小波津亜廉が主演を務める舞台『ノラネコシティ』が、12月3日(土)に東京・新宿FACEで開幕した。前日に行われたゲネプロの様子をレポートする。サスペンス群像劇『博多豚骨ラーメンズ』やバディが活躍するクライムコメディ『マネートラップ』シリーズで知られる作家・木崎ちあきの小説をベースに、企画演劇集団ボクラ団義の久保田唱が脚本・演出を手がける本作。「ノラネコシティ」と呼ばれる犯罪都市を舞台に、Ψ(サイ)という特殊能力を持つ者・持たざる者たちによる“異能群像劇”が展開される。違法ドラッグと超能力が跋扈するノラネコシティに満身創痍でやって来た黒猫クロ(小波津)は、バーを営む美女猫ドーラ(飯窪春菜)のもとに倒れ込む。面倒を見てもらっていると強盗が現れ、店は大乱闘に。クロはとあるサイを、アクションを交えながら発揮してドーラと店を守る。一方、軍警察麻薬局所属のアビー(三井淳平)や新人ブルース(田中晃平)は「絶対に捕まらない」と噂される薬の密売人を追っていた。“スピード狂”として描かれるアビーとブルースが犯人を追うドライブシーンは下手のサイドステージを活用して臨場感たっぷりに展開される。また軍警の特別捜査官ベン(新井將)と警護官ウィッカーシャム(神里優希)は、新人女優ヘレン(北澤早紀:AKB48)のストーカー対策にあたっていた。どこまでも陽気なベンと、生まれ持ったサイに恵まれず皮肉混じりに周囲へあたるウィッカーシャムによるキャラクターの対比と関係性が物語に立体感を生む。そこへ自身が持つサイに戸惑うノラネコシティのスーパースター俳優アッシュ(横田龍儀)も絡み、ストーリーはさらに加速していく。毛の色で差別されるクロを筆頭に、サイの有無や内容に思い悩むキャラクターの葛藤がそれぞれ克明に描かれる。登場人物はすべて可愛らしい猫耳を付けてはいるが、その葛藤から生まれる野良猫たちのドラマは人間の観客にもきっと“刺さる”であろう普遍性に満ちていた。彼らの境遇に心を寄せるうちに、約125分(休憩なし)の上演時間はあっという間に過ぎるだろう。公演は12月11日(日)まで。チケット販売中。取材・文:岡山朋代
2022年12月06日1988年に漫画家の柴門ふみが発表し、ドラマ化もされた『東京ラブストーリー』。煌びやかな東京を舞台に繰り広げるカンチとリカら4人の若者の恋愛模様は、一大センセーショナルを巻き起こした。ミュージカル「東京ラブストーリー」チケット情報この冬、同作初の舞台化が決定、2022年度トニー賞ベストスコア賞ノミネートの作曲家ジェイソン・ハウランドが音楽を手掛けるオリジナル・ミュージカルをおくる。設定を2018年に置き換え、舞台オリジナルのキャラクターも登場。また、柿澤勇人、笹本玲奈、廣瀬友祐、夢咲ねねの【空キャスト】と、濱田龍臣、唯月ふうか、増子敦貴、熊谷彩春の【海キャスト】という、世代も個性も異なる2チーム制によるダブルキャストで、同じ脚本を演じる。フレッシュで向こう見ずな恋模様を描く海キャストでカンチこと永尾完治を演じる濱田龍臣が、本公演に向けての意気込みなどを語った。両親がリアルタイムでドラマ版を見ていたという濱田。出演が決まった際は「自慢した」とはにかむ。「ミュージカルの経験が浅いというのもあって、プレッシャーもちょっと感じていますが、海キャストは皆さん自分と年齢が近いキャストさんなので、カンチとリカ、三上、さとみという4人の関係性は、20代だからこそ見せられるものをお届けできたら」と話す。「(役と)等身大の部分が出ている」という海キャストに比べ、空キャストは「大人な恋愛模様を感じます。勢いだけじゃない魅力があります」と濱田。空キャストのカンチ役、柿澤について尋ねると、「柿澤さんのお芝居を拝見し、発見がとても多い。どんどん盗んでいきたい」と刺激を受けているようだ。千葉県出身で、幼少のころから芸能界で活躍してきた濱田にとって、東京は身近な街。「東京は怖いところみたいなイメージはそんなになくて。ただ、会社員という役はすごく新鮮です。自分が演じる役の恋愛模様が中心となる作品も初めてで、新鮮です。“こういう恋っていいな~”と一視聴者のような気分で空キャストの稽古を見ていたりして。劇場に足を運んでくださる方たちにこの作品がどう届くのか、本当に楽しみです」。ジェイソン・ハウランドの楽曲については、次のように話した。「キャッチーなメロディーが多くて、カンチ役の歌も、他のキャストの歌もつい口ずさんだり。耳に残る素敵なメロディーをお芝居と結びつけていければいいなと思っています」。大阪公演は12月23日(金)から25日(日)まで、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて。街がクリスマス一色に染まる時期。それだけに「キュンキュンする作品を観ていただけたら」といざなう。チケット発売中。取材・文:岩本
2022年12月06日2023年2~3月に東京・日生劇場ほか全国5会場で開催される「市村正親ひとり芝居『市村座』」。発起人にして唯一のキャストである市村正親本人に今回の構想を尋ねると、あふれ出るように問わず語りが始まった。市村が1997年に旗揚げした一人芝居の企画である『市村座』。今回は毎度おなじみの口上をはじめ、役者生活50年で出演してきた40作品以上のミュージカルをその楽曲とともに振り返るパートが用意される。「デビュー作『ジーザス・クライスト=スーパースター』のヘロデに始まり、最新作の『オリバー!』で演じたフェイギンにいたるまで、僕が演じた役のバリエーションは実に多彩」「その舞台裏を、2020年に出版した『役者ほど素敵な商売はない』(新潮社)をもとにトークと生歌を交えてご紹介できたら」と笑顔を見せる。その一例として、劇団四季在籍時における『オペラ座の怪人』ファントム役を離れた時のエピソードを挙げた市村。「怒りや悔しさを超えて、遠いところから『ミス・サイゴン』のテーマが聴こえてきたんだ。それでオーディションを受ける気になってね。落ちたら何も受けなかったみたいな顔をして、シラを切り通すつもりでいたの」と含み笑いを見せる。このサービス精神を劇場で目の当たりにしたら、思わずノックアウト必至だろう。市村はこれまでの『市村座』において「文七元結」「子は鎹(かすがい)」「芝浜」といった落語を立ち姿で見せてきた。この“立体落語”と呼ばれる一人芝居仕立てのパフォーマンスには今回、三遊亭圓朝の「死神」が題材に選ばれている。「僕が西村晃さんの付き人をしていたときに、西村さんがいずみたくさんや藤田敏雄さんと組んで『死神』にまつわるミュージカルをやったんですよ。ピンキー(今陽子)が死神で、西村さんが葬儀屋。そういったご縁も、僕のキャリアを織り成すひとつだからね」と述懐した。ラストには、『市村座』全シリーズの作・演出を務めてきた高平哲郎、音楽を手がける上柴はじめが制作した新曲を披露するという。「僕の役者生活50周年をひとつの歌にしてもらうの。高平さん・上柴さんの目や耳に俳優・市村正親はどう映っているのかな。完成が楽しみだよね」──。そう笑って、市村はインタビューを結んだ。東京公演は、2023年2月26日(日)~28日(火)に実施。その後、3月3日(金)に大阪・NHK大阪ホール、3月4日(土)・5日(日)に福岡・博多座、3月8日(水)に市村の故郷である埼玉・ウェスタ川越 大ホール、3月10日(金)に宮城・電力ホールと巡演する。取材・文:岡山朋代
2022年12月06日アートとコンテンポラリーダンス界隈で熱い注目を集めている敷地理。武蔵野美術大学と東京藝術大学大学院で現代美術を学び、横浜ダンスコレクション2020コンペティションⅠで「若手振付家のための在日フランス大使館賞」を受賞し、新しいパフォーミングアーツの可能性を示す存在として着実に歩みを続けている。そんな彼の新作「unisex #01」が上演される。「渡仏以前から考えていたテーマでもあり、ファッション用語としての“ユニセックス”というものが創作のはじまりでした。これまでコンテンポラリーダンスの領域で見られてきたようなジェンダーを扱った作品とは違う視点、立ち位置による作品を作ってみたいと思っていたこともあり、このユニセックスという匿名性をはらんだ観点からそれができるのではないかと考えたのです」在日フランス大使館賞を受賞した敷地は2021年6月から3カ月間、フランス国立ダンスセンターにレジデンス。そこで出会った韓国出身のアーティスト、イ・ソヒョンと共に、兼ねてから思い描いていた題材によって作品を作り上げた。二人の人間が、“身体”そのものを空間に刻み込むように、力強い接近と別離を繰り返していく。ドラマ性を感じるが、どのようなインスピレーションがあったのだろうか。「今回、具体的なイメージや演劇的手法は取り入れていないのですが、創作のインスピレーションの一つには、両性具有の神を題材としたギリシャ神話があります。もともとひとつだった身体が分裂し、欠けている部分を補完するように引きつけ合い、完全な身体に戻ろうとするもので、ここにある“マグネティズム”は作品のキーワードの一つになっています」さらに敷地の作品ならではの特徴として、空間、さらには観客も巻き込む形で作品が作り上げられている。今回、その一つのツールとして用いられているのが音楽。ショパンのピアノ曲を通して演者と聴衆が一つの空間を共有することができる。「ショパンの《ノクターン第2番》の右手と左手を分けて録音したものを皆さんに聴いて頂きながらパフォーマンスを行っていきます。ただ、我々がその音に合わせて踊る、というわけではありません。音そのものもパフォーマンスの一つとして機能していくものです。今回の作品は、物語や写実的な表現をしているものではなく、広がる空間を“体験”するような感覚で鑑賞して頂けたらと思っています。皆さんの身体がもつ感覚を研ぎ澄ませて感じたものを味わっていただきたいです」文:長井進之介
2022年12月02日ウーピー・ゴールドバーグ主演の大ヒット映画をミュージカル化した『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』。『アラジン』『美女と野獣』など、数々のディズニー映画の音楽を手がけるアラン・メンケンによる珠玉のナンバーと心沸き立つダンスで、劇場中をハッピーにしてくれる傑作ミュージカル・コメディが4度目の再演。2014年の初演から主人公デロリス役を演じる森公美子が、自分ならではの役づくりを交えながら本作の魅力を語ってくれた。ある殺人事件を目撃したことから、ギャングに命を狙われるハメになったクラブ歌手デロリス。カトリック修道院にかくまってもらうことになった彼女は、そこで修道院長に頼まれ、“あまりにも歌が下手”な聖歌隊の指導することになる…。「デロリスは、言葉の使い方も知らず、周りの全員が敵だと思っているような女性。そんな彼女がシスターたちと出会い触れ合ううちに変わっていき、シスターたちもデロリスのおかげで歌うことの楽しさと喜びに目覚めていきます。人間同士が互いに尊敬し合い、成長していく姿がとてもすてきな作品ですね」。本作への出演にあたって、他のキャストとともに実際の修道院を訪問。その際、「あなた方も誰かのため、何かのために歌っていらっしゃるのよね。その姿を神は絶対見ていますよ」と言うシスターの言葉に感動し、泣いてしまったそう。「この舞台も『観てくれる人の救いになれば』と皆で心をひとつに演じている」と涙ながらに語る。また、常に感謝の心を忘れないシスターのあり様に触れ、森自身、何ごとにも感謝できるようになったそう。この作品で初めて帝劇初主演を果たし、大舞台のゼロ番(センター)に立つ快感を知ったという森。「瀬奈じゅんさん、蘭寿とむさん、そして今回は、前回に続き朝夏まなとさん。毎回『どうして、こんなにスタイルがよくて、踊りが上手なの?』という方とのWキャストなんですよ」と冗談まじりだが、このキャラクターが異なるWキャストも話題の1つだ。「宝塚の大先輩ということもあり、朝夏さんには絶対言えないと思いますが、私が演じるデロリスは、厳格な修道院長役の鳳蘭(おおとりらん)さんに『クソばばあ』なんて言っちゃったりします(笑)。舞台をよくするためなら何をやってもベリーウェルカムな鳳さんには、役づくりのうえでも大変助けていただいていますね」。どんな舞台でも予定調和な芝居にならないよう心掛けている。「想定外のこともたくさん起こるのが、芝居の面白さ。毎回新しい発見があると思うので、すでに見たという方もぜひ足をお運びください」と、笑顔でメッセージをくれた。公演は上演中~12月4日(日)東京・東急シアターオーブ、12月9日(金)~12日(月)大阪・梅田芸術劇場メインホール、12月29日(木)~1月4日(水)福岡・博多座。その他、広島、愛知、長野公演もあり。チケットは発売中。
2022年11月30日2023年1・2月に上演される『喜劇 老後の資金がありません』の取材会が行われ、キャストの渡辺えりと室井滋が登壇した。垣谷美雨が2015年に刊行した小説『老後の資金がありません』を、マギーの脚色・演出で舞台化した本作は、2021年に渡辺と高畑淳子のW主演で上演された。再演となる今回は渡辺が主人公の主婦・後藤篤子役を続投し、篤子の友人である神田サツキ役として室井が新たにキャスティング。老後の資金問題が次々と降りかかる平凡な主婦たちの生活を軸に、笑いと涙と希望の物語が歌や踊りを交えながらハートフルに描かれる。「コロナ禍の上演だったにもかかわらずカーテンコールが5、6回続き、お客さまに勇気を与える作品として印象が残ったのか、すぐ再演の声がかかりました」と初演を振り返った渡辺。初参加の室井は、舞台への出演が8年ぶり。音楽劇ということもあって故郷・富山のオペラ歌手に歌を習っていることを明かすも「まだ(歌唱力は)さっぱり。がんばります!」と意気込んだ。互いの印象を尋ねられると、渡辺は室井について「感受性が鋭くセンスを感じるような、おもしろい変化球を投げる方。私はストレートに演技するタイプだから、漫才コンビのように楽しくやれるのでは」と期待を込める。室井は「えりさんは『私に任せて!』という一面もありますが、実際はかわいらしい方。演出家でもいらっしゃるから修行のつもりでご一緒できれば」と渡辺に信頼を寄せた。自身の演じる主人公・後藤篤子について、渡辺は「日本に生きる主婦の最大公約数みたいな人物。管理していたお金が冠婚葬祭で300万円まで減ってしまい、実は見栄っ張りでおっちょこちょいな性格だったことに気づきます」と紹介する。その篤子に節約術を授けるパン屋の神田サツキを、室井は「商売あがったりで貧しくても義母に大変なことがあっても、旦那さん命。ささやかな幸せを守るためなら、意外と悪に手を染めちゃう人物にも思えて」と分析。これを聞いた渡辺は「家族を愛するがゆえに悪になっちゃうのは新しい解釈だね。おもしろい!」と室井に向き直り、「初演をご覧になったお客さんも『肩を寄せ合って仲睦まじく暮らしているサツキ一家の方が幸せそう』『篤子の家はちゃんとしているけど冷え切っている』とおっしゃるの。各家庭の対比が出たらおもしろそうだね!」と目を輝かせながらアイディアを口にした。キャストは他に羽場裕一、長谷川稀世、原嘉孝、多岐川華子、一色采子、明星真由美、松本幸大(ジャニーズJr.)、宇梶剛士らが名を連ねる。公演は2023年1月14日(土)~28日(土)に、京都・南座にて。その後、2月1日(水)~19日(日)に、東京・新橋演舞場と巡演する。取材・文:岡山朋代
2022年11月30日2004年に制作されたハイスクールコメディ映画をミュージカル化した『MEAN GIRLS』。ヒロイン・ケイディはアフリカで育ち、16 歳で初めてアメリカのハイスクールに通うことになる。「その設定自体がすごく面白い」と、生田絵梨花は語った。それまではずっとホームスクールで学び、同年代の若者たちとの集団生活をまったく知らなかったケイディ。そんな彼女が変わっていく姿を、「最初はダサくて、そこからキラキラ女子たちに囲まれて学校生活をサバイバルしていく。見た目や環境が変わることで内面も変わっていくって、誰もがあり得るので、丁寧に、コミカルさもありつつリアリティを出せたら」という。周りの女の子たちを意識して見栄を張り、“イケてる”自分であろうとする。『MEAN GIRLS』にはそんな“女子あるある”がポップでコミカル、でもシニカルな視線も交えながら描かれる。そうしたケイディたちの姿には、生田もシンパシーを感じるそう。「みんな多少は経験したことがあるだろうし、自分の感覚に引き寄せながら演じたいと思います」ケイディはハイスクールで、カースト上位の女の子たちのグループ・プラスティックスと出会う。そのリーダーが、レジーナ。ふたりの関係性が全編を通じての見どころだ。生田も、「女子カーストのトップに君臨している彼女に対して、ケイディは、最初は反発心を感じて『違う世界の人』って捉えていたのに、いつの間にか彼女に巻き込まれて仲間になり、仲間になってもまた衝突する。そういう関係性や、憧れと表裏一体の感情は探っていきたいと思います」とイメージを膨らませる。レジーナを演じるのは、モデルとして、また舞台でも活躍している石田ニコル。彼女と行動を共にするプラスティックスのメンバーは、グレッチェンを松原凜子、カレンを松田るかが演じる。彼女たちの華やかな存在感にも注目だ。また、ケイディの同級生であるロック系少女・ジャニスに田村芽実、ゲイの男子・ダミアンに内藤大希、ケイディが一目ぼれするアーロンに小野塚勇人、数学オタクのケヴィンに中谷優心など、個性豊かな若手キャストが集う。彼らのパワフルな演技・歌が、観客を魅了するに違いない。ブロードウェイでこの作品を鑑賞した生田は、「言葉はわからなかったけれどすごくワクワクした」そう。「女の子たちのキラキラやチャーミングさが、舞台のエネルギーとして渦を巻いたらいいですね。それと、女の子のブラックな側面もコミカルに描きたい。舞台って、これだけ五感をフルに稼働する空間は他にないと思っています。色々と閉鎖されたり抑制されたりした時期が続いた今だからこそ、気兼ねなく参加してもらえたら嬉しいですし、男女問わず楽しんでもらえたら。私もそういう空間を創れるように微力ながら頑張りたいと思います」。キラキラとした笑顔でそう語る彼女は、きっと魅力的なケイディを生み出すだろう。
2022年11月25日ミュージカル『スクルージ~クリスマス・キャロル~』が3年ぶりに2022年12月7日(水)から日生劇場で上演される。開幕を前にした11月21日(月)、都内で製作発表会見があり、市村正親、武田真治、今井清隆らが登壇。劇中の3曲を披露したほか、公演に向けた意気込みを語った。舞台は19世紀半ばのロンドン。クリスマス・イブを迎えた街は賛美歌が流れ、陽気な賑わいを見せていた。しかし、金貸しを営むスクルージ(市村正親)はひたすら不機嫌だ。クリスマスなんか大嫌い。ドケチな彼は今宵も借金の取り立てに勤しみ、献金を拒み、人々に嫌われるばかり。そんな彼のもとに深夜、かつての親友の亡霊とクリスマスの精霊たちが現れた。彼らはスクルージを過去、現在、未来の旅へと連れていく……。本作は、1970年のミュージカル映画『クリスマス・キャロル』(原題『Scrooge』)をもとに、脚本・作詞・作曲をレスリー・ブリカッスが担当し、1992年にバーミンガムにて初演。以後、世界各地で上演されるようになった。1994年の日本初演以降、7度目のスクルージ役となる市村正親。来年は役者生活50周年ということで「本当によくやっているなと自分を褒めております」と切り出し、「初めてスクルージをやった頃はメイクに約2時間かかりました。今日は10分で終わっております。なぜでしょう?メイクが上手くなったんですね」などと会場の笑いを誘う。「ついこの間『ミス・サイゴン』を卒業しました。しかし、スクルージという役は今がちょうど脂が乗っている時期。市村正親のスクルージをぜひご堪能いただけたら」などと語っていた。ボブ・クラチット役の武田真治は「クリスマスシーズンにこの作品に関われることは、エンターテイメントの世界で生きる者にとって贅沢な時間」とコメントし、「3年前は個人的には独身でしたが、今回は家庭を持つ者の温かみみたいなものが自分の中で表現できたらなと思います」。現在のクリスマスの精霊役の今井清隆は「前回は3年前で、世の中の状況が今とは違いました。人との絆や命の大切さが殊更重く感じられるこの時代。この作品を見てくださった方に生きる希望や勇気を与えられたら」と述べた。上演時間(予定)は1幕80分、休憩20分、2幕60分。公演は12月25日(日)まで。演出は井上尊晶。そのほかの出演者は相葉裕樹、実咲凜音、安崎 求、愛原実花、今 陽子ら。取材・文:五月女菜穂
2022年11月25日年末の京都といえば南座の歌舞伎の祭典「吉例顔見世興行」。出演俳優の名前を大きく書いた看板が南座正面に飾られる“まねき上げ”は京の冬の風物詩だ。今年は三部制。歌舞伎の魅力を盛り込んだ演目が並ぶ中、第三部に近松門左衛門作『女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)』が「顔見世」に初登場する。主役の河内屋与兵衛を演じるのは片岡愛之助。「顔見世で、上方の役者で『油地獄』ができるのは本当に幸せ」と語る愛之助は、第二部『封印切』でも「大好きな役」の丹波屋八右衛門役と、関西人2役を演じる。50代となった愛之助が、今回の与兵衛役への意気込み、「顔見世」や上方歌舞伎への思いを語った。「當る卯歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」 チケット情報『女殺油地獄』は、油屋の大店・河内屋の放蕩息子・与兵衛が遊びの金で借金がかさみ、同業の美しい人妻・お吉(片岡考太郎)を惨殺するという物語だ。愛之助は2004年に与兵衛を初めて演じ、今回は10年を経て4回目。関西には13年ぶりの登場となる「いつかやりたい」と思っていた役。役作りは、これまで何度も与兵衛を演じた叔父の片岡仁左衛門に習った。仁左衛門から「等身大で、その年の若さで演じる与兵衛がいい」と言われ、50歳になった愛之助は「若さが大事というのは難しい役なんだと今回初めて感じました」と語る。本作は文楽から歌舞伎となった義太夫もの。今回は「もう一回初心に戻って調べたい」と文楽の音源を聞いているところだ。「文楽の語りとはセリフや息が違いますけど、根っこは一緒とよくわかりました」。見どころは、油まみれで転び回りながらの殺害シーン。「油で滑るのがわざとらしく見えないように」という仁左衛門の教えの中「最初はわあっとやりますが、だんだん目つきが変わってくるんです」。今年は『夏祭浪花鑑』、『日本怪談歌舞伎(Jホラーかぶき)』に本作と「ずっと殺し続けている。来年はいい人の役もしたいな(笑)」。今、歌舞伎俳優は東京勢が圧倒的に多く、上方歌舞伎の演目がかかることも少ない。「だから僕は上方歌舞伎がしたかったし、観ていただきたいんです」と愛之助。南座で初舞台を踏んだ時には夢にも思っていなかったという「顔見世」での主演演目。「上方の役者にとって非常に大切な「吉例顔見世興行」で、きっちりお役を勉強して勤めるのは非常に大事。これからも顔見世に出続けたいと思っています」。仁左衛門、そして昨年亡くした父の片岡秀太郎。「師匠たちの背中と生き様を追い続け、上方歌舞伎を大切に上方歌舞伎の一端を担っていきたいです」。「當る卯歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」は、12月4日(日)から25日(日)まで、京都・南座にて。チケット発売中。取材・文:高橋晴代
2022年11月24日演劇カンパニー・リハーサルシアター(代表:島 崇)は、12月15日(木)にリハーサルシアター演劇公演「演奏と演劇で奏でるシューマン クララへの手紙」をサントリーホール(ブルーローズ)で上演します。■開催概要ロベルト・シューマンの妻クララは幼い頃から父親にピアノの技術を叩き込まれ、天才少女としてプロデビュー。当時では珍しかった女流ピアニストの地位を確立したことでも知られています。結婚後は家計を担い、さらには育児、家事、そして精神面でもロベルトを支えたクララ。ロベルトの死後も彼の音楽を携えて演奏旅行に出かけ、子供たちを育て上げました。今作ではそんなクララにスポットを当て、シューマンの音楽の生演奏と役者による語りを織り交ぜたコラボレーション公演として上演します。出演者の大谷 ひかる氏は劇団三条会に所属し、三島由紀夫やギリシア悲劇など近現代や古典作品に幅広く出演。フリーでも活躍する若手の実力派俳優です。演奏者もピアノの桑原 康輔氏と弦楽四重奏のYukina“Q”Stringsと若手の実力派揃い。演奏と演劇が織りなすこの新しい上演形式は必見です。今作のメインビジュアルはテキストレーターのはらだ有彩氏。著書『日本のヤバい女の子』シリーズにて、昔話に登場する女性たちを「私たちと変わらない一人の女の子」として読み解いていくことで、現代の「当たり前」を捉え直しています。19世紀を生きたロベルトとクララですが、時代は違えど、今を生きる私たちと同様に悩み、奮闘しました。今作ではそんなクララの思いやロベルトの音楽を通じて、現代社会を生きる私たちを見つめ直すきっかけにしたいと思います。■リハーサルシアター演劇公演演奏と演劇で奏でるシューマン クララへの手紙日時 |2022年12月15日(木)18:30開場 19:00開演会場 |サントリーホール ブルーローズ演出 |児玉 絵梨奈台本 |島 崇出演 |大谷 ひかる(三条会)編曲 |桑原 康輔演奏 |桑原 康輔 Yukina“Q”Stringsイラスト |はらだ 有彩デザイン |高(※)井 愛記録写真 |トナカイ(松本 慎一)サイトデザイン|牧野 心士制作 |萩谷 早枝子、飯塚 なな子※ はしごだかの表記が正式です。特設サイト 特設サイトクララへの手紙フライヤー表■演奏曲ロベルト・シューマン『子供の情景』より「トロイメライ」ほか『クララ・ヴィークの主題による10の即興曲』より一曲『幻想小曲集』より「飛翔」『ミルテの花』より「献呈」『詩人の恋』より「美しい5月に」『弦楽四重奏曲第3番イ長調』より「第一楽章」「第四楽章」※プログラムは予告なく変更となる場合がございます■チケット<料金(全席自由席・来場順入場)>一般:4,000円(前売・当日共) U30(30歳以下):2,000円(前売・当日共)※30歳以下券をお求めの方は当日受付時に年齢を確認できる証明書をご提示ください。※未就学児の入場はご遠慮ください。<お申し込み>・チケットぴあ Pコード:515-775 チケットぴあ・サントリーホールチケットセンターTEL:0570-55-0017 (10:00~18:00 年末年始・休館日を除く)※サントリーホール ホームページからもお求めいただけます。 サントリーホール■出演者プロフィール出演:大谷 ひかる(三条会)出演:大谷 ひかる(三条会)1991年、東京生まれ。洗足学園音楽大学ミュージカルコースを卒業後、演劇活動を始める。2015年に三条会に入団、以降すべての作品に出演。他には、悪魔のしるし、ダダルズなどの作品にも出演。個人の作品としては、一人芝居『大谷ひかるのシンデレラ』がある。■演奏者プロフィールpiano 桑原 康輔piano 桑原 康輔1988年6月3日生まれ。北海道函館市出身。4歳からピアノを始める。高校卒業後、ヤマハ音楽院ニューピアノ科に入学。20歳からピアニストとして活動開始。アーティストのサポートでツアーやフェス、武道館など様々なステージを経験。その他作曲、編曲等多方面で活動中。≪Yukina“Q”Strings≫1st violin ユキナ1st violin ユキナ東京音楽大学卒業後アーティスト活動を開始。Yukina“Q”Strings代表。音楽番組出演や、ライブサポート、作曲、ストリングスアレンジを手がけ、幅広く演奏活動を行う。2015年から自身のソロCDをリリースしており、『歌いたくなるヴァイオリニスト』としてパワフルに活動中。2nd violin 竹重 夏野2nd violin 竹重 夏野東京音楽大学を経て同大学大学院修士課程修了。在学中、奨学金給付生としてモーツァルテウム夏季国際音楽アカデミーにてディプロマを取得。これまでに鷲見四郎、大谷康子、海野義雄の各氏に師事。現在オーケストラや室内楽奏者として活動中。クロサワ音楽教室ヴァイオリン講師。viola 堀 那苗viola 堀 那苗東京音楽大学卒業後、同大学大学院修士課程(ソルフェージュ研究領域)修了。これまでにヴィオラを百武由紀、河野理恵子、ソルフェージュを岡島礼、各氏に師事。現在、東京音楽大学附属高等学校非常勤講師、サクライ楽器Y.A.アカデミー講師、足利カンマーオーケスター団員。cello 安喰 千尋cello 安喰 千尋東京音楽大学を経て同大学院音楽研究科修了。Phoenix OSAQA、プロジェクトQ等に参加。2016-2018年度テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ団員。現在オーケストラや室内楽を中心に活動中。また定期的に渡仏し、エリック・ピカール氏(パリ管弦楽団第1ソロ首席)に師事。■リハーサルシアターとは島崇が脚本、児玉絵梨奈が演出を務める演劇カンパニーとして2021年に始動。稽古や練習を表す“リハーサル”の語源は耕すこと。現代社会を生きるための練習としての舞台作品を上演する。島 崇(劇作家。リハーサルシアター代表)2009年よりシアター・カンパニー「マレビトの会」に役者/劇作家として参加。主な参加作品にマレビトの会「福島を上演する」(F/T16-18、2016-18年)、「シアターコモンズ’19リーディング・パフォーマンス」(2019年)、「オルガンと朗読で聴く『幻想交響曲』」(ミューザ川崎シンフォニーホール、2021年)「演奏と演劇で奏でるくるみ割り人形」(聖セシリア教会、2022年)。児玉 絵梨奈(演出家)2010年よりシアター・カンパニー「マレビトの会」に役者として参加。主な参加作品に「HIROSHIMA-HAPCHEON:二つの都市をめぐる展覧会」(F/T10他、2010年)など。近年の演出作品に「オルガンと朗読で聴く『幻想交響曲』」(ミューザ川崎シンフォニーホール、2021年)。展覧会「200年をたがやす」舞台分野 演劇公演「soda city funk」(秋田市文化創造館、2021年)。「演奏と演劇で奏でるくるみ割り人形」(聖セシリア教会、2022年)。 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年11月22日日本大学芸術学部のダンスサークルから生まれ、疾走感のあるダンスとJ-POPの名曲とで構成される“劇場型ダンスエンターテインメント”で人気の「梅棒」。アーティストのライブをはじめ映画や舞台での振付・演出でも活躍中の彼らの最新作、15th “RE”PLAY『シン・クロス ジンジャー ハリケーン』が、11月18日(金)から東京・サンシャイン劇場で上演中だ。本作は、2015年に上演された4th PLAY『クロス ジンジャー ハリケーン』をバージョンアップしたもの。メンバーのみで上演される「梅棒」の代表作のひとつが、7年の時を経てよみがえる。舞台は「日本のどこかにプカッと浮かんだちっちゃな島」。野球青年や受験少年、おまわりさん、漁師、花火職人、神主らがにぎやかに暮らす島に、ひとりの女性が旅行で訪れたことから物語が始まる。彼女を巡って男たちが争うなか、昔から伝わる「島一周競争」の行方は意外な方向へ……。幕開きは、舞台上になつかしい“ラジカセ”が置かれ、DJを演じる塩野拓矢の軽快なトークと音楽からスタート。続けて上記の役どころを演じる遠山晶司、鶴野輝一、櫻井竜彦、楢木和也、天野一輝が日常生活をユーモラスにダンスで表現すると、シーンが終わる頃には、“基本的にはセリフなし&感情はダンスで表す”梅棒の世界にいつのまにか引き込まれてゆく。先述のとおり、物語を彩るのはいずれも新旧のJ-POPの名曲だ。大ヒットした曲ばかりなので幅広い層の耳になじむのはもちろん、秀逸な歌詞はダンスを伴うことで重層的な意味合いを帯びる。いまTikTokでバズり中の曲もさりげなく登場し、客席の熱気が上昇していくのを感じた。ストーリーは、遠山演じる野球青年と、野田裕貴が演じる島を訪れた女性を中心に進行。遠山の真面目で一生懸命な様子と、野田の純粋な可愛らしい佇まいが醸し出す淡いラブストーリーは、王道のそれ。だからこそ、客席で受け取る側は自分の思い出に引き寄せて観ることが可能だ。ダンスと音楽のみで物語を描くという「梅棒」の舞台は、セリフがないからこそ無限に広がっているのだ。後半で登場する元カレ役の多和田任益、落ち武者役の梅澤裕介も、いわくありげな役どころを繊細に表現。クセのありすぎる池の主を演じる伊藤今人も、さすがの存在感。登場するたびに目で追ってしまう“視線泥棒”で物語にアクセントを加えていた。冒頭には島の盆踊りの振付レクチャーがあり、舞台と客席が一緒に楽しめる仕掛けもしっかりと。ほのぼのとした前半から意外な展開を見せる後半まで、疾走感あるダンスで飽きさせない。なにより2時間の上演中、最初から最後まで全力で、かつエモーショナルな表現で魅せる彼らを観ていると、こちらまでエネルギーがチャージされる感覚になるのが不思議だ。社会に沈鬱な空気が蔓延している今だからこそ、甘酸っぱくて少し切ない、さらに面白くてかっこいい唯一無二の「梅棒」の世界を、ぜひ味わってほしい。取材・文/藤野さくら
2022年11月21日京都を起点にし、総合芸術としての演劇活動を国内外に発信している劇団「地点」(運営会社:合同会社地点)は、2022年11月16日(水)、他に類をみない新たな演劇のスタイル<マルチリンガル公演>についての情報サイトを開設いたしました。マルチリンガル<マルチリンガル公演>とは、劇団「地点」が12月に控えるKAAT神奈川芸術劇場での公演『ノー・ライト』でチャレンジする、全く新しい演劇のスタイル。俳優が、それぞれ母国語でない言語(ドイツ語・英語・フランス語・スペイン語・ロシア語・韓国語・日本語の7ヶ国語)でそれぞれの台詞を語る<マルチリンガル公演>は、おそらく日本では初めての試みだと思われます。出演者がそれぞれ異なる言語で語り、観客は台詞を聴きながら日本語字幕を読みます。地点の俳優・安部聡子も出演している濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』でも、さまざまなバックグラウンドを持つ俳優たちが異なる言語で演じる舞台作品の上演がひとつのクライマックスとなりましたが、今回の<マルチリンガル公演>は、まさに映画で上映されたような、言葉を意味と感情に因数分解することで、イメージの増幅、音そのもの、めまぐるしい時間感覚を楽しむ新しい演劇のかたちです。今回リリースした新たなサイトは、地点の情報発信プラットフォーム≪ビヨンドチテン≫にて、新たなマガジンとして開設。その創作の過程や台詞へのアプローチなど、<マルチリンガル公演>の魅力について、テキスト・動画・音声であますことなくお伝えしてまいります。また、この公演に至った経緯について、地点の演出家・三浦基からのメッセージとしてまとめております。【地点「マルチリンガル 特設サイト」】 【地点の演出家・三浦基の今の思いを綴ったエッセイ】私の身のまわり ~マルチリンガル公演によせて 三浦基 【動画配信】■マルチリンガル公演について語る 安部聡子×ドイツ語篇 1/4 だれのことも理解できないっていう関係性 ■マルチリンガル公演について語る 小林洋平×韓国語篇 1/4 どうやって台詞を覚えるのか 【音声配信】■マルチリンガル公演について語る(1)~『ノー・ライト』にむけて|安部聡子×三浦基 【地点『ノー・ライト』公演情報】日程: 2022年12月16日(金)19:00-/17日(土)18:00-/18日(日)14:00会場: KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉詳細: <≪ビヨンドチテン≫について> 空間造形、衣裳、グラフィック、照明、音楽、言葉、演技、演出、劇場、世界演劇史など、一つの舞台作品の創作と発表の過程で私たちが手にし、目にする技術や知識は膨大なものです。さまざまなクリエイターが関わり、それぞれの専門性を発揮してつくられる舞台作品を<演劇果実>と命名。その皮をむき、総合芸術としての演劇を深く味わっていただくための情報発信プラットフォームです。<劇団「地点」について> 京都を拠点とし、総合芸術としての演劇活動を国内外で広く展開する劇団。多様なテキストを独自の手法で再構成・コラージュして上演する。言葉の抑揚やリズムをずらす独特の発語は「地点語」とも言われ、意味から自由になることでかえって言葉そのものを剥き出しにするその手法はしばしば音楽的とも評される。代表は演出家・三浦基(みうらもとい)。2013年、本拠地京都にアトリエ「アンダースロー」をオープン。2006年に『るつぼ』でカイロ国際実験演劇祭ベスト・セノグラフィー賞を受賞。チェーホフ2本立て作品をモスクワ・メイエルホリドセンターで上演、また、2012年にはロンドン・グローブ座からの招聘で初のシェイクスピア作品『コリオレイナス』を上演するなど、海外公演も行う。2017年、イプセン作『ヘッダ・ガブラー』で読売演劇大賞作品賞受賞。 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年11月21日ブロードウェイ・ミュージカル『ドリームガールズ』が来年2月5日(日)から東京・東京国際フォーラム ホールCほかで上演される。2022年11月14日(月)、都内で製作発表会見があり、主演の望海風斗らが登壇。代表曲「Dreamgirls」が歌唱披露された後、各々が意気込みを語った。本作は、トニー賞6部門・グラミー賞2部門を受賞し、2006年にはビヨンセ主演で映画化された大ヒットブロードウェイ・ミュージカル。今回、読売演劇大賞で優秀演出家賞を2年連続受賞した演出家・眞鍋卓嗣のもと、初の日本オリジナルキャスト版として上演される。主演のディーナ・ジョーンズ役を務める望海風斗。本作の映画版も公開時に見ている上、来日公演も観劇したというが、当時は宝塚歌劇団で男役として舞台に立っていたこともあり「ちょっと遠いと言いますか......もっとあのとき真剣に見ておけばよかったかな」と笑う。21年に退団後、女優として活躍している望海は「性別が変わってしまって、まさか自分がここにいるなんて。お話をいただいたときは信じられなかった。これからもっとちゃんと勉強していきたい」などと今の心境を語っていた。エフィ・メロディ・ホワイト役はWキャスト。福原みほは「私は60年代のソウルミュージックを聴いて育ちました。アレサ・フランクリンやエタ・ジェイムズなど、アーティストのイメージが何人かいるので、これから詰めていきたい。本当に光栄です」と話し、村川絵梨は「私なりのエフィを作っていけたらなと思ったりもしています。期待していてください」。ローレル・ロビンソン役のsaraは「子どもの頃から大好きだった作品にオリジナルキャストとして出演することが、夢のよう。自分の全力を尽くして、作品に臨んでいきたい」とコメントしていた。会見で「夢」を問われた望海は「子どもの頃の夢は宝塚に入ること。一つ大きな夢を叶えました」と話した上で、「自分の家を買うことが今の夢。安心できる、ほっとできる家をつくりたいです」と現実的な回答。会見の最後には「皆さんといろいろ話をしながら、時代背景のことなどいろいろなことを勉強して、最高の初日を迎えられるように、みんなで力を合わせていきたいと思います」と意気込んでいた。そのほかspi、内海啓貴、なかねかな、岡田浩暉、駒田一らが出演。東京公演は2023年2月5日(日)~14日(火)、東京国際フォーラム ホールC。大阪公演は2月20日(月)~3月5日(日)、梅田芸術劇場メインホール。福岡公演は3月11日(土)~15日(水)、博多座。愛知公演は3月22日~26日(日)、御園座。取材・文:五月女菜穂
2022年11月16日ミュージカル『バンズ・ヴィジット』が来年2月7日から日生劇場ほかで上演される。15日、都内で製作発表会見が行われ、「Haled’s Song About Love」や「Omar Sharif」といった楽曲が披露されたほか、出演者らが意気込みを語った。本作は映画『迷子の警察音楽隊』を原作に、ミュージカル『ペテン師と詐欺師』の作曲家デヴィッド・ヤズベクが作曲と作詞を手掛けた作品で、18年に米国トニー賞10部門を独占した話題作。日本初演となる今回、森新太郎が演出を務め、風間杜夫、濱田めぐみ、新納慎也らが出演する。風間は、自身がミュージカルに初挑戦した『リトル・ナイト・ミュージック』(2018)での苦労から「2度とミュージカルはやらない」と心に決めたが、「歌わなくていい、踊らなくていい」というオファーで出演を決めたという。「(演じるトゥフィーク役は)確かに踊らなくていいんです。ただ、濱田さんとのデュエットみたいな曲があって。その1曲に魂を込めよう、力の限りを尽くそうと決意しました」。本作の魅力について、演出の森は「この物語はびっくりするくらい、大したことが起きない」としつつ、「でも、第三者からしたら大したことではないけれど、登場人物の一人ひとりにとっては、もうこれ以上ないぐらい大したことが起きている」と話す。「それはほんの一瞬、心と心が通い合う瞬間があったということ。音楽の力を媒介にして、お互いがお互いの心の傷を分かち合えるような、素敵な瞬間が訪れるんです。それ自体もささやかな出来事だと思うんですけど、実はこのささやかな出来事こそが、我々が日常生活で一番待ち望んでいること、求めていることなのではないかという気がする」。ディナ役の濱田は、森のコメントを受けて、「何でもないことが、実はすごく大切で、素敵なこと。それは他の人には何も気がつかないし、何事もなかったかのようだけれども、本人たちの経験や人生の中では大切な1ページで、人生の宝物なんですよね」とコメント。その上で「自然に、素朴に、素直に、情熱的に。ニュアンス的にはエモいと言うのでしょうか。そういう素敵な中東のオリエンタルの風が吹かせられれば。これからお稽古が楽しみです」と意気込んでいた。カーレド役の新納は、2018年にブロードウェイで本作を観劇したことがあるというが「この作品の良さをなかなか言葉にするのは難しいんです。繊細で、何も起こらない。でもじわーっと心が温かく、すごく素敵な気持ちになる。......こんな平たい言葉でしか言えないんです。だからもう、つべこべ言わずに観に来て!と書いておいてください」などと語っていた。東京公演は2月7日~2月23日、日生劇場。大阪公演は3月6日~8日、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ。愛知公演は3月11日、12日、刈谷市総合文化センター大ホール。取材・文・:五月女菜穂
2022年11月16日岩井秀人が脚本・演出を手がける、PARCO劇場開場50周年記念シリーズ ミュージカル『おとこたち』。本作に出演する藤井隆が、稽古前の想いを語った。岩井が主宰するハイバイによって2014年に初演、2016年に再演された本作が、今回は前野健太による音楽でミュージカルとして立ち上がる。岩井と前野は『世界は一人』(2019年)でタッグを組み、オリジナル音楽劇を創作した経緯が記憶に新しい。劇中で描かれる“おとこたち”4人のおかしくも壮絶な人生は、初演時にNHK総合『クローズアップ現代』で取り上げられ、求められる理想像と現実のギャップに苦しむ男性の生きづらさや幸せについて議論されるきっかけになった。藤井が岩井と初顔合わせした『いきなり本読み!』は、集まったキャストが初めて渡された台本を“いきなり”読み合わせる企画。発案者の岩井が配役を入れ替えながら演出することで、演劇が生まれる様子や俳優の秘めた底力がステージ上に現れる人気イベントだ。2021年秋に参加した様子を振り返り、藤井は「ハプニングがよしとされる状況で“うまくやろう”と思うこと自体おこがましかった」とコメント。岩井について「闇雲にでも走ってみる、思い切ってジャンプする、そういった挑戦を大切にされる演出家さんだと感じました」と述べる。直近では『大地 Social Distancing Version』(2020年)に出演するなど、PARCO劇場との縁が深い藤井。奇しくもミュージカルデビュー作『ボーイズ・タイム〜つよく正しくたくましく!!』(1999年)も同劇場だった。その後も折々に音楽劇やミュージカルへ携わってきた藤井にストレートプレイとの違いについて尋ねると、「長いセリフより歌詞の方が覚えやすいんですよね」とひと言。「通常なら何度も稽古を重ねることで定まる登場人物の感情が、音楽劇だとメロディに乗るぶん没入しやすい。だから覚えやすいんじゃないかな」と役との向き合い方を明かした。芸人やタレントの顔を持ち合わせる藤井は、舞台の魅力をどこに感じているのだろう。そう問いかけると、自身のルーツである吉本新喜劇を掲げながら「客席をドカンと湧かせる先輩の姿を見て楽しさを知りました」「テレビ収録でも、お客さんが目の前にいてくださるのが好きですね」と笑う。そんな中で「まだまだ油断できない状況が来春には少しでも落ち着いて、お客さんと劇場で会えることを楽しみにしています」と語り、インタビューを結んだ。キャストは藤井のほかにユースケ・サンタマリア、吉原光夫、大原櫻子、川上友里、橋本さとしが名を連ねている。公演は2023年3月12日(日)~4月2日(日)、東京・PARCO劇場にて。その後、4月8日(土)・9日(日)に大阪・森ノ宮ピロティホール、4月15日(土)・16日(日)に福岡・キャナルシティ劇場へ巡演する。東京公演の一般発売は、11月19日(土)10時にスタート。取材・文:岡山朋代
2022年11月11日全国3都市ツアーを行う、ダンスエンターテインメント集団・梅棒の『シン・クロス ジンジャー ハリケーン』。キャストの遠山晶司と鶴野輝一(いずれも梅棒)が、稽古初期の段階でインタビューに応じた。伊藤今人の作・総合演出、梅棒メンバーのみで上演された『クロス ジンジャー ハリケーン』(2015年)をバージョンアップさせる本作。小さな島を舞台に巻き起こる、愛と友情と男の意地を賭けた“ビッグスペクタクル”が展開される。キャストは他に梅澤裕介、塩野拓矢、櫻井竜彦、楢木和也、天野一輝、野田裕貴、多和田任益という現在活動中の梅棒メンバーが名を連ね、東京公演には日替わりゲストとして高橋健介、小越勇輝、千葉涼平の参加も発表された。初演当時、フランス留学帰りで主人公の野球少年に抜擢された遠山。開幕直前に重い捻挫をしてしまい、怪我をしている設定に変更を余儀なくしたことで「最後のブラッシュアップができずに本番を迎えてしまった」と過去の後悔を率直に語る。野球少年と同じ島で暮らす受験少年に扮した鶴野も「公演期間中に立て直した記憶がいまでも残っているほど、過去イチ必死だった」と遠山を励ますように同調し、再演に際して「7年前より成長した梅棒をお見せしたい」と意気込んだ。バージョンアップのポイントを尋ねると、遠山は「新メンバーの存在が大きいですね」と2020年に梅棒の一員となった多和田の名前を挙げる。鶴野は初演時から活動休止・卒業している2名(大村紘望、飯野高拓)にも想いを巡らせ、「顔ぶれの変化によってグループとしての個性が転じた梅棒と時代に合う楽曲を選びました」とコメント。取材日に渡されたプロットによれば、初演からコミックソングが減って爽やかな現代のアーティストが増えているような……? そう印象を伝えると、二人とも「それがいまの梅棒かもしれませんよ」と笑顔を見せた。クリエーションの手法も初演時から変化している。遠山いわく「昔は楽曲ありきで話をつくっていたけど、近年はストーリーが先行していますね」「浮き沈みのあるドラマをつくるにはこの音楽、と逆算で考えるようになりました」──。これを受けて鶴野も「総合演出の今人から頼まれて振付やシーンをつくっていた当時に比べて、最近は全体をパートで割り振ってみんなで議論しながらつくっています」と述べる。外部の作品に振付として参加するメンバーが多く、つくり手としての経験値やスキルが上がった賜物だろう。成長した梅棒をぜひその目に焼き付けてみては。公演は11月18日(金)~27日(日)に、東京・サンシャイン劇場にて。その後、12月3日(土)・4日(日)に愛知・名古屋市芸術創造センター、12月8日(木)~10日(土)に大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールへ巡演する。チケット販売中。取材・文:岡山朋代
2022年11月08日11月27日(日)に東京・東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)で開幕するミュージカル『東京ラブストーリー』。初日を約3週間後に控えた過日、現在進行形でクリエーションが進む現場から「稽古場のぞき見&トーク」イベントが生配信された。柴門ふみが1988年に発表した漫画(小学館)をミュージカル化する本作。脚本・歌詞を佐藤万里、演出を豊田めぐみ、音楽をジェイソン・ハウランドが手がけ、「空キャスト」「海キャスト」の2チーム制で上演される。なお原作や91年のTVドラマでバブル期だった時代背景は、ミュージカルで2018年春にスライド。“コロナ前”の東京で希望を抱きながら暮らす永尾完治(柿澤勇人/濱田龍臣)、赤名リカ(笹本玲奈/唯月ふうか)、三上健一(廣瀬友祐/増子敦貴:GENIC)、関口さとみ(夢咲ねね/熊谷彩春)の四者を中心とする恋愛模様が描かれる。チケットぴあ編集部は、生配信の舞台裏に潜入。本番直前までウォーミングアップを欠かさないキャストを横目に緊張を隠せずにいる、増子と熊谷の初々しい司会ぶりに目を細めた。二人による曲紹介を挟みながら、イベントは劇中冒頭の「恋人たちの伝説〜出会い」「願いの星」「この街で生きる」の3曲で幕開け。物語の始まりを予感させる「願いの星」では、柿澤がアダルトながらも甘く優しい歌声を響かせる。続く「この角を曲がれば」では、海キャストの濱田カンチと唯月リカが芝居を交えたパフォーマンスを行った。タオルメーカーの東京支社へ転勤になったばかりの頼りないカンチを、濱田はフレッシュに造形。そんな彼を同僚として翻弄交じりにリードする様子を、唯月は大きな笑顔やジェスチャーで表現する。また空キャストの廣瀬は、アンサンブルと妖しいダンスを繰り広げる「56人の女たち」で稀代のプレイボーイぶりを遺憾なく発揮した。女遊びの激しい三上に戸惑いを覗かせる夢咲バージョンのさとみに、優しい言葉をかける柿澤カンチ。二人が一緒にいる様子を目撃して切なくなるリカの激情を、笹本は一幕ラストで繰り広げられる「24時間の愛」に乗せて高らかに歌い上げる。7曲が披露されたあとのトークで、長崎尚子役の綺咲愛里が「両チームとも見せ方が異なっていて違う作品を観ているみたい」とアピールすると、和賀夏樹役の高島礼子も「タイムリーに作品を知っている世代にはリカ派が多かった。でも最近はさとみが素敵に思える。私自身は尚子。年齢によって惹かれる人物が異なるくらいキャラクターの幅が豊かですし、キャストによって差別化される楽しみがありますよね」と続く。各登場人物の心情がチーム別にどう表現されるのか、ぜひ目に焼き付けたい。東京公演は、12月18日(日)まで。その後、1月下旬に向けて大阪・愛知・広島と巡演する。チケット販売中。取材・文:岡山朋代
2022年11月08日PARCO劇場が、珠玉の名曲を楽しむパーティー会場になる。第1幕はコメディ仕立てのお芝居と大人気のミュージカルナンバー、第2幕は様々なジャンルから選んだキャストお気に入りの名曲パフォーマンス&トーク、というバラエティショー。日替わりのゲストが出演するなか、全公演をリードする“ホスト”を務めるのは、小林遼介、そして咲妃みゆ。「こういうバラエティショーも初めてです。毎公演を初日のような気持ちで、ゲスト出演の方々も含め、皆さまに楽しんでいただけるショーをお届けできたら」と意欲を語った。ホスト自身も、芝居に歌にと多くの場面で活躍する。毎回顔ぶれの変わるゲストとの共演は「新鮮な風を吹き込んでくださることに頼り切ってはいけない。自分自身で型を決め過ぎず、ゲストの方々との化学反応を楽しみ、順応したい」。目指すは“柔らかいホスト”なのだとか。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』をモチーフにしたコメディ仕立ての第1幕は、限られた稽古日数のなかで、相棒となる小林遼介との軽妙なやりとりをつくり上げていかなくてはならない。「しっかりとコミュニケーションをとっていこう」と話し合ったというふたり。「とても優しくて気さくで、場を和ませてくださる」小林と咲妃が、どのようなかけ合いを見せてくれるのか楽しみだ。しかし真知子という役を演じつつ有名なミュージカルナンバーを歌い上げることには、意外に苦労しているとも言う。「お芝居の着地点を意識しながら、ミュージカルナンバーを歌う時はそれに合わせたカラーで楽曲をしっかりお届けしなくてはいけない。歌い上げつつお芝居との切り替えも意識して……難しいです!」と苦笑する咲妃だった。第2幕は、まだ楽曲リストを確認した段階だとか。しかし「早く聴いてみたい」ラインナップで、「私自身、第2幕は舞台袖でお客様と一緒に皆さんの歌声を楽しみたい」そう。トークでは、芝居とはまた違うゲストの一面も感じられる。歌に芝居にトークと極上のパーティーで、「プレゼントを開ける時のワクワクするような気持ち」と咲妃も語るドキドキワクワクが楽しめそうだ。取材・文:金井まゆみ
2022年11月04日サン=テグジュペリの『星の王子さま』の世界をダンスで描く、KAAT DANCE SERIES『星の王子さま サン=テグジュペリからの手紙』を2023年1月21日(土)からKAAT神奈川芸術劇場で上演する。本作は、森山開次が演出・振付のもと、名著『星の王子さま』を身体表現で描いた作品として2020年11月に初演された。言葉に重きが置かれた作品を身体で表現するという挑戦は、美術・衣裳・音楽各々のアーティストによる豊かな表現も相まって、独創的な世界観を生み出し、観客を魅了。コンテンポラリーダンスとしては異例の満員御礼となった。今回はその再演となるが、新たな出演者や創作が加わる予定だという。再演にあたって、森山は「大枠としては初演でやったことをそのままやっていきたいと思っていますが、演者たちのより深く、より豊かな表現を生かしていきたいとも思っています」。そして「言葉が大切にされていて、その言葉のファンも多い作品をダンス化していくわけですが、筋書きをなぞるだけの作品にならないように。ダンスだからこそできる豊かな表現を通じて、お客様がいろいろな言葉を見つけていく……。そんな作品になったらいいなと思っています。僕たちが発する身体にナンセンスな動きもたくさんあるでしょう。でも、お客様がその動きから言葉を見つけ出していくというやり取りこそが重要なんです。僕たちがたくさんの想像を膨らませて『こんなつもりでやるから見てね』『どういうふうに見える?』という問いかけをしていけば、きっとお客様が本では感じられない、ダンスの舞台だからこそ感じる『星の王子さま』が作れるのではないかと」。初演についても「演者の豊かな身体表現を殺さないように、想像力やそのときに感じたリアルを大切にして、身体を型にはめないような振付や演出にしたつもり」と振り返る森山。「スタッフもダンサーも僕が絶大な信頼をしている素晴らしいメンバーがそろって、むしろあの座組みで失敗はできないなという心配はありましたが、みんなの想像力に助けられながら、舞台を作り上げることができました」。2023年はコロナ禍が収まっているだろうか。観客へのメッセージとして森山は「コロナ禍で旅することがなかなかできない時間が長かった。この物語はサン=テグジュペリが飛行機で遠い土地に降りたところからスタートして、いろいろなことを発見したり、振り返ったりする、旅の物語とも言えます」。そして「普段生活の中で見落としている大切なものを、旅することで気づけるという物語の構成。ぜひお客様には劇場に旅をするようなつもりで見にきていただき、楽しんでほしいです。きっと本を読むのとは違った『星の王子さま』を体験いただけると確信しています」。公演は1月29日(日)まで。取材・文:五月女菜穂
2022年11月02日現代社会におけるコミュニケーションの諸問題を独自の手法で描き出す劇作家・山本卓卓(範宙遊泳)の言葉と、老若男女から電車や犬に至るまで25役を巧みに演じ分けるダンサー北尾亘(Baobab)の身体が織りなす『となり街の知らない踊り子』。2015年の初演以来国内外で上演され高評価を得てきた本作が、2022年11月4日(金)から6日(日)まで、東京芸術劇場シアターイーストで上演される。今回はどんなステージになるのか。山本は「これまでよりも、もっと大きくて広いことをやろうとしている。今までは言葉と身体、どちらかを生かすために、どちらかが犠牲になっていたのですが、今回は、身体と言葉と物語という3つの柱がちゃんと際立って立つようになっている」と話す。あうるすぽっとのホワイエやシドニーの教会など、劇場らしからぬ場所での上演を重ねてきたこともあり、東京芸術劇場での公演は「一つの節目。本作をこの規模の劇場で上演するのは初めてなので、楽しみです」。一方、北尾は自身の身体について語る。「初演と現在の自分の身体は全く違うものになっていて。年齢的なことを言うと、初演の方が張りや体力があるような捉え方をされるかもしれませんが、僕としては今、身体の状態に対してすごくポジティブ。それは、この作品が『ダンス』でもあり『演劇』でもありながら、そのどちらとも取れないハイブリッドな形であって、自身の思考や人生でどういう時間を経験してきたかがすごくダイレクトに身体に現れるから。戯曲に対しての考察や思い、蓄積してきたものはどんどん増えている一方なので、そういう意味で、今がベストコンディションと言えます」。演劇とダンスという領域をシームレスに行き来する2人。お互いについて、山本は「もちろん(北尾は)コンテンポラリーダンサーであり、クリエイターなんですけど、言葉にするなら“友達”というのが近い。それは馴れ合いではなくて、自分の思っていることをちゃんと話せるし、話してくれる存在」と話す。北尾も「(山本と)最初の出会いが演劇を通してではなく、もっと近い距離から関係性が始まっているので、フラットにもの作りができる」と言い、「身体がしっかりと演劇の中に含まれないといけないというような話もよくします。僕も身体だけ動かしていればダンスは成立するとは全く思わないし、言葉の力や人との関係性という演劇的なことに対してシームレスでいたいと思っている。そういう意味で、絶大な信頼と親愛の念を抱いています」。観客へのメッセージとして、山本は「テレビにもYouTubeにも他の舞台表現にもないことをやっていると思います。その時を捉えてしか僕たちは作れない。見逃されたらもうこのバージョンはお終いなので、出会えたら嬉しいですね」と話した。取材・文:五月女菜穂
2022年10月31日が~まるちょばの2023年新春公演『猛烈・炸裂・ドッカンコメディー!!』が、1月8日(日)大阪・松下IMPホールにて開催される。が~まるちょば『猛烈・炸裂・ドッカンコメディー!!』チケット情報従来の言葉のないストーリーを紡いでいく唯一無二の舞台公演とは異なる、最初から最後までオンリーコメディーパフォーマンスで構成された、が~まるちょば100%のライブショーとなっている。ついにこのバージョンで、大阪初開催が決定した。小さなお子さんからご年輩の方々まで、幅広い世代が一緒に楽しむことができる、他に類を見ないショーは必見だ!チケットは一般発売に先駆け、11月3日(木・祝) 23:59までオフィシャル先行(抽選)を受付中。
2022年10月26日鴻上尚史が率いる「虚構の劇団」の解散公演『日本人のへそ』が2022年10月21日(金)東京の座・高円寺1にて開幕。アメリカ帰りの教授のもとに集められた吃音患者たち。教授の指導者のもと「アイオワ方式吃音療法」によって、患者の一人であるヘレン天津の半生を題材にした演劇に取り組むことになった。ヘレンは、岩手県の農村に生まれ、集団就職で上京。さまざまな職を転々とし、浅草でストリッパーになる。その後、ヤクザの女となり、最後には政治家の東京の妻になる。劇がフィナーレを迎えようとするとき、予想外の事件が発生してーーというあらすじ。鴻上は、井上ひさしのデビュー作を解散公演の演目として選んだ。喜劇であり、ミュージカルであり、推理劇であり。そして、日本語を活かした言葉遊び、どんでん返しに次ぐどんでん返し。鴻上は「若い井上さんの才気とエネルギーに満ちあふれた、まさに、おもちゃ箱をひっくり返して、遊び倒した素敵な作品。そのハチャメチャさ、ワイザツさ、ぶっ飛び方、遊び方は、ちょっと比類ないもの」とコメントしている。初日を前に行われたゲネプロ(総通し舞台稽古)を観た。2007年に旗揚げ準備公演でスタートした「虚構の劇団」をタイムリーに追ってきた身としては、いつか来るとは分かっていながら、劇団の解散ということに寂しさを感じていた。だが、この虚構の劇団版『日本人のへそ』を観て気づく。鴻上が旗揚げ当初に掲げていた「プロの劇団になること」という目標をとうに達成していること、そして、あの頃は駆け出しだった俳優たちがこれからの演劇界を盛り上げてくれるであろう頼もしい存在になっていることに。特に旗揚げメンバーの小沢道成、小野川晶、三上陽永、渡辺芳博の活躍は言うまでもなかろう。本作でも彼/彼女らの個性と技量が発揮されていた。鴻上の「15年間どうもありがとうございました。解散公演、盛大な花火を打ち上げたいと思います」という言葉の通り、大輪の花火を打ち上げ、有終の美を飾ってくれたと思う。そのほかの劇団員、客演のメンバーも含めて、劇団が総力をあげてぶつかった『日本人のへそ』。この熱量をぜひ見届けてほしい。上演時間は約2時間35分(途中休憩あり)。座・高円寺1での公演は10月30日(日)まで。大阪公演は11月4日(金)~6日(日)、近鉄アート館。愛媛公演は11月12日(土)~13日(日)、あかがねミュージアムあかがね座。12月1日(木)~11日(日)には東京芸術劇場シアターウエストでも上演される。取材・文:五月女菜穂
2022年10月21日“上海の薔薇”と呼ばれた日本人ダンサー・マヌエラ の半生を描いた舞台『マヌエラ』が2023年1月15日(日)から東京・東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)ほかで上演される。時は第二次世界大戦前夜。永末妙子はSKDで将来を期待されながらも、駆け落ちし、生きていくためにダンスホールの踊り子となった。そこで、かつてムーラン・ルージュのスターであったパスコラに見出され、国籍不明の一流スターダンサー“マヌエラ”が誕生する――。1999年に天海祐希の主演で初演された本作が、約24年ぶりに元宝塚歌劇団月組トップの珠城りょうの主演で蘇る。「作品が非常に興味深いなと思いました。もともとストレートプレイに挑戦したいという気持ちがありましたし、この作品はダンス、音楽も入ったエンターテインメントですが、ストレートプレイの要素も大きくあり、いつも拝見しているパルコのプロデュースだったので、その点でもぜひ挑戦したいと思いました」と、本作への出演を決めた理由を話す珠城りょう。自身、宝塚歌劇団在団中からいろいろな演出家の舞台に足を運んできたといい、「宝塚は華やかな夢の世界を一つのエンターテイメントとしてお届けすることに重きを置いていますが、ストレートプレイはリアリズムを追求して、人々の葛藤や醜い部分もリアルに表現されている。お芝居だから“嘘”ではあるのですが、現実のように感じられることが面白い」と魅力を語る。初演ではマヌエラ を天海祐希が演じていたが、珠城は「演出もキャストも変わり、また違う形でやらせていただきます。初演の方々への敬意はしっかり持った上で、自分なりの『マヌエラ』という舞台をつくっていけたら」と気を引き締める。現時点で感じるマヌエラの魅力を尋ねると「自分の意見をしっかり持っていて、それをはっきり言葉で人に伝えることのできる、強い人。悪い見方をすれば、きつい女性に見えがちなのですが、彼女なりに女性としての葛藤があったり、その時代その土地でどう生きていくかを模索していたり。弱さや儚さも感じます」。2022年は珠城にとって「俳優として新しい人生を歩み出した」年。「いろいろな作品などに挑戦させていただきました。特に、自分を応援してくださっている方々に喜んでいただけるものに挑戦できたことが非常に有り難い。自分もとても楽しく、やりがいを感じていました」と振り返る。本作が2023年最初の舞台。「『マヌエラ』というまた新しい挑戦から始まります。自分の新しい一面を模索しながらやっていけたらいいなと思っています」と抱負を語った。脚本は鎌田敏夫、演出は千葉哲也。そのほかの出演は、渡辺大、パックン(パックンマックン)、宮崎秋人、宮川浩ほか。東京公演は1月23日(月)まで。大阪公演は1月28日(土)、29日(日)、森ノ宮ピロティホール。福岡公演は1月31日(火)、北九州芸術劇場大ホール。取材・文:五月女菜穂
2022年10月21日10月15日、東京芸術劇場 プレイハウスにて、森山未來と脳科学者の中野信子、イスラエル出身の振付家・ダンサー、エラ・ホチルドの共同制作による新作パフォーマンス『FORMULA』が開幕した。ダンサー、表現者として次々と新たなチャレンジにのぞむ森山が、中野の科学者としての膨大な知識とそれに基づく視点に刺激を受けて実現に至った、異色のコラボレーションだ。初日前日に実施されたゲネプロでは、舞台上のパフォーマンスのほか、劇場ホワイエにしつらえられたインスタレーションや映像作品も公開、「没入型アートコンプレックス」としての独自の世界観を打ち出した。客席に入ると、通路脇に建てられたいくつもの杭が視界に。舞台上の、木造住宅を想起させる装置がまるで客席にまでなだれ込んできたかのようだ。セノグラフィーを手掛けたのは川俣正。また衣裳の廣川玉枝、サウンドスケープの原摩利彦、グラフィックデザインの岡﨑真理子と、国際的に活躍するアーティストたちが集結した舞台だ。印象的な場面はいくつもある。川俣の舞台装置の延長ともいえる梯子や建具の断片らしきものを手にしたダンサーたちが紡ぐのは、jひとつつの家族を思わせる風景。森山の日常的なつぶやきのようなセリフから展開するシーンには、とても他人事とは思えない切実な思いが潜む。身近な人の死を思わせる場面は、誰もがいつかは経験する局面に真摯に向き合うダンサーたちの姿が、深く心に突き刺さる。クリエーションを振り返った中野は、「心理学、臨床心理学では、死を考えるということは、“生きたいから”だと解釈する。死にたいと口にするのは、いま生きている状態がすごくいやだというメッセージ──もっと良く生きたいという意味。未來くんはそこをもっと描いてもいいのではと思っていたが、それは実現できたのではないか」とコメント。東京、大阪公演では中野の作品である脳波測定体験アートが付いたチケットも発売され、話題に。プロジェクトの核となる森山も、「信子さんとの出会い、さまざまなアーティストとの出会いの中で見えてきたものがある。人間が人間たらしめるものとは何なのか──。人と人とが繋がっていくこと、関わっていくことが、その良し悪しは関係なく、僕ら人間に宿命づけられているもの。それによって僕らは生きていくのだということを、この1年近くのプロセスの中で感じてきました」と語った。さらに、ダンス作品としての強度を実現したのは、インバル・ピント&アヴシャロム・ポラック・ダンスカンパニー、バットシェバ舞踊団で活躍したダンサー、振付家、エラ・ホチルドだ。「誰もが共感できるようなストーリーです。作品を通して、自分自身を見るような気持ちになってもらえたら」と胸の内を明かした。さまざまな才能が集う独創的なプロジェクトだ。それを可能にした森山の創造力と、多くの才能を巻き込む求心力が、鮮やかな印象を放った。東京芸術劇場プレイハウスでの東京公演は10月23日(日)まで。その後、仙台、福岡、大阪、名古屋、高知での公演が予定されている。ライター:加藤智子
2022年10月19日今月の芸術祭十月大歌舞伎の第二部は『祇園恋づくし』で幕を開ける。幕開きは京都の茶道具屋大津屋の店先。朝顔に蚊遣りが置かれ、祇園祭の時期の蒸し暑さが漂ってくる。祭り見物のために江戸から逗留している指物師の留五郎は、ここ大津屋の主人次郎八ゆかりの人の息子。ねっちりした物言いの大津屋の人々と、留五郎のべらんめえな物言いの対比が面白くて、上方の和事と江戸の世話物を交互に観ているようだ。そして次郎八の妻おつぎは、夫が浮気しているのではと疑っており、客人の留五郎に詮議を頼むのだが・・・。コンコンチキチと祇園囃子が聴こえる中、鴨川の床で、次郎八と留五郎の京と江戸のお国自慢が繰り広げられる場面が楽しい。神田の祭、上野の桜、両国の花火、江戸紫の助六、と留五郎が江戸自慢すると、次郎八も京や奈良、近江八景の名所旧跡を並べたて、次第にエスカレートしていく。また、おつぎや染香はもちろん、お筆、おげん、おその、大津屋の女中たちに至るまで、この狂言に登場する京女たちの誰もが、それぞれイケずなのも面白い。次郎八とおつぎの二役を中村鴈治郎が、留五郎と染香の二役を松本幸四郎が勤める。鴈治郎のおつぎは扇子で仰ぐ姿が色っぽく、「似たもの夫婦」という台詞に「そりゃそうだ!」とばかりに客席が沸く。また幸四郎は、肌色の顔の留五郎から手足まで白く塗った芸者に、なんと劇中二度も替わる。いったいどんなスピードで化粧を落とし、また塗り替え着替えているのだろう。染香が出るたび、いわゆる早替りの時とはまた違う驚きの声が客席に広がった。落語の『祇園会』を題材に作られた一幕だが、この演出は歌舞伎ならでは。二幕目は松羽目物の『釣女』。ユーモラスな舞踊劇だ。西宮の戎神社に「妻を娶りたい」という願掛けにやってきた大名と太郎冠者。さっそくご利益があり、大名は釣り竿で美しい上臈を吊り上げる。太郎冠者も後に続こうとするがそううまくはいかず・・・。太郎冠者に尾上松緑、太郎冠者が釣り上げた醜女に幸四郎。歌舞伎にはいわゆる三枚目系の女の役がよく出てくる。この『釣女』の醜女、『伊勢音頭恋寝刃』のお鹿、『紅葉狩』の腰元岩橋、三枚目ではないが『身替座禅』の玉の井などなど。いったん惚れたら一筋、どこかピュアな役どころばかりだ。これらの役では紅白三段の前挿しを頭にすることが多いのだが、そんな性根のためか、この愛らしい挿し物が本当によく似合う。『祇園恋づくし』と『釣女』、マスク着用とはいえ、思いきり笑って発散できる狂言立てとなった。10月27日(木)まで。
2022年10月14日大阪市と文楽協会が主催し、文楽の新たなファン獲得のため中之島中央公会堂で開催している『中之島文楽』。一昨年は公演中止、昨年は人数制限で上演、3年ぶりに元の規模で開催する8回目の今回、文楽初心者に向けての取り組みを練り直した。ひとつの公演で、文楽で代表的なふたつの「道行(みちゆき)」を同じ演者がやるという、本公演では観られない特別プログラムだ。三角関係の恋のバトルを展開する『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)』の「道行恋の苧環(みちゆきこいのおだまき)」と、切ない愛の逃避行を描く『曽根崎心中』の「天神森(てんじんのもり)の段」。この「道行」2本同時上演の2日間に挑む技芸員たち、太夫・竹本織太夫、三味線・鶴澤燕三(えんざ)、人形遣い・吉田玉男と吉田一輔(いちすけ)が記者会見を行い、「道行」の魅力や企画公演への意気込みを語った。中之島文楽 チケット情報大河ドラマのような“時代物”の芝居で、全編で10時間超という長編大作の『妹背山』。その中で「道行」は約30分だ。また、トレンディドラマ風な“世話物”の代表格『曽根崎』は2時間半の芝居で、「道行」は25分。前後の物語を知らない観客のために、公演の冒頭に映像を用いて人物相関図や物語を解説、パンフレットにも掲載する。また、公演中は舞台上部に字幕スーパーも設置。4人が初心者に向けて「道行」を語った。「旋律の美しさ、三味線の手数のきれいさ、よどみのない太夫の美声を聴いていただけたら」(燕三)、「人形は、わかりやすいように少し大きめの振りでやろうかなと」(玉男※出演は『曽根崎心中』のみ)。「きれいだし、『妹背山』は人形3体で踊るので華やかです」(一輔)、「“時代物”の三大道行のひとつ『妹背山』の「道行」と、“世話物”のザ・道行を1800円で2度おいしいです(笑)」(織太夫)。2演目の間にはトークコーナーがあり、ゲストの作家・大島真寿美が技芸員と「道行」の魅力を語る。初日は話慣れている織太夫と燕三、2日目は「しゃべらなくていいから人形遣いになった」と言う一輔が「玉男兄さんも私も話すことが得意でないふたりでトークします(笑)」。当日ロビーには、開演の少し前までToday’s Cast的に人形を展示、記念撮影できる。また、今回からSNSで広報を開始、技芸員のコメント動画を毎日発信中だ。ポップなしおりはSNSで問い合わせが多く、来場者全員にプレゼントされることになった。「この公演をきっかけに文楽に興味を持ってもらい、ひとりでも多くの人たちが国立文楽劇場に来ていただければうれしい」と全員が願い、「全力を尽くす」と声をそろえた。公演は10月14日(金)・15日(土)、大阪市中央公会堂大集会室にて。チケット発売中。取材・文:高橋晴代
2022年10月11日新宿の新たなランドマークビルとなる「ハナミチ東京 歌舞伎町」が2023年8月末に竣工予定で、その地下1階に新世代大衆演劇場として「歌舞伎町劇場」が2023年10月にオープンすることが発表された。「ハナミチ東京 歌舞伎町」は、日本文化を歌舞伎町から発信することを目的とした商業施設。ビル全体が和をテーマにしており、江戸の衣・食・劇を1カ所で楽しむことができる。テナントには「歌舞伎町劇場」のほか、2Fに日本の伝統工芸でもある着物と和装のレンタルショップと、昭和39年創業のレトロ喫茶「珈琲西武 本店」が移転オープンする。3Fには「江戸時代にフードコートがあったなら」をテーマに、江戸の雰囲気を楽しみながら食事ができる江戸風フードコート、4Fにはバーベキューテラスと個室&パーティースペースができる予定となっている。「歌舞伎町劇場」内観「歌舞伎町劇場」は、和の総合エンターテインメントである「大衆演劇」を発信する山手線内唯一の大衆劇場。花道やセリなど本格的な舞台設備に加え、7m×3mの大型LEDビジョンを常設し、最新技術でショーアップした次世代型大衆演劇を毎日日替わりで上演する。また、「気軽に楽しむ伝統芸能」テーマに、大衆演劇以外のイベントも開催予定だ。<施設情報>「ハナミチ東京 歌舞伎町」【テナント】(予定)B1F:歌舞伎町劇場(固定椅子153席)1F:ロビー、楽屋、カフェ2F:珈琲西武本店(約100席)/ 着物と和装のレンタルショップ3F:江戸の町並みを再現したフードコート(約110席)4F:バーベキューテラスと個室&パーティースペース(約120席)【開業日】(予定)2023年10月1日:歌舞伎町劇場、着物と和装のレンタルショップ2023年10月1日:珈琲西武 本店2023年11月1日:フードコート、バーベキューテラス歌舞伎町劇場HP:
2022年10月08日11月8日に、ものまね100連発ライブを控えるハリウッドザコシショウ(『ハリウッドザコシショウのものまね100連発ライブ!SEASON4収録ライブ』)。彼のものまねは幅広いジャンルの時事ネタを扱うが、「これはイジらないでおこう」なんていう境界線は、彼には全くない。コンプライアンスの制限は一切気にせず「(100連発は)もうなんでもありですね」と語る。芸歴29年。「自分が面白いと思ったことをやるしか、自分の火力の強さが出せない。だから、やりたい仕事しかやらない努力をしている」と、こだわりを語る。その努力の結果が『R-1ぐらんぷり2016』優勝だ。「あの優勝で、こういう芸人もいるっていうのが世間に広まったじゃないですか。それが広まらないと、やりたくない仕事も入ってくるんですよ」と振り返る。「何か一個結果を残せば、自分がやりたい仕事だけやっても文句を言われなくなる。売れなきゃ、自分のやりたいことだけができるようには絶対にならない」。今の彼は、並々ならぬ努力の賜物なのだ。さらに、2009年から自身のYouTubeチャンネルに毎日動画をアップしている。これは“仕事”ではなく“趣味”だと言う。一番心が休まる瞬間は?という質問に「動画編集かも」と答えるほど。「これをやっていないと僕自身不安なのかもしれない。毎日アップするって言ったのに、それを守らないのが気持ち悪い」とプロ意識を見せる。ザコシショウが思うプロとアマの違いは「何事も、最後までやり通せるかどうか」。ストイックにプロの道を歩み続ける彼だが、プライベートでは6歳になる双子の女の子のパパでもある。二人のお子さんから「お笑いショーをやる!」と声をかけられた日のこと。「僕が普段作業している地下室を舞台に見立てて、照明まで焚いて、“みんなの憧れ、ハリウッドザコシショウさんが出てきます!”って言ったら、パパ出てきてって言われました。付き合いましたよ、一応(笑)」そう話す彼の顔は、少し緩んでいたように見えた。そして、そのお笑いショーは2~3時間続いたという。唯一無二の破天荒な芸風とは裏腹に、『R-1』で真摯に審査員を務めたり、時には優しいパパの顔を見せたり……。その多面性にファンは魅了されているのだが、彼は「褒められるとか、もっと認めてもらいたいとかない。好きな芸人として名前を挙げてもらえれば本望です」と謙虚な姿勢を見せた。取材・文:佐々木笑
2022年10月07日ミュージカル『新テニスの王子様』Revolution Live 2022が10月6日(木)から幕張メッセ 幕張イベントホールで開催される。“新テニミュ”として初のライブイベントで、総勢37名のキャストたちがThe First StageとThe Second Stageで披露された楽曲を会場中に響き渡らせる。今回のライブの見どころについて、越前リョーマ役の今牧輝琉(いままき・ひかる)は「キャラクターも曲もライブ仕様になっていて、舞台とはまた違った演出なんです。僕ら自身も予想していなかった演出がいっぱいあったので、お客さんから見てもいろいろと発見があると思います」と語る。「本編では見られないような組み合わせで歌う曲もあるので、結構驚くんじゃないかな。僕自身も驚きましたし、『こんなことするんだ!』と胸が熱くなりました」。越前リョーガ役の井澤勇貴(いざわ・ゆうき)は「見どころは、岸(祐二)さん。歌がハンパないです。多分、当日は幕張近くの海が荒れるんじゃないかな」と笑う。自身がライブで楽しみにしていることについては「リョーガの『遊んでやるぜ』という曲があるんですけど、初めて音源を聞いたときから、ミュージカルの楽曲というよりライブのパフォーマンスとして披露するような曲調だなと思っていたんです。だから今回のライブでどういう風になるのか。僕も楽しみですし、皆さんにも楽しみにしていてほしいです」。改めてお互いの印象を尋ねると、井澤は「普段の彼のSNS投稿を見ていると、かわいい要素が多いじゃないですか。でも、ステージに立つと頼もしい。安心感があるんですよね」と話し、一方の今牧は「直接的な言葉で教えてもらったことよりも、見せて教えてくれることが多いです。The Second Stageの本編の稽古中もダンスがすごいなと思ったんですけど、今回のライブの稽古はもっとすごい!『僕はこの後にパフォーマンスをしなくてはいけないのか』とある意味、こちらのやる気がなくなるぐらいです(笑)」などと仲睦まじく語っていた。公演は10月10日(月・祝)まで。取材・文・撮影:五月女菜穂
2022年10月07日豪華な講師陣を招き、今までの演劇やこれからの演劇を語るトークイベント「ぴあ演劇学校」が2022年10月1日(土)、2日(日) に開催される。ぴあ演劇学校は、ぴあ関西10周年を記念し、1996年2月に大阪・扇町ミュージアムスクエアフォーラムにて実際に行われたイベント。当時の講座を紐解くと、野田秀樹(NODA・MAP)、山西惇(劇団そとばこまち)、高田聖子(劇団☆新感線)が「バトルオブ想像力」と称した“解剖学”の授業を展開したり、真矢みき(宝塚歌劇団花組)、加納幸和(花組芝居)が「男の美学・女の美学」という“美学”の授業を受け持ったり。ちょっと硬派なものから、楽しく笑えるものまで全6科目が行われていた。今回、ぴあ創業50周年を記念して、その伝説的な「ぴあ演劇学校」が復活する。10月1日(土) 21時〜には、「劇団☆新感線42年の激闘とこれから」と題した“歴史学”の授業がPIA LIVE STREAMにて配信される。講師は、劇団☆新感線主宰のいのうえひでのり、同劇団看板俳優の古田新太。聞き手は、大の演劇好きで知られる、フリーアナウンサーの笠井信輔。編集部は、収録現場に潜入。“学校”らしくチャイムの音が鳴り、「起立・礼・着席」の号令でスタートした。スタジオには、劇団☆新感線の全興行年表が掲げられており(その数なんと124興行!)、その年表をもとに、時代を区切りながら、劇団の歴史を振り返っていく。劇団☆新感線は1980年、大阪芸術大学舞台芸術学科の4回生を中心に旗揚げ。つかこうへいの『熱海殺人事件』を卒業記念公演として上演するためだけに旗揚げされたそうだが、「1回で終わらせるのはもったいない」という声に押され、劇団は解散せずに公演を続けたという。その後、古田新太が劇団☆新感線に入った理由や、劇団がつかこうへいのコピー劇団からハードロック・ヘヴィメタルにのせたオリジナル作品を中心とする体制に移行した経緯、「人さらい劇団」と揶揄された“やばい話”などが懐かしい写真とともに語られていく。そして東京の劇場に進出し、熱狂的なファンを獲得しながらスケールの大きい舞台を制作する超人気劇団へと成長していくわけだが、いのうえや古田は当時何を思っていたのか。さらに、2017年に客席が360度回転するIHIステージアラウンド東京のこけら落とし公演として、『髑髏城の七人』をロングラン上演した苦労や、現在上演中の『薔薇とサムライ2 ―海賊女王の帰還―』のエピソードに至るまで、ノンストップで語られていく濃密な授業となった。なお、10月2日(日) はTOKYO FMホールにおけるリアルの授業と、PIA LIVE STREAMにおける配信授業が行われる。内容は、13時30分〜講師:末満健一、聞き手:鞘師里保による「共同幻想の物語と、共同幻想としての演劇」、16時〜講師:野上祥子(ネルケプランニング代表取締役社長)、中野博之(集英社「週刊少年ジャンプ」編集長)、聞き手:阿久津仁愛による「マンガと舞台のステキな関係」、18時30分〜講師:松尾スズキ(大人計画主宰、シアターコクーン芸術監督)、聞き手:安藤善隆(京都芸術大学教授)による「松尾スズキ、その原点と創作の秘密」。チケット発売中。取材・文:五月女菜穂撮影:源賀津己<イベント情報>ぴあ 50th Anniversary 「ぴあ演劇学校」2022年秋期特別講座『ぴあ 50th Anniversary「ぴあ演劇学校」2022秋期特別講座』ロゴ■10月1日(土) 21:00劇団☆新感線42年の激闘とこれから講師:いのうえひでのり(劇団☆新感線主宰)、古田新太(劇団☆新感線)聞き手:笠井信輔(フリーアナウンサー)※この回のみ配信限定復活した「ぴあ演劇学校」のトップを飾るのは、劇団☆新感線主宰である、いのうえひでのりと看板役者の古田新太。劇団の大阪時代から新作『薔薇とサムライ2-海賊女王の帰還-』までの42年に亘る歴史を語って頂く。この二人だからこそ語れる劇団の真実は、ファンならば絶対に聞き逃せない。また、聞き手のフリーアナウンサー笠井信輔は15年以上にわたって劇団を観劇しているツワモノ。笠井がいのうえ、古田にどう切り込んでいくかも、この授業の注目のひとつだ。公式サイト:公式Twitter:チケット情報はこちら:
2022年09月30日