「イケメンだと思ったら、実はマザコンだった」と異様に、第一印象で期待したものの、実際につきあってみると本性があらわになってげんなりしてしまうことってありますよね。今回ご紹介する『決定版!ゲッターズ飯田のボーダーを着る女は、95%モテない!』(ゲッターズ飯田、マガジンハウス)は、テレビなどにも多数出演している占い師のゲッターズ飯田さんが、いままで5万人以上を五星三心占いで占った実績から「こんな人はこういう性格」「◯◯が好きな人は、こんな行動をする」などという傾向をまとめた一冊。過去には「モテない」「彼氏いない歴=年齢」と相談をしにくる女性の90%がボーダーの服を着ていることもあったといいますから、なんだか興味深いですよね。今回はそのなかから、男性の好みでわかる本性をピックアップしました。■1:割り勘好きの男は巨乳好き本当はお金を持っているはずなのに、いつも割り勘の男性や、家で小銭をコツコツ貯めている男性。女性からするとがっかりですが、そういう「心が庶民」の人には巨乳好きが多いそう。根がケチというわけではなく、「割り勘の感覚」が好きで、大きなことをするのは苦手なのだとか。グループで飲みに行ったときに率先して「一人◯◯円で!」などと計算する人は、巨乳好き確定かも。■2:白い服を着る男は色白の女性が好き白いシャツやパンツが好きだったり、バッグや帽子などの小物に白を好んで使ったりする男性は根が真面目で優しいタイプが多いとか。そんな男性は女性の肌にこだわりがあり、色白スベスベ肌が大好きで、日焼けした女性を毛嫌いするほど。これからのシーズン、こんな男性を攻略するなら完全防備で美白をキープすべし!■3:おしゃれな男は依存傾向ありおしゃれな男性とは一緒に買い物に行くのも楽しく、話も弾みますが、実はモノや人に依存してしまう傾向あり。趣味が多彩だったり、いろいろなことに興味を示す場合が多いので、変化には対応しやすい一方で一度ハマったものからは抜け出せなかったりするのです。部屋にも無駄なものがあふれがちなので、一緒に生活するとケンカになるかも。■4:手ぶらで出かける男は理屈っぽいお財布やスマホはポケットにつっこみ、どこへ行くのも手ぶらという男性は要注意。こういう人はマザコンで理屈っぽいことが多いというのです。相手の発言や行動に対してすぐに「なんで?」と返すタイプなら、100%マザコンと思って間違いなし。こういう男性を怒らせるとさらに危険。理詰めで徹底的に相手を攻め、こちらのいいぶんなど聞く耳を持ってくれません。手ぶらで歩く男性と出会ったら、距離を置いてつきあった方が安全かも。■5:リゾート好きな男はギャンブラー南国やリゾートが大好きで、休みになるとビーチを求めて旅行するような男性は、常に刺激を求めています。だからギャンブルにもハマりやすいのですが、得意とは限りません。明るく楽しい性格なのでモテる傾向にありますが、浮気がちで、ブランドものの下着を「勝負下着」として身につけていたりします。ギャンブラーとしては、簡単に手に入る女性には興味がないので、こちらから「好き」という態度を見せるのは避けましょう。■6:B級グルメフェスタに行きたがる男は浪費癖がある「今度の週末、お台場でB級グルメフェアがあるらしいよ!」。そんなふうに、もしもつきあっている彼氏がやたらとB級グルメフェスタの情報に詳しいなら、結婚はちょっと考えた方がいいかも。こういう男性はお金を使うのが大好きで浪費家。かなりのどんぶり勘定といえます。行動範囲が広く情報を集めるのが得意なので、安くても楽しいデートをするのが得意ですが、その反面少ない小遣いでも浮気する可能性大アリ。そのうえ女性の扱いは子どもっぽく、セックスも淡白でなかなかいいとこなし……。家でなるべく白いご飯を食べさせると、浮気の虫は治まるそうです。■7:30歳過ぎてもパーカを着る男は飽きっぽいTシャツやパーカなど、襟なしの服は子どもっぽさの象徴。こういう服装を好む人はいいわけが多く、飽きっぽいことが多いそうです。ただ、次々と新しいことに目がいくような性格が活きるような職業なら、うまくいく可能性あり。企画などのアイディアを出す仕事や宣伝マンには向いています。服装は、人生の浮き沈みにも大きく関わるもの。もしつきあっている彼氏が転職などで悩んでいるようなら、イメチェンを提案してみるのもいいかもしれません。*あくまで傾向ではありますが、「たしかに……」とうなずいてしまうものもありますよね。この本には女性編もあるので、自分や友立ちと照らし合わせて「あるある!」と楽しみながら読んでみるといいかも。ちなみに「ボーダーを着る女」が服装を変えたところ2週間で彼氏ができたというエピソードもあるそうなので、恋愛で悩んでいる人はこの本を参考に行動や見た目を少し変えてみると、いい結果が生まれるかもしれません。(文/平野鞠) 【参考】※ゲッターズ飯田(2016)『決定版!ゲッターズ飯田のボーダーを着る女は、95%モテない!』マガジンハウス
2016年05月25日『マーケティングで面白いほど売上が伸びる本』(市川晃久著、あさ出版)は、ビジネスセミナーの人気講師である著者が、マーケティングについてわかりやすく解説した入門書。「初めてマーケティングに触れる方でもわかりやすいように解説しています」という言葉どおり、有名企業の成功事例などを交えつつ、マーケティングの基本が紹介されています。注目すべきは、マーケティングに欠かすことのできない「3C分析」「STP分析」「4P戦略」について順番に説明がなされている点。つまり、この流れに従えば、無理なくマーケティングができるわけです。でも、ビギナーにとってはそもそも、「3C分析」「STP分析」「4P戦略」自体が疑問かもしれません。そこできょうは、この3つの基本をさらってみましょう。■3C分析とは複雑かつ多様な環境要因が存在し、常に変化を続けているのが現代社会。そのため、成果を上げるためにはまず「現状を正確に把握すること」が必要とされます。そして、そのための最初の手法として用いられるのが「3C分析」。3Cとは、「市場・顧客」「自社」「競合」のこと。詳しく見てみましょう。・市場・顧客(Customer)特定商品の市場規模や顧客特製のことで、「顧客ニーズ」「市場状況」と同義。・自社(Company)自社の「市場シェア」「技術力」「資金力」など、定性的および定量的の両面によってはかることができる「自社の経営資源」のこと。・競合(Competitor)自社と同じ市場で競争する「他者の経営資源」のこと。つまり3C分析においては、自社と競合を比較することによって、「競合に対して自社が優位なマーケティング活動をどのように実施すべきかを考えるわけです。3C分析なくして、「ターゲットの選定」「商品」「価格」「販路」「販促」を決定することは無謀。ところが現実的に、9割以上の企業はこの段階が不完全なのだとか。そして、マーケティングが失敗する最大の理由は、この現状分析を正しく行っていないことなのだといいます。■STP分析とはSTPの「S」とは「セグメンテーション(Segmentation)」の略であり、つまり「市場を細分化する」こと。「T」は「ターゲティング(Targeting)」の略で、細分化した顧客のなかから、どの顧客を狙う(選ぶ)のかを明確にする、いわば「顧客の選定」。そして「P」は「ポジショニング(Positioning)の略。自社が参入した(しようとしている)市場を細分化し、顧客を絞り込んだうえで自社の立ち位置を決定するということです。ちなみにこれは、3C分析の知識があって、初めて可能になるのだといいます。顧客(ターゲット)を決定せずに営業するのは、現実的に不可能。プレゼントをする際に、「誰」に贈るかに寄って購入するもの、予算、時期が変わるのと同じことだといいます。商品をつくってから、それを必要とする顧客を探すようなマーケティング活動では、収益は安定しないわけです。■4P戦略とはそして最終段階は、「顧客に自社の価値をどのようなマーケティング活動で伝えるか」。そこで重要なのが、4P戦略を活用していくことだといいます。4Pとは「商品(プロダクト)」「価格(プライス)」「流通(プレイス)」「販促(プロモーション)」の4つの略称。この「4つのP」をどのように組み合わせるかによって、顧客の感じる価値は大きく異なるそうです。自社のマーケティング活動は、ターゲットを明確にしたうえで「商品」「価格」「流通」「販促」の4P戦略を活用しつつ、自社の価値を最大化すること、そして顧客の満足度を最大にすることが目的。その組み合わせパターンを複数持っておくことで、そのときの経済環境や、さまざまな顧客ニーズにも対応できるというわけです。当然ながら簡単なことではありませんが、刻々と変化する市場においては、その対応なくしては生き残れないと考えるべきだと著者はいいます。*こうした基本を踏まえつつ、以後もマーケティングについて無理なく学べる一冊。聞きたくてもいまさら聞けないことでもあるだけに、大きく役立ってくれそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※市川晃久(2016)『マーケティングで面白いほど売上が伸びる本』あさ出版
2016年05月24日NPO法人知的資源イニシアティブ(IRI)が企画し、先進的な活動を行う機関に贈られる「Library of the Year2015」で優勝賞に選ばれた塩尻市立図書館。人口わずか6万7,000名の町の施設であるにもかかわらず、開館5年で累計来場者300万名を達成しているというのです。いったい、どんな図書館なのでしょうか?そのあゆみと魅力を、新刊『「本の寺子屋」が地方を創る 塩尻市立図書館の挑戦』(「信州しおじり 本の寺子屋」研究会著、東洋出版)から探ってみましょう。■市民のいこいの場が集約されている塩尻市立図書館は、2010年に開館した「塩尻市民交流センター(愛称・えんぱーく)」内の施設。同センターにはほかにも子育て支援センターや会議室、食育室、ハローワーク、屋上広場など、市民のいこいの場が集約されています。3面ガラス張りで吹き抜けを多用した「えんぱーく」は明るい雰囲気。その中心である図書館には、静かに調べものや読書をするスペースだけでなく、会話可能なスペースやカフェも併設。従来の「私語厳禁」のイメージとは違い、市民のコミュニケーションの場にもなっています。とはいえ、同図書館が人口の数十倍が訪れる“スーパー図書館”として親しまれている理由は、決してそれだけではありません。そこには、とっておきの仕掛け、「信州しおじり 本の寺子屋」の取り組みがあるのです。■作家やジャーナリストが無料で講演「信州しおじり 本の寺子屋」は、2012年7月から同図書館がスタートさせた事業。「本・出版」をテーマに月に1~2回程度、作家やジャーナリストといった出版にかかわる人々を講師に迎え、講演やワークショップなどを無料で行っています。開講第1回目の作家・佐高信氏の講演を皮切りに、これまでに作家の島田雅彦氏や長江朗氏、ノンフィクション作家の柳田邦男氏や大下英治氏、詩人の谷川俊太郎氏、画家で絵本作家のいせひでこ氏らが来館しました。テーマを「本・出版」としたのには、塩尻市ならではの背景もあります。同市は、筑摩書房の創業者・古田晁氏の故郷。太宰治、井伏鱒二といった作家たちと交流を深め、現代の文学思潮に少なからぬ影響を与えた人物で、今なお塩尻市民の誇りの源になっているといいます。同地は歴史的にも“寺子屋”が多かった土地柄でもありました。こうして、書き手をはじめとした「担い手」と「読み手」である市民とが一緒になって本の可能性を考える「本の寺子屋」は出発したのです。2015年度末までの3年8か月間で約50回の講演や朗読会などのイベントが行われ、受講生はのべ5400人にも上っています。■2人のキーマンが本の寺子屋を実現なぜ、いち地方都市の市立図書館がこれほどの企画を継続的に運営できているのか。その陰には2人のキーマンの存在がありました。1人は、2007年から「本の寺子屋」事業がスタートする2012年春まで同図書館の館長を務めた内野安彦さん。28年務めた茨城県鹿島市役所からヘッドハンティングされた内野さんは、鹿島市でも務めた図書館長の職に就任。当初、塩尻についての知識を得るため地元の古書店を巡り、古書店主と相談しながら本をそろえるという、非常にユニークな図書館運営を行っていました。そして、新たなあゆみを始めていた同図書館を、もうひとりのキーマンが訪ねます。長く出版界に身を置き、河出書房新社で季刊誌「文藝」編集長も務めた長田洋一さん。第一線を退き長野に移り住んだ後も、「いい本」ではなく「売れる本」ばかりがつくられる出版界に危機感を抱いていました。そんな2人が塩尻の地で出会い、「本の寺子屋」の構想がスタート。長田さんのもつ出版界での人脈を生かし、さまざまな企画を実現しています。■塩尻市立図書館は本の復権を目指す「本の寺子屋」が目指すものは「本の復権」。本書にはこうあります。「(『本の寺子屋』は)地域に生きる市民の生活の中心にもう一度、本を据え直し、読書を習慣化させるための方策を、書き手、つくり手、送り手、読み手が共同して創り出そうという仕組みである。その根底には、映像や音楽の鑑賞からは得られない、読書のみが与えてくれる知的興奮、喜びがある、との信念がある」貸出冊数を増やすためなら、ベストセラーや人気作家の書籍をたくさんそろえるのが近道。しかし、それでは「本の復権」の理念に反する、というのが塩尻市立図書館の思い。それより、年に1度か2度くらいしか貸し出されなくても「その本が図書館にあって助かった」という利用者を増やすことに予算を使いたい、という思いが根底にあるからです。塩尻市立図書館は、そんな「課題解決型図書館」を目指しているのです。*塩尻市立図書館の取り組みは、地域の活性化にも大きな役割を担っています。本書は、このユニークな図書館のあゆみが関係者の思いに深く寄り添って書かれたノンフィクション。著者グループは「本の寺子屋」の受講生です。「売れる本」ではなく「いい本」の復権を――そんな、図書館の熱い思いに打たれます。読めば図書館に足を運びたくなる、そんな1冊です。(文/よりみちこ) 【参考】※「信州しおじり 本の寺子屋」研究会著(2016)『「本の寺子屋」が地方を創る 塩尻市立図書館の挑戦』東洋出版
2016年05月24日『大富豪が実践しているお金の哲学』(冨田和成著、クロスメディア・パブリッシング)の著者は証券会社に勤めていた当時、多くの大富豪と交流があったのだそうです。顧客である彼らの相談にのったりしながら、親密なコミュニケーションをはかっていたということ。つまり本書ではそんな経験を軸に、大富豪の実態をつまびらかにすることによって、大富豪ならではの習慣や心構え、その根底に流れる「お金に対する哲学」を明らかにしているというわけです。ちなみに本書でいう「大富豪」とは、純金融資産で1億円以上を保有する人のこと。これは日本の人口の約2%だといいます。また、年収数千万円はあるものの純金融資産が1億円未満の人を「小金持ち」、それ以外を「一般人」としているそうです。■節約するときの考え方の「差」節約するとき、毎日の食費を削るのが一般人で、入った分だけ使い切るのが小金持ち。そして、大きな支出だけを抑えるのが大富豪なのだと著者は主張しています。大富豪を目指すのなら、倹約の精神はたしかに必要。ただし、倹約だけで大富豪になる人はあくまでもレアケースだというのです。なぜなら大半の大富豪は「消費より倹約」の精神を持ちつつ、「消費より投資」というマインドをさらに強く持っているものだから。そこには理由があって、つまり過度な倹約は、将来的にリターンが期待できる支出まで控えてしまう恐れがあるということ。40代、50代になってから倹約するなら仕方がないとしても、若い世代は投資の回収期間が長いだけに、細々とお金を貯めるのは効率が悪いもの。つまり、大半の大富豪はお金を使うこと自体には積極的で、「それをいかに効果的に使えるか」を重視するというのです。■大きな支出をコントロールするだとすれば、支出を抑えるための極意のようなものはあるのでしょうか?著者によれば、それはただひとつ。大きな支出をコントロールすること。血眼になって、1円単位でお金を貯めたとしても、効果はきわめて限定的。たとえば「今月はお金がピンチだから」という理由で、いつもは500円かけているランチを200円にしたところで、月に6,000円(300円×20日)しか浮かないわけです。でも、その程度の節約をするため、安くて添加物満載のランチで健康を切り売りしながらお金を貯めるというのは本当に得策でしょうか?だとしたらバランスのとれたランチを食べ、心身ともに健康体を維持し、仕事の集中力を高めて早く収入を上げたほうが、長い期間で考えれば利回りがよいと著者はいうのです。体調を崩せば収入が途絶えますし、医療費もかかるわけですから当然といえば当然。しかも、細々とした節約をする人に限って、平気で飲み会に参加し、タクシー代を含めて1~2万円使ってしまうこともあるもの。でも、「コントロールすべきはそこだろう」と著者はいいたいのだそうです。■家計簿で交際費の多さに気づくそんな著者は20代の前半に、家計簿をつけていた時期があるのだとか。目的は、自分の生活パターンを可視化することで、どこに大きな支出があるのかを確認するため。その結果、出費の大部分は自分の目標にとって必要ではない交際費に使われることがわかったのだそうです。もちろん、なかには大切な飲み会もあるでしょうが、そうやってフィルターをかけていくと、参加しなくてもいい飲み会が意外と多いことに気づくのだといいます。そこで考え方を改め、無駄な宴席には出席しないと決めて、そのぶんのお金で本を買ったりスーツを買ったり、自分の仕事日雨ながる分野に投資していくことに。すると、その成果はすぐ収入面に出て、振り返ればその判断は自分の成長にとっての大きなターニングポイントになったのだそうです。■大局的な視点を持つことが大事そんな著者は、節約を考える時に重要なのは「木を見て森を見ず」の状態にならないように大局的な視点を持つことだといいます。もちろん、1円を粗末に扱わないことも大切。しかし、そこだけに注力するくらいなら、もっと効果的な節約手段を考えるか、もっとお金を稼ぐ方法を考えるほうが合理的だということ。*こうした主張からもわかるとおり、著者が明らかにする大富豪の考え方は、「大富豪」という言葉が持つ一般的なイメージとはだいぶ異なります。しかし、だからこそそこにリアリティと説得力があるのもまた事実。「大富豪だからものすごい浪費をする」という決めつけこそが間違っていて、基本的には堅実であることが重要だということです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※冨田和成(2016)『大富豪が実践しているお金の哲学』クロスメディア・パブリッシング
2016年05月23日20年間にわたってIBMに在籍していたという著者による『ひきずらない技術』(深谷純子著、あさ出版)は、IBMでの経験から得たものを「ひきずらない」ための技術としてわかりやすくまとめた内容。というのも同社には、やりたい仕事があると、自分から「やります」と手をあげることができる社風があるというのです。いってみれば、社員の意思が尊重される社風だということ。そんな環境下において著者は、「ひきずりやすい人」と「ひきずりにくい人」には共通点があるということに気づいたそうです。だからこそ、彼らの特徴を研究すれば、「高いパフォーマンスを発揮できるノウハウ」を見つけられるというわけ。「ひきずらない技術」を身につけることによって、「ストレスフルな現場で、いかに適応しながら結果を出していくか」を学ぶことができるということです。著者によれば、引きずってしまういちばんの原因は、「ストレス対応力」の弱さ。つまり裏を返せば、ストレス対応力を鍛えることが、ひきずらないためのいちばんの方法だということ。なお、ストレス対応力を鍛えるためには次の4つのステップで進めていくのだといいますが、どの段階でストレスが解消できるかはその人の感じ方によって違うとか。■ステップ1:ネガティブ感情を受け入れるネガティブ感情を放置すると、心理的に落ち込むだけではなく、食欲低下や不眠などの身体的不調、生産性の低下やミスなどの行動面にも影響が出るもの。それが、ますますストレスを増幅させる原因となるわけです。大切な基本は、心のなかで絡み合うモヤモヤをじっくりと紐解いて受け止めること。喜怒哀楽があるのが人間で、ネガティブ感情がまったくない人はいないので、否定せずに受け止めることが大切だというわけです。ネガティブ感情がわかったら、・腹式呼吸(おなかからゆっくり吸って、ゆっくり吐く。吐くときにネガティブ感情を外に出すイメージで)・エクササイズ(ジョギング、水泳などの有酸素運動を行うことで、心身の安定をはかるセロトニンが分泌される)・集中してできる作業や趣味(作業に没頭することでイヤなことを忘れる。料理や楽器の演奏、カラオケなど)などを試してみると効果的だそうです。■ステップ2:思い込みを見なおす感情の多くは、「思い込み」から生まれるといいます。たとえば過去に失敗を経験した人は、同じような状況に遭遇すると、「今回も無理だ」「自分にはできない」をいうネガティブ感情を持ってしまい、行動をためらうということ。思い込みは過去の経験がつくりだしたものなので、とても大切。しかし、頑固な思い込みはストレスの原因にもなるため、本当に正しいか、間違っていないかを見なおす柔軟さが必要だということです。思い込みの扱い方で重要なのは、ネガティブ感情を感じたら、自分に問いなおしてみること。思い込みとは、一事が万事そうだと決めつけてしまう心の動き。「きょうはちょっと都合が悪い」といわれただけで全否定されたようにとらえてしまい、「いつも断られる」などと思い込んでしまったりするわけです。だからこそ環境や人のせいにせず、当たり前と思っていたことを疑ってみると、突破口が見つかるかもしれないということです。■ステップ3:肯定的な意味づけをするこれは、ネガティブ感情をいったん横に置き、問題に視点を変えてみるということ。自分にとってプラスになることはないか、肯定的にその状況をとらえてみる。感情を切り離し、ストレスの原因となった状況を冷静に見るために、傍観者となってみる。いってみれば、他人事だと思って自分にアドバイスをするということです。ポイントは、どんなことにも肯定的な見方が必ずあると信じること。■ステップ4:脳によいレッテルを貼っていくここまでやってきて、まだストレスを感じている場合は、自分からストレスのある状況を変えるために行動することが必要。その際に重要なのは、どんな小さなことでも行動に移すこと。しかもその際、脳が喜ぶ感情のレッテルを貼ると効果的なのだとか。なぜなら、人の感情はパフォーマンスに大きく影響するから。私たちは情報を目や耳からインプットし、それを脳で「受け取り」→「感じ」→「理解し」→「考えて」→「記憶」するもの。このとき脳が好きな情報だと一連のサイクルが活発になり、嫌いな情報だと鈍くなるのだそうです。つまり、好きか嫌いかと言う感情によって脳のパフォーマンスは左右されるということ。だからこそ、脳によいレッテルを貼っていくことが意味を持つわけです。*本書では他にも、「ひきずり」状態から抜け出すためのさまざまな方法が紹介されています。活用すれば、「ついひきずる」回数を減らすことができるかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※深谷純子(2016)『ひきずらない技術』あさ出版
2016年05月23日「寝つきが悪い、眠れない」「便通がすっきりしない」「なにを試しても肌のトラブルが改善しない」理由のはっきりしないこんな不調、もしかしたらグルテンが原因かもしれません。そのヒントになるのが『2週間、小麦をやめてみませんか?』(フォーブス弥生著、三五館)。欧米で広がり、日本でも注目されはじめている「グルテンフリー」という食べ方について解説した本です。「グルテンフリーって、小麦粉アレルギーの人のための食事療法?」と思った人もいらっしゃるかもしれません。しかし実際には、冒頭にあるようにもっと多くの人にとって意義のある食事法なのです。本書を参考に、まだ日本では馴染みの薄いグルテンフリーとその効果について、見てみましょう。■グルテンフリー本が今ベストセラーに「グルテン」とは小麦、大麦、ライ麦などの麦類に含まれるタンパク質。このグルテンを含む食品を口にしないのがグルテンフリーと呼ばれる食事法で、グルテンとの関連性が強く疑われる「セリアック病」や「グルテン過敏(不耐)症」などの対策としてはじめられました。最近では、グルテン過敏症を患うテニスプレイヤーのノバク・ジョコビッチ選手がグルテンフリーの食生活を明かした書籍『ジョコビッチの生まれ変わる食事』(ノバク・ジョコビッチ著、三五館)が10万部を超えるヒットとなるなど、日本でもグルテンフリーという言葉が認知され始めています。■不調の原因を気づいていないケースもこれらの疾患は、発見が難しいことでも知られています。とくにグルテンに含まれるグリアジンに身体が過剰反応して起こるグルテン過敏症は、潜在患者数の多い疾患。アメリカでは20人に1人が患っているという説もあり、しかもその8割は診断を受けておらず、不調の原因がグルテンだと気がついていないといわれています。下痢や便秘、腹痛、疲労感、肌荒れや不眠などがおもな症状ですが、有効な医薬品などはなく、対策は「グルテンを摂取しない」ことしかないのが現状。日本でも診断が増えている一方で、まだまだ認知度は十分とはいえません。なんとなく身体の不調を感じるけれど、検査でもどこにも異常が見つからない、処方された薬を飲んでいるけれど症状が改善しない――そんな場合、グルテンが原因である可能性も考えられるのです。■健康な人が試しても嬉しい効果があるその一方で、近年はグルテンフリーを「より健康になるため」実践する人も増えています。じつは、著者のフォーブス弥生さん自身、グルテン関連疾患の患者ではないのにもかかわらず、グルテンフリーの食事で“効果”を感じたひとり。7年前にグルテン過敏症のご主人とともにグルテンフリーを導入し、2週間後には20代のころから悩まされてきた肌トラブルが改善。さらに、風邪をひかなくなったり、疲れにくくなったりという変化があったといいます。さらに、アメリカやヨーロッパではグルテンフリーを体重維持やダイエットのために取り入れる人も増えています。というのも、グルテンの主成分であるグリアジンには、とりすぎると食欲を増進させたり、血糖値を急上昇させたりする作用があるというのです。トップアスリートのジョコビッチ選手をして3か月間で5kgの減量になったそうなので、ダイエットへの効果もおおいに期待できそうです。■2週間のグルテン抜きで効果を確認!疾患の有無にかかわらず、多くの人にとって一考の価値がある、このグルテンフリー。本書でフォーブスさんは「2週間、一切のグルテンをとらない」ことを勧めています。グルテンフリーが身体に合っていれば、この“お試し期間”に体調に何らかの効果を感じられるとのこと。急に「一切のグルテンをとらない」なんてハードルが高いように感じる人もいるかもしれません。でも、じつは食材としての小麦をあまり使わない日本食はグルテンフリーを取り入れやすい料理。一般に売られているしょうゆや味噌、酒、みりんにもグルテンが含まれているケースが多いものの、グルテンフリーの無添加調味料に置き換えるだけでグルテンを除去することができます。しらたきが欧米で“ゼンパスタ”と呼ばれ、そばとともにパスタの代用品として注目されているなど“グルテンフリー向き”の食材も多くあります。本書では、グルテンフリーのしょうゆや万能つゆ、米粉パスタなどの商品情報のほか、米粉や大豆粉を使ったシチューや蒸しパン、パンケーキなどのレシピも公開。すぐ取り組める工夫が施されています。*本書を貫くのは、「誰でもその人なりのベストな食事があり、それを知っているのは自分自身の身体と心である」というメッセージ。「食事」というものが人の身体にどれだけ大きな影響を与えるかがひしひしと伝わってきます。グルテンそのものの影響を知るだけでなく、自分自身にとっての「ベストな食事」を見つめ直すきっかけとしても、本書を手に取ってみてはいかがでしょうか。(文/よりみちこ) 【参考】※フォーブス弥生(2016)『2週間、小麦をやめてみませんか?』三五館
2016年05月23日甘えることは得意ですか?女性のためのポータルサイト『健康美人』の調査によると、好きな人に素直に甘えられない女性は46%もいるとか。一方、恋愛・婚活マッチングサービス『pairs』の調査では、男性の81.1%が恋人にもっと甘えて欲しいと感じた経験があると回答。彼氏や旦那さんからもっと愛されるためには、甘え上手になることがポイントになりそうです。とはいえ「甘えるのが恥ずかしい」「どうやって甘えたらいいのかわからない」と悩む女性は少なくありません。そんな方にぜひ読んでほしいのが、『甘える技術 彼があなたを手放せなくなる魔法』(高野麗子著、WAVE出版)です。著者は、7,000人以上の男性を接客した元No.1キャバクラ嬢で、恋愛アドバイザーという人物。「昔から甘え上手だったからモテていたのでは?」と思いたくもなりますが、意外にも中高生時代はまったくモテないオタク少女だったそうです。そんな著者が、キャバクラでNo.1にまでのぼりつめられたのは、20代前半でとにかくたくさんの男性とデートを重ね、男性との上手な接し方を学び身につけたから。つまり誰でも努力次第で甘え上手になれるというわけです。「男性から長く深く愛される秘訣は“甘える”こと」と断言する著者が、本書では好きな男性に上手に甘えるテクニックを伝授しています。■甘え上手がよく使う6つの言葉“甘えのプロ”である売れっ子キャバ嬢がよく使うキーワードが、以下の6つだそうです。「うれしい」「楽しい」「幸せ~」「できない……」「ダメなの……」「あなただけ」このうちのどれかが、多い人は30秒に1回は出てくるとか。具体的にはこのように使います。「今日は緊張しちゃって、うまく話せたか心配。でも、こんなふうに話せたのはあなたが初めてでした。すっごく嬉しかった」先ほど挙げた「うれしい」「ダメなの……」「あなただけ」の要素がうまく盛り込まれていることがおわかりになったでしょうか。この6つの言葉は、人気キャバ嬢に限らず、甘え上手な人はみんな使っているのだとか。実際に何度も口に出してみて、すんなりいえるように練習しておくことを著者は勧めています。また本書では、日常で実践できる具体的な甘えテクニックが公開されています。いくつかの方法をピックアップしたいと思います。■職場の人に意識してほしいとき同じ会社の人や、仕事上で付き合いのある男性を好きになった経験はありませんか?とはいえ、ビジネスの場で甘えることに抵抗がある人は多いはず。そこで仕事中の「息抜きタイム」を利用して、ちょっと甘えるテクニックを実行してみてください。たとえば、自動販売機があるスペースや給湯室に飲み物を用意しに行ったとき。意中の彼がいたら「今日はあんまり調子が出なくてへこんでいるの」「最近プロジェクトのことを考え過ぎて、あまり眠れないんだ」と、ちょっと弱音を吐いてみるのです。これは人目のないところですることが、ポイントになるとのこと。また重い荷物を運ぶときに「落としちゃいそう……すみません、一緒に持ってもらえませんか?」などとお願いしたりします。過度にならない程度に弱音や出来ないことを見せることで、女性として意識してもらえるようになるといいます。■草食男子を振り向かせたいとき好きになった男性が草食系男子だったら……待っても彼から動いてくれる可能性は少なそうですよね。このケースでは、すべての行動を“わかりやすく”行うことが重要。なにかをお願いして叶えてもらったときには、小さなことでも「○○君って頼りになるよね」「○○君に助けてもらって本当にうれしかった」と、しっかり言葉で伝えるのです。他にも「会えてうれしい」「一緒にいると楽しい」と、彼に好意があることをわかりやすく表現するのだとか。草食系男子はとても繊細。失敗して傷つきたくないため、うまくいくと確信が持てない勝負には出ないそうです。そのため、彼に確実にあなたが好意を抱いていることを感じてもらうことで、彼が安心してあなたに対して行動ができるようにするのです。■彼氏にキュンとしてほしいときつきあいが長くなってくると、相手にトキメキを感じなくなったりしますよね。彼の気持ちを取り戻すには、視線をうまく使うのが有効になるとのこと。彼と話をしながら、「うんうん」と相づちを打つようなシーンで、なにもせずにじーっと彼の目を見つめます。見つめる以外、話には反応しないこと。それに気づいた彼が「どうした?」と聞いてきたら、「なんか、ずっと見ていたくなっちゃって」「やっぱり好きだなって思って見ていたらボーッとしちゃった」などと“キュン”としていたことを表現するのです。すると彼も「この子、やっぱりかわいいな」と抱きしめたくなるといいます。*本書では上手な甘え方が身につくトレーニング方法や、具体的なアクションを初歩からていねいに解説してくれています。できそうなことからトライしていくことで、少しずつ甘える力をつけることができそうです。片思いの彼、恋人、夫……すべての男性から愛されるための秘訣が満載の一冊。自分の恋愛スキルを高めたい、もっと彼に愛されたいと思ったら、ぜひ手に取って読んでみてください。(文/椎名恵麻) 【参考】※高野麗子(2016)『甘える技術 彼があなたを手放せなくなる魔法』WAVE出版※vol.329 甘え上手?甘え下手?-健康美人※甘えなきゃ損かも?女性から甘えられたい男性は●割!-pairs
2016年05月22日『ハリウッド式ワークアウト 腹が凹む! 神の7秒間メソッド』(北島達也著、ワニブックス)は、画期的な身体のつくり方を明かした書籍です。ポイントは、最短距離で一番楽に理想の体型になれるワークアウト(トレーニング)である「神の7秒間理論」。その方法を用いれば、最小の運動で最大の効果が得られるというのです。■なぜ7秒間で理想の体型になれるのか?でも、わずか7秒間のワークアウトで本当に身体づくりができるのでしょうか?そもそも、なぜ7秒間なのでしょうか?著者によれば、7秒間というのは、筋肉が最大筋力を出せる限界の時間なのだそうです。ポイントは、ウエイトで筋肉に負荷をかけ、筋肉が働く限界の7秒間をつくり出すこと。すると身体が劇的な変化を起こし、筋肥大とともに体脂肪を減らしていくことができるというのです。ちなみにこれは著者独自の理論ではなく、正しいワークアウトを行ううえで必要不可欠な、ワールドスタンダードな理論なのだとか。7秒間に集中して正しい方法でワークアウトすると、脳が「いま以上の筋力が必要だ」と判断し、運動のエネルギーに成る体脂肪の分解の指令を体に出すというのです。つまり、そこで初めて、出っぱったおなかが凹みはじめ、バランスのとれた体がつくられはじめるということ。“神の7秒間”について、もう少し探ってみることにしましょう。■最大筋力を使わないトレーニングは無駄神の7秒間は、ひとつの筋肉がもっとも強い力、すなわち「最大筋力」を出すことのできる限界の時間。「身体を鍛える」という表現から多くの人がイメージするのは、ジムで60分間、全身の筋肉をまんべんなく鍛えるようなトレーニングではないでしょうか。著者もそれ自体を否定してはいないのですが、ただし、これから理想の身体を手に入れたい人には向いていないと指摘してもいます。なぜならそれは、上級者のアスリートのためのメソッドだから。少なくとも、「この腹を凹ませたい」「もっとかっこいい身体を手に入れたい」と思うのであれば、長時間のウェイトトレーニングを行うことは、遠回りの道を歩いているようなものだというのです。最大筋力を使わない60分間のトレーニングをダラダラとやっても、筋肉の形が劇的に変わることは少ないということ。■見た目が変化して「体脂肪も減少」する「身体の見た目」を変化させるためには、筋肉を鍛えるしかないのだといいます。もちろん、体脂肪がついてたるんだ体になっているのであれば、体脂肪も減らす必要があるでしょう。しかし「神の7秒間」をつくり出せば、その両方が可能になるというのです。神の7秒間で大切なのは、トレーニングを繰り返すことによって筋肉側で変化するのを期待することではないそうです。そうではなく、脳に「筋肉を大きくさせる」スイッチを入れることが重要な意味を持つということ。■最大筋力を出せる7秒間のワークアウトワークアウトの1セット目は、動きを捉えるために軽く。2セット目で、重さを十分に感じる。そして3セット目に本気を出して、ドカンと力を出す。この3セット目が、スイッチを入れる刺激。そこで、最大筋力を出せる7秒間をつくるポイント。限界値を超える力が必要になったとき、脳は「いま以上に力が必要だ」「筋肉を大きくしなければいけない」と指令を出すことに。そこで初めて、筋肉のなかで筋繊維を太く大きくする化学反応が起こりはじめるのだそうです。■どこで7秒間の最大筋力を発揮するのか100メートル走の予選などで、アスリートたちが全力を出していないような走りをすることがあります。スタートでポンと飛び出して、ゴール前の何メートルかは流しているということ。著者によればそれは、彼らがきちんと身体の仕組みを理解しているから。通過タイムだけを稼げる走りをしているというのです。なぜなら、最大筋力は48~78時間に1回しか出せないから。本レースは予選の48〜78時間以内に行われるので、予選で最大筋力を出してしまうと、本番のレースで最大の力を出せなくなってしまうわけです。この例と、おなかを凹ませるということは、筋肉の成長や痩せるため、動くためのエネルギー代謝の仕組みと大きく関わっているのだといいます。100メートル走の時間は、およそ9~10秒間。そのなかのどこで、7秒間の最大筋力を発揮するかが勝敗を左右するということです。彼らが練習で体感し、科学的にも考えた走りが示すとおり、ワークアウトにおいても、最大筋力を計画的に出すことが腹を凹ませるということです。*たしかに効率的なワークアウトが実現できれば、効率的におなかをへこませることができるかもしれません。興味のある方は、ぜひ手にとってみてください。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※北島達也(2016)『ハリウッド式ワークアウト 腹が凹む! 神の7秒間メソッド』ワニブックス
2016年05月21日親なら誰でも、自分の子どもには「賢い子」に育ってほしいと思うもの。他のママたちと話していると、「うちの子も早く習い事をさせなきゃ」などと焦ったりすることもあるかもしれません。『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える 「賢い子」に育てる究極のコツ』(瀧靖之著、文響社)では、脳医学者の著者が最先端の脳研究から「賢い子」を育てるためのコツが紹介されています。著者自身も子育て中ということで、より実践的な内容になっているのが特徴。今回は本書のなかから、子どもの好奇心を育てる3つの道具をご紹介します。■1:5歳までに「図鑑」を読む習慣をつける著者が学生のころ行った調査によると、「小学生のころから勉強ができて、そのまま成績が伸び続けた子」は、幼少時から図鑑をよく読んでいたという共通点があることがわかったそうです。3、4歳までに図鑑を与えると、子どもの好奇心をぐんぐん伸ばすことができるというのです。「字が読めるか読めないかという時期では早すぎるのでは?」と思う人もいるかもしれません。でも、この時期をすぎると子ども自身で「好き・嫌い」を判断するようになり、せっかく図鑑を与えても「嫌い」と判断されてしまうかもしれないのです。幼いころから図鑑に親しんでいると、学校に通い始めても勉強へのハードルが低くなります。たとえば早くから魚の図鑑を見ていれば、理科の授業で「魚はエラ呼吸で……」といきなり説明されても、「エラは図鑑で見たことがあるぞ」と理解できるでしょう。このような経験を通じて子どもは「自分は勉強が得意」「学校が好き」という気持ちを育んでいくのです。しかも、図鑑は脳への刺激にも効果的。文字を読む時には「言語野」と呼ばれる部分が活性化しますが、図鑑には必ず写真やイラストがあるので、図形認識や空間認知など複数の脳の領域を活性化できるというのです。子どもが図鑑に親しむためには、「親も図鑑が好きだ」という姿勢を見せること。そうしているうちに子どもも真似して図鑑を読むようになります。毎日10分でも20分でも図鑑を読むことを習慣にしてみてください。■2:「虫取り網」でリアルな体験をする図鑑で興味を持ったものを、実物で見たり体験したりする。道端で咲いている花を見て、図鑑で同じものを見てみる。そうやって「バーチャルの知識」と「リアルな体験」が結びつくと、子どもは「知ること」が楽しくなり、脳も成長していくそうです。子どもが昆虫に興味を持ったら、虫取り網で捕まえる。魚が好きなら釣竿を与えて釣りに出かける。星が好きなら望遠鏡を与える。そんなふうに図鑑と現実をつなぐ道具を探してみましょう。また、親がわからないことなら「どうしてこうなっているんだろうね」と子どもに聞いてみるだけでも子どもの好奇心が刺激され、後になって「この間のアレ、図鑑で見たよ!」と話してくるかもしれません。「子どもに知識をつけさせよう」というより、「家族みんなで楽しもう」という姿勢を大切にしましょう。■3:3歳頃に「楽器」を習うと言葉の発達に効果的子どもにどんな習い事をさせようかと迷っている人もいるかもしれませんが、3歳ごろからの習い事としては、ピアノなどの楽器がおすすめだとか。2015年に大手電機メーカーが行った調査によると、「東大をはじめとする国内難関大学生の約半数は、ピアノを習ったことがある」という結果が出たそうです。もちろんピアノを習えば東大に入れるというわけではありませんが、ピアノを演奏することで脳の発達が進む可能性が期待できます。それに、脳内の音を司る領域と言語を司る領域はほぼ重なっているため、言葉の発達の時期である3、4歳の頃に楽器を演奏することでよい刺激になり、将来的には外国語の習得にも有利に働く可能性もあるのです。赤ちゃんの頃から楽器に触れさせ、そこから音に興味を持たせるのが理想ですが、もし親がピアノなどを演奏できるなら、子どもの前で弾いてみてください。楽器に興味のなかった子どもも真似をするようになるでしょう。音楽は一生を通して楽しめ、人生を豊かにしてくれるもの。家族みんなで楽しむことができれば、親子ともに脳にいい効果が望めます。*ただ子どもに一方的に知識を押しつけようとするのではなく、親も一緒に楽しみ、サポートしていく姿勢が大切なんですね。そのなかから、親子の会話やコミュニケーションも増えていくのではないでしょうか。子育て中の方はぜひ生活の中に3つの道具を取り入れてみてください。(文/平野鞠) 【参考】※瀧靖之(2016)『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える 「賢い子」に育てる究極のコツ』文響社
2016年05月21日きょうご紹介したいのは、『赤ワインは冷やして飲みなさい』(友田晶子著、青春出版社)。ソムリエ、ワインコーディネーター、日本酒きき酒師、焼酎きき酒師、トータル飲料コンサルタントとして多方面で活躍する著者が、最高の1杯に出会うための飲み方・選び方の「新常識」をまとめた書籍です。しかし、そもそも「新常識」とはなんなのでしょうか?なぜ、「新常識」が必要なのでしょうか?つまり、こういうことです。いまはスーパーやコンビニでも気軽に「おいしくて安い」ワインを買うことができ、日本全国の個性的な地酒も手に入れることが可能。またクラフトビールも、これまでになかった味のバリエーションを身につけています。そんなことからもわかるとおり、現代はプロの目から見ても「お酒が楽しい時代」だということ。でも、それだけ幅が広がったということは、時代に見合った「新しいルール」も必要になってきます。そこで本書では、長らく受け継がれてきた常識に敬意を払いつつも、時代の変化とともに続々と生まれている「お酒の新常識」を紹介しているわけです。きょうはそのなかから、気になっていた人も少なくないであろう、あるお酒についてのエピソードをご紹介したいと思います。■ロマネ・コンティは高級だけどまずい?「ロマネ・コンティ」といえば、世界最高峰の赤ワインとして有名。そのヴィンテージや古酒の価格は、1本数百万円になることもあります。ところが、そんなにおいしいのかと聞かれた場合、答えはかなり難しいのだと著者は記しています。それどころか、自身の経験を拠りどころにするなら、「おいしくないかも……」が本音なのだとか。高級赤ワインといえば、色が濃く、香りが強く、果実味が豊富で酸味も豊か。渋みが十分にあり、とにかく濃厚なイメージではないでしょうか。でもロマネ・コンティは、色が非常に淡く、フルーティというより土のような香りで、どことなく臭い感じも。なにより濃厚さに欠け、味も淡くてパンチがないように感じるのだそうです。いってみれば、「高級な赤ワイン」のセオリーからは外れた味だということ。■ロマネ・コンティは理解するのが難しいしかしロマネ・コンティの魅力は、その淡さにこそあるというのです。ただ淡いだけではなく、香りも味も奥深い。そして、最初のインパクトこそやさしいけれど、最後に残る深く官能的な余韻こそが魅力だということ。その特徴は、ある程度ワインを飲み続けた人にしかわからないのだといいます。とはいえ、高級ワインを飲み続けられる人はほんのひと握り。だからこそ、「特徴を理解するのが難しいワイン」ということになってしまうというわけです。この話からもわかるとおり、そのお酒本来のおいしさを最大限に味わうには、一定の段階を踏んでいなくてはいけないのだと著者はいいます。ある種の“おいしく飲む順番”というものがあるということ。■ソムリエが教える「おいしく飲む順番」まだお酒を飲みなれていない人の多くは、飲みやすいフルーティなタイプ、いわば個性がさほど強くないタイプを好むはず。これが第一段階です。しかしその後、次第にそれでは物足りなくなってきて、濃い味わいのもの、つまりそのお酒の個性が強く打ち出たタイプに進んでいく。これが第二段階。その時々の段階で、「なるほど、これはおいしい」と感じながら、徐々にそのお酒が持つ本来の魅力と意味がわかるようになっていくというのです。しかし、お酒が本当に好きで魅力を知り尽くしている人は、「味の濃いお酒」まで進んだら、その次のステージとして「淡いお酒」へと舞い戻るのだそうです。いってみればこれこそ、ロマネ・コンティの味の意味がわかるようになるのと同じ理屈。インパクトのある味や濃い味の魅力を知り尽くしたのちに、最後はふたたび淡い味わいのお酒に戻り、その淡さの奥にある豊かな底力を楽しむようになる。そういった、奥深い楽しみ方ができるようになるということ。淡くて深い味わいでありながら、飽きずにずっと飲み続けられる、そのお酒ならではの底力を感じられるものこそ、“ツウの到達点”になるというわけです。*どちらかといえばこれは“常識”の範疇に収まる話ですが、他にも目からウロコの“新常識”満載。お気に入りのお酒を飲みながら読んでみれば、心地よい週末が過ごせるかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※友田晶子(2016)『赤ワインは冷やして飲みなさい』青春出版社
2016年05月20日「ときめかなければ、恋愛ではない!」「胸がときめくような男性に出会いたい!」。そんなことを考えていませんか?実はそれ、恋愛がうまくいかない女性に起こりがちな「ときめき中毒」かもしれません。スマホ小説投稿サイト『E★エブリスタ』の調査によると、20代~40代の女性66%が「日常において、もっとときめきがほしい」と回答しています。もちろん適度なときめきは、毎日をワクワクさせてくれるでしょう。しかし、恋愛にときめきを求めすぎると、幸せからどんどん遠ざかってしまうのです。『なぜときめくほどに恋愛はうまくいかないのか』(立川ルリ子著、SBクリエイティブ)では、恋愛コーチとして多くの女性の悩みを解決してきた著者が、30代女性の恋愛を成功させる方法を指南してくれます。今回は、これから彼氏を見つけたい人、気になる人と距離を近づけたい人に使える方法をピックアップしました。■ときめきの求めすぎは苦しい恋愛を招く恋愛でときめきを求めすぎている人は、自己肯定感が低くなっているかもしれません。「素敵な彼に好きになってもらえれば、自分を肯定できる」という思いから、ときめきに振り回されてしまうのです。簡単にいえば、「自分が気持ちよくなりたいから、彼のことを振り向かせたい」という、自分中心の視点で相手を見ているということ。すると、相手に「自分の心をもっと満たしてほしい」と求めるようになってしまいます。たとえば、「出会ったころは毎日何度もメールをくれていたのに、最近は1日1回しかこない」という悩みは、「何度もメールをもらっていたときのときめき」が忘れられないために起こっています。ささいなことでネガティブな妄想が広がっていくのも、ときめき中毒になり、相手のことが見えなくなっている証拠です。これでは自分も辛くなるだけですよね。そんな状態を抜け出すには、視点を「自分」ではなく「彼」に移すことが必要。「私だったらこうする」という立場ではなく、彼の視点に立って物を見ることがなにより大切なのです。■相手のスペック重視では幸せになれない「なかなかいい出会いがない!」と嘆いている人も多いでしょう。それは自分だけの視点から相手を探そうとしているから。「イケメンが好き」「生活レベルを落としたくないから、収入の高い人と出会いたい」など、スペックの高い男性を探すのは、ただ自分の足りないものを満たし、不安を解消しようとしているにすぎません。それでは幸せな気持ちで満たされることはないのです。自分が穏やかで充実した気持ちになれる相手を見つけたいなら、スペック重視ではなく、「自分の理想のライフスタイル」を軸にすることが大切。「休日は自然の多い場所に出かける」「お互いの仕事帰りに待ち合わせて食材を買い、家で語り合いながら食事をする」など、自分らしさを発揮できて、晴れやかな気持ちで過ごせる、理想の環境をイメージしてみてください。そういった視点から見ると、相性のいい男性と出会える可能性が高まります。スピード婚するカップルにはライフスタイルが合うもの同士の組み合わせが多いそうですよ。一時のときめきに振り回されるのではなく、相手とのコミュニケーションのなかで、幸せな感情が湧き出てくる相手こそ、自分にふさわしい相手なのです。■2回目の有無は距離感のつかみ方次第!出会って間もない関係を進展させられるかどうかは、相手との距離感のつかみ方が鍵。自分の視点ではなく、彼の視点から距離感をつかめれば、反応は大きく変わります。自分中心の視点だと「彼が自分のことを好きかどうか」が気になり、相手の気持ちを試すようなメールを送ったり、いきなりふたりきりでのデートに誘ったりしてしまいます。しかしこれでは相手に「重い」という印象を与えるだけ。たとえば飲み会で会った男性が気になる場合、彼はあなたのことを覚えているとは限りません。それなのにいきなり親しげなメールをすれば相手は返信すらしないかもしれません。顔の見えないやりとりだからこそ「彼の視点」に立つことが大切なのです。一度しか会っていない相手にメールをするなら「彼は自分のことを覚えていない」「彼は今最高に忙しいはず」ということを念頭におくくらいの配慮が必要。「相手がもう一度自分に会いたいと思うメールはどんなものか?」と彼の視点に立って考えてみましょう。*相手のことを考えているつもりでも、いつの間にか自分中心になってしまっていることがあるかもしれません。がんばっているはずなのになぜか恋愛がうまくいかないという人は、自分が「ときめき中毒」になっていないか振り返ってみましょう。(文/平野鞠) 【参考】※立川ルリ子(2016)『なぜときめくほどに恋愛はうまくいかないのか』SBクリエイティブ※女性の約7割が“ときめき”不足!?“ときめき”の価値は平均3.6万円 20代~40代女性の“ときめき”の実態とは?-株式会社エブリスタ
2016年05月20日『人間は、人を助けるようにできている』(服部匡志著、あさ出版)の著者は、開業することなく、どこの大学や病院にも属してもいないというフリーの眼科医。14年にわたり、ベトナムで無償の医療活動を続けているのだといいます。その取り組みは、テレビ東京系列のドキュメンタリー番組『カンブリア宮殿』でも取り上げられたばかりなので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。「フリーの眼科医」というポジションを貫き続ける人がいること自体が驚きですが、1ヶ月の半分は、北は盛岡から南は鹿児島まで、約10ヶ所の病院を渡り歩き、診察と手術を行っているのだとか。そして残りの半分は、ベトナムの首都ハノイと地方に足を運び、貧しい人たちのために働いているというのです。自宅で丸一日過ごせるのは年に1日か2日だけだという話にも、十分納得できます。■お金はすべて「持ち出し」そういう話を聞くと、つい頭をよぎるのは「どうやって生活しているの?」という純粋な疑問ですが、その答えは意外なくらいにシンプルでストレート。つまりは日本全国の病院で働いて得た収入で、家族の生活はもちろんのこと、ベトナムでの活動費用もすべてまかなっているということ。しかもベトナムでは、患者さんからは一切の金銭を受け取らず、渡航費、滞在費、医療品代などもすべて持ち出しなのだとか。■医者は特別な存在じゃない「白衣が患者さんに与える威圧感が好きじゃないから、もう何年も白衣を着ていない」「権力、金銭欲、嫉妬、憎しみ、裏切りが渦巻く環境で、そんなふうに染まるのが嫌だった」「変なプライドなんか必要ない。困っている人がいたら助けてあげたい」「目指すは“医者らしくない医者”。医者は特別な存在じゃない」著者の言葉はそれぞれが真っ当なもので、だからこそ強い説得力があります。とはいえ、ここまで献身的になれるということにはただ驚くばかり。近年は「人のためになる」ことの価値が再確認されていますが、そうはいっても簡単にできることではないはずです。■父親を侮辱した医師の言葉著者が医師になる決意をしたのは16歳のころ。がんのためみるみる衰弱していく父親についての、医師と看護師との会話を偶然耳にしてしまったことがきっかけだったのだといいます。「82号室のあのクランケ(患者)は文句ばかりいって本当にうるさいやつだ。そうせもうすぐ死ぬのに」病気を治して命を助ける存在だと思っていた医師が、死と戦っている父親を侮辱した……。その怒りが、「こんな医者が世の中にはびこっていては、世の中は良くならない。だったら僕がいい医者になってやる。そして病気で苦しんでいる人を救いたい」という思いにつながったということ。そして結果的には、1万人以上のベトナム人を、無報酬で失明から救ってきたというわけです。父親の遺書には「お母ちゃんを大切にしろ。人に負けるな。努力しろ。人のために生きろ」と書かれていたそうですが、その約束を守ったことになります。■大切なのはいまこの瞬間!そんな著者が尊敬しているのは、マザー・テレサ。少しでも彼女に近づきたいと思ってきたそうですが、それでもまだ半人前だと、ストイックに自身を評価しています。しかしそれでも、暗く沈んだ顔をした患者さんや、その家族の人たちに笑顔が戻る瞬間に立ち会えることが、最高の幸せなのだといいます。患者さんたちのこれからの人生に関わっていくことはできないけれど、ただ、この瞬間のために活動しているのかもしれないとも。大切なのは、いま、この瞬間。ひとりひとりが、それぞれの場所で、「いまできること」を精一杯やること。著者だけではなく、どんな環境で、どんな立場にいようとも、すべての人にとってそんな姿勢が大切だという考え方です。*これらのエピソードからもわかるとおり、著者はとても純粋な人柄。お世辞にも器用なタイプとはいえないかもしれませんが、だからこそ、多くの人が忘れかけていたことを再確認させてもくれます。人間関係に疲れた人、人生に迷っている人、挫折した人などに、強い力を与えてくれる一冊だといえます。ぜひ読んでみてください。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※服部匡志(2015)『人間は、人を助けるようにできている』あさ出版
2016年05月19日赤ちゃんの出生に関するショッキングなデータがあります。現在、わが国で誕生する赤ちゃんのおよそ10人に1人が低体重児だというのです。これは、厚生労働省が発表している人口動態統計が明らかにしているもの。1980年代から、その割合は増加し続けています。その原因を“貧血”との関連で説明しているのが、臨床医である著者による『貧血大国・日本 放置されてきた国民病の原因と対策』(山本佳奈著、光文社)。本書から、身近にありながらあまり知られていない「妊婦と貧血」について取り上げてみます。■母親の貧血は「低出生時体重児リスク」に「低出生体重児」とは、生まれたときの体重が2,500g未満の赤ちゃんのこと。10人に1人という数字は、日本が貧しかった1951年当時のデータにくらべ、3割も高い数字です。小さく生まれた赤ちゃんは身体の機能が未熟で、さまざまな合併症が起こりやすくなると著者は指摘します。たとえば出生直後には、新生児仮死、呼吸窮迫症候群、動脈管開存症、低血糖など。その後数週間の間には、慢性肺疾患、無呼吸発作、貧血、黄疸など。こうした合併症で亡くなるケースもあるとのこと。そして、その原因のひとつと考えられるのが、母親の貧血です。妊娠中期の母親が貧血だった妊婦が低出生時体重児を出生するリスクは、そうでない場合よりも1.29倍高まったとする研究も。米血液学会は「妊娠中期の母親が貧血の場合、早産や低出生体重児の危険性が高まる」と明言しています。これほどのリスクがあるわけですが、2005年に虎ノ門病院の医師らが発表したデータによれば、50歳未満の日本人女性の20%超が貧血。さらに、妊婦の30~40%が貧血状態にあるというのです。これは、先進国の平均18%よりも、どちらかといえば発展途上国の平均56%に近い数字だと著者は指摘します。■ダイエットで女性に不足しがちな「鉄分」いくつかのタイプの貧血のうち、女性にとくに多いのは鉄分不足による「鉄欠乏性貧血」。しかし、毎日の排泄や汗などで流れ出ていく鉄分に加え、女性は月経血としてひと月あたり45mlの血液を排出しています。そのため毎日1.75mgの鉄を摂らなくてはならず、鉄分不足になりがちです。さらに著者は、近年のダイエットブームも女性の貧血の原因のひとつになっているといいます。食べることを控えるダイエットでは、鉄分を多く含む肉や魚などを避ける傾向があり、食事量自体も減らしがち。結果、十分な鉄分を摂ることができなくなってしまうのです。さらに、妊娠すると、赤ちゃんに栄養や酸素を送るためにより多くの血液が必要になりますし、分娩時の出血に備えて身体が血液を多めにつくろうとします。妊婦が貧血になりやすいのは、そのためです。■妊娠してから鉄剤を飲んでも間に合わない妊娠初期にはかならず血液検査を行い、貧血だった場合、鉄剤で鉄分を補うことになります。実際、鉄剤を服用することで貧血のリスクが減り、低出生体重児も減ったとする研究結果も発表されているそう。しかし、その上で著者は「妊娠してからでは遅い」と指摘します。鉄剤を服用しても、貧血を改善するためには飲み始めてから最低でも1~2ヵ月必要です。この時期がちょうど赤ちゃんの循環器系や呼吸器系、消化器系などの臓器がつくられ、働き始める時期にあたるため、妊娠に気づいてからでは「胎児の発達にもっとも重要な時期には間に合わない」というのです。さらに、妊娠初期はおなかの赤ちゃんがもっとも薬品に影響を受けやすい時期。奇形などのリスクを避けるため、安全性が確認されている薬剤以外は服用できないこともあり、鉄剤に頼る考え方は改めるべきだと著者は強く警鐘を鳴らしています。■貧血対策の基本は「一にも二にも食事」!そうした意味でも、妊娠する前からの貧血対策がとても重要。なかでも、鉄欠乏性貧血について著者は「対策の基本は、一にも二にも食事です」と断言しています。まずは、身体に吸収されやすい「ヘム鉄」を積極的に摂取すること。これは肉や魚、卵、乳製品など動物性食品に多く含まれています。吸収率では劣る「非ヘム鉄」は野菜や果物に多く含まれますが、こちらはビタミンCと併せて摂ることで吸収効率がアップするそうです。さらに、著者がおすすめするのは「食べ方」を工夫すること。鉄鍋を使うと、同じ料理をアルミ鍋や土鍋で料理した場合にくらべて、鉄の摂取量が1.5~2倍に増えたという研究結果もあるとか。また、煮物やスープの鍋に入れておくだけで料理中の鉄分を増やすことができる「Lucky Iron Fish」というグッズも販売されています。*基本的な貧血のメカニズムに加え、子どもや高齢者、中高生、アスリートといったさまざまな属性の人に貧血が与える影響、鉄分を効率よく摂る方法などがていねいに解説された本書は、まさに貧血に関する教科書。日本人女性の5人に1人が当てはまる貧血に、改めて向き合ってみる必要がありそうです。(文/よりみちこ) 【参考】※山本佳奈(2016)『貧血大国・日本 放置されてきた国民病の原因と対策』光文社
2016年05月19日タイトルからわかるとおり、『やるべきことがみるみる片づく 東大ドクター流やる気と集中力を引き出す技術』(森田敏宏著、クロスメディア・パブリッシング)の著者は、地方の新設校から初めて最難関の東京大学理科三類に合格したという実績の持ち主。そればかりか、心臓病の専門医として、東大病院の心臓カテーテル手術件数を10年間で50例から600例まで、10倍以上に増やしたのだそうです。また、次世代リハビリとして加圧トレーニングを東大病院に導入し、いまやすっかりおなじみの加圧ブームを起こした仕掛け人でもあります。つまり本書では、そんなキャリアを生み出すに至った「集中力」の活かし方が紹介されているわけです。きょうはそのなかから、「仕事と向き合う」3つの視点に焦点を当ててみましょう。■仕事で重要な3つのポイント人によって差があるとはいえ、仕事に費やす時間は、1日24時間のうち最低でも8時間。つまり私たちは、人生の3分の1以上は働いていることになるわけです。それだけ多くの時間を費やす仕事と真剣に向き合うということは、当然ながらとても大切。そして著者によれば、仕事について考える際、「自分にとってなにが重要なのか」を考えるには、次の3つのポイントが大きな意味を持つのだそうです。・お金・キャリア・好きなこと(1)お金・・・いくら稼ぎたいのか?世の中の働く人を見てみると、「特にやりたい仕事ではないけれど、お金を稼ぐために働いている」というケースが大半でしょう。それどころか、会社に勤めることもなく、株式の売買など、投資だけでお金を稼いで生活している人もいます。さて、みなさんが働いているのは、お金を稼ぐためでしょうか?また、「年収1000万円稼ぎたい」など、具体的な目標はあるでしょうか?(2)キャリア・・・どんな人になりたいのか?知識や経験を積み重ね、地位を確立することによって、収入はアップしていくもの。つまり、それがキャリアです。では、働くことで社会的に立派な地位を確立することが、みなさんにとっては大切なことでしょうか?「起業して経営者になりたい」など、具体的に目指したい姿はあるでしょうか?(3)好きなこと・・・なによりも大切にしたいことは?これは、収入や地位に関係なく、心底好きで打ち込めること。たとえば動物が好きな人が大学を卒業し、収入のいい企業を蹴ってまで動物園に就職して働いているというようなケースもそのひとつ。このように、なによりも優先したい、本当に好きなことがあるでしょうか?■3つの視点で考えることが大切!こうした3つの視点で考えると、自分にとって本当に重要なことが見えてくると著者はいいます。たとえば著者が、東大病院で毎日のように心臓カテーテル手術を行い、患者の治療をしてきたのは、小学生のころに病気で母親を亡くしたから。そんな経験から、「医者になって多くの人の命を救いたい」と思ったことがきっかけだったのだそうです。ところがあるとき、治療を施した患者さんがみんな元気で長生きしているわけではないことを実感したのだとか。そもそも心臓カテーテル手術を受ける人は、健康状態がよくないもの。そこで心臓を治療するよりも、もっと前段階で、「心臓の病気にならないような健康で幸せに生きられる人を増やしたい」と思い、加圧トレーニングを取り入れた健康法を広めようと考えたというのです。■10年後20年後をイメージするこのように、一度じっくり自分と見つめ合う機会をつくると、そこから見えてくることがあるというわけです。いまの仕事をずっと続けた場合、続けなかった場合、10年後、20年後、定年を迎えたとき、果たしてどうなっているかをイメージしてみることが大切だということ。著者は社会人の方から、「東大を再受験したい」という相談をよく受けるのだそうです。しかし、これもよく考える必要があると主張しています。理由は明白で、18歳で東大を受験するのと、30歳で受験するのとでは意味合いがまったく違うから。さらにいえば、40歳、50歳、60歳と年齢が変わるだけで、受験する意味合いもそれぞれ変わってくるわけです。だからこそ、「それを行うことに本当にメリットがあるのか」としっかり考える必要があるということ。ひとりひとりの目の前には、多くの選択肢があるもの。しかし、そのなかから選べるものは限られているわけです。そこで、その道を選んだとき、明るい未来をイメージできるかが重要な意味を持つことになるのです。*ここからも推測できるように、「やる気」と「集中力」を基本テーマとしながらも、視野は大きく広がっています。そのぶん、地に足のついた説得力を感じることができるのです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※森田敏宏(2016)『やるべきことがみるみる片づく 東大ドクター流やる気と集中力を引き出す技術』クロスメディア・パブリッシング
2016年05月18日『もうこれで英語に挫折しない――マッキンゼーで14年間活躍できた私は英語をどう身につけたか』(赤羽雄二著、祥伝社)は、『ゼロ秒思考』など、マッキンゼーで培ってきたキャリアを軸に多くの書籍を生み出してきた著者の新刊。タイトルからもわかるとおり、今回は「英語学習法」をテーマにしています。いうまでもなく英語学習の最大の問題点は、長く続けることの難しさ。しかし著者は本書において、「英語の勉強は、細く長く続けられなくて当然」だといい切っています。■3ヶ月だけ区切って英語の勉強をほとんどの日本人は、中学高校の6年間にわたって英語の勉強をしてきたはず。にもかかわらず、普通はそれだけでは使いものにならないというのが現実です。なぜなら、英語ができなくても、さしあたりなにも困らないから。日本語だけで完結してしまえるし、ほとんどの場合はキャリアアップにもあまり関係してこないでしょう。つまりそんな状況下で、英語の勉強を細く長く続けようとしてもうまくいかないのは当然だということです。そこで著者が提案しているのは、もっと短期、たとえば3ヶ月だけ区切って英語を勉強すること。長く続けようと思うとつらくなるけれど、3ヶ月ならなんとか集中力も続くだろうという考え方です。そもそもビジネスパーソンは、普段から仕事や生活に追われているもの。やるべきことが常にたまっているわけですから、そんななかで英語の勉強をしようということは、それ自体に無理があるわけです。■時間を決めれば学習効率が高まる「いつまでになにをやるべきか」がよくわかっていなければ、集中してやり遂げることもできるはずがありません。でも、ずっと続けるのではなく、3ヶ月集中したら、1ヶ月休むようにする。そうすれば、日々の仕事、生活のなかに英語学習を組み込むことができるという発想。1ヶ月の休みの間にたまったことを整理すれば、気分的にもすっきりするはず。それに時間を決めれば、「英語の勉強をしなくては」と常に思い続け、しかし実際はできずに後悔するというようなことがなくなっていくといいます。3ヶ月は集中するけれど、その後1ヶ月は休憩し、余裕を持つというほうが、精神衛生上もいいわけです。また、集中もしやすくなるそうです。■仕事のプロジェクトと同じペース「たった3ヶ月だけ勉強したってダメだろう」と思われるかもしれませんが、3ヶ月集中し、本気で英語の勉強をすると、かなりレベルアップするのだと著者はいいます。それに仕事の現場で3ヶ月のプロジェクトはよくあるもの。ビジネスパーソンにとっては慣れたペースでもあるはずなので、プロジェクトの一環としてとらえれば、「そのくらいならできるだろう」という気持ちになりやすく、普段の習慣でやり続けられるわけです。なお、3ヶ月の間にやるべきこととしては、次のようなことが挙げられるといいます。(1)動画を視聴する3ヶ月間、毎晩1時間ずつ、英語の動画を真剣に見る。YouTubeでもCNNニュースでもドラマでも、自分が好きな分野、関心の強い分野に関して見るわけです。好きな分野だと好奇心が湧くので、楽しく知識が増え、言葉にも馴染みが生まれ、人の名前も耳で聞き分けられるようになるので続きやすいといいます。(2)英語記事を見る、タイトルをA4メモに書く好きな分野、関心の強い分野でのキーワードで検索し、出てくる英語記事を100回くらい眺めてみるといいそうです。さらにそれらのキーワードをGoogleアラートに登録し、毎朝流れてくる記事を眺める。それが習慣になると、なんとなく記事の内容がわかってくるので、タイトルや見出しなどをA4用紙に書き留めておきましょう。(3)動画を見ながらシャドーイング好きな分野、関心の強い分野の記事、動画ばかりを読んだり見たりしていると、だんだんリズムが頭に入ってくるもの。少しずつ、言葉が聞き取れるようになってくるわけです。その段階で、次にはじめるべきはシャドーイング。シャドーイングとは、英語を聞きながら、同時に小声で同じ言葉をいってみること。日本語にくらべて英語のシャドーイングは難しくなりますが、一般的に演説やインタビュー番組はわかりやすく、ゆっくり発音しているものが多いのだとか。それを何度も聞き返しながら、耳と口とを鳴らしていくわけです。■1ヶ月休むとまた勉強したくなる3ヶ月集中して勉強したら、1ヶ月あえて休むことに。気分も明るくなり余裕もできるので、気分よく、いろんなことに取り組めるといいます。しかし1ヶ月休むと、英語を勉強したくなる気持ちがまた湧いてくるので、そうなればしめたもの。1ヶ月の最後の週には、次の3ヶ月12週間、なにを目標にしてどういうステップで勉強するかをA41ページにまとめておくとよいそうです。そうすれば、次の3ヶ月集中して勉強する意欲が強く湧いてくるということ。*たしかにこういうやり方なら、続けるのが難しい英語学習も続けていけそうです。本書ではさらに具体的な勉強法が紹介されているので、きっとチャレンジしやすいはず。英語を身につけたい方は、ぜひ読んでみてください。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※赤羽雄二(2016)『もうこれで英語に挫折しない――マッキンゼーで14年間活躍できた私は英語をどう身につけたか』祥伝社
2016年05月18日最大震度7を2回観測した熊本地震から、1ヶ月あまりが経ちました。怪我を負ったり、大切なものを失ったり、いまだ避難所での生活を余儀なくされている方もおり、当地では余震が観測される状況も続いています。そんななか、震災後1ヶ月というこの時期は、心のケアに改めて目が向けられはじめるタイミングでもあります。5月16日の報道で、熊本市教育委員会が市立小中学校全137校の計6万1,039人を対象にアンケートを実施、カウンセリングが必要と思われる児童・生徒が2,143人(3.5%)に上ったとの発表が伝えられました。今後、各校を巡回する臨床心理士を増員するなどの対応が進められる予定です。そして、子どもたちを笑顔にする“物語の力”が心のケアに果たす役割も、決して小さくはありません。東日本大震災から丸5年のことし2016年3月11日に刊行された『生きてごらん、大丈夫子どもと本と、出会いをつむぐ』(佐々波幸子著、かもがわ出版)には、東日本大震災後のできごとを追った文章が取り上げられています。降りかかる大きな試練に“物語の力”が果たす役割とはなにか。本書から読みとります。■震災のストレスを絵本が癒やした本書は、朝日新聞の記者である著者・佐々波さんが書き、2008年以降に同紙に掲載された“子どもと本”にまつわる記事をまとめたもの。詩人のまど・みちおさんや児童書作家の岡田淳さん、上橋菜穂子さんといった児童文学の担い手へのインタビュー、ブックスタート活動や読み聞かせの現場を取材した記事などに加えて、東日本大震災以降に同紙に掲載された、被災地での活動を伝えた記事も採録されています。被災地に絵本を届ける「3.11絵本プロジェクトいわて」の記事は、その一環で2011年4月27日に紙面に掲載されたもの。震災からひと月あまりが経った4月16日、プロジェクトのメンバーが岩手県大船渡市内の保育所を訪れたときの様子が記されています。当時、道の両脇には打ち上げられた漁船やがれきの山。風が吹けば車の破片や家の断熱材が飛び散る恐れもあり、外で遊ぶことができない園児たち、そして親たちにもストレスがたまっていました。この日、保育所に運び込まれた絵本は400冊。同プロジェクトの「被災地の子どもたちに絵本を」との呼びかけに応えて全国から寄せられたものでした。絵本『はらぺこあおむし』の読み聞かせに身を乗り出して聞き入り、にぎやかに声を上げて楽しんだ園児たち。「好きな本を選んでいいですよ」と声をかけられ、うれしそうに絵本に一斉に駆け寄りました。その日、子どもたちは絵本を持ち帰り、震災以来途絶えていた物語に親しむ時間を久しぶりに持つことができたのです。■本は食糧や毛布と同じくらい必要震災後1ヶ月の間に、同プロジェクトはこうして27の避難所や保育所、小学校に計1万2,700冊の本を提供し、絵本を乗せた「えほんカー」を走らせたそう。同プロジェクトの活動は現在も続いています。記事は、プロジェクトの呼びかけ人で児童図書編集者・末盛千枝子さんのこんな言葉で結ばれています。「遠くにちらっと希望や夢が見えていないと、人はなかなか歩き出せない。そういう力が絵本にはあると思うんです」このエピソードをはじめ、本書にまとめられた40本ほどの記事の端々から、生きる力を与えてくれる“物語の力”の存在を読みとることができます。2009年9月の朝日新聞「ひと」欄に掲載された国際児童図書評議会のパトリシア・アルダナ会長(当時)の記事では、洪水で両親を失い丸2日言葉が出なかったベネズエラの少年が、読んでもらった絵本を抱えて帰った翌朝、言葉を取り戻したエピソードが紹介されています。アルダナ氏は「本には凍りついた感情をとかす力がある。食糧や毛布と同じように速く届けることが必要なんです」と語ります。■本の主人公にふれることの大切さ“物語の力”は、子どもひとりひとりが生活のなかで直面する試練にもはたらきかけます。2008年12月16日に紙面に掲載されたインタビュー記事。東京子ども図書館理事長で翻訳家の松岡享子さんは、いじめに苦しむ子どもに向けてこう語りかけます。「いましか視野に入っていないと、とてもつらい。友だちのひと言で心が埋め尽くされてしまう。乗り越えるには、ちょっと離れて自分を見ることが必要です。さまざまな本の主人公の生き方にふれることで、自分に降りかかったことを複眼的に見られるようになってきます」*人生には、さまざまな試練が訪れます。多くの人が一度に巻き込まれる災害時はとくに、飢えや怪我など生命に直接かかわる被害へのいち早い対応が第一です。そして1ヶ月という時間が経ったいま、今度は目に見えない心の傷にも思いをいたすことが求められるのではないでしょうか。本書のタイトルは、児童文学の評論家で『ゲド戦記』などの翻訳でも知られる清水真砂子さんが2009年、34年間勤めた青山学院女子短大での最終講義で語った、「すぐれた子どもの本は『大きくなるって楽しいことだよ。生きてごらん、大丈夫』と背中を押してくれるもの」というメッセージから採られています。子どもたちがどんな出来事にも負けない心を育むために、いま一度立ち止まって、子どもの本が持つ奥深さ、“物語の力”を見つめ直す――再び起こってしまった災害からの復興を願うとき、そのきっかけにしたい1冊です。(文/よりみちこ) 【参考】※佐々波幸子(2016)『生きてごらん、大丈夫子どもと本と、出会いをつむぐ』かもがわ出版
2016年05月18日誰でも、実年齢より若く見られるとうれしいものですよね。スキンケアやダイエットなどで、アンチエイジングに励む人も多いでしょう。シニア向け宿泊予約サービスを提供する株式会社ゆこゆこが50代以上の男女に行った「シニアの年齢意識に関する調査」によると、「周囲からいわれてうれしい言葉」の第1位は『若々しい』で、男性の50.2%、女性の52.3%の人がこういわれたいと思っているそう。現代では女性だけでなく、男性にとっても、「どうやって若さを保つか」は気になるテーマなのです。アンチエイジングというと見た目のケアに注目しがちですが、若さを保つには内面のケアもかなり重要。年齢を重ねても新しいことに挑戦したり、毎日イキイキ暮らしたりしている人は素敵ですよね。そんな人を目指すなら、脳を鍛えることから始めましょう! 日常にちょっとした習慣を組み込めば、脳の老化を防ぎ、意欲的に過ごすことができるのです。『生きるのが楽しくなる脳に効く言葉』(中野信子著、セブン&アイ出版)では、メディアに多数出演する脳科学者の著者が「脳の生かし方」について教えてくれます。今回はそのなかから、年齢に負けない若々しい脳を保つ方法を5つピックアップしました。まだ若いと思っている人も、いまのうちに「脳を鍛える習慣」を身につけておきましょう!■1:午前中に脳トレをする脳の前頭前野を鍛えると、若返りにつながります。特に、脳がもっとも活発に働く午前中に「音読」や「計算」を行うと効果的。最近では大人のための音読や計算の本がたくさん出版されていますよね。それらを数分でも行う習慣をつけることが、脳の活性化の鍵となるのです。脳の仕組みでは、5分間集中するとその後は30分でも1時間でも続けられるといいます。毎日の習慣にすれば、仕事や勉強もはかどるようになるでしょう。■2:他人の役に立つことをする自分がしたことが誰かの役に立ち、褒められることによって、脳からドーパミンが大量に分泌されるそうです。ドーパミンは”快楽の分子”といわれていて、チョコレートを食べることから、セックスをすることまでさまざまな行為によって分泌される物質です。そして一説では、性的快楽よりも誰かの役に立ったときに感じる「社会的快楽」の方がずっと上だといわれるほど、人に認められることは快感なのです。そして快感によって脳内のドーパミンの量が多くなると、なにかに夢中になる気持ちが高まります。これが「いつまでも意欲的で若々しい人」という印象を与えることにつながるわけです。実際に誰かから声に出して褒められなかったとしても、「自分のやっていることが人のためになっている」と考えて行動すると、些細なことでも意欲がアップするはずです。■3:記憶するときは他の情報と関連させる年齢を重ねるにつれ、「記憶力がなくなった」「人の顔と名前が一致しない」など、脳の衰えを感じることがあるでしょう。しかし、知識など、勉強して蓄積される「結晶性知能」という能力は死ぬまで向上するといわれています。記憶する際にはポイントがあります。1つ目は条件をつけて情報を覚える「緻密化」。たとえば、「美容師の鈴木さん」などと、条件をリンクさせて覚えること。2つ目は、知り合いに似ているなどのつながりで覚える「ファミリアティ」。そして3つ目はイメージした絵と一緒に情報として覚える「イメージ」です。ただやみくもに暗記しようとするのではなく、なにかと関連させることでストレスなく記憶することができます。■4:適度に難しいことにチャレンジする大人の脳内でも新しい神経細胞が生まれることが、研究によって明らかになっています。しかし、大人の脳内で生まれた神経細胞は刺激がなければすぐに死んでしまうのです。そのため、脳に適度に困難な課題を与えて刺激することが必要。適切な刺激が加われば、新しく生まれた細胞は生き残り、脳内のネットワークの一部として機能することができます。筋トレのように、毎日少しずつ適度な刺激を加えることで脳は育っていきます。自分ができるレベルより少し上を狙ってチャレンジすることを続けましょう。■5:楽しい妄想をするドーパミンは楽しい妄想でも分泌されます。特に素敵な恋愛を妄想すると、そのときめきによってドーパミンの分泌を促します。憧れの芸能人との恋愛を妄想するもよし、ドラマの主人公になりきるもよし。妄想ならお金もかからず、どこでもできるので電車の中や寝る前などにやってみては?*「最近なんだかやる気が出ない」、「記憶力が下がった」という人は、できることから脳のアンチエイジングをはじめてみてください。この本では「脳を使いこなす」「脳を喜ばせる」「脳を育てる」「脳をだます」という4つの章にわけて、脳を活用する方法が紹介されています。日常にちょっとしたポイントを取り入れて、脳を活性化させましょう!(文/平野鞠) 【参考】※中野信子(2016)『生きるのが楽しくなる脳に効く言葉』セブン&アイ出版※シニアの年齢意識に関する調査—株式会社ゆこゆこ
2016年05月18日『「世界」で働く。 アフリカで起業し、50社を経営する僕が大切にしていること』(金城拓真著、日本実業出版社)の著者は、タンザニア・ザンビア・マダガスカル・ベナン・ニジェール・ブルキナファソ・コートジボワール・カメルーン・トーゴと、アフリカ9ヶ国で50社以上の会社を経営しているという起業家。金取引、農場経営、不動産、タクシー、運送業、金鉱山運営、ホテル、中国製品の卸売、土地開発など業種もさまざまだといいますが、「アフリカでビジネスをする際に、一番気をつけなければならないのは、相手の裏切りです」(20ページより)という言葉からも想像できるとおり、そのビジネスは一筋縄ではいかないもののようです。しかも「裏切り」に気をつけなければならないのだとしたら、お金のトラブルも少なくなさそう。そこできょうは同書のなかから、お金についての考え方を引き出してみたいと思います。■日本人はお金に盲目的になりがち日本人のいちばんの欠点は、お金を絶対視していることだと著者はいいます。もちろんお金は重要ですし、なければご飯も食べられないことになります。しかし多くの方は、お金に対して信仰に近い念を抱いているというのです。そして多くの場合、盲目的になりがちでもあるといいます。ところが著者は、「すべての物事は俯瞰的に、客観的に捉えなければいけない」と考えているのだそうです。■海外では「お金で解決できない」また、「お金でなんでも解決できる世界は日本のなかだけ」と思っておいたほうがいいともいいます。外国に出て、お金で物事を解決しようとすると、「私からどんどんボッタくってください」と喧伝しているようなものだというのです。しかしそうなると、よからぬ輩がその人のもとに現れるのは時間の問題だということ。それは、日本人が海外でトラブルにあう原因のひとつではないかとも著者は考えているのだそうです。にもかかわらず、多くの日本人はお金で物事を解決しようとするもの。もし取引において不安な部分があれば「専門家に委託しよう」「この規模の会社なら委託しても間違いないはずだ」「これだけの金額を積んだのだから、大丈夫なはずだ」というように考える企業が多いというのです。しかし当然ながらそれは、著者の目から見ると「詐欺をしてください」といっているようなもの。もちろん、業務を委託すること自体が悪いことだというわけではないでしょう。ただし、相手が誰でもいいというわけではないということ。取引相手を自分の目で見て、自分の感覚に従って取引を決めたり、業務を依頼したりすべきだというわけです。気になってしまいがちな会社の規模や金額は、そのあとに見ればいいという考え方なのです。■お金を出してしまったらおしまい「騙し」や「裏切り」と表裏一体の環境に身を置いているだけに、自分と取引をしている人を見ずに、取引をしている人の外側で判断するなんて理解できないと著者はいいます。ビジネスはある意味においてマネーゲームであり、お金で解決しなければならないことも多くあります。しかし、それと同じくらいの割合で、「お金を出してしまったら間違うビジネス(相手にたかられるような結末を迎えてしまうビジネス)もある」というのです。実際のところ、著者が尊敬しているビジネスパーソンも、お金に関してこのようにシビアな感覚を持っている人ばかりだといいます。そして、実際に大成功されている方も多いのだとか。また、いま成功していなかったとしても、将来的に大成功するのはこのようなタイプだとも感じているそうです。そして著者は、こうもいうのです。この先、日本人が世界で戦っていくためには、こうしたお金の感覚を養うのも大切なことかもしれないと。*たしかに、著者のビジネスフィールドであるアフリカの現状を、そのままのかたちで日本に置き換えるのは現実的ではないかもしれません。著者の目に映っているアフリカのビジネスシーンと日本のそれとの間には、大きな隔たりがあるのも事実だからです。しかし、それはあくまで「現時点においては」の話にすぎません。世界が加速度的にグローバル化している状況下においては、予想よりも早く、彼らの価値観を共有しなければならないときが訪れる可能性もあります。つまり未来に焦点を当てた場合、本書はぜひとも読んでおくべき一冊であるといえるのです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※金城拓真(2016)『「世界」で働く。 アフリカで起業し、50社を経営する僕が大切にしていること』日本実業出版社
2016年05月16日『あの世へ逝く力』(小林玖仁男著、幻冬舎)は、著者のショッキングな告白からスタートします。「間質性肺炎」という進行性の難病により、早ければ2年半ほどで死に至ると宣告を受けたというのです。つまり本書は、死の宣告以来書きつづっていた、自分の心の対話や葛藤、本音を洗いざらいまとめ、あとに続く人たちのために遺したもの。いわば、“死の前に整えたい気持ちの準備書”だといいます。■「死んだ気になって」の真実とは人はよく、「死んだ気になって」という表現を使ったり、思ったりするもの。しかし死ぬ身になってから、この「死んだ気」の意味が変わったと著者。健康な人の「死んだ気になって」は、ガムシャラ、貪欲、足し算、かけ算、プラス発想。もし絶望の淵にいたとしても、死にたいと思っていたとしても、死ぬ気になったらなんでもできるという、みなぎるパワー全開のイメージだというのです。事実、著者もこのようなプラス軸を駆け抜けてきて、つい最近まで「死んだ気」とはそういうものだと思っていたのだといいます。ところが死ぬ人の「死んだ気になって」の真実とは、冷静沈着、引き算、マイナス発想、ロスをしない、確実性を求める総決算発想。“なにとなにを”“なにからはじめて”確実に仕上げるかということなのだというのです。いままでは、なんでも無限にできるような気でいたからこそ、気持ちだけ先で、後回しになることも多かったのだとか。しかし人生の集大成には(せめて熟年になったら)、死ぬ前の「死んだ気になって」の発想で、確実にやり遂げることも大切だと考えるようになったそうです。そういう気持ちで、未来の残された時間を計算しながら仕上げていくと、ミスやロスや無駄がなくなることに。つまり効率がよくなるわけで、いままでにない新しい発見や、具現性のある答えも出るといいます。■死ぬ前に夢や計画の多くを断捨離そして著者は、「死ぬ前のこの境地は“買い”」だと主張しています。死ぬ人がいうのだから間違いないとも。死の宣告を受けたことで、心の水面に大きな石を投げ込まれ、波紋が広がって一気に気持ちが沈んだといいます。そして以後の11日間を、人生でいちばん長く感じたそうです(この11日間のことも、本書では詳細につづられています)。でも、その期間を過ぎると、気持ちがだんだん沈静化していったのだというのです。潜在意識のなかから、死の覚悟をつくる最適解を選択し、確実に心の波紋を沈めたということ。それは人生の価値観が一気に変わったということでもあり、その変化には驚いたそうです。具体的には、いろいろな夢や計画の多くは断捨離をし、そうしたうえで考えたのは、「自分はなにとなにをやらなければならないのか?」「なにをやりたいのか?」「なにができるのか?」ということ。■最後の願いは「8本」に限定したまず、「事業」「著述業」「身内」「社会奉仕」の4つの方面でやりたいことを2つずつに絞り、順番を決めていったのだそうです。心がけたのは、“絶対に失敗しない”こと。当然のことながら、失敗する時間がないから。確実性をもっとも重要視しなければならないため、大きな夢は描かないということです。そして、できるだけ高い成果はあげたいと思っているとか。ただし、これから先の物差しは「生きてきた証になるかどうか」。こうして「4方面×2つ」で願いは8本。そのなかで、さらに優先順序を決めたそうです。いままで、つまり死を宣告される前までは、時間がいっぱいあって、なんに対してもアグレッシブで、根拠のない自信がみなぎっていて、絶対にできるという気合いで物事に取り組んできたと著者は振り返ります。無駄もあったけれど、元気だったし、無駄は次のエネルギーにもなったというのです。しかしこれからは、日に日にそうはいかなくなっていくわけです。時間も体力も精神力も限られていくからこそ、もっとしたたかに、そろばんずくで考え、効率的に仕上げていかなければならないと考えているのだとか。仕事を「片づける」は、「形づける」「価値づける」ことでありたいと思うのだそうです。*死は誰もが避けて通れないもの。だからこそ、死と真正面から向き合う著者の言葉には強い説得力を感じます。そこにある強さを本書から感じ取れば、自分自身にとっての肥やしになるのではないでしょうか?(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※小林玖仁男(2016)『あの世へ逝く力』幻冬舎
2016年05月16日「いま、幸せですか?」そう聞かれ、YESと即答できる人もいれば、いままさにドン底で幸せなんて感じられないという人もいるでしょう。最新版「世界幸福度ランキング2016」では、日本の幸福度は68カ国中28位。「幸福を感じている人の比率 — 不幸を感じている人の比率」で示される「純粋幸福度」は52という結果になりました。1位のコロンビアの純粋幸福度85と比較すると、日本では幸福を感じている人がかなり少ないのかもしれません。ではどうしたら、もっと幸せを感じられるようになるのでしょうか?『怖れを手ばなすと、あらゆる悩みから自由になる』(大鶴和江著、大和書房)では、人気心理セラピストの著者が、自分の心と向き合い方や、自分が望む人生を生きるための方法を教えてくれています。今回はそのなかから、幸せを感じられる自分になるためのヒントをご紹介したいと思います。■1:他人の期待に応えるために頑張るのはやめる「自分はいつも愛されていて、守られている」。感覚的にそう思える人は人間関係もスムーズで、人生における幸せを手に入れやすい人です。しかし、この感覚が持ちづらい人は、他人の意見に左右されやすく、相手のちょっとした言動に過剰反応して傷ついたりしてしまいます。それに、友人や恋人、家族がいても、なぜか孤独を感じるということも。これでは、せっかくの自分の人生が他人中心になり、自分の感覚や感情もわからなくなってしまうのです。そして誰かの期待に応えるために、がんばり続けなければならなくなってしまいます。がんばって疲れたなと感じたら、他人からどう見られるかではなく、自分がしたいこと、心地よいと思うことをやってみましょう。そうすれば人生はもっとラクになります。自分の心の充足度は自分が感じるもの。うまくいってもいかなくても「よくがんばった」と自分を認めてあげましょう。■2:まずは自分が幸せになれば周りも幸せになる恋愛も仕事もうまくいかせるには、自分を満たすことがなにより大切。自分自身を愛せるようになれれば、人生は好転します。自分のことを肯定し、大切にできると、他人のことも信頼し大切にできます。すると、周りからも自然に愛されるのです。逆に自己否定が強いと、他人を信用することができず結果として人が離れていってしまいます。世の中は、自分の在り方次第で周りとの関係性も変わっていくもの。自分が変われば周りも変わり、自分が幸せなら、周りも幸せになる。だからまずは自分自身を幸せにすることからはじめてみましょう。■3:ネガティブな感情にフタをしないようにする無意識のうちに、自分の感情にフタをするのがくせになっていませんか?日本には、人前で感情を出さないことが美徳とされる文化があります。けれど感情を素直に出すことを我慢していると感覚が麻痺し、悲しいことがあっても泣けなかったり、他人から理不尽な攻撃を受けても「私が悪いんだ」と自分を責めてしまったりと、心に深刻なダメージを受けてしまいます。感情にはポジティブなものとネガティブなものがありますが、どちらも脳が感じる場所は同じ。だからネガティブな感情にフタをしていると、「うれしい」「楽しい」という感情にも鈍感になり、幸せを感じられなくなってしまうのです。それに、ネガティブな感情を見ないようにしていると、逆に意識がそこにフォーカスされ、かえってその感情を強く感じるようになってしまいます。ですから、自分のなかから出てきた感情には「よい・悪い」をつけないことが大切。どちらも人生にとって必要なのです。自分の心の声である感情は、コントロールしようとするのではなく、対話してみましょう。自分の弱さや不完全さを認めるということが、安心感や自分を肯定する力につながります。■4:ないものではなく「あるもの」に目を向ける「あの人みたいにお金持ちになりたい」「あの人みたいに幸せになりたい」……。そう思うとき、心の奥に嫉妬や僻みといったダークな感情が潜んでいることがあります。そうすると「あの人」を見るたびに無意識に自分の無価値感や劣等感を感じてしまうのです。他人と比較して生きる人は幸せにはなれません。幸せは自分の内側で感じるものだからです。そして、多くの人は「ないもの」に意識を向けて、それを埋めようとします。それさえ手に入れば幸せになれると思っても、手に入ればまた次の「ないもの」が欲しくなり、いつまでたっても満足することはできません。「健康だ」「仕事がある」「愛する人がいる」。人は「いまここ」に意識を向けるだけで、どんな状況にあっても幸せを感じることができます。*実は幸せは自分の周りにあり、それに気づくことができるかどうかが幸せを感じられる人、感じられない人の違いなんですね。ネガティブな気持ちになった時こそ、一度自分の身近にある小さな幸せに目を向けてみてはいかがでしょうか。(文/平野鞠) 【参考】※大鶴和江(2016)『怖れを手ばなすと、あらゆる悩みから自由になる』大和書房※最新版「世界幸福度ランキング2016」の結果発表! G7の幸福度が壊滅する中、幸福度1位に輝いたのは?—ハフィントンポスト
2016年05月16日厚生労働省の調査によれば、超高齢化社会に突入した日本では全国民の4人に1人が65歳以上の高齢者です。そのため、介護や看護を理由とした離職・転職者も増えており、平成23年10月~平成24年9月の1年間で10万人を超えています(総務省「就業構造基本調査結果」)。さらには、介護などのために離職し無業者になった人のうち、40歳代で約8割、50歳代で約5割、60歳代で約3割もの人が、もう一度就業を希望しています(総務省「同」)が、現実はなかなか厳しいようです。■介護離職者の再就職後の年収は「4割以上ダウン」再就職者の平均年収は、男性が556.6万円から341.9万円と約4割減ります。女性にいたっては、350.2万円から175.2万円とおよそ半減。たとえ再就職できたとしても収入は大幅に減少するのが実情です。加えて、仕事のある日の介護時間が男性で1.6時間、女性で1.8時間増大するというデータもあります。こうした現状を踏まえて、仕事を続けながら介護を行うために必要な情報を詳細に紹介しているのが、『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと』(翔泳社)です。著者は、20年以上にわたり介護現場などを取材し、離れて暮らす親のケアを支援するNPO法人を設立した太田差惠子さん。そんな実績があるからこそわかる「親の入院~介護」で必要となる情報を時系列に整理してあり、介護にまつわる不安を解消してくれます。とくに、仕事と介護の両立を目指す人にとっては心強い1冊といえます。■介護離職者は経済的・精神的・肉体的にも負担増!親の介護が必要になると、仕事を辞めなければサポートする時間が確保できないと考えがちですが、辞めてしまえば経済的に立ち行かなくなることも。仮に、パートで年間100万円の収入があったとすれば、それが0になり、10年間で1000万円の損失になります。自身の老後も遠い話ではないので、収入源は確保しておきたいものですね。また、介護一色の生活になれば、じつはストレスが増し、「経済的」だけでなく「精神的」「肉体的」にも負担が増加するという調査結果があります。介護を機に仕事を辞めて精神面で「非常に負担が増した」31.6%、「負担が増した」33.3%と回答した人を合わせると、約65%の人が精神面で負担が増したと感じています。肉体面でも「非常に負担が増した」22.3%、「負担が増した」34.3%となり、半数以上の約56%の人が負担増を感じています。経済的に「非常に負担が増した」35.9%、「負担が増した」39.0%となり、じつに約75%、4人に3人が経済的な負担を強いられているのです。離職者の年収は前述したとおりですが、転職先でも正社員として働いている人は、男性は3人に1人、女性は5人に1人という少なさです。年収が大幅ダウンする大きな要因といえそうです。介護は終わりの見えないことなので、目先のことだけに一喜一憂せず、長期的な視野に立ち、家族で協力しながら最善の方法を探っていきましょう。■介護休業制度を利用して「介護の体制」を作るべしところで、働きながら家族を介護するために、一定の期間休業することができる「介護休業制度」があるのをご存知ですか?勤続1年以上であれば、パートや派遣社員を含めておおよその労働者が対象に。期間は対象家族1名につき、要介護状態になるごとに1回、通算93日まで取ることができます。介護休業開始日の2週間前までに事業主に申し出ればOK。とはいえ、介護休業の取得率は低く、2012年で3.2%。その一方で、同年、約9万5000人が介護を理由に離職したという調査結果もあります。そこで、短期間の休業を分割して複数回取れるように2017年からルールを改正した制度の導入が検討されているようです。また、対象家族が1人であれば年に5日まで、2人以上であれば年に10日まで、1日単位で休暇を取得できる「介護休暇」や、短時間勤務などが可能になる「短時間勤務制度等」も整備されています。■介護休業中は雇用保険から「賃金の40%」が支給介護を行う労働者が仕事を休める制度があることはわかったけれど、休業中の賃金が気になるところ。じつは、法律での定めがないため、多くの会社で無給となっています。ただし、雇用保険から「介護休業給付金」として、賃金の40%が支給されます。原則、対象家族1人の介護につき1回の支給ですが、93日以内で終了し、その後、病状が悪化するなどした場合は、2回目の介護休業を取得することができ、通算93日に達するまでは受給できる仕組みです。気をつけたいのが、支給の対象年齢。支給されるのは65歳未満で、65歳以上の人が介護休業した場合には、支給対象にならないようです。親の介護といえば、入浴や排せつ、食事などの介助を思い浮かべがちですが、こうした「情報収集」はとても大切です。介護は、必要なことを関係機関に申請しなければ、事態はなにも進まないことが基本だからです。突然やってくるのが、親の介護。いざというときに困らないためにも、時間的にゆとりのあるうちから積極的に情報を収集し、知識を蓄えていきたいものですね。(文/山本裕美) 【参考】※太田差惠子(2015)『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと』翔泳社※2014年「仕事と介護の両立と介護離職」に関する調査-株式会社明治安田生活福祉研究所※平成24年度仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書-厚生労働省
2016年05月15日『NASAより宇宙に近い町工場』(植松努著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、紆余曲折を経たのち、北海道の小さな田舎町で宇宙開発に取り組んでいるという異例の人物です。注目すべきは、本書においてはっきりと「宇宙開発はお金を稼ぐ対象ではない」と断言している点。宇宙開発には、お金よりも大切な意味があるように思えるというのです。そして宇宙開発は、「あること」を実現するための手段だとも考えているのだとか。それは、「どうせ無理」という言葉を世の中からなくすこと。多くの人があきらめてしまう夢を実現できれば、「どうせ無理」といわない人がひとりでも増えるのではないかという考え方です。■手加減した働きかたをしてはいけないそんな著者は、給料に関しても明確な考え方を持っています。手加減をして給料分の仕事しかしていないと、本当に給料分の人間になってしまうというのです。「俺は正しく評価されていないな、俺の給料は安いな、だから、このへんで手を抜いておこう」と考えるような人は、本当にその給料どおりの輝きしか持たなくなるというのです。いいかたを変えれば、(給料をいくらもらっているかにかかわらず)仕事とは自分の人生の時間。そうであるだけに、手加減した働きかたをしていると、手加減した生き方になってしまうということ。しかしそれでは、人生の時間を無駄に浪費していることになってしまう。だからこそ、職場という環境を生かして、学ぶべきことを徹底的に学ぶことが大切だというのです。■トレーニングをしながら給料をもらうもしも職場で徹底的に学ぶことができれば、その結果として人はもっと輝きを放つようになるそうです。そればかりか、そのことを評価できる人と出会ったときに、その輝きは「本当の力」を持つようになるといいます。とはいっても現実的に、「その職場では評価されない」というケースもあるでしょう。でも、それはトレーニングやランニングだと思えばいいのだと著者はいいます。ランニングをしてもトレーニングをしても、誰かがお金をくれるわけではありません。だから、「トレーニングをしながら給料を少しもらえている」と考えたほうがいいということです。「俺はこんなにがんばっているのに、あいつはたいして仕事をしていない。でも、あいつのほうが給料を多くもらっている。おもしろくない」そう感じるようなことは、誰にでもあるかもしれません。しかし、そんなふうに考える必要はまったくないと著者。なぜなら、人生において最後に勝つのは、どれだけ「やったか」だから。どれだけ「もらったか」ではないということです。■前例がない世界に刺さることが大切!だからこそ、給料に不満を抱きながら手加減をするのではなく、できるだけのことをすべき。また、不景気で仕事が減ったとか、暇になったと嘆いてみたところで状況が好転するわけでもありません。むしろ大切なのは、世界を取り囲んでいる不景気を打破するためには、いかにして暇を生かし、前例や規則のない分野に挑戦していくかということ。ビジネスの現場匂いては、新しいアイデアなどが「前例がないから」という理由で却下されてしまうことは少なくありません。けれども、前例がない、規則がない世界に刺さっていくことが、もしかしたらこの不況を打破するための大切な考え方になっていくかもしれない。「そのために、不景気が暇をつくってくれていると考えればいい」という著者の意見は、とてもユニークです。しかし、そこに本質が見え隠れしているのもまた事実ではないでしょうか。さらにいえば、そんな思いが著者の仕事に対するポテンシャルになっているということがはっきりとわかります。*語り口は、きわめてソフト。しかし、その裏側には煮えたぎるような情熱があることがわかります。それが、本書の強い説得力につながっているのです。また、ここで紹介したことがら以外にも、学びとなるトピックスが随所に盛り込まれているため、得るものは大きいはずです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※植松努(2016)『NASAより宇宙に近い町工場』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年05月14日ダイエット器具やスポーツジム、食べるだけで痩せる食材……。次々に登場するダイエット法を試してもなかなか続かず、お金も時間も無駄にしてしまったという経験のある人も多いのでは?そんな方にご紹介したいのが、『肥満外来の女医が教える 熟睡して痩せる 3・3・7睡眠ダイエット』(左藤桂子著、SBクリエイティブ)。著者は、30年間にのべ3万人のダイエットを成功させた肥満外来の医師。特別な器具はもちろん、特別な時間を割く必要もなく、「3・3・7」のルールさえ守れば1年でマイナス10kgも夢ではないというのです。■睡眠でジョギング1時間分のカロリーを消費!実は、肥満に悩んでいる人の多くはきちんとした睡眠がとれていないそう。本来、ぐっすり眠るだけで、成長ホルモンの分泌により毎晩300kcalを消費できることがわかっているというのです。これはなんとジョギング1時間分。1ヶ月続ければ9,000kcal消費することになります。脂肪1kgは7,200kcalなので、1ヶ月で約1kg、1年間で約10kg痩せられる計算に。一方、睡眠時間が短い、眠りが浅いなど、きちんと眠れていない状態では消費カロリーが70%減。一晩で200kcalの脂肪が分解されず体に蓄積されてしまうのです。これでは半年後に5kg、1年で10kg太る計算になってしまいます!ただし、眠りさえすれば痩せられるというわけではありません。睡眠中に「痩せホルモン」ともいわれる成長ホルモンをたくさん分泌させるには、「3・3・7」のルールがあるのです。■痩せホルモンをたくさん分泌させる睡眠ルール(1)寝はじめの「3時間」はまとめて寝る睡眠で痩せるためには、寝はじめの3時間が肝心。この3時間がもっとも深い眠りになり、成長ホルモンをまとめて分泌させます。何時に布団に入ったとしても、はじめの3時間だけは途中で目覚めることなく眠ることが大切だというのです。では、ぐっすり眠るためにはどうすればいいのでしょうか?それは、眠る環境を整えること。清潔でない寝室で眠ると汚れた空気を体外へ出そうとして体が活動をはじめ、眠りがどんどん浅くなっていきます。寝室はこまめに掃除し、空気清浄機を置くのもいいとか。また、布団のなかの温度を体温より少し低めの32~34度に保つと快眠に。夏場はエアコンの風が直接当たらないように調整したうえ、就寝後3時間程度でオフになるようタイマーをセットしましょう。冬場は寝る前に十分に部屋をあたため、布団に入ったらスイッチを切るのがベストだそうです。(2)夜中の「3時」には寝ている成長ホルモンは22時~2時の間にもっとも活発に分泌されます。だから、その間に眠った状態になっていることが重要。とはいえ、生活パターンによっては毎日同じ時間に寝るのが難しいこともありますよね。そのため、遅くとも3時までには眠っているようにしましょう。ただし、3時に布団に入るのはNG。3時には深い眠りに入っていることが痩せる鍵になるのだそうです。(3)1日のトータル睡眠時間は「7時間」を目指す健康的に痩せるためには、1日の睡眠時間は7時間を目安にしましょう。体がスッキリする睡眠時間には多少個人差はありますが、長く寝たからといってたくさん痩せるわけではありません。7時間まとめて寝られない日は、通勤時間や昼休みの仮眠を合わせればOK。寝だめや二度寝をしてもかまわないそうです。ただし、その際は「朝は一度起きて、光を浴びる」「昼前には起きる」のルールを守ってください。朝の光を浴びずに寝続けてしまうと体内時計がずれ、夜に眠れなくなってしまうからです。また、「寝過ぎ」の状態もその日の夜に眠れず、逆に睡眠不足を引き起こしてしまいます。週末などにゆっくり眠りたい場合はこの2点を守れば、夜の睡眠に影響することなく体をリフレッシュできますよ。*夜型の生活パターンの人にとっては、「睡眠のルール」を続けることが少しプレッシャーになるかもしれません。そんなときはできることから始めればOK。このルールは(1)の「寝はじめの3時間はまとめて寝る」がもっとも重要度が高く、次いで(2)(3)の順に重要度が下がるといいます。忙しくてなかなか睡眠時間を確保できない人は(1)のルールから試してみるのがおすすめ。この本には睡眠法だけでなく、痩せるための食生活や日常の習慣も紹介されています。それぞれのライフスタイルに合わせて無理なく続けることで、健康的なダイエットを目指しましょう!(文/平野鞠) 【参考】※左藤桂子(2016)『肥満外来の女医が教える 熟睡して痩せる 3・3・7睡眠ダイエット』SBクリエイティブ
2016年05月14日『聴きながら眠るだけで7つのチャクラが開くCDブック』(永田兼一著、フォレスト出版)の著者は、心理トレーナー、ヒーリングセラピスト、心理カウンセラー。世界的な支持を得るチャック・スペザーノ哲学博士に師事して「ビジョン心理学」を学び、さらにはヒマラヤ密教の聖者カルマ・ソノ・フンソク大師に師事。宇宙や神と霊的存在についての秘伝を習得したのだそうです。そんな著者が本書のテーマにしているのが「チャクラ」、そして「クリスタルボウル」。30年以上にわたる研究により、クリスタルボウルの演奏によってチャクラを活性化させる方法を編み出したのだそうです。でも、そもそもチャクラとは、そしてクリスタルボウルとはなんなのでしょうか?古代アトランティス時代にルーツを持つというクリスタルボウルは、水晶でできた、大きなサラダボウルのような形状の楽器。7つのチャクラに対応する音色を持っているそうです。つまりクリスタルボウルの音色を聴くことで、チャクラを理想的に開かせることが可能になるということ。一方のチャクラとは、生命活動や生活・愛・学び・心をコントロールするために必要なエネルギーが出たり入ったりしている「気」の出入り口。私たちの体には7つのチャクラがあり、それぞれのチャクラに潜在能力を開花させる役割があるのだそうです。チャクラが開くと、健康で快活で、やる気に満ちあふれ、毎日快適な気分になれるのだとか。逆に閉じていると、体調不良に悩まされ、やる気も起きないのだといいます。そこで、7つのチャクラの性格をもう少し詳しくチェックしてみましょう。■生命力の根源「第1チャクラ」第1チャクラは体を動かす、危険を知らせるなど、生存のために欠かせない大事なスポット。第1チャクラがチャクラ全体の大きさの決め手になるのだといいます。第1チャクラが開いていると、現実での実現能力が開花し、物質世界(現実世界)でのサバイバル能力が高まるのだと著者はいいます。物事を組織立って考えたり、恐怖に打ち勝つことができたりするようになるわけです。■自己信頼感をつくる「第2チャクラ」愛、「自分は自分」という安定感や自信、肉体的・感情的・精神的な喜びと関係するのが第2チャクラ。第2チャクラが開くと、第1チャクラから吸収したエネルギーが上向きに働くことに。エネルギーを全身に運ぶことができ、生きる喜びが感じられるのだそうです。■感情を司る「第3チャクラ」第3チャクラはポジティブ/ネガティブの感情を司るエネルギー。私たちの性格に影響を及ぼし、潜在意識を支配しているという第3チャクラが開くと、第2チャクラから吸収したエネルギーが上向きに働き、感情がポジティブに。人と人とのつながり、信頼が生まれ、精神的な充実感を得られるといいます。■愛の泉「第4チャクラ」7つのチャクラの中心になることから、バランスや調和を司ると言われているのが第4チャクラ。肉体の基本となる第1~第3チャクラと、心や精神的なことに関わる第5~第7チャクラを結びつけ、より高いレベルでのエネルギーを生み出す役割。開くと素直になれ、あるがままの自分を受け入れられるようになるそうです。■コミュニケーションの要「第5チャクラ」第5チャクラは、コミュニケーション能力や言葉、音楽など、音や声に関するエネルギー。表現力や人間関係を司るわけです。第5チャクラが開いていると、積極的に自分の意見をいえるようになれるそう。容易に自己表現ができ、明るく前向きな発言によるコミュニケーションが可能に。■超能力を呼び起こす「第6チャクラ」「第3の目」ともいわれるこのチャクラは、目に見えないものを見たり感じたりすることのできるエネルギー。真実を見極める力、インスピレーション、直感、洞察力、予知能力とリンクしているといいます。開いていると、必要な情報だけを見極め、正しい判断ができるようになるそうです。■宇宙とつながる「第7チャクラ」「クラウンチャクラ」とも呼ばれる第7チャクラは、電気信号で宇宙からの情報をキャッチする場所。第1~第6チャクラまでが全開しないと開かないものの、開けば時間と空間を超越した、「悟り」の境地を生み出すといいます。*つまりクリスタルボウルの心地よい音色によってチャクラを開くことができれば、心身ともに最良の状態を生み出すことができるわけです。ちなみに本書には、クリスタルボウルの楽曲8曲を収録したトータル67分35秒に及ぶCDがついています。付属品だと侮れないほどのクオリティで、聴き流しているだけでリラックスできるはず。いま、実際にこの原稿を書きながら聴いているのですが、たしかに気持ちがとても落ち着きます。そういう意味でも、目と耳でリラックス効果を勝ち取れる本書はオススメ。受け入れてみれば、チャクラの効能を少なからず活用できるようになれるかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※永田兼一(2016)『聴きながら眠るだけで7つのチャクラが開くCDブック』フォレスト出版
2016年05月13日『日本でいちばん大切にしたい会社5』(坂本光司著、あさ出版)は、2008年の『日本でいちばん大切にしたい会社』から続くシリーズ第5弾です。著者は過去40年以上にわたり、企業の現場研究に携わってきたという人物。そんななかで経験法則として知ったのは、短期の業績や勝ち負けではなく、継続を第一義に、関わる人々の幸せを追求し、努力している企業は例外なく、業績が安定的に高いということなのだとか。つまりそのようなファクトに基づき、本書では、人をとことん大切にする「いい会社」を世の中に広めようとしているわけです。さらに思いの根底には、「そのような正しい経営を一途に実践する会社を1社でも多く増やしたい」という思いがあるということ。きょうはそのなかから、「世の中の役に立つ」ための会社としてNo.1の地位を保ち続ける福岡の明太子メーカーについてのエピソードをご紹介したいと思います。■「元祖」とも「本家」とも名乗らない姿勢福岡県の博多にある「ふくや」は、いまや国民食といっても過言ではない明太子を、日本でいちばん最初につくった会社。しかし、そうであるにもかかわらず、「元祖」とも「本家」とも名乗っていないのだそうです。それどころか、明太子の製法特許や商標登録さえとっていないというのですから、ただただ驚くしかありません。「いろいろな会社があったほうがお客様が喜ぶから」ということがその理由。心が広いとしかいえないこの会社の原点は、「社会貢献」「地域貢献」にあるのだそうです。現在、「ふくや」を引き継いでいるのは創業者の2人の息子。しかし、創業者が築いた精神はしっかりと受け継がれているのだといいます。製造のすべてを自社で行なっているのはもちろんのこと、お客さまアンケートを実施し、日に200件、年間6万件におよぶアンケートに全社員が目を通したり、全社員に販売士の資格を取らせたりするなど、顧客サービスや商品開発を徹底しているというのです。■利益の20%にあたる1.5億円を寄付!しかも「ふくや」の姿勢について、著者にはそれら以上に感銘を受ける部分があるのだといいます。それは、社会貢献にかける“尋常ならざる姿勢”。なにしろ、現在「ふくや」は、イベントやスポーツ支援、文化支援など大小合わせて150もの事業に対して寄付活動を行なっているというのです。それだけのことをしていれば、当然のことながら寄付に使うお金も膨大。金額は年間1.5億円は下回らないそうです。2015年の「ふくや」の利益は7億円だといいますから、1.5億円の寄付は利益の20%に相当するわけです。大手企業あるいは社会貢献に対する意識が進んだ会社でも、寄付金額は「利益の1%程度」が常識的な数字。そう考えても、「ふくや」が寄付のために支出するお金が常識をはるかに超えていることがわかるのではないでしょうか?■働く人の雇用を守るために合併したこともしかも寄付活動だけではなく、つぶれかかったホテルと酒造会社の2社を有効的なM&Aで合併し、2社の社員の雇用をすべて守っているというのです。事業拡大のための“欲”で合併したのではなく、働いている人の雇用を守るため、経営再建を頼まれたから引き受けたのです。2社は1人のリストラを行うこともなく、現在では見事に再建しているといいますから、見事というしかありません。経営再建といえば、すぐに思い出すのは日本航空です。会社更生法の適用からわずか2年で営業利益2,000億円というV字回復を実現した稲盛和夫氏の経営哲学あっってこその成功だったわけですが、それが厳しいリストラのうえに実施されたことも事実。ところが「ふくや」の現社長である川原正孝氏は、社員の雇用を守るというしっかりとしたビジョンと見識を持って再建を引き受け、それを成功させてみせたわけです。その根底にあるのは、「少しでも世の中の役に立ちたいという思いで『ふくや』をつくった」という創業者の口癖。いわば創業者の思いが、十分すぎるほどに生かされているということなのです。■愚直にひたすらおいしさを追求している!明太子を製造販売している会社なら、全国にいくらでもあるでしょう。しかし「ふくや」はひたすら世の中のため、お客さまのため、原点をブレさせることなく、愚直においしさを追求しているということ。いわば心がこもっているわけで、「元祖」「本家」とことさら強調しなくても長く愛され続ける理由も、そのあたりにありそうです。*他にも「ふくや」同様、さまざまな思いを軸に会社を経営している人たちの姿が、本書には映し出されています。忘れかけていた原点を再確認するという意味で、働くすべての人が共感できそうな内容です。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※坂本光司(2016)『日本でいちばん大切にしたい会社5』あさ出版
2016年05月12日2015年4月、アメリカの調査機関・ピューリサーチセンターが驚くべきデータを公表しました。2070年に、世界のイスラム教人口が史上初めてキリスト教人口に同率で並び、さらに2100年には、イスラム教人口が35%でキリスト教人口を1ポイント上回り、信徒数最大の宗教になるというのです。現在、世界の宗教人口はキリスト教が31.4%で最大。2位がイスラム教で23.2%、3位が「特定の宗教を信仰しない人」で16.4%、4位がヒンズー教で15.0%、仏教はそれに次ぐ5位で7.1%となっています。しかし、それほどの勢いで拡大しているにもかかわらず、日本ではイスラム教のことはほとんど知られていません。現在、日本人のイスラム教徒人口は1万人前後。日本に住む外国人のイスラム教徒人口を含めても11万人ほどと、身近にイスラム教徒がいないことがその理由でしょう。そこで、宗教学者で作家の島田裕巳氏の新刊『なぞのイスラム教』(宝島社)から、意外と知られていないイスラム教の基礎知識を見てみましょう。■イスラム教は非常にシンプルな宗教著者は、「イスラム教ほどシンプルな宗教はほかにないのではないか」と評します。なぜシンプルといえるのか、象徴的な4つの要素から確認してみましょう。(1)入信方法は「宣言するだけ」イスラム教のシンプルさがよく表れているのが入信方法。キリスト教では教会で神父や牧師を前に「洗礼」という儀式を行いますが、イスラム教の場合はもっと簡単。2人のイスラム教徒の前で、イスラム教を信仰するという趣旨のフレーズをアラビア語で唱えるだけなのだそう。たしかにこれはシンプルですね。(2)意外とフランクな「礼拝と断食」決められた時間にメッカの方角に向かっておこなう日々の「礼拝」からは、厳格な信仰心をイメージしがち。ですが、じつは祈りをささげる場所は自由。祈りの時刻や方角を教えてくれる腕時計などを利用する人が多いなど、現代的な側面も。感覚的には、日本人が自宅の神棚に朝晩手を合わせることとそれほど大きな違いはないのかもしれません。ラマダーン(イスラム暦の第9月)に行う断食も同様。「その月のあいだ、日の出から日没まで食事をとらない」というもので、断食の期間には含まれない日の出前や日没後の時間帯に“食べだめ”する人も少なくないといいます。いずれも、言葉から受ける厳格なイメージとは少々異なる面が見えてきますね。(4)異本がない「明確なルール」著者が「イスラム教はシンプルだ」と語るもっとも大きな理由がこれ。イスラム教には、聖典にあたるものとして「コーラン」と、預言者ムハンマドの言行録「ハーディ」があり、これら以外には存在しません。この2つをもとに、規範を定めたイスラム法「シャリーア」があり、豚肉を食べてはいけない、お酒を飲んではいけない、といった慣習も、このシャリーアに定められています。守るべき規範がひとつに集約されていて、異なるルールはいっさい存在しない。イスラム教はルールが非常に明確なのです。■行動は個々人の判断に任されているとてもシンプルで明快なイスラム教ですが、著者はもうひとつ、大きな特徴を指摘します。イスラム教は教団や宗派といった「組織」を持たないということです。キリスト教徒が特定の教会に所属したり、仏教徒がどこかのお寺の檀家になったりということが、イスラム教徒にはないということ。祈りをささげる「モスク」という施設はありますが、これはあくまで礼拝所。イスラム教徒なら誰でも利用できるものです。組織がないため、イスラム教徒の行動は個々人の判断に任されている、といえます。知れば知るほど、厳格に統率された宗教というイメージとはまったく異なる姿が見えてきます。■じつはアジアに多いイスラムの人口インドネシアの3分の2、パキスタンの97%がイスラム教徒であるなど、イスラム教徒が多いのはじつはアジアです。現在は総数11万人ほどの日本国内にも、今後アジア各国から来日するイスラム教徒がますます増えていくことが予想されます。そうしたときに、イスラム教への十分な理解なくして、先入観を持たずにイスラム教徒の人びとと接することができるでしょうか?日々ニュースで取り上げられるイスラムの名を掲げたテロ組織と、一般のイスラム教徒の人びとがはっきりと異なる存在だと正しく理解できるでしょうか。著者は宗教学者ですが、じつはイスラム教は専門外。自身のきょうだいがイスラム教を信仰するトルコ人と結婚したことでイスラム教に関心を持つようになり、本書を書くに至ったといいます。そのため著者が実際に見聞きした具体例も多く、わかりやすく書かれています。イスラム教を知ることは、より身近な仏教や神道、キリスト教などへの深い理解にもつながります。グローバル化のますます進むいま、読んでおきたい1冊です。(文/よりみちこ) 【参考】※島田裕巳(2016)『なぞのイスラム教』宝島社
2016年05月12日みなさんは、マウンティングをされたことがありますか?これは、相手よりも自分の方が上だとアピールする行為のこと。されると、ちょっとイラッとしますよね。『ガールズスタイルLABO』の調査によると、マウンティングされた経験がある女性は51.6%。つまり2人に1人は経験しているということ。恐ろしい時代になりましたね……。また54.1%が、女性同士のコミュニケーションで怖い思いをしたことがあると回答したのだとか。女友だちやママ友、職場など、さまざまな場所にマウンティングは存在するのです。そういった経験によって傷つかないために読んでおきたいのが、『上手に「自分を守る」技術: かわす、はね返す、やりこめる』(片田珠美著、三笠書房)。精神科医として多くの患者と接してきた著者が、やっかいな人との関係でもう悩まなくなる具体的な方法を紹介する書籍です。きょうはそのなかから、上手に自分を守る「7つの盾」をピックアップしたいと思います。■1:クッション言葉を置く相手の言動により不愉快な思いをしても、職場やママ友などのデリケートな間柄の人には、きつくは当たれないもの。そこで実践しやすい対処法が“クッション言葉”を置いたうえで、相手に思いや要望を伝えること。たとえば、傷つく発言をされたときにいい返す場合。「冗談のつもりだろうけど」と前置きをして、「冗談のつもりだろうけど、私はへこんでしまうから、やめてね」というのです。他にも「ありがとうございます……でも(要望を伝える)」などと、感謝の言葉を添えてから要望をいってみます。こうすれば、自分の気持ちを伝えやすくなるわけです。■2:リミット・セッティングをする話が長すぎる人、馴れ馴れしい人、借りたものを返さない人……。このようなタイプの人たちと関わっていると、いつまでも相手のペースに振り回されて、こちらの都合や感情は無視され続けるもの。そのような相手には「もうこれ以上は許しません」というリミットを設定するとよいそうです。話が長い相手には「30分後に出かける予定があって」と、自分の都合を先にいっておく。また貸したものを返してくれない相手には「明日どうしても必要なので、返してほしい」と期限を決めるのです。■3:相手の急所をチクリと刺す上司や先輩など立場が上の相手には、いい返すのが難しいと思いませんか?そのような相手には、「そんなことをすると、あなたも不利益をこうむりますよ」というニュアンスを込めて返すのがポイントになるとか。たとえば、仕事で無茶ぶりをしてくる先輩に対しては「できなかった場合には〇〇さんにも迷惑が掛かってしまうと思うので、再考していただけませんか?」と、少しだけデメリットを指摘するわけです。他人に対しては鈍感な人でも、自分の利益に対してはとても敏感になるそうです。■4:私を主語にして抗議するデリカシーのない人や自己中な人には、遠回しないい方では通用しません。そのような相手には、ストレートに抗議すること。ただし鈍感な人は基本的に自己愛が強くプライドが高いため、“相手”を主語にしての抗議はNG。相手に受け止めてもらえるためには、あくまで“私”を主語にすることが大切だといいます。ナイショ話を他の人にペラペラ喋られた場合などに、「私は、あなたのことを信頼していたからショックでした」というふうに話すのです。■5:伝聞調を使ってみる鈍感な人になにかいってやりたいけれど、どのようにいえばいいのかわからない場合も多いはず。そんなときには、“伝聞を使う”という手段を著者は勧めています。鈍い人ほど、やさしい人から指摘されても「そう思っているのは彼女だけ」と軽く考えるのだとか。しかし大勢からそう思われているといわれると、さすがにまずいと思うそうです。そこで、「●●さんの話って、ちょっと長すぎるってみんないっていますよ」と話してみるのです。■6:可哀想な人だと見下す機嫌の悪さをわざとアピールして周囲に気を遣わせる人や、自分の価値観を正しいと主張し、上から目線で押しつけてくるような人がいます。こういった人は、自分の生活や境遇に対する欲求不満や苛立ちを、周囲にばらまいているにすぎないのだとか。このような相手には「彼女も彼女なりに大変なんだな」と、ちょっと上から見下ろすような感覚を持つことがポイント。「へえ~そうですか~」と適当に相槌を打ったり、笑顔で受け流したりするのも、賢い対応になるといいます。■7:こちらも「鈍感さ」を応酬する鈍感な人に対しては、自分も鈍感で対応するのもひとつの手。職場で、自分の付箋を勝手に使われるという被害に遭っている場合を考えてみましょう。まず付箋はデスクの上ではなく、机の引き出しのなかにしまっておきます。そして「付箋貸してくれる?」といわれたなら、平然と「ごめん、私も持っていない」と返すのです。自分が使うときは机から出すことになりますが、「付箋あったのね」とわざわざいう人は少なく、いわれた場合も「あれ、引き出しのなかにあったのか~」としらばっくれること。鈍感さを武器に迷惑をかけてくる相手には、こちらも鈍感さを盾にしてはね返せばいいわけです。*ゴシップ好きな人、暴言を吐く人、自己中な人、なにかとルーズな人……。みなさんの周りにも他人を傷つける人がいるのでは?そのような人たちとの関係を賢く対処するテクニックを公開した一冊。ぜひ手にとって、人間関係の悩みから解放されましょう。(文/椎名恵麻) 【参考】※片田珠美(2016)『上手に「自分を守る」技術: かわす、はね返す、やりこめる』三笠書房※「女性同士のコミュニケーション」に関する実態調査女性同士の格付け(マウンティング)、2人に1人が体験者 ~「女性同士のコミュニケーションは気を使う」は8割以上~―ガールズスタイルLABO
2016年05月12日『ITエンジニアが覚えておきたい英語動詞30』(板垣 政樹著、秀和システム)の著者は、米国Microsoft社シニアプロジェクトマネージャーとして、用語管理システム開発、音声モデル構築システム管理などに携わる人物。そしてインド、中国系エンジニアが台頭する現場において、日本人の決定的な弱点に気づいたのだそうです。それは、日本人は会話の際、動詞が出てこなくなって詰まることが多いということ。しかし現実的に、IT現場の6割は基本動詞で成り立っているのだとか。だからこそ日本人エンジニアにとっては、日本語に捉われることなく、動詞のイメージをつかむことが重要。そこで本書が誕生したというわけです。とはいえ、まったく難しく考える必要はなく、動詞力は中学生レベルで十分。基本動詞を使って、シンプルに伝えるだけでOK。きょうはそのなかから、「する・やる」イメージを表現するためのdoのポテンシャルに注目してみましょう。というのも、「する・やる」を意味する場合は、doで7割がこと足りるというのです。■実はdoほど便利な動詞はない「なんでいまさらdoをおぼえなければならないの?」と思う方も多いでしょうが、その反面、doを使いこなせていない人は少なくないのだと著者は指摘しています。「意味を知っている」のと「使いこなせる」のとでは話が別。こんなに便利な動詞は他にないので、ぜひ身につけてほしいのだといいます。まず、次の質問に英語で答えてみてください。・御社のITシステム部門はどんな業務を行っていますか?多くの方は、システム業務を担当する人たちのことを思い浮かべ、They do…と言葉をイメージしたのではないでしょうか?また、さまざまな作業や仕事の説明にどんな動詞を使うべきかも迷うところ。「管理する」はmanageかadminister?「トレーニングをする」はtrain、それともprovide training?引っかかりそうなポイントがたくさんあります。そんなとき、まずはこう口にするのはどうかと著者は提案します。Well, our IT system team does a lot of stuff.(私たちのITチームはいろんなことをやっています)たしかに、これならシンプルでわかりやすいですね。■doで代用すればこと足りる!そして、さらに補足的にこう続けるわけです。They do computer management;they do software update;they do security training, and so on.(コンピュータ管理もしますし、ソフトの更新もすれば、セキュリティのトレーニングなどもします)見てのとおり、動詞はdoしか使っていません。しかし、日常会話レベルとしてはこれで十分な説明になるわけです。“do+名詞”で「物事をする」という一般的な表現となります。なお具体的な動詞が思いつかない場合は、その動詞をdoで代用すればこと足りるケースが多いのだといいます。■わりとなんでもdoでいえる!computer management、security updateなどの名詞の部分は、ITエンジニアとしてすぐ口にできるはずなので、あとは動詞「する・やる」のdoを使うだけ。・do the work(仕事・作業をする)・do the exchange(交換をする)・do the copy(コピーをする)・do the investigation(調査する)つまり、「動詞を表す名詞」であれば、なんでもdoでいえるということ。先のシステム部門の説明でも、各名詞は以下のようにすべて動詞が存在します。management(名:管理) → manage(動:管理する)update(名:更新) → update(動:更新する)training(名:トレーニング) → train(動:訓練する)■「do + 名詞」に慣れようたとえばcomputerのような、名詞だけの意味しかない単語の場合は、do the computerといっても言葉として成立しません。しかし動作を表す名詞は、山のように存在するもの。つまりdoが使える場面が多いのは、実はここがポイントだというのです。だからこそ、“do + 名詞”に慣れてしまうと、英会話が一気に楽になるのだという考え方です。*このようにわかりやすく、そして実践的。英語で伝えることに悩んでいるITエンジニアは必読です。そしてもちろん、IT以外のなんらかの業務によって外国人と会話する必要がある人にも役立ちます。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※板垣政樹(2016)『ITエンジニアが覚えておきたい英語動詞30』秀和システム
2016年05月11日世の中の森羅万象は、「ハカる」ことと一体。物理学的に表現すれば、「ハカれないものは、存在しないのと厳密に同じ」。ハカれるからこそ「存在」となり、意味が与えられる。こんな考え方に基づいた書籍が『プロフェッショナルをめざす人のための新ビジネス基礎力養成講座 「ハカる」力』(三谷宏治著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)。当然のことながら、主題となっているのは「ハカる力」です。「謀(はか)る」でも「図(はか)る」でも「諮(はか)る」でもなく、「測る」「量る」「計る」ことだといいます。それは、定規をつくり、あてて、試して、対象のなかに潜む「真実(インサイト)」を見抜くことなのだそうです。■「ハカる」力が必要な理由多くのビジネス現場に足りないのは、革新的な商品やサービス、あるいは、それらにつながるような調査や発見。しかし現実的に、職場で行われているのは硬直的なルーティン作業。出てくるアウトプットも新鮮味のないものばかり。仕事がそんなことばかりになっている方も、決して少なくないはずです。しかし、だからこそ必要なのは、ジャンプ力のあるおもしろい商品やサービスのアイデア。そしてその前提となる世の中の(見過ごされていた)変化、もしくは大変化の予兆。だからこそ、それらを見つけ、生み出すために「ハカる」力が必要(=足りない)ということ。■「ハカる力」の根源とは?ハカることの対極にある姿勢は、「感覚的に重要そうな要因を羅列すること」。たとえば、「売上が増えるには、景気好転と人口増が必要だ」などと口に出してしまうことがそれにあたるでしょう。たしかにそのとおりかもしれませんが、こんな主張をしたところでなにも変わるはずがないのです。ハカる姿勢とは、重要な事柄(この場合であれば売上増の分析)にあたって、曖昧な表現を許さず、重要な要因を選び出し、それらに因果関係があるという事実を示すこと。この例でいえば、・GDP成長が1ポイント上向いたとき、自社売上は5%向上する・商圏人口が1%増えたとき、自社売上は2%向上する・その他の外部要因が変動しても、自社売上にそれ以上のブレは生じないなどというようなことを示す。つまり、(1)定性的表現にとどまらず、定量的もしくは具体的指標に落とし、(2)大事な要因(だけ)を見定め(3)それらと目的(売上増やブランド向上等々)との因果関係を確認することが大切で、それこそが「ハカる力」の根源だというわけです。■言葉を数字に落とすべし!曖昧な表現を廃し、主張を具体的・定量的にしようとするとき、もっとも明確なのは数字で表すこと。たとえば「市場シェアが高い」ではなく、「市場シェア30%」と伝える。30%が高いかどうかは競合状況によるもの。シェア50%の敵がいるなら、30%は高いとはいえないわけです。しかしシェアトップで2位が20%なのだったとしたら、その30%は高いといえます。だからそのときは、「シェア30%、相対シェアは1.5」と表記すれば完璧だということ。このように、言葉を数字に落とすことはなかなか面倒。しかも私たちはつい、感覚的表現を使ってしまっているものです。・この分野では敵が「強い」・顧客とのリレーションが「効く」・流通を「押さえれば」勝ちでも、「押さえる」といわれても、そこに具体的な説得力はないわけです。そこで、・カバー率90%:流通チャネルの9割が自社製品を取り扱っている・専売契約率70%:それらのうち7割が専売契約を結んでいる・離反率3%:専売ディーラーが他者に寝返る率が年3%のみというふうに、数字に落としていくことが重要。しかも単純なところからでいいのだそうです。議論をきちんとぶつけ合おうとするとき(明確な意思決定をしようとするとき)、そのベースとなるべきなのは数字。客観的なファクト(事実)が求められるということで、発言者の情熱や気合い、声の大きさであってはならないといいます。たとえ周囲がそうだったとしても、それを覆すことができるのは「数字による議論」だということです。*こうした基本を軸として、以後も「ハカる力」の重要性が解説されていきます。事例やコラムも豊富に用意されているので、著者の考え方を無理なく理解できることでしょう。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※三谷宏治(2016)『プロフェッショナルをめざす人のための新ビジネス基礎力養成講座 「ハカる」力』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年05月11日季節が変わり、日によっては夏日になるなど街はすっかり春夏の装いです。この時期に陥りがちなのが、「着る服がない!」というお悩み。「去年のいまごろはなにを着ていたんだっけ?」なんてつぶやきながら、クローゼットを眺めている人も少なくないのでは?『洋服で得する人、損する人 1万人の人生を変えたパーソナルスタイリスト』(霜鳥まき子、大和書房)の著者は、一般の人々にコーディネートのアドバイスやショッピングのお手伝いをする“パーソナルスタイリスト”。1万人以上のクライアントのワードローブの整理をサポートした実績の持ち主です。著者の実感では「着る服がない」と相談に来るクライアントの多くが、クローゼットの整理をすると洋服を大小合わせて200着、靴は40足程度出てくるといいます。こうした、着ない服、着たくない服の整理がおしゃれの第一歩。でも、一度は気に入って手に入れた洋服を処分するのは難しいですよね。そこで本書を参考に、「いますぐ処分したい服」の7つの特徴をチェックしていきましょう。季節の変わり目のいまこそ、新たなおしゃれに目ざめるチャンスです!著者は、自分らしさを表現できて気持ちが上がる「幸せ服」1着を中心に、トップスとボトムス合わせて1シーズン20着あれば、普段のおしゃれが十分楽しめるといいます。そのためにまず大切なのは、着ても気持ちが盛り上がらない「不幸服」を見つけて処分すること。太って見える、貧相に見える、気持ちを後ろ向きにさせる、第一印象を悪くさせるなど、百害あって一利なしの「不幸服」とは、どんなものでしょうか。■1:やせたら着る服まず目をつけたいのが、「やせたら着よう」「いつか着よう」という服。「いま、なんとしても着こなしたい」という情熱がもてない時点で、いまの自分とマッチしていません。やせたらそのときに、ご褒美として着たい服を買えばいいのです。「いつか着よう」という服に袖を通す日は、永遠にやってきません。■2:無難な服自分なりの個性をプラスするシンプルシックな装いと「無難な服」とは、似て非なるもの。単なる「地味な装い」は個性を隠し、気持ちまで消極的にしてしまいます。服がブレーキになって思うままの生き方ができないなんて、こんなにもったいないことはありません。久しぶりの友人に会うときなど、いざというときに着られない服なら思い切って処分しましょう。■3:体型を隠す服たとえばふんわりと体型をカバーするチュニック。着ていてとてもラクですが、体型が隠せるだけにオバサン化を加速させる危険アイテムです。体が甘やかされ、肥満と老化を招きます。女性らしいラインを活かし、緊張感のある服を着続ければ、若々しさと体型の美しさを自然とキープできます。■4:昔似合った服10年以上前に気に入っていた服も要注意。時間が経つうちに色あせ、生地が劣化し、型くずれを起こしている可能性大です。年齢が上がり、肌の質感やトーンが変わってきたところに色あせた服を着ていると、自分が思っている以上に相手に貧相な印象を与えてしまいます。■5:若い人向けの服10代、20代の娘さんがいる方の場合、サイズが合うからといって若い人向けの服を着ることにも著者は警鐘を鳴らします。洋服のパターンは年代ごとの体型に合わせたつくりになっているため、一見サイズが合っているようでも、バストやヒップのトップ位置、肩の位置や袖つけのラインなど、ミスマッチな部分があるものです。服の細かいシワにミスマッチが表れてしまいます。■6:上質感のない服ファストファッションは手がかかる服だと著者は指摘します。手ごろな価格で手に入るファストファッションは、生地のランクを下げるなどコストも抑え、ワンシーズン限りと割り切ってつくられています。10代、20代ならサラッと着てもさまになりますが、年齢を重ねた女性の場合、フィット感をしっかり見極め、きちんと手入れしないとみすぼらしい印象になってしまうこともあるのです。■7:着ていないブランド服買ってはみたけれど、どうにも着こなせない、でも手放せない……そんなブランド服を著者は「一見豪華不幸服」と断じます。このミスマッチは、ブランド名に惑わされて自分との相性を見極めきれていないときに起こるもの。どういうシチュエーションで着るか、どんなアイテムと合わせるかまで想像できないものは、残しておいてもクローゼットの肥やしになるだけです。サイズがフィットしていない場合はお直しでグッと着心地がよくなることも。品はいいので自分との相性をしっかりと見極め、「合わない」と判断したら潔く手放しましょう。*著者は、1着の「幸せ服」を見つけることができればファッションの幅が広がるだけでなく、人生そのものが輝き出すと説きます。着るものひとつで自信がついたり、積極的にコミュニケーションがとれるようになった経験のある方も少なくないはず。本書では、「幸せ服」の見つけ方、コーディネート術、自分にマッチする服を見つけるお買い物術などプロのテクニックを惜しみなく披露しています。「もう、毎朝着る服に悩みたくない」という方におすすめです!(文/よりみちこ) 【参考】※霜鳥まき子(2016)『洋服で得する人、損する人 1万人の人生を変えたパーソナルスタイリスト』大和書房
2016年05月11日