発達障害のある子どもの不登校。特性のふまえ方は?不登校の小中学生は年々増加傾向にあります。発達障害のある子どもの場合、「学校」という枠組みや「標準」とよばれるようなものにフィットしづらい傾向があり、困りごとを抱えている中で不登校につながることがあります。そこでLITALICO発達ナビでは2023年1月に「発達障害のある子の不登校サポートセミナー」を開催し、臨床心理士・公認心理師であり、東京都内でスクールカウンセラーも務めていらっしゃる初川久美子先生に、不登校サポートに関してお話いただきました。このコラムでは不登校生セミナーでの講演から一部を紹介し、さらにあらたな質問と回答を加え「発達障害のある子どもの特性のふまえ方、自宅での過ごし方、学習のすすめ方」を中心にご紹介します。子どもが「学校に行きたくない」と言い出したときは、子ども自身がさんざん悩みに悩んだ結果のうえで、それでもどうにもならなかったから出している「SOS」であり、問題を解決するよりも先に、まず休養をとることが最優先と考えましょう。保護者の方自身も悩み、サポートしていくうちに疲れてしまうという声も多く耳にします。大人自身が不安な気持ちを信頼できる人に話したり、今や将来への情報を集めてみる(想像より選択肢は多く不安が少し解消されるかもしれません)、そして保護者が自分自身を休める時間をつくることが大切です。発達障害のある子どもの場合、「学校」という枠組みや「標準」とよばれるようなものにフィットしづらい傾向があります。能力として「できる/できない」以前に、学校生活を送るだけで消耗しやすい状態になりやすく、自分自身のコンディションによって思うような行動ができずに困りごとを抱えてしまうことも多く、不登校や行き渋りにつながることがあります。では、発達障害のある子どもの特性のふまえ方はどう考えたらよいのでしょうか。発達障害には主に3つのグループがあります。Upload By 発達障害のキホンしかし、「自閉スペクトラム症のある子どもの不登校には○○をしたら正解」「ADHDのある子どもの不登校は、このようにサポートしたらうまくいく」「学習障害のある子どもの不登校の対応はこれ」などといった、型の決まった解決方法というものは、残念ながら存在しません。発達障害は、その子の一部分でしかないため、お子さんの状態は「特性によるもの、性格によるもの、環境によるもの」などさまざまです。そのため特性にだけ焦点をあてて対応するのではなく、特性による対応は「大まかな方針」として考えるとよいと思います。では、以下でそれぞれの特性のふまえ方の例をご紹介します。例1、ルーティンがあるほうがよいかルーティンを取り入れられるのであれば、家での過ごし方の”大まかなスケジュール”をお子さんとの話し合いで決めてもよいと思います。例えば「午前中は本を読んで、ゲームは午後からにしよう」「1日1ページは漢字ドリルをやろう」など。また、何をしていいかわからないと困ってしまい「ルーティンがあったほうが過ごしやすい」というお子さんもいるので、その場合は何かルーティンがあることで、「今日も一日中何もしなかった」「つまらなかった」などとなることを防ぐことができるかもしれません。例2、学校を休むことに罪悪感が強い場合学校に行くのはつらいけれど、休むことへの罪悪感が強いお子さんもいます。その場合は、学校との関わり方を模索するとよいでしょう。詳しくはこちらのコラムをご覧ください。例3、どこでどう過ごすか「家で静かに過ごすだけなのは苦痛」というお子さんもいらっしゃると思います。例えば「放課後の校庭開放に行ってみよう」「放課後は友達と遊ぼう」「朝など、保護者と一緒にジョギングしよう」など、少し広い場所などで活動する時間をつくるとよい場合があります。自治体の適応指導教室の利用を考えてもいいかもしれません。例4、最低限、守ることを決めたほうがよい場合自分がやりたいことに対して制御できないというお子さんもいると思います。保護者の方もこのままではルールがなし崩しになってしまって危険と感じるようなとき、最低限のルールを決めることは必要だと思います。例えば「ゲームを始めると歯止めが利かず、いつまでもやり続けてしまう」などの場合は「ゲームの終わりの時間を決める」「夜はゲームをしない」「寝る時間を決める」「夕食は家族と一緒に食べる」など、(すべてを制限するのではなく)ルールを厳選して持つことが必要かもしれません。ここからは、子どもが不登校になったとき保護者はどうしたらよいのか、学校との連携についてなど寄せられた質問に初川先生に具体例を交えてご回答いただきます。Q.不登校になり家でゲームをずっとやっている息子。依存症にならないか心配【質問】不登校の小4の息子(自閉スペクトラム症/ADHD)がいます。ゲームが大好きで延々やっていても楽しそうです。無制限で徹夜でやりたがります。それでも許可してよいのでしょうか。依存にならないか心配です【回答】許可しない方がいいと思います。息子さんの特性的な面を考えると、ゲームのような楽しいものから離れづらい(自らおしまいにすることが苦手な)面があるのではと感じます。子どもは、好きなものには飛びつきやすく、生活リズムや体調管理、そして家族との生活(一人で生きているわけではない)を考慮して自らの行動をコントロールすることについては、まだまだ未熟、未発達な面があります。そういった意味で、家庭としてルールは設定してあげたほうがよい場合があります。息子さんの場合はそうだと思います。その設定の仕方はお子さんの特性や状態と家庭の考え方によるとは思います。終わりの時間を定めるだけにするか、始まりの時間も定めるか(不登校のお子さんのご家庭でよくあるのは「ゲームは午後から」や「ゲームは学校が終わった時間から」ですね)、食事は家族と一緒に取ることも追加するか、そのあたりはお子さんとも話し合ってご家庭の方針でと思います。不登校なり始めの際に、「学校に行っていないのだから、ゲームは禁止」とされるご家庭があると思います。また、「学校を休んでいるなら、寝ているか勉強しているか、あるいはお手伝いするかのどれかじゃないとだめ」と考える保護者の方もいらっしゃるように感じます。学校に行けないことの罰として、お子さんの好きなものを取り上げてしまうような対応をすると、お子さんは学校に行けないのもよくないと分かっているのに、さらに家でも苦しい状況に陥ってしまいます。また、休みはじめは疲れ切っていたり、好きなことすらやる気が湧かないような状態のこともあります。そういう場合は、お子さんの好きな活動や遊びをする時間をうまく取り入れていくことはとても意味のある大事なことになります。子どもは遊びから元気をもらう場合が多くあります。ただ、だからといって、際限なくさせるというのはまた違う話です。結果としてお子さんが一時的に昼夜逆転になることは多くのケースでありますが、昼夜逆転を引き起こすような設定をする(際限なく動画やゲームを許可する)のはちょっと違うと感じます。お子さんが落ち着いて話せそうなときに、生活のルールについて話し合うことは大切です。ただ、それがあまりにも細かすぎるとそこにもお子さんが疲弊してしまうので、ざっくりとしたルール(消灯時間やゲーム・動画の終わり時間を定めるなど)でよいように感じます。Upload By 発達障害のキホンQ.ルーティンがあるほうが安心して過ごせるようだが、時間の感覚が苦手な場合、どうしたらいい?【質問】子どもは「ルーティン」は好きなのですが、 時間感覚に少し苦手があるのか、 時間で決めるとうまくいかない場合が多く、親子共に困ることがあります。 時間感覚に少し苦手な場合のルーティンづくりのコツがありましたら教えていただけると幸いです【回答】ここはぜひご本人とも話し合っていただきたいのですが、時間管理を細かく決めすぎるとせっかくの過ごしやすいはずのルーティンがそうではなくなってしまいます。まずは親子で工夫を考えていただければと思います。私は基本的には時間は決めすぎない方がよいと思っていて、日によって多少ずれるのは自然なことだと思います(コンディションがいいからたくさん何かをやる日もあれば、やる気がどうにも出なくて少しゆるく過ごしたくなる日もあるのは自然です)。そういう意味で、帳尻を合わせるところをむしろ考えたらよいのではと思います。夕食は何時から(多少幅を持たせておいた方が苦しくはならないと思います)、寝る時間は何時といったざっくりさ。あるいは、午前中の間にこれとこれをする、くらいのざっくりさ。本人とどこで帳尻を合わせるか、つまり、優先順位の高い時間のルールはどこかを定めるという話し合いをぜひしていただければと思います。保護者が声をかけるのはその決めたところだけでいいのか、そのほかもリマインダーとして声をかけてほしいのか、そのあたりも相談できるといいと思います。ルーティンによって安心がもらえるタイプの方は、ぜひルーティンによって心穏やかに過ごせることを受け取ってほしいと思うので、だからこそルーティンに振り回されないことが大事になります。また、大人になってゆくことを考えると、ルーティンと自分自身のコンディションとを考慮できるようになっていくことも大事なことにはなります。例えば今日は疲れているから今日はこれはやらない、という多少の臨機応変さです。今そこまでできずとも、ゆくゆくそうした臨機応変を入れても大丈夫なだけの余白は残しておきたいという意味で、ゆるめのルーティンを一緒に検討しておくという準備が今からできるのではと思います。Upload By 発達障害のキホンQ.発達障害があり、服薬をしている娘が最近になりこだわりも増え毎日学校に遅刻。薬の増量をお願いしたほうがいい?思春期特有のパワー不足?【質問】自閉スペクトラム症(ASD)とADHDがあり、服薬をしている小学6年生の娘がいます。最近、こだわりも増え、学校に行きたくないと言い出し、理由は自分でも分からないと言いますが、毎日遅刻して登校しています。薬の増量をお願いするのか、思春期でよく起こるパワー不足による不登校が起きているのか、どうやって判断をしたらいいでしょうか?【回答】まずは、遅刻してでも毎日通っているのは娘さんはとても頑張っているのだと感じます。娘さんに限らず、学校に行きたくないと感じる子どもは、その理由をしっかりと語れることはあまり多くありません。学校あるいはそのほかの場面で、何らか苦戦している・つらいことがあると理解しておきましょう。自閉スペクトラム症とADHDがあるとのことですが、その場合、学校生活や集団生活ではさまざまに困難があることが考えられます。予期せぬ展開に戸惑ったり、注意集中が困難で頑張ろうとしているのに気がそれてしまったり。クラスの仲間との関係も気になるところです。そして小6だと授業がとても難しく、進みも速いかもしれません。遅刻によって参加できない授業があると、飛び飛びに受講することとなり、都度戸惑っている可能性もあります。授業はまだ参加さえしていれば過ごしやすいと感じるものの、休み時間をどう過ごしたらいいか分からない、誰かと一緒にいたいのにひとりぼっちになる。こうしたことが学校のつらさの要因になっているお子さんもいます。このように、さまざまな可能性が考えられます。まずは、担任の先生に、娘さんが学校で過ごしているときの様子(授業場面、生活場面、人間関係についてなど)を聞いてみるのがよいのではないでしょうか。また、娘さんにも学校で楽しい時間や授業があるか、困っていることはないかなど聞いてみるといいと思います。思春期になると、学習がどんどん難しくなり、ある程度の意欲がないとつらくなりやすいです。自分のことも多少客観視できるようになる中で、学校という環境(学習、友達、先生などさまざまありますが)にしっくりくるかどうかというところに自覚的になってくる面があります(これは成長の一つとも考えられます)。「思春期でよく起こるパワー不足による不登校」が何を指すのか私には分かりませんが、ともあれ、型にはめすぎることなく、お子さん本人がどう困っているのか、意欲などのコンディションはどうかなどを多角的に見ていただければと思います。親が学校に行ってほしい思いが強く、それが子どもにも伝わっている場合だと、子どもが学校の何がどうつらいのかをより一層言いづらくなることもあります。言ったところで反論されることが目に見えると言わないでおく子どももいます。思春期だとそうした面が強く出ることもあるので、そういう場合は親子で話し合うというよりも、担任の先生やスクールカウンセラー、養護の先生など、お子さん本人が話しやすい相手と話をするセッティングを取ることも工夫として考えられます。そして、もう一つ考えておきたいのは、本人がうまく言葉で説明できずとも、何となく学校が嫌だと感じている場合に、そこに無理に行かせることがよいことかということです。(本人にとっては)耐え難い環境に身を置いてどんないいことがあるのだろうか…と考えてしまいます。もちろんそれがゼロ(全く登校しない)か100(朝から最後までずっと登校している)かという話ではないので、無理なく、学習やさまざまな活動にそれなりに参加できる登校スタイルはどんなものかを考えてみるのは一つ大事なことかもしれません。場合によっては、登校することと併せて、自治体の適応指導教室や教育相談室、あるいはフリースクールの併用なども検討してもいいでしょう。学校のことに限らず、本人にとって意欲的に取り組めること、好きなこと、楽しめることなども同じように一度振り返っておくとよいでしょう。意欲を削がれる局面が多すぎると、好きなことすら楽しめなくなり、いよいよ調子が悪くなってしまうこともあります。薬については、主治医の先生にご相談をと思います。いかなる薬も、薬で得られることは限定的です。よく言われるのは、イイコになる薬や学校に行けるようになる薬はないということです。ご自身のコントロールの範疇を超えてイライラが止まらない、集中が難しい…そうした場合に服薬の検討が入るのだと理解しています。娘さんにとって学校がどんな場所か、どんなふうだったらもっといやすい場所になるか。学習に取り組みやすいか。そうした本人の心と、それを取り巻く外枠との調整をまずご検討いただければと思います。Upload By 発達障害のキホンQ.不登校の息子は自分の気持ちを表現するのが苦手、思春期で接し方も難しい。関わり方のコツは?【質問】中学1年生の息子は、二学期から不登校です。自分の訴えが中々うまく表現できません。また、思春期、反抗期ということもあり、関わりが難しいです。約束事も少なく厳選していますが、守るのが難しいです。関わり方にコツがあれば教えてください。【回答】話すのが得意な子どももいれば苦手な子どももいます。自分の思いがなかなかうまく伝えられないのは本人にとってもつらかろうと思います。伝えたいこと、分かってほしいことはあっても、うまくそこがうまく表現できないと苛立ち、あきらめなどの気持ちがわいてきてしまうかもしれません。そんな中で、不登校があり、家の中でも守るべき約束事があり…保護者の方へ反抗が向くのは自然な流れのようにも感じます。そういう意味では、無理に語らせるというよりも、まずは他愛もない話がお互い窮屈でなくできる関係でいることが大事かなと思います。昔からよく言われることではありますが、話をするときは同じ方向を向いている方が話しやすいです。面と向かって座ると実は話しにくいのです。散歩をしながら、一緒に料理をしながら。そのほか、何もしない時間を一緒に味わうこともとても良きことなので、おすすめは釣りです。ともあれ、同じ方向を見て、話しても話さなくてもいい時間で、その中で散歩なら目についたものを話す、料理だったら一緒に作業をする。釣りなら釣り糸を眺める。大人は、状況を前に進めるために話をして聞き出したり説得したりしたくなってしまいますが、そうではない時間を大切にしていく。親と話すのは、学校どうするの?勉強どうするの?だけになってしまうと、ますます話さなくなるだろうことは想像できると思うのですが、だからこそ、逆説的にただ一緒に過ごす。そんな時間を大切にしていくことが大事なのではと感じます。Upload By 発達障害のキホンQ.きょうだいそろって不登校。対応の注意点やアドバイスは?【質問】中学2年生の娘と、小学4年生の息子が不登校です。姉弟そろって不登校の場合の注意点やアドバイスなどもあればお聞きしたいです。【回答】きょうだい揃って不登校だと保護者の方のご心配や焦りはいかほどかと思います。きょうだいで徒党を組んで保護者の決めたルールを壊しにかかったり、どちらかが何かに意欲的に取り組もうとするともう一人の方が足を引っ張ろうとしたり、そうした難しさがあるのではと想像します。家の生活上のルールに関しては、2人からとやかく言われたとしても、守るべき線がある場合はどうにか守っていただきたいと思います。一度緩めてしまうとそこを立て直すのはなかなか難しいだろうと感じます。また、娘さんと息子さんの不登校の理由や学校の状況はそれぞれ違うはずです。おそらく、学習に関しての得意不得意や同世代の人間関係の築き方も違う。好きなものや楽しめることも(同じものもあるかもしれませんが)違うことがあるはずです。2人は不登校という広い括りでは似ていますが、違う状況にあると思います。2人がそれぞれ自分の人生を歩めるように、それぞれと話す時間を設けたり、「あなたのいいところはこういうところだね」「こういうことをしているときのあなたはとてもいい表情をしているよ」とそれぞれに伝えていったり。そうして、それぞれが自分のことを自分のこととして考えられるように支えることができたらよさそうだと感じます。きょうだいでお互いがお互いに重ねて理解したり、片方がこうだから自分も…と考えてしまったり、2人の中でそうしたときもあるにしても、そうでない時間や場面を大切にしていただけたらと思います。Upload By 発達障害のキホンQ.小5息子の休んだ分の勉強のフォローはどうしたらいい?無理にやらせないほうがいい?【質問】小学5年生の息子(自閉スペクトラム症)が11月から行き渋りが始まり、午前中の途中から登校しています。勉強が分からない、授業がつまらないと言うので、休んだ分家で勉強のフォローをしようと思うのですが、あまりやりたがりません。今は無理に勉強させないほうがよいのでしょうか?【回答】午前中の途中から登校しているとのこと、本人にとって良きペースであれば何よりです。小学5年生の勉強は難しいですね。授業を毎回出ていても難しいと感じるお子さんが増え始めるのが小学4年生の後半以降だなと感じるので、小学5年生はなおのこと難しいと思います。授業が飛び飛びになると、より一層難しく感じられる(抜けた分を想像しながら聞かないといけない)のはありそうですね。ただ、その前からもしかしたらつまずきがあり、1日6時間分の授業を受けることがつらいから朝から学校行く元気が湧かない…というお子さんもいるようにも感じます。「勉強が分からないなら、その分を家でフォローしたらいいのでは」とおっしゃるのは、ごもっともだと思います。分からない授業を聞くのは「つまらない」ので授業が分かるようにしよう。ただ、それがうまくいくのは、そこにコミットして解決してまで学校の授業に参加したいという強い気持ちがある場合だけだろうなと感じます。また、家で保護者と学習をする際には、保護者が一生懸命になるあまり、子どもと喧嘩になることが多いように感じます。小学校高学年以降の親子での学習は、保護者が熱くなりすぎないよう注意も必要です。「無理に勉強させて」いいことはあまりありません。「勉強したくなったら一緒にやるよ、分からないところは教えるよ」くらいのスタンスでいいように思います。ここから先はお子さんの学習意欲にもよりますが、親子で喧嘩しながら勉強したいとは思わないけれど、少しは取り組んでみたいと思うなら、通信教材の活用や、今は動画で単元ごとに配信されているものもあります。そういうものを使って取り組んでみる。分からないところは保護者やあるいは担任の先生に聞くということができるといいでしょう。今まさに授業でやっている内容につまずきがある場合に、その前の内容からつまずいていたらそちらの復習が先になるでしょう。小数のかけ算でつまずいているなら、まず簡単なかけ算からやって、「そうだった」「できるできる」を取り戻しながら取り組めるといいでしょう。昔のドリルや問題集をやってみたり、ネットで無料の問題もシェアされています。学校から配布されているタブレットにもタブレットで回答できるドリルが入っている場合もあります。本人に合っていて、やってみたいと思うものをやってみてもいいかもしれません。あまり多くはないですが、勉強は保護者や学校の先生ではない、勉強を教えてくれる専門の人に教わりたいと思うお子さんもいます。塾や家庭教師の先生とだとできる場合もあるので、そうしたことも検討してみてもいいかもしれません。さまざま書いてきましたが、大事なのは本人がどうしたいかです。こうしたいという気持ちがあれば、それに合わせてさまざま提案することはできると思います。ただ、何もしたくないというときはそれを尊重するのも1つです。午前中の途中から登校することの、本人にとっての良さはなんでしょうか。誰かと会える、給食が食べられる、休み時間遊べる、勉強ができる、放課後に遊ぶ約束ができる、家でゲームができる。いろいろあると思いますが、それと登校スタイルと、そして学習と。負荷がかかりすぎず、それなりにどれも得られるバランスを探っていただければと思います。そしてそのバランスはときどき変わってくると思います。一度決めたやり方にとらわれすぎず、本人の気持ちとコンディションに合わせて、適宜変更を加えながら進めていただければと思います。Upload 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発達障害のキホンQ.長期化した不登校。親はどこまで関わっていいもの?【質問】不登校が長期になってきた場合の家での過ごし方(中学生)どこまで親が関わればいいのか知りたいです【回答】中学生で、しかも長期にわたると生活リズムを一定に保つことも難しいことが多くなります。多くの子どもたちが学校で過ごす時間帯、明るい時間帯にたとえ家であっても心穏やかに過ごすことが(自覚の有無は人それぞれですが)つらく感じられたり、家族が寝静まった夜中だと過ごしやすい気がしたり。日中動かないがゆえに自然と眠くなることも少なく、寝ようと思ってもあまりすぐに寝つけなくなっていたり。ネット上などに友達がいる場合は、そうした仲間たちがネットに集まるのが夜間であることも多く、生活時間帯が後ろ倒しになりやすいです。ネットやスマホは○時までとルールを定めたり、あるいは家庭全体夜間はWi-fiを切ったりなどさまざま工夫される保護者の方もいらっしゃいます。そうしたルールや枠組みでうまくいく場合はそれでいいと思いますが、そこで喧嘩したり、ぎすぎすしたりといったこともよくある話ではあります。どこで折り合いをつけるかはケースバイケースだと感じます(単にそうしたものを取り上げるだけだと、お子さんにとって心のよりどころも失うことになる可能性もあるので、ゼロか100かというよりも、折り合いのつけ方なのだと感じます)。ただ、家族として同じ家で生活をしているので、お子さんの過ごし方が目に余ると保護者としてイライラしてくるのも自然なことだと思います。そういう意味でも、お子さんと家での過ごし方や学習の仕方、あるいは家庭以外での過ごし方(学校に部分登校できるか、適応指導教室やフリースクールに通えるか、相談機関に通えるか)を話し合い、大方の過ごし方について決めて、そこが維持されていればそれ以上は口は出さないという線を決めたいところです。実際のところでいえば、「高校に(は)行きたい」と考えているお子さんが多く、中学3年生の春夏ごろから高校の見学や説明会に出向くなど動き始めるお子さんは結構います。逆に言うと、そこまでは動きが見られない場合も多いです。動き出す時期のために、進路情報を保護者が集めておく(集めた情報を本人に知らせるかどうかは慎重にと思います。機が熟すのを待つほうがいい気がします)ことなどをしておきましょう。中学3年の秋以降は志望校に合わせた準備に取り組むこともよく見られます。どのような高校の種類があり、お子さんにはどんな学校が合っていそうかということは、担任の先生や進路の先生、地域のそうした情報に詳しい適応指導教室や教育支援センター、教育相談室などで聞いてみるのもいいと思います。情報は集めつつも、あくまでも本人が通いたいという意志を見せた学校に進学すること、そのために何校か見学すること。保護者はその手伝いをするということ。それを本人にも折々に伝えていただければと思います。Upload By 発達障害のキホン発達障害のある子どもの不登校。特性はおおまかな指針であり、大切なのは子どもの状態に合わせた対応発達障害がある子どもが不登校になったとき、その子どもの特性に焦点をあてて解決の糸口を探ることは多くあると思います。しかし、発達障害はその子どもの一部にしかすぎず、特性だけに焦点をあてても状況がよくならないことも多くあります。特性のふまえ方を大まかな指針として、それぞれのお子さんの特性、性格、環境、こころの状態などを見ながら対応しましょう。そして何より、子どもも保護者も学校の先生も途中で疲れ切ってしまわないように持続可能なペースでサポートしていくことが大切です。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年03月26日私は現在、4歳と1歳の2児のママです。次女が1歳になる前、精神科を受診して「適応障害」と診断を受け、服薬を開始しました。今は子どもの成長とともに育児も少し落ち着いてきて、かつ自分自身の仕事も安定しているので、服薬しなくてもある程度余裕を持って子どもたちを見られるほどにメンタル面が安定しています。そんな、今の私だからこそ言える、長女に対しての反省と後悔の念を体験談としてお伝えします。 長女の甘えを受け入れられなかった今だからこそ理解できるのですが、次女が生まれたときは長女はまだ3歳にもなっていないころだったので、当然、ママに甘えたい気持ちがまだまだあります。そこに次女のお世話のタイミングなど、私の事情は関係ありません。 次女が生まれたばかりのころは、「ママ、着替えられない!」「ママ、お外行きたい!」などといった欲求すら、洗濯や料理する家事の時間などの私の日常ルーティンと噛み合っていなければ、すべてイライラして「今忙しいから!」とバッサリ切り捨てていたように思います。 一番私が暗かった時期は「長女はなんでこんなにわがままなんだ」とイライラしていましたが、今思えば月齢に沿った自然な行動をしていただけだと思います。私が自分勝手だと解釈してしまったのは、自分自身のゆとりのなさからくるものでした。 ゆとりが持てる環境は「自らが作り上げて得られるもの」と「時間の経過で自然に得られるもの」と2つあるのだな、と実感しています。 ベビーカレンダーでは、赤ちゃん時代を卒業して自己主張を始めた2~6歳までの子どもの力を伸ばし、親子の生活がもっと楽しくなる【キッズライフ記事】を強化配信中。今よりもっと笑顔が増えてハッピーな毎日になりますように! 監修/助産師 松田玲子著者:石塚みよ自身の体験をもとに、妊娠・出産・子育てに関する体験談を中心に執筆している。
2023年03月01日■前回のあらすじ担任に自作自演を指摘され、謝るように促されるサヤ。しかし不気味な笑みを浮かべているだけなのでした。わが子に何の恨みがあるのか、ミヨの母親は不審に思います。■サヤはミヨのことを知ってた…!?■ウソをついた衝撃の理由とは?この期に及んでも「ウチの子は悪くない」と主張するモンペ母。この後もさらに無茶苦茶なことをわめき散らすのでした。しかしサヤ本人はというと…。次回に続く「ウチの子は絶対に悪くないんです」(全42話)は17時更新!
2023年02月22日子どもの寝つきが悪い…これって睡眠障害?睡眠にまつわるギモン自閉スペクトラム症やADHDなどの発達障害がある場合、睡眠障害を併存していることがあります。睡眠の問題の背景には、何かしらの障害が関係していることがありますが、睡眠の相談を医療機関ですることを知らず、長年悩みを抱えてしまう方もいるという現状があります。発達ナビQ&Aコーナーでも、子どもの睡眠に関する心配や、睡眠障害へのギモンが数多く寄せられています。「赤ちゃんのときから寝つきが悪く、朝起きられません。来年には中学生になりますが、どのようにサポートしたらいいでしょうか」「5歳すぎてもまとまって寝ないのは、発達障害が関係しているのでしょうか」「みなさんは眠れていますか?眠れないときはどうしたらいいのでしょうか」「日中に寝てばかりの息子がいます。服薬をしていますが効果がありません」これらは、発達ナビのQ&Aコーナーに実際に書き込まれた、睡眠にまつわる悩みです。このコラムでは、睡眠のなぜ?から、発達障害と睡眠障害の関わり、服薬についてなど、体験談や、専門家の先生のアドバイスを交えてご紹介します。睡眠障害とは、眠りに何らかの問題がある状態のことをいいます。子どもの睡眠障害にはいくつか種類があります。・不眠症…寝つきが悪い、眠りが浅く途中で何度も目が覚めてしまう、朝早く起きてしまう、眠りの質が悪いなど、睡眠が十分でない状態・過眠症…夜ちゃんと寝ているはずなのに、日中あらがえないほど眠い状態・概日リズム睡眠障害…昼夜のリズムと体内時計がうまく合わず、調節できなくなって睡眠リズムがくずれてしまい、社会生活に支障をきたす状態・いびき・睡眠時無呼吸症候群(SAS)…子どもの場合、いびき、無呼吸の主な原因は、鼻づまりやアデノイド・口蓋扁桃(こうがいへんとう)といったのどや鼻の奥のリンパ組織の肥大で、物理的に気道が狭まること。また、肥満で気道が狭くなることも・むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)…脚などの下肢がむずむずするなど動かしたい強い衝動がある状態・睡眠関連律動性運動異常症…乳幼児期から4歳くらいまでの時期で発症する睡眠障害。頭を左右に振ったり、前後に強く動かすなどする。9ヶ月の子どもでは59%に見られるほど、乳児期には非常に多い症状だが、5歳前後には5%以下に・睡眠時随伴症…睡眠中に生じるねぼけ、夜尿、歯ぎしり、悪夢などの身体的現象の総称子どもは、新生児期には昼夜を問わず短い睡眠・覚醒を繰り返しますが、乳児期から夜間睡眠が中心になり、3歳から6歳になるころには昼寝をとらなくなるなど睡眠リズムが徐々に確立していきます。赤ちゃんの眠りはまだ眠りが浅く、夜泣きをすることも多くあります。幼児期(3歳から6 歳ごろ)までに浅い眠りと深い眠りのサイクルが大人と同様のリズムに移行していきます。そのため、幼児期になっても睡眠に何らかの問題がある場合、改善の必要があるといえます。発達障害と睡眠障害の関連は?睡眠障害は、発達障害の併存症として認められることが多いといわれています。睡眠障害が発達障害を引き起こすという意味ではありませんが、発達障害の特性により、睡眠になんらかの問題が出てしまうことが主な原因です。乳幼児期の睡眠は脳の発育にも関わるため、睡眠障害が長引くこと自体が睡眠不足や生活リズムが乱れて悪循環を生み、子どもの心身の発育に影響している可能性も否定できません。自閉スペクトラム症がある子どもは音や光などに対する感覚が過敏なため、覚醒しやすいといわれています。また、睡眠に関係するメラトニン生成や、セロトニンからメラトニンにいたる代謝経路の障害が関係しているのではないかと考えられています。そのため、自閉スペクトラム症のある子どもの睡眠の問題には、なかなか寝つけない、入眠することができない、 夜中に起きて騒いでしまう、ちょっとしたことで起きてしまうなどが多くあります。ADHDの特徴には不注意・多動性・衝動性があります。ある調査ではADHDのある子どもの入床への抵抗、入眠の困難、中途覚醒、起床の困難、日中の過剰な眠気がある子どもが多い傾向があるという結果があります。また、ADHDのある人の脳には脳内の神経伝達物質であるセロトニンに偏りが生じているともいわれています。そのため、セロトニンを原料としてつくられるメラトニンという体内時計をコントロールするホルモンにも偏りがでてしまうため、不眠や概日リズム睡眠障害に陥りやすいのではないかと考えられています。参考:子どもの睡眠亀井雄一、岩垂喜貴 |保健医療科学2012 Vol.61 No.1 p.11-17Q:来月から6年生になる男の子の母です。ADHDの子は寝ない子・寝付きが悪い子が多いと言われていますが例にもれずうちも小さい頃から寝付きが非常に悪く、そして寝ると朝本当に起きられません少し前までおやすみをした後隠れてタブレットで動画見てたりしていたので没収しました・・・携帯は夜間ロックをかけています。普段は自分の携帯のアラームをかけさせていますが、全く起きず叩いても起きず、ベッドから引きずり降ろしてようやく起きます体も大きくなってきたので正直この起こし方が最近本当に大変です・・・。(中略)同じようなお子さんお持ちの親御さん、どのような対策とられてますか?病院にかかってみた方がいいのかな?と思ったこともありますこちらの質問には以下のような回答が寄せられました。A:息子もADHDとASDです。赤ちゃん時代は、眠りが浅い子でした。幼少期も夜驚や寝言が多かったです。それほど深刻には考えていなかったのですが、高学年になっても寝相がかなり悪く、主治医に相談し、メラトベルと言う睡眠ホルモンの薬を試してみました。(中略)朝起きられない問題は、コロナ禍で生活リズムが不規則になった頃からです。やはり、就寝前の電子機器の使用で就寝時間は徐々に遅くなり、22時半頃になることもあります。朝は休日でも8時起床にしていますが、息子もなかなか起きられません。自分の力で起床することが、自立の一歩だと思っているので、スマホのアラームやAlexaなど工夫して平日は一人で起きるようにしています。寝坊した場合は、就寝時間を早めるように促しています。熟睡できている事が前提だと思うので、1度主治医に相談してみては?違う切り口からの回答なんですが、職場で専門機関監修の睡眠改善セミナーを受けた中で使えそうなテクニックをいくつか。・睡眠環境を整える→寝室に光源を極力置かない。ダウンライトなどを活用。就寝中は家電のランプも塞ぐ(専用シールとかあります)→窓の隙間も塞ぐ。暗幕の活用→温度湿度の管理、寝具、パジャマの見直し(大人もついでにやってみては)・寝る前のスマホテレビ、照明→理想は1時間前にやめる。→リビングが調光できるならば、夕食前あたりから外に合わせて光量も落とす。・朝起きた時の楽しみを作る→朝飲む飲み物を少しリッチにする、朝ごはんへの投資、早起きして好きな映画を見るなど。(弟はゲーム時間確保のために早起きしてました)環境改善は一緒に寝てるのであれば親御さんの睡眠にも作用するのでおすすめです。年齢的にもう別々でしょうか?個人的には「朝起きる目的」があるパターンが学童期は一番効いたなと思います。私自身も見たいアニメがある、夏のラジオ体操でコンプリートして記念品もらいたい、という俗物的な目標があった方が起きてました。参考になれば幸いです。このように発達ナビQ&Aコーナーでは、疑問を投稿すると、ほかのユーザーの方が実体験をもとに回答してくれます。聞いてみたい質問があれば、ぜひ投稿してみてください!【小児科医に聞く】睡眠の大切さ、子どもの睡眠問題、何科を受診すればいい?、発達障害と睡眠障害の関わり、服薬のギモン、睡眠障害がある子どもへの対応などここまで発達ナビのQ&Aコーナーに寄せられたギモンを中心にご紹介しました。ここからは、小児科医の藤井明子先生に子どもの睡眠の重要性、受診のタイミング、睡眠障害がある子どもへの対応、服薬のギモンについてお答えいただきます。A:睡眠には「脳を休める」ノンレム睡眠と、「体を休める」レム睡眠があります。ノンレム睡眠時には、大脳を休めるだけでなく、成長ホルモンが分泌され、脳内の神経ネットワーク形成や細胞の修復、骨・筋肉形成が行われます。また、免疫機能・代謝機能が増強され、疲労の回復に役立っています。レム睡眠時には、脳は活発に活動し夢を見ることが多いですが、全身の筋肉は緩んで、体は休んでいます。睡眠の時間が短い、質が悪いなどで、睡眠の役割が十分に果たされないと、子どもの心身の成長や発達に影響が及ぶとされています。Upload By 発達障害のキホンA:かかりつけの小児科でまずは相談してみましょう。小児科医は、病気のことだけでなく、お子さんの生活全般、生活習慣についてのお困りごとにも対応することが可能です。すでに寝る前の工夫をとられていることもあるかと思いますが、お子さんが寝ないと、保護者も眠れず、親子共に疲弊していることもあります。少しでも工夫できることがないか、一緒に小児科医と考えていけると良いと思います。Upload By 発達障害のキホンA:いろいろ対策をしても寝つきが悪いようなら、受診して相談してみても良いでしょう。1〜2歳のお子さんの寝つきの悪さなら時間と共に改善する可能性もありますが、5歳であると睡眠覚醒リズムが確立される年齢なので、睡眠障害があるのかもしれません。ASDの特性もあるような気がするとのことなので、併せて相談されると良いでしょう。Upload By 発達障害のキホンA:受診すると、必ず薬が処方されるというわけではありません。まずは、睡眠リズムを作るための生活習慣の見直しをおこなっていきます。例えば、布団に入る1時間前のテレビ・インターネットなどは控える。休日・平日関わらず一定の時間に起きる、入眠までにすることの手順を同じ手順で同じ時刻に行うなどです。生活習慣の見直しをおこなっても改善しない場合に、薬の内服も検討します。発達障害に伴う入眠困難なお子さんへは、メラトニン受容体作動性入眠改善薬(一般名:メラトベル)を使用することがあります。メラトニンは、体内時計に働きかけ、睡眠と覚醒を切り替えて、眠りを促す作用があります。Upload By 発達障害のキホンA:易刺激性の薬とは、ASDに対するかんしゃくや、それに伴う暴言・暴力に対する薬のことだと思います。睡眠障害があるお子さんで、易刺激性に対する薬を使用することはあります。薬を使うことで、気持ちが安定し、入眠しやすくなることがあります。副作用として、眠気・だるさ、食欲増進を認めることがあります。主治医の先生と相談しながら、適切な効果のある量を調整していく必要があります。薬は、副作用と効果のバランスを見て、効果がある場合には続けていくと良いでしょう。長期に飲み続けて、依存性のでる薬ではないので、効果がある場合には続けて、適切な睡眠習慣をつくることができると良いと思います。Upload By 発達障害のキホンA:生活リズムの乱れは、抑うつやイライラといった気分の悪さと関連していることが指摘されています。睡眠リズムを取り戻すためには、朝に起きて光を浴びることから始めましょう。ベットを日当たり良い場所に移動し、毎日同じ朝の同じ時間にカーテンを開けて日光が入るようにして、刺激を多くしましょう。朝ごはんを食べることも、リズムをつくる上で大切です。食事が食べられなくても、少量のお湯などを経口摂取することから始めても良いです。午前中の生活を正してから、入眠前の工夫をしていきましょう。テレビや携帯電話、パソコンの使用は、入眠前1〜2時間は控えていきましょう。Upload By 発達障害のキホンA:ナルコレプシーは過眠症の一つで、オレキシン神経系の機能障害が原因です。日中の居眠りだけでナルコレプシーと診断できず、睡眠日誌をつけ、終夜睡眠ポリグラフィ、反復入眠潜時検査を受ける必要があると思います。ナルコレプシーを積極的に疑う場合には、睡眠外来を受診することをお勧めします。しかし、睡眠外来に受診すべきがどうか迷われる場合には、かかりつけの小児科に相談してみましょう。Upload By 発達障害のキホンA:起立性調節障害は、自律神経機能不全により、立ちくらみ、朝起き不良、だるさ、動悸、頭痛を認める病気です。朝起き不良だけでなく、だるさのために午前中の活動がしにくい状態になることもあり、そのため入眠困難になり、睡眠リズムの乱れにつながることもあります。起立性調節障害の治療と加えて、入眠をサポートする薬を使うこともあります。Upload By 発達障害のキホン発達障害のある子どもの睡眠にまつわるエピソード発達ナビライターの方々の睡眠にまつわるエピソードをご紹介します。子どもの成長に欠かせない「睡眠」。睡眠に関する悩みが解消しないときは抱え込まず、医療機関へ子どもの心身の成長や発達に大切だといわれる「睡眠」。しかし、いろいろと工夫してもなかなか子どもが思うように寝てくれず悩みを抱えている方も多いかもしれません。発達障害がある場合、睡眠障害を併存していることも多く、睡眠の問題は、単純に生活習慣の乱れではなく、何かしらの原因が背景にある可能性もあります。また、わが子が寝ないと、保護者も眠れず、親子共に疲弊してしまうこともあります。小児科医では、病気のことだけでなく、子どもの生活全般、生活習慣について相談することも可能ですので、心配なことがあれば、かかりつけ医に相談してみましょう。発達ナビ「Q&Aコーナー」にあなたのギモンをぜひ投稿してください今回は発達ナビQ&Aコーナーに寄せられた睡眠にまつわるギモンと小児科医の藤井先生からのアドバイスをご紹介しました。発達ナビのQ&Aコーナーに気になることを質問するとユーザーの方が経験をもとに答えてくれます。話題の質問に専門家からアドバイスともらえることも!ぜひチェックしてみてください。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年02月21日Instagramで人気のイラストレーター、星河ばよ(@bayo_fantasy)さん。2人の男の子のママです。長男タロちゃんの発達障害の判明、小学校の就学までの葛藤などのお話をご紹介します。長男タロちゃんが保育園に通っていたころ、主任保育士さんにつきつけられた事実!初めて聞く保育園でのタロちゃんの様子にショックを受け……? 保育士との面談では…※発達障害はいくつかのタイプに分類されており、自閉症、アスペルガー症候群、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害、チック障害、吃音(症)などが含まれます。(厚生労働省 「知ることはじめよう みんなのメンタルヘルス 総合サイト」より) 当時は次男の育休中で、長男は日中保育園に通っていました。 「わが子は他のお友だちができていることが、できない」 思いもよらなくて、いきなり辻斬りに遭ったようにとてもショックでした。 現実を受け止めるのが私にはやっとでしたが、主任保育士は私たち夫婦にグイグイ迫ってきました。 ◇◇◇ 「療育相談センターに行ってみますか? それともセンターの方に保育園まで巡回にきてもらいますか?」 保育園での他の子と違うタロちゃんの様子を聞かされ、ただでさえショックを受けているのに、主任保育士にこれからどうするのか、その場で判断を迫られ困ってしまうばよさんでした。 監修/助産師 松田玲子 著者:マンガ家・イラストレーター 星河ばよ
2023年02月14日障害児通所支援事業を運営するアース・キッズ株式会社(所在地:東京都渋谷区、代表取締役:高見 裕一、以下:当社)は、2月20日(月)に当社初の書籍『発達が気になる子の笑顔と「できた!」が増える スタジオそら式 おうち療育メソッド1 行動編』(出版社:主婦の友社)を出版します。本書は、当社が運営する児童発達支援・放課後等デイサービス「スタジオそら」が、2012年から約3,500人に対し現場で行ってきたケーススダディーを基にした書籍です。(「スタジオそら」は、2023年1月より放送中の発達障害をテーマにしたテレビドラマ『リエゾン』の取材協力をしています。)『スタジオそら式 おうち療育メソッド1 行動編』表紙書籍案内ページ: ■書籍出版の背景文部科学省の調査によると、通常の学級に在籍する小中学生の8.8%に発達障害の可能性があると言われています(※1)。10年前に実施された前回調査の6.5%から2.3%増加していたり、発達障害をテーマにしたテレビドラマが放送されたりと、発達障害や発達の遅れが気になるグレーゾーンの子どもについての関心は高まっていると言えます。2023年4月にはこども家庭庁の設置、2024年4月には児童福祉法改正の施行も迫っています。当社の療育(発達支援)施設「スタジオそら」は、全国に15拠点あり、合計約1,100人の子どもたちが通っています(2023年2月現在)。一方、入所待ちの子どもたちは約1,500人にものぼり、なかなか入所できない状態でもあります。その理由の一つには、日本における放課後等デイサービスのほとんどが「お預かり」にとどまり、当社のような「療育施設」は限られることから社会的ニーズに応えきれていないことが挙げられます。この背景には、これまで「療育」に関するガイドラインが不明確だったことが挙げられます。当社はこうした社会環境の改善を行うため、2019年より本格的に「療育」のガイドライン作成に向けて「SORA DESIGN PROJECT」を発足。桜美林大学 小関俊祐 准教授に監修いただきながら、3年の歳月をかけて療育メソッドを構築しました。その成果物としてまずは当社社員専用の教科書「療育士の手引き」を作成し、実際に現場で子どもたちに提供しています。この療育メソッドを、家庭や児童保育の現場でも実践できるように落とし込んだのが本書になります。※1 文部科学省|通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について(令和4年12月13日) <文部科学省が提唱する「発達障害」>文部科学省「発達障害者支援法」によれば、発達障害とは「自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢に於いて発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。代表的な分類に、ASD(自閉スペクトラム症)・ADHD(注意欠如・多動症)・LD(限局性学習症)があります。詳しくは以下をご参照ください。文部科学省が提唱する「発達障害」: ■本書の内容発達の気になる子が、くらしの中で苦手なことをトレーニングするために、家庭でできるプログラムを集めました。1対1を基本とした、子どもが楽しみながらチャレンジできる「スタジオそら」の発達支援プログラムを、家庭でも親子で実践できるように、わかりやすくオールカラーで紹介しています。バランスをくずしやすい、走ると急に止まれない、知っている言葉が少ない、友だちと一緒に遊ぶことが難しい、自分で着替えられない、自分で手洗いできない……など、子どもの「苦手なこと」別にトレーニングを親子の遊びとして行うプログラムを掲載。本書内で使用している絵カードなどの教具を無料ダウンロードできる二次元コード付き。また、行動に着目して問題行動をサポートする方法など、難しい内容もストーリーマンガでわかりやすく学べます。<本書のポイント>発達障害児向けの手法で知られる「ABA」(応用行動分析)に着目した内容に加え、「スタジオそら」独自の以下の4点を非常にクリアにまとめてあることが本書のポイントです。1.「見立て」(アセスメント):子どもの現在の発達状況を確認する2.「目標立て」:その子どもに合わせた支援を計画する3.「手立て」:何をしたら効果が高まるのか手立てを考える4.「実行」:手立てを実行するためのポイントを考える本書を読むと、「療養」(発達支援)の概要を掴むことができます。書籍内図表の例■書籍概要タイトル : 発達が気になる子の笑顔と「できた!」が増えるスタジオそら式 おうち療育メソッド1 行動編定価 : 1,540円(税込)著者 : スタジオそら/発達障害療育研究所 著カテゴリ : 育児・しつけ・教育発売日 : 2023年2月20日(月)判型・ページ数: B5変・112ページ出版社 : 主婦の友社URL : 目次■今後の展開本書を以て、入所を待つ家族へ早期に療育メソッドを届けるとともに、「家庭でなんとかしないと」とお悩みの家族、あるいは保育園や幼稚園の先生など、障害児へのアプローチに悩みを抱える多くの方にも寄与したいと考えています。2023年夏には、2冊目の書籍「スタジオそら式 おうち療育メソッド2構造化編」も出版を予定しています。■「スタジオそら」について「スタジオそら」は児童福祉法に基づく児童発達支援、放課後等デイサービスです。子どもたちが晴れた大空の太陽のような気持ちで育って欲しい…、そんな願いをこめて「スタジオそら」と名付けました。1対1を基本とし、子どもが楽しみながら課題にチャレンジできる発達支援療育を提供しています。「スタジオそら」公式サイト: 「スタジオそら」でのレッスン風景■会社概要商号 : アース・キッズ株式会社代表者 : 代表取締役 高見 裕一所在地 : 東京都渋谷区千駄ヶ谷3-51-6 原宿MOA 2F設立 : 2000年1月28日資本金 : 5,000万円事業内容: 児童福祉法に基づく児童発達支援、放課後等デイサービスURL : 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年02月07日4年生のときの担任に、標的にされて私は身体が小さくひょろひょろで、運動も苦手。それでいて口が立つし座学の成績はいいし、コミュニケーション障害のせいで周囲から浮くしで、もともと幼稚園のころからいじめられがちな子でした。でもときどきいじめられるだけで、クラスの中に多少の居場所はあったと思います。私が完全に「いじめられっ子」になったのは4年生のとき。担任の教師が反抗的な(に見える)私を目の敵にするようになったのです。体育の集合のときに一瞬遅れただけで「何をもたもたしている! 馬鹿にしてるのか!」と叫んで髪をひっ掴み、引きずり回す。アゲハチョウの幼虫にそっと触っただけで、まるで私が悪意を持って乱暴に扱ったかのように、「そうするっていうことは、こうすることだ!」と叫んで、腕を痣ができるほどつねる。学級会の多数決で皆が伏せているときに私だけ覗き見をしていたという濡れ衣を着せ、冬の廊下に締め出して謝るまで入れないと言う…。エスカレートしていくいじめ濡れ衣事件が決定的となって、「宇樹は人をバカにしており、悪意があり、不正までもするような非常に悪い子で、先生も懲らしめているから何をしてもいい」という感覚が児童の間で共有されてしまったようです。この感覚はクラス内だけでなく学年全体に及び、やがて「いじめられっ子」の印象は下級生にまで共有されるようになりました。班や下校グループをつくるときにクラス中でたらい回しにされる。バイキン扱いをされる。遠足で一緒になったグループ全員から走って逃げられ続ける(私は身体が小さく足も遅いので、全速力でも皆に追いつけませんでした)。クスクスと噂話をされ、近くに行くとピタッと話をやめられる。私は社交不安症のような症状が出て、学校に行くのがとても憂鬱でした。一度両親に訴えましたが、父は「学校に行かなければ将来路頭に迷う」と脅し、母はショックで泣いて寝込んでしまったので、それ以降は観念して死ぬ気で学校に通い続けました。5,6年時の担任からも受けた不適切な対応5年に上がるクラス替えのとき、4年のときに私を積極的にいじめていた子とは同じクラスにならないよう、また4年のときの担任がまた担任にならないように配慮してもらいましたが、状況は変わらないばかりか悪化していきました。給食を私にだけ配ってもらえない。買ってもらったばかりの服を着ていったら、体育のときに体操服に着替えていた間に隠され、最終的に出てこなかった(たぶん校内の焼却炉に投げ込まれたんだと思います)。体育や休み時間のドッジボールでは、身体の大きな男子が明らかな悪意を持って力いっぱいの球をぶつけてくる。クラス対抗の球技や縄跳びなどでうまくできないと、お前のせいで負けたんだと男子から罵られ、突き倒される。部活で下級生にさえいじめられる。父に相談したところ、学級会で「憲法違反だ、加害者についてはいずれ実名で訴えてやる」などと訴え出ろとアドバイスされ、そのとおりにしたところ、クラス中から非難轟々でした。「ひどいじゃないか、宇樹にも悪いところがある、みんなが宇樹から嫌な思いをさせられてるんだからいろいろされても当然だ」といったことを口々に言うのです。担任はこうしたクラスの反応に対し、「けんか両成敗ってことだね」とまとめました。私はこの流れを見ていて、あまりのショックに脱力してしまいました。今となっては、父のアドバイスも、そのとおりにした私も方向がずれていた、もっとほかのやりかたがあったのでは、とは思います。ですが、だからといって壮絶ないじめの被害者がいじめをやめてくれと訴え出たことについて、クラスの担任が「けんか両成敗」はないだろうと思います。担任は、いじめられっ子の側に立たずクラスの空気に迎合するばかりか、いじめられるのをニヤニヤして見ていたり、いじめを肯定するような発言をしたり、ときには率先してからかったりする人でした。3つ年上で地元の公立中学に通っていた兄が「このまま(ほぼ持ち上がりで進学する)公立中に上がったら義子はいじめ殺されるか、いじめを苦に自殺する」と両親に進言してくれたこともあり、私は中学は受験をして私立に進学しました。教師の不適切な対応はなぜ起こったのか ―虐待事件から考えたことこうした教師からの不適切な対応は思い出すたび腹が立ちます。その一方で、なぜあの人たちが私を虐待するに至ったのか ―私のような扱いにくい子どもを前にしたときに加害に至ってしまうような加害者マインドに陥ったのかを考えてしまいます。先日、保育園において保育士が園児に対して凄惨な虐待を行っていたというニュースが複数流れました。そのときにはやはり、自分の小学生時代のことを思い出しました。私が小学生だった30年前当時、女性のフルタイムで働けるキャリアといえば看護師と小学校教師、保育士ぐらいしかなかったのではないかと思います。当時女性ながらキャリアを築きたいと考えている女性で、学業成績も優秀だった人は、職業に教師を選ぶことも多かったのかもしれません。小学4年から6年のころの担任は、女性でした。ここで私が邪推するのは、彼女らがそのキャリアを歩む中で、男性優位の社会で能力を低く見積もられたり、ハラスメントを受けたり、悔しい思いを抱えていたのではないかということです。※これは決して、女の敵は女だとか、女性は感情の制御において劣っているとか言う意図ではありません。必ず最後までよく読んでください。社会の歪みは常により弱いほうに受け継がれます。不適切な対応をした担任は、まず彼女ら自身に社会の中で悔しい場面がたくさんあり、その傷が私のような扱いにくい子どもを前に反応したのではないか。ほかの児童のように従順に振る舞わない私に「バカにしている!」と腹が立ったのではないか―間違っているかもしれませんが、私はそう考えます。今回の保育園での虐待事件でも同様の構造が見えるように思います。保育士の仕事は、子どもの命にもかかわるハードなものであるにもかかわらず低く見積もられがちです。その専門性の高さに対する給与の低さは常に指摘されていますし、1人の保育士に割り当てられる子どもの数があまりに多く、仕事が非常にきついことも、保育士たちを追い詰める大きな一因となったと報じられています。男性教師による虐待もあるでしょうが、かつて、あるいは生活のほかの場面で被害者である人がより弱い相手に加害する構造はよくあるものだと思います。彼らの加害は決して許すことができません。しかし私は、その加害の裏にある彼らの痛みや社会の歪みに目を向け、根治に向けて何かしらの動きをしていければなと願っています。文/宇樹義子(監修鈴木先生より)もともと神経発達症(発達障がい)のあるお子さんは「不思議ちゃん」と言われることも多く、いじめのターゲットにされやすい傾向があります。私立を含めどこの学校であってもいじめはあり、例外ではありません。それは社会に出てからも継続することがよくあります。いじめる側は周りを見てやるので発覚することが少なく、いじめられる側は徐々にストレスが溜まっていきます。今日いじめていた子が明日はいじめられる子になることもしばしばあります。その逆も然り。いじめるグループに入ると周りが見えにくくなり、記憶に残っていないのです。一方、いじめられた側は一生記憶に残っています。神経発達症のあるお子さんは、もともと友達が少なくて頼れる人がいないということもあり、そのことがいじめを助長する一因にもなっています。唯一頼れる人が担任でなければならないのですが、その担任に暴力を振るわれ、いじめられていては元も子もありません。社会全体で神経発達症の理解&支援が必要なのです。
2023年02月02日かかりつけの歯医者さんはありますか?きっかけは「親の会」でのお話Upload By べっこうあめアマミたとえ発達がゆっくりでも、甘いものは大好きな子どもたち。それなりの年齢になり、何でも食べるようになってくれば、虫歯などの口腔内トラブルに見舞われることもあるはずです。私もそんな不安はありましたが、何となくその不安には蓋をして、長らく息子を育ててきました。しかし、ある日参加した地域の「親の会」のお話し会で、考えを改めることになったのです。そのお話し会では、すでに成人した障害があるお子さんの親御さんたちが、ご自身の経験談などを話してくれていました。その中で、歯科治療の話題が出たのです。お話しくださった方のお子さんには知的障害があるということでしたが、あるとき、虫歯になってしまったそうです。しかし、街の歯医者さんでは暴れてしまって治療ができず、大きな専門の病院に通って治療をすることになり、とても大変だったそうです。知的障害に限らず、発達障害などさまざまな特性があるお子さんに言えることですが、虫歯になってもこのように暴れてしまい、治療にならないケースは少なくないのではないでしょうか。子どもたちにとっては口の中に不思議なものを入れられるだけでも不快なのに、変な味がしたり、痛かったり、その上長時間じっとしていなければならないのです。これは、受け入れがたい苦痛でしょう。でもだからこそ、子どもが小さいときから取り組んでほしいことがあるとも言われました。それは「虫歯になってから」ではなく、「虫歯になる前から」歯医者さんに通うことです。まずは診察台に座れるようになるところから始め、歯磨きだけだったり、フッ素を塗るだけだったり、子どもの様子を見ながらゆっくりと、「歯医者さんに慣れる」ことができるようにしていきます。かかりつけの歯医者さんを決めて定期的に通うことで、最初は入ることさえ抵抗があった子どもも、だんだん慣れていくのではないでしょうか。虫歯になってから初めて歯医者さんに行くと、どうしても痛い治療をせざるをえません。そうすると子どもの中に「歯医者さん=怖い」というイメージができてしまい、拒否感がより強くなってしまいます。でも、何も痛いことをされないときに、ただ楽しい気持ちで通う習慣をつけていけば、結果は変わっていくかもしれません。お子さんが、歯医者さんという場所やそこで会う人たちに心を開き、信頼関係ができていることは、スムーズな治療のために大切なことです。このお話を聞いて、私は大いに納得し、息子にもかかりつけの歯医者さんを探したいと思いました。障害があると診てもらえない?難航する歯医者さん探しUpload By べっこうあめアマミ「息子にかかりつけの歯医者さんを」と思いましたが、実際に探してみると、なかなか障害がある子どもを快く受け入れてくれる歯医者さんは見つかりませんでした。街の診療所ですと人手も限られますし、患者が暴れた場合にしっかり拘束することもできません。口腔内は繊細な治療が必要となりますから、やはり歯医者さん側も不安があるのでしょう。そんなある日、「小児歯科」と看板に掲げている歯医者さんに、当時1歳だった娘(息子の妹)の歯科健診に行きました。娘はおとなしく診察台に座って健診を受け、歯医者さんも褒めてくれました。そして、「今後も定期的にフッ素塗布などしにくるといいよ」とすすめてくれたのです。ちょうど家からも近くて良さそうな歯医者さんだと思った私は、息子のことが頭をよぎり、「今度、この子のお兄ちゃんも連れてきていいですか?」と聞いてみました。すると歯医者さんは何の迷いもなく「どうぞ連れてきてください」と言ってくれました。しかし、その後私が息子に障害があることを話し始めると、歯医者さんは急に別人のように歯切れが悪くなったのです。娘の通院はぜひにとすすめてくれるのに、息子の通院は、本人を見てもいないのに拒まれる。致し方ないかもしれませんが、親としてはわが子2人に明らかな差がある対応をされたようで、少し悲しくなりました。出会いは突然に!息子を受け入れてくれた歯医者さんUpload By べっこうあめアマミその後しばらくして、今度は娘が保育園で歯をぶつけてしまい、またどこかの歯医者さんで診てもらわなければならなくなったときのことです。前回の苦い思い出を踏まえ、今度は別の歯医者さんに行ってみました。そして娘の治療後、またしても私は、歯医者さんにおずおずと息子のことを切り出し、障害がある子どもでも通院は可能か聞いてみました。すると、歯医者さんはさらっと快諾してくれたのです。その歯医者さんも、自分は障害児「専門」ではないとおっしゃっていましたが、「とりあえず連れてきてください」と言ってくださり、後日息子を連れていきました。その歯医者さんは、私が親の会で言われたことと同じことをおっしゃっていました。「息子さんにとって歯医者さんが嫌な場所にならないように、まずは信頼関係をつくりたい、だから無理に何かをしようとせず、ゆっくり進めていきますね」と話してくれました。まずは診察室に入り、診察台に座るところからです。息子は最初は多少緊張があったと思いますが、歯医者さんの人柄もあって安心したのか、初日からおとなしく診察台に座ることができました。診察台が倒れることには少し抵抗があるようでしたが、歯磨きをしてもらい、口の中に異常などがないかも診てもらえました。最後、息子が少しだけ嫌なそぶりを見せたので、その日はそこで終わりました。息子はたくさん褒められて、ご機嫌で帰宅。私もホッとしたのを覚えています。歯医者さんの提案で、最初はお互いの信頼関係をつくることと慣れるために、1ヶ月に1回くらいのペースで通いました。そうして歯磨きや、適切なタイミングでフッ素塗布などをしてもらいつつ、息子がだいぶ慣れてきた今は2、3ヶ月に1回くらいのペースで通っています。鉄則!発達っ子の歯科治療は「治療」より「予防」Upload By べっこうあめアマミ息子は今、8歳の小学2年生ですが、これまで一度も虫歯になったことがありません。いろいろな要因はあると思いますが、良い歯医者さんに出会い、定期的に口の中を診てもらいながら、歯磨きやフッ素塗布などをしてもらっているおかげかもしれません。親の会だけでなく、私の周りの障害があるお子さんを育てる親御さんたちの間では、「かかりつけの歯医者さんを見つけて定期的に通う」ことをよくすすめられます。幼児期のうちから歯医者さんと信頼関係を築き、歯医者さんは怖くない、口の中を触られても大丈夫、と良いイメージをつくり上げていきたいものです。もし、それでも大きな虫歯になって、治療がかかりつけの歯医者さんでは無理ということになったら、そのときは最終手段として専門の口腔センターなどにお願いしましょう。そういう際にはかかりつけの歯医者さんが判断して、治療に適した病院に紹介状を書いてくれるのではないかと思います。発達に課題があったり、障害があったりするお子さんの歯科治療はどうしても大変です。そのため、「治療」より「予防」が何より大切です。虫歯になってから困るよりも、なるべく虫歯にならないように気を付けていきたいですね。執筆/べっこうあめアマミ(監修:藤井先生より)良い歯科医院との出会いがあって良かったですね。信頼関係を築くために、1ヶ月おきにまめに通院されたのも良かったですね。治療となると、口腔内を安全にみるために身体を抑える必要が出てくることもあったり、場合によっては全身麻酔で入院されて治療する場合もあります。痛くない定期的なチェックを継続し、歯科医院の通院ができるようになっていることが、虫歯予防において大切です。今回のべっこうあめアマミさんのお話は、発達障害の特性があるお子さんの親御さんにはもちろんのこと、歯科検診を嫌がるお子さんをお持ちの親御さんにも知ってほしい内容です。
2023年01月23日本人への障害告知以前コラムでも書きましたが、娘は中学2年生のときに主治医から障害の本人告知を受けています。告知は・娘自身が「自分の障害について知りたい」と思った・本人に“居場所”があり、精神的に落ち着いている・告知後、支援者(学校関係者)のフォロー体制ができていることを医師が確認したうえで行われました。そのおかげで娘は障害告知をポジティブに受けとめることができました。障害告知から6年後に、再告知その後、娘は高等特別支援学校を卒業し、特例子会社(※)に就職しました。そして20才になったある日、娘は再び私に「自分の診断名を知りたい」と言いました。私は娘に、中2のときに告知を受けているのになぜまた聞きたいのか尋ねました。娘は「診断名は知ってるけど、自分の障害の詳しい種類と程度を知りたい」と言いました。SNS上でも発達障害に関する情報や当事者として発信する人も多くなってきていましたし、娘もそういったものを見て何かしら思うところがあったのかもしれないと、このとき私は思いました。(※)特例子会社は、「障害のある方の雇用の促進、そして安定を図るために設立された会社」のことです。【参考】厚生労働省特例子会社制度の概要Upload By 荒木まち子娘は社会人になってからは一人で通院をしていました。何か親が医師に伝えたいことがあるときは、手紙を書き娘から医師に渡してもらっていました。私は医師に『娘が自分の障害名や障害の程度を知りたがっている』旨の手紙を書きました。医師は中学生のときから娘を診ているので娘のことはよく分かっています。二度目の告知は通常診療とは別枠で予約を取り、親同伴で行われることになりました。一度目の告知のときは前回の告知のときは、娘と親がそれぞれ感じている“本人の長所と短所”を事前に書き出しました。・真面目で一生懸命。我慢強い・常識を学び、言われたことは直したいと考え努力している・ルーチンに強く、さぼらない・興味や関心が深く狭い。技術や知識は多い・自分から気持ちを伝えることは、落ち着いてるとできる・会話は苦手で、相手の言葉に不安になることがある・新しいことや状況の変化・変更に対して臨機応変に対応することが苦手これらのことを一緒に振り返りながら医師が娘の『特性』を文字に起こして障害の説明をしました。本人の理解力に合った言葉選びと文字を書きながらの説明は、視覚優位の娘にはとても有効な方法です。医師からは『これからどのようにして周りの人たちに助けを求めていくのが良いか』のアドバイスもありました。2度目の障害告知では二度目の障害の説明でも、事前に本人と親で『娘の長所と短所と思われることの書き出し』をしました。その内容は6年前とほとんど違いはありませんでしたが、新たに“自分のことばで相談を持ち掛けるのは、ハードルが高い。相談してくれる人が向いてくれたら話せる。自分から働きかけることが苦手”が加わりました。娘は自らに主治医に「自閉症」「発達障害」「アスペルガー症候群」「ADHD」の違いや「自分は何に当てはまるのか」「障害の重さはどの程度なのか」などを質問しました。娘の質問に対し、主治医は図を書きながら娘に分かるように説明をしました。そして診断名は大事な個人情報だということも娘に伝えました。娘をとりまく環境の変化私は当初、再度自分の障害についての説明を望んだ娘の心境がよく分かりませんでした。でも娘と医師のやり取りを見ているうちに、娘が“学生”から“社会人”になったことが大きく影響しているのだと感じました。『学生』でなくなると、選択の自由度が増し、煩わしいもの、嫌なことを避けることもできます。学生時代は限られていた交友関係や活動範囲を広げることが可能です。一方で、自ら行動を起こさなければ人間関係は希薄になりがちです。周りの人は本人の意思を尊重します。そして自身の行動には責任が伴なってきます。そんな中で娘が自分の障害を再確認したいと思うのは自然なことだったのかもしれません。これからも親は子どもが何歳になっても親ということには変わりありません。そして子どもに障害があると、子どもを守りたいという気持ちはことさら大きくなります。でも自分の障害を理解しようとしている娘の姿を見て、私は彼女を一人の大人としてもっと尊重し、対等なスタンスで接していくべきなのだろうと感じました。これからも人生の節目やターニングポイントを迎えるたびに、娘は自身の障害についていろいろと考えることでしょう。そしてそのとき、私もまた新たな気付きを得るのだと思います。いつになるか分かりませんが、そのときまで体も心も頭も(笑)元気でいたいものです。執筆/荒木まち子(監修:鈴木先生より)そもそも自閉スペクトラム症を「障害」ととらえずに「特性」ととらえればいいのです。特性を知ることで今後の人生や生き方に役立てればいいと思います。重要なのは会社や周りの人たちがその特性を理解してくれるかどうかです。理解してくれることによって優しく丁寧に具体的に肯定文で話してくれれば、娘さんにとって生きやすい社会になります。最近はSNSなどでさまざまな情報が飛び交っております。重要なのは信頼のできる主治医と向き合って自分独自の特性を正確に知り、どういう対策を取ったらいいか知っておくことです。そしてそれを理解してくれる仲間を増やすことです。
2023年01月17日近所に住む放置子のA子ちゃんが日常的に家に出入りしていたこっとんさん家。わが子の帽子をA子ちゃんが盗んでいたことが明るみになって以来、A子ちゃんに注意したうえで出入り禁止に。それから半年後、A子ちゃんが再びわが家を出入りするようになった途端、再びお金がなくなり始めます。これまでの思い込みから解放された瞬間、「A子ちゃんにお金を盗られたのは間違いない!」という確信に変わり、すぐにA子ちゃんのママと連絡を取って確認してもらいました。 「A子ちゃんが犯人で間違いない」という確信があっても、「よその子どもを疑うなんて絶対に間違いがあってはならない」という気持ちから、まずはA子ちゃんママに相談したこっとんさん。「すぐに探してみる!」と自宅に急ぐA子ちゃんママを見送ったその日の夜、A子ちゃんとママが2人で自宅にやって来て……!? 本人は認めていないようだけど… お金をA子ちゃんが盗んだ可能性をA子ちゃんママに伝え、お金を持ち運ぶときに使用していたと思われる手提げ袋を探してもらったこっとんさん。その日の夜、A子ちゃんとママが自宅にやって来ましたが、手提げ袋は見当たらなかったとのこと。A子ちゃん自身も「盗んでいない」と言ったまま、それ以外について何も話すことはなかったそう。しかし……。 「たぶんA子が盗っている」と、1万円を返してくるA子ちゃんママ。「本人が認めていないから」と、一旦は返金を断るこっとんさんでしたが、これまでにもよそでお金などを盗んでいた経緯もあり、A子ちゃんママはわが子の言葉を信じていない様子でした。 長期戦になることを予想して、「反省してきちんと謝罪に来るまでこのお金は預かっておこう」と、お金を受け取ることにしたこっとんさん。しかし、それからA子ちゃん親子からの音沙汰はないまま日にちだけが過ぎていくのでした。 こっとんさんからの訴えかけにすぐ対応してくれたA子ちゃんママでしたが、本人の気持ちを確認しないまま返金しようとするのは、少し場当たり的に感じてしまうかもしれません。何よりもA子ちゃん親子がきちんと向き合う時間をつくって、A子ちゃん本人の口からすべてを聞ける日が来るといいですね。著者:マンガ家・イラストレーター こっとん3人の子どもの母親です。メンタル豆腐すぎて、イラストが得意な訳でもないのに助けを求めてマンガを描いちゃったタイプ。
2023年01月15日わが子にとっての「あたりまえ」とは?を考えるーー『自閉スペクトラム症の太郎とやさしい世界』この本では、発達ナビの連載ライターである「まゆん」さんと、自閉スペクトラム症があり特別支援級に在籍する息子の「太郎」くんの温かい日常のエピソードが描かれています。太郎くんとの生活は驚きの連続。ふとしたときに独特の感じ方、考え方を見せる太郎くんの特性を、まゆんさんも、まゆんさんのご両親やお姉さんも、否定することなく、やさしく受け止めてくれます。自閉スペクトラム症がある太郎くんのエピソードが中心に描かれていますが、そのほかにも看護師として夜勤で働くまゆんさん自身のお仕事のお話や、若くして亡くなったまゆんさんのお兄さんや病気が見つかったお姉さんのお話、先生や友達との人間関係などを含めて、「自閉スペクトラム症のある子どもの子育て」というテーマに限らず、生きるとは、子どもを持つこととは、その人にとっての「あたりまえ」とは、お互いを思うこととは、といった幅広いテーマについてじっくりと考えられる一冊になっています。感覚過敏、癇癪、抽象的な概念の理解の難しさなど、さまざまな特性があるものの、ときに大人が気づかないようなハッとするようなことを口にしたり、周りの人の言葉や行動を自分なりに解釈してやさしい言葉をかけてくれる太郎くんとの関わりを通して、太郎くんだけでなく、まゆんさんや太郎くんの周りの人が成長していく様子も垣間見ることができます。やさしさあふれる太郎くんとあたたかいご家族の日常から、自分にも人にもやさしくなれる生き方のヒントが得られるのではないでしょうか。一人にしない、立場を超えた対話の重要性ーー『対話から始める脱!強度行動障害』強度行動障害とは、他害や自傷など、周囲の人の暮らしに影響を及ぼす行動を著しく高い頻度で起こすために、特別に配慮された支援が必要な状態を指します。近年、医療、教育、福祉、行政など、それぞれの分野でさまざまな取り組みが進められているものの、まだまだ家族や施設で孤立し、困り果ててしまうケースが多いといわれています。この本では、ライフサイクルを見据えたうえで、1. 思春期、2. 思春期~青年期、3. 成人期~高齢期と3つのパートに分け、強度行動障害の背景、予防のための工夫や支援、家族との関係性や自立生活のための支援についてなど、それぞれの時期にぶつかりやすい困りごとやその対処法について、座談会も交えながら、児童精神科医や介助職の方など幅広い立場の専門家により書かれています。大切なのは支援者も当事者も孤立させないこと。それぞれの立場を超えて対話を重ね、教育、福祉、医療など分野を超えて連携し、包括的に支援を行っていくことが強度行動障害を抜け出すための一歩になるのではないでしょうか。強度行動障害についてさまざまな悩みに直面したとき、この本は必要な情報を提供してくれるかもしれません。フリースクールについての疑問に答えてくれる一冊ーー『フリースクールを考えたら最初に読む本』近年では、不登校の子どもの数が年々増加し、フリースクールなど家や学校以外の「第三の居場所」の需要が高まっているといわれています。いざ子どもが不登校になり、フリースクールに通うという選択肢を考える段階になったときに、そもそもフリースクールとはどんな場所で、どんなスタッフがいるのか、どのように選べばいいのか、といったことについて情報を得ることが難しいという課題があるそうです。この本では、不登校新聞編集長の石井志昂さんにより、不登校について、フリースクールの必要性について、運営やスタッフについて、選び方についてなど、フリースクールに関して知りたい情報が分かりやすくまとめられています。Q&Aや当事者、保護者の方の体験談も掲載されており、幅広い視点から「フリースクールとはどんな場所か」について学ぶことができるような一冊となっています。不登校は決して他人事ではなく、何かのきっかけで急に学校に行けなくなってしまうことはいつでも起こりうることだと言えるでしょう。子どもが不登校になったとき、フリースクールは一つの選択肢になるかもしれません。フリースクールと言っても、中身はさまざま。子どもにとって最適な選択ができるよう、この本は必要な情報を提供してくれるのではないでしょうか。現在不登校状態にある方も、フリースクールについて知っておきたいという方も、さまざまな方におすすめの一冊です。強迫症の正しい理解と治療のためにーー『強迫症を克服するー当事者と家族のための認知行動療法』強迫症とは、自分の意思とは関係なく、ある考えやイメージが頭に浮かんで離れなくなり(強迫観念)、そこで生まれた不安を払拭するために同じ行動を何度も繰り返すこと(強迫行為)で日常生活に支障が出てしまう不安障害の一つです。強迫症は本人の生活に支障をきたし、そのことを自分で責めたりしてしまったり、家族や近くにいる人も巻き込まれてしまったりするケースが多く、とても苦しい病気であるといわれています。この本では、「洗浄強迫」「確認強迫」「整理整頓型強迫」「想像型強迫」などそれぞれのタイプごとに症状や原因が説明されているほか、強迫症の治療、家族の対応、関連するほかの障害などについて詳細に語られており、自分の症状に合った対処法を見つけることができるようになっています。強迫症の治療は「ひたすら我慢する」「ひたすら嫌なことをする」と考えられていることも多いですが、このようなイメージは誤解であるとこの本では述べられています。病気の実態や治療について正しい知識を得たいと思ったとき、この本はそっと寄り添ってくれるのではないでしょうか。誰もが参加し楽しめる、新しい体育のあり方ーー『合理的配慮にも活用できる!アダプテッド・スポーツで誰もが主役の楽しい体育』アダプテッドスポーツとは、身体活動をする際に配慮が必要な方(障害児者、高齢者、妊婦など)に対し、用具、ルール、環境などを工夫することで、誰もが身体活動に参加できるようにするための取り組みを指す言葉です。この本では、年齢、性別、障害などを問わず楽しめるアダプテッド・スポーツの考え方をベースに、誰もが主役になれる体育の在り方が分かりやすく解説されています。第1章では、理論編として、体育やアダプテッドスポーツの基本的な考え方を、第2章では、実践編として、器械運動、陸上運動、ボール運動など、それぞれの分野ごとにさまざまな運動の実践例が紹介されています。運動の効果・効用や評価の仕方など、実際に授業をデザインする際に参考になる内容もたくさん盛り込まれています。教室の中には、運動が苦手な子ども、身体を動かすことに制約がある子どももたくさんいるでしょう。体育の授業の時間に、誰かが我慢したりつらい思いをしたりする必要がない環境づくりのためには、みんなで楽しめる体育の授業を考えていくためには、どのようなことが必要なのか、この本と共に考えてみてはいかがでしょうか。「令和の日本型学校教育」と知的障害教育はどう交わる?ーー『知的障害教育における「個別最適な学び」と「協働的な学び」』2021年1月に中央教育審議会から「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」が答申されました。この本では、答申の中で示された「個別最適な学び」と「協働的な学び」というキーワードについて、これらを知的障害教育においてどのように実現していくかについての提案がなされています。Ⅰ章で「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」が示す内容を読み解き、Ⅱ~Ⅳ章では、知的障害教育の歴史、「学校生活の集団化と個別化」、教育目標「自立」をめぐる議論をもとに「個別最適な学び」と「協働的な学び」の在り方が検討されています。さらにⅤ章では「個別最適な学び」と「協働的な学び」を実現する授業づくりについて、Ⅵ章では今後の課題と望ましい方向性について述べられています。知的障害教育の歴史を振り返ると、すでに「個別最適な学び」「協働的な学び」の多様で豊かな蓄積があることが示されています。今後の教育が目指す「令和の日本型学校教育」と知的障害教育はどのように結びつき、関わっていくのでしょうか。知的障害教育という観点からの「個別最適な学び」と「協働的な学び」について知りたい方、「個別指導」と「集団指導」、また教育目標「自立」との関係について考えたい方におすすめの一冊です。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2023年01月14日娘の障害が分かったとき、夫は単身赴任中だったわが家の長女ゆいの障害認定が下りたころ、夫は3年間の単身赴任中でした。しかも当時はコロナで移動制限もあったころで、夫が帰宅できる回数は少なく、ほぼ私と子どもたちだけで過ごしていました。夫とはいつでもオンラインで連絡が取れるとはいえ、役所の手続きや通院、学校との打ち合わせも全部私一人で対応し、心細く大変だったことを思い出します。障害の診断が下りた当時は「うちの子は普通だ」「障害者の手帳なんかいらないのでは」「気にしすぎだ」と言っていた夫ですが、少しずつ心境が変わってきているように感じます。実は夫からちゃんとゆいについての思いを聞いたことはありません。でも、中学校の特別支援学級の説明会に参加したり、勤め先にゆいが療育手帳を取得したことも話したりしています。口にはしないだけで現実を受け入れつつあるのかなと感じているのですが…。Upload By 吉田いらこわが家の子育てバランスは、私が子どもたちに甘く夫が厳しいパターンでした。夫は甘やかすばかりでは子育てに良くないと思っていたようで、よく「俺が厳しい部門の担当になる」と言っており、ゆいの障害が確定するまでは、夫は子どもたちには特に勉強面で厳しくしていました。しかし今年に入り、単身赴任を終えて帰宅した夫は…とにかくゆいに激甘になっていました。特別支援学級に移ってから本人に合う勉強法に変えていただいているとはいえ、全員共通で受ける算数のテストの点数は相変わらず高くはありません。○が少ない答案用紙を見て、以前の夫だったら「しっかり勉強しないからだ」と注意していたと思うのですが、今はもう答案用紙を見ても微笑むだけです。Upload By 吉田いらこ夫の娘たちに対する接し方の違いが気になって…勉強面以外でも、次女のあいに接するときの夫は今までと変わらないのですが、長女のゆいに関しては「まあ、仕方ないか」という感じで流してしまうのです。ゆいが元々大人しい性格で怒られるようなことはあまりしないという事情もありますが、あいが対応に差を感じてしまうかも、と少し心配しています。夫を見ていて感じたのですが、怒るということは相手に対して期待する気持ちがあるからなのではないかということです。今よりもっと成長してほしいから怒る、ということもあると思います。このことをゆいに対しては無意識に避けているのでは、と感じました。Upload By 吉田いらこでも姉妹で対応に差をつけてしまうと、されている側は敏感に感じ取ってしまうので、二人に対して同じように接するよう、夫には気をつけてもらうようにしています。私としては二人とも優しく甘やかしてもいいのでは、と思っているのですが…。もうすぐ、長女のゆいは中学生、次女のあいは小学校高学年になります。これから勉強面だけではなく、精神面でも成長してきたときに、娘たちにどう対応していこうか悩んでいるところです。執筆/吉田いらこ(監修:藤井先生より)コロナ禍の単身赴任中に、ゆいさんはゆいさんのペースがあると、受け止められたのだと思います。一方で、次女のあいさんへの接し方が気になっているのですね。きょうだいの対応に差をつけるのは、されている側は敏感に感じ取ってしまうかもしれない、と相談されることもあります。しかし、きょうだいとはいえ、個々に個性があります。個別に対応を変えるのはあっても良いかと思います。しかし、必要な注意はあっても良いかと思いますが、成績に対して怒るという対応は工夫しても良いかもしれませんね。
2023年01月13日臨月に行ったノンストレステストでひっかかった娘には重度の知的障害や身体障害があります。言葉はほとんど話すことはできません。発達の遅れは感じていたものの、2歳直前で障害があると診断されるまでは、そんなに重い障害があるとは思ってもいませんでした。妊娠中は、後期になるまではとても順調でした。ですが、臨月になり、ノンストレステストを行ったところ、いつまでたっても胎児が起きないのです。通常は、おなかの中の赤ちゃんは20分おきくらいで起きたり寝たりしているそうなのですが、ずっと寝ている状態とのこと。ほかの妊婦さんが30分ほどでテストを終えていくのに、私だけ3時間たっても終わりませんでした。産院の先生はなんども超音波で胎児の様子を見ては「脳もあるし、身体に異常は見当たらない。なんでだろう」と頭をひねらせていました。大学病院に紹介状を書くか迷っていた様子でしたが、予定より2週間ほど早く陣痛が来て、紹介する間もなくかかりつけの産院で出産することになりました。出生後すぐチアノーゼに出産時も、上の子の時とは違いました。生まれてすぐ一声泣いたものの、そのあとはぐったり…胸に抱かせてもらった娘の顔色がだんだん悪くなるのを見て、私は「先生、この子おかしいです!」と叫びました。スタッフが慌てて血中酸素濃度をチェックすると、とても低い数値。あわてて酸素ボックスの中に入れられました。ですが翌日になると落ち着いたので、予定通り3日ほどで退院となりました。Upload By ユーザー体験談泣かない、手がかからない、乳児時代その後は特に問題はないように見えた娘ですが、上の子と比較して違ったのは「泣かない」ということでした。上の子がとにかく泣いてずっと抱っこをしていて大変だったのに、娘は寝かせておいたらずっと寝ているし、泣いてアピールすることもほとんどありませんでした。出産祝いに来てくれたママ友に、「こんなに手がかからないなんて、なんか変じゃない?」と言って「楽なのに心配するなんて、心配しすぎだよ」と言われたのを覚えています。今思えば、自己主張するほど脳も発達してなければ、泣くために必要な身体の力も未熟だったのだろうと思います。Upload By ユーザー体験談4ヶ月を過ぎたころから発達の遅れが目立ち始めた首すわりまでは順調だったのですが、そこから先はつまづきました。寝返りしない、ハイハイしない、座れない、伝い歩きしない…7ヶ月健診で要観察、9ヶ月健診のときにもお座りが安定しない娘をみて、産院の先生に子ども病院を紹介されました。上の子のときを思い返せば、9ヶ月ではしっかり座り、座ったまま体をひねったり、両手でおもちゃで遊んだりしていたし、ずりばいやつかまり立ちもしていました。人見知りも始まっていました。娘は人見知りをすることもありませんでした。原因不明の発達遅延といわれて子ども病院にはかかったものの、原因不明の発達遅延と言われただけ。発達センターを紹介され、1歳になるころから、PT(理学療法)を受けることになりました。センターの先生は、おそらく一目見て娘の障害に気づいていたのでしょう。その後、同じ自治体に娘と同じ障害がある子が複数いると分かりましたし、そうした子どもたちはみんな、就学前はこのセンターに通っていたからです。ですが、立場もあるからでしょう、障害名について口にすることはなく、「ウォーカーをつくって歩行練習をしたほうがいいと思います。障害者手帳をつくれば、公費でつくれるので手帳をつくりませんか?」と提案されました。おそらく、歩行に困難がある障害だから、はやめにウォーカーをつくってリハビリを始めたほうがいいと考えてくださったのだろうと思います。1歳半健診で感じた周りの子どもとの違い1歳半健診にもいったものの、ハイハイもせず、模倣もせず、もちろん積み木もつめず。「おかあさんが髪をとかしていたら、それをまねしますか?」といわれ、1歳半の子どもってそんなことできるんだっけ、と思ったのを覚えています。そうした模倣をするようになったのは、娘の場合は小学校に入ってからでした。健診で、すでに発達センターに通っていることを伝えると、それならと特に要観察の指示もありませんでした。てんかん発作が診断のきっかけに結局、障害が分かったのは、1歳半を過ぎたころにてんかん発作を起こしたことがきっかけでした。地域の中堅病院にしばらく入院し、その後主治医になったのが、ある大学病院から月に何回か来ている脳神経の専門の先生で、その先生は脳波をみて娘の障害に気づき、大学病院への転院手続きをしてくださったのです。大学病院での遺伝子検査の結果、先天性の希少疾患があることが分かりました。Upload By ユーザー体験談3歳児健診はパス、大学病院での配慮がうれしくて3歳児健診には、娘を連れては行きませんでした。障害も分かっていたし、すでに毎月大学病院で見ていただいていたからです。役所に電話したら、「大学病院で毎月見ていただいているなら大丈夫ですよ」と言われました。定期通院のときに、看護師さんに「3歳児健診は行くのやめたんです」と伝えると、いつも計測している身長体重に加えて、詳しく計測をしてくれ、母子手帳に記載してくれたのがとてもうれしかったです。Upload By ユーザー体験談障害告知はつらかったけれど生後1ヶ月くらいから感じていた「何か気になる」というカンは、結局当たっていました。わが家の場合、てんかん発作で入院した病院に、娘の障害に詳しい先生がきていたことから、早めに障害を見つけてもらうことができました。障害が分かったときはその重度さに落ち込みもしましたが、今は早く見つけてくださった先生に感謝しています。あれから10年以上経ちましたが、私たち家族は娘を中心に幸せに暮らしています。イラスト/にれエピソード参考/あき(監修:鈴木先生より)1歳までは運動面での発達が主なので、遅れのあるお子さんはとりあえず「運動発達遅滞」という病名で定期的にフォローしながら病因検索をしていきます。この時点で一般の小児科医から神経専門の小児科医のいる病院へ紹介されるのが普通です。娘さんは運動発達を遅らせることで親にイエローカードを出していたのです。それをいち早く察知するために乳幼児健診(基本コラム「0歳児健診」参照)があります。早めに診断するメリットとしてさまざまな合併症に対する検査・診断・治療が早くできることが挙げられます。1%程度の病気の面は主治医が診るので家族のみなさんは残り99%の健康的な娘さんのできるところを見て伸ばしてあげてください。
2023年01月07日【前編】障害児キッズモデル「僕たちから目をそむけないで!」華ひらく社長・内木美樹さんよりつづく12月3日午前10時、週末の千葉県のイオンモール木更津。多くの家族連れでにぎわうなか、2階にある展示スペースで、ひっそりと小さな写真展が始まった。30点ほどのパネルには、子供たちがカラフルなバルーンやシャボン玉に夢中になっていたり、あどけない表情でソファでくつろぐ姿などが写されている。一見、何げない日常の光景だが、作為のない子供たちの表情や、会場全体の飾りつけもパステルのトーンで統一されていて、不思議な幸福感に満ちているのだ。《ここにいる全員、障害のあるキッズモデル》入口脇に掲げられた写真展のタイトルのとおり、実は、ここに写っているすべての子供が、何らかの障害と共に生活している。よく見れば、パネルの脇にモデルの名前と一緒に「7歳・自閉症・肢体不自由」「3歳・自閉症・重度知的障害」などとプロフィールが添えられていた。「写真も会場も明るい雰囲気で、驚かれたでしょう。私が何より大切にしているのが、この世界観なんです。障害につきまとう、暗かったり、マイナスのイメージを変えたいんです」そう話すのは、この写真展を主催した、障害のある子供たちのモデル事業などを手がける「華ひらく」(東京都新宿区)社長の内木美樹さん(40)。■結婚、起業……穏やかな生活は、授かった長男が2歳になる直前、保育士のひと言で一変「普通にわがまま(笑)、よくいえば活発な女の子でした」’82年12月4日、横浜市に生まれた内木さん。「航空会社勤務の父、専業主婦の母、3つ上の兄の4人家族。地元で小中高と公立校に進み、ずっと陸上部に所属していました」そんな、「ごく普通の生活」が中学1年のときに突然、断たれる。「母が膵臓がんで急死。当たり前だった、学校から帰宅しての『おかえり』という笑顔を失い、深い絶望に陥ります。その孤独や悲しみを12歳の私は抱えきれずにパニック障害を引き起こし、幸福な時期があるからつらいんだと自己防衛で忘れようとするうちに本当に記憶を失い、解離性障害と診断されました」そんなとき、図書館で1冊の学習漫画と出合う。「何げなく手にしたマザー・テレサの伝記を読んで、世界には、こんな不幸な私すら持っている家のない人や、ご飯さえ食べられない人たちがいることを知り、私も泣くばかりでなく、将来、マザーのように自分の体験を生かして何かできないかと、前を向けたんです」その夢を実現すべく、高校卒業後には留学準備の専門学校へ進み、19歳で渡米。ネバダ州のリノ市にある、看護学でも有名な短大TMCCへ入学。23歳で帰国後、コピー機の営業職などを体験。しかし、「上司からのノルマや罵声があったり。留学したせいで、日本の会社とはこういうもんだと思い込んでいましたが、やがて、いわゆるブラック企業だと気づくんです。これは自分の思い描いている道とは違う。だったら、会社に縛られない働き方をしたいと、起業に踏み切りました」’10年11月、たった一人で設立した「華ひらく」は、当初は留学体験を生かして、飲食店のインバウンド向けの接客の英会話教育などを請け負う会社だった。2年後の春に、日米間の長距離恋愛を続けていた克親さんも帰国して、結婚。穏やかな夫との生活のなかで、パニック障害もいつしかおさまっていた。そして、’13年10月8日、長男の尊くんが誕生する。「主人は会社員で経理を担当していて共働きですから、尊は6カ月から保育園。歩き始めるのが遅いくらいで、なんの心配もなく忙しく毎日を送っていました」その日常が、2歳になる直前、保育士のひと言で一変する。「タケちゃん、耳が聞こえてないかもしれません。お名前を呼んでも振り向かないんです」母親の直感で耳は正常だと思っていたが、不安を捨てきれずに、大きな施設を訪ねた。■ガラスの壁の向こうにいる人にも障害のある子供たちのことをどう伝えるか、ひらめいたのは……「自閉症と知的障害があります」市川市のこども発達センターの医師が告げたのに対して、事前に発達障害等について調べていた内木さんは、間髪入れず尋ねていた。「知的障害は中度ですか?」「重度に近い中度です」その言葉が重くのしかかる。「自閉症などの障害があっても、各分野で活躍している人もいます。その存在が私の最後の希望でしたが、重度の知的障害と聞いて、一気にくだかれました」しかし、女性園長は行政と相談して尊くんの担当となる加配保育士を付け、ほかの保護者たちも温かく受け入れてくれたのだった。「それでも、2歳、3歳と成長するにつれて、ますます尊がじっとしていられなくなったり、大声を上げたりするのを見て、私は、うちの子が園全体の和を乱しているのではと、心配するばかりで。’16年2月には、弟の謙くんも誕生。しかし、遊びたい盛りの男の子2人を公園に連れていくのは、いつも夕方5時を過ぎてから。「薄暗い公園を見渡し、ほかの子やお母さん方がいないのを確かめてホッとしている自分に気づいて、また泣きたくなったり」本来の自分らしさをどんどん失っていく内木さんだったが、わが子の障害を受け入れるきっかけは小学校入学と同時に訪れた。千葉県立の特別支援学校への入学式でのことだった。「最初の行事の集合写真の撮影で、尊がシャッターが1回下りただけのところで駆け出してしまったんです。私自身は、もう焦ってしまうばかりでした」すると、周囲の先生たちが、こんな言葉を口にした。「あらら、行っちゃったねえ~。元気でいいね」そのやわらかな笑顔を見て、内木さんは、ようやく自分たち母子の居場所を見つけたのだった。その初めての心の余裕が、彼女にあることを気づかせた。「ふり返れば、保育園でも、公園でも、みなさんは私たちを受け入れてくれていた。なのに、自分で見えないガラスの壁を作っていた。そうか、私こそが、障害のある人たちに対して、偏見や差別の気持ちを持っていたんだと」そして’20年に入ると、家族はまた大きな一歩を踏み出す。ユーチューブで、尊くんの日常を配信し始めたのだった。名付けて、「はばたけタケル」。1年後には登録者数も3千人まで増えるなど、一定の反響は得ていた。しかし、内木さんは、「ユーチューブを通じて、同じ障害のある人たちの輪はできました。でも、ふさわしい表現ではないかもしれませんが、傷のなめ合いをしているうちは、社会は変わらないだろうと思ったんです。だったら、かつての私のように、ガラスの壁の向こうにいるあちら側の人にも、障害のある子供たちと家族のことをどう伝えるか。お涙ちょうだいはイヤだし、できれば子供たちの自立につながってほしいと、思いました」仕事や家事をしながら、また夜も寝ずに考えに考えた。そして、「興味のない人も否が応でも目にしてしまうもの、感情に訴えるもの。そうだ、広告だ、キッズモデルだ!」■無我夢中でらくがきに没頭する子供たちの笑顔が広告に使われ大評判に「飛込み営業で、まずは世間的にSDGsに力を入れている会社などに連絡しましたが、ほとんどが『前例がありません』『障害者を利用してお金もうけをしているとのクレームにつながりかねない』というお返事でした。そこで、よし、外堀から埋めようと思うんです。社会のほうから“日本にだって障害のあるキッズモデルがいてもいいよね”というウエーブを作ろうと。その具体策が、写真コンテストでした」このコンテストは、新聞各紙などにも取り上げられ、冒頭のとおり、その後の写真展にもつながっていき、大きな成果を上げた。同時に進んでいたのが、ある広告プロジェクト。その相手企業がチョークや描いても消せる筆記具「キットパス」で知られる日本理化学工業(川崎市)だった。「60年以上前から障害者雇用に取り組み、社員の7割が知的障害者という日本理化学工業さんは、ずっと大ファンで、モデル事業を立ち上げたときに、ぜひお声がけしようと決めていたんです」同社広報部の雫緑さん(42)は、「今年4月、わが社のホームページのお問い合わせ欄に、内木さんの最初のメールが届きました。障害のある方への思い、ご自身のママとしての思いがあふれるほどの長文で、私自身4歳児の母親として大いに共感して、すぐに広告作りが動き出しました」早くも翌5月には、千葉県の鴨川でキットパスの新商品の広告の撮影が行われた。「華ひらく」から出演するのは、ダウン症のすみれちゃん(8)と自閉症と軽度知的障害のあるなぎさちゃん(7)。ほかの広告制作との大きな違いは演技指導などが一切ないこと。現場に立ち会った、なぎさちゃんの母親の武藤綾夏さん(34)は、「内木さんから『お絵描きの好きな子向きの仕事があります』と一斉メールが来て、なぎさにぴったりと思いました。家でも何時間でも描き続ける子なんです。撮影の現場でも、『この大きな窓ガラスに好きに絵を描いていいんだよ』と伝えられたあとは、大人は手出しせずに、のびのび自由にやらせていただけました」完成した広告写真は、商品チラシや展示会パネルに使用され、大評判となった。雫さんは、「現場で、無我夢中でらくがきに没頭する子供たちの笑顔こそ、私たちが伝えたかった商品のコンセプトそのものです。これは、新しい化学反応ができたなと、現場で広告の成功を確信しました」現在、「華ひらく」に登録しているキッズモデルは、0~13歳の38人、契約企業はフォトスタジオやこども食堂など7社。もちろん、この事業のきっかけとなった内木さんの長男の尊くんも、トランポリン施設の広告などに出演している。■障害のある子供たちが自立でき、そのとき彼らにやさしい社会が実現してほしい「タケちゃ~ん、戻っておいで」写真展の昼休みの時間に、会場近くの海の見える公園を訪れた内木さんファミリー。車を降りた途端に駆け出した尊くんは、もう50mも先にいて、まだ走り続けている。そのあとを克親さんが名前を呼びながら追いかけ、さらに謙くんが続く。「いつもの、わが家の光景(笑)。尊のおかげで、笑い声も絶えないし、教わることも多いです。障害のある子供がいると、両親がその子にかかりきりになって、健常の子が寂しい思いをすると知り、毎月、『タケルがママを独占できる日』と『ユズルがママを独占できる日』も作りました。「ほら、タケル。あっちは海だよ、オーシャン」 「オーシャン!オーシャン!」ようやく戻ってきた尊くん、今度は海を目がけて走り出す。語学に堪能な内木さん夫妻は、幼いころから兄弟に英語で話しかけていて、家族の会話にはよく英単語が混じるのだそうだ。海を見に行った母子を見送りながら、今度は克親さんが、「夫婦でよく話すのは、僕たち親は子供より先に死ぬこと。だからこそ、障害のある子供たちが自立でき、そのときに彼らにやさしい社会になっていてほしい。彼女の仕事はそのきっかけになると信じ、家族全員で応援しています」今後、キッズモデルたちの写真展は、12月21~27日に新宿髙島屋での開催が決まっている。内木さんは、木更津での取材翌日に40歳になったが、これまでと変わらず、次のクライアントや写真展の会場を探して、今日も飛込み営業の電話をかけ続ける。「いずれ60歳ごろまでに、里親や保護司を務めたいという思いもあります。もちろん、マザー・テレサがお手本。でも、まず今はキッズモデルを、もっと日本中の人に知ってもらうことが最優先。まだまだガラスの壁は厚いですけど」ポンと背中を押してくれるのは、たくさんの無垢な笑顔たちだ。
2022年12月18日『自閉症児のいる家族の、特別ではない日常のエッセイ』と題し、日常の出来事をInstagramに投稿している、beth(3beth_gm)さん。長男のハルくんは自閉症を抱えており、bethさんは外出中、周囲に迷惑をかけないかと不安にかられることが多いといいます。ハルくんが通学のために使うバス停でも、bethさんはハラハラする出来事がありました。週に3回ほど、バス停で会う女性とは会話をするような仲ではなく、ハルくんのルーティンが迷惑をかけているのではないかと、bethさんは心の中でその女性に謝罪していました。しばらく経った頃、ハルくんのルーティンが崩される出来事が起きます。ハルくんが女性に対してとった行動は…女性を凝視するハルくんを制止し、代わりに謝罪したbethさんですが、その場はなんとも気まずい雰囲気になってしまったといいます。すると次の日…。女性の行動に、bethさんが驚いた理由女性は、昨日の一件を受けてか、ハルくんが座る場所を空けておいてくれていたのでした。その気遣いに感謝の言葉を述べたbethさんは、女性の返答にさらに嬉しくなったといいます。ハルのルーティンを理解してもらえたこと、受け入れていただけたこと、とても嬉しかった出来事でした。自閉症であるハルくんが、周囲から特別な目で見られたり、誤解されたりすることもあるという、bethさん。しかし、この女性は、ハルくんを『自閉症児』としてではなく、『ハルくん』として見て、また、受け入れてくれたのでした。その女性の思いに「温かな気持ちになった」「素敵です」「読んでいて涙が」と、bethさんが投稿したエピソードは、多くの人を幸せな気持ちにさせています。また、ハルくんと一緒にいると、bethさんは、多くの人の縁に恵まれるのだそう。この出来事をきっかけに、他愛もない話をする仲になったという女性との出会いもまた、ハルくんがつないでくれた縁なのでしょう。[文・構成/grape編集部]
2022年11月26日無料の参加登録受付中!お子さんやご家族へ届けたい、オンラインセミナーが12/10(土)に開催決定Upload By 発達ナビアライアンス プログラムお友達や家族とコミュニケーションを取りづらい…勉強についていけなくなった…家の中にずっと引きこもってしまう…特性ゆえに、周囲の環境による影響からストレスを抱え、二次障害に発展してしまうこともあります。どうコミュニケーション取ったらいいんだろう。周りにサポートを求めるにはどうしたらいいんだろう。これからの勉強や学校のことはどうなるんだろう。そもそもこの子が楽しめることって何だろう。など、保護者のみなさまにとっては、たくさんの不安もあることと思います。発達ナビでは、すべてのお子さんとそのご家族が、ご自宅で情報を得られる機会をお届けしようと、「二次障害の理解と対応セミナー」を開催します。・日時:12/10(土)9:30~13:15(予定)・参加費:無料・形式:Zoomウェビナー配信・参加方法:事前申込必須。下記ボタンよりお申し込みください・内容:専門家講演、お子さんを応援する企業によるセミナー※企画調整中のため、今後変更となる場合もございますセミナーの内容をご紹介Upload By 発達ナビアライアンス プログラム発達障害の二次障害について関心のあるご家庭も多いのではないでしょうか。今回は、児童精神科医の千村浩先生にご登壇いただき、発症のきっかけや治療、ご家庭でできることなどについて、事例とともに分かりやすく解説します。さらに、セミナー後半では発達ナビ編集長も登壇し、講演中チャットに寄せられた保護者のみなさんの不安やお悩みについて先生にお答えいただきます。講師:千村 浩先生児童精神科医/代官山やまびこクリニック医院長医学部を卒業後、国や地方、国際機関など幅広い分野の保健医療行政に携わった後、精神科医療、児童精神科医療に携わる。現在は、子どもの成長する力を信じて子どもたちの主体性を大切にすること、母と子、家族の幸せを大切にすることを目標に代官山やまびこクリニックで診療に当たるとともに、クリニックの隣のやまびこ村では、クリニックと連携して、子育てに悩むお母さんやお子さんを医療の枠を超えて応援するさまざまなプログラムを行っています。 私たちが大切にしていることは、お子さんやお母さん、ご家族をサポートすることです。Upload By 発達ナビアライアンス プログラム二次障害の症状の一つとして 不登校や行き渋りが多くなっています。お子さんが学校に行きたくないと言ったとき、その背景には何があるのでしょうか?ここ数年、不登校状態にある小中学生のお子さんは年々増え続けており、今年はとうとう20万人を超えました。不登校児が増え続けている背景は何なのか。お子さんは何を感じ、考えているのか。そして、不登校児が増えている裏で、学校に通っていないのに出席扱いになっている児童生徒数も過去最高を更新し、どこで学ぶかでなく何を学ぶかが大切な時代に変化しつつあります。学校が合わないお子さんにどんな選択肢があるのか、出席扱いにする方法は?そのほか保護者の方がすべきことについて、利用者の36%が不登校児の学習教材『すらら』の発達支援室長佐々木様に、詳しくお話しいただきます。Upload By 発達ナビアライアンス プログラム「コミュニケーションに不安がある」「自信がもてない」などがきっかけで 頭痛、腹痛、不眠などの身体的、精神的な症状がでていたり、不登校や行き渋りがあるお子さんにとっては、その子の「好き」を伸ばすことが前向きな将来への大きな一歩につながります。そのためには、お子さんの「好き」を大切にし、「好き」を通じて信頼できる大人や友達を増やし、お子さん自身が安心して過ごせる環境を整えることが重要です。今後ますます多様化が進む社会で、必要となる考え方や今後の教育の見方など、お子さんの「好き」を大切にした新しいオルタナティブ教育を提供する オンラインフリースクール『SOZOWスクール』の活動事例も含めながらお話していきます。Upload By 発達ナビアライアンス プログラム不登校や行き渋りなど、発達障害のあるお子さんが抱えやすい二次障害に対して、お子さん自身の個性や特性にあった進路・環境選びのポイントを解説します。【このセミナーで分かること】1.お子さんの個性・特性にあった環境選びのポイント発達障害のあるお子さんの特性や個性を活かした進路選びの考え方について解説。今の状態や困っていること、どんな環境があればよいのかなど、整理する方法を学びます。2.地域ごとの中学・高校の選択肢や特長私立・公立、特別支援教育、通信制・サポート校、高等専修学校など、中学・高校の進路の選択肢の特長や、地域ごとに異なる学校情報などを紹介します。3.教育にまつわる準備教育資金やお子さんの自立後に必要になってくる費用など、現実的な準備についても解説します。Upload By 発達ナビアライアンス プログラム「どうしてそんな行動をするの?」「こんなときどうすればいいの?」二次障害に限らず、発達が気になるお子さんの子育ての中で出てくるたくさんの疑問。そんな保護者さまの疑問をいち早く「分かった!」に変えるために、オンラインサービス『発達ナビPLUS』では、発達障害の子育てに役立つ解説動画やダウンロードし放題の特別支援ツール、OT/ST/心理士などの専門家への相談などを通じたサポートを行っています。今回は、そんな『発達ナビPLUS』のサービス内容や実際の活用方法などについてご紹介します。たくさんの方のご参加を、心よりお待ちしております。
2022年11月25日育児につまずき、思い詰めて心療内科を受診した私。そこで医師から投げかけられた言葉は「発達障害の疑いがある」という、私にとって意外な言葉でした。そこで心理テストを受け、結果を受け止めた今の自分の心境をお伝えします。ほかのママとどこかで比べてしまう現在、私は3歳と0歳の姉妹を育てている2児の母親ですが、上の子も下の子も出産後から両親や親戚などに頼らず、ほぼワンオペで育児をおこなっていました。孤独に育児をしていたこともあってか、ほかのママ友たちと自分を比べると「どうも私は子どもに対する愛情に欠けているのではないか」と思ってしまう自分がいることに気づいたのです。たとえば、子どもとどうやって遊べばよいか本気でよくわからなかったですし、一生懸命に育児本を読んでそのようにおこなっても、いまいち乗り気になれない自分がいたりしました。特に下の子を出産したあとの数カ月の間は、上の子に対して感情的に怒鳴るなどひどい扱いをしていたことも事実です。そんな出来事から「私はもしかして産後うつなのでは?」と思い悩み、また慢性的な睡眠障害もあって、思い切って心療内科を受診したのです。 思い切って心療内科を受診心療内科を受診したのは下の子が生後半年を過ぎたころでした。医師からの診断は「適応障害と産後うつ」そして「発達障害の疑いがある」という、私にとっては衝撃的な話でした。恥ずかしながら発達障害というワードだけは聞いたことがありましたが、詳しくは知りませんでした。早速家に帰って発達障害について調べてみたり、セルフチェックテストなどをおこなったりしました。たしかに今までの人生を振り返ってみて対人関係においてのつまずきや、職場でのトラブルなどはあったのも事実ですし、いわゆるADDやADHDの症状である「忘れっぽさ」や「衝動性の強さ」「こだわりの強さ」があったように感じました。 愛着障害と診断を受けて後日、2日ほどに渡って精密な発達障害の心理テストを受けたのですが、結果は「発達障害の所見はなし」でした。しかし、私が過去に実親から暴力などの虐待を受けたことがあるということから、「愛着障害の可能性がある」と医師から聞かされました。愛着障害とは、乳幼児期において暴力やネグレクトなどで傷を負い、適切な愛情を持って育てられなかった子どもが、社会人になったときに対人関係や仕事、そして育児などに支障が出る障害のことだそうです。医師からその診断を受けたときは、正直言って「やっぱりな」と思う自分がいました。 まさか自分が発達障害の疑いを持たれるとは思いもよらず、心理テストの結果が出るまではモヤモヤでいっぱいでしたが、発達障害やそのほかの精神疾患などについての勉強にもなりました。客観的に自分が親にされてきたことは虐待だったのだと受け止め、過去の自分と向き合うことで本当の私になれる気がしています。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 ベビーカレンダーでは、赤ちゃん時代を卒業して自己主張を始めた2~6歳までの子どもの力を伸ばし、親子の生活がもっと楽しくなる【キッズライフ記事】を強化配信中。今よりもっと笑顔が増えてハッピーな毎日になりますように! 監修/助産師 松田玲子著者:仲本まゆこ自身の体験をもとに、妊娠・出産・子育てに関する体験談を中心に執筆している。
2022年11月20日医療的ケア児って?医療的ケア児とは、生きるために、日常的な医療的ケアを必要とする子どものことです。ひと言で医療的ケア児といっても、抱える障害の種類や症状の程度は幅広く、必要なケアもさまざまです。歩ける場合もあれば、自分で体を動かすことや移動が難しく、一日のほとんどをベッド上で過ごす場合もあり、知的障害や身体障害、その他の障害の有無や程度も違いがあります。具体的な医療的ケアの例としては次のようなものがあります。・気管切開部のバンド交換などの管理・人工呼吸器による呼吸管理・経鼻、胃ろうなどの経管栄養・痰などの吸引・人工肛門(ストーマ)の管理・導尿・血糖値測定やインスリン注射厚生労働省の調べによると、在宅医療的ケア児の推計人数は、2005年は約1万人と発表されていました。しかし、その人数は2019年には約2万人と発表されており、14年間でおよそ2倍に増えていることが分かります。また、幼稚園~高校に在籍する医療的ケア児は約1万人、このうち8,400人は特別支援学校に在籍をしています。医療の進歩と共に、広く存在を知られることになってきた医療的ケア児。乳幼児期を経て学齢期に入ったとき、教育の場ではどのような状況におかれているのでしょうか。医療的ケア児と教育生きていくために日常的な医療的ケアは欠かせません。学校においても、それは同様です。学校で適切なタイミングで安全に医療的ケアを実施できる体制を保障することができれば、子どもたちも毎日安心して学校に通うことができます。また、そのなかでほかの子どもと同じように、授業に参加することができます。毎日学校に通うことができれば、生活リズムの形成が促され、ケアを行う看護師や教員との関係ができ、そのなかで「吸引してほしい」「姿勢を変えさせてほしい」といった、自分の意思を伝える力が育まれる場合もあります。学校生活で、仲間たちとともにさまざまな経験を重ねることで、自己肯定感や自尊感情の向上も見込め、家族以外の人との信頼関係の構築もできると思われます。通常学校であれば、他児への障害理解教育、共生教育(さまざまな違いを持つ人が一緒に学び合う)にもつながります。学校で医療的ケアを行うことには、医療的ケア児の身体的・心理的な安定やコミュニケーション力の向上、人間関係の形成といったさまざまな意義があるのです。医療的ケア児にもさまざまな実態の子どもがおり、一括りに「こういう配慮が必要」と言い切ることはできません。例えば、さまざまな実態のある医療的ケア児と、学校現場で想定される課題を考えてみると、大きく以下の3つのパターンが想定されます。1.身体障害及び知的障害ともに重度経管栄養や気管切開、人工呼吸器の使用といった濃厚な医療的ケアを必要とする場合が多く、よりきめ細やかで専門性の高いケアが必要です。病気や障害の程度や種類にもよりますが、例えば経管栄養の場合は、無理のない姿勢の調整や注入時間の調整が必要です。喘鳴や嘔吐、下痢などを起こしやすい子どもには、注入中の細やかな見守りや、注入後の全身状態の確認は欠かせません。気管切開をしている場合には、その子どもにとって最適なタイミングでの痰の吸引や、気管カニューレ部分の適切な管理が必要です。また、人工呼吸器を使用している子どもには、呼吸の状態のこまめなチェックや、呼吸器の接続の確認が必須です。車いすやバギー、ベッドでの移動がスムーズなバリアフリー環境も求められます。2.身体障害が軽度、知的障害は軽度〜重度自分で動くことはできるが、日常的な医療的ケアが必要な場合、気管切開や経管栄養、導尿などのケアが必要な場合などがあります。知的障害がほとんどない場合も多く、同年代の子どもとの集団生活や、年齢相当の学習環境も求められます。知的障害の程度によっては、ケアに必要な器具や装具を適切に扱えない場合が考えられ、支援者による見守りや教育が必要です。3.身体障害及び医療的ケアが重度、知的障害は軽度身体障害が重く自力では身体が十分に動かせなかったり、疾患により手厚い医療的ケアが必要ではあっても、知的機能にはほとんど障害がない子どももいます。本人の学習意欲が高い場合も多く、年齢相当の集団生活や学習環境が求められることも多いです。また、1と同様に、車いす移動なども可能なバリアフリー環境も求められます。もちろん、上記の3パターンの中でも個人差がありますが、共通することとして、医療的ケアを安全に、衛生的に実施できる環境を確保することが必要です。そして、そのためには、医療的ケア児の周囲にいる教職員や子どもたちの理解と協力が不可欠です。どのパターンにも想定される緊急事態として、体調の急変などが挙げられます。急変時に周囲の者が迅速に対応できるよう、急変時を想定したシミュレーション訓練や研修を定期的に行うことが必要です。これらの中には自分、支援者、友達などが、管を抜いてしまう事故抜管なども考えられます。このように、ケアを安全に行うだけでなく、体調の管理や急変時の対応や事故が起きないための工夫も必要となります。医療的ケア児と保育・教育現場の課題近年、医療的ケア児が増加する中で、保護者や教員など当事者や実践現場の声により法整備が進み、「社会福祉士及び介護福祉士法の一部改正」や「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」などによって、医療的ケア児をとりまく環境も変わりつつあります。・「社会福祉士及び介護福祉士法」の一部改正による変化(2012年)介護職員等(介護福祉士、ヘルパー、教員、保育士等)の対応が法的に位置付けられ、医療的ケアの担い手(対応者)が拡大していく方向に進みました。例えば、これまでは保護者が付き添って行うことも多かった、痰の吸引や経管栄養の実施なども教職員が行うことができるようになりました。・「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」の施行(2021年 6月)国や地方公共団体などは、医療的ケア児に対する教育体制の拡充をはかることが求められるようになりました。文部科学省からは、「学校における医療的ケアの今後の対応について」(2019年)という通知が出され、各教育委員会などに向けて、すべての学校における医療的ケア児への対応が示されました。その中では、医療的ケアの基本的な考え方や、医療的ケアを実施する際に留意すべき点などがとりまとめられています。また、各都道府県に相談や情報提供等を行う医療的ケア児支援センターも設置されました。医療的ケアを行う看護職員などへの研修資料の作成や、医療的ケア児の受け入れ体制に関する調査研究なども進められています。医療的ケア児の家族は、就学前からずっとわが子のケアを担ってきました。日常的に命に関わるケアを求められる家族の負担は、定型発達の子どもを育てる家庭に比べて、とても重くなります。病院ではなく家でケアを行うことで、「何かトラブルがあったら」という不安が常にあり、ケアの頻度が高ければそれだけ時間も割かれます。深夜も子どもの様子が気になって、熟睡できないことや、必要なケアが就寝時間帯にも及ぶと、家族の睡眠時間にも影響もするでしょう。また、子どもの今後の発達や、将来への不安を感じている家庭も多いと考えられます。支援を得るための手続きが煩雑であったり、医療的ケアが可能な保育園などの預け先が見つからない、という困りごともあり、本人にとっても保護者・家族にとっても、まだまだ負担が大きい現状は見過ごせません。医療的ケアは、痰の吸引と経管栄養の一部の行為であれば、介護福祉士や、専門の研修を修了し「認定特定行為業務従事者」として都道府県知事から認定を受けた職員もできますが、すべての行為をできるわけではありません。そのため、現場では実際に医療的ケアを行える人材が足りず、学校でケアを行う学校看護師は、慢性的に不足しています。また、看護師の配置にも地域格差があります。学校に看護師が配置されていたとしても、医療的ケア児に対しては保護者のつき添いを求めている場合もあります。医療的ケア児の家族は就労に制限が出たり、転職や離職を余儀なくされてしまうなど、厳しい状況に立たされてきました。これを解消するためにできたのが、「医療的ケア児支援法」(2021年)です。本来であれば、子ども本人の自立を促す観点から考えても、保護者がつき添わず、学校の中で支援が完結されることが望ましいでしょう。医療的ケア児支援法に則って、自治体は必要であれば看護師を配置し、教員による医療的ケアを進めていく必要があります。医療的ケア児とその家族を支援するための喫緊の課題は、大きく分けて4つあります。1.教員による医療的ケアの充実医療的ケア児のことをよく理解し、その子どもと信頼関係のある教員が、ケアを実施することで生まれる教育効果も多く報告されています。まだまだ教員が医療的ケアを主体的に担っていくには課題のある学校現場や自治体もありますが、将来的には、子どもの一番身近にいる教員が、看護師の見守りのもとで医療的ケアを行いながら、教育を保障していく形に近づいていくことが望ましいでしょう。2.教員と看護師の連携(校内連携)学校看護師は、学校で医療的ケア児の教育を保障していく上で、なくてはならない存在です。学校看護師は、人工呼吸器の管理等や体調急変時の対応など、教員にはできない医療的ケアや処置などを率先して行いつつ、教員ができる医療的ケアを見守り、医療・保健の視点からの専門的なアドバイスを行います。教員は、看護師の見守りのもとで授業を進め、担当する子どもの健康の保持・増進を教育的に支えます。また、校内の医療的ケアや医療的ケア児についての情報の管理や看護師と教員のスムーズな連携をコーディネイトする養護教諭の役割も重要です。学校内で、医療的ケア児を支えていくためには、教員、養護教諭、看護師の有機的な連携が不可欠です。3.学校と他機関の連携医療的ケア児には、教員や学校看護師のほか、主治医やリハビリにかかわる理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、また福祉についての相談やコーディネイトを行う保健師や児童相談所相談員など、さまざまな職種が支援にあたります。それぞれの専門家がそれぞれの立場から支援を行いながら、お互いの情報を共有し、子どもと保護者が安心して生活できるような支援体制をつくっていくことが必要です。4.特別な支援を必要とする子どもへの、切れ目ない支援体制の整備これは医療的ケア児に限ったことではないですが、幼児期、学齢期、思春期・青年期、成人期とステージが変わるごとに、支援の切れ目ができてしまうことがあります。そのため、幼稚園や保育園、療育などを受ける幼児期、学校に通う学齢期、子どもから大人へと変化を迎える思春期・青年期、そして成人後の社会参加と、切れ目ない支援を受けられるようになることが求められています。この課題を解決していくために、個別支援計画などを活用しながら子どもの情報を共有し、教育、福祉、医療など、子どもに関わるそれぞれの施設が連携できる体制をつくることや、連携支援コーディネーターを配置すること、広く社会に向けて、特別な支援を必要とする子どもたちへの理解について、普及、啓発していくことが必要とされています。まとめすべての子どもには、病気や障害によらず、就学先を自由に選択できる権利があり、病気や障害を理由に不利にならないこと、本人にとって望ましい環境で教育を受ける権利が保障されています。医療的ケアが必要な子どもたちにとっても、学校という教育の場はさまざまな経験をつみ、心身を成長させる大切な場です。必要な支援を適切に受けながら、自分の可能性を広げるために学び育つことができる環境がより整っていくことが、今必要とされています。
2022年11月19日発達障害の長男は、赤ちゃんのときから「寝ない子」でした。長男を産む前の私は、子どもは一度寝たらぐっすり寝るものだと思っていましたし、寝付くときも30分ぐらいで寝るものだと思っていました。しかし、いざ育児が始まると現実はあまりにも違っていたので、もしかしたら長男は「寝ない子」ではないかと感じるようになりました。そのときの私の思いや、長男が寝なかった理由などについてご紹介します。とにかく寝なくて大変だった乳児期長男は生後6カ月から保育園に入ったのですが、30分ぐらいしか昼寝をしないので保育園の先生がとても心配するほどでした。家でも授乳中には寝るものの布団に寝かせるとすぐに起きてしまうのです。1歳を過ぎても昼も夜もなかなか寝付かず、2時間近くゴロゴロ転がってばかりで全然寝ないので、私のほうがだんだんイライラ……。長男が寝ないことへのストレスと、成長への影響の不安がどんどん募っていきました。 寝なくてもいいやと発想を変えた結果1歳を過ぎてもあまりに寝ないので、疲れ果てた私は発想をガラリと変えてみました。保育園に行くために夜8時半には寝かせたかったのですが、寝る時間にこだわることをやめました。 それまでの私は、長男を寝かしつけたあとに、家事を済ませたり自分の時間を過ごしたりしていたのですが、それをすべて夕食後にすることにしたのです。そして夜10時になったら長男と一緒に寝てしまうスタイルに変えてみました。お互いに好きな時間を過ごせるようになったので、私のストレスも減っていきました。 長男が寝たくない理由とはその後しばらく経って、長男が年長のときに寝なかった理由を聞いたことがあります。理由は2つありました。1つ目は、「音とか光が気になって眠れない」、もう1つは、「起きていれば、もっとおもしろいことがありそうだから」でした。なるほどと思いました。長男は感覚過敏があり、蛍光灯が苦手です。そして音にもとても敏感なのです。起きている間は自分の興味のあることに熱中しています。私が起きていれば、長男も「何かおもしろいことを見つけて遊べる」と思っていたのでしょう。 小学5年生になった今でも、睡眠時間は少ないほうだと思います。「子どもは早く寝るもの」という大人の理想に当てはめず、長男のペースに合わせることで、私の気持ちが「寝られないものは寝られないんだ」と割り切ることができました。感覚過敏がある、発達障害という特性があることで、当時は不安を感じてしまっていたのです。寝る時間が少ないということは、理想の生活習慣を身につけるには本当は良くないのかもしれません。しかし、長男の成長を信じてやっていこうと思っています。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 監修/助産師 松田玲子著者:川本 千華発達障害の長男、兄が大好きな次男を育てる2児の母。元ピアノ講師。自身の経験を活かし音楽・発達障害に関するライターとして活動中。
2022年10月17日「ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所」(※以下、IBS)ではグローバル化社会における幼児期からの英語教育の有効性や重要性に関する情報を定期的に発信しています。今回は、バイリンガル児の言語発達、発達障害児のバイリンガリズムについて研究されている、イタリア、ウルビーノ・カルロ・ボ大学のMirta Vernice(ミルタ・ベルニーチェ)教授にインタビューを行い、記事として公開しました。今回のインタビューは、第二言語を学んでいる小さなお子さんや発達障害のあるお子さんについて親御さんや先生が抱えるかもしれない疑問にお答えできる内容になっています。■ <インタビューサマリー>・ヨーロッパでは、0〜6歳の子どものマルチリンガリズムを支援する研究プロジェクトが進んでいる。・乳幼児期からほかの言語を学ぶことに対する教育関係者や保護者の誤解を解くためには、一人ひとりと対話することが有効。・子どもが外国語を学ぶときには、「0~3歳」「4~6歳」それぞれの時期に重点的に伸ばすべき能力を意識する必要があり、研究結果に基づいたアクティビティは効果的であることがわかった。・バイリンガルであることが、ディスクレシア(発達性読み書き障害)の結果として生じる特定の認知機能の低下を防ぐことが明らかになった。・子どもをバイリンガルに育てると、言語的な観点だけではなく、認知的な観点からもメリットを得られる。■ ヨーロッパ各地の幼稚園におけるマルチリンガル教育を支援Vernice教授は、EU主催の「EDUGATE プロジェクト」に参加し、0~6歳の子どもに適したマルチリンガル(多言語使用)教育について研究・促進する活動をしています。大学のあるウルビーノという地域は、モノリンガルとして育つ人が多く、多くの親が外国語(特に英語)を子どもに学ばせたいと思う親御さんたちが多いとのこと。多言語社会と言われているヨーロッパであっても、日本の状況と似ている地域があることがわかりました。「EDUGATE プロジェクト」の目的は主に二つ。一つは、ヨーロッパ各地の幼稚園の先生や親御さんが「バイリンガリズムに対してどのような意識をもっているか」を明らかにするための調査。二つめは、小さいころから第二言語に触れることの効果について、研究結果に基づく情報を提供すること。 そして、研究結果に基づいた教材やアクティビティを開発して、実際に幼稚園で使ってもらったそうです。■ 乳幼児期の英語学習に対する誤解を解くためには、対話が効果的幼稚園の先生のアンケート回答の中には、「まだ小さい時期に、どうしてわざわざほかの言語に触れさせる必要があるのか?」といったびっくりするような回答もあったそうです。「子どもは第二言語に触れ始める前に第一言語が完全に発達している必要はない、ということを理解してもらうのは、一番難しかったですね。子どもたちが複数の言語で混乱したり、ことばの発達が遅れたりするのではないか、という点は、先生たちが一番心配していることの一つだったんです。」とVernice教授は言います。そこで、Vernice教授たちは、科学的知見を説明する前に、先生たちが質問したり経験談を話したりできる機会を設定。すると、バイリンガルの子どもに関して何か苦労した経験があると、そのたった一度の経験がバイリンガリズムに対するネガティブなイメージを定着させてしまうことがわかりました。先生たちの個人的な質問に耳を傾けて答えることが、バイリンガリズムに対する誤解について伝える上で一番効果的だったそうです。■ 子どもの言語が発達していくプロセスを考慮したアクティビティは効果的EDUGATE プロジェクトでは、科学的文献で発表されている情報を幼稚園の現場で実践できるようなアクティビティに落とし込んで教材を開発したそうです。多くのアクティビティが研究の実験で使われたものが基になっています。Vernice教授によると「実験で効果的だったアクティビティが、実際の教室でもうまくいくかを確かめます。また、子どもの第一言語に関係なく、あらゆる国での実施や組み入れが可能な内容に開発をしました。このアクティビティは、外国語(英語など)のさまざまな要素を習得させるうえで有効であることがわかりました」とのことです。0〜3歳と4〜6歳の子どもでは言語発達面で大きな違いがあり、「3歳までは『理解』に重点を置いた活動 (ことばの音声やリズムを聞かせる)、4歳以降は『産出』に重点を置いた活動(語彙や構文を口に出させる)を行わなければなりません」と言います。言語に含まれる一つひとつの音を意識する、聞き分ける、リピートする、というような能力が十分になければ、その後、読み書きを学ぶときに苦労する傾向にあるそうです。さらに、幼児がどのように新しいことばを獲得していくか、ということを考えると、「完全な英文を文脈や状況・場面とともに提示して、子どもたちが単語に気づき、その意味を推測できるように手助けすることが重要」とVernice教授。インタビューではVernice教授たちが開発したアクティビティの事例を、実際に使用するイラストなどとともに紹介してくださいました。(アクティビティの詳しい内容は本文をご覧ください)■ 学習障害のある子どもが外国語や第二言語を学ぶメリットVernice教授は、モノリンガルだけではなくバイリンガルの子どもも対象としたディスレクシア(発達性読み書き障害)の診断方法について研究されています。そこで、学習障害のある子どもは外国語や第二言語の学習からどのような影響を受けるのか、という点についてお話をうかがいました。「私たちは、言語聴覚士のみなさんと『戦って』います。なぜなら、子どもが学習障害や言語障害、注意欠陥障害などの診断を受けた親御さんに、ほかの言語に触れさせるのをすぐにやめるようにアドバイスする方々がまだいるからです。」とVernice教授。バイリンガルは、状況に応じて一方の言語を抑制して、もう一方の言語を選択する、という作業を脳が常に行うことにより、脳の実行機能(※1)が高まることがわかっています。そこで、イタリアの小学生を対象に共同研究を行ったところ、「ディスレクシアのあるバイリンガルの子どもは、ディスレクシアのあるモノリンガルの子どもよりも、実行機能を調べるテストではるかに良い成績だった」そうです。さらに、バイリンガリズムがディスレクシアの子どもたちにとって認知的な負担になるどころか、認知機能を強化し、子どもを障害による困難から守る(保護因子になる)ことも明らかになりました。「子どもをバイリンガルに育てると、二つの言語を知っているという言語的な観点だけではなく、認知的な観点からもメリットを得られる、と言えるかもしれません」、「ですから、特に学習や発達面で困難を抱える子どもの親御さんには、第二言語に触れる環境を継続することをお勧めします」とVernice教授は言います。Vernice教授のインタビューからは、イタリアの人々も、日本人と同じように「子どもに英語を学ばせたい」と考えている一方で、「早くから英語を学ぶことで何か悪影響があるのではないか」という心配しているものの、何度も議論を交わすことで科学的な知見を理解してもらえることがわかりました。また、Vernice教授の発見は、「言語をもう一つ学ぶことは、学習障害や発達障害のある子どもにとって負担がかかる」という一般的な認識に反し、発達段階にある子どもはバイリンガリズムによって認知機能が強化される、ということを裏付けるものです。(※1)あらゆる認知機能(情報の知覚や記憶、推理、判断など)の働きをコントロールしながら複雑な状況下で目的を実行することを可能にする高次脳機能の一つ。目標の設定、達成方法の考案、必要な作業の維持、状況への柔軟性、効果的な戦略の選択などに関わる(福井, 2010)。詳しい内容はバイリンガル サイエンス研究所で公開中の下記記事をご覧ください。■ ■イタリア、ウルビーノ・カルロ・ボ大学のMirtaVernice氏へのインタビュー前編: 後編: ■ワールド・ファミリーバイリンガル サイエンス研究所(World Family's Institute of Bilingual Science)事業内容:教育に関する研究機関( )所 長:大井静雄(東京慈恵医科大学脳神経外科教授/医学博士)所 在 地:〒160-0023 東京都新宿区西新宿4-15-7パシフィックマークス新宿パークサイド1階設 立:2016年10 月URL: 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年09月22日ほぺろうくんが3歳ごろ、癇癪がひどく、ぼさ子さんは精神的に追い詰められて限界に……。しかし「大好きだよ」と思いを伝えるようにすると、寝る前の癇癪が落ち着いてきました。「適応できないことがたくさんあって、ほぺろうは大変だな……」と、ほぺろうくんの思いを想像してみることに。 息子の正体を妄想してみたら…!? とにかくいろんなものの感覚が合わなくて、すぐ癇癪を起こすほぺろう。 「そう言えば自閉症児って、宇宙人に例えられることあるよな」と思い想像してみました。 急に「ほぺろうの正体は宇宙人なんじゃ?」と妄想にふける私。 そう思うと「もしかして地球人の体をコントロールできていないのでは!?」という気になってきました。(あくまでもぼさ子の妄想です) 「やりたいことがうまくできなかっただけ」かどうかは定かじゃないけれど、お母さんへの攻撃は「怒り表現」のときもあっただろうし「甘えたいけどうまくできなかった」ときもあったのかもしれない。 ほぺろうは焦っていたのかなって。 ◇◇ ◇ 「体をコントロールできない理由」について考えていると、不意に目つぶしされたことも、突然頭突きされたことも、髪の毛を引きちぎられたことも、なんだか納得いくような気がする……?! 監修/助産師 REIKO 著者:マンガ家・イラストレーター ぼさ子自閉症と中度知的障害を持つ、2015年生まれの息子を育児をしています。いまだに発語はありませんが、母目線でその成長記録を綴っています。
2022年09月05日自閉症と中度知的障害を持つ2015年生まれのほぺろうくんママのぼさ子さん。ほぺろうくんが3歳ごろ、癇癪がひどすぎて精神的に追い詰められて限界に……。しかし突然「ほぺろうは、私の表情に苦しんでいたんじゃ?」と思いつき、「ほぺろう!大好きだよー!」と思い切り抱きしめたところ、いつも寝るときに大暴れするほぺろうくんがスッと落ち着き、安心したように眠りに落ちたのでした。 その日以来、毎晩「大好き」「かわいい」「ほぺろうがいてママは幸せだよ」と愛情たっぷりの言葉を伝えるように。すると……?! 息子に起きた変化とは? 「ほぺろうが笑ってくれたのいつぶりだろう」。今思い出しても、胸がギュッとなります。 当時、日中はまだ癇癪があったものの、イチャイチャするようになってからは、少しずつほぺろうの情緒が安定してきたような気がします。(たまたま成長と重なっただけかもだけど) ◇◇ ◇「大好き」という思いを口に出して伝えることに、最初は慣れなかったというぼさ子さん。でも、毎晩続けると、ほぺろうくんも「ぼくも!」と喜んでくれるようになり、思い切りイチャイチャするように! 寝る前の癇癪が、イチャイチャタイムにより落ち着き、「やっぱりこれまで不安だったのかな」という罪悪感を抱きつつ、ほぺろうくんの笑顔のためにこれからも向き合っていくことを心に決めるのでした。 監修/助産師 REIKO 著者:マンガ家・イラストレーター ぼさ子自閉症と中度知的障害を持つ、2015年生まれの息子を育児をしています。いまだに発語はありませんが、母目線でその成長記録を綴っています。
2022年09月04日自閉症と中度知的障害を持つ2015年生まれのほぺろうくんのママ、ぼさ子さん。ほぺろうくんが3歳ごろ、保育園に入園できたものの癇癪がひどすぎて精神的に追い詰められて限界に……。しかし突然「もしかして、ほぺろうは、ずっと前から私の表情に苦しんでいたんじゃ?」と思いつき、「ほぺろう! 大好きだよー!」と思い切り抱きしめました。 いつも寝るときに大暴れするほぺろうくんですが、このとき、ぼさ子さんがぎゅっと抱きしめると? 「気づかなくてごめんね…」 ほぺろうは言葉もなく、考えていることもよくわからない子だったので 「お母さんのことなんて何とも思ってないんだろうな」 と勝手に決めつけていたのですが、そんなことはなかったのかも……。 この当時のこと思い出すと、本当「うわぁあああーーっ」ってなる。 ほぺろうはずっとお母さんが寄り添ってくれるのを待っていたのかと思うと、私、大罪すぎるー(泣)!!! ◇◇◇ いつも寝るときに大暴れするほぺろうくんですが、このとき、ぼさ子さんがぎゅっと抱きしめると、癇癪がスッと落ち着き、安心したように眠りに落ちたのでした。 監修/助産師 REIKO 著者:マンガ家・イラストレーター ぼさ子自閉症と中度知的障害を持つ、2015年生まれの息子を育児をしています。いまだに発語はありませんが、母目線でその成長記録を綴っています。
2022年09月03日ほぺろうくんが3歳ごろ、保育園に入園できたものの癇癪がひどすぎて精神的に追い詰められ、限界だったというぼさ子さん。「私、泣いて暴れる制御のきかない息子を、冷たい視線で見ていた気がする……!」 その視線や表情に苦しんで、暴れているのかも? そう気づいたぼさ子さんは……。 気づいてしまった「大切なこと」とは? こんなダメ母でも、ほぺろうにとって母親である私は大きい存在だっていう自覚が足りなかった。 大人の私だって、不安だったときに夫に否定されて情緒が奈落の底だったことがあった。 ほぺろうは自閉症の特性でコントロールが利かない不安がある上に、私に否定されたら……。 なんかもう、想像するだけで申し訳なさすぎて胸が張り裂けそうになる……。◇◇◇ 「もしかして、ほぺろうは、ずっと前から私の表情に苦しんでいたんじゃ?」 泣いて暴れる制御のきかない息子を、冷たい視線で見ていた気がする……。その視線や表情に苦しんで、暴れているのかも……?! そう気づいたぼさ子さん。ある行動に出ると、驚きの反応が! 監修/助産師 REIKO 著者:マンガ家・イラストレーター ぼさ子自閉症と中度知的障害を持つ、2015年生まれの息子を育児をしています。いまだに発語はありませんが、母目線でその成長記録を綴っています。
2022年09月02日ほぺろうくんの癇癪がひどかった3歳ごろ、あるとき突然気づいてしまったこととは?障害児を子育てするなかで気づいたこと、心境の変化を綴る「障害のある息子からの学び」を短期連載でご紹介します。ほぺろうくんが2、3歳のころ、癇癪がひどすぎて精神的に追い詰められて限界だったという、ぼさ子さん。 しかし、ひょんなことからの気づきによって、今は母子ともに笑って過ごせる時間が増えたそう。その心境の変化とは? 繰り返される癇癪に、気分は落ち込み… 保育園に入園できたものの、この頃はまだ癇癪がひどかったほぺろう。 でも、パートに行き始めて、ほぺろうと離れる時間を作れたおかげで母(私)のほうが少しずつ変わっていけた気がします。 ◇◇◇ 「なにこの癇癪……」「感覚過敏のせい? 眠いのが理解できないせい?」 暴れながら泣き叫ぶほぺろうくんの癇癪をみて、うんざりしてしまったママ。 しかしその瞬間、気づいてしまった「大切なこと」とは一体? 監修/助産師 REIKO 著者:マンガ家・イラストレーター ぼさ子自閉症と中度知的障害を持つ、2015年生まれの息子を育児をしています。いまだに発語はありませんが、母目線でその成長記録を綴っています。
2022年09月01日ガイドヘルパーとしての悩み障害児者にとって、家族以外のほかの大人と関わることは、大切なことだと思います。移動支援の制度を使うことで、週末の余暇活動として、ガイドヘルパーに外出の同行をしてもらうことができます。私は週末、ガイドヘルパーの仕事をしています。外出同行の際に、保護者の希望を通すべきなのか、本人の希望を通すのが良いのか、て悩むことがある場面があります。とくに、利用者の方が成人の場合、悩むことが多いです。成人の異性の利用者と手をつなぐことについて知的には5歳児くらいであるとされている、30歳の青年との外出の際には、手をつなぐかどうかについて悩みます。私は年齢に合わせた対応をした方がよいと思っています。どうしてかというと実年齢が30歳だからです。もちろん、中には隙を見て一人で走って行ってしまったり、非常ベルやホームの緊急停止ボタンを押してしまったりすることもあるかもしれません。この場合は手をつないでいる必要がありますが、そうした行動がほとんどない方については実年齢通りの対応が必要だと思っています。ですが、危険忌避のために手をつないでほしいと考えられる保護者の方の場合、どのように対応したらいいか悩んでしまうのです。お金について駅の券売機で切符を買うとき、本人に購入してもらった方がよいのか、私がかわりに購入した方がよいのかも、すごく悩みます。お金についてよく分からないと感じている場合、利用者自身で購入をしてもらおうとしたら自信をなくしてしまわないか?でも、親御さんは「一人でやらせる経験をさせてほしい」と思っているのではないか?私は、本人の楽しみのための余暇活動なので、できないことを無理じいして訓練するような場にはしたくないとも思い、逡巡してしまいます。徒歩で行くか、交通機関をつかうか親御さんは普段の運動不足を解消するため、「できるだけ歩かせてほしい」という希望があるけれど、本人は「歩きたくない。大好きな電車やバズを使って移動したい」と思っている場合があります。こんなときも、どちらを優先させたらよいのか悩みますが、本人の余暇活動なので、私は本人の意向を優先させた方がよいと思っています。こだわりを通せる場面と通せない場面ある日のことです。発語のない知的障害と自閉スペクトラム症がある利用者の方とラーメン屋に入りました。混んでいるのに麺を一本ずつ食べていました。待っている人や次の電車の時刻も気にせず、マイペースです。私が「残してよいからもう出よう」と言ってもガンとして動かなかったので、食事がすんだ私は外で待っていました。結局、1時間以上かけて完食しました。店を出てから、利用者の方がマスクをなくしたことに気付きました。代わりのマスクを渡しても断固拒否するため店に戻り、お客さまに席を移動していただいて探す状態になりました。しかし、見つかりませんでした。でもパニックを起こさず、代わりのマスクを使ってくれました。私は麺を一本ずつ食べるこだわりには応じました。でも、失くしたマスクは見つからないので応じられません。利用者の方は、自分のこだわりを通せる状況と、そうではない状況を理解できたのでしょう。この青年も、幼いころは失くしたものが出てこないと大パニックになっていたのではないかと思います。自閉スペクトラム症がある私の息子も、幼いころ、パズルの一片がなくなったとき、手がつけられないほどパニックになりました。そのために、同じパズルを何セットが予備で買っておいたことを思い出しまた。今は例えば靴下の片方がなくなっても、マスクを落としても大騒ぎせず、別のものを使ってくれます。軽度でも中度でも重度でも、成長しています。Upload By 立石美津子支援者の対応に統一性がないことも課題同じ事業所でも手をつなぐがどうか、本人の意向を優先させるか親御さんの意向を優先させるかなど統一されておらず、支援者の個人の考えに任せている場合もあります同じ事業所で一致した対応をしたとしても、移動支援をやっている事業所は増えているので、利用者さんも複数の事業所をかけもっています。そうなるとまた対応が違ってきます。本人が混乱することのないように、情報ややり方を共有して、支援のあり方を考える必要性を感じています。執筆/立石美津子(監修者・鈴木先生より)神経発達症(発達障害)のある患者さんが高校生になってバイトを始めることは社会性を高めるうえで有意義なことだと思います。親と学校の教師以外の大人と接することで自立を促し、将来の就職率が上がっています。最近は訪問看護という手段もあります。主治医の指示により定期的に専門の看護師やリハビリのスタッフが患者さんを預かってくれます。その間、親は美容院へ行ったり、普段相手してあげられない兄弟と触れ合ったりすることができます。費用はワンコインほどです。訪問看護というと寝たきり老人の看護というイメージが強いですが、自閉スペクトラム症の患者さんも扱える会社も増えてきました。今後は神経発達症に特化した訪問看護が全国に広まることを願っております。
2022年08月08日まだ集中力がない未就学児。サッカーは好きみたいだけど、練習中にふらっと砂場に行っちゃう子をどうすればいい?というご相談をいただきました。未就学児の指導は、話を聞けるようになる年代より自由な子が多く大変なことも多いもの。同じような経験を持つコーチもいるのでは?今回も、ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、6歳以下の指導で大事なことをアドバイスします。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<手詰まりになるとサイドにパスする子どもたち。サイド=スペースがあって安全、ではなく「安全な場所」は状況によって違うと教える方法は?<お父さんコーチからのご質問>池上さんに相談していいことなのか悩んだのですが、投稿します。現在U-6以下のクラスに関わっているのですが、どうしても、練習中に砂遊びをしてしまう子がいるのです。サッカーが嫌いというわけではないようで、毎回楽しそうにクラスに通っていますし、周りのお友達とも仲良くやっているのですが、練習中にフッと砂場の方に向かってしまいます。まだまだ集中力のない年代なのは理解しているのですが、他の子たちはちゃんと練習に取り組んでいます。どうすればその子も一緒に楽しくサッカーできるでしょうか。池上さんはこんな時どうしていましたか?また、この年代の指導で大事にしていることは何か教えていただけませんでしょうか。<池上さんのアドバイス>ご相談ありがとうございます。6歳以下という年代は、指導者が「サッカーを教えなくては」と力む必要はまったくありません。すべてにわたって「どうしたら楽しくなるか?」を大人が考えてほしいと考えます。■砂遊びでなく、バッタなどに興味を持つ子どもたちも拙書『叱らず、問いかける』に書かせていただいた話をしましょう。幼児にサッカーを教えているコーチの方が、ほとほと困った様子でこんなことを相談してきました。「幼稚園の子は夏になると、バッタばかり追いかけているんですよ。わざと、ピッチの外側の草むらにボールを蹴り込むんです」草むらにボールがころころと転がると、バッタがいっせいに跳びはねます。それを見て、4~5歳の子どもたちはみんなで笑い転げる。そして、それが楽しくてたまらないので、みんな草むらにボールを蹴りに行ってしまうそうです。困り果てるコーチには申し訳ないのですが、子どもは確かにボールを蹴っていることに気づいてほしいと思いました。場所がサッカーコートではなく草むらなだけです。私が「私ならわざと草むらにボールを蹴り込みますよ」と話すと、コーチの方は驚いたような顔でした。ボールが転がってバッタが跳ねれば、子どもは楽しくて何度も何度も蹴ります。楽しくて練習になっているのです。バッタを捕まえ、ボールを蹴って、子どもたちはすごく楽しい。何の問題もありません。■砂遊びしたくなるのは当然の年代サッカーボールを使わない遊びで、身体を動かす楽しさを伝えるのも良い砂遊びがしたくなるのは当然の年代です。子どもたちがそちらに心を奪われているのならば、「よし、今日は砂遊びにするか!」とみんなでやってもいいでしょう。なぜなら、サッカーだけでなく様々な形で体を動かしたほうがいいし、いろんな経験を積んだほうがいい年代なのです。サッカー遊びだけでなく、砂遊びをしたり、バッタを捕まえたり。バルシューレと呼ばれるボールを使った遊びでもいいでしょう。サッカーボールを使わない遊びはたくさんあります。それらを通して、体を動かしている楽しさを伝えてください。その際に、すべて競争がある、勝ち負けを楽しめるゲーム形式にするとよいでしょう。幼児や低学年を教えるコーチの皆さんにはそういうことも勉強してほしいです。■「今日は何をしたい?」と子どもたちに選ばせようもうひとつ、私が大事にしていることは、子どもたちに問いかけることです。「じゃあ、みんな今日は何をしたい?」と尋ねてみましょう。コーチから一方的に「今日はこれをやるよ」ではなく、彼らに選ばせるのです。例えば、砂遊びを少しだけやったら、「今度はボールを使って何かやってみようか。何がいいかな?」と聞いてあげます。先日、親子サッカーキャンプをしました。子どもはサッカーを織り込んで、親御さんたちには私から座学で子どもが楽しく学ぶための環境とはどういうものかを伝えます。サッカーの練習は最初にシュートゲームというメニューを行いました。最初は地面に置いたボールを蹴るのですが、次の段階で「試合中は止まった状態では蹴らないよね?」と子どもたちに問いかけます。ドリブルしながらシュートなど、動きながら蹴ることを「みんなで考えてください」と言って考えてもらいます。最新ニュースをLINEで配信中!■一例を見せるとそれしかやらない、思考しない子どもたちところが、日本の子どもたちは「ドリブルしながらシュートとか」と一例を見せると、今度はそれしかやりません。パスを出してもらってシュートするといったほかのことをなかなか考えようとしない傾向があります。したがって、手を変え品を変え質問していきます。例えば、フットサルコートに置かれているゴールの前に、同じサイズのゴールを置き、間にはサッカーボールが入るくらいの隙間をつけて2台を前後に並べます。その状態で「さあ、後ろのゴールに入れてごらん」と言って始めます。そうすると、2台のゴールの前から、ボールをふわりと浮かして入れようとする子、斜めから隙間を通して狙う子などいろいろ出てきます。カーブをかける子もいます。そのように、考えたり、選べたりできる環境を整えてあげると、子どもたちは楽しそうにチャレンジします。なかには「こんなの簡単!できたよ」と意気揚々と報告してくる子がいます。「おお、どんなふうに入れた?」と言えば、やって見せてくれます。そこで、また注文を出します。「じゃあ、次は違うやりかたでやってみてくれる?」すると、子どもはまた考え始めるのです。このように、大人は次々と問いかけ続けることが大切です。■サッカーも遊びの一つ。6歳以下の子どもたちは「遊ぶ意欲」を削がないことが重要遊びのメニューも、サッカーの練習メニューも、ネットで調べたり本を読めば、そこらじゅうに転がっています。そして、説明通りにやる必要はありません。広さや距離、ボールやゴールの数など、コーチの皆さんが自分で考えて、その都度変えていくことです。正解はないので、変えることを怖がらずトライしてみましょう。一回やって、子どもたちが乗ってこなければ、やめればいいのです。大事なのは、練習を楽しくするためにはどうするか?を大人が考え続けること。子どもにそれを問いかけ続けること。この二つの視点を、この年代では大切にしてください。なぜならば、6歳以下の子どもたちの育成は、「子どもの遊ぶ意欲」を削がないことが重要だからです。サッカーも遊びです。「真面目に練習しろ」とか「きちんとやれ」といった規律のようなものはこの年代ではそこまで重要視することではありません。■選手主体は大事だが、世界はすでに「選手とコーチ両方が学びあう」のフェーズに入っている(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)これはダメ、あれはするなとやめさせるのではなく、大人は工夫し子どもの遊びをより広げてあげましょう。常日頃からおおらかに構え、コーチが工夫する姿を見せていれば、子どもも「こんなふうに考えたらいいのかな」と自分で気づく力をつけていくことでしょう。これまで、スポーツ指導は「プレーヤーズセンタード」といって、選手が主体ですよということが提唱されていました。しかしながら、専門家の方がおっしゃるには、世界はすでに「プレーヤー&コーチセンタード」になっているそうです。つまり、選手とコーチが中心。両方が学び合わなくてはいけないのです。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2022年07月17日水嫌いなお子さんのための処方箋。「水を怖がる子」ってどんな子? 水嫌いな子にやったほうがいいこと、ダメなことって? 3児ママ小児科医の保田典子先生に聞きました!こんにちは。3人の子どもを子育て中の小児科医、保田典子です。みなさんのお子さんは水、大好きでしょうか? それとも、怖がりますか? これからプールや水遊びが多くなる季節になりますが、子どもが水を怖がらないとお風呂などもラクになると思いますので、今回は「水を怖がる子」のための処方箋をお伝えしたいと思います。 「水を怖がる子」ってどんな子?今までたくさんの子を見てきて、「水を怖がる子」は、その子の特性で怖がりな子が怖がってしまうパターンがとても多いように感じています。 水が全然平気な子は、水が鼻に入っても、ちょっとすべって水に頭ごとざぶんと入ってしまっても、また懲りずに水に向かっていくのです。なので、水嫌いの子は水だけでなく、高いところに登る、乗り物(自転車や遊園地のアトラクションなど)に乗ることなども怖がりでできない・やらない子に、水を怖がる傾向があると考えています。 水を怖がってしまうと、プールも怖がってしまうので、水泳もなかなかレベルアップしにくいことがあります。 水嫌いの処方箋1:なにが嫌なのかをきちんと把握する水が嫌い、水が怖いといってもいろいろあったりします。0歳の子だと、「顔に水がかかる感じが嫌」だということが多いかと思います。1歳を過ぎると、漠然とした水への恐怖が出てくることがあります。2歳を過ぎると「溺れちゃうかも」みたいな想像が、水が怖い気持ちにつながります。 水を嫌がる・怖がるお子さんは、水がかかる「感覚」が嫌なのか、水に溺れてしまう「恐怖」が嫌なのか、それだけでも判断できるとその先の対処がラクになります。 水嫌いの処方箋2:子どもが「嫌なこと」はしない水がかかる感覚が嫌なタイプの子は、まずはシャワーキャップなどで顔に水がかからないようにしてあげる方がいいでしょう。シャンプーのときはシャワーキャップを使って、顔を洗うときはなるべく顔にバシャッと水がかからないように、手で水をよけてあげながら洗ってあげることがいいでしょう。無理に水に慣れさせようとすると、かえって水嫌いが長引く可能性があります。 溺れる想像による恐怖心で水を怖がってしまう子は、お風呂の湯船は大丈夫でも、プールに入れないという子が多いです。この場合は、プールに入るときにずっとしっかり抱っこしてあげて「絶対安全」と子どもに感じさせるような状況にします。 抱っこのまま、ちょっとずつプールに足をつける、腰まで入ってみるなどプールに少しずつ慣れさせてあげましょう。また、アームリングなどの浮き輪をつけてあげて「安全だよ」という気持ちを高めてあげるなどして、ちょっとずつ「大丈夫の範囲」を広げていくようにしてあげましょう。 水嫌いの処方箋3:スモールステップで慣れていく!水嫌いの子、水が怖い子でも、子どもはだいたい「水遊び」は大好きです。プールは嫌でも、お風呂に顔をつけるのは嫌でも、水遊びは好きなんです。不思議ですね。なので、水が怖い子が少しでも水に慣れてもらう第一歩としては、水遊び風にして水に慣れてもらうことです。 水遊びといっても、水が怖い子のための水遊びは、タライや浅いビニールプールに水を張って遊ぶことからが良いと思います。わが家ではお風呂の洗い場に小さいビニールプールを置いて、水遊びをしていました。暑い日のシャワーは、あせも対策にも良いので、「お風呂プール作戦」はオススメですよ。 お風呂プールは裸でも、水着を着てプール気分を盛り上げてもいいですね。0歳、1歳の子は水着でテンションは上がらないと思いますので、裸でよいと思います! 2歳以上であれば、水鉄砲などの水を使うおもちゃをお風呂で使ったり、プール遊びなどで水鉄砲で水を顔にかけたりして水に慣れていきましょう。公園のじゃぶじゃぶ池などもいいですね。 赤ちゃんや小さいお子さんの場合、水深数センチでも溺れる可能性がありますので、子どもから目を離さないように気を付けましょう。 水嫌いにならないために「溺れてしまいそうで怖い」という感覚は、その子の特性でのちのち出てきてしまうものなのですが、「顔に水がかかる感覚が嫌」はある程度、経験も関係してきます。 生後すぐの沐浴などでは、水が顔になるべくかからないように丁寧に洗ってあげたりしますが、沐浴のときからある程度おおざっぱに洗って顔に水がかかるのに小さいときから慣れてもらうと、水が顔にかかっても平気になります。 「溺れそうで怖い」に関してもベビースイミングなど、小さいうちからプール慣れしておくと発症予防になることが多いかなとは思います。水遊びが気持ちいい季節になりました。赤ちゃんを育児中の方、お子さんが水を怖がるという方はぜひ参考にしてください。 監修者・著者:医師 高円寺こどもクリニック院長 保田典子 先生2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。2021年、高円寺こどもクリニック開院。3児の母。
2022年07月15日東京を中心に、埼玉・千葉・神奈川・静岡で知的障害者向けの障害福祉サービス事業所「ゆたかカレッジ」を運営する株式会社ゆたかカレッジ(代表取締役社長:長谷川 正人、本社:福岡市博多区)では、知的障がい者の子供を持つ保護者向けに、福祉セミナーを開催します。遠隔地からもご負担なく参加いただけるよう、Zoom開催、参加費無料となっています。福祉セミナー「障害のある子の幸せライフプラン」【増加し続ける知的障がい者数と保護者の悩み】知的障がい者の数は近年増加傾向にあります。内閣府発表の「障害者白書」(※)によると知的障がい者の総数は、平成26年版では74万1千人だったものが令和3年版では109万4千人となり、約7年で35万3千人余り増加、このうち18歳未満については、平成26年が15万9千人、令和3年が22万5千人と約7年で6万6千人余り増加していることがわかります。知的障がい者を子に持つ保護者は子の将来について多岐にわたる悩みを抱え、自分が健在であるうちにどんな準備をしたらいいのか、必要な情報がすべて手に入るとはいいがたいのが現状です。※ 内閣府 障害者白書 【生活・お金・将来に向けた準備を学べる福祉セミナー、Zoomで無料開催!】当社では「障害のある子の幸せライフプラン」をメインテーマとして、連続5回、保護者の皆様が日ごろ気になっている個別テーマについて無料セミナーを開催しています。講師には、行政書士、ファイナンシャル・プランナーとして活躍中の山口 まゆみ先生をお迎えし、第2回は「障害がある子と家族を守る成年後見制度セミナー」と題して2022年7月23日(土)に開催します。「そもそも成年後見制度ってなに?」「成年後見人は誰でもなれるの?」「成年後見制度のメリット・デメリットは?」といった疑問をお持ちの保護者の皆様に、成年後見制度の理解を深めていただける構成としました。開催方法はZoomウェビナーによるリモート開催ですので、ご自宅からお気軽にご参加いただけます。【「障害のある子の幸せライフプラン」残り4回ウェビナー詳細】参加費は無料ですが、申込制となっており、定員を300名とさせていただいております。お申し込みは、下記URLまたはチラシ記載のQRコードの「こくちーず」から、またはダウンロードURLから入手できる申込用紙に必要事項ご記入の上FAX返信で承ります。受付完了後、ZoomのURLを送信いたします。1. 申込みサイト : 2. 申込用紙ダウンロード: FAX番号 : 042-506-1348※ 各回セミナーの開催ごとのお申し込みが必要です。第2回以降の各テーマと開催日時は以下のとおりです。第2回 「障害がある子と家族を守る成年後見制度セミナー」令和4年 7月23日 土曜日 15:30~第3回 「障がいをもつ子と家族の為のライフ&マネープランセミナー」令和4年 9月10日 土曜日 15:30~第4回 「障がいをもつ子と家族のためのエンディングノートセミナー」令和4年11月26日 土曜日 15:30~第5回 「家族の安心・笑顔のための障がいがある子と家族を守る遺言作成のポイントセミナー」令和5年 1月28日 土曜日 15:30~【今後の展開】今後もゆたかカレッジでは、知的障害者に寄り添う形の支援を様々なかたちで展開してまいります。知的障害者のお子様をお持ちの保護者の方々からのご相談も随時受け付けております。本件に関するより詳しい内容をご希望でしたら、当社ではマスコミの方の取材お申し込みを随時受け付けておりますので、是非お問い合わせください。【会社概要】会社名 : 株式会社ゆたかカレッジ本社 : 〒812-0013 福岡県福岡市博多区博多駅東二丁目5番37号博多ニッコービル402号室東京オフィス: 東京都新宿区西新宿三丁目9番7号フロンティ新宿タワー2階 209号室URL : 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年06月28日「グレーを白にしたかった」診断はADHD、LDも大生さんは小さなころから多動や言葉の遅れがみられたが、和枝さんは大生さんの発達の遅れに気付くまでに時間を要した。離婚後、家計を支えようと、看護師の資格を取得するべくパートの仕事の傍ら看護学校にも通っていたため、育児が二の次になってしまったからだ。大生さんは頻繁に忘れ物をし、夏休みの宿題はろくに手がつけられず、外食に行けばじっとしていられず、ときに癇癪を起こしていた。小学校中学年のある日、和枝さんが連絡帳を開くと、中は真っ白だった。授業のノートも見ると、板書のメモは一行だけで終わっており、作文の文字はマス目に収まっていなかった。「どうしてできないのかが分からない」「僕なんてダメなんだ」と、家の柱に頭を打ち付けたり、自分に包丁を向けるなど、自傷行為もするようになっていった。「私もイライラしていたんです。今からでもフツウになれるんじゃないかと思って、とにかくやりなさいって、型にはめようとしていました。グレーを白にしたかったんです。でも、母親として切ないというか、大丈夫かな、ウチの子は楽しいのかなとか。毎日毎日泣いて帰ってくる大生を見て、そんなに嫌な思いして学校に行くならほかの子と一緒じゃなくてもいいかなって思ったんです」(和枝さん)Upload By 桑山 知之ほかの保護者からの指摘を受けて調べたところ、発達障害の特性が当てはまった。発達検査では全検査IQは“普通の中”。スクールカウンセラーのすすめで受診した病院で、ADHDと診断を受けた。学習障害もあった。さらに、医師から「お母さんも“抑肝散”を飲んでみてはどうか」とも提案されたという。抑肝散(ヨクカンサン)とは、精神疾患や神経疾患の補助薬として処方される漢方薬だ。「え、私?って。看護師なのでそれがどういう薬なのかわかるから、驚きました。それと同時に、子どものしんどさの導火線は私が握っているんだなっていうか。この子だけをどうにかしようと思うんじゃなくて、私もこの子のつらさに拍車をかけちゃいけないんだなと思いました」(和枝さん)Upload By 桑山 知之「死んでやる!」どん底で見つけた一筋の光大生さんは地元の公立中学で通常学級に進学したが、遅刻や早退がほとんど。教師の理解は乏しく、よく説教を受けた。クラスでは仲間外れにされ、「遅刻してきたのによく堂々と入ってこれるな」「勉強面で遅れてて終わってんな」などと言われることもあった。登校時間になると嗚咽が止まらなかったりと、休みがちになっていった。大生さんの自傷行為を防ぐため、和枝さんは家中の刃物を隠した。「死んでやる!と言って大生が自分の首を絞めていたこともありました。私も家に帰るのがつらいっていうか…。一緒に死んでもいいのかなって思ったりもしました」(和枝さん)Upload By 桑山 知之中学2年に進学したある日の夜、和枝さんは『坂上どうぶつ王国』(フジテレビ系)でキャリアチェンジ犬のことを知る。キャリアチェンジ犬とは、身体面や性格面など何かしらの理由により介助犬に向かないと判断された犬のこと。かつて犬を飼っている知人の家に行った際、大生さんが柔らかい表情をしていたのを思い出した。「手は尽くした。これしかない」と、日本介助犬協会に問い合わせた。※介助犬…肢体不自由者の日常生活のお手伝いをする犬のこと。盲導犬、聴導犬とともに身体障害者補助犬の1つとして定められている。人懐っこい“魔法使い”がやってきたUpload By 桑山 知之10ヶ月が経ったある日、1頭のキャリアチェンジ犬とマッチングした。名前はオズ。介助犬を目指して訓練していたものの、好奇心が旺盛でほかの犬が好きな性格のため、介助犬には不向きと判断された犬だった。お試し期間として2週間、自宅で一緒に過ごすことになった。和枝さんが「オズにわかりやすいように笑顔で、感情を込めて『よしよし』ってなでるといいよ」と伝えると、大生さんは少しずつ一言添えてなでるようになった。人懐っこくいつも顔をペロペロなめるオズに、思わず大生さんにも笑顔が戻ったのだった。「大生は最初は興味なさそうだったんですけど、だんだん感情を込めてオズに接するようになったんです。大生も笑うんだ…って思ったぐらいでした」(和枝さん)Upload By 桑山 知之さらに、3個下の弟と適切な距離感がつかめずケンカが絶えなかった大生さんだが、オズを介してコミュニケーションが取れるようになった。かつて喫茶店に行くのが趣味だった和枝さんに「俺たち大丈夫だから、喫茶店に行ってきていいよ」と大生さんが言ってくれたり、最近では料理もするという。「(オズを)迎え入れてよかったです。人と違う接し方ができて楽だし、オズと散歩に行ったときに近所の人から空気感が変わったね、って声をかけてもらったり、話したりするようになりました。オズは家族です」(大生さん)Upload By 桑山 知之「最初、見学会でご家族を見たときは空気が張り詰めている感じがありました。でも、犬にはすごいパワーがあって、もたらす効果も大きいんです。その中でもオズはフレンドリーで、マイペースで、明るくて動じない性格だから尾崎さん家族に合うのかなって。オズが来たことがきっかけで変わって、本当に良かったです」(日本介助犬協会・柴原永佳さん)オズが来て半年。これまで集中力が続かず、不登校だった大生さんは自ら勉強に励み、「高校に行きたい」と言うようになった。大生さんは現在、専修学校2年生。専門課程までの5ヶ年一貫教育を経て、就職できるよう力をつけていく。「自分で働いて、自分が暮らせる分ぐらいは稼げるようになってほしい」と和枝さんは願っている。Upload By 桑山 知之Upload By 桑山 知之平成元年愛知県名古屋市生まれ。慶應義塾大学経済学部在学中からフリーライターとして活動。2013年に東海テレビ入社後、東京支社営業部を経て、報道部で記者/ディレクター。2018年から公共キャンペーンのプロデューサーとして「いま、テレビの現場から。」や「見えない障害と生きる。」、「この距離を忘れない。」といったドキュメンタリーCMを制作。主な受賞歴は、日本民間放送連盟賞CM部門最優秀賞、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSゴールド、JAA広告賞 消費者が選んだ広告コンクール経済産業大臣賞、ギャラクシー賞CM部門優秀賞、広告電通賞SDGs特別賞など。取材・文:桑山知之取材協力:若者支援ネットワーク研究会in東海(監修・井上先生より)家族関係の中に動物が介在することで、共通の話題やプラスのコミュニケーションが生まれてきます。また、家族同士の関係性や価値観も変わってくるのだと思います。今回のケースでは、オズ自身の性格もさることながら、キャリアチェンジをして頑張っているオズという存在自体が、「チェンジしたい」と願う家族それぞれが自分と重ね合わせることで大きな力になったのではないかと感じました。
2022年06月28日