発達障害のある子どもや家族の困りごとを解消するために!5月もミートアップを開催「LITALICO発達ナビ」では、発達障害に関するコラムの発信や、施設情報の提供などを通して、発達障害のあるお子さんや、保護者の方々の生活を取り巻く困難の解消に取り組んできました。現在は、月間300万人以上の方がサイトを訪れる規模となりました。多くのユーザーの方に、必要な情報と出合ったり、同じような悩みを持つ仲間との交流ができる場となっています。一方で、LITALICO発達ナビの力だけでは解消出来ない困難が多いことも事実です。そこで、発達障害にまつわるより多くの困りごとを解消していくため、さまざまな分野の企業とのコラボ企画・協業を進めていこうとしています。その一環として、先月に引き続き、2018年5月22日(火)に「LITALICO発達ナビ ミートアップvol.2」を実施。ゲストスピーカーによる講演や、さまざまな企業や団体で活躍されている皆さんとLITALICOのスタッフでのディスカッションなどを行いました。LITALICO発達ナビ ミートアップの様子をレポート今回のミートアップにも、IT企業、旅行会社、小売店、セキュリティ会社などから、保育園や学校に勤務されている方まで、多種多様な業種の企業・団体などで働く方の参加がありました。ミートアップでは、まずLITALICO発達ナビの鈴木編集長からの媒体紹介がありました。続いて、ウェブマガジン「greenz.jp」のビジネスプロデューサー・小野裕之さんによる講演が行われました。Upload By 発達ナビ編集部ウエブマガジン「greenz.jp」を運営するNPO法人グリーンズは、「一人ひとりが『ほしい未来』をつくる、持続可能な社会」を目指しています。この理念のもと、ウェブマガジンの発行のほか、さまざまなイベントを主催しています。また、「社会の中にある違和感」を解消するための取り組みを行う起業家らをメディアで取材したり、そうした人と企業や自治体とつなげて一緒にプロジェクトを行ったりもしています。例えば、次のような事例があげられました。■地方移住をしたい人、その人をサポートし地域活性化をしたい地方の鉄道会社をつなぎ、「移住者サポートつきコワーキングスペース」をオープン参考:あそこに行けば、面白いことをやってる。西日本鉄道・宮﨑泰さん×福岡移住計画・須賀大介さん×グリーンズ小野裕之が語る「HOOD天神で“はじめる”未来」■こだわりのお米を仕入れて販売しているお米屋さんと、日本橋の街づくりを担う会社をつなげ、おむすび屋さんというリアル店舗を開店。おいしいおむすびを食べながら、人と人との接点もつくりだせる場所に参考:グリーンズとトラ男が日本橋に、本屋とイベントスペースもあるけど「普通の」おむすび屋をオープンします。このように、日常生活の中にある課題に気づくだけでなく、そこから人と人・企業・行政などをつなぎ、いろんな生き方や価値観があってもいいということを体感できる場所づくりも、ビジネスとして成り立つ形で行っています。LITALICO発達ナビも、さまざまな課題に気づき、発信するだけでなく、企業や行政などとつながり、障害のない社会という「ほしい未来」をつくっていきたいと感じることができた講演でした。 By 発達ナビ編集部鈴木編集長からは、現在どのような企業とのコラボレーション実績があるのかなどについて紹介がありました。■非日常の状況でパニックを起こしやすいお子さんが、安心して空の旅を楽しめるサービス紹介の例発達が気になる子どもが安心して飛行機に乗るには?JALの子ども向けサービス活用法を徹底紹介!■多様性を踏まえたマネジメントができるよう、社員向けに研修を行った例ミュゼプラチナム×発達ナビ 発達障害への理解を深める勉強会を開催!■障害のある子どもの保護者の方の意見を取り入れて制作された商品紹介の例障害のある子どもの「ママたちの声」を生かして開発!3つの「お出かけ便利グッズ」がフェリシモから新発売あったらいいサービスや商品って?グループディスカッションで意見交換Upload By 発達ナビ編集部会場を5つのグループに分け、各グループごとに「自社のリソースと理念」をまず書き出すワークを行いました。そして、発達障害がある人の困難の例を参照しながら、「それぞれの会社のリソースでできる解決策」についてディスカッションを行いました。さまざまな業種、職種の参加者が、メーカー側、支援者側からの意見などが活発に出され、自社の商品やサービスの中に、今まで気づいていなかった価値があることに気づけた場面もありました。例えば、IT技術を活用することで、ARメガネを使って勉強することが当たり前になるかもしれないーそんな意見に、支援の仕事をしている参加者からは、「発達障害があることを保護者が受け入れるのは難しい場合もある。でもIT技術を活用し、特性によって困難になっていることをポジティブに解決できる可能性があることに気づけた」という意見も。障害のある子どもの支援をしている人や当事者・保護者と、技術を持っている人がつながる。旅行会社と工場をもつメーカーなど、異業種でもコラボレーションの可能性がある企業がつながる。それぞれの経験や技術を組み合わせることで、よりニーズにあった商品やサービスが生まれるのではという希望が、より高まるディスカッションでした。LITALICO発達ナビ ミートアップは、毎月開催予定!Upload By 発達ナビ編集部ミートアップでは、グループディスカッション後に懇親会も行い、皆さんが交流できる場を設けています。ディスカッションで興味を持った事業内容についてより深く聞くことができたり、ほかのグループの参加者とも話すことができます。参加者からは、次のような感想をいただきました。「多種多様な企業の方のお話をききながら、自分の問題の整理ができました」「いろんな人に会って、どういう想いで何をしようとしているのかも知りたいし、逆にニーズや困りごとについても知りたいです」さまざまなアイディアを実際に社会の中に生み出し、より生きやすい世界にするために、LITALICO発達ナビは企業や団体の皆さんとつながり、新しいサービスや商品を作り出していきたいと考えています。また、実際にコラボレーションが実現した企画についても、LITALICO発達ナビ上で発信をしていきます。「LITALICO発達ナビミートアップ」は、これからも毎月開催予定です。それぞれの企業や団体が持っているサービスや商品の力で、社会をもっと生きやすいものにしたい!熱意のある人たちとディスカッションをしたい!という方は、ぜひご参加ください。次回のゲストは、Branch代表の中里祐次さまです。Branchとは、発達障害のある子どもと、その子ども達が興味を持っている分野の学生や専門家などをマッチングさせ、その子の可能性を伸ばすことに取り組んでいるWEBサービスです。代表の中里さまは、発達障害のあるご自身のお子さまと過ごす中で着想を得て、Branchを立ち上げられました。イベントでは、発達障害にまつわる課題をWEBサービスの力で解決することをテーマにお話いただく予定です。■ゲスト紹介:中里祐次さまUpload By 発達ナビ編集部2007年、早稲田大学卒業後、㈱サイバーエージェント入社。子会社の㈱サイバー・バズにて広告クリエイティブのディレクションを担当し東京インタラクティブ・アド・アワード受賞。広告プランニング/商品開発経験後、子会社の㈱プーペガール取締役に就任。その後Amebaにて、ソーシャルゲームのスマートフォン対応、プラットフォームのオープン化担当、プロジェクト責任者などを経て独立。次回のミートアップは、6月28日(木)に開催します!【日時】6月28日(木) 19:00-21:30【場所】株式会社LITALICO東京本社〒153-0051東京都目黒区上目黒2-1-1中目黒GTタワー16F【交通案内】東京メトロ日比谷線・東急東横線「中目黒駅」東口より徒歩1分【対象】企業にお勤めの方で、発達障害のあるお子さまや保護者さまの抱える困りごとの解決に関心をお持ちの方、発達ナビとのコラボレーション企画を希望される方【参加費】2,000円※発達ナビに会員登録されている方は1,500円【プログラム】①発達ナビのこれまでの取り組みと今後の展望紹介②ゲスト講演:Branch代表 中里祐次さま③質疑応答④企業の力で発達障害の課題解決を考えるワークショップ⑤参加者同士の交流・懇親会(ドリンク・軽食あり)多くの方のご参加をお待ちしております!
2018年06月05日「みんなが当たり前にできていることが自分にはできない」「ママ友とよく原因不明のトラブルになってしまう」…。発達障害が広く世間に認知されるようになり、これまでの経験から「もしかして自分も?」などと感じている方も少なくないのではないでしょうか?そんな大人の発達障害(グレーゾーン含む)に悩む人のために、日常生活を上手に過ごすための具体的なノウハウを紹介したのが「ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に暮らすための本」。前回は、片づけやスケジュール管理が苦手なママのための“上手に暮らすコツやツール”をご紹介しました。著書の村上由美さんは、現在は言語聴覚士として活躍されていますが、実は4歳まで音声言語を話さなかったASD(自閉症スペクトラム)当事者です。そして、村上さんの旦那さんも、ASDに加えてADHD(注意欠陥・多動性障害)やLD(学習障害)の傾向もあり、大人になってからようやくそのことに気づいたそうです。そんな、当事者でもあり、家族でもあり、支援者でもあるという村上さんが、三つの視点から編み出した、発達障害の人が日々の暮らしがラクになるためのアイデアをおうかがいしました。お話をうかがったのは… 村上由美さん上智大学文学部心理学科、国立身体障害者リハビリテーションセンター(現・国立障害者リハビリテーションセンター)学院聴能言語専門職員養成課程卒業。重症心身障害児施設や自治体などで発達障害児、肢体不自由児の言語聴覚療法や発達相談業務に従事。現在は、自治体の発育・発達相談業務のほか、音訳研修や発達障害関係の原稿執筆、講演などを行う。著者に「声と話し方のトレーニング」(平凡社新書)、「アスペルガーの館」(講談社)、「ことばの発達が気になる子どもの相談室」(明石書店)、「仕事がしたい!発達障害がある人の就労相談」(明石書店、共著)、「発達障害の人が活躍するためのヒント」(弘文堂、共著)がある。■ママ友の世界は“究極の調整能力”が必要――今回は、ママの世界のコミュニケーションについておうかがいします。というのも、 前回 の片づけのお悩みと同様に、発達障害グレーなママからは、「ママ友とのおつき合いが苦手」という声もとても多かったのです。村上由美さん(以下、村上さん):ママ友の世界は、まさに究極の調整能力が求められますからね。そもそもおつき合いが得意でない人は、ママ友に関しては、自分ができる範囲の境界線を引くことが大切だと思います。ここまでは一生懸命やるけどこれ以上はやりません、などというふうに。もちろん断り方も大事です。「私には関係ないから」みたいな言い方をしたら、当然反感を買ってしまうので、誠意をもって対応すること。でも、それでも相手に伝わらなかったとしたら、それは仕方ないですね。相手によっては難癖をつけるのが目的な場合もありますから。自分には及ばない、できないことは、必要以上に悩んでも仕方ないので、ある程度のあきらめも必要だと思います。――ママ友の世界は、子ども同士が仲が良い、同じ園や学校といった“縛り”があるため、断りにくく感じてしまうお母さんも多いかもしれませんね。村上さん:子どものことを考えると、うまくつき合わざるを得ないのもよくわかりますよ。でも、自分の精神を病んだり、家族に悪影響を及ぼしてまでつき合う必要はないはず。「自分はどれくらいこの人たちと関わりたいのか?」ということを、きちんと見極めることが大切です。また、ママ友の世界しか頭に入らなくなってしまっていると、つい自分の居場所はそこしかないような気がしてしまいがちですが、一歩引いてみれば全然違う世界があるのです。実際、ママ友のことで悩んでいる方は、たいていほかのコミュニティーに入ったり、別の世界を見ることで、解決するケースが多いようです。物事に対する別の尺度が出てくると、気が楽になるんですね。――確かに。ただ、地域によっては、保育園・幼稚園から小学校、中学校まで1つしか選択肢がなくて逃げ場がないなんてケースもあるそうですが…。村上さん:そういう場合は、気が合えばものすごく心地良いんでしょうけど、何かあったら途端にいづらくなってしまいますよね。そうならないためにも、リスクは分散して、いろいろな逃げ場を作っておきましょう。趣味が合う友人や、独身時代の友だちなど、ママの世界とは違う世界のコミュニティーを意識して確保し、自分を一つの世界に閉じ込めないように心がけましょう。今は、SNSなども上手に利用して、自分の趣味や好きなことで仲間とつながって息抜きしているお母さんも多いようですよ。SNSはトラブルになるリスクを懸念する人もいるでしょうが、最初は特定メンバーだけフォローしたり、アプリ設定で制限を設けたりして段階的な導入でリスクを抑えられます。 ■「ほどよいおしゃべり」って、実はとっても難しい――男の人と比べて、「女の人は雑談が得意」などとよく言われますが、おしゃべりがすぎて「つい余計なことを言って相手を不快にさせてしまう」とお悩みのママもいました。村上さん:こういう方は、相手が会話の中で何を求めているのか、上手に察知できないのでしょう。例えば、食事中など第三者がいる場で、人が悩みや愚痴を打ち明ける時は、相手に共感を求めていることが多く、そういった場合に現実的なアドバイスや意見をするのはあまり歓迎されません。でも、ASD(自閉症スペクトラム)の傾向が強い人は、相手が聞き入れる体制にあるかどうかをほとんど考えずに話してしまいがちですし、ADHD(注意欠陥・多動性障害)傾向が強い人の場合は、思いついたことをその場の状況を無視して口に出してしまうことが多いので、相手の感情を害してしまうことが多いです。その場の雰囲気を感覚的につかむことが苦手な場合、まず相手は自分から意見を聞きたいのか、それとも愚痴って気分転換したいのかを観察してから発言するようにしましょう。――具体的な方法としては?村上さん:まず、相手がこの会話で何を重視しているのかを観察しましょう。例えば、ちょっと愚痴りたいだけなのか、何かアドバイスを求めているのかなど。次に、相手の話を黙って聞いてみましょう。今まで見えてこなかった相手の悩みや感情が出てくることがあります。そして、相手が伝えたいことは何か? に焦点を絞って話を聞きましょう。最後に、相手がひと息ついたり、話に区切りをつけるような言葉(例えば「まあ、仕方ないんだけどね」など)が出てきてから、自分の意見を言うようにしましょう。そして、相手が知りたくない、聞きたくないことは極力言わないように心がけることが大切です。――お話をうかがっていると、上手なおしゃべりって、かなり頭をフル回転させねばならない感じですね(汗)。村上さん:言語聴覚士として、言語リハビリや療育支援の仕事をしていると、ご家族から「せめておしゃべりでもできるようになれば」と希望されることが多いのですが、でも、雑談するためには、実はとても高度な情報のやりとりをするスキルが必要なのです。なかでも特に、非言語のコミュニケーション情報を操作するスキルがとても重要になります。会話は突然、主語や時系列、話題が変わるため、文脈から状況を推測する力が必要となり、発達障害の人にとっては難しいことが多いのです。――たわいもないおしゃべりは、誰でも簡単にできると思われがちですが、必ずしもそうではないのですね…。村上さん:最近では、発達障害は広く世間に知られるようになりましたが、言葉がひとり歩きして、「困った人たち」というレッテルばかりが増えている印象もあります。でも、実は一番困っているのは本人ですし、周囲の人も「本人が何に困っているのかよくわからないから困る」という発想の転換が必要なのだと思います。発達障害の人たちが、このようなライフスキルを身につけるためには、幼少期からのトレーニングが必要で、大人になった今はもう手遅れではないか? と思われる方もいるかもしれません。でも、村上さんのお話によると、「本人がその気になった時こそが、実は一番良いタイミング」とのこと。「大人だからこそ、言葉だけで解釈したり、達成度を数字などの尺度で確認できる強みもある」そうです。実際、村上さんは当事者でもあり、発達障害を抱える旦那さまと一緒に試行錯誤を繰り返すなかで、言葉で確認し合える大人同士だからこそ話がわかる面も多かったといいます。何を始めるのにも、遅すぎることはないのかもしれません。参考図書: 「ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に暮らすための本」 (翔泳社)大人になってから発達障害の症状に悩む人が増加しています。ここ10年で「発達障害」の知名度が飛躍的に上がったことで、「もしかして自分も…」と成人になってから気づく人が増えたのが最大の要因と思われます。発達障害の人には、「同時並行作業力が弱い」「段取りが取れない」「ケアレスミスをする」「コミュニケーションが苦手」といった特徴があり、そうした症状に悩む人のために、上手に日常生活を過ごす方法を解説。イラスト/高村あゆみ取材/文:まちとこ出版社N
2018年05月31日行き先の確認は念入りに…「用意周到」を求められるレジャー出典 : 発達障害の息子と一緒に旅行やレジャー施設などに行くとき、私たち家族は常に先回りして施設の特徴を調べ、息子にとって苦痛な刺激がないかどうかを確認します。大きな音や明るすぎる照明がないか。疲れたときに休ませる場所はどこにするか。混み具合はどうか。泊まりにしたほうが良いか日帰りにしたほうが良いか。息子は刺激に弱く、すぐに「疲れた」と言って座り込んでしまいます。そんな息子が無理をすることなく、「楽しかった」と言って終わってくれるようなラインを探ります。こんなとき、「このレジャー施設は発達障害のある子どもにやさしいよ」「このホテルは発達障害の特性に理解があるよ」というようなことが体系的にまとめられている情報があったら、とても助かりますよね。今回、諸外国の事情を調べていたときに、アメリカでは発達障害のある子どもにやさしい施設に認定を与えていることを知ったのです。認定された施設をまとめてくれている「Autism Travel」というページを見れば、ホテルやレジャー施設などの一覧を見ることができます。 Travel - 自閉症者向け旅行サイト(英語)アミューズメントパークとしては初めて!「セサミプレイス」とは出典 : 「発達障害のある子どもにやさしい施設」の認定は、アメリカのIBCCES(International Board of Credentialing and Continuing Education Standards 資格認定・継続教育基準国際委員会:筆者訳)という団体が行います。同団体の定める条件をクリアすると、「認定自閉症センター(Certified Autism Center)」として認められ、レジャー施設やホテルであればAutism Travelのページに掲載されます。この「認定自閉症センター」に初めて認められたアミューズメントパークが、アメリカ・ペンシルバニア州にある「セサミプレイス」です。ここは、アメリカの子ども教育番組「セサミストリート」のキャラクターのテーマパーク。「セサミストリート」といえば自閉症の女の子のキャラクターが登場したことも話題になりましたね。セサミストリートに自閉症の新マペット登場!番組制作の背景は?日本では視聴できるの?アメリカで「認定自閉症センター」として認められるには、働いているスタッフが発達障害についてしっかりと教育を受けている必要があるそうです。では、「セサミプレイス」のスタッフは、実際にどのような訓練を受けたのでしょうか。公式ホームページに記載されている内容によると、スタッフは発達障害の特性にかかわる以下の点について特別なトレーニングを受けているそうです。・感覚刺激に関する認識・運動能力・自閉症に関する基本的知識・各種プログラムの作成・ソーシャルスキル・コミュニケーション・環境設定・感情についての認識また、スタッフがその人の特性に配慮して、乗ることのできる乗り物をピックアップしてくれたり、刺激で疲れてしまった人のためのコームダウンの部屋を準備してくれていたりします。聴覚過敏の人のためにヘッドフォン貸出が行われているほか、パレードでは、身体を触れられることが苦手な人は、キャラクターが直接ハグしたりすることのない列に案内されるのです。セサミプレイスホームページ ー 世界で初めて「認定自閉症センター」に認定される(英語)「分かっている人がいる」という安心感出典 : 今でこそわが家の息子は感覚刺激が不快になると、自分から休憩するようになりました。成長するに従って、自分の限界を認識することができるようになってきたからです。けれども、幼いころはそうはいきませんでした。水族館に行けば、ボヤボヤとした光と、館内から響く独特の音にやられて、床に這いつくばって動かなくなりました。動物園では、動物の臭いにめまいがしてきてしまい、ずっとおんぶで移動したこともあります。顔は真っ青でした。お祭りに足を運べば、太鼓の音と人混みに吐き気がしてしまい、泣きながら帰りました。心配して「どうしました?」と声をかけてくださるスタッフの方もいましたが、「すみません、発達障害で…」と答えても「?」という顔をされることが多かったのです。そうすると、なんだか申し訳ないことを言ってしまったような気分になり、「大丈夫です。ちょっと疲れたみたいで」と、そそくさとその場を去ったものです。そんな時、具体的に何かをしてくれるわけではなくとも、「セサミプレイス」のようにいまパニックを起こしている人が何に苦しんでいるのか「分かっている人がいる」ということ、それがどんなに心強いことか想像に難くありません。私たち親も、特に何かを配慮をしてもらいたいわけではなく、「知っておいてもらえると、それだけで気持ちが楽」なのです。日本にも、このような認定制度があったら、旅行計画をするときに、もっと気楽に楽しい気持ちでできるかもしれませんね。
2018年05月28日「みんなが当たり前にできていることが自分にはできない」「ママ友とよく原因不明のトラブルになってしまう」…。発達障害が広く世間に認知されるようになり、「もしかして自分も?」などと感じている方も少なくないのではないでしょうか?そんな大人の発達障害(グレーゾーン含む)に悩む人のために、日常生活を上手に過ごすための具体的なノウハウを紹介したのが 「ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に暮らすための本」 (翔泳社)。著書の村上由美さんは現在、言語聴覚士として活躍されていますが、実は4歳まで音声言語を話さなかったASD(自閉症スペクトラム)当事者です。そして、村上さんの旦那さんは、ASDに加えてADHD(注意欠陥・多動性障害)やLD(学習障害)の傾向もあり、大人になってからようやくそのことに気づいたそうです。そんな、当事者でもあり、家族でもあり、支援者でもある村上さんが、3つの視点から編み出した、発達障害の人が日々の暮らしがラクになるためのアイデアをうかがいました。お話をうかがったのは… 村上由美さん上智大学文学部心理学科、国立身体障害者リハビリテーションセンター(現・国立障害者リハビリテーションセンター)学院聴能言語専門職員養成課程卒業。重症心身障害児施設や自治体などで発達障害児、肢体不自由児の言語聴覚療法や発達相談業務に従事。現在は、自治体の発育・発達相談業務のほか、音訳研修や発達障害関係の原稿執筆、講演などを行う。著者に「声と話し方のトレーニング」(平凡社新書)、「アスペルガーの館」(講談社)、「ことばの発達が気になる子どもの相談室」(明石書店)、「仕事がしたい!発達障害がある人の就労相談」(明石書店、共著)、「発達障害の人が活躍するためのヒント」(弘文堂、共著)がある。■断捨離「モノが捨てられない」悩みを解決!――著書を読んで、「発達障害と長くつき合うのは、愛情じゃなくてスキルが必要」という言葉に「なるほど!」ととても納得しました。そのスキルをまとめたのが、本書というわけですね?村上由美さん(以下、村上さん):私は、かねてから、発達障害者の自立のカギは「時間、モノ、お金の管理ができること」と思っていて、最近ではそれに加えて「他人と協力できる場を持てること」「生き延びるための体力」も必要だと思っています。これらは、発達障害の人がこの三次元の世界で生きるための接着剤のようなもの。これらを介さないと、この世界の人やモノとは繋がれないので、それぞれの苦手項目を解決するためのスキルをまとめました。――今回はその中から、「モノの管理(片づけ)」についておうかがいします。というのも、発達障害グレー気味というママからは「片づけができない」というお悩みが圧倒的に多かったからです。村上さん:発達障害の人は、空間やモノへの捉え方が一般の人とは感覚的に異なるので、「片づけが苦手」という方がとても多いです。片づけについては、まず、自分にとってどういう状態が片づいているのかを明確にすることが大事です。例えば、ホテルのような整然とした部屋が良いのか、多少散らかっていても日常生活に支障がない状態なら良いのか、などというふうに。――確かに、人によって定義が全然違いますものね。でも、自分の片づけのイメージ通りに「モノを捨てられない(減らせない)」という悩みも多いようですが、これはどうしたら?村上さん:発達障害の人はモノの判断基準があいまいで、自分にとってのモノの役割を認識できていないため仕訳が苦手です。例えば、ADHDの傾向が強い人は、興味や関心に惹かれてつい使わないモノに手を伸ばしてしまいがちですし、ASD傾向が強い人は、そもそも片づけの意味や必要性を認識していないことや、人から押しつけられるとうまく断れず不要なモノが増えてしまうことも多いのです。発達障害の傾向が強い人は、自分の好みに合わないモノとつき合うのがそもそも苦手という特性を認識して、ある程度試してみて不要だとわかったら手放す覚悟が必要だと思います。――具体的な対処法としては?村上さん:まず、似たようなモノ同士をまとめます。集めたモノを比較すると、モノ本来の目的や自分の判断基準が明確になります。そこから不要なモノを間引きするのですが、判断に迷ったらいったん保留にし、モノ本来の評価と自分の感情を表などに書き出して整理しましょう。例えば、「使いにくいけど高価なモノ」は、モノ本来の評価は「使いにくい」、自分の感情は「高いから捨てるのがもったいない」になり、どちらが勝っているかがわかりやすくなるので決断しやすくなります。また、「〇〇したら使うかも」などと、条件つきで判断に迷うモノは、実際に使ってみることで結論がでます。例えば、「修理が必要なモノ」は「お金をかけて修理してまで使いたいのか?」「そこまでするのは面倒なのか?」で判断ができるはず。また、捨てるにはもったいないけど自分では使わないモノを処分するには、リサイクルショップや寄付などを利用するのが良いでしょう。 ■子どもの大量プリントやスケジュールはIT管理――家の片づけに加えて、子どもの片づけや学校の用意も加わって、お手上げ状態のお母さんもいたのですが、子どものモノの片づけはどうしたら良いでしょうか?村上さん:基本はどの片づけもだいたい同じなのですが、まず「この部屋で何をするか?」というルールを決めることが大事です。例えば、リビングは家族のパブリックスペースで、たくさんの個々人のモノが持ち込まれるので散らかりがちですが、「ごはんを食べる」「仕事をする」「勉強する」「遊ぶ」などと目的を決めると、だいたいの作業エリアが決まるので、そのために必要なモノを配置しやすくなります。子どもが勉強するなら、テーブル回りに筆記用具の引き出しや勉強本の棚を設置したり、それにまつわるモノが回る仕組みをつくります。また、子どもが片づけやすい状況になっているかも大事です。引き出しにラベルを貼って中身をわかりやすくしたり、きょうだい児がいる場合は棚を色分けするなど工夫しましょう。…とはいえ、子どもがいる場合は、そもそも整然としたホテルのような部屋を目指すのは難しいので、ある程度の妥協は必要だと思いますよ。――なるほど。また、子どもの片づけといえば、学校からの大量に配られるプリントの管理もありますが、こちらの対策は?村上さん:どんどんデジタル管理して、用済みの紙は捨てることです。紙情報は、処理して捨てるまでの流れを仕組みにしないと、どんどん積み重なって“地層化”になる一方ですよ。また、紙は検索できませんが、データなら検索できるのでとても便利。ちなみに、私はクラウド・サービス「 Evernote(エバーノート) 」を利用していますが、ほかにもプリント管理に便利なスマホのアプリなどたくさんあるのでぜひ検索してみてください。きょうだい児ごとにタグづけすれば簡単ですよ。また、IT管理は子どものスケジュール管理にも便利です。家族行事は、夫婦でGoogleカレンダーを共有し、子ども用には、プリントアウトしたモノを目につきやすいところに貼っておくことをおすすめします。子どもには、情報をITで理解するのはまだ難しいので、紙という具体化したモノで見せることが大事です。――スマホのアプリで管理するのは便利そうですね。村上さん:パソコンやスマホ、インターネットは、発達障害者にとっては三種の神器のようなもの。世の中のIT化により、社会の仕組みが発達障害の人たちが苦手とする三次元の世界から、得意な仮想空間の世界へとシフトしてきています。これらの情報機器をうまく活用すれば、生活の質を上げていくことができるでしょう。――ちなみに、ITオンチのお母さんはどうしたら良いでしょう…?(汗)村上さん:ITが苦手なお母さんは、トレイで管理することをおすすめします。目につきやすいところに「ママに渡すモノトレイ」を設置して、そこに子どもにプリントを入れてもらい、見たら即仕分けたり返事を書く、手帳やカレンダーに記入するというルールを決めましょう。また、子どもがちゃんとプリントを出せたら、たとえ内心、当たり前と思っていても、ちゃんと言葉に出してほめることが大事。できなかった時に叱るのではなく、できた時にほめることで、子どもにプリントを出す行動が定着します。■「お客様」意識のパパ、「私がやらなければ」意識のママ――なるほど。でも、いろいろお話をうかがって、これらを全部お母さんひとりでやるというのも大変ですよね…?村上さん:本当にその通りです。お母さんがやるのが大前提になってしまっていますが、これはお母さんだけの課題ではありません。協力して助け合うのが、家族の大事な役割なのですから。でも、日本の家庭は、たいてい奥さんが「プログラマー」になって細かくプログラムを組まないと、夫がうまく動いてくれないですよね(苦笑)。だから、「そんなの面倒くさくてやってられない!」と全部自分でやってしまうから、夫婦ケンカになってしまう。――おっしゃる通り(笑)。村上さん:私が思うに、多分、大半の夫は家庭に対して「お客様」感覚でいるのだと思いますよ。でも、夫は家族の一員なのだから、それは違いますよね? ですから、夫に家庭での「お客様」意識を改めてもらうことが必要です。そして同じように、お母さんも育ってきた環境や社会に求められて、家のことはすべて自分がやるものだと思いがちですが、そういう意識も変えていく必要があると思います。で、先ほどの、子どもができたらちゃんとほめるという話は、自分に対しても同じ。できて当たり前ではなく「できた私ってえらい!」と自分をきちんとほめてあげてくださいね。片づけや家事は「できて当たり前」と思われがちなうえに、消耗する行為が多いもの。でも、できて当たり前ではないこと、できたら自分をほめてあげる習慣をもつことで、自分自身にも片づけの習慣が定着するかもしれません。後編では、ママ友との「コミュニケーショントラブル」についておうかがいします。参考図書: 「ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に暮らすための本」 (翔泳社)大人になってから発達障害の症状に悩む人が増加しています。ここ10年で「発達障害」の知名度が飛躍的に上がったことで、「もしかして自分も…」と成人になってから気づく人が増えたのが最大の要因と思われます。発達障害の人には、「同時並行作業力が弱い」「段取りが取れない」「ケアレスミスをする」「コミュニケーションが苦手」といった特徴があり、そうした症状に悩む人のために、上手に日常生活を過ごす方法を解説。イラスト/高村あゆみ取材・文/まちとこ出版社N
2018年05月24日発達障害があるなしに関係なく、子どもの就学は親にとって大きなイベントですが、障がいのある子を持つ親にとっては、就学先を考えることに加えて、さらにもうひとつ大きな問題があります。それは、放課後の過ごし方。学童に問題なく通える子はいいけれど、障がいの程度によっては、学童利用が制限されることがあります。そこで代わり通うのが放課後等デイサービス(※)です。筆者の息子(自閉症スペクトラム)も、来年は小学生。就学先と並行して、いろいろな施設を見学に行っている最中です。そんな中で知ったのが、パソコンを学んだりサッカーができるという 放課後デイサービス「あいだっく」 。普通の施設とは一風変わったプログラムを実施していることに興味を感じ、取材に行ってきました。代表の上田宏樹さんにお話を伺いました。※放課後等デイサービスとは、障がいのある就学児(小・中高校生)が放課後や長期休暇中に通うことができる施設のこと。対象は、障がいのある子ですが、障がい者手帳がなくても、専門家などから必要が認められれば通うことができます。単に預かるだけでなく、子どもが楽しんだり成長したりできる場所を提供したい―― 御社はもともと福祉系ではなく、様々なサービス業をしていますが、放課後等デイサービス(以下、放課後デイ)事業に参入したきっかけを教えてください。上田宏樹さん(以下、上田さん):私はサービス業が大好きで、世の中に独自の新しいことを作っていきたいという思いがあります。ある時、ふとしたきっかけで、放課後に行き場がなくて困っている子どもたちがいることを知り、「じゃあ、我々で居場所を作ろうよ」と、この事業に参入しました。―― はじめの放課後デイで、絵を描く「アトリエあいだっく」を始めたのはなぜですか?上田さん:それまで放課後デイ事業は、単なるお預かり事業のような側面がありましたが、弊社がやるならば単に預かるのではなく、子どもたちが楽しんだり成長したりできる場所にしたい、と思ったからです。そして、働くスタッフもやりがいを感じられるような働き方をしてほしいと思いました。もともと弊社がデザイン会社からスタートしたというのもあり、「子どもたちが自由に楽しく絵を描ける場所をつくろう!」と。民間独自のアイディアで福祉業界に新しい風を吹き込んでやろう! という意気込みもありましたね。―― 子どもたちは絵を描くことが大好きですものね。上田さん:それが、私たちの予想に反して、最初の頃はみんなぜんぜん絵を描かなかったんですよ(笑)。でも、スタッフの情熱と子どもへの上手な働きかけ、子どもたちの成長で、少しずつ興味を持ってくれる子が増えてくれました。「アトリエあいだっく」で子どもたちが描いた作品。ここでは絵画や工作などの作品作りを通し、時間や決められた流れに沿った集団行動を継続して行えるよう、サポートしている。 「アトリエあいだっく」詳細はこちら >> とはいえ、やっぱり絵には興味を持てず、体を動かす方が好きな子もいます。そこで、そういう子も楽しめるように、歌やダンス、楽器が楽しめる「スタジオあいだっく」を設立しました。「スタジオあいだっく」では、通常活動や年二回の発表会を通し、歌、ダンス、楽器を集団行動で行うことをサポート。仲間たちと協力し合いながら活動することで、他者との関わりや集団で行動することの楽しさ、思いやりの心を養う。 「スタジオあいだっく」詳細はこちら >> その後、パソコンが好きな子もいたので、生徒全員がパソコンに触れられる「パソコンあいだっく」も設立しました。「パソコンあいだっく」では、いろいろなソフトやハードを使用して、子どもたちが自分自身で「やりたいこと」を見つけて、タイピングの技術向上につながるようサポート。長時間課題に取り組める集中力も養える。また、作品発表や質問をすることで、自己主張や表現力の向上にもつながるという。 「パソコンあいだっく」詳細はこちら >> ―― 子どもたちのニーズに応えて、どんどん進化しているのですね! 月曜から金曜日まで、ワンパッケージで子どもたちはさまざまな体験ができますし、「あいだっく」として全体で情報共有して支援体制を考えられるのも、保護者にとっては心強いですね。上田さん:「はじめると決めたら赤字になってもつぶさない!」という覚悟で運営していますよ。飲食業のような他のサービス業と違って、運営が立ちいかないからといって、子どもたちを追い出すようなことは絶対にしたくないですからね。チャンスは、すべての子どもに平等であるべき―― 放課後デイの運営にあたって、「あいだっく」が大切にしていることは何でしょうか上田さん:子どもの表現方法の幅を広げることを大事にしています。障がいがある子たちは、いろんなことが制限されがちですが、そこを広げて、今までできなかった表現方法を見つけられる機会を提供できたらと思っています。例えば、パソコンに関しては、よく保護者から「パソコンの練習するんですか?」と聞かれるのですが、そうではなくてパソコンはあくまでツール。パソコンで小説を書く子もいますし、絵を描く子もいますし、動画を作る子もいますし、話すのは苦手だけどチャットならコミュニケーションがとれる子もいます。パソコンは “自己表現の幅を広げるきっかけ” にしてほしいと思っています。――なるほど。上田さん:他の子どもたちは、放課後は自分で自由に遊びにいけますし、習い事にも行けます。でも、障がいがある子たちは、行動が非常に制限されてしまいます。でも、同じ人として、それは違う。チャンスはすべての子どもに平等にあるべきだと思うのです。―― 本当にそうですね。お友達のお子さん(自閉症スペクトラム)で、水泳教室の入会を断られた方がいました。水泳は命に関わる危険もあるので、受け入れ側も体制が整っていない場合は難しいのかもしれませんが、こうして様々なチャンスが奪われてしまうのは非常に悲しく残念でして…。上田さん:だから、弊社は「サッカーあいだっく」も作ったのです。オリンピック開催が決まってこれからスポーツが盛り上がるという時に、他の子と一緒になって盛り上がれるように、と。また、サッカーをはじめたもうひとつの理由は、保護者のためです。自分の子どもの試合を観戦することは、親の最大の楽しみ。そんな機会がないことも、親にとっても機会損失です。試合をした時に、私が何より感動したのは、お母さんたちの熱狂具合でしたよ(涙)。ルールを守り、集団の中の一員という意識を持ちながら運動活動することを学ぶ「サッカーあいだっく」。サッカーを通して、探求心や協調性、コミュニケーション能力の向上を目指す。 「サッカーあいだっく」詳細はこちら >> いろんな人がいて当たり前な世の中になってほしい――「あいだっく」では、文化祭や卒業式などのイベントもしているそうですね?上田さん:成果がわかる発表の場があるというは、子どもにとってもスタッフにとっても、やりがいのあることだと思います。みんなとても張り切って楽しそうでした。卒業式では、毎年号泣してしまいますね。今、卒業後もみんなが生き生きとしたつながりを持てる場を作れればと、例えば劇団なんかどうだろう? といろいろ考えているところです。――「ただのお預かり施設にはしたくない」という上田さん思いが、ここにも表れているのですね。上田さん:正直、僕はこの事業をはじめるまで、障がいのある方と身近に接する機会がなかったんです。だから、みんなにはもっと外に出て欲しいし、まわりの皆さんにも知ってほしいです。隣にいろんな人がいて当たり前、そんな世の中になってほしいと思います。最近、盲目の方がR-1で優勝しましたけど、あんなふうに、障がいを持った人がどんどんいろんな場に出て、本人も笑いのネタにしちゃうくらいの自信を持って生きてほしい。そのために弊社ができることは何だろう? と、常に自分に問いかけています。取材に同席してくださった、現場責任者である柴岡康大さんからは、「『あいだっく』では障がい者手帳のあるなしにかかわらず、専門の相談支援員がさまざまな相談に電話でお答えしているので、いつでも気軽にお問い合わせくださいね」との心強いお言葉もいただきました。実際、診断が出ていないグレーゾーンの方からのお問い合わせはとても多いそうです。「すべての子どもに平等のチャンスを提供したい」という「あいだっく」の熱い思い、福祉業界の枠を超えて、世の中にどんどん広がっていってほしいと思います。 放課後デイサービス「あいだっく」 >> 相談支援事業所「あいだっく」 >> 取材・文:まちとこ出版社N[PR] 放課後デイサービス あいだっく
2018年05月23日5/26 (土)「ちゃんと知りたい!子どもの発達障害」すくすく子育て×ウワサの保護者会 コラボスペシャルの内容は?Upload By 発達ナビニュース2018年5月26日(土)にEテレで発達障害特別番組「ちゃんと知りたい!子どもの発達障害」すくすく子育て×ウワサの保護者会 コラボスペシャルが放送されます。幼児の子育ての悩みや疑問に専門家が答える「すくすく子育て」と、小・中学生の保護者が教育について尾木ママと語り合う「ウワサの保護者会」が初コラボ。最近は、若い親世代の間で発達障害が知られてきています。それによって、「言葉がなかなか出ない」「他の子と比べて落ち着きがない」など少しでも気になる様子が子どもにあると、「もしかして発達障害かも…?」と心配をする親も増えているといいます。しかし、発達障害は社会性や人間関係に表れる特性のため、乳幼児の間は診断ができないことが多いとされています。「様子を見ましょう」という医師の言葉に不安と期待を抱きながら過ごす時期は、心も揺れ、どう対応するべきか分からずかえって苦しい思いをしている場合も…。今回の番組は、乳幼児期から就学にかけての年齢の子どもたちを育てている保護者にぴったりな内容です。 Eテレ「すくすく子育て」「ウワサの保護者会」乳幼児期から就学にかけて…成長の段階で変わっていく不安や悩みは?Upload By 発達ナビニュース番組の前半では、乳幼児期の「もしかして発達障害?」という悩みを専門家と一緒に考えます。■発達障害のある子もない子にも共通する子育ての基本■初めての集団生活である幼稚園や保育園でできる対応などを紹介しながら、発達障害とは何かを小児科医の榊原洋一先生が解説します。後半は、発達が気になる子の就学にはどんな支援があるのか、現在の特別支援教育についてを詳しく解説。■発達が気になる子の就学、どんな支援がある?現在の特別支援教育についてなどの疑問にも答えてくれます。また、「地域の中で、他の子どもたちと関わりながら一緒に育ってほしい」「将来の自立のために、手厚い支援を受けさせて能力をのばしてあげたい」という思いを当事者の親が語り合い、発達障害のある子どもにとって、必要な教育とは、学校とはどうあるべきなのか?を考えます。どちらを選んでも感じるジレンマ。その選択は悩ましいものです。そのどちらの思いも両立する「インクルーシブ教育」に向けて、親と行政と学校が手を組んで始まっている取り組みについても、番組内で取り上げられます!同じ悩みや不安を共有するだけでなく、先進的な事例も知ることができそうです。番組の詳細はこちら!Upload By 発達ナビニュース【番組名】Eテレ「ちゃんと知りたい!子どもの発達障害」すくすく子育て×ウワサの保護者会 コラボスペシャル【放送日時】2018年5月26日(土) 21:00~21:54、2018年6月2日(土)12:00~12:54【出演者】司会:尾木 直樹(教育評論家)、高山 哲也(アナウンサー)、山根 良顕(お笑いコンビ「アンガールズ」、優木 まおみ(タレント)、専門家:汐見 稔幸(東京大学名誉教授)、榊原 洋一(お茶の水女子大学名誉教授)、ナレーター:笠間 淳、鈴木 麻里子発達障害プロジェクト
2018年05月22日「小学校教育、どうだった?」学校ギライの長男に聞いてみた出典 : こんにちは。『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て法』著者、楽々かあさんこと、大場美鈴です。小学校時代、うちでは学校に長男への合理的配慮をお願いするなど、あの手この手でサポートしながら、なんとか卒業しました。それでも結局6年間、彼は学校自体あんまり好きではありませんでした。親も先生も、そして長男自身も、できる限り努力してきた結果なので、私は「そもそも、今の公教育の仕組み自体が長男に合わないのかな」とも感じました。そして彼は「みんなと同じ」公立中学への進学を希望せず、自分に合った私立中学を選択しました。今回の「息子インタビュー」では、生意気にも、現在の日本の教育制度や、同世代の子ども達や親達に伝えたいことを、正直者の12才の彼が、素直な言葉で語ってくれました。※一部、正直過ぎて、やや配慮に欠ける表現があるかもしれませんが、彼の素直な言葉を尊重したいと思いますので、どうかご容赦下さい(文責・インタビュアー:製造責任者・母)。公立の学校の問題点出典 : かあちゃん(以下、母):じゃあ、今回は「学校」について。私立を受験したのは、今の公立の学校自体、キミには合わないところがあったからだよね。長男・◯太郎(以下、長男):うん。例えばね、給食で弟みたいに軽い牛乳アレルギーの子でも、牛乳だけじゃなくて、牛乳をちょっとでも含むもの全てが「全部ダメ」みたいなのがおかしい(※母注:次男に関しては後日相談し、対応して頂けました)。母:まあ、一部の重症なアレルギーのある子にとっては命に関わるから、切実に必要なことなんだけれども、一律に「ダメ」だとね。長男:「軽い人も重症の人も同じ」みたいな。母:沢山の子ども達がいるから、凄く困っている子もいれば、ちょっとだけ困っている子もいるよね。長男:公立の学校はどの子も1つの方法で、まとめてやろうとしちゃう。母:なるほどね。それは勉強でも同じじゃないかなと、かあちゃんも思う時があるけど…。Upload By 楽々かあさん長男:だから、おれは成績は全部Cで構わない。全部Aでも、Cでも、カンケーない。成績表は、ただ単に「教室で集中しているか、どうか」を、あくまで先生から見て数値化したもの。だから、成績良くするのは、スゲーカンタンだよ!母:え!?どうしたらいいの?長男:ごはん貰うときのうちのワンコみたいにね、お利口におすわりして、鉛筆をカツカツ言わせながら、黒板に書いてあることをその通りにノートに書けば、先生はAくれるよ!母:そ、そっかあ…(破壊力あるコメント…汗)。長男:だから、成績表のAとか、Cとか、ホントにどーでもいい。学校の成績が悪くても、頭いい子は沢山いるよ。今の学校のやり方が合う子はいいけど…。学校では、学ぶための城の中で「門が1つしか開いてない」みたいな。母:「学びの城の門が1つしか開いてない」!長男:(絵に描きながら)そう、いろんな城があって、ルートがある。学びの城は、まず最初に第一の石垣があって、これは(公立の)小学校で「ここしか門が開いてない」みたいなカンジ。そんでも、城の攻略では、この石垣を登って近道するってテもあれば、正攻法で攻めたり。こっちは、遠回りだけれど、ゆっくり学べるみたいなルート。母:学ぶスピードは人によって違うもんね。子どもが勉強をキライになる理由出典 : 母:じゃあ今、「勉強がキライ、苦手、つまらない」って子がいるとしたら、それはなんでだと思う?長男:まず、「キライ」と「苦手」と「つまらない」は、それぞれ(理由が)違う。「苦手」は内容が難しいんだけど「=キライ」とは限らない。「つまらない」は、簡単すぎて興味が持てない、とか。「キライ」はね、得意なことでもなるよ。母:簡単過ぎても、難しすぎても、その子のレベルに合ってないってことかな?長男:そう、合ってない。「キライ」の理由は何種類かあって、まず「簡単すぎる」、あとは…例えば「自分よりもっとできる子がいるから」とか。それから「難し過ぎる」とか、「教える人が怖い」とか。母:…確かにそれは勉強キライになるだろうね。長男:「勉強がつまらない」のは、多分ずっと同じステージのダンジョンで、レベル上げしてるのと同じだからだと思う。スライムやゴブリンの経験値2とか5ばっかり倒してるから「つまんね」ってなる。自分と同レベか、その前後。特に自分よりちょっと強めの敵レベルで戦うのが一番いいんじゃない。母:今のその子にちょうどいい学習のレベルがあるんだね。それから、「苦手=キライではない」って言ったけど、キミの場合は国語がそうだよね。「苦手だけど好き」になるにはどうしたらいい?長男:「苦手でも好き」になるには、ゲーム感覚でやるとか。母:ああ、なるほど。そういうの最近では「ゲーミフィケーション」っていうよ。ホントのゲームだけじゃなくて、うちの「ポイント手帳」や「ごほうび設定」もその1つだね。じゃあ、授業中ねり消しつくったり、教科書の偉い人にヒゲ描いてる子はどうしたらいいと思う?長男:それはもう教え方が悪い!母:あはは。ハッキリ言うね(汗)その子のせいじゃないんだね。長男:そうそう。教え方が悪いんだよ。なんかつまらないから、落書きしちゃうみたいな。例えば、歴史の教科書もムスッとしたおっさんの部将じゃ、女子は興味が持てないかも。例えば、アニメやゲームに出てくるようなカッコイイ部将の絵を使うといいと思う!母:あはは。確かにイケメン部将なら、教科書開くのも楽しいよね。ただ、かあちゃんは、教科書の印象だけでなくて、さっき言ってたみたいに、授業や宿題が作業ゲー化してるのもあると思う。今の子ども達は、楽しいゲームの展開に慣れているからね。12才、凸凹男子が夢見る「理想の学校」とは…?出典 : 母:キミは前「もっと学校が選べるようになったらいいのになあ」って言ってたけれど、具体的にどういうこと?長男:今のやり方で、楽しくできる子はいいんだけど…。例えば「もっと自由にやりたい」とか、「実際に見てみたい」とか…社会なら修学旅行や社会科見学、理科なら実験を沢山したりとか…。母:体験中心の?長男:そう、おれみたいに体験中心の勉強が好きな子もいれば、友達の中でワイワイやるのが好きな子も、1人でじっくりやるのが好きな子もいる。パソコンやゲームで学びたい子もいると思う。いろんな子に対応している学校ができたらいい。母:なるほど。公立校でもいろんな学び方があっていいよね。長男:うん。学校はまず、楽しく学べるというのが一番大切だと思う。おれの「理想の学校」は、学年じゃなくてレベルで分ける。例えば、1レベから10レベまであって、「国語はおれ難しいから1レベ」って、国語の時間になったら1レベの教室へ行く。「算数は得意だから、5レベの教室」って。まず最初にテストをして、「今ここらへんだよ」って決めて。母:それは「習熟度別クラス編成」だね。例えば、算数は10レベだけど、国語は1レベってコトもある?出典 : 長男:うん。算数だけは「めちゃ天才!」みたいな子もいる。そしてレベル別に分けたら、更にコース分けする。パズルコースとか、動画コースとか、体験コースとか…。そんで給食はね、食堂で好きな子と一緒に好きなメニューを食べればいい。それから、スクールバスと、あそびの部屋と…。母:夢が広がっているね(笑)。キミの理想の学校は、要するに「いろいろ自分で選べる」ってことかな?長男:そう自分で選べる!自分で何でも選べると、小さな事でもうれしいじゃん。母:逆に言うと、今、公教育はあんまり選択肢がなくて「ここに住んでいるからこの学校」「教科書はこれ」「今年の担任はこの先生」「今日の宿題はこれ」…って決められちゃうことが多いかな。長男:もうねえ、効率ばっかり求めちゃって。「公立は効率を求める」。ダジャレできた!だははははは。母:あはは。でも、未だに大量のプリントが毎日学校から届くのを見ると、効率良くない面もあるかもね。先生達がコピー機の前に並んだり、授業で毎回プリントを配って集めて丸付けする時間に、「個人の努力」以外にもできることはあると思うな。長男:とにかく公立は、楽しさよりも「みんな同じで」って考えてる人がいるから。母:自分の意思で選んで学べたら、日本の子ども達は、もっと学校や勉強が好きになるかな?長男:そう!勉強がキライな子に、大人達はどうしたらいい?出典 : 母:じゃあ、今勉強がキライだと思っている子には、周りの大人達はどうしたらいいと思う?長男:その子の性格もあるから、とにかく、いろいろやらせてみる。それで、楽しそうすることとか、集中してたことを沢山やっていく。それで、その子に合ったレベルの内容にする。母:試しにいろいろやってみると、その子の得意な方法や好きなことが見つかるよね。パズルが得意な子も、ゲームが好きな子も、漫画描くのが好きな子もいて「これだったらできる!」みたいなのがあるよね。出典 : 長男:勉強もね、毎日「できないできない」言われるより「君はできるねえ」って、ほめられてやったほうがいい。「鶏口牛後」って言うでしょ。だから、親のとるべき行動はね、「ほ・め・る」。母:うん、なるほど。長男:ほめるのが大事だと思う。時には叱る事も大切だけど、できたことはほめてあげてほしい。できないことも無理に責めずに、できないことをできるようになったら、ほめる。ふざけてる時には、叱って欲しい。できないからじゃなくて、ふざけてる時に叱る。同じ0点でも、ふざけて0点なら叱っていいけれど、がんばって0点だったら、「しょうがないね」ってしてあげて欲しい。それで、一問でもできたらほめる。母:キミの場合は、具体的になんて言葉でやる気出た?長男:(受験勉強の)最後のほう、おれ、漢字が結構書けるようになったじゃん。そん時に、かあちゃんが「およよ〜?」って(笑)母:あはは。かあちゃんも、キミが苦手な漢字を書けるようになったのは、驚いたし、嬉しかったんだよ。長男:そう、親も一緒に嬉しいと思うから、自分も嬉しい。できないから叱るのは、良くない。否定的になっちゃうと思う。出典 : 長男:それから、仕事とかで忙しくても、やっぱり親は子どもと話す時間を作ってあげて欲しい。時間は10分、15分でいいから、相談時間を毎日つくる。母:親と話せる時間があると子どもは安心するよね。親もね、忙しい人もいっぱいいると思うけど…。長男:でも、10分くらいのスキマ時間はあると思う。子どもも、その決めた時間までは、解放しない。親の都合もある。でも「この時間だけは」っていう。母:例えば、気になることとか、不安なこととか?長男:楽しかったことも、嬉しかったことも。それでもう、話す事が尽きたら「一緒にマリオカートやろう」でもいい。ゲームを親と一緒にやるのは、おれ、一番楽しいんだよ。母:そうだね。子どもがいろんなことを親に話す時間があれば、勉強にも集中しやすくなるだろうね。今、学校がキライな同世代の仲間達へのメッセージ出典 : 母:今、学校がキライな子も結構いると思うけど、どう思う?長男:学校キライな理由に、「クラスがぎゃーぎゃー騒がしいから」って子もいると思う。そういう子は、やっぱり家で自分で勉強するのがいいと思う。それなら成績がCだらけでも、親は叱るべきではないトコ。だって、これは、環境がよくない。うるさいのが楽しい子もいるけど、やっぱり、学校ってうるさくなりやすい。母:確かに、人が多くて集中できない子は、人数が少ない環境なら、勉強が頭に入る可能性があるね。長男:だから、教室がうるさいとか、先生が怖いとかは、環境が悪いんだから相談しなきゃ。うるさければ、先生に「イヤーマフ使っていいですか」とか、相談する。でも、怖い先生に「先生が怖いです」って言ったら、大変なことに…(笑)だから、スクールカウンセラーか、親に。母:ははは(汗)。相談する人は選べばいいよね。最後に◯太郎から、今、学校が好きじゃない子に伝えたいメッセージは?長男:「自分に合ったことを、時間をかけて探して」って、思う。時間をかけて、いろいろ試して、自分のカタチに合うものをやって、そこを拠点にして、興味の輪をどんどんと広げてって欲しい。母:そうだね。その子の世界が広がっていくといいね。今回、面白い話を、いっぱいありがとうね。学びの主人公は子ども自身だから…出典 : 子どもって本当に、一見何も考えてないようで、いろいろ考えているんです。何も聞いてないようで、意外と聞いている。何も見てないようで、ちゃんと見ている。何も傷ついてないようで、かなり繊細。そして、何も知らないようで、結構いろんなことに気づき、分かり始めている…。だからこそ大人達は、これからの教育についても、子ども達自身の意思や気持ちに、もっと耳を傾けてゆく必要があるのかもしれません。だって、学びながら成長してゆく物語の主人公は、ひとりひとりの、子ども自身なのですから…。☆2回に渡り、うちの凸凹長男のインタビューを掲載させていただき、ありがとうございました。大場美鈴/著『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て法』2017年/刊/ポプラ社
2018年05月15日ヘルプマークが必要、でも周りの目が気になる娘娘は高校1年生の時に電車で体調を崩して以来、遠出する時や一人で初めての場所に出かける時に、ヘルプマークを携帯するようになりました。でも、周りの目が気になる娘は、近場の外出や通学時などでは、ヘルプマークを携帯しようとはしませんでした。娘の心境を変えた、ある出来事高校2年生のころ、娘が荒れました。イライラしては自分の部屋で暴れ、衣装ケース、ゴミ箱、扇風機、ドア、壁などいろいろなものを壊しました。ある時、娘は壁掛けフックを力任せに引っ張り、壁とフックを固定していた留め具を折りました。気持ちが落ち着き、自分で直そうと考えた娘は、販売メーカーのHPで「留め具のみの販売」をしていることを確認し、フックを購入したお店に留め具を買いに行きました。買い物がうまくできなくてその日、手ぶらで帰って来た娘は落ち込んだ表情で、お店でのやり取りを私に話しました。Upload By 荒木まち子再度チャレンジしてみたものの…翌日、娘はそのお店のHPに掲載されていた商品の画像をプリントアウトし、持って行きました。Upload By 荒木まち子帰宅後「やっぱり無いと言われた…」としょんぼり話す娘。私は助け舟を出しました。「HPで販売していると載っているなら有ると思うけど。明日もう一度行ってどうしてもうまく聞けなかったら、私も店員さんと話をしてみるから電話してきても良いよ」結局、親が出動することに…翌日お店から電話があり、私は店員さんと話をしました。Upload By 荒木まち子言葉でのやりとりが苦手な娘娘は一見障害があるようには見えませんが、言葉でのやり取りが苦手なタイプです。相手に強く言われれると、言いたいことがあっても言葉が出なくなります。忙しいせいもあるのか、店員さんはテキパキと早口で話す方でした。これでは娘は聞き取れないし、たとえなんとか聞き取れたとしても、萎縮してしまい上手くしゃべれなかったのだろうと感じました。Upload By 荒木まち子娘が求めるのは「ヘルプ」<「理解」娘はこの出来事以来、近所へ外出する時もヘルプマークを身につけるようになりました。周りに合った歩調で歩けないのも、人と目が合わせられないのも、せかされた状態ではうまくしゃべれないのも、大きな周りの音に邪魔されて上手く聞き取れないのも…理由があります。へルプマークには「助けて欲しい」という想いだけでなく■分かって欲しい■理解して欲しい■認めて欲しい■ほんの少しの配慮が欲しいなどさまざまな想いが込められていると思います。娘がこのマークをいつも携帯するようになったのも「分かってほしい」という想いがあったからなのです。想いは十人十色ヘルプマークの認知度は、3年前に比べ格段に増してきました。これからは、「見えない障害」にはさまざまな種類があり、ヘルプマークを携帯する人にもさまざまな想いがあることを知ってもらえたら良いなと思っています。
2018年05月13日小学校は「学びの場」。わが子はきちんと学習できる?出典 : 子どもが小学校に入学するということは、一体これまでと何が1番変わるのでしょう。それは言うまでもなく、「学びの場」に入っていくということです。それまで走り回って元気よく遊んでいれば良かった生活から、急に1日何時間も椅子に座り、勉強をする生活に変わります。この急激な変化を前に、不安を覚える親御さんも多いのではないでしょうか。立ち歩かずにきちんと授業に参加できるのか、毎日の宿題をこなすことができるのか、そもそも漢字や計算を問題なく習得できるのか。1年前の私も、そんな不安でいっぱいでした。漢字学習の苦手を救ったアイテム!発達障害のある息子は、自分の嫌いなことに黙々と取り組むのが苦手です。入学後、やはり漢字の学習でつまずいてしまいました。ただ形を覚えるだけであれば、それほど時間をかけずに達成できます。けれども、ノートに手本どおりに何回も繰り返し書く作業、さらに、それを先生に赤ペンで直されて、その上からなぞる作業…。これが毎日延々と続くことが、息子の苛立ちを誘うようです。また、息子はとにかく頑固で人の言うことを聞きません。漢字の書き順が完全に自己流になるのです。何度訂正しても直す気がありません。しまいには、訂正したそばから怒り始めます。人によっては書き順にそこまでこだわらせず、とにかく形を覚えさせればいいという考えもあるようですが、息子は一筆書きで書いてしまったり、変な順番で書き始めたりすることで、ノートのマスから文字がはみ出してしまいます。ですから、やはり書き順はある程度守ってもらいたいと思いました。そこで、息子に何かをさせるとき、私がいつも一番大切にしていることに立ち返ってみました。それは、「成果が見えるようにする」ことです。これを踏まえて、学習支援グッズを手づくりしてみることにしたのです。そこで、「楽々かあさん」さんのアイデアを参考にさせていただきました!これが、想像していたよりもずっと息子の学ぶ力を伸ばしてくれることになりました。参照URL:楽々かあさんのアイデア支援ツールと楽々工夫noteUpload By 林真紀上の写真が、手づくりしたカードです。材料は名刺カードと名刺ホルダで済むというのもうれしいです。教材やレイアウトなどはそれぞれのお子さんに合ったものを選ぶのが良さそうです。基本的には、1年生~6年生までに習う漢字をコピーして、名刺カードに1枚ずつ貼っていきます。6年間の間に習う漢字は1,006字です。時間のあるときに切って貼ってとやっていると、意外とあっという間にできてしまいました。1,006字を学年ごとに名刺ホルダに収納します。文部科学省 学習指導要領「生きる力」 別表学年別漢字配当表Upload By 林真紀Upload By 林真紀ちなみにわが家で使っているカードの教材は、漢字の成り立ちを絵で表現していたり、書き順を絵描き歌の歌詞のように書いたりしている漢字辞典を採用しています。表面は成り立ち、裏面はその漢字をパーツで分解し書き順を表記したものを貼ってつくります。息子に書かせるときには、「細」という字であれば、「くムとつづけて」「たてチョンチョン」と記述されている順番通りに声を出して読み上げてあげれば、正しい書き順で書けるようになりました。ただし、シンプルなカードのほうが好きな子どももいますので、そういう子は漢字が一文字だけ大きく書かれただけのカードをつくってみたほうがいいかもしれません。「僕、こんなに覚えたの!?」達成感でやる気スイッチON!漢字ノートに毎日ひたすら練習をしていた時は、「いつ終わるんだ~」「毎日こんなのが続くなんて~」「つまんないよ~」とグズグズでしたが、このカードを使ってみて息子の漢字学習は劇的に変わりました。2年生が始まって1ヶ月で、その学年で習う漢字をほとんど習得してしまったのです。なぜ息子のやる気を起こすことができたかというと、このアイテムは製本されている漢字ドリル等に比べて、覚えた漢字の量やこれから学習が必要な漢字の量が一目瞭然だからです。覚えた漢字を上の写真のように積み上げていくうちに、「え!?僕こんなに覚えたの?」と、達成感を得ることができ、次々に自分から学習してくれるようになりました。さらに、まだ習得できていない漢字のカードをよけておくと、「5枚分かあ。これだけなら頑張れるかも」という見通しがたつようです。先生の赤ペンがびっしり入った真っ赤な漢字練習帳を前にすると、一文字書いて突っ伏してしまう息子が、カードにすると「まだいけるかも!」「よし、また覚えた!」と楽しく学習してくれます。小学校6年間に習う漢字は1,006文字。こうして名刺ホルダに収めてみると、見通しがたって、それほど大変な気がしないというのも面白いものです。先取りで漢字をどんどん覚えると、漢字練習帳にコツコツ書くのもそれほど嫌がらないようになりました。わが家の息子のやる気もぐんぐん伸びた学習支援グッズ、是非お試しを!
2018年05月12日Upload By 楽々かあさんこんにちは。『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て法』著者、楽々かあさんこと、大場美鈴です。まずはご報告。うちの「あの」長男が、無謀にも約一年間の自宅学習で中学受験に挑戦し、第一志望の中高一貫校に無事、合格しました!小学校時代、字を書くのが苦手で、ノートもロクに書けなかった長男。漢字は何回書いても覚えられないし、得意なハズの算数もミスばかり。折角やった宿題は提出し忘れ、持ち帰ったテストはくっちゃくちゃ!成績表はC評価の「がんばりましょう」ばっかり…。そんな発達凸凹男子の彼の強い希望が叶ったこと、そして、受験勉強をきっかけに「おれ、勉強好き〜」と、今は言えるようになったことが、私は何より嬉しいんです。今回、親子で一緒に歩んだ日々を振り返りながら、「みんなと同じ」学び方が合わない子や、発達凸凹の差が大きい子が「勉強が好きになる」勉強法…そして、しんどい時期の乗り切り方などを、息子にインタビューを敢行!前・後編の2回に分けて、彼自身の言葉で語ってもらいました(文責・インタビュアー:製造責任者・母)。好きなことを入口にした、ボクの勉強法出典 : かあちゃん(以下、母):まずは、第一志望合格おめでとうございます。長男・◯太郎(以下、長男):Thank you!母:(笑)じゃあ、まずは志望校に合格した、今の素直な気持ちは…?長男:1つは嬉しいという気持ち。もう一つは「勉強大丈夫かなぁ」という不安もある。母:なるほど、中学での勉強に対する不安もあるんだね。第一志望の学校、すごく気に入ってたけど、どういうところが良かったの?長男:教育に新しい方法を取り入れてるトコと、明るい感じがしたこと。あと、おれの好きなカレー屋さんが近くにあったから!母:…いや、確か校則で「買い食い禁止」だから、まっすぐ帰ってネ(汗)。でも、かあちゃんも、小規模校でチャレンジ精神を大事にする校風だし、全校でICT導入済みで、すごくキミの個性にピッタリだと思う。自分に合った学校への希望が叶って、本当に良かった。Upload By 楽々かあさん母:じゃあ、具体的に勉強のことを聞くよ。キミは受験勉強を始めたのが正直かなり遅かったけど、そこからすごくがんばれたし、勉強楽しそうになったよね。「勉強ができるようになった」「楽しくできるようになった」その理由は…?長男:…とにかく歴史が楽しかったから。歴史に興味を持てたのは、かあちゃんが買ってくれたPCゲーム「信長の野望」とかがきっかけで!母:(笑)ソレだね。キミは元々PCゲーム大好きだから、「信長の野望」にすぐハマったよね。自分の好きなことからまず入っていって、そこから他の勉強にも広がっていったね。長男:他の普通のゲームでも、例えば、おれが前から大好きな「マインクラフト」でも、世界遺産の歴史的な建造物を再現して作ったりすれば、それは立派な学習になる。母:なんでも工夫次第で活かせるよね。それに、自分の好きなことや興味のあることだと、結構集中できるかな?長男:うん!母:でも、これだけだとゲームで遊んでるだけになっちゃうでしょ?ただのゲーム好きな子が「もっといろんなことを知りたい」って思えるには何が必要?長男:やっぱり、最初のうちは、興味を持てそうなところからやって…興味の輪を広げる!母:「興味の輪を広げる!」いい表現だね、これ。長男:おれは、歴史で興味を持ったけど、これはあくまで一例だから。例えば、算数の分数が好きな子もいれば、理科の元素記号とかが好きな子もいる。だから、まず自分の好きなことからやる!それで、自分の形に合うものからはめていく。母:ほうほう、ちょっとイメージを図に書いてくれる?Upload By 楽々かあさん長男:それぞれの子でいろんな形と穴があって、自分の持っているピースもそれぞれ違うから。だから、自分の好きなものから、ドンドン順番にはめていって、そして最後に、最初はあんまり興味持てなかったことも、埋めていくっていうか…。母:好きなものが広がると、興味も広がっていくよね。キミの場合は「信長の野望」が入り口で、そこから歴史全体が好きになって…長男:そう、戦国時代から…次が同じ武士つながりで、室町・鎌倉・幕末と明治維新とか、プラス江戸時代とかって感じで、次に日本の地理とか…。最初は1コだった「勉強の拠点」が、どんどん広がっていって…。母:なるほど!「信長の野望」と同じで、自分の拠点が増えて領土が広がっていくんだね。まずは歴史を一国制覇したら、地理でも「信濃川」「越後平野」とか、旧国名に因んだ地名は自然と覚えちゃうし、戦国モノは漢字もいっぱい出てくるもんね。長男:そう、漢字も見慣れる。社会を制覇したら、他のところにも勢力を広げる。母:興味が持てれば、勉強は全然苦にならない?長男:うん。母:でも、やっぱり問題集解いたり、「墾田永年私財法」とか覚えることも必要でしょ?(笑)それも嫌じゃない?長男:うん!興味持てれば!「マインクラフト」公式サイト「信長の野望」30周年記念サイト:GAMECITY(コーエーテクモゲームス)Upload By 楽々かあさん母:あとは「体験する」っていうのが、大事だよね。長男:そう!実際に見て、やってみる!まずは、地元の城とか、近所の郷土資料館とかでもいい。それで、実際に体験したら、思ったことをまとめる。ただ見ただけだと「楽しかった〜」で終わっちゃって、ただの観光になっちゃう。母:じゃあ、更にそれを勉強に活かすにはどうしたらいいの?長男:家族に「こういうところが面白かったんだよ」って話す!これだったら家族も、お土産より喜ぶ。母:人に話すって凄く大事だね、アウトプットするの。長男:そう、ノートに絵を入れて描いたり、家族に話して、外側に自分の考えをまとめる。母:実際に甲冑着てみると「もし戦場に出たら、こんな凄い重いのを着て、素早く動けないな」みたいなことも分かったよね。長男:映画だと、普通に歩けているように見えるけれど、あれはプロだから。それか、軽い素材でできてるのかも。実際の戦国時代で身軽に動けてるのは、相当鍛えてるからだと思う。だから、「実際どうなのか」自分で確かめる。火縄銃の実演見学も、空砲でもあんなにすごい音がしたらねえ…実際の戦場では火薬バンバンつめてさ、もっともっとスッゲー音がすると思う!!(瞳キラキラ)Upload By 楽々かあさん母:ああいう音は、体験しないとわからないね。長男:「どんくらい凄い音なのか」とか、まず行く前に予想立てる。母:おお、いいね。長男:城の天守閣からの景色はどんなか…「めちゃめちゃキレイだろう」みたいな予想。火縄銃の音は「スピーカー音30くらいかな」とか。で、実際見た後で、やっぱり「景色高くて怖かった」とか「スピーカー音50位だった」とか。あと本の図では、城のお堀があんまり深くなさそうだったけど、実際は予想以上にめちゃくちゃ深かったとか。実際に感じたことをまとめるといい。母:感覚が敏感なキミは肌で感じ取るのが得意だろうし、更にそれを人に話すのは、すごく◯太郎に合った勉強法だと思う。自分で体験してみないと分からないことは沢山あるよね。それからキミの場合、実際体験したことは、テストでも結構覚えてられるんじゃない?長男:そう結構覚えてる。本だけだと受験用の勉強はなおさら難しい。YouTubeとかの面白動画だったら、覚えるのはカンタンだけど。母:(笑)。やっぱり「楽しい」と思えるかどうかが大事かな?理科の実験もいろいろやってみたけど、家ですべての実験ができるわけじゃないよネ。長男:例えば爆発の実験とか、危険なのは動画で見る。でも、スチールウール燃やす程度だったら、ウチでスグできる。母:そうだね。スチールウール燃えるの、キレイだったね。あとは、YouTubeで塾の先生とかが、面白く分かりやすい解説動画を沢山UPしてたよね。そういうのも含めて「ひたすら問題集を解く」じゃなくて、自分に合った方法で勉強したのがすごく良かったなと思う。長男:結局、勉強の中で一番大事なのは、「興味の輪」を広げられるか、広げられないか、だとおれは思う。受験勉強中に本当につらかったのは、過去の記憶。出典 : 母:じゃあ逆に、この一年間で一番つらかったことを聞いてもいい?長男:……学校。母:うーん、やっぱりそうかあ。学校の何がつらかったかな?長男:もう、ずーっと前に、他の子に言われたヤなこととか…。母:そうだね。何年も昔のことを、ちょっとしたキッカケで何度も思い出しちゃうんだよね…。かあちゃんも、見ててつらかったけど、勉強してる最中に急にイヤな体験を、よく思い出してたよね…。長男:イヤな体験は「忘れようとしても忘れられない」みたいな、そういうのがある。母:そうだね。特に、受験勉強を始めて最初の三か月くらいは、ヤなことしょっちゅう思い出して、一旦ストップしたり…◯太郎にはつらい時期だったと思う。やっぱり、勉強に興味が持てても、いろいろ気になる事があると、余計に集中力が落ちたり、ミスが増えたり、ぼーっとするのが増えちゃうように思うんだよね。長男:うん…。出典 : 母:でも、多分◯太郎と同じように、学校でイヤなことがあって、勉強に集中できなかったり、「学校行きたくないなあ…」なんて思ってる子は結構いると思うんだけどネ。かあちゃんはネガティブなことも、決して思っちゃダメなワケじゃなくて「そういう時どうしたらいいか」が大事だと思う。キミはどうしてきたっけ?長男:うーん。おれは「スクールカウンセラーの先生に話す」とかした。母:そうだね。スクールカウンセラーの先生と、何度も相談させてもらったよね。長男:思い切って話した。母:そうすると、少しスッキリしたりする?長男:する。母:じゃあ、カウンセラーの先生は、どんなカンジで話を聴いてくれたのかな?長男:フレンドリーに話してくれた。あと、相談しながら一緒に給食食べてくれたし。だから、相談するのは「ちょっと恥ずかしい」とか、「初めてだから、よく分かんない」って利用しない子は多いかもしれないけど、友だちだと思って一回やってみるといいと思う。それでも不安な時は、親にも一緒について行ってもらうとか。母:慣れるまでの最初の何回かは、かあちゃん隣にいたもんね。それだと安心して相談できたかな?家の中だけじゃなくて、学校にも味方がいたのは、キミに取って大きいことだったかな、と思う。長男:そう、そう。一緒に勉強してくれた母と、いつも通りにしてくれた家族。出典 : 母:では、キミが勉強してる時、家族や周りの人が「してくれてよかった、助かったこと」ってある?長男:まず、かあちゃん。ずっと一緒に毎日勉強につき合ってくれてありがとう。母:そっか(照)。一緒にやったこと自体が、よかったんだね。長男:それから、弟と妹ととうちゃん。一緒にゲームしたり、フツーに息抜きしてくれて、今まで通りに接してくれたこと…うん。そしてMy dog は癒し。ぺろぺろしてね、おやつをねだってきてね、カワイイ。母:そうか。他の家族はいつも通りだったのが、かえって気が楽だったかな?長男:うん!それから勉強も、休憩を挟んで、朝・昼・夜に分けて、ちょこちょこやるのがいいと思う。母:まぁ無理しすぎないと言うか…集中できる時間も個人差あるもんね。キミはあんまり、毎日何時間も続けて勉強だと、ちょっと負担が大き過ぎるから「それはやめよう」って思ってた。成長期にしっかり睡眠を取るのも大事だしね。長男:それに、遊ぶのも大切なことだから。おやつ食べたりさ。そういう時間を作る方が、より集中しやすいと思う。母:うん、そうだね。じゃあ一旦、おやつタイムにしよう!(笑)その子に合った学び方なら、できる子は沢山いる…!出典 : この一年間での、自分の学び方に合わせた主体的な勉強は、多感な少年の心も成長させてくれました。そして、例え今、お子さんの学校の成績がイマイチでも、それはその子の本当の「学力」を表しているのではないと思います。「自分に合った学び方なら、勉強ができる子は沢山いる!」…私はそう、心から確信しています。☆次回「後編」では、長男が生意気にも、現在の日本の教育制度について思うことを正直に語ります。お楽しみに〜!大場美鈴/著『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て法』2017年/刊/ポプラ社
2018年04月29日私はアスペルガー症候群。発達障害という言葉が浸透しているとは感じるものの、まだまだ偏見や生きづらさを実感します。人が生きていくうえでの幸せとは何なのか、その答えは出せないままです。文・七海結婚するつもりもなかったし、子どもを産むつもりもなかった発達障害は遺伝性だという説は、よくいわれます。アスペルガー症候群当事者として生まれ、当事者として生きてきました。人それぞれなのは重々承知ですが、私は生きづらさを感じてきました。コミュニケーションのうえで成り立つ人間関係はとても難しく、それを築くのが苦手だと痛感しています。比喩がわからず額面通り行動してしまったり、暗黙の了解がわからず不快な気分にさせてしまったり。努力してきたつもりだし、今も努力しているつもりなのですが、知らず知らずのうちに人間関係に亀裂を入れてしまっていたように思います。学生時代はいじめに遭った経験もありますし、集団行動になじめずクラスでも1人浮いていました。そういった生活のなか、躁鬱病などの精神疾患も併発しました。全てをアスペルガー症候群の特性のせいにするつもりはありませんが、人間関係が基盤になる社会を生きるうえでは、ハンディキャップな障害であるように感じます。また、発達障害当事者に対する風当たりは非常に強いと実感します。例えば「アスペかよ」といった罵り言葉を聞くことがあります。相手がアスペルガー症候群であろうがなかろうが、当事者を差別しているからこそ出てくる言葉なのではないかと思います。「だってアスペは空気が読めないし面倒だから」と言われそうですが、その考えが偏見や差別の根本なのだと考えています。アスペルガー症候群は遺伝性の可能性がある、と聞いたとき、私は子どもを産まないと決意しました。ある種のハンディキャップを持って生まれる可能性が高いとわかっているなら、子どもにつらい思いをさせたくないと考えたのです。だから、出産の話につながるような結婚もしないつもりでした。理解ある男性と出会って結婚。その後のプレッシャー結婚はしないという前提で交際していたことはよくあります。結婚願望がないことも、最初に伝えていました。そんななか、病気にも私の価値観にも理解がある男性に出会いました。私は彼に、「子どもを産むつもりはないし、一緒にいたいなら事実婚が良い」と伝えました。それでも彼は結婚したいと言い、結婚したときの法的メリットを挙げてくれました。話し合うなかで、結婚という道でともに生きるのも良いものだと理解し、入籍に至ったのです。しかし結婚についてあまり考えてこなかった私は、入籍後のプレッシャーに悩むようになりました。それは、両家の親から出産を望まれるということです。私のなかで結婚は、私と相手との問題でした。「結婚したら次は子どもがほしいのだろう」と、身内からも自然に思われるのだという感覚が抜けていたため、実親や義親たちが当然のようにそう考えるということを考えていなかったのです。義親はとても良い人です。主人と一緒に家にお邪魔し、よくお話します。世間話の延長線上で義母からこう言われました。「これから家族を作っていくうえで大切なことよね」と。言われた瞬間、その意味を理解できませんでした。私と主人は入籍していて、もう家族なのに。家族を作っていくって何だろう? しばらくして気づきました。暗に孫を望んでいるのだ、と。多分、それが当たり前なのだ、と。実親には学生の頃から結婚しないと宣言していました。子どもを作る気がないことも、それで伝わるだろうと思っていました。しかし、いざ結婚すると、孫を望んでいるのではないかという言動が気になるように。「子どもは作らない」と伝えましたが、心根でどう考えているのかはわかりません。子どもを作らない選択肢を取る夫婦もいるのはわかっていますが、子どもを産むことが幸せだという風潮では、当たり前のように子どもを作りたいのだろうと思われるのだと気づいたのです。義親が良い人なぶん、申しわけなさが増しました。遺伝性といわれている病気でも産む人は産む。幸せのあり方はゆっくり考えよう発達障害以外にも、遺伝性だといわれている病気はたくさんあります。その病気はハンディキャップになり得たり、生きづらさを感じたりするものかもしれません。なかには、発病したら死に至るような病気もあるでしょう。それでも、産みたい人は産んでいるのです。私は決してそれを否定しません。発達障害から話は逸れますが、私も主人も癌家系です。癌は今のところ完全な予防が難しく、治療も大変で、死亡率も決して低くはありません。癌もすべてではないですが、遺伝性のものがあるといわれているので、彼との子どもは癌に罹患する可能性も高くなるのではないかと思います。私がもし発達障害でなかったとしても、夫婦ともに癌家系であれば妊娠への思いを踏みとどまったのではないかと考えています。しかし、同じ境遇の夫婦でも、子どもを産む人はいるだろうと思います。私は ”幸せ” が何なのかを、改めて考えてみることにしました。幸せだと言うことは簡単です。不幸だと言うことも簡単です。だけど、私は自分自身の幸せをきちんと理解していないのだな、と感じています。今のところ、私は「生まれてきて良かった」と思えていません。「生まれてきて良かった」と感じられるとき、私は幸せなのだと断言できるような気がします。自分が幸せだと感じられたときに、初めて子どもを幸せにできる第一歩を踏み出せるような、そんな気がするのです。アスペルガー症候群当事者として、生きづらさを感じてきました。癌家系に生まれ、いつか私も癌になるのかもしれないな、とも思っています。だけど、それ以上に、生きていて幸せだと感じられることがあれば、きっと子どもにも、幸せを感じてほしいと期待や希望を持てるような気がしています。幸せのあり方は人それぞれです。出産への考え方も人それぞれです。私は今、自分自身の幸せのあり方と、ゆっくりと向き合っていこうと考えています。正解なんてないんだろうけど、自分と、私を大切にしてくれている人と、生まれてくるかもしれない子どものことを想って。©Highwaystarz-Photography/Gettyimages©KatarzynaBialasiewicz/Gettyimages©chameleonseye/Gettyimages
2018年04月28日発達障害のある子どもの遊び場探しは超難関!出典 : 発達障害がある子どもを自由に遊ばせる場所…、実は結構探すのが難しかったりしませんか?わが家の息子(自閉症スペクトラム障害・ADHD診断済)の場合は、社会性という意味でも、感覚という意味でも、遊び場の選択が難しかったです。社会性という意味では、順番が待てない、お友達の物を衝動的に取ってしまう、「返しなさい」と言うと癇癪を起こして泣き叫ぶ等の問題がありました。感覚という意味では、大きな音楽やまぶしい光で疲れてしまうため、デパートなどに入っているプレイスペースは苦手でした。結果どうなったのか…?私たち家族は、長いこと家に引きこもっていたのです。息子のパニックや癇癪が怖くて、どこへも出かけたくなかったのです。それだったら、家のなかでDVDを見ていたほうがずっとマシ。家にいれば、他人の冷たい目にビクビクしながら、頭を下げて逃げるように帰宅する必要もない…。息子の幼少期、私たち家族は一日中DVDを流しっぱなしにして、家の中で過ごしていたのでした。理想の遊び場を実現しちゃった!?NYのある夫婦出典 : そんな発達障害のある子どもの遊び場探しに頭を悩ます親の気持ちは、世界共通のようです。2017年の11月、ニューヨークのレイサムに、発達障害のある子ども向けのプレイルームがオープンしたことがアメリカで話題になっていました!Ring Around The Spectrum - Facebook Pageこのプレイルーム、Ring Around The Spectrum(リング・アラウンド・ザ・スペクトラム)は、発達障害のある子どもの感覚統合や感覚過敏に考慮したつくりになっています。(リンク先にプレイルームの写真と動画があります。)リング・アラウンド・ザ・スペクトラムでは、普通のプレイルームのように大きな音で音楽がかかっていたりしません。発達障害のある子どもの聴覚過敏に配慮しています。強い明るさの照明もついていません。全てのおもちゃや道具類は、作業療法士が選んでいます。感覚過敏に考慮したつくりになってるだけでなく、感覚統合を促せる遊具やクラスが設置されています。ざっと見回しただけでも、ゆらゆら揺れるスイング、バランスボール、ロッククライミング、ビーズクッションなど、発達障害児の感覚刺激に良さそうな遊び道具が沢山置かれています。さらに、少し明るさを落としてあるクールダウン用のスペースには、キラキラ光る泡のチューブや柔らかな光を放つチューブがあります。このプレイルームを開設したのは、支援が必要な二人の子どもを育てる、アッベ・ロバーツ(Abbe Roberts)とケン・ロバーツ(Ken Roberts)夫婦です。ロバーツ夫妻はある日、こんなことを思ったのだそうです。「地域にこの子たちが遊べる場所が欲しい。この子たちが非難されることなく心から楽しめる場所が欲しい。この子たちが支援の必要のない子どもたちと一緒に遊べる場所が欲しい…」そして、ロバーツ夫妻はこのリング・アラウンド・ザ・スペクトラムという場所を開設したのでした。「この子たちが非難されることなく心から楽しめる場所が欲しい」という夫妻の言葉にグッときたのは私だけではないでしょう。私も息子が幼少の頃は、いつも同じことを考えていました。「白い目で見られずに遊ばせる場所が欲しい」「発達障害のある子どもが、楽しみながらさまざまな経験を積んだり、力をつけることができる場所が欲しい」と。その想いは世界共通。そして、そんな想いを形にしたのが、このプレイルームなのです。New gym for children with Autism opens in Latham (訳:「自閉症児向けのジムがレイサムに新規オープン」)どの子どもたちも一緒に楽しく!こんな遊び場が日本にもあったら…出典 : リング・アラウンド・ザ・スペクトラムは、発達障害のある子どもに限らず、多くの子どもたちを歓迎しているそうです。遊具などは、発達障害のある子どものニーズに対応していますが、定型発達の子どもも遊ぶことができます。また、発達障害のある子どもの体幹トレーニングや衝動性コントロールなどに効果がありそうな、ヨガやマインドフルネスなどのクラスもプレイルーム内で開講しています。普通のクラスに連れて行くことが難しくても、このプレイルームでのクラスであれば、気軽に連れて行くことができそうですね。料金は一回の利用が12ドル(およそ1,300円程度)で、時間制限はありません。こんなプレイルームが日本にオープンしたら素敵だなあと思うとともに、遊び場探しに苦慮して自宅に引きこもっていた昔の辛い記憶も蘇ります。「この子たちが非難されることなく心から楽しめる場所が欲しい」。同じような想いを持って、こうしてプレイルームをつくった保護者がいる…。国境を超えて同じ想いを共有していることに、私は少しジーンときました。日本でもいつか、同じ想いを抱くご家族のために、こんな素敵なプレイルームがつくられる日がくるかもしれませんね。
2018年04月28日入学や進学など、年度切り替えのこの時期は、障害があるなしに関係なく、親がナーバスになる時期。でも、発達障害のある子を持つ親にとっては、さらに頭を悩ませる時期なのではないでしょうか?通常学級、通級、支援級、支援学校…わが子が安心して楽しく通える環境はどこなのか? 親は、就学問題に長い時間と労力を費やし、時には夫婦で揉め心をすり減らしながら、やっとの思いでわが子にベストと思える居場所を決めます。でも、そんな親の努力をすべてひっくり返すような、無理解な担任の先生に当たってしまったり…。そんな思い悩むことが多いこの時期、再びNHK総合テレビで発達障害をテーマにした特番 「超実践!発達障害 困りごととのつきあい方」 が放送がされます。番組では、寄せられた約4000通の体験談から「感覚過敏」「忘れ物・片付けが苦手」「読み書き計算が苦手」「コミュニケーション」という代表的な4つのテーマを取り上げ、発達障害の当事者はもちろん、家族やその周囲がすぐに実践できる「対処法」「周囲への助けの求め方」などをできるだけ具体的に伝えていく。さらに、「困りごと」「周囲の無理解」からどうやって人生を好転させたのか、その転機をとなった方法や出会いを描くほか、栗原類さんをはじめ一般の発達障害当事者8人をスタジオに招き、一人ひとり微妙に異なる困りごとに対する対処法をトーク。「どうすれば困りごとに対処できるか」「どうすれば人生楽しくなるか」「発達障害の人とそうでない人が共存するにはどうすればいい?」などを生放送で話し合う。■「発達障害」に対する社会の認知は高まってきたけれど…ここ数年で、発達障害に対する社会の認知は高まって、園や学校ではずいぶんと理解が進んだように思います。でも、当事者や家族の目線から見ると、依然としてサポート体制が不十分で必要な配慮が受けられなかったり、相談したはずの困り事が放置されたままだったり、個々人の対応はまちまちだったり……まだまだ難しいと感じることが多いのが現実です。今回の特番担当プロデューサーからも、「これまで発達障害については何度も放送してきましたが、無関心層へのリーチはまだまだだと感じています。しかし、そうした層に届かない限り当事者の困り事は解決しないため、繰り返しを恐れず伝えたいとも思っています」とメッセージをいただきました。これ、まさに、その通りだと思うのです(冒頭でお話した、すべてをひっくり返すような無理解な先生がいることもしかり)。でも、みなさん、日々自分の生活でいっぱいいっぱい…。当事者や家族でない限り、「大変そうだけどよくわからない」とか「障害を言い訳にしてない?」などとスルーされてしまうのも仕方ないことなのかもしれません。■自分が生きやすくなるためには「相手のことを知る」が一番の近道そんな私も、息子が自閉症スペクトラムと診断されるまでは、「大変そうだけど、結局よくわからない」の人でした。障害について理解する前は、「親子でがんばればなんとかなる!」などと、ワケのわからぬ根性論で発達障害を改善しようとしていた時期もありました。そして、息子に無理強いをさせては、それが自分に跳ね返って、ますます自分自身がイライラしてしまう、そんな悪循環に陥っていました。結局、無理解は相手だけでなく、まわりまわって自分自身をも辛い状況に追い込んでしまうのです。私は、息子を通して、「基本的に人(子ども)を変えることはできない」という当たり前のことを改めて思い知りました。相手(子ども)に自分の価値観を強いることは、トラブルと双方のストレスのもと。喜びや苦しみは現実と期待とのギャップで生まれ、相手(子ども)にできないことを求める行為は、結果、自分に対するストレスを生むことになります。■「発達障害の人のため」ではなく、「自分自身のため」にちょっと変な言い方かもしれませんが、今回の放送、「発達障害の人がより生きやすくなるために」というような道徳的な視点よりは、むしろ、「自分自身がより生きやすくなるために」という自分視点で見た方が、より幅広い方々に響くのかもしれません。発達障害は、今や40人学級で2~3人の割合でいると言われているほど。子どものクラスメイト、親戚、会社、ママ友仲間にも、障害とまではいかなくても、グレーな方を含めれば「もしかして…?」と思われる方も少なくないでしょう。もはや避けては通れない問題です。「なんであの人は、いつもあんな嫌な言い方をするんだろう?」とか「どうしていくら説明しても、あの人には話が通じないんだろう?」など、あなたが苦手に思っている人との、上手な付き合い方のヒントが得られるかもしれません。また、番組で語られる、コミュニケーションが苦手な方や生きにくさを感じている方が、自身の人生を好転させるために編み出したノウハウには、私たちの生き方にも参考になるところがあるのではないでしょうか?今回、私は、息子のためではなく、自分のためという視点で、番組を見たいと思っています。文:まちとこ出版社N【NHK 発達障害プロジェクト】超実践! 発達障害 困りごととのつきあい方放送日時:2018年4月30日(月・祝)午前8:15~9:59 NHK総合テレビMC:中山秀征さん、近江友里恵アナウンサーゲスト:栗原類さん(「あさイチ」で自分が発達障害であることを告白)ほか、発達障害のご本人(一般の方)8人と専門家
2018年04月28日発達障害のある子どもや家族の困りごとを解消するためにUpload By 発達ナビ編集部「LITALICO発達ナビ」では、サイトがオープンしてからの2年間で、発達障害に関するコラムの発信や、施設情報の提供などを通して、発達障害のあるお子さんや、保護者の方々の生活を取り巻く困難の解消に取り組んできました。一方で、LITALICO発達ナビの力だけでは解消出来ない困難が多いことも事実です。そこで、発達障害にまつわるより多くの困りごとを解消していくため、さまざまな分野の企業とのコラボ企画・協業を進めていこうとしています。その一環として、2018年4月19日(木)に「LITALICO発達ナビ ミートアップvol.1」を実施。ゲストスピーカーによる講演や、さまざまな企業や団体で活躍されている方とLITALICOのスタッフでのディスカッションなどを行いました。LITALICO発達ナビ ミートアップの様子をレポートUpload By 発達ナビ編集部今回のミートアップには、起業や団体などで活躍されている方27名が参加してくださいました。発達障害について、どのような特性や困りごとがあるかなどについて、学びたいという参加者も多かったため、まずゲストによる講演や、ゲストと編集長による対談で、当事者や保護者の思い、発達障害のある子どもや家族をめぐる状況などについて理解を深めていきました。白砂さんは、企業のWEBサイトのコンサルタントをされています。また、発達障害のあるお子さんを育てています。今回の講演では、プロの視点と保護者の視点から、保護者としてどのような不安や悩みを抱いたのか、どのように「LITALICO発達ナビ」に出会ったのか、そしてLITALICOワンダーに通うようになるまで、実体験をもとにお話いただきました。お子さんが発達障害だと気づかないまま、悩みながら子育てをする中で、友人に「発達障害なんじゃない?ADHDがあるのでは?」と指摘されたことがきっかけでネット検索を行い、LITALICO発達ナビの記事にたどり着いたのが、最初の出会いだったそうです。それまでは、発達障害やADHDという言葉も知らなかったそうです。世の中にはまだまだ発達障害についての情報が少なく、知識と出会うことができないで悩みを抱えている保護者も多いので「障害名ではなく、特性による行動についての記事が増えることで、より情報に接触できる人が増えるのではないか」という意見もいただきました。参考:5分で理解!オウンドメディアとは? ~事例とともに分かりやすく説明します~参考:株式会社Faber Company「発達障害のある子どもを育てるご家庭には、さまざま生活課題があります。その解決を、企業タイアップで目指そうと、いくつかの取り組みがスタートしました」と、鈴木編集長から今までに行った企画について紹介がありました。■非日常の状況でパニックを起こしやすいお子さんが、安心して空の旅を楽しめるサービス紹介の例発達が気になる子どもが安心して飛行機に乗るには?JALの子ども向けサービス活用法を徹底紹介!■服薬をしているお子さんが多く、服薬管理が大変だという声から、どのようなサービスがあるとよいかについてモニターによる意見を募集した例発達障害の薬物療法の疑問・悩みに応える情報提供を!電子お薬手帳harmo(ハルモ)×発達ナビ共同企画■多様性を踏まえたマネジメントができるよう、社員向けに研修を行った例ミュゼプラチナム×発達ナビ 発達障害への理解を深める勉強会を開催!上記以外のタイアップ企画についても紹介がありました。Upload By 発達ナビ編集部ゲストの白砂さんと鈴木編集長による対談では、どのような支援やサービスが必要かについて、会場からの質問なども受けながら話が進みました。鈴木編集長(以下、鈴木)LITALICO発達ナビと出会って、白砂さんの中で変化はありましたか?白砂さん原因が分かってすっきりしましたね。原因が分かれば、どう対応すればいいのかなども考えることができますよね。2歳前後の一番大変な頃に、どのように対応したらいいのかという情報に出会えていたらもっと楽だったろうなと思います。電車に乗るのも外食するのも無理でしたから…。鈴木現在お子さんは小学校に通っていらっしゃいますが、お出かけや外食など、社会の中で困りごとはありますか?白砂さん5歳くらいからはだいぶ落ち着いてきたので、外出できるようになってきました。ゲームが好きなので、ゲームさえあればなんとかなります。鈴木夢中になれるものが見つかったことが、困りごとの解消に役立ったということですね。白砂さんはい。夢中になれて、かつ脳によい刺激があるゲームがあるといいなと思います。息子は「LITALICOワンダー」(ロボット教室)に通っていますが、ワンダーに通うことで、得意を伸ばせる環境を整えられていると思います。鈴木では逆に、どのようなサービスが足りていないと感じていますか?白砂さんサービスというか…学校教育ですかね。息子は通常学級に通っていますが、先生1人に生徒35人で、せかせかしている息子は授業中ヒマだと言うんです。通常学級でも、子どもそれぞれの進度に合った教育ができるようになるといいなと。ーここで、会場からの質問を受けました。会場発達障害についてよく知らないという一般の人も多いと思います。どのような取り組みをすれば、発達障害についての認知が進むと思いますか。認知が進めば、小学校でも発達障害のある子どもへの接し方への理解が深まると考えられるので…。白砂さんすでにLITALICO発達ナビがさまざまな情報を発信してくれているとは思いますが…(笑)例えば、学校で配布される「コミュニケーション教室開催のお知らせ」には、発達障害という言葉がまったく載っていません。「苦手を克服しよう」という言葉が使われています。これはとても気になっていて、発達障害と言うのは隠すべきことなのかと疑問を感じています。学校でも、テレビなどのマスコミでも、きちんと取り上げたり、こうした言葉はタブーではないと、ポジティブな考えにならないと認知が広がらないのではないかと思います。鈴木発達障害がある子の特性がずっと一緒かというと、違うんですよね。それぞれのペースで発達するし、周囲の環境によっても変わってきます。かかわり方、学びやすさでも子どもは変わります。学校はもちろん、レストランや空港など、世の中のさまざまなところで、それぞれの子どもの立場に立つということが広まって欲しいと考えています。外食で癇癪を起こすにしても、子どもなりの理由がある。癇癪を起こすという行動の表面だけを見るのではなく、その背景について社会全体が理解を深める必要があるんですね。こうした、社会全体での理解の促進は、一人だけの力では難しいかもしれませんが、一人ひとりが、そしてさまざまな企業が認識し、行動することで変わっていくと、LITALICO発達ナビは考えています。そこで次に、各テーブルごとにディスカッションを行いました。あったらいいサービスや商品って?グループディスカッションで意見交換Upload By 発達ナビ編集部LITALICO発達ナビと企業とのタイアップで、発達障害のある子どものいる家庭の生活課題を解決する取り組み例を紹介した後、あったらいいサービスや商品についてディスカッションをしました。それぞれが働く企業のリソースを使ってできそうなことを出し合うグループも。最後に、各テーブルで話し合った内容について全体に共有をしました。その一部を紹介します。■発達障害への対応について親和性がある企業が単独で行動するだけでなく、親和性がある企業同士がつながって、「発達障害のあるお客さまに対して、積極的な姿勢を取る」と、社会に対してアナウンスしていくことが大切■障害のある・なしもスペクトラムで、明確な境界はない。もっとボーダレスな世の中になればいい■体幹を鍛えられる自転車を販売している。自転車の乗り方講座がペアレントトレーニングに通じる。親子で、スモールステップで取り組むことで、保護者は適切なサポートの仕方を学べ、子どもは自己肯定感を育めそう■AIやチャットボットなどのテクノロジーを活用し、子どもが得意なことを伸ばすサポートができそう■子どもの取扱説明書的なアプリがあると特性を気軽にシェアできそう■保護者自身の安全基地を作りたい。人と人をつなぐプラットフォームがあるといいさまざまな業界の参加者による提案は、どれもワクワクするものばかり。LITALICO発達ナビと企業とのタイアップで実現できることは、すぐにスタートしていきたいと感じました。LITALICO発達ナビ ミートアップは、毎月開催予定!Upload By 発達ナビ編集部こうしたアイディアを実際に社会の中に生み出し、もっと生きやすい世界にするために、LITALICO発達ナビは企業や団体の皆さんとつながり、タイアップして新しいサービスや商品を作り出していきたいと考えています。また、ミートアップなどを通じてタイアップが実現した企画についても、LITALICO発達ナビ上で発信をしていきます。LITALICO発達 ナビミートアップは、これから毎月開催の予定です。それぞれの企業や団体が持っているサービスや商品の力で、社会をもっと生きやすいものにしたい!熱意のある人たちとディスカッションをしたい!という方は、ぜひご参加ください!来月のミートアップは、5月22日(火)に開催します!5月のゲストは、ウェブマガジンgreenz.jpのビジネスアドバイサーを務める小野裕之さんです。小野さんには、「ソーシャルな課題に対して企業とメディアにできること」などについて、実際にご自身がプロデュースされた事例紹介を交えながら語っていただきます。■小野裕之(ビジネスプロデューサー)Upload By 発達ナビ編集部岡山県生まれ。中央大学総合政策学部を卒業後、ベンチャー企業に就職。その後、ソーシャルデザインをテーマにしたウェブマガジン「greenz.jp」を運営するNPO法人グリーンズの経営を6年務め、2018年、同法人のソーシャルデザインやまちづくりに関わる事業開発・再生のプロデュース機能を事業会社として分社化、代表に就任。メディア経営で培ったネットワークを活かし、社会的な事業づくりやスタートアップの育成を行う。greenz.jpビジネスアドバイザー。ジュエリーブランドSIRI SIRI共同代表。おむすびスタンドANDON共同代表。【日時】5月22日(火) 19:00-21:00【場所】株式会社LITALICO東京本社〒153-0051東京都目黒区上目黒2-1-1中目黒GTタワー16F【交通案内】東京メトロ日比谷線・東急東横線「中目黒駅」東口より徒歩1分【対象】企業にお勤めの方で、発達障害のあるお子さまや保護者さまの抱える困りごとの解決に関心をお持ちの方、発達ナビとのコラボレーション企画を希望される方【参加費】2,000円※発達ナビに会員登録されている方は1,500円【プログラム】①発達ナビのこれまでの取り組みと今後の展望紹介②ゲスト講演: NPO法人グリーンズ小野裕之さま③ゲストと編集長による対談: 発達障害の困難さに対して企業にできることは?④発達ナビとのコラボ企画を考えるワークショップ⑤参加者同士の交流・懇親会(ドリンク・軽食あり)参加を希望される方は、以下のフォームよりお申込みください。多くの方のご参加をお待ちしております!
2018年04月27日特別番組「超実践!発達障害 困りごととのつきあい方」の内容は?Upload By 発達ナビニュース2018年4月30日(月)8:15からNHK総合テレビで特別番組「超実践!発達障害困りごととのつきあい方」が生放送されます。NHKが昨年5月から「あさイチ」など10番組で展開している「発達障害プロジェクト」の一環です。特設ホームページでは、「感覚が過敏」「片付けが極端に苦手」「感情のコントロールができない」といった発達障害による困りごとの解決策を募集してきました。すると、当事者や家族などから4000通を超える体験談が寄せられたそうです!今回は、その中から多くの人が悩んでいた「感覚過敏」「片付けが苦手」「読み書き計算が苦手」「コミュニケーション」の4つのテーマを中心にピックアップ。当事者をはじめ、家族や周りの人がすぐに取り入れられる具体的な「対処法」「周囲への助けの求め方」などが紹介されます!また、「困りごと」「周囲の無理解」をどう好転させたのか、実際に経験した転機となった方法や出会いも取り上げます。発達障害プロジェクト「対処法どうしてる?」出演者がスタジオで生トーク!!視聴者の意見も募集Upload By 発達ナビニュースステジオには、モデル・俳優の栗原類さんのほか、一般の発達障害当事者の方8人と専門医などをゲストに招いて、一人ひとり異なる「困りごと」への対処法をトークします。さらに、生放送中にも視聴者からのメールやFAXを募集。リアルタイムで「どうすれば困りごとを解決できるか」「どうすれば人生は楽しくなるか」などを話し合います。事前にホームページでも体験談や意見を募集しています。あなたも「こんな工夫をしてみたらうまくできた」「周りの人にこうしてもらえたらもっと助かる」といった声を送って番組に参加してみましょう。Upload By 発達ナビニュース番組にたくさんの意見が集まることで、より内容の濃いトークが聞けそうですね。これまで、困りごとを誰にも相談できずにいた人も、番組から改善の糸口が見つかるかもしれません。当事者の方だけでなく、身近に困りごとがありそうな人に心当たりがある人も、参考にしてみませんか?【番組名】NHK総合テレビ特別番組「超実践!発達障害困りごととのつきあい方」【放送日時】2018年4月30日(月)8:15〜9:59【出演者】MC:中山秀征、近江友里恵、ゲスト:栗原類ほか、一般の発達障害の当事者8人、専門家「困りごとのトリセツ(取扱説明書)」も一読を!Upload By 発達ナビニュースこのプロジェクトでは「困りごとのトリセツ」と題して、発達障害のある人が感じやすい「困りごと」を整理・解説し、当事者や周囲の人の体験談、要望を集めています。毎週金曜日に情報が更新され、多くの意見が掲載されています。30日の特別番組の予習・復習として目を通してみてはどうでしょう。また、投稿に参加することで、同じ悩みを持つ人の困りごとを軽くすることもできるかもしれません。
2018年04月25日赤ちゃんと目が合わない…出典 : 赤ちゃんは人の目を好んで見つめると言われています。赤ちゃんを抱っこしている時や授乳をしている時、パパ・ママが赤ちゃんを見つめていると、赤ちゃんもパパ・ママを見つめ返してくれる時があります。ですが、赤ちゃんと目が合わない、目をそらされてしまうことに悩んでいるパパ・ママもいるといいます。赤ちゃんと目が合わないと、赤ちゃんとのコミュニケーションが取れている気がしなくて辛いと感じることも少なくありません。また、目の病気があるのかも?目が合わないことが特徴の一つと言われている、自閉症スペクトラム障害かも?など不安に思う方も多いのではないでしょうか。以下から、赤ちゃんと目が合わない原因や赤ちゃんの視力発達のメカニズム、目が合わないことと疾患や自閉症スペクトラム障害との関係性について詳しく説明していきます。赤ちゃんと目が合わないのはなぜ?出典 : 赤ちゃんと目が合わない時、その原因としてどんなことが考えられるのでしょうか。育児本やウェブサイトで調べてみると、ついつい「目の疾患」「自閉症スペクトラム障害」という言葉が目についてしまうかもしれません。でも、赤ちゃんと目が合わない原因の大半は、そこまで心配しなくてよいものだったり、成長の過程であったりするものです。例えば、次のような原因があります。まずはそれらに当てはまる様子はないか、赤ちゃんの様子をよく見てみましょう。赤ちゃんにとって身の回りの物はすべて新鮮であり、興味や関心の対象です。大好きなパパ・ママがそばであやしてくれていても、他に何か気になるものを見つけると、そちらへ興味の対象が移ってしまうこともあります。生まれたばかりの赤ちゃんとはいえ、一人ひとり個性があり、性格も異なります。じっと凝視されるのが少し苦手な赤ちゃん、好奇心が強く、目新しいものにきょろきょろと視線を移す赤ちゃんなどさまざまです。育児書など子育てに関する情報から「赤ちゃんは一定の月齢になるとパパ・ママと目を合わせるようになるはずだ」などと思い込んでしまうと、自分の赤ちゃんにそのような様子が見られない場合、途端に不安になってしまいがちです。赤ちゃん自身の育ちのペースや個性を受け入れ、見守っていくという姿勢が大切です。水野 克已/著『笑顔で子育てあんしん赤ちゃんナビ―6か月(はじめ)よければすべてよし! 』2013年/メディカ出版公益財団法人母子衛生研究会赤ちゃん&子育てインフォ赤ちゃんは自分のことをあやしてくれる人の表情や声にとても敏感です。生まれつき視覚や聴覚からの刺激に敏感な赤ちゃんもいます。急に近づいたり、顔を近づけたり、大きな声で話しかけると顔を背けてしまうかもしれません。目が合わせにくいからと焦って目を合わせようとすると、赤ちゃんもその不安やストレスを敏感に感じ取るかもしれません。赤ちゃんをあやす時、自分がどのような表情をしているか確認することが、赤ちゃんと目が合わない原因を探り当てるヒントになるかもしれません。赤ちゃんと目が合わない時、ここまでで紹介したことが原因となっていることが多数ですが、もしかしたら次のようなことが原因である可能性もあります。目の病気の発症や視力の異常が見られる赤ちゃんは、視線が定まらなかったりきょろきょろしたりする様子が多く見られます。赤ちゃんによく現れる目に関する異常には、斜視・眼振・弱視などが挙げられます。これらの詳しい症状や治療方法に関しては「目が合わない赤ちゃんと目の病気の関係って?」の章で解説します。発達障害の一つである自閉症スペクトラム障害には、「人とのコミュニケーションが苦手・困難」「こだわりの強さ・感覚のかたよりがある」という特徴があります。自閉症スペクトラム障害の症状には視線が合いにくいことも挙げられていることから、目が合わない赤ちゃんに対して自閉症スペクトラム障害かも?と不安になるパパ・ママもいるでしょう。赤ちゃんと目が合わないということだけで自閉症スペクトラム障害であると診断されることはなく、さまざまな視点からの検査・観察から総合的に判断されます。ですが、自閉症スペクトラム障害と診断がつく年齢(3~5歳頃が多いとされています)の子どもが赤ちゃんの時、「目が合わなかったな…」と感じるパパ・ママは少なくないようです。目が合わない赤ちゃんと自閉症スペクトラム障害の関係性に関して詳しく知りたい方は、「目が合わない赤ちゃんと自閉症スペクトラム障害との関係って?」の章をご覧ください。赤ちゃんの視力発達のメカニズム出典 : 赤ちゃんは生まれた直後からものがはっきり見えているわけではありません。生まれてから1歳までの間、どのように視力が発達していくのかについて説明します。生まれてすぐの赤ちゃんの視力は、明るいか暗いかが分かる程度と言われています。生後1ヶ月ごろで視力は0.01~0.03くらいで、人や物の輪郭がぼんやり捉えられたり、はっきりとした色は認識できたりします。生後2ヶ月では、お母さん・おもちゃなどの動きを目で追う「追視」が見られるようになります。生後3ヶ月過ぎから生後6ヶ月頃は急激に視力発達する時期です。生後3ヶ月では人や物をじっと見つめることが増えたり、瞬きが上手にできるようになったりします。生後6ヶ月時点での平均的な視力は約0.1まで上昇します。生後6ヶ月になると、見えないところから声をかけるとその方向に目を向けるなど、視覚と聴覚が連動するようになってきます。また、追視も上下左右と細かくできたり、動くものに対しても目で追いかけたりできるようになります。小児の遠視 -弱視、斜視との関連-|沖縄県医師会医師会報生後7ヶ月を過ぎていくと、奥行や距離感も見て捉えられるようになっていきます。1歳にもなると視力は0.2ほどまで伸び、より細かいものも捉えることが可能になります。それゆえに探索活動が活発になり、行動の幅も広がっていきます。立体視の発達、可塑性、個人差解説-空間視の発達山口 真美乳幼児健康診査の手引改訂第5版新潟県福祉保健部新潟県医師会生後1ヶ月から1歳6ヶ月頃にかけては、特に視覚の発達が盛んな時期とされています。視力の発達自体は6歳から8歳くらいまでに成人と同じレベルに達します。視力が発達するこの時期に、両目で人や物をしっかりと見ているかどうかはもちろん、何か異変に気づいたらすぐに対応することが重要です。厚生労働省母子手帳省令様式厚生労働省母子手帳任意様式目が合わない赤ちゃんと目の病気の関係って?出典 : 先ほど、赤ちゃんと目が合わない場合、目の病気や視力の異常の可能性もあると説明しました。赤ちゃんの目や視力の問題について、詳しく解説します。◇斜視斜視とは、片目は正面を向いていても、もう片方の目が内側・外側・上側・下側など違う方向を見てしまっている状態を指します。斜視は子どもの約2%に見られる小児眼科の代表的な病気で、眼鏡などの矯正器具で治るものもあれば、手術による治療が必要なものもあります。片方だけ目が合うのに、もう片方は違う方向を向いていることが多く見られると、斜視の可能性があります。斜視のまま放っておいてしまうと、違う方向を向いている目の視力が育たないため、斜視かも?と思ったら早めに小児眼科を受診することが大切です。日本眼科学会子供の斜視公益財団法人日本眼科医会子どもの弱視・斜視-6.斜視の原因◇眼振(がんしん)眼振とは、知らず知らずのうちに目が動いてしまう疾患です。眼球の動きの特徴としては、動き方に規則性がある・周期性がある・本人が意図しているわけではないという3つがあります。原因として先天的な眼振をはじめ、脳や神経の異常で起こるものなど後天的なものがあります。赤ちゃんが注視・追視する様子が見られず、きょろきょろしていたり、不自然に頭を傾けていたりしていたら、注意する必要があります。◇弱視弱視とは、先ほど紹介した視力の発達する期間に、目をうまく使えなかったために視力が悪い状態のまま発達が止まってしまうことを言います。強い遠視や乱視が両目に見られる場合や、片目だけに遠視や乱視、斜視があるために視力が発達しない場合に弱視は起こりやすいと言われています。弱視は早期に適切な治療や矯正(眼鏡着用など)をすることによって、治る可能性は高まります。頻繁に目を細めている、目つきに違和感があるなどわかりやすいサインが見られることもありますが、特に目立った症状が見られないこともあります。乳幼児健診の際に気になる点がないか専門家に診てもらうとよいでしょう。3歳になったら受けられる3歳児眼科検診を受診するのもおすすめです。社団法人日本眼科医会3歳児眼科健診のすすめ紹介したような目に関する病気を赤ちゃんが発症している場合、次のような特徴が見られることがあります。・瞳が白や黄緑色に見えることがある・目が揺れることがある・追視が見られない・片目だけ上下左右に寄っていることがある・片目を順番にふさいでみると、一方の目だけ嫌がったり、顔を背けたりするなど目の健康を調べるチェックシートパパ・ママは赤ちゃんと目が合わないな?と思ったら、それまでよりいっそう赤ちゃんの目や目の動きを観察し、何か異常がないか見てみることが大切です。目が合わない赤ちゃんと自閉症スペクトラム障害との関係って?出典 : この章では、目が合わない赤ちゃんと自閉症スペクトラム障害がどのような関係にあるのかについて詳しく紹介します。自閉症スペクトラム障害は、主に「人とのコミュニケーションが苦手・困難」「こだわりの強さ・感覚のかたよりがある」という特性があります。診断基準によっては自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害などの診断名で呼ばれている場合もあります。自閉症スペクトラム障害の診断がつくのはだいたい3~5歳と言われています。このくらいの年齢になると、以下のような自閉症スペクトラム障害の特徴が目立ちやすくなります。◇周囲にあまり興味を持たない傾向がある例えば、生活の中で次のような様子が見られます。・視線を合わせようとしない・他の子どもに興味をもたない・名前を呼んでも振り返らない・指さしをして興味を伝えることをしないなど◇コミュニケーションを取るのが困難以下のように、会話や人と関わることが難しいと感じていることがあります。・言葉の遅れや、オウム返しが見られる(知的障害を伴う場合)・一方的に言いたいことだけを言ってしまう・質問に対してうまく答えられない・ごっこ遊びなど、集団での遊びにあまり興味を示さないなど◇強いこだわりを持つ日常生活での強いこだわりとは、例えばこのようなことを指します。・興味を持つことに対して、同じ質問を何度もする・ものごとの手順が変わると混乱してしまう・視覚・触覚・聴覚・味覚・嗅覚に対して過敏、鈍麻があるなど自閉症スペクトラム障害の診断がつく年齢では、このような特徴がいくつか見られるようになります。注意しなければならないのは、単に「赤ちゃんと目が合わない」ということだけで自閉症スペクトラム障害ということではないということです。自閉症スペクトラム障害の診断が出ている子どものパパ・ママが、その子どもが赤ちゃんだった時を振り返ってみて「そういえばあまり目が合わなかったな…」と思い起こすことはあるようです。ですが、自閉症スペクトラム障害はそれだけで判断されるものではなく、子どもの気になる様子と診断基準を照らし合わせ、総合的に判断されます。また、生後すぐに自閉症スペクトラム障害をはじめ発達障害の診断がつくことはありません。パパ・ママが自閉症スペクトラム障害の診断を求めても、赤ちゃんに対しては経過観察のような措置が多く取られることに、心配や不安の気持ちを抱くのも無理はありません。目が合わない赤ちゃんに対しては、「それだけで自閉症スペクトラム障害であるとは言えない」「赤ちゃんの時点で自閉症スペクトラム障害であると明確に診断できる場合は少ない」という2点をまず押さえましょう。そのうえで、それでも不安が残る場合や、目が合わないということに加えて他にも気になる様子が見られる場合は、かかりつけの小児科や近くの保健センター、子育て支援センターなどでその旨を詳しく相談することをおすすめします。一度専門家に赤ちゃんがどのような様子か話してみるだけでも不安や困りごとが解消されることがありますし、自閉症スペクトラム障害に関する、より詳しい情報も得られることもあります。赤ちゃんと目が合わなくて不安…そんな時に考えたいこと出典 : 赤ちゃんと目が合わないと、「赤ちゃんは自分のことをパパ・ママだとわかっているのだろうか」「赤ちゃんに好かれてないのだろうか」「発達が遅れているのだろうか」「病気や発達障害の予兆なのだろうか」など、さまざまな不安を感じることもあると思います。そんな時、パパ・ママが心がけたいことや考えたいことをご紹介します。生まれたばかりの赤ちゃんは、授乳などからどうしてもママの方が赤ちゃんに関わることが多くなると思います。そのため、赤ちゃんと目が合わないという不安を、つい一人で抱え込んでしまうことがあります。子育てに関する不安を感じた時こそ、同じ子どもの親であるパパにも悩みや不安を共有・相談するようにしましょう。またパパは、「気にしすぎだよ」「大丈夫だよ」と安易に言うのではなく、ママの子育てに関する不安感や心細さに寄り添ってあげることが大切です。また、子育ての先輩である自分の母親に相談するのも1つの手段と言えます。大切なのは、子育ての不安を一人で抱え込みすぎないことです。先ほど子育ての先輩である自分の母親に相談してみることをアドバイスの一つとして挙げましたが、そうはいっても子育てへの価値観が違ったり、母親の時代の子育て方針を押しつけられたりした、という経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。やはり知りたいのはリアルな子育て情報や、現時点の医学などからわかっている子どもの発達に関する情報ですよね。そのような情報を知るには、自分の赤ちゃんと同じくらいの月齢・年齢の赤ちゃんを育てているパパ・ママと交流することが有効かもしれません。地域の子育て支援センターは、赤ちゃんだけでなくパパ・ママの交流も目的とされています。そのような施設でさまざまなパパ・ママと交流し、それぞれの子育て体験談を聞くことで「子育てに悩んでいるのは私だけじゃない」「先輩パパ・ママはこのように悩みを乗り越えたんだ」など、参考になる意見やアドバイスが得られることもあります。また、子育てや子どもの発達に関して不安に感じた際に気軽に相談できる専門家を1人でも知っておくと心強いです。先ほど紹介した地域の子育て支援センターをはじめ、保健センター、またかかりつけの小児科医など、子育てや子どもの発達に関して相談することができる機関や専門家はたくさんあります。きちんとした専門家からの指導を受けることで、より安心感を得ることができたり、不安が軽減されたりするでしょう。その他に、子育てに関する電話相談サービスを行っている自治体もあるので、直接対面で相談することに抵抗がある方は、電話にて専門家に相談してみてはいかがでしょうか。東京都福祉保健局子育て支援情報一覧とうきょう子育てスイッチ-子育てに関する電話相談まとめ出典 : 赤ちゃんと目が合わない場合、赤ちゃんならではの周囲への興味や性格、あやしているパパ・ママの表情など、さまざまな要因が考えられます。また、目が合わないということだけで判断はできないものの、目の病気や自閉症スペクトラム障害であるという可能性もあります。赤ちゃんと目が合わなくて不安、と感じているということは、それだけパパ・ママが赤ちゃんのことを細かく観察し、見守ることができている証拠です。パパ・ママは日々子どもと丁寧に向き合っていることへの自信をもちつつ、子育てに関する悩みや不安を相談できる場を設けるなどして、ママ1人で抱え込んだり、パパ・ママ間だけで不安を溜めたりすることがないようにしましょう。
2018年04月24日学童で出会った、アスペルガー症候群のあるDくん出典 : 保育や教育については素人で経験もない私が、学童クラブ(以下、学童)のアルバイトに採用され配属されたのは、学校の校舎内に併設された学童でした。アスペルガー症候群があるDくんも、学童を利用していました。Dくんは、学校では特別支援学級に在籍していましたが、教室を飛び出し、特別支援学級の先生と2人で過ごすことが多くなっていたようです。ですが、その先生とのコミュニケーションもうまくいっておらず、だんだん学校に行きたがらなくなっていました。学校や友達のことは好きだったので、学童には毎日のように通ってきていました。でも、自分をコントロールできなくて友達や先生に怒られることや、本当は楽しく過ごしたいのに思うとおりにならないことに、悲しみや戸惑い、悔しさが混じったような何ともいえない表情を見せることがよくあったのを覚えています。Dくんにまつわるトラブルにはこんなことがありました。・遊んでいても気に入らないことがあれば癇癪を起こす・掃除などの当番を嫌がり、ほかの子に怒られる・終りの会など集まらなければいけないときに脱走する・人に注意されると殴ったり噛んだりと暴力を振るうほかの学童にヘルプに入ることもあったのですが、「発達障害があるので、細やかに見守ってほしい」といわれる子どもの中には、Dくんと同じようなトラブルのある子もいました。Dくんがトラブルを起こして、ベテランの先生に「ちゃんと対処してください」といわれてもどうしていいのか見当もつかなかった私。なんとかしたいと思い、発達障害についての研修を受けに行きました。でも、話を聞いてもピンときませんでした。自分に発達障害があると知ってからは、「自分のこと」として本を読むためか、さまざまな知識をどんどん吸収できるようになりました。ですが、自分が当事者であることさえ気づいていなかった私には、目に見えない「人の気持ち」を理解するのはとても難しいことだったのです。結局、懸命にDくんに関わろうとしたものの、彼の神経を逆なでしてばかり。今から思えばまったく支援になっておらず申し訳ないことをしたと思っています。そのような私ですが、今、発達障害当事者として気づけたことや、学童で働いていた経験をもとに考えた対処法を、少しでも多くの支援者や保護者の皆さんに伝えたいと思っています。そこで、次にどのような工夫があれば、発達障害のある子ども達にとって学童がより過ごしやすい場所になるかについて紹介していきたいと思います。発達障害のある子が、学童でストレスなく過ごすための「4つの工夫」出典 : 地域によって学童の上限人数やシステムには違いがありますが、比較的共通した問題と、それに対してできる工夫について紹介したいと思います。学童によっては100人近く在籍していて、教室も2つに分かれているところもあります。狭い教室に60人近くがひしめき合うように過ごしている場合もあるのです。騒がしい環境が苦手で騒音で疲れてしまう発達障害の子どもにとって、情緒も不安定になりやすい環境といえます。利用者数や場所を変えることはできませんが、次に紹介するような工夫をすることで、疲れやすい子どもにとって少しでも過ごしやすくなるかもしれません。■一番子どもの多い15時半過ぎ(6時間目が終わって子どもたちが全員帰ってくる時間)の様子をのぞいてみることをおすすめします。あまりに騒がしいなら「イヤーマフ」などの使用を学童の指導員に相談されてみるのもいいと思います。Dくんも、騒音が原因のストレスが大きかったのではないかと思います。■どのお子さんでも人数が多いと集中して宿題に取り組むのは難しいです。段ボールを貼り合わせて簡易的なついたてをつくると、周りからの刺激を少し減らすことができます。試してみるといいかもしれません。■大人数の中で過ごすことに疲れた子のためのクールダウンスペースも必要かもしれません。家具の配置を工夫してつくることもできると思います。つい立てよりは、家具で仕切れたほうが、ほかの子どもが入ってくることも少ないのでおすすめです。こういう話をできるくらいの知識が、その頃の学童のスタッフにあれば、Dくんももう少し居心地よく過ごせたかもしれないと思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになります。学校の時間割は日によって何時間目に終わるか違います。もちろん学年ごとにも違い、1、2年生だけで静かに過ごせる時間がある日、みんな一斉に6時間目が終わって帰ってくる日など、スケジュールは曜日ごとに異なります。それに加えて懇談期間や家庭訪問期間など特別な時間割もあります。さらに夏休み、冬休み、春休みはスケジュールが大きく変わります。見通しが立たないことを嫌う発達障害の子どもたちにはつらい環境とも言えます。「どうして今日はこんなに遊ぶ時間が少ないの?」と納得できないかもしれません。そこで、考えられる工夫はスケジュールの見える化です。■学年ごとに時間入りの絵カードをつくり、教室の見えやすいところに貼っておくと、見通しがつきやすくなります。発達障害のある子どもだけでなく、定型発達の子どもも落ち着くのではないでしょうか。アスペルガー症候群のある私の娘は、当番の仕事の手順が分からないことに困っていました。分からないから、うまくできずに怒られると、当番自体が嫌になるのです。学童でも、こうした困難に対して工夫することができます。■当番の仕事のルールはできるだけシンプルにし例外をなくすこと、やることを分かりやすくリストにするのです。リストは、親がつくってもいいと思います。■ついうっかり当番を忘れてしまう、楽しいことに気を取られてしまうと場合は、指導員の声がけや、できたときに褒めることが大切です。■当番の仕事の必要性を分かっていない可能性もあるので「どうしてその当番が必要なのか」理屈で教えるのも、効果があるかもしれません。Dくんの場合、特性や支援の仕方などをまとめた、サポートブックがあれば学童のスタッフも支援しやすかったと思います。情報はあればあるほど助かりますし、サポートブックのようにまとめていればスタッフ間で情報を共有しやすいからです。これから学童を利用する・利用している方には、サポートブックの活用をおすすめしたいです。「困った子は、困っている子」だから…出典 : 正直に言うと、以前の私は、Dくんのことを「困った子だなぁ」と思ってしまうことがありました。ですが、一番困っていて戸惑っていたのはDくんだったんだと今では思います。「困った子は、困っている子」という言葉があります。その子の行動の背景に何があるのか、どう手助けすればその子が楽になるのか、一人ひとりの子どもに対して必要なサポートができれば、きっと学童は障害のあるなしに関わらず、どの子ものびのびと過ごせるインクルーシブな場になるのではないでしょうか。放課後の子どもたちの居場所が、すべての子どもたちに保障されることを祈っています。
2018年04月22日発達障害の特性って?「社交辞令や、本音と建て前について考える」がテーマの当事者会へUpload By かなしろにゃんこ。息子に発達障害があると分かったころの私は、発達障害とはどういうものなのかもよく理解できていませんでした。息子の特性についても、すべてを分かってはいなかったと思います。他の人がどんなことで悩んでいたり困っているのかも知らなかった私にとって、当事者会は障害やその特性についていろいろ学べる場所だったのです。ある当事者会に参加したとき「社交辞令や、本音と建前について考える」というテーマで話し合う日でした。「こんなツライことがあったんです」と報告するムードではなく、どちらかというと失敗から気づいたことを伝え合っていました。そこで教えてもらったことは…社交辞令を、額面通りに受け取ってしまうUpload By かなしろにゃんこ。「いつでも本音で生きていたいから嘘がキライ、だから一般社会で社交辞令を使う意味が理解できない」という人が何人かいました。「社交辞令が分からない場面って?」具体的なエピソードで学べたUpload By かなしろにゃんこ。例えば…・引っ越しの挨拶で「お近くにお寄りの節はぜひ、わが家にお立ち寄りください」と言われれば「近くに行ったときには、訪問した方がいいのではないか?」と考えてしまう。・上司や親戚の家にお邪魔して「ゆっくりしていって」と言われたので、何日も泊めてもらった。「そんなに親しくないのに、なぜ誘ってくるんだだろう?」と考えてしまったり、「言われたようにしないと失礼なのでは?」と考えてしまったりするというのです。それが”定番の挨拶”であると知らないうちは、”額面通り”に受け取ってしまいアレコレ悩んでしまうのだと教えてもらいました。相手が気遣いから嘘を言っても気がつけない。相手の顔色を見て”本当は喜んでいるのか?それとも嫌がっているのか”を読み解くことは一番苦手なことだと言います。だから、「本当のことを言ってくれないと気がつけなくて失敗してしまうんだよね~」と告白すると、周りの人も「あるある、分かるな~」と共感。本音と建て前を使い分けする意味がイマイチ分からないから、「のみに行きましょう!」が定番の別れの挨拶だと知るまでは、誘われても本気かどうか分からない上、苦手な人だと「本当に誘われたらどうしよう…」と悩んでしまったり…。相手の表情から感情を読み取るのが苦手なのは発達障害の特性の中でよく聞いてはいましたが、具体的な場面でどう影響するのかまでは想像できていなかったので、とても勉強になりました。社交ルールは学校では教えてくれないですし、場の空気を読んで「コレはノリで言っているんだな」と判断することは難しいのだと理解できました。そもそも、「心にもないことを言う習慣が分からない」というので、日本人のならでは(?)の習慣を、客観的にとらえることもできました。う~ん…確かに少し面倒くさい習慣だわ(笑)友だちの言葉をうのみに…息子も一緒だった!Upload By かなしろにゃんこ。「そういうことあるある~」と皆さんと笑いながら話していたのですが…んん?待てよ!?うちの子も嘘がキライだし、本音だけで生きている…。その場のノリで出た友だちの調子のよい話を真に受けて、落ち込んだり振り回されてしまったことも一度や二度ではない!「一緒に文化祭の係をやろう」と友だちと話していたのに、結局は自分一人だけが立候補して、落ち込んでいたことも…。わが子にも同じような特性があるんだと改めて気づいたのです。反抗期の息子にはまだ早かった!?「本音と建て前」、バサリと斬られるUpload By かなしろにゃんこ。そこで、もう中学生だし少しずつ社交辞令について教えていこうと思いました。世の中には「本音と建前」というものがあることを、例文を交えて説明したとたん、流石は反抗期!「そんなつまらねー話をしている大人はクソだな!」とバサリ。反抗期の息子にとって”大人は全部敵”ですから、大人のルールも息子にとってはクソです。確かに、のびのび生きていったほうが本当はいい。でも…社会人になってから失敗したり、凹むことが少しでも減るなら、自分は社交辞令を使わなくても知識として持っていてもいいと思います。発達障害がある子は精神年齢が3割幼いとも言うので、息子には高校生になってから改めて話すことにしました。二十歳になった息子、社交辞令が理解できるようにUpload By かなしろにゃんこ。息子が高校生になってから、改めて社交辞令について教えはじめました。友だちの家にお邪魔する予定がある日には、「おいとまする時間が遅くなって、家の人が『ゆっくりしていって。ごはん食べて行きなさい』と言ったら帰る合図だよ」と伝えてから行かせるようにしました。高校生になると「あーそうなの!?そういうもんなんなの、分かった!」と、理解する姿勢を見せてくれ、母は嬉しく感じたものです。ただし!「覚えてたら気をつけるよ!だってオレ忘れっぽいじゃん」。そうだった、息子にはADHDがあるから、興味ないことは忘れちゃうよね…。でも諦めずに伝え続けています。二十歳になる今では、大人の人と趣味の交流会でお付き合いする機会も増え、「自分は社交辞令を使わないけど、そういうものもある程度必要なんだ」ということは分かっているそうです。少しお節介な親ですが、社会に出る日が迫ってきているので、これからもしばらくは機会があるごとに伝えていこうと思っています。
2018年04月15日発達障害への薬物療法は向き合い方がポイント!出典 : 発達障害の特性によって、家庭生活、学業、友人関係に支障をきたしてしまう…そんな子どもに対しては、さまざまな支援や医療的なケアを利用することができます。その中で、親として最も判断に迷うものに、薬物療法が挙げられるのではないでしょうか。薬物療法を始めても、「薬物療法が本当に良い決断なのか、子どものためになるのか」「副作用などでかえって子どもを苦しめてしまわないか」など、迷いや不安があるのは当然だと思います。薬物療法に対しては、さまざまな考え方や意見があります。中には判断に迷う情報もあるでしょう。そんな中大切なのは、不安な気持ちのまま薬物療法を進めるのではなく、疑問を解消して自分なりに「薬との向き合い方」を考えていくことです。そこで今回、「薬との向き合い方」を考えるうえで感じることの多い不安や疑問を、発達障害や子どもの薬物療法に詳しい、名古屋大学医学部親と子どもの心療科准教授の岡田俊先生にお聞きしました。その答えを一問一答形式でご紹介していきます。【Q.1】薬を飲むメリット・デメリットって?出典 : 前提として、発達障害を根治したり、その特性を消失させるような薬物療法はありません。薬物療法では、発達障害の特性の一部・発達障害のある子どもに伴うことの多い症状を軽減させることができます。例えば、注意欠如・多動性障害(ADHD)の子どもに見られる、不注意や多動性-衝動性が薬によって緩和されたり、自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもに多く見られる、かんしゃくやこだわりをやわらげたりすることに効果があります。これらの薬物療法の効果によって、その子の生きづらさが軽減されるだけでなく、親や教師がより適切なかかわりをしやすくなることもあるでしょう。薬に関する副作用や、それに伴う安全性への懸念は、多くの方が感じていると思います。ですが副作用は、どの薬にもあるものです。例えば、ADHD治療薬によって、いらだちが強まったり、こだわりが増強したりするほか、食欲の低下などの副作用が見られる子も少なくありません。また、ASDに対する抗精神病薬の使用で、眠気が増す、そわそわとした感じが出現する、月経不順、体重増加といった副作用が現れる子どももいます。あらかじめ子どもが飲む薬の副作用にはどんな症状が考えられ、万が一起きた時はどう対処すればよいのかを把握しておくことが大切です。以上のことを踏まえ、薬物療法においては、常にメリットとデメリットを天秤にかけて検討することが大切です。何を目標として薬物療法を受けるのかを、明確にしておく必要があります。発達障害の治療に関して、薬物療法が唯一の治療法ではありませんし、薬物療法によって改善しうる症状は、その子の抱える問題のほんのわずかな部分に過ぎません。・他の治療に比べて薬物療法を実施するメリットがあるのか・その他の治療と組み合わせることで相乗効果が得られるのか・薬物療法をいつまで続けるのかこの3点を中心に考えながら、薬物療法を進めることが重要です。【Q.2】薬物療法って、途中でやめられるの?出典 : 精神科の病気に用いられる薬には、一度服用すると、再発を予防するために薬物療法を続ける必要があることがあります。そのイメージが強いためか、発達障害の薬物療法でも「一度始めたらやめることができないのでは?」と考えている親御さんが少なくありません。確かに、子どもの様子を見て、薬の力が継続的に必要であれば薬物療法を続ければよいでしょう。しかし、薬物療法の標的となっていた症状がすでに改善しており、薬物療法を中止しても、概ねその状態が維持できるのであれば、薬物療法を続ける理由はありません。そのためにも、どんな症状を標的として薬物療法を開始したのかを明確にしておくことが、不要な薬物療法を漫然と継続しないためにも大切なのです。服薬を継続することのメリットやデメリットは、子どもであっても感じ取っているものです。親御さんの意見だけでなく、その子の服用感を大切にしながら、継続を検討していくとよいでしょう。【Q.3】薬物療法に対する意見が周囲と合わない時、どうすればいい?出典 : 薬物療法を巡って、子ども本人、親御さんにも迷いがある場合も少なくないのですから、ご家族の意見が一致しないことがあるのも当然のことです。自分の中でようやく決心に至ったのに、家族の意見で、また気持ちが揺れ動いてしまい、煩わしいと感じることもあるかもしれません。賛否を議論していても、何も決まりません。それよりも、現在の状況について、どのように考えているのか、服薬に際して何を期待し、何を心配しているのかを明確にすると、意外に対立点はないはずです。また、家族は薬物療法を開始したいという気持ちで一致しても、当の子ども自身が納得しないことがあります。あなたや周囲の大人がいかに困っているかを話して薬物療法の同意を取り付けようとする前に、子どもが薬に抵抗する理由を聞いてみると、「薬を飲むと自分が変わってしまうように感じる」「薬をのむと自分が病気であることを認め、どこか負けたように感じる」「とにかく特別なことはいやだ」など、その子ならではの理由があるものです。その背景には、発達障害をどのように受け止めているか、発達障害とともに育ちゆくことにどのような経験や思いを重ねているかなど、さまざまな認識が影響しています。薬を飲む・飲まない、ということから離れて、そういう思いの一つひとつを時間をかけて扱うことが大切でしょう。【Q.4】セカンドオピニオンを受けることも有効?出典 : セカンドオピニオンは、かつては「主治医の診断や治療方針に納得がいかないときに受ける」というような印象があり、患者の側も遠慮しがちに希望を申し出ていたところがありました。しかし、今日では、セカンドオピニオンは、安心して医療を受けてもらうため、医療側から見ても歓迎すべきプロセスとなっており、大学病院などでは重要な役割となっています。発達障害の診断は、その特性の程度により、どこから診断閾値を超えていると考えているか、医師によって若干異なることも考えられます。また、発達障害の場合、薬物療法を行うか否かは、診断の有無よりも、現在の状況を改善するためにどのような工夫が可能かという見立てによることが多いです。そのため、これまでの子どもの経過を最も知る主治医が適切な提案をできるとは思いますが、セカンドオピニオンで別の医師の意見を求めることも有益なことがあります。いずれにしても、発達障害の診療にあたる医療機関は限られています。そのため、通院中の医療機関に安心してかかるための工夫の一つとして、セカンドオピニオンも位置づけるとよいでしょう。【Q.5】子どもに対して、服薬をどう伝えればよい?出典 : まず、前提として、服薬の説明にしても、障害の告知にしても、親御さんのみで進めるのは避けましょう。障害の告知は、本来、その子の得意なところや苦手なところなど、子ども自身がさまざまな特性について自己理解を進めるうえで行われます。また、障害告知に関しては、単に障害名が伝えられるだけでは不十分です。その障害特性を踏まえて、直面している問題について可能な工夫を考えたり、新たな問題が生じても、そのことについて医師や学校の先生、家族と一緒に取り組んでいってもらえる安心感のある状況の中で行われたりする必要があります。薬物療法の提案も、その工夫の一つの方法として提案されることが大切です。服薬を説得するために告知をする、というのは、大きなマイナスの結果をもたらす可能性があります。もし、子どもへの伝え方が、1. その子どもが抱えている問題が現状では解決できない2. 解決できない理由はその子のもつ発達障害にある3. そのために薬物療法が必要であるこのような順序になると、「薬物療法を受け入れる=周囲とさまざまな問題を抱える発達障害特性がある」ということを、子どもに受け入れるように迫るということになり得ます。発達障害だから問題と直面せざるを得ないわけでも、発達障害だから服薬をしないといけないわけでもないのです。ですので、服薬のために障害を告知するというタイミングはよくありません。このノウハウは、医師がさまざまな経験のもと蓄積していますので、医師に任せて、親はどのようにそのプロセスに参加すべきか相談していくのがよいでしょう。出典 : その子どもの年齢や能力などを踏まえ、その子に応じた説明を行い、同意を得る必要があります。未成年の場合には、薬物療法の実施にあたり、保護者の同意(インフォームド・コンセント)が必要になりますが、親だけが納得していても子どもは服薬してくれませんし、同時に子どもの思いや決断も尊重する必要があります。そのために、その子の理解力に応じた説明を行い、同意(アセント)を得る必要があります。しかし、アセントを取得するにあたって、どのような説明を行うかは、医師の裁量に委ねられており、そこはその子の理解力を踏まえた医師としての力の見せ所ともいえる一方、そのような説明のもとに行われたアセントが本当に同意といえるかは悩ましいところでもあります。そのような説明と同意の現実をまず踏まえておくことが大切でしょう。その子の困りごとを整理し、その解決に薬物療法がどのように役立ちうるかと、薬物によって生じうる副作用を伝え、薬物療法を希望するかどうかについて子どもと話し合うことになります。その子の困りごとは、その子の視点からみた困りごとでなければなりません。「友達と仲良くなりたいと思っているのに、ちょっとしたことでキレてしまい、けんかになってしまう」「お母さんのことは好きなのに、早くしなさい、といわれるとかっとしてしまい、思わず物を投げてしまう」…これらのことに対して、本人ができる工夫、周囲ができる工夫など、いろいろあると思います。それらを行ってもうまくいかない時に、薬にも助けてもらうかどうかが話題になるわけです。薬には助けてもらうだけで、結局大切なのは本人の努力や工夫です。もし、薬物療法がとても有効であっても、薬ではなく、その子どもの頑張りを褒めてあげることが大切です。【Q.6】子どもの成長につれて、薬を拒否するようになったらどうする?出典 : 薬は対症療法にすぎませんから、その標的とした問題が解決すれば、中止を試みることになります。このような試みは、必ずしも医療主導とは限りません。ご本人やご家族の判断で、週末はやめてみた、長期休みなので飲まなかった、飲み忘れた日があったが問題なかった、など、いろいろなパターンがあります。一度、中止をしてみて、服薬を続けることのメリット、デメリットを再確認するのはよい方法です。服薬開始時点で、「何歳になったら卒業、薬に頼るのをやめよう」などという提案をされたという親御さんの話も聞きますが、このような表現は、薬を使用することが何かよくないことのような響きを持ってしまいます。本当に必要な薬であれば続けたらよいですし、現実には、そのような限界を設定しなくても、その年齢の前にやめてみようという試みが、ご本人やご家族からあることの方が多いものです。子どもが急に薬を飲むのを嫌だと言い出した、というケースもあります。その時には、なぜと問い詰めるより、その思いになったきっかけを確認することが大切でしょう。自意識が高まって「人と違うことはいやだ」と思うようになったのかもしれませんし、「何に対して自分は薬を飲んでいるんだろう」と思い、障害の受容をめぐって揺れ動いていることもあります。その場合、薬の服用については、本人の思いを尊重していったんやめてみることが多いです。ですがそのことよりも、そのような子どもの心の揺れ動きについて、診察のなかで扱うことが大切です。最後に、大切なことは、医師が服薬を薦め、子どもがそれに従う、という関係ではなく、薬物療法を含め、さまざまな話題を医師・親・子どもで一緒に考えていけるような関係性です。そのような関係性のもとでは、服薬をやめたいと思う、といったこともオープンに話し合えます。医師の処方通りに服用していないことがあるのは、医療全体にいえることです。しかし、抗うつ薬のように自己中断が離脱症状をもたらす薬もあります。「医者に通うこと=薬をもらうこと」ではない治療関係であれば、薬をめぐるオープンな話し合いができ、服薬の中止についても医師との相談のうえで、計画的にすすめていくことができるでしょう。まとめ出典 : 親としては、自分の子どもが一定期間にわたって薬を服用することに対し、どうしても不安やためらいを感じずにはいられないと思います。薬物療法の開始を決定した後でも、子ども本人にどう伝えるか、周囲とどのように意見をすりあわせていくかなど、さまざまな悩みが生まれることでしょう。あくまでも薬は対症療法の1つであり、メリットだけでなくデメリットもあります。薬を飲むことがどのような意味をもつのかを基準に考えることが重要です。また、薬を使うことは他の支援方法を諦めるということではなく、常に並行して考えていく必要があります。その子が発達障害とともに育つ、そして発達障害のある子を育むという歩みの中で、医療とどう付き合い、利用していくのか、こういった視点の中で、自分なりの薬に対する向き合い方を考えていきましょう。
2018年04月09日4月の発達障害にかかわる話題やイベントを紹介!出典 : 新年度のスタートは、新しいことを始めるにも良いタイミングかもしれません。今年度の受講者の募集や新年度対応の申請などが続々と始まっています。専門性の高い機関が行なっている支援プログラムなどを知ってどんどん活用していきましょう!また、当事者の声や専門家の話を聞けたり、就労支援における海外の事例も学べたりする講演会なども各地で続々と開催されます。ここでは、今月の話題をピックアップして紹介します!出典 : スカラープログラムは、全国から選抜された障害や病気のある中学生、高校生・高卒生、大学生・大学院生の中から、将来の社会のリーダーとなる人材を養成することを目的としたプログラムです。DO-IT Japanが2018年度の参加者の募集を始めました。今年度は、進学や就労を目指す多様な障害や病気のある中学生から大学院生が対象の「2018年度スカラー」と小学生・中学生向けで、スカラープログラムに部分的(夏季プログラムの一部)に参加することができる「特別聴講生」の2つの枠で募集を行なっています。スカラーは夏に開催されるプログラムの参加に加え、インターネットを活用したオンラインメンタリング、ギャザリング、海外研修など年間を通じたプログラムに参加することができます。学びたいという気持ちを後押ししてくれるプログラムです。ぜひ将来に目標がある人は応募してみてください。【応募書類締切り】5月6日(日)(当日消印有効)【定員】各10人程度(選抜制)【問い合わせ】DO-IT Japan事務局(東京大学先端科学技術研究センター 人間支援工学分野)TEL/FAX: 03-5452-5228(平日10:00〜12:00・13:00〜17:00、「新規スカラー募集問い合わせ」とお伝えください)Eメール:toiawase@doit-japan.org Japan出典 : 通常の印刷された教科書では読むことが困難な児童・生徒のための教科書「平成30年度デイジー教科書」の申請受付が開始されました。デイジーのデジタル録音図書は、視覚障害者のほかに学習障害、知的障害、精神障害の方にも有効であることが国際的に認められてきています。国内でも平成13年度から福祉医療機構の助成により、認知・知的障害者向けマルチメディアデイジー図書の研究開発が進められています。使い方は、デジタル図書をパソコンやタブレットでインストールして再生します。医学的診断はなくても使用することができますよ。初めて教科書を使用する場合はホームページから申請書の提出が必要です。申請は誰でも行えるので、まずは気になったらページを開いてみてください。【お問い合わせ】日本障害者リハビリテーション協会情報センターDAISY担当宛TEL:03-5273-0796FAX:03-5273-0615E-Mail:daisy_c@dinf.ne.jpデイジー教科書 一般提供申請方法(平成30年度)Upload By 発達ナビニュースADHD当事者である著者のあーささんの書籍の出版記念講演会です。あーささんは21歳でADHDであることを知り、「もっと早い時期に知っていれば、あんな辛い思いをしなくてすんだのに」と思ったそうです。ADHDの知名度を上げ、理解を得るために 2003年「マンガで解説『フロンティア★ADHD』のサイトを立ち上げています。対談する高山恵子さんは、ADHD等高機能発達障害のある人のカウンセリングと教育の専門家です。著書に込められた思いや当事者、専門家の立場からさまざまなお話が聞けそうです。【日時】4月18日(水)19:00〜21:00【会場】池袋東京芸術劇場シンフォニースペース【参加】2500円(書籍代含む)(定員100人)【内容】講演「ADHD脳でスランプ脱出!」 あーさ氏、対談「支援者として、当事者として」 高山恵子氏×あーさ氏【申し込み・問い合わせ】合同出版 担当:齊藤TEL:03-3294-3506Eメール:info@godo-shuppan.co.jp出典 : 子育ての中で、「何回言っても、うちの子はいうことをきかない」といった悩みを抱いたことはありますか?そんな悩みを解決するヒントが得られるかもしれない講演会が群馬県前橋市で開かれます。発達障害のある子どもの保護者向けのプログラムである「ペアレント・トレーニング」を奈良県で実践する楠本伸枝さんが講師を勤める講演会です。ペアレント・トレーニングは、保護者の方が子どもとのより良いかかわり方を学び、日常の子育ての困りごとを解消し、楽しく子育てができるよう支援するものです。「子どもを叱ってばかりで辛い」「どう実践したらいいのかわからない」という人にはぜひ、おすすめです。楠本さんは、発達障害のあるお子さんのお母さんでもあります。コミュニケーションで悩みがあるお母さんやお父さんたちの気持ちに寄り添ったアドバイスがたくさん聞けると思います。日々の困りごとをポジティブに変える声かけを学びましょう!【日時】4月21日(土)9:30〜11:00【会場】前橋市総合福祉会館【参加】無料(定員90人)【内容】講演「子どもが変わるプラスの声かけ〜子育て・保育・教育が楽しくなるペアレント・トレーニング〜」榎本伸枝氏(エジソンクラブ奈良「ポップコーン代表」)【申し込み・問い合わせ】ペアレント・トレーニングを学ぶ会(群馬大大学院保健学研究科十枝研究室)Eメール:grow9house@yahoo.co.jpTEL/FAX: 027-257-4701群馬県生涯学習センター まなびねっとぐんま「子どもが変わるプラスの声かけ 子育て・保育・教育が楽しくなるペアレント・トレーニング」Upload By 発達ナビニュースアメリカから障害者雇用の国際的リーダーとして著名なジョイス・ベンダーさんを講師に招いて講演会が行われます。自身もてんかんによる脳出血を経験し、片方の耳の聴力の60%を失いました。この経験から障害者支援への熱意を持つようになったといいます。IT、エンジニアリング、財務会計、人事などの研修を受けた障害者の求人雇用のために、企業・政府機関と協力しダイバーシティとインクルージョン推進を支援しているスペシャリストです。アメリカ障害者協会会長と全米てんかん協会理事長なども歴任しています。当日は、DPI日本会議議長補佐の崔栄繁さんも日本の障害者雇用の状況を報告します。一般の方も参加できるので、この貴重な機会に海外の事例を学んで日本の障害者雇用の未来について考えてみませんか。(日英通訳・要約筆記・手話通訳・ヒアリングループ・点字資料有り)【日時】4月16日(月)13:30〜15:30【会場】名古屋国際センター別棟ホール【参加】無料(定員100人)【内容】講演・ディスカッション「アメリカの障害者雇用への取り組みと経済効果」ジョイス・ベンダー氏、「日本の障害者雇用の現状と課題」崔栄繁氏(DPI日本会議議長補佐)【申し込み・問い合わせ】愛知障害フォーラム(ADF)事務局:AJU自立の家・愛知県重度障害者団体連絡協議会担当:木下TEL:052-851-5240Eメール:adf.jimu.2008@gmail.com愛知障害フォーラム(ADF)ホームページまとめ気になる話題やイベントはありましたか?実際に参加したり、使用してみることで、困りごとが改善されたり、生活の質を高めてくれる手助けになるかもしれません。今後も月ごとにぜひ知ってもらいたい発達障害のニュースや関連イベントを紹介していきます。5月に開催されるイベントなどを募集します。情報をお待ちしております!
2018年04月06日診察室で、日々、出会うのです。親たちの思いと、言葉に…出典 : わが子のそだちに寄り添うなかに生じる違和感、「なにかが違うんです」という親の思い。そこには、わが子のこころに自分のこころが重ならないことの悔しさともどかしさがある。それが時に自分へのふがいなさとなり、自分を責めたり、わが子のわがままとしてつい追い詰めてしまう。発達障害という診断は、生来的にわが子にある特性として、その日その時にできる関わり方で対応するという医学モデルを提案するもの。診断が下ったとしても、誰も責めあう必要はないのです。親は「私の育て方でも、この子が私を嫌っているからでもないのですね」という安堵と、「でもこれからずっと、その特性と私もこの子もつき合っていくしかないのですね」という荷を背負う覚悟を、時には疲れ果てた思いとともに、語る。画期的な治療方法があれば、なにか魔法のようなものがあれば、ある日、朝起きたときにすべての課題が霧のように消えてしまっていたら。そういう願いを、いつもこころのどこかに抱きながら、親は毎日を送っているのだろうなぁ。僕は診察室での出会いから空想する。診察室で話をしながら、僕は、この子と親が自宅で悪戦苦闘している姿を空想する。リビングで、食卓で、トイレの前で。ゲーム機やタブレット、携帯を間に、激しい言葉のやりとり。モノが飛び交い、時に破損していく姿。そうした光景を走馬灯のように頭のなかで巡らせながら、僕はその子と親を診る。わが子のそだちにつき合っていくのは、もちろん楽しみでもある。しかし、苦痛でもある。先のゴールが見えないだけでなく、今歩いているこの道さえも、本当に正しい道かどうかすら、誰からも正しい助言を、親はもらえない。「日々のわが子の言動に迷いと途方にくれる思いを持ちながら、眼の前のわが子の言動に一喜一憂しながら、親としての時間が過ぎていく」「こんな苦労もそのうち終わると思っているのですが、ひょっとして終わりのない苦労なのじゃないかと思うのです」「いつまで私はこの大変さとつき合っていかないといけないのでしょう」「小さい喜びのあと、決まって大きな哀しみが来ます。最近は笑いながら泣いています」「この子が変わらないなら、私が家を出るしかないと、先日荷物をまとめたことがあります」「家族ですら、私の気持ちを分かってくれる人はいません。本当に疲れてしまいました」「本当は、私のせいではないのですか」僕は、診察室で、このような言葉と出会うのです。そしてその言葉の後ろにある、思いにー。子どもの生きる力を、思いを、翻訳して親に伝える。それが、僕ができることー出典 : 診察室でできることは限られている。育ちの見通しを明確に告げる予言は僕にはできない。せめてこの子の行動に裏にある意味や行動を説明する仮説を設定し、それを言葉にして親に伝えようと、僕は苦心する。時にそれは発達段階としての生物学的説明であったり、思いを言葉にできないゆえの行動であったり、強い個性から生じるちょっと分かりにくい個性的思考であったりする。同時に、言葉を届ける相手の気持ちに思いを馳せる。僕にとってそれほど的を外していないと思われる言葉であっても、今の眼の前の親には届かない場合もある。今、欲しい言葉でないときに、聴きたくないときに、言葉は対話とならずに宙をさまよう。今、最大限伝わると思われる言葉を選りすぐり、僕は親に言葉を贈る。何年やっても、その選択には自信がない。語り合うなかでの、微妙な表情の変化を読み取り、僕の言葉がシャットアウトされていないか、スルーされていないか、誤解されて伝わっていないか、恐る恐る微調整していく。気持ちの乗せ方、発語のスピード、抑揚、一期一会のやりとりである以上、できる限りこころを砕く。思いがこもる発話は、侵襲性が高い場合もある。記号化した言葉よりも、思いが過剰に残像となる場合もある。時に僕は紙に説明文を書き、それを説明して音としての言葉でなく、文字としての言葉を遺すこともしている。言葉は、恐ろしいものである。誤解も簡単に作ってしまう。そもそも、育ちという先の見えない、しかも、すべてが例外という育ちを、平均的に説明すればするほど、眼の前の子どもの有り様が消えていく。発達障害臨床、あるいは子どもの精神医療とは、マニュアル、ガイド化しにくいもので、診断名がついたことで、先が見えるというものではない。常に「じゃ、今を、明日を、これからを、どのように生きていけばよいのですか」。答えのない疑問を共有し、今できる小さいことを提案し、それを積み重ねていく作業を応援していく、それがそだちに関わる僕の仕事である。そのために、なにをおいても親には先に倒れることなく、焦らずに、日々の小さいできごとを、きちんと受け止め、喜び、泣き、次に生きる糧にしてもらいたいと、願う。子どもの育ちの速度を変えることは僕の臨床ではできない。子どもの力を一新することも、僕にはできない。僕にできることは、今のこの子の生きる力を捉え、同時に、この子の思いに近づく努力をし、それを周囲に翻訳し伝えることである。そのためには常に、大きく貢献してきた親への感謝と労いを、言葉にすることが重要なのである。「よく、ここまでそだてましたね」「この子に上手に寄り添っていますね」「この子も安心していることでしょうね」「お疲れさまです。ちょっと休んでよいかと思います」いくら言葉にしても、足りないくらいである。その子のこころに近づこうとすることー発達障害を突き詰めることより、大切なもの出典 : 医学は個々の発達のなかで、ある特性を強く持つ状況を、医学的に病態としてグループ化し、それぞれのグループに診断名をつけた。大きな括りは「発達障害」である。そのなかを、自閉スペクトラム症とか注意欠如多動症とかさまざまな名称で区分けをした。その特性の度合いは一定ではなく濃淡というイメージで、非常にバリエーションがあり、個々のなかでも、生活状況によって流動的だ。しかも、その区分けの境界線も非常に脆いもので、時に複数が混じり合っている場合もある。その特性は、突き詰めると、すべての子どもに濃淡があり、まったくないという子どもは、そもそも存在しないのではないか、鍵は濃淡の度合いになってしまう。すると、時にその特性は、医学的に診断されるものに該当し、ある特性は、存在するが診断されるほどの濃さではないと、医学的に判断される、ということになる。もちろん、大きな戸惑いもなく、判断される濃さもある。診断する側によって右往左往してしまう微妙な濃さもある。発達障害があるかないかという境界線は、実際には、明確さに欠ける部分がある、という感想を僕は診察室で常に抱く。それは、問題視するべきではない、全然大丈夫、という判断をしてもよいということではない。少なくとも、これまで述べてきた親の言葉は生活のなかで紡ぎ出された思いである。子どもたちも、どこか生活場面に戸惑い、追い詰められ、自己判断を否定され、思いを拾い上げてもらえず、糾弾されてしまう、という体験のなかで、苦しみうめいている。この事実に、僕はより生活がしやすい方法を探し、環境調整に苦心するのが精神科臨床であると思っている。明確な診断がつかなくても、診断という海図におおよその目途をたて、難破することなく、巡航できることを計画することはできる。あとは天候に応じて微調整を計り続けるだけである。海図は、あくまでも海図である。そこにリアルタイムな関わりを創造していくのが僕たちの臨床なのだ。発達障害を突き詰めるよりも、この子のこころにより近づこうとするほうが、実際は難しいが必要なことであり、近づく人は、この子の生活に実際に関わるすべての人たちでないといけない。その橋渡しが僕の役割である。僕は、日々を送られる子どもたちとその親を、こころから応援したいと思っている。そしてそれを支える周囲の生活者に敬意を払いたいと思います。
2018年04月03日薬ってそもそも何だろう?出典 : 私たちは、誰もが心や体のバランスを崩すことがあり、そのためにつらい体験をすることがあります。病気やけがを治したり、心や体のバランスを取り戻したりするために「薬」が用いられることがあります。薬の歴史は古く、紀元前には、草や木の根、一部の動物や鉱物などが薬として使用されてきました。しかし薬は、適切な状態に対して使用されなければ、利益をもたらすことも害をもたらすこともあります。そこで、薬を使うことは、現在の患者さんの病状を正確に診断し、それに対して処方すること、すなわち医学の専門的領域として発展してきたのです。現代の日本では、主にヒトや動物の病気の診断・治療・予防に使うものを薬機法という法律で定め、医薬品と呼んでいます。今日の医薬品は、漢方薬のように植物や動物などの生薬により生産されているものもありますが、多くは化学的に合成された薬品です。製薬会社はさまざまな候補物質を作成し、薬理学的活性や動物実験などによって、その物質が「薬」の候補となり得るかどうかを調べています。そのなかで有効性と安全性の両面で優れていると考えられる物質が、開発候補となります。これは製薬会社が合成した候補の中のほんの一握りの物質であり、慎重な検討のもと、開発候補(治験薬)が選定されるのです。しかし、実際にヒトで安全であるのか、患者さんで有効であるのかは、明らかではありません。第Ⅰ相試験では、健康人を対象にして治験薬が投与され、その体内での動態や安全性が検証されます。これをクリアした場合に、第Ⅱ相試験が実施されます。この試験では、試験への参加同意の得られた比較的少数の患者さんに対して、治験薬の安全性とともに、投与量と効果の関係が検討されます。第Ⅲ相試験では、第Ⅱ相試験の結果を踏まえ、より大きな規模で有効性と安全性が調べられます。このとき、仮に患者さん100人に治験薬を使用したところ、80人に有効であったということがあっても、この薬が有効であるかどうかは分かりません。第Ⅱ相、第Ⅲ試験では、プラセボ、つまり治験薬とみかけは変わらず薬効成分のない薬との有効性と安全性を比較することが普通です。プラセボは有効成分がないのだから効果も副作用もないだろうと考えるでしょう。しかし、実際にはプラセボでも効果や副作用があるように感じることがあります。人のからだは不思議で、薬と信じて服用すると、その安心感から自然治癒力を引き出すことがあります。このような効果を「プラセボ効果」と言います。この「プラセボ効果」と「薬の候補の効果」を、医者も患者さんも分からないという条件の下で、有効性と安全性を調べ、プラセボに比べて薬の候補が有意な効果を認め、安全性にも問題が無い場合に薬の候補となるのです。最終的には、これらの臨床試験の結果を踏まえて、規制当局が薬として承認することになります。このようなステップを経て開発された新薬には特許があります。新しく合成した化学物質には「物質特許」がありますし、その効能・効果には「用途特許」があります。それ以外に、製造方法に与えられる「製法特許」、製剤上の新しい工夫に関する「製剤特許」です。原則6年間がたつと、物質特許と用途特許は切れて、後発医薬品、つまりジェネリック医薬品の生産が可能になります。ジェネリック医薬品は、先発医薬品と同じ薬効成分を有しており、服用後の血中濃度の変化が同等であることが求められています。しかし、製法特許や製剤特許は切れていないため、ジェネリック医薬品のメーカーにより製法は様々で、薬効成分以外の成分は異なっている場合もあります。したがって、先発医薬品とジェネリック医薬品が全く同じ、というのは事実ではないのですが、国全体としては医療費を抑制していくことが急務ですし、ジェネリック医薬品メーカーも、より質が高いジェネリック医薬品の提供や安全性情報の提供などに努めています。ドラッグストアなどで一般の人が自分の判断で使用することのできる一般用医薬品もあります。このなかには薬剤師からの指導、文書での情報提供の要否や努力義務によって、第1類、第2類、第3類などの指定があります。軽い身体不調に対して自分で手当てするというセルフメディケーションも現在推奨されている方法の一つです。しかし、この記事でこれからご紹介する向精神薬は、医療機関でしか処方できない医薬品がほとんどです。「薬が効く」ってどういうこと?出典 : 風邪を引いたら風邪薬を飲む、熱が出たら解熱剤を飲む、というのは、幼い頃から当たり前のようにやってきたことで、何の疑問も持たないでしょう。しかし、風邪薬を飲んだから病気が治ったのでしょうか?実際のメカニズムは、それほど単純ではありません。初期の風邪には、葛根湯を飲んで体を温めたり、免疫機能を高めたりすることがあります。これは、身体自体に備わっている風邪を治す機能を後押ししているのです。風邪で病院を受診し、抗生物質を処方されることもあるでしょう。最近では風邪に対してお決まりのように抗生剤を処方されることはなくなってきています。これは風邪の多くがウイルスによるもので、抗生物質は無効であるばかりか、抗生物質の効かない耐性菌を作ったり、腸内の細菌叢のバランスを崩してしまうからです。しかし、風邪をこじらせた場合には、細菌感染を合併していることが、採血の結果や咽頭ぬぐい液の培養によって確かめられることがあります。このような場合には、細菌を殺す(殺菌)あるいは細菌の増殖を抑える(静菌)ことを目的として抗生物質が処方されることがあります。これは原因療法といってもよいでしょう。原因療法とは異なり、症状を軽減する目的で薬が処方される場合もあります。それを対症療法といいます。対症療法というと、なにか原因を踏まえないつけ焼き刃の治療法のように聞こえるかもしれません。しかし、症状を緩和することで、日常生活の質が改善したり、別の治療的アプローチが有効に機能することがあるとしたら、対症療法も一つの治療法というべきでしょう。総合感冒薬(いわゆるかぜ薬)をみると、頭痛を軽減したり、鼻づまりを治したり、痰を出しやすくする一方、咳を止めたり、熱を下げたりする成分が入っています。これらは、風邪を治すというよりも対症療法として、その間の苦痛を軽減し、食事がとれたり、睡眠がとれることで体力の消耗を抑えることによって、身体の回復を助けようとする薬です。発達障害における薬の効き方出典 : 発達障害に対して薬物療法はしばしば行われることですが、発達障害自体を完全に治癒させる薬物療法はありません。発達障害における薬物療法は、対症療法であると言えます。注意欠如・多動症(ADHD)の中核的な症状である多動性—衝動性、不注意に対して、メチルフェニデート徐放錠(コンサータ®)、アトモキセチン(ストラテラ®)、グアンファシン徐放錠(インチュニブ®)が使用できます。それぞれの薬剤は、効果が出現するまでの時間や効果の強さ、効果がみられる時間の長さや副作用のプロフィールが異なっており、患者さんの状況や薬物への反応性に応じて使い分けられます。ADHD症状が軽減すると、全体を見渡して判断したり、順序立てた行動ができるようになったり、感情的になることが少なくなったりしますが、そのような思考や感情表出のパターンが本人にとっては新しい体験であったりします。また、保護者の方にとっても、「この子らしくない」とみえ、戸惑うこともあるでしょう。本当のその子らしさは、ADHDの症状が消えてみるとみえてくるものなのですが、それまでの間は戸惑いの方が大きいものです。日本では薬にまつわる否定的な表現も多くあります。薬に頼る、薬漬け、薬から卒業する、といった具合です。薬を使うことがネガティブに感じられ、本人や家族の努力不足であるかのような表現に聞こえる方もいるかもしれませんね。このような背景には、精神医学的な問題は、根性で立ち直るべき、といったような精神主義的な考え方があるのかもしれません。ADHDの治療においても、薬物療法か、薬物療法をしないかといった対比で語られがちです。ですが、これもそのような単純な図式では語れません。その子が行動上の問題を抱えているとき、望ましい行動を増やし、好ましくない行動を減らすためにはどうすればよいか、行動療法の考え方に基づいて最もよい対応を相談することが大切です。また、そのためのスキルを、ペアレント・トレーニングとして学ぶことも可能でしょう。また、学校や家庭で起こった現実的な困りごとについて、現実的な解決や調整を図ることも大切です。しかし、そのような行動変容を期待するとき、本人の動機付けを高めることも大切ですし、何よりも本人や家族が衝突ばかりを経験しており、疲弊しているようでは効果的な介入を期待できません。ADHDの子どもは小さな報酬に対して、脳の中の報酬系(快と感じる行動を選択しようとする脳の働き)が活性化されにくいと言われています。つまり、言葉で褒められただけでは行動が動機づけられにくく、食べ物やゲーム、お小遣いのようなわかりやすい報酬にしか反応しない傾向があるのです。しかし、メチルフェニデート徐放錠(コンサータ®)を服用すると、小さな報酬に対しても報酬系の活性化が見られるという研究結果が報告されています。このことは、行動療法を行う場合にも、これまでには動機づけられなかったような小さなフィードバックに対しても、子どもたちが動機づけられる可能性を示しています。薬物療法は行動療法と相乗的に効果をもたらす可能性があるといえます。また、自閉スペクトラム症(ASD)の易刺激性に対しては、リスペリドン(リスパダール®)やアリピプラゾール(エビリファイ®)といった抗精神病薬が使用されます。易刺激性とは、かんしゃく、人への攻撃的な言動、自傷、気分の変わりやすさとして観察される感情のコントロールの難しさです。しかし、易刺激性の精神医学的な意味は必ずしも明確ではありません。薬剤は、抑うつ症状や気分の波、衝動性、こだわり、感覚過敏などのさまざまな面で効果を示している可能性があります。他方、易刺激性の背後には、相手の気持ちや社会的文脈を読み取りにくい、見通しを持ちにくい、コミュニケーション障害といった認知特性や対処スキルの乏しさがあります。薬物療法の実施がその子の社会適応状況を一時的に改善したとしても、そのうえで認知特性に応じた支援やスキル獲得を目指した援助を実施する必要があります。どういう場合に子どもに薬物治療を行うの?出典 : 発達障害という診断を受けたからと言って薬物療法を受けなければならないわけではありません。発達障害自体を治癒する薬はなく、薬物療法が唯一の治療的アプローチでもありません。そうすると、薬物療法は、どういう子どもの状態が対象になるのか、ということが問題になります。子どもが抱えている問題について、さまざまな治療的アプローチを行った上でなおも残存する問題があり、薬物療法を実施することが、その子の問題の解決を促進すると考えられ、かつ、本人や家族がその治療を望む場合に、薬物療法が開始されることになります。実際に薬物療法を実施し、そのことによって期待される効果が得られるか、効果と副作用のバランスを見て、その治療がポジティブな結果をもたらすと考えられる場合に薬物療法は継続され、その治療が不利益の方が大きいと考えられた場合には、薬物療法は中止されることになります。薬物療法を継続された場合でも、問題が解決し、薬物療法を継続しなければならない理由がなくなってきたならば、薬物療法を中止することになるでしょう。薬物療法を開始する前に大切なことは、いま困っている問題がどのような背景であるのか、ということを見立てることです。たとえば、クラスのなかが騒がしく、いつも話し声が聞こえたり、たちあるく人がいる状況では、その子が不注意になってしまうのは当たり前のことです。その子が不注意だからといってADHD治療薬を使用しても十分な効果があるはずはありません。その状況が、学校や家庭などの複数の場面で発達水準に認められるという診断基準に立ち返り、本当にADHDといえるのかを検討する必要があります。発語がない自閉スペクトラム症の子どもがかんしゃくを起こしているならば、自分の思いが伝えられない状況で起こっているのか、こだわりが崩される状況の中で起こっているのかなどを確認し、コミュニケーション支援や周囲の対応や環境の作り方を考えることが先で、まず抗精神病薬を使えばいい、ということではありません。そのような見立てのためには、その状況について、親御さんや周囲の大人と医師が話し合いを行うことが大切ですし、その見立てを共有する中で、薬物療法の是非についても議論されるはずです。十分な見立てのないまま「問題行動」に対して薬物療法が実施されるとしたら、それはデメリットしかもたらさないでしょうし、漫然とした薬物療法が継続されることとなります。発達障害の治療に使われる代表的な薬出典 : の中核症状である多動性—衝動性、不注意を軽減する薬剤として、メチルフェニデート徐放錠(コンサータ®)、アトモキセチン(ストラテラ®)、グアンファシン徐放錠(インチュニブ®)が使用できます。メチルフェニデート徐放錠、アトモキセチンは、小児のみならず成人に使用可能ですが、現時点ではグアンファシン徐放錠は小児にのみ使用可能です。それぞれの薬剤は、効果が出現するまでの時間や効果の強さ、効果がみられる時間の長さや副作用の現れ方が異なっています。メチルフェニデート塩酸塩|PMDAアトモキセチン塩酸塩|PMDAグアンファシン|PMDA古くから発達障害に適応を有する薬剤として、ピモジド(オーラップ®)があります。添付文書によれば「小児の自閉性障害、精神遅滞に伴う下記の症状:動き、情動、意欲、対人関係等にみられる異常行動、睡眠、食事、排泄、言語等にみられる病的症状、常同症等がみられる精神症状」に有効とされており、これだけをみるとあたかも万能薬のようにみえてしまいます。ですが、当時と現在では適応症の決められ方が異なっており、この薬剤が他の抗精神病薬に比べて広範な効果を特別に示すとは考えられていません。この薬剤は、心電図のQT時間を延長させる作用があり、特に高用量では致死的な不整脈を起こすことがあります。そのため、最近では使用の機会が少なくなっています。自閉スペクトラム症に伴う易刺激性に使われる薬には、前述のとおりリスペリドン、アリピプラゾールがあります。使用する用量は低用量から中用量であり、鎮静を期待する量を使用することは好ましくありません。一般的には、うつ病や強迫症、その他の不安症に対して用いられる薬剤です。自閉スペクトラム症やADHDに抑うつ症状を伴うことがありますし、自閉スペクトラム症に強迫症状や社交不安などの不安症状を伴うこともあります。これらの症状に効果を示す可能性はありますが、逆にいらいらとした気持ちを高めたり、死にたい気持ちが高まることもありますので、注意が必要です。自閉スペクトラム症に伴う強迫症状には、抗精神病薬の方が有効なこともあります。気分の波やいらいら、感覚過敏などを伴う場合に使用されることがあります。気分安定薬の多くは抗てんかん薬としても使用されます。一般的に使用されるベンゾジアゼピン系の抗不安薬や睡眠薬は、脱抑制といって、興奮を強めたりすることがあるので、特に小児では避けられることが多い薬剤です。自閉スペクトラム症に伴う不眠には、メラトニンの有効性を示す報告が多くあります。メラトニンは覚醒と睡眠を切り替えて眠りをうながすホルモンです。日本では、メラトニン受容体に作用するラメルテオン(ロゼレム)が使用可能です。ベンゾジアゼピン系でない薬剤では、オレキシン受容体拮抗薬であるスボレキサント(ベルソムラ)が使用可能ですが、小児における有効性と安全性のデータが報告されていません。リスペリドン|PMDAピモジド|PMDAアリピプラゾール|PMDAラメルテオン|PMDAスボレキサント|PMDA発達障害の子どもへの薬物療法を行う際に気を付けたいこと出典 : 治療決定についての考え方は、昔と大きく変わってきました。以前は医師が専門的知識に従って治療方針を決定し、患者はそれに従うものでした。薬物療法についても、医師の指示通りに患者が薬を飲むかというコンプライアンス(服薬遵守)が問題とされてきました。近年では、医師は専門的知識に基づいて治療決定に必要な情報を提供し、患者がその方針を決定するものに変化し、その方針への積極性もアドヒアランスという言葉で表現されるようになっています。子どもの場合、法的には保護者が意思決定を行うことになりますが、保護者が決めた意思決定に子どもを従わせるというのは現実的にも不可能なことです。最近では、子どもにおいても自己決定を尊重し、子どもには子どもにわかる範囲の最大限の説明を行い、積極的な同意(アセント)を得ることが求められています。その子どもがわかる範囲というのは、その子の年齢だけでなく、知的な水準やそのパターンによっても異なってきます。病名や薬剤名を伝えるというよりも、その薬がどのような影響(効果、副作用、日常生活に期待される変化)をもたらし得るのか、実際にどのような薬剤(色、味、剤型など)なのか、いつまで服用するのか、など、わかりやすく説明し、子どもの意思を最大限尊重する必要があります。副作用のモニタリングも大切です。とはいえ、発達障害の診療に訪れる子どもは、すでに「お注射はされない」「お話だけ」などと説得されていることもありますし、検査が苦手な子も多く、専門医療機関が少ない現状の中で、子どもに嫌われたくないという医療機関側の思いも相まって、本来期待されるよりも少ないモニタリング頻度になっていることが多いでしょう。それらのモニタリングも含めて治療の枠組みとして説明しておくことが大切かもしれません。一方、モニタリングは採血や心電図など、本人の負担のある検査ばかりではなく、体重、脈拍、血圧、日々の様子など、さまざまな観察で行うべきものもあります。その点についても親御さんと医師で話し合っておく必要があります。まとめ発達障害の治療において、薬物療法だけですべてが解決することはありません。解決したい子どもの行動の成り立ちを医師と家族が一緒に見立て、環境調整や行動療法などと組み合わせることが大切です。いま何のために薬を飲んでいるのか、子どもと保護者、主治医が目的を共有し、その後の効果と副作用を見極めながら、薬物療法を継続していくか否か、意志決定していく必要があります。
2018年04月02日我が子の取扱説明書「サポートブック」Upload By 楽々かあさんこんにちは。楽々かあさんこと、大場美鈴です。うちでは、通常学級・支援級の担任の先生に、発達障害のある長男のことを詳しく知って頂き、集団生活の中でのパニックやトラブルを事前に予防したり、困ったときの伝え方のコツを伝えるために、「サポートブック」を作って渡してきました。「サポートブック」とは、いわば「我が子の取り扱い説明書」のようなもの、と思って頂けたらと思います。(※今回ご紹介するのは、私の自作の「楽々式サポートブック」のフォーマットが前提ですが、支援機関や行政機関等でも配布されています。ご家庭のニーズに合ったフォーマットのものをご使用になるといいでしょう)それを毎年の担任の先生に渡しながら、試行錯誤で学校と連携し、小学校時代をなんとか乗り切ってきました。ただし率直に言うと、「発達障害」という言葉がようやく広まったばかりの現在の日本では、残念ながら、まだまだ「レッテル貼り」と背中合わせの面があるようにも感じられます。それでも、発達障害のある子の困り感やその具体的な対応は、こちらから言わなければ伝わらないこと・気づかれないことは沢山あるように思います。特にうちの長男は、知的・言葉の発達面で大きな心配がなく、一見「フツーの子」と見分けがつきにくいタイプのため、通常学級の中で「障害」として伝えるメリット・デメリットの間で悩みながら、迷いながら、私も歩んできました。それでも、長男にとって環境との段差の大きい時期は、学校で注意や叱責を受け続けたり、友だち関係でつらい思いをしたり、授業中を無為にぼーっと過ごし続けるよりは、キチンと「形にして」対応を伝え、サポートをお願いしたほうが良いと判断したのです。その伝達手段の一つが「サポートブック」でした。では、その具体的な内容を、うちの実物の写真とともに、著書『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母の毎日ラクラク笑顔になる108の子育て法』より転載し、【特別公開】致します。Upload By 楽々かあさん私たち親子の「サポートブック」の内容と渡し方のコツ学校とよりしっかり連携したい、毎年の担任の先生にノウハウを引き継いで欲しい、という場合「サポートブック」を作って渡してみるといいかもしれません。「サポートブック」は、支援者(担任の先生や支援機関のスタッフさんなど)に我が子をサポートしていただく場合に、具体的な対応や話のきっかけのヒントになる、子ども本人の情報をまとめたものです。私が作った「楽々式サポートブック」では、次のような内容を必要に応じて記入します(サポートブックの記入内容は配布機関等によって異なります)。Upload By 楽々かあさん①プロフィール: 名前、生年月日、家族構成、住所、緊急連絡先、かかりつけ医、相談先・支援機関②発達の特徴・特別な個性: 診断の有無、診断名、投薬の有無、薬名、発達・知能検査の有無、言葉の心配の有無、知的な心配の有無、多動性・衝動性・不注意性の有無、学習の困りの有無、感覚の過敏性の有無、言語理解の特徴、その他発達上の心配③検査結果のまとめ: 検査の種類、実施機関、検査年月日と当時の年齢、IQ値、特に優れた項目、特に心配な項目、全体的なバランスや発達の特徴、主治医または臨床心理士等の意見・助言のまとめ(またはコピーを添付)④人間関係MAP: 家族、同居・別居の親族、本人が心を開いている友人、よく トラブルになる友達、頼れる先生や近所の人など、人的な援助資源の書き込みMAP⑤発達の凸凹~体質的な得手・不得手〜: 得意な行動・作業、苦手な行動・作業⑥いいところリスト: できること・がんばっていること⑦すごいところリスト: 特技・とても詳しいこと⑧好き・嫌い: 好きなこと・もの、嫌がること・もの、落ち着くこと・もの⑨パニック・問題行動記録: いつ、前の状況や要因、本人の行動、その時の対応⑩サポートの必要レベル: 生活面・学習面・社会面のサポートの必要性の程度⑪サポートテクニック集: 本人のつまずき、その困りの理由、サポート方法(家庭で実際に効果があり、学校でも対応可能なアイデアを、具体的な実例や声かけ例で書く。必要なら写真も添付)⑫引継ぎ時のサポートブック取り扱いの希望: 進級時等の引き継ぎの希望などUpload By 楽々かあさん検査結果などの実際の資料を添付したり、第三者にチェックしてもらえると、説得力があり、信頼性の高いものになります。そして、先生と子どものコミュニケーションのヒントとなるよう、少しでもできていること、がんばれていること、いいところ・長所や、特別な才能のあるところなど、ポジティブな情報は必ず入れます。子どもの心配な面については、「行動・困り」でみるようにします。「ワガママ」といった人格的な表現は避け、どんな具体的な行動が心配なのか、その背景にはどんな発達上の困りがあるのか、を書いていきます。お母さんの育児テクニック・うちの子ノウハウは、対応の「実例・具体案」として伝えます。声かけなどもできるだけ具体的な台詞を書き、写真も添付したりするといいと思います。Upload By 楽々かあさん進級等で担任の先生が変わっても支援のノウハウを活かして欲しい場合は、直接担任の先生個人に渡すのではなく、まず、特別支援コーディネーターやスクールカウンセラーなど、発達障害に理解の深い先生にアポイントをとって「サポートブックを作って渡したい」旨を相談し、内容をチェックして貰うといいと思います。担任の先生に渡す場合も、できれば管理・指導的立場の先生にご同席いただき、一緒に説明しながら手渡せるといいと思います。これは、継続的なサポートをお願いするのと同時に、担任の先生1人に過大な負担を強いることを避けるためでもあります。Upload By 楽々かあさん家庭での対応はあくまで「参考」ですので、学校の集団教育の中ではそのまま取り入れるのは難しい場合もあります。私は、あまり多くを期待し過ぎず、実際の状況に合わせて、先生自らの判断にお任せする気持ちで渡しています。「サポートブック」は、我が子をサポートして貰うことと同時に、支援者である先生もサポートするもの、という視点を持って作ると、学校と家庭がお互いにサポートし合う、良好な連携関係につながって行くと思います。(以上、『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母の毎日ラクラク笑顔になる108の子育て法』p.226-p.229より転載)本文出典:「発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母の毎日ラクラク笑顔になる108の子育て法」p.226-p.229より「サポートブック」を先生に渡して、実際どうだったの…!?出典 : では、ここからは更に一歩踏み込んで、「ぶっちゃけ、どうだったの?」という実際の結果と、率直な私の意見です。先述の通り、うちでは、サポートブックを記入したら、まず内容を一度スクールカウンセラーの先生にもチェックして頂きました。私の親としての想いはどうしても強くなりがちなので、第三者の客観的な意見も伺えればベターです。そして、事前にアポイントを取って面談をお願いし、特別支援コーディネーターの先生同席の元、その年の担任の先生に渡しました。面談のタイミングは、新学年のクラスに早めに慣れるためには、1学期の早いうちがいいのですが、新しいクラスへの子どもの反応と、担任の先生の個性や教育方針などを見極めた上で、ご判断するのがいいかもしれません。ですから、最初の授業参観の後や、家庭訪問の時期などが良いのではないでしょうか。そして、実際に毎年渡してみての結果ですが…正直に言うと、先生によって受け止め方に差があり、子どもにとって、プラスにも、マイナスにもなる可能性があると言えると思います。うちの場合、1.快く受け取り、よく活用して、自分でも工夫を考えて下さった先生2.パラパラと目を通す感じで、参考程度にして下さった先生3.一切目を通さず、かえって「できない子」「面倒な親」として扱われてしまった先生…がいます。私は「お母さんがその子の最大の専門家」だと思っていますが、教育者として自信のある先生程、現実的には素人扱いされがちなお母さんの家庭でのノウハウは、すんなりとは受け容れにくいのかもしれません。但し、3.の先生の場合、私は後に、近隣の福祉系大学の発達相談室に、知能検査の結果や長男のテストやノートを持参して相談にゆきました。そこで、臨床心理士でもある大学の先生からご助言を頂き、それを自分で文書にまとめて「◯◯大学の◯◯先生が、こうおっしゃってました」と伝えると、急に動いて頂けました。例え、同じことを伝える場合でも「相手によっては、伝え方を変えたほうが良い」という教訓です。サポートブックに限らず、学校連携で「うまくいかないな」「なかなか分かってもらえないな」と思った時、無理にお母さん1人でなんとかしようとすると、ただでさえ大変な育児の上に、更に消耗してしまいます。また、子どもが先生と親の板挟みになってしまうのも避けたいところ。ここは、管理職の先生やスクールカウンセラーに間に入って頂いたり、医療・福祉教育の専門家や第三者の外部機関・支援団体、周りの人達(パパや同じクラスのお母さん達など)にも頼るなど、省エネしながら、上手に「別ルート」を考えましょう。出典 : もちろん、サポートブックが長男にとって良い結果につながることもありました。1.の先生は、元々工夫するのが好きなタイプ。サポートブックをヒントに、以前のコラムでご紹介した「ファイルに紐を一本つけて、プリントくちゃくちゃ対策」のアイデア等、ご自身でも柔軟にいろいろと考えて下さったようです。2.の先生は、真面目で根気強いタイプ。サポートブックの対応そのままではないけれど、「こういう子に伝わりやすい方法があるんだな」ということに気づいて下さり、ご自身でも発達障害に関する書籍を手に取ってみて、ご多忙の中勉強して下さったようです。ですから、うちの試行錯誤の経験上言える事は、集団教育の中では家庭とは状況も違い、担任の先生にも個性や教育方針があるので「ダメ元」で渡してみる。それで少しでも何かのきっかけになればラッキー!もし、うまく行かなければ、別のアプローチをしたり、家庭でフォローすればいい…くらいの気持ちでいるといいと思います。そして、子ども・周りのお子さん達の成長や関係性、授業内容、環境の変化などによって、困っていることが変わったり、できるようになったこともあるので、うちではサポートブックは毎年学年末に回収して、情報の見直し・更新をしました。また、グレーゾーンの次男の場合は、もう少し簡潔にまとめた、紙一枚の「サポートシート」をワープロ打ちの文書で作成し、それを元に面談で相談させて頂くと、話がスムーズに運びました。(詳しくは、文末「楽々かあさん公式HP」または、本書の続編「発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て法」p.186-をご参照下さい)その上で、「成長に伴い、やや落ち着いてきた」「サポートや療育で、できることが増えた」など、比較的集団教育への適応が良くなってきた場合、「もう大丈夫」と思ったら「特別扱いが必要な子」というイメージを固定化させないためにも、サポートブックは返却して頂くのがいいと思います。そして、長男が6年生の時には、中学以降を見据えて、学校生活上で困った事があれば「自分で周りの人に相談できるように」練習したかったので、「サポートブックはナシ」で挑戦してみました(私自身は、長男の話や意思を聞きながら「誰になんて相談したらいいか」教え、裏で根回し…いえ、補助的にフォローしました)。大場美鈴/著「発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て法」2017年/刊/ポプラ社どうか、子ども・親・先生に、社会全体でサポートを…出典 : 「子どもも頑張っている、親も頑張っている、先生も頑張っている…それなのに、なんでうまくいかないんだろう」「その子のために何かしてあげたい、という気持ちは同じなのに、なんで親と先生がスレ違ってしまうんだろう」…私は、そんなもどかしさを、今だにまだまだ存在する学校側の理解不足や対応の遅れに直面した、お母さん達からの切実な訴えのお声と、毎日お疲れ気味の現場の先生方の姿を目にする度に、痛切に感じます。「個人の努力」でできることには限界もあります。私は、「サポートブックが、子どもと親と先生をつなぐ架け橋になれれば…」と願っています。ですが、本来公教育があるべき姿は、サポートブックがなくても、どんな学校でもどんな先生でも、発達障害のある・なしに関わらず、どんな子でも安心してお任せできる状態だとも思っています。どうか、学校全体、地域全体、社会全体で、毎日本当に頑張っている子ども・親・先生を支えてあげて下さい。楽々かあさん公式HP「楽々式サポートブックの書きかた・渡しかた」大場美鈴/著『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母の毎日ラクラク笑顔になる108の子育て法』2016年/刊/ポプラ社
2018年03月20日新卒時代、会社で出会った「暗黙のルール」の壁。周りを観察して「具体的なルール」に翻訳出典 : 新卒で入社した会社には、数多くの「暗黙のルール」がありました。誰も教えてくれないのに、ルールを守らないと孤立してしまいます。ですが、発達障害があると、「暗黙の」ことを察するのが、困難なのです。ちなみに、私が新卒で入った会社ではこんな「暗黙のルール」がありました。■若い考えを取り入れたいと言われるけれども実際に発言すると聞いてもらえないことが多い■打ち合わせや会議では議論になるような考えを言ってはいけない■周りの人たちに対して敵意がないことを示すために適度に雑談をする必要があるルールを理解できていないと、自分は普通だと思って行動しても批判されたり、社会人として失格だ!というレッテルを貼られてしまうこともあります。せっかく頑張って仕事をしようと思っているのに、ちょっとした意識のずれで同僚や上司とうまくいかなくなってしまうのは残念です。「何かルールがありそうか」周りの人たちの行動を見てみましょう。話を聞いてくれそうな先輩や同期がいたら、「こういうことってやっちゃいけないんですか?」なんて聞いてみてもいいかもしれません。「暗黙のルール」を「具体的なルール」に翻訳することで、自分も周りの人も気持ちよく仕事をできるのではないかなと思います。1日中、同期と一緒の寮生活。いつの間にか集団から外れ、迷惑をかけてしまう…予防策は?出典 : 私が新卒で入った会社では研修期間の数か月は同期の人たちと寮生活を行っていました。そこでは同期全員がいつも集団で行動していました。このころは朝ごはんを食べるときから帰宅後、そして休日もずっと全員一緒に行動しなければならないような雰囲気がありました。そうしないと孤立してしまい、今後の会社生活にも悪影響を与えてしまうという雰囲気がありました。会社の寮ですから、仲がいい友達とばかり一緒に行動する学生時代とは違って、いろんなタイプの人がいます。加えて、自分の行動を自分で決めることができないことにストレスを感じていました。その上、何も意識していないと、集団から外れてどこかにいってしまうことが多いようで、よく同期に迷惑をかけていました。「これから何をするのかよくわからないまま移動する状況が怖い」と感じることも多かったと記憶しています。現在もこうした傾向は多少残っています。そこで、集団から外れてどこかに行こうと思ったときには近くの人に一声かけたり、これから何をやるのかがよくわからない場合には、何をやるのか知ってそうな人に聞いてみるなどの対応策をとり、トラブルにならないよう気をつけています。判断基準や行動パターンが、周りの人たちと違うことに気づく出典 : 入社して半年くらいたったころ、自分の判断基準や行動パターンが、周りの人と違うことに気づきました。例えば交流を深めようと思った場合、当時の私は相手の部屋や自分の部屋でじっくり話すようにしていました。しかし、周りの人たちはお酒を飲みに行ったり焼き肉を食べに行って、そこで話すことが多いようです。また、同期の人たちはお互いに何も話していなくても意思の疎通が取れているようで、私からすると事前になにか決めごとをしているのではないかと思うくらい状況ごとの行動が一致していました。何か具体的なエピソードがあるわけではないのですが、日々一緒に行動している中で少しずつ「なんだか違うなぁ」と思うことが積み重なっていき、それが不安の原因になっていました。みんなが楽しがっていることが自分は全然楽しくなかったり、面白いなと思うポイントが全然違っていたり、つらいなぁと思うことが違っていたりと、その違いを痛感するようになっていきました。別の人間なんだから、他の人たちと感じ方が違っていても問題ないと今なら思えますが、当時は「どうして自分だけがこんなに違うんだろう…」と悩んでいました。自分の思う「当然」で答えてしまうと、話がかみ合わなくなる出典 : 上司「凸庵くん、これどうやって実装したらいいと思う?」私「○○のようにするのがいいと思います」上司「どうしてそう思ったの?」私「それが一番いいと思ったからです」これは新卒のころによくあったやり取りです。メールなどで連絡するときにも、同じような状況でした。上司の「どうしてそう思ったの?」という質問は、私が「○○のようにするのがいい」と思った理由を聞いているのですが、当時の私はそれをよくわかっていませんでした。私が答えるべきだったことは「今後機能を増やしていくときにこの方法なら修正が簡単になるとおもったからです」ということでした。でも、相手が何を聞いているのかを想像することは当時の私には難しいことでした。「自分がなぜそう考えたのか。相手は自分の考えの何を知りたいのか」…そういう意識がそもそもなかったのです。自分の中では当然だと思っていることは、他の人がまったく思いもよらなかったことかもしれませんし、実は問題があることがわかっていてすでに却下された考えなのかもしれません。自分の考えや、なぜそう考えたのかの理由を伝えられれば、答え合わせをすることができます。その結果自分の知識が増えたり、お互いにどんなことを考えているのかを知ることができます。最近の私はこれがとても面白いと思うようになってきました。自分の知識を深めることができるし、それにより自分と違う考えの人がいることを歓迎することができるからです。珍しい経験をしていて他の人と違う考え方をしている方は、私と同じように自分の考えを伝えるところでつまずくことが多いのではないかと思います。しかし自分の考えやその理由を相手に伝えることができるようになると、他の人と違う考え方をしていることそのものが強力な武器になります。とても難しいことだと思いますが、自分がなぜそう考えたのかを自分なりに伝える訓練を続けてみると、それまで見えていなかった道が開けるかもしれません。人と違う特性は、ターゲットにされやすい。心に傷を負う前にすべきことは…出典 : もう一つ気づいたことは、人と違うところを指摘したり馬鹿にしたりして面白がる文化が日本にはあるようだということです。周りと少し違う特性がある人は、社会生活を送る上で、このターゲットになりやすいと思います。私には考えるときに人差し指を立てて唇をなぞるクセがあります。ある日私が考え事をしていたとき、当時の上司が「なんでそんなことしてるの?」といいながら私のマネをして笑っていました。周りの人たちもそれをみて笑っていました。それ以降、私がこのクセをしてしまうと、他の人がマネするようになりました。その後、飲み会でもネタにされ、どんどん広がっていきました。その後数年して転職をし、ネタにされることはほとんどなくなりました。私自身そういうマネを無視できるようになったこともあるのかもしれませんが、何を面白いこととするかは会社の文化によるところが大きいのだと思います。もし自分がいろいろやってみても辛いなと感じる職場なら、転職などで環境を変えてみるのが有効なのだと思います。環境を変える活動はとてもエネルギーを使いますし、必ずしもうまくいくわけではありませんが、周りの人たちの意識や考え方を変えたり変わるのを待っているより現実的な方法です。心が元気ならいくらでも次の職場を探すことができますが、一度心に傷を負ってしまうと私のようにうつ病を患ってその後何年もその影響を受け続けるかもしれません。そうなる前に他の環境へ逃げてもいいと私は思います。発達障害のある新入社員が、会社でうまくやっていくための4つのアドバイス出典 : 社会人となると、学生時代にくらべて、さまざまな年齢層、さまざまなバックグラウンドを持つ人と一緒に仕事をすることになります。人と違う特性のある人の場合、つまづいてしまうことも多くあると思います。私自身、試行錯誤中のところもあり、すっきりと解決策を紹介できない部分もあります。ですが、次のポイントを意識して生活すると、トラブルを減らすことができるのではないかと思います。■会社の「暗黙のルール」を「具体的なルール」に翻訳する■トラブルを起こしがちな行動パターンに気づき、予防策をはる■自分の「当然」は人と違うかもしれないので、なぜそう考えるのかを言葉にして説明する■いじめのターゲットにされたら環境を変える今回のコラムでは、私が新卒時代につまづいたことと、そこから学んだことを紹介しました。これから社会に出る人や、社会に出たものの困っている人の力になればうれしいです。
2018年03月17日まさか相手の方が、世界標準だったなんて出典 : 歳で発達障害と診断されたとき、最初は「ああ、今まで仕事がうまくいかなかったのは自分のせいじゃなかったんだ」とホッとしたことをよく覚えています。ですが、まだ「もっと頑張れば大丈夫」と軽く考えていたんですよね。その後、2社で一般雇用で働き、2社目でカミングアウトせざる得ない事態に追い込まれます。そして、「自分の能力はこの会社では通用しない」「カミングアウトしても自分の気持ちや個性が理解されない」という現実をつきつけられて退職することになり、すっかり自信を失ってしまいました。子どものころから周囲に対して違和感を感じながらも、「どうしてわかってもらえないんだ、間違っているのは向こうの方だ」と信じ続けて自分を押し通し、「いつか自分が認められる場所を見つけてやる」と挑み続け『絶対にあきらめない』を信条としてきました。だけどこの一件で、自分は”発達障害があるマイノリティーな存在”で、相手の方が世界標準だったのだと腑に落ちたとき、心がポッキリと折れてしまったのです。だけどそれが、私にとっての障害受容の本当の始まりでした。長く険しい道のりでしたが、その道を歩むことで、自分の中に芽生えたものがあったのです。人生立ち往生状態の私が、救いを求めてやってみたこと出典 : ポッキリと折れた心をさすりながら障害福祉サービスを受け始めたものの、「私は支援を受けていい存在なんだろうか」と悩み葛藤する日々が始まります。このときの自分はまだ「自分の障害なんてそれほどのものではないのではないか」と低く見積もろうとしていたのです。今から思うと、まだ自分の障害を受容できずあがいていたのだなぁという感じです。そこで始めたのが、Twitterで発達障害があることを公言している人を片っ端からフォローして、そのつぶやきを読んでいくことでした。私と同じような立場の当事者たちの言葉に触れていると、ゆっくりとしみこむように仲間たちの苦しみ、悩みが伝わってきて「ああ、私もつらかったんだ」と改めて認められるようになっていったのです。人の物語を読むことで、自分の心に問いかけることができる。その物語を通して自分と対話し、理解を深めていくことができる。そして、私自身も自分の気持ちを整理するためにブログに自分の気持ちを書き続けました。そうすることによって、ゆっくりと自分の気持ちや今までの道のりを見つめることができました。これは今振り返っても、必要なプロセスであり、大きな効果を得られたと感じています。ヘルパーさんとの関わりが「人との違い」を教えてくれた出典 : 私の場合、Twitter・ブログと、自身を見つめる機会はインターネット上によるものが色濃くありましたが、それだけではあません。料理と掃除を2人のヘルパーさんに手伝ってもらっているのですが、どちらも年齢が近くて友達のような感覚で接してくれ、最初は緊張していた私もだんだん心を許しておしゃべりを楽しめるようになりました。発達障害のある私にとって、そのままの自分を出してもバカにしないで受け止めてくれる身近な存在が、このヘルパーさんでした。仕事のトラウマですっかり他人が怖くなっていたのですが、日によってテンションが極端に違っても、思うがままに自分のペースで話題を進めても嫌な顔一つしない2人に、次第と心を許せるようになっていったのです。ソーシャルワーカーさんに聞いた話ですが「人とのかかわりを深めていくこと、おしゃべりをするということ」も、重要な支援となるのだそうです。障害のある人が孤独に陥らないようにしたり、社会とのつながりを途切れさせないためには、おしゃべりが大事なのだそうです。そんなある日、ヘルパーさんに料理をしてもらっているときのことです。ヘルパーさんにレシピを見せると、ざっと1回読んだだけで料理をする姿にふと疑問を覚えました。「どうして、1回見ただけでつくれるの?」「だいたいこんな感じだなってわかったらできるものなの」「えっ、料理を始めてすぐのころから?」「違うよ、最初はまじめに読んで計ってつくるけど、慣れてきたらできるようになるの」「私は料理を始めてから20年以上経った今も、レシピを何度も何度も読み返さないとつくれないよ?みんなが普通なの?」驚いた私は、「普通の人がやる掃除ってどういうものか、見せてほしい」と頼みました。すると、丁寧ではあるものの、細部までこだわりすぎていないことがわかりました。動かせるものだけスッとよけて、さっときれいに掃除を終わらせてしまうのです。「隅っこの座椅子は毎回よけたりしないの?」「そんな大掃除みたいなこと毎回しないよ。たまにでいいのよ」そんなふうに家事を通じて、他の人たちの能力や力の入れ方を知っていきました。それは「自分と人との違い」を知るということでもあったのです。それをきっかけに、他にもたくさん「人との違い」があるんだろうなと初めて実感することができました。40代になってはじめて「障害者」と診断されるまで、「自分と人が違っている」ということなんて思いもしなかったのです。私にとってこの発見は人生がひっくり返ってしまうような大発見だったのです。生きていくうえでの前提条件がガラリと変わってしまったのですから。「人との違い」を知ると、自分のことが見積もれるようになってきた出典 : 「自分と人との違い」を知ると、「あの仕事はここでつまづいたんだ」「この仕事は私の特性から考えれば適性がなかったんだ」という風に、できないところやつまづきどころが理解できるようになってきたのです。また、家事にも仕事にも疲れ果てながら、なんとかやってきた自分を認めることにも繋がりました。とはいえ、これは正直つらいことでした。「頑張ればできる」と思っていたのに、「できないんだ」ということがわかってしまったのですから。「あきらめない」が信条の私が「あきらめる」ことを受け入れなければならないと知ったときの絶望感は、とても大きかったことをよく覚えています。自身の状況をソーシャルワーカーさんに話すと、こんなことを言われました。「やっと現実検討能力がついたのね。」現実検討能力というのは、自身の状態や能力を客観的に評価する能力のことです。例えば「私は有名大学を出ているし語学もできる。その気になれば大学で教鞭も取れる」といいながら、実際は何の仕事も続かないという人は、自分の中の認識と現実のかい離が大きく、現実検討能力が低いといえる、ということだそうです。そういわれてみると、私はずっと自分の現実の能力を見ようとせずに「資格さえ取れば活躍できるはず」「もっと自分に合う仕事があるはず」と夢を見続けていました。しかし発達障害と診断され、否応なく自分と向き合うことになります。これまでの考えや、自分の信条を覆され、心も折れてしまった自分。でも、 だからこそ自分のことを見つめ直し、障害を受け入れ、自分の姿を客観的に見られるようになったことで「自分のことが見積もれるように」なってきたのでしょう。正直を言えば「この年でやっと現実を知ってどうしろと?」という気持ちがないわけではありません。でも、私にとっては、今がそのときだったのです。だからこの瞬間を大切にして、ゆっくりでいいからまたいつか歩き出したいと思っています。
2018年02月28日支援の本質ってなんだろう?出典 : こんにちは。『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て法』著者・楽々かあさんこと、大場美鈴です。今日現在、「発達障害」などの言葉の認知度が上がり、通級指導教室や特別支援学級を希望する児童・生徒が急増し、学校現場がそれに追いつけない現状があると聞き及んでいます。そのため、支援級・通常学級の先生方への、発達障害に対する充分な理解と実践ノウハウの普及、教育現場への予算と人材の確保は、早急な対応が求められていると思います。また、2019年からは、教員の養成課程でも特別支援教育に関する単位を1単位以上取得することが義務となるなど、充分ではないながらも、制度上前進している部分もあります。しかし、これらは切実に必要なことですが、発達障害はあくまでその子の個性の「一部」であり、また、ASDとADHDとLDが複合している場合など、タイプ別のマニュアル対応だけでは難しいかもしれません。それから、通常級で「みんなと違う」特別扱いを気にする・されるなど、気持ちの問題もあります。そして、発達障害のある子だけへの対応では解決が難しい、いわゆる「フツーの子」達が抱える根深くて深刻な問題もあり、実際の教育現場の実情に合った経験則や実践知も必要なのです。その中で、うちではこれまで毎年学校の先生方と連携しながら、長男への配慮をお願いし、これまでの6年間を手探り状態で歩んできました。ただ、そんな長男が6年間で1度だけ、「支援要らず」だった学年があります。それは、A先生が担任だった、通常学級の2年生のとき。A先生の「通常運転」だけで、長男は1年間落ち着いて過ごせたのです。私も、特別な配慮をお願いしたり、面談の機会を作っていただくこともなく、連絡帳のやりとりも最小限で済み、安心してお任せすることができました。今、変わりつつある公教育を前に、私は時々、そんなA先生を思い出しては「支援の本質」について、考えさせられるのです。A先生が、毎日当たり前のように、どんな子にも自然に行っていたスゴ腕の職人技を、私はここでみなさんにお伝えしたいと思います。「A先生が怖くて学校行けない!」息子を前に先生が取った行動は…出典 : 年生に進級し、担任の先生と初顔合わせの始業式の日。長男が泣きながら帰るなり「A先生が怖い!おれ、もう学校行けない!」なんて言うので、「どんなヒドイ先生に当たったの!?」と、私は内心焦りました。実は、幼稚園児時代から小1まで、長男はずっと優しくて若い女性の担任ばかり。「先生=優しい女の人」という強い思い込みがあり、そこに人生初の男性の先生。しかもA先生は、超ベテランのご年配で、お坊さんのようによく通る声に、日焼けしてシワの刻み込まれた貫禄十分なお顔立ち。その第一印象にびっくり仰天した長男は、「いつもと違う見慣れぬモノ」に、パニックになってしまったのです。翌朝、子羊のように震えて「ムリ!怖い!」と座り込んで、玄関から一歩も動けず、欠席してしまった長男。私は学校に電話して、A先生に状況をそのまま正直に伝えました。すると、A先生は慌てる様子もなく「分かりました」と、短いやり取りだけで電話を切ったのです。この対応には私も少々不安になりました。ところが、その日の夜。玄関のチャイムが鳴るので出てみると、なんとA先生がにこやかに立っているのです。そして先生は「◯太郎君と、ちょっとだけお話させて下さい」と私に告げました。それから、長男と先生は玄関先で10分程度雑談をしました。この短時間の間でA先生は、長男の緊張と警戒心を魔法のように解いてくれたのです。長男の笑い声が聞こえて来た頃、A先生は「じゃあ、明日待ってるよ」と軽く長男の肩をポンと叩き、また親の私を責めるような様子もなく、「遅くにすみませんでした」と、ニコリと笑ってさっと帰っていきました。後から「A先生と何話してたの?」と聞くと、「うーん、別に。家で何するのが好きかとか、そんなこと。…あとね、A先生も子どもの頃、学校が怖くて、イヤだったんだって!」と、ちょっと嬉しそうに話す長男。A先生は、短い雑談の中で、長男の気持ちにしっかり寄り添って下さったのです。「学校に来なさい」と強制したり、長々とお説教することもなく、今の「学校が怖い、好きじゃない」という長男の気持ちを、否定せずにそのまま受け止めてくれました。それが、頑なだった長男の心の扉を、ほんの少し開いてくれたようでした。長男は「いやあ、A先生があんなに面白い人だったなんて…」と、見た目の印象だけで決めつけてしまったことを、少し恥じらっているようでした。翌日、長男は無事登校することができました。それからの1年間、支援要らずで、落ち着いて過ごすことができたその後すぐ、私はA先生に、長男には(当時の基準で)アスペルガー症候群の診断があることを伝えましたが、A先生は「そうですか。まあボチボチやっていきますワ」とだけ言うだけ。特に特別支援について詳しい様子もなく、最初のうちは正直不安でした。ところが私の不安をよそに、最終的には何事もなく1年間無事に終えることができたのです。ここで、長男に特に良かったと思われる、教師生活推定約35年・A先生の「スゴ技」を、私なりに分析しながら、紹介させて頂きますね(A先生の方法が全てのお子さんに合っている訳ではないでしょうが、ご一考の価値はあると思います)。出典 : あまりに当たり前のようで、見落としがちなことかもしれませんが、A先生は、・大きめの落ち着いた声で、分かりやすい言葉で、ゆっくりひとつひとつ話す…ことを、毎日ごく自然にしていました。たったこれだけで、「人の話を聞かない」などと注意されがちな長男も、ずっと聞き取りやすくなります。長男は、早口で高いトーンの声や、矢継ぎ早に次々指示を出されると、それだけで「聞こえなく」なってしまうのです。実は、その年の担任の先生の「声の聞き取りやすさ」次第で長男の成績も上下する程です。また、A先生は「声のトーンと表情の使い分け」も上手でした。長男は気持ちの切り替えや、人の表情から微妙な感情を正確に読み取ることが苦手なため、悪気はなくても、つい調子に乗ってハメを外してしまったり、夢中になると周りの状況に気づかずに、集団の中で目立つ行動を取って、何かと注意されがちに…。ところがA先生は、普段は目尻を下げて穏やかに接していましたが、長男が行き過ぎた行動を取ると、いかめしい表情と低く険しい声で、短い言葉でビシッと注意し、キッチリブレーキをかけるので、長男もハッと気づきやすいのです。また、クラスのどのお子さんにも、A先生はこのように接していたので、長男だけが何度も注意されて目立ってしまうこともありませんでした。出典 : 私が特に「神業だ!」と感動したA先生の行動は…・毎日、同じ時間・同じタイミングで行動する…ということ。A先生は、毎日キッカリ同じ時間に教室に入り、全く同じタイミングで子ども達から提出物と連絡帳を集めます。学校という場所は、感覚が敏感な子には、情報量が多過ぎて混沌としているように思えたり、「いつもと違うこと」が苦手な子は、毎日の天候の変化や様々な行事、クラスの子達の動きなど、予測できないことに不安や負担を感じやすいようです。そんな中、毎日同じことを同じ時間にする、A先生の安定した行動パターンは、長男に大きな安心感を与えてくれたようです。また、毎日同じタイミングで連絡帳を集めると、それが習慣として定着しやすく、うっかり忘れの多い長男でも、提出物を出し忘れることは、ほとんどありませんでした。また、A先生は感情も大変安定している方でした。少々元気のよい子どもたちをA先生が一喝する場面も見かけましたが、そこに先生自身の感情が巻き込まれることはありませんでした。子どもひとりひとりと先生が、日頃から信頼関係で結ばれているからこそ、時に厳しい態度でも、素直に受け容れられていたように思います。そして、子ども達が良くない行動をやめたら、何事もなかったように、いつもの「通常運転モード」に戻るのです。これらの安定した行動パターンは、実際にやってみると簡単にできることではなく、もはや「芸術」の域なのかもしれません。出典 : 先生は授業中、時折脱線しては、いろんな話を子ども達に披露して下さったようです。ユーモラスなA先生自身の経験談や身近な例え話は、なかなか教科書中心の授業では集中力が続かない長男も、興味を持ちやすかったようです。「A先生、釣りが好きなんだって。おれもやってみたい」なんて、言い出したこともありました。また、書字にやや困難さがあった長男が、大の苦手の漢字書き取りの宿題も、A先生は、いい意味でテキトーに、ぐるぐるっと大きなマルをつけるだけの大らかな添削で、細かなミスや字形の悪さには、片目をつぶってくれました。おかげで、一生懸命がんばっても字が上手に書けない長男にも、さほどプレッシャーにならず、毎日泣かずに宿題に取り組めるようになりました。そして、最初のうちは、A先生は長男を大きな声で注意せずにいてくれましたが、クラスに慣れてからは、長男だけを特別扱いすることはありませんでした。他のお子さん達と同じように、廊下を走れば「コラー!!」と、雷を落とされていたようです。でも、学年末の面談のときにA先生は「最近は、怒られてもケロリとしていて、また男の子達と校庭へ走っていっちゃうんですよ」なんて目を細めながら、どことなく嬉しそうに語って下さいました。このA先生のクラスでは、長男は「落ち着きのない問題児」ではなく、「ただの健全で元気な男の子」でいられたのです。出典 : そして、A先生は長男だけでなく、クラスのどんなお子さんにも同じように、大らかで肯定的な温かい目線で接していました。おかげで、どの子も素直にのびのびと過ごし、その年には集団から孤立しがちな長男にも、仲良しの友だちができたのです。実は、発達障害の診断のある・なしに関わらず、学校生活を送る上で障害となることがあれば、通常学級でも合理的配慮をお願いするのは、法的な根拠もあり、本来、堂々と主張して良いことなのです。ですが、現在日本では、発達障害への社会的な理解や支援体制が、まだまだ十分とまでは言えないようで、特に、通常学級の中で配慮をお願いすると、他のお子さん達から「◯◯君だけズルイ」などと思われてしまう場合もあるようです。いわゆる「フツーの子」であっても、子どもはみんな発達の途上にあることに、変わりないのでしょう。私は、障害のある子・方への配慮が当たり前の風景となる社会を望んでいますが、一方でそれぞれが必要とすることは違っても、どんな子も、大人から大事に特別に扱って欲しいと願う気持ちは、同じなのだと思います。支援の本質とは、ひとりひとりの個性や気持ちに寄り添い、信頼関係を築いて、子どもたち全てを肯定的な温かい目で、大らかに成長を見守ってあげること。本当の意味でのインクルーシブ教育とは、どんな子も特別で、どんな個性でも大事にしてあげること。…なんじゃないかな、なんて、A先生を思い出しては、私はいつも思うのです。変わりつつある教育の中で…出典 : そんなA先生は、長男のクラスを担任して下さった翌年、定年退職されました。今頃、毎日大好きな釣りを楽しまれていることでしょう。でも、ひょっとしたら、お父さんお母さんの懐かしい思い出の中にも、こんな先生に心当たりがあるかもしれませんね。こういった経験豊富な先生方は、それぞれ性格や教え方の違いはあっても、総じて大らかで、感情が安定している方が多いように思えます(勿論、ベテランだからといって、必ずしもうまくいく訳ではありませんし、お子さんとの相性もあるでしょう)。一方で、残念ながらこんな達人の先生方は、毎年、A先生のように、次々と定年退職されていく現実があります。日本の他の伝統産業と同じように、教育現場でも深刻な後継者不足・人手不足の問題が、今まさに現実になっているのを痛感する日々です。もちろん、若い先生の中にも、柔軟に新しい方法を取り入れて下さったり、発達障害について熱心に勉強して下さる方がいます。日本の教育は現在、過渡期にある特別支援教育だけでなく、いじめや不登校、親の経済力による教育格差、そして先生方の過剰な雑務や長時間労働の問題など、課題が山積みである以上、やはり大きく変わっていく必要があると私も思います。でも、そんな中で、日本の伝統的な教育制度の中で長く培われた、こんなに素晴らしい職人技と、どんな子も大らかに見守る温かい目線が、熱意溢れる若い世代の先生方にも、途絶えることなく受け継がれていくことを、私は切実に願ってやみません。
2018年02月24日「バレンタインって?」広汎性発達障害の娘に説明すると…女の子が夢中になるイベント…それはバレンタイン♡うちの娘も例外ではありません。初めて意味を理解したのは、娘が4歳の時。当時はしゃべりも理解力も、まだまだだったので、簡単な言葉と、絵で説明してみました。Upload By SAKURA「チョコを一人で作りたい!」5歳になった娘がやる気になった!?そして翌年、娘5歳。娘は、スーパーのバレンタインコーナーなどを見て、バレンタインが近いことに気づき、「早く作らなきゃ~!!私一人で作りたい!!」とやる気満々。4歳の時も、チョコレートは作りましたが、私がほとんどやったようなもの。一人で挑戦させたら、やり遂げることが、娘の自信に繋がるかもしれない。「やればできる」と思ってもらいたい!あげる相手はどうせパパ…失敗しても大したことはない(ひどい)…ということで、市販のバレンタインキットを使って、初めて一人で作らせることにしました。Upload By SAKURA娘がやりやすいように、準備できるところは?購入したキットには、材料がほとんど入っていたので、準備も楽。とは言っても、説明書の字が読めない娘。そこで私は、あらかじめ説明を読んで、説明絵を作ることにしました。順序を絵に描き、順番もわかりやすくするため、材料が入っている袋に番号を書きました。Upload By SAKURA「…(ああ~こぼれるッ)!」娘一人でやり遂げるために、お口チャックで見守ります娘に絵を見せ、ざっと説明すると、「よし!わかった!私一人でやるぞー!」と調理を開始しました。娘がやっている最中、私は最低限のこと以外は口を出さないようにしました。何度も手助けしたくなりましたが、ぐっと我慢…!手伝うこともせず、とにかく見守ります。それは、娘が「一人でやる」と言ったことを大事にしたいと同時に、一人でやることの大変さを理解してもらいたい、という気持ちからでした。口も手も出さないわけですから、もしかしたら取り返しのつかない失敗をする可能性もあります。間違えても大丈夫なように、予備もスタンバイしました。視覚優先で情報収集するという特性がある娘は、説明絵を真剣に見ながら、材料とにらめっこ。加えて真面目過ぎる性格が、功を奏し、一つひとつ確認しながら作業を進めていきました。Upload By SAKURA「できた!」大喜びの娘、でもちょっと待って…?Upload By SAKURA一時間ほどかけながらデコレーションまで終わらせ、冷蔵庫で固めて完成!初めて一人で作った娘は、できあがったものを嬉しそうに眺めていました。そして味見…味見…自分が作ったものがよっぽどおいしかったのか、味見が止まりませんでした(笑)貴重なチョコにパパ大喜び♡「あーさんのバレンタイン作戦」大成功なんとか守った残りをラッピングし、パパにプレゼント。初めて娘が一人で作ったチョコレートを、嬉しそうに味わうパパ。Upload By SAKURA半分以上、あげる前に娘が食べてしまったことは内緒です(笑)今年のバレンタインも、娘と相談し、お菓子を作る予定です。去年よりお姉さんになり、できることも増えた娘。今年のバレンタインはどうなるかな~!楽しみです!
2018年02月07日平成30年度「障害福祉サービス等報酬改定」のポイント出典 : この記事では、2018年2月5日に「平成30年度障害福祉サービス等報酬改定検討チーム(第17回)」で行われた、”平成30年度の障害福祉サービス等報酬改定の取りまとめ”について取り上げたいと思います。その中でも、特に発達ナビユーザーに関わりの大きい、放課後等デイサービスや児童発達支援を中心に、改定についてどのような議論があったのかや、予想される影響についてご紹介します。今回の報酬改定の主なポイントは下記のとおりです。■医療的ケア児・重症心身障害児への支援を促進■事業所の質の向上を促進■地域で保育・教育を受けられる体制を促進■障害の程度やサービス提供時間を踏まえた報酬へ■送迎加算の見直しは、次期検討事項に次に、それぞれの内容について、説明をしていきます。参考:平成30年度障害福祉サービス等報酬改定の概要 | 厚生労働省医療的ケア児・重症心身障害児への支援を促進出典 : 気管切開のために吸引が必要となるなど、医療的ケア児には医療的な支援が欠かせませんが、医療的ケアができる看護職員が在籍する事業所の数は、限られています。そのため、ケアが必要な子どもたちは事業所を利用することができず、自宅で家族が介護することが多いという状況がありました。今回の改定では、一定の基準を満たした医療的ケア児を受け入れるための体制を確保し、ケアが必要な子どものニーズに応じた支援が受けられるよう、看護職員の加配を評価する報酬体系が検討されています(看護職員加配加算/医療連携体制加算)。送迎サービスにおいても、吸引などのために職員を配置する場合に、加算が認めることが言及されています。また、医療的ケア児が体調を崩しやすいことを踏まえて、欠席時対応加算が拡充される見込みです。これまでは、予定していた利用者が急に欠席すると、事業所は収入がなくなってしまい、事業継続が難しくなるという問題がありました。この加算によって、医療的ケア児に対応する事業所の経営が安定化するというメリットがあります。加えて、通所が困難な医療的ケア児については、自宅への居宅訪問型児童発達支援が新設されることとなる予定です。また、重症心身障害児の指定児童発達支援を行う、利用定員10名以下の事業所については、報酬単価がアップする見込みであることが示されました。こうした報酬改定を受けて、重度障害のある子どもの支援環境の向上が望まれます。事業所の質向上を促進出典 : 児童発達支援を行う事業所では、人員について、現在は指導員又は保育士を配置することとなっています。ですが平成30年度からは、児童指導員、保育士、または障害福祉サービス経験者で、かつ半数以上が児童指導員又は保育士であることが求められる見込みです(ただし、すでに指定を受けている事業所については平成31年3月31日までの経過措置が設けられます)。※放課後等デイサービスについては平成29年4月1日から義務づけられています(ただし、左記時点ですでに指定を受けていた事業所については、平成30年3月31日まで経過措置期間)。児童発達支援・放課後等デイサービスの事業所の職員配置についての報酬も改定が予定されています。指導員加配加算が見直され、一定の基準を満たす事業所が指導員加配加算により評価した職員に加えて、1人以上のスタッフを配置した場合、つまり基準以上に手厚い人員配置を行っている場合に、さらに評価される見込みです。このとき配置される職員が、理学療法士などの専門職員の場合、児童指導員などの場合、その他の従事者の場合、それぞれで受けられる加算単価が異なります。専門性の高い職員は高単価である一方、資格のない従業員の場合は単価が低くなります。また、障害児へのきめ細やかな支援を強化するため、特別支援加算が見直されます。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・心理指導担当職員・看護職員など、専門職員を配置し、機能訓練や心理指導を行う場合の加算が、現状より高く設定されることになります。強度行動障害者養成研修を修了した職員を配置する場合の加算も新設されます(強度行動障害児支援加算)。このように、専門性の高い職員、強度行動障害についての知見がある職員を配置する事業所に対して、手厚い報酬となることが示されています。また、児童発達支援を行う事業所に対して自己評価結果の公表も義務づけられ、未公表の場合は15%報酬減算がされることが示されています(自己評価結果等未公表減算/平成31年4月1日から適用)。※放課後等デイサービスについては平成29年4月1日より自己評価結果公表が義務づけられています(ただし、左記時点ですでに指定を受けていた事業所については、平成30年3月31日まで経過措置期間)。自己評価結果等未公表減算については平成31年4月1日から適用。参考:「児童福祉法に基づく指定通所支援の事業の人員、設備及び運営に 関する基準について」等の一部改正について | 厚生労働省(平成29年3月31日)※放課後等デイサービスについて地域で保育・教育を受けられるような支援を促進出典 : 現在、児童発達支援や放課後等デイサービスの事業所などが、障害児が通う保育所や学校などと連携して個別支援計画の作成を行った場合、1年に1回を限度として加算がありました(関連機関連携加算)。今回、この回数が1か月に1回までとなり、支援計画作成による事業所への報酬が大幅にアップする見込みです。これにより、関係機関とのより緊密な連携が促進されると思われます。また、通所支援事業所を退所して、地域の保育所や学童クラブなどへ通うことになった場合の「保育・教育等移行支援加算」の新設が予定されています。上述の個別支援計画での連携なども実施しながら、障害のある子どもが地域の子どもたちと一緒に育つことを促進する施策と言えそうです。障害の程度やサービス提供時間を踏まえ、放課後等デイサービスの報酬にメリハリ出典 : 放課後等デイサービスの基本報酬については、全体的に引き下げの方向となりました。さらに、現在は一律となっている基本報酬について、利用する子どもの状態を踏まえた指標が設定されることになります。具体的には、食事・排泄・入浴及び移動のうち3つ以上の日常生活動作について全介助を必要とする障害児、もしくはコミュニケーションや自傷、他害など所定の項目について13点以上の重度の障害がある子どもの数が全体の50%以上かどうかで、報酬区分が変わることになります。この判定を誰が行うのかについては、まだ明らかにされていません。重度の障害児の利用が半数以上の事業所については3%強の引き下げ、それ以外の事業所については10%程度の引き下げとなる見込みとされています(平日、授業終了後に支援を行う場合、利用定員10名以下の場合の例)。また、サービスの提供時間が3時間未満の場合は、さらに報酬が下げられることになります。短時間のサービスを行っている事業所は、全体の12.8%にあたります。なお、この利用時間には、送迎時間は含まれません。つまり、軽度の障害がある子どもの利用が多い事業所や、短時間のサービスを行う事業所については報酬が下げられるため、経営に影響が出る可能性があります。放課後等デイサービスでの、送迎加算の見直しは?出典 : 今回の改定では、成人障害者が対象の、生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援の事業所については、送迎加算が見直されることになりました。ですが、放課後等デイサービスについては、今回は見直しや改定は行われず、次期改定時に検討・検証を行うこととされました。前回のコラム記事で、放課後等デイサービスでの送迎加算の廃止の可能性についてご紹介しましたが、今回の改定では現状維持となる見込みです。ただし「障害児の自立能力の獲得を妨げないように配慮するよう通知」するとしており、次期以降の見直しの可能性は残っています。障害のある子どもや家族への影響とは?出典 : 今回の議論では、より重度の障害のある子どもへの支援が充実するような報酬改定が示されました。今まで自宅で介護するしかなかったご家庭にとっては、地域の中でさまざまなサービスを利用しながら生活していく可能性が広がったと言えそうです。また、障害の程度が軽度の場合は、保育所や学童クラブなどへ通えるよう、支援を充実させていく方向が示されました。成人障害者についても、障害が軽度の場合は、仕事については作業所から企業での一般就労へ、住まいについてはグループホームから1人暮らしへ、障害が重度の場合は入所施設からグループホームへ…という風に、地域の中で生活していけるようにするという方向での報酬改定でしたが、これと同様の考え方だと言えそうです。障害のある子どもや大人が、生まれ育った地域の中で生き生きと暮らしていけるような支援が、この報酬改定を機に、より一層充実していくことが望まれます。
2018年02月06日思春期は、子どもから大人への変化を遂げる期間出典 : 思春期とは、子どもが大人へと移行する時期のことです。この時期には第二次性徴という体の変化が生じたり、異性への関心が育まれたりします。始まる時期には性差があり、女子は9歳、男子は11歳くらいです。二次性徴が始まった年齢から18歳頃までの期間を一般的には思春期と呼んでいます。思春期に入ると、脳から生殖器に性ホルモンを分泌するような指令が届き、男性なら精巣、女性なら卵巣からホルモンが全身に分泌され、身体に様々な変化が起こり始めるのです。二次性徴とは、このように思春期の身体に起こる性的な変化の総称です。第一次性徴とは、性別を決定する要素、つまり生まれてすぐわかる男女の性器にみられる特徴(精巣や陰茎、女性の子宮、卵巣)のことを指し、第二次性徴は、性器以外の身体の各部分において男女の違いが現れる変化を指しています。女性の第二次性徴の例として、乳房の発達、丸みを帯びた体つきになる、初経(初めての月経)などがあります。これらの体の変化がいきなり自分の身に起こることで、子どもたちは「これは自分の体ではない」と違和感を感じることもあるかもしれません。特に、発達障害や知的障害がある子どもの中には、突然の変化が苦手な子や、感覚過敏のため月経に生理的な嫌悪感を抱く子、それらの違和感をうまく表現できずに大きなストレスを感じてしまう子もいるでしょう。つまり、思春期は子どもにとって身心に大きな変化と、それに伴う悩み事が生じる時期なのです。次の章では、発達障害の女の子にとって思春期がどのような時期なのかを説明していきます。参考:野口忠/著『栄養・生化学辞典』(朝倉書店)2011年参考:女性アスリート指導者のためのハンドブック「発育・発達について」│国立スポーツ科学センターHP女の子の発達障害は、思春期に見つかることが多い出典 : 発達障害とは、認識や行動に特性があり、社会生活に支障をきたす状態にあることを言います。女の子は、男の子と比べて特性による困り感を抱えながらも発達障害と診断されない「グレーゾーン」の子が多いとされます。特性の出方には性差があり、相対的に、目立った問題行動が少ない傾向がある女の子の発達障害は気づかれにくいのです。性差の背景には、発達障害で課題とされる「社交的な言動」は女性のほうが得意であること、女性のADHDは不注意優勢型が多いこと、などがあります。なぜ不注意優勢型は気づかれにくいかというと、周囲への攻撃や発散といった形で特性が現れる多動・衝動性と違い、「わすれんぼうな子」「ボーっとしている子」と本人の性格だと解釈されるため、問題なりにくいと考えられています。このように、発達障害があることを見過ごされていた女の子でも、思春期に入るとその特性が目立つ場面が増えます。成長とともに変化する人間関係についていけなくなったり、周りとの違いが明らかになったりするのです。例えば、女の子同士の仲良しグループや、男女の役割分担など、暗黙の了解が必要なコミュニケーションなどで混乱してしまうことがあります。さらに、この時期は自意識が芽生える時期でもあるため、それまで自分の特性に自覚がない子でも、自らの特性が気になり、悩むようになることもあるでしょう。思春期という、自意識を育みながら成長する時期に他者との違いによって責められ、傷つく経験を重ねたり、特性に合った支援を受けられなかったりすると、症状の悪化や二次障害に繋がってしまいます。次の章からは、思春期に起こる具体的な変化と、発達障害の女の子ならではの注意点や対処方法を説明していきます。思春期の女の子に起こる体の変化とは出典 : 思春期に入ると、脳が生殖器にホルモンを出すよう指令を出し、生殖器が分泌した女性ホルモンが全身を巡ることで、女性らしい体への変化(第二次性徴)が起こります。では、具体的にはどのような変化が起こるのでしょうか。具体的には、以下のような変化が起こります。変化が起こる順番や、その程度は人それぞれです。・乳房が膨らむ・丸みを帯びた体つきになる・陰毛、わき毛が生える・初経が起こる(後述)・外性器・内性器(子宮・卵巣・腟・外陰部)が発達する女性アスリート指導者のためのハンドブック「発育・発達について」│国立スポーツ科学センターHPこのような変化を受け、女の子の身体は大人に近づいていきます。皮下脂肪の増加によって疲れやすく眠くなりやすくなる、生理に伴う体調不良など、変化と共に訪れる不調や困りごとがあります。これからは、体の成長に伴う発達障害の女の子ならではの困りごとと、その対処法を紹介します。思春期は”第二の誕生”と呼ばれるくらい、体に大きな変化が訪れます。この変化は、大人になる過程での自然な出来事ですが、大きな変化に戸惑いを覚える子どもたちも少なくないようです。特に、特性がある女の子は急な変化が苦手なため、強いストレスを感じることがあります。また、身体つきの変化に伴い、日常で行うべき事柄が増えることも精神的負担になりえます。たとえば、ブラジャーを着ける、生理ナプキンを取り替える、などです。これらのことを事前によく知らずに変化を迎えた場合、対応が遅れ、拒否感や苦手意識に繋がることもあります。さらに、感覚過敏が原因でブラジャーのワイヤーで締めつけられる感覚を不快に感じる、不器用さゆえにホックを上手に閉められない、などの困りごとも考えられるでしょう。■事前準備で見通し不安を解決!見通し不安がある子には、前もってこれから起こる変化の内容を伝えておきましょう。特性がある子どもたちは、いきなり変化する身体への違和感や、異常なのではないかという不安を感じています。親しい立場にある大人の女性が、体の変化は自然の流れであること、順調な成長の証であることを伝えておきましょう。さらに「胸が膨らむ」「おりものがでる」「初経は茶・黒っぽい血が少しパンツにつく」など、変化の内容を具体的に説明できると、よりイメージを持ちやすくなります。■子どもの感覚にあった下着を選ぶワイヤー入りのブラジャーに違和感を感じる場合、ワイヤレスのブラジャーやカップつきキャミソールを試してみましょう。比較的締めつけ感が少ないため、ストレスを減らすことが期待できます。不器用でホックが上手に扱えない場合は、シームレスタイプのブラジャーがおすすめです。また、母親や姉妹など、身近にいる女性が実際に着けるところを見せたり、いっしょに練習したりすることも効果的です。思春期は、自意識が芽生え、周囲の目を気にするようになる時期です。自分という存在を他者の視点から考えるようになるため、想像力や社会性が育まれる時期とも言えます。発達障害がある子どもの中には、自分の言動や容姿が周囲にどのような印象を与えるのか想像をすることが苦手、または興味がない子どもがいます。本人の悪気はなくても、周囲から「距離感が近すぎる」「はしたない」と感じられる言動をしてしまうことがあります。その結果、同性から距離を取られる、勘違いした異性による性的被害に遭う、などの問題に繋がってしまう可能性があるのです。■「マナー」「エチケット」はルール作りで明快に!発達障害の子は認知に特性があるため、「公共のマナー・エチケットを守りなさい」「女の子らしく」などの抽象的な注意は理解が難しいでしょう。なぜその行動をしてはいけないのか(周りの人を嫌な思いさせたり、誤解させたりした結果、自分がトラブルに巻き込まれることがあるから、など)を説明すると同時に、してはいけない行動と、対応する行動案を合わせて示してあげましょう。行動単位で提案されることで、判断の難しさが軽減されます。ルールの例として、次のような項目が考えられます。・男の人に触らない…男の人と話すときは腕1本分の距離を取る。・人前で着替えない…どうしても服を脱ぎたいときはトイレか保健室、更衣室を使う。・人前で性器、胸を触らない…どうしてもかゆみ、違和感などで触りたいときはトイレに入る。・人前で性的な発言をしない… 発言したいときは、おっぱい→胸などの言い換えを利用する。子どもたちは、一つひとつ教えられるうちにパターンとして整理できるようになっていきます。根気はいりますが、ぜひ、具体的な言葉で示すことを続けてみてください。生理について。ナプキンの扱い方、どう教える?出典 : 生理は、思春期の女の子の体の変化でいちばん戸惑いやすいと言えるでしょう。この章では生理に関して発達障害の女の子にどんな困りごとが起こり、どうサポートするべきなのかを説明します。生理(月経)は「約1ヶ月の間隔で起こり、限られた日数で自然に止まる子宮内膜からの周期的出血」を指します。医学的な正式名称は月経ですが、生理という呼び方も一般的です。初めての月経のことを初経と言い、迎える年齢は平均12~13歳(小学校6年生~中学校1年生)です。初経が起きる前触れとして、体の変化があります。急に身長が大きくなったり、胸が膨らみ始めたりしたら、いつ初経が来てもいいよう生理について説明し、生理用ショーツやナプキンを携帯させておくと安心です。月経周期とは、月経初日から次の月経の前日までの日数を指します。25~38日が正常範囲ですが、思春期には多少のずれがあり、毎回周期がちがっていても心配する必要はありません。特に、初経を迎えてからしばらくは乱れがちなことが多く、周期が安定するには数年かかると言われています。月経周期を把握すると、生理と関連した不調の存在を知ることに繋がります。生理に関連した不調では、月経前症候群(premenstrual syndrome)が代表的です。この症状は略してPMSと呼ばれ、月経開始の3~10日ぐらい前から始まる精神的・身体的な不調の総称です。身体的な症状として、乳房が張る、痛む、乳首が敏感になる、頭痛、肩こり、腰痛、下痢、ニキビ、肌あれなど、不快感を伴う変化が起こります。精神的な症状としては、イライラ、憂うつ感、不眠、眠気、過食などがあります。このように、生理に関係して女の子の体はとてもデリケートに変わります。特に、発達障害の女の子は、特性によって独特な困りごとを感じることがあるのです。以下では、生理に関係する困りごとと、対処法を説明します。感覚過敏がある女の子の中には、生理中の蒸れ・かぶれ、ナプキンの肌触りに対する不快感をより敏感に感じる場合があります。■生理用品を工夫して少しでも快適に蒸れやかぶれに対しては、蒸れを軽減する生理用品(サニタリーショーツや布ナプキン、月経カップ、タンポンなど)を利用したり、こまめなナプキン交換を習慣化する、などで対処しましょう。かぶれが気になるときには、婦人科などで薬を処方してもらうことも可能です。不器用さや、順序立てた行動の苦手がある子は、ナプキンをつける手順がわからなかったり、正しくつけられなかったりという困りごとが起きます。■視覚的なイメージに訴える手順を知るには、周囲の大人の女性が実際につけ替えする場面を見せてあげることが一番効果があるでしょう。他にも、絵や図を使って視覚的なイメージに働きかける方法も効果的です。■不器用さはつけ方の工夫で解決!不器用でつけられない子どもには、比較的手順が単純な羽根なしのナプキンや、家でナプキンを2枚重ねにしておき、外でははがす手間を省く、などの方法が考えられます。感覚鈍磨の特性がある子どもは、経血に気づかずナプキンをつけなかったり、蒸れやかぶれに気づかず、ナプキンをつけっぱなしにしてしまいます。ナプキンをつけている下着の中は湿気がこもっていて雑菌が繁殖しやすく、皮膚炎や感染症につながる場合があります。■「交換するタイミング」をルール化しようナプキンを交換するタイミングをルールとして決めましょう。「1時間目、お昼休み、4時間目が終わった時に変える」など、具体的なタイミングを指定されているほうが意識しやすいでしょう。生理に関係する不調は生活習慣、メンタルの影響を受けやすいと言われています。発達障害(特にASD)の子どもは生活習慣が乱れやすく、ストレスも感じやすいと考えられています。そのため、月経不順や生理痛・PMSの重症化に気をつける必要があります。■生活リズムを整えるホルモンバランスを安定させるためには、規則正しい生活が必要です。そのため、起床・食事・入浴・就寝など、1日の中での出来事を同じ時間に行うように心がけましょう。■月経周期を記録する周期の乱れを判断する目安として前後およそ1週間ほどのズレが続くようでしたら、産婦人科に相談してみましょう。この時、生理周期の記録を持っていくと医師が状況を把握しやすくなります。生理周期の記録の仕方としては、大人のサポートのもと生理開始日終了日にカレンダーにシールを貼る、生理日予測アプリを使う、などがおすすめです。自身の月経周期を把握すると、月経周期に伴う体調の揺らぎのリズムをつかめます。体調不良が起きやすい時期に入ったら、激しい運動や夜更かしを控える、温かい食べ物を意識的にとるなど、自身の症状にあったPMSとの付き合い方を見つけていきましょう。どうしてもつらいときは、低用量ピルという薬で症状を和らげることも可能です。気になるときは婦人科に相談してみましょう。■体調が悪い時は無理をしない生理に関係する体調不良は、精神状態に大きな影響を受けます。さらに、思春期の発達障害の女の子にとって、集団生活によるストレスや身体の変化に対する違和感から、より精神に負担がかかりやすい時期だと言えます。そのため、本人がつらいと感じているときは無理強いせずに、休ませることも大切です。発達障害の女の子にとって、思春期はなぜつらい?心に起こる困りごとにはどんなものがある?出典 : 思春期には、心は体と同じくらい大きく変化します。この章では、思春期に起こりうる心の変化と、発達障害の女の子が感じる困りごと、その対処法を説明します。思春期は、子どもから大人への成長段階として、自らのアイデンティティを築き上げている時期です。そのため、性格や人とのかかわり方にも、様々な変化が起こります。その変化は、急激で、個人差があるため理解が難しく、本人も家族も戸惑ってしまいます。また、困った言動が思春期特有のものなのか、特性によるものなのかの判断がつかず、対応が難しいと感じることもあるでしょう。この時期の環境とのかかわり方は、精神の健全な発達や、自己肯定感の向上に強く結びつきます。思春期ならではの心の問題が適切に対処され、子どもにとって成長機会となることを目指しましょう。では、思春期の心の変化に伴って起こりうる困りごとにはどのようなものがあるのでしょうか。子どもは精神面での成熟が進むにつれて、自立心が芽生え、大人に対して反抗的・疑い深い態度を態度をとるようになります。「一人前に見られたい」という気持ちから、大人に対して反抗的な態度をとるようになります。また、刺激欲しさに衝動的な言動をしやすくなるのです。また、もともとの特性であった衝動性や多動性が強化され、いきなり激情的な言動を見せるようになることがあります。さらには、成長による心境の変化や沸き起こる衝動などの感情を発散する術や場面がないことも、この時期の発達障害の子にとっては大きな問題と言えるでしょう。ASDの子の中には、この時期特有の興味関心や反抗的な感情、将来への不安といった複雑な感情を認識・表現することが苦手な子がいます。そのため、自分の中でため込みすぎて根強いストレス感情を持ったり、無気力感を抱いたりして、問題の悪化を招きかねません。■感情の流れを親子で整理しよう「どんな時に怒鳴ってしまうのか」「何に対して不安を感じるのか」など、漠然とした感情の流れを整理する手伝いをしましょう。問題行動を起こしてしまう場面や漠然とした不安感情の中身を紙に書き出すことで、行動以前にできる手立てはないのかを探ったり、感情の具体化によって不安感情を和らげたりできます。■ADHDの場合は薬物療法による支援も視野にADHDは薬の効果が出やすい症状です。合う合わないは個人差がありますが、本人の力や周りの環境調整ではどうしようもない時は、医師の指導のもと、薬物療法による支援も選択肢のひとつとなります。■興味関心を頭ごなしに否定しないこの時期の子どもたちは、様々な事柄に興味を持ち、試してみたい衝動を持っています。大人から見ると、不釣合いであったり、滑稽に思えたりすることもあるかもしれません。けれども、そのような多方面への興味関心はアイデンティティの確立において重要な役割を果たしています。見守ることが子どもの長い目で見た子供の成長につながるでしょう。精神面での成長によって、人付き合いが複雑になり、女の子ならではのかかわり方のスタイルもできていきます。男女の役割や、仲良しグループなどの表面的には表現されない意味や役割を共有する集まりが増え、”暗黙の了解”を読み解くスキルが求められるようになります。特に女の子は仲良しグループの意識が強く「ガールズトーク」といった、自分たちにしかわからない、かつ、話題がどんどん切り替わる話を楽しむようになるのですが、特性がある女の子は空気を読んだり、人の気持ちを考えることが苦手なため、意図せず周囲を傷つけるような発言をして孤立してしまうことがあるのです。また、人の評価や目線に敏感になる思春期に、失敗経験や叱責を積み重ねることで自己肯定感さがり、困りごとの悪化や人付き合いへのトラウマ、二次障害に繋がることもあります。■社交性が苦手なのを認め、無理させない友達づきあいや集団行動ができなくても大丈夫、と伝えましょう。人付き合いで困った場面を上記の方法で整理してみましょう。■専門家の力を借りる家族だけではどうしても解決が難しいこともあるでしょう。学校のカウンセラーや医師、臨床心理士などの専門家に頼って人付き合いの方法を勉強することも一つの手段です。女の子の性の問題に向き合う出典 : 思春期以降は、それぞれの性の特徴がはっきりし始め、異性への関心が高まる時期です。発達障害がある女の子は、性への関心や周囲の目線への無自覚さがあるために、トラブルに巻き込まれる可能性があります。本人が、自分の特性と周囲からの見え方を客観的に認識し、自らの体を守れるような仕組みを作りましょう。以下では、発達障害がある女の子が注意すべき、性にまつわる問題と対処法を紹介します。アスペルガー症候群の女の子は、仲良くなることと性交渉をすることとの区別が理解できない場合があります。また、ADHDの女子は性的衝動に駆られやすく、性交渉の頻度が高くなり、不本意な妊娠や性感染症につながる恐れがあるといわれています。このような問題を防ぐために、不用意な性交渉による影響を教えましょう。性交渉の意味、仲良くすることとは違うことをしっかり説明し、性交渉によって起こる性感染症や不本意な妊娠のリスクを伝えてください。そして、性交渉を求める男性の言葉や態度、断り方、避妊についても具体的に説明できるとよいでしょう。相手の意図が理解できずに、言葉をそのまま信じてしまい、見知らぬ男性の誘いに乗って性的関係に持ち込まれる危険があります。また、適切な距離感がつかめず、勘違いをした異性から性的被害を受けることも考えられます。こういった場合、なぜだめなのかを説明するよりもルールとして教えたほうが理解しやすくなります。言葉で伝えるだけでなく、文字に起こしたり、図で示すとよりイメージが付きやすい場合もあります。例えば、男の子に触らない、話すときは腕一本分の距離をとる、知らない人と話さない、メールアドレスや名前、電話番号を安易に教えない、個人情報をネットに書き込まない、などのルールを決めたり、目安となる距離感を描いた絵を見せる、といった方法があります。アスペルガー症候群の特性として、人との距離感がわからない、また、周囲から自分がどのように見えているかを認知することの苦手があります。こういった特性が、異性との近すぎる距離感や、自分や他者の恋愛について気軽に話してしまう、同性と異性での行動の区別がつけられないといった、恋愛にまつわる人間関係のトラブルにつながる場合があるのです。また、衝動性があるADHDの女の子は好きな異性に近づきすぎたり、場面を気にせず「好き」と言ってしまう、などの行動を起こしてしまうことがあります。このようなトラブルが見られる場合、本人は性的知識の不足や概念的な物事を理解することの難しさを抱えています。そのため、周囲の大人が場面ごとにどうすべきかを、一つひとつ説明し、理解してもらう必要があります。家庭が、子どもにとってわからないことがあるとき、トラブルが起こったときにすぐ相談できる場であるために、普段から恋愛や性のことについて話合う機会を持っておくとよいでしょう。まとめ出典 : 思春期は、発達障害がある女の子にとって心身共に揺らぎが大きい時期です。この時期は、大きな変化による身体的な負担や精神の不安定さから、本人だけでなく、周囲の大人も不安や戸惑いを感じる機会が多くなります。お子さんに次々と起こる変化に向き合うことは根気が必要です。ですが、不安定な時期だからこそ、お子さんの特性についてより深く理解し、一緒に困りごとを解決していくチャンスでもあります。家族で話し合いながら、あまり悲観的になりすぎずに、一つひとつ乗り越えていきましょう。梅永 雄二/監修 『15歳までに始めたい! 発達障害の子のライフスキル・トレーニング』2015年/健康ライブラリー宮尾 益知/監修『女の子の発達障害: 思春期の心と行動の変化に気づいてサポートする本』2016年/河出書房新社田中康雄 /監修『イラスト図解 発達障害の子どもの心と行動がわかる本』2014年/西東社女性アスリート指導者のためのハンドブック│国立スポーツ科学センターHP
2018年02月02日思春期を迎える発達障害の娘。心身の変化、どう伝える?出典 : 発達障害のある女の子は、特性ゆえの困りごとや、女の子ならではの困りごとに悩んでしまうことがあります。特に思春期を迎えると、心身の変化や、異性・同性の付き合い方の違いに戸惑いを感じてしまうことが多くあります。そのため、母親や祖母などの身近な女性が、子どもの特性に合わせて、心身の変化への対処法や必要性を教えたり、交友関係での困り感をサポートすることが重要です。一方で、きちんと教えなければいけないと分かりつつも、デリケートかつプライベートな思春期の諸問題を、どう伝えるべきか迷ってしまうこともあるのではないでしょうか。また、年ごろの子どもには聞き入れてもらえない場合もあるかもしれません。加えて、発達障害のある子どものなかには、特性として、抽象的な話し方が理解しにくい子や、視覚優位の子もいます。そのような場合、口頭で教えてもうまく伝わらない場合があります。そこで今回、女の子の発達障害や第二次性徴、性教育が取り上げられていて、思春期を迎える女の子のサポートに役立つ本をご紹介します。特性がある子どもにとっては、本の文章や図、イラストの方が、口頭で説明されるよりも理解しやすいかもしれません。これらの本を通して親が思春期の子どもについての理解・知識を深める、本を親子で一緒に読んでみる、本を子どもに手渡してみるなど、活用してみてはいかがでしょうか。保護者が発達障害のある女の子を理解するのに役立つ本出典 : はじめに、発達障害の女の子がいる保護者が、女の子の発達障害の特徴や、思春期を迎えた際のサポートを学べる本を2冊ご紹介します。そもそも発達障害とは何なのかという基礎情報に加えて、女の子ならではの特性について分かりやすく解説しています。女の子に多く見られる特徴や、女の子ならではの困りごと(友達関係、身だしなみなど)についても詳しい原因や対処法を紹介しています。乳幼児期から思春期まで網羅されているので、子どもがどの年齢でも役立つ情報が得られる一冊です。この本では、自閉症スペクトラム障害の女の子が、思春期を迎えて困ってしまいがちな、生理との向き合い方や生理用品の使い方、胸の発達に合わせた下着の選び方、性に対する考え方に関して、実例をまじえながら説明しています。特性に合わせた実践サポート術が豊富に紹介されているので、生理や下着、性に関することを教えるときに非常に役立ちます。また、自閉症スペクトラム障害のある女の子は、先のことが想像しづらい、予期しないことが起きるとパニックになりやすいといった場合があります。そのため、思春期を迎える年ごろの女の子がいる親御さんはもちろん、将来に備えて低年齢のお子さんの親御さんが読むこともおすすめです。これから子どもに起こり得る変化をあらかじめ把握し、いつどのように教えていくかを考えるきっかけにもなる本です。発達障害の女の子が思春期を迎えたときに読んでほしい本出典 : 続いて、思春期を迎えた発達障害の女の子向けに、自分や周りの心身の変化などに関して知ることに役立つ本を4冊ご紹介します。この本を手に取ると、自分にはどんな特性があり、それがどんな困りごとをもたらしているのかを把握できます。また、親には聞きにくいけど知りたい体の変化や、心の変化に伴う異性・同性との付き合い方、性に関することを自分で情報収集することが可能です。親子で一緒に読むのも良いですし、子どもにそっと渡してみるのも良いでしょう。この本は、自身も29歳でアスペルガー症候群と診断を受けた当事者であり、現在は自閉症の研究に従事する女性、デビ・ブラウン氏によって書かれた本です。主に著者よりも若い思春期の女の子たちに向けて、恋愛や性のこと、またそれに伴う危険から身を守る方法について、丁寧に述べられています。性や恋愛に関することは、通常すみずみまで教えられることは少なく、同世代の友達との会話やドラマ・漫画などからの情報収集、実体験から自然に把握・習得することがほとんどではないでしょうか。ですが、自閉症スペクトラム障害、アスペルガー障害の女の子たちは、この「自然に把握・習得」していくことが苦手な傾向があります。そのため、性や恋愛で悲しい思いや危険な目に遭うことが多いといいます。なかなか説明しにくい性・恋愛のことや、そこからくる危険や辛さから身を守り、癒す方法をこの一冊を通して伝えてみてはいかがでしょうか。こちらは女の子の体の変化について詳しく学べる、ワークブック式の本です。自分の体がどのようになっているのか、どう変わっていくのか。そして、徐々に女の子から女性になっていく中で、どんなことに気をつけるべきなのか、具体的に学ぶことができます。また、この本には「着せ替えふろく」もついており、女の子の体の仕組みと思春期を迎えるにつれて現れる変化を、手を動かしながら理解することができます。アスペ・エルデの会/著『おとなになる女の子たちへ』アスペ・エルデの会このハンドブックは、知的障害の方の支援を行う「全国手をつなぐ育成連合会」が出版した、主に性行為に関して取り上げたものです。子どもが読んでも理解しやすい表現で、親の口からはなかなか説明しにくい性に関することが書かれています。男女の体の仕組みから、性行為が遊びではないこと、重要なことであるという内容が分かりやすくまとめられています。支援者向けの解説も記載されているので、子どもに性のことをどう説明すればよいか分からないという親御さんも手に取ってみると、参考になるかもしれません。全国手をつなぐ育成連合会/著『自立生活ハンドブック16性・SAY・生(せい・せい・せい)』さまざまな発達の遅れで、性に関する理解が難しい子ども向けに、男女の体の仕組みや性行動、性的人権などについて、分かりやすい文章とイラストで解説されています。子ども1人でもある程度読むことが可能な本ですが、内容が盛りだくさんなので、「まずはこの部分を読んでみて」など、親が特に読んでほしい部分を事前に話して渡したり、付箋を貼ったりするなどして気軽に読めるように工夫してあげるのもよいでしょう。この本は、発達障害の女の子に特化しているわけではありませんが、女の子に訪れる心と体の変化について、漫画形式で説明されています。生理の始まりのような体の変化や異性への興味など、親から直接教えにくいことが、読みやすく優しい語り口と、かわいらしいイラストによって、子ども1人で読んでも理解しやすくまとまっています。また、同じ著者から『15歳までの女の子に伝えたい自分の体と心の守り方』も出版されています。子どもの年齢にあわせて選んであげるとよいでしょう。大人になったらどうなる?女性の発達障害が分かる本出典 : 発達障害の女の子がいる親御さんの中には、「この子が大人の女性になったとき、どうなるのだろう」「就職や結婚、子育てなどできるのだろうか」など、子どもの将来に関して漠然とした不安を抱いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。わが子が女の子から女性になるとき、どんなサポートが必要なのか…発達障害の女性を対象に書かれた本を手に取ってみるのも、子どもの将来をイメージするうえで、重要なヒントになるかもしれません。発達障害の女の子は、男の子より問題行動が現れにくく目立たない、という特徴があるため、子どもの頃に発達障害だと気づいてもらいにくいことが多くあります。そして成長し、成人になると就職や結婚、子育てといったより複雑で高度なスキルや社会性を求められるようになり、ますます生きづらさや困りごとを感じてしまう女性が少なくありません。このタイミングで医師やカウンセラーに相談し、自身が発達障害だと分かることも多いようです。この本では、冒頭に「家事ができない」「子育てが苦手」「男性との距離感が分からない」「仕事がうまくいかない」といった、具体的な生活の場面における困りごとが紹介されています。この部分から、「大人になるとこんなシーンで困ることがあるのか」と納得したうえで、読み進めることができます。このような困りごとの対処法はもちろん、女性ならではの発達障害の特徴や幼児期から老年期までの特徴も網羅されています。ADHDの特性がある、働く女性を主人公にした一冊。漫画形式なので、スムーズにストーリーを追うことができ、読み終えるころにはADHDの特性とそのサポート方法が理解できるようになる本です。仕事の「困った!」、片付けの「困った!」、感情・体調の「困った!」の章には、共感できる方も少なくないと思います。ADHDのある女の子を育てる親御さんにとっては、子どもが就職し、一人暮らしをする場面でどんな困りごとが起こるのか、イメージするにも役立ちます。この本は、40代になって発達障害の診断を受けた星野あゆみさんが、社会生活を送るうえで感じた困惑と、折り合いの方法を自ら語る内容になっています。転職を繰り返しながら、仕事や生活のさまざまな困りごと・生きづらさと向き合ってきたエピソードは、女の子の親御さんにとっても参考になること間違いなしです。エピソードは漫画形式で紹介されているので読みやすく、また漫画のイラストは「発達ナビ」でもおなじみの、かなしろにゃんこ。さんが担当されています。気軽に手に取れる一冊ではないでしょうか。まとめ出典 : 「発達障害って何?女の子と男の子でどう違うの?」「思春期の女の子への性教育、子どもの特性に合わせて行うには?」「娘は将来どんな女性になるのだろう?」など、発達障害の女の子を育てる親御さんは、さまざまな不安を抱えていることと思います。また、女の子自身も、成長するにつれて「どうして周りの友達みたいに普通のことができないんだろう」「どうして友達がなかなかできないんだろう」「体の変化に戸惑い、誰かに相談したいけど恥ずかしい」というような悩みを抱えることもあります。そんな親子それぞれの不安を解消する方法の一つとして、この記事で紹介したような本を一緒に読んでみたり、子どもに手渡してみたりすることをおすすめします。ぜひ、気になった本を手に取り、親自身の女の子の発達障害の理解や、自分の成長に戸惑う女の子のサポートに役立ててみてください。
2018年02月01日