『あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』(野口真人著、ダイヤモンド社)で著者が訴えているのは、「ファイナンス理論」の有効性。それは本当の価値を見抜き、正しい選択をするために人類が産み出した究極の実学なのだといいます。著者の言葉を借りるなら、ファイナンスとはすべての価値をお金に置き換える“現金な”学問。その証拠に、ほとんどの金融商品・ギャンブル、あるいは詐欺までもが、「現金(キャッシュ)が持つ魔力」をうまく利用することによって成り立っているのだそうです。つまりファイナンス理論は、それらのまやかしを見破り、“本当の価値”を見極めるためのシステム。そして驚くべきは、ファイナンスの価値体系において、現金は「もっとも価値の低い資産のひとつに位置づけられているということ。■お得なビールはどっち?ところで著者は、読者に対してある質問を投げかけています。「同じ銘柄のビールがコンビニAでは400円、隣のコンビニBでは350円で売られていたとしたら、この場合、お得な買いものは?」というもの。当然のことながら、お酒好きの方は「コンビニBに決まっている!」と思うことでしょう。しかし、ビールを飲まない人にとっては、「どちらも買わない」が正解であるはず。どうせ飲まないビールなら、買わないほうがマシだからです。また、このビールが普段から300円で売られている商品だとすれば、どちらのコンビニで買っても損することになります。この例からもわかるとおり、私たちは買いものや取引をする際、価格を見比べて損得を判断しようとするものです。「こちらのほうが価格が安いからお得だ」「あっちのほうが価格が高いから、価値も高いに違いない」というように、価格同士の比較が価値判断の基準になっているということ。しかし、価格だけを見くらべても、正しい判断はできないと著者はいいます。これは、ビールを株式に置き換えて考えてみると分かりやすいのだとか。■株の「買い時」はいつ?Q:昨日1,000円で取引されていたC社の株式が、きょうは700円で取引されている。きょう、この株は買うべきか?株価だけを見れば、1,000円だったものが700円で買えるのですから、C社の株は「まさに買い時」ということになるでしょう。とはいえ株式投資の経験がない人でも、ここで「買い」の判断をすることはないはず。なぜならC社の株は、700円よりももっと下がる可能性があるから。では、どうすればいいのでしょうか?この問いに対して著者がいいたいのは、「価格と価格を見くらべている限り、まっとうな意思決定はできない」ということだそうです。700円、500円、100円のどの時点で買うにせよ、あるいは買わないにせよ、目に見えている株価だけを根拠にして判断する人は、単なるヤマ勘を頼りにしている点においては「同じ穴の狢(ムジナ)」だということ。■「価格と価値」を分けるだとすれば気になるのは、「正しく意思決定をするためにはどんな情報が必要なのか」ですが、いうまでもなく、C社株の本当の価値がわかればいいのです。たとえば、「この株には本当は150円の価値しかない」とわかっていれば、1,000円から700円に下落した時点でも手を出そうとは思わないはず。逆に100円にまで下落したなら、迷わず購入を決めるはずだということです。私たちはどうしても、価格という“目に見えるもの”に惑わされてしまいがちです。しかし本当の意思決定は、「価格と価格」を比較する世界から抜け出したところ、すなわち「価格と価値」の両方を見渡す視点からしか生まれないのだと著者は主張しています。だからこそ、ファイナンス的な思考の第一歩は、価格と価値を分けて考え、価値の見極め(価値評価)に軸足を移すことなのだといいます。原価や市場価格に注目する従来の考え方は、あくまでも「目に見えるもの」、端的にいえば価格に注目していることになります。「価格が価値を決める」という発想であり、いいかえれば価格中心の世界観。対して、ブランドのような「目に見えないもの」を価値の源泉だと考えるのがファイナンス。「価値が価格を決める」という、“価値中心”の世界観でとらえようとするわけです。お金が単なる尺度であり、それ自体が価値を決めるものではないのだとすれば、ファイナンスのほうが現実に即していると著者はいいます。*「数字は苦手」だという方も、抵抗を感じることなくすんなりと読める内容。未来に向けて新たな価値観を身につけておくためにも、必読の書といえそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※野口真人(2016)『あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』ダイヤモンド社
2016年05月31日ジョディ・フォスター監督のもと、ジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツという2大スターがそろった『マネーモンスター』。このほど、第69回カンヌ国際映画祭での正式上映のため、“全員アカデミー賞受賞者”のこの3人がカンヌ入りし、レッドカーペットほか公式イベントに参加。ジュリアにとっては、今回が初めてのカンヌ体験となった。現地時間5月12日(木)に同映画祭のメイン劇場である、2,300席もの規模を誇るリュミエール大劇場にて盛大にガラ上映が実施された本作。実はジュリアの主演作品がカンヌ映画祭で上映されるのは、長年のキャリアで今回が初めて。この夜は、ジュリアにとってカンヌ・レッドカーペット初体験となった。一方、ジョディのカンヌ初体験は、1976年パルム・ドールを受賞した『タクシードライバー』で、自身の監督作がカンヌで上映されるのは2011年のメル・ギブソン主演『それでも、愛してる』以来、5年ぶり2回目となった。初カンヌのジュリアは、レッドカーペットに「Giorgio Armani Prive」のブラックのオフショルダー・ドレスに「Chopard」のエメラルドとダイヤのネックレスに身を包み、颯爽と登場!しかも、そのジュリアのドレスは、『プリティ・ウーマン』のオペラ観劇のシーンで彼女が着ていた有名な赤いドレスを彷彿とさせると話題に。ベストフレンドにして、劇中でも息の合ったところを見せたジョージらとレッドカーペットで喜びのビッグスマイルを見せ、数多くの報道陣やファンに盛大に迎えられた。ジョージはもちろん、アマル夫人を伴って登場。途中アマル夫人とジュリアという2人の美女を“両手に花状態”でレッドカーペットを闊歩し、歓声を浴びていた。また、正式上映終了後は、約4分にわたる盛大なスタンディングオベーションを受けたという。ジョディ監督は涙をこらえた表情を見せ、ジュリアも目に涙を浮かべ“カンヌの洗礼”に感激の様子だった。さらに本プレミアには、ジェシカ・チャステインやスーザン・サランドン、ナオミ・ワッツ、ジュリアン・ムーアら、ハリウッドのスター女優たちも駆けつけており、監督・出演者らを祝福した。この正式上映に先立って行われたプレス用スクリーニングでも、1,000席の劇場が満席状態となり、立ち見が出るほどの盛況ぶり。この時点で、カンヌで「最も話題にされている」(most talked about film at Cannes)映画と太鼓判を押されている。<記者会見コメント>■ジョージ・クルーニー財テク番組「マネーモンスター」司会者リー・ゲイツ役ジョディは信じられないほど才能のある監督だけでなく、信じられないほど才能ある俳優でもある。だから、彼女は俳優たちとどういう風に話すかを心得ているんだ。ジョディは俳優たちが色んなことにチャレンジする安全な場所を作ることに長けているんだ。例えば、すごくかっこ悪いダンスシーンとか(劇中、ジョージはダンスを披露!)。ジョディの仕事の仕方は考えられ得る、最もプロフェッショナルなやり方だ。俳優でもあり監督でもある人との仕事は、素晴らしい経験だった。■ジュリア・ロバーツ「マネーモンスター」ディレクター パティ・フェン役カンヌに来るのはこれが初めてよ。本当にここはクレイジーね。そして素晴らしいわ。映画の祝典ですもの。すぐ隣には親愛なる友人ジョージがいて、私がどこにでもついて回りたくなるようなジョディがいて。夢が叶ったわ!素晴らしい以外の何ものでもないわ。ジョージが脚本を送ってくれて、すごく気に入ったの。そしたら、ジョージが「OK、だったらジョディと話してくれ!」って。ジョディと私は電話で話して、2人ともとても興奮したわ。それから実際に、TV局のスタジオやコントロールルームで素晴らしい仕事をすることになったの。すごくハードワークだった。それが映画の中に現れているかわからないけど(笑)でも私の心の中にはそう刻まれているわ。しかもジョディはそれを知っててくれている。私はただ、いつもジョディにいいところを見せたくて頑張っていたようなものね(笑)■ジョディ・フォスター監督カンヌにいるのは特別な時間だわ。初めてここに来たときはまだ12歳(『タクシードライバー』にて)だった。あのころはもっとカオスだったわ。フォトグラファーがあちこちにいて。長いこと俳優をやってきて、たくさんの映画を作ってきたけれども、俳優としての人生のまさにスタートだった。パルム・ドールも受賞したの。あれから40年たって、監督としてここカンヌに戻って来られたことは素晴らしく名誉なことだわ。ここは作家主義の映画監督の場所だから。自分が尊敬する素晴らしい映画監督たちとこの場に立てて、ファンタスティックだわ!この映画を好きなところは、山ほどあるわ。最も好きなのは、キャラクター同士の関係性よ。パティ(TV ディレクター)とリー(司会者)、そしてカイルというジャック犯(ジャック・オコンネル)の3人の人生が交錯し、ある午後に人生が一変してしまうような奇妙な関係性よ。監督をしたことのある俳優(ジョージ・クルーニー)と仕事をすることほどラッキーなことはないわ。『マネーモンスター』は6月10日(金)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2016年05月13日『カール教授のビジネス集中講義 金融・ファイナンス』(平野敦士カール著、朝日新聞出版)の著者は、実務家、経営コンサルタント、著者、大学教授とさまざまな経験を経てきた人物。本書は、「経営戦略」「ビジネスモデル」「マーケティング」に続くシリーズ第4弾で、「金融・ファイナンス」をテーマに設定しています。と聞くだけで、「難しそう」という印象を持たれる方も少なくないはず。しかし著者は、そうではないと強調しています。そればかりか、金融やファイナンスは、企業人としても個人としても、これからの時代にもっとも学ぶべき学問だと断言しているのです。なぜなら、ファイナンスを学ぶことによって、お金を増やし、減らさないようにするための知恵が身につくから。金融初心者でも理解できるようなアプローチが貫かれた本書から、最近の気になる話題である「マイナス金利」に焦点を当ててみたいと思います。■金利は「お金のレンタル料」のこと去る2016年2月、日本でも史上初となる「マイナス金利」が開始されました。そこでまずは、金利についての基本を知っておきたいところです。著者の表現を借りるなら、金利とは、お金を貸し借りした際に発生する「レンタル料」のことなのだとか。金利の利率は、ローンの種類によっても異なってきますし、同じローンでも「変動金利型」の場合には、借りる時期によって変動するのだそうです。なぜ利率が異なるのかといえば、ひとつは、需要と供給の関係。お金を借りる人が多い場合、金利を高くしたとしても借りる人がいるからこそ、金利は上がります。しかし借りたい人が少なかったとすると、金利は下がることになるわけです。■なぜ消費者金融は金利が高いのか?また、貸し手が元手をどのように調達したのかによっても、事情は変わってくるのだそうです。たとえば銀行は、多くの人から集めた預金を原資にしてお金を貸しています。ところがノンバンク(銀行のようにお金を預かることはできないものの、企業や個人への融資を手がける金融会社)やその代表的存在である消費者金融は、銀行からお金を借りて、いってみれば「また貸し」をしている立場。それで、貸し出す際の金利も、銀行より高くなるわけです。最終的に、世の中のさまざまな金利を決めるのは、民間の銀行同士がお金を貸し借りし合う短期金融市場のコールレート、つまり「政策金利」となります。いうまでもなく、金利は経済を大きく左右する要素です。金利が高いとお金を借りる人が減るため、企業の設備投資、あるいは個人の住宅購入などが減り、経済が冷え込むわけです。しかし金利が低すぎたとすると、貸し手にメリットはありません。また、借り手が増えて経済が活性化するかというと、必ずしもそうでもありません。■マイナス金利だと現金保有が合理的さて、ここでマイナス金利について。マイナス金利政策は、ヨーロッパ中央銀行(ECB)が2014年に実施したもの。通常であれば民間銀行が中央銀行にお金を預ければ利息が得られるわけですが、マイナス金利の場合は、お金を預けた民間銀行側が逆にお金を徴収されることになります。預金すると損をするので、銀行は余ったお金を企業や個人への貸し出しに回すものだと期待されていました。事実、一部の国では銀行の貸し出しが増加しましたが、効果は限定的だといいます。マイナス金利だと、銀行に預金をするよりも、現金を保有するほうが合理的になります。とはいえ大量の現金の保有は危険であり、保管場所やセキュリティ、保険が必要になるはず。■マイナス金利によって個人はお得?では日本はどうかといえば、日銀の金融緩和も株や不動産が値上がりしただけ。つまり効果は上がっていないのです。それどころか、借金をしたほうが得をするという、常識では考えられない自体を引き起こしているのだとか。そんななか、日本の金融機関は政府の意向とは逆に、中小企業などリスクのある企業への融資に対して厳しくなると著者は読んでいます。一方、マイナス金利によって個人は、住宅ローンを借りると国からの補助もあり、むしろ得をしてしまうという逆転現象も。しかし金利は安くても、価格そのものが上昇してしまっている可能性が高いので注意が必要。今後は「いかに資産を増やすか」よりも、「いかに資産を守るか」という視点が重要になってくるといいます。*他にも多くの人が知りたかったであろう問題をわかりやすく解説しているため、とても役に立つ内容。金融やファイナンスの基礎を固めたいという方には最適です。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※平野敦士カール(2016)『カール教授のビジネス集中講義 金融・ファイナンス』朝日新聞出版
2016年05月05日学生時代にスクールカーストに悩まされた人は少なくないでしょう。実際、約半数の人がスクールカーストを感じていたことを、以前「20代の半数以上が感じていた“スクールカースト”の悲惨な実態」でご紹介しました。でも、学校を卒業すればカースト社会から逃れられると思いきや、そういうわけではないようです。社会人になってから身を投じることになるのが「社会人カースト」。株式会社オウチーノが行った調査によると、実に80%の人が社会に出てからカーストを感じているようです。スクールカーストよりもはるかに多くの人が、社会人カーストを意識しているんですね。では、社会人カーストはどのようにして生まれ、どのように階層が決まってしまうのでしょうか?■「自由」が生んだカースト社会戦後の社会はそれまでと違い、自分で働き方を決めることができる自由な時代です。平成に入ってからは、正社員以外にもフリーランスや契約社員として働く人が増え、より一層自由度が増したといえるでしょう。しかし、自由な社会に競争はつきものです。誰もが望んだ形で働けるわけではなく、なかにはやりたくない仕事や不安定な形で働く人も少なくありません。なんでも選べる自由は「この選択でよかったのか?」という迷いを、競争は「蹴落とされるかもしれない」という不安をそれぞれ生みます。こうした悩みが自分と誰かをくらべる原因であり、社会人カースト誕生の根幹にあるものではないでしょうか?スクールカーストの根底にも「誰かと一緒でなければ安心できない」という不安がありました。大人になっても、不安や悩みを解消するため他人と自分をくらべてしまう人が多いのかもしれません。さらに、昨今の不況がそのような傾向に拍車をかけているのでしょう。では、カーストを決定するものはなんなのでしょうか?スクールカーストは外見やコミュニケーション能力で階層が決まっていましたが、社会人カーストでは異なる基準が存在するようです。■お金と安定でカーストが決まる冒頭で触れた株式会社オウチーノの調査で「自分はどの層にいると思いますか?」と質問したところ、「最上層」と回答した人が12.8%、「上層」が 13.4%、「中層」が 32.1%、「下層」が 14.8%、「最下層」 が 7.0%、「『社会人カースト』はないと思う」が 19.9%という結果が出ました。それぞれ理由を聞いたところ、すべての階層で「給与」という声がもっとも多かったそうです。具体的に、上層と答えた人は出世の早さや高収入を、下層の人は収入が安いことや昇給しないことをそれぞれ理由に挙げたようです。下層の人からは、不安定な生活に対する不安の声も聞かれました。また、中層の人からは「平均的な生活を送っているから」という声が最も多く聞かれたとのことです。社会人カーストは「お金」と「安定」というステータスで決まるようです。他にも役職や肩書、会社名、仕事ができるかどうか等も階層を決める要因になっています。上層部に位置する人は人よりも豊かな生活を送ることができ、他人に会社名や肩書をいえば「すごい!」と思われます。一方で下層と答えた人はそんな上層の人と自分をくらべてしまい、コンプレックスを感じてしまうのでしょう。社内でも同期との昇進のスピードの違いや、成果の大小などを比較してしまうことがあるのではないでしょうか?社内・社外問わず、ついつい自分と他人のステータス比べてしまうことが社会人カーストの原因だとういうこと。しかし、ひとつ疑問が残ります。社会人カーストは働いてお金を稼いでいる人の間だけに存在するのでしょうか?■社会人カーストは主婦にもある社会人カーストは働きに出ていない主婦などのなかにも存在するようです。ドラマなどでよく見る光景が現実にも起こっているんですね。カーストを決めるのは夫の収入や子供の成績、どんな場所に住んでいるかまでも格づけに使われるそうです。家族のステータスが自分のステータスになるという、不思議な世界です。下位層の人に対してイジメを行うなど、深刻なトラブルに発展することもあるようです。主婦の方にも不安や悩みがあるのは当然ですが、それを自分と他の人とくらべることで解消しようとするのは働きに出ている人と同じであるようです。*自分と他人のステータスを見くらべて一喜一憂することに意味はありません。にもかかわらず、「他人より優位に立ちたい」という気持ちに負けてしまった結果、自分の周囲で社会人カーストが生まれているのかもしれません。調査で「社会人カーストはない」と回答した人はその理由として、「人それぞれだから」「自分なりの生き方を知ったから」 「相手に干渉しないから」などを挙げていました。自分の人生は自分だけのもの、誰かとくらべる必要はありません。ステータスに縛られることなく「自分らしい生き方」を見つけることが、無益な社会人カーストを抜け出す術ではないでしょうか。(文/堀江くらは) 【参考】※「スクールカースト・社会人カースト」実態調査-株式会社オウチーノ
2016年04月30日退職金は、会社が知らないところで準備しているもの。それはきわめて一般的な解釈だと思いますが、『誰でもできる 確定拠出年金投資術: ほったらかしで「年率10%」を目指す方法』(山崎俊輔著、ポプラ社)の著者によれば、そうともいいきれないようです。なぜなら会社員の6~7人にひとりは、自分の残高を毎日チェックできる退職金制度になっているから。その制度の名前は「確定拠出年金」で、簡単にいえば自己責任型の退職金制度。お金は会社が出すけれど、運用は自分で方法を決定するというものです。その増減が、自分の退職時の受取額に直結する仕組みだというわけです。■確定拠出年金のメリットとデメリット確定拠出年金には、多くのメリットと、少しのデメリットがあるとか。まずひとつ目のメリットは、「月々の積立額」と「いまいくら積立額があるか」を常に確認できること。ふたつ目のメリットは、会社の倒産や金融機関の破綻から、自分の老後の財産を保全する仕組みが整っていること。そしてもうひとつのメリットは、(制限はあるものの)自分の財産分については好きな運用方法を選択できること。一方、「原則60歳までもらえない」「運用の責任は自分で負う」というデメリットもあるものの、注目に値するのは間違いないようです。そんな確定拠出年金の適切な運用方法は、著者にいわせれば「ほったらかす」こと。とはいえ、ただ定期預金に預けてほったらかしておくのでは、当然のことながら無意味。より効率的な運用を行うためには、次の手順を踏まえる必要があるそうです。1.最初に毎月の投資金額を決める2.次に投資割合を決める3.投資信託のなかからマシなものを選ぶ4.具体的な運用指図を行う5.あとはほったらかすそれだけ!それぞれの手順の詳細については以下の通り。■ほったらかし確定拠出年金5つの手順(1)最初に毎月の投資金額を決める企業型確定拠出年金の場合、会社が退職金制度の一環として定期的な積立金額を拠出するため、金額は個人で選べないのだとか。しかし、確定拠出年金に入るか入らないか選べる場合は、必ず入るべきだと著者はいいます。入らない場合、給与課ボーナスに現金化して上乗せしてもらってしまうため、退職時はゼロになるからです。個人型確定拠出年金の場合は、自分のお金から積立金を出していくため、家計に支障のない範囲で、毎月の積立額を5,000円以上1,000円単位で決めるのだそうです。(2)次に投資割合を決める確定拠出年金に投資する資金のうち、何割を投資し、何割を安全資産に置くか考えるということで、これがいちばん肝心だといいます。できれば60%以上は投資してほしいと著者は主張していますが、儲かるチャンスと値下がりする可能性のバランスを考え、自分がチャレンジできる投資割合を決めるわけです。(3)投資信託のなかからマシなものを選ぶ投資信託については、2つのポイントからフィルタリングして「ベターなもの」を選ぶべきで、このとき「ベストの選択」などと考えないことが大切。なぜならベストの選択をする努力は、労力がかかるわりに実効性が高まらないから。なおフィルタリングのポイントは、「運用方針はインデックス(パッシブ)のもののみを選ぶ」「手数料がもっとも安いものを選ぶ」の2点。(4)具体的な運用指図を行う実際の購入指示(注文)を出すということ。その後は毎月自動的に積立金が引き落とされ、注文どおりの購入が行われる仕組みなので、「ほったらかし」をしたければ注文は最初の一度ですむといいます。このとき、以下の2パターンからどちらかを選ぶといいそうです。[パターンA]:バランス型ファンドをひとつだけ選んでまとめ買い国内の株式、国内の債権、外国の株式、外国の債権の4種をブレンドして購入したことになるのがバランス型ファンド(投資信託)。ほったらかしをして分散投資をしたければ、これが基本になりますが、バランス型ファンドなら1つ買うだけで4種類の投資を組み合わせたことになるといいます(大前提は、手数料が安いこと)。[パターンB]:自分で4資産の投資信託を買う国内の株式、国内の債権、外国の株式、外国の債権の4種に投資する4本の投資信託を選び、購入の指示を出します。(5)あとはほったらかすそれだけ!ここまでの作業ができれば、「ほったらかし投資」はスタート。少なくとも1年くらいは、そのままほったらかしておいてもOKだといいます。最初のうちは株価が上がったか下がったかが気になるでしょうが、なにもせずにほったらかしておけば大丈夫。*こうした基本ルールを軸に、以後はこの方法の有効性などが詳細に明かされます。将来のためにも、目を通しておいて損はなさそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※山崎俊輔(2016)『誰でもできる 確定拠出年金投資術: ほったらかしで「年率10%」を目指す方法』ポプラ社
2016年04月25日真面目で頑張り屋の人ほど、お金が貯まらない 節約よりも確実にお金が貯まる方法 貯蓄を始める前に知っておきたい、お金の使い方の3つのタイプ 90日プログラムで貯金力を10倍アップ【準備編】 90日プログラムで貯金力を10倍アップ【実践編】 の続きです。家計再生コンサルタントの横山光昭さんは、苦しい家計を再生させていくことを得意とするファイナンシャルプランナーで、これまで約9,000人の家計を「再生」させてきた。そんな横山さんのメソッドを紹介した「年収200万円からの貯金生活宣言」も今回が最終回。これまでを振り返りながら、真の貯蓄力をつけるためのポイントを教えてもらった。■習慣化させるためにプログラムを繰り返す仮に今、90日プログラムの第1回目が終わったとしよう。もしかしたら第1回目ではたいした成果が得られなかったかもしれない。でも、それでも問題ないと安心してほしい。「貯金ができるようになる成功パターンは、90日貯金プログラムの1回目ではなく、2回目、3回目の挑戦で大きく表れ始めることが多いのです」なぜなら、お金についての知識や考え方といった基盤を、90日間だけでなくもっと時間をかけて習得させたほうが強い土台となり、本当の貯金力に繋がるからだ。■「意思が弱いからこそ」仕組みづくりが大切このプログラムだけでなく、勉強であっても筋トレでもダイエットでも、実は一番難しいのは「続けること」。続けられる人というのは、どんな人なのだろうか? 「『お金が貯められる人は、私とは違って、きっと意思が強いのだろう』と嘆く人がいますが、実はプログラムの成果をうまく得られている人は『自分の意思だけでは限界がある』ということを理解して、『意思が弱いからこそ仕組みづくりが大切だ』という自覚からスタートできる人なんです」●途中でギブアップしないための仕組みづくり例ご褒美型の人は「貯めたお金でこれを買おう」と頑張ってみる自己満足むっつり(!?)型の人は口座にお金が貯まっていくのを見て幸せを感じてみようムチ型の人は第3者に監視されることで、モチベーションを維持しよう(出典:「年収200万円からの貯金生活宣言」より抜粋)■数字で自分をコントロールする「何回も90日貯金プログラムをこなしている人は、『数字で自分を把握する』から、『数字で自分をコントロールする』に変化していきます」(横山さん)『数字で自分を把握する』と『数字で自分をコントロールする』とは、どう違うのだろう?たとえば、「今月は食費の消費ペースがより早い」という感想。これは、大ざっぱであっても数字をコントロールしていなければ、出てこない感想だ。「だから食費を節制しよう」と行動する、これが数字で自分をコントロールすることの始まりだ。「自分の消費の数字を素直に受け入れ、ストレスもなく行動に反映させられるようになれば、しめたものです」(横山さん)■お金を貯めるには気持ちが大切貯蓄プログラムの最後の到達点は、「家計簿やお金のことをあまり気にしていなくても、自然と必要なお金を捻出できるようになること」だと横山さんは言う。たとえば別に所得がぐんと高い訳でもないのに、趣味である旅行費用を自然と捻出できる人がいたとしよう。「そのような人は、バランスをとるのが上手なんです。大好きな旅行が優先順位のトップにあるので、ほかの支出を抑えることが自然にできる。自分軸がしっかり形成されていて、そこに価値観がある。だからこそ、無理なく自然にお金のコントロールをすることができるのです。この例からもわかるように、お金を貯めるには何より自分の気持ちが大切なんですよ」(横山さん)お金を貯めるためには、自分を知ることがスタートでありゴールでもある。今回の特集を通じて、横山さんにそう教えてもらったような気がした。■今回取材にご協力いただいた横山さんの著書 年収200万円からの貯金生活宣言 (横山光昭著/ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)
2016年04月19日2012年4月、衝撃的なニュースが新聞の片隅にそっと掲載されました。2011年末の段階で、住宅金融支援機構が貸し出しているローンのうち8.48%が不良債権になっているというのです。■8.48%が住宅ローンを返済できていない「住宅金融支援機構」とは、昔の住宅金融公庫のこと。いまは住宅ローンといえば、銀行で借りるのが一般的。しかしほんの20年ほど前までは、住宅金融公庫から借りることが多かったのです。事実、住宅を建てる人の大半がここからお金を借りていました。そんな、多くの人々が住宅ローンを借りていた旧住宅金融公庫の8.48%が、不良債権になっているのだとすれば、とんでもないことです。不良債権と聞いても、遠い世界のことのように思えるかもしれません。しかし簡単にいえば、住宅ローンを3ヶ月以上返済できていない人が8.48%もいるということ。しかも、この中身を読み込むとさらに恐ろしいことがわかります。平成16年以前にお金を借りた人だけを見ていくと、返済できていない人の割合は10%を超えているのです。住宅関係の衝撃でいえば、衝撃の事実をもうひとつ。これは、2010年8月の朝日新聞の記事です。「ローン破綻増加、競売6万戸~甘い審査が落とし穴~住宅ローンを返せなくなり、家を手放す人が急増している。不動産競売流通協会の全国調査によると、銀行などが強制的に売るために裁判所の競売にかけられた一戸建て住宅とマンションは、2009年度には08年度の1.3倍の約6万戸に達した。一方、09年度に新築された住宅は約80万戸。新たにマイホームの夢をかなえた人がいる陰で、多くの“住宅ローン破綻(はたん)”が起きている。(2010年8月14日、朝日新聞)」しかし、この記事にも正確ではない部分があります。それは、「新築された住宅は約80万戸」という箇所。たしかに2009年度の住宅着工件数は、約80万戸でした。でもこの数字には、アパート用や貸家用に建てられた家の数も入っています。純粋に「マイホーム」として建築された数は、60万戸程度なのです。■住宅ローン返済できない人が10年で5倍につまり、どういうことか?毎年約60万戸の家が建てられているその陰で、毎年「6万戸の家」、つまり6万家族が家を手放さなくてはいけないということ。これが現実なのです。もちろん、裁判所に差し押さえになった原因のすべてが住宅ローンだったとはいい切れません。しかし、差し押さえになる以上、なんらかの「借金」を返済することができなくなったことは間違いありません。住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)の資料から見ても、「住宅ローンを借りた人の10人に1人は住宅ローンを返していけない」。決してオーバーな話ではないのです。そんな実感はないかもしれませんが、先ほどの住宅支援機構(旧住宅金融公庫)の話でいえば、この10年で約5倍になっているのです。これは、2008年に起こったリーマンショックの影響が色濃く反映されているから。現在はこの時より状況は改善していますが、それでもマイナス金利の影響を受けた低金利の結果、身の丈以上のオーバーローンを借りている人たちは多く見かけます。その人たちは、低金利が終了したときにどうなるのでしょうか?もしかしたら、2010年や2011年の比にならないローン破綻になるかもしれません。(文/ファイナンシャルプランナー・岡崎充輝)
2016年04月18日真面目で頑張り屋の人ほど、お金が貯まらない 節約よりも確実にお金が貯まる方法 貯蓄を始める前に知っておきたい、お金の使い方の3つのタイプ 90日プログラムで貯金力を10倍アップ【準備編】 の続きです。「強い貯蓄力をつけるには、まず『実行』です」と言うのは、家計再生コンサルタントの横山光昭さん。苦しい家計を再生させていくことを得意とするファイナンシャルプランナーで、これまで約9,000人の家計を「再生」させてきた。そんな横山さんに、いよいよ貯金力を10倍アップする90日プログラムの内容を教えてもらおう。■プログラム実行中にする7つのこと気持ちと道具の準備が整ったら、いよいよプログラムのスタートだ。90日間でやるのは、次の7つの項目。●プログラム実行中にする7つのこと本を読む家計簿をつける 新しいモノサシ で使い道を把握する夢のノートに3行日記をつけるクレジットカードは使わないキャッシングがあれば、それを洗い出す自分との小さな約束をする(出典:「年収200万円からの貯金生活宣言」より抜粋)今回の記事では、上記の7つの中から、代表的なもの3つについて、横山さんに説明してもらおう。 ■家計簿をつける「家計簿の目的は、自分のお金の全体像とその流れを把握することです。すべてきっちり管理し、不明なお金を出さないようにするためではないのですよ(横山さん)」始めた月は、「家計簿=お金のメモ」程度にとらえるだけでOK。自分がイメージしていた数字と現実の数字との差に、愕然とすることがあるかもしれない。でも、その思いをベースに新しい目標を立てればいいだけの話だ。つまり、家計簿をつけるということは現実を知ること。「これくらいだろうか」とか「きっとできるだろう」といった精神論から脱却することで、これまでいかに希望的観測でお金を使っていたかを気付くことになる。■新しいモノサシで使い道を把握する家計簿をつけられるようになったら、次は「新しいモノサシ(消費・浪費・投資)」で自分のお金の中身を計ってみよう。横山さんのおすすめは、蛍光マーカーペンを使って、色分けをすること。モノサシを色分けしておくと、パッと見て一目で分かる。「マズい! 今月は赤が多い!」などと、一瞬で判断できるのだ。「家計簿をつけるメリットは、『消費』『浪費』『投資』のバランスを、自分の目で理解することと言っても過言ではありません」(横山さん)●蛍光マーカーペンを使っての色分け消費:黄浪費:赤投資:青(出典:「年収200万円からの貯金生活宣言」より抜粋)■夢ノートに3行日記をつけるその日感じたことを思うまま、飾らずに自分の言葉で書く、いわゆる「日記」をつけてみよう。夢ノートに2~3行書くだけでOK。「コンビニで買い物しなくなった。そうしたら、やせられた!」「仕事に目標が持てないのがイヤだ」「不安ばかりが目につく」など思うままに。弱音も含め、思いをこのノートに吐き出してみよう。数日間書き続けることで、自分の気持ちの動きが見えてくるほか、思いを吐き出すことで気持ちのリセットにもつながる。3行日記で気持ちをリセットすることによって、また頑張ろうという原動力にもできるのだ。次回は、いよいよ最終回。これまでの連載を振り返ってみよう。■今回取材にご協力いただいた横山さんの著書 年収200万円からの貯金生活宣言 (横山光昭著/ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)
2016年04月18日真面目で頑張り屋の人ほど、お金が貯まらない 節約よりも確実にお金が貯まる方法 貯蓄を始める前に知っておきたい、お金の使い方の3つのタイプ の続きです。「強い貯蓄力をつけるには、まず『実行』です」と言うのは、家計再生コンサルタントの横山光昭さん。苦しい家計を再生させていくことを得意とするファイナンシャルプランナーで、これまで約9,000人の家計を「再生」させてきた。■目的をハッキリ意識し、実行する期間を決める横山さんが提案するやり方や考え方を頭で理解するだけでは、「貯める」力には繋がらない。これまでのことをベースにして、「実行」をしてこそ貯蓄力がつくのだ。そのための最初のポイントは、次の2点となる。実行する期間を定める(理想は90日)目標や願望、やりたいことをハッキリ意識する「90日=3ヶ月」と期間を決めているのは、変化を実感しやすいのと、貯められなかったころの自分との比較がしやすいから。もちろん、90日を過ぎても、さらに続けていってOK。90日がひと区切りというだけで、繰り返すことで効果は上がっていく。そして目標や願望は、とにかくハッキリ意識することが大切。「貯金できるようになる人はみな、目標の描き方が現実的なのです」(横山さん)■スタート日とゴール日を設定上記が決まったら、次にスタート日とゴール日の具体的な日付を決める。スタート日=収入が入る日、つまりお給料日ゴール日=3ヶ月後の給料日の「前日」共働きで給料日が違う場合は、家計のメインの収入となるほうに合わせる。ゴールも給料日の「前日」なので、キッチリ90日間である必要はない。 ■プログラムに取り組む前にする4つのことこの記事を読んで、「よし、早速やってみよう!」と思ったとしても、すぐに始めるのではなく、数日待って必ず給料日からスタートさせるのがよい。その間、「プログラムに実際に取り組む前にすること」があるので、ご紹介しよう。●プログラムに取り組む前にする4つのこと(1)目標、願望をハッキリと具体化させる目標として設定しておきたい項目は次のとおり貯めたい金額使い方の内容の割合をどう変化させるか(消費、浪費、投資)生活上、改善したいこと挑戦したいこと(2)夢ノートと家計簿を用意する家計簿はできるだけシンプルなものを。「お金の流れをメモしておくためのもの」程度のゆるいとらえ方で。横山さん監修の家計簿もある。目標や願望を自由に書くことができる「夢ノート」は、特に決まりはないが、B5サイズの大学ノートを使っている人が多いそう。(3)貯金箱と貯金用口座を用意する貯金箱はインスタントコーヒーの空きびんなど、中身が見えてわかりやすいものがおすすめ。わざわざ買う必要はなく、手元にあるもので用意してみよう。貯金用口座は新しく開設して、90日貯金プログラムで貯めた分だけをそこに入れよう。(4)気がかりなことを書き出すたとえば、「何だか最近、楽しくないし、やる気も沸かない。しっかり休んでみよう」「会社のデスク周りがぐちゃぐちゃ。使いやすいように片付けよう」など、何でもいい。とにかく心に思い浮かんだ気がかりなことを書き出してみよう。(出典:「年収200万円からの貯金生活宣言」より抜粋)準備ができたら、いよいよ次回は横山メソッドの真髄「90日貯金プログラム」【実践編】です。■今回取材にご協力いただいた横山さんの著書 年収200万円からの貯金生活宣言 (横山光昭著/ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)
2016年04月17日真面目で頑張り屋の人ほど、お金が貯まらない 節約よりも確実にお金が貯まる方法 の続きです。「貯蓄体質になるためには、これまでの家計管理の視点を変えなければなりません」と言うのは、家計再生コンサルタントの横山光昭さん。苦しい家計を再生させていくことを得意とするファイナンシャルプランナーで、これまで約9,000人の家計を「再生」させてきた。そんな横山さんが考える、貯蓄体質になるためのコツとは?■「自分の軸」を持つのが貯蓄の早道同じくらいの収入であっても、堅実に貯めていく人と、いつもお金を使いきってしまい、カツカツな気分で暮らしている人がいるのはなぜなのだろうか? 「その差は、自分の軸があるか、ないかなのです。貯蓄体質になるうえで、大切なのは、あなた自身の価値観です」と、横山さんは言う。自分の軸を作り上げるためにも、ぜひとも知っておいて欲しいことがある。それは、「お金の使い方には3つのタイプがある」ということだ。■「消」「浪」「投」で使い方をイメージ3つのタイプとは、以下の表の3つをいう。「消(ショウ)」「浪(ロウ)」「投(トウ)」と覚えると、覚えやすい。お金を使うときには、この3つのどれに当たるのかを考えながら使うようにしてみよう。●お金の使い方の3つのタイプ(1)消費生活するのに必要なものの購入や、使用料としての支払い全般。生産性はさほど伴わない。【例】食料や住居費、水道光熱費、教育費、被服費、交通費など(2)浪費生活に必要でないもの、今をひたすら楽しむためなどの、無意味な使い方のこと。いわゆる無駄づかいで、もちろん生産性もない使い方。【例】嗜好品(タバコやお酒、珈琲)、程度を超えた買い物など(3)投資将来の自分にとって有効なお金の使い方。資産運用のことだけを指すのではなく、何かを学ぶ、本を読むなどもこれに当たる。【例】習い事、本代など学ぶための費用、投資信託、貯蓄など(出典:「年収200万円からの貯金生活宣言」より抜粋) ■「いくら使ったか?」より、「何に使ったか?」が大切まずは表を参考にして、家計の支出をあなたなりに「消費」「浪費」「投資」に3つに分けてみよう。なかには同じ項目内であっても、内容が分かれることもあるだろう。たとえば、携帯電話代は、生活や仕事に使っている部分は「消費」だが、過度なゲームの課金や電子書籍の購入は「浪費」。食費も基本部分は「消費」だが、料理をするのが面倒だという気持ちでする外食は「浪費」。こんなふうに同じ項目でも、複数に分かれてもいい。「これだけでも十分、お金が貯められる体質作りへと繋がります。要するに、『いくら使ったか?』より、『何に使ったか?』が大事なのです」(横山さん)■新しいモノサシで、今までの自分を疑う次に、「消費」「浪費」「投資」の割合を適切に把握するため、3種類の内訳が支出全体の中でどれだけの割合を占めているかを計算してみよう。その計算方法は以下の通りだ。各項目(消費、浪費、投資)の金額 ÷ 支出合計たとえば、手取り収入が21万円で、消費が16万5,000円だった場合、16万5,000円÷21万円=0.785…。つまり、毎月の支出のうち78.5%が消費となっている計算となる。横山さんが現場で、「お金とのつき合い方が上手だなぁ」と感じる人の数値をもとに割り出した「消(ショウ)」「浪(ロウ)」「投(トウ)」の目安は以下の通り。●横山さんが考える消費・浪費・投資の理想の目安消費 : 70%浪費 : 5%投資 : 25%(出典:「年収200万円からの貯金生活宣言」より抜粋)「3つの項目ごとの割合を知るという新しいモノサシを手に入れることで、人は今までの自分の常識を疑い始めます。そして、お金の使い方の中身に意識を向けられるようになるのです」(横山さん)お金の使い方の中身に意識を向けられるようになったら、貯蓄力を始める準備をしよう。次回は横山メソッドの真髄「90日貯金プログラム」の【準備編】です。■今回取材にご協力いただいた横山さんの著書 年収200万円からの貯金生活宣言 (横山光昭著/ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)
2016年04月16日いま、所得格差が社会問題になっています。国税庁の平成26年度調査では、民間の企業に勤める人のうち年間給与所得300万円台の層が17.3%で最多。女性に限って見ると年間給与100万円台が26.2%で最も多く、年間給与300万円台までの層が女性全体の8割を占めるなど、まさに“年収300万円時代”といえます。多くの人が「幸せになるために、もっと豊かになりたい」と願うなか、「生活の豊かさを最優先課題にすると、幸せにはなれません」と警鐘を鳴らす人がいます。哲学者・ソクラテスの思想を下敷きにしたフィクション『ソクラテスに聞いてみた人生を自分のものにするための5つの対話』(日本実業出版社)の著者・藤田大雪さん。京都光華女子大学で教鞭をとるかたわら、訳書『ソクラテスの弁明』(kindle版)がAmazon kindleの哲学・思想部門で1位を獲得するなど第一線で活躍する古代ギリシア哲学の研究者です。『ソクラテスに聞いてみた』でもお金と幸せの問題を取り上げている藤田さんに、幸せになるための「お金とのつきあい方」をお聞きしました。■「幸せ」には魂の健康が欠かせない「じつは、最初に“お金”が人々の生活に不可欠なものになったのは、ほかでもないソクラテスの生きた時代なんです」と藤田さん。ソクラテスが生まれる200年ほど前にリュディア(今のトルコ)で発明されたお金(貨幣)が、紀元前5世紀ごろのアテナイで歴史上初めて一般市民に普及したのだそう。やがて「もっとお金を手にして豊かになりたい」という思いにとりつかれる人も出はじめ、ソクラテスはそんな人々を“金銭愛好家”と呼びました。「プラトンの『国家』という本のなかで、ソクラテスは金銭愛好家の心理について詳しく語っています。金銭愛好家はとにかくさもしくて、どうすればお金が増えるかということにしか頭を使わない。富める者しか尊敬せず、財貨の所有にしか名誉心の満足を覚えない、と。ソクラテスはそんな心の状態を“魂の病気”と呼んでいます」“魂の病気”といわれるとドキッとしてしまいますが、現代でもお金が価値観の中心になってしまうことはあります。では、魂の健康とは?藤田さんによれば、ソクラテスの答えはこうです。「人間の心には、本来優れた能力がたくさん備わっているもの。それらが本来の役割を果たし、善いものを善い、美しいものを美しいと感じられる状態が“魂の健康”で、魂が健康でないかぎり幸福はありえない、とソクラテスは考えました。彼の哲学的問答は、魂を健康にする治療のひとつだったんです」■豊かな生活はあくまで“おまけ”!そして、ソクラテスの時代から2400年後の現代。日本では雇用が不安定だったり、老後の生活資金が不安だったりとお金に関する悩みが尽きません。「もっと生活を豊かにしたい」という願いも、多くの人が持つ切実な思い。それでも、豊かさを願うことで魂は傷ついてしまうのでしょうか。藤田さんにそう伺うと、「私も30歳を過ぎるまで大学の非常勤講師で年収200万円台の期間が長かったので、もっと生活を豊かにしたいという思いはすごくよくわかります。だけど、わかるからこそ、その思いは危険だと、あえていわせていただきたいのです」とのこと。ソクラテスの思想の根幹をなすのは“自分はどういう人生を生きたいか”という問いかけ。藤田さんは「豊かな生活とは、その問いかけに答えて真剣に生きたときについてくる“おまけ”であるべきなんです。もっと生活を豊かに、という願いにつき動かされて人生を組み立てることは、やっぱり優先順位を間違えてしまっているんじゃないかと思うんです」と指摘します。魂を健康に保ち、幸せに生きるには、人生の基準を「お金」ではなく、善いものや美しいものに置いてみること。貧しい人を蔑んだり、“お金持ち”という理由で誰かをあがめたりせず、お金以外の価値を理解できる人と交流して、お金では量れない価値にたくさん触れること。それらが大切だと藤田さんはいいます。そのことを忘れさえしなければ、魂を傷つけることなく生活の豊かさを追い求めることも、不可能ではないのです。■プラトンが伝える“ソクラテス像”ソクラテス研究者として活躍する藤田さんがソクラテスに興味を持ったきっかけは、プラトンの著作だったのだとか。「じつは、ソクラテスは1冊も本を書いていません。私たちが知ることのできるソクラテスとは、おもに“プラトンの本に登場するソクラテス”のことです。プラトンの著作『パイドン』は、裁判で死刑判決を受けたソクラテスが最後の一日に友人たちと哲学の対話をするというフィクションですが、そのソクラテスのかっこよさに完全にノックアウトされてしまいました。誰もが心の中にヒーローを持つものだと思いますが、私にとってのヒーローはソクラテスで、そのソクラテス像をつくったのが『パイドン』でした」著書『ソクラテスに聞いてみた』は、現代の若者とソクラテスを名乗る老人とのやりとりを描いたフィクション。気軽にソクラテスの哲学のエッセンスに触れることができます。本書をきっかけにソクラテスに興味を持った人へのおすすめの哲学書を伺うと「プラトンの『ゴルギアス』がおすすめです」と藤田さん。「ゴルギアスというのは当時の有名な知識人の名前で、プラトンの『ゴルギアス』には、このゴルギアスをはじめ、3人の知識人が順番に登場して、主人公のソクラテスとガチンコ対決をします。とくに、最後に登場するカリクレスというキャラクターが強烈で、“哲学なんてなんの役にも立たない”とか、日本の財界のお偉いさんみたいなことをいうんです(笑)。このカリクレスとソクラテスの対話が本当におもしろいんですね。プラトンの本は難しい哲学用語がなくて誰にでも読めるものです。ぜひ本家本元のプラトンの本も読んでみてほしいと思います」*とっつきにくいと敬遠されがちな哲学ですが、本来は“よりよい人生”を考えるためのもの。『ソクラテスに聞いてみた』を入り口に、よりよい人生について、豊かさと幸せについて考えてみませんか?(文/よりみちこ) 【取材協力】※藤田大雪・・・1980年京都府生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程を修了。日本学術振興会特別研究員、京都大学非常勤講師、大阪体育大学 学習支援室主任を経て、現在は京都光華女子大学キャリア形成学部専任講師。専門は古代ギリシア哲学。博士(文学)。主な論文に「プラトン『パイドン』における自然学批判について」(『西洋古典学研究』2011年)、訳書に『ソクラテスの弁明』『クリトン』『大ヒッピアス―美について』(いずれもkindle版)。 【参考】※藤田大雪(2016)『ソクラテスに聞いてみた人生を自分のものにするための5つの対話』日本実業出版社※平成26年分 民間給与実態統計調査―国税庁
2016年04月15日真面目で頑張り屋の人ほど、お金が貯まらない の続きです。お金を貯めるとなると、すぐに思いつくのが節約だ。けれども、家計再生コンサルタントの横山光昭さんは、こんなふうに言う。「実はケチケチ節約するよりも確実にお金が貯まる方法があります。それは、固定支出をカットすることです」■「固定支出」と「流動支出」お金を貯めるには、出ていくお金(支出)を抑えなければならない。この時に、最初に覚えるべきことは、支出の内容は2種類あるということ。支出には、毎月決まった支出のある「固定支出」と、月に応じて支払い額が変わる「流動支出」があるのだ。よく雑誌などに載っている節約や、やりくり術は、食費や光熱費など「流動支出」に目を向けたものが多い。でも、これらは節約の「出来」で結果が左右されるので、安定した効果は望めない。一方で、固定支出は毎月決まった金額だけに、一度そぎ落とせば、その分は安定した結果が伴う。見落としがちになるからこそ、固定支出を見直すことで得られるメリットは大きいのだ。●「固定支出」と「流動支出」の例固定支出 : 家賃、生命保険料、新聞代、など流動支出 : 食費、日用品費、光熱費 など(出典:「年収200万円からの貯金生活宣言」より抜粋) ■あなたの生活をむしばむ固定費ワースト3今回の記事では、厳密な意味の会計用語としての「固定」や「流動」という支出分けではなく、毎月必ず払う必要があるものを「固定費」と考えてみる。横山さんに多くの人が抱えがちなムダな固定費をランキングしてもらった。第1位 ムダな会話やメールのもととなる携帯電話代第2位 意味のないおつき合いに費やされる交際費第3位 保障内容も知らない高額の生命保険料(出典:「年収200万円からの貯金生活宣言」より抜粋)「ある、ある」「これって、私のことだ」と、心当たりのある人も多いのでは? 解決方法を横山さんに教えてもらった。 ■抑えたい固定費第1位、携帯電話代を抑えるには?「格安スマホがおすすめです。ネット検索などで、大まかな格安スマホの棲み分けなど概要をつかんだら、電気量販店に行って相談してみましょう。機種によっても違いがあるので、『携帯コンシェルジュ』のような存在の店員さんに、個別で自分に適したプランを教えてもらうのが近道です」(横山さん)■合計すると意外と多い!? 交際費を抑えるには?「交際費の回数と金額を書き出してみましょう。たとえば、ママ友とのお茶会。1回1回の金額は小銭程度でも、あらためて書き出してみると結構な金額になっていることも多いものです。『このお金があれば、あれが買えたのに』というふうに、金額を自覚するとムダな交際費を減らすことに繋がります」(横山さん)■保険は大事、でも払い過ぎはNG 生命保険料を抑えるには?「生命保険には、『死亡保障』『医療保障』『貯蓄』の3つの効果があります。もちろん全部に入っていれば安心ですが、それで保険貧乏になってしまうのは問題です。あなたは、3つのうち、どの効果を優先したいですか? つまり、何に対しての備えが欲しいですか? 保険の見直しは、そこを軸に考えてみると、わかりやすいですよ」(横山さん) このムダな固定費ランキング、実は10位まであるのだが、いずれも思い当たることばかり。書籍には詳しく書いてある。次回は、貯蓄体質になるための方法を紹介します。■今回取材にご協力いただいた横山さんの著書 年収200万円からの貯金生活宣言 (横山光昭著/ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)
2016年04月15日「真面目で頑張りすぎる人ほど、お金が貯まらないんですよ」と言うのは、家計再生コンサルタントの横山光昭さん。苦しい家計を再生させることを得意とするファイナンシャルプランナーで、これまで約9,000人の家計を「再生」させてきた。■「生活下手」と「お金」は密接にリンクするこれといった不満はないが、どこかで気持ちが満たされず、不安や寂しさ、ストレスを感じて、その人らしく生きられない…。最近、このような人が増えていないだろうか?「このような方々は、思いどおりの生活が実現できていないのと同時に、お金の面でも自由ではありません。『生活下手』と『お金』は密接にリンクしてしまうのです。充分な収入があっても、月末になるとお金がない人や貯金ができない人は、生活自体を見直す必要があるかもしれません」(横山さん)。■自分の「お金のステージ」を知ろう生活自体を見直すためには、まず自分の「お金のステージ」を知ることが必要だ。「私が家計相談で目にする現実を平たく言うと、家計をスリム化したり、キャッシングを減らさなければいけない人が、投資関連の本を読み漁り、実際に挑戦してのめり込み、成果に一喜一憂するケースが多いのです。でも、人はそれぞれに合った『お金のステージ』をこなさないと、必ず失敗します」●3つのお金のステージ 第1ステージ お金を管理する実生活に関わるお金をマネジメントしていく段階。家計簿を使ってお金の流れを把握する、ムダな支出は抑える、貯金を少しずつするなど、お金と向き合ってコントロールができるようになるための大切な基礎の時期第2ステージ お金を学ぶ第1ステージでできたお金をどう活用するかを学ぶ段階。知識や情報が足りないと進歩はないので、本を読んだりセミナーに参加したりと時間をかけて「お金」をつかんでいく時期第3ステージ お金を活かす実際にお金を「活かす」段階。興味本位で楽しむ、学ぶためのアマチュア投資から、長期や分散投資による揺るがない組み立てを意識するものまで色々ある(出典:「年収200万円からの貯金生活宣言」より抜粋) 多くの人は、第1ステージにいる。それなのに、憧れや夢、はたまた勘違いでレベルの違うステージへの向かってしまいがち。抜け道やマジックはない。そのことに気づいたことがいちばんの近道となる。「これからの貯金生活を順調に進めるためは、常に自分は今どのステージだろうか? 何をすべきなのか? を意識してください」(横山さん) ■すべての始まりは、「貯める理由をハッキリさせる」こと「自分は今、何をすべきなのか?」を考え始めたのなら、その第一歩は、「貯める理由をハッキリさせること」。「『何となく』で貯められるほど、貯金はカンタンではないのです」(横山さん)多くの人は、限られた収入で家計をやりくりし、家族みんなで生活していかなければいけない。たっぷりと余裕がある人など、ほんの一握りだ。加えて、人間はお金があれば使いたいし楽しみたい、ラクをしたいと思う生き物。要は、ほとんどの人がお金を使いたい気持ちをコントロールし、自分なりの考え方や価値観を持ち、それを家計に反映させる必要があるということ。だからこそ、「何のために貯めるのか?」が、とても重要になってくる。そうは言っても、貯める理由が今は特に見つからないという人もいるのでは? そんな人はどうしたら良いのだろうか?「今はこれといった目的がない人も、貯金があることで、未来の可能性や選択肢が広がります。だから貯金はして欲しいですね」(横山さん)「貯める目的」にフォーカスできたら、次回からは具体的な方法論について触れていこう。■今回取材にご協力いただいた横山さんの著書 年収200万円からの貯金生活宣言 (横山光昭著/ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)
2016年04月14日こんにちは。深沢真太郎です。ビジネスパーソンを数と論理に強くする「ビジネス数学」を提唱する、教育コンサルタントです。いきなりですが、500円と600円はどちらが安い金額でしょうか。もちろん、500円です。「なにを当たり前のことを」と思われたかもしれません。でも「当たり前」と感じるのは、500と600という2つの数字だけを単純比較しているからです。では、もうひとつ質問です。「500円と600円では、600円のほうが安い」と思わせるためにはどうしたらよい?今日は、そんなお話です。■紙版とセットで電子版の雑誌を売るには?あなたが、ある雑誌のマーケティング担当者だとしましょう。読者にその雑誌の「紙版」と、新たにリリースが決まった「電子版」をセットで購入してもらうため、どうプロモーションしようかを考えています。ちなみにこの雑誌の「紙版」と「紙版&電子版」の価格は以下の通りです。紙版のみ:500円/月【NEW!】紙版&電子版:600円/月さて、あなたならこれらの金額を広告で見せる(魅せる)ことで、どのように「【NEW!】紙版&電子版」をPRしますか。仮にこのままで広告を出すと、おそらく見た人は単純にこの2つの金額を比較しただけで、「紙版のみ」を選ぶケースが多くなってしまいそうです。しかし、それでは困るわけです。表記を工夫することで、どうにか「【NEW!】紙版&電子版」が安い買い物であることを訴求したいですね。■あえて選ばれない選択肢を入れてPRする私であれば、このような表記でPRするでしょう。紙版のみ:500円/月【NEW!】電子版のみ:600円/月【NEW!】紙版&電子版:600円/月本質をご理解いただくために少し極端にしましたが、要するに「【NEW!】紙版&電子版」がおトクであるという理由をこちらがつくってあげればいいわけです。もちろん、こんな価格設定にしたら「【NEW!】電子版のみ」は売れないでしょう。でも、それでいいのです。なぜなら、私はあくまで「【NEW!】紙版&電子版」を売りたいのですから。このエッセンスは、ビジネスでよく利用されています。たとえば、なにかを学ぶ講座(10,000円)を売りたいとします。ビギナープラン:5,000円レギュラープラン:10,000円これでは単純に5,000円と10,000円の比較をされてしまいます。ですから、ちょっとだけお試し!ビギナープラン:5,000円すぐにマスターできる!レギュラープラン:10,000円目指せ上級者!アドヴァンスプラン:50,000円このように、あえて選ばれない選択肢「アドヴァンスプラン」を見せることで、こちらが選んで欲しい選択肢をおトクに見せることができます。*私たちが消費者の立場のときは、このような売り手の思惑も理解したうえで、数字の駆け引きに勝ち、自分にとってもっともおトクな選択をしたいですね。賢い消費者とは、「アタマのいい人」のことではなく、「勝負に勝った人」のことを指すのです。(文/深沢真太郎) 【参考】※ビジネス数学の専門家深沢真太郎〜数字が苦手な人の救世主〜-YouTube※ビジネス数学ブログ※深沢真太郎(2015)『そもそも「論理的に考える」って何から始めればいいの?』日本実業出版社
2016年04月13日ソクラテスといえば、だれもが知る古代ギリシアの哲学者。いまから2400年前、生まれ故郷であるアテナイの街に出て、若者に質問を投げかけて対話をしていたということで知られています。本人すら気づかない「本当の考え」を引き出す「ソクラテス式問答法」という対話法を得意としていたことも有名な話。『ソクラテスに聞いてみた 人生を自分のものにするための5つの対話』(藤田大雪著、日本実業出版社)は、そんなソクラテスが登場人物として活躍するユニークな書籍。現状に不安や不満、疑問を感じる27歳の青年と、いきなり目の前に現れたソクラテスとの対話を軸に、ストーリーが展開されていくのです。きょうはそのなかから、第4章「お金お金との「ちょうどいい距離」とは?」に注目してみたいと思います。■投資は確実に富をもたらすものではない将来の生活を不安に思っていたサトルは、その打開策として「投資」に注目し、その重要性をソクラテスに説きます。ところが意見は噛み合わず、ソクラテスはサトルに「投資をする人の人生を吟味しよう」と提案します。将来の生活を憂えて投資をはじめようとしているということは、投資によって将来の生活不安を和らげたいと願う心が宿っているということ。では、その心は、それが宿った人間の魂を全体としてどのようなものにつくり変えていくものなのか?すなわち、投資家のメンタリティを持つことが、人間の生き方にどういう影響を与えるのか?ここで重要なのは、投資が必ず儲かるものではなく、不確実性が伴うものであるという事実。どんなに優秀な投資家であっても、損をする可能性はゼロではないということ。つまり投資は、確実に富をもたらす性質のものではないとソクラテスはいうのです。■備えあれば本当に「憂いなし」でもないだとすれば、投資によって将来の生活不安を和らげたいと願う投資家たちは、自分の意のままにならない事柄に自らの運命を委ねているということになるはず。ところで、自分の意のままにならない事柄に運命を委ねる人は、内面的になにかの不安を抱え込みやすくなるのではないか? ソクラテスはそう疑問を投げかけます。サトルはそれに対して「備えあれば憂いなし」と反論しますが、ソクラテスはそこを指摘します。本当に「憂いなし」なのか?ほかならぬ「備え」のために、ずっと大きな憂いを抱えているように見えると。■なにを愛し求めるかで人の価値が決まる次にソクラテスはサトルに対し、一般的にいって、「なにかを追い求めようとする場合、そのなにかの点で不安になったとすれば、それについて考えることはいっそう多くなる」と指摘します。だとすれば、財産の点で不安を感じやすい投資家は、お金のことを気にしやすく、お金に執着した人間になりやすいということになるとも。つまり、お金に執着した人間になることは恐ろしいということをサトルに伝えたかったわけです。そして、このような趣旨のメッセージを伝えます。・人間の値打ちは、「なにを愛し求めるか」によって決まる。・立派なものを愛し求め、徳のために最善を尽くす人は、もうそれだけで立派で幸せな人である。・逆にお金の魔力にとらわれた人は、心が狭く、お金以外の価値を信じられない人間になる。・その結果、幸福な人ならだれもが持っている大らかさや朗らかさをうしなっていく。だからこそ私たちは、自分の心にお金への執着が生まれないように気をつけなければならないというのです。金儲け以外のことにはいっさい心を向けず、ただ「できるだけたくさんお金がほしい」と願いながら一生を送るなどということは、恥ずべきことだと。なぜならそれは、たった一度しか生きられない人生の価値を、自分自身の手によって、小さく、みすぼらしく、つまらないものにしてしまうことだから。■ソクラテスの考える正しいお金の使い方そしてお金は、「いい使い方」をすることが大切。そう主張するソクラテスは、自分が考える「いい使い方」とは、大切な人のために使ったり、立派で美しいことのために使ったりする、そういうお金の使い方だといいます。そういう使い方ができない人は、いくらお金を持っていても不幸せだというのです。なぜなら、友だちや恋人よりもお金のことを気にかけるような人は、決して「幸せ」ではないはずだから。*ここでは簡略化していますが、実際のサトルとソクラテスとの対話は、まるで禅問答のよう。つまりは堂々巡りの連続であるわけですが、だからこそ最終的には“真理”へとつながっていくことになるわけです。ソクラテスをホームレスのようなキャラクターに設定しているなど、見方によってはかなり強引な部分もありますが、そこが本書のおもしろさだともいえそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※藤田大雪(2016)『ソクラテスに聞いてみた人生を自分のものにするための5つの対話』日本実業出版社
2016年04月12日『社会人1年目からのお金の教養』(泉正人著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、そのタイトルどおり、新社会人を対象とした“お金の教科書”。入社3年目までに身につけておくべきだと著者が考える「お金の教養」43をピックアップし、わかりやすく解説しているわけです。きょうはそのなかから、いくつかのトピックスを抜き出してみたいと思います。■「消費」「投資」「浪費」の違いとは当たり前のことですが、自分が稼いだお金だけで生活する社会人は、お金をコントロールして使う必要があります。なにを買うべきなのか、なにを買ってもいいのか、なにを買ってはいけないのか、すべてを自分で判断しなければならないということです。そのためにはまず、お金の使い方が「消費」「投資」「浪費」の3つに分けられることから知る必要があるのだと著者はいいます。消費とは、毎日を生きていくうえで欠かすことのできないもの。電気・水道・ガスといった光熱費や家賃、通信費、毎日の食費、日用品などが含まれます。投資は、株や不動産など将来の資産形成につながるもの。キャリアアップのために資格取得や、健康維持のための食費などの自己投資も含まれます。そして浪費は、必要以上に飲み食いしたお金とか、欲に任せて買う高級品や嗜好品など、生活に不要なもの。いい方を変えれば、「消費=買ったものが払ったお金と同等の価値を持っているもの」「投資=買ったものが払ったお金以上の価値のあるもの」「浪費=買ったものが払ったお金より価値がないもの」といえるそうです。■新社会人は消費に慣れることが重要!社会に出たばかりの人についていえば、「買うべきもの」は投資であり、「買っていいもの」は消費にあたり、「買ってはいけないもの」が浪費にあたるものだと大別できるそうです。そして、毎月決まって十数万円以上のお金が振り込まれる経験が初めてであるはずの新社会人にとっては、心がけるべき重要なことがあると著者。当然のことながら、浪費を控えるように心がけ、まずは「消費」に慣れることが重要。どのような生活をすれば、毎月の消費が「使っていい金額」のなかにおさまるのか、その感覚をつかむことが大切なのです。次に投資ですが、社会に出たばかりのときは、日常業務に追われ、3~5年後を見据えて行動することなどできないのが普通。しかし、そんな時期だからこそ、自らの成長に投資をする「自己投資」を意識することが大切。そうすることによって、社会人として一気にライバルを引き離すことすらできると著者はいいます。■毎月の支出と収入を正確に把握しようお金をコントロールするためには、毎月いくら稼いでいるのか、なににいくら使っているのかという「お金の現状」を把握することが必要。住居費や食費などの出て行くお金(=支出)と、毎月会社から振り込まれる給与(=収入)を正確に把握しなければならないわけです。収入とは、新社会人にとっては給与に当たるものですが、給与には「額面金額」と「手取り金額」があります。額面金額は、基本給に時間外手当や通勤手当、住宅手当などの手当を足したもの。会社から支払われる報酬のすべてを合計した金額だということ(一般的には給与明細に「総支給額」と書かれています)。手取り金額は、「差引支給額」と書かれたもので、額面金額から税金(所得税、住民税)や社会保険料(健康保険、厚生年金、雇用保険)などが差し引かれたもの。つまり自由に使えるのは、手取り金額だということです。■把握しづらい支出を管理する方法は?支出の基本は「毎月の生活費」であり、固定支出と変動支出に分けられます。固定支出とは、住居費や月払いの保険料、教育費といった毎月一定に支払っているもの。預金通帳を見れば、すぐに把握できるものです。対する変動支出とは、食費や光熱費、通信費、レジャー費など、月によって変わる支出。特に食費やレジャー費は把握しづらいので、レシートや家計簿を活用して、1週間、1ヶ月単位で管理するべきだといいます。他にも年払いの保険料や冠婚葬祭費、家電・家具の購入費など「年に数回の支出」、学校の入学金、住宅購入の頭金、自動車購入など特定の年にだけ発生する「一時支出」が。いずれにしても収入と支出は、ひとり暮らしで生計を立てていくうえでの基本。必ず把握することが大切です。*このように基本がわかりやすく解説されているため、聞くに聞けない疑問も解消できるはず。ぜひ、手にとってみてください。(文/書評家・印南敦史) 【参考】※泉正人(2016)『社会人1年目からのお金の教養』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年04月07日エンゲル係数が、最近また注目されはじめています。エンゲル係数とは、食費にかかるお金が家計(消費支出)の何%を占めるかを表したもの。2015年末に発表された家計調査の結果、2015年11月のエンゲル係数は25.7%。7ヶ月連続で25%を超えたのです。■エンゲル係数が高いとどうなる?エンゲル係数(%)=食料費÷消費支出×100エンゲル係数が高くなるほど、食費以外にお金がまわせない状態で、生活は苦しくなるとされています。総務省の家計調査によると終戦直後、昭和22年の全世帯のエンゲル係数は63%と高く、昭和28年は48.5%、昭和37年は39%、昭和54年は29.2%と、生活が豊かになるにつれ下がっています。なお、2013年の全世帯のエンゲル係数の平均は22.1%でした(全国2人以上の世帯のうち勤労者世帯)。逆にエンゲル係数が低いということは、食費以外の衣服やレジャーなどにお金が回せる状態。つまり生活が豊かである証しだったわけです。■エンゲル係数が上昇している原因そのエンゲル係数が、ここに来て上昇しはじめました。なぜでしょうか?大きな原因のひとつは、間違いなく「消費増税」です。そしてもうひとつが「円安」です。円安によって輸入品の値段が上昇したということで、事実、ここ最近はニュースを見れば値上がりのニュースばかりです。しかし、それ以外のもうひとつの大きな原因は、「共働き世帯」ではないかと考えられているのです。共働き世帯が増えたことが、エンゲル係数を増加させているということ。通常であれば、共働きして収入が増えるわけですから、食費が上がっても相対的なエンゲル係数は下がるはずです。たとえば、次のようになります。[一般世帯]1ヶ月総支出20万円 → 食費5万円 → エンゲル係数25%[共働き世帯]1ヶ月総支出30万円 → 食費7万円 → エンゲル係数23%たしかに、お客様の家計相談にのっていると、ここ数年は正社員での共働きが増えてきた印象を受けます。育児休業制度の拡充や時間短縮勤務の義務化により、待機児童問題等はあるものの、子育てしながら働きやすい環境が整いつつあるのでしょう。■ご褒美が多くなりすぎている現状子育てしながらの正社員勤務は本当に大変です。ぎりぎりまで働き、子どもを保育園まで迎えに行き、帰ればすぐに家事。毎日壮絶な日々です。だからこそ、「お惣菜ですませよう」「たまの休みぐらいゆっくり外食でも」と考えても不思議はないでしょう。時短のための食材や外食を利用する機会が重なれば、エンゲル係数は増えていきます。時間の余裕を買うための手段としては、もちろん間違ってはいません。しかし、ここに落とし穴が存在するのも事実。自分や我慢してくれている子どもへのご褒美(外食・レジャー)が多くなりすぎ、お金が貯まらない傾向があるのです。つまり共働きで収入が多くても、貯蓄が増えていかないのです。ご褒美がだめだとはいいませんが、コントロールしていく必要はあるということです。(文/ファイナンシャルプランナー・岡崎充輝) 【参考】※岡崎充輝(2014)『知らないとヤバイシングルのためのお金の話』彩図社
2016年04月05日マネーフォワードは4月5日、ビジネス向けクラウド型会計ソフト「MFクラウド会計」などのデータを活用して、「MFクラウドシリーズ」のユーザが、金融機関からの資金調達を行うことを可能にする新たなFinTechサービス「MFクラウドファイナンス」を、2016年夏のサービス提供を目指して開発することを発表した。同サービスを利用することで、「MFクラウドシリーズ」のユーザは、従来よりも少ない手間と短い時間で、金融機関からの資金調達が可能となる。また、金融機関は、日次の財務データ・入出金データ・請求データなどのリアルタイム性の高いデータを活用した新しい審査モデルの開発や資金提供先の拡大が可能になるほか、審査書類提出の手間の軽減、審査時間の短縮といったメリットが期待できるという。同サービスは、資金提供を実行する金融機関、審査の基礎となるデータの信頼性を向上させる会計事務所、資金調達の仕組みを提供する同社の連携により提供されるとのこと。提携先の金融機関は下記9社となる。みずほ銀行静岡銀行住信SBIネット銀行山口フィナンシャルグループクレディセゾンGMOペイメントゲートウェイ群馬銀行滋賀銀行東邦銀行
2016年04月05日日本テレビで放送された投資バラエティ番組『\マネーの虎』の中国版が、今年5月から放送されることが4日、明らかになった。この番組は、一般人が夢の実現のため、その事業計画を投資家たちにプレゼンし、出資されるかどうかの様子を描くもの。この番組フォーマットが、イギリスやアメリカをはじめ、世界26の国と地域で放送されているが、今回の中国版は、初のアジアでの展開となる。番組タイトルは『合伙中国人』(=中国ビジネスパートナー)。ニューヨークで上場したオンライン教育事業のトップや、巨大インターネットサイトのCEOなど、中国で有名な企業家が続々と参戦することになっており、億単位の巨大マネーが飛び交う、世界最大規模になりそうだという。現在、北京のスタジオで制作作業が進んでおり、放送枠は毎週日曜プライムタイムの60分で、全12話を予定。日本テレビの君嶋由紀子海外ビジネス推進室長は「この番組をご覧いただいた中国の視聴者の方が、自分の夢をかなえるきっかけとなる番組になれば、こんなに喜ばしいことはありません」と期待を語っている。なお、2005年から放送されている英・BBC版はシーズン14に、2009年から放送されている米・ABC版はシーズン8の放送が決定しており、人気シリーズとなっている。
2016年04月04日『サザエさんの「花沢不動産」はなぜ潰れないのか?現役不動産屋が教える仕事とカネの裏事情』(齋藤智明著、宝島社)とはユニークなタイトルです。花沢不動産といえば、アニメ『サザエさん』にも頻繁に登場する磯野家のご近所。娘の花子はカツオの小学校のクラスメートで、「アハハ!」という豪快な笑い声と「磯野くーーん!」と呼ぶダミ声が印象的な女の子。将来はカツオと結婚して花沢不動産を継ぐという夢を持っています。花沢不動産もたびたび登場しますが、たしかにいつも店内にお客はゼロ。それなのに、社長で花子の父・金太郎はカツオにお寿司やうなぎをご馳走するなど、むしろ羽振りがよさそう。こうした“お客がいないのに潰れない”不動産屋、身近でもけっこう目にしますよね。そんな不動産屋あるあるについて、自らも不動産会社で働く著者が著したのが本書。そのなかから、タイトルにもなっている“客のいない花沢不動産の羽振りがいい不思議”の項に注目してみましょう。■花沢不動産のメイン業務は「賃貸管理」著者によれば、不動産会社にはデベロッパーとも呼ばれる「開発型」や不動産の有効活用に関する提案を行う「コンサル型」など、12もの業態があるそう。各社、このうちいくつかの業務を行い利益をあげるわけですが、花沢不動産の場合、「賃貸仲介型」と、大家さんから賃貸物件をあずかり管理する「賃貸管理型」の業務をメインに行っているようだ、と著者。「賃貸仲介型」は、文字通り賃貸物件を探している人々に物件を仲介し、仲介手数料を得る業態。窓にはびっしりと広告が貼られ、わたしたちが部屋を借りようと思ったときに訪ねる場所です。しかし、花沢不動産には、そんなお客さんがいたことはありませんよね。そこで重要になってくるのが「賃貸管理型」業務です。■賃貸管理型は縁の下の力持ち的な存在!「賃貸管理型」は、大家さんから直接物件の管理を任され、庭や建物の共用部分を定期的に掃除したり、家賃を集めたり、事故やクレームの対応をしたりと日々の建物の管理をします。部屋を借りようと思って名前の通った不動産会社の店舗を訪ねると、営業マンが適当な物件をみつくろい、その場で電話をかけて「○○アパートの××号室は案内可能ですか?」と確認しますが、その相手こそ、この賃貸管理型不動産屋。花沢不動産のような賃貸管理型の不動産屋は、そうした内見に備え、普段から空き物件を訪ねて換気をしたり、室内のほこりをきれいに掃除したりとメンテナンスを怠りません。隠れた苦労が多い賃貸管理型の不動産会社は、まさに縁の下の力持ちといえそうです。■花沢不動産のお客さんは地域の大家さん借り手が部屋を気に入れば契約成立。ここからやっと、賃貸管理型不動産会社のもうけが発生します。まず契約時。借り手は物件を仲介した不動産会社に仲介手数料を支払いますが、物件管理型の不動産会社は大家さんから仲介手数料を受け取ります。さらに、物件を管理すると定期的な収入が見込めます。まず、家賃の集金代行手数料。相場は家賃の3~5%で、かりに5%とすると家賃10万円×0.05=5,000円。部屋数100室、家賃平均10万円の物件を管理すれば、これだけで毎月50万円の収入になります。このほか、入居者から鍵交換手数料、保証会社をつければ保証委託契約の手数料、火災保険加入手数料などなど。2年ごとに訪れる賃貸契約の更新時手数料は、貸し手と借り手双方からダブルで受け取っているのだそう。花沢不動産の主なお客さんは、地域の大家さんたちだったのです。店内にお客がいなくても経営が安定しているのは、大家さんたちをしっかりとつなぎ止めているからなんですね。*このほか本書では、なかなか知ることのできない不動産業界の裏事情がたっぷり紹介されています。興味深いのは、良心的な不動産会社を見分ける方法。たとえば、賃貸物件を借りたときに支払う「賃貸仲介手数料」、“仲介手数料1ヶ月分”という表示を見かけますが、じつは規定額は家賃の0.5ヶ月分で、利用者の承諾があれば1ヶ月分まで受け取れるというルールなのだといいます。つまり、知らないうちに必要以上の金額を支払っている可能性があるのです。逆に“仲介手数料0円”の場合も、礼金を2ヶ月分としてその半額を大家さんから受け取るケースがあるとか。いずれにしても、良心的な対応を期待できる会社ではありません。雑学としてだけでなく、実用的な知識も満載。物件を借りたり買ったりする前にも読んでおきたい1冊です。(文/よりみちこ) 【参考】※齋藤智明(2016)『サザエさんの「花沢不動産」はなぜ潰れないのか?現役不動産屋が教える仕事とカネの裏事情』宝島社
2016年04月03日好むと好まざるとにかかわらず、現実的に離婚の話し合いの真っ最中だという方もいらっしゃるでしょう。あるいは、これから頭の痛い展開になることを予感しているところかもしれません。いずれにしても、離婚に際して泥沼にハマるようなことはさけたいものです。そこで、離婚問題に直面している方におすすめしたいのが、『こじらせない離婚―――「この結婚もうムリ」と思ったら読む本』(原口未緒著、ダイヤモンド社)。離婚の問題を専門とし、これまで約400人の離婚相談を受けてきた弁護士である著者が、タイトルどおり離婚を「こじらせない」ための策を説いた書籍。ところで離婚に際し、よく話題に上がるのが「慰謝料」です。しかし現実的に、「慰謝料のリアル」について語られる機会は意外に少ないもの。そこできょうは本書から、慰謝料についての大切なポイントをピックアップしてみたいと思います。■慰謝料をぶん取って復讐したい!「夫に浮気をされた。しかも不倫相手は妊娠している。だから復讐のために、慰謝料をぶん取りたい。離婚についてはどっちでもいいけれど、あの2人がいちばん困ることをしてやりたい」よくあるこんな相談を、著者も受けたことがあるそうです。でも、そのときにはこう答えたのだとか。「率直に申し上げるんですが、相手を懲らしめてやりたいと考えるのは、たぶんやめたほうがいいです。なぜなら、うまくいかないから」たしかにこのようなケースの場合、浮気された妻が慰謝料を請求できるのは明白。しかし、そのまま2人を心から恨んだまま慰謝料請求の手続きをしても、離婚を拒否して調停や裁判をしたとしても、その結果として多額の慰謝料をもらったとしても、きっと浮かばれない。幸せにはなれない。そういうイメージが、はっきりと思い浮かぶというのです。■被害者意識がドロ沼の原因になるご夫婦がどのような結婚生活を送っていたのか、おふたりがどのようなことを考えて毎日を過ごしていたのか、それは不明。ましてや、長い結婚生活の間に一度や二度の浮気があっても仕方がないなどというつもりもない。それを前提としたうえで、著者にはひとつだけ言えることがあるといいます。どちらかに不貞行為があった場合、その原因が100%相手にあると「考えない」ほうが、その後の離婚交渉がうまくいくことが多いということ。苦しさをお金に変えて、その後の生活の糧にするのは間違いではないでしょう。ただし、その場合でも被害者意識を持っていると、なぜかうまくいかないのだそうです。その理由について著者は、「相手が100%悪いと思っているときは、その怨念に引きずられ、客観的な判断ができなくなるからではないか」と考えているそうです。■慰謝料の「相場」はどのくらい?しかしそれでも、慰謝料を請求したいという気持ちを抑えられないことだってあるかもしれません。だとすれば次に考えるべきは、「いくら請求するか」ということになるはず。でも、不貞の慰謝料の相場とはどのくらいなのでしょうか?この問いに対しての前提は、「結婚していた期間、不倫していた期間、頻度、同棲までしていたのかなどの不貞の内容、相手に子どもがいるかどうかなど、さまざまな要素が考慮されるので一概にはいえない」ということ。それを踏まえたうえで、著者は「子どもができたら200万円はくだらない」といわれていると答えています。ただし、それは裁判までいった場合の話。示談する場合は、もっと高い金額が払われることはよくあるといいます。とはいえ慰謝料を「心の隙間を癒すための金額」と考えると、値段をつけにくくもあります。■慰謝料は「支度金」と考えるべしそこで著者はよく、慰謝料はあたらしい生活をはじめるための「支度金」だと考えるのがいちばんいいと伝えているのだとか。離婚するということは、新しい生活をはじめるということ。引越し費用のみならず、家具や家電までも含め、さまざまな資金がかかります。また、専業主婦の場合は新しい仕事を見つけるための時間や、仕事が軌道に乗るまでの生活費もかかることになります。これらを「支度金」と考えると、前向きに考えやすくなることに。数字に根拠ができるので、相手へのプレゼンもしやすくなるというわけです。また払う側も、次の人生を踏み出してもらうためのお金だと思えれば、財布を開きやすくなるもの。著者によれば、離婚を機に、資格を取るために学校へ通ったり、海外に留学したり、転職したりする人も多いのだとか。新しい環境に身を置くことで、離婚によって生じる喪失感も、比較的早く癒されるというわけです。慰謝料に関しては、感情に流されることなく、冷静な視点を持つことが大切なのでしょう。*著者によれば、離婚をこじらせてドロ沼化する人と、そうならない人との差は「心の整理の仕方」にあるのだとか。だからこそ、整理方法を身につけるためにも、ぜひ目を通しておきたい一冊だといえるでしょう。(文/書評家・印南敦史) 【参考】※原口未緒(2016)『こじらせない離婚―――「この結婚もうムリ」と思ったら読む本』ダイヤモンド社
2016年03月30日マネーフォワードは3月25日、個人向け自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」シリーズ、ビジネス向けクラウドサービス「MFクラウド」シリーズ、住信SBIネット銀行の顧客向けサービス「マネーフォワードfor住信SBIネット銀行」において、住信SBIネット銀行が提供するAPIとの公式連携を開始したことを発表した。住信SBIネット銀行のインターネットバンキング利用者は、今回の連携により、今後はIDやパスワードを預けることなく、「マネーフォワード」や「MFクラウド」シリーズにおいて、同行の残高情報や入出金履歴などを確認することが可能となる。なお、同APIを利用する際には、同行の認証基盤(Oauth2.0準拠)を用いて認証される仕組みとなっている。マネーフォワードは、引き続き金融機関が提供するAPIとの公式連携を推進していく構えだ。
2016年03月25日連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。○貯蓄目標額はとりあえずでもいいから決める!正社員のサラリーマンなら、20代のうちに200~300万円の資産は作っておきたいものです。もちろん、人それぞれ、会社による収入の多寡や、住宅手当や学生時代の奨学金の返済の有無など、家計の事情は異なります。しかし将来結婚するときに標準的にかかる費用や新生活を準備するための費用は大きく違いません。また、マイホームを購入する場合も、住みたい地域と間取りが同じであれば、準備すべき資金はあまり変わりません。20代の社会人は、まず貯蓄習慣を身につけましょう。貯蓄習慣があれば、よりまとまった資金が必要になる30代、40代が楽になります。独身の方は、将来の選択肢がたくさんあって不確定要素も多いため、貯蓄の目的があいまいになりがちです。ですから、とりあえずでもよいので「貯蓄の目標額」を決めましょう。目的があいまいでも、目標が明確であれば、やる気は出てくるものです。家計の収支から考えて非現実的な目標額を設定しても意味がありませんが、ここでは「30歳までに300万円」を貯めるやり方を考えてみましょう。300万円あれば、結婚費用や新婚旅行費用、新生活準備費用などは十分にまかなえ、ある程度貯蓄があるゆとりのある状態で新しい生活をスタートするができるでしょう。○毎月積立額、ボーナス積立額を決める!まずは、毎年の積立額を決めましょう。単純に考えると、毎年積立額は以下の計算式で決まります。毎年積立額=300万円÷(30歳-現在の年齢)たとえば、現在24歳の方の毎年積立額は、300万円÷(30歳-24歳)=50万円となります。次に、毎年積立額を達成するために、毎月の給料や年2回のボーナスからいくら積み立てるかを決めましょう。1年間で50万円を蓄える場合は、毎月1万円とボーナス1回19万円、毎月2万円と1回ボーナス13万円、毎月3万円と1回ボーナス7万円、毎月4.2万円と1回ボーナス0円などの組み合わせがあります。○給与天引きの仕組みを活用する!給与天引きの税金や社会保険料が、高い金額の割に痛みを感じないのと同じように、貯蓄も給与天引きを活用すれば、楽に財産形成をすることができます。■社内預金制度勤務先に社内預金制度があればぜひ活用したいものです。定期預金の標準的な金利が0.01%という超低金利の現在、預金の利息で増やすことはできません。しかし社内預金は優遇金利が設定されているはず。仮に金利が1.0%であったとしても、一般の金利の100倍です。多くの場合、限度額が設けられていますが、断然有利な制度です。できるだけ活用するようにしましょう。■財形貯蓄制度多くの会社には財形貯蓄制度があるはずです。財形貯蓄制度には「一般財形」「住宅財形」「年金財形」の3種類があり、「住宅財形」と「年金財形」には一定額までは利息が非課税になる優遇がありますが、使い道が「住宅取得」や「老後資金」に限定されています。超低金利のため非課税メリットがほとんどない現在は、用途制限がない「一般財形」を選んではいかがでしょうか。■NISA(少額投資非課税制度)給与天引きでNISA(少額制度非課税制度)が活用できるようにした会社が近年増えています。そんな会社に勤務しているのであれば、NISAを活用してはいかがでしょう。NISAは、1年で120万円までの株や投資信託への投資資金から得られる譲渡所得や配当金、分配金などの収益に5年間税金がかからない優遇制度です。値動きのあるリスク商品への投資になるため元本割れの可能性があります。そのため積立額の全部ではなく、一部をNISAに振り向けるようにしましょう。たとえば、毎月3万円の積み立てをする場合、2万円で社内預金や財形貯蓄を活用し、残りの1万円でNISAに活用するといった具合です。NISAでは、販売手数料や信託報酬の安い投資信託を使うとコストがかからないため効率的な運用をすることができます。投資信託などのリスク商品は、元本割れの可能性がある代わりに、預金を上回る高い利回りを期待することができます。20代のうちにある程度の財産形成をしておくと、その後の選択肢が増えます。財産を作ることは経済的な自由を手に入れることにもつながります。まずは目標を設定し、やりくりを工夫して積み立てをスタートしましょう。※写真と本文は関係ありません○執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。(株)ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)FPオフィスワーク・ワークスのHP
2016年03月23日マネーツリーは、日本ビズアップとの業務連携を発表した。これにより、マネーツリーが提供する「MT LINK」と、日本ビズアップが開発および提供する一般企業・会計事務所向け会計ソフト「クラウド発展会計」とがサービス連携するようになる。日本ビズアップの「クラウド発展会計」は、すでにデータアグリゲーションサービスを提供している先進的な会計サービスである。今回、既存のサービスプロバイダーから、マネーツリーが提供する「MT LINK」へと移行した、初の会計会社となる。日本ビズアップは、移行の理由として、多種多様な約2,400以上の金融機関(銀行口座、クレジットカード、電子マネー)の豊富さとクラウド型電子証明書技術による法人口座対応の技術力、APIベースの柔軟な対応力を挙げている。マネーツリーが昨年1月より提供を開始した「MT LINK」は、今回の連携で10社目となる。「MT LINK」は、昨年より法人口座の対応を開始し、電子証明書を必要とする法人口座への対応数は既に900行を超え、現在、国内第1位の対応数として会計業界のデファクトスタンダードになり始めている。
2016年03月18日TISは3月15日、AIを活用したビジネスを行うスタートアップ企業であるエルブズにシードマネー(ベンチャー・ビジネス創設のために当初投入される資本)を出資したと発表した。エルブズは2016年2月に設立し、高齢者にコミュニケーションサービスの提供を目指しているスタートアップ企業。同社は、Agents of Socialization(社会性エージェント)技術を用いたサービスの提供、広告配信、技術教育、システムコンサルティングサービスなどを事業としている。これまでTISではAI関連ビジネス推進のため機械学習や自然言語処理といったAIを構成する要素技術の検証・開発、関連技術を用いたソリューションの開発とPoC(Proof of Concept:概念実証)を進めており、大学との同技術領域に関する共同研究を実施するなど産学連携での活動も行ってきた。今回、AI活用ビジネスを展開するエルブズに出資することで、AIを活用した自然言語による対話およびコミュニケーションの技術を獲得し、対話プラットフォームを提供するとともに、広範な顧客に対するシステム・インテグレーション事業への活用も想定している。TISは今後もAI分野での社内ビジネス立上げやAI関連子会社の創設、関連ベンチャー企業への投資などを検討・推進し、AI関連ビジネスの拡大を目指す。TISがエルブズに対してシードマネーを出資し、リードインベスターを担い、ベンチャー企業の革新性やネットワークとシステム・インテグレータの総合力を融合することで、互いの利点を活かした迅速なビジネス立ち上げを行う考えだ。
2016年03月16日1月29日に日本銀行(日銀)が突然、「2月から金利を-0.1%にします」と発表しました。このとき、きっと多くの方が「金利がマイナスってどういうこと?」と疑問に思ったのではないでしょうか?通常、プラスになっている金利がマイナスになるということは、お金を銀行に預けると利息がもらえるのではなく、反対に利息をとられるということ?それとも、逆にお金を借りると利息がもらえるってこと?いままでになかったことなので、見当がつかないですよね。これは、民間銀行が日銀に預けているお金のうち、一部にマイナスの金利をつけるという限定的な方法。いまのところ、私たちが銀行に預けているお金や借りているお金がマイナス金利になることはないだろうといわれています。とはいえ、もちろんまったく影響がないわけではありません。たとえば、このマイナス金利によって銀行は、「お金を払って日銀にお金を預けるか、他にお金を貸すか、運用するか」という選択を迫られたことになります。同時に、住宅ローン金利が大きな影響を受けました。というわけで今日は、住宅ローンを組んでいる人にとって気になる“住宅ローン借り換えのポイント”についてお話ししたいと思います。■いま住宅ローン借り換えのチャンス?長期固定金利でもっともポピュラーな『フラット35』の金利を見ると、最低金利は2月の1.48%から3月の最低金利1.25%まで、0.23%引き下がっています。そのため「住宅ローン史上最低金利」などという言葉が、あちこちで飛び交いはじめました。すでに住宅ローンを借りている人なら、「住宅ローンを借り換えるならいまかも?」と思っても当然でしょう。ファイナンシャルプランナーである筆者のところにも、3月に入ってから借り換えのご相談が急増しています。しかし、ただ金利が下がったからといって住宅ローンを借り換えてもいいものなのでしょうか?そもそも借り換えとは、その名のとおり住宅ローンを借り換えること。簡単にいえば、A銀行からB銀行に住宅ローンを借り換えるということです(同じ銀行内での借り換えはできません。あくまで原則ですが……)。一昔前までは、「金利が1%以上、返済期間は10年以上、ローン残高が1,000万円以上なければ借り換えしても意味がない」といわれていましたが、実際はどうなのでしょうか?■失敗しない住宅ローン借り換えとは?曖昧な情報に流されないために必要なのは、借り換えの実態を知っておくこと。そこで、住宅ローン借り換えで失敗しないために知っておくべき2つのポイントをお伝えしましょう。ひとつめは、借り換えには手数料や諸費用がかかるということ。借り換えという言葉を使いますが、扱いとしては、新規で住宅ローンをもう一度借りることと同じ。つまり、借り入れの際の手数料や登記費用等の諸費用が発生します。場合によっては60万円から80万円程度かかることもありますから、この費用を支払ってでもメリットがあるのかを検討しないといけません。ふたつめは、借り換え後の「金利タイプ」「引き下げタイプ」を検討するということ。住宅ローンを返済している立場なら、「金利は低ければいい」「毎月の支払いが低くなるようにしたい」という思いが強くなるのは当然です。しかし、住宅ローン金利とは、見た目の金利の低い・高いだけで単純に選べるものではありません。なぜなら、「その金利が何年続くのか?」「金利変更後の条件はどうなのか?」ということが重要だから。選ぶときは、こういった要素も考慮しなくてはいけないのです。銀行へ相談しに行くと、「借り換えしても月々の返済が安くならないと借り換えのメリットがない」と主張する銀行員が多いとよく耳にします。ですが、実際はそんなことはまったくありません。もし、今の借りている金利がすでに低金利で、借り換えても金利があまり変わらないとします。借り換えても毎月の返済はあまり変わりません。でも、今のままでは金利が3年後までしか保証がない。今借り換えすることで、低い金利がローン完済まで続くことように変更できるとしたら……。そうです。手数料を払ってもメリットがあるかもしれません。この数年の金利低下、とくに今回のマイナス金利は経済の自然現象で起こっているのではなく、日銀の政策で起こっている現象です。このチャンスを生かして、将来にどうメリットを出せるのか?これこそが今回の住宅ローン借り換えの重要なポイントになるのです。(文/ファイナンシャルプランナー・岡崎充輝) 【参考】※岡崎充輝(2011)『住宅ローンの相談を銀行にしてはいけません。』総合法令出版
2016年03月09日マネーツリーは、iOS向けに提供していた資産管理アプリ「Moneytree」のAndroid版の正式バージョンを公開した。Google Playより無料でダウンロードできる。「Moneytree」はこれまで、iOS向けに提供されていた資産管理アプリ。昨秋、Web版を公開し、今年になってからAndroidユーザー向けにパブリックβを公開していたが、この度、Android版の正式バージョンがリリースされた。アプリでは、iOS版と同様、銀行口座、クレジットカード、電子マネー、ポイントカードの管理などが行える。今回リリースされたAndroid版は、同社が提供する、国内2,400社以上の金融機関から、明細データを自動的に取得できるクラウドサービス「MT LINK」上に開発されたものであることがアナウンスされている。対応OSはAndroid 4.3以上。なお、iOS版において有料で提供されている経費精算サービス「Moneytree PLUS」、法人口座アグリゲーションサービス「Moneytree PRO」は現時点で非対応。同社は、世界中で高まるフィンテックの勢いの中で、国内外を問わず、様々な業界において、機会均等に利用できるサービスを目指していくとステートメントを発しており、今回のAndroid版の公開についてもプラットフォームを問わず利用が可能であるというスタンスを打ち出すための施策とみられる。
2016年03月08日マネーフォワードは3月3日、群馬銀行及び滋賀銀行と業務提携を開始した。今後は両行と、自動家計簿サービス「マネーフォワード」、ビジネス向け「MFクラウドシリーズ」などFintech領域における新サービス・新技術の開発を共同で推進していく。○セミナーなども共催予定マネーフォワードは、自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」などを運営。同サービスは、スマートフォンでレシートを撮影するだけで、家計簿の入力は自動的にカテゴリーごとに分けられ、金融機関との連携で銀行口座やクレジットカードの支出も分類される。アプリに連携できる金融機関は銀行、クレジットカード、ポイント(マイル)だけでなく、証券やFXなど2,580社以上の金融機関に対応している。このたびの提携では、同社の自動家計簿・資産管理サービスをベースに、群馬銀行及び滋賀銀行のそれぞれの顧客向けに機能・情報を拡充した「個人顧客向けPFM(Personal Financial Management)」サービスの開発を各行と共同で推進していく。また、ビジネス向けクラウドサービス「MFクラウド会計」などの「MFクラウドシリーズ」の活用促進と、各行が提供するインターネットバンキング等、事業者向けサービスの活用推進を連携して進める。具体的には、各行と企業・会計事務所に向けたセミナーの共催、各行の顧客の「MFクラウドシリーズ」活用の提案などを実施予定。また、各行と「MFクラウド会計」のデータを活用した、融資スキームの共同開発の検討を開始する。ほかにも、相続、確定拠出年金、コンサルティング、金融教育など、Fintech領域における、新たな金融サービスの提供を目指していく。また、マネーフォワードFintech研究所と協働し、国内外のFintech情報・技術の調査などをすすめる予定となっている。
2016年03月07日連載『「老後破産」を回避せよ! - アラサーから始めるマネー対策』では、FPの馬養雅子氏が、貧困により老後の生活が破綻する「老後破産」をどのように回避すればよいのか、アラサーのうちからできる対策法をご紹介します。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――昔に比べると、今はお金と接する機会が減っています。お給料は口座振り込みで、受け取るのは明細書だけ。それすら、ペーパーは発行されずネットで確認するという会社もあるでしょう。その方が効率的だし、現金を落としたり盗まれたりする心配もないというメリットはありますが、"お金"を受け取ったという実感はありません。といっても、もう既にみんな慣れてしまっていると思いますが。支出に関しても、口座引き落としやクレジットカード払いが増えて、現金をおサイフから出すことが減りました。光熱費や通信費などはもちろん、スーパーで食料品や日用雑貨を買うのにクレジットカードを使う人も増えています。さらに、ネットショッピングではクレジットカードが必須。今や、クレジットカードのない生活は考えられません。○つい使いすぎてしまうクレジットカードただ、クレジットカードは現金がなくても買い物ができることから、つい使い過ぎてしまうという人もいるのではないでしょうか。そのせいでお金が貯まらないということもあるかもしれません。使い過ぎてしまうという人はクレジットカードを使わないようにするのが一番ですが、なかなかそうもいかないので、使い方を工夫しましょう。クレジットカードはお金を払った実感がなく、いくら使ったかわかりにくいのが難点。なので、カードを使ったらその日のうちに、何にいくら使ったかをメモするのを習慣にするのがコツです。つまり、「カードを使った」=「お金を使った」ということがわかるように記録するのです。それは、手帳でもいいし、スマホのメモアプリでも構いません。記録することによって「使った」ことが実感できるし、翌月以降に支払わなければいけない金額もわかり、カード代金の引き落とし日に口座の残高が足りないということも防げます。いちいちメモするなんて最初は面倒くさいかもしれませんが、我慢して続ければ習慣として身についてくるはずです。○使いすぎの原因は「タイムラグ」にある老後破産を回避するためには、先取り貯蓄で計画的にお金を貯めていくことが大切。収入からまず貯蓄をして、残ったお金を支出に回すというやり方ですね。クレジットカードの場合、問題になるのは、買い物した日と代金を支払う日のあいだにタイムラグがある点です。「今月はもうお金がない」という状態でも、クレジットカードなら買い物できてしまいます。でも、確実に翌月以降に支払いがあるのですから、その月は使える金額が少なくなり、お金が足りずにまたクレジットカードで買い物をする……。これを繰り返していたのでは支出をコントロールできません。そこで、クレジットカードで買い物をしたら、メモしておくと同時にその時点でお金を使ったことにしてしまいましょう。使った金額をおサイフから出して、取り分けておくのがベストです。それも面倒だということであれば、クレジットカードではなくデビットカードを使うことを考えてみてはどうでしょう。デビットカードはクレジットカードと異なり、使った時点で銀行口座から代金が引き落とされます。口座残高以上は使えないので、買い物しすぎる心配がありません。最近はデビットカードが使えるところが増えていて、ネットショッピングでも利用可能。カードによっては利用金額に応じたキャッシュバックもあります。「ついクレジットカードを使い過ぎてしまう」、「クレジットカードはお金の管理がしづらい」という人には、デビットカードがおすすめです。
2016年03月04日アスクルとマネーフォワードはこのほど、オフィス向け、個人向けの各分野において新サービスを共同開発することを発表した。提供は夏頃開始予定。アスクルは、オフィス用品通販「ASKUL」や、個人向けの日用品ネットショップ「LOHACO(ロハコ)」を運営する会社。一方マネーフォワードは、オフィス向けクラウドサービス「MFクラウドシリーズ」や、個人向け自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」を運営する会社。両社ともオフィス向け、個人向けにサービスを提供しており、経営資源を活用して、顧客へ利便性の高い新たな付加価値を生むことを目指すという理念が一致したため、今回の業務提携が実現したという。○オフィス向けクラウドサービス新サービスのひとつ「MFクラウド for ASKUL」は、マネーフォワードが提供するクラウドサービス「MFクラウドシリーズ」をベースに、国約1,400社のアスクルエージェントやカタログ等を通じ、顧客に適したクラウドサービスを案内する。コールセンター、対面などさまざまなチャネルの支援体制を構築し、国内400万超の中小企業のクラウド活用を支援する。○EC連動型家計簿サービスもうひとつの新サービスは、マネーフォワードが提供する自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」をベースに、アスクルが提供する「LOHACO」の利用者に向けた便利な機能・情報を拡充したアプリケーション。「LOHACO」のタイムセールに関する情報やお得なクーポンの提供や、レシートをスマートフォンのカメラで撮影するだけで簡単に記録できるのが特徴だ。
2016年03月03日