すでに報じられている通り、2016年(平成28年)1月から「マイナンバー制度」がスタートします。正式名称は、「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(平成25年5月31日法律第27号、通称「番号法」)に基づいた「社会保障・税番号制度」。社会保障と税に関する行政手続きで利用するため、日本に住民票を持つ個人全員に対し、12桁の「個人番号」が付与されるというものです。結果として各個人の所得を正確に把握できるようになり、公平な税負担、社会保障の的確な提供などの効果が期待できるとか。また、行政機関・自治体等のさまざまな確認作業の負担も軽減されることになるといいます。とはいえ、私たちにとっては不安なことだらけ。そこで基礎知識を得るために読んでおきたいのが、『これ1冊でできるわかる 小さな会社のマイナンバー制度やるべきこと、気をつけること』(村阪浩司著、あさ出版)です。「Part 1 マイナンバー制度の基本を押さえる」から、「これだけは知っておきたいキーワード4つ」に焦点を当ててみます。■1:「個人番号」先に触れたように、マイナンバー制度においては住民票を持つ全国民に12桁の個人番号が指定されることになります。そして原則的に、一度指定された個人番号は生涯変わらないのだといいます。間もなく2015年10月以降に通知カードが配布され、さらに希望者には2016年1月以降、個人番号カードが交付されるそうです。ちなみにこれは写真つきなので、申請者の個人番号の確認だけでなく、身元確認にも有効。■2:「法人番号」法人番号とは、「国の機関、地方公共団体、会社法その他の法令の規定により設立の登記をした法人」、あるいは労働組合やマンションの管理組合などの「上記以外の法人又は人格のない社団等であって、法人税・消費税の申告納税義務または給与等に係る所得税の源泉徴収義務を有することとなる団体」に指定されるもの。難しい表現ですが、つまりは各種法人や団体のための番号です。■3:「特定個人情報」特定個人情報とは、個人番号や、「個人番号に対応する符号」を含む個人情報のこと。ちなみに「個人番号に対応する符号」というのは、個人番号に対応し、個人番号に代わって用いられる番号や記号などで、しかも住民票コード以外のものを指すのだといいます。■4:「特定個人情報ファイル」特定個人情報ファイルは、「個人番号や個人番号に対応する符号」をその内容に含む個人情報ファイル。民間の企業の場合は、個人情報保護法に定める「個人情報データベース等」と同じ意味だそうです。*これが、マイナンバー制度の基本的な部分。これを踏まえたうえで、会社の仕事がどう変わるのかを、本書ではわかりやすく解説しています。なんらかのかたちで自分自身にも関わってくる問題ではあるので、本書でしっかりと知識をつけておきたいところです。(文/印南敦史)【参考】※村阪浩司(2015)『これ1冊でできるわかる 小さな会社のマイナンバー制度やるべきこと、気をつけること』あさ出版
2015年09月07日聞きなれない方もいらっしゃるかもしれませんが、『菜根譚』という中国古典は、論語と並んで多くの著名人に影響を与えてきた処世訓の名作。そして本書『世界最高の処世術 菜根譚』(守屋洋著、SBクリエイティブ)は、「人間関係・人づきあいに長ける智恵」をテーマとして、同書をビジネスパーソン向けに再解釈した書籍です。きょうは第三章「組織でしたたかに生きる」のなかから、「『百忍』で耐え抜く」に焦点を当ててみます。聞き慣れない「百忍」ということばには、どのような意味があるのでしょうか?■粘って粘って粘り抜くことが必要「衰颯的景象、就在盛満中。発生的機緘、即在零落内。故君子居安宣操一心以慮患、処変当堅百忍以図成」『前集117』より(下り坂に向かう兆しは最盛期に現れ、新しいものの胎動は衰退の極に生じる。だから君子たるもの、順調なときにはいっそう気持ちを引き締めて異変に備え、困難にさしかかったときには、ひたすら耐え忍んで初志を貫徹しなければならない)「衰颯」とは衰えること、「盛満」とは真っ盛り、そして気になる「百忍」は、ひたすら耐え忍ぶことだそうです。その人物の真価が問われるのは、「変に処する」とき。なにか大きな問題が起こったり、ピンチに陥ったりしたときだということ。つまり、その時点で腰砕けになって、簡単に押し切られてしまっては話にならないというわけです。局面を打開して目的を達成するために必要なのは、粘って粘って粘り抜くこと。「百忍」ということばには、そういう粘り強さがなければ、新しい展望を開くことはできないという意味が込められているのです。■百回でも耐え忍ぶ強さを持つそしてこのことばを受け止めたうえで、著者は「近頃の日本は、何かにつけて恵まれすぎています」と指摘しています。アジアの途上国から来たひとたちはよく、「日本は天国のようだ」といいますが、たしかにそのとおりだとも。もちろん、それはとてもよいことでしょう。しかし、こうした環境のなかで生きていると、どうしても体質がもろくなって、「粘り腰」も失われていくもの。けれど、もしもそのまま耐え忍ぶ強さを失ってしまったとしたら、衰退の道をたどることにもなりかねないということです。私たちに必要なのは、百回でも堪え忍ぶことができる力なのかもしれませんね。*難しい漢字がたくさん出てきますが、決して難しくはありません。訳も現代的なので、とても読みやすいはず。また、中国古典の大家である著者の解説もスマートです。気軽にぱらぱらとページをめくり、座右の銘を見つけ出してみてはいかがでしょう?(文/印南敦史)【参考】※守屋洋(2015)『世界最高の処世術 菜根譚』SBクリエイティブ
2015年09月06日きょうご紹介したいのは、『キレイな人は「その一口」を大切にする 正しい食欲のつくり方』(西邨マユミ著、ワニブックス)。世界的なシンガーであるマドンナのパーソナルシェフを務め、他にもゴア元副大統領、スティング、ブラッド・ピットなど多くのセレブリティにマクロビオティックの食事を提供してきた著者が、独自の食欲コントロール術を明かした書籍です。食欲の仕組みについての解説に続き、「正しい食欲のつくり方」が明かされるという構成。その冒頭の「ステップ1」では、玄米(全粒穀物)、味噌汁・スープ、豆類・海藻、季節の野菜、伝統的基本調味料と、「必要なものから足してみましょう」という提案がなされ、「ステップ2」では、ちょっとしたチャレンジを提案しています。すぐに役立ちそうなので、クローズアップしてみましょう。■3日間からだに負担かかる食べものをやめるただ、ここでいうチャレンジを実行するためには、多少の決心が必要かもしれません。なぜなら、「肉類」「乳製品」「卵」「白砂糖」とからだに負担がかかる食べものを、3日間すべてやめようというのですから。でも、そうしてみることでなにがどう変わるのでしょうか?著者によれば、まず、食べものが変わることによって、細胞をつくる血液が変わるのだそうです。肉類や乳製品は血液を汚す食べものといわれているため、これらを控えれば血液がキレイになるという考え方。そして血液がキレイになれば内臓の調子がよくなり、内臓の状態がよくなれば、おのずと肌の状態もよくなっていくというわけです。いってみれば、からだ全体が内側から外側へとターンオーバーしていくということ。■理想は10日間食べものを変えたほうがといいなお、血液が変わりはじめるのは10日目以降だそうです。そして3~4ヶ月でからだを巡る血液は完全に入れ替わり、7年もすれば細胞までがすべて変わるといわれているのだとか。だとすれば、「まずは10日間続ける」ことが理想的。しかし現代人は肉類や乳製品を過剰摂取しているだけに、3日間実行するだけでもからだの変化を実感できるといいます。■3日間は必要なものをバランスよく食べるべし3日間の食べ方は、基本的には上掲の玄米(全粒穀物)、味噌汁・スープ、豆類・海藻、季節の野菜、伝統的基本調味料をバランスよく組み合わせること。理想的なバランスは、全粒穀物50~60%、味噌汁・スープ5~10%、豆類・海藻類10~15%、野菜25~30%だそうです。*この考え方を軸に、本書内ではさまざまなレシピも紹介されています。だから、とても実用的。ファストフードに慣れたからだを改善するために、最適な一冊だといえるでしょう。(文/印南敦史)【参考】※西邨マユミ(2015)『キレイな人は「その一口」を大切にする 正しい食欲のつくり方』ワニブックス
2015年09月05日『90日間で世界のどこでも働ける人になる』(白藤香著、総合法令出版)の著者は、30年におよぶグローバルビジネス実績の持ち主。つまり本書では、40カ国・1万人以上のビジネスパーソンと働いてきたことによって身につけた、「世界基準の考え方」を明らかにしているわけです。きょうはそのなかから、時間に関する記述を引き出してみます。■身につけておきたい4つのスキル著者は、グローバルビジネスに携わることを想定した場合、身につけておきたい最低限のスキルがあると主張しています。そしてそれは、おもに次の4つに集約されるのだそうです。[1]語学力(英語)[2]コミュニケーション[3]キャリアアップ志向[4]仕事の型(基本)そして「時間」に大きく影響するのは、[2]のコミュニケーションだといいます。■時間を有効に使うことを意識する海外で仕事をする際にも、取引先に連絡してアポイントメントをとることがあるはず。その際は、相手に対して必ず「会う目的」を伝えることが重要なのだとか。そればかりか、アポ当日までに、ある程度の情報をメールなどで送っておかなければならないともいいます。日本ではアポ当日まで「目的」が明確にならないことも少なくないので、これは少し意外でもあります。が、この部分を怠ったとしたら「時間のムダ」になってしまうという考え方なのです。欧米はもちろん、中国、インド、ベトナムなどのアジア圏でも、アポを取る際には目的をクリアにしなければならないそうです。目的を明確にすることによって、時間を有効に使うことを意識するというわけです。■なんのための時間なのかを考える日本人同士のコミュニケーションの根底にあるのは、ことばで多くを語らなくても伝わるという考え方。いい方を変えれば、コミュニケーションをつくり上げていく意識が低いのではないかと著者は指摘します。しかし、グローバルスタンダードのビジネスコミュニケーションは効率重視なので、日本人のやり方では通用しないそうです。どんな情報を提供し合えば商談が効率よく進められるのかを、充分に考える必要があるということ。だからこそ、「なんのための時間なのか」を自問自答することが重要なのです。■時間に対する意識を磨く必要がある著者はグローバルビジネスに取り組むなかで、「世界市場で活躍する元気な企業ほど、いろいろな企業と商談をして多様な考え方を取り入れたり、積極的に学ぼうとしている」と実感するそうです。重要なのは、その前提として「自分たちのビジネスインフラはまだベストではない」という考えがあるということ。そこで多様な人々とのコミュニケーションが必要となり、時間に対する意識を磨いておく必要も生じるというわけです。(文/印南敦史)【参考】※白藤香(2015)『90日間で世界のどこでも働ける人になる』総合法令出版
2015年09月04日『無意識はいつも正しい』(クスドフトシ著、ワニブックス)の著者には、仕事も恋愛も人間関係」もうまくいかず、家に引きこもり、ニートになり、うつ状態になり、死にたいと思っていた時期があったのだそうです。ところが「無意識(潜在意識)の力」の大きさに気づいてから、人生が大きく変わったのだとか。いったいどういうことなのでしょうか?■無意識は行動の9割を決定している日常生活のなかで自分がやっていることの大半は、無意識によって動かされている。まず、それが著者の基本的な考え方です。そして、無意識が行動の9割を決定しているのだと主張してもいます。つまりそれこそが、自分の意思ではコントロールできない「潜在意識」や「無意識」と呼ばれる力。にもかかわらず、私たちはそれを自分の力でコントロールしていると思い込んでいるから、結果的に悩んで苦しみ、不安に駆られてイライラしてしまうというわけです。著者がそのことに気づいたのは、冒頭で触れた引きこもりの時期。どうしようもできない状況のなかで、潜在意識の世界に救いを求めたということ。自分の力ではどうしようもないのなら、“人の行動の9割を支配している”といわれる潜在意識に頼るしかないと思ったというのです。■すべては潜在意識のおかげだったとはいえ、「無意識(潜在意識)」ということばが出てくると、「怪しいな」と感じるかもしれません。著者はそう認めたうえで、しかし決して怪しいものではなく、私たちの生命活動を維持してくれている大事な力だと断言しています。それだけではありません。寝ている間に心臓を動かし、全身に血液を巡らせたり、呼吸をしたり内臓器官で消化活動してくれているのも、潜在意識のおかげなのだとか。つまり身体的な活動は、潜在意識によってコントロールされているということ。そこで、心と体の両面から潜在意識に働きかけ、バランスをとることが大きな意味を持ってくるわけです。もちろん状況は変化するものですから、臨機応変に見方を変えることもときには必要。しかし、もっと大事なのは「見方を変えるということは大切」という考えを維持しつつ、「いつでもその見方そのものは変化させられる」という柔軟な意識を持つこと。だからこそ、バランスが大切なのだと著者はいいます。■いかに無意識が力を発揮できるか?「無意識の力」が9割を占めて日常をコントロールしているのであれば、「いかにその無意識が力を発揮できるようにするか」に意識を向けるべき。そして、心と体のバランスが保たれて初めて、自分自身が成立していると考えた方がいい。それが、著者の考え方です。*著者の主張はいたってシンプル。そうであるだけに物足りなさを感じる部分もあるかもしれませんが、潜在意識についてのこの考え方をベースに読み進めてみれば、なんらかの気づきと出会えるかもしれません。(文/印南敦史)【参考】※クスドフトシ(2015)『無意識はいつも正しい』ワニブックス
2015年09月03日人を説得するのは難しいもの。しかし、「説得する」ということについての答えを明確にしている書物が、約2300年前に生まれていたのだそうです。それは、古代ギリシャの哲学者であるアリストテレスの著書『弁論術』。『どんな人も思い通りに動かせるアリストテレス無敵の「弁論術」』(高橋健太郎著、朝日新聞出版)は、そのような考えに基づき、アリストテレスがこの書物で示した「説得のための技法」を紹介した書籍です。とはいえ、なぜいま、アリストテレスから弁論術を学ぶ必要があるのでしょうか?著者によればそれは、アリストテレスの弁論術が、歴史上の「話し方」に関する書物のなかでもっとも重要で、もっとも現実の議論に役立つから。■アリストテレスの理性的な弁論術アリストテレスは、彼が生きた時代に流行っていた、感情論で聴衆を説得するような弁論術をまったく認めていなかったのだそうです。なぜなら、論理的な説得こそが「本体」であり、感情論はあくまで「付属物」にすぎないというのが彼の考える本当の弁論術だったから。しかも彼は感情論を「付属物」としながらも、それを自分の弁論術から排除しなかったのだとか。むしろそれを取り込んだうえで、「理性的な弁論術」とも呼ぶべきものを考えたのだそうです。いくら好ましくないといったところで、現実の議論には「感情論」がたしかに存在するもの。ならばその現実を直視し、人の感情を分析して利用し、そのうえでどう論理的に説得するかを考える。これがアリストテレスの理性的弁論術だというわけです。■説得を成り立たせる3つの要素そしてアリストテレスは、弁論術による説得は次の3つの要素によって成り立つと述べているといいます。(1)「話す人の人柄」(2)「聞く人の気分」(3)「話の内容の正しさ」(3)が入っていることには納得できますが、「人柄」や「気分」が入ってくるのは意外な気もします。しかし、たとえば「なんか、あの人のいうことはいつも聞いちゃうのよ」という場合は、まさに(1)「話す人の人柄」による説得。また、「今日は社長の機嫌がよかったから、OKもらえたよ」というケースは、(2)「聞く人の気分」による説得。そして「彼女の示したデータや意見には有無をいわせぬ説得力があった」は、(3)「話の内容の正しさ」による説得ということになります。■2000年以上前も現代も同じつまり日常を振り返ってみると、現代も、2000年以上前にアリストテレスがいったこととあまり変わりがないということ。︎もちろん実際の場面では、ここまで単純化できるものばかりではないでしょう。しかし実際に人が人を説得するシーンにおいては、この3つが常に複雑に入り混じっているのだというわけです。だからこそ現実の議論では、「人柄」「聞き手の気分」「話す内容の正しさ」の三拍子をそろえる心構えが大切になるという考え方。*この基本的な考え方を確認してみるだけでも、アリストテレスの弁論術が私たちの役に立つものであることがイメージできるのではないでしょうか?だからこそ、本書に書かれた内容を実際のビジネスシーンで役立てたいものです。(文/印南敦史)【参考】※高橋健太郎(2015)『どんな人も思い通りに動かせるアリストテレス無敵の「弁論術」』朝日新聞出版
2015年09月02日『出口汪の論理的に考える力が身につく本』(出口汪著、SBクリエイティブ)の著者は、数々のベストセラーを生み出してきたカリスマ予備校講師。最新刊となる本書では、タイトルにあるとおり「論理的な考え方」をさまざまな角度から掘り下げています。きょうはそのなかから、特に印象的な部分を引き出してみたいと思います。■論理力をつくる「他者意識」とは?論理力をつくる「他者意識」が、「和」を重んじてきた日本人には欠けているのだと著者はいいます。この場合の「他者」とは「他人」という意味ではなく、「根本のところではどうやってもわかり合えない存在」だということ。「根本のところではわかり合えない」からこそ、他者とコミュニケーションし、自分の意見を理解させるために「論理力」が不可欠だということです。■「10円玉が丸い」なんて思い込み?そして重要なのは、人間が基本的には主観でしかものを捉えることができないという事実。たとえば「10円玉はどんなかたちをしている?」と質問されたら、ほとんどの人が「丸い」と答えるはず。でも、それはあくまで真上から見たときの10円玉のかたち。斜めから見たり、真横から見たりしたら、丸くは見えないはずです。ところが多くの人が、他人も自分と同じ視点でものを見ていると思い込んでいるといいます。しかし実際には、他の人は自分とはまったく違う視点でものを見ていたりするもの。だからこそ日常のなかでも、「他の人はどんな角度から見ているんだろう」と考えてみる必要があるということです。■企画書でも他者意識が求められるそしてそれは、たとえば企画書でも同じことだとか。つまり企画書を書く際に必要なのは、「自分がなにをしたいか」ではなく、「上司はどんなものを求めているのか」「クライアントはなにを欲しがっているのか」「など、上司やクライアントの立場に立って考えてみること。そのように論理的に考えた企画書であれば、なんの感想のことばもなく、無言で突き返されるようなことはないといいます。■相手の立場からものを見る大切さ要するになんであれ、「立場の違う人はどう感じるのか」ということを、一度立ち止まって考えてみることが大切。そして、仕事ができる人間は、相手の立場からものを見られる人間だと著者は断言しています。成績のいいビジネスパーソンは、知識が豊富で売り込みがうまい人ではなく、「相手はどんなものが必要なのか」相手のメリットを提案できる人だということ。「論理的に考える」というと難しそうに思えますが、たしかにこう考えると、論理的な考え方はあらゆることにとって大切であるようです。*これまでの著作同様、社会人2年目のOLと著者との対話形式で話が進められていく構成になっているため、読みやすさも文句なし。リラックスしながら、論理的に考えるために大切なことを学べるはずです。(文/印南敦史)【参考】※出口汪(2015)『出口汪の論理的に考える力が身につく本』SBクリエイティブ
2015年09月01日『まったく新しい「0円賃貸」で高収益マンション投資術』(森裕嗣著、幻冬舎)の著者は、なかなか劇的な人生を歩んできたようです。29歳で不動産のデベロッパー会社に入社後、1年もたたずに独立。不動産会社を設立するも、資金調達がうまくいかず何度も倒産の危機に。そんななか、秋田県のデベロッパーから新築アパートのオーナー募集営業を依頼され、高入居率を実現できる手段として日本初の「0円賃貸」をスタートさせたというのです。そして現在では、短期間で99%のアパートに借り手がつくこの手法が成功し、全国展開を行っているのだとか。しかし、そもそも「0円賃貸」とはどのようなものなのでしょうか?■森さんの「0円賃貸」はすべて0円!敷金、礼金はもちろん、退去時の原状回復費なし。火災保険や24時間駆けつけサービスも無料。さらには家賃保証料と呼ばれる滞納家賃の保証料も0円。場合によっては、オーナーさんに一定のリフォーム費用も提供。このように、すべて0円になっているのが「0円賃貸」。近年よくある「敷金ゼロ」「礼金ゼロ」物件とはまったく別ものだそうです。でも、なぜそんなことが可能なら、そこには根拠が必要です。■「0円賃貸」はクラブ会費のおかげ実をいうと「0円賃貸」は、希望するすべての不動産管理会社、オーナーに提供しているわけではないそうです。自分たちの利益だけではなく、オーナー、不動産管理会社、そして入居者と、全員が幸せになることを考え、不動産業界の発展を願う人でなければお断りすることもあるのだとか。また方針のひとつである「高入居率・低支出」という考えに賛同していただき、自らそうなるように行動するオーナーや不動産管理会社にクラブに入ってもらい、サービスを提供しているのだそうです。つまり、このクラブ会費が「0円賃貸」を生み出し、すべて0円を可能にしている最大の理由。ちなみにクラブ会費は地域や物件によって変わるものの、地方の平均はオーナーが月々1,500円、入居者は2,500円と意外に割安です。■森さんが「0円賃貸」を始めた経緯そしてもうひとつのポイントが、家賃保証事業を自分たちで行い、融合させること。賃貸物件契約時に連帯保証人を用意できない人のため、1990年代以降に増加したのが家賃保証会社。少子高齢化や家族関係の希薄化からニーズが高まりましたが、悪質な取立てなどが目立つようになり、社会問題化しました。そこで著者は、家賃保証事業を、地域密着型にして「自分たちで」行えば、より良いサービスが提供できるのではないかと考えたわけです。採算がとれれば収益アップにも繋がりますから、斬新な発想ではあります。そして結果的にこれが成功し、現在も大きく成長しているというわけです。*「0円賃貸」ということば自体は若干の不安も意識させますが、本書を読めば、これがきちんとしたコンセプトと信頼に基づいて運営されていることがわかるはず。サイドビジネスとして考える余地もありそうです。(文/印南敦史)【参考】※森裕嗣『まったく新しい「0円賃貸」で高収益マンション投資術』幻冬舎
2015年08月31日「糖質制限」や「ゼロカロリー」などの食品はすっかり浸透しましたが、それらを利用している私たちにとって、『体を壊す食品「ゼロ」表示の罠』(永田孝行著、SBクリエイティブ)はショッキングな内容かもしれません。医学博士であり、健康・保健指導や薬事法・景表法のコンサルティングなども行っているという著者によれば、食品表示に書かれていることの裏側にある真実を、大半の人は理解していないから。■巷にある「ゼロ商品」は有益ではない?「カロリーゼロ」「糖質ゼロ」「糖類ゼロ」「プリン体ゼロ」「コレステロールゼロ」「脂肪分ゼロ」などなど、市場にはさまざまなタイプの「ゼロ商品」が並んでいます。しかしその一方、医学の立場から「ゼロ商品」にまつわる研究が進み、ダイエットや生活習慣病の予防には、これら「ゼロ商品」が有益な結果をもたらさないのではないかという見解が挙がっているというのです。■ノンカロリーの人工甘味料で体重が増えたそればかりか、本書ではさらに衝撃的な事実も明らかにされています。「ノンカロリーの人工甘味料と砂糖では、どちらが太るでしょうか?」とたずねられた場合、多くの方が砂糖だと答えるはず。ところが2008年にアメリカのバデュー大学がラットを使って実験したところ、ノンカロリーであるはずの人工甘味料の方が体重が増えるという結果が出たのだそうです。■ダイエット・ソーダでウェストが増加する続いて紹介されている、米国糖尿病学会が2011年に発表した研究結果も驚くべきものです。テキサス大学サンアントニオ健康科学センターの研究チームによるもので、65~74歳の男女の集団を対象として10年近くかけて行われた調査によって導かれた結論。この調査研究によると、ダイエット・ソーダを飲んでいる人たちは、まったく飲まない人たちにくらべて、ウェストのサイズが70%以上増加したと報告されているのだそうです。また、毎日2本以上のダイエット・ソーダを飲んでいる人たちは、ウェストが平均4.74cm増加しており、ダイエット・ソーダを飲まない人たちのおよそ6倍に達していたのだとか。ちなみにこの調査でウェストを問題にしているのは、それが肥満やメタボリックシンドロームと関係の深い数字だから。つまりダイエット・ソーダを過信するのは、肥満や糖尿病、その他さまざまな生活習慣病のリスクを高める恐れがあるということです。*ここでご紹介したのは、あくまでいくつかの例。本書では他にも、多くの衝撃的な事実が明かされています。もちろん、害を防ぐための手段も。多くの人にとって切実な問題であるだけに、ぜひとも目を通しておくべき一冊だといえます。(文/印南敦史)【参考】※永田孝行(2015)『体を壊す食品「ゼロ」表示の罠』SBクリエイティブ
2015年08月30日『世界トップリーダー1000人が実践する時間術』(谷本有香著、KADOKAWA)の著者は、経済キャスター/ジャーナリストとして世界の1000人を超える著名人にインタビューしてきた実績を持つ人物。本書ではそんな経験を軸に、トップリーダーならではの、そして私たちにも応用できる時間術を明かしています。第1章「世界トップリーダーは、1分を60秒、1時間を60分、人生を30000日と考える」から、基本的な考え方を抜き出してみましょう。■すべての時間を有意義に使う著者によると、時間に対する特徴的な考え方を持っている点において、世界のトップリーダーには共通点があるのだそうです。それは、「Time is on my side = 時間は常に私の味方だ」という考え。忙しく時間に追われるのではなく、自ら時間を支配し、味方につけ、自分のすべての時間を有意義に使うということです。■「無駄」を徹底的に排除するそして重要なのは、トップリーダーに「無駄な時間は一切ない」ということだとか。裏を返せば、無自覚に、無意味に使われる時間を「無駄」と感じているということ。「結局は1日ダラダラしてしまった」「無駄なミーティングに参加してしまった」というような、自分の支配から離れてしまった時間を「無駄」と定義し、徹底的に排除しているということです。■すべての時間に意味を与えるだとすれば、そのために必要なのは「時間を有意義に使う」というマインドセット(考え方の基本的な枠組み)。「いまはなんのための時間なのか」ということを、常に意識し続けるということ。たとえば家族とのバカンス休暇ひとつとっても、トップリーダーは「仕事に備えてリフレッシュしている」と考えるのだそうです。同じようにお飲を飲む時間は「アイデアを生み出すために自分と対話する時間」、眠る時間は「仕入れた情報を脳に定着させるための時間」。普通の人が特別なことだと感じないようなことにも、意識的に意味を与えている。自分の意識したとおりに行動することで、結果的にすべての時間が無駄ではなくなるわけです。■時間の罪悪感から解放される一般的な考え方からすると極端な気もしますが、常に「いまはなんのための時間なのか」を自分に問う習慣がつくと、まずは「本当に無駄な時間」を削れるようになると著者。そしてこのマインドセットが身につくと、最終的には時間を使うことへの罪悪感から解放されるのだといます。「自分は有意義なことに時間を使っている」と思えるからこそ、時間に追われることがなくなるわけです。*だとすれば「時間をどう使うべきか」という問題は、まさに人生のマインドセットに大きく関係したことだといえそうです。(文/印南敦史)【参考】※谷本有香(2015)『世界トップリーダー1000人が実践する時間術』KADOKAWA
2015年08月29日日本では「やせている=美しい」という風潮があるものの、やせすぎてしまうと出産に影響が出てしまう。しかも、特に危惧しているのは赤ちゃんへの影響。そう警鐘を鳴らすのは、『ママと赤ちゃんにやさしい 産前・産後のボディケアとビューティーメソッド』(本田由佳著、上田康夫監修、あさ出版)の著者。たしかにやせている方が美しく見えるかもしれないけれど、出産はそれ以上に大切なこと。やはり正しい知識をつけておくことは不可欠です。■体重コントロールはなぜ必要?「ママになっても体型を崩したくない」「太りすぎたら産後にやせるのが大変」そう思う方は多く、産婦人科でも体重管理が徹底されるため、「体重はできるだけ増やさない方がいい」と考える人は少なくありません。しかし妊娠中に適切に体重を増やさないと、低出生体重児(2,500g未満で産まれてくる赤ちゃん)が生まれる可能性が高くなるそうです。低出生体重児は、将来、生活習慣病になりやすいなどのリスクがあるのだとか。やせすぎで体重増加不良のおなかのなかにいた赤ちゃんは、母体から充分な栄養を与えられず、低栄養にさらされることに。からだも、低栄養でもしっかり吸収できるように、省エネ体質になってしまうのだそうです。ところが産まれてくるのは、多くの食料であふれた飽食の日本。体質と環境がミスマッチを起こし、糖尿病や肥満などの生活習慣病になりやすくなるわけです。■太りすぎても出産が大変になるとはいえ、妊娠して太りすぎてしまうのもNG。妊娠中に太りすぎると、妊娠糖尿病になる可能性が高くなり、妊娠高血圧症候群や早産のリスクも高まるとか。さらに赤ちゃんが4,000g以上の巨大児になってしまったり、産道に脂肪がつきすぎたりすることも。これらが原因で、「陣痛が弱まり出産時間が長くなる」「出産時に赤ちゃんがなかなか出てこず、帝王切開になる」といったこともあるといいます。つまり、妊娠期のやせすぎにも太りすぎにもさまざまなリスクがあるということ。だからこそ、しっかりした体重コントロールが必要なのです。■妊娠中に増える体重の内訳は?妊娠中に増える体重の中身は、「胎児」、「羊水」、胎児に栄養や酸素を送る「胎盤」と「たんぱく質」。さらに「水分量」は妊娠前の1.5倍に、「体脂肪」は標準体系の人で3~4g増えるそうです。「妊娠中に体脂肪が増えるのはいやだ」と思う気持ちも理解できますが、体脂肪はとても大切だということです。そして産後は、2~3時間おきに授乳するなど、相当な体力が必要になります。そのときには体脂肪を燃やしてエネルギーにするため、妊娠中に体脂肪を蓄えておくことはとても大切なのです。なお、必要な体脂肪は、やせている人は4~5kg、標準の人は3~4kgくらい。これは、適切な食事で、適切な体重増加料を実現すると自然に身につくそうです。*産前・産後のボディケアについ知らないことは、意外に多いもの。本書に目を通して知識を身につけ、安全な出産を実現させたいものです。(文/印南敦史)【参考】※本田由佳(2015)『ママと赤ちゃんにやさしい 産前・産後のボディケアとビューティーメソッド』あさ出版
2015年08月28日『はじめての社内起業 「考え方・動き方・通し方」実践ノウハウ』(石川 明著、U-CAN)の著者は、総合情報サイト「All About」を社内起業した経験を持つ人物。本書ではそんな経験をもとに、社内で新規事業を立ち上げることの重要性を説いているわけです。たしかに社内での新規事業立ち上げには、資金面でも人材面でも信用という側面においても、独立起業にはない安心感があります。ただし問題は、新規事業の検討領域が指定されていない場合、どこから手をつけたらよいのかわからないということではないでしょうか?■まず既存事業を起点にして考えるその点について著者は、「新規事業の場合のベストな方法は、既存事業を起点にして考えること」だと主張しています。そしてそのうえで、既存事業とはどんな事業なのかを改めて定義してみる。そうすることで、新規事業と既存事業の違いも明確化できるといいます。なお以後の仕方はいろいろありますが、著者の場合は「5W2H」の枠組みを使って定義しているのだとか。■既存事業は“5W2H”で定義する[1]Who:誰に(購買者)・誰が(利用者)・誰と(取引先、協業先)[2]What:なにを(売る製品・サービス、販売名目、製品属性)なんで(材料)[3]Where:どこで(エリア、販路、売り場、業界、領域、◯◯市場)[4]When:いつ(需要期、売れる時期、使う時間)どの段階(バリューチェーン)[1]How:どうやって(販売方法、製造方法、仕入れ方法、デリバリー方法)どんな(業態、ビジネスモデル、協業方法)[2]How Much:いくらで(価格)どうやって(課金方法、料金体系、費用名目)[5]Why:なぜ(顧客が買う理由、顧客に提供する勝ち、競争優位の武器)これらを参考にして、既存事業を定義するということ。■事業の特性に合わせて解釈するただし、7つの軸すべてを使って定義づけする必要はないそうです。各軸の中身をどのようなものにするかも含め、自社の事業の特性に合わせて解釈するということ。なお、自社にとっては当然のことが、同業他社とくらべると特徴的なこともあるので、ひとつひとつていねいに各項目を見ることが大切だといいます。そして既存事業の定義づけができたら、7つの軸の各項目をひとつずつ見て、それらの項目を「仮に変えてみたらどうなるか?」と考えてみる。・Where(どこで):現時点では国内のみの販路を「海外」に広げたら?・Who(誰に):女性だけを対象にしていた店舗を「男性」向けに開発したら?など、ベクトルを変えて考えてみるということ。こうした作業を繰り返すことで、さまざまなビジネスアイデアを出すことができるというわけです。*当然ながら、ここでご紹介したのはほんの一部。全体をじっくり読み込んでいけば、さらに緻密な事業計画を確立し、社内企業を成功させることができるようになるかもしれません。(文/印南敦史)【参考】※石川明(2015)『はじめての社内起業 「考え方・動き方・通し方」実践ノウハウ』U-CAN
2015年08月27日『人生の主導権を取り戻す「早起き」の技術』(古川武士著、大和書房)の著者は、「習慣化コンサルタント」としてさまざまな生活習慣を提案してきた人物。これまでにも数々のベストセラーを生み出してきましたが、今回は「早起き」をテーマに掲げているわけです。■1ヶ月9時間睡眠して得られた効果でも人間は本来、何時間眠ればいいのでしょうか?この問題を掘り下げるにあたり、著者はおもしろい試みを行っています。睡眠の重要性を実験によって立証するため、「寝尽くす!」を目標に掲げ、1ヶ月ほど9時間睡眠に挑戦したというのです。具体的には、21時に寝て6時に起きたのだといいます。その結果、実感したのは次のこと。まず仕事面でいえば、集中力が劇的にアップ。通常3時間かかっていた仕事が半分の時間で終わり、気の重い仕事もどんどん片づいていったそうです。睡眠によって脳のエネルギーが満ちあふれているため、苦痛を感じないということ。■「睡眠負債」はためない方がいいまた、本を書いたり、教育コンテンツを開発したりといった創造活動が多いだけに、想像力が飛躍的に高まったことも実感できたのだとか。寝不足が続き「睡眠負債」がたまった状態だと、2~3時間かかっても決断できなかったにもかかわらず、スキマ時間だけで重要な仕事を終わらせることができるようになったのだといいます。そして著者が寝尽くすことによって感じた最大のメリットは、日中まったく睡魔と戦う必要がなくなったこと。それどころか、1日では使い切れないほどのエネルギーが充電されるのだそうです。そして痛感したのは、起きている間は幸福を感じられる生活が続き、逆に睡眠負債を抱えている状態がいかに苦痛かということ。もちろん、通常のビジネスパーソンにとって、9時間睡眠をとることはなかなか困難。著者はそのことも理解していて、7時間眠れば充分だと結論づけています。■生活習慣全体を最適化するべし!でも、睡眠時間を確保するために、仕事から帰って寝るだけの生活では毎日を楽しめません。だからこそ必要なのは、生活習慣全体を「最適なもの」にすること。たとえば著者の場合は、「塑造製の発揮」と「起きているときの集中力」という観点から、高い睡眠の質を保ちながら現在は8時間眠っているのだといいます。いろいろ試した結果、最終的に8時間睡眠がベストだと判断したのです。つまり同じように「からだの声」を聞きながら、睡眠の適量を判断すればいいということです。*早起きは手段であり、その目的は理想の生活習慣。著者のこのことばには、学ぶべきものが多いと言えるのではないでしょうか?(文/印南敦史)【参考】※古川武士(2015)『人生の主導権を取り戻す「早起き」の技術』大和書房
2015年08月26日2013年に『『統計学が最強の学問である』がベストセラーになって以来、統計学ブームが続いています。たしかに社会が複雑になればなるほど、感覚だけで判断できることは少なくなるもの。だからこそ、統計学に基づいた判断が必要とされるのかもしれません。とはいえ難しそうな印象もあるだけに、多くの人にとっては手を出しにくい領域でもあります。そこでおすすめしたいのが、『統計力クイズ: そのデータから何が読みとれるのか?』(涌井良幸著、実務教育出版)。身の回りのさまざまな統計現象に焦点を当て、経験や直感だけでなく、統計的なセンスによってどれだけ正しい判断ができるのかをクイズ形式でチェックしようというもの。統計学とはどんなものかを、無理なく理解できるというわけです。きょうはそのなかから、宝くじに関するクイズをご紹介しましょう。■宝くじは、買えば買うほど損をする?儲かる?(1)「買えば買うほど損をする」のが統計的事実だ(2)少ない枚数では当たりハズレもあるが、たくさん買えば高額当選金が当たる確率は高くなり、結果的に儲かる確率も高くなるさて、統計学的には上記のどちらが正解なのでしょうか?■宝くじの「戻ってくる金額」は統計学で算出可能宝くじを買ったとき、大儲けをするかハズレるかは個別にはわからないこと。しかし統計学的に見ると、たくさん買った際に「どのくらい戻ってくるか」を考えることは可能だそうです。そして当たる確率と賞金額から戻ってくる平均額を算出したものを、「期待値」と呼ぶのだとか。もし期待値が元でよりも大きくなるなら、買えば買うほど儲かるということ。■宝くじを1枚引く場合の期待値はたった30円!賞金1,000円が当たるくじが2本、100円が当たるくじが10本、ハズレくじが88本の合計100本のくじがあったとします。このくじを1枚引く場合の期待値は、賞金総額3,000円をくじの総本数100で割ったもの。(1,000 × 2 + 100 × 10 + 0 × 88)÷100 = 30円30円の期待値は、くじを1本引くごとに期待される賞金額(戻ってくる期待額)。もちろん、1本のくじを引けば必ず30円もらえるという意味ではなく、あくまでも理論的に期待される平均金額。つまり期待値が30円、1本引くのに50円なら、たくさん買えば買うほど損をするということになります。そして1枚300円の宝くじで計算した場合、期待値は143円。つまり、半額以下しか戻ってこないのです。宝くじはたくさん買えば買うほど「損をする」ようにできているわけで、冒頭のクイズの正解は(1)となります。*このように、身近な話題を通じて統計学を理解することが可能。論理的な思考を育てるためにも、読んでみてはいかがでしょうか。(文/印南敦史)【参考】※涌井良幸(2015)『統計力クイズ: そのデータから何が読みとれるのか?』実務教育出版
2015年08月25日ダイエットに失敗する人やリバウンドしてしまう人には、「太りやすい食生活を送っている」という共通点がある。そう断言しているのは、『太らない体質は食事がつくる』(岡田眞著、幻冬舎メディアコンサルティング)の著者。「太らない体質をつくる食事法」を実践し、これまで90%以上の人を無理なく目標体重まで落とすことに成功したというダイエットコンサルタントです。■カロリーよりも栄養素をチェック!私たちがふだん口にしている食材がすべて、4つのグループに分けられることは有名な話です。【食材の4つのグループ】[第1群]:牛乳、卵、チーズなどの乳製品[第2群]:肉や魚、大豆などのたんぱく質[第3群]:野菜や果物、イモ類、海藻やきのこ類[第4群]:ご飯やパン、麺類の糖質類、植物油や脂身(ラード)などの油脂類この4つのグループをバランスよく食べていくようにすること、つまり「4群食事法」がもっともおすすめの食事法だそうです。さらに重要なのは、「あまり食べていないはずなのに体重が増えてしまう」のは、からだに必要な栄養のバランスがとれていないからだといいます。栄養の偏りが原因だということ。■第4群の食べすぎで肥満になりやすいちなみに4つの食品群のなかで、もっとも効率よくカロリーに換わるのは第4群。すなわちご飯やパン、麺類、油、お酒など。つまり、第4群の摂りすぎが肥満に直結しているわけです。そこで、太らないための食事、ダイエットを意識した食事を考えるなら、第4群の食べすぎを見なおすことがまず大切だと著者は主張しています。なお第1群から第3群の食品は、20代から70代まで同じ量を食べ続けても問題はないのだとか。なぜならこれらは、おもにからだをつくる基礎として必要な栄養素だから。ただし第4群のご飯類は、エネルギーのもとになるもの。年齢を重ねると燃費がよくなり、エネルギーをあまり使わなくなるので、調整して減らしていくことが大切なのです。■素材の味の濃いものほど高カロリー肉や魚を含む第2群もカロリーは高いですが、第4群とのいちばんの違いは栄養密度の濃さ。栄養密度の高いものほどカロリーが高くなるということで、「素材の味の濃いものほど高カロリー」とおぼえておけばいいそうです。【肉類、魚介類のカロリーの高さの順番】[肉類]:牛肉→豚肉→鶏肉[魚介類]:赤み→白身→イカ・エビ■第3群を食べないことは肥満の原因にさらに忘れられがちなのが、第3群の野菜や海藻類。でも、これらを食べることはとても大切だそうです。「代謝」は、食品を栄養として吸収するためにも、脳やからだを動かすためにも大切な働きですが、第3群の栄養素が代謝を行うための重要な役割を果たすのだそうです。肉や魚から摂取したたんぱく質はアミノ酸に、ご飯やパンの糖類はブドウ糖に変わることによって初めて、脳にも必要な栄養素がいくことになるのだそうです。しかし第3群が不足していると代謝が進まず、カロリーが蓄積して体重が増えるというわけです。*「なるほどー」とうなずきたくなる知識満載。読みやすい新書版なので、短時間で大切なことを理解できることでしょう。(文/印南敦史)【参考】※岡田眞(2015)『太らない体質は食事がつくる』幻冬舎メディアコンサルティング
2015年08月24日『課長のための一瞬で人を動かす「数字の技術」』(深沢真太郎著、大和出版)の著者は、“数字力”トレーニングの専門家として、これまでにも数字に関連した多くの著作を発表してきた人物。本書のテーマは「いかにしてリーダーは人を動かす力を持つか」だそうですが、つまり人を動かすためには、力のある数字が必要だという考え方に根ざしているわけです。■ことばの多さはことばの浪費であるそんな著者は本書の冒頭で、「なにかを伝えること」の難しさに触れています。たとえば学生時代、長くて数字だらけの説明にストレスを感じた人は少なくないでしょうし、仕事においても、数字だらけの長い話は疲れるもの。いわば、なにかを100%理解させようとすると、説明に必要な言語は必然的に増えてしまうということです。しかしそれでは、聞かされる側のストレスが大きくなって当然。だからこそ、「ことばの多さはことばの浪費である」ということを理解する必要があると、著者は主張しています。■契約に100%の理解は必要ない?・保険を購入するに際し、その保険商品を100%理解して購入したか?・いま使っているパソコンは、スペック(仕様)を100%理解して購入したか?・結婚しているとして、パートナーのことを100%理解していると断言できるか?著者はここで、このような質問を投げかけています。そして、保険の購入、パソコンの選択、結婚には共通項があるとも。それはずばり「契約」で、つまり人は100%理解しなくとも契約できるということ。逆からいえば、相手に100%理解してもらわなくても、契約はしてもらえるということ。人を動かすためには、相手に完璧な理解をさせることが正しいわけではないという考え方。必要なのは100%の理解ではなく、75%の納得感を与えることだといいます。これはどういうことなのでしょうか?■半信半疑以上、完璧未満でOK!すべてを理解しなくても保険を契約したのは、支出額、メリット、デメリットなどを大まかに把握し、「これがよさそうだな」という気分になったから。つまりは自分で自分を「これがベストチョイスなんだ」と納得させたから。パソコンも結婚も同じで、いわば人は「納得するから動く」ということ。そして、ここで重要なのが、75%という数字は「半信半疑以上、完璧未満」であるという認識。100%の理解は難しいからこそ、100と50の中間地点である75くらいを着地点にすべきだという考え方です。少ない時間と少ない言語で、「なるほど、まあそうかもな」と思わせることができるようなビジネスコミュニケーションを目指せばいいわけです。*数字の専門家というと難しそうに感じるかもしれませんが、著者のアプローチはとてもソフト。これなら、数字で人を動かす方法も無理なく学べそうです。(文/印南敦史)【参考】※深沢真太郎(2015)『課長のための一瞬で人を動かす「数字の技術」』大和出版
2015年08月23日『それちょっと、数字で説明してくれる?と言われて困らないできる人のデータ・統計術』(柏木吉基著、SBクリエイティブ)で解説されているのは、「実務に必要なデータの見方や分析の仕方、あるいは最初のプロセスで必要な考え方や視点。つまり、あくまで数字をビジネスパーソンの視点から考えているわけです。しかしそうなると、ビジネスとデータとの連動性を改めて確認しておきたいところではありますね。そこで、「なぜ、ビジネスにはデータが必要なの?」という項目から答えを探し出してみたいと思います。■なぜ会社では数字が必要とされるのか?どんな仕事も、最終的にどこかでお金につながっています。でも、「なぜ会社では『数字』は数字が必要なのかと問われたとしたら、はたしてどう答えればいいのでしょうか?組織が大きくなるほど、経営層は会社全体の状況を把握しづらくなるもの。だからこそ、そんなときにデータ(数字)が大きな役割を果たすわけです。なぜなら数字を使えば、大量の情報(データ)も集約して把握できるから。また表面上の結果だけでなく、比較や分析によって新たな情報も掘り起こせるというわけです。また、他にも次のようなメリットがあるとか。■人を動かすいちばんの説得材料になる当然ですが、裏づけもなしに「僕はこう思います」というだけでは、組織は動かなくて当然。根拠のないことばには説得力がないからです。逆にいえば、「この施策をしたら、こういう数字が出たので、積極的に進めるといいと思います」など、数字・データの裏づけがあれば周囲は納得し、結果として人を動かせるのです。■リーダー・管理職になるなら数字は必須経営者でなくとも、組織のなかでは役職が上がるほど、自分ひとりで把握できるキャパシティーを超えた担当領域を持つことになります。そこで、数字に頼る要素が深まっていくということ。なぜなら組織のトップはそのすぐ下に数字を求め、その人はさらに自分の下に数字を求め……と、どんどん連鎖して下につながっていくから。途中で「数字はもういらない」となることは考えにくいわけです。つまり数字を使って仕事ができることは、自分の仕事の幅を広げるためにも、組織の内部でより質の高い職務を高いポジションで行うためにも重要だということです。■数字はコミュニケーションを円滑にする特に国籍や文化が入り混じったビジネスの現場においては、「ことば」によるコミュニケーションは便利である反面で、「曖昧さ」というリスクを伴います。そしてもちろんそれは、日本人同士でも同じ。たとえば「この商品、最近すごく売れているんですよね」という表現に対する感じ方は、人によって大きく違ってきます。しかしそれを「この商品、ここ1ヶ月は計画比の140%で売れているんです」といえば、間違った事実が伝わるリスクはなくなるというわけです。*たったこれだけのことでも、数字の重要性がおわかりいただけるのではないでしょうか?ビジネスの現場で「数字を」といわれると、ドキッとしてしまう人は少なくないはず。でも、数字についてわかりやすく解説してくれている本書を読めば、数字への恐怖感を和らげることができるかもしれません。(文/印南敦史)【参考】※柏木吉基(2015)『それちょっと、数字で説明してくれる?と言われて困らないできる人のデータ・統計術』SBクリエイティブ
2015年08月22日『最速の仕事術はプログラマーが知っている』(清水 亮著、クロスメディア・パブリッシング)は、プログラマーならではの発想が貫かれたユニークな書籍。プログラマーにとっての最大の関心事は「効率化」だと主張する著者が、徹底した効率主義を紹介しているのです。きょうはそのなかから、「お金を多次元で捉える」に焦点を当ててみたいと思います。■プログラマーにとって借金と貯金は完全に等価ビジネスマンが経営について考える際、もっとも重要なのは柔軟な発想を持つこと。一方で人間には先入観に左右されやすいという側面がありますが、その点においてプログラマーは少し違うのだそうです。なぜなら、一般人とくらべて柔軟な発想が得意な人が多いから。具体的にいえば、プログラムを組むとき、デバッグをするとき、ハックをするとき、新たなプログラミング言語をおぼえるときなど、常に「それまでとは異なる視点の獲得」が必要とされるということです。そしてプログラマーには、時間(一次元)と平面(二次元)と空間(三次元)をすべて等しく扱えるという発想があるのだとか。そのいい例が、借金と貯金。一般的に借金は「できればしたくないもの」として捉えられがちですが、プログラマー的な視点でいえば、借金と貯金は時間軸が逆になっているだけで等価だというのです。■プログラマーが借金と貯金が等価と考える理由そこで、利息が発生しないと仮定して、借金と貯金を見てみましょう。仮に月給20万で生活費が10万の人が、1月に親から100万円借金し、毎月10万円ずつ10ヶ月で返すと考えます。だとすれば、預金はずっと0のまま。一方、同じ人が親にお金を借りず、10万円ずつ10ヶ月貯金したら11月には100万貯まります。でも、それを一気に使うと、結局預金は0。利息を想定しない世界では、「100万円をいつ使うか」だけが問題で、借金と預金は完全に等価であるという考え方なのです。■知っておくと役に立つプログラマー的な考え方なお例外的に、利息をしてでも借金をした方が得になるのが、「資本を回転させる」という発想が必要な会社経営。たとえば手元の100万円を運用することで、1年後には120万円くらいに増やせるとします。もしそれが可能なら、銀行金利が年5%とすると借金をした方が得。なぜなら100億円借りられれば、120億円に増やしても5億しか利息を払わなくてよく、15億円を丸儲けできるからです。もちろん現実的には、こううまくはいかないかもしれません。が、基本的には、資本があるところはどんどん資本を増やし、ないところは小さなビジネスを回し続けなければならないということ。この「ある時点の残高が同じならば、借金と貯金は本質的に等価」という考え方を知っておくと、さまざまな場面で役立つと著者は記しています。*プログラマーならではの発想は、とてもユニークで理にかなったものが多数。目を通してみれば、新鮮な驚きを感じることができるでしょう。(文/印南敦史)【参考】※清水亮(2015)『最速の仕事術はプログラマーが知っている』クロスメディア・パブリッシング
2015年08月21日『売れる販売員の全技術』(井上健哉著、かんき出版)の著者は、保険の営業マンや経営コンサルタント業務と並行して、幅広い業種に向けた研修セミナーやコンサルティングを推進しているという人物。本書ではそんな経験を生かし、100種もの「売れるコツ」を明かしているわけです。きょうは第2章「販売以前の心理戦! 「欲しい」と思わせる4つのツボ」から、「お得感」についての記述を引き出してみます。■お得感とは「欲しい」を引き出すツボたとえば夕方のスーパーのお惣菜、お弁当コーナーで、商品に「300円引き」「30%オフ」「半額」などのシールが貼られると心がワクワクしてしまうもの。そんな「お得感」に触れると、気が大きくなってつい多く買ってしまったりしてしまいがちです。なぜなら、買いもの自体の「満足感」が高まるから。つまりお得感は、私たちの「欲しい」を引き出す大きなツボになるのです。■ユーザーの「基準」と実際との「差」しかし「価格」だけではなく、「時間」「質や量」「サービス」によって生まれるお得感もあるといいます。たとえば「時間」なら、レストランでの「18時までの入店に限ったドリンク半額、オフシーズンや平日限定の格安ツアーなど。「質や量」なら、値段の割に商品の質感が高い、大きなパックの食べものを買うと小さなパック2つ分よりもグラム数が多い、など。また「サービス」なら、ホテルの部屋や飛行機の席に空きがある場合、無料でアップグレードしてもらえることも魅力的です。つまりお得感は、お客様のなかにある「これくらいの値段(時間、質や量、サービス)なか?」という基準(相場)と、実際との「差」によって生まれるものだというわけです。■「いい塩梅」がお得感のツボを刺激するそしてお得感について考えるうえで、見逃せないのが「いい塩梅」だとか。お客様が考えている基準(相場)と、実際の商品やサービスとの「差」が大きすぎると、疑問が湧いてきてお得感がなくなるもの。たとえば「価格」なら、高すぎると手が出なくなりますが、安すぎても不安になるということ。しかし売れる販売員は、その中間に位置する微妙な「いい塩梅」をわかっていて、お客様のお得感のツボを刺激するのです。価格が高すぎても安すぎても逆効果だからこそ、「さじ加減」が重要だという考え方です。*このように、売るために忘れるべきではないことが満載。本書は業種を問わず、「売る」仕事に携わっている方にはきっと役立つはずです。(文/印南敦史)【参考】※井上健哉(2015)『売れる販売員の全技術』かんき出版
2015年08月20日A.T.カーニー日本法人会長であり、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」コメンテーターとしても活躍中の著者が、グローバル環境で能力を発揮するためのメソッドを明かした書籍、それが『グローバルエリートの仕事作法』(梅澤高明著、プレジデント社)。20年にわたって日米をまたにかけて戦略・マーケティング・組織関連のコンサルティングを実施してきたというだけあり、強い説得力を感じさせてくれる一冊です。■アメリカ人は数字に強いのか?日米のビジネスシーンを目の当たりにしてきた著者は、数字に強いことも日本のビジネスパーソンの強みだと記しています。でも、そもそもアメリカ人と日本人とでどのような差があるのかを知りたいところです。アメリカ人は数字でビジョンや目標を語ることが好き。事実、話にも「売上を2倍にする」「ユーザー数を10倍にする」など、大きな数値目標がよく出てくるそうです。ならば、アメリカ人は数字に強いのでしょうか?この問いについて著者は必ずしもそうは感じないといいます。それどころか、大雑把な数字をよく使う割には、きめ細かな計算が得意ではない人が少なくないのだとか。一方、算数の基礎ができていて、暗算も強いのが日本のビジネスパーソン。高学歴のインド人にはかなわないかもしれないけれども、それでも世界の平均的な水準よりずっと上だという印象を著者は持っているそうです。■暗算ができるとビジネス上で有利では具体的に、数字の強さはビジネスにおいてどのように活きてくるのでしょうか?当然のことながら、計算の正確さやスピードは電卓やエクセルの方が上ですから、決定的な差別化の武器にはならないでしょう。ただしそれでも、数字に強いと勢いに流されにくくなるというメリットがあるのだといいます。先に触れたとおり、特にアメリカでは大雑把に数字を扱う傾向があるため、現実的でない過大な目標を背負わされることがあるそうです。しかしそんなときに素早く暗算できれば、話がどんどん先に進む前に突っ込みを入れられるわけです。■数字で考えると冷静な判断が可能また、チームメンバーがエクセルで組み立てた定量分析に誤りがあったときなど、そのことにすぐ気づくのも、暗算で数字の全体感がつかめる人。ビジネスの現場では、数字で考えることによって冷静な判断ができるという場面は少なからずあるもの。決定的な差別要因にはならなかったとしても、強みとして積極的に活用すべき能力だと、著者は主張しています。*このように、実体験に基づいた考え方はなかなかに新鮮。視野を広げるためにも、読んでおくべき一冊だと思います。(文/印南敦史)【参考】※梅澤高明(2015)『グローバルエリートの仕事作法』プレジデント社
2015年08月19日『お金が「貯まる人」と「なくなる人」の習慣』(山崎俊輔著、明日香出版社)の著者は、投資教育、金銭教育、企業年金知識、公的年金知識の啓発について執筆・講演を行っている人物。「根拠のある『お金の貯まる習慣』が実行できれば、誰でも『お金がなくなる人』に別れを告げ、『貯まる人』になれる」そんな考え方のもと、本書では誰でも実行でき、その効果が確実に現れる「お金が貯まる習慣」をまとめているわけです。きょうは1章「お金が貯まる人の日常編」に焦点を当ててみましょう。■500円のランチを食べるとお金がなくなるお金がなくなる人の大きな間違いのひとつに、「いつもガマンしないと節約にならない」という思い込みがあると著者は指摘しています。でも実際には「貯まる人」ほど、日々を楽しみながらきちんと節約でき、お金を貯めているのだとか。その点について著者は「ランチ予算が1日500円だった場合はどうか」という問いかけをし、結果について以下のように断定しています。「素直に500円ずつ同じランチを、月曜から金曜まで同じ店で食べるような人は、お金がなくなる人です」■毎日同じランチを食べ続けると飽きる!意外な気もしますが、理由を聞いてみれば確かに納得できる話。つまり、こういうことです。「毎日500円の予算」と思い込むから、毎日500円でランチを食べるしかないわけですが、人間なので、それでは飽きてしまって当然。何ヶ月も続けていると、やがて食事はなんの楽しみもない、ただの作業になってしまいます。■同じ予算で変化をつけるとお金が貯まるしかし「1日500円」と決めつけてしまうからよくないわけで、「1週間で2,500円の予算」と考えれば違ってくることに。たとえば「月・水・木曜日は500円のランチ」「火曜日は吉野家で牛丼(並盛)380円」「金曜日は620円のちょっとだけゴージャスランチ」とすれば、同じ予算で変化が生まれるということ。だとすれば、同じ2,500円で買える満足度も、毎日同じランチよりも少し多くなることでしょう。つまり、同じ金額の消費について、自分の工夫で高い満足度を得たということになるわけです。「お金が貯まる人」は「同じお金で高い満足」を買ったり、「より安いお金でいままでと同じ満足」を買ったりしているのだとか。しかし「なくなる人」は、不満足のままたくさんお金を使ってしまい、同じランチタイムの過ごし方ひとつでどんどん差をつけられてしまうのです。*このように、ユニークな視点に基づいているので、読みごたえも充分。金の貯まる方法を、無理なく身につけられることでしょう。(文/印南敦史)【参考】※山崎俊輔(2015)『お金が「貯まる人」と「なくなる人」の習慣』明日香出版社
2015年08月18日「行動科学マネジメント」とは、期待どおりの成果を達成するために必要な行動を徹底的に分析し、誰にでもできるかたちにするマネジメント手法。『なぜ一流は「その時間」を作り出せるのか』(石田 淳著、青春出版社)は、その第一人者である著者が、日本人向けに改良したメソッドを紹介した新書です。著者によると、行動科学マネジメントにのっとった「正しい行動」を実践すれば、いつでも、誰にでも、どこででも理想の結果を引き出せるのだそうです。その結果、時間のムダをなくし、新たな時間をつくり出すことができるのだとか。きょうは同書のなかから、忙しい人が「その時間」をつくり出せる理由に焦点を当ててみたいと思います。■オバマ大統領は忙しくてもランニングできるアメリカ大統領のバラク・オバマ氏は、激務の合間を縫って、毎朝ランニングを行っているのだそうです。世界一忙しい人だといっても過言ではないはずなのに、ランニングを習慣化できるほどの時間をつくり出せているとは驚きです。しかしその一方には、いつも「時間がない」と悩んでいる人も。この差はなんなのでしょうか?その違いについて著者は、「時間の使い方が違うから」だと断定しています。■一流の人は「これはやらない」と決めているつまり、すべてのことに対して均等に時間を注いでいては、いつまでたっても時間をつくり出すことはできないということ。一流の人ほど多くのことをやっているというイメージがありますが、実は逆。多くのことをこなしているように見える彼らは、それ以上に多くのことに対して「これはやらない」と決め、それを実践できているというのです。だからこそ、時間をムダづかいせずに、やるべきことをやる時間を確保できるのだというわけ。■「生きている時間」と「死んでいる時間」に分類そして一流の人は、時間を「生きている時間」と「死んでいる時間」とに分けているのだとか。「生きている時間」とは、楽しいと思えたり、有意義に過ごせていると感じられる時間。「死んでいる時間」とは、つまらない、苦しいと感じる時間や、ヒマつぶしに費やした時間、あるいは成果につながらない無意味な作業をこなす時間など。だとすれば、「死んでいる時間」を削り、「生きている時間」を増やせばいい。そんなふうにメリハリをつければ、時間の浪費がなくなり、ひいては人生が豊かになるということです。*些細なことだからこそ、これを習慣化することはとても大切なのではないでしょうか?(文/印南敦史)【参考】※石田淳(2015)『なぜ一流は「その時間」を作り出せるのか』青春出版社
2015年08月17日きょうご紹介したいのは、『人は感情でモノを買う』(伊勢隆一郎著、フォレスト出版)。インターネットを利用したマーケティング手法によリ、12時間で5億円を売り上げた実績を持つ著者が、“見えない相手の感情”を見抜く方法を明かした一冊です。さまざまな角度から持論を展開しているなかから、ネットビジネスに限らずあらゆる業種に応用できそうな「『相手の話を聞く4レベル』で、相手の感情を見抜く訓練をする」に焦点を当ててみましょう。■レベルを設定した理由簡単そうに見えて、人の話を聞くことは思った以上に難かしいもの。著者はそう指摘しています。なぜなら多くの人が、「聞くことくらい、普通にできている」と思っているから。でも実際には、聞いているようでいて、「次に自分はなにをいおうか」と考えていたりするもの。しかし、それでは相手の感情を見抜けなくて当然です。そこで著者は、聞くことについて「相手の話を聞く4レベル」を設定しているのだそうです。■相手の話を聞く4レベル[レベル0]:まったく聞いていないこれは、相手の話を聞いているようで、実はまったく聞いていない状態。このレベルだと相手のことばが耳を素通りしているだけで、理解しておらず、理解しようとすらしていないといいます。だから当然、相手は「話を聞いてくれない」と不満を持つことに。親子、夫婦、友だちなどプライベートな人間関係のなかでならともかく、他人であれば、その場で関係が終わりになってもおかしくありません。[レベル1]:話をジャッジしながら聞いている自分が聞きたいことを、聞きたいように聞いている状態。判断軸はあくまで自分であり、自分と照らし合わせて「この人はいま正しいことをいっている」「間違ったことをいっている」と判断しているということ。当然ながら相手とのコミュニケーションは行われず、相手も「聞いてくれた」と感じることができないわけです。[レベル2]:相手のことばをそのまま聞いている自分の判断を入れず、相手のことばをそのまま受け取りながら聞いている状態。相手のことばを正確にとらえようとしているため、オウム返しを正確に行うことができるといいます。コミュニケーションは成り立っていて、こちらのことばにたいして相手が「そうそう」とうなずいてくれるレベル。相手から「なんでも話せる」「安心できる」と思ってもらうことができ、信頼関係が生まれるそうです。[レベル3]:相手の背景・意図・信念を考えながら聞いている相手のことばの背景や裏側にある意図、その人が持っている信念などを意識しながら聞いている状態。相手は「話を聞いてくれた」と嬉しく感じ、「自分のことをわかってもらえた」と感動することに。しかも、本人が気づいていなかったことを自覚させることができるため、大きな影響力を与えることが可能。だから、短期間で強い信頼関係を構築できるわけです。[レベル4]:相手の感情を共有しながら聞いている相手の感情を自分のことのように受け止め、感じながら聞いている状態。深く共感しているため、それが相手にも100%伝わることに。結果として、短期間でも親友のように深い絆で結ばれた関係になれるとか。*著者は「ほとんどの人の聞くレベルは0と1」だといいますが、ならば日常的にこのレベルを意識し、レベル4に近づくように習慣化していけばいいということです。慣れたころには、人間関係が円滑にまわっているかもしれません。(文/印南敦史)【参考】※伊勢隆一郎(2015)『人は感情でモノを買う』フォレスト出版
2015年08月16日『問題解決のためのセパレート思考』(鈴木進介著、フォレスト出版)の著者は、さまざまな問題を解決したいときにこそ、「セパレート思考」が絶大な効果を発揮するのだと主張しています。「セパレート思考」とは、「問題を仕分けする思考法」。頭のなかが混乱した状態にあるときは、選択肢と情報の「仕分け」(セパレート思考)を行えば、物事の本質が見えてくるという考え方です。では、どのように「仕分け」を行えばよいのでしょうか?「100点を取るべき仕事、60点でいい仕事」というページを見てみましょう。■「100点でなければいけない」は危険私たちはなにかをする際、すべてに対して全力でがんばろうとしてしまいがち。それどころか、「100点でなければいけない」という前提で行動し、その考え方に縛られてしまうこともしばしばです。しかし、すべてのことについて100点を目指すことは、時間の制約がある生活では現実的に困難。また、必ずしも100点が求められていない場面でそこに固執すると、「行動の第一歩目」が出てこなくなる危険性も。しかし仕事においては、「こだわること」と「こだわらないこと」を仕分けし、集中すべき領域を設定しなければならないと著者はいいます。別ないい方をするなら、「100点を取るべき仕事」と「60点でもよい仕事」を分け、頭のなかを整理する必要があるということ。これこそが、セパレート思考の発想です。■行動する前に「こだわり度」で仕分ける100点を取ることだけを考えていると、いつまでたっても優先順位がつかないばかりか、すべてが中途半端に終わるリスクがあると著者は指摘しています。でも、スピード重視でまわりのフィードバックをもらいながら、60点で着地できればいい仕事もあります。一方、コンプライアンスや数字の管理などは、100点が求められて当然でしょう。だとすれば重要なのは、その仕事がどちらに収まるのか見極めをすること。もし100点を取ることにこだわりすぎて成果が出ないなら、行動する前に「こだわり度」で仕分けすればいいということ。それが結果として、行動の加速化につながるわけです。■仕分けは「セパレートメモ」でやろうそのとき大きな意味を持つのが、「セパレートメモ」。横置きにした神の中央に縦の線を引き、左側には仕事で「とことんこだわること」を、右側には「あまりこだわらないこと」を書いてみる。たったこれだけのことで、気持ちをすっきり仕分けできるということです。ぜひ一度、試してみてください。(文/印南敦史)【参考】※鈴木進介(2015)『問題解決のためのセパレート思考』フォレスト出版
2015年08月15日教育経済学とは、「データ」に基づき、教育を経済学的な手法で分析する応用経済学の一分野。『「学力」の経済学』(中室牧子著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は教育経済学者であり、つまり本書ではそんな立場から、教育についての是非を掘り下げているのです。子どもの教育について、「なにが正しいのか」で悩んでいる方にとって必読の情報が満載された一冊。きょうはそのなかから、気になる「学習時間」についての記述をご紹介したいと思います。■テレビやゲームをやめても学習時間は増えない著者らの分析の結果、テレビやゲームが子どもの肥満や問題行動、学習時間に与える影響は小さいことがわかったそうです。ただし、テレビやゲームと学習時間の間には、負の因果関係があることも示されているのだとか。つまり「テレビやゲームをやめさせれば、子どもの学習時間は増える」という考え方は間違いではないわけですが、問題はその大きさ。なぜなら、テレビやゲームを1時間やめさせたとしても、男子は最大1.86分、女子は最大2.70分しか学習時間が増加しないことが明らかになったからだといいます。■ただしテレビやゲームは学習に悪影響もあるどうしてそんなことになるのでしょうか?理由はいたってシンプルです。テレビやゲームの時間を制限しても、子どもがそのまま机に向かって勉強するようになるわけではないから。テレビやゲームを制限されたら、スマホでチャットするとか、インターネットで動画を見るなど、他の遊びに移行するだけだというわけです。しかしその一方、著者らの研究では、テレビ視聴やゲーム使用の時間が長くなりすぎると、子どもの発達や学習への悪影響が飛躍的に大きくなることが示されているそうです。■テレビやゲームは1日1時間程度なら問題なしそうなると気になるのは、どれくらいのテレビ視聴やゲーム使用なら無害なのだろうかということ。ところが、1日に1時間程度のテレビ視聴やゲーム使用が子どもの発達に与える影響は、まったくテレビを観ない・ゲームをしないのと変わらないことが示されたのだとか。とはいえ、1日2時間を超えると、子どもの発達や学習時間への負の影響が飛躍的に大きくなることも明らかになっているそうです。だとすれば、子どもが1日1時間程度、テレビを観たりゲームをしたりすることで息抜きをするのは、決して悪いことではないということになります。だから、罪悪感を持つ必要はないわけです。「『テレビやゲームは有害だ』というのは、その昔『ロックンロールを聞くと不良になる』といわれたのと同様、単に人々の直感的な思い込みを強く反映した時代遅れのドグマにすぎないのです」著者のこのことばには、なんだか強い説得力があるように思えます。(文/印南敦史)【参考】※中室牧子(2015)『「学力」の経済学』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2015年08月14日『家事の手間を9割減らせる部屋づくり』(本間朝子著、青春出版社)の著者は、NHK「あさイチ」や「サキどり」、日本テレビ「ZIP!」などのテレビ番組でもおなじみの「知的家事プロデューサー」。本書では、「家事のしやすさは、部屋の環境に大きく左右される」という考え方に基づき、「手抜きではなく、“手間”を省くコツ」を公開しています。そのなかから、コラム「5分で部屋と気持ちをリセットできる『小片づけタイム』」を見てみましょう。■小片づけタイムは日に1~2回だけでOK!片づけたいという気持ちはあっても、時間がない。そんな人に著者がオススメしているのが、1回5分程度の「小片づけタイム」。まとまった時間がなくても、「小片づけタイム」を日に1~2回設けるだけで片づけグセがつきやすくなるそうです。たとえば、朝起きたときや作業が一段落したとき、寝る前などに一度部屋をリセット。一度にまとめてやると大変な片づけも、何度かに分ければ1回ごとの手間が小さくなるため負担にならないという考え方。事実、常に家が片づいている人は、使い終わったそばから道具をしまっているのだとか。そこまでできなくても、日に1~2回の「小片づけ」をすれば大きな散らかりを予防できるということ。■小片づけタイム向きのタイミングとはなお、「小片づけタイム」に向いているタイミングは次のとおり。語呂合わせの「明日楽しみ」でおぼえるといいそうです。「あ」・・・朝起きてすぐ「す」・・・すきま時間(お湯が沸く間など)「た」・・・立ち上がるついでに「の」・・・飲み食いする前に「し」・・・就寝前「み」・・・みんなが集まったときなかでも著者は、寝る前に家族で小片づけタイムを行うことを勧めています。理由は、家族が自分のものを自室に戻す習慣がつきやすくなるから。■小片づけですら気分が乗らないときは?もしも気分が乗らないときは、キッチンタイマーをかけるとスタートが切りやすくなるそうです。また、好きな曲をかけながら片づけるのも有効。ポップスやロックなら1曲はだいたい5分程度なので、曲が流れている時間だけ片づければいいということ。それからテレビを見ているときなら、CMの時間を片づけに利用すべし。1時間ドラマを見通した場合は、それだけで約6分の小片づけタイムができるわけです。*他にも、「あ、なるほど!」と思えるアイデアがたくさん。家事に悩んでいる人にとっては必読の一冊です。(文/印南敦史)【参考】※本間朝子(2015)『家事の手間を9割減らせる部屋づくり』青春出版社
2015年08月13日チーム単位で目的を達成するためには、各人がそれぞれの力を発揮すること、チームとしての団結、そして、その大前提としての相互理解や信頼関係が必要。そこでご紹介したいのが、『2人から100人でもできる! 15分でチームワークを高めるゲーム39』(ブライアン・コール・ミラー著、富樫奈美子訳)。ゲームを通じてチームワークを強化しようというコンセプトのユニークな内容で、「初対面のメンバーが親しくなるゲーム」「チームが盛り上がって活性化するゲーム」「チームに交渉力・創造力がつくゲーム」「変化に負けないチームをつくるゲーム」と4カテゴリーに分けられた、全39種類のゲームが紹介されています。簡単にできるものばかりなので、企業内研修などにも役立つはず。部署内でのコミュニケーションにもよさそうです。きょうはそのなかから、「2枚の硬貨をめぐって交渉し合うゲーム」をご紹介。多数決以外の手段で、簡単な問題解決策を見つけることを目的としたゲームです。■2枚の硬貨を使ったゲームで解決できることこれは3人以上で行うゲームで、場所はどこでもOK。用意するものは、3人1組のチームごとに2枚の硬貨。メンバーがチームの方針に従わずバラバラなとき、いろいろな解決法を見つける力を訓練する必要があるとき、多数決に頼ってばかりいるときに最適なのだそう。このゲームの手順は次のとおり。(1)メンバーを3人1組のチームに分ける。(2)各チームに2枚の硬貨を渡す。(3)3人のうち誰が硬貨をもらうか、5分以内で決めさせる。(4)他の方法で決まらない場合は、多数決で決めることを許可する。(5)最後まで決まらなかったチームから硬貨を没収する。硬貨をもらう人は、息子のサッカーチームに寄付するという条件で1人が2枚獲得、1人が2枚獲得することで合意する。ただし、その人は残りの2人に1分間ずつ肩もみをする、といった条件でもいいでしょう。そして、このゲームが終わったら、「どんな戦略を使いましたか? どの戦略がもっとも役立ちましたか?」「多数決で決めましたか? そうしたのはなぜですか?」「時間制限はどんな影響を与えましたか?」「他の人がなにを望んでいるかをどのように探りましたか?」「このゲームは、実際の仕事とどのような関連があるでしょうか?」というような質問をメンバーに投げかけます。■2枚の硬貨を使ったゲームを成功させるコツゲームを成功させるために、硬貨を獲得した人は実際にもらえることを強調する、2人が1枚ずつ硬貨を獲得することも1人が2枚とも獲得することも可能にする、といった工夫もアリ。また、交渉する硬貨を1枚だけにしてみる、メンバー全員にとって価値があるものを硬貨の代わりに使う、メンバーを2人1組に分け、硬貨を1枚渡してみるのもひとつです。*オフィスでゲームをしようという発想は、ある意味で斬新すぎるかもしれません。とはいえ、たしかにこれだけでチームワークや結束を高めることができそうです。特に、どうということもなさそうな「メンバーへの質問」は、ふだん知ることのできない各人の考え方を把握するためには効果的ではないでしょうか?残りのゲームもそれぞれがユニークなので、さまざまな場面で活用できる一冊だと思います。(文/印南敦史)【参考】※ブライアン・コール・ミラー(2015)『2人から100人でもできる! 15分でチームワークを高めるゲーム39』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2015年08月12日「自分の睡眠データ」を貯めることは、睡眠改善の第一歩。そう主張するのは、『“ぐっすり”の練習ノート』(白濱龍太郎著、実務教育出版)の著者。たとえば「前夜にビールあ杯以上飲んだ翌日の午前中は眠気がひどい」「朝食を和食にした日の夜は寝つきが早い気がする」など、“眠り”について気づいたことを本書の「睡眠ログ」に記録していくことで、自分にとっての快眠の黄金パターンを構築しようという書籍です。実際に記入できる「睡眠ログ」が豊富に掲載されているため、日常生活で多いに役立てることができそう。しかしそれ以前に、「睡眠時間」についてきちんと知っておきたいところではあります。そこできょうは第3章「今夜から始める“ぐっすり”のカイゼンから、睡眠時間に関する記述を引き出してみたいと思います。■最適な睡眠時間は「6時間30分前後」パフォーマンスが最大になる最適睡眠時間は、自分で試行錯誤しながら見つけなければならないのだそうです。たとえば、「23時までに寝る」というような一定のリズムをつくっておく。そこから、睡眠ログを参考にして“黄金の生活パターン”を実行し、翌日にいちばんスッキリする睡眠時間を確認していくわけです。地道な作業ですが、これが自分の最適睡眠時間を見つける唯一の方法なのだそうです。ただし、そうはいってもひとつの目安として意識しておきたいのは、「6時間30分前後」という時間だとか。というのもこれは、人間がもっとも長生きするといわれる睡眠時間なのだそうです。つまり、これだけ寝ておけば、大幅な睡眠不足になる心配はないということ。なお不眠症の方は、逆に「朝起きる時間だけ決める」ことが有効だといいます。なぜなら、きっちり寝る時間を決めてしまうと、かえってストレスになってしまうから。それよりも、眠くなるまで寝室に行かないと決めてしまうのがベストだということです。■毎日最低限の睡眠時間を確保すべきまた、「ショートスリーパーになりたい」という声を聞くことは少なくありませんが、ショートスリーパーになることは、慣れによってある程度は可能だといわれているそうです。とはいえ、傷んだからだを修復するためには、まとまった睡眠をとることが不可欠。それに睡眠不足が続くとネガティブになり、最悪の場合はうつになってしまうこともあるといいますから注意が必要。そうならないためにも、自己管理として最低限の睡眠時間を確保すべきだということです。■“自称不眠症”でも長く眠らなくてOKちなみに、最近では“自称不眠症”の人も増えているのだとか。「昔は8時間眠れたのに、最近は7時間しか眠れない」などと嘆いているような人です。でも成人しているなら、あまり長く眠ることを求めなくても大丈夫だそうです。たとえば70代の方にとっての5時間睡眠は、異常ではないのだそうです。むしろチェックすべきは、「日中の活動に支障があるかどうか」だけだといいます。*睡眠の常識も、その本質はなかなか理解しにくいところ。本書をもとに「睡眠ログ」をつくり、快適な睡眠を心がけてみてはいかがでしょうか?(文/印南敦史)【参考】※白濱龍太郎(2015)『“ぐっすり”の練習ノート』実務教育出版
2015年08月11日投資に関するアドバイザーは数多く存在しますが、『10万円から始める! 貯金金額別 初めての人のための資産運用ガイド』(内藤忍著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者による手法は、他の専門家とは大きく異なるのだそうです。なぜなら、イギリスの年金運用の手法をベースにしているから。しかもそれは、資産運用の知識がまったくない人でも再現できる方法なのだといいます。特徴は、過剰にリスクを取りすぎることなく、長期分散投資で着実に資産を増やせることだとか。しかし、そもそもなぜ投資をするべきなのでしょうか?コラム「投資をするべき『3つの理由』に、その答えを探してみたいと思います。投資はギャンブルと同じだと思われがちですが、両者には大きな違いがあるそうです。つまり投資は、新しい価値を生み出し、人生を豊かにする手段だということ。では、なぜ投資なのか?この疑問に答えるべく、著者は投資を始めるべき3つの理由を説明しています。■1:将来の生活基盤をつくる最初の理由は、資産を増やして将来の生活の安心を得るため。日本経済の不安定が続く今後に求められるのは、自分の資産は自分で守るという「自己責任」。少子高齢化が進むなか、老後の年金も医療費も、これまでのように国や会社のサポートを期待しづらい状況になっています。だとすれば当然のことながら、自分のお金は自分で用意しなければなりません。また、今後さらに円安になれば、円の価値が下落して日本人の生活水準が下がることに。そのときの対策として、外貨投資も考えておく必要があるというわけです。■2:投資は社会貢献にも次に注目すべきは、「投資は社会貢献にもなる」ということ。投資で得た利益について「あぶく銭」のようなネガティブなイメージを抱く人もいますが、それは正しくないと著者。なぜなら株式などに投資されたお金は、企業の経済活動に使われ、新しい価値を生み出すから。その結果、企業の価値が高まり、投資のリターンとなるということ。いわば投資の利益は、社会に価値が生み出されたことに対するご褒美。お金が社会で有効に使われたことの証明だということです。■3:投資を通じて自己成長そして3つ目の理由は、自己成長。資産とともに自分の成長できるのが、投資の大きなリターンだという考え方です。投資をはじめると、経済の動きやマーケットの変動に注意するようになるもの。そして「なぜ円高になったのだろう?」「どうして景気は悪化しているのだろう?」といった疑問が出てくることになります。そのような疑問を解決していくなかで得られるのは、経済や金融に関する知識。社会人として知っておくべき情報や知識を無理に勉強しなくても、投資について考えることによって、自然と自分で考えて解決できるようになるわけです。*こうした理由があるからこそ、日本人はもっと投資に対してポジティブになるべきだと著者は主張しています。投資の基礎を学ぶことができる本書、興味のある方は読んでみてはいかがでしょうか?(文/印南敦史)【参考】※内藤忍(2015)『10万円から始める! 貯金金額別 初めての人のための資産運用ガイド』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2015年08月10日きょうご紹介したいのは、『仕事ができる人はなぜハンカチを2枚持っているのか?』(西松眞子著、日本実業出版社)。幅広い分野において多数のコンサルティング実績を持つ「対外的・戦略的イメージコンサルタント」である著者が、気くばりを戦略として身につけ、自己演出として活用する方法を解説した書籍です。「モノ」「ことば」「会話」「見た目」「仕事・対人関係」など、さまざまな角度から気配りの仕方を説いた視野の広いアプローチが魅力。第6章「行動・しぐさの気くばり」から、「線を意識して動く」をご紹介しましょう。私たち日本人は欧米人にくらべると、派手なアクションが苦手。ただし、思いを伝えるためには、少しでもいいから自己演出をしてみることも大切。それもまた。気くばりのうちだと著者はいいます。そして、そんな考え方に基づいて紹介されているのが、実際に研修で紹介しているという「好かれる人の3つのしぐさ」。それはいったい、どのようなものなのでしょうか?■1:ワイドの動き(WIDE)気持ちを人に伝えたいときは、積極的に、ややオーバー気味に手を広げるようにすることがポイント。なぜならそうすれば、動きに躍動感や華やかさが出るからです。日本人は身振り手振りが小さく、自分では「大げさで恥ずかしい」と思ってしまいがち。でも周囲から見れば、それほど目立っていないことがほとんどだといいます。■2:左右対称の動き(SYMMETRY)左右対称であることは、美しい動作の基本。見た目にバランスがよいので、心理的にも安心できるということです。逆にバランスが悪いと、見た目がかっこ悪いだけではなく、人格が崩れていると受け取られがちだとか。■3:曲線(CURVE)直線的な動きには無駄がなく、力強いイメージがあります。そして目の前の相手に向けて手を動かす場合は、曲線を意識することが重要。特に男性が曲線を取り入れると、好感度がぐっと高まるもの。そして人間関係に効くのも、この曲線の動きだと著者は記しています。たとえば書類を渡す際でも、ストレートな動きで手を突き出すように伸ばして渡すと、つっけんどんな印象を与えてしまいがち。女性なら服装が女性らしくとも、性格が雑で、おおざっぱに思われるものだといいます。その点、曲線の動きはやわらかな印象を与え、調和を印象づけるもの。ふんわりと山をつくるように書類を渡すと、受け取る方も穏やかな気分になれるそうです。また、なにかを聞く際にも、相手に手を向けるときには、いつもよりゆったりと、カーブを描くように動かすべき。その方が、相手も緊張せず話がしやすくなるからです。*つまり、人に好かれる人、周囲から一目置かれる人は、しぐさにも好かれる要素があふれているということ。相手を思う心が、しぐさや動作に表れるのです。こうした所作を自然に身につければ、相手の信頼を勝ち取ることができるかもしれません。(文/印南敦史)【参考】※西松眞子(2015)『仕事ができる人はなぜハンカチを2枚持っているのか?』日本実業出版社
2015年08月09日