『お金持ちはなぜ、お金持ちになれたのか 元銀行富裕層担当が教える3000人のお金持ちから学んだ50のこと』(掛越直樹著、SBクリエイティブ)の著者は、大手都市銀行の富裕層担当営業。多くのお金持ちと接してきた経験をもとに、本書では彼らの考え方をさまざまな角度から公開しています。きょうは第1章「お金に関する考え方」から、「筆記用具にはお金をかけろ」という項目を引き出してみたいと思います。■お金持ちが筆記用具にお金をかける理由総じてお金持ちは、筆記用具にお金をかけているのだといいます。しかも選ぶのは、最高級のボールペンや万年筆。また、同じように腕時計や靴などにもお金をかけているのだそうです。でも、彼らはなぜ、そこにお金をかけるのでしょうか?著者によればそれは、お金持ちは「人から見えにくいところ」にお金をかける傾向があるから。人から見えやすいところにお金をかけるのは、誰もがやっていること。しかしそれでは差別化を図ることができないため、あえて人が気づきにくいところにお金をかけているというわけです。■スマートな行為が品格につながるお金持ちのワイシャツの袖から高級そうな腕時計が見えたり、ズボンの裾から質のよさそうな革靴が見えたりすると、「この人はお金持ちなんだな」と感じるもの。極めつけは筆記用具を取り出すときで、スーツの内ポケットからさりげなくボールペンや万年筆を取り出して書く仕草には、風格が漂います。しかもお金持ちは、それをひけらかすことなく、書き終えるとさっともとの場所に戻してしまう。そのようにスマートな行為が、品格につながっていくということです。■高級な筆記具を1本買ってみようそこで著者は、高級な筆記具を1本買って持ってみることを勧めています。とはいえ、必ずしもお金持ちが持っているような1本何万円もするようなものを持つ必要はなし。たとえばいま、1本400円の4色入りボールペンを持っているのだとしたら、少し奮発し、その20倍する1本8000円程度のボールペンを買ってみるということ。いうまでもなく、いままで1000円以下のボールペンしか購入したことのなかった人にとって、その20倍もの値段のボールペンを買うというのには勇気が必要です。しかし、一度使ってみれば、400円のボールペンとは明らかに異なる使い心地のよさに気づくはず。それだけではありません。高級なボールペンを使っていると、「なくすわけにはいかない」といった気持ちや、「大切に使おう」という意識も働くもの。そういう気持ちが、とても大切だということです。✳︎契約などでボールペンを使う場合、お金持ちと同じようにボールペンを内ポケットから出してサッと書くだけで、相手から「できる人」と思われるもの。著者はそう主張しています。見えないところにお金を使うというのは、たしかにいい心がけかもしれません。(文/印南敦史)【参考】※掛越直樹(2015)『お金持ちはなぜ、お金持ちになれたのか 元銀行富裕層担当が教える3000人のお金持ちから学んだ50のこと』 SBクリエイティブ
2015年08月08日『「一流の存在感」がある人の振る舞いのルール』(丸山ゆ利絵著、日本実業出版社)の著者は、日本初の「プレゼンスコンサルタント」。ホテル西洋銀座、ホテルオークラ神戸などのエグゼクティブ向けビジネスクラブ経営会社で要職を歴任し、一流の財界人と交流を持った実績を軸に、「超一流とそうでない人の違い」を分析。その結果として、一流を目指す人に求められる立ち居・振る舞いを体系化したのだそうです。きょうは第3章「一流の常識としての会食・接待のルール」から、話題の振り方についての記述を引き出してみましょう。■会食や接待時に「観客」になるケースが接待などの会食やパーティー、イベントなどにおいて、重要な役割を担うのがホスト/ホステスの役割。ゲストが快適に過ごし、満足して帰れるように準備や采配などを行うディレクター的な役割です。でも、いつの間にか「お追従役」のようになっているというのもよくある話。著者が知る名門レストランのサービス責任者は、「日本人は本当にコミュニケーションが下手だと感じる」とこぼしているのだそうです。たとえば数人で会食(接待)していても、トップ同士がお互いに話しているのを、周囲が黙って聞いているだけの状態。他は会話をすることもなく、黙々と食事をしているというのです。これは、トップふたりが「主賓1、主賓2」となり、あとは全員ホスト役のようになってしまうことが生む光景だとか。ホスト役どころか、「観客」になってしまっているのだといいます。■「3」聞いたら自分は「1」話すといいまた、トップのなかにはホストでありながら、自分の話に夢中になってしまう人もいます。しかし、もてなしの席では、ホストはゲストの話の聞き役。相手の話を促し、相手から話を「3」聞いたら、自分は「1」話すというつもりで話すのが適切だそうです。■会話のベストバランスは「3・2・1」でとはいえ、トップによる会話だけでは、他の担当者が参加した意味がありません。大切なのは、ゲスト側のトップにだけではなく、同行者にもバランスよく話しかけること。もしもトップが「3」話すなら、同行者にも「2」くらいは話してもらうという感覚でいることだそうです。ベストバランスは、「トップゲストが3:同行ゲストが2:自分は1」の状態。バランスよく話を進めていけば、他の人もだんだんと会話に参加できるようになり、会話の幅も広がっていくというわけです。*他にも「イメージ」から「衣服」「スピーチ」まで、振る舞いのあり方を多角的に解説しています。男女を問わず、ビジネスパーソンにとってはきっと役に立つ内容です。(文/印南敦史)【参考】※丸山ゆ利絵(2015)『「一流の存在感」がある人の振る舞いのルール』日本実業出版社
2015年08月07日ルイーズ・ヘイは、幼少期から虐待や暴行、レイプなどを経験した過去を持つ女性。その後、モデルとして活躍したのち、結婚と離婚を経てスピリチュアルな世界へ。1970年代初頭からは、自己啓発家として活躍しました。『あたらしい私のはじめかた You Can Heal Your Life COMPANION BOOK』(ルイーズ・ヘイ著、道端ジェシカ訳、フォレスト出版)は、そんな彼女が残した全世界5,000万部のベストセラーである『You Can Heal Your Life』のガイドブック。世界で5,000万人の人生を変えた本。心の持ち方が変わるメッセージとメソッドがつまってます。道端ジェシカさんの翻訳も読みやすく、「自分を愛し、ポジティブに考える」という著者の考え方を無理なく理解できます。きょうはそのなかから、「お金と繁栄」に関する記述を抜き出してみたいと思います。■持っているお金に値する人間になろうお金について考えるにあたり、「いまよりもお金持ちになるだけでは充分ではない」と著者はいいます。なぜなら私たちは、持っているお金に値する人間になり、そのお金を楽しむ術を学ぶ必要があるから。山ほどお金があっても、繁栄が保証されるわけではありません。それどころか、お金をたくさん持っている人は、貧困意識に飲み込まれてしまう可能性があるのだとか。お金持ちは、ホームレスよりも、一文なしになることを恐れがち。しかしそうなると、持っているお金を楽しみ、豊かな世界で生きる力を失ってしまうもの。事実、哲学者のソクラテスも、「満足は自然が与える富。ぜいたくは人が与える貧困である」ということばを残しています。■繁栄意識がお金の流れを決めているつまり、お金が繁栄意識を左右するのではなく、自分自身の繁栄意識が、自分のお金の流れを決めているということ。だからこそ著者は、お金の追求は、人生の質に貢献するものでなくてはならないと断言しています。もしもそうでないのなら、つまり、お金を稼ぐためにしていることが嫌いなら、お金は無用の長物と化すことになってしまうとも。つまり繁栄とは、所有しているお金の量だけではなく、人生の「質」をも指しているということです。■繁栄はお金だけで定義できないものそして繁栄は、お金だけで定義するものではないといいます。時間、愛、成功、喜、心地よさ、美しさ、英知といった要素も含んでいるということ。たとえば、もしも焦りやプレッシャーを感じ、急かされている気分だとしたら、周囲の時間は貧困にどっぷり浸っているといえるかもしれない。でも、「目の前の仕事をこなす時間はたっぷりとある」と感じ、どんな仕事でもこなせる自信があるなら、時間に関しては繁栄している状態にあるのだとか。■いま、この瞬間に考えは変えられるでは、成功についてはどうでしょうか?「成功なんて高嶺の花で手が届かない」と思ってしまいがちですが、「自力で成功できる」と感じているなら、成功に関してはリッチな状態。そして著者は、どんな思い込みを持っていようと、「いま、この瞬間に変えられる」と知っておくことが大切だとも記しています。自分自身を生み出した力が、自分にとっての経験を生み出す力を与えてくれるということです。*なお、絵本のようにきれいなフルカラーなので、ページをめくっているだけでも楽しめると思います。(文/印南敦史)【参考】※ルイーズ・ヘイ(2015)『あたらしい私のはじめかた You Can Heal Your Life COMPANION BOOK』フォレスト出版
2015年08月06日『日本の神さまと上手に暮らす法』(中村真著、ダイヤモンド社)は、日本人にとって身近な「神社」とのつきあい方を説いた書籍。もっと正確にいうなら、神社の住人である「日本の神さま」と仲よくし、暮らしを整えるためのヒントを、日常的かつ実用的にまとめているのだそうです。■神社の数はコンビニより多い?ただ、「神さま」「神社」といわれても、漠然とした抵抗感があったり、苦手だと感じたりする人は少なくないはず。けれど現実的に、神社はコンビニよりも数が多いのだそうです。それどころか、「人も住まない山奥にもある」という点を考え合わせれば、コンビニ以上に近い場所かもしれないと著者は指摘しています。ところで、そんな著者も、最初から神さまや神社に興味があったわけではないのだといいます。それどころか、10代から20代にかけては海外に魅せられ、世界中を旅していたというのですから、つまり日本のよさを考えることなどなかったわけです。ましてや宗教に関心があったわけでもなく、いまでも特定の宗教を持っていないのだとか。しかし、世界を見て、あるいは仕事を通じてさまざまなライフスタイルに触れるうちに、日本の神さまの存在に気づいたということ。■神さまと仲よくするといい理由では具体的に、日本の神さまと上手に暮らすと、なにが変わるのでしょうか?このことについて著者は、次のように記しています。・心がすっきりと整理整頓されます。・食べもの、水、空気、太陽、あらゆることに感謝できます。・神社めぐりが、より深く楽しめます。・暮らしのなかで出会う人たちに、やさしさがもてます。・日本人としての美しい所作と精神を取り戻せます。・なにもなく、シンプルでありながら、無限の豊かさを味わえます。そうなのだとすれば、多くの人々に受け入れられているオーガニックなライフスタイルとの共通点があるような気もします。■神社の数は15万社以上もある「コンビニ以上に数がある」神社は、全国の神社をまとめている神社本庁に登録されているだけでも8万社以上。伏見稲荷大社、日光東照宮のように神社本庁に登録していない神社もあり、小さな祠(ほこら)まで含めると15万社以上、20万社弱くらいなのだそうです。つまり、この国に生きている限り、かなりの確率で遭遇する場所だといえます。しかも、コンビニとの類似点は数の多さだけではありません。悩んでいるほどでもないけれど、気持ちが晴れないとき、ちょっと立ち寄れるところ。ひとりでぼんやりしたいとき、ふらりと行ける場所。それがコンビニであり、神社だということ。しかもお金を払わなくてもいいわけですから(お賽銭は入れたいところですが)、空いた時間を利用して訪ねてみるのも悪くないかもしれません。*本書ではお参りのマナーについてもわかりやすく解説されているので、「神社に興味はあるけれど、なにをどうしたらいいのかわからない」という人も安心。読んでみればきっと、暮らしをさらに心地よくするための場所として、神社を活用してみたくなるはずです。(文/印南敦史)【参考】※中村真(2014)『日本の神さまと上手に暮らす法』ダイヤモンド社
2015年08月05日『成功の神はネガティブな狩人に降臨する――バラエティ的企画術』(角田陽一郎著、朝日新聞出版)の著者は、TBSの敏腕プロデューサー。「さんまのスーパーからくりTV」「金スマ」「EXILE魂」など、おなじみのバラエティ番組を手がけてきた人物だといえば、ピンとくる人も多いのではないでしょうか?しかし、これだけのヒット番組を生み出してきたにもかかわらず、社内の企画会議で自分の企画が通ったことはほとんどないのだそうです。なのに、なぜ、やりたい企画を次々実現しているのか?理由はいろいろあるでしょうが、いちばん大切な部分、つまりアイデアの出し方にも秘密が隠されていそうです。そこで第2章「整った『カッコよさ』はつまらない——企画の『アイデア』」のなかから、「アイデアが生まれる3つの行動」を見てみましょう。■アイデアのキーワードは「宇宙」アイデアを日常のなかからどう探し出すかは、企画を考えるにあたって重要なポイント。著者は日常で体験するあらゆる出来事がアイデアの源泉だと考えているそうですが、それを企画にまで昇華させるためには、3つの「ちょっとしたポイント」があるのだといいます。それらを、ひとつひとつ見ていきましょう。■アイデアが生まれる3つの行動(1)自分の宇宙を広げる高校時代、自分の知り得た範囲内で「おもしろい」「つまらない」を判断していた著者の視野を広げてくれたのは、読書家の友人の存在だったそうです。いろいろな本を紹介してもらい、それらを読み進めていくことによって、「読書というのは自分の会ったことのない、またはたぶん会うことのない、それこそ世界中のあらゆるところで、あらゆる時代で、いろいろな人生を送ってきた人の考え方と直接コンタクトができる受信機なのだ」と気づいたのだとか。そんな経験があるからこそ、日常での思考のコミュニケーションパターンは、自分の宇宙を広げることにより、何倍にもなるのだと考えているそう。(2)宇宙に独自のルールをつくるルールを決めることが、ものごとをおもしろく展開させるのだと著者は主張しています。つまり、ルールやレギュレーションを決め、その決めごとのギリギリのところに焦点を当てて実行する。すると、それが期せずして予想外のおもしろさ=ハプニングを招いてくれるということ。でも企画を考えるにあたって、最初に意義するルールは独自のものでもよいのだそうです。なぜなら大切なのは、そのルールを厳密に遂行することで、ルールが生む現実との齟齬を楽しむことだから。それが企画の豊かさにつながるわけで、だから「宇宙に独自のルールをつくる」ことが2つ目のポイント。(3)宇宙の細部にこだわるそしてもうひとつ重要なのは、くだらないことをくだらないと認めたうえで、それを本気で楽しむこと。「ツッコマレるのが当たり前」のシチュエーションにもとことんこだわり、楽しみ、真剣になにかを競い合う。だからおもしろいことになるというわけです。*テレビ番組のプロデューサーというと、それだけで「特別な人」というようなイメージがあるかもしれません。けれど本書を読んでみれば、決してそうではないことがわかるはず。また上記の考え方にしても、きっとさまざまな業種で活用することができることでしょう。(文/印南敦史)【参考】※角田陽一郎(2015)『成功の神はネガティブな狩人に降臨する――バラエティ的企画術』朝日新聞出版
2015年08月04日『医者が教えるあなたを殺す食事生かす食事』(内海聡著、フォレスト出版)は、多くの著作を持つ人気の医師による新作です。タイトルにあるとおり、テーマは「食事」。そして基本コンセプトは、「健康になるために食事を機にするのではなく、生きるも死ぬもすべて自分の選択次第と考え、悪いものを食べるのも自己責任と考えること」だといいます。Part 1「まずは『1日3食』をやめてみる」から、従来に常識を覆すトピックをご紹介しましょう。■実は「1日3食」が不健康のもと!「1日3食」が不健康をもたらすとは意外な気もしますが、このことについては、野生動物や古代人の食べ方、そして断食の理論がヒントになるのだそうです。まず考えてみるべきは、「1日3食きちんと食べる野生動物がいるか」ということ。当然ですが、そんなことはあり得ません。肉食動物は狩猟だけでもひと苦労。エネルギーを維持するためにかなりの時間を食事に費やす草食動物にも、律儀に食べる法則はないそうです。古代人も野生動物と同様で、狩猟ができたときにまとめて食べることも多かったでしょうし、農耕がはじまったあとの時代でも1日2食、しかも粗食が一般的だったといわれているといいます。にもかかわらず、飽食の現代人よりも健康的な肉体を持っていたのです。■現代のおもな病気は食事のせいしかも、古代人と野生動物がかかった病気は、感染症、外傷、骨折、死産、食糧難による栄養失調、他の獣に襲われる、老衰などが主。ところが現代のおもな病気は、ガン、心筋梗塞などの心臓病、脳梗塞や脳出血など、アレルギーと呼ばれる病気、神経疾患や免疫疾患と呼ばれる難病、精神疾患と呼ばれるもの、機能性疾患と呼ばれるものなど。この食と病の違いからも、私たちがかかる病気の多くは、自分たちが食べているものによってつくられていることがわかります。ちなみに古代人の平均寿命が短いのは、幼児死亡率の高さ、外傷などの救急疾患でなくなってしまうため。つまり、病気のせいではないのだそうです。■食べすぎで内臓が働きっぱなしでは、食べ過ぎている私たちは、なぜさまざまな病気になりやすいのでしょうか?それは、人間の消化・吸収する構造に関係しているのだと著者はいいます。私たちは食べることで、外から栄養を入れて消化し、エネルギーをつくっています。その際、口で咀嚼した食べものが、喉を通って胃に入り、酵素によって消化され、腸管から吸収するまでにはだいたい1日かかるのだとか。だとすればその間、内臓は消化・吸収のため常に動いていることになります。ですから食べすぎると、内臓はずっと働きっぱなしになってしまうわけです。すると当然のことながら、内臓は次第に疲れていき、どんどん老化していくことに。■健康のために「1日3食」はやめてしかし食べる機会や食べる量が少なければ、その間、内臓を休ませることが可能になり、からだにかかる負担も減ります。つまり健康のためには、消化・吸収にかけるエネルギーを必要最低限に抑えることが必要だということ。もちろん古代人と現代人では、からだのつくりも生活環境も違います。それでも、せめて食べすぎる以前の食生活に戻せば、多くの病気を予防・克服することができ、目に見えて健康で長生きができるということです。だからこそ、消化・吸収の負担が大きすぎる「1日3食」をやめることが健康への第一歩なのです。*他にも、「食材の見分け方」「健康を守る調理法」、果ては著者の食卓の秘密までを幅広く網羅。楽しみながら、食に関する知識をつけることができます。(文/印南敦史)【参考】※内海聡(2015)『医者が教えるあなたを殺す食事生かす食事』フォレスト出版
2015年08月03日部下を叱るのは大切なことですが、とても難しいことでもあります。でも、『部下がついてくる人、離れていく人の叱り方』(齋藤直美著、あさ出版)は、部下を叱ることについて悩んでいる人を救ってくれるかもしれません。著者は、外食チェーン本部の人材育成部署で約8,000人の教育・研修を担当した実績を持つ人物。現在もさまざまな業界のリーダー教育に携わっているといいますが、そうして培われたノウハウが、ここでは明らかにされているのです。第3章「伝え方・言葉編すぐに実践できる“差”がつく叱り方とは」から、叱り方についてのポイントをひとつ引き出してみましょう。■ 「Iメッセージ」と「YOUメッセージ」まず意識すべきは、メッセージには「Iメッセージ」と「YOUメッセージ」があり、部下が離れていく人は「YOUメッセージ」のクセを出しがちだということ。つまり、話の主題が「YOU(あなた)」になっており、知らずのうちに相手を責めているということ。例を見てみましょう。(1)「こんなふうになるなんて、いったいなにをしていたんだ!!」(2)「何度いったらわかるんだ!?」(3)「そんなこともわからないのか!」相手を責めている印象があるとは思わないでしょうか?(1)は、「あなたが悪い・あなたのせいだ」「なんとかしろよ!」(2)は、「あなたはダメな人・理解できない人」「何度もいわせるな」(3)は、「あなたはわからない人・できない人」「自分で考えろ!」というニュアンスが伝わってくるはず。相手を責めたいと思うと、主語がYOUメッセージになりやすいのだそうです。■YOUからIに変えると責める印象がなくなるでは同じ内容を、YOUからI(私)に変えてみましょう。(1)「この状況を見て、(私は)とてもびっくりしたんだ」(2)「大切なことだから、しっかり理解してほしいと(私は)思っているんだ」(3)「(私は)とても期待しているんだ。だからこそ自分で考えてほしいと(私は)思っている。このように主語をIにするだけで、責めている印象はなくなります。■要注意な相手を責めるようなIメッセージただし、「相手を責めるIメッセージ」もあるのでご用心。相手を責めないように努めても、心のなかに相手を責めたい気持ちがあると、そうなってしまいがちだということ。(1)「ちゃんとやってくれないと(私が)大変になるじゃないか」(2)「遅刻するなんて、社会人失格だと私は思うよ」(3)「こんなミスをして……、私がなんとかしなきゃいけないな」どれもIメッセージですが、なんとなく相手を責めている印象があります。「あなたに~されると(あなたが~してくれないと)、私は~と思う(~になる)といういい方なので、「相手に問題がある」というメッセージになってしまうわけです。この点は注意したいところです。*このように実例が豊富なので、とてもわかりやすい内容。読んでみれば、部下との接し方がきっと変わります。(文/印南敦史)【参考】※齋藤直美(2015)『部下がついてくる人、離れていく人の叱り方』あさ出版
2015年08月02日文章を書くのは難しいもの。特にメールでなにかを伝える際などには、ちょっとした表現が大きな誤解につながってしまうことも少なくありません。しかし、『「一行フレーズ」で気持ちが通じる 大人の言葉遣い400』(むらかみかずこ著、KADOKAWA)の著者は、文章を書くことについて「難しく考える必要はありません」といい切っています。必要なのは、最低限の「使ってはいけないことば」をおぼえ、読む人のことを想像しながら、感謝やねぎらいのフレーズをプラスすることだけ。すると、「気がきくね」「文章いいよね」とほめられ、喜ばれ、仕事と人間関係がみるみる発展していくというのです。つまり本書ではそんな考え方を軸として、ビジネスでのさまざまなシーンに応用できる400種以上のフレーズを紹介しているわけです。特徴的なのは、「日ごろ気軽に使っていることば」と、正しい日本語にリライトされたフレーズが並列されているところ。自分のことばづかいの悪い点が、ひと目でチェックできる構造になっているのです。きょうは第1章「気がきく、差がつく! 『ありがとう・ごめんなさい』の伝え方」のなかから、使うことの多い「お礼のフレーズ」に焦点を当ててみたいと思います。社会人男性が考える“素敵女子の習慣”1位は「お礼状やお礼メールをこまめに出す」です。以下のフレーズを使うと、さらに素敵女子に近付けるはずですよ。■1:相手の親切心を表現することば×お気づかいいただき、すみません◯お気づかいいただき、ありがとうございます相手の親切心を表現することばはたくさんあり、「ご配慮ありがとうございます」「ご親切に感謝いたします」なども◯。■2:謙虚な姿勢の伝え方×どうもです◯おかげさまです「おかげさま」は、日ごろの感謝の気持ちを伝える奥深いことば。「相手の存在のおかげ」「見えない力に助けてもらっている」という謙虚な姿勢が伝わるそうです。■3:雨の日のことば×雨の日なのに、すみません◯足元が悪いなか、足をお運びくださり、ありがとうございます「足元が悪いなか」とは、雨などで外を歩きにくいことを表すときに使うことば。「遠方にもかかわらず」「大雪が降るなか」など、そのときの気候や状況に応じてことばを変えましょう。■4:時間がないときの返信×取り急ぎです◯取り急ぎ、用件のみにて失礼します。いつもありがとうございます時間がないなか、慌てて返信するときは、事務的な文章になってしまいがち。しかし「取り急ぎ……」に「いつもありがとうございます」という感謝の気持ちを加えれば、急いでいてもていねいな印象に。■5:日ごろの感謝を伝える×おつかれさま◯いつも仕事をがんばってくれて、ありがとう日ごろの感謝を伝えるフレーズ。大切なのは、お互いの関係がよりよいものになることを願って書くこと。*もちろん、これらはほんの一部。他にも、役に立つお礼のフレーズがたくさん掲載されています。加えて、「お願いごと」「励まし・ねぎらい」「喜び・幸せな気持ち」「自分の気持ち」「時節・天気」と、さまざまな「伝え方」も。具体的でわかりやすく、すぐに使える内容なので、大いに役立てたいところです。(文/印南敦史)【参考】※むらかみかずこ(2015)『「一行フレーズ」で気持ちが通じる 大人の言葉遣い400』KADOKAWA※こんな子は好感度大!男性に聞く「素敵女子に共通している習慣10」-マイナビウーマン
2015年08月01日規模や程度の差こそあれ、つらい過去は誰にでもあるものです。ただ、『最悪から学ぶ世渡りの強化書──ネガポジ先生仕事と人間関係が楽になる授業』(黒沢一樹著、日本経済新聞出版社)の著者のように極端な人生を送ってきた人は、なかなかいるものではないと思います。なにしろ、母親が17歳の高校生だったときに生まれ、父親は4人。貧困のため高校進学を断念。職人を目指すも原因不明の病で断念。自殺しても奇跡的に助かり、病気で生死の境をさまよっても、火事で焼死しかけても一命を取りとめる。……まだまだ書いていけばキリがないのですが、「波乱万丈」などということばではいい表せないほど劇的なのです。しかも、そんな著者は、ホスト経験などを経て現在は若者のための就職支援をしているというのですから、なにがどうなったのか想像できません。まずはその点をご説明しましょう。■ホストから税理士事務所勤務に著者を裏社会から救うことになったのは、税理士事務所に勤務できることになってから。ホストから税理士事務所というのも極端な展開ですが、そこには理由があったそうです。基本として心の底に根ざしていたのは、「なにかに依存していても、誰も助けてはくれない」という思い。そこで、「ならば自分で会社をやろう」と考え、簿記の資格を取得し、税理士事務所に勤務することになったというのです。税理士事務所を選んだのも、かつてバー経営に失敗した経験があったから。「どうしてうまくいかなかったんだろう?」と考えた結果、「『数字』の意識が弱かったからだ」という思いに行き着いたというわけです。■若者と企業をマッチングする転機が訪れたのは、テレビをかけたまま税理士事務所で掃除をしていたとき。そこで、就職先が見つからない大学生の特集を偶然目にして、「仕事のない若者たちと、人材がほしい企業をつなげられないか」と思いついたというのです。そこでNPO法人「若者就職支援協会」を立ち上げ、現在はキャリアコンサルタントとして多くの若者と対話しているというわけ。■黒沢さん流「幸せ」の考え方そして注目すべきは、数々の不幸を体験してきた著者の「幸せ」に対する考え方です。今の仕事に就き、幸せに暮らしていられるのは、強い精神力があったからでも、ポジティブ思考のおかげでもないというのです。いったい、それはどういうことなのでしょうか?著者のことばを借りるなら、それは「幸せを追求しよう」と考えることをやめたから。「やりたいこと」はできなくて、「夢」や「希望」も持てないもの。最初からそう考え、「絶対にこれだけは嫌だ!」というものだけを設定し、そこから逆説的に考えれば、幸せだと思えることの選択肢が広がるということ。著者はそれを「ネガポジ・メソッド」ということばに置き換えていますが、つまりどんなことでも、まずはネガティブ(最悪)なことにフォーカスする。そうすれば、そのこと以外のすべてを「ポジティブなもの」ととらえられるようになる。そこまで考えを進めることができれば、「ネガティブ以外=ポジティブな選択肢」となり、「最悪な人間ではない自分」と共存できるという考え方です。*不幸な経験をしてきた人は、とかくマイナス思考に陥りがち。そんななか、この著者が突出しているのは、めちゃめちゃ前向きで明るいことです。だからこそ、心に強く訴えるものがある。読んだ人はきっと、生きていく力を実感できるはずです。(文/印南敦史)【参考】※黒沢一樹(2015)『最悪から学ぶ世渡りの強化書──ネガポジ先生仕事と人間関係が楽になる授業』日本経済新聞出版社
2015年07月31日『人見知りでも「人脈が広がる」ささやかな習慣』(金澤悦子著、実務教育出版)の著者は、女性のキャリアを支援する「はぴきゃりアカデミー」代表。これまでに、下は20代から上は60代まで、2,000人以上の働く女性のハッピーキャリア(心もサイフも満たされる生き方)づくりをサポートしてきたのだそうです。つまり本書には、そんな経験から得たノウハウが凝縮されているということ。きょうは第1章「“出会う”ための習慣から、いくつかを引き出してみましょう。苦手だという方もきっと多い「人脈づくり」に、きっと役立ちます。■趣味のつながりから見つけよう人脈づくりというと、ビジネス交流会などをイメージするかもしれません。しかし、仕事以外のグループ、たとえば趣味のつながりも見逃せないそうです。プライベートだからこそ、仕事では接点のない人とも出会える可能性があるということ。そんな場合は、なんのしがらみもなく、自分も相手も本音でつきあえるため、本当の信頼関係が築ける可能性が大いにあるわけです。■好きなことから人脈ができる家でも職場でもない、第三のコミュニティ選びのポイントを挙げるなら、それは「参加すればするほどエネルギーが湧いてくる」コミュニティであること。逆にいえば、参加して気分が重くなるとか、一緒にいてイライラするような人たちとは、いくらメリットがありそうだとしても近づかない方が賢明。だからそんなときは、フェードアウトしてOK。好きなことを楽しむだけで、ストレス解消になって人生も豊かになる。そして人脈もできる。まさに一石三鳥の人脈術だというわけです。■第二印象で勝負することが大事!「交流会に参加しましょう」というようなフレーズをよく見かけますが、現実的には「交流会は得意」という人の方が少ないのではないでしょうか?でも、別に行かなければならないものではありません。もしも交流会が苦手なら、思い切って「行かない」という選択をすることも充分にありだといいます。そもそも交流会で新しいクライアント候補に出会ったとしても、即仕事に結びつくということはまれ。結局は、一から信頼関係を築くことになるはずです。だとしたら、もともと自分の仕事ぶりを知っている人たちに営業する方が早いという考え方もあります。いくら第一印象ばかりを磨いてみても、そこから長いおつきあいをすれば化けの皮は剥がれてしまうもの。むしろ最初から好印象を強調しすぎると、相手の期待値もさらに高まり、些細なことで失望される可能性もないとはいえません。最初は印象が悪くても、つきあっていく過程でじわじわ好印象に持っていくことは可能。期待値をめいっぱい上げておいてあとからガッカリされるよりは、「最初はダメでも挽回できる」というスタンスでいた方が、人づきあいのストレスは軽くなるはず。時間をかけて、「第二印象」を育てていけばいいということです。*本書を読むと、たとえ人見知りだったとしても、なんの問題もないことがわかるでしょう。そういう意味でも、人づきあいで悩んでいる人には格好の一冊だといえます。(文/印南敦史)【参考】※金澤悦子(2015)『人見知りでも「人脈が広がる」ささやかな習慣』実務教育出版
2015年07月30日『美しい食べものが 美しい人をつくる~ローフードで体の中からキレイになる~』(高野志保著、あさ出版)は、いま女性を中心に話題を呼んでいる「ローフード」の効能をわかりやすく解説した書籍。著者は一般社団法人BullianStyleローフード協会代表理事であり、つまりはローフードの第一人者です。でも、ローフードってどんなものなのでしょうか?聞くに聞けないという方もいらっしゃるでしょうから、まずは基本をチェックしてみましょう。■ローフード=「生の食べもの」ローフードの「ロー」は「raw(生の)」ですから、ローフード(raw food)とは、「生の食べもの」という意味。たとえば生野菜サラダをメインディッシュのように大皿で食べたり、デザートとして捉えがちなくだものも、食事の一品としていただく。そんな、「生の食べものをベースとした、健康的な食習慣」のことを指すわけです。そして、その「生」の部分にこそ、健康の秘密が隠されているのだといいます。■体の仕組みはとてもシンプル当たり前ですが、いきいきとしたものを食べれば、それはそのまま「いきいきしたエネルギー」に変わります。もちろん、フレッシュな野菜やくだものは「いきいきした状態」そのもの。逆に熱を加えると、素材からどんどん元気が失われてしまう。だから、いきいきしたエネルギーがほしいのであれば、生でそのまま食べればいいという考え方なのです。■すぐ食習慣を変える必要なしローフードの魅力のひとつは、低カロリーで高栄養だということ。だから好きなだけ食べてもカロリー過多にはならず、それでいて必要な栄養素をたくさんとることが可能。さらには、長く続けることによって、エネルギーがしっかり使える体に変わっていくのだそうです。ただ、だからといって、いきなり食生活のすべてを「なにがなんでもローフードだけ!」と変える必要はないそうです。なぜなら私たちは、いままで食べてきたものに慣れてしまっているから。いままで加熱調理したものばかりを食べていた人が、いきなりローフード100%の食事に切り替えたとしたら、体がびっくりしても当然。ローフードに抵抗がある人は、少しずつ生野菜サラダを食べる量を増やしていくところから始めればOK。加熱食を禁止しなくてもいいそうです。無理やり義務にしてしまうのではなく、健康食を楽しみ、体調の変化を感じながら続けるのがよいということです。■たった3日で味覚は変わる!穀物を主食にしないローフードは、「全部が主食」で、「全部がおかず」の主菜食。ですから必然的に調味料を使う量が減り、わざわざ「薄味にしよう」とがんばらなくても自然と薄味になっていくといいます。すると、ますます野菜やくだものの味が感じられる舌になっていくとか。素材そのものを楽しめるので、調味料を減らすほど「おいしい!」と感じるように。濃い味つけのものばかりを食べていると、味覚が麻痺して鈍感になっていくもの。でも繊細なものを食べるようにすれば、人間が本来持っている繊細な味覚がだんだん戻ってくるというわけです。だから著者は、ぜひ3日間でいいのでローフードを試してみてくださいと提案しています。たったそれだけで、変化を実感できるそうですよ。*巻末のChapter 7には、5分でつくれるローフードのレシピも掲載されているので、利用価値は抜群。ローフードを取り入れた生活の実現のために、きっと役立ってくれる一冊です。(文/印南敦史)【参考】※高野志保(2015)『美しい食べものが 美しい人をつくる~ローフードで体の中からキレイになる~』あさ出版
2015年07月29日会話をはずませるのは、なかなか難しいこと。どうすればうまく会話が進められるのか、悩んでいる方も多いのではないでしょうか?しかし『会話が弾むのは、どっち!? – 今すぐ身につく、使えるテクニック33』(櫻井弘著、ワニブックス)の著者は、会話は「すごく単純」だと断言しています。ポイントは、会話が次の3つの要素で構成されている点。■覚えておきたい会話の3つの構成要素(1)ネタ振り→話題を提供すること(2)展開→話題についての質問など、その話を弾ませること(3)着地→話題のまとめをすること本当にこれだけで、たとえば具体的な会話に当てはめると次のようになるそうです。↓ネタ振り:A子「B子、仕事ひと段落した?」展開と着地:B子「おかげさまで。ヒマだからLINEばっかりしてる(笑)」ネタ振り:A子「昨日のドラマ観た?」展開:B子「観た、観た!続きが気になってしょうがないよね」展開:A子「でしょ!私、絶対、花子と太郎が寄りを戻すと思う」展開と着地:B子「わかる、わかる(笑)!」このような日常会話でも、ネタ振り、展開、着地に分解できるということ。では次に、それら3つの構成要素を確認していきましょう。(1)会話の起点となる「ネタ振り」ネタ振りとは、話題を相手に提供すること。「天気いいですね」「調子どうですか?」などといった何気ない会話も、話題を提供していることになるといいます。話題がなければ会話が成り立たないからこそ、会話を弾ませたいのなら話題選びが大切になるというわけです。(2)聴く力がカギを握る「展開」展開は、話を弾ませる核心部。特定の話題について質問したり、興味深いエピソードを語り合ったり、冗談をいったり、一緒に考えたりして話題を深堀すること。または、その話題のなかから出てきたキーワードを起点として、話をそらしていくのも立派な展開なのだとか。会社の会議と違って、議題もゴールもないのが日常会話。話を展開するときは、「いかに相手のことばを拾うか」が会話の弾み具合を左右するため、ある程度の集中力と瞬発力(アドリブ力)、さらには冷静な状況判断力も必要だといいます。理想的なのは、話題を展開させているときに自分のエピソードも交えること。ただし、長話は禁物。一方的な長話が相手をうんざりさせるというようなことは、よくあるからです。むしろ、自分の話をほとんどせずに、聞き役に徹するだけでも会話は弾むとか。つまり会話を展開する際にいちばん重要なのは、いかに相手の話を引き出せるかということ。(3)ひとつの話題を話し終えた満足感を演出する「着地」着地とは、会話のまとめにあたる部分。会話が着地した瞬間とは、会話の最中に「ふーっ」とひと息ついてしまうような、軽い沈黙が訪れるとき。そして会話が着地したときこそ、次のネタ振り(話題提供)をする理想的なタイミングなのだそうです。■会話とはことばを介した感情のぶつかり合い著者は、会話とはことばを介した感情のぶつかり合いだとしています。相手に対する思いやりや関心があって初めて、お互いに心地よいと思える会話が成立するということ。つまり、会話が上手か否かよりも大切なことがあるということです。*これらの基本を踏まえたうえで、本編では2種の言い回しを退避させつつ、会話の弾みやすい表現をわかりやすく紹介しています。空いた時間にさらっと読めるので、会話のコツをつかむには最適な一冊だといえるでしょう。(文/印南敦史)【参考】※櫻井弘(2015)『会話が弾むのは、どっち!? – 今すぐ身につく、使えるテクニック33』ワニブックス
2015年07月28日やりたいことができない。自信が持てない。人との関係もうまくいかない……。『毎日15分自分と向き合えば、「欲しい結果」がついてくる』(池田潤著、KADOKAWA/中経出版)の著者は、ずっとそんな状態だったといいます。しかし、自分自身と向き合うことができたとき、自分が変わったと思えたのだとか。外側からなにかを学ぶことは、たしかに大切。でも、それ以前に、自分自身のなかにある「怖れ」と向き合い、自分を許して認め、すべてを受け入れる。それができたとき、「変われた」という実感をもつことができたということ。つまり本書では、そうなるための方法が解説されているわけです。が、それは意外にシンプルなことでもあるようです。■1日15分だけで見えなかったものが見えてくる現実問題として、「自分と向き合うことに慣れている」「自分と向き合うことを習慣化できている」という人の方が少ないと思います。著者はそれを認めたうえで、「できれば1日15分、自分と向き合う時間を確保してほしい」と主張しているのです。それどころか、「たったそれだけのことで、大きく人生が変わっていく」はずだとも。でも、自分と向き合って、どんなことをすればいいのでしょうか?この問いに対する答えは、「自分への質問」が大切だということ。自分に質問し、そのことについて考え、自分で答えを出すということ。そうすることで自分と向き合うことが可能になり、結果として、それまで見えなかったものが見えるようになってくるという考え方です。そして著者はここで、自分がよく使う質問を紹介してもいます。■池田さんが自分と向き合うときに使う質問3つ(1)「自分にとって本当に大事なことはなんなのか?」さまざまな情報が飛び交う社会のなかでは、本当に大切なことを見落とし、おろそかにしてしまいがち。だからこそ、「ものごとの本質」「自分の人生で大事にしたいこと」などを忘れないように、自分に対して1日に何度もこの質問を投げかけているのだそうです。そうすることで、自分が望む毎日を送れるようになるのだとか。(2)「この出来事が完璧だとして、自分はここからなにを学ぶことができるか?」目の前の現実に不満を抱えると、「いま」にOKを出すことができなくなってしまいます。だから鬱々とした気持ちを抱え、イライラし、状態を悪化させてしまう……。そこで、この質問を通じて発想を転換。いま目の前で起こっていることが「完璧」だということにすれば、感じ方も変わってくるわけです。そして、「だとすれば、自分はそこになにを学ぶべきか、なにに気づけばいいか、この出来事はなにを教えてくれているのか」と考える。いいことも悪いことも、すべてが「完璧」で、それらは自分になにかを伝えようとしている。そういう前提でものごとを考えると、新しい視点が生まれるということです。(3)「自分はすでに価値があり、やりたいことをしていいとしたら、どうするか?」「自分には価値がない」という思いは、自分を否定してしまう根源的な部分。でも、価値があると思えなかったとしても、「価値があるのだとしたら、自分はどういう気持ちで、態度で、生きていくのか」と仮定してみる。そして、その仮定のなかで自分がどうあるのかをイメージすれば、固定観念に囚われていた状況から離れ、本来の自分に戻っていくことができるという考え方。*あくまでこれらは著者自身が使っているものにすぎませんが、とはいえここに、自分と向き合うことの本質があるのも事実。日常に疲れ、悩んでいるときこそ、このような考え方を取り入れてみたいものです。(文/印南敦史)【参考】※池田潤(2015)『毎日15分自分と向き合えば、「欲しい結果」がついてくる』KADOKAWA/中経出版
2015年07月27日『プレゼンをキメる30秒のつくり方』(高橋晋平著、日経BP社)の著者は、国内外で累計335万個も売れたという『∞プチプチ』をはじめ、数多くのヒット商品開発に携わってきた人物。現在はアイデア・コークリエイターとして、多くの企業とともにさまざまな新商品・新サービスの企画開発を行っているそうです。■プレゼン嫌い人間が大変身そんな経歴を確認すれば、さぞプレゼンがうまいのだろうなと思うことでしょう。しかし実際には、幼いころから人前で話すのが大の苦手。いざ玩具メーカーに入社して念願の企画の仕事についても、社内での新企画プレゼンでは声が震え、顔が引きつってばかりいたのだとか。だから企画もまったく通らなかったといいますが、そんなことを繰り返すなかでひとつのプレゼンを通したことから、「プレゼンと次々と通せる人間」へと変身することができたのだといいます。■プレゼンは「オチ」が9割!そしていま、「プレゼンは『オチ』が9割」だと断言してもいます。「オチ」のひとことがしっかりとつくられていて、それさえプレゼンのなかで伝えられれば、提案がおもしろいように通るのだというのです。でも、「オチ」ってなんなのでしょうか?たとえば『∞プチプチ』のプレゼンをつくったとき、最重要ポイントとして考えたのが、「営業担当が『∞プチプチ』の注文を取りに行くとき、セールストークでなんといったらいいか」だったのだとか。裏を返せば、どんな提案でも、実際に営業担当が現場で使える「セールストーク」さえあれば商談に困ることはないということです。■セールストークの方向性もちろん、セールストークにはさまざまな方向性があります。「競合品より◯◯円安いです!」「従来品より品質がいいです!」「いま◯◯個売れている商品より、スペックが高いです!」などなど。ところが問題は、これまでにないコンセプトの『∞プチプチ』がそうであるように、比較しやすい要素や数字データがない場合。そんな場合に必要なのは、(1)受け手が「そのとおりだね」と納得し、(2)人にいいたくなる、(3)セールストークだと著者はいいます。つまり、それこそが「オチ」。ちなみに、『∞プチプチ』のプレゼンで「オチ」として使ったフレーズは次のようなものだったそうです。「心理学上、プチプチを見ると、本能的に誰もがつぶしたくなってしまいます。『∞プチプチ』を触れない透明パッケージに入れて店頭に陳列したら、誰もが触りたくなって買ってしまうはずです。全国の店頭でそれを仕掛けませんか?」裏づけはないけれど、なんとなく人を納得させてしまうものがここにあるわけです。■オチづくりの3つの基本そして本書ではこのあと、「オチづくりの基本」が紹介されています。それは、次の3つ。(1)「人はみな、◯◯したい」で納得させる(2)人にいいたくてたまらないネタを入れる(3)「受け手」のメリットを必ず入れる「たしかに◯◯したくなるよな」と納得させ、しかもそれを「人に伝えたい」と思わせ、「この提案が実現すれば、いままでなかったよりよい未来が見られる」ということを示す。それが、効果的なオチを実現するポイントだということ。*この基本を軸として、本書では他にもさまざまなメソッドが紹介されています。そして、それらはきっと、プレゼンをする際の力になってくれるはずです。(文/印南敦史)【参考】※高橋晋平(2015)『プレゼンをキメる30秒のつくり方』日経BP社
2015年07月26日『ディズニーシーであった心温まる物語』(吉田よしか著、あさ出版)の著者は、1983年の東京ディズニーランド開園以降、30年以上にわたりパークに通い続けているという人物。本書ではそんな経験を軸に、ディズニーシーで語り継がれているハートフルストーリーを紹介しているわけです。ただ、その内容をここで明かすと、読む楽しみを奪うことになってしまいます。そこできょうは、コラム「吉田さんち流 ディズニーシーのまわり方」をご紹介しましょう。■1:開園の1時間前くらいにゲートに並ぶその日の混み具合によるものの、開園の1時間前くらいから並ぶと開園10~15分以内に入園可能。土日は出足が早いので、もう少し早めに並んだ方がいいそうです。■2:トイ・ストーリーマニア!のファストパスは取らないトイ・ストーリーマニア!のファストパスを取ると、他のアトラクションのファストパスが確実に2時間は取れなくなってしまうので、あえて外すべき。■3:入園したら右回りでロストリバーデルタ方面へ向かうミステリアスアイランドおよびロストリバーデルタ方面へは、右回りの方が近道。ホテルミラコスタを抜けたら、右方向に進むそうです。■4:センター・オブ・ジ・アースのファストパスを取得してから、インディ・ジョーンズにスタンバイで乗車開園30分以内なら、待ち時間は15~20分以内ですむといいます。■5:インディ・ジョーンズの隣の施設にいるミッキー(ミニー or グーフィー)に会いに行くキャラクターの誕生日でない限り、開園してすぐ行けば、待ち時間は短めですむとか。グリーティングを終えるころには、センター・オブ・ジ・アースのファストパスが使用可能な時間に。■6:レイジングスピリッツのファストパスを取得し、センター・オブ・ジ・アースに向かうファストパスが発見できる時間になったら、すぐに取得。その後、発券済みアトラクションへ。“乗る前に取る”が鉄則で、基本的にロストリバーデルタ→ミステリアスアイランド→マーメイドラグーン→アラビアンコースト→ポートディスカバリー→アメリカンウォーターフロントの順に。■7:お昼はちょっと早めに食べる正午近くになると、レストランやワゴンフードが一気に混むので、お昼はちょっと早めの11時半くらいに。■8:マーメイドラグーンの「キングトリトンのコンサート」と、アラビアンコーストのマジッククランプシアターのファストパスを取得シアター系アトラクションは収容人数も多いですが、平均待ち時間は45~60分と意外に長め。ファストパス利用がいいそうです。■9:シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジは必ず乗る理由は、著者が大好きだから。■10:タワー・オブ・テラー、トイ・ストーリーマニア! は夕方以降にスタンバイで乗る朝イチだと120~180分待ちだけれど、夜になると待ち時間が極端に減るため、夜まで待つのがベスト。■11:ファンタズミック! はなるべく鑑賞するファンタズミック! がはじまる時間が近づくと人気アトラクションが空く傾向にあるものの、後方で立ち見であろうともファンタズミック! は鑑賞した方がいいと著者はいいます。*もちろん、本編のストーリーも心が温かくなるものばかり。ディズニーファンなら、ぜひとも読んでおきたい一冊です。(文/印南敦史)【参考】※吉田よしか(2015)『ディズニーシーであった心温まる物語』あさ出版
2015年07月25日『ビジネスマンのための「発想力」養成講座』(小宮一慶著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、人気の経営コンサルタントである著者による「養成講座」シリーズの10冊目。これまでにも「数字力」「発見力」「解決力」などに焦点を当てて独自のアプローチを展開してきましたが、今回は「発想力」をテーマに掲げているわけです。きょうはそこから、第4章「『発想力』養成のための11の習慣」をご紹介します。■1:いろんなところに行く・見る・経験するさまざまな情報収集も大切だけれど、実際の経験にはかなわないもの。本当に見て聞いたものの情報量、刺激の大きさが重要な意味を持つということです。それらの経験がすぐに発想を生み出すとは限らないとはいえ、脳の引き出しから、必要なときにいろいろな発想が生まれるようになるとか。■2:先に学んで深く見るいろいろなところへ行ったり見たりする際、事前に調べておくと、いっそう見方が深まるという考え方。関心の度合いが異なってくれば、インプットの量も強さも変わってくるわけです。■3:多くの人に会う人と会うことは最大の刺激。相手が「発想力」の高い人なら、その人の発想に感嘆し、さまざまなことを学べるということ。■4:新聞、本を読む・テレビを観る・ネットを見るいろいろなメディアを毛嫌いせずに読んだり見たりすることは、関心の幅を広げる習慣。インプットの質を高めてくれるといいます。しかも、「見る気はなかったし、存在も知らなかったけれど偶然見た番組やサイト」の方が、いつも見ているものよりも刺激的で、新しい発想につながるもの。■5:経験に投資するインプットするためには、ある程度の投資も必要。若い人ほど、本を買ったり新聞を読んだり、人と会うなど経験にお金を使うべき。経験は発想を生み、そこからかたちあるものをアウトプットしていけば、何十倍にもなって跳ね返ってくるというわけです。■6:知らない道を行ってみる知っている道と知らない道があったら、まず、知らない道の方を行く。これも、「発想力」の高い人に共通する行動様式のひとつ。それは、チャレンジするということ。■7:迷ったらやるこれも「発想力」の豊かな人に共通する習慣ですが、その前提として、ふだんから体を動かす習慣があることも重要。ジムやランニングだけではなく、日常生活のなかでのフットワークの軽さも無視できないといいます。■8:いろいろな場に慣れる緊張していると、いい発想は生まれにくいもの。逆に、常にリラックスしていられるなら、発想が生まれる場も広がるので、いろいろな場に慣れておくことも不可欠。■9:すぐに書き留めるどんな場所でも、思いついたらすぐに書き留める。この習慣はとても大事。そのためには、いつもメモとペンを身近に置いておくこと。■10:いつも体調を整えている特に「発想力」については、体調管理も重要。体も精神状態もよくしておけば、それはベストな発想を引き出す前庭条件になるといいます。■11:素直で謙虚素直になるためには反省が必要。自分が素直でいるかどうかを反省することで、素直な自分に近づいていける。よい習慣を持つことが、成功への大きなポイント。*どれも当たり前のことですが、つい忘れてしまいがちでもあります。だからこそ、習慣化できれば発想力にいい影響を与えてくれそうです。(文/印南敦史)【参考】※小宮一慶(2015)『ビジネスマンのための「発想力」養成講座』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2015年07月24日『97%の人を上手に操るヤバい心理術』(ロミオ・ロドリゲス Jr.著、SBクリエイティブ)の著者は、プロの「メンタリスト」。「メンタリズム」ということばが生まれる10年以上前から、日本で唯一のメンタリストとして活動してきたのだそうです。テレビ番組への出演経験もあるというので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。そして、その根底に根ざすのが「マインドリーディング」。それは、どのようなものなのでしょうか?■メンタリストのマインドリーディングとは?マインドリーディングとは、人間の深い心理を知ることによって相手の心を読み、心を操作することで、すべてを思い通りにする手段。なんだか怪しい気もしますが、根拠のない心理学や、犯罪のための知識ではないと著者は説明しています。それどころか、圧倒的な知見と実験をベースにした最強の「学問」なのだとも。本書では、マインドリーディングによって相手を思い通りに動かし、コミュニケーションを高め、良好な人間関係を築いていく技術が紹介されているわけです。きょうはそのなかから、関心のない商品も100%購入させることができるという「リピート誘導話法」をご紹介しましょう。■困ったときの「リピート誘導話法」とは?急いで売り込みをかけようとするセールスマンがいますが、著者はそういう手法は絶対にやめた方がいいと断言しています。とはいってもいつまでも相手の返事を待つわけにもいきません。だからこそ、そんなときは「リピート誘導話法」を使うといいのだそうです。リピートとは、いうまでもなく「繰り返す」という意味ですが、それはどんな話法なのでしょうか?アメリカのケント州立大学で行われた実験で、ある映像を見せたあと、「歪んだ情報」を被験者に与えたそうです。映像に映っていたのは素手の人物だったにもかかわらず、「手袋をはめた人物は……」「指紋を隠すために手袋をしていた……」と、事実(映像)とは違う印象を与えたということ。その結果、歪んだ情報を1回だけ与えられた被験者よりも、3回繰り返された被験者の方が、6倍以上も「映像の人物は手袋をはめていた」という間違った記憶に支配されてしまったのだといいます。つまり、これがリピート誘導話法。■セールストークに活かせば効果抜群そしてこのリピート誘導話法をセールストークに活かせば、相手がその気になる確率が非常に高くなるといいます。「この化粧品は必ずあなたをきれいにしますよ」といったところで相手は本気にしませんが、「ほら、少しつけてみただけでさっきと全然お肌の状態が違いますよ」といえば、半信半疑ながら相手は「本当に?」と思い始める。そこでさらに、「ほら、今度はわかりやすいように手につけてみて……ね、全然違うってわかるでしょう!」とたたみ込む。ここまでくれば、相手は完全にその気になるといいます。そして、最後のひと押し。「ね、この商品でもっときれいになりませんか?」ここまでリピートされると、相手はどんどんこちらのペースに巻き込まれることになるというわけです。*なお、この手法はビジネスだけでなく、恋愛においても効果が高いのだとか。試してみる価値はあるかもしれません。(文/印南敦史)【参考】※ロミオ・ロドリゲス Jr.(2015)『97%の人を上手に操るヤバい心理術』SBクリエイティブ
2015年07月23日「私たちの脳は、『楽をする』ことを忘れてしまったのです」『考えすぎる脳、楽をしたい遺伝子』(長沼毅著、クロスメディア・パブリッシング)の著者は、冒頭部分でそう主張しています。他の動物は、眠くなったら寝て、疲れたら休む。腹が減れば食べるし、からだの欲求に忠実に生きている。しかし人間は、先天的にからだの欲求に背いてしまう脳のトラブルを抱えているのだというのです。無理をする。疲れる。見栄を張る。ストレスがたまる。我慢する……。そんな困りごとが生まれるのは、あまりに高度に発達した脳があるから。だから本書では、「脳に振り回されずに生きる方法」を、生物学的な視点から考えているということ。■6,000年前よりも劣化した脳スタンフォード大学のある研究者によると、脳という臓器がもっともいいコンディションだったのは、いまから6,000年前。つまり文明ができたころだったのだとか。それどころか、実は文明の発達とともに、人間の脳は劣化しているというのです。これは文明の進化が、人間を自然から切り離し、城壁のなかへ閉じ込めてしまったから。私たちは脳を自然に対して使うのをやめた結果、その能力を人間関係に対して使うようになったという考えです。■脳の「どうしようもない部分」人間の脳の特徴な点は、抽象的なことを考えることができる能力。「メタ組織」といって、いろんなことを脳内宇宙で組み居合わせ、いままでになかったことをつくり上げられるということ。たとえば弓矢の発明がそうであるように、自然に対してこの能力は有効に発揮されていたといいます。そのように、建設的な方向へと広がるぶんにはいいのですが、「悩み」や「不安」など負の要素が脳のなかで堂々巡りしてしまう状態になると、一転して人を苦しめることに……。しかし現状では、脳の構造は遺伝子で決まってしまっているもの。だから、どうしようもない部分がある。いわれてみれば、たしかにそのとおりです。■少しでも楽しましょう人間の脳は進化の過程で、さまざまな遺伝子が誤用され、転用され、流用されるなかで偶然生まれたもの。だから、不都合がいっぱいあるわけです。いわば、「いろんな遺伝子の寄せ集め」でつくられたものだとも著者はいいます。ポイントはここ。「もともとからだの作りからしておかしいのだから、少しでも楽しみませんか」という考え方。それこそが、読者に訴えかけたいことの趣旨だということです。この点を踏まえて読み進めると、本書のメッセージをストレートに受け止めることができるでしょう。■楽になれるように生きよう私たち生物は、普通の状態がいちばん楽。健康も普通の状態をさすわけで、無理に働いたりしてからだを壊すなど異常なことだというわけです。からだが普通の状態でいたいと願っているのに、そうでないことをしたがるのが人間。しかし、そんな無理をせず、楽になれるように生きよう。著者は本書を通じ、そんなメッセージを投げかけているのです。*以後も、自分の個性を知る方法、群れのなかでの働き方など、知っておくと便利な脳の情報が満載。ぜひ一度、手にとってみてください。(文/印南敦史)【参考】※長沼毅(2015)『考えすぎる脳、楽をしたい遺伝子』クロスメディア・パブリッシング
2015年07月22日『プレゼンは「目線」で決まるNo.1プレゼン講師の 人を動かす全77メソッド』(西脇資哲著、ダイヤモンド社)の著者は、日本マイクソフトのエバンジェリスト。ちなみにエバンジェリストとは、ビジネスについてのメソッドなどを多くの人々に伝える役割を果たす人のこと。実際のところ、これまでに数多くのプレゼンや研修をしてきたのだそうです。クライアントは、三井住友海上、日立製作所、JT、富士通などなど大手ばかり。著者の技量がいかに信頼されているかは、そんなところからも推測できます。つまり本書ではそんな実績に基づき、プレゼンで人を動かすためのメソッドを解説しているわけです。注目すべきは、タイトルにもあるとおり「目線」が主軸になっていること。でも、それはどういうことなのでしょうか?ユニークで、しかも核心をついた考え方。それは本書の根幹をなすものでもあるので、その点について明らかにしてみましょう。■話し上手じゃなくても「伝わる」人の秘密「相手の目が見ていないもの」について伝えても、99.9%理解されない。これが、「伝える」ということの本質なのだそうです。なぜなら人間の脳は、「いま目で見ている情報」だけを理解しようとし、それ以外を「ノイズ」として無視するものだから。だとすれば、もしもなにかを伝えたいなら、まずはそれを「見てもらう」ことが大前提だというわけです。いわば、「話し上手というわけでもないのに、なぜか伝わる」タイプの人は、「視線誘導」ができているということ。本人が意識しているかどうかは別としても、「自分が伝えたいこと」と「相手が見ていること」を一致させることができているのです。■プレゼンの目的は伝えることではない?そして、もうひとつユニークなのが、「プレゼンの目的」についての考え方。「プレゼンの目的は?」と問われた場合、「すらすら話す」とか「わかりやすく伝える」と考えがちですが、それらはプレゼンのゴールではないというのです。だとすれば、なんのためにプレゼンするのか?それは「相手を動かす」ため。スマートな資料を使って滑らかに話したり、わかりやすいことばで自分の考えを理解させることは、すべて通過点。なぜなら、プレゼンするのは「ビジネスの現場」であり、ビジネスとは、「相手を動かして、お金をいただくこと」だから。つまり、どれだけうまく話せたとしても、その目的が達成できなかったとしたら、そのプレゼンは「失敗」。大切なのは、話をしたあとに、どれだけの「アクション」が起きたかということ。緊張しすぎて声が震えたとしても、スライド機材のトラブルで発表がグダグダになったとしても、聞いた人が「動かずにいられなくなった」のなら、そのプレゼンは成功したことになるという考え方です。*このような基本的な考え方を軸とした上で、「目線」を生かしたプレゼンを成功させるためのメソッドが具体的に解説されています。それらはきっと、プレゼンへの恐怖感を和らげてくれるはず。ぜひとも手にとっていただきたい一冊です。(文/印南敦史)【参考】※西脇資哲(2015)『プレゼンは「目線」で決まるNo.1プレゼン講師の 人を動かす全77メソッド』ダイヤモンド社
2015年07月21日不動産投資には「難しそう」というイメージがありますし、実際問題、興味があったとしてもなかなか一歩を踏み出せないもの。しかし、『不動産投資は地方に一棟買うことからはじめなさい!!』(竹居百合子著、総合法令出版)の著者は、そうは考えていないようです。■仕事の空き時間で不動産投資2006年から不動産投資をはじめ、今年で10年目になるという人物。現在の所有不動産はアパート・マンション8棟、戸数は100戸、家賃収入は6,800万円ほど。8月末には、総資産は6億4,500万円になる予定だというから驚き。しかも注目すべきは、著者が「特別な人」ではないという事実。2年前に独立するまでは23年間サラリーマン生活を送り、仕事の空き時間を利用して不動産投資をしてきたというのです。そんなことが本当に可能なのかと思いたくもなりますが、物件の選び方を間違えず、しっかり管理すれば、不動産投資は失敗する可能性がとても低いのだそうです。■成功するためのシンプルな法則ちなみに、不動産投資で成功するためのシンプルな法則は、次の3つ。(1)稼げる物件を探す(2)融資の審査をうまく通す(3)きちんと管理する本当にこれだけだけれど、この3つのことをするために、多くの人は時間を浪費しているのが実態。でも、「不動産投資は時間がなくてもできる」という認識を持つことが大切なのだそうです。■足りない時間をうまく使うコツとはいえ、「でも時間がない」という人は少なくないはず。そこで著者がオススメしているのは、お昼休みをうまく使うこと。意外にも思えますが、著者もお昼休み1時間のうち30分で不動産会社や管理会社、銀行と連絡をとってきたのだといいます。管理業はそれぞれのプロに任せ、大家である自分自身は、管理会社、修繕会社、清掃会社などをマネジメントするだけ。このやり方で、不動産投資をはじめて3年半で資産が億を超え、その後も徐々に増やすことができたのだとか。■不動産投資で最初にすべきことただし本書は、無責任に「いいこと」ばかりを並べ立てているわけではありません。つまり、たしかにお昼休みの30分を利用するだけで、一生困らないお金をつくれるけれど、「その前にすべき大切なこと」があるともはっきり述べているのです。それは、まとまった金額の頭金、つまり自己資金を用意すること。なぜなら銀行からは通常、物件価格の1~3割にあたる頭金を要求されるから。頭金ゼロ、全額融資の「フルローン」で買う人もいますが、初心者にとってこれは非常に危険な投資なのだそうです。だからこそ、安全に不動産投資をするなら、まずは自己資金を貯めることが大事だということ。たとえば3,000万円の物件を購入するなら、最低でも500万円くらいの頭金は必要だと考えるべきだといいます。*考え方が現実的で、説明も具体的なので、読んでみれば不動産投資が必ずしも手の届かないものではないことがわかるはず。将来のために、考えてみるのもいいかもしれません。(文/印南敦史)【参考】※竹居百合子(2015)『不動産投資は地方に一棟買うことからはじめなさい!!』総合法令出版
2015年07月20日きょうご紹介したいのは、『それでも、あなたを愛しなさい』(ルイーズ・ヘイ、 デーヴィッド・ケスラー著、山川紘矢、山川亜希子訳、フォレスト出版)。著者のことばを借りるなら、「失恋、離婚、死などの様々なタイプの不幸を体験した時に、それをどのように悲しみ、どのように癒すことができるかを発見するために」書かれたという書籍です。根底にあるのは「アファメーション」。ポジティブ、またはネガティブな思い込みを強化するための文章のこと。もちろんここでは、悲しみに対するポジティブなアファメーションが紹介されています。つまり、悲しみの痛みを避けるのではなく、それをしっかりと味わって先に進もうという前向きな発想。ただ、そうはいっても「喪失が生じたとき」はつらいもの。だからこそ、喪失のタイプを再確認しておきたいところです。ちなみに著者によれば、喪失には3つのタイプがあるのだとか。■1:複雑な喪失複雑な喪失とは、他の要素によって複雑になった喪失のこと。たとえば、双方がお互いに別れや離婚に同意しているとき、あるいは年をとった家族が幸せな人生を送ってからなくなるとき、それらは「複雑ではない」喪失。しかし喪失が複雑化するのは、起こるのが予想できなかったとき。なぜならそれは、意外で驚きだからです。でも、それを癒す可能性は常に存在しているといいます。たとえば恋愛において、ひとりが別れたいと思い、もうひとりは別れたくないときは、次のようなことを思考につけ加えるといいとか。「いまはこの別れを理解できないけれど、これを現実として受け入れます。そうすれば、ヒーリングが始まるでしょう」■2:宙ぶらりんな喪失宙ぶらりんな喪失の例として、ここではあるカップルの発言が紹介されています。「別れるのは大変だ。この関係をうまく行かせるか、永久に終わらせるかしたい」そんなときに有効なアファメーション(肯定的な断言)は以下のとおり。「この別れは役に立つ気づきを与えてくれるだろう。そのときが来れば、ふたりの関係はうまくゆくか、終わるかするだろう」■3:社会的に表現できない喪失これは、「自分は社会的に悲しむ権利を持っていない」と感じている喪失の結果として生じる悲しみのこと。このタイプの悲しみは、公に悲しんだり認めたりされないことが多いといいます。たとえば、同性同士の関係や結婚など。そういう場合は、次のように考えるといいそうです。「私の愛について他の人がどう考えようと、私は自分の愛と喪失を尊重します」失恋、離婚、死などが起こることはコントロールできませんが、そのあとに続く考え方は完全にコントロールできると著者はいいます。そしてアファメーションは、思考を癒しの方向に向け、苦しみから遠ざけるための価値ある手法なのだとも。*実例も多く紹介されているため、喪失からの立ちなおり方、あるいはアファメーションの価値をわかりやすく吸収できるはず。疲れたときにページをめくれば、気持ちを前向きに変えることができるかもしれません。(文/印南敦史)【参考】※ルイーズ・ヘイ、 デーヴィッド・ケスラー(2015)『それでも、あなたを愛しなさい』フォレスト出版
2015年07月19日『スープを売りたければ、パンを売れ』(山田まさる著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、20年にわたりPRを使った企業のマーケティングをサポートしてきたという人物。本書ではそのような実績に基づき、会社やお店を際立たせるユニークな「売り方」についての考え方を明かしているわけです。ユニークなのは、「なのに」「ずらし」「組み換え」「つかみ」「仕組み」という観点から売り方を捉えている点。きょうはそのなかから、気になるタイトルにも関連する「ずらし」に注目してみましょう。いま、お金をかけないPRが注目されているので、この売り方をヒントにすれば広告宣伝費が下げられるかも?■山田さんの言う「ずらし」で売るとはまず、商品やサービスを世に送り出すときには、「お客様にこう使ってほしい」と想定しているシーンがあるはず。ところが実際、ユーザーは送り手の想像以上の楽しみ方や使い方を見つけ出すことがあるもの。だから、そこに着目すべき。つまり商品を提供する企業やお店が想定する、当たり前からの「逸脱」、それが「ずらし」で売るという考え方なのだそうです。基本的な使い方を押さえたうえで、前後・左右・斜めに使い方を「ずらし」てやることで、商品やサービスが提供できる価値をふくらませることができるということ。■この「ずらし」で売ったカップスープそこで、スープのお話です。実は、味の素の「クノールカップスープ」が2010年から3年間実施した「つけパン」「ひたパン」キャンペーンの背後には「ずらし」の発想があるのだとか。2007~08年ごろ、日本の多くの食品メーカーは原料の高騰に苦しみ、製品の大幅な見なおしに取り組んでいたのだといいます。それまでクノールカップスープは品質をアピールしていたのですが、それでも売り上げが伸びなかったため、発想を転換したわけです。■“わくわく感”を売り方の中心にしようそんななか、チームメンバーから出たのが、「ディップ・スタイル」という提案。こんがり焼いた食パンを切ってカップスープにつけるという、ユーザー調査から見つけた食べ方です。そこで東京近郊の5店舗で「ディップ・スタイル」の店頭販売を行なったところ、予想以上に大好評。その結果、大きな話題を呼んだ「つけパン」「ひたパン」キャンペーンが誕生したという流れなのです。それまでの品質へのこだわりを訴える広告を変え、ユーザーがどのようにカップスープを楽しむのか、その“わくわく感”を売り方の中心に据えたわけです。「つけパン」「ひたパン」キャンペーンのユニークなところは、クノールカップスープが考えていた「行儀のよい食べ方提案」ではなかった点。主役のスープを脇役にし、「行儀が悪い」という非難を覚悟のうえで、朝の食卓でユーザーが楽しく、にぎやかにパンとスープを食べる姿を大切にしたということ。スープを売るのではなく、むしろパンを売るという「ずらし」の発想が、成功を実現したわけです。*このエピソードの他にも、ユニークな考え方が満載。売ることで悩んでいる人には、大きく役立つ一冊だといえます。(文/印南敦史)【参考】※山田まさる(2015)『スープを売りたければ、パンを売れ』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2015年07月18日手前味噌ながら私は毎日、『Suzie』をはじめとする複数のサイトに書評を寄稿しています。1週間に10数本書いていますので、単純計算でも年間600本以上。読むことと書くことが好きだからできているわけですが、きょうはそんな私の著書『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(印南敦史著、KADOKAWA)をご紹介したいと思います。長いライター経験を軸に、「読む」「まとめる」「書く」「伝える」ことについての持論をまとめたもの。「読ませる」文章に必要な4つのポイントを引き出してみましょう。■「読ませる」文章に必要なもの1:センス文章の書き方を解説した書籍は少なくありませんが、いきなりセンスを持ち出してくる書き手は少ないかも。それどころか、冗談扱いされる危険性だってあります。しかし、「伝わる」文章を書くにあたり、センスはとても重要な意味を持ちます。エッセイであれ小説であれ、それどころか企画書などにおいても、センスは読み手を引き寄せる役割を果たすからです。そして個人的に、センスを磨くためのポイントは次の3つだと考えています。(1)読む習慣を身につける(2)他人の視点に立つ(3)好きな書き手の真似をするまずは、読むことをライフスタイル化し、次に読み手の顔をイメージし、自己満足に陥らないように注意しながら書く。ただし、その際には、好きな書き手(作家でもライターでも)の文体を真似る、ということ。そうすればやがて、真似は「オリジナリティー」へと変化していくわけです。■「読ませる」文章に必要なもの2:文法文法の重要性はいわずもがなですが、とりあえず押さえるべきポイントは2つです。まずは「てにをは」。「重み“で”つぶれる」「扉“に”触れる」「時間“を”くり上げる」「弱点“は”隠しておきたい」などの“”にあたる助詞。ここを意識するだけで、文章は引き締まります。そしてもうひとつが、「テンとマル」。どこに、いくつ「、」を打つか?文章をいつ「。」で終わらせるか?この2点が、文章にとって重要なのです。■「読ませる」文章に必要なもの3:リズムそして、「テンとマル」をうまく使うと、そこにはリズム感が生まれます。このリズム感は、スラスラと文章を読ませるための重要なファクター。(1)「Suzie」は数字の魅力をふんだんに盛り込んだサイトなので情報をさまざまな角度からインプットすることができます。(2)「Suzie」は、数字の魅力を、ふんだんに盛り込んだサイトなので、情報を、さまざまな角度から、インプットすること、ができます。(3)「Suzie」は、数字の魅力をふんだんに盛り込んだサイト。ですから情報を、さまざまな角度からインプットすることができます。たとえば上記の3つなら、(1)は息切れしそう。(2)は区切りすぎ。明らかに(3)が読みやすくリズミカルであるとは思いませんか?■「読ませる」文章に必要なもの4:簡潔さ難しい漢字や熟語を使ったり、難解な文体にしてみたり、文章は複雑になればなるほど説得力と品がなくなるもの。シンプルすぎるほど簡潔な方が、相手に伝わりやすいのです。*他にも「読む」「まとめる」「書く」「伝える」を多角的に掘り下げています。ぜひ一度、手にとってみてください。(文/印南敦史)【参考】※印南敦史(2014)『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』KADOKAWA
2015年07月17日いまや、2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで亡くなる時代。しかし、実はその半分近くが予防できることもまた事実。そう明かしているのは、『がんにならないのはどっち?』(秋津壽男著、あさ出版)の著者。これまでにも『長生きするのはどっち?』(あさ出版)などのベストセラーを送り出してきた医師ですが、今回はがんをテーマに、知っておきたいことを二択の質問形式でまとめているわけです。最大のポイントは、正しい情報に基づいた予防法に取り組めば、がんの9割は予防できるということ。そのためにおぼえておきたい2つのことを、第3章「『がん習慣』のどっち」から引き出してみたいと思います。■1:「日傘をさす」と「日焼け止めを塗る」皮膚がんになる習慣はどっち?「太陽からの紫外線を浴びると、皮膚がんになる」、これは正しい情報だそうです。理由は、紫外線を浴びると、皮膚の遺伝子が傷つくから。遺伝子の傷は通常2日ほどで修復されますが、このとき遺伝子のプログラムが誤って修復され、皮膚がんになることがあるというのです。また美容面では、「肌の色が黒くなる」「長年大量に浴び続けることによってメラニンが過剰につくられ、シミやソバカスとなる」といったことも懸念されるとか。そこで美容面を気にして、日傘をさす、帽子をかぶる、日焼け止めクリームを塗るなどの対策をしている女性も多いことでしょう。しかし、これらのなかで「日焼け止めクリーム」はオススメできないと著者。なぜならほとんどの日焼け止めクリームは、それ自体に皮膚がんを起こす「酸化チタン」という成分が含まれるから。最近はこの問題が知られるようになり、自然化粧品のメーカーなどで酸化チタンや化学化合物を使用しないUVケア製品が販売されるようになったといいます。どんな成分が使われているか、しっかりチェックしたいところです。■2:「ランニング」と「ウォーキング」がんに対する免疫を下げるのはどっち?健康のため、習慣的に運動やスポーツを行なっている人も多いと思いますが、意外なことにランニングやテニスなどのスポーツは、がんを抑制するNK(ナチュラルキラー)細胞の活性を低下させる恐れがあるのだそうです。免疫細胞の仲間であるNK細胞は、体内をパトロールしながら、がん細胞やウイスルに感染した細胞を見つけると攻撃してくれる優秀なボディーガード。しかしその働きは、激しい運動のストレスによって低下してしまうのだというのです。たとえば、2時間半のランニング後にNK細胞の活性が50~60%低下したという報告もあるとか。つまり、激しい運動はからだの免疫力を低下させるということです。ただし、まったく運動をしない場合もNK細胞の活性は下がるので注意が必要。自分にとって無理のない適度なペースで、楽しみながらウォーキングする程度が、もっともNK細胞を活性化させるといいます。*このように、がんについての知識がわかりやすく解説されています。予防の意味でも、ぜひ目を通しておきたい一冊です。(文/印南敦史)【参考】※秋津壽男(2015)『がんにならないのはどっち?』あさ出版
2015年07月16日断捨離ということばもすっかり浸透しましたが、『ぼくたちに、もうモノは必要ない。 – 断捨離からミニマリストへ -』(佐々木典士著、ワニブックス)の著者は、その先を進んでいるようです。目指しているのは、持ちモノを自分に必要な最小限にする「ミニマリスト」という生き方。モノを減らすことによって、日々の幸せを実感できるようにすらなったといいます。でも、ミニマリストとなることで、具体的にどんなことが変わったのでしょうか?第4章「モノを捨て、ぼくが変わった12のこと」中の「時間ができる」から、いくつかを引き出して見たいと思います。■1:メディアや広告に惑わされる時間が減る家でテレビを見ていても、家から外に出ても、メディアや広告などあらゆるものを通じ、脅迫的なメッセージが送られてきます。しかしミニマリズムを意識していると、それらに惑わされる時間が減るそうです。なぜなら、「自分は必要なモノをすべて持っている」という自覚ができるから。「すべて持っている」と思えれば、ほとんどのメッセージはスルーできるというシンプルな発想です。■2:買いものの時間が減るミニマリストはそもそもあまりモノを買わないので、買いものの時間も減るといいます。もちろん新しく買いものをすることもあるけれど、その時間が減るということ。なぜならミニマリズムを進めていると、モノを選ぶ基準がはっきりしてくるから。だから新しいモノを買うときも、迷う時間が必要ないわけです。ちなみに著者がモノを選ぶときの基準は、・形がミニマルで表面積が小さく掃除がしやすいこと・色がうるさくないこと・長く使えること・つくりがシンプルなこと・小さく、軽く、コンパクトにできること・ひとつで多くの機能を持つこと■3:家事の時間が激減する部屋にモノを置かず、ミニマルにしていると、おのずと掃除にかかる時間も激減することに。服を少なくすると選択の時間も減るわけですし、なにを着るか迷う時間も減るというわけです。そして太陽の光で起きられるようになり、しかも目ざめると部屋はいつもキレイ。だから、起きることすら楽しくなったのだとか。自然と早起きになり、朝にも多くの時間が生まれるようになったという話にも納得できます。■4:たった30分で引越しできるまた、引越しをした際にもストレスは激減したといいます。なにしろ、事前にパッキングをすることもなく、ふだん生活しているままの状態から荷物をすべて運び出すまで、かかった時間は30分ほど。照明を外したり、洗濯機を外したり、そんな時間も入れて30分だったというのですから驚きです。*ミニマリズムに対する考え方にブレがなく、また力強い文体にも魅力があるため、すらっと読んでしまえるはず。生活をよりシンプルにしたい方には、文句なしでおすすめできる一冊です。(文/印南敦史)【参考】※佐々木典士(2015)『ぼくたちに、もうモノは必要ない。 – 断捨離からミニマリストへ -』ワニブックス
2015年07月15日きょうご紹介したいのは、『解くだけで人生が変わる!修造ドリル』(松岡修造著、アスコム)。テニスプレーヤーを経て、現在は各メディアで活躍する松岡修造さんが、「素晴らしい自分」に変わるための独自の方法を明かした一冊です。ユニークなのは、松岡さん流の習慣をドリル形式で身につけることができる点。各メッセージの●●●部分を埋めていくと、メッセージが浮かび上がるわけです。とだけ書くとギャグかと誤解されてしまうかもしれませんが、そのメッセージはとても真面目で理にかなったもの。日本の気温を上げるともいわれる「松岡キャラ」の根底に根づく、真剣な思いを感じ取ることができます。数字に関係した、いくつかの例をご紹介しましょう。■1:「切り替える」ための方法[問題]:イライラしたら半径1メートルにマイ●●●[答え]:イライラしたら半径1メートルにマイシールドメンタルが弱かったという松岡さんは現役時代、「感情的になったら自分の周囲に円を描き、その内側にいる姿をイメージしなさい」といわれたことがあるそうです。しかし基本的には同意できたものの、「それをそのまま取り入れると、メンタルトレーニングに支配されてしまう」とも感じたのだとか。つまり、それだと「やらされている感」が強くなってしまうということです。そこで考えたのは、「どうすればおもしろく続けられるか」ということ。自分流にアレンジすると長く続けられるし、効果も高いと思ったからだとか。その結果として思いついたのが、「マイシールド」。これは、SF作品に出てくる「身を守る薄い膜」のようなもの。感情的になりかけたら、自分を中心とする半径1メートルにマイシールドを張る。そうすれば外部との関係性は完全に遮断されるので、あとは感情的になりかけた自分自身をコントロールするだけだという考え方です。■2:「感謝する」ための方法[問題]:1日●●●回の「ありがとう」[答え]:1日100回の「ありがとう」うまくいかないとき、松岡さんにとっていちばんの武器になるのが「ありがとう」だそうです。前向きにさせてくれるだけでなく、心を落ち着かせてくれるから。だから、「ありがとう」をいつも心からいいたいと、常に目指しているそうです。そのために、最低でも1日100回の「ありがとう」をいうことから始めたというのですから驚きです。ちなみに、口に出してもいいし、心のなかで思ってもOK。習慣になったいまでは、100回でも足りないと感じるといいます。なぜなら、感謝すべきことはたくさんあるから。感謝すべきことが見つからないなら、特に理由がなくても「ありがとう」といおうと松岡さんは勧めています。最初は「どうして感謝するんだ?」と違和感を抱くかもしれないけれど、少なくとも「ありがとう」と思えば悪い方向には行かないはず。松岡さん自身が実践し、そう実感しているというのですから納得できます。✳このようにメッセージはシンプルで、説得力に満ちたものばかり。空いた時間にパラパラとめくってみれば、より心地よく生きるためのヒントを見つけることができそうです。(文/印南敦史)【参考】※松岡修造(2015)『解くだけで人生が変わる!修造ドリル』アスコム
2015年07月14日日々のコミュニケーションについて、頭を悩ませている人は少なくないはず。そこでおすすめしたいのが、『大人のための会話の全技術』(齋藤孝著、KADOKAWA/中経出版)。明治大学文学部教授である著者が、時間をかけずに「会話の達人」になるためのメソッドを明かした一冊です。「挨拶」「雑談」「コメント」「質問」「説得」、果ては「謝罪」まで、さまざまな角度から会話の仕方が説明されていますが、きょうは「コミュニケーションに不可欠な四つの身体の使い方」を見てみたいと思います。■身体的コミュニケーションは重要コミュニケーションというと、ことばだけのやりとりだと思っていまいがち。しかし同じように、身体的コミュニケーションも重要。著者は特に、「目を見る」「微笑む」「うなずく」「相槌を打つ」の4つは、会話の雰囲気を温かくするために不可欠な要素だと考えているそうです。■4つの身体的コミュニケーション(1)目を見る目を見つめるという行為は、簡単なようで意外に難しいもの。見つめられると照れてしまいますし、恥ずかしいという感情が湧いてくるからです。しかし、目と目が合ったときにこそ、人と人との間に「線」がつながるのだといいます。そして、その「線」の上にことばを乗せることで、相手にきちんと気持ちが伝わるとも。たしかに「目が泳いでいる」人と話をしていると、聞いている人はなんとなく不安になってきます。きっちり目を合わせるくらいの気持ちで話してこそ、場をつかむ感覚も生まれてくるということです。(2)微笑む微笑みは、相手を受け入れているというサインのひとつ。コミュニケーションが生まれ、心の内側から微笑みが生まれてくれば、それが相手にも伝わるそうです。自分の話に微笑んでくれる人と、仏頂面をしている人がいたとしたら、誰でも微笑んでくれる人と話していたくなるはず。そんなことからもわかるとおり、微笑みはコミュニケーションにおける基本中の基本といっていいほど重要なものだというわけです。(3)うなずくうなずくという行為も、「あなたの話をしっかり聞いていますよ」というサイン。そこには「同意・同調する」という意味合いも含まれるものの、それは絶対的なものではないそうです。相手の意見に同調していない場合でも、敵対しているわけではないことを伝える意味合いがあるということ。また、うなずきには、「相手のことばを咀嚼して消化している」というイメージを醸し出す効果もあるのだとか。それが相手の自分に対する信頼感を生み、もっと近づきたいという気持ちにつながっていくということです。(4)相槌を打つこれも、近年の日本人が失いつつあるコミュニケーション技術のひとつ。しかし良好なコミュニケーションを築くために、「相槌を打つ」というテクニックを身につけるべき。相槌を打つ際は、「そうそう」「ああ、なるほど」「ほー」「そうなんですか」などと、相手の話に同意する意思を示すことばを発すると効果的。*コミュニケーションについて考えるときは、会話にばかり気持ちが向いてしまいがち。でもたしかに、身体的コミュニケーションも重要かもしれません。(文/印南敦史)【参考】※齋藤孝(2015)『大人のための会話の全技術』KADOKAWA/中経出版
2015年07月13日『本当に頭がよくなる1分間アイデア法』(石井貴士著、SBクリエイティブ)は、文章術や雑談法など、多くの「1分間」シリーズを送り出してきた著者による新刊。タイトルにあるとおり、今回はアイデアを出すための発想法に焦点を当てています。そして、やはりポイントは「1分間」。でも、「1分間アイデア法」って、どのようなものなのでしょうか?■ひらめいたことをその場で著者によれば、その方法はいたってシンプル。「ひらめきを紙に書き留める習慣をつける」たったこれだけのことなのだそうです。そうすることによって、「エジソンやダ・ヴィンチと同じ行動をとることができます」と著者は記しています。ちょっと大げさな気もしますが、実際のところエジソンはメモ魔で、とにかくひらめいたことをなんでもその場でメモに書いていたといいます。同じくダ・ヴィンチも常にノートを持ち歩き、生涯で1万6,000冊ものノートを残したのだとか。だとすれば、少なくともそこにはなんらかの根拠はありそうです。◼意外にシンプルな「天才の習慣」︎つまり天才の習慣とは、ひらめいたことをその場で紙に書き留めること。著者はそう断言しています。ひらめきを紙に書きとめなければ忘れてしまうのは、天才も同じ。逆にいえば、天才とはひらめきを紙に書き留めた人のことだという考え方です。だとすれば、ひらめきを書き留めない限り、天才になることはできないということになります。■紙に書き留めるまでの時間は?では具体的に、思いついてからどのくらいのタイミングで紙に書き留めればいいのでしょうか?もうおわかりかと思いますが、正解は「1分以内」。紙とペンを出す時間も含め、ひらめいたら1分以内に書き留める習慣をつけることが大切だというわけです。■シンプルな習慣のメリットとは?とはいえ、あまりにシンプルすぎます。そんなことに、どのようなメリットがあるというのでしょうか?そのことを、著者はこう説明しています。「『ひらめいたらすぐに書き留めよう』よりも、『ひらめいたら1分以内に書き留めよう』と思っていた方が、具体的であるぶん行動に写しやすくなる」たしかに「すぐに」だと、1秒なのか10秒なのかはわかりません。でも「ひらめいたら1分以内」と決めておけば、59秒の余裕が生まれることになります。たとえば手元にペンがなかったとしても、59秒以内に探せばいいと思えば、心に余裕を持つことができるということ。■メソッドをわかりやすく具体的にいってみれば本書では、「ひらめき」原点を軸として、さまざまなアイデア法を紹介しているわけです。ただ書き留めればいいというだけのようですが、各章では、・ひらめきは「質」ではなく「量」で決まる・アイデアが、さらなるひらめきを生む・ひらめきを生むには「フック」を増やすなど、シンプルな「ひらめき」を大きなアイデアにしていくためのメソッドが、具体的に紹介されています。しかも非常にわかりやすいので、アイデアを出すことで悩んでいる人にとって大きな力になってくれると思います。(文/印南敦史)【参考】※石井貴士(2015)『本当に頭がよくなる1分間アイデア法』SBクリエイティブ
2015年07月12日『一流の人をつくる 整える習慣』(小林弘幸著、KADOKAWA)の著者は、日本体育協会公認スポーツドクターでもある順天堂大学医学部教授。数多くのプロスポーツ選手、アーティスト、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上指導に関わっている自律神経研究の第一人者です。つまり本書では、自律神経を意識することによって自分を「絶好調」な状態にするためのルールが紹介されているわけです。第2章「一日ごとの体の変化を意識する——時間の整え方」から、気になる時間の使い方をチェックしてみましょう。■午前中の“勝負の時間”を無駄にしない!コンディションを整えるだけではなく、コンディションに合わせた時間の使い方をすることも非常に大切。しかも人間には「集中力が高まる時間」「ものを考えるのに適した時間」があるといいます。それは午前中。9時から10時くらいの出社直後から昼食までの時間が、もっとも集中力が高く、創造的な作業をするのに最適だということです。だとすれば、そんな大切な時間をメールチェックや重要度の低い会議、ミーティングなどに費やすのはもったいない。仕事の質を高めて効率を上げたいのなら、「からだの状態」と「仕事内容」のマッチングを見なおすべきだと著者はいいます。そのためには、「なにをするか」を前日に考えておき、実際に「勝負の時間」がはじまったら、すぐに作業を開始できる状態にしておくことが大切。■昼食後の2時間は捨ててかまわない?「勝負の時間」とは逆に、昼食後の2時間は仕事がはかどらない時間帯。そもそも食べたものを消化するための時間なので、からだはその作業に集中しようとするわけです。ということは、からだの構造に逆らって効率や集中力を引き出そうとしても、かえってストレスを増やすことになるだけ。だからこの時間帯は、スパッと「あきらめる」ことが大切。だとすれば、あまり頭を使わないルーティンワークをここで行なえばいいわけです。しかし、それでもこの時間をうまく利用したいなら、人と会うのも一案。人と会って話していると、交感神経が高まり、からだに活動のスイッチが入るからです。■“終了間際”の集中力をうまく利用しよう「もうすぐ終わる」という状況になると、人間はさらにもう一段ギアが上がり、集中力が高まるもの。そこで、「終了間際の集中力」を仕事に活用するのはとても効果的。終業時刻の1時間前になったら、「あと1時間で、これだけの仕事をしよう」と気持ちを入れなおしてラストスパートをかける。すると場合によっては、朝の「勝負の時間」より高い集中力で仕事ができることもあるとか。いちばんよくないのが、残業が当たり前になっていて時間的なデッドラインがない状態。自分の能力を発揮するためには、自分自身に上手にストレスやプレッシャーをかけることも必要だということです。*他にも、日常生活のさまざまな場面で効率的に動くためのアイデア満載。全80のルールの何割かは、確実に役立つはずです。(文/印南敦史)【参考】※小林弘幸(2015)『一流の人をつくる 整える習慣』KADOKAWA
2015年07月11日『信用される人が絶対にやらない44のこと』(山﨑武也著、日本実業出版社)は、生き方や品格についての著作も多い著者が、「信用される人」に必要なことを説いた書籍。第一印象から行動、果ては習慣まで、「多くの人が忘れかけているかもしれない大切なこと」に焦点を当てています。そんななか、個人的にいちばん気になったのは、「一流っぽく見えても、こんなときに『化けの皮』がはがれる」というタイトルがついた第2章。たしかに、少しでも「一流」に近づこうという意識は、品位ある大人として持っておくべきかもしれません。そこで、一流とそうでない人との差を、この章から探ってみたいと思います。■1:上に立つ人ほど、周囲のことを考えるビジネスの世界で不祥事があったときなど、表面的に謝罪するだけで責任をとった気になっているリーダーの姿をよく見ます。しかし、それでは「責任をとった」とはいえないと、著者は断言しています。しかも、それは組織の大小に関係のないこと。小さなグループのリーダーにも、同じように責任のある言動が望まれるということです。いってみれば、上に立つほど下に対するサービス精神の発揮が必要になるということ。■2:信頼できる人は、人とのつながりを大事にする有名な人や偉い人の名刺を見せびらかして、「この人を知っている」「会ったことがある」などと自慢する人はどこにでもいるもの。でも、それが学生時代からの友人や、交流が長く続いている人だとしたら、名刺などは持っていない場合の方が多いはずです。つまり人脈とは、「ただ知っている」というだけではなんの効果も生み出さないということ。大切なのは質のいい人脈を築き上げていくことで、だからこそ重要なのは、「どのくらい深い人間的な付き合いがあるか」という、質的な面。そして質のいい人脈を築き上げていくためには、出会ったすべての人に対してていねいに接するところから始めることが大切。信用できる人は、そうやって、人とのつながりを大事にするものだといいます。■3:信用できる人は、最後まで誠意を尽くすたとえば仕事がそうですが、「自分の手を離れたから責任が終わった」と考えるのは大きな間違い。つまり、それを相手が確認して理解するまでが、自分の義務。だから、そのような姿勢を保つことが大切だということです。どんなときにもベストを尽くし、ひとつひとつの作業に対して誠意ある対応をする。それが重要だという考え方。*文体が少し堅いので、読みづらいと感じる部分はあるでしょう。しかしその内容は、本来なら忘れるべきではないことばかり。だからこそ、ひとつひとつのことばを粛々と受け止めてみるべきかもしれません。(文/印南敦史)【参考】※山﨑武也(2015)『信用される人が絶対にやらない44のこと』日本実業出版社
2015年07月10日