『マジビジプロ ハンディ版カール教授と学ぶビジネスモデル超入門!』(平野敦士カール著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、その名のとおりビジネスモデルについて学ぶには格好の一冊。DeNA、楽天、アップル、LCC、QBハウス、アマゾン、facebook、インテル、クックパッド、スターバックス、ZARAなどなど、躍進し続ける企業の“儲かる理由”を豊富な図解とともに解説した書籍です。著者は、企業で新規事業を立ち上げ、ベンチャー企業への投資を行い、近年は大学や大学院などで経営戦略やマーケティングを教えている人物。そんな実績をベースとしながら、あくまでも平易にわかりやすいアプローチを貫いているとことが最大の魅力であるといえます。きょうはそのなかから、「ソーシャルメディアでワインを50億円売った男」の話を取り上げてみましょう。■ソーシャルメディアを最大限に活用!ゲイリー・ヴェイナチェックさんは、アメリカでソーシャルメディアを利用し、1人でワインを50億円売った人物。2006年にWinelibraryという、ワインを紹介する動画コンテンツをスタートさせ、成功を収めたのだそうです。「ワインは好きだけど、詳しいことはわからない」という方も少なくないと思いますが、まさにそのような人をターゲットとして、ワインについてわかりやすく動画で解説したのです。おもしろいのは、単なるショッピングチャンネルとして人気を獲得したわけではないということ。ベラルーシ訛りで強烈に喋りまくることによって、「ワインのことならゲイリー」といわれるほどのブランドをつくることに成功したのだというのです。ツイッターのフォロワーは、100万人近くもいるのだとか。つまり、フェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディアと動画を連動させることによって、どんどんクチコミが広がっていったということ。とはいえ気になるのは、なぜ50億円以上もワインが売れたのかということではないでしょうか?■自動的に売れるビジネスモデルを構築ソーシャルメディアの時代においては、無理に物を売ろうとしても、そう簡単に売れるものではありません。では、なぜゲイリーさんにそれができたのか?その答えは、上記の記述のなかにあります。つまり、自身が画面に出てファンをつくり、彼らからの「信頼」を得たということ。ゲイリーさんを見たくて動画を開いた人に対し、動画の最後でワインを紹介することによって、「自動的に売れる」ビジネスモデルを構築したというわけです。ゲイリーさんのWinelibrary TVのビジネスモデルを5つのポイントで考えてみると、次のようになるそうです。(1)顧客→ワイン好きの人(2)顧客価値→ワインについての深い知識を動画で提供(3)経営資源→動画ソーシャルによる口コミ知識(4)差別化→強烈なキャラクター(5)収益→販売益■現代の「新たなビジネスモデル」事例近代マーケティングの父といわれる経営学者のフィリップ・コトラー博士は、「マーケティング3.0」という言葉で知られています。企業が広告宣伝を行い、消費者が物を買うのがマーケティング1.0。「食べログ」のように、消費者が商品やサービスを評価することによって、人々が購買行動を起こすのがマーケティング2.0。そして、ソーシャルメディアなどの口コミによって、消費者が企業のブランドをつくる時代のことをマーケティング3.0と呼んだのです。つまりゲイリーさんのビジネスモデルは、まさにマーケティング3.0そのものだというわけです。この事例は、現代における新たなビジネスモデルの可能性を示唆しているといえます。世の中の多くの人が「知りたい」と思っていて、なおかつそれが自分の得意分野であったとしたら、それがビジネスチャンスになるということ。ソーシャルメディアを利用して無料で情報発信ができるという利便性を、活用しないテはないということです。*女の子と著者との会話形式で話が進んでいくため、肩の力を抜いて気楽に読み進めることができるはず。そして気がつけば、ビジネスモデルについての基礎を学ぶことができるわけです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※平野敦士カール(2016)『マジビジプロ ハンディ版カール教授と学ぶビジネスモデル超入門!』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年06月12日『先生、その英語は使いません! (学校で教わる不自然な英語100)』(キャサリン・クラフト著、ディーエイチシー)は、南山大学の交換留学生として来日し、英語月刊誌『ET PEOPLE!』を発行するかたわら、通訳/翻訳家としても活躍しているという人物。本書ではそのような実績を軸に、学校で教わる100種の“不自然な英語”を紹介しているわけです。そのなかからきょうは、数字に関する2つの話題をピックアップしてみたいと思います。■1:「おいくらですか?」金額や料金を尋ねるいいかたに、次のようなものがあると学校では教えてくれます。What’s the total?(合計でいくら?)What’s the admission?(入場料はいくら?)What’s the fare?(運賃はいくら?)What’s the rate?(料金はいくら?これらの定型につられ、「おいくらですか?」を次のようにいってしまう日本人がいるのだとか。What is the price?著者によればこれは、ちゃんと通じるけれど、ネイティヴ・スピーカーの耳には「値段は?」とぶっきらぼうにいっているように聞こえてしまうのだそうです。How much is it?How much does it cost?金額や料金を尋ねるときは、“How much……?”というのが一般的。ただし、よく“How much?”とだけいう人がいますが、それは「いくら?」といっているようで偉そうに聞こえるので、上記のいいかたがいいそうです。なお、次のようにいうと、よりていねいに聞こえるといいます。How much will it be all together?How much will it cost all together?(全部でおいくらになりますか)他の例文も見てみましょう。How much does it cost to get in?(入るのにいくらかかりますか?)How much do tickets in the balcony cost?(バルコニー席はいくらですか?)How much does it cost to get to Nagoya Station?(名古屋までいくらですか?)How much does it cost per hour?(1時間いくら?)■2:「ちょうど20ドルかかった」また、「ちょうど500円です」「ちょうど1,000円になります」などということがありますが、金額の前につける「ちょうど」を英語ではどう表現するのでしょうか?「ちょうど20ドルかかった」という場合、教科書などに書かれているのは次のような表現。It cost exactly 20 dollars.“exactly”は「正確に、厳密に」なので、日本語の「ちょうど」に当たる正しい英文だといいます。ところがアメリカ人は、次のようにいったりもするのだそうです。It cost 20 dollars even.“even”は、形容詞では「端数のない、ちょうどの」、副詞では「端数がなく、ちょうど」の意味。「税込みでちょうど2,000円だった」は、It came to an even 2,000 yen with tax.(形容詞)It came to 2,000 yen even with tax.(形容詞)といい表すことが可能。にもかかわらず、「端数がなく、ちょうど」という副詞の“even”は、学校で教えられていないばかりか、ほとんどの辞書にも載っていないというのです。なお“even”は金額だけでなく、重量や長さを示す数字も修飾するそうです。My cat weights 7kg even.(私の飼っている猫の体重は7キロちょうどです)The rope Measured one meter even.(ロープは1メートルちょうどだった)The depth of that pool is nine feet even.(プールの深さはちょうど9フィートです)The height of the table is one meter even.(テーブルの高さはちょうど1メートルです)The width of these shelves is one foot even.(この棚の幅はちょうど1フィートです)*「へー、そうだったのか!」と新鮮な驚きを感じることができるエピソード満載なので、読みものとしても楽しめるはず。ぜひ手にとってみてください。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※キャサリン・クラフト(2016)『先生、その英語は使いません! (学校で教わる不自然な英語100)』ディーエイチシー
2016年06月12日会社で働いていると、ジレンマに直面することは日常茶飯事。特にマネージャー職になると、2つの選択肢を前に「どう決断したらいいか」と悩む場面も多くなることでしょう。『会社の中はジレンマだらけ』(本間浩輔・中原淳著、光文社)は、ヤフー上級執行役員の本間浩輔氏と、東京大学准教授の中原淳氏が、会社で起こりうる場面を取り上げ、どのような決断を下すべきかを述べた書籍。対談形式で書かれているので、実際にアドバイスを受けているような気持ちになれるはず。今回は本書から、チーム内にいる「働かないおじさん」への対処法を取り上げます。■「働かないおじさん」はあるあるジレンママネージャーとして、「仕事をしないおじさん」にいいたいことを伝えるか、それとも見過ごすかは会社で起こりうるジレンマのひとつ。実際、「働かない年下の部下」と「それに不満を漏らす若手」の間で板挟みになり、悩んでいるマネージャーも多いそうです。若手のなかには「自分は働きに見合った給料をもらえていない」と感じている人も多いので、働かずに給料をたくさんもらっているおじさんを許せないと思ってしまうのでしょう。■「働かないおじさん」は環境でつくられる本間氏は、「働かないおじさん」が生まれるメカニズムのひとつに、適切な評価がされていないことがあるといいます。本来なら働かないおじさん(Aさん)に対して、マネージャーが「このままだと評価が下がりますよ」と忠告するのがルール。それでも働かなければ給料を見なおすのは当然のことなのです。ところが、マネージャーがなにもいえなかったり、下げるべき給料を下げられなかったりするから、Aさんは「このままでいいんだ」と勘違いしてしまうのです。つまり、「働かないおじさん」はある日突然働かなくなるわけではなく、長い間時間をかけてつくられていくということ。会社側がAさんに間違った仕事の仕方を「学習してもらっている」ともいえるというのです。■人ではなく「事」を評価しないといけない本来、評価の目的はフィードバックにあります。フィードバックには「結果の通知」と「立てなおしのお手伝い」というふたつの側面があると中原氏はいいます。結果の通知は、その「人」ではなく「事(今期の働き)」で評価し、ランクに当てはめるべきなのです。Aさんについても、彼が過去に大きな実績をあげたとしても、「今期どれだけの仕事をして、どんな成果をもたらしたか」という点のみで評価すればいいということ。なのにAさんを「人」として評価しようとするから、マネージャーは悩んでしまうのです。■1on1ミーティングで部下の成果を把握ヤフーでは「1on1ミーティング」(上司と部下1対1の定期的なミーティング)があるため、マネージャーが部下の成果を確認しやすいと本間氏はいいます。部下のパフォーマンスは正しく把握するのが難しいからこそ、定期的に1on1を行って部下から直接状況を小まめに聞くことが大切なのです。マネージャーが部下とそれぞれ1on1を行うことで、風通しがよくなりチーム全体の雰囲気がよくなったこともあるそうです。■フィードバックと気長なフォローが大切!中原氏がAさんのマネージャーだったとしたら、「いまの状況のままでは評価を下げなくてはならず、その場合は給料も下がる」とハッキリ伝えるといいます。ただし、相手は年上なので敬意を払うことも必要。その上で、どういう状況が、どのようによくなかったのかをはっきりフィードバックし、「一緒にこの問題を解決するために、お互い取り組めることはないですか?」とAさんが自ら対策を考えられるように促します。一度のフィードバックではなく気長にいい続けていくというスタンスも大切だといいます。■若手メンバーにも問題を投げかけるといい本間氏の場合は、Aさんが明らかに給料をもらいすぎているので、外部市場とも照らし合わせて彼に見合った給料の額を提示するそう。遠慮して多めの額を伝えてしまうと嘘をついたことになりますし、「いつ辞めてもいいんですよ」などといってしまったら後がなくなります。Aさんもかつては給料に見合うだけの仕事をしてきたはずですから、寄り添う姿勢を持ちたいもの。それに、いくらAさんが仕事をしていないからといって、若手が陰口を叩いているというのもチームの状態としてはよくありません。ですから若手に対しても「どうすればAさんがパフォームするようになる?」などと問いかけ、みんなで考えるということも効果的だと本間氏はいいます。*本書では他にも、「なぜマネージャーに“現場仕事”が増えるのか」「なぜ産休社員への人員補充がないのか」などの5つのケースが紹介されています。マネージャーではない人も、会社のジレンマの実態がわかると少し心が軽くなるのではないでしょうか。(文/平野鞠) 【参考】※本間浩輔・中原淳(2016)『会社の中はジレンマだらけ』光文社
2016年06月12日〈 提案5W:こんなシチュエーションで『神様メール』を観れたら最高! 〉・WHEN(いつ):土曜のお昼すぎ・WHERE(どこで):こじんまりした映画館で・WHO(だれと):気のおけない女友達と・WHAT(なにを):『神様メール』を・WHY(どうして):映画館を通りがかったら可愛いメインビジュアルが目に入ったからこんな風に流れでふらっと観る機会があれば至極。『神様メール』とはそんな気楽な鑑賞をしていたい。もちろん鑑賞後はメールの受信ボックスチェックを忘れずに。突然だけど "神様" はブリュッセルのアパートに家族と一緒に住んでいる。妻の"女神" となぜか置物サイズになっている息子イエス・キリストと、10歳の娘エア。一見幸せそうに聞こえるけれど、この "神様" がそこらのダメ親父以上に最低な存在。家族に暴力を振るうわ、昼夜パソコンから人間に嫌がらせばかりして楽しんでいる。そんな "父" に嫌気のさしたエアは、人間に運命に縛られずに生きてほしいと思い"神様" のパソコンから人々に余命を知らせるメールを送ってしまう。もちろん、自分たちの寿命を知った人間たちは大パニック。奇跡を起こすには "女神" が好きな「18」の数の使徒を集めなくっちゃということで、"兄" の12人の使徒を引いた6人の使徒を探すべく、エアは一人ブリュッセルの街へと繰り出すのだった——……と、お世辞にも地に足がついているとは言い難い物語設定(!)に戸惑うものの、物語は思いの外にスッと入りこめる。その点において、主人公である10歳の少女・エアの果たす役割は大きいはず。物語は6人の使徒との出会いを順に追っていくため、鑑賞中置いていかれることもなく、もちろんユダのような裏切り者も登場しない。誰もが少しずつ欠けた状態で、刻々と減りゆく時間の中でエアに出会って救われていくのだ。観終わったら、あなたの受信ボックスにも寿命予告のメールが届いてるかも?もしそこに記載された寿命が明日だったら?50年後だったら?それがすぐでも後でも今日は今日。そんなことを思いながら重ねていたのは、故スティーブ・ジョブス氏がスタンフォード大学の卒業式スピーチで言っていたこの言葉。 "If today were the last day of my life, would I want to do what I am about to do today?"(もし今日が人生最後の日だとしたら、いまやろうとしていることって心からしたいこと?)毎日はこの言葉の自問自答の繰り返しかもしれないね。今日もしオフィスであなたに降りかかってきた災難も、どこかのモニター越しで "神様" が仕組んだ嫌がらせだと思えば、ちょっとした嫌なこともクスッと笑ってかわせそう。明けない夜がないように毎日は必ずやってくるのだ、どうせなら目一杯楽しみましょ!映画をより楽しむために!マルティーヌ役、カトリーヌ・ドヌーブ Official Interview — 『神様メール』では、主婦の役で登場していますが、今回のように比較的小さな役でも出演することはよくありますか?もちろん。私はこれまで、演じたいものだけを演じてきたの。シナリオを読み、面白いと思えば、主役でなくても引き受けるわ。長年そうしてきたように。— 今回この役を引き受けた理由を教えて下さい。まずはシナリオがよく出来ていました。一風変わったユーモアがあり、それが素敵だったしスカッとする陽気なお話だったの。ドルマル監督がこの人物を私に、と話してくれたとき、このおかしなアイデアをとても気に入ったのです。— シナリオでは、あなたが演じる裕福な主婦マルティーヌがゴリラと寝るシーンがあると分かったときはどう思いましたか?斬新な美女と野獣バージョンです。なぜこの役に挑もうと思ったのですか?実はその部分だけ、はじめは分かっていなかったの。ある夫婦がいて、夫が多忙なビジネスマンでという、よくある設定のお話だったのよ。それが、いきなりゴリラと出会い、一目惚れするという展開で、その素敵なお猿さんに会いに行ったり、ベッドインしたりと、非現実的なものが物語に収まっていくのがおかしくて、とにかく気に入ったのよ。— この役は一風変わっていますね。出演作中で最も奇妙な映画ですか?そんなことはないわ。理性的な方だと思う。日常では、皆もっと奇妙なことをするでしょう?ゴリラとベッドにいるだけで非現実的で、一風変わったワクワク感があった。そして同時に、現場はとてもいい雰囲気だったの。ドルマル監督は、感じがよく、優しく穏やかで、私にとってとても素敵な経験だったのよ。— 今後、挑戦してみたい役はありますか?いつも忘れないようにしていることはあるの。同じ路線を走らないように、前進し続けるということ。そもそも、賛辞をいただくことが私の原動力ではないし、一度もそうだったことはないのよ。やりたいものはたくさん頭の片隅にあるけれど、芝居か、音楽かは、わからない。ただ、変化のない路線を進まないために、挑戦すべきことは何かということをいつも考えているわ。 映画『神様メール』は、2016年5月27日よりTOHOシネマズ シャンテほかロードショー!ぜひ、劇場でご覧くださいね。 「神様メール」特製クリアファイルプレゼント映画公開を記念して「神様メール」特製クリアファイルを抽選で3名様にプレゼント!主人公エアと6人の使徒たちが描かれたファイルは持っているだけで運命が好転するかも?応募方法ROBE公式Twitter @robetokyo のキャンペーンツイートをリツイート締切5月31日(火)『神様メール (原題: Le tout nouveau testament)』(2015)監督: ジャコ・バン・ドルマルキャスト: ブノワ・ポールブールド、カトリーヌ・ドヌーブ、フランソワ・ダミアン、ヨランド・モロー、ピリ・グロワーヌ ほか★ 劇場情報: 公開予定映画館一覧はコチラAll pictures © 2015 - Terra Incognita Films/Climax Films/Après le déluge/Juliette Films Caviar/ORANGE STUDIO/VOO et Be tv/RTBF/WallimageText. Midori Tokioka
2016年06月10日必要なものだけでシンプルに暮らす「ミニマリスト」に注目が集まっています。株式会社マクロミルが全国の30代~40代の男女を対象に行った調査でも、56.8%がミニマリスト的な生活を好むという結果が出ています。そんな暮らしに憧れながらも、なかなか捨てられないのがクローゼットにぎっしりつまった服。「あまり着ていないからもったいない」「まだ着るかもしれない」と考えると、なかなか決心がつかないものです。そこでご紹介したいのは、『服を捨てると幸せが見つかる』(やまぐちせいこ著、SBクリエイティブ)。著者は1つのコーディネートを基本にワンシーズンを過ごす「ワンコーデ制服化」を実践中。「制服化」したボーダーシャツ×白のチノパンを3セットと、シャツやコートなど10着だけで快適に暮らしているそう。今回は本書のなかから、服の「捨て方」「残し方」をピックアップしました。片づけに悩んでいるという人はぜひ参考にしてみてください。■1:「捨てる」のではなく「残す」ものを考える服をなかなか捨てられない人は、発想の転換をしてみましょう。「なにを捨てるかより、なにを残すか」「なにを着るかより、なにをしたいか」「捨てることで、なにをしたいか」を考えることで、自分に本当に必要なものが見つかるといいます。たとえば「こんな毎日を過ごしたい」とイメージすることで、着る服も自然と決まりますし、「服を減らしたらこんな自分になりたい」と想像すれば捨てるものも明確になってきます。自分なりの基準を持ち、まずは「残すもの」を見極めてみましょう。■2:ワンシーズン着なかった服は捨てるワンシーズン(半年間)着なかった服は捨てましょう。約180日間も着るチャンスがあったのにその服を選ばなかったということは、心のなかではもう「いらない服」になっているのです。■3:朝40秒で選べる服は残す急いで出かけなくてはいけない朝、40秒でパパッと手に取る服は残してOK。そういうときは、反射的にお気に入りの服を選んでいるものなのです。また、今日着たコーディネートを「明日も着たい」と思えるなら、色柄違いで何枚か揃え、「制服化」してしまうのもおすすめだといいます。■4:「◯◯専用」のアイテムにこだわらない服が増えてしまう理由の1つに、「場」ごとのアイテムが多いことがあります。デート用、仕事用、家用……。そんなふうにそれぞれのアイテムを持っていると、ものは増えるばかり。たとえば冠婚葬祭でも使える黒のショルダーを普段も使うなど、なるべく共有できるものを持つことを心がけて。■5:部屋着もお気に入りのものにするよれよれになったTシャツや、ゴムが伸びた服を部屋着にしていませんか? 気楽にくつろぐ服と消耗した服は別物。役目が終わった服は「もったいない」と持ち続けるより、「お疲れさまでした」と感謝して処分しましょう。部屋で過ごす時間も、自分にとっては大切な人生の一部。そんな時間をよれよれの服で過ごす方がもったいないことなのです。■6:その服が自分になにをもたらしたかを考えるものの価値は使ってみないとわかりません。高価なものでも使い心地が悪ければ、自分にとっての価値は少ないのです。ですから、捨てようか迷うときは高かったか安かったかではなく、それが自分になにをもたらしてくれたかを基準にしましょう。コツはプラスとマイナス両面から見ること。たとえば著者は以前は色柄のきれいなニットが好きだったそうですが、ワクワクする反面、そのニットに合わせたスカートや鞄、靴などさまざまなものが必要になり、ものが大量に増えてしまったという経験があるそう。よい面と悪い面からものの価値を見極めれば、決断に迷いがなくなるはずです。■7:まずはお試し期間を設けるいきなり捨てるのが難しければ、まずは自分が何着で過ごすことができるのか「試してみる」「実験してみる」というスタンスで臨んでみるのもおすすめだそうです。著者はワンコーデ制服化にたどり着くまでに、「着る枚数を決める」「着たい服以外はダンボール箱で一時保管する」「保管の期限を決める」「決めた枚数で生活する」というプロセスを繰り返したのだといいます。捨てるかどうか迷う服は保管箱に入れて、シーズン中に取り出したものはクローゼットへ戻せばOK。ただし、保管箱には期限をもうけ、それが過ぎたものは処分するようにしましょう。*服を減らすと管理しやすくなるので、間違った買い物が減ったり、衣替えが簡単になったりというメリットもあると著者はいいます。それにお気に入りの服だけがクローゼットに入っていれば、気持ちも上がりますよね。まずはできるペースで何が自分に必要なのかを見なおしてみませんか?(文/平野鞠) 【参考】※やまぐちせいこ(2016)『服を捨てると幸せが見つかる』SBクリエイティブ※ライフスタイルと金銭感覚に関する調査-株式会社マクロミル
2016年06月10日「忙しくて本を読む時間がない」「読もうと思って買った本が、“積読(つんどく)状態”になっている」という人も少なくないのではないでしょうか。実際、株式会社クロス・マーケティングが15歳~69歳の男女を対象に行った調査でも、「読書の習慣がない」と答えた人の理由は、「忙しいから」が第1位(47.4%)でした。しかし、「忙しい」を理由に読書をしないというのは考えもの。成長したいと考えるビジネスパーソンにとって読書は欠かせないものだからです。今回ご紹介する『アクションリーディング』(赤羽雄二著、SBクリエイティブ)の著者はマッキンゼーという多忙な職場で14年間働きながらも本を読みこなし、それを仕事に活用していったそう。もちろん今も忙しい仕事をしながらも、読書を習慣化されています。では、いったいどうやったらそんな習慣をつけられるのでしょうか?本書から、ポイントをピックアップしてみました。■1:読書は「受け身」から「攻め」の姿勢に!「時間がなくて本が読めない」というのは、時間に対して受け身になっている証拠。時間がなくても必要な本を選んで読み、それを自分の身につけるという「攻め」の読書スタイルに変えることが大切です。読書は「してもしなくてもいいもの」ではなく「生きていくため、仕事のために必要なもの」という考え方に改め、優先順位を上げて時間を作りましょう。■2:読書の時間はスケジュールに組み込む1日のスケジュールの中であらかじめ読書をする時間を組み込んでおけば、「やろうと思っていたのにできなかった」ということが防げます。著者は平日の夜と週末に30分時間を取っているそう。この30分というのもポイント。だらだらと読まず、机に向かって集中して一気に読んでいくのです。これだけでも1週間に1~2冊は確実に読むことができます。■3:読むときは1冊に集中する何冊もの本を同時に読むとそれぞれの本がなかなか読み終わらず、最初の方に読んだ内容を忘れてしまいがちです。それに、1冊の本を少し読んだら、別の本を読むというようにだらだら読んでしまい、目的意識が薄れてしまったりもします。そうではなく、1冊の本を最初から最後まで一気に読み、次の本を手にするというスタイルにすることで、その本の主旨が頭に入るようになります。■4:本は「買って読む」ことで身につく本は必要なとき、読みたいときに読むのが一番。図書館で人気の本を借りようとすると数ヶ月待ちになり、その頃にはその本が必要ではなくなってしまっているかもしれません。それに、自分が買った本であればマーカーを引いたり、折り曲げたりすることもできます。そうすることで内容を自分の身につけることができるのです。■5:「積読」は仕分けして一掃!書店でついつい買ってしまった本も、しばらくすると読む気がなくなってしまったという経験は誰にでもあるもの。しかし、仕事に役立つと思って買った本でも、読まなければ結局無駄でしかないのです。これを防ぐには「その日に読まない本は買わない」というルールを作ること。毎日の読書時間があるので、その時間に必ず読めるものだけを買うことで、悪循環をストップさせましょう。また、すでに「積読」が家にあるという人は、「今見ても自分に必要だと思える本」かどうかという観点で仕分けしましょう。必要だと思える本は、数日間かけてさっさと読んでしまいます。必要とはいえ、読まずに置いてあった本ですから、そこまで重要度は高くないものということ。最後までしっかり読むというよりは、ざっと目を通すくらいのつもりで片付けてしまいましょう。そして、「今の自分にとっては必要ではない」と判断した本は、いさぎよく処分してしまいましょう。そうならないためにも、「今日読めるものだけを買う」というルールを徹底していきたいですね。■6:本を読んだら他人に話してアウトプットするある程度読書の習慣がついたら、アウトプットの時間をつくることで自分の行動に活かせるようになります。アウトプットの1つの方法としては読んだ本の内容を人に話すことがおすすめ。自然にポイントがまとまり、相手からの質問に答えることでより内容が整理されていきます。そのためにも本の中で大切な部分はマーカーを引いたり、読んだ直後に大事な部分をメモにまとめたりすることが大切。そこを中心にストーリーを組んで話すことで、伝わりやすくなります。また、相手から思いもよらない感想を聞くこともあるはず。自分の価値観とは違うものに触れ、普通なら見過ごしてしまう部分を見ることができるのも、他人に話すメリットの1つなのです。*著者によると、SNSで仲間を募って本の感想を言い合ったり、ブログにまとめたりするのも読書を習慣化したり、アウトプットするのに効果的とのこと。実際この本と連動したFacebookページも立ち上がっています。仕事でもっと活躍したい、視野を広げたいという人は、1日30分読書の時間を確保することから始めてみませんか。(文/平野鞠) 【参考】※赤羽雄二(2016)『アクションリーディング』SBクリエイティブ※読書に関する調査-株式会社クロス・マーケティング
2016年06月09日広々とゆとりを持って住みたいなら、なるべく広い家やマンションを選ぶべき――そんな固定観念をくつがえす発想で「小さい家で、ゆとりのある暮らし」を実現している人がいます。それまで住んでいた部屋の2/3のスペースに、以前と同じゆとりを持って住み、同時に年額100万円以上も住居費をカットしたというのですから驚きです。『3人子持ち働く母のモノを減らして家事や家計をラクにする方法』(尾崎友吏子著、KADOKAWA)から、その逆転の発想を詳しく見ていきましょう。■きっかけは90㎡の部屋からの住み替え著者は、不動産業などを経て、現在は建築業界でパートタイムとして働きながら、夫婦で高校2年、小学6年、小学1年の3人の男の子を育てるママ。2011年から始めたブログ「cozy-nest 小さく整う暮らし」で、小さく暮らすさまざまなアイデアを紹介してきました。そのアイデアをまとめたのが本書なのです。じつは著者自身、以前は「家は広ければ広いほどよい」と当たり前のように思っていたといいます。その考えを大きく変え、「小さく暮らす」ことのよさに気づいたきっかけは、それまで住んでいた90㎡の部屋からの住み替えでした。同じ広さの家は購入費が高くローンが増えてしまうこと、持っているモノをそのまま引っ越し先に持ち込めば、引っ越しの労力や費用もかさんでしまうことに気づき、発想を転換させたのです。■小さく暮らすほうがメリットは大きい!不動産業界、建築業界で働いてきた著者が考えたのは“モノの住居費”を算出することでした。日本の新築マンションの1㎡あたりの平均単価65万円(2015年不動産経済研究所調べ)を基準に考えると、70㎡・3LDKの新築マンションの購入価格は4,550万円。そのうち家具や収納スペースなど、モノの占有率の目安は1/3。ということは、モノのために1,500万円もの住居費を支払っている計算になります。一方、モノを極限まで減らして70㎡の2/3、47㎡のマンションに引っ越せば、住スペースは変わらず、購入費用は3,000万円となります。「モノを減らす、というと損した気持ちになりがちですが、実は『モノを減らす』ことで、実質広々と住まいながら大幅な住居費の節約になるのです」と著者。しかも、これはあくまでも住宅の購入価格だけの計算。毎月払う管理費やリフォーム代、固定資産税、持っているモノをメンテナンスする手間や時間も考慮すれば、「小さく暮らす」ことのメリットは決して「小さく」はありません。■モノを「劇的に減らす」2つのアイテム本書では、衣服やキッチン収納、掃除・洗濯シーンなど、暮らしのさまざまな場面での「モノの減らし方」が具体的に紹介されています。なかでも、一度見なおすだけでモノの専有面積を劇的に減らせるのが「大型家具・寝具」、ベッドとソファの断捨離です。(1)ベッド→布団で2.75畳の“節約”にベッドの最大の欠点は「場所を取ること」。「仕方ない」「布団は上げ下ろしが面倒だし……」と目をつぶりがちですが、著者はここに「専有面積」という物差しを持ち込みます。シングルの布団を収納するのに必要なスペースは約0.25畳。対して、シングルベッドなら周囲の動線も含めて約3畳。家族4人がベッドから布団に替えれば、11畳=約18㎡の床面積が節約できます。1㎡65万円として考えると、その差は1,180万円。もちろん計算上のメリットだけではありません。著者自身、リビングと隣接する夫婦の寝室は日中布団を収納し、開け放してリビングの一部のように使用。長男、次男の部屋は4畳ずつ、ベッドを置けばいっぱいになってしまうスペースを広々と使っています。(2)ソファ→断捨離して広々リビングに5人家族の著者の場合、全員がソファでくつろぐには最低でも2人がけのものが2台必要。テレビやコーヒーテーブルを置くと、9畳のリビングでも狭く感じてしまいます。そこで、著者は小さい住まいへの引っ越しを機にソファを処分。居住スペースを広くすることに成功したのです。本書では、「モノの住居費」を算出するための1㎡あたりの住居費を平均値=65万円で算出していますが、読者それぞれがいま住んでいる物件でも以下の方法で算出できます。1㎡あたりの住居費=購入金額・家賃(万円)÷物件の総床面積(㎡)これに、家具や収納などの専有面積をかけ合わせれば、自宅の「モノの住居費」がわかるのです。その数字に、目を見張ることになるかもしれません。*本書には、ひとつひとつのシチュエーションですぐに真似できる「小さく暮らす」アイデアが満載。その効果を著者は「必要なモノだけが残り、『足るを知る』ことによって、『いつもなにかが足りない』というココロの穴をふさぐことができました。家の広さやモノと引き替えに、ココロのゆとりを手に入れることができたのです」と振り返ります。「小さく住まう」よさを味わってみたい。そう思わせてくれる1冊です。(文/よりみちこ) 【参考】※尾崎友吏子(2016)『3人子持ち働く母のモノを減らして家事や家計をラクにする方法』KADOKAWA
2016年06月08日2015年に『ケイコとマナブ.net 』と『ケイコとマナブ』が小学生以下の子どもをもつママに行った調査では、小学校高学年の「今後、習わせたい習い事」としてプログラミングが8位にランクインしました。最近では各地に子ども向けのプログラミングスクールも開校されていて、今後ますますニーズが増えそうです。そこでお勧めしたいのが、『ルビィのぼうけん こんにちは!プログラミング』(リンダ・リウカス著、翔泳社)。10章に分かれたストーリーを楽しみながら、プログラマ的思考法を育むことができる絵本です。幼いころから絵本を通してプログラマ的な考え方に親しんでいれば、将来興味を持ったときにスムーズにプログラミングの世界に入っていけるのではないでしょうか。お子さんと一緒に読むのはもちろんのこと、大人が読んでも役に立つはずです。■プログラミング=順序よく命令を書くこと!主人公のルビィは、考えや順番がこんがらがるのが大嫌い。はっきりしない命令をされると困ってしまいます。お父さんに「学校に行くから、お洋服を着なさい」といわれれば、パジャマの上からワンピースを着て、靴を履きます。なぜなら、「まずパジャマを脱ぎなさい」といわれていないから。プログラミングやコードを書くということは、コンピューターに向けて、「なにをどの順番でやるのか」を正確に命令するということ。命令は分割して、コンピューターが理解できる大きさにしなくてはいけません。そして、なにをやるのかが詳細でなければコンピューターは間違えてしまいます。練習として、「朝ごはんを食べる」「歯磨きをする」などの命令を順番につくってみましょう。命令が順序よく書けたなら、それがプログラミングなのです。■アルゴリズム=ひとつずつ順番に立てた計画ルビィは宝石を探すために冒険に出ます。まずはヒントのメモに示された4つの場所にそれぞれ目印をつけ、ひとつずつ1番近い道で行ってみることにしました。このように問題を解決するため、命令の1セット(アルゴリズム)がつくられます。たとえば2つの場所を移動するルートを求めた場合、1番速いルートを知りたいこともあれば、交差点が1番少ないルートを知りたいこともあります。異なるアルゴリズムはそれぞれの用途によって使い分けられるのです。■「場合分け」をすることで混乱がなくなるルビィはキツネの住む野菜畑にやってきます。そこではキツネが混乱し、めちゃくちゃな状態になっていました。そこでルビィはキツネたちに指示をします。「あなたは種まき係。畑の穴が空っぽだったら種をまいて。もう種があったら次の穴へ。列の端っこまできたら次の列へどうぞ。これを5回繰り返してね」。これと同じように、コンピューターに対してはどのように決定を行い、それぞれの場合についてなにをすべきかを指示しなければいけません。これを「場合分け」といいます。「もしも」「そのときは」「そうでなければ」という言葉を使って、やることを決めます。■いいプログラマの条件は「好奇心が旺盛」その後ルビィはロボットたちのところへ行きました。そこではロボットたちがカップケーキを焼いています。彼らは「一度すてきなレシピを見つけたら、何百回だって同じカップケーキをつくれる。材料を変えて色々なカップケーキだってつくれるんだ」といいました。プログラミングはこのように、とても創造性のある行為。同じ課題でもさまざまなやり方で解決することができますし、あれこれ試しているうちにさらに素晴らしいものが生まれることもあります。コンピューターはどんどん変わっていくもの。いいプログラマになるには、どんどん新しいものに興味を持つことが大切なのです。■問題を見つけることもプログラマの仕事!ルビィは川を渡るためにロープと木の枝で橋をつくりましたが、それをどうやって向こう岸に渡すのかを考えていませんでした。困っていると、森で出会ったジャンゴという少年が一緒に考えてくれて、解決策を見つけることができました。プログラミングでは、ほとんどのコードがはじめはエラーを起こすもの。スペルの間違いや、プログラムのロジックの混乱など、プログラマはいつだって間違い(バグ)をおかすものなのです。問題を見つける方法が上達することも、プログラミングの仕事の一部といえます。プログラマは最初にコードを動くようにすることより、最後に仕上げる方に気をつかうものなのです。*本書はストーリーの部分とアクティビティの部分に分かれていて、アクティビティでは遊びながらプログラミングの考え方を学ぶことができます。イラストもとてもかわいいので、文系ママでも親しみやすいはず。親子で楽しみながらトライしてみてください。(文/平野鞠) 【参考】※リンダ・リウカス(2016)『ルビィのぼうけん こんにちは!プログラミング』翔泳社※『ケイコとマナブ』2015年子どもの習い事ランキング-株式会社リクルートライフスタイル
2016年06月08日きょうご紹介するのは、『第二言語習得論に基づく、もっとも効率的な英語学習法』(佐藤 洋一著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)。聞きなれない言葉ですが、「第二言語習得論(Second Language Acquisition)」とは、効果的な外国語学習方法を科学的に探究している分野。中学・高校で英語を学んだものの、習得するには至らないまま大人になった人が、最短距離で成果を上げるために必要なことを示したものなのだそうです。■大人の頭で学びなおす手順英語学習については一般的に、「早く学べば学ぶほど効果的」というようなイメージがありますよね。しかし、大人の頭で学びなおすことによって、短期間で英語力をアップさせることができるというのです。そんな方法が本当にあるのかと疑いたくもなりますが、具体的には次のような手順を踏むのだとか。(1)文法のコアを、自然順序仮説に沿って学習する・・・2ヶ月(2)十分な量の英語をインプットする・・・2ヶ月(3)受信型の英語」から「発信型の英語」へ切り替える・・・2週間(4)「発信型の英語」から「相互理解のための英語」へ切り替える・・・1ヶ月(5)自分の英語をモニタリングする方法を身に付ける・・・2週間(6)学習方法をカスタマイズし、学習を継続する最初のステップは、英文法のコアを押さえること。その際、「論理的な思考が得意な大人の頭がどのように文法知識を習得していくかについての理論」に基づいた順序で学習していくことが重要なのだといいます。次のステップは、インプットを蓄積すること。現在の自分よりも少しレベルの高い英語を、おもにリスニングを通して大量に取り込んでいく作業。そんな方法からもイメージできるとおり、「質より量」がポイントになるそうです。次いで必要となるのは、理解するだけの「受信型の英語」から「発信型の英語」へのモード切り替え。この作業には、短い英作文やスピーチが役に立つといいます。さらに行うのは、一方通行な「発信型の英語」から、双方向の「相互理解のための英語」への切り替え。ちなみに英会話学校で会話練習をはじめるタイミングとしては、ここがベスト。基礎が固まらないうちから英会話学校に通うのは、避けるべきだそうです。なお英会話を練習する際には、ネイティブのように自然な話し方を意識する必要はまったくないといいます。むしろ心がけるべきは、文法のコアを意識しながら、ゆっくりでもいいので、整った文を発話するように心がけること。自分の話す英語を常にモニタリングすることにより、倍以上の学習効率があると著者は断言しています。そして最後は、自分の学習方法を自分の手でカスタマイズしていく作業。自分が興味を持っている教材を用いることがポイントだとか。■決め手はモードの切り替えこのメソッドをひととおり終えたときが、英語学習の第二のスタート地点。以後は学習方法をカスタマイズしながら、継続的に学んでいくことが大切なのだそうです。なお、「英語をやりなおす」という点も重要。何故なら第二言語習得論においては、新たな言語を習得するためには相当量のインプットが必要だから。私たちは中学・高校の授業だけでも800時間程度英語に触れてきているので、そのインプットを活かさない手はないというわけです。いわば、大人の頭で文法を学び直す、過去のインプットを活かす、そのうえで学習に関するさまざまなモードの切り替えを行うことが言語習得の必勝手順だということ。■成功した人の3つの共通点著者によれば、英語のやりなおし学習に成功した人の共通点は、大きく以下の3つ。(1)やみくもに勉強するのではなく、筋道を立て、体系立てて学習を進めている(2)自分自身の学習段階を理解し、次になにを学ぶべきかを把握している(3)学習に関するさまざまな外的要素を自分でコントロールしているビジネスのための英語学習に成功する人は、「語彙や文法をひたすら暗記する」という受験英語のマインドセットを捨て、「自分のいいたいことを伝えるために必要な量の語彙と文法をおぼえ、繰り返し使う」という割り切りができているのだそうです。そして「次にやるべきこと」がわかっているからこそ、目の前の課題に手当たり次第に取り組み、壁に突き当たってしまうということもなくなるわけです。さらに、「なにをすべきか」がわかっている人は、学習時間の捻出など、学習に関するさまざまな外的要因をうまくコントロールできるようになるのだとか。*ざっとご紹介しただけでも、第二言語習得論に基づく英語学習法のオリジナリティがわかるはず。英語力がなかなかつかずに悩んできた人にとっては、本書が突破口になるかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※佐藤洋一(2016)『第二言語習得論に基づく、もっとも効率的な英語学習法』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年06月08日『職場を幸せにするメガネ ~アドラーに学ぶ勇気づけのマネジメント~』(小林嘉男著、まる出版)は、東証一部上場の半導体製造装置メーカーである株式会社ディスコの経理部長による著作。ディスコといえば、ここ数年は「働きがいのある会社」ランキングで、グーグルや日本マイクロソフトと並んでトップ10にランクインし続けている会社。ご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。■かつてはギスギスした雰囲気だったそんな話を聞くと、さぞ雰囲気がよく心地よい会社なんだろうなと感じるかもしれません。ところが著者が就任したころの経理部は、心地よさとは正反対の環境だったのだとか。経営陣からの評価も厳しく、社内的にも影響力を発揮できていなかったというのです。だからスタッフの多くも、「自分たちは社内で評価されていない」というような負い目を感じながら働いていたのだとか。しかも毎年のように部員が退職し、そのたびに中途採用で補充するという不安定な状態。どこかギスギスした雰囲気が漂っていたそうなのです。■「メガネをかけ替える」という概念そんな状態でありながらも改善を成功させることができたのは、著者が「アドラー心理学」を通じて「メガネをかけ替える」という概念を知ったから。ご存知のとおり、アドラー心理学とは、オーストリア生まれの心理学者であるアルフレッド・アドラーの提唱した心理学。そのなかにある「誰もが自分のメガネを通してモノを見ているのだ」という考え方(認知論)に衝撃を受けたというのです。これは、「世の中にあるのは主観的な解釈だけだということをいい表したもの。そのコンセプトを導入してみたところ、結果的には職場の雰囲気が大きく改善されたというわけです。■幸せ職場をつくる4つのキーワードつまり本書ではそこに至るプロセスを細かく解説しているのですが、なかでもとりわけ印象的なのは、「幸せ職場」をつくる仕組みのなかに組み込みたいという4つのキーワード。その「感謝」「寛容」「楽しむ」「Yes, and」には、果たしてどのような思いが込められているのでしょうか?(1)感謝私たちは、お互いに支え合いながら生きているもの。そのことに気づき、感謝できる「謙虚な人」でありたいと著者は考えているそうです。リーダーになると周囲から持ち上げられる機会が増えるため、自分が偉くなったと勘違いしがち。その結果、いつの間にか上下関係ができあがってしまう。けれど、つくりたいのは「横の関係」。上司が日々の部下のがんばりに対し、感謝の気持ちを伝える。これは、もっともシンプルで、もっともパワフルな、部下の心のコップを水でいっぱいに満たす行為だといいます。感謝からはじまるマネジメントこそが、幸せな職場への第一歩だということ。(2)寛容この世に完全な人など存在しません。どんな人でも、優れたところがあれば欠けているところもあるのですから。だから、その不完全さを受け入れたいと著者はいうのです。「寛容」とは、不完全さを受け入れる勇気。そして、人の不完全さを受け入れるために大切なのは、まず自分の不完全さを受け入れること。リーダーに昇格する人の多くは、自分にストイックな面があるもの。しかし、それと同時に心の余裕も必要。心に余裕ができた分だけ、人に優しくなれるわけです。(3)楽しむ仕事や働くことを楽しもうとするから楽しくなる。笑顔でやるから仕事が楽しくなる。「リーダーは幸せの専門家」というメガネをかけて、著者は初めて気づいたそうです。仕事が楽しく職場が楽しいと、「もっとがんばろう」という気持ちになれるもの。そして楽しいから気持ちに余裕ができ、自分にもまわりの人にも優しくなれる。日々、生きること、働くことを楽しむーー。それが幸せな職場につながっていくということです。もちろん仕事なので、成果が求められるのは当然。しかし成果が上がるのは、組織の成功循環のグッドサイクルが回っているときなのだといいます。(4)Yes, andかつての著者は常に否定する鬼上司だったそうですが、振り返れば、それがバッドサイクルを引き起こす最大の原因になっていたのだといいます。つくりたいのは、否定しあう文化ではなく、認め合う文化。その土壌があるからこそ、グッドサイクルが回り続けるというわけです。そこで第一声は、「Yes(そうだね)」ではじまりたいのだそうです。しかし、ここで陥りやすいのが、「Yes」で受けたにもかかわらず「But(でもね)」で否定してしまうこと。そこで、「Yes(そうだね)」で受け、「And(そして)」で展開する「Yes, and」の習慣を身につけたいと提案しています。*「もとは鬼上司だった人が心を入れ替えた」というストーリーが背後にあるだけに、本書で展開されている考え方はひとつひとつが説得力抜群。リーダーとしてのあり方について悩んでいる人にとっては、大きな参考になるはずです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※小林嘉男(2016)『職場を幸せにするメガネ ~アドラーに学ぶ勇気づけのマネジメント~』まる出版
2016年06月08日職場での人間関係、失業、失恋、家族間のトラブルなど、誰しもがいろんな悩みや不安を抱え、ときには壁にぶち当たりながら生きていますよね。一説によれば、「1人の人間が1日に思考する回数は約7万回で、そのうち8割はネガティブな思考をしている」そうです。だとすれば、マイナス思考はむしろ自然なことであり、無理してポジティブになる必要はないのかもしれません。ところが一方で、常に前向きな人もいます。世間で「超一流」といわれている人たちの多くが、なにごとも前向きに考える思考法を手に入れているというのです。そんな超一流の人たちがどんな考え方をしたり、壁を乗り越えてきたのかというエピソードを、クイズ形式で紹介しているのが、西沢泰生さんの『読むだけでポジティブになれる 超一流の人のちょっと深い話』(アスコム)。モヤモヤとした気持ちを解消したり、人生のピンチに役立つ、すぐれたエピソードをご紹介していきましょう。■1:巨匠、黒澤明監督がこだわった「9時5時」の習慣リアリティの追求にこだわって完璧主義を貫いた、日本映画界の巨匠、黒澤明監督。その撮影時間は、意外にも朝の9時から夕方5時までと決まっていたそうです。理由は、スタッフに撮影の準備と後片づけのための時間を十分に与えるため。朝9時にスタートするには、スタッフは早朝5時から準備を開始し、撮影が夕方5時に終わったとしても後片付けに11時までかかったとか。これ以上撮影時間を延長すれば、スタッフの睡眠時間がなくなることを知っていたからなのです。部下の仕事の時間を確保し、休む時間まで考慮する。そして、最高のパフォーマンスを引き出す。これぞ、マネジメントの極意といえそうですね。黒澤監督が、名作を量産できた理由のひとつがわかった気がします。■2:ドクター・中松の発明がすべて成功している理由数々の発明を生み出した、ドクター・中松はまさに天才。「いままでに失敗したことはありますか?」と問われると、「自分の発明はすべて成功している」といい切ってしまうほど。その発言の真意とは、「成功するまでギブアップしない」ということなのです。「現段階で失敗していても、そこで終わりではなく、粘り強く工夫し、必ず成功までもっていく」というのが発明家の極意。エジソンも「成功するための確実な方法は、どんなときももう1回だけ試してみると思い続けること」といっています。画期的な掃除機で人気のダイソンも、試作品が完成するまでにかかった歳月は15年。それまでに作った失敗作の数は5,125個。ケンタッキー・フライド・チキンのカーネル・サンダースが、融資先の企業を求めて売り込みを続けた企業の数は、なんと1,009社。1、2回の失敗なんて、まさに序の口。「失敗なんてない、あるのは成功につながる経験だけ」。そんなふうに出来事を受け止め、成功するまで工夫してチャレンジし続けましょう。■3:帝国ホテルのバーテンダーが2杯目のグラスを置く場所究極のもてなしで客人を迎える帝国ホテル。バーの居心地のよさも格別です。ここのバーテンダーは、1杯目のグラスはお客が手に取りやすい右斜め前に置くそうですが、2杯目はいったいどこに置くのでしょうか。答えは、1杯目のグラスが置かれていた位置。人間ならだれしも無意識に飲みやすい場所や置いておきたい場所に置くもの。それを観察し、当たり前のようにさりげなくその位置に置く気配りができれば、人の心をとらえることができるというわけです。さすがは、帝国ホテル。配慮の行き届いた接客術の真骨頂といってもいいでしょう。■4:ピカソが3分で描いたスケッチが5,000フラン?ある婦人がピカソに「私のスケッチを描いてくださいませんか? お値段は言い値でけっこうです」と声をかけたところ、3分ほどで描きあげられた絵の値段はなんと5,000フラン(今の相場で約40万円)。高額すぎると憤慨する婦人に、ピカソが告げたひと言とは――。「私はここまで来るのに、生涯を費やしているのです」生涯に15万点もの作品を生み出したピカソは、「もっとも多くの作品を残した画家」としてギネスブックにも載っているほど多作な芸術家。その膨大な積み上げがあるからこそ、3分の絵にも価値があると自信をもっていえるのでしょう。ちなみに、正岡子規が36歳で他界するまでの16年間で詠んだ俳句は2万3,647句。エジソンの死後に見つかった、アイデアがぎっしり書かれたノートの数はなんと約3,500冊。日々の膨大な積み重ねが、圧倒的な自信につながることを証明していますね。■5:漫画家、赤塚不二夫の「2度目だから」という思いやりいわずと知れたギャグ漫画『天才バカボン』の生みの親、赤塚不二夫さん。描きあげた原稿を編集者に渡したあとに事件が発生したことがあるといいます。なんと編集者が、原稿をタクシーに置き忘れてなくしてしまったというのです。それを聞いた赤塚さん。まったく怒ることなく、「ネーム(脚本のようなもの)があるからまた描ける」といい、さらにこう続けます。「まだ少し時間がある。飲みに行こう」と。そして編集者を気遣い、飲んで帰ったあと、同じ話を数時間かけて描きあげたそうです。そして、編集者に手渡すときに「2度目だから、もっとうまく描けたよ」といったのです。ファンからも出版関係者からも愛されていた彼の葬儀には1,200人が参列したとか。いかに慕われていたか、よくわかるエピソードですね。失敗をしたらつい責めてしまいたくなりますが、そんなときにも周囲を気遣える人こそ、本当に優しい人なのかもしれません。*悩んだり、つまづいたりしたとき、自分とは異なる発想を知ることで、思わぬ解決策が見つかることがあります。身近な人と話すことも大事ですが、超一流の人の考え方に触れることもひとつの方法です。大いに活用しましょう。(文/山本裕美) 【参考】※西沢泰生(2016)『読むだけでポジティブになれる 超一流の人のちょっと深い話』アスコム
2016年06月06日待ちに待った妊娠。喜びいっぱいのママ人生のスタートです。でも、心と身体に大きな負荷がかかることも事実。そんなとき、いちばん頼りにしたいのがパパですが、「うちのパパはいまイチ父親になった自覚が足りないみたい。この先、大丈夫かな……」という不安を感じている方も少なくないはず。そ子でおすすめしたいのが、『フランスのパパはあわてない 妊娠から産後まで妻を支える166の心得』(リオネル・パイエス&ブノワ・ル・ゴエデック著、CCCメディアハウス)。まさに、「新米パパの教科書」といえる一冊なんです。■東京23区の妊産婦の突然死は「7割が自殺」ことし4月、ショッキングな数字が公表されたことを記憶している人も多いはず。2014年までの10年間、東京都23区内で妊娠中から産後1年までに事故や自殺などで突然死した妊産婦89人のうち、7割にあたる63人がうつ病などでの自殺だったというニュースです。これは、順天堂大学と東京都が調査し日本産科婦人科学会で発表したもの。なかでも、妊娠中だった23人中4割、産後1年以内だった40人中6割はうつ病などと診断されていました。うつ病と診断されるか否かにかかわらず、妊娠中や産前・産後の生活の変化がママの心身に与える影響は小さくありません。一方、パパは「赤ちゃんとどう接すればいいんだろう?」という戸惑いを持ちやすいもの。この溝を埋めるべく書かれたのが本書です。■166の「Q&A」と51の「データコラム」ともに父親でもある、ジャーナリストと助産師のフランス人男性2人による共著。新米パパが持つであろう166のお悩みにQ&Aで答える形式で、徹底的にパパの視点に立って書かれた「心得」には、ママへの思いやりがあふれます。たとえば「妊娠中の妻の気まぐれにどう対処したらいいでしょう?」という問いには、「そんな彼女を理解してあげよう。『今夜の食事はなに?』などと聞くのは極力避け、あなた自身が料理をする。妻には、以前どおりにしなくてもいいと思っていることを伝えよう」と提案しています。「出産後、彼女が退院する前に、僕は家でなにをしておくべきなのだろうか?」という疑問に対する回答は、「あなたの妻はいま、日常に戻っていろいろ管理しなければならないことを考えただけで、涙が止まらなくなる状態と思われる。だからあなたは(中略)居心地のいい場を作っておくことが大切になる。缶詰や冷凍食をストックし、トイレットペーパーを補充し、(中略)部屋に花を飾り、シーツを替え、洗濯を2、3回して、ゴミ箱も空にし、掃除機をかける」といった具合。パパに気づいてほしいけれど、どうやって言葉にすれば分かってくれるのか……といいあぐねていたことが、微に入り細に入って書かれているのです。166の「心得」のほか、51項目のコラムでは出産時にかかるお金や彼女の陣痛を和らげるコツ、ベビーカーやチャイルドシートの選び方、ミルクのあげ方やお風呂の入れ方など、具体的なデータや手順を解説。なかでも注目したいのが「赤ちゃんとのきずなを築く5つのステップ」。このステップを踏めば、パパはきっと子育ての最初の段階から、力強い戦力になってくれることでしょう。■赤ちゃんとのきずなを築く「5つのステップ」(1)思いこみを取り除く「赤ちゃんと仲よくなれるタイミングは、授乳だけ」という思いこみは捨てましょう。ママが完全母乳でミルクをあげる機会がなかったとしても、パパが赤ちゃんとふれあう機会はたくさんあります。(2)まずは「お世話」でスキンシップまずは、子どものお世話を積極的にすること。おむつを替えたりお風呂に入れたりするのは、新生児とのスキンシップの絶好のチャンス。子どもと接触すればするほど、愛情のきずなは早く築けます。(3)抱っこするきずなづくりの基本は、抱いてあげること。赤ちゃんは、抱っこされるのが大好き。初めはママの協力を得て、赤ちゃんがウトウトしているときにチャレンジしてみましょう。(4)ベビーキャリアを使ってみるほとんどの赤ちゃんは、ベビーキャリアで抱っこされる動きと快適さが大好き。赤ちゃんと身体をぴったり合わせて温もりを感じましょう。(5)1対1の時間をすごすあえて、周りに助け船を出す人のいない環境で赤ちゃんと二人きりになってみましょう。最初は、赤ちゃんがおなかいっぱいのときを見計らって30分から始めて。2人だけの時間は、パパの自信を育みます。*本書によれば、パパたちが“本当に父親になった”と感じるタイミングでもっとも多かったのは「子どもが生まれた時」で43%(フランスでの調査)。10か月の妊娠期間を経て赤ちゃんと対面するママと同じスタートラインに立つことが難しいのも仕方のないこと。妊娠中、出産直後のママはぜひ、本書をパパにおすすめしてみてください。頼れる即戦力になってくれること請け合いです!(文/よりみちこ) 【参考】※リオネル・パイエス&ブノワ・ル・ゴエデック著、鳥取絹子訳(2016)『フランスのパパはあわてない 妊娠から産後まで妻を支える166の心得』CCCメディアハウス
2016年06月06日『いばる上司はいずれ終わる―世界に通じる「謙虚のリーダー学」入門』(鳥居正男著、プレジデント社)の著者は、長らく外資系の世界で生きてきた人物。なにしろスイスの医薬品メーカーである日本ロシュ(現・中外製薬)を筆頭として、以後約45年にわたり、外資系の医薬品業界で働き続けてきたというのです。しかも、そのうち23年以上を日本法人の社長として過ごしてきたというのですから、どう考えてもバリバリの「外資系人間」だといえそうです。ところが、そのようなイメージとは裏腹に、本人は大和魂を大切にする考え方を持った「根っからの日本人」だと自負しているというのです。それどころか、外資系経験を積み上げてきた結果としていえるのは、「『日本人らしさ』こそが、グローバル競争を生き抜く鍵である」ということなのだそうです。意外なようでいて、これはシンプルかつ真っ当な考え方です。競争環境がグローバル化しているからこそ、日本人は日本人の持つすばらしさを見なおすべきだということなのですから。その証拠に、外資系企業に身を置いていると、実は日本人よりも外国人の方が日本を高く評価していると実感するのだといいます。だとすれば、その根底にある謙虚な姿勢こそが、今後のビジネス現場で大きな意味を持つということになるはずです。■仕事が自分を成長させてくれる!ところで著者は本書において、「月曜日の朝の感じ方」について興味深い記述をしています。「また長い1週間がはじまるのか」と気分が落ち込む人と、「よし、今週もがんばろう」と意欲を持てる人——両者を比較した場合、人生のなかで仕事から学ぶことに大きな差が出るというのです。受け身の姿勢である前者にとって、仕事はただの義務。仕事を楽しむどころか、つらく苦痛になる可能性もあるわけです。しかしそれでは、人生の限られた時間を浪費するようなもの。しかし、逆に前向きな気持ちで仕事に向かうことができれば、仕事が自分を成長させてくれることを実感できるはず。仕事が人間性を高める機会を与えてくれるということで、そう考えることができるようになれば、仕事に対する意識が変わるということ。■99%と101%の違いは大きい著者自身も、初めて7人の部下を持った20代のころから、自分に100%の力があるなら、毎日105%の力を発揮することを心がけて働いてきたそうです。ときには150%や200%の勢いで走ることが続いた時期もあったのだとか。一方、100%の力があるのに、「90%や95%でいいや」と妥協すれば、自分の成長にはつながらないでしょう。だからこそ著者は、99%と101%の違いは2%ではないと断言します。99%は、「与えられたことを淡々とこなせばよい」という受け身の気持ち。しかし101%を超えれば、気持ちは前向きになり、仕事を楽しめる領域に入れるというのです。いわば、気持ちの持ち方だけで、プラスかマイナスかに大きく変わるということ。だから99%と101%は、完全に相反することだというのです。著者は32歳のとき、50名の部下がいる日本ロシュの試薬部を任されたそうです。自身にとって初めての大きな部門だったわけですが、治療用医薬品が主流の会社のなかに於いては、目立つ部署ではなかったのだとか。そこで存在感を高めるため、朝から晩まで休む間も惜しんで仕事に没頭したのだといいます。著者にとって幸運だったのは、同世代の部下も多く、強い仲間意識があったこと。そのため、一緒になって目標に向かっていくことができたというわけです。■管理職が社員のために尽くすべき著者のなかにある「会社はがんばってくれる社員のおかげで成り立っている」という信念は、この時期に培われたもの。そして経営トップになってからは、「本来会社組織は逆三角形であるべきで、つまりトップや管理職が現場の社員のために尽くさなければならない」と考えるようになったのだといいます。だから、「休暇中は絶対に邪魔をしないように」と秘書にだけ行き先を告げて長期休暇を取るような、ヨーロッパの企業トップや管理職には疑問を抱いているようです。そんなこともあり自身は、誰かがミスをした場合や、現場レベルでは解決できないトラブルに見舞われた場合は、いつでもどこでも駆けつけるのだそうです。いつでも、どこにでも、そして必ず駆けつけるという覚悟は、「仕事=生活」「仕事=人生」と考えていることにもつながっているといいますが、それこそまさに、101%以上の力を日常的に発揮してきた結果であるといえるのではないでしょうか。*本書からは、著者の仕事に対する強い信念を実感することができます。それでいて押しつけがましさのようなものを感じさせないのは、「謙虚さ」が根底にあるから。読んでみれば、“忘れかけていた大切なこと”を思い出すことができるかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※鳥居正男(2016)『いばる上司はいずれ終わる―世界に通じる「謙虚のリーダー学」入門』プレジデント社
2016年06月06日『引き出しの法則』(クスドフトシ著、ワニブックス)の著者は、なかなかユニークな経歴の持ち主です。20代のころニートになったことがあり、でも、そんな自分がイヤで、「なんとかしなければ」という思いにかられていたのだというのです。そこまでなら、まぁ、よくある話ではあるでしょう。しかし注目すべきは、そんなどん底の状態から一発逆転してみせたこと。自分探しを続ける過程で「無意識(潜在意識)」や「引き寄せの法則」「精神世界」などと出会ったことから、それらの考え方に傾倒していったというのです。そして結果的には、「心」と「体」の両方からアプローチすることによって人生を好転させる独自のメソッドを開発することに。その考え方をもとに、2012年にブログ『世界はキミのためにある!』をスタートさせたところ大きな反響を呼び、人生を逆転させることに成功したのでした。初の著書『無意識はいつも正しい』も5万部を超えるベストセラーになったので、記憶に残っている方もいらっしゃるかもしれません。本書はそんな著者の新刊ですが、今回も「無意識」に対する独自の考え方をもとに書かれています。タイトルにもあるとおり、軸になっているのは、「幸せもお金も、集中力も運気も健康も、すべて引き出しのように好きなだけ引き出せる」という考え方です。■たったひとつの大切なこと「無意識」のチカラを引き出せば、自分にとって幸せな方向へと導かれる。前作を踏襲するかたちで、著者はそう主張しています。実はこの無意識のチカラ、私たちの行動のなんと9割をつかさどっているのです。そのため、いいかえれば、無意識を「使いこなす」ことが重要だということになるのかもしれません。そうなると知りたくなってくるのは、「無意識」のチカラを引き出すためにはどうすればいいのかということ。この点に関しては、突き詰めていけばたったひとつしかないのだと著者はいうのです。それはいたってシンプルで、つまり「がんばりをやめること」。といっても、いまやっている仕事を辞めるとか、家事を一切しないとか、勉強をしないとか、ダラダラ過ごすというようなことではありません。そうではなく、答えの出ないことに対して時間をかけて悩まないとか、過去のことを後悔したり、将来の心配をしたりして不安にならないなど。そして、そのためには「(いまこの瞬間に)集中」と「リラックス」が重要な意味を持つのだそうです。■意識のチカラをうまく使うとはいっても、それができていたとしたら苦労はありません。「がんばるな」「悩むな」といわれても悩んでしまうのが人間なのですから、口でいうほど楽なことではないのです。だとしたら、私たちがやるべきことはなんなのでしょうか?それは、「無理やりがんばりをやめる」のではなく、「『意識』のチカラをうまく使ってがんばりをやめる」こと。著者はそう主張しています。そして、そのために重要なのは、「口に出す言葉」「体を使った動き」「新しい可能性を見つけ出す思考」を活用することなのだとか。それらはここで簡単に説明できるものではないのですが、以後の章で詳しく解説されていますので、気になった方はチェックしてみてください。いずれにしても、そうすれば「無意識」は、自分自身がチカラを引き出そうと思わなかったとしても、いいアイデアを思いつかせてくれたり、行動に移せる前向きな気持ちへと導いてくれたりするというのです。*著者の主張はとてもシンプルなものなので、もしかしたら、シンプルすぎるがゆえに不安を感じてしまう人もいるかもしれません。しかし、無駄がないからこそ、そこに本質的な部分が表れているともいえるはず。つまり、心をまっさらにして受け入れれば、ずっと忘れかけていたことを思い出させてくれるかもしれない。そこに、本書の意義があるともいえそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※クスドフトシ(2016)『引き出しの法則』ワニブックス
2016年06月06日仕事でもプライベートでも、洋服のコーディネートがキマらない日は、気分も上がらないもの。「毎朝の服選びが悩みの種」という人も多いのではないでしょうか。そんな人におすすめしたいのが、『毎朝、服に迷わない』(山本あきこ著、ダイヤモンド社)です。著者はプロのモデルだけでなく、一般の人にもコーディネートのアドバイスをするパーソナルスタイリスト。たった21着のアイテムをそろえれば、誰でもセンスのいいコーディネートができるというから驚きです。今回は本書のなかから、「普通の服」を使ってセンスよく見せる方法をピックアップしてご紹介します。これを取り入れれば、毎朝すぐに服が決まるはずですよ。■1:センスのいいコーディネートに必要なのは「普通の服」コーディネートで大切なのは、アイテム選び。シンプルかつプレーンな「普通の服」を選ぶことで、どのアイテムとも合わせやすくなるというのです。当たり前のように感じるかもしれませんが、意識していないと「普通の服」を見つけるのは難しいもの。買うときは、必ず試着してジャストサイズのものを選びましょう。■2:白シャツは必須アイテム最初に手に入れておきたいのはプレーンな白シャツ。上品で知的な雰囲気を出せる便利なアイテムです。レースつきやオーバーサイズのものは絶対NG。素材はハリのあるコットンで、襟は4.5~5cm幅くらい。裾は外に出しても長くなりすぎない丈のものがベストだといいます。白シャツは、着崩すことでセンスよく見えるもの。「襟は立てる」「袖はロールアップする」「ボタンは第2ボタンまであける」という3点が基本です。■3:「季節の素材」を取り入れる洋服にも季節の素材を取り入れると、おしゃれ上級者の雰囲気に。春はシフォン、麻、とろみ素材。夏はコットン、秋はスウェードやニット、冬はモヘアやファーなどです。ネイビー、白などの色が取り入れやすいですが、どんな色とでも合わせやすいカーキが1番おすすめ。■4:Tシャツは「深いアキ」で色っぽく見せる深いアキのある無地のTシャツは、鎖骨がきれいに見えるため、さりげない色気をつくり出せるそう。薄いグレーか白で、脇がぴたっとしていないものがおすすめ。首がつまったものや厚手のものは体操着っぽく見えるので避けましょう。■5:「とろみブラウス」は気持ちが上がるものを選ぶ「とろみ素材」のブラウスは、自分の気持ちが上がる色や柄ものを選んでOK。デニムに合わせて普段着に、大ぶりなアクセサリーを合わせてパーティにと、さまざまな場面で重宝するといいます。ポリエステルやレーヨンなら家で洗濯可能。■6:はおりは4着あればOKグレーのパーカー、ネイビーのノーカラージャケット、派手色のカーディガン、Gジャンの4つがあれば、どんな場面でもひと通りのコーディネートができます。シンプルでプレーンなものであれば、高いものでなくてもOKなので、持っていなければ迷わず買い足しを!■7:デニムはゆるっとしたものを選び抜いてブルーデニムはスキニーではなく、ゆるっとした形のものを選びましょう。定番アイテムだからこそ、自分のサイズに合ったものを選び抜くことが大切。お尻に横シワが入らないことを目安にしてください。きれいめのアイテムを合わせるとセンスよく見えます。その際はロールアップして足首を見せるのも必須です。■8:毎日持つバッグは白かスモーキー色に通勤で毎日使うバッグを白にすると、どんな服装にも合わせやすいうえ、「抜け」を出すことができます。また、スモーキーカラーも中間色のようにどんなコーディネートにも合いやすい色。角のないものを選ぶと堅い印象がなくなります。それにスモーキー色のバッグなら、オフィスだけでなく休日のカジュアルファッションにも使えます。■9:サンダルは3足で無限にコーディネートできるサンダルは「黒」「赤」「ぺたんこ」の3つにしぼりましょう。ぺたんこのサンダルはゴールドやシルバーを選ぶとカジュアルになりすぎず、洗練された印象に。赤のサンダルはそれだけで主役になるアイテムなので、他の部分では赤は使わないように気をつけて。黒はコーディネートを引き締め、高級感を出すことができます。■10:夏のインナーはベアトップにチェンジノースリーブなどを着たときにブラジャーの紐が見えるのは、大人の女性としては考えもの。透明のビニールのブラ紐もチープな感じがしてしまいます。そんなとき使えるのがブラカップつきのベアトップ。万が一見えても「下着感」のないグレーや、コーディネートの邪魔をしない白、黒などを選びましょう。*どれも具体的な方法で、すぐに取り入れられそうなものばかりですよね。それに、アイテム選びのポイントさえ外さなければ、ユニクロやGUなどの安価な服でもOKというのもうれしいポイントです。持つべき21アイテムを使ったコーディネートが写真つきで紹介されているので、そのまま真似することも可能。本書を活用すれば、毎朝の服選びがグンと楽しくなるはずです。(文/平野鞠) 【参考】※山本あきこ(2016)『毎朝、服に迷わない』ダイヤモンド社
2016年06月05日「頑張っても給料が上がらない!」と嘆いていませんか。でも、そもそも自分の給料がなぜその金額なのか、論理的に説明できる人はほとんどいません。給料を上げたいと思っても、そのルールを知らなければ望む結果を得るのは難しいでしょう。『自分の給料をいまより上げる方法』(木暮太一著、アスコム)は、経済ジャーナリストの著者が給料を決める「価値」について解説しています。今回は本書の中から、給料が上がらない人の思考法を紹介します。1つでも当てはまる人は要注意です!■1:社員食堂の食事が安いことに喜ぶ会社に安い値段で食べられる社員食堂があると、お得に感じますよね。しかし、「給料=労働力を作るための生産コスト」ですから、食費を会社が負担することは、その分の給料を安くしても、労働者は生活できるという暗黙の了解になってしまうのです。■2:「手当がつきます」という言葉に弱い毎月の支給額が同じでもそれが基本給として払われるのか、手当として払われるのかですべて違ってきてしまいます。ポイントは残業代、退職金、ボーナス。これらはすべて手当の額を除いた「基本給」をもとに計算されるため、残業時間が同じでも基本給が安い人の手取りは下がりますし、「ボーナス2ヶ月分」の額も変わります。■3:年功序列は悪だと思っている年功序列型の給料というと、「古臭い」と思うかもしれません。しかし、ある学者が行った調査では「今後5年間でもらえる給料の総額が同じ場合どのようにもらいたいか?」と聞いたところ、51.7%の人が「右肩上がり」と答えたそうです。徐々に給料が上がっていくことでモチベーションアップにつながる、という意見が出たそうです。つまり、完全歩合の給与体系の会社に入ると、失敗した場合に経済的にも精神的にも痛い目にあうことも少なくありません。■4:技術革新が進めば給料が上がると期待している現在働いている業界で技術革新が進み、自分がやらなくてはならない業務が減ると、生産性は上がりますが、実はこれは大問題。知らぬ間に自分の「労働力の価値」が下がり、給料が安くなってしまうのです。これからの時代、労働者は自分自身の「価値」が下がらないように、自分で自分の身を守らなければいけません。■5:チャンスはいつまでもあると思っている何かを始めるのに遅すぎることはありませんが、「いつまでも同じ量のチャンスがある」ということではありません。世の中にはチャンスはたくさんありますが、1つ逃すたびにどんどんチャンスが小さくなっていくのです。例えば就職活動期間中に内定が得られなければ、その後の活動はチャンスが激減します。厳しいように感じるかもしれませんが、これが現実なのです。■6:就業規則に無関心給料に関してはすべて就業規則に書かれているので、しっかりとそれを読み、何に対して給料が払われているのかを知っておかなくては、自分を守ることができません。転職する際も、その企業の人事制度や給与体系を調べて、落とし穴はないか事前に確認しておくことが大切です。■7:「会社の経費で落ちるかどうか」を気にしている自分の仕事に役立ちそうな本を購入したり、ビジネスセミナーに参加したりするのにも、経費で落ちるかどうかを基準に選んでいませんか。これは給料が増えない人の思考法の典型。自分がその金額に見合う意味があると感じるものには参加すべきですし、投資を惜しんではいけません。■8:「人は見かけが9割」を理解していない長い付き合いであれば、外見以外から「本当の自分」を見つけてくれることもありますが、第一印象が悪ければ次に会う機会を与えられません。同じ商品を提案されても、相手の信頼度によって買ったり買わなかったりすることもあるでしょう。ビジネスは中身が大事ですが、見かけをないがしろにする人は、中身がいいということを信じてもらえません。*そもそも給料とは、「その人の労働力を作るための生産コストの合計」と捉えることができます。働くためには、その仕事をする体力と知力(知識・経験)が必要で、それらにはコストがかかります。体力的にきつい仕事はエネルギー補給のコストがかかり、医師や弁護士などは専門的な知識を身につけるのに膨大なコストや労力がかかります。だからこれらの職業は給料が高いのです。しかし、給料はいい成果を出せば上がるとは限りません。「労働力の価値」を引き上げる努力が必要なのです。努力しなければ、いつまでも給料が上がることはないでしょう。ちなみに本書では自分の価値を上げるための行動についても紹介されています。がむしゃらに仕事をするのもいいことですが、一度冷静に自分の給料と価値について考えてみてはいかがでしょうか。(文/平野鞠) 【参考】※木暮太一(2016)『自分の給料をいまより上げる方法』アスコム
2016年06月04日『一緒に働きたい』と思われる 心くばりの魔法 ~ディズニーの元人材トレーナー50の教え~』(櫻井恵里子著、サンクチュアリ出版)の著者は、10万人以上のキャストを育ててきたという、元ディズニーのカリスマ人材トレーナー。2009年からは外部法人向けの「ディズニーのおもてなしの考え方」を伝えるセミナー事業部門で、講師、研修開発を担当しているのだそうです。いってみれば、心くばりのプロフェッショナル。つまり本書ではそんな実績を軸として、「誰からも好かれる人」に共通するポイントをさまざまな角度から掘り下げているわけです。きょうはCHAPTER 3「『いてくれて、よかった』と喜ばれる立ち振る舞い」から、「年代」についてのトピックを引き出してみたいと思います。■非常に前向きな「ディズニーが残した言葉」「僕たちは前進を続け、新しい扉を開き、新たなことを成し遂げていく。なぜなら、好奇心が旺盛だからだ。好奇心があれば、いつだって新たな道に導かれるんだ」これは、ウォルト・ディズニーが残した言葉のなかでも、著者がもっとも好きな言葉なのだそうです。なぜなら、とても前向きで、人生に対する意欲に満ちていると感じるから。会社に勤務していると、1日の時間の多くを職場で過ごすことになります。人生というスパンで考えてみても、仕事をしている時間の割合は決して小さくないでしょう。だからこそ、仕事に対して意欲的に取り組み、楽しむことができれば、そのぶんだけ自分の人生の時間も充実することになります。■参考にすべき「職業人生のVSOPモデル」そして、自分のキャリアや仕事の仕方を考えるうえで参考になるのが、「職業人生のVSOPモデル」だと著者はいいます。自らの年代ごとに、仕事におけるあり方を示した英単語の頭文字をとったもの。それはどんなものなのか、ひとつひとつ確認してみましょう。[20代]:「バイタリティ」(Vitality=活力)の時代若さゆえにまだまだ満足のいく仕事はできないものの、それを補って余りある体力が備わっていて、失敗を取り戻すための時間もあるのが20代。与えられた仕事を、選り好みせずにとにかくこなしていく。そうすることによって初めて、「自分にはどんな職種が向いているのか」というようなこともわかってくるというわけです。[30代]:「スペシャリティ」(Speciality=専門性)の時代20代のうちに積んだいろいろな経験のなかから、自分が得意なことを選び、磨き上げていく時期。望ましいのは、「これなら誰にも負けない」と思えるほどにまで、高いレベルの専門性を持つこと。[40代]:「オリジナリティ」(Originality=独自性)の時代リーダーシップを高め、自分ならではの仕事を展開するべき時代。[50代]:「パーソナリティ」(Personality=人間力)の時代そして、部下や組織を束ねるための、人としての力が問われるのが50代。ここで注目すべきは、20代での「経験」の積み重ねが、その後のキャリアに幅を持たせるための重要な基礎となっていること。なお、このモデルでは20代と区切ってありますが、著者は個人的に、30代でもまだまだ経験を積み上げることが大切だと考えているのだそうです。20代、30代のうち、先に挙げたディズニーの言葉にあるように「新しい扉を開け続け、新しいことを成し遂げる」。そんなことを、どれだけ意識的に積み上げることができたか。その結果によって、以後の人生が大きく変わっていくというのです。■週1回「初めて」のことにチャレンジしよういうまでもなく、新しいことをはじめたり、自分の知らない世界に飛び込んだりするのは労力がいることです。それに、失敗することに対する恐怖感もあるかもしれません。しかし、それらをはねのけ、勇気を持って新しいことにチャレンジしていくことによって、可能性を大きく広げることができるというわけです。そこで、まずは週1回、「初めて」のことにチャレンジしてみてはどうかと著者は提案しています。といっても特別なことである必要はなく、先輩に新たな提案をしてみたり、いままでのやり方を変えてみたりするなど、身のまわりのことでもかまわないのだといいます。そんな小さなチャレンジを積み重ねていくことによって、「チャレンジし続ける姿勢」を身につけることができれば、きっと仕事にやりがいが生まれ、結果的には人生の時間が豊かになる。著者はそう断言しています。*長らく現場にいた立場だから明かせる、ディズニーに関しての意外なエピソードも満載なので読み応えはばつぐん。そして、サービスのプロフェッショナルならではの言葉には強い説得力が備わっています。コミュニケーション能力を一歩進めたい人にとっては、必読の書であるといえそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※櫻井恵里子(2016)『一緒に働きたい』と思われる 心くばりの魔法 ~ディズニーの元人材トレーナー50の教え~』サンクチュアリ出版
2016年06月03日いつも「時間がない!」と思っていませんか? それなのに、ついネットサーフィンをしてしまったり、やると決めた習慣をさぼってしまったり……。今回ご紹介する『40代を後悔しない50のリスト【時間編】』(大塚寿著、ダイヤモンド社)には、40代のための時間活用術が50パターン掲載されています。「◯◯ができなかった」「◯◯すればよかった」などという後悔が見出しになっているので、親近感が湧きやすいのではないでしょうか。まだ20代、30代の人もいずれ訪れる40代に備え、読んでおいて損はありません。今回は本書のなかから、時間を生み出す「習慣術」をご紹介します。■1:朝は毎日同じ時間にスタートさせる時間をうまく使うコツは、生活を「ルール化」「パターン化」すること。特に重要なのは、朝のスタート時間を統一することだといいます。ここが崩れると、すべての予定が狂ってしまうからです。たとえば毎朝同じ時間に起床し、同じ電車に乗ることをルールとした場合、もう1時間遅い電車で間に合う日でも、いつもと同じ電車に乗るのです。そうすれば余った時間ができ、それを「ボーナス時間」として、読書や長期で取り組む仕事などに充てることができるというわけです。週末も同じ時間に起床し、朝のまとまった時間を有効に活用しましょう。■2:物理的な「切り替えスイッチ」を設定するオンとオフの切り替えにはコツがあります。それは物理的な「切り替えスイッチ」を設定すること。オフィスに入るときに大きな声で「おはようございます」と挨拶することでスイッチをオンにし、「お先に失礼します」の挨拶でオフにするということでもOK。頭のなかで切り替えようとするのではなく、体を使ったり声を出したりする方が効果があるというのです。■3:「平均時間」を割り出し共有する作業時間を短縮するためには、まず「デッドライン」を設けること。それにプラスして「時間を測る」ことも重要。各々がどのような仕事にどれくらいの時間がかかったのかを測り、部署内で共有することによって、自分なりに効率化しようという意識に変わります。また、部署内の共通の作業については平均時間を基準として示すと、それより早く作業を終えようという気持ちになり、結果的にスピードアップにつながるそうです。効率的な人のやり方を取り入れようという意識になるため、全員の仕事スキルを上げることにもつながるわけです。■4:「仮」でスケジュールを取っておく40代の多くは中間管理職のため、他人に時間を奪われがち。スケジューラーなどでスケジュールを共有している場合は、2週間先まで予定を入力してしまいましょう。細かな調整は後で行えば大丈夫。こうすれば、他の人はその時間に予定を入れなくなります。また、顧客とのやり取りでも相手に候補日を出してもらうのではなく、「◯◯日の△△時は空いていらっしゃいますか?」などと自分が候補を出すようにしましょう。相手に失礼のないやりとりをすればまったく問題ありません。■5:メールの返信は「自主ルール」を作るメールをうまくさばいている人は「自主ルール」を決めています。全メールを「顧客から」「ジャッジを求められているもの」「情報共有」の3つに分け、情報共有以外の2つについて重要なものはいったん素早く返信し、詳細は後でメールする旨を伝えるようにするなど。それ以外にも、できるだけ短く返す、二度読みはしないなど、自分なりのルールを決めましょう。■6:情報は必要最低限にし「どう編集して」「何を語れるか」を考えるネットサーフィンやSNSのチェックは時間の浪費になるだけでなく、情報への依存や他の人との比較による不安などさまざまなデメリットを生むことも。そして40代は情報を知っていることより、「それをどう語るか」が求められるもの。ネット上の情報は断片的なので、あたかもわかったような気になってしまいますが、それらを頭のなかで編集することが大切だということです。そのためにはベースとなる知見を厚くするために本格的な専門書を読み込むことも必要になってくるといいます。自分にとって必要な情報とはなにか、それをもとに自分には何が語れるかを見極める力を養うべきだということ。■7:時間は細切れに分割する東京勤務のビジネスパーソンの通勤時間の平均は58分。往復すると勤務時間の25%にものぼるため、有効に使わない手はありません。集中力を持続させるにはこの通勤時間も分割するのがポイント。「最初の20分は読書、次の10分はブレスト」などと時間割をつくってみましょう。なにかとなにかを交互に行うことで。より集中しやすくなるそうです。*仕事でもプライベートでも時間を上手に使えると、充実度がアップしますよね。忙しい40代だからこそ、限られた時間を活用して人生を楽しみたいものです。毎日やることに追われて「時間がない!」という人は、現在の自分の時間の使い方を見直してみてはいかがでしょう?(文/平野鞠) 【参考】※大塚寿(2016)『40代を後悔しない50のリスト【時間編】』ダイヤモンド社
2016年06月03日「子どもを本好きにしたいけど、読み聞かせにあんまり興味を持ってくれない。どうしたらいいの?」そんな悩みを持つ未就学児ママも少なくないはず。子どもといってもひとりの人間。なにかを好きになってもらうのは、そう簡単なことではないですよね。そんな悩み解決へのヒントにしたいのが「読書のアニマシオン」。フランス生まれ、日本でも徐々に広がりつつある活動です。新刊『子どもの心に本をとどける30のアニマシオン』(岩辺泰吏&読書のアニマシオン研究会編著、かもがわ出版)を参考に、1歳から大人まで楽しめる「読書のアニマシオン」について見ていきましょう。■アニマシオンってどんな活動?数人の子どもたちと、なかが読めないようにバンドでとめた本が数冊。子どもたちはグループに分かれ、本のタイトルと表紙のイラストを頼りに「どんなお話かな?」と想像力を膨らませてにぎやかにストーリーを考えていきます。一生懸命考えたストーリーを発表したあと、「本当はどんなお話なのかな?」と、手にした本を開く子どもたち。こうした活動が「読書のアニマシオン」と呼ばれるものです。「アニマシオン」とは、「アニマ(anima)」=魂や心をいきいきと活性化させる活動。転じて、フランス生まれの「市民が主体的に取り組む生涯学習運動」を指します。その目的は、グループで行うゲームのような活動を通して生活を楽しみ、心にゆとりを持つこと。指導役を務める「アニメーター(アニメトゥール)」は、1970年以降、「社会・教育・スポーツ・文化の活性化にあたる専門職員」として、国家資格を持つ職業になるなど、フランスでは広く知られた活動です。アニメーターというとテレビアニメを描く仕事をイメージしますが、両者はまったく別もの。しかし一方で、著名な漫画家・手塚治虫は、アニメーションとは1枚の絵に命を吹き込むことであるという趣旨の言葉を遺しているそう。魂・心を根本とした活動、という共通点があるといえそうです。■遊びながら自分自身を見つける本をツールとして「人生を豊かに生きる」ことを学べる活動、「読書のアニマシオン」。学校や地域の図書館を主な舞台に、遊びの要素も取り入れ、未知の世界や信頼できる仲間、そしてときには「自分はこんなことに興味があったんだ」と、自分自身も発見することもできます。冒頭で紹介した「どの本、読もうかな?」や、本を読んで自分なりのタイトルを考える「新しいタイトルを考えよう」といった低学年から楽しめるものから、物語を途中まで読んで続きを想像する「きみたちが作家なら」、映画化された小説の一部を読み、グループごとに「どの場面を映像化するか」を発表したあとに実際の映画を見て感想を述べ合う「きょうはきみが映画監督」といった深い読みが必要なものまでさまざま。いずれも、仲間と楽しく想像力をはたらかせて楽しみます。■アニマシオンは1歳からOK!一方、字を読んだり書いたりすることができない未就学児も本に親しむことができるのも、読書のアニマシオンの魅力のひとつ。本書は、教員や司書らで活動する<読書のアニマシオン研究会>が、約20年にわたる活動の成果をまとめたもの。実際にアニマシオンに取り組む図書館職員らのレポートも数多く紹介されています。そのなかのひとつ、徳島市立図書館副館長の廣澤貴理子さんの体験レポートでは、1~3歳の未就学児を対象とした活動について書かれています。絵本をテキストに、声を出したりお母さんと子どものスキンシップを多用したりと、参加型で行われるのが、1~3歳児を対象としたアニマシオンの特徴。絵本に出てくる生き物の絵を描いたカードを配り、手持ちのカードがお話に登場したら子どもにカードをあげてもらったり、並べてもらったり。紙芝居『まんまるまんまたんたかたん』では、リズミカルなセリフを一緒に声に出して読みながら手をたたくなど、ストーリーが理解できない年齢でも、動きや絵を使ってわかりやすく楽しめるよう工夫されています。活動をすすめるアニメーターである廣澤さんは、「私は子どもたちの心に一粒の種をまく人でありたいと思います。小さな積み重ねは、かけがえのない財産になります。ひとりでも多くの子どもたちに本の楽しさを届けるためにいま、置かれているところで自分も楽しみながら続ける、これに尽きると思います」と語ります。*子どもたちが「本って楽しいな」「知らないことを知るって楽しいな」と思えるように、いろいろな仕掛けで本との出会いを演出する「読書のアニマシオン」。本書では、具体的な30のアイデアが紹介されています。図書館での取り組みはもちろん、児童館や数人のママが集まって手作りで挑戦することもできそう。本書を読書への扉を開くきっかけにしてみてはいかがでしょうか。(文/よりみちこ) 【参考】※岩辺泰吏&読書のアニマシオン研究会(2016)『子どもの心に本をとどける30のアニマシオン』かもがわ出版
2016年06月02日『年収1000万円以上のNYキャリアが教える 仕事も恋愛もキレイもすべてを手に入れる女性のワークルールズ50』(バーバラ・スタニー著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、2003年に『ミリオネーゼになりませんか?』というタイトルで出版された翻訳書の新装版。原題は『SECRETS OF SIX-FIGURE WOMEN』ですが、“SIX-FIGURE”とは「6桁」のこと。日本円でいえば年収1,000万円以上というわけで、「ミリオネーゼ」とは、そこから着想した造語なのだそうです。ミリオネーゼの定義は、「仕事も恋(家庭)もおしゃれに楽しみ、1,000万円稼ぐ女性」というもの。また、「すべてをあきらめなくていい。わたしたちは、すべてを手に入れることができる」というメッセージも込められているのだといいます。ちなみに年収1,000万円である必要はないものの、収入に対するこだわりこそが女性たちにもっとも欠けていることだと著者。そこで、その数字を女性たちの経済的自立、精神的自立の象徴としたのだそうです。ところで、本書が初めて出版されたときには「一部のキャリアウーマンにとっての課題」だった事柄が、13年を経たいま、「ほとんどすべてのワーキングウーマンたちの課題となってきている」といいます。そこで改めて、「自分に自信を持つこと」「八方美人になろうとせず堂々と意見を述べること」「チャンスがきたら『とりあえずやる』と考えること」「自分の能力と業績に応じた正当な権利を主張すること」などの心得を訴えかけるために本書が復刊されたというわけです。きょうはそのなかから、お金に関するルールをいくつか引き出してみます。■お金に関する3つの法則を守る経済的自立は、頭で考えるよりもはるかに簡単だと著者はいいます。お金を賢く増やすのに、時間はそんなにいらない。お金がたくさんなければ財産をつくれないわけでもない。それどころか、現在の収入額がいくらであろうと、数千万を貯めることは可能だというのです。若いうちからはじめるに越したことはないけれど、歳をとっても遅過ぎることはない。もっとも危険なのは、年齢にかかわらず「なにもしない」こと。そして財産を築くためには、お金に関する3つの法則を守る必要があるのだとか。[法則1]支出を収入より少なくする[法則2]なによりもまず貯蓄する[法則3]お金を運用して増やす大切なのは、「なにを持っているか」ではなく、「持っているものでなにをするか」。それこそが、経済的安定を手にできるかどうかの決め手だということ。(1)支出を収入より少なくするミリオネーゼたちはたいてい、自由気ままにお金を使わないように自制しているのだそうです。ケチっているわけではなく、“贅沢”と“倹約”とを上手に使い分けているということ。いってみれば富の大きさは「どれだけ稼いだか」ではなく、「どれだけ使わないか」で決まるというわけです。(2)なによりもまず貯蓄する“お金を貯めるのが上手な人”は、収入の一部を定期的に貯蓄にまわすもの。ただし忘れるべきでないのは、貯蓄はいざというときに備えるもので、バーゲンセールのためにしているのではないということ。銀行に預けたお金は、借金や大きな損失に対する緩衝材になるだけではなく、予期せぬ出来事が起こったとき、あるいは夢を実現させるときのための賢明な備えになるということです。(3)お金を運用して増やす難しそうに感じはするものの、実はお金の運用はそんなに面倒なことではないもの。一般的な原則は次のとおりだといいます。1.臨時の出費や近い将来に買いたいものを買うためのお金など、今後5~7年以内に必要なお金は、現金か、MMF(マネー・マネジメントファンド)、CD(譲渡可能定期預金)などにしておく。2.今後8~10年以内に必要なお金は、株式や債券、現金に分散しておく。3.11年以上使う予定のないお金は、大半を株式に投資しておく。■いい投資家になれる4つの秘訣そして、お金の運用にもっとも有効なのは投資。そこで、誰でも腕のいい投資家になれる4つの秘訣も紹介されています。(1)自動化する一定の金額を、銀行口座や給料から自動引き落としで証券会社の口座に入れる契約をするということ。自分で銘柄を考えながら投資すると、意図に反する結果になることがあるためです。(2)プロに任せる専門家は投資のやり方を詳細に検討し、ポートフォリオのバランスを考え、定年後の生活に必要な資金計画を立てるようにサポートしてくれるというのです。(3)勉強する投資銘柄をむやみに怖がったり、無知なまま、あるいは習慣的に投資したりするのではなく、知識の裏づけを持って参加することが大事だという考え方。(4)人の話を聞く金融についてなんらかの知識がある人に会ったら、その知恵を借りるために質問をする習慣をつけるということ。*当たり前に思えることばかりですが、つまりは「当たり前のことをきちんとやる」ことが、なにより大切なのかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※バーバラ・スタニー(2016)『年収1000万円以上のNYキャリアが教える 仕事も恋愛もキレイもすべてを手に入れる女性のワークルールズ50』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年06月02日ご存知の方も多いと思いますが、『「自分の言葉」で人を動かす』(木暮太一著、文響社)の著者はフジテレビ「とくダネ!」レギュラーコメンテーターであり、他にもフジテレビ「ネプリーグ」、NHK「ニッポンのジレンマ」、Eテレ「テストの花道」など多くのメディアで活躍する作家。『カイジ「命より重い!」お金の話』など数々の著作も有名ですが、最新刊である本書では「言葉」をテーマに掲げています。自分の思いをうまく人に伝えられないという人も少なくないはずですが、「ある視点」を身につければ、自分だけの言葉を紡げるようになるというのです。そればかりか、“借り物”の「レンタル言葉」を脱却し、「自分と血のつながった言葉で話す」経験を繰り返すことで自信をつけることもできるのだとか。ただ、そのためには「伝え方」をしっかり認識しておく必要はありそう。事実、著者も「人を動かす伝え方」には3つの大きな勘違いがあると指摘しています。■勘違いその1:論理的に伝えれば、人は動くビジネスの現場においては、「もっと論理的に説明して」などという言葉が飛び交うことがあります。たしかに、なにかを伝えようというとき、筋道を立ててきちんと整理することは大切。膨大なお金が動くビジネスにおいては、客観的な論理や根拠が求められるのは当然でしょう。しかしロジカルな話し方や客観的な情報は、あくまで自分の理論や感性を証明する“証拠”であり、人を動かす“要因”にはならないのだと著者はいいます。相手が反論できないくらいに理論武装したとしても、それで相手が動いてくれるとは限らないということ。もちろん論理や根拠も、ないよりはあったほうがいいかもしれません。が、こちらの話を聞くことによって相手が動いてくれるとしたら、それは「正しいことをいっているから」ではなく、話に共感したり、刺激を受けたりしたから。だから、準備に準備を重ね、論理をきれいに積み上げた言葉よりも、支離滅裂に、しかし素直に気持ちを語った言葉のほうが人を動かせるというわけです。ビジネス書の定石とは正反対の考え方ですが、それでも「論理的であればあるほど人を動かせるという考えは幻にすぎない」のだと著者は主張しています。■勘違いその2:認知度が上がれば、人は動く企業が多額のお金を使ってテレビCMを放映するのは、「人の目に触れたら、商品は売れるようになる」と考えられているから。ただし、その情報を見聞きした人が思いどおりに動いてくれるかといえば、それほど簡単な話でもないそうです。その一例として明かされているのが、著者がレギュラーコメンテーターとして出演しているフジテレビ「とくダネ!」でのエピソード。毎日、約1,000万人が見ている番組ですから、ここで本を紹介してもらえ他としたら、大きな反響が得られるというのです。ただし、最初に紹介された『カイジ「命より重い!」お金の話』(サンマーク出版)は、『賭博黙示録カイジ』というギャンブルをテーマにしたマンガを題材にしたもの。つまり同番組の主要視聴者である主婦層との親和性は高くないわけですが、なぜか爆発的に売り上げが伸びたのだそうです。一方、次に紹介してもらった『今までで一番やさしい経済の教科書』(ダイヤモンド社)は、経済のニュースをわかりやすく解説しているだけに主婦層にぴったり。にもかかわらず、あまり売り上げが伸びなかったのだといいます。不思議な気もしますが、その理由を著者はこう分析しています。2冊目の本に対しては、MCの小倉智昭さんが、「コメンテーターの木暮さんが新しく本を出しました」と紹介したのみ。その内容は小倉さんの知っていることばかりだったため、客観的な情報だけをコメントしたということです。しかし1冊目の紹介コメントは「表紙を見てドキッとしますよね。本当におもしろかったです」というもの。つまり、そこには小倉さんが伝えたいと思ったことが詰まっていた。だから、それが視聴者に響いたというわけです。この結果が意味するのは、ただ単に多くの人の目に触れさせればいいということではなく、「その人が動くような言葉を発信する必要がある」ということ。「認知度が上がればOK」というような、単純な問題ではないのです。■勘違いその3:テクニックを使えば、人は動く本質的に、ラクに効果が出るものを求めるのが人間。たとえば、「食べていてもやせる!」などの謳い文句を掲げたダイエット本が話題になるのも、「ラクだし、効果も期待できそうだ」というイメージのおかげでしょう。魔法のテンプレートにあてはめれば、自分で考えなくても努力をしなくても大丈夫。ラクさの代償として、自分の気持ちに嘘をつく習慣を容易につくってしまうということ。しかし、借り物の「レンタル言葉」に自分を当てはめても、自分のためにならないのは明らか。そうしたテクニックとは、むしろ危険だと著者はいいます。人を動かすのは会話のテクニックではなく、伝える側の「教えたい」という視点。それが、聞く側の教官につながる。それが、人を言葉で動かす力の本質だといいます。*どれも常識だと思っていたことばかりなので、意外に感じた方も少なくないはず。でも、たしかに納得できることでもあります。他にも、納得できるエピソード満載。目を通してみれば、「伝えること」はもちろん、コミュニケーション全般についても自信がつくかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※木暮太一(2016)『「自分の言葉」で人を動かす』文響社
2016年06月02日『イヤなことを1分間で忘れる技術』(石井貴士著、きずな出版)は、『本当に頭がよくなる 1分間勉強法』(KADOKAWA)などのベストセラーを生み出してきた著者による新刊。タイトルにも明らかなとおり、今回のテーマは忘れる技術、すなわち「忘却術」。忘却術について語るにあたり、著者はまず「イヤなこと」について言及しています。いうまでもなく、イヤなことは誰にでもあるということ。しかし、イヤなことが起きたあとに、すぐ前向きに切り替えられる人と、後ろ向きに引きずる人がいるのも事実。それはなぜなのでしょうか?当然ながら、違いを生んでいるのは「感性が鋭い・鈍い」という違いでもなければ、生まれつきの遺伝子の違いでもないはず。違うのはただひとつだけで、すぐに忘れることができる「忘却術」を知っているかどうかということだけだというのです。■人の頭は忘れるようにできている「エビングハウスの忘却曲線」(『本当に頭がよくなる1分間記憶法』SBクリエイティブ)によれば、人は20分後には44%を忘れ、56%しかおぼえていないのだそうです。それどころか、1時間後には約55%を忘れ、約45%しかおぼえていない。1日後には74%を忘れ、26%しかおぼえていないということ。単純に考えれば、イヤなことがあったとしても翌日には74%をわすれているということで「人は物事を忘れるようにできている」と考えれば気持ちも楽になる。それこそが、「イヤなことを忘れる技術」だというわけです。そして、こうした基本を踏まえたうえで、もうひとつおぼえておきたい重要なことがあります。それは、完璧主義からの脱出。■完璧主義じゃないほうが愛される完璧主義になって「100点でなければダメだ」と思っていると、毎日のように落ち込むことになります。なぜなら、100点を取れるケースは滅多にないから。しかし「65点でいい」と思っていれば、65点を超えた日は笑顔、下回ったら落ち込めばいいということになるため、落ち込む回数は減ることに。また完璧主義者は「頭が固い」と敬遠されがちですが、短所があることを認めて生きると愛されるもの。完璧主義ではなく、弱点があるくらいのほうが、多くの人から愛されて、落ち込む回数も減るということです。■人生は78点が満点だと考えようだから人生を100点満点で考えると、完璧主義に陥ってしまいがち。しかし人生は100点満点ではなく、78点満点なのだと著者はいいます。そして、ここで紹介されているのが「78:22の法則」というものです。地球上は、海が78%で陸地が22%。空気中の窒素は78%で、酸素など窒素以外が22%。人間の身体は、水が78%、それ以外が22%。会社の売上も、上位22%の人が全体の78%の売上を上げているといわれているそうです。だとすれば、満点は78%だと考えることができるはず。人生のルールも同じで、100点満点ではなく78点満点で考えれば、楽に生きることができるというわけです。では78点満点で考えたとき、合格ラインは何点なのでしょうか?著者いわく、毎日の合格ラインは65点。65点をクリアしたら、「いい1日だ」と自分をほめる癖をつけるべきだといいます。100の仕事が目の前にあって、今日中に100すべてをこなさなければならないと考えると、完璧主義になってしまいます。だから、がんばったとしても78点で終わらせて、残りの22日は明日の分として残しておく。具体的には、合格ラインを65、満点を78にしていくと長続きするそうです。■65点で4日仕事すれば260点つまり著者が訴えたいのは、がんばりすぎるよりも、常に余力を持っておくほうが、毎日を健康的に生きられるということ。・「きょうはがんばったから100点、翌日は疲れてなにもしなかったから0点、次の日はがんばって100点、その次の日は疲れてなにもせず0点」ということだと、4日後の総得点は200点。・65点で4日間仕事をした人であれば、4日後には260点。こうして比較してみると、差は歴然とします、しかも後者は仕事以外のこともする余裕があるので、人生をエンジョイすることも可能。だからこそ65点主義でいるべきであり、がんばったとしても78点で止めておく。そうすることで落ち込み癖が減り、最終的なパフォーマンスも上がるということです。*このように、基本的な考え方はいたってシンプル。だからこそ無理なく読み進めることができ、しかも実践しやすいはずです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※石井貴士(2016)『イヤなことを1分間で忘れる技術』きずな出版
2016年06月01日『その節約はキケンです――お金が貯まる人はなぜ家計簿をつけないのか』(風呂内亜矢著、祥伝社)の著者は、これまでに3,000人以上の資産状況をヒアリングしてきたというファイナンシャルプランナー。そんな立場から、「ダイエットと節約はとてもよく似ている」とユニークな主張をしています。ダイエットの基本は、口に入れるカロリーより、身体を動かすカロリーを大きくすること。そして節約の基本は、出ていくお金より入ってくるお金を大きくすること。構造が同じだということです。さらにもうひとつの共通点は「世間の噂話を鵜呑みにするとキケン」だという点。本質を理解しないままダイエットしたら、栄養のバランスが崩れる可能性があります。節約法も、ネットや新聞で紹介されているやり方を真似するだけだと、かえってお金が貯まらないことがあるというのです。理由は、その方法の本質を見落としてしまうことになるから。そこで本書では「キケン」という観点から節約術や考え方を捉え、よりよいメソッドを紹介しているわけです。きょうはそのなかから、「住宅ローンは短く組むとキケン」をご紹介したいと思います。■住宅ローンは短く組むとキケンな理由住宅ローンを利用する際には、金利は低く、期間は短く、さらに積極的な繰上げ返済を行えば、総支払額を抑えることが可能。そのため、ローン選定時に借入期間をとにかく短くしようと考える人は少なくないでしょう。たとえば3,000万円の住宅ローンを年利1.5%で借りる場合、35年間で返済すると総支払い額は約3,858万円。しかし25年間で返済すると、総支払い額は約3,600万円となり、約258万円の差が生まれるわけです。これだけ違うわけですから、返済期間を短くしたくなるのも当然。でも返済期間を短くしようとすると、当然のことながら月々負担する金額は重くなります。先ほどの例で考えてみましょう。月々の返済額は35年ローンで約9.2万円ですが、25年ローンだと約12万円。期間が10年短くなる代わりに、毎月の負担は約3万円も増えることになるわけです。つまり、この支払い額の増加が、のちのち家計を圧迫してしまう可能性があるということ。これはかなりキケンだと著者は主張しています。■現在と同レベルの収入を維持できる?住宅ローンを借りるときは、現在の収入を基準に考えることが多いもの。また共働きの場合だと、妻の収入もアテにして返済計画を立ててしまいがちだといいます。しかし考えなければならないのは、夫婦揃って現在と同レベルの収入を今後もずっと得られるとは限らないということ。子どもができれば産休・育休を取得することになるでしょうし、子育て中は時短勤務になることも考えられます。また夫婦がフルタイムで働いたとしても、子どもが大学生になるころには学費の負担が大きくなるでしょう。こうした問題以外に、実家の両親の介護が必要になることも考えられます。夫婦のどちらかがリストラされたり、転職を考えたりする可能性もあります。しかも単身者であった場合は、これらの事態に自分ひとりで対応することになります。■「短期間」にこだわってはいけない!このように、人生には不確定な要素が数多くあるわけです。しかし住宅ローンを組んだ時点では、その後数十年の生活の変化を予想することなど不可能。だからこそ、住宅ローンの返済期間を短くすることだけを考えて月々の返済額をギリギリまで高くしてしまっていると、いざというときに身動きが取れなくなってしまう恐れがあるということ。それどころか、その月の生活費をまかなうために、住宅ローンよりも高い金利でお金を工面しなければならない事態になるかもしれません。「住宅ローンの借入期間をできる限り短くする」という節約方法は、慎重に選択する必要があるわけです。総支払い額ばかりに注目するあまり、いまの生活を苦しめることになってしまっては本末転倒。そうならないように、気をつけることが大切なのです。もちろん、収支や支出のバランスに見合った住宅ローンを借りることが大前提。そして借りる金額が同じである場合、短い時間での返済を確定してしまわない方が、苦しまずに返済できる可能性があると、著者はいいます。そして、そんな理由から、「短期間」にこだわらないことをおすすめしているわけです。*このように、実際の生活に密着した「キケン」を取り上げているため、とてもわかりやすい内容。ぜひ一度、手に取ってみてください。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※風呂内亜矢(2016)『その節約はキケンです――お金が貯まる人はなぜ家計簿をつけないのか』祥伝社
2016年06月01日なにをやってもうまくいくときがあれば、すべてが空回りしてどうにもならないようなときもある者。「運」っていったいなんなのでしょうか。『ゲッターズ飯田の運の鍛え方』(ゲッターズ飯田著、朝日新聞出版)では、いままで5万人以上を占った経験を持つゲッターズ飯田さんが、「運の正体」を解説し、その「運」を鍛える方法を教えてくれています。今回は本書のなかから、「運とは何なのか」をご紹介します。運は突然舞い込むものと思っている人が多いかもしれませんが、実はそうではないということがわかるはずです。■運気が悪いときは「自分らしくないとき」運気は上がりっぱなしということも、下がりっぱなしということもありません。振り子のように、左右に振れるリズムを繰り返しているというのです。この「振り子」がポイント。占いでよく使われる折れ線グラフは上下に浮き沈みするので、運気を善悪で捉えがちですが、運気が悪い=「悪」ではないというわけです。運気がいいとき、悪いときというのは、自分らしくいられるかどうかの違い。運気がいいときは自分らしさを出すことができ、運気が悪いときは自分らしくなくなるということが起こっているのだそうです。では「自分らしいとき」とはなにか?それは「欲望が満たされているとき」。ただし人間の欲望はみんな同じというわけではありません。誰でも自分の欲望を満たしたいと思っていますが、そもそも人によってその欲望の種類は違うし、振り子が逆に触れると、求めたくなる欲望が変わって心が乱れたりします。ですから、まずは自分の「欲」はなんなのかを知ることが大切なのです。■自分の欲望を知れば運を捉えやすくなる!人間の欲望は5種類に分けられ、著者はこれを「5欲」と呼びます。たとえば「金欲・財欲」の強い人は、お金がたくさんあると心が満たされ前向きになれます。そして「運がいい」と感じるのです。逆にお金がなくなると不安や恐怖を感じ、心が不安定になります。つまり、自分の心が変わることが、運にも影響を与えているというのです。また、「自分にない欲」を手に入れてしまったときにも人間は「運が悪い」と感じます。5つの欲望の特徴をピックアップしましたので、自分に当てはまりそうなものをチェックしてみてください。本書ではさらに多くの項目が掲載されています。(1)自我欲自分を認めてもらいたいという欲望。負けず嫌いや頑張り屋の人、目的意識が強い人などが当てはまります。欲望が満たされないと、反発心が強くなったり、人とぶつかりやすくなったりする傾向があります。(2)食欲・性欲食べ物やセックスへの強い執着。明るくサービス精神旺盛で、立ちなおりが早いですが、欲望が満たされないと感情をむき出しにしたり、短気になったりします。(3)金欲・財欲お金やモノの価値=自分の価値と捉え、それを高めたいと思う欲望。物事を現実的に考えることができ、いい意味で心配性。欲望が満たされないとケチになり、得だと思えないと行動できなくなったりします。(4)権力・支配欲人の上に立ってコントロールしたい欲望。リーダー気質で面倒見がよい反面、欲望が満たされないとメンタルが弱くなったり、細かいところを気にしすぎたりする傾向に。(5)創作欲モノやアイデアを生み出したいという欲望。自分の才能も他人の才能も認めることができ、好きなことを追求しますが、欲望が満たされないと人を小馬鹿にしたり、言い訳が多くなったりします。■運がいいときは「決断や行動」をする時期自分が「運がいい」と感じるときは、行動するとき。前向きになれる時期なので、決断や行動をするのに向いているといいます。やりたいことを決めてどんどん手を出してOK。気になる人にも積極的に声をかけましょう。そして絶好調の後には必ず振り子が振れ、欲望が満たされない時期がやってくるそうです。このときは「勉強の時期」。これまで避けてきたことや、触れる機会がなかったことをこなす時期と考えましょう。そういう時期であると捉えて心構えができれば、自分のステップアップにつながります。■12年のうち「絶好調期」は2年しかない運にはサイクルがあり、12年のうち好調期は4年。そのうち絶好調は2年で残りの2年は種まきの時期です。そしてそれ以外は「勉強の時期」なのです。また、日や月単位ででは好調日(月)と不調日(月)はそれぞれ2日間(ヶ月)で、普通の日(月)が8日(ヶ月)というイメージ。このサイクルがわかっていると、いまの自分がやるべきことが見えてくるはず。そして「運の動き」を見極めながらチャンスをつかむことができるようになるといいます。*自分らしさを「欲望」という切り口から見つめてみると、いまの自分がどんな状態なのかが捉えやすくなるのではないでしょうか。「運がいい」という状態は、人によっても違うものであり、不運の時期も、勉強の時期と捉えれば心も軽くなりそうです。運を味方につけて、人生の壁も乗り越えていきましょう!(文/平野鞠) 【参考】※ゲッターズ飯田(2015)『ゲッターズ飯田の運の鍛え方』朝日新聞出版
2016年05月31日本日ご紹介したいのは、『理系の伝え方―最良の知恵を生み出す「ロジック&コミュニケーション」』(籠屋邦夫著、きずな出版)。著者は、東京大学で工学(理系)を学び、アメリカではスタンフォード大学で経営と意思決定論という“理系と文系が融合した分野”を学んだ実績を持つ人物。その後に関わった経営コンサルティングの現場は「働く人たちの協働作業によって物事が成し遂げられる」という、文系の側面が強い環境だったのだとか。いってみれば理系と文系という、相反する2つの「思考回路」と接してきたということ。そこで本書ではそうした実績に基づき、「理系ならではの伝え方」を明らかにしているのです。■「理系思考」とは何なのかところで、あまり聞きなれない「理系思考」とはどのような思考なのでしょうか。著者の説明によれば、それは“すべての事柄に対して、価値判断の傾向が「絶対的ロジックである」”という「思考回路」を意味するもの。事実、グーグルの創業者であるラリー・ペイジ、アマゾンCEOのジェフ・ベゾス、インテル創業者のゴードン・ムーアなど理系出身の起業家たちも、大半が「ロジカル」なコミュニケーションを得意としているのだとか。そして、「ロジカル」なコミュニケーションの土台にあるのが「理系思考」だということです。スタンフォード大学大学院で「意思決定論」を学んだ経験を持つ著者の現在の本業は、クライアントの「意思決定のクオリティを高める」こと。それを “エデュサルティング”(「エデュケーション」と「コンサルティング」とをかけ合わせた造語)と名づけ、戦略的マネジメントと意思決定の本質を「教え」、プロジェクトや事業の成功を「支援」し、次世代リーダーを「育成」しているのだそうです。■伝える力は意思決定の武器「意思決定」というと「決断の瞬間」をイメージする人が多いかもしれませんが、実はそういうことではないようです。著者によれば「意思決定のクオリティを高める」とは、決断の瞬間の前後、そこに至るまでの思考のプロセスをも含めた、幅広い活動を刺すというのです。そして「意思決定のクオリティを高める」という作業のなかには、必ず「伝える」という行動が入ってくるのだといいます。たとえばA・B・Cの3つの候補のなかから、A案を採用してほしいという場合は、当然ながら「A・B・C案のうち、A案が最適」と思ってもらえるように話をする必要があります。つまり「伝える力」は、意思決定のための武器として重要な意味を持っているということ。だからこそ、意思決定のエデュサルティングをする日々のなかで著者は、コミュニケーションに関しては「“理系思考”を持っていたほうがうまくいく」と感じるようになったのだというのです。なぜなら理系思考を持っていれば、内容を整理し、伝達し、論理的に議論することが可能になるから。■伝えることの目的は3つ!そして、そのことに気づいてからというもの、「伝える」ことの目的の大半は次の3つに絞られると確信しているのだそうです。1.相手と衆知を結集する(お互いの意見を出し合う)2.意思決定と決断をする(目的とゴールを明確にする)3.次のアクションに結びつける(実際に行動を起こす)思ったとおりのことが正確に相手に伝わる。そして、それが相手の知恵と知識を活用した、より高次元の意思決定とアクションにつながる。それだけで、コミュニケーションは大きく変わるということです。■実は「内容や議論」も重要なお著者は、コミュニケーションの基本構造は以下の3つに分類されるとも主張しています。1.「内容」→伝える前に、自分が伝えたい内容を整理すること2.「伝達」→その整理した内容を実際に相手に伝えること3.「議論」→伝えたあとで、その内容をもとに相手と話し合ったり、相手の疑問を解消したり、その後の行動につなげること「伝える」というと、上記の3つのうちの「伝達」の部分ばかりをフォーカスしがち。しかし、その前段階である「内容」を準備すること、そしてそのあとの「議論」をイメージしていくことも、それと同等、あるいはそれ以上に重要なことだというのです。いわば「内容をどうするか」を考え、それを「伝達する」、そして、それに基づいて「議論をし、衆知を結集していく」ということ。それぞれが持っている知識やスキルや思考を合わせることによって、内容をよりよいものにし、そのやりとりを通じて合意を形成し、手を携えて次のアクションに結びつける。それこそが、理系の伝え方だというわけです。*「理系の伝え方」は決して難しいものではなく、文系の人でも抵抗なく受け入れられるはず。だからこそ、目を通してみればコミュニケーションに対する考え方が変化するかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※籠屋邦夫(2016)『理系の伝え方―最良の知恵を生み出す「ロジック&コミュニケーション」』きずな出版
2016年05月31日『あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』(野口真人著、ダイヤモンド社)で著者が訴えているのは、「ファイナンス理論」の有効性。それは本当の価値を見抜き、正しい選択をするために人類が産み出した究極の実学なのだといいます。著者の言葉を借りるなら、ファイナンスとはすべての価値をお金に置き換える“現金な”学問。その証拠に、ほとんどの金融商品・ギャンブル、あるいは詐欺までもが、「現金(キャッシュ)が持つ魔力」をうまく利用することによって成り立っているのだそうです。つまりファイナンス理論は、それらのまやかしを見破り、“本当の価値”を見極めるためのシステム。そして驚くべきは、ファイナンスの価値体系において、現金は「もっとも価値の低い資産のひとつに位置づけられているということ。■お得なビールはどっち?ところで著者は、読者に対してある質問を投げかけています。「同じ銘柄のビールがコンビニAでは400円、隣のコンビニBでは350円で売られていたとしたら、この場合、お得な買いものは?」というもの。当然のことながら、お酒好きの方は「コンビニBに決まっている!」と思うことでしょう。しかし、ビールを飲まない人にとっては、「どちらも買わない」が正解であるはず。どうせ飲まないビールなら、買わないほうがマシだからです。また、このビールが普段から300円で売られている商品だとすれば、どちらのコンビニで買っても損することになります。この例からもわかるとおり、私たちは買いものや取引をする際、価格を見比べて損得を判断しようとするものです。「こちらのほうが価格が安いからお得だ」「あっちのほうが価格が高いから、価値も高いに違いない」というように、価格同士の比較が価値判断の基準になっているということ。しかし、価格だけを見くらべても、正しい判断はできないと著者はいいます。これは、ビールを株式に置き換えて考えてみると分かりやすいのだとか。■株の「買い時」はいつ?Q:昨日1,000円で取引されていたC社の株式が、きょうは700円で取引されている。きょう、この株は買うべきか?株価だけを見れば、1,000円だったものが700円で買えるのですから、C社の株は「まさに買い時」ということになるでしょう。とはいえ株式投資の経験がない人でも、ここで「買い」の判断をすることはないはず。なぜならC社の株は、700円よりももっと下がる可能性があるから。では、どうすればいいのでしょうか?この問いに対して著者がいいたいのは、「価格と価格を見くらべている限り、まっとうな意思決定はできない」ということだそうです。700円、500円、100円のどの時点で買うにせよ、あるいは買わないにせよ、目に見えている株価だけを根拠にして判断する人は、単なるヤマ勘を頼りにしている点においては「同じ穴の狢(ムジナ)」だということ。■「価格と価値」を分けるだとすれば気になるのは、「正しく意思決定をするためにはどんな情報が必要なのか」ですが、いうまでもなく、C社株の本当の価値がわかればいいのです。たとえば、「この株には本当は150円の価値しかない」とわかっていれば、1,000円から700円に下落した時点でも手を出そうとは思わないはず。逆に100円にまで下落したなら、迷わず購入を決めるはずだということです。私たちはどうしても、価格という“目に見えるもの”に惑わされてしまいがちです。しかし本当の意思決定は、「価格と価格」を比較する世界から抜け出したところ、すなわち「価格と価値」の両方を見渡す視点からしか生まれないのだと著者は主張しています。だからこそ、ファイナンス的な思考の第一歩は、価格と価値を分けて考え、価値の見極め(価値評価)に軸足を移すことなのだといいます。原価や市場価格に注目する従来の考え方は、あくまでも「目に見えるもの」、端的にいえば価格に注目していることになります。「価格が価値を決める」という発想であり、いいかえれば価格中心の世界観。対して、ブランドのような「目に見えないもの」を価値の源泉だと考えるのがファイナンス。「価値が価格を決める」という、“価値中心”の世界観でとらえようとするわけです。お金が単なる尺度であり、それ自体が価値を決めるものではないのだとすれば、ファイナンスのほうが現実に即していると著者はいいます。*「数字は苦手」だという方も、抵抗を感じることなくすんなりと読める内容。未来に向けて新たな価値観を身につけておくためにも、必読の書といえそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※野口真人(2016)『あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』ダイヤモンド社
2016年05月31日『銀行員が教える 一生困らないお金の増やし方』(長岐隆弘、高市 亮著、総合法令出版)は、メガバンク行員経験を持つ不動産鑑定士/不動産投資プロデューサーと、メーカーに技術者として勤務したのちに独立した不動産投資家による共著。「銀行にお金を預けることの意味が大きく揺らぎはじめているなか、ただ漠然と貯金しているだけでは、とっさの事態に備えることは不可能。そこで、いますぐ行動を起こす必要がある」という考え方に基づき、一生お金に困らない生活力を身につけることを提案しているのです。■「お金に働いてもらう」という発想「一生お金に困らないなんて、ありえない」と感じる方がいても不思議はないかもしれません。しかし著者によれば、それは決してありえないことではないようです。彼ら自身が、そうした生活を送っているのがなによりの証拠。その根底にあるのは「自分で働くのではなく、お金に働いてもらう」という発想。つまりは投資によって、給料以外の安定収入を得ようという考え方です。しかもそれは、自己資金がまったくなくても始めることができるというのです。そんなコンセプトを軸に、お金を着実に増やすためのさまざまな方法を明かした本書から、きょうは不動産投資の魅力をピックアップしてみたいと思います。■不動産オーナーは銀行から借金するおそらく、「不動産投資はお金持ちのすること」だというイメージが一般的でしょう。つまり、「ビジネスで成功した人が、稼いだお金で不動産を購入している」というふうに思われているわけです。しかし意外なことに、不動産オーナーは実際には自分のお金を使ってはいないと著者はいうのです。何故なら1億円の不動産を買うとき、多くのオーナーは銀行から1億円の借金をするから。利回りが5%程度あれば、その借金は単純計算で20年あれば返済可能だということです。1億円×5%=500万円1億円÷500万円=20年※実際には税金の支払いなどが必要つまりこれまでは、お金持ちの人たちだけがこのことを知っていて、自分のお金を使わず、さらにどんどん資産を増やしていたということ。ところがサラリーマン大家の裾野が広がっていくにつれ、「自分のお金を使わずに不動産投資ができる」という情報がブログやSNSなどを通じて世間一般にも知れわたっていくことに。著者の分析によれば、これが最近の不動産投資熱の大きな原因のひとつなのだということ。■銀行が全額融資してくれるのが魅力家賃収入がローン返済額に見合っていて、なおかつ不動産の評価が高ければ、銀行は全額融資(フルローン)をしてくれるのだといいます。そしてこれこそが、あらゆる投資のなかで不動産投資だけが持っている最大の魅力。現在それほど自己資金のない人が不動産を購入するためには、不動産の購入資金を全額借り入れることができる、不動産投資ならではのこのメリットを使わない手はないということ。いいかえれば、全額融資可能な物件を見つけさえすれば、自分のお金をまったく使わなくても手に入れることができるわけです。■不動産の管理を自分でする必要ないとはいえ、もしそんな物件を手にすることができたとしても、管理などに手間がかかりそうです。しかし、それも心配ないのだとか。簡単なことで、購入したあとも、管理などは管理会社に外注できるからだというのです。つまり、自分で動く手間をとことん少なくすることができるということです。いってみれば、重要なのは、そういった仕組みを「知っているかどうか」だけ。さらにいえば、そのような物件の見極め方を学ぶ、あるいは、見極められる人を味方につける。たったそれだけでいいということです。もし「株式投資をやりたい」といっても、そのための資金を貸してくれる銀行はありません。FXにしても、証拠金によるレバレッジがあるとはいえ、基本的には同じこと。しかし不動産投資は、株やFXのような高度なセンスが求められる投資とは異なり、端的にいえば「誰にでもできる」投資なのです。つまり、あとは「やるかやらないか」だけ。だからこそ、強いのは「明確な理由のある人たち」だと著者はいいます。そして、「やりたい理由」を持っている人たちは、確実に一歩を踏み出し、成果を上げているということです。*まだまだ実感できないかもしれませんが、「納得するしかない」というほど説得力に満ちた根拠が、本書にはぎっしりと詰まっています。お金に困らない将来をつかむために、読んでおくだけの価値はありそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※長岐隆弘、高市亮(2016)『銀行員が教える 一生困らないお金の増やし方』総合法令出版
2016年05月30日『執事に学ぶ 極上の人脈―世界の大富豪が、あなたの味方になる方法―』(新井直之著、きずな出版)の著者は、執事によるフルオーダーメイドサービスを提供している「日本バトラー&コンシェルジュ株式会社」代表取締役社長。自身も執事として資産50億円以上の顧客をサポートし、さらに企業向けにも富裕層ビジネス、コンサルティング、講演、研修などを行っているのだそうです。本書においては、そんなキャリアのなかで見聞きした大富豪のさまざまなエピソードを交えつつ、人脈づくりの具体的な実践例を紹介しているということ。きょうはそのなかから、「人脈」に関する大富豪の考え方をご紹介したいと思います。■人脈を「トップ20とベスト5」に分類いうまでもなく、人脈とは、まわりの人を分け隔てなく大切にすることから育まれるもの。とはいってもそれは、決して簡単にできることではありません。また、人脈が広がれば広がるほど、おつきあいの量が必然的に増え、管理仕切れなくなるという現実的な問題もあるでしょう。そこで大切なのは、おつきあいの仕方を工夫すること。では、大富豪の方々は、この問題にどう対処しているのでしょうか?著者によれば、大富豪たちは人脈を「トップ20」と「ベスト5」に分けている人が多いのだそうです。といっても、おもてなしに差をつけているということではなく、それは「かける時間の差」。たとえば、トップ20に対しては月に一度程度、電話をかける。電話する時間がないときは、執事が手紙を代筆することもあるとか。一方、ベスト5とは、直接会う時間を設ける。そのようにして、時間のかけ方を工夫しているというのです。■食事にかける時間で大切か否かがわかるちなみに時間のかけ方の違いは、食事のお誘いを見ているとよくわかるそうです。というのも、大富豪は総じて、「誰と何回食事をともにするか」をとても意識しているから。そんななか、夕食を2~3時間かけてゆっくり過ごすような相手は、間違いなくベスト5だということ。なお人数に関しては、絶対に20人と5人でなくてはいけないわけではないと著者は補足しています。つまり30人と8人でもいいのですが、無理のない範囲でおつきあいを続けていくには、このくらいの人数に絞るほうが管理しやすいということです。■「トップ20とベスト5」に対する工夫「トップ20」「ベスト5」の数こそ違うものの、著者自身もこうした考え方にならっておもてなしの仕方を工夫しているのだといいます。具体的には、トップ20に当たる方たちは、いままで実際に問い合わせや商談など、仕事の話をした方々。そういう人たちには月に一度、相手にとって有益そうな情報をメールや手紙でお送りしているというのです。一方、ベスト5にあたるのは、契約のあるお客様と、過去に契約したことがあるお客様。さらには、お世話になっている旅行代理店などの取引先や、自社で働く仲間たちもそれに相当するのだとか。こうした方々には、どんなに忙しかったとしても、月に一度、自分の方から出向いて近況報告をしたり、意見をうかがったり、一緒に食事をしたりと、なにか相手に対して貢献できることを見つけに行くのだそうです。■3か月以上「間隔」を空けてはいけないただし、注意すべき点が1つ。特にトップ20の方たちからは、3か月以上間隔を空けてしまうとリセットされてしまう場合があるということ。事実、著者自身も、せっかく執事のサービスに興味を持ってもらえたにもかかわらず、3か月連絡しなかったために関係が切れてしまったという苦い経験があるのだといいます。これは他業種にもいえることで、たとえば営業マンなども、3か月連絡をとらなかったお客様に会いに行くときは、多少なりとも勇気がいるはず。しかも3か月といえば、人事異動で担当者が変わっていることも考えられる期間。だからこそ、間隔を空けてはいけないのです。そこでトップ20に限らず、今後も関係を持ちたいと思う相手に対しては、相手の負担にならない程度のコンタクトをとり続けることを著者は勧めています。*このように、「対執事」であるといっても、そのメソッドの多くは私たちのフィールドでも十分に応用できるものばかり。読んでみれば、コミュニケーションをより円滑にできるかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※新井直之(2016)『執事に学ぶ 極上の人脈―世界の大富豪が、あなたの味方になる方法―』きずな出版
2016年05月30日『体に毎日たまる毒をちゃんと抜く技術』(矢城明著、サンマーク出版)の著者は、外資系製薬会社で約20年間にわたり、新薬の開発を担当してきたという人物。「生涯で2~3種類の新薬開発に携わるのが常」とされていた当時の業界において、7種類もの新薬開発に携わったというのですから驚きです。現在は、薬学部トップクラスの大学で最年少の客員教授となり、講義を中心に活躍しているのだといいます。■毒を「抜く」という考え方つまり、そうしたキャリアを軸に書かれたのが本書だというわけですが、その主張の軸になっているのは「抜く」という考え方。私たちは毎日の食事を通じ、生きるために必要な栄養を摂取していますが、その過程においては必然的に「老廃物」という毒をためることになります。そこで、まず気をつけるべきは、毒をためないこと。ただし人間は毒を摂取しなくても、みずから体内で毒をつくってしまうもの。だからこそ、体内に毒をためないこと以上に、「たまった毒をいかに“抜く”か」が健康のカギを握っているというわけです。■なぜ水分補給が必要なのか本書で著者が強調していることのひとつが、「水分補給」の重要性です。まず、入浴して汗をかいたら、当然のことながら水分補給は不可欠。しかも人間は、寝ている間にコップ一杯分の汗をかくといわれています。この汗は睡眠中の体温調節のために欠かせないものだそうですが、朝起きたときの喉の乾きの原因になっているのも事実。それだけでなく、汗を大量にかいたあとの寝起きの体は水分が不足しているため、血液やリンパ液の流れが悪くなり、循環しづらい状態になっているというのです。そこで、水分補給が必要になるということとなるとスポーツドリンクを思い浮かべる方もいらっしゃるでしょうが、スポーツドリンクは糖分が多すぎて胃に負担をかけてしまうのでよくないそうです。それに、そもそも、体内の循環を上げるためには、冷たい水で体を冷やさないことが大切。たしかに暑いときには、冷たい水をおいしく感じます。しかし冷たい飲みものは体温を内側から下げ、血管やリンパ管を収縮させてしまうので、循環のスピードが確実に落ちるというのです。■理想的な飲みものは白湯!そこで、もっとも体に負担をかけない飲みものとして著者が推奨しているのが、常温(15~25度)か、できれば暖かい白湯(さゆ)。体温よりも温かい白湯を飲むと、胃腸をはじめとする臓器が温められて活性化することに。循環が高まれば、体も自然と目覚めてくるというわけです。ちなみに著者は、いつも沸騰させたアルカリイオン水をポットに、そして常温のアルカリイオン水をやかんに常備しているそうです。朝起きると、すぐにそれを1対1で割り、200~400ミリリットルほど飲んでいるというのです。ポイントは、温度を体温よりも少し高い40度くらいにしていること。フーフーと冷まさなくても飲める程度の熱さにしているわけです。朝起きたときだけではなく、寝る前にも白湯を飲み、寝ている間に水分が失われても大丈夫なように備えておくことも大切。また、お風呂上りも体の水分が相当失われているため、白湯を飲んで潤すといいのだとか。お風呂上りにはどうしても冷たいものを飲みたくなるものですが、どんな状況であれ、冷たいものは体温を下げ、臓器の機能を低下させてしまうのだといいます。循環機能においては、確実にマイナスなのです。■白湯を飲むべきタイミングつまり、(1)起床後、(2)入浴後、(3)就寝前というように、朝・夜・夜の3回は意識して40度前後の白湯を飲むのが理想的。それで体は活性化するというのですから、ぜひ取り入れてみたいものです。暑いときに冷たいビールやかき氷がおいしく感じられるのは、暑さによって上がった体温を下げようとするあまり、脳が間違ってサインを出しているからなのだとか。本当は冷たいもので内部から体温を下げるよりも、白湯で水分を補給して循環を上げ、汗をかいてゆっくりと体温を下げたほうがいいということです。なぜ、そこまで白湯がいいかといえば、糖分やカフェインなど、他のものが混ざった飲みものよりも、純粋に水分だけの白湯のほうが直接吸収できるから。特に朝は排出の時間なので、糖分などが入ったものを飲んで、消化・吸収にエネルギーをかけることは避けたいところ。そこで就寝前後は、白湯以外のものは飲まないようにするべきだという考え方です。なお、「白湯は苦手」という人でも、飲み慣れてくると次第においしいと感じるようになるといいます。*特筆すべきは、一方的に理屈としての持論を押しつけるのではなく、自身の体験に基づいた記述が徹底されている点です。そのぶん、机上の空論とは違った説得力が生まれているということ。しかもすぐに実践できることばかりなので、きっと役立つはずです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※矢城明(2016)『体に毎日たまる毒をちゃんと抜く技術』サンマーク出版
2016年05月30日「いい感じだと思った男性が離れていってしまう」「彼氏ができても長続きしない」という悩みを持つ女性は多いもの。男ゴコロってよくわからないですよね。株式会社マンダムが全国の20~39歳の女性を対象に行った調査でも、54.4%が自身の恋愛を「こじらせている」(悪循環、うまくいかない、 どうしていいかわからない等)と答えています。そして、それをどうにかしたい女性は50.4%もいることが明らかに。やっぱり苦しい恋愛より楽しい恋愛をしたいですよね。そこで今回ご紹介したいのが『ジョン・グレイ博士の「愛される女」になれる本』(ジョン・グレイ著、三笠書房)。本書によれば、男性と女性の心理の違いを知らないと、無意識のうちに男性を遠ざけてしまうことがあるそう。そこで今回は、男性が離れていくダメ行動を7つピックアップしました。恋愛がなかなかうまくいかないという人は、当てはまる行動がないかチェックしてみてください。■1:男性を「問題解決モード」に追い込む「ねぇ聞いてよ、きょう会社でね……」「そういえば友だちのA子が……」などと、女性はその日にあったことや、愚痴などを取り留めなく話したくなるもの。話してスッキリしたいだけなのですが、男性は誰かの話を聞くと、「だったらこうしたらいいんじゃない?」などと問題解決の方法を示したくなってしまうのです。せっかく仕事を終えて一休みしたいのに、それでは全然リラックスできません。ですから女性としては、はじめに「ただ話を聞いてほしいだけなの」と初めに伝えることが大切。そして、話が終わったら「聞いてくれてありがとう」と感謝してください。そうすれば彼も余計な一言を言わずに話を聞けますし、感謝されることで誇らしい気分になれるのです。■2:被害者意識が強い「彼は自分のことをわかってくれない」と思ったり、「自分は愛されていないんじゃないか」と拗ねた気分になったりしていると、彼の心は離れていくばかり。男性は「信頼されている」という実感があると幸せを感じられるのです。自分を抑えつけず、相手に素直に気持ちを伝えることも信頼の証。自分にも相手にも寛容になることができれば、二人の関係は長続きするでしょう。■3:連絡をくれない男性を責める彼から連絡がないと、女性にとっては淋しいですよね。でも、男性から連絡がほしいなら、ただ待っているだけでも、相手を責めるのもNG。「けなげに」連絡を待っていると相手に思わせることができ、連絡をもらったときに心から感謝を示すことができれば、二人の関係はスムーズになり、男性も電話やメールをすることに喜びを感じるようになります。男性は彼女と話したくないわけではなく、ただ仕事に集中したいだけ。そう考えて、「電話をくれなくても大丈夫。でも連絡をもらえればとってもうれしい」などと伝えることができれば彼も嫌な気持ちにならず、彼女のことを愛おしく思うはず。そして電話がかかってきたときにはそれがどれほどうれしいかを言葉にしましょう。■4:感情をコントロールできない感情のなかでも、特に「怒り」は暴走しがちでコントロールは難しいもの。けれど、怒りの感情を爆発させて事態がよくなることはほとんどありません。ですから、カッとなっても、それをより前向きなかたちでコミュニケーションする方法を身につけることが必要です。たとえばイライラしたときは「ちょっとイライラしてきたから、自分の好きなことをするね」といって買い物に行ったり、友達と電話したりして嫌な気持ちを取り除くのも有効。つきあっていれば、ときにイライラすることは避けられませんが、お互いに努力することで気持ちよく過ごすことができるでしょう。■5:質問攻めにする男性はときに自分の世界に閉じこもるもの。彼が急に黙り込んでしまったときに、「私がなにか気に障ることでもいった?」「私になにかできることはある?」などと、質問攻めにするのはNG。彼は不機嫌になり、ますます心を閉じてしまいます。ここで必要なのは、そっとしておいてあげること。彼のためになにかしようと思わず、自分の時間を過ごしていればいいのです。そのうち、彼が自分で解決するべき問題を片づければ、自然と心も戻ってくるでしょう。■6:母親のように世話を焼く「どうして部屋がこんなに散らかってるの?」「靴下を脱ぎっぱなしにしないで」などというような指図は男性が嫌うもの。男性にとっては「自分の力でどれだけ達成できたか」が大切であり、人から指図を受けたり、人に教わったりすることが基本的に好きではないのです。だから、彼の部屋に遊びに行って、気になるところがあっても母親のように世話を焼くのはやめましょう。そして、少しでも彼がなにかを自主的にしたときには、それをほめるのがポイント。ほめられることや感謝されることは男性にとってプライドをくすぐられることなのです。■7:自立していない女性はパートナーとすべてを共有したくなるもの。彼の考えていることや困っていることなどを知っておきたいと思うかもしれませんが、質問を浴びせたり、無理やり聞き出そうとしたりするのはやめましょう。いいつきあいは「ひとりでいる時間」と「ふたり」でいる時間」のバランスがとれてこそ生まれます。「ひとりでも楽しく生きていける」という余裕があってこそ、男性とも自然体で付き合っていけるのです。*何気ない行動が知らず知らずのうちに男性を傷つけたり、イライラさせたりしていることもあるんですね。自分を変えようと無理にがんばらなくても、少し相手の気持ちに立ってみることでコミュニケーションがスムーズになりそうです。「こじらせ女子」を卒業し、幸せな恋愛を手に入れましょう!(文/平野鞠) 【参考】※ジョン・グレイ(2016)『ジョン・グレイ博士の「愛される女」になれる本』三笠書房
2016年05月29日