今回のテーマは「漫画を描くために行った練習、勉強したこと」についてである。漫画家というのは絵が描けるのが大前提であるが、全員がすごくうまいというわけでもない。もちろんうまい人の方が多いと思うが、「ヘタウマ」という作風でヒットを出している作家も少なくはない。私の漫画を読んだことがある人ならご存じの通り、当方の作風は、ヘタウマからウマを引いたものである。しかし5年の作家生活を経て、私の絵も「常軌を逸したヘタ」から「普通のヘタ」へとランクアップし、余計に売れなくなった。デビューの際、私は最初の担当編集者から「絵はうまくならなくていい」と言われ、1~2年はそのアドバイスを忠実に守ってきたのだが、今思えばそのアドバイスを守り続けた方が良かったのかもしれない。しかし、個人的にはやはり漫画家たるもの、絵がうまいに越したことはない、と思う。○絵の練習にありがちな"オウンゴール"を避けるために絵をうまくするにはどうしたらいいか、と絵が描ける人に尋ねると、大抵の人が「とにかく描くこと」と答えるだろう。しかし、私も約5年間、ほぼ365日休まず絵を描いてきた。それにしては上達がなさすぎるが、ここでただ単に才能がない、と断じてはいけない(私の心が折れる)。肝心なのは「向上心を持って正しい絵をとにかく描くこと」であり、自分の描きたい絵だけを自分の手癖のままに描き続けても、サッカーのルールを一切覚えず必殺シュートの練習だけするようなもので、試合に出てもオウンゴールを連発するだけである。よって、まず正しい漫画の描き方の教本通りに描いてみる必要がある。そういった本を買うと「ダイエット本を買っただけで痩せた気になるデブ根性」が発動するという人は、ネットで絵の描き方を調べれば、そういったページがたくさん見つかるだろう。また、技術うんぬんはしゃらくさい、とにかく描きたいという人は、うまい人の絵を模写してもいいし、トレースするだけでもやり続ければ、おのずと手が覚えていく。私は以上のことを一切やらずに、今現在の「印象に残らないヘタ」という作風を完成させたので、そのポジションを目指す人は参考にしてほしい。特に、練習として模写やトレースをしたことはほぼないと言って良い。○絵を描くことの「喜び」は人それぞれ「絵や漫画を描くのが好き」と言っても、「絵を描く作業自体が好き」「満足する絵が描けたときの達成感が好き」など、どこに楽しみを見いだしているかは人それぞれだ、そして、その中には「絵を人に見せて褒められるのが好き」という人も含まれている。そこで「絵を褒めてもらいたい」→「上達するために努力する」という方向に行く人はうまくなる。しかしその過程をすっ飛ばして、「とにかく絵を褒められたい」という人はうまくならない。私は典型的な後者のタイプでああるそういうタイプの人間は、模写やトレースはしない。そうやってうまく描けても自分の絵として公開できず、人から褒めてもらえないからだ。時々、模写やトレースで描いた物を自分の絵として公開してしまう過激派もいるが、見つかれば叩かれるし、商業作家がやったら命取りになる。よって、自己流の絵で褒められようとするものの、練習をコツコツやらないから大して上達せず、当然ながら褒められることはないのである。「努力せずに結果だけ得ようとしてもダメ」という当たり前のことを、5年もかけて証明できたことだけが不幸中の幸いだ。他山の石としてほしい。○カレー沢作品に突如"美少女"が登場、読者の反応は?しかし、私にも全く向上心がないというわけではない、このままじゃダメだと思う時もある、もちろん自然にそう思うわけではなく、アンケートや単行本の売り上げが具体的にダメな時になって初めて考えるのだ。だが、「とにかく結果だけ得ようとする派」の私は、どれだけピンチに陥っても、今さらスケッチブックで絵の練習など始めない。ならばどうするかというと、原稿上で試行錯誤を始めてしまうのである。前話と明らかにキャラの造形が変わっていたり、ひどい時はコマ単位で顔が変わっていたりすると言う手探り状態を、そのまま雑誌に載せてしまうのである。数年前、連載作品の調子が芳しくなく、担当から「このままでは打ち切り」と言われたことがあった。それまで「うまくならなくていい」を実践していた自分も、やはり絵はうまいに越したことはないのではないかと思い直し、次の原稿では極力うまく描こうとした。まだそれだけなら良かったのかもしれないが、「カワイイ女の子が登場したら人気が出るのでは」という安易すぎる発想から、ヒロインの顔を別人のように変えて登場させたのである。その結果、評価は散々だった。平素、良くも悪くも話題にのぼらない自分の漫画が某大型掲示板でたたかれたほどである。そもそも、突然うまい絵やカワイイ女の子が描けるわけがなく、それまで応援してくれていた読者にまで「元に戻してくれ」と言われるありさまであった。私のみならず、突然作風が変わる漫画があったら、それは不人気によるテコ入れか、作家が突然このままじゃダメだと思い、見切り発車したかのどちらかである。既存ファンからしたら「余計なことを」と思うかもしれないが、こうした試行錯誤は作家が一応持っている向上心の表れであり、作品をよりよくしようという気持ちから生じているのである。ただ、焦って前に進もうとして、ギアがバックになっているのに気付かずアクセルを踏んでしまっただけなのだ。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。2015年2月下旬に最新作「やわらかい。課長起田総司」単行本第1巻が発売され、全国の書店およびWebストアにて展開されている。
2015年04月28日今回のテーマは「漫画家と結婚生活の両立について」だが、両立できてないのでこの話は終了、解散である。しかし両立の定義を「離婚していない」にまで広げていいなら、確かに両立していると言えなくもない。では、両立のコツはと聞かれたら、配偶者に「焼きゴテを押しつけられても眉ひとつ動かさない我慢強い人間を選ぶこと」としか言えない。○作家業界の「常識」自分で言うのもなんだが、私の夫はえらいと思う、どこがえらいかというと、なんと働いている。そんなの当たり前ではないか、と思うだろう。私もそう思う。私の友人・知人、親族の中にも、そんな褒め方をする人はひとりもいない。だが、漫画編集者などは本気で「カレー沢さんの旦那さんは、ちゃんと働いているからえらいですよね」と言うのである。そんなに女性作家の旦那というのは働いていないものなのだろうか。話を聞いてみると、もちろん、ちゃんと働いている人も多いという。しかし、最初はまともだった人も、嫁が作家として大成し収入差が広がるにつれ、ヒモ化したりマネージャーきどりになってしまったりする人もいる、とのことである。つまり、私の夫が未だまともに働いているのは、全て私が全然成功していないおかげなのだ。普通に働いている人間と結婚しただけで「男を見る目がある!」などと言われ、「カレー沢さんは夜寝て朝起きているから偉い」と斜め下の角度から褒められることを考えると、やはり作家業界というのは特殊な世界である。もしくは私にそういうところ以外褒める部分がないのだろう。○カレー沢家の分業体制現在、結婚生活5年目。昼間はお互い会社で、夜は私が仕事部屋にこもりっきりとなる。一緒にいる時間は10分にも満たないため、端から見れば家庭内別居と思われてもおかしくない。家事分担に関しては、最初は半々ぐらいだったと思うが、今では夫の方が圧倒的にやっている、特に掃除はほぼ夫がやっており、彼が掃除を放棄したら、我が家は瞬時に異臭を放ち、今ごろ行政の訪問を受けているところである。しかし、当然夫も暇ではない、正直いつ彼がブチ切れるのではと冷や冷やしているし、一緒にいると怒られる(怒られる覚えは5億個ぐらいある)気がするので、時間があろうがなかろうが、3分以上は一緒にいないように心掛けているぐらいだ。しかし今のところ夫に怒られたことと言えば「トイレを綺麗に使え」「たまには仕事部屋の換気をしろ」ぐらいである。"ぐらいである"、と言っても、このふたつが十分酷い。「お前はクソの仕方が汚い、と焼きゴテを押されても眉ひとつ動かさない」「俺でも耐えられないほど貴様の部屋は臭い、そのうち自分の臭いで死ぬカメムシみたいになるぞ」 と言われているのである。とても大人の女性が怒られる内容ではない。亭主関白を貫く一家の大黒柱でも、ここまで配偶者の手を煩わせないだろう。その上、当方の柱としてのスペックは先述の通りである。 反省してトイレはキレイに使うように心掛けているが、部屋は未だに臭い。このような状態なので、少なくとも「共働きでも家事は女が主にやるもの」という意識をもった相手ではとっくに家庭崩壊しているだろうし、顔を合わす時間はあっても、ゴミの山で相手の顔が見えないという事態になることは容易に想像できる。○「作家の家族」の受難また、作家の配偶者というのは、勝手にエッセイなどに登場させられている場合が多い。私も、こういった文章やエッセイ漫画などにたびたび夫を登場させているが、全て無許可である。女性作家というのは男に比べてえげつなくプライベートをネタにする傾向があるので、例え夫が酒におぼれようが、ギャンブルで大借金しようが、浮気をしようが、離婚になろうが、転んでもただでは起きない。それで1冊本を出してしまうのである。そして、出した方には印税が入るが、描かれた方はただただ酷い男であると全世界に晒されるだけである。スキャンダル暴露本ではなく、ほのぼの家庭エッセイなら良いかもしれないとも思うが、それを出した後に離婚という事態になったら、夫の側はしばらくお天道様の下を歩けない(そして元嫁はまたそれをネタに本を出す)。作家自身は覚悟の上で私生活を切り売りしているだろうが、知らないうちに切ったり売られたりしているのが作家の家族というものなのである。仮にフィクション作家だったとしても、時として自分の嫁が信じられない下ネタ漫画を描いているのを粛々と見守らなければいけない場合もあるのだ。個人的には、夫には私の描くものについては何も言って欲しくないと思っている。エッセイものに関しては苦言を呈する権利はあると思うが、少なくともフィクションに関しては何も言って欲しくない。夫もそれを察してか、今まで作品内容について、何か言ってきたことは一度もない。しかしよくよく考えると、夫は、ジャンプ、マガジン、サンデーを愛読し、「進撃の巨人」のコミックスを集めているメジャー嗜好である、私の描くマイナー漫画に対する感想は最初からないのかもしれないし、そもそも読んでいないのかもしれない。だが、それがお互いにとって一番幸せな状態である。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。2015年2月下旬に最新作「やわらかい。課長起田総司」単行本第1巻が発売され、全国の書店およびWebストアにて展開されている。
2015年04月21日今回のテーマは「同業作家とのエピソード」とのことだが、はっきり言って「ない」の一言で終わってしまう、もちろん他の作家に会ったことはあるが、漫画論で紛糾してゴールデン街で殴りあった等のおもしろエピソードはない。デビューして1年未満のころ、出版社側もまだ期待してくれていたのか「聖☆おにいさん」の中村光先生と、「ふたがしら」のドラマ化が決まったオノ・ナツメ先生に会わせてもらったことがある。思えばあの時が自分のピークであり、あれから5年経ち、ふたりとの差は当時よりもさらに広がったし、その時もらったサインを未だに自慢しているという有様である。○交流の機会を「全欠席」する理由このように、ごくたまに同業作家と同席する機会を設けてもらうこともあるが、基本的に他の作家と出会う機会がほぼないのだ。交流する一番の機会と言えば、各出版社が催す忘年会や新年会に出席することだろうが、当方デビューしてからそう言った会は全欠席なのである。まず単純に、地方に住んでいるからという理由がある。なぜかどの出版社も週のど真ん中に会を催すのだ。もちろん来るのは漫画家であるから、「休みは土日」という概念がないのでそれで問題ないのだろう。だが、当方会社員もやっているので、年末の平日に会社を休み、飛行機と宿をとって出席するというのは、いくらなんでもエクストリーム忘年会すぎる。それと、デビューした年に「売れたら行きます」と言ってしまったことも影響している、これは「未来永劫行きません」と宣言したようなものである。自分が雑誌の看板作家ならわざわざ上京してチヤホヤされにいく価値はあるかもしれないが、数万の交通費をはらって「お前誰?」という顔をされ続ける会に出席するというのはいくらなんでもドMすぎる。だが仮に、東京在住の専業漫画家だったとして、そう言った会合に出席するかというと、行かないような気がする。なぜかと言うと、性格がとにかく卑屈で嫉妬の塊だからである、その場に売れている作家(大体が自分より売れている)がいれば、ものすごく卑屈になるか妬むに決まっている。それも「いつか漫画でお前を超える」という前向きな嫉妬心なら良いが、パンチやキックを駆使してその場で何とかしてやろうと思ってしまうのである、もちろんそんな度胸はないので脳内でやるのだが、こんなことを考えながら飲む酒が美味いわけがない。○「うまい酒」を酌み交わすための座組よって、私が安心して飲もうと思ったら、全員私と同列か、それ以下しかいない会、ということになる。だがしかし、それだともう近所のちょっと絵の描けるおっさんを集めて飲むしかない。だが、そのちょっと絵の描けるおっさんだって、突然世に見出されて「画伯」と呼ばれる可能性があるかと思うと油断できない。もう犬を集めて飲むぐらいしかできないのだが、それではワンちゃんがかわいそうである。やはり何をどう考えても、「欠席」が一番幸せな選択肢となるのだ。漫画というのは、本当に誰がいつ売れてもおかしくない世界である。自分のようにくすぶっている同業仲間を作った所で、相手が突然売れてしまうかもしれないのだ。その時自分が友の成功を喜べるかというと、完全に否だ。全力で足を引っ張ろうとするし、脳内でパンチとキックをお見舞いするだろう。当方、ツイッター等で流れてくる、会ったこともない作家の作品のアニメ化などに一日中ムカついていられる逸材なのである、近しい人間のサクセスなど許せるわけがない。そのため、「同業者とはあまり関わらない方がいい」というのが現在の私の結論である。それだけではない。同業者だけでなく「同業志望者」も駄目だ。漫画家を目指す若者に「漫画家は大変だよ(笑)」などと先輩ぶった後に、その若者がデビュー作で100万部売ったとかいう展開になったら目も当てられない。また、単純に何を話していいかわからない、という所もある。相手の作品が好きでじっくり読んでいるというなら作品を褒め続ければいいのだが、会う作家全員の作品を読むと言うのはなかなか難しい。会話が完全に手探りになってしまう自分の姿は容易に想像がつくし、話している内に「あっ、こいつ俺の作品読んでねえ」と気づかれるのも、逆に相手が自分の作品を読んでいないのに気づくのもつらいものがある。かと言って、使っている画材や確定申告の話をするのも、プライベートでも仕事の話しかできないサラリーマンみたいで物悲しい。○カレー沢氏が唯一会ってみたい相手とは?このように、漫画家云々以前に自意識過剰すぎて人付き合いができないタイプなので、同業仲間はいないし積極的に作ろうとは思わない。だが、唯一会って話をしてみたいと思う作家がいる。具体的に誰ということではなく、「担当編集が同じ作家」と話してみたいのだ。しかし、実際に会って「あの担当クレイジーだよな!」と前のめりに話しかけたものの、「いや普通ですよ」と冷静に答えられ、実はクレイジーなのは自分の方だったと気がつく……などというホラー映画みたいなオチになるんじゃないかと思うと、それも怖くてできないのである。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。2015年2月下旬に最新作「やわらかい。課長起田総司」単行本第1巻が発売され、全国の書店およびWebストアにて展開されている。
2015年04月14日今回は漫画家と編集者の関係についてである。漫画家と編集者と言えば、喧々諤々の打ち合わせを経て共に作品を作り上げているというイメージもあるかもしれないが、私と編集者のやりとりはあっさりとしている場合が多い。ネーム(ネタ)を編集に見せる→OKが出る(修正が入る場合もある)→完成原稿をチェックしてもらう→OKが出る(修正が入る場合もある)→データを渡す、これで終了である。月刊連載の場合、月2、3回のメールのやり取りで終わってしまうことも珍しくない。連載当初は「ここはこうしたら良いのではないか」など修正を入れてきた編集も、3回目あたりになると「こいつは何言っても無駄だ」と思うのか、何も言わなくなる。私の担当は全員諦めが早いのか、私が諦めさせるのが早いのかわからないが、とにかくあまり修正が入らないのだ。描く側としては楽なのだが、あまりに何も言われないと本当にこれでいいのかと不安になるものである。○編集者から修正が来た場合のワークフローでは逆に修正が来た時はどうするかというと、まずひとりで怒る。尋常じゃなく怒る。この話の面白さがわからないコイツが悪いとマジ切れである。冷静に考えて、自分が描いた漫画を読むのは、全員が読者と言う他人である。ならば他人の意見は聞くべきなのであるが、修正が来た瞬間はそうは思えないものだ。そこで一旦、部屋の物を全部破壊するなどのクールダウンをしてから、再度修正案を読み、そう言われればそうだ、と思えば直すし、どうしてもそうは思えない場合は、編集を説得して初案を通す。それでも向こうが折れない場合は再度部屋の物を木っ端みじんにしてから修正をする。納得のいかない修正をする時がないとは言わないが、ネタがスベッた時に編集のせいにできるという利点もあるので、やはり編集の意見はある程度聞くべきなのである。○インターネット時代が可視化した"骨肉の争い"それにしても昔に比べ、漫画家、編集者という存在がずいぶん可視化されてきたと思う。今ではホームページ、ブログ、SNSなどを一切やっていない作家の方が珍しいと思うし、編集者がTwitterなどで作品の宣伝を行うことも少なくない。作家と編集は宣伝ができて、読者も作家と直接交流できたり、製作の裏側を知ることができたりと、おおむねWin-Winの関係であるが、何せ魑魅魍魎が跋扈するネット上のことなので、作家の不用意な発言が炎上したり、編集があまりにも前に出過ぎて叩かれるなどの弊害もなくはない。また、作家と編集のマジ喧嘩が始まり、それが読者に丸見えという事態も起こりうる。作品の美しさに魅かれて作家のTwitterアカウントをフォローしたのに、いきなり骨肉の争いを見せられるということもままあるのである。この場合、ケンカと言っても大体作家が一方的に編集への不満をぶちまけている場合がほとんどである。もちろん、編集が常に一方的に悪いというわけではない。編集をぶん殴りたいという作家の数だけ、あるいはそれ以上、漫画家を土に埋めたいと思っている編集がいるはずである。ただ、作家は個人であるが、編集は企業の一員なので、作家の言う事に編集が個人として反論することはできないのだろう。では編集は一方的に言われて不利だ、立場が弱いと思われるかもしれないが、ネットで内情を暴露してダメージを受けるのは作家の方である。暴露することでその出版社との仕事が切れる危険はもちろん、「何かあったらネットで言っちゃう作家」というイメージがつけば他の出版社からも敬遠されるであろう。それは暴露する作家も重々承知のはずだ。よほど後先考えない性格でない限り、いきなり不特定多数に向けて内情をぶちまけたりはしないはずである(漫画家になる時点で先を考えないタイプとも言えるが)。それでもなぜ言ってしまうかと言うと、もう「怒っているから」としか言いようがなく、ハナから得しようなどとは思っていない。むしろ、怒りと作家生命を天秤にかけて「終わっていい」と判断できるほどの、混じりっ気なし、100%純国産、「私が怒りました」と顔写真つきのシールを貼って良いほどの「怒り」がそこにあるのだろう。○作品の成否が関係を決める?こう書くと、漫画家は年中編集に対して怒り続けているように思えるかもしれないが、おそらく大半の作家と編集が良好、もしくは、仲良くもないがもめもしないというドライな関係だと思う。ちなみに個人的な意見だが、やはり作品自体が上手く行っていれば、作家と編集の関係はおおむね良好なのではないかと思う。作品の調子が悪ければ、編集は何とかしようとあれこれ助言をするだろうが、作家はそれに焦ったり反感を覚えたりするものだ。逆に作品が絶好調であれば、「先生、今週も最高です」と打ち合わせもそこそこに夜の街に繰り出し、ふたりで仲良く女体盛りをつついたりできるはずである。そんなことはない、売れたら売れたでもっともめる、と言われるかもしれないが、何せ売れたことがないのでわからない。どうせもめるなら売れてもめたいところである。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。2015年2月下旬に最新作「やわらかい。課長起田総司」単行本第1巻が発売され、全国の書店およびWebストアにて展開されている。
2015年04月07日今回は仕事の息抜きの話である。息抜きとは、仕事をより効率よく行うために必要不可欠な行為だ。しかし、私ほど息抜きに本業が圧迫されている作家はいないと思う。全く休みがない、どこにも出かけられないと嘆いているが、この息抜きの時間を減らせば余裕でバリ島ぐらいには行けるはずなのである。とにかく集中力がない。1コマどころか、1本線を引くごとに10分は息抜きしてしまう。本当に集中したいなら、今すぐネットのLANケーブルを斧で両断し、スマホを手刀で真っ二つにすべきなのだが、私がネット回線を絶つのはバトル漫画でいうところの「身に着けていた重り」を外す行為に等しく、生死を分ける強敵(締切)に出会うまでは絶対にはずさない所存である。○創作の息抜きは「エゴサーチ」では具体的に何をしているかというと、最近では女性に大人気のブラウザゲーム「刀剣乱舞」にはまり、その二次創作漫画を描くことにより本業の漫画を描く時間が圧迫されている、というわけのわからない状態にあるものの、一番の息抜きは「エゴサーチ」だ。エゴサーチとは、ウィキペディアによると「インターネット上で、自分の本名やハンドルネーム、運営しているサイト名やブログ名で検索して自分自身の評価を確認する行為」である。つまり、線1本描くごとに、Twitterで自分のペンネームや作品名はもちろん、時にはキャラクター名さえも検索し、自分の評価を調べているのである。見る人が見たら確実に病名がつきそうな状態だが、何せ漫画家は人気商売なので、世間の評価はどうしても気になる。褒めてくれているツイートを見ればやる気が出るし、逆に酷評するような物があれば、作品で見返してやろうと思う……ことはなく、「こいつに口内炎が7個ぐらいできますように」と呪詛を飛ばすぐらいだが、とにかく何らかのモチベーション向上につながるのだ。そして約5年にわたり、365日、1日も休まずエゴサーチをし続けた結果わかったことは、「良くも悪くも話題になるのは難しい」ということである。○月刊漫画誌デビュー、その時ネットの反応は…?Twitterに投稿されたアルバイトの悪ふざけ画像が大拡散、大炎上し、社会問題にまでなったこともあり、ネット上に何かを出すとあっという間に広まってしまう、という印象があるかもしれない。逆に良作がネットで広まり世に出るパターンもあるが、はっきり言ってそれはごくごく一部である。私が漫画家デビューした雑誌は、発行部数こそあまり多くないが、人気作も多く輩出している月刊誌であり、もちろん全国発売されているものであった。よって、私は自分の作品が掲載される日まで、「載った途端、ネットで酷評、住所を即特定され、嫌がらせが山のようにくるだろう」と本気で悩んでいた。しかし、いざ掲載され、おそるおそるネットで評価を調べて見ると、そこは静かな大平原であった。良いとか悪いとかいうレベルですらなく感想が「ない」のである。それぐらい「人の話題にのぼる」というのは難易度が高い。全国誌に一度載ったぐらいでは、誰も、一言も言及しない、なんてことはザラだ。それから5年、大平原状態は今も続いている。30秒に1回のペースでありとあらゆるワードで検索し、たまに落ちている感想を「ありがてえ、ありがてえ」と拾い、ほぼひとつ残らずリツイートする毎日である。酷評もないが絶賛もない、ジョジョの吉良吉影が求めたような生活がそこにあり、この平和を全世界に届けたいぐらいだ。平和は良いことだが、正直作家にとってはあまりよろしくない。賛美両論巻き起こるのは、それだけ人の目に触れているということだ。褒める感想が若干あるのみで悪評がないというのは、「変わり者のファンが3人ぐらいだけいる」という状態に等しく、その3人が全員石油王で単行本をひとり3億冊ぐらい買ってくれる場合を除き、そのうち干されてしまうだろう。○炎上もブレイクも"ホンモノ"に訪れる発信元のネットだけでなく、テレビや新聞などでも見られるようになった「ネットで話題」というお手軽な言葉を聞くと、いとも簡単に話題になれるような気になる。だが、広まるのはやはり「実力のある良作」であり、それはネットもリアルも変わらない。「炎上商法」も同じことであり、バカのフリをして売名してやろうと思っても大半はシカトされ、数人の人間に「バカだな」と思われて終わりであり、やはり炎上するのはホンモノのバカ野郎なのだ。日々、ネットで何かをきっかけにブレイクできないかと考えて過ごした5年であったが、結局、話題になるような良い作品を作るしかない、というのが結論である。しかしそれはなかなか難しい、なぜなら、30秒に1回エゴサーチをしているので、良作を作る時間がないのである。これを見た皆様はぜひ、私の名前を入れてTwitterでつぶやいて欲しい、必ず見つけ出して見せる、ただし悪口はいらない。どうしても言いたいなら、次の日に口内炎が7個ぐらいできる覚悟で臨んでほしい。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。2015年2月下旬に最新作「やわらかい。課長起田総司」単行本第1巻が発売され、全国の書店およびWebストアにて展開されている。
2015年03月31日今回は漫画制作における使用ソフトについての話である。前述の通り私は原稿の作成を、「ComicStudioEX 4.0」というソフトを用い、全てデジタルで行っているが、そのほかにも付属のソフトを使っている。何せ当方、会社員をしながらの漫画家生活のため、とにかく時間がない。よって向上心は一切捨て、楽できるツールは全て使う、という非常にストイックな方針を取らざるを得ないのだ。○労力削減のためのライフハックを公開「漫画を描くのは面倒くさい」と最初のコラムで言ったが、実はそれは嘘であり、本当は「すごく面倒くさい」のだ。最近は他の作家の作品を読んでも、面白い、面白くない以前にまず「描くの面倒くさそう」と思うようになった。絵を全く描かない方でも、1コマに大人数いる絵や、綿密な背景画などを見ると「描くの大変そう」と思ったことはあるはずだ。私はこの大変さを、「背景を一切描かない」、「人物の首から下は描かない」等のテクニックでやりすごしてきた。「こいつの漫画はこうなんだ」と、編集や読者の方を先に諦めさせるという画期的手法である。あと、どんなに面白くても「描くのが大変そうなネタはボツ」というクールな判断も功を奏していた。デビュー当時は本当にこれで何とかなったのだが、最近はそうもいかなくなった、キャラクターが今どこにいるのかぐらいはわかるようにしろ、と言われるようになってしまったのだ。しかしいきなり画力が上がるわけでも、作画人員を増やせるわけでもない、そこで私が新たに投入したのが「ComicStudio」と同じくセルシス社製品の「3Dデータコレクション」と「POSEPOSE STUDIO」である。別にセルシスの回し者でもないし金をもらっているわけでもない。(くれてもいいが)○デジタル社会の思わぬ落とし穴「3Dデータコレクション」というのは、簡単に言うと「背景画像素材集」である。背景画像素材は昔からあったと思うが、こちらは全て3Dになっており、用途に合わせ、拡大縮小、角度まで変更できるので、自然に背景を漫画にマッチさせることができる。と言いたいが、3Dというのは存外操作が難しく、背景の上に不自然に人物が浮いているというクソコラ状態になることもままあるものの、とにかくキャラがどこにいるかさえわかればOKだ。しかし、自分が欲しい背景が必ずしもあるとは限らない、キャラが小洒落たレストランで食事しているシーンにしたくとも、素材がファミレスしかないため、いい年の男女がいつもファミレスで飯を食っているという、しょっぱい漫画になってしまうこともある。また、この素材集は妙に「武器」の種類が多い、こちらとしてはもっとオフィスとかショップとかのデータが欲しいのだが、そういうのはあっても1種類なのに、「剣」だけで2、3種類あったりする。これはオフィスラブとかしゃらくさいことはやめて、今すぐ剣を持ってやりあう漫画にしろという、セルシスさんからのメッセージなのであろうか。「漫画」という超文化系製品を作っている割には武闘派組織なのかもしれない。続いて「POSEPOSE STUDIO」だが、これはデジタル版デッサン人形と思ってくれればいい。その名の通り、3Dの人物モデルにポーズを取らせ、それを元に描けば、どんな難しい構図もデッサンの狂いなく描ける、という大変便利なソフトである。だが前述の通り3Dというのは操作が難しいため、なかなかモデルが自分の求めるポーズをとってくれない。ちょっと右手を動かすはずが、胴体ごと人体が曲がってはいけない方向に曲がってしまうこともしばしばである。これは木製デッサン人形にはない苦労であり、デジタル社会の思わぬ落とし穴と言えよう(安物の木製デッサン人形は、膝を曲げることすら無理ということもあるが)。時短のために導入したソフトなのに、モデルに意中のポーズをとらせることに時間を取られるという本末転倒さえ起こってしまう。よって最近では、デフォルトで用意されているポーズの方に合わせて漫画を描くようにしている。○漫画家に必要な資質何だかツールを使いこなしているというより、逆に使われている気もしなくもないが、このようなソフトを使うことにより、アシスタントを使わず、会社員をやりながらなんとか漫画業をこなしているのである。しかし、いくら便利なツールを使っているとは言え、やはりデビュー当時の背景なし、人物は首から上のみの時よりは作画に時間がかかるようになったし、素材をそろえるための経費がかかるようになった。しかも悲しいことに、一番時間と金がかかっていないデビュー作が一番売れているのである。逆にどれだけ労力と金をかけても、売れない時は売れない。こういう事態を「まあ仕方ねえ」と諦めて次にいけるかどうかが、機器やソフトよりも漫画家に必要な資質なのである。※文中に登場するソフトの使用感は著者個人の感想です。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。2015年2月下旬に最新作「やわらかい。課長起田総司」単行本第1巻が発売され、全国の書店およびWebストアにて展開されている。
2015年03月24日下のグラフが私の今現在の、平日と休日のタイムスケジュールである。これを見てまずわかることは、図のセンスがなさすぎる。線1本、色1色どれをとってもダサい。われながら、親に年間75万の授業料を出してもらい、デザインの専門学校に2年通わせてもらってこれかと思うと、3秒以上は直視できない代物である。子どもが望む勉強をさせてあげるのも親の愛だが、その学校(クリエイティブ系専門学校は特にヤバい)で自分の子どもが本当に頑張れるのかを(就職するのが嫌で時間稼ぎしようとしてないか)クールすぎるほどに見定めてから送り出してやるべきだろう。脱線してしまったが、これが漫画家兼会社員として働く私の1日だ、原稿製作数は多少変動するが大体月産50ページ、家族構成は会社員の夫と2人暮らしである。○平日の場合まず平日を見ると、睡眠、会社、原稿以外ほぼ何もしていないように見えるかもしれないが、その通りである。睡眠を削るほどではないが、他のことは何もできない、というのが現状だ。睡眠時間は常に6時間から7時間、たとえやらねばならぬことがあっても、眠いと何もできないので「残りは明日の自分がやる」と割り切って寝る。起床は6時半、夫の弁当と朝食を作り出社準備をする(洗濯、風呂掃除は夫の担当)。8時から17時までは会社。事務職で残業なし、17時にはきっちり退社できる。帰宅後は洗濯物を取り入れ夕食を作り、風呂に入り夕食を食べ、18時には漫画の仕事を始め、その後は寝る23時前後までずっと原稿となる。ずっと原稿と言っても、30秒に1回Twitterで自分の名前でエゴサーチしたり、1コマ描くたびに30分ほどpixivを眺めたりする時間も含めてだが、おおむねずっと原稿をしていると言って良い。しかしこの18時から23時の「原稿」はあくまで"描く時間"であり「話を考える時間」は含まれない、絵を描ける時間が限られているため、ネタ出しは他の時間で終わらせなければいけない。家に帰って机についてペンを握ったはいいが「描くものが決まっていない」というのが最悪なのである。なので「原稿」と「睡眠」以外の時間でネタをひねり出さなければいけないのだが(最近は睡眠の間に何とかできないかと思っている)、これまた通勤時間、昼休み、ちょっと仕事の手が空いた時(会社で絵を描くわけにはいかないが、頭の中までは見られないので)など、絵を描く時間以上に限られている。なので、もはやおもしろいかどうかは度外視でネタを考える、というギャグ漫画家としてどうかしている状態なのだ。おもしろいかどうかはわからないが、とにかく話をまとめ、描いて、担当に見せてOKが出れば「こいつが面白いと言っているんだから良い」と納得して作画に入り(ウケなかったら担当のせいにできて一石二鳥である)OKが出なければ頭の中で担当をぶん殴ってから、修正するか、泣きながら説得してこのまま作画に移るかである。こう書くと「もっと真面目に考えろ」と言われるかもしれないが、はっきり言って24時間柱に縛り付けられて考えたネタが、ハナクソほじりながら3分で出したネタより面白いとも限らないのである。それにどんな仕事でも、納期に間に合わせるのは最重要なのだ。出版社側からすれば、納得いく物が描けていないからと締め切りを破る作家の方が厄介なはずである。ちなみに上記の通り、思いついた話を即原稿にできるわけではなく、いったんネームという話の素のようなものを担当に見せて(これを描く時間も「原稿」に入る)、OKが出てからはじめて本原稿に入れるので、担当の返事が遅いというのはこちらにとっては死活問題だ。よって某アニメ映画のように「40秒で返事しな!」と脳内で叫びながらネームをたたきつけることもしばしばである。○休日の場合次に休日(日曜祝日/土曜は隔週で休み)だが、これはかなり変動がある。余暇の時間は仕事の進行状況によって増えたり減ったりするが、「今日は丸1日休む」という日はほぼない。ならばその貴重な余暇に何をするかと言うとはっきり言って「何もしたくない」。お出掛けなどもってのほかであり、DVDを借りることすらだるいので、もっぱらネットサーフィン、パソコンのブラウザゲームか、携帯ゲームという極力頭を使わなくて良い遊びか、好きなゲームキャラクターの絵や漫画などを描いたりしている。漫画を描く息抜きに漫画を描くとはどういう変態だと思われるかもしれないが、そういう作家は結構多く、商業誌で活躍するかたわら趣味で同人誌を作ると言うド変態が数多く存在している。そのぐらい仕事で描く漫画と趣味で描く漫画は別物なのだ。このように私の漫画家兼会社員生活は、完全にプライベートと家庭が犠牲となっている。夫の家事負担は大きくなる一方であるし、休日に2人で出掛けることはまれで、旅行などもってのほかなのだ。しかし夫が休みの日に私と過ごしたがっているように見えるかと言うと完全に「NO」なので、もしかしたら今が一番家庭円満なのかもしれない。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。2015年2月下旬に最新作「やわらかい。課長起田総司」単行本第1巻が発売され、全国の書店およびWebストアにて展開されている。
2015年03月17日確定申告の季節である。確定申告というのは簡単に言うと、一向に芽がでない作家が「今年もダメだった」ということを再確認するためにする行為だ 。○苦渋の「白色申告」現在私は、確定申告を税理士などに依頼せず自分で行い、区分は「白色申告」である。もう少し厳密に言うとすれば、青色申告が全く理解できなかったための白色申告だ。白色申告と青色申告の違いは何かと言うと、とりあえず青色申告の方が難しいが税的に優遇されると思ってくれればいい。(ここでちゃんと説明できるなら青色申告をやっている)一昨年「やよいの青色申告」というソフトを購入し、数十万の控除を手に入れた気分であったが、全くもって「ダイエット商品を買っただけで痩せたつもりになっているデブ」と同じであり、全く使いこなすことができなかった。こんなよくわかっていない状態で無理やり青色申告をしても、法を犯す恐れがある。ならば税理士に依頼すればいいのだが、今度は税理士に頼むほどの収入でもないという事実がつきまとい、幾重にもつらい苦渋の白色申告である。漫画家の確定申告と言っても他の事業と変わらず、売り上げから経費を差し引いた物を申告し、税の還付を受けたり、さらに払ったりする。漫画家にとっての売り上げとは、原稿料、単行本の印税のことであり、ここ数年では電子書籍の売り上げの一部ももらえるようになった。(非常に限られているため)売り上げについてはそんなに迷うことはない。では経費はどうだろうか。漫画家の経費と言えば、ペン、インク、スクリーントーンなどを想像されるかもしれないが、私は前回のコラムで書いた通り、すべての作業を「ComicStudioEX 4.0」という漫画製作ソフトで行っている。それと、私ほどの大作家になると、カラーページがもらえるのは1年に1度あるかないかであるが、いつ依頼が来ても良いように、カラー対応の「CLIP STUDIO PAINT EX」というソフトも導入している。これらのソフトは両方とも月額500円。つまり、固定費としてかかる作画経費は年間1万2,000円ということになる。いくら安い漫画しか描いていないとはいえ安すぎる。節税どころの話ではない。なので作画経費のほかにも経費を計上していく。まず、私は自宅を仕事場にしているため、水道光熱費の一部を経費とする、また電話代、ネットのプロバイダー料金なども編集者とのやりとりに必要なので一部計上する。と言っても実は電話で話すことはまれであり、電話がかかってくるのは「連載打ち切り」等の言いにくい話の時のみ、という現状なのだが、そこまではお上も責めないであろう。また地方在住なため、打ち合わせ等で上京する際の飛行機代なども経費である。不景気だからか昔からそうなのかは知らないが、交通費を出してくれる出版社は実は少ない。しかし出版社側も「打ち合わせのために4、5万自腹で払って来てくれ」とは言いづらいのだろう、どの出版社も気を使って「交通費が出る出版社との打ち合わせのついでにうちとも打ち合わせしてくれ」と言ってくれるのである。結果、1泊2日の日程で、3社も4社も打ち合わせをすることになり、羽田空港のスタバで飛行機が飛ぶまでの1時間だけ、という、ラブホで会ってことが済んだら即帰るカップルのようなただれた関係になっていくのだ。他細かい経費はあるが、主な物としては以上である。今の漫画家はあまり経費がかからないのだな、と思ったかもしれないが、それは私が必要以上にシンプルな作風の作家だからである。○カレー沢薫、アシスタント募集を検討?漫画家の最大の経費と言えばアシスタント代などの人件費であろう。いくら作画ソフトのおかげで作画時間が短縮されたとは言え、週刊雑誌でストーリー漫画を一人で連載するのはほぼ無理であり、多くの作家がアシスタントを雇っている。昔は原稿料がアシスタント代で消え、単行本が売れなければ餓死とさえ言われていた。自分などは人件費がないので原稿料がマイナスになることはないが、売れずに終わって、次の仕事がなければ緩やかに餓死である。餓死しかねえのかよ、と思われたかもしれないが、漫画家に限らずどの職業も失敗すれば同じことなので、漫画家を志す皆様は臆せず挑んでほしい。ちなみに私は今までアシスタントを雇ったことがない、むしろあると言ったらふざけるなと殴られるレベルの絵であるため、今後しばらく雇う予定はない。しかしこの季節、経費の少なさに頭を抱えるのも事実なので、人件費計上のためアシスタントを雇ってみようかと思うことはある。何も作画の手伝いだけがアシストではない。メンタルが弱い作家にペンを握らせるために、至近距離で24時間作家をほめたたえ続ける仕事、というのも立派なアシスタントである。ただ非常にハードな仕事のため、日給10万ぐらいでないと、なり手がいない気がするので、結局得にはならないだろう。またそれを人件費と認めるかどうかは、お上の判断である。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。2015年2月下旬に最新作「やわらかい。課長起田総司」単行本第1巻が発売され、全国の書店およびWebストアにて展開されている。
2015年03月10日はじめまして、漫画家のカレー沢薫と申す者です。と名乗った所で誰も知らないので、あらためて自己紹介させてもらう。漫画家兼会社員生活6年目、「売れたら会社を辞める」が目標だったが、最近では「会社を辞めなくて本当に良かった」が口癖の、まあ木っ端作家である。そんな華やかじゃない方の漫画家の生活を華のない文章でつづるのが当コラムだ。○漫画家をめざしたきっかけ絵を描くことは幼少のころから好きだったが、小学二年生の時に読んださくらももこ氏の代表作「ちびまるこちゃん」の単行本に収録された「作者が漫画家になるまでのエッセイ漫画」を読んで、初めて漫画家という職業を意識し、目指すようになったと思う。その後一貫して「漫画家になりたい」と言い続けてきたが、恐ろしいことにそれから約20年間、私は1回も漫画を最後まで書き上げたことがなかった。漫画家になりたい、と言いながら、キャラクターの設定だけ凝りに凝った漫画の冒頭2ページだけを描いたり、末期になると自分の作品は一切書かず、ひたすら既存のアニメやゲームのキャラクターのキメ顔ばかり書いていた、親に高い金を出させ、美術系専門学校に通わせてもらったにも関わらずである。ボンクラすぎる、と思われたかもしれないが、こういう「漫画を描かない漫画家志望」というふざけた奴らは結構多いのである。ただこういうボンクラどもを一概に責めてはいけない。何故なら漫画を描くと言うのは超面倒くさい行為なのだ。「描き上げる」というだけでも多大な才能がいる、ボンクラに出来るわけがない、むしろ出来る方がおかしいと言ってもいい。しかしこの超面倒くさかった「漫画を描く」という作業も、パソコンツールの発展によりだいぶ緩和されてきた。正直私はパソコン以外で漫画を描いたことがない。もしいまだに漫画がつけペンにインクでしか描けない代物だったら、私は100%漫画家になれていないし、なった所で、原稿は3歳児100人に囲まれて描いたのかと思われるほどさんさんたる物になっていたであろう。私が現在使っているマンガ製作ソフトは「ComicStudioEX 4.0」。ペンタブはワコムの「Cintiq 12WX」を使用している。パソコンは多くのクリエイターがMacを使う中不動のWindowsで、机が狭すぎるためノートパソコンである。こういったソフトのおかげで、黒く塗りつぶす「ベタ塗り」「トーン貼り」などがワンクリックで可能になった。今でこそ当たり前のことであるが、昔は手でイチイチ黒く塗っていたし、トーンはカッターで切ったり貼ったりしていたのだ。この時点でボンクラどもは原稿を投げ出して、アニメキャラクターの模写を始めるところである。○漫画家デビューは規格外の"フォトショ原稿"こうしたツールのおかげで、描かない漫画家志望だった私は初めて投稿作を描き上げることができた、と言いたい所だが、全くそんなことはなかった。応募した漫画賞が「なんでもあり」をうたっており、完成原稿でなくてもOK、漫画原作でも小説でもOK、もちろん何を使ってどんな規格で描いてあってもOKという、間口ガバガバだったのである。今までの漫画投稿と言えばB4サイズにA4の枠を取り、断ち切りサイズは云々、黒インク使用、ボールペン薄墨不可…等々、それだけでバカ野郎の頭を破裂させるに十分なものだったため、正直冒頭2ページどころか枠線さえ満足に描いたことがなかった。しかし、このなんでもありの漫画賞を見た私(当時26歳無職)は、本当に何でもいいんだろうと思い、ブログに載せていた未完の漫画(B4とか一切無視でPhotoshopを使って描かれたもの)をプリントアウトしそのまま投稿したのである。その4カ月後、その原稿がデビュー作として誌面に載り3年の連載となった。こう書くとサクセスストーリー自慢のようだが、その漫画自体は特にサクセスしてないので許してもらいたい。(今後もサクセスの予定はない)このように、漫画家になる術というのは昔より大幅に広がっているのだ、昔であれば限られた雑誌のページを奪いあう形であったが、今ではWebという無限の容量があるし、何で描かれていても問題なく、逆に趣味でWebに発表していたものが出版社の目に止まり書籍化というケースも珍しくない。さらに何が売れてもおかしくない時代なので、たまたまインフルエンザとノロウイルスに同時に罹っていた編集者が、私のような者を「ワンチャンあるかも」と勢いでデビューさせてしまうこともままあるのだ。また前述の通り、漫画を描くソフトの発展も目覚ましいため、近い将来全く絵の描けない人間でも、ツールを駆使すれば漫画家として活躍できる時代がくるかもしれない。と言いたいが、私の漫画を見てもらえればわかるように、最新のツールを使っても、いまだに使い手の技術によるところが大きいのである。漫画制作ツールの開発者の方はもっと頑張ってほしい、私は限界だ。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。2015年2月下旬に最新作「やわらかい。課長起田総司」単行本第1巻が発売され、全国の書店およびWebストアにて展開されている。
2015年03月03日人気TVシリーズの待望の劇場版となる『深夜食堂』が1月31日(土)に公開を迎え、主演の小林薫を始め、高岡早紀、柄本時生、多部未華子、筒井道隆、菊池亜希子、オダギリジョー、松岡錠司監督が初回上映後の舞台挨拶に臨んだ。安倍夜郎の人気漫画を原作に2009年より連続ドラマとしてスタートしシリーズを重ねてきた人気作の映画化。深夜にひっそりと営業する食堂のマスターと、そこに集う個性的な客たちの人間模様を描き出す。“深夜”食堂ながら、朝8:45開始の初回上映は満席で松岡監督は「朝早くに起きて、午前中に観るために駆け付けてくださったみなさんに深く感謝します」と頭を下げる。小林さんは「監督が舞台そでで目頭を押さえていました(笑)」と暴露したが、これに対し松岡監督は「僕は目頭を熱くしてたかもしれないけど、トイレで号泣していたのは小林さん」とうそか真実かは不明だが(※小林さんは『なんで泣かないといけないの?』と否定)、いいトシの大人たちの暴露合戦の様相を呈し、会場は笑いに包まれる。小林さんは映画公開初日を迎え「今日がお正月のようなもの。こんなにたくさんの方に来ていただいて、“大吉”を引き当てた気分です」と笑顔を見せた。高岡さんは『バタ足金魚』以来となる実に二十数年ぶりの松岡監督の作品への出演。「感慨深かったです。(『バタ足金魚』での演技の)どこが悪かったのか…?呼んでくれなかったので(苦笑)」と苦情を言いたて、今回の現場についても「私には文句ばかり言うんです!」と語り、これには松岡監督も「小林さんといい、僕のことイジリに来たの…(苦笑)?」と困惑していた。TVシリーズから出演のオダギリさんは松岡監督について「普段から仲良くしていて、家族というと言い過ぎですが、親戚のおじちゃんのようなもの」と語り、本作に関しても「飲みながら『次はどうやろう?』という話をしていた」と明かす。「そうした過程を踏みながらこうして初日を迎えて、あのダラダラ飲んでた時間が少しは作品のためになったのならよかった。感慨深いです」と笑顔を見せた。映画にちなんで忘れられない一品について話を尋ねると、小林さんは一時期、納豆とネバネバ系の食べ物を混ぜて作る“五色納豆”に凝っていたことを告白。普段、納豆が食べられない友人も小林さんの作った五色納豆なら食べられたとのことだが、その友人の妻がそれで気分を害してしまったそうで、それが原因かは不明だが「しばらくしてその方は離婚しまして…(苦笑)」と申し訳なさそうに明かし、会場は爆笑!さらに「いまは別の方と再婚されて幸せになったんですが…」と近況まで明かし、自身の料理が引き起こした…かもしれない数奇な運命に首をひねっていた。『深夜食堂』は全国にて公開中。(text:cinemacafe.net)
2015年01月31日2シーズンぶりにJ1へ挑む湘南ベルマーレ。オフの補強で注目を集めたのが、柏レイソルから加入したFW高山薫だ。ベルマーレがJ2へ降格した2013年オフに移籍してからわずか1年。前例のない復帰劇の主役となった26歳は原点に帰り、大暴れを狙っている。○青天の霹靂となった湘南からのオファー思わず自分の耳を疑った。「冗談を言われているのでは? 」と勘ぐりたくもなった。昨シーズンも残り数試合となった段階で、高山のもとへ届いた移籍のオファー。2013年シーズンまでプレーしたベルマーレから、再び声がかかった。文字通りの青天の霹靂(へきれき)だった。「次のシーズンも普通にレイソルでプレーすると思っていたし、実際に契約も残っていた。最初は『マジっすか』という感じでした。完全移籍でベルマーレを出ていったのに、もう一回誘ってもらえるなんて考えられないじゃないですか。しかも、たった1年で」。2013年シーズンをJ1で戦ったベルマーレは、16位に終わって残留することができなかった。J1の厚い壁の前に開幕から苦戦を強いられ続けた中で、高山は左MFのポジションで攻守両面において群を抜く存在感を発揮。レイソルを率いていたネルシーニョ監督(現ヴィッセル神戸監督)のメガネにかなった。○ベルマーレで成長したいという気持ち昨シーズンに記録的な独走劇でJ2を制したベルマーレは、早い段階からJ1の舞台を見据えて2015年のチーム編成を進めていた。3トップの左で活躍していた武富孝介が、期限付き移籍を終えてレイソルへ戻ることが確実視されていた。オフの移籍市場で誰を獲得すべきか。白羽の矢を立てられたのがFW出身の高山だった。形の上ではレイソルとの交換トレードとなる。しかし、ベルマーレの曺貴裁(チョウ・キジェ)監督は、チーム内の競争の激しいレイソルで32試合に出場した高山をあるときにはファンの立場で応援し、またあるときには親心をもって見守ってきた。そして、レイソルから断られることを覚悟の上で出したオファーが高山の心を打った。「プロになったときもレイソルに移籍したときも、不安のほうがめちゃ大きかった。ベルマーレへの思い入れは確かに強かったけど、それ以上に今回の話をもらったときに、自分の中で不安よりも『楽しみだ』『もう一回挑戦したい』『ベルマーレで成長したい』という気持ちが純粋に膨らんできたんです」。○古巣の快進撃に刺激を受けてきた2014年川崎フロンターレの育成組織で育った高山は、専修大学を経て2011年シーズンにベルマーレへ加入。ルーキーイヤーはFWとして、チーム最多の9ゴールをあげた。2年目からは曺新監督のもと、スピードと運動量をさらに生かすためにMFに転向。若さを前面に押し出すベルマーレの象徴となった。再びJ2を戦う仲間たちに別れを告げて、新天地へと旅立った2014年シーズンも古巣は常に気になる存在だった。「開幕から勝ち続けてすごくうれしかったけど、途中からは勝ち過ぎていたというか……。レイソルのチームメイトからも『お前がいないほうが強いじゃん』とかいじられて、すごく悔しかったですね(笑)。僕にとって刺激になったし、モチベーションを上げてくれました」。かつてともに戦ったMF永木亮太、DF遠藤航がベルマーレに残留するという一報も入ってくる。悩むこと約2週間。高山はレイソルのフロントへ移籍したい意思を伝えた。○「自分が進む道に自信を持っていく」レイソル、ベルマーレ双方の選手やサポーターを驚かせた移籍が発表されたのは昨年のクリスマスイブ。最後はレイソルの吉田達磨新監督が高山の背中を押した。「達磨さんは『お前が思うようにするのがベストだ』と言ってくれた。僕の気持ちを尊重してくれた達磨さんとレイソルのフロントの方々には、本当に感謝しています」。古巣への復帰となると最近では中村俊輔(横浜F・マリノス)が代表的だが、決断したのは32歳のときだった。高山は26歳と心技体のすべてで脂が乗りきった年齢で、新天地で活躍した上、契約を残したまま1年で戻ってきたとなると前例はほとんどない。もちろん、歓迎されるだけではないだろう。J2を戦った2014年シーズンにいなかったことが、もしかすると快く思われないかもしれない。それらをすべて受け入れた上で、高山は再びベルマーレの一員となった。「自分が進む道に自信を持っていくことが、大事だと思っているので」。○背番号『23』に込められた決意今シーズンもキャプテンを務める永木とはフロンターレのジュニアユース時代の同期であり、中学年代の3年間で厳しく指導してくれたのが曺監督だった。サッカーを通じて育まれた絆にも感謝すると同時に、そうした縁に甘えることは許されないと高山は自分自身に言い聞かせている。実際、曺監督は「ポジションを約束することはない」と明言している。「(永木)亮太とはいまも仲がいいですけど、傷をなめ合うようなことは絶対にしない。監督の厳しさはわかっているし、最初にベルマーレにいたときから自分のポジションは確立されていなかった。そういう方針のほうが僕も成長できるし、練習からポジションを奪う気持ちでやっています」。背番号は自らの希望で『23』とした。入団1年目に背負った番号に、高山の決意が込められている。「もう一回、一からやるので」。J1へ再チャレンジするだけではなく、厚い壁に風穴を開けて日本サッカー界に驚きを与えることを目標にすえた2015年。静かに牙を研ぐベルマーレの中心に、原点に返った高山がいる。写真と本文は関係ありません○筆者プロフィール: 藤江直人(ふじえ なおと)日本代表やJリーグなどのサッカーをメインとして、各種スポーツを鋭意取材中のフリーランスのノンフィクションライター。1964年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒。スポーツ新聞記者時代は日本リーグ時代からカバーしたサッカーをはじめ、バルセロナ、アトランタの両夏季五輪、米ニューヨーク駐在員としてMLBを中心とするアメリカスポーツを幅広く取材。スポーツ雑誌編集などを経て2007年に独立し、現在に至る。Twitterのアカウントは「@GammoGooGoo」。
2015年01月24日安倍夜郎の人気コミックを映画化する『深夜食堂』のキャストと監督による初日舞台あいさつ1月31日(土)に丸の内TOEIで開催される。当日は、小林薫らキャスト7名と松岡錠司監督が登壇する。その他の写真本作は、ビッグコミックオリジナルで連載中の安倍夜郎の人気コミックをドラマ化に続いて映画化するもの。繁華街の路地裏にある小さな“めしや”にやってくるさまざまな客たちの人生模様を描く。ドラマ版に引き続き“めしや”のマスターを小林薫が演じ、愛人を亡くしたばかりの三十路女を高岡早紀、風采が上がらず安月給の平凡なサラリーマンを柄本時生、無銭飲食をしたことを機に、マスターの手伝いを兼ねて住み込みで働くことになったみちる役を多部未華子が演じる。丸の内TOEIで行われる初日舞台あいさつには、小林、高岡、柄本、多部、筒井道隆、菊池亜希子、オダギリジョー、松岡監督が登壇する。チケットは、いち早プレリザーブが受付中。プレリザーブ(先行抽選)は、21日(水)より受付を開始し、一般発売は、24日(土)午前10時よりスタートする。『深夜食堂』初日舞台あいさつ1月31日(土)会場:丸の内TOEI (東京都)開場8:25/開映8:45 上映後舞台あいさつ登壇者(予定):小林薫、高岡早紀、柄本時生、多部未華子、筒井道隆、菊池亜希子、オダギリジョー、松岡錠司監督料金:大人 2000円、大学・高校生 1700円※当日要学生証、3歳~中学生 1200円、シニア 1300円※60歳以上、障がい者手帳お持ちの方 1200円※当日要障がい者手帳いち早プレリザーブ:受付中~1月21日(水)11:00AMまでプレリザーブ:1月21日(水)11:00AMより~23日(金)11:00AMまでチケット発売:1月24日(土)10:00AMより
2015年01月19日ライカギャラリー京都は、小山薫堂とアレックス・ムートン(Alex Mouton)による写真展「KYOTO KOTOKOTO TOKOTOKO」を開催する。期間は2015年1月10日から3月29日まで。小山薫堂は「料理の達人」などを手掛けた放送作家で、人気キャラクター「くまモン」の作者としても有名。現在は料亭「下鴨茶寮」の主人や、アンテナショップ「京都館」の館長を務めている。一方、アレックス・ムートンは写真を愛する旅人で、先日にはパリを訪問したくまモンを撮影したことで話題となった。なお、今回の展覧会は京都市が提唱する“歩くまち・京都”憲章に則り、京都市内を散策中に2人が見つけた魅力的な景色を展示。それぞれの生まれ年に製造されたアンティークレンズを用いて、古都京都の雰囲気が伝わるような作品が撮影された。【イベント情報】KYOTO KOTOKOTO TOKOTOKO会場:ライカギャラリー京都住所:京都市東山区祇園町南側570-120ライカ京都店2階期間: 2015年1月10日から3月29日時間:11:00から19:00休廊日:月曜日入場無料
2014年12月19日小さなめし屋で繰り広げられるユーモラスで、時に切なくなる人間模様を描き、人気を博してきた小林薫主演のドラマの映画化作品『深夜食堂』。このほど、炊きたてご飯や煮込みカレーなど美味そうな“めし”も収められた予告編が到着した。ネオン煌めく繁華街の路地裏にある小さな食堂。夜も更けた頃に「めしや」と書かれた提灯に明かりが灯ることから、人は「深夜食堂」と呼ぶ。メニューは酒と豚汁定食だけだが、頼めば大抵の物なら作ってくれる。そんなマスターが出す懐かしい味を前に、客たちの悲喜こもごもな人生模様が交差する。春夏秋冬、ちょっとワケありな客たちが現れては、マスターの作る懐かしい味に心の重荷を下ろし、胃袋を満たしては新しい明日への一歩を踏み出していく――。今回公開されたのは、深夜食堂ファンおなじみの「赤いウインナー」から始まる予告編。小林さんが焼く卵焼きの音や、炊きたてご飯の土鍋をあけた瞬間の湯気、じっくりとカレーを煮込む音、見ているだけでお腹が空いてきそうな映像だ。そんな美味しい食べ物の中に描かれるのは、登場人物の人生。もちろんカナ・ミキ・ルミの“お茶漬けシスターズ”や常連客の姿も映し出されている。また、「めしや」の二階で煙草を燻らせるマスターや、昼間の路地にいるマスターなど、日常の姿も垣間見え、映画でしか観ることのできないマスターの日常の様子はファン必見!「できるもんならなんでも作るよ」というお決まりのセリフも健在だ。「ビッグコミックオリジナル」(小学館)で連載中の安倍夜郎の大ヒット漫画を原作に描かれる本作。キャストには、マスターの小林さんを始め、ドラマ版でもおなじみの常連客に、綾田俊樹、不破万作、松重豊、安藤玉恵、山中崇、宇野祥平、光石研はもちろん、オダギリジョーも前作までとは一変、新たなキャラクターとして登場。さらに、疲れた顔で誰しもがなじみのあるカレーを頬張る謙三役の筒井道隆、至福のときを味わうかのような笑顔でとろろご飯を見つめるみちる役・多部未華子、一見楽しげだが真の心は隠したままのミステリアスに微笑むたまこ役・高岡早紀など大切なメニューとともにそれぞれの人間ドラマを温かく描いていく。『深夜食堂』は2015年1月31日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2014年10月15日シリーズ累計230万部発行、国民的“食”コミックがTVドラマに続き、遂に映画化される『深夜食堂』。ドラマ1、2に引き続き、小林薫を主演に、「めしや」の一年間の日々を春夏秋冬、季節感たっぷりに描かれる本作からポスタービジュアルが公開された。ネオンきらめく繁華街の路地裏にある小さな食堂。夜も更けた頃に「めしや」と書かれた提灯に明かりが灯ることから、人は「深夜食堂」と呼ぶ。メニューは酒と豚汁定食だけだが、頼めば大抵の物なら作ってくれる。そんなマスターが出す懐かしい味を前に、客たちの悲喜こもごもな人生模様が交差する――。本作は、「ビッグコミックオリジナル」(小学館)で連載中の安倍夜郎の大ヒット漫画を原作に、『東京タワーオカンとボクと、時々、オトン』で日本アカデミー賞を受賞し、ドラマシリーズ「深夜食堂」も手がける松岡錠司がメガホンを取る。今回公開されたビジュアルには、自身が切り盛りする、“めしや”のトレードマーク、暖簾と提灯の前で仁王立ちする小林さんの姿が。一定の距離を保ったまま店へと迎え入れるマスターの器の大きさを表したかのようなビジュアルだ。また、ポスターの下方には今回の映画での「客」となる人々が集結!疲れた顔で誰しもがなじみのあるカレーを頬張る謙三役の筒井道隆、至福のときを味わうかのような笑顔でとろろご飯を見つめるみちる役・多部未華子、一見楽しげだが真の心は隠したままのミステリアスに微笑むたまこ役・高岡早紀などの姿が映し出されている。ほかにもドラマシリーズの風貌とは一変した警察官の恰好をしたオダギリジョーや、田中裕子、余貴美子など実力派のキャストが顔を揃える。映画『深夜食堂』は2015年1月31日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2014年10月11日JALは5月より国際線の機内販売にて、同社の新商品・サービス総合アドバイザーである脚本家・小山薫堂との特別企画「JAL スカイ ビスポーク」を開始した。その第1弾として、英高級靴ブランド「ジョンロブ(JOHN LOBB)」の「バッフィンググローブ」を6月まで販売する。価格は1万4,000円。「JAL スカイ ビスポーク」は、伝統あるブランドの高い技術を持つ職人によるアイテムを、JALオリジナル商品として販売するというもの。2015年4月まで、2か月ごとに全6回に渡り新製品を提供していく。「バッフィンググローブ」は靴の表面を磨くためのミトンのこと。表面に貼られたムートンの天然オイルによって、革に傷をつけることなく艶が出せる。クリームなどを必要としないため、旅先に持ち歩けば気軽に靴を磨くことが可能。ジョンロブでは全7色のグローブをラインアップするが、今回はJALオリジナルカラーとしてコーポレートカラーの赤を使った商品となっている。
2014年05月10日八千草薫を主演に迎え、今年101歳で亡くなった詩人・柴田トヨの半生を描く映画『くじけないで』。11月12日(火)に皇后美智子さまが行啓され、本作の試写会が開かれ、八千草さんを始め、共演の武田鉄矢、監督の深川栄洋と共に作品をご鑑賞された。本作は90歳を超えてベストセラー詩人となったトヨさんが、詩を書き始めるきっかけとなったエピソードや、詩集の背景となった家族のドラマなど、明治から平成までを生き抜いた100年の歴史をトヨさんの詩にのせて丁寧に描く感動のヒューマンドラマ。この日の試写会後に、報道陣の取材に応えた八千草さんは、美智子さまから「観終わってすぐに、『とても良いものを見させていただいた』と仰っていました」と嬉しそうにコメント。さらに映画鑑賞前にもお話しましたといい、「『(武田さんが演じた)健一さんと武田さん(ご自身)はよく似ていますか?』と聞かれたので、とても良く似ていますとお話しました。『どのようなところですか?』と聞かれたので、ダメなところが…(笑)、とお話しした後、健一さんのシーンで3、4回笑ってくださっていて感動しました」と楽しそうに明かしてくれた。また、八千草さんは82歳、美智子さまは79歳とあって、同世代の女性として皇后陛下が仰ったお言葉で心に残っていることは?と八千草さんに向けて質問が飛んだが、何故か武田さんが「オレが代わりに答えます」と一歩前へ。「八千草さんのことを『いつまでもお美しい』と仰っていました。作品に関しては、『誰もが憧れるおばあさまが描かれていました』と仰っていました」(武田さん)。これを受けて、八千草さんは恐縮しながらも「皇后陛下は、心からの美しさがあり、本当に優しさが滲み出ていらっしゃいました」と語っていた。『くじけないで』は11月16日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:くじけないで 2013年11月16日より全国にて公開(C) 2013「くじけないで」製作委員会
2013年11月13日サンシャインツアーはこのほど、青森県鰺ヶ沢町が2013年春に「マラソン村(仮称)」を開村するにあたり、首都圏の女性100名限定で開村プレイベントモニターツアーを発売した。「マラソン村(仮称)」は、全国各地からランナーを鰺ヶ沢町に誘致し、地域活性化を目指す施設。今回の女性限定モニターツアーは、首都圏などから100人の女性ランナーを招き、施設と鰺ヶ沢町の魅力を知ってもらおうというもので、9月28日~30日の日程で開催される。東京・新宿を28日夜に出発する、現地1泊3日間(車中1泊)の行程で、白神山地ランニング、岩木山観光ランニング、鯵ヶ沢町との交流会、女性ランナー松田千枝の講演会、美しい走り方講座などに参加する。朝食2回、昼食2回、夕食1回付。女性のみが参加できる。キャンペーン料金は、3名1室で6,000円(2名は1,000円増。1人1室は4,000円増)。大人・子ども同額。宿泊はナクア白神ホテル&リゾート。出発は9月28日21:30(東京駅)、22:00(新宿駅)。詳細は「マラソン村特別モニターツアーのページ」へ。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年08月30日ライフネット生命は5月31日に開設した、放送作家で脚本家である小山薫堂氏とコラボレーションしたウェブサイト「いのちのかぞえかた(URL:)」において、オリジナルのデジタル絵本の作成やアワードへの応募ができる「かぞえかたアワード」を7月30日より開始している。「かぞえかた」アワードコーナーでは、「いのちのかぞえかた」のストーリーをユーザーが自由に作ることが可能で、大切な誰かをイメージし、メッセージを書き込んでいくだけでオリジナルのデジタル絵本ができ上がる。アワードへはFacebookやTwitterアカウントがあれば誰でも応募することができ、優秀者には「いのちのかぞえかた」のイラストレーター、セルジュ・ブロック氏が応募作品を1枚の絵に書き下ろしたものや、小山薫堂氏が作品にある言葉を一筆箋(額装)にしたためたものなどのプレゼントが用意されている。その他にも、年齢を入力し、質問に答えると、大切な誰かの「いのちのかぞえかた」ムービーがスタートする「今日のかぞえかた」も同時に提供。絵本「いのちのかぞえかた」にも登場しない新しいストーリーが、セルジュ・ブロック氏の書き下ろし作品とともに綴られている。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年08月02日今年3月と12月に上演され、大きな反響を呼んだ『柳家三三で北村薫。-<円紫師匠と私>シリーズより』の第2弾となる『柳家三三で北村薫。2012』の公演が決定した。5月から7月に東京・草月ホールにて公演が行われる。「柳家三三で北村薫。2012」チケット情報柳家三三本人の発案でスタートした本企画は、直木賞作家・北村薫の記念すべきデビュー作である<円紫師匠と私>シリーズを、落語家自身が以前から愛読していたことがきっかけで実現した。原作の構成・文体を忠実に生かし、舞台上には演者である三三がたったひとりいるだけのスタイルで口演する。今回はシリーズの中から第2短編集「夜の蝉」全3作品を、短編集に掲載されているそのままの順序で、1か月に1作品ずつ3か月連続で上演する前代未聞の試みとなる。上演について三三と北村からコメントが寄せられた。「三月二十六日、まだ東日本大震災の余震が続く中、ぎりぎりまで話し合った末『柳家三三で北村薫。』は開催されました。あの状況で会を行うことには、相当なためらいがあったのも事実です。でもあの日、僕は舞台の上で確かに「空飛ぶ馬」の世界を“私”や“円紫さん”とともに生きたのだと思います。北村薫先生の人を見つめる厳しさと、それをも包み込む優しさにあふれた物語を皆さんと共有できたのではないでしょうか。そして今度は「夜の蝉」の中を歩かせていただける……、こんな幸せなことはありません。」(三三)「三月の末、今、《日常》をお届けするのが、わたしたちの役目ではないのか。そういう思いで『柳家三三で北村薫。』の会が開かれました。福島からのお客様が、“これだけは、どうしても来たかったんです”といってくださり、ああ、大きなものをいただいた……と思いました。そして今度は新たに、三三さん演じる『夜の蝉』中の3作を聴けることになりました。登場人物たちに会えるのも嬉しいし、作中の落語も大ネタばかり。前回以上に充実した会になるだろうと、まことに楽しみです。」(北村)公演は5月19日(土)に「朧夜の底~『夜の蝉』より」+「山崎屋」、6月30日(土)に「六月の花嫁~『夜の蝉』より」+「鰍沢」、7月21(土)に「夜の蝉~『夜の蝉』より」+「つるつる」をそれぞれ上演。会場はいずれも同劇場。チケットは3月3日より発売。
2011年12月16日