山田太一×渡辺謙のタッグで“東日本大震災”をテーマに描くドラマスペシャル「五年目のひとり」。この度脇を固める俳優陣に、市原悦子、高橋克実、柳葉敏郎を始め、ベテラン&フレッシュなキャスト陣が発表された。中学生の松永亜美(蒔田彩珠)は文化祭からの帰り道、歩道橋で見知らぬ中年男(渡辺謙)に呼び止められる。男は、文化祭でダンスのステージに立った亜美を見たといい、「キレイだった。いちばんだった」と称賛の言葉を贈り、立ち去っていく。思いがけない褒め言葉に亜美は有頂天になるが、その話を聞いた母・晶江(板谷由夏)が心配のあまり、自宅に警察を呼ぶ騒ぎにまでなってしまった。数日後、亜美は偶然街で男を見かけ、彼が小さなベーカリー「ここだけのパン屋」で働いていることを知る。その男、木崎秀次は半年間ほど複雑骨折で入院していたという話で、知人・花宮京子(市原悦子)の誘いを受けて故郷からこの町に移住し、社会復帰のリハビリとして無給で働いているようだった。母が疑うほど、木崎のことを悪い人間には思えない亜美。会話を重ねるうち、次第に秀次と打ち解けていく。そんなある日、亜美はそのパン屋の主人・上野弘志(高橋克実)から、秀次の本当の身の上を聞く。実は秀次は、東日本大震災の津波で一度に8人もの家族を失ったという、あまりに壮絶な過去を秘めていた…。稀代の脚本家・山田太一が今回手掛けるのは、東日本大震災から5年が経過した東京のとある町を舞台に、孤独な中年男と少女の不思議な交流を通じて、震災の“その後”と“再生”を描く物語。主人公・木崎秀次役には、数々の山田作品で味わい深い演技を披露してきた渡辺さんが演じる。さらに今回、そんな秀次のことを気にかけ、働き先を紹介する同郷の女性・花宮京子役として、名女優・市原さんの出演が決定。市原さんも数々の山田作品に参加しており、山田氏が高い信頼を寄せる女優のひとりで、今回の出演も山田氏の強い希望で実現。そして、渡辺さんと市原さんは今回が初共演となる。渡辺さんは「まさに“怪物”のような方ですね!こちらの予想をいとも軽々と超えてくるような、素晴らしいお芝居をされるんです。山田太一先生から託された際どいセリフも嫌味なく乗り越え、人間として強く投げかけてくださるところに、懐の深さを感じました」と市原さんについて話し、一方市原さんは「よく気のついてくださる、やさしい方ですね。人間的にはもちろんですが、ハリウッド、舞台、映画、ドラマ…と俳優としてさまざまな“場”を知っている分、視野が広くて…。それが、とても頼りになりました」と共演の喜びを語った。そして、秀次が出会った少女・松永亜美役には、現在14歳の新鋭・蒔田彩珠。7歳で子役デビュー後、是枝裕和監督が演出を手がけた連続ドラマ「ゴーイング マイ ホーム」に出演し注目を集める若手女優だ。出演決定時は、とにかく不安な気持ちが大きかったと話す松永さん。主演の渡辺さんに関しても、セリフを間違えたりしたら怒られてしまうのではないかと思っていたそうだが、「実際は私がミスしたら、ギャグのアドリブで返してくださるような面白い方で、現場の明るいムードを作って下さいました。それでいてカメラがまわると目や雰囲気がガラっと変わるんです!渡辺さんは本当にスゴイ!と改めて感じて…引き込まれてしまいました」と現場でのエピソードを明かした。渡辺さんも飄々としていた印象があったと話し、「彼女はとてもいい意味で、人間的に“太い”のかもしれません。これからも自分の思うように進んでいってほしいなと願っています」とコメントしている。さらに、「ここだけのパン屋」店主・上野弘志役に高橋さん、弘志の妻・春奈役に木村多江、美術教師・西沢いずみ役に山田優、亜美の父・満役に柳葉さん、その妻・晶江役に板谷由夏ら演技巧者たちが集結。また、亜美の兄・晋也役には関西ジャニーズJr.の西畑大吾が出演する。山田太一ドラマスペシャル「五年目のひとり」は11月19日(土)21時~テレビ朝日にて放送。(cinemacafe.net)
2016年10月19日俳優の渡辺謙が主演を務める山田太一脚本のドラマスペシャル『五年目のひとり』(テレビ朝日系、11月19日21:00~23:06)に市原悦子が出演し、渡辺と初共演を果たすことが19日、明らかになった。このドラマは、東日本大震災から5年が経過した東京のとある町を舞台に、渡辺演じる孤独な中年男・木崎秀次と、中学生・松永亜美の不思議な交流を通じて、震災のその後と再生を描くもの。今回、山田の強い希望を受けて出演する市原は、秀次と同郷で長い知り合いという花宮京子役を演じる。市原は、初共演の渡辺について「渡辺謙さんはよく気のついてくださる、やさしい方。俳優としてさまざまな"場"を知っている分、視野が広くて、それがとても頼りになりました」と印象を語る。一方の渡辺は、市原を「まさに"怪物"のような方ですね!」と表現。「こちらの予想をいとも軽々と超えてくるような、すばらしいお芝居をされるんです」とその理由を語り、「山田太一先生から託された際どいセリフも嫌味なく乗り越え、人間として強く投げかけてくださるところに、懐の深さを感じました」と絶賛している。秀次と交流する中学生役を演じるのは、蒔田彩珠。蒔田は渡辺について「もう存在が大きすぎますし、セリフを間違えたりしたら怒られてしまうのではないかとなんて、勝手に思っていたんです」というが、「実際は、私がミスしたら、ギャグのアドリブで返してくださるような面白い方」と、現場のムードをつくる座長ぶりを実感したそうだ。このほか、高橋克実、柳葉敏郎、木村多江、板谷由夏、山田優、関西ジャニーズJr.の西畑大吾らの出演も決定。秀次をアルバイトに迎え入れるパン屋の店主役を演じる高橋は、山田太一ドラマ初出演で「自分が山田作品に出演できるとは思ってもいなかったので感激しました!」と喜びを語っている。
2016年10月19日第21回釜山国際映画祭(BIFF)が6日(現地時間)、韓国・釜山市海雲台区の”映画の殿堂”で開幕した。日本からも『怒り』の渡辺謙、李相日監督、『シン・ゴジラ』の長谷川博己、樋口真嗣監督、『嫌な女』の黒木瞳監督、『ジムノペディに乱れる』の板尾創路、行定勲監督らがレッドカーペットに登場した。開幕式の司会は『監視者たち』で師弟を演じたソル・ギョングとハン・ヒョジュ(「トンイ」)の2人が務めた。今年映画デビューを果たした人気グループ「SHINee」のミンホが登場すると、レッドカーペット前に駆けつけたファンから大きな歓声があがった。ほかに、開幕作品『春夢』(原題)のハン・イェリとヤン・イクチュンをはじめ、名優アン・ソンギや、オ・ジホ、イエル(「ジニョプの道」)、パク・ソダム(『ベテラン』)、キム・ギドク監督らが出席。今年の釜山映画祭は波乱があった。セウォル号沈没事故でのパク・クネ政権の対応を批判するドキュメンタリー『ダイビング・ベル』の上映をめぐり、昨年から映画祭側と釜山市側が対立。映画祭の独立性を主張するイ・ヨングァン前執行委員長が事実上更迭されるなどしたため、一時は開催も危ぶまれた。なんとか開幕にこぎ着けたものの、釜山市側の対応を批判し、ボイコットする映画人も少なくはなかった。さらには猛威を振るった台風18号の影響で、映画祭開幕前夜には海雲台ビーチのBIFFステージが崩壊するなど大きな被害を受けた。とはいえ期間中、イ・ビョンホン、チョン・ウソン、ソン・イェジン、ユン・ヨジョンら韓国を代表するスターや、黒沢清監督、山下敦弘監督、蒼井優らのトークなど、さまざまなイベントが予定されている。釜山国際映画祭は15日まで。(text:Ayako Ishizu)
2016年10月07日「第21回釜山国際映画祭」“ガラ・プレゼンテーション部門”へ正式出品されている映画『怒り』。この度、10月6日(現地時間)に釜山シネマセンターで開幕式が行われ、主演の渡辺謙と李相日監督がレッドカーペットに登場した。国内外で数々の映画賞を受賞し、大ヒットした『悪人』から6年。その『悪人』製作チームが新たに挑戦した意欲作が本作『怒り』。9月17日より全国324スクリーンにて公開された本作は、公開から19日間で観客動員数91万人、興行収入は11億6千万円を記録している。本作が正式出品されている釜山国際映画祭は、1996年に創設されたアジア最大の国際映画祭。今年話題の新進気鋭監督の新作を上映する“ガラ・プレゼンテーション部門”は、本作のほかにも『君の名は。』『ダゲレオタイプの女』『Bleed for This』(米作品)の4本が出品されている。これまで渡辺さんと李監督は、本作で「第41回トロント国際映画祭」「第64回サン・セバスティアン国際映画祭」などの映画祭に招待され参加。本映画祭は、渡辺さんにとって3か所目の国際映画祭となる。過去には2013年の第18回釜山国際映画祭にて李監督と初めてタッグを組んだ映画『許されざる者』がガラ・プレゼンテーション部門で公式上映、翌年の第19回釜山国際映画祭では日本人初となる開幕式の司会を務め、今回が3回目の参加となる渡辺さんにとってはゆかりのある映画祭だ。しかし、今回は台風18号が釜山を直撃。映画祭恒例の海雲台ビーチの特設ステージが高波によってすべて破壊されてしまったが、そのような状況の中でも映画祭スタッフ、釜山市民の手により映画祭は無事開催。そして数々の俳優、監督などがレッドカーペットに登場する中、渡辺さんと李監督が共にレッドカーペットに現れると、客席からはより大きな歓声が響き、「ここが僕の締めなので、気合入っています!」という渡辺さんのコメントに4,000人の観客が熱狂!レッドカーペットには、そのほかにもソル・ギョング、チェ・ミノ(SHINee)、キム・ギドク監督、そして日本からは黒木瞳、板尾創路、長谷川博己らが登場していた。なお、本日10月7日(金)には、釜山シネマセンター・ハヌルヨン劇場での公式上映が予定。さらに、2017年3月より韓国での公開が予定されており、現地の映画ファンからの期待が高まっている。『怒り』は全国東宝系にて公開中。(cinemacafe.net)
2016年10月07日「第64回サン・セバスティアン国際映画祭」にて、邦画で唯一選出されたコンペティション部門出品作『怒り』。この度、主演の渡辺謙、李相日監督が招待を受け、9月23日(現地時間)にプレミア上映が行われた。国内外数々の映画賞を受賞し大ヒットした『悪人』から6年。その製作チームで新たに挑戦した意欲作が『怒り』だ。豪華キャスト陣が出演していることでも話題の本作だが、今月17日(土)全国324スクリーンにて公開され、公開から6日間の時点では、観客動員数43万人、興行収入は5億6千万円を記録するヒットスタートを切っている。このほど、渡辺さんらが参加した「サン・セバスティアン国際映画祭」は、ヨーロッパにおいてカンヌ、ベルリン、ヴェネチアに次いで重要な映画祭とされている、スペイン最大の国際映画祭。毎年多くの映画監督や著名人が登場し、今年もまたリチャード・ギア、ジェニファー・コネリー、イーサン・ホーク、ユアン・マクレガー、ジョセフ・ゴードン=レヴィットなど、数多くのハリウッドスターが訪れた。今回の公式上映にあわせて、スペイン入りした渡辺さんと李監督は、上映に先駆けサン・セバスティアンの名所であるウルグル山を訪問。上映を前にして渡辺さんは、「サン・セバスティアンの人たちは、何か日本人と合う気がします。食べ物もすごく近い感じがするし、文化的な感じや伝統の感じも、日本人が親しみやすい環境がある気がするので、おそらく心情の部分をもっと深いところで受け止めてもらえるのではないかな」と期待を膨らませているよう。そして、「Kursaal Congress Centre(クルサールコングレスセンター)」で行われた公式会見に参加。渡辺さんは「こんにちはドノスティア!(ドノスティア:サン・セバスティアン通称名)」とバスク語で挨拶し、続けて「ここサン・セバスチャン映画祭にこの映画を持って来られて、大変うれしく、誇りに思っております。人生と同じく複雑でなやましい作品ですが必ず心のどこかに響く作品だと思っています。みなさんにどんな風に受け止めてもらえるかとても興味があります。エスケリックアスコ!(どうもありがとう!)」と流暢なスペイン語でコメント。李監督は「自分が本気で誰かに理解してほしいことをなかなか伝えることが出来ないもどかしさであったり、人はすぐ自分と何かが違うということで排除してしまうところがあるので、映画を観た人が、作品の中のキャラクターたちが本気で抱えている問題が、自分のように感じられるにはどうしたら良いか、悲しみの奥の根っこには何があるのかを観ている人に感じ取ってもらいたいと思って表現を選んでいます」と思いを語った。その後行われた上映には、映画祭最大級のキャパシティを誇る劇場を埋め尽くす1,800人もの観客が来場。場内満席の大盛況の中上映された。本編上映後は、観客総立ちの拍手喝采!さらに劇場ロビーでも映画を鑑賞した観客による盛大なお見送りを受けた渡辺さんと李監督。「見送られながら階段を降りて振り返ったときに、監督と僕とで映画にかかわったスタッフ・キャストの熱い想いを背負って拍手を受けている気持ちがすごくしました。ものすごい力で我々の思いを受け止められ、胸を打ちました」(渡辺さん)、「トロント国際映画祭の上映以上に、お客様は映画を集中して観ていました。冒頭のあいさつの頃は、お客様がざわざわしていたのですが、映画開始のワンカットめから水を打ったように静かでした」(李監督)と語り、見送りでは「観た直後の人たちの気持ちというか、何かを僕らに返そうとする気持ちにやられました」と感動しきりの様子だった。『怒り』は全国東宝系にて公開中。(cinemacafe.net)
2016年09月26日「一緒に暮らしてみようか…?」――。どちらともなくそう言い出し、その場で一緒に物件を探し始めた。愛し合う2人のプロポーズのエピソード…ではなく、役作りの話である。いや「愛し合っていた」のはまぎれもない事実だ。映画『怒り』において、ゲイのカップルを演じた妻夫木聡と綾野剛。なぜそこまでするのか?なぜそれが可能だったのか?私生活までも互いにさらけ出し、彼らは何を得て、何を作品にもたらしたのか?この愛おしい時間について、2人にゆっくりと、じっくりと話を聞いた。残虐な夫婦惨殺事件から1年。犯人は顔を変えて逃亡を続けていた。同時期に東京、千葉、沖縄に、犯人の特徴を備えた、3人の素性の知れない男たちが現れる。彼らと親しくなった土地の者たちは、その存在を受け入れつつも、事件を知り、自分のそばにいる男が殺人犯なのではないかと疑いを深めていく…。3人の中に犯人はいるのか?信頼と不信の間で苦しむ者たちの選択は?妻夫木さんと綾野さんが出演しているのは東京を舞台にしたエピソード。妻夫木さんは大手企業に勤める青年・優馬を、綾野さんは彼と知り合い、素性を明かさないままに優馬のマンションに転がり込み、同居生活を始める謎めいた青年・直人を演じている。意外にも、妻夫木さんと綾野さんは今回が初共演。同世代の共通の友人も多く、以前に数回、顔を合わせる機会はあったが、じっくりと言葉を交わしたのは本作が初めてだった。妻夫木さんは、相手役である直人を綾野さんが演じると聞いて「ホッとした」という。「その時点で剛のことよくを知らないし、これからいっぱい知っていけるという喜びのようなものがありました」。単に俳優・綾野剛と共演できるという喜びという意味ではない。見ず知らずの関係から出会い、愛情を育んでいく優馬と直人の関係を作り上げる上で、ほぼ初対面に近い綾野さんが相手役であるというのがプラスになると感じたのだ。「これが(以前からよく知っている)小栗旬や瑛太だったら…それはそれで、安心できる部分はあったかもしれないけど。ただ、優馬と直人は、出会ってから幸せに過ごすまでがすごく短い期間の中でギュッとつまってるんですよね。その感じは、もともと、仲の良い関係じゃない方がいいと思ったし、剛が相手で助けられた部分だと思います」。綾野さんは、妻夫木さんが優馬役と知り、喜びに打ち震えた。「年上の俳優の中でも、ダントツで好きな俳優でしたので、まずはご一緒できることに喜びを感じました。僕の中では“安心感”なんてものはとうに超えていて、僕自身の中からいろんなものを引き出してもらえるんじゃないかという思いもありました。若い頃から(作品を)観てたので『実在してるんだ』という感覚。ちゃんと向き合うってことに関しては自信はありましたが『ついていけるのかな?足を引っ張らないようにしなきゃ…』という思いもありました。でも、それも一瞬ですね。お会いして、そういう不安は全て吹き飛びました」。では、この短い期間でどのように関係性を築いていったのか?妻夫木さんは「いっぱい喋るとか、コミュニケーションをとるってことじゃないんだろうな、とは思ってました」と語る。実生活での“同棲”を決めたのは、撮影が始まって数日後。映画の中で、優馬と直人はハッテン場のサウナで出会ってすぐに肉体関係となり、それから一緒にラーメン屋で食事をし、そこで優馬が「行くとこないならウチに来るか?」と声をかけて同居を始める。妻夫木さんは、同棲に至る経緯をこう明かす。「最初から(同居することを)決めてたわけじゃないけど、2人とも同じことを考えてたんですよね。それでどちらともなく『じゃあ、そうしようか』と。その3日後くらいにラーメン屋のシーンが控えていたので、それまでに入れるところということで、部屋を探したんです。できれば、キッチンとかも揃っているところがよくて、ウィークリーマンションなんかを当たったんですけど、(入居希望日が)近すぎて契約できなくて、結局、ホテルに落ち着いたんです。お互いの本当の家じゃ、もともとの“匂い”があるので、それも違うだろうし…」。綾野さんはその言葉にうなずき、続ける。「映画のストーリーに沿うなら、妻夫木さんの家がセオリーだけど、それじゃ優馬の家じゃないから、妻夫木さんがキツイんですよ。互いに一から作っていけるところが良かったんです」。映画では、幸せな同棲生活を送っていたはずの優馬と直人だったが、ある日突然、直人は優馬の前からいなくなってしまう。妻夫木さんと綾野さんの同棲生活でも、綾野さんは物語に忠実に、何も告げずに妻夫木さんの前から消えた――。まずは妻夫木さんの証言。「ホテルを選んで一番良かったと思ったのは、(ホテルスタッフが)ベッドメイキングをしてくれるということ。剛も本当に突然、いなくなっちゃったんだけど、次の朝を迎えても、隣りのベッドはベッドメイキングされたきれいなままの状態なんです。いつもそこで寝てるはずの直人だけがいなくて…。それを見たらもう寂しくて仕方ない(苦笑)!おれが監督だったら、そのベッドを撮るなぁってくらい、きれいないいベッドメイキングでした(笑)」。一方、綾野さんは綾野さんで、いつ、どのタイミングでホテルの部屋を後にするのかを考え抜いて、実行に移したという。「撮影は完全な順撮りってわけじゃなかったんですが、もう次の日の撮影で、直人はいないというシーンがあって、『今日の内にいなくならないと』と考えてました。それまでほぼ毎日、2人で外で同じものを食べて、一緒にホテルに帰ってきてたんですけど、その日、一緒に帰ってきてエレベーターで『あ、コンビに行くけど何かいる?』って声をかけて『いや、大丈夫』、『わかった。じゃあ行ってくるね』『気を付けてね』というやり取りがあって、そのまま外に出て、いなくなりました」。まさにそれ自体が映画の1ページのようである。妻夫木さんが「シャワーを浴びながら、だんだん帰って来ないんじゃないかって気がしてきて、『あぁ、やっぱり』と思った」と言えば、綾野さんはニヤリと笑みを浮かべ「この話はしてなかったけど…」と前置きし、こんなエピソードを明かしてくれた。「ホテルを出てタクシーを捕まえて…ああいうとき、ドラマとかではすぐに乗り込むんじゃなく、部屋の方を見たりするじゃないですか?演出家も俳優もその瞬間を残そうとして。そういうの、うさんくさいと思ってましたけど、実際、やてしまった。『ごめんね』と思いながら、部屋の明かりをちらりと見て、タクシーに乗り込みました」。なぜそこまでの役作りをするのか?そう問いかけたくなるが、2人とも、こうしたアプローチを自然な流れと捉えている。もちろん、頻繁に起こることでない。だが、妻夫木聡と綾野剛という、不思議と共鳴し合う2人がこうして出会ったからには、そうなることは当然の帰結であったと感じている。「この映画の中の2人も出会っちゃったわけで、それと同じ。おれらも出会っちゃった…それでいいんじゃない? という気がしてます」と妻夫木さん。そこには当然、相手が綾野さんだったからという思いが含まれている。「一緒に暮らしてるときも役名で呼び合ってたけど、じゃあ、そのときのパーソナリティは役柄かというとそうじゃない。そこは、うまく説明できないけど、相手によるものだなと思います。じゃあ、もし渡辺謙さんと親子役を演じることになっても、『普段から“お父さん”と呼ばせてください』って言えるかというと『もしかしたら、こいつめんどくさいって思われるんじゃないか?』とか考えちゃう。剛とはそんなこと、考えずにいられたんです、お互いに。それは奇跡的かもしれないけど、それだけのことなんですよ」。綾野さんは「それで何が変わったかですか?言葉にはできないけど、確実に体温が変わった」とふり返る。「相手の寝息を聞いて、朝になって『直人、そろそろだよ』と起こされて、『ただいま』とか『お帰り』と言葉を交わす。この東京編は、すごく普遍的なんですよね。僕らは性的マイノリティではあるけど、嫉妬したり、不安になったり、抱きしめ合って肌の隙間を埋めたり…。だから、そういう日常的なことが大きかったと思うんです」。もうひとつ、インタビューを通じて、2人の口からたびたび出てきたのが「同じ方向を向いている」「同じ目線で見ている」という言葉。妻夫木さんは「そもそも、会ったときから“距離感を縮める”という意識はなかった」と述懐する。互いに向き合い、歩み寄るのではなく、横に寄り添うという意識。「リハーサルでも李(相日監督)さんは、いつものように『違う!違う!』ってばかり言うんだけど(笑)、お互い、その『違う』に対してどうしていくのか?そこで向いている姿勢、方向が一緒だった」。綾野さんは、映画の中でも2人が真正面から向き合うカットはほとんどなく、ラーメン屋で食べているシーンから、ほぼ一貫して横に並び、直人は優馬の「横顔ばかりを見ていた」と指摘する。「何が重要って、同じ景色を一緒に見るという展望なんですよね。マイノリティは子どもを産むことができないから、未来に命をつないでいくことができない。でも、2人で同じものを見る行為に幸せを感じている。優馬が見ているものを、一緒に見よう――気づいたら、そういう気持ちになってました。僕が見たいのは、優馬の横顔と、彼が見ているその先の景色だったんですね」。狂おしいほどの愛おしさを感じながら歩み続けた2人。彼らの視線の先に広がる運命をスクリーンで見届けてほしい。(photo / text:Naoki Kurozu)
2016年09月20日2016年9月17日、18日の全国映画動員ランキングは、TOP3に新作2本がランクインするも、公開4週目の『君の名は。』(全国298館)が首位を守った。その他の画像初登場2位は、大今良時の人気コミックを京都アニメーションが映画化した『映画 聲の形』(全国120館)。初登場3位には、吉田修一の同名小説を李相日監督が、渡辺謙、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛らの競演で映画化した『怒り』(全国324館)が入った。そのほか、スティーヴン・スピルバーグ監督の新作『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』(全国348館)が初登場8位にランクインしている。次週は『真田十勇士』『ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK ‐ The Touring Years』『ハドソン川の奇跡』『メカニック:ワールドミッション』『闇金ウシジマくん Part3』などが封切られる。全国映画動員ランキングトップ10(興行通信社調べ)1位『君の名は。』2位『映画 聲の形』3位『怒り』4位『スーサイド・スクワッド』5位『四月は君の嘘』6位『シン・ゴジラ』7位『超高速!参勤交代 リターンズ』8位『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』9位『ペット』10位『キング・オブ・エジプト』
2016年09月20日篠山紀信によって撮影されたポスターを見ても、それが宮崎あおいであるとすぐに認識できないひとも多いのではないか?映画本編ではもっと凄まじい。肉体も精神も“ボロボロ”という言葉以外、思い浮かばない状態に追い詰められ、痛みを、哀しみを、苦しさを、そして愛情を体いっぱいで表現し、獣のように泣き叫ぶ。これまでも、様々な作品で多様な役柄を演じ、高い演技力を評価されてきた。それでも、この映画『怒り』では全くの別人と思えるような姿を見せている。「私も最初『なんでこの役が私に来たんだろう?』って思いました」――。なぜ宮崎あおいがこの役を?失礼ともいえるそんな質問に、宮崎さんは「わかります(笑)。正直、脚本を読みながら、『この役なら私じゃなくて…』と別の女優さんのイメージが浮かんできましたし」と穏やかな笑みさえ浮かべてそう語り、「でも…」と静かに言葉を続ける。「その中で、こうして私にこの役のお話をいただけたということは、きっと何か意味があるんだろうって思ったし、李(相日)監督が私を選んでくださったなら、そこに挑戦してみようという気持ちでした」。原作は吉田修一の同名小説。夫婦惨殺事件の犯人が顔を変えて逃亡を続ける中、東京、千葉、沖縄というバラバラの土地に、同時期に3人の素性の知れない男が現れる。隣人や彼らを愛する者たちは、指名手配の似顔絵を見て「彼は殺人犯なのか…?」との疑いを深め、愛情とのはざまで葛藤する。宮崎さんが演じたのは、千葉の港町で父(渡辺謙)と暮らす愛子。家出して上京し、風俗店に流れ着いていたが、身も心も傷ついて、連絡を受けた洋平が彼女を迎えに来る。地元に戻った愛子は、数か月前に流れ者のように町に来て、洋平の下で働き始めた田代(松山ケンイチ)と出会うが…。いままでやってきた役とも、自分自身ともかけ離れている愛子という役を前に、宮崎さんの心は、覚悟と不安の間で揺れていた。「これまでと違うものに飛び込んでいくんだなという気持ちでしたし、不安も大きかったです。本当にそこまでたどり着けるのか?という気持ちもありました」。純粋無垢で、それゆえに愛する者に、見返りを求めるでもなく過剰ともいえる情を注ぎ込み、傷ついていく。そんな愛子を宮崎さんはどのように見ていたのだろうか?「あやうい子ですよね、正直。それは演じているときも感じていたし、いまもそう思います。もっと上手に生きていくことができるんじゃないか?と思う部分はたくさんあります。でもあやういイタい子だけど、本当はいろんなことをわかってるんじゃないかと思う瞬間もあって…。不器用ながらも彼女が掴みかけているものを手放さないで、奪わないでと思うし、どこかで愛おしさのようなものを感じてるんでしょうね…」。登場シーンは洋平が迎えに来た歌舞伎町の風俗店のシーン。傷つき、すっぴんのままで横たわり、それでも父の姿を認めると「お父ちゃん…」と弱々しくも笑みを浮かべる。「化粧してない顔をスクリーンにさらすとか、役のために体重を増やすとか、正直、自分の中ではたいしたことではないんです。それで愛子ちゃんでいられるのなら、どんなことでも厭わない。でも、化粧をしてないから愛子ちゃんになれたかっていうと、そうじゃない。現場のスタッフさん、共演者のみなさんが私の顔を愛子ちゃんに変えていってくれたんだと思います。追い詰められて、追い込まれて…、そういう環境の中で、メイクだけでは変われない人相みたいなものが作られたのかなと」。そう、宮崎さんは、追い詰められ、追い込まれた。誰に?李相日監督に。そして、自分自身に…。「李さんには実際、精神的にも肉体的にもギリギリのところまで追いやられましたよ(苦笑)。でも言葉じゃないんです。無言の圧力と態度(笑)。付き合いの長い妻夫木くん曰く、李さんの中にも前もって確たる答えがあるわけじゃなく、一緒に探す作業をしてるんじゃないかって。だから、監督の感覚の“何か”にハマったものを見せた時にOKが出る。それは追い詰められますよ!(求めているものが)わからないんですから(笑)」だが、苦しいのはそこじゃなかった。むしろ「追い込んでもらっているのに、監督が求める愛子に到底、達してないんじゃないか?そんな自分のふがいなさがしんどかった」という。「追い込まれるのって必然で、愛子になるために通らないといけない道なんですよね。それこそ、これまでの人生で最も長く感じた2週間でしたし『まだ終わんない…』『明日もあるんだ…』って思ってるんですけど、それでも、愛子として生きるにはそれが必要だったんです。今回、初めて気づいたのですが、私、自分で自分を追い込むのは割と好きだけど、他人に追い込まれるのは得意じゃないんだなって(苦笑)」。なんともしんどい性格である。何より強く求められたのは、感情のリミッターを取り除くこと。それが、現れているのが、獣が吠えるかのような慟哭シーン。「監督には『良くも悪くも感情をセーブできてしまうから、それをしないで』と言われました。人間ですから感情をコントロールできてしまうし、おそらく私は、私生活でも他人よりも感情をセーブしがちなんですよね。すごく楽しんでても『大丈夫?楽しくない?』とか心配されますから(笑)。そのブレーキを全て外してアクセルを全開にして…それがきちんとできていたかはわかりませんが、すごいところに連れて行ってもらったなと思います」。意図したこと、意図せざることを含め「これまでと違うこと」はそこかしこにあった。撮影の前日に脚本をじっくりと読み込むということもそう。「普段はセリフを覚えるために軽く読む程度で、内容を頭に入れて、それで終わりでした。でも今回は、どこかに愛子ちゃんのヒントが落ちてるんじゃないか? って。セリフは完全に覚えてるのに行間に愛子ちゃんがいるんじゃないかと、寝る前にずっと読んでました。初めてのことですね」。いつもと違うことが起こる“予感”はあった。一方で、自分から「何かを変えたい」「新たなステージに進みたい」などと願っていたわけではない。ものすごい熱量を傾けたこの作品を経ても、その意識は変わらないし、いたって冷静である。「ないんですよね…。観てくださった方にこれまでと違うと感じていただけるのは嬉しいですが、『いままでと違うことをやりたい』という気持ちはないです。あんまり先のことを考えてもいないですし、女優としてどうなりたいか?1年、2年、10年先の自分がどうなってるか?といったことよりも、いま目の前にあることを一生懸命やって、穏やかな生活が送れればいいなって思ってるので。特別な変化を求めてはいないです」。ここまで凄まじい姿をさらけ出している女優の口から「穏やかな生活を送りたい」という言葉が出てくるのがなんとも面白いが…。ではいま、女優・宮崎あおいが仕事の中で感じているやりがいは?「今回、この作品に参加して改めて思ったのは『映画って素敵だな』ということ。情熱と時間をかけて丁寧にものを作っていくこと――そこに参加できることに幸せを感じています。だからこそ『自分がどう見られたいか?』とか『新たな挑戦を』というよりも、素敵な作品にかかわり、そこで自分にできるお芝居で役に立てればそれが一番だなと思っています」。最後にもうひとつだけ「これまでと違うこと」を。普段、関係者を集めた初号試写で完成した作品を鑑賞しても「監督やスタッフさんとそこでお話をするのが得意じゃない」ため、上映後はすぐに帰ってしまうことが多いという宮崎さん。本作に関しては「監督やスタッフのみなさんと時間を共有したくて」会場に残り、周囲の会話に耳を傾けていたという。「“いまの時代だから”というのは私にはわかりませんが、これだけむき出しの感情を見られる映画はなかなかないと思います。嘘のない、生の感情に触れて、出演している身でありながら、私自身、動悸が止まりませんでした」。(photo / text:Naoki Kurozu)
2016年09月19日杏が初主演を務めた映画『オケ老人!』の完成披露試写会が9月19日(月)、ニッショーホールにて行われ、出演する杏、笹野高史、黒島結菜、坂口健太郎ら総勢8名が登壇した。なお、杏さんが公のイベントに登場するのは出産後初となったが、変わらぬスリムな姿とあふれる幸せオーラをまとっていた。『オケ老人!』は平均年齢、おそらく世界最高齢のアマチュア・オーケストラに間違えて入団し、指揮をとることになった主人公・小山千鶴(杏さん)が奮闘する姿を描く痛快ストーリー。老若男女問わず、世代を超えてぶつかり合い、刺激し合い、人生を謳歌する姿から元気をもらえる作品に仕上がっている。5月16日に双子の女児を出産した杏さんは、「新しい発見の毎日で、久しぶりに今日来て、そういえばこういう世界にいたなあって。ずっと家の中にいたので、皆さんに会えてうれしいです」と、やや緊張の面持ちを見せた。作品については、「老人という言い方をしちゃうとあれなんですけど(笑)、皆さんが誰よりも元気だから、負けないようにと逆に元気をもらった現場でした」とまとめると、隣にいた小松政夫が「上手だねえ」と誉めそやした。杏さんとの共演シーンが多かった笹野さんは、すっかり打ち解けた様子。笹野さんは、「杏お母さんと朝ご挨拶しました。双子をどうやって抱いてるのと聞いたら、一人が膝で一人を抱えてるって!」と感心しきり。さらに、「杏さんはお父さんがすごい人ですからね。お父さんと一緒に仕事をしている気持ちで、とても緊張しました」と、父親の渡辺謙さんを引き合いに出し、チャーミングにおどけた。千鶴が想いを寄せるも、その気持ちに気付いていないという罪でピュアな男・坂下を演じたのは、坂口さん。「何となく演じていても、先が読めないんです。天然なのかわからない男の子なんですけど、プロデューサーから『坂口くんにすごい合っているキャラクターだよ』と言われて、そんなに似てるかなと思いながら…」と、自身は天然ではないと話し出すと、笹野さんが身を乗り出してニヤニヤ。「本人、地でやってるんだなって(思った)」と坂口さんに声をかけると、坂口さんは「地も出しつつ、やらせていただきました」とタジタジになりながら話を合わせていた。完成披露試写会には、そのほか、石倉三郎、藤田弓子、細川徹監督も出席した。『オケ老人!』は11月11日(金)より全国にて公開。(cinamacafe.net)
2016年09月19日公開初日を迎えた映画『怒り』の初日舞台あいさつが17日、東京・有楽町のTOHOシネマズ日劇で行われ、主演の渡辺謙をはじめ、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、宮崎あおい、妻夫木聡、李相日監督が出席した。公開初日を迎えたこの日の舞台あいさつは、主演の渡辺謙らキャスト陣と李監督が登壇し、観客の質問にキャスト陣と李監督が答えるという形式でスタート。そのような中で、李監督の魅力を問われた渡辺は「李監督とは前作の『許されざる者』以来ですが、李監督は役を作って何かを表現し、その先にある何かを要求してきます。それを丁寧に丁寧に待ってくれて切り取ってくれる監督ですね」と他の監督と異なる手法を紹介した。その渡辺の娘・愛子役を演じた宮崎はファンからの「渡辺謙さんと共演した印象は?」という質問には「今日から映画が始まって皆さんのモノになるのはうれしいんですが、明日からお父ちゃんに会わないと思うと寂しいんです」と話し、「お父ちゃんは現場で支えてくれて自分の居場所を作ってくれました。私の横に椅子を置いて話をするでもないんですが、そういう時間があったからこそ愛子とお父さんの関係ができたと感じています。謙さんの娘を演じられて幸せに思っています」と感極まって涙ぐむ場面もあった。最後に「撮影で苦労したことは?」と質問されて「監督との戦いです(笑)」と会場の笑いを誘った広瀬すずだが、「いきなり(広瀬が演じた)泉が沖縄にポンと来て、そこで出会って物語が進んでいくので、それまで17年間泉が生きたことやお芝居に行くまでの心情などを監督と話し合って、色々大変でした」と赤裸々に語ると、劇中で広瀬と絡みの多かった森山は「すずちゃんがクシャクシャになっていく姿を見ていました。でも目をキラキラさせて巨人の李監督を見上げている姿しか印象がありません。そんなすずちゃんをケアしようと思ったんですけど、役柄的に近づけなかったので、俯瞰して見るしかありませんでした。心中お察しするのみでしたね(笑)」と李監督の厳しさを物語るエピソードを明かしていた。数々の映画賞を総なめにした2010年公開の映画『悪人』の李相日監督と脚本の吉田修一が再びタッグを組んだ本作。東京・八王子で起きた殺人事件の真相に迫りながら、「信じるとは?」という根源的な問いを投げ掛けるヒューマンドラマに仕上がっている。
2016年09月17日俳優の渡辺謙が9月17日、都内で行われた主演作『怒り』の初日舞台あいさつに登壇。2013年に公開された『許されざる者』に続き、再タッグを組んだ李相日監督に対し「役作りして演じるだけじゃなく、その先にあるものを待ってくれる。正直に役者と向き合い、心を開かせてくれる存在」と深い敬意を示した。『怒り』舞台あいさつ/その他の写真一方、李監督は「いつも役者さんには『こういう風に…』とストレートな指示はせず、役についてどう思っているのか質問することが多い。なので、とことん苦しみながら、面白がってくれる忍耐強い俳優じゃないと付き合いきれない」と語り、「お互いの存在があって、成り立っている」とキャストへの感謝を述べた。犯人が現場に“怒”の血文字を残した夫婦殺害事件から1年。整形した犯人が逃亡を続けるなか、東京、千葉、沖縄に素性不明な3人の青年が現れ、その正体をめぐり、周囲の人間が疑心暗鬼に陥る。李監督と原作・吉田修一氏の『悪人』コンビが再び集結した。舞台あいさつには渡辺と李監督に加えて、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、宮崎あおい、妻夫木聡が登壇。渡辺と親子役で共演した宮崎は、「現場では私の居場所を作ってくれた。今日で“お父ちゃん”に会えなくなるのは、さみしいですが、謙さんの娘を演じられて幸せ」と涙ぐんだ。松山とは約10年ぶりの共演だといい「私をリードしてくださり、頼りがいのある存在だった」と語ると、松山は「ある女優さんが『あおいちゃんは変人』って言ったんですが、今回その意味がよくわかりました(笑)」と笑いを誘った。「見終わってこんなに愛おしい涙が流れたのは何年ぶりか」(綾野)、「私にとっては戦いのような撮影でしたが、今は財産になりました」(広瀬)、「怒りについて考える作品ですが、最終的には救いの映画なんだと思う」(妻夫木)、「すずちゃんがくしゃくしゃになる姿を、俯瞰で見ているしかなかった。心中お察しします」(森山)と共演陣も本作への強い思いを語った。『怒り』公開中取材・文・写真:内田 涼
2016年09月17日映画『怒り』が9月17日(土)に公開を迎え、主演の渡辺謙をはじめ、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、宮崎あおい、妻夫木聡、そして李相日監督が初回上映後の舞台挨拶に臨んだ。吉田修一の小説を原作に、ある夫婦惨殺事件の逃亡犯の疑いのある3人の男たちとその周囲の人間たちのドラマが東京、千葉、沖縄を舞台に展開する。この日の舞台挨拶は、映画を観終えたばかりの観客からの質問に登壇陣が答えるというQ&A方式で進行。公開初日の舞台挨拶での観客の質問に答えるというのは異例とも言える。宮崎さんは、渡辺さんが演じる漁港で働く洋平のひとり娘の愛子を演じており、松山さん演じる流れ者の田代と恋に落ちる。2人との共演の感想を尋ねられ「松山くんは、10年ほど前にご一緒したんですが、そのときは線の細い少年の役だったこともあり、年下の男の人だと思っていたんです。実は年上で、おしゃべりが好きで、思ったことを全て口に出す気持ちのいい方で、助けていただきました」と語る。また渡辺さんについてはトーク中も劇中同様に渡辺さんを「お父ちゃん」と呼び「いま、すごく寂しいんです。映画が公開され、明日から“お父ちゃん”とはもう会えなくなっちゃうのかと思うと…。私は現場で一人でいることが多いんですけど、お父ちゃんは『ここに座りなさい』と居場所を作ってくれて。『お父ちゃんについていけば大丈夫!』と安心して臨めたし、こうして一度でも娘を演じることができて、幸せでした」と語り、途中で感極まったか、言葉を詰まらせる一幕も!渡辺さんは、宮崎さんがこれまでの作品では見せたことのない姿、表情を見せていることに触れ「彼女の“覚悟”は感じていたし、見届けたいと思ってました」と称え「また連絡くださいね!」と“愛娘”に優しく微笑んだ。松山さんは「昔、ある女優さんと話してて『いままで一番変人だと思った役者は誰か?』という話になり、その女優さんはあおいちゃんの名を挙げたんです。意味が分からなかったけど、今回共演してよく分かりました!」と独特の言葉で宮崎さんを称えた。また、妻夫木さんには映画の中に登場する「大切なものが多すぎる」という言葉にちなんで「妻夫木さんが大切にしていること考えはありますか?」という質問が飛んだが、妻夫木さんは「人ですかね…。家族、友達、、仕事仲間。人と人の絆がないといいものは生まれない。感情と感情がぶつかり合う時間を大切にしたい」と語った。これに対し、映画の中で恋人役を演じた綾野さんが「愛というものに対してテーマを持っている人だと思います」と妻夫木さんを分析。妻夫木さんは「大河ドラマ(『天地人』/直江兼次役)で“愛”って(鎧かぶとに)付けてたからね(笑)」と冗談めかし、照れくさそうに笑みを浮かべていた。最後に映画の公開を祝って登壇陣と観客で鏡開きを敢行!渡辺さんに急きょ、指名された妻夫木さんの音頭で乾杯し、作品の船出を祝福した。『怒り』は全国にて公開中。(text:cinemacafe.net)
2016年09月17日渡辺謙が半ばあきれ顔で漏らす。「最初に犯人を決めずにこの小説の連載を始めたって?なんて恐ろしいことをやる人なんだろうって(笑)」。吉田修一は「いま、こうしてお話ししていて、なぜ李相日監督が、渡辺さんもあの役を…と考えたのか、わかってきた気がします」と顔を輝かせる。ペンと肉体。小説と映画。表現の方法や道具は異なれども、2人の男たちは確実に、ひとつの物語を共有し、共鳴した。作家・吉田修一が生み出し、俳優・渡辺謙が己の肉体を駆使して登場人物のひとりを表現した物語『怒り』。小説として誕生し、映画として産み落とされるまで――その“はじまり”と“終わり”に携わった2人が語り合う!――吉田さんが『怒り』の連載を開始されたのは2012年ですね。夫婦惨殺事件の現場に「怒り」という血文字が残されているという、センセーショナルな幕開け。犯人が顔を変えて逃亡を続ける中、東京、千葉、沖縄に、犯人と同じ特徴を有した3人の男が現れ、彼らの周囲の人間、彼らを愛する者たちが「実は自分の一番近くにいるこの男は殺人犯なのか?」という不信と愛情のはざまで葛藤します。そもそも、こうした作品を描こうと思ったのは…。吉田:テーマに関して、なかなかひと言では言い表せませんが…小説って「次はこれを書こう」って思って書けるもんじゃないんですよね。その時の自分が感じてること――その時、“書くべきもの”があるんですよね。それに従って書くしかなくて、その時は“怒り”という言葉を元にした物語を書くということだったんですね。なぜと言われると分からないんですが…。渡辺:啓示というと大げさかもしれないけど、何か降りてくるんですかね?吉田:何とも言い難いんですけど、そんな感じですね。本当に自分ではどうにもできない。その時に“喜び”で何か書こうとしても、全く筆は進まないんです。――いま、連載、刊行から少し時間を置いてみて、ふり返ってみて理由や背景について思い当たることや分かってきたことなどはありますか?吉田:いや、それもないんです。いろんな感想が届いて、こっちがなるほどと思ったりもするけど、本人は「だからこういうことだった」という結論には至らないんです。渡辺:思考というよりも、皮膚から入ってくるようなものだね(笑)?吉田:まさに!抗えないんですよ。ただ、イメージとしての“怒り”でいうと、小説を書いているときは、血文字の真っ赤な“怒り”だったんですよ。でも、完成した映画を見て、渡辺さんが演じた洋平やラストシーンを見ながら、自分の中の“怒り”の文字が少しずつ薄れてきたんですよね。ネガティブな感情としてあった怒りを、この映画はラストへ進む中で、消してくださるような作用があったんじゃないかと感じてます。――渡辺さんはどのようにこの映画『怒り』に携わることに?李相日監督とは『許されざる者』に続いてのタッグですね。渡辺:『許されざる者』が終わったときに、「また何か、形にしたい企画があれば、どんなものでも参加するから」とは伝えてたんですよ。それで「こういう企画を考えてます」って吉田さんの原作を渡されたんです。――では原作から入られたんですね?渡辺:そうです。ただ、どの役かといった説明は全くなくて。読んでいく中で「優馬(※映画では妻夫木聡が演じているゲイの青年)ではないよな…」とは思ったけど(笑)。ただね、読み進めていく中で、僕、ページがめくれなくなっちゃったの。何というか、悪い習性なんだけど、物語に鋭い角度で入り込み過ぎちゃって。そこで悩んじゃうとページが進まないの(苦笑)。その時点で「参加したい」って気持ちは固まってたけど、読みえた時は、正直「李のやつ、また厄介な本を…」って思ったよ(笑)。吉田:すみません(苦笑)。渡辺:東京、千葉、沖縄と3本の話があって、非常に根源的というか、人間としての根っこの部分をえぐられる物語だよね。きちんとこの3本のドラマをうねらせながら、2時間の中で深く掘り下げていくって至難の業だよなぁって。――吉田さんは、執筆されているときは映画になるとは…吉田:書いている最中は、そんなこと考える余裕はなかったですね。でも、書きあがったときに「李さんはこれをどう読むかな?」ってすごく興味がわいてきて、送ったんです。渡辺:馬の前にニンジンをぶら下げたようなもんですよ(笑)。吉田:いま考えると、渡辺さんが、物語の構成を変えて、犯人を追う刑事の役(※映画ではピエール瀧が演じている)を演じるってのも、ありだったかなってふと思ったんですよね。いまとは全く違う映画になるでしょうけど、あの刑事に焦点を当てた物語も面白いだろうなって。でも、李さんは、渡辺さんに洋平をやってもらうと。――洋平は、千葉の漁港組合で働く男で、妻を亡くして娘の愛子(宮崎あおい)と暮らしている男ですね。愛子に幸せになってほしいと願う父親ですが、決してキリッと強いタイプではなく…。吉田:どちらかというと、優柔不断で決められない、弱い男ですよね。渡辺さんが洋平…。『許されざる者』での李さんと渡辺さんの関係性があるからこそなんでしょうが、かなりチャレンジャーだなと(笑)。やっぱり、いまでも不思議なんですよ。いや、逆にお聞きしたい! なんで洋平役を受けてくださったんですか?渡辺:役の大小とかかっこよさではないんですよね。その役を生きて、心を震わせるかってところで、僕はこの物語を読んで、それを深く感じたんです。とはいえ、どこか洋平という男を掴みきれないまま、「これは監督と一緒に悩みながら作っていけばいいのかな?」と走り出したところもあります。――千葉編は洋平と愛子の親子、数か月前に街に現れて洋平の下で働くようになり、愛子と恋仲になる田代(松山ケンイチ)の3人を軸に展開しますね。田代は事件の真犯人なのか?というミステリ部分はもちろん重要ですが、それと同じくらい、洋平の愛子に対する自信の持てなさ――自分の娘は決して幸せになれないんじゃないか?と考えてしまう弱さの部分がドラマとして際立っています。渡辺:それが顕著なのは、事件の真相そのものよりも、愛子が洋平のところに来て泣くところですよね。あそこはつらかったなぁ(苦笑)。田代を疑っている自分がいて、愛子も同じ思いを持っていて、それに苦しんでる彼女を目の前にして…本当に悲しかったです。人間て不思議なもので、結果や真相以上に、その過程で疑いを抱いてしまっている自分に苦しむし、それが弱さなんですよね。――池脇千鶴さん演じる、近所に住む姪(愛子の従姉)が、洋平に「おじさん、本当は『愛子が幸せになれるはずがない』って思ってるんじゃないの?」とグサリと言い放つシーンも強烈です。吉田:素晴らしかったですね、あのシーン。渡辺:刺さりますよ、本当に(苦笑)。自分でも知らず知らずに確信を積み重ねていて、ボタンを掛け違えている。そのずれ、核心をズバッと突かれてしまう――もうね、愕然とするくらい、堪えました(笑)。――先ほど、演じる前は洋平を「掴みきれていなかった」とおっしゃってましたが…渡辺:わかんなかったですよ。僕とは正反対ともいえるタイプ。なぜ決められない?なぜその道を選んでしまう? その中にある苦しみ、弱さに何とか寄り添おうとしてました。そんな時に、吉田さんが千葉に撮影の見学にいらっしゃったんですよ。吉田:見学させていただきました。渡辺:その時に、「洋平には、千葉編の愛子と田代の物語だけでなく、東京編の優馬と直人(綾野剛)の物語、沖縄編の泉(広瀬すず)と辰哉(佐久本宝)、田中(森山未來)の物語、その全てを最後の最後で受け止めてほしいんです」とおっしゃっていただいて。その時ね、いろんなことがはっきりしたし、的が見えてきたんです。これは僕だけの物語じゃないんだ。3つの純愛、血だらけの3つの物語を受け止めなくちゃいけないんだと。吉田:先ほども言いましたが、最初、この洋平という男を優柔不断な弱い男として僕自身もまた捉えて「なぜこの役を渡辺謙が?」と考えていたんですよ。でも違う。「最後に全てを受け止める男」として考えたら、それはやっぱり渡辺さんなんですよね。いまこうして話していて、李さんは最初からそこを見ていたんだ!と感動を覚えています。――吉田さんは、前回、『悪人』でも李監督と組んでますが、小説『悪人』に関して現時点でのご自身の「最高傑作」とおっしゃってました。いま、『怒り』は吉田さんの中でどのような作品に?吉田:最高傑作になったかどうかはともかく、書くときは「『悪人』を超えなきゃ」という意識でしたし、この映画に関しても李さんをはじめ、みなさんが強い思いで参加してくださっているのを感じていました。自分の中では『悪人』を超える作品になったんじゃないかと思っています。渡辺:結局、クリエイトし続けるってことは、上書きしていくということだからね。もちろん評価は読者や観客がすればいいけど、作る側は、作家であれ俳優であれ、常に「これが自分のベスト」という思いで作り続けていかないといけない。――渡辺さんにとっては、吉田さんの作品に出演されるのは初めてでしたが、いま、改めて作家・吉田修一の凄みをどんなところに感じてますか?渡辺:いや、無からこれだけの作品を産み落とす、その苦しみは計り知れないですよ。まして、犯人を決めずに連載を始めたって(笑)。それは、冒険であり、物語と一緒に旅をするわけですよね。普通は、プロットを書いて、箱を決めて、そこにあった物語を書き始めるでしょ? それがいきなり終わりの見えない旅を始めちゃったわけで、「おいおい!」って思いつつ、その勇気には敬服しますよ。(photo / text:Naoki Kurozu)
2016年09月17日映画『怒り』に出演する渡辺謙、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、宮崎あおい、妻夫木聡と李相日監督が9月14日(水)、映画上映後の舞台挨拶に登壇。直前に行われたフォーマルな完成披露とは打って変わってラフな衣装でぶっちゃけトークを繰り広げた。この日は東京国際フォーラムでも完成披露試写会が行われ、500名の観客を前に渡辺さんらはスーツ、タキシードなどのフォーマルな姿で出席したが、その後、別会場で行われたこちらのトークイベントでは一転、登壇陣は砕けたラフな衣装で登場し、ゆる~いムードの中で、トークを展開。こちらの模様はLINE LIVEでも生中継され、多くの視聴者を集めた。私服っぽさを感じさせる登壇陣の姿に会場からは歓声が。渡辺さんは「おじさんなんで一応、ジャケットを着てまいりました」と語ったが、隣りの妻夫木さんは「ラフにって聞いてたのに、謙さんだけジャケットで話が違うなと思ってます(笑)」とニヤリ。宮崎さん、広瀬さん2人は共に花柄のワンピースで、客席からもネット上でも「かわいい!」という声が飛び交った。日本国内で、上映後の観客を前にイベントを行うのはこれが初めて。登壇陣も反応が気になるようだが、観客には事前に配ったボードに、感想をひと言で表してもらい、掲げてもらった。渡辺さんは「苦しかった」という感想を見つけて「本当に苦しかったんだろうと思います」としみじみ。広瀬さんは「衝撃」「迫力」といった感想を見やり「私たちだけでなく、みなさんにも感じていただけたんだなと思います」と嬉しそう。妻夫木さんは「『信』という字が多いですね」と映画のメッセージが伝わったことに満足そうに笑みを浮かべていた。吉田修一の小説を映画化した本作は、東京、千葉、沖縄の3つの地で展開。夫婦惨殺事件の犯人が顔を変えて、逃亡を続ける中、疑わしい3人の男がそれぞれの地に現れる。真犯人は誰なのか?愛する人、信頼している人が犯人なのか? 葛藤や揺らぎ、信じることの難しさが描き出されていく。松山さんは、同じ千葉編で共演した渡辺さんが、パブリックイメージと異なる弱く、優柔不断な男を演じた点について「謙さんが漁港の職員て、どう考えても結びつかないけど、現場で謙さんがフォークリフトに乗ってたら、買い付けに来た人が普通に『今日は何時から?』と聞いてた(笑)」といかに渡辺さんが漁港の男として溶け込んでいたかを力説!渡辺さんは「地元のみなさんは、『松山くんだ!』とか『あおいちゃん、可愛い!』とか言ってるのに僕が衣装でふらふら歩いてても何も言わない…」と苦笑。松山さんは「フォークリフトは全てを吸収するんですね…」と語り、笑いを誘っていたが、娘役を演じた宮崎さんは「お父ちゃんの長靴があまりに似合っててキュンキュンしてました!」と語り、渡辺さんを喜ばせていた。また、既に舞台挨拶や会見で恒例となった感もある「いかに李監督が厳しいか?」というテーマでもキャスト陣はここぞとばかり、とっておきエピソードを披露。妻夫木さんは、涙ながらに道を歩くあるシーンについて「(背中の側から)バックショットで撮るということで、僕をアテンドするスタッフがいないんですよ。なかなかカットがかからない中、山手通りを歩き続けて、周りの人が『あ、妻夫木聡だ…泣いてる!』って反応で…(笑)。50mくらいは一人で歩き続けました」と明かす。沖縄編に出演した広瀬さんは、監督のあまりの厳しさに「(本作のために)船舶免許を取ってたので、(船に乗った状態で)このまま逃げられるんじゃないか?ここで私が逃げたら、監督はどうなるんだろう?とか考えました」と告白。すかさず監督は「こっちの(監督・スタッフが乗っている)船のほうが速いからね」と笑顔で返し、これにはほかの共演者も爆笑していた。イベントの最後には、渡辺さんが自撮り棒を掲げて、壇上で登壇陣、観客とっ共にスマホで記念撮影を行うなど、最後まで大きな盛り上がりを見せた。『怒り』は9月17日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2016年09月15日映画『怒り』のジャパンプレミアが9月14日(水)に開催され、主演の渡辺謙をはじめ、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、宮崎あおい、妻夫木聡のメインキャスト7名と李相日監督が500名の観客を前に上映前の舞台挨拶に臨んだ。吉田修一の同名小説を原作に、東京、沖縄、千葉の3か所で物語が展開。1年前に起こった殺人事件の特徴を有する素性の知れない3人の男たちに対し、彼らの周囲の人間が愛情や信頼と板挟みになりながら疑いを深めていくさまが描かれる。渡辺さんらはタキシードやスーツ、ドレスなどのフォーマルな衣裳で出席。最初に姿を見せたのは東京編でゲイのカップルを演じている妻夫木さんと綾野さん。壇上でがっしりと抱擁を交わし、続いて沖縄編の広瀬さんと森山さんが現れて中央で握手。千葉編の宮崎さん、松山さんと続き、最後に登場した渡辺さんは李監督の手を取ってたからかと天へと突き上げた。渡辺さんはこれから映画を見る観客に「インパクトのある映画です。覚悟して見てください」と宣戦布告! 李監督、宮崎さんとともに訪れたトロント国際映画祭で、観客と一緒に映画を鑑賞したが「最後に滂沱の涙が流れました。自分の出ている映画で泣いちゃうなんておかしいですけど…(苦笑)」といかにこの映画が自身にとって特別かを口にする。キャスト陣のリアルな演技のための役作りも大きな話題に。森山さんは無人島を旅する男になりきるべく、撮影の予定よりも前に島に入り、実際に生活を送り、千葉の漁港で働く流れ者の青年を演じた松山さんも同様に撮影前から千葉入りした。また、ゲイのカップルを演じた妻夫木さんと綾野さんは、撮影期間中に実際に生活を共にしたという。綾野さんは「(自身が演じた)直人の存在があるのは妻夫木さんのおかげと言っても過言ではない」と語り、妻夫木さんも「僕も剛がいたから(役の)優馬でいられた」とうなづく。綾野さんの「妻夫木さんとの生活は愛おしい時間でした」という言葉に会場は温かい拍手と歓声に包まれた。松山さんは本作を「1億人に見てほしい」と語り、この日の観客500名に対して「ひとり2千人に勧めてください!」とお願いし笑いを誘う。宮崎さんは、公開を直前に控え、“父”渡辺さんとこうしてイベントに出る機会も残りわずかということで「お父ちゃんの言葉を聞けなくなるんだなと寂しい気持ちもあります」と正直な思いを吐露。改めて、妻夫木さんは「一番大切な人と見てほしい映画です。最後にその意味を知ることになると思います」と呼びかけた。最後に登壇陣を代表してマイクを握った渡辺さんは「ご覧いただければ何かを受け取っていただける映画だと思います」と力強く語り、会場は大きな拍手に包まれた。なお、本作はスペインで開催される第64回サンセバスチャンのコンペティション部門に日本映画として唯一、出品されることも決定。先日のトロント国際映画祭の結果も近日中に発表されることになっており、海外での今後の評価、公開も期待される。『怒り』は9月17日(土)より公開。(text:cinemacafe.net)
2016年09月14日旅とグルメをテーマにしたバラエティ「火曜サプライズ」の9月13日(火)放送回に、映画『怒り』に出演している渡辺謙と宮崎あおい、そして『超高速!参勤交代 リターンズ』から佐々木蔵之介が、それぞれゲストで登場する。『怒り』では親子役で共演している渡辺さんと宮崎さん。これまで何度も同番組に出演している宮崎さんは今回「秋の味覚を収穫したい!」ということで、渡辺さんと番組MCのウエンツ瑛士と共に米の収穫を体験する。ロケで向かった先は比較的収穫が早いという千葉県の田んぼ。初心者にも関わらずコンバインを見事に操縦する渡辺さんと宮崎さんに注目だ。さらにナスやモロヘイヤなど旬の野菜も収穫。穫れたての野菜と米で料理作りにも挑戦する。炊き立てご飯を頂きながら渡辺さんに双子の孫ができた話や、2人がそれぞれ大河ドラマに主演した際の裏話などをトークする。また前回の出演時、次に“アポなし旅”をするなら「地元で!」と言っていた佐々木さんは、今回その言葉通り地元・京都で「アポなしグルメ旅」を敢行。炎天下の中、先斗町の川床で食事がしたいというウエンツさんの希望を受け、京風フレンチの店にアポなし突撃するが夕方からの開店のためまだ準備中。佐々木さんの“凱旋”アポなし旅の様子も見逃せない。今回ゲストに登場した渡辺さんと宮崎さんが出演している映画『怒り』は9月17日(土)より全国東宝系にて公開。芥川賞作家・吉田修一の同名小説を映画化。SNSやモバイル機器の発達により、家族や友人、ときに愛する人でさえ、簡単に疑ってしまう不信の時代に、人を“信じる”という根源的な問いかけを一つの殺人事件をきっかけに投げかける群像ミステリーで、渡辺さんと宮崎さんのほ、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、妻夫木聡ら実力派俳優陣が集結。音楽を坂本龍一が手がける。佐々木さん出演の『超高速!参勤交代リターンズ』は現在全国公開中。前作の大ヒットから2年、前作では江戸へ高速で“参勤”した湯長谷藩一行が今度は故郷へ高速で“交代”する。なんと藩で一揆で発生、城も乗っ取られてしまう。果たして彼らは城を奪い返し、民を守ることができるのか?今回も佐々木さん演じる“殿”ら湯長谷藩の面々の奇想天外が作戦が繰り広げられる。佐々木さんほか、深田恭子、知念侑李、陣内孝則らが前作から続投。古田新太らも新たに加わり豪華キャストの共演も見どころだ。「火曜サプライズ」は9月3日(火)19時~日本テレビ系で放送。(笠緒)
2016年09月13日俳優・渡辺謙らが、主演作『怒り』(9月17日公開)がカナダの第41回トロント国際映画祭でスペシャル・プレゼンテーション部門に出品されたことを受け現地時間10日、プレミア上映が行われた映画館・エルギンシアターに登壇した。同映画祭は、1976年より開催。世界最大級の映画市場である北米に欠かせない映画祭で、例年300本以上の作品が上映されており、ベルリン国際映画祭、カンヌ国際映画祭に次ぐ規模の来場者数32万人を集めている。渡辺、共演の女優・宮崎あおい、そしてメガホンを取った李相日監督の3人は、上映に先駆けトロントのシンボル・CNタワーが一望できる名所・センターアイランドを訪問。映画祭を前に渡辺は、「マーケットに対しての影響力が一番大きな映画祭だと聞いていたので、賞をとるということではなく、世界中からこの地に集まる映画人に『怒り』を見ていただく。そういう意味では非常に価値ある映画祭」とコメント。上映についても「日本の方が見ても非常に簡単に答えが見つかるような映画ではないので、外国の方がどうのように受け止めてくださるのかとても興味深い」と期待を膨らませていた。また、トロントへ留学経験もある宮崎は「家と学校の往復のみでほとんど観光をしたことがなかった」と回顧。前日に、李監督と夜の街を歩いた際、「人がたくさんいて活気のある街」と実感したようで「思い入れのあるトロントに映画祭で戻ってこれて、すごくぜいたくでうれしい気持ち」と喜びを口にした。上映前のカーペットアライバルには、10代からシニア層まで観客約500人が集結。大きな声援に包まれた渡辺と宮崎は、サインや写真に応じた。18時から行われた上映には映画祭最大級の劇場を埋め尽くす1400人の観客が来場。場内満席となった中、上映前の舞台に登壇した3人はそれぞれ流ちょうな英語であいさつした。ラストシーンで響いたのは、観客の感嘆とすすり泣く声。上映後は、約10分にわたり観客総立ちで拍手が続いた。それを受けた渡辺の目には、うっすら涙が。宮崎と李監督も興奮した観客の余韻に浸っていた。映画祭を終え、渡辺は「一緒に上映を見ていて、お客さまがすごく素直に笑えるところは笑って、楽しんでもらえているな、と感じました」と歓喜。自身は2回目の鑑賞で、疲れもあったと笑いながら、「1回目に見たときよりも、ものすごい温かいものを感じた」と感慨を話す。加えて、「終わってからしゃべるのって難しい」としながら、「ただ泣けるとかではなく、本当に心の芯をつかまれているそんな作品だと思います。最後には心から温かい拍手を受け取りました」と満足気に語った。本作は、『悪人』(10年)の原作・吉田修一氏と李監督が再タッグ。吉田氏の同名小説を原作として、SNSやスマートフォンなどの発達により、簡単に他人を疑ってしまう不信の時代に「"信じる"とは?」という根源的な問いを、一つの殺人事件をきっかけに投げかける。(C)2016 映画「怒り」製作委員会
2016年09月12日「第41回トロント国際映画祭」スペシャル・プレゼンテーション部門に出品されている映画『怒り』が、9月10日(現地時間)にプレミア上映を行い、本作で父娘を演じた渡辺謙と宮崎あおい、そして李相日監督が登壇した。2010年、原作・吉田修一×李監督で挑んだ映画『悪人』の大ヒットチームが再集結し、新たに挑戦する意欲作『怒り』。本作は、八王子で発生した陰惨な殺人事件。被害者のものと思われる血で書かれた「怒」の一文字と、逃亡を続ける犯人。1年が経過しても犯人の有力情報は得られぬまま、事件から生まれた疑いが日本中に広まり、人々の“信じたい”気持ちに歪みを与えていく。前歴不詳の3人の男と出会い距離が縮まる3組の登場人物たちは、信じたはずが一度生じた疑いから逃れられず“信じる”“疑う”と対極の感情の間で揺れる。行き着く先は救いか破滅か。そして信じた先の“怒り”は凶行を生み思わぬ形で殺人事件を解き明かしていく――。この日の公式上映にあわせて、主演の渡辺さんらは現地入りし、上映に先駆けてトロント市のシンボルであるCNタワーが一望出来るトロント市の名所“センターアイランド”を訪問。トロントの印象について渡辺さんは、「アメリカのパブリシストとよく話をするとき、行くならトロント映画祭だと。マーケットに対しての影響力が一番大きな映画祭だと聞いていたので、賞を獲るということではなく、世界中からこの地に集まる映画人に『怒り』を観ていただく。そういう意味では非常に価値のある映画祭だと思います」とコメント。過去にトロントへ留学経験がある宮崎さんは「家と学校の往復のみでほとんど観光をしたことがなかったんです。昨日監督と夜の街をフラフラ歩いたのですが、人がたくさんいて活気のある街だなと感じました。思い入れのあるトロントに映画祭で戻ってこれて、すごく贅沢で嬉しい気持ちです」と印象を語った。そして、センターアイランドを訪れた後3人は、TIFF Bell Lightboxで行われた公式会見に参加。李監督作品に出演することに対して渡辺さんは「李監督は日本映画業界の宝物。一緒に仕事を出来たことを誇りに思っています」。李監督は本作の“信じる”というテーマについて聞かれると「この作品は、日本の社会の隅にいる人たちの物語ですが、同じようなことがたぶん世界でも起きていると思います。我々は知らない人たち、改めて知り合う新しい人たちをどれだけ信頼できるか、信頼することがいかに難しいか、信頼することによって失うこと、疑うことによって、失うことがどれだけあるのかは、いままさに世界で同じように起きていることだと認識しています」と話した。その後、ついにプレミア上映が開催。会場となったのは、1913年に建てられた歴史ある映画館「エルギンシアター」。上映前のカーペットアライバルには、10代からシニア層まで約500人もの観客が劇場前に詰めかけた。そして上映には映画祭最大級のキャパシティを誇る劇場を埋め尽くす1,400人もの観客が来場し、場内満席の大盛況の中上映前の舞台に登壇した渡辺さん、宮崎さん、李監督はそれぞれ流暢な英語で挨拶。また、上映中ラストシーンでは感嘆の声とすすり泣く声も聞こえ、本編上映後は約10分に渡って観客総立ちの拍手喝采となっていた。映画祭終了後は「一緒に上映を観ていて、お客様がすごく素直に笑えるところは笑って、楽しんでもらえているな、と感じました。今回自分は2回目の鑑賞なので、疲れました(笑)。1回目に観たときよりも、ものすごい温かいものを感じたんです。この監督は本当にやさしい人なんだ、温かいものを届けたい人なんだ、とすごく感じました」(渡辺さん)、「今回私は本作を観るのが2回目だったのですが、やっぱり前回とは違うところで感情を動かされました。謙さんとご一緒に取材をさせていただく中で、お父ちゃんがどんな気持ちで私(愛子)を見ていたのかを聞いたりして、それを聞いているせいか、お父ちゃんの気持ちになってしまって、こんなに自分のことを思ってくれているのに、その気持ちにものすごく心が打たれて、お父ちゃんの顔にぐっときてしまいました」(宮崎さん)と語った。『怒り』は9月17日(土)より全国東宝系にて公開。(cinemacafe.net)
2016年09月12日アン・パチェット著のベストセラー小説「ベル・カント」の映画化が決定した。「Variety」誌によると、監督は『アバウト・ア・ボーイ』のポール・ワイツ、脚本は劇場アニメ『鉄コン筋クリート』のアンソニー・ワイントローブとワイツ監督が共同執筆し、キャストにはジュリアン・ムーア、渡辺謙、デミアン・ビチルの名前が発表されている。「ベル・カント」とはイタリア語で「美しい歌」の意。ストーリーは有名オペラ歌手が南米のある国で開かれた日本の大企業の社長の誕生日パーティーに招かれる。しかし会場となっていた副大統領官邸にテロリスト集団が襲撃し、招待客が人質に。それから数か月間、テロリストと人質は外界からシャットアウトされた官邸の中で暮らすことになり、両者が不思議と心を通わせていく…という内容だ。ジュリアンはオペラ歌手、渡辺さんは日本の大企業の社長、デミアンはテロ集団の首謀者を演じる。映画のセールスを担当するアレックス・ウォルトンは、「何年も前に『ベル・カント』を読み、映画になるだろうということを自然と確信していた。世界中に愛読者がいるし、素晴らしいキャストが物語に命を吹き込むのを喜んでくれると思う」と語っている。(Hiromi Kaku)
2016年09月08日渡辺謙、ジュリアン・ムーア、デミアン・ビチルが、南米を舞台にした『El Canto』で共演することになった。その他の情報原作は、同名のベストセラー本。ムーアが演じるのは、金持ちの日本人(渡辺謙)の誕生日パーティで歌うために南米に呼ばれるアメリカ人オペラ歌手。ビチルが演じるのは、その日本人の家で反乱を起こすリーダーということだ。監督は『アバウト・ア・ボーイ』『ライラの冒険黄金の羅針盤』のポール・ワイツ。ムーアの最新作は、『ハンガー・ゲームFINAL /レボリューション。』現在は『キングスマン』の続編を撮影している。渡辺のハリウッド最新作は、現在撮影中の『トランスフォーマー』最新作。ビチルは最近、リドリー・スコット監督の『Alien: Covenant』を撮り終えた。ワイツは、アマゾンで配信中のテレビシリーズ『モーツアルト・イン・ザ・ジャングル』を監督している、文:猿渡由紀
2016年09月08日渡辺謙ら豪華俳優陣が出演し、「第41回トロント国際映画祭」に出品が決定するなど話題を集める映画『怒り』。この度、本作から本邦初公開の映像に、坂本龍一と「2CELLOS」の演奏シーンをMIXさせたプロモーション・ビデオが完成。本日8月31日(水)より、映画公式ウェブサイトにて視聴することができるようだ。八王子で起こった夫婦殺人事件。現場に“怒”の血文字を残し、顔を整形し、全国に逃亡を続ける犯人の行方は知れず。事件から1年後。千葉の漁港で暮らす洋平(渡辺謙)・愛子(宮崎あおい)親子の前に現れた田代(松山ケンイチ)。東京の大手企業に勤める優馬(妻夫木聡)が街で偶然出会った直人(綾野剛)。沖縄の女子高生・泉(広瀬すず)が無人島で遭遇した田中(森山未來)。前歴不詳の3人の男の中に、あの殺人犯がいるのか?あなたを信じたい――。そう願う我々に驚愕の結末が突きつけられる。芥川賞作家・吉田修一の同名小説を映画化する本作。キャストには、娘と暮らすしがない父親役の渡辺さんを始め、宮崎あおい、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、妻夫木聡といった、いま注目を集める実力派俳優陣が集結している。このほど到着したのは、「坂本龍一 feat. 2CELLOS」の本作の主題曲「M21 - 許し forgiveness」のPV。「2CELLOS」は、2本のチェロで奏でる情熱の超絶パフォーマンスにより世界を震撼させるクロアチア出身イケメン・チェロ・ユニット。2013年には、NTTドコモ「ツートップ」のTVCMに出演し、衝撃の演奏で日本のお茶の間をも沸かせていた人物だ。今回のPV内の「2CELLOS」演奏シーンは、7月下旬に20回を迎えたフジロック・フェスティバルのために来日した際都内で撮影。そこに坂本さんがNYで録音した際のフッテージと、すでに公開されている予告編の映像に加え、本作からの初公開映像をMIXさせたものとなっている。ストーリーの流れに沿って坂本さんと「2CELLOS」の演奏シーンがインサートされ、映画の世界観が見事に凝縮された濃厚な映像作品に仕上がっている。「2CELLOS」は、「このような日本映画の大作に、そして日本を代表する偉大な作曲家、坂本龍一氏とご一緒できて大変光栄です」と喜び、「僕たちは2人とも映画やアニメなど、日本の文化が大好きなので、このプロジェクトに参加できてとてもワクワクしています」とコメントを残している。なお、この主題曲「M21 - 許し forgiveness」も収録されている「怒り オリジナル・サウンドトラック」は、9月14日(水)よりリリース予定。また、iTunesなどで主題曲「M21 - 許し forgiveness」がアルバムに先駆けて先行配信中だ。『怒り』は9月17日(土)より全国東宝系にて公開。(cinemacafe.net)
2016年08月31日『悪人』の吉田修一と李相日監督が再タッグを組んだ映画『怒り』の特別映像が、映像配信サービス「GYAO!」にて順次配信されている。八王子で起こった夫婦殺人事件。現場に“怒”の血文字を残し、顔を整形し、全国に逃亡を続ける犯人の行方は知れず。事件から1年後。千葉の漁港で暮らす洋平(渡辺謙)・愛子(宮崎あおい)親子の前に現れた田代(松山ケンイチ)。東京の大手企業に勤める優馬(妻夫木聡)が街で偶然出会った直人(綾野剛)。沖縄の女子高生・泉(広瀬すず)が無人島で遭遇した田中(森山未來)。前歴不詳の3人の男の中に、あの殺人犯がいるのか?あなたを信じたい。そう願う我々に驚愕の結末が突きつけられる――。本作は、SNSやモバイルの発達により家族や友人、ときに愛する人でさえ簡単に疑ってしまう不信の時代に、“信じる”とは?という根源的な問いかけを1つの殺人事件をきっかけに投げかける群像ミステリー。主人公の娘と暮らすしがない父親役に渡辺謙を始め、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、宮崎あおい、妻夫木聡といった超豪華俳優陣が集結している。今回「GYAO!」にて配信するのは、千葉・東京・沖縄という3つの舞台をテーマにした特別映像と、各舞台のメインキャストとなる俳優の特別インタビュー映像。8月25日(木)より、映画公開までの3週にわたって配信される。第1弾としては、「東京編」の特別映像と、東京で出会う2人の男を演じる妻夫木さん、綾野さんのインタビュー映像が配信中。9月5日(月)からは「沖縄編」と広瀬さんと森山さんのインタビュー。9月12日(月)からは「千葉編」と渡辺さん、宮崎さん、松山さんのインタビュー映像が配信される。『怒り』は9月17日(土)より全国にて公開。(cinemacafe.net)
2016年08月26日2010年の『悪人』で、深津絵里が第34回モントリオール世界映画祭ワールド・コンペティション部門最優秀女優賞を受賞、日本でも興収20億円の大ヒットとなり、第34回日本アカデミー賞主要5部門を受賞をした原作・吉田修一×監督・李相日のコンビ。このほど、そのチームが再集結し、渡辺謙をはじめとする豪華実力俳優陣で贈る意欲作『怒り』が、第41回トロント国際映画祭スペシャル・プレゼンテーション部門、加えて第64回サン・セバスティアン国際映画祭コンペティション部門へ出品されることが決まった。八王子で発生した陰惨な殺人事件。被害者のものと思われる血で書かれた「怒」の一文字と、逃亡を続ける犯人。1年が経過しても犯人の有力情報は得られぬまま、事件から生まれた疑いが日本中に広まり、人々の“信じたい”気持ちに歪みを与えていく。前歴不詳の3人の男と出会い、距離が縮まる3組の登場人物。信じたはずが一度生じた疑いから逃れられず、“信じる” “疑う”の対極の感情の間で揺れていく。行き着く先は救いか破滅か。信じた先の“怒り”は凶行を生み、思わぬ形で殺人事件を解き明かしていく――。主演の渡辺さんをはじめ、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、宮崎あおい、妻夫木聡といった豪華キャスト陣がそれぞれ新たな境地を開いた本作。行き場のない感情に葛藤する3組が織り成す群像劇は、李相日作品の真骨頂として大きな注目を集めている。まず、ベルリン、カンヌに次ぐ来場者数32万人を集め、例年300本以上の作品が上映される北米最大級の映画祭にして、米アカデミー賞の前哨戦として広く知られるトロント国際映画祭では、父娘を演じた渡辺さんと宮崎さん、そして李監督が招待を受け、現地時間9月10日のプレミア上映に参加する。本映画祭の最高賞は、観客の投票によって決定する観客賞で、近年では『英国王のスピーチ』や『それでも夜は明ける』、『ルーム』など、アカデミー賞に直結するとして大きな注目を集めている。さらに、スペインで開催されるサン・セバスティアン国際映画祭では、日本映画で唯一、コンペティション部門での出品が決定!現地時間9月23日のプレミア上映に、渡辺さんと李監督が参加。また、翌日、現地時間24日に行われるクロージングセレモニーにも出席し、これまで日本作品は受賞していない最高賞となる最優秀作品賞を目指す。なお、渡辺さんは『明日の記憶』(’06)でハワイ国際映画祭、『硫黄島からの手紙』(’06)でベルリン国際映画祭、LA Eiga Fest2014、2013年公開の『許されざる者』でヴェネチア国際映画祭、釜山国際映画祭に参加以来、3年ぶりの国際映画祭への参加となる。■渡辺謙コメント僕が日本で出演した作品をアメリカで紹介したいとアメリカのパブリシストに言うと、「トロント国際映画祭へ出品しろ」と言われるくらい北米最大の映画祭です。この作品に含まれている人間の本質的な痛みや悩みみたいなものは、洋の東西問わないと思うので、海外の方々へどれだけ深く刺さるか、どういうリアクションがかえってくるか、興味深いです。また、ヨーロッパの方は日本に近い感覚を持っていらっしゃるお客様が多いので、また北米とは違うリアクションがあるのではないかと、とても楽しみにしています。オリンピックでもたくさんの種目があるように、日本の映画もいろいろなタイプの映画があります。いま、本当に誇れる映画が出来たなという気がしています。ちゃんと日本でこういう映画をつくりました、という誇りを持って、日本代表として行きたいと思います。■宮崎あおいコメントこの作品で李監督と渡辺さんと一緒に映画祭に行けるというのは、本当に嬉しいです。「すごい映画が出来ました」と自信を持って言える作品なので、その気持ちを伝えて、たくさんの人に観ていただけるように頑張りたいなと思います。とても緊張していますが、『怒り』を観た海外の方々の反応を楽しみにして行きたいと思います。そしてトロントは10年以上前ですが、ホームスティをした場所でもあるので、このようなかたちでトロントに行けることも嬉しいです。『怒り』は9月17日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2016年08月25日お笑い芸人の渡辺直美が30日、東京・原宿のラフォーレ原宿で行われた「渡辺直美展 Naomi’sParty」の内覧会に登場した。7月30日から8月6日まで東京・原宿のラフォーレ原宿で開催される同展示は、渡辺直美の世界を様々な形で楽しめる体験型展示イベント。インスタグラムにアップした写真のほか、過去の特注衣装などが展示されている。オープン初日となったこの日は、報道陣向けの内覧会が行われ、渡辺は「たくさん来ていただけるのか不安がありましたが、朝からいろんなお客さんが並んでくれたみたいで本当にありがたいです」とファンに感謝しながら「体験もできるブースもあるので、来た方々に楽しんでもらえるような『直美展』になると思います」とアピール。過去の特注衣装を展示しているブースでは、ベッドの上に渡辺の等身大の抱き枕もあるが、「この展示のために作りました。受注で販売しようということになっています。1個売れたら十分ですよ。35,000円とクソ高いですから(笑)。男性に買って欲しいですね。ボロボロになるまで使ってほしいです!」と語り、「エロでいえば、のぞき穴もありますよ。そこに私の秘密が隠されています。男性はのぞき見が好きだと思うので(笑)」と期待を持たせた。ラフォーレ原宿では、過去にきゃりーぱみゅぱみゅが展示を行ったが、「きゃりーちゃんはカリスマ性もあって可愛いし、本当にみんなから愛されています。3万人はすごい数ですけど、私は5万人が目標。絶対無理とか言わないで、頑張ってそこは超えていきたいですね」と"打倒きゃりーぱみゅぱみゅ"に意欲。そんな彼女に最近の色恋事情の質問を投げ掛けると「好きな人がいれば見て欲しいんですけど、今はいないんです。タイミングが悪いと思います」と寂しそうだった。
2016年07月30日俳優の渡辺謙が、今秋テレビ朝日系で放送される山田太一脚本のドラマスペシャル『五年目のひとり』で主演を務めることが23日、分かった。渡辺が演じるのは、東京の小さなベーカリーで働く木崎秀次。たまたま訪れた中学校の文化祭でダンスを披露していた少女に目を奪われ、その少女に「君のダンスがいちばんキレイだった」と声をかけたことから交流が始まるが、少女はやがて、木崎が東日本大震災で受けた心の傷に触れていくことになる。この震災で、実際に支援活動に携わってきた渡辺は、当時避難所を回った際に、家族も全て失った男性に出会ったことを思い出し、「僕は彼をハグして一緒に泣くことしかできなかったのですが、おそらく(自分が演じる)主人公の秀次も、そうした深い心の傷を受けたのだと思います」と想像。これまで『星ひとつの夜』(07年・フジテレビ)、『遠まわりの雨』(11年・日本テレビ)、『おやじの背中―よろしくな。息子』(14年・TBS)と、さまざまな山田脚本作品に出演してきたが、「セリフを役者が発したときに、目が覚めるような新たな発見が生まれ、胸に突き刺さるんです。まさに"山田マジック"ですね!」と、その世界観を今回も楽しみにしているようだ。その山田氏はこのほど、撮影中のスタジオを訪問し、渡辺を激励。気がかりだったシーンもあったそうだが、「謙さんがある意見を提案して乗り越えてくださいました。さすがだと敬服しました」といい、「謙さんならば、(震災の)被害に遭われた方々に穏やかに、深く心を寄せて演じてくださると信じています」と全幅の信頼を寄せている。テレビ朝日では、2014年2月にも、東日本大震災を背景に、2つの家族の崩壊と再生を描いた山田太一脚本ドラマ『時は立ちどまらない』を放送。今作では、それとは異なる視点で、震災の"その後"の人々の心の機微を描いていく。
2016年06月24日オネエ系映画ライター・よしひろまさみちさんの映画評。今回は、破壊・破壊・破壊!暴走イケメンから目が離せなくなる『ディストラクション・ベイビーズ』です。***女子的なストーリーがお好きな皆さんには、ちょっと刺激強すぎるかな~……とは思うんだけど、この映画が魅せる可能性は共有してもらいたいのよね~。それが『ディストラクション・ベイビーズ』。ストーリーは超シンプル。愛媛の港町の手のつけられない暴れん坊・泰良が、ある日突然失踪。彼はケンカできる相手を見つけては、素手で勝負するという毎日を送るために、都会の松山にいたのね。そんなノンストップの暴れっぷりを見ていたのが、これまたケンカっぱやい裕也。裕也は泰良の強さに惚れこんで、暴力で名をあげようと彼を誘い、無関係の一般人に襲いかかっていくの。警察やマスコミが大騒ぎするものの、彼らの動くスピードの方が速く、彼らの暴走は止める者ナシ……、と暴力の限りを尽くす暴走映画。これだけ聞いてると、あまり興味持ってもらえないと思うのよね。だって、任侠映画みたいに女子どもには手をださねぇ!っていうポリシーなんてゼロ。バッチリ子どもも女性も彼らの暴力のエジキになってくんだもん。でも、こんだけ暴力まみれで、理不尽な物語のくせして、一瞬たりともスクリーンから目を離せなくなるマジックがあるのよ!それって珍品!そのマジックの理由の一つは、暴れる2男子が、今をときめくイケメン2人だから。泰良役は復活ぶりがめざましい柳楽優弥くん。裕也役は、これまた成長著しい菅田将暉くん。柳楽くんはご存じの通り、一時期完全に表舞台から姿を消してたわよね。でも映画『許されざる者』で主演の渡辺謙さんを食ってしまうほどの存在感を見せつけてからは、完全上り調子。いわゆるイケメンの枠にハマらずに、目力の強さを武器にタイプの違う役を演じまくってるの。菅田くんは、CMの鬼ちゃん役でブレイクしてるけど、アレ以上に映画やドラマでの存在感ハンパなしのオールマイティ男優なのよ。この天才的に器用なイケメン2人が、ひたすら暴力の限りを尽くす役(しかも武器は使わないのもミソ)を、なりきり演技でやるもんだから、いつどこでこの暴走が止まるのかわからなくて、目が離せなくなるの!おそるべき才能ね。シンプルかつ破天荒な構造の物語のくせして、こんだけのパワーをもった作品を観るのはうれしくもあり恐ろしくもあり。こんなクレイジーな作品を作ったの誰よ!って思ったら、クレイジーなインディーズ作品の大量輩出映画祭として知られるゆうばり国際ファンタスティック映画祭出身、真利子監督だってので超納得。彼の初期作はあたしも夕張で観てきているけど、初期作からしてモーレツな勢いがあったのよ。その勢いはそのままに、メジャー俳優を使ってさらにパワーアップさせてたのね~。そりゃ無差別の暴力に対しては嫌悪感しかないけど、観た後にゾワゾワくる何とも言えない感情は、これまでの日本映画にはあまりなかったことだわよ。監督の才能も恐るべしだわ……。今後、どうなっちゃうんだろう、真利子さん。そしてなにより、今をときめくイケメン2人が、こんな狂気に満ちた役を見事に演じきっているってのは、珍品以外の何物でもないわよ。むきだしの感情をカメラにぶつけた2人とそれを無駄なく収めた監督の力、スクリーンで感じ取って!◇インディーズ映画界の雄・真利子監督はこの映画で商業映画デビュー。監督&脚本/真利子哲也出演/柳楽優弥、菅田将暉、小松菜奈、村上虹郎、でんでんほかテアトル新宿ほかにてロードショー公開中。(C)2016「ディストラクション・ベイビーズ」製作委員会※『anan』2016年6月1日号より。文・よしひろ まさみち(オネエ系映画ライター)
2016年05月31日今年の1月、双子の妊娠を発表した俳優の東出昌大と女優の杏が、5月16日、無事に双子の女児が誕生したことを連名にて報告。杏さんの父親で双子の祖父にあたる俳優の渡辺謙も、自身のTwitterで孫誕生の喜びを明かし、SNS上では祝福のコメントがあふれた。東出さんの事務所公式サイトにて、「みなさまへ」と題し、「先日、無事に双子の女児が誕生いたしました。予定より少し早い出産でしたが、今は母子共に健康です」と報告。「今後は親として恥ずかしい行いをせずに、立派な子に育て上げたいと考えておりますが、気づかぬ点や至らぬ点も多く在ると思います。今後ともご指導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます」と二児の父親になった決意を綴った。また渡辺さんも「少し早かったようですが、母子共に順調のようです。まずは二人がしっかり退院出来るまでしばらく時間がかかりそうです」と自身のTwitterにて現状を報告し「静かで穏やかな日々を過ごさせてやりたいと願っております」と温かい思いをコメント。さらに、「さて、どんな子育てになるのやら楽しみです。父ちゃんパニクってました。くくっ」と今後への期待と、東出さんの父親っぷりを明かした。渡辺さんのツイートには、「おめでとうございます!双子ちゃんってことで喜びも2倍ですね!」「謙さんがおじいちゃまなるなんて…(∩∀`*)♪父ちゃんパニック、おじいちゃまはメロメロですね~!双子ちゃんがすくすく育ちますように…」「じぃじ双子ちゃん、なんておめでたいことでしょう。杏ちゃんと東出くんのベビーはスラッーと成長なさることでしょう。早くママになった杏ちゃんみたいな」とお祝いの声が続々と上がった。東出さんは、現在、 窪田正孝や小松菜奈、片岡鶴太郎らと共演した主演作『ヒーローマニア-生活』が公開中。今後も『クリーピー 偽りの隣人』『デスノート Light up the NEW world』と超話題作の公開が控えている。今月は5月7日にも、俳優の染谷将太が、妻・菊地凜子の妊娠5か月を発表しニュースになったばかり。日本エンターテインメント界で大活躍する俳優たちの子どもが、“同い年”になる可能性があるようだ。(text:cinemacafe.net)
2016年05月17日●『追憶の森』撮影中、おにぎりはマコノヒーの息子に日本のみならず、世界で活躍する俳優・渡辺謙。『ラストサムライ』(03年)を皮切りに『バットマン・ビギンズ』(05)『硫黄島からの手紙』(06年)『インセプション』(10)など数々の作品に出演。さらにはNYリンカーンセンター・シアターで、ミュージカル『The King and I(王様と私)』に主演し、トニー賞主演男優賞にノミネートされるなど、グローバルに羽ばたいている。ガス・ヴァン・サント監督による最新作『追憶の森』(4月29日公開)では、オスカー俳優マシュー・マコノヒーと共演し、マコノヒー演じる主人公のアーサーが人生の終わりを求めて訪れた青木ヶ原樹海で出会う日本人ナカムラ・タクミを演じる。最新作にかける思い、そして映画、舞台といったエンタメをとりまく環境について話を伺った。○おにぎりでクイックチャージ――渡辺謙さんは、現場にご自分で作られたおにぎりを持って行って共演者の方と食べることがあり、過去にはレオナルド・ディカプリオさんともおにぎりを食べた仲だそうですが、今回も持って行かれたのでしょうか?持って行きました。今回は特に現場が森の奥なので、なかなか戻って来る時間がなかったんですよ。ランチボックスをデリバリーしてもらって食べていましたが、本当に自分のおなかがすいたタイミングでごはんになるわけではないので。炊き込みごはんのおにぎりが多かったです。――それはマシュー・マコノヒーさんにも勧められたのですか?いつも多めに炊いて持っていくので、今回も「食べる?」とマシューにあげました。そうしたら、現場に連れてきたマシューの3歳くらいの息子が食べてしまったみたいで、「全部取られた!」と報告されました(笑)。やっと歩き始めたくらいで、一番下のお子さんだったのかな。マシューが「すっごいおいしそうに食べてたよ」と言うから「良かった良かった」と思いましたね(笑)。――共演される俳優の方々はびっくりしそうですね。あまりおにぎりを持ち歩いている人はいないので、「何それ!」「食べる?」といったやりとりはよくありますね。けっこうクイックチャージできるんですよ、おにぎりって。○センセーショナルな意見を一般論のように扱う状況――日本と海外の映画界の違いについて「海外は批評がしっかりしている、日本は良くない」といった意見が盛り上がることもありますが、両方に関わられて、実際に違いを感じますか?逆に、SNSなどで個人の意見が拡散されて議題に乗ることが気になります。センセーションであればあるほど取り上げられたりしますよね。少し前までは、批評家がある種、切腹覚悟で批評を書いていたように思います。――批評に責任を持っていたのが批評家だったんですね。見識があって、自分の名前を出して書いていた、責任を持った批評だったわけですよね。それが最近は匿名であっさりと評価を下されてしまうことに、危うさは感じています。もちろん、個人が映画を見て自由な感想を持つのは当たり前ですが、あっという間に議題に乗ってしまい、一般論として扱うことに危惧を感じる点はあります。文句があっても、せめて見てから言って欲しいとは思いますし、「書いているのはあなただよ」ということは、きちんと引き受けてほしいです。――アメリカでは状況が違いますか?同じだと思いますよ。インターネットやSNSの環境は全世界的なことですので、日本だから外国だからということはありません。ただ文句を言うのではなく、映画やエンタテインメントというものを、もっと大切にしてほしいという思いはあります。身近になったと言えば良いことではありますが、扱いが軽くなっている部分は感じますね。●ふわっとした人を取り込むために、命をかける○死を受け止めることの重さを感じて――この作品は人の死に関わる部分が大きいですが、渡辺さんご自身の死生観が反映されている部分などはありますか?僕の個人的なことだけでなく、今は本当に、人の死に立ち会い、受け止めるといったことが、なかなかリアルではないのではないか、とは思います。大きな災害が起こった時に、人の生死が数字としてカウントされてしまうことの怖さもあります。現実としてそのできごとに傷ついたり、受け止めたりしなければいけないことはあるわけで、深くて重くて大事なものであることを、映画というフィクションを通してでも感じてもらえたら、と思いますね。――タクミという役柄については、どのような役作りをされたのでしょうか?タクミは生死の世界の中間点にいる存在で、アーサーの奥さんであるジョーン(ナオミ・ワッツ)の思いを受け止めるような役割でもあると考えながら、演じていました。青木ヶ原という場所の磁力もあり、「タクミだけどタクミではない」という瞬間もあったと思います。単純にひとつの役をつくり上げるのとは違う意味で、面白かったですね。「ナオミ・ワタナベ・ワッツ」みたいな感覚はありました(笑)。――観ているだけでもハードそうだったのですが、一番大変だったシーンを教えて下さい。やっぱり、濁流に飲まれるシーンですね。4日間くらいずっとずぶ濡れのシーンを撮っていたので、本当に大変でした。○映画の世界と、舞台の世界の違い――ブロードウェイの舞台にも出演されていますが、映画の現場との違いや受け止められ方の違いなどはありますか?映画はミステイクの連続で、いっぱい撮ったテイクの中で良い物が出てくればいいという考え方です。舞台の場合はいかにミスを減らしながら、一気に高いところまで世界を作り上げるかという、全く性質の違う時間の流れになっていくんですよね。また舞台の時って、全体のショーが3時間で、開演の2時間前から劇場に入るので、合計で6時間くらい劇場にいることになります。2回公演の時はもっと長くて、11時間くらい。その公演のためだけに24時間を費やすのは、非常に贅沢な行為ですよね。――観る方も「その舞台のために」1日を過ごすこともあるんじゃないでしょうか。これがまた、そこまででもないかな(笑)。今回の『王様と私』の公演(3月17日~4月17日)が終わってから時間があったので、ショーを観に行ったんです。20時の回だったので、夕方からごはんを食べてワインを1杯飲んで、わーっという気持ちで劇場に入って、「あ、観る方ってこんなんだよな」と思いました(笑)。でも、ザッツ・エンタテインメントだから、それがいいんですよ。ふわっとした人をみんな取り込むために、やる方は命をかけないといけないということが、逆側の立場になってよくわかりましたね。『追憶の森』富士山の北西に広がる青木ヶ原の樹海、死を求めて訪れたアーサー・ブレナン(マシュー・マコノヒー)。しかしアーサーの前に森の出口を求めてさまよう日本人男性・ナカムラタクミ(渡辺謙)が現れ、2人は出口を探すことになる。怪我を負いながらも森をさまよううちに、アーサーは妻(ナオミ・ワッツ)のことを話し始める。
2016年04月30日『ダラス・バイヤーズクラブ』でアカデミー賞を受賞したマシュー・マコノヒーと、日本を代表する国際派俳優・渡辺謙が初競演を果たした『追憶の森』。先日、大盛況の内に幕を閉じたブロードウェイ・ミュージカル「王様と私」で2度目の“王様”を演じた渡辺さんが、青木ヶ原の樹海を舞台にした本作中でもその歌声を披露する本編映像が到着。マコノヒーも、絶賛を贈っているという。富士山の北西に広がる青木ヶ原の樹海を、人生の終着点にしようと決めて日本にやって来たアメリカ人アーサーは、原生林が鬱蒼と生い茂る森の中で、出口を求めて彷徨う日本人タクミと出会う。怪我を負い、寒さに震えているタクミをアーサーは放っておくことができず、行動を共にするように。次第に方向感覚を失った2人。その過酷な状況下、運命共同体となったタクミに心を開いていくアーサーは、樹海への旅を決意させたある出来事を語り始める…。「王様と私」では、歌やダンスを披露するミュージカルは初挑戦ながら、トニー賞ミュージカル部門主演男優賞にノミネートされ、多くの称賛を浴びた渡辺さん。今回は、劇中で渡辺さん演じるタクミが「王様と私」ばりの歌声を披露する(?)本編のワンシーンが到着した。森を彷徨い歩いている最中、突然の大雨に見舞われたアーサーとタクミ。冷えた身体を焚火で必死に温めているアーサーの後ろで、タクミは突然ある歌を歌い始める。それに合わせてアーサーも歌い始めるが、伸びやかに歌い上げるタクミと適当に合わせただけの気の抜けたアーサーの歌声は、さながら不協和音のように樹海に響いていく。タクミが歌っているのは、1951年に公開されアカデミー賞作品賞をはじめ8部門を受賞、ジョージ・ガーシュウィンが作曲を手掛けたダンス・ミュージカル映画『巴里のアメリカ人』の劇中歌「天国への階段」だ。渡辺さんは、劇中では日本語で歌っているが、なんと歌詞は自ら英訳、さらにアレンジを加えた完全オリジナル版だという。マコノヒーは、渡辺さんの歌声について「いまいましいほど歌が上手なんだよ!」と大絶賛、さらに「今度、君と共演するときは、アクション映画をやるより一緒に歌って踊りたいね。ミュージカルをやろう! デュエットするんだよ。きっと楽しい共同作業になる」と、まさかの逆オファー!もしかしたら、ミュージカル映画で2人が再共演する日も近い、かもしれない?『追憶の森』は4月29日(金・祝)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2016年04月29日死に場所を求めてアメリカから日本に向かい、富士の青木ヶ原を目指した男性が、樹海に足を踏み入れた途端に傷だらけの日本人男性と出会う。外界から隔絶された空間での2人の会話劇は思いがけないもう1つの物語が導き出し、愛と生命の尊さを描いていく。ガス・ヴァン・サント監督がメガホンをとり、マシュー・マコノヒーが『ダラス・バイヤーズクラブ』でアカデミー賞主演男優賞受賞直後の出演作として選んだ『追憶の森』。渡辺謙はマシューが演じる主人公・アーサーの前に現れる傷だらけの男、ナカムラ・タクミを演じている。数年前、初めて脚本を読んだとき、「最初に思ったのは、こういう死生観感にアメリカ人、外国の人が興味を持つようになったんだな、ということです」と渡辺さんはふり返る。「ただ、お話を頂いたのは2011年の震災後すぐだったので、当時の僕にはそれを受け止めるだけの余裕がない、とペンディングしていたんです。でも、一昨年かな。ガスが手を挙げてくれたので。これはもしかしたら、すごく良い作品になるんじゃないかという思いがあって、お受けすることになりました」。ヴァン・サント監督の参加が大きなきっかけの一つだが、「後からの答え合わせみたいになっちゃうんですけど」と前置きして、渡辺さんはこう続ける。「たまたま、この間、胃がんが見つかって。手術をしていただいて、あっという間に仕事ができるようになったんです。そこで医学や科学のものすごい進歩を体感したわけです。昔だったら治らなかったり、見つけられなかったり、それで人は亡くなっていたんですけど、それが見つかるようになり、すごい手術もできるようになった。今回はそこまで深刻ではなかったにしても、20代の後半に味わった“人生には終わりというものが必ずある”という感覚を、久々に思ったわけです。医学や科学がこれだけ進歩しても、それはもう何千年も人間が抱えてる命題なんだと再認識したというか。だから、こういう映画を作ることにも多少なりとも意味があるんだと思いました」。マシューとは撮影の数か月前に一度会って以降、撮影初日までは敢えて顔を合わせないようにした。「ガスは『リハーサルや打ち合わせしたりする?』って聞いてくれたけど、『初日に樹海で会うまでいいんじゃない?』と言ったら、『そうだね。そうしようか』と。衣裳合わせとかも、全部すれ違いのスケジュールにしてくれて。撮影当日も、樹海で『アクション!』となるまでは顔を合わせないようにしてくれたんですよ。で、それなりに面白いエモーショナルなシーンになったんですけど、あまりにもエモーショナル過ぎて、『これは使えないね』って(笑)。でも、そうやって毎日積み上げて行くことで、2人の関係性ができ上がっていったので、それは間違いではなかったなと思います」。マシューについて、「もちろん経歴も違うし、歳も違うんだけど、タイプ的に似てるような俳優だという気はするんです」と言う。「それなりに準備はちゃんとするんだけど、それは全部置いて、裸一貫というか、何にも持たない状態でカメラの前に捨て身で立っていくところが結構似てるなと思って。あまり構えずに、そこで起きていること、そこで感じることをどこまで忠実に出せるか、みたいなことを2人でやっていけたような気がします」。マシューは撮影時の渡辺さんについて、常に準備万端で現場に現れたと語っている。彼のコメントについて、「いや、四の五の言わないからでしょ」という反応がすぐに返ってきた。「現場に入って、『俺はこうなんだ。このシーンは…』と、そういう理詰めの人もいるけど、僕はもう(笑)。そういう意味でも僕とマシューは似てると思ったんです。彼もそのままストンとそこに立つ人で。だから、彼の言ってくれた言葉は、そのまま返したい感じです。彼もそういう人でした」。アーサーとタクミの物語はすべて樹海の中だけで起きる。だが、出口を求める2人の彷徨は、観客にとってはもちろん、演じる俳優たちにとってもドラマティックなものだった。「最初に脚本を読んだときに、こんな大変な話だとは思わなかった。2人で樹海を彷徨って終わる話だと思ってたら、こんなに大変になるとは…。ちょっと予想外でしたね」と言う渡辺さんの表情には達成感が見てとれる。「自然と、撮影がないときは日常の回転数を落としましたね。撮影から戻ると、本当に誰とも会わずに、じーっとしてました。回転数を上げると、マインドが変わっちゃう気がしたんですよ。だからあの頃、嫁さんとも電話でも喋らず、メールのやり取りだけで済ましてたりとか、そんなことでしたね」。『ラスト・サムライ』でハリウッドに進出してから10余年、渡辺さんがこれまで出演した海外作品はクリント・イーストウッド監督やクリストファー・ノーラン監督などの大作ばかり。今回もガス・ヴァン・サント、マシュー・マコノヒーというアカデミー賞受賞経験者が揃う作品だが、いわゆるメジャー・スタジオ大作ではなく、インディペンデント作品。撮影現場の違いもあっただろうか。「ガスの映画だという違いはあったんですけど、そんなに少人数でもなかったですし。ただ、もちろんスタジオのプロダクションがやってるバジェットではないので。でもね、撮ってる感覚はそんなに変わりないですね」。それよりも監督が誰なのか。その違いこそが「大きいですね」と言う。「そんなにすごい細かく繊細に詰めてどうこうってことはないんです。ぼん、とカメラの動きを決めて、『こんな感じ?』『じゃあやってみようか』とマシューと2人でリハーサルして。わりと放りっぱなしという感じでした。それは、信頼されてたのかもしれないですけど」。渡辺さんがツイッター(@harryken311)を始めたのは、ちょうど『追憶の森』の撮影が始まった2014年夏だった。詳細にふれないよう細心の注意を払いながら、現場の様子や感じたことをつぶやいていたが、改めて当時のツイートを読み返してみると、タクミについては「本当に厄介で面白い役」と表現し、先の発言と同様に「事前のプランを全部捨てて、とにかく何を感じるか?それに徹してます」と役に臨む気持ちを綴っている。「結局、僕の役って実線じゃない感じがするんですよ。要するに点線だったりとか、もしかしたら影絵みたいな。それでいてそれでないような、というかな。そんな部分があって。だから、彼のバックグラウンドや人生観を全部掘り起こすのではなく、どれぐらいのさじ加減で出していくかをガスとも話をしながらの演技でした。ある時点からはそれを面白がってやってましたね」。お気に入り、あるいは印象深いシーンは?という質問には「ちょっと哲学的なセリフが多かったですが、『魂が昇華するときに花が咲くんだよね』というシーンですね」というお答え。「すごく幻想的にも撮ってましたし、輪廻転生みたいな感覚はすごくよくわかる感じもあったし。デザイナーがすごくかわいい花を作ってくれたので、いいシーンになったと思います」。それにしてもタクミとは一体、何者なのか。樹海の中からアーサーの目の前に現れ、彼と言葉を交わしていくにつれ、その謎は深まっていく。渡辺さんは「この世とあの世の臨界というか結界があるとしたら、そこのフレームから顔を出してる人みたいなものですよ。恐らくね」と言う。「さっき話した、自分とは違う魂が昇華するときに花が咲くっていう話。それはもしかしたら、自分の終わりかも知れないわけですよ。自分もいつかはこうやって花が咲いたら昇華できるかもしれない。それはいいことかもしれないし、悪いことかもしれないし、ある種の未練として、それがもう無くなって消えていくかもしれない。その辺って、明確なロジックにあてはまることではなくって、非常に微妙な曖昧なところで話が進んでいく。あまりそのことを僕の中で明確に輪郭つけようっていうふうにはしなかったですね。こういうことかな、ああいうことかな、みたいな。そういう“居方”みたいなものは気をつけました。あんまり色濃く、本当にこう、できればそれこそCGで輪郭を薄くして欲しいみたいなね、ところはありましたから」。取材が行われたのは3月初旬。以前と何ひとつ変わらず、明るくて前向きで、写真撮影中はカメラマンに冗談を飛ばす気さくな渡辺さんがいた。取材から数日後には渡米し、今月17日(現地時間)まで、ブロードウェイでミュージカル「王様と私」の舞台に立ち、2度目のキングを演じた。そして取材時には明らかにされていなかったが、当時は夫人の南果歩さんも闘病中だったことが後に発表された。どんなときでも態度を変えず、常に準備万端。世界で活躍するために求められる本物のプロフェッショナリズム。渡辺さんはそれを体現している。(text:Yuki Tominaga/photo:Kyoko Akayama)
2016年04月28日兄の連れてきた婚約者は…
いきすぎた自然派ママがこわい
義父母がシンドイんです!