医療費控除や住宅ローン控除等で確定申告を経験している人も多いのではないでしょうか。実は投資で利益が発生した場合も基本的には確定申告が必要になります。ただし、例外的に手続きが不要になる場合もあり、それぞれの状況に応じて判断することが重要です。また、万が一、確定申告が必要にもかかわらず申告を怠ってしまうと加算税や延滞税のペナルティが発生する可能性もあり、投資を行う上で確定申告に関する知識は必要不可欠と言えるでしょう。そこで今回は、投資に関わる確定申告の基本的な内容について解説します。確定申告の基礎知識確定申告とは、未払い分の税金がある場合には追加の支払いを行い、過払い分の税金がある場合には還付金を受け取るための手続きです。確定申告を行うことで税金が少なくなることもあり、上手に利用すれば効果的に節税することもできます。まずは、確定申告の基本的な内容を紹介します。確定申告を行ったことがある人にとっては当たり前の内容かもしれませんが、重要な内容ばかりなのでこの機会に再確認しておきましょう。対象期間確定申告の対象となる期間は、前年の1月1日〜12月31日までです。手続きできる場所と期間原則として、住民票のある自治体の税務署で行うことになっています。また、e-Taxを利用して申告することもできます。申告期間は基本的に2月16日から3月15日となっていますが、2018年分の場合は2019年の2月18日(月)から3月15日(金)までです。期日直前は混み合うこともあり、できるだけ早めに申告すると良いでしょう。確定申告が必要にも関わらず怠るとペナルティが発生する?確定申告が必要にもかかわらず怠ってしまうと、加算税や延滞税のペナルティが発生する可能性があります。ただし、自主的に申告すればペナルティが軽減される場合もあり、申告漏れが発覚した場合はできるだけ早く税務署に問い合わせることが重要です。ペナルティの具体的な内容としては、決められた期日までに確定申告を行わずに税務署から指摘を受けた場合には無申告加算税が加算されます。さらに、納めるべき期日を超えた分の利息として延滞税が加算されます。投資で確定申告が不要な場合ここからは、投資において確定申告が不要な場合を紹介します。これから投資を始める人には、聞き慣れない用語が多いですが、重要度の高い内容なのでできるだけ正しく理解しておきましょう。①「特定口座」の「源泉徴収あり」で取引した場合株式や投資信託を購入するためには金融機関の口座が必要ですが、実はこの口座には一般口座と特定口座があります。さらに、特定口座には「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2つがあり、「源泉徴収あり」の特定口座を利用した場合は、金融機関が税金の計算・納税を代行してくれるので確定申告が不要になります。②年間の給与所得が2,000万円以下で投資等の利益が20万円以下の場合1年間の給与所得が2,000万円以下で給与以外の所得が20万円以下だった場合は、確定申告が不要になります。給与以外の所得が対象なので、投資が20万円以下でも副業等の収入を合算すると20万を超える場合には注意が必要です。③NISA口座で取引した場合NISA口座の利益は制度上のメリットで非課税となっているので、利益が発生しても確定申告は不要です。④損益が確定していない場合損益が確定するまでは確定申告は不要です。例えば、100万円で購入した株式が120万円になっていても売却して利益を確定するまでは確定申告は不要です。投資で確定申告が必要な場合次に、投資において確定申告が必要な場合を紹介します。ここでは最低限知っておきたい内容をピックアップして紹介します。結論からお伝えすると以下2点の場合、確定申告が必要です。特定口座の源泉徴収なしを利用している一般口座を利用している①「特定口座」の「源泉徴収なし」で利益が出た場合「源泉徴収あり」の特定口座の場合とは異なり、「源泉徴収なし」の特定口座の場合は確定申告が必要です。「源泉徴収なし」の特定口座の場合には、金融機関から「年間取引報告書」が郵送されるので、それを使って確定申告することになります。具体的には、年間損益がプラスの場合は税金を支払い、マイナスの場合は株式の配当金や投資信託の分配金等と損益通算して税金の還付を受けます。②「一般口座」で利益が出た場合一般口座で取引したものは確定申告をする必要があります。多くの場合、株式や投資信託の取引は特定口座を利用しますが、例外的に一般口座で取引している場合には注意が必要です。また、FX投資等は一般口座での取引となっているので確定申告が必要となります。具体的な手続きについては、一般口座の場合には特定口座のように年間報告書は送られてこないので、自分自身で損益を計算する必要があります。取引履歴の詳細については、ホームページの取引履歴や取引の都度送られてくる売買報告書で確認すると良いでしょう。ただし、取引数が多くなると手続きも煩雑になるため、投資初心者や忙しい人はできるだけ特定口座を利用した方が良いでしょう。確定申告した方が良い場合次に、確定申告した方が良い場合を紹介します。知らないと損する場合もあるのでしっかりと確認しておきましょう。①損失を翌年以降に繰り越す場合投資で損失が発生してしまった場合は確定申告の必要はありませんが、確定申告することで損失を翌年以降3年間繰り越すことができます。損失を繰り越せば、翌年以降に利益が発生した時に損益通算することができ、税金を抑えることができるため長期的な投資を考えている人には非常に有効な制度と言えるでしょう。例えば、100万円で購入した株式を50万円で売却した場合、この時点では50万円の損失が確定しますが、翌年に株式投資等で30万円の利益が発生すれば前年の50万円と損益通算できるため税金はかかりません。さらに残りの20万円分を翌年に繰り越すこともでき、税制面で非常に優れた制度です。ただし、損失の繰り越しは毎年手続きが必要になる点には注意が必要です。②複数の金融機関の「源泉徴収あり」の特定口座で取引している場合複数の金融機関に「源泉徴収あり」の特定口座がある場合で、「利益の発生した口座」と「損失が発生した口座」がある場合は確定申告することでそれぞれの利益と損失を合算することができます。例えば、A社で50万円の利益・B社で30万円の損失があった場合、本来であれば差額の20万円に対して課税されるべきです。しかし、実際にはA社の特定口座では50万円に対して課税されます。A社にはB社で発生した30万円の損失が通知されないためです。そこで、確定申告することでA社とB社の損益を合算して正しい税金を計算することができます。つまり、この場合であればA社の特定口座で支払っていた税金の一部が還付されます。まとめ:これから投資する人は「源泉徴収あり」の特定口座がベター金融機関の口座には一般口座と特定口座があり、特定口座には「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」があります。これから投資を始める人は、特段の事情がない限り、「源泉徴収あり」の特定口座を選択すると良いでしょう。「源泉徴収あり」の特定口座であれば、金融機関が税金の計算・納税を代行してくれるため、非常に便利です。ただし、年間損益がマイナスになる場合や複数の金融機関で取引する場合等は確定申告を行った方が良い場合もあります。確定申告の必要性について、判断に迷う場合は取引先の金融機関や税務署に確認すると良いでしょう。また、知らず知らずの間にペナルティの対象になってしまうことがないよう細心の注意を払うようにしましょう。
2018年12月20日投資について調べると「ポートフォリオ」という言葉を目にすることがあります。中にはよくわからないまま読み進めている人もいるのではないでしょうか。しかし、実は「ポートフォリオ」は投資を検討する上で欠かせない基礎知識の1つと言っても良いぐらい重要です。そこで今回は、ポートフォリオの基礎知識や作成方法について解説します。ポートフォリオの基礎知識まずは、ポートフォリオを知る上で重要な基本的な内容を解説します。また、投資の世界では定説とされている考え方についても簡単に紹介します。意味と語源ポートフォリオには「書類入れ」の意味があり、もともとはイタリア語のポルタフォリオ(札入れ)が語源と言われています。日本では「作品集」の意味で使われることが多いです。投資の世界におけるポートフォリオの意味投資の目的や期間等から計算した資産配分比率に合わせて選択した具体的な金融商品の内訳のことです。ただし慣用的には、資産配分比率を示す言葉として使われることもあります。本来は資産配分比率のことをアセットアロケーションと呼ぶため、使い分けが必要ですが同義で使われることが多いです。例えば、投資金額の半分を株式、残りの半分を債券に投資している場合であれば資産配分比率は株式50%・債券50%となります。そして、株式50%に対してどの株式をどれだけ組み入れ、債券50%に対してどの債券をどれだけ組み入れるのかを示したものがポートフォリオとなります。野球のチーム作りに例えると野手と投手の比率がアセットアロケーション、具体的な選手の内訳がポートフォリオと言えるでしょう。株式と債券を中心に特徴の異なる資産を組み合わせると良いアメリカの経済学者であるマーコビッツは、株式と債券を組み合わせるとリターンは2つの平均値になるがリスクは2つの平均値以下になることを発見しました。つまり、様々な資産を組み合わせることでリターンを維持しながらリスクを軽減することができると言えます。リスクを軽減できる主な理由としては、株式と債券が反対の値動きをすることが多く、相殺する力が強いことが挙げられます。そのため、同じ値動きをする資産を組み合わせてもリスクを軽減する効果は小さくなるので注意が必要です。資産価値の主な変動要因は2つ資産価値の変動要因には様々な種類がありますが、大きく分けると個別リスク(資産固有の要因)と市場リスク(市場全体の要因)の2つに集約できます。個別リスクとは決算内容や業績見通し等のことであり、投資においてはできるだけ避けた方が良いと言われています。市場リスクとは為替変動や物価変動等のことであり、どの資産にも影響を与えることがあります。そのため、ポートフォリオ全体で考えると市場リスクを避けることは困難です。個別リスク(資産固有の要因)を避けるためには400銘柄以上の分散が必要以前は個別リスクを避けるためには数十銘柄程度で十分だと考えられていましたが、最近の研究結果ではさらに銘柄数を増やすことが必要だと考えられています。具体的には、100銘柄以上で個別リスクの90%を避けることができ、400銘柄以上で個別リスクの95%を避けることができると言われています。運用成績は資産配分で決まる様々な調査結果から、投資の結果の約94%は資産配分で決まることが明らかになっています。つまり、個別の銘柄選択や売買のタイミングよりもポートフォリオの重要性が高いと言えます。ポートフォリオを作成する手順いきなりポートフォリオを作成するのではなく、事前準備を入念に行うことが重要です。ここでは、先述した内容を踏まえて、ポートフォリオを作成する際の具体的なポイントについて解説します。投資金額と目標金額を明確にするまず初めに、投資金額を明確にすることが重要です。そして、その金額をいくらにしたいかを決めることが計画的な投資の実現につながります。投資金額や目標金額の設定は具体的な金融商品の選択にも影響するため、慎重に検討しましょう。期間を明確にする次に投資金額を目標金額にするための期間を考えます。例えば、5年後に使う予定の資金であればそれまでに目標金額を達成できるように計画を立てることが重要です。1年間の目標を計算する目標と期間が決まれば、あとは1年間にどの程度増やしていく必要があるのかを確認します。多くの場合、金融商品のリターンやリスクは年率で表記されているため、1年単位で考えることが重要です。比率を決めて金融商品を選択する1年間に必要なリターンを基に各資産の比率を決めて、具体的な金融商品を選択します。業種や会社の規模等を基準に複数の商品に分散することで個別リスクの軽減につながります。手軽にポートフォリオを作る方法ポートフォリオの重要性については十分に理解していただけたのではないでしょうか。しかし、最大の問題はポートフォリオの作成に手間がかかることです。特にこれから投資を始める人や経験の浅い人にとっては簡単な作業ではありません。そんな時は、第三者の力を有効活用することも検討してみると良いでしょう。ここでは、2つの選択肢を紹介します。①専門家に依頼するお金の専門家と呼ばれることもあるファイナンシャルプランナーに相談してみてはいかがでしょうか。ファイナンシャルプランナーに相談するメリットは完全オーダーメイドのポートフォリオを作成できる点です。一方、デメリットは相談料がかかる点です。特に相談回数が複数回になると相談料も高額になるので注意が必要です。また、ファイナンシャルプランナーにも得手不得手があるので資産運用を得意としているかどうかは事前に確認しておくと良いでしょう。ラップ口座(投資一任口座)を利用するラップ口座とは金融商品の選択等を金融機関に一任することができるサービスです。具体的なサービス内容は金融機関によって異なりますが、一般的には、いくつかの質問に答えるだけで自動的にポートフォリオを作成してくれます。ただし、あらかじめ用意されたポートフォリオの中から意向に近いものを選択するので自分にぴったりのポートフォリオになる可能性は低いと言えます。ラップ口座を利用するメリットはポートフォリオを作成する手間が大幅に省ける点です。また、定期的に状況報告が行われるので運用経過を頻繁に確認する手間も省けます。一方、デメリットは手数料がかかる点です。ラップ口座の場合、投資金額の1~3%程度が年間の手数料として差し引かれることが多く、投資金額が高額になれば年間手数料も高額になると言えます。また、最低投資金額が設定されていることが多く、まとまった資金を用意してからでないと利用できない点にも注意が必要です。まとめ:ポートフォリオが投資の結果を左右する計画的な投資を実現するためにはリターンとリスクの管理が欠かせません。特に長期投資においては意向に沿ったポートフォリオを作成することが重要です。過去の研究や調査等によりポートフォリオの重要性は明らかになっており、投資の結果を左右する大きな要因と言えます。また、適切なポートフォリオを作成できればリスクを調整することが可能になり、効果的な投資につながると言えます。ポートフォリオの作成においては、ファイナンシャルプランナーや金融機関の担当者に相談すると良いですが、専門家のアドバイスを有効活用するためには基礎となる考え方を理解しておくことが重要です。
2018年12月04日不動産に掘り出し物(ここでは相場より価格が安い物件の意味とします)がない理由として、「安い物件は市場に出回る前に不動産会社が優先的に買って、値段を上げ転売してしまうから」という意見をたまに耳にします。実は、この意見は半分正解で半分ハズレています。今回は、先述の意見が「半分正解で半分ハズレている」理由をもとに、不動産会社が物件を仕入れる仕組みについてお話ししたいと思います。■ 不動産会社は掘り出し物を転売して儲けている?HHImages / PIXTA(ピクスタ)不動産にはさまざまな指標からなる相場があり、相場よりも価格が安い物件を「掘り出し物」と呼ぶことがあります。一般的に、不動産会社はこの「掘り出し物」が市場に出回る前に優先的に買うことができ、それを右から左へ転売して儲けている、と思われているようです。たしかに、不動産業者が購入する物件は相場よりも安いものになります。逆にそうでなければ、不動産会社が売主となって分譲する物件は、その販売価格が相場より高くなってしまいます。これが冒頭の意見が「半分当たっている」理由です。では、なぜ不動産業者は相場より安く買えるのでしょうか?■ 相場より安く買える最大の理由とは?maruco / PIXTA(ピクスタ)まず、あなたが不動産(土地や建物)を持っていて、それを売る場合を考えてみましょう。あなたはその不動産を「少しでも高く売りたい」と思うはずです。ただし、不動産には相場があるので、なかなかそれ以上で売ることはできません。逆にいえば、「相場以下で売る必要もない」ともいえます。そこで疑問なのは、「少しでも高く売りたいはずの売主がなぜ相場以下で不動産業者に売るのか」ということです。不動産の売買には個別の事情が存在するのが当然であり、「売り急ぎ」やその逆の「買い進み」などの事情も多く存在します。言うまでもなく、売り手に売り急ぎの事情がある場合は、その取引価格が若干低めになる傾向があります。また、不動産会社のなかには情報の非対称性(買い手と売り手が持っている情報の格差)を利用して、安く買い取ろうとする質の悪い業者も一部には居るようです。■ 「不動産を商品化するスキルを持っている」ことが最大の理由テラス / PIXTA(ピクスタ)しかし、不動産会社が相場より安く買える最大の理由は、不動産会社が「不動産を商品化するスキルを持っている」ことにあります。例えば、高低差があり造成しなければ住宅が建たない土地や、一般住宅用地としては広すぎる土地、生活インフラ(上下水道・ガス・電気・道路等)が未整備の土地、権利関係が複雑だったり何らかのトラブルを抱えている土地などは、その物件情報を一般のマーケットに公開してもなかなか個人の買い手は見つかりません。買い手が見つからなければ、そのような物件は個人向けに販売するのではなく、不動産会社向けに販売することになります。そして不動産会社が購入する価格は、事業性(再販売等)を前提としたものになるので、個人向け相場よりも安くなってしまい、結果的に売主は相場より安く不動産業者へ土地や建物を売ることになります。不動産会社は、その不動産の最適用途を見つけ出して加工(造成工事、権利関係整理、利害関係整理など含む)することで新たな商品としての価値を見いだします。■ 加工して商品化するという前提があるから安く買える!HAKU / PIXTA(ピクスタ)不動産会社が土地や建物を相場より安く買える背景には、そのままでは一般の人たちが購入しづらい不動産を「加工して商品化する」という前提があります。つまり、不動産会社は「優先的に安い物件を買えている」わけではないのです。これが冒頭の意見が「半分ハズレている」理由です。このように、不動産会社はさまざま情報を集め、その不動産を加工する能力と技術を駆使し、相場より安く(しかし競合他社よりは高く)不動産を購入する努力を重ねているため、掘り出し物を購入することが出来るのです。
2018年12月01日いろいろな書籍やネット上で、「○○年に不動産が暴落する!」などの記事を見かけたことはありませんか?そのなかでも、とくにまとしやかに「暴落の年」と主張されているのは、「2019年」と「2022年」ではないでしょうか。では、この2つの年には何が起こり、なぜ不動産が暴落するといわれているのでしょうか?■ 2019年問題とは?ABC / PIXTA(ピクスタ)国立社会保障・人口問題研究所が2013年1月に推計した「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」によると、世帯総数は2019年をピークに減少に転じるとされていました。世帯数が減少に転じることで、住宅が供給過剰状態に陥り価格が暴落する、というのが「2019年不動産暴落説」が主張される大きな理由のひとつです。Rise / PIXTA(ピクスタ)しかし、この主張の基になった「総世帯数の減少」ですが、今年2018年1月に新たな推計が発表され、世帯総数増加のピークは2023年まで延びるという結果が出ました。つまり、世帯数減少を理由とした2019年問題はすでに回避されてしまったので、ここでは新たに世帯数ピークとされた2023年に暴落があるかを考えてみたいと思います。まちゃー / PIXTA(ピクスタ)実は、総世帯数が減少に転じても、すぐに不動産が暴落するとは考えにくいといえます。なぜなら、2023年以降も人口が増え続けると推測されている地域がたくさんあるからです。国立社会保障・人口問題研究所の人口推計によると、全都道府県の人口が減少に転じるのは前回の推計よりも延びて2030年となっています。つまり、2030年までは人口が増え続ける地域(都市)があるということになります。まちゃー / PIXTA(ピクスタ)これは、近年、出生率が改善されたことや、人口移動(移住)の状況を反映した結果なのですが、人口増加が続く地域では住宅の需要も一定程度継続します。そのため、人口流入が続いている地域(都市)については不動産の暴落は起こりにくいと考えられます。ただし、人口が流出していく地域では住宅需要が減り続け、不動産価格も下落していくと考えられます。■ 2022年問題とは?1988年に農地法が改正され、生産緑地の指定が始まりました。この指定を受けた土地は、固定資産税などの税金を大幅に減免できたり、相続税の納税を猶予する制度を使うこともできるのです。ただし、生産緑地の指定を受けると30年間の営農義務を負い、その土地を他の用途に転用することはできません。pixabayこの指定を受けた土地が2022年には30年目を迎え、その営農義務が外れて、税金対策などでそれらの土地が一斉に売り出されたり、アパートやマンションなどが建築されて、市場が供給過多になり、地価が暴落する、というのが「2022年問題」と呼ばれるものです。ABC / PIXTA(ピクスタ)ただ、この問題についても、すぐに不動産の暴落にはつながりにくい理由があります。2017年に生産緑地法の改正があり、生産緑地の指定から30年経過した土地について、新たに「特定生産緑地」の指定を受ければ、買い取り申出の時期をさらに10年延長することができるようになったことで、まずは急激な増税は回避されました。money/pixabayまた、この生産緑地の指定を受けた農地のなかには、前述した相続税の納税を猶予する制度を利用している生産緑地もあります。この、相続税納税猶予制度を利用するための条件が、終身営農(三大都市圏の場合)なので、買い取り申出(生産緑地の解除)をする場合は、猶予されていた相続税を支払う必要があります。つまり、そもそもこの制度を利用している生産緑地については、相続の発生などがないかぎり買い取り申出の対象外になると考えられるのです。よっちゃん必撮仕事人 / PIXTA(ピクスタ)東京都が2015年に都内の都市農業者を対象に行ったアンケートでは、この「相続税納税猶予制度の適用をまったく受けていない」という回答は約41%でした。さらに、この「相続税納税猶予制度の適用はまったく受けていない」と回答したなかで、今後の利用計画について「指定から30年経過後、すぐ区市へ買取申出したい」との回答は8.2%でした。つまり、東京都に限っていえば、2022年に買い取り申出の対象となる農地は、生産緑地の指定を受けている農地の約41%で、さらに即時買い取り申出をしたいのは、そのなかの8.2%なのです。実際にどれだけの農地が買い取り申出されるかについては「そのとき」になってみないと分かりませんが、上述した理由を考慮すれば、2022年に供給過剰といわれるほど市場に土地があふれ出るとは考えにくいといえるでしょう。HAKU-No1 / PIXTA(ピクスタ)今回取り上げた以外にも、2020年問題、2025年問題、2030年問題など、不動産の暴落をアナウンスする声は絶えません。ひとつだけ確かなことは、不動産が確実に「上がる」「下がる」などのタイミングは誰にも分からないということです。過激なアナウンスに惑わされずに、自分自身にとって最適な「売・買」のタイミングとは何かを大事にして実際の売買に臨むようにしましょう。【参考】※国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成 30 年推計)」※参議院立法と調査「都市農地の保全と有効利用」都市農地の貸借に関する制度と課題2017.11
2018年11月25日マイペースに賃貸業を営んでいるアサクラですが、世間を賑わす不動産の話題が気になることもあります。最近気になるのはやはり、過熱ぎみの不動産投資とそれに伴うトラブルのニュースです。不動産投資の怖さは「おいしい話」ばかりが独り歩きしてしまい、困難やリスクが語られにくいこと。そこで今回は、大家的視点から見た「ゼロから始める不動産投資の難しさとリスク」について考えてみたいと思います。■ 不動産投資はとにかくシビアな金銭感覚が必要ナカムラ / PIXTA(ピクスタ)うちのマンションは親族から引き継いだ古い物件を、家族みんなに助けてもらって経営しています。ですから、賃貸経営といっても、物件を取得するための多額な初期投資がない分、ゲタをはかせてもらっての商売です。その分、リノベーションにもメンテナンスにもしっかりと予算を割くことができています。仮にビジネスとして少々割が合わない投資でも、自宅の延長としてマンションをとらえているので「自分の家のために使った」と思うと納得できてしまいます。HM / PIXTA(ピクスタ)しかし、ゼロから資金を借り、ローンを組んで不動産を取得し、それを賃貸に出すとなると事情が違います。投資である以上、金利を含めて銀行への返済をおこない、そのうえできちんとした利益を出さねばなりません。そのためには、とにかくお金に対するシビアな感覚を求められます。入居者獲得のために物件は充実させたい、しかし、利益を考えるとお金はかけられない……。freeangle / PIXTA(ピクスタ)賃貸経営は常にこのせめぎあいにさらされるビジネスですが、不動産投資で利益を上げている人たちの話をうかがうと、みなさん、僕とは比べものにならないくらい厳しいラインで、このせめぎあいに苦しんでいます。投資である以上、投下した資金と労力に見合う利益が出なければ意味がないのです。僕などは利回りの計算などを見せられると頭が痛くなってしまいますが、綿密な計画なくして不動産投資はできません。■ 物件の維持管理にかかるお金や労力もバカにならないアオサン / PIXTA(ピクスタ)緻密な計画には「今後〇年のあいだに物件のメンテナンスにいくらかかるか?」という見通しも含まれます。しかし、この見通しをつけること自体が、簡単ではありません。水道ポンプが急に故障したり、古い電気ヒューズが飛んだり、僕が体験しただけでも予想外の出費はたくさんありました。僕が無知だったということもありますが、こういうトラブルを予測して長期の資金計画に盛り込むのは、かなり難しいことです。また、僕のように入居者と同じ屋根の下に暮らしていれば、トラブル発生時に自分が駆けつけることができますが、マンション投資をしている人のほとんどは物件の近くに住んでいるわけではないので、誰かに代わりに対応してもらわなければなりません。あんみつ姫 / PIXTA(ピクスタ)となると、業務を管理会社に委託することになりますが、そのためには管理料(家賃収入のうちの3~8%くらいといわれます)を支払わねばなりません。管理会社選びも重要です。うっかり質の悪い管理会社を選んでしまうと、満足のいく対応をしてもらえない可能性もあります。うちに入居いただいた方の一人は、前に住んでいた物件で上階からの漏水があった際、遠方に住むオーナーと管理会社のたらいまわしに遭い、なかなか問題が解決せずに苦労したとおっしゃっていました。僕個人としては、自分が子どもの頃から暮らしていた物件を管理するのにも四苦八苦していますから、よく知らない遠方の物件を購入して管理するなんてことは、ちょっと想像できません。■ 家賃保証で不動産投資を丸投げするリスクsasaki106 / PIXTA(ピクスタ)すべてを人任せにするという不動産投資も喧伝されています。たとえば、こんなセールストークを聞いたことはありませんか。「あなたはローンだけ組んでください。できたマンション(アパート)は我々が借り上げて経営します。ローン返済はマンションが勝手にやってくれます。ウン十年間、家賃も保証しますから心配ありません」大家をやっている身からすると、「こんなおいしい話、あるわけないよな」とすぐわかります。家賃というのは、まさに不動産賃貸業の生命線です。それを何十年にもわたって保証することなんてほぼ不可能な話です。まちゃー / PIXTA(ピクスタ)時代的に見ても、新築マンションが乱立し人口が減少に向かうなか、常に安定した家賃収入を想定すること自体、無理があります。実際、「家賃保証」という言葉が醸し出す安心感とは裏腹に、その現実は残酷です。不動産会社は、経済状況の変化などを理由に家賃を減額できるし、契約を解除することもできるのです。つまり、「家賃の支払いは保証するけど、いくら払えるかはわからないよ」ということですね。個人的には、これでは「家賃保証」とは言えないと思うのですが、法律的にはそれがまかり通ってしまうのです。■ 借地借家法は不動産業者の味方?sanae / PIXTA(ピクスタ)この「約束破り」を可能にしているのが、借地借家法(の悪用)です。常々申し上げているとおり、現在の借地借家法は「借りる側に圧倒的に有利」にできています。通常の個人(弱者)が、マンションやアパートという資本を持つ人間(強者)から物件を借りるという前提なら、それも一理あるのかもしれません。大家の気まぐれで追い出されたりすれば、入居者の生活は成り立たないですよね。しかし、不動産会社という資本力のある強者が、(相対的に見れば弱者である)オーナーから「一括借り上げ」というかたちでマンションやアパートを「借りる」場合でも、この借地借家法が適用されるわけです。つまり、「家賃保証」のような約束を交わしても、不動産会社は法的な弱者であることを盾に、いざとなれば契約を変更・破棄することができるというわけです。結果的に本当の弱者であるオーナーが苦境に追い込まれる事態になります。これはルール自体に問題があると言わざるをえません。不動産投資をするなら、すべてを人任せにせず、最低限の法律知識を持って自分を守る必要があります。■ マンション経営だってリスクのあるビジネスですしゅんちゃん / PIXTA(ピクスタ)とまあ、いつもに比べてやや殺伐としたテーマで書きましたが、やはり「マンション経営だって、ほかのビジネスと同じでリスクがある」というきわめてあたりまえの結論に行きつきます。うちのように、「親族から引き継いだマンションを」「子どもの頃からよく知っている地元で」「自主管理している」場合でも、それなりの出費や苦労があるわけです。ならば、「ゼロから多額のローンを組んで」「よく知らない土地にマンションを建て」「その経営を人任せにする」ことが、いかに困難でハイリスクなことか容易に想像がつきます。なんとなく「老後の蓄えにマンション経営」なんて考えている方もいるかもしれませんが、ゼロから始める不動産投資には、新しいビジネスを起業するくらいの心構えが必要だと思ったほうがいいでしょう。
2018年10月01日今回は不動産取引における「片手」「両手」というものについてお話したいと思います。不動産取引で業者が客から受け取るお金は、賃貸借、売買いずれの場合も原則として契約締結に持ち込んだ場合の仲介手数料だけです。物件を何件も紹介し、交通費などの経費を使って現地案内を繰り返したお客様でも、他社で契約されてしまえば1円のお金も入ってきません。業界が抱える問題点のすべての根源が、ここにあるように思います。仲介手数料は、賃貸の場合は月額賃料の1か月分、売買の場合は売買代金の3%+6万円と決まっています。売り上げを増やして給料を上げるためにはなるべく金額の大きな物件を決めることがカギとなりますが、もう一つの手段として「両手」をねらうというものもあります。そもそも「両手」「片手」とは一体何のことを差すかご存じでしょうか。■ 売主と買主に別々の仲介会社がつく「片手」取引って?shimanto / PIXTA(ピクスタ)不動産取引において賃貸の場合は貸主と借主、売買の場合は売主と買主という2組の当事者があります。家を売りたい、貸したいと思っている人は自分で客を探すのが難しいため、媒介契約を結んで不動産業者に依頼します。一方、家を買いたい、借りたいと思っている人も不動産業者を訪れて物件を紹介してもらいます。ややこしくなるため、ここから先は売買に限定します(賃貸でも内容は変わりません)。甲さんの依頼を受けたA社が売却活動をした物件をB社が乙さんに紹介し、甲さんと乙さんの間に1,000万円で売買契約が成立したとします。この場合A社は甲さんから、B社は乙さんからそれぞれ36万円の仲介手数料(税抜)を貰います。売主側と買主側の仲介会社が違うこのような取引を「片手」と呼びます。■ 売主と買主の仲介会社が同一の「両手」取引って?ふじよ / PIXTA(ピクスタ)甲さんから売却依頼を受けたA社が、A社で物件探しをしている丙さんに紹介して甲さんと丙さんの間で売買契約が締結されたとします。この場合A社は売主の甲さんと買主の丙さんの両社からそれぞれ36万円の仲介手数料(税抜)を貰うことができ、1件の取引で2倍の売り上げとなります。このような取引を不動産業界では「両手」と呼んでいます。当然のことながら営業はまず両手を狙います。物件を「物上げ」した場合まず自分の客に紹介できないか考え、次いで同じ店の他の営業に紹介可能な顧客を抱えていないか確認します。物件情報をオープンにするのはその後です。■ 「両手」取引はそんなに悪いことなの?maroke / PIXTA(ピクスタ)この両手取引が“評論家”の間で評判が悪く、「不動産業界における悪しき商習慣」の筆頭のようにまで言われています。私が不動産業界に転身した19年前、入社初日に読んだ業界誌で「両手取引では利害関係が異なる売主・買主の双方に対して責任が果たせない」と書かれていたことを今でも覚えています。売主は高く、買主は安く取引したいのが当たり前なので一つの会社で仲介するのは利益相反だと言うのです。両手取引の場合買主と売主の間に1社しか入らないため、買主の値引き要求(「指し値」という)があれば売主がそれを飲まされて損をするというのですが果たしてそうでしょうか。現実の取引では購入申し込み(買付け)が入ると片手であっても両手であっても仲介会社は何としてもその客で決めたいと思います。先ほどの事例でいえば、B社にとっては自社で紹介した物件で決まらなければお金になりませんし、A社にとってはこの申し込みが破談になればそれ以降に別の申し込みが入る保証はなく、それではやはりお金になりません。ですから指し値が無茶な内容でない限り、買い付けが入ればA社は売主を説得しようとします。これはA社の両手取引でも変わりません。売主の側にとっても早い段階で指し値に応じて売ってしまうことにメリットはあります。指し値を断って破談になればその後物件が売れ残る恐れがあり、そうなると値引きか売却中止しかないからです。そもそも売主は指し値が入ってくることを前提にして、相場に少し上乗せして値付けをしているものです。そして買主の希望する金額が納得できなければ断ればいい話です。お互いが意地になって50万円の差額がどうしても埋まらず、両手取引が成立しなかった経験が筆者にはあります。従って、両手取引で誰かが不利になる、という事は実際にはないのです。■ 「両手を狙って物件を囲い込む」というのは本当?ふじよ / PIXTA(ピクスタ)「両手取引を狙うあまり、業者は物件情報を他社に流さず囲い込む」という指摘もよく見ます。囲い込みにより売却が遅れたり、それによる値引きで売主が不利益を被るというものです。両手取引はもちろん効率的ですが、特定の物件に狙ってできるほど客付けというのは簡単なものではありません。物上げした物件をピンポイントで気に入ってくれる客を自分で見つけるのは至難の技で、そんなことをしても買い客を逃すだけです。囲い込んだまま売れずに売却中止になる、あるいは一般媒介に切り替えられて他決するという最悪の事態を考えると、両手取引を狙って物件を囲い込むことにメリットはありません。何より営業マンというものは今月の数字をどうするかということしか考えない人間です。将来どうなるかわからない物件を抱え込むよりは、片手でいいから決めて今月の数字にしたい、と考える方が普通でしょう。あくまでも両手取引を目指す、という会社も中にはあるかもしれません。しかし私がこれまで在籍してきた会社はすべて「片手でいいから決めて、今月の数字を何とかしろ」という方針でした。囲い込みが業界内で常態化しているかのような指摘は、実態から乖離しているといえます。■ 薄っぺらい業界批判に惑わされず、不動産業界を正しく理解してほしいABC / PIXTA(ピクスタ)これまでも書いていますが、不動産というものは金額が高く、売るのが大変だからこそ、買い付けを取るためにあらゆる可能性にかけるのです。そのため他社が物件を内見するのは大歓迎され、予約を入れれば「ありがとうございます!頑張ってください!」と言われます。不動産やマンション管理についてのニュースはこまめに見るようにしていますが、実務について何も知らずに書いていると思われる、薄っぺらな内容の業界批判が多すぎるようです。不動産は契約にならなければお金にならず、それでいて契約を1件まとめるというのは大変だということをお分かりいただきたいと思います。(written by 鶴間 正二郎)
2018年09月27日今回は物件を購入する際の「値下げ交渉」についてお話します。不動産は高額の買い物であるために少しぐらい値切りたいというのは自然な感情ですが、効果的な交渉を行うためには取引の仕組みを知っておく必要があります。中古物件と新築物件では状況がまったく異なってくるため、それぞれのケースについて実体験に基づいてご説明します。■ 「中古物件」の値下げ交渉は常識の範囲内で行うことがポイント売主と買主の間に仲介会社が入る「中古物件」の場合、値下げ交渉は売り主側の仲介会社(物元、元付)と買主側に仲介会社(客付)の間で行われることになります。中間業者による中古物件の「値下げ交渉」についての仕組みをご紹介します。ABC / PIXTA(ピクスタ)値下げ交渉は「買い付け」を書くことが大前提値下げ交渉のタイミングとしては「お気に入りの物件が見つかった時」になりますが、実際の交渉は不動産購入申込書(買い付け)を物元業者に提出することから始まります。Good morning / PIXTA(ピクスタ)中古物件において値下げ交渉をするということは「ここまで価格を下げてくれれば『絶対に』買います」という意思表示であり、そのための証として買い付けは必須で、これを書かなければ物元業者は交渉に応じてくれません。申込書を提出しているのですから、交渉が成立した場合はそのまま契約準備に入らなければなりません。筆者は何回も値下げ交渉を行いましたが、値下げの余地について物元業者に事前に打診しても「買い付けを入れてくれれば、売主と交渉します」としか答えてもらえなかった記憶があります。また自分が物元の物件に問い合わせがあった際も同様の回答をしており、値下げの可否について事前に探りを入れるのは難しいと考えておいた方がいいでしょう。そもそも大幅な値下げはありえないTATSU / PIXTA(ピクスタ)物件探しに際して買主は仲介会社に希望条件を伝え、それに基づいて仲介会社は物件を紹介します。条件の中でも価格は最も重要な要素であるため仲介会社は細心の注意を払って紹介するものであり、大幅な値下げ要求というのはそもそもありえないはずです。そうでないのは仲介会社が買主の希望を無視した物件を紹介したか、買主の欲の皮が張ってしまったかのいずれかで、どちらにしてもあまり感じのいいものではありません。非常識な値下げ要求には仲介会社が応じないfreeangle / PIXTA(ピクスタ)筆者の場合は、950万円の物件に600万円で買い付けを出され、上司から「そんな買い付けを取ってどうするつもりだ」と怒られたことがあります。客はローンではなく現金で買うのだから下げて当然だろうと主張し、こちらが何度説明しても「銀行を通さない綺麗な金だから売主にとってもありがたい話のはずだ」と譲りません。とても売主にはかれるような話ではないため、最終的に担当者の判断で断りを入れました。売主は「指値」が入ることを前提に価格を設定しているfreeangle / PIXTA(ピクスタ)そうはいっても不動産は高い買い物であり、少しくらい値切りたいというのは自然な感情です。実際に買い付けを書く際にも販売価格そのままの金額を書くことは稀で、いくらか減額した金額を記入している事例が大半だったように思います。このように買主が希望した金額を指値(さしね)といいますが、たいていの売主は売却開始に際して指値が入ってくることを前提として価格を設定しているものです。「査定価格としては3,000万円ですが、指値が入ってくることを考えて3,300万円で市場に出しましょう」というような話を筆者は何回もしました。常識の範囲内の「指値」には応じてくれる可能性大xiangtao / PIXTA(ピクスタ)売主は指値が入ることを前提に価格を設定しているのですから、常識的な範囲の価格交渉には応じてくれる可能性は大であり、むしろ指値を入れないのは損であるといってもいいでしょう。どのくらいが常識の範囲内であるかということは仲介会社の営業マンが一番よくわかっています。■ 「新築マンション」の値下げ交渉は状況次第新築物件の場合は中古とは事情が異なってきます。筆者は新築の戸建は扱った経験がないため、マンションの事例についてご説明します。shimanto / PIXTA(ピクスタ)竣工前でモデルルームで販売しているような物件の場合は値下げ要求はまずできませんが、売れ残ってしまった完成物件の場合は交渉の余地があります。売れ残った部屋に関しては売主が区分所有者ということになって管理費や修繕積立金の負担も発生するため、業者は多少値下げしてでも売ってしまわないと負担が大変なことになるのです。特に棟内モデルルームで使用していた部屋や最後の一部屋というような場合は交渉に応じてくれる可能性大であり、積極的に申し入れましょう。Ushico / PIXTA(ピクスタ)この場合は業者の営業担当者と直接交渉することになり買い付けの提出は不要ですが、「下げてくれれば買います」と明確に意思表示すれば相手も応じてくれやすくなります。不動産は金額が大きいため、ちょっとした交渉でまとまった金額を節約することが可能です。しかしここで非常識な態度に出てしまうと信頼関係が損なわれ、交渉そのものが壊れてしまうことになります。値下げ交渉においてはくれぐれも「常識の範囲内」ということを大切にしてください。
2018年09月23日おそらく、人生のなかでもっとも高額な買い物であるマイホームの購入。誰もが、高額の買い物である不動産を「少しでも安く買いたい!」と思うはず。そこで、不動産業界で約30年間、実際の取引現場を見てきた筆者が考える、「不動産を購入する際の値引き交渉の方法」や、そのタイミング、やってはいけないことなどについて解説します!■ 誰が交渉するの?bee / PIXTA(ピクスタ)まず、買主が売主と直接交渉する機会はほぼありません。ほとんどの場合、売主と買主の間には「仲介業者」が介在しますので、値引き交渉は仲介業者を通して行うことになります。ただし、売主が不動産業者などの場合で、売主が「直に販売」をしているようなケースでは当然、買主と売主が直接交渉することになります。■ いつ交渉するの?xiangtao / PIXTA(ピクスタ)たくさんの物件情報を集め、いくつも現地を見学し、「お気に入りの物件が見つかったとき」こそが交渉するタイミングです。逆にこのタイミング以外で仲介業者が交渉を引き受けることはありません。値引き交渉をするうえで覚えておきたいのは、「買う意思を固めてから交渉を行う」ということです。物件の売主は、市場相場を事前に調べたうえで売り出し価格を決めていますので、その価格を交渉するためには「この価格になれば買う」という前提が必要なのです。■ どうやって交渉するの?xiangtao / PIXTA気に入った物件が見つかったら、いよいよ交渉開始です。まずは仲介業者に「少し安くなりませんか」とストレートに聞いてみましょう。仲介業者の担当者によって多少の差はありますが、一般的に営業マンは、顧客が気に入りそうな物件については、価格交渉ができそうな物件かどうかを事前に調べている場合が多いのです。価格交渉が難しい物件について、安易に価格交渉を引き受けてしまうと、その交渉が失敗した場合には取引が成立しない可能性が高くなるので、値引きができる物件かどうかを担当営業マンが事前に調べておくのは当然といえば当然です。例えば、担当営業マンが「この物件は一切値引き交渉できません」というならおそらくその言葉どおりでしょう。その場合は売り出し価格どおりで購入するかどうか検討してください。逆に、「○○万円までなら可能かもしれません」や、「○○万円までなら交渉してみましょう」と言ってきたら、担当営業マンは値引きができるかどうかの可能性を事前にある程度知っているかもしれません。その場合は思いきって交渉してもらいましょう!■ 交渉のコツxiangtao / PIXTA(ピクスタ)買主が値引き交渉する窓口となるのは仲介業者です。そして、仲介業者は契約が成立しなければ、物件を何件案内しても売り上げは「0円」です。なので、買主が契約する条件を「値引き」にするなら、仲介業者は一生懸命に交渉してくれるはずです。しかし、その値引き交渉の額があまりに高額だったりすると、仲介業者は交渉そのものを引き受けてくれなかったり、熱心に交渉してくれなかったりする場合もあります。大事なことは「値引きしてくれるなら購入する」という意思をはっきりと担当営業マンに伝えて、その値引き幅についてもしっかり担当営業マンと相談することです。値引き交渉のコツは、買主と仲介業者の担当営業マンが、見る方向と目的を同じにすることなのです。■ 値引き交渉でやってはいけないことxiangtao / PIXTA(ピクスタ)個人、法人にかかわらず売主にとって自分の物件を値引きして売るということは重大な決断です。値引き交渉後に「やっぱりやめた」というのはできるだけ避けたいものです。その物件をきちんと確認・調べたうえ、購入の意思がしっかり固まってから交渉を始めるようにしましょう。また、ある物件の値引き交渉中に別物件の値引き交渉を同時に行うのもマナー違反なのでご注意を!■ 一番の注意点は…先に買われてしまうことxiangtao / PIXTA(ピクスタ)値引き交渉をする場合、もっとも注意しなければならないことは、タイミングによってはせっかく気に入った物件が売り出し価格どおりで他の買主に先に買われてしまう可能性があるということです。物件の希少性、時期、値ごろ感、仲介業者の意見など、総合的に考えたうえで値引き交渉するかどうかを判断しましょう!
2018年08月21日住まいを購入しようと様々な情報を集めたとき、よく目にする情報があります。「不動産の買い時」についての情報です。不動産価格の相場の話、住宅ローンの金利の話、行政が定める税制の話、など様々な観点から多くの考察がなされています。しかし、不動産業界の中で働く者として皆さんに申し上げたいことがあります。それは「誰にでも当てはまる不動産の買い時」など存在しない、ということです。■ 不動産業者はいつでも「今が買い時です」と言うG-item / PIXTA(ピクスタ)世の中には「今が買い時です!」と強調した情報がたくさんあります。それこそ住まいの見学のために不動産業者を訪れれば、必ず「今が買い時だ」と言われるでしょう。業者からすればビジネスなわけですから「今が買い時だ」と言うのは当然です。もちろん「買い時」であると強調するための事実に嘘はありません。例えば、現在の住宅ローンの金利は稀にみる低さです。商品によっては年金利1.0%を下回るものが珍しくない時代です。金利が低いうちに住まいを購入すること自体は合理的だと思います。freeangle / PIXTA(ピクスタ)しかし、ここで肝心なことが一つあります。それは、不動産業者はいつ、どんな時代でも「今が買い時だ」というトークをやめないということです。買い時アピールができる情報を何か見つけてきます。金利の話でいくと、金利が上がり始めることがあれば、「もっと上がる前の今が買い時です」というトークを展開するでしょう。また、多くの不動産関連の税の優遇制度には適用期限があります。これを「この税制は今年度で終わりなので、適用できる今が買い時です」というトークに活かすこともできるのです。■ 「買い時」は外部環境で決まるものではない。sasaki106 / PIXTA(ピクスタ)前述したような「買い時トーク」は筆者自身も使っていました。特に不動産の知識や経験が浅かった頃です。繰り返しますが、この時提供した情報に嘘はありません。住まいを購入する際、こういった情報を参考にすることはプラスに働きます。まちゃー / PIXTA(ピクスタ)大切なことは、金利や相場、税制などといった情報は、あくまでその時の「住まいをとりまく外部環境」を説明しているだけ、ということを理解することです。こういった外部環境は、とても不安定で不確実なものです。時代によってあっさり変化する可能性があります。そういった情報は、あくまで知識・参考としてのもので自分自身の住まいの買い時を決める決定打にはならない、と私は思っています。■ 「買い時」を決めるのは自分自身kou / PIXTA(ピクスタ)では、どのように自分自身の買い時を見つけるのか。答えはいたってシンプルで、「自分が住まいを欲しい理由」を突き詰めることです。例えば「子どもが産まれて部屋が手狭になったらから住まいを探す」として、買い時を「子どもが幼稚園に入るまで」と決める、などです。子どもが幼稚園・小学校と進めば、転園・転校のリスクが伴い、人間関係の構築に時間がかかる可能性があるからです。maroke / PIXTA(ピクスタ)こういった内容は外部環境に左右されません。たとえ20年後に相場が大幅によくなる、といった情報があったとしても、子どものために住まいを買うのであれば、20年後では意味がありません。他にも「定年までにローンを完済したいから、30歳までに購入する」とか「両親の介護のために半年以内に購入する」などがあるかもしれません。筆者も今は「買い時」をお客様に説明するとき、できるだけお客様の事情に寄り添ってアドバイスするようにしています。住まいの買い時は、誰にでも当てはまるような外部環境の情報でなく、自分自身の事情によって、自分自身で決めることが大切なのです。
2018年08月12日不動産業というものは生活全般に関わるものです。そのため世の中の動きの影響をもろに受けることもあれば、お客様の動きから世の中の意外な流れに気付かされたりすることもあります。今回は世の中の動きが仕事に影響した意外な事例を3つご紹介します。■ 1.若者の車離れがマンションの一般会計を直撃ニングル / PIXTA(ピクスタ)若者の車離れが進行しているといわれています。車を持とうとしないどころか車そのものに興味を持たない、更には教習所に通うのは金と時間がかかるから免許も取らないという、車好きの筆者にとっては信じられないような世の中になっています。これは自動車業界にとって深刻な問題となっていますが、実はマンションの管理組合にとっても重大な問題なのです。YNS / PIXTA(ピクスタ)マンション内の駐車場使用料は管理組合にとって管理費に次ぐ収入の柱であり、空き区画が増えることはその分だけ一般会計の収支が悪化することにつながります。マンションの駐車場はおおむね稼働率7割~8割くらいを想定しています。郊外のマンションの場合まだまだ問題になっていないようですが、筆者が担当していた都心部のマンションでは5割以下になってしまったところが多く、一般会計が大幅赤字になって繰越金が年々減少し、対応に苦慮したものです。■ 2.若者のテレビ離れも相当なものがあるUshico / PIXTA(ピクスタ)車離れほど話題になっていないようですが、若者のテレビ離れも相当なものがあるようです。駅前の不動産会社に勤務していた時、地元のケーブルテレビと提携して「引っ越し時に無料でチャンネル調整をやります」というキャンペーンを展開したことがあります。kou / PIXTA(ピクスタ)お客様と日時を打ち合わせたうえで訪問してテレビのチャンネル調整をするというものですが、その際にしれっとケーブルテレビの新サービスを紹介するのが真の目的です。ケーブルテレビ会社から紹介料がもらえることもあって積極的に告知しましたが、1Kタイプを契約した人の約半数が「テレビを持っていないので別にいいです」と言ってきたのは驚きでした。■ 3.リーマンショックが半年後に筆者の歩合給を直撃オカキ / PIXTA(ピクスタ)最後に、世の中の動きが仕事に影響した事例といえば、やはりリーマンショックです。アメリカの歴史上最大規模の企業倒産であるリーマンブラザーズの経営破綻が発生したのは2008年9月15日でした。筆者はその頃賃貸マンションの仕事をしていましたが、9月という比較的ヒマな時期であったこともあり、クビになった社員が段ボールを抱えて次々とビルから出てくるニュース映像をそれこそ他人事のように見ていたものです。しかしこれをきっかけとして発生したリーマンショックと呼ばれる世界規模の金融危機が直ちに日本を直撃し、さらに半年後には筆者の歩合給を直撃しました。maruco / PIXTA(ピクスタ)賃貸マンションの営業といえば1~3月がとにかく忙しく、特に3月は賃料の高いファミリータイプのマンションが法人契約の借り上げ社宅としてガンガン動くため、1年で最も大切な月になります。生命の危険を感じるほど忙しくなるのが常ですが、その分だけ歩合給も相当な額になります。しかし景気が悪くなれば企業はまず福利厚生に関する支出を削減します。2009年の3月はファミリータイプの法人契約がほぼなくなり、そのためとても3月とは思えない売上になってしまいました。チンク / PIXTA(ピクスタ)いかがでしたか。マンション管理という仕事は景気変動の影響を受けにくいといわれていますが、電気料金の値上げや消費税増税が組合会計を直撃し、それが管理委託費の減額要求に結び付いたこともあります。生活と直結している仕事であるためいつも気が抜けませんでした。
2018年08月01日「お金がない」「損したくない」「よくわからない」という人は投資には向かない?そんなアナタのために、投資の“最終兵器”が存在していたーー! 「サービスを始めてから1年半ほどで、利用者は15万人を超えました」 そう話すのはクレディセゾンの美好琢磨さん。このサービスは、今話題の「ポイント投資」のひとつだ。ポイント投資とは、クレジットカードを利用するともらえるポイントで、投資信託を購入したり、投資の疑似体験をすること。現金がいらないので、投資が怖いと思う初心者にも、一歩を踏み出しやすいと注目されている。 最近は“貯蓄から投資へ”と言われる。とはいえ、日銀の調査にも、お金が減ることは避けて通りたいと思う人が多いことを示すデータがあった。元本を下回るかもしれないが、儲かる可能性も大きい金融商品を、持ちたくない人が80.8%もいたのだ。 だがファイナンシャルプランナーの山口京子さんは言う。 「人生100年時代ですから、投資は必要です。平均寿命が65歳なら、老後が短いので、定期預金でも間に合いました。ですが、女性の2人に1人は90歳まで生きる時代。投資しないと、人間より先に、お金の寿命が尽きてしまいます」(山口さん) 頭ではわかっても、投資が怖い気持ちは変わらない。そんな人は、ポイント投資でお試し投資してみよう。 ■投資信託ポイント買付サービス 楽天証券のポイント投資であり、本物の投資信託が買える。 「ポイント投資も、お金を使った通常の買い付けも、同じ手順です。あえて同じにすることで、実際の投資を経験してもらいたいのです」 そう話すのは楽天証券の服部由実さん。選べる投資商品は約2,500種類あるので、選ぶのがむずかしい人は、2〜3の質問に答えるだけであなたに合った投資商品をアドバイスしてくれる、ネット上のロボットアドバイザーやランキングを参考にするとよい。 楽天証券ではポイントのみ、現金とポイント、現金のみとさまざまな買い方ができる。 「今年3月に、初めて投資信託を買った人の約半数は、ポイントを使って購入しています。また、そのうちの90%がポイントだけ、現金なしでの買い付けです」(服部さん) 証券口座が必要だが、投資で得た儲けが非課税になる「NISA口座」の利用もできる。ポイント投資でNISAデビューもいいだろう。 ■トラノコ・ポイントで投資 TORANOTECが運営するトラノコのポイント投資は、スマホアプリをダウンロードすれば、簡単に始められる。ただ、月額利用料が300円かかる。利用料を払っても、利益が出るのかをよく計算してから使ってほしい。 ■ストックポイント ストックポイント社が運営するポイント投資は、株価と連動する。ストックポイント自体が、あらかじめ選んだ株価などに連動して価値を変えるので、株式投資の疑似体験ができる。さらにストックポイントが一定以上たまると、本物の株と交換できる。 これらのポイント投資で注意したいのは、投資のセオリーである長期、分散、継続を守ることだ。 「ポイントがたくさんあっても、一括ではなく毎月小分けで投資するほうが安全です。また、値下がりを恐れることはありません。値下がりは、投資商品をたくさん買えるチャンス。バーゲンセールです」(山口さん) また、ポイント活用に詳しい(株)ポイ探の菊地崇仁さんも注意を呼び掛ける。 「ポイント発行会社が倒産したときや、自分が亡くなったとき、ポイントには補償がないため、戻ってきません(一部のマイルは相続可能)。ですが、ポイントで金融商品を買えば、購入先の証券会社が倒産しても1,000万円までは保護されますし、相続もできます」(菊地さん) 50代からの投資は、早くはないが、まだ間に合う。20年後のちょっぴりリッチな生活を目指して、今すぐお試しから始めてみてはいかがーー。
2018年05月24日「お金がない」「損したくない」「よくわからない」という人は投資には向かない?そんなアナタのために、投資の“最終兵器”が存在していた――! 「サービスを始めてから1年半ほどで、利用者は15万人を超えました」 そう話すのはクレディセゾンの美好琢磨さん。このサービスは、今話題の「ポイント投資」のひとつだ。ポイント投資とは、クレジットカードを利用するともらえるポイントで、投資信託を購入したり、投資の疑似体験をすること。現金がいらないので、投資が怖いと思う初心者にも、一歩を踏み出しやすいと注目されている。 最近は“貯蓄から投資へ”と言われる。とはいえ、日銀の調査にも、お金が減ることは避けて通りたいと思う人が多いことを示すデータがあった。元本を下回るかもしれないが、儲かる可能性も大きい金融商品を、持ちたくない人が80.8%もいたのだ。 だがファイナンシャルプランナーの山口京子さんは言う。 「人生100年時代ですから、投資は必要です」 金融庁の試算(平成5年~27年)がある。同じ金額を「定期預金」「分散投資」に毎年投資し、20年間、それぞれの方法で運用した収益を比較して見ると、定期預金では元本の1.32%しか増えておらず、貯蓄と投資とでは明らかな差が。特に、「定期預金」と「日本だけでなく、海外の株と債券を含む、リスクが高めの投資」との差は、1.8倍という大きなものだ。 「平均寿命が65歳なら、老後が短いので、定期預金でも間に合いました。ですが、女性の2人に1人は90歳まで生きる時代。投資しないと、人間より先に、お金の寿命が尽きてしまいます」(山口さん) 頭ではわかっても、投資が怖い気持ちは変わらない。そんな人は、ポイント投資でお試し投資してみよう。 ■永久不滅ポイント運用サービス クレディセゾンの永久不滅ポイント運用サービスは、ポイントのまま運用ができて簡単。マイナンバーが必要な証券口座もいらないし、手続きもスマホアプリで会員登録すれば、クリック3回程度で済む手軽さがウリだ。山口さんも、いちばん簡単だと太鼓判を押す。 「ポイントはもともと“おまけ”ですから、いくら減ってもゼロリスクです。だったら、元本を大きく下回るかもしれないが、大きな儲けも期待できるアクティブ運用を選びましょう。他社も含めてポイント投資は“ゼロリスク・ハイリターン”を目指すのがおススメです」(山口さん) また、永久不滅ポイントはセゾンカードのほか「MUJI Card」や「PARCOカード」などでもたまる。右肩にセゾンのロゴがあるカードを探してみよう。 「MUJIは使っていても、永久不滅ポイントがたまっていることを知らない人もいます。集めてみたら、意外とたくさんあったと驚く人が多いです」(美好さん) ■マネーハッチ インヴァスト証券のクレジットカードであるインヴァストカードは、利用金額の1%のポイントが付く。マネーハッチとは、そこで得たポイントを現金に換え、あらかじめ選んでおいた投資商品を買う仕組みだ。これが毎月、自動で行われるので、買い忘れる心配がない。 ポイント活用に詳しい(株)ポイ探の菊地崇仁さんは、放りっぱなしでも勝手にポイント投資が続けられるのがメリットだと言う。 「インヴァストカードで毎月5万円支払いをすれば、ポイントは500ポイントつきます。1年で6,000ポイント、20年で12万ポイントが投資の原資になります」(菊地さん) もし、先の金融庁試算の「日本だけでなく、海外の株と債券を含む、リスクが高めの投資」の運用と同じような利益が出たとすると、20年後には20万ポイントを超える。投資商品を売却すれば、現金約20万円を手にできる。 結果はどうあれ、元手はポイント。10年後、20年後のお楽しみに今から始めてみては。
2018年05月24日家を「借りる」と「買う」どちらが得か?という議論が、不動産業界には……いえ、世の中には昔からありますよね。この問題、筆者が不動産業界に入った19年前から(恐らくもっと以前からあったでしょう)盛んに議論されていましたが、いまだに結論が出たという話を聞きません。TATSU / PIXTA(ピクスタ)■ 「借りる」「買う」どちらが得か?問題のカラクリkou / PIXTA(ピクスタ)この問題のベースとなっているのは「“家賃”を払い続けるのと“住宅ローン“を払うのとどちらが得か?」ということで、大抵の場合、それぞれ発生する費用の合計をシミュレーションして比較しています。まだ紙の媒体が不動産情報の中心だった時代の話です。同じ出版社で賃貸向けと売買向け、2つの情報誌を出していましたが……、KAORU / PIXTA(ピクスタ)賃貸の情報誌では「借りる方が少しだけ得」、一方、売買の情報誌では「買った方が少しだけ得」というまったく異なる結論を出していました。一生の間に必要となる住宅関連の支出の合計は簡単にシミュレーションできるようなものではなく、前提条件を少し変えればまったく違う結論となります。つまり、立場が変われば結論も変わるのです。■ 設備やインテリアのグレードに大きな差はある?freeangle / PIXTA(ピクスタ)入居者が頻繁に入れ替わることを前提とした賃貸住宅に対し、分譲住宅は入居者が永住することが前提となります。そのため設備や内装等についていえば、分譲の方が長持ちする仕様となっていることが多かったように思います。特にクロスについては、ランクが全然違いました。賃貸の場合、入れ替わる度に何らかのリフォーム工事が入りますし、何かあれば退去した時交換すればいい、という意識がどこかにあるのかもしれません。■ 分譲マンションで発生する費用って?hug++ / PIXTA(ピクスタ)分譲マンションの場合、毎月発生する住宅ローン返済、管理費、修繕積立金等の他、故障等による設備の修理は当然のことながら全額自己負担です。分譲マンションには専有部と共有部があり、雑把に分けると玄関の内側で起こったことについては自己負担です。厄介なのは配管やインターホンといった、専有部と共有部両方にまたがる部分のトラブルで、原因がどちらにあるかによって負担額も変わってきます。専有部と共有部の細かい区分けについては管理規約に必ず記載がありますので、購入前にチェックしておくとよいでしょう。■ 賃貸住宅は、実は家主にとって厳しい時代にABC / PIXTA(ピクスタ)賃貸住宅の場合、賃料と共益費を毎月払いますが、消耗品関係を除き設備の故障については原則として家主負担となっています。また退去時における原状回復に際しても、「国土交通省ガイドライン」や「東京都住宅紛争防止条例(東京ルール)」により、自然損耗や経年劣化については借主は負担しなくてよいとされています。そのため、退去に伴うリフォーム工事についてもその大半を負担しなくてはならないなど、家主にとって厳しい時代となってきたように感じます。■ 賃貸住宅はまだまだ高齢者に厳しいのが現実foly / PIXTA(ピクスタ)賃貸住宅を語る上で、どうしても避けて通れない問題があります。賃貸物件の営業をやっていた時代に痛感しましたが、「高齢者に非常に厳しい」というのが日本の不動産業界の現状です。高齢者の場合、現役世代と違って収入が限られるということと、室内で万一のことが起きる可能性がある、ということが原因として挙げられます。高齢者を受け入れる物件はかなり限れられますし、仮にOKという場合でも内容のいい親族が保証人となり、かつ近くに住んでいなければならない、などといった厳しい条件が付きます。freeangle / PIXTA(ピクスタ)そして既にリタイアされた方の場合、年金だけが収入とみなされます(預金残高は考慮されないことが多い)。年金の金額だけで借りられるレベルの部屋というものは、高齢者が暮らしやすいようなものとは決して言えないでしょう。家は「買う」「借りる」どちらが得か、という問題は、おそらく今後も永久に決着はつかないでしょう。しかし「どちらがいいか」ともし聞かれたら、「リタイアするまでに、どこかで買っておいた方がいい」というのが筆者の結論です。(written by 鶴間正二郎)
2018年04月13日共有持分・共有名義とは?共有持分とは、複数の人が1つの不動産を共同で所有している時に、それぞれの人がその不動産について持っている所有権の割合のことをいいます。たとえば夫婦で1つの不動産を2分の1ずつ共有している場合は、夫と妻それぞれが持っている所有権の割合(2分の1ずつ)のことをさします。そしてこの割合を登記所に登記しなければなりません(持分登記)。登記とは、第三者に「これは私の所有権だ!」と主張することです。さて共有持分といったワードを聞くと、セットのように「共有名義」といった言葉を耳にすると思います。共有名義とは、その不動産の所有権を持っている人のことをいいます。たとえば3000万円の住宅をあなた(妻)と旦那さん(夫)で購入するとしましょう(共有名義はあなたと旦那さんになります)。出資額で持分割合が決まりますので、2,000万円分を旦那さんが、残りの1,000万円をあなたが出したとしましょう。するとこの住宅の持分割合は、旦那さん:3分の2あなた:3分の1となります。共有持分のメリットとデメリットは?「これから結婚して新居で夫婦生活を始めるんだ」といったご夫婦は、上記のように不動産を共有の持分とすることもできるわけですね。または年収や貯金を考慮すると2人でお金を出す方が良いかもしれない、といった人も少なくはありません。しかし「共有名義・持分にするとなんだか面倒なことにならないかな?」と懸念を抱いてしまうもの。まずはデメリットについてみてみましょう。デメリット夫(共有者)の承諾がないと、売却できない!ご夫婦2人の持分なので、当然にご自身の判断だけでは不動産を売却することはできません。旦那さんの承諾がないと売却できないわけですが、ここで夫婦喧嘩が起きることも・・・・。離婚した場合、売却を視野に考えたくはありませんが、夫婦喧嘩の火が広がって離婚することとなった場合、売却の可能性が高まります。住宅購入の資金に余裕がないから住宅ローンを組んだり、共有名義での購入を検討したはずです。つまり、片方がいなくなればその分を補填しなければならず、それは現実的に難しいので結果的に売却せざるをえなくなるわけです。夫(共有者)が他界した場合、相続の対象となる不動産は相続の対象となります。多くの場合、配偶者であるあなたかもしくは子どもが相続の対象となります。しかしほかに相続人がいたりすれば、遺産分割の対象となり、話は少し面倒になります。贈与税の対象となるもし旦那さんの方が先にお仕事を辞めた場合、住宅ローンが残っていればその分はあなたが支払うことになります。この場合名義人はあなたのみとなるので、旦那さんからあなたに不動産が贈与されたこととなり、贈与税が課せられます。逆もしかりです。メリットデメリットでは少々暗い話を考慮する必要がありましたが、メリットは明るい話です。なんと税制において2つもトクするのです!住宅ローン控除を二重に受けられる住宅ローン控除は、購入価格の一定割合を所得税から税額控除できる制度で、年末の住宅ローン残高の1%が税控除できます。住宅ローン控除は夫婦それぞれが、自身の住宅ローンの残高に対して利用できます。しかし夫(共有者)が病気などで仕事を辞めざるをえなくて収入が無くなるようなことや将来的にあなたが出産などで仕事を辞めるなど、ライフスタイルの変化も考えられます。この場合、住宅ローン控除は使えなくなる可能性があるので要検討です。売却時の特別控除を二重に受けられる不動産を売却するときには、なんと3,000万円が控除されます(居住用財産の買換えの特例)。通常だと3,000万円しか控除できませんが、不動産を夫婦2人の名義で購入した場合は、これが6,000万円となります。不動産を売却した時に利益が出れば、税金がかかります。この際にかかる税金6,000万円分のは支払わなくて済むといった制度です。まとめいかがでしたか。共有持分にする場合、片方が病気になって収入減がなくなるなどといったことを考慮しなければなりません。しかし将来(さき)のことは分かりません。デメリットなどを考慮して不動産を選ぶよりも、購入資金や住宅ローンの支払いに少しでも余裕が持てる物件を選ぶことが肝心だといえるでしょう。
2018年03月04日不動産管理委託契約とは不動産管理委託契約とは、不動産オーナー(管理組合や個人投資家など)が管理会社(マンション管理会社など)にその物件の管理をお願いする契約のことをいいます。主にマンション管理を委託する契約のことです。マンション管理会社がマンション管理法に定める「マンション管理業者」である場合は、以下の業務を行う義務があります。マンション管理会社は、管理委託契約の締結前に一定の重要事項を説明しなければならない(マンション管理適正化法第72条)。マンション管理会社は、管理委託契約を締結するときに、一定の事項を記載した書面(通常は管理委託契約書)を遅滞なく交付しなければならない(マンション管理適正化法第73条)。不動産オーナーである大家さんは、不動産は所有していますがその資産を運用する知識に関してはうとい場合があります。自分で運用するよりも、その道のプロである管理会社に運用をお願いした方が運営はうまくいくとみて、管理会社に委託をお願いするわけですね。運用とは具体的に何をするのでしょうか。たとえば共用部分などの管理・修繕マンションやアパートといった集合住宅は、ほかの人も住んでいます。階段や廊下などといった共用部分は居住者全員が利用するので、管理が大変です。また不動産も人と同じように年をとります。古くなってきたら外観などを補修しなければなりません。これには膨大なお金が掛かるので、あらかじめ計画を立てる必要があります。入居者の募集また一番の問題は、高い収益を得るにも空室率をなるべく低くしなければなりません。しかし大家さんは不動産に限っては素人です。空室率が低くなるよう、なんならゼロになるよう運営するためにもプロの手ほどきが必要です。このように、マンション1つを運営するだけでも大変な労力と戦略が必要となります。それを一手に担うのが管理会社で、そしてその契約である管理委託契約には2種類があります。2種類の管理委託契約一般管理契約一般管理契約とは、契約の対象となる不動産の大家さんが行うはずの管理業務を管理会社が「代行」する契約のことをいいます。具体的な業務内容として、入居の際の「賃貸契約」や「入金管理」など入居者との事務手続きや、マンションの共用部分であるエレベーターなどの整備・保守、清掃作業などが挙げられます。併せて、一般管理契約を選択した場合のメリットとデメリットもみてみましょう。メリット:高い収益性が見込める賃貸契約の内容(賃料、礼金・敷金など)や条件を、大家さんが取り決めることができるため、比較的高い収益が見込めます。デメリット:空室率を考慮した入居募集と広告にリスクがあります上記メリットで先述したように、一般管理委託契約は大家さんと入居希望者が直接契約を結ぶ契約です。メリットでは高い収益性があると挙げましたが、それはあくまでも「入居希望者が契約書にハンコを押せば」です。入居希望者が入居するまでにその広告をうつ必要があり、管理会社によってはこの費用が高額なところもあります。広告をうっても入居者が決まらず、それによって空室率が高くなれば、当然家賃も入りません。サブリース契約(一括借り上げ管理契約)サブリース契約とは、不動産管理会社が大家さんから物件を借り上げて、その管理会社が入居者と賃貸契約を直接結ぶ契約形式のことをいいます。一般管理委託契約とはどう違うのでしょうか。メリットとデメリットについてみてみましょう。メリット:安定して家賃収入が得られる「一般管理契約」との最大の違いは、家賃滞納や空き部屋が生じた場合でも「家賃収入」の保証があることです。サブリース契約は、「保証賃料(管理会社が査定した相場賃料の90~95%の率をかけた料金が一般的)」が管理会社から大家さんにオーナーに払われることになります。また入居者との契約も、大家さんと入居希望者ではなく、管理会社と入居希望者との直接契約を行なうことになります。そのため、大家さんと管理会社による確認の手間や時間を省くことができます。デメリット:高い収益が見込めない一般管理委託契約と比べると高い収益性が見込めません。家賃収入が最大化しないのがデメリットです。また管理会社との契約や広告の確認の手間や時間が省けることをメリットとして挙げましたが、裏を返せば入居者を選定することができないことを意味します。特に気にしないという大家さんもいますが、モラルの低い入居希望者が入居する確率も高まるといえます。しかしサブリース契約を受ける管理会社も、トラブルは避けたいため、入居審査は厳しめに行うところも多いのでそんなに気にする必要もないと思われます。まとめいかがでしたか。今回は管理委託契約の種類についてみてきました。一見、安定的に収益が入るサブリース契約の方が良いように思われます。しかし、サブリース契約には落とし穴も多く、あまり良い印象を持たれていないのが実状です。サブリース契約の注意点については、また別記事でご紹介しますのでお見逃しなく!
2018年03月03日もしかして、定期預金を放置していませんか?超低金利時代にそれは「もったいない」の極致。高リスクの投資でなくても“価値を上げる”方法はあるのです。仮に100万円があったとしたらーー。 「現在、空前の低金利です。一昔前の金融商品のように、複利計算で年利3%あれば、お金を預けただけで、24年後には倍に増えていました。ところが今の普通預金の金利は、わずか0.001%です。預けたお金が倍に増えるまでに、なんと7万2000年もかかってしまいます。たとえ100万円というまとまったお金を預けても、1年の利息はわずか10円。“これでは預けても意味がない”と、タンス預金にする人も多いでしょう。しかし、お金は手元に置くだけでは“成長”しません。工夫が必要なのです」 そう力説するのは、『図解でわかる!投資信託』(秀和システム)など多数の著書がある、ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんだ。生活経済ジャーナリストの柏木理佳さんは、このようにアドバイスする。 「お金は、預け場所を変更するだけ、まとめて払うだけで、得するケースが多い。今は元本割れをしない金融商品や投資といっても、安全に運用できる投資信託商品もありますので、まずはそういった情報を得ることが大事です」 そこで今回、手元に“100万円のへそくり”があると仮定して、柏木さんに実利重視で考えたその「お金の生かし方」を解説してもらった。 安心・安全を望むなら、金融機関の定期預金と考える人は多い。 「単なる定期はほとんど金利がつかないので、さまざまなサービスが付加された定期預金のほうが楽しめるのではないでしょうか」(柏木さん・以下同) 筆頭に挙げられるのはスポーツ応援定期。例年、2月から7月くらいにかけて、プロ野球、サッカーチームの応援定期預金の募集が始まる。 「たとえば昨年の広島銀行、もみじ銀行は、広島東洋カープを応援する定期預金があり、カープの観客動員数や戦歴に応じて金利が上乗せされます。一口10万円で、4位以下なら金利は0.025%ですが、優勝したりすると0.1%上乗せされます。100万円預けてカープが4位なら、通常の金利に250円の利子がプラス。優勝したら、年に1,000円の利息が上乗せされます」 金利はそれほど高くなくても夢がもらえる定期がある。 「宝くじ定期は、定期預金額に応じて、宝くじがもらえるというもの。スルガ銀行には、一口100万円の3年満期の宝くじ付き定期があります。金利は通常の定期預金と変わりませんが、1年間に2回(5月のドリームジャンボと11月の年末ジャンボ)、5枚ずつの宝くじがもらえます」 宝くじは、有名な西銀座チャンスセンターで購入され、地元の三嶋大社で当せん祈願をする念の入れよう。 「昨年末までに、10万円以上の当せん者が1,677人も出ていて、1億円の当せんも2本あったそうです」 なんと昨年の年末ジャンボでも、京葉銀行の宝くじ付き定期預金から1億5,000万円が。そのほか、変わり種定期にはこんなものも。 「横浜信用金庫では、子育て応援定期預金として、18歳未満の子ども1〜2人の場合、店頭金利に0.1%を上乗せ、18歳未満の子どもが3人以上いる場合で、0.15%も上乗せしています」
2018年02月28日まずは確認したい「不動産特定共同事業法」とは不動産特定共同事業法(以下、不特法)とは、投資家から資金を募って不動産を小口化したうえで、それを元に売買・賃貸し、その収益を投資額に応じて配当として投資家に分配する不動産事業のことをいいます。不特法は、事業主の適正な運営や投資家の利益の保護を図るために、この事業に対して「許可制」を設けているのが特徴的といえます。また不動産特定共同事業には主に2種類あります。出資者が所有権を持つことのできる「任意組合型」出資者は配当を受ける権利を持つが、所有権自体は事業者が持つ「匿名組合型」いずれにせよ、投資家が利益を得るには当然ながら事業主が重要となってきます。この事業主について説明していきます。法改正前の不動産特定共同事業を行うには?法改正前の不動産特定共同事業を行うには、主務大臣の許可を受ける必要があり、以下3つの条件が必要でした。宅建業の免許事務所ごとの業務管理者配置(自ら不動産特定共同事業の許可を得るために)資本金1億円以上が必要宅建業(大家業などの自ら賃貸業以外のこと)の免許が無いとなると、不動産会社でなければ事業主になることはできません。また仮に宅建免許を取得できたとしても、資本金1億円以上が必要ですので、多くの不動産会社はこれを行うことができずにいました。つまり分配利益を得る投資家の数は、そう多くはなかったといえます。これらの制度問題を解消するべく、本年度に法改正が行われました。不特法改正の背景と期待される効果とは現在、空き家の増加問題が社会的な問題として顕著となっています。また老築化の一途を辿る不動産を再生化し、市場に売り戻すことなどが喫緊の課題として認知されています。さらに当事業を行うには資本金1億円以上が必要であり、これでは中小企業である不動産会社が参入できず、結果、地方では良質な不動産ストックの形成が比較的難しいという問題がありました。これらの社会的背景を解消するために、不特法の改正が行われました。不特法を改正することで期待される効果は、以下のとおりです。空き家(空き店舗)の再生に伴う投資傾向の増加良質な不動産ストックの形成地方などの中小不動産企業事業参入不特法改正のポイントから、具体的にどのような効果(投資家にとってのメリット)が期待できるのかみてみましょう。新設:小規模不特定共同事業とは先述したように、従来の不動産特定共同事業は資本金1億円以上のある企業でないと当事業を行うことはできず、この条件によって、地方などの中小企業が参入しづらいといった問題がありました。これを解消すべく、今回の改正で小規模不特定事業を新設しました。業者が応募に必要となる要件を確認してみましょう。宅建業法の免許を受けており、資本金が1000万円以上で、かつ負債額が資産額の10%以下であり、主務大臣等による登録を受けた者(許可制から登録制に緩和)であること、などこれにより、不動産小口化商品で出資者を募ることのできる不動産会社が増えることが期待できます。つまりこれは、投資家目線でいえば「投資先がかなり増えた」「投資参入壁が低くなった」といえますまとめいかがでしたか。今までは資本金額や許可制などの厳しい条件があり、宅建業者は当事業に参入しにくく、また投資家もその影響で参戦しづらい状況でした。しかし今回の改正で、宅建業者の当事業への参入壁が低くなり、地方の業者でも参入しやすくなりました。伴って投資家が参入できる枠もかなり増えることが期待できます。
2018年01月28日指定流通機構(レインズ)とは指定流通機構(通称、レインズ)とは、宅地建物取引業法に基づき国土交通大臣が指定した不動産流通機構のことをいいます。不動産業者は、この指定流通機構に登録されたすべての物件を閲覧することができ、これにより買主に最適な物件を早急に見つけることが可能です。このような不動産流通の円滑化を目的に、全国に4法人(東日本、中部圏、近畿圏、西日本)の不動産流通機構が設立されています。指定流通機構の役割とは指定流通機構は不動産物件の情報を一元化しているコンピュータネットワークシステムですが、その役割は何でしょうか。不動産流通機構の役割として、以下の3つが挙げられます。不動産情報の交換不動産業者が売主の依頼により媒介契約を受けた場合、指定流通機構に物件情報などを登録する必要があります(一般媒介契約の場合は依頼者の任意)。上述したように指定流通機構は、登録された物件情報すべてを不動産業者が閲覧できるようにしています。こうすることで、迅速に買主を見つけることが可能となります。指定流通機構は、不動産流通の円滑化が促進される働きを担っているといえるでしょう。成約情報の集約登録した物件の売買契約が成立した場合、不動産業者は以下の項目を指定流通機構に通知する必要があります。『登録番号、売買契約の年月日、取引価格』不動産業者がいつまでも成約済みの物件情報を掲載していては紛らわしいので、成約したらすぐにその旨を指定流通機構に通知する義務があるのですね。ところで、物件価格はどのようにして決められているかご存知ですか。実は物件の販売価格などは、不動産業者が対象物件の近隣の成約価格(実際に販売された価格)を基にして決めています。指定流通機構は、この成約された物件情報を集約することで、不動産業者が次の取引を適切に行えるよう、その環境を提供しているのです。取引情報の提供近年インターネットが普及したことから、私たち消費者は不動産取引情報をスマートフォンなどで収集するようになりました。私たちは不動産に関しては素人なので、相場関係が分かりません。これでは不動産取引時に情報弱者となるといった懸念から、指定流通機構は不動産取引情報提供サイト「RMI(レインズ・マーケット・インフォメーション)」を公開しています。このサイトでは、指定流通機構が保有している成約物件の情報を、私たち消費者でも閲覧できるようになっています。こうすることで、私たち自身の目で取引の相場価格を把握することができ、安心して取引を行うことができます。まとめ不動産業界には、取引流通の円滑化や購入者の利益保護を図るべく、物件情報などを指定流通機構に一元化していることが分かりましたね。不動産業者は不動産取引のプロではありますが、常に正確な情報を提供しているとはいえません(しないと犯罪ですが、私たち素人ではわからない情報もあり隠そうとします)。不動産取引を行う際には、ぜひご自身の目で指定流通機構のRMIで取引相場を確認するようにしてみましょう。
2018年01月23日身近な法律家「司法書士」とは司法書士とは、一般的に不動産売買時や会社設立時に必要となる『不動産登記』を行うスペシャリストといった認識があります。司法書士の主要業務には、大きく分けて以下の5つが挙げられます。登記業務(不動産、会社設立など)成年後見に関する業務相続・遺言に関する業務債務整理に関する業務裁判業務私たち一般消費者が司法書士と関わる機会は少ないのですが、実は人生で重要な場面でお世話になっているのです。たとえば「1.登記業務」なんかは、その最たる例といえるでしょう。司法書士が私たちの生活をどのようにして支えてくれているのか、具体的にみていきましょう。司法書士の役割とは登記とは上記1で挙げた登記業務(不動産)は、私たちの生活を支えてくれている良い例といえるでしょう。不動産登記とは、土地や建物の「物理的な状況」や、その不動産が誰から誰に移ったかなどといった「権利の変更」を、法務局の登記簿に記録し、国民に広く知らせる制度のことをいいます。司法書士は上記でいうところの「権利の変更」に関する登記申請を、私たちの変わりに行ってくれます。なぜ代わりに申請してくれるのでしょうか。それは「登記の必要性」に答えがあります。登記の必要性とはそもそも登記とはなんぞや!?って感じですよね。登記とは、第三者に対して「これは私の権利だ!」と主張することのできる権利(対抗力)のことをいいます。たとえばあなたが、不動産をAさんから購入するとしましょう。しかしAさんは、あなたの他の人にもその不動産を売却したとしましょう(二重売買といい、実際にこのようなケースは多くあります)。これでは所有者が2人になってしまい、争いが起きてしまいますよね。この場合あなたならどのようにして権利を主張しますか?向こうも当然、自分が先だ!と主張してきます。こうなっては争いになってしまいますよね。法律に無知な私たちはどうすればよいのでしょうか。争いを避けながらも「これは私が先だ!」と主張するためにも、登記を行う必要があります。上記のように、民法など人との争いには法律が絡んできます。ご存知のように法律は複雑なため、私たちのような素人では到底太刀打ちできません。しかも一生に一度しか買い物をしない不動産なんて、なおさらですよね。そこで法律のプロである司法書士に、自身の財産を守ってもらうように登記申請を依頼するのですね。直接依頼しなくても良いから気楽!しかも、司法書士への依頼は“不動産屋さん”がやってくれます。不動産購入の費用の中に「司法書士への依頼報酬(約5万円ほど)」があるのですが、自分の財産を守ってくれるための費用と思えば、安いものですよね。まとめ司法書士は、私たちの財産を他人から守ってくれる身近な法律家です。直接関わることは少ないですが、いざという時には最も頼りになる存在です。これからマイホームを購入される方は、物件の引き渡し時に司法書士の先生と立ち会うこととなるでしょう。有事の際にはぜひ、その先生に頼ってみてはいかがでしょうか。しかし「なんだか敷居が高いな・・・・」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。そんな方は、不動産屋さんに相談してみるのもひとつの手です。不動産や金融に関する相談はもちろん、案件によっては司法書士の先生に繋いでくれるので、気軽に相談してみましょう。
2017年12月21日建築基準法とは建物を建てる際の敷地や構造、設備及び用途に関する守るべき最低基準を定めている法律のことをいいます。1950年に制定された建築基準法は、国民の生命、健康および財産を保護すべく、都市計画法、宅地造成等規正法、消防法などさまざまな法律の規制を受けます。このことから、建築基準法は建物を建築するうえで最も基本となる法律とされています。そのため、着工前の「建築確認」や工事中の「中間検査」、工事完成後の「完了検査」、違法建築物の「是正勧告」などについての規定も定められています。また建築基準法は以下の2種類に大別することができます。建物自体の安全性や構造・防災・衛生などについて定めた「単体規定」都市の防災や環境向上などの観点から定めた「集団規定」1の単体規定では、具体的には居室の採光(床面積の7分の1以上)や換気(20分の1以上の開口部を設ける)、トイレ、電気設備など、個々の建物を建築する際の基準がまとめられており、全国一律に規定されます。一方、2の集団規定では、敷地と道路に関する基準(接道義務など)、建物の用途や形態に関する基準(建ぺい率や容積率、高さ制限、各種斜線制限など)、都市再生特別地区等、防火地域、景観地区などが集団規定に当たります。また集団規定は、都市計画区域及び準都市計画区域に限ってその規定が適用されます。建築前に確認したい代表的な法令とは建物の建築には、実に多くの法令が絡んでいます。その代表例が、上記で述べた「建築基準法」といえます。建物建築時の基準となるこの法律ですが、そもそもほかの法令も理解していないと、これを理解することは難しいといえるでしょう。数ある法令の中でも、建築基準法と密接に絡んでいる都市計画法について確認してみましょう。都市計画法都市計画法とは、都市の将来あるべき姿(人口、土地の利用方法、主要施設等)を想定する都市計画に基づき、必要な事項を定めている法律のことをいいます。都市計画法では、計画的に街づくりを行う「都市計画区域」と、都市計画区域外の区域で放置すれば、将来、都市としての整備や開発、保全に支障が生じるおそれのある区域であるとして指定される「準都市計画区域」があります。また都市計画区域内では、積極的に市街化する「市街化区域」と、市街化を抑制する「市街化調整区域」とに線引きします。この市街化区域内では、異なる地域が混在しないよう、その地域ごとの用途や使用目的に合った建築物が建つよう、地域ごとに細かく分けられます(例:住宅地と工業地を分ける、など)。これを「用途規制」といいます。建物を建てるには、建築基準法に適しているかどうかを確認する前に、まず都市計画法に適しているかどうかを確認しなければならないといえるでしょう。
2017年11月30日「『貯金しても利息はほぼゼロですが、○○なら運用利回り3%以上ですよ』。そんな勧誘を受けたことはありませんか。銀行や郵便局は、今盛んに、投資を勧めています。政府が『貯蓄から投資へ』と言い始めてから、10年以上がたちました。私は常々『デフレの今は、現金が一番』と声を大にして言っていますが、『投資信託』の運用額は増加傾向です(’17年7月・投資信託協会調べ)」 そう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。こうした風潮のなか、「老後の生活も考えると、やっぱり投資したほうがいいの?」と悩んでいる人に向けて荻原さんが書いたのが、『投資なんか、おやめなさい』(新潮新書)だ。その内容をぎゅっと濃縮して、荻原さんが「投資をやめたほうがいい理由」を解説してくれた。 【1】貯金と投資を比べるワナ 「冒頭のセールストークは、本当なのでしょうか。最近よく勧められる『外貨建て生命保険』(積立金を外貨で運用する生命保険)を例に、見ていきましょう。まず、貯金の利息ですが、今や多くの銀行の普通預金金利は0.001%です。10万円を1年預けても、利息はわずか1円。10万円未満なら利息はゼロです。いっぽう、『外貨建て生命保険なら運用利回り3%以上』は、たとえば、利回り2.79%のアメリカ国債(30年もの・9月14日現在)と、6%超の利回りが続くインド国債などを組み合わせると、実現可能です。つまり『貯金しても利息はほぼゼロ』『外貨建て生命保険なら運用利回り3%以上』はどちらも本当です。しかし、両者の比較は本来、できないのです。貯金と保険は、まったく違う商品設計だからです。 貯金は、毎月1万円ずつ積み立てると、1年後には12万円、2年後には24万円と確実に増えますが、大金にするには時間がかかります。ところが生命保険は、毎月1万円の保険料を、たとえ数カ月しか納めていなくても、被保険者が亡くなったら死亡保険金が満額支払われます。ただし、生きて受け取る満期金は、支払った保険料総額を下回ることが多く、高利回りをうたう商品でも得とは限りません。詳しくは2で説明します。それをあえて両者を比べるのは、超低金利で貯金が増えない不安感を利用して、保険が有利だと思わせるためでしょう。そんなイメージ戦略に、惑わされてはいけません」 【2】金融機関は手数料でもうけている 「『運用利回り3%』と聞くと、支払った金額が3%で運用されると思いがちですが、実際は、そうではありません。先の外貨建て生命保険なら、保障のための手数料が、支払った保険料から差し引かれ、残った金額が運用に回ります。手数料は保険の商品設計や年齢・性別によって異なります。なかには、初回保険料の1万円から、加入時手数料など4,000円が引かれて、運用に回るのは6,000円という商品もあります。運用利回りが高くても、お得とは言えません。金融機関にとっては、手数料がもうけになります。これを稼ぐために、私たちに投資を勧めているのです」 【3】外貨建て商品は損得がわかりにくい 「日本は超低金利なので、利回りのよい外国で、その国の通貨に両替して運用する『外貨建て』商品が人気です。外貨建て商品では、私たちが日本円を支払ったとき、また、満期金など日本円を受け取るときに、両替が必要です。そして両替には、為替の手数料がかかります。日本国内で運用する商品には必要のない為替手数料が、外貨建て商品には上乗せされ、手数料が高くなる傾向があります。いくら利回りがよくても、2と同様、運用に回る資金が減ればお得ではありません。金融機関は、手数料をより多く稼げる商品だからこそ、販売に力を入れているのです。 また、外貨建てだと、たとえ米ドルだとしても、損得がよくわからなくなる弊害もあります。日本円なら、本当に得をしているのか自分で計算できる人も、営業マンにすべてを委ねてしまいがちです」 荻原さんは、「投資に疎くて人のいい小金持ちを、彼らは狙っているのです」と言う。 「もし投資するなら、生活に支障のない余剰資金で、自己責任でやりましょう。『何に投資すればいいですか』は絶対にダメ。金融機関のカモになるだけです。『投資はコワイ』『難しい』と感じる方は、投資なんかおやめなさい。『投資しなくちゃいけない』呪縛から、早く解放されましょう」
2017年09月22日これまで「投資」をしてこなかった人たちでも、はじめたとたん、「投資アンテナ」が立つひともいるでしょう。これは勇気をもって投資の第一歩を踏み出したからこそのアンテナ。でも、たくさんの投資に関する情報の中から、取捨選択をどう行っていけばいいのでしょうか。全6本に渡ってお送りした本連載も、いよいよ最終回。今回は、投資に対して、「アンテナを立ち始めたとき」に、入ってきがちな情報について、横山さんに検証していただきます。■金融機関の「おすすめ商品」は、本当にオトクなの!?「投資を始めよう」と思い立ち、証券会社や銀行から投資に関する資料を取り寄せたり、証券口座を開いたりすると、必ず「おすすめ商品」が紹介されます。ネット証券会社が、サイトのトップページなどで大きく宣伝している商品も、ほとんどはその会社の「おすすめ」といえるでしょう。おすすめ商品は、たいてい高利回りをうたっており、もしかしたら、「バランス型の投資信託やインデックスファンドへの投資より、そちらの方がよいのではないか」と思ってしまう人がいるかもしれません。「一見どれほどおトクに思えても、金融機関のおすすめ商品には、『手数料が高い』『リスクが高い』といった問題が隠れている可能性があります。とくにはじめて投資をする方は、『おすすめ』という言葉や目立つ広告に惑わされないようにしましょう」(横山さん)。 ■個別株やFXで「勝てる」確立は低い投資に慣れてくると、「別の金融商品も試してみたい」と考える人も出てくるでしょう。貯金や堅実な投資を続けながら、生活に必要なお金をしっかり確保し、きちんと研究したうえで行うなら、もちろんそれもありだと思います。 ただ、横山さん自身は、経験やさまざまな方から聞いたお話を考え合わせると、次のように考えているそうです。「よほど投資に精通した人でない限り、個別株への投資で成功する確率は、それほど高くありません。とりわけ短期間で利益を出すのは難しいでしょう。『9割が負けて1割が勝つ』といわれる株式の世界で、プロの投資家たちと争い、利益を上げるのは、よほど勉強と経験を重ねなければ難しいのかもしれません」。(横山さん)唯一、横山さんが個別株でおすすめしている買い方は、ある程度勉強したうえで、「好きな会社や応援したい会社の株を無理のない範囲で買うという方法。「FX」という言葉も、投資とセットと語られているような気がして、何となく気になるところです。FXとは、外国為替証拠金取引のこと。米ドルやユーロなど外国の通過の動きを予想して売買し、為替差益(かわせさえき)を得るというものです。「私はFXは、投資というより完全にギャンブルだと思っています」(横山さん)ギャンブルの多くがそうであるように、FXで勝てる人は、ほんの一握りだそう。途中まではどんなに順調に利益を得ていても一度の失敗ですべてを失ってしまう可能性もあります。「生半可な知識しか持たずに個別株やFX大金を投じるのは、絶対に避けましょう」(横山さん)■外貨預金にも注意が必要為替差益が出る可能性がある金融商品としては、FXのほかに「外貨預金」があります。外貨預金は、米ドルや豪ドル、ユーロなど、さまざまな国の通貨で預金をするというもので、銀行で扱っています。「預金」という名前がついているだけに、安心感や親近感を持つ人もいるでしょう。けれども横山さんは、こう言います。「外貨預金は円建て(普通の)預金よりも、はるかにリスクの高い金融商品です」外貨預金のデメリットは、大きくわけて二つあります。●外貨預金のデメリット・為替差損が出る可能性がある為替差益が出る可能性があるということは、為替差損が出る可能性があるということ。為替相場は、プロでも正確に読むことはできません・手数料が高い外貨預金では円を外貨に換えて預金し、満期になったら再び円に戻すのですが、いずれの作業にも、それぞれ為替手数料がかかります。たとえば米ドルで1万ドルを預けると、銀行窓口で1万円~2万円、ネットバンクでも2千円~5千円の為替手数料(※)がかかります。※銀行窓口0.5円~1円、ネットバンクで0.1~0.25%(金融機関によって異なる)で試算出典: 「はじめての人のための 3000円投資生活」 (横山光昭著/アスコム刊)より抜粋外貨預金を、為替相場によって「勝手に上下する預金である」という前提を理解しておく必要はあるでしょう。「くれぐれも、『預金』という言葉に惑わされないようにしましょう」(横山さん)これにて、はじめての人のための3000円投資生活連載も終わり。この記事を書いている私自身、数年前まで、「投資!? そんなの怖くて絶対にイヤ!」と思っていました。けれども、取材を通じて、「公的年金は、老後の生活の基幹部分くらいしか出ない」と痛感し、「老後のお小遣い稼ぎ」のつもりで、投資を始めました。マイナス金利の現在、銀行の金利はすずめの涙ですよね。漠然と「お金の不安」を抱えるよりも、まずは一歩を踏み出してみることも「アリ」かもしれませんよ。■今回取材にご協力いただいた横山光昭さんの著書 『はじめての人のための3000円投資生活』 (横山光昭著/アスコム刊 ¥1,100(税別)
2017年09月03日「貯金だけでは、お金の悩みが解決できない」というのは、ファイナンシャルプランナーの横山光昭(よこやまみつあき)さん。苦しい家計を再生させることを得意とするファイナンシャルプランナーで、これまで1万人以上の家計を「再生」させる中で、「無理のない範囲で投資を学んで貯蓄スピードを上げてきた人たち」をたくさん見てきました。■投資は「手間をかけない」方が成功する横山さんはいいます。「プロの投資家でない限り、投資を成功させるうえで、『あまり手間をかけすぎない』ということは、とても重要だと思っています」 とくに3000円投資生活の場合は、「バランス型の投資信託」を選び、積立の設定をしたら、あとは基本的にほったらかしに。バランス型の投資信託は、プロのファンドマネージャーが、経済状況や社会の動きを見て運用してくれています。気が向いたときだけ、証券会社から定期的に送られてくる取引報告書に目を通せばOKです。では、複数のインデックスファンドを購入した場合は、どうでしょうか? 投資の本やWEBサイトを見ると、よく「複数のインデックスファンドを買った場合は、リバランスが必要である」と書かれています。リバランスというのは、「資産全体のバランスの見直し」のことです。 「私はリバランスも、とくに必要ないのではないかと考えています」(横山さん)毎月積み立てていく場合、価格が安いときも高いときも設定した金額の分だけ買っているため、いずれバランスは平均化されていきます。そのため、へたにいじらなくても、勝手にリバランスされていくというイメージです。横山さん自身、そのようにしていて、十分にバランスがとれているそうです。■横山さんが経験した「苦い経験」そんな横山さんも、じつは過去にいろいろと苦い経験をしています。かつて日本の個別株に投資したときのこと。株価は刻々とかわります。横山さんは、自分が買った株の値動きが気になって仕方なく、株式市場が開いている昼間、仕事の合間を見ては、株価の値動きをチェックするようになりました。それはどんどんエスカレート。ついには株価チェックの合間に仕事をするようになってしまったそうです。まさに本末転倒。当然、仕事は手につきません。ところが。それだけ熱心に取り組んでいたのにもかかわらず、あるとき、横山さんが選んだ銘柄が、市場全体の下落に引きずられ、一気に値下がり。「あんなに時間と労力を割いたのに」「一生懸命分析し、市場がどうなろうとダメージを受けないよう、手を打っていたつもりなのに」と、大きなショックを受けたとか。 ■投資は時間をかけても100%うまくいくとは限らない投資は、手間をかけたからといって、100%うまくいくとは限りません。ひんぱんに売買を繰り返せば、その分手数料もかかります。「一時的な値上がりや値下がりに一喜一憂するのは、時間とエネルギーのムダです」(横山さん)。投資を経験したことがある人のなかには疲れ果て、投資に嫌気がさしてしまったことがあるかもしれませんね。「投資は本来、長期的な視野に立ち、『お金に勝手に増えてもらう』くらいの気持ちで取り組むべきものだと、私は思います」(横山さん) 商品を購入し、「20年間は続ける」「50万円になるまでは続ける」など、おおまかな目標を立てたら、あとはほったらかしにしましょう。それくらいの方が、「ママとしての心の健康」には良さそうです。実際に、投資を始めて気持ちが揺れたときには、この記事のことを思い出して欲しいと思います。この記事を書いている私自身、「投資をする中で、気持ちがとても揺れた」という体験をしたことがあります。デビュー戦で買った投資信託の配当金の額は、同じ額を1年間ネット銀行に預けた時の利率の約3倍でした。そう気がついたあと、株式相場がガクンと落ちて「チャンスだ」と感じた自分自身に驚きました。なぜなら投資は、それまで「私にとってはすごくがんらなければできないこと」という存在だったのに、欲がムクっと起きてがぜんヤル気になっていたから。そう「投資生活を始める」ということは、そんな、「気持ちの揺れ」を体験するということでもあります。次回は、「投資に欲が出てきたら注意! それ本当に“お得”ですか?」です。■今回取材にご協力いただいた横山光昭さんの著書 『はじめての人のための3000円投資生活』 (横山光昭著/アスコム刊 ¥1,100(税別)
2017年09月01日「将来が不安」「いつもお金の悩みがある」、誰でもが持っているお金の不安。だからこそ貯金に励み、節約の毎日をがんばって送っている人も多いことでしょう。それでも「貯金だけでは、お金の悩みが解決できない」というのは、ファイナンシャルプランナーの横山光昭(よこやまみつあき)さん。リバウンドの少ない家計再生の実現を得意とするファイナンシャルプランナーで、これまで1万人以上の家計を「再生」してきました。そんな横山さんが「もうお金の不安はなくなります」と話すのは、毎月3000円からの「貯金感覚」の投資法です。■バランス型の投資信託の問題点とは横山さんがおすすめするのは、「毎月3000円、バランス型の投資信託を積立から始める」という、シンプルで明快な投資方法。ただ、バランス型の投資信託には、次のような側面があるのも事実です。●(インデックスファンドと比べ)手数料がやや高い●国内と外国、株式と債券などの資産バランスを自分で変えることができないもし、「手数料をできるだけ安く抑えたい」「バランス型の投資信託を買うだけではなく、もう1歩踏み込んだ投資をしたい」と考えているのであれば、横山さんは、こうおすすめしてくれました。「ぜひ、インデックスファンドを買ってみてください」。※「バランス型の投資信託」とは、日本の株式や債券、外国(先進国から新興国まで)の株式や債券などが、その名のとおり、バランスよくパッケージされた商品。これを1つ買うだけで、複数の銘柄に投資したことになります。■インデックスファンドって、何ですか?インデックスファンドも、これまで紹介してきた「投資信託」の商品の中のひとつ。インデックス(※)に連動するよう、投資先が機械的に決められるため、手間がかからない分、手数料が低めなのが特徴です。「最強の投資家」といわれるウォーレン・バフェット氏などは、「『非常に低コストなインデックスファンドに投資すれば、同時に投資を始めた90%の人よりも良い結果を得るだろう』とまで言っています」(横山さん) ※インデックスとは、市場の動向を示す指標や指数のこと横山さんがおすすめするインデックスファンドは、次の2本となります。●横山さんのおすすめのインデックスファンド出典: 『はじめての人のための3000円投資生活』 (横山光昭著/アスコム刊)より抜粋■横山さんが「積立」投資をおすすめする理由横山さんは、バランス型の投資信託やインデックスックスファンドをスポット(一括)ではなく、「積立」で買うようおすすめしています。「『積立』のメリットは、なんといっても、少額から始められる点にあります」(横山さん)。バランス型の投資信託やインデックスファンドをスポットで買う場合、価格はたいてい1万円前後。ですが、一部の証券会社では、100円単位から買うことができます。「積立は、一定額を毎月積立システムなので、『自動的にコツコツ、タイミングを意識することなく購入することができる』というメリットもあります」(横山さん)投資信託の価格は日々変動するため、スポット(一括)で買う場合は、ある程度タイミングを見極める必要があります。「少しでも安く買いたい」と思うあまり、なかなか最初の一歩を踏み出せない人もいるでしょう。その点、積立なら、毎月決まった額で買える分だけを購入することになるため、値動きを気にせず、思い立ったときに投資を始められるのです。■投資の「欠点」を知っておこうさて。ここまで「バランス型の投資信託」と「インデックスファンド」をおすすめしてきましたが、これらに盲点はないのでしょうか?「インデックスファンドは、市場と同じような動きをすることを目指して設定してあるので、良くも悪くも価格は市場の影響を確実に受けます」(横山さん)リーマンショック、最近では、中国ショックといった言葉を耳にしたことがあるでしょう。市場は不規則に暴落します。ですから、暴落が起これば、インデックスファンドは大きく値下がりします。債券が含まれるバランス型の投資信託であっても、基本的には同じです。もし、「そろそろ定年だから、運用資産を現金化しよう」と思う前後に暴落が起こったら…? もちろん、資産は大幅に目減りしてしまうことでしょう。その点が、インデックスファンドの最大のリスクです。ただし、過去の市場の動きを見てみると、たとえ暴落しても、やがて市場は回復し、暴落時の影響を吸収したうえで、右肩上がりの成長をしていることもわかります。「ざっくりとではありますが、暴落後、回復してくるまでの期間は、短くて3年、長くて10年ほど見ておく必要があります」(横山さん)逆に言えば、「運用するお金」というのは、「市場が回復するまで、手をつけずにおいておくことができるお金(いわば余裕資金)」であって、生活費やなけなしのお金で投資をしてはいけないということなのです。次回は、投資するお金は、こう用意する!この記事を書いている私自身、はじめて投資は、「インデックスファンド」でした。「実際に銘柄を購入してみる」とか「値動きを体感する」…。こればかりは、「習うより、慣れろ」だと実感しています。インデックスファンドは、洋服で例えるならば、「紺のカーディガン」。「無難だから、ひとつくらいもっておいても良い」というアイテムです。私の投資デビュー戦。じつは、なにも買えずに終えてしまったのです。理由は、パスワードエラーというなんとも情けない話。さらに株価をチェックしだしてしまうと、なかなか動くことができないでいました。しかしある日、気持ちが切り替わりました。「もういいじゃん。損とか得とか、いま、チマチマ考えていたって、意味ないよ。とにかく今日は買うぞ!」と。「投資をする」は、気持ち的ハードルが高いかもしれません。でも「怖くはありませんよ」と私からも付け加えさせていただきます。■今回取材にご協力いただいた横山光昭さんの著書 『はじめての人のための3000円投資生活』 (横山光昭著/アスコム刊 ¥1,100(税別)
2017年08月30日「私自身、これほど結果が出るとは思っていませんでした」と語るのは、ファイナンシャルプランナーの横山光昭(よこやまみつあき)さん。今回は、「横山式投資術」について、貯蓄と一緒に投資を始める方法を横山さんにうかがいます。横山光昭(よこやまみつあき)さん苦しい家計を再生させることを得意とするファイナンシャルプランナーで、これまで1万人以上の家計を「再生」させてきました。『年収200万円からの貯金生活宣言』シリーズの書籍で一躍有名に。■投資を始めるのは「強い家計」になってからどんなに充分な収入があっても、月末になるとお金がない人や貯金ができない人は、まずは家計自体を見直す必要があるでしょう。横山さんは、「家計自体を見直すためには、自分の「お金のステージ」を知ることが必要」と話します。<お金のステージとは>第1ステージ お金を管理する第2ステージ お金を学ぶ第3ステージ お金を活かす横山さんは、「お金をきちんと管理し、ムダな支出をおさえ、強い家計を作ることができてはじめて、無理なく貯金と投資を行うことができるのです」と話します。強い家計の作り方、お金のステージについては、今後の連載の中で詳しくお話させていただきます。家計での支出を管理して、まずは貯金をします。貯金によって「強い家計」になってきたなと感じてたら、貯金をしながら「投資」を視野にいれていくというのが、正しい順番です。連載1回目の今回は、「ムリのない範囲で投資を学ぶこと」。投資と聞くと、難しそうで、何となく損をしてしまうようなイメージもあります。本当に大丈夫なのでしょうか?■貯金だけでは、お金の悩みが解決できない「夫婦でしっかり節約しているのに、貯蓄が増えない」「収入は安定しているのに、お金が残らない」…。多かれ少なかれ、お金の悩みはだれにでもあるものです。でも、急に収入が増えることはないし、いつも「節約しなきゃ!」と思いながら生活するのも、しんどいですよね。横山さんが目指すのは、「お金とうまくつきあい、自分をコントロールできるようになってもらう」こと。じつは、横山さん自身、過去に借金に苦しんだことがあるそうです。それをきっかけに、ヨコヤマ式90日貯金プログラムを編み出しました。しかし貯金ができるようになったからといって、「お金に関する悩み」や「将来に対する不安」が完全に消えたとはいえないようなのです。「お金は順調に貯まっているけれど勤務先の業績が悪く、収入が減っている」「貯金だけで、豊かな老後を送ることができるだろうか」そんな声を聞くことも多く、「こうした悩みや不安は、貯金だけではなかなか解消できないのです」と、横山さんは言います。では、どうしたらいいのでしょうか? その答えとなるのが「3000円投資生活」なのです。■3000円投資は怖くない ところで、みなさんは、「投資」という言葉を聞いたとき、どのようなことを連想しますか? 「もうかるのは、ごく一部の人だけで、ほとんどの人は損をする」「しょっちゅう株価をチェックしたり、売買したり、いろいろと手間がかかる」おそらくこんなネガティブなイメージを持っている人も多いのではないでしょうか?もしかすると、みなさんが「投資」と聞いてイメージするものは、「投機」に近いのかもしれません。「『投資』というのは本来、もっと気長に取り組むべきものであり、気軽にできるものなのです」と、横山さん。そんな横山さんがおすすめする投資方法は、きわめてシンプルで、次の3つをするだけです。●横山さんのおすすめ投資方法1)証券口座を開く2)月々3000円でスタートする3)バランス型の投資信託を買う出典: 「はじめての人のための 3000円投資生活」 (横山光昭著/アスコム刊)より抜粋横山さんのおすすめ投資信託商品については、次回ご紹介します!■「月々3000円だけではお金が増えない」は大きな間違いここまで読んでも、おそらく「月々3000円の投資だけでは、たいしてお金は増えないのではないか」と思っている方も多いのではないでしょうか?横山さんのところに実際に相談にいらっしゃったA子さんの例を見てみましょう。A子さんが買ったのは、「バランス型の投資信託」。それを毎月、積立で購入していきます。次の表で注目すべきは、投資の「運用益」と、貯金の「利息」の違いです。貯金の「利息」が毎月1万円貯めていっても10年後に60円にしかならないのに対して、3000円を投資し続けた「運用益」は5万9224円になりました。A子さんの例を見ると、「投資をすることで、貯蓄スピードがあがる可能性がある」とも言えるのではないでしょうか。●月々1万円の貯金と3000円の投資を続けた場合貯金の金利は0.001%、投資の利回りは3%、1年複利・税引き前出典: 「はじめての人のための 3000円投資生活」 (横山光昭著/アスコム刊)より抜粋次回は、「貯蓄スピードをアップする! 挫折しない3つのポイント」です。■今回取材にご協力いただいた横山光昭さんの著書 『はじめての人のための3000円投資生活』 (横山光昭著/アスコム刊 ¥1,100(税別)
2017年08月28日「政府が期待するように投資をする人が増えないためか、あの手この手の投資商品が登場します。なかには初心者向けのものもあります」 こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。「貯蓄から投資へ」といわれ始めたのは、’00年前半。それから15年ほどたったが、今も、投資は伸び悩んでいる。投資を敬遠する人たちも多いが、理由の1つは「元本割れがイヤだから」ではないだろうか。そんな中、初心者に向けた「元本防衛型」ともいえる新しい投資信託の販売受付けが開始。荻原さんが解説してくれた。 「三井住友銀行の『あんしんスイッチ』も初心者向けの1つです。今月3日から販売受付けが始まりました。大きな特徴は『プロテクトライン』を設けたことです。投資信託が元本保証ではないので、買った時点より値下がりすることもあります。そこであんしんスイッチは当初の基準価格(投資信託の値段)・1万円に対して、9,000円をプロテクトラインと設定しています。値下がりして9,000円を下回ったときは、即時売却されます。つまり、損が一定以上、膨らまないので、安心だというのです」 また、値上がり基準価格が1万600円になったら、プロテクトラインは1万円に。さらに1万1,111円以上になると、最高額を更新するたび、プロテクトラインは最高額の90%に上昇する。 「いったん上がったプロテクトラインは下がりません。ですから、基準価格がある程度、上昇すると『元本保証』状態になることもあるでしょう。そのため『元本防衛型』といわれることもあります。実際には、手数料がかかり、100万円を投資すると90万円になる可能性もあります。注意してください。プロテクトラインを導入した仕組みは、実は、むずかしいものではありません。投資する人が『損はいくらまで』『○円より下がったら売る』と自分で決めて、実行するのと同じだからです。とはいえ、人間は迷いが生じ、タイミングを逸することがありますが、先のあんしんスイッチは、コンピュータによる自動売却なのでプロテクトラインは必ず守られます」 しかし、自動売却がよくないケースも。 「たとえば1万円で買った投資信託が値上がりして、1万5,000円になったとします。プロテクトラインは、その90%、1万3,500円まで上昇します。その後、値下がりし1万3,000円になったら、プロテクトラインを下回ったということで、自動的に売却されます。でも、元々は1万円で買った投資信託です。まだ3,000円の儲けがありますから、売らずに様子見を続けたほうが得だと考える方も多いのではないでしょうか。こういった投資信託は、値動きをチェックする暇もないほど忙しく、大きく損はしたくない方には向いているかもしれません。ですが、根本的には、誰でもできる防衛策を、システム化しただけです」
2017年07月13日【ママからのご相談】最近、投資に興味津々のママです。というのも、今のパパのお給料だけだと正直きついですし、自分が自由にできるお金も少しは欲しいです。ただ、実は独身時代に株に貯蓄をつぎ込み、大きく減らしてしまったというトラウマがあります。 今回こそはそのようなことがないよう、しっかり勉強しようかと思っているのですが、いったいどうやって始めたらよいのかわかりません。また、投資をするのにいくらくらいお金があればよいのかも含めて、教えてください。目次 元本保証がない“投資”について理解しよう“投資”と“投機”の違いは?まずはわが家のお金を仕分けることから投資に回せるお金は?まとめ●A. 元本保証がない“投資”について理解しようこんにちは。ファイナンシャルプランナーの小澤美奈子です。ご相談をしていただき、ありがとうございます。投資といえども商品はいろいろあり、代表的なものとしては株式 、債券 、投資信託 、外貨 などが挙げられます。これらの商品は基本的に元本保証がなく、増える可能性がある一方で、減らしてしまうことも考えられる ため、以下でご紹介する3つのポイントをしっかり押さえてからはじめるようにしましょう。●“投資”と“投機”の違いは?“投資”と“投機”という言葉を聞いたことはありますか?おそらく“投機”と聞くと、一攫千金を狙ったギャンブル的要素の強いお金儲けをイメージすることでしょう。対する“投資”ですが、一般的には中長期的な計画 を立てて、着実にお金を育てることを意味すると言われています。これらの違いは理解していたとしても、つい夢中になるあまり“投資”を目指していたはずが“投機”になってしまうこともあるもの。そうならないためには、自分の運用方針をしっかり定めて、長期的な目標を立てた上で投資を行うことが重要です。●まずはわが家のお金を仕分けることから投資をはじめる際、いくらのお金を準備すればよいのかを考える前に、わが家の家計では、現在いくらくらい投資に回せるお金があるのかを把握することが大切です。具体的には、手持ち資金を次の3つに分けることから始めるとよいでしょう。●(1)生活費として使うお金いざというときのために、月の生活費の約3~6か月分 のお金を確保しておくことが目安だと言われています。●(2)使う目的のあるお金たとえば教育資金や住宅資金など、向こう10年間に使う目的のあるお金 については、守るお金として確保しておきましょう。●(3)使う目的のないお金つまり(1)にも(2)にも該当しないお金です。この金額がいくらあるか洗い出して、把握しておきましょう。●投資に回せるお金は?さて、上記で仕分けたお金のうち、投資に回せるお金は何番目でしょうか?言わなくてもおわかりかもしれませんね。答えは、(3)の「使う目的のないお金」です。つまり投資は余裕資金ではじめる 、ということを忘れないようにしましょう。●まとめ投資をはじめるにあたっては、“投資”と“投機”の違いをしっかり理解し、家計の中で“守るべきお金”と“攻めて増やすお金”を仕分けることが、とても重要です。次の回では、投資に関するリスクとの付き合い方などをご紹介しますので、これからも参考にしてみてくださいね。【参考リンク】・知るぽると | 金融広報中央委員会()●ライター/小澤美奈子(ファイナンシャルプランナー)●モデル/前田彩(桃花ちゃん)
2016年10月01日正社員としての終身雇用がもはや当たり前でなくなり、職場でいくらがんばっても稼げる給料の上限が見えてしまっている現在、不動産投資にトライする人が年々増加しています。民泊ブームや、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに合わせた不動産ブームも、これに拍車をかけている模様。「不動産投資」のキーワードで検索すると、「不動産オーナーになれば、不労所得が得られて老後は安泰ですよ」という業者の決まり文句がたくさん出てきます。しかし不動産投資で成功する人がいる一方、失敗する人も後を絶ちません。いったい、なにが成否を分けるのでしょうか?そのポイントは、これまでの心理状況にあります。■1:自分で勉強せず営業マンの話を鵜呑みにしてしまうパターン&背景不動産投資は普通、必要資金が株や投資信託など他の投資にくらべて高額になります。では、投資する人がみな、きちんと時間をかけて下調べをし、冷静に投資戦略を練りに練っているかというと、実はそうでもありません。むしろ勉強をあまりせず、不動産業者のいいなりになってしまう人が多いのです。日常の食料品や消耗品などの少額の買い物ではあちこちの店を渡り歩き、値段や内容を比較してから買うのに、不動産という大きな買い物になった途端、思考がフリーズして不動産業者のいうことが情報のすべてと思いこんでしまいます。「この物件は空室リスクがほとんどありません」「この物件を逃したらもう他はありません」という不動産業者の甘い言葉に引きずられて投資物件を購入した結果、赤字や借金を抱えて失敗してしまう……。そんなタイプには、「幼少期、親や他人のいうことを鵜呑みにし、自ら冒険をあまりしてこなかった」ような真面目な人が目立ちます。でも冒険する場合は自力で状況を調べ、対策を練ることが必要。そういった習慣がないために、営業マンの言葉を信じてしまうのです。また、不動産業者の顔色をうかがってしまう人もこのタイプ。「なんかアヤシイ」「本当かな」と思っても、押しの強い営業マンに不機嫌な顔をされるのが怖くて聞けないのです。■2:新築物件を建てて損をしてしまうパターン&背景新築物件をイチから建てることを業者から勧められる場合も、最終的には損をします。なぜなら、基本的に新築物件は販促のための人件費やパンフレット費用などのコストが上乗せされているため、中古にくらべて価格が高くなるのです。また、悪質な不動産業者の場合、「これだとコストが安く済みますよ」と安い部材を購入させ、入居希望者が集まらなさそうな安っぽいアパートを建てさせることも。それでも不動産業者には管理料と建築費用が入るので、泣くのは大家だけなのです。さらに、売却を念頭に置いた場合、新築物件は必ず損をします。新築物件は、購入した時点で20%価値が下落するからです。また、売却する場合には「物件の契約価格の3%+6万円」を不動産業者に払わなくてはなりません。収入ダウンや老後のことを考えて不動産投資をはじめるケースが一般的ですが、相続の場面になったとき、お荷物となった物件を売却するのもよくある話。つまり、投資用物件として新築を購入するのは、最初から「負け」の勝負をするようなものなのです。長期的に運用することが前提ならば、需要と供給のバランスで価格が決まる中古物件に投資すべきです。しかし、なぜこんなことが起こるのでしょうか?先述の「これまで親や他人のいいなりになってきた」こともありますが、「イメージや見た目に弱い」「新しいものがとにかく好き」な場合もまた多いのです。普段から見栄を張ってしまうタイプ、ブランドイメージで買い物をしてしまうタイプは、その買い物が合理的かどうかをチェックしないため、ムダにお金を払ってしまう傾向にあるということ。■3:資金計画がないor無理な返済計画を立ててしまうパターン&背景不動産投資をする場合、資金を銀行から借りて不動産賃貸収入から返済をしていくのが一般的なパターンです。実は、不動産投資の最大のリスクはこのローンなのですが、ここで思わぬ痛手を被る人が少なくありません。例えば、短すぎる返済期間で無理な返済計画を立ててしまう、「物件の購入価格=総コスト」と思いこみ、購入後にかかってくる税金やメンテナンス費用などを考慮していないなどがあります。しかし、いちばんまずいのが、「住宅ローンの感覚で不動産投資のローンを組んでしまう」ケースです。住宅ローンの金利は大抵0.8~2%ですが、不動産投資ローンはそれよりずっと高く、最低2%はかかります。また、不動産を登記する際の費用も、居住用住宅を購入する場合の3倍ほどかかります。つまり投資の場合の不動産購入は、通常の住宅ローンとはまったく別物と考えなくてはならないのです。なぜ、このようなことが起きるのでしょうか?予測が甘い、不測の事態に備えないなど理由はいろいろありますが、総じて「最悪の事態を考えたくない」「いいことしか考えたくない」という無意識が働いているためだといえます。実は、奥底には「失敗したらどうしよう」という不安が強く渦巻いているのですが、その不安と向き合うとダメな自分を目にして居場所を失うような感覚に陥るため、あえて考えないようにしているのです。*この他、「契約書を細部までしっかりチェックしない」「借り上げ保証や家賃保証に過度に期待する」「空室リスクを予測していない」などが不動産投資の失敗として挙げられます。いずれも根底にあるのは、「自分の内側にある不安と向き合うのを怖れている」「自分の目や手や足を使って、情報を自ら集め、可能な限り投資のリスクを見極めようとしない」という点です。不動産投資は、株式や投資信託にくらべてはるかにリスキーな投資です。この投資の失敗ひとつのために、一家離散や貧困といった不幸な事態に陥りかねません。不確定要素の高い不動産投資においては、まず自分の力で徹底的にリスクを洗い出し、投資のメリットとデメリットを比較して判断することが必要です。つまり「大人としての責任と覚悟と決断」が求められるのです。「難しいから」「大丈夫だといわれたから」であいまいにするのではなく、ぜひ「それは本当かな?」をクセにして、自分の責任で投資の判断を行うようにしてください。(文/税理士・鈴木まゆ子)
2016年06月30日2015年7月からスタートした「普通のママでもできる投資」もいよいよ最終回となりました。その間、マーケットは乱高下し、「マイナス金利政策導入」という初めての体験もありましたね。日銀のマイナス金利導入決定で、預貯金の金利は低下。長期金利もマイナスになった影響で、住宅ローン金利が下がったり、「一時払い終身」など一部の貯蓄型の生命保険が販売停止になったり、保険料が上がったりしました。そんな中、老後資金など長い時間をかけてゆっくりお金を増やすためには、株式や投資信託など「リスク資産」への投資をするべきだという記事がよく目につくようになりました。■「貯蓄から投資へ」のスローガンは正しかったのか「サラリーマン1万人アンケート」など、退職・投資教育に関する研究やレポートで情報発信し、投資啓蒙活動を行っているフィデリティ退職・投資教育研究所の所長 野尻哲史さんが行った調査結果が非常に興味深いものでしたのでご紹介したいと思います。・ フィデリティ リタイアメント情報サイト 「貯蓄から投資へ」の動きを加速すべきとの議論は90年代から進められた。しかし、日本の個人金融資産構成比は全く変わってはいない。預貯金の構成比は、米国14.7%に対して、日本51.9%。株式と投資信託を合わせた比率は、日本が16.1%に対し、米国は31.4%。さらに、日本の個人金融資産はほとんど増えていない。米英が過去27年間に5~6倍になっているのに対し、日本はわずか2倍。株式・投信の資産残高は、1.26倍にとどまる。ちなみに米国は11.5倍、英国は4.5倍の伸び出典:『日米英の個人金融資産の動きとその背景〜弱みをチャンスに DCとNISAの拡大が鍵』 フィデリティ退職・投資教育研究所の所長 野尻哲史氏より つまり、日本は、ここ20年ほど、貯蓄も投資もほとんど増えていないという結果でした。野尻さんは、「『貯蓄から投資へ』というのは、貯蓄を取り崩して投資へ回すと理解されて、『貯蓄をリスクにさらす』という印象が強かったのでは。しかし、本来はそうではなく、貯蓄もしながら投資もする。両方を増やしていくべき。老後難民にならないため、今の収入の一部を将来のための投資に振り向けることが大切なのです」とおっしゃっていました。「『貯蓄から投資へ』というのは手段であり、目的は、個人資産を殖やすこと。そのためには、DC(確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)を利用する」ということです。今後、両制度の一層の拡充を期待したいものです。高齢化の進展で老後資金の重要性はますます大きくなります。老後資産をふやすために、超低金利の預貯金ばかりでは難しいでしょう。 ぜひ、みなさんも、「普通のママでもできる投資」を参考に、株式や投資信託などのリスク資産をDCやNISA口座を活用して、個人資産を殖やしていきましょう。■無リスク資産はどうすればいい?超低金利下でも、一定の利益を確保することができるのは、「個人向け国債」でしょう。 Vol.10 で、個人が買える国債をご紹介しましたが、現在、「新窓販国債」はマイナス金利で販売を停止しています。「個人向け国債」は買うことができます。固定3年、固定5年、変動10年がありますが、おすすめは「個人向け国債10年変動金利型」です。最低金利が0.05%(税引後0.0398425%)まで低下しましたが、銀行預金の定期金利の0.01%と比べると高く、また変動金利なので、今後、国債の利回りが上がれば、連動して金利も上がります。金利は半年ごとに見直されます。購入後1年経過すれば、2回分の利子相当額を支払えば解約できますが、今後、金利が高くなるようなら、ペナルティの2回分の金利も大きくなります。途中換金しなくてよいように、10年間使う予定のないお金で買いましょう。逆に言えば、当面使う予定のないお金は、銀行預金にしておかないで、国債で運用したほうがよいということです。■普通のママでもできる投資まとめ 当面必要なお金(半年〜1年間の生活費)や4、5年以内に必要な教育費などは預貯金で持っておくどんな資産にいくら配分するかアセットアロケーションを決める具体的に運用する商品を選ぶDC、NISAを優先し、どこで運用するかを決める 詳しくは、Vol.15の「 資産運用をスタートするプロセスのおさらい 」をご覧ください。運用をスタートしたら、年に1~2度、資産の状況を確認してください。自分の決めたポートフォリオから、配分が大きく変化しているようなら、「リバランス」を行います。積立金額を調整するなどして、調整していきましょう。配分比率を維持することが大切です。皆さんが、このコラムをきっかけに、自分の未来のお金について考え、「なんとかなる」ではなく、「なんとかしよう」と一歩を踏み出してくださることを願っています。1年間、おつき合いくださり、本当にありがとございました。
2016年06月20日