時間をかけて、自分で探す1冊誰もが楽しめるように、専門書は置かず店員さんが面白そうだと思ったものを置いているという「B&B」。しかし、本棚には、本を紹介するポップもなくジャンル表記もなく、ただ整然と本が並んでいます。見たい本棚へ直行できないのはもちろんのこと、ぱっと見た限りではヒントはほとんどありません。じっくり時間をかけて、全ての棚をじっくり見て回るのが「B&B」のスタイルです。本当に読んでみたいと思える1冊を選ぶタイトルだけではよく分からない本も多いため、手にとってページを開いてみたくなります。「B&B」の本棚は、良い意味で親切ではないのです。また、誰かのおすすめの本紹介やフェアをすることもほとんどないとのこと。“誰かがすすめているから読む、というセレクトはしてほしくない”とスタッフさん。近年は、SNSで誰かのおすすめが常に流れてくる時代ですが、それに逆行するかのような本屋さんです。自分の興味のない本も嫌いな本も混在した本棚を前に、しっかり自分の目で見て本を開き、本当に読んでみたいと思える1冊を選ぶ。それは、直感以外の何ものでもありませんが、本来の本選びとはそういうものだったはずと思いださせてくれるお店です。ビール片手に本を物色する楽しさB&Bの変わったところは、本棚だけではありません。ビール片手に店内を闊歩できることも、他にはない面白いところ。ビールは、カウンターにあるビールサーバーから注いで出してくれます。“プシュー”という音と本屋という、なんだかヘンテコなマッチング。でも、それが大人の本探しらしいワクワクを後押ししてくれます。ビールだけではなくソフトドリンクも豊富にあり、ほとんどのメニューが1杯500円と、ついつい長居をしたくなる値段設定です。また、店内奥には4人掛けテーブルが2つ置かれているので、ここでドリンクを飲みながら気になる本をゆっくり読むこともできます。ただ、食べ物の販売はなく持ち込みもNGなのでご注意ください。取材・文/山田桃子店舗情報店名:B&B住所:東京都世田谷区北沢2-12-4第2マツヤビル2F営業時間:12:00~24:00(ドリンク注文は23:30まで)
2016年09月17日働くすべての人に捧げるお薦めの1冊23歳で料理の修行のため単身でフランスへと向かった斉須政雄さんの著作。作品は、フランスでの修行経験を時系列で、内面の変化や培われる人生観とともに綴られている。激流のように過ぎゆく日々をくぐり抜けたからこそ出てくる、熱い言葉の数々は料理人にとどまらず、働く全ての人に勇気を与えたロングセラー本です。本をイメージしたカフェメニュー渋谷店にはないコーヒーやオリジナルブレンドの紅茶も提供している表参道ヒルズ店。テイクアウトもできて、カフェとして利用する方も多いのだとか。フード・アルコール類も充実。フードは、小説を想起させるネーミングのついた、「パパの好きなキッシュ」や「自家製ピクルス」「チョコケーキ」など、アルコールは、クラフトビールやビオワイン、日本酒などが並びます。本を眺めながら、気軽に1杯飲んで帰るのにも重宝しそうです。ドリンクを1杯頼むごとにオリジナルのコースターが付いてきます。表には、本にちなんだデザイン、裏にはオーナーの感想文。表参道ヒルズ店オープン時に、6 種類から24種類に増やしたというコースター。ついつい集めたくなっちゃうかわいさです。そして何と言っても、表参道ヒルズ店だけのオリジナルメニューブックがすごい。1冊の本のような分厚いメニューには、フード・ドリンクひとつひとつにイメージされる本とオーナーの紹介文付き。本への愛を感じずにはいられない、かなりの力作です。図書室としてもカフェとしても本を読まなくても大丈夫、この場所をもっと自由に楽しんでほしいという森の図書室。ひとりでふらりと立ち寄る人や仕事を黙々と続けている人、仕事帰りに本を借りていく人や1杯飲んで行く人。さまざまな人の温度を感じる場所。あなたなりの森の図書室の楽しみ方をぜひ見つけてみてくださいね。店舗情報店名:森の図書室 表参道ヒルズ店TEL・予約:03-6434-0625アクセス:表参道駅、明治神宮前駅から徒歩5分営業時間:[月~土] 11:00~21:00 [日] 11:00~20:00定休日:不定休(表参道ヒルズに準ずる)
2016年09月15日泊まれる本屋がコンセプト泊まれる本屋がコンセプトのホステル『BOOK AND BED TOKYO』。ベッドは、本棚と一体になった“BOOK SHELF”エリアに12床とロビーの奥にある“BUNK”エリアに18床。トイレ・シャワールームは共同ですが、1泊4500円~と低価格なのは嬉しい。「一番大切にしているのは、楽しい体験の中、気づいたら寝ているってことです。本はそのためのツール。宿泊施設ですけど、僕らの仕事は寝たくないと思わせるツールを提供することかなと思っています。」と広報の力丸さん。『BOOK SHELF』では、まさにそんな体験ができます。本棚の裏に隠した秘密基地のようなベッドには、ワクワクしちゃいます。カーテンを引けばひとりだけの空間ですが、ロビーで読書している人の息遣いやスタッフの声などがちょうど良い雑音になって、家では体験できない心地よさがあります。お酒もピザもカレーも持ち込みOK!飲食の持ち込みは、何でもOK!ということで、下のピザ屋さんから出前をとって、焼き立てのピザとワインを楽しむ方もいるそう。本棚には、食べ物の本も多くあるので気持ちを高めて外食というのもありです。おひとりでもどうぞ女性のおひとり様の利用もかなり多いようです。家でお風呂に入り寝る準備をしてここを訪れ、次の日、そのまま出勤する人もいるそうですよ。本当に気軽に非日常の体験をできるのは魅力的。歯ブラシ・シャンプー・リンス・ボディーソープ・タオルセット(540円)も売られており、8のつく日はパジャマデーとして、先着4名にパジャマも貸し出してくれます。思い立って、手ぶらで訪れても困ることはなさそうです。週末の仕事終わり、誰かと予定を合わせることに振り回されず少しの贅沢とリフレッシュを味わいに来てみるのも良いかもしれません。気軽に非日常の体験を13~17時は、デイタイム利用ができます。ベッドは使えませんが、ロビーにあるソファは見るからに寝ころびたいディテール。大きく開かれた窓から池袋の街を見下ろして、ゴロゴロするのも気持ちが良い。今年の秋頃には、京都に2店舗目がオープンするとのことで、そちらも楽しみです!旅先で色んな出会いと経験を求めて、訪れてみてはどうでしょう。週末にプチ外泊に、仕事の合間に、旅先でのコミュニケーションツールとして、BOOK AND BED TOKYOでの体験を楽しんでみてください。取材・文/山田桃子(Me Times)スポット情報スポット名:BOOK AND BED TOKYO住所:東京都豊島区西池袋1-17-7 ルミエールビル7階
2016年09月11日なんだか近頃、夫婦の会話が減った気がする。ズバリ、倦怠期だと思う。もう夫婦の仲が冷えきっている……そんなご夫婦のみなさん!諦めるのはまだ早いです!ご主人が「愛妻家」になればすべて解決するんです。愛妻家って…なに?「イクメン」はよく聞きますが、「愛妻家」という言葉は「イクメン」に比べて影が薄いような気もします。そもそも、愛妻家ってどんなひとのことを言うのでしょう?たしかに「お宅のご主人は愛妻家ね~」なんて言われたら嬉しいけど、うちの夫は愛妻家に当てはまるの…?という奥様。自分が愛妻家になるってそんなの無理だ!と思っているご主人。『サラリーマン 妻夫木マモルの愛妻生活』を(ご主人が)読めばその答えが見つかります!サラリーマン 妻夫木マモルの愛妻生活本の監修は「日本愛妻家協会」が担当。ちなみに、お値段も1,122円、「いい夫婦」プライスというこだわり!『サラリーマン 妻夫木マモルの愛妻生活』(竹書房)この本は、結婚10年のサラリーマン妻夫木氏(35歳)が周りの友人と愛妻家を目指す、実践的な専門書。妻夫木夫婦は最近会話もなく関係は冷め切っており、「熟年離婚」も頭をよぎる日々。妻夫木氏の友人は、「それは妻がモンスター化している!愛妻家になるしかない!」と強くアドバイスします。でもいきなり愛妻家になると言っても、どうしたら……。妻夫木氏が悩んでいると、「実はオレも!」と仲間が集結。ひとりではできないことも仲間がいたら大丈夫!こうして、妻夫木氏の愛妻家になるためのクエストが始まったのです!内容は漫画とコラムで構成され、1…いえ、ゼロから「愛妻家になるため」の方法が詳しく書かれています。料理本に例えるなら“どこのスーパーで買い物するか”から書いているぐらい、本当に初歩からです。どうして妻がモンスターに?「妻は、夫婦関係が冷めてくるとモンスター化してしまう」とこの本には書かれており、妻夫木氏の妻は頭に角が生えたモンスターとして描かれています。え…妻がモンスターに見えてしまうって、それまで一体何があったの!?とツッコまずにはいられません。私はまだ結婚3年目のペーペーですが、10年も経つと女はモンスターになってしまうんでしょうか…。この奥さん、残業で帰ってきた妻夫木氏にご飯も用意していませんが…。妻夫木氏が実践していく「愛妻家の道」。まずは残業せずに早く帰ること。家事を習うこと。妻に「ありがとう」と言うこと。…妻夫木氏よ、今までこれ、してなかったんか! そらあかんわ!奥さんもモンスターになるわ!…つい素の関西弁でつっこんでしまいました。いや、もしかしたら結婚当初はしていたのかもしれない。けれども年数を重ねて当たり前になり、倦怠期を迎える。もしくは忙しくなり、余裕がなくなってそのままになってしまった…。妻夫木夫婦はそうだったのかもしれません。そんな妻夫木氏がこなしていくクエストは、女性から見ても「たしかにこれをされたら嬉しいなぁ」と思ってしまう納得の内容です。日本愛妻家協会の活動が感動的巻末にはクエストスペシャルとして、日本愛妻家協会の詳しい活動内容が掲載されています。「キャベチュー」こと「キャベツ畑の中心で妻に愛を叫ぶ」、愛妻の日の1月31日に花を買って早く帰る「男の帰宅花作戦」などなど…。特に気になったのが、夫婦がハグをするためにお互いの足の置く位置が書かれている「ハグマット」を使った、30代から60代のご夫婦の体験談。「恥ずかしかったけどよかった」「妻が一回り小さくなった気がしてさらに愛おしくなった」「お互いお腹が出て、年を取ったねと笑いあった」などのコメントに胸がじんわりと温かくなりました。「愛妻家」を軸とした夫婦のありかたを提案するこの本。愛妻家の定義は、きっと夫婦の数だけあると思います。だからこの本すべて実践してもよし、ポイントだけ試してもよし。カバー裏にも素敵な仕掛けがあるので、こちらは奥様から活用してもいいかもしれません。さぁ、あなたも「愛妻生活」で素敵な夫婦関係、はじめてみませんか!?日本愛妻家協会ライター:三谷 アイ
2016年09月03日「センスがいい」とほめられると、うわべだけではなく、これまでの生き方全体を評価されたようでうれしいものです。美術館や一流のホテルに通い、質の高いものをながめる習慣がつくとセンスは磨かれます。とはいえ、忙しいとなかなか大変。いつでも気軽に楽しめて、読んでいるうちに美意識が高まるような本をご紹介します。■ショーウインドーはまるでミュージカル『八鳥治久JRタワー札幌ステラプレイスショーウィンドウ2003-2013』(八鳥治久デザイン事務所)八鳥治久 JRタワー札幌のショーウインドー・ディスプレイの作品集。まるで舞台美術のように洗練された“非日常の世界”があふれています。帽子から飛びだす黄金の鳩、夜空をかけぬける豹、三日月、火の鳥など、さまざまなモチーフのディスプレイは、とても躍動感があります。ページを開くと、これからミュージカルが開演するかのようで、拍手が聞こえてきそうです。重厚な雰囲気とクールな空気感がただよい、日本人離れした、スケールの大きさを感じさせます。それもそのはず。デザインした八鳥治久さんは、1936年満州(現・中国東北部)生まれ。少年時代を過ごした厳しい自然と広々とした大地の記憶が、手がけた作品に影響を与えているのでしょう。日本人の繊細な感性と異国情緒の両方を楽しめる、まぶしい写真集です。 ■芸術と科学『芸術と科学のあいだ』(木楽社)福岡伸一ベストセラー『生物と無生物のあいだ』で有名な、生物学者・福岡伸一ハカセが芸術と科学の間にメスを入れました。紹介されているのは、DNAの神秘、昆虫、フェルメール、邪馬台国ロマン、建築物など。これらは何の関係もなさそうに思えますが、終盤にさしかかるにつれて、本当は、理系・文系・芸術系とわけて考える必要がないことに気がつきます。現在福岡ハカセは、研究者として活躍する一方、エッセイストや、フェルメール愛好家としても知られています。ハカセの興味の対象は、驚くほど広い範囲におよびますが、少年時代は友達と遊ぶよりも、虫を追いかけたり、1人で読書をするのが好きだったそうです。変わり者と思われても、誰かに合わせるより、〈好きなこと〉を、とことんつきつめていく熱意が、ジャンルをこえた非凡な感覚をささえているのです。幾何学的な写真とわかりやすい解説文で、読みすすめているうちに頭の中が整理されてくるように感じられます。■中華料理とアンティーク食器のコラボレーション『うつわと宴 中国料理とアンティーク食器』(求龍堂)脇屋友詞、大里成子 2014年度に紫綬褒章を受章した中国料理店オーナーシェフ・脇屋友詞さんの創作料理を遊び心いっぱいの中国アンティーク食器によそう。そんな、ゴージャスな企画が本になりました。器のグラビアからはじまり、次に食器と料理の組み合わせが披露されます。最後に詳しいレシピが紹介され、1冊で3通り楽しむことができます。骨董品の世界は狭くて深く、初心者にはむずかしいイメージがありますよね。中国美術の特徴は、おおらかさと、力強さです。たとえば、龍や鳳凰のような、神獣をモチーフにした皿。補色を組み合わせた大胆な色彩。一見、どんな献立とあわせるのか、想像できないような遊び心があるデザインですが、ふしぎと、静けさが感じられます。迫力のある世界観を「うつわと宴」で堪能してみませんか。これらの本は、直接、美の秘訣を書いているわけではありませんが、ながめているうちに、内側から美のモチベーションを高めてくれます。どれか1冊でも読んでいただきたいおすすめの本です。・ 芸術と科学のあいだ(木楽舎) ・ JRタワー札幌ステラプレイスショーウィンドウ2003‐2013(八鳥治久デザイン事務所) ・ うつわと宴―中国料理とアンティーク食器(求龍堂)
2016年08月13日読みたい本、読まなくてはならない本はたくさんあるのに、一向に「積ん読(つんどく)」が減らない。そんな状況下で、「本が早く読めたらいいな」と思っている人は少なくないのではないでしょうか。けれど速読に興味があっても、なんだか難しそう、としり込みしてしまう人も多いはず。でも、楽しくレッスンを受講しながら読む速度を速める手段があります。インストラクターの平井ナナエさんが開発した、「楽読」という速読トレーニングがそれ。右脳を活性化させる、まったく新しい速読法です。平均して3か月のレッスンを受けた後には、ほとんどの人の読む速度が上がるといいます。人によっては、7倍も速くなるというのですから驚きです。レッスンでは、現在の読書速度を数値化し、レッスン後にふたたび数値化することで、速度が上がることを視覚的に実感できるそうです。なにが楽なのか、なぜ早く読めるようになるのか、楽読の創始者である平井さんにお話をうかがってきました。■本を読めなかった平井さんが楽読を始めた理由文字を読んで理解するというのは、左脳の働きです。ところが、平井さんは根っからの右脳人間。子どものころから、本を読むのが苦痛で仕方なかったといいます。これについて「本を読むと、左脳が優位になってしまうのが嫌だったのでは?」とご自分で分析されていました。そんな平井さんが速読を知ったのは、3人の子どもを抱えてシングルマザーとしてバリバリ働いていた30代前半のころ。本にまったく興味のなかった平井さんを説き伏せて、友人が速読の第一人者の方を紹介したそうなのです。そこで、いきなり読書速度が3倍以上になったことに驚いた平井さんは、「私は単純だから、これはすごいと思いました。なにせ、それまで本を完読した記憶がほとんどなかったですからね」と語ります。当時の営業の仕事は完全歩合制でしたが、シングルマザーで働く時間も限られていたのにもかかわらず、平井さんは好成績を出していました。ところが、平井さんのまわりには高学歴でも自信をなくして辞めていく人が後を絶たなかったそうです。平井さんの営業時代は、そんな彼や彼女たちを前に、無力感を味わった時期でした。「いくら『あなたにもできるよ』っていっても、『自分には無理』とあきらめてしまうんです。できると思った人はできる、できないと思った人はできない、ただそれだけの違いだと感じていたので、自信のない人がやればできるんだ、と思える方法を自然と探していたような気がします」そんなとき、速度の読書速度が可視化される仕組みに感動し、自信がない人が自信をつけるために「このツールは使える!」と思ったそうです。「なぜなら自信がない人は、目に見えないことには自信を持てないからです」そして、当時の速読のトレーニングをより改良し、楽読の開発に至りました。ちなみに楽読というネーミングには、続けるためには楽しくなくては、という想いが込められているそうです。■楽読は右脳のフル稼働によって本が速く読める人の脳は文字を見ると、理解しようと左脳が働きだすと先に書きました。しかし楽読はそのような読み方ではなく、右脳を使った読み方を、レッスンを通じて身につけていくのだそうです。「文字を理解せずに、見ることだけをしてもらいます。見る力が増すと、結果的に、理解する力が増します。そもそも私たちって、意図的に文字をただ見ることって、生まれてきてからしたことがないんですよ」楽読では、ひとつのことしかできないという左脳の性質を利用し、左脳が処理しきれないくらいの負荷をかけてフリーズさせた上で、右脳をフル稼働させるというユニークなトレーニングを導入しているそうです。具体的には、「本を見ながら(読みながらではなく)、速度の速い音声をバックに流し、周辺にも気を配りながら、受講生同士で会話をする」というトレーニングなのだとか。実は、右脳は複数の作業を同時にすることが得意だそうです。できない、と思ってしまうのは、それまでそんな脳の使い方をしたことがなかったからなのですね。ちなみに、速読以外の効果ですが、税理士系の専門学校でセミナーを行った際、その後受講生になった人たちのなかから、何人も税理士試験の合格者が出たそうです。■楽読でコミュニケーション能力も劇的アップ!楽読にはさらに、その他の効果もあるそうです。平井さん自身が気づいたことは、毎日時間に追われてイライラしていたのに、いつのまにか時間のゆとりが生まれていたということ。また、コミュニケーション能力も上がるそうです。「左脳が優位な人は、コミュニケーションをとるのが苦手なんですね。人と話していても、常に自分の話したいことが勝ちます。アウトプットが優位だからです。多くの大人は左脳優位で、ただ人の話を聞く、ということができないんです。赤ちゃんは右脳優位です。右脳が優位というのはインプット優位ということですね」すぐに批判したり、ジャッジしたりするのも左脳の仕業なのですね。物事をありのままに受け入れることは、自分をありのままに受け入れることと関係がありそうです。事実、楽読を経験して、先天性の脳の疾患でコミュニケーション不全だった人がふつうに会話できるようになった人や、うつ病が治った人までいるそうです。*もともと自己肯定感が高い人は存在します。平井さんがそうだったようで、ほめるのが上手な幼稚園の先生との出会いにより、2歳のときにはすでに「自分はなんでもできる」と思っていたそうです。ですが平井さんは、「たとえほめてくれる人がいないまま育ったとしても、人は生きている限り、いつでもチャレンジできる、と思っています」といいます。インタビューは、子どものような無邪気さとパワフルさの同居する彼女の魅力に包まれたひとときでした。(文/石渡紀美) 【取材協力】※平井ナナエ・・・1969年10月18日生まれ。18歳のときに結婚するが、23歳のときに3歳、2歳、1歳の娘を連れて離婚。それに伴い、通信機器の販売営業で独立する。その後、2004年に楽読(速読)と出逢い、2005年、塾へ楽読(速読)のDVD販売営業からスタート。同年12月から大阪本町でおじの会社の会議室を借りて、スクールをスタート。その後、全国にスクールを増やし、現在スクールの数は54。2014年には韓国にて初の海外スクールをオープン。現在4人の孫がいる。 【参考】※楽読ホームページ※楽読研究所&ピース小堀(2013)『世界一楽しい速読』学研マーケティング
2016年07月31日結婚後のライフスタイルは人によってそれぞれで、正解はありません。だからこそヒントは得たいと思うはず。そこで今回は考えかたの違う夫婦が“結婚生活”を送る上でヒントになる、実話をベースにしたマンガを5つ紹介します!現在の生活と照らし合わせて、ぜひ読んでみてください。1. “新婚あるある満載!”けらえいこ『たたかうお嫁さま』(メディアファクトリー)内容紹介『あたしンち』で有名な漫画家けらえいこさんが自身の結婚直前から新婚時代を描いたエッセイマンガ。プロポーズへの誘導、お互いの両親との挨拶、式場選び、結婚式当日などがリアルに描かれています。こんな人にオススメ!:新婚ホヤホヤのあなた誰でも楽しめる結婚入門マンガ。「ちょうど良い式場がない…」「式に呼ぶ人をに悩む…」といった新婚あるある満載で、男女の考えかたの違いが分かりやすく紹介されています。新婚ホヤホヤでこれから色々な家庭内ルールを決めていこうとしている人にぜひオススメしたいです!結婚1年目の夫婦あるあるを描いた『セキララ結婚生活』や結婚生活7年目を描いた『7年目のセキララ結婚生活』も併せてどうぞ。2. “オタクと結婚するということ”安野モヨコ『監督不行届』(Feelコミックス)内容紹介『働きマン!』などで人気の漫画家安野モヨコさんが、「カントク」さんとのオタク夫婦生活を可愛く描いたエッセイマンガです。夫である「カントク」さんは「新世紀エヴァンゲリオン」の監督である庵野秀明さん!「日本のおたく4天王」とも呼ばれる庵野さんの極まったオタクっぷりに戸惑いながらも、夫の影響でどんどんオタク度が増していく安野さんの変化に注目。こんな人にオススメ!:好きになった相手がオタク寄りだったあなた赤裸々に語られる庵野監督のオタクっぷりやこだわりが面白い!旦那さんがオタク寄りの奥様は共感して笑い転げられること間違いなしの一作です。これを読めば今まで許せなかった相手の趣味も理解できるようになって、円満な結婚生活を送れるかも!?3. “理系男子を理解する”高世えり子『理系クン 夫婦できるかな?』(文藝春秋)内容紹介理系男子に萌える文系女子の高世えり子さんと、典型的な”理系クン”である「N島クン」との新婚生活を描いたマンガ。理系ならではの独特な生活に驚きながらも、少しずつ理解し合い夫婦の絆を深めていくさまが描かれます。こんな人にオススメ!:理系男子と出会ったあなた「新居の家電は徹底的にリサーチ」「料理は科学実験のように細かく」「ツールを使ってしっかり家計を管理」など、結婚後も変わらぬ”理系クン”っぷりを発揮するN島クンに戸惑う文系奥様。「考えかた」の違いをどうやって乗り越えていくのかに注目です。独特の魅力を持つ理系男子に惹かれてしまった文系女子にオススメ!。同シリーズの付き合いはじめを描いた『理系クン』、付き合い、結婚式を挙げるまでを描いた『理系クン結婚できるかな?』、子どもが出来てからを描いた『理系クンイクメンできるかな?』も併せてチェックすると楽しさ倍増です。4. “いざ、国際結婚!”小栗 左多里『ダーリンは外国人』(KADOKAWA/メディアファクトリー)内容紹介人気シリーズ「ダーリンは外国人」の1巻目。漫画家の小栗左多里さんとジャーナリストのトニー・ラズロさん夫婦の結婚生活の「現実」が描かれています。映画を観たときの感情表現やお互いの呼び名、ジョークの感じ方など、国際結婚あるある全21ルポを掲載、夫の出身国別にみる「暮らしのコツ」も収録。こんな人にオススメ!:国際結婚も視野に入れているあなた井上真央さん主演で映画化もされた人気シリーズ。国際結婚したばかりの2人の初々しさを楽しめるだけでなく、日本との文化の違いや英語の単語の意味などを学ぶこともできます。国際結婚も視野に入れているかたや、既に外国人の旦那様との文化の違いに戸惑っているかたはチェックしておいて損はないかも!?ハマったら、続編シリーズや実写映画も観てみるといっそう楽しめますよ!5. “愛する相手がうつになったら…?”細川貂々『ツレがうつになりまして』(幻冬舎)内容紹介突然うつ病になった「ツレ」とそれを支える妻の日々を明るく描き、大ベストセラーとなった純愛コミックエッセイ。「いつものことが出来ない」「起きることができない」など具体的な行動を通じて、うつ病の症状や対処法をわかりやすく理解できます。こんな人にオススメ!:愛するパートナーが最近、元気ない…?と思ったあなたこちらも堺雅人さんと宮崎あおいさん主演で映画化された一作。旦那さんが最近、元気ないかも…?と不安になったときに読むと、うつとは限らなくても何かのヒントが得られるかもしれません。長く続く夫婦での生活を心身ともに健やかに過ごすためにも役に立つこと間違いなし。 今回ご紹介させていただいたマンガはちょっと特殊な旦那様のケースが多いかもしれませんが、「考えかたの違い」について描かれたこれらのマンガは、きっとあなたの助けになるはず。ぜひこちらの“結婚マンガ”を読んで、さらに良い結婚生活を送ってください!ライター:オレンジいわさき
2016年07月22日旅行に持って行くトランク、ついつい余分なものを入れすぎたり、逆に足りなくなってしまったり、なんて経験がある人もいるのでは?旅慣れている人たちに、愛用のトランクやその中身、旅に欠かせないものなどを聞いてきました。旅先の感動を永久保存「自分の普段いる場所から遠く離れた旅先では、美しいものを見たり、思い切り羽を伸ばしたり、知らない道を歩いて初めての食べ物と遭遇したりして、何かと刺激を受け、心を動かされると、今までにないアイデアが閃きます。心が震えるような感動を”フリーズドライ”にするために、必ずダイアリーを持っていき、毎朝毎晩、今日やりたいことや今日会ったことを書きとめるんです。自分でプロデュースしている『20代のうちにやりたいこと手帳』を持って、ホテルで寝る前に3行くらいの日記をつけておくと、いつ眺めても感動が蘇ります」読んだことのある本にも、新しい発見が「荷物がかさばるので、1〜2冊くらいの本を持って、残りのものはkindleに入れて持っていきます。私は、同じ本を繰り返し繰り返し読むのが好きで、そのときのインスピレーションによって旅に持っていく本を本棚から直感的に選びます。その場所で読むと、また日本で読むときとと、違った発見があるので、そういった読書の出会いも楽しむようにしています」
2016年06月28日みなさんは、パートナーのどこが好きですか?性格?もしくは顔?男らしさ?女らしさ?その好きな部分が変わってしまっても好きなままでいられるでしょうか。記憶喪失で性格が変わってしまっても、性別が変わってしまっても、相手を受け入れられるでしょうか。そんなことを考えてしまった漫画が2作あります。「オススメ!めおとブックス!」バックナンバー第1回:他人と一緒に暮らすということ『ラララ』第2回:「わかっているよ・察してよ」信頼過信を2つの漫画から考える第3回:グルメ漫画ブーム!何を食べるかよりも「誰とどう」食べるかが大切第4回:「デキチャッタ!!」産むか迷っているアナタの気を楽にするコミックエッセイ『青山月子です!』/湯木のじん(集英社 全3巻)主人公は高校1年生2回目の青山月子。入学早々、交通事故に遭って記憶喪失になってしまいます。両親や友人たちは「青山月子は友達いっぱいで明るくていい子だった」と言いますが、記憶をなくした今の青山月子はどこか抜けていて、明るく振る舞おうとしても空回り。さらに留年ということで同級生からも浮いています。彼女は人気者だった「青山月子」になろうと頑張ります。「青山月子」になれば、両親や友人たちが喜んでくれる。なによりも強いのは、「『青山月子』にならないと、人に好きになってもらえない」という思い。しかしそう思って「青山月子」になろうとすればするほど、「じゃあ、今の自分は誰なのか」と悩みます。そして変わってしまった娘を受け入れらないのが、母親です。なんで何も思い出してくれないの、月子はこんな子じゃなかった――。母親なら、子どもを温かく受け入れてあげればいいのに…と最初は思います。しかし考えていくと、この母親が冷酷な人間だとは思えなくなります。たとえば、「明るくてよく喋る」という性格に惹かれていた夫や妻が、「無口で物静かな人になった」とき、違和感を抱えたままずっといっしょに生活していくことができるでしょうか。人間、年を取れば考えかたや性格が変わり、どうしても友達付き合いをやめてしまったひとや、距離をとる親戚が出てくると思います。しかし、離れられない家族でそれが急に起きたとしたら。そう思うと、青山月子の母親は普通の人間の姿に映るのです。「母親だから」すべてを受け入れろ、というのはあまりに乱暴です。「青山月子です!」試し読みはこちらそしてもうひとつの漫画。男女の入れ替わり、性格の入れ替わり漫画というのはジャンルとして昔からありますが、「性格はそのままで性別が変わってしまう」という異色の物語が『彼女になる日』。『彼女になる日』/小椋アカネ(白泉社)男女の比率を一定に保とうとする世界で、クマノミのように女の数が減ると、男の中から女へと性別が変わるものが出てくる現象が起こります。この現象は「羽化」と呼ばれ、少々気の少年たちに起こるはずが、男の主人公の幼なじみは高校生で「羽化」、女子高生になってしまいます。性格はそのまま、考えかたもそのまま。顔もほぼそのまま。でも、体は男ではなくて女になっている。主人公は女嫌いで、女になってしまった友人との付き合いかたに悩んだり、でも女になった友人をどこかやはり「異性」として見てしまったり…。読み終わったあと、「これは同性愛?BL?でも男女の物語になってる!? 人類愛!?」と混乱した私は、ありえない想像をしてしまいます。「……もし夫が『羽化』して女になったら…?」えー、えー、どうしましょう。受け入れたい!と自信を持って言いたい、けれども。性格はそのままだし受け入れられる気がするけど、でもやっぱ「男だから好き」になった部分もあるだろうし、また女としての性格がまた出てくるかもしれないし…。逆に私が男になっても夫は受け入れてくれるのか…。こんなことを考えられてしまうほど、「羽化」についてしっかり描かれた、現実感のある漫画です。ひとの、どこが好きで、なにを恋しく、愛しいと思うのか。自分の家族や恋愛をする相手への捉えかた、そして自分の性について、いろいろな価値観についても考えさせられた2作です。「オススメ!めおとブックス!」バックナンバー第1回:他人と一緒に暮らすということ『ラララ』第2回:「わかっているよ・察してよ」信頼過信を2つの漫画から考える第3回:グルメ漫画ブーム!何を食べるかよりも「誰とどう」食べるかが大切第4回:「デキチャッタ!!」産むか迷っているアナタの気を楽にするコミックエッセイライター:三谷 アイ
2016年06月23日「出産」それは、人生の一大事。命がけの大イベント。無計画にできちゃったりしたら、ふたりの将来が大きく狂うかもしれない。「笑う出産―やっぱり産むのはおもしろい」(情報センター出版局)と出会う前のわたしはそう思っていました。まっすぐ真面目に「出産は勢いでするものではない」と考えていました。それは間違っていないと、今でも思います。本来、勢いで「できちゃった!! 産んじゃえ!!」なんて、いいはずがないのです。それでもデキチャッタとき、あなたはどうしますか?「おなかの中にあかちゃんがいるということは、なんていうか、ひとことでいうと”らりらり”です」(本書引用)ページをめくるとすぐにある「まえがき」の3行目。ここを読んで、わたしは決めました。「よし、産もう!!」「オススメ!めおとブックス!」バックナンバー第1回:「他人と一緒に暮らすということ『ラララ』第2回:「わかっているよ・察してよ」信頼過信を2つの漫画から考える第3回:グルメ漫画ブーム!何を食べるかよりも「誰とどう」食べるかが大切食う” “寝る” “セックスする” “産む” “死ぬ” 生きるっていたってシンプルだと気づかされる本書は漫画家兼ライターの著者が、半分お遊びで取材に行ったインドで「子づくり」をするところから始まります。いきなり子づくりです。しかもお相手は「知人 の知人」でお付き合いさえしていない。冒頭から飛ばしまくっているので、秩序と常識を重んじる人は頭が痛くなること間違いなし!!“インドでなにがあったんだ。インドは、とにかく、なにもかもありすぎた。”“時間も空間もお金持ちも貧乏も、犬も蛙もなめくじも、人生も宗教も、宝もゴミも、ありとあらゆるものが、あったっていいじゃんと存在している”ただそこに存在するあらゆるものを眺めているうちに、著者はインドで「わたしは生きている」と実感します。そして「子どもを作ろう」と思い立ちます。文字に起こすと「ほえ!?」なミラクル展開でありますが、本書を読むと自然となじんでくるから驚きです。「ぼくらはみんな生きている!!」「わたしも生きている!!」「さあ、子どもを作ろう!!」そんな自然な流れで「妊娠」を受け入れることができるのです。子どもを囲んでゲラゲラ笑えば、そこがホーム。漫画家兼ライターの著者と、フリーカメラマンの夫。それまで気ままに自由に生きてきただろうふたりには貯蓄がなく、そのうえ安定した収入もありません。一般的な感覚なら、この条件で「子育てしよう」とは思わないでしょう。家探しをしながら「子育てのための住宅」で悩む著者。彼女の頭にふと浮かんだのは、インドで見たほこりだらけの家族でした。“カルタッタで見たテント暮らしのインド人親子はすげー幸せそうだった”狭くとも汚くとも、家族が一緒にゲラゲラ笑えたら幸せなのです。どんなに広くてキレイな家でも夫のシワにも気づかないような距離があるのなら、そんなに不幸なことはありません。笑っていればだいたいのことは大丈夫なのです。身体は神様からの借り物だ。わたしは生かされている。「結婚」「妊娠」「出産」現代日本で生きていると、これらのワードがとても重く感じます。「よいこらどっこいしょ!!」と、鉛のように重くなったリュックサックを背負いながらしがみつき登る壁のよう。本当にそうでしょうか?だって産まれるときに、「さあ産まれるぞ」と決意したわけじゃありませんよね?気づけば産まれていたんです、みんな。決意する間もなくおぎゃあと。そして気づけば手足が伸び、大人になっていた。本書を読み終えるころには、すべては至ってシンプルなのだと、肩の力がすーっとぬけていきました。「大好きな彼女と結婚するか悩んでいるなら読むべき」最後に、わたしとともに「デキチャッタ!!」を乗り越えた夫の感想を聞いてみました。――――――妊娠が発覚したとき「このさきどうなるんだろう」と不安しかありませんでした。ワクワクよりも、これから起こる大変なことばかりを妄想してしまって。彼女のことは好きだし、この先もずっと一緒にいたいけど、自分は「父親」にふさわしいのだろうかと悩みました。でも、この本を読むとめっちゃ楽しそうなんですよ。冷静に考えるとすごく大変なことをしているのに、読み終わる頃にはワクワクしてしかたがなくなってました。父さん(著者の夫)のインタビューが終始適当なのも素晴らしい。「ああ、父親ってこんなのでいいのか」と思えました。これからの人生で背負う責任の重さに押しつぶされそうになっていましたが、いい意味で吹っ切れました。それでホイホイ結婚してしまったわけですね(笑) いまが楽しいので結果オーライです。――――――「出産」を重く感じているのなら読んでみてほしい妊娠が発覚したとき、わたしは駆け出しフリーランスでした。無職と言われても返すことばがない状態です。「まさかね…」と軽い気持ちで試した検査薬の結果を見て、脳みそフリーズしました。「結婚していないのに産むの?」「そもそも結婚するの?」「お金は?」「住む場所は?」「安定した職業は?」「わたしの夢は?」…エトセトラ脳内をせわしなく駆け巡る「これからどうするの?」の自問自答。考えすぎて涙が止まらなくなりました。そんなときに救ってくれたのが「笑う出産」です。今まさにデキチャッて脳内嵐真っ最中のあなたや、マタニティブルーでハートが壊れそうなアナタに読んでもらいたい。そんなパートナーを支えようと心に決めた男性にもオススメです。笑う出産―やっぱり産むのはおもしろいライター:金延さえ
2016年06月14日「忙しくて本を読む時間がない」「読もうと思って買った本が、“積読(つんどく)状態”になっている」という人も少なくないのではないでしょうか。実際、株式会社クロス・マーケティングが15歳~69歳の男女を対象に行った調査でも、「読書の習慣がない」と答えた人の理由は、「忙しいから」が第1位(47.4%)でした。しかし、「忙しい」を理由に読書をしないというのは考えもの。成長したいと考えるビジネスパーソンにとって読書は欠かせないものだからです。今回ご紹介する『アクションリーディング』(赤羽雄二著、SBクリエイティブ)の著者はマッキンゼーという多忙な職場で14年間働きながらも本を読みこなし、それを仕事に活用していったそう。もちろん今も忙しい仕事をしながらも、読書を習慣化されています。では、いったいどうやったらそんな習慣をつけられるのでしょうか?本書から、ポイントをピックアップしてみました。■1:読書は「受け身」から「攻め」の姿勢に!「時間がなくて本が読めない」というのは、時間に対して受け身になっている証拠。時間がなくても必要な本を選んで読み、それを自分の身につけるという「攻め」の読書スタイルに変えることが大切です。読書は「してもしなくてもいいもの」ではなく「生きていくため、仕事のために必要なもの」という考え方に改め、優先順位を上げて時間を作りましょう。■2:読書の時間はスケジュールに組み込む1日のスケジュールの中であらかじめ読書をする時間を組み込んでおけば、「やろうと思っていたのにできなかった」ということが防げます。著者は平日の夜と週末に30分時間を取っているそう。この30分というのもポイント。だらだらと読まず、机に向かって集中して一気に読んでいくのです。これだけでも1週間に1~2冊は確実に読むことができます。■3:読むときは1冊に集中する何冊もの本を同時に読むとそれぞれの本がなかなか読み終わらず、最初の方に読んだ内容を忘れてしまいがちです。それに、1冊の本を少し読んだら、別の本を読むというようにだらだら読んでしまい、目的意識が薄れてしまったりもします。そうではなく、1冊の本を最初から最後まで一気に読み、次の本を手にするというスタイルにすることで、その本の主旨が頭に入るようになります。■4:本は「買って読む」ことで身につく本は必要なとき、読みたいときに読むのが一番。図書館で人気の本を借りようとすると数ヶ月待ちになり、その頃にはその本が必要ではなくなってしまっているかもしれません。それに、自分が買った本であればマーカーを引いたり、折り曲げたりすることもできます。そうすることで内容を自分の身につけることができるのです。■5:「積読」は仕分けして一掃!書店でついつい買ってしまった本も、しばらくすると読む気がなくなってしまったという経験は誰にでもあるもの。しかし、仕事に役立つと思って買った本でも、読まなければ結局無駄でしかないのです。これを防ぐには「その日に読まない本は買わない」というルールを作ること。毎日の読書時間があるので、その時間に必ず読めるものだけを買うことで、悪循環をストップさせましょう。また、すでに「積読」が家にあるという人は、「今見ても自分に必要だと思える本」かどうかという観点で仕分けしましょう。必要だと思える本は、数日間かけてさっさと読んでしまいます。必要とはいえ、読まずに置いてあった本ですから、そこまで重要度は高くないものということ。最後までしっかり読むというよりは、ざっと目を通すくらいのつもりで片付けてしまいましょう。そして、「今の自分にとっては必要ではない」と判断した本は、いさぎよく処分してしまいましょう。そうならないためにも、「今日読めるものだけを買う」というルールを徹底していきたいですね。■6:本を読んだら他人に話してアウトプットするある程度読書の習慣がついたら、アウトプットの時間をつくることで自分の行動に活かせるようになります。アウトプットの1つの方法としては読んだ本の内容を人に話すことがおすすめ。自然にポイントがまとまり、相手からの質問に答えることでより内容が整理されていきます。そのためにも本の中で大切な部分はマーカーを引いたり、読んだ直後に大事な部分をメモにまとめたりすることが大切。そこを中心にストーリーを組んで話すことで、伝わりやすくなります。また、相手から思いもよらない感想を聞くこともあるはず。自分の価値観とは違うものに触れ、普通なら見過ごしてしまう部分を見ることができるのも、他人に話すメリットの1つなのです。*著者によると、SNSで仲間を募って本の感想を言い合ったり、ブログにまとめたりするのも読書を習慣化したり、アウトプットするのに効果的とのこと。実際この本と連動したFacebookページも立ち上がっています。仕事でもっと活躍したい、視野を広げたいという人は、1日30分読書の時間を確保することから始めてみませんか。(文/平野鞠) 【参考】※赤羽雄二(2016)『アクションリーディング』SBクリエイティブ※読書に関する調査-株式会社クロス・マーケティング
2016年06月09日「子どもを本好きにしたいけど、読み聞かせにあんまり興味を持ってくれない。どうしたらいいの?」そんな悩みを持つ未就学児ママも少なくないはず。子どもといってもひとりの人間。なにかを好きになってもらうのは、そう簡単なことではないですよね。そんな悩み解決へのヒントにしたいのが「読書のアニマシオン」。フランス生まれ、日本でも徐々に広がりつつある活動です。新刊『子どもの心に本をとどける30のアニマシオン』(岩辺泰吏&読書のアニマシオン研究会編著、かもがわ出版)を参考に、1歳から大人まで楽しめる「読書のアニマシオン」について見ていきましょう。■アニマシオンってどんな活動?数人の子どもたちと、なかが読めないようにバンドでとめた本が数冊。子どもたちはグループに分かれ、本のタイトルと表紙のイラストを頼りに「どんなお話かな?」と想像力を膨らませてにぎやかにストーリーを考えていきます。一生懸命考えたストーリーを発表したあと、「本当はどんなお話なのかな?」と、手にした本を開く子どもたち。こうした活動が「読書のアニマシオン」と呼ばれるものです。「アニマシオン」とは、「アニマ(anima)」=魂や心をいきいきと活性化させる活動。転じて、フランス生まれの「市民が主体的に取り組む生涯学習運動」を指します。その目的は、グループで行うゲームのような活動を通して生活を楽しみ、心にゆとりを持つこと。指導役を務める「アニメーター(アニメトゥール)」は、1970年以降、「社会・教育・スポーツ・文化の活性化にあたる専門職員」として、国家資格を持つ職業になるなど、フランスでは広く知られた活動です。アニメーターというとテレビアニメを描く仕事をイメージしますが、両者はまったく別もの。しかし一方で、著名な漫画家・手塚治虫は、アニメーションとは1枚の絵に命を吹き込むことであるという趣旨の言葉を遺しているそう。魂・心を根本とした活動、という共通点があるといえそうです。■遊びながら自分自身を見つける本をツールとして「人生を豊かに生きる」ことを学べる活動、「読書のアニマシオン」。学校や地域の図書館を主な舞台に、遊びの要素も取り入れ、未知の世界や信頼できる仲間、そしてときには「自分はこんなことに興味があったんだ」と、自分自身も発見することもできます。冒頭で紹介した「どの本、読もうかな?」や、本を読んで自分なりのタイトルを考える「新しいタイトルを考えよう」といった低学年から楽しめるものから、物語を途中まで読んで続きを想像する「きみたちが作家なら」、映画化された小説の一部を読み、グループごとに「どの場面を映像化するか」を発表したあとに実際の映画を見て感想を述べ合う「きょうはきみが映画監督」といった深い読みが必要なものまでさまざま。いずれも、仲間と楽しく想像力をはたらかせて楽しみます。■アニマシオンは1歳からOK!一方、字を読んだり書いたりすることができない未就学児も本に親しむことができるのも、読書のアニマシオンの魅力のひとつ。本書は、教員や司書らで活動する<読書のアニマシオン研究会>が、約20年にわたる活動の成果をまとめたもの。実際にアニマシオンに取り組む図書館職員らのレポートも数多く紹介されています。そのなかのひとつ、徳島市立図書館副館長の廣澤貴理子さんの体験レポートでは、1~3歳の未就学児を対象とした活動について書かれています。絵本をテキストに、声を出したりお母さんと子どものスキンシップを多用したりと、参加型で行われるのが、1~3歳児を対象としたアニマシオンの特徴。絵本に出てくる生き物の絵を描いたカードを配り、手持ちのカードがお話に登場したら子どもにカードをあげてもらったり、並べてもらったり。紙芝居『まんまるまんまたんたかたん』では、リズミカルなセリフを一緒に声に出して読みながら手をたたくなど、ストーリーが理解できない年齢でも、動きや絵を使ってわかりやすく楽しめるよう工夫されています。活動をすすめるアニメーターである廣澤さんは、「私は子どもたちの心に一粒の種をまく人でありたいと思います。小さな積み重ねは、かけがえのない財産になります。ひとりでも多くの子どもたちに本の楽しさを届けるためにいま、置かれているところで自分も楽しみながら続ける、これに尽きると思います」と語ります。*子どもたちが「本って楽しいな」「知らないことを知るって楽しいな」と思えるように、いろいろな仕掛けで本との出会いを演出する「読書のアニマシオン」。本書では、具体的な30のアイデアが紹介されています。図書館での取り組みはもちろん、児童館や数人のママが集まって手作りで挑戦することもできそう。本書を読書への扉を開くきっかけにしてみてはいかがでしょうか。(文/よりみちこ) 【参考】※岩辺泰吏&読書のアニマシオン研究会(2016)『子どもの心に本をとどける30のアニマシオン』かもがわ出版
2016年06月02日NPO法人知的資源イニシアティブ(IRI)が企画し、先進的な活動を行う機関に贈られる「Library of the Year2015」で優勝賞に選ばれた塩尻市立図書館。人口わずか6万7,000名の町の施設であるにもかかわらず、開館5年で累計来場者300万名を達成しているというのです。いったい、どんな図書館なのでしょうか?そのあゆみと魅力を、新刊『「本の寺子屋」が地方を創る 塩尻市立図書館の挑戦』(「信州しおじり 本の寺子屋」研究会著、東洋出版)から探ってみましょう。■市民のいこいの場が集約されている塩尻市立図書館は、2010年に開館した「塩尻市民交流センター(愛称・えんぱーく)」内の施設。同センターにはほかにも子育て支援センターや会議室、食育室、ハローワーク、屋上広場など、市民のいこいの場が集約されています。3面ガラス張りで吹き抜けを多用した「えんぱーく」は明るい雰囲気。その中心である図書館には、静かに調べものや読書をするスペースだけでなく、会話可能なスペースやカフェも併設。従来の「私語厳禁」のイメージとは違い、市民のコミュニケーションの場にもなっています。とはいえ、同図書館が人口の数十倍が訪れる“スーパー図書館”として親しまれている理由は、決してそれだけではありません。そこには、とっておきの仕掛け、「信州しおじり 本の寺子屋」の取り組みがあるのです。■作家やジャーナリストが無料で講演「信州しおじり 本の寺子屋」は、2012年7月から同図書館がスタートさせた事業。「本・出版」をテーマに月に1~2回程度、作家やジャーナリストといった出版にかかわる人々を講師に迎え、講演やワークショップなどを無料で行っています。開講第1回目の作家・佐高信氏の講演を皮切りに、これまでに作家の島田雅彦氏や長江朗氏、ノンフィクション作家の柳田邦男氏や大下英治氏、詩人の谷川俊太郎氏、画家で絵本作家のいせひでこ氏らが来館しました。テーマを「本・出版」としたのには、塩尻市ならではの背景もあります。同市は、筑摩書房の創業者・古田晁氏の故郷。太宰治、井伏鱒二といった作家たちと交流を深め、現代の文学思潮に少なからぬ影響を与えた人物で、今なお塩尻市民の誇りの源になっているといいます。同地は歴史的にも“寺子屋”が多かった土地柄でもありました。こうして、書き手をはじめとした「担い手」と「読み手」である市民とが一緒になって本の可能性を考える「本の寺子屋」は出発したのです。2015年度末までの3年8か月間で約50回の講演や朗読会などのイベントが行われ、受講生はのべ5400人にも上っています。■2人のキーマンが本の寺子屋を実現なぜ、いち地方都市の市立図書館がこれほどの企画を継続的に運営できているのか。その陰には2人のキーマンの存在がありました。1人は、2007年から「本の寺子屋」事業がスタートする2012年春まで同図書館の館長を務めた内野安彦さん。28年務めた茨城県鹿島市役所からヘッドハンティングされた内野さんは、鹿島市でも務めた図書館長の職に就任。当初、塩尻についての知識を得るため地元の古書店を巡り、古書店主と相談しながら本をそろえるという、非常にユニークな図書館運営を行っていました。そして、新たなあゆみを始めていた同図書館を、もうひとりのキーマンが訪ねます。長く出版界に身を置き、河出書房新社で季刊誌「文藝」編集長も務めた長田洋一さん。第一線を退き長野に移り住んだ後も、「いい本」ではなく「売れる本」ばかりがつくられる出版界に危機感を抱いていました。そんな2人が塩尻の地で出会い、「本の寺子屋」の構想がスタート。長田さんのもつ出版界での人脈を生かし、さまざまな企画を実現しています。■塩尻市立図書館は本の復権を目指す「本の寺子屋」が目指すものは「本の復権」。本書にはこうあります。「(『本の寺子屋』は)地域に生きる市民の生活の中心にもう一度、本を据え直し、読書を習慣化させるための方策を、書き手、つくり手、送り手、読み手が共同して創り出そうという仕組みである。その根底には、映像や音楽の鑑賞からは得られない、読書のみが与えてくれる知的興奮、喜びがある、との信念がある」貸出冊数を増やすためなら、ベストセラーや人気作家の書籍をたくさんそろえるのが近道。しかし、それでは「本の復権」の理念に反する、というのが塩尻市立図書館の思い。それより、年に1度か2度くらいしか貸し出されなくても「その本が図書館にあって助かった」という利用者を増やすことに予算を使いたい、という思いが根底にあるからです。塩尻市立図書館は、そんな「課題解決型図書館」を目指しているのです。*塩尻市立図書館の取り組みは、地域の活性化にも大きな役割を担っています。本書は、このユニークな図書館のあゆみが関係者の思いに深く寄り添って書かれたノンフィクション。著者グループは「本の寺子屋」の受講生です。「売れる本」ではなく「いい本」の復権を――そんな、図書館の熱い思いに打たれます。読めば図書館に足を運びたくなる、そんな1冊です。(文/よりみちこ) 【参考】※「信州しおじり 本の寺子屋」研究会著(2016)『「本の寺子屋」が地方を創る 塩尻市立図書館の挑戦』東洋出版
2016年05月24日最大震度7を2回観測した熊本地震から、1ヶ月あまりが経ちました。怪我を負ったり、大切なものを失ったり、いまだ避難所での生活を余儀なくされている方もおり、当地では余震が観測される状況も続いています。そんななか、震災後1ヶ月というこの時期は、心のケアに改めて目が向けられはじめるタイミングでもあります。5月16日の報道で、熊本市教育委員会が市立小中学校全137校の計6万1,039人を対象にアンケートを実施、カウンセリングが必要と思われる児童・生徒が2,143人(3.5%)に上ったとの発表が伝えられました。今後、各校を巡回する臨床心理士を増員するなどの対応が進められる予定です。そして、子どもたちを笑顔にする“物語の力”が心のケアに果たす役割も、決して小さくはありません。東日本大震災から丸5年のことし2016年3月11日に刊行された『生きてごらん、大丈夫子どもと本と、出会いをつむぐ』(佐々波幸子著、かもがわ出版)には、東日本大震災後のできごとを追った文章が取り上げられています。降りかかる大きな試練に“物語の力”が果たす役割とはなにか。本書から読みとります。■震災のストレスを絵本が癒やした本書は、朝日新聞の記者である著者・佐々波さんが書き、2008年以降に同紙に掲載された“子どもと本”にまつわる記事をまとめたもの。詩人のまど・みちおさんや児童書作家の岡田淳さん、上橋菜穂子さんといった児童文学の担い手へのインタビュー、ブックスタート活動や読み聞かせの現場を取材した記事などに加えて、東日本大震災以降に同紙に掲載された、被災地での活動を伝えた記事も採録されています。被災地に絵本を届ける「3.11絵本プロジェクトいわて」の記事は、その一環で2011年4月27日に紙面に掲載されたもの。震災からひと月あまりが経った4月16日、プロジェクトのメンバーが岩手県大船渡市内の保育所を訪れたときの様子が記されています。当時、道の両脇には打ち上げられた漁船やがれきの山。風が吹けば車の破片や家の断熱材が飛び散る恐れもあり、外で遊ぶことができない園児たち、そして親たちにもストレスがたまっていました。この日、保育所に運び込まれた絵本は400冊。同プロジェクトの「被災地の子どもたちに絵本を」との呼びかけに応えて全国から寄せられたものでした。絵本『はらぺこあおむし』の読み聞かせに身を乗り出して聞き入り、にぎやかに声を上げて楽しんだ園児たち。「好きな本を選んでいいですよ」と声をかけられ、うれしそうに絵本に一斉に駆け寄りました。その日、子どもたちは絵本を持ち帰り、震災以来途絶えていた物語に親しむ時間を久しぶりに持つことができたのです。■本は食糧や毛布と同じくらい必要震災後1ヶ月の間に、同プロジェクトはこうして27の避難所や保育所、小学校に計1万2,700冊の本を提供し、絵本を乗せた「えほんカー」を走らせたそう。同プロジェクトの活動は現在も続いています。記事は、プロジェクトの呼びかけ人で児童図書編集者・末盛千枝子さんのこんな言葉で結ばれています。「遠くにちらっと希望や夢が見えていないと、人はなかなか歩き出せない。そういう力が絵本にはあると思うんです」このエピソードをはじめ、本書にまとめられた40本ほどの記事の端々から、生きる力を与えてくれる“物語の力”の存在を読みとることができます。2009年9月の朝日新聞「ひと」欄に掲載された国際児童図書評議会のパトリシア・アルダナ会長(当時)の記事では、洪水で両親を失い丸2日言葉が出なかったベネズエラの少年が、読んでもらった絵本を抱えて帰った翌朝、言葉を取り戻したエピソードが紹介されています。アルダナ氏は「本には凍りついた感情をとかす力がある。食糧や毛布と同じように速く届けることが必要なんです」と語ります。■本の主人公にふれることの大切さ“物語の力”は、子どもひとりひとりが生活のなかで直面する試練にもはたらきかけます。2008年12月16日に紙面に掲載されたインタビュー記事。東京子ども図書館理事長で翻訳家の松岡享子さんは、いじめに苦しむ子どもに向けてこう語りかけます。「いましか視野に入っていないと、とてもつらい。友だちのひと言で心が埋め尽くされてしまう。乗り越えるには、ちょっと離れて自分を見ることが必要です。さまざまな本の主人公の生き方にふれることで、自分に降りかかったことを複眼的に見られるようになってきます」*人生には、さまざまな試練が訪れます。多くの人が一度に巻き込まれる災害時はとくに、飢えや怪我など生命に直接かかわる被害へのいち早い対応が第一です。そして1ヶ月という時間が経ったいま、今度は目に見えない心の傷にも思いをいたすことが求められるのではないでしょうか。本書のタイトルは、児童文学の評論家で『ゲド戦記』などの翻訳でも知られる清水真砂子さんが2009年、34年間勤めた青山学院女子短大での最終講義で語った、「すぐれた子どもの本は『大きくなるって楽しいことだよ。生きてごらん、大丈夫』と背中を押してくれるもの」というメッセージから採られています。子どもたちがどんな出来事にも負けない心を育むために、いま一度立ち止まって、子どもの本が持つ奥深さ、“物語の力”を見つめ直す――再び起こってしまった災害からの復興を願うとき、そのきっかけにしたい1冊です。(文/よりみちこ) 【参考】※佐々波幸子(2016)『生きてごらん、大丈夫子どもと本と、出会いをつむぐ』かもがわ出版
2016年05月18日『1日36万円のかばん持ち――三流が一流に変わる40の心得』(小山昇著、ダイヤモンド社)の著者は、株式会社武蔵野代表取締役社長。2001年から同社の経営の仕組みを紹介する「経営サポート事業」を展開しており、現在、600社以上の会員企業を指導しているのだといいます。「かばん持ち同行」もそのひとつで、著者のあらゆる場面に同行・同席するというもの。その仕事ぶりを身をもって感じることで、経営者としての心構えを会得する「3日間プログラム」であり、多くの社長が参加しているのだといいます。費用はなんと「1日36万円」。プログラムは3日間なので、108万円(税込)を支払わなければならないことになります。著者は多い日は1万歩歩いているといいますから、一歩36円の計算。しかしそれでも、多くの社長がかばん持ちをしようと著者のもとを訪れ、そして値段以上の価値を実感しているというのです。つまり、3日で108万円の現場研修を、たった1冊読むだけで体感できるようにしたのが本書だということ。きょうはそのなかから、お金に関するいくつかの「心得」をご紹介したいと思います。■「売上」と「現金」はイコールではない著者の「かばん持ち」をした多くの社長は、「売り上げを伸ばせば、会社はつぶれない」と考えていたそうです。しかし著者によれば、それは間違い。銀行の格付が7以下の会社(業績が不安定な要注意先の企業)が「3年間125%以上」の増収増益をすると、資金ショートで黒字倒産するとも。なぜなら、「売上」と「現金」は必ずしもイコールではないから。「売掛・在庫」という概念がないと、倒産の危機を招くことがあるというのです。現金で仕入れていて、売掛で販売していたら、帳簿上は利益が出ていても、実際には現金は減っていくということ。見逃すべきでないのは、会社が上げる利益の50%は税金だという事実。残りの半分、つまり利益の25%を予定納税として納付するので、残りは利益の25%。ところが今度は、借入金の返済が待っている。しかし、その25%が在庫や売掛金になっていたとしたら、資金難に陥って倒産してしまうことに。これが黒字倒産のカラクリだというわけです。■経営は「現金にはじまり現金に終わる」だからこそ著者は、現金は会社の血液だと断言します。現金である以上、止まると倒産するわけです。どんなに儲かっていたとしても、現金がなければ、賞与も給料も支払うことができなくなります。しかし逆に、たとえ赤字だったとしても、B/S(貸借対照表)を見ながら資金調達の仕方を変えていけば倒産することはないということ。だから会社には最低でも、「月照と同額の現金」を用意しておくことが鉄則。「経営は現金にはじまり、現金に終わる」と著者がいい切るのは、そんな考えが根底にあるから。モノの長さをはかるのは「ものさし」。重さを量るのは「はかり」。そして、経営をはかるのが「現金」だというのです。■繰上げ返済をしてはいけない3つの理由多くの社長が「銀行に金利を払うのはもったいない」といいますが、著者によればそれは間違い。「金利は会社が成長するための必要経費」と考えているため、金利をたくさん払っても、「たくさんのお金を借りて、現金をたくさん持っていること」が正しいというのです。「金利はもったいない」と考えている社長は、借入れをすると「繰上げ返済をしたい」と考えるもの。でも、資金に余裕があっても、繰上げ返済をしてはいけないと著者。理由は3つあるそうです。(1)会社が赤字でも、現金が回れば倒産しないから先に触れたとおり、黒字倒産の原因は現金を持っていないこと。でも、銀行から融資を受けて現預金を持っていれば、会社が赤字でも倒産はしないものだといいます。(2)銀行が損をするから銀行は融資をするとき、「期限の利益」を考えているもの。「この会社にこれだけ貸せば、これだけの金利が得られる」とわかっているわけです。ところが期限より前に返済されると、利益が少なくなってしまいます。銀行は会社が危ないときでもお金を貸してくれたのですから、こちらの都合で繰上げ返済をするのは、恩を仇で返すことと同じだと著者はいいます。(3)銀行は、緊急支払い能力の高い会社に貸すから銀行は、なにがあっても返済してくれる会社にお金を貸すもの。月照の3倍の普通預金(最低でも月照と同額の現金)を確保しておけば、銀行は「この会社はキャッシュポジションがいい(手持ちの現金がたくさんある)」と判断し、融資をしてくれるそうです。借りた額が半分くらいになったら、銀行に「折り返し」でもう一度借りることが大切だとか。たとえば「5,000万円を期間5年」で借りていて、3年で2,500万円を返済したとしたら、もう一度2,500万円を借り、新たに5年の長期融資をしてもらうということ。このように常に現金を確保しておけば、たとえ赤字でも会社はつぶれないということです。*著者の経営方針はユニークかつパワフル、そして理にかなったもの。だからこそ経営者は本書から、それらを吸収することができるのではないでしょうか?(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※小山昇(2016)『1日36万円のかばん持ち――三流が一流に変わる40の心得』ダイヤモンド社
2016年04月26日前回 、子どもが英語力を身につけるためには、英語の絵本が必要不可欠というお話をしました。今回は英語を勉強したことのないお子さんでも楽しめる絵本を、バイリンガル育児コンサルタントの山田日弓さんにご紹介いただきます。おすすめの英語絵本&CD付き英語絵本※タイトル横のカッコ内の数字は興味を持ちやすい年齢の参考として記載していますが、どの絵本も0歳からの読み聞かせが可能です。また英語のレベルが高くないお子さんでしたら、もっと高い年齢でも利用できます。・『 Quiet Loud 』(0歳~3歳または英語初心者向け)子どもたちに大人気のシリーズ絵本です。左ページに「Quiet(静か)」なこと、右ページに「Loud(うるさい)ことが描かれています。カラフルな絵にユーモアたっぷりの内容で、大人でもクスッと笑ってしまうくらい楽しいですよ。・『 Where's Spot? 』(0歳~3歳または英語初心者向け)お母さん犬のサリーが、子ども犬のスポットを「どこにいるの?」と探します。洋服ダンスやベッドの下など、スポットがいそうなところは絵をめくれるしかけになっていて、楽しみながら読み進められます。こちらもシリーズ絵本ですので、気に入ったら別のバージョンも読んでみてください。・『 I Spy Little Animals 』(1歳~4歳または英語初心者向け)日本では『ミッケ!』というタイトルで知られているシリーズ絵本です。『ウォーリーをさがせ!』のように絵を探すゲームを楽しみながら、ボキャブラリーを増やすことができます。・『 I Spy a Dinosaur's Eye 』(4歳~8歳または英語初心者向け)同じく『I Spyシリーズ』の絵本です。『I Spy Little Animals』よりも絵が細かく、難易度が高くなっています。・『 Scholastic I Spy Phonics Fun Box Set with Flashcards & CD 』(4歳~8歳または英語初心者向け)同じく『I Spyシリーズ』で、フォニックスファンCD・フラッシュカード付きボックスセットです。・『 See you later, Alligator! 』(4歳~8歳または英語初心者向け)働き者のクロコダイルが、怠け者のアリゲーターにお手伝いをお願いします。でも、アリゲーターはさまざまな理由をつけて断り続けます。指人形がついていて、顔の部分を動かすことができる、とても楽しい本です。私が学長を務めるソレイユ広尾インターナショナルプリスクールの生徒たちは、この本のタイトルを覚えて、先生たちへの挨拶として使っています。英語圏のネイティブは”See you later, Alligator.”を「さよなら、またね」という意味で使います。日本語で言う「さよなら三角、また来て四角」のようなダジャレ感覚です。『 I Want to Be an Astronaut 』(2歳~5歳または英語初心者向け)宇宙飛行士がスペースシャトルに乗って宇宙に行くお話です。ときには宇宙に夢をはせるのもよいですね。3歳~4歳くらいになると、アニメのキャラクターが出てくる絵本も楽しめます。英語のアニメを親子で見ておくと、発音が耳に残り、絵本を読んであげやすくなるでしょう。英語の絵本はユーモアを取り入れたものが多く、子どもはもちろん大人も楽しめる点がいいですね。絵本を読む時間を、親子の大切なふれあいタイムとして楽しんでください。今回取材に協力してくださったのは山田 日弓(やまだ ひゆみ)さんソレイユインターナショナルスクール学長。東大法学部卒。米国デューク大学ロースクール修士。米国コロンビア大学プロフェッショナルフェロー。外資系企業(GE)などを経て現職に。自身の経験や、バイリンガル研究の成果を元に、バイリンガル育児コンサルタントとして活躍中。■0歳からのバイリンガル育成スクール Soleilis(ソレイユインターナショナルスクール) ■ブログ「 年収3000万円以上の子供を育てる方法 」
2016年03月29日図鑑というと、ちょっと専門的なイメージがあるかもしれませんが、プロフェッショナル向きというより、もっと気軽に楽しめて写真がお洒落な本がたくさんあります。たとえば、肉厚な葉っぱが愛らしい多肉植物、海や森で拾ってきた“自然の落としもの”である流木やヒトデや木の実、地球の創造物といえる鉱物など、実際にコレクションするにはスペースが限られていて難しくても、図鑑を開けば、そこは自分だけのワンダーランド。リアルに育てたりコレクションするもよし、見るだけで癒されるもよし、そんな本を3冊ご紹介しましょう。「多肉植物図鑑」でお気に入りの多肉植物を見つける楽しみガーデニングといえば、花やプランツ類と決まっていたのは昔のこと。今は、苔、盆栽、サボテン、エアープランツなど、多種多様な植物たちが一般的になりました。なかでも、多肉植物の人気は目覚ましいものが…。カフェやインテリアショップなどでもよく見かけるようになり、気がつくと欲しくてたまらなくなっていました。私はまったくの初心者ですし、本格的にたくさん収集して育てられるわけもなく、恐る恐る購入したのが本書。あまりに専門的だと挫折しそうな自分にはぴったりの、お洒落でカジュアルな図鑑です。コロンとした多肉たちの可愛いこと! 表紙に「ぷっくり可愛い、ちょっとグロテスク」とありますが、まさに、そこが多肉植物の魅力ではないでしょうか。多肉植物を扱う専門ブランド「sol×sol(ソルバイソル)」のクリエイティブディレクター・松山美紗さんが著者なので、多肉植物の種類や育て方のみならず、寄せ植えの写真やヒントが載っているのも楽しいです。丸い器や長方形の鉢を選んだり、シンボルツリーを中心に置いてサボテンを周囲に配してみたりと、センスが素敵! アンティークの鉢や漆の器を使ってユニークに寄せ植えしてみたい、というのが私の将来のささやかな夢です。「海と森の標本函」に誘われるイマジネーションの机上旅行“コーミング”という言葉をご存じですか? 本書の著者である結城伸子さんは、“宝もの探し”と訳しておられますが、海辺や森などに落ちているものを、きれいだなと思って拾いあつめることだと、この本で初めて知りました。海岸に打ち寄せられた漂着物を拾いあつめることは、“beachcombing ビーチコーミング”。comb は髪を梳くという意味があり、“浜辺を梳くように探す”ことだとか。世界中に愛好家がいるそうです。「なぜこんなかたちなんだろう、うーむおかしい、なんて不気味、謎めいていてすごく変……そんな単純な驚きと喜びをもたらしてくれるもの、この世はなんて驚きに満ちているのだろうと思わせてくれるものに強く惹かれます」と語る結城さんが、海辺や森で拾いあつめてきた自然のかけらたちが、一冊にまとまりました。持ち帰ったら、不思議なかたちと遊びながら、標本に。洗浄・乾燥など、少し手を加えるだけできれいに長く保存できるとか。ラベルをつけて飾って眺めることも、コーミングする者にとっては至福のひとときだそう。彼女はそれを、 “アナザーワールド” への机上旅行と呼んでいます。なんて素敵な旅でしょう。私はそれを、さらに空想の世界で楽しんでいます。部屋は狭くても、脳内の標本棚にはそれこそ膨大なコレクションが!「賢治と鉱物」が教えてくれる鉱物のポエティックな佇まい宮澤賢治は、 “石っこ賢さん” とあだ名されるほど、子供の頃から石に興味を持っていたそうです。彼の文章にはよく鉱物の名前が出てくるなあ、と思ってはいたのですが、まさにぴったりの本を発見! 本書は、賢治作品と鉱物、鉱物写真と鉱物解説の二段構えになっており、それぞれの専門家である加藤禎一さんと青木正博さんが担当されています。鉱物の美しさには惹かれるものの、詳細な知識を得たいわけでなく、宮澤賢治は好きだけれど、彼の作品を研究しているほどではない、という自分のスタンスに優しく寄り添ってくれる本書は、「鉱物に魅せられた宮澤賢治が見ているものを、彼の肩越しに見るような想い」と、帯に書かれたそのままの気持ちを味わえるのです。ワクワクしますよ。「その一つの平屋根の上に、目もさめるやうな、青宝石と黄玉の大きな二つのすきとほった球が、輪になってしづかにくるくるとまはってゐました(原文ママ)」という、童話「銀河鉄道の夜」のアルビレオ観測所のシーンが、子供の頃から気になっていましたが、この青はサファイアの描写なのですね。宝石を持つことには関心がないのですけれど、鉱物を知ることで、地球の神秘への畏敬の念がさらに深まりました。お勧めしたい一冊です。いかがでしたか? 眠る前にめくったらファンタスティックな夢が見られそう。居ながらにして、果てしない未知の世界を体験できるはずです。・ 「多肉植物図鑑」 ・ 「海と森の標本函」 ・ 「賢治と鉱物」
2016年03月17日「ねえママ、とんかつは、生きた豚さんだったの?」「面倒なのに、犬の散歩に行かないといけないの?」「体のなかは、どうなっているの?」ある日、子どもからこんな質問をされたら、一体どのように答えたらよいのでしょうか? 大切な問題ですが、どこまで話してもよいものなのか…。とまどいますよね。ちょっぴり深刻ですが、避けて通ることのできないテーマである「いのち」。その「いのち」を親子で話し合うときに、おすすめの3冊の本を紹介します。いのちを食べるとは?『 いのちの食べかた 』(森達也・著/イースト・プレス)子どもたちが大好きな「お肉」。ですが、「どうやって、牛さんはステーキになったの?」と訊かれたら、とても答えにくくはありませんか?「小さな子には残酷!」「食肉業の歴史を話すべきなのかしら?」そんな疑問が頭をよぎります。でも、ウソはつきたくないですよね。『いのちの食べかた』は、事実に目をそむけることなく、動物が食卓に上るまでをたんたんと書いています。たしかに、家畜が食肉になる過程はどうしても刺激が強いものです。しかし、『いのちの食べかた』には動物たちを苦しませて命を絶つと肉がまずくなるため、できるだけ恐怖や苦しみをあたえないように工夫していることなどが、詳しくつづられています。だから逆に、この本を読むとほかの生物の命をいただいている、という後ろめたさから解放されます。命を提供してくれた牛や豚や、食肉の加工にたずさわるすべての方々へ、感謝の気持ちを伝えたくなる1冊です。犬が語る「どうして?」『 どうして? 犬を愛するすべての人へ 』(原作・ジム・ウィリス/文・石黒謙吾/絵・木内達朗/アスペクト)ペットは大切な家族です。でもそれは、なぜでしょうか? 子犬を引き取った人は、最初のうち、小さくてめずらしいその存在に、ご飯をあげたり、ブラッシングをしたり、こまめに世話をしてあげるはずです。ところが、日にちがたつと、散歩に行ったり、遊んであげたりするのも面倒になるかもしれません。特に子どもは興味の対象がうつろいやすいもの。だけど、ワンちゃんは生きています。「毎日、面倒を見る約束だったでしょ!?」と声を荒げても、子どもの心は動きません。そんなときは、この絵本を開いてみてください。「どうして?」この言葉は、いたずら好きの子犬に飼い主が言ったセリフでした。やがてその子犬は、かしこく忠実に成長していきます。しかし、楽しい日々は長くは続きませんでした。人の事情だけで、安楽死されることになった犬が、今度は人間に問いかけます。「どうして?」と。この本には悪役が登場しません。けれども、誰の心のなかにでも存在する「まいいか」という気持ちが重なると、結果的に取り返しがつかない事態をまねくことを、わかりやすく表現しています。体のなかを大冒険!『 最高に美しい人体図鑑 』(監訳・奈良信雄/エクスナレッジ)テレビで手術のシーンが出てきたら、目をそらす人は多いのではないでしょうか。体のなかは、気持ち悪い! おどろおどろしい!そんなイメージがあるかもしれません。しかし本当は、人体は美しいのです。この図鑑では筋肉や骨、血管や胃腸などを、大きくて詳しいイラストで紹介しています。あざやかな色彩と立体感がある描写は迫力満点。まるで、体内側にもぐりこんだような臨場感にあふれています。パーツのひとつひとつを拡大しているため、「人体図鑑」特有の生々しさははなく、「宇宙図鑑」を眺めているようなスケールの大きさが魅力的です。親子で体のなかのフロンティアを大冒険してみませんか?「いのち」は、軽い話題ではないからこそ、親子でしっかり、納得いくまで話し合いたいテーマですよね。紹介した本を読みながら、子どもと話してみるのもいいかもしれません。
2016年03月12日いま、読書に苦手意識を持っている人が少なくありません。平成25年の文化庁調査では、1カ月の読書量が「0冊」という人が47.5%とほぼ2人に1人。「読書に興味はあるけど、時間がなくて……」「もっとスラスラ本が読めればなぁ」なんて思っている人も少なくないのでは?「僕も、本を読むのが遅いんですよ、本当に。気づくと同じ行を何回も読んでいたり、放っておくと1ページ読むのに5分くらいかかっちゃう“遅読家”なんです」そう話すのは、月60冊の本を読み、『Suzie』など4つの媒体で書評を発表している書評家の印南敦史さん。“遅読家”なのに1日2冊も本を読める、その秘密はどこにあるのでしょう?『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)を出版した印南さんに、本がスラスラ読める”とっておきの方法”を伺ってきました!■10日間のダラダラ読みより60分のパラパラ読み印南さんがすすめる基本の読書スタイルは、このひとことに集約されています。パラパラ読み、つまり本の内容が自分のなかを”流れていく(flow)”ように読む。それは”読書”という言葉から受けがちな、じっくり熟読するイメージとは対照的なスタイルです。「そもそも、時間をかけて熟読しても、内容の多くは忘れてしまうものです。じっくり読んでも流すように読んでも、印象に残る部分は案外同じだったりしますし、むしろ、さらっと流し読みすることで、自分にとって重要な部分が浮かび上がるんです」と印南さん。「毎日本を読んで書評を書く」という仕事を始めてからそのことに気づいた印南さんは、読書への考え方を180度転換します。そして生まれたのがこの「フロー・リーディング」という発想。”流れるように”さらっと目を通し、気になった言葉や引っかかったところに重点を置く読書法です。■読書リズムをつくる秘策「寝起き10分読書習慣」読書に対する思い込みを取り払ったら、身につけたいのが「読書リズムをつくる」こと。そのためのとっておきの方法が“寝起き10分読書”です。「まず1日10分でいいから、決まった時間帯に本を開く習慣をつけること。本を開くことが”普通”になれば、電車に乗ったり時間がちょっとあいた時にもスマートフォンではなく本を開くようになったり、読書がどんどん身近に、楽しくなっていくんです」10分では短い気がしますが、じつはそれもポイント。とにかく時間がないという人も1日10分なら確保でき、時間に制限があることで集中力が高まってフロー・リーディングがしやすくなるといいます。そして“寝起き”の真意は?「起きたときって頭が冴えていて、情報がすぐに頭に入ってきます。それに、読書のリズムをつくるには、毎日同じ時間帯に習慣づけするのがいちばん。目が覚めてから布団を出るまでの時間って、ムダに費やしちゃうことが多いですよね。毎日10分くらいの時間を確保するのもわりと楽なので、習慣づけしやすいんです。その上、スッキリ起きられるメリットもあります」■10分読書をするだけで1日中アイドリング状態にさっそく読書の習慣づけにトライしてみたくなったという人のために、『遅読家のための読書術―』から、印南さんがおすすめする「iPhoneのアラーム機能を使った”寝起き10分読書”の具体例」をご紹介しましょう。たとえば朝7時に起きて活動する場合――・6時49分 目覚まし時計の音 → 読書開始・6時50分 好きな音楽(読書用BGM) → 音楽を聴きながら読書・7時00分 目覚まし時計の音 → 読書をやめて起きる「1日10分の習慣がつけば、それがエンジンになるんです。たとえば朝10分読書して『もっと読みたいな』と思えたなら、そこで一旦やめても続きが気になるから、昼休みにまた読める。そうやって1日ずっと“アイドリング状態”でいられるんです。エンジンをかければすぐにワッと発進できる、そんな状態をキープできるんですね。それを積み重ねていくと、本を開くこと自体が習慣になるんです」*『遅読家のための読書術―』は発売数日で増刷が決まるなど、大きな反響を呼んでいます。「本をもっと速く読みたい、たくさん読みたいと思っている人がけっこういるということだと思っています。出版不況ともいわれるけれど、みんなそれほど読書嫌いではない気がする。たとえばスマホを開いているとき、名作文学が読める“青空文庫”を読んでいる可能性もある。そうでなくとも、なんらかの文字情報に触れている人は少なくないはず。本かどうかは別として”読んでいる”ことが、スタートラインとして重要じゃないかなと思うんです。スマホでなにかを読んで興味を持ったことがきっかけで、本を買ってみるということもあるでしょうし。だから、『本が売れない』『みんな本を読まない』と悲観するよりも、もっと『本って楽しいよね』っていうことをいい続けていきたいですね」と印南さん。その言葉には、本を愛する気持ちがこもっています。本書では、ほかにも本をスラスラ読める「フロー・リーディング」のアイデアがたくさん紹介されています。どれも”遅読家”の印南さんが編み出した、誰にでも可能な方法。本を開けば別世界が広がったり、知らなかったことに出会えたり、それが読書の魅力です。本書をきっかけに、月20冊があたり前になる読書生活を楽しんでみませんか?(文/よりみちこ) 【取材協力】※印南敦史・・・作家、フリーランスライター、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。ウェブ媒体『LifeHacker[日本版]』『NewsWeek日本版』『Suzie』『WANI BOOKOUT』などで年間700本以上の書評を発表している。著書に『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)のほか、音楽関連著作が多数。 【参考】※印南敦史(2016)『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』ダイヤモンド社※本を年間700冊も読む書評家が教える「3つの読書習慣構築術」―Suzie
2016年03月11日季節の変わり目は、体調を崩してしまいがち。まだまだ寒い日が続くので、体の冷えを感じているという人も多いのでは? 花粉症などのアレルギーも、中医学的には体の冷えからくるものだといいます。体を整えるために、基本となるのはやはり毎日の食事。改めて食生活を見直し、風邪や花粉症に負けない体作りをするための、参考になるような本3冊を選んでみました。体を温め、免疫力をあげる食事『生きるための料理』たなかれいこ(リトルモア)自身で畑を耕し、食べ物教室を主宰する料理家・たなかれいこさんが、旬の食材を摂ることで体を温め、免疫力をつける生活を提案する本書。文字だけの潔い表紙に書かれているのは、そんなたなかさんが基本とする7か条。お腹が空いたときに食べる、塩むすびや葛練りの話に始まり、れんこんやにんじん、大根など身近な食材を使ったシンプルなレシピのほか、簡単なだしのとり方やごはんの炊き方も掲載されています。素材も調味料もそれほど変わったものは使わず、ちょっとしたコツで体を温めてくれる料理になります。なにより美味しそうなので、すぐに作ってみたいと思うレシピばかり。食生活を見直すきっかけにもなり、キッチンに置いてときどき読み返したい一冊です。配合調味料もレトルト食品も使わない、簡単ごはん『基本調味料だけで作る 毎日の献立とおかず』すみや角田真秀(マイナビ出版)さまざまな調味料が巷に溢れるなか、「さしすせそ」の基本調味料だけで、もっとシンプルに料理をしようという、フードユニット「すみや」の角田真秀さんによるこの本。酢味、味噌味、しょうゆ味、塩味とそれぞれの献立例と主菜、副菜のレシピ、鍋のもとやレトルト、すし酢など便利な調味料を使わずにおいしくできるひと皿、手作りの調味料やたれなど、豊富なレシピを掲載。おなじみのメニューがほとんどですが、レシピ通りに作ればきちんと美味しく、新たな発見があること間違いなし。基本調味料を使いこなすと、調味料を使い切れないといった無駄がないだけでなく、アレンジも簡単になり、食べ疲れせず、健康管理もしやすいのだとか。献立の組み立て方の参考にもなり、普段のごはんづくりが少し楽になりそうです。お酒とともに楽しむ、薬膳おつまみ『ほろよい薬膳』鳥海明子(誠文堂新光社)薬膳料理家の鳥海明子さんによる、薬膳の考えに基づいたおつまみレシピの本。薬膳とお酒、一見すると正反対に思えますが、お酒も適量であれば、心身をリラックスさせて体を温める効果があるそう。薬膳は生薬を使う難しい料理ではなく、季節の恵みを楽しむことが基本。それを組み合わせることで、より心と体の調子を整えられるのだとか。本書では、春夏秋冬、梅雨と5つの季節、それぞれに起こりやすい症状を改善する、前菜、副菜、主菜、〆、すりながし(スープ)のレシピを掲載。鳥海さんが紹介する薬膳レシピは、「梅しそじゃこの納豆パスタ」や「アボカドの生ハム巻き」など、身近な食材を使い、手軽にできるのが魅力。二日酔い対策レシピやお燗のつけ方、ワインと料理の合わせ方などのコラムもあり、楽しく薬膳を取り入れられる一冊です。ご紹介した3冊、それぞれアプローチは違いますが、「素材の美味しさを活かして、きちんと料理することで、体調管理をする」ことの大切さを教えてくれている気がします。美味しく食べて、健やかに過ごせるなら何より。これらの本を参考に、食材の選び方や調味料から見直してみては?・ 生きるための料理 ・ 基本調味料だけで作る 毎日の献立とおかず ・ ほろよい薬膳
2016年03月08日大好きな本はたくさんあるのですが、いつも身近なところに置いて、パッと目に入るようにしておきたい本というと、やはりビジュアルも大事! 内容の素晴らしさはもちろんのこと、センスがものを言うブックデザイン含め、挿画の美しさが加わると、本はたった一冊で何冊分もの魅力を感じさせてくれる宝物になります。枕元といい、リビングルームのサイドテーブルといい、どこかしら常に手元にないと落ち着かない。表紙を目にするだけで気持ちが明るく華やいでくる、優しくも頼もしい親友のような本たち。人生をともに暮らしていく彼らを、3冊ご紹介させてください。「Paradise 花と生き物いっぱいのぬりえブック」がくれるカラフルな癒し塗り絵の本が女性を中心に大人気で、自律神経を整え、不眠にも効果的という事実を、この本と出会うまで知りませんでした。本書はその名の通り、まさにパラダイス! 色彩かなキノコや花々が躍る表紙のゴールドに、まず視線を奪われました。金子みすゞの詩とともに動植物、雪の結晶などが描かれているのですが、あまりに繊細なラインは、ぬりえというよりもはやアート。作者のタカヤママキコさんに、お話を伺いたくなりました。タカヤママキコ/イラストレーター。1983年広島県生まれ。多摩美術大学卒業。書籍、雑誌、ファッション、Web、スマホアプリなど、幅広い分野で活躍。ビームス、アーバンリサーチ、リーバイスなど、企業とのコラボレーションも多数。HPから、彼女のデザインしたTシャツやスマホケースが入手できます。―― 最初は大変かも…と思ったのですが、いざ塗ってみると本当に癒されますね。「ありがとうございます。インスタグラムでタグを付けて、写真をアップしてくださってる方がたくさんいらっしゃるんですけど、時々見てみると、みなさん、想像を絶する上手さで、私には無理だなと(笑)。色鉛筆だけでなく、パステルでふわ~っとぼかしたり、サインペンでクリアに塗ったり、いろんな画材で自由自在。すごく刺激を受けてます」―― 苦労した点、大事にされた点は?「私が育った広島の野山で触れあった自然や動植物を描いているのですが、中には虫とかミジンコも。女子に嫌われがちな虫も、可愛く描いたら好きになってくれるかな…と思って描きました。実家の近くに馬もいたし、道端や林にいるものを描きたかったんです」子供の頃は、山を探検したり、枝で編んだ釣竿で川魚を釣ったり、レンゲ畑で駆けっこしたり、虫を捕まえて観察していた、というタカヤマさん。本書には、彼女の日常を彩った景色やワンダーランドがつまっているからこそ、ホッと安らいで癒されるのですね。「好きな色、好きな塗り方で自由に塗って、植物や生き物たちに命を吹き込んであげてください。そして、あなただけのパラダイスを完成させてください」。彼女自身のふんわりピュアな雰囲気に、可愛いだけでなく、ちょっぴりポイズン(毒)な魅力も混じったオリジナリティあふれるマキコワールド。日々の忙しさや喧噪を忘れて、あなたもParadiseの世界で遊んでみませんか? 「ビロードのうさぎ」のせつなさに胸がキュンキュンある日、小さい男の子のもとに、ピンクサテンの耳が愛らしいビロードでできたおもちゃのうさぎがやってきます。うさぎは、子供部屋のおもちゃの棚で暮らし始めますが、ある時、「長い間に、子供の本当の友達になったおもちゃは“本物”になれる」という魔法のような話を耳にします。うさぎは男の子と、寝る時も庭で遊ぶ時もずっと一緒に過ごすようになり、男の子にとってかけがえのない存在となりますが、だんだん汚れていき…。1881年、ロンドン生まれの作家、マージェリィ・W・ビアンコの名作が、日本を代表する絵本作家の一人、酒井駒子さんの絵と抄訳で甦りました。酒井駒子/絵本作家。1966年兵庫県生まれ。東京芸術大学卒業。海外でも高い評価を得ている。「きつねのかみさま」(あまんきみこ/文、ポプラ社/刊)で2004年日本絵本賞、「金曜日の砂糖ちゃん」(偕成社/刊)で、2005年ブラチスラバ世界絵本原画展で金牌、「ぼく おかあさんのこと…」(文溪堂/刊)で2006年フランスのPITCHOU賞、オランダの銀の石筆賞など、受賞歴多数。ブロンズ新社HP 年、本書の発売イベントの一環で、憧れの酒井駒子さんのサイン会が、たまたま当時住んでいた六本木の青山ブックセンターであると知り、事前に購入しようと手に取り最後までパラパラと繰っていて、その場から動けなくなってしまったことがありました。童話とはいえ、心を揺さぶる衝撃の大きさと、とっくに大人になっているのにこんなにも動揺してしまう自分に驚き、本書を入手したのはそれからしばらく経ってから。というと何だか恐いみたいですが、そうではなく、どこかノスタルジーと憂いが漂う、絵の具の筆致が感じられる絵の魅力に、完全に惹き込まれてしまったからなのです。今ではお気に入りの毛布みたいに、身近にないと落ち着きません。一生見ていたい大切な絵本です。 「本と店主」の表紙の絵から清冽なイマジネーションが湧きあがる銀座の片隅にある“一冊の本を売る書店”というコンセプトの森岡書店の店主、森岡督行さんは文章の名手でもあり、今まで彼の著した「写真集 誰かに贈りたくなる108冊」(平凡社刊)や「東京旧市街地を歩く」(エクスナレッジ刊)を愛読してきました。新著「本と店主」は、森岡さんが人気のカフェや雑貨店などの店主12人に、彼らの“人生にかかわった本”について聞き出す対談インタビュー集。森岡さんらしい地に足の着いた日常感覚とメタフィジカルな魅力が交錯する内容も素敵ですが、本を描いた表紙の絵に一目惚れ。2015年12月、この絵を描いた画家の平松麻さんの個展が森岡書店で催されたので、お邪魔して、後日お話も伺いました。もともと本が大好きで、本の表紙に作品を使ってもらうことが夢だったとか。ブックデザインを担当したsmbetsmbの新保慶太さん、新保美沙子さんと相談しながら、表紙だけでなく、裏にも続く絵にしたかったので、新たに描き下ろしたそうです。平松麻/画家。1982年東京生まれ。この写真は、写真家・Eric(エリック)が、「麻ちゃんは中性的なところがあるから、半分は光、半分は影に」といって撮影したものだそう。―― 本が並ぶだけの静謐な絵なのにインパクトが強いです。麻さんにとって絵とは?「暮らしの中でいうと、野菜やパンのように生活必需品です。暮らしの中になくてはならない存在。絵の具の物質感、運筆を追う高揚感、作者が過ごした時間の積層、そういったものを近く感じていたいと思っています。種をまいて野菜や果実が育っていく過程と、わたしが経る絵の制作過程も重ねて考えることが多いです。芽が出て水をやったら茎が枝になって、枝分かれして実ができてくる。実が大きくなったら収穫して、展覧会という場所で観てもらう。実がなくなったら、次はまた、種植えから…。そんな制作姿勢が理想です」―― きれいに飾っておくものというより、生活の中で一緒に暮らしてほしい?「はい。だから、本の表紙に使われてすごく嬉しいのは、本はカバンの中に入れて持ち歩かれて、生活の一部になるでしょう? もちろん美しく飾って対峙する絵との時間も濃密だし、この本のように持ち運んだりする絵の在り方も濃密だと思っています。作品を求めてくださった方の中には、出張に絵を持っていってくださる方もいらっしゃって、本当に嬉しかったです」そんな平松さんの絵を起用した森岡さんにも、彼女の絵を選んだ理由を伺ってみました。「麻さんの絵は、キャンバスとか伝統的な画材でなく、フローリングの板とか、より生活に近い素材を用いているため、雑貨とか古物に近い趣があって、それは自分にとってとても魅力があります。自分の周りにもそういうものが多いので、調和しますし。それに、絵というのは普通、経年変化を嫌うものだと思うのですが、彼女の絵はともに時間を経ていくというか、それを楽しめる作品だと思います」お二人の感性がスパークした本書を手元に置いて、イマジネーションの幅を広げてみませんか? 生き生きとした絵がいつも語りかけてくれるので、前向きでいられますよ。・ 「Paradise 花と生き物いっぱいのぬりえブック」 ・ 「ビロードのうさぎ」 ・ 「本と店主」
2016年03月01日恥ずかしながらきょうは、発売されたばかりの私の新刊をご紹介させていただきたいと思います。『遅読家のための読書術―――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(印南敦史著、ダイヤモンド社)がそれ。『Suzie』をはじめとする複数のウェブメディアで毎日書評を書き続け、年間700冊以上の本を読んでいる立場から、自分なりの読書術を披露した書籍です。などと書くと、あたかも速読の達人であるように思われてしまうかもしれません。しかし実は私自身、放っておくと1ページ読むのに5分もかかってしまうほどの「遅読」派なのです。でも、そんな人間でも年間700冊の壁を越えることができる、それこそがまさに、本書で伝えたいこと。■ポイントは「フロー・リーディング」!私の読書術の根幹をなすには、「フロー・リーディング」という考え方です。いうまでもなく「フロー(flow)」とは、「流れる」という意味。ストック(ため込む)ことに重きを置いた従来の読書法とは違い、「その本に書かれた内容が、自分の内部を“流れていく”ことに価値を見出す読書法」です。「流れて行ったんじゃ、なにも残らないじゃないか」と思われるかもしれませんが、ポイントはそこにあります。なぜならどれだけ熟読しようとも、結果的には忘れてしまうことのほうが多かったりするものなのです。逆に、さらっと読んだとしても、自分にとって重要な部分は必ず心に引っかかります。むしろ大切なのはそちらなのだから、「流して読んで引っかかった箇所」に重点を置きましょうという考え方。■読書習慣をつくるための3つのステップ別ないいかたをすれば、「音楽を聴く」ような気軽さで本を読もうということなのですが、しかし、それ以前にも問題はあるでしょう。「忙しくて、読みたくてもなかなか読書の時間を確保できない」という、現代人にとって切実な悩みです。その気持ちは私も同じなので、本書では読書習慣をつくるための3つのステップをご紹介しています。(1)「毎日・同じ時間」に読むようにするなにかを習慣化するうえでの極意は、毎日・同じ時間に行うこと。読書を習慣化するうえでも、読む時間帯を決めることはとても重要です。小学校の「朝の10分間読書」のように、「仕事をはじめる前の10分間」「昼食後の10分間」「就寝前の10分間」など、読書時刻を自分のライフスタイルのなかに設定することが最初の一歩。なお個人的には、頭をスッキリさせることのできる朝の時間がおすすめ。逆に夜寝る前は、酔っていたり眠かったりするので、あまり効果的ではない気がします。また同じように、読書の場所、シーン、シチュエーションを決めることも大切。「自宅のこの場所」「このカフェのこの席」など“場所”だけでなく、「コーヒーを淹れる」「好きな音楽をかける」などのシチュエーションも意識すべきです。(2)「速く読める本」を中心に選ぶ次に「どんな本を選ぶか」という問題について。もし読書を習慣化したければ、「読みたいかどうか」だけでなく、「速く読めそうか」という基準で本を選ぶことも大切です。1.そもそも読まなくていい本2.速く読む必要がない本3.速く読める本基本的に、本はこの3つに分類されると考えています。「読まなくていい本」というのは価値がないという意味ではなく、「自分にとって必要のない本」。「速く読む必要がない本」は、小説などプロットを楽しみたい本。そして「速く読める本」とは、どこから読んでも相応の価値を見出せる「切れ目」が多い本。この「速く読める本」を中心に据えることによって、「前に進んでいる感じ」をつくり出すことが可能になり、それがモチベーションの向上につながるわけです。(3)「昨日とは違う本」をいつも読む読書を楽しむための原則として、「1冊の本に10日以上かかりきりになっている状態」は望ましいものではありません。いちばんいいのは、時間のかかる本を、別途用意した「速く読める本」と並行して読み進めていくこと。そして、できることなら、本は「1日で1冊読みきる」のが理想的。毎日違う本が自分のなかを通り抜けていく状態をつくることが、フロー・リーディングの基本だからです。大切なのは、「熟読の呪縛」に縛られないこと。「10日間のダラダラ読みより、60分間のパラパラ読み」を意識すれば、読書体験のクオリティは格段に向上します。ちなみにこれは経験的なエピソードですが、現実的には1時間ですばやく読んだほうが、本のポイントはしっかりと記憶に残ることが多いものです。*これ以外にも、読書習慣を身につけるためのちょっとした工夫をたくさんご紹介しています。また、スラスラと読み進めることができるように配慮して書いたつもりです。すぐに読めると思いますので、週末にでもぜひ読んでみてください。(文/書評家・印南敦史) 【参考】※印南敦史(2016)『遅読家のための読書術―――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』ダイヤモンド
2016年02月26日暖冬とは言われていますが、寒くて家から出たくない日も多いこの季節。家のなかで「編みもの」なんて豊かな時間ですよね。そんな暮らしに憧れてはいるけれど、「難しそう、何を作ればいいかわからない」という方におすすめの、編みものの入門書になるような3冊を選びました。編みもの作家がニットの聖地で感じる、編むことと暮らし▼「アラン、ロンドン、フェアアイル 編みもの修学旅行」三國万里子(文化出版局)まず「編みものとは?」を感じることができる本。編みもの作家の三國万里子さんが、ニットの聖地を訪れて感じたこと、またそこからインスピレーション受けて編んだ、セーターやミトン、ティーコージーなどの作品と作り方がまとめられています。三國さんのデザインは、洗練されていてかわいらしく、“いつか編めたら……”と思うものの初心者にはハードルが高め。でも、セーターの名前にもなっているスコットランドのシェットランド諸島、アイルランドのアラン諸島、イギリスのガーンジー島、ロンドン、とそれぞれの地におけるニットの歴史や人々の暮らしは、読み物としてとても興味深く、「編みものっていいな」と思わせてくれます。 作り手で選ぶ、糸の楽しみ▼「こんな糸で編んでみたい」MOORIT(グラフィック社)編みもの初心者にとって難しいことのひとつが、糸選び。手芸店には豊富な種類の糸があり、見ていて楽しいけれど、どれを選んでいいのかわからないという経験はありませんか? そんな方におすすめなのは、東京・丸の内にある上質な毛糸が揃う店「MOORIT(ムーリット)」によるこの本。ウールやリネン、アルパカ、カシミア……、世界各地の生産者の糸づくりやその思いと、それぞれの糸を使って編んだ作品、編み方が載っています。発色が美しく、素材として素晴らしいだけでなく、環境に負荷をかけないことを心がけて作られている糸は、まさにタイトル通り、「こんな糸で編んでみたい」と思えるはず。また糸の太さについてや道具、英文パターンの見方など、編みものの基礎知識も収録。ありそうでなかった、糸を愛するお店ならではの一冊です。 初心者にも挑戦しやすい、バッグのレシピ本▼「手編みのちいさなバッグとポシェット」eccomin(誠文堂新光社)最後にご紹介するのは、編みもの初心者でも「これなら編めるかも!」と思わせてくれるこの本。オールカラーで、糸によって編み図が色分けされているので、見ているだけで頭が混乱しそうな編み図が、とてもわかりやすいのが嬉しいポイント。また、棒針編みとかぎ針編みの編み方、そしてその基本である表目、裏目の組み合わせだけででき、比較的短い時間で編めて、実用的なバッグというのも初心者が挑戦するにはぴったりです。著者である「eccomin(エッコミン)」の野口さんは、かわいらしい色使いが魅力のニット作家。編み地は単調でも、その色合わせだけで十分にかわいらしく、作りたくなるバッグやポーチ、ポシェットが満載です。編んだ分だけ形になる編みものは達成感があり、編むことでリラックスできる効果もあるのだそう。まずは小さなものからチャレンジして完成できたら、その魅力にどっぷりはまるかもしれません。参考書籍/・ 「アラン、ロンドン、フェアアイル 編みもの修学旅行」 三國万里子(文化出版局) ・ 「こんな糸で編んでみたい」 MOORIT(グラフィック社) ・ 「手編みのちいさなバッグとポシェット」 eccomin(誠文堂新光社)
2016年02月17日優秀なカメラマンはタイミングを知っています。何気ない街なみ。どこにでもいる猫。こどもたちの一瞬の笑顔を、あざやかな作品にして私たちの目をたのしませてくれます。同じように才能のある歌人は、当たり前の風景を詠っても、そこには新しい発見があるものです。■短歌は、瞬間のドラマ短歌のタネは、旅や、病気などのドラマチックな体験だけではありません。むしろ、料理や掃除や、通勤中の1コマ、自宅でくつろいでいるときなど、日々の生活のなかにこそ、落ちているものなのです。一見、平凡な日常にこそ、新鮮な発見があります。そんな、一瞬と永遠が交差する名歌を紹介しましょう。■時計も置き方ひとつでこんなに違う「むかうむきに時計を置けばざまあみろ 時は勝手に流れてゆくさ」 岩田正(『レクエルド』)「ざまあみろ」と、つぶやく小気味よさが、さわやかで、余裕があります。あえて、文字盤をみえないように時計を置くことで、時の流れから自由になるような、すがすがしさがあります。肩の力を抜いて、自然体で楽しみたい作品です。■列車が持つ生命力人間のあぶらをつけて蘇る始発列車の窓という窓 盛田志保子(『木曜日』)まだ薄暗いホームに入ってくる始発列車は、緊張感につつまれています。作者は近寄りがたい列車の全体像のなかから「窓」に注目しました。そして、「人間のあぶらをつけて蘇る」と表現したのです。風景と身体感覚が一体化して、不思議な生命力にあふれています。■食材から料理になる瞬間「まだ動く海老を掴みて熱湯に落とすやたちまち赤海老となる」 奥村晃作(『歌集 造りの強い傘』)豚肉や牛肉とは反対に、エビやカニは火を通すと赤くなります。生き物が食材に変わる瞬間を、鮮やかにとらえています。感情をこめずに、事実だけを伝えることで、かえって新鮮さがひきだされています。■読書、二度目はどこから読みますか?「帯・カバー外し〈新刊歌集〉読む二度目はうしろの頁から読む」同一度読み終えた歌集を、ふたたび開く場面。けれども、はじまりからではなく、うしろから読むという意外性がポイント。言葉にしなければ、すぐに忘れてしまうささやかな日常の側面が伝わってきます。■毎日の家事で思うこと「掃除機の中に家族の抜け髪は絡まりあいて縄のごとしも」 前田康子(「歌壇」2015年10月号)作者は掃除機の内部でからまりあう髪が縄になるのではないかと想像しています。もちろん、実際にはありえないことですが、掃除機の奥には家族たちの知らないもう1つの世界が存在しているようで楽しくなります。パラレルワールドのようでユニークですね。■忙しい時の電話って面倒!「セールスに不機嫌になる声のまま受話器をとれば義母の声のす」同(「短歌研究」2015年6月号)「また、セールスの電話ね。忙しいのに!」と受話器をあげると、お姑さんだった…という笑えないシーン。「まあ、おかあさん」とうろたえながら声のトーンが変わっていく、作者のようすが思い浮かびます。■もしも…を想い浮かべる「生き直したい俺なのか丸善を歩けば医科の文字がまつわる」 中沢直人(「極圏の光』)「「鱈(たら)」がいるのは、海のなかだけ」といったのは、小説家の田辺聖子さん。けれども、「あのときに、別の道を選んでいたら」「やはり、医学部をめざしていたら」などと、「たら」や「もしも」の人生を、想い浮かべてみることはありませんか?書店(丸善)の通路を歩く作者は医科の文字が気になる様子。短歌は31音の、世界でいちばん短いポエム。時計をふせたり、エビをゆでたり、書架をながめているうちに、味わい深いドラマがはじまります。あなたのまわりの何気ない風景、そこにもいろいろなドラマが転がっているかもしれません。
2016年02月15日本に直接書き込むことで、自然と教養が身につき、楽しみながら進められるテキスト系冊子を3冊おすすめします。通信教育でのしっかり学習とはまた違った、気軽な学びを始めてみませんか? きっと学ぶことが好きになりますよ。■著者名「自分」。自分の本ができる『マイブック 2016年の記録』(新潮文庫)この本は毎年、年末頃に次の年用が発売されます。1ページごと右端に日付が一行だけ印字されていて、1月1日から12月31日までのページがあります。本の最後には「あとがき」ページがあり、まさに文章のない文庫本です。つまり、著者名が「自分」という本。日記のように毎日の出来事を書いてもよし、絵を書くのもよし、詩を書くのもステキ。「今年は全ページ英語で書いてみよう」と目標を決めてもいいかも。1年たつと、それはどのような本になっているでしょうか? 仕上がりが楽しみになる本です。■まさに大人のドリル『日経ホームマガジン 女子力を磨く 美しい言葉と敬語が身に付く 日本語練習帳』(日経BP社)この本を見ると小学生の頃によく宿題でだされたドリルを思いだします。まさに大人のドリル。美しい日本語が勉強できます。復習になる部分もあるかもしれませんが、知らなかった言葉が必ずあります。最近ではメールでのやりとりが主流となり、字を書く機会が大幅に減ってきています。久しぶりに自分の字を眺めてみませんか? 仕事でも言葉を使わない日はありません。仕事に直結して生かせる内容です。ドリルを終えるとすがすがしい気持ちになります。ステップアップしていること間違いなしです。■英語がまた好きになる『全くダメな英語が1年で話せた!アラフォーOL Kayoの『秘密のノート』』(重盛佳世/マガジンハウス)他人のノートを見ている感覚になるこの本は、「まとめ方が上手だな〜」と感心してしまいます。英国式の英語に特化した本ですが、イギリスの文化や日常英語の絶妙な使い方が学べます。英語に対して苦手意識がある人、TOEICの勉強に疲労困ぱいしている人、この本を読めばきっと英語が好きになるはず。英語が好きになると英語に興味がでるので自然とまた、英語に対する習得意欲がでてきます。まさに「好き」「面白い」といった感覚を持たせてくれるノート形式の本です。あなたはどのタイプの本を試してみたいですか? 目的や気分で使い分けをし、また知的な女性へと一歩前進してみてください。
2016年02月15日働く女性は生き方そのものが千差万別。アパレル販売員の挫折と成功、貧困を救うための会社の立ち上げ、フリーを追求した職業確立者、力強くも繊細な「女道」をノンフィクションでつづった3冊を紹介します。きっと、現代に生きるステキな女性たちの生き方が、発見できますよ。■単なるHow to本で終わらない『ダメ販売員だった私がNO.1スタッフになれた"ちょっとした"習慣』/内藤 加奈子アパレル販売にとって一番大切な「接客」について、とてもわかりやすくまとめられた一冊。失敗からどのようにして成功へと向かえたのか? 実際の経験をもとに書かれています。実はこの本、アパレル販売に限らず他の職業の人にも役立つ内容になっています。失敗にはたくさんの成功のヒントが隠れているのでしょう。■発展途上国に人生を捧げる、現代のマザーテレサ『裸でも生きる』/山口絵理子株式会社マザーハウスの代表山口絵理子さんが、会社設立の経緯や設立当初の奮闘ぶりを、ありのままに書いています。発展途上国の未来を考えた末に彼女が導き出した答えが、いまの仕事。「人はだれかのために、ここまでできるのか!」と尊敬を通り越して、感動してしまいました。マザーハウスは、情熱を実現するために必要な思考を鍛えあう場「マザーハウスカレッジ」というイベントを主催しています。情熱あふれる山口さんから、目が離せません。■職業をつくりだした先駆者『冒険に出よう(U25サバイバル・マニュアル)』/安藤美冬大学卒業後、大手出版会社に勤めた安藤美冬さん。しかし数年後、その出版社を辞めてしまいます。自分の仕事とは何かを考察していくなかで、「ノマドワーカー」という職業を選んだ彼女。既存の概念にとらわれず、一歩踏み出す勇気を持ち合わせた行動は、若い人だけでなく年を重ねた人々にも学ぶべきところはあります。仕事について考え抜くと、自ずと見えてくるものがあるのでしょう。どんな働き方にも「人」というキーワードが欠かせません。接客はもちろん「人」のため、発展途上国の「人々」の暮らしのため、「人」とのつながりがもたらすノマドワーカーという働き方。結局、仕事をするにあたって「人」は切っても切れない存在。人は人のために働きます。手段はたくさんありますが、情熱を持って働いている女性の目的は一つなのかもしれませんね。
2016年02月10日スマホやタブレットで絵本が読めるサービスはいくつもあります。しかし、収録されている絵本は、昔ばなしや世界名作童話など。もちろん、それらも十分魅力的ですが、本音を言えば子どもたちが普段手にしている人気の絵本をスマホで読めたら…と思いませんか? 「いつも読んでいる絵本」がスマホで読めるそんなパパやママに朗報です。『バムとケロ』シリーズや『キャベツくん』など、市販の名作絵本がスマホやタブレット(※)で読み放題になるサービスがスタートしました。(※)PCで読むことはできません。絵本の情報・通販サイトを運営する株式会社絵本ナビが提供している「絵本ナビ プレミアムサービス」。そのサービスに、日本で初めてとなる「市販絵本のデジタル読み放題」が、2016年2月2日より新たに追加されました( プレスリリース )。サービス開始時点の読み放題作品は55作品。『バムとケロ』シリーズや『キャベツくん』『ちびくろ・さんぼ』『いろいろバス』といった、読み継がれている定番絵本や最新の人気絵本など市販の絵本が提供されています。お気に入りの絵本を持ち歩けば、お出かけ中も安心スマホの画面で見ると、少し小さく、読みにくく感じられるかもしれませんが、スマホの画面を横にすれば、じゅうぶん読むことができます。もちろん拡大もできるので、必要に応じて大きくしたり、ページ全体を眺めたりして楽しめます。月額料金は275円+税。支払いはクレジットカード、もしくは携帯料金と一緒に支払うことも可能です。また、NTTドコモの運営する「スゴ得コンテンツ」の会員であれば、追加料金なしで市販絵本の読み放題サービスを利用することができます。子どもの大好きな絵本をいつでも持ち歩けると、お出かけの不安も荷物も減って、助かりますね。・ 絵本ナビ プレミアムサービス
2016年02月06日冬は日照時間が少なく、寒さが厳しい北欧。そんななか人々は、家の中をカラフルに装飾し、楽しく過ごす工夫をするようになり、デザインが発達したともいわれています。そんな北欧、スウェーデンから届いた『Fine Little Day ファイン・リトル・デイ 好きなものと楽しく暮らすアイデアとインテリア』は、世界的に注目を集めるアーティスト、エリーサベット・デュンケルさんが、インテリアや暮らしを紹介した話題のビジュアルブック。この本から、インテリアや家の中で楽しむヒントを学びたいと思います。Elisabeth Dunker エリーサベット・デュンケルアーティスト、ビジュアルコミュニケーター。スウェーデン第2の都市、ヨーテボリにあるデザイン工芸大学(HKD)修了。2007年にブログ「Fine Little Day」 を開設し、世界的に注目を浴びる。同ブログは「The Times」紙やマーサ・スチュアートによって、世界で最もインスピレーションを得られるブログのひとつに選ばれている。自身のプロダクトブランド「Fine Little Day」ほか、「House of Rym」「Urban Outfitters」「Ikea」といったブランドのデザインも手がける。Instagram:@finelittleday、@elisabethdunker著者のエリーサベットさんが注目されるきっかけとなったのは、2007年にスタートした、日々の暮らしや好きな物を綴ったブログ「Fine Little Day」。今ではブログと同名のプロダクトブランドのデザイナー、フォトグラファー、スタイリスト、ライターとして、幅広く活躍しています。そんなエリーサベットさんのおしゃれな自宅や職場、森の小屋のほか、友人たちの手がけた作品やインテリアを紹介する本書。見ているだけでもうっとりしてしまう写真ばかりですが、真似ができそうなアイデアがたくさん詰まっています。同じものを集めて、スタイリングする集めているものがあっても、飾るのは難しく、しまいこんでいるという人も多いのではないでしょうか。エリーサベットさんは、集めている同系色の陶磁器やテキスタイル、毛糸の靴下、鍋つかみなどを、「異常なほどに分類して、考えて、スタイリングする」そう。特に青い染付けの陶磁器のコレクションは、テイストはバラバラなのに、色で集めて並べるとこんなにも素敵なのか、とハッとさせられます。壁紙を楽しむ賃貸物件だと、なかなか家に手がかけられないという人におすすめなのが、壁紙。エリーサベットさんも「後悔した時のため、また後で張り替えられるように」と、壁紙は糊付きで貼ってはがせるタイプのものを使っているのだとか。こちらはエリーサベットさんの、スモーランド地方にある森の小屋。花模様の壁紙は、前の住人から受け継いだものだそう。時間を経て、味わい深い色合いに。壁一面だけでも、部屋の印象ががらりと変化する壁紙。こんな素敵な模様なら、すぐに試してみたくなりますね。 不器用でも手づくりにチャレンジかぎ針も棒編みもできないというエリーサベットさんは、蚤の市やセカンドハンドショップでかぎ針編みの鍋つかみを買い集めて、ガーランドや掛け布団にしています。ドイリーを縫い合わせたカーテンや、シーツの上に布を縫い合わせた掛け布団など、手づくりに慣れていない人にも簡単にできる作り方を紹介してくれているのは嬉しいところ。また、本棚にある本の表紙に絵を描いてみる、木のスプーンに表情を描いてみる、など大人も子どもも楽しめそうなユニークなアイデアも。木の枝や葉を使ってつくるモビールや押し花など、北欧らしく自然を生かしたものづくりも提案してくれています。このほかにも、キッチンやベッドルーム、アトリエなど、本ではたくさんの写真を紹介。その写真ひとつひとつから、インテリアの参考になるインスピレーションをきっともらえるはずです。
2016年02月02日冬はあったかい気持ちになりたいそんな気分。心がほっとするような泣ける本を、こたつに入ってみかん食べながら、ぐすんぐすんとすれば、心に溜まった毒素も吹き飛んでしまうでしょう。今回は、私がおすすめしたい、泣ける小説とマンガをご紹介しましょう。恋愛でほろりほろりいい恋愛で泣く。これはとっても気持ちのいいものです。悲恋もなけるし、気持ちが通じ合う恋愛も、いいですね。今、恋愛中の人も、ちょっと恋にご無沙汰な人も、心を動かすのは最高の女性ホルモン活性剤なはず?! うるっときてくださいね。「世界で一番美しい音楽」 小沢真理 (講談社)シングルマザーの女性の恋愛のお話。娘の“のんのん”ちゃんが可愛いのだ。世界でいちばん優しい音楽とはなんなのか? 読むとすぐにわかります。全8巻。なんとも優しい気持ちになる恋愛漫画の王道です。「陽だまりの彼女」 越谷 オサム (新潮社)松本潤と上野樹里で映画化もされましたね。非常に可愛らしい泣けるラブストーリーです。なんとなく途中からオチがわかるのですが、そういうのは抜きにして、とにかく上野樹里ちゃんが演じる「彼女」が可愛くてしょうがないんです。大河小説にどっぷり浸かる長い小説をじっくり読むことありますか? 最近は私もスマホ一辺倒でなかなか長い小説を読むことが少なくなってしまいました。でもたまにはちょっと大作に挑戦してみてください。「大奥」 よしながふみ (白泉社)男女逆転の奇想天外な歴史漫画。嵐の二宮くんと柴崎コウで吉宗編が。菅野美穂と堺雅人で綱吉篇が映画化され、それがきっかけで結ばれましたね。本当に緻密に練られたすばらしい大河ドラマ漫画です。歴女である私には堪えられない作品。毎巻でるのが待ちきれません。どんどん時代が進んで幕末にどのように収束させるのか非常に楽しみですが、どの時代の男女も政治と恋愛にどうにか折り合いをつけて時代にバトンをつないでいるのが、泣けます。「ベルサイユのばら」 池田 理代子 (集英社)もうベルサイユのばらなんて知らない方も多いのでは? 私が小学生中学生の頃はバイブルでした。今は愛蔵版でコンパクトになって売られています。久々に読みましたが、名作は古くならない!史実であるマリー・アントワネットとフェルゼンの恋愛も泣けますが、作者の創作であるオスカルとアンドレという二人の人物の恋愛にはなんとも言えない妙味があります。わたしにとってこのアンドレが究極の理想の男性です。「坂の上の雲」 司馬 遼太郎 (文春文庫)以前NHKでドラマ化されて、本木雅弘と阿部寛が主役の兄弟にキャスティングされていました。とにかく名作です。日清戦争から日露戦争までが描かれますが、まあすごい。とにかくすごい、面白い。司馬遼太郎の作品はちょっと読み慣れるまで癖がありますが、読み始めると止まりません。ドラマほど女性陣は出てきませんが、読み終わってつくづく感動が体を染み渡ります。歴史を作った人たちの賢さと愚かさの織りなすドラマ。ぜひ一度読んでいただきたい名作です。私は明石という人物が好き。かなりページを割いて司馬遼太郎も記述しています。「この世界の片隅に」 こうの史代 (双葉社)第二次大戦時、広島に原爆が落とされる前から後を、静かに優しく描いた作品です。反戦を力強く叫ぶわけでもなく、ただただ読み終わって、今の平和の有り難みを思います。非常に魅力的な作品です。短くて軽く読めるけど、じんわり来ます「博士の愛した数式」 小川 洋子 (新潮文庫)寺尾聡と深津絵里で映画化もされました。映画は未見ですが、小川洋子さんの小説は非常に読みやすくそして余韻が残ります。80分しか記憶が持たない数学者と、お手伝いさんの女性の、心の触れ合いを描いています。「機械仕掛けの愛」 業田 良家 (小学館)さまざまなロボットと人間との心の触れ合いや哀しみを描いています。一つ一つのお話は非常に短いのですぐに読めます。今は3巻まで出ています。寂しさを埋めるためのロボットたち、その寂しさが他のもので埋められた時の、居場所のないロボットたち。エピソードごとに胸に迫りますが、人によって一番泣くエピソードが違うみたいです。冬の夜、心から感動する本や漫画に身を委ねて、心の底からあったまってくださいな。春がくる頃には、より深く人を好きになれるはず。
2016年01月23日以前、「職業・女優」というキャッチコピーがありました。確か、確定申告のポスターだったと思います。女優は舞台や映画に出演し、お芝居をすることで生活をしています。また、小説家は物語を書き、漫画家は絵を描き、ストーリーを練るのが生業(なりわい)です。ところが歌人は、短歌をつくるだけでは生活はできません。そのため歌人のプロになっても、皆それぞれに仕事を持っています。だからこそ、創作としてつくりあげるのではない、現場の、臨場感あふれる職場うたが生まれるのです。なかでもわかりやすくて、リアリティーある作品を紹介します。■21世紀の歌人がつむぐ、仕事のうた「皮膚科医の要らぬ性なり街なかで 義髪がすぐに見抜けることも」 「訊かざれど皮膚は語れり俯ける 少年の腕の煙草の跡よ」 医師:久山倫代「星芒体」皮膚科の医師である作者。もしも、皮膚科医でなければ、義髪も、たばこの跡もわからなかったことでしょう。けれども、勤務時間が終わってからも、また別件で診察をしていても、意識してしまう医師としての〈性〉を、シニカルに描いています。歌集のタイトル「星芒体」(せいぼうたい)はあとがきによると、「ある種の皮膚疾患の組織標本の中に見られる美しい物質」とのこと。なるほど。さすが、専門家ならではの着眼点です。「〈馬〉といふ漢字を習ひみづからの 馬に与ふるよんほんの脚」「日本語の日記見せにくる学生の 助詞の欠落のみ補いつ」日本語教師:大口玲子「海量」母国語でない言語を習得するのは難しい。なぜなら正確な発音や、文法を覚えなければいけないから。その反面、外国人が達者すぎる日本語をあやつると違和感があるときも。日本語教師の作者は懸命に漢字を覚える学生に、もどかしさと初々しさの両方を感じています。初心の時期にしかない輝きは、美しい反面、痛々しさも秘めているのではないでしょうか。「平身低頭謝っている鼻先で 羊羹2ミリ動いたようだ」「身のほどを知れと言われて大いなる 机かついで帰りぬ」会社員:奥田亡羊「亡羊」緊迫感がある場面とは裏腹に、作者の視線はわずかに動いた羊かんや、大いなる机といったこまかい部分に注目しています。■21世紀の啄木たち石川啄木が、「はたらけどはたらけど猶わが生活(くらし) 楽にならざりぢつと手をみる」と、詠んでから約100年がたちました。さて現代の歌人は、時代と生活をどのように表現しているのでしょうか?「たぶん親の収入超せない僕たちが ペットボトルを補充してゆく」 山田航「さよならハグ・チルドレン」「手をつたう洗剤の泡アルバイト やめていいよと今日も言えずに」山田航「短歌」(2015年10月号)近年は、非正規雇用が急増。とくに男性にとって、結婚にふみきるのも度胸がいるのでしょう。21世紀の啄木ともいえる作品です。給料と、結婚にまつわるうたといえば、第61回角川短歌賞の次席に、こんな名歌がありました。「給料は「いくら」と問うてくる君に 「二十八」だと年齢答える」佐々木定綱「短歌」(2015年11月号)感情をこめずに事実のみを伝え、現実を浮かび上がらせているユニークな一首。ちなみに受賞したのは、就職活動をモチーフにしたこちらの一首。「鉛筆でごく簡潔に描く地図の 星のしるしのところへ向かう」鈴木加成太「短歌」(2015年11月号)「どんなにうまく傘をさしても容赦なく スーツを濡らす雨の散弾」鈴木加成太「短歌」スニーカーを履いて通学していた青年が、春からは革靴でどんな会社に通勤することになるのでしょうか。あたらしい環境でもまれながらつむぎだす言葉の結晶に、これからも注目したいですね。
2016年01月21日