まさか相手の方が、世界標準だったなんて出典 : 歳で発達障害と診断されたとき、最初は「ああ、今まで仕事がうまくいかなかったのは自分のせいじゃなかったんだ」とホッとしたことをよく覚えています。ですが、まだ「もっと頑張れば大丈夫」と軽く考えていたんですよね。その後、2社で一般雇用で働き、2社目でカミングアウトせざる得ない事態に追い込まれます。そして、「自分の能力はこの会社では通用しない」「カミングアウトしても自分の気持ちや個性が理解されない」という現実をつきつけられて退職することになり、すっかり自信を失ってしまいました。子どものころから周囲に対して違和感を感じながらも、「どうしてわかってもらえないんだ、間違っているのは向こうの方だ」と信じ続けて自分を押し通し、「いつか自分が認められる場所を見つけてやる」と挑み続け『絶対にあきらめない』を信条としてきました。だけどこの一件で、自分は”発達障害があるマイノリティーな存在”で、相手の方が世界標準だったのだと腑に落ちたとき、心がポッキリと折れてしまったのです。だけどそれが、私にとっての障害受容の本当の始まりでした。長く険しい道のりでしたが、その道を歩むことで、自分の中に芽生えたものがあったのです。人生立ち往生状態の私が、救いを求めてやってみたこと出典 : ポッキリと折れた心をさすりながら障害福祉サービスを受け始めたものの、「私は支援を受けていい存在なんだろうか」と悩み葛藤する日々が始まります。このときの自分はまだ「自分の障害なんてそれほどのものではないのではないか」と低く見積もろうとしていたのです。今から思うと、まだ自分の障害を受容できずあがいていたのだなぁという感じです。そこで始めたのが、Twitterで発達障害があることを公言している人を片っ端からフォローして、そのつぶやきを読んでいくことでした。私と同じような立場の当事者たちの言葉に触れていると、ゆっくりとしみこむように仲間たちの苦しみ、悩みが伝わってきて「ああ、私もつらかったんだ」と改めて認められるようになっていったのです。人の物語を読むことで、自分の心に問いかけることができる。その物語を通して自分と対話し、理解を深めていくことができる。そして、私自身も自分の気持ちを整理するためにブログに自分の気持ちを書き続けました。そうすることによって、ゆっくりと自分の気持ちや今までの道のりを見つめることができました。これは今振り返っても、必要なプロセスであり、大きな効果を得られたと感じています。ヘルパーさんとの関わりが「人との違い」を教えてくれた出典 : 私の場合、Twitter・ブログと、自身を見つめる機会はインターネット上によるものが色濃くありましたが、それだけではあません。料理と掃除を2人のヘルパーさんに手伝ってもらっているのですが、どちらも年齢が近くて友達のような感覚で接してくれ、最初は緊張していた私もだんだん心を許しておしゃべりを楽しめるようになりました。発達障害のある私にとって、そのままの自分を出してもバカにしないで受け止めてくれる身近な存在が、このヘルパーさんでした。仕事のトラウマですっかり他人が怖くなっていたのですが、日によってテンションが極端に違っても、思うがままに自分のペースで話題を進めても嫌な顔一つしない2人に、次第と心を許せるようになっていったのです。ソーシャルワーカーさんに聞いた話ですが「人とのかかわりを深めていくこと、おしゃべりをするということ」も、重要な支援となるのだそうです。障害のある人が孤独に陥らないようにしたり、社会とのつながりを途切れさせないためには、おしゃべりが大事なのだそうです。そんなある日、ヘルパーさんに料理をしてもらっているときのことです。ヘルパーさんにレシピを見せると、ざっと1回読んだだけで料理をする姿にふと疑問を覚えました。「どうして、1回見ただけでつくれるの?」「だいたいこんな感じだなってわかったらできるものなの」「えっ、料理を始めてすぐのころから?」「違うよ、最初はまじめに読んで計ってつくるけど、慣れてきたらできるようになるの」「私は料理を始めてから20年以上経った今も、レシピを何度も何度も読み返さないとつくれないよ?みんなが普通なの?」驚いた私は、「普通の人がやる掃除ってどういうものか、見せてほしい」と頼みました。すると、丁寧ではあるものの、細部までこだわりすぎていないことがわかりました。動かせるものだけスッとよけて、さっときれいに掃除を終わらせてしまうのです。「隅っこの座椅子は毎回よけたりしないの?」「そんな大掃除みたいなこと毎回しないよ。たまにでいいのよ」そんなふうに家事を通じて、他の人たちの能力や力の入れ方を知っていきました。それは「自分と人との違い」を知るということでもあったのです。それをきっかけに、他にもたくさん「人との違い」があるんだろうなと初めて実感することができました。40代になってはじめて「障害者」と診断されるまで、「自分と人が違っている」ということなんて思いもしなかったのです。私にとってこの発見は人生がひっくり返ってしまうような大発見だったのです。生きていくうえでの前提条件がガラリと変わってしまったのですから。「人との違い」を知ると、自分のことが見積もれるようになってきた出典 : 「自分と人との違い」を知ると、「あの仕事はここでつまづいたんだ」「この仕事は私の特性から考えれば適性がなかったんだ」という風に、できないところやつまづきどころが理解できるようになってきたのです。また、家事にも仕事にも疲れ果てながら、なんとかやってきた自分を認めることにも繋がりました。とはいえ、これは正直つらいことでした。「頑張ればできる」と思っていたのに、「できないんだ」ということがわかってしまったのですから。「あきらめない」が信条の私が「あきらめる」ことを受け入れなければならないと知ったときの絶望感は、とても大きかったことをよく覚えています。自身の状況をソーシャルワーカーさんに話すと、こんなことを言われました。「やっと現実検討能力がついたのね。」現実検討能力というのは、自身の状態や能力を客観的に評価する能力のことです。例えば「私は有名大学を出ているし語学もできる。その気になれば大学で教鞭も取れる」といいながら、実際は何の仕事も続かないという人は、自分の中の認識と現実のかい離が大きく、現実検討能力が低いといえる、ということだそうです。そういわれてみると、私はずっと自分の現実の能力を見ようとせずに「資格さえ取れば活躍できるはず」「もっと自分に合う仕事があるはず」と夢を見続けていました。しかし発達障害と診断され、否応なく自分と向き合うことになります。これまでの考えや、自分の信条を覆され、心も折れてしまった自分。でも、 だからこそ自分のことを見つめ直し、障害を受け入れ、自分の姿を客観的に見られるようになったことで「自分のことが見積もれるように」なってきたのでしょう。正直を言えば「この年でやっと現実を知ってどうしろと?」という気持ちがないわけではありません。でも、私にとっては、今がそのときだったのです。だからこの瞬間を大切にして、ゆっくりでいいからまたいつか歩き出したいと思っています。
2018年02月28日華やかな一方で多忙なイメージがある建築の世界。その第一線で働くママ・パパたちは、子育てと仕事をどうやって両立しているのか。そのリアルな実態がわかるエッセイ集『子育てしながら建築を仕事にする(学芸出版社)』が刊行されました。そこで、編著者で「キュープラザ二子玉川」の商環境デザインを手がけた3歳児ママ・成瀬友梨さんをはじめ、建築家パパの三井祐介さんと豊田啓介さんも参加したトークイベントに潜入! さらに後日、成瀬さんにインタビューし、両立するための工夫や職場の環境づくり、働くママにとって過ごしやすい家づくりなどのアドバイスをいただきました。 ■「あきらめること」から始まる仕事と育児本でもトークイベントでも、多くのママ・パパが語っているのが「あきらめる」ことの大切さ。建築家は自分ですべての事柄を決定し、ディテールにとことんこだわる仕事ですが、育児が始まるとそうはいきません。「仕事をしていると子どもが気になるし、子どもといると仕事が気になる。葛藤もありますが、最近は鈍感力が身についてきました。例えば、忙しくても早く帰って家族と夕飯を食べたり、ビールを飲んですぐに寝ちゃったり。やってみると、結果はそう変わらなかったりするんですよね。すべてを自分がコントロールすることをあきらめることで、人が育つという面もあります(豊田さん)」。「私は、建築家の仕事と並行して7年間続けてきた大学助教の仕事を、辞める決断をしました。学生に対応する時間が足りなくなり、子どもと過ごす時間もボーッとすることが多く、体力気力の限界になってしまったんです。今やっている仕事も、細かいところには目をつぶってスタッフに任せている部分が多い。歯がゆい気持ちもありますが、今は我慢の時だと思っています(成瀬さん)」。育児も同様で、すべてを夫婦だけでやろうとするのではなく、あきらめが肝心。ベビーシッターや病児保育を利用したり、近所の知り合いやママ友に保育園の送迎を頼んだりと、周囲に頼ることが大切だと話してくれました。■「スケジュール管理」と「得意分野」で分担 本に登場する夫婦は、育児・家事の協力体制が完璧! それぞれの仕事や家族の行事など、あらゆる予定をスケジュール管理アプリで共有し、互いに助け合っています。「妻も仕事がかなり忙しいうえ、高齢の両親のサポートもある。だから、掃除や料理は僕がやることが多いんですが、家事は得意なので全然苦ではありません。妻は、買うと高いからと夜中に教材を自作したり、科学の実験装置を作ったりと、子どもの自発的な学習を促すための時間を惜しまない。お互いが得意なことを、自然と分担している感じです(三井さん)」「私は保育園への送り迎えや食事の用意、夫は掃除・洗濯・ゴミ出しなどを担当しています。私が出張の場合、夫は子どもにごはんを作って食べさせ、寝かしつけまでこなしてくれるので、本当にありがたい。2歳くらいまでまでは熱を出すことも多かったので、区の病児保育にはずいぶんお世話になりました(成瀬さん)」ほかにも、ルンバや食洗機・食材宅配サービスを活用したり、ファミリーサポートやベビーシッターを頼んだりと、両立するための方法は家族によってさまざま。試行錯誤しながら、自分たちに合ったスタイルを模索しているようです。■「クリエイティブな時間=1人時間」を確保する方法子どもが生まれるまでは1日中建築のことを考えていた建築家たちにとって、クリエイティブな時間をどう確保するかも重要な課題。仕事と子育てに追われる日々の中で、それぞれ工夫をしているようです。「子どもを寝かしつけた後で夜中まで本を読んだり考えごとをしたり、もう一度事務所に戻って作業をすることもあります。また、他業種の人に会ったり、面白そうなイベントに参加したりと、自分の世界を広げることも大事。どうしても夜の外出が多くなってしまうんですが、夫は快く送り出してくれます(成瀬さん)」「夕食はできるだけ家族そろって食べたいので、子どもを寝かしつけた後に1人で外出して、時間を確保することが多いですね、近所に3、4軒ある行きつけのバーで、ビールを飲みながら思考をめぐらせたり図面をチェックしたり。深夜1時ごろに帰宅して就寝、翌朝7時に起きるというサイクルです(豊田さん)」何かと忙しい子育て期に「自分だけの時間」を確保するのは難しいもの。お互いの仕事を尊重し合うこと、そして夫婦が同等に子育てスキルを身につけることが大切だと感じました。 ■ママ建築家・成瀬友梨さんにインタビュー! 働くママが子育てしやすい家とは?――まず、この本を出版しようと思ったきっかけを教えてください。成瀬さん:私は東京大学工学部建築学科の助教として学生の指導をしていたんですが、女子学生から「子育てと建築の仕事を両立する将来が想像できない。大変そうで、とても真似できない」と言われることが多かったんです。才能ある若者たちが「仕事か、子育てか、どちらかを選ばないといけない」と考えているとしたら、本当にもったいない。そこで、実際に両立している人々を紹介することで「自分にもできる!」ということを伝え、背中を押したいと考えたのがきっかけです。実際に、本が出来上がってみると、建築家に限らず、これから子どもを持とうとしている方や子育て中の方、会社のマネジメント層にも役立つ本になったと実感しています。――確かに建築家に限らず、子育てしながら働くことは「大変」というイメージが強いですよね。成瀬さん:実際に経験してみると、自分の時間が減ってしまうのは大変なのですが、豊かになったことの方がずっと多いんですよ。以前は、仕事に夢中で休日も常にインプットの時間でしたが、子どもがいると強制的にペースダウンするので、季節による太陽の光や緑の変化に敏感になりました。週末には公園で思いっきり遊んだり、保育園の友達家族と昼間からお酒を飲んだりと、世界が広がっていくのも楽しい。子どもができてからバリアフリーの大切さに気づくことができ、世の中には本当に多様な人がいることも知りました。――この本に出てくる建築家の皆さんは、会社の理解のもとで周囲と協力しながら仕事をしている印象を受けました。働くママが職場で協力を得るためのコツを、ぜひ教えてください。成瀬さん:子育てだけが大変なのではなく、それぞれにさまざまな事情があると認識することが、大前提だと思います。そのうえで、ほかの人が困っていたらいつでも相談にのる、協力する、というスタンスでいることが一番大事なのではないでしょうか。――子どもがいると、家に対する考え方も変わってきます。建築家の目線から見て、子育てしやすい家とはどんな家だと思われますか?成瀬さん:子どもが元気に動き回れるように、広くてのびのびした家がいいでしょうね。実利的には、玄関が広いのが一番。子どもが小さいうちは、ベビーカーや三輪車などいろいろと置くものがありますし、宅配便の荷物をちょっと置いておくのにも便利です。玄関で子どもの支度をすることも多いので、狭いと苦労するかもしれませんね。また、玄関が広いと全体の印象として余裕があるように見える、という効果もあります。――最後に、働くママ・パパへのメッセージをお願いします。成瀬さん:子育てを終えた方からは「子育ては大変だけど、さみしいくらいあっという間に過ぎてしまうもの」とよく言われます。その言葉を信じて、楽しんでいけたら素敵ですよね。私も怪獣のような子どもを抱えていますが、仕事も家庭も欲張りに生きていきたい。完璧じゃなくていいから毎日を大切にしていきたいと思っています。参考図書: 「子育てしながら建築を仕事にする」 (学芸出版社)著・編集 成瀬友梨ゼネコン、アトリエ、組織事務所、ハウスメーカー、個人事務所等、異なる立場で子育て中の現役男女各8名の体験談を集めたエッセイ集。仕事と子育ての両立に奮闘しながら、欲張りに楽しむリアルな姿が見えてくる。成瀬友梨 プロフィール1979年愛知県生まれ。2007年東京大学大学院博士課程単位取得退学。同年に成瀬・猪熊建築設計事務所共同設立。と2010年〜2017年東京大学助教。地域・ライフスタイル・コミュニケーションという観点から建築を考え、シェアをキーワードに設計を行う。主な編著書に『シェアをデザインする』『シェア空間の設計手法』等。
2018年02月27日2015年4月、「子ども・子育て支援新制度」がスタートしました。そのうちのひとつ「病児保育」は、子どもの急病で出社できないというワーママに役立つ制度として注目されていますが、2016年、少し遅れてスタートした「お迎え制度」をご存知でしょうか?今回は、全国病児保育協議会会長・大川洋二(ひろじ)さんが解説してくれました。「お迎え制度」ってどんな制度?「子どもが急病でお迎えに行かなきゃ…」。子育てと仕事を両立するママなら、多くの人が経験したことがあると思います。しかし「お迎え制度」を活用すれば、その心配はなくなるそう。「これまでは、保育園や幼稚園、認定こども園などの施設に預けていた子どもが急に体調が悪くなったとき、お母さんに連絡して迎えに来てもらうのが一般的でした。しかしこの制度は、病児保育を行う施設のスタッフなどが代わりに迎えに行き、かかりつけ医で診察してもらってから預かるというもので、お母さんやお父さんが仕事中に早退しなくてもよくなったのです」(大川さん、以下同)子どもの急病による早退問題は、働くママにとって、重要なこと。この制度はそんな人たちにとって、大きなメリットとなるのです。デメリットも認識しよう!一方で、この制度にはまだ危ない面もあるのだとか。大川さんは、デメリットとして2つのことを挙げます。「まずひとつ目は、『子どもの精神的不安』です。知らない人に知らない場所へ連れていかれるというのは、子どもにとっては、大きな心理的負担。子どもにとってもなじみのある施設、せめて一度は使ったことがある施設にするなどの配慮が必要です」そしてもうひとつは、「重症化したときの対処」。「体調が悪くなるといっても、軽度のものから重症化の恐れがあるものまで様々あります。施設のスタッフが園にお迎えに行って、かかりつけ医に診察してもらったとき、もしも『すぐに入院する必要がある』と言われたらどうしますか?家族ではないスタッフに、勝手な判断はできませんよね。そのため、あらかじめ保護者と綿密な話し合いをして、緊急時にどうするかを決め、同意を取っておく必要があります」さらに、大川さんは、「『お迎え制度』を含む病児保育は、母親の就労支援の面ばかりがクローズアップされますが、本来は子どものための制度」とも。ママにとっては、子どもの急病が原因での急な早退や欠席を避けられるメリットはありますが、「早退しなくてよくなった」だけではなく、子どものことを考え、もっと慎重に利用すべき制度なのかもしれません。(文・明日陽樹/考務店)
2018年02月26日支援の本質ってなんだろう?出典 : こんにちは。『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て法』著者・楽々かあさんこと、大場美鈴です。今日現在、「発達障害」などの言葉の認知度が上がり、通級指導教室や特別支援学級を希望する児童・生徒が急増し、学校現場がそれに追いつけない現状があると聞き及んでいます。そのため、支援級・通常学級の先生方への、発達障害に対する充分な理解と実践ノウハウの普及、教育現場への予算と人材の確保は、早急な対応が求められていると思います。また、2019年からは、教員の養成課程でも特別支援教育に関する単位を1単位以上取得することが義務となるなど、充分ではないながらも、制度上前進している部分もあります。しかし、これらは切実に必要なことですが、発達障害はあくまでその子の個性の「一部」であり、また、ASDとADHDとLDが複合している場合など、タイプ別のマニュアル対応だけでは難しいかもしれません。それから、通常級で「みんなと違う」特別扱いを気にする・されるなど、気持ちの問題もあります。そして、発達障害のある子だけへの対応では解決が難しい、いわゆる「フツーの子」達が抱える根深くて深刻な問題もあり、実際の教育現場の実情に合った経験則や実践知も必要なのです。その中で、うちではこれまで毎年学校の先生方と連携しながら、長男への配慮をお願いし、これまでの6年間を手探り状態で歩んできました。ただ、そんな長男が6年間で1度だけ、「支援要らず」だった学年があります。それは、A先生が担任だった、通常学級の2年生のとき。A先生の「通常運転」だけで、長男は1年間落ち着いて過ごせたのです。私も、特別な配慮をお願いしたり、面談の機会を作っていただくこともなく、連絡帳のやりとりも最小限で済み、安心してお任せすることができました。今、変わりつつある公教育を前に、私は時々、そんなA先生を思い出しては「支援の本質」について、考えさせられるのです。A先生が、毎日当たり前のように、どんな子にも自然に行っていたスゴ腕の職人技を、私はここでみなさんにお伝えしたいと思います。「A先生が怖くて学校行けない!」息子を前に先生が取った行動は…出典 : 年生に進級し、担任の先生と初顔合わせの始業式の日。長男が泣きながら帰るなり「A先生が怖い!おれ、もう学校行けない!」なんて言うので、「どんなヒドイ先生に当たったの!?」と、私は内心焦りました。実は、幼稚園児時代から小1まで、長男はずっと優しくて若い女性の担任ばかり。「先生=優しい女の人」という強い思い込みがあり、そこに人生初の男性の先生。しかもA先生は、超ベテランのご年配で、お坊さんのようによく通る声に、日焼けしてシワの刻み込まれた貫禄十分なお顔立ち。その第一印象にびっくり仰天した長男は、「いつもと違う見慣れぬモノ」に、パニックになってしまったのです。翌朝、子羊のように震えて「ムリ!怖い!」と座り込んで、玄関から一歩も動けず、欠席してしまった長男。私は学校に電話して、A先生に状況をそのまま正直に伝えました。すると、A先生は慌てる様子もなく「分かりました」と、短いやり取りだけで電話を切ったのです。この対応には私も少々不安になりました。ところが、その日の夜。玄関のチャイムが鳴るので出てみると、なんとA先生がにこやかに立っているのです。そして先生は「◯太郎君と、ちょっとだけお話させて下さい」と私に告げました。それから、長男と先生は玄関先で10分程度雑談をしました。この短時間の間でA先生は、長男の緊張と警戒心を魔法のように解いてくれたのです。長男の笑い声が聞こえて来た頃、A先生は「じゃあ、明日待ってるよ」と軽く長男の肩をポンと叩き、また親の私を責めるような様子もなく、「遅くにすみませんでした」と、ニコリと笑ってさっと帰っていきました。後から「A先生と何話してたの?」と聞くと、「うーん、別に。家で何するのが好きかとか、そんなこと。…あとね、A先生も子どもの頃、学校が怖くて、イヤだったんだって!」と、ちょっと嬉しそうに話す長男。A先生は、短い雑談の中で、長男の気持ちにしっかり寄り添って下さったのです。「学校に来なさい」と強制したり、長々とお説教することもなく、今の「学校が怖い、好きじゃない」という長男の気持ちを、否定せずにそのまま受け止めてくれました。それが、頑なだった長男の心の扉を、ほんの少し開いてくれたようでした。長男は「いやあ、A先生があんなに面白い人だったなんて…」と、見た目の印象だけで決めつけてしまったことを、少し恥じらっているようでした。翌日、長男は無事登校することができました。それからの1年間、支援要らずで、落ち着いて過ごすことができたその後すぐ、私はA先生に、長男には(当時の基準で)アスペルガー症候群の診断があることを伝えましたが、A先生は「そうですか。まあボチボチやっていきますワ」とだけ言うだけ。特に特別支援について詳しい様子もなく、最初のうちは正直不安でした。ところが私の不安をよそに、最終的には何事もなく1年間無事に終えることができたのです。ここで、長男に特に良かったと思われる、教師生活推定約35年・A先生の「スゴ技」を、私なりに分析しながら、紹介させて頂きますね(A先生の方法が全てのお子さんに合っている訳ではないでしょうが、ご一考の価値はあると思います)。出典 : あまりに当たり前のようで、見落としがちなことかもしれませんが、A先生は、・大きめの落ち着いた声で、分かりやすい言葉で、ゆっくりひとつひとつ話す…ことを、毎日ごく自然にしていました。たったこれだけで、「人の話を聞かない」などと注意されがちな長男も、ずっと聞き取りやすくなります。長男は、早口で高いトーンの声や、矢継ぎ早に次々指示を出されると、それだけで「聞こえなく」なってしまうのです。実は、その年の担任の先生の「声の聞き取りやすさ」次第で長男の成績も上下する程です。また、A先生は「声のトーンと表情の使い分け」も上手でした。長男は気持ちの切り替えや、人の表情から微妙な感情を正確に読み取ることが苦手なため、悪気はなくても、つい調子に乗ってハメを外してしまったり、夢中になると周りの状況に気づかずに、集団の中で目立つ行動を取って、何かと注意されがちに…。ところがA先生は、普段は目尻を下げて穏やかに接していましたが、長男が行き過ぎた行動を取ると、いかめしい表情と低く険しい声で、短い言葉でビシッと注意し、キッチリブレーキをかけるので、長男もハッと気づきやすいのです。また、クラスのどのお子さんにも、A先生はこのように接していたので、長男だけが何度も注意されて目立ってしまうこともありませんでした。出典 : 私が特に「神業だ!」と感動したA先生の行動は…・毎日、同じ時間・同じタイミングで行動する…ということ。A先生は、毎日キッカリ同じ時間に教室に入り、全く同じタイミングで子ども達から提出物と連絡帳を集めます。学校という場所は、感覚が敏感な子には、情報量が多過ぎて混沌としているように思えたり、「いつもと違うこと」が苦手な子は、毎日の天候の変化や様々な行事、クラスの子達の動きなど、予測できないことに不安や負担を感じやすいようです。そんな中、毎日同じことを同じ時間にする、A先生の安定した行動パターンは、長男に大きな安心感を与えてくれたようです。また、毎日同じタイミングで連絡帳を集めると、それが習慣として定着しやすく、うっかり忘れの多い長男でも、提出物を出し忘れることは、ほとんどありませんでした。また、A先生は感情も大変安定している方でした。少々元気のよい子どもたちをA先生が一喝する場面も見かけましたが、そこに先生自身の感情が巻き込まれることはありませんでした。子どもひとりひとりと先生が、日頃から信頼関係で結ばれているからこそ、時に厳しい態度でも、素直に受け容れられていたように思います。そして、子ども達が良くない行動をやめたら、何事もなかったように、いつもの「通常運転モード」に戻るのです。これらの安定した行動パターンは、実際にやってみると簡単にできることではなく、もはや「芸術」の域なのかもしれません。出典 : 先生は授業中、時折脱線しては、いろんな話を子ども達に披露して下さったようです。ユーモラスなA先生自身の経験談や身近な例え話は、なかなか教科書中心の授業では集中力が続かない長男も、興味を持ちやすかったようです。「A先生、釣りが好きなんだって。おれもやってみたい」なんて、言い出したこともありました。また、書字にやや困難さがあった長男が、大の苦手の漢字書き取りの宿題も、A先生は、いい意味でテキトーに、ぐるぐるっと大きなマルをつけるだけの大らかな添削で、細かなミスや字形の悪さには、片目をつぶってくれました。おかげで、一生懸命がんばっても字が上手に書けない長男にも、さほどプレッシャーにならず、毎日泣かずに宿題に取り組めるようになりました。そして、最初のうちは、A先生は長男を大きな声で注意せずにいてくれましたが、クラスに慣れてからは、長男だけを特別扱いすることはありませんでした。他のお子さん達と同じように、廊下を走れば「コラー!!」と、雷を落とされていたようです。でも、学年末の面談のときにA先生は「最近は、怒られてもケロリとしていて、また男の子達と校庭へ走っていっちゃうんですよ」なんて目を細めながら、どことなく嬉しそうに語って下さいました。このA先生のクラスでは、長男は「落ち着きのない問題児」ではなく、「ただの健全で元気な男の子」でいられたのです。出典 : そして、A先生は長男だけでなく、クラスのどんなお子さんにも同じように、大らかで肯定的な温かい目線で接していました。おかげで、どの子も素直にのびのびと過ごし、その年には集団から孤立しがちな長男にも、仲良しの友だちができたのです。実は、発達障害の診断のある・なしに関わらず、学校生活を送る上で障害となることがあれば、通常学級でも合理的配慮をお願いするのは、法的な根拠もあり、本来、堂々と主張して良いことなのです。ですが、現在日本では、発達障害への社会的な理解や支援体制が、まだまだ十分とまでは言えないようで、特に、通常学級の中で配慮をお願いすると、他のお子さん達から「◯◯君だけズルイ」などと思われてしまう場合もあるようです。いわゆる「フツーの子」であっても、子どもはみんな発達の途上にあることに、変わりないのでしょう。私は、障害のある子・方への配慮が当たり前の風景となる社会を望んでいますが、一方でそれぞれが必要とすることは違っても、どんな子も、大人から大事に特別に扱って欲しいと願う気持ちは、同じなのだと思います。支援の本質とは、ひとりひとりの個性や気持ちに寄り添い、信頼関係を築いて、子どもたち全てを肯定的な温かい目で、大らかに成長を見守ってあげること。本当の意味でのインクルーシブ教育とは、どんな子も特別で、どんな個性でも大事にしてあげること。…なんじゃないかな、なんて、A先生を思い出しては、私はいつも思うのです。変わりつつある教育の中で…出典 : そんなA先生は、長男のクラスを担任して下さった翌年、定年退職されました。今頃、毎日大好きな釣りを楽しまれていることでしょう。でも、ひょっとしたら、お父さんお母さんの懐かしい思い出の中にも、こんな先生に心当たりがあるかもしれませんね。こういった経験豊富な先生方は、それぞれ性格や教え方の違いはあっても、総じて大らかで、感情が安定している方が多いように思えます(勿論、ベテランだからといって、必ずしもうまくいく訳ではありませんし、お子さんとの相性もあるでしょう)。一方で、残念ながらこんな達人の先生方は、毎年、A先生のように、次々と定年退職されていく現実があります。日本の他の伝統産業と同じように、教育現場でも深刻な後継者不足・人手不足の問題が、今まさに現実になっているのを痛感する日々です。もちろん、若い先生の中にも、柔軟に新しい方法を取り入れて下さったり、発達障害について熱心に勉強して下さる方がいます。日本の教育は現在、過渡期にある特別支援教育だけでなく、いじめや不登校、親の経済力による教育格差、そして先生方の過剰な雑務や長時間労働の問題など、課題が山積みである以上、やはり大きく変わっていく必要があると私も思います。でも、そんな中で、日本の伝統的な教育制度の中で長く培われた、こんなに素晴らしい職人技と、どんな子も大らかに見守る温かい目線が、熱意溢れる若い世代の先生方にも、途絶えることなく受け継がれていくことを、私は切実に願ってやみません。
2018年02月24日2015年4月、子育て世帯やママを取り巻く環境は、大きく変わりました。それは、「子ども・子育て支援新制度」が始まったから。この「子ども・子育て支援新制度」には、保育園や幼稚園を利用するための認定について、子どもにかかるお金のことなど、様々なことが定められていますが、「病児保育」も注目したい項目のひとつ。そんな「病児保育」について、「病児保育の施設には3つある」、そう話すのは、全国病児保育協議会会長・大川洋二(ひろじ)さん。「病児保育」を行う3つの施設って?先ほど、大川さんが言っていた「3つの施設」。これらについて、解説してくれました。「ひとつ目は、病院やクリニックに併設されている『医療機関併設型』。2つ目は、幼稚園や保育園などに併設された『保育園併設型』。そして3つ目は、『単独型』というものです」(大川さん、以下同)では、それぞれの施設はどのような特徴があるのでしょうか?「『医療機関併設型』は、おもに病気は治っていないけど、悪化する可能性の低い子どもを預かる『病児保育』を担当していて、『保育園併設型』は、病気は治っているけど、円や学校には行けない子どもを預かる『病児後保育』を担当しています。というのも、いずれの場合も子どもの容体は安定しているとはいえ、悪化する可能性はゼロではありません。そのため、『病児保育』は医師が常駐している『医療機関併設型』で担当することが多いのです」「医療機関併設型」、「保育園併設型」の違いはわかりましたが、もうひとつの「単独型」は?「『単独型』はNPO法人などが運営している施設です。地域のドクターがチームを組んで、今日は○○病院、明日は××病院といったように、当番制で担当しています」これらの施設には課題もこのように、病児を受け入れてくれる施設はありますが、「まだ課題もある」と大川さんは続けます。「『子ども・子育て支援新制度』が施行された2015年以前から『病児保育』の取り組みはありました。当時は、病児2人に対し、保育士・看護師がひとり付くことになっていましたが、現在は、人員不足の観点から、保育士・看護師ひとり当たり3人になったのです。しかし、これでは病児へのケアが不十分になるとの懸念もあります」また、定員が少なく、現状は預けたくても預けられない状況もあるそうで、その点も解決すべき課題だと大川さん。共働き世帯や働くママが増え、病児保育の需要が高まっている昨今。子ども・子育て支援新制度が充実するには、まだ時間がかかりそうです。(文・明日陽樹/考務店)
2018年02月23日ウーマンエキサイトで人気連載中のちゅいママさんの記事 「専業主婦もストレスフル! 『預けられない子育て』を経験した私の願い」 で実施したアンケート。「母親が1人で抱え込みがちな育児の現状『預けられない子育て』について、ご意見をお聞かせください」の問いに、専業ママ、働くママの双方から多くの意見が集まりました。ちゅいママさんは、「働いていても働いていなくても、誰でもいつからでも子どもを保育園に預けられるようになったらいいのに」と言います。この意見に賛成、反対と表明する人、「どうすればいいのか?」と問題提起する人など、「小さい子どもを預けること」について、多くの人(とくにママ)が関心を持っていることがわかりました。■専業ママが思っていても口に出せなかったこととは「働いていなくても保育園に預けたいと思ってはだめでしょうか?」と問うちゅいママさんに対して、「涙しながら共感しました!」「思ってはいけない! と思い込んでいたことを書いてくれてありがとう」と、自分の気持ちを代弁してくれたと感動する声が、もっとも多く集まりました。筆者の意見に賛成です。0~2歳児は保育園、3~5歳児は幼稚園をなかば義務にしてしまえばいいのに、と思います。雇用も促進されるし、「女性ももっと働こう!」という国の方針にも合うと思います。一人でいる時間は人間ならだれでも欲しいものです。子育てや介護の最中でも、その状況から離れられる環境が用意できなくては、だれだってストレスでつぶれます。みんな思っていても口に出して言えなかっただけだと思います。現代の育児は人の手を借りることが難しいです。父親も帰りが遅くクタクタで、育児に参加したくても仕事だけで精一杯の日が大半をしめていますよね。ずっと預けっぱなしにしたい訳じゃない。少しだけでいいんです。もし子どもを預けられるようになれば、虐待が減るのではないか、少子化が止まるのではないかという意見もありました。核家族化が進み、ママとイヤイヤ期の子ども、産まれたばかりの赤ちゃんだけが部屋の中に閉じ込められてしまったかのように感じるママたち。ちゅいママさんは、「同じ景色の中で終わりのないマラソンを走り続けているような感覚」と言い表しましたが、アンケートでは「生き地獄」と評した人もいます。■「専業ママを自分で選んだ」というストレスちゅいママさんは専業ママも働く主婦も経験したうえで、「圧倒的に専業主婦の方がストレスフルだった」と話します。「働いていないのだから育児・家事は完璧にこなす」ことを自分で課してしまったり、「専業ママなのだから子どもを預けること」をみずから制限してしまったりするママも多いよう。すべてを選んだのは自分という責任感、夫から理解してもらえない専業主婦のせわしなく退屈な毎日、働いていないという家計への無力さからの遠慮、夫や義母からの小学生までは家にいて子育てしてほしいという希望、言いきれないほどの理由があり私も一時保育を利用できない1人です。「母親なんだから」、「専業主婦なんだから」、「自分が選んだんでしょ?」夫にまでも言われてしまう現状。保育園の一時保育を利用したくても、リフレッシュで使うには何時間までと決められ、予約は常に取れない。疲れていても24時間休めない。下の子がイヤイヤ期になり、上の子に我慢させることも多くなり、体力的だけでなく精神的にも追い詰められても、だれも手を差し伸べてくれない現状です。預けることがいけないことのように、「お母さんといるのが一番だよね」なんて言われたり。少しの買い物にも何時間もかかり、子も親も最終的には険悪に。だれか助けて。子どもと過ごす時間を「ヒリヒリと常に焼かれるような感覚。朝、目が覚めるとまた今日が始まってしまったという絶望感」とまで書いた方も。どうしてこれほどまでに専業ママは追い詰められてしまっているのでしょうか。そこには、世の中に蔓延(まんえん)する「母性神話」の存在があります。女性だったらだれもが子どもを出産すれば「母性」が宿り、「子どものためならどんなことでもいとわない」なんてことを男性のみならず、同じ性である母からも圧力がかかり、ママたちは追い詰められていきます。私も本当に苦しかった。「子どもと、いつも一緒にいられていいね」といったパパを嫌いになるくらいに。国の前に、パパにわかってもらえなかった。10年かけて、理解してもらいました。もう子どもは大きいですが、あのとき理解してほしかった。仕事してないのに子どもを預けるのは良くないとか三歳児神話とか日本特有の「尽くして我慢して子を愛するのが母親」みたいな考えやめてほしい。子育て経験者世代の「あなたの育て方が悪いんじゃない?」とか「愛するわが子を育てて何がつらいの?」とか 押し付けもやめてほしい。一時保育を利用する理由を記入しなくてはいけないのはなぜなのか。理由なんてなんでも良いじゃない。こんなに子育てにストレスあると少子化は止まらないよ 私は小さいとき親から、「保育園に預けられている子はかわいそう」とか、「子どもの成長が見られなくて親もかわいそう」と言われて育ちました。だから、いざ私が子どもを預けたいと思ってもなかなか周囲からいい顔もされず、結局ワンオペ育児中です。保育園は悪者だというとくに自分の母親世代の風潮も何とかして欲しいです。■働かずに預けるのはぜいたくな意見か?しかし専業ママが「保育園で子どもを預かってほしい」と考えることに反対する意見もありました。子育てと家事(仕事)の両立が大変なんだから、家事の方を頼む方向性はないの? 子育て大変だけど母の愛は唯一無二。家事から解放されたら朝から眉間にシワは寄らないんじゃない? 私も子育てしたから言いたいことはすごくわかる。でもそこは子どもを預けるより先に、家事代行の話をしてほしかった。個人の受け止め次第ですが、ほんの一時期の問題であり、専業主婦が預けるなんてワガママとしか思えません。国費を投入するべきは、高齢者を含む介護や不妊治療が優先されるべきです。これらは、個人の受け止めとか、キツいキツくないの次元の話ではないからです。現在預けられない育児中です。誰かに見てほしい、一人でゆっくりお風呂に入りたい。でも思うのと実行するのは別。働いていないのに毎日保育園に預けている人がもし周りにいたら、私はその人のことを親になる資格がないと心底思います。月に何度か一時保育に預けて美容室やショッピングなどリフレッシュはとてもいいことだと思いますが、それだけでは不十分なのでしょうか。また、専業ママからは、「『仕事してます』と言ってPTAを専業ママに押し付けないでほしい」、「共働きの家の子どもがわが家に入り浸っている」といった「面倒なことをタダで押し付けられている」という声も聞かれました。「専業ママVS働くママ」「時短ママVSフルタイムママ」というように、なぜか日本では同じ女性同士が対立構造になってしまいがちだと感じます。本当はどんな立場であれ、自分の望む形で生活をしたいはずなのだと思うのですが。■幸せな国デンマークの子育て事情今回、専業ママが子どもを保育園に預けることに反対する人の多くは「ぜいたくな意見」というものでした。医療費、年金問題、介護など、日本では莫大(ばくだい)なお金を必要とする問題が山積みとなっています。だからこそ、だれでも預けたい人が保育園に預けることが「ぜいたく」となってしまうのかもしれません。ちゅいママさんは、デンマークでの「働いていなくても保育園に預けられる」という政策に共感し、「あぁ…日本もこうなればいいのに!!」といいます。デンマークといえば、国連が調査する「幸福度ランキング」で常に上位となっている国。そして高い税金を徴収する代わりに育児制度も充実しているといわれています。アンケートでは実際にデンマークで子育てしているという方からも意見をいただきました。デンマークで子育てしています。こちらはむしろ1歳前後(8ヶ月頃から)から預けないと、「社会性が身につかん!」と言って、なかば強制的にまわりからとやかく言われて預けるにいたります。保健婦など公の人にもです。日本人の私は最初ものすごく抵抗ありました。語学学校に週3で数時間ずつしか通っていなかったので、学校のない日は申し訳ない気持ちでいっぱいでした。でも、こちらの人たちはなぜ申し訳なく思うかまったくわからない感じでした。ただ「日本もデンマークのようになればいい」とは簡単に言えない問題についての指摘もありました。筆者の方はデンマークを引き合いに出していますが、デンマークの手厚い社会保証は高額納税あってこそと考えます。保育園に2人預けてフルタイムで働いていますが、月11万かかっています。それでも、保育士さんの労働環境(お給料)はいいとは言えないと、当の保育士さんから聞いています。気軽に預けられる環境作りはもちろん重要ですが、金銭的な負担をだれが背負うかは、この問題で避けてとおれないと考えています。高納税の国デンマークだから実現できた仕組みかもしれませんが、日本ではまったく実現できない制度なのでしょうか。デンマークで子育て支援が充実する背景には、女性の社会進出を促す目的があるともいわれています。日本でも働き手が不足する状況で、女性が社会に出ていくことは必要不可欠な問題だろうと思われます。だからこそ国として少子化対策、女性への社会への進出については、同じ土俵で検討してほしいと切に願いたいです。■ママが「つらい」と言ってもよい社会では、私たちが目指すのはいったいどういった社会なのでしょうか?半年間の育児休業を経験した今1歳半の息子の父親です。父親目線で見ていても母親の育児実態がちゅいママのいうとおりであることがよくわかります。2人目以降を考えると、専業主婦で年の近い子どもを一日中相手するのは相当つらいというのは容易に想像できます。子どもにはそれぞれの個性があり、複数の子どもを育てる場合、夜泣きがひどく数年間ずっと慢性的な寝不足、日中は一時も目を離せないというプレッシャーと対峙(たいじ)します。日本にも預けられる環境が整うことで母親が笑顔でいられ、それで子ども父親も笑顔でいられるという良い循環となるよう切に願いますやっぱり理想の母親像がだれの中にもあって、それが自分がお母さんになった後により一層重くのしかかってきます。お母さんだからわかるつらさがあるんです。それを経験したことのない人、国を変えることができる政治家などに訴えていかないといけない。そこが一番難しいところだと思うんです。日本は経済先進国だけど、いろいろな面で発展途上国だと思います。転勤族の妻の子育ても、またつらいものがあります。キャリアは中断、子連れで新生活だけでも大変なのに、仕事や保育所情報求めるのも一苦労。日本企業の仕組みが専業主婦を作ってます。イクメンしたくても無理な男性もたくさんです「選べることができる国=幸せな国」と書いた方もいました。選ぶということは、もう一方を否定することではないはず。もちろん税金や費用の問題は大きいのですが、それだけではないと思います。ママ自身が作ってしまった「ママの檻」。そしてそんなママを閉じ込めてしまうような世間の風潮。それらも変えていかないと、日本で子育てすることが「つらい」ままなのではと思います。なぜ預けることが悪なんでしょうかね。そういう空気感があると思います。たまには騒ぐ子どもがいない、ゆっくりランチしてもいいじゃない。ホントに大変なんです、家で3歳までみるのは。でも、こんなこと言ったら言われるでしょ…「子どもがかわいくないの? かわいそう」って。母親が子どもを預けやすい環境にするには、世論として子どもを預けても「良い!」という声をもっと一般的にする事がだいじかなと感じています。私自身や周りのママたちの何人かは一時保育に預けることを家族に反対され断念した経緯があるのです。気軽に預けることがあたり前という社会にしていく必要があると思います。働いていても働いていなくても、預けることに否定的な人、肯定的な人がいます。ちゅいママさんは、「いつか働く、働かない、預ける、預けない、人それぞれ好きなように組み合わせられるような世の中になればいいにな…と祈るばかりです。」といいます。今回のアンケートでは、多くの専業ママから「無給で365日働いて、それでも『食べさせてもらってる』扱い」というような悲痛な叫び声がたくさん聞かれました。そして働くママも保活であじわう苦悩、仕事・育児・家事に追われている人がたくさんいます。「ママが疲れたときは休める場所があること」を望むことは、けっして「悪」ではないはず。今回のちゅいママさんの記事を読んだ方から「ママが疲れたなら『疲れた』『つらい』と愚痴をこぼしてもいいんだ」「だれかが私と同じ気持ちを持っていると知ることができただけで救われた」という意見がありました。ママが子どもを預けることは、子どもに愛情がないということとは違います。「ツラいと感じている」ということを夫や周りの人に理解されない…、または自分が言ってはいけないと思っていることが、追い詰められる原因ではないでしょうか。 一時保育が利用しやすくなるなど制度面の改善にも期待したい! ですが、まずはつらかったら「助けて」と言える家庭、社会であれば、ママが感じる閉塞感も少しは薄らぐのではと思います。母親が1人で抱え込みがちな育児の現状「預けられない子育て」について、ご意見をお聞かせくださいアンケート回答数:875(アンケート集計期間:2018/2/15~2018/2/19)
2018年02月22日2015年4月に始まった、「子ども・子育て支援新制度」。その中のひとつに、「病児保育」というものがあります。ひと口に「病児保育」といっても、じつは4種類もあるということ、ご存知でしょうか?今回は、それぞれの特徴をおさらいしましょう。ご協力いただいたのは、全国病児保育協議会会長・大川洋二(ひろじ)さん。病児保育のそれぞれの特徴は?先述のように、病児保育には4種類あるのですが、それは(1)「病児保育」、(2)「病後児保育」、(3)「体調不良型」、(4)「派遣型」の4つ。それぞれの特徴は以下。(1)「病児保育」病気がまだ治っていないけれど、容体が急変する可能性が低い子どもを預かる(2)「病後児保育」病気自体はすでに治っているけれど、保育園や幼稚園、学校にはまだ行けない子どもを預かる(3)「体調不良型」保育園や幼稚園、学校等で預かっている子どもが、急に体調が悪くなったけれど、保護者がすぐに迎えに行けない場合、施設に配備されている看護師が面倒を見る(4)「派遣型」別名「非施設型」とも呼ばれている。厚生労働省が認定している病院、クリニック、保育園、認定こども園等の施設に子どもを預けるのではなく、病気の子どもの自宅にベビーシッターなどが訪れ、預かる大きな違いは国家資格の有無これら4つとも、病気の子どもの面倒を見てもらえるという点では共通していますが、大きな違いは「国家資格有無」とのこと。「『病児保育』、『病後児保育』、『体調不良型』の3つは、微妙な違いはあるものの、保育士や看護師、医師といった国家資格を有している人が対応します。一方、非施設型の『派遣型』は、『家庭的保育士』と位置付けられ、国家資格を有していなくても、市町村長が指定した研修さえ受ければどなたでもできます」この国家資格の有無の差は、私たちにしてみればあまり重要とは思えないかもしれませんが、懸念点は多いといいます。「派遣型の場合、きちんとした人が来てくれればいいけれど、人によっては不安が残ります。また、ひとりで来るので、どういう風にお世話をしているかがわからないのです。また、病気の子どもは、容体が急変する可能性もあります。看護師や医師なら緊急の時でも焦らず対応できるでしょうが、その保証もありません」保育士不足などが問題化している今、「研修さえ受ければ誰でも」というのは、人材を補うためにはいいこと。しかし、技術や経験が不足しているという点では、まだ不安も残るようです。子どもが病気になったとき、ママがそばにいてあげられないことも多々あります。子どもの状態を見て、どんな施設を利用すればいいのかを判断するためにも、4つの病児保育の違いは知っておきたいですね。(文・明日陽樹/考務店)
2018年02月20日赤ちゃんの名付けは、出産後のワクワクイベント!みなさん、こんにちは。ロシアンハーフ子育てに奮闘中の室伏真由子です。先日、古くからの友人が出産を終え、可愛い赤ちゃんの写真が送られてきました。出産前のお腹が大きいときにも、その友人と会っていたので、とても嬉しかったと同時に母子共に健康でほっと一安心しました。その次にやっぱり気になるのは、「どういう名前にしたの?」ということ。「こういう漢字で〜」とか「お父さんの字をひとつ取って~」など、名付けの経緯を聞きながら、ワイワイ大盛り上がり!新しく生まれてきた赤ちゃんの名前には、ママになった友人の愛情が沢山詰まっていて本当に素敵だなとしみじみと感じました。今回のテーマは「我が家の名付け事情」ということで、私たち家族がどうやって息子“ニコライ”の名前を決めたのか、そして海外の名付け事情もちょっぴり紹介したいと思います!名付けの前に悩んだのは、苗字! 夫婦別姓の我が家の場合まず、主人と私が悩んだのは、名前ではなく苗字でした。というのも、私たち夫婦は別姓で(日本では外国人との婚姻でのみ、夫婦別姓が許されています)、私の「室伏」という苗字と主人の「リアザノフ」という苗字、どちらを取るかという問題がありました。なぜ別姓にしたのかは、ここでは割愛しますが、結局のところ息子には私の苗字「室伏」を継いでもらうことにしました。どうしてかというと、日本では学校や社会で苗字を使う機会が多かったり、印鑑を使用したりするので、日本の苗字を持つことの方がメリットが多かったからです。なにより、日本は名前よりも苗字で呼ばれることのほうが圧倒的に多い国。日本の苗字を持っていることで、髪色の違うハーフであっても、周囲から親しみを持って接してもらえると思ったのです。ただ、ロシアに帰省する際に困らないように、パスポートにはロシアの苗字も併記しています。ロシアの風習「父姓」をミドルネームに!息子には日本の苗字、と決めた後は、ロシアの慣習から「父姓」をミドルネームとしてつけることに決めました。これは、お父さんの名前から付けられると決まっていて、ロシアでは公共の場で「◯◯さん」と呼ぶときに「名前+父姓」という形がよく使われます。例えば、ニコライのお父さん=私の主人の名前は「セルゲイ」というので、息子ニコライの父姓は「セルゲーヴィチ」となります。もし、息子がロシアで丁寧に呼ばれるならば、「ニコライ・セルゲーヴィチ」と呼ばれることになります。これで、日本の苗字であっても、父姓があるので帰省時に困ることは無さそう!ロシアで共通の風習である「父姓」ですが、旧ソビエトであったウクライナやベラルーシなどでもこの風習が未だに残っています。ちなみに、日本ではミドルネームや父姓の文化がないので、住民票などの公的文書ではファーストネームと一綴りで「ニコライセルゲーヴィチ」と記入されてしまいます。どれがミドルネームか判別しにくいので、公的文書以外の氏名欄は「ニコライ」としています。日本名かロシア名、どちらにするのかわたしの大学時代の友人や知人の中には、国際結婚カップルも多くいます。国際結婚カップルの多くは、日本で長く暮らすなら日本の苗字を残して、下の名前を外国名にしている人が多いような気がします。国際的に通用する「リサ」「ナオミ」「ジョージ」などは、漢字も充てられ、日本にも馴染みのある名前で良いですよね!欧米の名前には、宗教の聖人から由来した名前が多くありますが、その聖人たちの名前も、もとを辿れば古代ギリシア語に起源していることがあります。たとえば、先ほどの「ジョージ(George)」という名前は、「ゲオルギオス(Georgios)」というキリスト教の聖人によって広まりますが、もとは古代ギリシャ語で「大地で(geo)働く(erg)人」という意味です。息子のニコライも、「ニコラオス(Nikolaos)」というカトリック教会の聖人から取りましたが、もとを辿ればやはり古代ギリシャ語で「勝利する(nike)人(laos)」という意味です。ギリシャ神話には、「ニーケー(Nike)」という勝利の女神が登場しますが、人気スポーツブランドの「ナイキ(NIKE)」がこれに由来していることは有名な話です。息子は、超シワシワネーム!?笑昨今の日本ではキラキラネームやシワシワネームなど、名づけでは色々な議論があると思いますが、ニコライは西暦270年には既に使われていた「超シワシワネーム」です!!!しかし、ロシアではもちろん、日本側の親戚も「ニコちゃん」と呼んで、今まで全く抵抗無く過ごしています。名前は親が与える初めてのプレゼント。私と主人の親族どちらにも、そして周囲にも受け入れられやすく、誰からも好まれるような名前を付けることも大切ではないかと思います。国際結婚ママだけでなく、妊娠中のプレママさんたち、たくさん考えて素敵な名前が見つかりますように♡
2018年02月11日「コミュ力UP」ワークショップで、会話のコツを学ぶ!Upload By かなしろにゃんこ。発達障害がある人や、その家族、支援者などいろいろな立場の人が参加できる会が、発達障害がある人の「コミュニケーション力の向上」を目指すワークショップを行っていると知り、行ってみることにしました。そこで教えてもらったコミュニケーションのコツは目から鱗だったのです!どんなコツなのかについては、前回のコラムを読んでいただけると嬉しいです。コミュニケーションのコツを教えてもらったら、いよいよロールプレイングを行います!6~8人のグループに分かれてスタートです。まず、ファシリテーター(会の進行役)からお題が出されます。そして、そのお題に沿った内容について、2人1組で5分間雑談をするのです。2人以外は、周りで2人の会話の様子を見守ります。いざ雑談を…と言われても、初めて会う者同士です。何から話していいのか分かりません。でもとにかく、私と相手役のNさん(男性)は、与えられたお題「和菓子」について話し始めたのでした。いよいよロールプレイング開始!ミッションは「いいところ」さがしUpload By かなしろにゃんこ。5分間は短いようで長い!自分の好きな和菓子の話をしてみたり、Nさんに話を振ってみたり。Nさんが好きな和菓子について掘り下げて聞いたり、和菓子のデザインの話まで広げてみたりと、アレコレ一生懸命話しました。私が気をつけたところは「嫌いなもの」や「苦手なもの」など否定的な会話をしないようにすることです。司会進行役のKさんの「否定的な会話からは何も生まれない」という発言が、私の心に響いたからです。肯定的な会話になるよう意識してみると、雑談もスムーズ!5分間の会話が終わると聞き役の方たちから「どこがよかったか!」を発表してもらいます。周りで見守っているメンバーは、話している2人をよく見て「いいところ」を探すのです。必ず「いいところ」だけをコメントするのが、このワークショップのポイント。会話をしている2人を観察して、長所を見つけることがミッションなのです。もちろん私も、他のメンバーが会話している間は聞き役になって、2人の「いいところ」を探しました。発達障害がある人は周りの人に興味がない、気にしないと言われることがありますが、こういう風に意識することで、変わるんじゃないかと思いました。皆さんから「いいところ」を発表してもらうと気持ちがいいものです。たとえそれがお世辞であっても!「雑談中、うまく話せなかった」「余計なこと話しちゃったかな?」と反省したりクヨクヨすることが多かった私ですが、肯定的なコメントをもらうことで、自己嫌悪を感じることがありませんでした。「私のこのしゃべりでも認めてもらえるんだ!」と自信を持てたのです。グループディスカッションで、会話の引き出しづくりUpload By かなしろにゃんこ。そしてテーマ「和菓子」について、もっと話せることはないか!?とみんなでディスカッションをします。これが楽しい!自分では引き出しが無くて思いつかなかった話や伝え方、テーマについてこんな切り口があるよ!とオモシロイ発想をグループのみなさんから聞くことができました。何度かワークショップに参加者しているという男性(会社員)は、「雑談はこうする!」というコツが分かってきたから「会社でも困らなくなった」と言っていました。コツが分かると、積極的に話したくなるのだそうです。「知識はひけらかさない」あえて避けるのがポイントUpload By かなしろにゃんこ。何度も参加している方に、雑談で気をつけていることを聞いてみると、「テーマに沿って相手も乗ってくれて話がうまくいったとしても、歴史や素材など話が長くなってしまいそうなものは避けます」とおっしゃっていました。そして「話がマニアックになってしまいそうになったら、自分からマニアックになってしまうので止めて違う話にしましょう」と方向転換することも身についたとも。ついつい知識を伝えたくなってしまうけれど、「あえて話さない」ことで雑談の雰囲気がよくなって、会話のイイ流れをつくれるのだと、勉強になりました。最大の難関…反抗期真っただ中の息子に、どう伝える!?Upload By かなしろにゃんこ。自助会でたくさんの情報を得てホクホクな私は早くこの素晴らしいコミュニケーションのコツを息子に話したい!とウキウキ。が!反抗期真っただ中で、親の言うことにはいちいち反発してくる息子です。うまく伝わるものなのか…???どうやったら伝えられるのか、悩んでしまいました。この続きは次回に!少し長い話になりましたが、もう少しお付き合いいただけたら幸いです~♡
2018年02月08日「バレンタインって?」広汎性発達障害の娘に説明すると…女の子が夢中になるイベント…それはバレンタイン♡うちの娘も例外ではありません。初めて意味を理解したのは、娘が4歳の時。当時はしゃべりも理解力も、まだまだだったので、簡単な言葉と、絵で説明してみました。Upload By SAKURA「チョコを一人で作りたい!」5歳になった娘がやる気になった!?そして翌年、娘5歳。娘は、スーパーのバレンタインコーナーなどを見て、バレンタインが近いことに気づき、「早く作らなきゃ~!!私一人で作りたい!!」とやる気満々。4歳の時も、チョコレートは作りましたが、私がほとんどやったようなもの。一人で挑戦させたら、やり遂げることが、娘の自信に繋がるかもしれない。「やればできる」と思ってもらいたい!あげる相手はどうせパパ…失敗しても大したことはない(ひどい)…ということで、市販のバレンタインキットを使って、初めて一人で作らせることにしました。Upload By SAKURA娘がやりやすいように、準備できるところは?購入したキットには、材料がほとんど入っていたので、準備も楽。とは言っても、説明書の字が読めない娘。そこで私は、あらかじめ説明を読んで、説明絵を作ることにしました。順序を絵に描き、順番もわかりやすくするため、材料が入っている袋に番号を書きました。Upload By SAKURA「…(ああ~こぼれるッ)!」娘一人でやり遂げるために、お口チャックで見守ります娘に絵を見せ、ざっと説明すると、「よし!わかった!私一人でやるぞー!」と調理を開始しました。娘がやっている最中、私は最低限のこと以外は口を出さないようにしました。何度も手助けしたくなりましたが、ぐっと我慢…!手伝うこともせず、とにかく見守ります。それは、娘が「一人でやる」と言ったことを大事にしたいと同時に、一人でやることの大変さを理解してもらいたい、という気持ちからでした。口も手も出さないわけですから、もしかしたら取り返しのつかない失敗をする可能性もあります。間違えても大丈夫なように、予備もスタンバイしました。視覚優先で情報収集するという特性がある娘は、説明絵を真剣に見ながら、材料とにらめっこ。加えて真面目過ぎる性格が、功を奏し、一つひとつ確認しながら作業を進めていきました。Upload By SAKURA「できた!」大喜びの娘、でもちょっと待って…?Upload By SAKURA一時間ほどかけながらデコレーションまで終わらせ、冷蔵庫で固めて完成!初めて一人で作った娘は、できあがったものを嬉しそうに眺めていました。そして味見…味見…自分が作ったものがよっぽどおいしかったのか、味見が止まりませんでした(笑)貴重なチョコにパパ大喜び♡「あーさんのバレンタイン作戦」大成功なんとか守った残りをラッピングし、パパにプレゼント。初めて娘が一人で作ったチョコレートを、嬉しそうに味わうパパ。Upload By SAKURA半分以上、あげる前に娘が食べてしまったことは内緒です(笑)今年のバレンタインも、娘と相談し、お菓子を作る予定です。去年よりお姉さんになり、できることも増えた娘。今年のバレンタインはどうなるかな~!楽しみです!
2018年02月07日平成30年度「障害福祉サービス等報酬改定」のポイント出典 : この記事では、2018年2月5日に「平成30年度障害福祉サービス等報酬改定検討チーム(第17回)」で行われた、”平成30年度の障害福祉サービス等報酬改定の取りまとめ”について取り上げたいと思います。その中でも、特に発達ナビユーザーに関わりの大きい、放課後等デイサービスや児童発達支援を中心に、改定についてどのような議論があったのかや、予想される影響についてご紹介します。今回の報酬改定の主なポイントは下記のとおりです。■医療的ケア児・重症心身障害児への支援を促進■事業所の質の向上を促進■地域で保育・教育を受けられる体制を促進■障害の程度やサービス提供時間を踏まえた報酬へ■送迎加算の見直しは、次期検討事項に次に、それぞれの内容について、説明をしていきます。参考:平成30年度障害福祉サービス等報酬改定の概要 | 厚生労働省医療的ケア児・重症心身障害児への支援を促進出典 : 気管切開のために吸引が必要となるなど、医療的ケア児には医療的な支援が欠かせませんが、医療的ケアができる看護職員が在籍する事業所の数は、限られています。そのため、ケアが必要な子どもたちは事業所を利用することができず、自宅で家族が介護することが多いという状況がありました。今回の改定では、一定の基準を満たした医療的ケア児を受け入れるための体制を確保し、ケアが必要な子どものニーズに応じた支援が受けられるよう、看護職員の加配を評価する報酬体系が検討されています(看護職員加配加算/医療連携体制加算)。送迎サービスにおいても、吸引などのために職員を配置する場合に、加算が認めることが言及されています。また、医療的ケア児が体調を崩しやすいことを踏まえて、欠席時対応加算が拡充される見込みです。これまでは、予定していた利用者が急に欠席すると、事業所は収入がなくなってしまい、事業継続が難しくなるという問題がありました。この加算によって、医療的ケア児に対応する事業所の経営が安定化するというメリットがあります。加えて、通所が困難な医療的ケア児については、自宅への居宅訪問型児童発達支援が新設されることとなる予定です。また、重症心身障害児の指定児童発達支援を行う、利用定員10名以下の事業所については、報酬単価がアップする見込みであることが示されました。こうした報酬改定を受けて、重度障害のある子どもの支援環境の向上が望まれます。事業所の質向上を促進出典 : 児童発達支援を行う事業所では、人員について、現在は指導員又は保育士を配置することとなっています。ですが平成30年度からは、児童指導員、保育士、または障害福祉サービス経験者で、かつ半数以上が児童指導員又は保育士であることが求められる見込みです(ただし、すでに指定を受けている事業所については平成31年3月31日までの経過措置が設けられます)。※放課後等デイサービスについては平成29年4月1日から義務づけられています(ただし、左記時点ですでに指定を受けていた事業所については、平成30年3月31日まで経過措置期間)。児童発達支援・放課後等デイサービスの事業所の職員配置についての報酬も改定が予定されています。指導員加配加算が見直され、一定の基準を満たす事業所が指導員加配加算により評価した職員に加えて、1人以上のスタッフを配置した場合、つまり基準以上に手厚い人員配置を行っている場合に、さらに評価される見込みです。このとき配置される職員が、理学療法士などの専門職員の場合、児童指導員などの場合、その他の従事者の場合、それぞれで受けられる加算単価が異なります。専門性の高い職員は高単価である一方、資格のない従業員の場合は単価が低くなります。また、障害児へのきめ細やかな支援を強化するため、特別支援加算が見直されます。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・心理指導担当職員・看護職員など、専門職員を配置し、機能訓練や心理指導を行う場合の加算が、現状より高く設定されることになります。強度行動障害者養成研修を修了した職員を配置する場合の加算も新設されます(強度行動障害児支援加算)。このように、専門性の高い職員、強度行動障害についての知見がある職員を配置する事業所に対して、手厚い報酬となることが示されています。また、児童発達支援を行う事業所に対して自己評価結果の公表も義務づけられ、未公表の場合は15%報酬減算がされることが示されています(自己評価結果等未公表減算/平成31年4月1日から適用)。※放課後等デイサービスについては平成29年4月1日より自己評価結果公表が義務づけられています(ただし、左記時点ですでに指定を受けていた事業所については、平成30年3月31日まで経過措置期間)。自己評価結果等未公表減算については平成31年4月1日から適用。参考:「児童福祉法に基づく指定通所支援の事業の人員、設備及び運営に 関する基準について」等の一部改正について | 厚生労働省(平成29年3月31日)※放課後等デイサービスについて地域で保育・教育を受けられるような支援を促進出典 : 現在、児童発達支援や放課後等デイサービスの事業所などが、障害児が通う保育所や学校などと連携して個別支援計画の作成を行った場合、1年に1回を限度として加算がありました(関連機関連携加算)。今回、この回数が1か月に1回までとなり、支援計画作成による事業所への報酬が大幅にアップする見込みです。これにより、関係機関とのより緊密な連携が促進されると思われます。また、通所支援事業所を退所して、地域の保育所や学童クラブなどへ通うことになった場合の「保育・教育等移行支援加算」の新設が予定されています。上述の個別支援計画での連携なども実施しながら、障害のある子どもが地域の子どもたちと一緒に育つことを促進する施策と言えそうです。障害の程度やサービス提供時間を踏まえ、放課後等デイサービスの報酬にメリハリ出典 : 放課後等デイサービスの基本報酬については、全体的に引き下げの方向となりました。さらに、現在は一律となっている基本報酬について、利用する子どもの状態を踏まえた指標が設定されることになります。具体的には、食事・排泄・入浴及び移動のうち3つ以上の日常生活動作について全介助を必要とする障害児、もしくはコミュニケーションや自傷、他害など所定の項目について13点以上の重度の障害がある子どもの数が全体の50%以上かどうかで、報酬区分が変わることになります。この判定を誰が行うのかについては、まだ明らかにされていません。重度の障害児の利用が半数以上の事業所については3%強の引き下げ、それ以外の事業所については10%程度の引き下げとなる見込みとされています(平日、授業終了後に支援を行う場合、利用定員10名以下の場合の例)。また、サービスの提供時間が3時間未満の場合は、さらに報酬が下げられることになります。短時間のサービスを行っている事業所は、全体の12.8%にあたります。なお、この利用時間には、送迎時間は含まれません。つまり、軽度の障害がある子どもの利用が多い事業所や、短時間のサービスを行う事業所については報酬が下げられるため、経営に影響が出る可能性があります。放課後等デイサービスでの、送迎加算の見直しは?出典 : 今回の改定では、成人障害者が対象の、生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援の事業所については、送迎加算が見直されることになりました。ですが、放課後等デイサービスについては、今回は見直しや改定は行われず、次期改定時に検討・検証を行うこととされました。前回のコラム記事で、放課後等デイサービスでの送迎加算の廃止の可能性についてご紹介しましたが、今回の改定では現状維持となる見込みです。ただし「障害児の自立能力の獲得を妨げないように配慮するよう通知」するとしており、次期以降の見直しの可能性は残っています。障害のある子どもや家族への影響とは?出典 : 今回の議論では、より重度の障害のある子どもへの支援が充実するような報酬改定が示されました。今まで自宅で介護するしかなかったご家庭にとっては、地域の中でさまざまなサービスを利用しながら生活していく可能性が広がったと言えそうです。また、障害の程度が軽度の場合は、保育所や学童クラブなどへ通えるよう、支援を充実させていく方向が示されました。成人障害者についても、障害が軽度の場合は、仕事については作業所から企業での一般就労へ、住まいについてはグループホームから1人暮らしへ、障害が重度の場合は入所施設からグループホームへ…という風に、地域の中で生活していけるようにするという方向での報酬改定でしたが、これと同様の考え方だと言えそうです。障害のある子どもや大人が、生まれ育った地域の中で生き生きと暮らしていけるような支援が、この報酬改定を機に、より一層充実していくことが望まれます。
2018年02月06日「今日こそは大声で叱らないと決めていたのにな…」天使のような子どもの寝顔を見ながら思ったこと、ありませんか?「夫にうまく言いたいことが伝わらなくてケンカになってしまう」「義両親とうまく付き合えない」「ママ友とランチしたけど、みんなの本音がわからなくて不安…」ひとりになると、いろいろなことが頭を駆けめぐり、相手に対してモヤモヤ…そして、そんな自分に対してもイライラ。そんな子育て中のママのお悩みに、ジワジワと効くのは、ズバリ、学問です。え?学問? そう、学問なのです。勉強なんて苦手…と思う人も多いかもしれません。でも、社会人になり、実社会でいろいろな経験をした今は、実のところ「学生の頃にもっと勉強しておけばよかったな」と思う人も多いのでは?学問とは、理論に基づいて体系化された知識と方法を学ぶこと。大人になった今だからこそ、その「体系化」された「知識の地図」を理解できることも。「心理学」とは心を理解するための地図のひとつそんな学問の中でも、人間関係や心が出発点となるお悩みを抱えているママにおすすめなのが「心理学」です。心理学とは、ズバリ、文字通り「心」の「理(ことわり/物事の筋道)」の学問。曖昧ではっきりしない人の心を、長い間多くの研究によって科学的に分析し、心と行動・身体のメカニズムを体系化したもの。心を理解するための地図のひとつとなります。何を考えているのかいまいちよくわからない乳幼児期の子どもを育てているママならば、乳児期の心理的発達を学ぶことで、「なるほど、この行動には、こんな能力を育てようとする目的があったのね」と理解が深まるでしょう。子どもの教育に興味があるのであれば、学習支援の心理学を学ぶことで、学習意欲を育てる手助けになるでしょう。子育てだけでなく、働き盛りのパパのことを支えたかったり、年齢を重ねていく親の心を知りたかったら、心理学で新たな視点を学ぶことで、相手がどんな状態にあるのかのヒントをつかむことができるでしょう。また、自分の仕事や、職場で起きる問題のアレコレ、さらに、自分の人間関係の悩みについても心理学がきっと活かされることでしょう。入り乱れた路地をただ闇雲に歩くよりも、その道の専門家が作った地図を片手に歩いたほうが目的地には確実にたどり着けると思いませんか?心理学を学ぶなら、何歳になっても自由に学べる「開かれた大学」で!その地図のありかのひとつが「放送大学」です。放送大学は、学びたい人が「いつでもどこでも」学べる「開かれた大学」です。何歳になっても、どんなライフステージの人でも、学びたい気持ちがあれば入学できて、その上、何度でも再入学できます。授業の科目を調べてみると「乳幼児の発達心理学」「子どもの発達に与える電子メディアの影響」「科学的思考力を育てる」など子どもに関するものだけでなく、「人格心理学」「偏見の心理」「自分を知り、自分を変える」など自分自身に役立ちそうなものまで、興味をそそられる内容がたくさんあります。 どんな授業があるの? 授業科目例を見てみる 学習方法は大学の名前の通り「放送授業」がメインです。テレビで放送大学のチャンネルがあるのをご存知の方も多いと思いますが、テレビ以外にラジオやインターネットで学ぶ方法もあります。もちろん、オンタイムにテレビ視聴できればそれでいいですし、録画しておけば、好きな時間に学習することも可能。学生専用サイトにアクセスすれば、ほとんどのテレビ科目とすべてのラジオ科目をネット配信しているから、パソコンやスマホ、タブレットとネット環境があれば、学ぶ場所も時間も選びません。自宅で勉強するだけなのが不安ならば、キャンパスで学ぶ方法もあります。放送大学のキャンパスは「全都道府県に設置」された学習センターやサテライトスペース。見逃した授業をCDやDVDで視聴できます。さらに、放送大学の隠れた人気&楽しみのひとつは、スクーリング。全国50カ所の学習センターと7カ所のサテライトスペースで、年間3,000以上のクラスが開講されているので、実際の教室で、同じ授業を受ける仲間たちと一緒に学ぶこともできるのです。また気になる授業料も1科目11,000円から学べます。好きな科目だけ選択する場合は、その科目の授業料だけを納入すればいいので、無駄がありません。※別途入学金が必要となります。金額は、学生の種類によって異なりますが7,000~24,000円です学び始めて面白いと思ってさらに本格的に学びたい気持ちが高まったら、資格も取れます。専門家への第一歩となる「認定心理士」。この「認定心理士」の資格、実は放送大学では、これまでに、7,900人以上もの人が資格取得要件を満たしています。そして、さらに臨床心理学の知識や技術を用いて、心理的な問題を取り扱う専門家「臨床心理士」、放送大学大学院修了生の合格率は、2016年度73.5%です!※臨床心理士の資格を取得するには大学院修士全科終了と1年以上の実務経験が必要となります最後に。私自身、子育てをしながら仕事をしているママとして、声を大にして、全国のママに伝えたいのは、放送大学の講師の方々は、本当に、本当に、一流だということ。現役のときには到底、入れる学力がなかった(涙)私にとっての、あの憧れの大学、大学院で教鞭をとったこともあるキャリアのある先生方が教員紹介のリストに、ずらずらと並んでいるのです。本屋や図書館で読んだ、あの有名な専門家の先生が教員紹介のリストに、いっぱいいるのです。そんな一流の先生を独り占めにするかのような贅沢な環境で学ぶこともできるのが放送大学の魅力のひとつです。これでも受講を迷うようならば、一回、気になる授業をテレビで見てください。45分の授業を見終えた後、きっと、少しだけでも、自分が成長したのを感じられるはずです。 まずは1科目から! はじめてみませんか?心理学 PR:放送大学
2018年02月06日「プリキュアも子育てもお仕事だって、ぜーんぶ、がんばっちゃうよ!」『キラキラ☆プリキュアアラモード』の放送後に流れた新シリーズ『HUGっと!プリキュア』の予告編で主人公・野乃はなが発したセリフだ。■プリキュア新シリーズは「子どもを守るお母さん」ごく普通の女の子たちが伝説の戦士プリキュアに変身し、世界征服企む悪と戦うプリキュアシリーズ。2004年2月に『ふたりはプリキュア』の放送が始まり、以降1年ごとに新しいシリーズが誕生している。キラキラとした変身シーンや果敢に敵に挑んでいく姿は、小さな女の子たちにワクワクする気持ちや憧れを抱かせてくれる。そして、2月4日(日)から放送を開始するのがシリーズ15作目となる『HUGっと!プリキュア』(ABC・テレビ朝日系)だ。今回のテーマは、ずばり「子どもを守るお母さん」。超イケてる大人のお姉さんに憧れる中学2年生の野乃はなの元に、空から赤ちゃん「はぐたん」とお世話係のハムスター「ハリー」が降ってきたことから物語は動き始める。はぐたんを守りたいという強い気持ちによって、はなはプリキュア・キュアエールに変身。キュアアンジュ(薬師寺さあや)やキュアエトワール(輝木ほまれ)と共に、みんなの未来を守るために立ち上がる。■プリキュアの子育て事情にイケメンのイクメンも登場これまでの「つよく」「かっこいい」ヒロイン像に、母として子どもを守る愛の力が加わった『HUGっと!プリキュア』。女の子たちは、これまでプリキュアとして世界を守るために悪に立ち向かってきた。十分にがんばっているのに、そのうえ子育てまで…? プリキュア、がんばりすぎだよと口を挟みたくたくなるが、まずは『HUGっと!プリキュア』を見るときに個人的にチェックしたいポイントを紹介する。●プリキュアの子育て事情物語の中で子育てがどう描かれるのかは気になるところ。「最近、はぐたんの夜泣きがひどくて寝不足なんだ」「離乳食を始めたけど、全然食べてくれなくて」と子育てによくある悩みが、はなの口から出ることもあるのだろうか。これまで、どちらかというと娘の好きな番組として見ていたプリキュアに、ママが共感を覚える日もくるかもしれない。●はぐたんの成長具合物語のキーになる存在のはぐたんの成長具合も見どころだ。まずは、はぐたんが生後何ヶ月くらいなのかが気になる。おすわりはできるのか? ミルク以外に口にできるものはあるのか? など、はぐたんの動向をチェックして観るのも面白そう。●イケメン(イクメン)も登場!はぐたんのお世話係のハリーは、関西弁を話すハムスター。人間体に変身するとものすごいイケメン(イクメン)になるそう。「イクメン」に関する是非はあるにせよ、イケメンがはぐたんのお世話をする姿はきっと絵になるはず! 子育てをめぐって、はなとハリーが口論するところもぜひ見てみたい。■ママが新プリキュアにハマる!?ここまで書いてきたが、ママがプリキュアにハマるにあたり、ちょっとしたハードルもある。登場人物の名前が覚えきれないことだ。興味のあることをぐんぐん吸収できる子どもの脳とはちがい、大人にとってたくさんの固有名詞を覚えるのは至難の業。しかし、できればがんばって覚えてほしい。理由は二つある。<プリキュアの固有名詞を覚えたい理由>●物語が楽しめる!プリキュアシリーズは登場人物一人一人の背景を丁寧に描いているため、名前と顔がわかっていれば物語をより楽しめる。●心痛める子どもの気持ちを切り替えられる!慣れ親しんだ『キラキラ☆プリキュアアラモード』が終わってしまうことに心を痛める子どももいることだろう。親がプリキュアに興味を持ってくれていることがわかれば、子どももうまく気持ちを切り替えられるのではないだろうか。筆者のケースでは、娘から毎日のように「キュアホイップは誰でしょう?」「琴爪ゆかりはキュア何でしょう?」とプリキュアに関する名前クイズを出される生活を送っていた。「えーと、宇佐美…ひまり?」と間違えた回答をすると怒る鬼教官の特訓のおかげで、自然と(?)覚えられたのだった。子育て事情や赤ちゃんの成長など、気になるポイントがたくさん詰まった『HUGっと!プリキュア』には、従来どおり仲間との友情や夢などのテーマも描かれている。今作に限っては「プリキュアがんばって!」と応援する子どもの横で、ひっそりと「がんばりすぎなくていいよ」と思ってしまうママたちもいるかもしれない。小さな女の子たちに夢や勇気を与えてくれたプリキュアが、一緒に見ているママたちの心にも寄り添った内容であることを期待する。■『HUGっと!プリキュア』(ABC・テレビ朝日系)●放送日時:2018年2月4日(日)8:30~放送スタート●公式サイト: 朝日放送公式サイト
2018年02月02日思春期を迎える発達障害の娘。心身の変化、どう伝える?出典 : 発達障害のある女の子は、特性ゆえの困りごとや、女の子ならではの困りごとに悩んでしまうことがあります。特に思春期を迎えると、心身の変化や、異性・同性の付き合い方の違いに戸惑いを感じてしまうことが多くあります。そのため、母親や祖母などの身近な女性が、子どもの特性に合わせて、心身の変化への対処法や必要性を教えたり、交友関係での困り感をサポートすることが重要です。一方で、きちんと教えなければいけないと分かりつつも、デリケートかつプライベートな思春期の諸問題を、どう伝えるべきか迷ってしまうこともあるのではないでしょうか。また、年ごろの子どもには聞き入れてもらえない場合もあるかもしれません。加えて、発達障害のある子どものなかには、特性として、抽象的な話し方が理解しにくい子や、視覚優位の子もいます。そのような場合、口頭で教えてもうまく伝わらない場合があります。そこで今回、女の子の発達障害や第二次性徴、性教育が取り上げられていて、思春期を迎える女の子のサポートに役立つ本をご紹介します。特性がある子どもにとっては、本の文章や図、イラストの方が、口頭で説明されるよりも理解しやすいかもしれません。これらの本を通して親が思春期の子どもについての理解・知識を深める、本を親子で一緒に読んでみる、本を子どもに手渡してみるなど、活用してみてはいかがでしょうか。保護者が発達障害のある女の子を理解するのに役立つ本出典 : はじめに、発達障害の女の子がいる保護者が、女の子の発達障害の特徴や、思春期を迎えた際のサポートを学べる本を2冊ご紹介します。そもそも発達障害とは何なのかという基礎情報に加えて、女の子ならではの特性について分かりやすく解説しています。女の子に多く見られる特徴や、女の子ならではの困りごと(友達関係、身だしなみなど)についても詳しい原因や対処法を紹介しています。乳幼児期から思春期まで網羅されているので、子どもがどの年齢でも役立つ情報が得られる一冊です。この本では、自閉症スペクトラム障害の女の子が、思春期を迎えて困ってしまいがちな、生理との向き合い方や生理用品の使い方、胸の発達に合わせた下着の選び方、性に対する考え方に関して、実例をまじえながら説明しています。特性に合わせた実践サポート術が豊富に紹介されているので、生理や下着、性に関することを教えるときに非常に役立ちます。また、自閉症スペクトラム障害のある女の子は、先のことが想像しづらい、予期しないことが起きるとパニックになりやすいといった場合があります。そのため、思春期を迎える年ごろの女の子がいる親御さんはもちろん、将来に備えて低年齢のお子さんの親御さんが読むこともおすすめです。これから子どもに起こり得る変化をあらかじめ把握し、いつどのように教えていくかを考えるきっかけにもなる本です。発達障害の女の子が思春期を迎えたときに読んでほしい本出典 : 続いて、思春期を迎えた発達障害の女の子向けに、自分や周りの心身の変化などに関して知ることに役立つ本を4冊ご紹介します。この本を手に取ると、自分にはどんな特性があり、それがどんな困りごとをもたらしているのかを把握できます。また、親には聞きにくいけど知りたい体の変化や、心の変化に伴う異性・同性との付き合い方、性に関することを自分で情報収集することが可能です。親子で一緒に読むのも良いですし、子どもにそっと渡してみるのも良いでしょう。この本は、自身も29歳でアスペルガー症候群と診断を受けた当事者であり、現在は自閉症の研究に従事する女性、デビ・ブラウン氏によって書かれた本です。主に著者よりも若い思春期の女の子たちに向けて、恋愛や性のこと、またそれに伴う危険から身を守る方法について、丁寧に述べられています。性や恋愛に関することは、通常すみずみまで教えられることは少なく、同世代の友達との会話やドラマ・漫画などからの情報収集、実体験から自然に把握・習得することがほとんどではないでしょうか。ですが、自閉症スペクトラム障害、アスペルガー障害の女の子たちは、この「自然に把握・習得」していくことが苦手な傾向があります。そのため、性や恋愛で悲しい思いや危険な目に遭うことが多いといいます。なかなか説明しにくい性・恋愛のことや、そこからくる危険や辛さから身を守り、癒す方法をこの一冊を通して伝えてみてはいかがでしょうか。こちらは女の子の体の変化について詳しく学べる、ワークブック式の本です。自分の体がどのようになっているのか、どう変わっていくのか。そして、徐々に女の子から女性になっていく中で、どんなことに気をつけるべきなのか、具体的に学ぶことができます。また、この本には「着せ替えふろく」もついており、女の子の体の仕組みと思春期を迎えるにつれて現れる変化を、手を動かしながら理解することができます。アスペ・エルデの会/著『おとなになる女の子たちへ』アスペ・エルデの会このハンドブックは、知的障害の方の支援を行う「全国手をつなぐ育成連合会」が出版した、主に性行為に関して取り上げたものです。子どもが読んでも理解しやすい表現で、親の口からはなかなか説明しにくい性に関することが書かれています。男女の体の仕組みから、性行為が遊びではないこと、重要なことであるという内容が分かりやすくまとめられています。支援者向けの解説も記載されているので、子どもに性のことをどう説明すればよいか分からないという親御さんも手に取ってみると、参考になるかもしれません。全国手をつなぐ育成連合会/著『自立生活ハンドブック16性・SAY・生(せい・せい・せい)』さまざまな発達の遅れで、性に関する理解が難しい子ども向けに、男女の体の仕組みや性行動、性的人権などについて、分かりやすい文章とイラストで解説されています。子ども1人でもある程度読むことが可能な本ですが、内容が盛りだくさんなので、「まずはこの部分を読んでみて」など、親が特に読んでほしい部分を事前に話して渡したり、付箋を貼ったりするなどして気軽に読めるように工夫してあげるのもよいでしょう。この本は、発達障害の女の子に特化しているわけではありませんが、女の子に訪れる心と体の変化について、漫画形式で説明されています。生理の始まりのような体の変化や異性への興味など、親から直接教えにくいことが、読みやすく優しい語り口と、かわいらしいイラストによって、子ども1人で読んでも理解しやすくまとまっています。また、同じ著者から『15歳までの女の子に伝えたい自分の体と心の守り方』も出版されています。子どもの年齢にあわせて選んであげるとよいでしょう。大人になったらどうなる?女性の発達障害が分かる本出典 : 発達障害の女の子がいる親御さんの中には、「この子が大人の女性になったとき、どうなるのだろう」「就職や結婚、子育てなどできるのだろうか」など、子どもの将来に関して漠然とした不安を抱いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。わが子が女の子から女性になるとき、どんなサポートが必要なのか…発達障害の女性を対象に書かれた本を手に取ってみるのも、子どもの将来をイメージするうえで、重要なヒントになるかもしれません。発達障害の女の子は、男の子より問題行動が現れにくく目立たない、という特徴があるため、子どもの頃に発達障害だと気づいてもらいにくいことが多くあります。そして成長し、成人になると就職や結婚、子育てといったより複雑で高度なスキルや社会性を求められるようになり、ますます生きづらさや困りごとを感じてしまう女性が少なくありません。このタイミングで医師やカウンセラーに相談し、自身が発達障害だと分かることも多いようです。この本では、冒頭に「家事ができない」「子育てが苦手」「男性との距離感が分からない」「仕事がうまくいかない」といった、具体的な生活の場面における困りごとが紹介されています。この部分から、「大人になるとこんなシーンで困ることがあるのか」と納得したうえで、読み進めることができます。このような困りごとの対処法はもちろん、女性ならではの発達障害の特徴や幼児期から老年期までの特徴も網羅されています。ADHDの特性がある、働く女性を主人公にした一冊。漫画形式なので、スムーズにストーリーを追うことができ、読み終えるころにはADHDの特性とそのサポート方法が理解できるようになる本です。仕事の「困った!」、片付けの「困った!」、感情・体調の「困った!」の章には、共感できる方も少なくないと思います。ADHDのある女の子を育てる親御さんにとっては、子どもが就職し、一人暮らしをする場面でどんな困りごとが起こるのか、イメージするにも役立ちます。この本は、40代になって発達障害の診断を受けた星野あゆみさんが、社会生活を送るうえで感じた困惑と、折り合いの方法を自ら語る内容になっています。転職を繰り返しながら、仕事や生活のさまざまな困りごと・生きづらさと向き合ってきたエピソードは、女の子の親御さんにとっても参考になること間違いなしです。エピソードは漫画形式で紹介されているので読みやすく、また漫画のイラストは「発達ナビ」でもおなじみの、かなしろにゃんこ。さんが担当されています。気軽に手に取れる一冊ではないでしょうか。まとめ出典 : 「発達障害って何?女の子と男の子でどう違うの?」「思春期の女の子への性教育、子どもの特性に合わせて行うには?」「娘は将来どんな女性になるのだろう?」など、発達障害の女の子を育てる親御さんは、さまざまな不安を抱えていることと思います。また、女の子自身も、成長するにつれて「どうして周りの友達みたいに普通のことができないんだろう」「どうして友達がなかなかできないんだろう」「体の変化に戸惑い、誰かに相談したいけど恥ずかしい」というような悩みを抱えることもあります。そんな親子それぞれの不安を解消する方法の一つとして、この記事で紹介したような本を一緒に読んでみたり、子どもに手渡してみたりすることをおすすめします。ぜひ、気になった本を手に取り、親自身の女の子の発達障害の理解や、自分の成長に戸惑う女の子のサポートに役立ててみてください。
2018年02月01日4歳と3歳の年子の女の子二人を育てるママ、MONAさん。産後ストレスを食事に当て激太りしてしまった子育て奮闘中のママがお金を掛けずに自宅でストレスなく続けられるダイエットを開始。なんと産後15キロの産後ダイエットに成功したのです。今回は出産後、間もなくダイエットを決心したMONAさんのダイエット奮闘記の第三話です。私が産後ダイエットを決意したのは、二人目を出産した1年後の2016年から。まず食生活の見直しからはじめました。ダイエット前の食生活を箇条書きにしてみると…・冷凍庫にレンジでチンすればすぐに食べられるもの(たこ焼き・唐揚げ)・お菓子BOXには常に満タン(子供用、自分用)・朝食は、仕事をしていた時はコンビニでおにぎりのみ・産後は朝昼兼用でがっつりメニュー(ラーメンなど)・昼食は簡単なもの=炭水化物だらけ。袋麺、炒飯、パスタなど・夜ごはんを食べて、寝かしつけ終わりにまたお菓子やアイス・ストレスを感じたら満腹になることでストレスを解消書き出してみると、よくこんな生活をしていたものだなとゾッとします。■産後ダイエットを始める前までの生活1番の原因はストレスが溜まりやすい環境を自分で作っていたことです。地元が遠く、身寄りも知り合いも少なかったので、出かける先は近所の公園やコンビニ、スーパーのみ。唯一の楽しみはお菓子コーナーで新作のお菓子(主にポテトチップス)を食べることでした。特に2人目の産後は、慣れない年子育児で寝不足になってしまったのと、寝不足になることでいつもお腹が空いていて、食べていないと満足できなかったことでした。荒療治かもしれませんが、まずは1番太ったのではないかと思われるポテトチップスや冷凍たこ焼きを断ち、規則正しい食生活にすることから始めました。それまで、週4、5日のペースで食べていたので最初は頭の中がお菓子のことでいっぱいになるほど辛かったですが、私の場合、辛いのは最初の1週間だけでした。スナック菓子を断つようになってからは、嘘のようにお菓子を食べなくても平気になったので、次のステップへ進むことができました。しかし、スナック菓子を断つことは出来ても、基本的には食べることが大好きだったので、食事制限は無理だな……、と思っていました。そんな矢先、工夫すればきちんと食べても痩せることができる糖質オフにたどり着いたのです。■私が産後ダイエットは始めた時期ちなみに、私が産後ダイエットを始めたのは、下の子の卒乳が終わってから。授乳中の食欲は産前よりも増しますし、ママの体も本調子ではないので、あまりおすすめできません。しかし、私は卒乳後も授乳中のように炭水化物が大好きなことに変わりはありませんでした。そこで、まずは試しにと色々と糖質オフのメニューを勉強してみることに。すると、好みのメニューが沢山あることに気付き、産後ダイエットを始めた2年前から今もなお、継続して糖質オフをしています。ただ、徹底したスーパー糖質制限ではなく、パワーのいる朝や昼は炭水化物(玄米など)OK、夜のみ糖質オフという食生活が根付くようになりました。※この連載は筆者のMONAさんが出産してから1年後の2016年から始めた独自のダイエット方法を綴っています。あくまでも筆者の体験談であり、痩せることを保証する内容ではありません。
2018年01月27日いつでも、どこにいても、子どもの発達について学び支え合える場所をつくりたいー2周年を迎えた発達ナビのこれまでとこれからUpload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)「私の住んでいる地域には、支援を受けられる施設も少ないし、発達障害の親の会もないんです。LITALICOはいつになったらうちの地域にも教室を出してくれるんですか」このような声をいただいたのが、「LITALICO発達ナビ」をはじめたきっかけのひとつでした。発達ナビを運営するLITALICOは、子どもの発達をサポートする教室「LITALICOジュニア」を関東・関西にて運営していますが、まだまだ全国各地に教室を出すには至っていない状況です。それでも、全国各地には困っている子どもたちや保護者の方々がたくさんいる。教室は出せなくても、なんとかサポートすることはできないだろうか。インターネットなら、場所や時間を問わず情報を届けることができるし、ユーザーさん同士で交流や情報交換をすることもできる。全国どこにいても、子どもの発達について学び支え合えるコミュニティをつくりたい。そんな思いから、「みんなでつくる発達障害ポータルサイト」として、LITALICO発達ナビは始まりました。2016年1月26日にリリースし、本日がちょうど、2周年の節目となります。いまでは、月間約240万人の方に訪問していただけるようになり、また会員登録ユーザーさんの数も10万人を超えました。この記事では、発達障害を取り巻くこの2年での社会の変化や発達ナビの歩みを振り返ると共に、サービスの今後の展望と、ユーザーの皆さんにサービスを届ける上での運営スタッフの思いをお伝えできればと思います。高まる社会の「発達障害」への関心。より深く、よりきめ細やかな情報を届けるには?出典 : 年は、NHKが番組横断での通年企画として実施した「発達障害プロジェクト」をはじめ、これまで以上に、さまざまなメディアが「発達障害」に注目した情報発信を行った年であったように思います。比例して、世の中の人々が発達障害に関連したキーワードでインターネット検索をする頻度も大きくなり、発達ナビに訪れる人の数もますます増えていきました。プレスルーム: 5月21日(日)放送 NHKスペシャル「発達障害~解明される未知の世界~」の制作にLITALICOが協力しました。発達ナビに限らず、多くのメディアが発達障害を取り上げるようになったことで、少しずつ、発達障害に対する認知は広がってきているように思います。一方で、発達障害と一口にいっても、一人ひとりの特性は千差万別です。特性の凸凹の大きさ、診断の有無、どのような環境にいて、どのような支援を必要としているか…「発達障害だから」と十把一絡げにするのではなく、一人ひとりの「ちがい」を踏まえたかかわりあいが何よりも大切です。実際に子育てをしている保護者の方々、ご自分の発達特性に悩まれる方々に対して、一般論に留まらない、具体的で参考になる情報をどのように届けられるか。他のメディアではカバーされない、発達ナビだからこそできる情報発信はどのようなものだろうか。そんなことを議論しながら、2年目の発達ナビでは、さまざまな新しい取り組みを行いました。たとえば「コラム」コーナーでは、基礎情報や体験談だけでなく、より深く専門的な解説や、実際の保護者・当事者の多様な声を取り入れながらの特集を企画していきました。自分の子どもに合った発達支援施設を探し、問い合わせができる。「施設情報」のリニューアルUpload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)また、「コラム」を中心とした情報発信だけでなく、全国各地で、困っているご家庭が必要な支援につながりやすくなるための機能の開発にも取り組んできました。昨年の大きな変化としては、「施設情報」コーナーをリニューアルし、全国の発達支援施設の検索・比較や問い合わせができるようになりました。発達が気になる子ども向けの通所施設「児童発達支援事業所」や「放課後等デイサービス」は、行政の認可を受けて運営される施設のため、お住まいの自治体の役所に行けば、近隣にある施設表などを受け取ることはできます。しかし実際は、一つひとつの施設には違った特色があり、さまざまな方針やプログラムで支援が提供されています。また、近隣の施設に空きがあるかどうか、見学が可能かどうかも、保護者の方が問い合わせをするタイミングによってまちまちです。そういった施設ごとの詳しい特徴や現在の運営状況までは、自治体への問い合わせでは確認することが難しいのが現状です。発達ナビでは、施設を運営する事業所の方々にもヒアリングを重ねてきましたが、具体的な運営情報を保護者へと届ける方法に困難を感じているという声も少なくありませんでした。そこで、「子どもの発達を応援したい」という発達支援施設と、「自分の子どもにあった施設を見つけたい」という保護者をつなぐサービスとして、「施設情報」の機能拡充を行いました。発達ナビと掲載契約をしてくださった施設のページでは、より詳しい運営情報、写真やブログ、問い合わせボタンなどが表示され、保護者の方々がより具体的な情報収集をし、自分の子どもを通わせる施設の比較検討・問い合わせができるようになっています。(掲載契約をしていない施設についても、自治体に登録されている全国の基礎情報を掲載しています)発達ナビ「施設情報」はこちらからUpload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)発達ナビに詳細情報を掲載いただいている施設数は、2018年1月26日現在、450施設以上となりました。今後も引き続き、多くの施設の方に発達ナビ上で情報発信をしていただけるよう、全国の施設の方々と交流を重ねていきたいと思います。※発達ナビへの掲載を希望される施設運営者の方は、以下のページからご連絡ください。発達ナビへの情報掲載ご希望の施設さま向けお問い合わせページ保護者同士の交流と、発達支援施設選びの方法をお伝えする「発達ナビ保護者会」も全国各地で実施しています。以下のコラムと、メールマガジンでお知らせしていますので、ご興味のある方はぜひご参加ください。便利なアプリ・グッズや、生活の困りごとを解消するサービスを、企業とのコラボで企画中旅行やお出かけ、食事や栄養、学習や運動、身辺自立に服薬管理…発達障害のあるお子さんが大きくなっていく上で、さまざまな生活場面で困難に直面することが予想されます。学校や発達支援施設でのサポートも重要ですが、発達障害のある人たちが過ごしやすい社会を作るためには、民間企業の力も取り入れながら、便利なアプリ・グッズを企画・発信したり、住まいやお店、交通機関などの環境を過ごしやすく変えていったりと、生活環境全体を変えていくことが必要だと考えています。そこで、発達ナビでは昨年から、発達障害のあるお子さんやご家族をサポートするコラボ企画を企業の皆さんと一緒に企画・実施しています。新たな商品・サービスの共同開発や、発達障害のお子さんに役に立つ商品・サービスの紹介記事、ユーザーの皆さんの声を企業に届ける交流・モニター企画などなど、これから様々な企画を実施していく予定です。※発達ナビとのコラボを希望される企業さまは、以下からお問い合わせください発達ナビとの共同企画をご検討の企業・団体さま向けお問い合わせページ一人ひとりの「ちがい」を、これからも大切にできる場所であるように出典 : 「ここでは安心して悩みを吐き出せる」「嬉しいことも、辛いことも、自然体で共有できる」タイムラインやコミュニティなどの投稿コーナーを利用される発達ナビユーザーさんから、そんな声をいただくことがあります。私たち発達ナビは、これからもユーザーのみなさんが「安心」して、自然体で過ごせる場所であり続けたいと思っています。発達障害や、発達特性の凸凹による困りごとは、何か一つの解決策で一朝一夕になくなるものではないことがほとんどです。生きている中で、うまくいくこともあれば、落ち込むこともある。一人ひとりが、自分の特性と向き合い、社会の中で他者とかかわりあいながら、自分自身の物語を紡いでいくものなのだと思います。そして、私たちはその長く続く人生の「過程」にこそ、寄り添えるサービスでありたいと思うのです。発達ナビ編集部とともに、コラムを執筆してくださるライターさんの中には、1年, 2年と長期にわたって連載を続けてくださっている方もいます。新しいお子さんが生まれたり学年が上がって環境が大きく変わったりお子さん自身が発達障害に関心を持って自分のことを知ろうとしたり受験や進学、就職と、自立に向けた人生の節目を迎えたり…ライターさんの連載中には、ライターさんとそのご家族に、たくさんの変化がありました。また、発達ナビの中にも、30名強の運営スタッフがいて、一人ひとり違った背景を持ってこの場に集まっています。自分の子どもを発達支援施設に通わせている保護者もいれば、私のように最近子どもが生まれたばかりの新米保護者もいます。発達ナビで働く中で、自分自身の発達特性に気づき、自分とより深く向き合うようになったスタッフもいれば、今から発達障害について知りながら、社会に貢献できる仕事を考えていきたいという大学生インターンもいます。福祉や教育の現場を経験したスタッフもいれば、まったく違う業界から飛び込んできたスタッフもいます。立場や背景は違えど、発達障害を取り巻く社会環境をより良くしていきたいという思いは変わりません。ですが、発達ナビのこれからのサービスのありようは、私たち運営スタッフが「答え」を決めるものではないと思っています。ユーザーの皆さんも、連載ライターの皆さんも、私たち運営スタッフも、一人ひとりが変わり続ける人生を歩んでいくなかで、関わり合い、対話を重ねながら、一緒につくりあげていければ嬉しいです。2周年に際しては、ユーザーの皆さんからもたくさんのお祝いと、そして今後のサービス進化への期待の声をいただきました。一つひとつ拝見し、今後のサービス企画・改善の参考とさせていただきます。これからもご意見をお寄せください。【発達ナビ2周年!】発達ナビでのお気に入りのサービスを教えてください!【発達ナビ2周年!】「発達ナビにあったらいいな」と思うサービスを教えてください!最後に、とある専門家の先生にいただいた言葉をご紹介して結びとさせていただきます。「人は一生、発達していく。発達に終わりはない」人生は長期戦のマラソン。これからもみなさんの日常に、長く、長く寄り添い続けられるサービスであればと思います。
2018年01月26日2周年を迎えたLITALICO発達ナビ、ユーザーの皆さんの声を募集しました!Upload By 発達ナビ編集部LITALICO発達ナビは2016年1月26日、発達障害ポータルサイトとしてオープン!本日2018年1月26日で2周年を迎えました。会員数も2018年1月26日現在、10万人を超え、多くのユーザーの皆様にご利用いただいています。ココで現在、発達ナビにはどんなサービスがあるか、見てみましょう!【タイムライン】…ユーザーさんが自分の気持ちや日々の出来事をつぶやき、ほかのユーザーさんと交流できます【みんなのアンケート】…テーマや質問に回答。みんなの回答も見られるコーナーです【Q&A】…ユーザーさんが自分の聞きたいことや悩みを質問。投稿に対して他のユーザーの回答が集まります【コラム】…当事者ママの体験談や専門家のコラム、発達障害についての概説コラムやニュース記事が読めます【コミュニティ】…「共通の趣味や話題がある人とつながりたい」ユーザー同士が交流できるコーナーです【親子のヒント】…子どもの困りごとに関して、臨床心理士や作業療法士の専門家がヒントを紹介!イラストもたっぷりで対処法がわかります。【施設情報】…発達が気になるお子さまが利用できる全国の施設が検索できるコーナーです。ほかのユーザーさんがどんなふうに発達ナビを使っているのか、どこが気に入っているのか、気になっている人もいるのではないでしょうか?今回は2周年を機に、ユーザーの皆さんのお気に入りのサービスや活用法を「みんなのアンケート」で聞きました!アンケートの回答から、いくつかご紹介します!Upload By 発達ナビ編集部【発達ナビ2周年!】発達ナビでのお気に入りのサービスを教えてください!「私は一人じゃない!」発達ナビで会えるみんなとのつながりが心地いい出典 : 会員さん同士の交流を楽しめるタイムラインやコミュニティの機能。「ここに来れば仲間がいる」そう感じて、育児で孤軍奮闘しているとき、仕事で疲れたとき、たあいのない会話をして笑ったり、日常の小さな報告をしているとの声をたくさんいただきました。コミュニティ、Q&A、タイムラインをみて、みんな真剣に生きている姿勢、パワーをひしひしと感じ、自分1人ではないと、力をもらってます。タイムライン。真夜中のテンションで書くとおかしな事になりそうなので実況はしませんが子供が夜中に起きた時に更新されていくのを見て孤独ではないのだな、と勇気づけられています。みんなのアンケートやタイムラインが好きです。皆さんからの投稿を読み、私だけではない…と思え気持ちが楽になります。何度も読み返してます❤️発達ナビに登録して8ヶ月ほど。はじめは「親子のヒント」の続きが見たくての登録だったけど、利用し始めると、「タイムライン」が興味深い。あとは「Q&A」。勉強になる。やっぱり好きなのはタイムラインとQ&Aです。出会いの場であり、気付きがあり、それから息子の成長記録。気持ちを分かってくれる仲間がここにいる。ここでの繋がりが、すごく力になっています。「ココでだけは本音が言える」自分の気持ちを吐き出せる場所に出典 : 普段は弱音を吐かずに頑張っているけれど、発達ナビでは「疲れた」「悩んでいる」そんなふうにちょっとネガティブなことや愚痴、本音を言っても大丈夫、そんなふうに感じているユーザーさんも。交流するユーザーさん同士が、いろんな人の立場や気持ちを尊重して寄り添える。そんなタイムラインやQ&Aの風通しの良い雰囲気が、みなさんの本音を引き出しているのかもしれません。なかなか定形の方たちには理解して頂けない悩みや気持ちを理解して下さる方がここにはいるという事。これが1番大きいです。勉強させて頂ける事が大変多く有り難い存在です。タイムライン辛い気持ち、本音を遠慮なく吐き出せるところ。初めてこのサイトを利用して、本音をぶちまけたら多くの方が嫌な顔せずに共感して下さってホッとしました。使い方を誤らないようこれからもちょくちょく色んなことを書いていきたいですタイムラインや他のコミュニティーに参加させて貰い、他愛ない会話や時には愚痴、悩み事を相談させても頂きました。慣れないせいか、自分自身のコミュ力にも落ち込み、私の特性上にも初めの時にはリタリコでも気を遣い過ぎていた時期、勝手ながら私のコミュニティーを作らせて貰い、主に呟き場やリアルな本音を吐き出す場所として利用させて貰いました。「知りたい情報がココにある」知識を得るのに活用中!出典 : コラムや親子のヒントでは、専門家によるコラムや、子どもの困りごとに即した対処法をわかりやすく紹介しています。また、当事者や保護者のリアルな体験談コラムは、「うちの子もおんなじ!」という共感や「そういう接し方もあるんだ!」という発見があると人気です。かなしろにゃんこ。さんのマンガは、息子本人の障がい受容の助けに大変お世話になりました。m_ _mかなしろにゃんこ。さんのマンガを見たがるので、「これを見たいなら、お母さんの話を真剣に聞きなさい」と言って、自閉症スペクトラムとは何か、ADHDとは何か、あなたにも同じようなところがあるけれど、苦手なことをほったらかしにしないで、ちゃんと向き合わないといけない。と話しました。ムダなプライドを、私が色々言って下手に刺激するよりも、かなしろにゃんこ。さんの息子さんのリアルなお友達との対応やエピソードの方が、本人のSSTの復習や同学年の子との接し方のヒントになっているようです。楽々かあさんさんは、私はぺアトレを受けたのですが、小学校高学年になってからでしたので、効果はあるにはありましたが息子本人にも難しかったですし、自分の思考改革にもすごく時間がかかりましたし、今もガチガチなので、具体的で効果的な声掛けの復習や気づきに大変お世話になっています。「コラム」が好きです。息子の症状に見合うような内容のコラムであれば尚のこと。そうでなくとも、知らぬ情報が出てきていることも多いので、ここへきてまず最初に開くのは「コラム」と決まってます(^^)息子が未就園の頃は「親子のヒント」に本当~に助けられてました。いまは「コラム」が一番のお気に入りです。以前は「ADHDブログマンガ」とかで検索していろいろ読んでましたが自分で検索するとどうしても当たり・ハズレがあるのでコラムで良質なブログがまとめて読めるのはとてもイイ!です。子どもが成長してることに気づいた!出典 : 「親子のヒント」を利用しているうちに、息子さんの成長に気づいたという嬉しい回答もありました!久しぶりに「親子のヒント」のページを覗いてみたけど、はじめてここにきたときに読みたかった「発語・会話」のページ、今見てみると、読みたいテーマが変わっていることに気付きました。そっか、息子が出来ることが増えたから、読みたいものも違うんだ!そうやって間接的に感じた息子の成長です。「どうしたらいい?」気軽に聞ける!回答で新たな考え方に気づく!出典 : 【Q&A】私もアンサーを書かせて頂く事があるのですが、他の回答者の方の答えがとっても、役立っており、私の拙い回答以上に得るものが大きいです。また、質問されていた時は元気がなかったユーザーさんが、他の方の質問には回答者として、しっかり親身に答えているのをみて、元気になったんだなぁーと勝手に嬉しくなったりしています★「みんなのアンケート」さりげないテーマに沢山の方から色んなアンサーが出る…って言う所を楽しく感じています。当事者・家族・関係者…それぞれ事情は違えど「発達障害」て繋がり、一人一人違う答えや反応があることに面白さを感じています。支援機関や病院などでは受けられないアドバイスや新たな発見があります。先生や支援の方に言いにくい事や相談しても分かってもらえない事に気づいてくれました。自分が神経発達症でよかったとは思わないけど自分がADD.ASD ではなかったら発達のことも含めて色んな方とお話しが出来なかったと思います。「発達ナビにあったらいいな」と思うサービスのアンケートもUpload By 発達ナビ編集部発達ナビにあったらいいな、というアイデアも募集しています!よりよいサイトを目指して。3年目の発達ナビにもご期待ください!2周年おめでとうございます(⌒▽⌒)やっぱり、コラムが一番見ますけど、Q&Aや、コメントが付くと「お知らせ」で知らせてくれるなど、利用者目線な作りがお気に入りです。少しずつでも確実に、使いやすく探しやすく紹介しやすいサイトへと改良を重ねて下さっているスタッフさんには頭が下がります。これからも宜しくお願いします(∩_∩)アンケートでは使ってくださっている皆さんの活用法や感想などの嬉しいご意見や、「こうしてほしい!」というご意見もたくさんいただきました。まだまだアンケートでは皆さんのご意見を募集中です!ユーザーの皆さんのお役にたてるサイトを目指して、発達ナビではたくさんのコラムやニュース、サービスをお届けしたいと考えています。3年目を迎える2018年も、どうぞよろしくお願いします!
2018年01月26日自閉症である息子さんを通わせたいと思える放課後デイサービス(以下、放課後デイ)がなかったことから、自ら「アイム」を立ち上げた佐藤典雅さん。そこから、息子さんや生徒の成長に伴い、フリースクールや就労支援、グループホームまで立ち上げてしまった。それらの施設を立ち上げた理由も、やはり放課後デイ設立の時と同じように、既存の施設に大きな不満があったからだと言う。そんな佐藤さんに、現在の福祉業界の問題点や自ら立ち上げた施設への思いを語ってもらった。発達障害のある子を育てる親たちにとって、最大のテーマは、将来の自立や働き方。『療育なんかいらない!』の著者でもある佐藤さんのお話の中には、きっと、発達障害の子どもの幸せな将来のために、親としてやるべきことのヒントがたくさんつまっているはずだ。佐藤典雅(さとう・のりまさ)さん川崎市で発達障害の子どもをサポートする放課後デイサービス「アインシュタイン放課後」「エジソン放課後」を運営している、(株)アイムの代表。自身の自閉症の息子さんの療育のために、息子さんが4歳の時に渡米して、ロサンゼルスで9年間過ごす。前職は、ヤフー・ジャパンのマーケティング、東京ガールズコレクションとキットソンのプロデューサーという異色の経歴の持ち主。福祉という範囲を超えた目線で、自身の息子さんの成長を見守りながら、発達障害児が社会で幸せに生きるための道を広げる挑戦をしている。著書: 『療育なんかいらない!』 (佐藤典雅・著/小学館 ¥1,296 税込)※放課後デイサービス(= 放課後デイ):6~18歳までの障害のある子どもが放課後や学校休業日に利用できる、就学時向けの福祉サービスのこと。■子どもの将来について保護者が不安に思わないインフラの構築がテーマ――前回の取材から1年ほど経ちました。その間、がっちゃん(佐藤さんの息子さん)の高校進学にあわせてフリースクールを設立したそうですね?佐藤典雅さん(以下、佐藤さん):アイムの放課後デイには、たくさんの中学生の生徒がいるので、中学卒業後の進路は重要なテーマでした。というのは、高校って義務教育じゃないから支援学級がないんですよ。だから、支援学校に行くしか選択肢がないのですよ。でも、既存の支援学校だと高校卒業証書はもらえないから、中卒扱いになっちゃうんですよ。どうせ就労支援に行くなら、あんまり関係ないかもしれないけど、親の心情的な観点からいくとちょっと残念だよね。ウチが設立したノーベル高等学院は発達障害や自閉症の生徒に合った通信サポート校で、明蓬館高校の教育連携施設として、高校の卒業証書も取得できるんですよ。――がっちゃんの進路に、既存の支援学校を選択しなかったのはなぜですか?佐藤さん:中学校までは義務教育だから、だいたいどこも手厚くやってくれるんですよ。でも、高校になった瞬間、何が始まるかというと「職業訓練」という言葉が出てきます。見学に行ったらわかると思うんだけど、ほとんどのところが就労の準備期間として、封筒やチラシを折ったり、縫物の練習をしたり、昭和の内職みたいな作業をさせているんですよ。でも、普通の子が高校で青春を楽しんでいる時に、どうして障害者の子たちは就労準備しなくちゃならないのか? 親として、自分の子がそういう状況にいるのはしのびないよね。――それで、もっと楽しい高校をご自分で作ってしまったわけですね。ノーベルでは、日々どんなことをしているのですか?佐藤さん:最低限、取得しなければいけない単位があるので、午前中は主に課題をしていますが、午後はもう自由! 好奇心旺盛なスタッフが、毎日いろいろなおもしろいところへ遠足に連れて行ってくれています。最近では、足立区にあるアスレティック施設や渋谷ヒカリエで開催されていた「チームラボ」のイベントなどに遊びに行ってましたよ。――それは通常の支援学校とはずいぶん違いますね! 生徒はどれくらいいるのでしょうか?佐藤さん:今、生徒は2人です。もともとフリースクールは赤字前提でやっている事業なんですよ。でも、なぜ赤字でもやるかというと、今、ウチには放課後デイに通っている中学生の子たちがたくさんいて、その子たちのセイフティネットとして必要だから。アイムのテーマは、子どもの将来について、保護者が不安に思わないインフラを作ること。だから、赤字でもやらないといけない理由があるんです!■市場から「置いてきぼり」にされる福祉の世界――支援学校と同様に、就労支援にも疑問を感じて、アイムで取り組まれているそうですね? 既存の就労支援のどんなところに問題を感じているのですか?佐藤さん:いろいろありますが…例えば、就労支援に行くと、まず、みんなあいさつの訓練をさせられます。見学に行ったことありますか? 行くと、みんなが無条件に一斉に立って「いらっしゃいませ!」って言うから。トイレ行く時だって、みんな「佐藤さん、トイレに行っていいですか?」って聞いてくるの。トイレ行くのにどうして許可が必要なわけ? みんなロボットみたいになっちゃうんですよ。――確かに、そういう雰囲気がある気もしますね…。佐藤さん:でも、そもそも仕事において、あいさつってそんなに重要なの? それで売り上げが上がるんですか? 僕は、あいさつなんかより儲かる就労支援をつくることの方がずっと重要だと思ってます。だから、福祉業界の人に「あいさつはいりません!」って言ったら、「佐藤さん、それでは社会性が身につきません」って言われました。じゃあ、普通の世間一般の会社の社員が同じようなあいさつをしているのでしょうか? あいさつをしなくてもいい業種はたくさんありますよね。それでも全ての社員は型にはまったあいさつをしないと社会性がないといえるのでしょうか? 仕事においてどこに価値を求めるのかという話なんですよ。――確かに…。佐藤さん:どんな大手企業でも、行動パターンを変えられなければ、いつかはつぶれてしまうと思います。市場が変わっているのに、会社の倫理観、価値観、戦略、全部変えられないままでは、市場から置いてきぼりにされる。学校や福祉の世界でも、これと同じようなことが起こるはずなんです。しかし、助成金によって雇用も給料も守られているわけで、福祉は保険点数でも守られているからつぶれることがないわけです。こんなの民間企業だったら、とっくに淘汰されていてもおかしくないです(苦笑)。制度の枠組みで仕方ないのですが、そもそも行政からみて就労支援は「就職」でなく「介護」の延長線上にあります。なぜかというと、就労支援に配置される資格者は介護士なんですよ。これまでビジネス経験のない介護資格者がいきなり売り上げを求められるわけです。だから、発達障害の子たちのために利益分配を考えるのは、かなりハードルが高い話なんです。――そういう現状を、きちんと親が知って考えるべきなんですね…。佐藤さん:お母さんはみんな、「将来この子が困らないように」って療育で訓練することばかりに夢中になっているけど、だれも「出口」のことを考えていないし調べてもいない。僕は、「出口」のことしか考えてなくて、それは就労です。その子が自分の力で就職できるのか否かという明確なラインがあって、そこしか見ていない。今、支援学校を卒業した後の進路は、2つしかないんです。ひとつは、特例子会社に就職する。もうひとつは、就労支援に行く。一般企業に普通に就職できない子の出口は、就労支援しかないんです。将来、わが子の就職が難しいと考えた時、親として考えるのは、どういう就労支援だったらわが子が充実した毎日が送れるかということ。そこしかないんです。既存の就労支援には、がっちゃんを通わせたいと思えるような施設がなかったので自分たちでやる必要性を感じたわけです。――特例子会社の方はどうなのでしょうか?佐藤さん:特例子会社っていうのは、企業枠で障害者を2.3%雇用しなければならないという決まりがあって最低賃金が発生します。で、特例子会社は大手企業が多いから、ほとんどが都心にあって、オフィスで事務作業をすることができます。でも、僕から見ると、特例子会社も就労支援も両方同じようなもんですよ。封筒やチラシ折ったり、昭和の内職みたいな仕事をしている。もちろん、その子がその仕事を楽しんでいればいいけれど。――でも、キレイなオフィスで働けて最低賃金が発生するなら、保護者にとったら就労支援より特定子会社に入るほうが理想的ですね?佐藤さん:でも、特例子会社は民間企業だから、ある程度の基準を満たさないと入れないし、枠も限られています。加えて、都心のオフィスに通うために、通勤ラッシュにも耐えられる子が採用の前提となります。そうすると、当然、ある程度コミュニケーションがとれる軽度の子が採用されるんですよ。――そうすると先ほどのお話のように、重度な子は特例子会社には入れず、就労支援に行く進路しかない、というわけですね?佐藤さん:ウチのがっちゃんは、まさにそこなんです。特例子会社に行く子たちは、比較的障害が軽いので、社会で働いて賃金を稼いで満足を得ることができます。でも、がっちゃんは給料をもらってもよくわからないから、「このつまんない作業はなんなんだ!?」で終わっちゃう。――働くことにおいて、がっちゃんの幸せはどこにあるとお考えですか?佐藤さん:がっちゃんはあまりにも謎が多すぎてまだわからない(笑)。でも、親として、特例子会社に行くことががっちゃんの喜びにならないことはわかっています。だから、どういう就労支援だったら楽しめるのか、ということをずっと考えています。がっちゃんはかなり自閉症ど真ん中なので、ウチの子のニーズを満たせれば、ほぼすべての自閉症児のニーズを満たせると思ってる。がっちゃんの問題を解決することが、幅広い子どもたちの問題を解決することにつながる。それがどういう就労支援なのかということを、いくつか実験しているところです。 ■就労支援もきちんと利益を追求、「儲からない仕組み」を根本から改革――その手始めとして、就労支援ルピアをアイムの傘下に入れたのですね?佐藤さん:そうなんですよ、ルピアさんの協力で。おかげで、就労支援の仕組みがだいたいわかってきたので、来年のどこかで、ウチ独自のアートの就労支援を作ろうと計画しています。その後は、飲食の就労支援も考えています。カフェがいいのかビュッフェスタイルがいいのか…?どうやったら最小限の労力で最大限の利益を上げられるか、そこを必死に考えています。よく、福祉の世界は利益追求反対という風潮があるけど、資本主義の中で生きている以上避けられません。ビジネスとして利益をあげて、利用者の環境のために再投資をしていくために利益は大切なんですよ。――確かに、既存の就労支援って、あまり利益を出そうという雰囲気がないですよね…。佐藤さん:そこが就労支援の大きな問題なんです。就労支援は保険点数でまかなってるから、つぶれることがない。だから、彼らは利益なんか出なくてもいいんですよ。危機感が非常に薄い!ルピアも最初は課題が大きかったですよ。当初はお店もボロボロでいかにも「福祉!」っていう感じで…。 だから、アイムでプロデュースしてオシャレに改装したんですよ。すると後日、店の責任者は「全然効果ない」って言うから、よくよく話を聞いてみたら、なんと就労支援だからという理由で週末にお店を閉めていたんですよ! もう、ビックリしちゃって(爆笑)。お店、つまり小売りでしょう? 小売り店舗で土日閉まってるって、その時点で売り上げが出るはずもなく(笑)。福祉にいると、商品やサービスを提供するって時点で、就労支援も民間企業との競争になるっていう認識が薄くなるんです。もちろんその後、週末にお店を営業したら、案の上、売り上げは3倍になったわけで、みんなハッピー(笑)。一般的な就労支援を見ると、仕事内容が、ビラを折るとかボールペンの組み立てだったりするわけです。こんなところに入るために、支援学校で3年間も訓練させられたの!? って思いませんか?■既存の施設や他人に親は振り回されるだけ…子どもの将来はゆだねない!――確かに。親子で一生懸命職業訓練して、でも、その先がそんな職場ばかりだったら浮かばれないですよね…。佐藤さん:普通の就労支援でも、その子が働くことを楽しんでいればいいんです。でも、私から見たら、昭和の内職みたいな仕事をして時給100円の世界ですよ。実際にそれが合わずに引きこもりで終わってしまう障害者が多いと聞きます。特例子会社にしても、お母さんがわが子の就職先にそこを目指して、二人三脚で支援学校で3年間一生懸命訓練しても入れなくて。「ずっとがんばってきたのに特例子会社に入れなかった」って泣いたり落ち込んだりしている姿をいっぱい見ます。でも、全然落ち込む必要ないですよ!ってお母さんたちに言っています。だって、そんなところに入れなくたって、アイムがその子たちに合う就労支援を作ればいいだけのことでしょう?――そうしたら、お母さんも子どもの将来について余計な心配しなくてすみますね。佐藤さん:今ある既存の施設や他人に将来をゆだねると、親は振り回されるだけ。どうでもいいことで落ち込んだり泣いたりしてしまう。よく保護者が「将来、この子が困らないように、しつけてる」とか「療育で訓練してる」って言うけど、こんなところに入れてもらうために、子どもの個性をねじまげてまで訓練する必要なんてないですよ。大事なのは、その子自身をどうこうすることではなく、その子が生き生きと生活できる環境を与えること。だから、子どもがそのままでも安心して働ける楽しい就労支援を、アイムは目指します。そのために、ウチは「就労継続支援B型」をやるんです! ウチは「移行支援」には手を出さず、どんつきである「継続支援B型」をやります。(※)だって、たとえばうつ病とかなら、訓練してまた社会復帰できる可能性もあるかもしれないけど、自閉症は治らないから、訓練を受ければ復帰できるというわけじゃないじゃないですよね? それに「移行支援」では2年間しか訓練を受けられないから、最終的には「B型」に突っ込んで、「はい! おしまい!」なんですよ。その先のことは彼らにはあまり関係ないから。でも、これだとうちの息子の場合は困るわけですよ。※就労支援には、「就労移行支援」と「就労継続支援」の2タイプがあります。「就労移行支援」とは、一般企業への就職をサポートする訓練支援(2年間限定)なのに対して、「継続支援」は一般企業への就職が困難な障害者に就労の場を提供する支援です。さらに、「継続支援」には「A型」と「B型」の2タイプがあり、「B型」は「A型」の仕事が困難な障害者が対象となります。■健常者が「うらやましい!」と思うような就労支援を提供したい――アイムで就労支援を立ち上げるにあたって、さまざまな施設を見学に行かれたと思うのですが、参考になりそうなところはありましたか?佐藤さん:学ぶべき就労支援はたくさんありますよ。例えば、名古屋にある「世界の植物と昆虫のお店『APERO HYLE』」。虫好きの自閉症の子たちが昆虫や植物を育てて、それを売るの。ヘラクレスオオカブトとか高価な虫は1匹3万円ほどの値がつくんですよ。1日の売り上げが10万円あるから「B型」なのに、最低賃金も払えてるの! すごいなぁ〜って。――さまざまな施設を見学されて、アイムの方向性は決まりましたか?佐藤さん:ウチは川崎に3種類違う就労支援をもちたいと思ってます。だいたい3タイプくらいあれば、すべての生徒を対応ができるかな、と。アートの就労支援は決まったので、今年中に設立します。あとの2つは、案は出ているけれど、その時の状況や人材など、いろいろな要素が絡んでくるから、今のところリサーチにとどめています。でも、2年以内には作る予定です。――相変わらずすごいスピード感ですね。佐藤さん:福祉や教育は業界の特質として変わりにくいっていう前提で考えた方がいいですよ。だから、自分で作った方がずっと早いわけ。今の福祉制度をうまく使って、アイムでは新しい視点で就労支援を提供したいと思っています。もちろん、働く本人たちが楽しいっていうのが大前提なんだけど、一番重要なのは、健常者が「ここに通いたい」「こんな素敵な場所で楽しそうな仕事ができていいな」って思えるような施設を作ることだと思うんですよね。障害者がなんでかわいそうに見えるのか、それは、みすぼらしい場所にいるからだと思うんですよ。だから、うちのテーマは、健常者がうらやましいと思える職場を障害者に提供することなんです。――保護者も、福祉に頼るだけでなく、自ら行動を起こすべきなんですね。とはいえ、普通のお母さん(私)は佐藤さんのように、ガシガシ動ける自信もないのですが(苦笑)。佐藤さん:じゃあ、川崎に引っ越してきて、ウチに通えばいいじゃないですか(笑)。最近では、療育をしないというアイムの方針が浸透して、それに賛同する保護者がウチに通いたいと遠方から引っ越してきてるんですよ。だから、ウチの生徒になったら、ちゃんとアイムとして最後まで面倒を見たいなと思っています。今年の秋から、グループホームも始めました。放課後デイ→フリースクール→就労支援→グループホームと一つのレールを敷くことで、保護者の不安を取り除き、発達障害の子育てを明るいものにしたいと思っています。「すべての子どもがあこがれるような居場所を。健常者がうらやむような職場を」と、驚くような勢いで、発達障害の子どもたちの充実した人生のためのインフラ作りを進める、佐藤さん。その原動力は、「親として子どもに納得できる環境を与えたい」という想いだった。誰もが佐藤さんのように動けるわけではないが、障害を持つ子の親であれば、誰しも同じ想いを持っているのではないだろうか? わが子の幸せな働き方ってなんだろう? そのために、私は親として何ができるだろう? 改めて考えさせられた取材だった。取材・文/まちとこ出版社N
2018年01月25日2017年11月25日から12月5日に、LITALICO発達ナビでは「女の子の発達障害に関するアンケート」を行いました。発達障害のある子どもの保護者677名、発達障害の当事者445名の声が寄せられました。ご協力いただいたユーザーの皆様、どうもありがとうございました。この記事では、「約450名の当事者が回答!女の子の発達障害、勉強や仕事、恋愛、交友関係など悩みや解決策は?」とし、調査結果の一部を抜粋し、お伝えします。保護者の声については、「約700名の保護者が回答!女の子の発達障害、学校や友達との関係、身だしなみの悩みや解決策は?」でご紹介しています。<調査対象について>「LITALICO発達ナビ」会員へのメールから、アンケートフォームにて回答いただいた発達障害の当事者445名の回答を集計しました。(調査期間:2017年11月25日~12月5日)※設問によっては445名全員が回答していないもの、複数回答可のものがあります。※調査結果の構成割合は四捨五入をしているため、合計が100%にならない場合があります。女の子の発達障害とは?発達ナビに寄せられた、当事者約450人の声出典 : 「約450名の当事者が回答!女の子の発達障害、勉強や仕事、恋愛、交友関係など悩みや解決策は?」では、発達障害のある女性の当事者445名が回答。現状や不安に思っていること、悩み、解決策までが寄せられました。30代~40代を中心に、主に成人の発達障害当事者が回答Upload By 発達ナビ編集部70%弱が就職後に発達障害に気づくUpload By 発達ナビ編集部70%弱が就職後、続いて大学・専門学校のころに発達障害に気づいたと回答しています。保護者が回答した「約700名の保護者が回答!女の子の発達障害、学校や友達との関係、身だしなみの悩みや解決策は?」では、約60%が就学前に気づいたのと対照的です。成人当事者が幼少期のころは発達障害が認知されていなかった、比較的障害の程度が軽度などの理由で学校生活では問題が起きにくかったなど、さまざまな原因が考えられます。発達障害があることに気づいたきっかけとしては、■人間関係・仕事(28件)■子どもの診断(24件)■WEBや書籍などの情報(18件)■二次障害の発症(8件)があげられています。人間関係・仕事でのきっかけについては、「人間関係がうまくいかない」など、日常生活や職場での人間関係でつまづいたという声や、「仕事で複数の指示の聞き漏らしや、仕事を完遂できないことが頻発し、自分はおかしいと思ったため」など、仕事でのミスがきっかけだったという声が目立ちました。また、子どもの診断がきっかけの人は、「自身の子どもに発達障害の疑いを持ち調べているうちに自身の発達障害を疑いだした」というように、子どもの特性と自身の特性が似ていたり、子どもの診断をきっかけに発達障害について調べるうちに自分の特性に気づいた、という人が多いようです。WEBや書籍などの情報については、「小学校に上がってから、自分の異質感を感じてはいました。(中略)大人の発達障害の概念はまだ、一般的でなく情報は得られませんでした。不調をきたし適応障害からの抑うつ状態との診断で約5年、加療しました。その後勤め先が変わり、全然対応できないことで、色々検索したら、大人の発達障害が広がる少し前でしたが、情報があり、受診しました」というように、情報が手に入りやすくなったことで診断につながったという声もありました。また、早めに気づけなかったことから、二次障害を発症してしまった例も複数あるようです。約73%が二次障害を発症Upload By 発達ナビ編集部約73%が二次障害を発症しています。二次障害の発症率は「約700名の保護者が回答!女の子の発達障害、学校や友達との関係、身だしなみの悩みや解決策は?」では約40%でした。二次障害の内容としては■うつ(96件)■不登校(28件)■不安障害(18件)が多くあげられました。「離人感、フラッシュバック、躁鬱、過覚醒、過活動、不安、孤独感、過食、過眠、性的逸脱、など。あげていったらキリがないのでこの辺りで」などのように、摂食障害、パニック障害、不安障害など複数の二次障害があるケースもみられました。約84%が友人関係で困難やトラブルを経験Upload By 発達ナビ編集部約84%が友人関係での困難やトラブルを経験していますが、その内容としては下記2つが多くあげられました。■グループに入れない・いじめ(56件)■会話がうまくできない(54件)暗黙のルールなどが分からず、グループになるとどう振る舞っていいか分からなかったという回答が多く寄せられました。「女性社会の暗黙のルールが分からず、何をすると浮いてしまうのかが分からなかった」「個人間では話せるがグループや団体になったりすると楽しく過ごせない」「集団の時の疎外感。親しめる人への距離の近さから「友人の彼氏」にも近すぎてしまい誤解された」のように、距離感がうまく取れないことから、トラブルにつながった例もありました。また、いじめのターゲットとなったという回答も多くありました。グループに入れず仲間外れにされた人や、集団対自分でひどい行為を受けたという場合も。「みんな離れていきました。ある方たちには酷い!と言われたことがあります」「小学生~中学生にかけては、仲間外れなんかは当たり前でしたし、教師込みでの葬式ごっこにもあっています。 呼び出されて給食室に行くと、給食を運ぶエレベーターに友達に閉じ込められて、授業に出られなかった時がありましたが、何故か私が怒られていましたねぇ」会話についても困難やトラブルの原因となっているようです。学校や職場でのなにげない会話がうまくできないことから、人間関係につまづいてしまうようです。「雑談の話題作りのしかたや、興味のない話題への相づちの打ち方が分からず、孤立したこと」「雑談が苦手、孤立しがち」「余計なことを言ってしまい空気が冷え込み、距離をもたれる」のように、雑談が苦手、がんばって話そうとすると余計な発言をしてしまう」などの回答がありました。「怒らせるつもりは無いのに怒らせる。騒音や刺激物に気をとられ話を聞き逃す。話を聞いてないと言われる」「友達の話にすぐ理解、反応できず、自分1人だけ浮いてしまう。相手の表面どおりの言葉を真に受けてしまうので、その特質を利用されて仲間外れにされてしまう」のように、聴覚過敏や、額面通りに受け取ってしまうというような、特性ゆえにコミュニケーションが難しいという回答も目立ちました。約73%が親子関係で困難やトラブルを経験Upload By 発達ナビ編集部保護者との関係でも、多くの当事者が困難やトラブルを経験しています。その内容としては、次のようになっています。■喧嘩(24件)■無理解(21件)■暴力・虐待(13件)■過干渉(5件)ストレスなどから、すぐ喧嘩になってしまうという声が多くあがりました。「学校で感じているストレスの発散場所が無く、親に対して暴言、暴力でストレスを発散していました」「母親とは対立。結婚してからは兄弟のお嫁さんに対立。私以外の人間がルーズでだらしがないので、イライラしてしまう」理解してもらえず苦しんだという声も多く寄せられました。「親に子供の立場に立って考えてもらえないことが多かった」「自分のことを理解してもらえない」保護者の思う理想像との違いから、批判されて苦しんだという人もいます。「母が特性や辛さを理解せず、母の考える『普通』(実は理想の娘像)との違いで始終ダメ出しばかりだった」「友達がいないことを母親に責められた。冷たい人間と言われた」発達障害への認知がなかったために、不登校も許されなかったという例もありました。「親に発達障害の知識がなかったため、病院に行くまで学校に行くことを強要されていた。行かなかったら殴られていた」暴言・暴力などの虐待を受けていたという人も複数いました。「父親が厳し過ぎて、いつのまにか人の顔色を伺い、心も体も疲れはてた」「虐待を受けていた(身体、精神)。 意見を言う事や、何かを要求する事は禁止されていた。 できない事はずっと否定され、理解してもらえなかった」「母親には、かなり叩かれていました。本当に死ぬんじゃないかな?って思うぐらいに…。(中略) 一番辛かったのが、『夜眠れないのよぉー!』と言いながら、徹夜で朝まで説教で、寝させてくれませんでした。本当にツラかった」以上のように、本来、落ち着ける場所・逃げ場であるはずの家庭でも強いストレスを感じざるをえなかった様子がうかがえます。90%以上が学校や職場でトラブルや困難を経験Upload By 発達ナビ編集部多くの当事者が、学校や職場でのトラブルや困難に直面しており、特に仕事でのトラブルや職場での人間関係に悩んでいる様子がうかがえました。■仕事でのトラブル(35件)■人間関係(35件)■学習の遅れ(15件)仕事でのトラブルについては、スムーズにこなせなかったり、ミスをしてしまうという例が多くあげられました。「上司の指示が理解できない、仕事のミスが多い、人の気持ちが分からない、時間や締め切りを守れない、仕事中に眠くなってしまう」「やらなければならないことを優先度合いで順番をつけ実行するのが苦手なため、いつも手一杯で結果も中途半端」「電話対応の仕事をした時に、電話しながらメモができなくて、電話を切ったあとに、内容を忘れる相手の名前や会社の名前を忘れる」「マニュアルがないと戸惑う。マニュアルから逸脱するのに抵抗がある」「仕事では、不注意のため介護現場で利用者さんに怪我をさせてしまった」また職場での人間関係についても、世間話ができなかったり、飲み会への参加が苦痛で断るうちに、同僚との関係がぎくしゃくしてしまうようです。「休憩時間の世間話が上手くいかない」「飲み会が苦痛」「飲み会への不参加が続く。何度も誘われるが仕事するだけでいっぱいいっぱいでヘトヘトなので何度も断り嫌われる」ただ、中には「以前は多くあったが、現在の職場にはカミングアウトして、できないところのサポートと配慮をしてもらいやすくなった」という風に、発達障害について周囲に伝えることで、必要な配慮をしてもらえるようになったという回答もありました。第二次性徴時の体の変化についての困難やトラブルの内容に、特徴があるUpload By 発達ナビ編集部第二次性徴時の体の変化については、約半数は困難やトラブルを経験しなかったという回答でしたが、約25%からは、次のような困難やトラブルについての声があがりました。■体の変化が受け入れられない(13件)■PMSなど生理に関連する体調不良(12件)■自分の性別への違和感(9件)まず、急激な体の変化についていかず、対応ができなかったという意見が目立ちました。「自分に何が起こったのか理解できなかった。受け入れがたかった」「急激な身体の変化による不安や不眠」「ブラジャーをつけることが物凄く気持ち悪く、つけずにいたら母に酷く叱られた。月経にもなかなか対応できず下着を汚してばかりいた」生理に関する困難も多くあげられました。ホルモンバランスの変化によるイライラのほか、一定しない生理周期にパニックになる、ゆううつになるなどの例も。「10才くらいで初潮がありPMSが現在もきついです。思春期はいつもイライラしてて家の中で荒れていました」「生理が来なくなったり、早まったりと予測ができず初めはパニックになることが多かった」「生理前のゆううつ感、自殺願望、生理が来るたびになんで妊娠しないのにと思った」それまで意識していなかった性差に直面し、自分の性を受け入れられない、理解が難しかったという人もいました。「自分の性別を受け入れられない」「女の体になるのが気持ち悪かった。今も、胸を潰して腰を狭くできるならそうしたい」「性別の概念がよく分からないので、勝手に分けられる体になることに抵抗があった」困難やトラブルがあった25%については、体の急激な変化に加え、大人の女性として見られていくことに対して、うまく対応ができず混乱してしまったことがうかがえました。約62%が学習面での困難を経験しているUpload By 発達ナビ編集部学習面での困難としては、下記のような内容が多く寄せられました。■得意不得意の差が大きい(33件)■集中できない(17件)■読み書き困難(12件)■宿題忘れ(8件)得意不得意の差が大きいという人の中でも、算数・数学ができないという回答が20件ありました。「数学が全然分からなかった」「今思えば数学が極端にできない。答えが1つである性質には魅力を感じるのだが、できない」「算数の繰り上がりの足し算から分からなくなった。(中略)コンパスなどをうまく使えず、図形の問題に時間がかかった」また、国語や英語について苦手感があるという声も数件ありました。「漢字は読めるのに、書くことができない。英語のスペルが全く覚えられない」「漢字が覚えられない。忘れるのが早い」「文法が苦手なため国語や英語も苦手で覚えられなかった」逆に、「小数点や分数の計算は未だにできない。(中略)文を書く事は好きだったため、国語表現の成績だけはよかった」など、得意な科目についてはよくできたという声もありました。集中力のなさからの困難としては、下記のような例があげられました。「集中力が続かない、文章は読めても理解できない」「集中して聞き続けられない、書字が遅く、また聞いていることを要約しながら書けないため板書が困難」「過度集中の特性を持ちつつも、通常時に机に向かって一つのことに集中していられない」また、過集中の特性を生かせるときと生かせないときがあるという人もいました。「過集中の時はテストの成績も良いが、そうじゃないと全く勉強できない」「始める前に色々と考えてしまうと、思考で頭がいっぱいになってしまい、何もできなくなる。ただし、一度始めれば一般的以上の集中力や成果を発揮」読み書き困難については、次のような回答がありました。「文章題の意味が取れない」「成人してからも逆さ字をかいてしまう。読めるけどかけない」「指示代名詞の理解が難しい。『ちゃ、ちゅ』など小さな文字の読み書きができない」また、板書がなくなったことで理解が難しくなったという場合もあるようです。「先生の言葉だけでは理解できないので、高校大学で黒板などをほとんど使わなくなってくるとついていけなくなった」教科によって得意不得意の凸凹が大きかったり、不器用さや集中できないことなどから勉強に支障が出てしまう場合が多くあるようです。約半数が、ファッションや身だしなみでのトラブルや困難を経験Upload By 発達ナビ編集部ファッションや身だしなみに関しては、約半数が困難やトラブルを経験しています。以下のように、そもそもファッションに興味を持てない、適切な服装を自分で考えることが苦手、不器用さなどから身だしなみを整えるのが苦手、感覚過敏があり着られるものが限定されるといった面があるようです。■TPOに合う服装が分からない(26件)■無頓着・だらしない(23件)■不衛生(15件)■感覚過敏(10件)TPOに合う服装が分からないという回答が一番多く寄せられました。具体的には、細かな指示がないと何を着ていいのか分からない、季節に合わせた服装ができないなどの声がありました。「ドレスコードが分からない」「制服以外で、日中の外出に何を着たらいいか分からなかった。無地で2色くらいが無難と気付くまでは、ちぐはぐな上下を組み合わせていたと思う」「Tシャツ、ジーパン不可の指示で、ポロシャツとチノパンで行ったら、怒られた」「どんな服装が適切か(温度との関係など)がよく分からない」無頓着・だらしないという回答については、下記のような具体例があげられました。興味が持てなかったため無頓着になってしまったり、不器用さなどからルーズな着こなしになってしまうことが多いようです。「2児の母ですが、未だに化粧もせず(そもそも興味が持てない、面倒)、ファッションも気にすることができない。歯磨きも幼少の頃から苦手でうまくできないまま。ムダ毛を剃っても剃り残しが頻発」「今はかなり気をつけていますが、背中が出てる、パンツ見えてるはよくいわれてました」感覚過敏についての声も寄せられました。しめつけや素材感に苦手なポイントがある、髪に触れるのがイヤでまとめられないという声が目立ちました。「合わない服だとストレスで具合が悪くなる。肌に化粧品を塗るのが苦痛」「服のタグがチクチクしてたまらなかった。締め付けがキツく感じ、下着を選ぶのが困難」「髪の毛は自分で始末が付けられず、ボサボサのまま学校に行っていました。また首に何かが触れるのが嫌で、ハイネックやタートルネックは着られませんでした。(中略)ストッキングは大嫌いで、履かなければならない日は物凄く不機嫌になります」約40%が異性関係でのトラブルを経験Upload By 発達ナビ編集部約40%が異性関係でのトラブルを経験しており、具体的には次のような内容があげられました。■適切な関係が築けない(36件)■性被害(29件)■距離感(21件)■依存(12件)適切な関係が築けないという人が最も多くいました。誘われたら断れない、好きという意味が分からないので恋愛がゲームのようになってしまうという場合も。「複数人と関係をもってしまう、誘われたら断らない」「結婚が長続きしない。離婚3回」「言いなりになりがち」「恋人がころころ変わる、付き合い始める前のかけひきみたいな状態が好きで、後先考えずにそういう雰囲気にもっていってしまう」「誰かと付き合っていても別の人間を好きになってしまうことがあり、そもそも恋愛的な意味での好きとは何なのかが分からなくなっている」また、「出会い系に手を出して、ストーカー被害にあった」「交際していない中年男性によるつきまといなどのストーカー被害」というように、性被害にあいやすいという人も多くいました。中には「8ヶ月間軟禁された」という人までおり、深刻さがうかがえました。不適切な距離感によるトラブルとしては「しつこく連絡して嫌われた」「勝手に気に入ってつきまとう」というように、しつこくしてしまい嫌われてしまうという例や、「好きじゃない人にも好意的に接してしまい、言い寄られる」「両思いだと勘違いされる」など距離感が分からないことなどが原因で、行為があると誤解されてしまうという例がありました。「男性との距離感で友人から恋仲との区切りが分からず「仲良いよね」と言われると、ベタベタされても、納得していた」という風に、自分では判断できない場合もあるようです。また、依存については、「性依存。浮気」「性的逸脱、共依存」「セックスフレンドにはまった」のように、性的に依存しまったり、「元夫に精神的DVを受けていた。共依存関係だった」「依存してしまいお金を貢いだり、妊娠して逃げられたりした」のように共依存となりDVを受けたり貢いだりしてしまうことも。このように、異性関係でのトラブルは、性暴力やDVなど精神的にも身体的にも大きな影響出てしまう可能性があります。異性関係のトラブルの原因とは?出典 : では、どうして異性関係でトラブルとなってしまうのでしょうか。その原因について、どのように認識しているかについても聞きました。■人の気持ちや距離感が分からないから(26件)■自己肯定感の低さ(21件)■性的知識の未熟さ(13件)どんな人とも同じような距離感で接してしまう、自己肯定感が低いために依存してしまう、性的なハードルが低すぎてトラブルに巻き込まれるというような声が目立ちました。約65%が恋愛や結婚をしたいが向いていないと考えている出典 : By 発達ナビ編集部約65%が、恋愛や結婚をしたいと考えているものの、向いていないと考えています。異性関係でのトラブルの経験などから、希望はあっても自分は恋愛や結婚に向いていないと考えてしまう人の割合が多くなっているようです。困難やトラブルの対応策・解決策は?出典 : 学校や仕事、交友関係など、さまざまな場面で生きにくさを感じている発達障害のある女性。でも、自分なりの対応策や解決策を見出している人も多くいます。■逃げたり放置して身を守る(22件)■冷静に整理・分析する(22件)■相談する(22件)■あやまる(10件)逃げたり放置して、身を守る例としては下記のようなものがあげられました。「環境を変えられるなら変える」「信頼回復に努める。職場や交遊関係なら離れる、逃げる」「直後であれば、落ち着ける場所に逃げる。または、保護してくださる方がいたら、頼って話を聞いてもらう。落ち着いてきたら、現状を自分なりに整理し、迷惑をかけた方々に最適と思う対応をする。決して必要以上にへりくだらない」どうしても合わない場合などは、無理せず職場や交友関係から離れて、心が壊れないように身を守るという方法です。冷静に整理・分析するという意見もありました。まず、起こっているトラブルを紙に書き出すなどして、客観的にみつめ、書籍を読むなどして対応策を考えて、対応するという方法です。「紙に書き出し整理する」「書き出す、フローチャートを作る」「参考になりそうな本を読む」「疑問、要因を確認する。自分が悪かったと思われるところは、相手に謝るようにしている」「尊敬する人をイメージして、その人が今この時なんと答えてくれるか、どんなリアクションをとるか考える」また、信頼できる家族やカウンセラーなどに相談することで、客観的にみることができたり、対応策が見つけられるという人もいました。「とりあえずあやまる」「早めに謝る」というように、トラブルがおきたらすぐにあやまることで問題を大きくさせないという意見も目立ちました。当事者が実際にとっている多くの対応策・解決策から、場合によってはまずは謝ってその場をおさめたり、がんばりすぎず、時には諦めたり離れたりすることも、自衛のためには大切だということが分かりました。相談相手はいる?誰に相談しているの?Upload By 発達ナビ編集部相談相手がいると回答したのは約65%。相談先としては、下記のような結果となりました。■家族(52件)■友人(25件)■カウンセラー(22件)■医療機関(13件)■修了支援施設の職員(5件)対応策・解決策のひとつとして、相談することで客観的に見ることができたり、身の安全を守ることができたりするという声が寄せられていました。信頼できる相談先を持っていることはとても重要です。特性を生かして、活動・仕事をしている人も出典 : 「ご自身の発達障害特性を生かした活動をされている場合、どのような特性をどのような活動で生かしているか教えてください」という問いに対し、下記のような回答が寄せられました。■当事者支援活動・子育て支援・指導員など(21件)■音楽・美術など芸術関係(16件)■プログラミング・パソコン入力など(8件)■子育て(7件)子どもを指導したり、カウンセリングをする中で、当事者としての経験を生かして、寄り添うことができるという声が最も多くあげられました。「学童保育指導員。自分の過去の失敗から、似た失敗の仕方をする子どもに、前向きな言い換えで指導できた」「教諭として自分の取説を作れるように自己理解を深めるような指導をしてきた。今は、多機能型通所事業所で指導員として勤務している。ご利用者のお子さまの気持ちも分かる。親御さんの気持ちも分かる。いろいろあるけど、自分は自分を認めたい」「同じような悩みの人に、自分の経験が役立てばと、カウンセラーを目指しているところです」視覚や聴覚の優位さなどの特性を生かし、芸術系の職につき、活躍している人もいました。「昔から絵を描く事にたけているので、美大を出て今も主婦として絵画の制作活動をしている」「絶対音感とリズム感を生かして、音楽活動をしている。色彩感覚や細かな絵を描くことが得意で、絵を描くことを仕事にしている」「フリーランスですが舞台に立つことや音楽、グラフィックデザインなどでもお金を得ています「企業内グラフィックデザイナーで就労していた」同様に、特性を生かしてプログラミングやデータ入力などの職についている人もいました。「プログラミングができるので、システムエンジニアとして就職」「独身時代は、システム開発の仕事で重用されていた。 通常の言語とは異なり、プログラミング言語は私の考えを表すのに適していると感じていた」「パソコン入力、経理など」また、発達障害がある子どもを育てるうえで、自分自身の経験が役立っているという回答もありました。今回の調査結果から今回の調査結果から、女性ならではの不安や困難を感じているものの、具体的な解決策が見つけられず悩みながらも、自分自身なりの対応策・解決策を見つけて、折り合いをつけながら生活をしている人がいることも分かりました。LITALICO発達ナビでは1月~2月にかけて「女の子の発達障害」特集を組み、コラム記事を掲載していきます。自分自身だけで抱え込まず、専門機関などに相談するなど第三者を上手に活用したり、書籍やコラム記事で紹介する内容などを取り入れて、ご自身なりの生きやすい方法を見つけていっていただきたいと願っています。
2018年01月24日こだわりが強い、ちょっと変わった子どもだった出典 : 小さいころの私は、ものに対するこだわりがとても強く、枕とタオルケットはいつも使っているものでないとダメ。外に出るときは、いつも好きな人形を抱えていました。はたから見ると変わった子どもだったに違いなかったけれど、両親はよその子と比べることなく育ててくれていました。おかげで、小学校入学前までは、特に問題になることもなく生活できていました。家庭崩壊の危機へ!?不登校になった小学4年生のころ出典 : 小学校に入ると、周りの子どもたちとの違いに自分でも気づくようになりました。他の子が楽しそうにしていることが、自分はまったく楽しくない、何が楽しいのか分からないのです。でも、家でも学校でも、本当の気持ちを見せないでいました。私には兄と弟がいて、3人兄弟を育てる両親は本当に大変そうでした。それで「いい子でなければいけない」「素直でニコニコしてなきゃいけない」と思い込んでいたのです。だからか、誰も私の違和感に気づいていないようでした。小学校4年になった頃、私は、当時まだ珍しかった不登校になりました。何か決定的な出来事や明確な原因があったわけではありません。でも、ある日突然、学校に行くのが嫌になりました。クラスメートと話が合わず学校生活が苦痛だったことと、家族の前ではいい子を演じていたことなどが重なって、限界が来たのだろうと今は思います。出典 : 不登校になると、両親の態度は一変しました。毎日のように両親と言い争いをするようになったのです。母親からは「今日は学校行かないの?」から始まり「なんで学校に行ってくれないの!」と何度も言われました。父親には「今のうちからこんな生活をして、将来どうやって生きていくつもりなんだ?」と責められました。私からも、母親に対して「親の育て方が悪かったんだ!」とか「親なのになんで分かってくれないんだ!」など、傷つけてしまうような言葉を何度もぶつけてしまいました。以前は笑顔があふれていた夕食のだんらんは、暗い顔で黙って食事をとるだけの時間に。小学校に上がった弟まで「お兄ちゃんが休んでるなら僕も学校休みたい」と言いだす始末で、両親の顔はさらに暗くなっていきました。そのころの私は、両親は自分のことも周りのことも、何でも知ってる万能な存在だと信じていました。それまでは、私が何も言わなくてもいろんなことを察してくれていたし、質問すれば何でも答えてくれていたからです。「今までは何も説明しなくても全部分かってくれていたのに、どうして今のつらい気持ちを分かってくれないんだ!」なんてことをずっと考えていました。両親の変化と、夢中になれるものとの出会いが、私を変えた出典 : 毎日言い争う生活が1年半程続いたころ、徐々に光が見えてくるようになりました。話し合いを通して、両親は何でも知っている万能な存在ではなく、ただのひとりの人間なんだということに気づいたのです。両親はさまざまな本を読んだり専門家に相談するようになりました。そして、私への対応に変化があらわれてきたのです。母は仕事を休職し、不登校で家にいる私とよく話すようになりました。以前は「なんで学校に行かないの?」から始まっていた毎朝のやり取りは、「別に休んでいいからね」「無理していかなくていいよ」という声かけに変わっていました。父親からは「休みたいなら休んでもいいけど、将来のことは自分で責任をとるんだぞ」と言われるようになりました。出典 : なかでも一番大きく変わったのは、両親がちょっとしたことでほめてくれるようになったことです。特に母親はとても大げさにほめてくれるようになりました。ちょっといいことがあっただけで、とてつもなくすごいことをしたかのように大げさにほめてくれたのです!それまではテストでいい点を取ったり家事を手伝ったりしても特に何も言ってくれませんでした。だから、初めて母親にほめてもらったとき、私は心底うれしくて、泣きじゃくりながら母親に頭をなでてもらったことを鮮明に覚えています。つらくて固まっていた私の心は、少しずつ解けていきました。出典 : 両親との関係で光が見え始めたころ、私は自分だけのRPG(ロールプレイングゲーム)をつくるゲームと出会いました。数少ない友人から借りたそのゲームが、プログラミングの楽しさを教えてくれました。生まれて初めてのプログラミングは「主人公が家に入ると、その中にいる人の前まで自動的に歩いて話をする」という簡単なものでしたが、私にとっては大きな転機となりました。なぜなら自分の考えや気持ちを言葉にして伝えるのが苦手だった私が、自分の考えをダイレクトに表現することができた初めての体験だったからです。画家が絵で自分を表現するときのように、詩人が詩で考えや感情を表現するときのように、私はプログラミングでなら自分を表現できるかもしれないと思いました。将来は絶対にプログラマーになる!と決めた私は、少しずつ学校に通うようになりました。中学校では少し不登校をぶり返しましたが、何とか地元の工業高等専門学校(通称 高専)に入れる程度の学力を身につけられました。出典 : 私が通った高専は寮生活でした。わが家はいまどき珍しいほど貧乏ではありましたが、親が(本人曰く)清水の舞台から飛び降りる気持ちで私専用のノートパソコンを買ってくれました。私はそのパソコンを使って毎日ひたすら、学校でも寮でも、プログラミングの勉強をしました。学校の敷地内で生活できて、しかも変化の少ないスケジュールの中、ひたすら自分の好きなことにのめり込める環境は、私にとって最高でした。それまでは学校に通うことは苦痛でしかありませんでしたが、高専に入ってようやく、学校を楽しいと思えるようになったのです。希望の職に就職…!打ち砕かれた夢と現実とは出典 : その後プログラマーとして、とあるメーカーの子会社に就職しました。毎日プログラムを組めて、専門知識をいっぱい持っている先輩に囲まれて働くという、バラ色の未来を夢見ていました。ですが、残念ながらそんな期待はすぐに打ち砕かれました。プログラムを組むかわりに、毎日のように私が書いていたのは大量の技術文書。私がやりたいと願っていたプログラミングをする機会はほとんどありませんでした。学生時代の半分もプログラミングできない仕事は、私にとってはやりがいを感じられずとてもつまらないものだったのです。出典 : 就職してからは同期や先輩との付き合いが増えてきたのですが、周りの行動について行けなかった私は、ずっと困惑していました。周りの人たちは私だけが知らない決まったルールに従って動いているように見えていました。誰もそのルールを教えてくれず、誰かがリードしているわけでもないのに、なぜかみんな見えないルールに従っているように見えました。誰かが事前に口裏合わせをしているのだろうと本気で勘ぐったこともありました。私は知らない文化圏に迷い込んだ迷子のようになっていました。「顔つきは日本人で日本語を話しているのに、まるで異国のような文化・慣習の人たちが住む町に迷い込み、一緒に生活することになった」という状況を想像してみてください。私がこのころに感じた孤独感や困惑は、そんなときに味わう心境に似ていると思います。出典 : そんなある朝、突然ベッドから起きられなくなりました。何とか起きて外へ出ても、「車にぶつかれば休める」とか「電車に足一本持って行ってもらえればしばらくゆっくりできるなぁ」などというかなり危険なことが頭をよぎるように。精神科を受診し、うつ状態と診断されました。それから数年間さまざまな抗うつ薬を飲みながら生活していましたが、改善する見込みがなく20代半ばで休職することになりました。半年の休職を経て復職しましたが、復職先の上司には、叱責の度にうつ病のことを言われたり、人格否定をされました。就職してからは滅多に親に電話することはありませんでしたが、上司に人格否定された日は初めて泣きながら両親に電話しました。結局その環境に耐えきれなかった私はまた休みがちになり、最終的に会社を退職して実家に帰ることになりました。ようやくADHDとASDだと診断。両親にもらった勇気と自信に支えられ、管理職に…出典 : 実家で数ヶ月過ごすうちに、もう一度プログラマーとして仕事をしたいという気持ちが出てきました。そこで、とある会社に就職しました。その会社は、私のことをとても高く評価してくださったのです。自分が普通にできることをこなしているだけで周りの人たちが喜んでくれ、高い評価もしてくれる。こんなにうれしいことは社会人になってから数年間ずっとありませんでした。私ははじめて、仕事を面白いと感じるようになりました。その後、現在の会社に転職しました。しかし、ここで私はどうしようもないミスを多発してしまいます。悩み、調べる中で、自分がADHDなのではないかと思い至り、精神科を受診。ADHDとASDという診断を受けました。診断前後で大きく生活は変わってはいません。でも、自分が生きづらいと感じていたことの理由を理解できたことは、自分を理解するうえで大きな手掛かりとなりました。両親にたくさんほめてもらえたことで「自分を認めてくれる場所がある!自分はここにいていいんだ!」と思えるようになっていなければ、いまの私はなかっただろうと思います。発達障害があってもなんとか生活していけるだけの勇気を持たせてくれた両親には感謝しています。不登校のお子さんのいる保護者や支援者の皆さんには、お子さんをたくさんほめてほしいと思います。勇気や自信は、生きていくうえでの土台となるからです。浮き沈みを繰り返しながらも、私は今、管理職として働けるまでになりました。【後編】では、さまざまな生きにくさや挫折を経て、私がようやく掴んだ、無理せず、がんばりすぎず「人生をラクに生きる」サバイバル術についてご紹介します。
2018年01月22日発達障害児とその家族を支えるため、発達障害の正しい理解のための講演活動や、発達障害児を持つ家族のための相談支援活動などを行っている団体、一般社団法人「発達障害ファミリーサポートMarble(マーブル)」。その代表理事を務める国沢真弓さんは自身も、高校生になる自閉症児の母であるため、「当事者家族」の視点からのお話にはとても説得力があり、温かみのある方です。本業がアナウンサーであるため、周囲への「伝え方」のアドバイスは、なるほど! と深く納得できるものばかり。500名以上の発達障害児の家族の相談にのってきた国沢さんに、今回うかがったのは、発達障害の子どもを取り巻く、周囲との上手なコミュニケーション方法について。同じく発達障害の息子を持つ筆者が、「カミングアウトはするべきか?」「するとしたら上手な伝え方は?」、また「身近に発達障害児がいる場合、周囲はどう働きかければいいのか?」などを聞きました。■カミングアウトにあえて障害名を言う必要はない――発達障害の程度が重い場合は、あえて説明しなくても周囲は自然とわかるかもしれませんが、グレーな場合はわかりにくいですよね。特に説明する必要を感じない場合は、黙っていてもいいような気もしてしまいますが、身近なところにはカミングアウトした方が良いのでしょうか?「私が相談を受けた中では、カミングアウトした方が良いケースが多かったです。ただし、その際に、障害名をあえて言わない方が、結果的に良かったようですよ」――障害名をあえて言わないのはなぜでしょうか?「保育園や幼稚園だと、保護者が顔を合わせる機会が多いので、保護者の人となりが大体わかるのですが、小学生になると保護者の顔が見えにくくなってきます。残念ながら、中には噂好きのお母さんがいて、障害名だけ切り取って周囲に言われてしまったという例もあります。もちろん、障害名を伝えてうまくいくケースもあるので一概には言えませんが、カミングアウトする際は、どういう保護者がいるかわからないという想定で考えた方が良いと思います」――具体的には、どう伝えれば良いのでしょう?「上手くいった、ひとつの例をご紹介しましょう。『ホップ・ステップ・ジャンプの伝え方』…と私は名付けているのですが(笑)。まず“ホップ”。ユル~リと、子どもの具体的な行動を伝えます。例えば、『授業などの予定が急に変わると、混乱して泣いてしまうこともあるかと思います』とか『息子の〇〇は気持ちが高ぶると時々、乱暴な行動に出てしまうことがあります』など。ただ、この時、できればマイナス面だけではなくプラス面も話してほしいです。例えば、『小さな子には優しかったりするんですよ』など、良い面もくっつけると、聞いた時の印象が和らぎます。次に、“ステップ”として、子どもの行動に対して親として努力している姿勢を伝えます。例えば、『本人が行動を改められるように、1カ月に1回ほど専門家に相談に行っています』などというふうに『何もしていない訳ではないんだよ』と知らせます。最後に“ジャンプ”として、『〇〇のことで、何かありましたらお知らせください』と、いつでも受け入れる姿勢でいるということも伝えておく。そうすると、『ちょっと子どもはやっかいだけど、この保護者は何かあった時に聞く耳を持っているんだ』と、周囲も安心してくれるでしょう。本当は、しんどいんですけどね(汗)そして余裕があれば、最後に『今日は、話す前は緊張しましたが、親子ともども、楽しい学校生活を送りたいと思っているので、1年間よろしくお願いします』などと前向きな言葉で締められたら、グッド! ちょっとハードルが高いかな(笑)。でも、こんな順番でお話しすると、周囲に受け入れてもらいやすいようで、1クラスに2~3人は、応援してくれる保護者が出てくるケースをたくさん見てきましたよ」――なるほど。受け入れる姿勢を示すことはとても大事ですよね。では、もし、実際に子どものことで保護者からクレームがきた場合は、どう対処するのがベストでしょうか?「『周囲から子どものことでクレームがきた』という相談も、とても多いです。例えば、通常学級では『〇〇君がいると授業が進まない。支援学級にうつった方がいいんじゃないんですか?』なんて言われてしまうことも、残念ながらあります。そういう時は、もし、わが子が授業を中断しているのが事実だとしたら、まず謝ることが大切。そのうえで、『この子の居場所ができるように、クラスメートに迷惑がかからないように、学校と話し合いをしているので、もう少し見守っていただけますか?』とか『今、事態が改善されるよう、専門家にも相談をしています』などと、こちらが努力している姿勢を示しましょう。と言っても、こういう局面で、このように伝えるのは、すごくエネルギーを使いますよね。私も、相談する方のつらさがわかるだけに、なんとか力になれたらと思うんですよ」 ■発達障害の子どもに対して、周囲はどう対応すべき?――次は、逆の立場から考えた時のことをお聞きします。例えば、身近に発達障害の子どもがいた場合、周囲はどう接したら良いのでしょうか?「周囲が『歩み寄りたい』という気持ちを持ってくれたら、とてもありがたいです。発達障害の子どもの性質と接し方のコツを、周囲のみんながわかってくれたら、その子だけでなく、きっとみんなも楽になると思うんです。事実、障害児がいることで、その子を落ち着かせるために一致団結したり工夫したり、クラスがすごくまとまるケースもあるんです。…と言うことを、私たちのような“障害児の親サイド”から言ってしまうと、ちょっと押しつけがましいかもしれませんが(笑)。でも、実際、そういう例はあるんですよ」――「あの子はいろいろ問題行動を起こして迷惑」というふうにとらえるのではなく、「どうすればみんなが快適に過ごせるか?」というふうに視点を変えるのですね?「そうです。『授業を中断されて迷惑』とばっさり切り捨てるような一面的な考え方ではなく、『同じ教室に困っている子がいて、どうすれば解決できるか』を多面的にみんなで考える。その子が落ち着けば、自分たちへの飛び火も消えて、お互いに過ごしやすくなるはずですから。ただ一方的に、その子ばかりを特別扱いするというのではなく、みんなにも良いことがあるということを知ってもらえたら良いですね」――具体的には、周囲はどう接したらいいのでしょうか?「発達障害児に接する基本は4つです。1つは、話しかける時は『おだやかに・短く・肯定的な表現で・具体的に・わかりやすく褒める』。例えば、『廊下は走っちゃダメだよ!』ではなくて、『静かに歩きましょう』。『ちゃんとやってよ!』ではなくて、『〇〇を□時までに△△にしまいましょう』というふうに。2つ目は、あらかじめ予定を伝えることです。例えば、今日1日のスケジュールなどを表にして、『どこで、何が、いつ、誰が』を明記してわかりやすく伝えます。3つ目は、その子が集中できる環境を整えることです。好きなモノを手に握らせるなど、ほかにもその子が落ち着いていられるように工夫します。4つ目は、感覚過敏に配慮することです。発達障害児は知覚・触覚・嗅覚・味覚・平衡感覚が鋭かったり、逆に鈍かったりすることが多いので、近くで大声を出さないようにしたり、急に体に触れたりしないように、その子どもに合わせて配慮します。これら4つのことを組み合わせてやっていくと、落ち着いてコミュニケーションを取れることが多いと思います。すごくたくさんあって、大変という印象を持たれる方も多いかもしれませんね! けれど、こういうことを実践して、実際、発達障害の子どもが落ち着いて、クラスにいることができたら、それは周囲の皆さんの“努力賞”だと思いますよ」――なるほど。でも、このコミュニケーション方法って発達障害児だけではなく、すべての子どもに同じように役立ちますよね?「もちろん、発達障害児だけではなく、すべての子どもに有効な方法だと思います。私もこの対応法が身に着いてから、ずいぶん変わりました。例えば、忙しい時に子どもがミルクをこぼしたりすると、以前は『もう…! 何してんの!』みたいに怒ってしまっていたけど(苦笑)、息子への対応法が身についてからは『これでキレイにふきます』とサッと布巾を渡せるようになりました。私がイライラすると息子がそれに影響されて大変になってしまうので、自分の身を守るためでもあるんですけどね(笑)」――対応法が、すっかり体に身に着いたのですね!「10年以上、発達障害児の子育てをしていると、ずいぶん変わりますよ(笑)。難しいことかもしれないけれど、周囲の皆さんにも、どんどん対応法を知ってもらえたらうれしいです。上手に対応できた子は、きっとクラスの中でも『えっ、すごいじゃん!』と羨望(せんぼう)も集まって、その子も鼻高々になるかもしれません。そうやって、お互いコミュニケーション方法を学ぶことで、お互いの理解が深まるような、そんな環境になれば素敵ですよね」集団の調和を乱す子を、単に『みんなの邪魔』と言って排除するのは簡単です。でも、排除するだけでは、そこからは何も学べませんし、成長もありません。自分も、いつ“障害を持つ側”になるかはわからない…。障害を持った時に、悲嘆したり絶望したりすることがないように、誰もが尊重される、暮らしやすい社会が実現できると良いなと、心から思います。ただし、発達障害の子どもが何に困っているかを考え、相手の立場を理解し、一緒に楽しく過ごす方法を考えるのは、手間も忍耐力もとても必要です。けれど、それを根気よく進めていくことで、子どもたち(もちろん子どもだけではなく私たち大人も)は、かけがえのないものを学んでいくのではないでしょうか?国沢真弓さん プロフィールフリーアナウンサー、自閉症スペクトラム支援士、一般社団法人 「発達障がいファミリーサポートMarble」 代表理事<役職>ペアレント・メンター、三鷹市相談支援事業「ママサロン」相談員 、三鷹市知的障害者相談員、三鷹市発達障害児親の会「モンブランの会」会長、社会福祉法人「清陽会」評議員、児童発達支援施設「すこっぷ調布」アドバイザー、三鷹市教育支援推進委員会委員。<経歴>都立新宿高校、聖心女子大学文学部歴史社会学科を卒業。富士通株式会社を3年勤務後、アナウンサーに転向。NHKテレビ「きょうの料理」「婦人百科」の進行を約10年務めたほか、多数のテレビ・ラジオ番組に出演。海外特派員、番組企画構成も担当。ナレーション・司会は各500回以上務め、厚生労働省主催「世界自閉症啓発デイシンポジウム」の総合司会を毎春担当。「3歳までの子育ての裏ワザ」「こんな時どうする?子どもの友達・親同士」(PHP出版)など共著多数。<現在の活動>一般社団法人「発達障がいファミリーサポートMarble」代表理事として、「発達障害」や「伝える力UP」といったテーマでの講演を、全国で行っている。また、「ペアレントメンター」として保護者や支援者の相談に応じるほか、障害児の家族が気軽に参加できるイベントやお喋り会の開催等を行い、家族の元気を応援している。(詳しくはホームページをご覧ください)。取材・文/まちとこ出版社N
2018年01月20日2017年11月25日から12月5日に、LITALICO発達ナビでは「女の子の発達障害に関するアンケート」を行いました。発達障害のある子どもの保護者677名、発達障害の当事者445名の声が寄せられました。ご協力いただいたユーザーの皆様、どうもありがとうございました。この記事では、「約700名の保護者が回答!女の子の発達障害、学校や友達との関係、身だしなみの悩みや解決策は?」とし、調査結果の一部を抜粋し、お伝えします。発達障害の当事者の声については、「約450名の当事者が回答!女の子の発達障害、勉強や仕事、恋愛、交友関係など悩みや解決策は?」でご紹介しています。<調査対象について>「LITALICO発達ナビ」会員へのメールから、アンケートフォームにて回答いただいた発達障害の子どもをもつ保護者:677名の回答を集計しました。(調査期間:2017年11月25日~12月5日)※設問によっては677名全員が回答していないもの、複数回答可のものがあります。※調査結果の構成割合は四捨五入をしているため、合計が100%にならない場合があります。女の子の発達障害とは?発達ナビに寄せられた、保護者約700人の声出典 : 「約700名の保護者が回答!女の子の発達障害、学校や友達との関係、身だしなみの悩みや解決策は?」では、学齢期を中心とした発達障害の女の子の保護者677名が回答。現状や不安に思っていること、悩み、解決策までが寄せられました。小学生を中心に、幼児から中高生までの女の子の保護者が回答Upload By 発達ナビ編集部発達障害があることに気づいた年齢やきっかけは?Upload By 発達ナビ編集部お子さんの発達障害があることに気づいた時期は、就学前が約60%、小学校低学年が約20%となっています。気づいたきっかけは、1歳半健診など健診時(21件)や、幼稚園・保育園の先生(10件)からなど、専門家や先生からの指摘という回答がありました。他に目立ったのは、「言葉の発達の遅れ」(47件)によるものです。「発語が遅い」「単語のみで会話にならない」など、言葉の発達について保護者が疑問・不安を持ち、医療機関を受診したり専門家へ相談したという回答が寄せられました。就学後のきっかけとしては、学校でのトラブルのほか、不登校(23件)などがあげられました。また、癇癪や多動、こだわりの強さ、友人関係のトラブル、てんかん発作などがきっかけという声もありました。約40%が二次障害を発症しているUpload By 発達ナビ編集部発達障害特性を原因とした二次障害を発症している割合は約40%でした。二次障害で多くあげられたのが「不登校」(111件)です。続いて「うつ」(35件)、「不安障害」(17件)、「自傷」(13件)という回答でした。不登校とうつ、不登校と自傷など、複数の二次障害があるお子さんも多いようです。他に「反抗挑戦性障害」「ゲーム依存」「睡眠障害」「緘黙」などを発症した例もありました。また、特性である聴覚過敏などがひどくなった、ストレスでじんましんになった、クラスで孤立したという声も寄せられました。歳でアスペルガーと診断。二次障害で苦しむ娘を想い考えること90%以上の子どもが、不安や困難を感じているUpload By 発達ナビ編集部保護者から見て、日常生活に不安や困難を感じていると感じられたお子さんは、回答したご家庭90%以上に上りました。では、どのような場面で困難を感じているのでしょうか?Upload By 発達ナビ編集部保護者からみて、園・学校生活(76%)で不安や困難があると感じられることが一番多く、友人関係(72%)、学習面(53%)と続きます。具体的にどのような不安・困難を感じているのでしょうか?次に、具体的な回答内容を紹介していきます。女の子の発達障害、保護者から見た不安や困難の具体的な内容とは?出典 : 園・学校生活では、下記のような困難やトラブルがあるようです。■一斉指示に従えない■切り替えがうまくできない■トラブルがあっても大人に伝えられない■忘れ物が多いエピソードとしては、次のような例があげられています。「一斉指示が入りにくい」「高学年になると、先生も説明が簡単になり、理解出来ず泣いて固まる」「耳からの情報を捉えにくいため、先生からの指示を聞き逃して注意を受ける」など、一斉指示や口頭指示などが理解できない・気づかず、集団生活にうまくなじめない例。「給食、遊び、散歩など決まったスケジュールに沿った切り替えができない」という例。「何があったのか 誰が何を言ったのかを 明確に教えれないので発覚が遅れる」など、トラブルがあっても大人へうまく伝えることができない例。「ハンカチ、ティッシュの予備は登園するリュックの中にある事を知っているのに、(必要になった時に)どうしていいかわからず、スモックで拭いたり友達や先生に借りたりしている」など、忘れっぽいことや、場面に応じた対応が不得手なために困惑してしまう例。上記のような困難やトラブルから叱られることが増え、自己肯定感が下がってしまうお子さんもいるようです。中には、不登校や場面緘黙など二次障害を発症する場合もありました。「学校で声が出せない。後ろから誰か来ると動けなくなるためスイミングでも急に沈む。運動会で動けなくなる」「私立中学に通学していたが、コミュニケーションの取り方がうまくいかなかったり、誤解をされたりしたことで孤立ぎみになったため学校をやめて、本人が興味を示していた海外に留学させている。しかし現在、言葉の壁にぶち当たっている真っ只中で、閉鎖気味になってきた」不登校などの二次障害を発症する前に、対人関係や集団生活のフォローが必要になると考えられます。出典 : 友人関係では、女の子特有の交友関係でのトラブルについての回答が目立ちました。微妙なニュアンスが分からないためにガールズトークについていけず、ストレスを感じてパニックを起こしたり登校渋りにつながってしまうという声も。「ガールズトークについてけない、何となく浮いてるなど気になる部分がある。学校で頑張るせいか、家庭では未だにパニック起こしたり不注意が多い」「思春期では友人関係に苦しんでいました。女の子特有の集団発想など、気持ちがわからないためにしばしばトラブルに」いじめを受けてしまう場合もあるようです。「今まで話かけてくれていた子から、まったく話かけてもらえなかったり、声をかけるとみんな黙ってしまい、自分でどうしたらいいのか分からない為に辛い」「集団登校で、死んだらええのに、と言われたり、持ち物を捨てられる」反対に、中学校までは孤立していたものの、自分に合う学校を見つけられたことで転機となったお子さんもいました。「女の子が作りがちな派閥が嫌いで、中学までは孤立していた。通信制高校に入り、生徒会的な仕事をきちんとしていたら、派閥に入らなくても認められるようになってきた」出典 : 苦手教科がある、理解に時間がかかるという悩みを持つお子さんがいるようです。「算数が苦手」「文を読むのが苦手、+−=などの意味が全くわからなかった」「みんなと同じ宿題がこなせない」書字障害や注意欠如などが原因で、学習で必要な準備ができない場合もありました。「連絡帳が書けない」「忘れ物、連絡事項が記憶できない」感覚過敏が原因で、授業に集中できないお子さんもいました。「聴覚過敏があるため、授業中に隣のクラスの声も聞こえていたらしい」一方、「行けそうな時間割のところだけ行く。 教室には入れない。授業を受けていないので勉強が分からない」というように、不登校になったことで学習面で遅れてしまうケースもありました。出典 : 感覚過敏やこだわりによって、身だしなみに関わるトラブルが起こることもあるようです。「感覚過敏から特定の服ばかり着たがる」「服の色にこだわりがあり体操服が着られない」また、身だしなみをきちんとしていなくてはいけないという意識が低いお子さんも多いようです。「髪の毛がいつもボサボサ」「変な格好も平気で外に出る。上下がちぐはぐだったり、季節感がおかしかったり、年齢的に幼かったりする」「寒暖に合わせて服が選べない・ボタンの掛け違いや前後逆でも気づかず出かけてしまう」また、中にはこだわりすぎてしまうようになった例も。「中1までは、無頓着で、髪の毛ボサボサ・服もダサい。 中2からは、気にしすぎて、美容品や服にお金が掛かる」。衛生面で問題が出てしまう場合もあるようです。「洗髪しなくても気にならない」「時間に間に合わないので、毎日風呂やシャワーを浴びれない日がある。心身が落ちているときは何日も風呂に入らず不衛生」身体面で大きな影響が出ている場合があるようです。「本人が、体が疲労してても気がつかず、逆にテンションオーバーしてしまい、睡眠障害が出たり、こだわりが強いため、成長がどうしてもそこで止まってしまう」「起立性調整障害のため朝起き上がれず、眩暈・吐き気をもよおして登校・外出できない。PMS・生理痛がひどく月の半分は体調が悪い」出典 : 親子関係では、家庭内での暴言・暴力、嘘などについて悩んでいる保護者も多くいました。「母親への異常な反発」「かんしゃくから家庭内暴力になること」「自分の感情を抑える事ができない。パニックを起こす」「嘘をつく、兄弟をいじめる、お金を盗む」家庭内のトラブルから「普段の生活そのものを家族と共有することが大変」と感じてしまう保護者も多いようです。社会的な活動ができない状態について、どのように対応してよいか分からず困惑している様子もうかがえました。「人との距離感が近い。感覚過敏や体調不良、気が乗るときと全く動けないときの差が大きい」「友達が一人もいない、自己肯定、自尊心が低く、不安が強い。社会に出られない。働く勇気がない。何事も人のせいにする。いつもイライラしてる」その他、睡眠に関する困難について、多くの声が寄せられました。「ストレスから夢遊病、夜驚症」「不眠症、イライラ」「就寝前に家中の戸締りを確認しないと眠れない。死んだらどうしよう、といういう気持ちに襲われ不安で眠れない」睡眠のトラブルについても、本人はもちろん、一緒に暮らす家族への影響が大きく、悩む保護者が多いようです。女の子だからこそ心配なこと、悩むことはある?Upload By 発達ナビ編集部約80%の保護者が、お子さんの発達障害について、女の子ならではの悩みや心配を抱えています。寄せられた悩みの多くは、下記の4つに関連するものでした。■女の子特有の人間関係(41件)■第二次性徴による体の変化(14件)■異性関係・性のこと(47件)■将来のこと(14件)子どもの「生理」について悩む保護者が多いUpload By 発達ナビ編集部さらに、「思春期の心身の変化や生理などについて、不安や困っていることがある場合、どのようなことに困ったり、不安に思っていますか?」という質問を行ったところ、「異性関係・性被害」(15件)、ホルモンバランスの変化などの影響による「精神不安定」(10件)などがあげられましたが、一番多い回答は「生理」(44件)についてでした。特に、生理時に適切な処理ができない・できるのか不安という回答が多く寄せられました。「生理になったときの対応ができるかどうか(予期せぬ対応ができない為)」「自分で汚れ物の処理をちゃんとしてない。そこら辺にナプキン投げて恥じらいがない」「生理の始末が面倒で、たびたび衣服を汚すがまったく気にしていない」また、感覚過敏などの特性により、生理時に困難がある場合も。「感覚過敏があるので、下着がどれでも着られない。 生理用ショーツが履けない。ナプキンもつけていられない」「少しの傷で血を見ると大騒ぎなのに、生理の出血をどうとらえるか心配」また、生理前や生理中の気分の変調が大きいお子さんも多いようです。「生理中、生理前の気分の変調が激しく、仕事にいけない事がよくある」「生理の前は気分が沈むことが多く、悲観的になる」生理についての対応策については、後述する体験談も参考にしていただきたいと思います。女の子の発達障害不安や困難が少ない家庭は、どのような工夫をしているの?出典 : では、特に不安や困難を感じないで生活できている人は、どのような対策をとっているのでしょうか。下記の4つが、対策のポイントのようです。■事前に説明しておく(53件)■ツールを活用する(15件)■見守る・認める(23件)■第三者に頼る(4件)皆さんが行っている具体的な対策について、次に紹介していきます。出典 : 見通しが持てるように、事前に説明しているとスムーズだという意見が寄せられました。「何かをする前や出かける前は、説明したり事前に行く場所を見学する」「具体的になぜ気を付ける必要があるのか逐一説明している」「事前に『こんな時にはこう言おう』『相手の返事を聞いてから行動しよう』など伝えている」生理についても具体的な対策方法があげられました。「サラサーティなどで練習させている」「生理は、低学年の頃から母のトイレでのナプキンの付け方など見せて説明していた」「大きなナプキンにしたり、パンツ型のものを買っている」ナプキンの使い方を見せたり実際に使わせるなどして早いうちからロールプレイングする、処理が難しい場合はパンツ型のものを使うなどの例は、ぜひ取り入れてみたいものです。また、体の変化や異性関係などについては、下記のような声が寄せられました。隠すことなく、具体的に、分かりやすく伝える姿勢が大事なようです。「性教育の、かたくない本を複数わたしてある。興味がある分野なので、真剣に読んでいる」「知らない人と話さない。携帯電話を常に持っていることをアピールしながら歩く」「機会があるたび、性行為などについて教えている」具体的に話すほか、女の子の発達についての書籍も活用できそうです。参考:デビ・ブラウン著 『アスピーガールの心と体を守る性のルール 』(東洋館出版社)参考:やまがたてるえ著『15歳までの女の子に伝えたい自分の体と心の守り方』(かんき出版)出典 : また、混乱なく生活できるよう、ツールを活用している保護者もいます。視覚的に分かりやすいツールを取り入れている例としては、下記があげられました。「スケジュールはじめ、家庭内でホワイトボードなどを利用し視覚化。模擬時計、キッチンタイマーを利用」「時間割り、時系列がわかりやすいように色分け」自分の気持ちを伝える場合にもツール活用できます。「困った時に『困っています』とカードを見せられるようにしている」忘れ物が多い場合などは、必要なものを一カ所にまとめておくという工夫をしている家庭もありました。「お手伝いや、色んな出来たことに対してポイント制にしてモチベーションをあげてます。また、忘れ物が多かったり面倒くさがりな所があるので学校に必要なものは全て玄関に置いてあるボックスにて完結できるようにしている」子どもにあったツールを活用することで、スムーズに生活ができるようになりそうです。子どもが「初めて」に挑戦するときに最適!絵カードの使い方とは出典 : また、子どもの立場に立つことや、自主性を尊重することで、家庭生活がスムーズになったという声も寄せられました。「子どもの目線になり、親の独り善がりにならないように寄り添い傾聴した」「唯一の楽しみがスマホでアニメを見ること。その時間を作り出すためにお風呂の時間が短くなった。髪や身体を洗う順番や工夫があるみたいです」また、子どもを追い詰めないような接し方を心がけることで、二次障害を防ぐことも大切です。「緊張が高まりやすいことに対しては無理せずできなくてもいいんだよと話すようにしている。 苦手なことはなるべく先に慣れるように家でやってみたりしている(なわとびの練習やお当番さんの練習など)」「出来ない事を、出来るだけ怒らないようつとめている」出典 : 第三者の力を上手に借りている保護者の声も寄せられました。「困った時は、通級の先生や臨床心理士の先生のアドバイスなどを受け、子どもに適切に伝えていくようにしている」「生理の処理方法などは、母親の私が言っても全然耳に入らないので、学校の先生(女性)やデイサービスの指導員(女性)のかたにお任せしてたいぶ改善した」家庭の中だけで駆け込むのではなく、保護者が積極的に第三者にアドバイスをもらう姿勢が大切です。また、思春期は保護者の言うことは聞かないことも多いため、先生などの力を借りて対応したほうがうまくいく場合もあるようです。スクールカウンセラーに関するコラムを総まとめ!役割や相談の様子などをご紹介します85%は相談相手がいるUpload By 発達ナビ編集部約85%の保護者には、相談相手がいるという回答でした。具体的な相談先としては、次のような結果となりました。療育機関の先生(26件)カウンセラー(26件)医療機関・医師(22件)友人(18件)園・学校の先生(8件)夫(7件)通っている療育機関や、学校や行政などのカウンセラー、医療機関というように、専門家へ相談している人が多いようです。ただ、多くの保護者はさまざまな悩みを抱えている現状が見えてきました。不安や困難がある場合は、積極的に専門機関などを活用し、解決策を見つける必要がありそうです。今回の調査結果から今回の調査結果から、女の子ならではの不安や困難を感じているものの、具体的な解決策が見つけられず悩んでいる保護者や、発達障害を原因とした二次障害に苦しむお子さんがいることが分かりました。そこで、LITALICO発達ナビでは1月~2月にかけて「女の子の発達障害」特集を組み、コラム記事を掲載していきます。家族だけで抱え込まず、専門機関などに相談するなど第三者を上手に活用したり、書籍やコラム記事で紹介する内容を取り入れて、少しずつでも生きやすくなる工夫を試していっていただきたいと思います。
2018年01月19日「ママ、20歳になったら胸を取る手術していい?」出典 : アスペルガー症候群のある娘。彼女の第二次性徴は10歳ごろにやってきました。早くも生理が始まり、体つきがどんどん女性らしく変化していきます。生理については私自身も人と比べて早い時期に始まったこともり、娘には生理が始まる前にネットで適切な情報を載せているサイトを探し、プリントアウトして手渡すようにはしていました。それは、反抗期がはじまっている娘にとって、そういった話を直接私から聞くことを嫌がっていたからでもあります。生理が始まったときはすぐ報告してくれたので、手当ての仕方は繰り返し丁寧に教えることができました。それでもよく失敗しましたが、そのときの恥ずかしさは私も身に覚えがあったので、決して怒らず片付けて、余裕ができてきたら自分で処理する方法を教えると、本人も気が楽になったようです。あと、体毛が生えてきたときなどもびっくりして「こんなの生えてきたけど大丈夫?」と一つひとつ確認してきたのを覚えています。そんな娘にとっての一番の問題。それは、胸が大きくなることだったのです。娘は変わり始めた自分の胸を嫌悪していました。「ママ、これ以上目立たないようにしたいからさらし買って」「胸を小さくするにはどうしたらいいの?」「どうしてもいやだったら手術を受けて胸取ってもいい?」本人は真剣です。私もここは真剣に答えるべきだと判断しました。「あなたが大人になって、よく考えたうえでやっぱり手術を望むのなら反対しないよ。手術したら元には戻せないからよく考えて決めようね。息子になったとしても私は受け入れるから。」それを聞いて娘はホッとしたように笑顔を見せました。性同一性障害の子どもたちUpload By ヨーコその後、性的マイノリティなどに詳しいソーシャルワーカーにその話をしたら、「とてもいい対応だったと思いますよ」とのコメントをいただきました。その理由は、身体の性と心の性が一致しない人は、そのことに気付かされたときに最大の精神的危機を迎えるからだそうです。日本性教育協会が発行している「現代性教育研究ジャーナル」にもこのような内容を見つけました。性同一性障害(Gender Identity Disorder: GID)とは、「生物学的性」(身体の性)と「性の自己認識:性自認」(心の性)とが一致しない状態であり、心の性は男性、身体の性は女性の female to male(FTM)と、心の性は女性、身体の性は男性の male to female(MTF)とがあります(1-6)。性指向が男性に向いているか、女性に向いているかは問いません。この点では、身体の性と心の性とは一致していて、性指向が身体の性と同じ性に向かう同性愛とは異なります。性同一性障害では自分の身体の性を強く嫌い、反対の性に強く惹かれた心理状態が続きます。(現代性教育研究ジャーナル2013年No.29 )思春期の MTF 当事者にとっては、ひげが生え、声が低くなることは恐怖です。また、FTM 当事者では、月経時には「自殺したい」「内臓を掻き出したい」などと話す方もいます。自殺念慮の発生も中学生の時期に1つ目のピークがあります。(現代性教育研究ジャーナル2013年No.29)「自分は何者なのだろうか」「これからどうなってしまうのか」という不安でいっぱいな子どもに対し、「あなたは何もおかしくない」というメッセージを、周りの大人から伝えてあげることが大切だというのです。また、一時的に自分の性に違和感を持っても、それは性同一性障害とは限りません。成長とともに自身の性への違和感が解消されることもあるそうです。中には発達障害の場合、性同一性障害と誤診されるようなケースもあると聞いたこともあります。どのケースであれ、そのときに子どもが自分の性について違和感を持っているサインを出してきたら、決して頭から否定することなく「あなたはそう思っているんだね」と受け止めてあげたうえで、落ち着いて対処法を考えた方がいいのではないでしょうか。発達障害の子どもたちは性自認で混乱するケースも出典 : 発達障害を持つ子どもたちは、「なんだか自分は周りの人と違うようだ」「ここは自分の居場所じゃない」と感じることが多く、「自分がみんなの中に溶け込んでいる」と感じることはあまりないようです。それゆえに「自分は何者か」がわからず混乱してしまうことや、それが自分の性別の混乱につながることがあると聞いたことがあります。たとえは、特性によって対人関係がうまくいかないことを「同性とうまくやっていけない」という風にとらえて、それが性別違和と思い込んでしまうケースもあるそうです。私自身、小学生になってからすぐに女子の悪口、仲間はずれなどの洗礼を受け、うまく対応することができず「女は敵だ」と思い込むことによって自分の心を守っていました。そんな自分の身体が「大嫌いな女」になっていくときの気持ちは屈辱的で、「女なんか嫌。男らしくなりたい。」と切実に願っていたことを思い出しました。また発達障害の特徴の一つとして、「変化への対応に弱い」ということがあります。思春期の身体の変化はあまりにも早く、定型発達の子どもたちでさえバランスを崩す時期。発達障害の子どもたちには、なおのことつらい時期だといえるのではないでしょうか。娘は背もあまり伸びず、どちらかというと子どもっぽい外見だったので、胸だけ変化してきたことをとても気にしていました。「ママ、私の胸もいつかママみたいになってしまうの?」「こんな大きいのは嫌だ」と言われたことを覚えています。それからどうやらネットで「胸が大きくならない方法」などのキーワードを検索したみたいで、そこから手術する方法などを知ったようです。男装専用下着などの知識も仕入れていました。(ただ、自分自身で情報を得るための行動を起こしたことで、本人にとってのは、それが精神の安定につながったように見ます。)ただでさえも性同一性障害の診断は難しいと専門家も述べているのを聞きます。発達障害の子どもたちは困りごとも千差万別。だからこそ診断が難しいのでしょう。早々に性同一性障害を疑うよりも子どもの様子をよく見て、必要なようであれば専門家につながったらいいのではと私は思いました。女の子の発達障害特有の思春期の問題Upload By ヨーコそんな娘の気持ちを受け止められるのは、私自身も近しい気持ちを抱いていたからだと思います。私もアスペルガー症候群の診断を受けており、40歳を過ぎても化粧はしないし、「口紅だけは塗らなきゃ怒られる」と思ってもすぐ忘れる、つい足を開いて座ってしまうという有様で必要最低限のマナーも身についていません。言葉遣いについても、外向きには穏やかに話すことができますが、身内(弟や子ども)には「よう、元気か?」といったような男言葉が口から飛び出る始末。自分の娘にはできるだけ気を付けたつもりですが、普通のお母さんよりは男性的な接し方で育ててきたような気がします。思い返せば私が幼いときも、両親はやいのやいの言葉遣いを注意してきましたが、私はかえって反発するばかり。「大人になってからごまかせるようになったらいいじゃない」と思って右から左へと聞き流していました。いまだに「女性の常識」というものは分かりませんが、分かりたくもないという気持ちも理解することができます。そんな自分を「これが私だ」と開き直る一方、「私って大人としていまだに成熟していないってことなのかな」と自信がなかったのも事実です。そんな中、発達障害と女性をテーマにした書籍で私の心を代弁するような記述と出会うことがありました。「女性らしさ」は形のないもの。誰にとっても、わかりにくいものかもしれません。しかし多くの女性は、大人になるにつれ、必要最低限の習慣やマナーは身につけていきます。アスペルガー症候群の女性の場合、そういった習慣やマナーの習得にも悩みます。「足を開かずに座る」というような、多くの人が常識として覚えることが、なかなかできないのです。そもそも女性らしさに価値を感じていないため、家族や友達が多少、注意したくらいでは、改善しません。明確に、具体的に教えられなければ、わからないのです。(『女性のアスペルガー症候群』宮尾益知監修講談社P19より)この一文を読んで、それが女性のアスペルガー症候群の特徴の一つだと知り女性の"常識"が身につきにくいのには訳があるのだと知って正直ホッとしたのです。もうひとつ、「女性らしくなりたくない」という気持ちのもとになったのは、ジェンダー的役割に対する不快感でした。どうして望んでもいないのに女性らしくしなければならないのか。日本の文化は女性に求めるものがたくさんあります。男女平等の思想は少しずつ浸透しているとはいえ、どこかに透けて見える「女は男を立てて家を守りかわいくあれ」という教育は、私にとってとても不快なものでした。「好きなものは好き、嫌いなものは嫌い」という気持ちが人一倍強く頑固だった私は、そうした気持ちを飲み込むことは絶対にしないとと誓ったのです。たまたま生まれついた性別だけで生き方を決められるなんてやってられない。これは今も私の核になっています。そんな私の気持ちを説明するような一節にも出会いました。女性として期待される役割について、私は思春期から悩んでいます。思春期になると、小さいときから仲が良かった女の子の友だちは、いっせいに、本などよりも自分の外見に注意を払い出し、男の子には私に対するよりも優しくふるまうようになりました。あの頃から、ジェンダーの役割には不快感を覚えてきました。(中略)自閉症スペクトラムの人たちの多くは、ASの症状も男女で分けて考える必要はないと考えるのではないでしょうか。ほとんどの場合、本質的に、私たちAS者は、身振りなどの癖や行動において、両性具有的だからです。(『アスパーガール』ルディ・シモン著スペクトラム出版社P83より)気持ちがぴったり一致したのは、「ジェンダーの役割には不快感を覚えてきました」の部分です。今の自分は男性的な面もあれば女性的な面もあって、「あなたのジェンダーは何ですか?」ともし問われても答えようがなく、まさに「両性具有的」というのがぴったりくる表現だと強く感じました。違う国、違う文化に住む人が同じ思いを抱いている。そのことは「アスパーガール」の一人としてとても心強い気持ちになりました。だからこそ、娘の「性」の違和感や、ジェンダー感にはしっかりと向き合っていきたいと思うし、どんな選択をしてもそれを尊重して受け入れる強い意志を持つことができたのです。あれから5年。中3になった娘が思うこと出典 : 娘の第二次性徴期が始まって5年。この機会に娘に直接質問をしてみました。「今でも胸を締め付けるブラジャー欲しい?」「スポーツブラでも目立たないから別にいいかな」「胸を取る手術はどう?」「今くらいで止まってくれたらそのままでもいいかも。でももっと大きくなって『イーッ』となったらやっぱり手術するかもしれない。」「男性器は欲しい?」「う~ん、一人暮らしとかしてるとふっと欲しくなったりするかも」(これはちょっと突っ込めませんでした…。)普段の娘の服装は、通年スポーティなTシャツと半ズボン、わらじのようなサンダルです。冬はそこにフリースの上着とダウンジャケットを着ますが、帰るなり脱ぎ捨てています。小学校2年生から不登校で家にいるので恋愛してる様子もありませんし、アイドルにも興味はありません。子どものころと変わらず戦隊ものやヒーローもの、あとかわいい女の子が出てくるゲームも好きみたい。男性主人公のゲームも好きですし、趣味は男性寄りみたいだけど、何が好きのポイントなのかはどわからないなぁというところです。なんだか性別を超越してるようなところがありますね。今、娘は「別に今は何も悩んでいない」と言いますし、特に相談などは考えていませんが、もしこの先深く悩んだり落ち込むことがあれば迷わず専門のクリニックに相談に行こうと考えています。フィットしない性別に悩み苦しむより、専門家の助けを得て一番自分の望む形を見つけて幸せに生きていてほしいから。そして望まない性別でパートナーを得られず一人で生きていくより、どのような形であれ心預け合えるような人に出会って一緒に生きていってほしいから。娘の本当の気持ちや将来のことは分かりませんが、自分らしく幸せに生きてくれたらいいなと思います。
2018年01月19日そもそも発達障害とは?出典 : 発達障害とは、生まれつきの脳機能の発達のアンバランスさ・凸凹(でこぼこ)と、その人が過ごす環境や周囲の人との関わりのミスマッチから、社会生活に困難が発生する障害のことです。発達障害はいくつかのカテゴリーに分類されています。この記事では中でも、性別による違いが現れる、女の子ならではの悩みと関連しやすいという観点から、今回はADHD(注意欠陥・多動性障害)、自閉症スペクトラム障害(ASD)について詳しくご説明します。ADHD(注意欠陥・多動性障害)とは、不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(考えずに行動してしまう)の3つの症状がみられる発達障害のことです。自閉症スペクトラム障害(ASD)とは、社会的コミュニケーションの困難と限定された反復的な行動や興味、活動が表れる障害のことです。そのほか、感覚過敏・鈍麻や、協調運動の不器用さも併存していることがあります。専門書などを見てみると、発達障害の発現率は男性の方が高いという表記が多いため、発達障害は男の子に多いもの、というイメージをお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。近年の研究では、実際のところ、発達障害の発現にはっきりとした男女の差は見られないという説があります。ですが、あらわれる症状や特性が男の子より目立たないことがあり、今まで「女の子」の発達障害についてはあまり指摘されてこなかったのではないか、とも言われています。女の子の発達障害には、特有の特徴があり、生きづらさや悩みを抱えているのではないかと考えられます。この記事では発達障害のある女の子が直面することの多い困りごとと、その対処法をご紹介します。女の子の発達障害、その特徴は?出典 : 発達障害の種類、そして一人ひとりに現れる症状や特性は異なりますが、今のところ、発達障害の女の子にはこのような傾向があることがわかっています。発達障害の特性は、人によって現れ方や程度が異なります。その中でも女の子の場合、問題行動につながるようなことは少ないため、目立ちにくく、周りも問題意識を抱きにくいことが多くあります。例えば、ADHDの場合、上記の通り不注意・多動性・衝動性という3つの症状がありますが、ADHDの女の子は特に不注意特性が強いことが多くなります(これを不注意優勢型とも言います)。この不注意特性は、多動・衝動優勢型の子どもに比べて、周りへの影響が小さいこともあり、ADHDであると気づかれにくい傾向があります。このように、女の子は発達障害だと気づかれず、特性による困りごとを抱えたまま過ごしてしまうことがあります。そのため支援につながりにくいのです。困りごとが解決されず、生きづらさを抱えたまま成長してしまうことが多いと言われています。二次障害とは、発達障害の主症状とは異なる症状・状態を引き起こしてしまうことを言います。発達障害の子どもが、適切な治療・サポートを受けられない状態が続いてしまうと、失敗体験を繰り返してしまい、自己肯定感が徐々に低下していってしまいます。そしてそれが、二次障害として現れることがあるのです。二次障害には、例えば以下のような症状・状態があります。・気分障害(うつ病など)・行為障害・不安障害・反抗挑戦性障害・不登校やひきこもり・アルコールなどの依存症など発達障害の女の子の傾向として「特性がはっきりと現れにくい」と紹介したように、二次障害の起こりやすさはこの特性発現の曖昧さによってもたらされていることがあります。女の子は周囲・そして自分でも「発達障害である」と気づかれにくい。だから「不真面目な子」「自分勝手な子」などと誤解されてしまったり、自分でも「どうして周りの子のようにできないのだろう…」と思い詰めてしまったりすることがあります。そうしたネガティブな誤解・思い込みが重なり、発達障害の女の子は、二次障害の発症に繋がってしまうこともあります。女の子は、成長に伴ってさまざまな「女の子・女性特有の問題や決まりごと」に直面します。女の子ならではの同性の友人との付き合い、異性との距離の取り方、心身発達への対応、身だしなみなど、女の子には「女の子としてのスキル」を求められることがよくあります。多くの女の子は、このような女の子ならではの問題への対処法を、同世代の子どもとの集団生活の中で、自然と身につけていきます。そして、自分の周りにいる女の子に対しても、このような対処法を習得していることを前提に、関係を築いていくことが多いです。ですが、発達障害の女の子は、こういった「女の子としてのスキル」を周りに合わせて習得することに難しさを感じることが少なくありません。集団の中で浮いた存在となってしまったり、「女の子なんだから…」というような抽象的な指摘の意味がわからず、混乱してしまったりします。例えば、自閉症スペクトラム障害の社会的コミュニケーションの困難という特性は、女の子集団特有の人間関係への苦手意識や、身だしなみへの無関心さにつながりやすいと言えます。女の子の発達障害、年齢ごとに直面する問題とは?出典 : 発達障害の女の子には成長に応じてどのような兆候や困りごとが現れるのか、発達に応じて紹介していきます。一般的に、「自分が男である、女である」という意識が芽生え始めるのは、3~4歳とされています。しかし、乳幼児期では、「女の子かつ発達障害だからこそ、このような困りごとが起こる」ということは少ないようです。自閉症の場合こだわりというよりは感覚の過敏性が見られたり、新しいところが苦手、等の傾向が見られる場合もありますが、男女共通して見られる特徴が現れることがほとんどです。これは、性意識がまだはっきりとはしていないこと、このくらいの年齢では発達障害であると明確にわかるわけではないためです。一方で、症状や困りごとがわかりにくいことから、言葉や知的な遅れがない場合、気づかれにくいことも多いので、注意が必要です。参考:日野原 重明/著『脳とこころのプライマリケア4子どもの発達と行動』シナジー/2010年小学生くらいになると、より高度な社会性が求められたり、学習時間が長くなったりすることから、発達障害による困り感を強く感じる子どもが多いようです。また、小学校高学年になると、女の子ならではの人間関係や、それに伴う暗黙のルールなどが増えたり、早い子では第二次性徴が見られたりするため、女の子としての生きづらさも徐々に感じ始める傾向にあります。例えば、以下の困りごとが現れます。・友達、先生の話を聞かない・忘れ物が多い・整理整頓が苦手・時間や活動の変更への対応ができない・授業に集中することができない・話し始めると止まらない・友達との会話についていけない、周りから敬遠されてしまう・人の言うことをすぐ信じてしまい、からかいを受けてしまうなど参考:「女性アスリート指導者のためのハンドブック2.第二次性徴」‐国立スポーツ科学センター女の子の思春期は、10~12歳ころから18歳までとされています。この時期は心身ともに子どもから大人に変化していきますが、そうした変化に戸惑いを感じたり、周りからの目を気にしてしまったりします。学童期で生じた困りごとのほかに、思春期ならではのこんな悩みを抱える可能性があります。・女性下着の着用を嫌がる(本人の衣服へのこだわり、手先が不器用でブラジャーのホックを留められない、ブラジャーのワイヤーを痛がるなど)・生理用ナプキンの着用を嫌がる、定期的な交換ができない・生理痛やPMS(月経前症候群)の影響を強く受ける、不安になってしまう・異性の前でも生理や下着の話を平気でしてしまう・女子グループから浮かないように、無理に合わせすぎて疲れてしまう・周りとの違いに気づき、落ち込んでしまう・異性との距離感がうまくとれないなどなお、学童期や思春期で多く挙げた第二次性徴にまつわる悩みや、女の子特有の人間関係についてのサポート方法に関しては、次の章で詳しく解説します。成人になると、就職や結婚、子育てなど自分自身でさまざまなライフステージを超えていくこととなります。まだ幼い子どもがいる家庭では、子どもが歩んでいく将来に期待しつつも、大きな不安を感じているところも多いかもしれませんね。人によっては、成人になってこのようなライフイベントを経て、自分の特性の偏りに気づくこともあります。・家事を段取りよくできない・片づけができない・お金や書類の管理が苦手・子育てがうまくいかず、感情的になってしまうのを止められない・恋人や結婚相手、またその家族とうまく関係を築けない・ご近所づきあい、ママ友づきあいが苦手・仕事でのミスが多く、周りの人から責められてしまう・何かハマるととことん依存してしまう(酒、ギャンブル、ショッピング、インターネットなど)・自分への自信のなさから不幸な恋愛をしてしまう(金銭を貸してしまうなど)など女の子ならではの困りごと、対処法って?出典 : 女の子は成長につれて、特有の問題にぶつかりがちです。そのうえ、親とはいえどこまで踏み込んで説明すればよいかわからないこともあると思います。以下、女の子の子育てでつまずきがちな「人間関係」「心と身体の変化」「身だしなみ」の3点について子どもに教えるポイントをお伝えします。小学校高学年を過ぎたあたりから、学校などで、女の子は少人数の仲良しグループをつくるようになります。そのグループの中だけでの秘密話や、グループだけで通じるたわいもない話で楽しみます。このようないわゆる「ガールズトーク」は、次々と話題が変わったり、自分と相手の話す量のバランスを調整しながら話したりすることが多くあります。これが、発達障害の女の子にとっては話にうまく入れない、グループの秘密を守る理由が理解できないなど、友達との関係づくりの苦手意識につながることが考えられます。その時、次のようなサポートを試してみると、本人が女の子の人間関係の構造を理解するきっかけになるかもしれません。■どうしてガールズトークや仲良しグループでうまくできないのか一緒に考える発達障害の女の子は、その子たちに距離を置かれたり、会話に関して文句を言われたりしても、どうしてそんな状況になっているのかわからないことが多くあります。周囲と仲良くすることができない理由を、親や信頼できる友達からわかりやすく説明してあげると、自分の発言・態度が相手にどのように伝わっているのか、理解しやすくなるでしょう。特に、人の表情を読んだり、冗談や皮肉など文字通りの意味ではないニュアンスを読み取ったりするなど、非言語的なコミュニケーションが苦手なことがあります。そのような微妙なニュアンスを言葉にして説明することで、女の子の人間関係のコツを理解するきっかけになるかもしれません。■人付き合いに疲れてしまったときは少し離れてみてもよい、常に一緒にいる必要はないことを伝える発達障害であるかどうかに関わらず、関わる全ての子と友達になる・うまく仲良くするのはなかなか難しいと思います。よく、学校などでは「たくさんのお友達をつくりましょう」などと広い交友関係をもつことを良しとしてしまいがちですが、そのイメージを強く持ちすぎると、「友達がなかなかできない自分はダメな子」というように思ってしまうことがあります。親は子どもをサポートする側として、子どもの交友関係に過度に干渉するよりも、友達への話しかけ方や、スムーズに会話をする方法を教えてあげましょう。そして、多くの友達と関係をつくる・維持するよりも、自分が無理をせずに付き合える友達と過ごす、時には一人になってみる選択肢もある、ということを伝えてあげることがポイントです。■自助グループへの参加高校生~成人くらいであれば、自助グループに参加し、同じ境遇の人と話してみることも良い方法です。発達障害の自助グループをはじめ、二次障害に関する自助グループなどもあります。自分と同じ特性や悩みがある人に、人間関係に関してどうしているかを聞いてみると、当事者ならではの良い改善方法が見つかるかもしれません。参考:アスペ・エルデの会/著『おとなになる女の子たちへ』アスペ・エルデの会成長するにしたがって、子どももその周りの子も心身ともに変化が見られます。その変化に応じて、以下のことを子どもがわかりやすい方法で伝えることが重要です。■ブラジャーの身につけ方、生理用ナプキンの使い方を一緒に実践してみる小学校などで女の子向けの性教育の時間を設けてくれるところは多いですが、集団の中で教えられるので、いざ自分がその時にどうすればよいのかわからないことがよくあります。・ブラジャーの着脱方法・子どもにあった下着選び・生理用ナプキンの交換頻度、交換方法・トイレまでのナプキンの持参方法などこれらのことを、子どもと一緒に実践しながら教えることが大切です。ただ一方的に教えるだけでは、なかなか想像・理解がしづらいことなので、できれば女の子の先輩である母親、姉、親戚などで協力し、実物を見せるなどして子どもに教えられると良いですね。■異性とはどのくらい距離感を保つべきなのか、具体的に教える小さい頃は男女関係なく遊んでいても、成長につれて男女分かれて遊ぶようになったり、お互い異性としての距離を取って付き合ったりすると思います。ですが、発達障害の女の子の場合、思春期頃の男女関係の変化に気づかず、同性と異性それぞれへの行動の区別ができないことが多くあります。そのため、異性に近づきすぎる、体を触る、じろじろ見る、恋愛や性の話題をためらいなくするといった、周囲に誤解を与えかねない行動をしてしまうことがあります。親のサポート方法として、異性の前でしてはいけない行動・話を具体的に教えてあげることが挙げられます。この時、子どもの特性に合わせて、異性の付き合い方のルールとしてリスト化してあげたり、ルールを守らなかった場合、相手にどんな印象を与えてしまうのかというところまで教えてあげたりするなど、工夫するとよいでしょう。一方で、幼児期に男の子にからかわれたりして苦手意識を持つなどして異性と話したり接することができない子もいます。適切な距離感を教えながら集団の中で話しやすそうな男の子と話す機会をつくるなどして少しずつ成功体験を積めるようにするとよいでしょう。■年齢に応じて性に関すること、自分の身を守る方法を教える性に関することは、親から子へはなかなか話しにくいことかもしれません。ですが、思春期を迎えるにつれて、避けられない話であると同時に、発達障害の女の子の場合は、その特性からさまざまなトラブルに巻き込まれる可能性があります。先ほど紹介した、異性との距離感の保ち方と同様に、性に関するタブー(人前でプライベートゾーンを触る、露出するなど)のほか、異性との性行為のリスクや断り方に関しても、きちんと教えることが大切です。もし、本人が性に関する話に抵抗するようであれば、子どもの年齢に合った語り口で、性に関して解説された書籍・ハンドブックなどを手渡してみるのも、性に関する正しい知識を得る良いきっかけとなるかもしれません。参考:デビ・ブラウン/著 『アスピーガールの心と体を守る性のルール 』2017年/東洋館出版社参考:やまがたてるえ/著『15歳までの女の子に伝えたい自分の体と心の守り方』2012/かんき出版参考:ロリエからだのノート~おとなになるということ~集団生活を送るうえでは、マナーとして身だしなみを清潔に保つことが求められます。それゆえに、身だしなみが整っていないことが、同年代の友達に敬遠されてしまったり、社会的な常識が身についていないと見なされ、怒られてしまったりなど、さまざまな困りごとにつながる可能性もあります。身だしなみの教え方として、子どもに合わせて以下のようなサポートをしてみてはいかがでしょうか。■最低限の身だしなみを整えられるよう、チェックリストをつくる年頃の女の子は自然と「可愛く、きれいになりたい」「周りの視線が気になる」という意識が芽生え、身だしなみにも気を遣い始めると思います。一方、特に自閉症スペクトラム障害の女の子は、他人から自分がどう見られているか想像することが苦手・関心がないゆえに、羞恥心や身だしなみを理解できないことが多くあります。とはいえ、体臭や頭髪の清潔さなど、他者と過ごすうえでの最低限のマナーに関しては、子どもが守れるよう、マニュアルやチェック表を作って洗面所に貼ってみるなどのサポートが必要です。また、大きくなると一人の女性として化粧をすることやむだ毛のケアがマナーとされることもあります。そうはいっても、感覚過敏で化粧品や脱毛が苦手だったり、これらのケアをする意味がわからず、やる気にならなかったりすることもあると思います。その場合、「顔色よく見えるように口紅・色つきリップクリームだけは塗る」「化粧水などのスキンケアでお肌をきれいに保つ」「半袖を着る時期はムダ毛の処理をする」といった無理のない約束事を、年齢・TPOに応じて追加するのもよいでしょう。■服選び、コーディネイトは本人の特性・ペースに合わせて徐々に対応していく発達障害の女の子は、「大きくなっても一人で服を選べない」「好きな色、柄、キャラクターだけでかたくなにコーディネイトしようとする」「気温や気候に合わせて服装を考えられない」など、服選びの場面でも苦労することがあります。1人で服を選べない場合、トップス・ボトムス・靴下のどれか1つだけ選ばせてみる、全身コーディネイトのパターンを数種類用意し、どのパターンにするか選ばせてみるというように、服を選ぶハードルを下げ、少しずつ自分で選べるようにはたらきかける方法がおすすめです。また、コーディネイトに本人なりの強いこだわりがある場合、ある程度は本人に任せてしまってもよいかもしれません。色や柄、肌触りにこだわりがある場合は、同じような服を何枚か買ってそろえてあげる、その服を使ったコーディネートの写真を参考程度に見せてみるなど、本人の好みをある程度尊重する姿勢でゆっくり見守っていくことも大切です。まとめ出典 : 発達障害は、周りの環境とのミスマッチによって、特性の偏りによる困りごとや悩みが膨らんでいってしまうことが多くあります。特に女の子は、それぞれの困り感に合わせて女の子ならではの問題も絡んできます。女の子特有の友達づきあい、異性との距離感、身体の変化をはじめ、「女の子らしさ」「女の子なんだから」という周りからの視線…さまざまな生きづらい環境に身を置きながら、自身の特性と付き合わなければならない場面もあるでしょう。女の子の先輩である母親、祖母、親戚、信頼のおける友達など、周りの女性をはじめ、異性の家族とも協力しながら、一人ひとりの女の子の成長をサポートしていきたいですね。参考文献星野仁彦/著『なんだかうまくいかないのは女性の発達障害かもしれません』 PHP研究所/2015宮尾 益知/監『女の子の発達障害: 思春期の心と行動の変化に気づいてサポートする本』河出書房新社 /2016「レディを育てる親と支援者たちへ」
2018年01月17日先生発案!目からウロコの「合理的配慮」の実例ベスト5出典 : こんにちは。『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て法』著者・楽々かあさんこと、大場美鈴です。うちには、もうすぐ小学校卒業の発達障害のある長男と、グレーゾーンの小4の次男・小1の長女がいます。今まで私は、学校の先生方と連携し、さまざまな「合理的配慮」をお願いして、ここまでやってきました。でも、担任の先生がいつの間にかやってくれていた「さり気ない配慮」もたくさんあるんです。本当にちょっとしたことでハードルが下がって、すごく気持ちがラクになったり、みんなと一緒に取り組めたりするんですよ。今回はお忙しい通常学級の先生にも手軽にできて、「◯◯くんだけズルイ」だなんて目立たずに、クラス全体で取り組んだり、さり気な〜くサポートできる、目からウロコの「合理的配慮」の実例ベスト5を、一挙にご紹介します!Upload By 楽々かあさん教室の机の奥に、くっちゃくちゃのプリントやテストが押し込められて、大事なお知らせを持ち帰り忘れてしまう長男。おかげで、「一体いつの話?」という、提出期限切れの申し込み用紙が後から発掘されることも。そんな「困った」を担任の先生が、たった1本のヒモを使って問題解決して下さいました。連絡帳を入れる学校指定のジッパー式の「連絡袋」のカドに、書類用の綴じヒモを通して輪にするだけ!これを、長男の机の横のフックにひっかけて、プリントやテストを配ったら、すぐにそこに入れるように促して下さったのです。机の外に出て見えているので、長男も持ち帰る時に気づきやすく、先生も声かけしやすい、ナイスアイデアでした!出典 : ある年の学習発表会では、グレーゾーンの次男の担任の先生も、さり気ない配慮をして下さいました。緊張しやすく、大勢の人を前にすると固まってしまって、台詞や動くタイミングが吹き飛んでしまう次男。プレッシャーから、直前に「やっぱりムリィ〜!」と敵前逃亡した実績もあります。でも、その年の先生は、なんと、体育館のステージの正面2階の連絡通路から、まるでオーケストラの指揮者のように、次男に大きなジェスチャーでサインを送って、タイミングを教えてくれたのです。先生のサインに、マウンドのピッチャーのように小さく頷く次男。そして、無事台詞が言えたら、先生はニッコリ笑顔で大きな「マル」を作って見せてくれました。他の先生からは「◯◯先生と◯次郎君、コントみたい」なんて、面白がられていましたが、次男は安心して参加でき、「できた!」体験がとても自信になったようです。おかげで、翌年からは、配慮なしでも学習発表会が大丈夫になりました。出典 : もう一つ、次男の先生から。次男は「人の顔と名前が覚えにくい」ので、3学期になっても、クラスのお子さんたちの3分の2くらいは、名前が分からなくて、自信を持って話しかけることができず、本人もそのことを結構気にして悩んでいました。次の学年の初めに面談をお願いし、そのことを先生に伝えたところ、教室の後ろにクラス写真に名前を入れたものを掲示して下さいました。このように「クラス皆が共有できる」ことは、次男だけでなく、同じようなタイプの子や転校生、近年増えている外国人の子など、どんな子も安心できる素敵な「さり気ない配慮」だと思います。出典 : 教室の席というのは、実は大抵、視力や身長、クジ運だけではなく、ある程度担任の先生が、クラス運営のしやすさなどを加味して決められていることもあるようです。一般的に、席の配置では「ちょっと気になる子は、先生の目の前の、最前列中央の席」になることも多いかと思います。確かに先生がマメに声をかけやすく、目が届きやすいですよね。不注意性の高い長男が低学年の頃は、いつもココが定位置でした。でも、その時のクラスの雰囲気や他のお子さんたちとの関係で、優先することも変わって来るようです。3・4年生の時、長男の定位置は「中央一番後ろ」になりました。その理由は、「◯太郎君が授業中に何度も声かけされるのを、他の子の目につきにくくするため」とのこと。長男は「教科書◯ページだよ」「定規出してね」など、先生にその都度個別に声かけしてもらえれば気づきやすいけど、それが最前列の席だと、いつもクラスのお子さんたちから目についてしまいます。社会性が育って、仲間意識が強まる3・4年生は「ギャングエイジ」とも呼ばれ、ちょっとしたことが、仲間はずれやからかいの要因になることもあります。そんな空気をいち早く先生が気づいて細やかに配慮して下さり、一番後ろにしてくれました(そして、ちょっと遠回りしながら、声かけも続けてくれました)。この位置は長男もお気に入りで、安心できたようです。空気を読むのが苦手な長男は、自分で気づけない・モヤモヤした気持ちを言葉でうまく表現できないこともあるので、先生がさり気なく守ってくださって、本当に有難いなと思いました。また、聴覚過敏のある次男は、廊下側の柱の横の、片側が壁になっている席が落ち着くようです。班決めなども、大人しい子が多いグループになる確率が不思議と高い学年は、「ひょっとして、配慮してくれてるのかな?」なんて感じることもあります。他にも、夏休みの自由研究の発表などは、順番を最後のほうにしてくれて、他のお子さんたちの「お手本」をたくさん見てからだと、発表の仕方がイメージしやすくなったこともありました。マニュアルではなく、実際の状況に合わせた弾力的な対応と、ほんのちょっとの先生の采配で、下がるハードルも結構あります。出典 : 長男が1年生の2学期から、漢字書き取りが宿題に出るようになりました。ところが当時の長男は、視力に問題はなくとも、漢字のカドやトメ・ハネ・ハライが正確に認識できなかったため、どんなにがんばっても字がお手本どおりに書けませんでした。担任の先生は、漢字ノートをとても丁寧に添削して下さったのですが、本人には訂正前と後の違いが分からず、「どこをどう直していいのか、分からないよ〜」と泣きながら、何時間もかかって宿題をし、勉強にすっかり自信をなくしていました。丁度その頃に長男の発達障害の診断がつき、先生にそのことを相談したところ、漢字の間違っているところを「丁寧に訂正する添削」から、合っているところや丁寧に書けたところに、花マルやほめコメントをつけるという「丁寧にほめる添削」に、変えて下さったのです。そして「◯太郎君に良い方法は、他のお子さんにもいいと思うので、クラスで『ほめほめ作戦』やってみますね!」と、明るく言って、長男だけでなく、クラス皆のお子さんの漢字ノートを、同じように花マルで埋めて下さいました。先生が柔軟にものの見方を変えて、同じ添削指導に使うエネルギーを、少しでもできているところを見つける方向に使って下さったおかげで、長男は少しずつ自信を取り戻していきました(段階的に訂正にも慣れていき、今では、×をもらっても大丈夫になりました)。誰だって、自分のやり方を変えたり、人に合わせたりすることは、そんなに簡単なことではないのを、私は知っています。そこを快く譲って下さった、まだお若いその先生に、私は心底敬服したのです。先生方が、共に育ててくれたからこそ…出典 : こうして見ると、「合理的配慮」というのは、診断書を持っていって交渉するような、難しくて特別なことばかりではなくて、「集団教育の知恵袋」とでも表現できそうな、もっと手軽で身近な、さり気ないことだって、たくさんあるのだと思います。子どもたちにとっては、先生のちょっとした気遣いや思いやりが感じられるだけで、「学校」の印象だって全然違うんです。それにはまず、先生方に気持ちと時間の余裕が必要なのだと思います。ただでさえ、大人数の子どもたちをたった1人で引き受ける通常学級の担任の先生が、授業時間の増加や過剰な雑務による負担を長時間勤務でこなしている現状があります。そんな中で、子ども一人ひとりの小さな困り感に気づいたり、丁寧に関わる時間を持つのは、至難の業でしょう。中には、私がうまく連携できなかった先生もいましたが、お一人でさまざまな問題を抱え込んでいた印象でした。また、ある先生は「本当は◯太郎君のこと、もっと丁寧に見てあげたいのに、なかなか時間がなくて、そこまでできなくてごめんなさいね」と、申し訳なさそうに謝っておられ、私も胸が苦しくなりました。本当に今の教育現場は、厳しい状況に置かれているのが痛切に伝わってきます。でも、そんな中でも、結局6年間ずっと、学校があんまり好きではなかった長男に、それぞれの先生が「できる範囲で、できること」を探りながら関わり、一緒に育てて下さったからこそ、なんとかここまで来れたのだと思います。おかげさまで、その長男も、この春中学生になります。「取り残される日本の教育 わが子のために親が知っておくべきこと」尾木直樹・著(講談社+α新書)「池上彰の『日本の教育』がよくわかる本」池上 彰・著(PHP文庫)大場美鈴/著『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て法』2017年/刊/ポプラ社
2018年01月15日発達障害の子育てママの座談会で、よく話題にのぼるものの一つに、夫の無理解や無協力があります。「無」とまではいかなくても、子どもの障害をなかなか認めようとしなかったり、療育や児童精神科などに行くことに乗り気ではなかったり、というお父さんがどこにも一定数はいるようです。そんな時、知ったのが一般社団法人「発達障害ファミリーサポートMarble(マーブル)」。発達障害児とその家族を支えるため、発達障害の正しい理解のための講演活動や、発達障害児を持つ家族のための相談支援活動などを行っている団体です。代表理事の国沢真弓さんは自身も、高校生になる自閉症児の母であるため、「当事者家族」の視点からのお話にはとても説得力があり、温かみのある方です。また、本業がアナウンサーであるため、周囲への「伝え方」のアドバイスは、なるほど! と深く納得できるものです。そんな国沢さんに、発達障害の子育てに協力的ではないお父さんや、育児に口出ししてくる祖父母への対策法をうかがいました。■発達障害はグレー診断な子ほど夫の理解が得られにくい――発達障害の子育てにおいて、ママの間でよく「夫が子どもの障害を認めてくれない」とか「夫が育児に協力的じゃない」という愚痴を聞くのですが、国沢さんの周囲でもこういった相談は多いですか?「今まで、保護者の相談を約500名ほど受けてきましたが、そのうち半数以上が、知的に遅れのない発達障害児(通常の学級に在籍して通級や校内特別支援教室などを利用しているようなお子さん)のお母さんからの相談です。その中で、夫の無理解や無協力という相談はとても多いですよ」――発達障害はグレー診断なほど、夫の理解が得られにくいというわけですね。「子どもとの会話が成り立たなかったり、説明しても理解できなかったりすれば、お父さんも『うちの子、何かある?』と思わざるを得ませんよね。でも、例えば、週末に家族の中だけで接していて、会話もほぼ成り立っている程度だと、たとえ外で問題行動があったとしてもお父さんにはなかなか、わかりません。『これくらい、男の子だったら当たり前じゃん?』とか『俺も昔そうだったよ』『個性だよ』という一言ですまされたり、ひどい時には『お前は、なんでそんなに障害児にしたがるんだよ!』なんてお母さんが怒られてしまうこともあるそうです」――障害と個性の線引きは、専門家でも判断が難しいと言われていますものね。では、知的に遅れがない発達障害のケースでは、ほとんどのお父さんは、わが子は問題ないと思っているのでしょうか?「いえ。私は、お父さんも本当は薄々わかっていると思いますよ。『なんでこんなに育てにくいんだろう?』とか『なんでこんなに癇癪がひどいんだろう?』という違和感は持っていると思います」――そうすると、わかっているのに認めたくないということ?「私がいろいろ相談を受けてきて思うに、男の人はとてもナイーブなんです。その点、女の人はとてもたくましいですね。もちろんお母さんだって、わが子の障害が判明した時はショックを受けて泣いたり悲観したりはします。でも、いろいろなところに相談して発散したり、専門家に助けを求めたりして、お母さんはさまざまなことを学びます。そうやって子どものことを苦しみながらも少しずつ受容し、子どもへの接し方もどんどん上手になり、プクプク…と浮上していくことが多いのです。一方、お父さんは、お勤めの関係などで、子どもと一緒に過ごす時間が物理的にとれないケースが多いため、専門家やドクターと接する時間もなかなかとれないまま、子どもに障害があるということを認める機会を逃してしまいがちなんです」■子どもが大きくなった時こそ父親の出番――お母さんはどんどん学んでいく一方で、お父さんは置いてきぼりになりがちなのですね。「夫婦で子どもに対する意識もスキルもどんどん離れていき、お父さんは家族の中で孤立してしまう…といった悩みを、お父さん自身から聞くことも多いんですよ。さらに、追い打ちをかけるように、一緒に過ごす時間が多いきょうだい児も、お母さんと一緒にどんどん学んでいくから、気がついたらお父さんだけがポツ~ン…って。でも、お父さんには、『お父さんにも教えて』と素直に言えないプライドがあるんですよね(苦笑)」――そうなると、お母さんは「じゃあ、もういいわよ! 私が全部やるから!」となるか、「この人にはもう期待しない」とコミュニケーションをあきらめちゃいそうですね…。「ただでさえ、お母さんは子どものことでいっぱいいっぱいなのに、夫にまで配慮していられない! という気持ち、よくわかります。でも、子どもが大きくなった時のためにも、ここはなんとかお父さんを積極的に子育てに巻き込む機会を早期にどんどん作った方がいいと思います」――子どもが大きくなった時のため、というのは?「発達障害というのは、男の子の割合が非常に多いのです。男の子の場合でも、小学校低学年くらいまでなら、お母さんの力でも主導権をにぎることができます。そのため、この時期ならば、お母さんのペースで日々の暮らしを仕切っていくことも、なんとかできるのです(まぁ、子どものタイプにもよりますが…)。でも、高学年くらいになると、お母さんが主導で物事をやっていくには限界があります。だって、男の子のトイレやお風呂に、高学年になっても一緒について行くわけにはいかないでしょう? その他、進路の問題や、思春期特有の難しい問題も出てきます。そうした時に、お父さんの出番となるのです。でも、急にその年齢になって『お父さん! お願いします!』と言っても無理なので、早い段階からどんどん子育てに巻き込んだ方が後々のために良いと思うのです」――なるほど。確かに健常児だって、男の子の思春期対応法は、お母さんには難しいですものね。では、夫を積極的に育児に参加させるには、具体的にはどうしたらいいのでしょうか?「大事な局面には必ず連れて行って、夫を頼る姿勢をみせてみてはどうでしょうか? 例えば、小児科や療育の面談など、ここぞ! という時は絶対に同席してもらうようにして、『あなたがいないと場がしまらない』とか『あなたがいないとちょっと心細い』とか頼ることで、男の人のやる気を引き出したり」――お母さんがお父さんのやる気をうまく引き出すということですね。「大事な局面に夫婦2人で参加した方がいいのには、別の理由もあります。例えば、一人でドクターへ面談に行った場合、聞くこと、答えること、話を受け止めること、書き留めること、即座に判断すること、これ、全部お母さん一人がやらなければならなくなります。専門家の時間は限られているので、いろいろ言われてワーッと終わっちゃうと、家に帰ってきた時に『あれが言えなかった』『これが聞けなかった』と不完全燃焼で終わり、悶々としちゃうことも多いのですよね。その点、2人いれば、お父さんが質問している間に大事なポイントを書き留めたり整理したりできるし、状況を客観的に見ることもできます。もちろん、直接先生と会って話すことで当事者意識が育つので、お父さんのためにもなると思います。そういう状況を作るのが、難しいご家庭もあると思いますが。可能なら…ということです」 ■疲れたり迷ったりしたら…心強いペアレント・メンターの存在――非協力的なお父さんを育児に巻き込むには、お父さんをわが子が集団にいるシーン(例えば、園や学校の普段の様子やイベントなど)に積極的に連れていくのが良いと聞いたことがありますが、どう思われますか?「お父さんは、集団の中にいるわが子の姿を見る機会が少ない方も多いので、理解をうながすには良い方法だと思いますよ。ただ一つ落とし穴があって、男の人って実はナイーブなので、集団の中で、わが子とほかの子どもとの違いを目の当たりにして、ガーンとショックを受けて落ち込んじゃうケースもあるんですよ。で、その後、お母さんがいくら誘っても、園や学校に行くのを避けるようになってしまった、そんな相談を受けたことも、たくさんあります」――すでにさまざまなことを乗り越えてきたお母さんとしては、「傷ついてる場合じゃないでしょう~!」と思ってしまいそうですが…。「お気持ち、よくわかりますよ(笑)。でも、男の人はそういう生き物と割り切って、『パパもショックだったよね。私も初めて見た時はショックだったんだよ』と寄り添いつつ、『うちの子みたいな子が落ち着けるように、こんな療育があるみたいだよ。一緒に見学行ってみない?』という感じに、だんだん専門領域の世界に引き込んでみてはどうでしょう?お母さん、大変ですね!(笑) たとえば、理論で入る男の人には、専門書をさりげなく渡してみるのもいいかもしれません。そういう方法で、実際に夫が協力的になったというご夫婦もいましたよ。――なるほど。専門書から理解を促すのは良い方法かもしれませんね。「お母さんは本当に大変だと思います。でも、これは大きくなった時に返ってくる「保険」だと思ってあきらめないで、早い段階から協力的な夫になってもらえるよう働きかけてほしいです。ここでガツンと切っちゃうと、夫婦関係が険悪になってしまったり、離婚という選択にもなりかねません。そういった例も、たくさん見てきました。逆に言うと、お父さん役も担っているシングルのお母さんは、大変な負担のなか、とても頑張っているんです。本当に、身体が心配です」――発達障害の子育てにおける、お母さんの負担はとても大きなものなのですね…。「そうですね。でも、しんどい時は、どんどん専門家に頼りましょう。もちろんママ友や先輩ママに頼るのも良いけれど、私は専門的な訓練を受けたペアレント・メンターをおすすめします」――ペアレント・メンターって何ですか? 「ペアレント・メンターとは、自分自身も発達障害の子育てを経験し、さらに相談支援に関する一定のトレーニングを受けた親のことです。私も資格を持っているんですよ。2010年から、厚生労働省もメンターの養成に力を入れています。発達障害の子育てに関する悩みや相談を抱えた親に対して、気持ちに寄り添い、その親にとって必要な情報(病院、療育、学校、福祉サービス、地域の情報など)を提供したりしています」――実際に発達障害の子育てをしている方だと、専門家とはまた違った安心感がありますね。「発達障害児の子育てでは、すべての情報が親に集中します。しかも、情報は多岐に渡ります。療育機関の専門家、医療機関のドクター、心理士、作業療法士、園や学校の先生、療育ママ友、家族、親せき、近所の人…いろいろな人から『ここが良いわよ』『これをしたら良くないわよ』という情報が、すごい勢いで入ってきます。そこから、親はわが子に必要なことを取捨選択するわけですが、そのプロセスは想像以上に大変です。ペアレント・メンターは親に寄り添い、一緒に情報を整理し、今後の道を一緒に考える役割を担うので、とても心強い存在になると思いますよ。同じ仲間として、先ほどお伝えしたような、お父さんへの上手な接し方などもアドバイスしてくれます。ストレスがたまったり、子育てに疲れてしまったら、こういった専門家に頼るのも手だと思います」■祖父母世代には、「専門家の意見では…」で対応――周囲には、義理両親(もしくは自分の両親)の子育てへの口出しに悩んでいるお母さんもいましたが、祖父母関係の相談は多いですか?「10年前くらいはとても多い相談でしたが、最近は少し減ってきたように思います。逆に、孫のことを理解しようと講習会に積極的に参加したり、自分も何とか役に立ちたいという祖父母の方も増えてきました。とはいえ、まだまだ『そんな子育てだから、子どもがワガママになるのよ』とか『もっと、こうしてみたら伸びるんじゃないの』とか、ひどい例では『うちの家系には、こんなことをする子はいない』といったことを言われてしまうことも残念ながらあります。そんな時は、大変つらいと思いますが、すべてキッチリ理解してもらおうと思わず、上手に受け流して、別のところでストレス解消をしましょうね。自分たちより長く生きて、自分のスタイルを確立している人たちの認識を変えることは、とても大変です。ただ、言われっぱなしも悔しいので『専門家に相談してすすめていますので見守ってください』などと、自分たちも自己流ではなく、ちゃんと考えて子育てしている、ということはアピールしておくといいかもしれません。で、ほかのところで毒を吐く(笑)。同じ思いをしている仲間は、意外にたくさんいますよ」――ちょっと極端な話ですが、お姑さんのちょっとした子どもへの体罰に悩んでいるお母さんもいました。良くないことをすると、手をつねって教えるという。「お嫁さんが『嫌だから止めてください』という言い方をすると角がたつから、専門家の名を借りてみてはいかがでしょう。たとえば、『専門家から、そういうことを続けるとほかの子に暴力をふるうようになるって聞いたんです』などと伝えてみるとか。もちろん、ただの『嘘』になってはいけないので、専門家にも、その件を相談してみる。『義理の母が、しつけと称して子どもの手をつねるんですけど、こういうことを続けていると、この子がほかの子をつねる可能性もありますよね?』と聞いて『可能性あるね』と言われたら、それを『お墨付きのアドバイス」』にする。専門家の意見と言えば説得力が増すので、さすがのお姑さんも自制するのではないでしょうか?『伝え方の工夫』、これは、発達障害児の子育てで、とても必要な力だと思います」――確かに、「専門家の意見では…」という言葉は効果ありそうですね。「私は、これを学校の先生対策にも利用していますよ。例えば、生徒を大きな声で叱る先生がいて、それが怖くて、指示されても全然動けなくなった子がいるとします。そんな時、『児童精神科の先生に相談してみたら、大きな声がすごく苦手みたいなので、席を後ろにしていただけませんか? もしくはイヤーマフをつけさせてもいいですか? このままだと学校に行けなくなって不登校になる可能性もあると言われたんです』というふうに。親が『大きな声で叱るのはやめてください』とだけ言うと、ただのクレームみたいに思われてしまうけど、専門家の指示であれば対応せざるを得ないでしょう。周囲を上手に説得したい時は、専門家の意見を上手に借りるのも一つの手だと思いますよ。『伝え方』を工夫をすれば、双方の関係は悪化せず、子どもの状況が改善される…そんなケースを、私はたくさん見てきました。こうして見てくると、お母さんには、たくさんの力が要求され、本当に大変ですが(涙)、一緒に励まし合って、乗り越えていきましょうね!国沢真弓さん プロフィールフリーアナウンサー、自閉症スペクトラム支援士、一般社団法人 「発達障がいファミリーサポートMarble」 代表理事<役職>ペアレント・メンター、三鷹市相談支援事業「ママサロン」相談員 、三鷹市知的障害者相談員、三鷹市発達障害児親の会「モンブランの会」会長、社会福祉法人「清陽会」評議員、児童発達支援施設「すこっぷ調布」アドバイザー、三鷹市教育支援推進委員会委員。<経歴>都立新宿高校、聖心女子大学文学部歴史社会学科を卒業。富士通株式会社を3年勤務後、アナウンサーに転向。NHKテレビ「きょうの料理」「婦人百科」の進行を約10年務めたほか、多数のテレビ・ラジオ番組に出演。海外特派員、番組企画構成も担当。ナレーション・司会は各500回以上務め、厚生労働省主催「世界自閉症啓発デイシンポジウム」の総合司会を毎春担当。「3歳までの子育ての裏ワザ」「こんな時どうする?子どもの友達・親同士」(PHP出版)など共著多数。<現在の活動>一般社団法人「発達障がいファミリーサポートMarble」代表理事として、「発達障害」や「伝える力UP」といったテーマでの講演を、全国で行っている。また、「ペアレントメンター」として保護者や支援者の相談に応じるほか、障害児の家族が気軽に参加できるイベントやお喋り会の開催等を行い、家族の元気を応援している。(詳しくはホームページをご覧ください)。取材・文/まちとこ出版社N
2018年01月14日各地で講演活動を行い、障害のある子の「親なきあと」の現状や対策について発信する行政書士の渡部伸先生と、自閉症児の母であり、発達ナビで連載コラムを執筆する立石美津子さんによる「親なきあと」についての対談企画、第二弾。対談の前編、「親なきあと、障害のある子はどう暮らす?お金は足りる?」では、保護者が元気で動けるうちに、税の控除や手当なども活用しながら資産をつくる、親なきあとに障害年金がもらえるように準備したり、のこした資産を信託するなど、適切に渡していくことの準備が必要だということが分かりました。「親なきあと」の暮らしはどうなる?住まいは?支援者は?「親なきあと」相談室を主宰する行政書士・渡部先生×自閉症の子を育てる立石さんの対談からUpload By 発達ナビ編集部「親なきあと」に関する保護者の方のもうひとつの懸念は、のこされた子どもが「どこで暮らすのか、その暮らしを誰がサポートしてくれるのか」ということです。障害者支援施設といった入所施設やグループホームなどに住むのか、福祉サービスを活用しながら1人暮らしや親族と一緒に住むのか…ぼんやりと想像はできても、わが子が将来どのような暮らしをするのか、それにはどのくらい費用がかかるのかなど、分からないことが多く、不安や疑問があると思います。対談後編の今回は「暮らし編」と銘打ち、「親なきあと」の暮らしをテーマに、お二人の対談をお届けします。「親なきあと」、障害のある子はどこに住むのか?出典 : 立石さん(以下、立石)お子さんがまだ小さいと、将来親がいなくなった後、どこに住むかということまでまだ考えが及ばないかもしれませんが、実際は親なき後の人生の方が長いですから、お金の問題もですが、どこで誰と住むのか考えておくことは大切だと思います。健常の兄弟姉妹がいたとしても、独立してそれぞれの生活を歩みますから、障害のある子の面倒を託すこともできませんし…。渡部先生(以下、渡部)今、障害のある方の住む場所についても、法制度や社会環境が変わっている…過渡期なんですよ。今後の流れとしては、居宅介護などを充実させていくことで、特に軽度から中度の場合はできるだけ施設やグループホームに入らず自宅で暮らすことを目指す、という方向になってくと思います。大規模施設を作ってそこに障害のある方を集めて…というところから、福祉サービスを充実させて地域で暮らせるようにするという流れですね。発達ナビ編集部(以下、編集部)どうしてそういう流れになったんでしょう?渡部2003年に、それまで行政がサービスの利用先や内容を決めていた「措置制度」から、障害のある方の自己決定に基づいてサービスの利用を決定する支援費制度に変わったことが大きなきっかけだったと思います。もうひとつ大きいのは、2014年に「障害者権利条約(障害者の権利に関する条約)」を批准したことですね。この条約を批准するために法制度を整備する必要が出てきて、「障害者総合支援法」ができたり、「障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)」ができました。”住み慣れた地域で自分らしく暮らしていきたい”という願いにこたえていこうという流れになっているんです。2018年4月には、「自立生活援助」制度も始まります。施設やグループホーム、病院に入所している障害のある人が、1人暮らしを始める場合、一定期間、巡回したり支援するという制度です。また、そうした法制度が走り始めると、一定期間たって「自立生活援助」による支援が終了したあとをサポートするようなサービスなどが民間から出てくると思います。それによって、地域で暮らしていきやすい体制が整ってくるのではないかと期待しています立石本当に過渡期なんですね…。参考:障害者の権利に関する条約 | 外務省参考:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律 | 内閣府渡部また、新しい取り組みとして、障害者とその親が一緒に住める老人ホームや、障害者のグループホームとその親が入る高齢者のグループホームがひとつの敷地内にある施設などができてきています。高齢になると、施設に入所している子どもに会いに行くことができなくなりがちですが、同じ敷地内であれば安心ですよね。立石そういう施設もあるんですね。渡部障害者の入居施設は結構定員いっぱいなことが多くて。入居できる施設は地方にあることが多いし、親も元気なうちは新幹線で1本だからすぐに会いに行けると思って入居を決めたりするのですが、いざ高齢になると、なかなか会いに行けなくなってしまう…。立石うちは母一人子一人なので、私がいなくなったら…、動けなくなったらと思うと心配なんですね。いざというとき、地元に入居できるグループホームもないかもしれない。子どもが路頭に迷わないようにしたい。それで、将来のことを考えて、グループホームを作りたいなと思っています。編集部立石さんは、実際に役所に出向かれたりして、グループホーム設立について動きはじめています。どのようなグループホームをつくられるのか、今後の発信がとても楽しみです。障害者手帳はもつべきなのか?メリットやデメリットは?Upload By 発達ナビ編集部立石いろいろお話を伺っていて、改めて思うのは、手当とか割引など活用できる制度は使って、親が元気なうちから出ていくお金を抑えられるような仕組みづくりをしておかなきゃいけないなということですね。“日本の福祉は自己申告制”ですよね。じっと待っていても役所から案内が来るわけじゃないですから、自分から積極的に行動し、情報をとりにいかないといけませんね。渡部そうですね。立石それから、いろいろな支援をうけたり、支出を抑えたりするためには、やっぱり障害者手帳を持っていたほうがいいように思います。ちなみに、障害者手帳を取得するとデメリットになるようなことってあるんでしょうか?渡部私は、特段大きなデメリットはないと思っています。あるとしたら、保護者に「持ちたくない」という気持ちがある場合、持つことがストレスになるということくらいでしょうか。立石例えば、手帳を持っているから受験や就職で不利になるということは?渡部ないと思います。必要ないときは見せなければいいだけですから。立石逆に、手帳を持っているとメリットになることと言えば?障害年金は、手帳がなくても基準を満たせばもらえるということでしたけど…。渡部手帳を持って入れば法定雇用率の中で働くことができるので企業に障害者枠で一般就労しやすいというメリットや、JRや私鉄、バスなど公共交通機関の乗車料金の割引、タクシー利用券の支給、公営住宅の優遇抽選、おむつ支給などが受けられます。デイサービスやヘルパー派遣などは、手帳がなくても申請できます。ですが、手帳があると行政側が障害状態を判断しやすい。障害の程度によって支給されるかどうか、また支給時間数などにも影響するので、手帳があったほうがスムーズにサービスを受けられるのではないかなと思います。手帳の種類・度数によっては税制面での優遇もあります。立石医療費の助成もありますよね?渡部身体障害者手帳か療育手帳の重度判定の方は、所得によって医療費が1割負担、もしくは無料になります。20歳未満は世帯主の所得が対象なので1割負担、20歳になると本人の所得が対象なので無料になる、というパターンが多いですね。市町村によっては、精神保健福祉手帳を所持している人や中度判定の方も助成対象になるところもあります。編集部いずれもお住まいの地域によって違いもあるので、行政の窓口で相談してほしいと思います。参考:心身障害者医療費助成制度(マル障)| 東京都福祉保健局立石いろいろ伺って、やっぱり手帳は、持っていてメリットはあるけれど、デメリットはないなと思いました。渡部障害状態が軽いと判断され、交付されないお子さんもいます。でも申請しなければ交付されることもないわけですから、私は「まずは申請してみたほうがいいですよ」とお話しています。立石手帳は3種類ありますが、ボーダーのお子さんは知的障害が軽いと判断されて、療育手帳が取れないこともありますよね。知的には高くても、いろんな困難を抱えているお子さんも多い…。渡部発達障害に該当しているような場合は、「精神障害者保健福祉手帳」を申請してはどうかとアドバイスをしています。手帳が取れない場合でも、ドクターや児童相談所の判断で受けられる福祉サービスもあります。お住まいの地域によってもサービスは異なるので、そういう情報を得るためにも、行政の窓口に行ったり、地域の集まりに顔を出したりしておいたほうがいいと思います。自分から申請しないと、福祉サービスは受けられないですから。立石手帳については、母親は取りたいと思っているけれど、夫や義親が反対するケースもよく聞きます。渡部手帳を持たせたくない、つまり親や祖父母が、子どもや孫の障害を認めたくないということかなと思います。それぞれが障害や手帳に対して異なるイメージや感情を抱いているときは、無理に説得してもうまくいかない例が多いです。個人的には、お母さんが動いて手帳を取っておくというのも、一つの手段ではないかと思います。いざ必要になる時まで、タンスにしまっておけばいいわけですから。立石あぁ、なるほど。成年後見制度は、利用すべき?出典 : 立石支援する人を確保するという点で、成年後見人についても検討することになると思います。ちなみに、どの段階で成年後見人をつけることを考えたほうがいいですか?渡部成年後見人をつけると、たとえ親であっても子どもの財産を動かすことが難しくなります。報酬は財産額にもよりますが、月1~2万円かかるので、保護者が元気なうちはつけなくてもいいのではと考えています。親なきあとのことを見据えて、どの人に成年後見人をお願いできそうか考えておく、相談窓口がどこなのか知っておくくらいでいいと思います。成年後見人は高齢者には有効な制度だと思いますが、若い障害者の場合は、住んでいる場所もそれぞれですし、就労する場所もさまざま。福祉サービスでヘルパーを利用していたりもします。立石高齢者の場合は老人ホームに入っていて、仕事をしていない場合がほとんどだけれど、障害者の場合はいろんなパターンがあるということですね。渡部そうです。本来はそうした事業所をとりまとめて、障害のある人の暮らしを支援するのが成年後見人であるべきなのですが、法律の専門家ではあっても福祉の専門家ではないため、難しいのが現状です。ですので、保護者がまだ元気なうちは、つけなくていいかなというのが私見です。将来、信託や成年後見制度を利用することを頭に置いておいて、その制度について相談できる窓口を見つけておくぐらいでいいと思います。成年後見であれば地域の社会福祉協議会が相談窓口を開いている場合が多いですし、近くに法人後見を行っている団体があればそういったところとつながっておくことも大事です。また、親の会などに入っていれば、さまざまな情報が入ってきますので、ぜひいろいろなところと接点を持っておいてください。つながりをつくる、外に出ていく。保護者が、まずすべきことUpload By 発達ナビ編集部編集部親なきあとに向けて、やっておくべきことって本当にいろいろありますよね。法制度も過渡期なので、子育てもがんばりながら、最新の情報をキャッチするのも大変…。渡部ですから、たくさんつながりをもつことが大切なんですよ。同じ障害の子を持つママ友でもいい、親の会に入ると会報なんかでもたくさんの情報を送ってきてくれるし、専門家を招いた勉強会も催していたりする。まずは、情報が入ってくるつながりづくりからはじめるといいですよ。立石つながりがあると、親なきあとも、福祉の網の目からこぼれ落ちる前に、セーフティーネットにもなりますよね!何かあったときも、SOSに気づいてもらえる。渡部それから、子どもにどんな支援が必要かを書き留めておくと、親なきあとのサポートもスムーズになると思います。子どもの特性に加えて、障害福祉サービス受給者証の番号や利用している医療機関や施設なども書いておくといいですよ。「親心の記録」などの冊子を活用すると何を書いておけばいいか分かりやすいと思います。参考:「親心の記録」について・お申し込み|日本相続知財センターHP※「親心の記録」は団体向けに寄贈されています。個人で希望する方は、上記ウェブサイトよりお問い合わせください。渡部「もっとこんなこと知りたい」とか、「うちの場合はどうなるの」、「どうやって資産をのこせばいいの」など迷うことがあったら、私や私の仲間たちがやっている「親なきあと」相談室みたいな場所へ、相談に来てほしいなと思っています。障害者福祉は、窓口がいろいろ分かれていて、何をどこに相談したり申請すればいいのかが分かりづらかったりしますよね。保護者の皆さんは、子育てだけでも大変なのに、さまざまな窓口に行って聞くのは本当に大変だと思います。「親なきあと」相談室はよろず相談室なので、なんでもお伺いしますし、どこの窓口に申請したらいいのかなどもアドバイスしています。立石心強い!私もまた相談させてくださいね。参考:「親なきあと」相談室「親なきあと」の住まい・支援者についてまとめると、次のようになりそうです。・住まいについての法制度は変革期(居宅介護などが充実、軽度から中度の場合は自宅で)・成年後見制度などの利用を念頭におき、相談窓口を見つける・支援者がサポートしやすいような引継資料をつくる など住まいや支援についての法制度は過渡期にあります。さまざまな情報に触れたり、相談できるように、まずは保護者が”知る”ことや”つながる”ことが大切です。保護者が動けるうちに行動しておければ、自然と情報も入ってきます。渡部伸先生渡部行政書士事務所代表。「親なきあと」相談室主宰。慶応義塾大学法学部法律学科卒業。出版社でさまざまな事業を担当後、行政書士、2級ファイナンシャルプランニング技能士などの資格を取得。著書に『障害がある子の家族が知っておきたい「親なきあと」』(主婦の友社)、『障害のある子が「親なきあと」にお金で困らない本』(主婦の友社)。立石美津子さん講演家・ライター。聖心女子大卒業。幼稚園・小学校・特別支援学校教諭免許を取得後20年間学習塾を経営。自閉症児の母。著書に『1人でできる子になるテキトー母さん流子育てのコツ』(日本実業出版社)、『はずれ先生にあたったとき読む本』(青春出版社)、『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』(すばる舎)など多数。立石美津子さんのページ対談写真撮影:田島寛久
2018年01月12日大ヒットSFアクションシリーズの「猿の惑星」。そのリブート・シリーズ最終章となる『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』が10日、動画配信サービス・ビデオマーケットで配信をスタートした。『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』、『猿の惑星:新世紀(ライジング)』に続く、リブート・シリーズの最終章となる同作。『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』は2011年、『猿の惑星:新世紀(ライジング)』は2014年にそれぞれ日本で公開されているが、いずれも興行収入は10億円を超えるヒットとなっている。猿と人類が全面戦争に突入して2年。猿の群れを率いるシーザーは、軍隊を統率する冷酷非情な大佐の奇襲によって妻子を殺されてしまう。大佐への憎悪に駆られたシーザーは、わずかな仲間と共に復讐の旅に出る。その道中で口のきけない人間の少女と出会い、ノバと名付けた一行は、さらに人間の物資を盗んで生きている奇妙なチンパンジーのバッド・エイプと遭遇し、シーザーの妻子を殺した大佐の居場所を知る彼に道案内をさせる……というのが『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』のストーリーだ。また本作では、最大の謎ともいえる「猿の惑星」が誕生した衝撃の理由についても明かされており、「猿の惑星」ファンのみならずとも注目の内容となっている。
2018年01月10日赤ちゃんもコミュニケーションも苦手な娘。弟が産まれ1年たって変化が!?Upload By SAKURA広汎性発達障害のある娘(6歳)には、5歳下の弟がいます。弟が産まれたばかりの頃は、弟の泣き声も大の苦手だった娘。お世話はしてくれるけど、その関係にはどこか距離があり…接し方、関わり方が、わからないような様子も見えました。最初はどうなることかと思いましたが、今、母が何も言わなくても弟のことを気にかけるようになりました。それは、なぜか…どうやら、娘との療育のテーマにして取り組んでいたことが、ココでも役立ったようなのです。娘の中で、「弟=家族」になった!『自他との区別』の取り組みがあったから?娘は、まだ言葉の話せない弟の代わりを、自分で考えてするようになったのです。それも、私が言う前に…!Upload By SAKURAUpload By SAKURA弟のことなのに、自分のことのようにお礼を言えるようになったり…弟がしてしまったことを、自分のことのように謝ったり…娘と息子の関係は、言語・コミュニケーション能力を上げるため、主治医の先生から教えてもらった「自分の思うことと、相手の思うことは違う」という『自他との区別』の実践には、ぴったりなようでした。相手の気持ちを想像し、寄り添う、私が娘に対してやったことを、今度は娘が弟に対してやってくれています。そうやって日々弟と過ごす中で、娘は、弟が家族ということの理解ができるようになってきたようなのです。弟を思い、自分から行動できるように息子は、最近すっかりわんぱくになり、いたずらも多くなってきました。段々と主人が怒ることも増え、気の強い息子は、思い通りにならないと泣き叫びます。そんな時、娘は状況に応じて、間に入って話を逸らそうとしたり…弟が怒られている間中、背中をさすったり…怒られて一人泣く弟に「大丈夫よ」「泣かないで」と声をかけ続けます。時には、逆ギレした弟から攻撃を受けることもありますが、娘が怒ることはありません。娘はまだまだコミュニケーションに課題がある…そう思っていた私。この成長には、本当に驚かされました。元からの優しい性格から、弟を思い、さらに行動ができるようになった娘。まじめにコツコツと、『自他との区別』のトレーニングを続けてくれた。その姿を見て、娘のすごさを改めて感じました。Upload By SAKURA二人育児は時々大変だけど、きょうだいで良かった!息子を妊娠した時は、もう一人増えたら、娘の療育の時間が減ってしまうのでは?寂しい思いをさせるのでは?そんな風に思ったりもしましたが、息子の存在は、娘にいい影響を与えてくれました。今では、弟との何気ないやり取りや、予測不能な動きをする弟との日々は、娘を大きく成長させてくれると思っています。二人の育児に振り回され、ぐったりな日々ですが…娘の、弟を気にかける行動や、息子が姉に寄っていく様子を見ると、娘と息子を産んで良かった!と心からそう思えるのです。Upload By SAKURAしかし娘とは真逆の激しい性格の弟…見ていてやりすぎなことろもあるので、娘がやられすぎないように、間に入りながら、注意して見守りたいと思います(笑)
2018年01月10日「親なきあと」とは?今できることはある?「親なきあと」相談室を主宰する行政書士・渡部先生×自閉症の子を育てる立石さんの対談からUpload By 発達ナビ編集部「子どもは学校を卒業したら働き、いつかは自立して巣立っていく―」。それが当然だと思っていたけれど、障害のある子を授かり、そうではないこともあるのだと気づいた保護者も多いのではないでしょうか。保護者がサポートできなくなった後も、子どもの人生は続きます。子どもが幸せに、自分らしく生きていくためには、親が元気なうちに準備しておく必要があります。この企画では、「親なきあと」相談室を主宰する行政書士・渡部伸先生と、自閉症児の母であり「LITALICO発達ナビ」でコラム連載を持つ立石美津子さんとの対談を通して、障害のある子の保護者が「親なきあと」に備えて何をしておけばよいのかについてお伝えします。Upload By 発達ナビ編集部発達ナビ編集部(以下、編集部)今日は、行政書士であり「親なきあと」相談室を主宰する渡部伸先生と、自閉症のあるお子さんを育てている立石美津子さんに、「親なきあと」について知っておくべきこと、やっておくべきことなどお話いただければと思っています。立石美津子さん(以下、立石)私の息子は自閉症です。来年度は高校3年生になります。学校でも、就労の実習を行う機会があったり、親として就労セミナーに出席したりしています。学校卒業後の就労や、将来的にどういったところで暮らすかなど、具体的に考える時期になりました。渡部伸先生(以下、渡部)私は市民後見人として成年後見などにかかわるほか、「親なきあと」相談室の活動を通していろいろな場所で講演を行い、直接相談も受けています。そういう中で、たくさんの保護者の方とお話する機会があります。また、私の次女には知的障害があります。講演などでよく質問を受けることや、みなさんが不安に思っていること、疑問に感じていることなどについて、お話できたらと思います。立石発達ナビを見ている保護者の方は、まだお子さんが小さい場合も多いですよね。でも、就学問題などの数年先のことを考えるだけでなく、人生という長いスパンで考えてもらいたいなと思っています。学校を卒業してから、そして親なきあとのほうが人生長いですから。お子さんの将来を見据えて、子どもが小さいうちからできることを、今日は渡部さんとお話していきたいです。編集部先日「親なきあと」についてのユーザーアンケートを取りました。「一人で暮らせるのか。難しい場合、どこで受け入れてもらえるのか」といった暮らしの場についての悩みや、将来に備えて貯蓄をしているが、「どのくらい準備すべきか分からない」「なかなか貯められない」という声、「自分の子どもの障害の程度の場合、どんなサービスが受けられるか分からない」「お金を残しても散財しそう」といった、福祉サービスや金銭管理についての疑問も多く寄せられました。「親なきあと」のお金はどうなるの?障害年金や、就労による収入は?Upload By 発達ナビ編集部立石では、まず親なきあとのお金の問題について伺ってもいいでしょうか?障害のある子には、親がのこした財産以外に、どういった収入がありますか。渡部まずもらえるお金として考えられるのは、障害年金ですね。これは、20歳以上の障害のある人に年金が支給される制度です。受給額は障害の等級によって変わってきます。ちなみに、障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金がありますが、障害厚生年金は厚生年金に加入している人が障害状態になった場合に支給されるものなので、ここでは障害基礎年金についてお話ししますね。立石障害基礎年金は、1年間でだいたいいくらぐらいもらえるんですか?渡部毎年変動はありますが、障害基礎年金は1級で年間974,125円、2級で779,300円です(2017年度)。また、受給者本人の所得に応じての制限があって、所得が一定額以上になると、年金額が半額になったり、全額支給停止になります。また、障害があると受け取れる手当や医療費の助成などは、障害者手帳を持っていることが支給要件のことが多いです。要件や受け取れる額は都道府県や市区によって異なるので、確認してほしいと思います。参考:障害基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法|日本年金機構出典 : 立石障害年金は、障害者手帳を持っていないと受け取れないんですか?(注:障害者手帳には「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」の3つの種類があります。)渡部障害年金の判定と手帳は別な手続きなので、直接手帳の有無とは関係しません。障害年金は障害者手帳があるだけで申請できるのではなく、別の申請方法になります。ただし、年金の申請時に手帳を提出すると、障害状態を確認する補足資料になります。立石障害年金を申請するには、ドクターに診断書を書いてもらう必要がありますよね?でも、障害年金を申請するときには病院との関係が切れてしまっていて、子どもの状況を理解してくれているドクターが見つからないということも耳にします。渡部知的障害の診断書は原則精神科のドクターに書いてもらいますが、慣れていないとどう書けばいいのかわからず、お願いしても断られてしまうこともあるんですよ。立石子ども病院にかかっていると、18歳になるとみてもらえなくなったり、小さい頃は定期的に通院していても中高生の頃に通院しなくなることもありますからね…。まわりには、これを見越して早めに転院しているご家庭もあります。うちももう少し早く動くべきだったなと今さら後悔しているところです。渡部小児科のドクターが主治医の場合でも診断書は書けますが、断られることも多いと聞きますね。小児科から転院する場合に、紹介状なりをきちんと書いてもらって引き継げるとよいのですが。立石発達ナビのユーザーは小さいお子さんの保護者が多いと思いますが、「障害年金の申請のことも見越して、18歳以降もみてくれる病院にかかっておいたほうがいいですよ」と伝えたいです。編集部「(現在の)主治医にいつかみてもらえなくなるかもしれない」ということは、小さい子の保護者は気づきにくいですし、障害者手帳の申請方法を知らないことも多いと思います。立石さんもお話してくださったように、「18歳以降どこでみてもらえるのか、ほかの病院へ紹介はしてもらえるのか、転院のタイミングはいつがよいのか」など、早めに主治医に確認しておけると安心ですね。編集部話を収入のことに戻したいと思います。企業に障害者枠で一般就労する場合、平均賃金はどのくらいなんでしょうか?渡部企業の障害者雇用枠内で働いている場合の賃金は、もちろん個人差はありますが、現状だとだいたい月に12~13万円ぐらいが平均です。なので、障害年金が満額受給できる範囲内の収入となる人が多いと言えます。障害年金の等級が2級だと年金は毎月約6.5万円。つまり、合計して1か月あたり20万円弱の収入となります。立石一般就労でなく、就労移行支援事業所や就労継続支援B型の場合はどうなりますか。渡部就労継続支援A型の事業所で月67,795 円、B型の事業所で月15,033円(平成27年度)が平均値です。就労移行支援の場合は訓練なので、原則として支払われません。立石就労継続支援の事業所だと賃金はぐっと低くなりますね。生活も厳しくなりそうです…。平成27 年度工賃(賃金)の実績について | 厚生労働省福祉サービスなどを活用し、出ていくお金を抑えることが大切Upload By 発達ナビ編集部渡部収入はある程度限られますから、「出ていくお金」をいかに抑えるか、ということが大事なんですよ。立石というと?渡部例えば、グループホームへの支払いについては、過度な負担にならないような仕組みがされています。国からの助成金は全国統一で1万円、それに加えて独自の助成金を出している自治体もあります。東京都の場合は、合計最大2万4千円の補助があります。障害者手帳があると受けられるサービスや助成などを活用して、出ていくお金をなるべく抑えることが大切になります。交通機関の乗車料金や携帯電話料金の割引、上下水道の基本料金の免除のほか、医療費の助成もあります。税金についても住民税の非課税や控除、所得税の控除がされますね。手帳がなくても、ヘルパー派遣など、必要だと判断されたサービスについて支援を受けることができます。立石限りある財産や収入だから、行政からの助成や支援をきちんと受けられるように整えて、生活に困ることがないようにしないといけないんですね。参考:障害者の利用者負担|厚生労働省参考:障害者と税 | 国税庁「親なきあと」、お金を適切に管理する方法とは?Upload By 発達ナビ編集部渡部それに加えて必要になるのは「出ていくお金を誰がどう管理するか」です。立石せっかく親御さんがのこした資産をだまされてとられてしまったとか、散財してしまいお金が全部なくなってしまったという話も聞きますよね。渡部親が子どものためにのこした大切なお金をきちんと管理して、毎月決まった額を子どもに渡していける制度があるんですよ。立石どんな制度ですか?渡部「信託」という制度です。信託というのは、「信頼している人や企業法人に、資産を託して、きちんと管理してもらう」ことです。最近は、「民事信託」が認められるようになって、家族・親族など特別な資格を持っていない人に託すこともできるようになっています。民事信託は非営利が基本なので、管理費用が基本的にかからないことも活用しやすいポイントです。立石親族でも信託できるんですか。渡部はい。たとえば、母一人子一人の親子がいるとします。子どもが母親の財産を相続したとき、管理できないと困りますよね。このとき、信頼できる親族に信託することができます。たとえば、母親が甥と信託契約を結ぶと、財産は甥が管理・保有することになります。甥は信託銀行などの中に専用の口座を作り、そこにお金を預け、月々相続人である子どもに渡していきます。こうすると、子どもが散財したりだまされたりというリスクがなくなり、長い間しっかり守られます。また、子どもが亡くなった後、通常は使いきらなかった資産は国庫に入りますが、信託をすることで、亡くなった後のお金の行き先も決めることができます。お世話になった社会福祉法人へ寄付するとか、親の会に寄付するとかもできます。もし仮に、甥が破産してしまうようなことがあっても、信託財産は甥の財産から独立しているので、守られます。編集部信託した財産を、甥がきちんと管理してくれるかをチェックできるように、第三者に監督を頼むことはできるんですか?渡部甥を監督する受託者信託監督人というのも設定できますが、そもそも甥を信頼して託しているのならコストをかけてまで監督人をつけるべきなのか。甥も「信頼されていない」とがっかりしてしまうかも。それなら信託銀行に頼んだほうがいいかもしれませんね。編集部頼める親戚などがいない場合は、金融機関などに頼めばいいんでしょうか。渡部信託の免許を持っている信託銀行や信託会社に頼むことができます。管理費はかかりますが、企業なので管理に対するチェックも厳しく、安心感があるという利点もあります。以前に比べて信託する金額のハードルも下がっているようです。手数料も抑えられるようになってきました。信託している銀行が破綻してしまった、というようなときも信託財産は銀行の財産とは区別して管理することが法律で義務付けられていますから、安心です。それから、障害のある人が活用できる信託制度として、「特定贈与信託」といものがあります。これは、子どもや孫などに贈与をする際、特定障害者や特別障害者だと、3,000万円もしくは6,000万円まで非課税になる制度です。ちなみに、通常は年間110万円以上の贈与は、贈与額に応じて10~55%の贈与税が課税されます。特定贈与信託は信託銀行などに商事信託する必要がありますが、このとき、成年後見人をつけることが条件となっている場合もあります。参考:贈与税の計算と税率(暦年課税)| 国税庁立石贈与や相続できる財産が不動産しかないなんてこともありますよね。そういう場合でも信託できるんですか?渡部信託銀行での信託は、通常は金銭での受託のみです。ですが、一部の信託会社では、不動産で特別贈与信託が可能だと聞いています。駐車場や賃貸物件などの管理・運用を信託して、運用益を生活費として支給する例などがあるようです。保護者存命中に、親なきあとの不動産資産の管理・運用について信託できますし、非課税で贈与することで、万が一の際の相続対策も兼ねられますね。参考:不動産信託活用事例集|スターツ信託株式会社立石もう少し少額でも、金融機関に信託できる方法ってないんですか?渡部少額から始められて、信託ってどういうものかという仕組みも理解できるのが、生命保険信託です。生命保険会社と信託会社が組んで、死亡保険金を信託するという商品です。第一生命とみずほ信託銀行、ソニー生命と三井住友信託銀行、プルデンシャル生命とプルデンシャル信託会社、また最近では障害者向け保険を取り扱うジェイアイシーがみずほ信託銀行・FWD富士生命と組んで、生命保険信託商品を出しています。福祉は自己申告制。「親なきあと」、支援の網の目からこぼれ落ちないためには?出典 : 編集部相続でもなにか対策できることや、活用できる制度はあるんでしょうか?渡部相続では、障害者控除枠があります。金額は重度の特別障害者が(85-相続発生時年齢)×20万、一般障害者は20万のところが10万になります。たとえば40歳6か月で相続発生した一般障害者の場合、85-41(切り上げ)に10万円を掛けて440万円が控除額です。立石相続でも障害者控除があるんですね。保護者が元気で動けるうちに、使える制度やサービスについて学んでおかないと…。そして、子どもが支援からこぼれ落ちないような仕組みを作っておかないといけないですね。編集部お二人の対談を通して、「親なきあとに障害年金がもらえるように準備する。税の控除や手当なども活用しながら資産をつくる。のこした資産を信託するなど、適切に渡していくことの準備する」ということが必要だと分かりました。「親なきあと」のお金についてまとめると、次のようになりそうです。・障害年金の有無や就労状況で収入額は変わる・福祉サービスの活用や控除、割引などを活用し支出を抑える・信託など、資産を適切に渡す方法を知るなどさまざまな制度やサービスを活用できるように、まずは保護者が”知る”ことが大切です。そのうえで、自分の子どもに必要な支援を申請したり、備えたりしていきましょう。立石さんが、以前コラムでも書いていたように「福祉サービスは自己申告制」です。待っていても支援は受けられません。そのためには、保護者が動けるうちに行政や支援者などとつながっておく必要がありそうです。つながることで、自然と情報も入ってきます。保護者の懸念事項としてもうひとつ大きいのが「どこで暮らすのか」ということです。どこに住むか、お子さんが小さいうちからやっておくべきこと、セーフティーネットなどについては、1/12(金)に公開予定の、「親なきあと、障害のある子はどう暮らす?お金は足りる?行政書士・渡部伸先生×立石美津子さん対談【後編】にてご紹介します。Upload By 発達ナビ編集部渡部伸先生渡部行政書士事務所代表。「親なきあと」相談室主宰。慶応義塾大学法学部法律学科卒業。出版社でさまざまな事業を担当後、行政書士、2級ファイナンシャルプランニング技能士などの資格を取得。著書に『障害がある子の家族が知っておきたい「親なきあと」』(主婦の友社)、『障害のある子が「親なきあと」にお金で困らない本』(主婦の友社)。立石美津子さん講演家・ライター。聖心女子大卒業。幼稚園・小学校・特別支援学校教諭免許を取得後20年間学習塾を経営。自閉症児の母。著書に『1人でできる子になるテキトー母さん流子育てのコツ』(日本実業出版社)、『はずれ先生にあたったとき読む本』(青春出版社)、『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』(すばる舎)など多数。立石美津子さんのページ対談写真撮影:田島寛久
2018年01月10日