東北の七重町に暮らす高校生の美和は、人ならざるものを幻視する体質。ある雪の日、何かに導かれるように見知らぬ場所に迷い込んだ彼女が見つけたのは老いた男の他殺死体だった――。倉数茂さんの新作『忘れられたその場所で、』は、そこから土地に刻まれた暗い歴史に斬り込んでいく社会派ミステリー。雪降る田舎町で発見された遺体の謎。幻想と社会派小説の美しい融合。架空の七重町を舞台に美和たち滴原兄妹が事件に遭遇するシリーズの第3弾。しかし本作の中心人物は死体の謎を追う若手刑事の浩明で、前2作を知らなくても十分楽しめる。「第1作の『黒揚羽の夏』は新人賞に応募したデビュー作ですから、続編は考えずに書いたんです。でもそこから壮大なストーリーを思いついてしまって(笑)。シリーズで一貫しているのは、美和が不思議なものに出会ったことから、消されてきた記憶が蘇るというパターンです。今回は少年少女たちが事件を解決していくより刑事を据えた方がスムーズにいくと思い、警察小説の枠組みを活用しました。ただ、そこに幻想要素も加え、オリジナリティを出せたかと思います」浩明と、彼とコンビを組む刑事で異端視されているシングルマザーの絵美の地道な捜査を主軸に、所轄と県警の軋轢や、七重町の経済を牛耳る大真知家の闇といったサイドストーリーも進行。冬の七重町の静謐な姿を遠景に、社会的に弱い立場の人々の姿をちりばめながらスリリングに謎解きは進む。記憶をモチーフにする際、忘れ去られた人、見過ごされてきた人を掬い上げるのが倉数作品の特徴だ。「僕は文学研究者でもあるんですが、それも主に大正~昭和をフィールドにしていました。いま自分が生きている社会の中に過去の痕跡を感じて、遡って考えることが多いんです」本作の着想のひとつには、2016年の相模原障碍者施設殺傷事件があったという。「あの事件にはものすごく衝撃を受け、いろんなルポや証言も読みました。“誰でもよかった”という通り魔的な殺人とは違い、論理を持って多くの人を殺あやめたという事実が非常に辛い。あの事件を直接書くのではなく、過去に置き換える形で物語にしようと考えました」浩明が過去に差別されていたハンセン病患者について専門家に話を聞く場面がある。そこで語られることに読者も驚くはずだ。「患者たちが、わりと最近までひどい扱いを受けていたこと、それが知られていないことに驚きますよね。患者の家族も口をつぐみ、社会から見えないようにされていたんです」実は浩明には障碍のある弟がいる。だからこそ事件の核心に迫るうち、自分自身を見つめ直すことになる。「大学時代、障碍者の弟さんを持つ友人がいたんです。彼は“将来自分が弟を養わないといけない”とさらりと言っていた。卒業後も、ふっと彼のことを思い出すんです。二十歳前後の学生がああ考えているなんて重いことだな、って。そういう家族を持ち、若いうちから一生単位で生き方を考えているけれど、口にしない人は現実にたくさんいる。浩明は、まさにそういう人なんです」やがて浮かび上がる真実は予想外のもの。ミステリーとしても、幻想小説としても超一級の読み心地だ。「今回はスピーディに話を進めようとしたので滴原兄妹のことはそこまで細かく書けなくて(苦笑)」と言うが第1弾で夏、第2弾で秋、今作で冬が描かれたのだから、第4弾もあるはず…と、期待が高まる。倉数茂『忘れられたその場所で、』東北の田舎町・七重町に暮らす高校生の美和は、ある雪の日、下校途中に道に迷った末、老人の他殺死体を発見。刑事の浩明は殺された男の過去を探るうちに、町の意外な歴史に行き当たるのだった。ポプラ社1870円くらかず・しげる2011年『黒揚羽の夏』でデビュー。‘18年『名もなき王国』で日本SF大賞、三島由紀夫賞にノミネートされた。他の著書に『始まりの母の国』『魔術師たちの秋』『あがない』。※『anan』2021年7月7日号より。写真・土居麻紀子(倉数さん)中島慶子(本)インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2021年07月05日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「ヤングケアラー」です。一人で抱え込ませず相談できる体制を整えることが優先。「ヤングケアラー」とは、家族の介護や世話、家事や労働を日常的に担っている18歳未満の子どものことです。今年3月、国の初の実態調査により、中学生のおよそ17人に1人がヤングケアラーであることが明らかになりました。公立中学校1000校と全日制高校350校を対象に行われた調査によると、「世話をしている家族がいる」と答えた中学生は5.7%、高校生は4.1%。食事作りや洗濯などの家事、祖父母の介護や見守り、幼いきょうだいの保育園への送迎など、世話の内容は多岐にわたっています。世話に費やす時間は中学生で1日平均4時間、高校生は3.8時間。7時間以上と答えた生徒も1割いました。下校後の時間がとられ、当然、勉強や睡眠、友達と遊ぶ時間などが削られてしまいます。最も深刻なのは、この状況を人に相談した経験のない子が中高ともに6割以上もいたことです。学校に行きたくても行けないと答えた生徒もおり、国は対応を急いでいます。ヤングケアラーのなかでも、「きょうだい児(病気や障がい者の兄弟姉妹がいる子ども)」はその存在がまだあまり知られていません。病気や障がいのある本人やその親に対してのサポートはありますが、きょうだい児もまた様々な視線にさらされています。まだ子どもなのに親に甘えられず、きょうだいの世話を担い、遊ぶ間がありません。自分の人生をきょうだいに捧げてしまうケースも少なくないのです。ヤングケアラー、きょうだい児に共通しているのは、その状態が「あたりまえ」と本人も周囲も思い込んでいること。あるきょうだい児の人は後年、「自分は、自分の自由にしていいのだということを教えてほしかった」と話していました。「24時間子供SOSダイヤル」や「子どもの人権110番」などの相談窓口を利用していれば、もう少し楽になれたのかもしれません。国は社会保障費を減らすために、施設ではなく家庭内で介護することを提唱しています。父母が働いていれば、ヤングケアラーは今後も増えるでしょう。ヤングケアラーが孤立し、人生の選択肢を狭められている現状に対して、適切なサポートが求められています。堀潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2021年7月7日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2021年07月02日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「こども庁」です。組織の一元化にとどまらず、官民協力体制で実現を。子どもに関する諸問題に一元的に取り組む「こども庁」の創設を、与党は次の衆議院選挙の公約の目玉にしようとしています。これまで、案件が複数の省庁にまたがるため、速やかに解決できないという問題がありました。たとえばコロナ禍のオンライン授業も、厚労省、文科省、経産省が関わります。経産省は、ベンチャーIT企業とつながりがあり、エドテック(エデュケーション×テクノロジー)を産業政策に掲げ、「未来の教室」というサイトを作っています。文科省は文科省で別のプログラムを持っており、こちらはテクノロジーにはあまり強くありません。こども庁創設の議論がなされるようになったきっかけは少子化です。子どもの貧困や教育格差などの問題に注目が集まり、もっと速やかに政策を打てるようにするべきだという機運が高まりました。さらにコロナ禍になり、その動きはいっそう加速しました。日本はもとより、「シルバー民主主義」といわれており、高齢化が大きな課題です。そのため、どうしても高齢者の医療サポートや年金問題、社会福祉政策に目が向きがちでした。予算配分もそちらのほうに重きがおかれていました。GDPに占める子育て支援策の比率は、先進国のなかでも日本は低水準といわれています。人口の違いもありますが、イギリスが3%台半ばなのに対して、日本はたった1%台半ばくらいしかないんですね。ただ、「こども庁」が創設されても、単に組織を作るだけで終わってはいけません。東日本大震災のときには復興庁が作られ、その存在は大きいですが、まだ使われずに眠っている予算もあるといわれています。きちんとした実態把握をし、それに適した予算を投下する実働部隊が必要です。子どもの貧困や教育、テクノロジーなどは、ソーシャルセクターといわれるベンチャー企業やNPO、NGOに任されてきた分野。彼らが積極的にこども庁のなかに入って構成されるような、官民の協力体制が欠かせないのではないかと思います。チルドレン・ファーストな国を作ることが、結果的に国民全体の利益につながります。さまざまな社会資源をここに投入していただきたいですね。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX 平日7:00~)が放送中。※『anan』2021年6月30日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2021年06月26日WOWOWで放送中の『中島健人の今、映画について知りたいコト。』の第6話の未公開シーンと第7話の予告を含むプロモーション動画が公開されている。中島健人(Sexy Zone)がMCを務める本番組は2021年1月にスタート。ハリウッドをけん引する映画監督やクリエーター、世界へ羽ばたく日本映画の監督へのインタビュー、映画制作現場の取材等を通じて中島が知りたい“映画の今”について学ぶ、という内容だ。7月2日(金)放送分では中島が「特殊メイク」について学ぶべく、『ゴーストバスターズ』や『デューン / 砂の惑星』など錚々たるハリウッド作品に参加し、日本において特殊メイクのパイオニアとして多くの映画・CM、テレビ番組製作に携わる、特殊メイクアップアーティスト・江川悦子のもとを訪ねる。そこで中島が人生初の特殊メイクに挑戦、さらには自身も実際に特殊メイクを施され大変身。果たして中島はどんな姿に変貌を遂げたのだろうか。また放送に先駆けて、WOWOW番組オフィシャルサイト( )では、前回の放送に入らなかった中島大興奮の未公開シーン、と次回の予告を公開している。■番組情報『中島健人の今、映画について知りたいコト。』#7 俳優を劇的に変貌させる~特殊メイクアップアーティストの神業~ゲスト:江川悦子7月2日(金)22:00~ [WOWOWプライム] [WOWOWオンデマンド]毎月第1金曜 22:00放送(全12回)最新情報は番組オフィシャルサイト及びWOWOW映画公式ツイッターにて公式サイト: 映画公式ツイッター: @wowow_movie()
2021年06月24日出会った女性がネタの源。そんな横澤夏子さんが、街で見つけたいい女を実演。今回は、できることを全力でやろうとする女になりきり。逆境への適応力が高い人はどんな環境でもうまくいく。大阪のテレビ番組に出演しているのですが、スタッフの方が用意してくれるケータリングがとにかくすごい。“温かいものを食べてください”という気持ちでやってくださっているようで、かつてはラーメンやおでんをその場で作ってふるまってくれました。それを出演者みんなで食べるのがすごく楽しかったんです。でも、コロナ禍でできなくなってしまい寂しい気持ちに。すると、今度は楽屋に、1人用のおやつやフルーツなどがたくさん並んでいて驚きました。なかには大阪にしかないコロッケやお団子などご当地のものも。出演者も多い番組なのに、スタッフの方一人で百貨店などいろいろな場所に行って探してきてくれたことに、思いやりの気持ちや気遣いの心が伝わってきました。“こういうご時世だから”と言い訳をすることなく、今できることを最大限に全部やろうとする姿がカッコいいと思いました。また、私の友だちが婚活を頑張っているのですが、「今、コロナだから婚活パーティに行けない」と嘆きながらも、絶対に諦めたくないと3つのマッチングアプリを掛け持ちし始めたんです。私はすぐにできない理由を見つけて言い訳にしがちだけど、こうして逆境ともいえる状況を前向きに頑張っている人がいるんだなと。工夫をする力や状況に適応する力を持っている人は、どんな環境でもうまくやっていけるんだろうなと感じました。まずは、予想外のネガティブな出来事が起こってもうまく対応している、お手本となるような人を見つけて学び、真似して行動してみるのがよさそう。自分がされて嬉しかったことを覚えておいて、自分で実践してみるのも役立つはずです。どんな状況をもポジティブにとらえて向き合える、柔軟な発想の持ち主を探しましょう!よこさわ・なつこ芸人。“ちょっとイラッとくる女”のモノマネで大ブレイク。婚活で培ったテクニックをまとめた著書『追い込み婚のすべて』(光文社)が発売中。昨年2月に第一子を出産。※『anan』2021年6月23日号より。写真・中島慶子イラスト・別府麻衣文・重信 綾(by anan編集部)
2021年06月20日傷つき傷つけ合ってしまう人々をオムニバス形式で優しく描いた漫画『スナック キズツキ』が話題に。登場人物に共感し、読むと心が癒されるこの物語に込めたメッセージを、作者の益田ミリさんに聞きました。小さな傷を癒す絆創膏のような場所。今年発売された益田ミリさんの描き下ろし漫画『スナック キズツキ』。日々ホコリのように、心の中に降り積もってしまう苛立ちやモヤモヤを抱えた人々を丁寧に描き、ささくれだった心を包み込んでくれると話題。その癒しの秘密について、益田さんに聞いた。「スナックキズツキとは、傷ついた人しかたどり着けないスナックです。心が傷ついたといっても、失恋のような大きな傷もあれば、何気ない会話の中で思いがけず傷ついてしまうこともあります。相手に悪気はないとわかっていても、小さな傷がじくじくと痛む。そんなとき、誰もがふいに怖くなるんじゃないでしょうか。自分も知らぬ間に誰かを傷つけているかもしれないと。傷ついたり傷つけたり。そんな不安定な日常の中で、ふらりと立ち寄れるスナックを描いてみたいと思いました。問題が解決するわけではなくても、絆創膏のような役目になればいいなぁと」益田さんの作品は、見ないふりをしている感情に寄り添って風通しをよくしてくれるが、スナックキズツキもそんな“場所”となっている。そして、年齢も立場もさまざまな人がやってくる。「日常の中でどんなことに傷ついているだろう?と考えて、『軽く扱われた』と感じるときが多いんじゃないかなと思ったんです。登場人物のひとりにコールセンターで働くナカタさんという女性がいます。彼女は彼氏と居酒屋で食事をしているとき、いつも自分ばかり質問していると気づきます。『今日は忙しかったの?』くらい聞いてくれてもいいじゃないかと思う。そしてアダチさんという販売員の女性もまた、お客さんに偉そうにされたり、同僚にいいとこ取りをされたり、いつも自分が損をしていると感じてしまう。気にしなければいいと思っても、そうもいかないのが人間。軽く扱われて傷つくエピソードから、さまざまな登場人物が思い浮かびました」また、ここはスナックなのにお酒を置いていないのもユニーク。「作中の会社員の男性サトちゃんは、お酒が飲めない体質です。なので話を聞いてほしいと思うような夜でも、同僚と飲みに行くこともできません。私自身もスナックに行った経験って数えるほどなんです。お酒が強くないというのもありますが、なかなかひとりで行きにくい場所です。前を通ったとき『この中はどうなっているのかな?』とよく想像し、カラオケなんかが聞こえてくると『ああ、今この中で嫌なことを忘れて歌っている人がいるのかもなぁ、よかったなぁ』と安堵する気持ちがありました。スナックにかねてから憧れがあったのかもしれません」私たちの周りにも存在するスナックキズツキ。スナックキズツキのママは淡々としていて、一見するとぶっきらぼう。だけどその距離感が、傷ついた人に心地よかったりもする。「友達に愚痴を聞いてもらいたいときってありますよね。だけどときには聞いてもらったことで、かえって傷口が広がることもあります。ママは、傷ついてやってきたお客に何も聞きません。けれども人って案外『ちゃんと聞いているよ』という姿勢だけでうれしいものじゃないかなと思ったんです」あれこれ質問しない代わりに、歌わせたり踊らせたり。お客さんはママの誘導に最初こそ戸惑うものの、さまざまなアクションに乗せられて気持ちを吐露し、思いのほかすっきりして店を後にする。「湯船の中ででたらめな歌を歌うことってないですか?私はあります(笑)。適当に節をつけて『あ~ほんと~疲れちゃったな~』みたいな。スナックキズツキに来店する人たちも、つかの間そういう素の自分になってほしかったんです。スナックキズツキは傷ついた者しかたどり着けない。ということは、ママもまた傷を負ってたどり着いたひとり。だからこそ傷ついた人に寄り添えるんだと思います。店で出すホットココアも、牛乳で練り、とても丁寧に作ります。丁寧に作ったものを受け取った人は、自分が丁寧に扱われていると感じ、安心するんじゃないかなと描きながら思いました」スナックキズツキを訪れたからといって問題が解決するわけではない。でも傷つけ合う連鎖にいた登場人物たちが、お礼の電話をかけたり、家族のためにココアを淹れてみたり。来店後に、足取りが軽くなって、誰かを気にかけられるようになる様子が描かれているのも、読者の心を明るくする。「ひとつの傷が癒えても、また新しい傷はできるもの。登場人物たちも元の場所に戻っていくので、傷つけ合うことからは逃れられないかもしれません。ただ、スナックキズツキという“手すり”が彼らにはできた。何かあればまたここに来よう、と思える場所があるのはよいものです。現実の私たちにとっての手すりは、スナックキズツキのような“場所”に限らず、本を読んだり、映画や芝居を観たり。そういうものすべてなんだと思います」自分ならどうしてほしい?その視点が優しさを生む。コロナ禍で外出や出会いが制限される中、心にじわじわダメージを受けている人も多い今、益田さん自身はどう心を整えているのか。「初めての経験で戸惑う日々ですが、私は最近、海外旅行記をよく読んでいます。読書をしている間、心の中だけはのびのびと自由でいられて。先日、小林聡美さんの『キウィおこぼれ留学記』を読んで寝たら、ニュージーランドに行く夢を見ました。飛行機代もいらない海外旅行ができました(笑)」危うい日常の中で人とのコミュニケーションで大切なことは、自分ならどうしてほしいかを考えること、と益田さんは言う。「悩み事を相談されるとアドバイスをしたくなりますが、自分に置き換えてみれば、ただ聞いてほしいだけということもあります。とにかくまずは聞く。そうできたらいいなぁと思います。『気持ちを聞いてくれた』。それだけでも元気が出るものだと思うので」癒しのポイント1アルコールなしで「お疲れさん」と言ってくれる。スナックはお酒を飲む場所というイメージが強いが、ここはアルコール類は一切なし。「そうすることで、お酒が飲めない人でもふらりと寄れる場所になればいいなと考えました。傷ついた若い女性も、高校生のお母さんも、あるいは高校生だって来店できます。傷つくことに性別や年齢は関係ないので、いろんな登場人物を描こうと思いました」癒しのポイント2自然と吐露できる心地よさ。「なぜ今こんなことを!?」と思うようなアクションを通して、来店者は素の状態に。「そのためにはママも素でいることが重要で、お客と一緒に歌ったり、踊ったりするときにも躊躇してはいけないと思いました。『あなたのことを私は絶対に笑ったりしない』という強いメッセージが必要ではないかと」癒しのポイント3前の物語で傷つけた側の人が次の物語で傷ついた主人公に。惣菜屋でクレームを言ったカホは、販売員のアダチさんを傷つけた人として登場するが、その後、息子に言われたひと言で傷ついた主人公としても再び登場する。「傷つかず、傷つけずになんて仙人のようには、なかなか生きられないもの。ただ自分が傷ついたときに、自分も誰かを傷つけているかも、と思うことはできるかもしれません」『スナック キズツキ』都会の路地裏にあるらしい、傷ついた者しかたどり着くことのできないスナックが舞台のオムニバス。共感が心の救いになる、7年ぶりの描き下ろし漫画。小社刊1430円ますだ・みりイラストレーター。本誌連載中の『僕の姉ちゃん』(小社刊)はシリーズ第4巻まで発売中。近著に『沢村さん家のたのしいおしゃべり』(文藝春秋)など著書多数。※『anan』2021年6月23日号より。写真・中島慶子イラスト・益田ミリ取材、文・兵藤育子(by anan編集部)
2021年06月19日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「選挙イヤー」です。よりよい暮らしのために、政治に判断を下せる好機。今年は選挙イヤー。前政権を受け継ぐ形で誕生した菅内閣は10月21日に任期満了します。ですから、それまでに必ず衆議院議員選挙が行われます。コロナ対策やワクチン、東京オリパラ、経済政策など、菅政権の是非を選挙によって総合的に判断を下すことができるのです。4月に広島再選挙、長野、北海道で補欠選挙が行われましたが、政治とカネの問題をめぐり与党に厳しい審判が下されました。2009年には政権選択選挙と謳われ、民主党政権が誕生しました。再び政権交代があるのか、注目が集まっています。その前哨戦になるのが7月の東京都議会議員選挙。前回は小池百合子さん率いる都民ファーストの会が圧勝しました。選挙について、選挙期間中に考え始めても遅いと思います。期間中は、コロナ対策や消費税など、わかりやすい一つのテーマに公約は絞られがちです。解決しなければいけない問題が山積していても、政治家たちが議論したいテーマに有権者は誘導されてしまいます。そうならないために、普段から自分がどんなことに不安を抱え、どんな未来を描きたいのか。それに対して候補者がどんな考えを持ち、対処しているのかをウォッチしておかなければなりません。まずは自分の選挙区が何区なのかを把握しましょう。出馬する候補者の大半は現職の政治家ですから、彼らが公約を守ったのか調べてみる。SNSでどんな発信をしているかも有効なチェックポイントになります。人々の関心が薄いと、あっという間に強い権限の法律が通ってしまいます。この春に成立した、まん延防止等重点措置の「酒類禁止」の項目はプレス発表もなくさらりと加えられました。なんとなく受け入れてしまっていますが、飲食店にとっては死活問題です。ワクチン接種も、首長や議会の手腕次第で、スムーズに進む自治体、進まない自治体に分かれます。政治は特別なものではなく、私たちの暮らしに密着しているのです。もしも投票したい候補者が見つからない場合には、あなたが出馬するという方法もあります。衆院選や都議、県議は25歳以上に被選挙権があります。政界も若い風を強く求めていますから、チャンスです!堀潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2021年6月23日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2021年06月18日琉球風水志・シウマさんのオリジナル占術「数意学」をもとに作られた携帯ナンバー占い。凶数字の人も、開運ナンバーを取り入れることで幸運になれます!吉数字の超パワーで幸運に!携帯ナンバー占い【占い方】携帯番号の下4桁を合計して出た数字があなたのナンバーです。(例)下4桁が「1111」の場合1+1+1+1=42021年の幸運ランキング1位…33、2位…16、3位…8、4位…6、5位…24ここでは、下4桁の合計19~36の運勢をご紹介します!【19】直観で行動するタイプ。でも恋愛には慎重直感力が強く、気分で行動しますが、それが正解なことが多い。ただし、それで人を振り回さないように要注意。「17」を取り入れると自分を客観的に見られて、衝動が抑えられますよ。基本的に異性からモテますが、好みのタイプでない人から好かれることも。恋に関しては身持ちが固いので、気分で交際することはないでしょう。【20】空回りしないように注意!32の力で正しい評価が努力家で、決められたことや教えられたことをこなすのが得意。でも、自分で決めると、やらなくてもいい努力をしてしまうところがあるので、何かするときは必ず誰かにアドバイスをもらいましょう。体調を崩しやすいので無理はしないこと。「32」を取り入れると頑張りが正しく評価され、自信になります。良縁にも恵まれそう。【21】未来の女社長候補。ヒモ男に注意してビジネスセンスに長けていて、生活力もあります。異性からモテるタイプですが、キャリアウーマン志向なので、恋愛を重視しません。ヒモ男に好かれる可能性があるので注意。IT企業やメディアの仕事が向いているほか、投資の勉強をするのも吉。「1」の力を取り入れると、時代の変化を上手にキャッチできて仕事に活かせます。【22】’21年は我慢強さが肝。8の力で結果を出して自分のこだわりを持っていて、何事も納得いくまでやるタイプ。ただ、納得できないと投げ出してしまうことも…。粘り強く頑張ると、奇跡を起こすことができるので、諦めないことが大事です。「8」を取り入れると、最後まで諦めずに進められて、結果を残せます。我慢強くなり安定感も出るので難しいことも挑戦できるように。【23】無敵の“コミュ力おばけ”。恋愛では注意が必要?コミュニケーション能力が抜群。機転も利くので、初対面の人からもすぐ好かれます。プレゼンや交渉事も得意なので、営業やコンサルタントなどの仕事で実力を発揮しそう。ただし、異性を見る目はやや難あり。恋愛は必ず人に相談しましょう。「11」を取り入れると、天才肌な気質がさらに高まり、男運のなさも改善に向かいます。【24】玉の輿候補No.1。経営者の才能もあり2021年幸運ランキング5位。一番金運に強いタイプ。お金に困らないしゼロから財を築く力もあります。結婚運もあり、玉の輿にものりやすいですが、つい欲張りすぎると運気が下がるので謙虚さを忘れずに。「5」の力を取り入れると、協調性と思いやりが強化されて、まわりから妬まれにくくなり、トラブルを避けられます。【25】クールなリケジョタイプ。ギャップ萌えでモテる計画的に進めるのが好きな理系タイプ。エリート志向なので他人にも自分にも厳しく、特にルールは絶対に守ります。クールな雰囲気で気難しいところもありますが、お酒でキャラ変するところがあり、そのギャップが異性からモテます。「13」を取り入れると、普段からいい具合に愛嬌が出て、まわりの人との距離が縮まりそう。【26】自分を見つめ直してシンプルに生きるとエネルギッシュで頑張るけど、目的のためには手段を選ばないところがあり、人を振り回しがちなので、周囲への気配りを忘れずに。自分のことを理解しきれていなかったりするので、得意不得意をメモに書いて整理すると吉。「7」を取り入れると、不必要なものが自分から去っていき、シンプルに生きられます。ダイエットにも。【27】優秀ではっきりした性格。31の力で恋人ができる頭が良くて勉強も得意。問題意識もあって物事を読み解く力が抜群。人の悩みをズバッと解決するアドバイス力もあるけど、そのせいで冷たいという印象を持たれることも。外科医やプログラマーなど、一人で作業に没頭できる職種だと、その才能を存分に発揮できる。「31」を取り入れると、仲間に恵まれ、その中から恋が生まれそう。【28】頑張りすぎには要注意。筋トレで運を好転させて人に優しくてコツコツやる頑張り屋さん。でも、つい頑張りすぎて体調を崩したりして、チャンスを逃すことがあります。やりたいことがあるのはいいけど、無茶をしないよう注意しましょう。メンタルが弱りがちなので筋トレをして自信をつけると、余裕が生まれて他のことも好転します。「18」の力で生命力を高めましょう。【29】異性が萎縮するほどの完全無欠のプリンセス地位も学力もお金も備えていて、いつも誰かがサポートしてくれる、根っからのお姫様気質。努力も惜しまないので人の上に立てるけど、そのぶん、異性からは遠慮されてしまいそう。宝石など高級なものを一つ持つと、さらに運気が上がります。「24」の力を取り入れると、より財力が上がって貯金が増え、権力も降りてきます。【30】陽気な盛り上げキャラ。イベンター系の才能ありノリが良くてまわりを笑顔にできる。同性からも異性からもモテます。ただし、行動が危なっかしい面があるので、ハラハラさせてしまうことも。お金の使い方はよく考えて、大きな買い物をするときは慎重に。ギャンブルは絶対NG。盛り上げ役を買って出るとキャラを発揮できる。「25」の力で計画的になると魅力的な大人に変身。【31】敵が少ないカリスマ。今の時代に最も適任空気を読むのが上手で、TPOもわきまえた“デキる”大人の雰囲気。31は一番性格がいい数字で、敵も少なく、異性からも引く手あまた。本能のままにいてOKですが、外見はギラギラせずフラットな印象を心がけると、さらに運気がアップ。「15」の力を取り入れると、女性の幸せが全て手に入って、さらに自分を高められます。【32】幸運が連鎖していくくじ運ランキング1位くじ運が最も強くチャンスにも強い、引き寄せ体質。人間関係にも恵まれていて、良縁が良縁を呼び、仕事や恋愛にいい影響を及ぼします。窓やカーテンをきれいにすると、さらに出会い運が上がるので、しっかりと掃除を。「29」の力を取り入れると、やってきたチャンスを見逃さず、根こそぎつかまえられるようになります。【33】誰からも愛されて成功も収めるスター2021年幸運ランキング1位。人間的魅力にあふれていて多くの人に愛されるスーパースター的存在。エネルギーが強く、まわりの人にも好影響を与えるので、どこにいっても成功します。ただ、厳しい環境ほど力を発揮するので、自分を律しましょう。「17」の力を取り入れると、より高い目標を達成する手助けとなります。【34】ミステリアスなモテ体質。開運行動は全て試して同性からも一目置かれるほどセクシーな魅力を持っている存在。ミステリアスな雰囲気があるので、性別や年齢、国籍問わず思いを告げられる可能性が!トラブルに巻き込まれがちな面もあるので、あらゆる開運行動を試してみよう!「32」を取り入れると、不運の連鎖が断ち切れて運が好転します。【35】面倒見のいい聖母。生活にメリハリをつけて面倒見が良く真面目。何でもそつなくこなせるので、どんな仕事でもうまくいきます。高望みしすぎず、日々の何気ない生活に幸せを感じる気質で、結婚など環境が変わってもそれは変わりません。生活に起伏をつけると運気が上がるので少しの変化を意識しましょう。「3」を取り入れると、自分をいたわってくれる人と出会える。【36】親切心が誤解されがち。13の力で女子力を高めて誰にでも優しいですが、良かれと思ってやったことが、おせっかいになったりすることもあるので注意。目標のためには手段を選ばない必死さが長所ですが、やりすぎないよう、ほどほどを心がけて。心穏やかに過ごし、甘いものを食べると運気が上がります。「13」の力を取り入れると、女性らしい可愛らしさがアップ!シウマ1978年生まれ、沖縄県出身。琉球風水志。沖縄に伝わる琉球風水に精通。姓名判断をもとに編み出した独自の占術「数意学」により、携帯ナンバーや暗証番号による開運術を提唱。『突然ですが占ってもいいですか?』(フジテレビ系)に出演中。※『anan』2021年6月16日号より。写真・中島慶子取材、文・金山 靖(by anan編集部)
2021年06月13日出会った女性がネタの源という横澤夏子さんが、街で見つけたいい女を実演。今回は、人の気持ちを楽しく軽くできる女性、「極端な例え話をする女」になりきり。想像しやすい内容選びが共感を呼ぶポイントに。離乳食のことで悩んでいた時に、井桁容子先生という子育てのプロの方から、「じゃあ、ジャングルで子どもを育てようと思ってみてください」と言われました。先生曰く、ジャングルにも子どもがいて、その子たちはそこにあるものを食べて大きくなってきた。また、縄文時代のような狩猟を行っていた時代でも、子どもはきちんと育ってきたからこそ今の私たちがある。だから、“離乳食は絶対に七分粥じゃなきゃいけない!”なんてことはないし、その子の体に合った食べられるものを食べていれば大丈夫なんだと。その話を聞き、最初は、“子育てって、そんなにざっくりでいいの!?”と思ったけれど、気持ちがすごく楽になりました。“ジャングルだと思えばなんでもいいじゃん!”“ジャングルにしてはいいもの食べてるよね”と、一度不安になっていた気持ちが落ち着いたんです。その言葉を友だちに伝えたところ、彼女も心が軽くなったと言っていて、こうした極端ながらも悩んでいる人を助けられる例え話ができる人って素敵だなと思いました。以来、SNSで素敵な子育てをしている写真を見ても、“ジャングルにいたら見なくていい情報だよな”と思えるようになり、うちはうちでいいんだと前向きに受け止められるようになったんです。きっと、井桁先生自身、いろいろと悩んだ経験があるのだろうし、さまざまな人を見てきたからこそ、こういう素晴らしい例えができるのだろうと思います。そんな先生のように説得力のある例えをするには、極端だけど言われた相手がスムーズに想像できるような、絶妙な内容を選ぶ努力をすることが必要だと思います。想像が全然できないと、共感できないですよね。絶妙なラインを見極めましょう!よこさわ・なつこ芸人。“ちょっとイラッとくる女”のモノマネで大ブレイク。婚活で培ったテクニックをまとめた著書『追い込み婚のすべて』(光文社)が発売中。昨年2月に第一子を出産。※『anan』2021年6月16日号より。写真・中島慶子イラスト・別府麻衣文・重信 綾(by anan編集部)
2021年06月13日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「温室効果ガス46%削減」です。環境の問題だけではなく、経済の生き残り策 。4月に気候変動サミットが開かれ、各国が温室効果ガスの削減目標を表明しました。日本は2030年度までに2013年度比で46%削減するという新たな目標を掲げ、「50%の高みに向けて挑戦を続ける」と発表。それまでの目標値は26%削減でしたから、一気に引き上げた形になります。ところが、環境問題に熱心に取り組む若い人たちが、その数字では足りないと、経産省前でハンガーストライキを行いました。パリ協定では、世界の気温上昇を産業革命前と比べて1.5°Cに抑えることを目標に定めています。そこまで効果を出すには日本は62%の削減が必要だと訴えたのです。ちなみに他国の目標値は、アメリカは2005年比で50~52%削減。EUは1990年比で55%以上減。イギリスは1990年比で78%以上減です。アメリカのバイデン大統領は、オバマ政権で謳われた、温暖化防止と経済格差是正の両方を行う経済刺激策「グリーン・ニューディール」をさらに強化し、「クリーンエネルギー/持続可能インフラ計画」に4年間で総額2兆ドルを投入すると公約で掲げました。中国は、公害により健康被害が多く出たことを機に、環境対策に積極的になり、2030年までの温室効果ガス削減目標は2005年比で65%以上削減。また、2035年の新車販売でガソリン車をゼロに。電気自動車を中心に省エネ・新エネルギー車の割合を5割にし、残りの5割もすべてハイブリッド車にすると昨年秋に発表しました。欧米や中国の削減目標値が高いのは、環境対策がこれからの経済の主戦場になると踏んでいるからです。欧米の大手企業は、石炭や火力による電力に依存する企業とは取引しないと公言していますから、日本も再生可能エネルギーの比率を上げるなどの対処をしないと、このままでは世界の経済市場から日本の企業は排除されてしまいます。環境対策は、地球を守るというイデオロギー的なものから、産業の生き残り策に大きく変わったんですね。AIや再生可能エネルギーなど、あらゆるテクノロジーを駆使し、環境に負荷をかけない産業政策を、国が本格的にとる必要があるのではないかと思います。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2021年6月16日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2021年06月12日作詞や詩、エッセイ、絵本の執筆など多方面で活躍する高橋久美子さんが初の小説集を上梓。『ぐるり』は世代も立場も異なる、時に動植物が主人公となる短編集だ。一人でいても、繋がっている。作詞や随筆で人気の著者の初小説集。「最初はエッセイの連載でしたが、途中で別の人の人生を書きたくなって。編集者に“小説に変えてもいいですか”とお願いしたんです」日常の光景や、ファンタジーやSFなど多彩な内容。実体験に基づいているものもあるようで、「男の子が蟻の王国に行く話は、実際に庭の苔をダンゴムシに食べられて、蟻の王国があればいいのにと思いつき、宮沢賢治の童話風に描いたもの。姉妹と母親のベトナムを旅行する話は、私小説といえるかも」見事なオチのある話もあるが、想像の余地を残す作品も。「サビがどこか分からない話って好きなんです。音楽でも聴けば聴くほど味が出るものを“スルメ曲”と言いますが、何回も読み返せる“スルメ小説”ですよね(笑)」いくつかの短編で登場人物がクロスする。ニヤリとするのは「DJ久保田」の2編。他の話の登場人物たちがゲストで登場したり、番組にメールをよこしたり。「私もラジオのパーソナリティをしていますが、ラジオと小説って相性がいい気がして。ゲストやメールをくれるリスナーって、顔は見えないけれどお互いを知っていて、友達みたいに思えますよね。小説の登場人物たちもそうだなって」どの人物にも愛着がわくのは、著者の優しい眼差しがあるから。「人間観察が好きです。人間のことが、すごく好きなんだと思う。嫌な感じの人がいても嫌と思わず“へえーそんなふうに考えるんやー”と思いながら見てしまう」人に言えない思いや孤独を抱いた人も多い。全体を通し、そんな人たちが隣り合わせだと思わせる。「一人で歩いていても通り過ぎるトラックには乗っている誰かがいるし、一人で部屋にいても外には人の気配がある。地球の上でみんな一緒に暮らしているという感覚があります」そんな思いがタイトルにも滲む。「今はコロナ禍で会えない人も多いけれど、だから一層相手のことを考えたりしますよね。孤独と孤独が繋がって、孤独でなくなればいいなと思っています」『ぐるり』さまざまな世代、立場が見つめる光景を自在に描き出した短編集。連載を楽しみにしていたという奈良美智さんが挿絵を描き下ろしている。筑摩書房1540円たかはし・くみこ作家、詩人、作詞家。さまざまなアーティストへの歌詞提供や翻訳などの創作活動を続ける。主な著書にエッセイ集『いっぴき』『旅を栖とす』、詩画集『今夜凶暴だからわたし』など。※『anan』2021年6月9日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2021年06月08日自宅で過ごす時間を有効活用して、筋膜をセルフケアできるアイテムがますます人気に!そこで、形状や機能別に注目アイテムをリストアップ。健康コンシャスで筋膜ケアに注目しているライターWと、ガジェット系は未経験の編集Mが実際にお試し。感想もぜひご参考に!フォームローラー大きさ・タイプも豊富なメジャーガジェット。筋膜ケアではポピュラーなローラー型。シンプルな形状で基本のストレッチが大体まかなえるのがいいところ。ライターW:ローラー型は使いやすい。編集M:いろいろ出ているけれど、意外と形も機能性も違うんだ!ライターW:そうなんだよね。グリッドフォームローラー(R)は、振動なしで自重で圧力をかけられるからじんわりほぐれる感じがグッド。編集M:私はパワーローラー、かなり好きかも!ふくらはぎをのせて振動させるとテクいらずで気持ちいい~。テレビを見ながら毎日使いたくなる!ライターW:ラドヘリックスはこの形状が腋や二の腕の細かいパーツに対応。肩甲骨にもフィットするから、筋肉がゆるんで肩が開くのがわかるね!グリッドフォームローラー(R)トリガーポイントマッサージ師の手技を再現できるような特殊構造でセルフマッサージが簡単に。筋肉になじみやすい柔らかい素材で効果が期待できる。直径14×長さ33cm 604g¥5,500(ミューラージャパン TEL:045・651・7800)ラド ヘリックスラド ローラーカラダをのせて自重をかけたり、気になるパーツに当てて転がすことで脊柱やカラダの歪みを整え、凝り固まった部位をリラックス。最大直径7.5×長さ32cm 384g¥7,150(ヴィット TEL:03・6805・6095)パワーローラーSIXPAD最大2800回(分)のパワフル振動で2種類の振動と3段階のレベルが選択可能。背中や腕、脚などの筋肉をストレッチ。直径約13.5×長さ約34cm 約1540g¥15,180(MTGTEL:0120・467・222)ボール型持ち運びもできる手軽さが魅力。手のひらサイズのボール型は、バッグにポンと入るコンパクトさが魅力。編集M:3Dコンディショニングボールスマートは撮影現場でも大好評!ライターW:この振動が絶妙で気持ちいいよね。アシストカバーにボールを入れれば、肩甲骨にもラクに届くし。編集M:ヒーター付きもポイント高い。ライターW:同じくヒーター付きでEMS仕様のルルドスタイルEMSボールは筋肉の奥まで届く感じがして充実感すごい。しかも見た目がおしゃれ。編集M:EMSに慣れていない私は、ビリッと感に驚き。プチプラのやわこは手軽に試せていいですね~。でもやっぱり私にはめっちゃ痛い!(泣)ライターW:プチプラながら硬派な仕事ぶりがインパクト大だね!(笑)3Dコンディショニングボール スマートドクターエア3段階の振動レベルで、肩甲骨まわりや腰など手の届きにくいパーツケアも楽々できるアシストカバー付き。充電式コードレスなので持ち歩きも可能。直径9cm 300g¥9,800(ドクターエア TEL:0120・05・8000)ルルドスタイル EMSボール AX-FRL906svアテックスEMSアイテムが人気のブランドから新発売。肩甲骨から足裏まで、ヒーター付きで温めながら筋膜ケア。直径約6.5×高さ約6.5cm 約120g¥9,900(アテックス TEL:0120・486・505)ラヴィ やわこ ホワイトジョイナス硬さはテニスボールほど。コリの気になる場所に、イタ気持ちいい強さでボールを当ててゴリゴリするだけのお手軽さ。幅約14×奥行き約6.5×高さ約6.5cm 約220g¥1,280(ジョイナス TEL:048・997・1533)ハンディガン型ピンポイントに使え、注目度上昇中。プロの愛用者も多いガン型は、トレーニング前後の筋肉メンテナンスやリラックスに最適で、やや上級者向け。ライターW:ドドド…と上下する振動が境界線や深層部まで届くプロ仕様。編集M:シンカマッスルパーカッションガンはヘッドをいろいろ付け替えるのが楽しいですね~。私は丸いスポンジヘッドだと3~4ぐらいの強さがちょうどいいみたい。U字は二の腕にフィットして、刺激がクセになりそう。ライターW:シンプルなデザインにもこだわりを感じるね。セラガンミニは小型でもパワフルでびっくり。編集M:ハートみたいで可愛いし、音も静かだから使う場所を選ばない。ライターW:携帯用の超小型版だから、ジム後にもささっと使える!シンカマッスルパーカッションガンジョンソンヘルスケア1分間に1500~3000回の振動調節あり。握りやすい形状のガン型で気になる部位に届きやすい設計。幅約5.7×奥行き23×高さ22.1cm 685g¥18,480(ジョンソンヘルスケア TEL:0120・000・677)セラガン ミニTherabody人間工学に基づき開発。独自のモーター搭載でパワーとスピードを維持しながら3段階の強さを調整できるため、細かいボディケアが可能。680g未満¥25,300(THERAGUN専用窓口 TEL:0570・028・651)※『anan』2021年6月9日号より。写真・中島慶子文・若山あや(by anan編集部)
2021年06月08日日常のスケッチの中にいまどきの気分がさりげなく表現されていて、共感を誘うオカヤイヅミさん。今年でデビュー10周年を迎え、その記念碑的作品2冊を同時刊行。『いいとしを』と『白木蓮はきれいに散らない』は、ミッドライフ・クライシスを感じ始める男性と女性、それぞれから見た世界が描かれ、首肯する場面や言葉が随所に出てくる。揺れる世界とお年頃…諸行無常を男女それぞれの目線で描いた2冊。「どちらも、死に近づいている人たちの話ですよね。男性、女性と分かれたのは、連載媒体に合わせてだったのですが、コミュニケーションのしかたや心理的・社会的な性差についての感覚…結果的にその違いも出せたかなと思います。たとえば、『いいとしを』で描いたように、男性は踏み込み方が違うのかな。雑談が苦手な人が多いですよね。そういうのは女の人の方が得意で、『白木蓮~』でもわかりますが、お互いそれほど踏み込まなくても、話すことがいっぱいありますよね」『白木蓮~』に登場するのは、専業主婦のマリ、離婚調停中のサヨ、キャリアウーマンのサトエ。高校時代はいつもつるんでいたが、大人になったいま、境遇は三者三様だ。高校卒業後40年間会ったこともなく、親しかった記憶もないヒロミが、なぜ自分たちに遺言を遺したのか。その意味を掴みかねながら、それぞれが目の前の悩みやこれまでの来し方に思いを馳せていく。「ヒロミは家族もいなくて孤独死してしまったけれど、背景が見えてくるにつれ、幸せってそんな単純な話ではないとわかるというか。そんなことを描きたかったんです」一方、『いいとしを』では、息子と父という、女性にとっては興味深い関係性を眺めるのが楽しい。灰田俊夫が父と同居してからあらためて〈親についてなんて、知らないことの方が多いんじゃないか〉と独りごちたりするリアリティが見事。「私の家族は父が2年前に他界していて、灰田家のように“聞けば/聞かれれば答える”くらいの距離感でした。生んで育てた/育てられたわけだから密な感じはするけれど、家族は親密で感情を共有するものだという空気には違和感がありますね」また、両作品ともフェミニズムと関わるテーマにも触れられていて、その手さばきにも心を掴まれる。「女性同士ならとっくにがしっと手を取り合うくらいの話も、男性たちには“そんなにわかり合えていなかったんだ”と思うことがあります(笑)。ただ指摘しても響かないと思うので、日常の中でだんだんわかってくれればいいなと思います」オカヤさんのマンガを読んでいて何よりも心地いいのは、さまざまな人間の生き方や価値観を柔らかく受け止めて描いてくれるところ。「長年積み重ねていけば、いいものも悪いものも増えていく。どうしようもなさがからんで“しょうがないな”と思いながらやっていかなくてはいけない部分もあるし、いい思い出で気持ちが楽になったりもする。自分の中に、何に対しても『どっちがいいというものでもない』というのがある気がします」『いいとしを』42歳のバツイチ男性が、かくしゃくとしたマイペースな父と同居し始めて気づくさまざまな変化を描いた。KADOKAWA1320円©オカヤイヅミ/KADOKAWA『白木蓮はきれいに散らない』孤独死した元同級生ヒロミの謎の遺言によって、集まることになった3人の女性たちが、自らが向き合っている現実を見つめ直す。小学館1320円オカヤイヅミ1978 年、東京都生まれ。マンガ家、イラストレーター。2011年に『いろちがい』でデビュー。『ものするひと』『すきまめし』など著書多数。※『anan』2021年6月9日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年06月07日出会った女性がネタの源という横澤夏子さんが、街で見つけたいい女を実演。今回は、人を不安にさせない気遣いができる女性、「正直に言う女」になりきり。事情を素直に伝えることが、人を安心させる第一歩に。このあいだ健康診断を受けに病院へ行った時のことです。結果を待っていると、先生が「あ、ちょっと待ってね」「え~っとこれは…」と普段より時間がかかっていたので、診断結果に何か悪いところがあったに違いないと一瞬、思ったんです。でも、すぐに「ごめんなさいね。病院のシステムが変わって、横澤さんが初めてだから…」と事情を教えてくれてホッとしました。どうやら、4月の新年度を機に病院のシステムがすべて変わり、先生やスタッフの方もまだ慣れていないということでした。本来なら、言わなくていいことかもしれないけど、正直に言ってくれたおかげで無駄に心配せずにすみました。「そういうことなら、第一人者として、見届けてみましょう」「新年度は大変ですね~」とおおらかな気持ちにも。こうして、何に手こずっているのか、時間がかかっているかということをきちんと素直に伝えるほうが、相手のためになるんだと気がついたんです。たとえば乗っていた新幹線が止まった時も、理由がわからないと困惑するけれど「動物が線路を横断しています」と一言、理由を伝えられるだけでスッキリする。「あら、鹿かな?」などと考えられる余裕が生まれますよね!そうした気遣いができる人になるには、まず、待たされている側の気持ちを想像してみましょう。すると、ここが不安の理由なんだろうなと理解でき、安心させる一言を添えられそうです。あとは、相手が自分に対して聞きづらそうなことを考えたり、人が不安に思いそうなことを予測して答えを用意しておくのもよさそう。ネットショップのお問い合わせのところに書いてある「よくある質問」のようなイメージですね。“もはや質問はさせない”くらいの気持ちでいるようにしましょう!よこさわ・なつこ芸人。“ちょっとイラッとくる女”のモノマネで大ブレイク。婚活で培ったテクニックをまとめた著書『追い込み婚のすべて』(光文社)が発売中。昨年2月に第一子を出産。※『anan』2021年6月9日号より。写真・中島慶子イラスト・別府麻衣文・重信 綾(by anan編集部)
2021年06月06日人生の先輩的女性をお招きし、お話を伺う「乙女談義」。今月のゲストは歌手、俳優の中尾ミエさん。ラストとなる第4回は、大ヒットしたあのドラマ、そして、“女友達”について語ります。『その女、ジルバ』のようなバーを開きたい。今年の1月から放送されたドラマ『その女、ジルバ』で、元ホステスで直木賞作家のチーママ・真知を演じました。物語の舞台は40代以上しか働けないバー。高齢女性が“今を楽しく生きる姿”を華やかに描いた日本の作品は、とても珍しい。しかも話題にもなった、ということは、本当に素敵なことよね。実は最初、衣装の着物はもっと地味だったんですが、これじゃつまらないといろいろとアイデアを出していった結果、あんな派手な感じに(笑)。くじらママを演じた草笛光子さんも、最初は踊る予定はなかったんですよ。でも収録が進むにつれて「私も踊りたいわ」とおっしゃり、素敵な衣装でダンスを披露。草笛さんを見ていると私もまだまだ先があると思え、改めて勇気をいただきました。ああいう、いくつになってもみんながキラキラしていられるバーがあったら、ぜひ飲みに行きたいわよね。っていうか、私が作りたいわ。みんなぜひ働きにいらして!経験は財産。それを活かせば人生は豊かに。デビュー当時、私は“スパーク3人娘”というトリオを組んでいたんですが、実質一緒に活動したのは3年程度。でも40年後、「またやろう」と集まったら、すぐに結束できた。そのときに私は、“経験というのは財産なんだな”と強く実感しました。かつてグループを結成していたから、再結成ができる。また私は一昨年、約30年ぶりに古巣の事務所に所属させてもらったんですが、それもかつてお世話になっていたから、再び入れてもらえた。かつての経験を活かすことで、人生の可能性が更に広がります。なのでみなさん、あちこちに首を突っ込んでたくさんの経験をしてください。出会いも別れもたくさんあるでしょう。でも先の人生で、それを活かせる機会は絶対に訪れる。だから私はバラバラになるアイドルグループを見ると、いつかその経験を活かして、また集まってほしいと思う。ていうか、集まれるのよ。経験者が言うんだから間違いない(笑)。なかお・みえ歌手、俳優。1946年生まれ。‘62年、デビュー曲『可愛いベイビー』が大ヒットし一躍スターに。6/23より米倉涼子と城田優がプロデュースするエンターテインメントショー『SHOWTIME』に出演。※『anan』2021年6月9日号より。写真・中島慶子(by anan編集部)
2021年06月06日意味深なタイトル、巧みな文体、センスのいいエピソードやモチーフ…。そのすべてに痺れる、十市社さんの『亜シンメトリー』。なかでも表題作は、十市さんが初めて短編に挑戦した作品だそうで、魅惑的ないくつもの謎に陶然とする。執筆に1年以上かけたという野心的な一作だ。謎解きの難易度高め、読む快感強め。魅力的な仕掛けで惑わせる短編集。「物語を面白くするにはどうすればいいかと考えていくうちにこうなった、というのが正直なところです。ただ、ヒントはすべて書いてあるつもりなので『読み終わっても、よくわからない』という反応になるとまでは思っていなかったです(笑)」大学講師の亜樹は、通勤に利用している循環バスで〈六十の境はまだ越えていない〉くらいの年齢の花田早由里と乗り合わせる。ふたりはやがて奇妙なゲームに興じるようになるのだが、その流れで、亜樹は早由里の初恋物語を知ることになり…。「自分にいろいろ縛りを設けた作品で、シンメトリーにこだわりを持つ女性というのもその一つですね。さらに、宇治の巨椋池や、和辻哲郎さんの随筆、その辺りを走る循環バスなど、作中に織り込める実在の場所やものがつながって、物語の世界を広げてくれました」他に3つの短編が収録されている。1話めと3話めは、大学のジャズサークルで先輩後輩の関係にある中熊美緒と千日顕、美緒の高校の後輩の紫子が登場。紫子の叔父のジャズ喫茶〈ポーギー〉で顔を合わせて交わす、緊迫した会話が秀逸だ。「『枯葉に始まり』では、高校の美術部での事件について書き起こされたテキストを、謎としてどう活かすかから着想しました。その9年後を描いたのが『三和音』。3人の関係性が持つインパクトはいまだからこそ強いかも。設定が決まると場にふさわしい人物が現れるので、彼らを観察するように書いています」2話めの「薄月の夜に」は一人称視点で語られるいびつな恋愛劇なのだが、「私」など自分を指す言葉が一切出てこないために、物語と不思議な体感で向き合えるのが面白い。「意図的に人称を使わないことで、得体の知れない男という印象を持ってもらえたらいいなと考えました」実は本書は、登場する男女の関係がどう転ぶかわからない、サスペンスフルな恋愛短編集としても一級品。何度も読み返したくなる。『亜シンメトリー』十市さん自身も「読み返してみたら、すべて三角関係の話だと気づきました」と言うように、ハラハラさせられる危うい恋愛譚揃い。新潮社1815円とおちの・やしろ作家。1978年、愛知県生まれ。Amazon Kindleストアにて発売した『ゴースト≠ノイズ(リダクション)』が、のちに東京創元社で刊行。他の著書に『滑らかな虹』。※『anan』2021年6月9日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年06月05日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「出入国管理法改正案」です。難民は犯罪者ではない。廃案後も対応是正を求める。日本の入国管理のあり方が国際的に問題視されています。まず、難民認定率が1.2%(2020年)と、とても低い。さらに、難民申請を却下された外国人が、入国管理の施設に長期間収容されていることも問題になっています。家族と引き離され、無期限勾留のような状況で、体調を崩してもきちんとした手当てが受けられません。扱いが非人道的ではないかと、国連からも再三勧告を受けていました。今国会では出入国管理法の改正が審議されました。改正案には、難民認定手続き中は強制送還が停止されるという規定を3回目以降の申請には適用せず、本国に送還できるという変更が含まれていました。しかし、内戦や封建的な軍政から命からがら逃れてきた人を母国に送り返せば、その人は殺されてしまうかもしれません。改悪案だと、多くの人が反対の声をあげ、3月に名古屋入管施設に収容中だったスリランカ人女性が死亡し、その管理状況が問題視されたことも受け、与党は今国会での審議を断念しました。難民申請をしている人が本当に難民なのかを判定するのは確かに難しいです。パスポートはもとより、その人を証明するものがないからです。けれども、難民=犯罪者ではありません。ただ、入管庁は麻薬カルテルの一味や武装集団を入国させないよう水際を守るのが仕事ですから、入管庁の中で難民審査を行うこと自体に無理があると思います。たとえば、難民局を作り、難民なのか、虚偽の申請をする偽装難民なのかを審査できる体制を整える必要があるのではないでしょうか。日本は難民申請を厳しくする一方で、特定技能制度など、外国人労働者を受け入れる規制緩和はしてきています。労働力のためには門を開き、助けを求める人には閉ざすというのは矛盾しています。欧米には多民族、多文化の土壌があり、移民を国力に反映させる術を持っています。その点、日本は多様性を受け入れるのが不得意なんですね。廃案になっても難民に対する日本の対応は問題が残っています。もしも日本が戦争状態になり、自分が国を逃れ難民になったとしたら?と想像力を働かせて考えてみてほしいです。堀潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2021年6月9日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2021年06月05日いまや空前の“もふもふ”ブームといえるが、もふもふにデレデレしているのは現代人だけではない。山村東さんの『猫奥』は、江戸城大奥で猫に萌える女性たちのコメディだ。「江戸時代が好きなのですが、大奥の知識に関してはほとんどなく、ドラマで描かれるようなドロドロしたイメージしかなかったんです。それで何冊か本を読んでみたら、大奥に勤めていた20代後半の女性が、このまま仕事を続けるか、退職して大奥を出て結婚するかで悩み、占い師に相談したという記録があるらしく。それって現代の感覚に似ているなあ、と親近感が湧きました」主人公は、ドラマなどでもおなじみの人物といえる、大奥を取り仕切る御年寄(おとしより)の滝山。本当は猫が大好きなのに生真面目な性格かつ、眉間にしわを寄せた険しい表情がデフォルトであるため、いつの間にか周りからは猫嫌いだと誤解されている。ほかの女中たちが猫にかまけて、キャッキャしているのを鋭い目つきで見つめながら、心の中はうらやましさでいっぱい。そんな滝山が人目を忍んで翻弄されているのが、上司である姉小路(あねがこうじ)の飼い猫で、ふてぶてしさが味わい深い、吉野ちゃん。「大奥は今でいう社宅みたいに、同じ職場の人が一緒に暮らしていた場所。猫はいろんな部屋を自由に行き来していたんじゃないかなと、想像を膨らませました。吉野ちゃんは、滝山が敵わない相手にしないといけないので、人を人とも思っていないようなマイペースな猫になりました。だけどまあ、猫をかわいいと思う人は、その時点で猫には敵わないものですけどね(笑)。そういう敵わなさを出せたらと思っています」猫を2匹飼っている山村さんもまた、“敵わない側”のひとり。吉野ちゃんやほかの猫たちのちょっとしたしぐさや佇まいなど、猫好きのツボを心得ているところはさすが。そして猫だけでなく、大奥の人間模様も見どころ。滝山と真逆なタイプで派手好きな同僚の花町や、滝山が素性を隠して文通する、吉野ちゃん専属のお世話係である美登(みと)など、従来の嫉妬が渦巻くようなイメージとは、少々異なる女の園がそこにはある。「限られた空間に2000人近くの女性がいたのだから、つらいことばかりではなく、女子校みたいな楽しさもそれなりにあったのではないでしょうか。大奥について知らなかった私が面白いと思ったことや驚きを、素直に落とし込んでいきたいです」2巻では、滝山が猫好きであることを察する人物も登場。猫と大奥、なんともクセになる組み合わせだ。『猫奥』2猫好きだと誰にも言えぬまま吉野ちゃんを密かに愛でる滝山に、ついに味方が!?本作で連載デビューする前の作品「こまとちび」も収録。こちらにも猫!講談社715円©山村東/講談社やまむら・はるマンガ家。2018年「フク」で第6回THE GATE大賞を受賞。その後『モーニング』に読み切り「こまとちび」「おのぼり侍」を掲載。※『anan』2021年6月2日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2021年05月31日松田青子さんの新作『男の子になりたかった女の子になりたかった女の子』は掌編&短編が詰まった一冊。「ばらばらの時期に書いたものですが、読み返してみたら、無意識のうちに同じテーマ性を持ってたんだなと思いました」そのテーマ性とは、裏表紙の帯にもある“わたしたちは、会ったことはなくとも、つながっている”。「女性同士の関係が描かれるフィクションはドロドロしたものになるかアッパーの方向に行くものが多かった気がします。そうではなく、社会に存在しているだけでみんな緩く繋がっていること、その緩い繋がりのグラデーションを書きたかったんだなって気づきました」確かに、過去に出会った女性の声が聞こえてくる「天使と電子」や、就職試験で同席した女性たちのその後を描く「クレペリン検査はクレペリン検査の夢を見る」、アルバイト先にいた女性を思い出す「桑原さんの赤色」、世代の異なる女性が交流する「向かい合わせの二つの部屋」などは、女性たちの繋がりを感じさせる。「特に親しくしていなくても“こういう人がいたな”と記憶に残ることはあるし、その時は繋がれなくても、その後に違う形で繋がり直すことはあると思うんです」ユーモア炸裂の話も。「ゼリーのエース(feat.「細雪」&「台所太平記」)」は液体がゼリー状に固まって女の子になる話。『細雪』『台所太平記』はどちらも谷崎潤一郎作品だ。「谷崎のこの2作品は、どちらも女性たちが結婚できるかどうかが大問題なんです。よく出てくる“身を固める”も、考えてみれば変な言葉だなって。それで、身を固めるといえばゼリーだろう、と(笑)」また、「物語」は自分の言動が第三者の勝手な解釈で物語化される嫌悪を皮肉と笑いたっぷりに描く。「2014年に書いた短編ですが、読み直して今も状況があまり変わらないことがショックでした。ストレートに描くと説教くさくなるので、できる限りふざけてみました」「この世で一番退屈な赤」は生理について大っぴらに語れない空気への違和感から生まれ、「許さない日」は学校でブルマーを強制されたことへの怒りをぶつけた掌編で、共感する人は多いはず。タイトルを先に思いついた「斧語り」は文字通り斧が語り手で、愛おしくなる一作。表題作も、先にタイトルがあった。「小さい時から男性優位社会の中で生きてきて、自分も男性の目線で物事を見てしまうことがある。本来の目線を取り戻す過程を書きました」書き下ろしの「誰のものでもない帽子」は、コロナ禍で幼い娘と二人でホテルに逃げてきた母親の話だ。「コロナ禍で、女性の育児やDVの問題が増えたことが気になっていて。そばに助けてくれる人がいなくても、SNSの見知らぬ人や、誰かが忘れていった帽子が助けてくれることはある。今はなかなか物理的に人と会えませんが、社会に存在している時点で誰かと繋がっているんだ、と伝われば嬉しいです」世代も時間も、空間も越えた繋がりを感じさせる本作。越えるといえば、松田さんの『おばちゃんたちのいるところ』は今、国境を越えて海外で評判になっている。「日本の古典のリメイクなのに書評や感想を読むと“共感する”という言葉が多いんです。海外のイベントで作品を朗読した時も、“私たちの国も同じだよ”と言われて。そこにも繋がりを感じています」『男の子になりたかった女の子になりたかった女の子』過去に出会った女性の声が聞こえる「天使と電子」をはじめ、女性たちの緩い繋がりが描かれる作品集。現代社会に潜む違和感を、ユニークな発想で物語世界に落とし込み、共感&痛快感たっぷり。中央公論新社1650円まつだ・あおこ2013年、デビュー作品集『スタッキング可能』が話題に。’21年に『おばちゃんたちのいるところ』が米国のレイ・ブラッドベリ賞の最終候補になるなど海外でも注目。翻訳、エッセイでも活躍。※『anan』2021年6月2日号より。写真・土佐麻理子(松田さん)中島慶子(本)インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2021年05月30日出会った女性がネタの源という横澤夏子さんが、街で見つけたいい女を実演。今回は、短い言葉を繰り返して場を収める女性、「早口で聞こえない女」になりきり。「大丈夫早口4連発」は、気を使わせない魔法の言葉。私が大好きな吉本興業の社員さんのことなのですが、このあいだ、「私からもあの人にお礼を言った方がいいですか?」と尋ねた時に、「大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫~」と言いながら、絶妙なタイミングで扉を閉めて、どこかに消えていきました。その、早口で「大丈夫」と繰り返すニュアンスからは、“気にしないでいいよ”“ここは私が片付けておくから”という彼女の気持ちが伝わってくる。「いいですよ、私がやりますよ」とは言わせない空気を作るのがとても上手で、私は素直に「ありがとうございます!」と甘えることができたんです。相手に気を使わせないスキルを見て、本当にすごいなと思いました。短い言葉を何度も言われることで、自分の引き際が見極められる。しかも彼女は言い方が上手で、声がどんどん小さくなっていくところが、また相手に気を使わせなくていいですよね。たとえば、友だちと食事をして自分が払いたい時に、この「大丈夫早口4連発」スキルを使うとスムーズではないでしょうか。「ここは払っちゃうから。大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫~」と、おばちゃんのような包容力を感じさせるキャラをあえてやってみることで、意外とみんな引いていくはず。日常生活のいろいろなシーンで役立ちそうです。まずは一度、「大丈夫」と早口で4回言ってみましょう。まさに今、やってみてください!すると、案外おばちゃんのキャラになれることに気づくし、「甘えていいよ!」という気持ちが芽生えてくるはずです。ただし、言っておきながら大丈夫じゃないというのはダメなので、当たり前ですが、この技を使うのは、本当に自分が受け止められる時だけにしましょう(笑)。押すと「大丈夫」が4回鳴るようなアプリがほしいです。よこさわ・なつこ芸人。“ちょっとイラッとくる女”のモノマネで大ブレイク。婚活で培ったテクニックをまとめた著書『追い込み婚のすべて』(光文社)が発売中。昨年2月に第一子を出産。※『anan』2021年6月2日号より。写真・中島慶子イラスト・別府麻衣文・重信 綾(by anan編集部)
2021年05月29日人生の先輩的女性をお招きし、お話を伺う「乙女談義」。今月のゲストは歌手、俳優の中尾ミエさん。第3回は、その健やかな心と体の秘密に迫ります。面白そうな扉は、片っ端から全部開きたい!人生って長くても100年程度。何でもできるように思いますが、実はそんなこともないんです。74歳の私が言うんだから本当よ(笑)。とはいえ、この年になっても、経験してないことはたくさんあるし、出会っていない人のほうが全然多いわけで。私たちの周りには、開けていない“可能性の扉”がまだまだたくさんある。それに手をかけずに人生を終わるなんて、もったいないと思いません?扉の向こうには、まだ知らない楽しい世界が待っているかもしれない。だから私は、最後の最後まで、それこそばったり倒れるまで、「もっと楽しいことない?」と、扉を開け続けていきたいんです。アクティブな気持ちを持ち続ける秘訣?それはただ1つ。健康であること。そうすれば自信が持てるし、いろんなことにトライする気持ちが生まれてくる。若いとかきれいとか、そんなことは関係ないの。とにかく健康。みなさんも、お体を大切にね(笑)。年をとっても体は変わる。諦めないで!体のために何をしているか…。とりあえず日課としては、うちには犬がいますので、雨でも雪でも散歩には行かなきゃいけない。毎日近くの公園まで歩いていくんですが、そこで鉄棒にぶら下がったり、懸垂の真似事や、腹筋をしたり…。犬はおとなしく座って、そんな私を見ています(笑)。その他、ジムは週に2回、2時間ほど。コロナの前は水泳もやってましたね。あとは家でダンベルやストレッチをしたり…。仕事が立て込んでないときのほうが、私は忙しいかもしれないわね。あのね、お若いみなさんは信じられないかもしれませんが、70代になっても、鍛えると体は変わるんです。体は締まるし、筋肉は付く。私は身をもってそれを実感してます。それに、変化する自分を見るのって、楽しいじゃないですか。どこまで行けるのかしら、って。ちなみに今の目標は、今年のうちに腹筋を割ること!テレビで公言しちゃったもんだから、努力してます(笑)。なかお・みえ歌手、俳優。1946年生まれ。’62年、デビュー曲『可愛いベイビー』が大ヒットし一躍スターに。6月には米倉涼子と城田優がプロデュースするエンターテインメントショー『SHOWTIME』に出演。※『anan』2021年6月2日号より。写真・中島慶子(by anan編集部)
2021年05月29日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「総力戦研究所の教訓」です。空気に流されず、科学的根拠に基づいた政策を。80年前の12月に太平洋戦争は始まりました。ところが開戦の年の4月に当時の帝国政府は「総力戦研究所」を立ち上げ、日米開戦となった場合にどのような戦況になるのか、様々な観点から検証するよう指示を出していました。研究所に集められたのは30代前半の精鋭たち。大蔵省や商工省など省庁のエリート官僚や、陸軍省の大尉、海軍省の少佐、日本製鐵、日本郵船、日銀、同盟通信社(のちの共同通信社)の記者ら30数名で、模擬内閣を作り、徹底検証されたのです。当時の証言や資料をもとに猪瀬直樹さんがまとめたルポルタージュが、1983年に出版された『昭和16年夏の敗戦』です。総力戦研究所が引き出した結果は、序盤は日本優位に進み、中盤は産業力、物量の差が明らかになり戦況は悪化、ソ連の参戦で開戦から3~4年で負けるというものでした。ところが、すでに世の中は開戦の機運が高まっており、メディアもそれを煽るようにしており、引くに引けない状況に陥っていました。天皇はこの空気を諌めようと、東條英機に託し、日米交渉の姿勢を見せたところ、「東條弱腰」と多数の批判の投書が寄せられた。結局、東條は「日露(戦争)がそうだったように、戦争はやってみないとわからない」とエリートたちの試算を反故にし、予想通りの敗戦になってしまったのです。実は昨年、この本が再びヒットしました。それは新型コロナウイルスの対策をめぐり、同じようなことが起きたからです。科学者や医療関係者が、人々の行動規制案を提出しましたが、専門家会議は解体され、ひとつの分科会に格下げとなり、データ活用のために立ち上げた接触確認アプリCOCOAは、数か月にわたり機能していなかった事態が明らかに。人々の行動の追跡も、PCR検査もままならない状況では何も判断できません。科学的根拠のないまま、Go Toや東京オリパラなど、まあなんとかなるだろうと正常性バイアスがかかり、精神論で乗り越えようとする節がある。80年前と変わっていない体質があることを認識しなければいけません。これは僕ら一人一人に刷り込まれた感性かもしれないと、自分を疑う目線を持っていたいですね。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2021年6月2日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2021年05月28日WOWOWで2021年1月にスタートした中島健人(Sexy Zone)がMCを務める映画情報番組『中島健人の今、映画について知りたいコト。』。6月4日(金)放送の#6では光と影で映画を創る、照明技師のテクニックに迫る。その放送に先駆けて、WOWOW番組オフィシャルサイト( )に、#5では披露しきれなかったスタジオジブリでのインタビューの模様、そして#6予告を含むプロモーション動画も公開中だ。本番組は、ハリウッドをけん引する映画監督やクリエーター、さらに世界へ羽ばたく日本の映画監督へのインタビューや、映画制作現場の取材等を通じて、中島が知りたい“映画の今”について学ぶ月1のレギュラー情報番組。第6回は、中島が今1番“映画について知りたいコト”と話す「照明」について学ぶべく、『万引き家族』で第42回日本アカデミー賞にて最優秀照明賞を獲得し、是枝裕和監督や俳優たちが厚い信頼を寄せる照明技師・藤井勇の元を訪ねる。照明技師のテクニックを学び、実際に照明作りにも挑戦。さらにに、今回は中島が心に残るシネマの思い出を語る新コーナーも。この模様をぜひ放送・配信でチェックしてほしい。【番組情報】『中島健人の今、映画について知りたいコト。』放送日: 「#6 光と影で映画を創る~照明技師のテクニック~」6月4日(金) 22:00 [WOWOWプライム] [WOWOWオンデマンド]毎月第1金曜 22:00(全12回)MC: 中島健人(Sexy Zone)ゲスト: 藤井勇最新情報は番組オフィシャルサイト及びWOWOW映画公式ツイッターにてお知らせいたします。番組オフィシャルサイト: 映画公式ツイッター:
2021年05月28日出会った女性がネタの源という横澤夏子さんが、街で見つけたいい女を実演。今回は、買ったものを大事に愛用し続けられる女性、「サステナブルを意識する女」になりきり。地球のためにできることは日々の生活の中にあります。近頃よく、「サステナブル」や「SDGs」という言葉を耳にします。でも、正直なところ、どういうことを意味しているのかわからないことも多かった私。そんな時、小さい頃から使っていたぬいぐるみをクリーニングに出して娘にあげたという話をした相手から、「それってサステナブルな行動ですよ」と言われ、“これもそうなの!?”とすごく驚きました。そのぬいぐるみは私にとって大事なもので、上京する時にも持ってきたし、R-1ぐらんぷりで自転車を使ったネタをした時にも小道具として使っていました。それを子どもに渡すということで、受け継いでいくような感覚はあったけれど、まさかサステナブルなことだとは思いもよらず。その瞬間、視野がすごく広がって、まるで自分が地球を救っているかのような、壮大なことをしている気持ちになれました。こうして物を大事にすることもそうだし、普段、流通せずに廃棄される魚を扱うお店で食べることや、蜜蝋で作ったラップを使うこともサステナブル。自分にもできることがたくさんあると気づいたことで、もっと頑張ろうと思えたんです。本当にちょっとしたことが、環境にいいことへと繋がっていくんですよね。まずは、自分が今持っているものを大事にして、むやみに物を捨てたり、買い替えることをやめるのが、サステナブルへの第一歩になりそうです。そう、高校を卒業する時に担任の先生が「ゴミの分別ができるような大人になれ」と話していて、当時は“なぜ今この話?”と不思議に思っていたけど、今になってようやくその意味がわかりました。当たり前に思える小さなことを日々、しっかりとやっていくことが大切で、その結果、世界が良くなっていく。できることを探して、取り組みたいです!よこさわ・なつこ芸人。“ちょっとイラッとくる女”のモノマネで大ブレイク。婚活で培ったテクニックをまとめた著書『追い込み婚のすべて』(光文社)が発売中。昨年2月に第一子を出産。※『anan』2021年5月26日号より。写真・中島慶子イラスト・別府麻衣文・重信 綾(by anan編集部)
2021年05月25日人生の先輩的女性をお招きし、お話を伺う「乙女談義」。今月のゲストは、ドラマ、舞台、バラエティと幅広く活躍する中尾ミエさん。第2回は「夢や希望があるうちに、苦労することが大事」。私くらいの年になると偉そうなことも言えると思うので、ちょっと聞いてほしいんですが(笑)、生きている人全員、人生は平等にできていると思うんです。誰でも絶対苦労は味わうようになっていて、異なるのは、それがいつ来るか、ということだけ。“若いときの苦労は買ってでもしろ”なんて言いますけれど、それを避けてしまうと、年をとってからとてつもない困難に直面するわけで、もう立ち直る気力がないから、しんどいのよ。老人になったら、ラクに生きたいじゃない?(笑)できれば、夢や希望、そして体力があるうちに、苦労をしておいたほうがいいですよ。この年になると、通り抜けてきたネガティブな経験をいろいろと思い出すものですが、正直それがあったから学べたり、身についたことって本当にたくさんある。素敵な経験はいい思い出にはなるけれど、正直学びはないわよね。失敗を恐れることなかれ。その経験が、あなたの人生の財産になるんだから。30歳から習い事開始。人生が彩り豊かに!10代で出したデビュー曲が大ヒットして、そのまま行けるのかしら…と思ったものの、私の20代は全然ダメ。ヒット曲も出ず、すごく中途半端な10年でした。20代って、若いしなんでも吸収できるし、放っておいても成長する世代のはずなのに、目標が定まらなかった私はほとんど何も身にならなかった。だから30歳になったとき、これはいかんと思って習い事を始めたんです。最初はジャズダンス。とりあえず10年…と思って続けまして、40歳。そこで、もっと上達するにはクラシックバレエも習ったほうがいいかしら…と、そこからまた10年。50歳、ちょっと足が上がらなくなってきたので、次はタップダンス。あっという間に30年!!(笑)夢中になれることがあると人は自分に自信が持てます。またそれを通じ新しい出会いもあり、世界が広がる。少しでも興味がある、やりたいと思うことがあるなら、一刻も早くやりましょう。人生が楽しくなりますよ!なかお・みえ歌手、俳優。1946年生まれ。‘62年、デビュー曲『可愛いベイビー』が大ヒットし一躍スターに。6月には米倉涼子と城田優がプロデュースするエンターテインメントショー『SHOWTIME』に出演。※『anan』2021年5月26日号より。写真・中島慶子(by anan編集部)
2021年05月24日間違いなく、今年の大注目作。一穂ミチさんの『スモールワールズ』は、家族がテーマの短編集だ。家族という小さな世界で生まれる大きな痛みと祝福。話題の作品集。「毎回形式を変えて、いろんなスタイルを試してみました」巻頭の「ネオンテトラ」は不妊に悩む既婚女性が、恵まれない家庭環境で暮らす中学生の少年と出会う話。「普段はBLを書いているので、女の人の語りを書いてみようと思って。熱帯魚のネオンテトラの語感が好きなのでタイトルに選び、水槽や自然繁殖できないといったイメージを重ねていきました」孤独な二人の交流の話かと思いきや、驚きの展開に。本書は予想外の景色が見えてくる話が多いが、「オチのない小説も好きですがそれを書くには文章力が必要。私にはまだ無理なので、小さな裏切りを入れて退屈させないようにしています」とのこと。が、ただ驚かせるだけではなく、どれも胸を打つ内容だ。2話目の「魔王の帰還」は、キャラクターありきで書き始めたそうで、豪快な姉と小心者の弟と一人の少女の交流がキュンとさせる。残酷な童話をイメージしたという3話目の「ピクニック」は「ですます」調の文体に企みが。4話目「花うた」は、事件の被害者遺族と刑務所にいる加害者との往復書簡の形式だ。「去年観たドキュメンタリー映画『プリズン・サークル』が印象的で。自分が悪いことをしたと気づきを得る加害者と、気づきを与えた被害者遺族はどういう関係を育んでいくんだろうと考えました」手紙の一通一通が心を打つ上、構成の上手さに痺れる。「おじさんの目線も入れようと思って」という「愛を適量」は冴えない教師が、別れた妻と一緒に暮らす娘と意外な形で再会。最後の「式日」は、語り手が疎遠だった後輩の父親の葬儀に列席する話で、「主語のないスタイルで、ハンディカメラの映像を見るようなロードノベル風に書きたかった」と言う。タイトル“スモールワールズ”は個々の家族を指す。「よその家の常識を聞いてびっくりすることがありますよね。それくらい家族って、小さいけれどそれぞれ別の世界だと思うんです」個々の世界がバラバラに存在しているのではなく、すぐ隣にあるのだと感じさせる連作。全体の作りもまた巧みな一冊なのだ。一穂ミチ『スモールワールズ』いびつな家族たちの光景を、さまざまな切り口と文体で掬い取る連作短編集。一編一編、巧みな構成と仕掛けが用意されている。講談社1650円いちほ・みち2008年『雪よ林檎の香のごとく』でデビュー。著書に劇場版アニメ化された『イエスかノーか半分か』など。本書収録の「ピクニック」は日本推理作家協会賞短編部門にノミネートされた。※『anan』2021年5月26日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2021年05月23日「10年くらいマンガを描いていますが、“長編”と“恋愛”どちらもハードルが高くて、今回が初めてですね。ラブストーリーと聞くと照れが出てしまうのですが、きれいな恋じゃなくて、持っていると危険な時限爆弾のような恋の話ならどうかなあと」。宮崎夏次系さんが『あなたはブンちゃんの恋』で恋愛を描くにあたって選んだ設定は、定番中の定番といえる三角関係。ただし“女×女×悪霊”という前代未聞の関係だ。滑稽でも「好き」が止まらない。暴走する不器用な恋のゆくえ。「以前、ぬいぐるみを手放そうとお寺に持っていったとき、自分が悪霊になったらどんな気持ちがするのかなと思いました。悪霊になるだけの理由があるなら、それは愛とか後悔とか切実なもののためじゃないかという気もするし、悪霊と恋は一緒のもののように思えたんです」主人公のブンちゃんは、同級生だった三舟さんにずっと片想いをしている。ブンちゃんのことを好きなシモジは、3人で遊びに行ったプールで事故死。ブンちゃんが持ち歩くクマのパスケースに乗り移っている。「ブンちゃんの世界には、大切なものがひとつだけしかなく、それをなくしたらおしまいなのだと思います。そんなブンちゃんの想いに気づかない三舟さんは、太陽とか土とか、栄養がふんだんにあるような人で、自分が好きなものを隠さない。シモジには少し意地悪な役をやってもらっていて、思春期に死んでしまったので黒歴史状態のまま意見を発しています。大人になったら蓋をするような部分を請け負ってくれている、私にとって頼もしい悪霊です」不器用なブンちゃんは報われない恋にけりをつけるべく、グリーンランドに出かけたり、剃髪して修行僧になろうとする。ちょっとずれた情熱の傾け方が笑えるものの、平常心ではいられなくなる恋愛の本質を突いているようで、その真っすぐさが切なくもあり……。それぞれが好きな人にしか気持ちが向かず、自分のことを想ってくれる人を傷つけてしまう、恋愛の残酷さも鋭く描く。「ほかの人から見たらどんなに滑稽でも、本人はそれどころではなくなる瞬間が誰にでもあると思うし、その瞬間がずっと続いている人たちの話だと思います。変わっていく三舟さんを、ブンちゃんはそれでも好きでいられるのか。『自分なんて死んでよかった』というシモジの気持ちがこの先変わるようなことが起こるのか。あとは、恋が愛情に変わったら、それまで抱えてきた修羅な想いはすべてきれいに終わらせられるのかという疑問が自分の中であって。その疑問の答えを、今後描きながら見つけていきたいと思います」宮崎夏次系『あなたはブンちゃんの恋』2三舟さんの片想いの相手にシモジが乗り移り、三者三様の「好き」がますます暴走。第3巻は夏の終わりに発売予定。『月刊モーニング・ツー』で連載中。講談社715円みやざき・なつじけい著書に『僕は問題ありません』『培養肉くん』など。大前粟生さんとの共作絵本『ハルには はねがはえてるから』が6月9日発売予定。※『anan』2021年5月26日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2021年05月23日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「Z世代」です。世界中で抱える問題。解決の鍵となるZ世代。バブル世代と氷河期世代は「X世代」、‘80~‘90年代半ばに生まれたゆとり世代は「Y世代」、‘90年代半ば~2010年代初めに生まれた若者たちは「Z世代」と呼ばれています。Z世代に注目が集まるきっかけとなったのは、人権運動家のマララ・ユスフザイさんや環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんの登場でしょう。ティーンエイジャーが、人権や地球環境が脅かされている窮状をSNSを通じて訴え、それらを守ろうとするアクションは世界で同時多発的に起こりました。そうして、経済至上主義とは別の新しい幸福の価値観を広げていきました。日本のZ世代は、小学生~中高生の多感な時期に東日本大震災や原発事故を体験しています。義務教育課程で環境や人権、SDGsについて学び、働き方は会社員ベースから、フリーランスベースに移行しつつあります。国や集団に属さずに、強い個として生き抜く新自由主義者がフィーチャーされた時代を経て、人々は戦いに疲れてしまいました。さらに自然災害が頻繁に起こり、景気は回復せず、格差は広がるばかり。個人の力ではどうしようもない状況に陥っています。そんな背景のもと、多様な個が足りない部分を補填し合い、困難を共に乗り越えようとする「コミュニタリアニズム(共同体主義)」がZ世代に広がっていきました。社会環境は目まぐるしく変化しています。人権や環境部門に積極的でない企業は投資の対象にならなくなり、SDGsというゴールを目指さねばなりませんが、大人たちは策がなく困っています。以前、ベンチャー企業と大手企業をマッチングさせる取り組みを取材したとき、大企業の社員はZ世代の新しい感性や価値観をサービスに取り入れようと、熱心に若い起業家たちの意見を聞いていました。これまでは若者の意見といえば、流行物やギャル語など、トレンドとして取り上げられる程度でした。しかし、今後は、デジタルネイティブのZ世代から新しい知見を学び、大人は資本やマーケットを若者に提供するなど、ウィンウィンの関係を築く必要があると思います。互いに協力しなければ乗り越えられそうにない問題が世界に山積みなのです。堀潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2021年5月26日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2021年05月21日時代の空気とそこに生きる人々の秘めたる本音を、絶妙な比喩を交えて表現してきた朝井リョウさん。そんな朝井さんが作家生活10周年記念作品として、昨年に『スター』(朝日新聞出版)を、そしてこの3月に『正欲』(新潮社)を刊行した。「『スター』は初めての週刊連載だったので、次々に展開するグルーヴ感のある作品を目指していました。一方、人間の欲望をテーマにした『正欲』は書き下ろしだったので、衝動のままに書くというか、読み手にとって咀嚼しにくい作品になるかもと思っていました。それで前者を〈白版〉、後者を〈黒版〉と名づけたんです。でも、完成してみれば、『スター』は閉所で誰かと誰かがずっと対話をしている話で、逆に『正欲』は、私の本の中で“生きる”ということにいちばん前向きな本になったと感じています。本当に小説って計画通りにいかないんです。ただ、『正欲』を書きながら、この数年で明確化してきた、“生と死のうち生を選ぶとして、その理由になり得るものとは”というテーマに少し向き合うことができた気がしていて、それはよかったなと感じています」朝井さんの言葉は強い。デビュー作のタイトルは、10年経ったいまもさまざまにもじられる言葉として定着している。また本書では、性欲と重なる音に「正」の字を当てはめたタイトルにしたことで、性的欲求だけではなく、生きる上でおろそかにできない承認欲求や生存欲求のような欲も俎上に乗せた。たった2文字で、正しい欲とは何か、それを誰がジャッジするのか、と突きつけられているかのようだ。「〈正欲〉という題名は執筆前から決まっていました。欲はすごく個人的なことで、正はすごくパブリックなイメージの文字。そのアンバランスさが居心地の悪さを醸し出してくれるかなと。性欲はずっと書きたいテーマだったのですが、それをテーマに据えたとして説得力が出る自分なのかと、ずっと躊躇していました」不登校児の息子を持て余している検事の寺井啓喜、自分は〈正しい命の循環〉から外れていると感じている寝具店勤務の桐生夏月、学祭の実行委員として〈ダイバーシティフェス〉を仕切る大学生の神戸八重子が、代わる代わる語り手を務め、物語は進む。冒頭に置かれているのは、ある手記と衝撃的な事件の記事だ。語り手を含め、それらに何かしらの形で関わる人々が、自らが直面している問題を語っていく。作中には、性的指向をひた隠しにしている人物も出てくる。それは決して、多様性を認めようという建前だけでは解決しない苦悩も孕んでいる。多様性という言葉にしても、〈清々しいほどのおめでたさでキラキラしている言葉〉〈話者が想像しうる“自分と違う”にしか向けられていない言葉〉と評し、安易に是としないところが朝井さんらしい。「好きな顔のタイプとかはよく聞く話ですが、他のパーツ、たとえば膝とかの好みってなかなか聞かない。同じ体でも人を興奮させる部位とそうでない部位があるということがずっと不思議でした。『正欲』には、そういうレベルのものを筆頭に、ずっと頭の中に流れていたさまざまな回路が集合しています。どんな話題にも、それっぽい答えみたいな言葉はあると思うんです。たとえばコロナ禍でのステイホーム。私も色々と準備をして家にいられる状況を整えました。家庭ごみの清掃業者の方々の大変さに気付いたのはかなり後のことでした。それっぽい答えに安住しているときほど視野は狭まる。全員の暮らしやすさや生きやすさが実現するまでには、どうしても順番が生まれてしまう――色々と実感しました。もっと言えば、最後まで順番が回ってこない人もいるような世界で、それでも生きるほうを選ぶきっかけになり得る言葉に巡り合いたい。これは今後の課題でもあります」装幀にも一瞬で掴まれる。「メインテーマである“欲”を彷彿とさせるので、人間を含めた動物を表紙にしたかったんです。写真家の友人に相談したら、菱沼勇夫さんの作品を教えてもらいまして、内容にとても惹かれました。鑑賞者を集中させる力がすごいんです。菱沼さんの作品からは、私たちにはきっと理解ができないレベルの、被写体への執着のようなものを感じます。鴨の写真を表紙に選んだ理由は幾つもありますが、せっかく読者の方が考察してくださっているので、変に限定せずにおこうかなと思います」小説家として10年が経ち、何か変化はあったのだろうか。「私はこれまで、小説を書くときに社会を反映した広い視野を持たなければという強迫観念みたいなものがありました。やはり若いときに直木賞という大きな賞をいただいたことで自縄自縛しがちだったのですが、今回思ったのが、広い視野を持つ努力よりも狭い視野の人をたくさん書く努力のほうが向いているかも、ということです。そうすれば、極狭な私自身の視野でも小説を書ける気がする。こういう感じで、自分の中にある、できないことやわからないことへの恐怖心が少し減ったのも変化かもしれません。それは、先ほど少し触れた今後の課題に関わってくることでもあります。『死にがいを求めて生きているの』あたりから、もう生きている理由はないからと終わりを選ぼうとする自分、または誰かがいるとして、そのとき機能しうる言葉を私は見つけられているのだろうかとずっと考えているんです。その言葉を見つけ出す作業は、小説や読者のためというより自分のために、今後も続けていくと思います」変化する時代の中で、作品の質や価値はどう変わっていくのかを考察した『スター』に続く最新刊『正欲』。あらゆる欲望は、多様性という美辞麗句ですべて肯定できるのかと問いかける。新潮社1870円あさい・りょう作家。1989年、岐阜県生まれ。2009年、『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。’13年、『何者』で直木賞を、’14年、『世界地図の下書き』で坪田譲治文学賞を受賞。※『anan』2021年5月19日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年05月18日生きづらいのがデフォルト。そんな不器用な魂の成長記録。少年アヤさんによる、『ぼくをくるむ人生から、にげないでみた1年の記録』をご紹介します。「昔は人からひどいことをされても傷つきませんでした。隠したり、繕ったりしてばかりで、つねに自分を抑圧していたので、心が動かなくなっていたんです。けど20代半ばで、はじめて痛めつけられた時に怒りが湧いて。自分は自分のために怒れるんだと発見したのが、ターニングポイントでした」と語る少年アヤさん。そんな彼は20代最後の日々をどう過ごしたのか。新作『ぼくをくるむ人生から、にげないでみた1年の記録』は、毎日つけている日記をまとめた一冊だ。「忘れてしまうこと、流れ去っていくことがもったいなくて、日記は毎日細かくつけているのですが、20代最後の1年は本当に色々なことがあったので、改めて外に向けても書いてみたくなりました」すべて実体験だが、これがまるで小説のよう。人間関係の再構築の記録、精神的な成長記として胸を熱くさせる内容になっている。1年の間にいくつも大きな出来事がある。ひとつは、疎遠だった中学時代からの女友達との再会だ(そのうちの一人、まゆちんの言動が最高)。「ゲイであることも、助けが欲しかったことも言えず、卒業してからはずっと連絡を絶っていたんです。でも10年ぶりに再会したら、あっさり受け入れてくれて。正直もう、人生このままエンディングかと思いました(笑)」恋にも落ちた。だが、デートの直前に「無理」となってドタキャンするなど、アヤさん、かなり情緒不安定。なぜここまで幸せから遠ざかろうとするのか、もどかしくなる。「幸せという実感から、ほど遠いところで生きてきたので、どうしても恐れを抱いてしまう。マイノリティにとっては、わりとありふれた心の動きかもしれません」そんな状態からどのように関係を築いていくかも読ませる。そこには、周囲の偏見や、相手のカミングアウトの問題も含まれている。アヤさんはすでに家族にゲイだと伝えているが、彼らとの関係も変わっていく。「家族は多分、ぼくがゲイであることを、わかっているけどわかっていない、という感じで。いざ恋人ができた時に、改めて動揺したようです。特に父とはここ数年でやっと関係を作り直したところだったので、社会の模範によって引き裂かれるのが悔しくて」終盤、母親がアヤさんにむき出しの言葉をぶつけてくる。そのなかの「もっと好きに生きろ」という言葉はきっと、迷いを抱えた読者の心にも突き刺さるはずだ。また、自身の内面と向き合ってきた著者が、弱い立場の他者へも目を向けていく様子が印象的。「友人たちと赤ちゃんを連れて出かけると、本当におじさんに舌打ちされたり、いやな絡み方をされたりする。改めてそばで経験して、とてもショックでした。そんな友人たちが、“私たちの代わりに書いて”と言ってくれたことも、本書を書こうと思った理由のひとつです」やがて、まゆちんが職場で、あるルール変更を勝ち取るなど、希望をもたせる展開も待っている。「自分について書くということは、すごく狭いようで、実は社会の姿や、時代の空気も炙り出せる。それを、この本で改めて示すことができたと思っています。これからも愛すべき他者たちと関わり合いながら、健やかに生きていきたい。それが自分の使命だとも思います」健やかでいてほしい。本書を読めば、誰もが思うはずだ。しょうねんあやエッセイスト。平成元年生まれ。ブログが人気を博し、それを書籍化した『尼のような子』でデビュー。著書に『焦心日記』『ぼくは本当にいるのさ』『なまものを生きる』『ぼくの宝ばこ』など。『ぼくをくるむ人生から、にげないでみた1年の記録』ずっと会えずにいた友達、本気で好きになった相手、そして家族…。人との関わり合いのなかであがき、自分と他者を見つめ直した胸熱な1年の記録。双葉社1760円※『anan』2021年5月19日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2021年05月16日