『今すぐ妻に不動産投資をさせなさい』(菅原久美子著、KADOKAWA)の著者は、秋田で生活する主婦であると同時に、ソプラノ歌手、そして株式会社の代表として全国で講演活動をしているという人物。そのちょっと変わった経歴から、お金持ちなんだろうと思われることもあるといいますが、それは違うのだとか。収入が安定しないソプラノ歌手としての活動を続けながら、なんとかして定期的に収入を得ることができないかと思考錯誤した結果なのだそうです。そして、そんな流れのなかで知ったのが、本書で明らかにしている不動産投資だということ。きょうはそのなかから、第3章「奥さん名義で物件を持つ」に焦点をあててみたいと思います。■副業禁止の会社では不動産投資NG会社から得る収入とは別の収入を得たいと考えるサラリーマンは少なくないはず。だからこそ、不動産投資に注目が集まっているという側面もあるでしょう。しかし注意しなければならないのは、就業規定で副業が禁止されている会社では、不動産投資をすることができないという事実。「大きな会社ならバレない」という考え方も、著者によれば甘い認識のようです。■不動産投資「5棟10室の壁」とは不動産投資の場合、「5棟10室の壁」と呼ばれる制限があるそうです。家を貸す場合の棟数が5棟以上、あるいはアパートやマンションなど、部屋を貸す場合の客数が10室以上である場合は、事業として不動産賃貸業を行っているとみなされるのだということ。事業規模になると税制面も変わりますし、副業禁止規定のある会社の場合、規定に触れてしまうわけです。だからこそ不動産投資をはじめる前に、自分の会社は副業を禁止していないか確認する必要があるのです。■副業禁止でも不動産投資をする方法では会社が就業規則で副業を禁止していた場合、サラリーマンは不動産投資を諦めなければならないのでしょうか? ルールを破らずに不動産投資を行う方法はないのでしょうか?この問いについて、著者は決定的な答えを明らかにしています。それは、家庭のなかに、不動産投資ができる人がもうひとりいるということ。いうまでもなく奥さんです。たとえば著者の場合はご主人が地方公務員で、母親から譲り受けた1棟のアパートを持っているのだそうです。しかし公務員ですから、当然ながら副業は禁止されています。また、戸数を増やしたいと考えていたといいますが、そのアパート以外に物件を買おうとすれば、それは事業規模になってしまうことになります。当時検討していたのは、2・3・4棟目にあたる3棟一括アパートだったそうです。戸数が18室もあるので、その時点で「5棟10室の壁」はとっくに越えていることになるのです。つまりご主人の名義で不動産を増やすわけにはいかなかったため、次の物件を買うため、妻である著者の名義で購入することになったというわけです。このように、もしご主人の会社が副業禁止だったとしても、あるいは不動産投資自体を禁止していたとしても、奥さんがするぶんにはなんの問題もないということ。たとえ規模が大きくなって「5棟10室の壁」を越えてしまったとしても、会社になにかをいわれる心配はないというのです。そこで著者は、いずれ物件を増やしていきたいのなら、最初から奥さん名義で不動産投資をはじめたほうが賢明だと主張しています。■無収入主婦が融資を受けられる理由ところで奥さんが物件購入すれば「5棟10室の壁」越えられるとはいえ、奥さんが融資を受けられなければスタートラインには立てません。しかし、そもそも主婦である著者はその時点で、銀行家からの融資は受けられないはず。でも、だからといって不動産を諦める必要はなし。なぜなら、ここでサラリーマンであるご主人にバトンタッチすればいいから。奥さんが銀行融資を受けるには、ご主人がサラリーマンであることが重要。大抵のサラリーマンは、安定した収入があることで銀行から評価を受けることができるということ。つまりこうすれば、無収入の主婦でも融資を受けることができるというわけです。*本書には他にも、主婦が不動産投資を成功させるためのメソッドが数多く紹介されています。なにより著者の経験を軸としたものなので、説得力も抜群。収入を増やしたい方は、ぜひ手にとってみてください。(文/書評家・印南敦史)【参考】※菅原久美子(2015)『今すぐ妻に不動産投資をさせなさい』KADOKAWA
2016年02月04日「東京一極集中は悪であり、地方との格差をなんとしても是正すべきだ」という意見は、日本人のなかに強く根を張っています。けれども、「本当にそれだけでいいのだろうか」と疑問を投げかけるのは、『東京一極集中が日本を救う』(市川宏雄著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者。数十年の歳月を都市政策研究に捧げ、第一線の海外の研究者と議論を重ねてきた専門家だそうです。そしてそんな立場から、誰も口にしたがらないことを明らかにする責任を感じているのだとか。資源を持たず、少子高齢化で労働力さえ失われつつある日本が今後も国際競争を勝ち抜いていくには、ヒト・モノ・カネを東京に集中するしかないということ。地方にまわすお金が枯渇しつつあるいま、東京が世界的に競争力のある都市になり、率先して稼いでいかなければ、地方にとっても得はなくて当然。東京が沈めば、地方が沈み、日本が沈んでしまうというわけです。だとすれば、すぐに思い浮かぶのが、2020年の東京オリンピック、パラリンピックの経済効果です。このことについて、著者はどう考えているのでしょうか?■2020年の五輪は「成熟型」2020年に開催される東京オリンピック、パラリンピックと1964年大会とは、どのような違いがあるのでしょうか?この問いについて、著者は「進化」を指摘しています。決定的に異なるのは、東京がかつてのような発展途上都市ではなく、前回大会から56年の歳月を経た結果、都市機能が高度に整備された「成熟都市」へと成長しているということ。東京はすでに、ロンドン、ニューヨーク、パリに型を並べ得る国際都市へと発展を遂げているということです。注目すべきは、東京オリンピック招致委員会が「都市の中心で開催するコンパクトな大会」というコンセプトを掲げたこと。前回大会では急激な投資を行ったため経済的な反動が見られましたが、今回は違います。前回の反省を踏まえ、既存の施設を使い、施設を集中させ、設備費用がかからない「世界一コンパクトな大会」を打ち出したのです。ですからこれが成功すれば、すでにインフラや競技施設が整備されている都市だからこそ可能な、コスト・時間・エネルギー・環境負荷を抑えた新しいオリンピックの形を世界に提示できることになるわけです。■五輪の莫大な「経済波及効果」そして、そんな二度目の五輪が東京にもたらすプラスの効果として真っ先に挙げられるのは、当然のことながら経済効果です。東京都の試算による東京五輪の経済波及効果は約3兆円。東京都は五輪の当事者なので、そう考えるとこの額はきわめて控え目だともいえます。しかしこれは、おそらく五輪に直接関係したお金の動きだけを追っているからだろうと著者。しかし東京オリンピック、パラリンピックの経済効果は、施設整備費や大会運営費などの直接支出だけでなく、もっと広範囲に及ぶはず。ちなみに東京都はオリンピック、パラリンピックに直接関連するものに範囲を限定した形で、正しくはその経済波及効果を2兆9,609億円と試算したそうです。また、森記念財団都市戦略研究所は、東京都の試算とかぶらない形で、補完的にオリンピック効果を多角的に想定したのだといいます。その内訳は次のとおり。・在日外国人の増加(消費拡大)生産誘発額3,356億円・宿泊施設の建設増加(建築投資額増大)生産誘発額1兆308億円・基盤整備事業の前倒し(基盤整備事業投資額の拡大)生産誘発額1兆2,591億円・新規雇用の増加延べ106万人増生産誘発額2兆7,988億円・オフィス等の都市開発の前倒し生産誘発額1兆1,837億円・外国企業の進出生産誘発額2兆2,792億円・ドリーム効果(高揚感がもたらす支出増大)生産誘発額7兆5,042億円計:16兆3,913億円の生産誘発額■日本の経済成長率がアップするしたがって、オリンピック、パラリンピック全体の経済波及効果を見るには、両者を足せばいいということになります。その結果、2兆9,609億円+16兆3,913億円=19兆3,522億円ということになります。これらの粗付加価値誘発額は合計で9兆7,346億円になり、1年あたりで計算すると1兆3,907億円。この数値は、2014年度の実質GDP525兆8,664億円のおよそ0.26%。つまり2020年のオリンピック、パラリンピック開催は、日本の経済成長率を0.26%程度押し上げてくれるというのです。GDPを0.26%も上昇させることは、政府がどれだけ優れた政策を用いたとしても容易なことではありません。つまり、この効果は非常に大きいということになります。*ここで取り上げた五輪問題のみならず、本書では様々な角度から東京一極集中がもたらすものの影響の大きさを説いています。今後の日本のあり方を見極めるためにも、ぜひ読んでおきたい内容だといえるでしょう。(文/印南敦史)【参考】※市川宏雄(2015)『東京一極集中が日本を救う』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年02月04日『やってはいけないウォーキング』(青栁幸利著、SBクリエイティブ)の著者は、その考え方や取り組みが、NHK『あさイチ』『おはよう日本』『ためしてガッテン』などのテレビ番組や、各新聞、雑誌で「まったくあたらしい健康づくり」として注目されている人物。群馬県中之条町に住む65歳以上の全住民5,000人を対象に、15年以上の年月をかけて身体活動と病気予防の関係を調査し、そこから導き出された「病気にならない歩き方の黄金律」が、世界中から称賛を浴びたのだそうです。しかし実際のところ、いままで刷り込まれてきた“常識”が頭に貼りついているだけに、「まず『1日1万歩』を目指す、という考えをやめてください」という主張には驚きを禁じ得ません。「歩数はひとつの目安にはなるけれど、歩数「だけ」を信じて一喜一憂していては、健康長寿という意味では間違った運動になってしまう」というのがその理由。なるほど、納得できる気がしますね。そこできょうは、歩くときのことについて著者が提唱する「気をつけるべき7つのポイント」をご紹介したいと思います。■1:生活のなかで「8,000歩」歩く著者は本書で、「8,000歩/20分」のウォーキングを勧めています。「1日の総歩行数は8,000歩で、そのうちの20分が中強度の歩行」、それが究極の生活習慣であるという考え方。ただそこの場合の8,000歩は、ウォーキング時間だけで目指す数字ではないといいます。買いものに出かけたり、家の階段を上り下りしたり、無意識に歩いた歩数も含めて「目指す数字」になるということです。■2:20分は「速歩き」をするそして上記のように、1日8,000歩の活動のうち、20分は「中強度の活動」をしているようにすることが大切。■3:目安は「なんとか会話できる程度」ところで、「中強度」とはどのくらいの速度なのでしょうか?このことについては、「最大酸素摂取量の40~60%に相当するスピードで歩くこと」が、自分にとっての「中強度」の「速歩き」だという説明があります。わかりにくいかもしれませんが、「なんとか会話ができる程度」がひとつの目安。鼻歌が歌えるくらいだと遅すぎて、会話ができないくらい息が切れている状態では速すぎるのだとか。この点に関しては、実際に試してみて感覚をつかむのがよさそうです。■4:できるだけ夕方に歩くベストは、1日のなかで体温がピークを迎える「夕方」に速歩きをし、最高体温をさらに上昇させること。それが難しければ、起床後1時間以内、就寝前1時間以内の速歩きは避けるようにすべきだといいます。■5:健脚自慢の人は歩きすぎに注意「8,000歩/20分」を超えて歩いても、健康効果に大差はないそうです。それどころか、むしろ疲労がたまると免疫力が下がり、病気になりやすいのだというので注意が必要です。■6:運動不足の人は4,000歩からこれまで1日数千歩しか歩いていなかった人は、「4,000歩/5分」「6,000歩/10分」と、2,000歩刻みで歩数を徐々に積み重ねていくといいそうです。■7:長寿のために「2ヶ月」続ける普段は体内で眠っている長寿遺伝子は、毎日20分の「速歩き」を2ヶ月間続けることによってスイッチが入ることに。だからこそ、まずは「8,000歩/20分」のウォーキング生活を2ヶ月間続けてみることを、著者はオススメしています。でも、ウォーキング生活を続けるのは、現実的になかなか難しいことでもあります。だからこそ知りたいのは、どのようなステップを踏んで「8,000歩/20分」ウォーキング生活を続けていけばいいのかということ。著者によれば、そこにはコツがあるのだそうです。オススメしたいステップは、(1)自分のいまの状態を知る↓(2)いまの生活(1)と理想の「8,000歩/20分」とをくらべてみる↓(3)自分の生活のなかで「足りない部分」を補う↓(4)毎日、記録しながら続けていくそして、この(1)~(4)のステップを簡単に踏むためには、「身体活動計」を利用するのがベスト。なぜなら身につけるだけで、生活を障害にわたって全面的にサポートしてくれるから。*注目すべき点は、本書に書かれていることが決して難しくないということ。運動不足を感じている人にとっては、ありがたい内容だといえます。(文/書評家・印南敦史)【参考】※青栁幸利(2015)『やってはいけないウォーキング』SBクリエイティブ
2016年02月02日『絶望は神さまからの贈りもの』(ひすいこたろう、柴田エリー著、SBクリエイティブ)の著者は、「不幸」は「幸せ」の前触れだと断言しています。だから、あらゆる「ピンチ」は「チャンス」に変わるとも。人生には、悩み、落ち込み、どうすればいいのかわからなくなるときがあるもの。でも、それこそがチャンスなのだということです。■状況が変えられないなら心を変えるべし!人の気持ちや行動は、次のような流れのなかで生じていくのだそうです。(1)「出来事」→(2)「意味づけ」→(3)「感情」→(4)「行動」の順。「ピンチはチャンスである」という意味づけができたら、そのあとに生まれる「感情」も「行動」も変わり、人生は確実に変わっていくということ。それは、(1)「ピンチ(出来事)」→(2)「困った(意味づけ)」→(3)「ヤダな(感情)」→(4)「逃げよう(行動)」という流れから、(1)「ピンチ」→(2)「これはなんのチャンスだろう?」→(3)「このときを待っていたんだ」→(4)「俺の出番だ」というように、気持ちも行動も全く変わるということ。人は、外側(状況)を変えられないときに絶望するものです。しかし、外側を変えられないときこそ、本当の意味でのチャンス。なぜならそういう場合には、外側ではなく、自分の内側(心)を変えざるを得ないから。私たちの生きる真の目的は、内側(心)に変容を起こすことだという考え方です。内側の変化こそ、本質的な変容(トランジッション)をもたらすもの。たとえばそれは、過去の偉人たちも同じ。そこで本書では、彼らが絶望からどう復活したのかを明らかにしているのです。■本田宗一郎は99%の失敗をして成功した「私のやったことの99%は失敗だが、1%の成功のおかげで、いまの私がある」これは、世界のHONDA(本田技研工業)の創設者である本田宗一郎の言葉。「世界一でなければ日本一じゃない」と、宗一郎が率いるHONDAが世界を目指したのは、日本に不景気の波が押し寄せていた1954年のこと。たった1台のバイクを輸出しはじめたばかりの段階であったにもかかわらず、世界一のバイクレースとして知られる、イギリスのマン島TT(ツーリスト・トロフィ)レースに出場すると宣言したのです。このとき、宗一郎は47歳。本田技術研究所として操業して8年目のこと。世界のトップメーカーが出場するこのレースに優勝することは、世界一のバイクメーカーであることの証明になります。小さな会社だったHONDAには無茶な挑戦でしたが、宗一郎の頭のなかにあるのは、「世界一こそ日本一」だという考え方。ただ、TTレースは予想以上にハードルが高く、宗一郎は「これは考えたこともないレベルだ」と弱音を吐いたのだとか。とはいえ、「できない」「ムリ」「不可能」といわれると、逆にワクワクしてしまう彼に、「あきらめる」という選択肢はなかったといいます。ところがレース出場までの道は予想以上に険しく、1年目も2年目も、3年目も4年目もダメ。そして5年目にようやくレース出場を果たすことに。■日本一を目指すなら世界一を目指すべし!しかし注目すべきは、世界一を目指すその間に、いつの間にかHONDAはバイクの生産台数日本一に輝いていたという事実。世界一を目指していたら、あっさり日本一になってしまったわけです。そしてTTレースでも、出場から2年目で優勝を果たすことに。海外のマスコミからは、「東洋の奇跡」と絶賛されたのだそうです。これこそが夢の力。夢に向かって進むときには、トラブルなどトラブルではなくなるということです。経営不振だろうが、あらゆる難関は、燃え上がる炎にくべる巻きになるという考え方。「日本一を目指したいのなら、世界一を目指せばいい」夢をいつかたどり着きたい最終地点にするのではなく、通過点にしてしまえば、夢は一気に加速するもの。HONDAのエピソードは、そんなことを教えてくれるのです。「新しいことをやれば、必ず、しくじる。腹が立つ。だから、寝る時間、食う時間を削って、何度も何度もやる」本田宗一郎のこの言葉は、すべての人の人生にあてはまるものではないでしょうか?*自分のつくった会社から追放されたアップルのスティーブ・ジョブズ、ツイてないことばかり起きる男だった坂本龍馬、自殺未遂をした過去を持つ「世界のクロサワ」こと黒澤明監督など、他にもピンチを乗り越えてきた多くの偉人のエピソードが掲載されています。力を与えてくれる話ばかりなので、逆境から立ち直りたいという方はぜひ手にとってみてください。(文/印南敦史)【参考】※ひすいこたろう・柴田エリー(2015)『絶望は神さまからの贈りもの』SBクリエイティブ
2016年02月02日これまでにもさまざまな議論が展開されてはきていますが、現実的に「ほめて育てる」ことはなかなか難しいもの。だから「なんとなく諦めてしまっている」方も少なくないと思いますが、結論を出すより先に『今すぐできる! 今すぐ変わる! 「ほめ育」マネジメント』(原邦雄著、PHP研究所)を読んでみるべきかもしれません。著者は、「ほめ育」コンサルタントとして、「ほめる」ことをテーマにした著作を送り出してきているという人物。しかも、船井総合研究所コンサルタントからラーメン店の洗い場に転職し、現在はさまざまな現場で培った“ほめ育”ノウハウを軸として多くのコンサルティングを行っているのだそうです。ありえないようなルートをたどってきているわけですが、だからこそ不思議な説得力があるのも事実。ただ、単純に考えても、普通にほめただけで部下の業績が上がるわけがないことはわかります。しかし、それでも「ほめ方」が大切なのだと著者はいうのです。だとすれば、ほめ方と業績が連動しないことには理由がありそうです。■業績を上げるためにはビジョンを語るべし業績が落ちてくると、人はなにかと言い訳をしたがるもの。「競合店ができたから仕方がない」「政府の運営がダメで景気が回復しないのだから仕方がない」「人口が減っているのだから仕方がない」など、どんないい方もできるわけです。しかし、本当に大切なのは、ないものねだりをするのではなく、「いまあるもの(状況)で、どう最良の結果を出すか」を考えることであるはず。具体的にいえば、いまいるスタッフと、いまある商品やサービスで業績を上げるにはどうすればいいのかということ。それを考えるのが経営者やリーダーの仕事で、そこが腕の見せどころだというわけです。だとすれば、なにが必要なのでしょうか?そのために経営者やリーダーに求められるのは、まずビジョンを語ることだと著者はいいます。「この先、どんな会社にしたいのか」「どこを目指しているのか」スタッフはそうしたビジョンを知りたがっているもの。だからこそ、これからの経営者やリーダーは、ビジョンを語り。それに賛同してくれるスタッフと一緒に業績を伸ばしていくことが求められるのだといいます。■スタッフは成長を実感できないと辞める!従業員満足度を上げるためには、給料を上げたり、労働時間を短くしたり、職場環境の改善をするなど、労働条件や労働環境をよくすることは大切です。ただ、それだけでは足りない。なぜなら、スタッフが成長を実感できることが大切だから。「これまでできなかった仕事ができるようになった」「これまでわからなかったことがわかるようになった」「これまで会えなかった人に会えるようになった」などがそれにあたるといいます。こうした成長を実感させてあげることができれば、スタッフに満足してもらえるということ。事実、成長を実感し続けられない企業のスタッフは、遅かれ早かれ辞めていくものだと著者はいいます。従業員満足度を上げるためには、成長を実感させてあげることが重要だというのです。■ほめ育マネジメント=ほめる+5つの要素ところで、筆者がコンサルティングの軸にしている「ほめ育」とは一体どのようなものなのでしょうか?そのことについて著者は、「『ほめ育マネジメント』は単なる『ほめる』ではなく、『ほめる』に次の5つの要素をミックスしたものだと主張しています。(1)エンパワーメント(2)マネジメント(3)マーケティング(4)セールス(5)エンゲージメントひとつめのエンパワーメントは、個人や組織の能力開発のこと。部下の持つ潜在能力を引き出すことによって、「ほめ育」でもっとも大切な長所を伸ばすことを指すわけです。次のマネジメントは、部下の能力を結果に結びつけること。よって、部下を物心ともに幸せにする意思と能力が必要になるということ。マーケティングは、売れる見込みをつくること。どんな業種にも売り上げが上がる道があるものなので、その道を見つけるための仮説を立てられる能力が必要とされるのです。セールスは、いうまでもなく「売る」こと。売れる人、売れる店、売れる会社になるということです。そこで、売る側の自信と、お客様のニーズをつかむ技術が求められるといいます。最後のエンゲージメントは、会社の方向性とスタッフの方向性を合わせること。経営理念の浸透であり、これをすることで組織の力が倍増するのだそうです。そして、これらの要素を意識しながらスタッフを「ほめる」ことで、業績がアップしていくというのが著者の考え方です。*現実的に「ほめる」ことは難しいもの。しかし、それを実践できれば、たしかに業績アップを実現できるかもしれません。だからこそ、いまの状況をなんとかしたいと感じている方には、読んでみる価値があるかもしれません。(文/書評家・印南敦史)【参考】※原邦雄(2015)『今すぐできる! 今すぐ変わる! 「ほめ育」マネジメント』PHP研究所
2016年01月31日『働く君に伝えたい「お金」の教養: 人生を変える5つの特別講義』(出口治明著、ポプラ社)の著者は、インターネットを媒介した「ネット生保」として知られるライフネット生命保険株式会社の創業者。同社は、第二次世界大戦後初めて、内外の保険会社を親会社とせずに設立された独立系生命保険会社。2006年の設立時には大きな話題を呼んだだけに、ご存知の方も多いかと思います。そして本書は、日本生命保険相互会社勤務時代から数十年にわたって豊富な知識や経験を重ねてきた著者が、「お金の原理原則」を伝えるために書いたもの。お金に関する本といえば、貯蓄のコツや方法、投資すべき銘柄についての知識などを公開したものが大半ですが、本書はちょっと違うようです。著者の言葉を借りるなら、「小手先のノウハウではなく、『いま学べば、結婚しても、子どもが生まれても、みんながオジサンやオバサンになっても使える、いわば一生モノの運転免許証のようなもの』だということ。きょうはそのなかから、「貯蓄」に関する考え方を引き出してみましょう。■貯蓄額は最低でも手取り1年分金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](2014年度版)によると、20代の平均貯蓄額は約279万円。意外に多い気がしますが、これはあくまで「平均貯蓄額」です。平均については、一部のお金持ちが全体を釣り上げている可能性があるため、そのまま信じてはいけないわけです。その証拠に、数字の真ん中を示す「中央値」を見ると、約112万円なのだといいます。しかし気になるのは、「だったら月々どれくらい貯めればいいのか」ということであるはず。その点を考えるにあたって意識すべきは、「人生には予期せぬアクシデントがつきもの」だということだと著者はいいます。怪我、病気、火事、解雇、会社の倒産など、なにが起こるかわからないからこそ、最低限蓄えるべきお金とは、万一のときのセーフティネットだと考えるべきだということ。「貯める」お金は、「すぐに使える」お金でないといけないというわけです。そして著者はここで、「手取り1年分」を目安に説明しています。とりあえず1年分あれば当座の生活はなんとかなり、その間に今後の対策を立てられるはずだから。■貯蓄プランのシミュレーションたとえば年収が300万円だとしたら、手取りは200万円~250万円程度。これくらいの額を最終的な目標にして、毎月決まった額を貯蓄していけばいいということ。仮に手取りを20万円、目標を200万円、すでに30万円の貯蓄があるとしたプランを見てみましょう。まず、最初に決めるべきは期限。「目標額から貯蓄分を引いた、残り170万円を貯めるために何年かけるか」を決めるのです。早すぎたら無謀な計画になってしまうだけですし、10年後に設定したとしても、その間の備えになりません。そこで「ちょうどいい期限」を見分けるために大切なのは、自分の目標額と手取り、そして月々の貯蓄額を書き出してみること。たとえば、次のような感じです。【例】目標170万円(手取り20万円中)[1年で貯める場合]:月々14万円(とても払えず現実的ではありません)[2年で貯める場合]:月7万円(まだまだ難しい額です)[4年で貯める場合]:月々2万8,000円(可能性が見えてきました)※もちろん5年計画(月々2万8,000円)に伸ばすこともできますし、年2回のボーナスを組み込んで、6月と12月には多めに貯めるというプランを立てることも可能。■決めたお金以外は使ってもいいつまり、こうして書き出してみると、「できること」と「できないこと」を無理なく線引きできるわけです。なお、これはあくまでもセーフティネットとしてのお金を確実に貯めるための方法。結婚式や留学などのまとまった資金を貯金するときにも、同じやり方を使うことができるといいます。その場合に大切なのは、気合いを入れて「月々に貯める額を増やす」こと。著者は、お金についての大原則を「財布(日樹で使うお金)」「投資(なくなってもいいお金)」「預金(流動性の高いお金)」に分けて管理する、「財産三分法」を提唱しています。これは、入ってくるお金の額が変わらないのであれば、「投資」の部分を思い切ってゼロにする、あるいは財布から使うお金をセーブするなど、なんらかの振り分け方を見なおすしかないということです。残念ながら、「いつもどおりお金を自由に使っていたのに、知らず知らずのうちに残高が増えていた」などということはありません。そして貯蓄は、「貯める額を決めたら、使わない」。これだけだと著者は主張しています。逆にいえば、貯めると決めたお金以外はどう使ってもいいということですから、楽しく使えるお金をより多く捻出するため、より倹約=賢約に努めていくべき。*ちなみに、お金についての漠然とした不安や疑問は、データ(数字)とファクト(事実)を見ながらとことんつぶしていくことが大切だというのが著者の考え方。たしかにそれは、より確実にお金を活用していくために必要なことかもしれません。(文/書評家・印南敦史)【参考】※出口治明(2015)『働く君に伝えたい「お金」の教養: 人生を変える5つの特別講義』ポプラ社
2016年01月30日近視になってから長い人も、視力回復法の効果がなかった人も、レーシック手術を受けたのに視力が再び低下してしまったという人も、10秒間のトレーニングによって視力を回復させることが可能。そう断言しているのが、きょうご紹介する『目がよくなる10秒トレーレニング』(川村明宏、 川村真矢著、フォレスト出版)。ユニークなのは、著者が眼科医ではなく、速読の専門家であるという点です。つまり速読術を教える過程において、たくさんの人の視力が回復したのを確認してきたというのです。信じがたいような話ですが、そこには根拠があるそうです。速読の目の動かし方には、自然と目の筋肉の偏りを補正する効果があるということ。その結果、ものがはっきり見えるようになり、目が疲れにくくなる持久力、動体視力などの視覚機能も回復するというわけです。「目の疲れがとれた」「よく見えるようになった」という声が多かったため、視力回復の研究を本格的に開始したのが約30年前だといいますから、しっかりとした裏づけもあるようです。つまり本書では、長い実績に基づいた目のトレーニング法が紹介されているのです。しかし、だとすれば最初にすべきは、目がどれだけ疲れているかをしっかり確認しておくことであるはず。そこで、目の疲労度を確認するための「9つのチェック」をご紹介したいと思います。■「疲れ目」と「眼精疲労」の違い目に疲れを感じたとき、「疲れ目」とか「眼精疲労」などの言葉が使われます。疲れ目とは単純に目の疲労を指したものであり、一晩眠れば回復するなど症状が軽いもののこと。対する眼精疲労は、ものを見ているだけで目に重さや痛みを感じ、視界がぼやけたり、目が充血したり、頭痛や吐き気、肩こりなどが起こる状態をいうそうです。こちらは疲れ目とは違い、休憩や睡眠をとっても十分に回復しないので注意が必要。そしてもちろん、眼精疲労は視力低下と密接な関係があるもの。目の血行が悪く筋肉もスムーズに動かないので、ものが見えにくくなるというのです。■すぐにできる目の疲労度チェックでは、目の疲労がどの程度進んでいるのかチェックしてみましょう。次の項目のなかから、当てはまるものを数えてみてください。(1)遠くから近く、近くから遠くへと視線を移したときに、視界がしばらくぼやける。(2)目が乾いている感じがして、頻繁に目薬をさしている。(3)パソコンの画面を見ていると、目が充血する。(4)いつも目の芯が重く感じ、頭痛を起こすこともある。(5)本を読んだり、勉強したりしていると肩がこってくる。あるいは、すぐに眠気や頭痛に襲われる。(6)車やバイクを運転していて、横から子どもが飛び出してきたときなどの発見が以前より遅くなった。(7)のどのなかがいつも乾く感じがして、水分の補給を頻繁に必要としてしまう。(8)大きな風船などを一気に膨らませようとしたとき、めまいや貧血を起こすことがある。(9)よく首を寝違える。■7以上あてはまったら医師に相談合計数が3以下なら、眼精疲労の程度は中くらい。4~6はやや眼精疲労が進んでいる状態で、気をつけないと、さらに疲労が進行してしまうといいます。7以上は眼精疲労だけでなく脳全体の疲労が心配されるので、専門医に相談するべき。いずれにしても、該当数が多い人は、日ごろどのような目の使い方をしているか思い返してみることが大切。偏った使い方をしたり、血行が悪くなったりするような姿勢や環境で目を使っていないか考えてみるということです。そうやって、まずは現在の状態に自覚を持つことが重要。そしてそれを前提に、本書で紹介されているトレーニングを実践すれば、確実に目の状態がよくなるということです。*トレーニングには掲載されている図版を利用する必要があるため、ここでご紹介することはできません。でも実際にやってみれば、その効果はきっと実感できるはず。しかも著者がいうように、驚くほど簡単です。だからこそ、もし目の疲れを感じているなら、ぜひ手にとってみることをおすすめします。(文/書評家・印南敦史)【参考】※川村明宏、 川村真矢(2015)『目がよくなる10秒トレーレニング』フォレスト出版
2016年01月29日『自分のままで暮らす』(吉澤久子著、あさ出版)の著者は、昨年にもロングセラー『ほんとうの贅沢』を生み出した家事評論家兼エッセイスト。65歳からのひとり暮らしは30年を超え、現在は97歳になるそうです。にもかかわらず現在も積極的に、執筆、講演、ラジオ、テレビなどで活躍中。その根底にあるのは、「暮らしを大切にする思い」です。きょうは「年齢」をテーマにした2章「『歳を重ねる』ということ」に焦点を当ててみましょう。■失うことを嘆かないで楽しむべし!著者が自分自身の老いを実感したのは、60代のときだったといいます。服の脱ぎ着が思うようにいかず、高いところのものを取ろうとすると、手が上がらなくなったことなどがきっかけ。そして肩からひじにかけての痺れるような痛みを感じながら、「これが、うわさに聞く五十肩か」と、妙に納得した気持ちだったと記しています。きのうまで当たり前にできていたことが、急にできなくなる。それは、歳をとればよくあることでしょう。そして、老いは突然やってくるものでもあります。いわば五十肩の痛みは、「老いの準備をしなさいよ」「いまのうちに先々のことまで考えておきなさいよ」という合図なのかもしれないと著者は感じたのだそうです。そして、そんなときは「いつまでも健康ではいられない」ことを前提にして、老後の人生設計をもう一度考えてみるべきだとも記しています。老いて失うものは数多くあるけれど、それはずっと前からわかっていたこと。こういったことを嘆くよりも、楽しむくらいの心づもりでいたいということです。■できないことをいちいち気にしないつい先日はできたことが、きょうはしんどくなる。五十肩の話だけでなく、それは歳をとればよくあることかもしれません。そんななか、「できなくなった」を何度も経験するうちに、著者はできない自分を嘆くことをやめたといいます。理由はいたってシンプル。できないことはできないと認める方が、ずっと楽だと気づいたから。できないことは仕方がない。だから、できないことを受け入れたうえで、「これからはどうやればいいのか」「他にやりようはないのか」と考えるようにしたというのです。できないことを数え上げると、悲しくなって当然です。しかしそうではなく、自分ができること、できないことはなんなのか、それぞれを知っておくことが必要だという前向きな考え方です。そして、できるとなら、たとえ時間がかかっても自分でやる。人は楽をしたい生きものなので、一度でも怠ける方法を知ってしまうと、「面倒でも自分でがんばろう」とは思えないものです。でも、楽な方へ楽な方へと流されたために、以前できたことができなくなってしまたというような、そんな老い方はしたくないのだといいます。できることは、自分のペースでしっかりやる。できないことについては無理をせず、知恵を絞って他の方法を探ってみる。著者はそれを、老いて暮らしを楽しむための心構えにしているそうです。■食べたいものを食べて前向きでいる長らくひとり暮らしを続けてこられた理由のひとつは、健康だったことだと著者は。そしてそれは、ゆたかな暮らしを実現するためには、絶対に欠かせない条件だとも自覚しているとか。とはいっても、健康のためになにか特別なことをしているわけではないというのですから驚き。意識しているのは、「普通の食事を、バランスよくとる」「心をすこやかに保つ」、このくらいだといいます。食べものについても、「食べたいものを食べる」が基本。なぜなら年齢的に、いつ普通に食べられなくなるかもわからないから。でも高級品を食べたり、暴飲暴食をしたりするのではなく、「いま、これが食べたい」という気持ちに正直になるということ。肉が食べたければたっぷり食べ、甘いものを我慢したりもしないのだそうです。また、1日に30品目食べるのが理想とされていますが、その点に神経質になることもないとか。「いろいろ食べよう!」という言葉を頭のかたすみに常に置いておくようにした食生活をしていれば、それで十分だと思うからだという考え方。人の命はいろいろで、「絶対」はありません。だから情報に惑わされることなく、バランスよく、おいしく食べ、お茶で一息ついたら、食後は程よい運動と休息をとる。あとは、明るく前向きに暮らす。それが、いちばんの薬だといいます。*本書における著者の文言は、単に「お年寄りの言葉」としてアタ付けられるものではなく、すべての年代の人に通用するものであるはず。だから読んでみればきっと、ポジティブな気持ちを分けてもらえると思います。(文/書評家・印南敦史)【参考】※吉澤久子(2015)『自分のままで暮らす』あさ出版
2016年01月28日不動産投資に関する書籍は多く、しかしその多くはメリットばかりを強調する傾向にあります。でも現実的にはリスクも大きいものであるだけに、石橋はしっかり叩いて渡りたいところ。そこでおすすめしたいのが、『失敗事例に学ぶ! 「不動産投資」成功の教科書』(ふどうさんぽ著、御井屋蒼大監修、日本実業出版社)です。著者の「ふどうさんぽ」とは、不動産投資家を目指す、あるいはすでに不動産を所有しているメンバーと、不動産投資に関する情報交換をするサークル。メンバーは1,000人を超え、中心メンバーは億を超える資産を持つ経験値の高い人達ばかりなのだとか。つまり本書では、豊富な経験に基づいた、さまざまな失敗事例が紹介されているわけです。しかし、それらを理解するためには、まず基本を知ることが重要。そこで、不動産投資の基本をおさらいしてみましょう。■「利益を得られる物件」を購入するべし不動産投資は、「購入して、保有(運用・管理)して、売却する」という3つの基礎構造によって成り立っているもの。購入手順はマイホームを買うときと同じで、物件を探してもらい、それに見合った物件が見つかれば紹介を受け、気に入れば購入、となります。しかし、ここで重要なのは「利益を得られる物件を購入しなければならない」ということ。「利益を得られる物件」を自分でイメージでき、具体的に条件を書き出すことができなければ、不動産仲介業者に自分の希望を伝えることは不可能。また購入時に銀行から融資を受けることも考えると、「利益が得られて、融資が受けられる」物件であることが必須となるわけです。たとえば相場で5,000万円の物件を、誤って6,000万円で買ってしまったとします。この物件で年間100万円のキャッシュフローが得られるとすると、10年間に1,000万円のプラスとなります。しかし10年間でローンの残高が4,000万円まで減ったものの、売却したら経年変化もあって3,000万円でしか売れなかったとなれば、キャッシュフローのプラス分1,000万円とキャピタルロスのマイナス分1,000万円で、差し引きトントンになってしまうことになります。もちろんオーナーは10年にわたり、不動産投資家としてきちんと働いてきたはず。ところが、最初に相場より高い物件を買ってしまったため、その労働すべてがチャラになってしまうということ。でもトントンならまだマシで、マイナスになってしまうこともあるのだとか。そんな場合は10年間タダ働きだったということになるだけでなく、「働いてお金をロスする」という意味不明の結果になってしまうのです。■必ず相場よりも安い物件を購入するべしこの例からもわかるように、「相場より高く買う」という失敗は、絶対に避けなければいけないと著者は強調しています。大切なのは、まず購入時に正確な相場を学び、必ず相場より安く、無理なら相場と同等の金額で購入すること。そしてそのためには、誠実で信頼できる不動産仲介業者から紹介してもらうべきだといいます。■物件の「売却額」も自分で算定するべしまた売却の際にも不動産仲介業者に協力してもらいますが、キャピタルゲインをいくら得られるかを計算し、売却額を自分で算定することが必要。相場を知るのはもちろんのこと、ローン残高を考えて、「これより下回ったらトータルでいくらの損になるのか」を知らなければならないということ。また、売買のタイミングも自分で知るべき。建物が劣化して使えなくなってから売るのか、使えなくなった建物を壊して土地だけ売るのか、減価償却が終わったタイミングで売るのかなどによって、利益が変わるのです。こうしたことをすべて考えたうえで、「どのような条件で手放したいか」を伝え、それに見合った広告を出してもらい、買い手を紹介されて売却となるわけです。そして購入時の金額と売却するときの差益がプラスであればキャピタルゲインとなり、マイナスならキャピタルロスとなるということ。もちろん世間の経済状況にも左右されるでしょうが、しっかり勉強し、必要ならコンサルティングなどプロのアドバイスに耳を傾けることが大切。そうすれば、好景気でも安く購入することや、不況でも利益を出して売却することが可能だと著者はいいます。*こうした基本をベースに、以後の章では数多くの失敗事例が具体的に紹介されています。「不動産屋さんと会話がかみあわなかった」というようなコミュニケーションの問題から、「部屋のなかで孤独死が発生してしまった」というようなシリアスな話までさまざま。不動産投資に関心があるなら、手にとってみればきっと役に立つ内容だと思います。(文/書評家・印南敦史)【参考】※ふどうさんぽ(2015)『失敗事例に学ぶ! 「不動産投資」成功の教科書』日本実業出版社
2016年01月27日小浜島は、沖縄本島からさらに400キロメートル南、石垣島を中心として連なる八重山諸島のひとつ。石垣島から船で25分ほどの小さな島です。人口は600人ほどで、学校もひとつだけ。周囲はわずか16キロメートルで、信号機はまったくなし。サトウキビ畑が広がり、野生動物や放牧の牛などが道に出てくることもあるというのですから、なんとものどかな環境です。KBG84(小浜島ばあちゃん合唱団)は、そんな小さな島に住む80歳から97歳までのオバァちゃんたちからなる史上最高齢のアイドルユニット。オバァたちが“ユンタク”(沖縄の方言で、おしゃべりの意味)しているうちに始まった合唱団が母体となっているのだそうです。「天国に一番近いアイドル」というキャッチコピーを掲げて大活躍中で、いまや海外から取材が来るほどの人気です。『笑顔で花を咲かせましょう 歌って踊るオバァたちが紡いだ「命の知恵」』(KBG84[小浜島ばあちゃん合唱団]著、幻冬舎)は、そんなKBG84のオバァちゃんたちが長寿と健康と笑顔の秘訣を語った書籍。「人生は80歳からが楽しい」というオバァたちの長い人生経験に基づく、明るくも深い話が展開されています。きょうはそのなかから、「年齢」に関するいくつかのエピソードを抜き出してみましょう。■おしゃれは何歳になっても大事!92歳の目中トミさんは、お出かけするときには杖の色を選ぶのだそうです。2色しか持っていないのだけれど、おしゃれにしていたいという思いがあるため、どちらにするかをちゃんと考えるというのです。そしてそんなときには、ファンデーションもきちんと塗るのだとか。陽に焼けているから色も黒いし、シワもたくさんあるけれど、「女の身だしなみ」だからきれいにしたいと考えているのです。洋服も、「はいむるぶし(島のなかのリゾートホテル)」に行くときにはおしゃれをするのだといいます。「おしゃれは何歳になっても大事」が持論。なぜなら、おしゃれをしていたら笑顔になれるから。■80歳から楽しく生きることを決意そんなトミさんが仕事を辞めたのは、80歳のときのこと。それまではほとんど毎月、島の神事をひとりでやっていましたが、ようやく若い人たちに任せるようになったのだといいます。いまは、いろいろなことが終わってホッとしている状態。だからこそ、これからはみんなと遊び、楽しく生きていこうと思っているというのですからすごい。KBG84での活動に、大きな張り合いがあるそうです。■その年齢で自分ができることをやる84歳の白保夏子さんは、ずっと小浜島にいたわけではありません。結婚して子どもができ、石垣島で生活するようになったからです。子どもの学校の事情もあり、また生活の問題もあったため、小浜島を離れるしか手段がなかったということ。そこで、石垣島にできたパイン工場の事務員として、57歳まで働いたのだそうです。ちなみに「57歳まで」ということには理由があります。本当は60歳まで働くつもりだったそうですが、外国産のパインに押され、パイン工場がダメになってしまったのです。そこで、やむなく早めの“定年退職”をしたというわけ。つまりは順風満帆だったわけではないのですが、それでも子どもが巣立つまでは、やることがたくさんあったと振り返ります。子どもが学校を出て一人前になるまで必死に働いたのは、「それが私の役目だ」という思いがあったから。とはいえ、「いつかやりたい」とずっと思っていたこともあったのだといいます。まずは畑。そこで定年退職後、夢を実現するため小浜島に畑を買い、最初はサトウキビを、体がきつくなってからは野菜をつくっていたそうです。虫がつかない野菜をつくろうと、ご主人と一緒にがんばったのだとか。そしてもうひとつは、伝統工芸として有名な小浜の織物。ただし技術が必要で、やるからには集中しないとできないものなので、やるのは定年退職跡と決めていたのだといいます。島の生活では、歳とともに自分がやるべきことが決まっており、次になにをすべきか悩むことなどないと夏子さんはいいます。年相応にやることがあるから、自分にできることをやり、後輩につなげていくということです。*本書に掲載されたオバァたちのメッセージは、シンプルだからこそ強く共感できるものばかり。日常生活に疲れたときにページをめくってみれば、忘れかけていた大切なことを思い出し、パワーをチャージできるかもしれません。(文/書評家・印南敦史)【参考】※KBG84[小浜島ばあちゃん合唱団](2015)『笑顔で花を咲かせましょう 歌って踊るオバァたちが紡いだ「命の知恵」』幻冬舎
2016年01月26日『呼吸で心を整える』(倉橋竜哉、フォレスト出版)の著者は、日本マイブレス協会代表理事。「セルフコントロール」と「呼吸」の関係性を研究して呼吸法を体系化し、「マイブレス式呼吸法」を開発したという「呼吸のプロフェッショナル」です。その人の息づかいを見れば心の状態がわかり、「ストレスに強い人なのか?弱い人なのか?」「身のまわりが整っている人なのか?散らかっている人なのか?」といったこともわかるのだとか。心と体の状態は呼吸に現れるもの。だから逆に呼吸を意識的に変化させれば、心と体の状態を変えること可能になる。それが、著者の提唱する「マイブレス式呼吸法」なのだそうです。「誰でもできる」「いつでも、どこでもできる」「お金をかけずに、簡単にできる」と三拍子揃ったマイブレス式呼吸法のなかから、数えて呼吸するだけで集中力が高まるという「数える呼吸」にスポットを当ててみましょう。■「数える呼吸」とは?数える呼吸は、心を鍛えるトレーニングに最適な呼吸法。そしてその効果は、筋トレの効果を思い浮かべると理解しやすいといいます。スポーツジムでダンベルを使って筋肉を鍛えると、強靭でしなやかな肉体をつくることができます。同じように、「数える呼吸」を通じて「心の筋トレ」をすれば、自分の意思でなにかをやり遂げたり、誘惑に振り回されなくなったり、多少のストレスでは折れない心をつくることができるというのです。この、数える呼吸ですることは、呼吸の回数を数えることだけ。しかし、大切なポイントがあるそうです。それは、できるだけ余計なことを考えないということ。ただひたすら、呼吸の回数を数えることに意識を集中するのです。そんなとき、想念や雑念が浮かんできてしまうのは仕方のないこと。ただし、それらは受け流すようにするべき。なにか気になることを思い出したとしても、「それはいったん横に置いて、呼吸の回数を数えることに意識を剥けよう」と意識を戻すべきだというわけです。筋トレは、重いものを持ち上げたり降ろしたりすることで筋肉を鍛えますが、数える呼吸では、頭に浮かぶ想念を、「浮かんだら受け流す」ことを繰り返す。それが、心の筋肉を鍛えることになるのです。■「数える呼吸」の仕方姿勢は、座った状態でも、立った状態でもOK。継続して取り組むことで成果が出るので、最初から無理をしないことが大切だといいます。背筋は、前かがみになったり、後ろにもたれたりしないようにすることがポイント。上半身が腰にきちんと乗っている状態にするのがベスト。胸を張るべきでないのは、背筋をピンと伸ばしすぎて胸を張ってしまうと、呼吸しづらくなったり、腰を痛めたりしてしまうことがあるから。座っているときは、手のひらを上向けにして膝の上に。立っているときは、手のひらを前に向けましょう。そして目を開けて一点を見つめ、呼吸は吐くところからスタート。ゆっくりと息を吐き、十分に吐き切ったら2、3秒だけ息を止めます。その状態から、力をふっと抜いてやると、自然と息が入ってきます。そのとき、無理に吸わないように。自然に入ってくるだけでいいそうです。息を吐くときは、口からでも鼻からでも大丈夫ですが、息を吸うときはできるだけ鼻からにしましょう。口から息を吸うと、空気が乾燥している時期などは喉を痛めるおそれがあるからです。■「数える呼吸」のコツ数える呼吸は、次の3つを頭に置いて始めます。(1)息は吐くところからスタートし、毎回きちんと吐き切る(2)できるだけゆっくり、細く長く息を吐く(3)呼吸の回数を数えることに意識を向けるもしも途中で他のことに気を取られ、回数がわからなくなってしまっても、わかるところまで戻れば大丈夫。最初は想念がたくさん頭に浮かんできますが、それが普通なので安心してくださいと著者。最初は10回くらいからスタートし、慣れてきたら毎回5分、あるいは10分と時間を増やしていくようにしてください。なお初心者の場合、10回をおよそ2、3分で終えることができるといいます。たったこれだけのことで無駄が省くことができるので、「やることが少なくなる」「作業が早くなる」「忙しいと感じなくなる」などのメリットがあるのだそうです。*本書では、他にもさまざまな呼吸法が紹介されています。もちろん、どれも難しくないものばかり。日常生活に取り入れてみれば、いつもの日常がより心地よくなるかもしれません。(文/書評家・印南敦史)【参考】※倉橋竜哉(2015)『呼吸で心を整える』フォレスト出版
2016年01月25日ご存知の方も多いと思いますが、『一生モノの超・自己啓発 京大・鎌田流 「想定外」を生きる』(鎌田浩毅著、朝日新聞出版)の著者は、京都大学の人気火山学者であり、多くのビジネス書、自己啓発書を大ヒットさせてきた実績も持つ人物。そんな著者がこれまでに書いてきたビジネス書は、地球科学者の立場から、理系的発想に基づいたものだったといいます。■人生の“揺れ”とうまくつきあうべしなにやら難しい表現ですが、重要なカギは、科学の本質が「予測」と「制御」であるという点。たとえばボールを空中に向けてある角度で投げたとしたら、「どのような放物線を描いて。どこに落下するのか」についての見当がつくものです。それをさまざまな自然法則から導き出すのが「予測」であり、予測した地点に落ちるように投げる力や角度を調整するのが「制御」。「理系的な発想のビジネス書」の根本にあるのも、この「予測」と「制御」。そんな確信があったからこそ、著者は数多くの名著を生み出せたのだということ。ところが、そんな考えの重心が、ここにきて変化しているそうです。2011年の東日本大震災と、2014年の御嶽山の噴火、科学の限界を突きつけられる事件を立て続けに経験したことで、「現実では、ときに予想外のことが起き、まったく制御不能の陥ることがある」という思いが強くなったというのです。そして結果として、自分が説いてきた「予測」と「制御」をもとにした考え方に疑問を感じるようになったともいいます。仕事や人生をコントロールできると考えるのは、人間のおごり。それどころか本当は、仕事や人生の“揺れ”を認めたうえで、「うまくつきあっていく」ことを考えた方がよいのではないかというわけです。つまり本書ではそのような考え方を軸に、「ビジネス書がもたらす多数の功罪を知り尽くした上で、よりよい幸せへの道しるべ」を記しているわけです。そのなかからきょうご紹介したいのは、自分の体の声を聞きたいときに便利な「5つの質問」。これらを自問自答したときに心が反応したなら、そこで自分の感受性の傾向がわかるといいます。感受性は体癖(たいへき:感受性の癖を表す概念)と密接に関係しているため、自分に対してこれらの質問をすることによって、自分の体癖をもつかむことができるというわけです。■自分の感受性の癖がわかる5つの質問(1)自分は誰かに褒めてもらいたいのか褒められれば誰でもうれしいですし、けなされれば悲しくなるもの。特にその傾向が顕著な人は、毀誉褒貶(褒めたりけなしたりすること)が感受性の中心である上下型(1種・2種)の体癖かもしれないそうです。上下型の人は、頭で考えるのが得意なタイプ。だからこそ、「どうも理屈に合わなくて嫌だ」とか「考えたら、なんとなくうまくいきそうな気がしてきた」という結論が出たら、それに従うことが賢明。一方、2種の人はイメージ先行で、必ずしも厳密な論理に基づいて判断しているわけではないものの、やはり納得感を大事にするのだとか。(2)自分はそれが好きなのか、嫌いなのか体の声を聞くときにもっともイメージしやすいのが、この質問に対する反応。なぜなら「好きか嫌いか」「楽しいか楽しくないか」という感覚は、集中しなくても比較的簡単に自覚できるから。この質問に対し、他の価値基準に優先して「好きならやる」「嫌いならやめる」と判断するのは、左右型(3種・4種)の体癖を持つ人。どちらも感情が豊かですが、3種の人は感情が外に向かい社交的。4種の人は内向的で、感情の豊かさが外からは見えにくいそうです。(3)これは得なのか、損なのか「これをやると得をする」と聞くとやる気が湧いてくるという人は、前後型(5種・6種)の体癖。前後型が前かがみの姿勢が特徴で、利害損失の感受性が強いタイプ。得なら積極的になり、そんなら気持ちがさめてしまい、体の反応も鈍くなるそうです。そして前後型は行動力があるのも特徴。特に5種の人は行動しながら考えるのが好きで、みんなと一緒に騒ぐことを好むのだとか。対して、ひとりを好むのが6種。胸にロマンを秘めており、激しい変化が起きて混乱した状況でも冷静に行動できるといいます。(4)自分は誰かに勝ちたいのか勝ち負けを気にする人は、ねじれ型(7種・8種)の人に多いのだとか。どちらも緊張感のある場面になると力を発揮し、逆境にも強い性質を持っているそう。7種はがっしり型で攻撃的、8種は闘争心が強いものの、心のなかでひっそり闘志を燃やすところが特徴的。(5)自分はまわりに貢献できているのかこの質問に対して体が反応する人は、愛憎の感受性が強い開閉型(9種・10種)。開閉型は愛情が豊かで、自分よりもまわりのことを優先するのだといいます。9種は極端なところがあり、他人への愛情が強い一方、裏切られるといつまでも執念深くおぼえているのだとか。一方、10種の愛情は寛容的。親分肌のところがあり、くるものは拒まず、去る者は追わずというスタンス。裏切られても、ショックをあまり引きずることはないそうです。開閉型の特徴に心当たりがある人は、仕事をするとき全体像を見る癖をつけるといいと著者はアドバイスしています。*これらが、自分の感受性や体癖を知るのに効果的な質問。活用し、さらに本書の内容を深く咀嚼することで、新たな価値観を身につけてみてはいかがでしょうか。(文/書評家・印南敦史)【参考】※鎌田浩毅(2015)『一生モノの超・自己啓発 京大・鎌田流 「想定外」を生きる』朝日新聞出版
2016年01月24日周囲に納得してもらえるような企画を生み出すのは、決して楽なことではないでしょう。しかし、『企画はひっくり返すだけ! 「離婚式」「涙活」を成功させたぼくのアイデア術』(寺井広樹著、CCCメディアハウス)の著者によれば、企画を出す際には重要なポイントがあるのだとか。タイトルからも想像できると思いますが、それは既存の価値観を「ひっくり返す」こと。もし自分のなかにオリジナルの発想がなかったとしても、決して悲観する必要はなし。既存の考え方を「ひっくり返す」テクニックさえ身につけることができれば、おもしろいアイデア、珍しいアイデアを簡単に生み出すことができるというわけです。そして、その考え方には裏づけがあります。なにしろ著者自身が、そうすることで成功を収めているのです。ちなみに著者は「涙活プロデューサー」「離婚式プランナー」「試し書きコレクター」と、珍しい肩書きの持ち主でもあります。いったいどういうことなのでしょうか?まずはひとつひとつを確認してみましょう。■涙活も笑顔葬もひっくり返したものまず「涙活」は、泣ける動画や映画、音楽、絵本などによって積極的・能動的に涙を流す活動。マイナスでネガティブなこととして捉えられがちな「涙」「泣く」ということについての価値観をひっくり返し、「ストレス解消に役立つプラスでポジティブなこと」に転化したわけです。月に1、2度のペースで涙活イベントを行っており、映画や楽曲など「泣けるコンテンツ」とのコラボ企画も開催して好評を博しているのだとか。「離婚式」は、「結婚式があるのに、離婚式がないのはなぜなんだろう?」という、著者の子どものころからの疑問を原点としたもの。離婚後はさまざまな噂話に苦しめられることも少なくありませんが、離婚式で「公式声明」を出すことが、それを防ぐ役目も果たすのではないかと考えたのだそうです。突拍子もない考えのようにも思えますが、このひっくり返した発想が評価され、6年間で300組以上の離婚式をプランニングしてきたというのですから驚きです。そして「笑顔葬」とは、「静かにしめやかに涙とともにお見送りする」のが一般的だった葬儀を、思い切りひっくり返したもの。別名「騒式」ともいうそうですが、つまりは明るく楽しく、笑顔で盛大に亡くなった人をお見送りする葬儀です。つまり、「いまあるものをひっくり返す」だけで唯一無二のオリジナルコンテンツができてしまうとは、こういうことなのです。■3秒で説明できるものを目指すべしまた著者は、ひっくり返す際に重要なのは「それを3秒で説明できるか」ということだと主張しています。たとえば、「えっ、それなに?」と興味を持ってもらえたとしたら、すかさず3秒で全体像を説明しなければいけないということ。それができるか、ダラダラ説明しないと内容が示せないのとでは雲泥の差だといいます。たとえば、上記の3つの企画を3秒で説明するとなると、次のようになるとか。「離婚式=結婚式の反対の式」「涙活=能動的に涙を流す活動」「笑顔葬=笑って明るく見送る葬儀」これ以上の説明を付け足したいのなら、興味を持ってくれた相手にゆっくりすればよいという考え方です。そして、「3秒で説明できる」とはどのようなものかと考えていくと、結局のところは「シンプルなもの」に行き着くといいます。たとえば「奇抜・斬新なことをしている」と思われがちだという著者は、実はそうではないのだといいます。「結婚式があるから離婚式」「みんなで集まって泣く」「笑顔で葬儀をする」など、どれも既存のものをひっくり返しているだけで、実際にはシンプルなことしかしていないというわけです。■わざわざ奇をてらう必要は全くない奇をてらったことや、エッジの効いたことには、たしかに人を惹きつける力があるでしょう。著者もそれは認めていますが、しかし、行き過ぎると危険だともいいます。なぜなら、それは限られた人にしか受けなくなってしまうから。だからこそ、もしも今後広めたい企画や活動があるのだとしたら、内容を3秒できるか試してみるべきだと著者。難しければまだ熟考の必要があるということですし、3秒でわかりやすく説明できたとしたら、これからブームを起こすためのひとつの条件がクリアされたといえるそうです。*本書を語るに当たって重要なポイントは、ここに書かれていることが、決して特別な人にしかできないことではないということ。柔軟な発想力さえ持つことができれば、誰にでも応用できることなのです。(文/書評家・印南敦史)【参考】※寺井広樹(2015)『企画はひっくり返すだけ! 「離婚式」「涙活」を成功させたぼくのアイデア術』CCCメディアハウス
2016年01月23日『聞くだけでネイティブに伝わるビジネス英語を身につけるCDブック』(デイビッド・セイン著、アスコム)の著者の名前を見て、ピンとくる方も多いのではないでしょうか?なぜなら日本で30年近く英語を教えてきた実績を持ち、累計400万部の著作を送り出してきた人物だから。ところでいまの時代は、仕事をするうえで仕事を話すことが必須だといっても過言ではありません。とはいえ仕事をしていると、英語を勉強はなかなかとれないもの。そこで著者は本書において、「1日2、3分CDを聞くだけでOK」な英語学習法を提唱しているのです。英語は、耳から覚えると効率がいいとよく言われています。それで、付属のCDに全29トラックが収録されており、1トラックあたり4~5ページ分のフレーズが入っているので、それを聴いていれば無理なく記憶できるというわけ。ただし、基本的に音声を聞くだけでいいとはいえ、英語をさらに深く理解したいなら、テキストを活用することは避けて通れません。テキストあってこそのCDだということです。また、ネイティブに伝わるのは、必ずしも学校の授業で習ったフレーズではありません。そこできょうはテキストのなかから、仕事でよく使う「朝、そして帰るときの各4フレーズ」をご紹介したいと思います。■朝のあいさつなら、この4フレーズ(1)おはようございます、ブラウンさん。「Good morning, Brown-san」朝のあいさつの定番だとはいうものの、日本語の「おはよう」とはやや温度差があるのだそうです。上司や顧客にはGood morningというべきですが、同僚にいうとあらたまって聞こえてしまうということ。同僚に対してはMorning、もしくはHi!がもっともよく使われる朝のあいさつなのだとか。(2)きょうは絶好調みたいですね。「You look ready-to-go today.」Ready to goだと「(どこかへ)行く準備ができている」ですが、ready-to-goのイディオムで形容詞的な使い方になるのだといいます。後ろにtodayがついて、「きょうを迎える準備ができている」「元気で意気込みがある」「バリバリ仕事をしそうだ」というニュアンスが伝わるため、朝の声がけにはぴったりだというわけ。(3)今朝は早いね。「You’re early today.」早めに出社したのに、同僚や部下がすでに来ていた。そんなときには、このような表現で朝のあいさつをするのも自然。遅刻の常習犯にいうと皮肉に聞こえますが、そうでなければ「きょうもがんばろう」という気持ちが伝わるといいます。(4)週末休めた?「How was your weekend?」直訳は「週末はどうだった?」になりますが、職場でこう聞くと「週末楽しいことがあった?」「週末はゆっくりできた?」というニュアンスに。■帰るときのあいさつなら、この4フレーズ(1)失礼します。「I’m going now.」職場でこういうと「これから帰ります」、つまり「失礼します」という言い回しになり、特に失礼なことにはならないそうです。I’m going now.でも大丈夫。(2)お先に失礼。「Take it easy.」「お疲れさま」と同様に、「お先に」も普通の別れの言葉で大丈夫。このような短いあいさつは厳密な英訳でなくてもよいので、気にせず使うべきだといいます。(3)じゃあね!「Bye now!」これはくだけたいいかたで、「じゃあね!」「さよなら!」といったニュアンスになるのだとか。Bye-byeでは少し幼い印象になるので、ネイティブはnowをつけてBye now!ということが多いのだそうです。(4)お先です!「I’m out of here.」そしてこれも、かなりくだけたいいかた。I’m out of here.の直訳は「ここから出るよ」ですが、「やっと解放される」という含みもあるため、同僚に対してはよく使う表現なのだといいます。また、ほぼスラングながら、Out ofを縮めたouttaを使って、I’m outa here!ということも。*このように、テキストだけでもかなり実用的な内容。ぱらぱらとめくって好きなところを拾い読みするだけでも、相応の効果が期待できそうです。そして、そこにCD音声が加われば、さらに効果が高まるということ。スマホに音声を入れておき、通勤途中に聞きながらページをめくるのもいいかもしれません。(文/書評家・印南敦史)【参考】※デイビッド・セイン(2015)『聞くだけでネイティブに伝わるビジネス英語を身につけるCDブック』アスコム
2016年01月22日『感情にふり回されないコツ』(辻秀一著、フォレスト出版)の著者は、20年間もの経験を持つというメンタルトレーニング専門ドクター。その長いキャリアのなかで、ビジネスパーソンはもちろんのこと、アスリート、芸術家など、幅広い層に向けてのメンタルトレーニング指導を行い、実績を残してきたのだそうです。そんな著者には、伝えたいことがあるといいます。まずは、常に平常心でいようとしても、それは無理な話だということ。次に、常に心を安定させておく必要はないけれど、乱れたならすぐ切り替え、心の状態を整えることが大切だということ。理由はシンプルかつ明快で、心の乱れが、自分自身のパフォーマンスの質を下げてしまうからです。■心の乱れに気づくだけで心は整っていく!ちなみに、ここでいうパフォーマンスとは、「なにをするのか」という行動の内容と、それを「どんな感情で行なうのか」という心の状態。そして、行動の内容を決めるのは脳の認知による機能で、心の状態を整えていくのが脳のライフスキルという機能なのだそうです。人間は誰しも、心の状態を整えるスキルを持っているもの。「なのに心が乱れるのはおかしい」と思われるかもしれませんが、そこには根拠があるようです。すなわち、持っているはずのスキルを使わないから、心の乱れを整える力が弱まっているというだけだということ。だとすれば逆にいうと、コツさえつかむことができれば、ライフスキルを使いこなすことができるということにもなるでしょう。たとえば、「いま、心が乱れているな」と自分の感情に気づくことがあります。するとそれだけで、多かれ少なかれ心の状態は整っていくものです。つまりは、そうした脳の使い方もライフスキルのひとつなのだということ。■ライフスキルについての3つのキーワードそんなライフスキルについてのキーワードは、次の3つだそうです。「いま」「ここ」「自分」物事に向かうとき、他人と接するときに、これらを意識することが大切だというのです。なぜならこの3つは、自分で安定してコントロールできるものだから。過去は変えられませんし、未来は不確か。しかし、「いま」なら自分でコントロールできます。出来事や環境はコントロールできませんが、目前(ここ)にあることを精一杯やることは可能です。そして他人はコントロールできないけれども、自分の心はコントロールできるでしょう。だからこそ、この3つに集中することで、心は整った状態へと変化していくということ。■知っておきたい「心が乱れる13の思考」そして心を楽にしておくためには、心の乱れを少なくする必要があるはず。そこで著者は、人の心が乱れる原因となる13の思考を紹介しています。これらをチェックすることが、自分の感情に気づくためのヒントになるのだとか。ぜひとも、おぼえておきたいところです。1.未来思考(不確実さから起こる心の乱れ)2.期待思考(勝手な想像からくる心の乱れ)3.勝利思考(敗北への不安からくる心の乱れ)4.疑念思考(裏切りからくる心の乱れ)5.過去思考(新しいことをすることへの恐れからくる心の乱れ)6.安定思考(変化への恐れからくる心の乱れ)7.獲得思考(喪失の心配からくる心の乱れ)8.帰属思考(孤独からくる心の乱れ)9.比較思考(他者から影響される心の乱れ)10.評価思考(優劣が気になることからくる心の乱れ)11.ポジティブ思考(ネガティブになってはいけないという固定観念からくる心の乱れ)12.成功思考(失敗を予想することからくる心の乱れ)13.結果思考(不達成への恐れからくる心の乱れ)出来事、環境、他人に対して抱いてしまう思考によって、心が乱れてくることが多いというわけです。だとすれば、たしかにこの13項目を意識しておくだけでも、少なからずメリットはありそうです。*著者のいうとおり、心とうまくつきあっていくことができれば、感情に左右されることも少なくなるはず。それは、日常の安定感とも連動することでしょう。だからこそ本書を通じ、心との距離感を保ちたいものです。(文/書評家・印南敦史)【参考】※辻秀一(2015)『感情にふり回されないコツ』フォレスト出版
2016年01月21日『あなたの「治る力」を引きだそう』(市川加代子著、あさ出版)は、著者が日ごろから行なっているという自然療法「市川式恢復(かいふく)療法」についてのガイドブック。耳慣れないかもしれませんが、市川式恢復療法の基本的な考え方は次のようになるそうです。・体に設計ミスはない・体は「治る力」を秘めている・どんな病気に対しても例外ではないつまり病気を治すのは、薬でも医者でもなく、自分自身だということ。もっと詳しくいえば、自分のなかで眠っている「治る力」を引き出すことによって、病気は治るというのです。そんな市川式恢復療法には、10種ものメリットが。■市川式恢復療法のメリット(1)知っていれば、いつでもできる使用するのは生姜や豆腐、こんにゃくなど、身近にあるものばかり。それらがあれば、昼夜を問わず行えるといいます。(2)どんな病状でも使える体調の改善、治癒が期待できるそうです。(3)害がないすべて自然のものを使用するため、副作用の心配もなし。(4)安価である基本的に、使用する野菜やサラシを買う費用だけでOK。(5)おぼえたら、小学生でも行なえる過去には、4歳で行なった子もいたのだとか。(6)体のことがよくわかる体調を観察することが必要なので、おのずと自分の体に対する理解が深まります。(7)家族、友人間で行なえば、つながりが深まる手でなでたり、さすったりするので、無理なくスキンシップができるということ。(8)実践すると治癒力が増進される体力が早く恢復するなど、予後がよくなるのだといいます。(9)自分への信頼、体へのいたわりが強くなる「治る力」を実感するほど、自分の体を信じるようになるそうです。だからこそ「大切にしよう」という気持ちも強くなり、さらに健康になることに。(10)権威や情報に振り回されず、自分で方向性を見い出せる自分で行ない、自分で治すことを体験することで、自分の判断によって、的確に体を扱うことが可能に。使い方を学ぶ必要があったり、手間ひまのかかるものもあったり、根気とやる気が必要だったりもするものの、これなら効果が期待できそうです。でも、具体的にどのようなことをするのでしょうか?■いちばんの近道は半身浴!市川式恢復療法の実践方法はさまざまですが、すべてに共通する鍵があるのだそうです。それは、体を芯から温めて、不要物を出す力を高めること。そして、なかでも著者が最初にオススメしているのが半身浴。なにも特別なものを準備する必要がなく、体の負担も軽く、それでいて血液循環をよくする効果は抜群だといいます。(1)風呂をぬるめ(38~41度)に沸かします。水位を低くするか、浴用の椅子を沈めるかして、入ったときに水位がみぞおちからへその間くらいにくるように調整します。(2)途中で飲むための水やお茶を用意し、湯船に浸かります。なお、腕は湯から出しておきましょう。(3)体が熱くなってきたら、いったん湯から上がって、下半身に水シャワーを浴び、ふたたび湯船に浸かります。これを、自分が疲れず「気持ちいい」と思える範囲で何度か繰り返します。このとき大切なのは、脱水症状を「起こさないように、マメに少しずつ水分をとること(ただし、ガブガブ飲むのはよくないそうです)。(4)大切なのは、必ず「冷」で終えること。そして最後に水シャワーを浴びるか、冷たいタオルで全身を拭きます。半身浴後も、マメに水分補給することを忘れずに。*他にも、末端を集中的に温める「手足温浴」、万能の薬効を体に送り込む「びわ療法」、体中から汗が噴き出す「全身生姜罨法(あんぽう)」など、身近にあるものを利用して、手軽に行えるメソッドがたくさん紹介されています。しかも無理なくできるものばかりなので、実践してみれば体調を快適にすることができるかもしれません。(文/書評家・印南敦史)【参考】※市川加代子(2015)『あなたの「治る力」を引きだそう』あさ出版
2016年01月20日「リモートワーク」という言葉をご存知でしょうか?クラウドソーシングの急速な発展に伴って注目されるようになったそれは、オフィスに通勤せずに働ける新たなワークスタイルのこと。これまでは、事前に決められた仕事やプロジェクトをフリーランサーが請け負うというかたちが一般的でしたが、ここにきてその可能性が組織にまで広がっているといいます。つまり会社やチームに所属していたとしても、住みたい場所に住んで、通勤せずに働けるようなワークスタイル「リモートチーム」が可能になったということ。そこで、ぜひ読んでおきたいのが、きょうご紹介する『リモートチームでうまくいく マネジメントの“常識”を変える新しいワークスタイル』(倉貫義人著、日本実業出版社)。■どこにいても仕事ができる著者は、リモートチームを取り入れることによって、組織ならではの安定した仕事、仲間と助け合える環境、そして好きな場所で働ける自由をすべて実現できると主張しています。なぜなら、自らが代表を務めるソフトウェア開発会社のソニックガーデンが、まさにリモートチームの有効性を立証しているから。たとえば東京のオフィスに通勤して働いているメンバーがいる一方、全国各地で在宅勤務をしているメンバーも数多く存在しているというのです。しかも在宅勤務だったとしても、仕事内容や働き方、雇用形態も本社勤務の人たちと違いはないのだとか。だとすれば、スキルさえあればどこにいても仕事ができることになり、たしかに可能性のあるワークスタイルだといえるでしょう。■ノンストレスで仕事できるリモートチームを採用することによって得られる最大の効果は、いうまでもなく時間の節約による生産性の向上。なぜなら在宅勤務をすれば、通勤時間がゼロになり、移動時間や待ち時間など、どうしても削ることができなかった時間を削ることが可能になるからです。つまり、その分の時間を生産的な仕事のために利用できるのです。そればかりか、ゼロになるのは時間だけではありません。通勤時間がなくなるということは、通勤時に避けて通れなかった満員電車内での疲労、電車の遅延、車の渋滞などによるストレスもなくなるということ。疲労やストレスとは無縁の状態で1日の仕事をスタートさせることができるのですから、そこには大きな精神的効果が期待できるはずです。■オンラインで会議ができるところで組織やチームなどで仕事をする場合、当然のことながら会議やミーティングは必須です。でも従来のようにオフィスで仕事をする場合、チーム内や顧客とのミーティングを開くためにはいくつものハードルを越える必要がありました。事前に出席者の都合のよい日時を調整し、そのうえで会議室を予約するなど、さまざまな調整が必要だったわけです。でもリモートチームでのミーティングは、各人がパソコンを持っていて、インターネットにつながる環境さえあればOK。オンラインを通じての会議が可能になるため、会議室の予約も必要ないのです。■無駄な時間の節約もできるちなみに会議室を予約して使う場合、仮に1時間の予約をしていたとしたら、要件が早めに終わったとしても、なんとなく時間いっぱいまでミーティングをしてしまうということになりがち。逆に時間がオーバーして次の予約者が来てしまったら、改めて別の場所を探さなければならなくなります。いろんな意味で無駄が生まれるわけですが、オンラインでのミーティングなら、用件が終わった時点でサッと終えることが可能。次の人たちが集まってくることもないので、時間を節約でき、ストレスも軽減できるでしょう。■さらに出張の概念も変わるまた、リモートチームワークが当たり前のものになってくると、出張の概念すら変わるといいます。出先でもインターネットにつなげば、そこには普段のオフィスと同じ労働環境が生まれることになります。つまり出張に行くからといって、チームの仕事に待ち時間などの支障が出ることもなくなるのです。■仕事に対する意識も変わるそしてリモートワークをはじめると、働く人の意識も変わってくるといいます。つまり、「オフィスに行きさえすれば仕事をしているとみなされる」という従来の状態ではなくたるということ。成果を出さない限り、仕事をしていないのと同じだということになるので、“働いているふり”が通用しなくなるのです。それはデメリットのようにも聞こえますが、そうではないというのが著者の考え方。結果的にはよりいっそう成果を意識した働き方をメンバーに促すことになるため、チーム全体の生産性を高めることになるということです。*現代の労働環境は、被雇用者にやさしくないものであると認識されています。それは否定しようのない事実であり、特にあおりを受けやすいのは、シングルマザーなど時間に制約のある方々でしょう。しかし、もしもリモートチームによって自らのスキルを生かすことができるのであれば、そこには従来になかった新たな可能性が生まれることになります。より効率的な働き方へのシフトを実現させるためにも、本書には読むべき価値があると思います。(文/書評家・印南敦史)【参考】※倉貫義人(2015)『リモートチームでうまくいく マネジメントの“常識”を変える新しいワークスタイル』日本実業出版社
2016年01月19日『フツーの会社員だった僕が、青山学院大学を箱根駅伝優勝に導いた47の言葉』(原晋著、アスコム)の著者は、青山学院大学体育会陸上競技部長距離ブロック監督。2015年には、青学を史上初となる箱根駅伝総合優勝に輝いて話題を呼んだだけに、記憶に残っているという方も少なくないはずです。しかしながら、そこに至るまでの経緯は決して安泰とはいえなかったようです。というよりも、かなり遠回りをしてきたような印象すらあります。広島県三原市生まれ。世羅高校から中京大学に進学してからは、暇さえあればパチンコ屋に通い、彼女とのデートに精を出す日々だったのだとか。どこにでもいるような大学生だったということになるでしょうが、ともあれ、「このままではいけない」との思いから大学3年のときに全日本インカレの5000mで3位に入るのが精一杯だったといいます。しかも卒業後は陸上競技部第一期生として中国電力に進んだものの、足の故障により、5年目にして競技生活から引退。以後はサラリーマンとして新たなスタートを切ることとなり、電気の検針や料金の集金などの業務を経て、営業マンとして能力を開花させたのだといいます。つまり、陸上とはまったく無縁の生活を送っていたということです。ところが2003年には、長く低迷していた青山学院大学陸上競技部から、監督として来てほしいとの誘いを受けたのだといいます。かくして3年契約で監督に就任するも、3年目での箱根出場を逃して監督辞任のピンチに追い込まれることに。しかし説得の末に猶予をもらい、2009年に33年ぶりの箱根駅伝出場を果たしたというのですから、まさに綱渡りのような状態。以後もビジネスの経験を生かした「チームづくり」「選手の育成」によって陸上界の常識を破り、8年連続出場の実績を更新中だといいます。が、かなりの苦労を重ねてきたことは否めません。■オンリーワンの提案を用意ところで、そんな著者は本書において、獲得した人材の潜在能力を最大限に引き出すためには、育成プランが必要だと主張しています。具体的には、どうしても欲しい人材を獲得するためには、「オンリーワンの提案書」を用意することが効果的だというのです。たとえば新規事業や新製品は、クライアントにしてみれば、海のものとも山のものともわからないもの。だからそれを売り込むには、会社が用意したパンフレットだけでは不十分。「お客様のための提案です」とオンリーワンの提案書をつくってこそ、相手に本気で向き合ってもらえるというわけです。■数字を交えて具体的に示すそしてそれは、ほしい人材を獲得する際についてもいえること。育成プランを作成する際に意識すべきは、目標をできるだけ具体的にし、なおかつ数字に落とし込むことだというのです。たとえば著者の場合は提示する育成プランを、大学1~4年までの目標をA4用紙1枚にまとめるのだそうです。5000メートル、1万メートル、ハーフマラソン、それぞれの目標をはじめ、「1年生で関東インカレの1500メートルに出場し、2年生で5000メートルに出場、3年でユニバーシアードに出場」など、その選手に実現してほしい道筋を、数字を交えながら具体的に示すということ。■数字を道しるべにしよう!またプランにはそうした目標だけでなく、「それまでにどのような課題を克服すべきか」を書き添え、「目標を実現するためには努力も必要だ」ということを伝えているのだともいいます。そんな著者は、育成プランで大事なのは、組織、チームのビジョンをしっかり伝えながら、新入社員や新入部員が自分の成長を具体的にイメージできるようにすることだと主張しています。なぜなら道しるべがあると、その後の伸び方が大きく変わってくるものだから。つまり、そのためにも、数字で表現することが欠かせないということです。*ここからもわかるとおり、著者はスポーツの世界とビジネスの世界を柔軟に行き来して物事を考えるように見えます。もちろんそれは、直接的な体験の裏づけがあるからですが、いずれにしてもその考え方は、あらゆるビジネスシーンに応用できることでしょう。だからこそ、部下やチームの動かし方で悩んでいるビジネスパーソンに対して、本書はなんらかの気づきを与えてくれるはずです。(文/書評家・印南敦史)【参考】※原晋(2015)『フツーの会社員だった僕が、青山学院大学を箱根駅伝優勝に導いた47の言葉』アスコム
2016年01月18日『仕事も人間関係もうまくいく ANAの気づかい』(ANAビジネスソリューション著、KADOKAWA)は、ANAホールディングスの100%子会社である「ANAビジネスソリューション」による著作。社名からもわかるとおり、ANAグループのノウハウに基づき、研修事業や人材派遣事業を行っているのだそうです。ちなみに研修内容は、「接遇&ビジネスマナー」「ヒューマンエラー対策」「コミュニケーション」など。つまり勤続20年以上の現役社員からOBまでにインタビューし、現場での努力を通じて人から人へと受け継がれてきた「口伝の技術」を初公開しているという本書は、ANA社員たちが実践してきた「気づかい」のコツを凝縮した内容だということ。きょうはそのなかから、気づかいと時間との関係についての考え方を引き出してみたいと思います。■具体的に言うことで安心を与えるタイムマネジメントは、自分のためだけにあるものではないと著者。つまり、「自分の接する相手が行動しやすくするため」という目的も含まれるということです。また、自分のとる行動が相手の予定に影響を与える場合、相手への気づかいはとりわけ大切になるともいいます。たとえば、みなさんが飛行機の乗客だったとします。パイロットから、この先、揺れが起きることを告げられたとしたら、次のどちらの方が安心できるでしょうか?(1)「あと少しで、当機は揺れることは予想されます。この揺れはしばらくのあいだ続くことが予想されますので、化粧室のご利用などはいまのうちにお済ませいただけますようお願い申し上げます」(2)「約10分後に、当機は揺れることが予想されます。この揺れは、20分ほど続くことが予想されますので、化粧室のご利用などはいまのうちにお済ませいただけますようお願いいたします」この場合、わかりやすいアナウンスは(2)の方。なぜなら(1)の「あと少しで」「しばらく」とは違い、(2)では「約10分後に」「揺れが20分ほど続く」といった具体的な言葉が使われているから。■悪い情報も誠実にオープンにする通常とは異なることは、いつ、どのくらい起きるのか。人はそんな「わからない」という状況に大きな不安を抱くもの。だからこそ、たとえ通常とは異なる出来事が起きるとしても、それが「いつ」「どのくらい」起きるのかがあらかじめわかっていれば、不安感を減らすことができるというわけです。また、そうすれば「次になにをすべきか」が判断できるため、時間を有効に使うことも可能。いい情報も悪い情報も誠実にオープンにすることが、信頼につながっていくということです。なるべく具体的に見通しを伝えるという気づかいは、航空機のアナウンスに限った話ではないと著者はいいます。たとえば、どうしても納期に間に合わせられないという場合、あるいは、どうしてもデートの約束に遅れそうだという場合も同じ。「何日の何時までにはお届けしますので」とか「何分後には行くからね」などと、遅れるときこそ、相手になるべく具体的にイメージしてもらうことが大切だということ。曖昧に「あとちょっとで着く」「少しだけ送らせていただけませんか?」といっても、相手はどうしたらいいのかわからなくなってしまうからです。■予定の過少申告はしない方がいいなお、この「予定を伝えるときは具体的に」という気づかいには、ひとつだけ注意点があると著者はいいます。それは、「過少申告」をすべきではないということ。たとえば、相手と10時に会う約束が、電車の遅れなどによって到着が10時30分になってしまいそう、というような場合があります。そんなときは、「10時30分にはなんとか間に合う」と思ったとしても、「申し訳ないのですが、待ち合わせを11時にしていただけませんか」と、余裕を持たせて予定を伝える方がいいというわけです。約束の時間に間に合わないとき、人は「なるべく相手によく思われたい」と考える成果、実現できるかどうか微妙な遅延時間を伝えようとしてしまいがち。でも「10時30分にはなんとか間に合う」といっておきながら、実際の到着が10時45分になってしまえば、相手に「さらに遅れた」と悪いイメージが残ることになります。一方、余裕を持って「11時にしていただけませんか」と伝えて10時45分に到着できれば、「以外と早く着けたね」と、遅刻のなかでも好印象を持ってもらえるかもしれません。これは一例ですが、このような細かい気づかいが、ANAのサービスすべてに貫かれているわけです。*もともと「後発」の「弱小エアライン」としてスタートしたANAは、とにかく愚直に「お客様満足」を目指すことしか武器を持っていなかったのだといいます。しかし結果的にその姿勢が、英SKYTRAX社による2013~2015年のエアライン・スターランキングにおける3年連続・世界最高評価「5スター」という実績にもつながったのだともいいます。だからこそ本書を熟読すれば、同社の姿勢が生み出した「気づかい」のあり方を身につけることができるわけです。(文/書評家・印南敦史)【参考】※ANAビジネスソリューション(2015)『仕事も人間関係もうまくいく ANAの気づかい』KADOKAWA
2016年01月17日『話を噛み合わせる技術』(横山信弘著、フォレスト出版)の著者は、年間100回以上の講演・セミナーをこなす人気ビジネスコンサルタント。「話し方」の専門家ではないのですが、そんな立ち位置を軸としたうえで、ひとつの考え方を持っているのだそうです。それは、ビジネスで目標を達成するために必要なスキルは、「話し方」ではなく「話を前に進める力」だということ。本書ではそのような考え方を軸に、話をかみ合わせる術を説いているわけです。注目すべきは、話がかみ合わない相手とコミュニケーションをとらなければならない場合の策。そんな場合には、相手を外国人だと思って接することが重要だというのですから、ユニークな考え方だといえます。そして大切なのは、次の3点だともいいます。(1)前提知識をていねいに伝える(2)ゆっくりと話し、論点を繰り返そうとする。(3)話が通じないときは仕方がないと思う。しかし、そうであるなら、「誰かに悩みを打ち明けたい」「誰かになにかを相談したい」というような思いがあった場合には、果たして相手が話のかみ合う人であるかどうかを意識すべきでしょう。話がかみ合う人だとわかっていたなら、素直に相談すればいいということになるはず。しかし話がかみ合わない要注意人物だとわかっているのなら、事前準備をしたり、話し方を工夫したりすべきだということです。あるいはそれ以前に、最初から話を持ちかけないべきかもしれません。いずれにせよ、話がかみ合わない要注意人物については、その特徴を認識しておくべきだということ。そこで、著者のいう「相談してはいけない要注意人物の3つの特徴」を見てみましょう。■1:置かれた立場や環境などが著しく異なる人話をかみ合わせるためには、話のコアとなる知識をお互いが共有していることが前提条件。たとえば、学校卒業後すぐに結婚し、一度も社会で働いたことがない専業主婦と、長時間労働が当たり前の環境で働くビジネスウーマンとでは、価値観が違って当然。どちらが優れているかという問題ではなく、環境が違いすぎるのだから、話がかみ合わなくて当然だということです。性別が異なり、年齢が離れていたりすると、「かみ合わない度」はさらに大きくなっていくだろうと著者は指摘しています。■2:リアルでの接点が少ない人これは、インターネット上でのつきあいがメインの人のこと。ツイッターやフェイスブックなどのSNSを通じて親しくなり、自分が抱えていることについて相談したいという気持ちになったりするようなケースです。しかしこのような場合、お互いの立場や環境を正しく共有できていないケースが多いと著者はいいます。だから、実際に会話をしてみると、かみ合わないことも多々あるということ。原因は明白で、つまりメールやメッセージ交換のみのやるとりだと、どうしても「言葉の省略」と「タイムラグ」が発生するから。リアルな会話であれば、ちょっとした言葉のニュアンスを補うことができたり、自分のいい間違いや相手の誤解を即座に訂正したりすることも可能でしょう。しかしネット上だと微調整ができないため、誤解が誤解を生み、話がこじれてしまう場合が多いということです。だからこそ、どうしてもネットだけのおつきあいの人に相談したいという場合は、電話やスカイプを使うなど、双方向の通話ができるシステムを活用するのがいいと著者は提案しています。■3:自分の方が立場・地位が上だと考えている人自分の方が相手より立場が上だと考えている人、いつも上から目線で話を聞こうとする人は要注意。なぜなら彼らは話半分に聞き、しかも早とちりした挙句、自分の考え方を押しつけようとしてくることが多いから。具体的にいえば、「なんでも私に相談しなさい」と命令口調でいう人には、なおさら相談しない方がよいといいます。相談してアドバイスをもらったのに、その人の考えにしたがわないと、あとからややこしいことになったりする可能性があるわけです。*しかし現実的にはこうしたケースだけではなく、話がかみ合わなくなるシチュエーションは多種多様。だからこそ、さまざまな状況を想定しておくことが大切であり、それぞれについての対処方を用意しておくべきでしょう。そこで、本書が役に立つというわけです。人間関係に悩んでいる人は、ぜひ一度、手にとってみてください。(文/書評家・印南敦史)【参考】※横山信弘(2015)『話を噛み合わせる技術』フォレスト出版
2016年01月16日『食品添加物ほんとうの話』(三輪操著、あさ出版)の著者は、相模女子大学栄養科学部管理栄養学科教授。長らく食品添加物の研究に携わっているという実績の持ち主なので、次のような質問を受けることも多いといいます。「添加物を取るとがんになるってほんとうですか?」「健康によくないのにどうして使い続けるんですか?」「コンビニ弁当は食べないほうがいいんですよね?」しかし、これらの質問はすべて誤解や思い込みによるものなのだとか。そして、偏った情報をそのまま受け入れてしまうことは、巷で危険だといわれている食品以上に危険だといいます。では、家族の食や子どもの食について考えるとき、具体的になにを意識しておくことが大切なのでしょうか?■根拠に基づいて目の前のことを考えようその点について、いちばん身につけてほしいのは「科学的な考え方」だと著者はいいます。科学的な考え方とは、「根拠に基づいて目の前のことを考える」ということ。とはいっても難しいことではありません。なにか問題が起きたとき、判断を迫られたとき、「根拠はなんだろう」と疑ってみるだけでいいということ。こうした考え方を身につけておくと、情報に翻弄されることなく「なにが正しいか」をきちんと自分で判断できるようになるといいます。これは食べものについてだけではなく、すべてのことがらについてもいえそうです。食品添加物にしても、いろんな種類があり、それぞれ働きがあって、消費者にメリットがあるから使われているのだといいます。たとえば、腐ったものや傷んだものを口にして体を壊さないように「保存料」や「防かび剤」が使われます。食べものをおいしく見せるために「着色料」や「香料」が使われています。「うま味調味料」は、料理にうま味を加え、塩分を抑えられるそうです。「甘味料」は、甘さを感じながらもカロリーをぐっと抑えることができるのだといいます。もしもこれらの添加物がなくなってしまったら、現代の食生活は成り立たなくなってしまうかもしれないと著者。「食品添加物はあまり気にしなくていい」というのです。食品のことを考えるときにむしろ気にしていただきたいのは、塩分や糖分、カロリーなどのとりすぎ、そしてアレルギーだといいます。■昔ながらのおばあちゃんの知恵を活かそうお母さんやおばあさんの世代は、食品が腐っているかどうかを見極めるために、自分たちの嗅覚や味覚、視覚をフルに使っていたものです。昨夜つくったお味噌汁の残りがあれば、匂いを嗅いだり、色を見たり、少しだけなめてみて「これはもうダメ」「全然傷んでいない」などと判断したわけです。そんな姿をみた記憶のある方も多いのではないでしょうか?なぜそうしていたかといえば、多少の菌が繁殖しそうな場合でも、十分に加熱すれば菌は死に、体に害を及ぼさないということを経験的に知っていたから。事実、菌の種類にもよるとはいえ、だいたいの菌は一度沸騰させれば死滅するそうです。だからこそ昔は、毎日一度は日を入れて、何日も煮物を食べたりしたわけです。味は落ちるものの、火を通すことで腐敗を遅らせたのです。いわゆる「おばあちゃんの知恵袋」です。■ラベルや数字に頼りすぎないようにしようまた、買いものに行けば、野菜や鮮魚、生肉をしっかりと目で見て、ときには匂いをかいだり、触って弾力を確かめたりして、鮮度を見極めたもの。ところが最近は、鮮度の見極め方が様変わりしたように感じると著者は指摘しています。自分の五感よりも、ラベルや数字を信じる人が多くなってきたということ。だから消費期限や賞味期限が、できるだけ長いものを買うことになる。そして冷蔵庫のなかに期限の過ぎているものを見つけたら、封も開けずに処分してしまう。つくってから時間が経ったものも、「1日経ったから、傷んでいるに違いない」と、匂いもかがずに処分してしまう。でも、それではあまりにも数字に頼りすぎていて、食品に対しての判断が厳しすぎると著者はいいます。著者の研究室にも、たとえば卵の賞味期限を見て、「来週の火曜日が賞味期限だから、その前に実験に使わないと」と心配するような学生が少なからずいるのだといいます。しかし、そういう場合に著者は、「1日くらい過ぎたところで、そんなに変わらないから大丈夫」と使用を促すのだそうです。それに数字やラベルだけに頼ってしまうと、食品ロスもどんどん増えていくことになります。しかし、食品が安全かどうかを確認するため本当に大切なのは、五感を駆使して自分で感じたり、考えたり、判断したりすること。だからこそ、そうした習慣をつけることが大切なのだといいます。*たとえば問題になっている「トランス脂肪酸」についての真実など、本書には知っておきたいさまざまな情報が詰め込まれています。食べものについての客観的な判断能力を磨くためにも、ぜひ読んでおきたい一冊だといえるでしょう。(文/書評家・印南敦史)【参考】※三輪操(2015)『食品添加物ほんとうの話』あさ出版
2016年01月15日『答えを探さない覚悟』(山元賢治著、総合法令出版)の著者は、日本IBM、日本オラクルなどで実績を積み上げた結果、スティーブ・ジョブズから「日本を元気にしてほしい」との命を受けたという人物。かくしてアップル・ジャパン株式会社代表取締役社長兼米国アップルコンピュータ社セールス担当バイスプレジデントに就任し、iPodビジネスの立ち上げからiPhoneを市場に送り出すまで、国内の最高責任者としてアップルの復活に貢献したというのです。50歳を機に同社を退社してからは、株式会社コミュニカを立ち上げ、21世紀の坂本龍馬を育てる「山元塾」を主宰されているそうです。つまり本書においても、豊富な経験を軸として、人生に迷っている人に向けたメッセージを投げかけているわけです。■アップルは日本で売れて当たり前と思われたそんな著者は、ビジネスは「がんばります」だけでは通用しない世界だと指摘しています。その証拠にアップル時代は、数字が多くを左右する「算数の世界」だったのだとか。著者が日本市場のセールスを統括するようになった当時のアップルは、まだ量販店での評判がよくなかった時期。製品の利益率があまり高くなく、「売ってもあまり儲からない」と考えられていたからだそうです。また新製品の予告も日程の約束もしないため、急に製品が発表され、仕入れておいた付属品が全部破棄になるといった事態も。営業担当者も少なく、世界で日本の売上貢献度は高くなかったといいます。しかしそれでもアメリカの本社からは、「世界中で売れているのだから、日本で売れて当たり前」と思われていたのだとか。アップル・ジャパンのオフィス内にも問題が山積し、著者が日本を任されてから半年間は、状況が好転しなかったのだそうです。風向きが変わったのは、着任1年後あたりから。アップル製品は値引きをしないことで有名ですが、そんなアップル製品の販売でも利益を出してもらえるという数式をつくり、それを提示していったのだそうです。その結果、それまでは店舗の奥にあったアップル製品の売り場が、徐々に前に出てくることに。最初は嫌味ばかりいわれていたといいますが、数字で提案できれば理解してもらえるもの。「すべて数字のなせるワザ」だと著者は記しています。■すべての数字は「変数の組み合わせ」であるちなみに、毎週朝5時から2時間連続で行われる電話での販売会議にも、必ず出席していたのだそうです。毎週、「翌週には全国何百店舗でなにが何台売れる」というシミュレーションを高い精度で行っていたというのです。「3年前のシミュレーションだと13.8%売上が上がる週だから」といったことをすべて数字で提示するわけです。すべての数字は、絶対に変えられないベースと仮説、つまり変数の組み合わせだと著者はいいます。なぜなら、もし数字を間違えて在庫が足りなくなったりしたら、量販店の売り場は一晩で他のメーカーの売り場に変わってしまうから。逆に強気の販売予測をして在庫が余ったら、すぐにアメリカ本社の信頼を失うことになります。だからあまりの緊張感に、著者は1年365日のうち300日は仕事の夢を見ていたといいます。■どんなことも数値化するクセをつけるといいそんな経験があるからこそ、著者はビジネスにおける数字の存在を強調しています。ビジネスにおける説得材料は、基本的には数字だけだともいい切っているのです。ビジネスの現場においては、「たくさん顧客訪問をする」といういいかたは無意味だとも。「1年で180回訪問します」といった数値と、その根拠を提示しなければ、評価する方もされる方もハッピーな結果にはたどり着けないという考え方です。だからこそ、日常生活で目標を決めるときも、無理やりでもいいので数値化するクセをつけることが大切だといいます。なぜなら人間は、本来怠惰なものだから。そこで、弱い自分を駆り立てるためにも、「がんばって歩く」のではなく、「2キロ歩く」と定めることが大切だという考え方。そして数字にするだけでゴールが明確になり、心持ちも変わってくるだろうと結論づけています。*過酷なビジネス環境で戦ってきたからこそ、著者の数字に対する考え方には強い説得力があります。そして緻密なバックグラウンドがあれば、どんなに困難な状況も乗り越えられるということを、本書は実感させてくれるでしょう。(文/書評家・印南敦史)【参考】※山元賢治(2105)『答えを探さない覚悟』総合法令出版
2016年01月14日タイトルからもわかるとおり、『世界の超富裕層だけがやっているお金の習慣』(岡村聡著、KADOKAWA)で明らかにされているのは、「本当の富裕層」のさまざまな習慣。日本とシンガポールで、金融資産3,000万ドル(約36億円)以上の超富裕層を対象に、資産運用、税金対策、海外移住などについてのアドバイスを提供している著者が、そのキャリアをもとに著した書籍です。きょうは「マネーの流儀」について書かれた章から、いくつかのトピックスを引き出してみたいと思います。■1:本当の富裕層はこうして買いものをする買いものをするとき、富裕層には強く意識していることがあるそうです。それは、自分が信頼するブランドを選び抜き、常連客となること。また富裕層は、希少性のある時計屋ジュエリー、美術品などにもこだわるもの。そんな傾向を見ている著者は、日本にも欧州と同じくらい歴史的な価値がある美術品やブランドがあるだけに、うまくグローバルに展開していけば大きなビジネスになるはずだと指摘しています。■2:本当の富裕層はエコノミークラスに乗る富裕層の移動手段と聞けば、飛行機のファーストクラスをイメージする人も多いはず。ところが著者のクライアントや周囲の大富豪で、ファーストクラスに乗る人はあまりいないのだそうです。意外な気もしますが、より具体的にいうとしたら「本当の富裕層はエコノミークラスとプライベートジェットに乗る」というのが正しいのだといいます。エコノミークラスとプライベートジェットでは雲泥の差ですが、そこには理由があるようです。本当の富裕層にとって、プライベートジェットとファーストクラスとの間にはお金の差以上の大きな違いがあるというのです。それはなにかといえば、自由になる時間の違い。プライベートジェットの最大の魅力は、拘束時間が劇的に下がること。パスポートや荷物のチェックを待つ必要もなく、大半のプライベートジェットには衛星を利用したWi-Fiが備えられているので、地上と変わりなく仕事することが可能です。つまりプライベートジェットを利用すれば、不自由な時間なく仕事をしながら移動できるわけです。一方のファーストクラスには、エコノミークラスと同様の時間的拘束があります。それを、時間の観点で不自由だと感じる富裕層が多いというのです。そして、どうしてもファーストクラスかエコノミークラスを利用しなければならない場合、時間拘束が同じなのであれば、ファーストクラスではなく、もっとも安いクラスを利用するべきだという考え方。■3:本当の富裕層は自分以外のためにお金を使う著者が暮らすシンガポールには、欧米の富裕層も増えてきているといいます。背景にあるのは、米国や大陸欧州では課税強化の動きが強まり、さらにスイスなど、これまで欧米の富裕層が資産運用をしていた場所で、情報公開の圧力が高まっているという事情。そこで、「自分の資産が追加で課税されるリスクを抑えたい」というニーズから、シンガポールに資産を移したり、移住したりする欧米の富裕層が増えているというわけです。そして著者がこうした欧米出身の富裕層と話していて感じるのは、社会貢献への意識の高さだといいます。そのいい例が、マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツとその妻メリンダによって設立されたビル・アンド・メリンダ・ゲイツ・ファンデーション(ゲイツ財団)ですが、他にも多くの富裕層が社会貢献活動に積極的な姿勢を見せています。また、情報技術やバイオテクノロジーなど理系の分野を中心として、研究にかかるコストも増大しているだけに、こうした基金の存在は大学の研究レベルにも大きく影響するものなのだとか。いわば富裕層たちの莫大な資産が、教育や健康問題、貧困問題など社会的に重要な問題の解決に用いられる仕組みができているというわけです。また、世の中で広く報じられることは少ないものの、日本でも学校の設立など社会貢献に数千万円・数億円の大金を投じる富裕層も増えてきているのだとか。こうした動きを目の当たりにしている著者は、自身のお金についての目標にも、ぜひ他者の目線を介在させてほしいと記しています。なぜなら「老後が不安だから3,000万円貯めたい」など、自分のことだけで完結した目標では、なかなか長期的にモチベーションを維持できないものだから。まずは子どもの教育のためや、親に楽をさせてあげたいなど、資産形成の目標設定に他社を介在させた方が、モチベーションを高く保つことができ、結果として目標も達成しやすいという考え方です。*他にも「振る舞い」「人づきあい」「生活」「教育」と、あらゆる角度から富裕層の習慣が明らかにされています。だからこそ、広い視野で彼らのことを把握できるはず。そしてその多くは、私たちのライフスタイルにも生かすこともできそうです。(文/書評家・印南敦史)【参考】※岡村聡(2015)『世界の超富裕層だけがやっているお金の習慣』KADOKAWA
2016年01月13日『足を温めると健康になる』(吉田佳代著、白澤卓二監修、あさ出版)の著者は、足つぼマッサージと整体の技を得意としたトータルリラクゼーションサロン「ラグジュア」を経営している人物。自身が語っているとおり、医者でもカウンセラーでもなく、「足を温める」ことによって自然に治す力を引き出す方法を実践しているだけなのだといいます。ちなみに、足を温めることによって得られる効果は次のとおりだとか。・血管が開いて、血液がスムーズに流れやすい状態になる・血流がよくなることで、体のなかに蓄積されている不要なもの(老廃物)が外に排出され、むくみがとれる・温まった血が全身に流れるため、体温が上がり、内臓機能が強くなり(活発になり)、病気になりにくくなるこうしたことから、健康な体を手に入れることができるというのです。しかし、だからこそ気になるのは「足の冷え」について。そこできょうは、病気の原因になるというこの点をクローズアップしてみたいと思います。■健康になるために冷えを知るべし大切なのは、足を温めることによって、病気になりにくい健康的な体を手に入れること。しかしそのためにはまず、健康の大敵である「冷え」について知っておくことが大切。ちなみに冷えは、体のさまざまな要因によって体全体、または一部分が温まりにくい状態になることによって起こるそうです。そこで、冷えが起きる4つの要因を、それぞれ具体的にチェックしてみましょう。■冷えを引き起こす4つの要因とは(1)血液の循環が悪い東洋医学では昔から、血液の流れがさまざまな病気の原因であると考えられてきたのだといいます。老廃物の滞留などによって血液が汚れていると、当然のことながらドロドロして流れにくくなります。すると血液の循環が悪くなり、その結果、新陳代謝のための栄養素、細胞が活性化するための酸素が滞ってしまうことになるというのです。恒温動物であるヒトは、血液の流れによって全身に熱が与えられます。つまり血液の循環が悪いと熱量が不足し、冷えの状態を引き起こしてしまうのです。血が足りない状態(血虚=けっきょ)、血が滞っている状態(お血=おけつ)も冷えの原因とされているのだとか。血を温めて循環させることが、冷えを解決するためには欠かせないということです。(2)筋肉量が少ない筋肉には、体の熱をつくって出す役割があるのだと言います。運動不足で、ほとんど筋肉を使わない生活をしていると、必然的に熱量が不足することに。そこで、体が冷えた状態が続いてしまうわけです。具体的には、厚着をしても暖房を入れても、なかなか体が温まらず、いつしか「冷たいことが当たり前」な状態に。つまり、それが冷え性。年配の方に冷え性が多いのも、年齢を重ねると筋肉量がだんだん減ってくるから。なお、熱をつくり出す筋肉の多くは下半身にあるもの。そして筋肉中には血液がたくさん通っています。そこで、日ごろから歩いたり、ストレッチをしたりして下半身を温め、適度に筋肉を刺激して、熱を発する体をつくっておくことが大切なのです。(3)自律神経の乱れストレスや不規則な生活習慣が続くと、自律神経の乱れが起きることになるのだそうです。自律神経が乱れると、体温調節がうまく機能しなくなります。そして具体的には、上半身に熱がこもって下半身に熱が足りないといった状態になるのだとか(冷えのぼせ)。また、それにともなって足の冷えや心臓のドキドキ、めまい、頭痛などの症状が起きることも。当然ながらそうなると、日常生活にも支障をきたしてしまうことになるでしょう。「心のバランスが偏っているな」「緊張が続いているな」と感じるときは、体が冷えている可能性があると著者。お風呂に入るなどして、まずは体を温めることが大切だというわけです。(4)ホルモンバランスの乱れ冷え性は、男性よりも女性に多く見られるもの。もちろん筋肉量の違いもありますが、ホルモンバランスが大きく影響しているのだとか。排卵や生理のときなどはホルモンバランスが乱れやすいため、自律神経も乱れて血液循環が悪くなり、冷え性の症状が出てくるということ。そこれリラックスするためにも、シャワーだけですませるのではなく、ゆっくり湯船につかって体を温めることが大切だといいます。*これらからもわかるとおり、冷え性とは、私たちの体を温かく保つための機能が不調をきたしている状態。だからこそ、体がつくり出す熱ではなく、暖房やある次でごまかしても改善は望めないわけです。そこでぜひ、本書を参考にして体を内側から温めたいものです。(文/書評家・印南敦史)【参考】※吉田佳代(2015)『足を温めると健康になる』あさ出版
2016年01月12日日本のお金の問題はすでに抜き差しならぬものになっているだけに、これまでと同じ方法では解決不可能。変革期にさしかかっている時代においては、自分の身は自分で守らなければならない。具体的にいえば、いまこそお金について真剣に考える必要がある。そして、明るい未来を迎えるための鉄則は、「自分のお金は自分で守る」ということ。そう主張するのは、『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』(俣野成敏・中村将人著、日本経済新聞出版社)の著者です。■サラリーマンはもうひとつ給料袋を国の膨大な借金返済のため、増税や徴収強化、インフレによる物価上昇は避けることができません。しかもサラリーマンを続けていたところで、給料が上がるわけでもないでしょう。出世しようと努力をしても、退職金だって、いくらもらえるかは不明。その証拠に、退職金制度を廃止している上場企業も増えています。しかも法人の税制は下げる方向に向かっているにもかかわらず、個人の負担は大きくなるばかり。もし家庭を持ちたいと思っても、経済的に難しくなりつつあります。当然、老後も不安だらけ。そして貨幣経済が激変しようとしている。だとすれば日本のサラリーマンは、我慢し続けるしかないのでしょうか?しかし、そんな厳しい状況のなかでも生き残り、自分や大切な家族を守っていけるだけの強力な方法があるといいます。そのひとつが、著者の言葉を借りるなら“お金を生み出すマシン”。つまり、会社からもらう給料袋とは別にもうひとつ、新たな給料袋を持つということだといいます。出世レースに精を出す時間やパワーがあるならば、もうひとつの給料袋をつくり出す作業、給料袋の中身を増やす作業に力を注いだ方が、ずっと簡単にお金を増やすことができるという考え方です。そのために大切なのは、自分のなかに「投資」の発想を持つこと。■でも収入増で副業はやめた方がいい会社とは別に収入を増やしたいとき、多くの人が考えるのは副業です。たとえば自分の趣味や特技を情報商材とする「週末起業」や、会社の終業後に働く「アルバイト」などがそれ。しかし著者は、副業とは自分の時間を売って稼ぐことにほかならないと指摘しています。なぜなら副業は、常に「就業以外の時間を使って行う」という条件つきだから。サラリーマンである以上は、時間というものがまず中心にあり、どこまでいってもその制約を越えることはできないわけです。そんななかでよりお金をかせぎたいと思った場合、「時間単価を上げる」か、「労働時間を増やすか」の二者択一しかないことになります。でもサラリーマンにとって、時間単価を上げるのは難しいこと。だから、お金を増やすためには「副業で労働時間を増やすしかない」という発想になるわけです。ところが「時間単価」「労働時間」の問題は、副業にもついてまわるもの。アルバイトなら、時給が上がるか、さらに長時間働くかのどちらかでしかお金を増やすことはできません。しかも自分の体はひとつだけしかありませんから、どこまで副業をがんばれるかという問題もあるでしょう。だからこそ著者は、「もっとお金を稼ぎたい」というサラリーマンの方には、「副業だけはやめた方がいい」と伝えたいのだそうです。■副業ではなく「複業」をすればいい一方、自分の労働時間、労働力の壁を軽々と乗り越えてしまうのが、投資家の「お金を働かせる」発想。なぜなら彼らが行っているのは、副業ではなくで「複業」だから。いいかえれば、お金を生み出す仕組みをいくつも持っているということです。たとえば投資案件を持っておけば、お金を生み出す仕組み1号機、2号機、3号機が同時に走りはじめることになります。その場合、仮に1号機が転んでしまったとしても、まだ2号機と3号機が残ることになります。しかもそこに、時間の制約や自分自身の労働力は関係ありません。投資をはじめる際の入り口では、「おいしそうな話」がたくさん目につくと著者はいいます。でも、そんなとき簡単に「それはすごい」と投資を決めてしまうのは危険なこと。おいしい話の「“おいしさ”の根拠は、どこから来ているものなのか?」「裏づけはあるのか?」ということは、投資活動の一環としてしっかり調べておく必要があるということです。さらに、少額を投資してみて、実際に“おいしい”リターンがあるのかをテストしてみることも大切だといいます。そして情報の精査、すなわち「その話は、本当においしいのか否か」を見極める際の重要なファクターは、「人」なのだとか。信用できる人の話であれば、耳を傾ける価値があるということ。そして次に見るべき点は、そのおいしい話のリターンを生み出す「仕組み」。その話が、どのようなビジネスモデルのもとに成り立っているのかを確認するということです。*ふたりの著者は、サラリーマン出身。独立後は投資家・ビジネスオーナー・著者・講演業によって、サラリーマン時代の何倍もの収入を得ているというだけあり、説得力があります。これからの働き方について模索している人は、読んでみるべきかもしれません。(文/書評家・印南敦史)【参考】※俣野成敏・中村将人(2015)『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』日本経済新聞出版社
2016年01月11日『なぜ、一流の男は肌を整えるのか?』(小野浩二著、あさ出版)の著者は、約18年間のキャリアのなかで、1万人以上のスキンケアに携わってきたというエステティシャン。独立後はエステ業界での店舗コンサル、人材育成、スキンケアのセミナーなど、プロを育成するエステティシャンとしても活躍しているそうです。そんな経験をもとにした本書から、「男のスキンケア」についての基本をチェックしてみましょう。■男性のスキンケアの基本男性の肌の特徴としては、次の3点が挙げられるそうです。(1)皮質成分が多い(2)角質が厚くなりやすい(3)肌の水分量が少ないそして、これらを踏まえた上で、化粧水、美容液、乳液、クリームなど、直接肌につける「スキンケア化粧品」を使いこなす必要があるというのです。・化粧水化粧水を使うことのおもな目的は、肌に水分を補い、うるおいを与える「保水」。さらには、肌の調子を整え、あとから使用する美容液や乳液、クリームのなじみを高めるという役割もあるのだそうです。・美容液目的に応じ、さまざまな種類があるのが美容液。たとえば乾燥肌向けの「保湿美容液」や、美白を目的としたもの、あるいは肌のハリを取り戻すアンチエイジングを目的としたものなど、バリエーションもいろいろ。目的別に必要な栄養素を肌に補填する役割があるので、スキンケアの肝ともいえる化粧品なのだと著者は説明しています。・乳液、クリーム乳液やクリームは、保湿のために大切。化粧水や美容液の効果を閉じ込め、水分の蒸発を防ぐ役割もあるのだといいます。■スキンケアの4ステップスキンケアにとって重要なのは、次の4ステップ。(1)洗顔 → (2)化粧水 → (3)美容液 → (4)乳液、クリームこれを、朝、夜の2回実践することが重要なのだそうです。男性の肌の特徴のひとつである皮脂分泌の多さには、ひとつの問題があります。皮脂は、汚れを吸着してしまうということ。つまり、男性の肌は汚れているということになるのです。だからこそ、肌の汚れをしっかりと洗顔で落とすことが、スキンケアのスタートラインとなるわけです。ただし勘違いすべきでないのは、「しっかり落とす」=「ゴシゴシ洗う」ではないということ。ゴシゴシ強く洗うと、肌を痛めてしまうだけだから。また、顔の部位によっても洗顔法は変わってくるのだそうです。■就寝中も顔は汚れているなお、朝は水だけでしか洗顔しないという男性も少なくないはずですが、朝もしっかり洗顔料を使うべき。なぜなら、寝ている間にも皮脂の分泌は行われ、空気中に飛んでいるホコリが顔につくことで肌は汚れてしまうから。また、毎日枕カバーを取り替える男性は少ないかもしれませんが、取り替えない枕カバーはとても不衛生な状態。そこからも肌に汚れがついてしまうというのですから、なんとも驚きです。そして朝の洗顔時は、まず手をしっかりと洗うことが大切。朝も、手には菌や汚れが付着しているからだといいます。洗顔の際は、フェイスラインや生え際を意識して洗うことも重要。朝は洋服を着たまま洗顔をすることが多いため、襟元が濡れないようにしようという意識から、フェイスラインの洗顔が甘くなってしまいがちだから。同じように生え際も、髪の毛が邪魔になって洗い残しが多くなる部分。そこで朝の洗顔は、ヘアターバンなどを使用して行うといいのだそうです。■一流男性ほど肌を整える男のスキンケアと聞くと、それだけで抵抗がある方もいらっしゃるでしょう。ましてや「メンズエステ」に通っている男性というとナヨナヨしたイメージがしなくもありません。ところが著者の経験上、実際にメンズエステを利用しているのは、体育会系の経営者や営業マンなど、エステとは縁がなさそうな人ばかりなのだとか。相手に少しでもいい印象を持ってもらうため、クライアントとの商談前や取引先への営業前、大切な仕事の打ち合わせ前などに肌を整えるというのです。つまり、ビジネスと真摯に向き合う一流のビジネスマンほど、印象をよくするために肌をケアしているということ。*好印象を得るためにも、具体的なスキンケアの方法がイラストとともにわかりやすく紹介された本書を、ぜひチェックしておきたいところです。(文/書評家・印南敦史)【参考】※小野浩二(2015)『なぜ、一流の男は肌を整えるのか?』あさ出版
2016年01月10日「いつも全力を尽くしてしまう人」は、意外に多いもの。無理して全力を尽くしたところで実際にはうまくいかないことも多いのに、うまくいかないと「もっとがんばらなければ」と、ますます全力を尽くしてしまうことになってしまったりもします。しかし逆に、ここぞというところで実力を発揮できる人は、ここぞでないところで巧みに力を抜いているもの。そう主張するのは、『すごい手抜き – 今よりゆるくはたらいて、今より評価される30の仕事術』(佐々木正悟著、ワニブックス)の著者。「効率化」と「心理学」を掛け合わせた「ライフハック心理学」を探求しているという「心理学ジャーナリスト」です。つまり本書ではそんな観点から、「うまく手を抜く仕事術」を紹介しているというわけです。そのなかから、「時間」に関する考え方を引き出してみましょう。■仕事は限りある時間内にやろう「仕事に手抜きは許されない」「時間はいくらかかってもよいから、完璧に仕上げなければならない」「そうしていない者は、いずれ手痛いしっぺ返しを食らう」よく耳にするこのような言葉は、毒性が強いと著者は考えているのだそうです。なぜなら、つい信じてしまいそうになるものだから。しかしいったん信じてしまうと、恐怖で身動きがとれなくなってしまいがちです。そして気がつけば、「どれだけ徹夜しても、まったく仕事が終わらない」というような状態に追い込まれることになり、最悪の場合は体を壊してしまうということも。しかし著者は、仕事を完璧に仕上げるというのは、不可能なことだといい切っています。仕事を完璧に仕上げるためには、無限の時間が必要だから。人が仕事を仕上げるときは、その人がどんなに完璧主義者のつもりであったとしても、どこかで妥協をしているもの。だからこそ、仕事が仕上がるというわけです。いわれてみれば当然の話で、やるべき仕事に時間を無制限にかけられる人など、現実的にはほとんど存在しないでしょう。だから仕事に完璧を期すことによって、むしろ痛いしっぺ返しを食らうことになるという考え方です。■締め切りギリギリに取り組もうこだわりが強い人は、仕事に取り掛かるのが早すぎる傾向があると著者はいいます。一般的な考えの下では、「仕事は早め早めに取り掛かりなさい」といわれるもの。そこで多くの人が、それでいいと思い込んでいるというのです。しかし、こだわりが強い人は、こだわりが強すぎて、締め切りに間に合わなくなることもしばしば。その結果、「3ヶ月前から取り組んでも間に合わなかった!今度は4ヶ月前から取り組まないと!」というような思考に陥るというのです。しかし、そのようなやり方では、いくら早めに取り組んだとしても同じこと。理由は明白で、締め切りまでの日数があればあるほど、たくさん仕事をしてしまうだけだから。そんな時間の使い方をするくらいなら、むしろ、「締め切りギリギリになってから取り組むようにしましょう」と著者は提案しています。時間に余裕をなくしてみるということです。大胆な考え方のようにも思えますが、時間に余裕をなくしてみれば、「ギリギリのなかで、できることだけをやりきろう」と頭が働くからだという発想。■ギリギリだと無駄なことをしないそもそも余裕は、多くあればあるほどいいというものではないといいます。誰でも、締め切りまで多くの日にちがあると思えば、なるべく時間をかけ、できるだけたくさんのことをしようと思うもの。しかし先にも触れたように、仕事を完璧に仕上げるというのは不可能なこと。それをやろうと思えば、時間は無制限に必要になってしまうわけです。そして、おそらく完璧に仕上がることもないはず。逆説的ですが、早い段階から取り掛かるほど、たくさんの時間を使ってしまうということです。より多くのことをしようとするのは、求められていないムダなことをしているという意味でもあると著者はいいます。つまり、早め早めに取り組むということは、多め多めにムダをしかねないということだというのです。一般的に、締め切りギリギリになってから仕事に取り組むのは良くないこととされています。たしかにギリギリの段階で仕事をすれば、仕事が雑になったり、大事なことをやり忘れたりするなど問題はあるもの。当然、ストレスもたまるでしょう。しかしそれでも、メリットはあるのだと著者は主張します。特に重要なのは、無駄なことをしなくなること。時間がないことがはっきりしていれば、ムダなことをしている場合ではなくなるわけです。そして、ギリギリになってから仕事に取り組んだ方が、判断力が研ぎ澄まされるということ。■仕事の見積もりも小さくできるまた、ギリギリになってから仕事に取り組み、ギリギリでなんとか終わらせることができたと考えると、もうひとつ大きなメリットが生じるといいます。仕事を終わらせるのに必要な時間、すなわち「仕事の見積もり」を小さくできるというのです。こだわりが強い人は、仕事の見積もりを大きくしてしまいがち。でも、多少は妥協したとしても必要最低限のことを時間内にやり遂げることができれば、違う見方もできるようになるということ。これは、早めに仕事に取り組んでばかりいては、まず得られない見通しだといいます。*「仕事によってはギリギリになってから取り組みましょう」という著者の考え方は、たしかに大胆。そうはいかない仕事も現実にはあるでしょうが、こうした尺度を持っておくことも、たしかに必要ではあるかもしれません。(文/書評家・印南敦史)【参考】※佐々木正悟(2015)『すごい手抜き – 今よりゆるくはたらいて、今より評価される30の仕事術』ワニブックス
2016年01月09日『99%の社長が知らない銀行とお金の話』(小山昇著、あさ出版)は、地域密着事業、ITソリューションなどの広域事業、そして経営支援事業を行う株式会社武蔵野代表取締役社長。2001年から同社の経営のしくみを紹介する「経営サポート事業」を展開しており、これまでに550社以上の会員企業を指導している人物でもあります。つまり、そのような実績に基づき、本書では「会社のお金の増やし方」を明かしているわけです。■無借金経営より「借金経営」がいいところで一般的に、会社は「借金はしないほうがいい」「無借金経営をしている社長は優秀だ」と考えられています。普通に考えれば、それは当然のことではないでしょうか?しかし著者は、それは間違いだとはっきり断言しています。それどころか、会社を潰さないため積極的に借金をして、「無借金にならない」ように心がけている社長こそ優秀だというのです。そもそも日本の税法上、銀行からお金を借りない限り、会社を大きくすることはできないのだそうです。たとえば、みなさんの会社が1,000万円の経常利益を出していたとします。しかし、そのうちの500万円は税金、250万円は予定納税となります。残りは250万円ですが、その大半が在庫や売掛金に化けてしまい、そればかりか借入金の返済も回ってきます。つまり増収増益になったとしても、資金繰りは大変。だから銀行からお金を借りなければ、会社を成長させることはできないということです。■無借金経営の会社ほど倒産しやすい「無借金経営の方が財務体質はいいのだから、いざというときにお金を借りやすい」そのような考え方は的外れで、無借金経営の会社ほど、お金を借りることはできないのだと著者はいいます。もちろん、借金をしない会社の方が財務体質はいいということにはなるでしょう。ところが財務体質がいいからといって、すぐにお金を借りられるわけではないというのです。なぜなら銀行は保守的であるため、過去の鳥時期実績に対してお金を貸すものだから。いわば「継続性」が原則であり、新規取引には必要以上に慎重になるものだということです。これは想像してみれば、すぐに理解できることです。もし、一度も借り入れのない会社が急に融資を申し込んできたとしたら、銀行はどう思うでしょうか?「よほど追い込まれているんだろう」「回収に不安があるかもしれないから、新規の融資は見合わせよう」と警戒するのは、十分に考えられることです。しかし、融資・返済の実績がある会社だとしたら話は逆です。金融機関にも融資の枠があるので、融資・返済の実績がある会社か、実績のない会社、どちらかにしか貸すことはできないとしたら、実績のある会社を選ぶわけです。著者の会社は必要のない借金までしているといいますが、つまりそれは、いざというときの備え。「借金ができる『信用』そのものが財産」と考えているからなのだそうです。銀行から融資を受け、きちんと返済して実績をつくる。それこそが、いざというときに困らず、倒産もしない仕組みのひとつだということ。「これだけお返ししました。だから、これだけ貸してください」と、借り入れと返済を繰り返していくことが実績につながるわけです。■銀行に借金しても現金が必要な理由現金は、会社の明るさの象徴だと著者はいいます。現金のない社長は、資金繰りに奔走し、事業に専念できなくなるもの。だから暗い雰囲気になってしまうというのです。しかし、どんなに赤字だったとしても銀行からお金を借りることができれば、おのずと前向きになり、事業にも専念できるようになる。だからこそ、明るくて強い会社をつくりたいのなら、現金を持つことが大切だというのです。では、どうやって現金を増やしたらいいのかといえば、銀行から借りる以外にないということ。現金は、会社の血液。だとすれば、止まったら倒産してしまうということになるはずです。どんなに儲かっていようとも、現金がなければ賞与も給料も支払いも不可能になってしまうのです。この考え方を立証するために、著者はここで注目すべき事実に焦点を当てています。それは、リーマンショックのあと、多くの老舗が黒字倒産しているということ。なぜだかおわかりでしょうか?それは、無借金経営をしていたから。売掛金の増加や大量の棚卸資産によって資金繰りが悪化し、現金がなくなり、その結果として倒産してしまったということ。いまの時代は変化が早く、お客様のニーズも、ライバル会社の動きも、刻一刻と変化し続けているものです。そんななか、「利益が出てから設備投資をすればいい」と悠長に構えていたのでは、すぐに取り残されてしまって当然。だからこそ、設備投資やお客様を増やすための借金は、未来への投資だと著者はいうのです。*自らの実績基づいているだけに、著者の考え方にはとても説得力があります。また、いまはまだ会社経営者でない人にとっても、お金に対する考え方を固めるうえで本書は役に立つでしょう。ぜひ、手にとってみてください。(文/書評家・印南敦史)【参考】※小山昇(2015)『99%の社長が知らない銀行とお金の話』あさ出版
2016年01月08日ご存知のとおり、『心を動かす交渉上手の思考法裁判官の仕事術にみた人を納得させて動かす技術』(八代英輝著、詩想社)の著者は弁護士。テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活躍されているので、名前を見ただけでピンとくる方も多いのではないでしょうか?そんな著者は本書の冒頭で、よくある「交渉術」「対人術」などの有効性に疑問を呈しています。理由は明白で、相手を煙に巻いたり、だましたりするような小手先のテクニック、姑息な詭弁によって相手を心から納得させることは不可能だから。それでは「いいくるめる」だけなので、その場をしのぐことだけで終わってしまうという考え方には強い説得力があります。では、人を本当に納得させ、動かしていくためにはなにが必要かといえば、それは「論理力」。なぜなら人は、客観的な材料と、それを積み上げていく論理の力によって心から納得し、自ら進んで行動を起こすものだから。それは裁判官時代に培った考え方だといいますが、つまり本書ではそんな「裁判官式思考法」に基づいて、さまざまな交渉のノウハウを明らかにしているのです。きょうはそのなかから、「交渉」と「時間」にまつわる考え方を抜き出してみたいと思います。■交渉では必ず15分前に現地へ交渉においては、たとえ些細なことであったとしても、自分が不利になるような状態は避けるように気をつける必要があります。そして著者によれば、それは交渉のスタートラインから肝に銘じておくべきこと。たとえば待ち合わせ時刻に遅れるとしたら、それがたった1分の遅刻であったとしても、もし相手がすでに待ち合わせ場所に来ていた場合には、開口一番、遅刻したことを謝らなければならなくなります。つまり、それだけで相手に借りをつくることになるわけなので、交渉を進めるにあたっては精神的に不利な状態になることに。一段低い位置からのスタートを余儀なくされることになるわけです。特に打ち合わせ場所が初めて足を運ぶところであるなら、時間を十分にとり、あらかじめ場所を確認したうえで、近くの喫茶店にでも入って約束の時間が来るのを待つべき。そのくらい、余裕を持っておく必要があるので、コーヒーでも飲みながら気持ちをリラックスさせておくことがポイント。■事前の準備が交渉を成功させるそしてリラックスできたところで、どういう組み立ててで自分の論を進めるかということを、もう一度頭のなかでシミュレーションしてみる。もちろん資料にも目を通し、不備がないか確認することも大切。そうやって事前にチェックをするだけでも、心のゆとりが変わってくるものだといいます。精神的な側面が交渉に影響を与えることは少なからずあるので、相手と向き合う前に心の準備ができる時間を持つことは大切。小さなことであっても万全を期し、落ち着いた状態で交渉に臨むようにすることが、交渉のうまい人のやり方なのだと著者はいいます。■終了時刻は事前に設定しておく時間を有効に使うため、打ち合わせの時間は「何時から」だけではなく、「何時まで」という終わりの時刻もあらかじめ決めておいたほうがいいのだとか。終わりの時刻を決めておかないと、その後の予定を立てられないということがまずひとつ。また時間意識を持ち合わせていない相手の場合、世間話だけで大幅に時間を浪費してしまう可能性もあるからです。しかし終了時間を決めておけば、相手も計画的に話してくれる確率が高くなるもの。だからこそ、必ず「何時まで」と決めておいたほうがいいというのです。■打ち合わせを切り上げたいときでは、そろそろ切り上げたいというときには、どういういい方をすれば、相手の気分を害することなく次に繋げられるのでしょうか?この点について著者は、ポジティブな表現をすれば問題はないとしています。「きょうはとてもいい打ち合わせができました」「次回改めてご提案いたします」など前向きな姿勢を見せれば、相手も悪い気はしないということ。ただし、その日の交渉が明らかに不毛なものだった場合、「とてもいい打ち合わせができました」だと嫌味にしかならないので注意が必要。そういうときには、「今回は共通の認識に立てない点も多かったのですが、次回に向けてそういう点は徐々に解決していければと思っております」というように、次回への期待を込めた挨拶をするのがいいそうです。状況をつかんで臨機応変にいい換えることが重要なので、そういう技を身につけておくことが大切だということです。*ビジネスの現場においては、さまざまな交渉の必要性が生じることになります。つまり好むと好まざるとにかかわらず、それはビジネスパーソンには避けて通れないハードル。だからこそ本書を通じ、交渉に関する的確なスキルを身につけておきたいところです。(文/書評家・印南敦史)【参考】※八代英輝(2015)『心を動かす交渉上手の思考法裁判官の仕事術にみた人を納得させて動かす技術』詩想社
2016年01月07日「ソロ男」とは、想像できるとおり未婚男性のこと。『結婚しない男たち 増え続ける未婚男性「ソロ男」のリアル』(荒川和久著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)によれば、その数は増加の一途をたどっているのだそうです。昔と違い、「夫婦と子からなる標準世帯」よりも単身世帯が上回っているのが現代。家族生活者よりもソロ生活者の方が多いわけで、ソロ男こと独身男性も、もはや少数派として片づけられないボリュームにまで成長しているというのです。だとすれば、そこには「消費」のポテンシャルも生まれてくるはず。そこで本書では、2014年に立ち上がった「博報堂ソロ男プロジェクト」を通じて得た調査結果を軸として、マーケティングの視点から状況を分析しているというわけです。■自分に対してお金を使いたい人たちソロ男の消費行動を探るにあたって注目すべきは、彼らが「自分に対してお金を使いたい」人たちであるという事実。たとえばこだわりの強い趣味にお金をかけ、普段の食事を筆頭とする飲食にもお金をかけ、ひとりで旅行に出かけたりもするということ。一方、お金をかける場面と、節約する場面とを使い分けるメリハリがあるのも特徴のひとつ。主婦のように厳しく商品を選択する眼を持ち合わせていながら、一度気に入った商品は一途に指示する傾向が強いというのです。つまり企業にとっては、息の長い優良顧客となりうる可能性があるということ。ではそんななか、ソロ男は今後、モノとは別にどのようなサービスを利用したいと考えているのでしょうか?■ソロ男が利用したいと考えるサービス(1)金融系サービスソロ男は、生命保険や医療保険についてまったく興味を示していないのだといいます。たしかに生命保険に入ったところで、残す相手がいないのだから当然かもしれません。だから唯一、自分で受け取れる個人年金には多少興味を持っているのだとか。しかし、だからといってソロ男が生命保険会社のターゲットにはなり得ないかといえば、そうともいえないと著者。つまり家族がいる前提で考えられている現状の生命保険とは違う、生涯独身であるソロ男向けメリットが提供できれば、彼らを振り向かせることは可能だという考え方です。(2)銀行系サービス利息がほとんどつかない定期預金に、ソロ男が関心を示すはずもありません。しかし投資信託、外貨預金、NISAなどについては、ソロ男の方が現在でも利用しており、今後の利用意向も高くなっているそうです。そもそもソロ男は2割以上が、1,500万円以上の貯蓄額を持っているのだそうです。だとすればなおさら、金融業界も彼らに対するサービスを検討すべきだということ。(3)消費行動系のサービスソロ男はもともとネットとの親和性が高いので、「宅配レンタル」「ネット通販」「ネットオークション」の利用率は高め。加えて「電子マネー・プリペイドカード」の利用率も利用意向も高く、「マイレージ」や「ポイントカード」などへの関心も強いそうです。またリアルな来店行動も多く、独身女性よりも、お店に入って消費しているのだといいます。だからこそ、ネットとリアルの買いものをシームレスにつなげる「オムニチャネル」時代の強力なターゲットとして、ソロ男に注目すべきだということです。(4)レジャー系サービス旅行でもパックツアーに関しては、ソロ男は既婚男性とくらべて利用度も利用意向もかなり低い結果となったそうです。これはソロ男が今後旅行しないということではなく、いままでのパックツアーが、基本的には「複数申し込み」だったため利用されなかったということ。最近では旅行会社各社から「ひとり旅のパックツアー」が販売されているので、今後その認知度が上がっていけば、ソロ男の利用動向も上がってくるかもしれないと著者は予想しています。(5)学び系サービスソロ男は、「英会話教室」「ビジネスセミナー」など、自己啓発型のサービスを積極的に利用し、利用意向も高いのが特徴。仕事しながら平日の夜間や土日に大学院に通ったり、大学の公開講座に積極的に参加したりする人も増えているそうです。なお、ソロ男ながらも「結婚情報サービス」に対する利用意向もわずか6%ながらあるのだといいます。彼らが本気で結婚しようとしているのかは疑問であるものの、40代をすぎて結婚を意識するソロ男が多いのは事実。そこで婚活サービスも、いままでのように20~30代中心ではなく、40~50代のソロ男にターゲットを広げていくのも一考だと著者は主張しています。*たしかに周囲を見回してみれば、ソロ男は決して少なくないはず。重要な消費者として可能性を持つ彼らのことを、本書を通じて知っておくのもいいのではないでしょうか?(文/書評家・印南敦史)【参考】※荒川和久(2015)『結婚しない男たち 増え続ける未婚男性「ソロ男」のリアル』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年01月06日