11月は厚生労働省が定める児童虐待防止推進月間ということ、ご存じでしたか。今回は、子どもたちを理不尽な暴力暴言指導から守るために大人は何ができるかを提案できればと思います。子どもが所属するチームで、指導者が子どもを叩いたり、暴言を吐いたりしたとき、保護者の皆さんはどうしていますか。叩かれたのが自分の子じゃないから、トレセンや中学以降に行きたいチームへの入団を妨害されるのが怖くて抗議できないから、卒業まで耐えた......。など、黙認している保護者の方もいますよね。暴力暴言指導を受けたとき、我が子が受けていなくてもチームのほかの子が受けているのを知ったとき、保護者は黙って我慢するしかないのでしょうか。スポーツと教育のジャーナリストであり、スポーツ暴力・パワハラ相談窓口相談の相談役を務める島沢優子さんに聞いてみました。(文・島沢優子)写真は少年サッカーのイメージです<<関連記事:サッカーでの育児の悩みに島沢さんが答えるサカイク連載「蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~」サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■読者からの暴力暴言指導の悩み「指導者の暴力や暴言があり、移籍を考えています。試合で負けると「お前のせいだ」などと言って顔を叩くことがあります。叩くのは一人だけでなく、ほかのコーチが別の子を叩くのを見たこともあります。叩くだけでなく、試合中も「なんで○○しないんだよ!」のように怒声を浴びせ、子どもたちは委縮しています。一部の保護者が抗議をしたところ、叩いたことは謝ったのですが、その後練習の際子どもたちに「親たちがいちいち干渉してこないよう黙らせろ」と言ったそうです。このままチームに居続けるのも子どもにいい影響はないとわかっているのですが、S級ライセンスを持っていてトレセン担当でもあるので、親が抗議することで子どもへの報復(トレセンや強豪校への進学の妨害、干されるなど)が心配です。子どもを人質に取られているようで、親としても身動きが取れない状態です。本人は友達と一緒にプレーできる今のチームにいたいと言いますが、ひっそりと移籍させた方がいいのでしょうか」■多くの保護者が報復を恐れ、暴力暴言指導を黙認しているこれがS級ライセンス保持者のすることでしょうか。暴力をふるい、保護者からの抗議があると「親を黙らせろ」と子どもに八つ当たりする。いや、これって事実なの?と疑いたくなります。ところが、私の連載への質問箱に以上のような投稿が複数あります。プライバシー保護のため、編集部のほうで共通要素をまとめたものとしましたが、投稿者への確認もしており、事実であることは間違いないようです。多くは、相談者が書いているように指導者側からの報復を恐れ、子どもをそのまま所属させている。皆さんがこの記事を読んでいる今この時間、このようなコーチのもとで子どもたちがうつむいたままサッカーをしています。サッカー少年の親が知っておくべき「サカイク10か条」とは■順天堂大学で起きた元日本代表による暴言指導、J1ではサガン鳥栖監督がライセンス降格そのことは、昨今の報道をみても明らかです。「1年のクソ坊主。お前みたいなのがいた(出身)クラブからはもう選手獲らないからな!」「人間のクズ」このような暴言が継続されたとして、順天堂大学サッカー部の堀池巧監督が指導現場から外されました。つい先月、10月のことです。耐えかねた選手らがハラスメント行為を文書にまとめ大学側に提出したのです。堀池監督と言えば、20日に開幕したW杯で指揮を執る日本代表・森保一監督や三浦知良選手らとともに1994年アメリカW杯を目指した「ドーハ組」のひとり。13年には、日本サッカー協会(JFA)が公認する最高位の指導者資格で、Jリーグで監督を務めるために必要な「公認S級コーチ資格」を取得しています。にもかかわらず、怒りを態度で表すことも頻繁にあったうえ、2016年8月の総理大臣杯のトーナメントでより戦いやすい組に入るため予選の試合で「負けろ」と指示を出していたことが、当時在籍した選手複数人の証言によって報じられています。このような「敗退行為指示」が認められた場合、Jリーグでは「サッカーに限らずスポーツに対する信頼や高潔性の維持に疑義を生じさせてしまった責任」と見られ、クラブライセンス剥奪などの厳罰があります。堀池監督が指導していたのは大学ですが、大きな問題に発展する可能性は小さくないでしょう。ほかにも、J1サガン鳥栖でパワハラ行為が認定された金明輝前監督は今年3月、S級からA級に降格させられています。S級からの降格は初めての処分でした。同日、J2東京ヴェルディでパワハラが認められた永井秀樹前監督はS級資格の1年停止になりました。復帰までに研修や社会奉仕活動が求められるものの「処分が甘いのではないか」という声はあちらこちらから聞こえてきます。■今春には高校の強豪サッカー部での暴力動画も大学生やプロだけでなく、高校生も暴力や理不尽な扱いに苦しんでいます。今年5月、暴力動画を発端に、被害届を出した生徒が中学浪人させられていたことも判明した秀岳館高校サッカー部の騒動。9月には、木更津総合高校サッカー部の3年生が顧問のパワハラによって大量退部していたと報道されました。学校側は一部を認め調査すると発表しました。日本サッカー協会は他団体とともに2013年4月、暴力根絶宣言をしました。ちょうど10年前、2012年12月23日に大阪市立高校のバスケットボール部員が顧問の暴力や暴言を苦に自死したことなどがきっかけです。指導環境の修復に乗り出して10年目になるというのに、日本最高位の指導者資格を保持するコーチが、子どもたちに暴力をふるう、しかも何ら反省しないという実態があるのです。なぜ、修正できないのでしょうか。それは、修正できない人を、周囲の人たちが「他人事」と放置しているからだと考えます。上述した事件のひとつが報じられた際、複数の指導者が私にメッセージをくださいました。「いつかやると思った」「ブラックな指導をしていることは知っていた」そこで「何故やめろよと言わなかったのですか?」と尋ねると、「仲がいいだけに言いづらい」「(自分との)関係が悪くなるから」と注意するのを控えていました。数年前に高校サッカー部で暴力が発覚した指導者は、何のお咎めもなくそのまま小中学生のクラブを設立。海外でプレーした実績などが保護者に評価され、クラブは大きくなりました。が、指導者本人のマインドは何も変わっていないため、今度はスタッフへのハラスメントが原因で代表の座を追われたのです。■当事者たちが声を挙げなければ、被害はなくならない記事冒頭にお伝えした、S級コーチが暴力をふるうチームにわが子を預け続ける親御さんと恐らく同じでしょう。問題が起きても、多くの保護者が「子どもは人質なので声をあげられない」とうつむきます。チームメートの親全員が同じ価値観ではないことも要因です。親御さんにクラブへ被害を訴えるよう勧めた際「ここ(クラブ)にわが子がいるわけでもないのに、私の気持ちがわかりますか?息子も私も仲間外れになるかもしれないのに」と言われました。こんなことは一度や二度ではないので、他人が口で言うほど簡単でないことは私も重々承知しています。それでも、競技団体や社会に知ってもらわなければ被害はなくなりません。もっといえば、声をあげなければ「間違ったことでもまかり通る」ことを子どもに学習させる可能性もあります。■親たちが相談できる窓口はいくつかあるしたがって、JFA傘下の各都道府県や市区町村のサッカー協会へぜひ相談してください。それには公的機関なので実名で訴えることが前提です。暴力や暴言があった日時、相手、そのシチュエーションなど細かく文書化しておくこと、そしてそのことをともに伝えてくれる証人が必要です。公益財団法人日本サッカー協会にも「暴力等根絶相談窓口」はありますが、【利用対象者】が「トップアスリートとその関係者」のため、それ以外の小中高校生は対象外かもしれません。上述したように、各都道府県や市区町村の相談窓口をまずは利用しましょう。同じ問題を解決するために米国で設立された「セーフスポーツセンター」では匿名でも相談に応じますが、残念ながら日本ではどの競技団体もそこまでのマンパワーは割かれていないので、弁護士や有志のスポーツ人からなる民間の相談窓口も候補に入れてください。例えば『日本スポーツマンシップコーチング普及コミュニティ』が設けている「スポーツにおける暴力・パワハラの相談窓口」です。こちらは匿名でも相談を受け付けます。私もアドバイザーとして相談員を務めています。日本スポーツマンシップコーチング普及コミュニティ「スポーツにおける暴力・パワハラの相談窓口」サッカー少年の親が知っておくべき「サカイク10か条」とは
2022年11月28日サッカー指導者の悩みで多く聞かれるのが「保護者対応」。子どもの出場機会やポジションについて口を出してくる保護者の対応に苦慮しているチームも少なくありません。かつては保護者と言い合う事もあったと言いますが、現在では大変良好な関係性を築いている強豪街クラブ・センアーノ神戸の大木宏之監督(以下、大木)に、保護者対応について伺うこのインタビュー。後編では、どんなふうに保護者とのコミュニケーションを深めているのか、具体的に紹介します。(取材・文:貞永晃二)センアーノ神戸の選手たち<<前編:かつては出場をめぐって保護者と言い合いも。センアーノ神戸が保護者と良好な関係を築くために大事にしていることサカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■試合報告とともに、指導者も勉強していることを伝える――最近はサッカー経験のある親御さんもいると思いますが、それゆえの子どもへの指導の難しさを感じられますか?大木やっぱり難しいですね。でもそこは自分らがその親御さんよりも勉強しているということをちゃんと伝えます。チームのホームページがあってその日の試合のコメントを書きますが、そこできちんと今日取り組んだ内容を書くようにしています。そうすると、私たちがきちんと意図を持って試合をしていることを理解いただき、変な誤解が出ないようにしています。あと、保護者の方と飲む機会もあり、そこでちゃんと話ができます。■「子どものことをちゃんと見てくれてる」と感じさせることが大事――そういう関係性を築かれているから親御さんから不満が出ないんですか?大木いやゼロじゃないですよ。いっぱいありますよ。例えば学年によって試合に勝つのが難しい年があるので、下の学年の子を入れる。そうなるとその学年の子の保護者からは「下の学年を出すんですか」みたいな、ちょっと嫉妬のようなものを感じることはあります。――飲み会で話をすることで"ガス抜き"をする感じでしょうか?大木ガス抜きの意味もありますし、こっちの方針みたいなのもちゃんと伝える機会にもなります。8割ぐらいは雑談ですけど、2割は真面目な話をしていますかね。乾杯とか挨拶のタイミングで自分の思いを少し喋ったりするようにして、だんだんお酒が入ってきたら、保護者から個別に相談とかくるので、それには真摯に対応します。――飲み会は定期的に開催されるのですか?大木決まってはいません。保護者の方からやりましょうか、とお声をかけていただいて開催される感じですね。学年毎や、チーム毎で開催します。参加されるのは15、6人ですから大体の方と喋れるんです。小学生のお母さん達は、普段あまりこういう場所に出られないので、楽しみにされていますね。親御さんも安心するじゃないですか、自分の子どものことを監督、コーチが話をしてくれると、「ああ、ちゃんと見てくれてるんやな」と。そこが大事だと思っているんです。だからサッカーノートでも同じで、僕らがちゃんとコメントを書く事によって自分の子どものことを見てくれているんだなという安心感を持ってくれたら、不満はだんだん減ってくるかと思います。それが一番大事です。そういう意味でサカイクのサッカーノートはすごくありがたいです。強豪街クラブ・センアーノ神戸の選手がサッカーノートを変えただけで上達した理由■ホームページでクラブの理念を伝える――ホームページの活動報告には、ホテルでの過ごし方への苦言もあり、親御さんに向けてちゃんと躾けてくださいとまで書いてあって驚いたんですが、それが言える関係性のチームなんだなと感じました。大木ホームページはオープンですので、ウチに入ってない方も見られるのでその方にも見てもらっていることを少し意識しながら発信しています。一番見てもらうのは、ウチの保護者なので、保護者に向けたメッセージでもあります。コーチが書いた言葉にちょっとネガティブなことが多いと、会議で共有したり、どんな風に書けばいいか話し合ったりしますね。――実際試合のことだけじゃなくて、他のチームでここまでやっているところはないなと。先のことを見て、すごくちゃんと人間として成長させたいと思っておられるからだろうなと思いました。大木僕らのクラブの理念があるので、そこが一番だと思っています。なのでサッカーを通じて伝えていくことが一番。クラブ理念にはこの後にもっと文言があるんですが、その中にも保護者の方と地域と三位一体でやるということも掲げているんです。だから保護者の方にも少し協力してもらいます。強制や当番とかはないんですが、やれることはやってほしいと。NPO法人ってサッカーの世界で限られているんで。スタッフを倍の人数にすればもっといろんなことができるのですが、経営的に難しいので、やはり保護者の協力は必要なんですよね。その中で快くやれる範囲でやってもらうためには、普段から関係性を良くしておく。その辺が海外との違いですね。海外はチームにスポンサーがついたり、地域で支援してくれますけど、日本はなかなかそういう文化が根付いていないですから。地域のスポンサーがついてくれたら嬉しいなとは思うんですけどね。■個別の状態に合わせて親のサポートをお願いをする――センアーノさんは、スクールから社会人チームまであって、生涯サッカーというか全年代対応ですね。大木そうですね。本音を言うと経営的には厳しい部分もあります。でもクラブの理念がそうなので、例えばウチの高校生は勉強もサッカーも真剣にやって、高体連でもJ下部でもないウチのようなチームがあれば、中学生、小学生がそこを目標にしてくれたらいいなという思いでやっています。――ワールドチャレンジで優勝した選手たちは小柄な子が多かったですが、逆に成長の早い子が多い年代もあります。そういうことも保護者とお話しされるんですか?大木小柄な子の場合は「中1、中2は多分あまり出場できずしんどいですよ」と。逆に早熟な子の保護者には、「今はフィジカル的に優位だから勝てているけど、周りも大きくなると今のようにはいかないから、今はしっかり技術を身につけるようにしてください」という話をして、その間ちゃんとサポートしてあげてほしいとお願いします。――そういうのはやっぱり親御さんも安心すると思います。大木そう思ってくれたらありがたいなと思うんで、できるだけ話します。一応30年やってきたデータが僕の中にあるので、そこは自分の中では宝かなと思っています。それを今若いスタッフにできるだけ伝えている感じですね。■保護者にも喜ばれた母の日企画口だけでなく親への感謝を感じるイベントに――Facebookで母の日に親御さんにハグをするという企画を拝見しました。大木あれはめちゃくちゃ親御さんが喜んでくれました。サプライズでやったんで。あの企画は、全国どこもやった方がいいと思います。6年生の男の子なんて口で感謝、感謝と言ったって、実際はしないんですよ。母親に対して口に出してなんてなかなか言わないんです。心の中では、いつもありがたいなというのは思ってるんですよね。日頃、これだけサッカーをやらせてもらって、お金も出してもらって、遠征も一杯行かせてもらっている。それは保護者の支えがあってのこと。でもそれを表現する機会がないので、このイベントでは保護者に手紙を書かせたんです。ありがたいという気持ちをちゃんと言葉で伝えることは自分の成長にもなるし、サポート、応援してくれたら自分の力になって返ってくるんだということ説明します。6年生くらいだと純粋なんで、親への手紙も真面目にちゃんと書いてくれるんですよ。■サッカーを頑張ること以前に、家庭での親とのコミュニケーションが大事――そういうふうに、クラブが親との繋がりもすごく考えてくれてることが伝わりますから、子どもを預けてよかったなと感じてくれるのでは?大木親御さんは普段本当に協力してくれるんですよ。だから、感謝を僕らも伝えたいなと思っているんで、母の日はやっぱり子どもからのありがとうという手紙を喜んでもらえますね。手紙だけでなく、ゲームの要素も入れました。10種類くらいカードを作って引かせ、そこに書いてある内容を親と一緒に実行してね、という内容です。"パワハラカード"って勝手に名づけたんですけど、このご時世にそんな名前つけていいかなと思ってしまいましたけど(笑)。「母親とハグをする」「ほっぺにチューをする」というカードは、親にとっては嬉しいだろうなと思いつつ迷いましたが、この2枚は入れていいか子どもたちの意見を聞いてから入れました。自分は当たらないだろうという前提で「OK」と言っていたキャプテンが見事にそれを引きまして。本人は照れていましたが、親御さんはとっても喜んでくれましたね。他は一緒に買い物に行くとか、トイレ掃除をするとかのカードで、保護者とのコミュニケーションを取る内容のものです。サッカーを頑張ることも大事ですが、それ以前に家庭での過ごし方、親とのコミュニケーションは大事ですから。そういったことは、今後もいろんな方法で伝えていきたいと思っています。保護者との関係性を良好にするにはコミュニケーションが大事。十分想像できた言葉でしたが、そこは大木監督独自の流儀がありました。母の日に子供たちから日ごろの感謝の思いを手紙や、お礼の行動で伝えさせる。きちんと言葉にして伝えることの重要性なども、長年の指導経験と自らの子育て経験からのアイデアで、親子で楽しめる企画を通じて伝えるなど、サッカーの場を通じた成長を提供していることが伺えました。保護者が納得してチームに子どもを預けるために、どんな風に考え、関係性を築くのか、今迷っているチームの方にとっても、センアーノ神戸のやりかたは一つのヒントになるのではないでしょうか。サッカー少年の親が知っておくべき「サカイク10か条」とは
2022年10月17日全国レベルのチームでレギュラーから落とされ自信を失った息子。親が送迎できないから出場させないなど、理不尽な扱いを受けている。明らかに好き嫌いがあり、うちの子は好かれてない。子ども自身もコーチにアドバイスを求めるような関係性を築けておらず、今後もこれ以上の進展は無理。自己肯定感を失ったままこのチームで続けることが本人にとっていいことなのか......。とのご相談をいただきました。スポーツと教育のジャーナリストであり先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの子育てと取材で得た知見をもとに、4つのアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<プロになるなら楽しくサッカーするな!と言うモラハラ夫を改心させたい問題<サッカーママからのご相談>我が子は高学年です。(11歳)チームは全国レベルのチームで、中学年の途中迄はレギュラーで出ていましたが、新しい選手が入るやいなや競争もさせてもらえずレギュラーから落とされ、何のアドバイスもなく自信だけを失ってしまいました。それでも本人は頑張り続けましたが、親が試合会場への送迎ができないため、チーム送迎を頼ると、送迎を理由に試合に出さないなど理不尽な内容で試合に出してもらえません。練習試合ならまだしもそれが主要大会で行われます。本人もその事を親にも言えず、不憫な思いをしています。子どもはそれでもこのチームでサッカーをやりたいと言っていますが、試合に出れないことから、親から見るとどこか情熱や集中力に欠けてしまい、ますますコーチから見向きもされない状況に陥っています。最近は試合経験がつめないため、短い時間で出ても波にも乗れずただ怒られているだけになっています。我が子は、自分でコーチにアドバイスを求めるような信頼関係も築けてません。おそらく今以上の関係を築くことはできないと感じています。コーチも明らかに子どもの好き嫌いがあり、我が子に話しかけることはほとんどありません。このようなことから、親としてもコーチへの信頼がなく、できれば環境を変えた方がいいのではと思っています。子どもの主体性を奪いたくありませんが、このまま自己肯定感を失ったままやり続けることが本人にとっていいことなのか、親としては悩むところです。チーム環境を変えて楽しんでもらった方が本人のためになるのではと考えていますが、その前に親としてどう子どもに関わるべきか助言をいただけるとありがたいです。<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。レギュラーから落とされ、息子さんが自信を失ったように見えるとのこと。お母さんの辛さがメールから伝わってきます。さまざまアドバイスしたいことはありますが、まずは相談文の最後に書かれたお母さんの質問に答えますね。「このまま自己肯定感を失ったままやり続けることが本人にとっていいことなのか、チーム環境を変えて楽しんでもらった方が本人のためになるのではないか」と書かれています。その通りだと思います。そして、そのあとに「親としてどう子どもに関わるべきか」とあります。ここを悩んでおられるのですね。■息子さん自身がどうしたいか、考えを整理する手助けをしよう以下、4つほどアドバイスさせていただきます。全国レベルのチームに在籍しておられるとのこと。すべてではありませんが、全国少年サッカー大会に出るようなチームに勝利を優先するところは少なくありません。全国大会を目指す高学年になると、同じように全国大会に出たいと願う選手が他のチームから移籍してくることは少なからずあるようです。そうなると、それまで出場していた子どもは出られなくなります。その点から見ると、息子さんのクラブはどうやら全員に平等に出場機会を与えていないようです。であれば、中学年まで息子さんはレギュラーで出ていたけれど、補欠で試合に出られない子どもも大勢いたのではありませんか。そのときは、そのベンチにいる子どもたちのことは、コーチから適切なアドバイスを受けていたのでしょうか。他の活動機会を与えられていたのでしょうか。親御さんのなかには、補欠になっても這い上がれ、頑張れ、負けるなとひたすら励ます方もいます。そういう方々から聞かれるのは「うちの子が試合に出られないのは全国大会レベルのチームなのだから仕方ない。ここにいるだけでも満足」といった声です。正しいかどうかは別として、小学生の時期からスポーツに競争原理を持ち込まれています。その点で、お母さんはいかがでしょうか?息子さんが試合に出られず自己肯定感を失ってしまうことを恐れ、チーム環境を変えて楽しんでもらったほうがいい。そう心の底から思われているのなら、もしかしたらクラブ選びを間違えていたかもしれません。まずは、息子さんに、どんなチームでサッカーをしたいか、サッカーをやる理由や目標は何なのかを考えてもらいましょう。お母さんは話し相手になって、考えを整理してあげてください。できるだけ、お母さんの考えを言わずに息子さんに話をさせるよう、たくさん問いかけること。それが1つめです。サカイク公式LINEアカウントで保護者のみなさんへお役立ち情報をお届け!■相手が「○○してくれない」という志向ではなく自分は何ができるかを考えてみよう2つめ。お母さん自身の思考パターンを少し見直しませんか。コーチに対し「息子に何もしてくれない」というニュアンスの言葉が多いことが気になります。例えば「レギュラーから落とされ、何のアドバイスもなく」「送迎を理由に試合に出さないなど理不尽な内容で試合に出してもらえません」「見向きもされない」「子どもの好き嫌いがあり、我が子に話しかけることはほとんどありません」などなど、〇〇してくれないという発言が目立ちます。わが子が不憫。かわいそう。悔しい。そんなふうに子どもの感情と同化してしまってはいけません。「大変だね」「残念だったね」と、息子さんの悔しさに共感してあげてもいいです。でも、親が一緒に落ち込んで、コーチに不満を抱えた状態のまま活動を続けるのは子どもにとって精神的にヘルシーな環境とは言えないでしょう。そして、誰かが何かをしてくれないと嘆くのではなく、自分が親としてどう接したら、子どもが成長するのかを考えましょう。何が大切なのか。どうしたら子どものためになるのか。それについて時間をかけて考えてください。パートナーがいるなら一緒に考える。信頼できるママ友がいれば、話してみましょう。■親子ともにラクになるために、子どものサッカーから少し離れてみよう3つめ。お母さんは一時的にでもいいので、息子さんのサッカーを「お休み」しましょう。なぜならば、今現在お母さんは息子さんに対し「情熱や集中力に欠けている」といった否定的な気持ちを持っているように映ります。息子さんが自分でコーチにアドバイスを求めるような信頼関係も築けないという部分に対し、「自分から求めてほしいのに」といういらだちに似た葛藤が見て取れます。しかしながら、小学生時代は楽しくサッカーができればそれでOKです。見ていればどうしても干渉したくなるので、一度息子さんのサッカーから離れましょう。試合に出たかどうか、勝ったか負けたかも尋ねない。ただただ「楽しかった?」とだけ聞いてあげてください。そうすれば、少し離れた場所から、客観的に息子さんの姿やご自分との親子関係を見つめ直せます。と同時に、息子さんも楽になるはずです。■子どもは自分とは「別の個体」だと知ること。本人が求めてきたらサポートすればいい(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)4つめ。息子さん自身、このチームでサッカーをやりたいと話しているようです。であれば、好きなようにさせてあげましょう。その一方で、「イヤな気持ちになるようだったら、他のチームを一緒に見学に行ったりしようね」と他の選択肢もあることを伝えておきましょう。親御さんには、子どもは「別の個体」だと知ってもらいたい。試合に出たいとか、サッカーでこんなことを目指したいなどと野心を持つのは子ども自身です。目標達成に手伝ってほしいと言われたら、可能な限りサポートしてあげればよいのです。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)。
2022年10月12日サッカー指導者の悩みで多く聞かれるのが「保護者対応」。わが子かわいさに親が起用ポジションやメンバー選考に口出し。テレビや動画で世界のサッカーを観られる昨今では、チームの戦術に意見する方もいるそうで、指導者たちは対応に苦慮しています。一方、保護者側も我が子の成長を願うばかりに、口出ししたら子どもの立場が悪くなりそうで疑問があっても話し合いができない、など指導者との関係に悩むケースもあるようです。セレクションを設けているチームは、ある程度同じ意識を持った方が集まるかもしれませんが、少年団や街クラブでは選手のレベルも親の熱意もバラバラです。今回は、「かつては保護者と言い合う事もあった」時期を経て保護者と良好な関係を築いている強豪街クラブ・センアーノ神戸の大木宏之監督(以下、大木)に体験を交えてお話を伺いました。(取材・文:貞永晃二)センアーノ神戸の選手たち<<関連記事:センアーノ神戸の選手たちも上達を実感!書くだけでうまくなるサッカーノートサカイク公式LINEアカウントで保護者のみなさんへお役立ち情報をお届け!■選手交代の意図を保護者にも伝えるなど、まめにコミュニケーションをとることを意識――最近の保護者との関係構築について、大木監督のように長年経験されてきた方はどういうふうに対処されていますか?大木まめなコミュニケーションですね。グラウンドで姿を見たら挨拶して、最近どうですかという感じでね。やっぱりいつも応援に来てくれている保護者がどんな表情で見ているかなと、すごく観察はしますね。よく見ているのは保護者の表情ですね。選手の(プレー面の)調子が悪いときは、親もそう思っているのがすぐ分かるので、練習後に「ちょっとうまくいってない所もありましたが、こういった感じでやれていたんで大丈夫ですよ」みたいな感じで。少しフォローを入れたりしますね。実は、全国大会につながるリーグ戦の試合で、対戦相手が予想と全く違う戦い方をしてきて、たまたま前半スタメンだった子を3分で代えたことがあるんです。交代は戦術上の理由でしたが、保護者にはそんなことは分からないですよね。だから選手には試合が終わって解散する前に、あえて保護者もいる前で「今日代えた理由はこうで、別にプレーが悪かったわけじゃないぞ、次のゲームは先発で行くからな」というような話をしました。その後、保護者にLINEを入れて、改めて交代の理由が戦術上の理由だったことと、お子さんのプレーが悪かったのではないということを伝えました。■クラブは保護者に選ばれる時代、保護者の理解を得ることを大事にしている――そういうフォローができているチームが多分少ないんでしょうね。それができるようになったきっかけはどういうことでしょうか?大木当然僕も子どもができて変わった部分もあります。親心が分かるようになったので。サッカーが好きで情熱を持って指導されている指導者には、未婚の方もいらっしゃいますが、少しでも親の気持ちを分かるようなコーチになっていくことが大事だと思います。とくに街クラブは保護者から選ばれる時代ですからね。そういった保護者の理解を得ることは僕らもすごく大事にしてますね。ウチのコーチも5人いますけど、僕以外は未婚で子どもがいないので、スタッフ会議でよく言うのは「難しいと思うけど、親心ってこんな感じやから、みんなもそこは意識してな」ということです。強豪街クラブ・センアーノ神戸の選手がサッカーノートを変えただけで上達した理由■口出しは不可、協力はしてもらう――基本的に保護者は練習も試合も見学自由なのでしょうが、応援というか、口を出すというのは?大木それは絶対ダメです。チームに所属する際、最初に説明会や父母会があるので、そういう会とかで、はっきりと「活動時は子どもに近づかないで、声もかけないでください」と伝えています。「我々の考え方はこうで、子どもたちには自立して欲しいので、基本的には声をかけないでください」と。ただ、その距離感ってすごく難しくて、保護者何にもしてはいけないみたいになるんで。さじ加減が大事です。例えばグラウンドで低学年はゴールを運ぶのも大変なんで、その時間をちょっとでも短縮できたら子どもを試合にいっぱい出してあげられるじゃないですか。そういったときは「お父さん、すいません、ちょっとゴール運びを手伝ってください」と言った感じで、協力を仰いだりすることもあります。■若いときは、出場機会について問いただしてくる親と揉めたことも――昔の上手くいかなかった時期というのは、親が口を出してきたということですか?大木昔はやっぱり(試合に)出る、出ないですね。試合に出られなくて子どもがつらい顔をしているようなときに、「なんで出られないんですか」と問われることが多かったです。「うちの子はすごく頑張っているのに」とか、「ほかの子より努力しているのに」と言われたりしましたね。当時は僕も若くて気が短かったので、言い返したりしてしまい、保護者と揉めたりしましたけど、自分自身が親になって初めてお父さんの言いたいことも分かるなと、一歩大人になりましたね。そういう経験を経て、保護者の思いも受け入れながら、「チームとしてこういうふうに考えています」と伝えるなどの対応ができるようになったと思います。■子どものポジションを指定してくる保護者への対応――最近は我が子のポジションを指定してくる親御さんがいると聞きました。大木そうですか、ウチには指定してくる人はいないんですが、「間接的にそういうこと言いたいのかな」と感じるときはあります。はっきりと「うちの子はFWにしてくれ」というような親御さんはいないですが、「うちの子は性格的に前の方が向いているんですよね」といった感じで伝えてくることはあります。選手たちで試合のメンバーを決めたりすることが多いので、そのときに親からFWやりなさいと言われた子はやりたいと言います。子どものポジションについては、「そこまで言ったらあかん」というのは多分保護者の方も分かってるんですが、ちょっと抑えられなくなる時があるんだと思います。でもウチはいろんなポジションをさせるので、受け流しますけどね(笑)。子どもたち自身、いろんなポジションを経験する中で、どこが向いているか分かってくるし、親御さんもそのうち理解してくれますよ。かつては出場機会などに口を出してくる保護者の方と言い合う事もあったそうですが、親という立場になり、保護者の気持ちも理解できるようになったことで、保護者に寄り添うコミュニケーションを取れるようになったと語ってくれた大木監督。保護者にとっての関心事である試合への出場や交代についても、理由を本人だけでなく親にも伝える(聞こえる位置で話すなど)ようにすることで、疑問やわだかまりを生まないようにしています。また、子どものいないスタッフにも親の気持ちを伝えることで、保護者に寄り添ったコミュニケーションをチームとして実現している点は、多くのチームでも参考になるのではないでしょうか。サッカー少年の親が知っておくべき「サカイク10か条」とは
2022年10月07日昨今、スポーツ界のニュースで報じられることが多いのは、指導者の暴力・暴言関連のネガティブなニュースが多く、それに関心が高い保護者も多いと思います。そのような旧態依然とした指導が残っていることも事実ではありますが、最近では「子どもを伸ばす指導」をしている指導者・チームも増えています。今回は、この夏開催されたワールドチャレンジ2022の現場でお伺いした話をもとに、育成に力を入れているチームの指導者が、どんなふうに選手と接したり、声掛けをしているのかをご紹介します。3年ぶりにFCバルセロナが参加したU-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ(C)新井賢一<<関連記事:3年ぶりにバルサが参戦、ワールドチャレンジ2022の記事はこちらサカイク公式LINEアカウントで保護者のみなさんへお役立ち情報をお届け!■「育成に力を入れているチーム」とはどんなチーム?皆さんは育成に力を入れているチームとは、どんなチームだと思いますか。・小学生年代で県大会や全国大会で優勝させてくれるチーム・トロフィー、メダルを獲るチーム・Jクラブや競合クラブのセレクションに合格できるぐらい上達させてくれるチームそんな風に、小学生年代で何らかのタイトルを獲らせてくれるチームだと思っていませんか。もちろん、勝ちたいから頑張ることは良い事です。子どもたちが大会でトロフィーや賞状をもらって喜んでいる顔を見ると、保護者も嬉しいものですよね。ただ、育成に力を入れているチームは「もっと先」を見て指導しています。この夏開催されたワールドチャレンジ2022で、いろんなチームにインタビューをしてきたので、そこで聞いた指導者たちの「小学生年代の育成」に関する考えなどを紹介します。■小学生年代がサッカー人生の頂点ではない今年は3年ぶりに海外勢も出場し、まさに世界への挑戦となる大会になりました。サカイクは大会のメディアパートナーとして、色んなチームにインタビューをしましたが、Jクラブの育成組織も含め、ほとんどのチームの指導者が異口同音に口にした言葉があります。それは、「小学生年代がサッカー人生の頂点ではない」です。また、このようなことをおっしゃる指導者も多かったです。「小学生年代は、中学以降もサッカーを続けるための『種まき』の時期。まずはサッカーを楽しむことを大事に、勝ったり負けたりする中でいろんなことを学んでいければいい」まさにその通りで、中学以降もサッカーを続けていくためには「サッカーって楽しい」と心に刻まれることが大事ですし、育成に力を入れているチームの指導者たちは「今」だけでなく「少し先」を見据えていることがうかがえました。技術習得より「ありがとう」が言える方がサッカー上達につながる理由■グラウンドに響く監督たちの声、一番多いのは?ちなみに、今大会も多くのチームの監督、コーチの声がグラウンドに響いていましたが、どんな声掛けが多いかわかりますか?答えは・・・↓↓「ナイス!」「いいよ!」「そうそう!」といった肯定的な声です。各カテゴリーの予選を勝ち上がって出場する強豪チームが多いので、厳しい声が多いと思いましたか?ちなみに今大会では多くの方が「ナイス、ナイス、ナイス!」「いいよ、いいよ、いいよ!」「そうそうそう!」など3回ぐらい繰り返すことが多かったです。口に出すとその位の回数がリズムも良く言いやすいのかもしれません。街クラブ選抜チームを率いた播戸竜二監督は「素晴らしい!」「まだ終わってないよ」を連呼して選手たちのモチベーションを上げていました。そんな感じで、大きな声で選手たちに何か伝えているシーンは多いですが、肯定して背中を押してあげるような声が多いのです。試合前には「みんなの思うようにプレーしたらいいと思うよ」と選手たちに信頼を伝えて送り出していたチームも。ハーフタイムも選手たちで試合の改善ポイントなどを話し合い、そこに監督やコーチがアドバイスを加えるというチームも多くみられました。そういった、選手が安心してサッカーができる状態が当たり前にあることが、選手を伸ばすことにつながるのでしょう。■普段からの関係性、信頼が大事ちなみに、ワーチャレに限らず、声を張り上げている指導者の多くが「ピッチの中では私の声は聞こえないですからね。サッカーは自分で状況を判断して動かなければなりませんから」とおっしゃるのですが、本当に聞こえていないのか選手に聞いてみました。私「監督、声大きいよね」選手「うん」私「でも、ピッチの中では聞こえないもの?」選手「聞こえてるよ」とのことで、しっかり聞こえていると笑顔で教えてくれました。ちなみに、プレー中の「サイドを切れ」「中締めろ」のような声に関しては「声は聞こえてるけど、状況によってはすぐ対応できないし自分で判断するから」ということのようです。選手たちも必死に対応している時は、外からの声はハッキリ聞こえない時もあるのでしょうね。プレーに対する「ナイス」「いいよ」以外の声でよく聞かれるのは、ボールが落ち着いたときに「A(名前)、B(名前)が出しどころ無くて困ってるときフォローしてあげて」とか、「まだ焦る時間じゃないから、前係にならなくていいよ」のようなアドバイスが多かったです。一見厳しいことを大声でピッチに叫んでいるように見える監督がいるチームも、試合終了後には選手と指導者たちが仲良く談笑している、というのもよくある光景です。選手取材の後に監督のインタビューをしたときも、監督が「午後も試合あるから今のうちにお昼食べて」と声をかけても、選手たち自身が「監督のインタビューも見たーい!」とその場に留まるなど微笑ましい場面も。監督のインタビューをカメラの後ろで見ているYF NARATESOROの選手たち。インタビュアーが選手たちに「監督は普段どんな人?」と聞いたら矢継ぎ早に「おもしろい」「芸術家」「私服がかっこいい!」と答えてくれました(C)新井賢一そういった場面を目の当たりにすることで、大事なことは指導者たちと子どもたちの普段の関係性、信頼の構築なのだと改めて感じました。普段から心理的安全が確保されているから、子どもたちは思い切りサッカーを楽しめているのです。■子どもも保護者も指導者も、みんながサッカーを通じて幸せになる環境をどうしても、旧態依然とした指導の問題のほうがニュースで取り上げられやすく、ネガティブな情報の方が読者の共感も生むため、スポーツの現場には問題がある指導者が多いように捉えられてしまう部分もありますが、情報をアップデートしながら子どもたちに接している指導者の方はたくさんいます。保護者の方も、自分たちの学生時代とは大きく異なる現代の育成について改善できることをチームで話し合ったり、古い慣習などを見直して負担を減らすことで、子どものサッカーにかかわるのが気持ちと体力面でラクになると思います。サッカーをする子どもたちだけでなく、関わる親・指導者も楽しめる環境が増えていくことが大人たちの幸せにもつながるのです。サカイクではこれからも、いい指導をする・しようと取り組む指導者、チームを応援していきます。サッカー少年の親が知っておくべき「サカイク10か条」とは
2022年10月05日監督・コーチの話を聞かない、練習の並び順でケンカ、行動が遅い......。U-10年代の指導の指導はどうすればいい?池上正さんの書籍を読んで実践しているけど、うまくいかない。という悩みをいただきました。この連載を読んでいる方の中にも、同じような経験を持つ方がいるのでは。今回も、ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、話をじっと聞いていられないU-10年代の指導の指導のコツを伝授します。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<上手い子、そうでない子が混在するチーム。どっちにも楽しんでほしいからレベルでグループ分けしたいが、注意点は?<お父さんコーチからの質問>こんにちは。田舎の少年団で指導をしている者です。担当はU-10です。池上さんの書籍「伸ばしたいなら離れなさい」を読ませて頂き実践しているのですが、子どもたちが話を聞きません。行動が遅い、待ち時間の並び順でケンカばかりする、など、なかなか上手くいきません。池上さんの本が発売されたころとは教育、家庭でのしつけなども変わっているので子どもたちの気質なんかも変わってきているというのはあると思うのですが、(過保護なご家庭が多いと感じます......)この年代のチームがまとまる良い方法はないでしょうか?<池上さんからのアドバイス>ご相談ありがとうございます。先日、首都圏のある自治体で、教員の方々に「これからのスポーツを考える」というタイトルでお話しさせていただきました。そのなかで、子どもたちが主体的対話的深い学びが必要だと言われているけれど、授業でその時間をつくっていないという話が出ました。■子どもが輪に入れないとき、大人の方が焦って世話を焼いていないか午前中、ひとつの学校で6年生に指導した際、みんなの活動に入っていけない子どもがいましたが、私は最後まで声をかけませんでした。指導の後で、担任の先生から「あの子には声をかけないのですか?」と尋ねられました。私は、ほかの子どもたちの行動を待っていたのです。その子が交わらない最初の10分は、他の子どもたちは何もしませんでした。が、そのうち「入れよ」と声をかける子が出てきました。言ってもらった子は「いいの?」という感じで中に入って一緒に活動するようになりました。「どうしてあんなふうになるんでしょう?」と先生は不思議な顔でしたが、私からすればそもそも子どもの世界に大人が踏み込まない方がいいと思っています。先生がどうするか、ではないのについ声をかけてしまうようです。先生はそれが自分の役割だと考えているし、周りもそうなので、先生が行動を起こさないと周囲に「何か言ってください」と言われてしまう。そうならないためには「子どもをどう育てるか」を共有しなくてはなりません。それなのに、「自分が言わなければ!」と大人は焦ってしまうわけです。子どもが成長する余白を与えていません。機会を奪っていることも多いのです。サカイク公式LINEアカウントでイベントや最新情報などをお届け!■子どもたちをずっと動かすことがカギ「並ぶ必要のない」練習メニューを提供することさて、ご相談いただいた件です。10歳以下。けんかしたり、ふざけたり。小集団でいろいろなことをやりたくなる。この年代の特徴です。大人のほうが「この年代なら当然だ。当たり前。こんなものだ」とおおらかにとらえることが重要です。そして、もうひとつ大事なのが、並ぶ必要のないメニューを提供することです。つまり、並ぶ時間もなく、次々とサッカーをしてもらう練習にしてください。実際、ご相談者様のように子どもの私語やふざける様子が気になる指導者の方たちは、おしなべて並んで行うメニューを組んでいることが多いようです。子どもたちをずっと動かしましょう。いつもお話ししているように、練習はミニゲームを中心に。その間に、2対1、3対1など小集団で動くメニューを挟みます。コートを半分に使ったり、4分の1ずつにするなど、狭いスペースでよいので次々と行うようにしましょう。■「早くしなさい」ではなく「このままだと○分しか練習できないよ」と焦らせる方が有効そのほかに、三つほどアドバイスさせてください。ひとつめ。子どもの行動が遅いと感じるのは、指導者側の問題でもあります。子どもに対し「何やってるんだ」「早くしなさい」ではなく、「時計の小さい針が6を指したら、次のメニューを始めるよ」などと、明確な時間を示すことです。練習の時間を最初から決めておくことです。そこで「このままだと、次の練習は○分しかできないよ~」と知らせることも有効でしょう。■水分補給の時間が長すぎると集中力が切れてだらけてしまうので、時間の見直しを二つめ。水分補給の時間確保についても一考してみましょう。皆さんの練習を見ていると、水分をとる時間が長いときがあります。子どもは座りこんでしまい、おしゃべりをしながらゆっくり補給しています。そうると、コートになかなか戻ってきません。子どもたちに、水分補給は休憩ではないこと、飲んだらすぐコートに戻るよう伝えましょう。そのことをきまりにしてください。その際、水分補給を急がなくてはいけない根拠を伝えることも重要です。「試合中はボールをいつも見ていないといけないよね。練習中は試合をしているのと同じ集中力でやりましょう。試合の中で起きることに気を配らなくてはいけないのに、ぼーっとしているとどうなりますか?」そのように、子どもたちが早く集まる動機づけになるような話をしてください。「君たちの水筒は押せば出て、すぐ飲めるよね。便利だよね。だから、飲んで蓋を閉めるまで3秒でいけるね!」などと話します。そうすると、大慌てで我先にとコートに帰ってきます。例えば「前回よりタイム短縮できたね」「記録を伸ばそう」などと自尊心を刺激しましょう。急がなくてはと思えるような仕掛けをしてください。当然ながら、子どものことなので、そんなふうに毎回できるわけではありません。行きつ戻りつしながら、習慣にしていくことです。素早く行動できたときは「良かったね。みんなが早く動いたから、たくさんサッカーができるよ」と褒めましょう。■説明は短めに、練習しながら少しずつ修正ポイントを伝えよう(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)三つめ。水分補給をサッとやったのに、次の練習メニューの説明が長いと、子どもたちはざわざわし始めます。上述したように、説明はできるだけ短く切り上げましょう。子どもたちがじっとしていることなく、すぐに行動できるようにします。言うことを聞かせようと思うがあまりに、じゃあ注意しようとなりがちです。そうすると余計話が長くなって逆効果です。また、練習中に1回の説明で練習がうまくできない場合があります。コーチが再度確認したり、説明したい場合は一度集めて「この練習はどう?どこが難しい?」などと尋ね、修正するポイントを伝えます。そして、また集める。そんなふうに少しずつコミュニケーションを図りながら、行ってください。最終的には、冒頭でお伝えした児童のように、子ども同士で「集中しようぜ」などと声を掛け合えるチームを目指してください。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2022年09月23日今年の春、秀岳館高校サッカー部のコーチが男子部員を暴行する動画がSNSで拡散されました。しかし、その後に部員が顔出しで謝罪動画を公開し、暴力は日常的なものではないとメディアで報道されている内容を否定しました。その後、監督がテレビに出演し「謝罪動画は部員の主体的な行動によるもので、自分は関与していない」と釈明しましたが、数日後に監督が指示したという事実が発覚し、指導者としてあるまじきことであると大きな問題として取り上げられました。筆者は、長年育成年代を取材してきた経験からこのような問題はまだ氷山の一角で、表に出てきていないことはたくさんあると感じています。今回は、日本の育成年代で度々起こる暴力問題の本質を紐解いていきたいと思います。(構成・文:KEI IMAI)<<関連記事:「お前たちが考えていることはどうでもいい」監督にもコーチにも相談できない学生プレーヤーたちの苦悩サカイク公式LINEアカウントでイベントや最新情報などをお届け!■古いままの指導観、アップデートされない教育観まず、日本の学校教育を筆頭に教育観がアップデートされていないという問題があります。欧米ではより科学的にスポーツ指導が行われ、サッカー以前に人間性を育む指導が当たり前になっていますが、日本は未だに根性論が根強く、暴力を伴う行き過ぎた指導が散見されます。熱血指導、暴力をともなう強制的な指導は、軍隊教育の名残だと言われています。日本野球界の偉大な指導者、野村克也さんは著書「指導者のエゴが才能をダメにする ノムラの指導論」の中でこう書かれています。「私が現役の頃、『指導』には暴力がつきものだった。当時は軍隊を経験した人たちが指導者となるケースが多かった。軍隊は生死を懸けた戦いの場所だ。とくに太平洋戦争を経験された人は、さぞかし苦労されたと思う。そうしたなかでも特筆すべきことは、一般社会では例を見ないほどの『行き過ぎた上下関係』が、軍隊で行われていたことに尽きる。俗に言う『しごき』の類は、ここで体験したことを、戦後になって『教育』という名のもとに、一般社会に持ち込まれてしまったからに他ならない。」出典:指導者のエゴが才能をダメにする ノムラの指導論著者:野村克也サッカー以外のスポーツでも根強く残る、いき過ぎた熱血指導は古いままの指導観、教育観が原因であると感じています。■指導者の横暴を許容、黙認する保護者たちも問題もう一つ問題なのは、このような指導者を黙認してしまう大人だと思います。ジュニアサッカーの現場に行くと、未だに高圧的で横暴な指導者もいますが、これを後押ししているのは保護者の方だったりします。保護者世代も同じような指導を受けてきたので問題に気が付かない人が多かったりと、決して悪気はないと思うのですが、お茶汲みなどの過剰な接待をしながら「子どもたちを鍛えてください」などと熱血教育に対するニーズも残っているように思います。また、指導者に対して違和感を感じながらも黙認してしまう大人も多いように思います。同調圧力や声が大きい影響力のある人に対して意見しにくいという国民性もあるかもしれません。しかし、子供たちのためにより良い方向にいけるように考えていかなければなりません。■指導者が勝利至上主義に陥る理由また、指導者が勝利至上主義に陥ってしまう理由の一つに全国大会などの構造問題があります。負けたらおしまいのトーナメント方式中心の大会運営はその最たるものです。サッカーを含めたスポーツと呼ばれるものは本来、生涯スポーツとして楽しみ、心身ともに健康的に過ごすためのものです。しかしながら、実際には多くのジュニアチームが勝利至上主義に陥り、子どもを消耗しています。目先の勝利が最優先になり、熱血指導、先回り指導が跋扈しています。結果として暴力事件や、オーバーユース、バーンアウトが起こりやすい構造になっているように思います。行き過ぎた指導により、サッカーが嫌いになって辞めてしまう子どもの話もよく耳にします。そんなことは、あってはならないことだと思います。サッカーを楽しみながら、好奇心と主体性を育み、それぞれのレベルに合ったプレー環境が大切なのです。全国大会を廃止とまでいかなくても、その方式は早々に変えるべきだと思います。レベル別にリーグを分けて戦えるような仕組みにすること、そのカテゴリの中でトーナメントなどを行うのはいいと思うんです。既存の全国大会はそのような仕組みになっていません。レベルが圧倒的に違うチームが試合を行わなければならない仕組みも、変えていかなければならないと思います。サッカーコンサルタントの幸野健一さんの著書「パッション 新世界を生き抜く子どもの育て方」にはこう書かれています。「サッカーも、冬の高校選手権が選手の最大の目的になっているよね。勝てば天国、負けたら地獄みたいな戦いは、もちろん、選手にとってかけがえのない経験となる面もあると思う。でも僕は、それが本当に選手のためになっているのかは疑問に思ってしまうんだ。考えてほしいのは、ゲームそのものではなく、誰のためのものかということ。育成年代のスポーツの主役は、あくまで選手でなければいけない。でも現実は、選手の手を離れて、視聴者を意識したテレビ局や大会関係者のものになっているよね。ヨーロッパや南米の育成年代においては、日本のような全国大会はないんだ。あまりにも強いスポットライトを浴びることで、選手が天狗になるのが良くないという理由でやっていないんだよ。選手を保護する考えがある」出典:パッション 新世界を生き抜く子どもの育て方幸野健一■保護者ができること構造をすぐに変えることは難しいかもしれません。しかし、問題提起すること、コミュニケーションを取ることはできます。もし、自分のチームの指導者が熱血過ぎるのなら、子どもがサッカーを心から楽しむための親の心得「サカイク10か条」を思い出してください。保護者としてどうあればいいか、わかるはずです。そして、チームの保護者、指導者とコミュニケーションをとってみてください。親御さんが、間違った指導を知ることができれば問題はすぐに把握できます。まずは知ること、そして必要なアクションを考えることです。
2022年09月13日誰でも入団できる街クラブだから、レベル差が激しい。単純に学年で分けて練習すると上手い子、そうじゃない子、どちらかに合わせるか、中途半端になって「サッカーってつまんない」となりかねない。どっちの子も楽しく感じてほしいから、指導者で話し合って2学年ごとのレベル別でグループ分けをすることにしたけど、トレーニングで注意することはある?というご相談をいただきました。今回も、ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、事前説明から実際のトレーニングまでどんな所に気を配ったらよいかアドバイスを送ります。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<たくさん練習することを「頑張っている」と喜ぶ親や指導者がいるけど、正しいの?練習しすぎの影響を教えて<編集部からの質問>池上さんこんにちは。街クラブで指導している者なのですが、今回はレベル別グループ分けについて教えてください。現状ウチのチームではセレクションもなく、手続きさえ踏めば誰でも入団できます。なので、同じ学年でもレベル差がある状態です。これまでは各学年ごとにコーチがついていましたが、レベル差があることによって上手い子は物足りない、上手くない子はついて行けなくてしんどい・つまらない=サッカーが嫌になるという、どちらにとっても良くないと感じることが増えました。なので、チームで話し合い、低学年、中学年、高学年と2学年ずつでレベルごとのグループ分けをしようという事になりました。上手い子たちに刺激を与え、現状上手くないグループにいる子たちを切磋琢磨してみんながサッカーを嫌いにならないように伸ばしていきたいのですが、トレーニングで気を付けることはありますか?また、どの学年でも良いので、おすすめの練習メニューを1つ教えていただけませんでしょうか。よろしくお願いいたします。<池上さんの回答>ご相談ありがとうございます。2学年ずつでレベルごとのグループ分けをすることについては、まったく問題ありません。■選手と保護者には、事前にグループ分けの意図を丁寧に説明しようただし、日本人の価値観や文化を考えると、上手いか下手かという表層でしかとらえてもらえないことでしょう。したがって、技術レベルで分けることは、子どもたちひとり一人がサッカーを学ぶために重要であることをまずは保護者に伝えてください。ボールの扱いが上手いとか、何かができるから上手い子という印をつけているのではない。それを理解してもらったうえで進めてください。当然ながら、この事前説明は選手たちにも丁寧にやったほうがいいでしょう。子どもたちの疑問にも誠意をもって答えてください。サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■欧州では、習熟度が遅い子は下の学年のカリキュラムで練習させている欧州の指導書でも、指導カリキュラムは年齢に合わせています。カリキュラムに合わない、つまり少し追いついていない子をどうするかと考えたとき、欧州のコーチたちは下の学年のカリキュラムで練習させています。そうすれば簡単に理解できるし、マスターできます。例えば中学年でサッカーをやり始めたばかりの子どもを低学年と練習させたとします。彼らは、技術はおぼつかないけれど、体は大きくなっているし理解度も高いため、低学年の子より上達スピードは速いはずです。そのように、カリキュラムを一段下げて取り組むのが重要です。■習熟度や身体の成長スピード、モチベーションなどを見逃すと、成長に必要なピースがそろわない同時期にサッカーを始めたとしても、個人差はあります。理解度や習熟度が早い子、ゆっくりな子、肉体的な成熟度のスピードも違います。早く上手になったからといって、ずっとそのスピードで上達するわけではありません。そしてサッカーに対するモチベーションも違います。これは目に見えない部分なので、よく見てあげてください。そうしなければ、本来身に付けるものが置き去りにされ、そのあとの成長に必要なピースが揃わなくなります。例えば、ポジショニング。どこに動けばいいのか。どこを見ればいいのか。仲間をどう使うのか。そのようなサッカーを認知する力を、多くの指導者がうまく伝えられていません。ドリブルや、止める、蹴るといった個人のスキルが中心になりがちです。上述した「味方をどう使うか」のイメージは、中学年になったときは当たり前にできる子に育っていてほしいと私は考えます。■選手の評価項目に「考える」「インテリジェンス」を追加してそれなのに、中学年、高学年とドリブルが上手い子が評価されがちです。ドリブルのテクニックなど、下の学年であっても上の学年で通用するものだけに評価する項目が絞られがちです。評価項目に「考える」という視点が欠けているようです。自分でよく考えられる子。よくパスを出せる。そのあたりを視る指導者は決して多くありません。選手を選別するという点からみると、トレセンも同じです。トレセンの選手を選抜する際、コーチの皆さんが見る点は「大きい・速い・強い」になります。皆さんはどう考えるでしょうか?日本では、小学生年代のスカウティングの観点は、そこにサイズが入ってきます。ところが、海外のセレクションでは第一に「インテリジェンス」をみます。賢そうかどうか。次にテクニック、スピード。最後にフィジカルです。実は私のチームに、2年から入ってきて、すごくよく考えられる子がいます。キックもドリブルもままならないのですが、相手が来るとうまくかわしてパスを出したり、まわりを見られます。恐らく他のチームにいけば、目立たない選手で上手くないほうの部類に入れられてしまうでしょう。このような「自分で考えられるかどうか」という視点を持って、レベル分けしてほしいと思います。■低学年までは多少子どもたちの思い通りになるよう調整するのも、サッカーが楽しくなる方法(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)練習については、選手のレベルに応じて難易度をうまく調整してあげましょう。例えば、ドリブルが上手くない子に、ゴールに向かっていけと言ってもなかなかできません。2対1をしていて点が入らず楽しくなさそうであれば、ゴールを二つにしてあげましょう。ゴールを2つ設けるだけでもゴールの確率は上がります。点を取りやすくすることを考えると、幼児だからといってミニゴールにすることはありません。大人のゴールにするといっぱい入ってうれしくなります。幼児から低学年にかけては特に、楽しくするためにどうしたらいいかを考えましょう。多少子どもたちの思い通りになるようにすることです。3対3であれば外にフリーマンを設けるなど、人数を調整するのもひとつの方法です。練習を、子ども自身が「難しい」と感じているかどうか。そのあたりを指導者は感じ取れなくてはけません。今日はこれをやれ、と命じるのではなく、その日の選手たちとどうアジャストさせていくのか。簡単にするのか、難しくするのか。さじ加減をどうするかが、コーチの腕だと思います。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2022年08月26日指導者が「リフティングが100回できた者からレギュラー」と言ったから一生懸命練習してチームで一番できるようになった。試合でも、一人でドリブルして相手を交わしてゴールを決めた。チームミーティングでも「別次元」と褒めたらしいのに、出場機会がどんどん減ってる。リフティングでレギュラーの話はどうなった?わが子が出場できない理由を聞いてもいいの?というご相談をいただきました。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの子育てと取材で得た知見をもとに、アドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<指導者が息子を劣等生扱いするのがツラいのでチームを辞めさせたい問題<サッカーママからのご相談>小学校5年生男子の母親です。地区のスポーツ少年団のチームに所属しています。3年時に指導者が変わり、4年生から試合に出る時間が少なくなり、現在公式戦はもちろんのこと、練習試合での出場時間もほとんどなくなりました。指導者は、常々「実力勝負」「勝ちにこだわる」ということを口にして、練習試合であっても下級生を連れてきてスタメンで使っています。少しでも試合に出れるよう、指導者に次の2点を尋ねて良いものか、逆恨みされないか、悩んでおります。1点目は、指導者の過去の発言について。指導者がリフティングに凝った時、「リフティングが100回できた者からレギュラーだ」と言ったことがあります。息子は一生懸命練習し、チームで唯一常時100回左右でできるようになりました。最高は250回です。チームには息子ほどできる子はいません。「レギュラーの話はどうなったのか」と聞くのは嫌味に聞こえるでしょうか。2点目は、選手起用の考え方についてです。我が子のみを見ていて目が曇っているのかもしれませんが、どうも指導者に好かれていないように思えてなりません。先日の試合で、息子は5年生で唯一公式戦に出してもらえませんでした。その後のフレンドリーマッチでも、公式戦で足を痛めた子が続けて出て、息子はその子と代わる形で後半から出場しました。息子は、得意のドリブルで相手をかわして前まで持っていきゴールを決めました。素直に上手でした。その後の全体ミーティングで、指導者は「凄かった。別次元の動きだった」と皆の前で褒めました。息子は「じゃあ、最初から出せ」と思ったそうです。「別次元の動き」と褒める割には、お情け程度(フレンドリーマッチの半分)にしか試合に出さない理由を尋ねて良いものでしょうか。不毛なことでしょうか。<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。試合に出られないわが子を見守るのは、親としても辛いものがありますね。私も親として同じ思いをしたので、お気持ち察します。■自分の当番日に出場できなかったから辞めさせた親もあるサッカークラブで、小学5年生からサッカーを始めたA君が入団して半年も満たずに辞めてしまいました。A君自身は続けたかったのですが、お母さんの一存で辞めさせたのです。ご自分が当番だった日にA君が公式戦に出られなかった。それが理由でした。ひとつ下の4年生の上手な子が数人出場していました。「みんな試合に出られると聞いていたのに、息子は出られなかった。言っていることとやっていることが違う。信用できません」お母さんは、周囲にそう漏らしていました。コーチらは試合後、プレー時間がなかったことをA君に謝り、次の練習試合でたくさん出られるようにするからと話していました。本人も納得して帰って行ったのですが、お母さんは納得していませんでした。コーチの方は「子どもとともに、母親にも話をするべきだった」と後悔していました。「まだサッカーを始めたばかりだから、出られなくても仕方がないと思ってくれると期待してしまった。5年生は高学年だしプライドもある。お母さんにもあったでしょう。そこを僕らが汲めなかった」これは10年ほど前。試合に全員出場させようといった機運はほぼなかった時代のお話です。サカイクで連載をされている池上正さんを始めとして「全員に出場機会を」の機運は少しずつ広がりつつありますが、10年経っても状況は劇的には変わりません。8,9割のチームが勝利するためにレギュラーメンバーをずっとプレーさせている。それが、さまざまな指導者や親たちに取材してきた私の実感です。サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■わが子への「かわいそう」という感情は、くせ者。共感は良いが同化はダメとはいえ、A君のお母さんの行動は正しかったと思われますか?A君のお母さんは、息子さんが試合に出られずベンチでポツンと座っている姿を見るのが辛かったのだと思います。辛いだろう、悲しいだろうと思うと、かわいそうになりますね。しかし、親のわが子への「かわいそう」という感情は、実はくせ者です。得てして良い子育てに繋がりません。この連載で何度か申し上げているように、子どものつらさに共感するのは必要なことですが、子どもの気持ちと同化してはいけません。同化するとは、子どものつらさを、親がわがことのように受け止めてしまうこと。お母さんが「そんな子どもを見守っている私って、かわいそう」となりがちです。■コーチに質問したいのは、親御さんが自分の気持ちを鎮めたいからでは?かわいそうなままでは不安です。不安な親は、自分の不安を払拭したくて子どもに干渉したくなります。第三者がみれば過度な干渉でも、親御さん自身は「子どもに良かれと思って」世話を焼いてしまいます。「リフティングができたら試合に出すと言ったじゃないか!」「異次元の動きと褒めたのに、なぜレギュラーじゃないのか?」そのようにコーチに質問したくなるのは、息子さんに良かれと思ってでしょうか?もしかしたら、ご自分の気持ちを鎮めたいのではありませんか?実はストレスがたまった「自分に良かれと思って」考えたことかもしれません。子を想う親の気持ちは非常に複雑です。子どもに笑顔でいてほしい。努力が無駄にならずに済むようにしてあげたい。すべて親心です。■親が先回りしてしまうと、子どもは自分で思考することや課題解決の経験が積めないところが「良かれと思って」やったことはほとんどの場合、子どものためになりません。なぜならば、親が先回りすることで、子どもは何も考えず、何もやらなくて済みます。要するに、自分の課題解決をする経験を積めません。親心は時として暴走することがあります。そこに気をつけなくてはなりません。暴走しないためには、まず子育てをしている意味を考えましょう。お母さんが息子さんを育てるなかで、最も大事なのは何ですか?私は、まず子どもを死なせないことだと思います。私の子ども二人は兄妹ともサッカーをしていましたが、兄は割と鈍感なので心配しませんでしたが、生真面目で繊細な妹のほうはサッカーで気に病んでいそうなとき、命を絶ったりしないか彼女の表情を盗み見ていました。気になって寝室に見に行ったこともあります。■もう5年生、監督やコーチには自分で質問させよう次に大事なのは子どもの人としての成長を支えること。息子さんはもう5年生、高学年です。成長してほしいのならば、上述したように何事も自分で解決をする経験をさせてあげてください。「リフティングが100回できた者からレギュラーだ」と言ったコーチに対し、「僕は努力したのに。レギュラーの話はどうなったのか」と尋ねるのは、息子さんがやるべきです。少なくとも、お母さんではない。「聞いてみたら?」と話し、息子さんが「え~、聞けないよ」と拒むなら、まだその時期ではないということ。ほっとけばいいのです。選手起用についても、「別次元の動きだった」と皆の前で褒めたのなら、「じゃあ、最初から出してください」と自分で言えばいい。親としては「悔しいなら言ってみたらいいじゃん」くらいの態度で十分ではないでしょうか。なぜ試合に出られないのか。そこを自分で考えて策を講じる経験をさせてあげてください。それをせずに、親のほうが「なぜ出られないんだ?」と詰問するのは、子どもが成長する機会を奪うことになりかねません。■子どもに自信を持たせたいなら、親がいつまでも不安を抱えていないこと(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)そして最後に。お母さんがいつまでも不安に思っていては、息子さんは自分に自信を持てません。大好きなお母さんを「いつまでも不安がらせるダメな僕」であり続けるからです。子育ては、子どもへの「不安」を「信頼」に転換する旅なのです。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)。
2022年08月17日子どもたちが毎日たくさん練習することを「サッカーが好きすぎて」「上手くなるために頑張ってる」と目を細める親や指導者もいますが、それって正しいのでしょうか。オーバートレーニングになっているのでは?たくさん練習する=上達じゃないのでは?成長期に運動しすぎることの弊害は?など、今回はサカイク編集部が気になっている疑問を池上さんにぶつけてみました。ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、練習しすぎによる心身への影響などを教えてくれました。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<仲間との協力プレーは大事だけど、ドリブルなど個のスキルも不可欠だと思う。U-8年代の指導は何に注力すべきか教えて<編集部からの質問>今回は、コーチからの質問でなく編集部から質問させていただきます。「運動しすぎること」について教えてください。いっぱい練習すること、長時間練習することが上達につながる、と思っている指導者はいまだに多くいるように思います。また、保護者側も同じように思っている方も多く、「毎日練習があるチームの方が上達する」と入団のポイントに挙げていたり、練習以外でもずっとボールを触っていることを「上達するために頑張っている」と目を細める方も少なくないようですが、これってサッカーの「しすぎ」ではないでしょうか。(オーバートレーニング症候群?)疲労回復の面や、成長期に運動しすぎるのは、摂取した栄養より消費カロリーが多そうで、身体を大きくする面でも気になります。先日の弊社イベント、親子サッカーでトレーニング後もずっとサッカーしている子たちがいて、池上さんが「練習しすぎを止めるのも大人の役目」と言ったと聞きました。指導者や親は、子どもの運動量について、どの位を目安にすればいいですか。<池上さんの回答>サカイク編集部から興味深い相談がありました。ありがとうございます。さて、みなさんは「超回復」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?アスリートだった方や、大学などでスポーツを学んだ方はよくご存じかともいます。超回復とは、トレーニングの間にきちん休むことで運動が定着することです。科学的にも証明されています。■筋力アップやスキル習得のためにも休息して「超回復」させることが大事例えば、練習や試合の後に一日、二日と休んだ翌日、トレーニングしたことが定着している、つまり上手くなったような感覚を持つことがあります。その感覚はその後少し薄れるのですが、そうやって運動しては、休みをきちんととることでうまくなっていきます。休息は、大人だけでなく子どものアスリートにとっても非常に重要です。また、超回復というと、筋力アップのためには休みが必要であるという説が有名です。しかし上述したように、スキル習得にも超回復は立証されています。サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■サッカーが上手くなるためには、心身の余裕が大事そもそもインプットしたスキルは試合で使えるようにしないと意味がありません。要するにアウトプット、試合で発揮する機会が必要です。ところが、毎日ずっと練習しているとインプットばかりになってしまいます。いや、週末には試合をしていますよ、とおっしゃるかもしれません。が、少年サッカーの試合でコーチがこうしなさい、こう動きなさいと指示ばかりしていれば、それは練習になります。アウトプットし、それをまた自分で振り返る。サッカーが上手くなるには、そのようなこころの余裕が大切になってきます。きちんとお休みをとればリフレッシュできるのです。加えて、小学生年代に来る日も来る日もスポーツ漬けでは、人間形成ができません。もちろんサッカーによって人として成長するのですが、大人になるための学びの機会が必要です。サッカーだけじゃない。長い人生を考えると、友達と遊んだり、家族でどこかに出かけたり、野外活動などサッカー以外の豊かな経験を積んでほしいと思います。■日本の子はオーバートレーニングのリスクにさらされている欧州では、サッカーの間に、他の遊びをします。さまざまなスポーツも体験させます。例えば水泳やバスケットボールなど、他のスポーツの経験が後々サッカーの役に立つこともあります。ことサッカーという競技は、さまざまな運動技能が合わさったものです。ボールを足で扱うわけなので、多くの場面で片足で立っています。つまりバランスの競技です。そのことから、他のスポーツが大いに役に立ちます。日本でも、いくつかの競技を並行して行なう「マルチスポーツ」が注目されるようになりました。一方で、日本の小学生はオーバートレーニングのリスクにさらされています。小学校に紐づけられた少年団などでは朝練を行っているところもあります。そうなると、例えば放課後にサッカースクールに通う子の場合、寝るのは夜11時過ぎなのに翌日は早起きして学校に行かなくてはなりません。しかも、朝練はコーチや親から「やりなさい」言われてやっています。自発的な練習ではありません。■練習を「やればやるほどうまくなる」という根拠はない夏休みも、チームからの「リフティング〇回できるようになろう」という宿題に取り組まなくてはなりません。夏休みはもっと自由に他のことができるはずなのに、人としての成長に必要なことができなくなります。すでに申し上げたように、サッカーでも学べるけれど、他のことに集中することも大事です。そういったことがよくわかる本に『アスレチックスキルモデル才能を適切に発揮させる運動教育』(レネ・ウォンホートほか/金子書房)があります。良かったら手にとってみてください。たくさん練習をすれば上達する、やればやるほどうまくなると皆さん思われていますが、まったく根拠がないことがよくわかるでしょう。■運動しすぎるリスクは身体だけでなく精神面にも。楽しむはずのスポーツに「抑圧」されている運動をし過ぎるリスクは明白です。ジュニア期でオーバートレーニングになると、サッカーであればかかと、足の甲、足首、膝、腰と、下半身を中心にスポーツ障害のリスクが高まります。休まず長時間練習すると、睡眠が足らなくなります。そうすると身長が伸びません。100%、良いことはありません。加えて、精神的にもバーンアウトする恐れがあります。それなのに、大人も子どもも「練習しないと不安だ」という気持ちになっています。楽しくて、子どもの生活を豊かにするはずのスポーツによって、抑圧されています。このことは「毎日真面目に練習しなさい」と子どもに言ってしまう日本人の教育観も関係しています。練習するのは、チームの中で一番になるためです。大人がチームの中で競い合わせています。なぜなら学校の教育が同じ様式だからです。「クラスで一番になりなさい」と言われて育ちます。言われなかったとしても、そのような競争の価値観は刷り込まれています。どんなことにおいても競争、競争なので、運動会で全員手をつないでゴールしようといったことをしても、根本的な策にはなりませんでした。■チームで協力しあうのがサッカーなのに、個人プレーによる自己完結になっている(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)「競わせることが子どもの大きな動機づけになる」という意見もありますが、それではエゴイストが育ちます。チームで協力し合って勝利を目指すのがサッカーなのに、個人が活躍することで自己完結します。チームでどう勝つかといった重要なことが学べません。特に今のような暑い時期に無理にサッカーをする必要はありません。子どもをしっかり休ませましょう。その間、大人も休めます。その時間のなかで新たな学びをぜひ身に付けてください。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2022年08月12日人数が足りないわけじゃないのに、下の学年と練習させられる。息子と女子だけユニフォームがもらえなかった。チームから共有される試合の写真もうちの子だけ写ってない。同じ金額を払っているのに、試合経験を積める子と見限られた子。劣等生扱いされているのは公開処刑みたいで私がツラくてサッカー辞めさせたい。どうすればいい?というご相談。出場機会の悩みを持つ親御さんも多いのでは?今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの知見をもとに、お母さんへのアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<試合に出られない息子。上達しないのに時間の無駄と思う自分がイヤです問題<サッカーママからのご相談>はじめまして。小4の息子は年中からサッカーを始め、本格的に今のチームに入団したのは年長からです。悩みはだいぶ以前からで、ずっとモヤモヤしたまま続けてきました。所属しているのは、地元のスポ少です。勝負の世界なので上手な子が試合にたくさん出るのは仕方のないことなのは分かっています。とはいえ、なかなか上達の遅い我が子に対しての指導者の劣等生扱いがすごいのがツラいです。たとえば・4年生が呼ばれている練習試合に息子と女子は呼ばれず、下学年の練習へ行かされた・息子と女子だけユニフォームを与えられなかった・フィールドから→キーパーになったが最近では別な子にキーパーを教え始め、その子ばかりを起用・始まったばかりの4年生大会にほとんど試合に出してもらえないと、こんな感じで指導者が息子に対してあからさまな劣等生扱いをするので保護者、チームメイトもうちの息子を「1番下手」と認識しているんだろうなと思います。大会には息子以外の4年全員と、3年や2年の子が出ていました。4年生は9人なので人数が多くて試合に出られない子がいるわけではないです。最近はキーパー以外で出ることはほぼなく、ごくたまにフィールド出されたところで、動きが悪いのか叱られていることばかりです。「試合の写真です」と、たくさん写真が送られてくる中に、出場機会の少ない息子の写真だけ1枚もないこともしょっちゅうです。そういうのも、全体の前で公開処刑されているようでツラいです。ちなみに親の色眼鏡かもしれませんが息子そこまで際立って下手なわけじゃないと思います。リフティングも少しずつではありますが回数ものびてきているし、自主練もしています。全く努力していないわけではなく、サッカーは好きなんです。だからこそ惨めな思いばかりさせられるのは悲しく......。みんな同じ団費を支払っているのに、たくさん試合経験を積んでどんどん上手になっていく子、反対に4年生でもうもう見切られたのかほとんど試合に出してもらえず、下学年との練習に混ぜられてばかりで試合経験も積めない子。サッカーが好きで、サッカーがやりたくて、チームに入ったのに...。これでは上手な子達との差はどんどん開く一方ではないでしょうか?地元のスポ少であっても、上手な子にしかサッカーの試合に出る資格はないというのでしょうか。この年代において、いつも惨めな思いをしたり、ここまでの差別を受けないといけないものなのかと思い悲しくなってしまいます。息子は辞めたくないと言っていますが、親としては今このチームに息子の居場所はなくなってしまったように思い、見ていてツラいので正直もう辞めさせたいです。もしかしたら、チーム側から辞めてくれと言うわけにいかないいのでこちらから辞めていくように仕向けている?などと、考えたくもないことまで考えてしまいます。こういうチーム、こういうことって、普通なことなのでしょうか...?アドバイスいただけましたら、嬉しいです。<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。お母さんとしては、息子さんが「劣等生のように扱われている」と感じているのですね。かわいいわが子が貶(おとし)められていると思えば、それはとても辛いことでしょう。ご相談の文章だけではわかりかねますが、あくまでも私の印象でお話しします。文章全体に悲壮感があふれていて、お母さん自身が今とても感傷的になっていることが伝わってきます。そのような状態で、私の言葉が届くかどうか不安ではありますが、ひとつだけアドバイスを送ります。良かったら参考にしてください。■お母さんはある意味勝利至上主義を認めているまずは、ご自分の価値観が矛盾していないか。そこを考えてみましょう。所属されている少年団について「こういうチームは普通のことなのか?」という質問ですが、普通という表現を「一般的なのか?」と言われれば、今現在の少年サッカーはまだまだこのようなチームは少なくありません。息子さんのチームが軸にしているのは「勝利」です。つまり勝利至上主義です。これは、子ども全員が楽しくサッカーをする、サッカーをすることで成長するといった指導哲学とは対岸にあります。だから、チームが女子と息子さんにだけユニフォームを与えなかったり、息子さんら一部の子の写真が少なくても平気で送ってしまうわけです。クラブが「勝てばいい」という価値観を軸に走っているので、そこに関わらない子どもは置き去りにされがちです。ということは、お母さんと息子さんはチーム選びを間違えた、とも考えられます。子どもたちをできるだけみんな同じだけ試合を経験させたり、一人一人の成長を見守るクラブは増えています。そのあたりをもう少し見定めて選べば良かったかもしれません。とはいえ、お母さんは「勝負の世界なので上手な子が試合にたくさん出るのは仕方のないことなのは分かっています」と、勝利至上主義をある意味認められています。もちろん、それを責めているわけではありません。人それぞれ考え方が異なるのは当然です。サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■わが子がレギュラーだったら、同じことを思ったかそこで少し耳の痛いことを申し上げると、もし、息子さんがレギュラーで出ていればどうだったでしょう?もしかしたら、写真やユニフォームのない子どもたちのことに思いが及ばなかったかもしれません。(私自身も、もう十数年前に遡りますが、途中まで息子が試合に出るだけで満足する親だったと猛省しています)それを踏まえたうえで、クラブのことについて息子さんとどんなふうに話をしているか振り返ってみましょう。コーチはひどいねと息子さんに同情していますよね。その一方で「勝負の世界だから上手な子が試合にたくさん出るのは仕方がない」とお母さんは考えている。これは矛盾しています。この矛盾に、まだ9歳の息子さんは気づかないと思いますか?確実に言えることがひとつあります。彼は「お母さんは矛盾している」と言えないけれど、みんなより自分がサッカーが上手くない、試合に出られないことで、お母さんが傷ついていることを感じ取っています。しかしながら、一番傷ついているのは息子さんです。大事なお母さんにツラい思いをさせている「ダメな僕」。そう感じ自己肯定感を下げているかもしれません。■「私がツラい」は理解するが、本人が望んでないのに辞める提案はNGそこで、お母さんの考え方を「息子を主体」にすることをおすすめします。今現在、お母さんは「自分が主体」になっています。上達の遅い我が子に対しての指導者の劣等生扱いがすごいのがツラいです。全体の前で公開処刑されているようでツラいです。惨めな思いばかりさせられるのは悲しく......。親としては今このチームに息子の居場所はなくなってしまったように思い、見ていてツラいので正直もう辞めさせたいです。すべて息子さんの問題なのに、「私がツラい」と自分が主語になっていますね。上記のような愚痴を言いたいのはわかりますし、それは全く構いません。配偶者がいればその方に、ママ友に話してストレスを解消してもいいでしょう。しかし、最後に私が挙げた「見ていてツラいので正直もう辞めさせたい」はいけません。「息子は辞めたくないと言ってます」と書かれている。ということは、辞めたら?と提案したのでしょうか。であれば、そのことは息子さんに謝罪しましょう。「あなたの問題なのに、お母さんの思いだけで辞めたらとか言ってしまってごめんね。自分で決めてね」ぜひそう言って謝ってください。息子さんがどうしたいのか。息子さんが今のチームでサッカーを続けたいのか。息子さんを主語にして考えてください。■本人がチームを替えたいと言ったら、移籍先を探せばいい息子を主語にするってどういうこと?って思いますよね。例えば、こんなことです。「全く努力していないわけではなく、サッカーは好きなんです」と書かれているように、お母さんは息子さんの努力やサッカーが好きな気持ちを理解しています。ここで、次に続く「だからこそ惨めな思いばかりさせられるのは悲しく......」という負の感情をご自分で整理してください。息子はサッカーが好き。今のチームでやると言っている。だったら、まあいいか。まだ小学4年生。彼の好きにさせよう、成長を見守ろう。彼が「試合に出られるチームに替えたい」と言ったら移籍先を一緒に探せばいいや――そんなふうに考えましょう。また、息子さんを主体にすれば、あの人が悪い、チームがダメとお母さん自身が他罰的にならずに済みます。■過干渉が子どもに与えるリスクを軽く見ないで(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)私はスポーツの育成に注目して取材活動をして20年ほどになります。並行して、脳科学や心理学、新しい教育学に基づいた専門家も取材してきました。出会った親子は2000人以上になります。そのなかで、親御さんがご自分のつらさや喜びを優先した子育てで上手くいった例を、私は知りません。なかには過度に世話を焼いても順調にいく例もあるでしょう。しかし、親が道を作って歩ませて、上手くいかなかったときに子どもは「お母さんの言うとおりにクラブを変えたのに、今度はいじめに遭った。お母さんのせいだ」となりかねません。過干渉リスクを軽くみて痛い思いをした例は枚挙に暇はありません。逆に、自分で考えて決めた場所であれば、上手くいかないことがあってもそこで戦えます。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)。
2022年08月10日日本代表の久保建英選手を直接指導するなど、世界で活躍するトップ選手にコンサルティングや指導を行い、パリ・サンジェルマンの育成部門でダイレクターを務めたダビッド・エルナンデス氏。10年以上にわたるキャンプやクリニックを通じて日本人選手についても熟知している指導者です。前編では、ダビッド氏が考えるスペインと日本で育成年代の選手において11の違いをお伝えしました。後編では、日本人選手が世界で成功するために必要なトレーニングなどを伺いました。パリサンジェルマンの育成部門でダイレクターを務め、かつては久保建英選手を直接指導していたダビッド・エルナンデスさん<<前編:パリ・サンジェルマンでダイレクターを務めた指導者が語る、スペインと日本で育成年代の選手における11の違いとは?■日本がW杯で優勝するために分析すべきこと――なぜ日本人選手は成功するのが難しいのでしょうか?まずサッカー選手にとって「成功する」とは何を意味するかを定義しなければいけません。もしそれがサッカーをプレーすることを楽しみ、その後の人生において大切な能力や価値を身につけるということを意味するなら、日本人選手は既に成功していると言えると私は考えます。一方で、もし日本代表が世界ランキング上位のチームに勝つことや、ワールドカップで優勝することとするなら、改善すべき点について分析するべきかもしれません。――改善すべき点とはどのようなことでしょうか?前編でもお話したように「率先力」「理解力」「柔軟性」「量」「質」「規律」「努力」「積極性」「順序」「コーディネーション」「評価」これら11の要素があげられます。■日本では正しいとされる会話の「順序」が、スペインやイタリアでは通じないことも――11の要素に含まれている「順序」とはどのようなことでしょうか?どんな国でもトレーニング形式はその国の伝統や文化に影響を受けるものです。日本の場合も同様で、いくつかの場面では日本の伝統や文化がとても良い影響を与えていると考えています。日本のチームが試合後にロッカールームを使用前と同じかむしろ使用前よりも綺麗にしている画像が欧州ではたびたび話題になります。また、日本チームが試合に負けた後、ファンに敬意を払い負けたことを謝ったり、応援してくれたことに感謝したりする写真もよく目にします。しかしこうした影響はいつもポジティブに働くわけではありません。日本人にとっては会話において「順序」を尊重することが大切です。他人の時間や空間を邪魔しないことが正しい振る舞いとされています。こういったことはスペインやイタリアの文化とは大きく異なっています。私たちスペイン人にとっては、ジェスチャーをしたり、話すときに腕を動かし、相手を触ったりするのは普通のことです。相手が話し終える前に遮るように話すことも普通なのです。この「順序」という概念は人生の多くの場面でメリットをもたらしますが、サッカーのトレーニングや試合ではデメリットになると私は考えます。「順序」の概念も、サッカーのトレーニングや試合ではデメリットになるとダビッド氏は語りますサカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■日本人は腕や身体を使ってボールを奪う回数が少ない――それでは日本人がサッカーで成功するためには文化を変えなければいけないのでしょうか?いいえ、そうではありません。選手のプレーの戦術的な面を分析する時、トレーニングのプランニングを考える時、そしてトレーニングや試合中に、この点を考慮しなくてはいけません。正しくあることやルールを守ることは大切です。しかし、個人やチームのプレーにネガティブに働いてしまう慣習は修正しなければいけないということです。――例をあげていただけますか?例としては、ウイングの選手がボールを持ち、クロスを上げようとしています。多くの場合、日本のサイドバックの選手は強くプレスをかけずに相手に自由にプレーさせてしまいます。相手に介入しないのです。相手のプレーを遮るのに時間がかかってしまい、相手に有利な状態でプレーされてしまいます。もうひとつの例はボールを奪う場面で、相手のパスをインターセプトするか、五分五分のボールを奪うことがほとんどです。私の見解では、相手のスペースに入っていき腕や体を使ってボールを奪う回数が日本人選手は極端に少ないように思います。日本人選手は相手のスペースに入って腕や身体を使ってボールを奪うことが極端に少ない印象がある、と語るダビッド氏■日本人が世界で活躍するためにはどのようにトレーニングすべきか――ではどのようにトレーニングすべきなのでしょうか?ここではひとつの例しかあげていませんが、私が思うにこの「順序」という概念がプレーにネガティブな影響を及ぼしている場面はたくさんあります。まずやらなければいけないことは、普遍的な個人戦術(プレー原則)やポジションごとの個人戦術のひとつひとつをパフォーマンスとして発揮できているか分析することです。次に文化的な影響を受けている問題点を補完するための具体的なキーファクターを考えることです。そして最後に、その問題点に選手が直面し、解決方法を見つけるためのトレーニングを準備することです。――ではどのようにトレーニングすべきなのでしょうか?前編の「スペインと日本で育成年代の選手における11の違いとは?」では、それぞれの育成年代の選手の違いを「率先力」という観点から分析しています。近いうちに「日本サッカーと欧州のサッカー 11の違い」というタイトルで本を出版し、これらの要素を(定義、比較分析、事例、メリットとデメリット、指導法など)深掘りしていく予定です。また、エコノメソッドキャンプでは、先程述べた日本人選手の課題を改善するトレーニングを行っていますので皆様の学びになるはずです。<エコノメソッドサマーキャンプ2022 概要>【開催日時・場所】【中学生キャンプ】中学1年生~3年生京都クール8/12(金)-8/13(土)@大谷中学高等学校【小学生キャンプ】小学2年生~6年生奈良クール8/9(火)-8/10(水)@ヤナギフィールド愛知クール8/15(月)-8/16(火)@瀬戸SOLAN小学校千葉クール8/18(木)-8/19(金)@ZOZOPARK HONDA FOOTBALL AREA川崎クール8/22(月)-8/23(火)@富士通スタジアム川崎高知クール8/27(土)-8/28(日)@野市ふれあい広場サッカー場対象小学生キャンプ:小学2年生~小学6年生中学生キャンプ:中学1年生~中学3年生基礎技術をしっかり持った中級・上級レベルの方※男女不問その他各種割引あり(友達紹介割引、兄弟割引など)宿泊・通いプランありエコノメソッドキャンプの詳細・お申込みはこちら>>エコノメソッドスクール公式HP>>ダビッドさんのトレーニングも紹介賢いサッカー選手を育てるDVD
2022年08月01日パリ・サンジェルマンの育成部門でダイレクターを務めたダビッド・エルナンデス氏は、かつて日本代表の久保建英選手を直接指導するなど、世界で活躍するトップ選手にコンサルティングや指導を行ってきました。また、10年以上にわたりサッカーキャンプやクリニックなどで来日し指導をしてきた経験があり日本人選手についても熟知しています。ダビッド氏はスペインと日本で育成年代の選手において11の違いがあると考えています。ダビッドさんの指示に真剣に耳を傾ける選手たち<<関連記事:スペイン人指導者が語る日本人選手の良さは「技術」と「練習態度」、一方で世界と比べて欠けているスキルとは?■川崎フロンターレ、鹿島アントラーズ、JFAアカデミーなどで指導したことも――日本とスペインで育成年代の選手への指導経験はどのようなものがありますか?私はスペイン(ヨーロッパ)と日本の育成年代の選手のことをよく知っています。これまでスペイン(RCDエスパニョール、カタルーニャサッカー協会)に加えフランス(パリ・サンジェルマン)とイタリア(サッカー連盟)で指導してきました。この3つの国を挙げたのはこれらの国がこれまでに世界一になったことがあるからです。さらにここ12年間は日本でもエコノメソッドのスクールやキャンプ、川崎フロンターレ、鹿島アントラーズ、奈良クラブ、JFAアカデミーなどで指導する機会に恵まれました。しばらくの間コロナウイルスの影響で海外へ行くことが出来ませんでしたが、ここ最近また日本に帰ってくる機会があり、その時何度も聞かれたのが、「日本とスペインの育成年代の選手は何が違うのか?」ということでした。ダビッドさんの指示に真剣に耳を傾ける選手たち■スペインと日本の育成年代における「11の違い」とは――その違いをいくつか挙げていただけますか?私自身もこの問いについて長い時間考えて、スペインと日本の育成年代について11個の要素において違いがあるという結論に至りました。それが、「率先力」「理解力」「柔軟性」「量」「質」「規律」「努力」「積極性」「順序」「コーディネーション」「評価」です。――これら11個の要素はどのように分類されるのでしょうか?私はこれらの要素は次のように分けられると考えています。「率先力」「柔軟性」「理解力」「積極性」は戦術的な特徴に関するものです。次に「コーディネーション」は身体的な特徴に関するもの、他には「質」「量」「評価」「順序」はトレーニング環境に関するもの、最後に「努力」「規律」はメンタルに関する要素です。11の要素TURNO(順序)、COORDINACIÓN’(コーディネーション)、EVALUACIÓN(評価)、ESFUERZO(努力)、AGRESIVIDAD(積極性)、INICIATIVA(率先力)、COMPRENSIÓN(理解力)、FLEXIBILIDAD(柔軟性)、CANTIDAD(量)、CALIDAD(質)、DISCIPLINA(規律)サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■ドリル形式のトレーニングに慣れると自分でプレーの判断ができない選手になる――どれかひとつを簡単に説明していただけますか?「率先力」は選手たちのプレーの戦術的な面で違いを生む重要な特徴のひとつです。サッカーの試合では、練習した通りでない状況や、様々な理由で個人やチームとしてのゲームプランを実行できない場面に遭遇します。しかしそのような時でもできるだけ早く適切な判断をしなくてはいけません。例えば、自チームのセンターバックがフリーでボールを持っていて、ディフェンスラインの他の選手は相手にマークされているとします。そのときに中盤の選手はうまく連携を取れておらず、全員がボールに近づいてしまいました。その一方でセンターフォワードの選手は疲れているせいか状況を正しく把握していないせいか、前線に残り高い位置でボールを要求しています。そうなるとチームのシステムの真ん中に大きなスペースができており、そこには誰もいない状況になります。通常この中央のスペースはウイングの選手が埋めるべきではありませんが、この場合ウイングのどちらかがこのスペースにサポートに入り、空いたスペースを活かすことが大切です。これが試合の中で選手の「率先力」が重要になるところであり、選手が日頃からトレーニングの中で問題を解決することに慣れていなければいけない理由です。もし判断の必要がなく同じ動きを繰り返すドリル形式のトレーニングに慣れてしまうと、自分自身でプレーの判断ができない選手になってしまいます。逆に、問題のある状況に置かれるようデザインされたトレーニングをメインに行えば、選手は継続的に自分自身で判断せざるを得ず、主体性が養われ、実際の試合でプレーする時に「率先力」を発揮できるようになります。選手の育成段階やクラブのプレーモデルに応じてトレーニングをするため、指導者は選手のプレーを評価できる客観的な指標、トレーニングメニュー、指導法について学ばなくてはいけません。■11の要素を実践するための場がある――この11個の要素についてもっと知るためにはどうすれば良いでしょうか?また、どのように育成年代のトレーニングを改善すれば良いのでしょうか?ここでは「率先力」という1つの要素についてお話ししましたが、読者の方は後編の「日本人選手が成功するために足りないこととは?」(※近日配信)をお読みください。その中では「順序」の要素についてお話しします。また近いうちに「日本サッカーと欧州のサッカー 11の違い」というタイトルで本を出版し、これらの要素を(定義、比較分析、事例、メリットとデメリット、指導法など)深掘りしていく予定です。また、ここで話した考え方を実践する場として、育成年代の選手たちにはエコノメソッドキャンプへ参加することをお勧めします。<エコノメソッドサマーキャンプ2022 概要>【開催日時・場所】【中学生キャンプ】中学1年生~3年生京都クール8/12(金)-8/13(土)@大谷中学高等学校【小学生キャンプ】小学2年生~6年生奈良クール8/9(火)-8/10(水)@ヤナギフィールド愛知クール8/15(月)-8/16(火)@瀬戸SOLAN小学校千葉クール8/18(木)-8/19(金)@ZOZOPARK HONDA FOOTBALL AREA川崎クール8/22(月)-8/23(火)@富士通スタジアム川崎高知クール8/27(土)-8/28(日)@野市ふれあい広場サッカー場対象小学生キャンプ:小学2年生~小学6年生中学生キャンプ:中学1年生~中学3年生基礎技術をしっかり持った中級・上級レベルの方※男女不問その他各種割引あり(友達紹介割引、兄弟割引など)宿泊・通いプランありエコノメソッドキャンプの詳細・お申込みはこちら>>エコノメソッドスクール公式HP>>ダビッドさんのトレーニングも紹介賢いサッカー選手を育てるDVD
2022年07月25日まだ集中力がない未就学児。サッカーは好きみたいだけど、練習中にふらっと砂場に行っちゃう子をどうすればいい?というご相談をいただきました。未就学児の指導は、話を聞けるようになる年代より自由な子が多く大変なことも多いもの。同じような経験を持つコーチもいるのでは?今回も、ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、6歳以下の指導で大事なことをアドバイスします。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<手詰まりになるとサイドにパスする子どもたち。サイド=スペースがあって安全、ではなく「安全な場所」は状況によって違うと教える方法は?<お父さんコーチからのご質問>池上さんに相談していいことなのか悩んだのですが、投稿します。現在U-6以下のクラスに関わっているのですが、どうしても、練習中に砂遊びをしてしまう子がいるのです。サッカーが嫌いというわけではないようで、毎回楽しそうにクラスに通っていますし、周りのお友達とも仲良くやっているのですが、練習中にフッと砂場の方に向かってしまいます。まだまだ集中力のない年代なのは理解しているのですが、他の子たちはちゃんと練習に取り組んでいます。どうすればその子も一緒に楽しくサッカーできるでしょうか。池上さんはこんな時どうしていましたか?また、この年代の指導で大事にしていることは何か教えていただけませんでしょうか。<池上さんのアドバイス>ご相談ありがとうございます。6歳以下という年代は、指導者が「サッカーを教えなくては」と力む必要はまったくありません。すべてにわたって「どうしたら楽しくなるか?」を大人が考えてほしいと考えます。■砂遊びでなく、バッタなどに興味を持つ子どもたちも拙書『叱らず、問いかける』に書かせていただいた話をしましょう。幼児にサッカーを教えているコーチの方が、ほとほと困った様子でこんなことを相談してきました。「幼稚園の子は夏になると、バッタばかり追いかけているんですよ。わざと、ピッチの外側の草むらにボールを蹴り込むんです」草むらにボールがころころと転がると、バッタがいっせいに跳びはねます。それを見て、4~5歳の子どもたちはみんなで笑い転げる。そして、それが楽しくてたまらないので、みんな草むらにボールを蹴りに行ってしまうそうです。困り果てるコーチには申し訳ないのですが、子どもは確かにボールを蹴っていることに気づいてほしいと思いました。場所がサッカーコートではなく草むらなだけです。私が「私ならわざと草むらにボールを蹴り込みますよ」と話すと、コーチの方は驚いたような顔でした。ボールが転がってバッタが跳ねれば、子どもは楽しくて何度も何度も蹴ります。楽しくて練習になっているのです。バッタを捕まえ、ボールを蹴って、子どもたちはすごく楽しい。何の問題もありません。■砂遊びしたくなるのは当然の年代サッカーボールを使わない遊びで、身体を動かす楽しさを伝えるのも良い砂遊びがしたくなるのは当然の年代です。子どもたちがそちらに心を奪われているのならば、「よし、今日は砂遊びにするか!」とみんなでやってもいいでしょう。なぜなら、サッカーだけでなく様々な形で体を動かしたほうがいいし、いろんな経験を積んだほうがいい年代なのです。サッカー遊びだけでなく、砂遊びをしたり、バッタを捕まえたり。バルシューレと呼ばれるボールを使った遊びでもいいでしょう。サッカーボールを使わない遊びはたくさんあります。それらを通して、体を動かしている楽しさを伝えてください。その際に、すべて競争がある、勝ち負けを楽しめるゲーム形式にするとよいでしょう。幼児や低学年を教えるコーチの皆さんにはそういうことも勉強してほしいです。■「今日は何をしたい?」と子どもたちに選ばせようもうひとつ、私が大事にしていることは、子どもたちに問いかけることです。「じゃあ、みんな今日は何をしたい?」と尋ねてみましょう。コーチから一方的に「今日はこれをやるよ」ではなく、彼らに選ばせるのです。例えば、砂遊びを少しだけやったら、「今度はボールを使って何かやってみようか。何がいいかな?」と聞いてあげます。先日、親子サッカーキャンプをしました。子どもはサッカーを織り込んで、親御さんたちには私から座学で子どもが楽しく学ぶための環境とはどういうものかを伝えます。サッカーの練習は最初にシュートゲームというメニューを行いました。最初は地面に置いたボールを蹴るのですが、次の段階で「試合中は止まった状態では蹴らないよね?」と子どもたちに問いかけます。ドリブルしながらシュートなど、動きながら蹴ることを「みんなで考えてください」と言って考えてもらいます。最新ニュースをLINEで配信中!■一例を見せるとそれしかやらない、思考しない子どもたちところが、日本の子どもたちは「ドリブルしながらシュートとか」と一例を見せると、今度はそれしかやりません。パスを出してもらってシュートするといったほかのことをなかなか考えようとしない傾向があります。したがって、手を変え品を変え質問していきます。例えば、フットサルコートに置かれているゴールの前に、同じサイズのゴールを置き、間にはサッカーボールが入るくらいの隙間をつけて2台を前後に並べます。その状態で「さあ、後ろのゴールに入れてごらん」と言って始めます。そうすると、2台のゴールの前から、ボールをふわりと浮かして入れようとする子、斜めから隙間を通して狙う子などいろいろ出てきます。カーブをかける子もいます。そのように、考えたり、選べたりできる環境を整えてあげると、子どもたちは楽しそうにチャレンジします。なかには「こんなの簡単!できたよ」と意気揚々と報告してくる子がいます。「おお、どんなふうに入れた?」と言えば、やって見せてくれます。そこで、また注文を出します。「じゃあ、次は違うやりかたでやってみてくれる?」すると、子どもはまた考え始めるのです。このように、大人は次々と問いかけ続けることが大切です。■サッカーも遊びの一つ。6歳以下の子どもたちは「遊ぶ意欲」を削がないことが重要遊びのメニューも、サッカーの練習メニューも、ネットで調べたり本を読めば、そこらじゅうに転がっています。そして、説明通りにやる必要はありません。広さや距離、ボールやゴールの数など、コーチの皆さんが自分で考えて、その都度変えていくことです。正解はないので、変えることを怖がらずトライしてみましょう。一回やって、子どもたちが乗ってこなければ、やめればいいのです。大事なのは、練習を楽しくするためにはどうするか?を大人が考え続けること。子どもにそれを問いかけ続けること。この二つの視点を、この年代では大切にしてください。なぜならば、6歳以下の子どもたちの育成は、「子どもの遊ぶ意欲」を削がないことが重要だからです。サッカーも遊びです。「真面目に練習しろ」とか「きちんとやれ」といった規律のようなものはこの年代ではそこまで重要視することではありません。■選手主体は大事だが、世界はすでに「選手とコーチ両方が学びあう」のフェーズに入っている(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)これはダメ、あれはするなとやめさせるのではなく、大人は工夫し子どもの遊びをより広げてあげましょう。常日頃からおおらかに構え、コーチが工夫する姿を見せていれば、子どもも「こんなふうに考えたらいいのかな」と自分で気づく力をつけていくことでしょう。これまで、スポーツ指導は「プレーヤーズセンタード」といって、選手が主体ですよということが提唱されていました。しかしながら、専門家の方がおっしゃるには、世界はすでに「プレーヤー&コーチセンタード」になっているそうです。つまり、選手とコーチが中心。両方が学び合わなくてはいけないのです。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2022年07月17日株式会社マイファーム(京都府京都市、代表取締役:⻄辻 ⼀真)は、令和4年度農林水産省補助事業「新規就農者育成総合対策のうち農業教育高度化事業のうち全国事業」の実施事業者として、「ミライの農業をつくる指導者向け研修」への参加者の募集を開始いたしました。夏の研修で指導者がレベルアップすることで、共に農業の未来をつくります。「ミライの農業をつくる指導者向け研修」とは農業教育高度化を支援するため毎年実施されてきた研修会を、本年度は「ミライの農業をつくる指導者向け研修」として開講します。農業指導者の悩みである「いまの学生に響く指導スキルを身につける」「講義で教えることと、農業現場を接続させる」「指導に生かせる現場の知識と事例を仕込む」をテーマに、コーチングと参加型講義、農業経営、環境配慮型農業、先端農業技術、マーケティング、知的財産権などについて実践的な知見を提供するとともに、講座設計に役立つ資料や考え方も提供。そのほか、指導者同士の交流会やお悩み解決のためのワークショップも実施します。開催概要【期間】(DAY1) 2022年8月19日(金)12:00-17:15 / (DAY2)8月26日(金)13:00-17:15上記2日程+選択制オプション講義(9月開講)【受講方法】オンライン(Zoom接続)※アーカイブ受講のみの申込みも可【対象】1.農業大学校教員等の地域の農業経営者育成を担う指導・支援従事者2.農業高校・農業系大学の指導従事者3.地方自治体の農業大学校を管轄する担当者、担い手支援担当者、普及指導担当者等【定員】30名【受講料】無料【申込】WEBサイトより「お申込みフォーム」入力または「参加申込書」メール送付にてお申込みください。ミライの農業をつくる指導者向け研修 : 【申込締切】一次締切2022年7月29日(金) / 最終締切2022年8月10日(水)株式会社マイファーム本社所在地:〒600-8216京都府京都市下京区東塩小路町607番地 辰己ビル1階代表者:代表取締役西辻 一真設立日:2007年9月26日資本金:100,000,000円事業内容:耕作放棄地の再生及び収益化事業/体験農園事業(貸し農園、情報誌の発行)農業教育事業(社会人向け新規就農学校、農業経営塾)/農産物生産事業および企業参入サポート流通販売事業(農産物の中間流通・通信販売)URL: 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2022年07月05日サカイクでは、夏休みに宿泊ありのサッカーキャンプを実施しています。サッカーの指導に加えて「ライフスキル」を高めるカリキュラムもあり、参加者からは「初対面でも、すぐに友達になれた」「何事にも、前向きにチャレンジできるようになった」などの感想が寄せられています。サッカースキルに加えて、人として成長する部分のサポートもしているサカイクキャンプ。2022年の5月に「宿泊ありのキャンプは不安」という保護者やお子さんの声にお応えし、サカイクキャンプが体験できる「1dayサカイクキャンプ」を実施しました。「1dayサカイクキャンプ」に参加したお子さんの保護者は、どんな理由でお子さんをサカイクキャンプに参加させたのでしょうか?3名のリアルな声をお届けします。(構成・文:鈴木智之)サカイクキャンプのトレーニングを体験<<【キャンプ参加者の声】たった3日間で自信のついた息子に変わった!■1dayキャンプ参加の理由は「初対面の子との関係性構築」を体験させるため1人目は小学3年生のハルマくんです。ハルマくんは身体が小さく、プレー中に他の子に負けてしまうことがあり、サッカーに対するモチベーションが下がっていました。そんなとき、チームメイトの保護者にサカイクを教えてもらい、1dayサカイクキャンプに参加しました。お母さんは「クラス替えなどの学校行事で、新しい子たちと一緒になる機会も多いので、初対面の子と関係性が構築できるようになってほしかった」と、参加した理由を教えてくれました。サカイクキャンプで実施しているライフスキルにも興味があり、お子さんの「聞く力」や「理解力」を高めることが、思考力の向上にもつながると考えているそうです。「ハルマの宿泊経験は、仲の良い友達とのお泊り会やキャンプ程度ですが、親元を離れることに不安はありません。いずれ親の庇護を離れ、自立しなければならないので、(夏に行われる)2泊のキャンプをきっかけ作りにしたいです。自分の人生を自分で決められる子になってほしいです」■人見知りなわが子が初対面の子たちと楽しくできそうか知りたくて1dayを体験2人目は小学3年生のマコさん。1dayサカイクキャンプに参加した理由は「人見知りでコミュニケーションが苦手だから」とのこと。所属クラブの中には女子が一人なので、周りの男の子たちと上手く話せないこともあり、「初めて会う子たちと、コミュニケーションをとれるようになってほしい」という、保護者の想いがあったそうです。宿泊キャンプにも興味があるそうですが、その前に「人見知りなわが子が初めての子たちとサッカーが楽しめるか」を知るために1dayキャンプの体験を決められたようです。ライフスキルの面では「思考力」に期待してるそうで、「すべてにおいて自分で決められない子で、食事も服も『どうでもいい、ママが決めて』と親任せのことが多いので、自分で決められるようになってほしい」と願いを口にします。■宿泊キャンプの前に指導の雰囲気を感じたかった最後は小学3年生のカナタくん。1 dayキャンプに参加した理由は「サカイクキャンプで行っている『褒める指導』が、子どもに合っていると思ったから」と話してくれました。数か月前までは、子どもより自分の方がサッカーに力を入れていて、荷物も全部保護者が用意して、練習に「行くよ」と連れて行っていたそうです。ある時、お子さんが「サッカーを辞めたい」と泣いて訴えてきたことから、意識改革が始まります。ハッと気が付き、お子さんへのかかわり方を変えたそうです。「時間がかかっても自分で準備をさせ、自分でサッカーに行くことを見守るようになりました。子どもが泣いて訴えられる子でよかったです。泣かれるまで、サッカーが嫌いになっていたことに気がつきませんでしたから」チームの指導者は、どうしても言わなければならないことはビシッと言いますが、基本は冷静で怒らないそうで「サカイク/シンキングサッカースクールのように、楽しくプレーさせる指導は、我が子に合っている」と感じているようです。2022年夏サカイクキャンプ参加者募集中!■たった1日でもキャンプの雰囲気を知れたので宿泊キャンプの不安がなくなったお昼ご飯の後はライフスキル講習も行われました今回、話を聞かせてくれた3組の保護者、お子さんに共通するのが「学校で経験する新しい出会いの前に、サッカーを通して、初対面の人と話をする経験をさせたい」という思いです。サッカーを通じて、初対面の人とコミュニケーションをとることや、ライフスキルに触れることで、お子さんのマインドに変化が現れることに期待する声が聞かれました。ほかにも、1dayサカイクキャンプを通じて、「トレーニングの様子やコーチの子どもたちへの接し方など、雰囲気を知ることができたので、不安がなくなりました。子どもが希望すれば、夏のキャンプに行かせたいです」というポジティブな意見も多かったです。■自分で考えて決断すること、チャレンジする気持ちを後押ししてくれるキャンプ今年のサカイク夏キャンプは2泊の日程で行われます。サッカーを通じたコミュニケーション、5つのライフスキルの講習を体験することで、人間的な成長も期待できます。コーチ陣による「ポジティブな指導」を通じて、自分で考えて決断することや、前向きにチャレンジする気持ちを後押ししてくれます。過去の参加者からは「3日間で、見違えるようにたくましくなった」という声も聞かれ、お子さんが変わるきっかけになるキャンプとして好評を博しています。興味のある方は、こちらで詳しい内容に触れてみてください。ひと夏の経験として、忘れられない体験ができるとともに、サッカーをもっと好きになってくれることでしょう。2022年夏サカイクキャンプ参加者募集中!」
2022年06月16日特別支援教室のガイドラインが変更に出典 : 東京都では、平成28年度から小学校、平成30年度から中学校の特別支援教室の導入を進めてきました。この導入期に合わせて「特別支援教室の導入ガイドライン」が作成され、ガイドラインに沿って各校で特別支援教室の導入が進められました。そして、令和3年4月に東京都の全ての区市町村立小中学校において特別支援教室の導入が完了しました。それに伴い、令和3年3月に「特別支援教室の運営ガイドライン」が作成されました。このガイドラインには、あらたに指導期間の考え方や指導目標の設定の仕方などが記載されました。東京都教育委員会|「特別支援教室の運営ガイドライン」を作成しました「特別支援教室の運営ガイドライン」は、導入時のガイドラインとどのような点が変わったのでしょうか。東京都教育委員会の教育庁都立学校教育部特別支援教育企画調整担当の方にお話を伺いました。新ガイドラインでは、指導期間や指導目標について明確に。そのねらいとは?出典 : 発達ナビ編集部(以下――)特別支援教室の導入時のガイドラインと、最新の 「特別支援教室の運営ガイドライン」の違いはなんでしょうか?東京都教育委員会:特別支援教室の運営に必要なことだけではなく、特別支援教室での指導以外の場面での役割の重要性など、これまでの導入ガイドラインの内容をさらに充実させています。特に、指導期間の考え方、指導目標の設定(読み書きチェックリストの活用、連携型個別指導計画の作成)の仕方、指導による達成状況の確認、指導目標を達成した後の在籍学級での支援などについても記載を充実するなど、発達障害のある児童・生徒への支援について総合的に記載しています。ーーガイドラインが発表されたことにより、支援者や保護者からどのような声がありましたか。東京都教育委員会:保護者の方や学校の先生方から、指導期間の考え方について教えてほしいといった声などが寄せられました。発達障害のある児童・生徒は、学校生活での多くの時間を通常学級で過ごしています。こうしたことからも、特別支援教室での学びを通じて、学習上や生活上の困難さを低減し、学校生活を有意義に過ごしてほしいと考えています。そのため、一定の指導期間の中で、どの程度、指導目標を達成できたのかを確実に評価すること、その上で、引き続き指導の継続が必要なのか、それとも指導を終了し、通常学級の中での配慮や工夫をしていくことが良いのかなどをしっかりと判断して実践していくことが重要だと考えています。指導期間は、一つの区切り。大切なのは、子どもの困りに着目すること出典 : ーーガイドラインの中の「原則の指導期間 は1年間とする」「延長する場合、再設定する指導期間は最長1年間とする」という指導期間について具体的に教えて下さい。それ以降は在籍できないということなのでしょうか?東京都教育委員会:そのような声が保護者の方や先生方からもありました。期間をはっきり記載したのは、「基本的に1年間しか在籍できません、最長2年間までしか在籍できません」ということではありません。1年、2年というのはあくまでも一つの区切りなので、期間を設けた上で「本当にその子が困っていることは何なのか」「指導法は合っていたのか」などを確認しよう、2年間の指導に対し、指導目標の達成まで至らなかった場合は、改めて適切な支援の在り方から考え直そう、ということです。そこでやはり特別支援教室での指導が必要であれば、再度在籍することもできます。また、特別支援教室を退室したお子さんが、やはり指導が必要だとなれば、改めて特別支援教室で指導を受けることも可能です。ーーありがとうございます。指導期間の考え方についてよく分かりました。最後に子どもたちへのメッセージをお願いします。東京都教育委員会:発達障害による困難さで、さまざまなつまずきを感じているかもしれません。また、うまくいかないなどの経験から自信をなくしてしまうこともあるかもしれません。特別支援教室は、みなさんのスキルを向上するための教室です。発達障害による困難さを少しでも低減することができるよう、先生方が寄り添ってくれます。先生方を信じて頑張ってくださることを願っています。取材協力:東京都教育委員会教育庁都立学校教育部特別支援教育企画調整担当
2022年06月14日選手の約7割は指導者の理論を欲していない では、どう伝える?株式会社カンゼンは、現在、Jリーグ大分トリニータでヘッドコーチを務める歴戦の指導者岩瀬健氏による『サッカー指導者は伝え方で決まる机上は緻密に、現場は柔軟に』を6月7日より発売いたします。『サッカー指導者は伝え方で決まる机上は緻密に、現場は柔軟に』書影内容紹介選手の約7割は指導者の理論を欲していないでは、どう伝える?歴戦のプロ指導者が明かす「ザ・現場」のリアルな手引き書プロサッカー指導者の岩瀬健氏はトップチームからスクールまで様々なカテゴリーのサッカー選手を指導してきました。サッカー指導者は、ピッチ外における「指導者の理論(ロジック)」とピッチ内における「選手の感覚(フィーリング)」に隔たりがあることを自覚しなければならない、と彼は言います。つまり、机上では緻密な理論を持つことは当然として、現場ではその理論を柔軟に伝えなければ選手は躍動してくれない――。トップチーム監督デビューとなった大宮アルディージャでの経験も踏まえながら、試合、戦術、分析、練習、育成、選手など、シチュエーションごとの最良の伝え方をサッカーライターの清水英斗氏とともに考察していきます。サンプルページ第1章ロジックは緻密に、伝え方はポップに第3章ゲーム分析と伝え方第4章練習設計の考え方対談指導者の「伝え方」を考察する岩瀬 健( 大分トリニータヘッドコーチ)×戸田和幸( 元日本代表・解説者・指導者)目次目次①目次②序章「伝える」とは何か?お互いが次に進むために/監督のキャリアに関わるターニングポイント/指導者としていかに「伝える」か1章ロジックは緻密に、伝え方はポップにロジックでは選手に伝わらない/伝えるのは指導者だが伝わる方法は相手によって決まる/ロジックを好む選手との接し方/コーチは選択肢を増やし、監督は決断をする/ズバッと変えられる勇気はあるか?/監督が仲介人を付けるケースが増えている2章サッカーの戦術とは何か?戦術が「窮屈ではない」若い選手が増えつつある/攻撃における3つのキーワード/「スペース」は必ずある、「良いタイミング」は相当な幅がある3章ゲーム分析と伝え方練習設計は敵陣、自陣に分けて考えると落とし込みやすい/相手を分析する上で攻守において目を留めるポイント/試合の「結果」を受けて伝える時に必ず注意すべきこと4章練習設計の考え方指導者は練習のメリットとデメリットを把握したい/前の試合の修正課題を指摘する際に留意すべきこと/次の試合の想定・準備には「余白」を残しておくべき?/「プレービジョンの浸透・増幅」を意識し、無機質な練習になるのを避ける/選手と信頼関係があればどんな練習でもあり5章育成に携わる者としてこれから「変わるもの」「変わらないもの」を想像する/サッカーは3つの要素を奪い合うスポーツ/選手にとって小学6年生という1年間は一生に一度しかない/指導者が「やりたいこと」と「できること」に差が生まれるワケ/依存より自立すること、大人になってから伝わること/「生」で衝撃を受けることが指導の熱量につながる6章個人、グループ、チームの関係性チームと個人の成長のバランスをどう考えるか/指導のメソッドがあるメリットとデメリット対談指導者の「伝え方」を考察する岩瀬健( 大分トリニータヘッドコーチ)×戸田和幸( 元日本代表・解説者・指導者)おわりに書誌情報タイトル:サッカー指導者は伝え方で決まる机上は緻密に、現場は柔軟に著者:岩瀬健構成:清水英斗定価:1,870円(本体1,700円+税)判型:四六判総頁数:208PISBNコード:978-4-86255-644-8発売日:2022年6月7日amazon : Rakutenブックス : 商品情報 : プロフィール岩瀬健(いわせ・けん)1975年7月8日生まれ、千葉県出身。習志野高校から1994年に浦和レッドダイヤモンズに加入。98年シーズン途中に大宮アルディージャへ移籍し、5シーズンプレーしたのち指導者の道へ。浦和のユースコーチなどを経て13年から柏レイソルの育成組織で指導。U-15コーチ、U-15監督、アカデミーダイレクターを歴任し、17年からトップチームのヘッドコーチに昇格。18年のリーグ戦残り2試合を監督として指揮。19年はアカデミーヘッドオブコーチ、2020年は大分トリニータのヘッドコーチ、21年は大宮の監督に就任するも、同年5月に成績不振を理由に解任。22年から再び大分のヘッドコーチを務めている。清水英斗(しみず・ひでと)1979年12月1日生まれ、岐阜県出身。プレーヤー目線で試合の深みを切り取るサッカーライター。著書に『サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点』(東邦出版)、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』(中公新書クラレ)、『サッカー好きほど知らない戦術の常識』(小社)など。【この件に関する問い合わせ先】株式会社カンゼン営業部担当:伊藤真TEL:03-5295-7723MAIL: ito@kanzen.jp 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2022年06月03日2022年度全日本吹奏楽コンクール課題曲を、指揮者・下野竜也の解説付きで!2022年5月21日(土)に、音楽監督で指揮者の下野竜也が率いるプロの吹奏楽団「広島ウインドオーケストラ」が、三原市芸術文化センターポポロ(広島県三原市宮浦2-1-1)で、特別公演を行います。第1部は、2022年度全日本吹奏楽コンクール課題曲全曲演奏を下野監督の解説付きで。第2部は、下野監督がセレクトした吹奏楽の名曲を、NHK交響楽団首席トランペット奏者の菊本和昭を迎えて演奏。コンクール出場者や吹奏楽ファンはもちろん、音楽好きな皆様に満足していただけるプログラムです。チケット好評販売中、小学生から高校生は入場無料!!ぜひこの機会に迫力ある演奏をポポロのホールでお楽しみください。広島県三原市の三原市芸術文化センター[ポポロ] : プログラム【第1部】*オープニング内藤淳一/インヴェンション第1番(1983年度全日本吹奏楽コンクール課題曲)*2022年度 全日本吹奏楽コンクール課題曲 全曲演奏&解説杉浦邦弘/やまがたふぁんたじぃ~吹奏楽のための~鈴木雅史/マーチ「ブルー・スプリング」鈴木英史/ジェネシス奥本伴在/サーカスハットマーチ前川保/憂いの記憶―吹奏楽のための【第2部】A.リード/ヴィヴァ・ムジカJ.カーナウ/トランペットとコンサート・バンドのためのコンサートピースJ.V,d.ロースト/カンタベリーコラールA.リード/トランペットのためのオードR.ロジャース(arr.宮川彬良)/私のお気に入りジャパニーズグラフティ~時代劇絵巻~※都合により曲目が変更になる場合がございます。公演情報公演名:広島ウインドオーケストラ 三原特別公演会場:三原市芸術文化センター(広島県三原市宮浦2-1-1)開催日時:2022年5月21日(土)15時開演(14時15分開場)入場料:一般3,300円、ペア6,400円、小学生~高校生無料(未就学児は入場不可)取扱い:三原市芸術文化センターポポロ、ポポロオンラインURL: 主催:一般財団法人みはら文化芸術財団、中国新聞備後本社後援:三原市、三原市教育委員会、広島県吹奏楽連盟ご来場の皆様へ当ホールでは「新型コロナウイルス感染拡大防止ガイドライン」に基づき、感染拡大防止に努めて公演を実施して参ります。ご来場の際にはマスク着用、手指消毒、検温などの感染防止対策に、ご協力をお願いいたします。万が一会場内で新型コロナウイルス感染が判明した場合に備え、ご来場のみなさまにお名前と連絡先電話番号を、チケットの半券裏面に記入していただくようお願いしております。ご記入いただいた個人情報は適正に管理し、必要に応じて所管の保健所等に開示し、ご本人に連絡を差し上げることがあります。あらかじめご了承ください。アクセス◎JR三原駅より4番バス乗り場「田野浦線」で5分「芸術文化センターポポロ・医師会病院入口」下車すぐ◎山陽自動車道本郷ICより約30分。福山西ICより約30分※公演当日は隣接する宮浦公園多目的広場を、無料駐車場としてご利用いただけます。(13時15分~18時)※駐車場には限りがございます。公共交通機関をご利用ください。※公演終了後、ホール西側バス停よりJR三原駅行きの無料シャトルバスを運行します。地図 : 主催者概要団体名:一般財団法人みはら文化芸術財団所在地:広島県三原市宮浦2-1-1三原市芸術文化センター ポポロ設立:2019年11月27日URL: 公式facebook : 公式twitter : 公式Instagram : お問い合わせ先三原市芸術文化センターポポロ(一般財団法人みはら文化芸術財団)担当:吉本電話番号:0848-81-0886E-mail: event@mihara-caf.jp 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2022年05月04日サッカーの指導者の悩みで一番よく聞かれるのが「保護者対応」。最近ではインターネットの記事や動画で情報を得る方も多くなり、サッカーの経験がない親御さんも指導者に「ネットにはこんな指導が良いと書いてあった」「うちの子は●●が得意なので■■選手のようなポジションが合っていると思います」など注文を付けてくる方もいるそうで、頭を悩ませている指導者たちも少なくないようです。サカイクでは指導者たちのリアルな悩みを聞くために、オンライン座談会を実施しました。そこで聞いた現場の声をお届けします。写真は少年サッカーのイメージ子どもが心からサッカーを楽しむために大事にしてほしい親の心得「サカイク10か条」>>■上手い子の親たちが選手起用に意見してくる3、4年生を指導するAコーチのチームでは、学年の担当コーチに対して保護者から練習方法や選手起用について口を出されることが多いのが悩みだそう。チームの結果より自分の子が活躍したかどうかを重視し、勝ちを求めるために試合のメンバーについても「あの子たちと組ませてください」「あの子は外してください」など意見されることも多く、その対応に困っているとのこと。子どもたち同士はうまい下手に関わらず仲良く練習しており、指導者としても小学生年代は楽しむことを一番に、サッカーを嫌いにならないように全員を試合に出したりしているのに、親たちの方が勝利にこだわっており、その結果チームに不満が生じアレコレ言ってくる現実があることに悩んでいると教えてくれました。■わが子のポジションを指定してくるチームを指導して22年のベテラン指導者Bさんも、近年保護者の要求が変わってきたと感じている方の一人です。海外のリーグも気軽に視聴できる環境が整ったり、インターネットの普及もあり情報があふれた最近では、子どもの得意なプレーに照らし合わせて、例えば「うちの子はドリブルが得意なのでメッシ選手のようになれるでしょうか」のように、親から見てプレースタイルが似ていると思う有名選手のようになれるか聞いてくる保護者や、「うちの子はボールコントロールが得意なのでMFが適正だと思います(MFにしてください)」など、わが子のポジションを指定してくる保護者が増えているのだそう。また、試合では「ボールを持ったらドリブルしろ」など直接プレーを指導する保護者や、チームへの要望ではなく自分の子だけに親がやってほしいプレースタイルを指示する方もいるなど「チームスポーツをしているはずなのにまるで個人競技のようになっている」と教えてくれました。わが子の試合よりも、サッカー動画を見ることが多い保護者もいるそうで、動画で切り出されたプレーを見ていることで、サッカーの流れの中でのプレーより一瞬の技術にばかり注目して、それをわが子に求める方も増えつつあることを嘆いていました。■個人偏重は指導者にも原因が?低学年を担当するCコーチは、保護者のサッカーの個人偏重には、サッカーというスポーツの理解によるものではないかと言います。パスが通った、ゴールが決まったなど、結果が見えやすい、分かりやすい部分ばかり評価されることで、サッカー経験のない保護者の方々は結果ばかりに注目してしまう。これはチームとしてのやり方にも問題があると感じる、とCコーチは言います。そこでCコーチは、結果につながる一つ前のプロセスもしっかり褒めるなど、保護者に「いいプレーとは何なのか」を理解してもらうように心がけているのだとか。また、いわゆる「お父さんコーチ」として関わる保護者コーチもいるそうで、最初は子どもがサッカーを楽しめばそれでいいと思っていたお父さんコーチが、公式戦などが始まる年代になると「勝たせたい」という思いから勝利重視に変わってしまうことがあることが残念だと教えてくれました。保護者の方が勝ちたい思いが強くて、いつの間にかレギュラーメンバーを固定してしまったりするのだそう。そして、それまでは全員で楽しめればいいと思っていた保護者の方も「勝たせるメンバー選考」に賛同してしまうことが多いのだとか。チームとしては、小学生年代は楽しませることを重視し、中学以降もサッカーを続けてもらいたいので出場時間を平等にするなどの工夫をしていることをいかに理解してもらうか、という部分で苦心していると教えてくれました。■サッカー経験者の保護者が勝利を求めてくる同じく低学年を指導するDコーチも、チームとしてはサッカーを楽しいものと思ってもらいたいという方針で指導育成に当たっているのに、保護者の中でも学生時代にサッカー部だった方(主に父親)が勝利を求めてくることに歯がゆさを感じているのだと言います。試合に勝つためにはこんな風にした方が良いのではないか、といった練習内容や戦術についての提案に留まらず、「あの子たちを出すなんて負けに行くつもりですか?」など、出場メンバーについてほかの保護者がいる前でも心ないことを仰ることに心を痛めているとのこと。もちろん、チームとしての方針があるので全員出す理由を伝えはするものの、そういった保護者の方はなかなか納得してくれず、日々悩んでいるとそのつらい心の内を明かしてくれました。■指導者はアップデートしているのに......学生スポーツのニュースというと、どうしても旧態依然とした厳しい指導や暴力暴言での被害にまつわる記事が多いので、そのようなスパルタ指導者が多いと思う方も多いのかもしれません。ですが、近年サッカーの指導者は、ライセンス更新のタイミングや、様々な「子どもを伸ばす指導」の発信により、かつての指導と同じではいけないと常に情報をアップデートしている方がたくさんいます。逆に親御さんは、学生時代にサッカーを経験していてもそこからいったん離れ、わが子がサッカーをするようになってから再び関わる際に、自分の現役時代と同じ感じで関わってしまうことが多いので、このような指導者と保護者の感覚に乖離が生まれてしまうこともあるようです。今回お伝えしたのはほんの一部ですが、指導者のみなさんが様々な事情で保護者の方への対応に苦慮していることがうかがえました。子どもにいい指導を受けさせたい、と思う親御さんは多いでしょう。しかし、子ども以外の理由で指導者になりたい人が減ってしまったら、いい環境・いい指導者のもとに置くこともできなくなるのです。サカイク10か条では、保護者の心得として「サッカーのことはコーチに任せよう」としていますが、それは「親は一切口を出すな」ということではありません。よくわからないことや疑問に思うことは質問して話し合ったり、子どもたちのために何が一番いいのかを判断して一緒にサポートするということを大事にして、親御さんもわが子のサッカーを思いきり楽しんでください。子どもが心からサッカーを楽しむために大事にしてほしい親の心得「サカイク10か条」>>
2022年04月19日2020年度の高校サッカー選手権大会で山梨学院高校を日本一に導き、前任の神奈川大学では日本代表のMF伊東純也選手(KRCヘンク)らを飛躍に導いたのが、長谷川大さんです。指導者としてのキャリアをスタートさせた秋田商業高校での監督時代は、「社会よりも厳しい状況をあえて作り出し、社会に出た時に厳しいと思わせないようにしたいと考えていました」と振り返りますが、以降は自主性を育むため、選手が考え、判断する指導を重視するようになりました。今回は指導者としての転機となった神奈川大での指導についてお聞きしました。(取材・文:森田将義写真提供:長谷川大監督)2020年の高校サッカー選手権で優勝した山梨学院高校サッカー部でも選手たちとの対話を大事にしていた<<前編:元山梨学院サッカー部・長谷川大監督が育成年代で大事にする「再現性」を生む指導とは■環境が変わったタイミングは、自分を変えるチャンス母校でもある秋田商からの転勤を言い渡されたのを機に、新たなチャレンジを決めた長谷川さん。声を掛けてくれたのは、関東2部リーグに所属していた神奈川大でした。「当時は秋田商業で選手、監督、先生をやっているから長谷川大があると思われていた。秋田商業では上手く行っていても、他に行ったら同じ指導は出来ないと思われていたと思います。ですから、自分が他のチームに行った際も、そこにある文化に応じて自分はこういう事もできるんだと示したかった。大学に行くからには、真に新しいチャレンジをしたかったんです」。そのため「俺はずっとこうやって指導してきた」、「俺の考えはこうだから、生徒もこうしろ」といった上から目線での押し付けた指導ではなく、選手一人ひとりがどんな背景を持って、大学に進んだのか、どんな想いを持って今ここにいるのかを知る所からスタートしました。同じ環境に身を置いていると何かを変えるには勇気がいりますが、環境が変わったタイミングは何かを変えるチャンス。長谷川さんを新監督に迎えた神奈川大の選手にとっても、立場や見られ方を大きく変えるチャンスでもありました。神奈川大に就任した当初は、周囲から「厳しい人が来るぞ」と伝えられていたため、緊張する選手も多かったのですが、時間が経って打ち解けていくと「大さんは怖い人じゃなかったですね」と笑顔で言われるまで距離が近付いていきました。就任した2014年は、現在はV・ファーレン長崎に所属するMF奥田晃也選手が2年生でした。長谷川さんが「今まで見てきた中で、サッカーセンスはトップクラス」と評する程の素質がありながら、自らが理想とするプレー像に拘り過ぎ、スタッフからは「アイツは一生懸命やらないから、ダメ。使えない」と評価されていました。認められるような評価を受けられないと感じていた奥田選手は、3年生になるタイミングで「このまま続けても仕方ないので、サッカー部を辞めます」と長谷川さんに伝えてきたそうです。奥田選手に、チャンスは誰にでもあるというのをもう一度分かって欲しかった長谷川さんはコーチと話して、「もう1回、チャンスを与えても良いかな?」と思えるように促しました。奥田選手ともサッカーだけでなく、プレー以外の事までたくさん話し、持っている可能性に気付かせ、ピッチで強みとして発揮できるよう導きました。最終的にはチームの中心選手へと変貌し、プロ入りを掴むまでになりました。■エネルギーの方向を変えるのが、指導者の役割奥田選手のようなケースは、どのカテゴリーでも珍しくありません。その理由について、長谷川さんはこう話します。「サッカーで力を発揮できない選手は、指導者に『お前は、もういいよ』と言われて、『それなら僕も、もう良いですよ』と拗ねているのがほとんど。ちゃんとプレーした上で、ダメだったと受け入れられる心理状態ではない。活躍している選手と同じ土俵で見られていると感じられないのです」。奥田選手に、チャンスは誰にでもあるというのをもう一度分かって欲しかった長谷川さんはコーチと話して、「もう1回、チャンスを与えても良いかな?」と思えるように促しました。奥田選手ともサッカーだけでなく、プレー以外の事までたくさん話し、持っている強みをピッチで発揮できるよう導きました。最終的にはチームの中心選手へと変貌し、プロ入りを掴むまでになりました。ヤンチャと言われる選手、手がかかる選手に対する対応も同じです。押さえつけたり、除外するのは簡単かもしれませんが、長谷川さんはこう話します。「教育的な立場に関わっている人間は、まずは一人ひとりの個性や強みを認めてあげる事。エレルギーの強い子に対して、『アイツは言う事を聞かない』、『アイツはダメだな』と思ったら、ずっと印象が変わらないままの指導者も多いけど、僕はそうした子どもの方が、きっかけ一つで社会に貢献できる人間になれる気がします。何かを成し得る人は、周りが感じるくらいの大きなエネルギーを持っている。そのエネルギーを押さえつけて消すのではなく、『エネルギーを違う方向に出してみたらどうだろう?』と思わせるのが、教育現場や育成年代の指導者に必要だと思います」。こうして個に応じた対話を重ねるようになったのは、大学生を教えるようになってからの長谷川さんの変化です。■選手自らが考えるのは、一番厳しい選手一人ひとりを見て強みを認め、伸ばす指導をモットーにしている長谷川監督声掛けの内容も意識するようになったと言います。以前は思い通りにプレーできない選手を見ると「お前は難しいな、ダメだ」と厳しい言葉をかけていましたが、そうした言葉をかけると選手は聞く耳を持たなくなってしまうためです。「育成年代で『お前は、もういいよ』と言われている選手は、強みよりも弱みをフォーカスされているから。守備ができない、走れない、戦えない、言う事を聞かないとか。でも、その選手が持っている人としての強みをまず認めて、強みを伸ばすために努力していくように導くのが大切なんです」まずは選手がピッチで長所を発揮できた際に「ナイスプレー」と声をかける事で、長所が強みとなれるよう更に磨いていこうと指導しました。しばらく選手を観察した上で、「ここも良くした方が更に良いんじゃない?」、「ここが解消されたら、お前の強みがもっと伸びる」といったアプローチをして、選手に自身の強みと弱みを理解させ、考えさせました。画一的だった秋田商業時代とは比べると選手へのアプローチは優しくなりましたが、選手が誰かを傷つけたり、迷惑をかけたりした際は厳しく接する事も忘れていません。「厳しい指導と選手の主体性を育む指導は、両極端にあると考えがちですが、どちらかではなく両方が大事」と話す長谷川さんは、「自分で考えることが、選手にとって一番厳しいと思う」と続けます。高校、大学と違うカテゴリーを経験したからこそたどり着いた長谷川さんの考えや指導法は、サカイクの読者であるジュニア年代の指導者や親御さんにも役立つヒントがあるのではないでしょうか。
2022年04月11日2020年度の高校サッカー選手権大会で2度目の日本一に輝いたのが、山梨学院高校です。立役者となったのは、監督として指揮を執った長谷川大さん。イヤホンを耳にし、ベンチから指示を送る姿が覚えている人も多いのではないでしょうか。優勝の原動力となった的確な試合分析に加え、選手育成にも定評があり、前任の神奈川大学監督時代には日本代表のMF伊東純也選手(ベルギー・KRCヘンク)を指導しています。昨年度限りで山梨学院高の監督を退任し、この春からはS級ライセンスの取得を目指す長谷川さんに育成年代での指導に関する考え方をお聞きしました。(取材・文:森田将義写真提供:長谷川大監督)選手たちに支持を与える長谷川監督。選手たちとは対話を大事にしていたという■再現性を生むためには、自分で答えを見つけようとする姿勢が大事「純也はこうしなさい、ああしないさないと強制的に指導されてきたら、たぶんサッカーをやめていたと思います。ずっとノビノビ自由にやってきたから、今がある」。伊東選手について評する通り、長谷川さんも神奈川大時代は選手の自主性を大切にする指導を行ってきました。選手に具体的なアドバイスを送るのは選手が壁にぶつかった時のみ。基本的には選手自らが考え、判断するよう促してきました。象徴的なのは、伊東選手が4年生だった頃のエピソードです。シュートが入らなくなったため、ドリブルスピードを落とし、顔を上げる事でシュートの質を上げようとしていた伊東選手に対し、「外しても良いよ。だったら、今まで5本打っていたのを8本打ってみろ。そうすれば1本ぐらい多く入るかもしれない。君はシュートを増やして、点をとるタイプだ」とアドバイス。その結果、再び大学サッカーで活躍し始め、その後の飛躍へと繋がりました。スランプに陥る前にアドバイスするのも一つの手ですが、長谷川さんの考え方は違います。「指導者が正解を教えてしまうと再現性が生まれません。一番大切なのは、自分で答えを見つけようとする姿勢を育む事。幼少期にやっていた「かくれんぼ」を思い出しても、誰かに居場所を教えて見つけるより、自分で工夫して見つけた時の方が喜びは大きい。成功体験を1度味わうと、子どもは同じ方法を再現しようとする。成功した時にちゃんと誉めてあげるぐらい、指導者がちゃんと見てあげていれば、また同じ事をやってみようとなる。成功しなくなった時には、また新しい事が必要だとヒントを与えてあげれば良い」。■指導者を始めたばかりの頃はゲームのスイッチボタンを押しているだけだった2019年度に移った山梨学院高でも大学生に接するのと同じスタンスで指導を行っていましたが、現役時代を過ごし、指導者としてのキャリアを始めた秋田商業高校時代は今とは全く違う指導法だったと言います。商業高校はその名の通り、接客業を始めとしたビジネスに必要な知識やマナーを身に付ける高校です。「商業は人作り。お客さんは神様という発想で耐性と言いますか、お客さんに理不尽な事を言われても、我慢する力を身に付けるのが商業高校の強みと教わっていた。だから、先生の言う事は絶対だし、周りから言われる事も絶対に守らなければいけない」(長谷川さん)。そうした考えは、サッカー部の指導でも変わりません。今でこそ伝統だった坊主頭を廃止し、髪を伸ばし始めるなど時代に合った指導が行われていますが、長谷川さんが監督だった時代は「社会よりも厳しい状況をあえて作り出し、社会に出た時に厳しいと思わせないようにしたいと考えていました」。また、コーチから監督になったのは30歳になる直前で選手の育成以上に、どうすれば勝てるのかを主に模索していました。「今にして思うと、若い頃はゲームのスイッチボタンを押しているだけだった。指導者がボタンを押せば、言われた所にボールを蹴って、諦めずに走りなさいというだけだった。選手には誰でも良いと言っているのと等しいくらい同じことを求めていました。そうしたマインドの指導者は、『アイツは使えない』なんて言葉が自然に出てくる。使えないというのは、自分が思っている通りに動かないから。『アイツは使える』というのは良い選手ではなく、自分が意図したプレーをひたすらやってくれるから」。■教育としてサッカーを教えるなら、自分で考える土壌を作らなければいけない2020年の高校サッカー選手権では山梨学院高校を率いて優勝を手にした長谷川監督(写真右)当時の厳しい指導は、高校を出て就職する選手も多いチームならではで、社会に出る選手の将来を思ってのもの。今とは時代背景も違うため、長谷川さんの指導は決して間違っていたとは言えません。ですが、母校を離れて指導者として様々なキャリアを積むうちに考え方に変化が生まれました。「使える選手を育てるのは、仕事として監督に使われるプロになってからでも良い。教育としてサッカーを教える際は、自分で考える土壌を作らないといけない。自分で考えられる選手が、ロジック(論理)をしっかり理解した上で、自ら進んで行動するのが凄く大切。指導者に言われて理由なくやるのとは全く意味合いが違います」。考え方に大きな変化が生まれたのは、2014年に神奈川大の監督となり、これまでの高校生から大学生を指導するようになってからです。以前は高校の部活動でよく見られる一糸乱れぬような挨拶や行動が何よりも素晴らしいと考えていましたが、大学に行くとそれぞれのスタイルで行う挨拶や、個々の責任ある行動力を目の当たりにしました。高校とは違い、全員が揃ってきちんと挨拶するわけではありませんが、より自主性が求められる中でも、礼儀が大事と考え、敬意を示すためにとっている大人としての行動です。「彼らの立ち居振る舞いをとても素晴らしいと思ったんです。高校の集団的指導が素晴らしいと考える文化しか知らなかったけど、大学生はよく考えて、自分たちにとって今必要なことをやっている。今までの指導とは両極端かもしれませんが、どちらも大事だと気付いた時に、一番大切なのは真ん中だと思いました。組織として団結した行動もできるし、それぞれが考えて行動もできる。大学生への指導で出た答えが、『その場に応じた確かな行動力とその説明責任を果たせる逞しい人作り』でした」。選手に対する考え方が変わった長谷川さんが、神奈川大でどんな指導を行っていたかは具体例を交えながら、後編で紹介します。
2022年04月07日「月謝を払っているんだから、ちゃんと上手くしてほしい」という保護者への対応、どうしたらいい?とのご相談。すぐ習得できる子もいれば、時間がかかる子もいて、一概にこれを教えればいつまでに上手くなるというものでもないのに、かけているお金と成果(上達)が比例しないといって、すぐに上達することを求めてくる保護者達。じつは、指導者の悩みの中でも多く聞かれる内容です。みなさんならどうしますか?今回もジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、悩めるコーチにアドバイスを送ります。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<「またあの練習?」サッカーには欠かせない反復練習に飽き飽きの子どもたちを楽しませる練習メニューを教えて<お父さんコーチからのご質問>サッカースクールコーチです。はじめまして。私が指導しているのは、チームを持たず試合などは行わないサッカースクールです。当然レベルもバラバラで、「運動体験をさせたくて」と親が連れてきた子や、近隣のチームに所属しつつサッカーの技術を高めたい子、チーム練習がない日の放課後を過ごす場所として通っている子もいます。教えているU-10年代(小3)は全員で12名です。悩みは保護者からの要求です。「月謝を払っているんだから、ちゃんと上手くしてほしい」という声を度々いただくのですが、親御さんの気持ちも分かりますが、子どもによっては練習メニューをすぐ習得できる子もいれば、時間がかかる子もいて、一概にこれを教えればいつまでに上手くなるというものでもないですよね。本人のやる気が大事なので見守ってほしいと思うのですが、かけているお金と成果(上達)をコストパフォーマンスのように捉えている方も少なくありません。池上さんならどのように保護者に理解してもらいま<池上さんのアドバイス>ご相談ありがとうございます。親御さんから「もっと上手くしてほしい」と言われる。指導者の間でよく聞かれる話です。サカイクの読者の皆さんはもうご存知かと思いますが、少し以前からサッカーコーチの皆さんは子どもの自主性、主体性を伸ばす指導を目指しています。■親世代が受けた指導と180度違うので「教えてくれない」と解釈してしまうところが、親御さん世代が受けた教育やスポーツ指導とは180度違う性質のものなので、彼らからすると、「コーチは子どもに何も言ってくれない」「ほったらかしで教えてくれない」と解釈してしまうようです。ここは、指導者自らが親御さんたちに向けて「こんな理由で、こんな方針をたて、このような指導をしている」ときちんと説明しましょう。■トレーニングがアジャストしていない可能性ももうひとつのチェック項目は、トレーニングの質です。トレーニングそのものがアジャストしていなくて子どもたちが上達しない、という側面があることも忘れてはいけません。コーチとして、自らの指導を省みることはなかなか難しいことですが、サッカー経験のない親たちが「上手くなっていない」と言うのであれば、余程のことかもしれません。例えば、私のトレーニングは毎回メニューが変わります。そのうえ、同じメニューを長々とやりません。これができたから次に移る、という考え方ではないのです。同じことを長くやってしまうと、子どもは飽きます。短い時間で目先を変えてどんどんやるほうが、子どもたちは楽しくやれます。■ミニゲームでは練習のテーマを思い出させる声掛けをご存知のように、練習は「マッチ‐トレーニング‐マッチ(М・T・М)」といって、最初にミニゲームをして、そこで足らないものを練習し、最後にまたミニゲームをしてその日練習したことにトライしてもらいます。ミニゲームの質が、最初と最後で変わっていることが目に見えてわかる。それが理想です。例えば、最初のゲームでワンツーをもっと使おうという目標を定めます。それに付随した練習を行った後、最後にミニゲームでワンツーをどんどんやってもらいます。そうすると、ミニゲームでの勝敗などに懸命になってしまい、どんなテーマでその日練習したのかを子どもたちは忘れがちです。そういうときこそコーチの出番です。「今日は何を練習したかな?」「今のところ、サイドでワンツーができたよね」そんなふうに声掛けをします。できているチームや選手をほめたり、できないときに「どうしたらできるかな?」と尋ね、自分で考えてもらいます。このあたりは決して親受けを狙うわけではありません。必要な指導を、必要な場面で行う。これが重要です。このようにいつも質問を投げかけながらトレーニングをする方法は、フィードバックと言われています。この手法は今世界で注目されています。その時その時の状況を認知させることで、自己解決策を見つけさせていく方法です。そういったことがスムーズに行えるようにするには、まずは自分の指導に問題ないのかを考えてみることが肝要です。■能力や動機付けがバラバラの子が一緒にやる重要性を保護者に説明しよう「運動体験をさせたくて」と親が連れてきた子。近隣のチームに所属しつつサッカーの技術を高めたい子。チーム練習がない日の放課後を過ごす場所にしている子。サッカースクールなので、いろいろなレベルがあるのは当然のことです。書いていらっしゃる通りです。だからこそ、練習も当然いろんなことをやらなくてはいけません。そのことを理解したうえで、以下の三つのことに目を向けてみましょう。ひとつめ。能力や動機付けがバラバラの子が一緒にやる重要性を、親御さんたちに説明しましょう。能力がバラバラだけど仕方なく一緒にやってます、という感覚ではなく、バラバラのほうが子どもたちはひとり一人が上手になるということをまずは相談者自身が理解してください。そのうえで、そのことを保護者に伝えます。その際はきちんと理論武装し、どうすれば保護者を納得させられるかをよく考えて臨みましょう。それでも親たちが「お金を払ってるんだからもっと上手くして」と言ってくるのであれば、子どもたちをレベル分けして練習させるのか、もう一度練習の方針を説明するのか考えてみましょう。池上正さんの指導を動画で見る>>■いつも全体で動かす必要はない。習熟度に合わせた練習もできる(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)ふたつめ。ご相談者様が受け持っている12名という人数は、とてもいい規模感です。全体で練習を動かしながらも、子どもたちの「個別性」を追求できる人数と言えます。例えば、みんなでキック練習をしていれば、うまく蹴られない子には手厚く指導してあげられます。12名のなかには必ずできている子、もしくは早くマスターしてしまう子がいますから、その子のプレーを可視化し真似することでほかの子も上達します。メニューによっては「君はこういうことやってみよう」「君たちはあっちでこれをやってみよう」と習熟度別にやることもできます。ひとりのコーチでも、12名全員に声をかけることができます。いつも全体で動かす必要はありません。そんな練習のやり方もあるのです。■ただ漠然と練習しているわけではないことを説明しようみっつめ。練習後の話をぜひ親御さんにも聞いてもらいましょう。どんなテーマでどう取り組んでいたのか。ただ漫然と練習をしているわけでないことを理解してもらいましょう。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2022年03月25日大人気マンガシリーズ、今回は永遠の厄年2人組(@eiennoyakudosi)さんの投稿をご紹介!「SNSの罠で不登校になった話」第7話です。なんと自粛明けに学校に登校するとA梨さんがお兄さんに付きまとわれてると噂になっていた…!生徒指導室出典:instagram間違いないよね?出典:instagram一方的出典:instagram勘違いだろ!!出典:instagram生徒指導室に呼ばれたお兄さん。不自然にメッセージを消されお兄さんが送ったものだけが残っている証拠を突き付けられました。生徒指導の教師から罵倒され怖くなったお兄さんは無理矢理認めてしまいました…。次回の配信もお楽しみに!(lamire編集部)(イラスト/@eiennoyakudosi)本文中の画像は投稿主様より掲載許諾をいただいています。"
2022年03月10日テクノブレーン株式会社は、法人向け健康経営・保健指導サービス「健康習慣プラスサポート」を2021年9月より開始、この度、より手軽に参加者が生活習慣改善に取り組めるよう従来のプログラムをアレンジしたライトプランを2022年1月より新たに展開いたします。「健康」へのハードルを下げた、日常の延長線でできる食事と姿勢の改善により自発的な健康行動の意識付けを行い、将来的な特定保健指導への新規流入防止、メタボリックシンドローム予防に努めます。(1)健康習慣プラスサポートURL: 【若年層向け保健指導の必要性】これまで40歳以上の特定健診データは、事業者から保険者にわたり必要な方に特定保健指導が実施されておりました。2022年1月より、40歳未満の健康診断結果も事業者から保険者へ提供される法的仕組みが設けられ、より効率的な保健指導や健康施策の実施が期待されております。また、特定保健指導の対象者の8割以上が20歳時の頃よりも体重が約10kg増加していることや成人期に体重が増加した群では生活習慣病の有病率が高いことが明らかになっております。これらのことから、特定保健指導対象外である40歳未満への健康施策は重要視されており、若年期からの健康意識の喚起や生活習慣指導により、成人期の体重増加を予防することが、将来的な生活習慣病予防や医療費の適正化につながることが期待できます。(2)若年層向け健康習慣プラスサポート【健康習慣プラスサポートとは】健康習慣プラスサポートとは、LINE、Zoomを用いた完全オンラインでの若年層向け保健指導サービスです。初回面談では、実際の食事写真やヒアリング内容から、参加者の健康習慣向上に向けた行動目標を設定しオリジナルプログラムを作成します。プログラム期間には、LINEで食事写真を送るだけで管理栄養士からのアドバイスが受けられる食事改善サポートと、自身の全身写真を送るだけでパーソナルトレーナーからの姿勢改善サポートを実施。特に姿勢改善サポートは標準的な保健指導にはないプログラムであり、多くの健康保険組合様よりご好評をいただいております。この度、健康習慣プラスサポートは、ベーシックプランとライトプランの2種類をご用意。ベーシックプランは初回面談後、積極的なコミュニケーションによる健康習慣の定着を目的とした、フルサポートのプログラムです。今回リリースするライトプランは初回面談後、LINEでの健康相談に加え、参加者個人に最適化した情報発信を中心とした健康への動機付けを目的としたプログラムです。(3)健康習慣プラスサポートの特徴【3枚の写真から生活習慣の改善!ライトプラン】(4)ライトプランの流れベーシックプランとの大きな違いは姿勢改善サポ―ト。ベーシックプランでは6枚の全身写真が必要でしたが、ライトプランでは写真3枚だけで姿勢チェックが可能です。自身では確認が難しいからだ姿勢の歪み、正しい基本姿勢に近づくよう日常生活で気を付けるポイントをプログラムで押さえていただきます。(5)姿勢チェック【手頃な価格での提供】健康習慣プラスサポートは、“パーソナルながらも低価格”であることも魅力の一つ。特にライトプランでは従来のベーシックプランよりも安価にプログラムの実施が可能です。(6)比較表参加者様はプログラムを受けていただくことで◆初回面談や食事改善サポートによる、現在の生活習慣の現状把握◆いつでも可能な健康相談、定期的なコンテンツ配信や中間評価による健康への興味関心・意識付け◆姿勢チェックにより日々の姿勢を意識することでの肩こり腰痛予防などが期待できます。※一括プランの他に分割プランあり。詳しくはお問い合わせください。テクノブレーン株式会社「健康習慣プラスサポート」は、“パーソナル”を重視した管理栄養士によるオンライン マンツーマンサポートで、効果的な健康経営を実現します。■grlowパーソナルジム 会社概要姿勢改善・加圧を得意としたパーソナルジム。年間約2000セッションを指導しており、姿勢改善・リハビリ・ボディメイクなどあらゆるパターンの対応が可能名称 : grlowパーソナルジム代表 : 助川 友樹・古山 佑所在地 : 〒150-0032 東京都渋谷区鶯谷町5-6 武田ビルB1Fホームページ: ■テクノブレーン株式会社 会社概要名称 : テクノブレーン株式会社代表取締役社長 : 北川 太所在地 : 〒141-0022東京都品川区東五反田1丁目13-12 いちご五反田ビル5階会社ホームページ: CBHホームページ : CBH Instagram : 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年01月19日公益財団法人日本スポーツクラブ協会(所在地:東京都渋谷区、理事長:野川 春夫)は、学校運動部活動の地域移行を円滑にサポートするために即戦力となる部活動指導員の養成を目的とした「学校運動部活動指導士(養成資格)認定講習会」を本年度より開始することになりました。その第1回となる講習会を2月13日(日)~15日(火)に国立オリンピック記念青少年総合センターにて開催いたします。学校運動部活動指導士(養成資格)認定講習会イメージ■背景○学校の働き方改革を踏まえて部活動指導員制度が法制化され、平成30年3月には「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」が策定されました。これを受けて、令和5年度から始まる学校運動部活動の学校から地域への移行に向けた準備が日本全国各地で始まっていますが、一方、移行のあり方については、具体的な方針等が示されておらず、学校と地域との協議に委ねられており、特に部活動指導に関する資格や講習会が制度的に用意されていないことから、学校現場において混乱が生じるなど、円滑な移行が危惧される状況にあります。本講習会は、こうした状況を整理するとともに、学校現場が求める即戦力となる運動部活動指導者の育成を図ることを目指しています。■学習カリキュラム学校運動部活動は学校施設を使っての実技指導となるため、スポーツ・運動の技術指導に加え学校教育法の知識、教員・保護者との連携、児童・生徒の発育・発達など広範囲な実践的知識が求められます。カリキュラムは、学校教育法、運動部活動のマネジメント、児童・生徒の理解、アンガーマネジメント等の理論編と運動学習理論、体力トレーニング、スポーツ指導法、コーディネーショントレーニング等のスポーツ科学領域の演習編の2種類を用意しています。理論編は、部活動指導員の資格検定を目的とし、受講者の時間的都合を配慮して配信を利用したオンディマンド形式とし、後日筆記による検定を行います。演習編は、集合型対面式の講義と実技を組み合わせて実施します。受講者は、講習会後1か月間で課題レポートを提出し、合格者には講習会認定書が付与されます。理論編の資格検定および演習編の講習会合格者には「学校運動部活動指導士」の資格が付与されます。なお、資格保持者には、体罰やハラスメント根絶を厳守する「ハラスメントフリー(Harassment-Free)」が義務付けられます。■協会概要商号 : 公益財団法人日本スポーツクラブ協会代表者 : 理事長 野川 春夫所在地 : 〒151-0053 東京都渋谷区代々木3-1-10 代々木中央ビル102設立 : 1977年3月(設立時は財団法人日本スポーツクラブ協会)事業内容 : 総合型地域スポーツクラブを始めとした地域のスポーツクラブの支援基本財産金: 3,000万円URL : ■カリキュラムと講師科目:生活を豊かにする部活動指導の倫理・理念と指導者の役割行動(フェアプレイ・アンチ・ドーピング)講師:友添 秀則所属:公益財団法人日本学校体育研究連合会科目:学校部活動の歴史と将来講師:友添 秀則所属:公益財団法人日本学校体育研究連合会科目:運動学習理論(段階的指導法)講師:岡出 美則所属:日本体育大学科目:生徒の自主性を育む目標設定と練習計画の立案講師:岡出 美則所属:日本体育大学科目:部活動の継続とドロップアウト(スポーツの社会化)講師:山口 泰雄所属:流通科学大学科目:スポーツ指導法(初心者・初級者指導のコツ)講師:細越 淳二所属:国士舘大学科目:部活動指導員の職務と部活動の組織運営講師:日比野 幹生所属:日本体育大学科目:中学生年代の体力トレーニング法(筋力・持久力)講師:杉田 正明所属:日本体育大学科目:中学生年代における性差とスポーツ指導法講師:石田 良恵所属:日本ウェルネススポーツ大学科目:部活動と学校のルール(規則・人間関係)・ステークホルダーマネジメント講師:菅原 淳一、桑田 健秀所属:太田スポーツコミッション、ピボットフット科目:安全確保と成長期におけるケガ等の救急処置講師:野田 哲由所属:了徳寺大学科目:コーディネーショントレーニングの理論と実践(リードアップゲーム)講師:東根 明人所属:コーチングバリュー協会科目:総合型地域スポーツクラブと学校部活動講師:川西 正志、柳沢 和雄所属:北翔大学、武庫川女子大学科目:中学生年代に必要なスポーツ栄養学講師:本田 由佳所属:慶應義塾大学科目:生徒カウンセリング/ アンガーマネジメント・ストレスマネジメント講師:倉盛 美穂子所属:日本女子体育大学科目:コーチングの心理学(モチベーション)講師:岩崎 由純所属:トレーナーズスクエア株式会社科目:チームビルディング講師:芳地 泰幸所属:日本女子体育大学科目:学校スポーツ施設・設備・用具の安全管理講師:瀬戸口 祐剛所属:セノー株式会社(時間割等は諸事情によって変更する可能性があります。)講師陣(一部)■受講料と資格取得費用受講料:42,000円資格取得費用11,000円(2カ年分認定料 6,600円 審査料2,200円 認定料2,200円)■受講要件児童・生徒のスポーツ・運動部指導に興味・関心・経験等のある満22歳以上の方 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年01月14日子どもたちに蹴りを寸止めして「ビビってんじゃねーよ」、ボールを頭めがけて蹴るなど威嚇行為や暴言がひどいコーチ。親たちが苦言を呈しても、「親に言われても変える気はない」「誰にアピールしなきゃいけないのか考えろ」と改善する気なし。S級を持っててトレセンでも偉い立場らしいけど、こんなコーチのもとにいて大丈夫?とのご相談。暴力暴言は脳の萎縮につながるだけでなく、生きづらさの原因にも。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、悩めるお母さんにアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<1学年上の子にいじめられている。行かない選択をしていいのか問題<サッカーママからのご相談>6年生の息子が所属しているクラブチームの代表兼コーチの暴言や威嚇行為に悩んでいます。もともと息子の学年は強くないので、代表は興味がないので練習を一切見ませんでした。下の学年に力を入れていて、いつも下の学年の練習をみている感じでした。ことの発端は今年の四種リーグ戦です。6年生にとっては最後の大きい大会なのに6年生を3人5年生を5人出したのです。交替も5年生で、ほかの6年生は一試合も出れませんでした。さすがに何故出さないのかや、練習をもっと見て欲しいと親たちが抗議しましたが、「自分は見ているの信じてほしい」というのでその場はとりあえずおさめました。しかしその3日後に行われた6年生と代表とのミーティングが酷かったらしく、「親に何を言われても俺は変える気はないから嫌ならやめてもらってかまわない」「誰にアピールしなきゃいけないのかよく考えろ」「6年は頑張っても元が下手だから強くはならないから」など言われたそうです。最初は言葉の暴力だけでしたが、いまは蹴りを寸止めして『ビビッてんじゃねーよ』など言ったり、ボールを頭めがけて思いっきり蹴ってきたりと威嚇がひどくなってきています。息子にも「お前なんて通用しない」とも言ってきます。しかも自分がトレセンに推薦したのに「今度は落としてやる」と言われました。どうやらS級ライセンスも持っていてトレセンでも偉い立場にいるようですが、こういう人が指導者で良いのでしょうか?この代表の下であと3か月続けて行くか迷っています。<島沢さんのアドバイス>ご相談いただき、ありがとうございます。「S級コーチがそんなことをするなんて信じられません」などとは言いません。どういったプロセスでS級を付与されたのかはわかりませんが、ご自分がプレーをやって見せたり、技術を教えることには長けている方なのかもしれません。■コーチがしていることは「威嚇」ではなくすでに「暴力」ただし、お母さんのお話がすべて事実であれば、私の感覚ではこの方は指導者失格だと思います。「蹴りを寸止めして『びびってんじゃねーよ』など言ったり、ボールを頭めがけて思いっきり蹴ってきたり」お母さんは「威嚇」と表現していますが、これは間違いなく暴力です。スポーツ界は2013年4月に暴力根絶宣言をしています。このコーチにS級ライセンスを与えた日本サッカー協会も同様に宣言しています。それなのに、今でも一部の指導者は、手を上げなければ、つまり拳で殴ったり、平手打ちをするなど直接手をくださなければ暴力ではないと考えている方もいます。なかには、「何か言われても、暴力だと思わなかったと言えばいいんだ」とおっしゃる方もいると聞きます。決して良いことでないとわかっていてやっているわけです。■暴力暴言は脳を委縮させ、更には生きづらさの原因にもこの暴力について、少しだけ意識を高めて考えてみてもらえないでしょうか。デリケートな子どもの脳は幼少期に厳格な体罰や暴言などを受けることで変形し、発達の遅れや記憶力低下につながってしまう――現在の脳科学ではそんなこともわかっています。「日常的に親から暴力や暴言を受けて育った子どもの脳は萎縮したり、変形したりして発達が損なわれてしまう。それが原因となり、子どもは将来生きづらさを抱える可能性がある」と、著名な小児精神科医の先生から聞きました。したがって昨年、厚生労働省は親がしつけと称して体罰をふるうことを禁止しました。親でさえやってはいけないことです。さらにいえば、小学校の先生がこのようなことをやっていたことが発覚すれば、場合によっては懲戒免職です。なぜ、サッカーのコーチだけが許されてしまうのでしょか。また、「最初は言葉の暴力だけでしたが、いまはと威嚇がひどくなってきています」とあります。言葉の暴力が具体的にどんなものか書かれていませんが、息子さんに代表の方が言った「お前なんて通用しない」とか、トレセンに推薦したのに「今度は落としてやる」といったものも「暴言」にあります。上述した体罰根絶宣言では、暴言が暴力に含まれることは明記されています。■小学生の間は楽しむことが一番、できれば今の環境を離れよう小学生の間は、楽しくサッカーをすること、サッカーを心から好きになるよう指導していくことが肝要です。このことは日本サッカー協会から指導者に通達されています。ところが、ご相談に書かれている代表の方はそれとは異なり、スパルタ式で子どもたちを威嚇し、暴力をふるい、こころを傷つけています。このようなスポーツ環境に長く置いてしまうと、前述したように脳は大きな負のダメージを受けてしまいます。本来なら運動によって脳は活性化するので、サッカーをすることは子どもの脳にプラスに働くはずです。身体的な暴力はないものの、言葉による暴力を受けてきた人の脳の調査では、「おまえなんて生まれなければよかった」「死ねばいい」などの暴言を受けていた人は、そうでない人と比べて会話機能をつかさどる脳の聴覚野が変形することも証明されています。一部のコーチが暴力をふるっているのなら、クラブの代表の方に相談することを勧めますが、代表の方がそうされているためクラブ内で解決するのは難しそうです。ここはできれば、すぐに辞めて違うチームに預かってもらうか、もう最上級生であと少しなので、次にプレーするジュニアユースのチームで練習させてもらうなどサッカーをできる環境を細々でも確保することを考えてみてはいかがでしょうか。チームには加入せず、スクールだけで中学まで練習してもいいでしょう。■次の被害を生まないために、サッカー協会の窓口に連絡するなど行動を起こそうそして、できれば日本サッカー協会の暴力相談窓口に相談したほうがいいでしょう。その際、匿名では日本の暴力相談窓口は対応してくれません。特に、お母さんがトレセンで「選ばない」と発言したことや、試合に出してくれないことを強調してしまうと、相談を受けた方によっては「親の逆恨み」と受け取ってしまうかもしれません。私は対応しないことの言い訳のように聞こえますが、これまでそんなケースが多かったから疑心暗鬼になるのかもしれません。そういったことを踏まえて、連絡を取ることをお勧めします。辞めてしまえば......、早く忘れたい、と思われる保護者が多いのですが、次の被害を生まないためにも行動することを検討してください。■お子さんが「自分がダメだから......」と考えてしまわないよう、心のケアを(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)そして何より重要なのは息子さんのこころのケアです。息子さんは何も悪くないこと。暴力や暴言をするコーチから離れるべきであることをぜひ伝えてください。暴力の被害者の多くは「自分がダメな選手だから、代表を怒らせてしまう」と考えがちです。手法が旧い指導者は激しく怒った後に「お前には期待しているよ」とやさしい言葉をかけ、それを「フォローしているから自分はいいコーチだ」と思い込んでいます。しかし、子どもはどちらのコーチが本当の姿なのか混乱します。混乱し自分を責めてしまい心を病んだりするケースは少なくありません。アメとムチはとても旧いやり方です。自分だけで悩まず、ほかの保護者やご家族で話し合ってみましょう。よき方向に向かうことを祈っています。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2022年01月12日株式会社幼児さんすう総合研究所(代表:大迫 ちあき)が運営する幼児さんすう指導者養成スクールは、公益財団法人 日本数学検定協会認定資格「幼児さんすうインストラクター」を取得できる養成講座を日本初開校し、講座は来年第31期目を迎えます。遠方からのお問い合わせが多く、これまでの受講者は北海道から沖縄のみならず、ブラジル・台湾・オーストラリアにも資格取得者は広がり、その人数は190名を超えました。昨年からは、オンラインですべて完結する講座を順次開講しています。今回、資格取得者は幼児さんすうスクールSPICA(R)を開講できるプログラムも同時に提供。子育てが一段落した女性たち、大学で理系を専攻した女性たちのセカンドキャリアの創出も目指しています。また、今後は幼児さんすう指導者を育てるための講師育成も行います。対面レッスン時(恵比寿教室)の様子 (2021年度はオンラインで実施)■「幼児さんすうインストラクター養成講座」開校の背景幼児期からの算数教育は喫緊の課題です。当社はこれからの将来を担う子供を育てるため、世界のSTEAM教育に対応するため、幼児期のさんすうの充実と発展・普及に貢献することを目指しています。そのためには、我々大人がもっと子供たちの行動をみつめ、算数への正しいアプローチ法を教える必要があると考え、「幼児さんすうインストラクター養成講座」を開校いたしました。今後、幼児期の算数指導のエキスパートを育成すると同時に、幼児さんすうスクール講師としての就業や起業を支援し、女性のセカンドキャリアの一助としていきます。■幼児さんすうスクールSPICA(R)現在、東京・恵比寿で、思考型・体験型の幼児さんすうスクールSPICA(R)を開講しており、2歳児から小学生の子どもが通って来ています。楽しみながら試行錯誤しながら様々な教具を使って、考える力を養成して、小学校以降の算数で躓かない子ども達を育てています。■会社概要会社名 : 株式会社幼児さんすう総合研究所代表者 : 代表取締役社長 大迫 ちあき所在地 : 〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿1-15-4 三木ビル201事業内容 : 公益財団法人 日本数学検定協会認定資格講座開催「幼児さんすうインストラクター養成講座」「幼児さんすうシニアインストラクター養成講座」幼児さんすうスクール「SPICA(R)」運営各種セミナーや各種イベント事業の企画・開催幼稚園・保育園など幼児教育施設への幼児さんすうプログラム導入資格認定者の幼児さんすう教室開校・起業支援子育て支援事業コンサルタント幼児さんすうカリキュラム・教材・教具の企画、開発、販売講演・執筆公益財団法人日本数学検定協会幼児さんすうシニアインストラクター養成講座を受講して、「幼児さんすうシニアインストラクター」が在籍する園には、「幼児さんすうインストラクター養成資格認定団体」として同協会から認定証が送られます。資格取得者は、一年に一度の幼児さんすうインストラクター活動報告会の他に、幼児さんすう指導者養成スクールが開催するスキルアップ講習・懇親会に参加も可能です。日本数学検定協会認定 数学コーチャー&幼児さんすうエグゼクティブインストラクター大迫 ちあき【略歴】二人の子育てが一段落したあと、大手個別指導塾で中学受験 算数の担当講師として勤務。 幼児期の算数指導の重要性を感じ、2015年独立。翌年2016年より、東京・恵比寿に未就学児対象の「幼児さんすうスクールSPICA(R)」を開校する。 さんすうワークショップを月に一度開催。日本初の公益財団法人日本数学検定協会認定資格講座 「幼児さんすうインストラクター養成講座」を立ち上げ、 幼児期のさんすう指導法の確立に力を注いでいる。上智大学卒著書:「算数ができる子の親がしていること」(PHP文庫)「小1から小3で算数嫌いにならない本」(内外出版社)(「折り紙百科3・4・5歳 楽しく算数センスが身につく」(世界文化社)」「折り紙百科5・6・7歳 図形力と考える力が身につく」(世界文化社) 「LaQさんすう400ピース」(ヨシリツ)「プレジデントファミリー」「AERAkids」他 掲載多数講演:早稲田アカデミー・城南予備校 他 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2021年12月24日サカイクとしつもんメンタルトレーニングが開発した『サカイクサッカーノート』。使用した子どもたちや保護者、コーチから「書きやすい」「子どもの考えを知ることができて良い」などの感想をいただいています。今回はシンキングサッカースクールに通う小学4、5年生のお子さんと保護者の方に、サカイクサッカーノートの活用についてうかがいました。(取材・文:鈴木智之)藤代さん監修!1日10分で書けるサッカーノート>>シンキングサッカースクールの生徒が書いているノートの誌面を見せてもらいました【関連記事】サカイクサッカーノートで育まれる、"不確実な時代"に必要なスキルとは?■サッカーノートは「正解」を探すものではないと認識して千葉県佐倉市ユーカリが丘で活動中の「シンキングサッカースクールユーカリが丘校」には、幼稚園生から小学6年生までのお子さんが通っています。どのカテゴリーも『サカイクサッカーノート』を使い、子どもたちの成長やサッカーの上達に役立てています。メインコーチを務める菊池健太コーチは「サッカーノートは小学1年生から書いています。小さい子の場合は、内容は気にせずまずはやってみようというスタンスです」と話します。「僕たちコーチの方から、『こういうふうに書きなさい』と言ってやらせるのではなく、気づいたことやそのときの思いを素直に書いてほしいです。上手に書けなくてもOK。学校の授業ではないので、正解探しにならないように気をつけています」(菊池コーチ)■「大人に見せるため」に書くノートにしてはいけないノートにはコーチや保護者がコメントを書く欄があります。そこについては「できた、できない、良い、悪いと、大人が評価をしてしまうと、大人に見せるために書くノートになってしまいます。それでは意味がありません」と話し、次のように続けます。「ノートを書くことは強制ではないですし、学校のテストでもありません。あくまで子どもたちが、サッカーについて考えたり、イメージをふくらませるための手助けになるツールだと思っています」■指導内容がしっかり伝わっているかを確認でき、スタッフ間で共有できるサッカーノートを書くことは、お子さんだけでなく、コーチや保護者など、大人にもたくさんのメリットがあるようです。「子どもたちがノートに書いた内容を見ることで、僕たちコーチがトレーニングで伝えたことが、ちゃんと届いているかを確認することができます。もしうまく伝わっていなければ『言い方を変えてみよう』『こっちの言葉を使ってみよう』など、スタッフ間で話し合いができるので、そこはメリットだと思います」子どもたちのノートを見せてもらうと「おにぎり」などのキーワードが書かれていました。これは三角形を作るポジショニングのことで、そう書いてある子には、イメージがしっかりと伝わっていることがわかります。「学年が上がるにつれて、自分でシュートを決めたり、ドリブルで相手を抜くのが楽しいところから、チームで課題を解決したり、チームとしてどううまくプレーするかに目が向き始めます。その中で、自分はどんなプレーをすればもっと活躍できるかを考えるために、ノートがあると、自分の取り組みやアイデアを振り返り、あのときはこうやっていたからうまくいったんだな。次はここを意識してみようなどのイメージが湧いてきます。その手助けをノートはしてくれると思います」さらに菊池コーチは「ノートをしっかり書く子は、考えてプレーしている印象を受けます」と話します。「プレーでミスをしたとしても『こういうことを考えてプレーしていたんだな』とノートを通じて意図がわかっていれば、僕としても指摘する必要はありません。むしろ『ナイスチャレンジ!』と声をかけます」■ノートが親子の会話の糸口にも!親子の関係性をよくするのにも使えるノートを書くことに対して、保護者の視点からもメリットを感じているようです。「私にも子どもがいますが、『今日のサッカー、どうだった?』と聞いても『勝った』『楽しかった』など、短いコミュニケーションになりがちです。そこでノートを見ると、『2点取ったんだ』とか『こういうことがあったんだ』とわかるので、会話の糸口になります。それもメリットだと思います」菊池コーチは「サッカーに行くときに、『ボールや水筒と一緒に、ノートも持っていこう』と、習慣になるといいと思います」と笑顔を見せます。サカイクサッカーノートには、「はじめる前(練習前)に書こう」というページが左に、「終わったら書こう」というページが右側にあり、1つの見開きでセットになっています。練習前に書いた目標やポイントを確認したり「意識していたことはできたかな」と振り返ることができます。菊池コーチは、低学年の子には『見ましたよ』とコメントをして、高学年になるとより具体的に『どうすればいいか』をアドバイスしたり、子どもたちに考えさせるような投げかけをしていくそうです。それもノートの活用法といえるでしょう。次回の記事では、サカイクサッカーノートを使っているお子さん、保護者の方の声をお届けします。藤代さん監修!1日10分で書けるサッカーノート>>
2021年12月02日世の中には、効果的な英語指導方法、効果的な英語学習方法など、英語教育に関する情報や教材、書籍がたくさんあります。しかし、学習者にはさまざまな個人差があるため、すべての学習者にとって効果的であるとは限りません。ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(※以下、IBS)では、動機づけやモチベーションに関する研究を行う新多 了教授(立教大学)にインタビューを行い、「英語を習得するために重要な学習者のあり方」という記事を公開しました。●新多了教授は、効果的な英語習得のための根本的な問題として第二言語習得における動機づけやモチベーションに関する研究を行っている。●理想的な学習者に必要な要素は、「学習者エージェンシー」、「自己調整力」、「相転移」、「振り返る力」。●理想的な学習者を育てるために、教師は適切なチャレンジを促す環境設定と、モチベーションや自尊心など非認知的な要素にも配慮したScaffolding(足場かけ)をしていくことが大事。●主体性のある学習者は環境に左右されず、向上心を保ち結果的に高い英語力を習得できる。立教大学 新多 了教授■ 優れた教授法も、やる気が低い生徒には効果的でないウォーリック大学(イギリス)大学院応用言語学研究所にて修士号、博士号を取得し、現在は立教大学の英語教育プログラムの開発と運営に取り組んでいる新多了教授。「なぜ自分はいつまで経っても英語が苦手なのか?」という疑問から第二言語習得研究の道へ。研究テーマのTask-Based Language Teaching(タスクを使った教授法)は、日本も含め、世界的に広がったアプローチです。ところが、「イギリスに来ている学生にこのアプローチで英語を教えると機能するのですが、日本に帰国して大学で教え始めたときに、思ったようにうまくいかないことを実感した。」と言います。「タスクを使った教授法は、生徒に『英語を学びたい』というやる気があることを前提としたアプローチなので、やる気が低い生徒に対しては機能しない、ということに気がついたのです。ですから、根本的な問題として、動機づけ(モチベーション)が大事なのではないかと考え、この分野の研究を始めるようになりました。」「モチベーションがあるとかないとか、ということは表面的なことですが、その根本にあるのは、自分をどう捉えているかとか、自分はどんな人間でどうなっていきたいか、英語を使ってどう変わっていきたいか、ということと深く関わってきます。アイデンティティというものは、長い時間をかけてできあがっていき、そして変化していくものです。ですから、学習者が自分の過去を振り返って、その過去をどのように捉えているか、ということが現在のモチベーションに影響し、さらにこの先どうなっていきたいかという将来像も現在のモチベーションに影響します。」と新多教授は言います。■ 理想的な学習者の姿同じように第二言語を習得したいと考えている人たちであっても、積極的に学習しようとする人と、そうでない人に分かれます。新多教授によると、その違いは、次の4つの要素をもっているかどうかによって生まれます。1)エージェンシー : 自分の学びに対して当事者として責任をもつ力。2)自己調整力 : 計画→観察→自己評価というサイクルでモチベーションや学習を調整する力。3)相転移:新たなチャレンジをすることによって次のレベルに上がれる力。4)振り返る力:自分の学習状況を深く分析する力。■ 理想的な学習者になるために教師ができること「授業の中で教師ができることは、大きく分けて二つあると思います。一つは、どのようなタスクや課題(※1)を準備するか、ということです。もう一つは、どういう手助けをするか、ということです。これは、scaffolding(スキャフォールディング)と呼ばれていて、日本語では「足場かけ」と訳されます。Scaffoldingは「〜ing」と進行形になっていますが、これはこの概念をぴったり表していると思います。イギリスにいたときに、建物を立てているところをよく見たのですが、そこに組まれていた足場は、毎日そこを通るたびに変わっていました。ビル建設の進行状況に伴って、足場が上や横にずれていったりしていたんです。これがまさにScaffoldingなんです。」さらに続けて、「授業では、子どもや生徒をよく観察して、いまどういう助けが必要なのかを判断して、適切なチャレンジをできるような状態に環境設定していく、ということですね。チャレンジというのは、認知的なレベルに合ったものにすることはもちろん大切ですが、モチベーションや自尊心など、非認知的な要素にも配慮したScaffoldingをしていく、ということもすごく大事だと思っています。」と話します。新多教授によると、「いまは特に変化が激しいVUCA(※2)と呼ばれる時代ですから、何が正解かわからない中で生きていくためには、自分で考える力はすごく大事です。そして、自分のことだけではなく、何が社会の発展のために大事なのかということを考える能力も必要です。こういう力を身につけられる手段の一つが英語を学ぶことなのではないかと思っています。」とのこと。■ 学習者には主体性が重要今回、新多教授からは、「理想的な学習者のあり方」として、1)エージェンシー、2)自己調整力、3)相転移、4)振り返る力が挙げられました。この4つに共通することは、主体性です。効果的に英語を学ぶにはどの学校がいいのか、どの教師がいいのか、どの教材がいいのか、といった環境面ばかりに目がいきます。しかし、そればかりに囚われていては、モチベーションが低下したとき、学習がうまくいかなくなったとき、すべて環境のせいにしてしまうでしょう。一方、主体性をもっている学習者は、うまくいっているときもそうでないときも、常に自分を振り返りながら向上心を保ち、結果的に高い英語力を習得することができるのではないでしょうか。※1:英語を学ぶことそのものを目的にするのではなく、課題に取り組むことを通じて、結果的に英語を使い、英語力が伸びている、ということを目指すアプローチ。※2:Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)といった特徴をもつ予測不可能な状況詳しい内容はIBS研究所で公開中の下記記事をご覧ください。■英語習得のために重要な「学習者」のあり方〜立教大学 新多教授インタビュー〜前編: 後編: ■ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(World Family's Institute Of Bilingual Science)事業内容:教育に関する研究機関所 長:大井静雄(東京慈恵医科大学脳神経外科教授/医学博士)所 在 地:〒160-0023 東京都新宿区西新宿4-15-7パシフィックマークス新宿パークサイド1階設 立:2016年10 月URL : 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2021年11月19日