こんにちは。新宿に注文住宅を建てて暮らしている鳥と申します。建築条件付きの設計作業も済み、いよいよ不安だらけの家の工事請負契約をするのか、それとも白紙解除して土地を諦めるのか、決めねばならぬ時が近づいてまいりました。■ 施主にとって不利な契約書!?人のこころは変わるが常。法の力で関係を縛るのは有効な手段です。それでも鳥の元夫は振り解いて行ってしまいましたが……。さて、R社の工事請負契約書について、コンサルさんに解説していただきました。赤枠で囲んだ【特約条項】というR社が追加した部分にご注目。契約までに実施設計図を出してもらえないことは、すでに書きました。その上、こうして契約書上に「契約後に間取りの変更があっても、文句なしね」「契約後に追加見積りがあっても、もう契約解除はなしね」「契約後に仕様変更があっても、文句なしね」と明記されてしまっています。(まあ、この業種では現実的な面で、ある程度は仕方のないことだと思います)でもこの契約書に印鑑を押した後では、「やんごとない理由につき、数百万アップになりました」と言われても、もう断ることが不可能だということです。(以前も書きましたがネット掲示板には、そのような体験をされた施主さんが少なくないことがわかります)ただ、このときのコンサルさんは、「ここを変えて欲しいと言っても、まあ、変えてもらえることはないでしょうね」とおっしゃっていました。建築条件付きという、交渉の難しいケースだったからだと思います。当初「業者の言いなりにならざるを得ないので」とサポートも断られたぐらいですしね……。■ コンサルさんからのメールさあ、当初のコンサルさんのアドバイス通りR社に良い家にしてもらえるよう精一杯働きかけてきた結果、仕様については出揃いました。詰めてゆかねばならぬ時期です。鳥夫婦は、どんなにR社仕様の家にガッカリしても、「やはり土地が諦められない……我々には土地が大事なので」と言っては、契約締結に向けて歩を進めてきました。そしてコンサルさんからは、以下のようなメールをいただきました。***********************************なお、今後の進め方について再確認しておきたいと思います。すでに構造図面はできているわけですし、契約までに出してもらえる図面はどんどん出してもらう15日までにすべてを決め、その後は詳細見積書と決定仕様書の提示を求める詳細見積書が出れば、優先順位にしたがって取捨選択する(予算に合わせる)工事金額が決定したら、(工事開始後の変更を含めて)それ以降の変更は一切なし契約書・約款の説明を受け、納得がいかない文言の修正を求める第三者現場検査を入れる旨を伝える契約調印保奈美さん(40代半ばだと思われる女性設計士さん)に工事内容チェックシートへの記入を依頼する-追伸-一生のうちで最も大きな買い物なのに、すべてが明らかにならないにも関わらず契約しなければならないこと、言い値で金額が決まること、そして十分に吟味する時間が与えられていないこと、これらは本来あってはいけないことだと思っています。そのような中で契約しなければならないのは大変ですが、お二人が汗水流して働いたお金と交換するわけですから、可能な限りその額に相応しい価値を手に入れていただきたいと思います。しかし、保奈美さんは、お二人が支払う金額の中から給与を受け取ることになるにもかかわらず、よく逆ギレなどしたものだと感心させられます(笑)。***********************************コンサルさんも、絶対に勧めたくないであろう家の購入に向けて、最大限できることをやろうとしてくださいます。話すと疲れさせられるという残念な面もあるにしろ、ど素人で困ってしまっていた鳥夫婦のために、これほど親身に面倒見ていただけたことは、本当に心強くありがたかったです。鳥夫婦は、この家を買うのか新宿くんを諦めるのか、毎夜のように夫婦で話し合いました。そして、とうとう、鳥夫が、結論を出しました。(鳥)■この連載の一覧を見る■
2018年10月03日マイペースに賃貸業を営んでいるアサクラですが、世間を賑わす不動産の話題が気になることもあります。最近気になるのはやはり、過熱ぎみの不動産投資とそれに伴うトラブルのニュースです。不動産投資の怖さは「おいしい話」ばかりが独り歩きしてしまい、困難やリスクが語られにくいこと。そこで今回は、大家的視点から見た「ゼロから始める不動産投資の難しさとリスク」について考えてみたいと思います。■ 不動産投資はとにかくシビアな金銭感覚が必要ナカムラ / PIXTA(ピクスタ)うちのマンションは親族から引き継いだ古い物件を、家族みんなに助けてもらって経営しています。ですから、賃貸経営といっても、物件を取得するための多額な初期投資がない分、ゲタをはかせてもらっての商売です。その分、リノベーションにもメンテナンスにもしっかりと予算を割くことができています。仮にビジネスとして少々割が合わない投資でも、自宅の延長としてマンションをとらえているので「自分の家のために使った」と思うと納得できてしまいます。HM / PIXTA(ピクスタ)しかし、ゼロから資金を借り、ローンを組んで不動産を取得し、それを賃貸に出すとなると事情が違います。投資である以上、金利を含めて銀行への返済をおこない、そのうえできちんとした利益を出さねばなりません。そのためには、とにかくお金に対するシビアな感覚を求められます。入居者獲得のために物件は充実させたい、しかし、利益を考えるとお金はかけられない……。freeangle / PIXTA(ピクスタ)賃貸経営は常にこのせめぎあいにさらされるビジネスですが、不動産投資で利益を上げている人たちの話をうかがうと、みなさん、僕とは比べものにならないくらい厳しいラインで、このせめぎあいに苦しんでいます。投資である以上、投下した資金と労力に見合う利益が出なければ意味がないのです。僕などは利回りの計算などを見せられると頭が痛くなってしまいますが、綿密な計画なくして不動産投資はできません。■ 物件の維持管理にかかるお金や労力もバカにならないアオサン / PIXTA(ピクスタ)緻密な計画には「今後〇年のあいだに物件のメンテナンスにいくらかかるか?」という見通しも含まれます。しかし、この見通しをつけること自体が、簡単ではありません。水道ポンプが急に故障したり、古い電気ヒューズが飛んだり、僕が体験しただけでも予想外の出費はたくさんありました。僕が無知だったということもありますが、こういうトラブルを予測して長期の資金計画に盛り込むのは、かなり難しいことです。また、僕のように入居者と同じ屋根の下に暮らしていれば、トラブル発生時に自分が駆けつけることができますが、マンション投資をしている人のほとんどは物件の近くに住んでいるわけではないので、誰かに代わりに対応してもらわなければなりません。あんみつ姫 / PIXTA(ピクスタ)となると、業務を管理会社に委託することになりますが、そのためには管理料(家賃収入のうちの3~8%くらいといわれます)を支払わねばなりません。管理会社選びも重要です。うっかり質の悪い管理会社を選んでしまうと、満足のいく対応をしてもらえない可能性もあります。うちに入居いただいた方の一人は、前に住んでいた物件で上階からの漏水があった際、遠方に住むオーナーと管理会社のたらいまわしに遭い、なかなか問題が解決せずに苦労したとおっしゃっていました。僕個人としては、自分が子どもの頃から暮らしていた物件を管理するのにも四苦八苦していますから、よく知らない遠方の物件を購入して管理するなんてことは、ちょっと想像できません。■ 家賃保証で不動産投資を丸投げするリスクsasaki106 / PIXTA(ピクスタ)すべてを人任せにするという不動産投資も喧伝されています。たとえば、こんなセールストークを聞いたことはありませんか。「あなたはローンだけ組んでください。できたマンション(アパート)は我々が借り上げて経営します。ローン返済はマンションが勝手にやってくれます。ウン十年間、家賃も保証しますから心配ありません」大家をやっている身からすると、「こんなおいしい話、あるわけないよな」とすぐわかります。家賃というのは、まさに不動産賃貸業の生命線です。それを何十年にもわたって保証することなんてほぼ不可能な話です。まちゃー / PIXTA(ピクスタ)時代的に見ても、新築マンションが乱立し人口が減少に向かうなか、常に安定した家賃収入を想定すること自体、無理があります。実際、「家賃保証」という言葉が醸し出す安心感とは裏腹に、その現実は残酷です。不動産会社は、経済状況の変化などを理由に家賃を減額できるし、契約を解除することもできるのです。つまり、「家賃の支払いは保証するけど、いくら払えるかはわからないよ」ということですね。個人的には、これでは「家賃保証」とは言えないと思うのですが、法律的にはそれがまかり通ってしまうのです。■ 借地借家法は不動産業者の味方?sanae / PIXTA(ピクスタ)この「約束破り」を可能にしているのが、借地借家法(の悪用)です。常々申し上げているとおり、現在の借地借家法は「借りる側に圧倒的に有利」にできています。通常の個人(弱者)が、マンションやアパートという資本を持つ人間(強者)から物件を借りるという前提なら、それも一理あるのかもしれません。大家の気まぐれで追い出されたりすれば、入居者の生活は成り立たないですよね。しかし、不動産会社という資本力のある強者が、(相対的に見れば弱者である)オーナーから「一括借り上げ」というかたちでマンションやアパートを「借りる」場合でも、この借地借家法が適用されるわけです。つまり、「家賃保証」のような約束を交わしても、不動産会社は法的な弱者であることを盾に、いざとなれば契約を変更・破棄することができるというわけです。結果的に本当の弱者であるオーナーが苦境に追い込まれる事態になります。これはルール自体に問題があると言わざるをえません。不動産投資をするなら、すべてを人任せにせず、最低限の法律知識を持って自分を守る必要があります。■ マンション経営だってリスクのあるビジネスですしゅんちゃん / PIXTA(ピクスタ)とまあ、いつもに比べてやや殺伐としたテーマで書きましたが、やはり「マンション経営だって、ほかのビジネスと同じでリスクがある」というきわめてあたりまえの結論に行きつきます。うちのように、「親族から引き継いだマンションを」「子どもの頃からよく知っている地元で」「自主管理している」場合でも、それなりの出費や苦労があるわけです。ならば、「ゼロから多額のローンを組んで」「よく知らない土地にマンションを建て」「その経営を人任せにする」ことが、いかに困難でハイリスクなことか容易に想像がつきます。なんとなく「老後の蓄えにマンション経営」なんて考えている方もいるかもしれませんが、ゼロから始める不動産投資には、新しいビジネスを起業するくらいの心構えが必要だと思ったほうがいいでしょう。
2018年10月01日家族のあり方も変化していき、最近では二世帯住宅も増えています。二世帯住宅が増えた理由は「女性の社会進出による子育ての変化」「親の介護」などさまざまです。それらを互いに支えるために二世帯住宅を検討する家族が増えました。しかし、義両親と住むことは必ずしもうまくいくわけではなく、悩みや不満を抱えているケースも多くあります。ハウスメーカーに5年勤めた経験から、二世帯住宅を建てる前に多くの人が抱えやすい悩みや不安、その解消ポイントを解説します。あわせて、うまくいくケース事例もご紹介。■ 義両親と同居、どんな暮らしになる?暮らし方が変わる二世帯住宅の種類千和 / PIXTA(ピクスタ)二世帯住宅における、義両親との暮らし方は以下の3つです。それぞれのメリットと実際の暮らしなどの本音も見てみましょう。完全同居型EKAKI / PIXTA(ピクスタ)個室以外、ほとんどの生活空間を共用するタイプです。コストはあまりかかりませんが、生活となると気を使う部分もあるそうです。部分同居型Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)玄関やキッチンなどの一部を共用しつつも、リビングなどは分けるタイプです。玄関などは、どの程度のスペースをお互いに使うのかを遠慮してしまいがちになるそうです。完全分離型千和 / PIXTA(ピクスタ)義両親との生活空間を完全に分けた暮らし方です。生活リズムがほとんど異なる義両親との生活ですから、完全に分離することで相手を気にせず済むようです。■ 二世帯住宅を建てる前、実際に多い悩みや不満U-taka / PIXTA(ピクスタ)1.光熱費の支払いの不満Naoaki / PIXTA(ピクスタ)家を建てると、ほとんどの方は住宅ローンを組むでしょう。月々の負担が増えるため、毎月支払う水道、ガスなどの光熱費についてもシビアになります。そんな中、二世帯住宅で義両親との共同生活において、光熱費について話し合えていなかったり、なかなか言えずにうやむやにしてしまったことで、不満が募っていくケースがあります。今後ずっと支払っていく光熱費ですから、事前に話し合うか、義両親であるがためになかなか言い出せない場合は、夫もしくは妻に相談して言ってもらいましょう。2.部分同居型にしたが、それに対する不満二世帯住宅では敷地が十分に確保できて、コストもかけられるのならば、完全分離型にしたい方が多いでしょう。ですが、なかなかそれが難しい方もおり、一部を共用スペースにします。多いのは玄関とキッチンと水回りです。YUMIK / PIXTA(ピクスタ)生活スタイルやリズムがそれぞれの世帯で異なりますから、どこを共用しても息の詰まるような気分になってしまうケースが多いです。例えば玄関を例に出すと、収納部分がどちらかの世帯の物で占領されてしまったり、または逆に占領してしまうことを気遣ってしまったりと快適に暮らせなくなる恐れがあります。言いにくいことでも、暮らしてから不満を抱いたり、もめ事が起きるよりも事前に確認しておく必要があります。3.建築費の支払いの割合freeangle / PIXTA(ピクスタ)どちらがどれだけ支払うか細かく話し合っていないパターンです。子世帯がほとんど支払うパターンや義両親が資金を一部援助するパターンもあるでしょう。支払いで不満が出る多くのパターンは、義両親が打ち合わせにて、知らず知らずのうちに最新設備を入れたり、窓を大きくしたり増やしていたりして、コストが上がっているパターンです。子世帯はそれを否定しにくいため、我慢してしまうケースが多いです。設備や建具など金額が増えそうな打ち合わせの際に一緒に打ち合わせをして、確認するのがオススメです。4.友人やママ友を呼ぶのに遠慮してしまうUshico / PIXTA(ピクスタ)自宅に頻繁に友人を招き入れる方は、話し声などの騒音で義両親に気を遣ってしまうケースがあります。二世帯住宅にしてからできなくなってしまっては不満が溜まってしまいますよね。こちらも一緒に住む以上、事前に理解してもらうことが必要です。5.義両親から干渉されてストレスを感じるFast&Slow / PIXTA(ピクスタ)いくら完全分離型の二世帯住宅にしても、一つ屋根の下に暮らしているわけですから、お互いの暮らしを監視しやすい面もあります。特に多いのが、子どもができてからの義両親からの干渉や口出しです。夫婦2人とも家を留守にしなければならないときなどは、すぐに頼めるので助かりますが、普段の暮らしも干渉されてしまうと不満の原因になってしまいます。直接言いにくかったら、遠慮せずに夫または妻に相談しましょう。■ 二世帯住宅で義両親と本当にうまくいくケース事例maroke / PIXTA(ピクスタ)ここで義両親との生活が成功したケースをいくつかご紹介します。1. 夫または妻がしっかりと仲介役になってくれる本当の親ではなく、さらにパートナーの両親には直接言いにくいこともたくさんあるでしょう。そんなときにしっかりと仲介役を引き受けてくれるパートナーだと、成功しているケースが多いです。2. どんなに仲が良くてもガスメーターは別々にしている義両親の理解もあり、事前にガスメーターを別々にする話し合いができている家族はあまりモメていません。3.共用されたら困る部分や、共用せざるを得なくなってもお互いのスペースを決める暮らし方は人それぞれですから、靴が大好きな人は玄関周りを占領してしまうでしょう。そういった譲れない部分は事前に伝えておく必要があります。4.家を建てるまでの打ち合わせは、一緒のときと別々の日を分けてするハウスメーカーで建てる場合は完成まで打ち合わせをします。毎回別々で打ち合わせをしていると知らない間に色々な設備を入れてしまったりすることもありますし、反対にいつも一緒だとそれぞれの本音を担当スタッフに言えないこともあります。スタッフに、分けたいときと一緒にしてほしい日などを事前に調整してもらいましょう。5.お金に関することを事前に話し合う費用はとても重要な部分です。どれだけ支払うのか、義両親が出してくれるのか納得するまで話し合いましょう。■ まとめYUMIK / PIXTA(ピクスタ)二世帯住宅の悩みや不満についてご紹介してきましたが、いかがでしたか?事前に話し合うなど準備をしておかないと、どんなに仲の良い家族でも、もめ事に発展する恐れもあります。不満は少しのキッカケから生まれてくるものなので、それをお互いにスルーせず、お互いの快適な暮らしのためにも納得行くまで話し合いをしましょう。
2018年09月29日今回は不動産取引における「片手」「両手」というものについてお話したいと思います。不動産取引で業者が客から受け取るお金は、賃貸借、売買いずれの場合も原則として契約締結に持ち込んだ場合の仲介手数料だけです。物件を何件も紹介し、交通費などの経費を使って現地案内を繰り返したお客様でも、他社で契約されてしまえば1円のお金も入ってきません。業界が抱える問題点のすべての根源が、ここにあるように思います。仲介手数料は、賃貸の場合は月額賃料の1か月分、売買の場合は売買代金の3%+6万円と決まっています。売り上げを増やして給料を上げるためにはなるべく金額の大きな物件を決めることがカギとなりますが、もう一つの手段として「両手」をねらうというものもあります。そもそも「両手」「片手」とは一体何のことを差すかご存じでしょうか。■ 売主と買主に別々の仲介会社がつく「片手」取引って?shimanto / PIXTA(ピクスタ)不動産取引において賃貸の場合は貸主と借主、売買の場合は売主と買主という2組の当事者があります。家を売りたい、貸したいと思っている人は自分で客を探すのが難しいため、媒介契約を結んで不動産業者に依頼します。一方、家を買いたい、借りたいと思っている人も不動産業者を訪れて物件を紹介してもらいます。ややこしくなるため、ここから先は売買に限定します(賃貸でも内容は変わりません)。甲さんの依頼を受けたA社が売却活動をした物件をB社が乙さんに紹介し、甲さんと乙さんの間に1,000万円で売買契約が成立したとします。この場合A社は甲さんから、B社は乙さんからそれぞれ36万円の仲介手数料(税抜)を貰います。売主側と買主側の仲介会社が違うこのような取引を「片手」と呼びます。■ 売主と買主の仲介会社が同一の「両手」取引って?ふじよ / PIXTA(ピクスタ)甲さんから売却依頼を受けたA社が、A社で物件探しをしている丙さんに紹介して甲さんと丙さんの間で売買契約が締結されたとします。この場合A社は売主の甲さんと買主の丙さんの両社からそれぞれ36万円の仲介手数料(税抜)を貰うことができ、1件の取引で2倍の売り上げとなります。このような取引を不動産業界では「両手」と呼んでいます。当然のことながら営業はまず両手を狙います。物件を「物上げ」した場合まず自分の客に紹介できないか考え、次いで同じ店の他の営業に紹介可能な顧客を抱えていないか確認します。物件情報をオープンにするのはその後です。■ 「両手」取引はそんなに悪いことなの?maroke / PIXTA(ピクスタ)この両手取引が“評論家”の間で評判が悪く、「不動産業界における悪しき商習慣」の筆頭のようにまで言われています。私が不動産業界に転身した19年前、入社初日に読んだ業界誌で「両手取引では利害関係が異なる売主・買主の双方に対して責任が果たせない」と書かれていたことを今でも覚えています。売主は高く、買主は安く取引したいのが当たり前なので一つの会社で仲介するのは利益相反だと言うのです。両手取引の場合買主と売主の間に1社しか入らないため、買主の値引き要求(「指し値」という)があれば売主がそれを飲まされて損をするというのですが果たしてそうでしょうか。現実の取引では購入申し込み(買付け)が入ると片手であっても両手であっても仲介会社は何としてもその客で決めたいと思います。先ほどの事例でいえば、B社にとっては自社で紹介した物件で決まらなければお金になりませんし、A社にとってはこの申し込みが破談になればそれ以降に別の申し込みが入る保証はなく、それではやはりお金になりません。ですから指し値が無茶な内容でない限り、買い付けが入ればA社は売主を説得しようとします。これはA社の両手取引でも変わりません。売主の側にとっても早い段階で指し値に応じて売ってしまうことにメリットはあります。指し値を断って破談になればその後物件が売れ残る恐れがあり、そうなると値引きか売却中止しかないからです。そもそも売主は指し値が入ってくることを前提にして、相場に少し上乗せして値付けをしているものです。そして買主の希望する金額が納得できなければ断ればいい話です。お互いが意地になって50万円の差額がどうしても埋まらず、両手取引が成立しなかった経験が筆者にはあります。従って、両手取引で誰かが不利になる、という事は実際にはないのです。■ 「両手を狙って物件を囲い込む」というのは本当?ふじよ / PIXTA(ピクスタ)「両手取引を狙うあまり、業者は物件情報を他社に流さず囲い込む」という指摘もよく見ます。囲い込みにより売却が遅れたり、それによる値引きで売主が不利益を被るというものです。両手取引はもちろん効率的ですが、特定の物件に狙ってできるほど客付けというのは簡単なものではありません。物上げした物件をピンポイントで気に入ってくれる客を自分で見つけるのは至難の技で、そんなことをしても買い客を逃すだけです。囲い込んだまま売れずに売却中止になる、あるいは一般媒介に切り替えられて他決するという最悪の事態を考えると、両手取引を狙って物件を囲い込むことにメリットはありません。何より営業マンというものは今月の数字をどうするかということしか考えない人間です。将来どうなるかわからない物件を抱え込むよりは、片手でいいから決めて今月の数字にしたい、と考える方が普通でしょう。あくまでも両手取引を目指す、という会社も中にはあるかもしれません。しかし私がこれまで在籍してきた会社はすべて「片手でいいから決めて、今月の数字を何とかしろ」という方針でした。囲い込みが業界内で常態化しているかのような指摘は、実態から乖離しているといえます。■ 薄っぺらい業界批判に惑わされず、不動産業界を正しく理解してほしいABC / PIXTA(ピクスタ)これまでも書いていますが、不動産というものは金額が高く、売るのが大変だからこそ、買い付けを取るためにあらゆる可能性にかけるのです。そのため他社が物件を内見するのは大歓迎され、予約を入れれば「ありがとうございます!頑張ってください!」と言われます。不動産やマンション管理についてのニュースはこまめに見るようにしていますが、実務について何も知らずに書いていると思われる、薄っぺらな内容の業界批判が多すぎるようです。不動産は契約にならなければお金にならず、それでいて契約を1件まとめるというのは大変だということをお分かりいただきたいと思います。(written by 鶴間 正二郎)
2018年09月27日今回は物件を購入する際の「値下げ交渉」についてお話します。不動産は高額の買い物であるために少しぐらい値切りたいというのは自然な感情ですが、効果的な交渉を行うためには取引の仕組みを知っておく必要があります。中古物件と新築物件では状況がまったく異なってくるため、それぞれのケースについて実体験に基づいてご説明します。■ 「中古物件」の値下げ交渉は常識の範囲内で行うことがポイント売主と買主の間に仲介会社が入る「中古物件」の場合、値下げ交渉は売り主側の仲介会社(物元、元付)と買主側に仲介会社(客付)の間で行われることになります。中間業者による中古物件の「値下げ交渉」についての仕組みをご紹介します。ABC / PIXTA(ピクスタ)値下げ交渉は「買い付け」を書くことが大前提値下げ交渉のタイミングとしては「お気に入りの物件が見つかった時」になりますが、実際の交渉は不動産購入申込書(買い付け)を物元業者に提出することから始まります。Good morning / PIXTA(ピクスタ)中古物件において値下げ交渉をするということは「ここまで価格を下げてくれれば『絶対に』買います」という意思表示であり、そのための証として買い付けは必須で、これを書かなければ物元業者は交渉に応じてくれません。申込書を提出しているのですから、交渉が成立した場合はそのまま契約準備に入らなければなりません。筆者は何回も値下げ交渉を行いましたが、値下げの余地について物元業者に事前に打診しても「買い付けを入れてくれれば、売主と交渉します」としか答えてもらえなかった記憶があります。また自分が物元の物件に問い合わせがあった際も同様の回答をしており、値下げの可否について事前に探りを入れるのは難しいと考えておいた方がいいでしょう。そもそも大幅な値下げはありえないTATSU / PIXTA(ピクスタ)物件探しに際して買主は仲介会社に希望条件を伝え、それに基づいて仲介会社は物件を紹介します。条件の中でも価格は最も重要な要素であるため仲介会社は細心の注意を払って紹介するものであり、大幅な値下げ要求というのはそもそもありえないはずです。そうでないのは仲介会社が買主の希望を無視した物件を紹介したか、買主の欲の皮が張ってしまったかのいずれかで、どちらにしてもあまり感じのいいものではありません。非常識な値下げ要求には仲介会社が応じないfreeangle / PIXTA(ピクスタ)筆者の場合は、950万円の物件に600万円で買い付けを出され、上司から「そんな買い付けを取ってどうするつもりだ」と怒られたことがあります。客はローンではなく現金で買うのだから下げて当然だろうと主張し、こちらが何度説明しても「銀行を通さない綺麗な金だから売主にとってもありがたい話のはずだ」と譲りません。とても売主にはかれるような話ではないため、最終的に担当者の判断で断りを入れました。売主は「指値」が入ることを前提に価格を設定しているfreeangle / PIXTA(ピクスタ)そうはいっても不動産は高い買い物であり、少しくらい値切りたいというのは自然な感情です。実際に買い付けを書く際にも販売価格そのままの金額を書くことは稀で、いくらか減額した金額を記入している事例が大半だったように思います。このように買主が希望した金額を指値(さしね)といいますが、たいていの売主は売却開始に際して指値が入ってくることを前提として価格を設定しているものです。「査定価格としては3,000万円ですが、指値が入ってくることを考えて3,300万円で市場に出しましょう」というような話を筆者は何回もしました。常識の範囲内の「指値」には応じてくれる可能性大xiangtao / PIXTA(ピクスタ)売主は指値が入ることを前提に価格を設定しているのですから、常識的な範囲の価格交渉には応じてくれる可能性は大であり、むしろ指値を入れないのは損であるといってもいいでしょう。どのくらいが常識の範囲内であるかということは仲介会社の営業マンが一番よくわかっています。■ 「新築マンション」の値下げ交渉は状況次第新築物件の場合は中古とは事情が異なってきます。筆者は新築の戸建は扱った経験がないため、マンションの事例についてご説明します。shimanto / PIXTA(ピクスタ)竣工前でモデルルームで販売しているような物件の場合は値下げ要求はまずできませんが、売れ残ってしまった完成物件の場合は交渉の余地があります。売れ残った部屋に関しては売主が区分所有者ということになって管理費や修繕積立金の負担も発生するため、業者は多少値下げしてでも売ってしまわないと負担が大変なことになるのです。特に棟内モデルルームで使用していた部屋や最後の一部屋というような場合は交渉に応じてくれる可能性大であり、積極的に申し入れましょう。Ushico / PIXTA(ピクスタ)この場合は業者の営業担当者と直接交渉することになり買い付けの提出は不要ですが、「下げてくれれば買います」と明確に意思表示すれば相手も応じてくれやすくなります。不動産は金額が大きいため、ちょっとした交渉でまとまった金額を節約することが可能です。しかしここで非常識な態度に出てしまうと信頼関係が損なわれ、交渉そのものが壊れてしまうことになります。値下げ交渉においてはくれぐれも「常識の範囲内」ということを大切にしてください。
2018年09月23日こんにちは。新宿に注文住宅を建てて暮らしている鳥と申します。納得いかないことばかりの建築条件付きの家づくりに最後までジタバタし、設計はほぼ完了の段階まできた鳥夫婦でしたが……。■ ヤメテ監理建築士は「設計」だけではなく「監理」という重要な役割も担うとのこと。現場をチェックしたり、重要な箇所の写真を提出させたりして、自らが設計した図面通りに施工業者に建てさせるよう働きかけるのだそうです。保奈美さん(40代半ばだと思われる女性設計士さん)に「あの、監理はやはり保奈美さんが?」と聞いてみたところ、「Yes」。……。鳥夫が心配して、「建築業界ってちょっと荒っぽいというか、怖い男の人が多い印象があるのですが、女性の保奈美さんが監理ってやりづらくないんですか?」と聞いたところ、「逆に女の方が可愛がってもらえるというか、”お願いしますよー”って頼めばうまくいきやすいところがあるので、逆に言うこときいてくれるんですよー(笑)」と、珍しく女を出した四十路の保奈美。直後に恥ずかしくなったのか、デコルテがピンク色に染まるのを、鳥は見逃しませんでした。普段だったら、恥じらった熟女がほんのり肌を紅潮させる風情に「うぅ~ん、艶っぽいじゃ~ん、ヒューヒュー!」ともてはやす鳥ですが、この状況での保奈美さんには残念さしか感じませんでした。ある日の打合せで、それとなく鳥夫が「保奈美さんは、注文住宅の設計とかもされるのですか?」と聞いたところ、「私は建売しかやったことないんですよねー」というご回答……。本当に申し訳ないのですが、「私が設計した家」「自分の作品」とプライドを持って仕事しているようには見えない保奈美さん。監理などという、施工業者を巻き込み・手綱を締めて・しっかりとした施工へと持っていかせる、という気力のいる仕事を、保奈美さんができるのでしょうか?■ ヤメテ工務店監理に期待できないとなると、施工T社が「監理の眼などなくても、実直で真面目な仕事をするさ!」という矜持を持った工務店であることに期待するしかないのですが……。コンサルさんは最初からおっしゃっていました。「T社は、本当の注文住宅を建てられないと思いますよ」規格住宅のみ繰り返しているようだから、多様な建築士の設計に柔軟に応えられる技術力はないだろうとのこと。さらにコンサルさんは施工T社のホームページや業界の評判も調べてくれて、「ほら、ここを見てください。これこれこうでしょう?T社自身は施工しないでしょうね。T社からどこかの孫請け工務店に丸投げされるんですよ。そしてね、通常、孫請けに丸投げされた場合は……」などと、懸念される施工の問題について教えてくれました。そして「良い工務店とはどういうところか」についても、いろいろ教えてくださいました。■ 新宿くん(※土地)への執着「設計面だけではなく施工面までも不安だらけか……」ここまでマイナス要素が出揃っても、まだ新宿くんの足元にしがみついてしまう鳥夫婦。実は、新宿くんと出会った後も、他の仲介業者さんには黙っていました。建築条件を白紙解除する可能性も考え、引き続き土地情報を送ってもらうために。しかし新宿くんを知ってしまった後では、全く魅力を感じない土地ばっかり……。笑えるのは、新宿くんの契約をした数週間後に、同時分譲の南向き角地の情報が来たこと。「まだ土地さえ未分譲の段階で、仲介Y社から情報をもらって、半地下ではないし500万円以上安かった一区画を契約済みですよ……」とは言えず、適当な理由をつけてお断りしました。(営業さんは「すごくオススメの非公開物件なんですよ!」と渋っていました)「こんなに希望通りの土地には、もう出会えない気がする……」そう思うと、とても新宿くんを諦めきれませんでした。もしかしたら読者の方々には、鳥夫婦が、家づくりにこだわりがあるように見えているかもしれません。でも単に「心配性」で「コスパにうるさい」性格だからジタバタしているだけであり、そもそも鳥夫婦の価値観は「土地(立地)>家」であり、「上物は消費財であるコスト」という認識です。西新宿に惚れ直してしまった今、ここまで希望を裏切る家づくりでも、やはりこの土地を諦めきれなかったのです……。(鳥)■この連載の一覧を見る■
2018年09月20日こんにちは。新宿に注文住宅を建てて暮らしている鳥と申します。R社との建築条件付きの家づくりが佳境に入ってきたのですが、概算見積書しかもらえず、窓・ドア・照明・etc、の金額がわからない。コストダウン(減額調整)さえまともにできない家づくりに、どんどん気力が失われてゆく鳥夫婦です……。■ 手すり I 型でも最後の気力を振り絞り、一番重要な3階パソコン部屋に、鳥の儚い願い、大好きな肘掛窓をリクエストしました。(肘掛窓:座って肘を掛けられるくらいの高さに設けた窓のこと)しかしリクエストして数日後、保奈美さん(40代半ばだと思われる女性設計士さん)から以下のようなメールが*************************************メーカーより連絡があり、手摺バーを部屋内に1本付けるだけですと保証ができないので、添付カタログのような手摺を外側に付けないとダメと解答がきてしまいました。カタログの画像と合わせてご検討いただければと思います。*************************************嫌な予感しかないが、添付ファイルを開いたところ……「あたし、前世で悪事でも働いたのかな?」人の心って、報われないことが続くと、自己攻撃で納得し始めるらしいですね……。■ 家づくりのベストなフローって?コンサルさんが口酸っぱくおっしゃっていたアドバイス。「工事請負契約を交わす前に、実施設計図を出してもらってください」施主にとってコントロールしやすいフローは、お家欲しい!→ 設計士選び→ 基本設計図作成→ 設計契約→ 実施設計図完成→ 工務店相見積り→ 工事請負契約であるのに対し、今回のR社のフローはお家欲しい!→ (土地に紐づいて)設計士・工務店が勝手に決まっている→ 基本設計図作成→ 設計契約・工事請負契約→ 実施設計図完成というものでした。設計士も選べないし、工務店も選べないし、相見積りも取れないのです。つまりR社に主導権があるフロー。R社の言いなりにならざるを得ず、見積額が高くなる可能性が高いのです。■ 契約後に金額アップされる可能性も!?さらに契約後に実施設計図完成となると、見積額は変わらないのに仕様がグレードダウンされていた諸事情のため設計図が変更になり、見積額が増額された概算見積では予算内だったのに、最終見積では数百万円高かったなどをされても、法律上文句は言えないとのこと!このような窮地に追い込まれてしまったら地獄ですよね……。鳥は無駄に強い不安感から、家づくりに関するネット掲示板などで、先輩方の実際の体験談も読み漁っていたのですが……。実際に上記のような窮地に追い込まれ、怒りのあまり、その体験を業者の実名を晒して書き込んでいる先輩方も少なくありませんでした。残念ながら、建築業界では決して珍しい話ではないのです。一応、保奈美さんに「契約後に見積額が増額されるようなことはないですよね?」と確認したところ、「それはないですよ!」とのご回答。しかし過去に、とっくに平面図も確定し構造計算も終了していた段階で、「大変申し訳ありません!実は北側斜線に引っかかってしまうことが判明しました。建物の角度をほんのちょっとだけ西に回転させてください!」という基本的なミスが発覚したことで、もうこいつ……ごほん、彼女は信じ切れない……。この調子だと、工事請負契約後に、「大変申し訳ありません!確認申請に出したところ、これこれの理由が判明したので、このように変更させてください!」などという重要な変更・増額を申付けられそうな気が……。だって、「北側斜線でやむを得ず」「確認申請でやむを得ず」などという大義名分付きで言われちゃったら、こちらとしては何も言えないしさ。これは鳥の妄想とは限りません。なぜなら最初にいただいていた仕様書にも、しっかり変更の可能性がちらついています……。これってさ、「いただく」「ございます」なんて大変丁寧な言葉遣いで書かれているけど、実質言っていることって、「こっちの都合で勝手に変えるからよー。でも文句言うなよな」ってことでしょ……。都合のいい女になりたくないのに、新宿くんに惚れた弱みよ……。(鳥)■この連載の一覧を見る■
2018年09月12日太陽光発電こそ一般的に認知されてきましたが、今では自宅で使う1次エネルギーをまかなう、より環境に配慮した住宅が基本になってきています。よりよい住環境になるだけでなく、省エネで光熱費の節約もできる!これからの基準となっている住宅や設計手法をご紹介します。最近よく耳にする ZEH(ゼッチ)って?昨今の環境配慮住宅の代表格ともいえるZEHハウス、聞いたことはあるけどいまいちよく知らないという方も多いのではないでしょうか……。ZEHハウスとは、冷暖房や換気、給湯、照明といった1次エネルギー消費を自宅で発電しまかなう住宅のことをいいます。電気料金を抑えられるだけでなく、地球温暖化対策にも貢献できるんです。サスティナブルな社会を実現させるためにもますます重要になってきています。最近話題のゼッチってどんなもの?太陽光発電との関係を徹底解説!カラダにもやさしい♪自然を活用したパッシブ設計風の通り道を作って、風通しのよい住宅にしたり、建物の配置を工夫して陽の光をうまく取り入れたり。自然エネルギーを最大限に活用して快適な空間にする「パッシブ設計」という考えがあります。カラダにやさしいだけでなく、光熱費の節約にもつながるのでZEHハウス実現のためには積極的に取り入れていきたい設計手法です。自然を感じる暮らし〜パッシブ設計とは〜高気密高断熱が鉄則!?住宅の気密性と断熱性能を高めることで、外気の侵入や外の熱を遮ることができ、室内の冷暖房効率はグッと上がります。このことで、冷暖房費を節約でき、夏は涼しく冬は暖かい住宅が可能になります。つまり、高気密高断熱住宅にすることでエネルギーロスが最小限になり、ZEHハウスに一歩近づきます。夏涼しく冬暖かいエコ住宅(高気密高断熱住宅)太陽光発電で創エネ!ZEHハウスを実現するためには、「断熱」の他に「創エネ」「省エネ」が大事な柱になってきます。次にご紹介する〔雑司が谷ZEH・ゼロエネハウス〕は、太陽光発電を用いることで年間エネルギー収支マイナスを実現させています。開口部は熱負荷が大きくなりがちなため取り入れるのが難しいですが、こちらの住宅ではZEHハウスでありながらも、大きな気持ちのよい窓が設けられています。のびのびとした吹き抜け空間も魅力的です。雑司が谷ZEH・ゼロエネハウスハニカムブラインドで暖かさを蓄える!次にご紹介する住宅はリビングに大きな吹き抜け空間があり、上部に光窓が取り付けられています。冬場は、日中に太陽の陽をたくさん取り込み、同時にその陽の暖かさを利用して室内を温めます。大きな窓には断熱性の高いハニカムブラインドが取り付けられているので、夜間はそれを下ろすことで家にフタをし、日中溜めた熱を外に逃さない仕組みになっています。夏場は逆に暑い日差しを遮るのにも活用できるようになっています。ハニカムブラインドが年間を通して作用する機能的な工夫です。太陽の暖かさを蓄える家足立の陽器(ようき)な家まとめ今回は、環境配慮に対して工夫がなされている住宅をご紹介しました。ZEHハウスは、住宅を建てる際の基本となってくるのでぜひ知っておきたい存在です!最近では、ZEHハウスや省エネ住宅に対して補助金制度も導入されています。家計にも、これからの地球環境にもやさしいサスティナブルな住宅をぜひ検討してみてください。省エネ住宅にする際に利用出来る補助金や税制をまとめてご紹介
2018年09月04日こんにちは。新宿に注文住宅を建てて暮らしている鳥と申します。建築条件付きの家の設計にはまったく満足できないのに、土地は手に入れたいという気持ちに変わってしまい、より苦しくなってしまった鳥夫婦です。■ 上物はいらない、土地だけ欲しい不良(ワル)な四ツ谷くん(※土地)に熱を上げ、大人しい新宿くん(※土地)に対しては、「いざとなったら白紙解除すればいいしぃ」というヤリ逃……ごほん、遊びのつもりで関わっていた鳥。それが新宿くんと関わっているうちに、新宿くんに本気になってしまいました。そうなると急に執着が出てきます。「この人を手放したくない」と……。しかし二人の恋路を、姑(R社)が阻みます。(妄想族なため、設定がコロコロ変わっていきますが、気にしないでください)今回のR社の設計にまったく満足できていない。あんな外観の家で暮らすなんてムリ。じゃあ建築条件を外してもらうしかないが、これ以上土地にお金をかけられないし(すでに予算を400万超えている)、建築条件を外してくれない可能性もある。この土地を諦めて別の土地を探すか?でもこんな好条件の土地、もう二度と手に入らないのでは?やはり土地を手に入れるためだけに家は妥協するか……。いや、でもあんな外観の家……。ぐるぐるぐるぐる。そうこう言っているうちに、どんどん建築条件の白紙解除の期限が迫ってきます。やはりコンサルさんの言う通り、期限までは最大限検討するしかありません。■ 概算見積書は出てきたけれど…さあ、とりあえず見積書の件です。コンサルさんから「とにかく早く詳細見積書を出させてください。期限が非常に短いので、先に先に検討しないといけないので。先方は別に検討する時間を与えるつもりはないでしょうから、こちらが引っ張っていかないといけません!」とのアドバイス。しかしアドバイス通りに「一式見積りではなく、詳細見積りを下さい」と頼んでも、姑はお茶ばかり飲んで、なかなか出してくれません。諦めず(鳥夫が)保奈美さん(40代半ばだと思われる女性設計士さん)にしつこく頼み、さらに施工T社の営業くんにも伝えたりなどしてがんばったところ、やっとこさ以下の「概算見積書」が出てきました。「一式見積書」の段階では「本体工事」という名でまとめられていた以下の赤枠部分が、分割されて記載されているのものです。ちなみに、以下のオマケ資料付き。まあ、本来であれば一式見積書しか出さないところを、 なんとかここまで出してくれただけでも「私達のために動いてくれた」と言えますが……。■ でもこれじゃ減額調整ができない!でもこちらがやりたいことは、「このWICのドアをやめることで、いくらコストダウンできるか?」「この寝室の窓をワンサイズ小さくすることで、いくらコストダウンできるか?」という「見積調整」「減額調整」なのです。最小限の予算で、満足のゆく家が欲しいのですから。この概算見積書では、相変わらず「減額調整」などできないまま。だってドアも窓も「建材工事」っていう一項目にまとめられちゃっているのですもの。でも窓は鳥のこだわりポイントです。他の部分はもうしょうがないので我慢するとしても、どうしても窓は……窓だけは……!鳥の好みに少しでも近づけてくれないか……!!気力を振り絞り、保奈美さんに伝えました。「見積書ありがとうございます。でもすみません、この見積書ではそれぞれの窓の値段がわからなくて、この窓をやめるとか、違う窓に取り替えるとかの意思決定ができないです……」すると次回の打合せで、保奈美さんがサッシメーカーのカタログを手に「どういう変更がしたいですか?」と聞いてきました……。ポツリポツリと場当り的に伝えるたびに、保奈美さんはカタログをペラペラとめくり、「あった!」とつぶやいてはその窓の価格を教えてくれます……。でも、そもそもカタログに掲載されているのは定価で、実際の価格でもないですし……。一生懸命対応してくれる保奈美さんに申し訳ないと思いながらも、もう本当にR社との家づくりに気持ちが萎え萎え……。(鳥)■この連載の一覧を見る■
2018年09月03日念願の注文住宅とはいえ、実際に住んでみてからでないと気づけないことというのは、たくさんあります。ちゃんと考えて建てたはずなのに、後々になってから「ここをこうしておけばよかった!」と後悔する人も少なくないようです。せっかく大金をかけるのですから、できることなら後悔はなるべく少なくしたいし、初めからほぼ満点の自宅にしたいもの。そこで、注文住宅(リフォーム、リノベーション含む)のマイホームを手に入れた人たちに、不便な点や不満に思うことについてリサーチしてみました。■ 必要なのに見落としがちな未確保スペース5か所1.子どもの落書きスペース「目を離すと子どもが床や壁に落書きしてしまうことがあるので……」(33歳/パート)マコ / PIXTA(ピクスタ)2・キッチンのゴミ箱を置くスペース「建売住宅なら仕方がないけど、せっかく自分仕様にできるのにゴミ箱の存在をすっかり忘れていました」(35歳/専業主婦)さわだゆたか / PIXTA(ピクスタ)3・玄関まわりに背の高いものを収納するスペース「今思えば、ほうきやデッキブラシなどを収納するスペースを確保すればよかったと後悔しています」(39歳/パート)ABC / PIXTA(ピクスタ)4・リビングに掃除機を置くスペース「友人の家で見ていいなと思ったのですが、リビングの中に掃除機をしまうためのちょっとしたコーナーを設ければよかったなと思います」(40歳/専業主婦)sasaki106 / PIXTA(ピクスタ)5・トイレと洗面所の収納スペース「後から自分で置くとダサいし、収納力もいまいち。さらにお風呂に入る度にパジャマとタオルを各部屋に取りに行かなければならないのも時間と労力のロスになるのでストレスが溜まります。少しばかりの金額をケチって造り付けなかったのは本当に失敗でした」(31歳/フルタイム)チンク / PIXTA(ピクスタ)■ 今の住まいでの不満点を書き出すことが「必要なスペース」確保の第一歩!話を聞いてみると、掃除道具が出っ放しになるのがピシッと片付かない原因だったり、洗面所にタオルや下着類、パジャマなどを置くスペースがないために生活動線が乱れやすくなったりするようです。Graphs / PIXTA(ピクスタ)子どもの落書きスペースに関しては、部屋のテイストに合わせておくのがオススメです。そうすることで、子どもが落書きをしない年齢になっても家族の連絡用やカフェ風インテリアに再利用することができますよね。使い勝手の良いマイホームにするために「必要なスペース」というのは、意外にも見落としてしまいがち。これを見つけるためには、とりあえず今の住まいでの不満点を書き出してみるのもありかもしれません。ぜひ、参考にしてみてください。
2018年08月29日こんにちは。新宿に注文住宅を建てて暮らしている鳥と申します。3F(不安・不快・不満)の連続だったR社との建築条件付きの設計作業が、いよいよ終盤に入ってきた鳥夫婦です。■ 衝撃!キノコの生える家まだ鳥がピチピチジューシーな女子大生だった太古の記憶。今でも印象に残っている、お昼のワイドショーの映像があります。ご自慢のデザイン住宅(←当時、家に興味のなかった鳥でもスタイリッシュな印象を受けた)を背に、顔にモザイク、ヘリウムガスを吸ったような声で、めちゃくちゃテンション低くインタビューに答えている男性施主。次の画面で、そのスタイリッシュなデザイン住宅の窓枠がアップで映し出されたのですが、なんと、にゅうっと突き出している複数のキノコが……。衝撃でした……。キノコ……。刈っても刈っても生えてくるという……。それはそうでしょう。もうその窓枠の木材に、菌糸はびっしり入り込んでいるのですから……。生物の奥深くに組み込まれた増殖のプログラムに抗うことは不可能です。外国にある巨大なアロエとか、癌細胞の映像とか、あの無心に増殖へと突き進む生物の映像を見るたびに、鳥は無力感を感じます。しかもその施主曰く、「デザイン性の高い建材を海外から取り寄せて建てたので、取り替えるにも、同じ建材がもう手に入らないんですよ……」。輸入建材を採用してまでオシャレでクールにキメた施主が、キノコハウスと化したマイホームを背にインタビューを受けている図……。鳥が「マイホーム」といわれると「欠陥住宅」を連想してしまうようになったのは、このワイドショーの衝撃映像からでした。■ 恐怖!壁を剥がしたらカビだらけの家残念ながらこの衝撃映像しか覚えていないのですが、おそらくキノコハウスを生み出した要因は、いい加減な施工(雨漏り)か、結露対策の甘さでしょうね。他にもYouTubeで「欠陥住宅」などと検索していたら(鳥の心配性活動の一環)、「咳が止まらなくなり、体調が悪くなっていきました。来客にも “この家、カビくさいよ” と言われたため、壁を剥がしてみたら……カビだらけで……」と言いながら、壁を指さす被害男性の映像も見ました。確か、これは結露が原因だったかと思います。鳥夫は、なぜかカビが大嫌い。生理的に拒否するらしい(おそらく前世で、感染症かなにかで死んだのでしょう)。「結露対策をしっかりしないと、壁内がカビだらけになる可能性があるよ!」と鳥夫をたきつけたところ、予想通り、結露対策へと走り出しました。■ R社の家の結露対策は?もう読者の方々も予想できていると思いますが、当然R社の基本仕様は、別段結露対策もされていないものでした。コンサルさんには推奨する建築工法がありまして、その工法は結露対策もしっかりしているとのこと。鳥夫婦も、どうせ自分達にはわからないしと、素直にコンサルさんご推奨の工法で建ててほしいと思いました。そして保奈美さんに「この工法で設計してくれ」と頼んだのですが、「それに対応するサッシがないので」「今回はこれこれの方法のため対応できないので」とアッサリ却下。この頃は最後の追い込み時期で、鳥が(前回記事に書きました)肘掛窓の件、鳥夫が結露対策の件にこだわり、R社相手に粘っていました。しかし、肘掛窓に「手すりI型」がつくショックで、鳥はKO負け。「手すりI型」が致命傷となり、ハートが引き裂かれてしまった鳥は、家造りから引きこもってしまいました。その間、鳥夫はまだ粘り強く戦い、コンサルさんの推奨する工法は却下されたものの、「Tハウス」で用いられている「外壁通気工法」を採用してもらうことに成功。そして、以下がお約束のオプション見積書です。これが、鳥夫婦が検討したオプション見積書の、最後となりました。(鳥)■この連載の一覧を見る■
2018年08月24日おそらく、人生のなかでもっとも高額な買い物であるマイホームの購入。誰もが、高額の買い物である不動産を「少しでも安く買いたい!」と思うはず。そこで、不動産業界で約30年間、実際の取引現場を見てきた筆者が考える、「不動産を購入する際の値引き交渉の方法」や、そのタイミング、やってはいけないことなどについて解説します!■ 誰が交渉するの?bee / PIXTA(ピクスタ)まず、買主が売主と直接交渉する機会はほぼありません。ほとんどの場合、売主と買主の間には「仲介業者」が介在しますので、値引き交渉は仲介業者を通して行うことになります。ただし、売主が不動産業者などの場合で、売主が「直に販売」をしているようなケースでは当然、買主と売主が直接交渉することになります。■ いつ交渉するの?xiangtao / PIXTA(ピクスタ)たくさんの物件情報を集め、いくつも現地を見学し、「お気に入りの物件が見つかったとき」こそが交渉するタイミングです。逆にこのタイミング以外で仲介業者が交渉を引き受けることはありません。値引き交渉をするうえで覚えておきたいのは、「買う意思を固めてから交渉を行う」ということです。物件の売主は、市場相場を事前に調べたうえで売り出し価格を決めていますので、その価格を交渉するためには「この価格になれば買う」という前提が必要なのです。■ どうやって交渉するの?xiangtao / PIXTA気に入った物件が見つかったら、いよいよ交渉開始です。まずは仲介業者に「少し安くなりませんか」とストレートに聞いてみましょう。仲介業者の担当者によって多少の差はありますが、一般的に営業マンは、顧客が気に入りそうな物件については、価格交渉ができそうな物件かどうかを事前に調べている場合が多いのです。価格交渉が難しい物件について、安易に価格交渉を引き受けてしまうと、その交渉が失敗した場合には取引が成立しない可能性が高くなるので、値引きができる物件かどうかを担当営業マンが事前に調べておくのは当然といえば当然です。例えば、担当営業マンが「この物件は一切値引き交渉できません」というならおそらくその言葉どおりでしょう。その場合は売り出し価格どおりで購入するかどうか検討してください。逆に、「○○万円までなら可能かもしれません」や、「○○万円までなら交渉してみましょう」と言ってきたら、担当営業マンは値引きができるかどうかの可能性を事前にある程度知っているかもしれません。その場合は思いきって交渉してもらいましょう!■ 交渉のコツxiangtao / PIXTA(ピクスタ)買主が値引き交渉する窓口となるのは仲介業者です。そして、仲介業者は契約が成立しなければ、物件を何件案内しても売り上げは「0円」です。なので、買主が契約する条件を「値引き」にするなら、仲介業者は一生懸命に交渉してくれるはずです。しかし、その値引き交渉の額があまりに高額だったりすると、仲介業者は交渉そのものを引き受けてくれなかったり、熱心に交渉してくれなかったりする場合もあります。大事なことは「値引きしてくれるなら購入する」という意思をはっきりと担当営業マンに伝えて、その値引き幅についてもしっかり担当営業マンと相談することです。値引き交渉のコツは、買主と仲介業者の担当営業マンが、見る方向と目的を同じにすることなのです。■ 値引き交渉でやってはいけないことxiangtao / PIXTA(ピクスタ)個人、法人にかかわらず売主にとって自分の物件を値引きして売るということは重大な決断です。値引き交渉後に「やっぱりやめた」というのはできるだけ避けたいものです。その物件をきちんと確認・調べたうえ、購入の意思がしっかり固まってから交渉を始めるようにしましょう。また、ある物件の値引き交渉中に別物件の値引き交渉を同時に行うのもマナー違反なのでご注意を!■ 一番の注意点は…先に買われてしまうことxiangtao / PIXTA(ピクスタ)値引き交渉をする場合、もっとも注意しなければならないことは、タイミングによってはせっかく気に入った物件が売り出し価格どおりで他の買主に先に買われてしまう可能性があるということです。物件の希少性、時期、値ごろ感、仲介業者の意見など、総合的に考えたうえで値引き交渉するかどうかを判断しましょう!
2018年08月21日こんにちは。新宿に注文住宅を建てて暮らしている鳥と申します。恋焦がれた四ツ谷でもないし、質に期待できない建築条件付きの家づくり。「こんな物件、さっさと白紙解除して逃げ出したい!」という気持ちでいっぱいだった鳥夫婦でしたが……?■ 黄昏時の西新宿新宿くん(※土地)との婚約時、鳥は四ツ谷くん(※土地)のことが忘れられていませんでした。婚姻届(※土地契約書)に判を押した後、四ツ谷くんが恋しくて悲しくて、電車内で泣いたのはまだ少し前のこと。でも設計が始まると、何度も新宿くんの元へと足を運び、土地や隣家の形状などを確認しなくてはなりませんでした。新宿くんに会いにゆくときは、せっかくなので、最寄りの地下鉄駅ではなくJR新宿駅で降りることが多かったです。新宿駅の西口から出て、西新宿の高層ビルの谷間を散歩しながら向かう。宵っ張りの鳥夫婦が西新宿に着くころは、いつも夕方。あの、落日後の残り陽のなか、街灯や信号の光が潤む時間。鳥が一番好きな時間。西新宿のビル達も、直線的な形状をたたえたまま、美しく切なく潤んでいます。「ああ、やっぱり、西新宿はいいなあ」そう感じながら、何度も鳥夫と歩きました。(もともと鳥が東京で一番好きだったところは新宿であり、四ツ谷は土地探し中に惚れたエリアでした)西口周辺は人混みが激しいですが、5分も歩くと、もう閑散とし始めます。オフィスビル街なので、週末は人がいないのです。さらに歩くと、高層マンションも混じってきます。大型の建造物は、足元に空地を作らねばならないので、広々としています。空地には緑や水が積極的に取り入れられているので、「西新宿なんて、高層ビル街で殺伐としているのではないか」という予想に反して、意外とおっとりさが感じられるのです。平日はサラリーマンで溢れているであろう、ビルごとにある喫茶店も、週末は空いて居心地の良いことを知りました。精緻な高層ビル街を抜けて住宅街に入ると、庶民的で優しい空気感へと変わり、灯りの点る窓からは炊事の音が聞こえたりして。でも振り向くと、錚々たる高層ビル街の夜景。このギャップ。「もしかして住むかも」と思うと、西新宿についてさらに調べるようになり、歴史・未来(再開発)・出来事・特徴など、知れば知るほど改めて魅力を感じるようになっていきました。■ 時間とともに気持ちは馴染んでいくそう、建築条件付きの家造りにジタバタ飛び回っている間に、いつしか鳥の心は、四ツ谷くんから新宿くんへと移っていったのです。別件の用事があり、数か月ぶりに四ツ谷くんに会いに行ってみたところ、「えっ……こんな感じだったっけ……?」ケイセイ / PIXTA(ピクスタ)四ツ谷くん周辺の私道はかなり幅が狭めだったため、「こんな狭かったっけ……あれ……あれ……」と違和感を感じてしまったのです。あんなに恋い焦がれていた四ツ谷の空気感にも、心がときめかない。見上げた空に、私を取り囲んで見下ろすビル達がいない。「ああ、私は、いつのまに新宿くんが馴染んでしまった」と気づいた瞬間でした。まだまだ先の話ですが、晴れて希望通りの注文住宅が建てられた直後にも、鳥は新築ブルーになりました。でも、それも時間とともにおさまっていきました。人の心って、このように、時間とともに順応してしまうのですね。しかし新宿くんに気持ちが移っていったことで逆に問題が大きくなりました。希望すれば100%叶うであろう「白紙解除する」という方針から、「R社の仕様の家はイヤだ。でもこの土地は逃したくない。R社に建築条件を外してもらわないといけない」という意向に変わってしまったのですから。(鳥)■この連載の一覧を見る■
2018年08月21日皆さんは注文住宅派ですか?それとも建売住宅派ですか?それぞれメリットとデメリットがあるので、どちらが良いかなんて決められないですよね。とはいえ、2棟も購入するわけにいきません。だからこそどちらにしよう、と悩んでしまいますよね。今回は注文住宅を選ぶべき人と、建売住宅を選ぶべき人、またそのメリットとデメリットについて考えていきたいと思います。自分たちに合ったスタイルを見つけて、後悔しない家づくりをしましょう。注文住宅と建売住宅、その違いと確認したいポイントそもそも注文住宅と建売住宅の違いは、どういったものなのでしょうか?2つの違いと購入する前に確認したいポイントをご紹介します。注文住宅とは?Satoshi KOHNO / PIXTA(ピクスタ)注文住宅は完成形がなく、自分たちで間取りやインテリアなどすべて考えて建てます。でき上がったものがないため、住宅展示場や実際の建てた家を見に行って、どんな家にしたいのか想像力を膨らませます。また坪単価はありますが、金額も決まっていないため、自分たちのさじ加減で総予算が変動します。つまり、建物だけでなく、解体工事なども含め全体のプランができ上がるまで、資金計画が見えないところがあります。注文住宅を建てる前に確認したいポイント注文住宅で建てる前に確認したいポイントは以下の3つです。実際に色々な建物を見て、自分のしたいことが明確にできているか?家を建てたらしたいことをメモしてあるか家を建てるのにどんな費用がかかるか把握しているか。その上で資金計画を立てているか注文住宅は最後までどんな建物ができるのか、いくらかかるのか見えません。大きなお買い物ですが、意外とざっくりでしか計画を立てていない人が多いものです。建売住宅とは?cba / PIXTA(ピクスタ)建売住宅は注文住宅とは正反対で、最初から完成形があり、その中から自分たちが選んでいくというものです。ですから、購入する前に確認できるので、気に入ったものがあればすぐに購入できます。あらかじめ金額が見えるのも、わかりやすいところです。ですが、建売住宅はしっかりしてるものもありますが、いかに早く建てて、早く売るかなので工事がどこまで丁寧なのか見えない部分があります。建売住宅を購入する前に確認したいポイント建売住宅を購入する前に確認したいポイントは以下の3つです。瑕疵担保責任ではなく、他に保証はついているのか?また、それは何年か?どこまでが標準なのか?ペアガラスなど、オプションになるものはあるかサッシや扉などの取り付けなどがしっかりしているか建売住宅を購入したあと、オプションで数百万円上がってしまったという事例もよく聞きます。あらかじめ確認しておきましょう。注文住宅と建売住宅、どちらが向いているか?どちらも一長一短であり、悩むところは多いでしょう。選ぶ基準は、自分がどちらが好みかどうか、で決まっていくのではないでしょうか。注文住宅に向いている人cba / PIXTA(ピクスタ)注文住宅に向いている人の傾向は以下の4つです。「家を建てたら〇〇がしたい」など理想やこだわりがある。金額よりも保証内容を重視したい。家の工法や、外装・内装にこだわりがある。家づくりをじっくりと楽しみたい人建売住宅に向いている人Ushico / PIXTA(ピクスタ)今度は建売住宅に向いている人はどんな人か見ていきましょう。向いている人の傾向は以下の4つです。とにかく初期費用を安くしたい。家の間取りや保証など、あまりこだわりがない。入居するのに急いでいる。あまり手間をかけたくない人。いかがですか?あなたはどちらが多く当てはまりますか?注文住宅 or 建売住宅。その選択に後悔しないために…cba / PIXTA(ピクスタ)ほとんどの方は住宅を購入するのは一生に一度で、多くても2回程度でしょう。大きな借金を抱えて、ずっと住んでいく家ですから、後悔したくありませんよね。業者さんから「今買わないとなくなってしまいますよ」と言われることが多いと思います。それはあながち間違いではありません。人気の物件は本当に問合せが殺到して、すぐに購入されてしまいます。すべて条件が同じ土地は、この世にありません。YNS / PIXTA(ピクスタ)ですから、本当に自分たちが納得して気に入ったのならばすぐにおさえるべきです。しかし、少しでも引っかかるところがあるならば、他の人に買われても仕方ないという覚悟で、購入するのを思い留まりましょう。そして納得するまで見させてもらってから、購入するようにしましょう。cba / PIXTA(ピクスタ)いかがでしたか?何度も言いますが、住宅は一生に一度の大切なお買い物です。どこで踏ん切りをつけて良いのか判断が難しいところですよね。購入を思い立ったら行動すると同時に自分たちはどうしたいのか、しっかりと家族ですり合わせしてから購入することをオススメします。
2018年08月17日日々進化する住宅設備のおかげで、わたし達の暮らしは大変便利なものになりました。しかし、住宅設備のなかには、設置した後に思いもよらないトラブルやクレームが発生することも。今回は、意外な住宅設備トラブルについて、4つの具体的な例を挙げながらお話ししたいと思います。■ 1.「魚焼きグリルのガラス窓」で幼児がやけどをする事故もruna / PIXTA(ピクスタ)キッチンコンロについている魚焼きグリルのガラス窓にさわり、幼児がやけどをする事故が増えています。国民生活センターによると、「魚焼きグリルのガラス窓」でやけどを負う幼児は、月齢8か月から25か月(0歳~2歳)で、身長は70~80cm。一方、魚焼きグリルのガラス窓の高さも、おなじく70~80cmとなっています。また魚焼きグリルのガラス窓の温度は、魚焼きグリル使用時で84度(IH)~150度(ガス)と高温です。つかまり立ちや歩行ができるようになった幼児が、伝い歩きで魚焼きグリルのガラス窓をさわると大やけどをする可能性も。mits / PIXTA(ピクスタ)対策としては、歩き始めの好奇心旺盛な子どもが触れないように、キッチンに侵入防止用の柵をつける、幼児期には魚焼きグリルを使用しない、などの方法があります。また魚焼きグリル扉の高温を抑制できる商品も販売されているので、コンロごと交換するという方法もあります。■ 2.「省エネ給湯器/家庭用コージェネシステム」と睡眠障害の関係ABC / PIXTA(ピクスタ)エネファームやエコキュート・エコウイルなど、電気やお湯を高効率で生み出し、環境にも優しい「省エネ給湯器/家庭用コージェネシステム」は、国や自治体の補助金などの後押しもあり、設置するご家庭が増えてきています。しかし、自宅や隣家にある省エネ給湯器/家庭用コージェネシステムの運転音により、不眠や耳鳴り・頭痛などの健康障害を発生したという訴えが、最近、目立ってきています。HiroS_photo / PIXTA(ピクスタ)健康障害の原因とされているものが、運転音に含まれる「低周波音」で、人体に不快感や圧迫感・睡眠障害を引き起こすと言われています。家庭用コージェネシステムの運転音と健康障害の関係性は断定はできないものの、その関連性は否定できないと、消費者安全調査委員会(消費者庁)も判断しています。いまのところ明確な対策はありませんが、運転音の発生源である省エネ給湯器/家庭用コージェネシステムの設置位置を、建物から少し離れた場所に設置・移設するなどの方法がとられています。■ 3.「温水洗浄便座」で低温やけど!?naka / PIXTA(ピクスタ)今では多くの家庭に普及している「温水洗浄便座」。その普及率は6割を超えています。1年を通して便座が温かいのは快適ですが、皮膚感覚の弱い高齢者には注意が必要です。独立行政法人製品評価技術基盤機構によると、高齢者が温水洗浄便座を使用して「低温やけど」を負った事故が、平成27年に4件発生しています。「低温やけど」は、体温より少し高い熱が長時間作用することで皮膚の深部にまで及び、皮下組織が壊死する場合があるため、重傷事故に至るおそれがあるものです。対策としては、便座の温度設定を「低」にするか、または使用直前まで温めて、使用中は「切」にするなどの方法が推奨されています。■ 4.「24時間換気」は音がネック?ABC / PIXTA(ピクスタ)新鮮な空気を取り入れて空気中の化学物質を排出し、また結露やカビの発生をおさえる「24時間換気」は、いまの住宅には、設置が義務付けられています。この24時間換気ですが、換気方式が3種類あります。そのなかで、給気も排気も機械で行う第一種換気方式は、計画的な換気が可能な反面、ファンなどから発生する異音が、クレームへとつながっています。「寝室についている給気口からの音が、思ったよりうるさくて、眠れない」という苦情は多い反面、「運転音であって、故障ではない」というメーカー側の見解から、交換などの対応はしてくれません。対策としては、ダクトや給気口まわりに、消音ボックスを取り付ける方法がありますが、取り付けの際には、メーカーに確認する必要があります。イグのマスタ / PIXTA(ピクスタ)いかがでしたか?エコで快適な住宅設備は、いまでは生活に欠かせないものとなりました。しかし、使い方や設置場所を考慮しないと、トラブルになってしまうケースも。設置してから後悔しないためにも、住宅設備の選定・使用は、慎重におこなってください。(しかまのりこ)【参考】※国民生活センター/こんろのやけど※消費者庁/家庭用コージェネレーションシステムから生じる運転音により不眠等の症状が発生したとされる事案※独立行政法人製品評価技術基盤機構 高齢者の製品事故にご注意ください-介護ベッド、電動車いす、温水洗浄便座-
2018年08月16日マイホームは「一生に一度の買い物」とよくいわれていますよね。これから建売住宅か注文住宅の購入を考えている方が、筆者の体験をもとに購入するときに知っておきたいことについてご紹介します。■ 建売住宅もしくは注文住宅を購入するときに確認したいことマイホームを購入するときに私自身が確認したことは、主に「設備」と「家事動線」の2つでした。詳しくは以下にまとめます。設備の確認maruco / PIXTA(ピクスタ)建売住宅やか注文住宅の購入において事前に確認したいポイントは、やはりコストと住宅に導入する設備の性能のことです。特に注文住宅は、土地だけの価格は提示されていても、家に関する価格は最初から提示されていません。実際に我が家も注文住宅を選択(※後述も参照)しましたが、設備を選ぶときに「あれも入れたい、これも入れたい」という欲望が積み重なったことで予算がオーバーしました。最後は夫婦で話し合って本当に必要な設備を選びました。家事動線の確認TATSU / PIXTA(ピクスタ)家事でキッチンや洗面所をフル活用する立場だと、家選びでもやはり「使いやすさ」を重視するでしょう。私もマイホームを検討している段階で、キッチンや洗面所といった家事動線が自分の考えとマッチしているか分析し、頭の中でシミュレーションも行いました。新しい家に住んでから「前もって分析やシミュレーションすれば良かった……」と後悔しないよう、家事動線も忘れずに確認しましょう。■ 建売住宅と注文住宅、それぞれどんな人にオススメ?我が家では、賃貸住宅に住んでいた時期に娘がピアノを習い始め、アップライトピアノを購入しました。Tomoka / PIXTA(ピクスタ)ピアノを置くスペースや間取りのこともあり、マイホームには注文住宅を選びました。私のこれまでの経験と、同じくマイホームを購入した友人の様子から、建売住宅と注文住宅のそれぞれの向いているタイプについてまとめてみました。建売住宅がオススメの方めがねトンボ / PIXTA(ピクスタ)早いタイミングで戸建てを手に入れたいと考えているリーズナブルな価格で戸建てに住みたいという考えがあるなど注文住宅がオススメの方cba / PIXTA(ピクスタ)もともと一からモノを作り上げることが苦にならないタイプライフスタイルにこだわりがあり(子どもが本格的に楽器を習っているなど)、ブレない考えを持っている子どもの独立などでリフォームも視野に入れているなどさて、皆さんはどちらのタイプでしょうか。ぜひチェックしてみて下さいね。■ マイホームは大きな買い物、だからこそ後悔しない最適な家づくりを建売住宅と注文住宅はタイプが違っても「人生で大きな買い物」であることに変わりありません。izumi / PIXTA(ピクスタ)だからこそ後悔しない「家づくり」にしたいものですよね。設備や家事動線の確認だけでなく、生活環境・間取り・将来のビジョン、そして家族の好みや考えなどをトータルで検討することをオススメします。
2018年08月14日住まいを購入しようと様々な情報を集めたとき、よく目にする情報があります。「不動産の買い時」についての情報です。不動産価格の相場の話、住宅ローンの金利の話、行政が定める税制の話、など様々な観点から多くの考察がなされています。しかし、不動産業界の中で働く者として皆さんに申し上げたいことがあります。それは「誰にでも当てはまる不動産の買い時」など存在しない、ということです。■ 不動産業者はいつでも「今が買い時です」と言うG-item / PIXTA(ピクスタ)世の中には「今が買い時です!」と強調した情報がたくさんあります。それこそ住まいの見学のために不動産業者を訪れれば、必ず「今が買い時だ」と言われるでしょう。業者からすればビジネスなわけですから「今が買い時だ」と言うのは当然です。もちろん「買い時」であると強調するための事実に嘘はありません。例えば、現在の住宅ローンの金利は稀にみる低さです。商品によっては年金利1.0%を下回るものが珍しくない時代です。金利が低いうちに住まいを購入すること自体は合理的だと思います。freeangle / PIXTA(ピクスタ)しかし、ここで肝心なことが一つあります。それは、不動産業者はいつ、どんな時代でも「今が買い時だ」というトークをやめないということです。買い時アピールができる情報を何か見つけてきます。金利の話でいくと、金利が上がり始めることがあれば、「もっと上がる前の今が買い時です」というトークを展開するでしょう。また、多くの不動産関連の税の優遇制度には適用期限があります。これを「この税制は今年度で終わりなので、適用できる今が買い時です」というトークに活かすこともできるのです。■ 「買い時」は外部環境で決まるものではない。sasaki106 / PIXTA(ピクスタ)前述したような「買い時トーク」は筆者自身も使っていました。特に不動産の知識や経験が浅かった頃です。繰り返しますが、この時提供した情報に嘘はありません。住まいを購入する際、こういった情報を参考にすることはプラスに働きます。まちゃー / PIXTA(ピクスタ)大切なことは、金利や相場、税制などといった情報は、あくまでその時の「住まいをとりまく外部環境」を説明しているだけ、ということを理解することです。こういった外部環境は、とても不安定で不確実なものです。時代によってあっさり変化する可能性があります。そういった情報は、あくまで知識・参考としてのもので自分自身の住まいの買い時を決める決定打にはならない、と私は思っています。■ 「買い時」を決めるのは自分自身kou / PIXTA(ピクスタ)では、どのように自分自身の買い時を見つけるのか。答えはいたってシンプルで、「自分が住まいを欲しい理由」を突き詰めることです。例えば「子どもが産まれて部屋が手狭になったらから住まいを探す」として、買い時を「子どもが幼稚園に入るまで」と決める、などです。子どもが幼稚園・小学校と進めば、転園・転校のリスクが伴い、人間関係の構築に時間がかかる可能性があるからです。maroke / PIXTA(ピクスタ)こういった内容は外部環境に左右されません。たとえ20年後に相場が大幅によくなる、といった情報があったとしても、子どものために住まいを買うのであれば、20年後では意味がありません。他にも「定年までにローンを完済したいから、30歳までに購入する」とか「両親の介護のために半年以内に購入する」などがあるかもしれません。筆者も今は「買い時」をお客様に説明するとき、できるだけお客様の事情に寄り添ってアドバイスするようにしています。住まいの買い時は、誰にでも当てはまるような外部環境の情報でなく、自分自身の事情によって、自分自身で決めることが大切なのです。
2018年08月12日こんにちは。新宿に注文住宅を建てて暮らしている鳥と申します。R社との建築条件付きの家づくりが始まって以来、安心材料がひとつも出てこない状況に、ただただ追い詰められていった鳥夫婦です……。■ 設計・施工業者との関係図マイホームの建て方で最も多い形って、ハウスメーカー(HM)や工務店と契約し、設計・施工の両方を一括で請け負ってもらう形ですよね。また先に書いてしまいますが、鳥夫婦が最終的に採用できたのは、設計事務所に設計を依頼し、工務店に施工してもらう形でした。そしてR社との建築条件付きの家づくりはちょっと特殊で、以下のようにR社が間に立っている形です。だから鳥夫婦はこれまで一度も施工のT社と接触したことがなかったのです。しかし、ある日コンサルさんから「住設機器なども実際に目で見て触った方が良いですよ。”積極的でうるさい施主だ”という印象を持たせる方が良いので、ぜひT社のショールームに行かれたらどうでしょう」というアドバイスを受けました。追い詰められていた鳥夫婦は、さっそく保奈美さん(40代半ばだと思われる女性設計士さん)に頼み、T社に訪問しました。■ 自分たちの家なのに情報を秘密にされるって…T社は直接施主からの依頼(B to C)も受ける工務店ですが、今回はR社が依頼主である「B to B」のお仕事。対応してくれたT社の営業くんも「B to B」部署所属でした。営業くんに案内されながらショールームで住設機器を見学し、今回の仕様についても説明してもらいました。そしてある程度会話が進んだところで、鳥夫が質問しました。「あの一式見積りというものが、どうも私達一般人には受け入れがたいのですが……。R社とどのような契約の仕方をされているのですか?やはり坪単価で話をつけているのでしょうか?」↑以前の記事に掲載した見積書の再掲です営業くん「そうですね……確かにそう思われるのはごもっともだと思うのですが、業界的にそういうやり方でして……。今回はこれこれこういう仕様で坪単価いくら、という契約の仕方なんです。逆に一から見積もったらとても金額が高くなってしまうと思いますよ」鳥夫「それはちょっと困った話ですね……。でも我々としても、あの一式見積書ではちょっと……。厳密なものではなくても、大体でも良いので、なんとか詳細見積書をいただきたいのですがねー」営業くん「うーん……。保奈美さんと相談してみますね」鳥夫「営業くんは、我々がR社から提示されている坪単価はご存じですか?ぶっちゃけ、御社とR社では坪単価いくらで契約しているのでしょうか(笑)?」営業くん「それはちょっと答えられないですね(笑)。あと保奈美さんから鳥夫婦さんにいくらで提示されているのかは、こちらは存じておりません」なんかこの関係性に違和感……。なんでうちの家なのに情報を開示されないの?うちの家じゃなくてR社の家みたいに感じるのは鳥がおかしいの?■ 照明の数さえも標準超えるとオプション!鳥「最初R社さんは別の工務店さんを検討されてましたが、最終的に御社に決まりましたよね?最終的に御社に決まった理由は何でしょうか?」営業くん「その工務店さんのお話は聞いていませんでしたが、そうですねー……、うちは坪単価が低い割に標準仕様が豪華なんですよ。私は前職も今と同じ仕事をしていたのですが、T社に転職してきたとき、”え、ここまで付くの?”って驚いたんですよ。例えば今回の坪単価だと、他の工務店では絶対に食洗器は付かないですね!」でも私達に提示されている坪単価は、R社がたんまり上乗せした後のものでしょ……。いくらT社が安く提供してくれたってR社が儲かるだけじゃん……。せっかく営業くんに付き合ってもらったのですが、鳥夫婦が「このまま素直にR社とT社に建ててもらおう」という気持ちになることはありませんでした。むしろ営業くんとの会話の中で「照明の数も”標準”があり、超えるとオプション」ということを知ってしまい……。「我が家の設計テーマは”ランプの点る家”にしよう!」などと考えるほど照明にこだわろうと思っていた鳥には、さらに萎える結果となりました……。(鳥)■この連載の一覧を見る■
2018年08月10日こんにちは。新宿に注文住宅を建てて暮らしている鳥と申します。R社との建築条件付きでの設計が始まりましたが、勝手に耐震等級や窓の枚数が決められており、「標準」を外れると「オプション」とされる家づくりに違和感ありまくりの鳥夫婦です。■ ローン仮申請のために作った外観図外観図といえば、ローン仮申請のために作った仮プランの際にもいただいていました。でも、あの頃はまだ建築条件付きの家づくりについて無知で、ネット上で見ていたようなスタイリッシュな家ができると思っていた頃。「この外観図って、設計ソフトで自動的に出力されるやつだよね?ローン仮申請のためのイメージ図だよね?」と本当に当たり前に思い込んでしまっていたのです。「まさか私達の家がこのようなデザインであるはずがないでしょ。あはは」って……。そして無事ローンの仮申請が通り、R社と契約を結び、保奈美さんとの家づくりが始まりました。1か月半もすると、鳥の言いなりの間取り・標準枚数に収められた窓・7枚以上の耐力壁などが加味された平面図(間取図)ができあがってきました。そしてそれと同時に外観図(パース図)も渡されたのですが……「えっ……まさか……本当に……この外観……なの……?」あまりの衝撃に、鳥は言葉を発することができませんでした。■ 鳥夫婦の希望する外観イメージ時は少しさかのぼり、保奈美(40代半ばだと思われる女性設計士さん)さんと初めてお会いした日。実は鳥夫婦からマイホームの「希望イメージ集」なるものをお渡ししてあったのです。それは、鳥が「素敵だな」と感じたネット上の画像を貼って、特徴を明記したもの。以下が外観についてのページでした。ここに記載されている通り、外観における鳥の希望はシンプルモダン四角いでした。白いシンプルな壁に、シンボルのように配置された窓……。今宵もその窓から、家人が今・ここで生きている証の灯がもれ……。道往く人々の心まで点すような、計算された美しさ……。ここまでは語ってはいませんが、「四角くてシンプルな外観にしてほしい」とは保奈美さんに伝えてありました。チンク / PIXTA(ピクスタ)設計部長さんとメールだけで設計したローン仮申請とは違い、今回は正式に保奈美さんと相談しながらの本設計です。住設機器などは決められた既製品で仕方がないにしろ、デザイン的な面は(既製品などないのだから)希望通りにしてもらえるものと思い込んでいました。そんな無邪気でバカだった鳥が、保奈美さんから外観図を渡されたときの衝撃をご想像いただけるでしょうか?さあ……、保奈美さんから渡された外観図は……、こちらです!何?この三流音楽家の髪型のような屋根……。何?この乳みたいにうつむいた正面の双璧……。また見るたび脱力したのは、「鳥さんが、四角い外観がご希望とのことなので……」と付けてくれたというこの立ち上がり壁……。(古い商店街に行くと、この立ち上がり壁のある建物をよく見かける)建築家物件を見て憧れてつけてもらった「横長の地窓」が、皮肉にも鳥の儚い憧れを思い出させるシンボル窓となってしまいました……。想像していたイメージとのあまりのギャップに、その日は落ち込みのあまり食欲をなくしてしまいました。(鳥)
2018年08月02日不動産業というものは生活全般に関わるものです。そのため世の中の動きの影響をもろに受けることもあれば、お客様の動きから世の中の意外な流れに気付かされたりすることもあります。今回は世の中の動きが仕事に影響した意外な事例を3つご紹介します。■ 1.若者の車離れがマンションの一般会計を直撃ニングル / PIXTA(ピクスタ)若者の車離れが進行しているといわれています。車を持とうとしないどころか車そのものに興味を持たない、更には教習所に通うのは金と時間がかかるから免許も取らないという、車好きの筆者にとっては信じられないような世の中になっています。これは自動車業界にとって深刻な問題となっていますが、実はマンションの管理組合にとっても重大な問題なのです。YNS / PIXTA(ピクスタ)マンション内の駐車場使用料は管理組合にとって管理費に次ぐ収入の柱であり、空き区画が増えることはその分だけ一般会計の収支が悪化することにつながります。マンションの駐車場はおおむね稼働率7割~8割くらいを想定しています。郊外のマンションの場合まだまだ問題になっていないようですが、筆者が担当していた都心部のマンションでは5割以下になってしまったところが多く、一般会計が大幅赤字になって繰越金が年々減少し、対応に苦慮したものです。■ 2.若者のテレビ離れも相当なものがあるUshico / PIXTA(ピクスタ)車離れほど話題になっていないようですが、若者のテレビ離れも相当なものがあるようです。駅前の不動産会社に勤務していた時、地元のケーブルテレビと提携して「引っ越し時に無料でチャンネル調整をやります」というキャンペーンを展開したことがあります。kou / PIXTA(ピクスタ)お客様と日時を打ち合わせたうえで訪問してテレビのチャンネル調整をするというものですが、その際にしれっとケーブルテレビの新サービスを紹介するのが真の目的です。ケーブルテレビ会社から紹介料がもらえることもあって積極的に告知しましたが、1Kタイプを契約した人の約半数が「テレビを持っていないので別にいいです」と言ってきたのは驚きでした。■ 3.リーマンショックが半年後に筆者の歩合給を直撃オカキ / PIXTA(ピクスタ)最後に、世の中の動きが仕事に影響した事例といえば、やはりリーマンショックです。アメリカの歴史上最大規模の企業倒産であるリーマンブラザーズの経営破綻が発生したのは2008年9月15日でした。筆者はその頃賃貸マンションの仕事をしていましたが、9月という比較的ヒマな時期であったこともあり、クビになった社員が段ボールを抱えて次々とビルから出てくるニュース映像をそれこそ他人事のように見ていたものです。しかしこれをきっかけとして発生したリーマンショックと呼ばれる世界規模の金融危機が直ちに日本を直撃し、さらに半年後には筆者の歩合給を直撃しました。maruco / PIXTA(ピクスタ)賃貸マンションの営業といえば1~3月がとにかく忙しく、特に3月は賃料の高いファミリータイプのマンションが法人契約の借り上げ社宅としてガンガン動くため、1年で最も大切な月になります。生命の危険を感じるほど忙しくなるのが常ですが、その分だけ歩合給も相当な額になります。しかし景気が悪くなれば企業はまず福利厚生に関する支出を削減します。2009年の3月はファミリータイプの法人契約がほぼなくなり、そのためとても3月とは思えない売上になってしまいました。チンク / PIXTA(ピクスタ)いかがでしたか。マンション管理という仕事は景気変動の影響を受けにくいといわれていますが、電気料金の値上げや消費税増税が組合会計を直撃し、それが管理委託費の減額要求に結び付いたこともあります。生活と直結している仕事であるためいつも気が抜けませんでした。
2018年08月01日こんにちは。新宿に注文住宅を建てて暮らしている鳥と申します。勝手に決められている「標準」内での設計、鳥の言いなりの間取り、目を疑うダサさを誇る外観図に、とうてい満足できるはずもない鳥夫婦。そしてコンサルさんの指示通り、断熱・シロアリ対策についても確認したのですが……。■ 断熱について問うコンサルさんから「断熱工法を教えてもらってください」との指示を受け、保奈美さん(40代半ばだと思われる女性設計士さん)に質問してみました。すると「グラスウール(重さ10kg・厚み75mm)を壁面に敷き詰める予定です」とのご回答。断熱材については主義主張によって評価が変わり、どれが優れているのかは一概に言えないようですね。ただいずれにしろR社の「グラスウール(重さ10kg・厚み75mm)」という選択は、「それが最も断熱性能に優れている」からではなく「最低限の性能を確保するための選択」だろうと思いました。耐震等級と同じく。保奈美さんに一応「断熱性能についても気がかりなのですが……」と伝えたのですが、「まあー、でも昔に比べれば、今の家は暖かいですよ」という返答だけ……。ちなみに今回の施工業者に決まっているT社は、「Tハウス」という高気密高断熱工法をウリにしている工務店でした。だったらそのご自慢のTハウス仕様で建ててくれれば良いものを、今回の仕様はそうはなっていない。保奈美さんに「Tハウス仕様にしてほしい」と頼んだところ、「Tハウスそのものは無理だが(理由はおそらく保奈美さんが設計できないため)、せめて断熱材はグラスウールからTハウス用の断熱材に変えてくれる」とのこと。も・ち・ろ・ん、オプションで。なんかさ、コンサルさんのアドバイス通り、「自分たちの要望をぶつけて、できる限り良い家にしていただく」べく対応してもらっても、根本的なツギハギ感が否めないのよね……。ジップアップのフリースを作るお店に行って、「ジップアップのフリースなんて嫌よ!」「フリース生地ではなくダウン生地に変えて!」「裾はロングに伸ばして!」と要望をぶつけて、無理やり仕立てさせているみたいな……。フリース用の型紙なのにダウン生地に変えてしまってズレは出ないのか?ロング丈に伸ばすのにジップアップのままで良いのか?だったら、はなからオーダーメイドのお店に注文した方がスムーズに仕立ててもらえますよね?まさにニーズと合わないお店に行ってしまったということです……。■ シロアリ被害の実体験またコンサルさんから、シロアリ対策についても確認するよう指示がありました。ちなみに、鳥の実家はRC造なのですが、築10年ぐらい経った頃だったかしら……、突然、階段の踊り場に大量の羽蟻が出現しました!第一発見者はまだ若かりし頃の鳥だったのですが、いつものごとく無防備な心持ちで階段を駆け上がったところ……、Tevarak / PIXTA(ピクスタ)この突然目の前に現れた「本能が拒絶する光景」に、「ヒィッ!」と短い悲鳴をあげました(「キャーッ」という悲鳴って、現実には出ないですよね)。それから毎年、春になると、律儀に階段の踊り場から出現するようになった羽蟻たち。あいつら、風の強い日に出てくるんですよね……。きっと風に乗って、明るい未来へと旅立っていくつもりなんでしょう。最初は怯えまくっていた鳥も鳥姉も、いつしか春の風物詩として慣れてしまい、羽蟻が出ても無言でキンチョールだの掃除機だので処理するようになりました。ちなみに今ではもう羽蟻は出ていないようです。RC造りでも断熱材の種類によっては喰われることがあるとのこと。もう羽蟻は鳥実家の断熱材を喰い終わったのかもしれません。■ シロアリの大好物「ホワイトウッド」が柱に!?さて、このような実体験があるために、鳥は人一倍シロアリを怖れていました。やっと見せてもらえた詳細仕様書によると、構造材の仕様は以下のようなものでした。コンサルさん曰く、この通し柱・隅柱・管柱に採用されている「WW」とは「ホワイトウッド」のことらしいのですが……なんとこのホワイトウッドは腐朽菌にも弱い上に、シロアリの大好物とのこと!(ホワイトウッドの産地はシロアリの生息していない北欧)にもかかわらず、国産の木材に比べて安価ゆえ、コストダウンのために数多く流通しているとのこと。R社もさすがに土台にまで採用することはしていませんが、「シロアリの大好物が柱に使われる家」なんて知ってしまった鳥夫婦の気持ちは、あえて書かなくてもわかっていただけますよね……。(鳥)
2018年07月27日たくさんの物件を見学して、オンリーワンの住まいが見つかったら、次は「住宅ローン」の申し込みです。住宅ローンにはいくつかの種類がありますが、どれを選ぶのが一番「お得」なんでしょうか?■ 金利の種類を知ろう!MaCC / PIXTA(ピクスタ)住宅ローンの金利には、変動金利と固定金利の2種類があり、さらに固定金利には、一定期間の金利を固定する「固定金利特約型」と、完済まで固定の「全期間固定金利型」の2種類があります。ここでは全期間固定金利型についてご紹介します。まずはそれぞれの特徴やメリット・デメリットをみていきましょう。■ 「変動金利」ってどんなもの?変動金利のメリット変動金利の大きな魅力は、固定金利より低い金利設定です。「変動」と聞くといつも金利が変わって返済額が安定しないイメージがありますが、変動金利の仕組みを知ると、実はそうではないことが分かります。saki / PIXTA(ピクスタ)変動金利の場合、その利率は年2回(4月1日、10月1日)見直されますが、しかし、その都度毎月の返済額が変わるわけではなく、返済額は5年間一定となります。5年後、年2回ずつ見直された金利がトータルで上昇または下降していれば、それが返済額に反映されます。そこで大幅に返済額が増えてしまうとその支払いが困難になる場合もありますので、金融機関はどんなに金利が急上昇しても5年後の返済額は、「現在の返済額×125%」を上限にするというルールを設けているのです。変動金利のデメリットKY / PIXTA(ピクスタ)固定型より安い金利、返済額が5年間一定、125%ルールなど、メリットの多い変動金利ですが、デメリットもあります。さまざまなルールを設けていても、金利の上昇はやはりリスクです。たとえば金利の急上昇が続き、5年後の返済額を125%まで上げても、払いきれない利息が発生した場合、それは「未払い利息」となり、元金の残高が減らない・通常の返済が終了しても未払いの利息ローンが続く・ローン期間終了後に未払い分を一括返済しなければならない、などの可能性もあるのです。■ 全期間固定金利型の代表「フラット35」TOSHI / PIXTA(ピクスタ)全期間固定金利型住宅ローンの代表といえば、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供している「フラット35」ですが、このローンにもメリット・デメリットがあります。フラット35のメリットフラット35の最大のメリットは全期間固定金利で返済プランが安定することに加え、融資利率が「低利」であることです。また、保証人が不要で保証料や繰り上げ返済手数料が無料なのも大きな魅力です。フラット35のデメリットさわだゆたか / PIXTA(ピクスタ)変動金利の基準金利は現在2.475%ですが、多くの金融機関では基準金利から-1.7%や-1.85%の金利を優遇し、実際の貸し出し金利は0.7%前後で推移しているのが現状です。フラット35の金利は2018年7月現在、返済期間15年~20年が1.290%、返済期間21年~35年が1.340%(融資割合90%以下、いずれも最頻金利)と、変動金利の倍近くで推移していて、この傾向が続くようなら最終支払総額は変動金利の方がかなり少なくなる可能性があります。makaron* / PIXTA(ピクスタ)また、多くの金融機関ではフラット35の融資にあたり融資手数料を徴収しており、それを融資金額の2%前後に設定している金融機関もあったりします。保証料無料のメリットをうたっているフラット35ですが、融資手数料がかかることでその分が相殺されてしまっているのです。■ 結局、お得な住宅ローンはどれ?日本銀行の公表データによると、変動金利の基準となる短期プライムレート(企業向け最優遇貸出金利)は1.475で、2009年1月から変わっていません。さらにさかのぼって1995年までの短期プライムレートを見ても最高で1.875(2007年3月~2008年11月)となっていますのでその変動幅は大きくありません。変動金利型住宅ローンの基準金利は短期プライムレートに連動しており、その短期プライムレートが約22年という長い期間あまり変動していないことを考えれば、融資実行金利が0.7%前後という超低水準で推移している変動金利型住宅ローンが「今なら」お得といえるかもしれません。しかし、この短期プライムレート、1990年にはなんと「8.25」まで上昇したこともありますので、変動金利を選ぶリスクがゼロではないことも覚えておきましょう。Naoaki / PIXTA(ピクスタ)金利上昇のリスクを「最重要視」するなら全期間固定金利型住宅ローン以外に選択肢はありません。「どっちがお得か」だけではなく「自分に向いているのはどちらか」を考えて住宅ローンを選びましょう!
2018年07月24日こんにちは。新宿に注文住宅を建てて暮らしている鳥と申します。コンサルさんを黒幕に据え、建築条件付きの家づくりを少しでも良いものにしてもらおうと積極的に働きかけている鳥夫婦です。■ 耐震等級を上げるにはいくらかかる?すると保奈美さん(40代半ばだと思われる女性設計士さんのことです)曰く、「それはちょっと……難しいですね。最初にご説明した通り、構造計算は一度しか行いませんので」とのこと。コンサルさんの入れ知恵通り、「え、いまどき、手計算というわけではないですよね?専用ソフトで自動的に出るのですから、ざっくりで良いので、それぞれの等級で計算して、どのくらいのコストが上がるのか教えてほしいのですが」と再度頼みました。しかし一旦持ち帰った保奈美さんから、数日後に改めて「やっぱりできません。構造計算を等級ごとにするなんて聞いたことがないです。でもコストがわからないと決められないというのはあると思いますので、本当にざっくりですが、仮の追加コストをお渡ししますね」という回答とともに、以下のようなオプション見積書を渡されました。耐震等級を3にするには200万円もかかるんだ!?しかも「これはあくまで仮なので、実際に等級を上げるとなったら、これ以上かかる可能性があることをご了承ください」とのこと……。実際に耐震等級3でお願いし、契約してしまってから「やっぱり500万円アップでしたー。テヘッ」などと言われたら困ります!!何十年も暮らすことになる家が耐震等級1で良いのか悩みましたが、このような状況で、耐震等級を上げる意思決定はできませんでした。■ 鳥夫婦が家づくりに求めたもの結局中途半端な結果でしたが、少なくとも「今回耐震等級を上げたいとなったら、最低でもこのぐらいお金がかかる」ということがわかり、「だったら耐震等級1のままで良い」という意思決定をすることができました。コンサルさんの入れ知恵がなければ、鳥夫婦は耐震等級のことなど知らないまま、耐震等級1で建てられていたことでしょう。このように「自分達が認識しないところで勝手に進められる」という状況が、すごく嫌でした。予算が低いのはこちらの問題なので、どうせ最終的に一番低い仕様を選択するかもしれない。それでも「自分達がわかったうえで選択した」というプロセスを踏みたい!R社との建築条件付きの家造りは、このように、自分達が無知であることの漠然とした不安がつきまとうものでした。■ 標準・オプションって何なのさ!?保奈美さんが設計中によくしていた仕草は、1階の耐力壁の数を数えることと、全体の窓の数を数えることでした。耐力壁について数えていたのは、耐震等級1を確保するためです。そして窓について数えていた理由は、最初はわからなかったのですが、あるとき、「1、2、3枚……、うん、この枚数だったら大丈夫ですね……」とつぶやいていたことから、標準仕様の枚数を超えないかどうか確認されていたのだとわかりました。実は、窓は鳥夫婦の家造りにおける優先順位の3位に上げられます。それほど重要なポイントであるのに、知らないうちに勝手に決められた標準に合わせて、枚数・サイズ・形が合格か不合格か判断されている(不合格だとオプション判定される)。だからこちらから何も言わないと、バルコニー面には掃き出し窓、その他にはやや長方形の引違い窓が自動採用されてしまうのです。ネットで建築家物件を拝見しながら「素敵だな~」と思っていた、上げ下げ窓・横長窓・横長の地窓・肘掛窓の数々は一切提案されない。当然、鳥夫婦のライフスタイルに合わせた窓の提案など、ひとつもない。このことに、とにかく強い違和感を感じました。(鳥)
2018年07月19日こんにちは。新宿に注文住宅を建てて暮らしている鳥と申します。庶民にとって人生をかけた買い物なのに適当なことを言うR社社長、職人気質が感じられない設計士保奈美(40代半ばだと思われる女性設計士さん)との家づくりで、気持ちが萎え萎えの鳥夫婦です……。■ 土地の諸条件今回、鳥夫婦が契約した土地は、約20坪北側接道(北向き)北側以外は全方位が隣家に囲まれているという住宅密集地の狭小地です。1階の陽当りなど期待できません。いわゆる「ヨンパチの東南角地」等を希望される方々からは、敬遠される物件でしょう。でもありがたいことに(?)鳥夫婦は陽当たりや角地にこだわりがありませんでした。人それぞれの好みでしょうが、鳥夫婦が譲れなかったのはとにかく立地!陽当たりが悪い・狭小3階建て・隣家が近い・旗竿地などは、とにかく立地さえ好みであれば気になりませんでした(でも極端すぎて資産価値が低いのはNGです)。■ 狭小地でも南向き角地って良いものなの?日本人は南向きを好むのため、北向きの土地やマンションは価格が安く設定されますよね。北向きでも全くかまわなかった点も、鳥夫婦が安く土地を手に入れられたポイントだったと思います。新居は、3階南向きの一番良い部屋をパソコン部屋としたのですが、明るすぎて眼やフローリングを傷めるので、日中はブラインド閉めっぱなしです。結果として、窓をたくさん作った北向きリビングよりも暗くなっています。また狭小地となると、南向きの土地は(北側斜線のため)家が半地下になってしまうケースもあります。土地探しをしている時期、ある仲介業者さんから、「昨今のゲリラ豪雨で、半地下の家の被害が増えているんですよ。だから弊社としては半地下の物件を積極的にはお勧めしていません」と教えてもらいました。それ以来、カビ恐怖症の鳥夫により「半地下は対象外」となりました。あと角地も、狭小地の場合はデメリットになりえます。家のすぐ横が道路になるので、窓から通行人の気配がするでしょうし、散歩中のお犬様にマーキングされるリスクがあります。ということで、狭小地の場合は一概に「南向き」「角地」が良いとは限らないと思っています。それでも、鳥夫婦が購入した土地と同時分譲された南向き角地は、鳥夫婦の土地よりも坪数も少なく・変形地・家は半地下という条件にも関わらず、土地代が15%も高く設定されていました。日本人の「南向き信仰」が良く表れているなあと思いました。■ しっかり勉強してから契約しましょう……さて、保奈美さんとの設計の話。3F(不安・不信・不快)に満ちた悪夢の家造りとなってしまい、「ああ、もう、止めたい、逃げたい……」と本気で思いました。しかし、コンサルさんから「とにかく3か月間は白紙解除のことを考えずに、真剣に取組みましょう」と言われているので、なんとか踏ん張って保奈美さんと作業を続けました。それでもやはり根本的な諦めモードは否めず……。保奈美さんに伝えた間取図への要望は、その後の注文住宅の建築士さん相手に伝えたことの30分の1ぐらいでしたかね……。でもこの状況って、別にR社や保奈美さんが悪いことをしているわけではなく、R社の今回のサービスと鳥夫婦のニーズが合っていないだけなんですよね。強いて言えば、家づくりの勉強もせずに無知な状態で建築条件付きの土地契約をしてしまった鳥夫婦の責任です……。いや……。そうではないな……。ほら、あの場には、悪意(法律用語)の第三者がいたじゃないか……。そう。営業Sさん、お前だーーーー!!Sさんなら「鳥夫婦の要望的には建築条件付きではない」とわかっていたはず。にもかかわらず、そのことを鳥夫婦に教えてくれないまま契約させました。マイホームは人生にダメージを与えかねない高額な買い物なので、ほんと自分たちが勉強して身を守らないといけません……。(でもSさんには後々良い仕事をしてもらえることになるので、恨んでいません・笑)そして、この打合せの数日後、保奈美さんからメールで最新の間取図が送信されてきました。その間取図をコンサルさんに転送して見てもらったところ、「いろいろ質問や伝えたいことがありますので、電話で打合せを」という返信が送られてきました。(鳥)■この連載の一覧を見る■
2018年07月12日こんにちは。新宿に注文住宅を建てて暮らしている鳥と申します。自分達の希望から全くかけ離れた規格住宅仕様の設計をしなければならない状況になってしまい、コンサルさんを黒幕に据えて、なんとか理想イメージに近づけようと奮闘する鳥夫婦です。■ 自分たちの無知を思い知る保奈美さん(40代半ばだと思われる女性設計士さん)謹製の間取図を、さっそくコンサルさんに転送して見てもらった鳥夫婦。コンサルさんから次々とツッコミが入りました。「1階・2階・3階で、水回りの位置が見事にバラバラですねえ。揃えた方が建築費も安くなりますし、後々のトラブルにも対応しやすいですが……。このままで大丈夫ですか?」「工法はおそらく在来工法ですよね。ところで耐震等級はどうなっているのですか?」「断熱はどう取るのでしょうか?」「柱に使う木材の種類は聞いていますか?太さは?」「白アリ対策は? おそらく防蟻処理された木材だと思いますが、木材の種類は何になりますか?」「とにかく早急に詳細仕様書と矩計図をもらうようにしてください。それを見れば大体わかるので」素人の鳥夫婦にはちんぷんかんぷんなことばかり。初めて耳にする専門用語も……。コンサルさんからの質問にほとんど回答できなかったことからも、いかに鳥夫婦が無知なままR社任せの家造りをしているのかが良くわかりました。■ 家づくりについて勉強スタート!さあ、これから、少しでも良い家を建ててもらえるように、R社に働きかけてゆかねばなりません。しかし、あくまでコンサルさんは黒幕であり、保奈美さんに質問や依頼をするのは鳥夫婦です。コンサルさんの受け売りのままだとおかしい。ニートのお兄さんに、親戚の幼稚園生が「はたらいてこそ、いちにんまえなんだよー!!」とか言うようなものです。ということで、まずコンサルさんから聞いた内容を自分達が理解しなくてはなりませんでした。もちろんコンサルさんは解説・説明をしてくれますが、初めて聞く専門的な話を一度聞いたぐらいでは理解できません。それからは、コンサルさんにアドバイスいただいた後にまずネットで調べて理解し、理解できたら保奈美さんにお願いするのが日課となりました。白紙解除までの3か月間、このようにコンサルさんに報告相談コンサルさんから指示を受けるまずはお勉強して理解する保奈美さんにアクション保奈美さんから対応受けるコンサルさんに報告相談というプロセスが繰り返されましたが、工法だの断熱だのの話がこみあってくるごとに鳥はついていけなくなり、脱落……。最後はほとんど鳥夫がやってくれました(鳥夫は設計の中身に興味が持てて楽しかったようで、助かりました)。鳥はとりあえず「親戚にもう定年した建築士のおじさんがいて、いろいろアドバイスをくれる」という嘘をつき、「白蟻ガー!!」「耐震ガー!!」「見積りガー!!」「矩計図ガー!!」と騒ぐ、心配性な奥様の役をこなしていました。■ 耐震について問うそんなある日、コンサルさんから「耐震等級はどうなっているのですか?」と聞かれました。鳥夫婦「耐震……等級?すみません、ちょっとわかりません……。ただR社の設計士さんが、”東西に壁が7枚はほしいので”と言いながら壁の数を増やしていましたが……。とりあえずそれも聞いてみますね」そしてまず耐震等級について調べてみました。耐震等級1:建築基準法レベルの建物強さ耐震等級2:建築基準法の1.25倍の建物強さ耐震等級3:建築基準法の1.5倍の建物強さとのこと。要は最低限でも耐震等級1になるようですね。そして保奈美さんに聞いてみたところ、「今回の仕様は耐震等級1で設計しています」とのご回答。え、そんなこと、初めて聞きましたよ……。そういうことも勝手に決められているのですね……。それまで耐震等級のことなんて全く意識になかったくせに、知ってしまったら気になります。「建物強さが1.5倍になったからといって安全なのか?」という根本的な疑問もあり、自分達が耐震等級を高めたいかどうかもわかりませんでしたが、タダで耐震等級を上げられるなら上げてもらいたいものです。やはりお金の問題ということになります。そこで、コンサルさんからのアドバイス通り「耐震等級1、2、3の場合、それぞれでいくらコストが上がるのか教えてほしい」と保奈美さんに聞いてみました。(鳥)
2018年07月06日こんにちは。新宿に注文住宅を建てて暮らしている鳥と申します。コンサルさんを黒幕に据えて、海千山千の業者(R社)相手に、建築条件付きでもなんとか質の高い、納得のいく家造りを進めようと奮闘し始めた鳥夫婦です。■ R社の女性設計士さん登場R社との建築条件付き家造りの、初回打合せの日。ローン仮申請のための間取図作成は、男性の設計部長さん相手にやり取りしました。しかし初回打合わせの日は、入室するなり鈴木保奈美様風の40代半ばだと思われる女性設計士さんを紹介され、「今後は彼女が設計を担当させていただきます」と伝えられました(以下、保奈美さんと呼ぶ)。保奈美さんはサバサバした感じで「それでは、あとは、もう大丈夫ですので」と言い、さっさと設計部長さんに退出を促しました。そして保奈美さんはおもむろに以下のスケジュール表を出し、今後の流れについて説明して下さいました。この表を見て、「えっ、たった1か月で間取り確定!?」と驚きました。また今回は3階建てのため構造計算が法律で義務付けられており、ついては専門の構造設計事務所へ外注しなくてはならないとのこと。「間取図が確定したら、これ以上は変更しないというサインをしていただきます。サイン入りの間取図で構造計算にかけます。構造計算は費用がかかるので一度しか行いません。もしどうしても二度以上行いたいという場合は、追加費用をいただきます。ただ他の区画の方々もいらっしゃるので、鳥夫婦さんだけ進みが遅れるというのはちょっと困るのですが……」と説明を受けました(追加の構造計算代は説明されなかったので不明)。■ 3F(不安・不満・不快)に満ちた設計スタートこのスケジュール表には「工事請負契約」という項目が明記されていませんが、白紙解約の期限を迎える3か月後までには締結させるためのスケジュールだったのですね。すでにローン仮申請のために間取図は作成してあるものの、あんなの、設計部長さんとメールのやり取りだけで、仕方なく急いで作っただけの代物です。この間取りなら私達は幸せに暮らせるという確信が微塵も感じられていないのに、あと1か月で間取図を確定させなければならないのか……!?「人生で二度とないかもしれない大きな買い物なのに、こんなんでいいの??みんなこんな短期間で決めているものなの!?」3F(不安・不満・不快)でいっぱいになりながらも、保奈美さんとの間取図作成が始められたのですが……。鳥があーだこーだと言うばかりで保奈美さんは言いなり状態!しょせん鳥は素人です。木を見て森を見ず状態になっているかもしれません。てっきり、鳥の自由気ままな要望を受け取りつつ専門家らしい現実的な意見や提案を加えてブラッシュアップしてもらえるものだと思っていたので、ほぼ鳥の言いなりになっているだけの保奈美さんに強い不安を感じました……。■ 悪夢のマイホーム設計それとなく鳥夫が聞いてくれました。「土地契約の際に社長から”注文住宅のように建てられる”と言ってもらえたのですが、何かお話は聞いてらっしゃいますか?」保奈美さん「え?それはちょっと聞いていない……ですね……。鳥夫婦さんのところも今回の仕様で建てるのだと聞いておりますが……」鳥夫婦「……」庶民にとっては人生をかけた大きな買い物なのに、適当なことを言う社長。一級建築士の資格はあれど、職人気質が感じられない保奈美さん。どうせ注文住宅に変えてもらったとしても、信頼感の感じられないこのR社に設計してもらう限り、不安な家造りであることに変わりはない。しかも前回の適当な間取図による見積りですでに2,200万円に達しているのに、さらにお金がかかるであろう注文住宅に変えるなど、もう現実的に無理です……。「ああ、もう、止めたい、逃げたい……」この頃の鳥夫婦にとって「夢のマイホーム」という言葉は、「悪夢のマイホーム」という意味でしかありませんでした。(鳥)■この連載の一覧を見る■
2018年06月22日気に入った物件が見つかり、いざ「契約に進もう」とする前に不動産業者(仲介業者等)から住宅ローンの事前審査を促されることがあります。実はこの事前審査がとても重要で、この事前審査が通ればかなりの確率で本審査も通ります。まずは、「事前審査」の具体的な内容と審査を通過するポイントを解説。また、事前審査が通過しない人の共有ポイントもあわせてお伝えします。■ 事前審査でのポイント1. 「審査金利」euro/Pixabay住宅ローンの事前審査で金融機関がチェックするポイントはまず、年収に占める返済額の割合である「返済比率」です。この返済比率の算出方法は金融機関によりさまざまで、多くの金融機関は実際に適用される金利で返済比率を算出するのではなく審査のために設定した金利(審査金利)で算出した返済額によって審査します。例えばA銀行の住宅ローン金利適用が1.5%だとしても、その審査金利は3~4%等と「高く設定している」場合が多いのです。freeangle / PIXTA(ピクスタ)そのため住宅ローンのパンフレット等に「返済比率20%以内であれば融資可」と記載されている場合に、実際の適用金利で算出した返済比率はその範囲内であったとしても、審査金利で算出した返済比率はそれをオーバーしている場合があります。事前に返済比率を確かめたい場合は、利用したい金融機関の審査金利を不動産業者を通じて確認してください。ネット上には無料で利用できる「返済シュミレーション」のサイトがたくさんあり、そこで各項目を入力すると返済率を自動的に計算してくれるものもありますので一度利用されてみてはいかがでしょうか?■ 事前審査のポイント2. 「個人信用情報」money/pixabay事前審査のもうひとつのポイントは個信(個人信用情報)です。これはローン借り入れ時などに利用される情報(クレジットカード等の借入状況、借入金額、最終返済日等)ですが、ここでの審査基準も金融機関によってまちまちです。一般的には既存の借り入れが多額であったり、返済金の延滞が続いているような場合はここで落とされてしまう場合が多くみられます。最近は携帯電話を分割払いで購入するケースが増えており、この支払いが延滞するとその履歴が登録されることもあるようです。この個信が心配な方は、次の3つの個人信用情報機関でそれぞれ個人情報の開示請求ができますので各ホームページでその方法等を確認してみてください。(株)シー・アイ・シー全国銀行個人信用情報センター (株)日本信用情報機関■ ローンが通らない人に共通している3つのことこれまで住宅ローン申し込みのお手伝いをさせていただいたなかで、事前審査・本審査ともに通らなかった(通りにくかった)のは下記のような人です。1.クレジットカードをたくさん持っているSatoshi KOHNO / PIXTA(ピクスタ)意外と知られていませんが、キャッシング機能がついているカードの場合、そのカードを持っていれば「いつでも」キャッシングが可能です。なので、実際に借り入れしていなくても借入金があると判断され、既に借り入れをしていることと同様の評価となってしまう場合があります。2.高額なカーローンが残っているmuku / PIXTA(ピクスタ)カーローンの返済金額は住宅ローン審査時の「返済比率に組み込まれてしまう」ため、高額なカーローンの残債がある場合、住宅ローンの審査にはかなりのマイナスになります。3.現在借り入れ金等がある場合、その内容をあまり把握していない、もしくは正直に申告しない住宅ローン審査の申込書には、現在の借り入れ金等を記入する欄があり、ここに正確な記入がされなかったり、その内容を正直に申告しないと審査が通りづらくなる場合がありますのでご注意ください!money/pixabay住宅ローンは金融機関ごとに審査の基準があり、その内容は不動産業者がおおまかに把握しているはずなので、物件の情報だけでなく、住宅ローンについても分からないこと・不安なことがあれば不動産業者に相談されてみると良いと思います。
2018年06月19日こんにちは。新宿に注文住宅を建てて暮らしている鳥と申します。自分達が契約した「建築条件付き」というものが、「土地代を安く見せて客寄せし、上物の建築費で土地の利益分も取り戻す手法」だと知って、一気に落ち込んだ鳥夫婦です……。■ 一度会ったきりのコンサルさんに連絡を取ってみたマイホームは、一庶民には人生をかけた大きな買い物です。「安い買い物でもない」「おそらく上物の質は期待できない」「鳥も四ツ谷を忘れていない」となったら、もう白紙解約という文字が浮かびました……。「でも白紙解除ってそう簡単にできるの?たくさんの人の時間と労力を使って契約までしておいて、自分たちの都合でキャンセルできるの??それなりの理由がないと先方も納得しないんじゃないの???」不安に駆られた鳥夫婦は、あれから事後報告もせず放置してしまっていたことに罪悪感を感じながらも、あのコンサルさんに相談してみることにしたのです。メールしてみたところ、すぐにネット電話で相談にのってくれることになりました!建築条件付きの意味がわからないまま、土地を契約してしまった無知な素人の鳥夫婦では、どんな質の家なのかさえわからないいざとなったら白紙解約したいが、海千山千の業者相手に解約できるか不安などと説明し、サポートをお願いしたのですが、難色を示されお断りされてしまいました……。でも何千万円という人生かかった契約を締結してしまい、追いつめられている鳥夫婦。なんとか喰らいついて、「今回の家がどういう質のものなのか教えてもらえるだけで良い。あとは自分たちで意思決定するので!」と頼み込みました。するとやっとコンサルさんが「R社に恨まれるのは困るので、私の名前は決して出さずに黒幕のままでよければ、鳥夫婦さんの家造りの知識の一助にならせていただきます」と、サポートを引き受けてくださることになったのです!■ コンサルさんからのサポートメールそしてR社との初回打ち合わせの前日に、コンサルさんから以下のようなメールが届きました。*************************************明日以降の先方との打ち合わせについて、付け加えさせていただきたいことをお送りいたします。2点ございます。ひとつは、期限の日まで時間がありませんので、積極的に働きかけて、可能な限り打ち合わせを行うようになさってください。理由は工事契約前に、どの程度詳しい実施設計図と仕様書を出してもらえるか、わからないからです。そしてもうひとつは、(現時点では)あまり先方を追い詰めないよう、心がけながら進められた方がよいと感じております。私も付いておりますから、どうしても強気に出たいと感じる場面が出てくると思いますが、そこはグッとこらえて、先方を上手にコントロールするつもりで進めて行きましょう。なお、その場で即答してはいけないと感じたものについては一旦持ち帰り、ご質問くださいませ。これからお二人は大変な思いをされると思いますが、私は鳥夫婦の家づくりを楽しませていただくことにいたします(笑)。-追伸-「どうしても納得が行かない」ということになるまで、白紙撤回のことは一切考えず、工事契約するつもりで進めて行ってくださいね!*************************************■ コンサルさんを黒幕にして家造りスタート建築条件付きのからくりについても契約後に知ったほど情けない状態だったので、このように家造りのことを十二分にわかっている専門家がバックについていてくれるのは、非常に心強い思いがしました。それからは、R社との打ち合わせをしてはその内容をコンサルさんに話し、R社の家造りの思惑や甘さを解説してもらったり、次の対策を指示されたりするという日々が始まりました。初めてお会いしたときのように会話の中で引っかかるものはあれど、助けられることの方がよほど多く、「コンサルさんが居てくれて、本当に良かったね(泣)」と夫婦で日々感謝していました。メールにある通り、あくまでも契約するつもりで取り組むよう指示を受けてはいましたが、当然ながらコンサルさんはR社の家造りに批判ばかり……。たまにコンサルさんの口から「こうしてR社とやり取りしている内容は、決して無駄にはならないですから」「この家で、本当に良いのですか?」という本音めいた言葉も漏れていました。おそらくコンサルさんは、「鳥夫婦さんの性格で、建築条件付きでの家造りに満足できるはずがない」「この土地は白紙解約して、新たな土地に注文住宅を建てることになる」という見通しを持っていたのではないかと思います。(鳥)
2018年06月15日こんにちは。新宿に注文住宅を建てて暮らしている鳥と申します。帰宅ラッシュの終わっていない中央線に揺られながら、「四ツ谷に注文住宅を建てる夢が忘れられない……。まさにマリッジブルーという感じ……。大好きな人以外と結婚するのが怖い……」と泣いて告白した鳥です。■ 好きではない土地と結婚する恐怖土地契約って結婚にそっくりですよ。今後の長い長い暮らしのなかで、自分が日々なにを感じて生きてゆくのか、相手からの影響は計り知れません。人それぞれ感じ方は違うと思いますが、鳥の場合は相手の将来性や条件などは二の次で、とにかくその時好きな人とじゃないと絶望してしまいます。大好きじゃない人と結婚するなんて……、ううう、もう怖くて怖くてしょうがない。普段からしばしば「もし自分がどこかの小国のお姫様で、お国のために別国の王子と政略結婚させられたとしたら……」と妄想しては、「ううう、どうしよう、絶対イヤだ……!」と無駄に苦しんで遊んだりしているぐらいです。この時はとにかく四ツ谷が大好きで、「四ツ谷≒幸せな未来が待っている」と思い込んでいました。整形地・破格・車庫も作れる・駅近・スーパーも便利という西新宿の土地の方が条件的には良いことはわかっているのに、鳥夫婦の予算では傷物の土地しか望めない四ツ谷に惹かれる心を忘れられなかった。でも自らの足でY社に行き、自らの手でたくさんの書類にハンコを押してしまった……。そんな状況に追い詰められていました。そんなときに鳥夫から「どうしたの?嬉しくないの?」と問われ、人目も憚らず泣き出してしまったのです。■ 鳥夫の反応マイホームは、夫から妻への愛のプレゼントです。こんなに大きな決断をしたのに、肝心の妻が喜んでくれないことに、いつも温厚な鳥夫もさすがに感情を露わにし、「なんでもっと早く言わないの!今更どうするんだよ!」と怒りをぶつけてきました。鳥はボロボロ泣きながら、「自分でもどうしたらいいかわからなかった。あそこがすごくいい土地だとよくわかっている。私だって新宿は大好きだし、あそこに地縁があるとも感じているし。あとは私の四ツ谷への執着だけ。私の気持ちだけが流れに逆らっているだけじゃない。それがわかっているから、早く気持ちを変えようと思っていたけど、そう簡単に気持ちが変えられなくて…。でも白紙解約の期限まで3か月あるから、その間にまた気持ちも変わっていくかと思って……」と説明するしかありませんでした。優しい鳥夫はすぐに鳥の告白を受容してくれましたが、それでも感情を押し殺しながらの抑揚のない声で「まあ、いざとなったら白紙解除できるから……。どうしても四ツ谷が良かったらやめればいいし……。でも、そう簡単に白紙解除ってできるものなのか不安だけど……」と言いました。■ 建築条件付きのからくりを知る契約が済むと、家造りについてほとんど勉強ができていないままに、すぐに建築条件付きでの家造りが始まりました。すでに住宅ローン仮申請のための間取図作成において、住宅性能の話はなかった建材の説明はなく、住設機器などの説明しかなかった標準仕様が決められていて、それ以外はオプション料金一式見積書しかもらえない間取りの相談しかされなかったという違和感を強く感じていました。そして建築条件付きの家造りについて調べて行くうちに、「建築条件付きとは、土地代を安く見せて客寄せし、上物の建築費で土地の利益分も取り戻す手法」だということを知ったのです!建築条件付きの物件に対して「土地だけ売ってもらいたい」と頼むと、1~2割の利益を上乗せされることが多いとのこと……。多めに見積もって2割だとすると、鳥夫婦が契約した土地は、3,500万円 × 1.2 = 4,200万円となります。まだこの付近の土地相場(ネットからの公開物件)に比べれば安いですが、鳥夫婦が契約に踏み切った理由である「破格感」「掘り出し物感」はない……。しかも、これから「実は見積金額よりよっぽど品質の低い家造り」が始まると思うと、もう、もう、暗い未来しか描けなくなってしまいました……。(鳥)
2018年06月12日今回は住宅地の中に存在する農地である「生産緑地」と、それにまつわる「2022年問題」についてお話ししたいと思います。2022年には宅地が一度に大量供給されることにより、不動産・住宅市場に大混乱が発生するとまことしやかに説かれていますが、果たしてそれは本当でしょうか。■ 生産緑地とは何か?皆さんは住宅街を歩いていて、いきなり畑が出現し、「あれっ?」と思ったことはないでしょうか。実はこのような農地を「生産緑地」といい、大都市圏の市街化区域の中で、古くからある農地を一定の条件の下で意図的にそのまま残したものです。市街化区域とは市街化を推し進めるための地域であり、本来農地はその趣旨に反していますが、一方で農地に代表される緑地には地盤保持や保水といった社会的役割があり、また市街地に一定の緑があることには地域のオアシスのようなプラスの意味もあります。そこで1991年3月に改正された生産緑地法により、実際に農業を営むことや公園として利用されていることを条件に、500平米以上の農地を生産緑地として新たに指定し、法律による保護が加えられました。■ 生産緑地になるとどうなる?生産緑地に指定されると固定資産税や相続税の面で優遇措置を受けることができますが、一方で農業を続けなければならず、また農地以外への転用や転売も禁じられます。営農していないのに、いかにも営農しているようにみせかけ、特典のみを享受していたことがバレて問題になった事例もあります。一旦、生産緑地としての指定を受けると解除は難しく、相続の発生や指定後30年の経過といった場合に限られます。そのため生産緑地はどちらかというと「未来永劫変わらないもの」の代表例というイメージがあり、筆者も現地案内で生産緑地を見かけると、「ここは将来的にも環境が変わりません」というような説明をした記憶があります。■ 「不動産・住宅市場が大混乱する」2022年問題とは何か?生産緑地としての指定解除の条件として「30年の経過」というものがありましたが、さらっと述べたこのことが実は重要な問題を含んでいるのです。現在生産緑地として指定を受けている土地のほとんどが1991年の法改正に基づき1992年に指定を受けたものであり、そのため30年後の2022年に一斉に指定解除の時期を迎えます。生産緑地の指定を解除されると固定資産税がとんでもない負担増となるため、負担を嫌った地主が土地を一斉に宅地として売却することが考えられます。そのため土地が一度に大量供給されることで価格の暴落を招き、不動産・住宅市場に大混乱が発生するというのが2022年問題です。宅地造成が始まる前の風景宅地造成後の風景これは結構まことしやかに説かれていた問題で、実は筆者の住むエリア周辺でも生産緑地に指定されていた森が売却されて宅地造成が始まり、自宅からの眺望が激変したという事例がありました。■ 生産緑地法の一部改正により対応策が取られていた近い将来大変なことが発生するらしいということで、いろいろと調べてみましたが、既に2017年6月に生産緑地法が一部改正され、対策が取られていました。これにより生産緑地としての要件が緩和され、さらに指定から30年が経過した生産緑地について、10年ごとに更新できることになっています。sayamamine / PIXTA(ピクスタ)たとえ30年経過した生産緑地であっても、更新すれば指定解除されることなくさらに10年継続することができ、固定資産税の負担急増といった事態は避けることができます。また、今回の法改正により面積要件が緩和され、それに加えて地元の農産物等を使った商品の製造・加工・販売や、地元の農産物を用いたレストランのための施設を設置することもできるようになりました。これにより生産緑地という制度を今後も維持拡大していくという国の方針がはっきりしたのではないかと思います。■ 結局のところ大して変わらないのでは…いろいろ調べた結果、「いったい何を騒いでいるんだ?」というのが筆者の印象です。生産緑地が緩やかに宅地に代わっていくことはあっても、一斉に宅地として売却されるということは考えにくく、恐らく2022年を迎えても何も起こらないのではないでしょうか。個人経営の生産緑地では無人販売所を併設していることも多く、筆者もトマトの季節になると頻繁に利用しています。そのため今後もこのような制度が続くことを願っています。いかがでしたでしょうか。住宅街の中に何気なく点在している農地ですが、不動産という点では実は意外な問題を抱えていたのです。
2018年06月10日