在宅介護では暴言や暴力が絶えないともいわれています。このいわゆる虐待は大きな問題でもあります。認知症の人に接するうえで最も大切なことは何か。このような悲劇を招かないために、一度立ち止まって考えてみる必要がありそうです。■ 最も暴力に発展しやすいのは子が親を介護するケース!?平成27年度、家族や親族による虐待数は15,976件でした。これは前年と比べて237件増えています。sakai / PIXTA(ピクスタ)介護者と要介護者の関係を大きく分けると、子が親を介護、妻が夫を介護、夫が妻を介護、妻が姑を介護、という4つのケースがあります。この中で最も感情を乱しやすいのは、子が親を介護するケースです。また認知症の人は感情のコントロールがうまくできないため、何かと怒ったり頑固になったりします。しかも言うことを聞かないうえ、暴言や暴力までふるうこともあります。その結果、介護者がストレスを抱え、今度は介護者による虐待が始まることも少なくありません。■ 虐待で最も多い!息子が親に対して行う暴力平成27年度の虐待事例15,976件のうち、息子が全体の40.3パーセント(7,099件)を占めています。Ushico / PIXTA(ピクスタ)以下、夫の21.0パーセント(3,703件)、娘の16.5パーセント(2,906件)の順に続いています。では、なぜ息子の暴力が多いのか。それは、もともと力の差があるうえ、身内という遠慮のない関係が災いし、暴力をふるいやすいのではないかと思われます。■ 在宅介護で虐待が起こる最大理由はストレス!息子や娘は、自分を育ててくれた親をいつまでも気丈で尊大な人と思いたいものです。しかし、幼児のようにわがままや身勝手な振る舞いをする親に、我慢できなくなり、つい手を挙げてしまうのではないでしょうか。厚生労働省の調査によると、在宅介護で虐待が起こる最大の理由は「介護疲れ・介護ストレス」とのこと。shimi / PIXTA(ピクスタ)徘徊や異常行動を起こす親に振り回されると、疲れ、ストレスが溜まり、やがて冷静に対処することができず、大声で怒鳴ったり、手が出たりします。■ 病に対する理解不足は悲劇を生む根源同じ質問を一日に何十回もされると、多くの人は冷静さを失うでしょう。でも、それが認知症なのです。言ったこと、聞いたことをすぐに忘れる病が認知症なのに、性格が悪いとか頭がおかしいとか、本気で思ってしまう人もいます。shimi / PIXTA(ピクスタ)認知症で最も悲しいことは、こうした誤解による関係性の崩壊です。では、どうすればいいのでしょうか?最大の防止策は、認知症を理解することです。多くの介護者が認知症を理解しないまま介護をしていると考えられます。介護方法は知っていても、病気についての理解がないため基本的な接し方ができない人が多いのです。これは悲劇の根源でもあります。認知症の人は病人である前に人なのです。汚い言葉には汚い言葉で返します。優しい言葉には優しい言葉で返します。■ 認知症を理解し受け入れる寛容さが大切認知症は治らない病気、認知症になったら家庭は崩壊する、などの言葉が独り歩きし、誤解を信じ込んでいる人はたくさんいます。認知症を理解することは相手を理解することであり、それによって憎まない・怒らないにつながります。しげぱぱ / PIXTA(ピクスタ)病を憎んで人を憎まず。難しいことかもしれませんが、病気を理解し真正面から受け入れる寛容さが私たちには必要なのだと思います。【参考】※イリーゼ高齢者虐待を防止するには?介護現場の実態と今後の解決策※厚生労働省医療経済研究機構「家庭内における高齢者虐待に関する調査」概要※厚生労働省平成27年度 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果
2018年09月18日この世から児童虐待がなくなるように、との願いから「#こどものいのちはこどものもの」というチームを組み、さまざまな活動をしているイラストエッセイストの犬山紙子さん。児童相談所で長年子どもの問題を扱ってきた元児童心理司で、『告発児童相談所が子供を殺す』などの著書もあるカウンセラーの山脇由貴子先生。児童虐待の根絶に向けた活動を続けているお二人に、“#わたしたちでもできること”というテーマで対談していただきました。※お二人の対談を3回に分けてお送りします。子どもの泣き声が大きすぎてもしも自分が通報されてしまったら……犬山:これまでの話とは逆なんですけど……イヤイヤ期で、毎日ギャン泣きするような子どもがいるお母さんの中には、自分が通報されやしないかとビクビクしている人も多いと思うんですよ。でも、もし通報されて、ちょっと様子を見に来られたとしても、別に堂々としていればいいんですよね。山脇:そうそう。通報されたくないからって、タオルで子どもの口を押さえちゃったりするお母さんも本当にいますけど。堂々としていればいいんです。そのあたりは、児童相談所の職員も慣れているので。「近所から通報があったので訪問しました。心当たりがありますか?」って聞かれたら「うちだと思います。いつか通報されるんじゃないかと思っていました。泣き声が大きくて困っているんです」と言って、子どもを見せればいいだけのこと。けっこういますよ、そういうお母さん。犬山:変に怖がりすぎないことですね。とはいえ、子どもがギャン泣きしているとき「うわ~、隣の家、どう思っているのかなぁ」っていうのは、頭をよぎりますよね。今日もうちの子の通う保育園のクラスメイトの女の子が、イヤイヤ期がすごすぎて、下着姿で登園してきたんですよ。お母さんも「どうしても着せられなかったんです」と言っていて。実際、保育園でも30分くらい着せられなかったみたい(笑)。それくらい大変な子は大変ですもんね。山脇:あと、中には近隣の人が、子どもの泣き声がうるさいから、児童相談所に通報して「なんとかしてくれ!」っていうケースもある。児童相談所が来ること自体は全然気にする必要はないです。「たぶん、またあると思います」くらいの対応で平気だと思います。犬山:あー、よかったー。心がラクになった~(笑)。山脇:児童相談所って通報するだけじゃなくて、もちろん相談することもできるんです。子どもがすごく泣いちゃって、バンバン通報されちゃうという人だったら「どうしたらいいんでしょう?」って、相談しちゃえばいいんですよ。虐待ではないんですから。自分も虐待してしまうかもしれないという不安カーッとなってしまった後はまず子どもにちゃんと謝ることが大切――自分が子どもを虐待してしまわないために、できることはありますか?山脇:子育ては大変だから、イラッとしますよね、絶対。イラッとして、子どもに何かひどいことを言ったり、たたいちゃったりしたら、それはもう子どもに謝るしかなくて。「ごめんね、イライラしちゃった……」って言って、ギュッてしてあげるしかない。犬山:そこで謝らずに正当化すると恐ろしいですよね。山脇:そう、「あんたが悪いからでしょ」っていうことになっちゃうので。基本は素直に謝ること。子どもにも「ごめんなさい」はちゃんと言いましょう。親が謝ってくれると、子どもは「自分が悪かったわけじゃないんだ」ということが分かるので。子どもにそれを分からせるということが大事。あとは、自分がどういうときにイライラしやすいかを知っておくことですよね。犬山:イラッとした後に、メモを取るといいかもしれないですね。おなかが空いていたとか、仕事をめちゃ抱えていたとか。山脇:カーッとなったときは、ちょっと子どもから離れられるといい。だから、やっぱり育児の協力者がいるのが一番いいですよね。どうしてもいない人は、自治体のサービスを使って。とにかくお母さんに余裕がないと、子育てがうまくいくはずがないから。あとは、カーッとなったときはどうするかを決めておく人もいます。シャワーを浴びるとか、お気に入りの服に着替えてみるとか、子どもを連れて外に出るとか。少し気分が変わることをやってみる。犬山:「イラッとした後メモ」とは別に、「今日よかったことメモ」みたいなのを残しておくのもいいかも。ダメなことばかり書いていると、最悪……って落ち込んじゃうから。毎日、客観的にいいところと悪いところが書けたら、いいところを伸ばせそうな気がする(笑)。山脇:私はいろんなご家族に「形容詞をたくさん共有できる家庭は明るい」という話をしているんですよ。一番分かりやすいのは「おいしい」ですね。家族で「おいしいね」って言いながら夕食が終わると、大体満足して一日終わります。だから、みんなで「楽しいね」「嬉しいね」っていうことがあった日は、メモしておくといいですね。それはみんなの思い出に残るものでもあるし。もちろん自分が今日よくできました、みたいなことでもいい。それを夫婦で探し合うというのも、私のクライアントにはやってもらっています。「今日あれがよかったよ」とか、「今日これをしてくれて、ありがとう」とか。挨拶が多い家、「ありがとう」や「ごめんなさい」が多い家は明るいんです。本にも書いているんですけど、とにかく“夫婦仲良く”ですよ。夫婦が仲良ければ、たいていのことはうまくいく(笑)。今も被害に遭っている子はたくさんいる虐待事件のニュースを風化させないためには――虐待の事件を他人事と思わず、身近に落とし込んで考えてみるということですね。山脇:虐待のニュースを聞いても「じゃあ、一般の人には何ができるかな?」っていうところには意外と話が行かないんですよね。それこそ児童相談所の批判とか、そういう方向に行っちゃって。一般の人とは常に遠いところにある。だから虐待の問題については、どうやったらみんなが活動したいという気持ちをキープしてくれるか、ですよね。犬山:そこは超課題ですよね。山脇:結愛ちゃんの事件は本当に悲しかったけど、でも、ああいうことは現在進行形でたくさん起こっているから。それが情報として報道されていないだけで。あんなにひどいケースは多くないにしても、このままだと結愛ちゃんみたいになっちゃう可能性のある家庭はきっと存在するから。実の親であってもね。犬山:気になったときに、ささいなことでもいいから、みんながまず一回、ちょっと動いてみることが大事なんですかね。それがひとつのフックになって、今後何かを見かけたときにアッとつながっていくのかなと思います。Text:Keiko IshizukaPROFILE山脇 由貴子Yukiko Yamawaki女性の生き方アドバイザー。家族問題カウンセラー。 東京都に心理職として入都し、都内児童相談所に心理の専門家として19年間勤務。2015年に退職後、「山脇由貴子心理オフィス」を立ち上げ、現職。『教室の悪魔』(ポプラ社)、『告発児童相談所が子供を殺す』(文春新書)、『思春期の処方せん』(海竜社)など。PROFILE犬山紙子Kamiko Inuyama1981年生まれ。コラムニスト、イラストエッセイスト。著書に『負け美女 ルックスが仇になる』(マガジンハウス)、『地雷手帖嫌われ女子50の秘密』(文春文庫)、『言ってはいけないクソバイス』(ポプラ社)ほか多数。2017年に女児を出産し、育児体験者への取材記録や自身の出産体験記を収録した『私、子ども欲しいかもしれない。』(平凡社)を刊行。現在は「SPA!」「anan」「steady.」「文學界」「読売新聞」などで連載中。▼第1回はこちら▼第2回はこちら
2018年08月31日<#わたしたちでもできることベビモフ特別対談>この世から児童虐待がなくなるように、との願いから「♯こどものいのちはこどものもの」というチームを組み、さまざまな活動をしているイラストエッセイストの犬山紙子さん。児童相談所で長年子どもの問題を扱ってきた元児童心理司で、『告発児童相談所が子供を殺す』などの著書もあるカウンセラーの山脇由貴子先生。児童虐待の根絶に向けた活動を続けているお二人に、“#わたしたちでもできること”というテーマで対談していただきました。※お二人の対談を3回に分けてお送りします。自分も子育てや仕事でいっぱいいっぱい。そんなときに、児童虐待に対してできることってなに?犬山:はぁ……こうした虐待の実態を聞いているだけでも相当しんどいです。私たち、ベビモフを読んでいる人たちって、子育てしながら仕事をされている方も多いかな。とにかく毎日大変だと思うんですよ。なので、児童虐待に対して何かアクションを起こそうと思うと、すごくハードルを感じてしまう。マザー・テレサみたいな人じゃないと、やれないんじゃないかとか。私ひとりが動いたところで、とか。いや、そもそも今、自分の子育てでいっぱいいっぱいだから、そんな余裕ないわ、とか。私も今回、アクションを起こすまでは、そういうイメージが強くて。でも、そんな余裕がない人でも、何かワンアクションで、ちょっとは状況がよくなるんじゃないかと思うようになったんです。虐待を受けているかもしれないお子さんがいるとしたら、近所の人はどんなことができるんでしょうか?山脇:とにかく私が一般の方向けに講演するときに言っているのは、みなさんがおかしいなと感じたら、大抵の場合、きっとそのおうちに何かあるということです。児童相談所の職員のほうが、慣れすぎているせいで「これくらいなら、あんまりおかしくない」って思っちゃうので。犬山:でも、一般の方にはなかなか見抜けないことも多いと思うんですよ。何かこういうサインがあったときは、気をつけたほうがいいという例はありますか?山脇:たとえば、家に帰りたがらないとか。基本的に、幼児から小学校低学年くらいまでの子が、夕方以降ひとりでフラフラしているのは危険ですよね。これはまず間違いない。あと、これは他人には分からないかもしれないけれど、夜、親が家にいないっていうのは絶対にダメですよね。仕事柄もあるのかもしれない。朝の5時まで仕事していましたっていう人も職種によってはいますよね。でも面倒を見る大人が誰かいる必要はあります。犬山:夫や祖父母とか、誰かがいるんだったら、いいけれども。夜、子どものそばに大人が誰もいないっていうのはダメですよね。山脇:それに付随して、子どもひとりでコンビニに行く、みたいなことも出てくるので。コンビニでは、おなかが空いて万引きする子もいれば、親に万引きさせられる子もいますし。コンビニにそういう子が来たら、通報するという運動をやっている地域もあります。そういう運動も広がっていくといいですよね。犬山:すばらしい!コンビニで何かできないかな?っていう話、ちょうど先日していたんです。もう何かやるとしたら、民間なのかなって。街中にたくさんあるところ、コンビニとか、歯医者とか……。山脇:歯医者にはガイドラインがありますね。犬山:やっぱり虫歯だらけとか?山脇:虫歯が多いのは、虐待のサインですからね。過去の経験では、5歳と6歳の男の子の兄弟で、虫歯がひどくて離乳食しか食べられないというケースがあり、その日のうちに保護しました。あと、朝ごはんを食べてこないとか、やせすぎているとか。小学生だったら、給食をあまりにもガツガツ食べているとかね。「大食いの子なんです」って言われちゃうかもしれないけど。犬山:給食ドカ食いとセットで、不潔だとか……。山脇:保育園に通っている子で、いつもすごく不潔で、持ってくるタオルも汚くて、みんなと一緒にプールに入れられないというケースもありました。犬山:自分の家の前でポツンと立っているみたいな子は?山脇:家からの閉め出しは、もう絶対に110番。ためらわず。ベランダに出すのも、基本は110番だと私は思っています。やっぱり亡くなってしまう子がいるので。いきなり児童相談所に連絡する前にできることはたくさんある犬山:気になる子がいた場合、ハードル低めのできることって、何がありますか?山脇:ひとつは保育園や幼稚園、学校の先生とか、その子に関わる人に話をしてみるっていうことですね。先生は園や学校でしか子どもの姿を見ていないので。放課後はこんな様子なんですよね、っていう情報が入ると「放っておくわけにはいかないな」となる。そこから、先生たちが子ども家庭支援センターや児童相談所に連絡しようか、っていう流れができると思います。だから、気になる子を発見したら、まずは仲のいいママ同士でもいいので、ちょっと情報を集めてみて、その情報を集約したものを先生に持って行く。先生がママたちに言ってくれるかどうかは分からないけれど、もうすでに子ども家庭支援センターが関わっている、という子どももいるかもしれないですし。「あの子についてはすでに把握しているので大丈夫です」と先生に言われれば、これ以上心配しなくていいんだなって思えるじゃないですか。犬山:そうですね。いきなり自分が児童相談所に連絡するとなると、ハードルが高いと感じる人も多いと思います。なんか自分のせいで、あそこの家がバラバラになるのかな……?って思うと、ビクビクしてしまって。先生だったら「すみません。ちょっと匿名でお願いしたいんですけど」みたいな感じで、相談しやすいかな。山脇:ただ、先生によっては、相談した後、すぐにその子の親に連絡しちゃった、というケースもけっこうあるんですよ。だから、ママたちから「先生はどうされますか?」と聞いてみるといいですよね。先生に「まず、親に確認します」と言われたら「それは危険ではないですか?」って。先生が親にいきなり連絡しちゃったせいで、家に帰った子どもが親に責められたなんてことがあると困るので。犬山:まだ園にも入っていない乳児の場合は、どうしたらいいんですか?山脇:乳児の場合は保健所になりますね。保健師さんなどが新生児のいる家庭を訪問する“新生児訪問”のほか、生後4ヵ月までの乳児がいる家庭をスタッフが訪問し、産後のサポートをする“こんにちは赤ちゃん”事業なども各自治体でやっています。犬山:うちの子が生後1カ月のときに来てくれた保健師さん、すっごく優しい方でした。山脇:だから自分の子の健診のついでに「ちょっと気になる子がいて」っていう話をしてもいいわけですよ。歯科健診とかもありますし。あとは、各自治体の子ども家庭支援センターのほとんどが、0歳~3歳を中心として親子で遊べるような“子育てひろば”を開設しています。そこにはちゃんとプロがいますから。犬山:乳児のママたちって、児童館にもけっこう行っていますね。山脇:自分の子どもが児童館や学童を使っていたら、そこの職員の方にちょっと言ってみるというのもいいかもしれない。一番話しやすい人に。犬山:なるほど。この知識はシェアしたいですね。山脇:それに、子ども家庭支援センターって、子どもを預かってくれるショートステイやトワイライトステイの窓口など、働くお母さんにとって活用しやすいサービスがいっぱいあるんですよ。登録しなきゃいけないのが面倒くさいっていう人もいますけど。費用もそんなに高くないですしね。だから、住んでいる自治体の情報を一度しっかり調べてみるといいかもしれない。犬山:でも自治体のホームページって、見づらいんですよね……。山脇:役所や支援センターにはリーフレットがいっぱい置いてあるので、一度行ってもらってくるのもいいと思いますよ。緊急性のある場合はどこに連絡すればいい?児童相談所と子ども家庭支援センターの違いとは――厚生労働省が作った児童相談所全国共通ダイヤル189(いちはやく)はどうですか?山脇:“いちはやく”は電話しやすい反面、実はそんなに早いわけじゃないんですよね。相談員が電話を受けた後、担当の児童相談所に連絡を入れるという流れなので、むしろ時間がかかっちゃう。緊急性があるときは、地区の児童相談所に直接連絡したほうが確実です。児童相談所に直接来た連絡は、虐待通報として「このケースはどうしましょうか?」って、緊急受理会議をするので。そっちのほうが、よっぽど早いです。さっき、犬山さんは「自分が連絡したせいで、その家がバラバラになったら……」と心配していたけれど、通報があったからといって、すぐに児童相談所が子どもを保護することはないですよ。たくさん調査をして、それから預かるかどうかを会議で決めるので。もちろん、その子が全身傷だらけ、アザだらけだったら、すぐ保護しますけど。犬山:うん、たぶんそのことを知らないからハードルが高いと思うので。この知識があるといいですよね。山脇:その一方で、今どきは子ども本人が「家でお母さんに叩かれている」とか「家に帰りたくない」って連絡をして、即、保護になるケースもあるんです。親に何か嫌なことをされると「それ虐待だから!」って騒ぐ子もけっこう増えていて(苦笑)。軽い一言で、すごいことになっちゃうよ、というのを子どもにも知ってほしいですね。あと、児童相談所じゃなくて、子ども家庭支援センターに「気になる子がいる」って通報するのでもいいんです。支援センターには子どもを預かる機能がないので。そこにはどんどん情報を入れてもらって大丈夫。自分の子どもに「気になる子」のことを聞いてみる――というのも、ひとつの方法山脇:そのほかに、自分の子どもに「気になる子はいないか」を聞いてみてもいいかなと思っていて。犬山:あ、いいですね。例えば虐待のニュースがあったときに、子どもに「友達でしんどそうな子がいたりする?」って。それ、すぐできることだ。山脇:で、気になったら、お母さん同士で情報共有してみる。ただ、お母さんたちも忙しいですけどね。犬山:でも、虐待のニュースがあって、何かしたいけど、何もできない。そんなとき「じゃあ、一回ちょっと集まってみましょうか?」って、ママ会をやるだけでも、ひとつのアクションになるかもしれない。何もなかったら、お茶するだけでもいいし。山脇:そうそう。ただの雑談になってもOKなんですよ。雑談は平和の象徴なので。犬山:自分がPTA役員になったら、それを提案してみるとか。山脇:うん、PTA活動が活発な学校っていうのは、とにかく平和ですよ。子どもが明るい。友達のお父さんが会長をやっていたり、お父さんたちが学校の花壇の手入れをしていたり。それだけ大人の目があることになるので。犬山:PTAって、働く親からすると、うわ、めんどくさい!って思っちゃうイメージなんですけど。子どもを守るっていう気持ちだったら、私もがんばれそうな気がする(笑)。山脇:気になる子が、自分の子どもの同級生とか知っている子だったら、チャンスがあったときに、その子から直接話を聞くっていうのもいいと思う。例えば、いつも季節に合わない服を着ているとしても、それは本人のこだわりなのか、親がこれを着ろと言っているのか、服がないのか、理由はいろいろですよね。子どもって、わりと無防備に話してくれるので。そこから何か大きなことが出てきちゃったら、そこで学校の先生に言えばいいし。通報までしなくても地域の力で救われる子も必ずいる山脇:気になる子どもの“お母さん”に声をかけてみることもできますよね。犬山:その声のかけ方も、先生にぜひ教えていただきたくて。「あなた、虐待してるでしょ?」っていうのは絶対にダメじゃないですか。いい声のかけ方って、ありますか?山脇:まぁ、前提として、そのお母さんが話をしたがる人かどうか、っていう見極めが必要だけれど。「いやいや、放っておいてください」みたいな感じになっちゃう人だったら、やっぱり調査の段階から専門家が入らなきゃいけない。でも、そうじゃなかったら、まずふつうに仲良くなって「子育て、大変だよね」っていう話からでいいと思うんですよ。この人は何を大変だと感じているのか、っていうことからだと思うんですよね。困っていることが分かれば、「何か手伝えることがあったら、手伝うよ」って言える。世の中には通報しなきゃいけない人もいるけど、地域の仲間同士のサポートで助かる親、救われる子どもも絶対にいるんです。地域に期待できるのは、そっちでしょうね。どうやって発見して、どうやって手伝ってあげるか、という感じ。「ぜひお願い」と言う人も、きっといると思うので。第3回へと続く……Text:Keiko IshizukaPROFILE山脇 由貴子Yukiko Yamawaki女性の生き方アドバイザー。家族問題カウンセラー。 東京都に心理職として入都し、都内児童相談所に心理の専門家として19年間勤務。2015年に退職後、「山脇由貴子心理オフィス」を立ち上げ、現職。『教室の悪魔』(ポプラ社)、『告発児童相談所が子供を殺す』(文春新書)、『思春期の処方せん』(海竜社)など。PROFILE犬山紙子Kamiko Inuyama1981年生まれ。コラムニスト、イラストエッセイスト。著書に『負け美女 ルックスが仇になる』(マガジンハウス)、『地雷手帖嫌われ女子50の秘密』(文春文庫)、『言ってはいけないクソバイス』(ポプラ社)ほか多数。2017年に女児を出産し、育児体験者への取材記録や自身の出産体験記を収録した『私、子ども欲しいかもしれない。』(平凡社)を刊行。現在は「SPA!」「anan」「steady.」「文學界」「読売新聞」などで連載中。▼第1回はこちら
2018年08月30日今年1月、過去に養父のウディ・アレンから「幼い頃に性的虐待を受けていた」と再び告発したディラン・ファロー。ディランはこの件について2014年にも「ニューヨーク・タイムズ」紙に語っていたが、当時はウディの仕事に大きな影響が出ることはなかった。しかし、「#Me Too」、「Time’s Up」運動が盛んないまは、ウディの監督作に出演した俳優たちが次々と「後悔した」、「もうウディの作品に出演することはない」とウディと距離を取ることを宣言。その影響からか、ここ数十年の間、少なくとも毎年1本は監督&脚本作を世に送り出してきたウディが、事実上の休業状態に陥っているという。「Page Six」によれば、昨年11月にウディはAmazonオリジナル映画『A Rainy Day In New York』(原題)の撮影を終了。ウディとAmazonは、2016年にこの作品のほかに3本の映画を製作する契約を結んでいるというが、「The Hollywood Reporter」は「大きな出費になるとしてもAmazonが契約を続行することは考えられない」と報じている。さらに、世界最大の映画データベース「IMDb」のウディの“これからの予定作品リスト”には2020年製作予定の1作品が掲載されているが、関係者は「資金を確保できていない」と語り、製作に乗り出すことができない状況だ。「ウディは働くことが大好きで、休暇なんて取ったことがありません。でも今年は取らざるを得ないでしょう。(資金を提供してくれる)支持者が現れるまではね」と現状を明らかにした。(Hiromi Kaku)
2018年08月29日<#わたしたちでもできることベビモフ特別対談>この世から児童虐待がなくなるように、との願いから「♯こどものいのちはこどものもの」というチームを組み、さまざまな活動をしているイラストエッセイストの犬山紙子さん。児童相談所で長年子どもの問題を扱ってきた元児童心理司で、『告発児童相談所が子供を殺す』などの著書もあるカウンセラーの山脇由貴子先生。児童虐待の根絶に向けた活動を続けているお二人に、“#わたしたちでもできること”というテーマで対談していただきました。※お二人の対談を3回に分けてお送りします。目黒区の結愛ちゃん虐待死事件で、号泣。子どもに反省文を書かせる親の心理って……?犬山:目黒の虐待死事件のニュースを聞いたときは、本当にすごく苦しくなりました。山脇:犬山さん、亡くなった結愛ちゃんの書いた反省文を見て、号泣したって……。犬山:私、『スッキリ』というテレビ番組でコメンテーターをしているんですが、番組でアナウンサーの方が反省文を読み上げたんですよ。で、冷静にしゃべらなければいけないと思いつつも、やっぱり無理で……。今まで聞いてきた何人もの子の虐待事件がどんどん心の中にたまっていたのが、結愛ちゃんのニュースでついに決壊したというか。何もしないということが、もうできない状態になっちゃったんです。山脇:私はこの反省文、よく出してくれたなって思ったんですよね。あれで虐待をされている子の気持ちがみんなに理解された。子どもの苦しさがこんなにダイレクトに伝わって、よかったなと思いました。それこそ児童相談所の職員だって、子どものああいう気持ちまでは想像できないことがいっぱいあるので。まず、虐待する親って、けっこうな割合でああいう反省文を子どもに書かせるんです。自慢げに持ってくる人もいます。「うちの子、こんなに反省していますよ。自分が悪いって、認めているじゃないですか。私たちはこの子のために、しつけでやっているのだから、これ虐待じゃないでしょう?」っていう構図ができちゃうので。反省文を書かせることで、親のほうも虐待しているという意識が薄れるし、子どものほうも、自分が悪いからたたかれるんだと思い込んじゃう。どっちにとっても、それが本心になっちゃうんですよね。だからこそ、エスカレートしやすくて。殺す気はないんですよ、みんな。犬山:多いのですね……。山脇:きっと結愛ちゃんの家も「最低限の食事は与えている」と考えていたと思うんですよね。で、人間って慣れていくから。だんだんそれが日常になっていって、衰弱していく子どもの姿を見ても、まさか死ぬとは思わない。それで、どんどん自分の行動がエスカレートしているのに気づかないっていう感じですね。虐待する親ほど、子どもに執着する。依存という点で、虐待とDVはほぼ同じ構造。犬山:今までの私も含めて、虐待のニュースから目をそらしてしまう人って、本当に多いと思うんですよ。その一方で「自分も子どもをたたきそうになっちゃう」という声もすごく聞く。ワンオペの方なんかは特に。追いつめられて「子どもがかわいいと思えない」とか「子どもに怒った後、自己嫌悪で死にたくなっちゃう」とか。それでも、この事件のように、殺してしまう――という状況までは、一般的にはやっぱり想像できないんですかね。山脇:虐待する親って、子どもに対する執着がすごく激しいんです。だから「お子さんを預かりますよ」と言っても、絶対に預けないんですね。「憎くてやっているわけじゃない。この子のためにやっている」と。自分たちの責任で、しつけをしなきゃいけないと思っているんです。でも、実際は預けると虐待できなくなっちゃうのが嫌なんですよ。犬山:ということは、虐待って、完全に依存なんですね。預けちゃうと、自分の依存先がなくなる。山脇:そうそう。だから虐待って、DVみたいなものですよね。自分より弱者を作るっていう。一番弱い人間にすべての怒りが集中しちゃうっていうのが虐待の構造なので。DVも相手に執着するじゃないですか。いなくなったら困るので。そのへんがすごく似ている。――目黒の事件では、結愛ちゃんと父親は血縁関係ではなかったですよね。山脇:確かに虐待している親が、実の親ではないというケースは、割合としては多いとは思います。継母とか養母が虐待するっていうケースもあります。でも、実の親でも虐待はありますよ。結愛ちゃんの事件でも、お母さんは完全に加担していましたよね。母親が子どもじゃなくて、夫をとるという。虐待家庭って、夫が子どもに暴力をふるうから別れる、っていう決断を母親がしないケースが多いんです。性的虐待であってもそうです。あえて娘を犠牲にしたまま、離婚しないっていうのは、けっこうよくある構造ですね。犬山:それは、やっぱり依存しているからなんですか?虐待している夫に対して。山脇:そうですね。夫を失いたくないっていう。単純に女として生きちゃう。離婚をちゃんとできた人なんかは「後から考えると、相手は最初から娘が目当てだったかな」って言ったりもしますね。第2回へと続く……Text:Keiko IshizukaPROFILE山脇 由貴子Yukiko Yamawaki女性の生き方アドバイザー。家族問題カウンセラー。 東京都に心理職として入都し、都内児童相談所に心理の専門家として19年間勤務。2015年に退職後、「山脇由貴子心理オフィス」を立ち上げ、現職。『教室の悪魔』(ポプラ社)、『告発児童相談所が子供を殺す』(文春新書)、『思春期の処方せん』(海竜社)など。PROFILE犬山紙子Kamiko Inuyama1981年生まれ。コラムニスト、イラストエッセイスト。著書に『負け美女 ルックスが仇になる』(マガジンハウス)、『地雷手帖嫌われ女子50の秘密』(文春文庫)、『言ってはいけないクソバイス』(ポプラ社)ほか多数。2017年に女児を出産し、育児体験者への取材記録や自身の出産体験記を収録した『私、子ども欲しいかもしれない。』(平凡社)を刊行。現在は「SPA!」「anan」「steady.」「文學界」「読売新聞」などで連載中。
2018年08月29日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「児童虐待」です。見つけたら通報の義務がすべての市民にあるのです。3月に東京都目黒区で発生した、5歳の船戸結愛ちゃんの虐待死亡事件は、世間に大きな衝撃を与えました。日本小児科学会の調べによると、全国で1年間に虐待によって死亡した可能性がある子どもの人数は、約350人。この数は高い水準で増え続けています。これは、児童相談所など、制度として様々な欠陥があるからなんですね。東京都内の児童相談所の数は11か所。児童福祉司1人が抱える虐待相談などの世帯数は100を超えます。これは欧米の約5倍の数字。児童相談所も児童福祉司の数も全く足りていないのです。また、児童相談所には常勤の弁護士がいません。日本は、親の親権が強く保障されているので、子どもを親から引き離そうとするとき、親に訴えられないよう、法律家の判断を仰ぎたくても、スピーディに対応できないのです。そして、東京都の警察内には児童虐待専門の部署がありません。児童虐待防止法には、市民は児童虐待を認知したら通報する義務があると明記されています。その相談窓口の全国共通ダイヤルは「189(いちはやく)」。通報は匿名でできますし、虐待でなかった場合も罪には問われません。3月の事件を受け、社会起業家の駒崎弘樹さんを中心に、芸能人や作家、ソーシャルセクターが集まり、制度の改革を求める10万人の署名を集めて厚生労働大臣に提出。政府は緊急に児童虐待対策に動き出しました。結愛ちゃん家族が以前住んでいた香川県の児相の担当は、大変心配していたのですが、東京に転居したあと、新担当は家庭訪問に行ったけれども本人に会うことができませんでした。これを受け、面会ができなかった場合は強制的に立ち入り調査ができるよう児相の権限を強化。また、各地の児相や警察が情報を共有できること、児相や児童福祉司の数を増やすことなどが検討されることになりました。しかし、虐待は対応だけでなく、未然に防ぐことが実は重要です。店や電車で子どもが泣きわめいているのを、迷惑そうにしている周囲の大人たちの視線が、どれほど親御さんを追い詰めているか。虐待を生まない社会を作るために、私たちはどうしたらいいか、いま一度考えてみませんか。堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。新刊『堀潤の伝える人になろう講座』(朝日新聞出版)が好評発売中。※『anan』2018年8月29日号より。写真・中島慶子題字&イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2018年08月28日子育ては24時間365日体制。心は安まる間も無く、常に張りつめている。漠然とした不安を抱えながらの子育ては時に判断力を奪い、張りつめた糸を一瞬で切ってしまうことも。張りつめた糸が切れぬよう、心が壊れてしまわぬよう、母親の心をほぐすということが、子供の命を守ることに繋がるのではないかと思う。さやかわさやこInstagram : futomomushi
2018年08月21日介護の悩みは尽きることはありません。身近に相談できる人がいると安心して介護が続けられますが、相談できない介護者もいます。認知症やアルツハイマーというだけで他人に打ち明けられず、つい閉口してしまうからです。そんな介護者について考えてみました。■ 男性介護者は要注意!真面目な人ほど相談できず孤独に陥る認知症の親を介護することになれば、食事や入浴、薬、下着、オムツ、排便と、いろいろな問題に直面します。その結果、介護者のストレスは溜まるいっぽうです。真面目な人ほど精神的に追い詰められ、精神系の病に見舞われることもあります。NOBU / PIXTA(ピクスタ)介護中はストレスが溜まり続け、いくらストレス解消とばかりに遊びに出かけても、家に帰ればまたイライラ。特に男性介護者は自分で悩みを抱え込み、他人に相談できない人が多いようです。男性は人に相談するより、自分で何とかしようとする傾向が強く、家に閉じこもってしまいがちです。つい暴力をふるってしまうのも女性より男性介護者のほうが多いとも言われています。■ 介護者の羞恥心とプライドが介護の邪魔をする!?人にあまり相談したり助けを求めない介護者は、認知症の親を人目にさらすのが恥ずかしいと思っているからでしょう。Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)しかし、認知症や介護は今や500万~600万人という人が関わっていて、恥ずかしいというレベルはもう過去の話です。恥ずかしいと思っている人は、認知症の知識が少なく、世間とズレているといってもいいでしょう。一方、自分の介護がうまくいっていると思い込んで、他者の援助を好まない頑固な人もいます。一言でいうなら、プライドでしょうか。これもまた知識や情報を持たず、社会との交流を避けている感があります。車いすに認知症の親を乗せて買い物や行楽に出かける娘や息子はたくさんいます。Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)まずは自分の気持ちと行動を少しずつ外に向けていくことから始めてはいかがでしょうか。■ 同じ悩みを抱える「介護者仲間の会」に参加するのも一つの手段そんなストレスまみれの介護者でも、唯一心を開ける場があります。それは、同じ悩みを持つ人が集う「介護者の会」です。xiangtao / PIXTA(ピクスタ)会員たちは自分と同じような経験をし、悩みを抱えていることが多く、それだけで救われる思いがします。介護者として仲間意識が芽生え、やがてアドバイスをしたり、受けたりするようになります。そこでは誰も虐待は良くない、とは言いません。そんなきれいごとでは済まないことぐらい、十分に承知しているからです。解決法を見つけることができなくても、会員たちは自分の話をちゃんと受け止めてくれ、経験を通してアドバイスをしてくれます。■ 困ったら、すぐに介護の専門家と話をしてみることが大切!介護者にとって最も大切なことは、いろいろなことを相談できる人がいるということです。実の兄弟や友人、あるいは近所のおばさんでもいいでしょう。できれば介護経験者であれば、より安心です。たとえば介護のプロ。ケアマネージャーや介護士などの専門家は、数多くの介護者、要介護者と接してきています。しげぱぱ / PIXTA(ピクスタ)相談者としては理想的です。これらの専門家とは市役所の介護課などで紹介してもらうといいでしょう。■ 常に介護される親の気持ちを考えてみるもしも自分が介護される側に立った場合、娘や息子にそこまで必死で介護してほしいと思うでしょうか。プラナ / PIXTA(ピクスタ)親としては、申し訳ないという気持ちで一杯かもしれません。親の本音はおそらく、独りで頑張らないでほしいということだと思います。自分のせいで子どもが苦しんでいるのを見て平然としていられる親などいないでしょう。そう考えれば、早く病院で診断してもらい、医師専門家の意見を聞いてみるべきです。■ 誰かに相談したくなったら、いろいろな会に参加する専門家は敷居が高いと思ったら、介護者の会に参加(見学だけでも可能)して、話がしやすい相手を見つけておしゃべりしてみましょう。みんなの話を聞いているだけでも勉強になります。「介護者の会」には男性だけの「オヤジの会」などもあり、介護に悩んだらぜひ一度、足を運んでほしいところです。全国の役所や社会福祉協議会などで紹介してくれます。Renoir / PIXTA(ピクスタ)かかりつけの医院でも、どこの病院にどのような専門医がいるか教えてくれることがよくあります。SoutaBank / PIXTA(ピクスタ)それでもだめならインターネットで探してみましょう。介護、相談といったキーワードで相談できる専門家がたくさん出てきます。とにかく、介護では自分一人で抱え込まないことが、一番大事です。抱え込んでしまうと、介護をする方もされる方もダウンしてしまいます。ぜひ、皆さんも参考してみてください。【参考】※認知症ねっと第33回家族による虐待 ~男性介護者の場合~※厚生労働省平成28年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果
2018年08月21日児童虐待のニュースを見るたびに心が辛くて、傷ついて、目を避けそうになります。「自分一人では何もできないんだから」と思ってその辛さから逃げようとしてしまいます。私はそうしていました。コメンテーターやりながら「辛い、悔しい」と思ってやり過ごしていました。自分の感じた辛さを虐待した親への憎悪に変えてやり過ごすのです。でもそんなことを思っていても虐待されている子が虐待されなくなるわけじゃありません。虐待してしまう親が、虐待しなくなるわけでもありません。そして、また新たに虐待されたこどものニュースを耳にするのです。そのたびに無力感にかられます。何もしていないのに無力感っておかしな話ですが。でも、じゃあ自分にできることがあるのかって問うと、何もできないんじゃないかと思ってしまいます。私たちそれぞれに生活があります。日々を過ごすだけで精一杯です。私も1歳の娘と仕事とプライベートとで日々忙しく、心に余裕すらなかなか持てない状態。そんな状態で自分の家族以外の人のことを気にかけて動く余裕は、正直なかなか持てないです。そういう方、たっくさんいるのではないでしょうか。みんないっぱいいっぱいなんですよね。それでも、目黒区5歳児虐待死の事件を聞いて、私はおかしくなりそうでした。やり過ごせなくなりました。なぜって、全然自己肯定できなくなったからです。こどものいのちは大人が守るしかないのに、大人である自分が何もしていない、そんな自分を肯定できず苦しさは大きくなったのです。「いっぱいいっぱいなりにやれることをやろう」そう思い私は #児童虐待問題に取り組まない議員を私は支持しません というハッシュタグを作りました。ハッシュタグを作るなら1分でできます。でもそこに集まった声は、大きな力になって議員さんに届いていたもようです。(様々な議員や党の方がいいねをしたりリツイートしてくれました)#こどものいのちはこどものもの というチームも作りました。坂本美雨さん、福田萌さん、ファンタジスタさくらださん、眞鍋かをりさんと一緒に自分達にできることをやっていこうと、これもハッシュタグをつけて意見を募り、厚労省にたくさん届いた意見を、届けました。ハッシュタグって届けられるものなんですね(笑)たくさんの人が「児童虐待をなくして欲しいと強く思っている」ということが国に届かないことにはなかなか動いてもらえませんから、こういったことはとても大切なことだと思うのです。そして、そのたっくさんの意見は、いっぱいいっぱいな中、インスタグラムやツイッターで書き込んでくれたことで成り立っているのです。いっぱいいっぱいでもやれること、あるんですね。こういう動きをする時、どこか自分の生活を犠牲にしなければいけないというイメージが付きまといます。でも、そんなことないと思うのです。自分達の生活も、自分の心も大切にしながら、やれる範囲でやる。じゃないとハードルが高くなっちゃって、心を痛めていてもつぶやくことすらしにくい空気になってしまう。(もちろんいろいろなことを犠牲にして動いている方には尊敬しかなく、頭があがりません)だから私は娘との時間しっかりとりますし、自分の仕事もしますし、夫とも一緒にランチもしますし、友達とも会って大好きなゲームもします。そうして、ハッシュタグ運動を始めてから、ほんのり自己肯定感は戻ってきました。こどもたちのために動いたら、自分を好きになれました。これを読んで、虐待がなくなって欲しいなあと思った方、よければ #わたしたちでもできること #こどものいのちはこどものもの をつけて、何か自分にできそうなことをつぶやいてみてもらえたら嬉しいです。赤ちゃん連れで大変そうな人に微笑みかけるとか育児で大変そうな友達の話を聞くとか近所のこどもってどんな子だったっけと考えてみるとか虐待に関する記事を読んでシェアしてみるとか自分の住んでる自治体で虐待問題に誰が取り組んでいるのか調べてみるとか……本当に簡単にできること。そのたくさんの知恵が集まって、みんながそれを目にしたら、優しい世界が少しずつ増えると思うのです。この記事をリツイートしてくれるだけでもいいです。いっぱいいっぱいなりに、無理しない範囲でできること。活動することでみなさんの、ニュースの度に傷ついた心やどこか不安になる気持ちもちょっぴり落ち着きます。どうぞどうぞよろしくお願い致します。犬山紙子Illustration・Text:Kamiko InuyamaPROFILE犬山紙子Kamiko Inuyama1981年生まれ。コラムニスト、イラストエッセイスト。著書に『負け美女 ルックスが仇になる』(マガジンハウス)、『地雷手帖嫌われ女子50の秘密』(文春文庫)、『言ってはいけないクソバイス』(ポプラ社)ほか多数。2017年に女児を出産し、育児体験者への取材記録や自身の出産体験記を収録した『私、子ども欲しいかもしれない。』(平凡社)を刊行。現在は「SPA!」「anan」「steady.」「文學界」「読売新聞」などで連載中。
2018年08月18日全国で2,200カ所を超え( 「こども食堂安心・安全向上委員会」 の調査による)、大きなムーブメントとなっている「子ども食堂」。もともとはごはんをちゃんと食べられず困っている子どものために、食事を提供したいという思いで始められたものですが、今では地域交流など、さまざまな役割をもつスペースになっています。しかし、ボランティア活動であるがゆえに課題もたくさん。政府が発表した最新のアンケート結果からその課題を読み解きます。■「子ども食堂」が抱える“6つの問題点”急増する「子ども食堂」ですが、実際に運営するのはやっぱりたいへん? 農林水産省が3月にまとめた「子ども食堂」運営者へのアンケート結果( 農林水産省「子供食堂と地域が連携して進める食育活動事例集~地域との連携で食育の環が広がっています~」 )には、主要課題として6つのポイントが挙げられています。1)来てほしい人や家庭の参加2)資金の確保3)スタッフの負担、スタッフの確保4)地域との連携5)リスク管理6)会場の確保「1)来てほしい人や家庭の参加」は、お金で解決できるわけではないだけに難しい問題です。「子ども食堂」は親子で訪れる人も多いように誰でも利用できるオープンな場ですが、そもそも運営者は「生活困窮家庭の子どもの居場所作り」を活動目的にしている人が多く、その割合は90%にもなります。それなのに実態としては「来てほしい家庭の子どもや親に来てもらうことが難しい」と感じている人が40%も! つまり、ちゃんとしたごはんを食べられない生活をしている子どもに食事をさせてあげたいという気持ちで食堂を始めたのに、実際にはそういった子どもは来てくれないというジレンマを抱えています。これを少しでも解消するためには、学校や行政、民生委員との連携が欠かせないようです。大阪府の子ども食堂(朝ごはんを提供)「個別児童の朝食欠食状況について、運営者が把握し対象の児童を絞って事業を実施することは難しいため、小学校を通じて全校児童に呼びかけをする」滋賀県の子ども食堂「民生委員や学校の先生が気がかりな家庭の子どもたちにそっと声をかけて誘ってくれたり、連れてきてくれたりすることもあります」また、非営利の「子ども食堂」とはいえ、運営するには普通のレストランと同じように場所と食材・調理器具などが必要です。先立つものはまずお金。「2)資金の確保」では、約70%の「子ども食堂」が社会福祉法人や市区町村などの助成制度を活用しているという結果が出ました。また、お金としては受け取らなくとも、食材を無償で提供してもらう場合も多いようです。農家やJAから農産物、肉、魚などを直接もらったり、食品メーカーからパッケージ商品を寄付してもらったり、スーパーの余剰在庫を提供してもらったり、「フードバンク」というNPO活動から集めた食品を提供してもらったりと、さまざまに工夫しているようです。「3)スタッフの負担、スタッフの確保」は、「子ども食堂」が基本的にボランティア活動であるがゆえに、賃金として支払えず、難しい課題になっているようです。経費面では人件費がかからないのはプラスですが、アンペイドワークゆえに人を集めにくい。「運営スタッフの負担が大きい」と考えている割合は30%にもなります。新潟県の「子ども食堂」「食事の準備、配膳、片付け等は、主催者3名とボランティア(地域住民および市内の大学に所属する学生等)により行われています。ボランティアは事前登録制ですが、ボランティア活動への参加日や時間は自由で、事前連絡も求めていません」「4)地域との連携」では、「学校・教育委員会の協力が得られない」と答えた人が最も多く約17%、続いて「行政の協力が得られない」と答えた人が13%。「住民の協力が得られない」と答えた人も3%いました。「町内会で子ども食堂を立ち上げようとしたら『貧困家庭はこの地域にいない』と言われてしまった」(「広がれ、こども食堂の輪!」全国ツアー参加者より)など、“見えない貧困”について理解が広がっていないこともうかがえます。「5)リスク管理」で最も心配されているのは、やはり食中毒を出してしまうこと。それぞれの「子ども食堂」では火を通したものしか提供しないなど、注意を払っているようですが、利用者からすると、知らない人が調理したものを子どもに食べさせることに不安を抱く場合もあるでしょう。福岡県の子ども食堂「初回の時、おにぎりの提供風景が新聞記事に載り、保健所から衛生管理について問い合わせを受けました」千葉県の子ども食堂「ボランティアを含めた調理スタッフ全員が毎年、検便検査を受けることにしています」81%以上の「子ども食堂」が事前に保健所に相談し、スタッフに衛生管理の知識がある人を加え、万が一の事態に備えて保険に加入しています。「6)会場の確保」についても周囲の協力が不可欠でしょう。最も多い例となっている「公共施設(公民館、児童館等)」を借りるのもお金がかかりますし、飲食店の定休日にそこを使わせてもらったり、お寺や教会などの宗教法人に場所を提供してもらったりという場合でも、光熱費などを支払う必要が出てきます。 ■自分で「子ども食堂」を開いてみたら!? 予算をリアルにシミュレーションちなみに、もしこの記事を書いている私が「子ども食堂」を開いてみるとしたら、どのぐらいの予算が必要なのか。アンケート結果を参考にしてリアルにシミュレーションしてみました。まず会場代。自分の住む地域の福祉センターで調理室と28人収容できる洋室を、夜間の時間帯に借りるとします。1室1,000円で合わせて2,000円。調理室は、準備のために昼間から借りると考えて、会場代はトータル約3,000円になります。メニューはカレーライスとサラダとゼリーと仮定し、1日の来場者見込み30人分で換算してざっと2万円。スタッフは自分のほかに3人ほどママ友に来てもらうとして、ボランティアなので良くも悪くも人件費ゼロ。開催の告知は、自分でポスターを50枚作成し配布するとして5,000円。ここまでで2万8,000円となります。さらに、来てくれた子どもたちが遊べるような折り紙などを用意することを考えると、トータルで3万円ほどかかりそうです。食堂の料金は子ども無料、大人は300円。子ども20人、大人が10人来たとして、売上は3,000円なので、収支はマイナス2万7,000円。これを月1回開催していくと、1年間での出費は32万4,000円です。この金額がすべて私個人の持ち出しになってしまう。そう考えると、正直、私には「子ども食堂」を運営するお金は出せそうにありません。このマイナスを埋めるために、多くの「子ども食堂」では寄付金や補助金を受けています。ちなみに私が住んでいる地域の「子ども食堂」のひとつは市の地域福祉活動支援事業に選ばれ、助成金を年間75万円受け取っています。こちらは月2回の開催なので、ちょうど試算の倍になり、プラスマイナスゼロ。やはり毎回の支出が3万円というのがリアルな数字なのではないでしょうか。「もし私が『子ども食堂』を開くとしたら」シミュレーション1回につき来場者30人として試算。【支出】会場代 3,000円食材代 20,000円広告宣伝費 5,000円予備費 2,000円合計 30,000円 ※保険料含まず【収入】大人300円×10人来場。合計 3,000円収支マイナス27,000円 ※この分を寄付か助成金でまかなえるか?ただ、助成金や寄付金でまかなえる可能性も低くはないですし、まずは寄付金を募っておいて3万円集まったら開催するという不定期のやり方も考えられます。また、ひとりではなかなかお金が出せなくても、PTAの有志が集まって資金を出し合い、その外部活動として年に数回、開催しているところもあるようです。1回3万円はイタイと考えるか、そのぐらいなら出せると思うか。または「みんなでお金を集めたり出し合ったりすれば3万円ぐらい集まるよね」と話し合えるような仲間がいるかで、ハードルの高さは変わってきそうです。現状として全国に2,200カ所まで増えたわけですから、「やってみよう」と踏み出す人が多くなってきているわけですよね。もし、「子ども食堂」が気になっているのなら、まずは利用者として訪れるところから始めてみませんか? ・「こども食堂安心・安全向上委員会」 ・農林水産省「子供食堂と地域が連携して進める食育活動事例集~地域との連携で食育の環が広がっています~」
2018年05月20日「自分は虐待をしているのではないか?」1991年より都内で、子どもへの虐待防止のための電話相談などボランティアで支援を続けている民間団体の「子どもの虐待防止センター(CCAP)」には、相談者からこういった疑問を投げかけられることも少なくないそうです。前編では、ベテラン相談員・Mさんに「虐待の境界線」をお聞きしました。続く後編では、子育てしにくい時代に、どうやってできるだけ怒らずに子育てをしていけるか、というお話をうかがいました。■児童虐待防止法も影響? 周囲の目がきゅうくつに感じる「現代の子育て」── 長年相談を受けている中でお母さんたちの相談内容が変わってきたという印象はありますか?Mさん:私の主観的な印象ですが、「周りに子どもがいるのが当たり前」の環境から、「子どもと接する機会がない、子どものはしゃぐ声や泣き声を普段耳にしない」という環境になってきているように思います。その中で子育てをするのは大変ではないかと感じています。── 今の環境は、お母さんたちにとってきゅうくつなのでしょうか?Mさん:電話相談を受けるなかでも、「スーパーで子どもがダダをこねてギャーっと騒いでしまったので叱ったら、周囲からは冷たい視線。通報されるのでは? といたたまれなくなって、買い物もそこそこに家に帰りました。ドアを閉めた途端、つい子どもに『何なのよ!』と怒鳴ってしまった。今、子どもはイヤイヤ期真っ盛りなのはわかっているのに…」などと話す方もいらっしゃいます。──私の周囲でも、「子どもを叱っていたら児童相談所の人が来た」という笑えない話を結構聞きますが、2000年に児童虐待防止法が成立して、通告が増えた影響はありますか?Mさん:通告は困っている親子を支援するためのものなのですが、お母さんたちは「助けられている」というよりは「見張られている」ように感じる面があるのかな、と感じています。──相談を受けているなかでお母さんたちのとまどいを感じているんですね? Mさん:小さい子の機嫌をコントロールするのは難しいことです。親ならそれをうまくできるはずというプレッシャーを受けて頑張るけれどうまくいかない、ということだと思います。── そんなきゅうくつな中で、どのように子育てをしていったらいいのでしょうか?Mさん:難しいことですが、少し心に余裕を持てたらいいですね。親も子育てしながら親として成長します。失敗したと思ったら「言い過ぎたね。ごめんね」と正直に伝えたらどうでしょう。「おやつ食べようか。本でも読もうか」と親子共に気持ちを切りかえられたらいいのでは?子どもとの関係ってもっと広いし深いので、一つのことにとらわれすぎずにやっていってもらえたらいいな、と思っています。■自分の中の「コップの水=たまったストレス」をあふれさせないためには?── 具体的にはどうすればいいでしょうか?Mさん:ストレスがたまりにたまった時って、コップにお水がいっぱいいっぱいの状態と似ていますね。表面張力でかろうじてこぼれていない状態のようなものです。だから、そこで何か起こると、最後の一滴となってコップに注がれ、一気に水があふれてしまうんです。── そうですね。子育て、家事、仕事とあふれそうな状況は私自身よくあります。そういう時は申し訳ないけれど、子どもに八つ当たり気味に怒ってしまう時もあります。Mさん:皆さんそういう状況で電話をかけてくれるので、「子どもにやりすぎてしまった」「自分は反省している」「でも夫はこういうことをわかってくれない」と話していくと少し余裕が出てきて、子どもに当たってしまう今の自分が見えてきます。だから、お母さんがいっぱいいっぱいになった時は、コップの水が一気にあふれないように、少し自分からこぼせるといいですね。子どもには成長段階があって、時期がくれば今まではなんだったのか? ということも多いです。── 自分の中のコップの水を減らすのが大切ということですね。具体的にはどのような方法がありますか?Mさん:今はいろいろなところで相談を受け付けていますから、こういう電話相談などにかけてみるのも一つの手だし、どこかに子どもを預けたり、休みの日は夫に預けて自分の好きなことをやる時間を少しとったり、というようなことをやって、しのいでいけたらいいのではと思います。── 子育てだけの世界から少し離れる、ということですね。Mさん:1日24時間、365日お母さんをやっていると、すごく疲れますよね。だから、お母さんも1人になれる時間は必要ですよ、と話すと「食事もトイレもお風呂も、1人の時はない!」と初めて気づかれるんです。それでちょっとでも1人になれる時はないか、ホッとできるのはどんな時かを一緒に考えます。ワンオペで育児されている方も多いですが、公的サービスなど使えるものは何でも使って、少しでもストレス解消できるといいですね。── 電話をかけてくるのもワンオペ育児の方が多いのですか?Mさん:多いですね。そういう方はワンオペという大変な状況のなかで、すごく頑張っているんです。なのに「もっとやらねば。大変だと思うのは子どもを愛していないからなのか」と自分を追い込んでしまっているのが本当に残念です。── まずは、自分が大変ななか頑張っている状況を自分でほめてあげて、心に少しでも余裕を持つことが大切なんですね。 ■「どういう時に怒ってしまう?」自分の怒りパターンを把握── そのほかに怒りすぎない方法はありますか?Mさん:そうですね。あとは怒りたくなるけれど、視点を変えると超かわいい子どもの姿を撮る“おバかわ写真”のような方法でしょうか。ギリギリの状況は変えられない、腹が立つのも仕方ない。でも、せめて腹が立つのを笑いに変えられたら、親子共にハッピーですね。── 笑いに変えるなど自分なりにしのぐ方法をちょっと探してみる、ということですね?Mさん:怒りすぎてしまう時って大体、同じパターンになっていませんか? いつものように親子のやりとりをして、気がつけばいつものように怒っていた。そのようなやり取りになった時に、先ほどのおバかわ写真を撮るとか「あー始まった、始まった」と呪文を唱えるとか、その場を離れる、深呼吸するなど自分なりにしっくりくるものを探して、「あー、また怒っちゃった」と後悔せずにすめばいいな、と思います。── パターンを把握して、対処法をいくつか持っておくといいんですね。Mさん:パターンのどこかを変えると流れが変わります。この言い方で話してみよう、このタイミングでこうしてみようなど、なるべく楽しくなるようなことに変えながらやってみる。それでダメだったら、「あ、ダメだったな。次はどの手でいこうかな」くらいの気持ちで。── それ以外に何かありますか?Mさん:子どもの行動を(a)好ましい、(b)やめさせたい、(c)してはいけない、のように3つに分けてみてはどうでしょう。(c)は命にかかわるなど重大なことですが、(b)は時期を待つ選択もあるかもしれません。親も言い出すと意地になって引くに引けなくなる時期もあったりしますのであきらめる、というか、今すぐにどうこうしようとせず、ちょっと置いておくのはどうでしょうか。── 今日はありがとうございました。日々、子育てに困っているお母さんたちに向き合っているMさんのお話は大変参考になりました。取材なのに、ゆったりとした口調で、こちらの話も丁寧に聞いてくださるMさんとのインタビューは時折、自分の子育て相談をしているような錯覚に陥りました。そのMさんが「子どもを怒らない」ための対策としてあげるのが次の3つ。1.1人でがんばりすぎず、できるだけ心に余裕を持つ。2.自分が怒ってしまう原因などパターンを見つけ、(できれば楽しめる)対策を考える。3.あきらめる(今は置いておく)。ほぼワンオペで、コップの水もかなりギリギリの筆者自身の話も聞いていただき、「怒りたくないのに怒ってしまった」と後悔を繰り返す日々を抜け出す多くのヒントをもらったように感じました。長年、親身に困っているママたちに寄り添ってきているMさんのような方たちに話を聞いてもらうのも、とてもスッキリしそうです。取材協力: 社会福祉法人子どもの虐待防止センター(CCAP) 子どもの虐待を早期に発見し、虐待防止を支援するために1991年に設立された民間団体。研修を受けた相談員と、医師、弁護士、臨床心理士、ソーシャルワーカー、行政経験者、教育関係者などが活動しています。CCAPでは、子育てに悩む方のための電話相談、母親のグループ(MCG)、CCAPペアレンティングプログラム講座「親と子の関係を育てるプログラム」などを行っています。相談の電話番号は、03-5300-2990(平日10:00~17:00 土曜日は10:00~15:00/通話料以外は無料)取材・文/まちとこ出版社 石塚由香子
2018年03月10日「大きな声で子どもを怒鳴ってしまったら、児童相談所の人が来た。近所の人に通告されたみたい…」。ママ友の飲み会で、このような笑えない話が出ることも決して珍しくない昨今。つい子どもを怒鳴ってしまい「自分のしていることは虐待ではないか!?」と不安になっているお母さんも少なくないのではないでしょうか。「どこまでが虐待で、どこまでがしつけ?」という疑問を解消すべく、都内で1991年より虐待防止に向けて電話相談を始めとした支援をボランティアで続けている、民間団体の「子どもの虐待防止センター(CCAP)」にお話をうかがってきました。■一般的な境界線は? 東京都発行の児童虐待予防パンフに見る「虐待」一般的には虐待とはどのような状況をいうのでしょうか。東京都発行のパンフレット「みんなの力で防ごう 児童虐待」(2017年度版)によると、虐待は、1.身体的虐待 2.性的虐待 3.ネグレクト(養育の放棄または怠惰) 4.心理的虐待という4種類があります。2016年度の東京都の統計データでは、約10,000件の中で、心理的虐待が55.0%、身体的虐待が24.7%、ネグレクト19.5%となっています。そして、実母による虐待は53.8%、実父によるものが38.7%となっていて、お父さんよりもお母さんの虐待が多いようです。また、同パンフレットによると、虐待は子どもたちに次のような「深刻な影響」があるとされています。*発育・発達の遅れなどの身体症状。*情緒不安定、感情抑制、強い攻撃性などの精神症状があらわれることがある。■「虐待かどうか」ママたちが気になるのはなぜ?お話をうかがったのは20年近く子育ての電話相談をボランティアで受けてきたMさん。「虐待としつけの境界線はあるのでしょうか?」という冒頭の質問に対して、やさしい口調で次のような返事がありました。Mさん:電話相談でも「これって虐待ですか?」とたずねるお母さんはいて、皆さんものすごく心配していらっしゃいます。でも、虐待かどうか、その境界線を引いて仕分けすることに、どれくらい意味があるのかな、とはちょっと思います。思いがけない答えが返ってきて、ハッとしました。なぜ自分たち母親は「虐待の境界線」が気になるのでしょうか? 法律に触れるようなことは犯していないはずだし、子どもも元気に育っている。それなのに心配なのは、「自分の子育てはこれで大丈夫」という判断基準がない不安からでしょうか? 「虐待じゃない。しっかり子育てをしているよ」というお墨付きを誰からかもらいたいという気持ちなのでしょうか?「自分は虐待の境界線を知って、どうしたかったんだろう?」。そんな気持ちとともにインタビューは進みました。Mさん:私はまず、相談してきた方に「あなたはどう思う?」とお母さんの思いを聞いています。あるいは、「虐待ではないかを判断する立場ではないけれど、あなたが、自分がしていることをあまり良いことだと思っていなくて、今、困っているように感じられるのだけど…」と話すんです。── 虐待かどうかという答えを出さないんですね?Mさん:たとえ「それは虐待ではありませんよ」と言われても、「良かった。ホッとしました」と言って終わるものではありませんよね。モヤモヤを抱えているから電話をかけてきているので、しっかりその思いを聞かせていただきます。そして「少しスッキリしました」と言って電話を切ってもらいたいと思っています。── 確かに、「虐待ではありませんよ」と誰かが保証してくれても、お母さんたちの「自分の子育てはこれで良いのか」という心配がなくなるわけではないですもんね。■子どもを「かわいい」と思えない時があっても当たり前Mさん:子どもがかわいく思えないと、自分のことを母親失格のように感じてしまうお母さんも多いのが気になっています。だだをこねて泣き叫んでいれば、かわいく思えない時だってあって当然なのに、「ダメな親だ」と自分を責めてしまうのです。── その気持ちよくわかります。私も、遠くから眺めている時と寝ている時はかわいいのになあ、と思うこともしょっちゅうです。Mさん:お母さんにとって、子どもは大事な存在で、だからこそ精一杯努力しているわけです。でも努力が報われなかったり、ギリギリの状況になったりした時はかわいく思えなくても普通なんだ、と自分を許してあげていいと思います。── 子どもをかわいくないって思う気持ちがあってもいいんですね。Mさん:大事だから放りだせないし、もっと子どものために良くしてあげたいし、だけどうまくできないからイライラもするし、腹も立つ。そして、そういう自分を責めてしまうんです。そんな時は寝顔を見て「かわいい!」というので十分だと思います。 ■怒ることはしつけではない…虐待としつけの境界線── 子どもは大切だから、なんとか良い子に育ってほしいと思うからこそ、うまくいかない時につい腹が立って怒ってしまうんですね。よく、虐待の事件で、「しつけのつもりだった」などという報道もありますが、この差をどう思われますか?Mさん:しつけというのは本来、子どもが自立していけるようにサポートすることで、決して親の感情をぶつけることではないと思っています。子どもが自分の生活をきちんと立てていけるように基本的なところ、例えば、社会で生きていける信頼感や他人との関係のベースになるものを築くためのものなのではないでしょうか? ── 感情をぶつけるのはしつけではない、ということですね。Mさん:親が怒りすぎた時って子どもが失敗とか間違いをした時ですよね? 失敗とか間違いって、ふつう誰もがするものでしょう? だからそうした時に感情を爆発させるのではなく、どうすればいいかを教えられたらいいですね。── 例えば、どのように?Mさん:「なぜこういうことをしたの?」と聞くことから始めみてはでどうでしょうか? 例えば、子どもが友だちのおもちゃを無理やり取ったとしますよね。「○○ちゃんが貸してくれなかったから」などと言われたら、「遊びたかった気持ちはすごくよくわかるけど、取るのはいけないね。もう一度、また頼んでみようか」というように。すごく手間がかかることですけどね。──なかなか毎回対応するのは大変そうですね…。Mさん:お母さんが全部それをするのは、神様ではありませんから、無理でしょう。でも、今は悪いことと怒ることがセットになってしまっていることに気付いてもらって、ちょっと冷静になれればいいな、と思います。── 子どもがいけないことをした時も、本来、怒る必要はないということでしょうか?Mさん:本当のしつけは、子どもに何がいけなくて、どうすればよいかを教えることだと思うんですよ。だけど、ただ怒って「謝りなさい」って言っていたら子どもは何を学ぶのかなと思います。怒られたら謝るという、表面的なことだけ学んでしまうかもしれませんよね。「本当はどんな子に育ってほしいと思っていたか」を、思い出して欲しいですね。■子どもの存在を否定・無視することは「心理的虐待」── 虐待で一番多いのは心理的虐待なんですね? どのようなことが心理的虐待にあたりますか? Mさん:「お前なんか生むんじゃなかった」「Aちゃんと違ってお前はかわいくない」など、根本的に子どもの存在、人格を否定することです。── 頭にきてしまったら思わず言ってしまいそうですが…。Mさん:やっぱり存在を否定することは避けたほうがいいですね。それ以外にも、ちゃんとできるまでお説教し続けるなど、やりすぎるケースがあります。こういうケースは、「自分の子どもはこうあるべき!」という、親の思いが突っ走っているように思います。── そのほかには? Mさん:冷たく突き放したり、何を言っても無視したりと、無関心にさらされることです。── 感情を示さない無関心も虐待となるのですね?Mさん:存在をスルーされるのはつらいことです。人間として育っていく過程で、子どもは喜怒哀楽を学んでいきますよね。あり得ない例えかもしれませんが、なんのつらいこともなくて、お母さんはいつもニコニコしていて、それで子どもが健全に育ちますかっていうと、それはそれで難しいと思うんですよね。だから、やりすぎだなって思ったらセーブして、親子一緒に泣いたり笑ったりしていってはどうでしょうか?──心理的虐待が続くと、子どもにはどのような影響がでますか?Mさん:自分に自信がなくなる、安心感がなくなる、落ち着きがなくなる、食欲がなくなる、元気がなくなるというようになってくるかもしれません。── 子どもの存在を否定することは言わない、そして、あとは怒らないほうがもちろんいいけれど、喜怒哀楽をお互いにやりとりをしている間は大丈夫ということでしょうか。今日はありがとうございました。筆者自身も、娘たちをつい怒鳴ってしまったり、傷口に塩を塗るようにネチネチと叱ってしまったりすることもあり、それは心理的虐待にあたらないかな、といった思いも持ちながら向かったこの取材。長年、電話相談で虐待や子育てと向き合ってきたMさんのお話から、「どこまでが虐待で、どこまでがしつけ?」という線引きよりも、親が子育てで困らないことと、子どもの存在を否定しないことが大切なのだと感じました。後編では、子育てが大変な今の時代に、親がどのようにすれば心の余裕が持てるか、というお話を聞きました。取材協力: 社会福祉法人子どもの虐待防止センター(CCAP) 子どもの虐待を早期に発見し、虐待防止を支援するために1991年に設立された民間団体。研修を受けた相談員と、医師、弁護士、臨床心理士、ソーシャルワーカー、行政経験者、教育関係者などが活動しています。CCAPでは、子育てに悩む方のための電話相談、母親のグループ(MCG)、CCAPペアレンティングプログラム講座「親と子の関係を育てるプログラム」などを行っています。相談の電話番号は、03-5300-2990(平日10:00~17:00 土曜日は10:00~15:00/通話料以外は無料)取材・文/まちとこ出版社 石塚由香子
2018年03月09日ママの毎日は、ある意味、戦い。子どもを感情的に叱ったあと、言いようのない後悔に苛まれる…。そんな経験は、どんなママでもしているはず。けれども、「私って、毒親?」「これって、虐待?」と、自分で、自分のことが不安になってしまうこともあるのではないでしょうか。「まずお伝えしたいことは、『怒りはあなた自身ではない』ということです」と言うのは、NPO法人えじそんくらぶ代表の高山恵子(たかやまけいこ)さん。「怒り」との上手な付き合い方について、お話を伺いました。高山恵子さんNPO法人えじそんくらぶ代表。ハーティック研究所 所長。臨床心理士。薬剤師。専門はAD/HD等高機能発達障害のある人のカウンセリングと教育を中心にストレスマネジメント講座などにも力を入れている。■「アンガーマネジメント」という技術「アンガーマネジメント」という言葉を、聞いたことがありますか? アンガーマネジメントとは、心理学に基づいた怒りを扱う技術のことです。最近は教員採用試験にも出題されるなど、子どもと接するすべての大人にとって、必須な技術として注目を集めています。じつは、怒りの感情が沸くことは、人間としてごく自然なこと。「『怒り』との付き合いで大切なのは、まず『怒りという感情』と『あなた自身』を分離することです」(高山さん)「自分は、いま、怒っている」と、きちんと自分で気づいてあげること。そうすることで、「感情」と「あなた自身」は、少し分離されます。■怒りの応急処置は、「最初の6秒」がカギアンガーマネジメントの第1歩は、「自分は、いま、怒っている」と気づき、「いま、ここにある怒り」を、それ以上大きくしないことです。サインが現れた段階で「怒り」に気がつくことができれば、それだけ早く爆発を防ぐための行動に移行ができます。キーワードは、「最初の6秒」。「怒りのサインに気づいた最初の6秒間をどのように使うかが、アンガーマネジメントの重要なポイントです」(高山さん)この時点で「怒りのもと」を深追いするのはご法度! 「どうして、イヤばかり言うの?」「どうして、早くご飯を食べられないの?」。そんな怒りのもとを考え始めたら、炎に燃料をくべるようなものなのです。<早く気がつこう! 怒りのサイン>・呼吸が浅くなる・頭が真っ白になる・顔がカッと熱くなる・動悸がする出典: 『イライラしない、怒らない ADHDのためのアンガーマネジメント』 (高山恵子監修/講談社)より抜粋 なぜ「最初の6秒」がカギになるのでしょうか? それは、怒りには、「アドレナリン」というホルモンが関係しているからです。怒るとき、体の中では、「アドレナリン」が分泌されています。アドレナリンには体を活発にする作用があり、怒っているときには、まさに「火に油を注ぐ」ように怒りがエスカレートしていきます。カチンときて、アドレナリンが分泌されても、6秒後にはそのピークは過ぎるといわれています。言い換えれば、怒りの応急処置法とは、「最初の6秒を、いかに上手にやりすごすのか?」の方法論を知っておくことなのです。■自分が怒っていると気がついたら「最初の6秒」を、ただ、我慢するというのは、意外と難しいものです。そんなとき、物理的な「応急処置メニュー」を知っておくと便利です。「あ、ヤバいな!」と思ったら、それをパッと取り出しましょう。<怒りの応急処置メニュー3つ>●おでこに手を当てて数を数える目の真上、おでこの少し出っ張った部分には前頭葉があります。前頭葉は感情を制御する脳。手を当てて血流の動きを促すことで、動きを活性化させます。●水を飲む水は、火を消すもの。水を飲む時には、心の中で燃えている怒りの火を鎮めることをイメージします。水を飲むことで、脳の血流を改善する効果もあります。●深呼吸をする吐く時間のほうが長くなるよう、4秒吸って、6秒かけて吐きます。息は鼻から吸って、口から吐きます。肺から体のすみずみに新しい空気がめぐるイメージです。出典: 『イライラしない、怒らない ADHDのためのアンガーマネジメント』 (高山恵子監修/講談社)より抜粋 ■怒ってしまった自分に声をかけるまた、自分で、自分に声をかけてあげることも有効です。「言葉の力は、思っているよりも強く、確かなものです」(高山先生)セリフトークは、短く簡潔に! 大切なのは、しっかりと何度も唱えることです。もうひとつ。「『ママ、ちょっとあっちの部屋で休んでくるね』と、その場を離れることも効果的です」(高山先生)その場を離れたら、子どもへの「続きのお説教」を考えることはやめましょう。怒りの原因から心も離すことで、気持ちは切り替えやすくなります。<怒りをしずめるセルフトーク例>・落ち着いて。・私は大丈夫。・コントロールできる。出典: 『イライラしない、怒らない ADHDのためのアンガーマネジメント』 (高山恵子監修/講談社)より抜粋 次回は、「また子どもを怒鳴ってしまった…。『怒り』をぶつけてしまう本当の理由」です。怒りのメカニズムについて教えていただきます。■今回のお話を伺った高山恵子さんのご著書 『イライラしない、怒らない ADHDのためのアンガーマネジメント』 (高山恵子監修/講談社)¥1300円(税別)高山恵子(たかやまけいこ)さんNPO法人えじそんくらぶ代表。ハーティック研究所 所長。臨床心理士。薬剤師。専門はAD/HD等高機能発達障害のある人のカウンセリングと教育を中心にストレスマネジメント講座などにも力を入れている。注意欠陥/多動性障害(以下、ADHD)の正しい理解の普及と、ADHDを持つ人々を支援し、ADHDを障害としてクローズアップするのではなく、豊かな個性の一つとして長所を伸ばし、弱点を克服できるよう支援する団体として「NPO法人えじそんくらぶ」を立ち上げる。NPO法人えじそんくらぶ公式サイト: <イベント情報> 「成人ADHD等の理解と対応」 (2018年1月~6月/全6回・東京)第1回 『アンガーマネジメント概論』怒りのメカニズムとクールダウンの方法を学び、自責・他責を減らしましょう。(2018年1月23日(火)))
2018年01月15日虐待とは出典 : 児童虐待防止法の表現を借りると、虐待とは「特定の相手に対して、その人の人権を著しく侵害し、心身の成長及び人格形成に多大な影響を与えること」です。その対象になりやすいのは児童、高齢者、障害者などの社会的な立場が弱いとされる人たちです。平成27年度に厚生労働省が発表した統計によると、虐待の疑いが専門機関に連絡された件数(通告件数)は高齢者が28,328件、障害者7,768件、児童103,260件であり、児童に対する虐待の通告件数が一番多い結果になっています。また、平成29年8月17日に発表された平成28年度の児童虐待相談対応件数は122,578件で、その数も年々増加している傾向がわかります。この記事では最も通告件数が多い児童虐待について説明していきます。児童虐待の通告件数が増加している背景には2つの要因が挙げられます。1つ目はメディアの報道により関心度が高まったこと、2つ目には法律の改正により通報が義務付けられたことです。通告件数の多さからわかる通り、いまや児童虐待は稀な出来事ではありません。子育ての孤立や貧困など、現代の子育て環境は過酷で、かつて考えられていたような「一部のひどい親」だけが行うというものではなくなってきています。つまり誰にでも、虐待という不適切な親子関係に陥る可能性があるのです。いつ自分の身の回りに起きても大丈夫なように、正しい知識を持っておきましょう。虐待につながりそうな親子の存在にいち早く気づき、適切な支援につなげることで、救われる親子がいるかもしれません。参考:平成27年度高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果|厚生労働省参考:平成27年度 「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」に 基づく対応状況等に関する調査結果報告書|厚生労働省参考:平成27年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数<速報値>|厚生労働省参考:平成28年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数<速報値> |厚生労働省虐待の種類出典 : 虐待はその手段によって、いくつかの種類に分類されています。ここでは厚生労働省が「児童虐待の定義と現状」で使っている分類を紹介します。1.身体的な虐待殴る、蹴る、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などで縛るなど2.心理的な虐待言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるうこと(ドメスティック・バイオレンス/DV)など3.性的な虐待子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にするなど4.ネグレクト家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かないなど参考:厚生労働省「児童虐待の定義と現状」これら4種類の虐待は単独で起こるだけでなく、複合的に起こることもあります。また、法律の条文に載っていなくても、子どもの健康的な心身の発達を阻害する可能性がある言動は虐待に値します。次の章で紹介する基準をもとに、柔軟に判断することが子どもたちを救うのです。どこからが虐待なの?出典 : 専門機関が虐待かどうかを判断する指標として、児童虐待防止法の定義が使われます。一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。つまり、前の章で挙げた身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、ネグレクトの項目に当てはまるような言動が見られる場合に、虐待と判断されるのです。けれども、法律上の定義だけでははっきりと判別できない事例も多いことが事実です。虐待としつけの間には線引きが難しいグレーゾーンが存在し、第三者からは見分けがつきにくいこともあるでしょう。虐待の判断で重要なポイントは、子どもの視点に立って考えることです。親はしつけや教育のためと思っていても、子どもが耐えがたい苦しみを感じ、心身の成長に悪い影響を与えそうなときは虐待として考えるべきという専門家も増えています。また、もし、虐待かどうか判断しかねるときは、児童相談所にまずは相談しましょう。虐待かどうかの判断をするのは児童相談所です。虐待でなかったとしても、故意によるものでなければ通告をした人自身の責任は問われません。なので、通告の段階では主観的な判断であってもよいのです。むしろ、虐待かどうか判断しかねるような段階で早めに専門機関につながることで、支援の手により虐待が未然に防げることもあります。虐待の影響出典 : 虐待は子どもの心身に非常に大きな影響を与えます。この章では、虐待の影響を分類ごとに説明します。身体的影響は、さらに2つに大きく分けられます。一つは、外的な傷害です。外的な傷には打撲、切り傷、やけどなど目に見える傷と、骨折や頭蓋骨内出血などの見えない傷があります。また、目に見える傷であっても衣服に隠れる場所にあるため発見が遅れてしまう場合があります。外傷が重い場合には、重い障害が残ったり死に至る可能性があるため、いち早く気付けるように注意する必要があります。二つ目は発育の遅れです。十分な食事を与えられなかったり、愛情を注がれなかったために栄養障害や発育の遅れが生じることを言います。逆にストレスで過食になったり、感覚が鈍くなり、外傷を負っても気付かないこともあります。虐待を受けた子どもの中には、家庭内が安心できる環境ではないこと、十分に学校に通うことができないこと、また、保護者から知的発達に必要な関わりをしてもらえないために、知的な発達面に異常が生じることがあります。知的な発達の異常は、認知機能(知覚、記憶、思考、判断)の低下、衝動性や多動性により発達障害だと誤解される可能性もあります。本来、最も愛情を注いでくれるはずの保護者から傷つけられることで心理的な問題が生じることも多々あります。親子間の愛着関係を築くことができなかったため、対人関係の構築に問題が生じます。「人を信用できない」「仲良くなってもすぐに関係を壊してしまう」「否定されることが怖くて自分の意見が言えない」などの困りごとが生じます。これらは子どもが大きくなって社会生活を送る上で大きな障害となるでしょう。つまり、虐待の影響はその場限りではなく、子どもが成長してもずっと続くことがあるのです。他にも、自己評価の低下や行動コントロールの困難さが原因となり、暴力的・衝動的な行動や非行に走ることがあります。偽成熟性も特徴的な症状です。精神的に不安定な大人と関わることで自分が大人の役割を果たさなければいけないように思い、大人びた行動にでることを言います。一見成熟しているように見えても思春期頃に問題行動が出てくることもあります。また、強い心理的ストレスによる記憶喪失や解離性障害、不眠など、日常生活に支障をきたしてしまう精神疾患に至るケースもあります。このように、虐待は子どもの心身に多大な影響を残し、その回復のためには長期間の治療やケアが必要になるのです。手遅れにならないように、周囲がよく気を配ることが必要です。なぜ虐待が起こるのか出典 : 虐待が起こりやすくなるリスク要因として、「子どもによるもの」「保護者によるもの」「社会/環境によるもの」という3つの要素が挙げられます。1つ目は、子どもによる要因です。発達障害、身体的な障害、精神疾患など、その子が持つ特性によって、保護者がその子のことを育てにくく感じることもあります。もちろん、これらの要因は子どものせいではありませんが、特別なケアが必要だったり、愛着形成やコミュニケーションをとりにくかったりといった育児の難しさが、過剰なしつけや保護者自身のストレスにつながりやすく、虐待のリスクが高まることがあります。2つ目は、保護者による要因です。様々な要因により、保護者が子どもを受け入れられないことがあります。具体例としては、望まない妊娠、子育てに関する知識不足、保護者自身の発達障害、虐待を受けて育った経験、などです。子育ての途中につらい記憶がよみがえってきたり、子どもに注意を払いたくても気付けないことが多かったり、教育のしかたがわからなくて暴力的な言動やネグレクトを引き起こしてしまうことがあります。3つ目は、社会/環境による要因です。貧困家庭やひとり親家庭などの場合には、保護者が環境に関心を向ける余裕がなく、社会的に孤立してしまう場合があります。このような家庭は保護者が生活を維持することに精いっぱいなため、子どもへの関心が向きづらく無自覚のうちにネグレクトにつながってしまうことがあります。孤立している家庭は周囲とのコミュニケーション、サポーティブな関係、頼れるサービスが身近にあることで家庭内トラブルのリスクが大きく減ると言われます。本人や周囲の人々がリスクを認識しつつ、支え合える関係を築いておくことが重要です。虐待のサイン出典 : 家庭内に虐待が起こっている場合、子どもや保護者の様子に異変が生じるはずです。周囲がその変化にいち早く気づくことで深刻な虐待に至る前に早期発見し、食い止めることができるでしょう。1.身体的な変化□不自然な傷や同じような傷が多い□原因がはっきりしないケガをしている□治療していない傷がある□極端な栄養障害や発達の遅れが見られる2.表情□表情や反応が乏しく活気がない□ボーっとしている□おびえた泣き方をする□養育者と離れると安心した表情になる3.行動□食事に異常な執着を示す□衣服を脱ぐとき異常な不安を見せる□ひどく落ち着きがなく乱暴、情緒不安定である4.他者との関わり□他者とうまく関われない□繰り返し嘘をつく□態度がおどおどしている□親や大人の顔色をうかがう□誰かれなく大人に対して警戒心がうすい(なれなれしい、ベタベタする)□保護者が迎えにきても帰りたがらない□他者との身体接触を異常に怖がる5.生活の様子□衣服や身体がいつも不潔である□基本的な生活習慣が身についていない□予防接種や健康診査を受けていない□年齢不相応の性的な言葉や性的な行動が見られる□夜遅くまで遊んだり徘徊したりしている□家に帰りたがらない1.子どもへの関わり方□子どもへの態度や言葉が拒否的、無関心的である□子どもの扱いが乱暴である□子どもに理想を押し付けたり、年齢不相応な要求をする□体罰の正当化や偏った養育方針(しつけかた)をもっている□きょうだいに対して差別的である2.他者への関わり方□他者に対して対立的、否定的な態度をとる□特に、理由も無く関わりを避けたり、連絡が取りづらい□説明の内容が曖昧でコロコロ変わる□子どもに関する他者の意見に被害的・攻撃的になる3.生活の様子□近隣との交流を拒否し孤立している□不衛生な生活環境である□小さい子どもを家に置いたままよく外出している□夫婦関係や経済状態が悪い□夫婦間の暴力が認められている4.保護者自身のこと□ひどく疲れている□精神状態が不安定である□性格的な問題として、被害観が強い、偏った思い込み、衝動的、未成熟など□いつもお金に困っている様子がある□家族関係のトラブルを抱えている参考:虐待のサインを見つけるには|神奈川県参考:横浜市子ども虐待防止ハンドブック|横浜市参考:教職員・保育従事者のための児童虐待対応マニュアル|埼玉県もちろん、この基準に当てはまるからといって、虐待が起こっているとは限りません。その子どもの特性を踏まえて変化に注目してみましょう。たとえば「今まで活発だった子が急にふさぎこんでしまった」「お友達と遊ぶことが好きだったのに、最近は一人でボーっとしている時間が多い」などです。親子の様子に著しい変化や違和感がないか、確認しましょう。変化に気付くためには、周囲の注意深い観察が必要です。ぜひ、上の項目を意識しながら子どもたちを見守ってみてください。虐待の可能性があるときは?出典 : 虐待から子どもを守るためには、虐待のリスクに周囲が気づき、早期に関係機関に通告することが最も大切です。速やかな通告がされないと、行政機関も虐待の防止に向けた活動を行うことができず、虐待を受ける子どもの生命や心身に大きなダメージを与える危険性が高くなります。そのため、虐待の通告はとても重要な役割を担っており、児童虐待防止法では通告を国民の義務と定めています。児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。「もし違ったらどうしよう」とためらってしまうかもしれません。しかし虐待かどうかの判断は児童相談所が行うので、通告者が虐待であるかどうかを判断する必要はありません。少しでも虐待の可能性がある場合、そのリスクを見落とさないためにも、より多くの情報が必要です。そのため「一般の人の目から見て主観的に子どもの安全・安心が疑われる場合」であればためらわず通告してください。もし仮に通告の後で虐待の事実がないと判明したとしても、虐待の事実がないことを知りながらあえて通告したという場合などを除けば、法的責任を問われることはありません。まずは「189」に電話相談!「189」は、児童相談所や市区町村が「いちはやく」児童虐待に対応できるよう、厚生労働省により設けられた全国の児童相談所の共通ダイヤルです。「189」に電話をかけると最寄りの児童相談所につながります。児童相談所に電話をすると、専門家が子どもの状況や、「いつ、どこで、どのような異変を確認したのか」などの聞き取りを行います。出典 : 「189」への相談は24時間365日いつでもすることができます。電話の通話料金は相談者の負担となりますが、相談料などはいっさいかかりません。また、相談者の氏名や相談内容に関する秘密に関しては口外されないよう定められているため、相談者にとって安心して相談しやすい環境が整えられています。児童相談所に担当者に対して氏名を明かしたくない場合は、匿名での相談もおこなうことができます。虐待の通告への対応を含め、その後の親子への支援は児童相談所が担当します。虐待の疑いがある子どもを見つけても、「自分の子どもなんだから、これ以上のことはしないだろう」「通告したら、親子の関係をより悪化させてしまうのではないか」「親から告げ口をしたと恨まれないか」と不安に感じ、通告に踏み切れないこともあると思います。そう感じるときに思い出してほしいのは「虐待の通告は子どもだけではなく、親も救う」ということです。通告は罰することではなく、必要なサポートや支援につなげるための手段です。前述の通り、虐待が起きている家庭は孤立状態にある場合が多く、困りごとを共有できずにいます。通告によって行政が虐待の存在に気付ければ、保護者が子どもへの向き合い方を見直し、自らの困難さへの対処をすることにつながるのです。通告後はどんなサポートがあるの?出典 : 虐待が発見されたら、近くの児童相談所か行政の相談窓口に通告されます。通告が受理された後、保護者や児童本人にヒアリングして重症度・緊急度の審査が行われます。審査の結果を踏まえて、児童の一時保護を含めた措置を検討します。在宅支援とは、子どもの生活拠点は家庭のままにして、家族への支援を行うことです。在宅支援が行われる場合は、虐待のリスクはあるが「止めたい」という保護者の意思が確認できるときや、保護者を支援することで問題の改善が期待できるときなどです。児童相談所や自治体、民間団体など様々な機関から広い支援を受けることができます。1.ペアレントトレーニングペアレントトレーニングとは、行動療法的な考え方を使って保護者自身が子どもとの関わり方を学んでいく方法です。子どもを自分の思い通りに操作するために暴力や暴言に頼る方法ではなく、より良い関係の中で親子関係を築く方法を学びます。2.ピアカウンセリングピアカウンセリングとは、子育てに困りごとを抱えている保護者同士が話し合うことで困りごとを共有し、支え合う関係性を築くことです。境遇が似ている人と気持ちを共有することで、自分自身の行動を受け止め、許容することができるようになります。3.支援団体と保護者の面談主に児童相談所と行政の担当課による家庭訪問や面談です。話を聞いたり、困りごとの相談に応じることで、保護者が孤立してしまうことを防ぎつつ、子どもに対する行動を客観的にとらえられるように促します。4.幼稚園、学校内での見守り主に教職員によるモニタリングを行います。「ちゃんとご飯食べてる?」などの質問を通して子どもが健やかに育っているか、虐待の再発は無さそうかの変化を観察します。児童相談所から指示があれば、追加の支援も行われます。5.地域での見守り児童委員の人が家庭訪問等を通して、家庭内の状況を見守ります。親子を分離する必要があると判断された場合は、児童福祉施設や里親に預けられます。子どもの保護を保護者が拒否するときは、児童相談所が裁判所に申し立てをし、裁判所の命令によって児童を保護することになります。今までは児童福祉施設に預けられることが多かったものの、2017年8月に厚生労働省が被虐待児の施設受け入れよりも、里親の受け入れを増やす方針を発表しました。この方針は、家庭に近い環境での発育が必要な子どもの選択肢を広げることが狙いです。こういった世相の変化によって、子どもの特徴に合った、支援の幅が広がっていくことになるでしょう。子どもが保護されている間には、保護者に向けた関係機関からの支援が受けられます。支援によって親子関係の再構築が望める場合、家族が再び一緒に暮らすこともあります。子どもに虐待しそうになったときは出典 : 「自分が虐待をしてしまうのではないか」「自分が虐待をしているのではないか」、また「どうしても自分をコントロールできない」などと悩む保護者の方も少なくないようです。そういった悩みを抱える保護者向けのサポートがあります。子育ての悩み相談や地域で受けられるサポートを知りたい場合は、児童相談所のほか各市区町村の役場(役所)にある「児童福祉課」「子育て相談課」で対応してもらえます。情報収集や気軽に話せる相手がほしい場合はサポートをしている団体に連絡してみるとよいでしょう。社会福祉法人子どもの虐待防止センター(CCAP)が、研修を受けた相談員による電話相談を行っているほか、ケースによっては虐待などの悩みをもつ保護者同士が自分の体験を語ることによる治療的グループケアなども行っています。また、社団法人子どもの虐待防止センターでは、電話での相談を受け付けているとともに、育児スキルトレーニングの教室の実施なども行っています。このように信頼できる専門機関とつながることで、育児のストレスを減らすことが期待されます。子どもの虐待防止センター相談電話|社会福祉法人子どもの虐待防止センター (CCAP)参考:「虐待をやめたい」と悩み苦しむ親への支援|社会福祉法人子どもの虐待防止センター自分の感情をコントロールできない人には、アンガーマネジメントを学んでみることもおすすめです。アンガーマネジメントとは、イライラや怒りの感情と上手に付き合うための心理教育です。自分のイライラや怒りの原因を理解し、ポジティブな方向に持っていくための訓練をします。自分や子どもにあるリスク要因を認識し、感情が高ぶったときの対処法をあらかじめ考えておくと自分の感情をコントロールしやすくなります。アンガーマネジメントは日本アンガーマネジメント協会が行っている研修や、関連図書で学ぶことができます。困っているときにどのように対処するか、どこに相談するのかを知っておくことで、解決の糸口が見つかるかもしれません。参考:愛の鞭ゼロ作戦|厚生労働省参考:アンガーマネジメントとは|日本アンガーマネジメント協会参考図書:監修/日本アンガーマネジメント協会,著者/長縄 史子, 篠 真希 , 小尻 美奈『ママのアンガーマネジメント: 子育てのイライラスッキリ 8つのマジック 』(合同出版・2017年)まとめ出典 : 虐待は、保護者が故意に子どもに危害を加えるというイメージがあります。しかし、実際には虐待をしたくてしている保護者は少ないのではないでしょうか。もちろん子どもを傷つける行為自体は決して許されるものではありません。しかし、その背景に目を配ると、実は子育てに悩んでいて、どうすればいいのか分からずに虐待をしてしまっている人も多いのです。子育ての悩みと言っても子どもの問題や保護者自身の問題、社会や環境にある問題など、様々な要素が複雑に絡み合っているために本人では解決が難しい場合がほとんどでしょう。そのような困りごとを抱えている家族を救うためには、周囲の人の通告が一番重要な役割を担っています。通告と言うと、その過程に与える影響が気になりためらってしまう人もいるのではないでしょうか。けれども、通告は”悪い親“を罰するためではなく、困っている家庭を救うための手段です。親子の支援と早期発見が子どもの健やかな成長には必要です。虐待について知り、勇気を持って行動に移せる人が増えてほしいと思います。
2017年08月18日女優の篠原涼子がこのほど、主演を務める読売テレビ・日本テレビ系スペシャルドラマ『愛を乞うひと』(1月11日21:00~)の取材に応じ、虐待シーンの裏話などを語った。このドラマは、下田治美の同名小説が原作。幼少時代に母・豊子から凄惨な虐待を受け、愛に飢えていた女性・照恵が、本当の自分を取り戻していくストーリーだ。現代の照恵を軸に、幼少時代の回想シーンも並行して描いていくが、篠原は、現代の照恵と、幼少時代の照恵の母・豊子の2役に挑戦。照恵が控えめな女性である一方、豊子は気性の激しい役柄という両極端な性格で、篠原は「先に豊子を撮ってガンガンやりたい放題大きい声で怒鳴ったりとか、身振り手振りで暴行もやっていたので、引っ込み思案な照恵は、物足りないな、みたいな気持ちになりました(笑)」と、冗談めかして語る。照恵の幼少時代を演じるのは、子役の鈴木梨央。篠原は彼女への虐待を演じたが、最初のリハーサルの時に「本当にごめんね、そんな人間じゃないんだよ」と伝えていたという。しかし、虐待シーンの気持ちの入り方を考え、本番の撮影の際は、言葉でのコミュニケーションを意識的に抑えたそうだ。それができたのは、鈴木があまりにも大人びていたからだそうで、「子供の着ぐるみに入って、実は大人なんじゃないかと思うくらい」と表現。そんな中、ケータリングが焼き肉だったときに「わーお肉だ!」と無邪気に喜んでいる様子を見て、「良かった、子供だ。うちの息子とも遊べそうだ」と、安心したことを振り返った。そして、広瀬アリスが演じる、大人になった現代の照恵の娘・深草に対しては「照恵にとって救いの立ち位置で、それを本当に見事に、ボーイッシュに演じてくださったので、自然な親子という感じに見えてるんじゃないかな」と手応え。普段の広瀬については「私と同じサバサバしているタイプだったので、すごく話が合ってて楽しかったですね」と印象を語った。同作は、1998年に原田美枝子主演で映画化されているが、「虐待をここまで見せてしまうんだということに衝撃があって、それを原田さんが抜群の演技で見せている姿に、同じ女優として挑戦してみたいという気持ちがありました」と感化されたことを紹介。当時助監督だった谷口正晃監督が、今回メガホンを取っているが、さなざまな演出プランを提案されて、「いろいろ引き出しを開けられちゃったなという感じです」と見どころを話している。重いテーマの作品だが「あんまり構えないで見てほしいですね。そして、これを見て自分のことだなと思ったときに、1人でも思い直してくれる人がいたらいいなと思います」と要望。ほかにも、ムロツヨシ、平山浩行、杉本哲太、寺島進、豊原功補、木村多江、上川隆也らが共演し、主題歌は、詞を書き下ろした中島美嘉の「Alone」となっている。
2016年12月12日ブラット・ピットにかけられていた児童虐待容疑が晴れたようだ。ブラッドは今年9月、プライベート機の中でアルコールの影響下、息子マドックス(15)に対して暴行を加えた疑いをもたれていたが、数週間に渡るマドックスからの聞き取り調査と証拠を照らし合わせた結果、DCFS(児童家庭支援組織「デパートメント・オブ・チルドレン・アンド・ファミリー・サービス」)はこの件に関する調査を9日に終了することを決めたという。警察関係者らはTMZに対し、プライベート機の中で起きたとされる口論において、ブラッドがマドックスに対して身体的および精神的な危害を加えたという事実はなかったと判断されたとコメントしている。調査も終了し、疑惑が晴れたブラッドは、破局した妻アンジェリーナ・ジョリーとの親権争いにも明るい希望が見えてきたと言えるだろう。その一方で、アンジェリーナは家族を守るためにブラッドに対して行動を起こす必要があったとしているといい、結果が出た今、ようやく子供たちは両親の離婚から回復していくことができるようになると考えているようだ。アンジェリーナの代理人はTMZに対し「最初からアンジェリーナは、家族の健康のために行動を起こす必要があったと言っています。8週間の調査の結果に安心しており、DCFSが満足いく保護措置を取ったことで子供たちはこれから回復していくことができるでしょう」とコメントしている。さらに同代理人は、アンジェリーナが子供たちの第一親権を保持し、ブラッドは監視下で子供たちと面会をしていくという条件に2人が合意したことも発表した。しかしこれは、DCFSの調査が行われていた際に合意した条件であるため、ブラッドは現在も共同親権を望んでいるようだ。だが、関係者らによるとアンジェリーナはブラッドが親権を持つことに不安を抱えているようで、離婚裁判ではブラッドが子供たちの対して行った虐待の証拠を提出すると言われている。(C)BANG Media International
2016年11月11日ブラッド・ピットの長男に対する虐待容疑が晴れたのを受けて、アンジェリーナ・ジョリーの代理人がコメントした。ブラッドは9月にプライベートジェット機内で、15歳の長男マドックスと口論になった際に暴力をふるったとされ、ロサンゼルス郡児童家庭サービス局(DCFS)の調査を受けていたが、ブラッドとアンジェリーナ、6人の子どもたちと機内の目撃者たちから事情聴取を行った結果、「虐待のパターンは見つからなかった」として、調査の打ち切りを決定した。アンジェリーナの代理人は「TMZ.com」に「アンジェリーナは最初から、家族の健康のために行動を起こさなければならないと考えていました。そして8週間取り組んだ結果、保護体制が整い、子どもたちの苦痛も癒されるとDCFSが認めたことに安堵しています」とコメントした。アンジェリーナは、ブラッドがマドックスを殴ったことをきっかけに、離婚を申請、単独親権を要求している。関係者によると、彼女はブラッドが共同親権を持つと、子どもたちに危険が及ぶのではないかと考えていて、ブラッドが親権の要求を取り下げない場合、離婚裁判の法廷にブラッドが虐待をしていた証拠を提出するつもりでいたという。代理人は、アンジェリーナが身上監護権を、ブラッドはセラピストの監視下で子どもたちと面会する権利を持つことで双方が合意しているとも語った。だが、これはDCFSの調査期間中の一時的なものであり、ブラッドの容疑が晴れたことで親権争いは新たな局面を迎えるという見方も出てきている。(text:Yuki Tominaga)
2016年11月11日【ママからのご相談】年長さんの男の子ともうすぐ3歳の女の子のママをしています。近頃、毎日のように児童虐待のニュースが流れていますよね。自分にも同じような年齢の子どもがいるので本当に痛ましくて悲しいです。そんなニュースを聞くと、「とんでもない親だ!」と憤る気持ちが起きるより先に、「自分がもしわが子に同じようなことをしてしまったら?」という不安が頭をよぎるのです。私よりも大変な思いをしながら子育てをしている方はもっと大勢いるし、甘えているのかもしれませんが、今とても子育てが苦しいです。●A. 子育てに悩んだら「どちらでもいい」と考えてみてくださいご相談ありがとうございます。ママライターのあしださきです。児童虐待のニュース、私も最近本当に多いなと思います。毎日のように流れる痛ましい事件を、つらい気持ちで受け止めていらっしゃるご相談者さまのお悩みを少しでも軽くすることができないものかという思いで、このコラムを書いています。まず、ご相談者様のように子育て中の母親の中には、「自分がわが子を虐待してしまうかもしれない 」と考え、悩む人も多くいらっしゃるという事実があります。平成25年に東京都福祉保健局が行った、児童虐待防止のためのアンケート調査においても、次のような結果が出ています。子育ての経験がある方で、子育てについて悩みがある(あった)と答えた人のうち、「子どもを虐待しそうになったことがある」と答えた割合は、27.9%であったそうです。また、「児童虐待が起こる原因と思われるものは?」という質問に対しては、「親のストレス」が63.0%と一番多い回答でした。家庭内で主に昼間の育児を担っているのは、お母さんたちです。そのお母さんたちが育児関連で多くのストレスを感じてしまうのは、児童虐待防止の観点からも非常に危険なのだということがいえますよね。●母親のストレスにはどんなものがあるか・他者との比較によるストレスお子さんが小さいうちは、「いつ寝返りをしたか」や「言葉を話すのが早い、遅い」などで悩むことが多いです。大きくなると「小学校受験」「習い事」「親のステイタス」などで比較します。・義理家族との付き合い方孫誕生によって、自然と夫の家族との付き合いがより濃密なものとなります。そのことで生じる家族の価値観の相違はママたちにとっては非常につらいものがあります。夫はやはり違う家庭環境で育ってきた他人なのだな と痛感することも多く、そのことで夫婦の溝が生じる場合もあります。・子どものしつけ子育ては育児書のようにいかないことが多く、不安になればすぐにスマホで検索してしまう。たとえば「離乳食が進まない」「トイトレがうまくいかない」「食事のマナーが守れない」「公園でお友だちに順番を譲れない」などなど、全てにおいて母親である自分の不甲斐なさのせい と考え、落ち込んでしまいます。・経済的な問題・家庭内の不和(夫婦)●「どちらでもいい」という魔法のような言葉ヤングキャリアコンサルタントとして活躍中の田口久人さんがInstagramに投稿して話題となっている『どちらでもいい』という詩があります。田口さんの著書『20代からの自分を強くする「あかさたなはまやらわ」の法則』に載っていますので、引用してご紹介したいと思います。これを読んで、心を動かされた人がたくさんおり、話題沸騰中とのことです。**********『どちらでもいい』友達は多くても少なくてもいい本音を話せる人がいるなら年収は高くても低くてもいい幸せにすごせるなら家は広くても狭くてもいい自分に合っているならモノを増やしても減らしてもいい大切なものがわかっているなら頭が良くても悪くてもいいまわりを喜ばせられるなら性格は明るくても暗くてもいい個性の1つだから化粧は厚くても薄くてもいい自分の魅力が伝わるなら子供は褒めても叱ってもいい愛情が伝わっているなら夢は小さくても大きくてもいい叶えられるなら人生は短くても長くてもいい本当に後悔をしないのなら**********私自身、子育てしていて「もっとこうだったらいいのに」というわが子への期待 がでてきてしまうことが多いです。そしてそれに程遠い現実とのギャップを感じているときが最もつらいのだ、と気がつきました。そんなとき、この詩を目にする機会があり、「肩の力がふっと抜けた」と感じたのです。子育てに悩むママたちも、「どちらでもいい」と自分にもわが子にも思えたらいいのではないでしょうか。そうすると、わが子の天真爛漫な笑顔が自分や周りの人を明るくさせていることに気が付いて、そこを素晴らしい長所だと思って伸ばしてあげたいと思うでしょう。今までは、「うるさくて落ち着きがなく、躾の悪い子」に感じていたのに。わたしはそうでしたよ。叩いてまで言うことを聞かせようとしていた自分にも、もうさよならしなくてはいけないと思ったきっかけがこの詩でした。----------いかがでしたか?「どちらでもいい」これは魔法の言葉でしょうか?ちょっと立ち止まって、自分の心に問いかけてみてくださいね。いまこだわっていること、「どちらでもいい 」ことではないですか?【参考文献】・『20代からの自分を強くする「あかさたなはまやらわ」の法則』田口久人・著【参考リンク】・児童虐待についてアンケートを実施 | 東京都福祉保健局()●ライター/あしださき(元モデル)●モデル/神山みき(れんくん)
2016年10月31日子どもはかわいいはずなのに、子育てをしているとイライラして、つい大声を出してしまったり、手を上げてしまったり。そんな自分に自己嫌悪におちいっているママも多いのではないでしょうか。さら助産院(埼玉県)のベビーマッサージクラスで開催されたミニ講座「たたかない・どならない子育て」にて、NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事などを務める高祖常子さんに話を聞きました。子育て中はイライラするのが当たり前講座に集まったのは0歳児の赤ちゃんとママ12組。講座は、ママたちに、「たたかない、どならない育児」と聞いて思うことを、一言ずつ話してもらうところからスタート。「しつけに厳しい父にたたかれて育った。子どもとどう向き合ってよいのかわからない」、「よその親が怒鳴っているのを見ると、将来ああなるのはイヤだなと思ってしまう」、「上の子がイヤイヤ期。毎朝、『今日は怒らない』と決意するのに、夕方には怒ってしまい、自己嫌悪になる」などの意見が出ました。うなずきながら聞いていた高祖さんは、「これから子どもが成長する過程で、イライラする瞬間は絶対にあります。そのときの対処方法を知っておくと、どなったり、たたいたりすることを避けられます」。赤ちゃんが泣き止まないときは?~これだけはやらないで!「0歳時の赤ちゃんに対しても、『泣き止まない』などの理由でイライラすることはありますよね。未熟な状態で生まれてくる人間の赤ちゃんにとって、泣くことは生きるための手段なのです。お腹がすいた、眠いといった理由だけでなく、なんとく気分がすっきりしない、という理由で泣くこともあるでしょう。何をしても泣きやまないときは、『泣きたい気分なのね』と泣かせてあげればいいのです」。高祖さんが挙げた、赤ちゃんが泣き止まないときでも、やってはいけないこと。・強く揺さぶる・投げる・口をふさぐ・たたく以上は、赤ちゃんの命を守るためにも、絶対にやめてくださいとのこと。イヤイヤ期はどうする?~「たたかない」と決める「自我が出る2~3歳は、『イヤイヤ期』と言われますが、これは成長のステップ。自分の気持ちを表現できるようになったということです。ただ、相手のことを考えたり、場の雰囲気を察したりすることはできない、気持ちを切り替えることも難しいので、大人にとって大変な時期であることは確かです。でも、子どもの主張を『ダメ!』と押さえつけてしまうと、自己表現の機会を奪ってしまいますし、たたいて言うことを聞かせる方法を取ると、親の顔色を見て行動する子になってしまうかもしれません。『軽くたたく』のつもりが、エスカレートする危険性もあります。とにかく、『たたかない』と決めてください」。子どもの困った行動には?~まずは子どもの気持ちを受け止めるでは、子どもが自分勝手なことを言ったり、迷惑な行動を取ったりした場合、どうすればいいのでしょうか。「怒る前に子どもの感情を受け止めることが大事です。たとえば、靴を履かない子に、頭ごなしに『履きなさい!』とどなるのではなく、『そうなんだね。履きたくないんだね』と気持ちを代弁してあげる。『じゃあ、これとこれ、どっちを履きたい?』と本人に選択肢を与えてあげるのもいいですね。部屋で棒を振り回そうとする子に、『ここでは危ないからやめてね』と制止するのはもちろん。でも、何度もやるのなら、それはやっぱりやってみたいから。『ここは危ないけど、人がいない公園ならいいよ』、『風船で作った棒ならいいよ』など、代替案や条件を示してあげたり、『どこならいいかな?』と一緒に考えたりするのもいいですね。威圧するのではなく、自分で考えて行動するように導いてあげることができれば、社会に出てからも、自分で判断・行動できる子になります」。上の子に厳しく当たってしまう場合は?~上の子に向き合う時間を作る「ママが赤ちゃんのお世話で大変なときに、上の子にわがままを言われて、イライラして当たってしまうことも多いですよね。そういう場合は、たとえば、『おっぱいが終わったら、二人で絵本を読もうね』のように、具体的な約束をしてみましょう。月一回でもいいので、下の子をパパに任せて上の子に向き合う時間を作ってあげるのもいいですね。おいしいおやつを食べて『ママと○○ちゃんとの秘密だね』と伝えたら、上の子はきっとうれしいはず。頭をなでたり、下の子に優しくしてくれたら『ありがとう。うれしそうだよ!』とほめて、下の子の気持ちを伝えましょう。心を満たされると、下の子にも優しくできるようになります」。ママのイライラを逃す方法を知っておこう「イライラしてたたいたり怒鳴ったりしそうになったときに、クールダウンする方法を知っておくといい」ということで、高祖さんのおすすめは、たとえばこんなこと。・子どもから離れる・深呼吸する・数を数える・お皿洗いなどで心を浄化する「触ってはいけないものは高い場所に片づけておく、お菓子売り場を通らない工夫をするなど、イライラする要因を排除することも大切ですね。また、日頃から少しでもリラックスする時間を作って、ガス抜きすることも必要です。一時託児サービス利用したり、パパに預けたりして、1時間でも2時間でも、一人になる時間を作ってください。家事もがんばりすぎないで、疲れた日はお惣菜を買うなど、手抜きをしてもいいのです」。相談できる人を見つけよう「日中一人でがんばっているママには、大人の会話をしたり、小さなことを相談したりできる人が必要」と高祖さん。「まずは、パパと向き合うことをあきらめないで。二人で、『子どもにはどんな大人になって欲しいか』を話し合ってみることも必要です。一時的な感情を子どもにぶつける対応が、思い描く将来のわが子の姿につながるのか、ということも見えてきます。でも、パパは帰りが遅かったり、話を聞いてもらえなかったりすることがあるかも。そういう場合は、両親でも、ママ友でも、行政の担当者でもいいので、とにかく相談できる人を見つけて欲しいですね」。私も7歳と3歳の育児中。毎日、仕事も家事もするべきことは山ほどあって、そのうえ子どもたちが思い通りにいかないと、ついつい大きな声に。子どものためにはならないと、わかってはいるのですが。早速、「どなりそうになったら深呼吸」を実践してみようと思います。取材協力:さら助産院特定非営利活動法人児童虐待防止全国ネットワーク<文:フリーランス記者鯰美紀>
2016年06月20日昨今、児童虐待事件が多く報じられています。厚生労働省の発表によると、平成26年度、全国の児童相談所での児童虐待相談対応件数は8万8,931件。児童虐待防止法施行前の平成11年度に比べると、7.6倍にも増えています。そこで児童相談所の現状について、東京都福祉保健局・児童相談センターの栗原さんにお話を伺ってみました。全国的に相談対応件数が増加傾向にあるなか、東京都では人員が足りているのでしょうか?■平成28年度に児童福祉司を18人増員この2ヶ月でも虐待相談件数は昨年度同期にくらべて増えており、人員については厳しい状況だとか。しかし今年度に入って児童福祉司を18人増員しており、他に警察官OBや保健師などの非常勤スタッフとも連携をとりながら対応しているそうです。また、この人員増はスタートしたばかりの段階のようです。今年4月、厚生労働省が虐待への対応を強化する「児童相談所強化プラン」を発表。児童福祉司や児童心理司、保健師などの専門職を今後4年間で合計1,120 人程度増員する目標を掲げています。■児童相談所は子どもの安全を最優先する今年3月には、相模原市の男子中学生が児童相談所に保護を訴えたものの認められず、自殺したニュースがありました。子ども自らが助けを求めた場合には、どのように保護の決定がなされるのでしょうか。「子どもから保護を求められた場合には、児童相談所で調査、話し合いをして、保護の要否を決めています。警察や小中学校等からの通告も、基本的に同じように対応します」とのこと。ただ児童相談所は、子どもの安全を最優先するため、子どもを親から引き離し、一時的に保護してから調査をすることもあるようです。また虐待通告があった場合は、原則48時間以内に子どもを直接目視することがルールとなっています。調査の際は2~3人で行動し、家庭を訪問する際にも複数の職員で聞き取りに行くそうです。■子どもの虐待を見てしまったときの対応私たち大人ができることは、虐待を発見したら通告すること。しかし外出先で子どもが虐待されているところを目撃した場合でも、「その親子のことがわからない」「証拠もない」「一瞬の出来事だったから」などの理由で、児童相談所への通告を迷う人も少なくないはず。このようなケースでも、通告をすれば対応してもらえるのでしょうか。「虐待かなと思ったら、児童相談所に連絡してください」と栗原さん。子どもに危険が差し迫っている状況などを目撃した場合には、警察に通報しましょう。また近くの児童相談所がわからなくても、児童相談所全国共通ダイヤル「189」があります。「189」にかけると、近くの児童相談所につながります。たとえば駅で虐待を受けたと思われる子どもを見て、通告をしたとします。こうした場合は児童相談所職員がその駅に行き、できる範囲で特定のための調査を行うそうです。特定が難しい場合でも、「わからないから」と調査されないことはないのです。たとえ情報が少なくても、虐待かなと思ったら通告することが大切。■通告しても「通告者の秘密は守られる」通告は匿名でも行うことが可能です。ただし児童相談所の担当者が、再度詳しく話を聞くことができるように、できれば連絡先を伝えましょう。児童相談所は決して通告者の情報を外に漏らすようなことはないため、安心して教えてほしいといいます。また虐待であるか、そうでないかを判断できずに通告を悩むことがあるかもしれません。わかりやすい例が、同じマンションに住む赤ちゃんが普段とは違い、とても激しく泣き続けているとき。保護者の怒鳴り声がしたとしても、それが虐待からなのかはっきりしないこともあるでしょう。しかし小さい子どもは、自分から助けを求めることができません。誰かが通告をすれば、48時間以内に専門家によって子どもの安全確認が行わるのです。「他の誰かがしてくれるかも」と見てみぬふりをせず、虐待のサインを見つけたら専門機関に連絡をするようにしましょう。*親からの虐待により、子どもが命を落とす事件もあとを絶ちません。大切なのは、地域社会全体で子どもたちを見守ること。「虐待かな」と思ったら通告するだけでなく、外で出会う親子に温かい目を向ける、困っている親子がいたら声を掛けるなど、自分ができることをしていきましょう。それが子どもを救うことにつながるのですから。(文/椎名恵麻) 【取材協力】※東京都児童相談センター・児童相談所-東京都福祉保健局 【参考】※児童虐待の定義と現状-厚生労働省※児童相談所強化プラン-厚生労働省
2016年06月02日児童虐待のニュースは一向に減りません。これだけ多くのメディアに取り上げられているにも関わらず、2015年の児童虐待事件の検挙数は785件、被害児童は807人とどちらも過去最悪の数字を記録しています。しかし、これは氷山の一角に過ぎないでしょう。虐待されているのにもかかわらず、発見されず苦しんでいる児童は確実に存在します。もしかしたらみなさんの近くでも、虐待が行われているかもしれません。周囲で起こっている虐待に気づくためには、それ相応の知識が必要なのではないでしょうか?大事なのは知ること。そこで今回は、児童虐待について考えさせられる7種の漫画をご紹介します。■1:『ちいさいひと 青葉児童相談所物語』(夾竹桃ジン)虐待や暴力から生き延びてきた過去を持つ主人公。大人になった彼は、児童福祉司として1人でも多くの子どもを救うために奮闘します。育児放棄に焦点を当てた物語。リアルな描写は目を反らしたくなりますが、とても考えさせられます。■2:『母になるのがおそろしい』(ヤマダカナン)男性依存症の母をもち、義父からのわいせつ行為、ネグレクトを受けて育った作者が描くノンフィクションコミックエッセイ。30代になった著者は家庭を持ちますが、出産する決心がつきません。それは無意識下で、自分も母のような母親になるのではないかという恐怖があるから。母親と自分は違う人格であることを確かめるために、これまでの半生を振り返るためのコミックエッセイ。機能不全家族で育った著者の実体験は、いまリアルに苦しんでいる誰かの救いになるかもしれません。■3:『サボテンの花』(小金井すず)社団法人チャイルド・セーフティネット協会の協力のもと、実際に起きた児童虐待事件を基にした無料アプリコミック。児童虐待に至ってしまう経緯や、周囲で児童虐待が起こってしまったときの行動などを漫画でわかりやすく表現しています。専門用語の解説もあり、里親や施設についても書かれている本作は、児童虐待について学ぶのに最適です。少しでも子度もの虐待について理解を深めたいという方は、ぜひ読んでみてきださい。■4:『period』(吉野朔実)父親のDVが原因で母親が出て行ってしまい、残された幼い兄弟の物語。毎日父親の暴力に耐えていた二人でしたが、父親は“ある事故”が原因で、別人のように穏やかになり入退院を繰り返すようになります。そんな父親はやがて2人を育てることを諦め、家を売ってお金をつくり、2人に託します。父の影に支配されながらも2人で生きる兄弟は安住の地を求め流転を続けるのです。果たして兄弟の人生に平穏というピリオドが打たれる日は来るのでしょうか?人々の心に迫った作品です。■5:『毒親育ち』(松本耳子)親との関係に苦しみ、生きづらさを抱えるすべての人に送る、どこまでも残念な“毒親”との半生を綴った衝撃のコミックエッセイ。「できない」を許してくれない母と、反社会的で家庭を顧みない父。親による精神的な呪縛によって地獄のような青春時代を送った著者が、毒親から解放される「心のデトックス方」に辿り着くまでを描いた作品です。身体的な暴力がなくても、心への暴力が子どもに悪影響をおよぼすということが改めてわかる作品です。■6:『凍りついた瞳(め)―子ども虐待ドキュメンタリー』(ささやななえ)「子ども虐待」の現実を描いたドキュメンタリーコミック。暴力、放置、性的虐待など、さまざまな虐待の事例を具体的に漫画化しています。1994年9月~1995年7月にコミック誌に掲載された作品が収録されていますが、10年以上たったいまでも児童虐待の現状や悲惨さは変わっていないと思い知らされる作品です。何年経っても風化しない、読むべき作品だと思います。■7:『ゆがみちゃん 毒家族からの脱出コミックエッセイ』(原わた)家族に苦しんでいた著者が送るコミックエッセイ。元はWEBで連載されていた人気コミックを書籍化したものです。かわいい絵とは裏腹に、内容はショッキング。兄妹を差別し、妹を否定する母親。暴力によって子どもを支配しようとする父。新興宗教に入るよう家族に強要する祖母。大人に見つからないよう妹をいじめる兄。逃げ場のない家から逃げ出すことではじまる、自分を取り戻すための「解毒」の闘いを描きます。同じような境遇を持った人から支持された本作。家族にトラウマを持つ人は解毒のために、これから親になる人には毒親にならないために、ぜひ読んでほしい作品です。*自治体や民間団体に頼ってばかりでは、児童虐待を減らすことはできません。いちばん必要なのは地域の目ではないでしょうか?今回紹介した作品を通じて、もう一度児童虐待について考えてみてください。(文/堀江くらは)
2016年05月07日全国207箇所ある児童相談所が平成26年に対応した児童虐待件数は、前年度から20.5%増加して8万8,931件。過去最多の件数です。児童虐待は、調査を始めた1990年から24年連続で増加しています。原因は貧困にも関係しています。離婚や不景気などで労働時間が増えて時間がなく、ストレスから子どもにあたってしまう事件などが急増中。胸が痛くなるような出来事ですが、海外ではどのように虐待対策を練っているのでしょうか?■北欧では小さなエリアで展開スウェーデンでは、人口12万人に対して児童相談所のスタッフ45名。デンマークでは人口8万人に対して90名のスタッフがついています。日本の東京は215万人に62名なので、圧倒的に北欧はスタッフの割合が多いのです。フィンランドでは、妊婦から就学までの切れ目ないワンストップサービスが支援されています。しかも、サービスは100%無料で利用できます。また、妊娠期から相談できるため、母親は不安を解消することが可能。大きくなるまでのワンストップサービスを重視しており、妊娠期から虐待の予防支援を実現しています。またエリアを小さく区切ることで、把握しやすい、手が届きやすい支援を行うことができます。■オープン保育でいつでも相談さらにスウェーデンでは月曜から金曜日の8:30~15:30の間、オープン保育が重んじられています。保育士2名が常駐し、子どもは遊び、親は相談もできる場所です。1日20名~25名が利用していて、5~6時間自由に過ごせます。もちろん無料。家庭での育児が煮詰まったら、いつでも相談したり、気分転換に遊びに行ったりできるのです。毎日利用してもお金もかかりませんし、歓迎されるので気軽に利用できます。しかも、0歳~12歳までの子どもとその家族で、任意の相談に応じてくれます。そのため日本の多くの母親のように、ひとりで育児の悩みを抱えなくて済むのです。ソーシャルワーカーは3名やってきてくれて、家庭訪問する職員も1名。なんでも相談に乗ってくれて、孤独な子育ての話し相手にもなってくれます。家庭訪問にも対応しており、プライバシーに配慮した状態で細かな相談ができるので、母親は虐待したくなるほど追いつめられる前に対処できるわけです。■児童虐待の通報より相談重視日本では、児童相談所への通報も大きな割合を占めていますが、スウェーデンでは、通報よりも相談を重視しています。相談しやすいような体制を、政府や自治体がつくっているのです。母親や父親が気軽に相談して、虐待にいく一歩手前で相談に乗れるよう、通報よりも相談を重視しているということ。*どうやら日本の児童虐待への対応は、「事後対応」になってしまっているようです。しかし、北欧はあくまで予防。虐待が発生する前に防止しているため、傷つく人が少なくてすむのです。そういうことが、気軽に子どもを産める環境へとつながっています。こういったところは、日本も見習わなくてはならないですね。(文/渡邉ハム太郎)【参考】※平成17年版少子化社会白書(本編<HTML形式>)-内閣府
2015年12月24日子どもがいる家庭で家庭内暴力を行うことを指す「面前DV」。「家庭内DVは児童虐待につながる--子どもが受ける『面前DV』の深刻な被害とは」と題した前編では、対策に力を入れている大阪府茨木市を例にして、家庭内のDVが子どもに及ぼす影響や、被害者の支援策についてご紹介した。後編となる今回は、被害の早期発見のため必要なこと、加害者にならないための予防策について引き続き茨木市に聞いた。○"問題児"の背景に面前DVがあるかもしれない「面前DV」に関して、DV担当と児童虐待担当が連携して支援に取り組んでいる茨木市。問題解決のために大切なのは、できる限り早期に被害を把握し、適切な対応を行うことだという。担当者は「DV・児童虐待の双方の視点を常に意識した感度の高い相談を実施できるよう、支援者のスキルアップと支援者同士の連携を図っていく必要がある」と語った。また、民生委員などさまざまな機関に寄せられたSOSを見逃さず、支援に取り組みたいとしている。さらに求められているのが「子どもたちの観察」だ。DV家庭で育った子どもたちは「自分は愛されている」という経験が極めて少ないので、自尊心が低くなる傾向がある。その結果、暴力的になったり、落ち着きがなくなったり、過覚醒、解離、引きこもり、不登校など、一見非行や問題行動と見られてしまうような形で変化が表れてくることが多いとのこと。「『問題児』として捉えられていることも少なくなく、その背景にDVや児童虐待があるかもしれないということを、子どもに関わる人たちがアンテナを高く見ていけるかが重要になってくる」と話してくれた。○加害者にならないための教育を"幼児"から加えて茨木市では、"幼児"の段階から、DVや虐待の加害者にならないための取り組みを進めている。そのひとつとして導入しているのが、アメリカで開発された「セカンドステップ」と呼ばれる教育プログラムの実施だ。ぬいぐるみやカードを使って、ある状況に置かれた登場人物の気持ちを想像し、子どもたちに自由に発言・話し合いをしてもらうというもの。「怒りの感情を自覚し、自分でコントロールする力」「自分の気持ちを表現し、相手の気持ちに共感してお互いに理解し合い、思いやりのある関係を作る方法」などを学ぶことができる内容となっている。「小学校でキレやすい」「相手の表情を見て怒っているのかわからない」などの子どもについての相談が親から寄せられたことをきっかけに導入を決定。市内の公立保育所・幼稚園の5歳児を対象に週1回、計28回のコースを実施している。市では、「日々の保育の中で訓練を繰り返すことで、子どもたちがよりよい人間関係を作れるようになり、ひいては虐待やDVの加害者になることを防げるのではないか」と期待を寄せている。加えて注力しているのが、若年層に向けた「デートDV」の啓発だ。「デートDV予防啓発冊子」の配布や、「デートDV予防啓発ワークショップ」を開催し、中学生や高校生、大学生などを対象に、お互いを尊重し対等な関係を築くことについて考えてもらう機会にしているという。「恋人から暴力を受けることが"当たり前"だと思ってほしくない。自分を大事にして、もし被害にあったらSOSを出すことが大事だと伝えたい」と語った。暴力の連鎖につながりやすいという「面前DV」。将来にわたって被害が続いていくのを防ぐためにも、被害の早期発見と「加害者にならないための教育」という予防策が必要となるだろう。※写真と本文は関係ありません
2015年12月22日厚生労働省はこのほど、全国の児童相談所における児童虐待の相談対応件数(平成26年度)を発表。その数は過去最多の8万8,931件にのぼった。今回、件数が増えたことの背景として国があげたのが「児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力」いわゆる「面前DV」の通告数の増加だ。「面前DV」は子どもにどのような影響を及ぼすのか。そして家庭にはどのような支援が必要になってくるのか。対策に力を入れている大阪府茨木市の担当者に聞いた。○愛し方がわからなくなる子どもがいる家庭で家庭内暴力を行うことを指す「面前DV」は、児童虐待防止法に定められた心理的虐待とされている。しかしその影響は心理的虐待にとどまらない。担当者は「DVのある家庭の児童の多くは、同じ種類の虐待にあっているといわれている」と指摘。また、DV被害者は身体的にも精神的にも疲弊しているため、子どもの養育にまで気が回らず、ネグレクトになることが多いという。さらに深刻なのは、家庭内のDVが子どもの育ちに与える影響だ。DVによって家庭は安心できる場所でなくなるうえ、子どもの適切な養育が家族の重要事項でなくなる。つまり、子どもに関心が向かない、かまってもらえないという状況が生まれる。「子どもの居場所がなくなる。そして、自分は愛されている、大事にされているという体験が極めて少ないので、自尊心が非常に低い子どもが多い」と話してくれた。結果として「愛し方がわからない」であるとか、「対等な人間関係が形成できない」など、のちのちの人格形成、対人能力形成に支障をきたしてしまう。「問題解決に暴力を用いるといった行動につながることもある。DV被害者やDV加害者の成育歴を聞いていくと、DV家庭で育っていたり、被虐待児童であったりしたという方も少なくない」という。○DV担当・児童虐待担当が同席して対応「面前DV」の対応について、茨木市ではDV担当と児童虐待担当が連携して支援にあたっている。DVを担当する「配偶者暴力相談支援センター」に寄せられた相談の中で、児童虐待が見られる場合や、被害者の養育能力の低下が心配な場合などは、児童虐待を担当する「こども相談室」に報告。児童の見守りをお願いしたりしているそうだ。さらに必要があれば、DV担当・児童虐待担当が同席して同時に相談を受けることもあるとのこと。相談者の負担軽減になるうえ、支援者側にとっても同時に話を聞くので、聞いた話にズレが出ず、本人の意向に沿った支援策を検討することができるからだ。担当者は「多くの支援策があるということは、支援に幅ができ、選択肢が増えるということ。ひいてはDV被害者やその児童にとってよりよい支援策を組み合わせたり、選択できたりすることになる」と語った。「面前DV」の解決には、被害を早期に発見すること、そして各機関の連携が求められている。それでは、どうしたら被害を発見することができるのか。また、加害者を生まないためには何が必要なのか。後編でご紹介する。※写真と本文は関係ありません
2015年12月21日最近、親が子どもに対して虐待をする痛ましい事件がニュースで取り上げられます。その一歩手前、すなわち子どもに体罰(暴力)を与えている疑いをもたれている家庭に然るべき機関の専門員が訪ねると、ご両親の多くは「しつけです!」と答える場合が多いそうです。しつけと体罰(暴力)の線引きは非常に曖昧な点が多いのも事実です。では、その違いについて考えてみましょう。■「しつけ」の目的とは?簡単に言うと、しつけとは、「集団社会のルールにあった行動ができるように、トレーニングすること、そのサポート」です。サポートの結果、子どもが自分で自分をコントロールすることができるようになったり、自分で考える力を育めたりするように、大人が導くことを目的とします。決して、子どもを抑制したり、威圧をしたりすることではありません。縫い物をする際の「しつけ糸」には、同じ「しつけ」という言葉が使われています。しつけ糸の役目は、本縫いの縫い目が曲がらないように、事前におおまかな形を定めておくことです。それと同じように、大人が子どもへおおまかなガイドをしてあげることによって、自分で自分を律することができるようになってきます。しつけにとって重要なのは、自律心を育てていくことです。怒鳴ったり、叩いたりすることは決して有効な方法ではなく、反対にしつけの目的を削ぐことに繋がってしまうのでNGです。■「体罰」の目的とは?体罰とは、恐怖や痛みで子どもの言動をコントロールして従わせることです。体罰の多くは、単なる大人の感情のはけ口となっている場合があります。大人の感情を“暴力”という形で爆発させながら、「この子のしつけのためだ!」と思い込む、それは大きな間違いなのです。子どもが体罰から学ぶことは、「腹が立ったら暴力をしてもいい」ということ、それだけです。反省や謝罪の思いよりも、恐怖や不安な感情のほうが大きくなってしまいます。体罰には即効性はありますが、恐怖で子どもの行動をコントロールしようとしているだけにほかなりません。子どもにとっては「なぜいけないのか?」を学ぶことができず、痛いからこの行為を止めるという意識になってしまいます。そして、大人のいない所で同じ行為を繰り返すことにもなるのです。体罰では、しつけの目的、すなわち自律心を養うことを果たせないのです。■怒鳴ったり、叩いたりしないしつけ方を子どもにとっても本来、安心を与えてくれるはずのパパやママが、怒鳴ったり、叩いたりして自分へ恐怖を与えることで、心に混乱が生じ、アタッチメント(愛着)の形成が阻害されてしまいます。怒鳴ったり、叩いたりする前にまず、お子さんがどんな大人に育って欲しいのかを、よく考えてみてください。人にやさしくできる人、親切で人の手助けができる人、思慮深くて礼儀正しい人、賢い意思決定ができる人、正直で信頼される人、暴力を振るわない人、愛情深い人… などなど、いろいろと思い浮かぶでしょう。そうすればおのずと、どういう声かけや注意の仕方をしたらいいのかが見えてくるはずです。子育ては即効性がある方法は少なく、少しずつ一歩一歩積み重ねて成長していくものがほとんどです。場合によっては、同じ言葉を何度も繰り返し伝えることも必要です。いまの子どもの姿だけを見て、その場の解決策を考えるのではなく、大人になった姿を見据えて、しつけをしていきたいものですね。
2014年08月16日エス・エム・エスはこのほど、同社が運営する介護に関するQ&Aサイト『安心介護』にて、介護現場における虐待の実態調査を実施し、その結果を発表した。同調査は、2011年9月29日~11月14日の期間にインターネット上で行われ、『安心介護』会員207名から有効回答を得た。それによると、日常的に家族の介護を行っている人の26%が虐待経験「あり」と回答。反対に、「なし」と答えた人は74%だった。虐待経験がある人に虐待の種類を尋ねたところ、最も多かったのは暴言やいやがらせなどの「心理的虐待」で84.9%に上った。次いで、被介護者に”暴力的な行為”をふるうなどの「身体的虐待」が41.5%、「介護放棄・放任」が17.0%、「経済的虐待」が3.8%となった。虐待をしてしまった主な理由としては、「1日に何度も何度も同じ話を繰り返すので、無視したり、暴言を吐いた。(心理的虐待)」、「認知症とわかっていても、暴言、強い反抗、親戚への虚偽の話につい手がでてしまった。(身体的虐待)」、「精神的疲労や介護に対する親族の理解・協力が得られなかったため介護放棄した。(介護放棄・放任)」といった意見が寄せられている。虐待経験「なし」と答えた人(74%)に、虐待をしそうになったことはあるかと聞いたところ、41%が「虐待をしそうになったことがある」と回答。これを計算すると、全体の30%が「虐待をしそうになったことがある」ことが明らかになった。「虐待をしそうになったことがある」頻度を見ると、トップは「数カ月に1回程度」で32.8%だったが、「週に1回程度」は26.2%、「1カ月に1回程度」は19.7%、「2週に1回程度」は9.8%、「毎日」は3.3%となっており、これらを合わせると「1カ月に1回以上」は59%と約6割に上ることが判明。また、「週に1回以上」と回答した割合で見ても29.5%と高い傾向にあることが分かった。虐待をしそうになってしまった主な理由を聞くと、「寝ずに、何回も大声で叫び、暴れられたとき」、「文句を言われたり、激しく罵られたとき」、「スムーズに介護ができなかったり、介護サービスを受けたがらなかったりするとき」などの意見が多くみられた。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年11月05日