Sansan株式会社の綱島芳紀さんは2014年、英国発「FQ JAPAN」の「Mr.イクメンコンテスト」でグランプリを受賞。 忙しい毎日を送っていても “仕事と家庭どちらも大事にする”姿勢が評価されました。今回はそんな綱島さんに、仕事と育児の共通点をテーマにお話をうかがいました。※なお、イ“ケ”メングランプリではなく、イ“ク”メングランプリです!仕事と家庭を両立するとは−−イクメングランプリの受賞から1年以上が経過しましたが、仕事や生活に変化はありましたか?綱島さん(以下、綱島):仕事の面では昨年11月に異動があり、顧客対応の多い業務から社内で仕組みを作る業務に変わりました。でも仕事量は変わっていないので、今までと同様に平日はずっと仕事ですし、帰宅時間も遅いです。家事や育児への関わりかたも以前と変わっていません。−−忙しい中、仕事と家庭を両立するために、何か工夫をしているんですか?綱島:仕事の効率化は常に意識しています。「完璧にやろう」とこだわらず、調整できるところは調整し、重要度が高いことに集中する感じです。一方で、家庭だと最優先は子ども。子どもがやることは予測不可能「待ったなし!」、そこに多くの時間を使います。ただ、そこだけに注目すると「(子どもも含めた)家族全体」のことが疎かになるので、それは良くないと考えています。−−具体的にどうやって対応していますか?綱島:週1回土曜の早朝まだこどもが寝ている時間に、ゆっくり夫婦でコーヒーを飲みながら、大きく2つに分けて我が家でやることの棚卸しをしています。1つは保険やお金、幼稚園のことなど、比較的真面目に考えないといけないこと。2つめは純然たるウォンツリスト。行きたい場所や店、やりたいこと、欲しいもの。そこにいつ行くか、何を食べたいかをわくわくしながら出し合います。−−すごいきっちりされていますよね。そこまできっちりやっていると疲れませんか?綱島:むしろこれのおかげで疲れないんです。小さい子どもは最優先だけど、子どものことに追われて家族としてやりたいことができないとそれはそれで残念。だから、更なる家族のHAPPYのためにリストを作成しているのです。勿論それでも予定通り完璧にそのリストが消化されることはありません。項目が追加されたり期日が変わったり。または項目自体が削除されたり。でも、それでいいと思っています。そういう余裕も持って構えることで本当に必要なことや真の優先順位が見えてくる。そして、少しずつ家族としての想いや方向性も見えてくる気もしています。−−仕事を家に持ち込んでしまうことはありますか?綱島:ありますよ。ただ家族と一緒にいるときは家族のことに集中したいので、土日は5時には起きて、奥さんと子どもが寝ている間に仕事をします。そのときは基本的に次週のプランニングだけに留めて、仕事に没頭しないようにしています。本格的にやりはじめると、あれもこれもとエンドレスになってしまい、2人と過ごす時間が減ってしまうので。−−結構難しいですね。綱島:そうですね、難しいです。これだって完璧にはできませんし、そのまま仕事になってしまうこともあります。でも、そう意識しておくだけでも家族との向き合いかたは違ってくる気がします。奥さんとは同じチームである−−仕事に例えると、夫婦は家庭を運営するチームともいえると思います。家族の中で奥さんはどういった存在ですか?綱島:確かにチームのような面はありますね。といっても役割分担の割合は圧倒的に奥さんのほうが大きいです。というよりも、うちのチームは奥さんなしだったら成り立ちません。平日なんて僕はいないも同然ですから。−−子どもに対して「母親には敵わない」と感じることはありますか?綱島:どんなに頑張っても父親としての僕は、母親としての奥さんに敵いません。子どもって、なんだかんだで『お母さんが一番!』なところがありますし。どう気合を入れても、僕はおっぱい出ないですしね(笑)。そして何より、うちの奥さん、策士なんです。−−奥さんが策士とは、どういうことですか?綱島:幸せなことに、うちの2歳の息子は僕のことが大好きです。休日になると僕にべったりくっつき、そして何でも真似をしようとします。で、僕がちょっとしたことをしただけで「うわー、すごい!かっこいい!!」と連呼します(笑)。息子にとっての僕はまるでスーパーヒーローです。そんな息子はここ数ヶ月でだいぶおしゃべりが上手になってきたので、ある日ふと聞いてみたんです。「おとうさん、そんなにかっこいい?」。それを聞いて、息子が言うんです。「おかあさんがいつもいってるよ。おとうさんはすごいんだって。おかあさんができないことでもぜんぶおとうさんはできるんだよって」−−確かに策士ですね(笑)綱島:僕がいなくても、ことあるごとに奥さんは僕のことを息子に伝えてくれていたんです。例えば僕の仕事のことを教える。お昼になると「おとうさんもごはん食べたかな?」と言う。実際は奥さんが買っておいたプリンでも「これ、おとうさんが買ってくれてたよ。嬉しいね!」と息子に渡す。雷がゴロゴロ鳴って息子が怖がっていたら「おとうさんは雷怖くないんだって。すごいね!」と褒め、おもちゃが壊れて息子がべそかいていると「おとうさんなら直せるよ。かっこいいね!」と。ありがたすぎて参りました。奥さんなしでは僕は息子のスーパーヒーローにはなれなかったわけですから(笑)。そんな最強の策士であるうちの奥さんに敵うわけありませんよね。夫婦はチーム、「負担」「平等」なんて思わないし考えない−−仕事、生活を含めて夫婦2人の負担が平等になるよう、綱島さんは奥さんをどのように手伝っているんですか?綱島:実は、「負担」とか「手伝う」という単語は我が家では殆ど使いません。奥さん曰く「負担とか平等とか、そんなこと思うくらいならそもそも結婚なんてしてない」。特に負担という言葉は、自分の人生の足かせみたいな意味のように感じて苦手らしいです。僕も同じチームの仲間がやっていることを「手伝う」「負担する」というのは何か違和感を覚えます。−−同じチームなんだから、同じ目的のために協力するのが当たり前ということですね。綱島:『わたしがちゃんと料理をするから、あなたは掃除をする係です』みたいな分業制はうちにはありません。それでも明確に存在するルールがひとつだけあります。それは「できなかったことを責めない」。例えば、子どもにかかりきりで掃除ができなかった、食事の用意ができなかった、そういうことを責めない。できなかった理由がありますから。そして、その理由、原因は他ならぬ愛する我が子なんです。−−そのルールができたのは?綱島:息子が誕生してからの約1年間は、僕が帰宅するとしょんぼり落ち込んでいる奥さんの姿をみることが結構ありました。キッチンには調理が中断された食材。リビングには息子の大暴走が想像できる痕跡。奥さんがその後始末をしている途中でまた「待ったなし!」の何かが起きたんだろう。家全体から伝わってくるんです。悲惨な状況の中、息子を抱っこして懸命にあやしている奥さんの姿。近くに頼れる人がいなかった奥さんは、まさしく孤軍奮闘でした。どうすれば家族がHAPPYなのか考えて決めたルールが「できなかったことを責めない」でした。これは、奥さんが自分を責めないということ、そして僕も奥さんを責めない(不満に思わない)というふたつの意味があります。こうやって少しずつ我が家ならではのルールができていって、よりHAPPYになっていくといいなと思っています。−−家族というチームのゴールはどこなのでしょうか。綱島:明確には決めづらいですけど、子どもにちゃんと自立した大人に育って欲しい、ですかね。子どもには子どもの人生がある。自立できるように育って、自分で幸せな人生を歩んでくれればいい。そのためにどうしたらいいのか、何をサポートできるのかを考えています。−−夫婦喧嘩でよく聞くワードとして「子どものため」という言葉がありますが、綱島さんはこのワードを聞いてどう思いますか?綱島:「子どものため」と言う言葉が免罪符のような感じになりがちですが、僕自身はちょっと違います。家族みんなで幸せでいたい、「家族のため」です。自分だけでもないし、子どもだけでもない。奥さんと子ども、家族全員が幸せな状態が自分の幸せなので、そうなれるよう努力したいと常に意識しています。−−最後に、綱島さんの“育児”に関する考えかたを教えてください。綱島:「生かす」ではなく、「育てる」。つまり、極端な話、ただ生存のために食事をさせればいいということじゃない。生きていく力をつけるため、成長を促すことだと考えています。僕じゃなくて子ども自身の人生なので、子ども自身が正しく判断できる、きちんと生活できる。その成長のサポートをすることが育児なのかなと。ライター所感:お会いする前は、「綱島さんが凄いからイクメングランプリに輝いたんだろうな」と思っていました。とても真似なんてできないだろう。でも、お話しを聞いているとそうでもない。「完璧でなくてもいいんです。気持ちや考えかた次第で変わるんです」この言葉は印象的でした。「仕事が」「奥さんが」「子どもが」と不満を嘆くのではなく、家族みんなの幸せを大事にし、どうしたらそれができるのかを考えて前向きに実行していくこと。その想いが通じて、イクメングランプリに輝いたのかもしれませんね。ライター:山口聖子
2016年08月12日「主人公以外すべてCG」という革新的な映像技術を駆使し、躍動感あふれる“生命賛歌”をうたい上げ、全世界で大ヒットを記録中のディズニー映画最新作『ジャングル・ブック』。本作を引っさげ来日したジョン・ファヴロー監督、主演のニール・セディが取材に応じた。ウォルト・ディズニーの遺作である名作アニメを、約50年ぶりにディズニー映画が復活させた本作は、生後間もなくジャングルに置き去りになった人間のモーグリが、森の掟に従いながら、動物たちと成長を遂げる感動アドベンチャーだ。子どもの頃に見たアニメ版に、強い印象を受けたというファヴロー監督は、「大好きな作品に敬意を示しつつ、最新のデジタル技術だという事実を忘れてしまうほどの、感情豊かな作品にしたかった」とふり返る。「実は最新技術を用いて、古典に新たな命を吹き込むという姿勢は、ウォルト・ディズニー本人から受け継いだものなんだ。彼も当時の最先端だったセルアニメで『白雪姫』や『シンデレラ』といった昔話を長編アニメにしたんだからね。優れたストーリーを、最善の手法で表現し伝える。それがウォルトの信念だ。だからこそ『ジャングル・ブック』の原作が誕生してから100年以上の歳月が流れ、再び映画化するのは意義あるチャレンジだった」。そんなファヴロー監督の言葉通り、新たに生まれ変わった『ジャングル・ブック』は、実写映画の定義を刷新するほどの、つまり「映画の未来」を指し示す極めて重要な一作に仕上がった。一方で、娯楽の多様化が進むなか、いまこそ映画そのものの存在価値を見直すタイミングを迎えたことも事実だ。『アイアンマン』も手がけたファヴロー監督でさえ「テレビやネット、動画配信など映画のライバルは増えるばかりだね」と危機感を募らせる。それでも「映画に未来があるかと問われれば、もちろんイエスだ」とファヴロー監督。「映画という世界中で楽しんでもらえるエンターテインメントの作り手として、常に時代を見据えた作品づくりをする責任があるし、技術革新を通して、映画の価値をアップグレードするのも重要だ」と熱く決意表明する。「その意味で実験的かつ野心的な『ジャングル・ブック』は大きな役割を果たしたし、多くの人が心から感動してくれたことは誇りだよ」。忘れてはいけないのが、作品に真の生命力をもたらした主人公モーグリを演じるニール・セディの存在だ。演技経験は皆無ながら、オーディションで約2,000人の中から大抜擢。本人は「とにかく、ハッピー、ハッピー、ハッピーな体験だったよ。確かに超大作だから、最初は腰が引けたけど、ジョンも含めて現場のみんなが僕を支えてくれたから、もう怖がっている場合じゃないって思ったんだ」とモーグリ顔負けのエネルギーあふれる少年だ。現在12歳のニールについて、ファヴロー監督は「特別な何かがあるのは一目瞭然だった。カリスマ性があるし、アニメ版のモーグリを彷彿とさせる面もある。何より俳優として、とても聡明だ」と映画の未来を担う新星スターに太鼓判を押す。当のニールも「お芝居は初めてだったけど、とても楽しかったから、これからも挑戦したいし、バスケや野球、フットボールとか体を動かすことも大好きなんだ」と自らの未来に、大きな瞳を輝かせた。(photo / text:Ryo Uchida)
2016年08月09日太陽に向かって全力で咲き誇り成長するヒマワリのように、夢に向かって真っ直ぐに、そしてフレッシュで眩しい輝きを放ちながら成長している若者たちがいる。次世代を担う男性声優の発掘・育成プロジェクトとして開催されたリアルオーディション「ツキプロMusic Grand Prix 2016」で見事合格した13名の新人声優グループ「ツキクラ」。彼らは、架空の2.5次元芸能事務所「ツキノ芸能プロダクション(ツキプロ)」のリアルなアーティスト候補生として、7月からアニメ放送が始まった大人気シリーズ「ツキウタ。 THE ANIMATION」に登場するキャラクターのように、歌って踊れる声優アーティストを目指し、目下活動中。7月18日にはグループ初の単独ホールイベントを開催し、大成功を収めたばかりだ。今後は、選抜メンバー8名によるユニットのCDデビューに加え、「ツキクラ」として13人全員でのCDデビューや、冬には再び単独でのイベント「TSUKINO CROWD FESTIVAL 2016 WINTER」の開催が決定。フルスロットルで躍進する彼らから一瞬足りとも目が離せない!よそ見厳禁の最旬グループだ。そんな彼らが、いま、全力で追いかけるモノは一体何なのか?ヒマワリの如く輝く彼らにとっての“太陽”とは…?ツキクラメンバーの荒一陽、市川太一、井上雄貴、大島尚起、大海将一郎、小松準弥、西野太盛、筆村栄心、古畑恵介、松岡一平にインタビューを実施した。■花火大会から「アニメ」出演まで…この夏の“挑戦”から見えた等身大のツキクラツキクラとして初めて迎えるこの夏。彼らはどんな風に過ごしているのだろうか?「この夏、挑戦したいこと」をテーマに語ってもらうと、彼らの会話や表情から、等身大の飾らない、少年のようなツキクラの姿が見えてきた。――この夏挑戦したいことは何ですか?井上:メンバーで花火大会に行きたいです!小松:浴衣も着たいね!古畑:俺、出身が静岡県熱海なんですけど、熱海って花火大会が年に何回もあって、夏も10回くらいやってるから、ぜひみんな行きたい!荒:俺、こないだその話を個人的にされた…。古畑:ごめん、みんなにしてる(笑)。――やっぱりツキクラのメンバー皆さんでお出かけしたいですか?市川:そうですね、日程合わせて行きたいですね。小松:海も行きたいですね!市川:僕、海に行ったこと無いんです。肌が弱くて潮風にあたるだけでピリっとしちゃって…日焼けしたら火傷しちゃいますし、僕。西野:俺もそうなるで。赤くなんねん、バーって!市川:え、海行って大丈夫なの?西野:逆に行きまくる!真っ黒になっても真っ白に戻るし。海水って肌にいいらしいけどな。無理やり親に連れて行かれてたよ。市川:じゃあいまからお風呂に塩いれて、肌を慣らしておこうかな(笑)。小松:海繋がりで、サーフィンに行きたいなって。ちょっとだけ経験があるんですけど、体力的に「もういいや」って投げ出してしまったので。今度は諦めずにがっつりやりたいなって。松岡:おれは深海に行きたい…。大海:俺もどっちかっていったら深海がいい。古畑:スキューバーダイビングしようよ!市川:でもスキューバーダイビングって資格いるしね。免許取っても何メートルまでしか潜れないっていうのがあるから。一同:へ~。(感心)市川:僕もダイビングに興味があるんです。周りに資格を持ってる人がいるので、僕も今年は挑戦したいなって思ってるんですよ。荒:ほかには何かな…キャンプも(番組で)したしね。井上:僕いま「キャンプしたい」って思った!古畑:もう一回してもいいよね荒:今度はコテージじゃなくて、本格的にテントを張ってキャンプするとか!大海:僕は、花火大会とか海とか…全部“こみこみ”でお泊りがしたいですね!西野:ユニバ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)とか!?小松:遊園地いいね!古畑:でもお化け屋敷は無理!!市川:絶叫系苦手な人とか班に別れてもいいよね。絶叫苦手な人は?(荒、西野、松岡が挙手)荒:俺、絶叫系はダメ!乗れるけど怖い。泣いちゃうかも…。西野:俺も絶対イカン!あのG(重力)が嫌!“ぐあー”ってなる感じがもう!俺死にそうになってまう、登ってるとき。市川:そんなふうに言われると、逆に乗ってる姿見たくなる(笑)。あとはバンジージャンプもやりたい!小松:だったら思い切ってスカイダイビングだよ!井上:どっちもリスクが怖いよ…。小松:怖がってちゃ何もつかめない!市川:リスクを恐れてたら何もできないんだよ!井上:だったら温泉に行きたいな!筆村:お風呂に一緒に入るのは無理だよ(笑)。ひとりがいい…。――実際に、皆さんでお泊りとかするんですか?小松:仕事ではありますね。お泊まりすると、夜は結構深い話になることが多いんです。キャンプのときもそうだったし。僕は、ツキクラグリーティングツアーのときに福島県いわき市に行ったんですけど、市川くんと2人でホテルに泊まりました。そのときは、一緒に大浴場行ったり、部屋でちょっとお酒を飲みながら深い話もできた。だからやっぱり、“泊まりがけ”でどこか行きたいっていうのはありますね。市川:でも、みんなでがっつり飲みに行く、みたいなことはないね。古畑:レッスン終わりに食事とかにはいくんだけどね!市川:お酒を交えて話したいね。小松:みんなで飲みに行きたいね!一同:ほんとに!古畑:俺は、この夏は仕事でいっぱいにしたいです!仕事で遊ぶ暇が無いくらいになりたい。どんどんみんな個別の仕事も決まってきて、ツキクラとしてもどんどん上を目指せる時期だと思うので。ね!松岡:確かに!ツキクラのメンバーと、ツキクラとは全く別の現場で一緒にお仕事をするっていう経験もしてみたい。メンバーのいつもと違った面が見られると思うので。筆村:ちょうど「ツキウタ。 THEANIMATION」の放送が始まって、僕たちも出演することになっているので、それもこの夏の新たな一歩だなって思います。■メンバーも知らなかった“新たな一面”がちらり…彼らの“原動力”とは?プライベートも仕事も“やりたいこと”がいっぱい!己の夢に突き進んでいるいまが楽しくて仕方がない!と、満開の笑顔で語るメンバーたち。だが、その日々には努力、歓喜、幸福、辛苦、悲涙、焦燥…様々な想いを抱えているのではないか。全ての想いを凌駕して、彼らを突き動かすものとは…彼らを導く“太陽”とは?――みなさんの“原動力”とは何でしょうか?荒:“モテたい”というか…同級生とかに「あ~あいつ頑張ってるな」と思われるのは嬉しくない?「格好良いな」「頑張ってるあいつ!」「活躍してるじゃん!」って思われたい。古畑:素直な言い方になるけど“モテたい”っていうのは確かにありますね。俺も「俳優や芸能人になりたい」と最初に思ったきっかけは、“モテたい”“目立ちたい”という気持ちが大きかったから。ほかのメンバーも同じだと思うけど、やっぱりファンのみなさんの“笑顔”が本当に一番大きなエネルギーになってくれてます。俺が役者を志した理由もそれなので。井上:僕は、僕のことを支えてくださる方への“感謝”の気持ちがあるから。大変な時期があり迷っていたときに、家族やファンの方も然りなんですけど、この業界の中で、僕のことを考えて行動してくださる方がいらっしゃって。そういう方がいてくれたから“いまの僕”がいる、と凄く強く感じているんです。それに、お仕事は自分ひとりでできるものではない。僕たちのお仕事は、作品においてお芝居をすることですが、そのフェーズに至るまでに携わってくれる方、作ってくださる方がいてこその“自分の仕事”。だから、そこへの感謝は絶対に忘れないし、みなさんの気持ちも絶対に考えなきゃいけないと思う。「どうしたらこの作品の人気が上がるかな?どうしたらもっと売れるだろう?」とか「そのために僕ができることは何かな?」と考えられるようになる。それが僕の原動力かな、って思ってます。市川:僕の原動力は“好きであること”“楽しむこと”だと思っています。自分が「楽しい」と思ってないと、お客様に楽しさが伝わらないし、面白いと思っていただけない。だから、最低限、自分が如何にして“いま”を楽しんで、なおかつ、お客様に伝えたいことを伝えつつ、作り手側の意図に沿ってお客様に楽しんでもらえるか…というのを第一に考えてお仕事に取り組んでいます。やはり、厳しい世界なので、僕らがこの業界に居続けるためには、好きという“情熱”がないといけない。荒:僕も、凄く好きでこの仕事をやっているっていうのがありまして。上手くいかないときや不安になることもあるんですけど、実際にお仕事をしてみたり、ステージに立った後とかは、「凄く楽しかったな」「やっぱり俺はこういうことをするのが好きなんだな」って思うことがよくあります。だから、「これからも頑張っていきたい」っていうふうに思えるんだと思います。筆村:僕は小学生くらいから“夢見る男の子”みたいな…ほかの子よりもゲームやアニメが好きで、ずっとゲームやアニメを見ているタイプだったんです。それで、「アニメやゲームの世界のキャラクターに自分がなってみたい」と、“キラキラ”した世界に憧れて、いまこうして頑張れているんです。だから、ツキクラの活動を通して“夢”に近づいているまさにこの瞬間が、凄く原動力になっています。実際に働き始めても、思い描いていた“キラキラ”は消えていません!メルヘンじゃないところなんてないです!小松:僕は、人前に出ることが好きで、自分の身体を使って表現する仕事をしたいと昔から思っていました。とにかく、人生一度切りなので“いろんな人になりたいな”って。いろんな役を演じれば、様々な人の感性やいろんな考え方が入ってきて、そこが面白いし魅力的だと思うんです。それから、僕はこの仕事を通して、小さいころから支えてくれた周りの人たちに“恩返し”がしたいんです。とあるオーディションで賞を取ったときに、周りの皆が喜んでくれたんです。そのときに「ああ、僕がやりたいことをやって活躍する姿を見せることも、恩返しのひとつになるんだ」と気づいた。だから、人前に立つことで「僕はいまこうやって頑張ってるよ」という姿を皆に見せたい。大海:僕も準弥君と同じで、いろんな人に支えられて、いまこうしてここに“大海”がいるので、支えてきてくださった方々に恩返しの思いもありますし、いま応援してくださっているたくさんの方々の思いにも応えたい、という気持ちで頑張っています。西野:自分も、始めはふーくん(古畑)と一緒で、人気者になりたいという気持ちからだったんです。けど、本当にいまはたくさんの人たちに支えてもらったり、応援してもらっている。身近な方から大勢の方まで、いろんな方にお世話になっている。そういう方々の気持ちや、存在そのものが、僕が頑張れる原動力ですかね。…短くまとめちゃったんですけど、でも本当にその思いに尽きるんです。大島:僕の原動力は“憧れ”ですかね!僕はダンスと歌が大好きで、いまはツキクラとして演技を本格的にはじめましたが、ふり返ると小さいときからいろいろ経験してたなって。幼稚園のときは劇でメインの役を、小学生になってからはダンスでセンターポジションをもらったり、音楽の授業で歌うのも楽しかった。本当にダンスと歌と演技が大好きなんです!それ以外をやっている自分っていうのが想像できなくて、生きてる心地がしないんですよ。家に帰っても常に歌ってますし、踊ってないと納得行かない、って感じる…。だから、テレビで見ていた憧れの人に近づきたいって思うんです。もちろん、一生をかけても「このスキル手に入れられないな」って感じる方もいますが、いまは“マイケル・ジャクソンさんさえも超えたい”という思いで頑張ってます!あとは、声優に必要な言語力&トーク力を手に入れるために奮闘してます!松岡:僕の原動力は…“挑戦する気持ち”ですかね。僕は、もともと運動ができたり頭が良いわけではなかったので、「好きだからやりたい」と思っても「どうせできないしな…」とやる前から諦めたり、手を出してもすぐに辞めてしまうことが、昔からいままでずっと続いてきた。そのうちに、好きなこともしなくなって、何が好きなのか自分でもよく分からなくなったんです…。中高生のときはほとんど学校にも行ってなくて…。そんなときに気持ちを明るくしてくれたのが、ラジオやアニメ・ゲームでした。それで、声優という職業に興味を持ち始めたんですが、最初はやっぱり「できるわけないし…」と諦めたし、周りに「やりたいんだ」と言うのも恥ずかしかった。「無理だよ」と言われるに決まってるって思ったんです。だけどある日、家族に軽い気持ちで「(声優)やりたいんだよね、実は」と言ってみたら、「やりたいものがあるんだったら、もっと早く言ってくれればよかったのに!」と、思いがけず受け入れてくれた。親や家族、学校の先生も誰も反対せず、全員が全員、僕の背中を押してくれた。周りの人がこんなにも応援してくれて、しかも自分もやりたいことなのに、やらない理由はないなって。それに、人生で一つくらいは「逃げずにこれやったぞ!」って思えるものが欲しくて。なので、「負けないぞ!挑戦するぞ!」っていうこの気持ちが、いまもずっと原動力だと思います。――これまでもメンバー内でこうしたお話をしたことはあるんですか?小松:今後どうしたらもっと良くなるか?っていう話が結構多いので、「なんでやってるの?」という話は初めて聞いた。市川:ここまでに至る過程とかは、いままで一緒にいたけどあまり話さなかったので、新鮮というか、新たな一面がみれた気がしましたね。■より高みを目指して!ツキクラ13人13色で描く未来予想図それぞれの想いや夢を胸に、真っ直ぐ前進する彼ら。バラバラなようでいて、その結束は固く、想いの方向は同じようだ。まるで“花束”のように、それぞれが全く違う個性で輝きながらもツキクラとして一体感を持ち活動する中で、彼らがこの先に目指すものは?ファン必聴の「ツキクラ大構想(?)」が明かされた。――今後目指すものは何ですか?筆村:7月の七夕のときに短冊にツキクラの願いごとを1枚ずつ書いたんですけど、みんな「大きなステージに立ちたい」とか「みんなでCDデビューをしたい」とか…それぞれが向いている方向は同じだなって感じて。なのでやっぱりツキクラとして大きなステージに立ったり、これから僕たちもキャラクターがついて正式に「ツキノ芸能プロダクション」のタレントになるので、そのときにゲームやアニメで活躍して、ツキクラが大きなコンテンツになっていけたらいいな、と思います。小松:そのためにも、ツキクラとしての強みをこの夏で見つけたい!結構そういう話もしてるんです。13人もいるので、それを活かした強みについて。市川:13人それぞれが、声優・舞台・アイドルと様々な分野で活躍しているメンバーが集まっているので、お互いの進みたいところで活躍して、そこで新たにツキクラにも興味を持ってもらう。そうやって大きく広がっていくコンテンツとして注目してもらいたい。そこが、ほかの2.5次元コンテンツさんとは違うツキクラの強みかな、と思っています。――なるほど。具体的にやりたいことはありますか?井上:ツキクラのファンクラブを作りたい!ファンクラブができることによって、またひとつのグループとして新しい活動ができそうだし、面白いかな、と。出演するテレビ放送がなく、イベントが無い期間でも、会報やメルマガ配信など、ファンクラブ会員限定の何かができたらいいなって!市川:あと、ツキクラでお芝居をもっとやりたい。もちろん今後はキャラクターがついて、ドラマCDなども録ったり。それ以外にも舞台とか、2.5次元というコンテンツを活かして、新たな展開に挑戦してみたいです。松岡:シリアスな舞台がやりたい!一同:へ~!意外!松岡:逆にね!観ている人たちには、ツキクラっていつも仲が良いイメージがあると思うんだけど…ギャップじゃないけど、いつもと違うテンションで「重めの芝居もできるんだぞ!」っていうのを幅として見せられたら「素敵な役者さんだな」って評価にもつながると思う。大島:僕はね、毎週日曜日ツキクラだけの番組がやりたいです!「明日から月曜日だ…憂鬱だわ…」っていう気分を癒せたらいいなって!しかもイッチー(市川)が言ったようにいろんな展開ができると思う。歌とかダンスとか、演技も!それに、ダンスや歌、演技を志す若者たちにも刺激を与えられたら良いよね。そうしたら僕たちもいろんな方向で見てもらえるチャンスが増えるんじゃないかな。夢・情熱・未来について語る彼らの姿は、太陽の光を浴びて力強く咲き誇るヒマワリのように眩しく輝き、もはや太陽そのもののようにさえ感じられた。いまはまだ一人ひとりは小さな花でも、グループとして団結した彼らは花束となり新たな魅力を発揮し、そしていずれはそれぞれが大輪の花となるだろう。エンターテインメントの楽しみ方が多様化している昨今において、多彩な才能が集まったツキクラが、今後どのような煌めきを見せてくれるのか。楽しみで仕方が無い。(text:cinemacafe.net)
2016年08月08日結婚祝いには2人で楽しめる「オーベルジュチケット」、母の日にはエステチケット──。ソウ・エクスペリエンスはシーンに合わせて、大切な人にちょっと“贅沢”で“非日常”な体験を楽しんでもらう「体験型ギフト」を企画・販売しています。同社で2年前に始めた子連れ出勤制度は、子連れで働く社員だけでなく、会社や子どもがいない社員にとっても貴重な体験をもたらしてくれました。社外にも積極的に「子連れ出勤プロジェクト」を発信している同社の取り組みについて、西村琢代表取締役にお話しをうかがいました。「Women Willレポート」バックナンバー第1回:働くママだけじゃない。Google が目指すのは、誰もがHappy に働ける社会自然に始まった子連れ出勤プロジェクト西村さん:子連れ出勤制度は必要に迫られて、自然な流れで始まりました。制度化するきっかけは、約2年前に社員の1人が産休に入ったこと。当時の社員は10人程度。1人抜けてしまうのは会社にとって影響が大きかったんです。そこで、「会社に子どもを連れてきていいので働いてほしい』とお願いしました。本人も快諾してくれて、子どもを連れて出勤してくれることになりました。それまでも自分も含めて、たまに子どもを連れてくる社員がいたので、子連れ出勤が特別という感覚はなかったんです。新たに人員を確保する手間が省け、本人もブランクなく仕事を続けることができました。この経験で子連れ出勤が会社にとっても社員にとっても大きなメリットになると気づけたんです。子連れ出勤が日常化したことで、オフィス環境も徐々に子どもがいることを意識した仕様に変化していきました。現在のオフィスは、奥のスペースが土足厳禁になっていて、仕事をしている親のそばで子どもが裸足で遊べるようになっています。また、テーブルの角を養生するなどして、子どもがケガをしないような配慮もしています。でも、土足厳禁のスペースをつくる以外は特別なことはしていません。ベビーシッターもいないし、子どもが遊ぶおもちゃは親が持参しています。西村琢代表取締役人材不足も職場復帰の壁も解消ちょうど待機児童問題が話題になっていたので、働きたくても働けない女性がたくさんいるんじゃないかなと思いました。フェスブックなどで『子連れで働きませんか』と呼びかけてみたら、すぐに希望者が集まったんです。この時点では、子連れ社員が増えることでどのような問題が起こるのか未知数。でも、とりあえず2ヶ月くらい試しにやってみて、ダメだったらやめてもいいと思っていました。結果的には、色々な課題がでてきましたがどれも解決できるものばかり。子どもの年齢や相性によっては喧嘩をしてしまう。だったらシフトを組んだほうがいい。1歳くらいまでは意外と手がかからないからずっと見ていなくても大丈夫など。さらに子連れ出勤をしやすい環境が整っていったんです。産休をフルに取っても問題ありません。もちろん、会社としては復帰が早ければコストも抑えられますが、働く側もブランクが長くなると復職への壁が高く感じるようで、なるべく早く復帰したいという社員もいます。オフィスの奥側は土足スペース。一角には玩具が集まり、「挨拶をしよう」など子どもたちに向けたルールが張り出されていました。子どもが職場にいることで、子どもがいない社員の意識が変化子どもがいない人にとっては子どもって未知の生き物ですよね。基本的に自分の子どもは親が面倒をみていますが、他の社員が相手をしてサポートすることもあります。そうやって日常的に子どもに触れ合っていると、育児をしたことがなくても子どもってこういうものだっていうことが分かってくるんです。例えば、0歳児はお腹が空いたとき以外は、抱っこするか寝かしておけば大丈夫なので意外と楽だなとか。2歳くらいになると少し自己主張がでてきて大変な時期もあるけど、3歳になると1人で遊べるようになる。そういった子どもの成長過程をそばで見て、それほど仕事の邪魔にもならないということが分かると自然に『子どもっていいな』って思うようになるみたいです。他の社員の子どもに対する意識が良い方向に変化したことは大きなメリットでした。排除せず、受け入れる環境をつくることも会社のミッション子連れ出勤が待機児童問題の解決手段の1つになれば、会社にとっては人材を失うリスクを避けることができます。働きたいのに働けないという辛い思いを抱える人を1人でも減らすためにも、こういう選択肢が増えてほしいです。実は子連れ出勤は雇用以外にもメリットがありました。子連れ出勤社員の「こんなのがあったらいいな」という声を反映させて出産祝いの体験ギフトが生まれました。弊社ではモノのギフトは基本的に扱いませんが、知育や育児も体験の一部として知育玩具の取り扱いも始めました。出産祝いはプレゼントがかぶりやすいのですが、贈られたかたが自分で選べるのでとても喜んでいただけているようです。子連れ出勤のおかげで、出産祝いに最適な体験ギフトが生まれました。「1人でも多くの人に、より楽しい経験をお届けする」ことをミッションにしている会社がギスギスしていたらおかしい。本人が結果をだせるのであれば細かいことにはこだわらず寛容でありたいと思います。子どもに限らず、国や人種が違っても、最初から排除せずに受け入れることが必要な時代になってくると思います。会社にとって子どもは非日常な存在ですが、毎日いると慣れるし、業務に支障がでることはほとんどありません。子どもが床に寝っ転がるなら土足厳禁スペースを作ればいいし、課題に対する解決案を実践すればいいんです。何より子どもがいるとなごむので職場の雰囲気も良くなるんです。子どもたちと大人が自然に溶け込むオフィスライター所感:働く女性が悩むのは、職場を休むことで発生するブランク。ソウ・エクスペリエンスの中には育児制度がないために転職、子連れで出勤をしている女性社員もいらっしゃいました。育児休暇制度もあるそうですが、出産後3ヶ月で職場復帰をする女性社員もいるそうです。特別な設備がなくてもちょっとした工夫で子連れ出勤が実現できることも意外でしたが、子どもを抱っこしながらパソコンに向かっている女性社員、オフィスの中で楽しそうに遊んでいる子どもたちが自然にオフィスに溶け込んでいることが印象的でした。同社では月に一度、子連れ出勤オフィス見学会を開催して、子連れ出勤制度を広める活動をしているそうですが、子連れ出勤が常識になることで、子どもが小さい時期に親が働くことに対する偏見もなくなることを願っています。ソウ・エクスペリエンス株式会社SOW EXPERIENCE BLOG「Women Willレポート」バックナンバー第1回:働くママだけじゃない。Google が目指すのは、誰もがHappy に働ける社会ライター:柏木 真由子
2016年08月08日おもちゃのウッディやネズミのレミー、モンスターのサリーにロボットのウォーリーなど、これまでに様々な種類の魅力的なキャラクターを生み出してきたディズニー/ピクサー。そのどれもがユーモアと個性に溢れ、主人公のキャラクターでなくても、ファンの心を掴む魅力を備えているのが、同スタジオの何よりの手腕と言えるだろう。アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞し、ピクサーの数々の名作の中で日本における興行収入No.1の記録を持つ『ファインディング・ニモ』。主人公として描かれるクマノミのマーリンをはじめ、はぐれた息子のクマノミのニモ、アオウミガメのクラッシュ、マダラトビエイのエイ先生など、本作では海の中を舞台に、様々なキャラクターが登場する。待望の続編として公開中『ファインディング・ドリー』では、主人公であるナンヨウハギのドリーをはじめとするお馴染みのキャラクターに加え、ジンベエザメのデスティニー、シロイルカのベイリーなど、海の生物を保護し、治療して海に帰す海洋生物研究所を舞台に様々な生き物たちが登場する。そして、本作で何より新たな存在感を発揮するのは、ドリーが両親の居場所を探しに冒険を繰り広げる海洋生物研究所で出会う新キャラクター、ミズダコのハンクだ。シネマカフェが実施したピクサー現地取材レポート第4弾では、本作で大活躍するハンクが生まれるまでの過程を、キャラクター・アートディレクターを務めたジェイソン・ディーマーと、スーパーバイジング・アニメーターのマイケル・ストッカーのインタビューを通して紹介する。両親の居場所を探して海洋生物研究所までたどり着いたドリーだが、ひょんなことで研究所のスタッフによって捕まえられてしまい、クリーブランドの水族館行きのタグを付けられてしまう。研究所のバックヤードの水槽の中で戸惑うドリー。すると、壁にかかった猫のポスターの目がぎょろりと動き出す…ポスターに擬態して身を潜めていた、ミズダコのハンクの登場だ。「私はピクサーに勤めて18年になりますが、ハンクのデザインは私がこれまでに関わった中で最も誇りに思えるものであると同時に、最も大変な仕事でした」。本作でハンクのキャラクター・アートディレクターを務めたジェイソン・ディーマーはそう語る。フリーランスの編集イラストレーターとして活躍していた彼は、ピクサーに入社後、『モンスターズ・インク』のスケッチアーティストとしてそのキャリアをスタート。その後、『ファインディング・ニモ』『レミーのおいしいレストラン』『ウォーリー』など多くの作品でキャラクターデザインを担当し、『モンスターズ・ユニバーシティ』ではキャラクター・アートディレクターを手掛け、監督とともに、少数のピクサーアーティストからなるチームを率いて、キャラクターデザインを作り上げる役割を担っている。一方、スーパーバイジング・アニメーターとして、ハンクの誕生に大きく寄与したマイケル・ストッカーは、アニメーション業界に入る前は、広告代理店やデザイン会社でのイラストレーター、ボーイング社向けのコンセプト画を手掛けるなど、様々な企業で仕事をこなしてきたという。1992年にディズニーにて『ライオン・キング』の動画マンの研修としての仕事を始め、その後ワーナーブラザース・アニメーションの一部となるターナー&アソシエイツで最初のアニメーションの仕事を手掛けた。その後、ディズニー・アニメーション・スタジオにて10年間勤務し、『ヘラクレス』『ターザン』『ファンタジア2000』などの作品への参加を経て、2002年にピクサーに入社。『Mr. インクレディブル』『カーズ』『レミーのおいしいレストラン』『カールじいさんの空飛ぶ家』にアニメーターとして参加し、『トイ・ストーリー3』『モンスターズ・ユニバーシティ』ではディレクティング・アニメーターを務めている。「キャラクターをデザインする際にいつも最初にすることは、その生き物についてできる限り知るということです」。そうジェイソンが語るように、ピクサーは入念なリサーチを経てから作品制作に入ることで知られている。今回もハンクの制作にあたって、サンフランシスコのモントレーベイ水術館の協力のもと、タコの生態についてあらゆる研究を実施したという。「デザインのインスピレーションとなるビジュアル面での情報を得るようにしています。タコを調べていく中で最も惹きつけられたのは、触手の裏側の白い部分と、マットなグレーの柔らかく丸い部分ですね。そこに魅力を感じたので、こだわりました」。劇中でハンクは、様々な姿に擬態することで人間の目をかいくぐり、ドリーとともに冒険を続けていく。周囲にカモフラージュするハンクの姿はなんともユーモラスであり、いつ見つかるか分からないというハラハラ感が観客を楽しませてくれるのだが、これが映画的な演出というわけではなく、あくまでタコの実際の生態に基づいているというから驚きだ。「ミミック(擬態)・オクトパスは、肌の色を変えられるだけでなく、テクスチャーさえも変えられるのです。この映像のどこにタコがいるかわかりますか?」リサーチにあたって使用されたという実際のタコの映像が披露され、取材陣にジェイソンが語りかける。砂や岩の表面に見事に擬態したタコは、動き出すまではそこにいるとは気づかないほどであり、取材陣からはおもわず声が漏れる。「何度見ても飽きることがありません。信じられないですよね」と笑みを浮かべるジェイソン。「タコが小さな割れ目からでも逃げられるという話を聞いたことがあるでしょう?」とジェイソンは続ける。「タコは小さな瓶の中にも入れるし、自動販売機の後ろにも隠れられる。それからぺったんこになれるのも魅力的でした。パンケーキのように平たくなるかと思えば、真っ直ぐ伸びて細長くもなれます」。これらのタコの生態へのつぶさな観察を経て、ハンクというキャラクターをかたち作るための具体的なアイデアが提案されていく。「そこで、彼は究極の脱出名人だというアイデアを提案したのです。劇中で実際に披露される、ハンクが観葉植物に成りすますというアイデアも、このときに提案しました」。さらに、これらのアクション要素だけでなく、ハンクの口の位置や身体の表面のテクスチャー、色など、キャラクター化するにあたっての細部に至るまでの設計も行われる。なお、リアリティーのある表現をどこまでも突き詰めるというわけではなく、あくまでキャラクターとして仕上げるため、実物のタコの特徴の中からどの要素をデザインするかについても議論が行われるという。「タコは気持ち悪いキャラクターになってしまう部分もたくさん持っていますからね(笑)」とジェイソン。次に、デザインされたキャラクターを実際にアニメーションとして動かしていく舵取りをするのが、アニメーション・スーパーバイザーのマイケルだ。「アンドリューがこのデザイン画をボードに貼り付けたときに、これはものすごい挑戦でエキサイティングだと思いました。それと同時に、とても手強い課題だということも分かっていました」。ジェイソンと同様に、まずはタコをアニメーションとして描くことのやりがいと難しさについて語り始めるマイケル。「とにかく、我々はタコの吸盤がどのように動いているのかを分解していかなければなりませんでした。タコは、それぞれの触手を別々に動かせるだけでなく、吸盤ひとつひとつもバラバラに動かすことができ、意図的にコントロールすることができます。これには驚きますね。その動きをアニメーションで真似ることは、ほんとうに難しい作業です」。タコの動きの入念な観察を経て、スタッフは実際にこの動きをアニメーション化するために手を動かし始める。幾つかのテスト映像の検証を経て、自然な動きが追求されていく。「もし何かアイデアがあったら、そのアイデアをなるべく早くやってみなければなりません。もし2Dでやるなら、すぐに描くことができますが、3Dの場合、このようなモデルを作る際、素早くできるわけがありません。ひとつのポーズを作るのに1時間かかることもあります」。ここで、幾つかテスト段階の映像が取材陣に披露された。シンプルな触手の動きが、少しずつスムーズで伸びのある動きへとブラッシュアップされていく様が段階的に示され、私たち観客が楽しむことができるキャラクターたちの生き生きとした仕草が、いかに多くの行程を経た上で作成されているのかが分かる。そのほかにも、目と眉の動きによって作られる表情や、実際にアニメーターとともに作成したシークエンスの中でのハンクの動きなど、様々なテスト映像が披露される。ハンクは通常のタコよりも1本足が少ない“セクトパス”という設定だが、彼が登場する全てのシーンにおいて7本の触手の動きがアニメーションとしてコントロールされているかと思うと、途方もない思いがする。続けて、キャラクターのコンセプトアートに基づいたアニメーションを作るにあたり、コンピューター上のパペット(人形)を使用してキャラクターの演技を作り出す、キャラクター・スーパーバイザーの仕事について、マイケルが解説した。「自然な動きをコンピューターで作るのはとても難しいのです。我々は、何を作ればいいのかということから考えなければなりません」。この段階でストーリーはまだなくとも、チームのスタッフはキャラクターに要請されるであろう動きを想像しながら、アニメーターたちがその動きを作ることを可能にする正しい装置を設計していく。コンピューター上のインタフェースを設計し、実際に使用したアニメーターのフィードバックを加えながら改良を加えていくというその過程には、科学的であり数学的なアプローチが施される。触手の複雑な動きのほかにも、ハンクの肌の色のテクスチャーをコントロールするシステムなど、コンピューターによるアニメーション表現の洗練化が行われていく。そして、アニメーションの最終的なブラッシュアップの作業をシミュレーションチームが担っていく。ここでは、ハンクの吸盤が地面と接触した際に生じる細かな動きなどが、シミュレーション・ツールよって再現されていく。「ハンクには全部で350個の吸盤があります。ですからこの問題を解決するために、全部を手描きで作業するのは難しいですね。そこで、より良い方法を探していました」。チームのスタッフは個体力学の技術を利用したという特別なシミュレーターを作成し、くっつく、剥がれる、つぶれる、といったひとつひとつの吸盤の動きを実際の物理的な動きとして再現することで、自然な動きをするための加工をアニメーションに施していく。この行程を経ることで、ハンクはより柔らかく肉付きのよいものになり、アニメーターたちが仕上げたハンクの動きがより緩やかで親しみやすいものに仕上げられ、私たちがディズニー/ピクサーのキャラクターたちに感じる、ユーモラスで楽しい印象が生まれるのだ。「最初に取り掛かってから、ここまでで約1年かかっています」。テスト映像とともに話を伺った時間はほんの10数分だったが、その裏にはとてつもない時間と労力が費やされていると思うと、出来上がった数秒のシーンに感じられる重みが随分と変わってくる。実際にハンクを生み出したスタッフの数は、約50人にも上ったという。「あらゆる人たちが、それぞれ違うタイミングで貢献している。テストだったり、表面のペイントだったり、ソフトウェアを描くことだったりね」。「タコの触手の動きには、いろいろなものが混じっています。とても素晴らしく、美しい混沌です」。そう語るマイケルの言葉には、テクノロジーによってさまざまな自然を描写してきたピクサーが、何より自然に対する尊敬と畏怖の念を抱きながらアニメーションという表現に向き合ってきたことがわかる。「自然のものには、私が紙とペンを持って想像して書くよりも、ずっと興味深い部分があります」とジェイソンが語るように、ディズニー/ピクサーのアニメーションは、自然が持つ美しさへの驚きと発見の喜びに満ち溢れている。ピクサーが新たに生み出したハンクの活躍を、ぜひ劇場で目撃して欲しい。『ファインディング・ドリー』は全国にて公開中。協力:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン(text:cinemacafe.net)■関連作品:ファインディング・ドリー(原題)
2016年08月07日フランスでも“ゆとり”世代が現れた?今年2月、セザール賞授賞式の中継で、新人賞にあたる有望男優賞に輝いたロッド・パラドの受賞スピーチを聞いた第一印象だ。初めての映画出演で、生涯一度しか機会のない賞を受賞した喜びを、うれし涙をこらえて声をつまらせながら、「すっげえ感謝します」みたいな口調で語る。子どもの頃から賢そうな話し方を心得ている国の人にはめずらしい、素直な感情のほとばしりを会場は温かく見守った。これまでのセザールで見たことのない新鮮な光景だった。『太陽のめざめ』で彼が演じたのは非行少年、マロニー。奔放で無責任な母親のもとで愛に餓えて育ち、暴行や無免許運転などトラブルを起こしてばかりの少年が裁判所の判事と保護司の尽力を受け、本当の愛を見つけて更生の道を歩んでいく。寂しさを暴力という形でしか表現できず、荒れ狂う少年を全力で演じたロッドは、アラン・ドロンやリヴァー・フェニックスの再来と評される期待の新人。6月にフランス映画祭2016での作品上映に合わせて来日した。リセ在学中、休み時間にたまたまオーディション担当のスタッフに勧められたのをきっかけに、その後30回近いテストを重ねて役を勝ち取った。だが、最初は軽い気持ちで受けたのかというと、「最初から本気だった。受かるわけないって気もしていたけど、やれるだけのことはやろうと、全力で挑戦した」と言う。もともと演技に興味はあったが、経験はゼロ。「学校の劇に出たこともなかった。映画は普通に好きだったけど、俳優になるなんて想像もしてなかった。ただ小さい頃から、みんなを笑わせるのは得意だったんだ。人を楽しませることができるのは自覚していたけど、仕事にするなんて考えたこともなかった」。マロニーを幼い頃から知り、更生させようと寄り添う判事を演じるのはカトリーヌ・ドヌーヴ。そこにいるだけで凄まじいスター・オーラを放つ大女優に気後れはしなかったのか。「全然しなかった。撮影チーム全体が家族みたいな雰囲気だったから」とケロッとしているが、それにしても相手はドヌーヴ。「そうなんだけど」と笑いながら、「すぐに打ち解けられたよ」と言う。最初の対面はカメラテストのときだった。「『あなたいくつ?』と聞かれたので、『18歳です』と答えて、『あなたは?』と返したら、ちゃんと教えてくれたよ。お母さんみたいな雰囲気でいてくれたから、緊張せずにいられたんだと思う」。保護司を演じるのは、本作でセザール賞最優秀助演男優賞を受賞したブノワ・マジメル。「彼とはオーディションのときから会っていたし、友だちみたいな関係。というか本当に友だちになって、いまでも時々会ってるよ」。演技未経験者が映画の主演に抜擢されるのは、素のままでカメラの前に立つことを求められての場合が多い。だが、ロッドは最初から“演じる”ことを求められ、それに見事応えている。そこに到るまでは厳しい道のりだった。まずは2か月半、演技コーチと一緒に脚本を読み込んだ。「ストーリーについて、マロニーの感情について。どうしてそうなるのか?を徹底的に考えて、台詞も頭に叩き込んだ。撮影に入ってからは、エマニュエル・ベルコ監督の望むものを演じられるように全力で食らいついていった」。マロニーについては「愛情深い少年。特に母親に対して」」と分析する。「同時に、愛の欠如に苦しんでいて、だから激しい怒りにかられているんだ」。ロッドはパリ郊外のサン・ドゥニに生まれ育った。やや治安の悪い地域もあり、「マロニーみたいな少年たちは僕の住んでいる界隈にもいる」と言う。ロケで訪れたリヨンの少年院では強烈な体験もした。「本物の施設だから、撮影時にも実際に収容されている少年たちがいて、罵詈雑言を浴びたこともあった。『お前は映画で再現してるだけで、俺らにとってはこれが現実だから』と言われたよ。でも、その経験も糧になった」。暴力的な行動に潜む、怒りだけではない感情。不器用な愛。これだけ複雑な役を迫真の演技で表現しきった。そこには、彼と同じように十代で映画主演デビューを飾ったブノワ・マジメルとの、劇中の関係と重なる交流があった。「撮影中もいろいろアドバイスしてくれた。『集中して、マロニーになり切って、しっかり聴け』って。演じるとき、共演者の言葉を聴くことはとても重要なんだ。台詞を忘れたとしても、相手の言葉に耳を傾けていれば、何を言うべきかが分かる。すると、作られたものじゃなくて自然な流れができて、より真実味が増すんだ」。そして「好きな言葉があるんだ」とスマートフォンを取り出す。「アルバン・ルノワールという俳優のSNSの自己紹介文で“自分じゃない者として生きたい男”とあるんだけど。俳優ってそういうものだと僕は思う」。仕事の本質を理解し、的確なアドバイスをすぐに実践する順応性と、プレッシャーに動じない度胸も備わっている。俳優は天職なのかも、と伝えると「ありがとう」と照れ笑いをしながら、「この仕事、本当に好きなんだ」と言う。「ただ、もて囃されるのはちょっと苦手かな。レッドカーペットでキャーキャー言われて、写真を撮られたりするのは、本当はストレスなんだ。自分のことは、その辺を歩いてる普通の人間だと思ってるから、急にこんなことになっちゃって…」。スターになっても家族は以前と変わらずに接してくれるが、「友だちは2人しかいないことが分かった」と言う。「いや、僕には友だちはいない。友だちっていうのはあいさつするだけの関係で、毎日一緒にいるのが親友。僕には2人いる。彼らとの関係も全然変わらない。彼らにとって僕はただのロッドなんだ。映画祭とか華やかな場所にも行くけど、僕は自分が何者なのか、どこから来ているのかはちゃんと分かってる。それが大切なことだと思う」。素顔のロッドは人懐こく、初めて会った相手にも友だちのように接する。本人も自認しているが、自然と人を喜ばせることのできる真のエンターテイナーであり、警戒心むき出しのマロニーとはかなり違う。「自分でも全然似てないと思う。マロニーと近い点があるとすれば、ちょっと神経質なところかな。気が短いんだ。僕はとても社交的だけど、一方で些細なことですぐイライラする。たとえば、昨日このホテルに着いたとき、これが…」と窓辺のブラインドを指差す。「部屋に着いたら、カーテンが閉まっていて、それは簡単に開けられたけど、ブラインドが全然上がらなくて。1人でイラついてたよ」と身ぶりをまじえて再現する。このサービス精神はまさにマロニーと正反対。「そう。全然違う。でも愛については似ているかな。本当の共通点は…愛情深いところなんじゃないかな」。(text:Yuki Tominaga)
2016年08月05日初めて顔を合わせたのは、イケメンブームの先駆けとも言える2007年のドラマ「花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~」。生田斗真は当時22歳だった。「若かったなぁ…って思います(笑)。同世代の役者さんがワーッと集まるような現場は僕も初めてですごく珍しい経験でした」。そんな言葉で9年前の現場をふり返る。小栗旬、堀北真希、鈴木亮平、溝端淳平…現在も第一線で活躍する俳優たちがズラリと顔をそろえたが、その中にデビューして1年足らずの岡田将生もいた。「キレイな顔をした男の子がフラフラ現場にいまして(笑)。まだ“俳優”って感じでもなくて、かわいかったですねぇ…」と懐かしそうに微笑む。まだ17歳だった岡田さんも当時のことはよく覚えているという。「本当に最初の頃の仕事で、深く考えてなくて『カッコいい人たちがたくさんいるなぁ…』って(笑)。そんな中で生田さんは、すごく面倒を見てくださって、いろいろお話を聞いていただいたりもしました」。それから9年。共にいくつもの映画、ドラマで主演を務め、押しも押されもせぬ人気俳優となった2人が、映画で再共演を果たした。清水玲子の人気同名コミックを映画化した『秘密 THE TOP SECRET』で彼らが挑んだのは、人間の脳内に残された記憶!『るろうに剣心』シリーズで知られる大友啓史監督の下、2人はこの難題にどう臨んだのか――?被害者の脳内に残された記憶を取り出し映像化するという最先端の科学技術を使い、難事件を解明する“MRI捜査”。警察庁の特殊脳内捜査チーム【第九】が、この捜査を用いてある事件の真相に迫るさまを描き出す。生田さんが演じたのは第九の室長で天才的な頭脳を誇るが、過去にMRI捜査によって、親友を失い心に傷を持つ男・薪剛(まき つよし)。最初に脚本を読んだ時点で、決して簡単な仕事ではないだろうことを自覚していた。「一番のカギは、死者の見た記憶が映像化されるというところ。これをどう表現するのか?その出来具合が作品の良し悪しを左右することになりそうだなと思いましたが、ひとの記憶ですからね…。(あくまで脳内の記憶であるため)ある時には人間が悪魔のようにも見えるし、ある時には街が地獄のようにも見える。そういうことを考えるとドッと疲れましたね(苦笑)」。一筋縄ではいかないだろうという思いは、新人捜査官の青木を演じた岡田さんの中にもあった。「すごい話だな…と思いましたが、抱えなくてはいけないことがたくさんありました。大友監督の現場に関しては、かねがねウワサを聞いてはいたので…(笑)、覚悟を決めて臨まないといけないなと思っていました」。撮影に入る前には、脳や記憶に関する講義を受けるなど、知識の面でも“武装”して臨んだという。俳優だけではなく、スタッフも詳しくリサーチを行い、その結果に沿った形で物語やセットなどを構築していく。そんな現場の様子に生田さんは感動を覚えたという。「大友監督から、週に何回か“『秘密』通信”が届くんですよ(笑)。脳や人間の体の構造だったり、第九という組織、それぞれの役のバックグラウンドが書かれていて…。そこまでやっていただくと、逆にこっちも追い込まれます(苦笑)。実際、原作では死者と機械をつなげて映像を映し出すという形だったんですが、スタッフが調べると、どうやらそれは難しいらしく、死者と生きている人間を通して機械に記憶の映像を映し出すってやり方にたどり着いたそうです。そういう部分までリサーチする姿勢に感動しましたし、しっかりみなさんの期待に応えなきゃ!という思いでした」。岡田さんも、撮影前の段階から大友監督やスタッフの熱意に圧倒された。「クランクイン前から、大友監督が思いついたことを連絡してくださるんですよ。一度、『直接会って話したい』と連絡があって、そのときはちょうど僕は仕事で北海道にいたのですが『北海道まで行くから!』って(笑)。『いやいや、大丈夫です。こっちが戻ります』となったのですが。具体的な役づくりに関しても『体を作ってくれ!』と言われて、柔道に通うことになったり、熱量がどんどん上がっていく感じでした」。だが、現場に一度、入ってしまえば、大友監督は「好きなようにやってくれ」と役者の裁量に任せて自由にやらせ、それをカメラに収めていく。だがもちろん、妥協はない。何度でも何度でも同じシーンを繰り返すし、ギリギリを俳優に求め続ける。岡田さんが笑いながら明かす。「本番中に、監督の声がカメラマンさんのイヤホンから漏れて聞こえてくるんですよ。『もっといけんだろっ!』って(笑)。クランクアップのときは、(夜通しの撮影で)次の日の昼まで撮影だったんですけど、血まみれで(笑)。終わってシャワー浴びながら『おれ、何やってるんだ?』って(笑)」。生田さんも「思い返せば思い返すほど、しんどい撮影だったなぁ…」と苦笑まじりにふり返る。「楽しいこともあったけど、心地のよい疲れで満たされてましたね。終わった瞬間は肩の荷が下りたというか、全身の力がふわっと抜けるような感じで『終わったぁ…』って(笑)」。昨今、何かと規制が厳しい中で、チャレンジにあふれた作品となった。映画だからこそ許される、先鋭的な表現や描写が用いられ、その中で2人は躍動している。岡田さんは3か月もの撮影で捜査官・青木として生きられたことの幸せを噛みしめる。「ひとつの作品に集中して3か月もやらせていただけたのは贅沢な時間だったなと思います。精神的に追い込まれていく役ということもあって、3か月でみるみる痩せてしまったんです。スタッフさんからは『大友組ではよくあることです』って言われました(笑)。でも、そうやって負荷が掛かっているくらいの方がいいのかなとも思っていました。他人の脳内を見ることに魅了されていく青木を演じる上では、いい方向につながったんじゃないかと思います」。生田さんも近年、映画で次々とエッジの効いた役柄をこなしているが、映画ならではの面白さ、やりがいについてこう語る。「やはり映画というのは、お客さんがわざわざお金を払って、スケジュールを合わせて観に来るというのが大前提としてあり、それは僕にとってもすごく大きなことだと捉えています。昔から、演劇の世界で頑張ってきた人間として『あいつの作品なら観に行きたい』と思わせたいという思いがあるんですよね。そういう意味で、映画という場所にも勝負のしがいを感じています。大きなスクリーン、すごくいい音で作品の世界にどっぷりと浸かってもらえる環境で、自分がその世界にポンッと入って生きることができることに生きがいを感じますね。もちろん、以前とは違って映画にもいろんな規制もあるけど、その中でこそ生まれる表現があると思う。あきらめずにそれを求めて戦っていきたいし、この作品はそういう意味で攻めることができたかなと思っています」。9年ぶりの共演となったが、実はプライベートでは「一緒に旅行に行ったりする」(生田さん)くらい親しい仲で、だからこそお互いについて話すのは「恥ずかしい(笑)」(岡田さん)。それでも、生田さんは俳優として岡田さんと向き合い、喜びを感じたと嬉しそうに語ってくれた。「やはり、圧倒的に経験を重ね続けて、たくましい背中になったなと感じました。あれ(9年前の『イケメン♂パラダイス』)から互いに頑張ってきて、こうやってまた会えたことに特別な思いがあります」。では後輩・岡田さんが知る、生田さんの“秘密”は?「遊びの達人ですね。普段、忙しいからというのもあるんでしょうが、その日は遊ぶと決めたら全力で遊びますね。僕は意外とのんびりしたい派なんですけど(笑)、斗真くんは細かく時間を決めて、がっちり遊ぶ。『斗真くん、いま楽しいんだろうな』って見ています(笑)。素敵ですよ」。(text:Naoki Kurozu)
2016年08月03日「どうしてもやりたい!」――。『ゴジラ』新作製作の話を聞いたとき、石原さとみは出演を熱望した。だからこそ、正式にオファーが来たときは喜びに打ち震えた。そして、届いた『シン・ゴジラ』の脚本を読んで、その中身の面白さに圧倒された。と同時に、自身の役柄の難しさに絶望と孤独の淵に突き落とされ、「それまでの喜びが一切、吹っ飛んだ」という。ここ数年、舞台、ドラマ、そして映画と次々と挑戦的、挑発的な役柄を引き受け、圧倒的な存在感を示し、見る者を魅了してきた。そんな彼女にとって、30代を目前に控えた20代最後の一大チャレンジと言えるのが、この『シン・ゴジラ』である。完全新作として製作された本作。人々が“ゴジラ”なる存在を全く認識していない現代社会に、突然、まるで自然災厄のように、未知なる怪獣ゴジラが海から現れ、東京に上陸する。主人公の内閣官房副長官の矢口(長谷川博己)をはじめ、この未曽有の危機において、国民・国家を守るべく対応、決断を迫られる政府や各官庁の者たちのドラマが展開する。石原さんが演じたのは、日本人の祖母を持つ日系アメリカ人で、未来の大統領候補とも目される米国国務省の官僚カヨコ・アン・パタースン。独自のルートでゴジラの存在を認識し、管轄下に置こうとする米国と日本を繋ぐ存在でもある。「この物語の中でカヨコという登場人物がどんな立ち位置か、それは映画が完成したいまでも考えさせられます。彼女に課された“役割”や“立場”というのはすごく考えたし、現場に入る前は不安と怖さでいっぱいでした。正直、脚本を読んで『このキャラクター、私じゃないんじゃない?』と思う部分もあったし、プレッシャーもすごく感じてました。一方でスタッフさんに『石原さとみでやりたいんだ』という意味の言葉をいただいて救われて、頑張れた部分もありました。本当にいろんなことを考えて、積み重ねて作り上げていった役柄ですね」。日本にルーツを持ちつつも、米国の利益を代表する立場にある人物。ネイティブの英語を随所に交えた日本語でまくし立てる強烈なパーソナリティを含め、見る者を微妙にイラつかせつつ、外部から日本の政治・官僚機構に風穴をあけていく。一方で矢口とのやり取りや祖母が愛した祖国への思いから、少しずつ彼女自身も変化もしていくという難しい役柄である。「日本チームが情報不足で何をどうしたらいいか分からない状況で、新たな情報を持ってくる存在であり、現場の空気を変えて、事態をものすごいスピードで動かさなくちゃいけない。“日本人じゃない”空気を見せつつ、物語が進む中で、祖国の血や歴史に思いをはせ、日本人の国民性や矢口たちに感化されていく。準備段階で知り合いに海外で働いている政治家の方がいたのでお会いしたり、大統領特使についても深く調べていくことで、カヨコらしい感覚がはっきりしてきました。数少ない、感情を思いきり出す登場人物でもあるので『強くいなきゃ!』という思いで現場にしました」。そもそも、1954年に制作された第1作目の『ゴジラ』は、ビキニ環礁で行われた水爆実験に着想を得たと言われている。怪獣映画というエンターテインメントの中に鋭い社会風刺が挟み込まれているが、この『シン・ゴジラ』も同様に現代社会を反映した描写が数多く登場する。特に、強く感じさせられるのは5年前の東日本大震災のこと。未曽有の危機への対応を迫られる政府の人間を主人公とした設定を含め、見る者の心を大きく揺さぶる。石原さんも庵野秀明監督が脚本に込めたメッセージを強く意識させられたという。「そこは否応なく考えさせられましたね。台本を読み込めば読み込むほど、調べれば調べるほどに…この描写の意味は何なのか? この数字は何を暗示してるのか?そもそもゴジラってどうやって生まれたのか?ゴジラが歩く道筋って何を示してるんだ?とか…。おそらく、私自身もまだわかっていない部分がたくさんあると思います。3.11を経験した人間だからこそ演じられたとも思うし、いま、届けなきゃいけない作品であり、いまの日本だからこそ多くの人の心に刺さると思います。ある意味で、見る者に委ねられ、見る者を試している作品ともいえるのかなと感じてます」。本作だけでなく、昨年の『進撃の巨人』における人気キャラクターのハンジ、2年前のドラマ「失恋ショコラティエ」の“小悪魔”ヒロインのサエコなど、タイプは違えども、ここ数年、見る者の心にクッキリと“爪痕”を残すような強烈なキャラクターを多く演じてきた。もっと言えば、10代、20代前半では演じてこなかったようなタイプの役柄を楽しんでいるようにも見える。石原さん自身、変化は「確実にあった」と自覚している。「女優という仕事をする上で、目的意識がはっきりしたというのは大きな変化ですね。まず何より、多くの人に見てもらうってことを意識するようになったし、連ドラに関しては特に感情表現で、敏感な10代、20代の若い人たちの琴線に触れるような役柄を演じたいという思いが強いです。映画では、この『シン・ゴジラ』はまさしくですが、風刺などで社会を反映しつつ、しかもそれをエンターテインメントとして届けられるような作品に出たいという思いが強くあります。映画はお金を払ってスケジュールをあけて見に来てもらうものなので、それに見合うものを届けたい。それから、世界で見てもらえるということも大事にしていきたいです」。では、そこまではっきりとした意識の変化はどのようにもたらされたのか?「マネージャーさんが変わったり、いろんな人との出会いがすごく大きかったのかな? そこで女優という仕事について以上に、人生に対する意識、人生の中での仕事の在り方を考えるようになったんだと思います。それまで、どこかで他力本願だった自分がいて、誰かのせいにして生きてたところがあった。でも人生、自分で責任持つしかないって思えるようになったり、親との関係もこれまで絶対的な“保護者”だったのが、少し肩の力を抜いて、友達感覚で付き合える関係になった。周りの人間を幸せにするってどういうことなのか? より影響力のある人間になるにはどうしたらいいか? いろいろ考えたし、哲学も学びました。アフリカを訪れたことも大きかったですね」。三池崇史監督の『風に立つライオン』で彼女は初めてアフリカの地を踏んだ。「海外で撮影をしたい」というのも、この数年での彼女の目標のひとつだったそうだが、実際に現地を訪れ「人生観が変わった」とも明かす。「私にとってはものすごい衝撃の連続でしたけど、一方で現地の人々にとっては、私がアフリカに来たことなんて、どうでもいいことなんですよね。当然ですけど、私のことなんて誰も知らないから、ひとの心を変えるには、まずは自分を知ってもらわないといけないんだなと。逆に言うと、日本では少しは私のことを知っている人たちがいるわけで、ドラマや映画を通じてそういう人たちに何かを伝えることができるかもしれない。仕事=人生ではなく、生きていく上で、私には女優という仕事がある。そこで改めて、女優という仕事が大切なものになりました」。演じている瞬間に、楽しさや幸せを感じることは少ないという。「作品が公開され、人々にどう届くか?そこから得られるものの方がずっと大きい」とうなずく。30代を前に『シン・ゴジラ』は石原さとみに何をもたらすことになるのか?楽しみに待ちたい。(photo / text:Naoki Kurozu)
2016年08月03日「なんで僕なんだろう…?」。素直な思いを口にするのは、連続ドラマ「せいせいするほど、愛してる」で、ヒロインの未亜に思いを寄せる宮沢綾役を演じている俳優・中村蒼。一見チャラいが一途に未亜を愛し、優しくて面白く、人気ブランド「ジミー チュウ」の敏腕広報でイケメン。女性なら誰もが憧れるパーフェクトな男を演じる中村さんは、パブリックイメージとは違う本役に胸中は複雑のようだ。中村さんは福岡出身の25歳。主演舞台「田園に死す」(2006)で俳優デビュー。その後、数々の映画やドラマ、舞台に出演し、若手実力派俳優として頭角を現している。甘いルックスからは想像し難いが、映画『東京難民』でのホームレスに転落する大学生役や、医療サスペンスドラマ「無痛~診える眼~」で、髪と眉を剃り落として挑んだ事件のキーマンとなるイバラ役など、物憂げな表情が印象的な役柄も多い。そのせいか落ち着いたイメージを持たれがちで、自身も「普段からそういう感じです」と自覚する。そんな中村さんが、実に自身5年ぶりの民放恋愛ドラマとして出演しているのが、北川みゆきによる同名コミックの実写化ドラマ。ジュエリーブランド「ティファニー」の広報部で働く主人公・栗原未亜(武井咲)と副社長で既婚者の三好海里(滝沢秀明)との禁断の恋愛を軸に、個性豊かな人物たちが複雑に絡み合う人間模様を描く大人の群像劇だ。オファーを受けた時を、「関西人の役だし、自分と似ている部分を見つけられなくて不思議でした」と述懐する中村さん。宮沢のことを「基本はマイペースで強引だけど、社交的で頭の回転が速く、瞬時に物事を察して未亜のために動けるところはすごく良い」と分析すると、「常にテンションが高く、人の懐に入るのが上手なところが自分と全く違う。僕は構えてしまうタイプだから」と打ち明ける。なんとか絞り出した共通点は、「実は宮沢は照れ隠しでいっぱいしゃべっていると思う。そういうシャイな部分かな」と静かに笑った。また、「恋愛ドラマは得意じゃない」そうで、「キスシーンとかしたくないですもんね(笑)。現場の空気が苦手。どんな風にやるか誰にも相談できないし、女優さんに気を遣うし…」と思わず本音をぶっちゃける。しかし、役に没頭すると素の自分を忘れるため、劇中の“バックハグ”のような“胸キュン”シーンでも、「全然恥ずかしくないですね」とサラリと言ってのける。それよりも関西人役として「自分でボケてツッコむシーンとか、笑いを起こすシーンの方が恥ずかしいし難しいです」と顔をしかめる。宮沢役は、ふざけることで真面目さが際立ち、その逆もしかり。中村さんにとって今回は、“笑い”が大きな課題となっているようだ。苦労をにじませる中村さんだが、必死の努力は実を結んでおり、未亜とのシーンでは「武井さんはいつも新鮮に笑ってくれるので支えになっています」と安堵の声を漏らす。一方で滝沢さんについては、「僕が仕事を始める前から第一線で活躍されていて、恋敵役としては大き過ぎる壁。一生懸命アプローチしても未亜がふり向かないことに、そりゃそうだろうな…というオーラや格好良さがあります」と敬服する。とはいえ、「未亜が宮沢にふり向かない理由がないのに、なんでふり向かないんだろ…」と首をかしげる中村さん。そこには自ら作り出した宮沢への絶対的自信が感じられた。そして、本作を通して「自分にテンションが高い役のイメージがないので、こんな役もできると知ってもらいたい」と胸を張る。デビューから10年。新たな武器を手に入れた中村さんの今後の動向は、宮沢の恋の行方同様、注目せずにはいられない。TBS火曜ドラマ「せいせいするほど、愛してる」は毎週火曜よる10時~TBS系にて放送中。(text/photo:Rena Nishiki)
2016年08月02日映画監督の大林宣彦親子、美術家の横尾忠則親子など、多くの著名人親子をはじめ、これまでに約6000組もの親子を撮影してきた写真家のブルース・オズボーンさん。2003年に「親子の日」を提唱して以来、毎年7月の第4日曜日に100組の親子写真を撮るフォトセッションを開催しています。今年で14回目となる親子の日を前に、長年ファインダー越しに親子を見つめてきたブルースさん佳子さん夫婦に「親子の日」をはじめたきっかけや「親子の日」に込められた想いを伺いました。 「親になるってどんなこと?」素朴なギモンから始まった親子撮影オズボーンさんは写真を学び、アメリカや日本で写真家として活動。親子の日のきっかけになったのは、1982年に友人からパンクバンドの若者を撮影してほしいと頼まれたこと。撮影したのは、あの有名なパンクロックバンド「アナーキー」の元ボーカル、仲野茂さんでした。「ちょうど第一子が生まれる直前で、2人でよく『親になるってどんなことなのかな?』という話をしていた頃でした。仲野さんを撮影するとき、パンクロッカーのお母さんってどんなかたなんだろうと思って、ダメ元で『親子の写真を撮らせて』ってお願いしたらあっさりOKをもらえたんです」(佳子さん)実は、お母さんは茂さんの一番のファン。撮影してみて、とても仲の良い親子だということがわかりました。この1枚の写真が親子というテーマで写真を撮り続けるきっかけになったそうです。仲野茂さんとお母さん写真撮影が親子の絆を取り戻すきっかけに最初の頃、オズボーンさんは、親子から日本社会を切り取りたいと考えていました。寿司屋のお父さんと同じく寿司屋になった息子さん、真面目な仕事をしていたお父さんの娘さんがポルノ女優になっている。親子関係から親子の歴史、日本の時代が移り変わっていく様を表現したいと考えていたそうです。でも、どの親子もユニーク。切っても切り離せない「親子」という関係自体に関心が向くようになったと言います。2015年にオリンパスギャラリーで開催した親子写真展覧会には、美智子皇后陛下も来場され、「日本人は表情が乏しいと言われているけれど、みんな生き生きとした表情をしていますね」というお言葉をかけられたそうです。「大人になれば親子で一緒に何かするという機会はなかなかありません。カメラの前に立たされると、みんなどうしていいか戸惑います。こちらからポーズを指示せず、自分たちで話合って決めてもらいます。大人が二人、『どうしよう』って表情で照れている様子も、その親子らしさが現れています。何千組もの親子を撮ってきたけれど、それぞれ個性があって毎回発見があるんです」(ブルースさん)オズボーンさんが撮る親子は年齢も職業も様々。活動を始めてから34年、最初は身体の大きな力士のお父さんと小さい子どもだったのに、2回目の撮影ではお父さんと同じぐらい力強い力士になっている。そんな息子と一緒に誇らしげな表情で写真に写っているお父さん。3回目に撮影したときは、息子さんも引退して、お父さんと一緒にちゃんこ鍋屋さんをやっていました。こうした親子関係の変化が1枚1枚の写真から見えてくるのが面白い、とブルースさんは語ります。「親子写真を撮ってもらいたいという人の動機は様々です。離婚が原因で長い間疎遠になっていた親子の距離を縮めたこともありました。決して仲が悪かったわけではないけれど、撮影がきっかけで自然に会話できるようになったという親子もいます」(ブルースさん)「親子でもうまくいかないのは当たり前。修復しようと頑張ってもなかなか距離が縮まらない。でも親子って本当に些細なことでも仲直りできてしまうんです。写真はきっかけに過ぎないけれど、親子のコミュニケーション手段として役に立っているんだなって感じることも多いです」(佳子さん)オズボーン家の親子写真「“父の日”や“母の日”があるなら“親子の日”があってもいいよね」オズボーンさんの親子写真に世間の注目が集まるようになると、オズボーンさんと佳子さん夫妻は「もっとみんなが親子関係を見直す機会をつくりたい」と考え、「親子の日」のアイデアを思いつきます。「5月の第2日曜日は母の日、6月の第3日曜日は父の日。7月の第4日曜日は『親子の日』にしよう!その日に親子撮影会をするという告知を新聞に掲載してもらったら、たくさん応募がきて100組の親子が集まったんです。こんなに反響があるなら来年も100組撮影しようということになって今日まで続いています」(佳子さん)1年目は自分たちだけの力で開催したので大変でした。でも、2年目からはスポンサーがついて、2005年には日本記念日協会さんが「親子の日」を正式に記念日として認定してくれました。「アイデアを思いついて実行に移すまで2年かかりました。でも、ひとつアクションを起こしたことで、私たちが何をやりたいのか、何をやろうとしているのか伝えることができたのが大きな成果でした」(ブルースさん)親子というベーシックな関係を見直すことが世界平和につながっていくロサンゼルスで友人を介して出会ったオズボーンさんと佳子さん。誰よりも多くの親子に出会ってきたお二人は「親子の日」に様々な想いを込めてこのビッグプロジェクトを推進しています。「共働きの親が増え、みんなケイタイばかり見ている。そんな変化に注目してしまうけど、命を次の世代に受け継ぐ、本質的な親と子の関係は時代や環境が違っても変わっていないと感じています。 “家族”じゃなくて”親子”というテーマを選んだのは、 “親子”が家族や社会のベースとなる最も基本的な関係だからです」(ブルースさん)「世の中には幸せな親子関係だけではありません。みんな自分の親から平等に命を授かっています。“親子”は自分の原点、親子の関係を見つめ直すことで、自分の存在に自信をもって誰もが生まれてきてよかったって思える社会になってほしい。親子関係を大切にすれば、大きな問題も解決できるのではないでしょうか」(佳子さん)現在も変わらず仲睦まじい様子のオズボーンさんと佳子さん。夫婦円満の秘訣は「大きな問題になる前に相手に伝えること」だそう。親子は一番近いからこそ素直になれないことや、ぶつかり合うことも多い難しい関係です。親子関係がうまくいっている人もうまくいっていない人も、今年の親子に日は自分の親や子どもと向き合う時間をつくってみてはいかがでしょうか。7月23日に新宿オリンパスプラザ東京で13:00~「第10 回親子大賞授賞式」を開催。平原まこと、綾香親子やウルトラセブン、ゼロ親子もかけつけます。24日は「親子の日スーパーフォトセッション」も開催、たくさんの応募の中から100組の親子の写真をブルースさんが撮影します。親子の日普及推進委員会公式サイトはこちらブルース・オズボーンProfile公式サイトはこちらArt Center College of Designでコマーシャル写真を専攻。1980年の写真展「LA Fantasies」をきっかけに日本での活動を本格的に開始。1982年から「親子写真」の撮影を始め、撮影した親子の数は6000組を数える。2003年に「親子の日」を提唱。毎年、親子の日に約100組の親子写真を撮る取り組みを続けている。ライター:柏木 真由子
2016年08月01日ディズニー/ピクサーの映画を観た後に飛び出す「おもしろかった!」という言葉。公開作が続々と大ヒットを飛ばしている同スタジオにとっては、もはや「おもしろい」のが当たり前といった前提すら感じさせるが、そのクオリティは年々勢いを増すばかりであり、その“おもしろさ”が並大抵のものじゃないことは、夏休みの公開を毎年楽しみにしている子どもたちだけでなく、大人の映画ファンの間でも広く認識されている。日本でも興行的に大成功を収めた『ファインディング・ニモ』。魚たちをめぐる愉快なストーリーが、子どもたちをはじめ多くの観客を魅了したのはもちろんだが、そこには主人公のニモの成長や、父親であるマーリンの“親ごころ”が描かれており、楽しいだけではなく、人々の心を揺さぶる感動的なテーマがそこにはあった。そして、待望の続編として公開中の『ファインディング・ドリー』においても、観客を魅了するストーリーと感動的なテーマは健在。その“おもしろさ”は、2016年度洋画オープニングNo.1という記録を打ち出し、現在もなおより多くの観客の心を掴んでいる。シネマカフェのディズニー/ピクサー現地取材第3弾では、そんな並大抵じゃない“おもしろさ”の秘密、ディズニー/ピクサー流のストーリーの作り方を、『ファインディング・ドリー』でアンドリュー・スタントンとともに共同監督を務めたアンガス・マクレーンと、ストーリー・スーパーバイザーのマックス・ブレイスのインタビューを通してご紹介する。本作で晴れて長編アニメーション作品の監督デビューを果たすアンガスは、ピクサー・アニメーション・スタジオに1997年アニメーターとして入社後、『トイ・ストーリー2』をはじめ、『モンスターズ・インク』『Mr.インクレディブル』『ウォーリー』『トイ・ストーリー3』など多くの作品に参加。ピクサーにとって初のTV特番アニメーションとなった「トイ・ストーリー・オブ・テラー!」の監督として、国際アニメーションフィルム協会(ASIFA)ハリウッド支部からアニー賞優秀監督賞を受賞している。一方、マックス・ブレイスは、大学卒業直後の1996年7月にピクサー・アニメーション・スタジオに入社し、ストーリー・アーティストとして最初に『バグズ・ライフ』に参加。その後、『トイ・ストーリー2』『モンスターズ・インク』『カーズ』『ファインディング・ニモ』『Mr. インクレディブル』『ウォーリー』『メリダとおそろしの森』などにおいても才能を発揮し、ストーリー作成にあたって、監督とアーティストたちとのビジョンの共有に一役買う存在だ。『ファインディング・ドリー』への参加は、『メリダとおそろしの森』の完成パーティーのときにアンドリューから誘われ、「もちろん!ぜひ!」と答えたことから実現したとのこと。ディズニー/ピクサーのストーリー作りでは、監督や脚本家をはじめとする複数人のスタッフたちが意見を出しながらストーリーを構築していく“ブレイントラスト”と呼ばれる方法がとられている。一人の脚本家が書き上げる脚本を基に、監督をはじめとするスタッフが映画として仕上げていく、そういった一般的な映画作りのイメージとは異なり、ディズニー/ピクサーでは、民主的な空気の中で発揮されるチームワークによって物語が作られていくのだ。今回アンガスとマックスが解説してくれたのは、物語も後半に近づき、両親を探すために水族館の中を巡るドリーとハンクが、「タッチプール」と呼ばれる、子どもたちが海の生きものに触れることができるコーナーで、“恐ろしい目に”遭ってしまうというシーン。実際にどのような制作過程を経てストーリーが構築されていくのか、デモストレーションとともに披露された。「僕が息子を連れて水族館に行ったときに、息子とタッチプールに行ったんだ。そこで僕は、『魚の身になってみたらどうだろう?もしドリーがタッチプールの中に閉じ込められたら?』と考えたんだよ」。まずはマックスが、タッチプールのアイデアの発端を話し始めた。「僕たちは、何事に取りかかるときもまずはリサーチから始めるので、いくつかの水族館に行って、タッチプールの中にどういう生き物がいるのか、子どもたちがどうやってその生き物たちと触れ合っているのかなど、たくさんの写真を撮ってきたんだ。それをストーリー・チームのメンバーに見せ、そこで生まれるギャグや、中にいるキャラクターたちがどういった状況に置かれているのかなど、ブレインストーミングを通してアイデアをどんどん出し合ったんだ」。そして、そこで飛び出したギャグの1つが、「ヒトデの腕がちぎれる」というものだったと語るマックス。さらに、「ほかのキャラクターについてもいろいろとアイデアを出し合ったよ。人間に触られるのが大好きで、『気持ちいい~!』って叫ぶバットレイとかね(笑)」とマックスは続ける。ところどころで大人が笑えるギャグを挟んでいくのも、ディズニー/ピクサー流だ。「最終的に、ヒトデの腕がちぎれるのはちょっとこの作品にはブラック過ぎると思って、採用しなかったよ(笑)」と、ユーモラスにアンガスが合いの手を入れる。「それから、ドリーたちがどうやってここに巻き込まれるのかということを考えていったんだ。ハンクはドリーのパートナーになっているけれど、2匹がここから出られなくなったとしたらどうするか?彼らはどうやってここから出るのか?ハンクは自分の体の色を変えてカモフラージュ出来るので、お客さんの背中にくっついて運ばれていくというのはどうか?」と、マックスは当初のアイデアを次々と明かしていく。これらの様々なアイデアは脚本家に渡され、実際にストーリーとして形作られることになる。次に、書き上げられた脚本を基に、監督と絵コンテを作成するアーティストたちが各シーンの読み合わせを行い、そのシーンでは何を感じ取りたいのかが話し合われる。そして、アーティストたちは脚本に記された様々なアイデアを基に、構図や演技、照明、セット、編集など、あらゆる要素をビジュアル化した“サムネール・テンプレート”を作成する。ここで、最初に仕上がったタッチプール・シーンのサムネール・テンプレートが、マックスによって披露された。「それでは、シーンをプレゼンしてみましょう。この前のシーンでは、ドリーは隔離部屋に自分の家族がいるのではないかと思っていて、ハンクはドリーを隔離部屋に連れて行くことを渋々承諾しました。ハンクは『わかった、じゃあ行こう』と言って出発します。さて、ここからこのシーンに入っていきます」。「ハンクがパイプを通っていきます。ハンク『いいか。先に言っておく。いまから経験することは忘れられない思い出になるさ。たとえお前でもな』、ドリー『え?なんで?』、ハンク『ここが隔離部屋への近道だが、ここを通るのは簡単ではない。離れるなよ』。そしてハンクは上によじ登る。排水溝からハンクの頭が出るのが見える。そこはタッチプールの中。子どもたちの手が生き物の方にあちこちから“ぶしゅー”っと伸びてきている。画面はタッチプールの外に切り替わり、子どもたちがたくさん並んでいる。横にある看板には“タッチプール生き物には優しく”と書かれている。でも子どもたちは優しくなんかない。ヒトデの腕が子どもに引っ張られる。『ああ~!!腕が~!腕が~!』。ハンクはドリーを引っ張り上げて『どんなことがあっても上を見るな』と告げる。子どもたちの手が次々と伸びてくる。バットレイが叫ぶ。『もっと愛して~』(笑)。ハンクは後ろの壁まで来てプールの向こう側を見上げ、『あれが目的地の隔離部屋だ』と言う。プールの中ではドリーが子どもに触られて『あはは~!くすぐったい~』。『おい、彼女に触るな!お嬢ちゃん、しっかり水を吸い込めよー』。そしてハンクが子どもの手を掴むと子どもは『うわ、うわ~~~~~!!』と怖がって、ハンクを放り投げる。ハンクは空中を飛んで、ある男性客の背中に着地。ハンクが男性のシャツの柄と同じ模様にカモフラージュする。男性は気がつかずそのまま歩いて行く。ドリーはハンクに掴まっているが、水の中にいないので息が苦しくなる。そこでハンクは側にいた子どもが持っているジュースのカップを横取りし、ドリーを中に入れる。『あぁ~!冷たい~!』ハンクはドリーを隠して周囲を確認する。『もう少しだぞ~』。ハンクが隔離部屋の方へ飛び降りるが、そこにあった掃除バケツの中に落ちてしまった。ハンク『やったぞ!』、ドリー『なんだか隔離部屋じゃないみたいだけど』、ハンク『こうやって隔離部屋に入るのさ』。これでこのシーンは終わりです」。(取材陣、拍手。)マックスのプレゼンを経て、監督であるアンガスがフィードバックを加えていく。アンガスはここでもユーモラスに、当時の様子を再現してみせる。「とても良かったね。少し気になるところがあるんだけど、絵コンテの中で、ハンクが『たとえお前でもな』と言うセリフがあるね。ここは最後まで上を向いていたままで、下を見ない方がいいな。そしてヒトデが引っ張られているところはもっと暴力的でもいいね(笑)。あと、バットレイが『もっと愛して~』と言ったときにみんな笑ったけれど、ここまでずっと、“危険!”と来ていて、こいつだけが、“良いよ~”と言っていると、面白いかもしれないがペースを遅くしてしまうかもしれない。編集後にもう一度見てみて、残したいか考えてみよう。もうひとつは、ハンクは自分がやろうとしていることにとても慎重になっているのに、ドリーが『くすぐったい』と言っていると、彼女は自分の身の危険を心配していないように聞こえる。彼女は危険な状況を忘れてしまっているとも考えられるけど、もしかしたら身の安全について心配していなさすぎかもしれない」。このように、サムネール・テンプレートのプレゼンに対する監督からのフィードバックを経て、アーティストたちは再びそれぞれ自分の机に戻り、さらなる描き直しを加える。そしてまた、新たなサムネール・テンプレートが作成されるのだ。「我々のチームは10万3,000枚以上の絵コンテを編集チームに渡したよ。こういった絵コンテのアニメーションを3、4か月毎に上映し、ジョン・ラセターをはじめとする重役たちからのフィードバックを得る。この過程を3年半かけて進め、各シーケンスを作り上げ、作品のブループリントを作っていくんだ。だから、かなり長い間、映画はこの絵コンテの中で生きているんだよ」。そうマックスは語るように、先ほど取材陣に披露されたサンプルには、日付が2013年7月19日と記されていた。プレゼンを経てアンガスは、「いまふり返ると、これも作品のひとつのバージョン。後で『なぜこれを削除したんだろう?』と思うセリフやアイデアもあるけど、我々は常に主人公のための物語を追求しているので、物語がきちんと語られることを考えているんだ。だから、面白いギャグやジョークで脱線するのは避けて、それらは物語を引き立たせるものでなければいけない。良いアイデアはたくさんあるけれど、採用されないこともしばしばだよ。残念だけど、DVDに入れられるといいね」とふり返る。こうしてフィードバックが反映された各シーンのサンプルに、音声や音楽、効果音が加えられ、シーケンスが作成される。その後、編集スタッフによってそれらが繋げられ、監督をはじめとするスタッフがチェックし、随時変更を加えていく。また、その場で思いついたセリフやアイデアのスケッチはすぐに絵コンテとして新たに加えられ、再び仕上がりがチェックされる。このように、いかなる行程においても浮かんだアイデアはすぐに試され、実際にそれができる制作環境が整えられているのだ。当初のストーリー案にから劇的とも思えるほどの変化が加えられていく“ブレイントラスト”のプロセスだが、披露された第一稿も、さすがのディズニー/ピクサーだけあって、“おもしろい”ものではあった。しかし、その“おもしろい”をさらにブラッシュアップしていくのが、同スタジオのクリエイティブをさらなる上の次元に推し進めている。「ドリーのストーリーを語るということに注意を払い続けることが、何が必要で、何が必要ないかを教えてくれるんだ」。ストーリーを仕上げていく中で次々と加えられていく変更点について、アンガスは解説する。「どんなアートフォームでもそうだけど、足し算であると同じぐらい引き算が大切で、観客とエモーショナルなコネクションを作ることが、常にゴールなんだ。それを達成するまでは、僕らは何かを捨てることにオープンでいるよ」。「それに、どうしていいかわからなくなったとき、『ヘイ、カモン、これを一緒に解決しよう』と言ってくれる多くの人たちがいるのはナイスだよ」とマックスが続ける。「グループは、ひとりよりもうまくいく。自分の周りに人々がいることは、どんな問題を解決する上でも、常に役立つよ」。このチームワークが、ディズニー/ピクサー作品の並大抵じゃない“おもしろさ”を生み出しているのだ。最後に、タッチプール・シーンの第一稿として披露されたバージョンに対して加えられた、大きな変更点についておさらいしてみよう。■ハンクではなくドリーが主導権を握ること→ハンクが強調されていて、ドリーが脇役になっている。物語の主人公は常にドリーにしなければならない。■バットレイのジョークは削除→ジョークをウリにすることは出来たが、それにはもっとシーンを作り込む必要があり、それによってシーンのペースを遅くしてしまう。■タッチプールをもっと怖いところとして描く→危険な状況を加え、タッチプールが戦場であるかのように描く。これらの変更点を経て、実際にタッチプール・シーンはどのように仕上がったのか?それは是非、劇場で実際に見比べて見て欲しい。きっとピクサーの“おもしろさ”の秘密を覗くことができるだろう。『ファインディング・ドリー』は、全国にて公開中。協力:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン(text:cinemacafe.net)■関連作品:ファインディング・ドリー(原題)
2016年07月30日実写版『進撃の巨人』や、『劇場版MOZU』など多くの映画作品に出演し、役柄によって別の顔をみせる俳優・長谷川博己。彼の最新作は「エヴァンゲリオン」シリーズの生みの親にして、世界中でその名を轟かせている庵野秀明の脚本・総監督作『シン・ゴジラ』だ。7月29日(金)に公開されるが、いまだストーリーの多くはヴェールに包まれたまま…12年ぶりに日本で製作されるということもあって注目を集める本作について長谷川さんと同事務所でもある女優・玄理が迫り、庵野総監督の演出や撮影秘話について語ってもらった。■始まりは1954年の初代『ゴジラ』玄理:私は『ゴジラ』を今回初めて観たのですが、長谷川さんはいままでシリーズは観ていましたか?長谷川:結構、観ていました。初めて観たのは1954年の『ゴジラ』でした。小学校の頃、ほかにやっていたものも観ていたかもしれないけど初めて観たのは白黒の『ゴジラ』でしたね。玄理:映画館でご覧になったのですか?長谷川:いや、54年の作品はビデオテープで観ました。『七人の侍』も同じ年なんですよね。家に1954年の作品がたくさんあって『七人の侍』を観たあとに『ゴジラ』を観ました。玄理:小学校の頃観て『ゴジラ』を好きになりました?長谷川:ただただ、恐ろしいと思っていました。昔の特写は、ゴジラが人形で、コマ撮りになっているところもあるからちょっとカクカク動いていたりするんですね。人間の手で動かしている魂が宿った感じがとても怖いなと思いながら、ちょっと滑稽で好きでしたね。玄理:その後、いくつか『ゴジラ』シリーズは観ていたんですか?長谷川:多分観ていたと思いますよ。全部観ていたかは分からないですけど、ビデオだったり映画館だったりで。一時期やっていた『ゴジラ対モスラ』とか戦うものもたくさん観ていましたね。玄理:今回、長谷川さんはゴジラから日本を守らなきゃいけないという役でしたよね。直接の対決ではないにしろ、ゴジラと戦って、そのゴジラに対して怖いとか、憎いとかそういう気持ちはあったんですか?長谷川:ゴジラに対して憎しみとかを矢口が表現する場所ってそんなになかったと思います。庵野さんからも、そこはあまり求められてなかったです。どれだけ被害や犠牲者を出さずにうまくゴジラを倒せるか、というのがリーダーとしてあるべき姿かというのを想像しながら、それが感情的になるのはいけないことなんじゃないかと思いながら演じていたと思います。玄理:ゴジラに対しての気持ちというよりは国民を守らなきゃという思いの方が大きかったんですか?長谷川:ゴジラをどうやったら倒せるのかというところに腐心していたので、当然そういう部分の感情を出したりもしましたけど、それよりもどういう風に事態を解決していくかというところに専念してましたね。玄理:実際観て思ったのは、ゴジラを倒す以前に会議して誰の許可を取って…経なきゃいけない工程が強調されているように感じました。長谷川:そうですね。庵野さんがどう思って描いたのか、答えは聞いてはいないですけど。玄理:長谷川さんだったら煩わしいと思いますか?それともあって然るべきだと思いますか?長谷川:もっと即決できれば理想的ですが、やっぱり前例がないことが起きたときの対応は一筋縄ではいかないと思うんです。もし本当にゴジラが現れたら、現場で対処する前にいろいろしなきゃいけないと思うとちょっとゾッとしますよね。玄理:そうですよね。誇張されているものなのか、あれがリアリティなのか分からないけど、本当にこういう工程を踏まなきゃいけないとなると、無駄じゃないのかもしれないけど、助けるためにいろいろできたのに…と思いました。■庵野秀明のこだわりぬいた演出玄理:庵野さんの演出で変わったものはありましたか?長谷川:庵野さんはやっぱりこだわりがすごいですね。なかなかあれ程こだわり抜ける方はいないと思います。玄理:例えばどんなときにこだわっていると思ったんですか?長谷川:カメラが8台くらいあって、壁を取っ払って8台で撮って、今度は隣の壁を取っ払って8台で撮って…。あとはリサーチ力がすごいですね。事実に基づいて作っていると感じました。庵野さんにいろいろ聞くと、そんなに意味の大きいものなんだと思う部分がたくさんあって、台本を読めば読むほど新しい発見に気づかされました。映画もシンプルなストーリーだけどその中で行われている細かいところは専門的すぎてかなり難しいこともあるんですよね。でも観ていると全部が繋がって理にかなってる。この作品は未来のあり方を庵野さんが指し示しているなと思いました。玄理:カメラ8台はどんなカメラだったんですか?長谷川:もちろん映画用のいいカメラがメインですが、iPhoneもありましたね。あとはデジタルカメラとか…8台以上あったかもしれないですね。実際iPhoneの映像も使ってるって言ってました。玄理:みたいですね!アプリを入れて画質を揃えて…って聞いたことがあります。専門的なセリフが多かったと思うのですがどうでしたか?長谷川:内容を理解するのに時間がかかりましたね。会話の速度も速いですし、その中で即断して決めていく政治家の会話はなかなか面白いものがありました。玄理:政府の機関なども調べたりしたんですか?長谷川:そうですね、実際に取材しても本音で話してくれないかもしれないと思ったので政治家に近い友達に「こういう場合はどういう意図があると思う?」とか聞いて、「裏側でこういう欲があればこうするだろう」とかそういう話を聞いたりしましたね。玄理:長谷川さんの役って出世欲が強い役ではなかったですよね?長谷川:いや、出世欲がなければあのポジションにいなかったと思います。欲が表面に出ていなかっただけで矢口が40歳前に官房副長官の立場になれるということは、なくはないかもしれないけど、普通に考えたら若い人が抜擢されることは考えられないんじゃないでしょうか。大人の事情がありつつも選ばれるんですよ。選ばれてからも目立ちすぎると足を引っ張られると思うんです。だからそこに矢口の人物像の答えがあるなって。矢口は人とどう接するのか、周りからどう見られているのか。ということを庵野さんと相談し、想像しながら役を組み立てていきました。■そこに無いものを見る…演劇で培ったもの玄理:役としてはゴジラって初めて対峙する怪獣になりますよね?長谷川:そうですね。庵野さんからコンピューターグラフィックで作ったものを見せてもらって、こういう映像が映っていると思ってやってくださいって言われて。ほとんどグリーンバックでした。玄理:もしかしたら俳優さんによっては正確には見ているものとか、覚えているゴジラが違うかもしれないですよね?長谷川:そうですね。でも大体は見せてもらっているから思い描いているものは一緒だったと思います。玄理:今回のお芝居は、ゴジラの起こした出来事に怒りなどの感情を表現してお芝居するじゃないですか。ないものを見ながら演じることにやりづらさなどはありましたか?長谷川:僕はもともと演劇をやっていたから無いものを見えるように演技することは、ずっとやってきたことなんです。だから違和感や勝手が違うとかは感じなかったですね。(text:cinemacafe.net)
2016年07月28日なぜ、いま“ターザン”を映画化するのか?その問いにアレクサンダー・スカルスガルドは「ターザンがスーパーヒーローの原点だから」と答える。強いだけではない。思いやりがあって、ハートで人々を惹きつけ、リーダーシップの取れるヒーロー。それがターザンであり、世界がいま求めているヒーローだ。「子どもの頃、僕がターザンのことが大好きだったのは、ミュータントでもない、武器やガジェットも使わない、空も飛ばない、使うのは己の頭と身体だけ──という生身の人間であることだった。ジャングルで生きるために、より強くより素早く、ターザンは超人になっていく。そんな大好きなターザンを自分が演じることになるなんて。オファーの電話をもらったときはものすごく嬉しかったけれど、後でドッキリだったと連絡が来るんじゃないかって疑ったほどだよ(笑)。信じられないほどこのオファーは嬉しかった」。憧れのキャラクターを演じることの嬉しさに加え、新しい解釈を加えていることもスカルスガルドが惹かれた理由のひとつでもある。物語はターザンがジェーン(マーゴット・ロビー)と結婚し、イギリスで生活しているところから始まる。「冒頭、ターザンは3ピースのスーツを着た英国紳士ジョン・クレイトンとして登場するんだ。彼は首相とお茶を飲むような洗練された貴族だ。これまでのターザンは野生児からだんだん人間的になっていくストーリーだったけれど、この『ターザン REBORN』はその逆。ある出来事をきっかけに、人間の世界から自分のルーツであるジャングルの世界へ戻っていく。心理的にも外観的にも面白い解釈だと思ったよ」と語る。そして、ターザンとして存在するために厳しいトレーニングを積み、彫刻のような圧倒的な美ボディを手にした。最先端のVFXでどんな映像も可能な時代に、リアルな肉体で勝負する。そこには俳優としてのこだわりがあった。「モーションキャプチャーのスーツを着て撮影すれば、CGで理想のターザンの肉体になれただろうね。でも、そうしなかったのは理由があるんだ。何か月もかけてターザンを演じるための肉体を作る、そういう準備があるからこそターザンの気持ちになれる。大変だったけれど、とてもエキサイティングだったよ。ただ、撮影を終えてから半年後に1シーンだけ撮り直したいと言われてね。撮影後は食べたいだけ食べて太ってしまっていたから、また3か月間、お酒を断ち、ダイエットをして、トレーニングをしたんだ。撮り直しのシーンはムボンガとの闘いのシーンのひとつ。さすがに“CGでなんとかならないのか!”って、トレーニング中のジムで叫んでいたよ(笑)」。ジャングルのセットは14週間かけてスタジオに作られた。今回、美術監督を務めるのはスチュアート・クレイグ。『ハリー・ポッター』シリーズを手掛け、デイビッド・イェーツ監督とも4作一緒に仕事をしている。そのセットの素晴らしさにスカルスガルドは感嘆する。「あまりにセットが素晴らしくて、信じられない光景ばかりで、これは現実なのか?ってほっぺたをつねったよ(笑)。子どもの頃からのターザンのファンにとっては夢のような世界、僕たちだけのために“ターザンパーク”を作ってくれたようなものだからね。毎日現場に行くのが楽しかった。ツタからツタへ飛び渡るシーンはターザンの目線になって、観客もまるで自分もスイングしているかのようなリアリティを味わえると思う。ただ、ターザンはそれを軽々やってしまうけれど、そこで重要になってくるのがサミュエル・L・ジャクソンのジョージのキャラクターだ。彼はターザンのようにジャングルを走り回れないけれど、苦労することで重み(リアリティ)が生まれる。その重みが観客をジャングルにいる感覚にさせてくれるんだ」。役者としての挑戦には、そこにいないCGで描かれる動物たちとの共演もあった。たとえば、ターザンがジャングルに戻って来て、自分を育ててくれたゴリラと再会するシーン。目を見つめ合うだけで気持ちが通じ合うエモーショナルなシーンだが「僕の目の前にいるのはゴリラではなく(位置を確認するための目印の)テニスボールだけだからね(笑)。ボール相手にどうやって感情を出すのかが大変だった」。また、アクション映画に見られがちだが、実は「ラブストーリーに満ちている」と、ターザンとジェーンの愛がベースになっていると熱く語る。「観ている人が2人の愛を感じなければ、この映画は成り立たないからね。彼が殺されようが、彼女が水の中に落ちようがどうでもいい相手だったら、この物語は成立しない。愛する妻を救うために、ターザンは再びジャングルへ向かうわけだから。ジェーンが自立した女性、強い女性であることも大きなポイントだと思う。ジェーンはターザンの助けを待っているだけの乙女ではないんだ。1800年代の物語ではあるけれど、ジェーンを通して描かれる女性像はとても現代的だと思うよ」。女性はきっと、ジェーンのような女性に憧れるだろう。もちろん、スカルスガルドが作り上げたターザンの男らしさにも惚れるだろう。『メランコリア』『バトルシップ』『メイジーの瞳』『ザ・イースト』…作品ごとに違う顔を見せてくれる俳優アレクサンダー・スカルスガルドにとって『ターザン REBORN』は間違いなく大きなステップとなったが、そこに留まらないのがスター。「ターザンの撮影が終わってすぐに、インディーズ系の映画『War on Everyone』に主演したんだ。その映画で演じたのはスーパーヒーローとは真逆のキャラクター。メキシコのアルバカーキにいる非常に腐敗した警察官で、アル中でコカインもやる、悪党のお金もいただく役。ヒーローを演じた反動なのかな(笑)。僕は、役にどっぷり浸かるタイプだから、ひとつの作品が終わるとそれとは全く違う役を演じたくなるんだよ」。悪党役のスカルスガルドも気になるけれど、まずは『ターザン REBORN』。強くて、優しくて、正義感があって、たくましく美しい──パーフェクトな理想の男、ターザンを見ないことには始まらない!(text:Rie Shintani)
2016年07月27日孤児となった9歳の少女が、養子として韓国からフランスへと旅立つまでを、自身の実体験を基に描いた『冬の小鳥』(’09)のウニー・ルコント監督。その鮮烈なデビューから6年の歳月をかけて完成させたのが、長編第2作『めぐりあう日』だ。いま日本でも、尾野真千子&江口洋介出演のドラマなどで改めて注目されている養子縁組を軸に、ルコント監督は養子に出された娘と実母の運命的な再会を、再び自身の人生を重ねながら、しなやかに描き出した。本作で監督の“分身”ともいえる、実母を探し求める主人公を演じたフランスの実力派女優セリーヌ・サレットに話を聞いた。本作の舞台は、フランス北部の港町ダンケルク。生みの親を知らずに育った理学療法士のエリザは、自らの出生を知るため、息子のノエを連れてパリから引っ越してきた。ある日、ノエが通う学校で働く中年女性アネットが、患者としてエリザの療法室にやってくる。2人は治療を繰り返すうちに、不思議な親密感を覚えるようになるが…。フランス語原題の「あなたが狂おしいほどに愛されることを、私は願っている」という言葉は、監督の愛読書である作家アンドレ・ブルトンの詩集「狂気の愛」から引用されている。この1節が読み上げられるラストシーンは、親子や家族の普遍の愛と命の誕生の賛歌を謳い上げ、いつまでも心に深い余韻を残す。「力強い物語に思わず涙がこぼれました。どうしてこんなふうに感情を揺り動かされてしまうのか、意外にも思えることでしたが、とにかくそんなふうでした」と、セリーヌは最初にこのシナリオにふれたときのことを、そうふり返る。「物語そのものがもつ強さと言っていいのでしょうか。それが、映画の力強さにもなっているのです。あの瞬間に感動したと誰かが言ったとき、それは映画のどの瞬間でもあり得る。観客ひとりひとりが、それぞれ違ったシーンで感動したとしてもおかしくない、そんな力強い瞬間にあふれています。しかも、それらのシーンはけっして感傷に流されるままに演出されたものではないのです。その意味で、彼女の処女作『冬の小鳥』にきわめて近い映画だと思います」と、セリーヌは自身の感触を明かす。確かに、ルコント監督が自らの思いを切り離すかのような緻密さで描く1つ1つのシーンは、観る者を常に刺激し、あらゆる感情を誘発させる。「たぶん、背景となっている現実や状況がみごとに構成されているからではないでしょうか」とセリーヌ。「実際、それぞれのシーンの光の具合と背景にある思いや気持ちが、みごとに演出されています。もちろん、人物像や俳優の身体、演技も重要なのは言うまでもないのですが」。身体といえば、セリーヌが演じるエリザは理学療法士。“実母”とは知らずに、アネットの身体に幾度となく触れていくが、とりわけ、エリザの腕の中で母のほうが胎児のようなポーズをとるシーンは印象的だ。「偶然そうだというのではなく、彼女のキャラクターを描くにあたって、これ以上ない職業だと思います。誰かを癒してあげる、誰かを治療してあげることによって、彼女は自分のなかにある欠落を埋めることができ、母親から見捨てられたという事実を乗り越えて生きてゆくことを可能にしているのです」とセリーヌは語る。「そのため、エリザは最初、他人の世話をすることで目いっぱいなのですが、次第に自分自身を救うことの重要性に気づきます。つまり、それまで自分の意志とは違った人生を歩んできた彼女が、どうやってそうした状態から抜け出し、自らの人生をきちんと中心に置き直して、正面から向き合うことことができるのか、その答えを知ろうとするようになるのです。そのためには、まず自身の出生の秘密を知る必要があり、まさにその答えを探そうとし始めたばかりなのです」と、キャラクターの背景にも言及した。エリザ役を演じるにあたっては、「とにかくまず、理学療法士の仕事について綿密に学びました。監督のウニーは、よい意味で高い要求を課す人であり、それに応える必要があったのです。同時に彼女は、美学的にもより高い目標を設定していて、特殊効果を使ってごまかすようなことはしたくなかった。その結果、しかるべき準備が求められたわけです。こうして周到に準備し、きちんと理学療法士の仕草や仕事について学んだおかげで、映画にもよい結果がもたらされたのではないかと思います」と、手応えを覗かせるセリーヌ。「いま、私には5歳半になる娘がいるのですが、より切実感をもって“継承”という問題を感じるようになっています」と彼女は言う。「なにを、どのようにしてなすべきか、また継承してゆくことができるのか、こうしたことを知るのは人生の根本でもあるでしょう」と語るように、本作での経験は、彼女自身の人生観にも大きな影響を与えたようだ。一方、そんな彼女を主演に迎えることを、ルコント監督は「最初から考えていた」という。「複数の役者と会うことはぜず、彼女1本釣りでシナリオを送って読んでいただいて、彼女もプロジェクトを気に入ってくれたので、お会いすることになりました。ですので、カメラテストなども一切なしに、私が彼女に決めてオファーをしたという経緯です」と当初から“ベタ惚れ”だったことをコメント。みごと期待に答えた彼女の熱演を、「抑えた演技で、控えめだけれども存在感が光り、ある意味、アジア的な演技」と絶賛を贈っている。『めぐりあう日』は7月30日(土)より岩波ホールほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2016年07月27日この美しい人が相手なら、たちまちよろめいてしまうのも納得できるかも?女子刑務所に入った主人公パイパーのサバイバルを描く「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」で、ルビー・ローズは新登場の受刑囚ステラ・カーリンを好演。シーズン3を引っかき回すキャラクターの1人として人気を集め、ルビー自身の人生にも大きな影響を与えた。オーストラリア出身のルビーがアメリカに渡り、役者の道を本格的に歩み始めたのは数年前。ただし、それ以前から、演じることに対する情熱を静かに抱き続けていたという。「母がアーティストだったから、子どもの頃からアートに興味があったの。母はそんな私を支持してくれる人で、自分を表現する何かを探したい私の気持ちを理解してくれた。親類も協力的で、大叔母がヴィクトリア・カレッジ・オブ・アーツ(メルボルンの名門芸術学校)に行く資金を援助してくれたわ。でも、在学中にMTVオーストラリアのパーソナリティになるオーディションに受かり、役者を目指す道を貫くかタレントになるか悩んだけど、私は決して裕福な家庭に育ったわけではないから仕事を手に入れたい気持ちが勝った。その後はラジオの仕事をしたり、モデルをしたり、首相に会っていじめ問題について話し合ったり、記事を書いたり、CDをリリースしたり、いろいろな経験をさせてもらったわ。でも、やっぱり女優を諦められなかったから、アメリカでの再出発を選んだの」。しかし、その道は険しく、エージェントと契約すら結べない2年間が続いた。「予想以上に厳しかったわね。働くこともできない2年間だった。タトゥーを入れているのがいけないのか?アンドロジナスなスタイルでいるのがいけないのか?と、いろいろ悩んだわ。そんな中、『ブレイク・フリー』(原題)という短編映画を作ったの。性の垣根を超えることをテーマにした作品で、“自分に正直であれ”というメッセージを込めている。それが注目を集め、『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』のキャスティングディレクターから“オーディションを受けてみない?”と連絡をもらった。もちろん、“受けます!”って即答する状況よね(笑)。その後、何度か面接を受けることになるのかなと思っていたら、2度目の電話で“月曜から撮影だから、すぐNYに来て!”と言われたの」。そんな経緯を経て、パイパーも夢中になるステラ・カーリンが誕生。個性的で自我の強いステラ役は、「自分と似ているからこそ、難しい役」だそうだ。「例えば理想的な主婦の役なら、自分とかけ離れていて演じやすいかもしれない。だから、私はあえてステラと自分の違う部分に着目したの。私はもう少しオタクっぽいし、シャイだし、彼女ほどクールじゃないわ。ステラは自信たっぷりに振る舞うけど、あれは私には無理。パイパーにウインクするシーンが予告編にも使われ、みんなが話題にしてくれたけど、あれも本当に無理(笑)。私だったら、頑張って控えめに手を振ってみるくらいかな。“気づいたかな?う~ん、気づかなかったら仕方ない”って諦めるタイプね。そもそも、ステラは大胆過ぎると思う。パイパーにはアレックスっていう素敵な人がいるのに!」。彼女がウインクしたら相手はたちまちときめくだろうに、控えめな恋愛アプローチが精一杯とは少々意外。「ステラほどクールじゃない」と自己分析しつつ、「クールって何なのかな…?」と思わず呟く姿も可愛らしい。「好きなのは、脚本を読むこと。マーティン・スコセッシやスティーブン・スピルバーグ、デビッド・フィンチャーら、好きな監督の映画を観ること。飼い犬と遊んだり、一緒に寝たりすること。自分の犬がそばにいないときは、人の犬を借りて一緒に寝ること(笑)。パーティーや夜遊びはあまり得意じゃないし、クールな人たちの仲間になったこともないわ。でも、クールって、きっと人によって定義が違うわよね。私の友達も決して完璧な人だらけではないけど、私は彼女たちをクールだと思っているもの」。「『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』の仲間になれて、キャリアも上向いてきた。おかげでいまは以前よりずっと自信を持てているし、自分自身を受け入れられるようになったと思う」とも語るルビー。『バイオハザードVIザ・ファイナル』をはじめ、『トリプルX』のシリーズ第3弾、『ジョン・ウィック』の続編と、今後も話題作への出演が目白押しだ。「出演するだけ、尊敬する俳優も増えていくのが嬉しい。ヴィン・ディーゼル、サミュエル・L・ジャクソン、トニ・コレット、キアヌ・リーブス、ミラ・ジョヴォヴィッチ、そして今回一緒に来日したウゾ・アドゥバ…、みんな最高なの。大好きなケイト・ブランシェット、メリル・ストリープ、ケイト・ウィンスレットともいつか共演できたらいいな」。(text:Hikaru Watanabe)
2016年07月24日「ギョいしょっ」と言って腰掛けた途端、ノンストップで話し続けるのは微に入り細を穿った魚の知識。そのどれもが専門的なのにもかかわらず、魅力的な語りに思わず聞き入ってしまうのが不思議だ。日本でのディズニー/ピクサー映画興行収入No.1を記録した『ファインディング・ニモ』の続編として公開される『ファインディング・ドリー』。本作で声優と日本版海洋生物監修を担当しているのが、日本において魚にまつわることなら右に出る人はいないであろう、さかなクンだ。シネマカフェでは、さかなクンにインタビューを実施。ところで、海洋生物監修って一体どういうことなの?そんな疑問から、さかなクンの目から観た本作の魅力まで、余すことなく“ギョ紹介”してもらった。まずは、今回のさかなクンのクレジットとして記される「日本版海洋生物監修」。これって一体どういうことなの?と尋ねると、嬉々とした語り口でさかなクンは話し始める。「映画の中では、オーストラリアのグレート・バリア・リーフからアメリカの海までの大冒険が描かれていますが、そこで登場するたくさんの海洋生物がいます。ニモちゃんやマーリンさんたちのモデルであるクマノミちゃんの仲間をはじめ、ドリーちゃんのモデルにもなったナンヨウハギちゃん、エイ先生のモデルになったマダラトビエイちゃん、そしてマンボウちゃんや、マカジキさん、ミズダコのハンクさん。こういった海の生き物たちには、ナンヨウハギは“blue tang”、ミズダコの場合は“giant octopus”といった英名がついています。そのひとつひとつに、日本での呼び名である“標準和名”を申し上げさせていただきました」。次から次へと飛び出してくる魚たちの名前にはさすがの一言。その知識量には、ピクサーのクリエイターたちも舌を巻いたそうだが、そんなさかなクンにとって、魚に夢中になったというきっかけになった生き物がいる。それは、子どものときに友達の描いたイラストをきっかけに知ることになったというタコだ。タコといえば、ディズニーアニメーションでは『リトル・マーメイド』のアースラなど、どちらかといえば悪役として描かれることが多いが、本作ではドリーと行動を共にするバディとして登場するハンクの大活躍が描かれる。さかなクンにとって、主要キャラクターとしてのタコの大抜擢は願ってもみなかったことなのでは?そう指摘すると、さらに表情を明るくして「どんな役であれ、タコちゃんが出ると、タコちゃん出たーー!!と大喜びしちゃうんですが、今回のハンクさんは、動きと言いタコちゃんの習性と言い、すばらしく表現されていました」と、そのクオリティの高さに笑顔を浮かべる。さらに、「例えば、ハンクさんは一匹狼的な性格で描かれていましたが、実際にタコは海の中でも孤独を愛する生き物で、群れは作らず、大抵は一匹で静かに暮らしてるわけですね」と、実際にタコの生態に基づいたハンクの描写について解説。ちなみにクールなキャラクターといえば、前作におけるツノダシのギルもお気に入りだそうだ。東京海洋大学名誉博士をはじめ、様々な肩書きを持つさかなクンだが、イラストレーターもそのひとつであり、いまにも動き出しそうな色鮮やかな魚たちの姿には、魚に対する確かな知識と愛を感じさせ、観るものを惹きつける魅力がある。そんなイラストレーターとしてのさかなクンの目からは、ピクサーが描く魚たちの姿はどう映るのだろうか?「例えば、マーリンさんやニモちゃんのクマノミって、“ワインディング”と呼ばれるように、泳ぐときに必ず体をくねくねさせて泳ぐんですね。その動きからか、クラウン(=道化師)フィッシュ、アネモネフィッシュなんて呼ばれ方もしているんです。一方ドリーちゃんは、体を真っ直ぐさせて、胸ビレを、鳥さんのはばたきのように上下に動かして泳ぐんですね。映画では、そういった細かい動きや泳ぎ方も表現されています。今回の作品でも、クリエイターの皆さんが足繁く水族館に通って、お魚をすっギョく観察されていたと伺って、そういったことがあの自然な動きとか泳ぎ方、表情とかが、生き生きと表現されることに繋がっているんじゃないかなと感じました」と、惜しげもない賛辞を送る。「お魚って一見表情がないように見られがちなんですけど、お魚の表情とかよく見ていると、あーって大きなあくびをしたり、目を吊り上げて怒ったり、“クリーナー”と呼ばれる、ちっちゃなお魚やエビちゃんに掃除してもらってるときのウツボちゃんやクエちゃんの表情を見ると、ああ気持ちいい!って感じの顔をするんですね。だから、お魚たちの表情っていうのは観察すればするほど、いろんな表情があるんだなあって気づくんですよ」と語るさかなクン。その言葉には、長年魚たちを描き続けてきたさかなクンならではの、魚たちに対する温かい眼差しが感じられた。「お魚の世界でありながら、親子の絆でしたり、家族の大切さ、そういったものが素晴らしく描かれていて、ジーンとくるシーンもたくさんありましたね」。そうさかなクンが語るように、本作ではドリーが家族を探す冒険の中で自分自身のルーツを知り、自信を取り戻していく姿が感動的に描かれている。ディズニー/ピクサー映画ならではの普遍的なストーリーは本作の大きな魅力のひとつだが、さかなクンは作品の中で“擬人化”された登場人物としての魚だけではなく、あくまで魚として生きる彼らに対しても目線を向ける。「実際にお魚もいろんな経験をして、大人になっていくんです。小さいお魚は釣り針にかかりやすかったりするんですが、大人になるまでにいろんな危険な目に遭ったりするので、大人の魚は釣られないように、成長していくんです。もちろん映画では、魚が擬人化されている部分もあるんですけれど、お魚も家族を大切にしたり、命がけで卵を守ったりするんですね」。2010年には、絶滅したとされていた「クニマス」の再発見を実現させるなど、会いたいという気持ちを実際に大好きな魚たちとの出会いに結びつけてきたさかなクン。最近では、「東京スカパラダイスオーケストラ」とのコラボレーションや、映画『フォーカス』の企画でウィル・スミスに扮したりと、そのキャラクター性から領域をまたいで様々な活躍ぶりを見せているさかなクンに、今後の目標について聞いてみた。すると、やっぱり頭に浮かぶのは魚のことばかり。まるでその日が実現したかのような笑顔を浮かべ、さかなクンは語った。「誰も見たことのないお魚に会ってみたいなあというのは、すギョく前から思ってる夢なんです。ギョギョ!なんだこのお魚は!って、そんなお魚に会えたらいいなあと思っています」。(text:cinemacafe.net)■関連作品:ファインディング・ドリー(原題)
2016年07月20日作品を重ねるごとにそのクオリティを更新し続けているディズニー/ピクサーによる映画作品。毎年のように公開される最新長編に、全世界からの注目が集まるのはもちろんだが、忘れてはいけないのが同時上映される短編アニメーションだ。10分も満たない僅かな時間で、長編にも負けずと劣らない奥行きと世界観を表現するディズニー/ピクサーの短編作品。『トイ・ストーリー』などお馴染みのシリーズ番外編といった位置付けのものもあれば、完全オリジナルのキャラクターとストーリーで描かれる作品など、その表現の幅は多岐にわたるが、どれもが一瞬にして観客の心を掴む魅力に溢れた作品ばかりであり、そこにはディズニー/ピクサーの底知れぬクリエイティビティが感じられる。世界屈指の才能あるクリエイターたちを擁する同スタジオ、もちろんそこにはジョン・ラセターといった“天才”が強烈な存在感を発揮しているが、若手クリエイターたちも日々研鑽を重ね、作品の中で様々なかたちでその才能を開花させている。短編アニメーションは、そんな今後の活躍が期待される逸材たちにとって、監督としてデビューを果たす貴重な機会でもあるのだ。シネマカフェが実施したピクサー現地取材第2弾では、『ファインディング・ドリー』の同時上映作品『ひな鳥の冒険』で監督デビューを飾ったアラン・バリラーロと、プロデューサーのマーク・ソンドハイマーのインタビューをお届けする。まばゆい光に照らされた海岸線で、餌を探すシギの親子の姿が描かれる本作。主人公は、まだ親鳥に甘えている一羽の小さなひな鳥だ。そんなひな鳥に、なんとか自分で餌を探すように背中を押す親鳥と、突然やってくる波におびえながらも、自分で餌を探すことを覚え始めるひな鳥の成長が、美しい映像で描かれている。本作で初めて監督を手掛けるのは、『ファインディング・ニモ』を始め、『バグズ・ライフ』『トイ・ストーリー2』『モンスターズ・インク』『Mr.インクレディブル』『ウォーリー』『メリダとおそろしの森』と、ほぼ全てのピクサー映画にアニメーターとして参加しているアラン・バリラーロだ。なんと宮崎駿のファンだという彼だが、初めての監督インタビューということもあってか、熱い情熱をほとばしらせてインタビューに答えてくれた。濡れた砂浜がシギによって掘り起こされる質感に至るまで、とにかくリアルに表現された映像への感動をまず伝えると、「ありがとう。とても難しかったんだよ(笑)」とアランは頬を緩ませる。なんと本作は取材陣が訪れるつい数日前に完成したばかりであり、スタジオのスタッフですらほとんど観ていない状態だったという。「RIZ」と呼ばれる、新しいテクノロジーが用いられたという本作だが、ディズニー/ピクサーは近作『アーロと少年』においても“フォトリアル”と呼ばれるような、実写と見紛うほどのリアルな映像表現を実現させている。表現の中でのテクノロジーの重要性についての質問をすると、「まずはストーリーが最初にあるんだ」とアランは説明する。「もちろん、新しいテクノロジーはエキサイティングだよ。いまでは、アーティストがどんなフォームでも、自分たち自身を表現できるようになってきているからね。でも、僕にとって表現は、キャラクターやデザインにかなり基づいている。だから、この作品での波なんかは、ただ水をフィジカル・シミュレーションしたものじゃない。アニメーターたちの手によってかたち作られたものなんだ。だから、本物の水よりももっと水らしく感じるんだ」と、テクノロジーだけでなく、アーティスティックな感性が生かされたピクサー流の表現について語る。若手クリエイターの育成を積極的に行うピクサーだが、今回晴れて監督に抜擢されたアランにその経緯を尋ねると、「アンドリュー・スタントン(『ファインディング・ドリー』監督)が僕の机のところにやってきて、僕がやっていたテストを見たんだ。そして、僕のことを励ましてくれた。ジョン・ラセターもね」と興奮気味に話す。「あまり知られていないピクサーの大きな特徴は、こういったアーティストとのメンターシップなんだ。監督たちやアーティストたちからアートフォームとビジネスの関係について学ぶことで、とても鼓舞されたよ。ここでのメンターシップを通して、アーティストとして成長していると感じられるのは素晴らしいことだよ」。さらに、アランに続きプロデューサーのマークも、「短編を作るにはコストもかかるが、それでもピクサーとジョン・ラセターは、短編を作ることを推奨している。なぜなら、それはアランのような人々に、ストーリーを語り、学ぶ機会を与えるからだ。短編を制作することは、普段彼らがやっていることとは違うことをトライしてみる新しい機会を与えられる。そしてそれは、まさしくピクサーそのもののためなんだ」と熱く語る。アーティストにとって、才能を伸ばす上でここまで恵まれた環境はないだろう。これまでのアニメーターの仕事と、今回の監督との違いについて尋ねると、本作で表現したかったことについてアランは語った。「間違いなく、監督することはチャレンジだったよ。僕がアンドリューからストーリーについて最も学んだことは、表現しようとしていることに正直に、自分をさらすべきだということなんだ。僕はこの作品で、正直なことを表現したかった。それは、子どものときに感じた“恐れ”と、僕には3人子どもがいるんだけど、親として、どのように子どもたちがそういう状況を乗り越える手助けができるだろうか?と言うことだった」。アランが語るように、『ひな鳥の冒険』で描かれるのは『ファインディング・ドリー』においても表現される“家族”であり、“成長”の物語だ。アンドリュー・スタントンとのメンターシップを通して生まれた本作は、まさしく同時上映される作品としてはぴったりの作品だと言えるだろう。そのクオリティの高さと魅力は、本作を目当てに劇場に足を運んでもいいと言っても過言ではないほど。ピクサースタジオが送り出す新たな才能を、ぜひ目撃して欲しい。『ファインディング・ドリー』と同時上映短編『ひな鳥の冒険』は、7月16日(土)より全国にて公開。協力:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン(text:cinemacafe.net)■関連作品:ファインディング・ドリー(原題)
2016年07月17日第76回アカデミー賞で長編アニメーション賞を受賞、日本でもディズニー/ピクサー歴代興収No.1を記録した『ファインディング・ニモ』。ニモと同じカクレクマノミを見た子どもが“ニモだ!”と感激するほど社会現象化した同作の続編、『ファインディング・ドリー』もまたアニメーション史上、記録的な興行成績で全米を席巻中だ。その夏映画の大注目作に、ナンヨウハギの忘れんぼうドリーの吹き替えで室井滋が、ニモの父親で心配性の父親マーリンの吹き替えで木梨憲武もカムバック!夢の再共演を果たしたふたりにインタビューを敢行。ニモが繰り広げた奇跡の冒険から1年後の世界を描く本作は、忘れんぼうのドリーを主人公に新たなアドベンチャーを壮大なスケールで描くエンターテインメント巨編!ドリーとマーリンとして、室井さんと木梨さんは、再共演を果たすことになった。この点、室井さんは、「それこそドリーじゃないけれど、どんな風だったか思い出すことが大変で(笑)。日頃ナレーションの仕事は多いですが、吹き替えは少ないので、ドリーの感覚を思い出すために、収録の現場に入って、自分が納得できるまで多少の時間がかかりましたね」と述懐。一方のマーリン役の木梨さんも、「久しぶりだったので、時間はかかりましたね」と室井さんと同調。「ついに、この映画が帰ってくると思ったら、ニモのパート2ではなく、ドリーの話で、やったと思いましたよ。そこには、どういうストーリーが待っているんだろうって。この年月を経ていると思うと、海の映像などもとてつもないほどきれいに違いないと思いました」と期待感でいっぱいだったとか。今回のドリーは、離れ離れになってしまった両親との家族の思い出を探しに、禁断の人間の世界まで飛び出す大冒険を繰り広げる。水のない世界は、それだけで大変なのに、ドリーは極端に忘れんぼうという、言ってみればハンデを背負っている。それでもあきらめずに泳ぎ続けるドリーの姿を観ていると、ドリーを演じる室井さんも感動を禁じ得なかったと言う。「ドリーにはマイナス思考がないので、ハンデがあると自分でも思っていないんですよ。だって、忘れちゃうから。マイナス思考を持ちようがない、みたいなところがあるんです。でも、そういうところが力強いと思う。わたしたち人間は余計なことを考え過ぎて生きている。ドリーを見ているとそう思えてくる。だからこれから先の人生は、ドリーのように忘れたいことは忘れて、覚えていたいことだけ覚えていようと思いました(笑)。そこが魅力だと思いますね」。マーリン役の木梨さんも、ドリーの冒険を追体験して日々の生活にフィードバックできる感動と勇気を得たと笑顔で語る。「ドリーって、重要なことは覚えていたりもするんですよ。だからね、それさえ覚えていれば、人間だっていいんですよ。全部覚えてるから、人間はそのネタで夜酒を飲み、愚痴りながら酒に酔って寝る、そういう毎日になっているでしょ(笑)。それはそれでありなんだけど、ドリーくらいさばけているといいですよね。本当、あこがれますよ」。確かに今回初登場する7本足のタコのハンクも、ドリーの忘れんぼうの性格に最初は驚くが「記憶がないと、人生が楽でうらやましい」というような言葉を言う。しかし、それこそがドリーの魅力であって、人生を豊かに生きるヒントも隠されている。室井さんは、最後にこう付け加えた。「また、同じ失敗をドリーは繰り返すかもしれない。忘れんぼうだからね。でもドリーは、そういうことを恐れていないというか、全然気にしていないんです。過去は過去として、前だけを見ている。本当にうらやましい。すごくいいなあ」。(text/photo:Takashi Tokita)■関連作品:ファインディング・ドリー(原題)
2016年07月15日人気アニメシリーズ「ポケットモンスター」の劇場版第19弾『ポケモン・ザ・ムービーXY&Z「ボルケニオンと機巧(からくり)のマギアナ」』でゲスト声優を務めるのが、タレントで歌手の中川翔子と若手女優の松岡茉優。アゾット王国の王子ラケル役の中川さんは10年連続で劇場版声優に抜擢され、その姉であるキミア王女の声を吹き込む松岡さんはアニメ声優初挑戦となる。「2ケタ!サトシが10歳ですから、それだけの長い間」と10年という数字に驚きの声を上げる中川さんは「しかも今回はピュアで繊細な少年という難しい役どころ。まさに人生最高の幸せを更新しました。夢のようです」と“ポケモン”愛は溢れるばかり。一方の元おはガール・松岡さんは、王国支配を目論むジャービス役の声優・山寺宏一とテレビ東京系「おはスタ」以来の再共演。「中川さんが『おはスタ』時代に『ポケモン』映画』の宣伝に来て下さったこともあるので、『ポケモン』は私にとって憧れの存在でした。だから嬉しいニュースが2つ同時に飛び込んできた感じ」と思いもひとしおだ。『ポケモン映画』の例にもれず、今作でも個性的なポケモンたちが登場し、見どころの一つになっている。しかし中川さんと松岡さんは、女子ならではの目線で、もう一つの注目ポイントを口にする。それは主人公の少年・サトシの成長と進化だ。「最近のサトシは男らしくなってきていたけれど、今年は特にヤバイ!サトシを違った目線で見てしまった」と中川さんが目を見開けば、松岡さんも「帽子を取ったときのサトシはかなりのワイルド男子だった」と証言する。「アラサーばばあがスイマセン」と気持ちを自制しようとする中川さんだが「とあるシーンでのサトシの『俺は嘘をつかない』とさらっと言うところ、これが『俺は嘘をつかないぜ!』ではないのが紳士感もあって男らしく、一番高いお寿司を頼んでもてなしたいくらいカッコいい。幻のポケモン・ボルケニオンに引っ張られて引きずられるシーンでは、結構なダメージを受けるけれど、そこも“ダメージ男子”好きにはたまらんショット」とノンストップ萌え。中川さんの激愛ぶりに「その後にサトシを語ることは出来ない」とタジタジの松岡さんは、ジャービス役の山寺さんについて「悪役山ちゃんは凄い。優しいときの面影はゼロで、人間の嫌らしいところのすべてが凝縮されたキャラクターになりきっていて、まさにレジェンドです」と感銘を受けていた。本作でのアニメ声優初挑戦のほか、憧れのアイドルグループ・モーニング娘。への参加、大河ドラマへの出演など2016年は松岡さんにとって初尽くしの1年となっている。そんな破竹の勢いの松岡さんに今後叶えたい“初もの”を聞くと「番組と番組の間に放送する3分枠番組のナレーション」と具体的。テレビ好きな“テレビの住人”と自らを称しながら「あの枠はテレビ好きにはたまらない番組であり、憩いの場。食べ物で例えたら、ヒジキのような箸休め的存在です。私も、誰かが何かをやっている姿に自分のナレーションが入ることで完成する3分番組をやってみたい」と声を弾ませる。達成目標は「2020年の東京五輪までには」と力を込めた。『ポケモン映画』声優出演10年という節目の年に、実は中川さんも“初”を経験。それは自身初の一人暮らしだ。今年3月からスタートさせてまだ数か月しか経っていないが「まさにメガ進化。去年の自分が見たら“誰だ、お前は”となるくらい。いまでは掃除もしっかりして、きちんと自炊。体調管理の大切さをレベル30になって初めて知りました」と充実した表情。オタク気質が手料理に吉と出たようで「キッシュやボルチーニのリゾット、ピカチュウのオムライスとか手の込んだものを作って一人寂しく食べている」と教えてくれた。手料理を食べてくれる男性は募集中だが「ボルケニオンのような男性に食べさせたい。『どう?』と聞いたら『男は黙って食うんだよ。悪かねえな』と言ってほしい。全世界の男子は草食系とかいっていないでボルケニオン化すればいい」と妄想ばかりが膨らむ現在。10年時が経っても“しょこたん”節は健在であった。(text/photo:Hayato Ishii)
2016年07月14日「僕は『ファインディング・ニモ』のときから、ドリーの心が傷ついていることを知っていた。たとえ他の人たちは知らなくてもね。僕は、それを治してあげないといけないことがわかっていたんだよ」。日本におけるディズニー/ピクサー作品No.1の興行収入を記録した『ファインディング・ニモ』。その13年ぶりの続編で『~ニモ』の1年後を描いた『ファインディング・ドリー』において、引き続き監督を務めたアンドリュー・スタントンは、本作の主人公であるドリーについてこう語る。シネマカフェでは、本作の公開に先立ち、アメリカはカリフォルニア州エメリービルのピクサー・アニメーション・スタジオに現地取材を敢行。第1弾として、監督のアンドリュー・スタントンとプロデューサーを務めたリンジー・コリンズのインタビューをお届けする。人間に捕まってしまったクマノミの子ども、ニモを探しに、父親のマーリンが奮闘する姿を描いた前作。捕らえられてしまったニモを必死に追いかけようとするマーリンは、彼よりも少し大きくて青と黄色のカラーが特徴的なナンヨウハギと衝突してしまう。ボートを見失ったことに焦り、失望するマーリンに、その魚は明るく意気揚々と話しかける。「ボートなら見たわ!こっちよ!」ーーそれが本作の主人公、ドリーだ。自分で言ったことすらも忘れてしまう、“忘れんぼう”のドリー。1作目では、そんなドリーにうんざりさせられながらも一緒に旅をするマーリンの姿がコミカルに描かれ、コンビを組んだ彼女の人気にも火がついた。はぐれたニモを探し出す(ファインディング)ストーリーを描いた前作だが、本作もタイトルと同様、家族を探しに人間の世界へ飛び出していくドリーを、今回はマーリンとニモが探す姿が描かれる。そして何より本作では、ドリーが家族の居場所を探すことで、彼女自身を見つけるというもうひとつのストーリーが描かれていく。「彼女が彼女自身を信じ、私たちが彼女は大丈夫だと信じられるようにするためには、もう1本の映画が必要だったのよ」。そう続編に至る経緯を語るのは、プロデューサーを務めたリンジー・コリンズ。1997年に入社以来、『バグズ・ライフ』『トイ・ストーリー2』『ファインディング・ニモ』『レミーのおいしいレストラン』など、数々の作品に参加する凄腕だ。そして前作に引き続き監督を務めるのは、1990年に9人目の従業員として入社して以来、一貫して同スタジオのクリエイティブの大きな柱であり続けてきたアンドリュー・スタントンだ。「僕がドリーを作った時…それは1999年のことだけど、僕は彼女のことを忘れんぼうにしたかったことを間違いなく覚えている」。ドリーを生み出した当時を述懐するスタンドンは、前作『ファインディング・ニモ』で監督としてデビューを果たし、アカデミー賞2部門(脚本賞、長編アニメーション賞)にノミネートされ、長編アニメーション部門受賞という、ピクサーの長編アニメーションにとって初のアカデミー賞をもたらしている。「彼女がもしひとりぼっちで、マーリンに偶然出会うとすれば、それは彼女が、自分がどこから来たか忘れてしまったということに違いないと、ある意味論理的に思ったんだ」。続編製作にあたり、スタントンはドリーというキャラクターが既に持っていたストーリーを紐解いていったという。忘れんぼう、という大きな特徴と同じく、ドリーというキャラクターを魅力的にしているのは、時に強引にまで周りを巻き込んでいく彼女の明るさだろう。「ドリーを私たちが大好きなことの一つは、彼女が決して他の人の欠点を見ない、または、欠点で彼らを見ない、ということよ」そうリンジーが語るように、彼女の明るさはシリーズの全キャラクターを、とてもポジティブな方向へと導いていく。このシリーズには、一般的には“欠点”と見られてしまうようなユニークな特徴を備えたキャラクターたちが数多く登場する。ドリーの“忘れんぼう”という特徴をはじめ、ニモの“小さな右のヒレ”や、本作より登場する“7本足のタコ”のハンク、“近視”のジンベエザメのデスティニーなど、それぞれが欠点を抱えながらも、魅力的にストーリーの中で活躍する。「たとえば、ニモについていうと、ドリーは決して彼の小さなヒレについて特にネガティブに話すこともしないし、デスティニーが『うまく泳げないの』と言えば、ドリーは『あなたは美しく泳ぐと思うわ』と言うの。彼女はキャラクター全員に、自信を注入するのよ」。しかしながら、そんな明るいドリーの過去が明かされていくうちに、観客はドリーの孤独に次第に胸を締め付けられるような思いを抱かざるをえない。それは、彼女は誰かに話しかける時の「すみません」という言葉を、「エクスキューズ・ミー」ではなく、「アイム・ソーリー」と言ってしまうところにあらわされる。「彼女は多分たくさんの友だちを作り、そして彼らを忘れてしまう。または、彼らは彼女をうまく扱えなくて、逃げてしまうんだ。だから彼女は、見捨てられた、という思いをたくさん抱えているに違いない。そして、彼女はそれを自分自身のせいだと感じているんだ。それで僕は、 “アイム・ソーリー”と言うキャラクターに行き着いたんだ」と、謝ってばかりいるドリーについてスタントンは解説する。「彼女の喜びや楽観主義、誰かの助けになろうとするところは、実は彼女の鎧なんだ。もし彼女がすごく助けになれば、多分その人は彼女を置き去りにしたりしないだろうというのが、彼女なりの考えなんだよ」。前作では、子を思うマーリンの視点を通して、親子愛だけでなく自立していく子どもを見守る“親の子離れ”が描かれ、その物語の普遍性が年齢を問わず多くの人に感動をもたらしたと言えるだろう。本作においても、ドリーが自分自身のルーツに出会い、変わっていく姿を描くストーリーには、観るものの琴線に触れる普遍的なテーマを宿している。エンターテイメントの第一線を走りながらも、なぜここまでもそこに人々の感動を呼ぶ作品を生み出すことができるのだろうか?「ディズニー/ピクサー映画に共通するテーマは、人々が共感出来るように、世界共通のものであってほしいと感じていることだと思う」とリンジーは話す。「ある作品がスーパーヒーローについてで、ある作品が魚について、そしてある作品がロボットやモンスターについてで。これらの作品は表面的にはかなり違うストーリーのように見えるし、実際そうよ。でも、映画が何について描かれていて、その冒険がキャラクターにとってどういうものなのかという核を見れば、人間の条件の普遍性に本当に触れているかどうかということになる。たとえ彼らのほとんどは人間でなくてもね(笑)。だから、私たちの映画は子どもにも大人にも共感してもらえるんだと思うわ」。『ウォーリー』における、荒涼とした地球をバックに流れるルイ・アームストロングの楽曲や、『2001年宇宙の旅』のなんとも痛快なパロディシーンにおける「ツァラトゥストラはかく語りき」など、スタントンの作品には、オールディーズの楽曲が使用されたり、古典的名作への敬意あるオマージュが見られたりと、間口の広い子ども向けアニメーションとは思えないほどの、映画ファンを唸らされる演出が多分に含まれている。そのことを指摘すると、スタントンは「宇宙で“ハロー・ドーリー”を流すというアイディアを思いついた時、『これはヒップホップみたいだ』と思ったよ」と彼流の発想法について語る。「古いものを使って、新しいもののために再利用するということだ。僕らはより繊細なレベルで、いつもそういうことをしている。どんなアートを作る時でもね。アートは、アートをインスパイアするからだよ」。そしてそれはもちろん、本作でも健在だ。ラストを飾るシーアが歌う名曲「アンフォゲッタブル」はもちろん、アクション映画のようなスリリングな展開を見せる後半における、誰もが知っているであろうあの名曲の起用には、驚きとともに笑ってしまうほどの痛快さがある。「本作の目標は、ドリーがみんなに与えるのと同じ優雅さを、彼女自身に与えることだったのよ」と語るリンジー。「アイム・ソーリー」とついつい言ってしまうドリーの姿は、どこか「謝りすぎ」だと表現されがちな日本人の姿にだぶるところもある。そしてそんなドリーが自らのルーツを求め、自信を取り戻していく姿は、きっと多くの感動と勇気を観るものに与えることだろう。『ファインディング・ドリー』の冒険は、自分自身に出会うための忘れられない旅になるに違いない。『ファインディング・ドリー』は、7月16日(土)より全国にて公開。協力:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン(text:cinemacafe.net)■関連作品:ファインディング・ドリー(原題)
2016年07月09日「去年のインデペンデンス・デイ(独立記念日)に生まれた子なんだ」と言いながら、幼い息子の写真を見せてくれたジェフ・ゴールドブラム。そんな彼の一言に、誰もが思わずニヤリとしてしまうはず。それは、隣に座るリアム・ヘムズワースも同様。なぜなら、両者は『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』で共演しているからだ。『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』は、96年の大ヒット作『インデペンデンス・デイ』の20年後を描いた続編。その中でリアムは戦闘機パイロットのジェイク、ジェフは前作でも演じた科学者デイビッドに扮し、20年前に地球を攻撃したエイリアンに再び立ち向かう。続編のポイントの1つは、前作で活躍した登場人物と新しい登場人物のドラマが交錯すること。「ジェフのすべてが好き」と語るリアム、「僕はリアム・ヘムズワースが大好きだ!」と高らかに宣言するジェフも、撮影を通してすっかり打ち解けたようだ。「ジェフは人としても役者としても素晴らしい。エネルギッシュだし、周囲を明るくしてくれるんだ。人間関係を築く努力を惜しまないのがすごいよね」(リアム)「リアムに初めて会ったとき、何て真面目で地に足がついている若者なんだろうと思ったよ。才能があり、プロ意識も高い。彼のような真の好青年はなかなかいないね」(ジェフ)互いを絶賛し合う彼らの相性は、スクリーン上からも見てとれる。人類とエイリアンの死闘がスリリングに展開する中、ジェイクとデイビッドが揃って戦闘機に乗り込むシーンにはちょっとしたユーモアも。「実際の撮影では戦闘機の外に何もないわけで、“○○が見えるぞ!次は○○が来るぞ!”なんて指示に合わせて怖がってみせないといけない。そうしているうちに、ふと口から出た言葉が台詞として採用されていったんだ」(ジェフ)「ローランド(・エメリッヒ監督)は完璧主義者だから、同じシーンを何テイクも撮る。それはいろいろ試せるということでもあり、試す自由があったからこそ面白いシーンになったのだと思う。実際の僕は乗り物酔いするタイプだから、戦闘機なんてごめんだけど(笑)」(リアム)リアムの言葉を受け、「ジェットコースターも駄目なのかい?」と心配するジェフ。それに対し、「1度なら頑張れるけど、2度は無理」と本音で答えるリアムの姿はちょっとだけ甘えているようにも!?そんな彼らの撮影中の楽しみは、「映画ゲーム」だったそう。ジェフがゲームのルールを解説する。「キャストの名前からタイトルを連想したり、タイトルを聞いてキャストの名前を挙げたりするんだ。ジャック・ニコルソンと言えば『シャイニング』、『シャイニング』と言えばシェリー・デュヴァル、シェリーと言えば『ナッシュビル』、『ナッシュビル』と言えばジェフ・ゴールドブラム!といった感じでね(笑)」。「そうしているうちに、自然と“あの映画はいいよね!この俳優はいいよね!”という話になるだろう?2人とも映画が大好きだから、お互いのオススメを言い合ったりもしたんだ」とリアム。ジェフから勧められた1本を紹介してくれた。「“ジェフ・ニコルズ監督とマイケル・シャノンの新作と言えば?”という質問からの流れで、『ミッドナイト・スペシャル』(原題)をジェフに勧めてもらった。とても素晴らしい映画だったよ」。映画を愛し、芝居を愛し、互いを尊敬し合うリアムとジェフ。本編に因み、“もしエイリアンに遭遇したら?”という質問が出た際にも映画愛と演技への情熱が炸裂。「ジェフに電話して助けを求める」というリアムの一言をきっかけに、豪華過ぎる寸劇が始まった。リアム「ジェフ、エイリアンがいるよ。どうしたらいい?どうしたらいい?」ジェフ「リアム、君はいまどこにいるんだ?」リアム「わからない。怖いよ…、ジェフ!」ジェフ「周りを見渡せ!どこかに通りの名前が書いてあるだろう?」リアム「ああ、わかった。○○通りだ。でも、道を進めばいいの?止まればいいの?わかんないよ。(涙声で)ジェフ、君が必要なんだよ!助けてよ!」「その後、僕はリアムを見つけ出し、抱き合って、めでたしとなるんだ」と満足げなジェフ。『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』の展開とはだいぶ異なるが、こんな共演作も観てみたい?(text:Hikaru Watanabe/photo:Nahoko Suzuki)
2016年07月06日男子高校生二人が、放課後に、とある河原でとりとめもないことを喋る――。ほぼ全編、同じ場所で、同じ登場人物で綴る異色の青春映画『セトウツミ』。観客は、会話を糸口に、登場人物であるクールな知性派の内海想と、ややお調子者の瀬戸小吉の人となりや日常の様子を発見していく。気だるくも大阪弁を効かせた喋りのみで、青春の楽しさと人生の切なさ、若さの眩しさを覗かせる“セト&ウツミ”の二人。そして、彼らのマドンナ・樫村一期を演じるのが、今注目の若手女優、中条あやみだ。出身地である大阪を舞台にした本作で、キュートな大阪弁を披露してくれた彼女に、映画について、女優業について聞いた。ただ男子二人が話しているだけ。なのに、くすっと笑えて、人生への愛しさがこみあげてくるこの作品。中条さんの感想は?「試写室で観ていたんですが、仕事だから何となく笑いをこらえなきゃと思っていたんです。でも、誰かが“むふふ”という声をもらした途端、つられちゃってみんなで笑ってしまいました(笑)。笑いをこらえられない作品です」中条さんのツボはどこに?「ほとんどツボだったんですが、特に笑ったのは瀬戸くんのお母さんですね。私の母も大阪のおかん。ヒョウ柄の服は着ないし、あそこまでわかりやすいキャラではないですが、同じ匂いを感じるんです(笑)。“わかるわかる”という感じでしたね。“じゃがいも、買ってこいや”というシーンとか特に。自分の言いたいことだけメールを送って来たりして、とにかくマイペースなところとか似ていますね」。実は今回、それほど出演時間は多くない。にもかかわらず、二人の主人公にとって特別な存在ともいえる“樫村さん”は、とても鮮烈な印象を残している。モデルとして、佇まいや表情だけで物語性や感情を表現するという仕事を重ねて来たからなのだろう。「演技をするうえで、モデルの仕事が役に立っていると感じますね。自分の表情がどんな風に映っているかとか、カメラがこの角度から撮っているからどう見えるかというカメラ前の感覚、撮影の際の空間認識については、経験が生きているんだろうなと思います。ただ、演技はモデルの仕事とは全く違うので、いつも苦戦しています」。モデルと女優、一番違うと感じるのは?「いろいろな役を演じなくてはいけないことですね。幽霊を演じたり、ロボットに追いかけられるとかもこれまでに経験しましたが、モデルの仕事では確実にない体験。そのかわり、いろいろな人の人生を経験できる素敵な仕事だなと思います」。ドラマデビューから4年。この間に、心の変化はあったのだろうか。「最初は右も左もわからなくて、ドラマの『黒の女教師』のときは、専門用語で話をされるたびに『え、何?』っていちいち質問していました。“この人、大丈夫?”って思われていたんじゃないかなと思うと、恥ずかしくて(笑)。その頃は、演技の難しさと何もわからないこともあり、女優という仕事に向いてないのかなと思ったこともありました。でも好きだし、楽しいと思えることも増えて来たので、やればやるほど、続けていきたいと思えてくるんです。自分に合っているか、合っていないかより、好きだからやりたいという考え方に変わりました」。悩みながらも一歩一歩前に進んできた4年間。続けることができた理由とは?「女優を始めた頃、ある映画のオーディションで、初めて会った監督さんに、“モデルとして来たの?女優として来たんだったら、ちゃんと演技して”と怒られたんです。“なんでそんなきついことを言われるなんて”と自分に対して悔しさを感じたんです。その言葉がずっと残っていて。それから、そんな風に思われたくない、だから頑張ろうと感じるようになったんです。今考えると、すごく有難いこと。悔しさをばねに、上手くなりたいと思うようになったのが原動力でした」。十代の女の子にしてみれば、くじけてしまったとしてもしたかがないほど衝撃的な経験。でも、それを糧にした中条さん。彼女が発する凛とした美しさは、そんな強さから来ているのかも。「ある意味での負けず嫌いなのかなと思います」。そんな部分が、今回演じた“樫村さん”を彷彿させる。「樫村さんは内海君のことが好き。相手にしてもらえないけど、打たれ強いから冷たくされても全然諦めない。そのうち、心境の変化もあって、女性特有の母性的な優しさも感じさせる。なかなか素敵な女性ですよね」。樫村さんの恋の障害とも言える男の友情については、どう感じているだろうか。「女性の友情って複雑ですよね。でも、男性の友情ってシンプルな感じがするんです。私自身、性格が男の子っぽいので、生まれ変わったら男の子になりたいな。男子って楽しそうでいいなと思いました」。男子って楽しそう。男の友情っていいな。老若男女が、そう素直に感じられるのが、まさに本作の魅力。何気ないひとことや、ちょっとした表情で垣間見せる友への思いやりに、少年の中に芽生え始めた男前な一面を大いに感じさせてくれるのだ。いずれおとらぬ、魅力的な“セト・ウツミ”だが、どちらが好みかたずねると…。「樫村さんを演じたからなのか、私は内海君派。私も暗い人大丈夫なんです(笑)。振り向いてくれないところや、ミステリアスな部分に惹かれます。でも、どちらも素敵な人だから…。いやなことがあったときにも笑わせてくれるなと思うと、結婚したら楽しいのは、瀬戸君かなとも思います(笑)。結婚まで考えると、悩みますね(笑)」と、女子を惑わすイケナイ男子二人が登場する『セトウツミ』。3人が絡む可愛い関係がどうなるのかも気になるので、ああでもない、こうでもないと、とりとめもないガールズトークをもっとしていたい。そんな気分になった中条さんとのひとときだった。(text:June Makiguchi/photo:Nahoko Suzuki)
2016年07月01日切なさで胸が締めつけられる一方通行の恋。誰もが経験したことがあるだろう。でも、そのカタチは人それぞれ。映画『全員、片想い』には8つの秘めたる恋が描かれていて、観る者が誰かの想いに、かつての、もしくは今の自分を重ねることができる。そんな恋の中でも、トランスジェンダーの男性ソヨンの恋を描いた『片想いスパイラル』で主人公を演じているのが知英だ。難しい役に挑んだ彼女に、男のカッコ良さ、そして作品に寄せた想いを聞いた。「日本語がお上手ですね」知英さんに、こういうのは何ともはばかられる。それは、ヴァイオリニストに「ヴァイオリンがお上手ですね」とか、ピアニストに「ピアノがお上手ですね」とか言うのと同じような気がするからだ。2014年の夏から女優として活躍の場を日本に移した彼女にとって、言葉はあくまでもツールなのだ。それは、初めてトランスジェンダーの男性役に挑んだ『片想いスパイラル』のソヨン役からもよくわかる。心と裏腹な身体を抱えながら、切ない恋に苦悩する姿が観る者の胸を熱くするのだ。そのイケメンぶりにも公開前から話題が集まっているが、仕草や声、歩き方や表情こそ男性を観察したものの、特に誰かを参考にしたわけではないと話す。「誰かの真似をしたくはなかったので、自分が男性だったらどうするかという考えを土台にしたんです。撮影中の3日間は、心の中で自分は男だと言い聞かせていました」。実はソヨンに入り込みすぎて、次の作品でも男っぽさが消えず、指摘されてしまったという。外見や仕草は、役に入るための重要な鍵となる。だが、それはあくまでも役作りでのハード面だ。ソヨンのカッコ良さは、むしろキャラクターのソフトである内面の男前っぷりにある。「特に、カッコよくみせなきゃとは思わなかったんです。もちろんタバコをくわえたり、服装が男っぽかったり、外側の要素はすべてが強かったので、そこで外見的なカッコ良さは表現できると思っていました。だから、自分がカッコ良さを意識し過ぎると、ちょっとオーバーになっちゃう気がして。だから、とにかく心を強くすることで、ソヨンの内面を表現したいと思いました」。トランスジェンダーの男性で、まだ社会では好奇心を持ってみられてしまうソヨン。居場所を求めて日本に留学してきたという設定だ。「韓国では、女性だった自分を知る人が多いということで、より難しい生活を強いられていたのかもしれない。だから、より自分らしくいられる日本に来ることを選んだのでしょう。私自身も、女優として仕事をするために日本を拠点として選んだので、ソヨンの気持ちが誰よりも強いのは理解できた。そういうところは、自分も似ているかな。だから、この子は絶対に強い子じゃないといけないと思って演じたんです。そんな彼が初めて偏見を持たない女の子に出会って恋をするんです。その片想いから見えてくるのが、ソヨンの優しさ。上手く気持ちを表現できないし、心は男性でも見た目は女性という難しさもあるから臆病にもなる。強い反面、そんな繊細な部分もあるキャラクターなんです」。知英さん自身、大きな覚悟と強い決意を持って来日している。「大変な時期もあったんです。私はこのままでいいのかなと悩んだり、家族と離れて海外で暮らすことがつらかったり。ただ、大変だったけれど、自分がやりたいことがあったし、私はできるんだと希望もあったから、自分を信じて歩んできた。でも、自分だけではとてもできなかった。ファンやスタッフの皆さんが支えてくれたからできたこと。難しい時期を乗り越えてきたからこそ、もっと強くなることができて、今笑っていられるんだと思います」。くじけそうになっても、つらい時期を乗り越えられた理由とは?「帰りたかったことがないと言えばうそになる。でも、負けず嫌いなんです。 “自分が好きで選んだ道なのに、ここであきらめるわけにはいかない”という気持ちがあった。韓国にもファンの皆さんはいる。でもここには、日本人じゃない私をこんなにも応援してくれ、信じてくれる人がいる。私がいるから笑えるとか、元気になれるとか言ってくれる人がいる。だから頑張れるんだと言い聞かせていました。今は日本にも家族ができたんです。猫を飼い始めたので、今はちゃんと日本にも心の基盤ができて、とても幸せ。それに、ソヨンのような素敵な役に出会うと、尚のこと続けてきて良かったと思える。こういう役に出会えたのも、辛い時期にがんばったからだと思えるんです」。そんな知英さんですが、片想いの経験は?「幼稚園の時にあります(笑)。実はうそじゃなくて、片想いの経験がないんです。誰かを好きになるのが、すごく難しいタイプで。向こうが私を好きだと確信が持てないと、あまり意識できない。それに、片想いって切ないですよね。そんなの耐えられない。もちろん、淡い片想いはあったと思うんです。この人が気になるな、ぐらいの。でも、映画みたいに、ここまで想いを寄せて、心が痛くなるような片想いはない。そういう思いはしたくないから、自分で感情を抑えていたのかもしれませんね」。そんな彼女にも、いつか感情が抑えられないほどに好きになってしまう人があらわれるかも。「そうですね。覚悟はしておかないと(笑)。今回の映画で、片想いってすごく素敵だなと思いましたし。自分が出演した『片想いスパイラル』だけでなく、8つの物語すべてが素敵だった。片想いでもなんでも、恋するのは素敵なんだとあらためて感じました」。そう言って、輝く様な笑顔を見せる。それは、今回の映画では封印されているのだが。「そういえば、全く笑ってないですね!あまり意識していなかったけれど。ソヨンはあまり笑わない子かなと思ってはいましたが、特に監督から指示があったわけではないですね。あまり笑わない男性が、何かのきっかけで顔をくしゃっとさせて笑うとキュンと来るなと想像して、役に反映させました。ルームメイトで片想いの相手でもあるユキと2人のシーンで、ちょっと笑うんですが、まさにそんな考えを意識して演じました」。ころころと表情を変える感情表現豊かな役ではなく、感情があまり表面に出ないソヨン。内に抱え込んでいるさまざまな感情を、微妙な演技で表出させているのが見事だ。「性同一性障害、外国での孤独な暮らし、その結果のユキとの出会い。ユキは、これまでの誰とも違う優しい視線を向けてくれた。そのことが、すごくソヨンの人生では大きかったと思うんです。だから、心はとても揺さぶられていたんだと感じました。それをどうすれば、静かにでも確かに伝えられるか悩みましたね。だから、撮影中に本番の途中でも、ユキ役の佐津川愛美さん、監督と気が済むまで話をしました。結果的には台本とそれほど違わないのだけれど、このタイミングで立ち上がるとか、手を伸ばすとかそういうこと。そのひとつひとつがソヨンの感情を表すものだったので、疎かにできなかった。みんなで悩んで悩んで作り上げた作品です。そして最後には、ソヨンが素敵な恋に出会えるように、運命の人に出会える姿を想像しながら演じていましたね」。難しい役を演じきった今、女優としての大きな手ごたえを得たのではないだろうか。「まず、この映画のヴィジュアルが公開されたときに、“これ知英なんだ!”という驚きの反応がすごく多かったので、嬉しかったんです。この役になりきれたという意味で、少しは成功だったかなと感じました。いろいろな役をこれからも演じていきたいし、それができる女優になりたい。自分が信じるそんな目標にちょっとは近づいたんじゃないかなと思いますね」。(text:June Makiguchi/photo:Nahoko Suzuki)
2016年06月30日アリスが戻ってきた。前作から3年後を描いたシリーズ2作目『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』では、時間に奪われた大切なものに執着する親友マッドハッターを救うために再び冒険の旅に出る。前作から6年の月日を経て、すっかりたくましくなったアリスを演じるのは、もちろん、ミア・ワシコウスカ。女優としても、女性としても、すっかり成長した彼女が、どんなアリス像を見せてくれるか、ファンとしては気になるところだろう。来日したミアに、作品に寄せる思いを聞いた。映画の冒頭、船長として勇ましい姿を見せるアリス。時代背景となる19世紀には、男性を率いるパワフルな女性は少なかったはず。「アリスが最初に登場するとき、とても強さを持って描かれているところがとても気に入っているの。2年ほどの航海で船長という役目を立派に果たし、自分が誰であるかも確立しているし、経験からくる強さも持ち合わせている。ところが帰郷してみると、当時のイギリス社会が彼女に期待するものがとても低くて。でもアリスはそれに流されず、自分の価値は自分で決めるものだという感覚を持ち続けたまま、自分の決めた道を歩み続けていく。これはぜひ、30、40代の女性にも受け取ってもらいたいメッセージね」。今回で2回目となるアリス役も、これまでの役選びを見ても、役との結びつきがとても強いことが感じられるミア。撮影後、離れがたいと感じる役柄もあるのでは?「それぞれの役によって変わるけれど、ときには“やっと終わった、嬉しい”と、すぐに役から離れられることもあるわ。必ずしも役が嫌いだというわけではないの。例えば、『ジェーン・エア』のように、衣装がとてもきつくて、“やった!終わった”と思う役もある。もちろん、キャラクターと離れがたくて終わったときに喪失感を覚えるものもあるわ。アメリカで最初に出演した『In Treatment』というTVシリーズでは、ソフィーという女性の人生を、演技を通して追うことで、彼女の友達になったような気がしていたの。とても別れがたかったわ」。では、アリスは?「アリスはとても好きな役。特にこの2作目は演じていてとても楽しかったの。でも、衣装の着心地があまり良くなくて。毎日、シートベルトでもするみたいに、がっちり着込んでいたの。1作目も衣裳がとてもきつくて、それに比べれば今回のほうが楽だったわ。パンツルックも多かったし。オリエンタルなドレスも、スカートに見えて、実はフレアの太いパンツだったのよ。だいぶ動きやすくかったわね。今回は走ったり、跳んだりも多かったから、そのためだとも思うけれど、アリス自身も自由が反映されているとも言えるわ。とはいえ今回も、着たらそのまま衣裳を縫われてしまったり、座らないでと言われたり。すごく肉体的につらい面があった。そういう意味では、撮影が終わったとき、感傷的にならずにすんだわね(笑)」。作品の前半では、父を失い、“時間は大切なものを奪う泥棒”と考えているアリスだが、冒険を通して、時や過去への執着を解き放ち、成長していく姿が描かれていく。もし、アリス同様、時間は残酷なものだと考える女性たちがいるとしたら?「本作には時間に関する素晴らしいメッセージが込められているから、ぜひ観て欲しいわ。過去を正そう、変えようとするのではなく、過去から学ぼうとすることで自由を得ることができるし、いまこの瞬間を生きる、いま持っているものを大切にすることができる。それが、人が時間との間に築くことができる健康的な関わりだと思うの。もともと人には、そういう感じ方をする習慣がないと思うので、ぜひ学んで欲しいわ」。では、ミアには変えたい過去はない?「ないわ!もう、いまはね(笑)。もちろん、ああすればよかった、こうすればよかったと考えることはたくさんある。いまと違っていたらと思うことは誰にでもあるでしょう?でも、いまの私は時間と健康的な関係を持てていると思うわ。起きたことを悩むよりも、受け入れて先に進むほうがいいと思うから」。時間が大きなテーマとなっている作品だけに、この6年間、ミアがどんな時間を過ごしてきたのか気になるところ。「最高の6年間だったわ。多くの素晴らしい映画に出演し、作品が私を違う場所、違う時代へと連れて行ってくれた。それにプライベートも充実しているわ。実はずっと両親と住んでいたんです。映画の仕事が入れば、海外に行かなくちゃいけないから、自分の家は必要なかったの。でも、いまはやっと独り立ちして、自分の家と呼べる場所がシドニーにあるの。自分だけの場所を持つことができたことも誇らしいわ。仕事もたくさんしたけれど、仕事と離れたところで、自分の人生もしっかり確立しはじめることのできた6年だったわ」。その間には、短編2作で監督も経験。女優に新しい視点は加わったのだろうか。「短編を手掛けたおかげで、また違ったカタチでクリエイティビティというものを掘り下げることができたわね。例えば、視覚的に。実は、演技の部分はあまり考えなかったの。素晴らしい俳優をキャスティングしていたので、俳優たちは本能的に必要なものをわかってくれていると信頼できたから。だから、演技に対する不安を持たずに、カメラの裏側に立つわくわく感を味わうことができた。もちろん、不安がなかったわけではないわ。でもそれは、カメラの前で演技をするのとは全く違う種類の不安ね。人に観られるわけではないので、無心になって製作に没頭できたの。そんな経験を通して、大きな報酬を得たと思うわね」。深いクリエイティビティを発見したというミアの、ますますの活躍に期待!(text:June Makiguchi/photo:Nahoko Suzuki)
2016年06月30日これからの季節、観たくなるのは背筋がひんやりするホラー映画。『リング』や『呪怨』を筆頭に“ジャパニーズホラー”が定着しているなか、そこに新しいホラー映画が加わった。第19回日本ホラー小説大賞・読者賞を受賞し、若者の間で人気の「ホーンテッド・キャンパス」の映画化だ。オカルト研究会(通称:オカ研)の仲間たちのところに舞い込む謎の心霊現象を解決するドキドキと主人公とヒロインの恋のドキドキ。ホラーと恋と青春があわさった新感覚ホラーの世界で、中山優馬と安井謙太郎はどんなドキドキを経験したのか──。ビビりなのに霊がみえてしまう主人公・八神森司を演じるのは中山さん。今年の5月に主演舞台「それいゆ」を踏むなど役者としてのフィールドを広げている彼にとって『ホーンテッド・キャンパス』は記念すべき作品となった。初めての映画にして初主演、そのドキドキとは?「出演が決まったときは本当に嬉しかったですね。いつか映画に出てみたいと思っていたので、夢がひとつ叶いました。しかも主演で主題歌も…ありがたいことだらけです。もちろんプレッシャーはありましたけど、それ以上に楽しみの方が大きかったです」。役柄的には怖いのが苦手な設定だが、プライベートでは「小さい頃から霊感があって…」と、まさかの体験談が飛び出す。「成長するにつれて霊感が消えていったんですが、この撮影終わりに霊感、戻ってきたんです。少し前までは家にシャドーマン(黒い影として存在する霊)がいて、何人かと一緒に住んでいました。僕がぜんぜん彼らのことを怖がらないからなのか、ばんばん出てくるようになって。最終的にはこっちが気を遣っていたくらいです(笑)。最近は見かけなくなりましたけど、なかには犬の霊(影)もいて。実は僕が飼っている犬も真っ黒なんですね。なので、時々ですが愛犬なのかオバケ犬なのか分からないこともあったりしました(笑)」。恐怖の体験談になりそうな話を何とも楽しそうに話す中山さんとは対照的に「僕はホラーが苦手で…」と告白するのはオカ研の部長・黒沼役の安井さん。「僕自身はもともと霊感はないですが、優馬から『撮影後に…』というその話を聞いて、もしかすると自分の身にも起こるかも!?と、しばらくドキドキしながら生活していました。いまのところ何にも起きていないのでほっとしています(笑)。ホラーが苦手なので不安もありました。でも、優馬が主演で一緒なので安心して臨めた。優馬を筆頭に共演者のみんなが役柄同様に僕をいじってくれたんですね。みんなの協力を得てあの部長キャラを演じることができました。部長なのでセリフがオカルトの専門用語だらけで、シミュラクラ現象の“シミュラクラ”には苦労しましたけど(苦笑)」。同じジャニーズ出身。「優馬」「謙ちゃん」と呼び合う姿からも、ホラー映画であっても撮影現場はきっと和やかだったのだろうと想像がつく。そして中山さんは、撮影初日の“部長が川に落ちるシーン”が気に入っていると言う。「森司とこよみ(島崎遥香)を追いかけてきた部長が川に落ちるシーンが撮影初日でした。ホラー映画なのに敢えてコミカルなシーンが最初だったことで、みんな安心したというか現場がすごくいい雰囲気になって。僕自身は謙ちゃんがどんな人物か知っているけれど、現場に入ってみて、改めて謙ちゃんは部長役にぴったりだなぁと思ったんですよね。ホラーとは結びつかない明るいキャラクターの部長がいたことで、この作品のギアがひとつ上がりましたから」という中山さんの賛辞に「こうやって格好いいことをスラスラ言っちゃうのが凄いんだよなぁ」と今度は安井さんが中山さんを褒め殺し。「個人的に気に入っているのは、部室で森司が酔っぱらって起きたところに教授が入ってくるシーンのお芝居です。あのシーンはアドリブだったんですが、優馬がすごいのは毎回演技を変えて、しかも毎回面白い。圧倒されました。本来なら僕がコミカル担当のはずなのに、そこも持っていくのか…と(笑)」。2人が共通して「みどころ」だと語るのは、クライマックスでもある図書館のシーン。“ホラー×青春×恋愛”──この映画のすべての要素が集約されたシーンでもあり「全員の気持ちが集中していないと成立しないシーンだったので、朝から朝までの撮影で時間はかかりましたが、みんながモチベーションをあげて乗り切りました」と中山さん。ホラー的“壁ドン”も要チェックだ。本当は怖いのが苦手だけれど、大好きなこよみのためにオカ研に入り霊と対峙する森司の恋にもキュンとさせられる。「森司のこよみに対する恋心はすごく純粋。自分は弱いけれど、それでも大好きな彼女を守りたいという森司は男気があると思う」と同性として森司の魅力を語る中山さん自身の恋愛観は?「誰かを好きになったら自分から告白するのが理想ですね。でも、もしもフラれたら…と考えると躊躇してしまう気持ちもあります。ジャニーズなのでフラれたくないですし、フラれちゃダメなんじゃないかなって(笑)。もちろん、過去に片想いの経験はあります。学校一のマドンナに片想いしていましたが、彼女は足の速い男子と付き合っていて告白には至らなかった。多分…俺の方がイケメンだったと思うんですけどね(笑)」。一方、安井さんは「僕もジャニーズですけど、優馬はフラれちゃダメなタイプなのに対して僕はフラれてもいいタイプ。同じジャニーズのなかにもそういうすみ分けがある」と独自の見解を語る。「今回の映画のセリフにもあるように、部長は“人間の女には興味がない”らしくて(笑)。グイグイっていうキャラではなかったですが、僕自身はフラれてもOKなタイプだと思うので安井謙太郎としてはグイグイいって告白したいですね。僕がいちばん恋愛に積極的だったのは幼稚園の頃。好きな女の子がほかの男の子と話していると間に割って入って邪魔をしたり、手をつかんでその男の子から離したりして…。当時の僕に比べていまの僕はチキンなので、あの頃の僕になりたいです(笑)」。ホラーは得意なのにビビリで怖がりの森司を演じた中山さん、ホラーは苦手なのにオカルト好きなオカ研の部長・黒沼を演じた安井さん。本当の自分と映画のキャラクターとのギャップがあるからこそ生みだせた新しい一面。そんな2人のギャップにもきっとドキドキするはず!(text:Rie Shintani)
2016年06月29日不慮の事故で地獄にたどり着き、赤鬼・キラーKのロックバンドに加入するはめになった高校生・大助を描く『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』。宮藤官九郎監督と大助を演じた神木隆之介が、キラーKを演じた長瀬智也とのコラボレーションを語る。地獄でロックバンド「地獄図(ヘルズ)」を結成しているキラーKを演じた長瀬さんとは、ドラマ「池袋ウエストゲートパーク」以来、数々のドラマや宮藤さんの映画監督デビュー作『真夜中の弥次さん喜多さん』で組んできている。以心伝心の域に達している。「今回は本当にスムーズでしたね。キラーK仕様のギター制作やレコーディングもあったりして、クランクイン前に会う機会がいつもより多かったんです。そうすると長瀬君からもいろいろ意見が出てくるし、僕も『こうしてほしい』というのを言葉で伝えられたので、撮影が始まったときには、お互い共有できてる状態でした。撮影前に長瀬君から『鬼ってどれぐらい鬼の感じですか?特殊メイクするぐらいの感じですか?』と聞かれて、いや、そうじゃないよと答えたら『僕だと分かる感じですか?じゃあ、まだ牙がフィットしてない感じとか、そういうのもありですかね』って(笑)、そのまま採用させてもらいました」。撮影現場でも互いの意見を伝え合い、新たなものが生まれることもあった。「そこで軌道修正できるんですよね。僕は僕で準備していたものがあって、こういうふうにしたい。でも、長瀬君がやってる方が面白いなと思ったら、そっちにしようかって。下準備がうまくできて、世界観が共有できてたからかなと僕は思ってます」。神木さんは01年のドラマ「ムコ殿」以来、久々の長瀬さんとの再共演となった。「小学校以来で、最初は少し恥ずかしかったです。子どものときは全く何も考えずに演じていました。当時は長瀬さんは芝居の中でも普通に、僕に接してくださっていたのですが今回は役として向き合ってくださいました。長瀬さんは長瀬さんで、僕も僕で役づくりをして、それをぶつけ合うというのが、お互い新鮮過ぎて『恥ずかしかったよね』と話していました。だけど、一度共演させていただいたこともあって、呼吸をすぐに合わせることができたと感じています」。キラーKは、地上では“近藤さん”という地味な男性だった。大助は現世でも地獄でも一貫して彼をなめてかかるが、長瀬さんと神木さんのテンポよく息の合ったやりとりは実に楽しい。「近藤さんはキラーKっていう鬼になりたての、完成し切ってない状態で大助と会うんです。ちょっとまだぶれてるところが大助のキャラクターによって、引き出される。大助の鬼を怖がらないキャラクターが面白い。特に冒頭のシーンは思いましたね」と監督は言う。今回は特に、役者やスタッフから投げかけられる意外な発想を柔軟に取り入れたという。「そうですね。言われた通りにやるだけの役者さんよりも好きですね。違ったら『違う』って言えるし、僕も。何か仕掛けてくるというか、逸脱したアイデアを持ってる役者さんとなら、いくらでもそういうことできると思います」。(text:Yuki Tominaga/photo:Nahoko Suzuki)■関連作品:TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ 2016年6月25日より全国にて公開(C) 2016 Asmik Ace, Inc. / TOHO CO., LTD. / J Storm Inc. / PARCO CO., LTD. / AMUSE INC. / Otonakeikaku Inc. /KDDI CORPORATION / GYAO Corporation
2016年06月28日修学旅行中の不慮の事故で、なんと地獄に堕ちてしまった高校生・大助が、地獄にある高校の軽音楽部顧問の赤鬼・キラーKのバンドに加入し、現世への復活に挑む『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』。荒唐無稽なのに、なぜか胸に迫る瞬間がいくつもあるユニークなコメディを作り上げた宮藤官九郎監督、長瀬智也扮するキラーKとの迷コンビぶりが鮮烈な大助を演じた神木隆之介に話を聞いた。「長瀬君とハードロックとかヘビメタとかが、すごいぴったりくるなと思って。日本映画では、ちょっとあり得ないくらいトゥーマッチなキャラクターにしたいなと思ったので、地獄の鬼にしようと思ったんです」と宮藤監督は着想を語る。地獄とロックと長瀬智也。とても収まりのいい完ぺきなトライアングルの調和を乱す者として登場するのが大助だ。「もう1人の主人公である大助は、今の若者の感性で。大仰な地獄に対して『何これ?』って、淡々としてる若者がいるといいなと思って。大助は一貫してチャラい。地獄だっていうのに、全然なめてかかってる感じです。そのとき、『11人もいる!』っていうドラマで一緒に仕事をした神木君を思い出して、彼がいいんじゃないかなと思いました」。劇中の大助の言動1つ1つにイラっとさせられたと伝えると「うれしいです」と笑顔で応える神木さんは、台本を読んだ第一印象を「実は文字だけだと分からないところもいっぱいあったんです。地獄で鬼に吹き飛ばされる大助?どうやってどう吹き飛ばされるんだろう?とか、地獄のセットってどんなものだろう?という疑問が真っ先に頭に浮かびました」とふり返る。「『11人もいる!』のときもそうだったのですが、台本を見ながらたくさん笑って、最後には心が温かくなるような人間味があって。すごく素敵な作品だな、と。強くそう思いました」。2011年のドラマ『11人もいる!』では脚本家と俳優という関係だったが、今回は監督と主演俳優として現場で一緒に仕事した感想は?「本当にチャラい人だと困るけど、そうじゃないのは知ってたんで。『もっとやっていいよ』と言えたのは神木君だからです。どんなにやっても品があるから。逸脱し過ぎたときも『この後の展開があるから、ここはもうちょっと抑えましょうか』と言うと、すっとその微調整ができる。2歳からやってますからね、さすがだなと思いました」という監督の言葉に「いやいや(笑)」と神木さんは謙遜するが、宮藤さんは「それ結構、感心しましたね」と続ける。「神木君はすごく深く考えて、試行錯誤してたのかもしれないんですけど、僕にはそういうふうに見えずに、さらっとやってるように見えた。だけど、さらっとできるって、実はすごいことなんじゃないかなと思ってます」。「大助があまり考えていないような人だと思ったので、同じく考えない方がいいのかなとは思いました(笑)」という神木さん。「例えば、タイミングを狙うことも彼は絶対にしないですし。大助が『こうかな?こうか。ん、違うな。あ、こうか!』という過程があって結論にたどり着くのが、絶妙な瞬間やテンションだったりするのかなと。なので何も考えない方がいいのかなと思っていました」。「良かったです」と宮藤監督。「難しいと思うんです。これをやったら嫌悪感を覚えるぐらいのところを、そうならないっていうのが、すごい。深く役を掘り下げてるからなのかと思ってたんですけど。今、聞いたら何も考えてないらしいので(笑)、なおさらすごいですね」。大助は共学校に通うごく普通の高校生。かっこいいわけでも悪いわけでもなく、好きな女の子と仲よくなりたいのになかなかうまくいかず…という彼の日常は、子役時代から人気者だった神木さんの高校生活とはかなり差がありそうだが、神木さんは「とても普通の男子高校生でした」と言う。「1週間50円で過ごしたこともありますよ」(神木さん)「それは普通じゃないよ(笑)」(宮藤さん)と、やりとりしつつ、「テストも一夜漬けでしたし、文化祭も体育祭も楽しんでいました。モテるために徒競走で一着になりたくて、前日に公園で重りを持って走っていました。たぶん、そこまでみんな掘り下げないんです、文化祭や体育祭を。漫画のような高校生になりたかったです。その方が絶対楽しいと思っていて。恋愛コメディの通りに生きたら、その当事者になったら、絶対楽しいはずなんです」と力説。「その通りに生きてみようと思って。その通りに生きました(笑)」。「普通の高校生からしたら、それをやってくれてるのが神木君だと思うだろうけどね。普通の高校生役をやってる神木君を見て、ああいうふうになりたいなって。それをさらに神木君がやってる、もうわけ分かんないね」と笑う宮藤監督に、神木さんは「曲がってますね」と苦笑。ただ、漫画の世界の高校生に憧れるのは大助の感覚にも通じる。「大助を本当に楽しく演じることができました」。(text:Yuki Tominaga/photo:Nahoko Suzuki)■関連作品:TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ 2016年6月25日より全国にて公開(C) 2016 Asmik Ace, Inc. / TOHO CO., LTD. / J Storm Inc. / PARCO CO., LTD. / AMUSE INC. / Otonakeikaku Inc. /KDDI CORPORATION / GYAO Corporation
2016年06月27日どんなことでも挑戦することは簡単じゃない。挑戦を為し遂げることはもっと簡単じゃない。であるからこそ、挑戦を経て目的の場所にたどり着いた人、またその人が為し遂げたことは輝いて見える。そんな挑戦の詰まった映画『日本で一番悪い奴ら』には、正義を守るために警察への忠義を誓いすぎた男の半生が描かれ、ここまで描いちゃっていいんですか?という驚きと、悪とは何をもって悪というのか?観客は大きな問いかけを受け取るだろう。白石和彌監督と主演の綾野剛さんは映画に流れるその問いをどう受け止め、どう挑戦したのか。『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』、悪人を題材にした映画が続く白石監督。前者はノンフィクション・ベストセラー小説「凶悪 ある死刑囚の告発」、後者は「恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白」が原作となっている。実録ものに惹かれる理由を白石監督は「知りたいという探究心」だと言う。「どちらの登場人物に関しても僕のなかではそれほど悪人だとは思っていなくて。どの人にも“良い”ところ、“悪い”ところがある。そこから“一体人間って何なんだ?”ってことを見つけたいんです。だから実録ものの映画が続いているのかもしれない。実録って、小説や漫画と違って(製作していくなかで)分からないことが次から次へと出てくる。その分からないことを探していく作業が“人間って何なのか?”に繋がっていく。魅力的なんですよ」。その“魅力的”だというキャラクターとは主人公の諸星要一。北海道警の熱血警察官だが、正義感が強く真っ直ぐなゆえに、でっちあげ、やらせ逮捕、おとり捜査、拳銃購入、覚せい剤密輸…あらゆる悪事に手を染めてしまう男だ。そんな諸星のオファーを綾野さんは「自分は役者であると、何の恥じらいもなく言えるきっかけになった役」だと喜ぶ。諸星役に綾野さんを抜擢した背景には“色気”というキーワードがあった。白石監督が明かす。「稲葉(圭昭)さんの原作を読んで台本の第一稿を書き終えるまでは、諸星を誰が演じるのか全然想像できていなかったんです。というのも、諸星は柔道の猛者。大学を辞めるときにロシアの格闘技サンボの大会か北海道警かという選択を迫られて、北海道警に入った人物です。なので、稲葉さん本人に会ったときの印象は“骨太”な人でした。そして“色っぽさ”のある人でした。捕まった当時は彼女が8人いて、そのうちの2人が婦警だったそうで(苦笑)。超モテる男なんですよ。たしかに話しをしていても色っぽさがある、モテる理由が分かる。稲葉さんのその色っぽさを見て、諸星のキャスティングは色気のある人にしようと決めました。…で、綾野剛だなと」。そのチョイスはもちろん正解だった。綾野さんは、役として「スクリーンのなかに映りたいんじゃない、そこに存在したいんです」と、22歳から48歳までの諸星を演じている。必要だったのは演技におけるテクニカルさはもちろんだが、もっと動物的な感覚。白石監督の前作『凶悪』からもヒントを得たと語る。「『凶悪』を観たときに、この映画を“面白い”と思っている自分はどれほどのクズなのかと、面白いと思った自分自身と対峙しました。クズとは?面白さとは?いろいろ考えているうちに(自分に向けた)嫌悪感が出てきて。もうその時点で監督の罠にはまっているわけです。なぜ面白いと思ったのか──悪さに行き着くまでの(キャラクターの)ベクトルが決して快楽的主義なのではなく、何て言うか動物的な何かを感じたんです。白石監督は、クズ人間は好きだけどダメ人間は嫌い。生きていない人間、本気じゃない人間は好きじゃない。それは前作も今回も共通していて、それが僕にはすごく響いたんです」。綾野さんは白石監督のことを敬意と親しみを込めて「ブラック・チャーミングな人」だと言い、白石組は「毎日、楽しくて仕方なかった」とふり返る。「この手の作品は役者が自由にやっているイメージがあるかもしれないですが、自由に演技させてもらっているその先で、白石監督はしっかりと手綱をひいてくれている。いつ鞭がとんでくるのか、いつブレーキをかけるのか、そのセンスがとてつもなくいい。諸星というキャラクターは白石組が創ってくれた産物。自分で作り上げたとはこれっぽっちも思っていなくて。だからできあがった作品を観て、自分はこんな顔をしていたのか…と、ものすごく嬉しかった。と同時に諸星は今後の自分にとっての最大の敵になる、この作品でのこの役を今後の自分は超えることができるのか?と突きつけられた瞬間でもあって。いつも次回作こそ代表作だと思っているので、そういう意味でもまた白石監督と映画を作りたい。でも、今回の方法は次回には通用しない。また一からスタートして、1を50にできるか100にできるかプレッシャーはあるし、恐怖もあるけれど、そうやって自分を鼓舞することで、まだ役者をやっていていいんだなって、生きていていいんだなって思うんです」。事実は小説よりも奇なり。この映画で描かれていることが事実であることにただただ驚かされるが、驚きの事実を描ききったことにさらに驚く。というのもつい最近、喫煙シーンのある映画が「成人指定」になるなど、映画の作り手にとって厳しい世の中になりつつあるからだ。しかしながら、この『日本で一番悪い奴ら』はそんなことに縛られはしない。そういった反発が挑戦であり「ひとりくらい反発して、(ダメだということを)表現する奴がいてもいいのかなって」と言う白石監督は、なんとも格好いい反逆児だ。「映画での表現に限らず、いまの世の中は本当に潔癖症になっていて、不倫をしたらその人の人生を全否定、薬物使用で逮捕されたらその人のこれまで制作してきたものを全否定、そんなことあるかと。“罪を憎んで人を憎まず”という言葉がある国なのに、本当におかしい世の中になってきている。この映画の主人公も捕まった当時の三面記事を見ると、おそらくですが、一人の悪徳刑事が薬物所持、銃刀法違反で逮捕、なんてヒドい奴がいたもんだ…で終わってしまっていたと思うんです。でも、彼にも青春時代があって、人としての営みがあって、それを描くべきなんじゃないかと。インモラルなことを観て育ってきた身としては、世の中にはこんなことがあるのか!?というのを知って、いろんなことを学んでいくことを伝えたかった」。不道徳が何なのかを知ることで真の道徳を知る──この映画はそれを北海道警を舞台に描いているが、上司のために、警察のために突き進んでいく諸星の生き方、そのモデルである稲葉氏の生き方に「共感する」とも言う。「諸星は柔道しかやってこなくて、最初に入った社会が警察組織で、そこのルールに乗っかるしかなかったんです。僕も映画が作りたくて若松プロに入って、若松(孝二)さんみたいな人に“あれやれっ、これやれっ”と言われたら何が何でもやるしかない。それが僕の使命。若松さんがコレを撮りたいというけれど撮影許可が下りない、じゃあどうするのか?何とかやったろうか!となるわけです。たとえ社会的にはダメなことであっても(笑)。だから諸星の精神状態はよく分かるんですよ」。その言葉に綾野さんも大きく頷く。「諸星は現場で創られた産物」だと白石組を称える綾野さんに対し、白石監督は「この作品には綾野くんのような共犯者が必要だった」と称える。撮影現場で語り、撮影が終わった後に呑みながら語り、時間の許す限り語り合って、そうやってこの挑戦的な映画は完成へと辿り着いた。そして、新たな挑戦も──「嬉しいことに、綾野くんがまたやりましょうと言ってくれるので、マーティン・スコセッシ監督とレオナルド・ディカプリオみたいになれたらなって思うんですよね」。そんな最強タッグの次回作も気になるが、まずは第一作目の共犯作を目撃してほしい。(text:Rie Shintani/photo:Kyoko Akayama)
2016年06月24日働くママにとっては不安でいっぱいの職場復帰。出産前とは同じように働けないかもと、出産を機に退職を決意する女性もたくさんいます。そんな「働きたいけど働けない」という女性をテクノロジーの力でサポートしたい!とGoogle 社員の思いから生まれたのが、「Women Will Japan」の取り組み。Google でWomen Will プロジェクトのプロジェクトリード、二児のパパでもある山本裕介さんにお話をうかがいました。山本裕介さん働く女性にとって日本はまだまだ発展途上山本さん(以下、山本):「Women Will」というプロジェクトは、テクノロジーで女性の社会進出を支援するというミッションを持ち、アジア各国で活動しています。日本では、インターネットがある程度どの世代、性別でも浸透していますが、国によってはまだまだインターネットの活用が少なく、誰でも必要な情報にアクセスできるようにインターネットの浸透率を高めていく活動が必要です。しかし、日本では、浸透率を高めるよりも伝えるべきことがありました。働く女性や周辺の人たちが、テクノロジーを活用することで具体的に何ができるかに気付いて、理解してもらいたい。たとえば、社外から会社のメールにアクセスできない、テレビ会議のシステムはあるけど活用されていない…活用されていれば、働く場所、時間がもっと自由になりますよね。育児中の女性も働きやすくなるのではないでしょうか。実際、アンケートでも、25〜49 歳の女性は「時間や場所に関する制限」で仕事を続けられないと判断していることが多いとわかりました。もし、在宅勤務ができれば、通勤に長い時間をかける必要がなくなり、勤務エリアの問題もなくなります。子どもの病気で出勤できなくても、ミーティングの時だけテレビ会議に参加できるような環境があれば、働き続けられる人がもっと増えるはず。私たちは、テクノロジーでこういった問題は解決できることがあるのではないかという仮説を立て、テクノロジーの力で問題を解決するため、2014 年 10 月に「Women Will」の取り組みを始めました。先ほど話したアンケートでは、もう一つの気づきがありました。在宅勤務やフレックスなどの制度を持っている会社のうち、テクノロジーが活用されている会社の場合、ずっとこの会社で働き続けたいと思う社員が多いのです。テクノロジーを活用したことで働きやすくなる。プライベートの時間もとれるようになった。仕事の生産性を上げることも大切だけど、育児中の女性に限らず、みんながハッピーになれる。当たり前なことですが、一方で実現できていない会社があることもはっきりわかりました。制度やテクノロジーを導入してみたけど、活用されていない。こうした会社には「活用できる」文化を作っていく必要があります。どうすれば文化ができるのか…パートナー企業と問題解決に取り組む「未来への働き方コンソーシアム」山本:ひとつの解決策は「未来への働き方コンソーシアム」です。Women Will に賛同してくれた企業に実際にテクノロジーを活用するモデル部署を選んでもらいます。そこでのIT活用の実践と検証、そしてその結果を公開する、これが Women Will の取り組みのひとつ「未来への働き方コンソーシアム」。広島県庁では女性が活躍するにあたり何がハードルになっているのか職員にアンケートをとりました。「担当者にしかわからない仕事が多く、個人業務の時間確保のため、残業になりやすい」などの、実は男女に関係ない全体の生産性や効率に関する問題が出てきたのです。さまざまな企業が参画し、働きかた改革を行っているそこで、「スケジューラー」を使ってお互いの予定が見えるようにしました。はじめは自分の予定をシェアすることに抵抗感があったものの、半年試験的に利用してみて事後アンケートで効果を検証すると、部署全体の生産性・効率性が上がっていました。お互い何をやっているかわかるようになり、管理職も部下が何をやっているかが常に見えるため評価しやすくなったそうです。これにより、職員の仕事に対する満足度も上がった。さらに、プライベートの予定もスケジューラーに入れる文化ができ、お互いのプライベートを尊重する空気が生まれたそうです。仕事のやりがいだけでなく、プライベートの充実度まで上がったこともわかりました。「このテクノロジーは便利だよ」ではなく、「どう使えばいいのか」「何が解消できるのか」、実際に触って業務に取り入れてもらう。効果を感じれば、「使い続けよう」と思っていただけますし、他の部署も「うちも導入してみよう」になりますよね。そして “企業カルチャー”になっていく。「未来への働き方コンソーシアム」では、こうしたパートナーの成功事例を公開しています。どんなことをやっているのか、実際に効果が出ているのか、それがわかれば「自分たちもやってみよう」と思いやすいですよね。今後もより実例を増やしていきたいです。ワーママにとってハッピーな職場=誰もがハッピーに働ける職場「働くママが特別な存在じゃなくなるといいなと思います」これは動画に登場する職場復帰したママの生の声。そう、働くママが一番望むことは、子どもがいても普通に働くことができる環境なんですよね。山本:Women Will Japan のもう1 つの取り組み「Happy Back To Work」は2015 年3月に始動。誰でも「働く女性をハッピーにするアイデア」を投稿できるサイトを作りました。ここで重要なのが、「育児中の女性に活躍してもらう」と考えていること自体が、明らかに育児中の女性を特別扱いしている」ということです。育児で大変なときでも本人はみんなと一緒に働きたい、と考えている。誰もが働きやすい職場であれば、育児中の女性も働きやすくなるのではないでしょうか。そんな柔軟で誰もが働きやすくなるようなアイデアを集めています。「長時間働いた人がえらい、そんな空気、やめませんか?」といった意識に関するものもあれば、「18時以降は会議を禁止しよう」「退社する時にすみませんと言うのをやめよう」といったような、具体的にもっとこうしたらよくできるよね、というような具体的なアイデアもあり、現時点で5000 以上のアイデアが寄せられています。でも、アイデアを集めただけだと「ふーん、できたらいいよね」で終わってしまいますよね。Happy Back to Work ではさまざまなアイデアを募集している「未来への働き方コンソーシアム」と同じく、実践することが大事。だから、アイデアを実際にトライしている企業にサポーターになっていただいています。現在、1000 社以上のサポーター企業が、集められたアイデアを実践。こうしたアイデアも実践していきながら、少しずつでも社会を変えていくきっかけにしていきたいんです。アイデアはどなたでも投稿でき趣旨に賛同いただればどなたでも参加いただけます。みんなで社会課題に取り組み、「Happy Back To Work 」を社会的なムーブメントにしていきたいと考えています。筆者自身も子どもを保育園に預けて働いているワーキングマザーです。自分のまわりにも勤務エリアなどの問題でやむを得ず仕事をやめたママがたくさんいます。復帰当初は毎日が綱渡り状態で、仕事を続けるべきかどうか何度も悩みました。そんな想いがあったので、山本さんのお話しがとても興味深く感じました。次回からは、「Happy Back To Work」のアイデアを実践しているサポーター企業の取り組みをご紹介していきます!Google Women Will 公式サイトライター:柏木 真由子
2016年06月24日あの『リング』シリーズの貞子と『呪怨』シリーズの伽椰子という、邦画ホラー史を代表する人気キャラクターが激突する注目作『貞子vs伽椰子』に、近年女優としての活躍も目覚ましい人気モデルの玉城ティナが出演した。「この作品に関わるまでホラーは苦手でした(笑)」と本人は言うものの、その恐怖感を逆手にとって初出演のホラー映画でホラークイーンを見事に熱演した玉城さん。「モデルの時とは違い、演技の表現は感情を削っていく作業でした」と女優業を述懐する彼女に、『貞子vs伽椰子』のこと、仕事への想いを聞いた。1998年の『リング』誕生以降、数々のシリーズ作品が放たれた『リング』と『呪怨』シリーズは、ジャパニーズ・ホラーにおける二大巨頭として一大ジャンルを確立・牽引した最大の立役者たちだ。今回、玉城さんが山本美月さんとともに出演を果たした『貞子vs伽椰子』は、日本を代表する2大ホラーのキャラクターが共演・対決する最恐プロジェクト。その歴史的な作品に関わったことについて本人は素直に感激しているという。「今回は“呪いのビデオ”を改めて説明するシーンもいっぱいあって、『リング』と『呪怨』の融合ではあるけれど、まったく新しいホラー映画になっていると思いました。その記念の作品にホラーが初挑戦のわたしが参加できたことは、本当にうれしく光栄に思いました」。玉城さん演じる女子高生の高木鈴花は、訪れたら必ず死ぬという「呪いの家」の向かいに引っ越してきたことで伽椰子の呪念のターゲットになってしまう。初めてとは思えないホラークイーンとしての玉城さんの熱演が観る者を作品世界に一気に誘うが、そこには役柄に対する深い理解が演技の背景にあった。「鈴花は普段、おとなしい普通の女の子なのですが、秘めた想いがある子だと思ったので、それを表現できるように努力しました。言葉であえて説明すると難しいですが、強い正義感や怖いものに立ち向かっていく姿勢を感覚的に表現したつもりです。彼女はどんどん強くなっていくので、クライマックスに向けての成長を見守ってほしいです」。今年に入って『オオカミ少女と黒王子』で主人公のクラスメイト・立花マリン役を演じるなど、出演作が相次ぐ玉城さん。モデルとしての仕事も継続する一方で、カメラの前で演技をするという別なフィールドでの表現は刺激になっていると話す。「モデルの仕事はひとつのテーマに沿って一瞬の写真を作っていく作業ですが、演じるという俳優の仕事は、まず自分の思いをワッ!と表に出して、そこから削っていく作業という印象がありました。モデルの時は『こうかな?』と自分の感性で表現を足していく感じですが、演技は自分で加減をしてはいけないというか、そもそもわからないことだらけだったので、まずはトライをしてみてアドバイスをいただくことの繰り返しです。自分で表現を調整せず、最初から全力。一度理解したら、後は自分を信じて全力で自分を出していくイメージですね」。そして『貞子vs伽椰子』との出会いを経て、「これからも ジャンルを問わず、演じることに挑戦をしていきたいです」と女優業を強く意識するように変わったとも。「もともと好奇心が強い性格なので、もっと挑戦してみたいです。わたし、負けず嫌いなんですよ(笑)。女優として『この役を玉城に演じさせてみたい』と言われるようになりたいので、貪欲に挑戦を続けたいですね(笑)」と大きな瞳を輝かす。今後の活躍も楽しみだが、まずは『貞子vs伽椰子』の彼女の熱演を見届けてほしい。【スタイリスト】コギソマナ【ヘアメイク】今井貴子(text/photo:Takashi Tokita)
2016年06月15日兄の連れてきた婚約者は…
いきすぎた自然派ママがこわい
義父母がシンドイんです!