2015年4月、アメリカの調査機関・ピューリサーチセンターが驚くべきデータを公表しました。2070年に、世界のイスラム教人口が史上初めてキリスト教人口に同率で並び、さらに2100年には、イスラム教人口が35%でキリスト教人口を1ポイント上回り、信徒数最大の宗教になるというのです。現在、世界の宗教人口はキリスト教が31.4%で最大。2位がイスラム教で23.2%、3位が「特定の宗教を信仰しない人」で16.4%、4位がヒンズー教で15.0%、仏教はそれに次ぐ5位で7.1%となっています。しかし、それほどの勢いで拡大しているにもかかわらず、日本ではイスラム教のことはほとんど知られていません。現在、日本人のイスラム教徒人口は1万人前後。日本に住む外国人のイスラム教徒人口を含めても11万人ほどと、身近にイスラム教徒がいないことがその理由でしょう。そこで、宗教学者で作家の島田裕巳氏の新刊『なぞのイスラム教』(宝島社)から、意外と知られていないイスラム教の基礎知識を見てみましょう。■イスラム教は非常にシンプルな宗教著者は、「イスラム教ほどシンプルな宗教はほかにないのではないか」と評します。なぜシンプルといえるのか、象徴的な4つの要素から確認してみましょう。(1)入信方法は「宣言するだけ」イスラム教のシンプルさがよく表れているのが入信方法。キリスト教では教会で神父や牧師を前に「洗礼」という儀式を行いますが、イスラム教の場合はもっと簡単。2人のイスラム教徒の前で、イスラム教を信仰するという趣旨のフレーズをアラビア語で唱えるだけなのだそう。たしかにこれはシンプルですね。(2)意外とフランクな「礼拝と断食」決められた時間にメッカの方角に向かっておこなう日々の「礼拝」からは、厳格な信仰心をイメージしがち。ですが、じつは祈りをささげる場所は自由。祈りの時刻や方角を教えてくれる腕時計などを利用する人が多いなど、現代的な側面も。感覚的には、日本人が自宅の神棚に朝晩手を合わせることとそれほど大きな違いはないのかもしれません。ラマダーン(イスラム暦の第9月)に行う断食も同様。「その月のあいだ、日の出から日没まで食事をとらない」というもので、断食の期間には含まれない日の出前や日没後の時間帯に“食べだめ”する人も少なくないといいます。いずれも、言葉から受ける厳格なイメージとは少々異なる面が見えてきますね。(4)異本がない「明確なルール」著者が「イスラム教はシンプルだ」と語るもっとも大きな理由がこれ。イスラム教には、聖典にあたるものとして「コーラン」と、預言者ムハンマドの言行録「ハーディ」があり、これら以外には存在しません。この2つをもとに、規範を定めたイスラム法「シャリーア」があり、豚肉を食べてはいけない、お酒を飲んではいけない、といった慣習も、このシャリーアに定められています。守るべき規範がひとつに集約されていて、異なるルールはいっさい存在しない。イスラム教はルールが非常に明確なのです。■行動は個々人の判断に任されているとてもシンプルで明快なイスラム教ですが、著者はもうひとつ、大きな特徴を指摘します。イスラム教は教団や宗派といった「組織」を持たないということです。キリスト教徒が特定の教会に所属したり、仏教徒がどこかのお寺の檀家になったりということが、イスラム教徒にはないということ。祈りをささげる「モスク」という施設はありますが、これはあくまで礼拝所。イスラム教徒なら誰でも利用できるものです。組織がないため、イスラム教徒の行動は個々人の判断に任されている、といえます。知れば知るほど、厳格に統率された宗教というイメージとはまったく異なる姿が見えてきます。■じつはアジアに多いイスラムの人口インドネシアの3分の2、パキスタンの97%がイスラム教徒であるなど、イスラム教徒が多いのはじつはアジアです。現在は総数11万人ほどの日本国内にも、今後アジア各国から来日するイスラム教徒がますます増えていくことが予想されます。そうしたときに、イスラム教への十分な理解なくして、先入観を持たずにイスラム教徒の人びとと接することができるでしょうか?日々ニュースで取り上げられるイスラムの名を掲げたテロ組織と、一般のイスラム教徒の人びとがはっきりと異なる存在だと正しく理解できるでしょうか。著者は宗教学者ですが、じつはイスラム教は専門外。自身のきょうだいがイスラム教を信仰するトルコ人と結婚したことでイスラム教に関心を持つようになり、本書を書くに至ったといいます。そのため著者が実際に見聞きした具体例も多く、わかりやすく書かれています。イスラム教を知ることは、より身近な仏教や神道、キリスト教などへの深い理解にもつながります。グローバル化のますます進むいま、読んでおきたい1冊です。(文/よりみちこ) 【参考】※島田裕巳(2016)『なぞのイスラム教』宝島社
2016年05月12日みなさんは、マウンティングをされたことがありますか?これは、相手よりも自分の方が上だとアピールする行為のこと。されると、ちょっとイラッとしますよね。『ガールズスタイルLABO』の調査によると、マウンティングされた経験がある女性は51.6%。つまり2人に1人は経験しているということ。恐ろしい時代になりましたね……。また54.1%が、女性同士のコミュニケーションで怖い思いをしたことがあると回答したのだとか。女友だちやママ友、職場など、さまざまな場所にマウンティングは存在するのです。そういった経験によって傷つかないために読んでおきたいのが、『上手に「自分を守る」技術: かわす、はね返す、やりこめる』(片田珠美著、三笠書房)。精神科医として多くの患者と接してきた著者が、やっかいな人との関係でもう悩まなくなる具体的な方法を紹介する書籍です。きょうはそのなかから、上手に自分を守る「7つの盾」をピックアップしたいと思います。■1:クッション言葉を置く相手の言動により不愉快な思いをしても、職場やママ友などのデリケートな間柄の人には、きつくは当たれないもの。そこで実践しやすい対処法が“クッション言葉”を置いたうえで、相手に思いや要望を伝えること。たとえば、傷つく発言をされたときにいい返す場合。「冗談のつもりだろうけど」と前置きをして、「冗談のつもりだろうけど、私はへこんでしまうから、やめてね」というのです。他にも「ありがとうございます……でも(要望を伝える)」などと、感謝の言葉を添えてから要望をいってみます。こうすれば、自分の気持ちを伝えやすくなるわけです。■2:リミット・セッティングをする話が長すぎる人、馴れ馴れしい人、借りたものを返さない人……。このようなタイプの人たちと関わっていると、いつまでも相手のペースに振り回されて、こちらの都合や感情は無視され続けるもの。そのような相手には「もうこれ以上は許しません」というリミットを設定するとよいそうです。話が長い相手には「30分後に出かける予定があって」と、自分の都合を先にいっておく。また貸したものを返してくれない相手には「明日どうしても必要なので、返してほしい」と期限を決めるのです。■3:相手の急所をチクリと刺す上司や先輩など立場が上の相手には、いい返すのが難しいと思いませんか?そのような相手には、「そんなことをすると、あなたも不利益をこうむりますよ」というニュアンスを込めて返すのがポイントになるとか。たとえば、仕事で無茶ぶりをしてくる先輩に対しては「できなかった場合には〇〇さんにも迷惑が掛かってしまうと思うので、再考していただけませんか?」と、少しだけデメリットを指摘するわけです。他人に対しては鈍感な人でも、自分の利益に対してはとても敏感になるそうです。■4:私を主語にして抗議するデリカシーのない人や自己中な人には、遠回しないい方では通用しません。そのような相手には、ストレートに抗議すること。ただし鈍感な人は基本的に自己愛が強くプライドが高いため、“相手”を主語にしての抗議はNG。相手に受け止めてもらえるためには、あくまで“私”を主語にすることが大切だといいます。ナイショ話を他の人にペラペラ喋られた場合などに、「私は、あなたのことを信頼していたからショックでした」というふうに話すのです。■5:伝聞調を使ってみる鈍感な人になにかいってやりたいけれど、どのようにいえばいいのかわからない場合も多いはず。そんなときには、“伝聞を使う”という手段を著者は勧めています。鈍い人ほど、やさしい人から指摘されても「そう思っているのは彼女だけ」と軽く考えるのだとか。しかし大勢からそう思われているといわれると、さすがにまずいと思うそうです。そこで、「●●さんの話って、ちょっと長すぎるってみんないっていますよ」と話してみるのです。■6:可哀想な人だと見下す機嫌の悪さをわざとアピールして周囲に気を遣わせる人や、自分の価値観を正しいと主張し、上から目線で押しつけてくるような人がいます。こういった人は、自分の生活や境遇に対する欲求不満や苛立ちを、周囲にばらまいているにすぎないのだとか。このような相手には「彼女も彼女なりに大変なんだな」と、ちょっと上から見下ろすような感覚を持つことがポイント。「へえ~そうですか~」と適当に相槌を打ったり、笑顔で受け流したりするのも、賢い対応になるといいます。■7:こちらも「鈍感さ」を応酬する鈍感な人に対しては、自分も鈍感で対応するのもひとつの手。職場で、自分の付箋を勝手に使われるという被害に遭っている場合を考えてみましょう。まず付箋はデスクの上ではなく、机の引き出しのなかにしまっておきます。そして「付箋貸してくれる?」といわれたなら、平然と「ごめん、私も持っていない」と返すのです。自分が使うときは机から出すことになりますが、「付箋あったのね」とわざわざいう人は少なく、いわれた場合も「あれ、引き出しのなかにあったのか~」としらばっくれること。鈍感さを武器に迷惑をかけてくる相手には、こちらも鈍感さを盾にしてはね返せばいいわけです。*ゴシップ好きな人、暴言を吐く人、自己中な人、なにかとルーズな人……。みなさんの周りにも他人を傷つける人がいるのでは?そのような人たちとの関係を賢く対処するテクニックを公開した一冊。ぜひ手にとって、人間関係の悩みから解放されましょう。(文/椎名恵麻) 【参考】※片田珠美(2016)『上手に「自分を守る」技術: かわす、はね返す、やりこめる』三笠書房※「女性同士のコミュニケーション」に関する実態調査女性同士の格付け(マウンティング)、2人に1人が体験者 ~「女性同士のコミュニケーションは気を使う」は8割以上~―ガールズスタイルLABO
2016年05月12日『ITエンジニアが覚えておきたい英語動詞30』(板垣 政樹著、秀和システム)の著者は、米国Microsoft社シニアプロジェクトマネージャーとして、用語管理システム開発、音声モデル構築システム管理などに携わる人物。そしてインド、中国系エンジニアが台頭する現場において、日本人の決定的な弱点に気づいたのだそうです。それは、日本人は会話の際、動詞が出てこなくなって詰まることが多いということ。しかし現実的に、IT現場の6割は基本動詞で成り立っているのだとか。だからこそ日本人エンジニアにとっては、日本語に捉われることなく、動詞のイメージをつかむことが重要。そこで本書が誕生したというわけです。とはいえ、まったく難しく考える必要はなく、動詞力は中学生レベルで十分。基本動詞を使って、シンプルに伝えるだけでOK。きょうはそのなかから、「する・やる」イメージを表現するためのdoのポテンシャルに注目してみましょう。というのも、「する・やる」を意味する場合は、doで7割がこと足りるというのです。■実はdoほど便利な動詞はない「なんでいまさらdoをおぼえなければならないの?」と思う方も多いでしょうが、その反面、doを使いこなせていない人は少なくないのだと著者は指摘しています。「意味を知っている」のと「使いこなせる」のとでは話が別。こんなに便利な動詞は他にないので、ぜひ身につけてほしいのだといいます。まず、次の質問に英語で答えてみてください。・御社のITシステム部門はどんな業務を行っていますか?多くの方は、システム業務を担当する人たちのことを思い浮かべ、They do…と言葉をイメージしたのではないでしょうか?また、さまざまな作業や仕事の説明にどんな動詞を使うべきかも迷うところ。「管理する」はmanageかadminister?「トレーニングをする」はtrain、それともprovide training?引っかかりそうなポイントがたくさんあります。そんなとき、まずはこう口にするのはどうかと著者は提案します。Well, our IT system team does a lot of stuff.(私たちのITチームはいろんなことをやっています)たしかに、これならシンプルでわかりやすいですね。■doで代用すればこと足りる!そして、さらに補足的にこう続けるわけです。They do computer management;they do software update;they do security training, and so on.(コンピュータ管理もしますし、ソフトの更新もすれば、セキュリティのトレーニングなどもします)見てのとおり、動詞はdoしか使っていません。しかし、日常会話レベルとしてはこれで十分な説明になるわけです。“do+名詞”で「物事をする」という一般的な表現となります。なお具体的な動詞が思いつかない場合は、その動詞をdoで代用すればこと足りるケースが多いのだといいます。■わりとなんでもdoでいえる!computer management、security updateなどの名詞の部分は、ITエンジニアとしてすぐ口にできるはずなので、あとは動詞「する・やる」のdoを使うだけ。・do the work(仕事・作業をする)・do the exchange(交換をする)・do the copy(コピーをする)・do the investigation(調査する)つまり、「動詞を表す名詞」であれば、なんでもdoでいえるということ。先のシステム部門の説明でも、各名詞は以下のようにすべて動詞が存在します。management(名:管理) → manage(動:管理する)update(名:更新) → update(動:更新する)training(名:トレーニング) → train(動:訓練する)■「do + 名詞」に慣れようたとえばcomputerのような、名詞だけの意味しかない単語の場合は、do the computerといっても言葉として成立しません。しかし動作を表す名詞は、山のように存在するもの。つまりdoが使える場面が多いのは、実はここがポイントだというのです。だからこそ、“do + 名詞”に慣れてしまうと、英会話が一気に楽になるのだという考え方です。*このようにわかりやすく、そして実践的。英語で伝えることに悩んでいるITエンジニアは必読です。そしてもちろん、IT以外のなんらかの業務によって外国人と会話する必要がある人にも役立ちます。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※板垣政樹(2016)『ITエンジニアが覚えておきたい英語動詞30』秀和システム
2016年05月11日世の中の森羅万象は、「ハカる」ことと一体。物理学的に表現すれば、「ハカれないものは、存在しないのと厳密に同じ」。ハカれるからこそ「存在」となり、意味が与えられる。こんな考え方に基づいた書籍が『プロフェッショナルをめざす人のための新ビジネス基礎力養成講座 「ハカる」力』(三谷宏治著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)。当然のことながら、主題となっているのは「ハカる力」です。「謀(はか)る」でも「図(はか)る」でも「諮(はか)る」でもなく、「測る」「量る」「計る」ことだといいます。それは、定規をつくり、あてて、試して、対象のなかに潜む「真実(インサイト)」を見抜くことなのだそうです。■「ハカる」力が必要な理由多くのビジネス現場に足りないのは、革新的な商品やサービス、あるいは、それらにつながるような調査や発見。しかし現実的に、職場で行われているのは硬直的なルーティン作業。出てくるアウトプットも新鮮味のないものばかり。仕事がそんなことばかりになっている方も、決して少なくないはずです。しかし、だからこそ必要なのは、ジャンプ力のあるおもしろい商品やサービスのアイデア。そしてその前提となる世の中の(見過ごされていた)変化、もしくは大変化の予兆。だからこそ、それらを見つけ、生み出すために「ハカる」力が必要(=足りない)ということ。■「ハカる力」の根源とは?ハカることの対極にある姿勢は、「感覚的に重要そうな要因を羅列すること」。たとえば、「売上が増えるには、景気好転と人口増が必要だ」などと口に出してしまうことがそれにあたるでしょう。たしかにそのとおりかもしれませんが、こんな主張をしたところでなにも変わるはずがないのです。ハカる姿勢とは、重要な事柄(この場合であれば売上増の分析)にあたって、曖昧な表現を許さず、重要な要因を選び出し、それらに因果関係があるという事実を示すこと。この例でいえば、・GDP成長が1ポイント上向いたとき、自社売上は5%向上する・商圏人口が1%増えたとき、自社売上は2%向上する・その他の外部要因が変動しても、自社売上にそれ以上のブレは生じないなどというようなことを示す。つまり、(1)定性的表現にとどまらず、定量的もしくは具体的指標に落とし、(2)大事な要因(だけ)を見定め(3)それらと目的(売上増やブランド向上等々)との因果関係を確認することが大切で、それこそが「ハカる力」の根源だというわけです。■言葉を数字に落とすべし!曖昧な表現を廃し、主張を具体的・定量的にしようとするとき、もっとも明確なのは数字で表すこと。たとえば「市場シェアが高い」ではなく、「市場シェア30%」と伝える。30%が高いかどうかは競合状況によるもの。シェア50%の敵がいるなら、30%は高いとはいえないわけです。しかしシェアトップで2位が20%なのだったとしたら、その30%は高いといえます。だからそのときは、「シェア30%、相対シェアは1.5」と表記すれば完璧だということ。このように、言葉を数字に落とすことはなかなか面倒。しかも私たちはつい、感覚的表現を使ってしまっているものです。・この分野では敵が「強い」・顧客とのリレーションが「効く」・流通を「押さえれば」勝ちでも、「押さえる」といわれても、そこに具体的な説得力はないわけです。そこで、・カバー率90%:流通チャネルの9割が自社製品を取り扱っている・専売契約率70%:それらのうち7割が専売契約を結んでいる・離反率3%:専売ディーラーが他者に寝返る率が年3%のみというふうに、数字に落としていくことが重要。しかも単純なところからでいいのだそうです。議論をきちんとぶつけ合おうとするとき(明確な意思決定をしようとするとき)、そのベースとなるべきなのは数字。客観的なファクト(事実)が求められるということで、発言者の情熱や気合い、声の大きさであってはならないといいます。たとえ周囲がそうだったとしても、それを覆すことができるのは「数字による議論」だということです。*こうした基本を軸として、以後も「ハカる力」の重要性が解説されていきます。事例やコラムも豊富に用意されているので、著者の考え方を無理なく理解できることでしょう。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※三谷宏治(2016)『プロフェッショナルをめざす人のための新ビジネス基礎力養成講座 「ハカる」力』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年05月11日季節が変わり、日によっては夏日になるなど街はすっかり春夏の装いです。この時期に陥りがちなのが、「着る服がない!」というお悩み。「去年のいまごろはなにを着ていたんだっけ?」なんてつぶやきながら、クローゼットを眺めている人も少なくないのでは?『洋服で得する人、損する人 1万人の人生を変えたパーソナルスタイリスト』(霜鳥まき子、大和書房)の著者は、一般の人々にコーディネートのアドバイスやショッピングのお手伝いをする“パーソナルスタイリスト”。1万人以上のクライアントのワードローブの整理をサポートした実績の持ち主です。著者の実感では「着る服がない」と相談に来るクライアントの多くが、クローゼットの整理をすると洋服を大小合わせて200着、靴は40足程度出てくるといいます。こうした、着ない服、着たくない服の整理がおしゃれの第一歩。でも、一度は気に入って手に入れた洋服を処分するのは難しいですよね。そこで本書を参考に、「いますぐ処分したい服」の7つの特徴をチェックしていきましょう。季節の変わり目のいまこそ、新たなおしゃれに目ざめるチャンスです!著者は、自分らしさを表現できて気持ちが上がる「幸せ服」1着を中心に、トップスとボトムス合わせて1シーズン20着あれば、普段のおしゃれが十分楽しめるといいます。そのためにまず大切なのは、着ても気持ちが盛り上がらない「不幸服」を見つけて処分すること。太って見える、貧相に見える、気持ちを後ろ向きにさせる、第一印象を悪くさせるなど、百害あって一利なしの「不幸服」とは、どんなものでしょうか。■1:やせたら着る服まず目をつけたいのが、「やせたら着よう」「いつか着よう」という服。「いま、なんとしても着こなしたい」という情熱がもてない時点で、いまの自分とマッチしていません。やせたらそのときに、ご褒美として着たい服を買えばいいのです。「いつか着よう」という服に袖を通す日は、永遠にやってきません。■2:無難な服自分なりの個性をプラスするシンプルシックな装いと「無難な服」とは、似て非なるもの。単なる「地味な装い」は個性を隠し、気持ちまで消極的にしてしまいます。服がブレーキになって思うままの生き方ができないなんて、こんなにもったいないことはありません。久しぶりの友人に会うときなど、いざというときに着られない服なら思い切って処分しましょう。■3:体型を隠す服たとえばふんわりと体型をカバーするチュニック。着ていてとてもラクですが、体型が隠せるだけにオバサン化を加速させる危険アイテムです。体が甘やかされ、肥満と老化を招きます。女性らしいラインを活かし、緊張感のある服を着続ければ、若々しさと体型の美しさを自然とキープできます。■4:昔似合った服10年以上前に気に入っていた服も要注意。時間が経つうちに色あせ、生地が劣化し、型くずれを起こしている可能性大です。年齢が上がり、肌の質感やトーンが変わってきたところに色あせた服を着ていると、自分が思っている以上に相手に貧相な印象を与えてしまいます。■5:若い人向けの服10代、20代の娘さんがいる方の場合、サイズが合うからといって若い人向けの服を着ることにも著者は警鐘を鳴らします。洋服のパターンは年代ごとの体型に合わせたつくりになっているため、一見サイズが合っているようでも、バストやヒップのトップ位置、肩の位置や袖つけのラインなど、ミスマッチな部分があるものです。服の細かいシワにミスマッチが表れてしまいます。■6:上質感のない服ファストファッションは手がかかる服だと著者は指摘します。手ごろな価格で手に入るファストファッションは、生地のランクを下げるなどコストも抑え、ワンシーズン限りと割り切ってつくられています。10代、20代ならサラッと着てもさまになりますが、年齢を重ねた女性の場合、フィット感をしっかり見極め、きちんと手入れしないとみすぼらしい印象になってしまうこともあるのです。■7:着ていないブランド服買ってはみたけれど、どうにも着こなせない、でも手放せない……そんなブランド服を著者は「一見豪華不幸服」と断じます。このミスマッチは、ブランド名に惑わされて自分との相性を見極めきれていないときに起こるもの。どういうシチュエーションで着るか、どんなアイテムと合わせるかまで想像できないものは、残しておいてもクローゼットの肥やしになるだけです。サイズがフィットしていない場合はお直しでグッと着心地がよくなることも。品はいいので自分との相性をしっかりと見極め、「合わない」と判断したら潔く手放しましょう。*著者は、1着の「幸せ服」を見つけることができればファッションの幅が広がるだけでなく、人生そのものが輝き出すと説きます。着るものひとつで自信がついたり、積極的にコミュニケーションがとれるようになった経験のある方も少なくないはず。本書では、「幸せ服」の見つけ方、コーディネート術、自分にマッチする服を見つけるお買い物術などプロのテクニックを惜しみなく披露しています。「もう、毎朝着る服に悩みたくない」という方におすすめです!(文/よりみちこ) 【参考】※霜鳥まき子(2016)『洋服で得する人、損する人 1万人の人生を変えたパーソナルスタイリスト』大和書房
2016年05月11日「病気ではないけど、なんだかスッキリしない」「しっかり寝ているのに疲れが取れない」……。そんな不調は、自律神経の乱れが原因かも。自律神経は私たちの生命活動を支える重要なシステムで、その働きが乱れると疲労や不眠、偏頭痛、便秘、うつなど心身にさまざまな影響が出てしまいます。そんな深刻な症状に陥らないためには、日々のケアが大切。ぬり絵のような単純作業に集中することで自律神経が整い、リフレッシュできます。そこで注目したいのが、日本の季節をモチーフにした塗り絵が掲載された『日本の二十四節気をぬる』(小林弘幸著、アスコム)。1日15分行うだけで効果は十分。イライラや不安を感じるとき、眠れないときなどに使うのもおすすめです。■単純作業に集中すればイライラを忘れられる!人は1日5~6万回考えごとをしているといわれ、無意識のうちにストレスがたまっています。こうした心の疲れを解放するのが、ぬり絵のような単純作業。ゆっくりていねいにぬっているうちに、自然と仕事やプライベートの嫌なことを忘れることができます。花びらや葉っぱなどの規則的な模様をぬるのも、集中しやすくなるポイント。自律神経が整うと、体のすみずみに新鮮な血液が行き渡るので、新陳代謝の促進や疲労回復にもつながります。■「懐かしさ」を感じると自律神経の働きアップ自律神経の働きを高めるには「懐かしい」という感情が効果的。そもそもぬり絵は子どものころに誰もが一度は遊んだことのあるもの。それを大人になってもう一度やってみると自然に懐かしくなるはずです。そして、この本で使われている絵柄は「二十四節気」をテーマにしています。二十四節気とは、1年を二十四等分した節目に付けられた名前で、立春や立冬、冬至など耳馴染みのあるものもあります。季節の細かな変化を感じられる風景や動物、植物などの絵柄で、さらに懐かしさを盛り上げてくれるでしょう。*最近ではさまざまな種類の「大人のぬり絵」が発売されていますが、こうした日本の絵柄なら、老若男女問わず楽しむことができそうです。ぬり絵のページにはミシン目が入っているので、きれいにぬれたら、切り取って家族にプレゼントしたり、SNSにアップしたりするのもいいかもしれません。(文/平野鞠) 【参考】※小林弘幸(2016)『日本の二十四節気をぬる』アスコム
2016年05月11日どこの街にもあって、誰でも利用できるのが図書館の魅力。とはいっても、いまの時代はインターネットが主流。本当の意味で図書館を使いこなしている方は、意外に少ないかもしれません。とはいえ図書館には、インターネットにはないいろいろな魅力が詰まっているもの。うまく活用すれば、ビジネススキルも高めることができます。そこでぜひ読んでみていただきたいのが、『図書館「超」活用術』(奥野宣之著、朝日新聞出版)。図書館を活用することにより、知識や思考力を高めようという意図に基づいて書かれた書籍です。きょうはそのなかから、図書館の魅力やメリットをいくつか引き出してみましょう。■公共施設で図書館だけが無料な理由図書館を利用するのにお金が必要ないということは、私たちにとっては当たり前の事実。ところが戦前の日本の図書館では、入館料を取っていたのだそうです。いま無料化されているのは、戦争に負けてアメリカに占領されたから。GHQが、「日本を民主化するためには、市民の意識を変えなくてはならない。そのために、アメリカのようにあらゆる市民に無料でサービスする図書館が必要だ」と考えたからだというのです。同じ公共施設である博物館や公民館、体育館などは、いまでもたいてい有料です。なのになぜ図書館だけが無料にされたのかといえば、それは重要な教育施設だから。事実、自治体組織では、図書館は教育委員会が設置しているのだといいます(2005年からは首長部への移管も可能に)。小中学校の授業料が無料なのは、すべての子どもに教育を受けさせるため。同じように、貧富の差にかかわらず、赤ちゃんから高齢者まで、すべての人が社会教育を受けられるように図書館は無料になっているというのです。■誰でも図書館で情報にアクセス可能ところで「無料」というと、「本がタダで借りられる」という話になってしまいがち。しかし本当に重要なことは、「どんな人でも情報にアクセスできる」ということなのだと著者はいいます。たとえば自営業者や零細企業にとって、業界雑誌や市場調査レポートを購読することはなかなかの負担。しかし購読する余裕がなかったとしても、図書館へ行けば読むことができるわけです。また自分が珍しい難病にかかって、治療費がいくらかかるかわからないとします。そんなとき、その難病に関する高額な専門書が図書館にあったら、とても助けられることになるでしょう。■図書館では有料データベースも無料しかも無料なのは、書籍や雑誌など「紙の本」だけではありません。有料データベースにしても、費用は図書館持ちなのです。たとえば日経新聞の過去記事や企業情報などが検索できる『日経テレコン』に個人で契約すると月額8,000円(2016年1月現在)かかりますが、図書館でならどれだけ見てもタダ。また、講演会やセミナーなども無料(もしくは有料でも資料費程度)というケースが多いといいます。つまり図書館は、本やDVDなど形のあるものだけでなく、インターネットやオンラインデータベース、講演、セミナーなど無形のものを含めたあらゆる情報を無料で提供してくれるということです。■書店と図書館の決定的な違う点とは次に「数」について。書店と図書館をくらべたとき、最大の違いは「本のタイトル数」なのです。しかも書店と図書館には、決定的な違いがあります。「売れる本」を中心とした品揃えになっている書店に対し、図書館の資料は基本的に「一点もの」だということ。また書店の場合、売れない本は返品され店頭から姿を消すことになりますが、図書館は保管できる限り、どんな本でも残しておくのが基本方針。もし、ほとんど閲覧されることがないとしても、貴重な本が破棄されることはないのです。また図書館の蔵書は、「世の中のあらゆることに関する本を中立的に集めよう」という意図でつくられているもの。たとえば「日本国憲法」の棚には、護憲派の本もあれば改憲派の本もあるわけです。世の中の森羅万象を集めているのだから、それでいいということ。その結果、図書館では「レンジ(幅)」の広い本探しができるのです。ただし図書館にも、書店に劣る点はあります。最たるものは、「速さ」。図書館が本を買って棚に並べるまでには多くの作業があるため、新刊の発売日に貸出することはまずないということ。その結果、図書館の本棚はなかなかブームに反応できないのです。かわりに得意なのは、有名作家が亡くなった時に過去の作品を並べる「追悼コーナー」。つまり書店の棚が「現代の縮図」なら、図書館の棚は「社会の足跡」だと著者は表現しています。*「集中力」「発想力」「思考力」「教養力」それぞれの高め方など、図書館を使いこなすためのメソッドが詰まった内容。読み終えたから図書館に足を運んで見れば、新たな気づきが得られるかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※奥野宣之(2016)『図書館「超」活用術』朝日新聞出版
2016年05月11日「今年こそ結婚する!」と意気込んで婚活をしても、理想の相手と出会うのは難しいもの。ネットリサーチサイト『マクロミル』の調査では、過去に婚活をしていたものの、現在はしていないという人の59%はその理由について「なかなか相手が見つからず疲れた」と答えています。しかし自分の行動パターンを振り返ってみると、相手ではなく自分のなかにうまくいかない理由が隠れていることが多いのです。そのことについて、自己啓発書の定番『7つの習慣』を応用して、現代人の悩みを解決する方法を紹介した『まんがでわかる7つの習慣 Plus』(フランクリン・コヴィー・ジャパン監修、宝島社)で確認してみましょう。■結婚後の自分をイメージしてパートナーを選ぶべし周りと自分の生き方をくらべたり、「うらやましい」「あっちの方がおもしろそう」などと本当にやりたいこととは別の方向へ進んだりしてしまうと、あとで軌道修正できなくなるハメに。まずは「自分がどこに向かうか」を決め、それを目指して少しずつ進んで行けば途中でブレることがありません。これが7つの習慣のうちのひとつ、「終わりを思い描くことからはじめる」というものです。婚活中の女性は、活動をしていることに満足してしまい、自分がどこに向かっているのかを見失っていることも多いもの。そんなときは、「結婚したら、自分にはどんな役割ができるのか」を手帳に書き出してみてください。そうすれば、相手になにを求めるかではなく、「自分が将来、どんな家庭をつくりたいか」に意識が向くはず。そんなふうにゴールが明確になっていれば、年収や学歴などの表面的な部分で相手を判断するのではなく、パートナーとして一緒に家庭を築き上げる相手と巡り会えるでしょう。■自分が幸せになるために他人との比較をやめよう!周りとくらべて自分が幸せかどうかが気になってしまうのは、「世のなかの幸せの量には限りがある」と思っているから。幸せそうな人を見ると、自分の取り分がなくなったような気分になり、相手を祝福することもできません。だから、第4の習慣である「Win-Winを考える」ことが大切。この世のなかには無限の幸せが存在していて、新しく生み出すこともできるものだと考えるのです。いつも、そのときの自分が幸せになるように生きればいいし、状況が変わればまたそのときに自分にできることで幸せになればいいのです。ほかの人と張り合う必要はまったくありません。それに、仕事、結婚、出産、どれかを選べばどれかを諦めるという必要もありません。むしろ女性は選択肢が多い分、幸せになるチャンスが多いのです。*この本のストーリーでは、バリバリ仕事をする女性、婚活中の女性、子育て中の女性の3人が登場し、それぞれの幸せを探します。「自分の生き方はこれでよかったんだろうか?」と不安を抱えたとき、『7つの習慣』が道を切り拓くヒントになるかもしれません。(文/平野鞠) 【参考】※フランクリン・コヴィー・ジャパン 監修(2016)『まんがでわかる7つの習慣 Plus』宝島社※未婚男女に聞く、「婚活」に関する意識調査-マクロミル
2016年05月10日『大学受験の神様が教える 記憶法大全』(和田秀樹著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、2014年に刊行されて話題となった同名作のコンパクトなハンディタイプ。長年にわたって受験勉強法の書籍を送り出し続け、多くの受験生を成功に導いてきた実績を持つ著者が、さまざまな記憶法を紹介したものです。つまり読者はこのなかから、自分に合った記憶法を見つけ出すことができるのです。そのためにまず知っておきたい基本は、記憶の3ステップが「おぼえる」「保つ」「思い出す」であるということなのだとか。これらは専門用語で「記銘」「保持」「想起」というそうですが、この3つの機能を強化していくことで、年齢に関係なく記憶力を伸ばすことができるというのです。記憶や想起をする際に、重要な手がかりとなるのが「イメージづけ」と「関連性」なのだそうです。単に情報をインプットするよりも、この2つを活用することで効率よく記憶を行うことができるということ。そこでこの項目で著者は、そのために重要な「10の基本原則」を紹介しています。これらを、記憶したい情報に適した原則を探して活用すればいいということです。しかも、決して難しいことではなく、いたってシンプルなことばかり。だからこそ、すぐに応用することができそうです。■原則1最初の原則は、五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)から得られる情報に意識を向けること。そうすることで記憶はより強化され、必要なときに想起しやすくなるというのです。■原則22つ目の原則は、情報を大げさに誇張させること。大きさや形、音などで誇張されているものは想起しやすいということです。■原則3原則3は、リズムと動きのあるイメージにすること。歴史の年号などを語呂合わせでおぼえるのも、この原則に従ったもの。■原則4原則4は、「色」をイメージづけること。色は記憶を鮮明にし、ものごとをおぼえやすくするのだそうです。たとえば、消防車と聞句とすぐに赤色を連想することができますが、まさにそれがいい例。そこで著者は、マーカーなどでカラフルに彩り、視覚効果を活用することを勧めています。■原則5原則5は、「数字」を使うこと。数字によって整理・順序づけを行い体系立てる。そうすることにより、膨大な記憶から必要な情報が引っぱり出しやすくなるといいます。箇条書きなどが、これにあたるわけです。■原則6原則6は、「記号」を使うこと。ブランドロゴや道路標識などは、まさにこの原則を活用したものだそうです。記号ひとつで瞬時に多くの情報を思い出すことができる効率的な記憶法といえるそうです。■原則7原則7は、「順番」をつけてパターン化することで、これも体系づけて整理する方法。また同じように、色や大きさなどでグループ分けしたり、距離や高さ、年齢、場所などで分類したりしてもよいといいます。■原則8原則8は、「魅力的」なイメージづけをすること。人間は魅力的なイメージを持ったものに対して強い関心を示すものなので、記憶しやすくなる傾向があるというのです。■原則9原則9は、「ユーモア」を活用すること。理由はいたってシンプルで、おもしろいことは記憶に残るものだから。しかも思い出すと楽しい気持ちになれるので、ふたたび想起しやすくなるということ。■原則10最後の原則は、「ポジティブ」なイメージにすること。当然のことながら、ネガティブよりもポジティブなイメージのほうが想起しやすくなるわけです。脳は、わくわくして居心地がよい状態に戻りたがるものだというのです。*このような基本を軸として、以後はさまざまな記憶法が紹介されていきます。目的や効果別に分かれているので、理解しやすいはず。自分にとってベストな記憶法が、きっと見つかるのではないでしょうか。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※和田秀樹(2016)『大学受験の神様が教える 記憶法大全』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年05月08日寝起きのボーッとした頭とカラダを目ざめさせ、1日のはじまりの大切なエネルギー源となる朝食。食べたほうがいいことはわかっているけれど、「1分でも長く寝ていたい」「時間がない」「食欲がわかない」などの理由で「朝食抜き」という人も多いのでは?ネットリサーチの株式会社マーシュが、全国の20代~60代の男女400人を対象として行なった「朝食に関するアンケート」によると、平日、朝ご飯にかけられる時間は「10分以内」(5分以内も含む)という人は52.8%。20分以内と回答した人は33.3%で、じつに85%以上の人が20分以内に朝食を済ませていることが判明したのです。やっぱり、平日の朝は時間との戦いですよね。■4人に1人が朝食にスープを食べている!同アンケートによれば、平日の平均品数は2.7品(休日は2.9品)。もっとも食べられている朝食の主食は「パン類」で、平日49.0%、休日52.8%と、約半数がパン派。「ご飯類」は、平日で42.0%、休日で36.4%という結果になっています。さらに、組み合わせを聞いたところ、平日では、27.8%が「ヨーグルト」、次いで26.3%が「味噌汁・スープ」、さらに24.8%が「卵料理」を選んでいるようです。休日は順位が入れ替わり、「卵料理」29.8%、「味噌汁・スープ」と「ヨーグルト」が同率で25.5%。休日の朝食にかける時間は、平日と違い「20分以内」が最多で36.5%なのに対し、10分以内(5分以内も含む)と答えた人は30.0%でした。朝食の時間が長くなるぶん、気持ちにもゆとりが生まれ、手をかけている様子がうかがえます。とはいえ、平日でも休日でも4人に1人が朝食として選んでいるのが「味噌汁・スープ」です。朝食の定番ともいえそうですが、マンネリ化しそうでもあります。そこでおすすめなのが、4年以上、1,500日も毎朝スープを作り続けた主婦・有賀薫さんの著書『365日のめざましスープ』(SBクリエイティブ)。かんたんでおいしくって無理なく続けられる、朝食スープ作りの工夫が満載です。■時短のコツは少ない材料と組み合わせ方!毎朝続けるスープづくりの方程式は、「短い時間」×「少ない素材」×「なるべく簡単」で、おいしくというもの。野菜の切り方を変えるだけで、味が変わってくるといいます。最初に登場するのが、ささっと15分前後でつくれる、野菜のうま味を主役にしたシンプルなスープ。だしを使わずに、野菜だけでおいしいスープをつくるコツは、トマト、きのこ、ねぎ(玉ねぎや長ねぎ)のどれかを使うこと。この3種類の野菜には、強力なうま味があり、だしがなくてもスープの支えになってくれます。たとえば、ミニトマトと玉ねぎ、オリーブ油、そして塩というシンプルな材料を使い、およそ10分ほどでできるスープは、忙しい朝の強い味方です。そんなトマトスープをご飯にかけて、目玉焼きを乗せれば、スープご飯に変身。またトマトスープに溶き卵を加えれば、トマトと卵のかきたまスープが楽しめます。まさに、バリエーションは無限なのです。■毎朝スープでもマンネリしない簡単な工夫それでは、有賀さんの手軽でおいしいアイデアスープの一端を、一気に紹介しましょう。包丁を使わずにつくれちゃうものもあり、びっくりです。(1)だしのうま味をじっくり味わうスープかつお節と味噌を湯のみに入れて、お湯や緑茶を注ぎ入れれば完成です。だしの味をもっとシンプルに味わいたいなら、味噌を塩に変えてつくってもOK。かつお節の濃厚なうま味が、心にも体にもスタミナを注入してくれるでしょう。(2)まな板いらずのすり流しスープじゃがいもをおろし金ですりおろし、熱した味噌汁に加えて温めればできあがり。仕上げにせりなどをのせれば、彩りも抜群。白味噌でつくったり、酒粕を加えたり、アレンジも自由です。(3)いつもと違う切り方の野菜スープズッキーニを縦長にピーラーで薄切りし、熱したブイヨンのなかに入れて3分程度煮るだけ。塩で味を調えればOKです。ほかにも、スライサーで極細の千切りにしたニンジンを使ったスープなど、切り方を変えるだけで、見慣れた野菜のおもいがけないおいしさに出合えます。包丁で切るより野菜の表面がギザギザになり、味がよくしみこみ、よく絡みます。ぜひ、一度お試しを!(4)缶詰を使ったサバイバルスープ冷蔵庫が寂しいときは、缶詰などを上手に利用しましょう。1.5cm角に切った大根を煮た鍋に、焼き鳥の缶詰を加えてさらに加熱。レモンを絞って味をキュッと引き締めればできあがりです。*時間に限りがある朝だからこそ、アイデア次第でパパッとおいしいスープがつくれます。簡単だけど、サプライズを加えたスープなら、家族の会話も増えるかもしれませんね。(文/山本裕美) 【参考】※朝食に関するアンケート-株式会社マーシュ※有賀薫(2016)『365日のめざましスープ』SBクリエイティブ
2016年05月08日『欧米人を論理的に説得するためのハーバード式ロジカル英語』(青野仲達著、秀和システム)の著者は、外資系企業勤務を経て、ハーバード大学経営大学院でMBAを取得したという人物。現在は、大前研一氏が学長を務めるビジネス・ブレークスルー大学で英語カリキュラムの設計に携わり、その一方で幅広く学生や社会人の実践英語習得を支援しているのだそうです。つまりここでは、そのようなキャリアに基づいた独自の英語術が展開されているわけです。■英語はロジカルであることが重要本書における著者の最大の主張は、「話す内容がロジカルでなければ、英語のネイティブスピーカーであっても通用しない」ということ。逆にロジカルであれば、もし非ネイティブスピーカーであったとしても差別されないというのです。「ロジカル(logical)」とは、「ロジック(logic)=筋道」に裏打ちされたという意味。つまりロジカルな英語とは、「筋が通ったわかりやすい英語」ということになるのです。そしてロジカルな英語が必要とされるのは、舞台がハーバードのような世界的教育機関であろうと、グローバルな仕事環境であろうと同じなのだとか。では、「ロジカル英語」を身につけるには、いったいなにをすればいいのでしょうか?ロジカルな英語を身につけるために不可欠なのは、まず「書く」ことだと著者はいいます。「英語を書くためのルール」に沿って英語を書けば、自然にロジックと出会えるということです。そして英語を書くためのルールは、「エッセイ」を書くことで習得できるのだとか。そこで本書では「5行エッセイ」と「1枚エッセイ」を通じ、そのルールを解説しているのです。その最大の基本である、「5行エッセイ」をクローズアップしてみましょう。■5行エッセイで英語が身に付く!エッセイと聞くと難しそうに思えるかもしれませんが、その基本はとてもシンプル。たとえば5行エッセイを使って「冬が好きだ」という意見を伝えるとすれば、以下のようになるわけです。1.I like winter.(私は冬が好きだ)2.I can dress up.(おしゃれができる)3.I enjoy winter sports.(ウインタースポーツが楽しめる)4.Sea foods are in season.(海の幸が旬だ)5.Winter is my favorite season.(冬は私の大好きな季節だ)1行目で結論を述べ、2~4行目で3つの理由を挙げ、5行目でふたたび結論を伝えていることがわかります。ここには、「3つの基本ルール」があるということ。1.結論を述べる(1行目)2.理由を3つ挙げる(2~4行目)3.結論を繰り返す(5行目)たしかに、構造的にはきわめてシンプルであることがわかります。だからこそ、これらの基本ルールに従って英語を書き、さらにはそれを話す習慣を身につけることが大切。そうすることによって、どこへ行っても通用する「ロジカルな英語」の基礎を養うことができるというのです。■シンプルな言葉はそのまま話せるいってみればエッセイを書くことによって、自分の考えを「シンプルな言葉でわかりやすく伝える力」を養うことができるという考え方。しかもシンプルな言葉には、難しいことを考えるまでもなく、そのまま話すことができるというメリットがあります。英語を書くためのルールは、「世界標準の英語」を習得するための基本型だと著者は主張します。つまりエッセイが書けるようになれば、それだけで基本をものにしたことになるわけです。*このように「5行エッセイ」を軸としたシンプルな考え方に基づき、本書ではロジカルな英語を身につけるためのメソッドが解説されています。シンプルなのに奥深い。だからこそ本書には、オリジナリティ豊かな説得力が備わっているといえそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※青野仲達(2016)『欧米人を論理的に説得するためのハーバード式ロジカル英語』秀和システム
2016年05月07日世界の平均寿命ランキング(2014年厚生労働省)によると、男性の1位は香港で3位が日本、女性は日本が1位で香港が2位。日本だけでなく、香港もなかなかの長寿国なのです。4月に出版された『世界一の養生ごはん』(小学館)の著者であり、中医学美容学博士の楊さちこ先生いわく、香港の人は「死ぬまで元気、が当たり前!」なのだとか。そのヒミツを探っていきたいと思います。■病気になる前に食べもので整えるちょっとした不調は食べもので整えて、お薬は本当の病気になってから。それが中医学の考え方です。私たちの体には、健康な状態と病気の状態以外に「健康でもないけどお医者さんにかかるほどの病気でもない」という状態があります。人間はこのグレーゾーンともいえる状態から、「四季の移り変わりに伴う気候や気温の変化や、人間関係による心の摩耗、ちょっとした身体のクセ、年齢を重ねる」などが重なってだんだん病気に近づいていきます。だからこそ、毎日ちょっとずつ不調をリセットしていくためには、毎日食べるものが大切なんですね。■楊さちこ先生が語る理想の食生活毎日食べるものが大切だといっても、実際にはどういうものがいいのでしょうか?楊さちこ先生は、以下の7つが重要だといいます。(1)一物全体を食べる(丸ごと、すなわち皮などもそのまま食べて、サプリメントのように抽出したものではなく、食べものとして食べましょうということ)(2)消化しやすいもの(3)栄養補給しやすいもの(4)水分補給しやすいもの(5)老廃物をきちんと排出できるもの(6)季節に沿ったもの、そしてなにより(7)温かいものを食べることそのため、香港人は毎日スープを飲むのです。各家庭でお母さんは家族の体調や季節に合わせて毎日スープをつくります。外食してきた日でも、おうちに帰ったらスープは飲まなければなりません。また、家庭の食事では取り皿がスープのお碗なので、まずスープを飲まなければ他のごはんやおかずを食べることができないのです。そしてポイントはほんの少しの塩で味つけすること。だから素材そのものを味わえるんですね。■健康長寿生活にはチキンスープ!スープを毎日つくるのは、正直ハードルが高いことですよね。そこで、チキンスープを鍋たっぷり作り、小分けにしておいたらいいのです。チキンスープは美肌に、運動後の肉体管理に、生活習慣病予防に、ダイエットに最適です。そして消化吸収がよく、脂っぽすぎないのでご年配にも子どもにもいいという、まさに万能スープ。チキンスープがあれば、そこに具材を足して季節に合わせたスープができますし、水分補給代わりに気分転換にスープだけ飲んでもOK。もちろん出汁をとったあとの具材だって食べられます。用意するものは、できれば丸鶏。難しければむね肉、もも肉、手羽肉など部位別に売られているものでも問題ありません。丸鶏も大きなスーパーなどで買えますね。生姜を2スライスと塩を少々入れて、沸騰したら中火で、丸鶏なら30~45分程、部位別のお肉なら20~30分ほど煮ます。お水は丸鶏なら2リットルほど、部位別のお肉なら500~600gで1リットルほど入れてください。できたスープは冷凍なら約1ヶ月、冷蔵で夏なら2~3日、冬は1週間ほどもちます。スープをいつものごはんにプラスするだけ。みなさんも健康長寿生活をはじめてみませんか?この『世界一の養生ごはん』には季節別、症状別のスープのレシピがたくさん載っているので、ぜひ一度見てみてほしいです。*日本の昔ながらの食生活には、お味噌汁がありますね。もちろんお味噌汁を毎日飲むのでもいいでしょう。これからの暑い季節に備え、身体を温かいスープや味噌汁でいたわって生活していきましょう。(文/料理家・まつながなお) 【参考】※楊さちこ(2016)『世界一の養生ごはん』小学館
2016年05月06日なぜだかわからないけれど、一緒にいると疲れてしまう相手がいるものです。あるいは、うまく話すことが苦手で、知らず知らずのうちに相手を疲れさせてしまうと悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。そこで、ぜひとも読んでみていただきたいのが、きょうご紹介する『一緒にいて疲れる人の話し方 楽な人の話し方』(野口敏著、KADOKAWA)。「TALK&トーク話し方教室」を主宰し、大阪および東京でコミュニケーション講座を開講。これまでに5万人以上の受講生を聞き上手、話し上手に変身させてきたという実績を持つ著者が、「うまく話せる」「聞いてもらえる」ルールを明かした書籍です。特徴的なのは、「疲れる人の話し方」と「楽な人の話し方」を対比させながら話を進めている点。そのぶん、無理なく話し方のコツをつかめるというわけです。■優柔不断な人は人の時間を無駄にしている優柔不断な人といると、それだけで疲れてしまうもの。たとえばレストランで、他の人はすでに注文が決まっているのもかかわらず、いつまでもメニューを見ている人はいないでしょうか?「あれにしようか」「こっちもいいかな」と迷ってばかりで、なかなか決断を下せないタイプです。あるいは友人同士で旅行の計画を立てているときにも、「行く」「行かない」を繰り返した挙げ句、結局はドタキャンして大ヒンシュクを買ったなどという人もいるかもしれません。好き嫌いは別としても、優柔不断な人といるとそれだけで、時間が無駄になってしまうことが少なくないわけです。■優柔不断な人は実はあまり考えていない?そして、ここには重要なポイントがあると著者は指摘しています。優柔不断な人はたくさん考えていそうで、実はなにも考えていないということ。なぜなら頭のなかを巡っているのは「どうしよう」という迷いばかりで、肝心の「どれを選ぼうか」という考えはほとんどないから。仮にあったとしても、「これを選べばこういうマイナスがある」といったようなアラ探しばかりで、最善のゴールを目指して考えを巡らせることはないというのです。そして優柔不断な人は、決断できずに問題を先送りしがち。だから、成功も失敗もしないわけです。すると、どうなるでしょうか?いうまでもなく、なんの経験も積むことができず、成長すらできないという寂しい結果に終わってしまうということです。■ベスト3を決めると優柔不断を卒業できるそこで、優柔不断から卒業するためには、選択のプロセスを身につけることが大切だと著者は主張しています。まずは優柔不断な人の思考をチェックしてみましょう。たとえばファミリーレストランでメニューを決めるとき、優柔不断な人は「ハンバーグもいいし、トンカツ定食もおいしそう。パスタにはコーヒーがセットになっているのか。でもダイエットには和食がいいよね」という具合に迷いつつ、「でも、桃のパフェってどんなものだろう?」と考えなくてもいいことまで考えて迷子になってしまうことになりやすいものです。目に入るものすべてが選択肢になったのでは、決められなくても当然だということ。そこで重要なのは、まずメニューの中でベスト3を決めることだと著者はいいます。たしかに1つに絞り込むことが難しくても、3つなら挙げることができそうです。洋食から1つ、和食から1つ、別のジャンルから1つというように、各ジャンルから1つを選べばいいわけです。■ベスト3を決めたら理由を言い聞かせよう3つを選んだら次にすべきは、そのべスト3を選んだ理由を明確にすること。「晩ご飯が遅くなりそうなので、ガッツリとしたものを」「いちばん安いから」「ダイエットにいいから」という具合に、理由を考えてみるということ。確かにそうすれば、自分でも気づかない自分の真意がわかりそうにも思えます。そしてその理由を自分の胸にいい聞かせ、いちばんときめくものを選ぶようにすればいいということです。このとき重要なのは、一度決めたら、選択しなかったものを振り返らないことだとか。どれにもそれぞれの魅力があるから迷うので、振り返れば後悔がはじまるということです。*たしかにこうして考えを進めていくと、優柔不断なスタンスの原因を突き止め、克服することができそうです。そして結果的にはそれが、「楽な人」になるための道を切り開くというわけです。また他にも、「疲れる人」と「楽な人」の考え方の違いが数多く紹介されていますので、きっと役に立つ内容だと思います。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※野口敏(2016)『一緒にいて疲れる人の話し方 楽な人の話し方』KADOKAWA
2016年05月06日『カール教授のビジネス集中講義 金融・ファイナンス』(平野敦士カール著、朝日新聞出版)の著者は、実務家、経営コンサルタント、著者、大学教授とさまざまな経験を経てきた人物。本書は、「経営戦略」「ビジネスモデル」「マーケティング」に続くシリーズ第4弾で、「金融・ファイナンス」をテーマに設定しています。と聞くだけで、「難しそう」という印象を持たれる方も少なくないはず。しかし著者は、そうではないと強調しています。そればかりか、金融やファイナンスは、企業人としても個人としても、これからの時代にもっとも学ぶべき学問だと断言しているのです。なぜなら、ファイナンスを学ぶことによって、お金を増やし、減らさないようにするための知恵が身につくから。金融初心者でも理解できるようなアプローチが貫かれた本書から、最近の気になる話題である「マイナス金利」に焦点を当ててみたいと思います。■金利は「お金のレンタル料」のこと去る2016年2月、日本でも史上初となる「マイナス金利」が開始されました。そこでまずは、金利についての基本を知っておきたいところです。著者の表現を借りるなら、金利とは、お金を貸し借りした際に発生する「レンタル料」のことなのだとか。金利の利率は、ローンの種類によっても異なってきますし、同じローンでも「変動金利型」の場合には、借りる時期によって変動するのだそうです。なぜ利率が異なるのかといえば、ひとつは、需要と供給の関係。お金を借りる人が多い場合、金利を高くしたとしても借りる人がいるからこそ、金利は上がります。しかし借りたい人が少なかったとすると、金利は下がることになるわけです。■なぜ消費者金融は金利が高いのか?また、貸し手が元手をどのように調達したのかによっても、事情は変わってくるのだそうです。たとえば銀行は、多くの人から集めた預金を原資にしてお金を貸しています。ところがノンバンク(銀行のようにお金を預かることはできないものの、企業や個人への融資を手がける金融会社)やその代表的存在である消費者金融は、銀行からお金を借りて、いってみれば「また貸し」をしている立場。それで、貸し出す際の金利も、銀行より高くなるわけです。最終的に、世の中のさまざまな金利を決めるのは、民間の銀行同士がお金を貸し借りし合う短期金融市場のコールレート、つまり「政策金利」となります。いうまでもなく、金利は経済を大きく左右する要素です。金利が高いとお金を借りる人が減るため、企業の設備投資、あるいは個人の住宅購入などが減り、経済が冷え込むわけです。しかし金利が低すぎたとすると、貸し手にメリットはありません。また、借り手が増えて経済が活性化するかというと、必ずしもそうでもありません。■マイナス金利だと現金保有が合理的さて、ここでマイナス金利について。マイナス金利政策は、ヨーロッパ中央銀行(ECB)が2014年に実施したもの。通常であれば民間銀行が中央銀行にお金を預ければ利息が得られるわけですが、マイナス金利の場合は、お金を預けた民間銀行側が逆にお金を徴収されることになります。預金すると損をするので、銀行は余ったお金を企業や個人への貸し出しに回すものだと期待されていました。事実、一部の国では銀行の貸し出しが増加しましたが、効果は限定的だといいます。マイナス金利だと、銀行に預金をするよりも、現金を保有するほうが合理的になります。とはいえ大量の現金の保有は危険であり、保管場所やセキュリティ、保険が必要になるはず。■マイナス金利によって個人はお得?では日本はどうかといえば、日銀の金融緩和も株や不動産が値上がりしただけ。つまり効果は上がっていないのです。それどころか、借金をしたほうが得をするという、常識では考えられない自体を引き起こしているのだとか。そんななか、日本の金融機関は政府の意向とは逆に、中小企業などリスクのある企業への融資に対して厳しくなると著者は読んでいます。一方、マイナス金利によって個人は、住宅ローンを借りると国からの補助もあり、むしろ得をしてしまうという逆転現象も。しかし金利は安くても、価格そのものが上昇してしまっている可能性が高いので注意が必要。今後は「いかに資産を増やすか」よりも、「いかに資産を守るか」という視点が重要になってくるといいます。*他にも多くの人が知りたかったであろう問題をわかりやすく解説しているため、とても役に立つ内容。金融やファイナンスの基礎を固めたいという方には最適です。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※平野敦士カール(2016)『カール教授のビジネス集中講義 金融・ファイナンス』朝日新聞出版
2016年05月05日便秘などの腸トラブルを抱える女性は少なくないはず。女性にとって、腸内環境を整えることは大きなテーマです。この腸内環境の観点からやせる身体づくりについて書かれているのが、『ヤセ菌が増えて太らない食べ方』(岩田麻奈未著、自由国民社)。“ヤセ菌”とは気になるワードです。早速その中身を見てみましょう。■ヤセ菌を腸内に増やしてヤセ体質に!1千兆個、重さにして1kg以上――なんと、これが1人の人間の腸内に住む細菌の数です。腸内細菌は、食べたものの消化や吸収を促したり免疫力を高めたり、大切な役割をいくつも果たしています。その理想的な内訳は、善玉菌が2~3割、有毒物質を発生する悪玉菌が1割。残りの約6割は日和見菌という多勢につく菌ですが、そのうち善玉菌に加勢しやすいものがヤセ菌、悪玉菌に加勢しやすいものがデブ菌と呼ばれています。そして、やせている人の腸内はヤセ菌優位、太っている人の腸内はデブ菌が優位になっていると考えられているのです。実際、やせている人と太っている人の腸内細菌をそれぞれマウスに移植した実験では、やせている人の菌を移したマウスはやせ、太った人の菌を移したマウスは太ったそう。日和見菌をヤセ菌に変えることができれば腸トラブルが解消し、自然とヤセ体質になる、というのが本書の主張。ヤセ菌を増やす習慣や、デブ菌に変えないための心得が詳しく説明されています。では、どんなものを口にするとヤセ菌を増やすことができるのでしょうか?気になる“ヤセ菌を増やすエサ”には、こんなものがありました。■ヤセ菌が増える6つの食べ物&飲み物(1)食物繊維「第6の栄養素」ともいわれ、注目されている食物繊維。なかでも水溶性食物繊維は糖や脂肪の吸収を穏やかにしたり、毒素や有害物質を吸い取ってくれたり、便を柔らかく保ちます。善玉菌のエサになり、腸内細菌の住む“腸内フローラ”を改善する役割も担っています。水溶性食物繊維を多く含む食べ物の代表は、大麦と海藻。とくに大麦に含まれる水溶性食物繊維は、白米の20倍。白いごはんを麦ごはんに切り替えるだけで、飛躍的に摂取量を増やすことができます。(2)オリゴ糖糖類のなかでも吸収されにくい組成のオリゴ糖は、大腸まで届いて善玉菌であるビフィズス菌を増やしたり、老廃物や有害物質を自ら吸着して排出したりしてくれます。シロップなどでダイレクトにとるのもいいですが、身近なところではタマネギやバナナ、大豆、ゴボウ、アスパラガスなどに含まれます。豆腐や豆乳、納豆などの加工食品にも含まれる大豆オリゴ糖はとくに腸内フローラを改善する働きが強いのも、うれしい話。(3)有用菌善玉菌やヤセ菌のエサになるだけでなく、腸内で善玉菌と一緒になって働いてくれる有用菌。代表的なものが乳酸菌、麹菌、納豆菌などで、ヨーグルトや納豆、漬け物といった発酵食品からとることができます。とくに納豆や漬け物など植物性の発酵食品は、ヨーグルトやチーズなど動物性のものよりも日本人の腸内フローラとの相性がいいといわれています。(4)油「油=高カロリー」だからと敬遠してはいけません。たとえばオリーブオイルの主成分であるオレイン酸は、大腸のぜん動運動を刺激して排泄を促したり、腸壁を滑りやすくしたりして便の流れをスムーズにする働きがあり、便秘に悩む女性の強い味方。パンにつけたり味噌汁にスプーン1杯回しかけて飲んだり、そのままの形でとれると効果大です。ただし、1gあたり9kcalとカロリーが高くなりやすいのも事実。サラダ油など調理に普段使う油を控える工夫も忘れずに。(5)ミネラルミネラルの一種であるマグネシウムとカリウムは、腸内をよい状態に保ために欠かせない存在。マグネシウムは水分をため込み、便を柔らかくしますし、カリウムは腸の筋肉を正常に働かせるために必要です。身近な食べ物でミネラルを多く含むのは、やはり海藻。海藻に含まれるミネラルのうち80%が身体に吸収されるといわれ、効率よく栄養素を摂取することができます。バナナやリンゴ、ナッツ類もミネラルが豊富です。(6)水分腸内細菌の直接的なエサではありませんが、便秘解消に欠かせないのが水分。また、意外なことにむくみ防止にも水は大切。むくみは、体中を巡って老廃物をとかしこんだ水分が細胞内で滞ることから起きます。水分をたっぷりとって、血液の流れをスムーズにすることが、むくみ解消につながるのです。コーヒー、紅茶、緑茶などカフェイン入りの飲み物は利尿作用があり、逆に水分を奪ってしまうので注意が必要です。*ヤセ菌を増やして腸内環境を整えると、いいことがたくさん。免疫力がアップし、腸トラブルが解消して代謝がよくなり、むくみや冷えも解消。肌荒れも解消します。さらに、お通じがスムーズになればやせやすい身体を手に入れることができるのです。腸内細菌を味方につけて、リバウンドなしの快腸ダイエットが実践できる1冊です。(文/よりみちこ) 【参考】※岩田麻奈未(2016)『ヤセ菌が増えて太らない食べ方』自由国民社
2016年05月05日新年度がはじまって1ヶ月が過ぎました。この時期、職場の人間関係で悩んでいる人も少なくないのではないでしょうか。正社員で働くことを希望する女性向け求人情報サイト『エンウィメンズワーク』の調査によると、30代以下の働く女性の94%は職場でのストレスを抱えており、そのうち47%はストレスの原因として「上司との関係」を挙げているそう。権力をふりかざすパワハラ上司や、部下を徹底的に攻撃するクラッシャー上司などに振り回されると、精神的にまいってしまいますよね。しかし『「自分が絶対正しい!」と思っている人に振り回されない方法』(片田珠美、大和書房)では、職場やプライベートで出会う「大迷惑な人」に振り回されず、ストレスをためない方法が紹介されています。そのなかから、特に上司との関係で使えるコミュニケーションの方法をピックアップしました。■1:「いい人」をやめて心の負担を軽くする「自分が絶対正しい!」と思っている人に振り回されやすいのは、いわゆる「いい人」。素直で純粋、真面目で責任感の強い人ほど「自分が絶対正しい!」と主張する人にとっては恰好の餌食になってしまいます。そんな人は、「プチ悪人の要素」を持ってみることが大切。たとえば少しだけ「疑いの目を持つ」「相手の裏を探る」「反論してみる」「上から目線で相手を見てみる」「小馬鹿にしてみる」などして、意識的に視点を変えてみてください。いままで腹が立つだけだった人が、少し笑えるような存在になったりするのではないでしょうか。また、罪悪感を抱きやすい人も危険!例えば自分が所属するチームで問題が起こったときなどに、「自分の責任だ」「自分がもっとちゃんとやっていれば……」などと考えていると、そこにつけこんだ上司に「君が悪い」「君の責任だ」と責任を押しつけられるはめになります。ミスに責任を感じるのは大切なことですが、仕事において自分ひとりの影響力などたかが知れています。なんでも自分のせいにする癖をやめれば、心の負担も少し軽くなるでしょう。■2:相手の言動の裏にある気持ちを分析するもうひとつのポイントは、相手を分析する癖をつけること。相手と同じ土俵に立って感情で受け止めると、どんどんストレスがたまり、精神的なダメージが大きくなります。ですが、「この人は怒鳴っているけど、本当は自分に非があることを知っているんだな」などと分析できると、無駄に落ち込んだり、イライラしたりすることがなくなります。また、無茶なやり方を押しつけてくる上司を客観的に見てみると、実は新しく赴任したばかりで不安の裏返しで焦っているということがわかったりします。その場合は「部長のマネジメント力はすごいですね。いきなりそのレベルで仕事をするのは難しいので、私たちでもできるやり方があれば教えてもらえませんか?」などと、相手のことを認め、不安を和らげてみてください。すると上司も安心し、「こんなことから始めてはどうだ?」などと態度を改めたりするものです。冷静かつ客観的に相手を観察する目を養いましょう!*本書には「自分が絶対正しい!」と思っている人への対処法のほか、そんな相手のタイプの見分け方、標的になりやすい人の特徴、そして自分が加害者になっていないかのチェックも紹介されています。職場でのコミュニケーションに役立つこと間違いなしです。(文/平野鞠) 【参考】※片田珠美(2015)『「自分が絶対正しい!」と思っている人に振り回されない方法』大和書房※女性の94%は仕事でのストレスを感じている。原因は「職場での人間関係」と「給与の低さ」—エンウィメンズワーク
2016年05月05日「もっと貯金があれば、お金の悩みがなくなるのに……」と考えることはありませんか?でも、それは間違い。どんなに貯金があっても、お金の不安がつきることはないのです。では、どうしたらいいのでしょうか?それは、毎月お金を生み出してくれる仕組み=「金の卵を産むニワトリ」を持つこと。そうすれば生涯にわたって、お金の悩みのない充実した生活を送ることができるのです。とはいえ、お金を生み出す仕組みを持つなんて、難しいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。そんな方のために読んでいただきたいのが、『金の卵を産むニワトリを持ちなさい』(菅井敏之著、アスコム)。お金のソムリエ・元メガバンク支店長の著者が、家計を見なおし、どんな人でも「金の卵を産むニワトリ」を持てる方法を教えてくれるのです。■食費や交通費の節約はストレスを増やすだけ「金の卵を産むニワトリ」は、いきなり手に入るわけではありません。まずは自分の家計を見なおし、お金が貯まる体質を身につけることが大切。そして貯金を元手に、お金を生み出す仕組みをつくっていくのです。ただ、節約しようとしてランチ代や交通費を削ろうとするのはNG。数百円の節約を積み重ねても、ストレスがたまる一方だから。効率よく節約するなら、細かい出費より、大きな出費である4大固定費に注目するべきなのです。■お金持ちになるには4大固定費の見直しから「住宅費」「保険料」「自動車費」「教育費」の4大固定費を見なおすだけで、毎月数万円の節約をすることができます。たとえば労働日数が月25日だったとして、750円のランチを500円の弁当に変えれば、6,250円の節約になるかもしれません。また、7万円の家賃を交渉して1割値下げしてもらえれば、毎月7,000円の出費をストレスなく減らすことができます。手厚くかけすぎている保険を解約すれば、数千~数万円の節約に。その他、週末しか乗らない車を手放したり、子どもの習い事や塾を見直したりすることでもかなりの出費を抑えることができるはずです。確かにこれなら、日々の節約に神経をすり減らさなくてもいいですよね。そして、4大固定費は合わせて収入の50%以下にすることがポイント。そうすれば、細かい節約をしなくてもお金が自然に貯まっていくのです。*節約というと、「今日のランチは500円に抑えよう」「急いでいるけどタクシーを使うのはもったいない」などと考えがちですが、その一方で大きな出費を見落としていたりするものですね。みなさんも、自分の家計を振り返り、お金の貯まる体質を目指しましょう。きっと「金の卵を産むニワトリ」を持つチャンスが訪れるはずです。(文/平野鞠) 【参考】※菅井敏之(2016)『金の卵を産むニワトリを持ちなさい』アスコム
2016年05月04日『なぜあの人は中学英語で世界のトップを説得できるのか』(三木雄信著、祥伝社)の著者は、かつてソフトバンク社長室長を務めていたという人物。当然のことながら同社社長である孫正義氏のすぐそばにいて、海外出張にも同行し、英語でスピーチする姿も何度となく見てきたのだそうです。そんな立場から著者は、孫正義氏の英語は聞き取りやすかったと感想を述べています。しかし、興味深いのはその理由です。孫氏の英語は発音が日本人なまりのわかりやすいもので、つまり流暢ではなかったからこそ聞きやすいというのです。またスピードもかなりゆっくりで、ネイティブのお母さんが自分の幼い子どもに話しかけるくらいの速さなのだとか。■孫氏は中学英語で世界と交渉それだけではありません。英文をよく見てみると、きわめてシンプルなものばかりだというのです。使っている英単語がやさしいものだけで、複雑な関係代名詞や高度な仮定法も使っていないというのです。にもかかわらず、孫氏は世界のトップと互角に交渉している。むしろ、こちらの交渉を通している。そこで、「中学英語なのに、なぜ相手を説得できるのか」という観点から書かれたのが本書なのです。当然のことながら、英語に関する孫氏ならではのメソッドが数多く明かされているのですが、本書のおもしろいところは、単なる「英語本」で終わっていないところ。英語の話題が軸になっているとはいえ、その裏側に、プレゼンテーションや交渉に関する孫氏ならではの哲学が垣間見えるのです。たとえばそのひとつが、「A4の紙1枚の使い方」。■A4用紙でうまく伝える方法孫氏は、事前準備なしの手ぶらでミーティングに望むことはまずないのだそうです。重要な会議であればあるほど、入念に準備をするということ。多くの場合は、Power Pointのスライドを使ったプレゼンテーションを持っていくそうですが、プレゼンテーションを使わない場合は、小さな紙にキーワードをまとめているのだといいます。A4の紙を短冊状に折ったものに、自分で書き込んでいる場合もあったのだとか。あるいは、毎朝秘書から手渡される紙のスケジュール表に、手書きで書き込んだもののときもあったといいます。■英語学習にも有効な事前メモ著者も孫氏のこうした手法を見習って、必ず事前に準備をしているそうです。特に英語でのミーティングの前には、A4用紙1枚に自分のいいたいことをまとめているというのです。箇条書きで、自分のいいたいことを英文でまとめただけのシンプルなもの。また、そのテーマに関連する重要な英単語を、参考のためにまとめておくことも。このようにミーティング前に準備をすることは、非常によい英語学習の機会になるのだとか。理由は簡単で、絶対に自分がアウトプットをしなければならない立場になるから。■準備を恥ずかしがる必要なし「事前の準備をせずに英語でミーティングができないと格好が悪い」と思い込んでいる方もいるかもしれませんが、そうすることを結果に結びつけているからこそ、「恥ずかしがる必要はまったくない」と著者は断言しています。メモさえつくっておけば、こちらが伝えたいことは必ず伝えることができるから。たとえ相手のペースで話が進んだとしても、手元の紙に戻れば、もう一度自分のペースに戻ることができるわけです。また、このような紙が手元にあることが、自分の心配を事前にぬぐい去ることにつながるともいいます。英語で交渉に臨もうというとき、緊張してしまうのは当たり前の話。でも、そのようなときに、手元の紙はお守りのような役割を果たすというのです。不安な気持ちのままで臨んでしまうと、英語ができるかできないか以前の、「ビジネスパートナーとしてどうか」というレベルの問題にもなってしまいかねません。どのようなミーティングであったとしても。静かに自信をたたえた態度で臨みたいもの。そこで、手元の紙がとても有益だということです。■日本語の会議でもメモは有効なお、このA4のメモは、ミーティング終了後も捨ててはいけないそうです。いうまでもなく、これらがたまると、自分にとって最適な単語集と表現集になるから。だからこそ著者は、ミーティングの前にA41枚のメモをつくることを強く勧めています。そして英語のときだけでなく、日本語の会議でも事前につくる習慣を持つと、さらに有益だといいます。*このように、英語学習を主軸としながらも、さらに広い視野が本書には備わっているわけです。だからこそ、読んでみればきっと得るものは多いと思います。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※三木雄信(2016)『なぜあの人は中学英語で世界のトップを説得できるのか』祥伝社
2016年05月04日つい凹んでしまうことは、誰にでもあるもの。でも当然のことながら、凹んでいたのでは最高のパフォーマンスを発揮することは困難です。そこで読んでみていただきたいのが、『凹んだら読む本』(治面地順子著、クロスメディア・パブリッシング)。さまざまな企業や官公庁などで、これまで多くのストレスマネジメントを手がけてきたという著者が、凹んだ気持ちを回復させるための術を明かした書籍です。■1日3分「いいことだけ」を考える「好きなこと」や「楽しいこと」を考えましょう、やってみましょうといわれてもそれはなかなか難しいもの。習慣がない人は、戸惑ってしまったとしても無理はありません。だからこそ、まずは習慣化することからはじめるべきだと著者。そのためには、1日3分だけ「いいことだけ」を考える時間をつくることが大切だというのです。そして習慣化するためには、「決まった時間」を設けるのも得策なのだとか。たとえば電車で通勤している人であれば、朝、電車に乗ったら3分間、「いいことだけ」を考える時間をつくればいいということ。考えるだけなので、ぎゅうぎゅう詰めの満員電車であったとしても、無理なく実行できるわけです。満員電車に揺られているとネガティブな気持ちになってしまいがちですから、これは得策かもしれません。■いいことは花やかわいい子犬でOKちなみに「いいこと」は、ほんのちょっとしたことでかまわないのだそうです。朝起きて、駅にたどり着くまでに、道端に小さな花が咲いていたのを見たとか、通りすがりの子犬がかわいかったとか、コーヒーショップの店員さんとの会話が楽しかったとか、それらはすべて「ちょっといいこと」。奥さんのいる人だったら、週末に特別な料理をつくってくれたことを思い出してみる。お子さんがいるなら、きのうの夜に見た幸せそうな寝顔を思い浮かべてみる。そんな、ほんのちょっとした「いいこと」を考えるだけで、心は和むものだからです。あるいは、きょうこれから起こりそうな「いいこと」を考えてみるのも、凹まないためのちょっとした技術なのだそうです。午前中の企画会議で、「きっと自分の企画書が通る」と考えてみる。午後からの商談もきっとうまくいく。今晩のデートはきっと楽しくなる。こんなふうに、近しい未来についての「いいことだけ」を考えるわけです。もし実際にダメになったり、うまくいかなかったりしたとしても、それはそのとき。特に凹んだときは、まだなにも起こっていないにもかかわらず、悪いことを考えたり、心配したりしがちです。だからこそ、「きっとうまくいく」と考えることが、心を健康にしてくれるというわけです。■心配しすぎは病気につながりやすい著者は、心を健全に保つために思考や食の習慣を見なおし、うつなど心の不調を予防・改善する「メンタルセラピー」というメソッドを広める活動をしているのだといいます。その考え方によれば、うつや統合失調症などの精神疾患だけでなく、がんやリウマチなどの患者さんにも心配性が多いのだそうです。まだ起こっていないことを心配したり、悩んだりして、自分の心や身体に負担をかけ、自分で病気をつくっている人が多いということ。たしかに怒ったり、人を恨んだり、イライラしたりして、胃がキューっと痛くなったりすることはあるもの。感情は、身体にも大きな影響を与えるということです。つまりストレスを撃退するためにも、「いいこと」を考えるのは効果的であるわけです。だから著者自身も、あまり怒ったり、恨んだり、イライラしたりしないようにしているのだといいます。我慢強いとか精神力が優れているというようなこととは別の話で、「怒りや恨み、イライラは、身体にダメージを与え、いろいろな病気の原因になる」ことを知っているからなのだそうです。たしかに、悪いことを考えたり、心配したりするよりも、起こったらうれしいこと、楽しいことを考えたほうがいいに決まっています。そこで、凹まないためにも1日3分、「いいこと」を考える時間をつくるべきだというのです。*シンプルでわかりやすいアプローチが貫かれているだけに、抵抗なくスラスラと読み進められるはず。凹みやすい自分をなんとかしたいという方は、読んでみると気づきを得ることができるかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※治面地順子(2016)『凹んだら読む本』クロスメディア・パブリッシング
2016年05月03日職場や友人関係、恋愛など、さまざまな人間関係で「困った!」「こういうとき、どうすればいいの?」と悩むことは多いものです。心理学の理論やテクニックを使い、そんな人間関係の「困った!」を解決してくれるのが、『一瞬で相手の心をつかむ 1行心理術』(渋谷昌三監修、宝島社)。「交渉時」「部下・上司関係」「ウソを見抜くしぐさ」「第一印象」「メールをはじめとした文章」「恋愛シーン」という7つのシチュエーション別に、ズバリ1行のアドバイスが掲載されているのです。そのなかから、すぐに役立つ“回数”にまつわる1行心理術を5つピックアップしてみます。■1:鏡を見る回数が多いほど外見は魅力的になる好感度を上げる第一印象のテクニックがこちら。「他人からどう見られているか」という意識を、心理学では「公的自己意識」と呼びます。この意識が高い人ほど、鏡を繰り返し見るということがわかっています。つまり、鏡を繰り返し見るのは、他人から見た自分の印象をアップさせたいという思いの表れ。実際、アメリカの大学で行われた実験では、男女ともに外見が魅力的な人ほど鏡を見る時間が長かったという結果も出ています。意識して鏡を頻繁に見るようにすれば、自分の外見をもっとよくしようという意識が育ちます。外見に磨きをかけたい場合は、現実をしっかり見つめて意識を高めるようにしてみましょう。■2:何度も顔を合わせて「回数」で挽回するアポイントに遅刻する、相手の名前を間違えるなど、最悪の第一印象を与えてしまうことってありますよね。そんな、初対面での失敗を取り戻したいときのテクニックがこれ。ちょくちょく顔を出して、なるべく相手と数多く会うことを心がけるのです。心理学には、会う回数が増えるほど親しみがわくという「熟知性の原則」があります。あまり印象のよくなかったタレントが、CMで顔を何度も見るうちにいつの間にか気になる存在になっていた、なんていうことはありませんか?それは、この熟知性の原則によるもの。初対面で失敗したときこそ、恐れずどんどん相手に向き合ってみましょう。■3:4回目のメールから「~様」を「~さま」に変える取引先の担当者など、あまり親しくない相手にメールで連絡をする場合に、さりげなく親しみを演出したければ、このテクニックが有効。メール冒頭の「~様」という宛名を、「~さま」に変えてみるのです。ひらがなには、文章をやわらかく見せて親しみを演出する効果が。より効果をアップさせるため、最初のやりとりではあえて「~様」を使い、4回目から「~さま」に変えるのです。すると、相手にグッと距離が縮まったような印象を与えることができます。もし、受け取ったメールがカジュアルな文面なら、こちらも思い切って同じくらい砕けた雰囲気で返しましょう。たとえば、社外の人から「お疲れさまです」という書き出しのメールが来た場合。そこはためらわず、こちらも「お疲れさまです」と返してOK。じつは、相手に調子やリズムを合わせるとお互いに好感を持ちやすくなるという効果があり、これを心理学では「同調ダンス」と呼んでいます。■4:部下の提案には3回までダメ出しするこれは、職場で部下の潜在能力を引き出すアドバイス。部下が企画を出してきたら、1~2回目はあえて機械的に突っ返し、だいぶ練りなおされたところでもう一度突っ返すと、部下は必至に知恵をしぼり提案をまとめてくるので、ここでようやくゴーサインを。すると企画が見違えるようにブラッシュアップされている、というテクニックです。これは、徹底して「反対」を繰り出し相手国から妥協策を引き出す旧ソ連の交渉術「反対の原則」を応用したものです。ただし気をつけたいのは、部下のタイプを見極めること。自尊感情が高い部下には有効ですが、自分の能力を低く見ている部下の場合、ダメを出されると「やっぱりダメか」とあきらめてしまうこともあるので要注意。■5:プレゼントは回数が大事本書には、恋愛にまつわるテクニックも登場します。気になる相手やまだ距離感がつかめない恋人にプレゼントを贈りたい場合がこちら。男性と女性では、もらってうれしいプレゼントの頻度に感覚のズレがあるもの。女性にとってプレゼントは「心遣い」なので頻度が重要。ささやかでもこまめにすることの方が大切で、ときには「ありがとう」といった感謝や労いのメッセージが大きな意味を持つこともありますよね。一方、男性は頻度よりも1回の大きさを重視するもの。大きなことをドーンとすることに意味を見いだす生き物といえます。この男女の違いをよく理解することが、成功の秘訣。ただし、あまり高価なものは逆効果になることも。心理学では「好意の返報性」といって、好意には好意で返さなければならないとう心理が働くとされているのです。あまりに相手の負担になってしまうようなプレゼントも考えもの。相手への気持ちを上手に伝える手段にしたいですよね。*本書では、合計250もの1行心理術が紹介されています。人間関係の「困った」に対する答えがきっとみつかるはず。『家庭の医学』やマナー本のように、かたわらに置いて必要なときに手に取りたい一冊です。(文/よりみちこ) 【参考】※渋谷昌三(2016)『一瞬で相手の心をつかむ 1行心理術』宝島社
2016年05月03日人工知能(AI)とビッグデータ分析が飛躍的な進化を遂げていることは、いまや周知の事実。だからこそ、改めて強調する必要はないかもしれません。しかし『人工知能×ビッグデータが「人事」を変える』(福原正大、徳岡晃一郎著、朝日新聞出版)の著者は、私たちの思いを上回るような事実を明かしています。米国をはじめとする海外において、AIとビッグデータが人事評価制度に大きな影響を与えているというのです。つまりAIとビッグデータを活用することによって、企業の人事評価が、より客観的で正確なものへと進化しようとしているということ。■基本的に人事の情報は明かされないでは、人事の先進企業は、具体的にどのようなことを行っているのでしょうか?残念ながら、この答えに明確に答えてくれる情報はいまのところほとんどないのだとか。なぜなら、求職者に自社の魅力をアピールするため、人材育成カリキュラムなどの制度的枠組みが公表されることはあったとしても、ノウハウや具体的な施策の内容は秘匿されるものだから。公表して他者が模倣したとすれば、自社の採用活動に不利に働いてしまうわけですから、当然といえば当然の話かもしれません。■グーグルの人事情報は唯一の例外!しかし、そんななかでも唯一の例外といえる企業がグーグルなのだそうです。というのも、グーグルの人事担当上級副社長であるラズロ・ボック氏が、『ワーク・ルールズ!』(東洋経済新報社)という本のなかで、グーグルの採用、育成、評価について詳細に明かしているから。でも、なぜそれを明かしてしまうのでしょうか?それはグーグルにとって、デメリットとはならないのでしょうか?そんな疑問について、著者は「他社がグーグルの人事施策のなかから参考になりそうな一部を模倣することはできても、世界最高の職場だといわれるグーグルの人事すべてを模倣することはできないという自信があるからだろう」と分析しています。■一流エンジニアには300倍の価値ちなみに、そんな同書の印象的なエピソードとして紹介されているのは、グーグルのナレッジ担当上級副社長であるアラン・ユースタス氏の次の言葉。「一流のエンジニアは平凡なエンジニアの300倍以上の価値があるーーひとりの並外れた科学技術社を失うよりも、工学部大学院生の1クラス全体を失うほうがましだ」たしかにここには、優秀な人材の採用と、その能力を引き出す職場環境作りに力を注ぐグーグルの風土がよく表れていると著者もいいます。優秀な人材を獲得するためにじっくり時間とコストをかけ、グーグルは客観的な採用活動を行ってきたわけです。そうであるだけに同社が今後、AI×ビッグデータ活用を積極的に行うであろうことも十分に予測されるはず。ある意味において、効率化とコスト削減に注力する日本の人事とは正反対のことをやっているわけです。著者はそんな状況を確認したうえで、どう考えてもいまの日本企業が、グーグルよりも優秀な人材を勝ち取れるとは思えないと記しています。いまやAI×ビッグデータはそれほど、人事に欠かせないツールになりつつあるということ。■AIとビッグデータの研究が進行中著者は本書の執筆に先立ち、世界の最新動向を確認するため、アメリカへの取材旅行を敢行したのだそうです。いうまでもなくアメリカといえば、IT(情報技術)の本場。そうであるだけに、AI×ビッグデータの活用に取り組むベンチャー企業が続々と登場しているという実感を受けたといいます。たとえばそれは、各個人が自らに合ったキャリアを構築するために最適な企業の紹介、語学学習、クリティカル・シンキング力のテストなど、事業内容も各社さまざまで多岐にわたっているのだとか。「彼らはこうしている間にも、着々と研究開発を進めている。ファンドからの投資により、事業資金の潤沢さも日本とは比較にならないくらいである」というセンテンスにも、強い説得力があります。重要なのは、アメリカのそうしたベンチャー企業が、他のアメリカ企業から受け入れられ、着々とユーザー数、クライアント数を伸ばし続けていること。サービスを提供する側と受け入れる側が両輪として動きはじめており、AI×ビッグデータ活用が、事業として確実に根づきつつあるということ。*各社がどのような取り組みを行っているのかについては、以後さらに細かい解説がなされています。そんなこともあり、本書を読み込むことによって、読者はAI×ビッグデータと人事との新たな関係性をリアルに感じ取ることができるはずです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※福原正大、徳岡晃一郎(2016)『人工知能×ビッグデータが「人事」を変える』朝日新聞出版
2016年05月02日マインドフルネスの関連書籍は、これまでにもいくつかご紹介してきたことがあります。簡単にいえばそれは、心の体の疲れのもととなる雑念を取り除くことによって、“自分が自分らしくある状態”を実現するための手段。そして、きょうピックアップした『心を整えるマインドフルネス CDブック』(人見ルミ著、あさ出版)も、そんなマインドフルネスの効能をリラックスしながら実感できる一冊です。■著者はマインドフルネスによって人生が好転著者がマインドフルネスに出会ったのは、28歳のときのことだったのだとか。人生のどん底といっていい時期で、精神的にも肉体的にも疲弊しきっていたのだといいます。やがてインドに渡り、偶然に出会った師からマインドフルネスの考え方、そのエッセンスとなるヨガや瞑想法を学んだのだといいますが、結果的にはその体験が大きな意味を持つことになります。道場で1年半修行したのちに帰国して働きはじめたところ、携わった仕事のほとんどで大きな成果を得ることができたというのです。具体的には17年間にわたって黒字を出し続けた結果、会社で初の女性役員に抜擢されたのだそうです。まさに、マインドフルネスによって人生が好転したわけです。■マインドフルネスは世界中の先進企業が注目しかし、それは著者に限ったことではありません。マインドフルネスの効果に対しては、近年、世界中で注目が集まっているからです。たとえば世界トップレベルの頭脳集団であるグーグルにおいても、約5万人の社員のうち10人に1人がマインドフルネスを実践して効果をあげたという結果が出ているそうです。また、フェイスブック、インテル、ツイッター、ナイキ、ドイツ銀行、マッキンゼー・アンド・カンパニーなどなどの先進的企業、さらにはアメリカ海軍やペンタゴン、アメリカ農務省森林局などの政府機関でも導入されているといいます。■活用したいなら「奇跡の90秒ルール」を!そんなマインドフルネスの活用法のひとつとして、本書では「奇跡の90秒ルール」というものが紹介されています。ついイラッとしてしまうことは誰にでもあるものですが、そんなときは90秒だけ、どこかへ避難してしまおうという考え方。そして、ここで紹介されているのが、神経細胞学者であり、ハーバード大学医学部で脳と神経の研究に携わっているジル・ボルト・テイラー博士の著書『奇跡の脳—脳科学者の脳が壊れたときー』(新潮社)から抜粋された文章です。「自発的に引き起こされる(感情を司る)大脳辺緑系のプログラムが存在しますが、このプログラムの一つが誘発されて、化学物質が体内に満ちわたり、そして血液からその物質の痕跡が消えるまで、すべてが90秒以内に終わります。たとえば怒りの反応は、自発的に誘発されるプログラム。ひとたび怒りが誘発されると、脳から放出された化学物質がからだに満ち、生理的な反応が引き起こされます。最初の誘発から90秒以内に、怒りの科学的な成分は血液中からなくなり、自動的な反応は終わります。もし90秒が過ぎてもまだ怒りが続いているとしたら、それはその回路が昨日し続けるようにわたしが選択したからです」(「第15章自分で手綱を握る」より)つまり怒りの感情は、「90秒」で血中からなくなるというのです。だとすれば、その90秒さえやりすごすことができれば、落ち着いた対応が可能になるともいえるのではないでしょうか?だからこそ著者は、かっとなって部下を怒鳴りつけそうになったり、子どもに手をあげそうになったりしたら、まずはその場を離れることを勧めています(もちろん、子どもの様子は見える場所に)。そして、ゆっくり深呼吸をしてみる。お水を飲んで一息つくのもいいそうです。その後、90秒経って落ち着いたら、もどって問題に向き合えばいいということです。*こうした記述からもわかるとおり、マインドフルネスは決して難しいものではありません。むしろ楽に取り入れることができ、そこから最大の効果を引き出せる可能性があるということ。なお本書には、自律神経を整えパフォーマンスを最大化する効果があるという528Hzオリジナル曲が4曲収録されたCDもついています。目と耳からマインドフルネスを実感できるわけで、とても充実した内容だといえるでしょう。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※人見ルミ(2016)『心を整えるマインドフルネス CDブック』あさ出版
2016年05月02日『ディズニー 「感動」のプロフェッショナルを育てる5つの教え』(ブルース・レフラー、ブライアン・チャーチ著、月沢李歌子訳、朝日新聞出版)はその名のとおり、ディズニーの「感動」の秘密がわかる興味深い書籍。ディズニーで人材育成プログラムを作成した著者が、最高のサービス精神を育てる「I.C.A.R.E.(アイケア)」の5原則を明らかにしているのです。■ディズニーが大切にする5原則ウォルト・ディズニーは「舞台裏で行うことが結局は舞台上に現れる」といっていたそうです。だとすれば企業がつくり出す体験に関しては、従業員、マネジャー、経営陣には、自分がすべきことを知り、目指すべきものを理解し、改善のための計画やプロセスを策定する責務があるはず。「I.C.A.R.E.の原則」はそのための手段だというわけです。I:印象(Impression)・・・絆の構築を促す触媒C:つながり(Connection)・・・絆を結ぶための要A:考え方(Attitude)・・・考え、発言、行動のフィルターR:応対(Response)・・・サービスは個別の対応によって決まるという考え方E:最上のもの(Exceptionals)・・・人間関係構築のスキルの実践これこそ、ディズニーなどの優良企業がライバルと一線を画す要因となっているということ。そして著者いわく、感動体験には5つのレベルがあるのだとか。ひとつひとつを確認してみましょう。■5つのサービス感動体験レベル(1)有毒な体験<人間味がなく、不快感を与えるような体験を提供し、やる気のなさ、無関心、無気力が感じられるサービス>“有毒”な企業が提供するサービスは顧客を怒らせ、苛立たせるもの。ここでいう有毒とは、やる気のなさ、無視、無関心など、従業員のネガティブな態度。サービス体験として最低の水準であるため、顧客を失い、倒産する危険を冒していながら、それを現場の人間は気にせず、リーダーも認識していないということ。(2)平均的な体験<従業員は形だけのサービスを提供し、現状に満足している。ありきたりで、味気のないサービス体験>有毒な体験ほどではないにしても、平均的な体験も同じように受け入れがたいもの。この水準の企業は、顧客のニーズを満たしていないわけです。よくも悪くもなく、ただ形だけのことをするのみ。しかし凡庸なサービスを提供する企業や人間は、他者の心を動かすことができなくて当然です。たとえば子どものことを思う親は、「がんばって“平均点”をとりなさい」とはいわないはず。もちろん平均的な水準で我慢できる人もいるかもしれないけれども、卓越したサービスを期待する人には耐えられないものになってしまうわけです。(3)よい体験<従業員が前向きで、親しみやすく、感じがよい。顧客やクライアントの多くがポジティブな体験をし、尊重され、歓迎され、重要視されていると感じる>少なくとも、この水準を出発点とすべきだと著者。現実的にはレベル1とレベル2が全体の約60%を占めるそうですが、成功を望むなら、そこに甘んじてはいけないということ。このレベル3をスタートラインとして、卓越した体験を確立していく必要があるといいます。(4)すぐれた体験<一貫してすぐれた顧客体験を重視するサービス。従業員が個々の顧客に応じた対応をしたり、関係を構築する体験を生み出したりしようと努めている>この水準の企業や個人は、顧客のために格別な努力をするもの。従業員にとって好ましい環境を用意し、すべての面において超一流のものをつくり上げるといいます。独自の発想、積極的な考え方、強いエンゲージメントが見られ、ライバルとの差別化を図るために尽力するのが特徴。(5)卓越した体験<すべての従業員が顧客ひとりひとりにとって特別な「体験」を、ライバルを大きくしのぐ水準で創出。卓越したサービスはその一部>サービスをまったく新しい水準に引き上げる卓越した企業は、他に類のない、心に残る体験を創出するもの。それによって、機会あるごとにその体験を口コミで広めてくれるアンバサダーを育成するのだといいます。そして、もっとも重要なのは、お客様に口コミで体験を広めてもらうこと。そのためにはすぐれたサービスが不可欠なので、1レベルずつ改善を図り、レベル4やレベル5の体験の提供を実現することが重要だと著者は主張します。*ディズニーは見事にレベル5を実現しているだけに、こうした著者の考え方には強い説得力があります。サービスの本質を突き詰めたい方にとっては、大きな意味を持つ一冊であるといえます。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※ブルース・レフラー、ブライアン・チャーチ(2016)『ディズニー 「感動」のプロフェッショナルを育てる5つの教え』朝日新聞出版
2016年05月02日『逆境を生かす人 逆境に負ける人』(アル・シーバート著、林田レジリ浩文訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、とてもユニークな経歴の持ち主です。なにしろ心理学博士でありながら、元落下傘部隊隊員だというのですから。その結果、「逆境に負けず生き抜いた人」を40年以上にわたって研究し続けているというのだとか。つまり落下傘部隊隊員としてのキャリアが、結果的には大きくプラスに作用しているわけです。たとえば2001年に世界を震撼させたアメリカ同時多発テロ事件後は、生存者、介護者、救急隊員の心理ケアのサポートを積極的に展開してきたのだといいます。また著者としての評価も高く、1996年の『「逆境に負けない人」の条件 「いい加減さ」が道を開く』(邦訳は2005年、フォレスト出版刊)によってベストセラー記録を打ち立ててもいます。そんな著者の最新刊である本書では、ここでは「誰でも心の弾力性を身につけることができる方法」を紹介しています。■1:論理的に問題解決するどんな人の人生にも、多かれ少なかれ問題はつきもの。しかしどんな種類の問題であれ、大切なのは疑問を持つことだと著者はいいます。特に倫理的に問題を解決する場合には、次の手順が大切なのだとか。(1)正確に状況を読む「なにが問題なのか?事実はなんなのか?深刻度はどれほど?緊張度は?時間の猶予はあるか?他に知るべきことは?誰が行動するべきなのか?」このように、客観的な状況を把握するべき。(2)自分がすべきことはなにかを考える状況と自分をここで結びつけるということ。「自分はなにを得たいのだろうか?自分の行動のゴールはなにか?」と考えてみる。(3)どうしたら(2)にたどり着けるかを考える。ひとつだけでなく、複数の選択肢を用意し、そこにリスクや落とし穴はないかを考える。もし時間があるなら、何人かで話し合うのもいいとか。(4)行動を起こす不安があるのは当たり前。でも「どうすればいいのか」が事前にわかっていればできるはず。(5)自分の行動の成果を見てみるフィードバックを得られるような質問を、周囲の人にしてみるという方法も。時間がかかりそうな問題なら、「解決の兆しがあるかどうか」を見て、そのまま進んでいいかどうかを判断。(6) (5)で得られたフィードバックをもとに軌道修正をする(7)もう一度、行動によって得られた成果を見てみる「満足のいくものだろうか?」「この問題は解決されただろうか?」など。(8)今回の問題から学ぶべきことを考える「問題になるまで見過ごした兆しはなかっただろうか?」「教訓はなんだろう?」「今後、同じような問題が起こらないようにするには、どんな手を打ったらいいのか?」■2:クリエイティブに問題解決するクリエイティブな問題解決とは、ありえないような方法で解決に導くこと。「そうだ!」とひらめく瞬間をいいあらわす「アハ体験」という言葉がありますが、いかにして自分の心の宇宙の膨大な情報から「アハ」を引き出すかが重要だというのです。そしてクリエイティブであろうとするなら、自分を追い詰めることは禁物。問題から気持ちが離れたときにこそ、解決の道が開けるものだから。つまり問題を解決したいと思うとき、ついている人は、いったん問題について考えるのをやめ、リラックスし、気持ちを整理したうえで解決の道を探るものだということ。クリエイティブな問題解決は、「いままで考えもしなかったようなユニークな解決法があるはずだ」と思うことからはじまるのだとか。それを忘れてはいけないと著者は記しています。■3:現実的に問題解決する学校の勉強ができなかったとしても、成功をつかんだ人は多いもの。なぜなら彼らは、現実的な知恵に長けていたから。高いIQが、現実的な問題解決を可能にするわけではないということです。そして、賢い問題解決ができるようになるためには、(1)「問題を解決する」という意志を持つ(2)「自分の力で解決する」という心構えを持つ(3)いままでの思考パターンを飛び出す(4)感情的にならないという4つが大切。そしてこれらは、人生で起こってくるあらゆる問題に役立つはずだと著者は説いています。* 大きな逆境を生き抜いた人たちについての研究を確認してみると、彼らはどんなに大変なことであれ、起こったことを受け入れることからはじめていると著者はいいます。起こってしまったことを恨んだり、怒ったりはしないということで、これは多くの人が応用できそうな考え方でもあるでしょう。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※アル・シーバート(2016)『逆境を生かす人 逆境に負ける人』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年05月02日何もかもうまくいかない、なんて自分はダメな人間なんだろう……と落ち込むことはありませんか?毎日を楽しく過ごせればよいですが、誰でも仕事で失敗するとき、人間関係で悩むときがあるでしょう。そのときにネガティブなことばかり考えていては、苦しみがずっと続いてしまいますよね。心を強くしたい、もっと頑張りたいと思ったときに、読んでほしいのが『メンタリストDaiGoの心を強くする300の言葉』(セブン&アイ出版)です。著者は、日本唯一のメンタリストとして多数のテレビ番組に出演するDaiGoさん。本書は、21万人のフォロワーを持つ著者が、Twitterの中でつぶやいてきた「自分の心理をコントロールし、人生をより充実させるための言葉」を書籍化したもの。きょうは本書の300の言葉の中から抜粋した、数字に関する言葉を紹介したいと思います。■1:10人の人がいれば、2人には嫌われ、2人には好かれ、残り6人はどちらでもない人になる知り合う人みんなに好かれようとする人はいませんか?人に嫌われたくないと思うのは当然のことかもしれません。しかし「嫌われる人ばかりに気をとられて、人生の時間を無駄にしないように気をつけよう」と著者はアドバイスします。大切なのは、自分を好いてくれる人を探して、その人と付き合うことなのです。■2:遺伝子レベルで考えれば、あなたがあなたとして生まれる確率は300兆分の1生まれてきたことは奇跡であり、この世にいるだけであなたは貴重な存在なわけです。だからこそ、300兆分の1の個性を活かした仕事や趣味を楽しみ、徹底的に自分らしく生きましょう。世間の目を気にする必要はないのです。■3:運がいい人は就職や転職などのキャリア選択において、運の悪い人に比べて約20%も直感に頼った決断をする職業を選ぶとき、あなたはどのように決めていますか?著者は「自分の直感を信じて決めよう」といいます。自分の直感を信じることができた人が、成功を掴み取るとのこと。人生がどうなるかは、自分次第というわけです。■4:ひとつの自信が1000の自信に溢れる行動をつくり出してくれるどんなに才能が溢れる人だとしても、全てのことに自信がある人はいないもの。たったひとつでも、自信が持てるものを作ることが大切なのです。■5:自分の望む6割ぐらいを満たしてくれるなら、貴重な人材だと考える相手に期待し過ぎてしまう人がいます。しかし自分のことは棚にあげ、他人に多くを望むから、人間関係に疲れてしまうのです。自分の望む6割を満たしてくれたのなら、貴重な人材だと考えてみましょう。最初は6割でも、今後成長する可能性もあるのですから。■6:仕事への対価の80%は経験と学びによって得られる会社の文句や不満ばかりを言っている人はいませんか?そのようなことに時間を使うなら、どうやって会社を利用するかを考えましょう。例えば、会社の名刺を使って人脈を作ったり、特殊なスキルを身につけたり。対価が給料だけだと思っている人は、損をしているのです。■7:寝る前の40分間はどうしても覚えたいこと、その日やったことをサッと復習する一度は覚えたと思っても、すぐに忘れてしまうことってありますよね。人間の記憶の定着には、覚えてから寝るまでに余計な情報が入らないことが重要とのこと。寝る前の40分間を使うことで、面白いほど記憶が定着するそうです。■8:最初の5回は覚えるためにすると割り切ってやる教わったことは忘れやすいため、教わったらすぐに試すべきなのだとか。最初の5回は覚えるためと行うことで、自然と教わったことを身につける習慣がつくといいます。■9:人はわずか2秒で物事を判断する「迷ったら最初の直感を信じよう」と著者はいいます。人の脳は驚くほど高い情報処理能力を持っており、2秒で物事を判断するというのです。そして、その直感を働かせるには、自分を信じることが一番大切になるのだとか。■10:歳をとることをポジティブに考えると、寿命は平均7.6年も延びる歳を重ねるのが怖い、嫌だという人がいます。しかし歳を取ることをポジティブに考えれば、寿命は平均で7.6年延びることがわかっているそうです。また健康のために食事や酒、タバコなどを節制しても、寿命は4年未満しか延びないとのこと。つまり、メンタルの持ちようが人の健康と人生を左右するわけです。*言葉には大きな力があります。本書には、心を強くする300もの言葉が紹介されています。著者は「抱えている問題や、抱いている夢を頭にイメージしてから読んでみてください」と勧めています。悩んでいるとき、心がもやもやするときに、ページをめくれば、あなたにぴったりの言葉が見つかるはず。また本書に登場する、著者の可愛い愛猫「ぬこ様」にも癒されますよ。ぜひ手にとって、一度きりの人生をより楽しく生きるためのヒントを探してみましょう。(文/椎名恵麻) 【参考】※メンタリスト DaiGo(2016)『メンタリストDaiGoの心を強くする300の言葉』セブン&アイ出版
2016年04月30日もち麦という麦をご存知ですか?「なにそれ?」「どんな食材?」「初めて聞いた」という方も多いかもしれませんね。もち麦とは、もちもちとした「もち性」の大麦。とろろご飯でなじみのある押し麦は、粘り気の少ない「うるち性」になります。もともと大麦には多くの食物繊維が含まれています。とくに、もち麦に含まれる食物繊維の量はダントツで、プチプチ、プリプリした食感が特徴です。そんな食感の楽しさにハマり、気づけば2.5kg痩せ、その後1年間で14kgも痩せたのが、シェフの山下春幸さんです。食事制限も運動もしないのに勝手に痩せていく「もち麦」ダイエットの真髄を、70種以上のおいしいレシピの数々とともに、著書『もち麦ダイエットレシピ』(アスコム)でたっぷりと紹介してくれています。ダイエット効果と健康効果というダブルの力をもつスーパーフードとして、脚光を浴びているもち麦が、ダイエットとどう結びつくのか探っていきましょう。■もち麦のダイエット効果(1)白米の約25倍も食物繊維が!もち麦のやせパワーの源は食物繊維の豊富さで、なんと白米の25倍もあり、食物繊維が多いといわれるごぼうと比較しても2倍以上あります。現在の日本人の食物繊維摂取量は、1日平均で11~14g。厚生労働省が目標として掲げている18~20gには、追いついていないのです。ところが、白米の代わりに、米1合(150g)に対し、もち麦50gを加えた「3割炊きのもち麦ごはん」なら、茶碗1杯で約2.4gも多く摂れます。米0.4合(60g)に対し、もち麦50gを加えた「5割炊きのもち麦ごはん」なら、なんと約3.4gも摂れるのです。しかも不溶性食物繊維と水溶性食物繊維という異なる2つの食物繊維を、もち麦はバランスよく含んでいます。(2)便秘改善&美肌効果も2種類の食物繊維は、それぞれ役割が違います。まずは、不溶性食物繊維から見ていきましょう。野菜やキノコ、豆類にも含まれますが、文字通り、水に溶けずに腸内の水分を吸ってふくらみ、便のかさを増し、排便を促してくれます。また、腸内の有害物質を体外に排出させる働きもあります。一方の水溶性食物繊維は、腸内細菌のエサになって善玉菌を増やし、腸内環境の改善に役立ちます。腸内環境が整うことで、便通がよくなるばかりか、美肌効果、代謝改善、ダイエット効果があり、免疫力も高まります。とはいえ、腸内環境はだいたい2~3週間で変化し始め、3ヵ月で体質が変わると言われています。(3)糖尿病&メタボ予防にも!食後の血糖値の上昇を抑制することが、糖尿病の予防に有効ですが、水溶性食物繊維には、糖質の消化・吸収を緩やかにし、血糖値の急上昇を防ぐ働きもあります。また、インスリンの過剰な分泌もなくなるので、余分なブドウ糖を脂肪細胞に貯め込まなくなり、体に脂肪がつくのを防ぎ、太りにくくなるようです。とくに水溶性食物繊維のなかでも注目を集めているのが「β-グルカン」。体内にある不要なものを包み込んで体外に排出してくれるのですが、その働きにより、悪玉コレステロール値は下がり、中性脂肪の減少にも効果を発揮します。■ベストタイミングは朝食食後の血糖値の急激な上昇を抑える働きがあるばかりか、次の食事、さらにはその後の食事まで、長時間にわたって血糖値の上昇をゆるやかにすることがわかってきました。それを「セカンドミール効果」と呼びます。その働きを最大限に利用するなら、朝食にもち麦を食べるのが、ベストです。1日中血糖値の上昇がゆるやかなので、満腹感が持続し、食べ過ぎを予防できます。さらには、夕食にもち麦を食べることで、効果は翌朝まで続きます。■メニューはアレンジ自在もち麦は白米に混ぜて炊くだけでなく、たっぷりの水分でゆでた「ゆでもち麦」にしても便利。弾力のあるもっちりとした歯ごたえを、サラダに加えたり、スムージーに加えたりして楽しめます。ポタージュなどのスープに加えれば、食感は残るのにとろみが出てきて、マイルドな口当たりに。忙しいときや食欲のないときは、おにぎりにしておくといつでも手軽に食べられます。昆布やひじきなどの具を混ぜ合わせて握れば、ビタミンやミネラルなども加わり、ますますバランスのよい食事に。もち麦を加えた混ぜご飯は崩れやすいので、ラップを利用してしっかりと握りましょう。*もち麦ダイエットは、主食の白米をもち麦ごはんに変えるだけでOK。あとはいつも通りの食生活ですが、2~3週間で内蔵脂肪が減り、ウエストサイズがダウン。同時に体重も少しずつ減ってくるようなので、夏に向けてさっそくはじめてみませんか?(文/山本裕美) 【参考】※山下春幸(2016)『もち麦ダイエットレシピ』アスコム
2016年04月30日いま、俳優の金子賢さんの肉体改造ぶりに注目が集まっています。ことし1月から始めたトレーニングと食事制限で、4月中旬までに11kg減、現在の体脂肪率は4~3%後半。写真共有アプリInstagramではビフォアアフターの画像も公開され、その変貌ぶりがネットで「凄すぎる」「あこがれる!」など、大きな話題になりました。身体の仕上がりからは“ストイック”というイメージが浮かびますが、トレーニング法を明かした新刊『美筋トレーニング 週4日でつくる、魅せるベストボディ』(金子賢著、KADOKAWA)には、意外にも「がんばりすぎない」「自分でできる範囲で」「毎日じゃなくてOK」といった、ストイックさとは正反対の言葉がちりばめられています。そんなユルイ向き合い方で、美しい身体を手に入れることができるのでしょうか?そこで本書から、金子さんのフィットネスに対する思いに注目。そこには、理想の身体づくりというテーマと15年間向き合ってきた金子さんならではの信念がありました。■トレーニングの基本は1日4種類×週4日本書のトレーニングはとてもシンプルなもの。初心者が専門器具なしで挑戦できる「基本トレーニング」、ペットボトルなど身の回りのものを使った「器具トレ!」など26種類のトレーニングと4種類のストレッチから1日4種類をピックアップし、決められた回数をこなすトレーニングを週4日実践する“1日4トレ×週4回”スタイル。30種類の動きをバランスよくこなすことで、腹直筋、大臀筋など美しい身体のポイントになる9つの筋肉に働きかけ、ただ鍛えるのではなく、効率的に美しい身体をつくり上げることを目指します。金子さんはこのトレーニングの意図を「気持ちが盛り上がりすぎると、トレーニングのやりすぎで逆に息切れしてしまいます。毎日じゃなくてOKでしかも、ジムなどのトレーニング環境を利用できず諦めていた人にもできます」と説明。「自分にできる範囲で、とにかく続けてほしい」というのが、金子さんのメッセージです。美しい筋肉をつくり、キープしていくことは、未来の自分の身体と健康をつくっていくことにつながります。金子さんが「続ける」ことに重きを置くのはそんな思いから。息切れしない工夫が、続けるためにはなによりも大切なのです。しかし、息切れとトレーニング環境のハードルの高さが、継続的なトレーニングに大きな壁となって立ちはだかるもの。「ジムに行くよりも強度は落ちるかもしれないけれど、まず『続けること』が大事」と金子さん。美筋づくりに成功している本人の言葉だけに、説得力があります。■目標は短い期間で設定すると成功しやすい息切れ対策のもうひとつのポイントが、短いスパンで目標設定をすること。目標は「長期間で高く」ではなく、短い期間を設定し、小さな成功体験を積み重ねて確実にクリアできるレベルにして、前に進むことこそが大切、と金子さんはいいます。1週間、1カ月、2か月と、自分のできる範囲で目標をつくっていくことが、未来の身体づくりに大きな意味を持ってきます。いまの時期であれば、肌の露出が高まる夏までの「3か月」を目標に設定すると効果的。「8月には、ビーチで水着のバカンスを楽しみたい!」といったわかりやすい目標が設定でき、モチベーション対策にピッタリです。■「10年計画」でゆっくり身体を整えよう15年前、腰痛をきっかけにトレーニングを始めた金子さん。「続けること」を重視するその眼は、10年後を見据えています。自身の身体のピークは2年後の「42歳」のときだと考えているそう。そこから少しずつ衰えていくところをカバーしていき、「50歳のときに現在(39歳)くらいの身体を留めておければ、成功しているかな」というイメージを持っているのだといいます。「フィットネス」「トレーニング」と聞くと、肉体年齢に挑戦していくイメージもありますが、金子さんは、あくまでも年齢には抗わず、寄り添う姿勢を保っています。「若いときはなにを食べてもすぐに吸収するし、いらないものはすぐ消化する。それが、どんどん吸収も消化も遅くなるから脂肪がたまってきたり。臓器の衰えはみんなにあるものなので、そう思うのは当然なんですよ。でも、それではコンテストには勝てないから、僕たちは『できるだけ衰退していかない』『現状維持』をと考えているわけなんです」50歳を見据え、ゆっくり取り組んでいきたい、と話す金子さん。できるだけ衰えを遅らせるという考え方は、コンテストに挑戦する人だけでなくすべての人に当てはまるものでしょう。*本書とDVDでは、金子さん本人の実演による30のトレーニング・ストレッチに加え、金子さんが実践する食事制限のテクニックも紹介されています。「コンテスト前には1日約1,000kcalに抑える」というストイックさも持ち合わせる金子さんですが、本書で紹介されている「美筋メシ」は野菜・フルーツと低脂肪高たんぱくな鶏肉を活用したアイデア。週4日、トレーニングする日の夜だけでOKと、こちらもややユルめなのも助かります。「激しいトレーニングは無理!」「忙しくて……」「これまで続いたダイエットは一つもない!」という方にこそ、おススメしたい1冊です。(文/よりみちこ) 【参考】※金子賢(2016)『美筋トレーニング 週4日でつくる、魅せるベストボディ』KADOKAWA
2016年04月29日以前、「フレッシュパーソンのためのあたらしい教科書」として創刊された『やるじゃん。』ブックスシリーズのなかから、『社会人1年目からの「これ調べといて」に困らない情報収集術』(坂口孝則著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)をピックアップしたことがあります。きょうご紹介する『社会人1年目からの仕事の基本』(濱田秀彦著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)も、同シリーズのなかの一冊。タイトルどおり、仕事の進め方、人間関係、ビジネスマナー、企画力・問題解決力、人間力などなど、社会人に求められる38種の「仕事の基本」を取り上げているわけです。■仕事の力は5つの要素で構成されるどんな仕事に就こうとも、ビジネスマンとしての基礎は身につけることができるもの。そして、そこで身につけた基礎こそが、自分自身の将来を決定づけるのだと著者はいいます。ちなみに基礎を身につけるための期間は3年間。その3年間でついた差は、なかなか埋まらないものだといいます。研修の講師として16年間で2万5千人以上のビジネスマンを見てきた結果、著者にはそう断言できるのだそうです。そんな著者は本書において、仕事の力は5つの要素で構成されていると述べています。しかもそこには、「3つの柱」が含まれているというのです。それは、「コンセプチュアルスキル」「ヒューマンスキル」「テクニカルスキル」。ひとつひとつを確認してみましょう。(1)コンセプチュアルスキルコンセプチュアルスキルとは、ひとことでいえば「考える力」。たとえば計画立案能力、企画力、問題解決力などがこれにあたり、職位が上がるにつれて重要度が増してくるといいます。(2)ヒューマンスキルヒューマンスキルとは、その名称から想像できるとおり「対人関係力」。話す力と聞く力を使って、説明、説得、交渉をする力だというわけです。いうまでもなくヒューマンスキルは、新入社員から経営トップに至るまで、変わらず求められるもの。(3)テクニカルスキルそしてテクニカルスキルは、「業務に必要な知識・技術」。たとえば営業なら商品知識、経理なら財務の知識、製造なら加工技術など。特にはじめのうちは重要度が高く、これらがなければ仕事にならないといいます。また、この3つの柱に加え、成果を出すために必要なのが「人間力」だとか。目標達成意欲やストレスに耐える力、粘り強さなどマインド系のもので、当然のことながらすべてのビジネスマンに求められるわけです。そして、これらすべての土台になる最後のひとつが「ビジネスマナー」。これは新入社員だけではなく、あらゆるビジネス活動の土台になるもの。■優先順位は「重要度」を意識しようところで著者がかつて働いていた建設業界では、「段取り八分」が合言葉になっていたのだそうです。仕事の出来の8割は段取り、すなわちPDCA(計画=Plan、実行=Do、確認=Check、改善=Action)におけるPlanで決まるということ。そして、これはどんな仕事にもあてはまるのだそうです。そのPlanのなかでも、もっとも重要なのがスケジューリング。多くの場合、仕事は同時進行で進めなければなりませんが、やりたいことから手をつけたり、手当たり次第にやったりしていたのでは、納期に間に合わなくなるなどの問題が発生するもの。そこで大切なのが、優先順位を決めること。なかでも特に強く意識すべきは「重要度」だといいます。そして重要度は、職場の業績への影響度で測るべきもの。業績に大きく影響を与える案件は、たとえ緊急度が低かったとしても優先する必要があるということ。だとすれば、ここで問題になるのが、A「重要だが緊急ではないこと」とB「緊急だが重要ではないこと」をどう両立させるか。Aを優先させるからといって、Bを放置することはできないからです。■締め切り間際に仕事をしてはダメ!そこで著者が提案しているのは、Aの仕事に「フロントローディング」という方法を活用すること。わかりやすくいえば、「着手を早くする」ということです。たとえば、顧客向けの提案書の作成という仕事があって、納期までに1か月あるとします(なお、これは職場の業績に影響する重要な仕事だと考えてください)。完成までに3日かかるとしたら、まだまだ時間があったとしても早めに着手し、(ファイルと目次だけつくるなど)できることをしておくべき。そうすることで、意識が働くからだといいます。つまり、その時点で「完成までになにが必要なのか」を意識することができるので、残った時間を有効に使いながら、人に聞いたり自分で調べたりすることが可能になるのです。そして結果的には、仕事の質も上げることができるということ。逆に避けるべきは、締め切り間際のギリギリに3日かけること。それまでなにもやっていなかったのでは意識もそちらに向けにくく、人に聞いたり自分で調べたりする時間もないので、よい結果を生み出すことはできないのです。*『社会人1年目からの「これ調べといて」に困らない情報収集術』と同じく本書も、新社会人のみならず、中堅ビジネスパーソンにとっても便利な内容。忙しい日常の中で忘れていた基本を、改めて目の前に提示してくれるような魅力があります。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※坂口孝則(2016)『社会人1年目からの「これ調べといて」に困らない情報収集術』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年04月28日雑談は、効果的に使うことによって潤滑油としての役割を果たす、人間関係のコミュニケーションツール。しかし『お金持ちの雑談』(田口智隆著、総合法令出版)の著者は、それ以上の価値が雑談にはあるのだと主張します。雑談は、お金持ちになれるかどうかを決めるくらいのインパクトを持っているというのです。それどころか、「幸せな人生を送るために必要不可欠な道具」といっても過言ではないのだとか。雑談とお金持ちとの間にはあまり関連性がないようにも思えますが、「お金持ちの人ほど、意識的に雑談をしている」がポイントなのだといいます。ただなんとなく会話をするのではなく、相手との相性を見極めるリトマス試験紙として雑談を活用しているということ。そこで、「雑談によって、日々のご縁がお金に換わる」と意識しながらひとつひとつの出会いを大切にすべきだという思いから、本書を執筆したというのです。■お金は必ず人からもたらされる本書において最初に著者が強調しているのは、「良縁が良円を生む」ということ。いつの時代においても、どんなビジネスでも、お金は人との縁(出会い)から生まれるもの。これは、すべてのお金持ちが大事にしている「お金の原理原則」なのだと著者は強調します。「お金持ちになりたい」と拝んでみたところで、お金が目の前に現れるわけではありません。そうではなく、お金は必ず「人」からもたらされるものだということ。だからこそ、人との縁がお金を運んできてくれるという考え方です。つまり、出会った人と縁をつくり、それをビジネスにつなげていけるかどうかが、お金持ちになれるかどうかの分かれ目になるということ。■雑談するとビジネスにつながるでは、よい縁を見つけて次につなげるためには、どうすればいいのでしょうか?著者は、その最速な手段こそ「雑談」であると断言するのです。当たり前ですが、初対面の人といきなりビジネスがスタートしたり、お客様になってもらえたりすることはありません。なにかの縁があって出会ったら、まずは多くの場合、会話などを通じてコミュニケーションをとることになるでしょう。そこからおつきあいがはじまったり、お客様になっていただいたりするわけです。そして、雑談で話すことは以下のようなものがあります。・どんな仕事をしているか?・どうしてこの場にいるのか?・どんなことに興味があるか?・どんな趣味を持っているか?・最近どんなことに関心を持ったのか?こうした話をしているうちに、共感したり、盛り上がったり、意気投合したりすることがあります。著者の経験上、そうした出会いは良縁であり、その後ビジネスにつながることが多いといいます。■雑談の充実度が判断材料になる著者も講演の依頼を受けたとき、受けるかどうかをギャランティー(講演料)の金額だけで決めているわけではないのだそうです。実際に主催者とあって雑談をし、「その人と楽しく話ができたか」「その人の主催するセミナーで講演したいかどうか」、自分自身の気持ちを確かめてから受けるようにしているというのです。理由は明白で、最初の雑談で盛り上がったり、好印象を抱いたりした相手でなければ、楽しく仕事ができず、その後もビジネスにはつながっていかないということを経験的に学んできたから。■実は雑談で9割が決まっているそして著者は、最初の雑談で、第一印象の9割が決まるといっても過言ではないといい切っています。もしも同じような条件の仕事がふたつあって、どちらかを選ばなければならないとしたら、雑談が盛り上がった人と仕事をしたいと思うのが人情。もし金銭などの条件が多少悪かったとしても、「一緒に仕事をしたい」「商品を買いたい」と思わせる相手は少なくないはずです。そして長い目で見れば、そうした縁は長く続いていく可能性が高い。だからこそ、お金持ちは初対面の印象を決定づける「雑談」をとても大切にするというのです。よく「見た目が9割」だといわれることがありますが、いくら見た目の印象がよかったとしても、雑談が盛り上がらなければ次につながる可能性は低いでしょう。効果的に縁をつなげるには、相手の記憶に刻まれるようなコミュニケーションが必要になってくるということ。そこで、お互いの印象に残る雑談をする必要があるわけです。著者いわく、お金持ちが雑談を単なる世間話と考えていない理由はここ。雑談を、良縁をつないでくれる大事なビジネスツール(強力な接着剤)として位置づけているというのです。*お金を「人との縁」という観点から語った書籍は、意外に少ないかもしれません。そういう意味でも、目を通してみれば気づきを得ることができそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※田口智隆(2016)『お金持ちの雑談』総合法令出版
2016年04月27日『1日36万円のかばん持ち――三流が一流に変わる40の心得』(小山昇著、ダイヤモンド社)の著者は、株式会社武蔵野代表取締役社長。2001年から同社の経営の仕組みを紹介する「経営サポート事業」を展開しており、現在、600社以上の会員企業を指導しているのだといいます。「かばん持ち同行」もそのひとつで、著者のあらゆる場面に同行・同席するというもの。その仕事ぶりを身をもって感じることで、経営者としての心構えを会得する「3日間プログラム」であり、多くの社長が参加しているのだといいます。費用はなんと「1日36万円」。プログラムは3日間なので、108万円(税込)を支払わなければならないことになります。著者は多い日は1万歩歩いているといいますから、一歩36円の計算。しかしそれでも、多くの社長がかばん持ちをしようと著者のもとを訪れ、そして値段以上の価値を実感しているというのです。つまり、3日で108万円の現場研修を、たった1冊読むだけで体感できるようにしたのが本書だということ。きょうはそのなかから、お金に関するいくつかの「心得」をご紹介したいと思います。■「売上」と「現金」はイコールではない著者の「かばん持ち」をした多くの社長は、「売り上げを伸ばせば、会社はつぶれない」と考えていたそうです。しかし著者によれば、それは間違い。銀行の格付が7以下の会社(業績が不安定な要注意先の企業)が「3年間125%以上」の増収増益をすると、資金ショートで黒字倒産するとも。なぜなら、「売上」と「現金」は必ずしもイコールではないから。「売掛・在庫」という概念がないと、倒産の危機を招くことがあるというのです。現金で仕入れていて、売掛で販売していたら、帳簿上は利益が出ていても、実際には現金は減っていくということ。見逃すべきでないのは、会社が上げる利益の50%は税金だという事実。残りの半分、つまり利益の25%を予定納税として納付するので、残りは利益の25%。ところが今度は、借入金の返済が待っている。しかし、その25%が在庫や売掛金になっていたとしたら、資金難に陥って倒産してしまうことに。これが黒字倒産のカラクリだというわけです。■経営は「現金にはじまり現金に終わる」だからこそ著者は、現金は会社の血液だと断言します。現金である以上、止まると倒産するわけです。どんなに儲かっていたとしても、現金がなければ、賞与も給料も支払うことができなくなります。しかし逆に、たとえ赤字だったとしても、B/S(貸借対照表)を見ながら資金調達の仕方を変えていけば倒産することはないということ。だから会社には最低でも、「月照と同額の現金」を用意しておくことが鉄則。「経営は現金にはじまり、現金に終わる」と著者がいい切るのは、そんな考えが根底にあるから。モノの長さをはかるのは「ものさし」。重さを量るのは「はかり」。そして、経営をはかるのが「現金」だというのです。■繰上げ返済をしてはいけない3つの理由多くの社長が「銀行に金利を払うのはもったいない」といいますが、著者によればそれは間違い。「金利は会社が成長するための必要経費」と考えているため、金利をたくさん払っても、「たくさんのお金を借りて、現金をたくさん持っていること」が正しいというのです。「金利はもったいない」と考えている社長は、借入れをすると「繰上げ返済をしたい」と考えるもの。でも、資金に余裕があっても、繰上げ返済をしてはいけないと著者。理由は3つあるそうです。(1)会社が赤字でも、現金が回れば倒産しないから先に触れたとおり、黒字倒産の原因は現金を持っていないこと。でも、銀行から融資を受けて現預金を持っていれば、会社が赤字でも倒産はしないものだといいます。(2)銀行が損をするから銀行は融資をするとき、「期限の利益」を考えているもの。「この会社にこれだけ貸せば、これだけの金利が得られる」とわかっているわけです。ところが期限より前に返済されると、利益が少なくなってしまいます。銀行は会社が危ないときでもお金を貸してくれたのですから、こちらの都合で繰上げ返済をするのは、恩を仇で返すことと同じだと著者はいいます。(3)銀行は、緊急支払い能力の高い会社に貸すから銀行は、なにがあっても返済してくれる会社にお金を貸すもの。月照の3倍の普通預金(最低でも月照と同額の現金)を確保しておけば、銀行は「この会社はキャッシュポジションがいい(手持ちの現金がたくさんある)」と判断し、融資をしてくれるそうです。借りた額が半分くらいになったら、銀行に「折り返し」でもう一度借りることが大切だとか。たとえば「5,000万円を期間5年」で借りていて、3年で2,500万円を返済したとしたら、もう一度2,500万円を借り、新たに5年の長期融資をしてもらうということ。このように常に現金を確保しておけば、たとえ赤字でも会社はつぶれないということです。*著者の経営方針はユニークかつパワフル、そして理にかなったもの。だからこそ経営者は本書から、それらを吸収することができるのではないでしょうか?(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※小山昇(2016)『1日36万円のかばん持ち――三流が一流に変わる40の心得』ダイヤモンド社
2016年04月26日