発達障害については「悩んでない」—いい悪いじゃなく、そうやって生まれたからインタビューの中でも、この「LITALICO発達ナビ」の連載コラムの中でも、鈴木さんが繰り返し語られていたのは、自分が発達障害であることで「悩むことはない」ということ。鈴木希望さん(以下、鈴木): 私だって日々の生活で悩むことはありますけど、それは、「誰だって生きていれば悩みの一つや二つある」ぐらいの普通なことであって、特別に発達障害“だから”悩むとか、発達障害“そのもの”について悩むことはもう無いんです。発達障害がある人間として生まれて「良かった」とは言わないけれど、「障害じゃなくて個性だよ」とか「大変なのに頑張ってるね」と、周囲に変に気を遣われるのもなんだか違和感があるし…良いも悪いもない、これが“基本設定”って感じです。もちろん、感覚過敏や相貌失認など、発達特性の凸凹によって“困る”ことはある。でも、原因がわかっていれば対処のしようがあるし、特性は変わらないのだから、その上でどう生きていくか考えるだけ…と、鈴木さんはあっけらかんとした口調で語ります。算数障害はあっても、大人になった今は電卓を使いこなせば計算には困らない。音や光、匂いに対する過敏性があるけど、自覚していればなるべく苦手な刺激を避けることができるし、どうしても苦手な環境で過ごさなければいけないときは、早めに休憩を入れるようにする…「これは特性なのか」「この場合はこういう対処をすればいいのか」と、自分の思考や言動のパターンと発達障害の特性を照らし合わせながら分析し、対処を考える行為には、ある種の“面白さ”も覚えるとのこと。日頃から自分の特性をよく観察し、受け止めているからこそ、他人に対しても比較的フラットに自分の発達障害のことを話せるそうです。鈴木: 先日、ネットを通してつながった、共通の趣味のある友人たちと集まったんですが、「こういう特性があって、初対面の人とは目を合わせにくいんだけど…」と説明すると、「あぁそうなんだ」って向こうもあまり特別視することなく受け止めてくれたんです。そういうときはすごく楽な気持ちになりますね「痛いところがあったら早く治せるように、薬を家に置いておくのと同じだね」—自分以上に発達障害をあっさりと受け止めた息子について今でこそ「発達障害で悩むことはない」と語る鈴木さんですが、学生の頃や働き出してばかりの頃など、医師の診断を受ける前には、やはり思い悩んだ時期があったそうです。こんなに人付き合いや仕事でつまづくのは、自分の性格が悪いのか、それとも努力が足りないのか…何が原因なのかも、修正の方法もわからず、「自分のことを理解できない生きづらさ」に苦しんでいたあの頃。「分からないまま悩み続ける」ことがどれだけ辛いかを痛いほど知っているからこそ、同じ発達障害の診断を受けた息子さんに対しては、早いうちから告知をしたそうです。すると…鈴木: 本人に告知してみたら、私の予想以上にあっさり受け止めたんですよ。「あんた、発達障害ってのがあるらしいよ」「ふーん、そうなんだ!」ぐらいのリアクションで…おまけに、お医者さんのところに連れていくことに対しても「痛いところがあったら早く治せるように、薬を家に置いておくのと一緒だね」なんて一人で納得する始末で…笑わが子ながらいい例えをするなぁって感心しましたよ。息子さんにとっての発達障害診断と通院は、いざという時のために救急箱を用意しておくぐらいの感覚…鈴木さんより早いうちから発達障害の告知を受け止めた息子さんは、母親であり、同じ診断を持つ鈴木さんも驚くほどに、自分の特性を自分の一部として受け入れ、成長していっているようです。「なんとかなるし、なんとかするしかない」合言葉を胸に、“同志”として共に生きるそんな鈴木さんの息子さんは、現在小学校二年生(2017年度時点)。マイペースに過ごしながらも、同級生の間で独特のポジションを確立し、みんなに愛されているのだとか。鈴木: 鬼ごっことか、自分が好きな遊びだったら集団遊びにもアクティブに参加するんですけど、いつもそういうわけではなくて、興味がないときは集団の輪の外からニヤニヤ笑いながら一人で眺めてるらしいんです。でも、集団に参加しないからといって仲間はずれにされてるってわけでもなくて、「ハルくん(息子さんの愛称)はそういうもんだから」と、クラスメイトからも“そういう立ち位置”として普通に認知されてるみたいなんですね(笑)面白いのが、先生曰く、そんなハルでも体調崩して休むと「クラスの均衡が崩れる」らしいんですね。ニヤニヤして遠くから眺めてるだけなのに、それがクラスの調和を保つピースの一つとして、自然に溶け込んでいる。あと、他人に興味がなくて一人でいるわけではなく、なんだかんだ周りのことはよく見ていて、誰かが困っていたら一番に駆けつけるらしいんです。私が心配するまでもなく、しっかりやってるんだなぁ…と。出典 : 同じ診断を受けた鈴木さんと息子のハルくん。自分の幼少期と比べて、似ているところもあれば全く違うところもある。そして、凸凹がありながらも彼は彼でたくましく学校の中で成長している。そんな息子さんの様子を眺めながら、「いずれ困るときもやってくるだろう」と予想する鈴木さん。鈴木: 今は本人も自覚していないけど、学年が上がったり環境が変われば、困り感が出て来ることもあると思います。私の予想では、4年生ぐらい。だから、親としてはある程度の心の準備はしているんですけど、正直、それほど心配していないんです。だって、彼の人生を生きるのは彼であって、私じゃないから。あまり心配しすぎるのも彼に失礼かなって。「まぁ困ったことがあれば話してくれよ、一緒に考えようぜ」ぐらいのスタンスでいます。親子と言っても、自分と息子は他人だから、それぞれの人生を歩んでいく。親としてサポートはするつもりでいるけど、彼自身が道を切り開く邪魔をしてはいけない。そんな考えを取材中繰り返し語ってくれた鈴木さん。「なんとかなるし、なんとかするしかない」それが、鈴木家の合言葉だそうです。発達障害による困りごとがゼロになるわけではない。自分がそうであったように、これからのわが子の人生にも色々あるだろう。だけどきっと、彼なら「なんとかする」と信じている。日々成長していく小さな“同志”を横目に、鈴木希望さんも、自分の人生を歩んでいきます。
2017年11月19日発達障害支援研究・実践の最前線を学ぶシンポジウム出典 : 発達障害の原因や治療法、支援方法に関する研究は、様々な分野の専門家が取り組んでいる領域です。発達障害のある子どもを育てている保護者や、その周辺の支援者にとって、最新の研究成果は今と未来の生活にどのような影響をおよぼすのでしょうか?誰もが多様で豊かな人生を送ることのできる社会を形成していくためにできることとはなんでしょうか?そんな疑問に応えるシンポジウムのお知らせです。11月26日(日)、「うちの子、少し違うかも...II~エビデンスに基づく発達障害支援をみんなで考える~」と題されたシンポジウムが、東京・お台場のテレコムセンターで開催されます。(主催:国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 社会技術研究開発センター(RISTEX))家庭・学校・地域・行政等における支援のしくみや最新の取り組みを紹介しながら、様々な支援の場面に横たわる障壁を乗り越え、改善していくための具体的方法について、分野・領域を超えて考えるシンポジウムです。サイエンスアゴラ2017 公開シンポジウム11月26日(日)「うちの子、少し違うかも...II~エビデンスに基づく発達障害支援をみんなで考える~」シンポジウム概要出典 : 日時2017年11月26日(日)10:15~12:30 (開場 10:00)場所テレコムセンタービル 8階 会議室B※新交通ゆりかもめ「テレコムセンター駅」直結参加費無料対象発達障害療育・子育て支援等に携わる方(医療・福祉関係等)学校・教育機関関係者の方行政(国・地方自治体)関係者の方発達障害児支援に関心をお持ちの一般の方、保護者・ご家族の方プログラム:10:00受付開始10:15開始10:20講演■神尾 陽子 氏(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児童・思春期精神保健研究部 部長)■船曳 康子 氏(京都大学大学院人間・環境学研究科/総合人間学部 准教授)■山野 則子 氏(大阪府立大学大学院人間社会システム科学研究科 教授/スクールソーシャルワーク評価支援研究所 所長)11:15パネルディスカッション■モデレーター:熊 仁美 氏 (特定非営利活動法人ADDS 共同代表)■パネリスト :上記講演者3名、外岡 資朗 氏(鹿児島県こども総合療育センター 所長)12:20フロアとの対話(質疑応答)、まとめ12:30終了出典 : 京都大学医学部卒業、ロンドン大学付属精神医学研究所児童青年精神医学課程終了。京都大学医学部精神神経科助手の後、米国コネティカット大学(フルブライト研究員)で自閉症研究に従事した後、九州大学大学院人間環境学研究院助教授を経て、2006年より国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所児童・思春期精神保健研究部部長、2010年より山梨大学客員教授、2017年よりお茶の水女子大学客員教授を併任。出典 : 年京都大学医学部卒業。京都大学医学部付属病院、京都市立病院にて研修後、京都大学大学院医学研究科に入学し、認知症の臨床研究を行った。2000年からは、カリフォルニア工科大学行動生物学教室に留学し、小鳥の歌を用いた音声発達の臨界期の研究に従事。2003年に帰国し、こころの発達、発達障害の分野の臨床と研究に従事。日本学術振興会特別研究員、京都大学医学部付属精神科助教を経て、2015年より現職。出典 : 関西学院大学社会学研究科後期博士課程修了、博士(人間福祉)。内閣府:子どもの貧困対策検討委員会委員・有識者会議委員、文部科学省:中央教育審議会生涯学習分科会委員、企画調整部会委員、家庭教育支援の推進方策に関する検討委員会座長、教育相談等に関する調査研究会議委員、厚生労働省:社会保障審議会臨時委員、ほか国の委員多数。大阪府子ども施策審議会会長、子どもの貧困部会部会長、大阪府スクールソーシャルワーク配置事業スーパーバイザー、ほか多数。出典 : 年、慶應義塾大学大学院社会学研究科修士課程修了。2011年、自閉症児に効果的な早期療育が届くことを目指し、NPO法人ADDS設立。2013年、同大大学院後期博士課程を単位取得退学、同大先導研究センター研究員。自閉症児のコミュニケーション研究や、早期療育の実践研究に携わる。NPO法人では、保護者が家庭療育に取り組むためのペアレントトレーニング、セラピスト認定制度等を実施し、現在までにセラピストを約100名養成、ペアレントトレーニングを約200家庭に提供してきた。出典 : 小児科医師。1988年、熊本大学医学部卒業、熊本大学大学院医学研究科へ入学後、同大医学部附属病院発達小児科にて勤務し、1996年、熊本大学大学院単位取得終了。1999年より鹿児島市立病院小児科(小児神経科)で医師、医長、科長を歴任後、2007年より鹿児島県児童総合相談センター療育指導部長、2010年より現職。鹿児島県こどもの虐待問題研究会副会長を併任。主催者からのメッセージ「国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の社会技術研究開発センター(RISTEX)では、「社会のなかの科学・社会のための科学」の理念のもと、社会の具体的な問題の解決を目指す研究開発を推進しています。今回のシンポジウム(入場無料)では、RISTEXにおける関連プロジェクトの成果も踏まえながら、家庭・学校・地域といった場面での発達障害支援における課題を改善し、のりこえていくための具体的なとりくみ等についての情報提供・共有や議論を行うことを目的としています。」昨年度も実施し、好評を博したシンポジウムの第2弾。様々なプロジェクトの成果の紹介や、必要とされる支援についての議論が行われます。本人や保護者はもちろん、教育や支援に関わる方に幅広く、足を運んでいただきたいシンポジウムです。イベント申し込みはこちら以下のリンクから申し込みが可能です。定員200名(予定)、氏名の登録は必須ではありません。お問い合わせは、下記のページの「主催・お問い合わせ」に情報が記載されておりますので、そちらからお願いいたします。サイエンスアゴラ2017 公開シンポジウム開催(入場無料) - 社会技術研究開発センター
2017年11月11日発達ナビ編集長・鈴木悠平のオススメ本発達ナビでは秋の読書週間に合わせて様々な方におすすめの本を紹介いただきました。しめくくりに、発達ナビ編集長の鈴木悠平が、発達ナビのユーザーの皆さんにご紹介したい本をピックアップしました。『イラスト図解 発達障害の子どもの心と行動がわかる本』北海道の「こころとそだちのクリニックむすびめ」院長である、児童精神科医の田中康雄先生の著書。表紙にある”「困らせる子ども」は、「困っている子ども」です。”のメッセージの通り、発達障害のある子どもたちの側に寄り添い、さまざまな特性を持つ子どもたちが、身の回りの出来事をどのように感じて、どうして困ってしまうのかを、イラスト付きでやさしく解説しています。学術的な難しい専門用語はほとんど使われておらず、発達障害についての前提知識がなくても簡単に読み進めることができます。発達障害について知りたい、子どもの行動の理由を知りたいといったときの「はじめの一冊」としてピッタリな本です!『ぼく、アスペルガーかもしれない。』著者の中田大地さんは、2001年北海道生まれ、本書執筆時はなんと8歳!小さいころから音や光に対しての過敏性が強く、集団行動にも難しさがあったことから、小学校進学時は特別支援学級で学ぶことを選択。自分の目や耳はどんな風に感じているのか、自分はどんなことが得意で、どんなことが辛いのか…日常の一つひとつの体験を、中田さんが自分自身の言葉で語っています。”しっかり働ける大人になるために僕はもっと、自分のことを知らなくてはいけない。”ーー主治医の先生やお母さんたちとの対話を通しながら、自分自身のことを知り、学校の中でみんなと一緒に学び過ごしていくためには何が必要か学んでいく中田さん。子ども自身の目線から発達凸凹の大きいお子さんの感じる世界が描かれた貴重な本です。続編の『僕たちは発達しているよ』(2010年, 花風社)、『僕は、社会(みんな)の中で生きる。―お家で、学校で、アスペルガーの僕が毎日お勉強していること』(2011年, 花風社)もぜひあわせてどうぞ。『わが子の発達障害告知を受けた、父親への「引継書」。』首都圏在住、資源・エネルギー関連の会社に勤める著者の白山宮市さん。次女が自閉症スペクトラムの診断を受けてからのご自身の経験をもとにした、父親による、父親のための父親業務「引継書」です。企業で長く働いてきたビジネスパーソンならではの喩えとして、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合に、損害を最小限に食い止め、いちはやく事業の継続・復旧を図るために策定されるBCP(事業継続計画)になぞらえた、FCP(家庭生活継続計画)の策定を白山さんは提唱します。わが子の発達障害診断・告知を受けた瞬間の心の動揺や落ち込み、そこからの立ち直り、夫婦間の対話や家庭内での役割分担の決定、職場への説明や立場・働き方のギアチェンジ、療育等の社会資源の利用や学級・学校選択などなど…発達障害のある子どもを育てる上でどうしても避けられない保護者への負担・困難を受け止めつつも、家族とともにいかに歩んでいくかを、冷静な筆致で叙述しています。体験談をベースにしつつも、発達障害のある子どものいる家庭がたどる道筋や利用できる社会資源などが俯瞰してまとめられており、どちらかというと構造的で体系的な理解を好む人が多いと言われる父親(男性保護者)読者にとって非常に参考になる書籍だと思います。鈴木悠平プロフィールUpload By 発達ナビ編集部1987年生まれ。東日本大震災後の宮城県石巻市におけるコミュニティ事業の立ち上げ、コロンビア大学大学院での地域保健政策の研究を経験した後、株式会社LITALICO入社。発達支援教室「LITALICOジュニア」での指導員、「LITALICO研究所」の立ち上げ・運営業務等を経験したのち、発達障害に関するポータルサイト「LITALICO発達ナビ」( ) の編集長に就任。NPO法人「soar」( )理事も務める。
2017年11月10日ライター・鈴木希望さんのおすすめ本フリーライターの鈴木希望さん。ご自身と息子さんがともにASD(自閉症スペクトラム)の診断を受けており、発達ナビでも体験を綴ったコラムを連載中です。そんな鈴木希望さんに発達ナビユーザーにおすすめの本を4冊教えていただきました。子育てや家事に疲れた時、親子で本を読む時間をつくってみてはいかがでしょうか?『妖怪ウォッチ』「言わずと知れた人気漫画。主人公のケータ君が様々な妖怪と出会い、友達になるというストーリーなんですが、人々を困らせる妖怪と話してみると、実は「誰かを困らせたいわけではなく、妖怪自身が自分の性質や能力の取り扱いに困っている」というパターンが多いんですね。『あ、これ、発達障害当事者の状況に似ているな』と。妖怪たちの吐露を聞いたケータ君が、『でもそれってこんなふうにいいところもあるよ』とリフレーミングしたり、『それをこういうふうに活かしたらどう?』とアドバイスするんですね。なので、『ああ、これは多様性受容の話なのだな』と私は理解しています。基本はギャグ漫画ですけれど、そのように観点を変えて読んでみると面白いかもしれません。」(鈴木希望さん)「発達障害について理解が深まる本を教えてください」と聞いたところ、鈴木さんが教えてくれたのは意外にも妖怪をテーマにした漫画『妖怪ウォッチ』。『コロコロコミック』で連載中の、大人気ニンテンドー3DSゲームを原作とした漫画です。小学5年生のケータが森の中で「妖怪執事」のウィスパーと出会い、妖怪ウォッチを手に入れたことから物語は始まります。妖怪ウォッチをつけると、見えないはずの妖怪が見えるようになります。悩んだり、イタズラで人を困らせたり、そんな妖怪たちとケータは友達になり、問題を一緒に解決していき…。かわいいキャラクターとわかりやすいストーリーで、子どもに大人気のコミック。2017年11月28日に最新刊14巻が発売予定です。『このあとどうしちゃおう』「おじいちゃんの楽しげなエンディングノートを見つけた男の子が、それを読みながら、どんな気持ちで記したのかと想像を巡らす、楽しくて、ちょっぴり切ないお話です。死に関して語ることって、何となく重いというか、タブーのような雰囲気がありますが、生きることと地続きで、誰しも経験するものですよね。だから、生きることの大切さを語ることと同様に、死についてももっと気軽に語る機会があってもいいよね、とこれを読んで私は感じました。この絵本をきっかけに、8歳の息子とはもちろん、老親とも『このあとどうしちゃおう』『いきているあいだはどうしちゃおう』と話し合う機会が増えました。」(鈴木希望さん)『りんごかもしれない』『ぼくのニセモノをつくるには』に続く、ヨシタケシンスケさんの大人気絵本シリーズ「発想えほん」の第3弾。今回のテーマは「死」。重いテーマですが明るい絵柄でからっと読めるので、子どもから大人まで、家族みんなで考えるきっかけにもなる本です。『子育ては、泣き・笑い・八起き 妊娠・出産・はじめての育児編』「新潟を拠点に活動されている子育てエッセイストさんのご著書。出産1年未満でシングルマザーになり、不安だらけの時期にこの本の元になった『どーいんソレ…!』に出会い、とても救われました。自分に高いハードルを設定しがちで、キャパシティー以上のことをしがちな私は、新米お母さん時代のちゃいさんの姿に自分を感じて、タイトル通りに泣き笑い。ついつい『自分ってダメな親だなぁ…』と思ってしまいがちなお母さん、お父さんには是非、『あなたはとっても頑張っているんだよ!』というちゃいさんのメッセージを感じていただきたいです。」(鈴木希望さん)地元・新潟のフリーペーパーで子育て漫画エッセイを連載しているちゃい文々さん。小学生の女の子、中学生の男の子を育てるシングルマザーとしての奮闘の日々を明るく綴ります。はじめての妊娠から出産、子育てまで、かわいい子どものために頑張ろうとするけれど、なかなかうまくいかずイライラ…。そんな体験をするパパ・ママは少なくないのではないでしょうか?そんなとき、この本は重すぎる子育ての負担を“キャパ・リュック”としておろす方法を提案してくれます。百点満点の育児じゃなくても大丈夫、そんな気持ちになれる一冊です。『逃避めし』「仕事に行き詰まったときや、締め切りが迫っているときの現実逃避として、作った料理を綴った、吉田戦車さんの食エッセイです。計量もせず、ありものでデタラメな料理をするのが私の趣味。そのワクワク感が詰まったこの本が大好きで、繰り返し読んでいます。料理にまつわる思い出や日常の記録も味わい深く、プロが作らないような名もない一品や毎日の暮らしが愛おしくなってきます。」(鈴木希望さん)『伝染るんです。』などで知られる漫画家吉田戦車さん初の料理エッセイ。締め切りを目前になぜか作ってしまう料理「逃避めし」を描き下ろしのイラストたっぷりに語っています。鈴木希望さんプロフィールUpload By 発達ナビ編集部1975年新潟県生まれのシングルマザー/フリーライター。側頭葉てんかんとは生来の付き合い。2009年生まれの息子が発達障害の可能性があると指摘を受け、調べたところ、後日親子揃って自閉症スペクトラム(旧アスペルガー症候群)と診断されました。発達ナビでコラムを連載中。
2017年11月09日熊谷晋一郎先生におすすめの本をききました!小児科医の熊谷先生は、脳性マヒのある障害当事者としての立場から、当事者研究も行っています。ロボット工学を専門とする、脳情報通信融合研究センターの長井志江先生チームと、熊谷先生・綾屋沙月さんの当事者研究チームが研究・開発した「自閉症知覚体験シミュレータ」を、発達ナビのコラムでご存知のユーザーの方も多いのではないでしょうか?平成28-33年度 戦略的創造研究推進事業(CREST)「認知ミラーリング:認知過程の自己理解と社会的共有による発達障害者支援」今回は、熊谷先生に発達ナビのユーザーに読んでほしい本を教えていただきました。自分や周りの人への理解が深まるきっかけに、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか?『うわわ手帳と私のアスペルガー症候群』「一組の母と娘の間でつむがれた、静かで、繊細で、丁寧な、相互理解の軌跡」(熊谷晋一郎先生)高橋紗都さんは10歳のアスペルガーの女の子。ある日紗都さんにお母さんの尚美さんは「好きなことに使ってええで」と1冊の白い本を手渡します。紗都さんはその本を『うわわ手帳』と名づけ、自分の世界を自分の言葉で書き始めました。「うわ~っとなる」自分のしんどい状況を「うわわオバケ」という言葉で表現し、どんなときにどんなことに困るのか、どんな風に感じているのかが綴られたその手帳は、紗都さんの世界を写しだします。そしてそれは紗都さん本人や家族が理解し、対処法を探る大きなツールとなったのです。もちろん発達障害のある人の困りごとや、感じ方は人それぞれですが、高橋さん親子の手帳は発達障害のある子どもの世界を知る、一つのきっかけとなるのではないでしょうか?『こんな私が大嫌い!』「タイトルにぴんと来たら、ぜひ読んでみよう」(熊谷晋一郎先生)自分が嫌い、でも「自分を好きになろう」…そう言われてもどうしたらいいのか、迷う方も少なくないのではないでしょうか?エッセイストの中村うさぎさんが、。中村さん自身の体験と実践をもとに、きれいごとや欺瞞抜きで「自分嫌い」という呪いを解く方法を語ります。ふりがなやイラストも多く入り、わかりやすい言葉で綴られているので、思春期の悩める子どもにおすすめです。『母よ!殺すな』「子育ての重荷を親だけに背負わせる社会にNO!」(熊谷晋一郎先生)日本の障害者解放運動、自立生活運動をけん引した「青い芝の会」の脳性マヒ者、横塚晃一さんをご存知でしょうか?横塚さんは生後10ヶ月の高熱により重度の脳性マヒがありました。当時の日本では、障害者への支援が十分でなく、家庭での子育ての負担に耐えられないことを背景とした事件が社会問題となっていました。横塚さん達「青い芝の会」は重症児殺し告発運動を行い、その障害者の立場からの批判や運動は大きな反響を呼びました。そんな横塚さんの発言を聞き書きとして集めたのが本書です。1975年に出版され、長く絶版となっており入手困難でしたが2007年に復刊されました。初版に未収録の文章や年表、原一男監督によるドキュメンタリー映画『さようならCP』のシナリオも収録されています。『暇と退屈の倫理学』「あらゆる苦しみの根底には「退屈」という宿命があった!」(熊谷晋一郎先生)熊谷先生に、面白かった本、好きな本は?と伺ったところ、教えていただいたのが高崎経済大学准教授、哲学者國分功一郎さんの本です。「なぜ人間は退屈するのか」という問いを持った國分さんが、文化人類学、哲学、経済学、倫理学など様々な側面から論考します。2012年には読者が選ぶ人文書の賞「紀伊國屋じんぶん大賞」を受賞。分厚くとっつきにくいと感じるかもしれませんが、哲学だけに収まらない視点で、この疑問への答えを導き出そうとするその道筋そのものが面白いと話題になりました。2015年に出版された増補新版ではさらに新版に寄せた論考「傷と運命」も足されています。熊谷晋一郎先生プロフィールUpload By 発達ナビ編集部熊谷晋一郎(くまがやしんいちろう)・東京大学先端科学技術研究センター准教授、小児科医・日本発達神経科学学会理事新生児仮死の後遺症で、脳性マヒに。以後車いす生活となる。東京大学医学部医学科卒業後、千葉西病院小児科、埼玉医科大学小児心臓科での勤務、東京大学大学院医学系研究科博士課程での研究生活を経て、現職。専門は小児科学、当事者研究。主な著作に、「リハビリの夜」(医学書院、2009年)、「発達障害当事者研究」(共著、医学書院、2008年)、「つながりの作法」(共著、NHK出版、2010年)、「痛みの哲学」(共著、青土社、2013年)など。熊谷晋一郎|東京大学先端科学技術研究センター
2017年11月08日精神科医・山科先生におすすめの本を聞きました!精神科医で中央大学教授の山科満先生。クリニックでの診察・カウンセリングも精力的に行い、臨床現場と心理学教育をつなぐ臨床研究に取り組んでいらっしゃいます。発達ナビのコラムの監修者としてもご活躍いただいています。そんな山科先生に、精神医学についての理解を深められる2冊を伺いました。いずれも豊富なエピソードと筆者の深い洞察力で、一般の読者でも興味を持って読める、おすすめの本です!『「こころ」の本質とは何か統合失調症・自閉症・不登校のふしぎ』「この挑戦的なタイトルに惹かれて発刊間もない頃に偶然手に取り、以来私にとってバイブルとなった本です。発達障害に向き合うにあたっての「考え方」を教えてもらいました。発達障害に関する臨床経験も知識も、今よりもずっと乏しかった頃は(今でも多いとは言えませんが)、私はほとんどこの本を頼りに臨床を行っていました。学部の1年生の授業でもテキストとして使っています。」(山科満先生)学習院大学教授の滝川一廣さんは『子どものための精神医学』(医学書院)や『家庭のなかの子ども 学校のなかの子ども』(岩波書店)などの著作でも知られる児童精神科医です。2004年に刊行された本書では、統合失調症、自閉症、不登校の3つを取り上げ、「こころ」の本質とは何かを考えます。「こころの病は決して異常ではなく、人間のこころの本質のある現れである」という考えに立つ滝川一廣さん。自身が臨床の現場で感じたことやエピソードなどを交えながらわかりやすい筆致で語られ、精神医学の入門書としても読みやすい本です。『火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者』「著名な脳神経外科医(にして著述家)による患者のインタビューを元に構成された本ですが、タイトルになっている「火星の人類学者」とは、『我自閉症に生まれて』で有名なテンプル・グランディンの話です。彼女は自分を「火星からやってきた人類学者」に喩え、周囲の出来事を徹底的に観察分析し、頭の中にデータベースを構築することで適応力を向上させていったのだと説明しています。大学生まで生き延びたアスペルガーとおぼしき人にこの本を読んでもらうと、「自分のことだ」と言われることがしばしばあります。(山科満先生)『レナードの朝』でも知られる脳神経科医サックス博士が出会った7人の患者についてのエッセイで、全米で大ベストセラーとなった本です。自閉症のある動物学者テンプル・グランディンをはじめ、トゥレット症候群の外科医、色彩感覚を失った画家など、障害が才能となって開花した人が登場します。サックス博士は7人と診察という形で交流を重ね、そのエピソードと彼らそれぞれへの理解を深い洞察力を持って描いています。障害とその人の個性や才能との境目はどこにあるのか、そもそも境目はあるのだろうか…様々なことを考えさせてくれるエッセイです。山科満先生プロフィールUpload By 発達ナビ編集部山科満(やましなみつる)中央大学文学部教授。精神科医,臨床心理士。専門は青年期精神医学、精神分析的精神療法。大学教員となって,発達障害傾向ゆえに不適応に陥っている若者の多さに驚き,発達障害と本腰を入れて向き合うようになった。山科満さんのページ|LITALICO発達ナビ
2017年11月07日アナログゲーム療育アドバイザー・松本太一さんに発達ナビユーザーへのおすすめ本を聞きました!松本太一さんは、アナログゲーム療育アドバイザー。ボードゲームやカードゲームなどを使って発達障害のある人のコミュニケーション能力を楽しく高めるという「アナログゲーム療育」の開発者です。全国で研修や講演を行う傍ら、発達ナビでもコラムを発表しています。今回は、松本さんに子育てをしている発達ナビユーザーに読んでほしい本を教えてもらいました!『子どもへのまなざし』「子育てのバイブルとして多くの親御さんに読まれています。「子どもの発達」と親の役割について、これほど平易に書かれた本は他にありません。」(松本太一さん)著者は児童精神科の医師として40年以上活躍された故・佐々木正美さん。自閉症のある方への支援プログラム「TEACCH(ティーチ)」を日本に紹介、普及に尽力されたことでも知られています。乳幼児期は子どもの人間としての基礎となると考える佐々木さんが、あたたかな視点で語る育児書です。佐々木さんには多くの著書がありますが、語りかけるようなわかりやすい言葉で書かれたこの本は特にパパママに長く愛されています。「これでいいのかな?」「がんばっているのにうまくいかない」と子育てに悩んだときに開いてみてはいかがでしょうか?『赤ずきんとオオカミのトラウマ・ケア: 自分を愛する力を取り戻す〔心理教育〕の本』「トラウマやフラッシュバックに悩まれている思春期以降のお子さんとその親御さんに読んでほしい。思い出したくない記憶とどう向き合うか、わかりやすく具体的に解説されています。」(松本太一さん)みんなが知っている『赤ずきんちゃん』に登場するオオカミと赤ずきんちゃんの物語仕立てでトラウマについてわかりやすく説明しています。トラウマに苦しむ人や家族が理解しやすいように工夫されていますが、その内容は、トラウマの仕組みからフラッシュバックへの具体的な対処法、家族や支援者の具体的な支援法まで、具体的かつ網羅的に紹介されています。『勇気づけて躾ける―子どもを自立させる子育ての原理と方法』「別名「対人関係の心理学」とも言われるアドラー心理学に基づいた子育てを、豊富な事例とともに解説。子どもの自主性を尊重した親の関わり方や、兄妹の間に働く心理の解説は、子育てに新しい視点を与えてくれるはず。」(松本太一さん)子育てに悩むパパ・ママにおすすめの本として挙げてくれたのがこの本。アドラー心理学はオーストリアの精神科医アルフレッド・アドラーが築いた心理学です。アドラー心理学では「人間は、分割できない個人という全体として、目的に向かって行動する」と考えます。「子どもが言うことを聞いてくれない」「自主性を身につけてほしい」と悩むパパ・ママも多いのではないでしょうか?この本ではアドラー心理学をもとに、子どもへの理解や自由をどう教えるかなどを紹介しています。『教育心理学講義』「「心理学のモーツァルト」と呼ばれた天才ヴィゴツキーの30歳の著作。「教師が100で生徒が0」という前提の一方的な知識教授に偏った教育は時代遅れであり、教師は子どもが自ら学ぶ環境を整える調整者であるべきだという彼の主張は、この本の出版から90年後を経て今なお先進的。」(松本太一さん)松本さんが愛読する座右の書として教えてくれたのが旧ソ連の天才心理学者ヴィゴツキーの名著。ヴィゴツキーは唯物弁証法の立場から現代心理学を方法論から問い直し、批判しました。この『教育心理学講義』は師範学校で行われた教育心理学の講座をまとめたもので、1926年に刊行されました。37歳という若さで亡くなったヴィゴツキーですが、今もなお世界中の心理学者に影響を与えています。松本太一さんプロフィールUpload By 発達ナビ編集部松本太一(まつもとたいち)フリーランスの療育アドバイザー。カードゲームやボードゲームを用いて、発達障害のある子のコミュニケーション力を伸ばす「アナログゲーム療育」を開発。各地の療育機関や支援団体で、実践・研修を行っている。東京学芸大学大学院障害児教育専攻卒業。教育学修士。NPO法人グッド・トイ委員会認定おもちゃインストラクター
2017年11月06日スクールカウンセラーの池田先生に聞いた、発達ナビユーザーへのおすすめ本!発達ナビでコラムを連載している池田行伸先生。スクールカウンセラーとしての豊富なご経験の中から、印象的だった保護者や子どもへの支援を紹介しています。コラムの具体的な事例やさまざまな立場への支援を参考にしている発達ナビユーザーもお多いのではないでしょうか?今回は池田先生に、保護者や支援者など、子どもとかかわる大人に読んでほしい本と、愛読している本を教えていただきました!『子どもに障害をどう説明するか―すべての先生・お母さん・お父さんのために』「障害を理解していない人に話す話し方がよくわかる。子どもを傷つけない言い方で子どもに説明する方法のヒントが得られる本。」(池田行伸先生)「障害について子どもにどう説明したらよいのか」「障害って何?と子どもに聞かれたらどう答えたらよいのか」そんな悩みを抱える保護者や学校の先生も少なくないのではないでしょうか?本書では、障害をどのように説明するか、特別支援学級の教師である相川さんと東北大学教授の仁平義明さんがわかりやすく具体的に答えます。『夜と霧』「ユダヤ人強制収容所の体験が書かれている。希望の持つ意味を教えてくれ、困難に向き合うときの知恵と勇気を与えてくれる。」(池田行伸先生)池田行伸先生が愛読書として挙げてくださったのは、フランクルの『夜と霧』。ユダヤ人精神分析学者が自身のナチス強制収容所での体験を綴った世界的名著です。原著の初版は1947年。日本では1956年に霜山徳爾が訳し、2002年に新版として池田佳代子訳が発行されています。池田行伸先生プロフィールUpload By 発達ナビ編集部池田行伸(いけだゆきのぶ)國學院大學人間開発学部子ども支援学科教授特別支援教育士スーパーバイザー上智大学文学部卒業上智大学大学院修了博士(心理学)専門は神経心理学。現在は國學院大學人間開発学部子ども支援学科教授、佐賀大学名誉教授。特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV)の資格を持ち、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校のスクールカウンセラーを歴任している。人が生まれて発達していく過程の概略、性格・人格・人格の偏りの概略が学べる本です。
2017年11月04日発達障害における薬物療法とは出典 : 発達障害の症状に対する治療法の一つとして、医師の判断によって薬が用いられることがあります。しかし、発達障害を根本治療する薬は現在ありません。そのため、発達障害で薬を処方する時は、発達障害の特性をなくすという目的ではなく、その症状を抑えることや二次障害を治すことが目的になっています。薬を処方することは医師にしかできません。薬によっては、医師の中でも限られた一部の医師にしか処方することが許されていないものもあります。また、発達障害だと診断されたら、必ず薬を服用するというわけではありません。医師の判断によって、必要に応じて薬を服用していくため、薬を処方されるタイミングで医師から薬に関する説明を受けることになります。発達障害のある人への支援で、お薬に期待されることは?出典 : この章では、発達障害のある人が、薬を服用することによってどのような効果が期待されるのかを紹介します。現在では、発達障害のある人への支援方法の一つとして、薬物療法はある程度の効果があると考えられています。しかし、服用する上で気をつけなくてはならないのは、発達障害における薬はすべて対症療法であることです。そのため、薬に期待されることは、発達障害そのものをなくすためのものではなく、発達障害の症状を和らげることになります。主な発達障害を例に、どういった症状に対して薬を服用していくのか見ていきましょう。◇自閉症スペクトラム自閉症スペクトラムを根本的に治療していく薬はありません。また、このあとで紹介するADHDの場合とも異なり、現在、自閉症スペクトラムの特徴である「社会性・対人関係の障害」 「コミュニケーションや言葉の発達の遅れ」「行動と興味の偏り」といった中核症状を直接軽くするような目的で薬が使われることはあまりありません。しかし、自閉症スペクトラムに伴う以下のような関連症状に対しては、薬の効果が期待されています。・かんしゃく・こだわり・不注意・多動性/衝動性・チック・抑うつ気分・睡眠障害など参考書籍:『精神科治療学Vol.30増刊号』(星和書店・2015)◇ADHDADHDでは、不注意・衝動性・多動性といったADHDに特徴的な症状そのものを緩和させることが期待されています。しかし、薬物療法でADHDを根本的に治療できるわけではなく、薬を服用しながら環境調整やソーシャルスキルトレーニングなどの療育を行っていくことで、困りごとを減らしていくことになります。ADHDにおける薬物療法は、「ADHDをなくす」ためではなく、「社会生活や学業での困りごとを解消する」ための手助けをしてくれるものだと考えるといいのかもしれません。発達障害のある人に処方されるお薬の種類出典 : 発達障害の症状に対して効果があるかもしれないと考えられている薬は多くあります。日本では未認可であっても、海外では認可されている薬や、ADHDで用いられる薬が他の精神疾患のある人に対して効果が見られるようなケースがあります。また日々、発達障害の薬は研究が行われており、オキシトシンなどさまざまな物質が薬として利用できないか調べられています。数多くの薬がありますが、人によって合う薬と合わない薬もあり、副作用などもあります。現在のところ、すべての人に必ず効果があるような薬はありません。そのため、薬物療法を進めるときは医師の判断のもと、その人の症状や状態を慎重に見ながら行うことになります。ここでは、自閉症スペクトラムやADHDの治療において認可されており、比較的用いられることの多い薬についてまとめました。◇自閉症スペクトラム小児の自閉症スペクトラムの易刺激性に対しては、リスパダール(リスペリドン)、エビリファイ(アリピプラゾール)といった薬が認可されています。易刺激性とは、自傷行為やかんしゃく、攻撃的になりやすいなどの性質のことです。これらの薬は、脳内の伝達物質のバランスを整える作用があります。◇ADHDADHDに対しては、中枢神経刺激薬であるコンサータ、非中枢神経刺激薬であるストラテラ、インチュニブが認可されています。それぞれの薬の詳細については関連記事を参照ください。参考:リスパダール錠|独立行政法人医薬品医療機器総合機構リスパダール患者向医薬品ガイド|特別行政法人医薬品医療機器総合機構参考:エビリファイ錠|独立行政法人医薬品医療機器総合機構エビリファイ患者向医薬品ガイド|特別行政法人医薬品医療機器総合機構また、コンサータと同じく中枢神経刺激薬であるリタリンは、昔は認可外ではありましたが、ADHDに処方される場合もありました。しかし、今ではADHDに処方されません。リタリンとコンサータの違いについては、以下の関連記事内で詳しくまとめてあります。発達障害のある人がお薬を服用するときの注意点は?出典 : 薬を服用するときには、「副作用があるのではないか」や「本当に効果があるのか」など多くの不安がつきまといます。そのような不安を解消するためにも、精神薬を服用する時には、医師と相談したり協力したりすることが必要不可欠です。薬の服用に関しては、具体的に以下のことに気をつけるといいでしょう。発達障害に処方される薬の多くは、対症療法を目的としたものです。そのため、服用する薬が具体的にどんな行動・症状を抑えるための薬なのかを知っておくことが大切です。主治医や薬剤師の方に薬について説明をしてもらったり、不明なことや不安なことは相談するとよいでしょう。また、副作用と、副作用が起きたときの対処法も事前に理解しておくとよいでしょう。発達障害に処方される薬の副作用として生じる症状のうち、早急に対処しなければいけないものはそれほど多くはありません。そのため、心配しすぎる必要はありませんが、急に発疹がでたり、呼吸が乱れたりしたときにどのような行動をとればいいのかは理解しておきましょう。薬の使い方を誤ると、重大な副作用が生じる可能性もあります。基本的に、医師の指示にしたがって服用するようにしましょう。症状が軽くなったからといって、個人の判断で勝手に量を減らしたり服用を中止したり、逆に薬が思った通りに効かなかったからといって、勝手に量を増やしたりしてはいけません。しかし副作用がひどい場合には、いったん服用を中止して医師に相談するようにしてください。精神薬は、効果に個人差があることも多く、最適な量についてもバラバラのため、様子を見ながらその都度修正していく必要があります。副作用が見られる場合もあります。どんな些細なことであっても、なにか気になることがあれば医師に報告し相談するようにしましょう。副作用として、次のような症状が見られることが多いため、このような症状に気を配っておくとよいかもしれません。・食欲不振/食欲減退・軽度な不眠症・体重減少・頭痛・腹痛など参考書籍:太田昌孝 永井洋子 武藤直子/著者『自閉症治療の到達点第2版』(日本文化科学社・2015)また、薬を服用するときに気になることに、薬をいつやめるべきかということがあります。児童精神科医の吉川徹先生は薬のやめどきについて発達ナビのコラムで以下のように述べています。常にやめることを考えながらお薬を使う、というのがおそらく正解であると思います。減薬や中止のチャンスを常にうかがっていないと漫然とお薬を使うことになってしまいます。・標的となっていた症状が改善してきたとき・環境との不適合が小さくなってきたと感じられるとき・他の支援がうまく回り始めたときなどが、お薬を減らす・やめるチャンスです。薬のやめどきについても、医師と相談しながら決めていくようにしましょう。上記や下記のコラムでは、薬のやめどき以外にも、発達障害と薬について詳しく紹介しているので参考にしてみてください。薬物療法と併せて療育的支援を行うことが大切出典 : 発達障害の症状は薬物療法によって軽減することがありますが、これは決して薬任せにすればいいというわけではありません。発達障害の治療においては、薬物療法のみを行うことはなく、薬物療法で症状が落ち着いている間に並行して教育的・療育的なアプローチをすることが重要です。例えば、ADHDの子どもに対して行われる療育には、ソーシャルスキルトレーニングやペアレントトレーニングなどがあります。ソーシャルスキルトレーニングは様々な特性をもつ本人が社会や生活での適切な行動をうまくできるようにトレーニングするもので、ペアレントトレーニングは保護者の方々が子どもとのより良いかかわり方を学びながら、日常の子育ての困りごとを解消し、楽しく子育てができるよう支援する保護者向けのプログラムです。また、自閉症スペクトラムのある人に対してはTEACCHと呼ばれるアメリカ発祥の当事者とその家族を対象とした生涯支援プログラムなどがあります。ここに挙げた以外にも、本人がより生活しやすいような環境を整備したり、本人にあったやり方を模索していったりすることも大切です。療育的支援の詳しい内容については、それぞれまとめてありますのでそちらを参照ください。医療費の助成について出典 : 発達障害の日々の困りごとを解消する手助けをしてくれる薬ですが、実際に服用するとなるとお金がかかることになります。薬の服用頻度や、薬の種類によって金額は異なるため、薬を服用するにあたって、一概にいくらかかるとは言うことができませんが、家計への負担を少しでも軽くするために、薬にかかる費用も含めた医療費を少しでも減らす方法についてまとめました。日本全国どこにいても、受けられる支援に自立支援医療があります。発達障害や精神疾患が原因で、精神科に通院する時にかかる費用の一部を国が負担する制度です。調剤、往診、デイケア、訪問看護が対象となっており、自己負担額が1割になります。しかし世帯の所得などに応じて、窓口負担額の上限金額が定められています。こちらの支援を受けるためには、区市町村の窓口から申請する必要があります。実際に申請するときの流れなどについては、こちらを参考にしてみてください。各地方団体では、それぞれが独自の支援を行っていることがあります。例えば、乳幼児にかかる医療費への助成であったり、自立支援医療での自己負担額をさらに軽減したりするような制度があります。これらの支援は、各地方自治体で受けられるサービスが異なります。また、申請方法についても異なるため、お住いの地方自治体のホームページを見たり、役所に足を運んだりしてみてください。また、医療費以外にも受けられる支援があります。受けられる支援の内容や申請方法に関する詳細はこちらにまとめられています。まとめ出典 : ここまで、発達障害のある人に処方されるお薬にまつわることをまとめてきました。発達障害の薬に限らず、すべての薬は、正しく利用できれば大きな味方になりますが、使い方を誤ると思わぬ副作用をもたらします。発達障害や精神疾患の薬は、風邪薬などに比べると、副作用のでる確率が高かったりと繊細で扱いにくい一面があります。また、効果が現れるかどうかも人によって差があります。そのため、普段以上に使い方を間違えないように注意したり「こんな些細なことを相談してもいいのかな」と思うようなことを含めて、すべて医師に相談するようにしましょう。薬に頼りっきりになることなく、薬で症状が落ち着いている間に療育を行ったり、少しでも本人が生活しやすいような環境を整えたりすることも大切です。
2017年10月20日先月、NHK総合テレビで 「深夜の保護者会/発達障害 子育ての悩みSP」 をはじめ、Eテレ「ハートネットTV」では 「自閉症アバターの世界1・2」 、NHK「あさイチ」では 「シリーズ発達障害/どう乗り越える? コミュニケーションの困りごと」 など、続々と発達障害特集が放送された。どれも見ごたえのある内容だったが、4歳の自閉症スペクトラムの息子を持つわが身としては、やはりリアル世代である「深夜の保護者会」が一番興味深かった。話し合いにのぼったテーマは、「周囲へカミングアウトはするべきか?」「カミングアウトするとしたら、どう説明したらよいのか?」「夫や子どもの本音は?」「ありのままのわが子を受け入れるには?」など。どれも、まさに発達障害の子育てをしている親の悩み、ど真ん中の内容だったと思う。現役ママの葛藤は、私には痛いほど伝わってきて、ちょっとホロッとしてしまうほどだったし、すでにさまざまなことを乗り越えてきた先輩ママたちが、試行錯誤の上生み出した、わが子との向き合い方はとても参考になった。■わが子を嫌いになる、自分が辛いそして、現役ママの苦しい胸の内を聞いて、改めて発達障害を持つわが子の「ありのままを受け入れる」ことの難しさを思い知った。「彼らを大好きなのに、大嫌いになる時がある自分が辛い」(番組に寄せられたファックスのコメント)「比べるものではないと重々わかっているけど、どうしても下の子と比べてしまう。下の子はできが良くて、かわいくてギュッって抱きしめられるけど、上の子にはできない…。できない上の子を受け入れられない」(番組に参加した現役ママのコメント) NHK総合テレビ「深夜の保護者会/発達障害 子育ての悩みSP」より そんなママたちの悲痛な叫びに、胸が締め付けられた。■本当に、子どものこと受け入れてる?ありのままのわが子を受け入れる――それは発達障害の子育てのスタート地点のように思えるのだが、実は、親にとっては、それが一番難しいことのような気がする。私自身も、「私は周囲にもカミングアウトしてるし、もう受け入れているから大丈夫!」と、すっかり達観したつもりでいたのに、自分でもビックリするほど些細な事で傷ついてしまうことがある。そんな時は、「実は、心のどっかでは息子のことを受け入れられてないのかも…?」と心が揺れる。ブレない自分でいたい。…なのに、なかなかなりきれない! それが自分でも、すごく歯がゆくて悔しいのだ。■子どもが笑ってくれる、そのために何ができるか?これに対して、先輩ママたちや尾木ママの意見は…「試行錯誤する、という作業がすごく大事。私たちも最初はどうしたらいいのかわからない状態で、いろいろ試して、今がある。のちのちつながっていくことだから、あきらめないで少しずつでも進んでいってほしい」「高望みせずに、『一個できたらすごい!』を積み重ねていけばいい。とにかく今できることを褒めて。『褒めるは認めること』って言葉に置き換えてもいい。良いところを褒めるのではなく、できていることを認めればいい。それが丸ごとの発達障害と付き合っていく姿勢につながっていくはず」「発達障害は、息子の世界と私たち世界の交わるところにある、『壁』みたいなもの。でも、その壁は環境や周囲の考え方、関わり方で低くもなる。息子の世界も尊重しつつ、私たち側もお互い気持ちよく過ごせるエリアが広がるように、私たち側が変わっていかなければならない」 NHK総合テレビ「深夜の保護者会/発達障害 子育ての悩みSP」より 様々なアドバイスが飛び交ったが、なかでも印象に残ったのは、先輩ママの次の言葉だった。「よっちゃん(息子さんの名前)に笑ってほしい。そのために自分がどうしたらいいか? それを考えれば自ずと変わってくる。それを変えただけ」私は、障害(発達障害に限らず)を持つ子どもの親というのは、何か高尚な考え方ができるような、立派なママにならなければならないような気がしていた。でも、そうではなくて、この先輩ママが言うような、子どもの毎日の笑顔の積み重ねの先に、いつの間にか生まれてくるような、もっと自然な感情なのかもしれない。そう思うと、私はまだまだ肩の力が入ってしまっているようで、まだまだだなぁ~と苦笑してしまった。■障害は敵ではないまた、当事者である子どもの発言にも考えさせられた。「悪いのはこの子ではなく、障害のせい」と、子どもと障害を別々に考えるということで気持ちが楽になったというお母さんに対してお子さんの考えは違った。「僕は、そういう考え方はやめてほしい。障害は敵ではない。生まれてしまった以上しょうがない。しょうがないから向き合う。うまく付き合っていけたら気持ちは楽になる」 NHK総合テレビ「深夜の保護者会/発達障害 子育ての悩みSP」より この2人のやり取りを見て、発達障害の子育てを描いたコミックエッセイ『母親やめてもいいですか』に書かれていた、自閉症当事者によって書かれた「私たちのことを嘆かないで」という詩の一節のことを思い出した。自閉症は人を閉じ込める殻ではありません中に普通の子どもが隠れているわけではないのです自閉症は私が私であること、そのもの私という人格から切り離すことはできません「うちの子が自閉症でなければよかった」「この子の自閉症がよくなりますように」その嘆き、その祈りは、私にはこう聞こえます。「自閉症ではない別の子がよかった」両親が語りかける夢や希望に、私たち自閉症者は思い知るのです彼らの一番の願いは、私の人格が消えてなくなり、もっと愛せる別の子が私の顔だけ引き継いでくれることなのだと… 『母親やめてもいいですか』(山口かこ・文/文春文庫)より引用 ■何を持って「息子」なのだろう?障害を持つ子どもの親であれば、誰しも、わが子の障害がなおることを願ったことが、一度はあると思う。私自身も、息子が自閉症スペクトラムと診断された当初は何度となく、この障害を息子から取り除きたいと願った。一生治らないものだと知った時は、夜中パソコンの前で号泣した。でも、1年経った今は、こう思うのだ。例えば、息子がいきなりおしゃべりで明るい社交的な子になったとしたら…? それはそれでうれしい面もあるのかもしれないけど、果たしてそれは息子なんだろうか? と。改めて、「何を持って息子なのだろう?」と考えると、思い浮かぶのは、なぜか、やっかいで面倒なエピソードばかり(笑)。むしろ、そのやっかいなところこそが、息子が息子であるための大切な要素なのかもしれない、と。最近ではそう思うのだ。最後に、先輩ママたち全員が、声をそろえていたことがある。それは、「まずは、お母さんが元気なことが基本。自分を犠牲にしちゃダメ。お母さん自身の人生も大事にしてほしい」ということ。子どもに笑顔でいてほしいなら、そのためには、まずはお母さん自身が笑顔でいることこそが大切なのだ。まちとこ出版社N NHK 発達障害プロジェクト 【発達障害についての記事一覧】▼大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界(全4回)▼「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら(全9回)
2017年10月12日アメブロ総合1位、モンズースーさんのコミックエッセイ、遂に続編が発売!Upload By 発達ナビ編集部Amebaブログで人気を呼び、発達ナビでも連載中のコミックライター・モンズースーさんの新刊『生きづらいと思ったら親子で発達障害でした 入園編』が発売されました。モンズースーさんはADHD当事者で2児の母。長男のそうすけくんは1歳半で発達の遅れを指摘され、その後自閉症スペクトラムの疑いありと診断されました。次男のあゆむくんは1歳で発達の遅れを指摘され、保育園に通いながら病院の療育へ通っています。その体験をつづった漫画ブログが、一時はAmebaブログで総合1位を獲得するまでの人気に。その後、ブログと同名の著書1作目『生きづらいと思ったら親子で発達障害でした』が2016年に出版。1作目では、お子さん二人が生まれてから幼稚園に入るまでの軌跡や、ご自身が発達障害の診断を受けるまでの日々が描かれています。読者からは応援の声、そして、特に同じような境遇の読者からの共感の声が多数あり、大反響でした。そして、2017年9月末、親子のその後について描いた続編が出版されました!本作では、幼稚園、保育園生活、さらに進路や転園について悩みながらも力強く前に進んでいく親子のストーリーが描かれています。今回のコラムでは、モンズースーさんの新刊『生きづらいと思ったら親子で発達障害でした 入園編』の印象的なシーンや見どころを紹介していきます!わが子にとってベストな園?制度や組織の面での問題も…支援学校の幼稚園に通い始めた長男のそうすけくん。3人という少人数のクラスで手厚い環境の中、そうすけくんの幼稚園生活がスタート。先生方の深い理解のもと、そうすけくんのペースでゆっくり成長していきます。ご自身にママ友ができ、親同士で気持ちを支え合う場面も描かれています。園生活は順調なスタートが切れた模様です。モンズースーさんは、そうすけくんの着実な成長を見て、より多くの子どもたちと関われる園への転園を検討し始めます。「新しい園探し」の日々の始まりです。中には、理解のない園の園長先生や行政の担当者との面談の様子も。当事者のリアルな状況が垣間見えるシーンです。Upload By 発達ナビ編集部ご本人の奮闘を通して社会インフラの有益な情報も!しかし、このような辛い局面でも、味方でいてくれる園の担当者やママ友といった周囲の支えを得て、モンズースーさん親子は一歩一歩前に進んでいきます。お話の中では、周囲からの情報を得て、色々なコミュニティや社会制度を知り、支援してくれる人や組織、仲間の輪が広がっていく様子が多く描かれていますが、読者にとっても漫画を通して支援の制度を自然と学ぶことができる構成になっています。通所支援事業所の種類や療育手帳のこと、それらの申請の手続きなど、知っていれば子育てが楽になる情報が満載です。不器用ながらもそうすけくんなりに成長していく姿が胸を打つできることが増えたり、見通しが理解でき冷静になってくると、逆に「完璧にできないこと」に対する苦手意識が芽生え、不安な気持ちになることも増えたそうすけくん。そんなそうすけくんを一歩前に進ませてくれた担任の先生の言葉を紹介します。Upload By 発達ナビ編集部とてもチャーミングなキャラクターの先生が教えてくれた「まぁいいか」という合言葉。少しでも失敗すると思いつめてしまう…そんな性格・特性のある人にとって、心の支えになる言葉です。「失敗しても次に進める力」は大人でも大事ですよね。ほかにも、園の先生の教えやお友達との交流を通して、成長していくそうすけくんの姿が見どころです!・トイレで一緒になった園の上級生にトイレの仕方やスリッパの揃え方を教わる・新しくて不安なこともスモールステップで成功体験を積むことで自信がついて前進・クラスのお友達とたたきたたかれながら、お友達との距離感を学習すべてのことに一生懸命に向き合う中で、自分の気持ちとの折り合いのつけ方を学んでいく姿に、大人の読者も自分自身を顧みさせられます。発達が気になる子どもを持つ親が抱くリアルな心情、前に進み続ける強さ体験談をベースに話が進んでいくため、発達が気になる子どもを持つ親、また成人発達障害当事者としての立場からみえる世界が、モンズースーさんの心情・感情とともに伝わってきます。ご自身に発達障害があったり、お子さんの発達が気になる保護者の方々にとって、同じように奮闘する仲間の存在に勇気をもらえる一冊だと思います。また、発達障害の当事者ではない人にとっても、多様な発達の特性について知り、誰もが生きやすい社会のあり方を考える上でピッタリな一冊です。ぜひお手に取ってみてください!一緒に悩みながら、一つずつ向き合い乗り越えていく親子の姿が描かれている一冊です!モンズ―スーさんのページ|発達ナビモンズ―スーさんブログ「生きづらいと思ったら親子で発達障害でした」
2017年10月10日川崎市では発達障害児の生活支援ツールのひとつとして「サポートカード」を発行しています。川崎市健康福祉局から発行されているこのカードは、発達障害により日常生活のさまざまなシーン(学校、医療機関、美容院など)でうまくコミュニケーションがとれずに困っているお子さんが、特性に応じた配慮を受けられるよう提示するものです。このカードを作ったのは、川崎市通級親の会・前会長の今村優子さん。普通の主婦であり母である今村さんがどのように行政を動かしたのか、話しを聞きました。発達障害児への無理解や偏見が誕生のきっかけに今村さんは、サポートカード誕生のきっかけとなった辛い体験を次のように話してくれました。当時小3だった息子さん(DAMP症候群=外的刺激に対して健常児よりも過敏または鈍感。感情のコントロールが困難。口頭でのルール説明などの理解が困難)が、学校の耳鼻科健診の結果を持参して受診したときの体験です。診察室に入り、今村さんは、息子さんが発達障害児で、耳の中の刺激に過敏で耳かきをさせてくれないこと、ピンセットで耳垢をはがす処置にも過剰反応を示すこと、そのため点耳薬でふやかして洗浄する処置を望むことを医師に伝えました。しかし、医師は聴覚過敏と早合点したのか、途中で話をさえぎり「聴覚過敏と耳垢は話が別だ!甘やかすな!」と一喝。看護師を呼び、4人ががりで息子さんの両手・両足・頭を押さえるように指示し、ピンセットを用意。突然のことに息子さんが驚き頭を動かそうとすると「ばかたれ!」と言って息子さんの頭をげんこつで殴りつけました。耳垢をはがすだけだったため、息子さんが恐怖で固まっている数秒で処置は終わり。医師に「終わり。大騒ぎするな」と言われて診察室をあとにしたそうです。待合室に戻っても息子さんは興奮状態。「あんなに大きい子が大騒ぎして…」と言いたげな周囲の視線も辛かったといいます。「私は息子に『あなたは何も悪いことはしていないけれど、これからもきっと同じ思いをする。だから世の中の無理解にもっと慣れていく必要がある』と話しました。ですが、私自身も納得がいかず、悔しくて涙が止まりませんでした」と今村さん。親の会で知り合った友人に相談したところ、同じような経験をしているお母さんたちがたくさんいることに驚いたそうです。「友人と話しているうちに『発達障害は目に見えにくい障害だけど、医療の現場ですらその特徴が受け入れられずにいるのはおかしい』と思うようになりました」。ある出会いで活動が大きく前進今村さんは、在籍校の校長、区役所福祉課、通級指導教室、川崎市発達相談支援センター、総合教育センターにアポを取って経緯を説明。「学校健診後のしばらくの間だけでも、特別なニーズのある児童も受診の機会が増えることを医師会に通達してほしい」と相談しましたが、いずれも「医師会には直接的な繋がりがないから難しい」という回答。医師会とのコンタクトを試みて相談窓口を探し始めてから1年が経過。話を聞いてもらえる場所すら見つからない状況が続いていました。そこで“窓口探し”や“医師会とコンタクトを取る方法探し”を中断。別の方向から改善に向けて声を上げてみようと考えました。「発達障害を社会に広く認知してもらうきっかけになり、無理解者が支援者に変わるような、または、支援者と要支援者をつなぐようなツールを発信できないか。イメージは妊婦さんのマタニティバッジでした」。ここで誕生したのが「サポートカード」というアイデア。今村さんが自身の高校時代の恩師にこの話をしたところ、市議会議員の田村伸一郎議員を紹介されました。田村議員は自身も難病を抱える子どもを持ち、障害者支援に力を入れていました。今村さんの辛い経験から2年。この出会いが活動を大きく前進させます。田村議員の力添えで、市民・こども局こども福祉課長と今村さんの面談が叶いました。田村議員同席のもと、今村さんは発達障害児の医療機関受診時の現状を訴え、カードの必要性・実現化・医師会へのアプローチを切望。田村議員も行政に働きかけてくれました。今村さんはさらに、自身が会長を務める川崎市通級親の会本部に協力と応援を要請。さらに2年後、ついに現在のサポートカードが完成し、川崎区役所保険福祉センター、発達相談支援センター、療育センターなどでだれもが無料でこのカードを受け取れるようになりました。サポートカードの認知と普及はまだまだこれから!発達障害児を抱える家庭の悩みのひとつが“病院探し”。今村さんは、無理解から来る不適切な対応により、子どもたちの病院嫌いが強化される悪循環を断ち切り、発達障害についての社会認知が広まってほしいという一心で、4年に渡ってこのカードの必要性を訴え続けました。川崎市通級指導教室親の会本部では今後もカードの普及・浸透に向けた活動を展開していく予定とのこと。「現在はまだ、サポートカードの存在を知らない人がほとんど。カードが認知され、実用性・有効性が本当の意味で決まってくるのは、ユーザーである私たちがどのように利用するか、その姿勢に関わってくると考えています。カード発行の際は、川崎市の医師会・歯科医師会・理容協議会・美容連絡協議会にも健康福祉局を通じて連絡をしました。相手側にすべてを期待するのではなく、無理解者を理解者に変えるきっかけとして、積極的に活用していきたいと思っています」取材協力:川崎市通級指導教室親の会前会長・今村優子さん<文・写真:フリーランス記者森藤理絵>
2017年10月07日すっかりお姉ちゃんに!広汎性発達障害のある娘は、小学1年生(6歳)。去年、弟が産まれました。最初のうちは新しい家族の出現に戸惑ってもいたようです。娘は聴覚過敏のため、「弟の泣き声が苦手…」と感じ、母に訴えることもありました。しかし、今では一方的に迷惑がるということは少なくなりました。その理由は、自分が「おねえちゃん」という自覚が育まれているから、のようです。2人とも成長中!きょうだいの愛が感じられ、母は嬉しい…日々の様子をお伝えします。娘のお姉ちゃん歴も…もうすぐ1年!最初はどうなることかと思っていたのですが、娘はすっかりお姉ちゃん。弟に対する接し方も、板についてきました。最近では、自分から「面倒見るよ~♪」と声をかけてくれるようになりました。Upload By SAKURAそんな2人の遊び風景を、いくつかご紹介したいと思います。姉と弟…その1Upload By SAKURA姉と弟…その2Upload By SAKURA姉と弟…その3Upload By SAKURA弟に対して、寛大すぎる!Upload By SAKURA娘と比べ、わんぱくすぎる息子は、ちょっとばかし遊び方が激しい…。そんな息子の相手をする娘は、いつもやられっぱなし。Upload By SAKURAいくら相手が赤子といっても、あまりに寛大すぎる娘。頭が下がります。(私は、11か月の赤ちゃん相手でも、寛大でいられない。)と、同時に優しい姉を持つ、このわんぱくすぎる息子のこれから…。ちょっと恐ろしいです(笑)
2017年10月04日摂食障害とは出典 : 摂食障害とは、体重や体形へのこだわりや自己評価の低さなどの心理的要因によって引き起こされる、食行動に関する障害をいいます。その症状は人によりさまざまですが、代表的に極度に食事を取りたがらない拒食(神経性過食症)と過剰に食べ物を摂取する過食(神経性過食症)、特定不能の摂食障害の3つにわけられます。摂食障害の特徴として、体重や体型に関する認知(考え方)が歪んだり、自分で食欲がコントロールできず、極端なやせ願望や太ることに対する恐怖心が強くなったりすることがあります。また、見た目に現れるくらいの体重の変動、過度な運動や下剤の使用といった代償行動が表れることもあります。代償行動とは、一度に大量の食べ物を食べてしまい、そのことを非常に後悔し、食べた分だけ体重が増えないように、下剤をたくさん使ったり、自分で吐き出したりすることです。摂食障害は、身体面だけでなく、精神面にも影響を及ぼします。例えば極度な不安や気分の落ち込み、怒りっぽくなるなど心の動きの異変がありえます。その関係から、精神疾患とも深く関わっていることが多くあり、抑うつや不安症状などが現れ、時には自傷行為や自殺に至ることもあります。このようなさまざまな症状が一時的ではなく、繰り返し発症する可能性があることも摂食障害の大きな特徴です。次から摂食障害の具体的な症状や治療法、サポートの方法を順に見ていきましょう。参考文献: 日野原 重明、宮岡 等 /編 『脳とこころのプライマリケア4子どもの発達と行動』 2010年 シナジー/刊摂食障害の分類出典 : 摂食障害は拒食症、過食症、特定不能の摂食障害の大きく3つに分けられます。それぞれを詳しくご説明します。一般的に知られる拒食症は、医学的に神経性無食欲症または神経性やせ症と呼ばれます。特徴としては極端なやせ願望と肥満恐怖があり、ダイエットや食欲不振などをきっかけに発症することが挙げられます。発症時期は10~19歳に最も多く、拒食症の90%が女性であると言われています。神経性無食欲症は食べることを拒否する"制限型"と、一度は過食をした後の無理な嘔吐・下剤の大量使用によって、食べた分を排出し、低体重を維持する"むちゃ食い/排出型"に分けることができます。特に後者は、過食・自己嫌悪・無理な排出を繰り返してしまい、悪循環してしまいがちです。過食症は、医学的には神経性過食症または神経性大食症と呼ばれます。過食症の人は食べることをやめられず、人よりも明らかに多い量を摂取することが特徴です。これは食べることを自分でコントロールできないことから起こります。また摂食行動とは反対に嘔吐・利尿を行い、体重を減らすような代償行動も行います。むちゃ食いし、健忘を伴うケースも報告されています。そのため、過食症は"過食と嘔吐を繰り返すパターン"と、"過食のみを繰り返すパターン"の2つのパターンにわけることができます。過食症は20~29歳に多く、90%の患者が女性と考えられています。発症前にダイエットをしたことがあり、拒食症から移行するケースも多くあります。過食や体重の急激な増減、下痢や嘔吐などが症状として挙げられます。日本精神神経学会/監修 『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』 2014年 医学書院/刊生活習慣病予防のための健康情報サイトl厚生労働省特定不能の摂食障害という診断は、拒食症、過食症いずれの診断基準にも当てはまりませんが、摂食の障害のために何かしらの診断名をつける必要がある場合に使われます。例えば女性で拒食症の診断基準にほぼ当てはまりますが、月経は問題なくあるという状態の場合、特定不能の摂食障害の診断になります。摂食障害を引き起こす要因出典 : 摂食障害を引き起こす要因としては体型に関する周りの見方、風潮といった社会的要因と性格や考え方の癖、対人関係などから来るストレスといった心理的要因が関連していると考えられています。「痩せていることが美しい」「痩せているほうが望ましい」という風潮があります。これにより、痩せていることは自己実現や成功の証として考えられがちです。テレビや雑誌、インターネットなどマスコミなどの影響が大きく、ダイエットの流行も摂食障害の要因として考えられています。性格や考え方、ストレスは摂食障害に大きな影響を及ぼすといわれています。そのストレスを引き起こす要因として下記の5つが要因として考えられます。◇自尊心が低い摂食障害になる人には自尊心が低い人が少なくありません。過去に太っていることを指摘された、痩せることで褒められたといった経験があることや、周囲の人から認めてもらいたいという気持ちが強い場合が多いです。また、ありのままの自分を肯定することが難しく、努力が結果として数字であらわれるダイエットにのめりこみがちです。◇完璧主義あらゆることに対して完璧であることを求め、自分に要求します。それは時に過度なストレスとなり、ダイエットのきっかけになることもあります。体型に対して不満がある場合は極限まで食事制限などをしてしまうことがあります。◇八方美人他人から良く思われたい、嫌われたくないと強く思う人は、自分の希望や気持ちを抑えてしまう傾向にあります。周囲の人の顔をうかがうことに気を遣い、知らないうちにストレスをため込んでしまうことがあります。◇家族関係保護者が過干渉あるいは支配的な場合、子どもは自分の気持ちを主張できないことがあります。そのとき、子どもは伝えたいことを伝えられず、ストレスを感じてしまうことがあります。◇決めることが苦手幼少期に過保護な生育環境におかれた場合、何も自分で決められなくなってしまうことがあります。自分は何をしたいのか分からず、心の中に葛藤を抱えることがあります。切池 信夫/著 『拒食症と過食症の治し方 (健康ライブラリーイラスト版)』 2016年 講談社/刊参考文献: 切池 信夫/著 『拒食症と過食症の治し方 (健康ライブラリーイラスト版)』 2016年 講談社/刊摂食障害と関連のあるこころの病気出典 : 摂食障害にはその他のこころの病気が併存しやすいと考えられています。その中でもうつ病や不安障害、強迫性障害、パーソナリティー障害が高い確率で併存するといわれています。それぞれのこころの病気に関してもっと知りたい方は、下の発達ナビコラムもご覧ください。◇うつ病うつ病とは軽症を含めると最も多い精神病で、繰り返し気分が落ち込んだり、意欲がなくなったりすることが特徴です。うつ病の症状は精神面だけではなく、身体面にも影響を及ぼし、その一つとして拒食や過食につながることがあります。◇不安障害不安障害とは、状況や具体的なものに対して、過剰に不安、恐怖を感じ、それによりさまざまな影響が身体と精神に現れ、社会生活を送ることに支障が出てしまう疾患です。不安障害と摂食障害が併存している場合、他者と一緒に飲食する場面において強い不安や恐怖を感じることもあるそうです。◇強迫性障害強迫性障害とは自分の意思に反して不安・不快な考えが浮かび、抑えようとしても抑えられない、もしくはそのような考えをなくそうと無意味な行為を何度も繰り返すことで日常生活に支障が出てしまう、こころの病気です。強迫性障害と摂食障害が併存している場合、「食べてはいけない」という強い強迫観念を持つことが多くあります。◇パーソナリティ障害パーソナリティ障害とはパーソナリティの著しい偏りにより社会生活を送る上で不適合や困難が生じる状態のことをいいます。奇妙で風変わりなタイプ、感情的で移り気なタイプ、不安で内向的なタイプの主に3つに分けられます。特に、境界性パーソナリティ障害では、不安からの逃避・他者の興味を引きたい思いから摂食障害の症状が現れることがあります。摂食障害がもとで生じる精神疾患の多くは、体重や栄養状態の回復により改善します。しかし症状が特に強い場合や摂食障害が快方に向かっても改善しない場合は個別に薬物療法が必要になることがあります。摂食障害を疑うサインは?出典 : 摂食障害には、急激な体型・体重の変化、食生活の変化、心理的・身体的な変化といったいくつかのサインがあります。発症に早く気づき適切な治療を施すと、回復が早くなると考えられています。次のようなサインを見逃さないようにしましょう。◇拒食症拒食症の場合は特に、体重が急激に減少します(嘔吐などの排出行為を伴わないと、目に見えて身体的な変化が見られない場合もあります)。本人が異常なほどに体重計に乗ったり、鏡で体型を気にしたりする場合は注意が必要です。拒食症の場合、体重÷(身長×身長)で求めるBMI(Body Mass Index)という指標から肥満度合い・重症度を判断します。BMIが17kg/㎡を下回るようになると、軽度の拒食症と診断され、15kg/㎡を下回ると最重度の拒食症となり、入院の可能性も出てきます。日本精神神経学会/監修 『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』 2014年 医学書院/刊◇過食症過食症の人は多くが体重は平均的な値を取っていることが多いです。そのため拒食症より体重や体型の変化が目で見てわかりにくい傾向があります。過食症の場合は食事量や食欲にわかりやすい変化が表れることが多いので、その点を先に見つけることで過食症による体重・体型の変化が見つかるかもしれません。◇拒食症拒食症の食生活の変化として、急激な食事量の減少や偏った食事内容があげられます。拒食症はダイエットが極端化して発症することが多いので、食事量を異常に減らしたり、食欲がなかったり、特定の飲食物しか食べなかったりする様子が見られることがあります。◇過食症過食症は拒食症とは反対に、明らかに多い食事量、食欲コントロールの不制御が食生活の変化として表れます。また、過食と不適切な代償行動(過度な運動、服薬、嘔吐など)が週に1回以上、3ヶ月間以上続いていると過食症の可能性があります。◇拒食症拒食症の場合、他に次のような身体症状が表れることがあります。・低血圧、低体温・無月経・便秘・皮膚の乾燥◇過食症一方過食症はこのような症状が見られます。主に嘔吐の繰り返しによる二次的な身体症状が多いです。・歯が弱くなる、歯の表面が溶ける・唾液腺の腫れ・不整脈・吐きダコ吐きダコとは摂食障害の身体的特徴の一つで、手の甲あたりの皮膚がただれている状態をいいます。これは口の中に手を入れて刺激し、前歯が手に当たることできます。周囲の人が摂食障害に気づく一つのサインとして考えてよいでしょう。摂食障害情報ポータルサイト‐摂食障害について心理的な変化としては、拒食症・過食症ともに以下のような症状があげられます。・ちょっとしたことでイライラする・精神的に不安定になる・体型の変化(特に太ること)に対して異常な恐怖・不安を感じる・体型や体重に過度なこだわりを持つなど摂食障害は心と密接な関係があるので、心理的にもかなり不安定になる人が多くいます。摂食障害かも?と思ったら、まずは内科、子どもの場合は小児科に相談することをおすすめします。摂食障害の治療を担当する診療科は他にも、精神科や心療内科、児童精神科などがあるので、必要に応じて紹介してもらうとよいでしょう。これらの診療科に受診すると、多くは患者自身と、患者が子どもの場合その親にも食行動や普段の生活、心身の諸症状を聞き取ります。会話をする中で目や歯、皮膚の状態を観察します。また体重測定も行いますが、摂食障害の傾向がある人は体重測定に関して敏感な人が多くいます。そのため数値が見えないようにしたり、強制的に行わないようにしたりと配慮しながら行います。摂食障害情報ポータルサイト‐摂食障害のサイン医療社団法人雅会前田クリニック摂食障害の治療って?出典 : 摂食障害は再発することが多く、慢性化してしまう方が少なくありません。身体的・精神的な症状は人によりさまざまなので、一人ひとりにあった治療が求められます。状況に応じて、入院か通院を決定しますが、体重の減少が極めて著しく重症な場合、緊急入院することもあります。本人の意思を尊重し、医師と相談しながら治療方針を決定しましょう。以下では、摂食障害に効果的な治療方法をご紹介します。特に体重の減少が著しい場合は、食生活の指導や栄養補給を行い、標準的な体重への回復を目指します。最低限必要な体重を定め、治療を行います。治療が進むにつれて体重が増加し、不安を感じる方が少なくありません。治療とともに、拒食・過食、不適切な代償行為を行わないよう、注意が必要です。体重の増加に加えて、心理的な治療も併せて行う必要があります。心理社会学的治療とは、食生活に対する理解を深め、摂食障害の原因となるものを取り除くことなどを目的とした治療です。体重が増加し始めると、この治療方法が開始されます。薬物療法とは身体症状・合併症を治し、不安や抑うつなどの情動面の改善を図ることをいいます。これはあくまでも対症療法であり、いまの段階で摂食障害を根本的に治療する薬はありません。体重に対する考えのゆがみや摂食障害のもととなる、こころの問題に向き合うことが最も重要になります。カウンセリングを通して自分は太っているという思い込みなどの認知の歪みを改善します。また適切な食習慣をおくることができるよう、指導を行います。健康体重の20~30%を下回るような体重が著しく減少している場合は、入院することもまれではありません。入院にはいくつかの判断基準がありますので、ご紹介します。・著明な、もしくは急激な体重減少が認められる・外来治療努力にも関わらず体重増加がない、あるいは、むちゃ食い/嘔吐/下剤乱用が持続している・重篤な身体合併症(低カリウム血症、心臓異常所見、糖尿病の合併)がある・重篤な精神疾患の合併を伴っている(うつ病、強迫性障害、境界性人格障害、自傷行為など)※・治療環境として問題のある家族環境あるいは心理社会的に不適切な環境である(摂食障害 | 厚生労働省)参考文献: 日野原 重明、宮岡 等 /監修 『脳とこころのプライマリケア4子どもの発達と行動』 2010年 シナジー/刊入院の場合、食生活の改善を図りながら栄養補給を行います。摂食障害の人をサポートするには?出典 : 摂食障害と付き合うには周囲の理解とサポートが欠かせません。摂食障害という病気を正しく理解し、あせらず長い目でゆっくり見守りましょう。摂食障害の治療をしていく、また支えていくためには以下のような考え方を意識することが大切です。・安心でき、十分に休養できる家庭環境をつくる・ありのままを受け入れ、自己肯定感を高める・否定するようなことはせず、話を聞き、共感していることを伝える・言葉や行動で愛情を表現し、サポートしていることを伝える・適切な距離を保ち、コミュニケーションをとる・完璧主義や白黒思考など、本人の考え方の癖を本人も周囲も把握できるようにする・日常生活の背景にあるストレスの解消法を幅広く探してみるなどファミリーサポートの会「摂食障害の理解と治療のために」厚生労働省‐みんなのメンタルヘルス「摂食障害患者さんへのアドバイス」摂食障害の人は「治したい・治さなければならない」自分と「治せない・治したくない」自分の間で葛藤したり、少し治療に失敗すると全てうまくいかないというような考え方に陥ったりすることが多くあります。また治療が進むにつれて、摂食障害の裏にあった、不安や憂うつ感、自尊心の低さ、ストレスなどが強く出てくることもあります。摂食障害と精神疾患を併発している場合、精神疾患への公的サポートを受けられることがあります。精神疾患の診断がある場合、このようなサポートを利用するのも一つの手段です。◇精神障害者保健福祉手帳精神障害者保健福祉手帳は、なんらかの精神疾患があり長期にわたり日常生活又は社会生活への制約がある場合に取得できます。摂食障害はICD-10の「生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群」に含まれるため、障害の程度によって取得が可能です。精神障害者保健福祉手帳を取得していると、税金の控除や福祉サービスを受けたり公共料金の減免といった支援を受けることができます。参考:自立支援医療|厚生労働省参考:精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準◇自立支援医療(精神通院)自立支援医療制度は、心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度です。摂食障害の治療のため通院による精神医療を継続的に必要とする場合、その通院医療にかかる自立支援医療費が支給されます。通常の医療保険では3割の自己負担ですが、この制度を利用することで1割に軽減されます。また世帯の所得に応じて1か月の1割負担額の上限も定められており、それ以上の負担がかからないようにもなっています。受給するには精神疾患があるという医師の診断を受け自立支援医療受給者証(精神通院)を申請・取得する必要があります。◇障害者総合支援法の支援精神障害のある人は障害者総合支援法による支援の対象となります。摂食障害も以下に該当する場合、精神障害があると認定され、必要な障害福祉サービスを受けることができます。・精神障害者保健福祉手帳を持っている・精神障害を事由とする年金を受けている・自立支援医療受給者証(精神通院)を持っている・18 歳未満の場合で、保護者が特別児童扶養手当等を受給しているそれぞれの支援の利用方法や対象になるかどうか、またどのような支援が受けられるか、詳しくはお住まいの市区町村の福祉担当窓口でご確認ください。障害福祉サービスの内容|厚生労働省摂食障害に関連したホームページや当事者の集まりである自助グループを、いくつかご紹介します。同じ悩みを持った人との交流は憩いの場となることもあるので、活用してみてはいかがでしょうか。@メンタルヘルス「摂食障害(拒食症・過食症)診断チェック」摂食障害治療おすすめクリニック・病院 「摂食障害のセルフチェック」つばめの会(摂食・嚥下に問題のある小児の親の会)医療法人菅野愛生会摂食障害の相談室NABA(ナバ)日本アノレキシア(拒食症)・ブリミア(過食症)協会未来蝶.net「摂食障害回復助け合いサイト」摂食障害自助グループ情報Eating Disorders Group Information「「摂食障害自助グループ情報」のページへようこそ!」オーバーイーターズ・アノニマスJAPANファミリーサポートの会「摂食障害の摂食障害の理解と治療のために」まとめ出典 : 摂食障害は不安やストレスなどに基づいて現れる食行動の障害です。他のこころの病気とも関連があることが多いことから、治療には長い時間が必要なこともあります。摂食障害は、ただ食生活の不全から健康を損なうだけではなく、心もどんどん疲れていってしまいます。重症化すると自傷行為や自殺につながることもあります。単なるダイエットと楽観視せず、周囲の人は変わったことがあれば気にかけ、精神科などの専門機関に相談しましょう。参考文献参考文献: 日本精神神経学会/監修 『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』 2014年 医学書院/刊参考文献: 中根允文、山内俊雄/監修 『ICD-10精神科診断ガイドブック 』 2013年 中山書店/刊参考文献: 切池 信夫/著 『拒食症と過食症の治し方 (健康ライブラリーイラスト版)』 2016年 講談社/刊参考文献: 日野原 重明、宮岡 等 /監修 『脳とこころのプライマリケア4子どもの発達と行動』 2010年 シナジー/刊
2017年09月29日モデル・栗原類さん15万部突破の自叙伝が、コミック版となって12月8日(金)発売決定!テレビの情報番組で、ご自身が発達障害のADD(注意欠如障害)であることを公表したモデル・俳優の栗原類さん。生い立ちから現在まで「発達障害」に向き合って来た道のりを語った自叙伝『発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由』は反響を呼び、「発達障害」が広く世間に知られるきっかけとなりました。書籍は、当事者や発達障害の子を持つ親御さんを中心に多くの方に支持され15万部を突破。このたび、子どもたちや活字が苦手という方にも手に取りやすいコミック版としての発売が決定しました!『マンガでわかる発達障害の僕が羽ばたけた理由』概要2016年10月に出版し、15万部突破となったエッセイ「発達障害の僕が 輝ける場所を みつけられた理由」(KADOKAWA)をコミック化。8歳のときNYで発達障害と診断され、生い立ちから現在までどう歩んできたか、ストーリーマンガ形式で、当時どのような気持ちで、どう壁を乗り越えたのかがよくわかり、ポイント解説で、羽ばたくことのできた理由を、わかりやすく知ることができる。文字だけの本が苦手な方やお子様にも。母、主治医のコメントも収録。スマホの活用方法や、現在の発達障害の支援環境についてなど、参考になる情報も加筆。『マンガでわかる発達障害の僕が羽ばたけた理由』著:栗原類画:酒井だんごむしKADOKAWA /2017/12/8発売予定/1200円(税別)著者: 栗原類(くりはらるい)1994年東京生まれ。イギリス人の父と日本人の母を持つ。8歳のときニューヨークで発達障害と診断される。11歳のときコメディ俳優になりたいという夢が芽生える。同年日本に帰国。中学時代にメンズノンノなどのファッション誌のモデルを経て、17歳の時にバラエティ番組で「ネガティブタレント」としてブレイクする。19歳でパリコレのモデルデビュー。22歳の現在は、モデル・タレント・役者としてテレビ・ラジオ・舞台・映画などで活躍中。楽天ブックス: 『マンガでわかる 発達障害の僕が 羽ばたけた理由』 著: 栗原類昨年、『発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由』を栗原さんが出版された際も、LITAICO発達ナビでは、編集長によるインタビューや、発達ナビライターによる感想コラムなどを通して書籍の見どころや栗原さんのお人柄を紹介してきました。以下は、栗原類さんを特集した発達ナビコラムのリンクになります。コミック版の新著発売を待つ間、これまでのコラムをお楽しみいただければ幸いです。
2017年09月26日厚労省が「精神・発達障害者しごとサポーター」の養成を決定出典 : 精神障害や発達障害のある人が働きやすい職場作りを促すべく、厚生労働省は今秋から「精神・発達障害者しごとサポーター」の養成講座の開催を決定しました。企業の経営者や管理職、人事部といった人材に限らず、広く一般従業員を対象にした講座です。実際に職場の同僚となる人たちに、精神・発達障害に関する知識や必要な配慮について学んでもらうことで、より身近で具体的な支援体制を作ることを目的としています。「今年度内に2万人の受講およびサポーターの養成を目指す」(厚生労働省)とのことです。毎年、厚生労働省が発表している「障害者雇用状況の集計結果」によると、精神・発達障害者の雇用は2006年から年々増加しています。そのような中、厚生労働省は精神障害者の雇用義務化に伴ない、今年5月に民間企業に義務付けている障害者の法定雇用率の段階的な引き上げを決めました。今まで以上に精神・発達障害者の雇用機会が増え、その人数も増えることが予想されています。一方で、厚生労働省が行った2013年の障害者雇用実態調査によれば、精神障害者の平均勤務年数は約4年。身体障害者のそれが約10年であることと比べても、職場の定着率は高いとは言えません。主な理由は「職場の人間関係」にあると考えられています。例えば、同調査では、精神障害があり、転職を経験した人のうち、半数以上は転職の理由を「個人的理由」だと回答しています。さらに具体的な理由を複数回答で選択してもらうと、「職場の雰囲気や人間関係」と答えた人が33.8%と最も多い結果となりました。こうした状況を受け、「職場の同僚がその人の障害特性について理解し、共に働く上での配慮をしていくことが重要であろうと考え、人事担当者や障害者雇用担当者を中心に行っていた従来のセミナーに加えて、一般の従業員の方を主な対象に、精神障害、発達障害に関して正しく理解いただき、職場における応援者=精神・発達障害者しごとサポーターになっていただこうと考えました」(厚生労働省障害者雇用対策課)とのことです。厚生労働省は約4,300万円の予算を拠出し、今秋から随時、講座を開催していく予定です。誰が講座を受けられるのかこの講座は、企業の雇用者であれば、誰でも受講可能です。受講時間は2時間程度で、特に企業は受講や受講人数を義務付けられてはいません。有志による受講となっています。修了者には「精神・発達障害者しごとサポーター」として、パソコンにはることができるステッカー(写真)や首からかけるストラップなどの「精神・発達障害者しごとサポーターグッズ」の進呈が予定されています。Upload By 発達ナビニュース精神・発達障害者しごとサポーター養成講座では、具体的に「精神疾患(発達障害を含む)の種類」、「精神・発達障害の特性」、「共に働く上でのポイント(コミュニケーション方法)」を学びます。これらの内容について75分程度の講義で学んだ後、15分から45分程度の質疑応答を行う構成となっています。養成講座の講師は普段から、精神・発達障害のある方の就労支援をしているハローワークの職員が担当します。精神・発達障害者サポーターの役割は?出典 : ここで、改めて理解しておかねばならないのは、「精神・発達障害者しごとサポーター」は特別に何かの義務や責任を負う資格ではないということです。サポーターになったら、「○○をしなければならない」といったことは決まっていません。また、しごとサポーターは障害のある特定の同僚を一人で支援しなければならないといったものでもありません。確かに、精神・発達障害者しごとサポーターがいることで、職場で精神障害のある人や発達障害のある人が働く上で、周囲から正しい理解や配慮が受けられるようになり、より働きやすい職場に変わっていくことが期待されます。しかし、障害の有無にかかわらず、共に働くことができるような職場の実現のためには、精神・発達障害者しごとサポーターに特別な役割を求めるのではなく、講座を受けていない方も一緒に職場の雰囲気作りにかかわっていくことが大切です。精神・発達障害者サポーターに関する問い合わせ先企業に勤めている方であれば、勤務先や身近身近に精神・発達障害者で働いている方がいなくても、誰でも講座に参加できます。「ぜひ参加したい」と思われた方はお住まいの地域の都道府県労働局にお問い合わせください。講座は、厚生省があらかじめ指定した会場で行われるものだけでなく、講師が事業所を訪れて行う「出前講座」も用意されています。出前講座に関しても、問い合わせ先は地域の都道府県労働局となっています。養成講座では、精神・発達障害について学ぶだけでなく、精神・発達障害者を雇用する上での実際の困りごとについて質問したり、ハローワークの精神保健福祉士や臨床心理士などの専門家に相談するきっかけを作ったりできます。以下のサイトで、養成講座に関する各地域の問い合わせ先を確認できます。より詳しい情報や、なにかわからないことがあれば、気軽に問い合わせてみましょう。障害者雇用対策施策紹介事業主の方へ|厚生労働省しごとサポーター養成講座リーフレット
2017年09月25日2017年7月に放送されたNHK「あさイチ」の発達障害特集の続編として、9月24日(日)午後11:00~11:50にNHK総合テレビで 深夜の保護者会「発達障害 子育ての悩みSP」 が放送される。「あさイチ」とEテレ「ウワサの保護者会」のコラボ特番だ。出演は、発達障害の子を持つ一般&先輩ママ、有働由美子アナ、尾木ママこと教育評論家の尾木直樹さん、タレントのはなわさん。「ママ友の『大丈夫だよ~』という善意の励ましが辛い」、「夫が非協力的」、「周囲にどう伝えたらいいか?」など、発達障害の子を持つ親が抱えがちな悩みに、先輩保護者らが自らの経験で、具体的な対処法や解決のヒントを紹介してくれるとのこと。また、今回はママだけでなく、夫の本音や当事者である子どもの声も紹介するという。例えば、「悪いのはこの子ではなく、障害のせい」と「子どもと障害を別々に考える」ということで楽になったというお母さんの発言に対して、それを聞いた子どもからは意外な本音が飛び出す。子どもの生の声を放送するのは、今までほとんどなかった試み! 今回の放送は、非常に内容の濃いものになりそうだ。■同じ境遇のママと繋がることのメリット一般的に、発達障害の子育ては少数派なので、子育ての情報源が少ない。だから、こういった番組で、ママの本音や先輩ママから具体的なアドバイスが得られるのは、とても貴重なことだと思う。筆者にも自閉症スペクトラムの息子がいるのだが、以前の保育園でのことを振り返ってみると、正直、居心地の良いものではなかった。他のママの子育て話は、申し訳ないがほとんど参考にならなかったし、正直、保育士の中にも、「発達障害のことをあまり理解していない?」と思わせる先生もいた。だから、療育で同じ境遇のママ友に出会えたことは本当にありがたかった。療育では、みな似たような子育てを経験しているので、相手の気持ちは痛いほどわかるし、こちらも気持ちもわかってもらえるという安心感があった。子どものことをありのままに話せるという心地よさもあった。療育機関や小学校、病院の評判など、地域の情報が得られたり、良質な専門書について情報交換ができるのもとてもありがたかった。また、不思議なもので、「同じような境遇で頑張っている人たちがいる」と感じられるだけで、励まされ、心が強くなれた。療育ママとの座談時間は、まさに、私の癒し&パワーチャージの場であった。■療育ママだって、さまざまだが、当たり前のことだが、次第に、療育ママもさまざまなのだなと思うようにもなった。同じ発達障害でも、子どもの特性や障害の程度はさまざまだし、親の価値観や考え方も違う。子どもの障害を認めたがらないママもいたし、支援学級や支援学校に対して偏見を持っているママもいた。また、コミュニティができればできたで、その中でまた比較が生まれて、誰かが誰かの成長をうらやましいと思ってしまったり。時には、愚痴が長引いたり、悪口などのマイナス話で盛り上がってしまったり。ちょっとした違和感を感じることもあった(もちろん、こんなことは少なかったけど)。 ■自分の身近な範囲を「世界の基準」にしない同じ境遇の仲間、それは本当に心強く大切な存在だ。だが、その世界だけにどっぷり浸かっていると、自分でも知らないうちに、周囲が見えなくなってしまう危険性がある。以前 取材 した(株)アイムの佐藤典雅さんは、「発達障害児のママこそ、常に意識して開かれた視点を持つことが大切。療育だけの狭い世界に自分を閉じ込めずどんどん外の世界に出なさい」と、力説されていた。人は、自分の身近な範囲を世界の基準にし、子育てやわが子の生き方について「こうあるべきだ」と決めつけがちだ。でも、自分の知っている世界なんて、ほんのわずか。偏った価値観に縛られないためには、常に広い世界に触れる必要がある。■発達障害は、「支援すべき少数派の種族」また、以前、NHKスペシャルに出演した本田秀夫氏の著書には、自閉症スペクトラムは「治療すべき“病気”」ではなく、「支援すべき“少数派の種族”」である、という認識を持っておくことが重要 「自閉症スペクトラム10人に1人が抱える『生きづらさ』の正体」(本田秀夫 著)より一部編集して抜粋 と表現されており、なるほど! と思ったものだ。少数派の種族が多数派の種族(一般の人たち)とうまくやっていくには、まず、多数派に自分たちのことを正しく理解してもらわなければならない。そのためには、内輪で慰め合っているだけではなく、積極的に外に向けて発信していかなければならないと思うのだ。私のように、「健常児のママの悩みには共感できない」とか「自分の大変さをわかってもらえない」など、自分で壁を作って引きこもっていても、問題は解決しない。■健常児の子育てをしているお母さんにこそ、知ってほしい私は、たまたま縁あって、ウーマンエキサイトに寄稿する機会を得た。だが、今では、こうした一般の子育てサイトにこそ、発達障害の記事を掲載する意義があると思っている。「こういった子どももいるんですよ」と、普通の子育てをしているママにも、ほんの少しでいいから知ってほしいと思うのだ。私自身、上の娘(定型発達)を育てている時は、発達障害というものをまったく知らなかった。子どもというものは、親が愛情持って育てていれば、自然に優しい心を学び、真っすぐに育ってくれるものだと思い込んでいた。だから、感情の抑えられない子や暴力的な子を見ると、「親にも原因があるのでは?」などと、うがった目で見てしまったりしていた。あの時、私がこの障害のことを知っていたら、もう少し違った見方や対応ができたかもしれない。■壁を取り払うこと、隣の子育てに想像力を持つことだから、こうした寄稿を通して、発達障害の子育てを、周囲に広く知ってほしいと思っている。お互いに隣の子育てに想像力を持つことで、発達障害の子育てを一般の子育てともっと繋いでいきたいと思っている。そして、発達障害の子育てをしているママにも、一歩踏み出すきっかけになればと願っている。私自身、保育園の保護者会で息子のことを説明してからは、園での生活(私の)がずっと楽になった。児童心理学の知識があるママが役立つ情報を教えてくれたり、障害は違うけど障害児を持つママが就学相談のアドバイスをくれたり。「お兄ちゃんがそうかもしれない」と興味を持ってくれたり、「そういう子にはどう接したら負担じゃないかな?」と関わり方を知ろうとしてくれたママもいた。また、いろいろ話してみれば、健常児でも登校しぶりで悩んでいるママがいたり、お友達トラブルで悩んでいるママがいたり、離婚した元旦那と養育費でもめているママがいたり…。私は、自分の子育てばかりが大変だと思い込んでいた。でも、みなそれぞれ、いろいろな事情を抱えて生きている。壁を取り払い、隣の子育てに想像力を持つことで、見えてくる景色はずいぶんと違ってくるのだ。今回、番組の担当プロデューサーからも、「発達障害のある子を持つ親御さんに見てもらいたいのはもちろんだが、それだけではなく、周囲の人にも見てほしい。普段なかなか言えない、当事者の本音を周囲に知ってもらう意味は大きいと思っています」というメッセージをいただいた。さらに、NHKでは、今後、9月26日(火)、27日(水)に「Eテレ」ハートネットTVで「自閉症アバターの世界 1、2」が、9月27日(水)に「あさイチ」の特集で「シリーズ発達障害 どう乗り越える? コミュニケーションの困りごと」など、続々と発達障害が特集されるとのこと。今後の放送にも、注目していきたい。文:まちとこ出版社N<NHK発達障害プロジェクト 今後の放送予定>・2017年9月24日(日)午後11:00~11:50 NHK「深夜の保護者会」「発達障害 子育ての悩みSP」・2017年9月26日(火)午後8:00~8:29 Eテレ「ハートネットTV」 「自閉症アバターの世界 ①」・2017年9月27日(水)午後8:00~8:29 Eテレ「ハートネットTV」 「自閉症アバターの世界 ②」・2017年9月27日(水)午前8:15~9:54 NHK「あさイチ」 「シリーズ発達障害 どう乗り越える? コミュニケーションの困りごと」※内容は変更になる場合がありますNHK 発達障害プロジェクト 【発達障害についての記事一覧】▼大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界(全4回)▼「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら(全9回)
2017年09月22日9/24(日)深夜の保護者会「発達障害 子育ての悩みSP」見どころは?Upload By 発達ナビニュース2017年9月24日(日)、NHK総合の特別番組、「深夜の保護者会『発達障害 子育ての悩みSP』」が放送されます。小・中学生の保護者の皆さんと教育評論家の尾木直樹さんが子育てについての悩みを共有しながら、問題解決のヒントを探していくEテレの人気番組「ウワサの保護者会」。NHKの通年企画「発達障害プロジェクト」の一環として特別バージョンでの放送です。今回は7/24に放送されたあさイチ「他の子と違う?子育ての悩み」とのコラボとして、あさイチで紹介された家庭のVTRを見ながら話し合いをしていきます。■周囲の理解が十分ではない中、子どもの発達障害・または特性を周囲に伝える?伝えない?伝えるならば誰にどう伝える?■子どもの気持ちにどうやって寄り添う?など、発達障害がある子どもを育てる上での困り事や悩み事から、「発達障害ってなに?」「子どもを丸ごと受け入れられるためにどうする?」といった深い内容まで、出演者・保護者の皆さんが本音で語り合います。番組の詳細はこちら!Upload By 発達ナビニュース◆番組名NHK総合 深夜の保護者会「発達障害 子育ての悩みSP」◆放送日時2017年9月24日(日) 23:00~23:50◆出演者はなわ、尾木直樹、有働由美子、高山哲哉◆サイトURL総合 深夜の保護者会「発達障害 子育ての悩みSP」(画像提供:NHK)
2017年09月22日娘の部屋からなにやら不穏な音…高校1年の終わりごろから高校2年の夏頃にかけて、娘はイライラを繰り返し自分の部屋でよく暴れていました。Upload By 荒木まち子女子とはいえ、それなりの破壊力。その結果壁はこうなりUpload By 荒木まち子ドアはこうなるUpload By 荒木まち子ビ・ン・カ・ン母の勘違い「今日は機嫌が良いな」とか「今日は不穏な感じだからそっとしてうおこう」など娘の顔色を窺う日々を続けるうちに、私は娘の部屋から聞こえる物音に敏感になっていきました。ナーバスになりすぎて時にはこんなことも(笑)Upload By 荒木まち子娘の切実な思い、「好きで暴れているわけじゃない!」障害に対する配慮がなされた環境にいても、日々の生活の中では思春期ならではの避けられないストレスもあります。「学校の行事前には見通しが立たず不安になる」「大人に注意されるのが嫌」「友達関係が思うようにいかない」などなどです。娘はかかりつけの主治医にも相談をして、教えてもらった様々な方法を試しました。それは「好きで暴れているわけではない、自分でもなんとかしたい!」と思う娘の必死な気持ちの表れでもあったと思います。Upload By 荒木まち子Upload By 荒木まち子親以外の信頼できる大人の存在が大切親の言うことには反抗的でしたが、医師のアドバイスと同様に「相性の合う学校の先生」など「自分が信頼する親以外の大人」の意見はすんなり聞き入れる傾向が娘にはありました。Upload By 荒木まち子担任がすべてを担う小学校とは違い、高校では本人の希望に添い、副担任、養護教諭、学年主任、支援コーディネーター、進路指導専任、管理職の先生など様々な先生が複数で関わる体制が出来ています。子ども自身が相談内容によって相談する先生を選ぶことが出来る。これは思春期の子どもを持つ親としても心強く嬉しいことです。娘は自ら校長面談を希望したこともありました。しかし…それでも感情のコントロールが難しかった娘。ある晩ついに家を飛び出してしまったのです。もう、どこへでも行ける年齢…母を襲う、えも言われぬ不安小・中学生ならそれほど遠くには行けないでしょうが、娘はもう高校生。携帯やチャージ式のプリペイドカード、ある程度のお金を持っているのでどこへでも行くことができます。電車に乗って夜の繁華街へも行くことも可能です。娘が家を飛び出したのは午後8時。我が家には小学生の息子がいるのでその子をひとり家に残して、探しに行くことも出来ません。「もしなにかあったら…」と不安な気持ちを募らせながらも私は家で娘からの連絡を待ちました。1分が1時間に感じられる…。ヒリヒリした胸中のさなか、一通のメールが!事故にあってないかしら?もしかしたら祖父母の家に行ったのかしら?色々な事を考え悶々としている私の携帯にメールがきたのは一時間後のことでした。「娘さんは公園にいます」なんと、メールの送り主は小学生のころ学習支援とSSTの家庭教師をして下さっていたY先生からでした!指導を卒業した今もお付き合いは続いていましたが、この時改めて娘と恩師の強い絆に感謝せざるをえませんでした。このような心から信頼する先生と繋がりを持てている娘はとても幸せであるな、と強く感じたのです。周囲の無理解やいじめに苦しんでいた頃、娘を救ってくれたY先生は“どんな状況でも必ず理解してくれる”と娘が絶対の信頼を寄せている唯一無二の存在です。外に出たものの、行くあてがない娘は自宅近くの公園から先生にメールをしたのだそうです。Y先生から私宛に、「今、あなたが帰る場所は家です、と伝えました。駅前で少し気分転換をし、気持ちを落ち着かせたら帰るそうです。」と連絡が入りました。せき止めていた不安な気持ちが一気に解けるような内容のメールでした。娘はY先生のメールから暫くして帰宅し、自分の部屋に直行、就寝したのでした。翌日感情を爆発させた直後はとても落ち込む娘ですが、暫くすると鼻歌を歌ってお風呂に入ったり、何事もなかったようにけろっとして話しかけてきたりします。これは発達障害の子どもに多く見られることのようで、爆発を目の当たりにしたこちらの気持ちが置いてきぼりになることが度々あります。なので親には(さっきの混乱はなんだったのか?)とモヤモヤが残ります。この翌日も休むことなく登校したのり。帰宅後は黙々とパソコンで何かを検索していました。そして暫くして私に聞きました。「ねぇ、こども食堂の場所、知ってる?」こども食堂は、地域の大人が子どもに無料や安価で食事を提供する場所であることは私も知っていました。しかし、それ以上のことはよくわからなかったので、娘と一緒に調べました。こども食堂は地域の大人が子どもに無料や安価で食事を提供する、民間発の取り組み。貧困家庭や孤食の子どもに食事を提供し、安心して過ごせる場所として始まった。(中略)最近は、地域のすべての子どもや親、地域の大人など、対象を限定しない食堂が増えている。食堂という形を取らず、子どもが放課後に自宅以外で過ごす居場所の中で食事を出しているところもある。娘は前日の先生とのやり取りの中で、こども食堂の事を聞いて興味を持ったのだそうです。本人の意思を大切にするこの時期、娘は親や周りの大人に物事を決められることをとても嫌がっていました。「こども食堂」が今の娘の居場所に相応しいかはわかりませんが、私は娘自身が自分で居場所を見つけたいと思う気持ちを尊重したいと思っていたのです。また、娘があてもなく夜の街を彷徨うより、こども食堂に行く方がずっと安心だとも思っていました。「児童相談所に、こども食堂のことを電話して聞いてごらん」と提案時間はもう17時を過ぎていました。役所の相談窓口はもう終了している時間です。私は17歳の娘が相談できる場所の一つに「児童相談所」があることを伝えました。そして、「こども食堂が市内にいくつかあるのは知ってるけど、詳しいことは私もわからない。近くのこども食堂の場所と開催日時を知りたかったら、児童相談所に電話して、<自分が17才だということ>、<居場所としてこども食堂を利用したいということ>を伝えれば、きっと教えてくれると思うよ。」と話をしました。娘は電話が得意ではありません。初めての人と話すと緊張してなかなか言葉が出ません。順序建てて話すことも苦手です。それでも娘は児童相談所に自分で電話し、近くのこども食堂の連絡先を教えてもらい自ら参加の申し込みをしました。地図を読むことが得意ではない娘は、当日迷う事がないよう事前に場所の下見にも行きました。自分の意思がはたらく時、苦手なことにもチャレンジできる娘の姿は、見違えるようなとてもたくましい姿に見えたのです。~続く~
2017年09月22日昨今、メディアでも取り上げられることが増えてきた「発達障害」。身近に当事者がいない人でも、この言葉を耳にする機会は多くなってきているのではないでしょうか。そんななか、NHKが「発達障害プロジェクト」と銘打ち、今年5月から1年を掛けて特集放送を行っています。このプロジェクトのなかのひとつに、イギリスのTVドラマ『ハンク―ちょっと特別なボクの日常―』があります。このドラマは、ディスレクシア(読み書き障害)の少年ハンクを主人公にした学園ドラマ。もともと2016年にNHKで放映されていたものを、「発達障害プロジェクト」に合わせて選りすぐりの5本を再放映するというもの。日本ではまだ発達障害を扱ったエンタメ作品の数は少ないですが、このイギリスのドラマでは「ディスレクシアとはどんなものか」を視覚的にわかりやすく表現しています。当事者たちが学校生活を送る上でどんな困難を抱えているか、さらにその困難さを主人公のポジティブな性格と大胆な発想で乗り越えていくさまをスパイスたっぷりに、コメディタッチで描かれています。■ディスレクシア(読み書き障害)とは?ディスレクシアとは、発達障害のひとつである「LD(学習障害)」の一種で、知的発達に遅れはないものの、脳の働きに特徴があり、文字や数字の読み書きなどに困難が生じることをいいます。有名人では、俳優のトム・クルーズやオーランド・ブルーム、映画監督のスティーブン・スピルバーグなどがディスレクシアであると告白していて、多くの人が障害について知るきっかけとなりました。主人公ハンクは12歳の少年。彼の場合は文字を読もうとすると「字が躍っている」ように見え、書くこと、計算も苦手。「作文の宿題をやろうとしても、文字が躍ってなかなか書くことができない!」「ミュージカルの主役に抜擢(ばってき)されたのに台本が読めない!」など、たびたびピンチに陥ります。どんなふうにこのピンチを切り抜けるのだろう? と思っていると、作文を書かされる回では、考えて考えて考え抜いた結果、「作文ではなくて、工作で伝えよう!」というとっぴな方法を思い付き、立派な作品を作り上げてしまいます。そう、彼のすごいところは、どんなピンチに遭遇しても決してあきらめず、ユニークなアイデアで切り抜けること。じつはハンクは頭の回転がとても速く、行動力もあるのです。なんでも突っ走ってしまうので、先生には怒られてばかりだけど…。■ディスレクシアの子どもが学校生活を乗り越える処世術ディスレクシアであることを悲観せず、親友や家族に助けられながら学校生活を送るハンクですが、ちょっとだけ愚痴が出ることも。「成績はいつもビリだから、いじめられる。ディスレクシアだけど頑張ってるのに…。みんな結果しか見ないんだ」発達障害の子どもは、ときにいじめられたり、不登校になったりするとよく耳にします。これを「二次障害」と呼ぶのですが、まさにハンクも同じ。でも、彼はへこたれません! “成績ビリ”という自分のイメージを変えるためには、「何か得意なことをみんなに見せればいいんだ!」と考えることのできる強さがあります。ハンクの姿を見てハッとさせられるのは、そんな発想の転換。ディスレクシアの自分を受け入れ、ほかのことでカバーしたり名誉挽回を目指したり。とくに読み書きや計算についてはみんなと同じようにできないけれど、自分なりの方法でならゴールにたどり着くことができる。それがハンクの学校生活を乗り切る処世術であり、二次障害を深刻にしない助けになっているようです。■発達障害児子育てのヒントがいっぱいあった!筆者にも、発達障害の疑いのある息子3歳がいます(診断待ちの状態です)。まだ私自身も発達障害について初心者で、毎日迷いながら子育てをしています。療育や幼稚園、児童館など、ほかのお子さんたちと活動をする場所に行くと、つい「みんなと同じように」やらせたいと思ってしまいます。でも息子には「できること」と「できないこと」があって、それが息子にとって大きな負担になってしまっていると感じることも多くあります。そして私は、あとから反省することばかり…。また、同じような境遇のママたちと会話して思うのは、自分も含めみなさん真面目だということ。病院や療育の先生のアドバイスひとつ取っても、まっすぐ受け止めすぎてしまいます。子どものことを考えて、「少しでもできることを増やしたい」という必死な思いが、いつの間にか「アドバイスどおりにしなければならない」という強迫観念にも近いものに変わってしまい、そこから外れるものを許容できなくなってしまうのです。どんなことをするにも、答えはひとつではないし、手段もひとつではありません。ハンクの行動は、それを証明しているように思えます。ママの考え方にしてもきっと同じではないでしょうか。みんなと同じようにできなくてもいい。いろんなやり方を試して、生きる力を身に着けることの方がきっと大事なはず。ステレオタイプにとらわれず、柔軟な考え方・受け止め方ができれば、発達障害児の育児の窮屈さが少しでもやわらぐのではないでしょうか。そんな、ちょっとしたヒントを、ハンクから教えてもらった気がしました。TVドラマ「ハンク―ちょっと特別なボクの日常―」第4回は、NHKにて9月23日(土)23:25より、第5回は、NHKにて9月30日(土)23:35より放映。<NHK発達障害プロジェクト 今後の放送予定>・2017年9月24日(日)午後11:00~11:50 NHK「深夜の保護者会」「発達障害 子育ての悩みSP」・2017年9月26日(火)午後8:00~8:29 Eテレ「ハートネットTV」 「自閉症アバターの世界 ①」・2017年9月27日(水)午後8:00~8:29 Eテレ「ハートネットTV」 「自閉症アバターの世界 ②」・2017年9月27日(水)午前8:15~9:54 NHK「あさイチ」 「シリーズ発達障害 どう乗り越える? コミュニケーションの困りごと」※内容は変更になる場合がありますNHK 発達障害プロジェクト 【発達障害についての記事一覧】▼大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界(全4回)▼「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら(全9回)
2017年09月22日2種類の「なぜなぜ期」が一気に押し寄せてきた!広汎性発達障害の娘は、小学1年生(6歳)。今、なぜなぜ期(質問期)の真っ最中です。定型発達の子だと、2~3歳に「あれなに?」と名前を聞く時期があり、4~5歳に「なんで?どうして?」と原因を聞く時期が来ると言われています。しかし、今娘には、その「2種類のなぜなぜ期」が一気に押し寄せているようなんです。Upload By SAKURA物事に全く興味がなかった娘元々娘は、物に執着がなく、物事にも興味がない…2歳半でその特性が現れ始め、健診の「発育遅れ」に引っかかっていました。4歳で、広汎性発達障害と診断を受けてからも、その特性は変わりませんでした。ことばの発達に遅れがあり、言語訓練を行っていましたが、そもそも物事に疑問を持たないため、療育施設での言語訓練も、家庭での療育も、スムーズに進まないことが多々あったのです。Upload By SAKURA待ち遠しかった「なぜなぜ期」。今が教え時!しかし、小学校に入学して少し経った頃から、なんで?どうして?と質問してくることが増え、待ちに待った「なぜなぜ期」に、母親として嬉しく思っていました。物事に疑問を持つことで、言語・コミュニケーション能力にもいい影響が出るのでは…?「この時期に、とにかくたくさん答えて、さらに訓練にも力を入れるぞ~!」と改めて気合いを入れました。Upload By SAKURA経験したことのなかった「なぜなぜ期」…想像以上に親が試される局面もしかし…なぜなぜ期、舐めてました!!なんだこれ!とにかく何でも「なんで?」「どうして?」の質問攻め。Upload By SAKURAUpload By SAKURA「正解を言う」を辞めたら、コミュニケーションが楽しくなったなぜなぜ期を体験した結果…娘は、そこまで答えを求めてないことに気づきました。答えがわからない時は、正直に「ママわからないな~」といい、「あーさんはどう思う?」と聞いたりすることもあります。娘の場合…メルヘンな返しをするとすごく喜びます(笑)そして2人のメルヘントークになり、おとぎ話のような展開に。なんだかんだで、なぜなぜ期を楽しめています!Upload By SAKURA
2017年09月20日「発達障害児=問題児」は本当か?「〇〇くんって、すぐ叩いたりするんだって。」「え~…、それって絶対、発達障害あるよね~」周囲のママたちの会話の中に、こんな言葉がよく聞こえてきます。困った子の話になるや、「それって発達障害じゃないの?」という流れ。発達障害について認知が広まったことは歓迎ですが、「問題がある=発達障害児」という図式だけがことさらに強調されている傾向には、私は戸惑いを覚えます。Upload By 林真紀かく言ううちの息子は発達障害と診断されて4年が経ちますが、幼稚園でも小学校でも「問題児」として扱われたことは、ほとんどありません。息子は、気持ちの切り替えがしづらいという特性があり、ちょっと先生に叱られただけでもパニックになり、そのときの気持ちを何年も忘れずにいます。そんな自分の特性を知っている息子は、「人に叱られる」ことを極度に怖がります。融通も利かず、「先生がダメだと言った」ということを死に物狂いで避けようとします。例えば、息子の小学校では毎日音読が宿題に出ますが、体調が悪かったりする日は音読が出来ない日もあります。そんな日の翌日、息子はパニックになりながら、「お母さん、音読は毎日やらなくちゃいけないのに、昨日は熱があったからできなかった。どうしたらいい?先生に叱られちゃう。どうしたらいい?」と慌てふためいて助けを求めてきます。「今日2回読めば、昨日の分もチェック表に書いておいてあげるよ(注: 本当はいけないのですが)」と私が提案すると、「それは先生に叱られる」「それはズルだ」「先生はダメだと言った!」と言って、頑として聞きません。「じゃあ、体調悪かったから音読はできませんでしたって連絡帳に書いておこうね」というと、「音読は毎日の宿題だから、毎日やらなかったら叱られる!!」と言ってパニックになるのです。この不毛な押し問答が延々続くのです。そして、私が途中で爆発してしまうことになります……こんな感じで、先生に叱られることは何が何でも避けようとし、先生の言ったことは忠実に守る息子ですから、これまで「問題児」として扱われたことはありません。それはそれで親の立場からすれば楽かもしれませんが、でも、それで本当に良いのでしょうか?確かに「問題は起こさない」…けどUpload By 林真紀学校側は、どうしても他害があったり、授業中の立ち歩きがあったりする子どもに対して、神経質になりがちです。人に叱られることを極度に怖がる息子は、他害も授業中の立ち歩きもありません。注意欠陥の傾向があるため、先生の指示を聞き洩らすことはよくありますが、一度「これはやらなければならない」と言われたら、何がなんでもそれを守り通そうとします。幼稚園でも小学校でも、「息子くんは他害も立ち歩きもないですし、パニックを起こすこともありません。本当に全然大丈夫ですよ。」と、先生方にサラッと言われてしまうことが多かったです。確かに、学校側からすれば「問題のない子」なのでしょう。けれども、当の息子は「(全く)問題がない」ことにこだわり過ぎて、心身共にクタクタなのです。「頑張り」が生きづらさを隠してしまうときUpload By 林真紀同様に、テストや発達検査などでも、息子は「やらなければならない」と決められたことに関しては、強迫的に自分を追い込む特性があります。また、点数に対するこだわりや、勝ち負けのこだわりも強く、分からない問題が一問あるだけでも「僕はダメな奴なんだ」とがっくりと落ち込んでしまうところがあります。学校での勉強はもちろんそうですが、発達検査などで「やらなければならないことに関して強迫的に頑張るため、苦手な部分もそこそこのスコアが出せてしまう」というようなところがあります。結果的に、息子が日常で感じている困難は、スコアからは推し量れなくなってしまうのです。周りの評価は関係ない。大切なのは、本人が困っているかどうか。Upload By 林真紀人の何倍もの努力をすることで「苦手」を覆い隠してしまう、そんな生活がいつまでも続くわけがありません。息子は帰宅するとそのまま倒れてしまい、食事もとらずに眠ってしまうことがよくあります。そんな息子の姿を見ていると、問題が表出していなくても、大きな困難を抱えている子どもが一定数いることを思わずにはいられません。つまり、学校生活において「問題のない子」だからそれで良いわけではなく、「問題のなさ」に覆い隠された本人の困り感を見過ごしてはいけないと思うのです。思い返せば、幼稚園の頃も「問題のない子」だった息子は、就学で特別支援学級に通級することを周りに随分反対されました。けれども今は、通常学級でガチガチになっている息子が、唯一気持ちが休まる場所は、特別支援学級のようです。ですから、周囲から見て「問題がない」という評価に左右されず、特別支援学級への通級を選択したことは、今思えば正解だったと思っています。外から見て問題があるかどうかを基準にしてしまうと、発達障害の子どもの困り感が置いてきぼりになってしまいます。他害がなくとも、立ち歩きがなくとも、いや、はたから見て何も「問題がない」としても、本人が困っているのであれば、それは本人にとっては大きな問題なのです。息子に限らず、発達障害のある子どものことを考えるときにはその視点を忘れないようにしたいです。
2017年09月14日注意欠陥で怒られ続けた私は、いつしか「怒り」そのものにおびえ…Upload By かなしろにゃんこ。現在、ADHDの元気いっぱいな息子を育てている私。息子との生活で自分の過去と重なったりする部分も多々あり、自己診断では「発達障害グレーかな?」と思っています。子どもの頃を思い返してみると、不注意の多さから怒られてばかりいました。私は怒る人を軽蔑して、怒りと無縁になりたくて人前では感情を隠して過ごしていたため、いつの間にか無表情な子どもになっていました。学校の友だち何人から「楽しんでるのか悲しいのか気持ちが分からない」と言われると上手く答えられないくらい、自分でも「今の自分の感情」が分からなくなっていました。学校生活でも初めてのことに取り組むときは失敗して怒られやしないかオロオロして脅え、ルールに適応していくことが難しかったのです。そんな私の性質も、4年生の頃、近所の幼なじみと付き合うようになって徐々に変わっていきました。一切「怒る」ことのない友達をみつけた!Upload By かなしろにゃんこ。幼なじみたちは明るく行動的でルールに縛られない遊び方をしていました。空家や建築中の家に忍び込み肝試しやままごと、工場に忍び込んで探検。廃材置き場で基地作りやお屋敷の屋根でドロ刑(鬼ごっこ)など大人に怒られるような遊びに次から次へと誘ってくれました。毎日幼なじみと遊ぶことが楽しくて、辺りが暗くなったのが分からないくらい真剣に遊びました。学校の友だちは急に怒り出したり遊んでいる途中で機嫌が悪くなって怒り口調になったりする人がいる中、彼女たちは一切怒ることがなかったのです。私にとっては怒りの感情と無縁の場所は天国!安心・信頼して遊ぶことができました。ですが、彼女たちはナゼ怒ったりしないんでしょうか?その答えは、彼らの家庭環境にありました、家庭事情が複雑で協調性を持たなければいけなかったり、ワガママを言ったりできない環境が、彼らを人付き合いの面で大人にさせていたような気がします。Upload By かなしろにゃんこ。警察沙汰になりそうなイタズラも一緒にしたりと、彼女たちの遊び方はぶっ飛んでいましたが、臆病者だった私はお陰様でいろいろな遊びを経験して度胸がついてきました。中学生になると先頭になって悪い遊びを提案するなどしていました。どんな悪いことかはご想像にお任せします(笑)「怒り」から逃れ逃れ、たどりついたのは「世界一の悪」になるという目標(笑)Upload By かなしろにゃんこ。怒られたくなくて親の前ではいい子にしていた私ですが、中学生になると反抗心が芽生え、親にも教師にも社会の大人にも無性に怒りがわいてきます。怒る人を軽蔑しておいて自分自身の中に怒りが沸々してくるのを止められません。無性に悪いことがしたくてたまらないのです。社会に反抗したくてたまらないのです。学校でも街中でも大人が嫌そうに私を見てくることを期待して、派手な格好をしたり繁華街で騒いだり、公共の物を壊したりなど迷惑行為をしていました。もう臆病な私ではないので、教師や大人が怒鳴って責めてくるのを鼻で笑ってバカにしたい私がいるのです。「言いたいことがあるなら私に文句言ってこいよ大人どもよ!」と、挑戦的な態度をとってしまいます。家では反抗しない子を装うのですが内緒でモラルに反することをくり返していました。本当の私はイイ子したくないし、人に頼られていい顔ばかりしたくないのです。今まで怒られないようにへりくだって我慢していたせいか、中学の頃は反動でツンツンに尖ってしまいました。このころ「世界一の悪」になることが目標だったのです(笑)幼なじみグループでは悪いことをするのは自己責任というルールだったので、私が迷惑行為をするのを止めたりしないし増長するように促したりもしません。ただなんとなくいつも一緒にいてくれました。グレる人間はカス呼ばわりされてしまいますが、私はカスでもなんでもグレて良かったと今でも思っています。社会に反抗することで自分の感情が今どういう状態なのか取り戻すことができました。中3になると反抗期は過ぎました。迷惑行為をしている場合じゃない!と、けろっと正気に戻ったのです(笑)「いい人」はとっくに辞めました。子どもにもバレてますUpload By かなしろにゃんこ。今思うと反抗から迷惑行為をしたことは愚かだったと反省です。でも小学校のときのいい子ぶった私のまま、心を解放しないで大人になっていたらどうなっていたのだろう?と思います。二度といい子、いい人になりたいなんて思わないように自分の本当の気持ちを隠さないで生きていきたいです。でも仕事や子育てでは気持ちを隠してしまうことって無意識にやってしまうもので無理をしていることに実は今も気が付いていないかもしれません。おばあちゃんになったら再びグレちゃったりするかもしれません☆
2017年09月12日「とにかく勉強ができなくて。実は私、発達障害のひとつ、学習障害だというのが最近わかったんです。道理で、勉強してもいっこうに読み書きができなかったわけです。師匠がしゃべるのを聴いて覚える落語なら、すぐに頭に入ったんですがね」 そう話すのは、古典芸能の型を大切にしつつ、現代的要素を取り入れたスタイルで人気の落語家・柳家花緑師匠(46)。新刊『花緑の幸せ入門「笑う門には福来たる」のか?〜スピリチュアル風味〜』(竹書房新書)では、冒頭で発達障害をカミングアウトしている。 著書に掲載されている中学3年の通知表では、英語と音楽、美術以外はほとんどオール1。この通知表が学生時代の最後にもらったもので、中学を卒業すると祖父である故・5代目柳家小さん師匠に入門した。ところが……。 「“人間国宝・小さんの孫”と言われ続けると、自分が偽者みたいな劣等感に襲われて、若いころはそのプレッシャーに押しつぶされそうでした。八方ふさがりで精神的に不安定な時期がありまして。祖父がいなきゃ自分の存在意義がないんだと思い詰めて、死のうとさえ考えたことも」 笑顔を絶やさず冗舌で、羨ましがられるほどの落語界きってのサラブレッド。けれどだからこそ、心の奥底に苦しみを抱えていたのだ。その鬱屈した毎日から抜け出すべく、自己啓発やスピリチュアル系の本を読みあさったという。そして、幸福について考えたプロセスや結果を著したのが今回の著書だ。 さて、近ごろ師匠を満たしたラッキーな「福」は? 「この間ね、落語会で出囃子を頼める人がいなかったんですよ。10人も弟子がいながら、全員がそれぞれの高座に出かけてしまっていて。途方に暮れていたところへ、近々真打ちに昇進する立川流の落語家が挨拶しに訪ねてきたの。まさに渡りに船!『出囃子をお願いできる?』と(笑)。この縁、“シンクロニシティ”という偶然の一致なんですね。遭遇したら幸せな気分になりますけど、自分から意図して起こすことはできないんですよ。おもしろいでしょ」 10月には東京での独演会「花緑ごのみ」が控えている。その稽古にも余念がない。 「本を読んで興味を持ってくださった方に、落語も楽しんでいただければ!」
2017年09月11日ADDとは?出典 : とは、日本語では「注意欠陥障害(Attentin Deficit Disorder with and without Hyperactivity)」と訳され、現在ADHDと呼ばれる発達障害のかつての診断名です。アメリカ精神医学会が発行する国際的な診断基準、『DSM(精神障害の診断と統計マニュアル)』の改訂に伴ってその名称が変化してきました。ADDという名称が診断カテゴリーとして有効だった期間は、『DSM-Ⅲ』が出版された1980年から『DSM-Ⅲ-R』に改訂された1987年までです。その特徴は注意の持続と衝動性の制御に困りごとが生じることで、現在の『DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)』の診断基準では、ADHDの「不注意優勢型」に相当します。現在、不注意と衝動性に対して「ADD」という診断が下りることはまれですが、以前に診断を受けた人もいらっしゃるかもしれません。また、診断名として機能してはいなくても、ADDの特性に困っている人もいるのではないでしょうか。今回の記事では、ADDがADHDに変わった経緯とともに、ADD的な特性を持つ人の困りごとに着目して解説します。ADDからADHDへ。診断名の変遷出典 : という診断名が登場したのは『DSM-Ⅲ』が出版された1980年です。それまでは、子どもの多動性のみが主に取り上げられていましたが、この改訂では「注意の持続と衝動性の制御の欠如」にも焦点が当てられました。その結果、ADD(注意欠陥障害)という障害概念が導入されました。その後、1987年に改訂された『DSM-Ⅲ-R』では、再び多動性の影響力が重視され「ADHD(注意欠陥障害,多動を伴う/多動を伴わない)」という分類名になりました。この改訂から不注意、多動、衝動性の3つが診断基準になったのです。しかし、『DSM-Ⅲ-R』以降もしばらくADDという診断名は有効でした。なぜかというと「ICD」という別の診断基準でADDが残っていたからです。ICDとは、「国際疾病分類」のことで、DSMと同じく国際的に用いられている疾患の分類を示したものです。この診断基準はWHO(世界保健機関)が作成しており、作成機関は違うものの、DSMとの整合性を意識して作られています。ICD-8では、1990年の改訂までADDという診断名が採用されていました。そのため、『DSM-Ⅲ-R』以降でも、ICDを使った診断ではADDという名称が使用された場合もあります。結果として、診断名がADDからADHDに完全に移行したのは1990年以降ということになります。ADDと診断された人の中でも、ADHDと診断された人の中でも、「不注意が強い」「衝動性のみが当てはまる」という症状の特性は出てきます。診断名が包括的なものであっても、その症状はやはり人それぞれなのです。診断カテゴリーの名称だけにこだわらず、自分はどのような症状の組み合わせがあるのかを判断することが、自分に合った対処法を見つけることにつながります。参考文献:中根充文,山内俊雄/監修 岡崎祐士/総編集 大久保善朗,小島卓也,渡邉義文/編集『ICD-10 精神科診断ガイドブック』2013年 中山書店/刊不注意・衝動性が見られる際の診断は?出典 : 半年以上不注意や衝動性が見られる場合は、専門家への相談をおすすめします。具体的な症状は次の章をご覧ください。現在、ADHDを含め、発達障害の診断は医師からの問診やさまざまな検査の結果を総合して行われます。その子どもの様子をよく観察し家族や先生など近しい立場にいる人たちの話を聞いた上で、基準をもとに診断名を決める場合が多いのです。現在の診断基準としてはアメリカ精神医学会が出している『DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)』と国際保健機関が出している『ICD-10(国際疾病分類第10版)』が用いられます。『DSM-5』の基準を用いた診断では、本人の様子や周囲の話から得た情報を診断基準に照らし合わせ、一定数当てはまればADHDと診断します。さらにADHDの中には混合型・不注意優勢型・多動-衝動優勢型という3つの分類があり、どれかに振り分けられます。この際、かつての診断基準でADDの条件を満たす症状は現在では「不注意優勢型ADHD」と診断されることになるのです。前述した通り、不注意や衝動性は子どもには一般的な特徴であると言えます。そのため子どもに不注意や衝動性が見られる場合は不注意優勢型ADHDと診断を下すことが難しく、他の発達障害や一時的な発達の遅れを視野に入れながら時間をかけて観察する必要があります。診断名がつかない、また、診断名が以前と違う場合でも、本人がどんな場面や行動に不自由を感じているのかを知り、症状に合った対処法を探してみましょう。「不注意優勢型ADHD」(旧ADD)の症状出典 : かつてADDと呼ばれていた症状がある場合、現在ではADHDの不注意優勢型として診断されますが、ここでは具体的にはどのような症状が見られるのかご紹介します。不注意優勢型ADHDの主な症状として不注意と衝動性が挙げられます。これらの症状は一見誰にでも起こりうるように思えますが、日常生活に大きな支障をきたすほどの度合いになることをいいます。不注意とは注意力が弱く、一定時間集中している状態を保つことが苦手なことです。また、注意力が弱いために物忘れの多さも見られます。・よく物を失くす・整理整頓ができない・周囲に気が散って集中できない・細かいところまで注意が向かない・いつもボーっとしているこれらの症状は脳の前頭前野の働きが関係しています。前頭前野とは、外から入ってきた情報を整理し、保存し、活用する役割があります。不注意の症状がある人は前頭前野の働きが弱いために、言われたことを記憶しておくことが苦手になってしまうのです。衝動性がある場合には、自分の感情や欲求をコントロールできないという症状がみられます。感情や発言、行動を我慢することが難しいため、周りの人に突発的だという印象を与え、困らせてしまうことがあるのです。・思いついたことをすぐ話してしまう・順番を待つことが苦手・優先順位が付けることが苦手・すぐにかっとなってしまうまた、喜怒哀楽が激しく、出来事が自分の思い通りにいかないと癇癪(かんしゃく)を起こしてしまうこともあります。このような感情的な行動から、集団の中で孤立してしまう可能性もあります。ADHDの症状は脳の働きが上手に機能しないために起こるものであり、わざとやっているわけでも、本人の単なる努力不足と言うわけでもありません。ですが、そのことが周囲に理解されず、叱られたり厳しい訓練を行われたりした結果、本人の自尊心が低下してしまうことがあります。自尊心が低くなることで、不登校やひきこもり、うつや非行などの二次的な障害が生じることもあるのです。「不注意優勢型ADHD」(旧ADD)の治療法はあるの?出典 : ここではADHDと診断された場合に考えられる手立てを紹介します。ADHDは根本的に治療することはできません。しかし、生活環境の改善や工夫、困難を取り除くための教育や周りの働きかけ、効果的な投薬などを行うことで症状を軽減することは可能です。ADHDの症状がある子どもたちへの関わり方として重要なことは「理解を示すこと」「自尊心の低下を防ぐこと」「社会生活への意欲を持ってもらうこと」です。次に、具体的な手立てを説明していきます。SST(Social Skills Training)とは、人間が社会で生きていくために必要な技術を育てるためのトレーニングのことです。学校や療育施設、病院などで取り入れられています。SSTでは、ゲームやディスカッション、ロールプレイなどを通して手段の中での行動を練習します。自治体で受けられるほか、家庭内で行えることもあるので近くの病院や療育センター等の専門機関に相談してみましょう。環境改善とは、家や教室などの生活環境を本人にとって刺激が少ないように調整することです。例えば、部屋を勉強するところと遊ぶところに仕切る、机の上におもちゃを置かない、などがあります。また、メモやスマホのスケジュールアプリ、TO DOアプリなどの活用、紛失防止タグなどの利用もおすすめです。ペアレントトレーニングとは、日々の子育てにおける困りごとを解消し、楽しい子育てを支援するための保護者向けの支援プログラムです。具体的には、子どもに対する上手な褒め方、間違ったことをした時の注意の仕方などを学びます。各都道府県に設置されている発達障害者支援センターや教育センターなどの行政機関や医療機関で受けることができます。ADHDの症状を和らげる薬は存在します。現在の日本で認可されているのは主にアトモキセチンとメチルフェニデート、グアンファシン(小児のみに適応)があります。どちらも医師から処方される薬なので、検討する場合は病院で診察を受け医師に処方してもらう必要があります。これらの薬には副作用もあることが報告されています。副作用や効用については一人ひとり異なるので、その他の不明点について医師と十分なコミュニケーションを取った上で判断できるといいでしょう。このように、気になる症状がある場合は、セルフチェックに頼らず専門機関に相談してみましょう。子どもの場合は保健センターや子育て支援センター、児童発達支援事業所、大人の場合は発達障害支援センターで対応してもらえます。「不注意優勢型ADHD」(旧ADD)の症状への具体的な対処法出典 : 章で紹介した手立てはADHD全般に向けられた治療法です。中でもこの章では、不注意優勢型に特徴的な症状に向けた対処法をご紹介します。専門家との問診を進めていくと、自分の困りごとがはっきりしてきます。その困りごとに合わせて、5章で挙げた療育や投薬を組み合わせていきましょう。困りごとを減らす過程で大事なことは「自分の状態を理解すること」「安心できる環境を整えること」「打てる手立てについて十分な情報を持っていること」です。不注意や衝動性がある人への関わり方の例を以下に挙げます。・必要なものは親や先生が一緒に確認する・気になる刺激が少ない環境にする・飽きないように、こまめに声掛けする、課題を切り替える・文字や絵など視覚的な指示を使って気をとめやすくする・メモやスマホのスケジュールアプリ、TO DOアプリなどの活用で予定をリマインドする・紛失防止タグ等の利用で忘れ物や紛失をしても見つけやすくする・やるべきことを思い出し気付かせる言葉かけをすることで本人の混乱を軽減する・ルールを設定したうえで、ある程度自由な行動を許す・水を飲む、一人になるなど自分なりのクールダウンの方法を見つける適切な対処をすることで、徐々に困りごとを減らすことができ、本人も周囲も安心した生活を送れるようになるでしょう。田中康雄/監修 『発達障害の子どもの心と行動がわかる本』2014年 西東社/刊上野一彦,月森久江/著『ケース別発達障害のある子へのサポート実例集 小学校編』2010年 ナツメ社/刊まとめ出典 : とは注意欠陥障害(Attentin Deficit Disorder with and without Hyperactivity)のことで、過去に用いられていた障害概念です。不注意と衝動性が強いために困りごとが生じます。精神疾患の診断・統計マニュアルであるDSMの改訂に伴い、現在ではADHD(注意欠陥障害,多動を伴う/多動を伴わない)と診断名が変わっています。診断名は包括的なものになりましたが、その症状は人それぞれです。専門家と協力して、自分の症状や困りごとを考え、自分に合った対処法を見つけていきましょう。医療の世界は変化が速く、以前の診断名が現在では存在しないものになる可能性もあります。そういった状況の中で大切なことは、診断名にこだわりすぎず、自身についてよく理解することかもしれません。特性や困りごとを理解し、専門家に相談し、適切な対処をすれば困りごとを減らすことは可能になるのではないでしょうか。神庭重信/総編集 神尾陽子/編集『DSM-5を読み解く』2014年 中山書店/刊
2017年09月07日私を苦しめた「かわいそう」という言葉出典 : 自分の子どもが発達障害であることをカミングアウトすると、やや的外れなコメントを向けられることがあります。カミングアウトするたびに「天才児なんでしょ」とか「ぜんぜん普通じゃん」とか言われることに、もはや慣れたと言えるくらいです。もちろん相手には全く悪気はありませんし、世の中の人がみんなが発達障害について深い知識があるわけでもありません。必要以上に理解あるコメントを相手に求めるのは、あまりに酷なことだと思います。ですから、私は必要以上に息子の障害のことを周りに話していません。それはカミングアウトしたときに、相手に背負わせてしまうことがあまりに大きく、それは自分にとっても相手にとってもあまり嬉しいことではないからです。私がカミングアウトを慎重にするようになったのは、いくつかの失敗経験がもとになっています。それは、一度カミングアウトをしたときに、こんなことを言われたからです。「息子くんかわいそう。お母さんもかわいそう。家族みんなかわいそう。でも、お姉ちゃんはまともだったんでしょ?それだけが救いだね。」その一言を聞いた瞬間に、私は頭にカーっと血がのぼるのを感じました。けれども、何に対して怒っているのか、自分でも理解ができません。相手は、私のことを心から思って言ってくれている、息子のこともいつも可愛がってくれている、なのに、なんでこんなに悔しいんだろう…。私の頭は混乱状態です。結局、何が嫌だということを表現できぬまま、その人と会うことは二度とありませんでした。「かわいそう」という言葉に憤る気持ちはどこから…出典 : 知り合いに「息子くんかわいそう。お母さんもかわいそう。家族みんなかわいそう」と言われたときに、どうして私はあそこまで頭に血がのぼったのか。その人と二度と会うことができなくなったのか。悶々としながらずっと考え続けました。どうやら私は、「かわいそう」という言葉にものすごく抵抗があったようです。息子はかわいそうなのか?自分はかわいそうなのか?私は「かわいそう」と思って、この子を育ててきたのか?そして何よりも、発達障害ではない上の娘は「まとも」で、発達障害のある息子は「まともではない」のか?じゃあ「まとも」ってなんだろう。グルグルと考え始めると止まらなくなり、そのとき何も言い返せなかった自分に対するいら立ちも募ってゆきます。でも、じゃあどう言い返せば良かったんだろう?悲しいことに、答えは簡単には浮かんできません。自分の選択を肯定できない日々出典 : それ以降も、ずっといら立ちを感じ続けてきた私。気付いたら、息子は小学校に入学する年になっていました。息子が小学校に入学する前、私は息子に対して感じる罪悪感で、気持ちが沈みっぱなしになっていました。それは、私が周囲の反対を押し切って、息子の小学生生活に通級を選んだからです。お風呂に入りながら、一緒に眠りながら、私は何度も何度も息子に言いました。「ごめんね。お母さんを許してね。通級を選んで本当にごめんね。かわいそうなことをしてしまったね。」「みんな、息子くんは通常級で大丈夫だよって言ってくれたのにね。あなたに恨まれたら、ずっと背負って生きていくよ」息子の進路を自分が決めてしまったことに対する罪悪感。取り返しのつかないことをしてしまった恐怖。今思えばそこまで悩み苦しむ話でもなかったのに、私は息子に申し訳なくて、ずっと顔向けができませんでした。さらに、ネット上の言葉も何度も自分に突き刺さりました。一番痛かったのは、「わずか6歳で『自分は違う』ということを突き付けられる残酷さを分かっていますか?」という言葉。それからというもの、ネットの意見を見るのも怖くなりました。息子の言葉に救われて出典 : 通級を選択していたものの、小学校に入学して間もない間、息子は通常級のみで過ごすことになりました。最初は楽しく通っているように見えましたが、みるみる息子の体力は削られていったようでした。ただでさえ新しい環境でいっぱいいっぱいの状態なのに、通常級は息子にはとても不快な刺激の多い場所だったようです。朝になっても疲れが抜けない日が続き、登校中に腹痛を訴えて戻ってくる日も増えました。そのうちに、息子は帰宅してから学校の話ができなくなりました。「思い出そうとすると疲れる」「まとまらない」と青ざめた顔で横たわるようになりました。明らかに、息子の頭の中のメモリは多々の情報でオーバーワーク状態でした。しかし、ゴールデンウィーク明けぐらいからでしょうか。息子の様子に変化が訪れます。帰宅したときの息子に笑顔が増え、学校の話をいろいろとしてくれるようになり、頭痛や腹痛の訴えもなくなったのです。どうしたのかと学校側に聞いてみたところ「特別支援学級での授業が開始されました」とのお話でした。息子に話を聞いてみたところ、教室内の刺激が通常級と特別支援級では全く違うということ、そして何よりも、特別支援級の先生はよく褒めてくれると話してくれました。また、情報の洪水に頭が疲れてしまったときは、クールダウンスペースがあって、本当に助かるとのこと。何よりも驚きだったのが、特別支援級に通うようになってすっかり元気を取り戻した息子を、なんと同級生たちがみんなで羨ましがるのだそうです。「いいなあ~、〇〇学級僕も行きたい」とみんなに言われて、息子は「君たちも頑張れば、僕みたいになれるよ!!」と言ったというではありませんか!これは本当にびっくりで、息子にとっても息子の同級生たちにとっても、特別支援級に通っていることは「かわいそう」でもなんでもなく、「羨ましい」ことだったのです。息子を「かわいそう」にしていたのは、出典 : 無事一学期が終わり、通常級と特別支援級と特別支援員の先生方みんなに可愛がられた息子は、小学校が大好きになりました。特別支援級に行くことは、息子にとっては「違う人間だと選別される」ことではなく、自分を見てくれる先生方を複数の場所に持つということだったのだと分かりました。この一件を通して私は気付いたのでした。息子を「かわいそう」と思っていたのは自分であったこと、そして、そんな自分自身に対して怒りを覚えていたからこそ、友人に「息子くんかわいそう」と言われた途端にどうしようもない怒りが湧いてきたのだとも…。多くの場合、誰かに対して意味もなく怒りを感じるときは、自分自身が抱える何かに怒りを感じている場合が多いのかもしれません。発達障害のある息子を「かわいそう」にしていたのは誰か?それは紛れもなく、私自身だったのです。
2017年09月07日個性豊かな作品たち!夏休み作品展出典 : 一か月以上におよぶ夏休みももう終わり。夏休み中に子どもたちがつくった作品のシェアを募集したところ、たくさんの投稿がありました!この記事で紹介する作品はほんの一部ですが、リンク先ではすべての作品を見ることができます。発達ナビに関わる3人の審査員の講評も併せてお楽しみください!編集長賞Upload By 金裕珍(発達ナビ編集部)まず初めに、発達ナビ編集長である鈴木悠平からの表彰です!出典 : 編集長賞に輝いたのは、wajimakiさんのお子さんが作った「埴輪」です!「埋蔵文化センター見学に行ったあとに作った自前の…笑」とのことです。さん埴輪とは渋いチョイスですねぇ。見た目のインパクトもさることながら、お母さんのwajimakiさんが書かれているように、埋蔵文化センター見学に行ったあとに自分で作ったというエピソードが素敵です。よっぽど印象に残ったんでしょうね。「何かを作って表現したい!」という気持ちが高まるのは、やっぱりこういう、本人にとって強い印象に残った経験をしたときが一番だと思います。きっと文化センターにはお土産に出来合いのミニ埴輪とか、キーホルダーやクリアファイルとかも売っていたんじゃないかと想像します。でもやっぱり、自分で作りたかったんですよねぇ。埴輪って、土から作るものですもん。これからもそのDIY精神を大切に、自分が作りたいものをどんどん作ってほしいですね!岸田CTO賞Upload By 金裕珍(発達ナビ編集部)続いては、岸田CTO賞の発表です。LITALICOの執行役員CTOとして、お子さん向けのアプリやサービス開発を手がける岸田崇志のお気に入り作品は…出典 : プルメリアさんのお子さんが作った「ダイオウイカ」です!プルメリアさんは、作品制作の詳しいエピソードと共に投稿してくださいました。「深海生物が好きな小1の息子と取り組んだ工作、ダイオウイカです。それぞれの足には、空気を入れて膨らませたり、ゴムや針金やペーパー芯が入っていたりと、動く仕掛けあり。うちの子は不器用なので、作品を巨大にして作業しやすくする作戦でいきました。これまでの私の人生で、ダイオウイカや深海生物なんて、全くの無縁だったけど、息子が目をキラキラさせて色々教えてくれるので、私自身の世界も広がります。夏の楽しい思い出をありがとう。」プルメリアさんまるで本物かと見間違うかのようなダイオウイカでとても驚きました。素材の選定と場所によって素材を変える工夫が表現力として素晴らしく、まさに深海生物だ!という雰囲気が出ています。中が青いペットボトルのフタを使うセンスもなかなかです。きっとクリエイティブな視点で日常生活でアンテナを張っているのでしょうね。ダイオウイカの特徴の2本の触腕も先まで特徴を捉えていて素晴らしいなと思います。海で泳いでいる姿を想像して水族館にいった気分になれました。素晴らしい作品をありがとうございます!井上先生賞Upload By 金裕珍(発達ナビ編集部)最後に、発達ナビの監修も務める、鳥取大学大学院教授の井上雅彦先生からの表彰です!出典 : 井上先生賞は、おかみさんのお子さんが作った「ダンボールフェラーリ」が受賞!段ボールでつくったとは思えないリアリティで、ひときわ存在感を放っていました。おかみさんルマン仕様でしょうか?曲線的なボディラインやライトのバランス、ホイールや車内のディテールの細やかさ、色合いもあえてフェラーリレッドでなく白を選択するなど、随所にお子さんの「入れ込み」が感じられます。好きなものを作る時は、きっと時間を忘れ、すごく集中できる至福の時間なのでは、と思いました。製作中の様子や車について熱く語ってくれる様子が目に浮かぶようです。リアウイングがなぜないのかをいつか教えてください。おめでとうございます!これからも熱い作品を作ってください。まとめ出典 : いかがでしたか?想像力に富んだ子どもたちらしい、個性豊かな作品たちですよね。どの作品を見ても、細部にまで宿っているこだわりから、子どもたちの頑張りがひしひし伝わってきます!また、作品を紹介する親御さんたちの文章にも、子どもに対する愛情が感じられ、とても温かい企画になりました。皆さん、ご協力ありがとうございました!
2017年08月31日さまざまな特性により〈育てにくさ〉を感じることもある発達障害のあるお子さん。家庭で多くのママが困っている「あるあるトラブル」について、川崎市通級指導教室の先生方に具体的な声かけ・働きかけについてアドバイスをもらいました。発達障害の有無に関わらず、子育て中のママのヒントが満載です!基本は「お手本を見せる」「一緒にやる」「ほめる」「お母さんたちから、身の回りのことを自分でしてほしいのにうまくいかない、指示したことをやってくれないという悩みをよく聞きます。大原則は、“お手本を見せる・一緒にやる・ほめる”こと。発達障害のあるなしに関わらず、子どもは親や先生をまねることから学びます。なるべく具体的に見せてあげてください。時間がかかることもありますが、一つひとつの手順を一緒にやることでできることが増えていきます。言われたことを100%できるようになるのは何度も繰り返し練習してから。完璧を求めず、お子さんの行動の中で“できた”ところを見つけてほめましょう」実際の困りごととその対処についてもこまかく教えてもらいました。ケース1:出かけるときの用意が遅い・後片づけができない「何を用意したらよいか、それにはどのくらい時間がかかるかなどを理解するのは難しいものです。まずは親が見本を見せながら、“準備する習慣”をつけさせましょう。親がサポートする量を徐々に減らしていくのが理想的。ひとつ準備ができたら“次は◯◯をしよう”と具体的に指示を出します。片づけも同様。何をどこにしまえばよいのか教えてあげてください。“早くしなさい”など抽象的な指示では伝わりません」そのほか、効果的な工夫・必要な持ち物は1カ所にまとめて置く・持ち物チェック表を作り、見えるところに貼っておく・着替えに時間がかかる場合は、ボタンがないものなどひとりで着脱しやすいものから挑戦させる・物の置き場所を固定し、箱にオモチャの写真を貼るなど、目で見てわかりやすいようにする・一緒に片づける(競争などゲーム形式にするとよい)・「片づけが終わったら◯◯をしよう」など、できたあとのお楽しみを与えるそれぞれのボックスに片づけるものの写真を貼り付けてある通級指導教室のオモチャ箱。ひと目で理解できるよう工夫されていますケース2:宿題をやらない「下校してきてから寝るまでの間、いつどこで宿題をするか親子で相談しましょう。子どもにとってやりやすい時間で、かつ親が関われる時間が理想的。親子で話し合いながら“家に帰ったらやることリスト”を作るとよいです。宿題をやったあとのお楽しみを作るのもひとつの手。あるママはリビングの隅に駄菓子コーナーを作り、宿題が終わると、そこで使える家庭内通貨を渡してお菓子を買えるようにしていました。簡単な計算の練習にもなり一石二鳥。気が散りやすいお子さんなら、宿題をする部屋の環境を整えることも大事です。テレビを消す、ゲームやオモチャは目に入らないところにしまう。きょうだいがいる場合はより配慮が必要ですね」小学校の通級指導教室内はこんなにシンプル。目の前の課題に集中しやすいよう余分な物や掲示物、装飾は一切ありませんまた児童精神科医の先生からは、「定型発達の子と同じ量・同じ難易度の宿題がこなせない場合もあります。ですが、宿題はやらなければいけないこと。みんなやっていること。ただ、“何をみんなと同じにするか”です。まずは、みんなと同じように宿題をやり、提出することを目標にしましょう。その際、みんなと同じ内容の宿題である必要はありません。その子の発達に応じた宿題を出してもらえるよう、担任の先生に相談するとよいでしょう」というアドバイスもいただきました。ケース3:親や先生からの指示が聞けない、言うことを聞かない「指示を聞くプロセスとして、聞く→理解する→行動に移すという過程があります。お子さんによっては耳からの情報が入りにくいことも多く、“言うことを聞かない”のではなく、“聞きとれない、聞きもらしていてわかっていない”ことも。そのため指示を出す側に工夫が必要です」指示を出す際の工夫・指示を出す前に、こちらに注目しているか、聞こうとしているか確認する(子どもの前で声をかける、肩をたたいて視線がこちらに向くようにするなど)・肯定的な言い方で伝える(“◯◯したらダメ”ではどうすればいいのかがわかりません。“◯◯してね”と伝えましょう)・指示は短く具体的に。指示が複数になると忘れてしまいます・「◯◯してくれると嬉しいな」など目を合わせてこちらの気持ちを伝えることも有効ケース4:行動の切り替えができない「得意なことや好きなことには集中力しすぎることがあるため、今していることが止められないのはよくあること。急な予定変更も苦手なので、あらかじめ次の活動の見通しをはっきりさせておきましょう。“何時からどこにでかけるよ”“何時になったらお風呂だからね”と予告をしたり、予定表・手順表を貼り予定が見えるようにしたりするのも効果的。キッチンタイマーや砂時計を使って残り時間を明確にするのも大事です。また、“それを止めたら◯◯ができるよ”など、切り替えができたあとのメリットを伝えるのもよいですね。テレビやゲームの時間などについては、ムリのないルールになっているか、親もそのルールを守れているか再確認してみてください」取材協力:川崎市通級指導教室<文・写真:フリーランス記者森藤理絵>
2017年08月31日ADHD(注意欠陥・多動性障害)とは?出典 : (注意欠陥・多動性障害)は不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(考えずに行動してしまう)の3つの症状がみられる発達障害のことです。年齢や発達に不釣り合いな行動が仕事や学業、日常のコミュニケーションに支障をきたすことがあります。人口調査によると、子どもの20人に1人、成人の40人に1人にADHDが生じることが示されています。以前は男性(男の子)に多いと言われていましたが、現在ではADHDの男女比は同程度に近づいていると報告されています。出典:DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル文部科学省はADHD(注意欠陥・多動性障害)を以下のように定義しています。ADHDとは、年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び/又は衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。また、7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。上記の文部科学省の定義では7歳以前に症状が現れるとされていますが、2013年に出版されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)では、診断年齢は12歳に引き上げられています。。また、ADHDの日本名については、日本精神神経学会の定めた「注意欠如・多動性障害」が用いられることもありますが、現在でも「注意欠陥・多動性障害」を使う場合が多いので、本記事ではこちらを障害名として使っていきます。近年では、子どもだけではなく大人になってからADHDと診断される人も多く、注目を浴びています。日本精神神経学会「DSM-5病名・用語翻訳ガイドライン」 2014年ADHDの3つの症状ADHDの症状は「不注意」「多動性」「衝動性」の3つに分けることができます。それぞれの具体的な特徴を見ていきましょう。Upload By 発達障害のキホン・忘れ物が多い・何かやりかけでもそのままほったらかしにする・集中しづらい、でも自分がやりたいことや興味のあることに対しては集中しすぎて切り替えができない・片づけや整理整頓が苦手・注意が長続きせず、気が散りやすい・話を聞いていないように見える・忘れっぽく、物をなくしやすいUpload By 発達障害のキホン・落ち着いてじっと座っていられない・そわそわして体が動いてしまう・過度なおしゃべり・公共の場など、静かにすべき場所で静かにできないUpload By 発達障害のキホン・順番が待てない・気に障ることがあったら乱暴になってしまうことがある・会話の流れを気にせず、思いついたらすぐに発言する・他の人の邪魔をしたり、さえぎって自分がやったりするADHDの3つのタイプとそれぞれの特徴出典 : 前の章でADHDには3つの症状があることを説明しましたが、人によってその現れ方の傾向が異なり、大きく3つのタイプに分けることができます。また、性別によっても多いタイプが変わってきます。多動と衝動の症状が強く出ているタイプです。次のような特徴が現れることがあります。・落ち着きがなく、授業中などでも構わず歩き回ったり、体を動かしてしまうなど、落ち着いてじっと座っていることが苦手・衝動が抑えられず、ちょっとしたことでも大声を上げたり、乱暴になったりしてしまい、乱暴な子、反抗的だととらえられやすい・衝動的に不適切な発言をしたり、自分の話ばかりをする・全体的にみるとこのタイプは少ないが、男性(男の子)に現れることが多い不注意の症状が強く出ているタイプです。次のような特徴が現れることがあります・気が散りやすくて、物事に集中することが苦手・やりたいこと、好きなことに対してはとても集中して取り組むが切り替えが苦手・忘れ物や物をなくすことが多く、ぼーっとしているように見えて人の話を聞いているのか分からない・幼い子どもの頃は、ADHDではなくとも忘れ物が多い人が少なくないため、ADHDと気づかれにくい。不注意の特性は女性(女の子)に現れることが多い。多動と衝動、不注意の症状が混ざり合って強くでているタイプです。次のような特徴が現れることがあります・多動性-衝動性優勢型と不注意優勢型のどちらの特徴も併せ持っており、どれが強く出るかは人によって異なる・忘れ物や物をなくすことが多く、じっとしていられず落ち着きがない・ルールを守ることが苦手で順番を守らない、大声を出すなど衝動的に行動をすることがあるこれらの分類はアメリカ精神医学会のDSM-4-TRによって規定されたものです。現在でもADHDの分類はこれらの3つのタイプによって分けられることが多いのですが、2013年に出版されたDSM-5においては、新たな診断基準が規定されています。詳しくはADHDの診断方法の章を参照してください。また、ADHDはアスペルガーや自閉症を含む自閉症スペクトラム(ASD)や学習障害(LD)などのほかの発達障害や睡眠障害などと合併することもあります。その場合は上記に挙げた以外の症状が見られる場合もあります。年齢別に見たADHDの症状の現れ方出典 : ■生後すぐから診断ができるの?ADHDは発達障害のひとつですが、発達障害は、言語・認知・学習といった発達領域が未発達の乳児では、症状が分かりやすくでることはありません。ですから、生後すぐにADHDの診断がでることはありません。また、ADHDの症状は他の発達障害の症状と共通するものもあるので、判断には注意が必要です。しかし、ADHDと診断された人たちは、乳児期に共通して特徴的な行動をとっていることが多くあります。・なかなか寝付かない・寝返りをうつことが多く、落ち着きがない・視線が合わない・抱っこされることを嫌がる乳児のADHDは見分けにくいですが、傾向として、後から振り返るとこのような行動が見られたケースも多いと言われています。■必ずしもADHDということではない上記の行動が共通して見られていますが、このような行動は定型の成長過程でも見られることがあるので、一概にADHDと結びつけることはできません。特に多動に関しては、生後まもなくから多動が気になる場合はごく少数です。気になるような場合には児童センターといった身近な相談機関や小児科などで相談してみましょう。ADHDの症状は小学校に入る頃までに現れる子が多いと言われています。■トラブルの原因となる行動をとることが多いこの時期のADHDの子は、以下のような行動をとることが多いです。ただ、前述の通り、ADHDの症状は他の発達障害の症状と共通するものもあります。必ずしもADHDだとは限らないので、特徴はあくまで参考程度にしましょう。・他の子をたたいたり、乱暴をすることがある・落ち着きがなくてじっとしていることができない・我慢ができないので癇癪(かんしゃく)をおこすことが多くみられる・物を壊すなど乱暴・破壊的な遊びを好むことがあるこれらの行動については、いくら言葉だけで注意しても同じ行動を繰り返してしまいます。■言葉の遅れがみられることも幼児期のADHDの子どもは他の発達障害との合併症状として、言葉の遅れなどの特徴が見られることもあります。■しつけの問題なの?幼児期になると、落ち着きがなかったり癇癪を起こしやすいといった行動から、ADHDに気づくことが多いようです。また、保育園や幼稚園でも他の子どもとトラブルを起こしがちになってしまいます。そのような行動が原因となり誤解され、しつけがされていないなど言われることがありますが、ADHDは先天的な脳の機能障害によるもので、しつけや育て方の問題ではありません。出典 : ■症状が顕著に現れてくるADHDの子どもが小学校に入学する頃には、以下のような症状が顕著に現れてきます。・授業中でもじっと座っていることができず、歩き回ったりする・注意力が散漫になって、興味の対象も次々と変化する・物を忘れたり、なくしてしまうことが多い・突然話しかけて他の人の邪魔をしたり、他の人に話しかけられてもぼーっとしてうわの空に見られる・突発的な行動をおこすことがあり、自分の怒りの感情をコントロールできない・友達と仲良くできずトラブルを引き起こしてしまうことが多い・不器用で何度やってもダンスが上手く踊れない、工作が苦手などがみられる■結果的に周りから問題視される何度も同じことを繰り返し注意されたり、授業態度などから周りからは問題視されたり、怠けていると思われることがあります。しかし、本人からすれば悪気があってしていることでもなければ、怠けているわけでもありません。■ADHDの診断がはっきりと下される時期小学校に上がる頃になると、ADHDの症状が顕著に現れるためADHDの診断が下される場合が多くなります。文部科学省の定義では7歳前、DSM-5によるとADHDは12歳前に症状が現れるとされていますが、必ずしもこの年齢で診断が下されるわけでなく、この年齢以前から症状がはっきりわかる場合には診断が下されます。神尾 陽子 「成人期の発達障害の臨床的問題」 2013年出典 : ■思春期のADHDは、合併症状にも注意思春期にはADHDの症状が治まる代わりに、学習障害(LD)などの発達障害との合併症状が目立ってくることがあります。対人関係がうまく築けない場合、自閉症との合併症状がある疑いもあります。ADHDの症状がみられる人は他の発達障害を合併している可能性もありますので、よくチェックして疑いがある場合には診断を受けてみましょう。例えば、・親・教師への強い反抗・友人とうまく付き合えず、トラブルになることが多い・ルールに従うことができないなどの行動がみられることがあります。■他人と自分を比較する思春期になると、他人と自分を比べて悩みやすくなります。ADHDの子どもも例外ではなく、他人と自分をよく比べるようになります。完璧主義の傾向が強いと“できないこと”に過敏になることもあります。そして、他人にはできて自分ができないことにコンプレックスを感じてしまいがちです。コンプレックスから次の行動をとる場合があります。・勉強への意欲の低下、学力の低下がいちじるしくなる・やる気がなく投げやりな態度・自分の世界に引きこもりがちになる場合もある知的機能に問題がない場合でも、不注意の特性が強いと、集団での学習に集中できず、学力の低下に結びつくこともあります。この結果、不登校やひきこもりなどの二次障害が現れることもあります。■薬の服用を嫌がる自分の障害を受け止めることができず、薬の服用を避けたり量を勝手に変えて服用することがあります。思春期の不安定な気持ちに寄り添いながら、家族が上手にサポートしましょう。出典 : ■大人になるとADHDはどうなるの?子どもの頃にADHDと診断された人の中には、成長につれて症状が目立たなくなったり、軽くなる人もいます。自分の特性を理解し、苦手な場面にもどのように対処するかを学ぶことで、日常生活の困難を乗り越えているひともいると考えられます。ですが、ADHDのある大人は、子どもの頃より困難が多いと感じることも多いようです。・親や教師のフォローがなくなる・やることが多くなる・大人としての行動や責任を求められるなど、周囲の環境の変化が大きいことがその理由と考えられます。そのため、大人になると社会生活を送るのが難しくなった、と感じるADHDの人が多くいます。また、大人になってADHDと診断を受けたり、診断を受けていない人でも同じ症状で困っている人も多くおり、大人の発達障害のなかではADHDの割合がもっとも高いと言われています。■大人のADHDに現れる症状大人の場合、ADHDによる特徴にはどのようなものが多くみられるでしょうか。・計画を立てたり、順序立てて仕事や作業を行うことが苦手・細かいことにまで注意が及ばないので、仕事や家庭でもケアレスミスが多い・約束などを忘れたり、時間に遅れたり、締め切りなどに間に合わない・片づけが苦手で乱雑になってしまう・同時に多くの情報を取り入れるのが苦手なので、一度に多くの指示や長い説明をされると混乱する・手間がかかったり、時間がかかったりして、集中が必要なものは後回しにしがち・何かに「はまる」と、ほどほどで止めることができず、なかなか抜け出せない(読書やネットサービス、ゲームなど)・長時間座っていることが苦手で、手足がむずむずしてくるADHDの診断方法出典 : 以下は、アメリカ精神医学会のDSM-5(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)に載っている診断基準です。該当項目が多い場合には、専門機関に一度相談してみるとよいでしょう。(DSM-5や日本精神神経医学会では「注意欠陥」ではなく「注意欠如」の表記に変更されましたが、前者の方が一般的に使われるため、本記事では前者の言葉を使用しています。)DSM-5における注意欠如・多動性障害(ADHD:Attention Deficit Hyperactivity Disorder)の診断基準A.(1)および/または(2)によって特徴づけられる,不注意および/または多動性-衝動性の持続的な様式で,機能または発達の妨げとなっているもの:(1)不注意:以下の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6ケ月持続したことがあり,その程度は発達の水準に不相応で,社会的および学業的/職業的活動に直接,悪影響を及ぼすほどである:注:それらの症状は,単なる反抗的行動、挑戦、敵意の表れではなく、課題や指示を理解できないことでもない。青年期後期および成人(17歳以上)では、少なくとも5つ以上の症状が必要である。(a)学業,仕事,または他の活動中に,しばしば綿密に注意することができない,または不注意な間違いをする(例:細部を見過ごしたり,見逃してしまう,作業が不正確である)(b)課題または遊びの作業中に,しばしば注意を持続することが困難である(例:講義,会話,または長時間の読書に集中し続けることが難しい).(c)直接話しかけられたときに,しばしば聞いていないように見える(例:明らかな注意を逸らすものがない状況でさえ,心がどこか他所にあるように見える).(d)しばしば指示に従えず,学業,用事,職場での義務をやり遂げることができない(例:課題を始めるがすぐに集中できなくなる,また容易に脱線する).(e)課題や活動を順序立てることがしばしば困難である(例:一連の課題を遂行することが難しい,資料や持ち物を整理しておくことが難しい,作業が乱雑でまとまりがない,時間の管理が苦手,締め切りを守れない).(f)精神的努力の持続を要する課題(例:学業や宿題,青年期後期および成人では報告書の作成,書類に漏れなく記入すること,長い文書を見直すこと)に従事することをしばしば避ける,嫌う,またはいやいや行う.(g)課題や活動に必要なもの(例:学校教材,鉛筆,本,道具,財布,鍵,書類,眼鏡,携帯電話)をしばしばなくしてしまう.(h)しばしば外的な刺激(青年後記および成人では無関係な考えも含まれる)によってすぐ気が散ってしまう.(i)しばしば日々の活動(例:用事を足すこと,お使いをすること,青年期後記および成人では,電話を折り返しかけること,お金の支払い,会合の約束を守ること)で忘れっぽい.(2)多動性および衝動性:以下の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6カ月持続したことがあり、その程度は発達の水準に不相応で、社会的および学業的/職業的活動に直接、悪影響を及ぼすほどである。注:それらの症状は、単なる反抗的態度、挑戦、敵意などの表われではなく、課題や指示を理解できないことでもない。成年期後期および成人(17歳以上)では、少なくとも5つ以上の症状が必要である。(a)しばしば手足をそわそわ動かしたりトントン叩いたりする。またはいすの上でもじもじする。(b)席についていることが求められる場面でしばしば席を離れる。(例:教室、職場、その他の作業場所で、またはそこにとどまることを要求される他の場面で、自分の場所を離れる)。(c)不適切な状況でしばしば走り回ったり高いところへ登ったりする(注:青年または成人では、落ち着かない感じのみに限られるかもしれない)。(d)静かに遊んだり、余暇活動につくことがしばしばできない。(e)しばしば”じっとしていない”、またはまるで”エンジンで動かされているように”行動する(例:レストランや会議に長時間とどまることができないかまたは不快に感じる:他の人たちには、落ち着かないとか、一緒にいることが困難と感じられるかもしれない)。(f)しばしばしゃべりすぎる(g)しばしば質問が終わる前に出し抜いて答え始めてしまう(例:他の人たちの言葉の続きを言ってしまう;会話で自分の番を待つことができない)。(h)しばしば自分の順番を待つことが困難である(例:列に並んでいるとき)。(i)しばしば他人を妨害し、邪魔する(例:会話、ゲーム、または活動に干渉する;相手に聞かずにまたは許可を得ずに他人の物を使い始めるかもしれない;青年または成人では、他人のしていることに口出ししたり、横取りすることがあるかもしれない)B.不注意または多動性ー衝動性の症状のうちいくつかが12歳になる前から存在していた。C.不注意または多動性ー衝動性の症状のうちいくつかが2つ以上の状況(例:家庭、学校、職場;友人や親戚といるとき;その他の活動中)において存在する。D.これらの症状が、社会的、学業的、または職業的機能を損なわせているまたはその質を低下させているという明確な証拠がある。E.その症状は、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではなく、他の精神疾患(例:気分障害、不安症、解離症、パーソナリティ障害、物質中毒または離脱)ではうまく説明されない。これらの結果から、不注意と衝動性が見られるタイプ、不注意が優位に見られるタイプ、多動性と衝動性が見られるタイプに分類され、さらに重症度が3段階に分かれて診断が下されます。この診断基準は、年齢によって障害の症状の現れ方が変わり、区分も流動的であるということを考慮したものだと考えられます。専門機関での診断は、上で述べたアメリカ精神医学会のDSM-5や世界保健機関(WHO)のICD-10による診断基準によって下されますので、正式に診断を受けたい場合には専門機関でも診断や検査を受けることをおすすめします。ADHDの疑いを感じたらどうすればいい?出典 : もしかしてADHDなのかな?と疑問を持ったら、まずは無料で相談できる身近な専門機関の相談窓口を利用するのがおすすめです。子どもか大人かによって、行くべき機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所・発達障害者支援センター【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所知能検査や発達検査は児童相談所などで無料で受けられる場合もありますし、障害について相談することも可能です。その他、発達障害者支援センターで障害についての相談ができます。自宅の近くに相談機関がない場合には、電話での相談にものってくれることもあります。以下は小児神経学会が発表している、発達障害診療医師の名簿です。この他にも、児童精神科医師や診断のできる小児科医師もいます。まず身近な相談機関に行って、障害の疑いがあればそこから専門医を紹介してもらいましょう。日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」ADHDの治療出典 : を根本的に治療することはできません。しかし、ADHDによる困難の乗り越え方を学ぶ教育・療育や、ADHDの症状を緩和する治療薬は存在します。また環境調整をしたり、周囲が普段からの対応法を考えることによって、本人が生きやすい環境を作ることも可能です。療育とは、社会的な自立をめざしてスキルを習得したり、環境を整えるアプローチのことです。この方法ではソーシャルスキルトレーニング、ペアレントトレーニング、環境調整などの手法が用いられ、本人の苦手な行動を調整し、のぞましい適応的な行動や得意な部分を磨いていくことができます。ADHDの治療には薬物療法が用いられることもあります。ADHDの治療薬には不注意・多動性・衝動性の症状を緩和する効果があります。しかし、この効果は服薬している間だけです。薬の効き方は個人によって違いがあり、また副作用の出方もまた同様です。そのため、医師と相談しながら使用する必要がありますADHDで使われる主な治療薬は主に2種類あり、ストラテラ(正式名アトモキセチン)や、コンサータ(正式名メチルフェニデート)などが用いられます■適切なサポートがない場合…ADHDと診断された子どもの経過は、以前は比較的楽観視されていました。しかし、ADHDの人が適切な治療やサポートを受けられない場合、ADHDの主症状とは異なる症状や状態を引き起こしてしまうことがあります。このような合併症を、「二次障害」と言い、下記のような症状・状態が見られることがあります。・うつ病・行為障害・不安障害・反抗挑戦性障害・不登校やひきこもり・アルコールなどの依存症などまた、ADHDの本人を支える人たちへのサポートも重要となります。特にこどものADHDの場合は、親が周囲との対応に追われて疲弊してしまっていることもあるため、心理的なサポートが重要となります。参考:今村明先生に「ADHD」を訊く | 日本精神神経学会,JSPNまとめ昔からADHDの特性がある子どもは多くいましたが、ちょっと変わった子や問題児として扱われていることが多くありました。現在は、ADHD(注意欠陥多動性障害)という名称も広がり、脳の機能障害が原因の発達障害だと広く認識されています。ADHDの子どもの場合、突然道路に飛び出したり、保育所や幼稚園、学校から呼び出されたり、友達とトラブルをおこしてしまったりと。保護者としては、困ってしまうことも少なくないかもしれません。ですが心身の成長や、適切なサポートを受けることによって、すこしずつ改善してゆくこともできます。また、ADHDの症状でいちばん困っているのは「本人自身」ということと「わざとやっている訳ではない」ということを忘れないであげてください。他の発達障害との合併や二次障害に目を配りながら、慎重に見守りサポートしていきましょう。
2017年08月30日知的障害者福祉法とは?出典 : 知的障害者福祉法(旧:精神薄弱福祉法)は、1960年に制定された法律です。知的障害のある人の福祉をはかることを目的とした法律です。2006年の改正前、その目的は「生活支援」という側面だけでしたが、現在は知的障害のある人の自立と社会参加を促進するよう法律で定められています。それでは実際の法律の文言を見てみましょう。(この法律の目的)第一条 この法律は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 (平成十七年法律第百二十三号)と相まつて、知的障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため、知的障害者を援助するとともに必要な保護を行い、もつて知的障害者の福祉を図ることを目的とする。また、この法律は2013年に制定された「障害者の日常及び社会生活を総合的に支援するための法律」、別称「障害者総合支援法」という障害のある人全般に適用される法律とあいまって、その内容が定められています。それまでは、障害種別によって個別の法律に基づき様々なサービスや制度が成り立っていました。その後、総合支援法ができたことにより、「知的・身体・精神」の3つの障害が同じ法律内で扱われることとなりました。そのため、従来の知的障害者福祉法がもっていた独自の法的な意義は希薄化しているのが現状です。それにともない、知的障害のある人へのサービスや制度も、障害者総合支援法に移行しています。知的障害者福祉法の概要出典 : 知的障害者福祉法は以下の4つから構成されています。・総則・実施機関及び更生援護(実施機関等、障害者入所支援施設等の措置)・費用・雑則総則とは、全体を通じて適用される法律のきまりのことです。つまり、法の根幹となる部分です。知的障害者福祉法における総則は、以下の4つの項目から成り立っています。◇目的知的障害のある人の自立と経済活動を促進させるために、知的障害者の福祉をはかることを目的としています。このために、国や自治体、施設などは知的障害のある人を保護し、適切な援助を行うことが定められています。◇自立への努力と機会の確保・知的障害のある人は、そのもっている能力を使って社会活動、経済活動に参加するように努力しなければならないとしています。・社会を構成する一員として、自立し、社会、経済、文化などの活動に参加する機会をもっているとされています。◇国、地方公共団体と国民の責務国や地方公共団体は、上の理念が達成されるために、国民の理解を促し、必要な援助と保護を行うことが定められています。国民は、知的障害のある人の福祉について理解を深め、社会経済活動参加する努力に対して協力することが定められています。◇職員の協力義務知的障害のある人に援助や保護を行う職員は、児童から成人まで一貫して福祉支援を行うことが定められています。このように、知的障害のある人が社会の一員として、社会的、経済的な活動に参加できるように、すべての国民、行政、職員が努めることを義務付けたのが、知的障害者福祉法です。この部分には、知的障害福祉法に関する支援を提供する機関について記載されています。・支援の実施は、市町村が実施の主体となっていること・知的障害者の判定は、知的障害者更生相談所で行うことなどの点が記載されています。この部分はのちの章で詳しく説明します。知的障害者福祉法のこの項では、知的障害のある人のための施設を運営、設立する際の費用を出す義務者が定められています。また、知的障害のある人がサービスを利用するときには、一部または全部の負担が課せられることになっていますが、その負担は、当事者および扶養者の自己負担の能力に応じることが記されています。知的障害者福祉法ができたわけ出典 : 知的障害のある人への総合的な福祉支援は、どのような理由から展開され、本格的に開始したのでしょうか。日本で、最初に知的障害のある人への福祉サービスを規定したのは、1947年の児童福祉法です。ここでは、障害の有無についての言及はなく、すべての児童が等しく、生活を保障されなければならないという理念が述べられています。その後、1953年に「精神薄弱児対策基本法」が策定されました。この法は、のちの1960年に成立する知的障害者福祉法の下敷きとなったものです。この法律の要綱では、成人をも視野に入れており、18歳を過ぎた知的障害のある人にも必要な施策がとられることとなっていました。しかし、この法律には様々な問題点がありました。というのもこの法律では、知的障害のある人の「隔離」と「保護」を前提としていた点です。そのために、具体的にとられた施策は、不良行為を行う知的障害のある人を収用する設備の強化や、優生手術の実施など、知的障害のある人を社会から排除するものでした。また、実際の福祉施策が適用されたのは、18歳未満の知的障害がある子どもだけでした。「隔離」を前提とするような法律の問題点を改善する声があがり、1960年に成立したのが知的障害者福祉法です。この法律でようやく、名実ともに児童から成人までの一貫した支援を提供する事業が整備されました。知的障害者福祉法の改正と障害者総合支援法出典 : 障害者制度は2003年、2006年、2013年と3度の変革を迎えています。これにともない知的障害者福祉法の位置づけや内容も変化してきました。まず2003年には、支援費制度が導入されました。ここでのキーワードは「障害者の選択の尊重」です。この制度の導入により、それまでは行政が定めたサービスしか受けることのできなかった利用者は、自分に合ったサービスを選べるようになりました。そして2006年には、「障害者自立支援法」が成立しました。ここで福祉サービスにおける障害者の位置づけが大きく変わりました。というのも、それまでは障害の種別によって提供されるサービスは分かれていたからです。障害者自立支援法の成立により、障害の種類や年齢にかかわらず、障害のある人たちが必要とするサービスを利用できるように、利用のしくみが一元化されました。そのために、それまで知的障害のある人を対象として提供されていたサービスの多くが障害者自立支援法という共通の制度のもとで一元的に提供されることになりました。2013年には、上記の障害者自立支援法の改正法として、障害者総合支援法が成立しました。ここで、よりよい支援を行うことで施設を退所する障害者が省令で追加されるなど、障害のある人が自立した日常生活、社会生活を営むことが法律の目的として定められいます。障害者総合支援法については以下の記事で詳しくご紹介しています。知的障害者福祉法の中で明確な定義がない「知的障害者」出典 : 「知的障害」という名称は、学校教育法や児童福祉法などの法律で使用されてから、一般的に福祉現場や医療の領域で、日常的に使われるようになりました。一般的には、知的障害とは、金銭管理、読み書き計算など日常生活や学校生活の上で知的機能を使う知的行動に支障があることを指す場合が多いです。しかしながら、肝心な法律においては、どのようなものを知的障害と指すのかを定める規定が見られません。このために、医学、心理学、教育学の領域でそれぞれ定義が定められており、共通した理解が得られていないのが現状です。またその呼び名も、教育分野では「知的発達障害」「知的発達遅滞」、医学関連では「精神遅滞」「精神発達遅滞」などばらばらです。支援の必要性の有無、障害の程度をもって、知的障害者を定義する法令は存在せず、客観的な基準を示していません。厚生労働省においては、知的障害を精神医学の領域における「精神遅滞」と同じものと定めていることから、法令上の用語もその基準にならっていることが多いようです。知的障害(ID: Intellectual Disability)は、医学領域の精神遅滞(MR: Mental Retardation)と同じものを指し、「知的発達の障害」を表します。すなわち「1. 全般的な知的機能が同年齢の子どもと比べて明らかに遅滞し」「2. 適応機能の明らかな制限が」「3. 18歳未満に生じる」と定義されるものです。「知的障害者更生相談所」知的障害のある人がより暮らしやすくなるための機関出典 : 知的障害者福祉法は、知的障害のある人がより暮らしやすくなるためのサポートを行う機関を、都道府県に設置することを定めています。それが知的障害者更生相談所です。主に18歳以上の年齢の人が対象となります。18歳未満の場合には、児童福祉法のもと設置された児童相談所を利用することとなります。知的障害者更生相談所では、以下の3つの取り組みが行われています。この施設では、知的障害に関する高度で専門的な知識や技術を必要とする人のための相談を受け付けています。医師やケースワーカーなどの知的障害者福祉司という専門の知識をもった職員が相談にのってくれます。知的障害者更生相談所では、知的障害の判定と療育手帳の交付を行っています。判定および交付は、医師や心理判定員によるものです。知的障害には、国の法律によって定められている定義が存在しません。そのため、障害の認定区分や基準は自治体により異なっています。おおまかには、知能や生活習慣、行動の特徴などから判定します。その他には、IQ(知能検査などの発達検査の結果でわかる知能指数のこと)や日常生活動作(身辺処理、移動、コミュニケーションなどの能力のこと)などが判定の材料に用いられることもあります。療育手帳の交付の詳しい方法は、以下の記事を参照ください。障害の状況や地理的な理由により、来所相談や定期相談ができない場合もあるかもしれません。そのようなときには、自治体によっては福祉士や心理判定員が、相談受付のため地域の巡回も可能ですので、利用するとよいでしょう。知的障害のある人に関連する制度や利用できる手当て出典 : 知的障害のある人に対する支援の体制にはさまざまなものがあります。現在、障害の種別に関わりなくサービスを一元化する動きのために、本法律を根拠とした知的障害のある人に特化した制度はありませんが、別の法律に準拠やガイドラインに定められた制度や手当をご紹介します。知的障害と判定された人に、一貫した相談や指導を行い、各種の福祉サービスを受けやすくすることを目的とした制度です。交付は、都道府県及び指定都市の長が行います。療育手帳制度は、法律で定められた制度ではなく、「療育手帳制度について(昭和48年9月27日厚生省発児第156号厚生事務次官通知)」というガイドラインに基づいた制度で、都道府県・政令指定都市ごとに要綱などを制定して行われています。療育手帳をもつことで、以下のような支援やサービスを受けることができます。・保育園への入園優待・就労支援・障害者医療費の助成・公共交通機関の割引・各種料金の割引、減免支援費制度とは、障害のある人自らがサービスを選択して、デイサービスや授産施設などの事業者と対等な立場で契約を結び、サービスを受けることのできる制度で、2003年に導入されたものです。当たり前のことだと思われた方もいらっしゃったでしょうが、導入以前は、利用者はサービスを選択することができず、市区町村などの行政が障害のある人の受けるサービスを決定していたのです。支援制度の「支援費」というのは、「利用者が施設を利用するための費用を市区町村が負担しますよ」ということです。ですので利用者は、直接何らかの金銭を受け取ることができるというわけではありません。障害のある人が施設を利用する際には、本来は全額費用を払わなければならないところから、行政がその利用料を負担するために、利用者が支払う費用が軽減されたという意味で「支援費」なのです。支援費制度は、現在障害者総合支援法に移行しています。それまでの支援費制度は、障害種別ごとのものであったり、利用できる施設が障害種別に応じて細分化されているという点から、複数の障害種別のある利用者からするとややこしいものでした。そこで、これらの課題を解決するとともに、障害のある方本人を中心とする個別の支援をより効果的に行っていくために、2005年に障害者自立支援法(のちの障害者総合支援法)への移行が行われました。成年後見制度とは、認知症のある高齢者、精神障害のある人、および知的障害のある人など、判断能力の十分でない人を支援する制度です。1992年に設けられました。この制度では、お金の管理や相続という手続きを、その人に代わって代理人が行うことができます。成年後見制度には二つの種類があります。一つは、法定後見制度といわれ、家庭裁判所が成年後見人などを選任し、すでに判断能力が低下している人に対して行われるものです。もう一つは、任意後見制度といい、あらかじめ本人が任意後見人を選び、近い将来に備え支援者と支援内容を決めておくものです。具体的な利用の方法や手続きについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参照ください。「もしも」のときのために、掛け金を積み立てておく制度です。精神、知的、身体に障害のある人の保護者が、亡くなったり、重度の障害になったときに、本人に終身一定額の年金が支給される制度です。対象は、・将来独立することが困難であると認められる、特に知的、身体障害の1~3級の手帳をもつ者の保護者・65歳未満の保護者・特別な疾病、障害がないなどの条件があります。対象となる保護者は、毎月1口~2口の掛け金を納めます。1口あたりの金額は、保護者の年齢により変わります。支給は保護者が亡くなった、重い障害をもった場合に、1口につき、月額2万円が本人に、終身支払われます。詳しくは、お住いの市区町村の保健所、保健局のHPをご覧ください。障害の等級によっては、以下の手当が支給されます。該当する手当をもらうことで経済的、精神的な負担の軽減することができます。・障害基礎年金・障害厚生年金・在宅重度心身障害者手当・特別障害者手当・特別児童扶養手当・障害児福祉手当など赤塚俊治/著『新・知的障害者福祉論序論』2008年/刊/中央法規出版山内一永/著『図解 障害者総合支援法早わかりガイド』2012年/刊/日本実業出版社まとめ出典 : 知的障害のある人のための法律は、刻々と変化しています。歴史的な背景から起こっている、障害のある人への差別や偏見から派生する社会問題を解決するために、国の施策が展開されています。法律の目的である「自立」「社会参加」という理念に向かう途上で、まだまだ課題点は多く残りますが、その達成に向けて私たちは着々と歩を進める途上にあるともいえるでしょう。
2017年08月30日