「若者よ、選挙に行くな」と題した動画が物議を醸している。7月21日投開票の参議院選挙を前に、「お笑いジャーナリスト」のたかまつなな(26)が投稿した動画だ。動画では中高年と思しき男女3人が「年金が破綻する?関係ないわ。だって私は貰えているもん」「教育予算が減っている?その分、医療費に回してもらえるからありがたいよ」などとカメラに向かって言う。さらに「年金を払いたくない。残業は嫌だ。給料が下がった。匿名でよくつぶやいているね」「でもあなたたちは選挙にはいかない」「だから私たちが政治を動かしているの」と代わる代わる若者を煽り、「あなたたち若者は存在しない人」「私たちは選挙に行く」「これでも、あなたは選挙に行きませんか」と言い放つ。この動画は7月15日時点で280万回以上再生され、Twitter上では《良い煽りだ》《これを観て、選挙にいこう!!》といった反響も。一方で、厳しい批判の声も寄せられている。タレントの麻木久仁子(56)は《若い人々に投票に行ってもらいたいからといって、あれはない。弊害の方が大きいですよ。偽りの対立軸に惑わされてどうするんだ》《妙な動画をありがたがって、何か良くなるというのかアタシにはわからん》とツイート。若者論研究を専門とする評論家・後藤和智氏(34)は《何度でも言うが、件の動画は、政治を選挙に、選挙を世代間闘争に隷属させる極めて悪質な煽動でしかないの》と厳しく批判。《高齢者医療と教育はトレードオフではない!高齢者の便益と若者の便益はトレードオフではない!》と呼びかけている。世代間対立を煽る側面もある「若者よ、選挙に行くな」動画には、実際に以下のような皮肉めいた反論も。《正しくは、『年寄りよ、選挙に行くな!』かと》《年寄りよ、選挙に行くな年金で買ったお酒飲んで寝ていてくれ!未来は未来のある若者にお任せ下さい!》政府統計によれば、’19年1月時点で65歳以上の人口は3562万人。50歳~64歳までを含めると5928万人になる。一方で18歳~29歳の人口は1500万人に満たない。若者が選挙に行かない理由について《圧倒的に年寄りが多いから若者が選挙に行ったって勝ち目ないのがわかってるからじゃない?》と、動画に疑問を呈するツイートも見られた。
2019年07月15日阿川佐和子(65・以下、阿川)「うちはいま、認知症の母(91)をきょうだいとお手伝いの方とローテーションを組んで、在宅介護しています。その合間にショートステイで外泊サービスを利用しているんです」ヤマザキマリ(52・以下、マリ)「私の母(86)は北海道の実家の近くに住む妹が、在宅介護をサポートしてくれていました。それが、認知症に加え、パーキンソン病も併発して……。足元がおぼつかなくなり、今年1月、部屋で倒れているところを妹に発見されて、入院しました」阿川「高齢者専門の施設なの?」マリ「専門ではないですが、認知症患者が多い病院なんです。我が強い母ですから、同室の人と合うわけがないと思っていたのに、4人部屋で和気藹々と過ごしています。お互い、会話はまったく成立していないんですけど、ワイワイ楽しそうでした」小説家、エッセイストの阿川佐和子さんの母親は、昭和2年生まれで、現在は91歳。父は作家の阿川弘之さん(’15年没、享年94)。外では温厚だが、家庭内では絶対君主で、専業主婦だった母親は振り回されていたという。漫画家のヤマザキマリさんの母親は、昭和8年生まれの86歳。北海道に渡り、札幌交響楽団のビオラ奏者として、2人の娘を女手一つで育て上げた。親の介護が始まったのは、阿川さんが57歳、ヤマザキさんが49歳のときだった――。マリ「佐和子さんは、どうやって親の認知症がわかったんですか?」阿川「8~9年くらい前かな。あるとき、長年、実家で働いてくれた家政婦さんが電話で『こんなこと、私から申し上げるのも何ですが、奥さまがヘンです』って。もともとトボけてるからなあって言ったら『そういう問題じゃありません』って、ピシッと言われたんですね。それで“ついに来たか”と」マリ「母は、80歳を過ぎたあたりから、物忘れが目立ってきたんです。でも、犬の散歩も欠かさず、毎日、元気そうでした。あるとき、北海道の実家に帰ると、母が外に立って青ざめた顔で『変な外人さんがうちに来ちゃって!』って。あわてて家に入ると、外国人が出ている料理番組が放映されていて、それを見て、うちの台所に外国人が来たのだと勘違いしたようなんです。そうした症状が増えて、ようやくレビー小体型認知症(症状の1つに幻覚がある)だと診断されました」阿川「うちの母は、いまだに、自分でできることはいっぱいあるんです。お医者さんに行って、勝手にパソコンをのぞいたとき“アルツハイマー”という文字を見て、『誰のこと?』って聞いたりね」マリ「本人も認知症だって認めたくないですよね。母も『一過性のもの』『疲れているだけ』と抵抗していましたから」阿川「いままで、自分を見守ってくれていた親が、だんだん壊れていく姿は、子どもとしてもつらいもの。だから、初期のころは特に必死になるよね」マリ「グレープフルーツの匂いが認知症に効くと聞いて、アロマを嗅がせたり(笑)」阿川「私も最初は何でも真面目に、完璧にこなそうとしていました。母は心臓病も抱えていたから“薬を必ず飲ませないと危ない”って、神経ピリピリさせてるの。だから薬袋ごと、どこかにしまって見つからなかったりすると、叱りつけちゃうんですよ。『どうして!』って。すると母も泣きだしちゃったり。マリちゃんも、やりすぎたことってない?」マリ「ありました。北海道に帰ると“わー”っていろいろ言ってしまうから、そばで介護してくれている妹から『お姉さんが来ると、お母さんがビクビクする』って言われました。こうなるとお互いが疲弊しますよね」阿川「仕事も、通わないとダメなようなものは辞めて、ある程度自分のペースでできる原稿の仕事しかできないかなって、ほんの一瞬だけ考えました」マリ「1対1になると、周りが見えなくなってきますよね」阿川「そんなとき、昔なじみの友人と会う機会があって、彼女たちに救われました。『アガワさ、介護は1~2年でなんとかなると思ってるでしょ。10年かかるかもしれないんだよ』って言われて。“え!10年、冗談じゃない”って」マリ「今から必死になっても、そんな長期戦、戦い続けることはできないですよね」阿川「10年ですまないかもしれないし。だからできる限り、手を抜けるところは抜いて、自分1人で背負わない。これを聞いて、すごく心が楽になって。友人との井戸端会議もバカにならない」マリ「夫の実家のあるイタリアでは、みんな井戸端会議好き。普通に高齢のおばあちゃんを車いすに乗せて連れていったり。それは当たり前に受け入れられ、『シニョーラ(おばさま)、元気そうで』って歓迎されます」阿川「そうやって、介護する側、される側も外につながることって大事。この間、取材である主婦の方の質問を受けたんです。『お姑さんの介護が始まったので、週に1回の習い事をやめたほうがいいでしょうか』って。周りの家族は“習い事なんてやってる場合じゃないだろう”という空気になるかもしれませんが、私は『やめちゃいかん』という答え。私だって、母を置いて、好きなゴルフをやることもありますが、“悪かったな”という後ろめたさを持っていると、次に“ようし、やってあげようじゃないの”とやさしくなれるもの」マリ「そうね、滅私奉公はいけないと思う。北海道で母をそばで見てくれる妹も、一時期、介護でいっぱいいっぱいになって。髪はボサボサだしストレスで太ってしまって。“やばい”と思って『もういいよ、お母さんのことはいいから出かけておいでよ』と、コンサートのチケットを買って送ったりしました」阿川「自分にとって、リフレッシュできるものを最低1つ持っていないと、逃げ場がなくなります。逆に自分のためだけの時間を持つことで、介護をするエネルギーが湧いてくるものですよ」現在でも、認知症の症状は少しずつ進んできているが、母たちは平和で穏やかな日々を過ごしている。マリ「最近は、イケメンの青年介護士さんに『リョウコさん』と下の名前で呼んでもらって、ポッと頬を赤らめています」阿川「認知症になると、女がよみがえってくる説もありますよね。フェロモンって大事」マリ「入居者が集うホールでダンディな男性がいたら、『あそこにすごく寡黙で、ハンサムな人がいるんだけど』って。いまでは私と女友達のような会話もしています」阿川「私も母が認知症になったばかりのころは、お風呂に一緒に入ったりしていましたから。すっぽんぽんになって、何十年ぶりかしらね。1回、お風呂で倒れて以来、1人では入れられなくなって」マリ「1人でのお風呂は怖いです。うちは3回、救急車を呼んでいます」阿川「一緒にお風呂に入ると『あんた随分おなか出てるわね』っておなかを突かれたり、こっちも突き返して『イヤン』と言われたり。そんなことをしながら、全身チェックもできるんです。湿疹を見つけて『かゆい、かゆい』と言っているのはこれが原因か、とか、巻き爪が痛そうだなとか」マリ「監視されるよりも、一緒にお風呂に入ったほうが母も安心しますよね。私も、今年の冬、母と妹と一緒に、温泉に行ったんです」阿川「あら、えらい」マリ「貸し切りのお風呂に入れて、みんなですっぽんぽんの状態になって。そのとき、また一段と心を許してくれたというか、恥ずかしがらなくなりました」阿川「甲冑を脱いでくださったのね。一緒にお風呂に入るのは、母と娘だからできること。一方で、最近では、認知症が進んで、だんだん、私のことを、母の姉だと勘違いするようになりました。『誰だかわかる?』って、指を私のほうに向けると、指先にある鼻を見て『お鼻ちゃん』と言ってみたり。そういう知恵の回り方がすごいんだけど」マリ「私も、名前を忘れかけられています。マリじゃなくて、『娘』って言われることも」阿川「『さ』がつくでしょって、ヒントを出しても、ウフッと笑ってごまかしたり。でも娘ってわかるから『娘子ちゃん』と言ってみたり。深刻になることも多いけど、そのあと必ず笑いがあるんです」マリ「介護を通して、親子の距離がぐっと近くなった、新しい母娘関係を築けているような気がしますね」
2019年06月30日「お互い、もう介護される年齢に近づいているわね」という話から始まった“認知症介護対談”。年を重ね歴史のある母娘でも、母が認知症になればその関係は変わってくる。いままで見せなかった弱さを見せるようになったヤマザキマリさん(52)の母は、これまで着ていた鎧を脱いで穏やかに。阿川佐和子さん(65)の母は家族のかせから逃れて、自由になった。母娘が向き合って、その距離がぐっと近くなった介護の時間はとても豊かなものだった――。阿川「うちはいま、認知症の母(91)をきょうだいとお手伝いの方とローテーションを組んで、在宅介護しています。その合間にショートステイで外泊サービスを利用しているんです」マリ「私の母(86)は北海道の実家の近くに住む妹が、在宅介護をサポートしてくれていました。それが、認知症に加え、パーキンソン病も併発して……。足元がおぼつかなくなり、今年1月、部屋で倒れているところを妹に発見されて、入院しました」阿川「高齢者専門の施設なの?」マリ「専門ではないですが、認知症患者が多い病院なんです。我が強い母ですから、同室の人と合うわけがないと思っていたのに、4人部屋で和気藹々と過ごしています。お互い、会話はまったく成立していないんですけど、ワイワイ楽しそうでした」小説家、エッセイストの阿川佐和子さんの母親は、昭和2年生まれで、現在は91歳。父は作家の阿川弘之さん(’15年没、享年94)。外では温厚だが、家庭内では絶対君主で、専業主婦だった母親は振り回されていたという。漫画家のヤマザキマリさんの母親は、昭和8年生まれの86歳。北海道に渡り、札幌交響楽団のビオラ奏者として、2人の娘を女手一つで育て上げた。親の介護が始まったのは、阿川さんが57歳、ヤマザキさんが49歳のときだった――。マリ「佐和子さんは、どうやって親の認知症がわかったんですか?」阿川「8~9年くらい前かな。あるとき、長年、実家で働いてくれた家政婦さんが電話で『こんなこと、私から申し上げるのも何ですが、奥さまがヘンです』って。もともとトボけてるからなあって言ったら『そういう問題じゃありません』って、ピシッと言われたんですね。それで“ついに来たか”と」マリ「母は、80歳を過ぎたあたりから、物忘れが目立ってきたんです。でも、犬の散歩も欠かさず、毎日、元気そうでした」阿川「うちも日常の家事には支障がなかったけど、同じことを繰り返し話したりして“ん?”っていうことが少しずつ……」マリ「あるとき、北海道の実家に帰ると、母が外に立って青ざめた顔で『変な外人さんがうちに来ちゃって!』って。あわてて家に入ると、外国人が出ている料理番組が放映されていて、それを見て、うちの台所に外国人が来たのだと勘違いしたようなんです。そうした症状が増えて、ようやくレビー小体型認知症(症状の1つに幻覚がある)だと診断されました」阿川「うちの母は、いまだに、自分でできることはいっぱいあるんです。お医者さんに行って、勝手にパソコンをのぞいたとき“アルツハイマー”という文字を見て、『誰のこと?』って聞いたりね」マリ「本人も認知症だって認めたくないですよね。母も『一過性のもの』『疲れているだけ』と抵抗していましたから」阿川「いままで、自分を見守ってくれていた親が、だんだん壊れていく姿は、子どもとしてもつらいもの。だから、初期のころは特に必死になるよね」現在でも、認知症の症状は少しずつ進んできているが、母たちは平和で穏やかな日々を過ごしている。阿川さんは、父を’15年に亡くしたが、母は、夫の死をどこまで理解できているのかわからないという。ヤマザキさんの母は、人生を支えてきた楽器演奏から離れて久しいが――。マリ「この間も病院に行くと、母が遠くに歩いている看護師さんを見て『今、コンサートホールの支配人を呼ぶから、挨拶しなさい』って言うんです。私もその“妄想”に付き合って『今日は何を演奏するの?』と聞くと、『プログラムを読んでいないの!』って怒られたり(笑)。母は元気なころ、コンサートのプロデュースもしていたんです」阿川「そういう物語には、乗っかるほうが楽しいよね。うちの母は、なぜかいないはずの赤ん坊の話をするんです。『赤ん坊どうしたの?』って聞かれると『さっき帰った』『ちゃんと寝かせているの』『うん、2階で寝てる』って、話を合わせたりして」マリ「認知症になっても、あえて否定するのもよくないし、羞恥心や感情面の尊重も大事ですよね」阿川「特に排せつに関してはね。以前、母が部屋で頭から布団をかぶっていたんです。どうしたのかと思って布団をめくると、片足だけ私のストッキングをはいているの」マリ「どういうことですか?」阿川「聞いても『んー』と言って答えないの。多分、自分の下着を汚してしまって、それが恥ずかしいと思ってはき替えようとしたのに、どうしていいのかわからなかったと思うんです。それで私のクローゼットから着替えを探したけど、パンツではなく、靴下の引出しを開けてしまったのだと」マリ「親の排せつの失敗は、娘もついつい情けない気持ちになったりするけど……」阿川「考えてみたら、隠すこと自体がカワイイじゃんて思うようになりました」マリ「認知症になって、とても自由に生きられている部分もありますからね」阿川「うちは圧倒的に父が強かったんです。絶対君主的で、それによって家族が振り回されていました。でも母は、『なんでそんなに言うことを聞けるの?』って思うくらい従順だったんです。だから私は、きっと7歳年上の父が早く死ぬだろうし、そうしたら母を旅行に連れていったりして、家庭の束縛から解放してあげようって、ずっと思っていたんです。それなのに、母が先にボケてしまって、悔しかったですよ」マリ「それは無念」阿川「でもね、ボケてみると、100%不幸だとはいえない。むしろ母は自己主張が強くなりましたよ。入院中だった父が『お前の作ったちらし寿司が食べたい』と言いだしたときも、さらっと『あーちらし寿司ですね、そこの百貨店に売っていますよ』って」マリ「素晴らしい!」阿川「いま、母はとても自由に愉快に生きているんです。私が『ねえ、母さん、ご飯作ってよー』って言うと『んー、明日』って先延ばし。マリちゃんのお母さんは、女手一つでずっと闘っていらしたわけでしょ?」マリ「闘魂そのままというイメージを持っていたんですが……。もともと物を書くのが好きな人で、日記帳を渡していたんですね。ところが、認知症に加えパーキンソン病も併発しているから、手が震えてうまく文字が書けない。それであるとき、母の部屋から、書こうと思ったのに、何度も何度も途中で諦めてしまっている書き損じの紙の束が出てきて……。それを隠していたんですね。手にしたときは、もう涙が止まりませんでした」阿川「切ないねえ」マリ「前の母とは違うんだと改めて感じて、喪失感を覚えました。いかに母が私の心の大きな支えになっていたかって痛感して……。50歳にして、初めて精神的自立を余儀なくされた焦りも(笑)。でも、認知症になって、肩肘張らず、強がらず、いまの母は穏やかです」阿川「よかったねえ」マリ「いままでの母なら『会いたい』なんて言わないタイプだったのに、お見舞いに行くと『今度はいつ来るの?』なんて聞いてくるんです。“なんだ、この弱々しい母は”って感じてしまうけど、『1人で娘2人を育て、世間と闘ってきたけど、ようやく甲冑を脱げたんだ』と、いまの姿が本当の母なんだと思えるようになりました」
2019年06月29日「老後に2,000万円不足」問題が連日取りざたされ、金融庁には「最大3,000万円必要」という試算まであったと物議をかもしている。しかし、経済ジャーナリストの荻原博子さんは、「あらゆる角度から家計を点検し消費支出を減らせば、年金+2,000万円も要らないでしょう」と語る。荻原さんが解説してくれた――。■光熱水費の見直しでも4つの工夫があるたとえば、光熱水費の見直しを考えてみましょう。【1】新電力への切り替え’16年に電力が、’17年にガスが自由化されました。ですが契約を変えた世帯は電力が2割超で(’18年9月)、ガスで1割足らずです(’19年5月・いずれも経済産業省)。新電力への切り替えや電気・ガスのセット割などで5~10%は節約できます。切り替えは、電気をたくさん使う夏前がおススメ。【2】契約アンペアの変更契約アンペアとは、同時に使用できる電気量のこと。家族が減れば、同時に使う電気量も減りますから、契約アンペアを下げても困らないでしょう。東京電力の場合、60Aの基本料金は約1,700円ですが、30Aだと約840円と半額です。【3】家電を上手に使う冷蔵庫の設定温度を「強」から「中」にすると年約1,670円の節約。また、野菜をゆでるときは、ガスより電子レンジのほうが時短で安上がりです。エアコンはフィルターを月1~2回掃除すれば、年約860円節約できます(’17年・資源エネルギー庁)。【4】エコ家電に買い換え家電を買い換えると、電気代の節約になります。特に冷蔵庫は10年前のものと比べると、年約8,000~9,800円節約できます(’18年・東京都)。とはいえ「冷蔵庫は高いから買えない」という方が多いのですが、小さめサイズを選ぶと、値段も抑えられ、食品の買いすぎ防止にもなって一石二鳥です。こうした節約と合わせて、保険の見直しやマイカーを手放すなど固定費カットも重要です。私は工夫次第で、年金だけでも暮らせると思います。
2019年06月28日「老後に2,000万円不足」問題が連日取りざたされ、金融庁には「最大3,000万円必要」という試算まであったと物議をかもしている。しかし、経済ジャーナリストの荻原博子さんは、「私は工夫次第で、年金だけでも暮らせると思います」と語る。荻原さんが解説してくれた――。■高齢夫婦と30代世帯の支出はよく似ている。家計はまだまだ工夫の余地あり2,000万円の根拠となった’17年の家計調査には、おもしろいデータがあります。世帯主年代別の家計収支を見ると、30代世帯(2人以上の勤労世帯)と、問題の65歳以上の夫と60歳以上の妻の高齢夫婦がよく似ているのです。まず、月々の生活費に当たる「消費支出」の中身を見ると、「食費」は30代世帯が約6.5万円で、高齢夫婦が約6.4万円。「光熱水費」は30代世帯が約1.8万円で、高齢夫婦は約1.9万円と、ほぼ同じです。次に、消費支出全体を見ても、30代世帯が約26万円で高齢夫婦が約23.5万円。約2.5万円違うものの、30代世帯には高齢夫婦にはない「教育費」が約1.3万円あります。これを除くと30代世帯が24.7万円で、高齢夫婦は23.5万円。その差は1.2万円ありますが、実は、世帯人数が大きく違います。30代世帯は平均3.71人家族で、高齢夫婦は2人。つまり30代世帯は2倍近い家族の生活を、ほぼ同じ支出でやりくりしているのです。とすると、高齢夫婦の家計はまだまだ工夫の余地があり、生活費は抑えられると思いませんか。あらゆる角度から家計を点検し消費支出を減らせば、年金+2,000万円も要らないでしょう。
2019年06月28日2019年10月に消費税が10%に増税されますが、注文住宅は引き渡しが2019年9月30日以降になる場合は、増税前の契約でも消費税10%として手続きをする必要があります。 この増税を緩和する目的として“次世代住宅ポイント”制度が設けられ、2019年6月3日から申請が始まりました。今回は新築だけでなくリフォームにも適用される“次世代住宅ポイント”についてお伝えします。 要件を満たした住宅の新築・購入・リフォームを対象にポイントが支給次世代住宅ポイント制度は2019年10月の消費税増税に備え、一定の省エネ性、耐震性、バリアフリー性能等を満たす住宅や家事負担の軽減に役立つ住宅の新築やリフォームをされた人に対して、多くの商品と交換できるポイントを発行する制度です。 2019年6月3日から申請が始まり、2020年3月31日までを限度に(申請が予算を超える前に受付終了)申請を受け付けます。主な要件は以下のとおりです。 1)「安全・安心」「健康長寿・高齢者対応」「子育て支援、働き方改革」に資すると国土交通省が選定した、①注文住宅の新築、②新築分譲住宅の購入、③リフォームが対象となります。 2)新築では、①エコ住宅 (断熱等級4又は一次エネ等級4を満たす住宅)、②長持ち住宅 (劣化対策等級3かつ維持管理対策等級2等を満たす住宅)、③耐震住宅 (耐震等級2を満たす住宅又は免震建築物)、④バリアフリー住宅(高齢者等配慮対策等級3を満たす住宅)に適合すると1戸当たり30万ポイント付与されます。 3)リフォームでは、①窓・ドアの断熱改修、②外壁、屋根・天井又は床の断熱改修、③エコ住宅設備の設置、④耐震改修、⑤バリアフリー改修、⑥家事負担軽減に資する設備の設置、⑦若者・子育て世帯による既存住宅の購入に伴う一定規模以上のリフォーム工事等がポイント付与の対象となります。 工事の内容によって2,000ポイントから150,000ポイントが付与され、合計の上限を1戸当たり300,000ポイントとしています。 ポイントの交換商品は食料品や日用品、家電など次世代住宅ポイントの申請はすでに始まっていますが、ポイントの交換申込は2019年10月1日以降の予定となっています。対象商品は米・肉・魚等の食料品、キッチン用品やバス用品等の日用品、テレビや空気清浄機等の家電等が用意されています。アウトドア用品や防災用品、キッズ用品等のカテゴリーもあり、2019年6月12日時点では、約2600件の交換商品が登録されており、今後も増える予定となっています。 ポイント交換があるから住宅を購入したり、リフォームをしたりと考える人は少ないと思いますが、消費税増税を理由として住宅購入を迷われている人はこの次世代住宅ポイントで付与されるポイントと合わせて住宅購入の総費用を検討すると良いでしょう。 現在、新築の住宅購入やリフォームを検討されている人は不動産やリフォームの担当者にこの制度の対象となる部分があるか確認してみてください。なお、この制度の詳細は、次世代住宅ポイントのサイトから確認できますので、参考になさってください。監修者・著者:ファイナンシャルプランナー 大野高志1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®(日本FP協会認定)。独立系FP事務所・株式会社とし生活設計取締役。予備校チューター、地方公務員、金融機関勤務を経て2011年に独立。教育費・老後資金準備、税や社会保障、住宅ローンや保険の見直し、貯蓄・資産運用等 多角的にライフプランの個別相談を行うとともにセミナー講師として活動しています。
2019年06月22日Rock Opera『R&J』の公開ゲネプロが13日に東京・日本青年館ホールで行われ、佐藤流司、仲万美、陣内孝則、鈴木勝秀(脚本・演出)が取材に応じた。同作は、"誰も観たことがない“ロミオ&ジュリエット”として、シェイクスピアの戯曲を鈴木勝秀が大胆に脚色。生歌唱で盛り上げながら、近未来を舞台にした一目惚れの物語を展開する。佐藤は「今回、通し稽古を15回くらいやりましたよね。なのでもう準備万全というところで、あとは本番を楽しむだけ」、仲は「舞台が初めてなので、すごい不安になるのかと思ったら、興奮してしまって。興奮と快感しかない」と頼もしい様子。陣内は「うちの女房には、ロミオ役やるのかと勘違いされて、『高齢者向けの舞台なの?』と言われました」と周囲を笑わせ、「若い女性のファンのハートをガチッとキャッチしたいと思います」と意気込んだ。「Rock Opera」と称した同作について、佐藤は「舞台で歌ったことのない歌い方をしているので、ちょっと聴いていただきたい。心臓に悪い歌い方といいますか、びっくりするような歌もあります」と明かし、「ぶっちゃけ、ロミジュリは予習してこなくても大丈夫です」と強気の発言。「デストロイというか、破壊的な舞台であるということをすごく大切に思ってます」と表現する。さらに佐藤が「ロレンス役の陣内さんも、毎日違うアドリブを随所に入れてきて、半分くらい台本にないですもんね」と暴露すると、陣内は「初日に向けては、台本通りやる。倉本聰先生の作品のようにやる」と弁解し、笑いを誘っていた。脚本・演出の鈴木は「佐藤流司のような、強いハートを持っている若者に出会えて、僕はとても良かった。本当に嬉しかった。万美ちゃんは、強いハートに、激しく共鳴することができて、その2人がロミオとジュリエットで立っている姿を見ると、劇場全体が震えるような気がします」と絶賛。陣内も「流司くんはとにかく達者ですね。歌もうまいし、芝居も長けてるし。万美ちゃんも踊りはとにかくグローバルスタンダートですから、初舞台にして、このセンス。歌に関してもすごく染みる」と実力を褒め称える。また佐藤は「ぶっちゃけダンスとか、少し仕事でやらせてもらうこともあって、『ちょっと俺も踊れるし』とか思ってたけど、次元が違いすぎて」と苦笑。「松田(誠)会長に、万美ちゃんがよすぎて、『お前、もうちょい頑張れよ』ってしっかり発破もかけられた」と明かす。一方、仲が佐藤について「熱いですよね、すごい。両方とも熱い人間で、バカで……」と言うと、佐藤は憮然とした表情に。仲は改めて「流司くんはロミオのような行動をするかわからないけど、(ロミオは)熱くて素敵な人だなと思います」と印象を表した。東京公演は日本青年館ホールで6月14日〜23日、大阪公演は森ノ宮ピロティホールにて7月4日〜7日。
2019年06月13日私は現在40代で、9歳の長女と1歳の次女の父親です。長女誕生後に原因不明の続発性不妊症になったため、治療をおこなっていました。治療期間が約6年間あったため、長女と次女の年齢差が8年あります。長女が幼いころは気にならなかったことでも、40代で新生児を新たに迎え入れたことにより、気になるところが増えてきました。40代パパがおこなった、子育てを楽しむためにしていることをお伝えします。 なんといっても体力勝負!私は、40代での子育ては基本体力勝負だと考えています。抱っこするにも、ベビーカーを運ぶにも、慢性的な睡眠不足対策にも、体力が必要になってきます。 私は体力には自信がありましたが、やはり40代だと若いときと同じというわけにはいきません。そこで、体力ができるだけ落ちないように次女誕生後は、ランニングを始めました。ランニングなら家の近所で気軽にできるうえ、何かあればすぐに帰ることができます。乳幼児を抱えるパパには、とても効率のいい運動でした。 身なりに気をつかうと会話も弾む独身時代、私はそれなりに身なりに気をつかっていましたが、結婚後は「若くないからファッションにこだわらなくても大丈夫」という慢心から、以前ほど気を使わなくなっていました。 ただ、次女誕生後は若いパパ友やママ友とも知り合う機会が増え、私は身なりに少しだけ気を使うように心がけました。そうすると、「○○ちゃんパパってオシャレだね」と言われるようになり、自然に打ち解けることができるようになりました。やはり、若いパパ・ママとコミュニケーションをとる上で、ある程度の清潔感や身だしなみを整える必要性を感じました。 ハプニングを含めて育児を楽しむこと現在2人の育児に励んでいる最中で、長女と次女の育児を比較しても若干の慣れはありますが、やはり頭を悩ますことも多いです。急な発熱や、夜泣き、原因不明のぐずり、予想外のハプニングに加え、慢性的な睡眠不足、育児のストレスなどは長女のときとほとんど変わりません。 ただ、長女のときと違うのは、育児に関するネットの記事やより細かな専門誌など、便利な情報源が増えていることです。そういった情報ネットワークを利用して、子どもの個性を尊重し、育児や家事を楽しむことがとても重要だと私は感じています。 いくら体力に自信があっても、40代になると、若くないと実感させられるシチュエーションも少なくないです。そんななかで周りに流されることなく、自分に体力をつけることで、育児に向き合い、無理なく楽しむことができています。 著者:ライター 吉田直樹二児の父。原因不明の続発性不妊症のため、夫婦揃って不妊治療を数年おこない授かる。グラフィック・Webデザイン事務所を経て、現在グラフィックデザイン・Webデザインのフリーランスとして活動中。
2019年06月12日高齢になると不安になるのが、愛犬、愛猫の病気やケガではないでしょうか。高齢になったペットのためにペット保険に入っておこうかしらと思われる方も多いと思います。今回は高齢のペットにおすすめのペット保険をランキング形式でご紹介するとともに、そのペット保険の評価ポイントについてもわかりやすく説明していきたいと思います。高齢になるほどペット保険は必要?公益社団法人日本獣医師会「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査及び飼育者意識調査2017年6月」以上の調査データから、犬猫ともに13歳以上となると、高齢(13歳以上)になるほど動物病院にかかる頻度と1つの病気での治療費が多くなることがわかります。高齢になるほど病気になって治療を受ける頻度は高くなり、合わせて治療費も増える可能性が高まるといえるのです。高齢の猫・犬におすすめのペット保険ランキングこうした高齢にともなうリスクに対してどのようなペット保険があるのでしょうか。ここからは高齢の猫・犬におすすめのペット保険をランキング形式で紹介していきましょう。ランキングの前提今回のランキングは犬と猫の2種類に分けて掲載しています。犬の代表例として高齢の中型犬、そして高齢の猫にわけてランキングにしました。また比較対象のペット保険は、ペット保険を紹介・比較する情報サイト(※)を調査して、総合的な観点から筆者独自の判断をもとにランキングを選定しています。(※)価格.com、ペット保険STATION、みんなのペット保険、ì保険ペット保険比較サイト高齢の犬のランキングそれでは最初のランキングは犬の代表例として中型犬をとりあげました。中型犬(18~20kg)、ミックス、年齢は10歳にかけるペット保険を比較しています。高齢の猫のランキングそれでは次に高齢の猫のランキングを紹介しましょう。保険の対象とした猫は、年齢は12歳にかけるペット保険を比較しました。高齢で加入できるペット保険犬と猫それぞれで高齢のペット保険についてランキングを紹介しました。犬猫ともに10歳以上の年齢となると、新規で加入できるペット保険の数が限られてきます。したがって、高齢期を既に迎えているペットがいるご家庭は、先ほど紹介したランキングを参考にしてご自身のペットに合ったペット保険を選んでいただければと思います。高齢犬・猫におすすめのペット保険まとめ高齢になったペットのためのペット保険について紹介をしてきました。調査データから分かる通り、高齢になるほど病気などで医療費がかかる割合は増加しますし、1回あたりの治療費も増大する可能性が高まります。高齢のペットのためのペット保険のランキングをご紹介しましたが、残念ながら高齢になることで加入できるペット保険の数は限られます。高齢の分保険料も割高になりますが、医療費が高額になるリスクの備えてとして、必要な補償を準備することを検討いただければと思います。ぜひランキングで紹介したペット保険を参考に、ご自身のペットに合うペット保険を選んでください。
2019年05月14日久々に親に会うと、介護の問題が身近に思えてきます。今年のGWに実家に帰省する予定の人の中には、親の今後について話し合おうと思っている人もいるはずです。親には何歳になっても、元気に過ごしてほしいですよね。高齢者が生き生きと、安心して暮らせる部屋づくりのコツとは?90歳を超えた今も自立した暮らしをしている女性の実例や、寝たきりにならない部屋づくりの方法など、お役立ち記事を3本まとめてご紹介します!■ 90歳を超えても「寝たきりにならない家」にするための3つの条件bino / PIXTA(ピクスタ)高齢になると、筋肉量が減り、足腰が弱くなってしまいます。また、骨密度も減っていくので、骨折しやすくなるという心配もあります。ふとした瞬間に転倒して歩けなくなり、そのまま寝たきりになってしまうケースも珍しくありません。こちらの記事では、79歳から生まれて初めて一人暮らしを始め、92歳の今もその生活を続けている女性をご紹介しています。86歳のとき入浴中に転倒し、一時は寝たきりになるおそれもありましたが、それを乗り越え、今でも元気に活動しているのだとか。寝たきりにならなかったのは、「家」に理由がありました。その3つの条件とは?詳しくは記事をチェック!92才の母が今でも「寝たきりにならない」3つの理由■ 高齢者もアクティブに過ごせる「介護ベッド」って?Mills / PIXTA(ピクスタ)寝たきりになってしまうと、本人が不自由な思いをするばかりか、体の機能の低下や、認知症の発症・進行にも影響します。寝たきりの予防には、「介護ベッド」を使うことがオススメ。上体を自動で起こすことができるので、座って過ごす手助けができますし、座ることで視界が変わって気分も前向きになります。また、寝ているときよりも座ったときの方が肺に空気がたくさん入るため、口腔内の清潔が保たれ、肺炎予防やむせ予防にもなります。このほか、利用者が活動的になる介護ベッドの使い方をレクチャーしています。詳しくは記事をチェック!介護ベッドは寝たきりや肺炎予防に!介護者の負担も激減する使い方■ 介護が楽になる「二世帯住宅」のつくり方maruco / PIXTA(ピクスタ)二世帯住宅をつくるときは、先々の介護まで想定して設計すると、いざというときとても便利です。完全分離型よりも共用部分がある融合型のつくりの方が、空間にアレンジがききます。介護が必要になったら仕切りを外して部屋の間取りを変更するなど、その時々に合わせて部屋づくりを工夫できるので、融合型の方が暮らしやすいようですよ。高齢になっても親に元気よく過ごしてもらうには、ある程度、自立して過ごせるスペースも必要でしょう。どこまでを共用とするか、介護が負担にならない部屋の配置、あると便利な設備など、参考になるアドバイスを盛りだくさんでお届けします!詳しくは記事をチェック!介護しやすい二世帯住宅とは?リビング隣を親の部屋に!
2019年04月20日「介護サービスを利用したときの自己負担額は原則1割、所得によっては2割です。しかし、昨年8月から一定の所得がある人は3割の負担に引き上げられました。“介護費用を軽減したい”という相談は増加しています。そこで、いま注目されているのが、役所での『世帯分離の手続き』というものです」そう語るのはファイナンシャルプランナーの畠中雅子さん。「世帯分離」とは、いったいどんなものなのだろうか?「お金と福祉の勉強会」代表の太田哲二さんが解説する。「高齢者と同居している、またはこれから同居して親を家族で介護する、という家庭は多いでしょう。世帯分離とは、親と同居している状態で、家を“親の世帯”と“子の世帯”の2つに分けることです」なぜ世帯主を分ける必要があるのか。その理由は、日本の社会保障費の計算方法にある。「介護保険料や高額療養費などの社会保障費は世帯ごとの所得に基づいて計算されるため、所得の高い世帯ほど負担が重い。たとえば65歳以上の親が、同居している子の世帯に入っている場合、親の年金収入と子の所得を合わせたものが世帯ごとの所得です。ところが、親だけで1世帯とすれば、社会保障費は親の年金収入のみに基づいて計算されますから、負担がぐんと軽減するわけです」夫と死別した母親(74歳)と同居するA夫婦(ともに50歳)のケースを見てみよう(負担額は自治体によりことなる)。母親の年金収入が年78万円。同じ世帯の場合、子の年収500万円、その妻のパートの年収120万円、親の年金合わせて698万円が世帯所得となるため、介護保険料の支払い額は年間6万3,000円と算出される。しかし分離すると、年金収入78万円で計算するため、ほぼ半額の3万3,600円にまで減る。世帯分離の負担減効果がその本領を発揮するのは、同居している親が介護サービスを受けるようになってからだ。「1カ月の介護保険の負担によって決まる『高額介護サービス費の自己負担限度額』はA夫妻の場合月額4万4,400円ですが、分離すれば月額1万5,000円と大きく減らすことができます」A夫妻の母が、特別養護老人ホーム(以下、特養)に入所した場合、親の収入が年金だけでも、特養(ユニット型個室利用)に入ると月に15万~16万円ほどかかる。「親の預貯金が1,000万円以下ならば、分離をすると特養でかかる費用のなかで食費や居住費が軽減されます。食費は1食460円から130円、居住費は1日1,970円から820円と減り、月々5万円ほどで特養に入所することが可能です」では、A夫妻のようなケースに当てはまらなくても、申請するメリットはあるのだろうか。畠中さんが解説する。「親が75歳未満で、子が勤めている会社の健康保険組合の福利厚生が充実している場合は“保留”にしておくべきでしょう。被扶養者の親にも差額ベッド代が出たり、人間ドックを安く受けられるなどいろんなサービスがあります。しかし、75歳になると、後期高齢者医療制度に移行するため、すべての人が子の健康保険から独立します。後期高齢者は要介護リスクも上がることから、75歳以上の同居親がいる場合は“いますぐ世帯分離すべき”でしょう」世帯分離という考えは、住民基本台帳法が制定されたときからすでにあったが、介護負担の軽減のために用いられることは少なかった、と太田さんは話す。「日本では、年老いた親は家族で面倒をみることが“美徳”とされてきただけに、世帯分離という言葉を聞いて“親を捨てるのか?”と思われる人もいます。しかし、これはあくまで住民基本台帳に基づく手続きであり、戸籍はそのままなので“親と縁を切る”ことではありません。扶養から外れるわけではないので、所得税の扶養家族控除はそのまま。控除と社会保障費の両面でお得なシステムなのです」親と子の世帯分離の手続きは、住んでいる市区町村の役所で行う。「必要なものは(1)国民健康保険に加入している場合は被保険証、(2)運転免許証やパスポートなど本人確認書類、(3)印鑑です。手数料などはかかりません。『住民異動届』の書類に記入して窓口に提出。もし書類がわからなければ窓口で『世帯分離の届出書類はどれですか?』と尋ねればもらうことができます。通常、手続きは5分ほど。注意すべきなのは『介護費用を安くしたい』という理由で申請しないことです。国の意図しない活用法なので、承認してもらえないことも。余計なことを言わず、『親とは生計を共にしていない』と窓口で伝えましょう」(太田さん)
2019年04月17日自宅で親の介護をしている、親が特別養護老人ホームで介護サービスを受けているという人!月の負担額を10万円以上削れる、無料で簡単な手続きがあるのを知っていましたか?「介護サービスを利用したときの自己負担額は原則1割、所得によっては2割です。しかし、昨年8月から一定の所得がある人は3割の負担に引き上げられました。“介護費用を軽減したい”という相談は増加しています。そこで、いま注目されているのが、役所での『世帯分離の手続き』というものです」そう語るのはファイナンシャルプランナーの畠中雅子さん。「世帯分離」とは、いったいどんなものなのだろうか?「お金と福祉の勉強会」代表の太田哲二さんが解説する。「高齢者と同居している、またはこれから同居して親を家族で介護する、という家庭は多いでしょう。世帯分離とは、親と同居している状態で、家を“親の世帯”と“子の世帯”の2つに分けることです」なぜ世帯主を分ける必要があるのか。その理由は、日本の社会保障費の計算方法にある。「介護保険料や高額療養費などの社会保障費は世帯ごとの所得に基づいて計算されるため、所得の高い世帯ほど負担が重い。たとえば65歳以上の親が、同居している子の世帯に入っている場合、親の年金収入と子の所得を合わせたものが世帯ごとの所得です。ところが、親だけで1世帯とすれば、社会保障費は親の年金収入のみに基づいて計算されますから、負担がぐんと軽減するわけです」夫と死別した母親(74歳)と同居するA夫婦(ともに50歳)のケースを見てみよう(負担額は自治体によりことなる)。母親の年金収入が年78万円。同じ世帯の場合、子の年収500万円、その妻のパートの年収120万円、親の年金合わせて698万円が世帯所得となるため、介護保険料の支払い額は年間6万3,000円と算出される。しかし分離すると、年金収入78万円で計算するため、ほぼ半額の3万3,600円にまで減る。「高額療養費の自己負担限度額もA夫妻の親の場合、分離前では月額4万4,000円ですが、分離後は月8,000円に。さらに、国民健康保険料の負担額や後期高齢者医療保険料も下がる可能性もあるのです」世帯分離の負担減効果がその本領を発揮するのは、同居している親が介護サービスを受けるようになってからだ。「1カ月の介護保険の負担によって決まる『高額介護サービス費の自己負担限度額』はA夫妻の場合月額4万4,400円ですが、分離すれば月額1万5,000円と大きく減らすことができます」A夫妻の母が、特別養護老人ホーム(以下、特養)に入所した場合、親の収入が年金だけでも、特養(ユニット型個室利用)に入ると月に15万~16万円ほどかかる。「親の預貯金が1,000万円以下ならば、分離をすると特養でかかる費用のなかで食費や居住費が軽減されます。食費は1食460円から130円、居住費は1日1,970円から820円と減り、月々5万円ほどで特養に入所することが可能です」月10万円以上は軽減できるため、分離前と後では、年間100万円以上も負担額が違うのだ。介護する側とされる側が共倒れにならないように、いまある仕組みをフル活用することが大事だ。
2019年04月17日“おひとりさま”は、元気なうちは、自由気ままにシングルライフを満喫できるが、問題は年をとってからだ。万が一、病気で倒れて病院に入院したとき、「誰が身元保証人になってくれるのだろうか」「死んだ後は誰が手続きをしてくれるのか」――と、将来への不安は尽きない。そんなニーズに応えるために、最近、安否確認や身元保証、死後の手続きなどの代行をパッケージで提供する民間サービスが広がっているが、『ひとり終活』(小学館新書)の著者で、シニア生活文化研究所所長の小谷みどりさんはこう注意を促す。「身元保証や死後の手続きを代行する高齢者のサポートサービスは、費用が想定以上にかかったり、預託金を流用されるといったトラブルに巻き込まれたりすることもあるので注意が必要です。たとえば、ある団体に預託金として約100万円支払ったが、事務経費と身元保証費のみに充てられ、葬儀や遺品の整理など、『死後の手続き』は別料金がかかることを知り、解約したいと思っても返戻金がほとんどなく、『損をした』という声をよく聞きます」(小谷さん・以下同)頼れる親族が身近にいない場合は、まずは自治体で実施しているサービスを、目的別に個別に申し込んで使うと、費用も安く済むという。そこで高齢になり必要になってくるサポートの中から、「身元保証」について小谷さんに解説してもらった。■入院したときの身元保証人は友達でもなれるおひとりさま生活でピンチの1つが、病院に入院してからのこと。手続きの際、病院側から「預かり金」と「身元保証人」を求められるケースがあるからだ。「身元保証人は親族しかなれない、と思い込んでいる人が多いのですが、それは間違いです。入院時の身元保証人には友人でもなれます。さらに、身元保証人がいないことで入院を拒否することは、厚生労働省も『医師法に抵触する』という通達を昨年4月に出しましたので、もし、拒否されることがあれば、すぐに自治体や地域包括支援センターに連絡しましょう」また、賃貸暮らしのおひとりさまは、賃貸住宅や老人ホームに入居する際に「連帯保証人」という大きな壁が立ちはだかる。「入居者が家賃などを支払えなくなったときに代わりに支払う義務を負うのが連帯保証人で、2人以上必要とするケースもあります。配偶者やお子さんがいないとき、60歳以上の人(要介護、要支援を受けている60歳未満の人)は、高齢者住宅財団の『高齢者家賃債務保証制度』と契約している賃貸住宅に引っ越す方法があります」2年保証の場合、家賃24カ月分の35%相当を保証料として財団に支払う。判断能力はあるが体が不自由になったとき、見守りや財産管理を行ってもらう「任意代理契約(生前事務委任契約)」の制度を知っておくと安心。「お願いする相手は、子どもや親族でなくても友人や司法書士、行政書士、弁護士などの専門家でもいい。判断能力があるうちは『任意代理契約』でサポートしてもらい、判断能力が低下してきたら『任意後見制度』に移行できるように2段構えの備えが理想です。任意後見制度は認知症になったときに備えて、財産管理やさまざまな手続きを代行してもらう契約を法的に結ぶ制度。ただし、認知症にならなければ無駄になるので、社会福祉協議会の担当者などと相談しながら決めましょう」任意代理契約は、公証役場で作成した公正証書でなくても契約は結べるが、トラブルを避けるためにも、任意後見制度に移行することを前提にして、公正証書で、両方を一緒に契約する方法が一般的という。セットで契約する際、公証役場に払う手数料は約5万円。このほかに、代理人との間での委託料が月々1万~2万円程度かかる。さらに任意後見制度に進むと、契約時に十数万円から20万円の手数料を支払い、数万円程度の報酬を後見人に毎月支払うことになる。それにプラスして任意後見人を監督する任意後見監督人への報酬も月額1万~2万円かかってくる。依頼主の資金から支払われるので本当に信頼できる相手にお願いすることが大切だという。
2019年04月08日編集部:学研キッズネット編集部お手紙体験を通して、世代を超えた交流が実現2019年3月7日(木)、神奈川県藤沢市にある「ココファン藤沢SST」で、高齢者と保育園児たちがお手紙体験をしながら交流する、世代間を越えた新しい取り組み、学研ココファン×郵便局「はじめてのおてがみ」が開催されました。ココファン藤沢SSTは、保育園が併設されたサービス付き高齢者向け住宅。毎月、高齢者と園児が歌を披露しあうなど、「多世代交流」を行っています。さらに、保育園では郵便局の“お手紙ごっこ遊び”支援キットを使用して、日常的にお手紙ごっこ遊びをしているそう。今回は、高齢者と園児がお手紙交換を行うという、ほっこりするワークショップにおじゃましてきました。ココファン藤沢SSTでは、高齢者と保育園児の交流が盛んに行われているお手玉やあやとりで仲良くなってから、お手紙体験朝、1Fの交流ホールには、約10名の高齢者の方々と20名の園児たちが集合。それぞれがソファや椅子に座り、グループに分かれました。そして、高齢者の方々がお手玉やあやとりを園児たちに教え、レクリエーションが開始。手を取り合い遊んでいると世代の壁も一瞬でなくなり、ひとつにまとまったアットホームな空間が生まれました。園児たちが遊びを覚え、「お婆ちゃんすごい!」「もっと見せて」と歓声が。一方、高齢者の方々も「覚えるのが早いねぇ」「上手じょうず」と、目を細めながら見守る優しい眼差しが印象的です。分からないことは素直に聞き、優しく教えてもらい、うまくできたら褒められる。当たり前だけれど難しくなった、核家族化が進んでいる現在のコミュニケーション問題が、この空間では解消されていました。手を取り合いながら、あやとりを体験ふたつのお手玉を使って、仲良くコミュニケーションそして、15分ほどしてお互い打ち解け合うと、いよいよお手紙体験へ。この時間では、手紙の書き方を学びます。園児たちは、マーカーや色鉛筆などを使って、お手玉やあやとりを教えてくれたお婆ちゃんの似顔絵を。高齢者の方々は、平仮名で書いたメッセージに似顔絵を添えたりして、それぞれが、手紙に想いをしたためました。「上手に描けたね」と一所懸命に書いた手紙は、最後に切手を貼って、2つのポストに投函。「ありがとうございました!」と挨拶をして、ここで高齢者の方々はそれぞれの部屋に戻りました。はじめてのお手紙、上手に書けました!ひ孫さんへの手紙のように、1枚1枚、心を込めて書かれていました手紙を出すときは、切手も忘れずに「どれだけ入っているかな?」手紙をポストに投函人形劇で郵便局の仕事や郵便の仕組みをお勉強高齢者の方々とお別れした後、園児たちはソファに移動し、先生の「どうやって手紙が届くか知っている人?」という質問に元気よく手を挙げ、「ポストに入れる!」「電車!」などハキハキ大きな声で返答。その後、郵便局の仕事を紹介する人形劇を観覧しました。質問に対し、「ハーイ!」と元気よく手を挙げる園児たち人形劇の物語は、主人公の女の子まーちゃんが、お正月に祖父母の家へ行き、公園に連れて行ってもらったお礼の手紙を出すところから始まる。そして「集荷」「消印」「仕分け」「配達」を経て、一週間後に祖父母から返事が届くという手紙の旅を追うストーリー。郵便局の仕事と、手紙が届く郵便の仕組みを学びました。登場する郵便局の乗り物や、仕事、仕組みを真剣に見る園児たち。赤い郵便車やオートバイに、「あー知ってる!」と目をキラキラ輝かせ、仕事の場面では「ハンコ押したい!」など、郵便局の仕事に興味津々。みんな楽しそうに郵便について学んでいました。手作りの人形劇。郵便の仕組みをしっかりお勉強いよいよ手紙を回収して配達へ!そして、いよいよ実演。先ほど学んだことを思い出しながら、高齢者の方々に手紙を届けます。園児たちは、「しゅうか」「けしいん」「しわけ」「はいたつ」と、4つのグループ分けしたバッジを胸に付け、先ほどポストに投函した手紙を高齢者の方々へと届けます。まずは、しゅうか係が2つのポストから手紙を回収。郵便マークがデザインされた青い郵便バッグに手紙を入れて、郵便局となるセミナールームへ。しゅうか係がポストを開けると、たくさんの手紙が出てきました回収した手紙は、郵便バッグにしっかりと入れよう集荷された手紙は、「郵便でーす」と、けしいん係にバトンタッチ。日本郵便のキャラクター「ぽすくま」のイラストがあしらわれたかわいい消印スタンプを手に、1枚1枚ていねいにポンポンと消印を押しました。切手の上に消印スタンプを押すのが、けしいん係のお仕事「ぽすくま」がデザインされた、かわいい消印次に「お願いします!」と任されたのは、しわけ係。手紙に書かれた部屋番号やクラス名ごとに、それぞれ決められた場所に分けてまとめます。表や裏をひっくり返しながら、手紙に書かれた宛先をしっかり確認。お互いの手をクロスさせながら決められた場所に仕分け、間違えたらダメと、真剣な眼差しが印象的でした。「これはアッチ」と、お互いの手をクロスさせる、しわけ係手紙に書かれた部屋番号ごとに、しっかりと仕分け最後は、まだかまだかとウズウズ待っていた、はいたつ係の出番。部屋ごとに分けられた手紙を、郵便バッグに収納。インターホンで「はじめてのおてがみ」に参加したお婆ちゃんの部屋番号を押し、「お手紙でーす!」と元気よく伝えました。エレベーターで降りて出てきたお婆ちゃんに、大切な手紙を手渡し。「よくできたね。ありがとう!」と、お礼の言葉をもらってミッションが終了しました。部屋番号を押してお婆ちゃんを呼ぶ、はいたつ係無事にお婆ちゃんへ手紙を届けられました。読んでね!大役を任された園児たちは、達成感に満ち溢れ「またやりたい」と楽しみながら、郵便の仕組みも学べたようです。ワークショップを終え、参加された高齢者の方々は、「ひ孫のようなかわいい子たちと触れ合うことで、子どものころに戻ったような気分になりました。普段は、お手玉やあやとりはやらないけれど、不思議と昔を思い出して手が動きました。カラダが覚えているんですね」と、園児たちとの交流を楽しんだご様子。一方、園児たちも「お手紙をもらえて嬉しかったし、楽しかった~。またやりたい!」と目をキラキラ輝かせていました。そして、イベント終了後にスタッフの元を訪れ、「また遊びたいからはがきをください」とお願いに。はがきだけでなく、切手や郵便バッグ、消印スタンプなどをプレゼントされ喜んでいました。高齢者の方もたくさんのかわいい手紙にニコニコ新しいコミュニティーは、各世代にメリットがある温かい場所高齢者と保育園児が、一緒にお手紙体験や郵便局の仕事を学びながら、触れ合いコミュニケーションを深めていく。学研ココファン×郵便局による、新しいコミュニティーは心温まる場所でした。最後は、お婆ちゃんから届いた手紙を読んで、手紙の温かさを学んだ1日となりました2時間弱と短い時間でしたが、このワークショップを通して、園児たちは、手紙のやり取りの楽しさや郵便の仕組みを知ることができた、かけがえのない体験となったでしょう。さらに興味が深まるだけでなく、お年寄りをいたわる気持ちやマナーや挨拶が学べたはず。そして高齢者の方々は、笑顔が増え脳の活性化にもつながり、届いた手紙で元気が出たと思います。また、園児の保護者の方々も自分たちより上の世代から、普段忘れてしまいがちな“しつけ”をしてもらえるという、三者三様のメリットがある取り組みだと感じました。学研キッズネット編集部(がっけんきっずねっと)『学研キッズネット』は、1996年にオープンした小・中学生のためのWebメディアです。学研の子ども向け書籍や雑誌の編集ノウハウを活かし、子どもたちが安全に楽しめるサイトとして運営しています。子どもたちのしあわせのために、家族のしあわせのために、有益な情報やサービスをお届けできるよう、いつも精一杯がんばっています。すくすく伸びる子どもたちのために
2019年03月27日今年で92歳になる私の母は、スペインにある私の家の近くのマンションでひとり暮らしをしています。母が生まれて初めてひとり暮らしを始めたのは79歳の時。今もとても元気でなんでも食べますが、一度転んで歩けなくなったことがありました。86歳のとき、1人で入浴した際に、腰を打ち付けてしまったのです。立ち上がるのがやっとの状態からまた歩けるようになり、92歳になった今でも寝たきりにならないのは3つの理由がありました。■ 1.昭和2年生まれのプライドベッドの周りに欲しいものがすべて手に届くように配置しています。腰が痛いだけではなく、腰を打った拍子にいろいろな所に影響が出てしまったのではないかと思います。足の指もうまく動かなくなり、足を左右交互に動かすことができなくなりました。それでも、オムツを拒否して絶対嫌だと言います。昭和2年生まれのプライドでしょうか。仕方がないので、ポータブルトイレをベッドの横に設置しました。ポータブルトイレは今は物置状態ベッドに腰掛ける→ベッドから立ち上がる→ポータブルトイレにつかまり立ちをする→ポータブルトイレに座るこの工程でなんとか1人の時も他人に助けられずに用を足せました。■ 2.車椅子を購入廊下で歩く練習が可能最初は食事を寝室まで持って行っていたのですが、ポータブルトイレもあることですし、食事をするのはやはり居間のほうが気分が晴れます。また、テレビも居間に置いてあるので楽に寝室に行けるように車椅子を購入しました。車椅子で居間に行くようになると、なんとなく機嫌も良いように感じます。自分の部屋であっても、そこから動けないというのは、囚われている気分になるのでしょう。そのような状況を私のブログにも書いていたのですが、経験者の方から「車椅子を買ったのなら車椅子を押して歩いてみるといいですよ」とアドバイスをいただきました。さっそく車椅子を押してみると、右、左と足が自然に動くではありませんか!何度も繰り返して普通に歩けるようになりました。みっともない姿を見せたくないという格好付けの母が練習できたのは廊下が広かったおかげです。そして車椅子があれば家の中ならどこにでも行けるのは「バリアフリー」だから。特別に意識してバリアフリーにしたわけではなく、もともとスペインの家の仕様が敷居がないため、どの家もバリアフリーなのです。もしかしたらそれもスペインでは寝たきりの高齢者が少ない理由なのかもしれません。■ 3.お風呂に手すりをつけるもともとは1人でお風呂に入っていた時に倒れてしまったのが原因で腰を痛めてしまったわけですが、それでも手すりは必須です。現在は私がフォローしてお風呂に入れていますが、西洋式のお風呂は日本のものと比べてバスタブの高さが低く、横になるタイプなので入りやすいと思います。手すりがあるので、自分で力を入れてなんとか1人で上がれるので、補助の必要がありません。ちなみにピソ(マンション)のエレベーターにも手すりがついているので安心です。■ 1人でなんでもできる環境づくりが大事bino / PIXTA(ピクスタ)母は今も1人暮らしをしています。1人暮らしをしていると意外と歩くことが増えて、じっとしているわけにもいきません。それだけリスクも増えますが、動く機会も増えます。最初の画像をご覧になって、散らかってると思われた方もいるかもしれませが、なんでもすぐに取り出せる状態が心地よいなら、とそのままにしています。私が考える寝たきりにならない家の条件は、以下の3つです。バリアフリーで歩く練習のできる廊下のある家周りに必要なものが配置され、簡単に手に取れるようになっている自分1人でなんでもできるようにする工夫がされている寂しくないかしら?とおっしゃる人もいるのですが、自分のペースで暮らせることが合っている人もいます。家族であっても、寝起きの顔を見せたくない、入れ歯を外した顔が恥ずかしいなど、高齢者にも恥じらいがあります。誰でも1人暮らしが最善策というわけではありませんが、自由に1人でいることも選択肢の一つではないでしょうか。
2019年03月26日相続に関する法制度が、今年1月から段階的に変わっている。じつに40年ぶりとなる大改正により、高齢化社会に対応したルールが順次導入されていくことに。相続問題に詳しい行政書士の竹内豊さんは“妻の権利の拡大”に注目する。「夫の死後、妻が1人で生きていく時間は長いので、今回は“残された妻”を保護するための改正が多いのが特徴です。自宅に住み続けるための権利や、介護の貢献によって相続人に金銭を請求できる権利など、妻の権利が広がることになります」残された家族が相続をめぐって争わないために、「遺言書」を書いておきたいが、「家族が仲よしだから」「面倒だから家族に任せる」などと書かない人が多い。相続コーディネーターで、「夢相続」代表の曽根恵子さんは次のように語る。「夫が亡くなって妻と子どもたちが相続するときには、妻を中心に意見がまとまりやすいのですが、子ども同士で親の財産を相続するときは、ささいなことでもトラブルになりがちです。それを防ぐためにも、遺言書を残すなどの対策が必要になります」一般的によく利用される遺言には「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の2つがあり、公証役場に足を運んで、口述しながら公証人が作成する「公正証書遺言」は、遺産の規模によって金額は異なるが、専門家のアドバイスを受けてから作成して、そのまま預かってもらうと20万円程度の費用がかかってしまう。これに対して「自筆証書遺言」は、作成代はゼロだが、財産目録のすべてを直筆で書くうえ、自分で保管しなければならないので、偽造や破棄、隠蔽などの恐れがあり、「遺言を書いても執行されないで、遺品回収業者がタンスの引出しから見つけた」などという話もあるほど。今年1月13日からこの「自筆証書遺言」のハードルが下げられた。「遺言書の添付する財産目録だけは手書きで作成しなくてもよくなり、パソコンの作成や、通帳のコピーも添付できるようになりました。1枚ずつ署名と押印は必要ですが、高齢者たちにとって作成の手間が大幅に省けるようになったのは大きいです」(曽根さん・以下同)父親の遺産を子どもたちで相続する際、「法定相続分どおりに分けるのは不公平だ」と、考える場合がある。たとえば、《長年同居して父の身の回りの世話をし続けてきた長女夫婦に自宅3,000万円と預貯金1,000万円を残して、遠方に住む長男は生命保険金の受取人に指名しておきたい》、というときには、遺言書が必要になってくる。「特にきょうだい同士で離れて暮らす家族は『親をそそのかして自分の都合のいいように遺言を書かせた』といって、離れて暮らすきょうだいからクレームがつくことも。親の看取り方を話し合う過程で、亡くなったあとの話をするなど、ふだんからきょうだい間で話し合っておくといいでしょう」また「自筆証書遺言」を、法務局で預かる制度が来年7月10日からスタートする。財産を残す人の意思を確実に反映するためにも併せて活用したい。
2019年03月16日介護者が肉体的に一番負担に感じるのがベッドでの介助です。寝ている状態からの起き上がり、車椅子への移乗、オムツ交換などは、介護者の体力の負担を高める原因となっています。そんな介護者にとって役立つのが「介護ベッド」。最近の介護ベッドは便利な機能が増えています。その機能と介護者の負担がどのように軽減できるかをご紹介します。■ 寝たきりにさせないための「介護ベッド」高齢者は軽い病気やケガ、あるいは骨折などがきっかけで長期間、安静した結果、寝たきりになる人が多くいます。Mills / PIXTA(ピクスタ)寝たきりになると障害は全身の器官に及びます。認知症の発症や進行にも影響するため、できるだけ起きている状態を保つことが大切です。そこでオススメなのが介護ベッドです。高さ調節や背上げ・膝上げ機能など、介護に必要な機能が備わり、介護者の負担とベッド利用者の快適性を高めてくれます。■ 上体を起こすことで肺炎予防にも寝たきり予防のためには自分で座ることが大事で、余程のことがない限り、上体を起こして生活することをオススメします。ベッドの端に腰かけ、両足を床につけて座ることを「端座位(たんざい)」と言いますが、端座位ができれば上体が起きているため肺に空気がたくさん入ることで口腔内の清潔が保たれるので、肺炎予防やむせ予防にもなるといいます。また、端座位ができれば、ベッド脇にテーブルを用意して食事をすることもできます。上体を起こすには、背上げの操作ボタンを押すだけ。ボタンから指を話すと動きが止まります。ベッドによっては背上げと膝上げが同時に動くタイプもあります。膝が上がることで状態が起きやすくなるようです。■ ベッドの高さを変えることで車椅子への移乗がラクになる介護ベッドは高さを自由に調整ができます。ベッドの高さを調整できるメリットとして、車椅子への移乗のしやすさがあります。Mills / PIXTA(ピクスタ)車椅子への移乗の際は、ベッドの高さを車椅子の座面と同じか、少し高めにして、移動しやすくします。車椅子が高いと、要介護者を持ち上げることになり余計な力が必要になります。反対に車椅子からベッドに移動する場合は、ベッドの高さを少し低くして移乗しやすくします。介護では「寝食分離」という考え方があり、就寝と食事を分け、できるだけ寝たきりにしないよう心掛けています。そのためベッドは寝る場所とし、食事はリビングでとることで生活にメリハリが生まれ、身体機能にも良い効果が期待できます。■ ベッドからの落下を防ぐサイドレールこのほかに介護ベッドの特徴として、サイドレールが付いていることです。サイドレールがあることで、利用者がそれを掴むことで寝返りなどの動作がスムーズに行えることがあります。また、サイドレールを中央に設置することによってベッドからの転落を防ぐことができます。サイドレールは位置を変えることや、取外しが簡単にできるようになっています。なお、ベッドの四方をサイドレールなどで囲うと身体拘束となり、虐待に値します。ただし、それ以外に方法がない場合は例外としています。身体拘束にならないよう、通常はサイドレールはサイドに一つずつ設置されています。■ 時にはベッドの置き場を変えてみることも必要!パナソニック「リショーネPlus(プラス)」ベッドの半分が車椅子に変身ここまで介護ベッドの性能や機能をご紹介してきましたが、時にはベッドを置く場所に変えてみることもオススメします。例えば、リビングにベッドを置いている人もいます。ダイニングで家族と一緒に食事をし、それと同じ空間のリビングでくつろぐことで、子どもや孫が気軽に声をかけてくれます。いつも寝室ではメリハリがないうえ、変化のない、刺激のない環境は認知機能の低下にもつながります。ベッドの中には、ベッドの半分が分離して車椅子のように移動できるものもあります。これであれば、車椅子に移乗しなくてもよいため、介護者の負担は大幅に減少し、無理なく移動できるようになります。いかがでしたか?ベッド一つで介護がラクになることは、まだまだ知られていないようです。ベッドや車椅子はレンタルで利用できることが多く、費用も介護保険により1割負担で借りられます。腰や膝を痛める前に、ぜひ相談してみましょう。相談は、いつも利用されているデイサービスやケアマネージャー、あるいは市役所などでも可能です。【離床アシストロボット 「リショーネPlus(プラス)」】■本体セット内容本体(ベッド+車いす)、木調ボード、ボックスシーツ(2枚1セット)、マットレス(防水カバー仕様)、充電器、車いす用バッテリーキット、車いす用ヘッドレスト■サイズ全長/2,075mm、全幅/1,009mm(車いす合体時)、全高/799~1,079mm■希望小売価格 90万円(税抜・配送・組み立て費用別)【参考】※パナソニック離床アシストロボット「リショーネPlus(プラス)」を発売※日本呼吸器学会呼吸器の病気誤嚥性肺炎
2019年03月13日環境問題への社会の関心を高め、環境保全活動・事業の推進を図ることを目的としたコンテスト「地球環境大賞」(主催/フジサンケイグループ)。先日、第28回が開催され、受賞者が発表されました!受賞したのは、企業や学校など8つの団体。その中には「エネルギー自給自足型住宅」を開発したハウスメーカーもありました。100%再生可能エネルギーだけで暮らせる家が、ついに実現!?環境技術の最先端が分かる「地球環境大賞」について、詳しくご紹介します!■ 大賞受賞は印刷技術を応用した“魔法瓶”みたいなボックス地球温暖化や、環境汚染、エネルギー資源の枯渇など、環境問題は私たちの暮らしのすぐ近くで起こっています。節電やマイバッグの使用、食品廃棄をできるだけ減らすなど、家庭でもさまざまな形で環境に貢献できることがありますね。「地球環境大賞」は、「産業の発展と地球環境の共生」をテーマに1992年から始まり、環境問題に取り組む企業や自治体、学校、市民グループなどの活動を対象にしています。今年の大賞に選ばれたのは、大日本印刷の「DNP多機能断熱ボックス」。印刷のコーティング技術を生かして作られた高断熱性能の輸送用ボックスで、いわば魔法瓶のような機能を持ち、外部の温度変化に左右されずに中身を運ぶことができます。海外への長距離輸送にも使えて、温室効果ガスの削減や、食品ロスの削減につながり、これからの物流業界で大活躍しそうです。■ 積水化学工業の「エネルギー自給自足型住宅」は国土交通大臣賞を受賞!今回の受賞の中でも気になるのが、100%エネルギー自給自足ができる住宅です。開発したのは、積水化学工業。高気密・高断熱で、省エネ性能が高いといわれるセキスイハイムの会社です。国が推進する“環境にやさしい住宅”の指標、「ZEH+(ゼッチプラス)」というものをご存じでしょうか。「ZEH」とは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略です。高断熱でエネルギーを極力必要としない高性能設備でエネルギーを効率よく使い、消費量をさらに削減再生可能エネルギーで自らエネルギーを作り出すこの3つの条件のもと、住宅のエネルギー消費量ゼロを目指します。今年度の地球環境大賞の国土交通大臣賞に輝いたセキスイハイムの「エネルギー自給自足型住宅」は、「ZEH+」の性能を備えています。従来の高気密・高断熱に加えて、大容量の太陽光発電システム(PV)と蓄電池、電気自動車の組み合わせで、暮らしに必要なエネルギーのすべてを自給自足でまかないます。電気もガソリンも購入することがなく、必要なエネルギーはすべて“家”が作り出してくれる。まるで、夢のようなシステムなのです!■ セキスイハイムの「エネルギー自給自足型住宅」は、蓄電エネルギーで災害にも強い家最近は、地震や大雨、洪水など、自然災害の発生が増えて、災害時に強い住まいへの見直しが求められています。家に蓄電池があると、停電になってしまったときでも電気を確保できるので、いざというときに安心です。これからの住宅は、“電力の自立”がキーワードになるのかもしれません。セキスイハイムの「エネルギー自給自足型住宅」は、「スマートパワーステーション 100% Edition」シリーズで、すでに2017年から発売されています。2018年11月には、集合住宅の「レトアAZ」、2019年1月には木質系住宅「グランツーユーV-ZEHモデル」の販売も開始。新築住宅だけでなくリフォームや、高齢者向け住宅、介護施設でも「エネルギー自給自足型住宅」の普及に取り組んでいるそうです。環境問題というと小難しいイメージもありますが、「エネルギー自給自足型住宅」は家そのものが環境への取り組みとなり、普段の何気ない暮らしの中でエコに貢献することができます。次世代を担う子どもたちに、自分の家のエネルギーの仕組みを教えると、教育面にもプラスになりそうですね。このほか、地球環境大賞の受賞団体の情報は、地球環境大賞のサイトでご覧いただけます。身近な企業の環境への取り組みが分かりますよ。興味のある方はぜひ覗いてみてください!【参考】※地球環境大賞
2019年03月08日平成18年に介護保険法が改正され、「介護予防」の考え方やサービスが導入されました。高齢者が増加するなか、介護を必要とせずに自立した老後を送れるように、国や自治体が支援しています。上手にサービスを利用して、気持ちよく楽しい老後を過ごせるように、家族もサービスの概要を知ることが大切です。今回は、親御さんにいつまでも元気でいてもらいたいと思っている人のために、介護予防のサービスについてご紹介します。介護予防サービスとは介護予防サービスとは、これから増加していく高齢者のために、介護が必要にならないよう、主に市町村が提供するサービスです。地域の実情に合わせて、地域全体で助け合いながら、介護が必要な状態にならないように高齢者をサポートしていきます。介護予防とは介護予防は、次の2つを目的としています。高齢になっても自立して生活できるよう、要介護状態になることを予防する要介護になっている人がリハビリテーションで、できることを少しずつ増やしていく生活機能を改善するだけではなく、活動できる場や参加できるイベントなどを企画し、生きがいや自己実現など、生きる目的を持って楽しく過ごせる環境づくりを目指しています。高齢者が自立し介護を必要としなければ、昼間1人でいても、家族は安心して仕事や外出をすることが可能です。高齢者自身にとっても、1人でも大丈夫だということが自信や生きがいにつながります。介護予防サービスと介護サービスの違い従来の介護サービスは介護認定を受けた人だけが対象でした。しかし、介護予防サービスは、介護サービスとは違い、ある程度自分で家事などをできる人が対象です。例えば、1人だと買い物もだんだん大変になっていき、色々な材料を買い込んで料理をしなくなります。簡単に購入できる出来合いのものを食べるようになってしまい、料理をするという活動も少なくなるでしょう。結果的には、生活機能の低下につながります。介護予防サービスでは、ホームヘルパーさんが一緒に買い物に行き、料理の下処理などの手伝いをします。そうすることで、できることを増やし、できないことも少しずつまたできるように促すのです。介護予防サービスは、介護サービスのように全てをホームヘルパーに任せるわけではなく、高齢者が自分でできるようにサポートしていくサービスです。家族が高齢者をサポートすることも可能ですが、できなくなったことを認めたくないという気持ちもあり、うまくサポートできない場合もあります。ホームヘルパーなどの家族以外の人との接触は、生活に張り合いを持たせるというメリットがあり、おすすめです。介護予防サービスを受けられる人介護予防サービスは、要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者で、要支援1及び2の人が対象です。地域包括支援センターが、高齢者ができるだけ自立した生活を送れるようにサポートしていきます。要支援1または2と判定された場合、介護ケアプランをケアマネージャーが作成してくれます。要介護状態にならないように、できなくなったことをリハビリテーションをして改善、サポートしていきます。 介護予防のためのケアプラン介護予防ケアマネジメントを受けて、プランを立ててもらいます。地域には「介護支援専門員」、一般にケアマネージャーと呼ばれている人がいて相談に乗ってもらえます。本人と一緒に、家族もケアマネージャーとプランを立てましょう。介護をしないですむように、老後の生活について話し合える良いチャンスです。家族だけでは話しにくいこともたくさんありますが、ケアマネージャーが一緒だと、掘り下げてプランを立てられます。家族が本音で話せる良い機会でもあるので、できるだけ家族全員で参加しましょう。 自宅で受けられる訪問サービス自分の家に住んで、介護なしで生活できれば理想的です。訪問サービスを受ければ、家族も安心して外出できます。ホームヘルパーの訪問サービスホームヘルパーが訪問して、家事の手伝いなどをしてくれます。目的は、要介護状態にならないように、支援することです。そのため、お手伝いさんのように掃除をしたり、買い物に行ったりするのではなく、一緒に活動します。また、利用頻度は、要支援1で週1回程度で、部屋の掃除はあくまでも高齢者本人が使う部屋のみです。介護予防訪問入浴「自宅に浴室がない」「感染症にかかって家のお風呂や銭湯に入れない」という場合、移動入浴車などを利用し、入浴をサポートします。訪問リハビリ生活機能を上昇させるための簡単な体操などを、理学療法士や作業療法士などが指導し、アドバイスしてくれます。高齢になると筋力が落ちて、体を動かしにくくなることが問題です。体操などで体を動かすことは、脳を活性化することにもつながります。介護予防居宅療養管理指導日常的には1人でなんでもできる状態であっても、通院は難しい場合があります。1人では病院に行けないため、通院をしないで家で我慢してしまうかもしれません。適切な医師や歯科医師の指導がないと、そのまま介護を必要としてしまう状態になりかねません。そのため、医師や歯科医師が自宅を訪問してアドバイスを行います。介護予防訪問看護利用者が自立できるようにすることを目的に、病状のチェックや療養上の世話(食事・排せつのサポートなど)をします。普段の生活が問題なくできる人でも、病に倒れたことがきっかけとなり、要介護状態になることがよくあります。できるだけ自宅で自立した生活が送れるよう、生活機能の低下が起きないように看護師が疾患のある人の自宅を訪問し看護をするシステムです。 施設に通って受けられるサービス介護予防通所リハビリテーションが、いわゆる要介護者のデイケアと同じように、老人保健施設や病院などに通って受けられるアシストです。送迎もドアトゥドアですから、家族のサポートがなくても参加できます。入浴もでき、さっぱりとして帰宅します。食事なども別払いで利用可能です。介護予防のために個々の能力に合わせ、機能訓練やセルフケアなどの指導をしてもらえます。また要支援1、要支援2では支払う料金が異なります。 宿泊して受けられる介護予防サービス介護予防の段階でも、ショートステイサービスが受けられます。仕事などでケアを十分にできない場合など、不在中のことが心配な場合に利用できるサービスです。介護予防短期入所生活介護家族の帰宅が遅くなる日が続く場合や、出張などで家族が不在の場合に、介護老人福祉施設などを利用できるサービスです。食事・入浴などのサポートや機能向上を目的とした体操などの指導が受けられます。介護予防短期入所療養介護(医療型ショートステイ)体調が思わしくない場合に、介護老人保健施設などを利用して、看護やケアが受けられます。看病する人がいない場合に安心できるシステムです。 自宅で始める介護予防まだ1人でほとんどのことができる65歳以上の高齢者が、要介護状態になることを予防するためのサービスを紹介しました。各自治体で用意されているアクティビティーなどの社会参加や日常的に身体を動かすことなどといったことは介護予防に有効です。家族がアクティビティーを見つけたり、お買い物に付き添ったりして高齢者をフォローしていけば、自宅でも介護予防ができます。その上で、早めに専門家の力を借りて要介護状態にならないようにしていくことが大切です。 参考:厚生労働省介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン(概要)公表されている介護サービスについて | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」介護予防サービスの種類(要支援1・2の方が利用できるサービス) – 石巻市介護予防サービスについて|東久留米市ホームページ介護予防サービス/池田市ホームページ介護予防訪問入浴介護厚生労働省これからの介護予防
2019年01月30日帰省で久しぶりに実家の両親に会うと、老いを感じてハッとさせられることがあります。介護の問題は誰にでも起こりうるものです。もしも介護が必要になったとき、何から手をつければいいのでしょうか。介護のエキスパートで関連著書も多い中村さんの記事から、“これだけは知っておきたい”介護に関するお役立ち記事を3本まとめてご紹介します!■ 1.認知症のリスクは誰にでもある!しげぱぱ / PIXTA(ピクスタ)少子高齢化が進む日本では、介護の問題は決して他人事ではありません。内閣府の調べでは2012年の認知症高齢者数は462万人。これは、65歳以上の高齢者の約7人に1人が認知症であるということを意味します。2025年には認知症高齢者数がさらに増えると予測されており、約5人に1人になるともいわれています。また、認知症は高齢者だけの問題ではなく、64歳以下の「若年性認知症」も増加傾向にあります。家族のみならず自分を含めて、誰でも認知症になるリスクを負っていると考えた方がいいでしょう。Ideya / PIXTA(ピクスタ)認知症の初期症状や、放っておくと危険な落とし穴とは?もしも認知症だと分かったときの相談窓口など、今のうちから知識を深めておきましょう。詳しくは記事をチェック!2025年には5人に1人が認知症に!介護問題って何から始めればいい?■ 2.“いい嫁”が「介護うつ」になりやすい!bee / PIXTA(ピクスタ)介護をしている家族が「介護うつ」になってしまうケースがあり、ニュースで事件として報道されることもあります。介護を行うときは負担を抱え込み過ぎないように注意することが大切です。高齢の家族に介護が必要になったとき、誰が中心となって介護を行うかというと、「嫁」であることがほとんどです。「親を介護するのは長男の嫁の努め」という昔ながらの固定観念が、いまだに残っているのかもしれません。KY / PIXTA(ピクスタ)“いい嫁”になろうとひとりで舅・姑の介護に勤しむと、「介護うつ」になる危険性が高まります。こちらの記事では、介護の負担を一人で背負わず、家族や外部に上手に分担する方法をお伝えしています。詳しくは記事をチェック!親の介護ではいい嫁になるな!妻が「介護うつ」にならない方法6つ■ 3.働きざかりで若年性認知症になったら?nonpii / PIXTA(ピクスタ)2018年10月から放送されたTBSのドラマ『大恋愛~僕を忘れる君と』では、若年性アルツハイマーがテーマに取りあげられました。主人公は女性医師で、34歳の若さでアルツハイマーを発症してしまいます。これは特殊なケースのように思われますが、若年性認知症の患者は約4万人もいるのが現実です。体力もあり働き盛りの頃に認知症にかかってしまったら、家族や仕事は一体どうなるのでしょうか。タカス / PIXTA病院や自治体から受けられる支援や、働き続けながら病気と上手く付き合っていくためのアドバイスをお届けします!詳しくは記事をチェック!ドラマ『大恋愛』のケースは現実にもある!若年性認知症の実態って?
2019年01月05日「人生100年時代」といったテーマで、マスコミが高齢化を取りあげ、世間も関心を持つようになりました。高齢単身者の住まいについても注目が集まっています。住宅を所有したほうがよいか、賃貸のほうがよいか論議がすでに行われていますが、今回は、高齢になったときに持ち家の方がよいケースについて考えます。■ 1. 今、高齢単身者の住宅事情は?【IWJ】Image Works Japan / PIXTA(ピクスタ)総務省統計局・平成25年住宅土地調査によると、高齢者(65歳以上)がいる世帯のうち、高齢単身世帯は26.5%。さらに、高齢単身世帯のうち、33.9%は賃貸住宅に居住しています。1-1高齢単身者の賃貸需要と供給はアンバランスまちゃー / PIXTA(ピクスタ)今後、賃貸住宅の需要の多くを支える単独世帯が増加傾向にあります。国立社会保障・人口問題研究所による予測では、2035年の単独世帯(一人暮らしの人)の数は、2015年を100とすると、愛知では110.9、大阪では103.9、東京では103.6、福岡では100.3です。このことから、単独世帯における高齢者構成比は増加し、高齢単身世帯の賃貸需要も増えるといえます。1-2 大家さんは住宅を貸したがらないfreeangle / PIXTA(ピクスタ)高齢単身世帯の賃貸需要が増えてもそれに伴う供給がうまくいかないのが現状です。大家さんは次のことを懸念し、高齢単身者に住居を貸し渋っています。年金収入のみで家賃が払えないのではないか身内が高齢者ばかりで、連帯保証人がいない室内で孤独死する可能性が、若者よりも高いごみ置き場まで歩くのが億劫で、部屋や共用部に溜め込み不衛生になるこれらの理由から、高齢者に住宅を貸したがっていない大家さんが多く、高齢単身者の賃貸住宅の需要と供給のバランスは崩れているのです。■ 2.高齢単身者で持ち家を所有するメリットは?住宅を所有する高齢単身者のメリットと、さらにお得に住む方法を考えてみましょう。2-1 寿命が長くなると、持ち家の方が安く済むEKAKI / PIXTA(ピクスタ)35歳で4,000万円の家を30年ローン、金利1%、頭金、ボーナス返済なしで買ったとします。月の返済は129,000円で65歳には完済します。固定資産税などを考慮しない、純粋な家賃返済の返済金額は4,644万円です。一方、35歳から65歳まで月10万円の賃貸に住み、65歳から90歳まで8万円の賃貸に住んだとします。更新料や初期費用を考慮しない、家賃のみの合計金額は6,000万円です。長生きすればするほど、賃貸は費用が掛かります。持ち家は、支払いが終われば自分の資産になり、売却することもできます。売却の際は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例」が適用になりますので節税も可能です。2-2 住み替えのリスクがないおおたま / PIXTA(ピクスタ)高齢になると、バリアフリーに変更するなど、改修することも考えられます。賃貸の場合は、基本的に入居者都合での大掛かりな工事は認められないので、使い勝手が悪くなったら、住み替えしなくてはなりません。しかし、1-2で述べたような理由で、次の住まいが見つからない可能性があります。持ち家の場合は、自分の家なので、工事は自由です。マンションの場合も、規約による制約はありますが、賃借よりも自由度が高くなります。住宅ローンの審査に通り、支払いさえすれば、無収入でも住み続けることができます。2-3 メリットを多くするためのポイントはPIXTOKYO / PIXTA(ピクスタ)メリットを享受するためには、物件選びの際に次のことが必要です。都心でアクセスの良いところ、駅から近い物件を選ぶ大規模マンションのほうが共用部分のグレードが高く、資産価値が上がる可能性があるタワーマンションの上層階は下層階と評価額は同じでも、資産性は高くなるこれらの条件を満たす物件なら、資産価値が上がり、売却や相続の際に有利となります。■ 3.住宅を買うべきでない場合はこんなケース以上のように高齢単身者が家を持つメリットはたくさんありますが、下記のような人は、住宅購入のメリットが少なくなる可能性があります。該当する人は、デメリットを理解したうえで購入するかどうか判断すべきです。3-1 住宅ローンの返済が65歳以上まであるkai / PIXTA(ピクスタ)多くの人が65歳以上になると給与が減る、仕事に就かないなどの理由で、それまでに比べ、年収が目減りします。今までと同じ金額の住宅ローンを支払うことは、家計の負担になります。そのために、住宅ローンが65歳までに返済できる計画が難しい人は、住宅購入を再検討すべきです。3-2 自宅用に50平方メートル以下の物件を検討しているfreeangle / PIXTA(ピクスタ)住宅ローン控除を受ける際、「延床面積、または専有面積が50平米以上」という要件があります。単身用のマンションを買う場合、この要件に引っかかり、控除を受けられない物件が意外に多くあるので注意が必要です。面積は登記事項証明書に記載されている広さで判断します。50平米未満ですと、登録免許税などのほか税制でも要件から外れるものがいくつかあります。購入するなら50平米以上の物件をおすすめします。3-3 住宅ローンを利用予定だが勤務年数が短いGraphs / PIXTA(ピクスタ)勤務年数が短い人は、審査で落とされる場合があります。また、希望融資額よりも少ない額しか融資されない場合もあります。結婚している人ならペアローンなどで融資を増額できますが、単身の人は、自分の所得のみで判断してもらうため、融資増額の可能性は少なくなってしまいます。現金で補てんする方法もありますが、無計画に現金を充てるのは危険です。あと数年、賃貸や実家に住んでから購入することも視野に入れ、もう一度考えましょう。■ 4.まとめYNS / PIXTA(ピクスタ)寿命が延びるということは、その分、住まいにかかる費用も増えることを意味します。費用面から考えて、若いときから持ち家に住む方が安価な場合も出てきます。高齢になったときの資金返済計画やリフォーム計画を考えて、自分に合っている住まいはどちらか、もう一度考えてみましょう。
2018年12月13日人が移動する経路のことを動線といいますが、住まいの中で無駄のない動線計画によって家事や作業等がしやすくなることはよくあります。ここでは、家の中の高齢者にとっての生活導線や介護の場合の導線など、気にしたいポイントを紹介します。高齢者にとって、家の中の生活導線を短くしたからと言っていいとは限りません。実際に、高齢者の歩く機会が減り、筋力が落ちた、などという声も聞かれるからです。■ 家の中には家事動線や介護の動線が混在しているNOBU / PIXTA(ピクスタ)動線といえば家事動線を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。洗濯室から干し場までの距離をできるだけ短くしたり、リビングを通らないで玄関からキッチンや浴室に行けるようにするなど、いろいろな生活動線があります。では介護についてはどうかというと、トイレや浴室、さらには外出までの経路をできるだけ短く移動しやすい動線にすることはよくあります。PHOTO NAOKI / PIXTA(ピクスタ)■ 家の中で日常的に歩くことも考えてしかし、歩く距離を短くすることが良いかというと、必ずしもそうとは言い切れません。高齢になると筋力も弱まって転倒しやすくなり、あまり外出もしなくなりがちです。家の中では何時間も座ったままということもよくあります。住まいの中で体を動かすことが減少すれば筋力や体力はますます落ちていくでしょう。こうしたことから、できるだけ日常的に家の中で歩くことをオススメします。Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)■ 廊下や段差を利用してリハビリや脳の活性化にそのためには、家の中の動線をあまり短くしないほうが良いように思われます。まだまだ自立歩行できる人は、自然に体を動かすことができるよう、長めの廊下や段差があってもいいように思います。Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)適度な運動の積み重ねは、筋力をはじめ脳の活性化にも役立ちます。リハビリが必要な人は家の廊下を歩いたり、段差や階段を上り下りしたりすることで、毎日少しずつ機能回復することができます。つまり家に住んでいるだけで自然に歩くことになり、結果として最期まで自分で歩いてトイレにも行けるようになる、という効果が期待できます。■ たくさん歩ける動線計画も考えてみる必要以上に便利にして歩く距離を短くしたり、バリアフリーにしたりすると、身体能力の低下を進めてしまうことになりかねません。必要なところと、それほど必要でないところを見分け、歩くための動線計画という発想を持つことも大切でしょう。kou / PIXTA(ピクスタ)新築やリフォームの際は、高齢者が最期まで自分の足で歩き続けられるよう空間や動線の工夫をしてみましょう。■ 意外に大きい歩く効果について適度なウォーキングや有酸素運動は認知症やいろいろな病に効果があることがわかっています。プラナ / PIXTA(ピクスタ)歩数と病気予防の関係を調べている東京都健康長寿医療センター研究所によると、認知症予防に効果があるのは一日5,000歩とのこと。ちなみに、骨粗しょう症やがんには7,000歩という数字も挙げています。もちろん家の中でこれだけ歩くことは難しいでしょう。散歩や買い物、通院なども合わせて、こうした数字を一つの目標にしてみても良いのではないでしょか。【参考】※認知症ねっと認知症予防に効果的な歩数※東京都健康長寿医療センター研究所 研究NEWS No.265 中之条研究
2018年12月09日高齢者にとっての外出は、デイサービスや病院、近隣との交流など、意外に多くあります。新築やリフォームでは、玄関から道路までの外出ルートをいかにスムーズにし、気軽に出かけられるようにするかが重要です。ここでは、要介護者が車いすでも気楽に外出しやすい「玄関まわり」のルートづくりについて紹介します。■ 手すりにつかまり玄関の段差に腰かける認知症高齢者の場合、いずれ車椅子が必要となるのは致し方のないことでしょう。ふじよ / PIXTA(ピクスタ)なかには最期まで自分で歩いて外に出ることができる人もいますが、あくまで少数派だといえます。外出ルートでポイントになるのは、段差をどう解決するかということです。まずは玄関までの通路には手すりを設置し、歩行を助けます。Mills / PIXTA(ピクスタ)歩ける状態であれば手すりにつかまって、ゆっくりと玄関まで進み、段差(框)に腰掛けて靴を履くことができます。近くにベンチがあると、そこに座って靴を履いたり、一息ついたりできる場となります。段差近くの手すりは、横ではなく縦に設置します。Graphs / PIXTA(ピクスタ)床と室内との上り下りや、座ったり立ったりするなど、人の動きが上下になるからです。■ 段差が高い時は「携帯スロープ」を利用して車椅子を移動問題は室内から車椅子を使用している場合です。室内と床との段差が高いときは携帯スロープを利用すると良いでしょう。チンク / PIXTA(ピクスタ)18cm程度の段差であれば、120cmほどの携帯スロープで昇降できます。ただし、玄関の広さは120cmにプラスして介助者と車椅子が動ける広さ(約1~1.5m)が必要となります。スロープで車椅子を使うときに注意したいのは、上りは前向き・下りは後ろ向きで通行するということ。逆にしてしまうと、座っている人が前に落ちる可能性があります。■ 玄関から道路へはスロープやワイドステップで玄関ドアの前のスペース(玄関ポーチ)は、ドアの開くスペースのほかに車椅子がとめられるスペースも確保しましょう。東北の山親父 / PIXTA(ピクスタ)ポーチから道路までスロープを設ける場合、車椅子が無理なく通れる角度と長さを考慮しなければなりません。玄関ポーチと道路との高低差は30cm以上という住宅が多く見られます。勾配1/12(120cm行って10cm上がる)とすれば、30cm上るためには360cmのスロープが必要になります。玄関から道路まで360cmのスロープを確保するのが難しい場合、スロープを住宅の壁面に沿うようにつくったり、「ワイドステップ」にしたりすると解決できることがあります。ワイドステップとは、10cm以下の段差を2、3個つけることで、一つひとつのステップ(階段でいうと足で踏む部分)が短くできる、省スペース型のスロープのことです。30cmの段差の場合でも、2つ段差をつけると1ステップは90cmほどの長さで済み、全長180cmのスロープにすることが可能です。■ 「段差解消機」や「階段昇降機」などの設備も活用できるより手っ取り早く段差を解消するのが「段差解消機」という設備です。ABC / PIXTA(ピクスタ)仮に玄関ポーチが100cmの高さであっても、エレベーターのように車椅子に乗ったまま昇降できるので、スロープをつくる必要はなくなります。また、屋外や室内で階段の上り下りのある住宅の場合、「階段昇降機」という製品もありますので、検討してみてはいかがでしょうか。taka / PIXTA(ピクスタ)これは階段に昇降機が走行するためのガイドレールを設置し、そのガイドレールに沿って椅子が動くという仕組みです。屋外用と室内用があり、費用は平均で50万~60万円。やや高額ですが、補助金が利用できるケースもありますので、考えてみてもいいかもしれません。介護の必要な高齢者が外出する場合、介護者はその対応で体力的にも精神的にも大きな負荷がかかります。障害物のない平坦な通路ならまだしも、階段があり、モノが置かれ、風雨にさらされたりする玄関まわりでは、高齢者とともに介助者の負担も軽減するルートづくりが大切であることを理解しておきましょう。
2018年11月26日介護サービスを受けるときに必要となる、「要介護認定」の申請。きちんと状況に適した判定をしてもらえるかどうか心配になる方も多いでしょう。そこでここでは、要介護認定にかかる期間や判定の基準について解説。認知症など特定疾患の場合の特例についてもまとめました。要介護認定の内容を知って、認定を受ける際の不安軽減に役立ててください。要介護認定の申請から認定までの一般的な流れ要介護認定を申請してから実際に認定された内容が通知されるまでは、一般的に次のような流れで調査・判定が行われます。申請住んでいる市区町村の担当窓口で要介護認定(要支援認定)の申請を行います。認定調査員による訪問調査/主治医意見書市区町村などの認定調査員が自宅や入居している介護施設などを訪問して、現況の調査を行います。また、市区町村から主治医(主治医がいない場合は市区町村の指定医)に依頼が行き、主治医の見解を記した「主治医意見書」が発行されます。一次判定調査結果や主治医意見書の内容をもとに、コンピューターによる一次判定が行われます。二次判定一次判定の結果と主治医意見書をもとに、保健・医療・福祉の学識経験者などが構成する「介護認定審査会」が二次判定を行います。認定通知二次判定により認定された結果が申請者に通知されます。要介護認定の有効期間要介護認定の有効期間は次のとおりです。新規、区分変更申請の場合:原則6ヶ月(状態により3~12ヶ月)更新申請の場合:原則12ヶ月(状態により3~36ヶ月)認定の効力は、新規申請・区分変更申請の場合、申請日にさかのぼって発生します。また、月途中で申請した場合は、申請月+6ヶ月間が有効期間となります。更新申請の場合は、効力の発生は前回の有効期限満了日翌日からです。要介護の認定を継続して受け続けたい場合は、有効期間満了までに更新申請を行う必要があります。更新申請ができるのは、期間満了の60日前から満了日までの期間です。また、状態の変化があったなどの理由で要介護認定の区分を変更したい場合は、有効期間途中でも要介護認定の区分変更申請ができます。申請から認定までにかかる期間要介護認定を申請してから認定の通知が行われるまでは、原則として30日以内です。もしも何らかの理由で30日以内の通知ができない場合は、遅延している理由と認定までにかかると予想される期間が、申請者に通知されます。認定が遅れるケースのひとつが、主治医意見書の発行に時間がかかる場合です。意見書の作成のために改めて診察が必要な場合や、一定回数の診察や検査を受ける必要がある場合などには、主治医意見書の作成に1ヶ月以上かかることもあります。早期の認定を望む場合には、医療機関にあらかじめ、主治医意見書の作成について確認をとっておくとよいでしょう。 要介護認定における要介護・要支援状態区分要介護認定における状態区分は大きく「自立(非該当)」「要支援」「要介護」の3つです。さらに、各区分のなかでも状態によって細かく分けられ、【自立(非該当)|要支援1・2|要介護1・2・3・4・5】の8段階で認定されることになります。このうち、何らかの給付が受けられるのは【要支援1・2|要介護1・2・3・4・5】の7つの区分です。要介護・要支援の違いは?「要介護」と「要支援」は、日常生活において介護を必要とする度合いの大きさによって決まります。具体的な判定の目安は次のとおりです。要介護:継続して、常に介護を必要とする状態。介護給付または予防給付が利用可能要支援:介護が必要な状態の軽減や悪化の防止が必要であり、日常生活を営むのに支障があると見込まれる状態。予防給付が利用可能各区分の状態のめやす要介護、要支援の各区分ごとに、状態のめやすをまとめました。※めやすであり、実際には詳細な審査をもって判定されます。【要支援1】基本的に日常生活はできるものの、入浴など一部に介助が必要なものがある状態。【要支援2】立ち上がり・歩行が不安定、排泄や入浴の一部で介助を必要とする。ただし、適切なサービスを利用することで要介護状態への移行が防げる可能性がある状態。【要介護1】立ち上がり・歩行が不安定。また、排泄や入浴などの一部で介助を必要とする状態。【要介護2】自力で起き上がることが困難。また、排泄や入浴の一部または全てで介助を必要とする状態。【要介護3】自力で起き上がったり寝返りを打つことができない。また、排泄や入浴、着替えなどで全介助を必要とする状態。【要介護4】排泄や入浴、着替えなど日常生活の多くに全面的な介助が必要な状態。【要介護5】日常生活の全般で全面的な介助が必要な状態。 要介護度の判定基準要介護度の判断の基準となるのは、「どのような介護サービスをどの程度必要とするか」です。そのため、病気などの進行度合いと要介護度は、比例しない場合もあることを覚えておきましょう。例:認知症を発症したが、寝たきりであったため徘徊などが起こらず、介護の手間が大きく変化しない場合。要介護認定でどの区分に認定されるかによって給付金の金額が上下するため、不公平が生じないように全国一律の客観的な判定基準が設けられています。訪問調査・主治医意見書では「日常生活自立度」を指標にする認定調査員による訪問調査や、主治医意見書で判定の指標となるのが「日常生活自立度」です。日常生活自立度の判定基準は障害高齢者、認知症高齢者に分けて設定されています。判定基準の具体的な内容は、次のとおりです。《障害高齢者の日常生活自立度》【ランクJ:生活自立】何らかの障害などがあるものの、日常生活はほぼ自立していて、ひとりで外出する。1.交通機関などを利用して外出する。2.近所なら外出する。【ランクA:準寝たきり】室内での生活はほぼ自立しているものの、外出には介助をともなう。1.介助をともなって外出し、日中はベッドから離れて生活することが多い2.外出はあまりせず、日中も寝たり起きたりの生活【ランクB:寝たきり】屋内での生活では何らかの介助が必要。日中も主にベッド上で生活するものの、座っていることができる。1.車いすに移乗して、食事や排泄時はベッドから離れる2.介助されて車いすに移乗する【ランクC:寝たきり】1日中ベッドの上で過ごし、排泄や食事、着替えに介助が必要。1.自力で寝返りする2.自力では寝返りしない《認知症高齢者の日常生活自立度》【ランク1】何らかの認知症があるものの、日常生活はほぼ自立している。【ランク2】日常生活に支障をきたす症状や行動、意思疎通の困難さが多少あるが、誰かが注意していれば自立が可能。2a.家庭外で支障が見られる2b.家庭内でも支障が見られる【ランク3】日常生活に支障をきたす症状・行動や意思疎通の困難さがあり、介護が必要。3a.日中を中心に支障がみられる3b.夜間を中心に支障がみられる【ランク4】日常生活に支障をきたす症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁にみられ、介護が常に必要。【ランクM】重い精神症状や周辺症状、重篤な身体疾患などが見られ、専門医療が必要。 一次判定では「1分間タイムスタディ・データ」を用いる一次判定では、コンピュータシステムを用いて訪問調査などの内容から高齢者を分類し、心身の状況が最も近い高齢者のデータと照らして要介護認定等基準時間を推計。結果をもとに要支援1~要介護5のどこにあたるかを判定します。このときに用いられるのは「1分間タイムスタディ・データ」と呼ばれる調査データです。《1分間タイムスタディ・データとは》介護老人福祉施設や介護療養型医療施設等に入所・入院している3,500人の高齢者を対象に、48時間の間にどのような介護サービスがどれくらいの時間行われたかを調査したデータ。二次判定では、介護認定審査会が一次判定の結果に加えて特記事項や主治医意見書などの個別の内容を総合的に判断し、最終的な要介護度が決定されます。 認知症など特定疾病の場合の要介護認定要介護認定は、基本的には65歳以上の高齢者について介護サービスの必要度を判定するものです。しかし、次の2点を満たす場合には、40歳以上65歳未満(介護保険第2号被保険者)も要介護認定を受けることができます。「特定疾病」と呼ばれる病気にかかっている特定疾病により要介護・要支援状態が6ヶ月以上続くことが予想される特定疾病とは、以下の16種類の病気を指します。がん(末期)関節リウマチ筋萎縮性側索硬化症後縦靱帯骨化症骨折を伴う骨粗鬆症初老期における認知症進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病脊髄小脳変性症脊柱管狭窄症早老症多系統萎縮症糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症脳血管疾患閉塞性動脈硬化症慢性閉塞性肺疾患両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症 要介護認定の判定基準や所要期間を知って無理のない介護を自分自身や家族が介護や支援が必要になったとき、金銭やサービスの補助を受けて負担を軽減するのはとても大切なことです。要介護認定が客観的な基準のもとで公平に行われるものだと分かっていると、申請したときにも安心感がありますね。ぜひ、要介護認定の流れや判定の基準を知識として知っておいてください。 参考:サービス利用までの流れ | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」要介護認定の有効期間と更新・区分変更 – 松阪市ホームページ認定申請日の取扱い/美作市ホームページ[要介護認定]申請から結果通知までの流れ|船橋市公式ホームページ要介護認定は申請してから認定までどれくらい期間がかかりますか。主治医意見書の作成にはどのくらいの期間がかかりますか。|船橋市公式ホームページ要介護度別の状態像の目安堺市要介護認定はどのように行われるか|厚生労働省・介護保険法(◆平成09年12月17日法律第123号)要介護認定に係る制度の概要|厚生労働省認知症高齢者の日常生活自立度・要介護認定における「認定調査票記入の手引き」、「主治医意見書記入の手引き」及び「特定疾病にかかる診断基準」について(◆平成21年09月30日老老発第930002号)認定を受けるには、どうしたらいいの?特定疾病の選定基準の考え方|厚生労働省介護保険制度について – 厚生労働省
2018年11月22日二世帯住宅には分離型と融合(共用)型がありますが、親世帯のどちらかが亡くなり、残された親も介護が必要となったら、融合型のほうが暮らしやすいようです。共用部が多い融合型の二世帯住宅における介護しやすい空間づくりについて紹介します。■ リビングの隣に母の自立した空間を配置親世帯の父のほうが亡くなり、残された母と子世帯とが暮らす二世帯住宅の例を考えてみましょう。千和 / PIXTA(ピクスタ)介護が必要といっても、ある程度のことは自分でできる軽度の認知症を発症し、デイサービスにも通う母とその息子夫婦というケースです。1階は共用のLDKと共用の浴室、そしてリビングの隣に母の部屋を、2階は子世帯の寝室と孫の個室を配置しています。maruco / PIXTA(ピクスタ)母の部屋には、トイレ、洗面所、洗濯室、納戸を設け、庭に面したところを縁側とし、洗濯物の干場にします。miya227 / PIXTA(ピクスタ)洗濯や掃除はこれまで毎日のように行ってきた母に、できるだけ自分の身の回りのことはひとりでやってもらうような環境としています。■ 「引き戸」を使ってゆるやかに閉じる母の部屋はリビングの隣にあることで、話し声や物音が伝わってきて人の気配が感じられるようになります。一緒に過ごしたいと思えばすぐに行けるし、休みたいと思えばすぐに部屋に戻ることができます。両方の間仕切りには引き戸を採用しています。pu- / PIXTA(ピクスタ)引き戸は開き戸に比べて、急に開いても人にぶつかることもなく、余計なスペースも必要ないので気軽に開け閉めできるのが特徴です。病気などで寝込んでしまっても、少しだけ隙間を開けておくと、母の呼ぶ声や行動がわかりやすくなります。完全に閉じるのではなく、ゆるやかに閉じることで人の気配が伝わるようになり、母のほうも不安なく過ごせるのです。■ 高齢者のための配慮と工夫母の部屋とリビングの床はできるだけ近い色調にしています。freeangle / PIXTA(ピクスタ)視力が衰えると、床の色が急に濃くなると、そこが段差だと勘違いしてしまうからです。ダイニングテーブルの定位置は母の部屋に近い位置にしています。リビングには母がくつろげるソファがあり、テレビを観ながら傾眠することもよくあります。リビングの外には庭があり、ソファに座ってゆっくり外を眺めています。polkadot / PIXTA(ピクスタ)キッチンは調理しながら母を見守ることができるよう、対面式キッチンにしています。■ 将来の「車椅子」利用も考慮しておくこともしリビングと母の部屋が少し離れた距離にある場合、歩きやすい幅や車椅子が直角に曲がるための有効開口は廊下・入口ともに80㎝以上となり、幅の広い建具にしておく必要があります。kou / PIXTA(ピクスタ)廊下を歩くということになれば手すりを設置することも想定し、あらかじめ下地を施しておくと良いでしょう。ヨシヒロ / PIXTA(ピクスタ)高齢になると人との付き合いも煩わしくなり、ひとりで過ごすことが多くなります。そのため家族が集まるリビング・ダイニングと母の部屋との距離は近いほうが良いように思われます。その場合、子世帯との距離を考え、孤立しない場所と閉じ込めない工夫が必要です。リビングや浴室など共有できるよう工夫し、空間を完全に分離せず、ほどよい世帯間の距離を保つことが大切だと考えられます。
2018年11月06日真矢ミキ(54)の母親・佐藤雪子さんが心不全のために死去したと10月30日、真矢の所属事務所が発表した。88歳だったという。宝塚歌劇団への入団を勧めたのも、“真矢ミキ”という芸名を思いついたのも雪子さんだった。さらに08年の西島数博(47)との結婚にも、雪子さんからのアドバイスの影響があったという。真矢にとって雪子さんとは、母であり恩人だった。「しかし真矢さんの40歳の誕生日にお父さん、つまり雪子さんの旦那さんが他界しました。すると雪子さんに認知症の兆候が出てきたそうです。心配した真矢さんは夫である西島さんの提案もあり、雪子さんとの同居生活を決心しました」(真矢の知人)雪子さんは16年、尻餅をついた衝撃で骨折。真矢は頼りにしていた母の次第に弱りゆく姿に“老いるとはこういうことなのか”とショックを受けたという。「今年8月、真矢さんは自身のブログで雪子さんについて『今日、母が私を忘れていた』と報告しました。骨折を機に雪子さんは高齢者ホームに入所しましたが、真矢さんの気づかないうちに認知症の症状が進行していたようです」(芸能関係者)真矢は女性セブン18年9月20日号で、「母が私を忘れていた」日について語っている。当初はショックだったようだが、介助を通して“学び”があったようだ。高齢者ホームからの帰り道、彼女はこう考えたという。《神様は親切で、徐々に親が老いていくということ、昔を忘れていくことを、ゆっくり時間をかけて教えてくれている。母の娘から、1人の大人の女性に、勇気を出して受け入れ一歩進みなさいと。そして母が忘れてしまっても、私が母の分も忘れないでいるからねと、心の中に決めた道のりでした》そんな母がいたからこそ、真矢もまた前を向いて歩き続けていた。「真矢さんは『ビビット』(TBS系)に出演するため、平日は朝4時半に起床。帰宅すると雪子さんの介助と家事をこなし、翌日の『ビビット』の準備をして夜11時には就寝していました。とてもハードな生活でしたが、彼女は弱音を漏らしませんでした。そこまで頑張ることができたのも、誰よりもお母さんのことを愛していたからなのでしょう」(前出・芸能関係者)母の老いを受け入れ、最後まで娘としての務めを果たした真矢。さぞ天国の母も、感謝しているだろう――。
2018年10月31日スボレキサント(ベルソムラ®)とは?スポレキサントとは、2014年に販売が開始され、2015年から長期投与が可能になった、比較的新しい睡眠薬です。一般名(有効成分の名称)はスボレキサントですが、商品名としてベルソムラ®の名称も使用されます。人間が持つ生理的なメカニズムを利用して、自然に近い眠りを導く睡眠薬で、かつ副作用や依存性も比較的少ないと考えられています。不眠症にもさまざまなタイプがありますが、スボレキサントはその幅広いタイプの不眠状態に適応されます。しかし、スボレキサントには不安や抑うつ気分を和らげる効果は認められていません。不安や抑うつ気分を伴う不眠に対しては、それらの症状を改善させる他の薬と一緒に、スボレキサントが処方されることがあります。参考書籍:第8巻 増刊号 『睡眠医療特集:オレキシン受容体拮抗薬の登場と不眠症治療のパラダイムシフト』(ライフ・サイエンス,2014)スボレキサント(ベルソムラ®)の特徴出典 : スボレキサントは以前の睡眠薬になかった作用機序の薬です。副作用や依存性が少ないという特徴があります。具体的にどのような睡眠薬なのか、詳しく見ていきます。眠りを制御しているのは「脳」。脳の覚醒や睡眠は、脳内で放出されるオレキシンという物質によってコントロールされています。オレキシンの作用が強いと、脳が覚醒して活発に活動するようになり、逆にオレキシンの作用が弱いと、脳が覚醒状態を維持することができず、眠くなってしまいます。覚醒物質であるオレキシンの働きを阻害すれば、睡眠を誘発できることが分かります。オレキシンは「オレキシン受容体」という部位に結合することで作用するので、スボレキサントによってオレキシン受容体をブロックしてしまうことで、オレキシンが作用できないようにします。この一連の作用が、自然な入眠に導いてくれるのです。これまでの睡眠薬は、睡眠中枢の働きを高めること、極端にいえば脳の働きを強制的にシャットダウンする形で入眠に導いていました。これに対しスボレキサントは、オレキシン受容体拮抗薬(拮抗薬とは、別の物質の作用を妨害する物質のこと)として覚醒中枢の働きを抑える作用があります(スボレキサントの作用機序を参照)。脳が覚醒しようとするのを抑えることで、より自然な眠りに近くなるのではないかといわれています。また、これまでの睡眠薬は耐性ができやすく、飲む量が増えていき、依存性が高く中止するにも非常に時間がかかるというリスクがあります。しかし、スボレキサントは耐性ができにくく副作用や依存性も少ないため、長期服用や副作用があった場合ただちに中止することも可能です。参考:スボレキサント(ベルソムラ®)添付文書参考書籍:第8巻 増刊号 『睡眠医療特集:オレキシン受容体拮抗薬の登場と不眠症治療のパラダイムシフト』(ライフ・サイエンス,2014)スボレキサント(ベルソムラ®)の効果スボレキサントがどのような不眠状態に効果があるのか、どの程度の作用時間なのか、解説します。不眠症にもいくつかタイプがありますが、スボレキサントの効果が期待されるのは、以下の3つのタイプです。・入眠障害…布団に入ってもなかなか寝つけない、眠くならない・中途覚醒…夜中に何度も目が覚めてしまう・早朝覚醒…朝早く目が覚めてしまい、その後再び寝つけない耐性・依存性といった副作用がほとんどない割には、入眠効果が高い睡眠薬です。一方で、二次性不眠症(うつ病や統合失調症、双極性障害などによって引き起こされる不眠症)に対する効果は確認できていません。スボレキサントが効き始めるのは、服用から約10~15分のため、服用後はなるべく早く布団に入ることが望ましいとされています。飲んでから1.5時間ほどで血中濃度が一番高くなり、半減期(薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間)は約12時間といわれています。実際の薬の効き目は、半減期の12時間よりは少ない6~8時間程度であるという臨床結果が出ています。6~8時間というと、成人の平均的な睡眠時間とほぼ同じ作用時間といえます。参考書籍:浦部昌夫、島田和幸、川合眞一/編集『今日の治療薬』(南江堂,2018)参考書籍:第8巻 増刊号 『睡眠医療特集:オレキシン受容体拮抗薬の登場と不眠症治療のパラダイムシフト』(ライフ・サイエンス,2014)スボレキサント(ベルソムラ®)と他の薬の違い睡眠薬は、スボレキサント(オレキシン受容体拮抗薬)を含めて、大きく5つに分類することができます。それぞれの特徴や強さを解説することで、スボレキサントと他の薬の違いを見ていきます。もっとも古い睡眠薬といわれ、手術時の麻酔薬として使われていたこともある薬です。脳の大脳皮質や脳幹に作用して、脳の覚醒を抑えることで、眠気を誘発します。ペントバルビタールカルシウム(ラボナ®)やアモバルビタール(イソミタール®)などがありますが、効き方が強すぎる、耐性・依存性・副作用(呼吸抑制や重篤な不整脈)のリスクもあるため、現在はベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系などが主流となっています。ペントバルビタールカルシウム(ラボナ®)アモバルビタール(イソミタール®)原末バルビツール酸系睡眠薬のリスクの見直しから、「もっと安全な睡眠薬を」と開発された睡眠薬です。脳内の神経興奮に関わるベンゾジアゼピン受容体を刺激することで、脳の興奮が抑えられ眠気を誘います。作用の持続時間によって、超短時間型、短時間型、中間型、長時間型の4タイプに分類されます。多種類に及びますが、代表的なものとしてはトリアゾラム(ハルシオン®)、ブロチゾラム(レンドルミン®)、フルニトラゼパム(ロヒプノール®)などがあります。不安から睡眠障害が起きている場合、抗不安効果があるエチゾラム(デパス®)、アルプラゾラム(コンスタン®)などが処方されることもあります。トリアゾラム(ハルシオン®)ブロチゾラム(レンドルミン®)フルニトラゼパム(ロヒプノール®)エチゾラム(デパス®)アルプラゾラム(コンスタン®)ベンゾジアゼピン系睡眠薬の筋弛緩作用(筋肉を緩めてしまう作用)を減らし、さらに改良したもので、1980年頃から使われるようになりました。これによりベンゾジアゼピン系睡眠薬の副作用であったふらつきなどが改善され、安全性も高まりました。作用機序はベンゾジアゼピン系と同じですが、すべて超短時間型のため、入眠障害のみに用いられています。ゾピクロン(アモバン®)、エスゾピクロン(ルネスタ®)、ゾルピデム酒石酸塩(マイスリー®)などがあります。ゾピクロン(アモバン®)エスゾピクロン(ルネスタ®)ゾルピデム酒石酸塩(マイスリー®)脳内の視床下部という部位から出るメラトニンというホルモンが、脳内のメラトニン受容体に作用すると、自然な眠気を感じます。メラトニン受容体作動薬はメラトニン受容体を刺激することで入眠に導く薬であり、自然に近い睡眠を誘発する点では、スボレキサントと似ているといえます。安全性も高く、耐性・依存性もほとんどありませんが、作用が弱いという欠点があります。現在のところ、メラトニン受容体作動薬はラメルテオン(ロゼレム®)の一薬のみです。ラメルテオン(ロゼレム®)参考書籍:浦部昌夫、島田和幸、川合眞一/編集『今日の治療薬』p.895-905(南江堂、2018)参考:「睡眠薬の適正使用と ベンゾジアゼピン系薬の減量方法 」 | 千葉大学病院スボレキサント(ベルソムラ®)の用法・用量出典 : 通常、成人・高齢者ともに1日1回、就寝直前に経口服用します。新生児、乳児、幼児および小児等への使用実績はなく、安全性は確立できていません。服用して就寝した後、睡眠途中で一時的に起きて、仕事などの活動をする可能性がある場合は服用してはいけません。また、スボレキサントは食事時間によっても入眠効果に影響があるため、食事と同時、または食事直後の服用は控えましょう。スボレキサントには、10mg、15mg、20mgの3種類の錠剤があります。通常、成人は1日1回20mg、高齢者は1日1回15mgを、経口服用します。参考:スボレキサント(ベルソムラ®)添付文書スボレキサント(ベルソムラ®)の副作用スボレキサントは副作用が比較的少ないといわれていますが、ゼロではありません。どんな副作用があり、出た場合はどう対処したらいいのでしょうか。傾眠とは、眠気でウトウトしてしまう状態のことです。スボレキサントは効果の持続時間が6~8時間のため、服用した翌朝以降に影響が出ることもあり、傾眠があるときの自動車運転、機械作業は非常に危険です。運転や危険な作業を避けることが最善策ですが、それでも傾眠が強い場合は、医師と相談のうえ、薬を変更することも検討しましょう。睡眠にはレム睡眠(身体は眠っていても脳が起きている状態)とノンレム睡眠(身体も脳も眠っている状態)がありますが、悪夢を見てしまうのはレム睡眠時です。悪夢の原因が睡眠薬なのか、ストレスの元となっているものなのか、医師と相談しながらしっかり見極めていくことが大切です。スボレキサントの持続時間によって、起き抜けに頭痛がしたり、頭がボーッとする感じが続く原因になることも。頭痛が起きた場合は、医師に相談しましょう。参考:「患者向け医薬品ガイド」(2016年12月更新) | MSD 株式会社参考:「ベルソムラ®錠 10mg、 ベルソムラ®錠 15mg、ベルソムラ®錠 20mg に係る 医薬品リスク管理計画書(RMP)の概要」 | MSD株式会社参考書籍:『睡眠医療特集:オレキシン受容体拮抗薬の登場と不眠症治療のパラダイムシフト』第8巻 増刊号 2014年11月/株式会社ライフ・サイエンス服用前・服用中に注意すべきこと出典 : スボレキサントをはじめとして、睡眠薬は脳に直接作用するため、飲み合わせや飲み方を間違えると、日常生活に大きな影響をおよぼす恐れがあります。特に、禁忌事項はしっかり守りましょう。イトラコナゾール、ポリコナゾール、クラリスロマイシン、リトナビル、サキナビル、ネルフィナビル、インジナビル、テラプレビルとの併用は、してはいけません。これらは、CYP3A(薬の成分を分解して体外へ代謝するための物質)を阻害するので、スボレキサントの作用を著しく増強させてしまう恐れがあるためです。妊娠または妊娠している可能性のある人は、治療上の有益性がリスクを上回ると判断される場合にのみ服用できますが、安全性は確立されていません。また、授乳中に服用する場合は授乳を中止する必要があります。低出生体重児、新生児、乳児、幼児または小児等に対しては、使用経験がないため安全性は確立していません。スボレキサントもアルコールも、ともに中枢神経系に対する抑制作用があるため、重い副作用につながる場合があります。服用中は禁酒しましょう。副作用に傾眠とあるように、スボレキサントによる眠気は、朝だけでなく昼以降にも続いてしまうことがあります。作用時間から考えると昼まで薬が残ることはあまりないのですが、「日中までだるく、眠気が続いて、記憶力が低下したり、運動能力が下がってしまう」という例もあるようです。続くようであれば、医師に相談しましょう。中枢神経の働きを抑制する薬やCYP3Aを阻害する薬、逆にCYP3Aを強く誘導してしまう薬は飲み合わせに注意が必要です。そのほか、体内の雑菌や真菌を外に出す働きの強い抗菌薬などで、ベルソムラとの飲み合わせとして禁忌の薬もあります。必ずお薬手帳などを活用して、自身はもちろん医師、薬剤師にも服用している薬を把握してもらいましょう。参考:スボレキサント(ベルソムラ®)添付文書参考:「ベルソムラ®錠 10mg、 ベルソムラ®錠 15mg、ベルソムラ®錠 20mg に係る 医薬品リスク管理計画書(RMP)の概要」 | MSD株式会社参考書籍:第8巻 増刊号 『睡眠医療特集:オレキシン受容体拮抗薬の登場と不眠症治療のパラダイムシフト』(ライフ・サイエンス,2014)まとめスボレキサントは、「オレキシン受容体拮抗薬」という新しい作用の薬で、これまでの睡眠薬とは違う特徴を持っています。もちろん薬ですから副作用もありますが、従来の睡眠薬と比較すると耐性・依存性が少ない睡眠薬といわれています。とはいえ、それぞれの特徴を知ったうえで、医師や薬剤師と連携し、自身の不眠状態に合った薬を使い分けていくことが大切です。その中で、スボレキサントも選択肢の一つとして検討すると良いでしょう。
2018年10月26日介護をするうえでトイレの問題は最も優先すべきことでしょう。高齢になるとトイレの回数も増えてきますので、介護が楽になるか嫌になるかを左右するほど影響力の大きい問題です。そこで今回は、介護が楽になるトイレづくりのポイントをご紹介します。■ 認知症高齢者が夜中にひとりでトイレに行く危険性夜中に起きてトイレに行くと、眠気や動作の問題でふらつきや転倒の可能性が高くなります。IYO / PIXTA(ピクスタ)認知症高齢者の場合、足腰が弱くなり、視力も落ちているうえ、どこにトイレがあるのかわからないという、トリプルパンチの状態です。トイレの位置がわからないといのは、家の中における各空間の位置関係がわからなくなるという認知症の症状の表れです。いわゆる見当識障害というもので、季節、曜日、住んでいる場所、年齢など、自分を取り巻いている現状が理解できないのです。■ トイレまでの通路は明るく歩きやすい環境に!トイレ問題は寝室からトイレまでの通路と、トイレそのものに配慮する必要があります。深夜に目覚めた高齢者は、トイレに行こうと廊下に出ますが、廊下の照明スイッチが遠いと暗い中を歩くことになります。stockcamerawork / PIXTA(ピクスタ)センサー付きの照明にするか、せめてフットライトは設置したいところです。たむらあ / PIXTA(ピクスタ)人は明るい所から暗い所へ移動したとき、一瞬、視力が奪われ見えなくなります。若い人は10~30秒ほどで見えるようになりますが、高齢者は1~2分もかかります。また、高齢者は光源の輝度が高すぎるとまぶしく感じますので、明るくしすぎないように注意しましょう。寝室では顔の真上に照明を設置しないようにしてください。■ トイレとわかるように張り紙や看板などを設置認知症高齢者はトイレがどこかわからなくなり、あちこち捜し歩くことがあります。できればトイレと書いた用紙をドアに張ったり、看板を取り付けたりして、トイレだとわかるようにしましょう。ThefotosoloNo1 / PIXTA(ピクスタ)トイレのドアは外開きだと、出るときに人とぶつかる可能性があり危険です。できれば横にスライドする3枚引戸タイプがオススメです。Graphs / PIXTA(ピクスタ)ドアは使用中であることがわかるように、部分的にガラスがはめ込まれ、中の明かりが外から見えるタイプにすると良いでしょう。トイレのドアを開けたとき、自動で照明が点くようすると、スイッチを探す必要がなくなります。■ トイレ内は車椅子と介護者が入れる広さにトイレの中は車椅子と介護者(介護をする人)が入れて、さらに中で車椅子が回転できる広さがベスト。hap / PIXTA(ピクスタ)トイレの中には手洗いのできる小さな洗面と、オムツなどが置ける収納棚があると便利です。下着や衣服などの汚れはスロップシンクという専用の洗面台を利用するととても助かります。くまちゃん / PIXTA(ピクスタ)掃除用具や靴、マットなどの汚れ物も手洗いすることができます。■ 将来の介護のために新築時できること将来、親の居室を介護しやすくすることを考え、あらかじめトイレ・洗面準備配管を施しておくこともできます。hap / PIXTA(ピクスタ)必要なときに最小限の工事でトイレ・洗面付きの居室に改修でき、特に車椅子などを使うような頃に重宝すると思われます。ポータブルトイレという方法もありますが、抵抗があるという人もいるでしょう。ちゃんとしたトイレが居室にあれば遠慮なく用が足せ、気持ちよく過ごせます。介護生活が長引くと介護者のストレスが溜まり、心身ともに疲れてしまいます。トイレの問題は早めに対策をすることで、要介護者と介護者がともに辛さから解放され、在宅介護が楽になる大きな一歩となるでしょう。
2018年10月07日どんな子も受け入れられる施設を。保護者のニーズにこたえ、2015年にオープン障害がある子どもの中でも医療的ケアが必要だったり、知的・身体の重複障害がある場合、通える施設が少なく、生活の場が家と園や学校に限られがちです。子どもたちがさまざまな経験をする機会を得られにくいことに加え、保護者も常に子どものケアのために働くことができなかったり、家事や買い物などの日常生活にも困難を感じていることが少なくありません。施設代表の松田さんは、そうした重度障害のある子どもの家族の状況を知り、2015年に重症心身障害児を受け入れるチャイルドケアハース、2016年に知的障害がある子どもを主に受け入れるラーニング、2017年10月にチャイルドケアハース2号店となるアカデミーをオープンさせました。(チャイルドケアハース、アカデミーは医療的ケア児対応施設です)医療的ケア児にマンツーマンの支援を――「チャイルドケアハースアカデミー」での1日Upload By 発達ナビ施設インタビューチャイルドケアハースアカデミーの建物に一歩足を踏み入れると、パステルカラーの壁や建具、壁面に描かれた空の絵が目に飛び込んできました。福祉施設だけれど、おしゃれなかわいいカフェのよう。子どもたちが過ごす空間が、より豊かなものとなるように――支援へのこだわりが、随所にちりばめられています。ここでは、医療的ケアが必要な子ども、重度重複障害がある子どもたちが、指導員とマンツーマンでゆったりと過ごしていました。気管切開をしている子には看護師がつき、体勢を変えたり、吸引をしたりと細やかにケア。定員は5名ですが、登録は35名。天白区にはほかに重症心身障害児や医療的ケア児を受け入れる施設があまりないことから、近隣の区からの利用者もいて、常に定員いっぱいだそうです。Upload By 発達ナビ施設インタビュー訪れた日は夏の終わりの蒸し暑い日。1人ずつ水着になり、自宅ではなかなか難しいプール遊びも。指導員と1対1で、水の感触をゆっくりと楽しみます。それぞれの子どものペースに合わせて過ごせるよう、無理のないプログラムが組まれています。休日はお昼ごはんをみんなで食べます。子どもに合わせて、ペーストにしたり、哺乳瓶を使ったりと、オーダーメイドの対応。また、入浴施設もあるので、通所中にお風呂にも入れます。体力的な負担も大きい入浴介助を施設で行えることで、家族も子どもも生活の質を上げることができます。当事者家族の「こうだったらいいな」に寄り添う姿勢が、そこここで感じられます。重度障害のある子どもたちが過ごす「チャイルドケアハース」、元気いっぱいの子どもたちのもうひとつの家「ラーニング」Upload By 発達ナビ施設インタビュー重度心身障害がある子どもたちを多く受け入れているのが「チャイルドケアハース」です。この日は、大きなテーブルを囲み、小学生から高校生までがトランプに興じていました。高校生のお姉さんは、やさしく小学生をフォロー。児童発達支援と放課後等デイサービスが一緒になった多機能型だからこその、年齢を超えたやりとりが生まれます。フロアで横になり、スタッフからケアを受ける女の子も。ほかの子どもたちのにぎやかな声を聴きながら、リラックスして過ごしています。車いすを利用している男の子2人は、Wiiで対戦。仲良く車いすを並べ、ゲームに夢中です!1日利用の日は、1時間以内と決めてゲームを楽しむこともできるのだそう。「どんなゲームなの?」と声をかけると、ゲームの種類やどんな対戦をしているかなど嬉しそうに話してくれました。Upload By 発達ナビ施設インタビュー同じビルの2Fには、主に身体障害がない子どもたちが過ごす「ラーニング」が。こちらも、幼児から高校生までがアットホームな部屋で一緒に過ごしています。この日は、「お部屋で虫とり大会」が催されていました!段ボール製のかわいい虫を、虫とり網でつかまえて、点数を競います。とれた虫の数をスコアボードに記入するときは、「5匹と6匹だね、合わせて何匹?」とさりげなく計算を促す指導員。高校生の男の子が、ゆっくりしっかり計算します。「11匹だね!」「ぼくが先にやりたい!」と主張する小学生の男の子に、高校生がやさしく諭す場面も。年下の子と関わることで、年長の子どもたちの自己肯定感も自然と育まれるよう。「それがうちの施設の大きな特徴です」と代表の松田さん。代表の松田さんに聞く、設立の背景と、これからの展望Upload By 発達ナビ施設インタビュー施設の代表を務める松田さんは「うちの会社は、必要とされること、つくってほしい・やってほしい・困っている、と言われることだけをやっていきたい」と言います。松田さんは、7年前から、高齢者向けのデイサービスを運営しています。その利用者の家族の「子どもにも重度障害があり、おばあちゃんと子どものW介護で働くこともできない。子ども向けの施設もつくってほしい」という願いが、チャイルドケアハース設立のきっかけ。そのころ、重度心身障害のある子どもが通える施設は、この地区にはなかったからです。現在は、待機が多い「ラーニング」の2店舗目を準備中だそう。重度知的障害や多動性が強い子どもたちもストレスなく過ごせる、広々した施設を年度内にオープンさせる予定です。はたらく人にも寄り添うから、ニーズに合わせた増設も可能にUpload By 発達ナビ施設インタビュー施設の「人を思う気持ち」は、従業員にも向けられています。子どものいるスタッフも無理なく働けるように、「アカデミー」のある建物には、企業主導型保育サービスも併設されています。10人の子どもたちが、9時から17時まで過ごしています。保育士や看護師、児童指導員、PT・OT・STなどの専門性を持っている優秀なスタッフも、子育てとの両立がしやすいから無理なく働ける。だから、質の高いスタッフがそろいやすく、ニーズに合わせた施設の増設もできるのです。「ここだけの常識の中で働いてほしくない」。外資系アパレル出身で、異業種から転身してきた松田さんは「社外研修には積極的に参加してほしい。そのあと押しはできる限りしたい」と、社員のスキルアップにも貪欲。スキルの高い、知見のあるスタッフが子どもたちの支援を担うことで、子どもたちにも保護者にもより満足してもらいたいと願うからです。広い視野を持ち、常に「困っている人」の想いや願いに寄り添い、必要とされる支援をすぐに形にしていく。社会の中でも取り残され、孤独に頑張らざるを得なかった重度障害のある子どもと家族の、強い味方。「チャイルドケアハース」を訪れて、これからの福祉に新しい風を吹き込む、強くて優しいまなざしを感じることができました。撮影/角野 杏早比(FINDFLaG)
2018年10月01日建築家の納谷学さん、納谷新さんの実家について、子ども時代の思い出から、今だから話せるエピソード、実家を巣立つときの心境などをざっくばらんにお話を伺いました。納谷学さん、納谷新さん兄弟は、1993年から共同で建築設計事務所を設立。さまざまな設計するなか、2004年に2人で実家を設計・建築した。そんな彼らにとっての実家とはどのようなものなのでしょうか?納谷ブラザーズの2人にとって実家とは?A. 15分だけでも、やはり帰る場所(学さん)家族それぞれが持つ精神的な存在(新さん)建築業界でも、兄弟でユニットを組む「納谷ブラザース」は稀有な存在です。斬新な作品を発表し続ける2人は、13年前、故郷で両親が住む「実家」を設計しました。以下の写真は、『住まいの設計』2007年3月号でも掲載した納谷兄弟が設計した秋田県能代市の実家。『住まいの設計』2007年3月号「日本海側の冬は寒くて暗いので、とにかく防寒と採光に配慮した」(学さん)という実家は、完全バリアフリーで高齢者向けの工夫が凝らされています。また2階は、窓が四周を帯状に巡り、冬でも 十分に光が入るようにも。両親は「年寄りのための家だ」と満足してくれているとか。そんな新しい実家と少年時代まで兄弟が暮らした実家についての思いを2人に聞きました。(新さん)「実家は本家だったので、人が多かったですね。嫁入り前の叔母2人、祖父母、それに一時は父の兄の家族も一緒に暮らしていたりで、人が多いぶん、思い出もたくさんあります」(学さん)「子どもの頃2階がにぎやかなので上がってみると叔母が角隠しの姿だったのを覚えてます。昔は、家からお嫁に行きましたから」家の前で待つ母親が、実家のイメージ納谷さんの実家は、雪国・秋田の能代市。田舎だからか、よく遊んだのは家の中ではなく、もっぱら外だったという。(新さん)「海や港、線路で遊んだり、虫捕りもよくしました」(学さん)「海は遠かったけど、近所の小学生のお兄ちゃんが行くというので、保育園児の僕は三輪車でついていったら、置いてけぼりに……。たどり着いた海には知り合いが誰もおらず、仕方なく引き返すと、どんどん日が落ちて、べそをかきながら必死にペダルを漕いだなぁ。心配した母が家の前で待っているのを見て、大泣きしましたよ(苦笑)。この原体験で、実家は帰ってくる場所というイメージが植え付けられました(笑)」濃密な思い出が多い実家だが、納谷さん兄弟は実家をどう捉えているのでしょう(学さん)「今は、ちゃんと実家に帰るのは年1回くらい。なるべく秋田の仕事をつくって、15分だけ実家に顔を出して、東京にとんぼ返りということも(苦笑)。それでも、やっぱり実家は帰る場所なんですよ」(新さん)「昨年、就職してひとり暮らしを始めた娘から“年末に帰る”と言われて、僕の家も“実家”なんだと気づきました(笑)。実家って、家族それぞれが持つ精神的な存在なんでしょうね」pfofile納谷 学(写真左)/ 1961年、秋田県生まれ。’85年、芝浦工業大学卒業。黒川雅之建築設計事務所、野沢正光建築工房を経て、’93年、弟の新さんと共同で納谷建築設計事務所を設立する。納谷 新/1966年、秋田県生まれ。’91年、芝浦工業大学卒業。山本顕設計工場を経て、’93年、納谷建築設計事務所を設立。昭和女子大学、東海大学非常勤講師photo koji yamada
2018年09月23日