当時でも異色の社会派ドラマ「ふぞろいの林檎たち」での共演が1983年。その後、シリーズを重ねた同ドラマの「パートIV」(1997年)以来の共演となった中井貴一と時任三郎は、しかし「何年か会ってなくても、つい昨日も顔を合わせていたような感じ」と口をそろえ、その関係を“戦友”と表現する。20代で出演した「ふぞろい…」から約30年にわたり、様々なドラマに出演し、いわばテレビ業界を“中の人”として見てきた2人が今回、映画『グッドモーニングショー』で演じたのは、TV局で働き、朝のワイドショーを担当するアナウンサーと番組プロデューサー。そんな2人に改めて、TVの隆盛と近年のインターネットの勃興で叫ばれる危機、30年の変遷について語ってもらった。――普段、ドラマでTVに出てらっしゃるおふたりですが、ワイドショーのスタッフを演じてみて、同じTV業界でもやはり違うものでしたか?中井:僕らは普段、ワイドショーには番宣(※放送前のドラマなどの番組の宣伝)で出させていただく立場で、招き入れていただいて2~3言、コメントするくらいで、そんなに大変と思ってなかったけど、実際の番組制作の現場はこんなに大変なのか!と。映画のオープニングで、番組の準備に奔走するスタッフたちの姿はほぼ、僕が見学させていただいた現場そのままです!朝の情報番組ほど“ながら”なものってないでしょ?つけっぱなしで朝ご飯食べたり、ネクタイ締めたりしながら「今日の占いは…」なんて(笑)。でも気楽なものほど作り手は大変で、それはコメディで笑ってもらうための作品作りの現場ほどシビアだってのとリンクしましたね。時任:立場としては普段、僕らは取材される側の人間で、それこそ若い頃は、ワイドショーに追いかけられて「この野郎!」って思ったり、肝心なコメントは編集で切られたりしてて腹を立てたものだけど(笑)。いざ、その立場に放り込まれてみると、こんなに大変な仕事なんだなぁって感じましたね。――中井さんが演じたのは、ある出来事がきっかけで、現場レポートができなくなったアナウンサー・澄田。時任さんは、番組プロデューサーの石山を演じられています。長い付き合いという意味で、お二人の関係と重なる部分もあったかと思います。時任:“積み重ねた時間”という意味では重なりますよね。中井:2人のシーンは、台本にない余白の部分を2人で作っていった感じがあったよね?時任:完成した映画を観たら「あれ?あそこ削ってるんだ?」ってやりとりもあったけど(笑)。中井:久々の共演で懐かしさもあったけど、それよりも僕らの中にある“同期”感覚がスクリーンを通じて映ってるんじゃないかなと思いますね。――「ふぞろいの林檎たち」の当時と比べて、ドラマ、TV番組の作り方も大きく変わったと思いますが。時任:当時は必ず、全てのシーンでリハーサルがあって週に2日はリハに充ててたからね。相当鍛えられましたね。中井:ほぼしごき(笑)。いま考えると、相当ぜいたくな時間でしたよ。時任:リハーサルをクリアするために、電話で読み合わせをしたりしたよね?中井:携帯なんてない時代に、家の電話でですよ。リハーサルのためのリハーサル!――当時、お互いについては俳優として、どんな思いで見てたんですか?中井:これね、さぶちゃんは「そんなことない」とか「覚えてない」って言うんだけど、当時、僕は21歳でさぶちゃんは25歳、この年齢の開きってすごく大きく感じるんですよ。本の読み方やお芝居の引き出しも確実に持ってて。演出家がものすごく怖くて、俺と柳沢慎吾は何やってもダメですごく委縮しちゃうんだけど、いつも三ちゃんだけ「うん、正しいですね」って言われるの。それはいま考えると役柄に合わせて狙ってやってたことなんだろうね。三ちゃんの役は自由人で、独立心の強いタイプだったし。そんなことはつゆ知らず、僕らはいつも「すげぇな、三郎」って(笑)。時任:いやいや、こっちはこっちでね「貴一、すごいな」と思ってたんですよ。いまも昔もそこは変わんないんだけど、100%の準備をした上で、アドリブが効くんです。本番で何があっても受け止めてくれるし、それを受けて返してくれる。今回の映画でも、改めて役者としてすごいなと思いましたよ。立てこもり犯役の濱田(岳)くんとのやり取りが、真に迫ってたなぁって。――現代でも名作と名高い「ふぞろいの林檎たち」ですが、当時はどんな風に受け止められていたのでしょうか?中井:「ふぞろい」の直後にね、フジテレビを中心にいわゆるトレンディドラマブームが起こるんですよ。でも、僕らがやってたのはあくまで社会派ドラマで、あの波には乗れなかったんだよね(苦笑)。フジテレビのドラマでも、トレンディのど真ん中のA面と、ちょっと変わった企画をやるB面とあるんですよ。柳葉敏郎さんに陣内孝則さん、石田純一さんなんかがA面で、僕らはB面…。そこはすごい格差を感じたよ! 「ふぞろい」も人気はあったけど、やっぱり社会派で、続編を続けるほど、そっちのカテゴリの空気が強くなったから…。トレンディは人々の“憧れ”を描くけど、僕らのドラマは「共感」。よく街歩いてて「頑張れよ」って声かけられました(笑)。頑張ってるよ(笑)!時任:少なくとも、人気の俳優をキャスティングして…という形で始まった作品じゃなかったしね。中井:撮影してたら、見学のおっちゃんが「ドラマ?誰出てんの?」って。「時任三郎とか柳沢慎吾が…」って俺はずっとスタッフとして対応してたもん(笑)。それが徐々に人気が出て、当時は移動は全員が集合してロケバスだったけど、修学旅行のバスが横に来て「キャーっ!」となってるんだけど、全員「え?誰に対し『キャー』って言ってんの?」って感じでポカーンとしてた。時任:楽しかったのと大変だったのと記憶がごちゃ混ぜになってるね。大変だったからこそ、チームワークが生まれて楽しいと思えるところまで行けたし。当時は「社会派」って部分についてもそんな深く考えず、自分は大学を途中で辞めた人間だから「もう一回、大学に入れた!」って喜んでた(笑)。貴一は当時は…中井:現役大学生でしかも3年生!そういう意味でもリアルだった。大学の中での反応もどんどん変わっていくの。自分が出る講義の教室の周りに人だかりができてて「人気の講義なんだ」と思って入ったら中はガラガラで「なんで教室の外にあんなに人がいるの?」って友達に訊いたら「お前だよ!」って言われるとか、漫画みたいなこともあったし(笑)。だって数か月前まで「誰が出てるの?」って聞かれてたんですよ。不思議だったね。――その当時といまと、TVを巡る環境も大きく変わってきています。中井:ちょうど僕がデビューした頃、TVに押しやられて映画がなかなか作れなくなった時代だった。今度はTVがインターネットに押しやられてる。一概に良いとか悪いって話じゃないんだけど、当時はTVって大人をターゲットにしてた。それがチャンネル権を子どもが持つようになって、子どもや若い子に向けて番組を作るようになった。でもいま、逆にチャンネル権を持ってるのって大人なんですよね。若い子はネットを見てるわけで。そういう意味で、勇気をもって立ち止まって、もう一度、大人向けの作品を作っていくのが得策なんじゃないかなって思いますけどね。楽な方に逃げて、お金を使わず…ってなると悪くなる一方で、悪い時ほどお金を掛けろって言うでしょ?時任:まあ、時代に合った媒体が広がり、必要ない、求められないものが淘汰されていくのは自然なことで、本当に良いとか悪いじゃないんですよね。ただ、スポンサーの意向ありき、コンプライアンスありきでの作品作りが、作品に変な影響を与えてしまう部分は多少なりともあるのかなとは思いますね。中井:最近、深夜枠のドラマが面白かったりするのは、作り手の意思で、面白いものを作ろうって意識がしっかりと反映されてるからなのかなと思う。見る側もアラばかりを探さない寛容さは必要ですよね。だって殺人犯が普通シートベルトして逃げないでしょ!?(笑)時任:そこは作り手も見る側も“作り話”として楽しめばね。中井:無茶をやるからこの世界、楽しいわけで、規律正しく生きてるひとは、俳優になってない(笑)。もう一度、大人になることを憧れさせるようなTVになってほしいですね。(photo / text:Naoki Kurozu)
2016年10月10日「シリーズの大ファンです!」「あなたの作品が私の人生を変えました!」。今日もどこかの映画のオーディション会場では、役を熱望する俳優たちが製作者たちにこう訴えているかもしれない。この場合、製作者たちは発言の真偽を見抜かなくてはならないだろうが、いまをときめくオスカー女優が目をキラキラさせながら冒頭の言葉を放ったとしたら、それは紛れもなく真実だ。『リリーのすべて』でアカデミー賞助演女優賞に輝き、旬のスターとなったアリシア・ヴィキャンデルにとって、『ボーン・アイデンティティー』に始まる“ボーン3部作”は過去の思い出にトリップさせてくれるものでもあるという。まだアリシアがオスカー像を手にする前、ロンドンのアパートで女の子3人とルームシェアをしていた頃。彼女たちの週末の楽しみは、“ボーン3部作”を観ることだった。「休日に女の子同士でワイワイ観るには最高のポップコーンムービーよね。その一方、世の中の動きを感じさせる物語なのが素晴らしいわ。ただ、私の楽しみ方は女の子っぽくなかったかもしれないけど(笑)。映画が大好きだし、女優として映画作りに夢中だったから、アクションシーンの長回しに痺れっぱなしだったの」。もちろん、女子同士でボーンのカッコよさにときめく瞬間もあった様子。「だって本当に素敵だもの。マット(・デイモン)はボーンをすごく魅力的なキャラクターに作り上げたと思う。そもそも、ほかのアクションヒーローたちは女性の扱いがなっていないわよね(笑)。マティーニを飲んだりしがちだし…。でも、ボーンは自分が何者であるかを知ろうとするし、悩み、傷ついていく。ものすごくクールに敵を倒す力を持つ一方、繊細さもあるところが素敵だと思うの」。そんなボーンに対し、シリーズ最新作『ジェイソン・ボーン』に登場するCIAエージェント、ヘザー・リーは興味深い振る舞いを見せる。ボーンをCIAに連れ戻そうとするヘザーと彼の関係を、演じるアリシア自身はこう分析する。「喪失を経験してきたボーンは、心の壁を崩すことができない。それはCIAで働くヘザーにも言えることで、彼女が自分と同じ葛藤を抱えているかもしれない可能性をボーンは感じたんじゃないかと思うわ。諜報の世界で、モラルのコンパスをどちらに向けるべきか悩んでいるんじゃないかって。だから、双方が望めば、2人の間につながりは生まれ得たと思う。でも、この映画の中では、ボーンにも観客にもヘザーの本心が分からないの」。『コードネームU.N.C.L.E』『エクス・マクナ』に『リリーのすべて』、そしていま熱っぽく語る『ジェイソン・ボーン』と、話題作の中で輝きを放つアリシア。自身の製作会社も立ち上げ、映画愛を加速させる中、映画作りにおいて最も重要なのは「ビジョンを持っている人との出会い」だと語る。「私は映画作りが大好き。まるでマシーンのパーツとパーツが組み合わさって1つのものになっていくように、みんなで力を合わせて共同作業を行う感覚が好きなの。私はカメラの前に立つ人間だけど、映画作りという大きなマシーンの一部に過ぎない。むしろ、大事なのは共同作業のリーダーとなる人物、つまり監督ね。リーダーである監督のビジョンやアイデアを形にしたいと思えるか、それが私にとって重要なことなの」。ビジョンを受け止めてみたい監督たちは、「彼の『預言者』が好き、数週間前に観直した『ディーパンの闘い』も素晴らしかった」というジャック・オディアールをはじめ、コーエン兄弟、ミヒャエル・ハネケ、ラース・フォン・トリアーなど、「挙げられないくらいたくさん(笑)」。一方、新鋭監督たちとのコラボレーションにも惹かれるという。「経験値がない分リスクはあるけど、彼らの情熱に魅力を感じるし、それを形にする手伝いができればと思っている。私自身にも、まだ経験が浅い時に私を信じてチャンスをくれた人たちがいるから」。もちろん、『ジェイソン・ボーン』でアリシアの情熱を受け止めたポール・グリーングラスとの再タッグも熱望している。「それは絶対よ。ポールとマットが次回作をやるなら、私は何が何でも参加するわ!」。(text:Hikaru Watanabe/photo:Nahoko Suzuki)
2016年10月08日新NHK朝の連続ドラマ「べっぴんさん」のヒロイン役を2261人が応募したオーディションで射止めた女優・芳根京子。撮影も順調に進み、「べっぴんさんチームは最高です!」と胸を張る芳根さんが、初めて挑む朝ドラ撮影のエピソードや、同世代の共演者に対する胸に秘めた熱い思いを赤裸々に語った。戦後の焼け跡の中、娘や女性のために子ども服作りにまい進し、日本中を元気に駆け抜けていくヒロイン・すみれとその家族、そして、彼女の仲間たちが夢へと向かう姿を描いた本作。当初、「自分らしさを忘れずに突っ走りたい」と意気込んでいた芳根さんは、すでに9週目の撮影が進行している中、現在の心境を「初心を忘れたくないという思いが強いこともあり、初めの頃と大きく変わったことはありません」と断言。さらに、主演の立場はプレッシャーになることから意識していないと言いつつも、「一番長く現場にいるから作品のことは一番考えていたいし、一番愛していたいと思う気持ちはぶれずにあります」と続け、伝統ある“朝ドラヒロイン”を自覚した強い眼差しを向けた。そんな芳根さんが演じるすみれは、太平洋戦争のさなかに結婚・出産を経験。妊娠中に出征した夫の帰りを待つ一方で人々との出会いに導かれ、得意の洋裁の腕を生かして子ども服作りを始める、はた目からはボーとしているように見えるが、芯の強さを持ち併せた女性だ。若干19歳にして出産シーンに挑戦した芳根さんは、「リハーサルは赤ちゃんの人形を使いましたが、それにわたしが感情移入して大号泣したので、みなさんが大笑いして…」と恥ずかし気に撮影秘話を明かしながら、本物の赤ちゃんが相手の本番では「産んだわけではないのに自然に涙が出ることが不思議で…。まだ子供だと思っていたけど、自分にもこういう気持ちがあると気づかされました」と母性本能が目覚めたことを報告。また、「自分に子供が生まれたら、泣きすぎて脱水症状で消えてしまうんじゃないかな」と冗談を言うと共に、「将来、子供は絶対に欲しいと思っているので楽しみ。リアルな気持ちが生まれました」と新感覚を喜んだ。様々な体験は人としての成長を促し、名だたる役者との共演は女優として大きく飛躍させてくれる。中でも、父親役の生瀬勝久からは役者として大切な金言を受け取ったよう。2人の出演シーンで何度かリハをやることで慣れてしまい、監督から「もっと新鮮な気持ちで」と注意された時に、生瀬さんから「いままでのことを全部忘れて、届けて!」と伝えられたのだとか。その時に、「ただ台詞を口にするのではなく、すみれの言葉をお父さまのもとへ届かせないと意味がない」ことに気づいた芳根さんは、「芝居であることを一度頭から抜いていただいたその時の気持ちを大切にしようと思いました」としみじみと述懐した。同じくオーディションで役をつかみ、すみれの女学校時代の同級生役で出演する百田夏菜子(ももいろクローバーZ)、谷村美月、土村芳も芳根に刺激を与えている。休憩中は他愛のない話をするほど仲が良く、一緒にいて安心する面々が、「同世代の方には負けたくない。頑張らないと!」という、これまで感じたことのない熱意を芽生えさせてくれたそうで、その理由を「同じオーディションを経てここに立っているからかな」と推測すると、「すごく良いこと」と切磋琢磨し合える関係に感激した。そして、「この人がヒロインで良かったと思われる存在になりたい」と瞳をきらめかせると、「上の方にはしっかりしがみついて、這いつくばってでも一緒に歩きたい。同世代とはみんなで一緒に歩くけど、でも負けたくない。みんながそういう思いになれば、もっといい作品になると思います」と自信をのぞかせた。その姿は、苦労をいとわず前進する、美しくも強いすみれそのものだ。(text : Rena Nishiki)
2016年10月08日ひとりだけでも思わず目を奪われるが、TAKAHIROと登坂広臣、この二人がそろうと、あたりの空気ごと華やかに染め上げてしまう。規格外の総合エンターテインメントプロジェクト『HiGH&LOW』の映画第2弾『HiGH&LOW THE RED RAIN』では兄弟役――通称・雨宮兄弟として主演を務めた。周囲から渇望され、焦がれられ続けた大きなうねりの中にいる二人は、大役を果たしたいま、何を思うのだろうか。胸の内を聞いた。2015年、深夜に放送されたテレビシリーズに端を発した『HiGH&LOW』は、複雑に絡み合う男同士の闘いに視聴者が熱を帯び、先だって公開された映画第1弾『HiGH&LOW THE MOVIE』では、その集大成が描かれた。…のだが、「全員、主役」がスローガンのこの物語にはアザーがたっぷりとあった。そこで、第2弾『HiGH&LOW THE RED RAIN』の看板を張ることになったのが雨宮兄弟。行方をくらました雨宮家長男・尊龍を、次男・雅貴と弟・広斗が探しに行くというロードムービー的要素もありながら、激しいバトルアクションや、家族の深い絆までも描き、涙が頬をつたうようなにくい仕上がりになった。これまで、顔見世程度の出演でファンをやきもきさせてきた雨宮兄弟。雅貴を演じてきたTAKAHIROさんは、「これで、ようやく『雨宮兄弟出る出る詐欺』から解放されます(笑)」とニヤリ。登坂さんも同意して、「僕らは何が目的か分かっていた上で雨宮兄弟を演じていたんですけど、ドラマや映画を観てくださっている皆さんは、ずっと『謎の兄弟だな』と感じていましたよね(笑)?」と、自分たちが演じたキャラクターの素性を、ようやく世間に知ってもらえることにホッとしている様子。兼ねてから話題にのぼっていたのは、二人の上に君臨する長男・尊龍が誰かということ。発表された斎藤工という配役は、風格、ルックス、演技、何をとってもパーフェクトで合点がいったに違いない。TAKAHIROさんは、「登坂と『兄貴って誰だろうね』とずっと話してたんですけど、腑に落ちました。もう斎藤さん以外考えられないですね」と諸手を挙げて喜んだ。「僕にとっては、本当にテレビで見ている方というか、芸能人というか(笑)。色気の塊のような方というイメージがあったので、ドキドキしました」と、触れなば落ちん魅力を持つTAKAHIROさんをもってしての最上級コメントだ。一方、以前より斎藤さんと親交があったという登坂さんは、「そもそも工さんからは、一視聴者として『ハイロー見てます!雨宮兄弟の長男誰なんでしょうね!?』とメールをいただいていたんです(笑)」と、オファー前のちょっとしたやり取りを明かした。「長男役に決まったことを真摯に受け止めて、すごく気合いを入れて現場に入ってきてくださいました。自分が入ることによって、絶対プラスの要素しか生まないと気持ちを込めておられたので、その思いに、もともといる僕らがグッと引っ張られました。工さんの現場での姿勢や兄貴としてのスタンスに、すごく気が引き締まったので、本当に大きな存在でした」と、役者としての尊敬の念を込めた登坂さんだった。シリーズ内、琥珀を演じたAKIRA、コブラ役の岩田剛典など、個性が強いキャラクターがそろう中でも、雨宮兄弟は出色の人気だ。その理由について、当の本人はこう分析する。登坂さんは、「脚本を読んでいて雨宮兄弟に求められたのは、100%格好いい男像だと思っていました。なので、広斗に持っていない部分を雅貴が持っているし、逆もあって。二人で完璧な格好いい男の理想像を作っている感じを求められていると思ったんです」と、それぞれが担う役割について表現した。TAKAHIROさんも、登坂さんの思いにかぶせる。「これまで点と点だったところを線にしたときに、雨宮兄弟はブレがない。常にまっすぐで、何にも恐れず正面から突っ込んでいくという男らしいところが魅力だと思っています。『THE RED RAIN』では、雨宮兄弟の抱えている大きな悲しみも語られるので、誰よりも人間くさい一面があるという新しい魅力もご覧いただけると思います」。いまさらながら、TAKAHIROさんと登坂さんは人気グループのヴォーカリストである。巷では二人の仲の良さに、「TAKAHIRO臣」コンビと、敬愛を込めて呼ばれるほど。インタビュー中も熱っぽく話すTAKAHIROさんを登坂さんがじっと見つめていたり、反対に登坂さんの発言にTAKAHIROさんが言葉で応戦したりと、この感じは…まさに雨宮兄弟そのもの。日頃の仲睦まじさは、やはりスクリーンにダダ漏れてしまうもの?「逆に言うと、役に対して全く作り込んだものがなかったので、普段もあのままだと思っていただけたら。役名と台詞だけ渡されて、本当に自由にやらせていただけたので。“雨宮兄弟”という架空の人物であり、僕らのドキュメントのようなものでもあると思っていただければ」と微笑みながら話すTAKAHIROさんに、「そうですね」と口角を上げて頷く登坂さん。この素の感じが収められているシーンがエンドロール後も続くので、場内が明るくなるまで席を立たず、雨宮兄弟を味わい尽くしてほしい。(text:Kyoko Akayama/photo:Nahoko Suzuki)
2016年10月07日30代女性が20歳年上の恋人と送る生活に、超頑固者の父が加わったら…?この設定にゾッとするか、クスッと笑うかは観る者次第。『お父さんと伊藤さん』は、おかしみの分だけ確かなリアリティのある映画だ。タイトルの“お父さん”と“伊藤さん”に挟まれるヒロイン、彩を演じた上野樹里も、自らの役を「いまの女性のリアリティを描いた役」と語る。34歳の彩は小さなアパートで、54歳の恋人・伊藤さんと同棲中。職場の同僚として知り合い、やがて付き合い始める2人の生活はごくごく穏やかなものだった。彩の父が家にやって来るまでは…。「働いているけどお金はあまりなく、結婚せず、父の問題を抱えるようになる。夢物語じゃない彩の状況を、身近に感じてもらえればいいなと思いました。撮影時、30歳にさしかかっていた自分だからこそ、彩を自然に、肩の力を抜いて演じられた気がします」。「台本を読んだとき、“もう、これは絶対リリー(・フランキー)さん!”と思いました」という伊藤さんは、飄々としていて捉えどころがないが、さり気なく優しい。そして、趣味は家庭菜園。彩として伊藤さんとの暮らしに浸った上野さんも、「一家に1台じゃないですけど、1人でいるよりは、一緒にいてもいい存在ですよね(笑)」との見解を示す。「働く34歳の女性ということで、彩にはそれなりの中身がある。自分をしっかり持った彩が、自分のまま一緒にいられるのが伊藤さんなんでしょうね。不思議なおじさんですけど、知恵もあるし、野菜を作ってくれたりもするし」。一方、頑固で口うるさいが、どこか愛らしくもあるお父さんと、彩の関係も面白い。決して仲のいい親子ではないが、ふとした瞬間、やっぱり親子!と思わせる。「藤(竜也)さんのヤクザ映画を観ていなかったので、ビビることなく、ニュートラルに接することができてよかったです(笑)。これから観て、お父さんだったときの藤さんとのギャップを楽しみたいですね。現場での藤さんは本当に優しく、チャーミングで、全然ヤクザじゃなかったです(笑)。すごく楽しみながら役者をなさっていて、現場にも1人で運転しながらいらっしゃるし、役作りのための下調べも自らなさるんですよね。藤さんの作品に対する愛情の傾け方を見て、私もそうありたいなと思いました」。ひとつ屋根の下に暮らす3人の関係は、物語が進むにつれ徐々に変化。さらには、いつの間にかお父さんすら伊藤さんを頼りに!?普段はのほほんとしながら要所要所でビシッとキメる伊藤さんに、うっかり(?)魅せられる女性が鑑賞後に急増している。「図星をちゃんと突いてくれる人ですしね。伊藤さんの一言で、彩もお父さんも“ウッ!”となったりする。54歳だからと言ってみんなが大人というわけじゃないんでしょうけど、伊藤さんは大人ですよね。その時々で柔軟に折り合いをつけるのが上手い。やることはやっているし、実はしっかり者。彩の実家で『ご立派な家ですねえ』なんて言っていたときも、自分が将来この家をどうするか、意外と真剣に考えていたんじゃないかなって(笑)」。気になる将来はさておき、彩と伊藤さんの“いまある日常”を演じるために、「撮影中は家で作ったお弁当を持参したり、自炊をしていました」とも語る上野さん。そこには、「彩がご飯を作って食べる生活をしているから、私も自分の手で作ったものを食べる生活を送りたくて」との意図があり、「仕事は仕事、生活は生活ではなく、生活の一部として好きなことを仕事にできるなら、それはとても豊かなこと」という想いがあったという。「1人の生活から2人の生活になったのを一番楽しみたいですよね。普通の日常なんだけど、いままでとは違うことが起きる。いままでの自分にとっての非日常というか、毎日が特別なんです。以前は100%自分のために時間を使っていたけど、いまは生活というものを考える割合が増えた。もちろん自分の時間も大事ですけど、それよりも相手のことが大事になってきたり、子どものいる人だとますます予想外のことが起きる中、その変化にみんな自ずと対応できてくるんだと思います。以前の自分からは考えられないようなことができるようになっちゃうし、小さいことの1つ1つを楽しめるようになる。きっと、そういった自分の変化が仕事にも味として出てくるんじゃないかなって」。今年5月の誕生日を経て、30代に突入したばかり。これも、上野さんにとっては大切な変化の1つだ。「20代のときには恋愛、夢、冒険なんてワードがありましたけど、30代になったら現実だとか、ちょっと先の未来がキーワードになる。自分の好きなもの、必要のないものがより明白になってくるし、だからこそ好きなものを掘り下げたくなるんですよね。もともと私はネガティブなものが好きじゃなくて…ネガティブなものが好きな人はいないと思いますけど(笑)、重い気持ちにさせたり、疲れさせたりするようなことはしたくない。せっかく観て下さる皆さんの気持ちを、役者としてちょっとでも楽にしたいんです。もっと言えば、元気を与えたい。それが、私の好きなことなんだなって。どんなことを要求されるか、これまでもこれからも分かりませんが、その中で好きなことを突き詰めていきたいです」。(text:Hikaru Watanabe/photo:Nahoko Suzuki)
2016年10月06日母親が働きやすい職場がたびたびメディアに取り上げられていますが、美容業界は出産退職が珍しくありません。理由は勤務体系、休暇中のブランクなど。今回は美容の現場の産後復帰と独立について、愛知県のエステサロン経営・マネージャーであり、美容に特化したコワーキングスペース「D→START」の安城オーナーを務める近藤利津子さんと、そのママさんスタッフにお話を聞きました。美容キャリアは35歳から近藤利津子さん愛知県安城市にあるエステサロン「サロンブランシュ」のマネージャー、近藤さんの美容キャリアは35歳から。マンションの一室を借りた「マンションエステ」からスタートしました。「お客が来ない状況に「このままじゃいけない!」と一念発起しテナントへ移動。努力の甲斐あってお客が入るようになり、手狭になって移動をテナントオーナーに相談したところ、「いま駐車場の土地があるからそこをビルにして、店舗設計から関わってみる?」と提案をうけ、現在のサロンが誕生。そして10年以上経った今年、2階をコワーキングスペースにしました。」そんな近藤さんのサロンには、この業界にしては珍しく出産を経て復帰したエステティシャンのかたが在籍しています。「復帰したい」と思える職場「サロンブランシュ」のみなさんママさんスタッフの1人である田中さんに、復帰を決めた理由についてうかがうと、やっぱりこの職場が好きだったのが大きいです。きっと違う仕事だと思ったらやりたいと思ってないです(田中さん)と、仕事内容より職場のよさが先に挙がりました。家にいると、働いている人が羨ましく思うのが出てきちゃって。でもまだ子どもが1歳だし、働いてもフル入れないし…。『働きたい』って言っちゃいけないと思ってました(田中さん)そんなとき、たまたま近藤さんと連絡を取る機会があり、ポロッと「働きたい」と呟いたのがきっかけで戻ることに。またお子さんを預かってくれるかたも見つかり、ご家族にも「やっておいで」と送り出してもらったそう。近藤さんにも「どうしてこのサロンに戻ってくるのか」を聞いてみると、「子どもの顔を見せにきてくれたり、こちらもお食事会に声をかけたりとか、そういう環境があったからでしょうか」と、戻りやすい土台があったようです。復帰によって前向きになれた「ブランクがあるので、復帰には不安もあった。けれども、お店のみんながフォローしてくれました」と笑顔で教えてくれた田中さん。復帰にあたり、技術を覚えているのかのチェック、新しいメニューの施術の練習、勤務可能時間の相談などを近藤さんとしっかり確認し、不安をなくしていったそう。働き始めてからのほうが、全てにおいて前向きになったと思います。家でずっと子育てと家事だけのときより、今のほうがどちらも上手にできているかな(田中さん)お客さんにも「戻ってきたんだね!」と喜ばれ、近藤さんとしてはサロンの信用にもつながっている実感も得ているようです。近藤さんと田中さん田中さんは長い通勤時間かけて出勤して、子どもを預かってもらえる間しか勤務できないんです。でもこの仕事が好きだからやりたいって。やりたいことがあるときは、どこか譲歩するところを見つけないといけないのかもしれません(近藤さん)美容ってひとりじゃ絶対にできない結婚・出産を経たネイリストやエステティシャンは、自宅サロンやマンションエステで独立するかたもいます。しかし集客ができず閉店するケースも。全身マッサージ1時間3千円でやってくれる自宅、マンションエステがあると聞きます。価格設定が、開店当初に来てくれたお友達向けの「お友達価格」のままになってしまう。だけどこの値段設定は、美容業界全体の値段も下げ、自分が持つ技術力の価値も下げていることにも気付いていないんですね。(近藤さん)独立は技術だけではなく、経営に関わる細かいところまで全部ひとりだけで決めなくてはいけません。退社したスタッフが独立について、近藤さんに相談にくることも。わたしもマンションエステがスタートでした。でも、自宅とかマンションだと看板が出せなかったり、あまり宣伝もできない。ひっそり開店して閉店していくサロンがたくさんあります。頑張ってもきっと相談できるところもないだろうし、こちらも聞いてももらえないと情報があげられない。美容ってひとりじゃ絶対にできないので、もっと自分をオープンにして、情報をどんどん取りに来てほしいです。そして1年先、5年先を思い描いて欲しい」(近藤さん)餅は餅屋。「私自身もたくさん助けていただきました。声を出してくれれば、なにか教えることはできますから」、と近藤さんはお話くださいました。仕事をして妊娠をすれば、どの業種の女性も産後のキャリアについて考えなければなりません。もし戻る場所があるなら一度声を出してみる。自分だけで調べず、その道の先輩に聞いてみる。たったその一歩で、目の前の光景がガラっと変わるかもしれません。※「D→START 安城」では、「起業相談会」・「お1人サロンのおしゃべり交流会」なども毎月開催予定。東海地方で美容・サロンにお悩みを持つかたは相談してみては。サロンブランシュ> FacebookD→START 安城> 公式サイト> Facebookライター:三谷 アイ
2016年10月05日孤高のスパイ、ジェイソン・ボーンが幸せになる日はやってくるのだろうか?2002年の『ボーン・アイデンティティー』に始まり、2004年の『ボーン・スプレマシー』、2007年の『ボーン・アルティメイタム』と、ジェイソン・ボーンは常に苦難の中で戦ってきた。記憶という過去を失い、愛する女性との現在を失い、未来すら奪われそうになる中、自分という存在を取り戻そうとしてきたボーン。あれから9年、再びジェイソン・ボーンと化したマット・デイモンの胸の内には、こんな想いがあったという。「続編を作るのは、本当に難しいことだと思う。慣れ親しんだものを求められはするけど、全く同じだと飽きられてしまう。つまり、親しみ深い部分と新しい部分のバランスが重要になるのだけど、続編を作るにあたって幸いなことに、前作から9年を経て世の中は大きく変わった。プライバシーとセキュリティの問題が深刻化し、ソーシャルメディアが活発になり、デジタルへの依存も高くなったよね。これほど様変わりした世界でボーンが活躍することこそに、僕たちの求めるバランスがあると確信したんだ」。マットの言う「新しい部分」をキャスティングで表現したい。こう言い出したのは監督のポール・グリーングラスだという。新キャストとして、アリシア・ヴィキャンデル、トミー・リー・ジョーンズ、ヴァンサン・カッセルらが加入。なかでも、アリシア演じるCIAエージェント、ヘザー・リーとボーンの関係は興味深い。「すごく面白い関係だよね。曖昧で謎めいたヘザーを、ボーンはもちろん、観客も信用していいかどうか迷う。そもそも、ボーンは誰も信用しないしね(笑)。ヘザーはサイバー世界の新しい世代の人間で、ボーンよりずっと若い。そんなヘザーを演じることで、アリシアはシリーズに新しい風を吹き込んでくれたと思う。もし更なる続編があるなら、2人の関係はもっと掘り下げて描かれるんじゃないかな」。一方、「親しみ深い部分」とも言うべき、変わらないものがある。それが、ジェイソン・ボーンというキャラクターだ。常に苦難の中で戦ってきたボーンは、またもや痛みを伴う戦いをCIAによって強いられる。「(シリーズ第1作の監督である)ダグ・ライマンと初めて話したとき、彼がこう言っていたんだ。“ジェームズ・ボンドには何だか共感できない”とね。ボンドは女好きだし、殺しを茶化すし、マティーニを飲んで呑気に振る舞う。60年代の感覚だよね。そうではなく、僕たちはボーンを共感できるスパイにしたかった。彼には良識があるし、正しい価値観を持っている。1人の女性をずっと愛し続け、自分がしたことに対して罪悪感も抱いている。だからこそ、彼は償いをしたい。それがボーンというものなんじゃないかな」。『ボーン・アルティメイタム』から現実世界は9年、劇中は12年が経過。ジェイソン・ボーンの人生の時計が進んでいたように、マット自身も年齢を重ねてきた。皺の数だけ味わいを増してきたボーンを、マットは「演じやすくなった」と言う。「初めから彼にはつながりを感じていたし、年齢を重ねると共に演じやすくなったのは事実。役の内面を演じるには、人生経験が多ければ多いほどいいからね。後悔もあれば失敗もあり、喜びもある人生のすべてを、演技に活かすことができるから。ただし、肉体的な苦労は今の方が大きいんだけど(笑)」。心の痛みも、肉体の痛みも、ジェイソン・ボーンから消えることはない。では、最初の問いに戻ろう。ジェイソン・ボーンが幸せになる日はやってくるのだろうか?「シリーズが続く限り、ボーンは苦しみ続けるんじゃないかな。幸せになったら、シリーズが終わっちゃうよ(笑)」。(text:Hikaru Watanabe)
2016年10月04日母親が働きやすい職場がたびたびメディアに取り上げられていますが、美容業界は出産退職が珍しくありません。理由は勤務体系、休暇中のブランクなど。今回は美容の現場の産後復帰と独立について、愛知県のエステサロン経営・マネージャーであり、美容に特化したコワーキングスペース「D→START」の安城オーナーを務める近藤利津子さんと、そのママさんスタッフにお話を聞きました。美容キャリアは35歳から近藤利津子さん愛知県安城市にあるエステサロン「サロンブランジュ」のマネージャー、近藤さんの美容キャリアは35歳から。マンションの一室を借りた「マンションエステ」からスタートしました。お客が来ない状況に「このままじゃいけない!」と一念発起しテナントへ移動。さらに数年後に現在のサロンを建て、2階をコワーキングスペースに改装しました。そんな近藤さんのサロンには、この業界にしては珍しく出産を経て復帰したエステティシャンのかたが在籍しています。「復帰したい」と思える職場「サロンブランジュ」のみなさんママさんスタッフの1人である田中さんに、復帰を決めた理由についてうかがうと、やっぱりこの職場が好きだったのが大きいです。きっと違う仕事だと思ったらやりたいと思ってないです(田中さん)と、仕事内容より職場のよさが先に挙がりました。家にいると、働いている人が羨ましく思うのが出てきちゃって。でもまだ子どもが1歳だし、働いてもフル入れないし…。『働きたい』って言っちゃいけないと思ってました(田中さん)そんなとき、たまたま近藤さんと連絡を取る機会があり、ポロッと「働きたい」と呟いたのがきっかけで戻ることに。またお子さんを預かってくれるかたも見つかり、ご家族にも「やっておいで」と送り出してもらったそう。近藤さんにも「どうしてこのサロンに戻ってくるのか」を聞いてみると、「子どもの顔を見せにきてくれたり、こちらもお食事会に声をかけたりとか、そういう環境があったからでしょうか」と、戻りやすい土台があったようです。復帰によって前向きになれた「ブランクがあるので、復帰には不安もあった。けれども、お店のみんながフォローしてくれました」と笑顔で教えてくれた田中さん。復帰にあたり、技術を覚えているのかのチェック、新しいメニューの施術の練習、勤務可能時間の相談などを近藤さんとしっかり確認し、不安をなくしていったそう。働き始めてからのほうが、全てにおいて前向きになったと思います。家でずっと子育てと家事だけのときより、今のほうがどちらも上手にできているかな(田中さん)お客さんにも「戻ってきたんだね!」と喜ばれ、近藤さんとしてはサロンの信用にもつながっている実感も得ているようです。近藤さんと田中さん田中さんは長い通勤時間かけて出勤して、子どもを預かってもらえる間しか勤務できないんです。でもこの仕事が好きだからやりたいって。やりたいことがあるときは、どこか譲歩するところを見つけないといけないのかもしれません(近藤さん)美容ってひとりじゃ絶対にできない結婚・出産を経たネイリストやエステティシャンは、自宅サロンやマンションエステで独立するかたもいます。しかし集客ができず閉店するケースも。全身マッサージ1時間3千円でやってくれる自宅、マンションエステがあると聞きます。価格設定が、開店当初に来てくれたお友達向けの「お友達価格」のままになってしまう。だけどこの値段設定は、美容業界全体の値段も下げ、自分が持つ技術力の価値も下げていることにも気付いていないんですね。(近藤さん)独立は技術だけではなく、経営に関わる細かいところまで全部ひとりだけで決めなくてはいけません。退社したスタッフが独立について、近藤さんに相談にくることも。わたしもマンションエステがスタートでした。でも、自宅とかマンションだと看板が出せなかったり、あまり宣伝もできない。ひっそり開店して閉店していくサロンがたくさんあります。頑張ってもきっと相談できるところもないだろうし、こちらも聞いてももらえないと情報があげられない。美容ってひとりじゃ絶対にできないので、もっと自分をオープンにして、情報をどんどん取りに来てほしいです。そして1年先、5年先を思い描いて欲しい」(近藤さん)餅は餅屋。「私自身もたくさん助けていただきました。声を出してくれれば、なにか教えることはできますから」、と近藤さんはお話くださいました。仕事をして妊娠をすれば、どの業種の女性も産後のキャリアについて考えなければなりません。もし戻る場所があるなら一度声を出してみる。自分だけで調べず、その道の先輩に聞いてみる。たったその一歩で、目の前の光景がガラっと変わるかもしれません。※「D→START 安城」では、「起業相談会」・「お1人サロンのおしゃべり交流会」なども毎月開催予定。東海地方で美容・サロンにお悩みを持つかたは相談してみては。サロンブランジュ> FacebookD→START 安城> 公式サイト> Facebookライター:三谷 アイ
2016年10月04日女優ミラ・ジョヴォヴィッチの代表作といえば、やはり『バイオハザード』シリーズと断言していいだろう。第1作の公開が2002年。この冬、シリーズ第6弾にして完結する『バイオハザード:ザ・ファイナル』まで、約15年にわたり主演を務め続けたミラの胸中は?「まだ映画が完成していない段階だけど、撮影は終わったし、さみしい気持ちなのは紛れもない事実ね」と率直に語るミラ。第1作『バイオハザード』では、自分が何者であるかさえ知らずにいた主人公アリスは、仲間たちと挑んだ壮絶な戦いを通して「本作でようやく自分自身の本質を理解できた」のだという。ミラ自身にとっても「女優として、ワクワクするような素晴らしい旅」だっただけに、「さよならを言うのはとてもつらいわ」と語る。誰もが知るハリウッド女優が、別の出演作を挟みつつも、約15年にわたり同じ役柄を演じ続けるのは、かなりのレアケースだ。「確かにアリスという存在が、キャラクターの枠を超えて、私の人生の大きな一部になったと感じているわ。人として自分らしくありたいと願うけど、現場ではアリスになりきらなければという使命感が沸いてくる。互いの人格が影響し合うから、アリスと同じように、混乱し自分が何者か分からなくなることもあったわ」。そんなミラの人生に、『バイオハザード』がもたらした最大の変化にして、最高の幸福はもちろん、夫であるポール・W・S・アンダーソン監督の出会いだ。「その通り!私にとっては生涯の恋人であり、インスピレーションの源なの。特に仕事に注ぎ込むエネルギーと情熱を間近で見ていると、いい刺激になるし奮起させてくれる。プライベートでは、2人の子どもにも恵まれたし、ポールが夫だという事実は、私にとってとてつもない幸運なのよ」。近年は『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』『ゴーストバスターズ』など女性が大活躍するSFアクションが花盛り。その先駆けが『バイオハザード』シリーズだったとは思わない?「そこまで直接的に大きな影響を与えたとは思わないし、私たちは信念を貫き、情熱をもってシリーズを重ねていっただけ。でも、確かに女性が主演のアクション大作が増えたことは認めるし、結果的に私たちの取り組みが一因だとすれば、それはとても誇らしいわ」。代表作である『バイオハザード』シリーズが大団円を迎えるいま、女優ミラ・ジョヴォヴィッチが見据えるのは“その先の未来”である。「女優として挑戦したいのは、コメディ映画ね。それに10代の頃、バンドを組んでいた影響で音楽も大好きだし、映像表現にも興味がある。最近、SOHNというアーティストのMVを監督し、出演もしたばかりなの。とにかく止まってはいられない。常に想像的な環境にいないと、私が私でいられなくなるから」。(text:Ryo Uchida)
2016年10月04日「いわゆる“中年感”ですよね」――。この男が発すると「中年」という言葉が全く違う、素晴らしい意味を持つかのように錯覚してしまいそうになる。だが、福山雅治が口にする「中年」が意味するところは、我々が想像するのとなんら変わらない、あの中年であり、映画『SCOOP!』で彼が演じているパパラッチ・都城静も、ガサツでだらしなく、下品なセクハラジョークを連発し、何かというと、すぐ野球を例えに持ち出す中年オヤジそのままである。その中年らしさに、“あの”福山雅治が共通点やシンパシーを感じたという。「年をとってくると、実は周りが言いたいことを言えなくなってきているんじゃないか?『あの人、めんどくさいところあるから…』なんて陰口を叩かれているんじゃないか?と思ったりして、ちょっとずつ若い人と距離を感じたりするんです。あとは、時代の最先端の感性やカルチャーを無意識に共有できていた頃とは違ってくる――僕自身、それはすごく感じますが――そういう“中年感”ですよね」。例えば映画序盤で、静が古巣でもある写真週刊誌「SCOOP!」の編集部を訪れるシーン。先輩風を吹かせながら“オラオラ”感満載で現れる静に、編集部員たちはやや引き気味に迎える。「おそらくは静自身もわかっているんでしょうけど、いつもと変わらない“先輩”の距離で接している(笑)。でも、若い後輩の編集部員の中には『いや、すみません静さん。もうあの頃の俺とは違うんで…』と思っているヤツもいる。そういうの、僕自身と若い子たちの間にもあると思うんですよ。そこは僕も静も一緒だなぁって感じますね」。借金まみれでゲスで、無精ひげを伸ばしたこの中年パパラッチ役について「まず何より、やったことのない役を演じてみたいって好奇心があった」という福山さん。巷では“あの福山が汚れ役を!”とも言われるが、福山さんは静を決してダメな男とも感じていないし、「そもそも僕自身、“ヨゴレ”みたいなところがありますから(笑)」とも言うが…。「いまでこそ“福山雅治”的な認知のされ方がありますけど、根はね…。それこそ東京に出てきてデビューした頃は、売れてないから金も仕事もなくて、とにかくヒマで、当時は代官山にあった事務所に顔出しては女性社員に『お腹すいたんです』ってたかり、『金ないんですよ』と金借りて、渋谷の井の頭線や中目黒のガード下にあったパチンコ屋にしょっちゅう行っていました。車だけは持っていて(※『10万円で買った』!)、昔は目黒川沿いなんて、桜が咲いてもいまみたいに人がいるわけでもなくて、そこに路駐して、パチンコで負けて、駐禁を切られて、またお金借りて、酒ばかり飲んで…(苦笑)」。まさしく静の若き日々といった感じである。「それをダメだとも思ってなかった。いたって普通の若者だと思っていて『ヒマならそりゃパチンコでしょ』って感じ(笑)。静も同じ感覚だと思います。『別にダメなことしてないでしょ』って。仕事はしているわけで、写真撮ってもらったお金を好きなことに遣ってもいいじゃんと。ヒモってわけでもないし、カメラマンとしての矜持を、プライドを持った役であり、“汚れ役”って思ってはなかったですね」。とはいえ、もはやパチンコ通いで駐禁を切られる若者ではない。いまでは“福山雅治”は、アイコンなのだ。「いろんなことが変化して…いや、むしろ、全てが変わったと言っていいと思います」と変化を自覚しつつ「でもね…」と続ける。「若い頃の経験って、それがごく一時期の短いものだったとしても、強烈に残ってるんです。『売れなかった』とか『ライブで大きな失敗をした』とか。他人から見たら、わずかな時間のことかもしれないけど、そういうことがたくさんあって、そういう、若いころのうまくいかなかったことってずっと残ってる。だからいまでも、根本の感覚とか意識って意外と変わんないんですよ。セコい話だけど、ツアーでホテルのスイートを用意されても、冷蔵庫の中のものは飲まないで、必ずコンビニに寄って水を買って帰る(笑)。僕は新聞配達をして小遣い稼いでた子どもでしたからね。いろんなことが変わったけど、やっぱり変わり切れない。仕事への向き合い方とかそういうのは変わっても、根本は変わってない。だから、静が醸し出している、仕事人としてではなく、“生活者”としてのいい加減さって、やはり僕の根底にあるものなんですよね」。若者は、変わらないものを持ち続けつつ、“福山雅治”となり、そして、あと数年で50歳に手が届く“中年”に達した。それこそ冒頭で自ら語っていた中年の悲哀、若さとのギャップに福山雅治はどう向き合っているのか?「昔、吉田拓郎さんが、あるインタビューでまさに同じ質問に対して『いや、ずれるんですよ、結局。どんなに自分が第一線と思っていても、年をとるといろんなことからずれていく。それを補正するんじゃなくて、そのまま行くしかないんですよ』ということをおっしゃっていたんです。若い頃にそれを聞いて『そうなんだ!』と思ったんですよね。その言葉で年をとること、ずれることが『怖くないな』って思えた。僕にもいつか、そういう時期が来ると思っていたけど、案の定、来ていますよ。『あぁ、ずれてきているな』って感じますよ」。ずれを受け入れる?「服だって相変わらず同じようなものしか着ないし、あと、本当にいろいろ覚えられなくなるんですよ。アイドルグループどころか若手俳優の名前も(苦笑)!それは絶対的に人数が増えたというのもあると思うんですが…共演した人しかわからんない。だから、最近覚えたのは(ドラマ『ラヴソング』で共演した)菅田将暉くんですよ(笑)。でもそれは記憶力の問題だけでなく、関心の問題でもあるんですよね。年をとって、そういう部分に関心がどんどんなくなっていく。そこは僕も既に相当ずれているし、でもじゃあ『ヤバい! 覚えなきゃ』と覚えるかというとそれも違う。それなら、その時間で本当に関心のあるものを追求すればいいだろうと。やっぱり、それは補正するものじゃないんですよね。あとは…まあそれなりにニュース――エンタメに限らず、政治経済、世界情勢とかの情報をアップデートするために、みなさんのようなネットの媒体のニュースを見たり、雑誌を買ったりはしていますけどね」。一方で、若い俳優やミュージシャンにも、福山雅治に憧れる者は多いが…。「会ったことないですよ(笑)! 『福山さんに憧れていました』という人に。コンサートに来て『最高でした』と言ってくれるのは、神木隆之介くらい(笑)。だから、自分としては、嫌われてはいないかもしれないけど、あんまり興味持たれてないんだろうってくらいの感覚。そういう意味では必死ですよ(笑)。それこそ少しでも関心のあることは、アップデートしていかなきゃって。そういう意味で、この仕事しているおかげですよね。そうじゃなかったら、もっとお腹も出ているはずだし、全体的にもっとだらしなくなっているでしょうね(笑)。仕事をさせていただいていることが幸いです」。(text:Naoki Kurozu)
2016年10月03日息を呑むような美貌でも、女優という肩書でもなく、北川景子を形作っているのはド根性! 話を聞きながらそんな思いがよぎる。口調はクールビューティな外見そのまま終始落ち着いているのだが、口をついて出る言葉は昭和を感じさせるような“熱”を秘めている。「できないこと、やったことのないことをやれるようになる。それが人生のモットー」――。そう語る彼女が、女優としてここ最近、強く望んでいたのが職業ものの作品、働く女性の役柄。そこにやってきたオファーがWOWOW初の法医学ミステリー「連続ドラマW ヒポクラテスの誓い」だった。処女小説「さよならドビュッシー」で「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した中山七里の法医学ミステリーを実写化した本作。内科医の研修生の真琴は、尊敬する内科教授・津久場(古谷一行)の勧めで法医学教室へ異動する。そこで、天才的な腕を持つ法医学教授・光崎(柴田恭兵)と出会い、解剖を通じて死者の声なき声に耳を傾けることになるが、その先には医学界の恐るべき闇が…。医師役で白衣を着ることができて「嬉しかったです」と笑顔を浮かべる北川さん。「これまで、職業系のわかりやすいコスチューム、制服を着るような役はあまりなかったので(笑)、やっと着られました。着慣れていないので、これでいいのかな…?周りを見渡すと、古谷さんや柴田さんはすごく様になってるんですよ。まあ、私は新入りっぽい感じの役なので、それでいいのかと思いつつ、なんで皆さん、あんなに似合うんだ!?と思ってました(笑)」。本作の撮影後には、先日まで放送され高視聴率を記録した地上波ドラマ「家売るオンナ」で不動産屋の営業女性を演じたが、本作を含め、こうした“職業系”の作品、役柄をやりたいと思った理由は?「学生を演じるにはもう年齢を重ねてしまったし、かといって子持ちのベテラン主婦、不倫劇や離婚したシングルマザーを演じるにはまだ若いかな…(笑)?というのもあり、いま、自分に一番合っているのは、私自身が働く女性であるということも踏まえ、等身大の仕事をしている女性なんじゃないかと。これまで、きちんと仕事に徹している作品は実は『HERO』くらいしかやってなかったんですが、『HERO』をやって、職業ものって楽しい!と感じていたんですね」。そんな中、オファーが来たのが職業系ドラマの中でも一ジャンルとして確立された医療ドラマ。「いつか医者も演じてみたいとは思っていました。特にこの作品は、普通の医療ものとは違う、ミステリー要素を含みつつ、真琴が成長し、それによって光崎教授、津久場教授といった周りも変わっていくという人間ドラマがあり、そこが面白いと思いました」。ちなみに北川さんにとっては、WOWOWのドラマ出演はこれが初めて。「ここ数年、共演するみなさん、特に年配の俳優さんが『WOWOWは本当にいいよ!』とおっしゃるのを聞いてて、是非挑戦してみたいという思いがあった」という。「現場に入って最初は、慣れない現場に戸惑いもありました(笑)。普通の連ドラと違って、映画のように最初に台本を全て渡された上での撮影で、映画なら1冊ですが、今回は全5話分の5冊。それが全て揃っているということは、こちらで準備はできてないといけないということ。急に台本が上がってきて、準備が…という言い訳ができない(苦笑)!そこはプレッシャーでした」。撮影は決して順撮りではなく、同じ廊下のシーンならば、第1話から5話までまとめて1日で撮影することも!「あれ?いまは何話だっけ…?となることもありましたよ(苦笑)。実際、真琴はいろんな思いで廊下を歩くんですよね。最初は内科医として活き活きと歩いてますが、途中で不安そうになることもあったり…1日で5話分をまたぐってこんなに難しいものなのかと初めて知りました!正直、『楽しい』と思える余裕はなかったですね。終わって全5話を見て『またやりたい』と思ったし、正直『いまなら慣れてもっと上手くできるはずだから、もう1回頭から撮り直したい!』という気持ちです。その後、『家売るオンナ』の撮影に入って、そこで初めて『ヒポクラテスの誓い』の現場で自分がいかに余裕がなかったかということに気づきました」。もちろん、余裕のない現場でも吸収できたこと、刺激を受ける経験はたくさんあった。特に柴田恭兵、古谷一行らベテランの先輩俳優との共演は北川さんにとっては大きな財産となった。「私が一番若くて、先輩方に囲まれた現場で、和気あいあいと楽しい感じの学園もののハシャぐような感じはないんですけど、こんなにいろんなことを学べる機会もないなってくらい、勉強させていただきました。芝居をしていないで待っているとき、どんな風に待っているのか?どんな会話をしてるのか?いままでどんな苦労をされてここまでやってこられたのか?お話いただいたこと全て、見るもの全てが勉強になることばかりで。自分が引っ張っていく現場とはまた違って、全てを吸収して帰りたいって思いで、貴重な現場を経験させてもらいました」。もうひとつ、今回の作品、役柄を通じて改めて強く実感したことがある。「自分で『こうあらなきゃいけない!』と決めつけ過ぎちゃいけないなと改めて感じましたね。真琴は『生きている患者を救うために医者になった』という思いで自分は内科医だと信じてるけど、法医学教室に行き、亡くなった人の本当の声を聴くことの大切さを学びます。それは最初の印象では『何者なの?』と苦手意識さえ抱いていた光崎教授と出会い、彼に振り回されながら苦労して得たものですよね。私も元々『苦労した先に何かを得られる』と考えるタイプですが、より一層、その思いを強くしました。今回の役と一緒に成長できた気がします。大変な現場こそ得るものが大きいんだと素直に思えたし、いままでも思ってきましたが、楽に感じる仕事を選んでちゃダメで、難しいことや初めての挑戦をどんどんやっていこうと。毎回、うまくいくわけじゃないけど、挑戦の大切さを改めて感じました」。決して器用なタイプではない。「リラックスするのが苦手で、小さい頃から『もっと肩の力を抜いて』と言われてきた(苦笑)」と首をすくめる。「撮影に入っちゃうと、家でもそのことばかり考えちゃうんですよ。取材なんかで『そのへんは、プライベートには持ち込まないタイプです』とか言ってるんですけど(苦笑)。結構、持ち込んでるなとこの作品をやってても思いました。家でもTVで医療のニュースとかやってるとハッと見ちゃったりして(笑)」。器用にスパっと切り替えることができないならば、せめて逃げずに、少しでも役のためになればと不器用に正面からぶち当たり、悩み続け、そのときにできる全てを出し切ろうともがく。そうやって10年近く、女優として走り続けてきた。上手にこなすのが目的ではない。難しいことに挑み続けること――それこそが北川景子の存在理由。「そこは性格ですね。勉強でも、一度解けたら次は出来ない問題に挑戦して克服していくことに意味があると思っていて。世の中、知らないことの方が多いですから、地道に知らないことを一個一個、経験していきたいですね」。(photo / text:Naoki Kurozu)
2016年10月02日イギリスをはじめ各国で話題を呼び、世界850万部を超えるベストセラーとなった恋愛小説が、満を持して映画化された『世界一キライなあなたに』。原作のジョジョ・モイーズが自ら脚本を手がけるとともに、ロイヤル・ナショナル・シアターやウエストエンドで数多くの作品に携わった演劇界のベテラン演出家、シーア・シェアイックが長編映画の初メガホンをとった。ジョジョによると、小説のタイトルであり、原題の『Me Before You』は、「あなたと出会う前の私」という意味だという。イギリスのレトロな趣のある田舎町に暮らす、ファッションが大好きなルーことルイーザ・クラーク(エミリア・クラーク)と、バイクの事故により車椅子生活を送る元青年実業家ウィル・トレイナー(サム・クラフリン)は、彼女が彼の世話係兼話し相手を務めることになり、出会った。やがて2人はお互いにとって最愛の存在になっていくが、ある日、ルーはウィルの“ある決断”を知ってしまう…。「撮影のときにスタッフがジョークを言っていたの。『この映画はクリネックスにスポンサーになってもらうべきだ』って。わかるでしょ?」と、いたずらっぽく問いかける原作者のジョジョ。本作は、とにかく泣ける…のに、なぜかその後に、じんわりと温かな気持ちになる不思議な魅力を持っている。「実は映画の製作段階からすでに私たちは涙していたの。涙なしでは作れない作品だったわ。きっとキャラクターが脚本通りに表現されていれば、いろんな感情があふれ出るはずだし、その延長で笑いや涙も自然と生まれるの。(監督の)シーアは原作になるべく忠実なキャラクターを作ろうと努力してくれていた。だからこそ、映画を見ると自然に涙が出てしまうと思うの」と彼女は語る。エミリア・クラークが演じた、本作の魅力を牽引する主人公・ルー(ルイーザ)というキャラクター像はどのようにして作られたのだろう?「私はルイーザのことはごく普通の女の子だと思っているの。ルイーザは真っ直ぐな性格よ。でも、彼女の歩む道には困難がたくさんある。それでも彼女は優しさを忘れず、絶対に意地悪なことは言わないの。両親の教育が良かったのね。でもね、脚本を書いている段階で『汚い言葉を使うかしら?いや、使わないわ。こんなひどいこと言うかしら?いや、言わないわ』といろいろ迷いはあった。人物像はそうやって作り上げていくものだから」と、映画化への苦労に触れる。さらに続けて、「おそらく特に若い女性は、彼女に共感する部分がたくさんあると思う。20代くらいの女性は『こんなに頑張ってるのに、どうしてうまくいかないのかしら』と思うものだし、そういう自分をルイーザに投影するはずよ。あれくらいの年齢の女性たちは、別に怠けているわけでも、意欲がないわけでもないけれど、思うようにいかなくてフラストレーションがたまるものなのよ」と、多くの女子たちの思いを代弁する。そんな原作のルイーザが持つイメージは、「ゲーム・オブ・スローンズ」で示される若き女王の姿ともどこか重なり、素顔の明るさとも相まってエミリアにぴったりだった。一方、ウィル役のサムには、『スノーホワイト』や『ハンガー・ゲーム』シリーズなど、これまでの役柄から清廉でたくましい男というイメージとのギャップがあった。監督のシーアは語る。「エミリアは誰よりも先にスカイプで話した役者だった。だから脚本について話したのはエミリアが女優の中では一番最初だったの。そのときすでに彼女は小説を読んでいて、大好きだと言っていたわ。そのときの会話はすごく弾んだの」。その後もオーディションは続き、最終的には300人以上の女優と会ったという監督。「そのときに一番大切にしていたことは、役者がルイーザとウィルになっているところを想像して、彼らの間に素敵なケミストリーが生まれるかどうか。そうやって候補者を2014年の夏に男女6人にまで絞ったの」という。結果、最後にエミリアとようやく対面した監督は、「ルイーザがいた!ちゃんといるじゃない!」と、当初の直感が合っていたことに自信を覗かせる。また、ウィル役の候補にも6人の俳優が選ばれたが、「最後にサムと(エミリア)の本読みになって、私の中に電撃が走ったの」と監督。「なかなか言葉では説明できないけれど、まるで現実に生きているルイーザとウィルを目の当たりにしたようだった。オーディションはものすごく長いプロセスだったけれど、2人がいてくれたおかげでキャスティングの決断には全く困らなかったわ」。さらに、ジョジョも続ける。「私は作家だから演技に関しては詳しくないけれど、そんな私でさえもサムとエミリアの間にあったケミストリーがはっきりと分かった。ウィルとルイーザがスクリーンから飛び出してきたようで涙が出たわ」。「もし、舞台版『Me Before You』を作っていたとしたら、映画とはまったく違うキャスティングをしていたかもしれない」と監督は言う。「けれど、カメラは被写体に魔法をかけるの。サムとエミリアは魔法をかけられたわ。ハッとさせられたの」。確かに映画を観ているうちに、どんどん2人の関係に引き込まれていく。だが、やがて、ある種の期待や予想を覆す展開が、この物語には訪れる。原作のジョジョは、「ラストに関して、迷いはあった」と告白する。「私にとっては物語を書くとき、キャラクター作りが一番大変な作業なの。けれどウィルとルイーザに関しては、それがスムーズに進んだ。まるで彼らのすべてが分かっていたみたいに。この物語で真っ先に思いついたのは、車椅子でダンスするシーンだった。そこから彼らがどういう人物なのかを掘り下げていったの。まったく違う境遇にある2人を引き合わせるのは楽しかったし、物語を展開させて行くのも面白かった」。しかし、「あるとき突然、『もう無理!』と自信をなくしてしまったの。私は普段、読者のためにも物語のラストは語らないように心がけているけれど、この物語を書いている途中にエージェントに電話して、ラストを2つ用意したいと提案したの。読者自身が最終的にどちらか選べるようにするというものだったわ。けれど、エージェントはそのアイデアには感心していなかった。そこで最初に考えていたラストに立ち返ったの。そうして正解だったと思ってるわ。私が選んだラストが、きっとキャラクターの気持ちに忠実だと思ってる。読者や観客の中には、もちろん賛成しない人もいるはずだけど、私にとって大切なのは、ウィルがなぜその決断を下したのか、なのよ」。観客は、あなたが選んだラストに賛成しないかもしれないと?「人は自分の主義や経験というフィルターを通して、小説を読んだり映画を観たりすると思うの。小説に関してだけ言うなら、批判的な意見はほとんど聞かなかったわ。正直なところ批判を受ける覚悟を決めていたけれど、幸いそれはなかった。それどころか、四肢麻痺の方や介護士から良い反響をいただいたわ。本の中に出てくる苦労やユーモアは本当にあって、彼らの暮らしを忠実に描いてくれていたって」。そして映画については、「(サムが演じた)ウィルはアクティブでセクシーな男性だったでしょ。試写を観た女性が泣きながら会場から出てきて『ウィルに惚れた』と言っていることがある。私たちはそれが本当にうれしいし、素敵なことだと思っているの。私たちはちゃんとウィルという人をみんなに見てほしいと思っていたし、女性たちは車椅子ではなく、ちゃんとウィルを見て彼に惚れてしまうの」。その言葉を受けて、監督は「さっきジョジョが、小説には2つラストを用意しようと思ったと言っていたけれど、映画には1つしかラストはなかった」と補足する。「きっとジョジョは小説を書いているときは、ものすごく感情的になっていたはずだから、ラストを2つ用意したかったと思うけれど、映画を作るときには、スタジオも、私も、ジョジョもみんながラストは、あの1つだけという意見で一致していたわ」と語っている。なお、小説「Me Before You」は続編「After You」がすでに海外で出版されているが、もし本作がヒットしたら、続編の映画化の可能性もありそう?「ジョジョが続編があると教えてくれたとき、正直『知りたくない!』と思った。そして、映画がちゃんと公開されるまでは続編は読まないと決めたの」と監督。「まったく違う物語だから、私はまだそこに足を踏み入れたくないと思っているの」。そしてジョジョは、「もし、いまの質問がシーアとサムとエミリアで一緒に映画を作りたいかという意図なら、もちろんまた一緒にやりたいわ。現場は楽しかったし、役者たちは臨機応変に頑張ってくれたから。スタッフやキャストはみんな自分のエゴを出さず、本当に作品のことを考えて行動していたわ。前向きで素晴らしいチームだった」と明かし、称賛を贈る。最愛の人に出会い、これまでの人生が一変する物語。その物語は、まだまだ続いていくのかもしれない。(text:cinemacafe.net)
2016年10月01日ウーマンエキサイトのママ読者モデル「ママリーダーズ」のメンバーを紹介します。日々を振り返りながら語る、母として女性としての思いとは?■ママリーダーズ 原田あゆみさん原田あゆみ Ayumi Harada独身時代は看護師として勤務し、ゴルフ、茶道、社交ダンス、日本舞踊、ボランティア活動などオフも多趣味に満喫。その後、青年海外協力隊のエイズ対策隊員としてザンビア共和国で活動、帰国後に現在の主人と出会い結婚。現在は息子さんと娘さんの二人育児中。ママ向けワークショップや親子で楽しめるイベントなどでスケジュールを埋めるのが大好きで、出産後もアクティブに楽しく暮らしている。生年月日 :1985年4月11日子ども : 息子(2013.12)、娘(2015.9)居住地 : 東京都興味のあるジャンル : 教育、美容、ファッション、ハンドメイド、料理、旅行Instagram: @ayutan_0411 Facebook: ■ママでも参加できるボランティア活動に、やりがいを感じて青年海外協力隊に参加するなど、社会貢献や福祉活動への興味も強い原田さん。直近では妊娠中の服や授乳用ワンピース10点を持参し、不要品オークション「ママ100人プロジェクト」に参加したそうです。収益の一部を熊本地震の被災者に寄付する活動に携わり、「ママでも役立てることがあると思えました」と充実感を語ってくれました。もともと看護師ということもあり、健康や病に関する知識が豊富。お子さんの病気に対しても落ち着いて対応できる強みがありました。「でも、子どもにとってはあまり心配してくれない母親で、寂しい思いをさせているかもしれません」そんな原田さんも第一子妊娠中にはひどく気持ちが沈み、“マタニティブルー”を経験。家事全般があまり得意でないうえに、仕事でも疲れ果てていた原田さんを助けてくれたのは“カジメン”なご主人だったそうです。毎日夜ご飯を作るなど、積極的に原田さんを支えてくれたのだとか。■最近はまっているのは「船旅」。子連れ家族にはオススメ!出産後は勤めていたクリニックを退職し、子育てに専念。“ネントレ”を実践したり(生後2カ月から夜一度も起きないお子さんに育っているそうです)、「ママと同じくらい、パパにもちゃんと懐いてほしい」と“イクメン”育成計画を実践したりと、楽しみながら取り組んでいるそうです。原田さんの狙いどおり、子どもたちはパパにとっても懐いているのだとか。ポイントはやはり「旦那さんを褒めて育てること」だそうで、ぜひ具体的な手法を伺いたいところです。「子どもと一緒に楽しめることも、たくさんある」と気づいてからは、毎日予定を埋めるほどアクティブに出かけるように。最近は「船旅」にもはまっています。「船内にはスケートリンクやプールがあるし、食事も食べ放題。移動の疲れもないし、思ったよりも高くないんです。家族全員がリラックスできる旅で、とってもおすすめです」■今の目標はバレエの発表会。将来は復職も考えています最近では、お子さんの習い事のついでに「大人のダンスレッスン」に参加したことがきっかけで、昔習っていたバレエへの思いが再燃。運よく家の隣にあったバレエ教室に、お子さんが寝静まってから週2回通っているそうです。現在は来夏にある発表会に向け、踊る感覚を取り戻そうと奮起中。看護師の資格も生かし、「いつか子どもの手が離れたら、訪問看護や病児看護、病児シッターといった仕事もしてみたいですね」と未来の目標も語ってくれました。育児を楽しみながら、自分の目標も持って頑張るママのことを、お子さんたちもきっと誇りに思っていることでしょう。ユニークな遊びやイベントにも敏感な原田さん、これからどんな情報を発信してくださるか、とっても楽しみです。(撮影/根田拓也、取材・文/外山ゆひら)
2016年10月01日ウーマンエキサイトのママ読者モデル「ママリーダーズ」のメンバーを紹介します。日々を振り返りながら語る、母として女性としての思いとは?■市来理恵さん市来理恵 Rie Ichiki出産後3ヶ月で現在の会社に入社し、コスメブランド「Pure Smile」のプレス担当に。各媒体へのリリースやニュースの紹介に携わっている。プライベートでは2008年に結婚、現在は娘二人と夫との4人暮らし。好きな街はみなとみらいや表参道。休日は午後早めにディナー作りを開始し、ゆっくりまったり過ごすのがお気に入り。生年月日 : 1981年9月28日子ども : 長女(2010.3)、次女(2018.3)居住地 : 神奈川県興味のあるジャンル: インテリア、美容、ファッション、ハンドメイド、旅行、アウトドアInstagram: @rriiiee928 Facebook: ■「仕事したい」思いが募り、産後3ヶ月で新しい会社へ出産後3ヶ月で新しい会社に就職した、という珍しい経緯を持つ市来さん。以前はアパレルの会社に勤めていたものの、結婚・出産前はアルバイト形態だったため、「仕事したい」という思いが長らく募っていたのだとか。そんな折に知人のツテで現在の会社からの誘いがあり、「やりたい!」と即答したそうです。とはいえ、まだ0歳児ということもあり、保育園からはしょっちゅう呼び出しがかかるし、創業間もない会社には他にママ社員がひとりもいない状況。当初は「気まずくて仕方なかった」そうですが、途中から「気にしていたら、どちらもうまくいかない!」と割り切るように。会社も「社員たちに長く働いて欲しい」と考えているとわかり、積極的にママならではの意見を出すように。結果、新たに子どものバースデー休暇制度ができるなど、市来さんの存在が社内環境整備のきっかけになっているそうです。■娘とボルダリングに夢中。習い事は「簡単にやめない」と約束職業柄、美容やファッションへの関心が強いという市来さん。最近では、仕事も家事もひと段落した時間に自分用の“アクセ作り”をすることが、ひそかなリラックスタイムになっているそうです。また週末は娘さんの習い事に付き添う形で、ボルダリングを楽しんでいるとか。実は市来さん、子どもの習い事に関しては信条があるそうです。子どもの本気度を試す意味でも、「飽きたらやめるはダメよ」「やるなら3年以上は続けてね」と約束できるものだけを許可しているとか。そう伝えると子どもは真剣に考え、「本当にやりたいか」を自問自答するといいます。一時期騒いでいたピアノ教室などは、最終的に「やっぱりやらない」と自分の意思で判断したそうです。■家事も子育ても「なるようになる」と思って無理をしない「なるようになる」がモットーで、「適当な性格なんです(笑)」と自称する市来さん。「疲れているから今日は外食にしよう」「洗濯物がたまっているけど、週末でいいや」などと、日々無理をしない姿勢で家事育児に取り組んでいるそうです。同じ境遇で悩んでいる友人ママの話を聞くなかで、「ずぼらな私の姿を見て、そういう感じでもいいんだな〜とリラックスしてもらえたら」と思うようになり、ママリーダーズへの参加を決めたのだといいます。アートマスクやパックなど、幅広い世代の女性に向けた商品のPRに携わる現在。「自分が企画したママ向けコスメで、いつかヒットを出したい」と、今後の夢も語ってくれました。旦那様や周囲の理解もあってこそですが、肩の力を抜いて仕事と家庭を充実させる市来さんのスタンスは、頑張りすぎて疲れがちな人にこそ、参考になるかもしれません。(撮影/根田拓也、取材・文/外山ゆひら) 【参加企画】
2016年10月01日ウーマンエキサイトのママ読者モデル「ママリーダーズ」のメンバーを紹介します。日々を振り返りながら語る、母として女性としての思いとは?■ママリーダーズ 鳥巣里奈さん鳥巣里奈 Rina Toris新卒で入社したメーカーに12年間勤めたのち、大好きなファッションへの興味を仕事にしようと一念発起。32歳で雑誌『VERY』のファッションライターへと転身を遂げる。プライベートでは30歳で結婚し、36歳で出産。休日には自由が丘でウィンドウショッピングをしたり、グランツリー武蔵小杉で娘さんとたっぷり遊んでから夕食をとる、という過ごし方がお気に入り。生年月日 : 1979年5月25日子ども: 娘(2015.9)居住地 : 東京都興味のあるジャンル : 美容、ファッションFacebook: ■すぐに復帰のつもりが「子どもと一緒にいたい気持ち」に変化新卒入社したメーカーの財務部に12 年間勤務していた鳥巣さん。いい会社だったものの、出産後のロールモデルとなる先輩がおらず、将来展望や仕事のやりがいを見失いかけていたそうです。「自分に他にできることはないのか」と悩みながら仕事を続けていたある日、愛読していた雑誌『VERY』のライター募集を目にした鳥巣さんは、迷いなく応募。面接を通過し、晴れてファッションライターという仕事に就くことになりました。最初の3ヶ月ほどは兼業で土日の撮影のみ対応していたものの、旦那様の応援もあり、「今がチャレンジのときかもしれない」と思いきって転職。そのとき鳥巣さんは32歳でした。それから4年近く、『VERY』のファッションライターとして仕事に没頭。人気誌ということもあり、専属に近い形で企画提案、打ち合わせ、撮影と忙しい日々が続いたそうです。そして36歳で妊娠。「3ヶ月くらいで復帰したくなるだろう」と思っていたのに、生まれてみるとお子さんへの愛情が募り、育休期間の延長を決意するに至ったのだとか。子育てをしながら夜中に執筆を続けていたら、ひどく体調を崩してしまった経験もあるという鳥巣さん。お子さんが意思表示できる2~3歳くらいまでは預けずに育てたいと考えており、最近は在宅でできるファッションアドバイスのライター仕事を請け負っているのだとか。「一時保育なども含め、ベストな形を探っています」■ママになったのが遅い分「好きなことをやりきった満足感」も落ちついたフラットな心持ちで育児をされている印象の鳥巣さん。いわく「周囲に先にママになった友人が多いので、予備知識をたくさんもらっていたからかもしれません」夫婦の時間がなくなると聞いていたので、子どもが産まれるまでは「二人だけの時間はもういいね」というくらい楽しみ、仕事に対しても「やりたいことをやりきった」と思えるのだとか。夫婦円満の秘訣をたずねると、「むしろ交際時のほうがけんかは多かったです」と笑顔。今は「なんでも話し合う」ことを心がけているそうです。最近ハマっているのは、「離乳食づくり」と「ママ友づくり」。地域の乳幼児クラブでママ友と知り合うのが楽しく、有意義な情報交換ができているそうです。■将来を考え、子どもの「好きなこと」を見つけて伸ばしてあげたい娘さんへの思いをたずねると、「自分の意見をいえる子に育ってほしい、お利口さんよりは“野生児”なくらいで、のびのびと育ってほしいです(笑)」と鳥巣さん。ライターに転身するまで「自分が何をしたいか、何を好きなのか」がわからず、大人になってからも長い間悩んでいたご自身の経験から、お子さんには興味のあることに触れる機会をどんどん与えて、得意なことを伸ばしてあげたい、という思いを持っているそうです。ご自身のファッションの変化をたずねると、好みは変わっていないものの、ママになってから実用性を考えて選ぶ機会が増えたといいます。子どもを温めつつ授乳しやすいロングカーディガンや、屈んでも背中が出ないよう長い丈のトップスをよく着るのだとか。最近気になっているものは「抱っこひもをして着られる肩周りのゆったりしたコート」「ぺたんこでも厚底のローファー」などなど。「以前ほどは気をつかえていなくて」とはいいつつも、やはりファッションへの強い興味が伺えました。ママ目線でのファッションアドバイスなども、これからぜひいただきたいですね!(撮影/ウーマンエキサイト編集部、取材・文/外山ゆひら)
2016年10月01日ウーマンエキサイトのママ読者モデル「ママリーダーズ」のメンバーを紹介します。日々を振り返りながら語る、母として女性としての思いとは?■山川恵美さん山川恵美 Emi Yamakawa広告会社、不動産関連会社にて勤務。2011年結婚、2014年に男女の双子を出産。出産を機に仕事を辞め、双子の子どもたちと向き合うため専業主婦の道へ。学生時代から読者モデル活動もしており、JJ、CLASSY、andGIRL、AneCan、VERY、Safari、Gainerなどで活動。ブログやインスタでは、双子育児や、ファッション情報などを発信。ママになっても日々を丁寧に美しく楽しみたい。子どもができても年齢を重ねても、女性でいることを諦めない。そんな考えをモットーに、ハッピーマインドで過ごしている。生年月日 : 1983年1月23日子ども : 息子・娘(2014.7)居住地 : 東京都興味のあるジャンル : くらし、美容、ヘルスケア、ファッション、旅行Instagram: @emi_loves_twins Facebook: Blog: ■まさかの双子ママに! 自分の限界を更新しつづける日々さまざまな媒体で読者モデルをつとめる、スラリとした印象の山川さん。しかしその二の腕は、この2年でかなりマッチョに成長したのだといいます。「双子の育児を経験することで、内面のたくましさはもちろん、腕の筋肉もかなり成長しました(笑)」山川さんのお子さんは、男の子と女の子の双子。妊娠中には、喜び以上に大きな驚きと戸惑いを感じていたそうです。「初産なのにどうなっちゃうんだろう、仕事を続けられないかもしれないなど、とにかく悩みました。でも、これが最初で最後の子育てになるかもと思ったんです」妊娠6ヶ月で退職し、専業主婦の道を選んだ山川さん。区が主催する双子ママの集まりに参加するなど、双子を迎える準備を進めました。しかし実際の育児は、想像以上に大変だったのだとか。「半年は家から出られず、授乳と寝かしつけに追われる日々。自分の限界がどんどん更新される感じでした」■忍耐、柔軟性、効率化…ママになって変わったこと山川さんいわく、「双子の子どもは、生まれたときから順番待ち」。一人ひとりに100%で向き合いたくても、つねに2対1の状態となってしまいます。「もっとも困難だったのは、やはり乳幼児期。同月齢、しかも男女の双子乳幼児をいっぺんにみて、さらに2人分の授乳を同時にするのは、想像以上の経験でした。親も子も忍耐力が鍛えられましたね」そうした日々の中で、できる限りのベストを尽くそうと、柔軟に、効率的にものを考えるようになったという山川さん。当時旦那様が仕事で忙しい時期には、両家のお母さんに交代で来てもらい、「チーム」で授乳期を乗りこえたこともあったのだとか。「仕事だったらあきらめていたかもしれないことも、子どものためなら頑張ろう、工夫してみようと思える。自分のためだけに生きていたころと違って、いろんな世代の方とのつながりも生まれました」■ファッションや美容など、女性ならではの楽しみも発信日々の美容も“効率重視”という山川さん。ふだん実践しているのは、シートパックを使った「ながら美容」です。「パックしたまま寝かしつけたり、お風呂に入ったり。あとはボディスクラブを保湿力の高いものにして、あとから何も塗らなくてもいいようにするなど、工程を省くようにしています」双子育児ならではの経験はもちろん、ファッションや美容など、女性ならではの楽しみ方も発信していきたいという山川さん。年齢とともに、よりシンプルに削ぎ落とされていく魅力から、今後も目が離せません。(撮影/根田拓也、取材・文/ウーマンエキサイト編集部)
2016年10月01日ウーマンエキサイトのママ読者モデル「ママリーダーズ」のメンバーを紹介します。日々を振り返りながら語る、母として女性としての思いとは?■土井地恵理子さん土井地恵理子 Eriko Doiji双子の女の子のママで、現在はバッグブランド「HAVEFUN」ディレクターを務める。25歳で出産後ネイルスクールに通い、産後1年半で自宅サロンを開業。ネイリストとして活躍するなかで新しい興味が広がり、自身のブランドを立ち上げ。オンラインショップ運営、セレクトショップなどへの卸販売などもおこなう。プライベートでは家族で音楽イベントやワークショップに行ったり、遠出してお寺や史跡を回ったり。Instagramでも多くのフォロワーを持つ。生年月日 : 1980年11月13日子ども : 娘2人(2006.4)居住地 : 東京都興味のあるジャンル : くらし、教育、インテリア、美容、ファッション、料理、旅行、アウトドアInstagram: @ericodoiji Facebook: Blog: HAVEFUN: HAVEFUN Instagram: @havefun_vtg Article: 「きれいの裏舞台 Vol.7 土井地恵理子さん」 ■25歳で出産、子育て。「仕事をやりきれていない」気持ちが独身時代はアパレル会社に勤めていた土井地さん。24歳で結婚、25歳で出産・退職を経験。早くにママになったため、「仕事をやりきれていない」という気持ちがあったといいます。しかし10年前は、今と比べれば働くママに不寛容な時代。最適な仕事はなく、保育園にも入れず、八方塞がりの状況だったとか。悩んだ末に「外にないなら自分で働く場所を作ればいい」と、実家の協力を得ながらジェルネイルのディプロマを取得した土井地さん。1年目は材料費のみで100人以上の実践練習をし、2年目から本格的にネイリストとして始動しました。当時はまだ一般的ではなかったジェルネイルは、家事にも差し支えなく、ショートネイルでも楽しめること、また同じママだからこその話ができる“リラックス空間”としても評判を得て、顧客を広げていったそうです■「一歩踏み出せば、ママでも可能性が広げられる」と伝えたいネイリストとして仕事を確立する一方で、「もう少し外に広がりのある仕事をしてみたい、やはりアパレルの仕事に携わりたいという思いが芽生えてきたんです」と土井地さん。そんなときに思い出したのは、昔英国に留学をしたときに目にした、若い人からお年寄りまで皆が古着を日常的に着ていた風景。日本ではファッションコンシャスな人や若い人に限られがちな古着を、もっと多くの人が楽しめるように…そんな思いから3年前、古着の代表アイテムでもあるバンダナをとり入れやすくリメイクしたクラッチバッグが誕生し、「HAVEFUN」が始まりました。「今は家でもいろいろな仕事ができるし、一歩踏み出してみると可能性が広がるはずです」。最近は、仕事でも必要となるillustratorソフトやカメラなど、スキルアップのためにいろいろな勉強もしている土井地さん。ママのワークスタイルを提案するイベントなどをいち早く開催してこられたそうです。■お気に入りに囲まれる毎日。娘たちとは女友達のように仲良し!流行に合わせてプチプラの物をたくさん買うよりも、本当に自分が好きな物や10年後も使えるようなお気に入りアイテムをそろえていくことが楽しい、という土井地さん。子どもたちにも“モノを大切にする心”が育ってほしいという思いから、インテリアも一つひとつ思い入れのある物をそろえるようにしているのだとか。10歳になる双子の娘さんとはファッションの話をしたり、恋愛ドラマを一緒に見たりと、友達のようにとっても仲良し。「同級生くらいの感覚で思われていますね(笑)」とのことでしたが、「いろいろなものに趣味を持ち、引き出しの多い子に育って欲しい」と教育方針を語る姿は、何よりも子どもたちの幸せを願うママの姿そのものでした。自信がなくなったり迷ったりしたときは、「自分が本当にやりたいこと、好きなものはなんなのか」に立ち返って考えるようにしている――という土井地さん。人生や物への情熱を持ち、意欲的に生きる姿からは、たくさんの刺激をもらえそうです。これからどんなことを発信してくださるか、楽しみですね。(撮影/根田拓也、取材・文/外山ゆひら) 【参加企画】
2016年10月01日日本のポップミュージック・シーンにおける女性シンガー&ソングライターの草分け的な存在のひとり、大貫妙子がソロデビュー40周年記念プロジェクトをスタートさせている。その独自の美意識に根差した繊細な音楽世界と飾らない透明な歌声で多くの人を魅了する一方で、CMや映画音楽関連も多く、あの映画『Shall we ダンス?』メインテーマや、竹中直人監督の『東京日和』の音楽プロデュースなど数多くのオリジナルサウンドトラックも手がけ、その活動は日本の音楽シーンで多岐に渡っている。今回、ソロデビュー40周年プロジェクトの第1弾としてアニバーサリーボックスを発売、第2弾として初のシンフォニックコンサートを12月に開催するなど、精力的に活動を展開する大貫妙子に単独インタビュー。これまでのソロデビュー40年について、そして今後の展望について、本人に聞いた。――「パラレルワールド」の制作にあたっては、どういう想いで取り組まれたのでしょうか?「ピュア・アコースティック」というアルバムを80年代に出しまして、当時アナログでレコーディングをしましたが、CDでしか発売されていませんでした。LPがまた復活している今の時期にLPで復刻盤を出しませんか、というお話をいただきまして。そのお話を進めているうちにアイディアが膨らみ、こういうボックスになりました。40周年ということもあって、過去に4回やらせていただいた、メトロポリタン美術館を含む「みんなのうた」シリーズ。それに連なる絵本「金のまきば」、また「ピュア・アコースティック」を制作した当時、NHKで1時間の音楽番組をやらせていただいた、その80年代の映像も入れましょうと。現在の心境を語ったインタビューや、私が選ぶ私のBESTなど、いろいろなものが膨らんで、こういうアニバーサリーBOXになりました。――ソロ活動の集大成という意味合いもありますね?集大成と言うには、もっと入れないと全然足りないですが(笑)、わたしの場合は、ポップスというカテゴリーがあって、その中でアコースティックな音楽、物を書くこと、旅の話、そういったいろいろな要素がそれぞれひとつの世界として存在しつつ、トータルで自分の世界になっています。今回のボックスは、その中でも大人も読むようなファンタジー・ノベルみたいな意味合いも含めて収めてみました。現実の世の中で、そんな意味合いを持つものがあってもよいかな、と思いましたし、このような企画だからできたこと、だと思います。――それで「パラレルワールド」というタイトルになっているのでしょうか?BOXに入っている「金のまきば」という絵本は復刻ですが、「みんなのうた」の映像を制作している時に、絵本として膨らませることができるのではないかと思い作ったものです。その時期たまたま「ナルニア国物語」を読んでいて。衣装ダンスの中に入っていくと、そこに別世界が!という物語。パラレルワールドは、わたしたちが生きている世界と平行してまったく同じ世界が存在しているということですが。まったく同じに見えて、もうひとつの世界では、なくしたものが存在している。実際にその扉を見つけることができるかどうかわかりませんが、わたしたちは進むべき方向を失っても、チャンスはあるということです。音楽を聴く時に、過去の自分に戻る時がありますが、音楽はファンタジーであると同時にパラレルワールドへ誘ってくれるツールでもあると思う。という希望を込めて「パラレルワールド」というタイトルにしたんです。――ソロデビュー40年周年ですが、ふりかえってみて長かったですか、短かったですか?あっという間ですよね。あっという間の40年間で、あっという間にお墓に入ってしまうかも(笑)。単純に後40年はできないので、100歳を越えてしまいますから。人生ってけっこう短いなって思いました。バンドを始めた20代の頃は、海のものとも山のものともよべないようなものでしたが(笑)。その後ソロになって、たくさんアルバムを出させていただきました。たいしたヒットもない私が続けられたのは、ひとえに支えてくださったファンのみなさまのおかげだと、心から感謝しています。――音楽シーンも劇的に変化を遂げて来ましたが、一番印象的な出来事は何でしたか?LPからCDの時代になり、現在は配信の時代になって、またLPに戻ってみたりしていますが。テクノロジーの変化とともに、音楽も変わってきたと思います。それはとても音楽に影響を与えるものですが、時代とともに受け入れなくてはいけなかったので、当然取り入れてはきました。今の時代は良いか悪いかは別として、譜面が読めなくても楽器が弾けなくても、コンピューターで音楽が作れるようになった。そのおかげで、家で録音が可能になったりと便利にはなりましたが、多くの歴史あるレコーディングスタジオがなくなりました。それは、ほんとにかなしいことだと思います。音楽には、国境がありませんし、言葉が通じなくても音楽は一緒に作り上げることができます。部屋にこもるのではなく、いろいろな世界のミュージシャンともっともっとジャンルを超えて、楽しく世界を広げてほしいですね。――初のシンフォニックコンサートが今年12月22日(木)に開催されるそうですが、どういうコンセプトでしょうか?千住明さんとは30年来のお友だちで、今までも何度かステージでご一緒していますが、今回は初めてふたりでやるんです。もちろんオーケストラと、バンドにも参加していただきますので、とても楽しみにしています。千住さんはポップスからクラシックまで幅広く活動されていて、オーケストラの指揮もなさいますから、今回はそれもお願いしています。今までは呼んでいただいて2~3曲だけの共演だったのが、今回はじっくりご一緒できるので、ふたりでどういう世界を作ることができるかを考えています。コンサートの前に千住さんとCDも作るので、その収録曲もお披露目したいですし、是非、楽しみにしていただければと思います。――この先の40年は?ですから、生きていないですよ(笑)。40周年も区切りではなくて、わたしには通過点だと思っています。これから先は、いつまで続けるかわかりませんけれど、いままでどおり。できるところまで(笑)。(text/photo:Takashi Tokita)
2016年10月01日写真週刊誌で、芸能&事件班とグラビア班を取り仕切る副編集長にして、次の編集長の座を狙うライバル同士。吉田羊と滝藤賢一がこの役を演じると聞いただけで、よく知りもしない写真週刊誌の編集部の様子がなぜかリアルにイメージできてしまう。校了前の“戦場”と化した編集部で、大声を張り上げ、互いのやり方を認めずに丁々発止の激論をぶつけ合う。実は若いときからなぜか対抗意識を持っていて…そんな、時間を超えたドラマ性まで妙にリアリティをもって想像させてしまうのは、この2人の演技力の高さ、絶妙な存在感ゆえである。この数年、次々と話題の作品に出演して注目を浴び、いまや日本映画界に欠かせない引っ張りだこの人気俳優となったという点でも共通している2人が、映画『SCOOP!』および、お互いについて、知られざる、とっておきの特ダネも…?――普段は、パパラッチに狙われる側であるお二人が本作では狙う側の写真週刊誌の副編集長を演じられていますね。滝藤:僕なんて狙われたことないよ!――いやいや、きっと虎視眈々とパパラッチが狙ってますよ(笑)。滝藤:そうなの(笑)?吉田:演じてみて「こういう風に(スクープの撮影を)やっているのか!」と興味深かったですね。実際、本物の張り込みの現場の様子の映像なども見せていただいたんですけど「こんなに手の内を見せていいのかな?」となぜか心配までしつつ(笑)。――写真週刊誌に対してイメージは変わりましたか?吉田:最初は二階堂ふみちゃんが演じた野火と一緒で「こんな仕事…」とか思ってたんですけど、演じる中で「なにがなんでもスクープ撮ってやるぞ!」って気持ちになってくるし、世間の反応を見て「自分は世の役に立っているんだ」なんて正義感まで芽生えてくる。それが原動力であり、大義名分にさえなってくるんですよね。映画の撮影が終わる頃には、私自身の感覚がちょっとすり替わっているのに気づいて怖くなりましたね。――お金とか部数増加のためではなく…吉田:お金に関係なく、自分がやったことが世の中を動かしたり、世間をあっと言わせたりする快感や興奮があるんでしょうね。理解したくないけど、ちょっと理解をしてしまったり…(苦笑)。滝藤:そりゃ、撮られるよりも撮る側の方がいいですよね。吉田:世間の「知りたい」という欲って底知れないもので、どんなに撮っても「その次が見たい!」ってなるんですよね。滝藤:僕はそこまで図太くないから無理だなと思いました。本人を前に直撃したりなんてできない!繊細ですから(笑)。だから僕は、グラビア班でよかった…。――グラビアといえば、映画の中でも“袋とじ”グラビアが出てきますね。滝藤:夢があっていいのかなぁ…(笑)?僕は破らずに、こうやって(隙間からのぞくように)見ます。吉田:そこで袋とじを破るか?破らないかの差、一線を超えるかどうかの基準って何?好きなタレントかどうか?――さすが芸能・事件班担当の副編集長!切り込みますね(笑)。滝藤:いや、破ったら見たってわかっちゃうでしょ?跡を残したくないんですよ。奥さんに知られるのはいいけど、僕の楽屋に置いてあった週刊誌の袋とじが破れていたら「滝藤賢一が袋とじを見た」ってなるわけでしょ。吉田:滝藤さん的には見たい欲求はあるけど、周りにどう見られるかを意識して…(笑)?滝藤:そう。僕は他人に対する壁が高いというか、シャットアウトしようとする気持ちが強いんでしょうね。――週刊誌の繰り出す芸能ネタに熱狂する人々の気持ちは理解できますか? 「見たい人がいるから、撮る人がいる」という論理もありますが…。滝藤:欲求はあるでしょうね。ただ、僕は常に「逆を問う」ことを大事にしています。「こういうニュアンスで書かれているけど、本当なのか?もしかしたら逆だったり、都合よく切り取られたりしてるだけなんじゃないか?」と。全てを鵜呑みにするんじゃなくて。――もしご自分に関する記事が出たら、どう受け止めますか?滝藤:僕の記事ですか?もし真実ならば、しょうがないですよね。でもそうじゃないなら…反論したくなるなぁ。吉田:しますか?滝藤:しないでしょうね。反論したらしたで、それがまたニュースになって…。そうならないように努力するしかないのかな?だいたい、そんな努力する必要あるのかな?僕の場合、そんなこと意識したのは「半沢直樹」直後だけでしたよ。――いまでは、もしも何かあれば一斉に飛びつきますよ(笑)!滝藤:何かあればね。何もないもん。吉田:うまくやっているから(笑)?滝藤:違う(笑)!家族がいるし、仕事しかないから!結局、そこでリスクを冒してまで、仕事の運気を変えたくないんです。僕は自分のことが大好き人間だから(笑)。――今回、お二人が演じたのは、同じ雑誌内でライバル関係にある定子と馬場という副編集長でした。お互い、これまで共演経験も多くて互いをよく知っていらっしゃるとは思いますが…。吉田:実は、そんなに以前から何回も共演経験があるわけではないんですよね。しっかりとお芝居で絡めたのはこの映画とWOWOWの「コールドケース」くらい?ただ、もともと、舞台出身ということで、似たようなスタンスでこの世界を生きている仲間意識、同じニオイのする同族意識があるのかな?滝藤:嬉しいですね。僕は勝手に“ライバル”だと思っているから(笑)。吉田:そうなの?滝藤:同じようにずっとやってきて「なんで売れないんだ?」って思ってた。自分のことも、羊さんのことも。だから『HERO』で羊さんがガツンと来たときは「ほら来た!」って(笑)。僕だけでなく、周りで見てきた俳優さんはみんなそう思ってたと思いますよ。――お互いを「似ている」「同族」と思うのはどういった部分で…?吉田:何でしょうね…どこかで「自分は何かを成し遂げられるかもしれない」って根拠のない自信を持っているところ…ありません?滝藤:あります(笑)。あとは、ひたすら現場で腕を磨いてきたっていうところ。小さな役でもひとつひとつ、積み重ねてきた自負がある。一作一作が勝負なんです。映画『八日目の蝉』でも、羊さんはラストだけだったでしょ?でもあれ見て「やっぱりすげーな!」って思ったもん。吉田:そういえば「傍聴マニア」もありましたね!滝藤:検事と被告人の関係でしたね。吉田:この時点で、私の中では『クライマーズ・ハイ』の印象があったんですよね。滝藤さんといえば、出る作品ごとに存在感を示していて、しかもいい作品ばっかり出てる!この人みたいになりたいなって憧れていました。「傍聴マニア」で共演したとき、私のアドリブにこれ以上ないっていうくらいのベストな返しをしてくださって、これだけ柔軟で、対応力があるからこそ求められているんだなって肌で感じました。――お二人とも様々な作品に出てこられましたが、世間的な意味で“全国区”の知名度を得たのはこの数年ですね。お話を伺っていると、売れる以前と以降でやっていること自体は変わってないように思えますが、売れる・売れないの差はどこにあるんでしょうか?滝藤:(指でこちらを指しながら)運!そうじゃないかなぁ?だって、うまくても埋もれている人もいっぱいいますし。発見してもらえなければ、世間に出てこられない。努力はしていて当たり前だし、才能がある人なんてゴロゴロいる。あとは運とか巡り合わせじゃないかしら?吉田:タイミングとか巡り合わせはあるよね。滝藤:自分がタイミング合わずにお断りした役で、別の俳優さんが助演男優賞を獲ったこともありますし(苦笑)。いつ何があるかわからないから、常に準備をしておく――結局、一作ずつを大切にしていくしかないんですよ。全てをチャンスと思ってやっておかないと、誰が何を見てくれているかわからない。積み重ねがなければチャンスすら来ないですしね。(無名塾時代の恩師の)仲代達矢さんは「チャンスは人生で3度来る」っておっしゃっていました。――そんなお二人から見て、今回の主演の福山雅治さんの存在は…?滝藤:僕とは見てきた世界が全く違う。持って生まれたもの、運命もあるんだろうし…カッコいいですよ。こちらが真似のしようのないお芝居をされますよね。吉田:でも、いい意味で変わらない方ですよねオンもオフも。「俺は福山だから」ってところがないんですよ。今回、特にカッコ悪い役ですけど、そこでカッコよく見せようって意識や欲が全くないのがカッコいい。私が見てきた、第一線で走ってきた人たちに共通することでもあります。自分ならカッコよく見せようとしちゃう気がします(笑)。滝藤:福山さんは気さくに話しかけてくださるんですけど、こっちは緊張しますよ、どこかでやはり…。吉田:わかる!わかる(笑)!やっぱりみんな、福山雅治のファンなんだもん!――お二人の中で福山雅治といえば…吉田&滝藤:チイ兄ちゃん(「ひとつ屋根の下」)!滝藤:「何なら、店ごと買い占めるか」ってしびれましたよ!(※妹の小梅がキャバクラに乗り込んでのセリフ)。吉田:あった!あった(笑)!!テレビ見ながら叫んでました。滝藤:あの福山雅治さんと共演しているって…いまだに不思議な気分です(笑)。(photo / text:Naoki Kurozu)
2016年09月30日2016年、世界2億ドル超えの大ヒットラブストーリーとなった『世界一キライなあなたに』が、まもなく日本に上陸する。舞台はイギリス、古城が佇むある田舎町。主人公は、その町で将来の展望が何もないまま家族と暮らす26歳のルイーザ・クラーク、通称“ルー”。ある日、カフェでの仕事を失った彼女は、“お城”を所有する大富豪の御曹司で、2年前にバイク事故に遭い、車椅子生活を送るウィル・トレイナーの身の回りの世話をする仕事(しかも6ヶ月の期間限定)に就くことに。そして、初めは反発し合っていた何もかも相容れない2人は、次第に惹かれ合っていくのだが…。世界40か国以上で翻訳され、850万部以上を誇るジョジョ・モイーズの人気小説を映画化した本作。主人公を演じるのは、世界中にファンを持つエミー賞受賞の海外ドラマシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」でデナーリス・ターガリエン/“ドラゴンの母”を演じ、本年度で3度目の助演女優賞ノミネートを果たした英国若手女優エミリア・クラークだ。映画出演としては、サラ・コナーを演じた『ターミネーター:新起動/ジェニシス』、ジュード・ロウ共演『ドム・ヘミングウェイ』(日本未公開)などがあるが、本作では本格的なラブストーリーに挑戦。本作のシーア・シュアイック監督をはじめ、世界的ベストセラーの原作を知る人なら誰もが魅了される、明るく楽天的で、真っ直ぐで、すばらしく独創的な(?)ファッションセンスの持ち主であるルーを、エミリアは見事にスクリーンに映し出してみせた。一方、事故で脊髄を損傷し、車いす生活を送るウィルを演じたのは、サム・クラフリン。『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』の若き宣教師フィリップに抜擢され、『スノーホワイト』など話題作に出演。2014年のリリー・コリンズ共演『あと1センチの恋』は、日本でも口コミからロングランヒットになった。オックスフォード大学に実在する上流階級クラブをモデルにした『ライオット・クラブ』(原題:Posh)が現在順次公開中で、いま注目を集める英国男子の1人だ。映画では、エミリア演じるルイーザが、色使いもスタイルも個性的なファッションでレトロなお城を行き来する姿が特に印象的だった。その撮影はどうだったのだろうか?エミリア:最高よ!本当に楽しかった!ルイーザがファッションを楽しんでいるのと同じくらい、私もいろんな服が着られてご機嫌だったわ。実は私もファッションが大好きなの。だから今回ファッションでキャラクターを表現できる役にめぐり逢えて本当にうれしかった。衣装デザイナーのジル・テイラーは、古着屋やブランドのショップに足を運んで、とにかくたくさんの洋服を買ってきたわ。すごい体験だったわ。なんというか…。サム:パーソナルスタイリストを雇ったみたい?エミリア:本当にそう!夢のようだった。また、サムといえば、ジェニファー・ローレンス主演『ハンガー・ゲーム』シリーズでの鍛え上げた肉体美でも知られているが、本作では役柄上、約18キロも体重を落としたとか?サム:撮影が始まるまでの数か月は苦労したね。大変だったけれど、どうせなら減量を楽しもうとしていたかもしれないな。痩せなきゃいけないことは分かっていたから、体重計に乗るたびに「まだまだいける」とやる気を出していたよ。その過酷なダイエットは撮影現場でも続いていたそうだが…。サム:(お菓子の)ミルキーバーボタンズを僕に買ってくれたよね。エミリア:そうね…買っちゃったわね。サム:僕がチョコレートが好きだって言ったからね。そうやって、ときどき彼女はお菓子をくれることがあるんだけど、もちろん「食べられないよ!」と言わなきゃいけなかったよ。エミリア:日曜日は食べたよね。サム:「これは内緒だからね」とか言いながらね。と、まるで劇中さながらの仲のよい掛け合いを見せる2人。特にエミリアのその素顔は、屈託のない明るさを放つルイーザそのものに見える。エミリア:いままでやった役は自分とは全く違ったけれど、ルイーザは自然体で演じられたわ。心がけていたのは、よく笑うようにしていたことくらいかしら。何よりもいつもサムが助けてくれていたし、監督のシーアやスタッフみんながサポートしてくれていたから自然体でいられたのかも。素晴らしいチームだったわ。サム:演技しなきゃいけないこともあったね。エミリア:少しだけね。サム:僕に恋しなきゃいけなかったからね。エミリア:おっしゃる通り。ねっ、やっぱりちゃんと演技していたでしょ。そんな2人が演じた役柄は、まるで正反対だ。人生に明確な目標もないまま、家計を助けるために働かなければならないルー。彼氏のパトリック(マシュー・ルイス)とは長いつき合いだが、何の進展も期待できない。しかも、新しい仕事の相手は、果てしなく楽観的なルーも手こずるくらい、人生を諦め心を閉ざした青年だった。一方、裕福で実業家としても成功していたウィルは、事故の前まで、世界中のあらゆる場所でさまざなことに挑戦してきた“勝ち組”男。モデルのような華やかな彼女もいた。もし、事故がなければ、同じ町にいても出会うことはなかったかもしれない2人なのだ。ルーは、コンサートデートや南の島への豪華旅行など、ウィルを胸躍る“冒険”へと連れ出し、生きることの喜びを思い出させようとする。だが、事あるごとに「きみこそ町を出ろ」と言うウィル。“冒険”を通して本当の人生の楽しみ方をルーに教えてくれたのは、むしろウィルのほうだった。“自分の人生を、自分らしく生きる”ことは、本作のテーマの1つでもある。エミリア:サムと私では、そのテーマは違う訴え方をしていたかもしれないけれど、私は自分の人生をしっかり生きようと思ったの。その気持ちを心の片隅に置いておくと、悩んでいるときも一瞬、視野が広くなって、いままで見えなかったものが見えるようになる。そうすると、はじめの一歩が踏み出せるようになるわ。サム:きっとみんな、生きる上で必ずそのテーマを考えるはずだよ。そのテーマが頭をよぎったら、絶対に自分のやりたいことをやったほうが良い。でも、そこで大切なのはあまり期待しすぎないことかな。達成できなかったときにがっかりしてしまうからね。原作本の中でウィルがこう言うんだ。「やれるだけやってみるんだ。立ち止まっちゃいけない。人生は可能性だらけだ」と。僕はそれが人生の鍵だと思ってる。絶対に手が届かないものも世の中にあるから、その前で立ち止まらず、どこかで待っているチャンスに目を向けるんだ。「やれるだけ、やってみる」――。それは、俳優を生業にする彼ら自身に対しても当てはまる。サム:この業界で成功するには勝負に出る覚悟が必要だ。エミリア:同感。サム:自分のためになると信じて、やったことがないことをやってみるのは大切だよ。エミリア:(「ゲーム・オブ・スローンズ」で)デナーリスを演じるために脱いだわ。大胆でしょ。何かを燃やすシーンがあるときは、特に大胆になるわね。怖いと思うことを、率先してやるようにしているの。と話す2人。こうした呼吸の合った掛け合いや、スクリーンからあふれ出るケミストリー(化学反応)は、今回が初共演とはとても思えない。サム:(監督の)シーアに初めて会ってから撮影まで1年くらいかかったんだ。かなり長い時間かかったね。オーディション期間中、シーアには合計3回会って、それから“ケミストリーテスト”をやったんだ。エミリア:何度かお酒を飲みながら食事もしたわね。サム:ああ。お酒を飲むとクリエイティブになれるんだ。エミリア:“クリエイティブディナー”と呼んだほうが良いかしら。サム:“クリエイティブ親睦会”かな。エミリア:じゃあそれで!サム:ケミストリーテストの良いところは、他の役者が用意してきた役と一緒に、自分で用意してきた役をもっと深く追求することができることなんだ。今回6人の女優が残っていたから、6通りのルイーザが見られたんだ。エミリア:私も同じで6通りのウィルを見たわ。サム:みんなそれぞれ違って素晴らしいルイーザだったけれど、エミリアが役を勝ち取ってくれて本当にうれしいよ。実は彼女とは数年前に初めて会って、何度か共演しかけたこともあったけれど、この映画が初共演作品になって最高の気分だよ。エミリア:(ティッシュの)「クリネックス」の箱にも私たちの顔が載っちゃったしね!“クリエイティブ親睦会”って、いったいどんなことしていたのだろう?サム:あれは、お互いをちゃんと理解し合うためのプロセスだったんだ。エミリア:私とサムでシーアの家にお邪魔したの。彼女の旦那さんが料理してくれて、お子さんとも遊んだりしたわ。基本的にはその後、お酒を飲んでおしまいよ。サム:初めてシーアの家に行ったときのことはよく覚えているよ。4時間ひたすら彼女の子どもたちとサッカーをして遊んだんだ。エミリア:そうなの、サムはずっと外で子どもたちと遊んでいたわ。サム:そんなことをしながら僕とエミリアとシーアの3人は絆を深めていったんだ。劇中、ウィルにとって、太陽のように明るいルイーザは“元気の源”となったが、演じた2人にとって“元気の源”、あるいは心に栄養を与えてくれるものとは何だろう?エミリア:私はものすごく幸運な人生を送れているわ。俳優だったら、いまの私の状況をみんなすごくラッキーだと思うはずよ。いまの自分の状況が本当に信じられない。でも、ワクワクするお仕事があるだけではなく、家族や友人たちとも強い絆で結ばれているの。だから、いろんなことがいまの私の元気の源よ。サム:ロンドンは僕の大好きな場所でね。誰にでもきっと元気を与えてくれる場所があると思うんだ。僕にとっては家族や友人のいる“ホーム”かな。彼らがいるから、僕は元気でいられるからね。エミリア:私にとっての故郷もやっぱりロンドンだわ。サム:僕も同じ。エミリア:それはきっと変わらないものだと思うわ。最後に、話題騒然となりそうなラストについても聞いてみた。よくある“別バージョン”のラストも実は存在していたりして…?エミリア:いいえ。(原作者の)ジョジョは、映画のラストはあれで行くと決めていたの。だからほかのバージョンはなかったわ。サム:ラストはあれしかないと思う。エミリア:だから違うラストのことは考えもしていなかったわ。サム:もちろん違うラストも考えられただろうけど、ウィルの物語がちゃんと語られることがとても大切だった。ルイーザにとってもそれは重要で、ラストが変わってしまっていたら、ちょっと残念だったかもしれないね。残念といえば、サムにとっても1つ残念なことが。かつてのウィルが水上スキーや崖からのダイブに挑むシーンなどは、代役がこなしていたそうだが…。サム:けれど上半身はちゃんと脱いだよ。自分でやったのはそれくらいかな。あのシーンを撮ったのは撮影終了間近だったんだけど、保険などの関係でスタントはやっていないんだ。エミリア:崖から飛び込むのは笑っちゃったわ。サム:実を言うと、あれだけは自分でやりたかったんだ。でも止められちゃってね…。こうした何気ない会話のやりとりの中にも生まれる温かなユーモアは、まるで映画のルーとウィルそのもの。2人のケミストリーは、まさに本物といえそうだ。(text:cinemacafe.net)
2016年09月29日女性である私は「男の人は、友達同士で家庭の話をあまりしないもの」というイメージを持っていました。家庭の話より仕事の話をする。友達の前で家庭の話をするのはどこか気恥ずかしい。私以外にもそんなイメージを持っている女性がいるかもしれません。今回取材させていただいた渡辺賢智さんは、仲の良い知人男性に「奥さんのことが大好きなんだ」というお話をしていたそうなのです。こんなカッコイイことを言ってしまう彼は、日頃どんなふうに奥様と向き合っているのでしょうか。渡辺賢智さん<現在の仕事>株式会社白ヤギコーポレーション代表<勤務曜日と帰宅時間>平日勤務で、帰宅時間は日によって異なる。オフィスが自宅から近いため、一度家に帰って子供たちをお風呂に入れた後、また戻る日が週に1~2回。<家族構成>妻、子供2人(男7歳、男1歳)<奥様の職業>専業主婦人はなぜ結婚するのか?–結婚の決め手になったことはなんでしたか?渡辺さん(以下、敬称略):大きなきっかけは、僕の上海赴任です。もともと好きな人ができてその人と付き合ったら結婚するものだと考えていましたし、上海と日本と国をまたいでのお付き合いは大変かなと思ったので結婚したっていう感じでしょうか。–結婚前ってお金の使いかたや価値観など、いろいろ考えてしまったりしていませんでしたか?渡辺:僕は何も考えてなかったです。(笑)–結婚前に人生観や仕事観については何か話をしていましたか?渡辺:していました。「MBAを取ります」「起業します」という話はしていましたし、どちらも実現しました。そして、妻はついてきてくれました。コンサルタント時代は高かった年収が、起業したら下がってしまったんですが、お金のことを気にしない人で良かったなと思っています。そういえば、彼女のキャリアプランや人生プランは聞いていなかったですね。「やりたいことができたら良い」といった雰囲気で、大きな野望はなさそうでした。僕は野望ばかりですけど(笑)。–少し哲学的な質問なんですが、人はなぜ結婚するのだと思いますか?渡辺:良い質問ですね!個人的には、税金と法制度だけだと思います。結婚は社会制度だから、扶養控除とか、法的な整備がされているからするんだと思います。だから結婚は、本質的にはしてもしなくてもどっちでも良いものだと思うけれど、ずっと一緒にいたいと思う人がいるのであれば結婚して社会制度に乗っかったほうが色々便利だと思います。対外的にも「大事な人です」と言うより「妻です」と言ったほうが伝わりやすいですし。「なぜ結婚するのか?」は、「なぜ人は服を着るんですか?」っていう問いと似ているかもしれません。–上海生活はどうでしたか?渡辺:楽しかったんですが、自分ならカンタンにできることが妻にはできなくて、それだけがお互いにストレスでした。例えば、サービスアパートなので、電球が切れた時には「替えてください」って電話で依頼するだけなんですが、妻はそれを嫌がったんです。言葉がわからないし、誰が来るかわからないし怖い。あのときは、用事を全部僕がこなしていたので、面倒だなって思ってました(笑)でも、途中で気持ちが変わったんです。できることや耐えられることは人によって違うんだなぁって。「なんでそんなことができないの?」「なんでそんなことで文句言うの?」っていうポイントが自分とは違うわけです。だから、結婚したらそれを早く見つけて理解することが大切だなってあの経験で早めに気づけたのは良かったです。–逆に奥様が合わせてくれていると感じたことは何かありますか?渡辺:いっぱいありますよ。例えば、僕はすごく道に迷うんです。そういうのは、妻にとってはすごいストレスだと思うんですけど、「しょうがないな」って感じで受け止めてくれています。あと、僕は適当なので、必要なお金の支払いを忘れてしまったりするんですが、見逃してくれています。(笑)もちろん文句を言われることはありますが、あくまでも「しょうがないなこいつ」って感じで、「なんでそんな簡単なことができないの?」とは言わないんです。もしも「頼むから道に迷わないようになってほしい」と言われたら、すごく負担になってしまうと思います。浮気したくない、想いを立証できる手段は行動だと思う–共通の知人から、渡辺さんは奥さんが大好きだと伺ったんですが…渡辺:大好きですよ。超好きですよ。–奥様のどんなところが好きですか?渡辺:難しい質問ですね。(笑)いつも素で、はっきりしているところですかね。わかりやすいっていうか。–一緒にいて楽だし信用できるってことですかね?渡辺:そうです!結婚していても、一緒にいる時間は一日数時間程度。夫婦って実は会っていない時間が長いもの。実際に見えているものと見えていないものの間にギャップがないこと、裏表がないことが大事だと思うんです。見えない部分を知りたいとは思わないけれど、見えない部分を知らなくても良いと思えるような人と一緒にいたい。これはすごく重要です。–見えない部分を知らなくても良いと思えるってどういうことですか?渡辺:たとえば、彼女や奥さんがいて「その人のことが一番だ」と言っているのに、別の女性と遊んでいる男性が世の中にはいますよね。それはその男性の心の中ではつじつまが合っているのかもしれないけれど、男性が取っている行動を見た周囲の人からしたら、全然つじつまが合っていない。人の心は目に見えないものだからこそ、目に見えるものである「実際の行動」が伴っていないと「何を考えているのかわからない人」になってしまいます。だから、嘘やその場しのぎの会話の積み重ねで勝負していくのではなく、考えていることと実際の行動を一致させられる人間でいたいですし、パートナーもそういう人であって欲しい。じゃないと一緒にいられませんよ。–理性と本能のせめぎ合いが起きた場合に、浮気することなく、きちんと理性で判断できる人でいるってものすごく大切ですよね。渡辺:相手を大切に想う気持ちを伝えられるのは行動だけですから。夫婦生活はマラソンなので、長きに渡ってその想いを感じてもらうイメージです。–短い時間しか一緒にいられない日々の生活の中で、工夫していることは何かありますか?渡辺:工夫しているとまでは言えないですが、気を遣うようにしています。妻に家事の負担をかけないようにしているつもりです。お皿洗いをしたり、子供を幼稚園に連れて行ったり、お弁当を作ったり。いつも手はつなぎますよ。あとは、変な恰好で家の中を歩かないようにしています。彼女の前で着替えたりもしません。お付き合いしていた頃と同じような“大好き”テンションでずっと一緒にいます。子供ができて、夫婦ゲンカの内容が変わった子どもたちの送り迎えもできる側がやる–子供がいなかった時と比較して、奥様とのコミュニケーション方法や接し方は何か変わりましたか?渡辺:夫婦ゲンカの内容が変わりましたよ。子供がいる場合のケンカの理由は3つあると思うんです。1つは、「これは誰のものか」っていう所有権をめぐるもの。うちではあまりないんですが、例えば「これは誰のお金か」といったことです。2つ目は、「誰がこの仕事をするのか」っていう役務の争い。子供がいると、これが圧倒的に増えます。「誰がお皿を洗うのか」、「誰がお金を振り込むのか」、「疲れて帰ってきた後に、誰がおむつを替えるのか」、「誰が子供のお弁当をつくるのか」「子供を遊びに連れていくのは誰なのか」といったこと。あともう1つは、ポリシーの争い。「子供は保育園か幼稚園か」、「旅行はどこに行くか」といったことです。どっちも譲らないってことはないですが、最後は奥さんが決めている気がします。解決のためのコツは、譲り合いですね。譲ってもらうときには、予め宣言します。–何を宣言するんですか?渡辺:例えば、明け方の3時まで仕事をしていた時には、「明日の朝は起きられないからごめん」ってあらかじめ言っておくんです。明日の朝のお弁当作りは妻にお願いする。–家族と接する際の座右の銘は何かありますか?渡辺:「明日から頑張る」。できないことが多くあるので、それについてクヨクヨしてしまうと暗くなっちゃう。だから、「明日から頑張る」んです。これからやりたいこと–これからの夫婦生活についての希望・野望はありますか?渡辺:家事や子育てを楽にしたいです。妻を楽にしてあげたい!もっと稼いで、家事をやってくれるかたを雇うとか。あとは、人生の選択肢を広げたいです。たとえば、私自身が台湾人と日本人のハーフなので、子供は他の国で暮らすのもありだと思っています。ライター所感多くの女性が考える「素敵な男性」って、渡辺さんみたいな人のことなんじゃないかと思いました。 人から褒められることがなくても、見えないところで正しいことを続けられる人。よそ見することなく正面を向いて生きる彼がとても幸せそうに見えるのは、目の前にいる人を愛していて、人から愛される喜びも知っていて、心がいつもポカポカと満たされているからなのかもしれません。ライター:藤宮 ありさ
2016年09月28日2人の出会いは、2009年に公開された共演作『クローズZERO II』。その後、交わされる深い絆はご承知の通りだが、当時は「なんか変な奴がいるなあって」(山田さん)、「えっ、こっちだって『暗い奴がいるな』と思ったけど」(綾野さん)。そんな第一印象を抱いたという。いまや人気、実力ともに日本映画界を代表する俳優となった山田孝之と綾野剛。『クローズZERO II』を筆頭に、『GANTZ』2部作、『その夜の侍』『新宿スワン』と映画だけも多くの共演が実現している。綾野さんが「出会った頃に比べるとお互い(精神的に)開くようになり、下界に降りていった」と語れば、山田さんが「下界?上にいたの?どう考えても首まで地面に埋まっていたと思うけど(笑)」とすかさずツッコミ。まさに丁々発止だ。そんな2人が共演する『闇金ウシジマくん Part3』が公開される。真鍋昌平氏の人気コミックを原作に、非合法な金利で金を貸し付けるアウトローの金融屋「カウカウファイナンス」社長・ウシジマ(山田さん)と、彼にすがり金と欲望に翻ろうされる人間の転落を描く本シリーズは、2010年のテレビドラマを皮切りに、2012年の劇場版第1弾公開、2014年のシーズン2放送を経て、今年、シーズン3放送&劇場版2作の連続公開で幕を閉じる。本作、そして『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』の2か月連続公開は、山田さんのアイデアだといい「まあ、深い意味はないんですけど、最後なら派手なほうがいいかなと思って」。ウシジマをサポートする情報屋・戌亥役でシーズン2からレギュラー出演する綾野さんは、「時間が空いちゃうと、役作り大変だもんね」と思いやりを見せる。原作とは一味違うウシジマ像は山田さんと綾野さん、2人の“共同作業”によって生み出されたものだ。「あのウシジマの髪型は、僕の知り合いのスタイリストさんに切ってもらったんですよ。僕もその場にいたんですが、『剛、こんな感じかな?』って。あんな不安そうな孝之は初めて見た(笑)」(綾野さん)、「最初は焦ったよ。普通に丸刈りだし、タワシみたいだから『やばい、どうしよう。もう切っちゃったよ』って。剛は剛で、めっちゃ笑っているし」(山田さん)。ちなみにメガネや衣装も一緒に買いに行ったのだとか。どこまで仲がいいんですか!(text:Ryo Uchida/photo:Nahoko Suzuki)
2016年09月28日ライフオーガナイザーとして、心地のいい空間作りを提案する、宇高有香さん。<前編>に続き、ママも子どもたちも笑顔でいるために考えた、収納のアイデアと厳選アイテムをご紹介します。宇高有香(うだかゆか)さん 娘さん:有咲(ありさ)ちゃん(5歳)、息子さん:通吾(とおご)くん(7歳)2013年にライフオーガナイザー1級を取得し、その後はフリーランスで活動中。お家からパワーをもらえるような空間作りを目指す「ウチカラ」主宰。著書に 『子どもと暮らす ラクに片づく部屋づくり』 (辰巳出版)。ブログ 「丘の上の家」 も人気。HP: ■将来的な使い方を考えた、もの選び宇高さんの家には、無駄なものが一切ないような気がします。それは、今必要なものでも、将来的な使い方を考えて選んでいるから。例えば、娘さんの絵本入れは、市販の収納ボックスに板とキャスターを付けたもの。「小さな子どもにとって、本は重いから、立てていても倒れてしまうことが多いですよね。でも、このボックスなら子どもでも片づけやすいです。うちにはスペースがあまりないので、これにはこれ、と専用のものは設けずに、成長に合わせて用途を変えられるものを選んでいます。これはハンガーラックの下にもちょうど入るサイズなので、大きくなって使わなくなったら、リュックなどを入れようと思っています」また、お絵描き用のデスクにもぴったりの、シェーカーキッズチェアは、息子さんがワークショップで作ったのだそう。「テープの色も自分で選んで、編んで作りました。自分で頑張って作ると、子どもも大切に使いますよね。大人が座ってもしっかりしているので、子どもの高さに合わなくなったら、かばんの一時置きとして長く使っていきたいなと思っています」■子どもに任せて、口出しはしない宇高さんのお子さんたちが自分でできることは、まだまだあります。有咲ちゃんはなんと2歳になる前から、保育園から帰宅してすぐに、リュックから汚れものを出してランドリーバッグに入れ、かごから翌日に必要なものを出して準備をしているのだとか。「一番簡単な“投げ込むだけ”の方法で、“子どもが自分でできる=ママが楽になる” 仕組みを考えました。玄関から入ってすぐの場所に、見た目がおしゃれな収納用品を置いて使っているので、生活感も感じなくてすみます。息子もハンカチやティッシュ、靴下をここから準備して出かけています」自分でできたことには、口を出さないのが、宇高さんのやさしさ。そのために、自由に使っていいスペースを決めることも。子ども部屋の前の壁には、マスキングテープで額縁のように枠を作り、子どもたちそれぞれが思うように飾っていいスペースにしています。「お絵描きした絵をすぐに捨てるのは嫌だけど、全部残していてはたまる一方。何をどんな風に飾るかは、子ども任せ。テープがはみ出ていても、貼り方がぐちゃぐちゃでも一切口出ししません。こういうスペースを作ると、ほかのところには貼らないし、本人たちの気持ちも優先できます。シールだと跡になってしまってストレスになりますが、マスキングテープならきれいにはがせるし、簡単にちぎって貼れて、見た目もかわいいんです」 ■お手伝いする子どもの肌にも優しい「ヤシノミ洗剤」料理は手作りにこだわる宇高さんが、3日に1回は作っているというのが、グラノーラ。大人の朝ごはんと、子どもたちのおやつとして、欠かせないものだそう。「とても簡単に作れるので、最近では、計測以外は娘に任せて作ってもらっています。今日作ったのは、オーツ麦、アーモンド、レーズンのシンプルなもの。毎朝のパンも作りますが、母の影響かもしれません。日々忙しいので、いつも手作りというわけにはいきませんが、将来子どもたちが“母の定番の味”と思ってくれたらいいなと思っています」お手伝いを積極的にしてくれるという、宇高家の子どもたち。だから、洗剤にもこだわりたかったという宇高さん。選んだのは「ヤシノミ洗剤」でした。「最近料理を始めるようになった主人は、洗浄力の強い洗剤が好きなんですが、洗う機会が断然多い私の肌が荒れてしまうのが悩みでした。だからきちんと落ちて、肌にもやさしい『ヤシノミ洗剤』は我が家にぴったり。子どもも肌が弱いので、これなら安心して使えます。無着色で、デザインがかわいいところもお気に入りです」■親が子に与える影響を考えて「親が片づけとどう関わるかによって、子どもも片づけについての意識が変わる」という宇高さん。親がさっと片づけてしまえば早いし楽ですが、子どもに任せる勇気が大切なのだといいます。「働いていて片づけができていないままだと、何かを子どもにさせるのは時間がかかるから、昔の私なら自分で全部やっていたと思うんですよね。それで結果的に自分だけが家事をして、イライラしていたと思います。だから時間がかかったとしても、子どもが自分でできるような環境にしておいてよかったと思います。その子の性格にもよりますが、小さな子どもでも片づけはできるものですよ」取材/文:赤木真弓 撮影:タドコロミズホ[PR]サラヤ株式会社 【やさしいママのひみつ 一覧】
2016年09月28日「やさしいママのひみつ」第2回目は、ライフオーガナイザーの宇高有香さん。5歳の女の子と、7歳の男の子、2人のママです。宇高有香さん娘さん:有咲(ありさ)ちゃん(5歳)、息子さん:通吾(とおご)くん(7歳)2013年にライフオーガナイザー1級を取得し、その後はフリーランスで活動中。お家からパワーをもらえるような空間作りを目指す「ウチカラ」主宰。著書に 『子どもと暮らす ラクに片づく部屋づくり』 (辰巳出版)。ブログ 「丘の上の家」 も人気。HP: 宇高さんが考える、いつも笑顔のママでいるための方法、愛を込めて選んだわが子のための厳選アイテムとは? <前編>では、宇高さんの「やさしさのヒミツ」に迫ります。■「片づけ」を通した、いい親子関係すっきりと片づいたお部屋。まだ散らかし盛りの年頃のお子さんが、2人いるお宅にはとても思えないほど、宇高さんのご自宅は気持ちのよい空気が流れています。「小さな頃からインテリアや建築に興味がありましたが、実は片づけが大の苦手でした。この家を建てる際、その苦手な片づけを克服しようとして、ライフオーガナイザーによるコンサルティングを受けたことが、この仕事に就くきっかけになったんです」個人宅の片づけのサポートや、片づけについての講座を開催するライフオーガナイザーとして、忙しく過ごす宇高さん。ライフオーガナイザーの考え方は、「人の意見を尊重する」というのが前提。自分の性格や片づけのタイプを見直し、そこで生活する家族のことを考えた上で、どういう暮らしが自分たちらしいのか考えていくのだそう。その集大成とも言える宇高さんのご自宅には、選び抜かれたこだわりのアイテムがいっぱいです。■子どもも、自分のことは自分で宇高さん宅の子ども部屋には、同じハンガーがきれいに並んだ、ハンガーラックがあります。左側には有咲(ありさ)ちゃんの服、右側には通吾(とおご)くんの服、とTシャツなどのトップスもすべてかかっています。「洗濯をして乾いたら、ハンガーのままラックにかけるんです。このハンガーは、襟を大きく開かなくても干すことができて滑りがいいので、子どもも自分で取りやすいんです。すべての服が見えるので、子どもたちは自分で着たい服を選びます。私は服について何も言わないし、手伝わないですね」見えていると存在を忘れることもなく、すべての服を稼働することができるといいます。通吾くんは7歳にして、Tシャツを色別に分け、毎日違うコーディネート楽しんでいるのだそう。「すべての服が一目瞭然なので、『あの服どこ?』と聞かれなくなって、忙しい朝も、気持ちに余裕ができました。子ども部屋は2人でずっと使っていくので、基本的に“ものは少なく”を心がけていて、服はここにかかる分だけ。おばあちゃんが服を買ってくれるので、私はできるだけ買わないように。いただきものも捨てられなくなるので、もらった時点で厳選するようにしています」そんな子どもたちのお気に入りの服を洗う洗剤には、特に洗浄力にこだわりたいと話す宇高さん。「家族みんな同じ洗剤を使いますし、保育園に通う娘は特に、砂遊びをするので汚れものが多いんです。洗剤もこだわって使っているつもりでしたが、柔軟剤はパッケージの見た目で選んだりしていて、使い心地で、これというものには出合えていなかったのかもしれません。今回ヤシノミ洗濯洗剤を使ってみて、安心な処方がされているのに、汚れ落ちも十分感じられるし、洗い上がりがさっぱりする感じがして、すごく気持ちがよかったです」 ■心の余裕を作るための収納宇高さんの平日は、朝8時に子どもたちを見送り、夕方6時までは仕事。洗濯などの家事は、夜にまとめてしているそう。片づけと食事の準備は、子どもたちの仕事。「なんでも自分でできるように」が宇高さん流です。「忙しいときに、いちいち呼ばれるとイライラしてしまいます。できるだけ子どもが自分でできるようにすると、私の心に余裕ができるんです。私も笑顔でいたいから、子どもが自分でできるような収納の仕組みを作って、自分も楽にしているんです。それに子どもができることが増えると、みんなが楽しく過ごせると思います」家事を一人で抱え込まず、みんなで分担することで、心の余裕をつくることが、宇高さんが笑顔でいられる秘訣。「仕事でも、依頼してくださる方の8割以上がワーキングマザー。忙しいから片づかなくて、イライラしてしまうという方が多いんです。収納の仕組みが整うと、気持ちが良いというのもありますが、時短にもなり、子どもが自分でできるようにもなる。インテリア好きの方の多くがこだわりたいから、ママ目線で考えてしまって、子どもの意見をないがしろにしがち。すべてを尊重するのは難しいから、自分のなかで優先順位をつけるといいですね。デザイン重視のときもあれば、使い勝手が重視のことも、子どもの意見が最優先のときもある。全部が大人、全部が子どもではなく、妥協点がわかった上で選ぶと、納得のいくものを選べて失敗もなくなりますよ」<後編>では、宇高さんが、子どもたちと家族のために、ひとつひとつ納得して選んだアイテムと、収納ルールをさらにご紹介します。 取材/文:赤木真弓 撮影:タドコロミズホ[PR]サラヤ株式会社 【やさしいママのひみつ 一覧】
2016年09月27日日本映画界を代表する鬼才・堤幸彦監督が、<天下一の名将・真田幸村の伝説は、実は猿飛佐助に仕組まれたものだった!>という大胆な発想の元、壮大な世界観と濃密な人間ドラマを怒涛のアクションの連続で描く時代劇エンターテインメント、『真田十勇士』。主人公・猿飛佐助役の中村勘九郎、佐助と十勇士を支える天才忍者・霧隠才蔵役の松坂桃李とともに、“くノ一”の火垂役で女優の大島優子が参戦した。大島さんは初の本格時代劇への挑戦ながら、劇中ではハイスペックなアクションも自分で披露している。近年、舞台や映画などで高い評価を得ている彼女だが、何が演技の原動力となっているのか。本人に話を聞く。大島さん演じる“くノ一”の火垂は、佐助と才蔵の幼馴染みでありながらも、彼らの命を狙うという複雑な立場にいるキャラクターだ。しかも、「めっぽう才蔵に弱い」という女子の一面も持っている。「もう、惚れたら負けですよね(笑)。性格としては気が強く、男性と分け隔てなく育てられているので、そういう面ではハートも強いと思いました。彼女の戦いについても勘九郎さんが『火垂、無敵説がある』と言われていましたが、ひとりの男、才蔵には弱いという女の子らしさもあって。くノ一もひとりの女性なのかなって(笑)。わたしは火垂を演じていて、彼女のことをかわいらしいなと思うことがたびたびありましたね」。設定で“くノ一”であるため、大島さん自身も激しいアクションに挑戦しているが、堤監督のプランの下で事前のトレーニングはなかった。堤監督に「今回のお前は、アクション女優だ!」と言われ、必死で撮影をする日々だったと大島さんはいう。「今回は事前のトレーニングが一度もなく、その日その日に殺陣をつけていただいて、その日のうちに撮影をしていました。台本には書いてないアクションが毎日あって、撮影現場に行ったら『今日は飛びます』みたいな(笑)。だから、ほぼ毎日飛んでいましたね。『これできるかな?』みたな殺陣もありましたが、トライせざるを得ない。スタントさんがいないので、全部本人がやるんです。だから、絶対に自分でトライしなくてはいけない。さすが、堤さんですよね(笑)」。大島さんは堤監督の期待に応え、“くノ一”火垂を魅力的なキャラクターに創造した。実は単独初主演作だった昨年の『ロマンス』(’15)ではタナダユキ監督が大島を“あて書き”した主人公像を創り上げたが、「今回のお前は、アクション女優だ!」という堤監督のリクエストも含めて、周囲が女優・大島優子の多様性を創っていく。大島さんも「そうですね。本当にそう思います。まわりの方々に、女優・大島優子を作っていただいていると思います」。それだけに仕事に対する原動力を「求めてくれている声」と自己分析をする。「それがエネルギーになっていることは確かです。たとえば監督、プロデューサー、スタッフさんなどに『この役は大島優子で』と言われること、ファンの方々の応援してくださっている声が聞こえること、そういうことが自分を動かしていると思います。でも、その一方でわたしに反対する人たちの声も原動力にしちゃうんですよ。『どうせ無理』などとネガティブなことを言われると、見返してやろうと思ってチャレンジしたくなるんですよ」。自分の挑戦したいことを追うなどの個人的な欲求ではなく、周囲のリクエストに応えることで、女優・大島優子は進化した。そして、そのメソッドは、いまの自分自身にとって「一番、合っていると思う」と大島さんは最後に言う。「リクエストされた後は、自分の技量やパワーが試されると思うので、そういう経験を積み重ねて、どれくらい自分の器が増しているか、自分のことを確認できる手段にもなりますよね。そしてそれはお芝居にかかわらず、自分の人生を生きている指針として、どれくらいの器になっているか、パワーになっているか、次の現場などの局面で明確になってくると思うんです。人生の基準としてのひとつの仕事だから、仕事がメインというよりは自分の人生を基準に仕事や物事を考えています。だからリクエストに応えていくことで、最終的には自分自身も豊かな人間になるような気がしています」。(text/photo:Takashi Tokita)
2016年09月22日離婚を経験し、東京から故郷の函館へと逃げるようにして帰って来た40の男が、人との深い関わりを避けながらも、どうしても逃げられない人と人とのぶつかり合いを経験しながら成長していく姿を描く『オーバー・フェンス』。自らと同年代の主人公・白岩を情けなく滑稽に、だからこそ現実味たっぷりに体現するのはオダギリジョー。孤高の作家とも称される佐藤泰志の短編小説の世界観を、映像化に際し豊かに広げた脚本に惚れこんだという彼に、作品に寄せる思いを語ってもらった。『オーバー・フェンス』は、オダギリさんが、39歳で挑んだ30代最後の作品。同年代を演じるというところにも、強い思いがあったという。「僕、山下敦弘監督を含め、同年代のスタッフが多く、お話をいただいたとき、何となくそういう世代感のようなものがひっかかったんです。これまでは、ちょっと変わった役や作品を選んできたかなという思いがあったので、地方都市にいる、ごく普通の40歳という人物をどれだけ深堀できるだろうかということも魅力でした」。これまで、個性的な役を多く演じてきたオダギリさん。エキセントリックな役柄は、インパクトが強く、迫力があるだけに、役者として旨味も大きいはず。一方で、普通の男を演じる魅力についてこう話した。「40代の男は、20代の若者と比較したときに、明らかに出るものが違うと思うんです。例えば、雲を見ているときでも、20代が雲を見ていればすごく爽やかで夢を見ているようなすがすがしいものを感じるけれど、40代なら“あれ?悲しいことでもあったのかな”とか観ている側が勝手に解釈を変えてくれる。つまりこちらの芝居次第で、清々しくも、悲しくも見せられるし、ぐんと可能性を広げられるということでもあると思うんです。それがきっと40代の面白さ。同じ年の山下監督と、白岩という同年代の役の人間臭さをどんどん深めて行って、男の情けなさとか、頼りなさとか、滑稽さとか、そういったいろいろなことを深めていけたらいいなと思ったんです」。エキセントリックな役が多かった時期は、どちらかというとオリジナリティを大切にしていたそうだ。「自分にしかできない芝居をと考えていましたね。誰もできない発想、誰も表現できない個性、というところに面白さを感じていたんです。今回は真逆ですね。普遍的な40代のあり方を追求し、それが普遍的であればあるほど、こういう40代っているよねというところに落ち着くのが面白かった。いままでやってきたのとは、違うベクトルで演技を組み立ていきましたね。ある年齢に達した男の人が持っている男性性を表現したかった。普遍的なものを演じたいと言うよりも、この作品ではそれが面白いと思ったんです」。劇中、男の情けなさ、ずるさを自分なりに表現してみたいと、監督と話し合い、自らのアイディアを実践することもあったとか。「こういうことをすると、女性がイラッとするだろうなと思って、やらせてもらったくだりもあります。そういう滑稽さとか、人間のずるい部分とか、自分勝手な部分も、この役なら活かせる気がして。そういう細かい部分が白岩の幅をどんどん広げていける気がして。人間の綺麗な面ばかり並べても、表面的な作品にしかならない気がしているんです。ムカついたり、イラッとしたりと、観ている人の感情にひっかかる、そんな要素を入れるように心がけました」。確かに、白岩の言動には“男の人ってこういうことするんだよな”という部分が、良きにつけ悪しきにつけ、浮かび上がります。だからこそ、女性の観客は白岩に呆れることもあるはず。でも、それは男性が知らないうちにしでかしてしまう種類のもの。オダギリさん自身が客観的にそこを理解できるというのは、男性として珍しいのでは?「そうかもしれませんね。気づくには気づくんでしょう、僕は(笑)。気付かないところもいっぱいあるんでしょうけれど。いままで女性がなぜ怒っているのかわからないこともいっぱいあったし。ただ、こういう返事をしたらずるいよなと思いながら、そう返事するということもいままでいっぱいあった。そういうことがいまになって活かせるのかもしれません。きっと相手のリアクション、相手の気持ちみたいなものを、注意して感じようとして育ったからかな。いい子でいたかった子どもって、相手の出かたとか、距離感とかすごく測る。きっと自分もそういうところから、人との関係性の構築の仕方を始めているような気がしています。僕も、いい子でいたいタイプの子どもでしたね。母と2人きりだったし、ちゃんとしなさいと言われ続けて育ちましたから」。劇中、白岩は幾度も“自分は最低な人間なんだ”と笑いながら言い、それを言いわけにして人間関係から逃げている。いまいる場所から、どうしても飛び立てないもどかしさに、絶望しているかのように。「人との距離を保っておくのが一番楽なんですよね。そうやって予防線を張ることで、傷つけ合わずにすむから」。本作では、傷つくのが嫌で人と距離を保っていた白岩が、容赦なく心に入り込んで来る聡というまっすぐな女性との出会いによって、何かを乗り越えていく様に、ある種の爽快さが感じられる。自分一人では超えられない壁だって、誰かとの出会いによって、ときには傷つきながらでも越えられるかもしれないというメッセージが鮮烈だ。聡がしきりに鳥の求愛行動を真似するのも印象的。さらには、鳥が空を飛ぶシーンも時折さしはさまれていて、柵も塀も、国境も関係なく飛んで行ける鳥が自由の象徴のように登場している。「聡という女性はとても純粋。ぶつかるときは、本気でぶつかるんです。白岩がずっとぬるま湯の中で、いい距離感を保っていこうと思っていたのに、それが通じなかった。彼女のペースに巻き込まれていくというか」。できれば、誰だって傷つかずに生きていきたい。現代は、摩擦を避ける傾向が顕著で、直接的に関わるのではなく、ネットなどヴァーチャルな繋がりを好む人も増えている。白岩にも、無意識のうちに鎧を着る、そんな現代性も見て取れる。でも、どんなに人との間に柵を作ろうとしても、人は人と関わらずには生きて行けず、いやがうえにも影響し合ってしまう。その部分を強調するかのように、劇中では人との関わりの重要性を反映させているアナログなコミュニケーションが繰り返し登場するのも新鮮だった。「携帯やPCを使うシーンはないですね。白岩が通う職業訓練校の場面では、たばこを吸いながら喫煙室で雑談を交わしたり、休憩時間にみんなで教官の悪口をぶつぶつ言いながら野球をしたりしている。野球もチームプレイのスポーツで象徴的。家を建てるという職業訓練所での授業内容も、チームワークを象徴するものですよね。離婚して、東京から函館に戻るときに、ゼロから出直すつもりだった白岩。人間関係をすべてシャットアウトした状況で戻って来たのに、人間関係を持たざるを得なかった。そこから、生きると言うことはこういうことなんだと学ぶんです。監督は、どちらかというと群像劇にしたいとおっしゃっていたので、そのつもりでいたんですが、群像劇の中から生まれる人と人との温度のあるぶつかり合いと、聡の情熱的な熱量の高いぶつかり、その両方を通して白岩が成長していく物語と言えるのかもしれません」。ヘアメイク:砂原由弥(YOSHIMISUNAHARA)スタイリスト:西村哲也(TETSUYA NISHIHARA)(text:June Makiguchi/photo:Nahoko Suzuki)
2016年09月21日「一緒に暮らしてみようか…?」――。どちらともなくそう言い出し、その場で一緒に物件を探し始めた。愛し合う2人のプロポーズのエピソード…ではなく、役作りの話である。いや「愛し合っていた」のはまぎれもない事実だ。映画『怒り』において、ゲイのカップルを演じた妻夫木聡と綾野剛。なぜそこまでするのか?なぜそれが可能だったのか?私生活までも互いにさらけ出し、彼らは何を得て、何を作品にもたらしたのか?この愛おしい時間について、2人にゆっくりと、じっくりと話を聞いた。残虐な夫婦惨殺事件から1年。犯人は顔を変えて逃亡を続けていた。同時期に東京、千葉、沖縄に、犯人の特徴を備えた、3人の素性の知れない男たちが現れる。彼らと親しくなった土地の者たちは、その存在を受け入れつつも、事件を知り、自分のそばにいる男が殺人犯なのではないかと疑いを深めていく…。3人の中に犯人はいるのか?信頼と不信の間で苦しむ者たちの選択は?妻夫木さんと綾野さんが出演しているのは東京を舞台にしたエピソード。妻夫木さんは大手企業に勤める青年・優馬を、綾野さんは彼と知り合い、素性を明かさないままに優馬のマンションに転がり込み、同居生活を始める謎めいた青年・直人を演じている。意外にも、妻夫木さんと綾野さんは今回が初共演。同世代の共通の友人も多く、以前に数回、顔を合わせる機会はあったが、じっくりと言葉を交わしたのは本作が初めてだった。妻夫木さんは、相手役である直人を綾野さんが演じると聞いて「ホッとした」という。「その時点で剛のことよくを知らないし、これからいっぱい知っていけるという喜びのようなものがありました」。単に俳優・綾野剛と共演できるという喜びという意味ではない。見ず知らずの関係から出会い、愛情を育んでいく優馬と直人の関係を作り上げる上で、ほぼ初対面に近い綾野さんが相手役であるというのがプラスになると感じたのだ。「これが(以前からよく知っている)小栗旬や瑛太だったら…それはそれで、安心できる部分はあったかもしれないけど。ただ、優馬と直人は、出会ってから幸せに過ごすまでがすごく短い期間の中でギュッとつまってるんですよね。その感じは、もともと、仲の良い関係じゃない方がいいと思ったし、剛が相手で助けられた部分だと思います」。綾野さんは、妻夫木さんが優馬役と知り、喜びに打ち震えた。「年上の俳優の中でも、ダントツで好きな俳優でしたので、まずはご一緒できることに喜びを感じました。僕の中では“安心感”なんてものはとうに超えていて、僕自身の中からいろんなものを引き出してもらえるんじゃないかという思いもありました。若い頃から(作品を)観てたので『実在してるんだ』という感覚。ちゃんと向き合うってことに関しては自信はありましたが『ついていけるのかな?足を引っ張らないようにしなきゃ…』という思いもありました。でも、それも一瞬ですね。お会いして、そういう不安は全て吹き飛びました」。では、この短い期間でどのように関係性を築いていったのか?妻夫木さんは「いっぱい喋るとか、コミュニケーションをとるってことじゃないんだろうな、とは思ってました」と語る。実生活での“同棲”を決めたのは、撮影が始まって数日後。映画の中で、優馬と直人はハッテン場のサウナで出会ってすぐに肉体関係となり、それから一緒にラーメン屋で食事をし、そこで優馬が「行くとこないならウチに来るか?」と声をかけて同居を始める。妻夫木さんは、同棲に至る経緯をこう明かす。「最初から(同居することを)決めてたわけじゃないけど、2人とも同じことを考えてたんですよね。それでどちらともなく『じゃあ、そうしようか』と。その3日後くらいにラーメン屋のシーンが控えていたので、それまでに入れるところということで、部屋を探したんです。できれば、キッチンとかも揃っているところがよくて、ウィークリーマンションなんかを当たったんですけど、(入居希望日が)近すぎて契約できなくて、結局、ホテルに落ち着いたんです。お互いの本当の家じゃ、もともとの“匂い”があるので、それも違うだろうし…」。綾野さんはその言葉にうなずき、続ける。「映画のストーリーに沿うなら、妻夫木さんの家がセオリーだけど、それじゃ優馬の家じゃないから、妻夫木さんがキツイんですよ。互いに一から作っていけるところが良かったんです」。映画では、幸せな同棲生活を送っていたはずの優馬と直人だったが、ある日突然、直人は優馬の前からいなくなってしまう。妻夫木さんと綾野さんの同棲生活でも、綾野さんは物語に忠実に、何も告げずに妻夫木さんの前から消えた――。まずは妻夫木さんの証言。「ホテルを選んで一番良かったと思ったのは、(ホテルスタッフが)ベッドメイキングをしてくれるということ。剛も本当に突然、いなくなっちゃったんだけど、次の朝を迎えても、隣りのベッドはベッドメイキングされたきれいなままの状態なんです。いつもそこで寝てるはずの直人だけがいなくて…。それを見たらもう寂しくて仕方ない(苦笑)!おれが監督だったら、そのベッドを撮るなぁってくらい、きれいないいベッドメイキングでした(笑)」。一方、綾野さんは綾野さんで、いつ、どのタイミングでホテルの部屋を後にするのかを考え抜いて、実行に移したという。「撮影は完全な順撮りってわけじゃなかったんですが、もう次の日の撮影で、直人はいないというシーンがあって、『今日の内にいなくならないと』と考えてました。それまでほぼ毎日、2人で外で同じものを食べて、一緒にホテルに帰ってきてたんですけど、その日、一緒に帰ってきてエレベーターで『あ、コンビに行くけど何かいる?』って声をかけて『いや、大丈夫』、『わかった。じゃあ行ってくるね』『気を付けてね』というやり取りがあって、そのまま外に出て、いなくなりました」。まさにそれ自体が映画の1ページのようである。妻夫木さんが「シャワーを浴びながら、だんだん帰って来ないんじゃないかって気がしてきて、『あぁ、やっぱり』と思った」と言えば、綾野さんはニヤリと笑みを浮かべ「この話はしてなかったけど…」と前置きし、こんなエピソードを明かしてくれた。「ホテルを出てタクシーを捕まえて…ああいうとき、ドラマとかではすぐに乗り込むんじゃなく、部屋の方を見たりするじゃないですか?演出家も俳優もその瞬間を残そうとして。そういうの、うさんくさいと思ってましたけど、実際、やてしまった。『ごめんね』と思いながら、部屋の明かりをちらりと見て、タクシーに乗り込みました」。なぜそこまでの役作りをするのか?そう問いかけたくなるが、2人とも、こうしたアプローチを自然な流れと捉えている。もちろん、頻繁に起こることでない。だが、妻夫木聡と綾野剛という、不思議と共鳴し合う2人がこうして出会ったからには、そうなることは当然の帰結であったと感じている。「この映画の中の2人も出会っちゃったわけで、それと同じ。おれらも出会っちゃった…それでいいんじゃない? という気がしてます」と妻夫木さん。そこには当然、相手が綾野さんだったからという思いが含まれている。「一緒に暮らしてるときも役名で呼び合ってたけど、じゃあ、そのときのパーソナリティは役柄かというとそうじゃない。そこは、うまく説明できないけど、相手によるものだなと思います。じゃあ、もし渡辺謙さんと親子役を演じることになっても、『普段から“お父さん”と呼ばせてください』って言えるかというと『もしかしたら、こいつめんどくさいって思われるんじゃないか?』とか考えちゃう。剛とはそんなこと、考えずにいられたんです、お互いに。それは奇跡的かもしれないけど、それだけのことなんですよ」。綾野さんは「それで何が変わったかですか?言葉にはできないけど、確実に体温が変わった」とふり返る。「相手の寝息を聞いて、朝になって『直人、そろそろだよ』と起こされて、『ただいま』とか『お帰り』と言葉を交わす。この東京編は、すごく普遍的なんですよね。僕らは性的マイノリティではあるけど、嫉妬したり、不安になったり、抱きしめ合って肌の隙間を埋めたり…。だから、そういう日常的なことが大きかったと思うんです」。もうひとつ、インタビューを通じて、2人の口からたびたび出てきたのが「同じ方向を向いている」「同じ目線で見ている」という言葉。妻夫木さんは「そもそも、会ったときから“距離感を縮める”という意識はなかった」と述懐する。互いに向き合い、歩み寄るのではなく、横に寄り添うという意識。「リハーサルでも李(相日監督)さんは、いつものように『違う!違う!』ってばかり言うんだけど(笑)、お互い、その『違う』に対してどうしていくのか?そこで向いている姿勢、方向が一緒だった」。綾野さんは、映画の中でも2人が真正面から向き合うカットはほとんどなく、ラーメン屋で食べているシーンから、ほぼ一貫して横に並び、直人は優馬の「横顔ばかりを見ていた」と指摘する。「何が重要って、同じ景色を一緒に見るという展望なんですよね。マイノリティは子どもを産むことができないから、未来に命をつないでいくことができない。でも、2人で同じものを見る行為に幸せを感じている。優馬が見ているものを、一緒に見よう――気づいたら、そういう気持ちになってました。僕が見たいのは、優馬の横顔と、彼が見ているその先の景色だったんですね」。狂おしいほどの愛おしさを感じながら歩み続けた2人。彼らの視線の先に広がる運命をスクリーンで見届けてほしい。(photo / text:Naoki Kurozu)
2016年09月20日月9ドラマ『好きな人がいること』もついに最終回。早くもスキコトレスになっている人も多いのではないでしょうか? 本企画のラストを飾るのは、吉田鋼太郎さん! ドラマの感想やご自身の恋愛観についてもお話をうかがいました。吉田鋼太郎さん演じる東村了は、全国に何店舗も店を持つ飲食業界のカリスマ的存在。柴崎家の3兄弟と美咲が働くレストランを買収しようと執拗に彼らの前に現れる。いったんは諦めたかにみえたが、夏向の前にまた姿を現し…■今回のドラマは、キラキラとした若い男女のラブストーリーでしたが、大人の男性である吉田さんご自身はどんな風にご覧になりましたか?「今回演じた東村は地位も名誉もお金もあって、若い人たちの邪魔をするという役どころだったんですが、僕自身は若い人たちの恋愛ストーリーが本当にうらやましくて。撮影中はずっと、そっちの中に入りたかったですね。僕も柴崎家の4人目の男として、恋愛に1枚噛ませていただきたかった(笑)。男女が海辺の生活で恋愛を繰り広げるなんてのは、まさに夢のような世界で。僕自身も22歳のころはよく湘南の海に泳ぎに行ってたんですよ。結局は叶わなかったんですが、男3~4人で来ては、女の子と来たいという話はよくしていました。海っていうのは特別な場所で、恋愛的な気分にさせてくれる場所。海辺と恋愛って直結してますよね。主人公の美咲ちゃんとなにか起こることを期待してたんですが、結局なかったですね。例え脅してる台詞だとしても、海辺を2人で歩きたかった(笑)。菜々緒さんとのシーンも一度もなかったので、どこかで火花を散らしつつ恋愛に発展するシーンを期待してたんですが、残念ながらなかったです」 ■そんなキラキラした世界の中で、東村はかなり刺激を与えるような役でしたが、演じてみていかがでしたか?「前半は千秋をどう喝し、後半は夏向をどう喝し、終始どう喝に徹するという役柄。ドキドキするような彼らの恋愛シーンに唯一水を差すというとても大事な役柄だったので、それまで流れていたドラマの空気を一瞬でグッと変えなければならないという難しさはありました。でもそこは思い切りやらせていただこうと最初から決めてましたので、意識して演じてみたつもりです。今回は出演者の平均年齢が若かったので、現場がすごく若者たちの雰囲気で。みんなでわいわい盛り上がっている感じがすごく新鮮で、心の底からうらやましいと思いましたね。入りたいと思っても入れなかったのが残念(笑)。20代の彼らが屈託なくフランクに話をしている姿は、本当に素敵なんですよ。その姿を見ているだけで元気をもらえました」■それぞれタイプのまったく違う柴崎家の3兄弟でしたが、吉田さんご自身はどのタイプが近いですか?「僕は千秋ではないな~。かといって夏向でも冬真でもないんですが。でもどっちかといえば、22歳くらいのころは突っ張って、仕事はちゃんとやってやるぞと、恋愛は二の次だと考えている硬派なところがあったので、夏向に近いのかなとは思いますね。中身はめっちゃ軟派なんですけど(笑)、それをなるべく出さないように、そしらぬクールな感じを装ってました」■恋に不器用な美咲のような女性はいかがですか?「自分の恋人にするなら、ああいう女性がいいですね。自分がやるべきことや目標をきっちり持っていて、まずはそれに向かって邁進している女性。そこから偶発的に生まれてきてしまう恋愛というのも理想的ですよね。仕事にずっと一生懸命だったけど、気がついたらこの人好きかもしれないというような状況は、本人にとってすごくうれしいことだと思うんです。そういう風に生きている女性はすごく魅力的だと思います」■最後に、読者へのメッセージをお願いします!僕もいろいろな恋愛をして、失敗もしてきましたが。そのときそのときで一生懸命でしたね。恋愛をすると、その人のいいところも悪いところも全部知りたくなるわけですよ。そうなるとどうしてもぶつかり合ってしまう。それでも、自分のことも知ってもらうためにも誠心誠意ぶつかっていってほしいですね。ですけど、これだけはやってはいけないっていう最後の一線があると思う。非常に難しいですが、そこの節度のバランスをうまくとりながら、身も心も捧げつくすような。そんな命がけの恋愛をしていってほしいと思います。ドラマのタイトルでもある『好きな人がいること』は、僕にとっては一番大切なこと。好きな人がいなければ仕事にも身が入らないでしょうし、今日あったことを家内に話すことはとても楽しみなんです。トラブルのない人生はありませんから、そこを2人でどう乗り切っていくか、楽しんで経験していけたらと思います」『好きな人がいること』毎週月曜よる9時放送出演:桐谷美玲、山﨑賢人、三浦翔平、野村周平、菜々緒、吉田鋼太郎 他公式ホームページ 公式Twitter 文:Sayaka Seko 撮影:Shun Yokoi(t.h.i.d.a)提供:TOPLOG
2016年09月19日篠山紀信によって撮影されたポスターを見ても、それが宮崎あおいであるとすぐに認識できないひとも多いのではないか?映画本編ではもっと凄まじい。肉体も精神も“ボロボロ”という言葉以外、思い浮かばない状態に追い詰められ、痛みを、哀しみを、苦しさを、そして愛情を体いっぱいで表現し、獣のように泣き叫ぶ。これまでも、様々な作品で多様な役柄を演じ、高い演技力を評価されてきた。それでも、この映画『怒り』では全くの別人と思えるような姿を見せている。「私も最初『なんでこの役が私に来たんだろう?』って思いました」――。なぜ宮崎あおいがこの役を?失礼ともいえるそんな質問に、宮崎さんは「わかります(笑)。正直、脚本を読みながら、『この役なら私じゃなくて…』と別の女優さんのイメージが浮かんできましたし」と穏やかな笑みさえ浮かべてそう語り、「でも…」と静かに言葉を続ける。「その中で、こうして私にこの役のお話をいただけたということは、きっと何か意味があるんだろうって思ったし、李(相日)監督が私を選んでくださったなら、そこに挑戦してみようという気持ちでした」。原作は吉田修一の同名小説。夫婦惨殺事件の犯人が顔を変えて逃亡を続ける中、東京、千葉、沖縄というバラバラの土地に、同時期に3人の素性の知れない男が現れる。隣人や彼らを愛する者たちは、指名手配の似顔絵を見て「彼は殺人犯なのか…?」との疑いを深め、愛情とのはざまで葛藤する。宮崎さんが演じたのは、千葉の港町で父(渡辺謙)と暮らす愛子。家出して上京し、風俗店に流れ着いていたが、身も心も傷ついて、連絡を受けた洋平が彼女を迎えに来る。地元に戻った愛子は、数か月前に流れ者のように町に来て、洋平の下で働き始めた田代(松山ケンイチ)と出会うが…。いままでやってきた役とも、自分自身ともかけ離れている愛子という役を前に、宮崎さんの心は、覚悟と不安の間で揺れていた。「これまでと違うものに飛び込んでいくんだなという気持ちでしたし、不安も大きかったです。本当にそこまでたどり着けるのか?という気持ちもありました」。純粋無垢で、それゆえに愛する者に、見返りを求めるでもなく過剰ともいえる情を注ぎ込み、傷ついていく。そんな愛子を宮崎さんはどのように見ていたのだろうか?「あやうい子ですよね、正直。それは演じているときも感じていたし、いまもそう思います。もっと上手に生きていくことができるんじゃないか?と思う部分はたくさんあります。でもあやういイタい子だけど、本当はいろんなことをわかってるんじゃないかと思う瞬間もあって…。不器用ながらも彼女が掴みかけているものを手放さないで、奪わないでと思うし、どこかで愛おしさのようなものを感じてるんでしょうね…」。登場シーンは洋平が迎えに来た歌舞伎町の風俗店のシーン。傷つき、すっぴんのままで横たわり、それでも父の姿を認めると「お父ちゃん…」と弱々しくも笑みを浮かべる。「化粧してない顔をスクリーンにさらすとか、役のために体重を増やすとか、正直、自分の中ではたいしたことではないんです。それで愛子ちゃんでいられるのなら、どんなことでも厭わない。でも、化粧をしてないから愛子ちゃんになれたかっていうと、そうじゃない。現場のスタッフさん、共演者のみなさんが私の顔を愛子ちゃんに変えていってくれたんだと思います。追い詰められて、追い込まれて…、そういう環境の中で、メイクだけでは変われない人相みたいなものが作られたのかなと」。そう、宮崎さんは、追い詰められ、追い込まれた。誰に?李相日監督に。そして、自分自身に…。「李さんには実際、精神的にも肉体的にもギリギリのところまで追いやられましたよ(苦笑)。でも言葉じゃないんです。無言の圧力と態度(笑)。付き合いの長い妻夫木くん曰く、李さんの中にも前もって確たる答えがあるわけじゃなく、一緒に探す作業をしてるんじゃないかって。だから、監督の感覚の“何か”にハマったものを見せた時にOKが出る。それは追い詰められますよ!(求めているものが)わからないんですから(笑)」だが、苦しいのはそこじゃなかった。むしろ「追い込んでもらっているのに、監督が求める愛子に到底、達してないんじゃないか?そんな自分のふがいなさがしんどかった」という。「追い込まれるのって必然で、愛子になるために通らないといけない道なんですよね。それこそ、これまでの人生で最も長く感じた2週間でしたし『まだ終わんない…』『明日もあるんだ…』って思ってるんですけど、それでも、愛子として生きるにはそれが必要だったんです。今回、初めて気づいたのですが、私、自分で自分を追い込むのは割と好きだけど、他人に追い込まれるのは得意じゃないんだなって(苦笑)」。なんともしんどい性格である。何より強く求められたのは、感情のリミッターを取り除くこと。それが、現れているのが、獣が吠えるかのような慟哭シーン。「監督には『良くも悪くも感情をセーブできてしまうから、それをしないで』と言われました。人間ですから感情をコントロールできてしまうし、おそらく私は、私生活でも他人よりも感情をセーブしがちなんですよね。すごく楽しんでても『大丈夫?楽しくない?』とか心配されますから(笑)。そのブレーキを全て外してアクセルを全開にして…それがきちんとできていたかはわかりませんが、すごいところに連れて行ってもらったなと思います」。意図したこと、意図せざることを含め「これまでと違うこと」はそこかしこにあった。撮影の前日に脚本をじっくりと読み込むということもそう。「普段はセリフを覚えるために軽く読む程度で、内容を頭に入れて、それで終わりでした。でも今回は、どこかに愛子ちゃんのヒントが落ちてるんじゃないか? って。セリフは完全に覚えてるのに行間に愛子ちゃんがいるんじゃないかと、寝る前にずっと読んでました。初めてのことですね」。いつもと違うことが起こる“予感”はあった。一方で、自分から「何かを変えたい」「新たなステージに進みたい」などと願っていたわけではない。ものすごい熱量を傾けたこの作品を経ても、その意識は変わらないし、いたって冷静である。「ないんですよね…。観てくださった方にこれまでと違うと感じていただけるのは嬉しいですが、『いままでと違うことをやりたい』という気持ちはないです。あんまり先のことを考えてもいないですし、女優としてどうなりたいか?1年、2年、10年先の自分がどうなってるか?といったことよりも、いま目の前にあることを一生懸命やって、穏やかな生活が送れればいいなって思ってるので。特別な変化を求めてはいないです」。ここまで凄まじい姿をさらけ出している女優の口から「穏やかな生活を送りたい」という言葉が出てくるのがなんとも面白いが…。ではいま、女優・宮崎あおいが仕事の中で感じているやりがいは?「今回、この作品に参加して改めて思ったのは『映画って素敵だな』ということ。情熱と時間をかけて丁寧にものを作っていくこと――そこに参加できることに幸せを感じています。だからこそ『自分がどう見られたいか?』とか『新たな挑戦を』というよりも、素敵な作品にかかわり、そこで自分にできるお芝居で役に立てればそれが一番だなと思っています」。最後にもうひとつだけ「これまでと違うこと」を。普段、関係者を集めた初号試写で完成した作品を鑑賞しても「監督やスタッフさんとそこでお話をするのが得意じゃない」ため、上映後はすぐに帰ってしまうことが多いという宮崎さん。本作に関しては「監督やスタッフのみなさんと時間を共有したくて」会場に残り、周囲の会話に耳を傾けていたという。「“いまの時代だから”というのは私にはわかりませんが、これだけむき出しの感情を見られる映画はなかなかないと思います。嘘のない、生の感情に触れて、出演している身でありながら、私自身、動悸が止まりませんでした」。(photo / text:Naoki Kurozu)
2016年09月19日渡辺謙が半ばあきれ顔で漏らす。「最初に犯人を決めずにこの小説の連載を始めたって?なんて恐ろしいことをやる人なんだろうって(笑)」。吉田修一は「いま、こうしてお話ししていて、なぜ李相日監督が、渡辺さんもあの役を…と考えたのか、わかってきた気がします」と顔を輝かせる。ペンと肉体。小説と映画。表現の方法や道具は異なれども、2人の男たちは確実に、ひとつの物語を共有し、共鳴した。作家・吉田修一が生み出し、俳優・渡辺謙が己の肉体を駆使して登場人物のひとりを表現した物語『怒り』。小説として誕生し、映画として産み落とされるまで――その“はじまり”と“終わり”に携わった2人が語り合う!――吉田さんが『怒り』の連載を開始されたのは2012年ですね。夫婦惨殺事件の現場に「怒り」という血文字が残されているという、センセーショナルな幕開け。犯人が顔を変えて逃亡を続ける中、東京、千葉、沖縄に、犯人と同じ特徴を有した3人の男が現れ、彼らの周囲の人間、彼らを愛する者たちが「実は自分の一番近くにいるこの男は殺人犯なのか?」という不信と愛情のはざまで葛藤します。そもそも、こうした作品を描こうと思ったのは…。吉田:テーマに関して、なかなかひと言では言い表せませんが…小説って「次はこれを書こう」って思って書けるもんじゃないんですよね。その時の自分が感じてること――その時、“書くべきもの”があるんですよね。それに従って書くしかなくて、その時は“怒り”という言葉を元にした物語を書くということだったんですね。なぜと言われると分からないんですが…。渡辺:啓示というと大げさかもしれないけど、何か降りてくるんですかね?吉田:何とも言い難いんですけど、そんな感じですね。本当に自分ではどうにもできない。その時に“喜び”で何か書こうとしても、全く筆は進まないんです。――いま、連載、刊行から少し時間を置いてみて、ふり返ってみて理由や背景について思い当たることや分かってきたことなどはありますか?吉田:いや、それもないんです。いろんな感想が届いて、こっちがなるほどと思ったりもするけど、本人は「だからこういうことだった」という結論には至らないんです。渡辺:思考というよりも、皮膚から入ってくるようなものだね(笑)?吉田:まさに!抗えないんですよ。ただ、イメージとしての“怒り”でいうと、小説を書いているときは、血文字の真っ赤な“怒り”だったんですよ。でも、完成した映画を見て、渡辺さんが演じた洋平やラストシーンを見ながら、自分の中の“怒り”の文字が少しずつ薄れてきたんですよね。ネガティブな感情としてあった怒りを、この映画はラストへ進む中で、消してくださるような作用があったんじゃないかと感じてます。――渡辺さんはどのようにこの映画『怒り』に携わることに?李相日監督とは『許されざる者』に続いてのタッグですね。渡辺:『許されざる者』が終わったときに、「また何か、形にしたい企画があれば、どんなものでも参加するから」とは伝えてたんですよ。それで「こういう企画を考えてます」って吉田さんの原作を渡されたんです。――では原作から入られたんですね?渡辺:そうです。ただ、どの役かといった説明は全くなくて。読んでいく中で「優馬(※映画では妻夫木聡が演じているゲイの青年)ではないよな…」とは思ったけど(笑)。ただね、読み進めていく中で、僕、ページがめくれなくなっちゃったの。何というか、悪い習性なんだけど、物語に鋭い角度で入り込み過ぎちゃって。そこで悩んじゃうとページが進まないの(苦笑)。その時点で「参加したい」って気持ちは固まってたけど、読みえた時は、正直「李のやつ、また厄介な本を…」って思ったよ(笑)。吉田:すみません(苦笑)。渡辺:東京、千葉、沖縄と3本の話があって、非常に根源的というか、人間としての根っこの部分をえぐられる物語だよね。きちんとこの3本のドラマをうねらせながら、2時間の中で深く掘り下げていくって至難の業だよなぁって。――吉田さんは、執筆されているときは映画になるとは…吉田:書いている最中は、そんなこと考える余裕はなかったですね。でも、書きあがったときに「李さんはこれをどう読むかな?」ってすごく興味がわいてきて、送ったんです。渡辺:馬の前にニンジンをぶら下げたようなもんですよ(笑)。吉田:いま考えると、渡辺さんが、物語の構成を変えて、犯人を追う刑事の役(※映画ではピエール瀧が演じている)を演じるってのも、ありだったかなってふと思ったんですよね。いまとは全く違う映画になるでしょうけど、あの刑事に焦点を当てた物語も面白いだろうなって。でも、李さんは、渡辺さんに洋平をやってもらうと。――洋平は、千葉の漁港組合で働く男で、妻を亡くして娘の愛子(宮崎あおい)と暮らしている男ですね。愛子に幸せになってほしいと願う父親ですが、決してキリッと強いタイプではなく…。吉田:どちらかというと、優柔不断で決められない、弱い男ですよね。渡辺さんが洋平…。『許されざる者』での李さんと渡辺さんの関係性があるからこそなんでしょうが、かなりチャレンジャーだなと(笑)。やっぱり、いまでも不思議なんですよ。いや、逆にお聞きしたい! なんで洋平役を受けてくださったんですか?渡辺:役の大小とかかっこよさではないんですよね。その役を生きて、心を震わせるかってところで、僕はこの物語を読んで、それを深く感じたんです。とはいえ、どこか洋平という男を掴みきれないまま、「これは監督と一緒に悩みながら作っていけばいいのかな?」と走り出したところもあります。――千葉編は洋平と愛子の親子、数か月前に街に現れて洋平の下で働くようになり、愛子と恋仲になる田代(松山ケンイチ)の3人を軸に展開しますね。田代は事件の真犯人なのか?というミステリ部分はもちろん重要ですが、それと同じくらい、洋平の愛子に対する自信の持てなさ――自分の娘は決して幸せになれないんじゃないか?と考えてしまう弱さの部分がドラマとして際立っています。渡辺:それが顕著なのは、事件の真相そのものよりも、愛子が洋平のところに来て泣くところですよね。あそこはつらかったなぁ(苦笑)。田代を疑っている自分がいて、愛子も同じ思いを持っていて、それに苦しんでる彼女を目の前にして…本当に悲しかったです。人間て不思議なもので、結果や真相以上に、その過程で疑いを抱いてしまっている自分に苦しむし、それが弱さなんですよね。――池脇千鶴さん演じる、近所に住む姪(愛子の従姉)が、洋平に「おじさん、本当は『愛子が幸せになれるはずがない』って思ってるんじゃないの?」とグサリと言い放つシーンも強烈です。吉田:素晴らしかったですね、あのシーン。渡辺:刺さりますよ、本当に(苦笑)。自分でも知らず知らずに確信を積み重ねていて、ボタンを掛け違えている。そのずれ、核心をズバッと突かれてしまう――もうね、愕然とするくらい、堪えました(笑)。――先ほど、演じる前は洋平を「掴みきれていなかった」とおっしゃってましたが…渡辺:わかんなかったですよ。僕とは正反対ともいえるタイプ。なぜ決められない?なぜその道を選んでしまう? その中にある苦しみ、弱さに何とか寄り添おうとしてました。そんな時に、吉田さんが千葉に撮影の見学にいらっしゃったんですよ。吉田:見学させていただきました。渡辺:その時に、「洋平には、千葉編の愛子と田代の物語だけでなく、東京編の優馬と直人(綾野剛)の物語、沖縄編の泉(広瀬すず)と辰哉(佐久本宝)、田中(森山未來)の物語、その全てを最後の最後で受け止めてほしいんです」とおっしゃっていただいて。その時ね、いろんなことがはっきりしたし、的が見えてきたんです。これは僕だけの物語じゃないんだ。3つの純愛、血だらけの3つの物語を受け止めなくちゃいけないんだと。吉田:先ほども言いましたが、最初、この洋平という男を優柔不断な弱い男として僕自身もまた捉えて「なぜこの役を渡辺謙が?」と考えていたんですよ。でも違う。「最後に全てを受け止める男」として考えたら、それはやっぱり渡辺さんなんですよね。いまこうして話していて、李さんは最初からそこを見ていたんだ!と感動を覚えています。――吉田さんは、前回、『悪人』でも李監督と組んでますが、小説『悪人』に関して現時点でのご自身の「最高傑作」とおっしゃってました。いま、『怒り』は吉田さんの中でどのような作品に?吉田:最高傑作になったかどうかはともかく、書くときは「『悪人』を超えなきゃ」という意識でしたし、この映画に関しても李さんをはじめ、みなさんが強い思いで参加してくださっているのを感じていました。自分の中では『悪人』を超える作品になったんじゃないかと思っています。渡辺:結局、クリエイトし続けるってことは、上書きしていくということだからね。もちろん評価は読者や観客がすればいいけど、作る側は、作家であれ俳優であれ、常に「これが自分のベスト」という思いで作り続けていかないといけない。――渡辺さんにとっては、吉田さんの作品に出演されるのは初めてでしたが、いま、改めて作家・吉田修一の凄みをどんなところに感じてますか?渡辺:いや、無からこれだけの作品を産み落とす、その苦しみは計り知れないですよ。まして、犯人を決めずに連載を始めたって(笑)。それは、冒険であり、物語と一緒に旅をするわけですよね。普通は、プロットを書いて、箱を決めて、そこにあった物語を書き始めるでしょ? それがいきなり終わりの見えない旅を始めちゃったわけで、「おいおい!」って思いつつ、その勇気には敬服しますよ。(photo / text:Naoki Kurozu)
2016年09月17日モラハラ夫図鑑
体調悪い詐欺夫
義父母がシンドイんです!