子どもの「困った行動」を伝えられても困る親たち「〇〇くん、給食のとき、ひとりだけ先に食べ始めてしまうんです」「〇〇さん、いつも出された宿題をやってこないんです」発達に課題のある子の親御さん方は、担任の先生からこんなことを言われたことはないでしょうか?給食や宿題に限らずとも、お子さんのなんらかの「困った行動」を指摘された経験はありませんか。先生としては、学校内での子どもの困った行動を保護者が知らないのはまずいだろう、という判断で言ってくれているはずです。しかし、言われた保護者は内心、こんなふうに思うかもしれません。「給食のときに先に食べ始めてしまうって、学校で起きたことでしょ。そんなことを家庭に言われても困る」「出された宿題をやってこないと言われても……だって、どんな宿題を出されているのかわからないし」保護者から先生へ、具体的な行動レベルのお願いをたとえば、出された宿題をやってこないお子さんのケースを考えてみましょう。中には、口頭で言われただけでは何が宿題に出されたのか理解しづらい、さらに宿題を書いてある板書を書き写すのにも時間がかかる、というお子さんもいるものです。そんな中学1年生のお子さんをお持ちのある保護者の方は、担任の先生に対して、次のようなお願いをしてうまくいきました。「うちの子は板書されたものを書き写すのに時間がかかってしまいます。先生にお願いがあるんですけど……それぞれの教科の先生が出された今日の宿題をまとめて、教室のうしろの黒板に書いていただいて、放課後までそのまま板書を残しておいていただけませんか。子どもには、時間をかけてでも書き写すようにさせますから」このように具体的な行動レベルのお願いは、保護者から先生に対して有効なやり方です。たとえば、「うちの子、先生からほめていただいた次の日、すごくやる気になって、宿題をすごく頑張るんです。何かひとつでもほめていただけると、もっと頑張ると思うんですけど……」と「お願い」するのです。「宿題をしない子」から「毎日宿題をする子」へ保護者から教師へ、具体的な行動レベルのお願いをしたわけです。これでお子さんは「宿題をしない子」から「毎日宿題をする子」に変わることができました。お子さんの特性については、親御さんのほうが先生よりもわかっているはずです。特に発達障害についての知識は、先生よりも親のほうが豊富という場合がしばしばあります。親御さんから先生に対して、「うちの子は口頭の指示だけだと理解しづらいんです。なので、こういう工夫をお願いできませんか」と「お願い」してみてください。学校には「合理的配慮」(障害のある子どもが平等に教育を受けるために、必要かつ適当な変更・調整を行うこと)をする義務があり、教師には配慮する義務があります。保護者からお願いをされたら、(学校生活の中で実現可能な配慮かどうかは検討・相談が必要ですが)断る教師は少ないはずです。もし①担任に伝えてうまくいかなかったら➡②学年主任➡③特別支援担当➡④教務主任➡⑤校長という順に伝えていきましょう。少なくとも、ひとりは優秀な教員がいるものです。できる先生とダメな先生の違いできる教師なら、「子どもがこうすれば理解しやすいんですけど……」と保護者から提案を受けたら(無理ではない提案や要望ならば)快諾してくれることでしょう。ある先生は、保護者からのリクエストをさらにアレンジして、授業中に板書をする際には、大事なところに傍線を引いてくれるようになりました。「そこだけ写せばいいからね」と、子どもにこっそり耳打ちしてくれたのです。次第に、この板書のルールを、学年の先生全体でも共有してくれるようになりました。力があってできる先生は、保護者からの具体的なお願いに協力的です。「あの保護者は、子どもが学校でうまくいくように力を貸してくれている」とありがたく受け止めます。一方、ダメな先生ほど、保護者からのリクエストは「めんどくさいもの」「クレーム」と受け止めがちです。近年は若手の先生が増えています。経験の浅さゆえにお子さんの困りごとに気づかないケースもあります。そんなときこそ、保護者から先生に、先ほどお伝えした「具体的な行動レベルのお願い」をしてみてほしいのです。子どもの担任がダメ教師だったら?最後に、「子どもの担任の先生は、ちょっとダメかもしれない」「ちょっと心配だ」と思う保護者の方向けのアドバイスです。それでも、「担任との関係をあまり壊したくない」という思いがあるのであれば、学年主任や生徒指導主任の先生に相談してみるといいと思います。あるいは、スクールカウンセラーに相談してみるのもいいでしょう。スクールカウンセラーをしているのは、公認心理師、臨床心理士、精神科医、大学の臨床心理学専攻の教員などです。カウンセリングや心理学に関する専門家です。現在、公立のすべての小中学校にスクールカウンセラーが配置されています。子どもたちの悩みを聞くのみならず、保護者と学校の先生をつなぐパイプ役も職務のひとつです。守秘義務がありますので、相談内容が学校に筒抜けになるということはありません。どの先生に相談するかを迷ったら、まず第三者的なポジションのスクールカウンセラーに相談し、その中で「どの先生に相談したらよいか」をカウンセラーに相談してみてはいかがでしょうか。次回は、保護者の方が気になる「先生への要望は、どこまでが正当でどこからが過剰になるの?」という話題について考えていきたいと思います。【著者プロフィール】千葉大学教育学部講師、助教授を経て、現在、明治大学文学部教授。教育学博士。 臨床心理士、公認心理師、上級教育カウンセラーなどの資格を持つ。「教師を支える会」代表。 著書に『教師の悩み』(ワニブックスPLUS新書)、『教師の資質』(朝日新書)、『プロカウンセラー諸富祥彦の教師の悩み解決塾』(教育開発研究所)、『孤独の達人』(PHP新書)、『男の子の育て方』『女の子の育て方』(ともにWAVE出版)、『図とイラストですぐわかる教師が使えるカウンセリングテクニック80』『教師の悩みとメンタルヘルス』『教室に正義を!』(いずれも図書文化社)など多数。
2020年10月06日期間限定配信!オンラインで学べる、「自閉症スペクトラムの人へのコミュニケーションの支援」Upload By noe.tokudaこの講義では、知的に遅れのある方からそうでない方まで、さまざまな年齢の方の具体例をご紹介しながら、穏やかに自己肯定感をもって暮らせるためのコミュニケーション支援について紹介しています。具体的には、理解面・表現面の支援の原則から、援助要請や相談する技術の育み方といった実践的な支援まで幅広く学ぶことができます。講義中は、スライドを用いて講師が解説を進めていきます。Upload By noe.tokudaオンラインでのセミナーを録画したものが、期間中何度でも閲覧することができ、自分のペースで学習を進めることができます。また、期間の最終日には、オンラインで講師に直接質問できる時間もございます。【実施概要】動画の視聴可能期間:2020年 10月17日(土)~10月31日(土)質疑応答(自由参加):2020年10月31日(土) 14時~14時30分【講師】飯塚直美さん(言語聴覚士/よこはま発達相談室・よこはま発達クリニック)【費用】4,950円(税込)【お問い合わせ先】mail : seminar@ypdc.nettel : 045-942-1160一般社団法人 発達精神医学・心理学研究会 セミナールーム大人も子どもも、障害のあるなしも関係なく一緒に楽しめる「カラフルライブフェスティバル」が開催!クラウドファンディングも実施中!Upload By noe.tokuda11月1日に、埼玉県の埼玉会館にて、地域交流型の音楽イベント「からふるライブフェスティバル」が開催されます。「からふるライブフェスティバル」は、大人も子どもも、障害のあるなしも関係なく一緒に楽しむことができるフェスティバルです。昨年度に引き続き2回目の開催になります。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、イベント当日のステージは無観客で、動画撮影を行い、後日、ユーチューブで配信する予定です。また、会場となる埼玉会館では地域の障害者施設による物販や展示を、対面で行います。からふるライブフェスティバルは、「知る・繋がる・楽しむ」をコンセプトとして、音楽を合言葉に集まった、さまざまな人たちが音楽やパフォーマンスを共感することで、今まで接点のなかった“繋がり”を作りだすことを目的としています。今年は無観客での開催にあたり、クラウドファンディングも実施中。支援者へのリターン品として、障害者就労支援施設で製作したグッズや食品を用意しています。【実施概要】日時:2020年11月1日(日曜日)11時~15時(予定)場所:埼玉会館 小ホール&ホワイエお問い合わせ先:colorful.prj@gmail.comアートライフブランド「HERALBONY」が「RAYARD Hisaya-odori Park」にてサステナブル・ミュージアムを開催Upload By noe.tokuda「福祉を起点に新たな文化をつくりだす挑戦」と銘打ったサステナブル・ミュージアムが3か月限定で名古屋に出店します。サステナブル・ミュージアムは、店内壁面を障害のある作家のアートで装飾し、展示終了後に装飾は廃棄されることなく、アートバッグに生まれ変わる。そんな循環型プロダクトを多数展開するショールームとなっています。運営するのは世界を目指すアートライフブランド、HERALBONY。ヘラルボニーは知的障害がある人の無数の個性に着目し、彼ら、彼女らが持つさまざまな「異彩」を、さまざまな形で社会に送り届けようとしています。その取り組みの一つとしてオープンした今回の美術館型店舗。ミュージアムでは、ART NECKTIEをはじめとした「HERALBONY」のアートプロダクトを展開しつつ、名古屋初出店を記念した「BRING x HERALBONY」、「MODECO x HERALBONY」の限定コラボレーション商品及び企画をご用意しております。【実施概要】◆SUSTAINABLE MUSEUM期間:2020年9月18日〜12月27日場所:RAYARD Hisaya-Odori Park(ヒサヤオオドオリパーク)〒460-0003 愛知県名古屋市中区錦3丁目15番10号先営業時間:10:00〜21:00定休日:不定休
2020年09月30日「頭がいい子と性格がいい子、どっちがいい?」子どもの頃、テストの成績がよくなかったとき、筆者が母親によく言っていたそうです(笑)。子どもながらに「 “性格がいい” ほうがいいに違いない」と、確信していたのでしょう。「勉強ができるだけでは生きていけない」というのは、いまや常識。今回は、人生をよりよく生きるための人間力の指標として注目され、認知されてきたSQ(社会的指数)について、ご説明します。生き方の知能指数と呼ばれる「SQ」頭がよい=IQ(知能指数)をご存じの方は多いでしょう。では、SQ(社会的指数)とは何を指すのでしょうか。その前に、IQ、そして感じる知性とも言われるEQを考えてみます。IQ(Intelligence Quotient):知能指数「考える知性」であり、いわゆる頭のよさ。IQが高いほど知能が高く、低いほど知能が低いとされている。EQ(Emotional Intelligence Quotinet):感情指数「感じる知性」「心の知能指数」と言われている。自分の感情を認識してコントロールできる能力。上記が、以前から注目を集めていたふたつの能力指数です。次に、「社会的指数」と呼ばれるSQ(Social Intelligence Quontient)について。EQの進化形として登場した概念がSQです。EQ理論を日本に広めたとされる、アメリカの心理学者ダニエル・ゴールマンは、同調性・自己表現力・影響力・関心(気配り)などの社会的適応能力を測るものとして、これを発表しました。SQは「生き方の知能指数」です。人は他人とのコミュニケーションなしには生きられません。「楽しいね」「困ったね」というさまざまな感情を、友だちと分かち合い、友だちの考え方や行動に心から同感できれば、人間関係はよりよいものとなるでしょう。また、自分の主張を相手が不快に感じないように伝えられる能力も、社会生活に欠かせない力のはず。もし、相手の気持ちを考えずに自分の意見だけを主張していたら……?友だちはきっと離れていってしまうでしょうね。まわりの人たちとうまく関わることができるかどうかは、SQの高低によるのです。SQが高い子、10個の特徴米国CTI認定プロフェッショナルコーチであり、子育て支援活動を行なうUmehana Relations代表の松原美里氏によると、SQは「人と上手に関わりながら社会で生きていくための大切な筋肉」なのだそう。つまり、この能力が高ければ、学校でも社会でも、子どもたちは先の人生をうまく乗り越えていける可能性が高いということ。わが子はどのくらいSQ能力が身についているのか、気になりますよね。松原氏が提唱している「SQが高い子」の10個の特徴をチェックしてみましょう。愛嬌があり、笑顔で会話ができる素直で一生懸命に物事に取り組める正義感が強く、善悪の区別がしっかりと身についている家族を大切にする人の嫌がることをしない、人の気持ちに立って物事を考えられるほめ言葉は気持ちよく受け取りつつも、適度に謙虚で調子にのらない努力することができる、物事を達成する喜びを知っている夢をもっている、未来に向かって前向きである自分の気持ちを表現するのが上手ひとりで抱え込まず、上手に人を頼ることができる松原氏によると、「SQの高い子どもというのは『お互いを尊重できる子』と言い換えることができる」そう。まずは、お子さんが「人を思いやる行動をしているか」を確認してみてください。子どもは親の鏡。子どものミラーニューロンを刺激せよでは、わが子のSQを高めるために、親はどう子どもに関わっていくべきなのでしょう。株式会社MELコンサルティング代表取締役社長の渡辺晴樹氏は、「SQの概念の新しさは、脳科学の裏づけに基づく点にある」とし、「ミラーニューロン」などの脳内細胞がSQに深く関係していると言っています。ミラーニューロンは “ものまね細胞” とも言われ、相手のしぐさからその感情を察知したり共感したりする脳内細胞のこと。たとえば、チームのなかにミラーニューロンの働きが活発なリーダーがいれば、そのチーム全体の共感力が上がり、明るい雰囲気になるのだそう。たしかに学校でも、まわりと上手に関わり合える子や友だちに対して気配りができる子がひとりいるだけで、クラスの雰囲気がぱっと明るくなりますよね。そしてこれは親子・家族間でも同じ。親のミラーニューロンの働きが活発であれば、子どものミラーニューロンも刺激されて活性化するのです。ダニエル・ゴールマン氏は、「親は子どもが最初に関わる『他者』」だと話しています。相手の感情を察知したり共感したりする、子どものミラーニューロンが活発になるかどうかは、親の行動次第ですよ。SQを育むためにできること4つ「子どもは親の鏡」ということを肝に命じて、松原氏が提唱する4つの行動を意識的に実践してみましょう。1. アイコンタクトをたくさんとるアイコンタクトは、言葉がまだ話せない小さい子にとって大切なコミュニケーションツールです。親が子どもと視線を合わせて笑うと、子どもも親を見て同じように笑います。これが、ミラーニューロンによる「共感」の芽生え。ここから、SQが高い子への道が開くのです。2. 表情豊かに接する親が素直な感情を表し、表情豊かに子どもに接することで、子どもは自分の言動が人に与える影響や善悪を自然と学び、社会性を身につけます。自分が「悲しい」「嬉しい」という表情をすると、相手はどんな反応をするのか、子どもは少しずつ覚えていくのです。3. スキンシップや声かけで愛を伝え、絶対的安心感を人と心を通わせられる人間性を身につけるためには、小さい頃のスキンシップがとても大切です。特に、不安なことや環境の変化があったとき、子どもは急に親に甘えてくることがあります。そんなときは、ハグや「大好きだよ」の声かけで、親の絶対的な愛を伝えましょう。「愛されている」という安心感は自己肯定感につながり、共感力へと発展します。4. テレビやインターネットはほどほどにSQを高めるには、リアルな交流に勝るものはありません。リアルな体験を通して身についた人間性のベースがあって初めて、バーチャルでの感動があるのです。アメリカ・ワシントン大学の研究では、2歳以下の子どもに教育番組を視聴させても効果がないことがわかりました。効果がないどころか、言語習得が遅れるという報告も。知育番組に頼りすぎず、リアルなコミュニケーション体験の機会をできるだけ増やしてあげましょう。SQの能力発達には、家族構成も影響するそうです。祖父母と同居、または兄弟姉妹が多いと、人との交流が増えるため、SQは高くなる傾向にあります。ひとりっ子のお子さんの場合は、親との会話を増やす、友だちと遊ぶ時間を増やすなど、特に気をつけてあげる必要がありそうですね。***SQのパイオニアであるダニエル・ゴールマン氏は「暖かな社会の結びつきは人々を幸福にするはずだ」と言っています。子どもたちには家庭でも社会でも、できるだけたくさんの人との交流を通して、SQを育んでほしいですね。(参考)ダニエル・ゴールマン 著, 土屋京子 訳(2007),『SQ生きかたの知能指数』, 日本経済新聞出版社.All About|子供の性格=SQ(社会的指数)の高い子を育てるにはAll About|社会的指数を表すSQとは?子育てにおける7つのポイント株式会社エム・イー・エル|EQの概念をさらに押し広げたSQ「社会性の知能指数」SWISS JAPAN SUPPORT|東洋経済“我が子をKY人間にする親の3タイプ”の記事(2月16日付)。幻冬舎GOLD ONLINE|子どもの可能性は無限大!幼児教育のプロが教える「育脳」の進め方
2020年09月17日学校では教えてくれない、発達障害当事者の「将来」の描き方「進路や職業を考えろと言われるけれど、自分には何ができるのか分からない」年若い、発達障害当事者の友人から、そんな悩みを聞かせてもらったことがあります。「中学、高校、大学と進むにつれて支援が薄くなっていく。我が子の将来をどう考えればいいのか」発達障害のあるお子さんを育てる保護者の方から、そんな不安をお話しいただいたことがあります。発達障害者支援法が制定されてから15年が経ち、「発達障害」という概念やその特徴に対する認知は高まってきました。学校での特別支援教育や、児童発達支援・放課後等デイサービス、就労移行支援といったさまざまな福祉サービスも少しずつ、ですが着実に、充実してきたと言えるでしょう。しかし、思春期・青年期の子ども・若者たちの進路や職業選択に関するサポートはまだまだ手薄いのが現状です。世の中にはさまざまな職業があり、生き方がありますが、このような生の声は学校では教えてくれません。「他の多くの人と同じような人生を送ることはしたくないし、できない、しかし何がやれるのか分からない」「好きなことはあるけれど、自信がなくて諦めざるを得ない」と嘆く子どもたち・若者たちも少なくないと思います。そこでこの度、発達障害の診断のあるミドルエイジの先輩方から思春期の後輩たちに向けた、仕事・人生に関するアドバイスやメッセージを届けていく『すてきなミドルエイジをめざして:発達障がいのある子どもたちの人生設計のために』(仮)という企画をスタートしました。職業やライフスタイル、診断や特性、年齢もさまざまなミドルエイジの発達障害当事者の先輩方のインタビューを重ね、学苑社(特別支援教育関連図書を発行する出版社)さんからの書籍出版を予定しています。今回、LITALICO発達ナビとの連動企画として、書籍出版に先がけて、ウェブ上でのインタビュー記事連載をお届けします。職業も特性も多種多様。ミドルエイジの先輩たちが「自分らしい生き方」に至るまで記念すべき連載第1回は、落語家の柳家花緑さんのインタビューです(2020年9月23日に記事を公開します)。Upload By 鈴木悠平2017年に、発達障害の一種で文字の読み書きが難しいディスレクシア(読字障害・読み書き障害)であることを著書で公表した落語家の柳家花緑さん。幼少期の悩みや、落語家の道を進み、自信をつけるまでの過程を語っていただきました。研究者、事務職、整備士、バーテンダー、作家、心理士、ショップ店員などなど、これからご紹介するインタビュイーの方々の職業や働き方も多種多様です。働き方や生き方に、万人に通じるたったひとつの「正解」というものはありません。「発達障害だから」こういう仕事ができる・できないと決めつけることもできないし、するべきではないと思います。だからこそ、この連載では「答え」を提示するのではなく、多様な先輩たちの多様な生き方と、そこに至るまでの考え方や道のりをなるべく丁寧に共有していきたいと考えています。「これから」を考える思春期・青年期の若い発達障害当事者の皆さんが、自分らしい生き方を考える上での「ヒント」を、それぞれに見つけてもらえるような、そんな連載・書籍にしていきたいと思います。ぜひお読みいただき、感想をいただければ幸いです。企画メンバーからのメッセージ連載企画をスタートするにあたって、企画メンバーからのメッセージです。Upload By 鈴木悠平皆さんの将来の夢はなんでしょう?この企画では、発達障害のあるミドルエイジの人の仕事や生き方にフォーカスしていきます。自分のやりたいことと自分のやれることのギャップに悩んでいる人、障害があることを理由に夢を諦めようとしている人、また子どもの将来に不安を持つ保護者の方にはぜひお読みいただきたいと思います。連載で取り上げられる職業の中には一見、発達障害がある人には向いてなさそうな仕事で活躍している人もいます。自分の特性に周りの環境をいかに合わせるか、先輩達の工夫から「発達障害」の考え方自体が変わるかもしれません。プロフィール:鳥取大学医学系研究科臨床心理学講座教授 LITALICO社外取締役専門は、応用行動分析学、自閉症と発達障害への支援、臨床心理学、特別支援教育。 ペアレントトレーニングシステム、強度行動障害研修プログラム、不登校支援プログラムなどの支援プログラムを開発し、LITALICOジュニアのプログラム監修も務める。学生時代はオフロードバイクにテントを積んで各地を放浪、長らく続いたバイク乗り行動も最近は周囲のご批判から黄色信号。大人になりきれないアラフィフ。井上研究室ホームページ井上雅彦TwitterUpload By 鈴木悠平思春期はどんな人でも悩む時期です。発達障害の特性のある方は、さらに人付き合いや家族のこと、進路で頭がいっぱいになってしまうこともあるでしょう。実際、私も何をやりたいのか、やりたいことがあっても実際にそれで食いっぱぐれずに生活していけるのか、不安だらけだった時期がありました。誰に相談すればいいのかも分かりませんでした。でも、これからご紹介するミドルエイジの先輩たちならば、きっと乗り越えるためのヒントを何かしら知っているはずです。連載、どうぞご期待ください。プロフィール:フリーライター。1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本史学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをし、編集業務を学ぶ。卒業後は一般企業に就職。25歳のときにライターに転身。現在は週刊誌やウェブなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。著書に『私たちは生きづらさを抱えている発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)、『「発達障害かも?」という人のための「生きづらさ」解消ライフハック』(ディスカヴァー21)趣味はサウナと読書、飲酒。姫野桂TwitterUpload By 鈴木悠平進路のこと、仕事のこと、将来のこと。未だ来ずの「未来」のことなんか分からない。「早めに考えてしっかり準備する」なんてこと、僕にはとても出来ませんでした。今もあんまり分かっていません。これから連載を読んでくださる皆さん、特に、思春期・青年期の若い世代の皆さんには、だからどうか、焦らずじっくり、考えたり悩んだりする時間を大事にしてほしいなと思います。今回の企画では合計8名のミドルエイジの先輩方のインタビューをお届けしますが、参考になることもあれば、ならないこともあるでしょう。全部を無理に取り入れようとする必要はありません。でも、たくさんのインタビューの中から、何か1つでも2つでも、皆さん一人ひとりにとって「お守り」となるような、言葉や考え方が見つかると嬉しいな、と思っています。楽しんでもらえると嬉しいです。ぜひ感想もお聞かせくださいね。プロフィール:文筆家/インターミディエイター® 1987年生まれ。株式会社閒 代表取締役。LITALICO発達ナビの初代編集長として、2016年〜2019年4月までの3年間、発達ナビユーザーの皆さんと一緒に歩んできました。現在は独立し、文筆・研究を中心に活動しています。ADHD/ASD混合型。体調を崩したり色々ありながらも、仲間たちと助け合いながら無理なく健やかに働き続ける方法を模索中です。閒 - あわい -鈴木悠平TwitterUpload By 鈴木悠平年を重ねるにつれて、支援は薄くなっていく――これは障害のある子どもを育てる私にとっても常に心のどこかで不安を感じ、懸念していることです。そしてそれは保護者の方が多く感じていることだと思っています。「才能を生かして自立すればいい」と言われ、なぜ障害のある子ばかりがそう言われなくてはいけないのか、そのように吐露してくださった保護者の方は一人や二人ではありません。「手に職を」と言われ、まだ将来の夢も描き切れない幼いうちから職につながる進路選択を迫られることへの悩みを話してくれた中学生もいました。生き生きと等身大で暮らす当事者の取材を通して、将来に悲観することなく、今を大切に生きる道しるべを届けられたらと願っています。プロフィール:LITALICO発達ナビ編集長。慶應義塾大学法学部政治学科卒。大学卒業後、約15年大手出版社で雑誌・書籍の編集に従事。その後、事業会社の広告宣伝部を経て現職。子どもは高校生と小学生の2人。長女には先天性の重度知的・身体障害がある。発達ナビ上でのダイアリーへの投稿、コラムへのコメント投稿、編著メンバーのSNSへのリプライなども大歓迎です。
2020年09月11日「都道府県名がなかなか覚えられない」と悩む子は少なくないはず。すぐに記憶できて忘れにくい都道府県の覚え方があったら、知りたいですよね。2020年度より実施されている新学習要領には、「第3学年及び第4学年の県の様子に関する学習において47都道府県の名称と位置を指導すること」とあります。都道府県名だけでなく、都道府県の位置まで覚えなければならないのです。小学校中学年にはなかなか根気のいる学習になるかもしれません。でも大丈夫。覚え方を工夫すれば、簡単に47都道府県を覚えられますよ。都道府県の覚え方にコツはある?都道府県の覚え方のコツは、「脳が覚えやすい方法で記憶すること」です。では、脳が覚えやすい方法とはどんな覚え方なのでしょう。日本記憶力選手権大会で6度の優勝経験がある池田義博氏は、「記憶が苦手だという人は、そう思いこんでいるだけ。脳にまかせておけば、きちんと記憶してくれる」と言っています。覚えるべき情報を、脳が理解しやすいかたちに加工することで、脳がしっかり覚えてくれるのだそう。まずは、脳が理解しやすい記憶の仕方を知ることがとても大切です。脳科学者の篠原菊紀氏は、著書『子供が勉強にハマる脳の作り方』のなかで、「脳が理解しやすい覚え方」はタイプによって異なると説明しています。【聴覚派】耳から入ってくる情報が理解しやすい→歌を聴いて覚える、語呂合わせで覚える【視覚派】目からの情報が理解しやすい→アプリで覚える、本を読んで覚える【身体感覚派】身体感覚と理解が結びつきやすい→ゲームで覚える、歌を歌って覚えるみなさんのお子さまはどのタイプでしょうか。これから紹介する都道府県の覚え方をいくつか試してみて、ぴったりの覚え方を見つけてみてくださいね。篠原氏によると、脳は「感動なしの記憶」が苦手なのだそう。だから、何かを覚えるときはワクワクするような「快」の気持ちで覚えることが重要です。「おもしろい!」など、覚えたいことに感動することで、記憶効率が高まっていきますよ。次項からは、子どもたちが「おもしろい!」「楽しい!」と思えるような、47都道府県の覚え方を紹介しましょう。都道府県 覚え方1:歌で覚える最初に紹介する覚え方は、歌を聴いたり歌ったりして都道府県を覚える方法です。名古屋大学教授の清河幸子氏らの研究発表(2014年)によると、「メロディつきの情報」は、ただ「見るだけ・読み上げただけの情報」よりも記憶しやすいのだそう。また、ウォータールー大学教授のコリン・マクラウド氏は、「覚えたい内容を声に出すことで、その内容が忘れにくくなる」と言っています。たとえば、「私はドアの鍵をかけた」と声に出すことで、戸締まりしたことを忘れにくくなるのだそうです。ということは、都道府県名が入った歌を何度も歌えば、効率よく都道府県が覚えられると言えるでしょう。都道府県が簡単に覚えられる曲を紹介しますね。◆名産品や観光名所も覚えられる曲4人組ガールズユニット・ももいろクローバーZが歌う『ももクロの令和ニッポン万歳!』は、都道府県名だけでなく、名産品や観光名所、イベントなど、その土地の特徴まで覚えられる歌です。また、「北海道地方・東北地方・関東地方・中部地方・近畿地方・中国地方・四国地方・九州地方」の地方区分も歌詞に入っています。「茶畑と両親に育てられました 静岡県」「どんどんどんどんどんうどん 香川県」「渦潮みれなかった 徳島」など、歌詞がユニークなので、つい何度も聴いてしまいそうです。◆県庁所在地も覚えられる曲シンガーソングライターとして活躍する森高千里さんが1992年にリリースした『ロックンロール県庁所在地』は、47都道府県すべての県庁所在地が歌詞に入っている曲です。県名と県庁所在地が異なる場合のみ、「福島 山形 宮城は仙台」のように「県名+県庁所在地」となっています。都道府県名も県庁所在地もどちらも覚えられるお得な曲です。ちなみに、1992年の発表当時は「浦和」だった埼玉の県庁所在地は、2001年に歌詞が「さいたま」と変更されています。◆都道府県の位置が覚えられる替え歌兵庫県川西市が運営する「川西市公式チャンネル」で公開された『小学4~6年生【社会】都道府県の歌』は、童謡『雪やこんこ』や『むすんでひらいて』などの替え歌です。都道府県を覚えるための替え歌は、数多く存在しますが、ほとんどの替え歌は短いメロディーを何度も繰り返したり、1曲のなかに47都道府県名が入っていたりするもの。もしかしたら、1番と2番の歌詞を歌い間違えてしまうかもしれません。しかし、この『小学4~6年生【社会】都道府県の歌』は、地方ごとに違うメロディーになっているので、歌詞を間違うことは少ないはずですよ。【北海道地方・東北地方】『雪やこんこ』北海道の下にあるのは東北地方でございます青森、岩手、秋田県宮城、山形、福島県【関東地方】『かたつむり』関東地方は都会だよ茨城、栃木、群馬、千葉、埼玉、東京、神奈川県【中部地方】『アルプス一万尺』中部地方は、新潟、富山、石川、福井、岐阜、山梨、静岡、愛知県【近畿地方】『ゆかいな牧場』近畿地方は2府5県滋賀県京都府兵庫県三重奈良大阪和歌山県【中国地方・四国地方】『むすんでひらいて』中国地方、鳥取、島根、岡山、広島、山口県四国地方、香川、愛媛、徳島、高知【九州地方】『春が来た』九州地方、大分、福岡、佐賀、長崎、宮崎、熊本、鹿児島県、沖縄県1都、1道、2府、43県(引用元:YouTube|小学4~6年生【社会】都道府県の歌)実際に歌ってみるとわかるのですが、この替え歌メドレーは歌いやすくて覚えやすい。それもそのはず、この曲の作成者は、子どもの頃、47都道府県を覚えるのにかなり苦労したそうなのです。だからこそ、覚えやすい替え歌ができあがったのでしょう。『小学4~6年生【社会】都道府県の歌』作成者からのメッセージをお伝えしますね。<こどもまなび☆ラボ読者のみなさまへ>私は小学生の頃、都道府県名を機械的に覚えようとしましたが、東北地方しか覚えられませんでした。子どもたちにはもっと楽しく、確実に覚えさせてあげたいなと思い、替え歌に目をつけました。都道府県の歌はいろいろ出回っていますが、同じメロディーを何度も繰り返しながら歌うものが多いです。しかし、それだと一番の歌詞と二番の歌詞を間違えて歌ってしまうことがあります。そこで、地方別に違う曲で歌っている都道府県の歌はないものかと探してみましたが、ありませんでした。ないなら自分でつくってしまおうと思い、この替え歌をつくりました。ちなみに、出てくる都道府県の順番は、東から西へ、北から南へと規則正しい順番になっています。せっかく歌を覚えても地図上の位置がわからないというのではかわいそうなので、順番にもこだわりました。この歌で都道府県を覚えた児童のなかには、都道府県のテスト中に「先生、歌ってもいい?」と鼻歌を歌いながら解く子もいました。子どもになじみのある童謡をメドレー形式にしたので、楽しく歌って覚えてくれたらいいなと思っています。地図帳とにらめっこをしていても、47つもある都道府県名を覚えるのはなかなか難しい……。でも、「歌」を取り入れた覚え方であれば、かなり効率的に都道府県を覚えられるのではないでしょうか。都道府県 覚え方2:語呂合わせで覚える次は、都道府県を語呂合わせで記憶する覚え方です。『記憶のふしぎがわかる心理学』『記憶力の正体』などの著書をもつ教育心理学者・高橋雅延氏は、「暗記のコツは『覚えるのではなく理解すること』、つまり意味のないものに意味をつける “語呂合わせ” 」だと言っています。子どもの頃、「白紙(894)に戻そう遣唐使」など、歴史年号を語呂合わせで覚えた親御さんも少なくないのではないでしょうか。語呂合わせを使うと暗記がラクになるのは、「記憶の精緻化(せいちか)リハーサル」が行なわれるからです。精緻化リハーサルとは、「覚えたい情報」と「別の情報」とを関連づけて覚えやすくすること。たとえば、「遣唐使、894年」を覚えたい情報とするならば、「白紙(894)に戻そう」という別の情報を関連づけるのです。記憶に「別の情報」という “何らかの手がかり” を残すことで、もし忘れてしまったとしても、記憶の糸をたぐり寄せて思い出すことができます。また、語呂合わせは自作がおすすめです。脳に関する著書が多い、脳研究者・池谷裕二氏によると、記憶には「知識記憶(頭で覚えた情報などの記憶)」と「経験記憶(過去の体験などに関連した記憶)」があり、「知識記憶」のほうは、きっかけがないとうまく思い出せないのだそう。しかし、「経験記憶」は自分自身が経験していることなので、記憶を簡単に引っ張り出すことができるのです。自作の語呂合わせは、「自分でつくった」という経験がそのまま「経験記憶」に結びつくので、記憶しやすく忘れにくい。たとえば、以下のようなイメージでつくってみましょう。「中国にある、取り残された島は広い。しかし山はない」(中国地方)中国→中国地方とりのこされた→鳥取県島→島根県広い→広島県山→山口県「エイ姫様は、高そうな香りがするなあ。姫様がいるなんて、四国はお得だね!」(四国地方)エイ姫様→愛媛高そう→高知香り→香川得→徳島親子で一緒に「語呂合わせ」をつくってみてはいかがでしょう。都道府県の覚え方としても、もちろん効果的ですが、親子コミュニケーション術としても効果がありそうです。都道府県 覚え方3:アプリで覚えるゲーム感覚で、楽しく都道府県を覚えたいというお子さまには、アプリを利用した覚え方もいいでしょう。レベル別に3つのアプリをご紹介します。【レベル1:初めて都道府県を学ぶ子】「はじめての地図タッチ-47都道府県を覚えよう!」(iOS)は、初めて「地図」や「都道府県」を学ぶお子さまにぴったりな知育アプリです。都道府県をタッチすると、「千葉」「大分」など、アプリの音声が読み上げてくれます。都道府県名は、すべてひらがな表示なので、漢字が読めないお子さまでも遊ぶことができますよ。【レベル2:都道府県名を完璧に覚えたい子】「すいすい都道府県クイズ – 都道府県名パズル」(iOS/Android)は、都道府県の位置をパズル形式で学ぶアプリ。地方別に出題されるので、都道府県を少しずつ覚えることができるでしょう。また、県ごとに「過去5回分」の正誤記録が表示されます。覚えにくい都道府県が把握できるので、回数を重ねるごとに正解数が増えていくはずです。【レベル3:日本の地理をとことん極めたい子】「【令和】全市区町村パズルまぷすた!」(iOS/Android)も、都道府県パズルができる教育アプリ。しかし、このアプリで学べるのは「都道府県」だけではないのです。「県庁所在地」のほかに、「山脈、山地、高地」や「河川」まで学べます。「もっと学びたい!」というお子さまは、日本全国にある1,724(2020年8月時点)の市区町村がピースになったパズルに挑戦してみてください。アプリを利用した覚え方なら、楽しく遊んでいるうちに、47都道府県を覚えてしまうかもしれませんね。都道府県 覚え方4:ボードゲームで覚える次に紹介するのは、ボードゲームを使った都道府県の覚え方です。「教育へのボードゲームの応用」を研究している、名古屋大学教授の有田隆也氏によると、ボードゲームには「考える喜びを知り、思考の基盤のトレーニングになる」という教育効果があるそうです。また、世界で活躍するポジティブ心理学エキスパートであるキャロライン・アダムス・ミラー氏も、ボードゲームの教育効果を認めているひとり。著書『実践版GRIT やり抜く力を手に入れる』では、ボードゲームで以下の力が鍛えられるとしています。高い集中力想像する力忍耐力注意力計画性都道府県名を覚えるだけでなく、集中力や忍耐力といったさまざまな力が育まれるのであれば、親として嬉しいかぎり。さっそく3つのボードゲームを紹介しますね。【『ドラえもん』のすごろくボードゲーム】日本の地名や名物が楽しく覚えられる、『ドラえもん』のすごろくボードゲームです。北海道からスタートして、ゴールの沖縄を目指しましょう。すごろくゲーム上では、飛行機や船、新幹線での移動もあるので、空港名なども頭に入ります。ひみつ道具やお金を上手にやりくりしながら日本全国を旅行しましょう。【旅行気分で日本と世界の地理を学べるボードゲーム】日本全国や世界の国々を旅行しながら、世界遺産や特産品、各地の見所など、地理の基礎知識を身につけることができるボードゲームです。付録の「日本学習地図」「世界学習地図」は、ポスターとして壁に貼って使えます。【各都道府県No.1のゆるキャラで日本を学ぶボードゲーム】「ゆるキャラグランプリ」で選ばれた各都道府県No.1のゆるキャラが勢ぞろい。47のゆるキャラを通して、愉快に日本地図を学べます。また「名産品カード」もあるので、各地の名産品にも詳しくなれますよ。「お父さんとお母さんに勝つには、どう進めればいいのか」と考えたり、「お兄ちゃんに負けた!」と悔しい気持ちになったり――紹介した3つのボードゲームには、地理の勉強以上の学びがありそうですね。「もう1回やろう!」と何度も繰り返すうちに、都道府県がすっかり頭に入ってしまいそうな覚え方です。都道府県 覚え方5:本で覚える本から学ぶ、都道府県の覚え方もおすすめです。小さなお子さまであれば、まずは読みやすい絵本から取り入れてみるのはいかがでしょう。【“にっぽんを知る” 図鑑絵本で楽しく学ぶ】3~6歳の「なぜなぜ期」に湧き出る好奇心をぐんぐん伸ばす図鑑です。地図・行事・文化など、日本に関する「なんで?」をわかりやすく解説しています。監修は、初等社会科授業研究会常任理事であり、筑波大学附属小学校教諭の由井薗健氏。【日本地図デビューに最適な絵本】子どもが大好きな「めくるしかけ」がたくさん詰まった地図絵本です。日本全国の特産品やお祭り、建物などの情報は、すべてひらがなで書かれているので、漢字を習っていないお子さまでも読みやすいでしょう。遊びながら日本の地理が学べる一冊。【1日10分!絵本で47都道府県を覚えよう】「えびのかたちは あおもりけん」「うさぎのかたちはかながわけん」など、47都道府県を “形” で楽しく覚える地図絵本です。なんと、「うちの3歳の子が本当に47都道府県を覚えました」という声も。日本地図の入り口として最適です。【情報量が多いので「調べ学習」にぴったり】魔法学校の生徒3人が、卒業レポートのために日本をリサーチ。「人口」や「農業生産量」、「1日の降水量の最多記録」など、情報量がかなり多いので、学校の調べ学習にも使えます。ご当地グルメや名産品にもページが多く割かれていて、読んでいるだけで旅行気分を味わえるでしょう。【鉄道好きの子どもにおすすめな1冊】都道府県ごとにJR線・私鉄を全線収録した、鉄道好きの子どもにはたまらない一冊。「路線から知る地域・産業・文化・歴史」がテーマなので、各路線ごとにさまざまな切り口のコラムが書かれています。漢字にはすべてフリガナがふってあり、小学生でもひとりで読むことができますよ。路線と都道府県は関連性が高いので、覚え方としてかなり効率的なはずです。都道府県 覚え方6:情報量を減らして覚える最後に、30校以上の教育現場で指導を続ける教育者・須貝誠氏がおすすめする、「あっという間に都道府県が頭に入る覚え方」を紹介します。須貝氏は、「位置」や「特産物」など、一度に多くの情報を関連づけるような都道府県の覚え方では、肝心の都道府県名を覚えるまでに時間がかかってしまうと言います。まずは、「都道府県名」を正しく覚えることが大切で、関連づけるのはそのあとでよいのだそう。それでは、須貝氏がおすすめする都道府県の覚え方を説明しましょう。【1】都道府県名を漢字で書けるようにする。【2】簡単な図に都道府県名を書き、「山口県」「広島県」……と、図に書いてある県名を声に出す。【3】「県」の文字を消す。今度は、「山口」「広島」という文字だけを見て、「山口県」「広島県」と県名を声に出す。【4】後ろの文字から一文字ずつ消していき、そのたびに「山口県」「広島県」……と声に出す。【5】何も書いていない状態の図を見ながら、「山口県」「広島県」……と声に出す。最終的には、何も書いていない図を見て「山口県」「広島県」と言えるようにする。持ち運びができる、小さいホワイトボードなどであれば、書いたり消したりが簡単にできていいですね。都道府県の覚え方をいくつか紹介しましたが、一文字ずつ消して覚える方法は、かなり効率的と言えるでしょう。***6つの都道府県の覚え方を紹介しました。脳科学者の篠原氏は、「もっと知りたい」「おもしろい」という “快” の気持ちで記憶することが大切だと言っていましたよね。お子さまが楽しいと思えるような、都道府県の覚え方が見つかりますように。(参考)篠原菊紀(2010),『子供が勉強にハマる脳の作り方』, フォレスト出版.池谷裕二(2011),『受験脳の作り方―脳科学で考える効率的学習法』, 新潮社.キャロライン・アダムス・ミラー著, 宇野カオリ監, 藤原弘美訳(2018),『実践版GRIT やり抜く力を手に入れる』, すばる舎.STUDY HACKER|“記憶が苦手” はただの思い込み。記憶力日本一の男は無理せず「脳にまかせている」CBC|Canadian researchers say you can improve memory with this one weird trickJ-STAGE|替え歌記憶法は有効か?(2)―メロディが記憶に及ぼす影響の検討―J-STAGE|メロディが記憶に及ぼす影響聖心女子大学|聖心女子大学の奥行きを知るnote|【教える技術】#06 記憶するには精緻化、体制化、二重符号化J-STAGE|ドイツボードゲームの教育利用の試み―考える喜びを知り生きる力に結びつける―
2020年09月03日ここ数年で、世のなかが一変するような大事件や、平凡な日常生活を送ることが困難になるような出来事がいくつも起きています。いまはなんと言っても、新型コロナウィルスによる影響が大きく響いていますよね。このような時代だからこそ、未来を生きる子どもたちには強くたくましく育ってほしいと願うばかりです。今回は、「メンタルが強い子に育てるためにすべきこと」について考えていきましょう。強いメンタルは楽しい人生を送る武器になる「メンタルが弱い人」と聞いて思い浮かぶのは、次のような特徴があるのではないでしょうか。プレッシャーに弱い、傷つきやすい、すぐに落ち込む、自信がなくてまわりに流されやすい――。反対に、プレッシャーに強く、落ち込んでもすぐに立ち直ることができ、しなやかな精神力を兼ね備えている人は、「メンタルが強い人」に分類されます。“メンタルを鍛える” と聞くと、スポーツ選手のように勝負の世界に生きている人が、大事な局面で最大限に実力を発揮するためのものだと思われがちです。しかし、普段の日常生活でも、メンタルの強さが求められる場面はたくさんあります。それは小さな子どもでも同じです。たとえば、お友だちに話しかけたものの返事がなかったとします。ある子どもは、「きっと僕のことが嫌いなんだ。だから無視したんだ」と思い込んで泣いてしまうかもしれません。一方で、「声が小さかったから聞こえなかったのかな?」「ほかの子と遊ぶのに夢中になっているから聞こえなかったのかな?」と思い、“次はこうしよう” と気持ちを切り替えられる子もいます。些細なことですが、前者よりも後者のほうが「メンタルが強い」ですよね。受験や就職といった人生を決める大勝負はもちろん、社会に出てからの長い人生のなかでは、強い精神力で乗り越えなければならない場面は数えきれないほど出てくるでしょう。もし自分の子どもが、入社直後に「先輩に注意された」「営業先の人に冷たくされた」という理由だけで、会社を辞めてしまったら?落ち込んでも自分の力で立ち直ることができる強い心を育むために、私たち親がいまできることはなんなのでしょうか。メンタルが弱い子とメンタルが強い子の違いメンタルが弱い子とメンタルが強い子、具体的にはどのような特徴が見られるのでしょうか。■メンタルが弱い子・自信がなく、何かに挑戦する前から諦める・少しでも壁にぶつかったら諦める・傷つくのを恐れるあまり、交友関係が広がらない・「自分はダメな人間だ」と思うことが多く、楽しいことよりもつらいことばかりを考える■メンタルが強い子・自分に自信があるので、「まずは試してみよう」と挑戦する・多少の困難でも諦めず、最後までやり抜こうと努力する・どんな相手とでもコミュニケーションがとれるので、よい交友関係が築ける・「自分ならできる」と自信にあふれ、毎日が刺激的で楽しく過ごすことができるメンタルの弱さの根底には、低い自己肯定感があります。自己肯定感や「自分ならできる」という自己効力感は、新しいことや困難なことに挑戦する力を与え、落ち込んだ気持ちを立て直す力にもなります。メンタルを強くするためには、まずは「自己肯定感を高める」ことを心がけるべきなのかもしれません。ただし、ひとつ気をつけなければならないのは、メンタルが弱い・強いというのは、生まれつきの気質も大きく関係しているということ。特に、「HSC(Highly Sensitive Child)」=「人一倍敏感な子」と呼ばれる子は5人に1人はいると言われ、ほかの子どもたちに比べて繊細で傷つきやすい傾向が強いのです。当然、メンタルは弱いよりは強いほうがいいでしょう。しかし、引っ込み思案で繊細な子どもに対して、無理に「もっと自信をもちなさい」「どんどん新しいことにチャレンジしなさい」と無理強いするのはよくありません。大事なのは、わが子の特性を理解したうえで、「しなやかで折れない心」を育ててあげることです。メンタルが強い子の親がしないこと3つ幼児臨床心理学を専門としている臨床心理学者の深谷和子先生は、「子ども自身に困難を切り抜けてもらうためにも、困難な状態にあっても『折れない心』を持ち、しなやかに立ち直ることのできる子どもを育てることが、これからの日本の教育の大きな課題」と述べています。その「折れない心」を育てるには、どうしたらいいのでしょうか。■子どもの感情を抑えようとしない心理療法士で『メンタルが強い子どもに育てる13の習慣』(講談社+α新書)著者であるエイミー・モーリン氏は、子どものメンタルを鍛えるためには、親は次の点に注意しながら育てていくべきとアドバイスしています。まず、「子どもの感情を抑えようとしない」こと。たとえば、子どもが怖がっていたり怯えていたりすると、親は良かれと思って「おおげさね」「たいしたことじゃないから大丈夫だよ」と安心させようとしますよね。しかし、これでは子どもは「自分は怖いと感じた。その気持ちは間違っているの?」と思い、これから先も感情を抑え込むようになりかねません。この場合、まずは「怖いと感じているんだね」と子どもの素直な感情を受け止めてあげましょう。励ますのはそのあと、「でも○◯ちゃんならきっと乗り越えられるよ」「◯○くんが強いこと、お母さんはちゃんと知っているよ」といったひとことを添えて、子どもの背中を押してあげます。■過保護にならない「過保護であること」は、子どもメンタルを強くするにはマイナスでしかありません。毎日「宿題やったの?」「忘れ物ない?」としつこく聞いていませんか?「子どもが失敗しないように」と先回りして世話を焼く親心は理解できますが、メンタルが強い子の親は、ある程度は子どもの行動を放任し、自然の成り行きに任せる傾向があります。それはたとえ間違った結果になっても、子どもが自分で気づき、考え、乗り越えるために努力できると信じているからです。■親の意見を押しつけない精神科の医師である中嶋泰憲先生は、「得意分野をつくる」ことも子どものメンタルを強くする方法だと述べています。たとえば、本当はバスケットボールが好きで上手なのに、親の希望で苦手なピアノを習わせている場合、ピアノのレッスンを続ければ続けるほど劣等感を抱くようになります。この劣等感が、子どもから自信を奪うのです。得意な分野をぐんぐん伸ばしていける環境を用意してあげて、あとは見守ってあげるだけで、子どもは自分で自信を手に入れます。それはいずれ自己肯定感へとつながり、強いメンタルの素地となるのです。***レジリエンス(折れない心)という言葉が注目を集めるように、近頃では子どもの精神力を強くするために頑張っている親御さんが増えてきています。しかし本当は、親が何かを “してあげる” ことではなく、“あえてしない” ことが重要なのかもしれませんね。(参考)伸芽’S クラブ|メンタルが強い子に育てたい!子どもの精神力を鍛える方法とは?STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|5人に1人は「人一倍敏感」である。“すぐに傷つく心のメカニズム”と声かけのコツZ会さぽナビ|特集 折れない心を育てるBUSINESS INSIDER|メンタルの強い子どもに育てたいなら、今すぐ止めるべき7つの子育て習慣All About|メンタルを強くする方法精神医学から考える育て方【メンタルヘルス】
2020年08月30日大切なわが子のために、できることはすべてしてあげたいーー。そう考えるのは親として当然です。しかし、勉強面や生活面で干渉しすぎてしまうと、子どもの将来に悪影響を及ぼしてしまう恐れも。今回は、「ハイパーペアレンティング」と呼ばれる “過干渉の子育て” をする親たちについて解説していきます。急増中の「ハイパーペアレンティング」な親とは?「ハイパーペアレンティング」という言葉を初めて目にする人も多いのではないでしょうか?簡単に説明すると、「過干渉の子育て」や「子どもをコントロールしようとする親たち」の総称として使われることが多いようです。いわゆる『教育虐待』もハイパーペアレンティングに含まれると言っていいでしょう。近年増加傾向にある「ハイパーペアレンティング」な保護者たち。その原因として、昨今の不安定で混沌とした社会情勢や、SNSなどの過剰な情報によって保護者のあいだで不安が増大していることが挙げられます。東京未来大学こども心理学部准教授で育児工学者の小谷博子先生は、「決して安定した社会が望めないこれからの時代を生き抜くために、さまざまなものを身につけさせてやりたいと早期教育に走る親たちが増えてきている」と指摘します。また、明治大学文学部教授で心理学者の諸富祥彦先生も、「現在の情報化社会のなかで、親は他人の子育てや家庭教育と自分を比べて不安になり、自己否定することが増えている」と述べており、他者との比較によって不安が増大していることを危惧しています。「ハイパーペアレンティング」は、一見すると “教育熱心な親” として悪くないイメージをもたれがちですが、実際には子どもに大きな負担をかけているケースが少なくありません。さらには親自身も大きなプレッシャーを感じており、親子ともに高すぎる理想に押しつぶされてしまうことも……。子どもを疲弊させる「ハイパーペアレンティング」の例「ハイパーペアレンティング」の具体的な例をいくつか挙げていきましょう。■たくさんの習い事をさせるハイパーペアレンティングの典型と言えるのが「習い事をたくさんさせる親」です。いい学校に進学をしていい会社に就職し、よりよい人生を歩ませるために親は最善を尽くそうとしますが、その手段としてやみくもに複数の習い事をさせることは、間違いなくハイパーペアレンティングです。ひとつひとつの習い事は子どもにとって有効であっても、欲張ってすべてをやらせようとすると、子どもは心身ともに疲弊してしまいます。■予定を詰め込んで “退屈” させない習い事をたくさんさせることと同様に、学校以外の予定を親が勝手に決めてスケジュールを詰め込むのも、ハイパーペアレンティングの一例です。子どもには、ぼーっとする “退屈な時間” が必要。国立大学付属小学校の松尾英明教諭は、「成績だけでなく、人格的な面も含めて “すばらしい” と賞される子は、家でダラダラしていることが多い」と指摘しています。脳を効率的に働かせるためにも、ぼーっと過ごす時間は必要不可欠なのです。■子どもの友人関係に口を出す子どもの交友関係を黙って見守ることができず、つい「あの子とはあまり遊ばないほうがいいんじゃない?」などと口を出してしまうのもハイパーペアレンティングと言えるでしょう。さまざまなタイプの人間と関わって、豊かで深い人間関係を築くことよりも、「わが子にいい影響を与えてくれる子」や「付き合うとメリットがある子」を選ぶことを優先するのは、子どもにとって決してよいことではありません。■子どもの失敗を先回りして阻止するハイパーペアレンティングは、言い換えれば「親の過干渉」です。子どもが何か新しいことを始めようとすると、すかさず情報を集めて「でもこれってこういうところが危ないみたいよ」「やってもあまり意味ないんじゃない?」とやる気を削いだり、実際に手を伸ばして転ぶ前に抱き上げたりするのは、過干渉にほかなりません。失敗を経験しないまま大人になると、わが子はどうなってしまうと思いますか?「ハイパーペアレンティング」は、決して子どもを苦しめたり困らせたりしようとしているわけではありません。根底にあるのは「わが子によりよい人生を歩ませたい」「将来苦労させたくない」という親の強い愛情。親であるならば当然そのように考えますよね。しかし、教育評論家の石田勝紀さんは「親の『子どもにこうなってもらいたい』は押しつけである」と断言しています。親と子では、得意なことも苦手なことも、そして価値観も異なります。だからこそ、親は子どもと自分を同一視するのではなく、子ども自身ときちんと向き合い、子どもが大切にしてる価値観を大事にしてあげるべきなのです。ハイパーペアレンティングにならないためにここまで読んで、「もしかしてうちも『ハイパーペアレンティング』予備軍!?」と心配になった親御さんもいるのではないでしょうか。ハイパーペアレンティングにならないために心がけるべきことをまとめたので、ぜひ参考にしてください。濁協医科大学の永井伸一名誉教授は、「頭のよい子ども、自主的に勉強できる子どもに育つかどうかは、中学生までに親がどう関わったか、それによってどのような脳がつくられたかで決まる」と述べています。大事なのは、「遊び」のなかで学習する習慣をつけること。楽しいと感じれば、脳は活性化し、グングン新しいことを学べるのです。逆に面白がれなかったら、何を見ても聞いても知識は深く根付きません。だから、小さい時から塾に入れてしごいたとしても残念ながら本当に頭のいい子は育たないんです。(引用元:現代ビジネス|「子どもをダメにする」親の研究~3000人の聞き取り調査でわかった!)「塾にさえ入れれば勉強ができるようになる」「たくさんの習い事をさせているから大丈夫」と、根拠のない安心感を得るのは危険です。子ども自身が何を学びたいか、何に興味があるのかを見極めて、環境を整えてあげましょう。教育ジャーナリストの中曽根陽子さんは、「親であるならば『こんな人間に育ってほしい』『子どものときに自分が苦手だったことを得意になってほしい』と願うのは当たり前」としたうえで、親としての究極の願いは「子どもに幸せになってほしい」ということが大前提であると説きます。はたして、親であるみなさんが考える「理想の子ども」は、目の前の我が子とはまったく別の人間になっていないでしょうか。自分が思う理想の子ども像に我が子を当てはめようとして、子どもが「自分らしく自分の強みを生かす」ことを邪魔していないでしょうか。(引用元:STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|親の役目は我が子の「自己探求の力」を育むこと。“理想の子ども像”を押し付けてない?)そして最後に、何よりも大事なのは「親自身が自分の人生を楽しむべき」だということ。諸富先生は、親自身が幸せになることで、子どもは「人生は楽しいんだ!」ということを親の生き方を通じて知るといいます。完璧な子育てをする完璧な親になどなる必要はありませんし、なれるはずもありません。そんなことを考えるより、もっと自分の願望に素直に従って、親自身が幸せになり、子どもに「僕も幸せになっていいんだ」「わたしも幸せになっていいんだ」と思わせてあげる。それが子育てにおいてもっとも大切なことです。(引用元:STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|完璧な子育てを目指さなくていい。親はもっとわがままに“自分の幸せ”を追求しよう)また、前出の石田さんも、親が子どもの「ネガティブな部分」にばかり意識が向いてしまうのは、「親自身が自分の人生を楽しむことに意識がフォーカスできていないことが背景にある」と述べています。子どもの成績や生活態度ばかりに目が向いて、小言が多くなったり過度に干渉したりするのは、親が自分の人生に不満を抱えているケースが多いのです。まずは親自身が自分の人生を楽しむことができれば、心に余裕が生まれます。そうすれば、ありのままのわが子を愛することができるようになるのではないでしょうか。***『100万人が信頼した脳科学者の絶対に賢い子になる子育てバイブル』(ダイヤモンド社)の著者であるジョン・メディナ氏は、「ハイパー・ペアレンティングは、子どもの知能の発達を妨げる恐れがある」と警鐘を鳴らしています。子どもが子どもらしく、健やかに成長するためにも、過干渉にならないように気をつけたいですね。(参考)PHPのびのび子育て 2020年8月特別増刊号,PHP研究所.STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|完璧な子育てを目指さなくていい。親はもっとわがままに“自分の幸せ”を追求しようCHILD RESEARCH NET|スケジュールをつめ込まれた子供:ハイパー・ペアレンティングは避けるべきプレジデントオンライン|なぜ頭のいい子は家でダラダラユルユルか東洋経済オンライン|子どもを追いつめる、親たちの「願望と正論」現代ビジネス|「子どもをダメにする」親の研究~3000人の聞き取り調査でわかった!STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|親の役目は我が子の「自己探求の力」を育むこと。“理想の子ども像”を押し付けてない?ダイヤモンドオンライン|「期待しない子育て」が脳にとてつもなくいいワケ
2020年08月17日「気軽に専門家に質問ができて、さらに返信も早い」とママから日々感謝の声が寄せられているベビーカレンダーの人気コンテンツ【助産師に相談】の掲示板。そのなかから特に注目をあつめた質問の内容を一部抜粋してご紹介します。今回は赤ちゃんの叱り方に関するご相談です。 Q.常に穏やかな口調で嗜めないといけないのでしょうか生後11カ月の娘にひっかかれたりのどを突いかれたりなど痛いことをされたとき、汚いものを触ったとき、危ないことをしたとき、「痛い! やめて!」と不機嫌に怒り、「ダメ!」と取り上げたりしてしまっていました。そういった否定的な態度や言葉は良くないのでしょうか。テレビでは0〜3歳児の保育では否定的な保育をしないと言っていました。常に穏やかな口調で嗜めないといけないのでしょうか。 高塚あきこ助産師からの回答叱り方にもさまざまな方法がありますが、お子さんが本当にやってはいけないこと、危ないことをなさったときは、何度も繰り返し伝えるしかありません。ですので、それはやめてほしいということを繰り返しお伝えになってみてくださいね。お子さんは、毎日同じようなことをしているように見えても、次第にいいことと悪いことの区別ができてくるようになると思いますよ。ですので、ダメなこと、危ないことは、一貫した態度で注意なさっても問題ないかと思いますよ。お子さんなりに、次第に理解するようになると、態度や反応も変化してくるのではないかと思います。※参考:ベビーカレンダー「助産師に相談」コーナー※診断や具体的な治療については医師の指示にしたがってください 叱るときの注意点! 「短く何度も」が効果的叱るときに注意したいことが、子どもが傷つく言葉(人格を否定する言葉)を使ったり、感情的になったり声を荒げたりすることです。このような叱り方をすると、子どもの心がとても傷ついたり、萎縮してしまいます。そのため、叱るときは冷静になり、目線をしっかりと合わせて、「どうして〇〇してしまったのか」と子どもに理由を聞き、「何がいけなかったのか」などをしっかりと伝えることが大切です。 また、あまり長く叱らないということもポイントです。話が長くなると、子どもの頭の中に内容が入ってこなくなるので、様子を見ながら「もう話を聞いていないな」と思ったら、言うのをやめたほうが良いです。「言葉が子どもに入っているかどうか」ということが大切になるので、それを見極めて伝えましょう。 年齢にもよりますが、大体4~5歳までの子どもだと集中力は2~3分しか続かないため、手短に伝えるようにします。情報量が多すぎると、子どもの頭の中に何も残らなくなってしまいます。子どもの記憶は一度言われて定着するというわけにはいかないので、「その都度短く叱る」ということがママやパパの労力も少なくなるほか、子どもにも伝わりやすい叱り方です。 「叱り方のOK・NG例」◇NGの叱り方)「そんなことする子は嫌い」、「どうしてそんなに悪い子なの」 子ども自身の存在を否定するような叱り方になっているため、このような言い方をすると、子どもは傷ついてしまいます。叱るときは子どもの存在を否定する言葉を言うのではなく、子どもがやってしまったことに対して冷静に指摘することが大切です。 ◇OKの叱り方)「●●したら危ないからダメだよ」、「●●したらママは悲しいな」 子どもの行動について危険ということを知らせたり、ママ自身がどんな気持ちでいるのかを率直に伝えています。どちらも子どもの行動に対して指摘しているところが、NGの叱り方と違う点になります。 イヤイヤ期の叱り方は「その都度手短に!」イヤイヤ期は「手短に言うこと」と、「何回も繰り返す」ことが大切です。イヤイヤ期は長々と叱ってしまうと、ますます子どものイヤイヤが強くなり、火に油を注いでしまうような状態になってしまいます。そのため、子どもが悪いことをしたら理由などは言わずに「それはダメ! 」「それはいけないよ! 」と止めて叱るようにします。その都度止められることで子どもは「これは危ないことなんだ」と学習していくからです。 イヤイヤ期は「何度も伝える」ことが大切な時期なので、根気強く繰り返し伝えます。何度も言っていれば、1年くらいかけて子どもの中に入っていくので、イヤイヤ期の叱り方は長期戦と考え、手短に繰り返し伝えましょう。 言い過ぎたら…関係が修復される魔法の言葉でフォロー! 叱ったあとにフォローを入れることで、子どもも叱られたことを前向きに捉えやすくなります。ママやパパと子どものわだかまりを緩和するためにも叱ったあとは、ハグをする、少し言いすぎた場合は「言いすぎちゃってごめんね」と謝るなどフォローを入れることで、子どもも素直にママやパパが言ったことを受け入れやすくなります。 例えば、ママが子どもに言い過ぎてしまったら、パパが子どものフォローに入るといいでしょう。 パパは「○○ちゃん(くん)も怒られて悲しかったね」など、子どもの気持ちに寄り添いながらも、「ママは○○ちゃん(くん)のことが嫌いで叱ったわけではないよ」と一言伝えます。そうすることで、子どもは「自分のことが嫌いでママは怒っているわけじゃないんだ!」と安心することができ、ママと○○ちゃん(くん)の関係性は修復されます。 あまりくどくどと言ってしまうと子どもは飽きてしまうので、この一言だけでもパパがしっかりと伝えてあげると、子どもの気持ちが安心し、気持ちを切り替えやすくなります。 今回の「子どもの叱り方」についてのポイントは、「①子どもの集中力を考えて手短に叱る」ことと、「②子どものことが嫌いで叱っているのではないと伝える」の2点になります。特に②を伝えるのと伝えないのでは、子どもとの関係性がかなり違ってくるので、ぜひ伝えてみてください。※参考:ニュース(ママネタ)「「叱る」と「怒る」は違う!? 子どもの力を伸ばすじょうずな叱り方とは」【監修者:臨床心理士 塩﨑 尚美日本女子大学 人間社会学部 心理学科 教授(臨床心理士・公認心理師)】
2020年07月13日みなさんは、わが子にどのような人間に育ってほしいと願っていますか?生まれる前は、「とにかく健康で元気な子だったらいい」と漠然と考えていたかもしれません。しかし、成長を追うごとに「勉強ができてスポーツが得意だったらいいな……」「誰からも好かれてお友だちがたくさんできたらいいな……」と、期待が膨らんでいっていませんか?今回は、「親の期待が子どもに与える影響」について考えていきましょう。イライラするのは、子どもに「期待」してるから子育てをしていると、わが子に対して「どうしてこんなこともできないの?」とイライラしたり、口うるさく注意したりすることもありますよね。ですが、みなさんが子どもに「どうして○○できないの?」と感じていることの裏側には、「あなたが子どもに期待していること」が隠されているのです。たとえば、モジモジしておとなしいわが子に対して、「どうして自分からお友だちに遊ぼうって言えないの?」とイライラしがちなのであれば、子どもが「社交的で積極的であること」を期待しています。日本メンタルヘルス協会公認カウンセラーのマツダミヒロさんによると、「人は、相手にかけた期待が外れたときに、怒りを感じたりイライラしたりする」とのこと。そして「思い通りに動いてくれない子どもに、自分の価値観を押しつけて、自分の望む反応を求めている」とも述べています。私たちは親として、わが子によりよい人生を歩んでほしいと願う一方で、自分が想像する幸せの型に子どもをはめ込もうとしているのかもしれません。教育評論家の石田勝紀先生は、「親が子どもへの理想のイメージをもつこと自体は問題ない」としながらも、「“こうあるべき” 姿を押しつけて、親の価値観や思考の枠からはみ出た子どもを、強制的に戻させようとすることが問題」と述べています。自分が理想とする「こうあるべき姿」をわが子に押しつけていないか、いま一度思い返してみましょう。自分ではそんなつもりがなくても、子どもが本来望んでいることとかけ離れているようなら、少し立ち止まって考え直す必要があるかもしれません。親の期待は「子どもの自己肯定感」を低下させる親が子どもに期待しすぎることで、子ども自身にはどのような影響が及ぶのでしょうか。専門家の意見や、いくつかの事例を挙げていきます。■わかったフリをするようになる親が子どもの「現時点での能力」をちゃんと理解できずに、高いレベルばかり要求した結果、子どもの脳は “ある状態” に陥るのだそう。『100万人が信頼した脳科学者の絶対に賢い子になる子育てバイブル』(ダイヤモンド社)の著者、ジョン・メディナ氏は、「自分の脳にはまだその準備ができていないのに、親からの期待が高くなるほど子どもは窮地に追い込まれる。すると脳は強制的に『低次思考』のレベルへと思考力を戻す」と述べています。その結果、子どもはその場ではわかったようなフリをするものの、本質的には理解できていないので、何も身につかないというわけです。■妥協するようになるメディナ氏によると、親の過剰な期待は、子どもが本来もつ好奇心までも奪ってしまうとのことです。子どもは好奇心をかき立てられると「これってどうなっているのかな?」と自問し、それにより成長するもの。しかし、親の期待に応えようとする気持ちが強くなると、「どうすれば親を満足させられるだろう」と妥協するようになります。つまり、親の反応ばかりを気にするようになるのです。■自己肯定感が下がる家庭教育の専門家である田宮由美さんは、「親が子どもの可能性を信じることは、親子の信頼関係を深めることにもつながる」としつつも、あまりにも期待が大きすぎることで弊害も生まれると言います。親が常により高いレベルを求めることで、子どもは「いまの努力」を認められずに報われない気持ちになるでしょう。すると、期待に応えられない自分を卑下し、「自分はダメなんだ」と自信をなくして、自己肯定感の低下を招いてしまうのです。■いい子症候群になる「大人の顔色をうかがい、先回りして親の期待に応えようとする自主性のない状態」は、「いい子症候群」になっているサインです。『ほめると子どもはダメになる』の著者で心理学博士の榎本博明先生は、「親の言いなりに動く “いい子症候群” の子は、自立できない心配がある」とし、自分で考えて動くことができないので、判断力や実行力が欠けたまま大人になる恐れもあると述べています。■反動で反抗的になる『女の子の学力の伸ばし方』などの著者で、進学塾VAMOSの代表でもある富永雄輔先生は、「子どもに期待をかけすぎるのは、父親より母親が多い傾向がある」と述べています。特に娘に対して、母親はより大きな期待をかけることがあるそう。彼女たちは幼いが故に、親の期待が自分にとってつらいものになってきてもそれを表現する力がありません。だから、なおさら親はそれを押しつけてしまい、あるとき、親と子どものパワーが逆転したときに、大きな反抗となって返ってきます。(引用元:ダイヤモンドオンライン|娘に「自分の人生のリベンジ」をさせる子育てをしてはいけない)親の期待に押しつぶされてしまうことは、子どもにとっても親にとっても、望まない結果を招いてしまうのです。自分の「親としての評価」を気にしていませんか?いくら「子どもに期待するな」と言われても、愛するわが子に期待してしまうのは当然のことです。しかし先に挙げたように、過剰な期待は子どもの人生に悪影響を及ぼします。どうしたら子どもに過剰な期待をせずに、適度な距離感で見守ってあげられるのでしょうか。前出のジョン・メディナ氏は、「子どもは大人の成功の代用品ではない」と述べています。自分の親としての評価を上げるために、子どもを立派に育てようとしていませんか?まわりの人たちからほめられたいという理由だけで、子どもに無理を強いていませんか?親はつい、自分の子どもをまるで自分の分身のように考えがちですが、どんなに小さくても子どもは自分とは違う人間だということを忘れてはいけません。ですから、自分の人生でやり残したことをやらせようとしたり、自分が経験して失敗したことを頑なにやらせなかったりするのではなく、本人が望めば好きなようにやらせてあげるのがベストです。また、子育ては競争ではありません。「あの子に比べて優秀」「あの子に比べて劣っている」といった評価を自分の子どもに下すことは、わが子の本来の姿を見ていないのと同じです。まずは、親の自分だからこそわかる「わが子のよいところ」をしっかりと認めてあげましょう。現役東大生の西岡壱誠さんによると「東大生の親は子どもに過度な期待をしない」とのこと。しかし、子どもが「自発的に考えて、努力すること」を全力で応援する親が多く、プレッシャーを与えずに子どもの可能性を引き出すことに成功しているケースがよく見られるそうですよ。***わが子に期待してしまうのは、愛情をもって育てている証拠です。大事なのは、子どもの気持ちを無視して親の期待を押しつけたり、親の期待に沿うように子どもを誘導したりしないこと。子どもを信じ、適度な距離感を心がけましょう。(参考)マツダミヒロ(2014),『“質問”に答えるだけでイライラがニコニコに変わる!魔法の子育てしつもんBOOK』,カンゼン.東洋経済オンライン|子どもを追いつめる、親たちの「願望と正論」ダイヤモンドオンライン|「期待しない子育て」が脳にとてつもなくいいワケAll About|子どもの自己肯定感が低いのは親のせい?NG言動5つと高める子育てSTUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|心理学者が指摘する“いい子症候群”たちの未来ーー自主性のない子どもの特徴5つPHPファミリー|親がかける言葉で、子どもの人生が変わるダイヤモンドオンライン|娘に「自分の人生のリベンジ」をさせる子育てをしてはいけない東洋経済オンライン|東大生の親に「お受験ママ」が異様に少ないワケ
2020年07月06日子どもに響く褒め方について、日本女子大学 人間社会学部 心理学科 教授の塩崎尚美先生にお話しいただきました!褒め方について、実践方法なども交えながら詳しく説明します。 「褒めること」でこんなに良い影響が…! よく「褒めて伸ばす」という言葉を耳にしますが、子どもを褒めることはとてもいいことです。褒めることで子どもは自己肯定感(自分自身の存在意義や価値などを肯定できる感情)を育むことができるほか、自信が持てたり、前向きに物事を取り組めるようになります。そのため、褒められるということは子どものやる気を育むうえでも大きな影響を与えています。 自己肯定感が高い子どもは自分自身を大事にすることができたり、良好な人間関係を築きやすいと言われています。周りの人からも大切にされている自覚があるので、物事に意欲的にチャレンジする傾向があります。 一方で自己肯定感が低いとされる子どもの特徴は、自分を否定的に捉えやすく、物事に対して諦めやすくなってしまう、情緒不安定になってしまうなどがあります。 「子どもに響く褒め方」とは!? 心からの共感が大切「子どもに響く褒め方」とは、子ども自身を見てよかった点を、具体的に心から褒めるということがポイントになります。子どもは大好きなママやパパに心から褒めてもらったり、一緒にうれしい感情を共有することで、自分の存在が認められている、ママやパパから愛されていると感じることができます。そしてそれは、子どもの精神的な部分での安心感につながっていきます。 しかし、子どもは大人の表情や口調、本心から言っているのかどうかなどをしっかりと見ています。子どもに響く褒め方でなければ、この大人は信用できない、いつも適当なことばかりで全然自分を見ていてくれないなどと感じてしまい、不信感へとつながってしまうこともあります。 一方、「子どもに響かない褒め方」は、ただやみくもに褒める、他者と比べて褒める、結果だけ褒める、条件が合ってそれをクリアしていれば褒めるなどがあります。 ▼こんな褒め方は子どもに響きません!・ただやみくもに褒める子ども自身が「どうして褒められているのか」がわからないと、褒めているという行為自体の意味がなくなってしまいます。相手が「適当に褒めている」と子どもが感じてしまえば「ちゃんと自分のことを見てもらえてない」「適当に扱われている」と思ってしまい、その人をあまり信用できなくなってしまう可能性も出てきてしまいます。 ・他者と比べて褒める他者と比べて褒められると、褒められていないその子のようになったときに「自分はダメなのか」「全部を受け入れてもらえないのか」という気持ちにつながり、自己肯定感を低くしてしまう可能性があります。また、比較されて褒められることに慣れてしまうと、他者より自分が優れていると思った際に、相手を馬鹿にしてしまうほか、相手のことを見下してしまう恐れもあります。 ・結果だけ褒める結果だけを褒めることで、子どもは「結果がすべて」だと認識していまい、失敗を恐れるようになるほか、結果に固執してしまい、嘘をつくようになるなどの悪影響を及ぼしてしまうこともあります。 ・条件が合ってそれをクリアしていれば褒める「●●できたからお菓子あげるね」など、条件付きで褒めると、親の顔色を窺うようになってしまったり、ママやパパからありのままを受け入れてもらえているという実感がなくなってしまうことが懸念されます。 また褒めることは、子どもの行動を実況中継することでもいいんです。子どもが頑張っている過程で「頑張っているね!」と伝えることも褒めることになるからです。そのため、「どうやって褒めていいかわからない」というママやパパは、実況中継を取り入れてみるのもおすすめです。 ここでのポイントは、ママやパパが子どもにちゃんと関心を向けていて、今やっていることを見ているよ! というメッセージが子ども自身に伝わることです。 「本当に心から褒めているか」がポイント!褒めすぎることを心配するママたちもいますが、本当に心から子どもが素晴らしい! と思ったときに褒めているのならば、褒めすぎにはなりません。子どものことをママやパパがしっかりと見ていて、子どもが喜んでいるときや、うれしいと感じているときに褒めてあげるということをしていれば、問題ありません。そのため、子どもをちゃんと見て、子どもの気持ちに沿った褒め方をしているかどうかが重要になります。 また、むやみに「すごいね~!」と褒めたり、すごいと思っていないのに言ったりするのは褒めすぎです。子どもがちゃんと自分のことを見ていてくれないなと感じたり、本当に自分ができたと思っても、喜びを共有してもらえないなと思ってしまうと、マイナスに働いてしまうこともあります。 ネガティブな感情を共有することも大切!褒めすぎるとよくないという話が出てくるのは、褒めること以外の関わりがないケースが問題になっているのだと思います。子どもは褒めれば育つと言われていますが、子育ては褒める以外にも子どもが落ち込んでいたり、悔しい思いをしていたりすれば、そういったネガティブな気持ちを共有していくことがとても大事になってきます。そのため、子どもは悔しさなどの気持ちをママやパパに共有してもらい、乗り越える力をつけていかないと、生きる力が育たなくなってしまいます。 しかし、褒めることだけしか見ていなくて、ネガティブな感情は子どもと共有しないということが起こってしまうと、子どもはできたことしか認めてもらえないと思ってしまい、「何かできないとダメだ」というふうにダメな自分を受け入れられなくなってしまう可能性があります。そうなってしまうといろいろな問題が起こりやすくなります。 そのため子どもの良いところだけを見ていると、子どもの発達にマイナスの影響を及ぼすことになるので、子どもが抱くネガティブな感情にもしっかりと寄り添い、一緒に乗り越えられるようにサポートしていきましょう。 子どもにとって大好きなママやパパから褒められるのは、とてもうれしく幸せなことです。ぜひ、子どもの良いところをたくさん見つけ、たくさん褒めて健やかな心を育めるようサポートしてあげてください!
2020年06月29日子どもとの良い関係性を保つためのヒントを日本女子大学 人間社会学部 心理学科 教授の塩崎尚美先生にお話しいただきました! 育児に関するプチイライラ解消法など、手軽に実践できる方法なども紹介しています。 子どもをしっかり観察!臨機応変な対応が肝 子育てをするにあたり、子どもの状態を観察しながら、その場その場で対応を変えていくことはとても重要なポイントになってきます。 例えば、子ども自身がママやパパに近くにいて欲しいときと、自分が好きなことをしたいので見守っていて欲しいというときがあります。そのため、ママやパパが子どもの状態を見極め、「今は関わってほしいと思っているのか、ほうっておいてほしいと思っているのか」ということを察知して、関わるということが一番重要になってきます。甘えたいときや不安になったときには子どもから近づいてきたり、求めてきたりするので、そういう場合は子どもの気持ちをしっかりと受け止めることが大切になります。 ただ、好きなことをしていたり、自分でしたいことを見つけてそれに取り組んでいたりするなど、ママやパパから離れていくときは手や口を出さずに少し離れたところから見守ることが重要になってきます。また、ここで注意してほしいのが、見守る=何もしなくてもいいわけではないということです。子どもは離れながらもママやパパの存在を気にかけ、笑顔を返してほしいというようなアイコンタクトを取ることがあります。そのため、そのときはママやパパ自身が笑顔を返す、声掛けをおこなうなど、子どもに「ちゃんと見ているよ」というのが伝わると、距離は離れていても子ども自身の安心感にもつながり、のびのびと取り組めるようになります。 イライラしたら実践したいプチストレス解消法子どもの状態を把握し、関わり方を臨機応変に変えていくことで、子育てに対するイライラの軽減につながりやすくなります。ただ、それでもイライラしてしまったら、そういうときは深呼吸をし、リラックスして気持ちを落ち着かせることが重要になります。 判断力が鈍ってしまうので、イライラしているときに子どもに関わろうと思っても、あまり良い結果につながりません。そのため、窓から空を見るなどでもいいのですが、その場で自分の気持ちを落ち着かせ、そこから何をすればいいかを考えてみてください。ママの心が落ち着けば、「子どもが何を求めているのか」が見えてきます。感情が高ぶっていると、子どもが何を求めているか見えてこないと思うので、瞬間的に気持ちを切り替えるという意味で、子育て中に「今イライラしているな」と思ったら、深呼吸や水分補給をして一呼吸置くことが大切です。また、糖分を摂るとイライラが収まるので、一口くらいのチョコレートを食べるというのもおすすめです。 子育ては毎日のことになるので、特にママさんは頑張りすぎないことが大切です。「イライラがちょっと溜まってきたな」と思ったらこのようなことを実践し、気持ちを少しでも切り替えられると子どもとの関わり方も良い方向に向きますよ。 「子どもと距離を置きたい」と思ったときは…イライラの解消法をしてもうまく気持ちを切り替えられないとき、1日中子どもと一緒にいるときなどは、子どもと距離を置きたいという思うこともあるかもしれません。「子どもと距離を置く」というと、少し罪悪感を持ってしまうかもしれませんが、自分の時間を作ることで気持ちをリフレッシュすることができ、「また頑張ろう! 」と新たな気持ちで子どもと向き合うことができます。そのため、月に1回や2回くらいは、旦那さんや両親など誰かに相談して子どもを見てもらう日を作るということもいいでしょう。 ご自分だけで頑張ろうとするのではなく、ほかの人の手もうまく借りて気持ちを切り替えながら、楽しく子育てに向き合っていただければと思います。 毎日の子育てはとても大変なことだと思います。家族のためにいつも笑顔でいたいけど、気分が落ち込んでしまう日やイライラしてしまう日もありますよね。ママがイライラしているときは、子どももそれを感じ取ります。上手に気持ちを切り替えながら、日々の子育てを頑張ってください。
2020年06月27日聞き分けがなく、気に入らないことがあるとすぐに泣きわめく、暴れる、親が怒れば怒るほど手がつけられなくなり、もうどうしたらいいかわからないーー。どんなに愛情をもって育てていても、子どもがかんしゃくを起こすと、かわいいと思えなくなることもあります。しかし子どもは、親を困らせるためにかんしゃくを起こしているわけではないのです。今回は、子どもがかんしゃくを起こす原因とその対処法について、くわしく説明していきます。子どものかんしゃくは大事な成長過程のひとつ子どものかんしゃくといっても、その状態は子どもによってさまざまです。一般的には2~4歳頃、イヤイヤ期と前後するくらいの年齢において、「泣きわめく」「叫ぶ」「手当たり次第に物を投げる」「手足をバタバタさせて暴れる」などの様子が見られます。とはいえ、かんしゃくを起こしやすい気質をもっている子もいれば、普段は穏やかなのにある一定期間だけ激しくかんしゃくを起こす子もいます。保育士として15年以上にわたり保育業務に携わっている市川由美子先生は、「子どものかんしゃくは、大事な成長過程のひとつ」とし、「ほとんどのお子さんが5歳頃には落ち着いてくるので、親はあまり深く思い悩まずに、対応を工夫しながら見守ることが大事」と述べています。いま現在お子さまのかんしゃくにお悩みの方や、イヤイヤ期が終わってホッとしているのに、これからもっとひどい時期が訪れるのかと不安を感じている方もいるかもしれません。でも安心してください。子どもがかんしゃくを起こす時期を親子で一緒に工夫しながら乗り越えた先には、大きく飛躍したお子さんの姿が見られるはずです。子どものかんしゃくを恐れたり、対処法がわからずにイライラして落ち込んでしまったりするのは、かんしゃくについての知識が足りないからとも言えるでしょう。かんしゃくが起こる原因、かんしゃくを起こす子どもの気持ち、そしていくつかの対処法を知れば、必要以上に恐れずにすみます。子どもが床に寝転がって大泣きする原因子どもをスーパーに連れていったところ、「お菓子を買って」とせがまれ、「昨日買ったでしょ。今日はダメだよ」と言ったら、火がついたように泣き出し、床に寝転がってバタバタ暴れるーー。公園に遊びに行き、「もう帰るよ」と声をかけたところ、「いやだ!まだ遊ぶ!」と言ってきかない。困り果てて無理やり連れて帰ろうとすると、大声で泣き出して力いっぱい叩いてくるーー。小さい子どもがいる親御さんのほとんどは、このような経験をしたことがあるはず。しかし、一度や二度ならまだしも、頻繁にこのような状況になってしまうと、心身ともに疲弊してしまいますよね。白梅学園大学で非常勤講師を務める発達心理学が専門の塚崎京子先生は、「怒りっぽい子は感受性が強く、敏感に反応するタイプであることが多い」と述べています。つまり、ほかの子にとっては取るに足らないことでも、感受性の強い子にとっては強い刺激となり、怒りやイライラにつながってしまうというのです。また、自信のなさや不安の強さから、自分の思い通りにならないとカッとなって感情をコントロールできなくなるケースもあるそう。「かんしゃくを起こしやすい子」と言っても、そうなってしまう原因は単純なものではないようです。かんしゃくを起こすのは「親にかまってほしい」から!?子どもがかんしゃくを起こす原因として第一に考えられるのは、幼さゆえに言語能力が未発達なため、自分の気持ちをうまく伝えられずに泣いたり暴れたりしてしまうということ。前出の市川先生は、それに加えて「身体機能も十分に発達しておらず、やりたいことが思うようにうまくできずにイライラしていること」も原因のひとつになっていると言います。つまり、かんしゃくを起こす根本の原因は「自分の思い通りにいかないことに対しての怒りやイライラ」があるのです。また、子育て心理学を活用した育児支援を行なう公認心理師の佐藤めぐみさんは、「4歳を過ぎると大脳の発達が進み、脳や心の認知機能が大きく伸び、より複雑な思考ができるようになる」と述べています。それゆえに、子ども自身が急激に変化する自分の内面についていけず、気持ちのコントロールができなくなって、泣きわめいたり暴れたりしてしまうそう。ほかに考えられるのは、“親子のコミュニケーション手段” としてかんしゃくを用いているケースです。小児科医の伊藤明子先生は、「親にかまってほしい」「親の注意を引きたい」という気持ちが、かんしゃくとして表れることもあると言います。たとえば、仕事が忙しいお父さんや、妹(弟)にかかりっきりになっているお母さんなどに対して、自分に注意を向けさせるためにかんしゃくを起こしていることも。「一般的なイヤイヤ期を過ぎてもかんしゃくを起こすようだと、アタッチメント(=親子の絆)の形成が不十分であることのほか、子どもが日常的にストレスを感じていることを疑ってもいいかもしれない」と説くのは、発達心理学を専門とする京都大学大学院准教授の森口佑介先生です。森口先生によると、突然かんしゃくを起こすなど感情をコントロールできなくなる子どもは、ストレスに弱いという特徴が見られるそう。また、日常的にストレスを受け続けた子どもは、ストレスに対して耐性ができるどころか、逆にストレスに対して敏感になります。すると、ちょっとした嫌な出来事に対しても激しいストレスを感じてしまい、結果的にかんしゃくというかたちで表面化してしまうのです。このように、かんしゃくは本人の気質によるものや、発達段階における成長の証、親子間のコミュニケーションの問題など、要因となるものは千差万別であるといえるでしょう。子どものかんしゃくへの対処法大勢が見ている場所で子どもがかんしゃくを起こすと、いたたまれない気持ちになり「なんとかして静かにさせなければ」「早くこの場から立ち去りたい」と焦ってしまいますよね。しかし、親が焦れば焦るほど、子どもはますますヒートアップして手がつけられなくなってしまうことも……。子どもがかんしゃくを起こしたときの対処法は、ひとつではありません。お子さんの様子や成長の過程を見ながら、その状況に適した対処法を見つけ出しましょう。いくつか実践例をご紹介するので、ぜひ参考にしてみてくださいね。■「イライラしたときはどうする?」と事前に聞いておくいざかんしゃくが起こってしまうと、収めるのは大変です。ですから、まずは事前の対策をしっかりと練って、かんしゃくを起こさせないように先回りして対処しましょう。おすすめは、子どもの状態が比較的落ちついているとき、親子で「かんしゃくが起こったときにどうするか」を決めておくこと。前出の伊藤明子先生によると、「イライラしたり、怒ったりしたときはどうする?」と聞き、子ども自身にどうしたらいいのかを決めさせるといいそうです。お気に入りのぬいぐるみやタオルに触る、空を見上げて深呼吸するなど、本人が考えた対処法であれば、スムーズに気持ちが切り替わってクールダウンできるでしょう。■時間や回数など、具体的な数字を伝える親の声かけひとつで、子どもはかんしゃくを起こさず、落ち着いてその場を切り抜けられます。たとえば公園で、「まだ遊びたい」と駄々をこね始めたとき、「急いでいるからダメ!」「早く帰るよ!」と頭ごなしに言いつけるのはもちろんNGです。また、「じゃあ、ちょっとだけね」と、一見理解を示したような声かけもよくありません。子どもには、「ちょっと」や「少し」といった曖昧な感覚が伝わらないので、「5時になったから急いで帰らないとね。じゃあ、あと3回滑り台滑って帰ろうか」と、時間や回数など具体的な数字を出して伝えましょう。■気分転換をはかって気をそらす!東京家政大学子ども学部教授の岩立京子先生は、子どものかんしゃくには「気をそらす」というテクニックが有効だと述べています。具体的には、次のような方法が効果的だそう。スーパーでお菓子を買ってほしいと子どもがかんしゃくを起こす↓泣いている子どもをひょいと抱き上げ、駐車場の車に連れて行くなど場所を移動してから、「あれが欲しかったんだよね」と子どもの気持ちに共感してあげる↓少し時間が経ち、子どもが疲れて落ちつくタイミングがやってきたら、ジュースをあげるなど気分転換をはかって気をそらす 「親に怒りなどの感情を受け止めてもらい、調整してもらってきた子どもは、自己の情動を調整できる傾向が強い」と岩立先生。こういったプロセスを繰り返すことで、子どもは自分の情動をコントロールする術を身につけられるようになるそうです。■「大声で叱る」「ご褒美で釣る」のは絶対にNG激しくかんしゃくを起こす子どもに、ついイライラしてしまうのは当然です。しかし、ここで「もう知らないからね!」と無視をしたり、「いい加減にして!」と大声で叱ったりするのは、結果としてさらに親御さんとお子さんを苦しめることにつながります。子どものかんしゃくを無視するということは、子どもの本当の気持ちに向き合っていないのと同じです。市川先生は、「わかってほしいのにわかってくれない」「聞いてほしいのに聞いてくれない」という挫折感が子どもの心に広がると、次第に自分の気持ちを人に伝えることを諦めるようになると警鐘を鳴らしています。また、いくら暴れて騒がしくしていたとしても、ご褒美で釣るようなこともおすすめできません。伊藤先生によると、「○○をあげるからいい子にして」とその場を収めることを繰り返していると、子どもは「かんしゃくを起こしたらご褒美がもらえる」と勘違いしてしまうそう。子どものかんしゃくには、毅然とした態度で向き合うことを心がけましょう。***子どものかんしゃくに悩んでいる保護者の方は、「今すぐにでもこの問題を解決したい」と願っているはずです。しかし、「こういう時期なんだ」「いまは身体と心が急激に成長しているんだ」と理解することで、気持ちに少し余裕が生まれるのではないでしょうか。(参考)ベネッセ 教育情報サイト|切実!子どもの癇癪(かんしゃく)にはどう対応するといいの?さぽナビ|<子どものココロジー>すぐに怒る子All About|「4歳児は天使」の誤解?! 反抗期や癇癪の心理と対策ウーマンエキサイト|【医師監修】子どもが癇癪(かんしゃく)を起こすのは育て方のせい?STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|困難に立ち向かえる自信のある子の育て方。何より大切なのは親子間の「アタッチメント」STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|イヤイヤ期には“気そらし方略”がうまくいく。3歳の子育てを楽にする、2歳までの「しつけ」のコツ
2020年06月24日コロナウィルス感染拡大防止のための休校措置にともない、お子さまの学習習慣をあらためて見直したご家庭も多いのではないでしょうか。学習面でのさまざまな問題点が浮き彫りになったり、生活習慣ががらりと変わったことで子どもの学習への意欲が低下したりと、これまで気づかなかったことに気づかされるきっかけにもなったはず。今回は、「勉強しない子」が「勉強する子」に変わる家庭での仕組みづくりについてご紹介します。長い?短い?小学生の勉強時間そもそも、一般的に子どもたちはどれくらい勉強しているものなのでしょうか。何を基準にして、わが子のベストな勉強時間の長さを決めればいいのでしょうか。小学生の家庭学習の目安として、よく耳にするのが「学年×10分」ですね。2年生なら「20分」、4年生なら「40分」。しかしこれでは、宿題をするだけで終わってしまいそうです。ベネッセ教育総合研究所が調査した「小学生の勉強時間」の平均は次のとおり。1年生56分2年生56分3年生66分4年生71分5年生76分6年生76分全学年としての平均は、宿題に費やす時間(30~40分程度)を含めて67分という結果に。ただし、習い事の有無など各家庭の事情にも大きく左右されるため、一概に「○年生なら○分勉強するべき」とは言いきれません。しかしながら、学年が上がれば上がるほど、勉強を習慣づけさせるのは困難になっていきます。そうであるならば、できるだけ早い時期から家庭学習を習慣づけさせる必要があるでしょう。勉強する子と勉強しない子、その差はどこから?これまでに多くの親子と関わってきた松尾英明先生(千葉大学教育学部附属小学校)は、「親はひとことも『勉強しなさい』なんて言っていないのに、きちんと勉強する子どもは一定数いる」と断言します。ここでは、「いくら言っても勉強しない子」と「何も言わなくても勉強する子」の違いについて考えていきましょう。■子ども自身が勉強の必要性を感じているか?「なんのために勉強するのか」を理解せずに、ただ「先生やお母さんに怒られるから」と、しぶしぶ机に向かっている子は意外とたくさんいます。ベネッセ教育総合研究所が2014年に実施した「小・中学生の学びに関する実態調査」では、小学生の10.1%が「なんのために勉強しているのかわからない」と答えたそう。みなさんも、「これって意味あるのかな?」「なんでこんなことやらないといけないの?」と思っていることを実行するのは、かなりの苦痛をともなうはずです。それは子どもだって同じ。一方で、「自分から勉強する子」は、勉強する意味を明確に理解しているケースが多いといいます。ベネッセによる2011年の調査の結果、「親と将来や進路について話をする」と答えた子どもは、比較的勉強時間が長いという傾向が見られたそうです。特に小学4年生以降になるとその差は歴然で、「親と将来や進路の話をすることがない」子に比べると、20分~30分もの差が生まれています。■子どもに「勉強しなさい!」と言っている?子どもが親に「勉強しなさい!」と言われるとつい反発したくなるのは、ある心理的な要因が考えられます。社会心理学を専門とする深田博己教授によると、「個人が特定の自由を侵害されたときに喚起される、自由回復を志向した動機的状態」、いわゆる「心理的リアクタンス」が機能しているとのこと。人は、「〇〇しろ」「××するな」と言われると、「自由を侵害された」「行動を制限された」という気持ちになるため、つい反対の行動をとりたくなるのだそう。パートナーから「早く△△しておいて!」などと言われて、「いま△△しようと思っていたのに急にやりたくなくなった」という経験はありませんか?同じように、「勉強しなさい!」という親の声かけは、逆に子どもから勉強への意欲を奪ってしまうのです。また、ベネッセの調査では、「勉強しなさい」と声かけをしてもしなくても、実際の勉強時間の長さはほとんど変わらないという結果が出ています。さらに驚くべきことに、中学3年生にもなると、「勉強しなさい」と声かけされない子のほうが、約25分も長く勉強していることがわかっているのです。いますぐ実践!勉強しない子が変わる仕組みづくり最後に、お子さんが「勉強する子」へと変わるために親がサポートできることをいくつかご紹介します。■机に向かっていればOKとする○机に向かっていれば勉強していなくてもOK小学校教諭、塾講師として長年教育現場に携わってきた須貝誠先生は、たった30分の家庭学習でさえ継続できない場合、「勉強でなくても、一定時間机で好きなことをさせておけばいい」と述べています。これで「机に向かう習慣」が身につくそうです。○わが子のペースで少しずつ時間を伸ばす机に向かうことに慣れ、しだいに数分からでも勉強するようになれば、今日は10分、明日は15分……と少しずつ時間を伸ばしていくといいでしょう。同様に、今日は1ページ、明日は2ページ、とページ数などで区切ってみるのもいいですね。○時間にはこだわらないその際に大事なのは、親は子どもの様子をよく見て、臨機応変に対応すること。「3年生だから30分は勉強しなきゃ」「同じ学年の子は30分以上勉強してるんだから」などと、数字にばかりとらわれていると、わが子に適した学習時間を見極められなくなります。取り組んでいるドリルが難しくて手が止まっているようなら、少し簡単なものに変える、量を減らす、基本問題だけをやらせて応用問題は後回しにさせる、などうまく調整してあげることで、勉強に対するモチベーションを保つことができるでしょう。■子どもが集中できる環境を用意する○机に向かったときに目に入るものをチェック集中力がなく、すぐに気が散ってしまう場合は、机まわりの環境を見直しましょう。収納カウンセラーの飯田久恵先生によると、「子どもは気が散りやすく、目に入ったものに気をとられると、なかなかひとつのことに集中できない」とのこと。子どもが目の前の勉強だけに集中できる環境を用意してあげる必要があるのです。○「好きなもの」をあえて視界に入れないゲームや漫画などは目に入る場所に置かない、デスクマットに勉強とは関係ないものを挟まない、などを意識するのはもちろん、勉強に必要なものがすぐに取り出せるように整理整頓を心がけましょう。片づけができていないと、物を探す時間の無駄が生まれて、勉強への集中力が途切れる原因にも。机まわりの環境を整えることは、勉強の習慣化につながります。■子どもの「学び」を後押しする○幼少期の熱中体験を大切に親との関わり方も子どもの学習意欲に大きな影響を及ぼします。東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授いわく、東大生の多くは、子ども時代に「何かに熱中する体験」をしているそう。しかし、子どもが何かに熱中しているそばで親がテレビやスマートフォンを眺めていては、せっかくの熱中体験が活かされません。○バーチャルとリアルをつなぐ大切なのは、子どもが興味をもったことを親も一緒に楽しんだり、もっと興味を追求できるように環境を整えてあげたりすること。実際に電車を見に行く、サッカーの試合を観戦する、博物館や科学館に連れていくなど、「バーチャルとリアルをつなぐ作業を一生懸命やった家庭の子は、ぐんぐん伸びていきます」と瀧教授も述べています。「勉強しなさい!」といくら言っても効果がないと諦めてしまった保護者の方もいるかもしれません。しかし、本来子どもは好奇心が旺盛なものです。わが子の興味の対象はなんなのか、それを見つけてうまく引き出し、学習意欲を刺激してあげることで、その他の勉強へのモチベーションにもつながっていくでしょう。***本文で述べたように、将来のイメージを具体的に思い描ける子ほど、自発的に勉強する傾向がみられることがわかっています。ぜひお子さんの将来や進路について、親子で話してみませんか?夢や目標があれば、勉強への意欲がぐんと上がっていくはずです。(参考)ベネッセ 教育情報サイト|小学生みんなの勉強時間はどのくらい?STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子供が勉強しないときの対策。イライラはNG、親子で勉強計画を立てよう!ベネッセ教育総合研究所|小・中学生の学びに関する実態調査報告書[2014]STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「勉強しなさい」といい続けたら将来どうなる!?子どもの才能を摘まないためにーーベネッセ 教育情報サイト|「勉強しなさい」よりも効果的!?な、子どもの学習意欲を高める関わり方広島大学 学術情報リポジトリ|心理的リアクタンス理論(1)STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「勉強しろ」は逆効果!統計でわかった、親が本当にやるべき3つのことSTUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「コツコツ勉強」「諦めずに練習」が苦手な子どもを生まれ変わらせる“4つのアプローチ”STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|勉強への集中力、学びへの興味を引き出す「片付けテク」を、収納カウンセラーが伝授!東洋経済オンライン|頭のいい子に共通する小学校時代の過ごし方
2020年06月22日家庭教育の話題としても耳にすることが増えている「アドラー心理学」。そもそも、アドラー心理学とはどんなもので、子育ての場面ではどのように生かせるのでしょうか。そのポイントを、株式会社子育て支援代表取締役であり、日本アドラー心理学会/日本個人心理学会の正会員でもある熊野英一さんが教えてくれました。熊野さんは、アドラー心理学の考え方を生かすことにより、親子間のコミュニケーションが格段にスムーズになると言います。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人一般人でも実践的に使えるアドラー心理学アドラー心理学は、心理学の一分野です。その創始者であるオーストリアの心理学者、アルフレッド・アドラーは、フロイト、ユングと並ぶ心理学の3大巨頭ですが、日本ではほかのふたりと比べて少しマイナーな存在でした。それが大きく変わったのが、2013年。アドラーの教えを伝える書籍『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社/岸見一郎・古賀史健 著)が大ヒットしたことで、日本にもアドラーの名が知れわたったのです。もちろん、アドラー心理学が注目を集めるようになった要因は、書籍のヒットだけではありません。なにより、その使い勝手の良さが大きかったと思います。アドラー心理学は、非常にシンプルでわかりやすい理論のため、子育てのほか、夫婦関係や職場での人間関係など、さまざまな対人関係に適用しやすいのです。では、アドラー心理学とは具体的にどういうものなのでしょうか。アドラーは、簡単に言うと、「どうすれば人は仲良くできるのか」ということを追求した人です。アドラー以前の心理学は、基本的に、心の問題を抱えている人を精神分析したりトラウマなど心の闇をまさぐったりして、「問題の原因を解明していく」というスタンスでした。でも、それでは即座に問題を解決することは難しい。いままさにけんかしている目の前の人とどうすれば仲直りできるのか、これから仲良くできるのか――。アドラーはそこにフォーカスしました。だからこそ、心理学について特別に学んでいない人たちであっても実践的に使える心理学として、アドラー心理学の注目度がどんどん増しているのだと思います。「子育ての最終目標」とは「子どもを自立させる」ことそのアドラー心理学の観点から、「子育ての最終目標」とは「子どもを自立させる」ことだと私は考えています。普通に考えると、親は子どもより長く生きることができません。そうであるなら、子どもが親から離れて自活し、自らの幸せをつかめるような人間に育てること、すなわち自立させることが親の役割だと言えます。また、自立に加えて、もうひとつの大事なキーワードが、アドラー心理学の専門用語で「共同体感覚」と呼ぶものです。わかりやすく言うと、「公共心」とか「思いやり」になるでしょうか。どんな人間にとっても自分は大事ですから、必要以上に自分を犠牲にする必要はありません。その一方で、社会生活を営む人間としては、「自分さえよければいい」という考え方はNGでしょう。自分を大事にして自らの幸せを追求しながらも、困っている他者に対して手を差し伸べることができる感覚――。共同体感覚を誰もがもっていたとしたら、その社会はきっとハッピーであるはずです。そういう点では、自分も他者も大事にできる共同体感覚をもっている人間が、自立している人間だと定義できるかもしれません。もちろん、アドラー心理学を学んだ経験がない人でも、親であれば誰もが「子どもに自立してほしい」「自分も他人も思いやれる人になってほしい」と願うものでしょう。ところが、実際の子育てとなると、さまざまな問題に直面します。その筆頭が、子どもに対する「イライラ」や「怒り」の感情ではないでしょうか。親は子どもを愛しているからこそ、イライラしてしまうでは、イライラや怒りとはなにか?それらは、心理学的には「二次感情」と呼ばれるものです。でも、二次感情以前に別の感情である「一次感情」があります。それらが増大して沸点に達した結果、イライラや怒りになるのです。代表的な一次感情は、「落胆」「心配」「不安」「寂しい」「悲しい」の5つ。「いい子に育ってほしい」と期待しているから落胆がある。「健康でいてほしい」と願うから心配するし不安にもなる。子どもと離れると寂しいし、子どもと愛し合えなくなったら悲しい。どれも親が子どもに対してもちやすい感情ですよね。つまり、これらの感情は親としての子どもへの愛情とセットのものです。親はみんな子どもを愛しています。だからこそ、一次感情が膨らんでイライラや怒りを抱えてしまうのです。つまり、親が子どもに対してイライラや怒りを覚えるのは当然のこと。問題は、親の気持ちの伝え方にあるのです。二次感情のイライラや怒りをそのままぶつけるから、親子関係がうまくいかなくなる。そうではなく、冷静に一次感情を伝えることを考えましょう。親子間に欠かせない「共感」は、「同意」とはまったくの別物そして、それ以前に子どもの話をきちんと聞くことを心がけてください。その際のキーワードとなるのが、「共感ファースト」。まずは子どもの話を聞いて、その思いに共感することが重要なポイントです。ただ、注意してほしいのは、「共感」と「同意」はまったく別物だということ。「共感=同意」だと考えると、すべて子どもの言いなりになるしかありません。それではやはり、親としては納得できない。「同意できないから、私は共感もしない」と考えてしまい、きちんと子どもの話を聞いてあげられなくなり、親子間の衝突が起きるのです。同意しなくてもいいのです。でも、まずは共感してみましょう。たとえば子どもが友だちに暴力をふるったとします。その行為自体はいいものではありませんから、絶対に同意はできないでしょう。でも、その行為の裏には、暴力をふるってでも守りたかった自分の正義があったのかもしれない。その本心をきちんと聞いて共感してあげないことには、子どもはいつまでたっても「どうしてわかってくれないんだ!」と親に対して不信感を募らせるだけです。でも、親がしっかり子どもの話を聞いて共感してくれたら、「お父さん、お母さんは、自分のことを本当にわかろうとしてくれているんだ」と子どもは思いますよね。そうすれば、そのあとのコミュニケーションもスムーズになる。「あなたの気持ちはよくわかった、でもやっぱり暴力はよくないと思う」と同意できないことを伝えても、自分に共感してくれた親の言葉になら、子どもは素直に耳を傾けてくれるはずです。『アドラー式働き方改革 仕事も家庭も充実させたいパパのための本』熊野英一 著/小学館(2018)■ 株式会社子育て支援代表取締役・熊野英一さん インタビュー記事一覧第1回:「○○ファースト」がポイント!アドラー心理学で親子間のコミュニケーションがうまくいく第2回:大事なのは我が子を無条件で信じる「信頼」。「信用」しかできないのはとても危険(※近日公開)第3回:子育てでは“ほめないこと”が大切なわけ。アドラー流・子どもを「ほめずに勇気づける」方法(※近日公開)第4回:つい叱りたくなるときでも、親は「インタビュアー」になれば落ち着いて我が子に向き合える(※近日公開)【プロフィール】熊野英一(くまの・えいいち)1972年1月22日生まれ、フランス・パリ出身。株式会社子育て支援代表取締役。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。メルセデス・ベンツ日本人事部門に勤務後、米国Indiana University Kelley School of Businessに留学(MBA/経営学修士)。製薬企業イーライ・リリー米国本社及び日本法人を経て、保育サービスの株式会社コティに統括部長として入社。約60の保育施設の立ち上げ・運営、ベビーシッター事業に従事。2007年、株式会社子育て支援を設立し、代表取締役に就任。日本アドラー心理学会/日本個人心理学会正会員。主な著書に『アドラー式子育て 家族を笑顔にしたいパパのための本』(小学館)、『アドラー子育て・親育て 家族の教科書 子どもの人格は、家族がつくる』(アルテ)、『アドラー子育て・親育て 育児の教科書 父母が学べば、子どもは伸びる』(アルテ)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年06月12日子どもに対して、「勝手に育ってくれ」なんて思っている親はまずいません。親それぞれに理想の子育てがあるからです。そのため、自分の理想から外れるようなことを子どもがすると、どうしても親子でぶつかりがち。アメリカの臨床心理学者であるトマス・ゴードン博士が、心理学、教育学、発達心理学をベースに開発したコミュニケーション訓練プログラム「親業」のインストラクターである親業訓練協会の瀬川文子さんは、親子間の問題を解決するには「勝負なし法」がベストだと言います。しかも、この方法には子どもの創造性を伸ばすというメリットもあるのだそう。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人親子間における問題の解決法は3種類「親業」においては、親子間における問題を解決するには3つの方法があると考えています。よく使われるのが、親の意見や考えを無理やり子どもに押しつけて従わせる方法です。これをわたしたちは、「第1法」と呼んでいます。一方で、スーパーで子どもに「お菓子が欲しい」と駄々をこねられ仕方なく親が従うということもある。これは、子どもが自分の考えを押し通したケースで、「第2法」と呼ぶものです。これら第1法と第2法には、勝ち負けが存在します。第1法なら親が勝ちで子どもが負け、第2法なら子どもが勝ちで親が負け。これら勝ち負けがある「勝負あり法」は、力技です。力を使われて負けたほうは、勝ったほうに対してもどうしても不満を持ってしまう。そのため、いい関係を築きにくくなります。でも、3つ目の問題解決の方法である「第3法」と呼ぶものは、勝ち負けがない「勝負なし法」です。この方法では、本来、子どもより力を持っている親は、その力を使わずに子どもとの話し合いのテーブルにつきます。いわば、横並びで対等になるわけです。そして、子どもと同じ目線に立ち、互いが納得できる解決策を話し合いながら探していくのです。もちろん、子どもの側も子どもなりに考えて解決策を出します。そのため、互いに不満が残らないのです。「勝負あり法」が子どもの育ちに与える悪影響もちろん、「勝負なし法」で親子間の問題を解決することが信頼関係を強めます。第1法、第2法では、親子のどちらかに不満が残ること以外にも、大きなデメリットがあります。それは、子どもの育ちに悪影響を与えるということ。第1法では、指示命令によって親の言いなりに子どもを育てることになります。そのため、子どもは、「言われたことはやるけど、言われなければやらない」という、いわゆる「指示待ち人間」になってしまうでしょう。これからの時代に大切だとされる、自立心や主体性がまったく育たないということになりかねません。また、第2法の場合には、子どもは常に自分の要求が通るために、すごくわがままで傍若無人に育ってしまう可能性を秘めています。もちろん、その要求を親だけに向けるのではなく、友だちなどまわりの人にもそうするでしょう。それでも、未就学児の頃までならなんとか社会生活ができるかもしれません。でも、小学校に入学したらそうはいかない。先生からは叱られ、友だちには嫌われる……。そうして、不登校になるといったことだって否定できません。さらに、第2法を使い続けると、年齢に応じて要求が大きくなることも問題です。スーパーでお菓子をねだるくらいならまだかわいいものですが、10代も後半となったら、バイクや自動車をねだるといったふうに要求はエスカレートするでしょう。そのときになって「これじゃ駄目だ」と慌てて第1法に変えようものなら、それこそ親子間のバトルが勃発してしまいます。子どもが一生懸命に考えることで、創造性が伸びる一方、「勝負なし法」である第3法の場合には、親子双方に不満が残らないことのほかにもメリットがあります。それは、子どもの創造性が伸びるということ。なぜなら、子どもが自分で「どうしたらこの問題を解決できるんだろう?」と一生懸命に考えるからです。いろいろな経験があるために「こういうケースはこうするべきだろう」と考えがちな親よりも、むしろ子どものほうがよほどおもしろくて自由な解決策を提案するということも珍しくありません。これは親子が衝突したケースではありませんが、かわいらしくて楽しいエピソードをひとつ紹介しましょう。わたしたちが行なっている親業訓練講座(インタビュー第1回参照)を受講したお母さんから聞いたお話です。そのお母さんには3人の子どもがいます。そして、問題となっていたのが、「寝るときにお母さんの隣を3人の子どもが取り合う」ということでした(笑)。子どもは3人なのに、お母さんの隣はふたつしかありませんからね。どうすればいいかと話し合ってみると、子どもたちは、じつにおもしろくて自由な解決策をどんどん提案しました。たとえば、「ひとりはお母さんの上で寝る」とか。それから、「みんなで寝られる大きい布団を買う」という意見も。その子の視点からは、同じ布団に入っていたら隣で寝ているという感覚なんですね。そんな発想は大人にはありません。このケースのように、なにか問題が生じたとしても「勝負なし法」によって子どもの発想を面おもしろがるような姿勢が、親子間の問題解決には大切なのかもしれません。子どものおもしろい発想に親が笑ってしまったら、それこそ衝突どころではありませんからね。『あっ、こう言えばいいのか! ゴードン博士の親になるための16の方法 家族をつなぐコミュニケーション』瀬川文子 著/合同出版(2013)■ 親業訓練協会インストラクター・瀬川文子さん インタビュー記事一覧第1回:子どもが反発ばかり……親子関係の問題を劇的に改善する「双方向」のコミュニケーションとは第2回:繰り返す、言い換える、気持ちを汲む。親の「能動的な聞き方」が、子どもを問題解決に向かわせる第3回:「私メッセージ」の叱り方で子どもが変わる! 親は怒りではなく“第一次感情”に注目して第4回:親子の衝突を解決するには「勝負なし法」がベスト。勝敗を決めるのは、子どもの育ちに悪影響【プロフィール】瀬川文子(せがわ・ふみこ)1954年8月28日生まれ、東京都出身。親業訓練協会シニアインストラクター。1973年、日本航空に客室乗務員172期生として入社。14年間の国際線勤務の後、結婚のために退社。1998年、コミュニケーション訓練のプログラム「親業」の指導員資格を取得。2002年、CAP(子どもへの暴力防止プログラム)スペシャリストの資格を取得。2003年、親業シニアインストラクターの資格を取得。2006年、『ママがおこるとかなしいの』(金の星社)で絵本作家としてデビュー。同年、親業訓練協会インストラクター養成担当となる。2015年、日本アンガーマネジメント協会ファシリテーターの資格を取得。現在は、親業訓練協会の運営に関わりながら、医療、介護、教育の各機関、企業、家庭を対象に、「想いが伝わるコミュニケーション」を軸とした講演会等を全国各地で行うなど活躍の場を広げている。主な著書に、『聞く、話す あなたの心、わたしの気もち いじめない、いじめられない子どものためのコミュニケーション』(元就出版社)、『ほのぼの母業のびのび父業 ゴードン博士に学ぶ 21世紀の家庭へ わかりあえるコミュニケーション訓練』(元就出版社)、『職場に活かすベストコミュニケーション ゴードンメソッドが職場を変える』(日本規格協会)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年06月10日「何度言っても子どもが言うことを聞かない」「いつも同じことで叱っている気がする」――。これはもう、親にとっての「あるある」でしょう。そういうことが起こる原因はどこにあるのでしょうか。アメリカの臨床心理学者であるトマス・ゴードン博士が、心理学、教育学、発達心理学をベースに開発したコミュニケーション訓練プログラム「親業」のインストラクターである親業訓練協会の瀬川文子さんに、対処法と併せて教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカット)「あなた」を主語にした叱り方が子どもの反発を招くNGな叱り方をひとことで言うと、「『あなた』を主語にした叱り方」です。子どもを叱るのは、たいてい子どもの行動に対して親が気に入らないとき。すると、「どうしてそんなことするの!」というふうな表現になります。主語を省略することが多いのが日本語の特徴であるためにわかりづらいかもしれませんが、これは、「(あなたは)どうしてそんなことするの!」と、「あなた」を主語にした叱り方です。「(あなたは)なにやってるの!」「(あなたは)またそんなことして……」も同様。そして、これら「あなた」を主語にした叱り方には、相手を責めるニュアンスが強く含まれます。そのため、責められたほうは言い訳をしたり反発したりしたくなるのです。親からしたら気に入らない行動も、子どもからすれば「親に迷惑をかけてやろう」なんて思ってやっているわけではありません。汚れた靴下を脱ぎっぱなしにしたのもただ忘れてしまっただけとか、おもちゃを片づけないのも夢中になって遊んでいるうちに結果的に散らかってしまっただけということがほとんどでしょう。そこで、「まったくこの子は!」というふうに子どもを責めるのはお門違いです。叱るときは、怒りではなく「第一次感情」に注目そうではなくて、親は「(私が)困っているんだ」ということを丁寧に子どもに伝えていかなければなりません。「私」を主語にした「私メッセージ」で子どもに感情を伝えることが大切なのです。そうすれば、子どもは親の感情をきちんと受け取って、行動を変える可能性が高くなります。でも、親も自分の感情にはなかなか気づけないものです。私たちが行なっている親業訓練講座(インタビュー第1回参照)の受講者のみなさんに、「私メッセージ」をつくる練習のために、親子にありがちなシチュエーションのなかでの自分の感情を挙げてもらうと、「嫌だ」「困る」「イライラする」くらいなもの。普段からそこに注目していないために、自分の感情が見えなくなっているわけです。でも、感情がそんなに単純なものだけであるはずはないですよね?そこで、自分の感情に注目するトレーニングをしましょう。注目してほしいのは、いわゆる「第一次感情」です。子どもを叱るとき、多くの親は先に挙げた3つの感情などを含む「怒り」を感じています。でも、怒りというものは、たいてい別の感情の次に湧いてくるもの。その怒りより先に湧いてくる感情こそが第一次感情です。子どもが遊園地で迷子になったとします。親が最初に感じる感情はなにかといったら、当然「心配」や「不安」でしょう。「どこに行っちゃったんだろう……」と親なら誰もが我が子を心配して不安になる。でも、子どもが無事に見つかったら、最初にどんな言葉をかけるかというと……「(あなたは)なにやってんの!」です。これでは、心配されていたことがわからないまま、怒られたという事実だけが子どもの印象に残ってしまう。つまり、親子間のコミュニケーションにとって好ましくない誤解を生むことになるのです(インタビュー第1回参照)。親の「私メッセージ」が、子どもの「思いやり」も育むもちろん、場合によっては叱らなければならないこともあるでしょう。でも、その前にまずは親の心配や不安といった第一次感情を「私メッセージ」で伝えるほうが効果的です。そうすれば、叱られた子どもに親の気持ちがしっかり伝わり、子どもの反省の度合もまったく違ってきます。それこそ迷子になった子どもが見つかったときであれば、親に「よかった、すごく心配して不安だったのよ」と言われたなら、子どもも「こんなに心配させてしまうんだったら、今度から気をつけよう」と思うでしょう。そのあとのお説教も素直に聞いてくれるはずです。最後に、子どもの行動や言葉が嫌だなと思ったときの、「私メッセージ」の伝え方のコツを紹介しておきます。以下の「3部構成」にすることが効果的です。【「私メッセージ」のコツ】子どもの行動:非難がましくなく、目に見える、耳に聞こえる事実を伝える行動から受ける自分への影響:できるだけ具体的に伝える私の感情:正直に素直に伝えるこの「3部構成」で「私メッセージ」を伝えることにより、子どもは自分の行動が親を困らせたり悲しませたりすることを理解できるようになる。ひいては、他人に対する「思いやり」を育むことにもつながります。そのためにも、「こうしてちょうだいね」という言葉をつけ加えて「4部構成」にしないことです。それでは結局、指示命令になってしまい、子どもの思いやりが自発的に生まれることを阻害することになりますから注意してください。『あっ、こう言えばいいのか! ゴードン博士の親になるための16の方法 家族をつなぐコミュニケーション』瀬川文子 著/合同出版(2013)■ 親業訓練協会インストラクター・瀬川文子さん インタビュー記事一覧第1回:子どもが反発ばかり……親子関係の問題を劇的に改善する「双方向」のコミュニケーションとは第2回:繰り返す、言い換える、気持ちを汲む。親の「能動的な聞き方」が、子どもを問題解決に向かわせる第3回:「私メッセージ」の叱り方で子どもが変わる! 親は怒りではなく“第一次感情”に注目して第4回:親子の衝突を解決するには「勝負なし法」がベスト。勝敗を決めるのは、子どもの育ちに悪影響(※近日公開)【プロフィール】瀬川文子(せがわ・ふみこ)1954年8月28日生まれ、東京都出身。親業訓練協会シニアインストラクター。1973年、日本航空に客室乗務員172期生として入社。14年間の国際線勤務の後、結婚のために退社。1998年、コミュニケーション訓練のプログラム「親業」の指導員資格を取得。2002年、CAP(子どもへの暴力防止プログラム)スペシャリストの資格を取得。2003年、親業シニアインストラクターの資格を取得。2006年、『ママがおこるとかなしいの』(金の星社)で絵本作家としてデビュー。同年、親業訓練協会インストラクター養成担当となる。2015年、日本アンガーマネジメント協会ファシリテーターの資格を取得。現在は、親業訓練協会の運営に関わりながら、医療、介護、教育の各機関、企業、家庭を対象に、「想いが伝わるコミュニケーション」を軸とした講演会等を全国各地で行うなど活躍の場を広げている。主な著書に、『聞く、話す あなたの心、わたしの気もち いじめない、いじめられない子どものためのコミュニケーション』(元就出版社)、『ほのぼの母業のびのび父業 ゴードン博士に学ぶ 21世紀の家庭へ わかりあえるコミュニケーション訓練』(元就出版社)、『職場に活かすベストコミュニケーション ゴードンメソッドが職場を変える』(日本規格協会)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年06月08日アメリカの臨床心理学者であるトマス・ゴードン博士が、心理学、教育学、発達心理学をベースに開発したコミュニケーション訓練のプログラム「親業」。そのインストラクターである親業訓練協会の瀬川文子さんに、具体的なメソッドを教えていただきます。今回、取り上げるポイントは、「聞き方」です。瀬川さんは、「子どもが育っていく過程において、親による話の聞き方は非常に重要」だと言います。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカット)聞き方には「受動的な聞き方」と「能動的な聞き方」がある「親業」においては、聞き方には「受動的な聞き方」と「能動的な聞き方」の2種類があるとしています。受動的な聞き方とは、子どもがなにかを話しているときに「相づちを打つ」「黙って聞く」「話が止まったら促す」といったことを指します。これも、親子間のコミュニケーションにおいては大切なことです。でも、受動的な聞き方が適さないケースもあります。子どもが深刻な悩みを打ち明けているのに、親が「へえ」「ふうん」とただ相づちを打っているだけだとしたらどうでしょうか?子どもは、自分の言っていることがきちんと親に伝わっているのか、親が自分を受け入れてくれているのかがわからず、不安に陥ります。そのような不安を招かないために効果的なのが、「能動的な聞き方」です。能動的な聞き方とは、「あなたの話を私はこう理解したけれど、それで正しい?」というふうに、相手に確認する聞き方のこと。具体的には、「相手の言葉を繰り返す」「言い換える」「相手の気持ちを汲む」です。子どもに問題や悩みを客観視させる「能動的な聞き方」じつは、この聞き方は、カウンセラーがよく使うものです。カウンセラーは、基本的に依頼者の話を聞くだけで、解決策を与えることはしません。与えなくとも、この能動的な聞き方によって依頼者自身が解決策を見いだすことができるからです。友だちと喧嘩したことを悩んでいる子どもが、どうしたらいいかと親に相談していたとします。そこで、「いまのあなたの話って、こういうことだよね?」と親から確認されると、子どもは自分の悩みや問題、喧嘩の経緯を鏡で見ているような状態になる。そのために、「僕の言葉にも悪いところがあったかも……」といったふうに客観視ができ、「じゃ、どうしたらいいんだろう」と子どもが自分で考えて解決策を導き出すことができるのです。もちろん、ただ能動的な聞き方をすればいいわけではありません。子どもが悩みを打ち明けているようなケースなら、それこそ子どもの気持ちに共感してあげる必要がある。それなのに、親業をちょっと学んだ人のなかには、表面的なテクニックに走る人も見受けられます。能動的な聞き方の具体的な方法は、「相手の言葉を繰り返す」「言い換える」「相手の気持ちを汲む」ことだとお伝えしました。このなかで一番簡単なものが「繰り返す」ですよね。そのため、「なんでもかんでも子どもの言葉を繰り返せばいい」と考える人もいるのです。でも、子どもが困っているケースにもいろいろなものがあります。これは少し極端な例えですが、先の予定がわからなくて困っている子どもから、「お母さん、来週の予定ってどうなってたっけ?」と聞かれたのに、それを繰り返したところでなんの解決にもならないですよね。あるいは、子ども自身が親の考えを見抜くということもあります。ただ表面的にテクニックを使って「とにかく繰り返せばいいや」と思っていたら、そのいい加減な気持ちは表情や声のトーンなどどこかに出てくるものです。子どもは敏感ですから、そういうサインを見逃しません。そのため、むしろ親子の信頼関係を壊してしまうことにもなりかねないのです。気持ちを3つに整理して、親がやるべきことを知るそんな悲劇を招かないためにも、「気持ちを整理する」ことを意識しましょう。親業においては、気持ちを大きく3つに分けて考えます。その分類基準は、「自分(親)が受け入れられるか受け入れられないか」ということ。子どもが汚れた靴下を脱ぎっぱなしにしていることを「嫌だなあ」と思ったら、それは親としては受け入れられない――「非受容」の行動として整理します。非受容の行動については、「嫌だなあ」と思っているのは親ですから、親自身がきちんと表現しない限り子どもには伝わりません。だから、「靴下を脱いだままにされると困るんだよね」というふうに表現する必要がある。非受容の行動についてはきちんと表現しなければならないのだと自動的に判断できます。一方、受け入れられる――「受容」に整理したもののなかにも、親は嫌ではなくても子どもが嫌だと思っていたり困ったりしている行動もあります。これが2つめの分類です。たとえば、子どもが「お母さん、抱っこして」と言ってきたとします。「嫌だなあ」と思う親はほとんどいませんよね?でも、子どもの様子をよく見ると、なんだかいつもと違って元気がない。「なにか嫌なことがあったのかも」「困っていることがあるのかな」というふうなサインをキャッチできたら、今度は逆に子どもの話を聞くことで問題の解決を図れます。要は、誰が困っているのかを親自身の感じ方で整理し、対応を決めるのです。もちろん、親子ともに困っていない行動もあります。これが3つめの分類です。この行動に関しては、親子ともに落ち着いている状態ですから、特にやるべきことはありません。自由になんでもできる状態といっていいでしょう。このように、「親は子どもの行動に困っている(非受容)」「子どもが困っている(受容)」「親も子も困っていない(受容)」の3つに気持ちを整理することで、親が話すのか、子どもに話を聞くのか、特になにも気にしなくてもいいのか、やるべきことが明白になるのです。『あっ、こう言えばいいのか! ゴードン博士の親になるための16の方法 家族をつなぐコミュニケーション』瀬川文子 著/合同出版(2013)■ 親業訓練協会インストラクター・瀬川文子さん インタビュー記事一覧第1回:子どもが反発ばかり……親子関係の問題を劇的に改善する「双方向」のコミュニケーションとは第2回:繰り返す、言い換える、気持ちを汲む。親の「能動的な聞き方」が、子どもを問題解決に向かわせる第3回:「私メッセージ」の叱り方で子どもが変わる! 親は怒りではなく“第一次感情”に注目して(※近日公開)第4回:親子の衝突を解決するには「勝負なし法」がベスト。勝敗を決めるのは、子どもの育ちに悪影響(※近日公開)【プロフィール】瀬川文子(せがわ・ふみこ)1954年8月28日生まれ、東京都出身。親業訓練協会シニアインストラクター。1973年、日本航空に客室乗務員172期生として入社。14年間の国際線勤務の後、結婚のために退社。1998年、コミュニケーション訓練のプログラム「親業」の指導員資格を取得。2002年、CAP(子どもへの暴力防止プログラム)スペシャリストの資格を取得。2003年、親業シニアインストラクターの資格を取得。2006年、『ママがおこるとかなしいの』(金の星社)で絵本作家としてデビュー。同年、親業訓練協会インストラクター養成担当となる。2015年、日本アンガーマネジメント協会ファシリテーターの資格を取得。現在は、親業訓練協会の運営に関わりながら、医療、介護、教育の各機関、企業、家庭を対象に、「想いが伝わるコミュニケーション」を軸とした講演会等を全国各地で行うなど活躍の場を広げている。主な著書に、『聞く、話す あなたの心、わたしの気もち いじめない、いじめられない子どものためのコミュニケーション』(元就出版社)、『ほのぼの母業のびのび父業 ゴードン博士に学ぶ 21世紀の家庭へ わかりあえるコミュニケーション訓練』(元就出版社)、『職場に活かすベストコミュニケーション ゴードンメソッドが職場を変える』(日本規格協会)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年06月06日どんな親も、我が子との関係をよりよいものにしたいと思っているもの。ですが、子育てをするなかでは、「子どもを思っての言葉なのに、反発ばかりされる……」という経験をして、「子どもへの愛情が伝わっていないのではないか?」と感じることもあるはずです。その問題解決の鍵を握るのは「双方向」のコミュニケーションだと語るのが、「親業」というコミュニケーション訓練プログラムのインストラクターである瀬川文子さんです。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人「子どもがどう育つか」ではなく、「親がどう育つか」「親業」とは、アメリカの臨床心理学者であるトマス・ゴードン博士が、心理学、教育学、発達心理学をベースに開発したコミュニケーション訓練のプログラムです。この親業には、ほかのプログラムにはない大きな特徴があります。子育てに役立つとされるほかのプログラムの場合、そのほとんどが「子どもをどう育てるか」という視点でつくられているものです。一方の親業は、「親がどう育つか」という視点でつくられています。親自身が学んで成長することで、子どもとの接し方や関係を改善できるというわけです。このプログラムを開発した当時、ゴードン博士はカウンセラーとして活躍していました。そのため、いわゆる非行少年と呼ばれる子どもたちに接する機会が多くあったそうです。ところが、家や学校では問題児扱いされてカウンセリングを受けさせられることになった子どもたちに会ってみると、子ども自身にはまったくおかしなところがないと感じることが多かったといいます。そして、むしろ親や教師の対応の仕方に問題があるために子どもが反発しているのではないかと考え、親向けのコミュニケーション訓練プログラムを開発するに至ったのです。この親業訓練講座(Parent Effectiveness Training)は、1962年にアメリカのカリフォルニアで開催されたのをきっかけにして全米に広がり、現在では世界50カ国に広まっています。日本では、ゴードン博士の著書『親業 子どもの考える力をのばす親子関係のつくり方』(大和書房)を翻訳された近藤千恵氏が設立し、私も運営に関わっている親業訓練協会が、1980年から講座を提供しています。コミュニケーションの仕方次第では、愛情は伝わらない親子間のコミュニケーションにおける問題には、じつにさまざまなものがありますが、親業の視点から見て大きな問題のひとつだと感じるのが、「子どもが問題に直面したときに、親が性急に解決策だけを与えようとする」ことです。子どもが悩んだり困ったりしていれば、子を愛している親なら助けたくなって当然です。すると、子どもよりはるかに多くの経験をしている親には、「こういうときはこうすればいい」というふうに解決策が見えます。そして、親が考える解決策や意見を子どもに押しつけ、なるべく早く子どもの問題を解決させてあげようとしてしまうのです。もちろん、その言動は子どもへの愛情からくるものです。でも、子どもからすれば、自分が悩んだり困ったりしている気持ちをまったく受け取ってもらえないまま、「こうしなさい」とただ解決策だけが押しつけられたに過ぎません。そのため、どうしても反発や抵抗をしたくなるのです。大人だって同じではないですか?悩んだり困ったりしているときは、悩みを解決したいという気持ちはもちろんですが、なによりまず「誰かに話を聞いてもらいたい」と思うものでしょう。親は、子どもにとってのその「誰か」になってあげなければなりません。「一方向」のコミュニケーションが誤解を生じさせるでは、親業のトレーニングを積んだあとには、子どもとどんな関係を築いていけるのでしょう。大きなメリットとして、「誤解が減る」ことが挙げられるでしょうか。親業訓練講座では、実際の生活のなかで使えるように、さまざまなシチュエーションを想定し、参加者が親役になったり子ども役になったりしながらロールプレイのトレーニングを数多く行ないます。そのトレーニングにより、親子間で「双方向」のコミュニケーションができるようになります。すると、たとえば先に挙げた子どもが悩んだり困ったりしているケースなら、「子どもを愛しているから、早く問題を解決してあげたい」という親の気持ちと、「話を聞いてほしいだけなのに、意見を押しつけられた」という子どもの気持ちのすれちがい――すなわち誤解を減らしていけるのです。逆に、コミュニケーションが「一方向」の場合には、親子間に誤解が生じます。たとえば、子どもに対する「早く起きなさい」「歯を磨きなさい」「宿題をしなさい」という指示命令の言葉がそれにあたります。これらももちろん、子どもを思っての言葉ですが、完全に一方向のものですよね?そのため、子どもには「なぜそうするべきなのか」という理由や、親が子どもを思う愛情は伝わりません。そうした誤解だらけのコミュニケーションを続けていると、子どもが思春期になった頃には、親がなにを言っても「うるさいないあ」としか反応しないようなことになってしまうでしょう。でも、双方向のコミュニケーションにより親子間に強い信頼関係ができていれば、子どもも不要な反発や反抗はしません。このことは、私自身が実感しています。息子が中学生くらいのとき、普段の口調は少し生意気になっても、本当に困ったときは私に相談をしてくれました。普段からの双方向のコミュニケーションの積み重ねにより、息子は「僕が悩んだり困ったりしたときには、お母さんはちゃんと向き合って話を聞いてくれる、僕の気持ちを理解しようと努力してくれる人なんだ」と思ってくれていたはずです。そんな関係性を築き、子どもが親を頼ってくれることは、間違いなく親としての大きな喜びとなるでしょう。『あっ、こう言えばいいのか! ゴードン博士の親になるための16の方法 家族をつなぐコミュニケーション』瀬川文子 著/合同出版(2013)■ 親業訓練協会インストラクター・瀬川文子さん インタビュー記事一覧第1回:子どもが反発ばかり……親子関係の問題を劇的に改善する「双方向」のコミュニケーションとは第2回:繰り返す、言い換える、気持ちを汲む。親の「能動的な聞き方」が、子どもを問題解決に向かわせる(※近日公開)第3回:「私メッセージ」の叱り方で子どもが変わる! 親は怒りではなく“第一次感情”に注目して(※近日公開)第4回:親子の衝突を解決するには「勝負なし法」がベスト。勝敗を決めるのは、子どもの育ちに悪影響(※近日公開)【プロフィール】瀬川文子(せがわ・ふみこ)1954年8月28日生まれ、東京都出身。親業訓練協会シニアインストラクター。1973年、日本航空に客室乗務員172期生として入社。14年間の国際線勤務の後、結婚のために退社。1998年、コミュニケーション訓練のプログラム「親業」の指導員資格を取得。2002年、CAP(子どもへの暴力防止プログラム)スペシャリストの資格を取得。2003年、親業シニアインストラクターの資格を取得。2006年、『ママがおこるとかなしいの』(金の星社)で絵本作家としてデビュー。同年、親業訓練協会インストラクター養成担当となる。2015年、日本アンガーマネジメント協会ファシリテーターの資格を取得。現在は、親業訓練協会の運営に関わりながら、医療、介護、教育の各機関、企業、家庭を対象に、「想いが伝わるコミュニケーション」を軸とした講演会等を全国各地で行うなど活躍の場を広げている。主な著書に、『聞く、話す あなたの心、わたしの気もち いじめない、いじめられない子どものためのコミュニケーション』(元就出版社)、『ほのぼの母業のびのび父業 ゴードン博士に学ぶ 21世紀の家庭へ わかりあえるコミュニケーション訓練』(元就出版社)、『職場に活かすベストコミュニケーション ゴードンメソッドが職場を変える』(日本規格協会)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年06月04日みなさんは「しつけ」をどのようにとらえているでしょうか。その言葉の響きから、「子どもを押さえつけるもの」といったイメージを持っている人もいるかもしれません。そうであるなら、子どもが自ら考えて行動する「自主性」とは対極にあるものとも言えます。ところが、幼稚園の園長を務めた経験もある東京家政大学子ども学部教授の岩立京子先生は、「しつけこそが、子どもの自主性を育てる」と語ります。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/山本未紗子「しつけ」と子どもの「自主性」は対極にあるものではない子育て中の親御さんから耳にする言葉に、「しつけもしっかりしたいけど、子どもの自主性も育てたい」というものがあります。この言葉には、大きな間違いがあります。「しつけとは親が子どもを押さえつけるもので、それによって子どもの自主性が育たないのではないか」という大いなる勘違いをしているようです。この、「しつけによって自主性が育たなくなる」というのは完全に間違いです。なぜなら、しつけというのは、最終的には子どもが自分自身でこの世の中を生きていける力、つまり、自主性を育てるためにあるものだから。しつけと子どもの自主性は、対極にあるものではないのです。しつけによって社会のルールや価値をきちんと知ることができた子どもは、それに基づいて自信を持って自分を出していけます。また、なかには居心地の悪い社会のルール、変えていかなければならない社会のルールもあるでしょう。そこで、その悪いルールを変えていこうと自ら動き始めることもできる。それもまた自主性が育っているからこそできることです。まずはしつけによって社会のルールを知ることが大切です。でも、そのなかに留まっている必要はありません。社会のルールを知り、それを行動基準としながらも、なおかつそれを、自主性を持って乗り越えていく。そういうことが、人間らしく生きていくにはとても重要なのではないでしょうか。自主性が育つベースにある自己肯定感と自己信頼ただ、大切となるのは、しつけによって社会のルールや価値を子どもに教えることだけではありません。なぜなら、子どもの自主性が育つには、そのベースとして子どもの自己肯定感や自己信頼が必要だからです。ですから、子どもがなにかを自分からすすんでやってくれたようなときには、そのことを認めてしっかりほめてあげることが大切になります。いま、「ほめる子育て」に対しては研究者によってさまざまな意見がありますが、わたし自身は、叱り続けるような子育てよりは、ほめる子育てのほうが絶対に子どもは伸びるというふうに考えています。これはもう、基本原理と言っていいでしょう。臨床心理学でも教育学でも、さまざまな研究が「ほめる子育てがいい」ということを示しています。ですから、まずは子どもをほめることを考えるべきです。もちろん、子どもがやることのなかには好ましくないこともあるでしょう。誰もが認める社会の基本的なルールから逸脱してしまうようなことです。そんなときには、きちんと叱ってあげることが大切。怒鳴りつけるように叱るのではなく、その都度、「こういうことはやらないほうがいいよ」「お母さんはこうしてほしくないな」といったようにマイルドにメッセージを伝えてあげるのです。そういう子育てをすれば、子どもは悪く育ちようがないと思うのです。自己肯定感と自己信頼が低い子どもは問題行動を起こす逆に言えば、自己肯定感や自己信頼が非常に低い子どもは、いろいろな問題行動を起こしてしまう傾向にあります。「自分なんてどうでもいいや……」と投げやりになっていて、「自分はできるんだ!」と思えない。だからさまざまな問題行動を起こすし、自主的になにかにチャレンジすることもできません。すると、問題行動を起こしてまた厳しく叱られ、さらに自己肯定感や自己信頼が下がってしまうという悪循環に陥ることにもなりかねないのです。この自己肯定感や自己信頼が大切だということは、大人であるみなさん自身に置き換えても想像しやすいものであるはずです。一生懸命に仕事や家事、子育てを頑張っているのに、パートナーから「あなたは全部だめ」「いいところはなにもない」なんて言われたとしたらどうですか?せっかく頑張っていた仕事や家事、子育ても投げ出したくなりますよね。それこそ、まだ自分自身でできることが大人に比べて少ない子どもに対しては、しっかりとほめてあげて、「自分はお父さんとお母さんに大事にされている!」「自分はいまの自分であっていいんだ!」「僕には自分でできることがある!」と思わせてあげることがなにより大切なのです。『遊びの中で試行錯誤する子どもと保育者 子どもの「考える力」を育む保育実践』岩立京子 監修/明石書店(2019)■ 東京家政大学子ども学部教授・岩立京子先生 インタビュー記事一覧第1回:イヤイヤ期には“気そらし方略”がうまくいく。3歳の子育てを楽にする、2歳までの「しつけ」のコツ第2回:もう「早く!」なんて言わなくていい。“ニンジン作戦”で子どもを楽しい世界にいざなってあげて第3回:子どもの失敗の機会を奪う「悪い先回り」を今すぐやめて、「いい先回り」をするための工夫とは?第4回:「しつけもしっかりしたいけど、自主性も育てたい」親のこの考えが“完全に間違っている”理由【プロフィール】岩立京子(いわたて・きょうこ)1954年生まれ、東京都出身。東京家政大学子ども学部教授。東京学芸大学名誉教授。東京学芸大学教育学部卒業後、同大学大学院教育学研究科修士課程を経て、筑波大学大学院心理学研究科博士課程単位取得退学。筑波大学心理学系技官を経て、1986に東京学芸大学講師となり、1991年に筑波大学で博士(心理学)を取得。その後、東京学芸大学で34年間にわたり保育・幼児教育の専門家養成に関わった後、現職に就く。2014年から2017年まで、東京学芸大学附属幼稚園長を兼任。主な著書に『幼児理解の理論と方法』(光生館)、『保育内容 人間関係』(光生館)、『たのしく学べる乳幼児の心理』(福村出版)、『乳幼児心理学』(北大路書房)、『新幼稚園教育要領の展開』(明治図書出版)、『子どものしつけがわかる本 がまんできる子、やる気のある子を育てる!』(主婦の友社)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年06月02日「先回り」をする親が増えている――子育てや家庭教育関連のメディアで頻繁に目にする内容です。それらのメディアは、「先回りはよくないもの」として扱っていることが多いよう。ただ、「先回りにも『いい先回り』と『悪い先回り』がある」と言うのは、幼稚園の園長を務めた経験もある、東京家政大学子ども学部教授の岩立京子先生。その真意を教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/山本未紗子(インタビューカット)社会の情報化と少子化が招いた、先回りする親の増加いま、「先回り」をする親、「手出し口出し」をする親が増えていると言われています。このことには、社会の情報化が進んだことが大きく影響しているのでしょう。以前と比べれば、インターネットなどを介して子育てに関する情報に触れる機会が増えましたよね。それらのたくさんの情報に基づいて、「最高の子育てをしたい!」と考える親が多いのです。また、少子化もそういった親が増えていることの一因でしょう。むかしのように4人も5人も子どもがいれば、子どもひとりひとりの子育てに十分に手をかけられません。でも、いまは子どもがひとりかふたりですから、「絶対に子育てを成功させなければならない」といった意識が強く働き、「こうあるべき」「こうしなければならない」というふうに考え、先回りや手出し口出しをしまうのです。でも、子どもは親の思うとおりに育ってくれません。子育てというのは、子ども自身の発達がまずベースにあります。それに対して親がどのような働きかけをするかで、子どもがどんなふうに成長していくかが決まるのです。いくら親が「バイオリニストにしたい」「学者にしたい」と思ったところで、そうなる可能性は高くはありません。ですから、親にとって重要となるのは、子どもをしっかりと見て、子どもが持つ可能性を最大限に伸ばす働きかけをすること。そのことを第一に理解してほしいと思います。子どもから学びのチャンスを奪う「悪い先回り」さて、親の先回りについてですが、子育て関係の記事では「先回りはよくない」というふうに語られることが多いようですね。ただ、わたし自身は、先回りにも「いい先回り」と「悪い先回り」があると見ています。「悪い先回り」とは、それこそ子育て関係の記事でNG行為として語られるような、子どもの力を奪ってしまう先回りのこと。なぜ子どもの力が奪われるかというと、「失敗」の経験を積めないからです。人間という生き物は、失敗から多くのことを学びます。でも、なんでもかんでも親が先回りをしてしまうと、子どもは失敗することなく育つことになる。親の先回りが、学びのチャンスを子どもから奪ってしまうのです。ただ、子どもに失敗をさせることが重要だと言っても、そのバランスは大切。たとえば、10回挑戦して9回失敗するようなことになれば、子どもはチャレンジする勇気ややる気を失ってしまうでしょう。そこで、もう少し成功率を上げられるようなお膳立てを、親であるみなさんに考えてほしいのです。もちろん、あからさまに手出し口出しをすることはよくありません。なぜなら、子どもには子どもなりのプライドがあるからです。そのプライドによって、親の手出し口出しに反発して、やろうとしていたことを結局投げ出してしまうことにもなりかねません。ですから、こっそりとお膳立てをしましょう。それこそが「いい先回り」です。たとえば、料理をお皿に盛りつけるお手伝いをするような場合なら、長い菜箸だとうまく使えないということもあるでしょう。ならば、子どもでも扱いやすいトングを用意するといった具合です。それでうまくできたなら、しっかりとほめてあげる。そのことが、子どもの自己肯定感や、自分に対する信頼を高めてくれます。「いい先回り」とは、親としてしておくべき「予測」「いい先回り」とは、親としてしておくべき「予測」と言い換えてもいいかもしれません。たとえば、子どもと電車に乗って出かけるとします。すると、移動中の車内でぐずってしまうようなことが予測できます。それなのに、親がそのことを予測せず、なんの準備もしていなかったら、いざ子どもがぐずってから場当たり的に対処することになります。でも、しっかり予測ができていたら、お出かけグッズを入れるバッグのなかに、子どもの機嫌がよくなるようなものを忍ばせておくこともできるでしょう。また、子どもは親のやることをやりたがるものですが、まだ成長段階の途中にある子どもには親と同じようにはできないことや、危険が伴うようなこともたくさんあります。親が食器を洗っていたら、子どももやりたがるというのもよくあることですよね。そのとき、子どもが皿を落としたとしても割れる心配がないプラスチック製の食器を用意しておくとか、あるいは床が濡れてもいいようにビニールシートを敷いておくのです。もちろん、子どもは親と同じようにはやれませんから、時間もかかります。親には根気も必要だと認識したうえで、「いい先回り」ができるように工夫してください。『遊びの中で試行錯誤する子どもと保育者 子どもの「考える力」を育む保育実践』岩立京子 監修/明石書店(2019)■ 東京家政大学子ども学部教授・岩立京子先生 インタビュー記事一覧第1回:イヤイヤ期には“気そらし方略”がうまくいく。3歳の子育てを楽にする、2歳までの「しつけ」のコツ第2回:もう「早く!」なんて言わなくていい。“ニンジン作戦”で子どもを楽しい世界にいざなってあげて第3回:子どもの失敗の機会を奪う「悪い先回り」を今すぐやめて、「いい先回り」をするための工夫とは?第4回:「しつけもしっかりしたいけど、自主性も育てたい」親のこの考えが“完全に間違っている”理由(※近日公開)【プロフィール】岩立京子(いわたて・きょうこ)1954年生まれ、東京都出身。東京家政大学子ども学部教授。東京学芸大学名誉教授。東京学芸大学教育学部卒業後、同大学大学院教育学研究科修士課程を経て、筑波大学大学院心理学研究科博士課程単位取得退学。筑波大学心理学系技官を経て、1986に東京学芸大学講師となり、1991年に筑波大学で博士(心理学)を取得。その後、東京学芸大学で34年間にわたり保育・幼児教育の専門家養成に関わった後、現職に就く。2014年から2017年まで、東京学芸大学附属幼稚園長を兼任。主な著書に『幼児理解の理論と方法』(光生館)、『保育内容 人間関係』(光生館)、『たのしく学べる乳幼児の心理』(福村出版)、『乳幼児心理学』(北大路書房)、『新幼稚園教育要領の展開』(明治図書出版)、『子どものしつけがわかる本 がまんできる子、やる気のある子を育てる!』(主婦の友社)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年05月31日「早く!」「だめ!」――親が子どもについ言ってしまう言葉です。でも、いくらそう声をかけても、子どもは親の思い通りに早く行動してくれませんし、だめなことだと理解してくれたのかもわかりません。いったい、どうすれば子どもに「早く!」「だめ!」と言わずにすむのでしょうか。幼稚園の園長を務めた経験もある、東京家政大学子ども学部教授の岩立京子先生にアドバイスをもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/山本未紗子(インタビューカット)大人と子どもはそれぞれ違う世界に住んでいる「早く!」「だめ!」という言葉を一度も言わないまま子育てをすることは不可能でしょう。なぜなら、大人には大人のリズムがあり、子どもには子どものリズムがあるからです。大人は、社会を中心にして生きていて、子どもは自分の好きなことを中心に生きています。そもそも住んでいる世界が違うために、どうしても両者のリズムがずれてくる。そうして、子どものリズムが自分に合わないと感じると、親はつい「早く!」「だめ!」と言ってしまうのです。もちろん、イライラして子どもをたたくなんてことはご法度です。かつては、そういう子育てがすすめられていたときもありました。子どもがなにかしてはいけないことをした場合、0歳台の子どもなら足の裏を、1歳台の子どもならお尻をぽんとたたくという教育メソッドが存在したのです。でも、たとえ0歳台の子どもでも、親の表情などから言わんとしていることが理解できることがわかってきたため、いまはきちんとコミュニケーションを取ることが重要だと考えられています。そのコミュニケーションとは、ただ「早く!」「だめ!」と言うだけのことではありません。大切なのは、なぜ早くしてほしいのか、なぜだめなのか、その理由を必ず伝えること。なぜなら、子ども自身が納得して「じゃあ、そうしよう」と思えなければ、しつけは成功しないからです(インタビュー第1回参照)。「ニンジン作戦」で子どもを楽しい方向にいざなうしかし、子どもに早くしてほしい理由をどんなにきちんと伝えたところで、時間感覚や価値観が違う世界に住んでいる子どもは、なかなかそうできません。子どもの住む世界は大人とは違うということをしっかり認識したうえで、子どもが早くできるような、だめなことをだめだと理解できるような工夫やお膳立てを、親の側がする必要があります。そのコツは、早くしてほしい理由やだめな理由を子どもに伝える際に、「楽しい方向」に導いてあげるということ。「誰かに怒られるよ」といった内容ではなく、たとえば幼稚園に遅れそうになっている場合なら、「幼稚園に早く行けたらお友だちとたくさん遊べるよ」というふうに、子どもが「じゃあ、早くしよう」と思えるような声かけをするのです。基本的に、ただ「早く!」「だめ!」と言ってもコントロールしにくいのが子どもなのです。でも、「早くしたら楽しいことがある」とか「これをやめたら次にいいことがある」などと思えたら、子どもはきちんと気持ちを切り替えることができます。これは、いわゆるニンジン作戦です。心理学における「強化」の理論をベースに、「子どもに対してニンジンを使うと、その後はずっとニンジンを増やし続けていかなければならない」という考え方も前にはありましたが、いまはそうは考えられていませんし、わたし自身もうまくニンジンを使うことには賛成です。その理由は、子どもの世界を広げるきっかけになるからです。ニンジンをうまく使って子どもを楽しい世界にいざなってあげる。そうすることが、結果的に子どもにとってはプラスに働くはずです。わかりやすいニンジンの例として、甘いジュースやお菓子があります。それらを完全に禁止している家庭もあるでしょう。でも、お菓子を食べたい子どもと食べさせたくない親のあいだでバトルが繰り広げられたら、それこそ親子関係自体が悪くなってしまう。そう考えると、適度にニンジンを使うことはなにも悪いことではないと思うのです。お膳立てで、子どもに「早くしよう!」と思わせる忙しい朝に早く子どもに起きてほしいのなら、朝食だって立派なニンジンになりますよ。ただ「早く起きて!」という言葉をいくらかけても、子どもは大人とは違う世界に住んでいますから、なかなか起きてくれない。そんなことに悩んでいる人も多いでしょう。でも、まだ寝ていたい子どもに対して、「早く!」と言うばかりか、まして「まったくもう!」なんて怒ったところで、子どもが素直に起きてくれるでしょうか?人間には、心理学における反発理論という行動原理が働きます。怒られると、ますます反発しようとするのです。大人だって同じですよね?自分に対して攻撃的な人に対しては反発したくなるでしょう。そこで、子どもの好物をニンジンに使ってみましょう。トーストのにおいを漂わせたり、「今日はあなたが大好きな卵焼きだよ」「焼きたてを食べたほうがおいしいよ」と言ったりして、子どもが「早く起きよう!」と思えるような方向にいざなってあげるのです。そのようにお膳立てをして、「早く!」「だめ!」と言わないですむように考えてみてください。『遊びの中で試行錯誤する子どもと保育者 子どもの「考える力」を育む保育実践』岩立京子 監修/明石書店(2019)■ 東京家政大学子ども学部教授・岩立京子先生 インタビュー記事一覧第1回:イヤイヤ期には“気そらし方略”がうまくいく。3歳の子育てを楽にする、2歳までの「しつけ」のコツ第2回:もう「早く!」なんて言わなくていい。“ニンジン作戦”で子どもを楽しい世界にいざなってあげて第3回:子どもの失敗の機会を奪う「悪い先回り」を今すぐやめて、「いい先回り」をするための工夫とは?(※近日公開)第4回:「しつけもしっかりしたいけど、自主性も育てたい」親のこの考えが“完全に間違っている”理由(※近日公開)【プロフィール】岩立京子(いわたて・きょうこ)1954年生まれ、東京都出身。東京家政大学子ども学部教授。東京学芸大学名誉教授。東京学芸大学教育学部卒業後、同大学大学院教育学研究科修士課程を経て、筑波大学大学院心理学研究科博士課程単位取得退学。筑波大学心理学系技官を経て、1986に東京学芸大学講師となり、1991年に筑波大学で博士(心理学)を取得。その後、東京学芸大学で34年間にわたり保育・幼児教育の専門家養成に関わった後、現職に就く。2014年から2017年まで、東京学芸大学附属幼稚園長を兼任。主な著書に『幼児理解の理論と方法』(光生館)、『保育内容 人間関係』(光生館)、『たのしく学べる乳幼児の心理』(福村出版)、『乳幼児心理学』(北大路書房)、『新幼稚園教育要領の展開』(明治図書出版)、『子どものしつけがわかる本 がまんできる子、やる気のある子を育てる!』(主婦の友社)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年05月29日人それぞれにとらえ方が違う「しつけ」。そもそもしつけとはどんなもので、また、いつ頃から始めるべきなのでしょうか。幼稚園の園長を務めた経験もある、東京家政大学子ども学部教授の岩立京子先生は、「しつけとは社会のルールや価値を子どもに伝えていく、親のやるべき最も中核的な営み」だと言います。そして考え方にもよりますが、しつけは子どもがはいはいを始める0歳台後半くらいから、始まっているのだそう。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/山本未紗子しつけとは、社会のルールや価値を子どもに伝える営み「子育て」と「しつけ」は似ているようで異なる意味を持つ言葉です。子育てとは、食事や排泄など、子どもに対するさまざまな「お世話」やその他の関わり全般を指すもの。一方のしつけとは、子育てのなかでも、なにが大切でなにがそうではないのかといった社会のルールや価値を子どもに伝えていく営みです。この営みは、言うまでもなくとても重要なものです。なぜなら、人間は社会のなかで生きていく生き物だから。社会のルールや価値がわかっていないまま育った子どもは、社会のなかでうまく生きていくことができません。つまり、しつけこそ親のやるべき最も中核的で重要な営みなのです。そのしつけのなかの具体的な行為は、大きくふたつに分類されます。そのふたつとは、「ほめる」と「叱る」です。親からほめられれば「これはいいこと」というメッセージを受け取り、逆に叱られれば「これはやってはいけないこと」というメッセージを受け取って、子どもは社会のルールや価値を徐々に学びます。ただ、研究者のなかにも、「子どもは愛情深く育てるべきだから、叱ってはならない」と考える人もいる。でも、叱るという行為は、怒鳴りつけるようなことを指すのではありません。社会に生きていくうえでなにをしてはいけないのか、どう振る舞うべきなのかといった不可欠で重要なことを、メッセージとして子どもに対して冷静に伝えていく――それが、叱るということなのです。ただ、叱ることも大切だとはいえ、親がルールを押しつけるようなやり方ではしつけは成功しません。子どもが「ああ、そうなんだ」と納得して、「じゃあ、そうしよう」と自ら思えなければならないからです。これは心理学では「内化」と呼ばれるプロセスで、子ども自身が社会のルールや価値を取り込んでいくという営み。その内化ができるように「導いていく」という発想を、親であるみなさんには持っておいてほしいですね。子どもがはいはいを始めたらしつけもスタートでは、しつけはいつから始めればいいのでしょうか?このことについては研究者によって考え方が大きく違ってくるのですが、私は0歳台の後半からしつけが始まると考えます。子どもは0歳台後半になると、はいはいをするようになります。すると、親の思惑を超えて子どもが動き回った場合には、子どもに危険が及ぶこともありますし、親からすれば大事なものを壊されるといった可能性も出てくるでしょう。ですから、子どもがはいはいを始めた頃からしつけが始まるというわけです。しつけでは、そうした子どもに危険が及ぶようなこと、してはいけないことに対して、「これはだめよ」「危ないからね」というふうに伝えます。とはいっても、やはり0歳台の子どもの場合は言語的理解が未熟ですので、表情や抱きとめるといったかたちでマイルドに伝えていくことが大切。たとえば、子どもがなにか熱いものに手を伸ばそうとしたら、「だめ!」と強く叱るのではなく、優しく抱きとめて「アチチだよ」という具合に、やわらかいメッセージで伝えましょう。いま、「言語的理解が未熟」だとお伝えしたことで、「0歳台でしつけを始めても意味がないのでは?」と思った人もいるかもしれません。でも、子どもは生まれて8カ月頃から、たいていの場合は愛着関係にある親を対象に「社会的参照」というものを始めます。社会的参照とは、子どもが未知のものに出合ったときに、それがよいものか悪いものか、危険かそうでないかのような判断を、愛着関係にある人の表情などを伺ってすることです。先の例のように、子どもが熱いものに手を伸ばそうとしたとき、親が「危ないよ」「アチチだよ」と言うと、子どもは親の顔を見ます。そして、その真剣な表情、禁止の表情を読み取って手を引っ込める。あるいは、親が「大丈夫よ」と言いながらほほ笑んでいれば安心して手を伸ばすのです。もちろん、そうしながらなにをしたらだめなのかといったことを子どもはしっかり学んでいきます。イヤイヤ期の子どもに有効な「気をそらす」方略そのように0歳からきちんとしつけをしていても大変になるのが、子どもが2歳になった頃。いわゆるイヤイヤ期です。自我が芽生え始め、ほとんどの子どものしつけが難しくなります。でも、イヤイヤ期は子どもの発達のひとつのプロセスですから、「あ、自分を出し始めたな」というふうにライトに考えてあまり深刻にとらえないようにしましょう。しつけが難しい時期ではありますが、いいことはしっかりほめて、子どもがだめなことをしようとしたときにはマイルドに叱るという基本は変わりません。ただ、この時期の子どもに有効な「気をそらす」というテクニックは知っておいて損はないでしょう。イヤイヤ期の子どもは、たとえばスーパーでお菓子を買ってほしいとかんしゃくを起こすようなことがありますよね。もちろん、言いなりになる必要はありません。子どもの泣くという行為には、非常に激しくてスパンが短いという特徴があります。ですから、泣いている子どもをひょいと抱き上げて駐車場の車にでも乗せて、「あれ欲しかったんだもんね」と共感してあげて、少し時間が経てば、子どもが疲れて少し落ち着くタイミングがやってくる。そのときに、ジュースをあげるなどして気分転換させてあげるのです。そういった気をそらす方略が有効です。そして、このプロセスのなかで、子どもは親の力を借りながら自分の情動をコントロールする術を身につけていきます。これがとても重要なこと。私は幼稚園の園長を4年間務めましたが、3歳になったときの、子どもそれぞれの自己コントロール力の大きな違いに驚かされました。同じ3歳でも、親に怒りなどの感情を受け止めてもらい、調整してもらってきた子どもは、保育者のなだめや「気そらし方略」によって自己の情動を調整できる傾向が強いと感じました。言ってみれば、0歳でのしつけが1歳の子育てを、1歳でのしつけが2歳の子育てを、2歳でのしつけが3歳の子育てを楽にしてくれるということ。子どもは0歳台から優れた学習能力を持っています。0歳台から、豊かなコミュニケーションのなかで、価値やルールの伝達=しつけをしていってほしいと思います。『遊びの中で試行錯誤する子どもと保育者 子どもの「考える力」を育む保育実践』岩立京子 監修/明石書店(2019)■ 東京家政大学子ども学部教授・岩立京子先生 インタビュー記事一覧第1回:イヤイヤ期には“気そらし方略”がうまくいく。3歳の子育てを楽にする、2歳までの「しつけ」のコツ第2回:もう「早く!」なんて言わなくていい。“ニンジン作戦”で子どもを楽しい世界にいざなってあげて(※近日公開)第3回:子どもの失敗の機会を奪う「悪い先回り」を今すぐやめて、「いい先回り」をするための工夫とは?(※近日公開)第4回:「しつけもしっかりしたいけど、自主性も育てたい」親のこの考えが“完全に間違っている”理由(※近日公開)【プロフィール】岩立京子(いわたて・きょうこ)1954年生まれ、東京都出身。東京家政大学子ども学部教授。東京学芸大学名誉教授。東京学芸大学教育学部卒業後、同大学大学院教育学研究科修士課程を経て、筑波大学大学院心理学研究科博士課程単位取得退学。筑波大学心理学系技官を経て、1986に東京学芸大学講師となり、1991年に筑波大学で博士(心理学)を取得。その後、東京学芸大学で34年間にわたり保育・幼児教育の専門家養成に関わった後、現職に就く。2014年から2017年まで、東京学芸大学附属幼稚園長を兼任。主な著書に『幼児理解の理論と方法』(光生館)、『保育内容 人間関係』(光生館)、『たのしく学べる乳幼児の心理』(福村出版)、『乳幼児心理学』(北大路書房)、『新幼稚園教育要領の展開』(明治図書出版)、『子どものしつけがわかる本 がまんできる子、やる気のある子を育てる!』(主婦の友社)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年05月27日編集部:学研キッズネット編集部子どもの発達リサーチ機関「パステル総研」を運営する株式会社パステルコミュニケーションは、長引く休校で学校からの課題に困惑しているとの声を受け、2020年5月16日~5月20日の期間、パステル総研Twitterと、パステル総研ホームページ内で、「休校中の課題どうする?」の緊急1問アンケートを実施。その結果を発表しました。調査背景長引く休校で当初課題が出ていなかった地域でも、休校が長引くにつれ課題をたくさん出された、オンライン授業が始まった、中には課題の時間割が提示された、今も課題はほとんどでていないなど学校・地域によって様々な対応がなされています。自粛生活で、お母さんの役割が増えている中、「課題の量が多すぎる!」「つきっきりで教えなくてはいけなくて親の負担が大きい」「毎日が宿題バトル!」などのお母さんたちの悲鳴も聞こえてきました。そこで皆さんが休校中の課題を実際はどのようにとらえているのかを問う、1問だけの緊急アンケートを実施しました。学校が再開した地域や、多くの学校で再開のめどがたってきたこの時期に、親御さんにとっての課題、お子さんにとっての課題について改めて考え、そのことがお子さんに合わせた選択、対応を模索するきっかけになればと考えました。調査結果既に学校が再開した地域、多くの地域で学校再開が近づいてきているこの時期に、課題についてどのような傾向があるか以下の方法で1問だけのアンケートを緊急実施。有効回答は、パステル総研Twitter(回答数64)パステル総研ホームページ内(回答数58)合計122となりました。1.休校中の課題どうします?多少無理してもやらせるが34%、無理してまでやる必要はないが52%という結果になりました。無理してまでやる必要がないが無理してまでやらせるを18%上回る結果となりました。新型コロナウィルスによって生活スタイルの変化がもたらされている今、これまでの学習、これからの学習についても大きな意識の変化が起きているのではないでしょうか。新しい学びのカタチを提案パステル総研では、電子書籍の『コロナ休校中の気になる勉強アイデア集『子どもが成長するおうち時間 ー勉強編ー』を無料プレゼント中。机に向かってワークに取り組んだり、教科書を読んだりすることだけを 勉強と思っていませんか?脳科学・教育学・心理学からなる発達科学コミュニケーションを学んだママたちが実践した、新しい学びのカタチを提案いたします!■パステル総研とは?子どもの発達に関するグレーゾーンの悩みごとを、大人に持ち越さないことを目指すリサーチ機関です。発達障害やグレーゾーンの正しい理解と対応を伝えることで、子どもたちが生きやすい時代を作るきっかけづくりをしています。パステルのお子さんを抱えるママの声をデータ化して、リサーチ結果を配信したり、ママが楽しく子育てできる情報を発信します。ママが困った時はいつでも、頼れるアイデアが湧き出てくる「4次元ポケット」になりたい!という想いで、日々のリサーチと情報発信を行っております。今回のアンケート結果をもとに、皆さまにお役立ち頂ける情報を提供していきます。▼無料電子書籍ダウンロードはこちら▼パステル総研公式サイト▼1日1分! ゼロから学べる 発達障害&グレーゾーンの対応メール講座■パステル総研代表吉野加容子プロフィール発達科学コミュニケーショントレーナー。学術博士、臨床発達心理士。慶應義塾大学大学院(博士課程)修了。脳科学をベースにした発達障害の発達支援が専門。大学院卒業後、企業の脳科学研究や、医療機関での発達支援に従事したのち、脳科学、教育学、心理学のメソッドを合わせた独自の発達支援プログラム「発達科学コミュニケーション」で子どもの発達を加速する「発達科学ラボ」を設立し独立。■書籍紹介「発達障害とグレーゾーン子どもの未来を変えるお母さんの教室」青春出版社「脳を育てる親の話し方」青春出版社「脳が喜ぶ子育て」世界文化社▼詳しくはこちら■会社概要社名:株式会社パステルコミュニケーション代表者:吉野加容子所在地:〒170-6045 東京都豊島区東池袋3-1-1サンシャイン6045階事業内容:子育て講座の運営/発達に関するリサーチ・開発/起業支援事業会社公式サイト:■「学研キッズネットFor Parents」のニュース一覧はコチラ■学研キッズネット編集部(がっけんきっずねっと)『学研キッズネット』は、1996年にオープンした小・中学生のためのWebメディアです。学研の子ども向け書籍や雑誌の編集ノウハウを活かし、子どもたちが安全に楽しめるサイトとして運営しています。子どもたちのしあわせのために、家族のしあわせのために、有益な情報やサービスをお届けできるよう、いつも精一杯がんばっています。すくすく伸びる子どもたちのために
2020年05月22日「子育ての最終目標」というと、みなさんはどんなものだと考えているでしょうか。人それぞれだとは思いますが、自身も子育ての真っ最中である、京都大学大学院准教授の森口佑介先生は、「子どもの自主性を伸ばすことが子育ての最終目標」だといいます。では、子どもの自主性を伸ばすために親ができることとはなんでしょうか?森口先生がアドバイスしてくれました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカット)受け身ではない「真の我慢」が自主性を伸ばす「我慢」という言葉を聞いたとき、みなさんはどんなイメージを持ちますか?子どもの頃、親や学校の先生に「我慢しなさい」といわれたことは誰もがあるでしょう。一般的に、我慢とは周囲の誰かに強いられるものというイメージが強いはず。このケースなら、子ども自身は我慢しようと思っているわけではなく、親や先生が我慢させたいだけ。これは、いわば「受け身の我慢」です。ただ、子ども自身がそうしたいと思ってする我慢もあります。たとえば、大好きなスポーツをうまくなりたいからと、肉体的にはきつくても一生懸命に練習やトレーニングに取り組むような我慢がそれにあたります。これは、子どもが自らすすんでやる「真の我慢」といえます。では、どちらの我慢が大事かというと、もちろん「真の我慢」です。というのも、自らすすんで行う「真の我慢」には、いわゆる非認知能力の発達に欠かせない「自主性を伸ばす」ということが伴うからです(インタビュー第1回参照)。また、非認知能力を伸ばすという目的以外にも、子どもの自主性を伸ばすことはとても大切だとわたしは考えています。意見はそれぞれでしょうけれど、子どもの自主性を伸ばすことこそが、子育ての最終目標なのではないでしょうか。通常、親は子どもより長く生きることはできません。子どもに「親から離れたあとも、自分で生きていける力」を身につけさせるには、自主性を育てることが大事。これこそが、親の役割であるはずです。成長する子どもをよく見て、子どもの自主性に「任せる」さて、子ども自らそうしたいと思ってやる「真の我慢」が大切であることはたしかですが、そうはいっても、幼い子どもにはなかなかできることではありません。「真の我慢」ができるようになるのは、だいたい4〜6歳頃からです。ですから、3歳くらいまでの子どもには、必要に応じて親がある程度コントロールして我慢させることも必要でしょう。でも、いつまでもそういう我慢をさせていては、子どもは「受け身の我慢」を続けさせられるだけですから、「真の我慢」によって自主性を伸ばすことができません。その一方で、親が子どもの自主的な行動を容認することで、子どもに「真の我慢」が身につくということもあります。だからこそ、親が子どもにかかわるバランスが大切。日々成長していく子どもの行動をしっかりと見て、親がかかわる度合を少しずつ減らしていくのです。そうして、これまでは子どもが自分でできなかったことが、子どもひとりでできそうに思えたなら任せてあげる。子どもの「自分でやりたい!」という気持ちを尊重し、徐々に子どもの自主性に任せる割合を増やしていくことがなにより大切です。「褒める」より「認める」子育てを!また、子どもの自主性を伸ばすことを考えるなら、近年流行している「褒めて伸ばす」子育てをするにも注意が必要です。なぜなら、褒めることが子どもの自主性によくない影響を与えることが研究によってわかっているからです。これは、専門用語で「アンダーマイニング効果」と呼ばれるもの。どういうものかというと、子どもが自主的にやっていることに対して褒めたりご褒美をあげたりすると、その行為を子どもがしなくなるというものです。たとえば、子どもがお友だちに対してなにか親切なことをしたとします。親であれば褒めたくなりますよね?でも、子どもというのはそもそも親切にすること自体が好きなのです。ですから、ただ自分がそうしたくて自主的にお友だちに対して親切にしただけにすぎないということもよくあります。それなのに、「すごいね!」なんて大げさに褒められたり、あるいはご褒美をもらったりすると、ただそうしたくてやっていたことの目的が、「褒められたい」「ご褒美が欲しい」というふうにすり替わってしまうのです。すると、「褒められたい」「ご褒美が欲しい」というときには同じことをするかもしれませんが、「褒められたくない」「ご褒美はいらない」というときには、それまでならすすんでやっていたことをやらなくなってしまうというわけです。褒め方次第では子どもの自主性の芽を摘むことになるという点には注意が必要です。そこで、「褒める」よりも「認める」ことを意識してください。「すごいね!」「天才かも!」といった大げさな言葉ではなく、子どもの行動をしっかりと見て、「頑張ってるね!」「自分でやり切ったね!」といった言葉で、「あなたがやっていることをきちんと見ているよ」ということを伝えてあげてほしい。それこそが「認める」ということであり、認められた子どもは「このままでいいんだ!」とさらに自主性を伸ばしていくことになるはずです。『自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学』森口佑介 著/講談社(2019)『非認知能力を育むリーフレット』(大阪府教育委員会)森口佑介先生作成協力■ 京都大学大学院准教授・森口佑介先生 インタビュー記事一覧第1回:エビデンス多数あり。「目標を達成する力」のある子どもは幸せになる!第2回:困難に立ち向かえる自信のある子の育て方。何より大切なのは親子間の「アタッチメント」第3回:“真の我慢”によって「子どもの自主性」を伸ばす。これぞ子育ての最終目標!【プロフィール】森口佑介(もりぐち・ゆうすけ)1979年生まれ、福岡県出身。京都大学大学院文学研究科准教授。科学技術振興機構さきがけ研究員を兼任する。京都大学文学部卒業、京都大学大学院文学研究科修了。博士(文学)。専門は発達心理学、発達認知神経科学。人文学に着想を得た問題を科学的に検討している。主な著書に『自己制御の発達と支援』(金子書房)、『おさなごころを科学する 進化する幼児観』(新曜社)、『わたしを律するわたし 子どもの抑制機能の発達』(京都大学学術出版会)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年05月13日子育てにおいて重要なものとされる、「アタッチメント」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?発達心理学を専門とする京都大学大学院准教授の森口佑介先生は、「しっかりとしたアタッチメントが、子どもにさまざまな力を与えてくれる」と語ります。そして、そのための鍵を握るのが「親の子離れ」なのだそう。まずは、そもそもアタッチメントとはどういうものなのかという話から始めてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカット)アタッチメントにより子どもは自信を持つ「アタッチメント」とは、ごく簡単にいえば「親子の絆」のことです。子どもが赤ちゃんのときには、なにをするにも親の助けが必要です。あるいは、なにか嫌なことがあったときにお母さんが抱っこしてくれるなどすれば安心できる。そういう親子のやり取りのなかで、子どもは親との感情的な絆を深めていきます。そして、このアタッチメントこそ、子どもがよりよい人生を歩んでいける人間になるための「礎」なのです。たとえば、親とのあいだにしっかりしたアタッチメントが形成できた子どもは「自信を持つ」ことができます。親からしっかりと愛情を受け取って育っているために、なにか嫌なことや困ったことがあったときにも、「親やまわりの人は自分のことを助けてくれる」「自分は親やまわりの人から愛される存在だ」という認識を持っているために、自信を持って問題解決に臨むことができるのです。しかし、親とのあいだのアタッチメント形成が不十分な子どもの場合は、「親やまわりの人は自分を助けてくれることなんてない」「自分なんて親やまわりの人から愛されない存在だ」という認識があるために、自信を持つことができず、ちょっとした困難にも立ち向かうことができません。社会で生きる人間に不可欠な「感情をコントロールする力」また、強いアタッチメントを形成できれば、子どもは「感情をコントロールする力」も獲得していきます。なぜなら、その力をアタッチメントの形成途上で親から学ぶからです。赤ちゃんが泣くと、親は必死に慰めますよね?このことは、いわば親が子どもの感情をコントロールしている状態だといえます。でも、こういうことを繰り返し経験するうちに、子どもは自分自身の慰め方、自分自身の感情をコントロールする方法をどんどん吸収して学んでいるのです。この「感情をコントロールする力」が重要なことについては、想像しやすいものでしょう。自分の感情をコントロールできず、場や相手を考えずに喜怒哀楽を周囲にぶつけていては、いい人間関係を築くことはできません。人間には、「他者とうまくつき合う力」が欠かせません。どんなに一匹狼に見える人でも、人間は社会のなかでしか生きられない生き物だからです。そして、他者とうまくつき合うためにも、「感情をコントロールする力」をしっかりと身につけなければならないのです。この「感情をコントロールする力」が育っていない子どもは、駄々をこねたりかんしゃくを起こしたりするようなことが増えます。もちろん、イヤイヤ期の影響もありますが、一般的なイヤイヤ期を過ぎてもかんしゃくを起こすようだと、アタッチメントの形成が不十分であることのほか、子どもが日常的にストレスを感じていることを疑ってもいいかもしれません。ついさっきまで機嫌がよかったのに、突然かんしゃくを起こすなど感情をコントロールできなくなる子どもには、ストレスに弱いという特徴があります。そして、どういう子がストレスに弱いかというと、日常的にストレスを受けている、虐待や体罰を受けているような子どもです。虐待や体罰などによって強いストレスを受け続けると、ストレスに強くなるのではないかと思う人もいるかもしれませんが、実態は真逆。ストレスを受け続けた子どもは、ストレスに対して敏感になり、ちょっとした嫌なことに対してもストレスを感じてしまうのです。もし子どもが頻繁に感情をコントロールできなくなるというなら、「しつけのつもりで虐待をしてしまっていないか」というふうに、自身の子育てを冷静に振り返ってみてください。子どもの成長の鍵を握る「親の子離れ」また、子どもがしっかりと自分自身で感情をコントロールできるようになるには、「親の子離れ」も欠かせない要素だということも、加えてお伝えします。いつまでたっても親が子どもを慰めるように、子どもの感情をコントロールしていては、子どもは自分の感情をコントロールする実践の場を経験できません。この子離れについては、いまの親は大きな問題を抱えているように思います。たとえば、わたしが勤める京大の卒業式を見ても、学生の親がついてくるケースが本当に多いのです。わたしが学生だった頃は、大学の体育館で卒業式をしたものですが、いまは同席する親があまりに多いために、大きなイベント会場を借りて行わなければならなくなっているくらいです。そういった子離れできない親の特徴として、子どもを「自分の所有物」のように思っていることが挙げられます。自分の「もの」だから、必要以上にかわいがって甘やかすのです。また、逆の方向として、虐待についても親が子どもを自分の所有物だと思っていることがひとつの原因です。自分の「もの」だから殴ってもいいというような思考を持っているのでしょう。そうではなくて、「子どもは自分とはまったく別の人格を持ったひとりの人間」という認識を持たなければなりません。そういう認識を持っていれば、最初はひとりではできなかったことを子どもができるようになってくれば、そのあとは子ども自身に任せられるようになる。そうして、きちんと子離れができるのです。『自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学』森口佑介 著/講談社(2019)『非認知能力を育むリーフレット』(大阪府教育委員会)森口佑介先生作成協力■ 京都大学大学院准教授・森口佑介先生 インタビュー記事一覧第1回:エビデンス多数あり。「目標を達成する力」のある子どもは幸せになる!第2回:困難に立ち向かえる自信のある子の育て方。何より大切なのは親子間の「アタッチメント」第3回:“真の我慢”によって「子どもの自主性」を伸ばす。これぞ子育ての最終目標!(※近日公開)【プロフィール】森口佑介(もりぐち・ゆうすけ)1979年生まれ、福岡県出身。京都大学大学院文学研究科准教授。科学技術振興機構さきがけ研究員を兼任する。京都大学文学部卒業、京都大学大学院文学研究科修了。博士(文学)。専門は発達心理学、発達認知神経科学。人文学に着想を得た問題を科学的に検討している。主な著書に『自己制御の発達と支援』(金子書房)、『おさなごころを科学する 進化する幼児観』(新曜社)、『わたしを律するわたし 子どもの抑制機能の発達』(京都大学学術出版会)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年05月11日我が子には幸せな人生を歩んでほしい――親の誰もがそう思っています。では、我が子が幸せな人生を歩むために、親にはなにができるのでしょうか。発達心理学を専門とする京都大学大学院准教授の森口佑介先生は、「『目標を達成する力』を伸ばしてあげること」だといいます。それには、なにより「子どもの自主性」を大切にすることが重要なのだそう。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカット)非認知能力のなかでも重要な「目標を達成する力」「非認知能力」という言葉もかなり一般的になりましたから、それがどういうものか、多くのみなさんがご存じでしょう。非認知能力とは、文字どおり、「認知能力ではない能力」のこと。この場合の認知能力とは、いわゆるIQで表せるような知能を指します。一方、非認知能力は認知能力以外の能力ですから、ものすごく範囲が広い。よくいわれるように、忍耐力や創造性、へこたれない力など、それこそ枚挙にいとまがありません。これらの能力が、よりよい人生を歩んでいくためには大切なものだ――というわけで、非認知能力の注目度が増しているのです。そして、よりよい人生を歩んでいくためという観点から見ると、世界的には「他者とうまくつき合う力」「感情をコントロールする力」「目標を達成する力」の3つの力が大切だとされています。なかでもわたしが本当に重要なものとして考えているのが、「目標を達成する力」です。その理由としては、なによりその重要性を裏づける研究が世界中にたくさんあるということ。ちょっとあいまいな表現になるかもしれませんが、「目標を達成する力」を調べるテストのようなものがあり、その成績がいい子どもほど学力が高いだとか、クラスのなかでうまくやっていける、将来的に社会的地位の高い職業に就きやすいといった研究結果が数多く存在するのです。つまり、「目標を達成する力」は、それだけ確実に人生においてプラスに働く力だといえるエビデンスがあるということです。目標達成に必要な「切り替える力」と「自己抑制する力」では、その「目標を達成する力」とは具体的にどんなものかというと、大きくふたつにわけられます。ひとつは、「切り替える力」。たとえば、幼稚園で遊んでいる子どもに「お弁当の時間ですよ!」と声をかけたときに、すぐに遊びをやめて切り替えられる力のことです。幼い子どもは、遊びが楽しくてなかなか頭や行動を切り替えることができませんよね?その場合は、まだ「切り替える力」が未発達だということです。もちろん、切り替えが必要なのは、していることをやめるといった場面だけではありません。なにか達成したい目標があったとき、つねにスムーズに目標達成に向かって進めるわけではないですよね。目標の達成には失敗がつきものです。精神的にまいってしまうような嫌な目に遭うこともあるでしょう。そのときに気持ちを切り替えて前に進んでいけるか――。それこそ、目標を達成するためには大切な力です。また、もうひとつの「目標を達成する力」が、「自己抑制の力」です。有名な「マシュマロ・テスト」を知っていますか?子どもの「自己抑制の力」を調べるために、1960年代後半から欧米を中心に盛んに行われた有名なテストです。その内容は、マシュマロやクッキーなどのお菓子を用意し、テスト対象の子どもたちに「いますぐに食べてもいいけど、15分食べずに待てたら2倍のお菓子をあげるよ」と伝え、子どもが我慢できるかどうかを見るというものでした。未来を見越して、きちんと自己抑制できるか否か――。この力が目標を達成するためには大切です。このことは、大人のみなさんでしたら、たとえばダイエットをしている場面を思い浮かべれば分かりやすいでしょう。ダイエットを成功させるには、運動することはもちろんですが、食事制限も大切になる。大好きなビールやラーメン、ケーキを我慢できるのかどうかが、ダイエットという目標を達成できるかどうかをわけるのです。そんな力を測っていたのがマシュマロ・テストであったわけですが、実はこれには注意が必要です。マシュマロ・テストが子どもの将来に重要だという話が少し前に広まったものの、現在ではこの可能性は低いと考えられているのです。というのも、これが「目標を達成する力」を測るテストのひとつであることは間違いないとはいえ、マシュマロ・テストだけではその力を測り切れないためです。それでも、この「自己抑制する力」が「目標を達成する力」につながることは確か。ぜひ子どもには身に付けさせたいものです。非認知能力を伸ばすには「子どもの自主性」を伸ばすさて、我が子の幸せを願うみなさんなら、もちろん子どもにはしっかりと自分の目標を達成して充実した人生を送ってほしいと思っているでしょう。そのためには、心理学では「実行機能」とも呼ばれるふたつの「目標を達成する力」をしっかりと高めてあげる必要があります。では、どうすれば子どもの実行機能を高められるのでしょうか?鍵を握るのは、親であるみなさんです。というのも、実行機能を含む非認知能力全般にいえることですが、子どもの非認知能力が伸びるかどうかは、遺伝のほか、教育や家庭環境の影響が非常に大きいからです。ただ、非認知能力を伸ばすためには、「これをすればいい」ということははっきりとはいえません。でも、さまざまな研究によって、「これをしてはいけない」ということは明確にわかっています。まず、あたりまえのことですが、虐待や体罰は絶対にしてはいけないこと。というのも、非認知能力の成長をもっとも強く阻害するのが、ストレスだからです。子どもが非認知能力を伸ばしていくには、安心して過ごせる家庭環境、深い親子関係が欠かせません。もちろん、しつけの範囲で叱らなければならないときもあるでしょう。でも、体罰はもちろん、虐待といわれかねない、子どもの心を壊してしまうような言動は絶対にNGです。そう考えると、しっかりした親子関係を築くことが第一となるでしょう。世界的に見ると、日本の親子関係はちょっと特殊な面があります。欧米の家庭の場合、厳しいしつけと温かさが両立しているケースが多いのですが、日本の家庭の場合は、体罰を肯定するような親もいまだに多いかと思えば、逆に甘やかし過ぎている親も目立ちます。なぜか両極端なのです。体罰をするなど厳し過ぎるかかわり方がよくないのは、すでにお伝えしたとおりです。一方、子どもを甘やかし過ぎている親の問題は、「手出し口出し」をしてしまうこと。じつは、実行機能を含む非認知能力を伸ばすキモとなるのが、「子どもの自主性」なのです。それなのに、子どもがどうしたいかを確認することなく、「こうしたほうがいいんじゃない?」などと、自分の考えを押しつけている親が多いように思います。子どもがやることを一歩後ろから見届ける――そんな姿勢で子育てに臨んでください。『自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学』森口佑介 著/講談社(2019)『非認知能力を育むリーフレット』(大阪府教育委員会)森口佑介先生作成協力■ 京都大学大学院准教授・森口佑介先生 インタビュー記事一覧第1回:エビデンス多数あり。「目標を達成する力」のある子どもは幸せになる!第2回:困難に立ち向かえる自信のある子の育て方。何より大切なのは親子間の「アタッチメント」(※近日公開)第3回:“真の我慢”によって「子どもの自主性」を伸ばす。これぞ子育ての最終目標!(※近日公開)【プロフィール】森口佑介(もりぐち・ゆうすけ)1979年生まれ、福岡県出身。京都大学大学院文学研究科准教授。科学技術振興機構さきがけ研究員を兼任する。京都大学文学部卒業、京都大学大学院文学研究科修了。博士(文学)。専門は発達心理学、発達認知神経科学。人文学に着想を得た問題を科学的に検討している。主な著書に『自己制御の発達と支援』(金子書房)、『おさなごころを科学する 進化する幼児観』(新曜社)、『わたしを律するわたし 子どもの抑制機能の発達』(京都大学学術出版会)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年05月09日新サービス「発達ナビPLUS」がいよいよスタートUpload By 発達ナビ編集部この春、発達が気になるお子さんの保護者さま向けに新しく開始した「発達ナビPLUS」。「発達ナビPLUS」の会員になると、4つのサービスラインナップすべてにアクセス・参加することができます。✔ 質問もできる!オンライン勉強会(毎週開催)✔ 専門家にメールで個別ケース相談✔ ペアトレの考え方を取り入れた子育てヒント動画✔ 専門家監修!支援のプロも活用する特別支援教材今回は、毎週開催のオンライン勉強会について詳しくご案内します。テーマも充実!毎週開催のオンライン勉強会って?Upload By 発達ナビ編集部発達ナビPLUSでは、臨床心理士、作業療法士、言語聴覚士など発達の専門家によるオンライン勉強会を毎週開催。オンラインなので、お住まいの地域に関わらずご自宅で視聴ができます!子どもの特性や行動を分かりやすく解説し、子育ての中でうまれる「どうして?」「なぜ?」のお声にお答えします。使い放題の「特別支援の教材」を活用したおうちでの取り組み方もご紹介!さらに、その場で専門家にチャットで質問することもできます。定員は90名、先着順で受付します。テーマや年齢層を参考に、気になる勉強会をチェックしてみてください。Upload By 発達ナビ編集部オンライン勉強会の講師をご紹介現在、決定しているオンライン勉強会の4名の講師をご紹介します。保護者の皆さま向けにコメントをいただきましたので、合わせてご覧ください。Upload By 発達ナビ編集部慶應義塾大学社会学研究科後期博士課程。博士(心理学)公認心理師/臨床心理士/臨床発達心理士慶應義塾大学先導研究センター、常磐大学助教を経て、現在LITALICOジュニアとLITALICO発達ナビのチーフスーパーバイザーに。発達障害のあるお子さまへの直接支援、幼・小・中学校での特別支援アドバイザー、大学・教育センター・医療機関でのスーパーバイズなど発達臨床歴20年超。Upload By 発達ナビ編集部京都大学医学部保健学科卒業、奈良教育大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)作業療法士奈良県総合リハビリテーションセンターでの支援、白鳳短期大学講師等を経て、現在はNPO法人はびりす 理事、 藍野大学 助教等をつとめる。編著に『子ども理解からはじめる感覚統合遊び』(クリエイツ・かもがわ) 、『 みんなでつなぐ読み書き支援プログラム』(クリエイツ・かもがわ)他多数。 NHK育児情報番組『まいにちスクスク』の「体の使い方が器用になる遊び」監修。Upload By 発達ナビ編集部大阪外国語大学、神戸総合医療専門学校卒言語聴覚士医療・福祉機関で勤務後、現在フリーランスとして活動。発達に凸凹のあるお子さんやご家族のサポート、支援者の育成、記事執筆・監修等を行う。Upload By 発達ナビ編集部北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科作業療法学専攻認定作業療法士愛知県三河青い鳥医療療育センター、文京区教育センター、LITALICOジュニアを経て、現在、東京保健医療専門職大学リハビリテーション学部作業療法学科に勤務。入所、通所、外来での発達障害や肢体不自由のあるお子さまへのリハビリテーション(作業療法)を実施。また、保育園・幼稚園・学校への巡回相談も実施。運動や身辺動作の向上に向けたプログラムも開発。日本作業療法士協会学術部委員、雑誌「小児リハビリテーション」編集委員。今後、さらにさまざまな分野の講師に加わっていただく予定です。6月以降もご期待ください。園・学校の先生とのコミュニケーションに大活躍の「サポートブック」Upload By 発達ナビ編集部5月に始まる最初のオンライン勉強会のテーマは「サポートブック」です。サポートブックは、入園や入学、進学などお子さまのライフステージが変わる際に、園や学校の先生などと、お子さまの普段の様子や関わり方、知っておいて欲しい情報を共有するツールです。年度替わりの今、サポートブックを用意したいと思っていても、一人ではどう書いたらいいか悩んでいる保護者さまも多いでしょう。オンライン勉強会では、未就学児向けと学齢期向けに分けて、書くポイントなどを丁寧にご説明します。発達ナビPLUSオリジナルのサポートブックのデータも、発達ナビPLUS会員の皆さま向けにご提供します。見逃せない!2つの早期申し込み特典4月29日(水)からの申し込み開始に伴い、早期にお申込みいただいた皆さまへの特典をご用意しています。Upload By 発達ナビ編集部通常、初期コンテンツ利用料29,800円+月額利用料2,980円×11カ月(月額利用料は初月無料)のところ、5月15日(金)までに申し込みいただいた場合は特別割引が適用され、初期コンテンツ利用料が90%オフの2,980円となります。※6月以降は月額利用料2,980円で利用できます。Upload By 発達ナビ編集部「発達ナビPLUS」会員になるとダウンロードできる特別支援教材の中から、発達年齢別に複数種類ピックアップし印刷したセットをご用意。4種類の中からご希望いただいた1セットをお送りします。「子どもにあった教材選びが難しい」「印刷が手間で、なかなか始められない!」という保護者さまに嬉しい特典となっています。
2020年05月02日以前、運動会のかけっこで順位をつけず、最後はみんな手をつないで一緒にゴールした小学校が話題になったことがありました。有名なモンテッソーリ教育も、“競争させない” のがポリシーです。仲良し教育を是とする風潮に、「今の子どもたちは昔に比べて競争心がない」とも言われ、子どもに競争させることの良し悪しはいまだ賛否両論あります。一方で、「負ける」ことに意義を認める日本の伝統競技があります。将棋です。「負けました」と敗者が自ら宣言し勝敗が決まるものは、勝負事としてほかにはないでしょう。期待の若き棋士藤井聡太7段(*)は、将棋を通して今も成長し続けています。その成長には、“負ける” という経験が大きく作用しているそうです。勝敗を競うべきか否かには一長一短ありますが、今回は「負けることの意義」にフォーカス。そこから得られる学びについて詳しく検証してみましょう。*…2020年4月現在子どもの「負け」を成長につなげるために負けると誰でも悔しいものです。その “負” の感情をどう自分の中で処理するかに成長の鍵が潜んでいます。負けを成長につなげるためのポイントは2つです。■負けを認める「自分の弱さを認めることで、どんな困難も乗り越えられる」とは、アメリカ国防総省現役官僚のカイゾン・コーテ氏の言葉。その心理ステップは次の通りです。自分の弱さを受け入れると、本当の自分が見えてくる本当の自分が見えてくると、自分を正しく機能させることができる自分を正しく機能させることができると、最善の選択ができる(引用元:STUDY HACKER|“負け”から成長できる人とできない人の決定的な差。一流営業パーソンは失敗しても〇〇を言わない。)つまり、負の感情を認めることで、自分の気持ちが一度リセットでき、ストレスのない状況で冷静な判断と落ち着いた行動ができます。負の感情をいつまでも引きずらずに前に進むための第一歩が、「負けを認める」ことなのです。しかし、子どもにとって「負けを認める」のはなかなか難しい。そんなときは、親が共感してあげるとよいのだそう。モンテッソーリ教育を掲げる「吉祥寺こどもの家」の百枝義雄先生は、親が「悔しいね」と共感するだけで、子どもは負けてしまったにもかかわらず「自分の持っている感情は間違っていない」「自分の経験は間違っていない」と自信をつけると言っています。■負けを乗り越える弱い自分を受け入れることで第一段階はクリア。しかし、負けを認めるだけでは成長はありません。その後に悔しい思いを糧に努力することが大事です。将棋の世界では、負けを宣言することにはもうひとつ重要な意味があります。それは、負けを口にできる精神的強さを証明したことになり、メンタルでは勝者を上回ったと認められるということなのです。「負けることの意義」は、まさにここにあります。「負けるのはダメなことではない、強さにつながる過程なのだ」と学び、負けを恐れず積極的にチャレンジできる人になれるのです。とはいえ、子どもには少々難しいかもしれません。日本ストレスマネジメント学会事務局長である小関俊祐先生は、「いいチャレンジだったよ!」「毎日頑張っていたよね」と、結果ではなく、毎日の行動や努力を親がほめてあげることで、再び挑戦する力を身につけられると話しています。子どもが思った結果を出せなかったときこそ、日々の努力や頑張りをたくさんほめてあげましょう。競争しない教育を受けた子どもは「攻撃的な大人」になる!?逆に、「負けないこと(競争しないこと)」のデメリットはあるでしょうか。反競争的な教育は、成績に優劣をつけないことで、仲良く協働できるようになること、そして競争に惑わされずに本来の学びに集中することを目指しています。しかし、経済学者で大阪大学大学院経済学研究科教授の大竹文雄氏の研究では、「反競争的教育を受けた子どもは、利他性が低く、非協働的、攻撃的な大人になる」という驚くべき結果がでたのです。本来、人の能力には生まれながらの素質がそれぞれあり、誰しも得意・不得意がありますよね。しかし、競争をしてこなかった子どもは、「能力は誰しも平等で、努力すれば等しく向上できる」と思ってしまうのだそう。もし能力に劣った人がいると、「努力を怠ったから」と断定し、困っている人がいても、助けてあげない傾向があると言うのです。負ける悔しさや、克服する大変さを身をもって知るからこそ、人を思いやり、協働できる人間力が育まれるのだとすると、楽しいこともつらいことも含めた多様な体験こそが、子どもの将来のために何よりも必要なものなのではないでしょうか。「いい子でなきゃいけない!」と思っている子ども子どもは自分の気持ちにきちんと向き合ったり、人に伝えたり、感情をうまくコントロールしたりする術をまだ完全には身につけられていません。消化できないもやもやを分析してみると、負けを認めない子どもの心理には大きく2つ原因があるようです。要因1:生まれつきの性格生まれ持った性格は皆それぞれ。アメリカの精神科医であるトーマス博士が研究発表した「9つの気質」(活発さ・集中力・粘り強さ・環境対応力・規則正しさ・順応力・五感の敏感さ・感情表現・ベースの気性)が混じり合うことによって、子どもは、負けず嫌いの子、のんびりした子、几帳面な子などの性格になります。そして、そこに家庭環境などが影響し、“負け” をどうしても受け入れられない子が出てくるのです。要因2:親からの “いい子” プレッシャー子育て支援士の田宮由美さんによると、どんな子にも保身の気持ちはあるので、親から感情的に叱られたりすると、つい自分の負けを人のせいにしてしまうことも。また、日頃から保護者や先生に「いい子にしなさい」と言われて育つと、「いい子でいなければ受け入れてもらえない」という不安を抱くことに。「負け=悪い子」という構図ができ上がり、どうしても負けを受け入れられない気持ちになってしまうのだといいます。これらの子どもの心理には、やはり親の接し方が大きく関わってきます。注意点を2つ見てみましょう。「レジリエンス」を育むための2つの方法レジリエンスの言葉の意味は「回復力・弾力性」。心理学的には「折れない心・しなやかな強さ」という概念で使われています。つまりは「負けてもへこたれない打たれ強さ」のことで、「生きる力」には不可欠な要素。負けを恐れないレジリエンスを育むためには、どんなことが必要なのでしょうか。以下の2つは、つい「言ってしまう・やってしまう」親の対応ともいえるのでは?NPO法人ハートフルコミュニケーション代表理事の菅原裕子さんのアドバイスを参考に、ポイントをまとめてみました。■子どもを否定しない親は、子どもの気質や思考のクセをできるだけ正確に把握し、常に意識しておく必要があります。特に気をつけたいのが、ネガティブ思考に陥るときのパターン。几帳面で正義感が強い子は、ほかの子がルールを破ったりすると許せず、怒ってしまうことも。そんなときは、親がフォローしてあげましょう。ここで重要なのは、決して子どもを否定や非難してはいけないということ。子どもの気持ちを受け止めたうえで、「Aちゃんはどうしてあんなことをしたのかな?たぶん〇〇だったんじゃない?」と相手の気持ちを慮ることを促すなど、いろいろなものの見方があることに気づかせてあげるのが大事です。ひとつの考えに固執しないことに慣れていくことで、子どもの気持ちも楽になり、視野も広がっていくでしょう。■子どもを人と比べない「〇〇君には負けないで」「お兄ちゃんは一番だったんだから、あなたも頑張って」など、特定の人と比べる言葉をお子さんに投げかけてしまうと、子どもは周りの人に対して偏った競争心を持ってしまい、本来の勉強や競技に集中できなくなってしまいます。対象が身近であるほど、負けることでコンプレックスを抱えてしまうことにも。競争心は特定の人物にではなく、自分の目標に対して抱くべきものなのです。たとえば、一緒にサッカーを練習しているお友だちのほうが上手で、いつもレギュラーで試合に出ているとしたら、子どもは悔しいと思うと同時に、自分にコンプレックスを抱くでしょう。そんなとき、努力のモチベーションを、友人に対する負の思いではなく、自分に向けるべく親が誘導してあげましょう。「目標はレギュラーになること」と定め、そのための手段として「ひとつずつ技を着実に身につけること」とし、具体的なトレーニングメニューを考えます。自分のレベルアップにフォーカスするのです。そうすることで、競争心は前向きな力となります。親は、子どもの意識を他人ではなく自分の内側に向けるガイドの役割を果たすことが求められます。正しい努力をして負けたなら、子どもは負けを受け入れられるようになっているはずです。そこからたくさんのことを感じ取って、成長してくれることでしょう。***長い人生、競争を完全に避けることは不可能ですよね。大小さまざまな優劣、勝敗によって傷ついてしまうこともあるでしょう。目標は、「負けることは悪いことじゃない」と子どもが思えるようになること。負けることにへこたれない強さと、挫折をプラスに転じる力がつけば、自己肯定感も高まります。「子どもの頃にたくさん負けて人間力アップ!」という気持ちで、親子一緒にいろいろなことにチャレンジしてみましょう!(参考)STUDY HACKER|“負け”から成長できる人とできない人の決定的な差。一流営業パーソンは失敗しても〇〇を言わない。JCER 日本経済研究センター|2014年8月14日 反競争的な教育が助け合いを減らす?公益社団法人 日本将棋連盟|将棋コラム|将棋で負けた子供へはどう接すればいい?「負けました」から得られる心の成長【子供たちは将棋から何を学ぶのか】SHINGA FARM|子育てのコト|自分の過ちや失敗を「人のせい」にする子どもの心理と対応法STUDY HACKERこどもまなび☆ラボ|「おしごと」と「集中現象」とは?“親にしかできない”もっとも重要なことSTUDY HACKERこどもまなび☆ラボ|我が子はどのタイプ?個性がわかる「9つの気質」の組み合わせから、子どもを伸ばす方法が見えてくる!さぽナビ|子どものココロジー 競争心の弱い子・すぐあきらめる子STUDY HACKERこどもまなび☆ラボ|子どもの「レジリエンス」を高めるのは、親子の会話。結果ではなく“挑戦”を褒める!
2020年04月27日新型コロナウイルスの影響で学校が休校となり、お友達と会えない時期が続いています。サッカーもチーム活動が停止中で、予定していた試合がなくなったり、子どもたちはこの状況を理解しつつもがっかりしている気持ちもあるのではないでしょうか。早く思いっきりサッカーをさせてあげたいけど......と不安に思うお父さんお母さんもいらっしゃるでしょう。もちろんお子さんたちにも不安な心があると思います。そこで今回は、日ごろオリンピック・パラリンピックを目指すアスリートのメンタルトレーニングに携わり、一方でスポーツを頑張る子の親の学び舎「スポスタ」で保護者の皆さんに心理学的な観点から子どもの人生と向き合う習慣づくりをサポートしている筒井香さんに、今不安に思っているみなさんに、心を少し軽くするアドバイスをいただきました。家にいる時間が増えて子どものテレビ視聴やゲームの時間が長くなってイライラしている保護者の方へのアドバイスもいただきましたのでご覧ください。(文:筒井香)サッカー活動も休止中でがっかりしている子どもも多い今、気持ちを和らげるためにできることとは■不安や苛立ち、今の気持ちに素直になろう新型コロナウイルスの感染拡大防止の影響が相次ぐ中、日本でも緊急事態宣言が出されました。休校延長が続いたり、サッカーの活動も休止中の人が多いと思います。皆様もご存知の通り、2020東京オリンピック・パラリンピックも1年延期されることが決まりました。私は日頃、2020を目指すアスリートの皆さんのメンタルトレーニングに携わっております。大会が延期されることが決まった後にも、それぞれの選手とトレーニングを行いました。こうした経験を踏まえて、そしてスポーツ心理学者として、今こそ皆様にお伝えしたいことがあります。お子様と一緒にお読みいただくか、お読みいただいた内容について子どもと一緒にお話しするなど、ご活用いただけたらと思います。これまでの練習の成果を発揮しようと心待ちにしていたサッカー大会が、中止や延期になったり、そして新生活を楽しみにしていたのに学校が休校になったり、予定外のことが次々と起こっていると思います。普段の休みと違って、サッカーの練習もできないし、友達と遊ぶこともできない日々が続いている今、どんな気持ち(感情)でしょうか?ガッカリしたり、イライラしたり、不安で落ち着かない、そんな気持ちになることも多いのではないでしょうか?子どもだけではなく、今の先の見えない状況に、大人も強い不安や苛立ちを感じていることと思います。そんな皆様に、今、お伝えしたいことは、「どうか自分の今の自分の気持ちに素直になってください」ということです。なぜなら、「ガッカリしていても大会がないことは変わらないから意味がない」「誰のせいでもないのにこんなことでイライラする自分はダメだ」などと、自分の気持ちを否定することは、最大のストレスになります。同様に、子どもを励ましたいという想いから、「残念だけど気持ちを切り替えよう!」などと声をかけたくなることがあると思いますが、実はこれも「自分の気持ちを否定された」という感覚を与えてしまい、ストレスになることもあります。■感情を言語化することで整理され、落ち着いて行動できるでは、周りの大人は子どもにどう接すれば良いのでしょうか?それはまず、子どもに「どんな気持ち?」と尋ねることで、子ども自身が自分の気持ちを言葉にする機会を持てるようにすることです。そして、「なぜ、そんな気持ちになったのかな?」とさらに理由を尋ねてみてください。子どもが、大会に向けて一生懸命練習をしてきたからこそ、好きなサッカーができないからこそ、ガッカリすることもできれば、イライラする気持ちを持つこともできるのです。これらは、子どもの"本気の想いがあったからこそ生じる感情"、つまり"本気の証"なのです。子どもにこのことに気づいてもらうことためにも、保護者の皆様との会話が大切だと思います。感情は私たちに大事なことをお知らせする機能を持っています。感情からのメッセージに耳を傾けることがとても大切です。イラつきは、例えば、何か自分に正論があって、それに相反する出来事が起こっていることを知らせています。焦りや緊張は、例えば、それだけ自分にとって大切な出来事であることを知らせてくれています。そして、落ち込みや悲しみは、例えば、失ったものがどれだけ大事なものであったかを知らせてくれているのです。このような感情は、とても大きなエネルギーを持っているので、簡単に抑え込むことはできないものです。無理に抑え込もうとすれば、誰にこの想い(エネルギー)をぶつけていいのかわからず、もっとガッカリしたり、最初のイライラとは関係のないイライラまで抱えることにもなりかねません。自分の感情を無視して抑え込もうとするのではなく、その感情になった理由を考えてみること、そして、本気だった自分を認めてあげることが、今はまず大事になります。ご家庭で、次のことをしながら時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。1.今の感情と、その感情になった理由をノートに書き出してみる。2.今のような日常とは違うことへの漠然とした不安を感じる場合にも、漠然としたままでは、実態よりも不安が膨れ上がってしまうので、過去、現在、未来の気になることに分けて考えて書き出してみる。3.今は会えないけれど電話やメールでもいいので友達、そして家族とお互いの感情について語り合う。このように感情を言語化することで、感情を客観的にみつめ、整理する力が養われて、感情を制御する力がつくと言われています。本当の意味での「気持ちの切り替え」はそこから始まると思います。ガッカリやイライラした感情エネルギーを、今から自分の行動にどのように使うかを考えることもできるようになります。「活動再開をしたら、もっと練習したい!」、そのために、今、時間のある間に、勉強をやっておく大切さに気づけるかもしれません。■考え方しだいでテレビやゲームも勉強やスポーツでの考える力をつける習慣作りにもなる最後に、保護者の皆様のなかには、子どものテレビやゲームの時間が長くなり、イライラを感じている方もいらっしゃるかと思います。もちろん時間を決めて、勉強する時間も作ることは大切ですが、それに加えて、「テレビやゲームも学びの時間と決めてやる!」というのも一つの方法かと思います。テレビを見て気づいたことは何か?今日より明日ゲームが上手くなるにはどうすればいいか?とお子様と話し合ってみてはいかがでしょうか。こうした力は勉強やスポーツに通ずるものです。また、そのイライラは、元の生活に戻れるのだろうか?この時間は取り戻せるのだろうか?といった、子どもの将来を想うからこそのイライラでもあると考えられます。それに改めて気づくことは、保護者の皆様ご自身の心の健康に繋がるものだと思います。ぜひ、感情からのメッセージを受け取ってみてください。感情エネルギーを有効活用することで、今よりももっと行動の質を高めることができるのです。筒井香(つつい・かおり)株式会社BorderLeSS代表取締役博士(学術)日本スポーツ心理学会認定スポーツメンタルトレーニング指導士大学・大学院時代に人間行動学、臨床発達心理学、スポーツ心理学などの心理学から「人間の特性」を広範に学び、また、博士論文では、「個別性を重んじたポジティブシンキングの多様性」に関する理論を構築。現在はオリンピック、パラリンピック選手のメンタルトレーニングのほか、スポーツを頑張る親の学び舎「スポスタ」の講師として、スポーツを(アスリートとして)頑張っている子どもの保護者に向けて、人としてのキャリアのなかにアスリートとしてのキャリアも含めた、包括的な人生設計に重要な理論と実践方法を伝え、子どもの「キャリア=人生育て」を心理学の視点からサポートしている。株式会社BorderLeSSスポスタ
2020年04月21日「ヘリコプターペアレント」というとちょっと耳慣れないかもしれませんが、空からつねに子どもを監視しているような親――つまり「過干渉」の親のことです。親がヘリコプターペアレントだと、子どもにどんな影響があるのでしょうか?欧米で学んだ心理学を子育てに生かし、母親たちをサポートしている公認心理師の佐藤めぐみさんに、ヘリコプターペアレントにならないための方法と併せて教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹「しっかり者」の親に多い「ヘリコプターペアレント」「ヘリコプターペアレント」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?これは本来、高校生や大学生くらいの年代の親のうち、ある特徴を持つ人たちに対して使われていた言葉です。「子どもの就活の面接に同行する親がいる」といった話を聞いたことがありませんか?そういう親が、あたかも子どもの頭上でホバリングしながら監視しているようだとして、ヘリコプターペアレントというふうに呼ばれるようになったのです。干渉し過ぎる親のもとで育った子は、のちのち社会に出てからもさまざまな問題を抱える傾向があります。子どもの頃から、なにをするにも「○○くんはこれが好きだよね」「これがいいよね」というふうに、一見意見を尊重しているようで結果的には親が一方的に決めてレールを敷いてしまうため、その子は大人になっても自分の意見を持てないというのはよくあるケースです。いわゆる、「指示待ち人間」になってしまうのです。さらには、打たれ弱いということもその特徴として挙げられます。親が自分のことを過剰なまでに守ってくれ、困難にぶつかる前に手を差し伸べてくれるために、つまずいたり壁にぶつかったりする経験が乏しいまま大人になってしまいます。でも、社会に出れば、親につねに守ってもらうというわけにはいきません。当然、さまざまな失敗を重ねることになります。すると、失敗に対する耐性が弱いために、一度の失敗で心に大きな傷を負ってしまうのです。子どもをそんなふうに育ててしまうヘリコプターペアレントには、心配性であることの他、少し意外かもしれませんが「しっかり者」の人が多いという特徴があります。しっかり者で管理上手だからこそ、子どもに対しても「なにごともうまくやってほしい」と考え、「我が子にはこれがいいんだ」と、子どもにかかわるあらゆることを決めてしまうのです。幼い子どもに対しては、ある程度の干渉が必要ただ誤解してほしくないのは、ヘリコプターペアレントは、あくまでも「高校生や大学生くらいの年代の親」に対しての呼び名だということ。それが、現在はもっと年齢が低い子どもの親に対していわれるようになってきているのですが、幼い子どもに対しては、もちろん親が管理したり干渉したりすることも必要です。なんでも子ども任せで、ただ放置しておけばいいというわけではありませんよね。幼い子どもが外で遊んでいるときには、親はきちんとそばで見守る必要があります。子ども自身や友だちが危険な遊びをしようとしているようなら、親がしっかり止めるべきです。ですが、多くの親御さんとかかわるなかで、わたしが「ヘリコプターペアレント“予備軍”かもしれないな」と感じる人がいるのも事実です。ですから、みなさんには「自分はヘリコプターペアレント予備軍になっていないか」ということを考えてほしいと思います。そうならないために大切なのは、子どもをひとりの人間として尊重することです。「質問をする」「相談をする」「意見を聞く」ということがとても大事になります。先にお伝えしたように、ヘリコプターペアレントは、子どもの日常に過度に干渉するため、その子の決断や判断の機会を失わせてしまうという特徴があります。そうではなく、子どもにかかわることは、まずは子どもにどうしたいかを聞いてほしいと思います。習い事や塾などの重要なことはもちろんですが、なにを食べたいか、なにを着たいか、なにで遊びたいか、そういう日常的なことでも自発的に考える練習になります。そういったことが、子どもの決断力を育むことになり、指示待ち人間ではなく、しっかりした自分の意見を持てる人間に育てるために大切です。子どもの成長に欠かせない、「悔しい」という負の感情また、子どもの「負の感情」を悪いものだと考えないことも重要です。負の感情とは、悔しいとか悲しい、寂しいといった気持ちのことです。もちろん、「友だちにいじめられて悲しい」だとか「お父さん、お母さんとあまり一緒にいられなくて寂しい」といった気持ちを子どもに味わわせることは、親として避けなければなりません。その一方、悔しい気持ちは子どもの成長に欠かせないものでもあります。たとえば、子どもが習い事やスポーツで他の子どもに負けて悔しい思いをしたとしましょう。その悔しい気持ちがあるから、その子は「今度は負けないようにもっと頑張ろう!」と努力をすることができます。その気持ちが、子どもにとってどれだけ大きな成長をもたらしてくれるかは、あらためて考えるまでもないでしょう。ところが、ヘリコプターペアレント予備軍の親たちは、そんな大事な悔しい気持ちすら、「子どもがかわいそうだ」と感じ、手を出したり、代わりにやってあげたりと干渉してしまいます。親の役割として大事なのは、子どもが嫌な思いをしないように先回りして解除することではなく、チャレンジをして悔しい思いをしたときに、「悔しかったね」と、子どもの気持ちに寄り添い、次に進めるように励ましてあげることです。そうすることで、失敗が成長のチャンスになっていくのです。先の「子どもに質問をする、相談をする、意見を聞く」ということにも通じますが、子どもが経験すべきことを親が奪うのではなく、子どもの本当の気持ちをしっかりと見つめることを大切にしてほしいと思います。『子育て心理学のプロが教える 輝くママの習慣』佐藤めぐみ 著/あさ出版(2012)■ 公認心理師・佐藤めぐみさん インタビュー記事一覧第1回:「登園時、毎朝大泣き」問題は、親がコレをしてあげると解決できる!第2回:子どもの「泣き落とし」を収めるテクニック。コツは“ルール作り”にあり第3回:子どもは「甘やかす」より「甘えさせる」!甘えさせてもらえない子は将来こうなる第4回:「過干渉、ヘリコプターペアレント予備軍」親の意外な特徴。もしかしてあなたも?【プロフィール】佐藤めぐみ(さとう・めぐみ)1969年生まれ、東京都出身。公認心理師。オランダ心理学会認定心理士。イギリス・レスター大学大学院修士号取得。欧米で学んだ心理学を日本のお母さんが取り入れやすいかたちにしたポジティブ育児メソッドを考案。現在は公認心理師として、ポジティブ育児研究所でのオンライン子育て心理学講座、育児相談室ポジカフェでのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動等を通じ、子育て心理学を活用した育児支援を行っている。HP:megumi-sato.com【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年04月20日育児に遅れと混乱が生じてる !!
ムスメちゃんとオコメちゃん
ドイツDE親バカ絵日記