脳科学と心理学をフル活用したオーダーメイドの企業研修・セミナーを行う株式会社ホワイトスターラボ ( 所在地:東京都渋谷区、代表取締役:山田 梨歌 )は、これまで実施してきたオーダーメイド個別研修・グループ研修の自社アンケートで最も好評価だった「6つの渇望遺伝子」についてお話する、法人設立5周年記念セミナーなどを掲載した新コンテンツを11月12日(金)よりオンラインにて無料公開します。5周年企画サイト: 【5周年】未来の社長を育てる脳を可愛がる脳会話専門学校■「 6つの渇望遺伝子」を知って営業も仕事も楽しむ「 6つの渇望遺伝子 」のセミナーでは、「 職場の人間関係を楽にする方法 」「 コミュニケーション 」「 脳へと直接に働きかける脳会話術 」といった内容を学び・体験することができます。当社の代表 山田は、セールストークやプレゼン術にこだわった固い営業スタイルではなく、セールスに従事する人も顧客もお互い気持ちよく楽しんで成果をあげることを目的に、顧客が自身でも気付いていない欲望を【 渇望遺伝子 】と名付けてプロファイリングして売る新しい方法を起業家や経営者向けに研修やコーチングをしてきました。今回の無料セミナー動画では、リーダーやマネジメント職だけでなく、社会人として仕事をする方々にも活用いただける【 脳の使い方 】についてご紹介します。「あいつ(ライバル)とオレの違いは一体なんだ!?ビジネス歴も変わらない、会社の規模も大して変わらない、ビジネスマン能力も多分そんなに変わらないはず。でも結果( 業績 )に、こんなに差がついているのはなぜ?」とスッキリしないモヤモヤした経験がある方にこそ、知っていただきたい脳科学と心理学の活用方法について、お伝えします。■【 渇望遺伝子 】= 買いたい遺伝子を目覚めさせるステップ自分のセールス力を飛躍的に高め、お客様( 商談相手 ) の【 渇望遺伝子 】を目覚めさせるためには以下の4つのステップを踏むことが必要です。(1)【 渇望遺伝子 】= 買いたい遺伝子 6つの存在を知るセールスが楽になる【 渇望遺伝子 】のメカニズムを理解することで、今まで多くの方が抱いていたセールスに対する悩みやトラウマ級の痛みを減らすことができる。(2)自分の脳の特徴を知る自分の【 渇望遺伝子 】を知り、自分の脳の癖を理解することで、なんとなく自分の上手くいった・上手くいかなかったを的確に理解できるので上手くいくようになる。(3)お客様の脳の特徴を知るお客様の【 渇望遺伝子 】と自分の【 渇望遺伝子 】との違いがわかることで、営業セールスが楽に楽しくなる。(4)お客様の特徴に合わせたセールストークを楽しむ欲求で満たされない乾いた部分を急激に今すぐに潤して、お客様の【渇望遺伝子】が目覚める脳会話ができるトークを作る。■ 5周年を迎えたホワイトスターラボ当社は、【 社員の心が楽になると、社長の心も楽になる 】【 人間のパフォーマンスの根源である心の豊かさ、脳の充実感から継続的に売上・業績をあげる安定経営を目指す心の研修 】で、カウンセリングを通してメンタルヘルスを整え、心をケアする会社です。脳の認知構造を再構築し、働き方改革に対応できる人間力を身につけ、人にもお金にも好かれる組織づくりも支援するマンツーマンでのオーダーメイドのメンタルサポートのほか、企業様のグループ研修や社長候補を育てる脳力開発、新人社員が会社にいたくなる脳の使い方講座など様々な講座も承っております。今後は2年後に、コロナ後ますますやることが増えているドクターが治療だけに専念できるように心の未病をサポートする対人支援チームを派遣する事業を、5年後には、日本の企業が心の豊かさから社員も業績も元気になったプログラムを海外向けにつくり、繊細で感受性の高い日本人だからこそ開発できた心理職・相談職を世界に発信することを目指します。<会社概要>商号 : 株式会社ホワイトスターラボ代表者 : 代表取締役 山田 梨歌所在地 : 〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿1丁目15の9シルク恵比寿403設立 : 2017年8月17日事業内容: 企業向け研修事業・ビジネス脳力開発支援・ビジネスマン向けメンタルヘルスコーディネーター・カウンセリングセラピー・コーチング< 代表取締役 山田 梨歌 >医療法人社団 仁静会の理事として、16年間36万件以上の人間関係の相談に携わり、精神的お悩みを解決。医療福祉従事者向けの人間関係を円滑にするビジネスコミュニケーション研修事業をメインに活動したヒューマンスターメディカル研究所3年を経て、2017年8月17日に株式会社ホワイトスターラボとして法人化。現在は、全国の中小企業経営者エグゼクティブ向け研修のほか、コーチング・カウンセリング・セラピーをオンラインで提供。また、2020年にメンタルクリエイター(R)協会を設立。オールインワンで心理職・相談職ができるプロコーチ養成講座も2期目を迎える。現在著書に「使われていない97%の脳を自由自在に操るビジネス催眠力(R)」忙しいビジネスマンの為にコーチング・セラピー・NLP・催眠療法・実践心理学・脳科学・個性心理学を統合したエグゼクティブクラスのセッション「 頑張らない営業~6つの買いたくなる脳の特徴で成約率98%を生み出す! エグゼクティブコーチが社長に教えていた【 渇望遺伝子の正体 】とは?」など。海外の心理学の恩師たちから学んだ技術を繊細で感受性の高い日本人向けに開発した脳を可愛がる手法、ヒプノティックパワー(R)を世界に発信し、【 褒めて・認めて・感謝する 】勇気と元気を自家発電できる賞賛と賛美する脳内構造へと再構築し、世界平和のために、まずは会社や家庭の中から争いのない世界にして綺麗ごとを綺麗にできる人類を増やすことに注力。代表取締役 山田 梨加(1)【本件に関するお客様からのお問い合わせ先】株式会社ホワイトスターラボ お客様相談窓口お問い合せフォーム: 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2021年11月12日子育てや教育にまつわる情報を探していると、「10歳までに◯◯すべき」という説をよく目にします。それはなぜでしょう?どうやら「10歳までの子ども」は、親子の関わり方によってぐんと伸びる可能性を秘めているらしいのです。今回は、子どもの未来のために「10歳までにしておきたいこと」について考えていきます。「10歳までに〇〇すべき」の科学的根拠そもそも「10歳まで」という年齢に根拠はあるのでしょうか?小学校高学年に差しかかる10歳の子どもは、大人に比べるとまだまだ幼稚な面が多いものの、子どもっぽさが抜けつつある変化の過渡期です。ここでは、脳や心の成長と教育面における10歳までの変化を見ていきましょう。■脳の発達における「10歳」とはまずは脳科学の面から、10歳までの子どもの脳の成長について解説していきます。発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家である加藤俊徳氏は、子どもの脳の成長には段階があり、その年齢に適した脳の発達を促すことが大切であると述べています。具体的には、3~7歳くらいまでは体を動かすことを重点的に、五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)で脳に情報を取り入れることを意識するといいそう。目的は右脳の成長を促すこと。「感性脳」と呼ばれる右脳の発達は、相手の気持ちを汲み取るなど、他者と上手にコミュニケーションをとるのに欠かせません。続いて7歳以降、小学校に入ると教科書を使ってたくさん勉強をするようになり、言葉の情報を理解する能力が鍛えられます。これにより「論理脳」と呼ばれる左脳が著しく成長し、自分自身を理解するのに役立ちます。加藤氏によると、「10歳以降にぐんと伸びるのは、体験を言葉にしたり、文字情報を読んで深い理解につなげたりする能力。だからこそ、それまでに言葉以外の体験を十分にしておく必要がある」とのこと。満点の星空を見上げる、炎天下でかき氷を食べる、虫の声に耳を傾けるなど、五感を通したさまざまな体験をさせてあげましょう。■心の発達における「10歳」とはよく「10歳の壁」という言葉を耳にしますが、発達心理学の観点からも、10歳は精神的な不安定さが顕著に現れる難しい時期だと言われています。「子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題」(文部科学省)によると、10歳前後の子どもは「自分のことを客観的にとらえられるようになる反面、自己に対する肯定的な意識をもてず、劣等感をもちやすくなる」という特徴が見られるようになるそう。このような内面の変化は、親にとっても子ども本人にとっても深い悩みにつながる可能性がありますが、決して悪いことばかりではありません。「10歳は子どもにとって大きな飛躍の年」と話すのは、発達心理学・学校心理学の専門家である渡辺弥生氏。この時期の子どもは急激に大人に向かって成長します。悩みの内容も大人と同じように複雑化されるでしょう。しかしそれこそ、自分を客観視できるようになった証であり、将来のことをしっかりとイメージして考えられるほど成長した、ということなのです。大きな変化の渦中にいる子どもは、親が考える以上に強いストレスを感じています。ときには反抗的な態度をとってしまうこともありますが、将来大きく羽ばたくために必要な過程なのです。10歳前後の子どもの心は、急激に成長している最中と言えるでしょう。■学力面における「10歳」とは最後に、10歳を境にした変化について、教育における観点から解説します。花まる学習会代表の高濱正伸氏は、「子どもはおおむね10歳(小学4年生)くらいを境に、大きく変わります。親は小学校低学年と高学年では “生態がまったく違う” ことを認識すべきです」と述べています。私の長年の観察によると、小学3年生(9歳)までが「オタマジャクシ」の時代で、小学5年生(11歳)から「カエル」の時代がはじまります。その間の小学4年生(10歳)は、「オタマジャクシ」から「カエル」に変わる転換期であり、「オタマジャクシに足が生えた状態」といえるでしょう(もちろん成長には個人差があります)。(引用元:高濱正伸(2014),『本当に頭がいい子の育て方』, ダイヤモンド社.)学力面において「10歳」は分岐点になります。高濱氏は、「8、9歳くらいまでに “頭のよさ” の核心部分が育つ」と言い、「低学年で基礎力を完成させ、高学年以降にさらに発達させる、というプロセスが一般的なので、10歳までに基礎力が身についていないと、それ以降の “あと伸び” が難しくなる」と指摘しています。このように、子どもにとって非常に重要な時期として「10歳」が挙げられるのは、それなりの理由があるのです。長い人生のなかでたった10年でも、その時期の経験や生活の基礎が人生の土台となることを考えると、「10歳までに」してあげたいこと・させてあげたいことが見えてくるはずです。10歳までにしたほうがいい4つのことでは具体的に、10歳までに何をしたらいいのでしょうか?ここでは押さえておきたい4項目をピックアップしました。■10歳までに「生活習慣を整える」12年間、5万人以上の「勉強ができる子」の学習パターンを調査してきた朝日大学マーケティング研究所所長の中畑千弘氏は、「勉強ができる、できない子の差は10歳までの生活習慣にある」と断言します。中畑氏によると、いわゆる「勉強ができる子」は、「10歳までに机に向かって5分でも10分でも何かをするという習慣」が身についていることが多いそう。また、勉強に限らず、同じ時間に起きる、同じ時間に食事をとる、同じ時間に寝る、など規則正しい生活を送る習慣が身についているという点も重要です。文部科学省による「全国学力・学習状況調査」(平成28年)では、朝食を毎日食べている子どものほうが、学力調査の平均正答率や体力合計点が高い傾向にあるという結果が出ました。朝起きて食欲が出ないなら、具沢山のスープやフルーツなどを少量でも食べる習慣をつけましょう。また、教育ジャーナリストの清水克彦氏は「正しい生活習慣に加えて、お手伝いや整理整頓の習慣も身につけるべき」と述べています。なぜなら、お手伝いや整理整頓が習慣づいている子どもほど、頭のなかの考えを整理しやすく、上手に感情のコントロールができたり、自分から率先して行動できたりと、学力では測れない能力が身につくからです。10歳までによい習慣を身につけさせたいですね。■10歳までに「考える経験をさせる」「思春期になんらかの問題を起こすかどうかは10歳頃までの親子関係で決まる」と話すのは、青山渋谷メディカルクリニック名誉院長の鍋田泰孝氏です。10歳までの学童期は、子どもが精神的に安定していてまだ頭が柔らかい時期。それゆえ外界から多くのことを取り込みやすく、「基本的な性格ができあがる時期」でもあるのです。基本的な性格ができあがるというのは、対人関係のスキルや物事のとらえ方、主体性といった「基本的なライフスタイル」ができあがることでもあります。この時期に自分で考える経験をせず、すべて親に決めてもらっていたら、思春期にぶつかる壁を乗り越えるのは困難になるでしょう。わが子が心配なあまり、つい過干渉になってしまう人も多いかもしれませんが、その弊害についてはよく知られるところ。そうならないように、「子どもをひとりの人間として尊重することが大切」と話すのは公認心理師の佐藤めぐみ氏です。親が意識すべきは「質問をする」「相談をする」「意見を聞く」の3つ。子どもの決断や判断の機会を奪わないように、まずは子どもに「どうしたい?」「○○くんはどう思った?」と聞いてみてください。子ども自身が考え、自分の気持ちを正直に言えるようになるといいですね。■10歳までに言語能力を伸ばす開成中学校・高等学校校長を経て現在は北鎌倉女子学園学園長を務める柳沢幸雄氏は、「人間としての基本形ができあがる10歳までに、幅広い経験をさせる必要がある」と話します。ただしそれは、習い事をたくさんさせるという意味ではありません。この時期に培いたいのは、学力や特定のスポーツの能力ではなく、「総合的な生活力」いわゆる「生きる力」です。なかでも「言語能力」を伸ばしてあげることを意識してあげるといいそう。というのも、人から何かを教わるときにも、自分で物事を考えるときにも、人間は言語を使うから。つまり、「言語能力こそが学びの基礎」なのです。子どもの言語能力を伸ばすには、「子どもの話をきちんと聞くこと」が基本です。成長過程にある子どもはボキャブラリーが少なく、話を組み立てることがまだ苦手。柳沢氏は、「話すのに時間がかかっても、親は辛抱強く待って、子どもに考える時間を与えてほしい」と述べています。「子どもがしゃべる時間が2、親がしゃべる時間を1」を意識するよう心がけましょう。■10歳までに思い切り遊ばせる「10歳くらいまでに思いきり遊べていない人間は、将来的に伸びない」と断言するのは、教育改革実践家の藤原和博氏。これからの時代に求められるのは、正確な答えをすばやく導き出す能力ではなく、「正解がない問題に対して多くの仮説を立てられる力」だと藤原氏は説きます。その力は、遊びのなかで育まれるのだそう。遊びというのは決まった正解がなく、想定外のことも起こります。だからこそ、その場の状況を踏まえて仮説を立てて乗り越えたり、みんなが楽しめるように臨機応変にルールを変更したりする柔軟性が求められるのです。実践教育ジャーナリストの矢萩邦彦氏も同様に、「小学2年生まではできるだけ外遊びをして、ものを観察したりつくったりする時間を確保する必要がある」と述べています。習い事に追われて遊ぶ時間がない子どもも多く見られますが、できるだけしっかりと外遊びをさせることが、その先の学びの基礎づくりになるのです。どこか特別な場所や整備された遊び場へ連れて行かなくても、近所の公園でいつもとは違う遊びを取り入れたり、散歩コースを変えてみたりと、日常のなかで工夫して変化を楽しむことはできますよ。10歳までに高めたい「自己肯定感」と「非認知能力」最後に、STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ(編集)× おおたとしまさ氏(監修)の書籍、 “10歳までに一生ものの土台ができる” 『究極の子育て』をご紹介します。本書は、「変化の激しい現代社会において、必要とされる知識やスキルを不足なく身につけるためにどうするべきか」を問う一冊。そのカギとなるのは、「自己肯定感」と「非認知能力」です。自己肯定感は、無条件に自分にOKを出せる感覚。非認知能力は、テストの点数では表せない幅広い力。どちらもこれからの時代に求められる力です。「これだけは大切なこと」をぎゅっと絞ってまとめています。「育児や教育に悩んでいる」「子どもの未来への漠然とした不安を抱えている」といった保護者にこそ、ぜひ読んでいただきたい一冊です。 ***とはいえ、「10歳までに絶対に身につけさせなきゃ!」と焦る必要はありません。ひとりひとりのお子さんのペースに合わせて、無理なく能力を伸ばせるようにサポートしてあげましょう。たとえ10歳を過ぎてしまっても、親御さんの愛情と熱意があれば、いつでも軌道修正することは可能なのです。(参考)PHPのびのび子育て 2020年8月特別増刊号, PHP研究所.高濱正伸(2014),『本当に頭がいい子の育て方』, ダイヤモンド社.文部科学省|3. 子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「10歳の壁」ではなくて「10歳の飛躍」!親が我が子の10歳をもっと面白がるべき理由ダイヤモンドオンライン|勉強ができる子を育てる「黄金の時間割」教えます!「早寝早起き朝ごはん」全国協議会|「早寝早起き朝ごはん」運動について清水克彦(2010),『頭のいい子が育つ10歳までの習慣』, PHP研究所.STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|思春期の問題は学童期からはじまっている?10歳までの親子関係が大事な理由STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「過干渉、ヘリコプターペアレント予備軍」親の意外な特徴。もしかしてあなたも?STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|生きる力をつくる「10歳までの幅広い経験」。子どもに勉強は教えるな!?STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|過剰な受験勉強よりも大切な、「10歳までに思い切り遊ぶ」という経験AERA with Kids 特別編集,『自己肯定感を高める本』, 朝日新聞出版.
2021年06月08日埼玉県放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報放課後等デイサービスおりひめでは、生活における基本動作や能力を習得し、集団生活や社会生活に適応できるよう学んでいきます。晴れた日は、おりひめオリジナルの散歩コースで外歩きや、スポーツで身体を動かし、体力の向上を図ったり、音楽・絵画などを通して、感性を磨き魅力的な内面になるよう成長を見守ります。宿題や自学習などは、保護者の方のニーズに沿い個別に対応。本人や家族の気持ちに寄り添い、サポートしています。埼玉県の放課後等デイサービスをもっと見るUpload By 発達ナビ施設情報児童発達支援では、生活における基本動作や能力を習得し、集団生活や社会生活に適応できるよう支援を行っています。基本的な物の名前を学んだり、リトミックを通じて表現のバリエーションを増やすほか、アートにも触れあうことで、新しい発見に驚き感動する、豊かな感性を育むよう取り組んでいます。本人やご家族の気持ちを尊重しながら、おともだちや職員との交流を通し、人と繋がることの楽しさを知るきっかけづくりをします。延長保育もあります。埼玉県の児童発達支援事業所をもっと見る大阪府児童発達支援事業所Upload By 発達ナビ施設情報未就学専門の療育機関です。工作・公園遊びなど、ルールのある遊びを行う集団療育、マッチングや微細運動・絵カードなどを使って、手先の不器用さの改善や言葉の発達を促す個別療育を行っています。また、子どもたちにさまざまな体験をして欲しいという思いから、公園遊び・工作・科学実験・粘土遊び・運動・音楽遊びなど、毎日多様なイベントを開催しています。お子さんが楽しく取り組めるよう、保育士や児童心理学等を学んだ経験豊富なスタッフが、笑顔あふれる施設でサポートしています。大阪府の児童発達支援事業所をもっと見る「もっと施設の情報を詳しく知りたい!」「見学をしてみたい!」と思ったら、WEBからもお問い合わせが可能です。施設情報ページでは、掲載されている施設の情報を地域ごとに検索して見ることができますよ。
2021年05月26日幼いころから「なんか変?」だったタケルUpload By 寺島ヒロ他にも、先生の言ったことにあいまいなことがあると、迷ってしまって動けなくなったり、泣き始めると止まらなくなって2~3時間も声をあげて泣き続けたりと、自閉症のある子どもに特有の様子が見て取れました。その反面、文字の読み書きは人より早く覚え、複雑なパズルゲームをこなし、人の体の臓器や働きについての解説は「ハカセ」と呼ばれるほど。会話も他の子どもとの間に成り立っているかは怪しいですが、一応先生方の指示は意味を汲み取れており、返答も明朗でした。なので、私はかなり前から「この子には高機能自閉症の傾向があるな…でも、こんなにしっかり喋れるのだから、障害というわけではないのかな?」と思っていました。私は学生時代に心理学の授業を取っていたので、発達障害についても少しは知識があったのです。でも、当時はアスペルガー症候群とも言われていた「喋れる自閉症」の事を、私はまだ知りませんでした。Upload By 寺島ヒロ実は、私の実家の一族には多くの教育従事者がいます。何度か養護に詳しい親戚らに意見を聴いてみたこともあるのですが、私の息子のような子どもは本では読んだことはあるが珍しく、実際にはほとんど見たことがないとのこと。「そんなに珍しいのなら学校も、自治体も頼りにならない。私が上手く育てていかなければ!」とは思ったものの、具体的に何をすればいいのかはわかりません。手掛かりを求めて、年に3回、市が主催する発達相談に度々足を運びました。相談員のスタッフの方は優しく接してはくださいましたが、発達障害や自閉症については、当時はほとんどご存知ない様子でした。心理や精神の専門家というわけではなく自分の子育ての経験を元にアドバイスをするという形が主だったらしく、「しっかり喋っているから頭の障害ではない」「お母さんが社交的になって友達をつくってあげて」と言われるばかり。何度も通って、こんなに普通と違って手がかかる部分があるんですよと訴えていると、やがて「そんなに子どもの世話が嫌なのか、こんないい子を障害者にしたいのか!」と怒られるようになってしまいました…。そんな日々を180度転換させる出来事が…!タケルの「特性」がはっきり分かったのは2007年、タケルが8歳のころです。懲りずに行った子どもの発達相談ででした。Upload By 寺島ヒロそのときの相談で、ジャージ姿の支援スタッフの方に、息子の生育環境やこれまでの経緯、自閉症に特徴的ないくつかの行動があることなどをお話しました。その間、息子は他の支援スタッフの方と絵本やボールで遊んでいましたが、遊びながら行動をチェックされていたみたいです。その後、医師と息子本人の面談を経て、「この場では診断はできないんですが、印象として申し上げるとアスペルガー症候群に大変近いですね。詳しく調べてみた方がいいと思いますが、どうでしょうか。県の発達療育センターであればここで今すぐ予約という形にできるんですが」ということになりました。急・展・開!市井の病院ではなかなか予約が取れないことを知っていたので、即申し込み!次の週末にはもう受診できることになりました。さて、ようやく療育センターの予約を取ったものの、困ったのは息子になんと説明するかです。発達相談の方は、会場となった保健所が近所だったこともあり「タケルの成長を保健所に行って見てもらおうね」で済ませていましたが、行ったことにない場所に、車に乗って1時間半もかけて行くのですから、さすがに説明なしは無理があります。いや、それ以前に何があるかわからないところに行くなんて、そんな恐ろしいことをタケルが認めるわけがありません。断固として拒否されてしまうでしょう。そこで、急遽「告知」をすることにしました。障害かどうかこの時点ではわかっていないので告知というのも変なのですが、適当な理由をつくって療育センターに連れ出したとしても、読み書きは大人並みにできる息子のこと、院内の表示やもらうプリントから何が起こっているのか正確に察知してしまうでしょう。私たち親が信頼を損なうだけです。Upload By 寺島ヒロ思った以上にすんなり受け入れてくれて一安心。実際の療育センターでの聞き取り調査や検査にも、飽きることなく頑張って取り組んでくれました。その後、数度の診察や検査を経て、タケルは「アスペルガー症候群にごく近い状態(※現在はASDに統合)」と診断されました。Upload By 寺島ヒロさらに…「診断結果は予想通りだったね。感想?いや別に。体重50キロの人が改めて計って体重50キロですねって言われたようなもんじゃない?」と、さらっと言うのでした。タケルの場合、「障害者」になる悩みとか葛藤はあまり感じていなかったようです。本人とって障害はすでにあるもので、診断がつかなければ消えてなくなるというものではない。診断がつけば福祉の対象にしてもらえて学校生活も配慮されるのだから、診断はついた方がいい。何を悩むことがあろうか?ということなんですね。ASDらしい原理主義的ロジカルシンキングだと思います。しかし、このようにストレートに向き合うことができたのも、タケルの周囲に障害をネガティブに捉える人が少なく、タケル本人を可愛がってくれる人が多くいたからでしょう。Upload By 寺島ヒロ発達障害のことを本人にどう伝えるかは、お子さんの置かれた状況や障害の特性、そしてお子さん本人の性格によって大きく変わるため、一概に言うことはできません。ですが、どういう状況であれ、その子本人を認め、困りごとがあれば一緒に改善しようとしてくれる人が周囲にいれば、きっとなんとかなるんじゃないかなあと思います。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年04月24日子どもの自己肯定感を高めるために、声かけなどのコミュニケーションや家での過ごし方など、子育ての環境を整える工夫をしているご家庭は多いはずです。では、親御さんご自身の自己肯定感はどうでしょう。じつは「親の自己肯定感」こそが、子どもの自己肯定感につながる大きな鍵になるのです。なぜ親の自己肯定感が大事なのか?その理由をくわしく解説していきます。科学的にも証明されている「親の自己肯定感=子どもの自己肯定感」昨今の「自己肯定感」ブームにより、「自己肯定感が低いとよくない」「自己肯定感が高い子どもと自己肯定感が低い子どもの大きな差」といった、不安を煽るような話題が取り上げられることも増えてきました。そのせいで、過度にプレッシャーを感じてしまい、わが子の自己肯定感を上げることばかりに注力する保護者も増加傾向にあるようです。しかし、どんなに「子どもの自己肯定感」にばかり気を配っていても、「親自身の自己肯定感」について真剣に考える機会はあまりないのではないでしょうか。「自己肯定感は親子セットで育むもの」と断言するのは、行動科学専門家の永谷研一氏です。永谷氏によると、「親の自己肯定感の低さが子どもに影響を与えることは、科学的にも証明されている」とのこと。慶應義塾大学医学部小児科教授で医学博士の高橋孝雄氏もまた、「親の考え方やふるまい、習慣などが子どもに影響することから、親の自己肯定感の低さは子どもに連鎖する」と指摘しています。たしかに、「どうせ私なんて……」「きっと失敗するから諦めよう」など、ネガティブな言葉を日々聞かされる環境で育てば、子どもの自己肯定感が低下するのもうなずけます。また、自己肯定感が低い親は、知らず知らずのうちに子どもにとってマイナスの影響を与えることもわかっています。一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会によると、「親の過去の悔しさや挫折を、子どもを使って挽回しようとする」「子どもの将来が親の希望通りに進むようにコントロールする」などのケースが見られるそう。一見すると教育熱心で、子どもの将来のために尽くしているようにも思えますが、それが「過干渉」や「教育虐待」につながってしまう恐れもあるので注意が必要です。「過干渉の親は、世間体を気にしすぎるあまり、『子どもが勉強できないと自分も格好悪い』というような、非常に狭い教育観で子育てをする傾向があります」と苦言を呈しているのは、臨床心理士の芳川玲子氏。このような親は、テストの点数や勉強の進み具合ばかり気にしているため、子どもの内面的な成長や長所に目を向けることがほとんどありません。芳川氏は、「その結果、子どもの自尊感情は育たず、子どもの心はどんどん萎縮していくのです」と言います。これらは、自分の生き方に自信がもてず、それゆえに子どもに「成功した自分」を自己投影してしまうことが原因です。『「いい親」をやめるとラクになる』(青春出版社)著者で医学博士の古荘純一氏は、「敏感な子ほど、全部それ(大人の不安)を受け止めてしまうため、大変なストレスになる」と指摘しています。子育てがつらいのは自己肯定感が低いせいかも……古荘氏によると、自己肯定感の低い親のなかには「何でこんなにつらいのだろう」「この子がいなければ楽なのに」などのネガティブな考えから、子育てが困難になるケースもあるとのこと。子育て心理学協会代表理事の東ちひろ氏も同様に、「自己肯定感が低いまま大人になった場合、子どもの自己肯定感を高めるどころか子育てそのものがつらく感じることがある」と述べています。自己肯定感が高い人は心に余裕があるため、子育て中のハプニングやトラブルに対して柔軟に対応できます。また、ネガティブな情報に振り回されずに、自分のペースで子どもと向き合うことができるのも、自己肯定感の高さゆえでしょう。子育ては決して楽しいことや幸せを感じることばかりではありません。孤独感に押しつぶされそうになったり、自己犠牲をともなったりするものです。そのような状況に置かれると、自己肯定感が低い人は「ちゃんとできないのは自分のせい」と、自責の念にかられてしまうのです。自己肯定感が低いまま親になる人は意外と多い自己肯定感を高めることができないまま大人になってしまうのはなぜでしょう。『子どもの能力を決める0歳から9歳までの育て方』(KADOKAWA)の著者で家庭教育専門家の田宮由美氏は、次のことを原因として挙げています。友人や兄弟と比べられて育ったいつも完璧を求められていた選択肢をあまり与えてもらえなかった話をあまり聴いてもらえなかった共感してもらえなかった つまり、子ども時代に「親に認めてもらえなかった」「親の期待に応えられなかった」という経験が根底にあり、成長後に他者と関わり合うなかでも自己肯定感を高めるきっかけをつかめなかったことが要因となっているのです。「長年かかって形成された自分の価値観や思考を変えることは大変」と田宮氏も述べるように、親になったからといって自動的に自己肯定感が上がることはなく、むしろその根深さに気づかされることも。前出の古荘氏は、現代の子育て世代が幼少期を過ごしてきた時代背景にも関係があると分析しています。現在子育てをしている親の多くは、1970~80年代の高度成長期から安定成長期にかけて子ども時代を過ごした世代です。その後突然のバブル崩壊を経て、日本全体が長い不況に陥る様子を青年期にかけて目の当たりにしています。一生続くと思われた幸せの図式があっという間に崩れ去り、将来の見通しが立たなくなるという不安定な時代を生き抜いてきた世代だからこそ、自分たちの生き方に自信がなく、常に将来に対する不安を感じているのです。自己肯定感が育まれないまま大人になり、親となったいま、わが子のためにも、まずは自分自身の自己肯定感を上げることを目指してみませんか?親の自己肯定感を上げる5つの方法親の自己肯定感を上げるには、どのような方法があるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。1. 夫婦で日常的に「感謝の気持ち」を伝え合う自己肯定感を高める方法として有効なのは、ほめられることです。しかし、大人になるにつれて他者からほめられる場面は確実に減ってきます。そこで、前出の高橋氏は「大人同士は『感謝すること・されること』を意識しましょう」とアドバイス。「いつもおいしいご飯をつくってくれてありがとう」「食器を洗ってくれて助かるよ。ありがとう」など、親が日常的に感謝の気持ちを伝え合うように心がければ、その様子を見た子どもも「感謝すること・されること」の大切さを感じ取り、自己肯定感の土台を築けます。2. 自分に対して「魔法の言葉がけ」をする多くの保護者たちと接するなかで「親の自己肯定感の低さ」を実感したという教育評論家の石田勝紀氏は、「いまの自分を肯定できないのであれば、『楽しむ』という世界へ自分をもっていくようにするといい」と述べています。自己肯定感が低い人ほど、現状の自分を否定し、物事を悲観的に考えてしまいがち。そこで「楽しいね~!」「ワクワクするね~!」という言葉を、自分自身に向けて発してみましょう。「面倒だな、イヤだな」という方向に思考が向いてしまいそうになったとき、「どんなことが起こるんだろう?ワクワクするね~」と多少強引にでも「これから楽しくなる!」と思い込むのがコツです。3. 物事を「できたこと」で評価するようにする前出の永谷氏によると、「自分への評価が『できていないこと』という否定からスタートすると、不安ばかりが増してチャレンジしようという力が湧いてこなくなる」のだそう。反対に、物事を「できたこと」というプラスから見始めると、さらにがんばろうという前向きな気持ちが生まれます。「忙しくて夕食はレトルトのハンバーグにしちゃった……」よりも、「忙しかったけど、スープとサラダは手作り!」と、できたことに目を向けてみましょう。4. 自分時間をつくる忙しい日々を送っている人ほど、心に余裕がなくなり、マイナスの感情にとらわれてしまいがち。『自己肯定感を育てるたった1つの習慣』(青春出版社)著者で心理カウンセラーの植西聰氏は、「自己肯定感が低い人は『自分を大切にする』ということが苦手」だと指摘します。そこでおすすめなのは、すべての情報をシャットアウトする時間を作ること。1日に10分だけでもゆったりとした気持ちで瞑想したり、深い呼吸を意識して気持ちを整える習慣をつけたりするだけで、プラスの感情を増やすことができます。自分を大切にするためにも、まずは自分と向き合う時間をつくりましょう。5. やりがいや熱中できることを見つけるペンシルバニア大学ウォートンスクール名誉実務教授のスチュワート D.フリードマン氏の研究によると、「親が自分の仕事にやりがいを感じていたり、自分自身をケアする時間をとったりすることは、子どもの感情面に良い影響を与える」とのこと。子どもの情緒面においても、親の自己肯定感を高めるためにも、やりがいや熱中できることを見つけたいものです。「何か新しいことに挑戦したい!」という熱意が湧いてきたら、気軽にチャンレンジできるものから試してみるといいでしょう。たとえば、子育て中のママに嬉しい短期集中型のスクールやレッスンなどがおすすめです。今後のキャリアのためにも、Webデザインを学びたい方には、「Fammママwebデザイナースクール」がぴったり。「1ヶ月で完結」というカリキュラムなので、集中して取り組めます。さらに、シッター常駐のキッズスペースや、急な欠席に対応してくれるオンライン講義など、小さい子をもつ母親向けのサポート体制も嬉しいですね。「せっかくだから英語を学習したいけれど、何から始めればいいかわからない」とお困りの方には、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」の「1 week ENGLISH COMPANY」がおすすめです。このプログラムは、言語習得や英語教育に関する豊富な知見をもった「英語のプロ」が、あなたの課題やつまずきを的確に発見し、「いまどんな勉強やトレーニングをすべきか」を教えてくれるというもの。「1週間・2回のみの受講」という超短期間で、効率よく英語学習を進めていくためのヒントが見つかります。自己肯定感を高めたい人におすすめの本最後に、親の自己肯定感を高めるのに参考になる本をご紹介します。◆『お母さんの自己肯定感を高める本』コロンビア大学で修士号を取得した心理学者による「母親が幸せになる14の行動習慣」を紹介している本著。NYで流行しているポジティブ心理学をベースに、12項目のバランスチェックシートや14のワークなど、論理的かつ具体的に「幸せになるための方法」を教えてくれます。◆『子どもの将来は「親」の自己肯定感で決まる』ドキッとするようなタイトルですが、中身はとても読みやすい小説形式になっています。「自己肯定感」をテーマに執筆活動を行なっている人気カウンセラーによる本著は、読み進めるうちに「子どもに対する罪悪感」がスーッと消えて、親子で自己肯定感を育むための気づきが生まれる不思議な感覚を得られます。◆『「自己肯定感低めの人」のための本』無意識の心のクセ=「心のノイズ」に着目した、自己肯定感を上げるための具体的な方法を示した一冊。これまで8,000人の心のクセを直してきた人気カウンセラーが、そのメソッドをぎゅっと詰め込んだ本著では、自分のなかに潜む「無意識のノイズ」に気づくことで不安を解消する方法が紹介されています。***2017年に逝去された児童精神科医の佐々木正美氏は、「愛されてきた人しか人を愛することはできないように、自分の言うことをよく聞いてもらってきた経験を持たない親は、幼い子どもの言うことをゆっくり聞いてあげることはできないのです」という言葉を残しています。親自身が誰かに受け入れてもらっていること、そしてありのままの自分を認めてあげることこそが、子どもの自己肯定感を伸ばす土台になるのです。(参考)AERA with Kids 特別編集,『自己肯定感を高める本』, 朝日新聞出版.たまひよ|親の自己肯定感が低いと、子どもに影響が、まず親から高めることを【小児科医】一般社団法人 日本セルフエスティーム普及協会|親の自己肯定感の低さが、子どもへの過度の期待を引き起こす学びの場.com|芳川玲子 子どもの折れやすい心を語る。古荘純一(2009),『日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか』, 光文社新書.東ちひろ(2019),『子育てが上手くいく!「ママのココロ貯金」のすすめ 親と子の自己肯定感を上げる33のポイント』, メイツ出版.東洋経済オンライン|「自分はダメ親」と悩む人を変える“魔法の言葉”ダイヤモンドオンライン|コロナ禍を乗り切るために「自己肯定感」を上げる習慣とは?Harvard Business Review|親のキャリアは子どもの成長にどんな影響を与えるかFamm|1ヶ月で完結 子どもと通えるママ専用WebデザイナースクールENGLISH COMPANY|1week ENGLISH COMPANY佐々木正美(2021),『子どもが喜ぶことだけすればいい』, ポプラ社.
2021年03月31日ママ友と話しているときに、「あ、今マウンティングされてる」と思ったことがある方は多いと思います。マウンティングされるといい気はしないもの。マインティングをする人の心理とはどのようなものなのでしょうか。 マウンティングとは?そもそものマウンティングは、ゴリラやチンパンジーなどが優位に立っていることを示すために相手の後ろからまたがる行動を指すことばです。これを、他人に対して自分の優位性を誇示するような振る舞いをしている人間に当てはめたのが、現在よく使用されている「マウンティング」です。 マウンティングにもいろいろあり、学歴や年収などのステイタスを誇示する場合、高級時計を自慢したり高級店に行ったことを吹聴し金銭的に豊かなことをアピールする場合、知識をアピールする場合などがあります。 恵まているように見える人ほどマウンティングをする?お金持ちや良い企業に勤めている人ほど、マウンティングする人が多いように感じている人も多いのではないでしょうか。 ここで、マウンティングをする人について、「マズローの欲求5段階説」になぞって考えてみます。 「マズローの欲求5段階説」とは、人間の欲求は「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」の5段階のピラミッドのように構成されているとする心理学理論です。 「生理的欲求」が満たされると「安全の欲求」→「社会的欲求」→「承認欲求」→「自己実現の欲求」と次の段階の欲求に向かうとされています。人に認められたいという「承認欲求」は第4段階になります。すでに、「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」が満たされている人がもつ欲求と考えられるのです。 現在の研究ではそれぞれの欲求が同時進行で行われていると考えられていますが、とはいえ、マウンティングするには、ある程度、生理的欲求(食事・睡眠など)、安全の欲求、社会的欲求(家族や集団などに所属する欲求)などの低次の欲求が満たされていないと、承認欲求が湧きづらいと考えられます。 恵まれているように見える人ほど、低次の欲求が満たされていることが多いため、マウンティングしやすい状況にあるといえるのではないでしょうか。 自己肯定感との関係承認欲求にも、他人への評価が重要となる「低位の承認欲求」と自分で自分を承認する「高位の承認欲求」があるとされます。自己肯定感が低く人と比較することでしか自分を肯定することができないと、「低位の承認欲求」が働きマウンティングしやすい人となることが多いでしょう。 人は残念ながら、その人が自分自身で変わろうと思わないかぎり、他人が変えることができません。マウンティングする人を変えることはほぼ不可能です。マウントされて嫌だなと感じたら、なるべく近づかないか、反論せずに「そうなのね」と受け流すようにしましょう。 また一方で、承認欲求は誰にでもあるものです。自分自身が他人対してマウンティングしている可能性も否定できません。マウンティングされて嫌だと感じたら、自分について振り返ってみる良い機会と捉えてみるのもおすすめです。 著者:ライター メンタル心理カウンセラー・上級心理カウンセラー カトウ ヒロコメンタル心理カウンセラー・上級心理カウンセラー。また、フリーのWEBプロデューサー&ライターとして活動中。
2021年03月27日いじめが続いて気づいた「これは私に問題がある」東京・目黒に生まれたコッピーさんは、研究者の父と専業主婦の母、それに姉の4人家族。「外交的だった」小学生の頃から、生きづらさを抱えていたという。「小4ぐらいのときに、お腹が痛くなることが増えました。今思えば仮病のようなもので、保健室によく行っていました。無理矢理休もうとしていたんですよね。友達もいたし、なんなら中心的な存在で楽しかったんですけど、今思えばその空間がつらかったというか……。朝から夕方まで椅子に座ってじっとしているっていうのがつらかったんじゃないのかなって。たぶん教室にいられなかったのかな」(コッピーさん)Upload By 桑山 知之女性のASDは男性よりも分かりづらいという。コッピーさんはその正義感の強さから、廊下を走る上級生などにも物怖じせず注意していた。「今考えれば、ASD特性も出ていたのかな」と当時を振り返る。さらに都内にある中高一貫の私立女子校に進学すると、いじめの標的にされてしまう。「中1の春からいじめに遭いました。仲良かったグループから仲間外れにされることがあって。なんか話しかけても無視されたり、目の前でヒソヒソ言われたり。仲良くなった別の子もいじめの主犯格で、その子にもガッツリいじめられました。廊下ですれ違うと舌打ちされたり、ブスって言われたりしました。それを相談してた相手も実はいじめっ子とつるんでいて、『裏でアイツこんなこと言ってたよ』って面白がっていたみたいで……それを最終的に知って人間不信になりました」(コッピーさん)Upload By 桑山 知之その後も、グループに所属しては仲間外れにされることがあった。「これはたまたま失敗したのではなく、私に問題がある」――。そう気づいたコッピーさんは、そこからどうしたら人間関係をうまく結べるのかを考えるようになった。悪目立ちをしないように、無難に会話をやり過ごすといった“暗黙の了解”を学び始めたのだった。マルチタスクができない夢のために受験へ中高一貫校だったが、高校2年の頃に週に4日通えばOKだという単位制の私立高校に編入した。ADHDの症状として多くみられる過眠症はコッピーさんも例外ではなかったが、授業のコマも好きに組むことができることで朝もゆっくり過ごせるようになった。クラスメイトは「ギャルみたいな子」がいて怖かったものの、コッピーさんも髪を染めるなどして適応。そして、アルバイトをやってみたいと思い立つ。Upload By 桑山 知之「コンビニバイトが簡単だって聞いたからやっていたんですけど、意外と覚えることが多くて、マルチタスクなんですよ。それが致命的にできなかったんですよね。年上のお姉さんとかにすごく怒られて。品出し(商品を陳列すること)している最中に列ができちゃっていて、だけどまったく気づかなくて。ハッとして走っていくんですけど、そのあとめっちゃ怒られる。あとお金の勘定ミスがすごくて、マイナス5000円とか出しちゃうんですよ。けっこう深刻に悩んでいたんですけど、フリーターの上の人に自腹を促されて、泣く泣く支払ったりしていました」(コッピーさん)その後、制服がかわいいということでカフェでのバイトに切り替えたが、結局マルチタスクをこなさなければならない状況は変わらなかった。そんな17歳という悩み多き頃、気になった邦画を片っ端からレンタルしていたとき、とある映画に出会う。舞台はタイ。臓器移植や人身売買などを描いた『闇の子供たち』(監督:阪本順治、原作:梁石日)だ。「子どもたちが人身売買されている現状が描かれていて、売春のシーンもあったり、めちゃくちゃ衝撃的なんですね。私は人間関係とかしょうもないこととかで悩んでいるけれど、こんな壮絶な状況の人がいるんだって衝撃を受けました。私の悩みは贅沢な悩みだったんだなって。今思えばそれぞれの立場があってそれぞれの悩みがあるんだって思うんですけど。当時はすごく罪悪感に近いものを感じたんですね。普通に暮らしていることに不満を持って、途上国支援がしたいと思いました」(コッピーさん)国際協力や途上国支援ができるような仕事に就きたいと志すも、それには大学を出る必要があると感じたコッピーさんは、死ぬ気で受験勉強に励んだ。友達付き合いも一切やめ、インターネットはすべて遮断。集中力などとっくに切れているのに、1日に十何時間も机にへばりついていた。精神的に病みかけながら臨んだ受験当日、周囲の他の受験生が気になった。「第一志望の受験の日に覚えているのは、近くの人が貧乏揺すりをしていたんですよ。それがずっと気になっちゃって。あと、ページをペラペラめくる音が気になったり、試験官がどこにいるかとか、些細な刺激が気になって、ずっと集中できませんでした」(コッピーさん)Upload By 桑山 知之自分と向き合うということ行き着いた「マイノリティの尊重」カンボジアやミャンマーなど、東南アジア諸国を実際に自分の目で見た。しかし、“この人生を歩んできた私”がそこで働く必然性をなかなか見出せなかった。大学のカリキュラムに加え、児童養護施設でのボランティアや、雑誌『ビッグイシュー』のインターンシップにも自主的に参加した。国内の貧困問題を学んだ末、「貧困」と「人間関係」には密接な関わりがあると感じた。不登校児を専門に対象とする『東京家学』で家庭教師も経験した。こうして“自分が関わるべき必然性”を追求していった結果、日本での社会問題に目を向けること、さらに当事者と研究者両方の視点での発達心理学にたどり着いた。Upload By 桑山 知之「心理学で『アタッチメント理論』っていうものがあって。簡単に言うと、初期にお母さんと言うか主な養育者との間に築いた関係性は、生涯に渡って人間関係に応用されていくよって言うこと。それぐらい1番最初の人間関係って大事だと。家庭環境でつまずくと、その後の人生にまで影響があるって衝撃だったんですよね。家庭環境のように、自分にはどうにもできないのに人生に影響してしまう要因がたくさんあるのに、世の中ではほとんど考慮されていないことに大きな違和感を覚えたんです。それって貧困とか障害に関してもそうですが、『みんな頑張っているんだからあなたも文句言わずに頑張れ』という世の中のスタンスに、それはおかしいぞって思うようになって、心理学的観点から自分の障害についても向き合っていきたいと思うようになりました」(コッピーさん)Upload By 桑山 知之修士論文のテーマは「成人期のADHD者の質的研究」。レジリエンス(逆境から適応に至る現象)について、ADHDの人はどういうプロセスで適応するのかを当事者へのインタビューを通してまとめ上げた。現在、コッピーさんは東京大学大学院で心理学博士課程の1年。一般就労をしているADHDのある人に適応状態や働き方をヒアリングし、論文にまとめている。「社会に出たADHDのある人ってどうやって生活しているんだろう?というのがすごくあったんですね。でも、スティグマ(負のレッテル)のせいで公表しながら生活している人にまったく出会えない状態だったので、じゃあみんなコソコソどうやって生活しているんだ?というのが、疑問のスタートでした。正直怖さもあって向き合ってこなかった部分で、感情移入しすぎてしまわないかと思ったんです。なんかもう世の中ひどい、辛いみたいな気持ちになるかなって避けていたんですけど、それをテーマにすることで発達障害に関する知識が深まりました。私自身、ASDだったかもしれない、かつてその傾向が強く出ていたかもしれないってことも、そこまで深くやらないとわからないことだったと思うので、結果的にたどり着いてよかったなと思います」(コッピーさん)Upload By 桑山 知之「しっくりきた」両親マイノリティ尊重する働きかけをコッピーさんは発達障害について研究を続ける傍ら、「ブラインド当事者会」と題しTwitter上で当事者同士が情報を交換するハブになるなど、少しでも生きやすい世の中になるように活動している。「多様な立場の人のことをインプットする。自分が想像できないぐらい違う感じ方の人がいて、それも網羅できないぐらいいるんです。発達障害に限らず、マイノリティを尊重することであったり、想像力を働かせる方向に、そういうことができる人を育てるような働きかけができたらいいなって思っています」(コッピーさん)Upload By 桑山 知之コッピーさんが自らを障害者だと名乗ることについて、「両親はきっと当初、自分たちの子育てが否定されたように感じ、抵抗があったのではないか」と言う。しかし、時間をかけて説明した。過去のコッピーさんの行動が発達障害の特性として体系的に説明されていくにつれ、「しっくりきている」のが目に見えてわかった。今となっては両親とも、コッピーさんの取り組みの社会的意義を理解した上で応援してくれていると言う。将来的には、心理学の授業を通じてあらゆる社会問題を考えていくような授業ができるようになりたいと語るコッピーさん。多様な立場の人のことをインプットできる授業を通して、自分が想像できないくらい違う感じ方をする人達が網羅できない程いるんだという感覚を持つことで、相手のことを決めつけずに思いやりを持って接することができるような人が増えて欲しいと願っているそうだ。Upload By 桑山 知之平成元年愛知県名古屋市生まれ。慶應義塾大学経済学部在学中からフリーライターとして活動。2013年に東海テレビ入社後、東京支社営業部を経て、報道部で記者/ディレクター。2018年から公共キャンペーンのプロデューサーとして「いま、テレビの現場から。」や「見えない障害と生きる。」、「この距離を忘れない。」といったドキュメンタリーCMを制作。主な受賞歴は、日本民間放送連盟賞CM部門最優秀賞、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSゴールド、JAA広告賞 消費者が選んだ広告コンクール経済産業大臣賞、ギャラクシー賞CM部門優秀賞、広告電通賞SDGs特別賞など。取材・文:桑山知之取材協力:若者支援ネットワーク研究会in東海
2021年03月09日勝ったり負けたりが当たり前の、普通の少年団。最近は楽しませることが大事だとよく目にするので、自分なりにメニューを組んで実施しており、子どもたちには好評だけど、保護者から「もっと厳しくしてほしい」と......。厳しくされている方が「指導されている」感が出るからだと思うけど、どうしたら楽しみながら成長することを理解いただけるのか。どんな伝え方がいい?とのご相談。保護者への伝え方など、指導者の悩みですよね。これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんがご自身が実践していることを踏まえ、保護者の皆さんへの伝え方をアドバイスします。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<U-8世代にも効率よく理解させる練習メニューが知りたい!いい方法はある?<お父さんコーチからの質問>池上さんこんにちは。私は3年前から地域のスポーツ少年団で指導をしています。地方在住なので情報が都市部に比べると遅かったり少なかったりするのは否めませんが、自分なりに本やネットなども使って勉強しています。指導しているチームはもともと県大会に毎回進出するようなレベルではなく、勝ったり負けたりが当たり前なので、歴代指導者もいわゆる厳しい指導はしておらず、サッカーの基礎を教え、練習最後に行う試合や大会などを通して学んでいくという感じです。よくある地方のチームだと思うのですが、最新のトレンドを抑えたトレーニングや、今現在「良い」とされている指導、チーム運営ができているかというと自信はありません。最近では、楽しませることが何より大事だということをよく目にするので、自分なりにネットや本などで情報を収集し実践しています。子どもたちには楽しんでもらえているようですが、保護者の皆さんに「楽しいのもいいけど、もっと厳しく指導してほしい」と言われます。親御さんたちも楽しむことが大事だと言われていることはわかっているようですが、それが結果や成長につながるかという点で完全に腹落ちしていないようなのです。分かりやすく結果が出ないと親が納得しないということと、厳しく指導されているのが目に見えるほうが「指導されている感」があって満足するようです。厳しい指導の部活などを経験している世代だからこそなのはわかりますが、そんな保護者を納得させるような伝え方や、楽しみながら上手くなることが伝わるメニューの例などがあれば教えてください。<池上さんのアドバイス>ご相談、ありがとうございます。今の親御さんたち自身が部活動などで厳しい指導を経験しているため、厳しく指導されているほうが「指導されている感」があって満足する。ご相談者様がおっしゃる通りだと思います。これは保護者のみならず指導者も同様です。皆さん、「スポーツは勝負事なのだから勝つチームがいい」「強いチームをつくるのが、いいコーチ」という評価になっています。■誰かと比べて上か下かではなく、以前よりどれだけ伸びたかを見てあげよう一方で、教育の現場は一足先に変わり始めています。例えば、子どもへの評価の考え方のひとつが「相対評価」です。誰かと比べて上か下か、そこを見ます。そうなると、わが子が、勉強にしろ、スポーツにしろ、属するグループで一番にならないと満足しません。対岸にあるのが「絶対評価」です。子どもが、以前よりどれだけ伸びたか。サッカーであれば、同じ大会で去年は1回戦負けだったのに、今年は1勝して2回戦に進んだ。それはひとつの成長としてとらえることができます。そのように「絶対評価」に慣れてくると、スポーツや少年サッカーの姿は変わってくるかもしれません。自分たちのチームがどれくらい伸びたか。コーチはそのことをよく知っているはずです。以前はあんな練習しかできなかったけど、いまはこんな練習ができるようになった。ここをもう少し鍛えて、こう変われば、もっとうまくなる――そんなイメージはできているはずです。それは、試合に勝つか負けるかではなく、個々とチーム全体が以前より上手くなる。前の年より進化する。そういうとらえ方の説明を、指導者が保護者に対し具体的な例を挙げて話せるようになるとよいかと思います。■コーチが子どもたちに話す姿を保護者にも見てもらう私は、私自身のサッカー観や指導観を保護者に伝えるために、練習や試合で子どもたちに話す姿を保護者にも見てもらいます。コーチ側がどんなことを大切にしているのか。そのことをどう伝えているのか。話を聴いている子どもたちは、そのことを理解しているのか。そういったことを親御さんに見てもらうのです。また、保護者とも可能な限り話します。私が最近新たに始めたチームで、フニーニョ(※ドイツで発祥したミニサッカー。ミニゴールを4つ使い3対3で行うミニゲーム。近年ドイツサッカー連盟が9歳以下の試合に導入を推奨した)の交流会を開催しました。試合のあと、私は保護者にこう言いました。「真剣に守っているように見えないですね。皆さん、どうですか?」すると皆さん、一斉にうなずいていらっしゃいました。「そうですね。次はもっとしっかり追いかけるようになるといいですね」と話しました。そんなふうに、次のステップが何なのかをしっかり親御さんにも伝えます。それを続けていくと、親御さんたちの姿勢は相当変わります。■楽しむことがモチベーションにつながる、という解説もしてあげるそれと同時に、サッカーを楽しむことが子どもたちのモチベーションにつながるという解説を、保護者にしてあげたほうがいいでしょう。昔から「好きこそものの上手なれ」と言われますね。サッカーが大好きだからこそ、真剣にやる。そうすることで、技術は身につきます。そのことは、スポーツ心理学の学びの中でも証明されています。とはいえ、物事に対する子どものモチベーション(動機付け)は、最初の段階では外発的なものが必要です。楽しくなるために、熱中できるために、コーチがどんな活動環境を提供してあげられるか。そこが問題です。楽しいからこそ真剣に取り組むのですが、そのうち気づけば誰も笑っていません。集中します。■「楽しい」はワイワイキャーキャーすることではない。真剣に楽しむことを教えて「子どもはサッカーを楽しみましょう」そんな価値観が広まってきたのは悪いわけではありませんが、私からすると「楽しい」がまだ甘いように感じます。ワイワイ、キャーキャーと歓声を上げるのが楽しい、というレベルで終わってないでしょうか?さらにもっと楽しくなると、笑うことはなくなります。まさしく集中し、ゾーンに入る。練習の中で白い歯を見せて笑っている子がいなくなります。そこをぜひ目指してほしいのです。徐々に真剣になっていく。そんな空気を作るために、常に勝ち負けのあるメニューを考え、子どもたちと対話し、要求を高めていきます。そこを、「笑っている子をなくす」「真剣に取り組む」といった、姿勢というか「かたち」から入ってしまうと、態度への注意が増えます。集中しよう。真剣にやろう。最後まで頑張ろう――そう指示命令されれば、子どもは真剣にやろうとするでしょう。でも、サッカーも、他のスポーツも、そうやって「真剣にやれ」と叱ってやらせるものではありません。そのような管理され作られた空気は長く続きませんし、委縮させられた子どもは自由にサッカーを考えられなくなります。池上正さんの指導を動画で見る>>次ページ:サッカーが俄然楽しくなるきっかけをつくる■「次は、今日負けたところに勝とう」と言ってはいけない理由(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)選手が勝ちたいと思うのは当然です。だから、試合に勝ったら「勝ってよかったね」でいい。それなのに大人たちが「次はあそこに勝って優勝しようぜ」と、次の「勝利」を目標に掲げていないでしょうか?負けて悔しい、でいい。そのあとに「次は、今日負けたところに勝とう」と大人は言ってははいけません。負けたら「残念だったね。また頑張ろう。うまくなろうね」でいいのです。そこで「次は勝とう、相手にリベンジしよう、とは私は言いませんよ」と保護者に説明してもいいですね。コーチがあくまでも「絶対評価」で子どもたちをとらえていることを伝えてください。私が最近地元にチームを作ったのは、絶対評価で子どもたちを育てていくとどうなるのか。子どもたちが大きく成長することを証明したいと考えているからです。ぜひ、そんなふうに考えて、保護者とたくさん話してください。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2021年03月05日食欲がない、疲れがとれない、眠れない、心のもやもやがとれないといった症状が出ていたとしても、風邪などのいわゆる病気と言えるような症状がないため、体に無理がきていることに気づかずに、うつ状態になってしまう人はたくさんいます。 うつになることを避けるために、早めに専門家に診てもらうのがおすすめです。しかし、病状がはっきりしないため、どこで診てもらったらよいかわからない方も多いかと思います。 心療内科・精神科・カウンセリングの違いとは?「心の病ではないか?」と疑ったときに思い浮かぶのが、心療内科・精神科・カウンセリングではないでしょうか。まず心療内科と精神科の大きな違いは、体に症状が現れているかいないかが判断材料となります。 心療内科動悸がする、食欲がない、眠れないなどの症状があり内科のお医者さんに行って診てもらったにも関わらず、異常がみられないと診断されるような場合が対象となります。 精神科うつ病、双極性障害、統合失調症などの精神疾患が表れている場合が対象となります。 いずれも、国家資格である医師の資格をもっている先生に診てもらうことになり、医師は治療薬を処方する薬物治療が可能です。一方、カンセリングをおこなうカウンセラーは医者ではないため、薬の処方はおこなえません。 カウンセリングとは?患者様がカウンセラーや医師との面談や対話を通じて心理的な問題を解消していく治療法です。心療内科や精神科の治療のひとつとしておこなわれます。カウンセラーが独立してカウンセリングのみをおこなっている場合も多くあります。 カウンセリングは、カウンセラーや医師が問題に対して回答を出すものではなく、あくまで心理学に基づいて、どうすればよいかの回答を患者様自身で導き出すための手助けをするのが目的です。患者様が出そうとする回答に対し、基本的に、カウンセラーや医師は否定や提案をしないことになっています。 どんなときに行けばいいの?風邪などの内科的な診断では異常がないにも関わらず、心が晴れない、眠れない、疲れがとれない、吐き気などが収まらないなどの症状が続き、つらいと感じているのであれば診てもらうことをおすすめします。 心療内科・精神科・カウンセリングのどこに行けばよいか迷うのであれば、まずは心療内科に行ってみてください。心療内科でカウンセリングや薬物療法を受けたほうがいいのか、精神科で診てもらったほうがいいのか診断してくれるはずです。 いきなり病院へ行くということにハードルを感じてしまったり、話を聞いてもらうことで少しでも落ち着きそうであればカウンセラーを訪ねてみましょう。うつは一度なってしまうと、治りにくい場合が多く、最悪、命を落とすことにもつながります。つらいと少しでも感じたら、心療内科やカウンセリングに行ってみてください。 著者:ライター メンタル心理カウンセラー・上級心理カウンセラー カトウ ヒロコメンタル心理カウンセラー・上級心理カウンセラー。また、フリーのWEBプロデューサー&ライターとして活動中。
2021年03月04日子どもの幸せ感度に影響を与える要素のひとつが、「親の過干渉」ということをご存じですか。『世界標準の子育て』著者・船津徹氏は、「親の過干渉が子どもの幸福度を下げる」と警鐘を鳴らしています。2020年9月にユニセフが発表した『レポートカード16-子どもたちに影響する世界:先進国の子どもの幸福度を形作るものは何か』。この先進・新興国38ヶ国に住む子どもたちへの調査では、日本の子どもの「精神的幸福度」はワースト2位でした。恵まれた環境にありながら、幸せを感じられないというのは深刻な問題です。もちろん、幸福度を下げる要因は過干渉だけではないでしょう。しかし、子どもに「自分らしい人生を切り開く力」を授けるためにも、過干渉はやめたほうがよさそうです。過干渉育児にならないように「親が本当はやらなくていいこと」を、いま一度見直してみましょう。親が “本当はやらなくていい” 7つのこと1. 子どもに早くから読み書きを教えなくていい多数の著書がある教育学者・齋藤孝氏(明治大学文学部教授)によると、「7歳までは神のうちなので、それまでに生きる力をしっかりと育むことが重要」なのだそう。「親子で共有する時間」を何よりも大切にするべきで、心が十分に育たないうちに詰め込む早期教育はよくないとのこと。読み書きを教えるよりも、絵本の読み聞かせによる情操教育のほうがより大切だと話しています。また、「塾ソムリエ」として35年以上子どもを指導している中学受験情報局主任相談員・西村則康氏も、「子どもの準備ができていない時期の早期英才教育は、ほとんど役にたたない」と述べています。その理由は、早期教育が人間の脳の成長過程に沿っていないから。早く〇〇できたほうがいいだろうと親は考えがちですが、その考えこそが過干渉になっています。2. 親は子どもに何でも教えなくてもいい子どもは「これは何?」「どうして?」など、知らないことは何でも聞いてくるものです。そのとき大人は、その質問に正しく答えなければいけないと思いがち。でも、大人だって知らないことはありますよね。そんなときは、「お父さん(お母さん)もそれは知らないなあ。一緒に調べてみよう」と、子どもの好奇心に寄り添い、一緒に学ぶ時間を共有しましょう。親が調べたことを教えるよりも、何倍も子どもの成長の糧となるのですから。アメリカの生物学者で、子どもの感性について綴られた名著『センス・オブ・ワンダー』の著者・レイチェル・カーソン氏も、「『知る』ことは『感じる』ことの半分も重要ではない」と語っています。大人も心を開いて、子どもとともに感じ、学ぶ姿勢をとることこそ正しい行動と言えるでしょう。3. しつけ期が過ぎたら、親はしつけを手放していい心理学者でスクールカウンセラーでもある諸富祥彦氏(明治大学文学部教授)は、小学3年生くらいまでの「しつけ期」が過ぎたら、できるだけ子どもの行動に口出しをしないようにするべきだと話しています。なぜなら、それ以降は子どもの個性を育てる時期に入るから。「こうしなさい」「これはやめなさい」と言われたら、子どもはどうしても親の指示に引っ張られてしまいます。人間の土台がある程度固まったあとの成長期には、親の干渉は邪魔にさえなるのです。よほどのことがない限りは、口出しはしないようにしましょう。必要なときのみサポート役に徹するという、子育ての方向転換をする時期は10歳頃なのです。4. 「家庭内ルール」は親が決めなくていい家庭での過ごし方について、親があれやこれや指示したり、小言を言ったりして、親主導で進めてしまいがちではありませんか?「全米最優秀女子高生」の母として有名になり、現在はライフコーチとして活躍中のボーク重子氏は、子どもの自己肯定感や自主性の大切さを力説しています。そして、それらを育むためのひとつの方法として、家庭内ルールは親の指示ではなく、「子ども自身で決めさせる」ことをすすめているのです。ルールの目的は「家族の幸せ」。年齢に応じて、お手伝いや勉強のことなど、子どもが自分ができると思うことは責任をもってやってもらいましょう。しかし、実際にやってみたら、何か違うと思うことや、問題が生じることもあるはず。そんなときは、子ども自身がルールを変更してもOK。物事の改善を重ねて、思考のしなやかさを鍛える絶好のチャンスですよ。5. 親は「子どもファースト」でなくていい子どもの学校、習い事など、親の生活は子ども中心になりがち。予定が詰まっているときなどは、子どもの一挙手一投足に口を出したり、次の行動を指示したりしている親御さんは多いのではないでしょうか。ときには、子どもから離れることも必要です。もし、子どもが学校や習い事に遅刻して恥ずかしい思いをしても、それは子どもの責任です。教育評論家の尾木直樹氏は、「過干渉をやめる手段」として、子どもから意識をほかに向けることをすすめています。「なかなか宿題をしない子どもを目の端に入れながらも、自分の仕事をする」「ときどきは自分の趣味で出かける」など、親が子どもと少し距離をとることで、子どもの自主性は育まれ、親のストレスは減るという、双方によい効果が生まれるとのこと。子どもから目を離す勇気が、子どもを成長させるのです。6. 夫婦の意見はそろえなくていい子育て中は、子どもの教育方針や学校の選択など、夫婦で意見がぶつかることもあるでしょう。そんなときでも、「無理して教育方針を一致させなくてもよい」と言うのは、教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏です。その理由は、夫婦の意見に幅があったほうが、その幅のぶんだけ子どもの個性が育つから。たとえば、「今回はお母さんの意見に賛成。英検受けるよ」「英検よりもサッカーを頑張りたいから、今回はお父さんの意見に賛成だな」といった具合に、子どもは自由に未来を選択することができます。広い視野で子どもの将来を考えてあげることが、過干渉を防ぐひとつの手段ともなりそうです。7. 「過保護」はやめなくてもいい児童精神科医として40年以上も多くの親御さんの子育てを見てきた故・佐々木正美氏は、「過保護」と「過干渉」は違うと言いきります。一番大きな違いは、行動に子どもの意思や希望が反映されているかどうか。「過干渉」は、子どもの気持ちにかかわらず、親がなんでも「やりなさい」とお膳立てしてしまい、子どもの自主性を置き去りにしてしまうこと。一方の「過保護」は、子どもがやりたいことがあれば、背中を押したり、サポートしたりすることです。これは、子どもの意思を尊重し、意欲を応援することですので、悪い影響はないと言います。「子どものために」と思う気持ちは同じでも、そこに子どもの心や意欲が介在しているかどうかを、常に意識することがとても大切です。子どもとの接し方に迷ったら読みたいおすすめの本「過干渉かもしれない……でもどうすればいいの?」と、子どもへの接し方で迷ったとき、心をシンプルにしたり、大切なことを再確認させてくれたり、視野を広げてくれたりする、おすすめの本3冊をご紹介します。それぞれ、違った視点から「果たすべき親の役割」について書かれています。過干渉で子どもを縛りつけてしまわないように、ぜひ読んでみてください。■『センス・オブ・ワンダー』作者である、海洋生物学者のレイチェル・カーソン氏が、甥のロジャーとの自然を探求した体験を通して、感受性の大切さを語った本です。タイトルの「センス・オブ・ワンダー」とは、「美しいもの、未知なもの、神秘的なものに目を見はる感性」。幼児期には、親子一緒に自然を体験し、体感することが何よりも尊く、大切だと、静かに、しかし毅然と語りかけます。自然といっても、田舎でなければいけないというわけではありません。都会にも “生命” は溢れています。子ども時代に感受性を磨くことは、将来の好奇心や意欲につながり、学びを深め、将来を切り開く力となるでしょう。50年以上も前の本ですが、「子育てにおいて本当に大切なものはなんなのか」、ときどき手にとって再確認したくなるバイブル的名著です。■『この子はこの子のままでいいと思える本』親と子ども、双方の心に寄り添う多くの温かい名言を残した児童精神科医の故佐々木正美氏。その佐々木氏に寄せられた子育て相談をまとめた1冊です。「また叱りすぎてしまった……」など、親ならば誰でも抱く悩みそれぞれに、丁寧に対応しています。語りかけるようにつづられた具体的なアドバイスは、親のがんじがらめになっている気持ちを優しく解いてくれます。佐々木先生は、「 “期待” という親の愛情は、子どもにとっては自分を否定されたに等しい」と指摘。 “期待” は過干渉を生む元凶ともなります。子育ては迷いと悩みの連続ですよね。自分の子育てに自信がもてないとき、佐々木氏の言葉が染み入ります。子どもを幸せにするのなんてとても簡単なことですよ。親が笑顔なら子どもはそれだけで幸せなのです。自分が親を幸せにしたと思って自信たっぷりに育っていくのです。(引用元:佐々木正美(2020), 『この子はこの子のままでいいと思える本』, 主婦の友社.)■『世界基準の子育て』世界の教育を紹介し、日本の教育を見つめ直す1冊。日米両国で長年教育に携わってきた著者ならではの視点で、日本の子育ての問題点を指摘します。著者・船津氏が挙げる「世界標準の子育ての条件」は以下の3つ。困難に負けない「自信」人生を自分で決めていくための「考える力」人に愛される「コミュニケーション力」日本の親がやりがちな過干渉は、このなかでも特に重要な「自信」を子どもから奪うとのこと。勉強ができるだけではなく、自分らしい人生を逞しく生き抜く力をわが子が得るために、親は何をしてあげたらよいのか……。子どもの年齢ごとに、わかりやすく、具体的に語られています。 “子育ての軸” がぶれているなと感じるときこそ、本書を手に取ってみてください。***親が必要以上に指図しなくても、子どもは自ら育つ生命力をもっています。その「生きる力」を信じてあげることからスタートして、目指すべきは、目先の小さな目標ではなく、「幸せな人生」という大きな場所であることを忘れずにいたいものですね。(参考)Newsweek|親の過干渉が子供の幸福感を下げるMind 子どもの心を育てるために|過保護と過干渉 佐々木正美NHK|過保護やめたいけれど…unicef|ユニセフ報告書「レポートカード16」先進国の子どもの幸福度をランキング 日本の子どもに関する結果FQ JAPAN男の育児バイブル|子供の才能を伸ばせる親、潰してしまう親日経DUAL|子育て・教育|頭のいい子の育て方|早期英才教育のほとんどは間違っているSTUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|いちばんのしつけとは、子どもに〇〇をみせること。親はそんなに頑張らなくていい!STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「ルールを守れる子ども」はこうして育つ。親が子に与えるべき大事な“時間”STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「過干渉」育児が招く悲しい結果。“見守るだけでは物足りない”親が危険なワケ船津徹(2017),『世界標準の子育て』, ダイヤモンド社.佐々木正美(2020),『この子はこの子のままでいいと思える本』, 主婦の友社.レイチェル・カーソン 著, 上遠恵子 訳(1996),『センス・オブ・ワンダー』, 新潮社.齋藤孝(2020),『1日15分の読み聞かせが本当に頭のいい子を育てる』, マガジンハウス.
2021年02月26日水泳、ピアノ、英語は、子どもの習い事の定番と言えるでしょう。最近では、プログラミング教室が人気沸騰中なのだとか。そして、習い事のジャンルが増えたことで、複数の習い事をかけもちするお子さまも増えています。送り迎えをするお父さん、お母さん、本当にごくろうさまです。そんな忙しい日々のなか、子どもから「もうやりたくない。やめたい!」と言われたことはありませんか?子どもが「習い事をやめたい」と言ったとき、親はどう答えるのが正解なのでしょう。今回は専門家の意見を参考にしながら、その答えを探っていきます。子どもの「習い事やめたい」、どこまで本気!?子どもの年齢や性格、習い事の種類によって、やめたい理由はさまざま。親は、そのやめたい理由によって、「やめるのか」「続けるのか」を考えていかなければいけません。やめたい理由としては、以下のようなことが挙げられるでしょう。飽きた、楽しいと思わなくなったからお友だちとけんかしたからお友だちにいじめられたから先生が怖い、嫌いだからレベルが上がってついていけなくなったからスケジュールが詰まりすぎていて体力的に限界だからほかにやりたいことができたから とはいえ、やめたい理由が「ほかにやりたいことができたから」ということであっても、「習い事を始めて1ヶ月の子ども」と、「3年以上続けている子ども」では、親の対応も変わってくるはず。また、「本当にもうやめたい」のか「なんだか面倒だからやめたくなった」のか、本人の気持ちによっても対応は異なります。では、専門家の意見に耳を傾けてみましょう。■習い事の継続期間によって対応を変える(家庭教育専門家・田宮由美氏)『子どもの能力を決める0歳から9歳までの育て方』の著者で家庭教育専門家の田宮由美氏によると、習い事の継続期間に応じて、以下のように対応の仕方を変えるのがよいのだそう。【始めたばかりの習い事】→できるだけ続けられる工夫と努力をすぐにやめさせるのはちょっと待ったほうがよさそうです。やめたい理由を聞いたうえで、親がその原因を解消する努力をします。たとえば、「いじわるなお友だちがいるから」という理由ならば曜日やクラスを変える、体力の問題や「思っていた内容と違ったから」という理由なら、子どもの気持ちを優先し、いったん休ませるといった対応がよいでしょう。そして、頃合いを見てもう一度チャレンジさせてみるなど、臨機応変な対応で子どもを見守ります。【長く続けている習い事】→やめることも選択肢に入れて子どもが長く続けている習い事をやめたいと言い出したときは、よりしっかり理由を聞くことが大切です。なぜならば、深刻な問題が隠れていることが多いから。人間関係が原因で行きたくないのかもしれませんし、周りのレベルについていけなくなり習い事の時間が苦痛なのかもしれません。ですから、問題が解決しない場合は、やめることも選択肢に入れるべきです。もしやめる選択をしたのであれば、次の目標について親子で話し合ってみましょう。■「やめたいレベル」を見極めて対処すべき(臨床心理士・福田由紀子氏)臨床心理士の福田由紀子氏は、子どもの「やめたいレベル」を見極めて、それによって対処を考えるべきと言います。レベルは次の3段階です。【やめたいレベル1:習い事が面倒くさい】やめる決断を急がず、習い事を始めたときの楽しさを思い出させるような会話をしたり、ときには休ませたりしてもいいでしょう。「もっと試合で活躍したいのに地味な練習ばかりでつまらない」「難しくなってきたから行きたくない」などのスランプかもしれません。子ども自身が積極的にやめたいと思っているわけではない状態ですので、様子を見つつ、子どもの「やりたい」気持ちを引き出すようなサポートができるといですね。【やめたいレベル2:習い事がイヤだ】“黄色信号” の「積極的拒否」の段階です。子どもの気持ちをじっくりと聞いてみてください。「やりたいけど、うまくいかない」「頑張ったのに評価されない」など、気持ちが揺れているのかもしれません。気持ちが不安定なときなので、「すぐにやめたいと言うなんて、あなたはダメな子ね」など、人格を否定するような言葉は絶対にNG。子どもの気持ちに共感することがなによりも大切です。担当の先生に相談してみるのもいいでしょう。【やめたいレベル3:習い事がつらい】「習い事に行くのがイヤ」なのか「習い事に行くのがつらい」のかを子どもに聞いて、 “赤信号” の状態かどうかを確認しましょう。つらいのであれば、すぐにやめることも考えるべき。ここまで状況が進行してしまうと、子どもの自尊心は低下し、意欲が大幅に落ちてしまっているからです。親はとにかく子どもの気持ちを受け止めてあげましょう。完全にやめるのではなく、「一時休会」という決断もありですよ。さまざまな角度からのアプローチがありますね。すべてに共通するのは、「状況次第ではやめてもいい」という考えでしょうか。しかしそうはいっても、実際には、「やめグセがついたら困るから、もう少し続けなさい!」と言う親御さんも多いかもしれません。そこで、次項では「やめグセって本当につくの?」という疑問について考えてみます。「やめグセ」がつくなんて嘘!子どもから「習い事をやめたい」と言われても、「『飽きっぽい』『忍耐力が足りないから』と、無理やり続けさせるのは要注意」だと、教育評論家の親野智可等氏は警鐘を鳴らします。では、どう対応すればいいのでしょうか。■「やめグセ」がつくなんて嘘!我慢はしないで(教育評論家・親野智可等氏)親野氏は、「やめグセがつくというのは嘘」と断言。「やりたくないことを我慢してやり続ける」のは、メリットよりもデメリットのほうが大きいと言います。「脳が急激に発達中の子どもの1年は、大人の5年に相当する」ので、子どもにとって我慢している時間は、大人が想像する以上に長く、苦痛なのだそう。その状態が定期的に続くことで、子どもが鬱になることも。また性格形成にも悪影響が及ぶ危険性があります。親野氏の「ダメならさっさとやめて、ピッタリハマるものに出会うまで、どんどん新しいことを試したらいい」という言葉は、親にとって安心できる助言ですね。■「やめたい」は好奇心旺盛な証拠。やめさせてあげて!(心理学者・植木理恵氏)テレビでも活躍中の心理学者・植木理恵氏は、「やめさせるのは悪いことではない。むしろ子どもがやめたいと言うのなら、親の感情で無理に続けさせるよりも、やめさせてあげたほうがいい」と述べています。好奇心旺盛な子どもがいろいろなものに目移りしてしまうのは、健全な証拠。たとえ習い事をやめてしまっても、子どもはその体験から、技術以外にもいろいろな学びを得て、ちゃんと成長しています。「根性が足りない」「モノになるまでやめるのはもったいない」などと思わずに、「興味が増えた」とプラスにとらえて、子どもの背中を押してあげるくらいの気持ちで対応しましょう。その習い事、合わなければやめてもいい!「こどもちゃれんじ」「進研ゼミ小学講座」を提供するベネッセの「やめた習い事はどのくらいの期間続けたか」という調査(2009年)では、全体の47%が2年未満で習い事をやめていることがわかりました。しかも、なんと全体の25%は1年未満でやめています。やめた理由のトップは、「習い事との相性」。継続1~2年未満でも32%とその割合は高いですが、継続半年未満を見てみるとなんと「習い事との相性」が問題でやめた子どもの割合は44%です。「習ってみたら、あまり夢中になれなかった」というところでしょうか。しかし、習い事を2年以上続けると、相性の問題は解消されるようです。そして今度は「習い事のレベル」や「レッスン時間」の問題に問題が移っていきます。子ども時代は興味を探るとき。いろいろ試して合うものが見つかれば、続けられる。それが自然なことなのですね。では最後に、10歳までの「自己肯定感×非認知能力」に重点を置いた『究極の子育て』著者で教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏からのアドバイスを紹介します。■エンディングを決めてから習い事を始める(教育ジャーナリスト・おおたとしまさ氏)おおたとしまさ氏は、「習い事を始めるときに、『どういう状態になったらやめるか』ということまで決めておくといい」と言います。「何年生までやる」「〇月の試合(発表会)までやる」など、目標となる節目を意識して始めることで、子どものモチベーションが保たれるからです。さらに、節目のタイミングごとに、「やめるか、続けるか」を考えるようにすると、一時の感情だけで「やめたい」と思うことが減り、「やめる」と言い出したときも、親は子どもの気持ちを理解しやすくなるでしょう。「我慢は美徳」「継続は力なり」という概念にとらわれすぎずに、臨機応変に対応したいもの。子どもたちが、心身ともに健やかに、習い事を楽しみながら、成長できるように、「合わなければ、やめていい!」――そう確信してよさそうですね。最近は、送迎不要のオンラインレッスンが人気です。以下の記事では、人気のプログラミングやピアノ教室以外にも、ミュージカル・マインドフルネス・アート(制作、鑑賞)など、編集部が厳選した「未来につながる習い事」を紹介しています。↓↓↓『【2021年版】子供の能力を上げるオンラインの習い事|プログラミング・ピアノ・アート・作文など』***習い事について、親が気をつけるべき点がもうひとつあります。それは「下心をもたないこと」。おおたとしまさ氏は「成果を求めて、期待しすぎても、子どもは親の下心を見抜いて逆効果になる」と実体験を交えて語っています。あくまでも子どもの興味が最優先。すべてはそこから始まり、そこに終わるのです――お子さまは、いま、どんなことに興味をもっていますか?(参考)Hapimama「習い事を辞めたい」は止めるべき?心理学者が教える子どもの心理と対処法」日経DUAL|「習い事をやめたい」と言われたら、やめさせるべき東洋経済ONLINE|多くの親が「子どもの習い事」でしくじる理由東洋経済ONLINE|子どもの習い事は、「やめ時」が肝心!ベネッセ教育情報サイト|2年未満で習い事をやめる理由は「お子さまと習い事の相性」All About|子供の習い事は無理にでも続けさせた方がいい?All About|子どもが「習い事をやめたい」と言い出したら
2021年02月22日外国にルーツを持つ子どもの人口変移日本に暮らす外国人は、年々増え続けています。2020年12月に法務省が公開した統計によると、2012年12月時点で約203万人だった在留外国人の総数は2019年12月時点では約293万人となり、7年間で約90万人増えていることが分かっています。そして、在留外国人の人数は今後も更に増える見込みだと言われています。そんな中で、外国にルーツを持つ子どもたちの、特別支援級・特別支援学校への在籍率の高さについて指摘されることが増えてきました。ある調査では、全児童生徒のうち特別支援学級に在籍する日本人児童は2.25%程度であるのに対し、外国人の子どものみで見た場合は5.01%と、日本人児童生徒の約2倍の割合で外国人児童生徒が特別支援学級に在籍しているというデータが示されています。私は、人口の8人に1人(総数およそ4400万人)が移民であるアメリカに、私自身も移民として長年住んでいました。アメリカの国家資格である Speech-Language Pathologist (CCC-SLP)という資格を取得し、言語病理学の専門家として発達障害、先天性の疾患、後天性の脳障害によるコミュニケーション障害や嚥下障害を抱える子どもや成人の検査・評価を行い、訓練や指導も実施していました。また、言語心理学も専門としており、アメリカの大学で外国語としての日本語教育にも携わっていた経験があります。現在は、LITALICOジュニアでシニアスーパーバイザーとして、支援のスーパーバイズや研修を行っています。そしてまた、外国にルーツを持つ子どもたちの支援に特化したプログラムの開発なども行っています。このコラムでは、言語的・文化的に多様なバックグラウンドを持ち、発達障害の可能性も疑われる子どもの支援について検討していきます。外国にルーツを持つ子ども達の抱える困難さ現在日本に住んでいる在留外国人のうち、20歳未満の子どもは約35万人ということが分かっています。2018年に実施された文科省の調査では、今現在日本に住む外国にルーツを持つ子ども達のうち、約5万人が日本語での日常会話が十分にできなかったり、日常会話ができても学年相当の学習言語が不足していることで学習活動への参加に困難さが生じており、特別な日本語指導が必要な児童生徒とされています。言葉の分からない異国の地で学校に通い、現地で生まれ育った同級生と一緒にさまざまな活動に参加することの困難さは想像に難くないでしょう。また、外国にルーツを持つ親御さんにとっても、自分自身が受けた母国の教育システムとは異なる日本の学校に自分の子どもを通わせるとなると、日々の学校生活の中でどんな活動が行われ、お子さまがどのように毎日を過ごしているのか想像しにくく、大きな不安を抱えている人が多いのではないでしょうか。そして、外国にルーツを持つ児童生徒を取り巻く環境として顕著なのが、冒頭でも触れた特別支援学級・特別支援学校の在籍率の高さです。これは移民の多い諸外国でも見られている傾向で、米国でも、英語を第二言語として話す児童生徒の中で特別支援を受けている児童生徒の割合は、ネイティブスピーカーで特別支援を受けている児童生徒の割合よりも高くなる傾向が知られています。なぜこういったことが起こるのか。それは、バイリンガルの児童の言語スキルや知能を正確に測ることの難しさにあります。ある研究では、発達心理検査の一つであるWISC-IVを外国にルーツがある子どもに対して施行したところ、対象児童の第二言語(日本語)で施行した場合は、母語(ポルトガル語)で施行した場合に比べて低いスコアが算出されたという結果が出ています。このように、第二言語で発達心理検査を受けた結果、誤って発達障害の診断を受けてしまう「過大診断」と言われるケースが多く存在します。一方で、発達心理検査の結果子どもが抱える困難さは認められたものの、検査の結果が振るわなかったのは第二言語で検査を受けたことの影響だと考えられ、適切な診断に繋がらないという「過少診断」のケースもあると言われています。こういった背景もあってか、外国にルーツを持つ子どもの支援に関わる際に、ほとんどのご家庭が直面する問題に「家庭内で何語を使うべきか」という疑問があります。子どもに発達障害の診断が下っている場合はもちろん、診断がない場合でも、子どもの発達に不安を抱えている家庭において、「子どもの言語発達を促し、スキルを育むためには、一つの言語に絞った方が良いのではないか」という疑問を持つことは、ごく自然なことだと言えるでしょう。また、ご家族が今後長きに渡って日本に住むことを予定している場合は特に、今後の居住地となる日本で話されている言語である日本語が一番重要だという想定のもと、日本語力を最優先で伸ばすべきなのではないかと考える方も多いようです。しかし、現地語である日本語の獲得を優先させるあまり母語を蔑ろにすることは、長期的な目で見ると、外国にルーツを持つ子ども達と親の間の絆である母語をなくすこと(母語喪失)につながります。母語喪失により、親子間のコミュニケーションが難しくなり、親子の関係構築にネガティブな影響があることも指摘されています。世界規模でみると、人口の約半数が複数の言語を話す「マルチリンガル」であると言われており、複数言語環境下で育つことが子どもの言語発達にどういう影響があるのかは、世界各国のさまざまな言語の組み合わせで研究がされてきています。ここでは、そういった研究で分かっていることを紹介していきます。参考:外国にルーツをもつ児童の発達アセスメントと言語の問題について | 松田真希子・中川郷子(著),(2017)複数の言語を聞いて育つことで子どもが「混乱」することはない複数の言語を聞きながら育つと、今何語を話されているのか理解できず複数の言語を切り分けて理解することができないのではないかという説がよく聞かれますが、複数言語下で育つ子どもがさまざまな言語を聞いているときの行動や脳波を分析した研究では、新生児や幼児であっても、複数の言語を聞き分けており、異なる反応を示していることが分かっています。また、バイリンガルの子どもや大人が二つの言語を混ぜて使う「コードスイッチング」という現象がありますが、これも、どちらの言語を使ったらよいか分からないから混同しているというわけではなく、一方の言語では伝わりにくい概念などを他方の言語で的確に伝えるために、複数の言語をうまく使い分けているという解釈が実情に近いとされています。参考:Evidence of Early Language Discrimination Abilities in Infants From Bilingual Environments | Infancy, 2(1), 29-49. | Bosch, L.&Sebastián-Gallés, N. (2001)発達障害のある子どもの言語発達においても、複数言語環境の悪影響はないASD(自閉症スペクトラム)、発達性言語障害、知的障害のあるモノリンガルの子どもとバイリンガルの子どもの言語発達を比較した複数の研究で、バイリンガル環境自体が発達障害を持つ子どもの言語発達に悪影響を及ぼすことはないという結果が出ています。これは音声言語だけでなく、社会的コミュニケーションの点においてもバイリンガル環境自体が不利に働くことはないとされています。例えば日本語と中国語を使用する環境で育った子どもと日本語だけを使用する環境で育った子どもを比べたとき、語彙数などには差が見られることも多いです。しかしこれは、多くの場合一時的な差と言われています。また、比較している語彙数に関しても、バイリンガル環境で育った子どもの日本語語彙数とモノリンガル環境で育った子どもの日本語語彙数を単純に比べると前者の方が少ない傾向があっても、バイリンガルの子どもが第一言語と第二言語のそれぞれで知っている語彙数を合計した場合、バイリンガルの子どもの方が語彙数が多いという結果が見られています。このことから見ても、言語発達をさまざまな観点から包括的に分析すると、バイリンガル環境で育つことが悪影響を及ぼすことはないというのが、多くの研究で立証されている結果です。参考:Comparative language development in bilingual and monolingual children with autism spectrum disorder: A systematic review | Journal of Early Intervention, 39(2), 106-124. | Lund, E. M., Kohlmeier, T. L., & Durán, L. K. (2017)参考:Bilingual children with primary language impairment: Issues, evidence and implications for clinical actions. | Journal of communication disorders, 43(6), 456-473. | Kohnert, K. (2010)参考:The language abilities of bilingual children with Down syndrome. | American journal of speech-language pathology. | Bird, E. K. R., Cleave, P., Trudeau, N., Thordardottir, E., Sutton, A., & Thorpe, A. (2005).親の第一言語で子どもに話しかけることが、子どもの言語発達に良い効果をもたらす子どもの将来を考えると居住国の言語を習得することが最優先なのではないかという認識のもと、家庭内での使用言語を日本語に絞るようアドバイスされるケースが少なくありません。しかし、親が得意としない第二言語のみを家庭内で使うことは、期待されている第二言語の上達には繋がりにくいとされています。第二言語で話すとなると、親から子に語りかける自然な発話の量が減り、使う語彙や文型も限られてしまい、子どもが触れる言語のモデルが量・質ともに下がってしまうからです。一方で、親の第一言語を家庭内で育んでいた場合、親から得る言語のインプットがより豊かになり、言語発達だけでなく、認知的能力にも良い効果が見られています。また、家庭内で親の第一言語を使ったコミュニケーションを促すことで、親子関係の向上にも繋がり、情緒面のサポートにも繋がるとされています。更には、家庭内で第一言語を使って第一言語の土台を強くすることで、読み書きのスキルが上がり、学齢期以降に学習面で必要となる複雑な概念などの理解もしやすくなり、学習によって得た知識は第二言語へも汎化されるという研究結果が出ています。このように、親の第一言語を家庭内で使用し外国にルーツを持つ子どもの母語支援をすることがさまざまな良い影響を及ぼすということが分かっており、居住国の言語のみに絞る減算型支援ではなく、加算型支援が諸外国でも進められているバイリンガル児童の支援の方向性と言えます。外国にルーツを持つ子ども達の持つ背景や成育歴は非常に多種多様です。何語をどのぐらいの割合で、どんな場面で使っているのか、周りにいる大人の言語習得度はどれぐらいなのか、生まれたときから二言語に触れていた「同時バイリンガル」なのか、それとも後から第二言語に触れるようになった「後続性バイリンガル」なのか…というように、一口に「バイリンガル」と言っても、さまざまな状況が複雑に絡み合って子どもの発達に影響を与えています。外国にルーツを持つ子どもや家族のルーツはアイデンティティそのものです。彼らのアイデンティティを否定することなく、育みサポートしていく方法を、それぞれの家庭の環境に合わせて考えていけると良いでしょう。このシリーズでは、今後複数回にわたって、外国にルーツを持ち発達障害の疑いがある子ども達やその家族の支援について、異文化理解、言語発達理論、第二言語習得論といった観点から検討していきます。参考:What clinicians need to know about bilingual development. | Seminars in speech and language (Vol. 36, No. 2, p. 89), NIH Public Access. | Hoff, E., & Core, C. (2015)参考:在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表| 総務省参考:「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(平成 28 年度)」の結果について | 文部科学省参考:外国にルーツをもつ特別支援学級在籍児童の複言語能力に関する調査研究|松田真希子(金沢大学 国際機構 准教授)
2021年02月19日法人の垣根をこえて、障害福祉施設の生産品を販売!ECサイト『あさがお広場』Upload By 発達ナビニュース『あさがお広場』は、障害者支援施設で生産された食品を中心に販売を行っているECサイトです。障害者就労支援事業所にて生産した加工食品は、地元の食材にこだわった商品や、品質の高い商品が数多くあります。しかし、販売チャネルが少なく、福祉施設が自らオンラインショップ運営を検討しても、経費負担の問題、アイテム数の問題等、サイトの立ち上げまで至らないケースが多く存在しました。また、新型コロナウイルスの影響から、店舗での販売が難しい状況もあります。そうした中で、オンラインショップ『あさがお広場』が立ち上げられました。『あさがお広場』では、北海道、東北の福祉事業所を中心に、品質の高い、美味しい商品を多数提供しています。地元食材を使用した商品などの紹介で、日本全国の人たちに、北海道、東北の魅力を知ってもらうとともに、この取り組みを通じて社会課題にもなっている「就労支援事業所の工賃問題」の改善にも貢献したいと考えているそうです。まずはサイトを訪れて、こだわりのつまった商品を見てみてはいかがでしょうか。【お問い合わせ先】合同会社あさがお広場(福島県白河市)メール:sys@asagao-hiroba.com2021年3月1日から障害者の法定雇用率が引き上げに、対象事業主の範囲も拡大出典 : 年3月1日から、障害者の雇用法定率が引き上げになり、対象となる事業主の範囲が拡大します。そもそも企業における障害者の法定雇用率は、2018年の4月1日に施行された改正障害者雇用促進法によって、民間事業主2.3%、国・地方公共団体2.6%まで引き上げられたものの経過措置として、民間事業主2.2%、国・地方公共団体2.5%となっていました。しかし、3月1日からは予定通り、民間事業主2.3%、国・地方公共団体2.6%に引き上げられることになります。また、対象となる事業主の範囲にも変更がありました。これまでは、「従業員が45.5人以上」の企業主が対象でしたが、このたび適用の範囲が「従業員が43.5人以上」となりました。下記におもな変更点をまとめて掲載しています。あわせてご確認ください。【変更点】<法定雇用率の改正>Upload By 発達ナビニュース<対象となる事業主の範囲>従来:従業員が45.5人以上2021年3月1日より:従業員が43.5人以上LITALICO発達ナビ 「オンラインまなびフェスタ2021」開催のご案内Upload By 発達ナビニュース2021年に5周年を迎えたLITALICO発達ナビが贈る、「オンラインまなびフェスタ2021」が2021年3月7日(日)に開催されます。当日は幅広いテーマのセミナーをご用意しており、専門家や企業と一緒に、家庭学習が楽しくなる教材や、進路選びのポイント、おすすめの学用品などをチェックすることができます。他にも、公認心理師による子どもの「かんしゃく」について解説した専門家セミナーや、特別講演として、鳥取大学大学院で教授をつとめ臨床心理学の講座をもつ井上雅彦先生と発達ナビ編集長牟田によるトークライブもご用意。未就学~中学生まで、発達が気になるお子さんの保護者の方々にぜひ知っていただきたい情報が満載です。また、オンライン開催なので、全国どこからでもご参加可能となっています。<開催概要>【日時】2021年3月7日(日)10時~17時※後日アーカイブ配信も予定しています。【参加費用】無料【形式】Zoomなどオンラインツールを用いた配信【参加方法】事前申込必須。2月中旬より参加申し込みを受け付けます。【内容】専門家講演、発達が気になるお子さんを応援する企業によるセミナーその他、イベントに参加すると応募できる抽選会なども企画しています!※予定のため、今後変更となる場合もございますイベントの詳細は下の記事からご確認ください。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年02月15日子どもをもったことで、ママ友との付き合いや親戚などに囲まれる機会が多くなり、今までなるべく避けてきたのに、苦手な集団行動や人付き合いの機会が増えて苦痛…。そう感じる方は少なくありません。なぜ、大勢での場所に居心地を悪く感じてしまうのでしょうか。 人に囲まれることに苦手を感じる心理そもそもの性格の他に、過去に人間関係に失敗したことによるトラウマから苦手意識がある場合があります。 さらにそれらの原因をつきつめると、・経済状況や見かけによる劣等感・人に嫌な思いをさせないようにとつい気を使ってしまい疲れる・コミュニケーション力に自信がなく、うまく立ち回れるか不安・グループができていると、その輪にどのようにはいっていったらいいかわからないなどがあります。 このように苦手を感じる原因は人によってそれぞれですが、これらの原因をさらに突き詰めると、人の目を気にして、うまく立ち回れないことを避けたい、自分をよく思ってもらいたいという気持ちから生じていることがほとんどであることがわかります。 相手を気遣いすぎることはないしかし、残念ながら、自分をよく見られたいという気持ちで相手にどんなに気を遣ったとしても、相手がその気遣いを察してくれるという保証はなく、さらにいえば、その気遣いをありがたいと感じてくれるとはかぎりません。相手が好意的に受け取ってくれなかったりすることで、さらに自信をなくし、人付き合いを敬遠してしまいたくなる原因になってしまう可能性もあります。 新しい視点の発見場所であると思う人の目を気にするということは、人のことを思いやり、人に気を配ることが自然にできるということでもあります。自分ではなく、人の気持ち本位で考えられるということはすばらしいことです。ただ、それによって、人付き合いをうまくできない自分を責めてしまうことになっているようであれば、たまには自分本位になってみてましょう。 大勢の中で人に合わせようとするのではなく、自分に軸をおき「子どものための情報収集をしよう」「知りたかった○○の話について聞いてみよう」と目的をもって、その場に居合わせることで、人の気持ちに集中することなく、自分らしくふるまえるはずです。 ちょっとガツガツしてしまったかも…と後で後悔してしまうこともあるかもしれません。しかし、親切を親切と受け止めない人がいる一方で、自分らしくふるまっているあなたを好んでくれる人がいるはずです。そしてそういった人こそが、自分にとって、心地よい人となり得ます。 「集団行動が苦手だからひとりでいいんだ!」と割り切れず、集団行動や人付き合いが苦痛に感じていたとしても、自分を責めず、それが自分の愛すべき特長だと思って自信をもって臨んでみてください。 著者:ライター メンタル心理カウンセラー・上級心理カウンセラー カトウ ヒロコメンタル心理カウンセラー・上級心理カウンセラー。また、フリーのWEBプロデューサー&ライターとして活動中。
2021年01月26日抱っこにおんぶ、頭をなでたり、ぎゅっと抱きしめたり、手をつないでお散歩したりと、子どもが小さいうちは親子で四六時中触れ合っているものです。しかし、子どもが成長するにつれて、直接肌に触れる機会はどんどん減っていきますよね。今回は、親子のスキンシップがもたらす「子どもの心と脳への影響力」について解説していきます。皮膚は「露出した脳」!?みなさんは、子どものころに親から抱きしめられたり、頭をなでられたりしたことを覚えていますか?あまり覚えていないという人も多いかもしれません。ですが、肌に触れられた記憶というものは、私たちが思っている以上にしっかりと脳や心に刻み込まれているようです。桜美林大学リベラルアーツ学群教授で臨床発達心理士の山口創先生は、著書『子供の「脳」は肌にある』(光文社新書)のなかで、「幼いころの肌の接触は、単に見たり読んだりした経験に比べると、その後の人生にとってははるかに大きな意味をもつ。そして、知らず知らずのうちに、私たちの生き方や人間関係に大きな影響を与えているのである」と述べています。山口先生は「皮膚は『露出した脳』であり、皮膚に直接刺激を与えることで脳が育つ」と言います。なぜ「露出した脳」なのかというと、皮膚と脳は同じ「外胚葉(がいはいよう)」という細胞からつくられているそう。そのため皮膚からの情報は、視覚情報や聴覚情報とは違い、ダイレクトに脳へと伝わり、脳を大いに刺激することがわかっているのです。そして重要なのが、一見「脳」からかけ離れている「肌」という身体の末端部への快い刺激こそが、子どもたちの心を豊かに育むことにつながっているということ。山口先生は、親との触れ合い経験が不足している子どもは、愛情の形成が不十分になり、のちに人間関係にさまざまな問題が出てくると指摘します。例えば、幼児期に母親から添い寝などを通じて肌にたくさん触れられて育った子どもは、成長してからも情緒が安定しており、社交性が高く、他人を攻撃する傾向も低い。反対に母親とのスキンシップが少なかった子どもは、人間不信や自閉的傾向が高く、自尊感情も低いことなどがわかりました。(引用元:致知出版社|「スキンシップ」が子どもの脳と心を育てるーー山口創が語る最新科学が明らかにした子育てのヒント)このように、子どもたちにとって肌の触れ合いは、その後の人生に大きな影響を与えるのです。愛情ホルモン「オキシトシン」のすごい効果なぜ肌に触れることで子どもの心が満たされるのでしょうか?それには、「愛情ホルモン」と呼ばれる「オキシトシン」が大きく関わっています。先ほどもお伝えしたように、実は密接につながっている皮膚と脳。人間の脳はスキンシップにより、いわゆる「愛情ホルモン」と呼ばれる神経伝達物質・オキシトシンを分泌する働きがあります。このオキシトシンこそが、ストレスへの反応を和らげたり、他人への信頼を高めたり、安心感を得て幸せを感じたりする効果を生み出すのです。では、親子のスキンシップによってオキシトシンが分泌されると、具体的にどのようなよい効果が表れるのでしょうか。■オキシトシン効果1:挑戦する力が育つ普段からスキンシップをしているということは、親子関係が安定している証拠。それゆえに子どもの心は常に落ち着いており、新しいことに挑戦しようという気持ちの余裕がもてるようになります。また、オキシトシン効果で不安な気持ちを抱え込みにくくなり、何にでも臆することなくチャレンジできるように。■オキシトシン効果2:集中力が高まる不安や心配事に心がとらわれていると、集中力が下がるのは周知のとおり。日常的に触れ合うことによってオキシトシンが出やすくなると、心身のリラックス効果をもたらします。目の前のことに集中し、結果を出したいと思っているのなら、まずはスキンシップを!■オキシトシン効果3:コミュニケーション能力がアップするオキシトシンは人を信頼し、人との絆を強めるはたらきをしてくれるホルモンでもあります。「友だちとうまく遊べない」「衝動的になることが多くトラブルを起こしやすい」という悩みを抱えている子の多くは、家で親に甘えられなかったり、スキンシップが極端に少なかったりする傾向があるといいます。東京慈恵会医科大学名誉教授の前川喜平先生は、「身体的接触は、安心感と親密さを増し、信頼関係を築きやすくなる」と述べています。実際に、スウェーデンの保育園や学校で子どもたちにマッサージを受けてもらったところ、落ち着きが出て、他者とのかかわり方が穏やかになっていったそう。なかでも、乱暴な言動で困らせていた男の子は、タッチケアによって攻撃的な振る舞いが減少したと言います。また、乳幼児期に母親とスキンシップが不足していた子どもは、高校生になったときに衝動的に他者を攻撃する、すなわち「キレやすい」傾向があることもわかっています。それは「皮膚レベルの欲求が満たされていない」ことが原因であり、「皮膚の欲求不満が、生まれてからずっと続いていたに違いない」と山口先生は指摘しています。スキンシップを増やして不満を解消することで、問題行動が軽減された実例もたくさんあることから、子どもの心の問題は親とのスキンシップと密接に関わっていることがうかがえるでしょう。子どもの肌に触れるときに気をつけたいことここまで読んで、「子どもと積極的にスキンシップをとらなくちゃ!」と意気込む人もいるかもしれません。しかし、親子のスキンシップは、日常的かつ自然に取り入れないと意味がないのです。それどころか、逆効果になってしまうこともあるので要注意。ここでは、オキシトシンを増やす触れ合い方のポイントを紹介していきます。○親の気持ちよりも子ども気持ち優先で自分の機嫌がいいときや手があいて暇なときなど、親の都合で無理に子どもを抱きしめたり、スキンシップをとったりしていませんか?残念ながら、子どもが求めていないのに触れ合っても、オキシトシンは増えません。子どもから「だっこして」と求めてきたり、体をくっつけてきたりしたら、「ちょっと待って」「あとでね」などと言わずにすぐに受け入れてあげましょう。○日常のコミュニケーションにさりげなく取り入れる本を読んであげるときに膝の上に座らせる、お手伝いをしてくれたときに「いいこいいこ」と頭をなでてあげる、添い寝しながらトントンするなど、普段の生活のなかでスキンシップをとれる瞬間はたくさんあります。毎日の習慣にすることで、子どもだけでなく親もオキシトシンが分泌されやすくなります。その結果、ストレスが軽減して気持ちが安定するという相互効果も期待できますよ。○子どもの肌を優しくマッサージする習慣を子どもは手のひらで優しくマッサージしてもらったり、トントンとリズミカルに皮膚を刺激されたりすると喜びます。小児看護を専門とする原田眞澄教授(中国学園大学)によると、「肌に触れることは、する側・される側のどちらにとっても情緒が安定する効果がある。また親子の絆も深まる」のだそう。お風呂上がりに保湿クリームやローションを手のひら全体で伸ばして塗ってあげると、親子の楽しいひとときにもなるのでおすすめです。○抵抗感があるなら遊びの延長からそうは言っても、さまざまな理由から「どうしてもスキンシップが苦手」と感じている人もいますよね。そのようなタイプの人は、無理に触ろうとすればするほど体がこわばって、不自然な触れ方になってしまいます。そこで、親子で体を使った遊びを取り入れてみましょう。こちょこちょくすぐり合う、抱き上げて飛行機ごっこなど、自然なかたちでスキンシップがとれる遊びがおすすめです。保育の現場でも、子どもの情緒を安定させる目的として、手遊び歌やわらべ歌、触れ合い遊びを推奨しています。以下は『保育ハンドブック』(大修館書店)で紹介されている例です。一本橋でこやまでこちゃんえんやら桃の木ちぎりばっちりいちりにりラララぞうきんおすわりやすちょちちょちあわわ YouTubeなどの動画サイトでも、プロの保育士による子どもが喜ぶ手遊び歌がたくさん紹介されているので、親子で楽しめる触れ合い遊びを見つけてみてくださいね。スキンシップの効用をもっと詳しく知りたい人におすすめの本肌と心の関係の奥深さについて、知れば知るほど興味がわいてきた人も多いのではないでしょうか?そんな方にぜひおすすめしたいのが、次に紹介する4冊です。◆『触れることの科学:なぜ感じるのか どう感じるのか』ジョンズ・ホプキンス大学医学部教授で神経科学者の著者による、触れることと感じることの関係性を科学的に解き明かす衝撃の一冊。少し専門的な内容ですが、より深く、詳しく知りたいという人にはぴったりです。◆『幸せになる脳はだっこで育つ。-強いやさしい賢い子にするスキンシップの魔法-』前出の山口創先生による、育児に悩む保護者の方に向けた「スキンシップ育児のコツ」が満載の本著。0歳から思春期まで幅広い年代に対応しているので、子どもの成長にずっと寄り添ってくれる一冊です。◆『皮膚感覚の不思議ー「皮膚」と「心」の身体心理学』普段あまり意識することがない「皮膚の不思議」について詳しく解説している一冊。ツボ押しの「痛気持ちいい」感覚や、どうしても我慢できない「かゆみ」の正体、触られる相手によって正反対の感情が湧き上がる謎など、皮膚と心の密接な関係が解き明かされます。◆『第三の脳ーー皮膚から考える命、こころ、世界』著者は資生堂ライフサイエンス研究センター主任研究員であり、皮膚研究のスペシャリスト。「皮膚は脳にも匹敵する、いまだ知られざる思考回路」というように、皮膚の潜在的可能性についてたっぷり語られています。***「幸福学」の第一人者である慶應義塾大学大学院教授の前野隆司先生は、「文化的にスキンシップが少ない日本人、とくに子育て中の親は、意識的に子どもとのスキンシップを増やす必要がある」と述べています。照れや気恥ずかしさもあるかもしれませんが、スキンシップによって子どもへの愛情がさらに伝わりやすくなります。ぜひ試してみてください。(参考)山口 創(2004),『子供の「脳」は肌にある』,光文社新書.PHPのびのび子育て 2020年8月特別増刊号,PHP研究所.致知出版社|「スキンシップ」が子どもの脳と心を育てるーー山口創が語る最新科学が明らかにした子育てのヒント公益財団法人 母子健康協会|「タッチケアで絆を育む」…安らぎの物質オキシトシン中国学園リポジトリ|子どもへのタッチングに関する考察大修館書店|保育ハンドップックSTUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「子どもは宝物だ」という思考が危うい訳。子を思うなら親は“自らの幸せ”を追求すべき
2021年01月26日2月5日オープン!日本初、バリアフリーと多言語で鑑賞できるオンライン型劇場『THEATRE for ALL』をご紹介!Upload By 発達ナビニュース2021年2月5日にオープン予定の「THEATRE for ALL」は、日本ではじめて演劇・ダンス・映画・メディア芸術を対象に、日本語字幕、音声ガイド、手話通訳、多言語対応などを施したオンライン型の劇場です。障害や疾患があり従来の劇場に出向くことが困難だった方や、母語が日本語以外の方、また、芸術に対して「わからなさ」がバリアとなり馴染んでこられなかった方などに対して、開かれた劇場であることを目指しています。「THEATRE for ALL」では作品の配信はもちろん、作品解説や対話型のワークショップ等、鑑賞者の鑑賞体験をより豊かにし、日常にインスピレーションを与えるラーニングプログラムの開発にも力を入れています。2月から3月にかけて、バリアフリー対応つきの映像作品約30作品、ラーニングプログラム約30本を配信予定。アクセシビリティに特化したオンライン型劇場「THEATRE for ALL」に今後も注目です!Upload By 発達ナビニュース<詳細>【オープン予定】2021年2月5日(金)【料金(1作品あたり)】無料・500円・1000円・1800円・3000円など【鑑賞方法】配信作品ページより鑑賞したい作品のチケットをご購入のうえご覧ください(要会員登録)よこはま発達相談室主催のWEB講座「自閉症スペクトラムのアセスメントセミナー」をご紹介Upload By 発達ナビニュース2021年1月30日(土)に、よこはま発達相談室主催の「自閉症スペクトラムのアセスメントセミナー」が開催されます。このセミナーでは、公認心理師である講師が実際の臨床場面で、どのようなアセスメントを組み合わせながら実施しているのか紹介しながら、それぞれのアセスメントで何を見ているのかということについても解説します。講座では、フォーマルなアセスメントを中心にスライドを用いて、講師が説明を進めていきます。Upload By 発達ナビニュース当日は、オンライン上でリアルタイムで講義を進めると同時に、質疑応答の時間も設けています。また、事前に回収した質問に対しても解説しながら講義を進めていきます。<詳細>【日時・場所】2021年1月30日(土) 14:00〜16:30オンライン(Zoomを用いて行います)【対象】医師・心理士・言語聴覚士などの支援者【講師】北沢香織さん(公認心理師・臨床心理士・臨床発達心理士)佐々木康栄さん(公認心理師・臨床心理士・精神保健福祉士)【料金】11000円(税込)【お問い合わせ先】mail : seminar@ypdc.nettel : 045-942-1160一般社団法人 発達精神医学・心理学研究会 セミナールーム子どもの自立について考える!発達障害講演会『知ってほしい!子どもの3つの分岐点 6才・14才・17才 自立のためにすること』Upload By 発達ナビニュース2021年2月28日に、発達障害オンライン講演会『知ってほしい!子どもの3つの分岐点「6才・14才・17才」自立のためにすること。』が開催されます。この講演では、子どもの自立を考えるにあたって、3つの分岐点にフォーカスを当てています。その3つとは、6才:学校という集団生活がはじまったとき14才:中学の卒業を控え、今後の進路について考えるとき17才:社会に出ていくことがいよいよリアルになってきたときです。本講演で講師をつとめるのは、発達障害のある経営者として、複数のTV番組にも出演経歴をもつアズ直子さんと、教員経験や自身も発達障害のある子どもを育てた経験をもつ平塚英子さん。子どもの自立について当事者と支援者、二つの目線で大切にしたいことなどをお話しします。<詳細>【日時・場所】日時:2021年2月28日(日)13:00~15:30場所:オンライン【料金】2000円(税込)【お申し込み方法】下記のフォームからお申し込みください。【お問い合わせ先】発達凸凹子育て・親育て講演会実行委員会and.e.therapy@gmail.comTEL 090-5803-1731LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年01月24日逆境に強く、ポジティブ思考の人になるためのキーワードがあります。それが「レジリエンス」。 “心の筋肉” とも言われ、鍛えれば人生がパワーアップするそうです。また、レジリエンスは、近年注目されている「やり抜く力(GRIT)」を構成する4つの要素、根性(GUTS)・回復力(RESILIENCE)・自発性(INITIATIVE)・執念(TENANCY)の1つでもあります。レジリエンスを鍛えることで、やり抜く力もアップするはず。今回は、親子で身につけたい能力であるこのレジリエンスについて、詳しく見ていきましょう。レジリエンスとは「折れない心」であり「回復力」いま話題のレジリエンスとは、「折れない心」であり、逆境から立ち直る「回復力」のこと。一般社団法人 日本ポジティブ心理学協会では、次のように説明されています。レジリエンスとは、心理学においては、「逆境やトラウマ、惨事、脅威、さらには重大なストレス源に直面したときにうまく適応するプロセス」であり、総じて「困難な経験から『再起する』こと」と定義されます(アメリカ心理学会の定義より)。(引用元:一般社団法人 日本ポジティブ心理学協会|JPPA認定 第3期レジリエンス・トレーニング・コースのご案内)※太字は編集部が施したストレスマネジメントの専門家である小関俊佑氏(桜美林大学准教授)は、「レジリエンスとは、ストレスに負けずに自分がやりたいことをやるためにあるもの」と言います。人生にストレスはつきものです。ストレスを上手にかわすためにも、レジリエンスを育みたいところ。レジリエンス育成はできるだけ早い時期がいいとされています。なぜならば、いろいろな経験の積み重ねこそがレジリエンス育成につながるから。では、レジリエンスとは具体的にどういう力なのか。次に見ていきましょう。レジリエンスが高い子と低い子の違い臨床心理士で医学博士の小玉正博氏は、レジリエンスには次の7つの要素が含まれていると言います。気持ちや感情をコントロールする力変化する状況に順応できる柔軟性「自分は大切な人間だ」という感覚人に助けを求められる力楽観的であることネガティブな気持ちを引きずらない力 「成績が悪かった」「友だちとケンカした」など、子どもにとって困難なことが起こり、落ち込んだり挫折したりしたとき、これらの要素をもつ子(レジリエンスが高い子)ともたない子(レジリエンスが低い子)では次のような反応の違いが出てきます。【レジリエンスが高い子】・・・楽観的、人に頼ることができる「なんとかなる」「この状況は長くは続かない」「いままでのようにきっと大丈夫」「お父さんかお母さんに相談してみよう」【レジリエンスが低い子】・・・悲観的、自分の殻に閉じこもる、ひとりで耐える「どうしたらいいのかわからない」「きっともうダメだ」「もうどうでもいい」「恥ずかしいから、誰にも話したくない」「怒られるかもしれないから、親には話せない」「自分でなんとかしなきゃ」このような反応の違いには、ふたつのポイントがあります。まずひとつめは、子どもに自己肯定感があるかどうか。自己肯定感とは、自分のよい面だけでなく欠点も含めて「私は私」と認められる感覚のこと。自己肯定感を高める活動をしている日本セルフエスティーム普及協会は、「自己肯定感を高めることでレジリエンスも高くなる」と説明しています。レジリエンスの土台は自己肯定感なので、レジリエンスを高めたいのであれば、まずは自己肯定感を高めるべきなのだそう。そして、ふたつめのポイントは、周りにSOSを出せるかどうか。これにはまず周りとの信頼関係が必要です。普段から親や友だちとの人間関係において、人との関わり方を学び、人から助けられる経験をすることがとても大切になります。問題を抱えてひとりではどうしようもなくなったとき、助けを求められるかどうかは、そのようなコミュニケーション体験の有無によるのです。これらをふまえたうえで、レジリエンスを育むコツをご紹介します。親子でやってみよう!レジリエンスを育む方法“折れない心” には、「自己肯定感」と「信頼関係」が必要だということがわかりました。次はいよいよ、レジリエンスを育むための方法をご紹介します。「自己肯定感を上げてレジリエンスを鍛えるトレーニング」と、「親子で信頼関係を築き、レジリエンスを強化する方法」です。ぜひ今日から親子一緒に実践してみてくださいね。方法1:劣等感に負けない、自己肯定感を育むトレーニング法政大学文学部心理学科教授の渡辺弥生氏は、「人がネガティブな感情をもつのはあたりまえで、むしろ必要」と言います。なぜならば、嫉妬や劣等感がモチベーションになり、よりよい自分であろうとするための成長ステップになるから。しかし、その過程でネガティブ感情に負けてしまっては意味がありません。そうならないために、渡辺教授が提唱する「レジリエンスを鍛える4つのトレーニング」で “心の筋肉” を鍛えてみてください。「I am」マッスル私は〇〇(自分を肯定する言葉)例:私は優しい「I can」マッスル私は〇〇ができる(自分ができること)例:私は泳げる「I like」マッスル私は〇〇が好き(自分が好きだと思うこと)例:私はサッカーが好き「I have」マッスル私には〇〇がいる、私は〇〇をもっている(自分が大事にしている人や宝物)例:私には頼りになるお父さんがいる、私は電車のおもちゃをもっているこのトレーニングは、子どもがもつ「いいところ」「いいもの」を「見える化」し、自分自身の劣等感に打ち勝つことを目的としています。子どもは、ポジティブな気持ちで眠りにつくことができるでしょう。そして、毎日続けることで自己肯定感もアップします。方法2:親子の絆を深め、レジリエンスを強化する方法子育てコーチング専門家でNPO法人ハートフルコミュニケーション代表理事の菅原裕子氏は、「レジリエンスがもともと低い子はいない」と言います。親との関係や、周りの人との関わりによって、子どものレジリエンスの高低は変化するのだそう。東京学芸大学名誉教授で臨床心理学者の深谷和子氏も、子どものレジリエンス育成の重要な鍵となるのは、親や家族との信頼関係だと指摘しています。家庭を「居心地のよい場所・心の拠り所」にすることで、子どもは外の世界で嫌なことがあったとしても、安全基地であるお父さん・お母さんのもとで充電し、気持ちを回復させることができるのです。それでは、深谷氏をはじめとした専門家の意見を取り入れた、親子コミュニケーションのポイントをお伝えしましょう。【親子の会話】子どもとの信頼関係を深めるのは、なんといっても “毎日の会話” です。しかし、親だけが一方的に話してしまうのはNG。もし子どもが失敗してしまったときでも、「だから〇〇しなさいって言ったのに」なんて言わず、「悲しいね」とネガティブな感情を受け止めてあげましょう。子どもの話をじっと聞き、どんなネガティブな感情を受け止めることで、親子の信頼関係のベースが築かれます。実際に、この方法で不登校が解消した例も報告されているようですよ。もしテストで思ったような点数がとれなくて子どもが落ち込んでいるときなどは、「勉強頑張っていたよね!」と努力の過程をほめてください。すると、ストレスを感じていたとしても、再度、挑戦する力が湧いてくるものなのです。また、親自身の「失敗談」や「立ち直りストーリー」を話すのも◎。「完璧な人はいない」というメッセージは子どもを安心させます。【子どものお手伝い】親を助ける、親の役に立つお手伝い経験は、子どもを無力感から開放し、「自分は家族のなかで大切な存在だ」と再確認できる機会です。洗濯物をたたむ、冷蔵庫からドレッシングを出す、買い物をお願いする、旅行の計画を立てるなど、簡単なお手伝いから少し難しいお手伝いまで、とりあえずどんなことでもお願いしてみませんか?「できた!」という達成感から自己肯定感も育まれますし、「失敗しちゃった……」という場面でも「頑張ってお水を運んでくれたよね。ありがとう!」と、親ができたことを認めてあげることで、子どもは、心を回復させる力を手に入れることができますよ。レジリエンスを学べる本そして家庭外では、ゲームなどのバーチャルではない、リアルな遊びを通して、できるだけ多くのお友だちと遊ばせましょう。また、スポーツに励むこともレジリエンス強化に効果があると、深谷氏は推奨しています。どうやら、レジリエンスを鍛えるには、まだまだたくさんの方法があるようです。おすすめの書籍をいくつかご紹介しますので、ぜひ読んでみてくださいね。『親子で育てる折れない心 レジリエンスを鍛える20のレッスン』うまくいかなくてもへこたれずに頑張ることができる、失敗しても立ち直れる――そんな「レジリエンス・キッズ」を育てる技術を紹介した1冊。どんなタイプの子どもにも有効なトレーニングばかりです。毎日3分、親子で取り組んでみませんか?『子どもの「逆境に負けない心」を育てる本』「挫折しやすい子」「キレやすい子」「すぐあきらめる子」が変わる!レジリエンス教育の第一人者による実践ワークブックです。日本の学校でも効果が実証済みの教育プログラムをイラストとともに説明しています。『イラスト版 子どものレジリエンス』著者は、子どものレジリエンス研究会代表の上島博氏。「気持ちを言葉にしよう」や「ストレスをパワーに変える」など、落ち込んでいる気持ちを回復させる方法がたくさん書かれています。子どもと一緒に読みたい1冊。『ヘコんでも折れない レジリエンス思考』健康心理学が専門の医学博士・小玉正博氏が「レジリエンス」について詳しく解説。また、ストレスから心を回復させるための思考法も事例とともに紹介しています。鋼のような強い心ではなく、復元力に富む「しなやかな心」をつくりましょう。***変化の激しい時代を力強く生き抜くために、「レジリエンス」はこれまで以上に必要不可欠な能力と言えるでしょう。レジリエンスを育むためには、子どもに大きな影響をもたらす大人(親)のレジリエンスを高めることも重要です。親子一緒にレジリエンスを鍛えていきましょう。(参考)一般社団法人 日本ポジティブ心理学協会|JPPA認定 第3期レジリエンス・トレーニング・コースのご案内SHINGA FARM|子どもの「心理的レジリエンス」を高める3つのコツとは?AllAbout|子どものレジリエンスを鍛える10のコツ!逆境を跳ね返す力とはベネッセ教育情報サイト|乳幼児から育む、折れない心【前編】困難に負けない、レジリエンスとはベネッセ教育情報サイト|乳幼児から育む、折れない心【後編】レジリエンスを伸ばす保護者の働きかけとは朝日新聞 EduA|逆境に負けない心、「レジリエンス」を育てるには他人に助けを求める能力も身につけて一般法人日本セルフエスティーム普及協会|レジリエンス(折れない心)は自己肯定感でつくる日経DUAL|レジリエンス、しなやかさ、負けないメンタル…「心が強い子」の育て方|レジリエンスを育むにはこの気質を理解することから個別指導塾スタンダード|どんな困難にもくじけない!我が子のレジリエンスを鍛えるには?STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|劣等感を自尊心に!寝る前に親子で実践、「レジリエンス」の簡単トレーニング法STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもの「レジリエンス」を高めるのは、親子の会話。結果ではなく“挑戦”を褒める!
2021年01月20日「うちの子やる気が見えなくて」「どうしたらやる気スイッチを押せるの」「やる気がないならサッカーやめな」など、保護者の皆さん一度は思ったり、実際にわが子に言ったことがある方もいるのではないでしょうか。兄弟なのに上と下でやる気が全然違う、というご家庭もあるのでは。実はやる気には種類があって、自分自身とやる気の種類・出し方が違うと相手に「やる気」がないように感じてしまうのだそう。お子さんのやる気の出し方が親御さん自身の出し方と違うだけで、じつは意欲があることも。今回は「やる気」の種類についてご紹介します。(文:筒井香)1.「やる気」の種類「やる気が出ない」「やる気を維持したい」という言葉をよく耳にします。ここで言う「やる気」とはいったい何のことを意味しているのでしょうか?実はやる気は一種類ではなく、たくさんの種類があると心理学では考えられています。「A」というやる気がないだけで、「B」というやる気はあるかもしれません。また、「A」だけを維持しようとするから難しいのであって、他のやる気を生み出すことで、結果的にはやる気を維持できると考えられます。今年は新型コロナウイルスの影響で大会が中止になり、「やる気が出ない」と訴える選手にも出会いましたが、「"試合前に持つ種類のやる気"は捨てる勇気が必要」というお話をさせていただいたこともあります。例えば、やる気の種類には、以下のようなものがあります。・新しいことを知りたい・能力を発揮したい・勝ちたい・認められたい・褒められたい・仲間を作りたい・金メダルを獲得したい・賞金を獲得したい2.「やる気」の出し方「やる気がある」「やる気がない」とわが子に対して感じることはないでしょうか?しかし、本当にやる気がないかは判断が難しいものです。なぜなら、やる気に種類があるように、やる気の出し方にも種類があるからです。例えば、やる気がある時に「大きな声を出す」というタイプの人は、「大きな声を出す」人を見て、「やる気がある」と感じますし、「声が小さい」人を見て、「やる気がない」と感じやすいと思います。でも、黙々と取り組んでいても、やる気がある人もいますね。自分と同じタイプの人のことはわかりやすいかもしれませんが、異なるタイプの人のことは間違った解釈をしてしまう可能性があるということです。でも、「やる気」は目に見えないのでそれも当然ですね。「間違った解釈をしてしまう可能性がある」ということをわかっていることが大切だと思います。3.イライラを鎮めるための3つのポイント「うちの子はやる気がない」と感じた時に、イライラしてしまう、といったことはないでしょうか?そのような時には、以下の3つのポイントを意識することがオススメです。①子どもに期待しているやる気の種類(例:勝ちたい)と、子どものやる気の種類(例:仲間と楽しむ)が異なっていることから生じている可能性を考える。②ご自身のやる気がある時の様子や行動(例:声が大きく、テキパキしている)と、子どものやる気がある時の様子や行動(例:何も言わず、のんびりしている)が異なっていることから生じている可能性を考える。③子どもに「やる気を出して頑張って欲しい」「良いパフォーマンスを出して欲しい」と願う気持ちがイライラに繋がる。イライラしたら、「今日も親として頑張る私がいる」と受け止めてみる。このようにご自身のイライラの理由と向き合い、わが子のやる気の種類や、やる気の出し方に目を向けることが大切になると思います。「やる気がある」とは、「今日、自分が行動を起こす理由がわかっている」という状態のことです。学校や練習に行く前に子どもと「今日のやる気」についてお話をして、一日を始めてみてはいかがでしょうか。今日のやる気を生み出し続けることが、結果的に「やる気の維持」に繋がります。筒井香(つつい・かおり)株式会社BorderLeSS代表取締役博士(学術)日本スポーツ心理学会認定スポーツメンタルトレーニング指導士大学・大学院時代に人間行動学、臨床発達心理学、スポーツ心理学などの心理学から「人間の特性」を広範に学び、また、博士論文では、「個別性を重んじたポジティブシンキングの多様性」に関する理論を構築。現在はオリンピック、パラリンピック選手のメンタルトレーニングのほか、スポーツを頑張る親の学び舎「スポスタ」の講師として、スポーツを(アスリートとして)頑張っている子どもの保護者に向けて、人としてのキャリアのなかにアスリートとしてのキャリアも含めた、包括的な人生設計に重要な理論と実践方法を伝え、子どもの「キャリア=人生育て」を心理学の視点からサポートしている。株式会社BorderLeSSスポスタ
2021年01月19日発達障害がある人の「働く」を描いたコミックエッセイーー『発達障害で問題児でも働けるのはワケがある!』漫画家かなしろにゃんこ。さんの新刊『発達障害で問題児でも働けるのはワケがある!』は、ADHDと広汎性発達障害がある息子リュウ太さんが就職し、働き始めるまでを描いた作品です。小さなころからのりものが好きだったリュウ太さん。中学校卒業後は、自動車整備士の国家資格取得を目指して専修学校で学びます。現在は社会人として働くリュウ太さんですが、振り返ってみると、アルバイトや家庭でのお手伝いなど、社会人になる以前から「働く」ことの土台を積み上げてきていたのです。それぞれの経験を通して学んだことが、社会人生活にも活きているようです。全9話の体験談コミックに加え、各章末にはキャリアアドバイザー・石井京子さんの解説もついており、プロの視点からも働くことについて考えることができます。将来お子さんが「働く」ことを見据えて、どのような関わりをしていけるとよいか、ヒントが詰まった一冊です。感じ方や考え方は違っていい!「脳の多様性」に注目した『ニューロダイバーシティの教科書』「ニューロダイバーシティ」とは、neuro(脳・神経)とdiversity(多様性)をつないだ合成語で、「脳や神経、それに由来する個人レベルでのさまざまな特性の違いを多様性と捉えて尊重し、それらの違いを社会の中で活かしていこう」という考え方を含む言葉です。例えば本書の中では、自閉スペクトラム症の人の特性について、ニューロダイバーシティの視点から捉え直しています。また、生活の中で身近な「教育」「職場」「家庭」などにおいても、ニューロダイバーシティの視点で考え、よりその人の特性にあった環境を提供する必要性があることについても解説されています。その人の内側に存在する特性を正確に理解し、多様性に柔軟な環境づくりをしていくために必要な「ニューロダイバーシティ」の視点は、支援や教育に携わる人はもちろん、発達障害の当事者や家族も知っておきたいもの。本書を入門書として、手にとってみてはいかがでしょうか。学校や家庭で実践できるーー「ソーシャルスキルトレーニングの考え方とコツ」本書の著者は、星槎大学共生科学部の教授で特別支援教育・心理学を研究する西永堅さん。この本では、「発達障害の子どもの特徴」や「必要なスキル」などを紹介したうえで、学校や家庭などで実践できるソーシャルスキルトレーニングの考え方とコツをまとめています。ソーシャルスキルトレーニング(SST)は、「あいさつをする」など、対人関係などで必要なスキルを身につける練習を指し、発達障害がある子どもたちへの効果的な支援方法です。本書はレイアウトも工夫されており、1項目見開き2ページで統一されています。ポイントが理解しやすく、支援者や保護者の方の最初の1冊にぴったりの入門書となっています。ぜひ手に取ってみてください。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年01月09日2020年に発表された「レポートカード16-子どもたちに影響する世界:先進国の子どもの幸福度を形作るものは何か」(ユニセフ・イノチェンティ研究所調査)で、日本の「子どもの幸福度」は先進国38ヵ国中、20位でした。2013年に行なわれた前回調査の6位からかなり順位を落としています。特に「精神的幸福度」については、生活満足度の低さや自殺率の高さが影響し、ワースト2位という結果に。健康や学力、経済面はトップクラスなのに、子どもが幸せを感じられないという事実。どうしたら、子どもたちは「自分は幸せ」と思えるようになるのでしょうか。今回は、「子どもの幸せ」と「子どもを幸せ体質にする親の特徴」について考えてみます。「幸福の4因子」があれば人は幸せになれる!人はどうすれば「幸せ」を感じられるのでしょうか?心理学・統計学をベースとし、「人はいかにすれば幸せになれるのか?」を追求する学問「幸福学」の第一人者である前野隆司氏(慶應義塾大学大学院教授)は、幸せを感じるための要素として、「幸福の4因子」を挙げています。やってみよう因子幸せを感じるためには、やりがいを見つけること。小さなことでもいいので、何かトライすることがとても有効です。新しい学びを得て、成長することに、人は幸せを感じるのです。 ありがとう因子「感謝の気持ち」をもっている人は、周囲といい人間関係を築けるため、幸せを感じやすいそう。また、人を喜ばせたいという気持ちがある人も、相手から感謝されることが多く、幸せを感じることができます。 なんとかなる因子リスクテイクできることは大きな強みになります。「なんとかなる!」と失敗を恐れずチャレンジできる人は、自分の世界が広がり、幸せへの道筋を見いだすことができるでしょう。 ありのまま因子人との比較で勝って得た幸せは、長続きしないことがわかっています。「人は人、自分は自分」と、ありのままの自分を受け入れることが、幸せにつながります。つまり、「幸せな人」というのは、「自己肯定感が高く、利他的で、人への感謝を常にもち、楽観的である人」と言えるでしょう。前野氏によると、不幸せな人は視野が狭くなりがちなのだそう。抱えている問題に対し、その一点しか見ていないため、袋小路に入り込んで出られなくなってしまうのです。反対に、幸せな人は、物事を俯瞰して見ることができるため、視野が広くなり、さまざまな解決策を出すことができます。解決策が出せれば、「なんとかなる」と考えられるため、楽観的にもなれるというわけです。そして驚くべきことに、「幸せな人」は「不幸せな人」よりも、寿命が7~10年長く、仕事の創造性は3倍、生産性は1.3倍になるという研究結果も出ています。幸福学についてもっと詳しく知りたいという方は、前野氏の著書『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』を読んでみてはいかがでしょう。「幸せは自分でコントロールできる!」と断言している前野氏が、幸せの仕組みをロジカルに解き明かしています。子どもの幸せの鍵を握っているのは、親ところで、いま、あなた自身は幸せですか?なぜこんな質問をしたのかというと、親の幸せが子どもの幸せに大きく関わっているからです。『世界に通用する子どもの育て方』の著者で、臨床心理学医学博士の松村亜里氏は、「子どもの幸せの鍵を握っているのは、親である」と言っています。どんな親でも子どもの幸せを願って、いろいろしてあげたいもの。しかし、まじめな人ほど、子どもを差し置いて自分の幸せを追求することに後ろめたさを感じてしまうようです。実際に、この後ろめたさを感じたことのある方は多いのではないでしょうか。ですが、「自分の欲求を我慢して子どもにばかり尽くしてはいけない」と前野氏は言います。尽くした先に生まれる、「ずっとそばにいてほしい」という束縛する気持ちは、子どもの自由を奪います。それに、子どものためにどんなに頑張っても、イライラして子どもにあたってしまっては本末転倒です。また松村氏は、もっと個人の強みにフォーカスするべきだと言います。日本人はつい弱みに注目してしまいがちですが、研究によると「自分の強みを知っている人は幸せになる」と証明されているのだそう。「人前で話すのは苦手でも、自分の考えをまとめることは得意」「飽きっぽいけど、新しいことにチャレンジするのは好き」というように、誰にでも「その人なりの強み」があるはず。これからAI化が進む未来に生きる子どもたちには、強みを生かし、価値を自分でつくり出していく力が絶対に必要なのです。まずは親自身がそのお手本になるべく、自分の強みを見つけ、幸せを積み重ねていく姿を子どもに見せましょう。親が毎日楽しそうに生きていれば、子どもは「自分もそうなりたい!」と思うもの。まさに「子は親を写す鏡」。ですから、「親自身が幸せになることはわがままでも勝手なことでもなく、むしろ子どものため」なのです。子どもを幸せ体質にする親の特徴6つ前述した「子どもの幸福度」の調査で、1位に輝いた国はオランダでした。オランダの子どもたちには、いわゆる「反抗期」もないのだとか。日本とオランダ、何が違うのでしょうか。どちらも、安全で物質的にも恵まれて、十分な教育を受けられることは、共通しています。違いは「その幸せを感じることができるかどうか」にある模様。そこには親の影響も少なからずあることは先に述べました。子どもを幸せ体質にしているオランダの親たちの特徴に、改善の糸口を探してみましょう。特徴1:子どもを「できる子」に育てようと思っていないオランダの親は、「頭がいい子」に育てる教育法などにあまり関心がありません。ですから、知育DVDを子どもに見せたり、幼児向けの習い事をさせたりする親はほとんどいないようです。親たちは、自分の子どもが「頭がいい子」に育つよりも「明朗でのびのびとした子」に育つことを願っています。特徴2:子どもの外遊びに付き添わない親の付き添いなしで外で遊ぶ子どもの姿は、オランダでは珍しくありません。よちよち歩きの子どもふたりが公園の滑り台で遊んでいても、親たちはベンチに座っておしゃべり。危ないからと横で見守ったり、「そこは触ったらダメよ」なんて言ったりはしません。オランダの子どもたちは外遊びで自由を満喫できるのです。特徴3:「ダメ」「~しなさい」と言わないオランダの親は、子どもに意見を押しつけることを嫌がります。しつけとして “指示する” ことも良しとしません。その代わりに、「~してほしい」という親の意思を、その理由とともにきちんと伝えるのです。そして、それをやるかどうかは子ども次第。考えさせて、行動は子どもに委ねます。特徴4:とにかく忍耐強い子どもと同等に向き合うことを常としていて、子どもの意向を確認しながら物事を進めるので、何事にも時間がかかります。そのため忍耐力は不可欠。子どもは大人のように、効率的に動くことができません。それでも、オランダの親たちは子どもの判断を待ちます。子どもを信じているからこそ、意志を尊重できるのです。特徴5:完璧主義ではない以前、ニューヨークタイムズで「オランダ人女性はなぜうつにならないのか?」と取り上げられたことがあります。その理由のひとつは、オランダの人は「完璧主義」でない人が多いから。「理想の自分」をつくりあげたり、人と自分を比較して落ち込んだりということが少ないのだそうですよ。特徴6:自分時間を大切にしているオランダは「パートタイムワーキング大国」。ワークシェアも進んでおり、自分に合ったライフスタイルを選ぶことができます。また、オランダの親たちは自分の時間を必ずもつようにしています。そのちょうどいいライフワークバランスこそが幸福感につながることを、オランダの親たちは知っているのです。オランダで、幸せのベースになると考えられているのは「平等主義」です。みなが平等であることで、比較、嫉妬、葛藤などの精神的ストレスがかなり減ります。それは親子関係でも同じ。親は子どもと対等でありながらも、人生の先輩として、「よいお手本」となることが推奨されています。親がよい行動と幸せな様子を見せることで、子どもの「幸せ感度」も自然と高まっていくのでしょう。***「幸福度研究」の第一人者であるオランダ・ロッテルダム エラスムス大学のルート・フェーンホーフェン教授は、「幸せは、生活満足度」だと述べています。経済的な豊かさではなく、「どれだけ生活を楽しんでいるか」ということが幸せにつながるのです。オランダの親たちはその点に価値を見出して、実践しています。もちろん、それぞれの国の文化、慣習、社会システムがあり、それぞれの家庭事情もあるので、すべて同じというわけにはいかないでしょう。それでも、オランダの事例に学ぶことは多いですね。(参考)Rese Mom|「親が幸せになることが大切」幸せな子どもを育むポジティブ心理学 松村亜里さんunicef|ユニセフ報告書「レポートカード16」発表 先進国の子どもの幸福度をランキングSTUDY HACKER|幸福学が証明「幸せな人はいろいろお得」――今日から始められる“幸せ習慣”教えますSTUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「子どもは宝物だ」という思考が危うい訳。子を思うなら親は“自らの幸せ”を追求すべきYouTube|Well Being~幸福の4因子〜リナ・マエ・アコスタ 著, ミッシェル・ハッチソン 著, 吉見・ホフストラ・真紀子 訳(2018),『世界一幸せな子どもに親がしていること』, 日経BPマーケティング.親力|あなたは待てる親?待てない親?待てる親だけが子どもを伸ばせる
2021年01月08日毎週のように、子どもの習い事の練習や試合に帯同し続け、小学校6年生でそれが卒業を迎えると、親御様も、必死に頑張り続けてきたことが無くなり、喪失感を味わったり、無気力になったり、強い疲労を感じることもあるでしょう。「子どものサッカーがなくなって、これからどうしたらいいの」と感じる方もいるようです。これは一種のバーンアウト(燃え尽き症候群)と考えられます。中学以降になると保護者の「観戦」はあっても「帯同」はなくなることでしょう。いつかは来ることですが、事前に心の準備ができていたら少しは気がラクですよね。それでは、バーンアウトにならないための3つのポイントをご紹介します。(文:筒井香)1.スポーツを通じて学んで欲しいことを多視点で考える子どもを想うからこそ感情が先立ってしまい、親が子ども以上に、そしてご自身のこと以上に勝敗へのこだわりを強めてしまう可能性があります。それが選手で言えばオーバートレーニングにあたるような、過度な応援になり、疲労を強めてしまうことに繋がると考えられます。改めて、スポーツを通じてわが子に何を学んでもらいたいかを考えてみると何があるでしょうか。チャレンジする心や、忍耐力、思いやりなど、きっと勝敗だけに限らないことと思います。また、過度の応援や期待が、子どもへの必要以上のプレッシャーになることが懸念されていることからも、勝敗以外にも目を向ける姿勢は大切になると思います。2.自分で自分を褒める毎週のようにわが子の練習や試合に帯同し続けることは、子どもの成長を見守れる嬉しい機会であると同時に、心身ともに疲労することも考えられます。しかし、このように帯同することは、「親としての当然果たすべき責任である」とご自身も考えておられますし、周囲それをも当然のことと考えているでしょう。卒業までスポーツを継続した子どもを褒めることはあっても、帯同した親を褒めることは少ないのではないかと思います。自分自身や周囲が当然であると思っていても、実は頑張っていることもたくさんあるはずです。「当然」というワードは、無意識に思い込んでしまっていることをお知らせしてくれているかもしれません。改めて、親御さんが自分で自分を褒めることも大切にしていただければと思います。3.多様なアイデンティティや自己像を持つ子どもに帯同することだけに情熱を注ぐことをあまりに重視すると、疲労感や、それが終わってしまった時の喪失感が強くなってしまうでしょう。「子どものために帯同する自分」だけが自己像になり、それをしているのが自分であるというアイデンティティを持つことになるためです。そこで、多様なアイデンティティや自己像を大切にするために、趣味の時間やご友人と過ごす時間を持つことが重要になると考えられます。もちろん、子育て中の親御さんにとって簡単なことではないと思います。しかし、出産前と同じ状態を求めれば難しいことも、ご友人と電話をしたり、テレビドラマを観るなど一週間に数時間だけ自分の時間を持つことであれば、実現できるかもしれません。疲れを感じた時こそオススメです。3つのポイントを抑えていただき、有限である子どものスポーツとの素敵な時間をお過ごしいただければと思います。入団から卒業まで、それこそ小学校6年間ずっと子どものスポーツに関わってきた方も多いでしょう。一生懸命だからこそ、バーンアウトのような状態になることもあるかもしれません。そんな時には、無理に元気を出そうとせずに、「そりゃ頑張ったから疲れたよね」と、今の自分の状態を素直に受け入れることで心を休ませ、少しでも趣味の時間やご友人と過ごす時間を持つことで栄養補給をするなど、「心の体力回復」に努めることが大切ですね。筒井香(つつい・かおり)株式会社BorderLeSS代表取締役博士(学術)日本スポーツ心理学会認定スポーツメンタルトレーニング指導士大学・大学院時代に人間行動学、臨床発達心理学、スポーツ心理学などの心理学から「人間の特性」を広範に学び、また、博士論文では、「個別性を重んじたポジティブシンキングの多様性」に関する理論を構築。現在はオリンピック、パラリンピック選手のメンタルトレーニングのほか、スポーツを頑張る親の学び舎「スポスタ」の講師として、スポーツを(アスリートとして)頑張っている子どもの保護者に向けて、人としてのキャリアのなかにアスリートとしてのキャリアも含めた、包括的な人生設計に重要な理論と実践方法を伝え、子どもの「キャリア=人生育て」を心理学の視点からサポートしている。株式会社BorderLeSSスポスタ
2021年01月07日前回は、目標を立てる前にやっておきたい1年の振り返りについて、しつもんメンタルトレーナーの藤代圭一さんに話を伺いました。今回は本題である目標の立て方についてのポイントをレクチャーしていただきます。(目標はノルマではないのです。楽しみややる気を生み出す目標を考えましょう)<<今年の目標を立てよう!の前に。知っておきたい「成長につながる目標」を立てるために"やるべきこと"■目標はノルマではない。「○○したい」を大事にして「まずはこの1年をどんな年にしたいのか。"したい"の部分を引き出してあげたいですね」藤代さんは、目標を立てる上で子どもたちの望みや願いを引き出す機会が大事だと言います。目標はともすれば"しなければいけない"という、ノルマになりがちですが、強制を求めるのではなく、やりたいという想いを大事にすることが重要なのです。「たとえば海外旅行をイメージしてください。旅行に行くのに、これをしなくちゃいけない、という考えは出てこないでしょう。『これをやらなくてはいけない』とノルマを設けてしまうと、旅行が楽しくなくなってしまいます。それと同じで、自分がしたいこと、どうなりたいかを求めることが楽しみややる気を生み出すのです。小学生ならなおさら、"しなくてはいけない"ではなく、"やりたい"という願望を目標にしたいですね」そのうえで、藤代さんはふたつの視点を持つことが大事だと指摘します。それは「結果の目標」と「成長の目標」です。「例えば、優勝したいといった結果の目標ももちろん大事ですが、上手くなりたいや、ここを伸ばしていきたいというような、成長の目標も引き出して行きましょう。結果の目標だけだと、振り返る際に、どうしても達成できなかったというネガティブなものになりがちです。でも成長に目を向ければ、結果には到達できなかったけど、『この部分は取り組めていたよね』とか、『ここは成長できたね』といったように、ポジティブな部分も振り返ることができるのです」■どんな目標を立てたらいいのか分からない時は...では、目標を立てる際に、どの程度のスケールで考えればいいのでしょうか。なりたいという願望を持つことは大事ですが、例えば県大会でも勝てないチームの子どもが、全国大会で優勝したいという目標を持つのは、悪いことなのでしょうか。「小学生くらいだと、目標と夢の区別をつけるのは難しいことかもしれません。ただ、スポーツ心理学的には、頑張れば実現できそうなこと、100~120%の力を出せば実現できそうなことを、目標に設定すると良いとされていますね」ただし、と藤代さんは言葉を続けます。「それは大人が知っていればいいことで、子どもが全国大会で優勝したいと言っている目標を、否定する必要はありません。もし、そういう目標が出てきたら、そのために何が必要かなとか、これからの行動をどうすればいいのか、という成長の部分にフォーカスしてあげることが大事になってきます」逆に目標を小さく見積もる子どももいるはずです。簡単にクリアできそうな目標を立てた場合には、どう対応するのがいいのでしょうか。「そういう子に対しては、できそうなことをクリアして成功体験を与えるという考え方を持つのがいいでしょう。100%の力でできることに対して、実現できた楽しさや誇りを感じられるようなかかわり方ができれば、また次の目標を立て、そこを目指して進んでいくことができるはずです」一方で、目標を立てられない子もいるかもしれません。これまでにそういう機会がなかった場合には、目標を立てることさえ難しいことも十分に考えられます。「その場合には、最初に『この1年が終わった時にどうなっていたら最高だと思う?』と、問いかけてみるのがいいかもしれません。サッカーだけじゃなく、勉強、社会とのつながり、家族のこと、なんでもいいので、1年後の最高の自分をイメージする機会をつくってみましょう。そしてその答えを引き出したら、今度は『どうすれば、それが実現できるかな?』と問いかけてみてください。それが成長の部分の目標になるのです。なかには、それでも目標が立てられない子もいます。そういう場合には『目の前のことに全力で取り組む』という考え方を持ち合わせたいものです。川崎フロンターレの中村憲剛選手もそういったタイプだったそうです。目の前のことを一生懸命取り組むなかで今の地位を築いていった。人は大きく分けて山登り型と川下り型のふたつのタイプに分かれるのですが、憲剛選手のようなタイプは川下り型に分類されます。流れに身を任せ、目の前のことを一生懸命に取り組んでいく。目標を立てられないやつはダメだという考え方だと子どもの負担になるので、そういう子にはそういう子なりの接し方が求められてきます」■できなかった理由を他者に求めない。「自分ごと」で振り返ると成長の道筋が見えてくる(サカイクキャンプでも、失敗したら原因を考えて何度もチャレンジする力を養う指導をしています)そして大事なことは、「目標」と「振り返り」をワンセットとして考えることです。目標を定め、それに対してどうだったかを振り返る。これは1年というスパンである必要はなく、1か月、あるいは1週間という期間で繰り返していくことで、選手としてだけでなく人間形成の部分にも役立ちます。ここでポイントとなるのは、自分自身のこととして考えることです。なぜできなかったのか。それを人のせいにはせず、自分のことにフィードバックすることが重要となるのです。「たとえばGKの子がミスをして試合に負けてしまい、自分の立てた目標が達成できなかったとします。そこで、振り返りの際に、『あいつがミスをしたから』という考え方では成長にはつながりません。『僕がシュートチャンスで外してしまったから、もっと練習しよう』というように、自分のこととしてフィードバックができるようになると成長につながりますよね」人は得てして、結果を出せなかったときに、人のせいにしがちです。それは子どもだけでなく、大人の世界にも当てはまるでしょう。結果が出なかったときには様々な問題があるはずです。その原因を外には求めず、自分にできることが他にあったのではないかと考える。そういう考え方を培うことが、何よりも大切なことなのです。「失敗があるから次に行ける。そういう考え方が習慣になっていれば、失敗も苦にはなりません。それを習慣化するには、立ち止まり、振り返る機会が重要になります。責任を他人に押し付けるのではなく、自分のこととして振り返り、なにが足りなかったのかを考える。その繰り返しがサッカーだけではなく、人として豊かな人物に近づくはずです」毎日のプレーの振り返りはサッカーノートを使って行うことができます。例えば、お子さんがノートにうまくいったことは「パス」「シュート」だけと書いたとしたら、親御さんは「どんなパスがうまくいったと思った?」「どんなシュートがうまくいったと思った?」と、具体的にかけるように「問いかけ」だけ書きましょう。そうすると次回は子どもの中に「あ、そうだった具体的に書こう」と行動が生まれます。抽象的な答えを「×」とするのではなく、そこにコーチや親御さんが「問いかけ」をすることによって、子どもの思考を深める関わりがおすすめです。お父さんお母さんもお子さんと一緒に2021年にやってみたい事、達成したいことなど、どんな小さなことでもいいので一緒に目標を立ててみるのも良いのではないでしょうか。目標を立て、振り返る。その作業の繰り返しが、子どもの成長を促す大事なルーティーンになるのです。そのためにも、まずは年の初めに、子ども達と一緒に、「目標を立てる」時間を設けてみてはいかがでしょうか。<<前編:今年の目標を立てよう!の前に。知っておきたい「成長につながる目標」を立てるために"やるべきこと"藤代圭一/スポーツメンタルコーチ1984年、名古屋生まれ。東京都町田で育つ。スポーツスクールのコーチとして活動後、教えるのではなく問いかけることで子どものやる気を引き出し、考える力を育む「しつもんメンタルトレーニング」を考案。全国優勝を目指す様々な年代のチームから地域で1勝を目指すチームまでスポーツジャンルを問わずメンタルコーチを務める。全国各地でワークショップを開催し、スポーツ指導者、保護者、教育関係者から「子どもたちが変わった」と高い評価を得ている。2016年からは「1人でも多くの子どもたち・選手が、その子らしく輝く世の中を目指して」というビジョンを掲げ、全国にインストラクターを養成している。著書に「子どものやる気を引き出す7つのしつもん」(旬報社)などがある。(取材・文:原山裕平)
2020年12月27日子どもを「ほめること」と「叱ること」については、そのメリット・デメリットを理解している親御さんは多いでしょう。一方、「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えることについては、あまり意識することはないかもしれません。しかし、親が子どもへの感謝の気持ちを言葉にすることで、子どもは自信をもってその先の人生を歩むことができるようになるのです。さらに「ありがとう」は、言われたほうはもちろん言ったほうにもよい影響を与え、ポジティブな人生を送るキーワードにもなります。今回は、「ありがとう」がもつ大きなパワーと、親が子に感謝の気持ちを伝えるメリットについて考えていきましょう。毎日何回「ありがとう」と言っていますか?子どもに対して、「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えるよりも、叱ったり注意したりすることのほうが圧倒的に多いご家庭は少なくないはず。考えてみれば、お手伝いをしてくれたときやプレゼントを渡してくれたときくらいしか、はっきりと子どもに「ありがとう」を伝える機会はないかもしれません。「親子なんだから」「夫婦なんだから」と、家族であることを理由に、改まって「ありがとう」と言うのが照れくさい人もいるでしょう。しかし、どんなに感謝の気持ちをもっていても、それを言葉にして伝えないことには意味がありません。夫婦間では、「ありがとう」の一言が円滑な関係を構築するのに一役買うことがよくあります。東京大学名誉教授で教育学者の汐見稔幸先生は、著書の中で「とくに男性は感謝の気持ちを表したり、人をほめたりするのが苦手であるからこそ、『ありがとう』は超えなくてはならないハードルなのです」と、「ありがとう」がいかに重要な言葉であるかを説いています。汐見先生によると、「妻が自分のためにしてくれたことに対して『ありがとう』と伝えることで、相手は『またがんばろう』と思えたり、お互いのことに興味や関心を向けるようになったりする。そして好循環が生まれ、コミュニケーションが深まる」とのこと。もちろん親子関係においても同様です。むしろ、日常的に親から子どもに感謝の気持ちを伝えるように心がけると、想像以上の「いい効果」が期待できることもわかっています。次に詳しく説明していきましょう。子どもの自己肯定感を上げる「ありがとう!」親の「ありがとう」の言葉は、子どもにどのようなよい影響を与えるのでしょうか。具体例を交えながら解説していきます。■「生まれてきてくれてありがとう」アドラー心理学カウンセリング指導者で上級教育カウンセラーの岩井俊憲さんは、「あなたがうちに生まれてきてくれて、お母さんは幸せだわ」「うちの子になってくれて、ありがとう」など、「かけがえのない存在」「必要とされている存在」というメッセージを伝えることで、子どもは自分自身を信頼できるようになると言います。自分の子どもに対して、親ならば「生まれてきてくれてありがとう」と思うのは当然です。ただし、口に出すのは気恥ずかしく、きちんと伝えたことがないという親御さんも多いはず。しかし、言葉にすることで、子どもは自分の存在を肯定し、自信を育むことができるのです。■「(お手伝いや片づけを)してくれてありがとう」お手伝いや片づけなど、子どもの行動に対して「ありがとう」「助かったよ」と声をかけると、子どもは自分が役に立てたことに喜びを感じます。東邦大学医学部名誉教授であり生物学者の有田秀穂先生によると、感謝されることで感じる温かい気持ちは、オキシトシンの分泌によって生まれるそう。オキシトシンは、ポジティブな気持ちになる効果があることもわかっています。発達臨床心理学を専門とする、東京都市大学教授の井戸ゆかり先生もまた、子どもの好意に対して親が「ありがとう」と表現することで、子ども自身の感謝の気持ちを育み、自己表現を豊かにし、人間関係を円滑にしていく強さを培うことにもつながると話しています。■「えらいね」のほめ言葉を「ありがとう」に変える日本キッズコーチング協会理事長で幼児教育家の竹内エリカさんは、「行動を評価する『えらいね』という言葉をかけられ続けた子どもは、評価ばかりを気にするようになり、その言葉を得るために行動を起こすようになる」と指摘します。子どもをほめるとき、つい「えらいね」と言ってしまいますが、それよりも「ありがとう」を伝えるように意識しましょう。すると子どもは、「誰かの役に立ちたい」という本能的欲求が満たされて、思いやりや貢献心のある人間へと成長するそうです。■「○○くんのおかげで助かったよ。ありがとう」『子育てハッピーアドバイス』シリーズの著者である精神科医の明橋大二先生は、「子どもの自己肯定感を育むのに、いちばん簡単で有効な言葉は『ありがとう』」だと話します。「ありがとう」はただのお礼の言葉ではなく、同時にその人の存在価値を認め、自己肯定感を高めてくれる言葉でもあります。「自分でも人の役に立てる」「自分は必要とされている」という実感こそが、生きる力にもつながるのです。■「早く準備をしてくれてありがとう。助かるよ」出かける前にモタモタして準備が進まない子どもがいれば、「早くして!」と注意したくなりますよね。しかし、前出の岩井俊憲さんによると、その気持ちを抑えて、まずは「○時までに出発したいから協力してね」と促すといいそう。そして、ちゃんと準備ができたら「○○ちゃんが早く準備をしてくれて助かったよ。ありがとうね」とお礼をしましょう。すると子どもは、「自分が協力したらお母さんはこんなに喜んでくれるんだ」と学び、自分から進んで準備するようになります。■「お母さんが忙しいのをわかって手伝ってくれたんだね。気づいてくれてありがとう」また岩井さんは、「優しく思いやりのある子に育ってほしいなら、子どもの『共感に基づく行動』に注目して感謝するといい」と述べています。たとえば、こちらからは頼んではいないのに、大変そうにしている親や困っている兄弟を見て、自分から手を差し伸べてくれたとき。「気づいてくれてありがとう」「弟が困っているの、お母さんも気づかなかったよ。助けてくれてありがとう」など、その行動を受け止めて、感謝の気持ちを言葉にするといいでしょう。「感謝の心」はポジティブな状態を生み出す誰に対しても感謝の気持ちをもち、素直に相手に伝えることは、簡単なようで意外と難しいですよね。なにより自分に余裕がないと、なかなか「ありがとう」の言葉も出てきません。しかし、「ありがとうの言葉」や「感謝の気持ち」が、いかに人生の充実度や幸福度を左右するのかを知れば、できるだけその気持ちを保ち続けていたいと思うはずです。「感謝の心をもっていると、妬み、憤り、後悔や落ち込みといった、私たちを幸福から遠ざける有害な感情を抱かなくなる」と述べるのは、カリフォルニア大学デービス校のポジティブ心理学者、ロバート・エモンズ教授。つまり、人生をより前向きに生きていくには、感謝の心をもち続けることが大切なのです。ペンシルベニア大学心理学部教授マーティン・セリグマン氏がうつ病患者に行なった実験では、「感謝の気持ちによって通常よりも幸福感が高まり、抑うつ状態が減った」という結果が導き出されました。また、心理学者のロバート・エモンズ氏とマイケル・マッカロー氏の調査では、不眠症の症状がある人たちに感謝の気持ちを書いた日記を書いてもらったところ、症状の改善や睡眠の質が向上するといった変化がみられたそう。さらには、ノースイースタン大学が中心となって行なった研究によると、感謝の気持ちは自制心を高める効果があるということがわかっています。これらの研究結果からも、感謝の気持ちは人間の幸福感を高め、人生の質向上に良い影響を与えることは明白だと言えるでしょう。感謝の気持ちをもつことが幸福感につながるというのは、大人の場合に限ったことではありません。筑波大学人間系教授の相川充先生が小学生を対象に行なった調査(2013年実施)では、子どもたちの感謝の気持ちが友人関係における好循環を作り出すことがわかりました。感謝の心をもち続けると、幸福感が得られる感謝の心は、ネガティブな感情を取り除き、人生をより豊かにし、幸福へと導いてくれる大きな力になります。さらに幸福感を得た人は、あらゆる面でよりよい結果が手に入りやすい状態になることから、感謝の心がもたらす好循環の連鎖は想像以上だと言えるでしょう。人間の幸せのメカニズムを科学的に明らかにする “幸福学” の第一人者であり、慶應義塾大学大学院教授の前野隆司先生は、次のように述べています。たとえば幸せな人は、自己肯定感が高い、仕事のパフォーマンスが高い、目標が明確、利他的、楽観的、多様な友達がいるなど、どんな人でも生かせる知見が蓄積されています。すでにある程度幸せな人も、ポジティブ心理学を学ぶことで、さらに幸せになれる時代がやってきたのです。(引用元:前野隆司(2017),『実践 ポジティブ心理学 幸せのサイエンス』, PHP新書.)前野先生によると、ポジティブ心理学とは「心が普通の状態にある人が、いまよりももっといい状態になって幸せになることのできる学問」だそう。従来の心理学が、病気や悩みなどネガティブな心理状態にフォーカスしていたのに対し、ポジティブ心理学は「普通の生活をさらに生き生きとしたよい状態にすること」を目指しているのです。深刻な悩みや不安を抱えているわけではなく、むしろ毎日を問題なく過ごしているーー。そのうえで、さらに心身の状態をレベルアップしたり、子どもとの関係をもっとよい方向へと深めていったりしたいと望む人にとってはうってつけの心理学が、このポジティブ心理学です。もっと深くポジティブ心理学について知りたい、親子のコミュニケーションにも役立てたい、という人は、ヒューマンアカデミーの「ポジティブ心理学資格取得講座」を受講してみるのもいいでしょう。オンラインで月々3,000円から始められるので、気軽にチャレンジできるのも嬉しいですね。親子で「ありがとう」を学べる絵本4冊最後に、お子さまと一緒に感謝の心を育める絵本を紹介します。どれも名作と呼ばれるものばかりです。親子で「ありがとう」の大切さを実感してくださいね。◆『ありがとう』いなかから遊びに来てくれたおばあちゃんから、手づくりのクッキーをもらったにゃんた。「本当はおもちゃが欲しかったのに……」という気持ちから、素直に「ありがとう」が言えません。子どもが「ありがとう」の本当の意味を考えるきっかけになる一冊です。◆『ありがとう』山へ出かけたりすの親子は、大好きなどんぐりをたくさん集めます。そのどんぐりは世代を超えて、おじいちゃんやおばあちゃんからつなげられたものでした。まさに、出版社からのコメントにあるように「自分ひとりでは生きてはいけない。自分を支えてくれる人たちの大切さを学べる絵本」です。◆『うまれてきてくれてありがとう』「生まれてきてくれてありがとう」と、子どもに直接言うのが照れくさいのなら、絵本を通して伝えてみましょう。優しく、心温まる世界を描いた本作に、「子どもに読み聞かせをしながら泣いてしまった」というお母さんが多いのもうなずけます。◆『どうぞのいす』30年以上愛され続けているロングセラー絵本であり、いまもなお小さな子どもたちの「思いやり」の心を育み続けている一冊。うさぎさんがつくった「どうぞのいす」をめぐって、次々と動物たちの優しさが連鎖していく様子は、子どもに「他者への思いやりと感謝」を教えるのにぴったりです。***そういえば最近、子どもに「ありがとう」って言えてないな……と感じているのなら、さっそく「ありがとう」と伝えてみませんか?あれこれ理由など考えずに、お片づけやお手伝いをしてくれた、約束を守ってくれた、今日も元気に過ごしてくれた、など小さなことに感謝して言葉にしてみましょう。(参考)汐見稔幸(2008),『夫婦力ー夫の「話し方」で夫婦はこんなに変わる』,岩崎書店.PHPのびのび子育て 2019年10月特別増刊号,PHP研究所.加藤紀子(2020),『子育てベスト100』,ダイヤモンド社.mamagirl|「ありがとう」は、人の役に立つ子どもを育てる魔法の言葉!マンガで楽しく、手軽に読める『子育てハッピーアドバイス』シリーズ|自己肯定感を育むのに、いちばん簡単で、有効な言葉は?ダイヤモンド・オンライン|「人に感謝できる子」の親がしている5大習慣HUFFPOST|The Surprising Benefit Of Writing A Gratitude Letter To My FatherPsychology Today|How Gratitude helps You Sleep at NightNortheasternUnivercity college of science|CAN GRATITUDE REDUCE COSTLY IMPATIENCE?モチベーション研究所|研究所第6回フォーラム「感謝するとwell-beingは高まるのか?」前野隆司(2017),『実践 ポジティブ心理学 幸せのサイエンス』,PHP新書.ヒューマンアカデミー|ポジティブ心理学取得講座
2020年12月23日ミドルエイジの先輩たちが「自分らしい生き方」に至るまでーー難波寿和さん島根県を拠点に、フリーランスの臨床発達心理士・公認心理師として働く難波寿和さん。子どもから大人まで、発達障害がある人のカウンセリングや療育に携わっています。そんな難波さんは、ASDの当事者でもあります。当事者が当事者を支援する中で感じることについて、難波さんのこれまでの歩みと共にお聞きしました。いい関係を築きたいのに、うまくいかない。「問題児」扱いされた幼少期――難波さんは、「臨床発達心理士」の資格をお持ちですよね。臨床発達心理士の仕事は、どのような内容なのでしょうか?難波寿和さん(以下、難波):臨床発達心理士は、発達心理学をベースに、子どもから大人までの成長・発達をサポートする仕事です。発達障害のある人だけでなく、幅広い人が対象となります。具体的な仕事内容としては、発達障害のあるお子さんの療育に関わったり、大人の発達障害当事者の方のカウンセリングをしたりしています。昨年、新たに国家資格として定められた「公認心理師」の資格も取得しました。Upload By 姫野桂――難波さんは幼い頃、どんな子どもでしたか?難波: 家の中ではやんちゃでしたが、母と離れることへの不安が強かったですね。喘息の症状緩和のために、3歳ぐらいからスイミングに通っていたのですが、そこで母親から強制的に引き剥がされたのが嫌で、母子分離不安になってギャンギャン泣いていました。感覚過敏もあり、母親以外に抱きかかえられると、嫌で噛みついたりもしていましたね。4歳から入った保育園でも、母はいつ迎えに来てくれるのだろうかとずっと不安に感じていました。――お母さんから離れることへの不安は、小学生でも続いたのでしょうか。難波:いえ、小学生からは、学校へ行くことの不安に変わっていったと思います。授業などの細かいスケジュールの変更や、何分後に何が起きるかわからない行事が苦痛でした。先の見通しが立たないので、トイレに行くタイミングがわからず、授業中に漏らしてしまうこともありました。感覚過敏だけでなく、感覚鈍麻もあって、僕は今でも便意がギリギリまでわからないことが多いんです。小学2年生のときに、トイレは休み時間のうちに必ず行っておく、授業中に行きたくなったら「トイレに行きたいです」と言えばどうにかなる、ということに気づき、それでなんとか漏らさずにすむようになりました。――そうだったんですね。他にも、学校生活で何か困ることはありましたか?難波: 落ち着きもなく、忘れ物もひどかったです。ほとんど毎教科で何かしら忘れ物をしていました。授業では、先生の話を記憶しようとした瞬間に、もう次の話に移っているので、なんの話をしているのかが全然わからなくって。1年生の時点で遅れをとっていました。友人関係も、いい関係を築きたいというイメージはありましたが、うまくいきませんでしたね。保護者会が僕の話題でもちきりになるぐらい、問題のある行動をしてしまっていて……。例えば、友人に暴言を吐いたりとか。それでいじめられるようになりました。僕もひどいことを言いたいわけじゃなかったんです。でも、そうしないと友達が自分のほうを向いてくれなかった。学校の先生は、「人の気持ちを考えなさい」と言いましたが、具体的にどうしたらいいかは教えてくれなかったので、どうすることもできませんでした。そのころは、全部人のせいにしていましたね。学校が悪い、先生が悪い、いじめる友達が悪いという考え方でした。――そんなとき、幼少期の難波さんにとって安心できる存在だったお母さんは、どのような対応をされたのでしょうか。難波: 母親は、「とにかく生きとりゃいい」「死ななかったらなんとかなるわ」みたいな考え方で(笑)。具体的な対処法は教えてくれませんでしたが、小学校6年生ぐらいまで、僕が帰ると膝の上で30分ぐらい話を聞いてくれました。「こんなことした」「あんなことされた」と泣きながら話すと、「おう、いけんかったなあ」とただただ慰めて支えてくれたのを覚えています。友達を模倣することでなんとか切り抜けてきた難波:僕、小学校の卒業式のときに、「僕は生まれ変わるんだ」と決めたんですよ。小学生のときの記憶に全部蓋をして、もう何も言わない、何も感じないようにするんだ、と。その決意の通りに中学校では比較的おとなしく過ごし、一緒に遊べる他の小学校出身の友達もできました。その一方で、乱暴に振る舞う人をコミュニケーションのお手本にしてしまうなど、まだまだうまくいかないこともありました。授業は黙って座っていれば問題ないことに気づき、耳も慣れてきて、小学生のころよりは聞けるようになりましたね。塾にも通って、成績は中の下ぐらいまでには、なんとかもちなおして。きちんと出席していたこともあって、推薦入試を受けることができ、全寮制の高校に進学しました。Upload By 姫野桂――寮ということは集団生活になるかと思いますが、その点は苦ではありませんでしたか?難波: むしろ、いろんなモデルがいて、いい模倣の場になりましたね。僕はこれまで、「この人をコピーする」と決めた人の話し方や動き方を模倣して学び、問題行動を修正して切り抜けてきたんです。寮生活では、他の人の掃除や洗濯、勉強の方法を模倣し、学ぶことができました。でも、この学習スタイルには問題があって。理屈がわからないまま覚え、そのまま真似しているから、応用がきかないんです。だから、学校でのテストでは90点取れるのに、模試になると数学2点、のようなことが起きていました(笑)。――応用がきかないという点、すごく共感します。高校生は進路を考える時期でもありますよね。難波さんは「モテたい」という理由で心理職を目指したと小耳に挟みました。難波: そうなんです。当時やっていたドラマを見て、「カウンセラーってモテそうだな」と思った、という不純な動機でした(笑)。一応、他の理由として「自分はなんでこんな変な生き方をしているんだろう?」と思ったこともあります。自分から関わりに行っても、なぜ人が離れていってしまうのか知りたくて、勉強したらわかるかなあと思い、岡山にある大学の心理系学部に進みました。――実際に大学で心理学を勉強してみて、いかがでしたか?難波: 全然楽しくなかったし、「これ、モテるのか!?」と思いました。ユングとかフロイトとか、いろいろ勉強しましたが、もう言葉の意味や解釈がわからないし、なぜそんな心の動きになるのかもわからない。基礎心理学の方面に行こうかとも思いましたが、数学が苦手なので統計学ができず、それもあきらめました。そんなとき出会ったのが、発達障害のある子どもたちでした。大学3年生から4年生ぐらいのころですね。はじめはうまく関わりが持てず、「なんだこの子たちは!」と衝撃を受けました。でも、関わっていくなかで「僕と似ているじゃないか」と感じるようにもなったんです。言うことも聞かないし話も通じない、幼少期の僕にそっくりでした。「自分でも、力になれるのではないか」と感じて。そこから、障害のある人たちを支援する職へ就こうかなと考え始めました。ここだけは、まともな動機でした(笑)。「支援者」というプライドが受診を遅らせた。仕事のつまずきから30歳を過ぎてASD診断を受ける――発達障害のある子どもたちが「自分と似ている」と感じたとのことですが、ご自身が発達障害の診断を受けたのもその時期なのでしょうか。難波:それが、そうではないんです。大学院に入り、障害児教育について研究するにつれて、自分も似ているところがあるぞと思うようにはなりましたが、なかなか受診には至りませんでした。指導教員が主催するペアレント・トレーニング(保護者向けの、子どもとの関わり方を学ぶプログラム)に大学院生たちで参加したときです。振り返りの時間に、他の学生が「あのお母さん、しんどそうだったね」「あの人は、こんな思いを持っているよ」と話していたのですが、僕には全くわかっていなかったんですよ。表情を読んでいなかったし、言葉尻しか掴めず、相手の心情も全然わからなくって。「自分はやっぱり...」と思いました。でも結局、自分は発達障害じゃないという結論にそのときはなったんです。Upload By 姫野桂――どうしてそう思ったのでしょうか?難波: これまで、さまざまな問題行動を模倣で改善してきていたので、自分で直せばなんとかなると思っていたからです。忘れ物があれば忘れないようにする、レポートは期日を決めて出す、片付けが難しいのは片付ける気がないからだ。23歳のときにはそんな風に思っていたので、病院を受診するまでにそこから7年かかりました。――30歳で病院を受診し、ASDと診断されたとのことですが、受診のきっかけは何でしたか?難波: プライベートと仕事での困難が重なり、うつ病になったことがきっかけです。大学院卒業後は、心理士として福祉施設で働いていました。これまで勉強したことを活かせる仕事で、自分に合っていると思いましたし、障害のあるお子さんの支援に関しては保護者の方からも評判がよかったのですが、職員さんとの関係に問題があって。あとから振り返ってみると、自分は書類の不備や忘れ物など日頃のミスが多く、よく指摘されていたんですね。それに、対人関係はどうでもいいと思っていた。そんな中で、会議では自分の思う理想の支援のために「こんなんじゃダメだ」などと強く主張したりしていて...周りからすると、信用するのが難しいですよね。トラブルが多く孤立し、業務を減らされてしまうこともありました。プライベートの人間関係でも悩んでいましたが、それでもなかなか受診しなかったのは、どこまででも改善できるはずだと思っていたのに加え、「支援者」としてのプライドがあったからです。自分のメンタルの管理もできずに人の支援なんてできないと、当時は思っていたので。でも、うつ病になってしまったことで、「これはもう精神科に行かんといけん」と思って、泣きながらようやく病院に行きました。――いざ診断を受けてみて、どんな心境になりましたか?診断が下りて安心したと話す人も多い印象ですが。難波: 「やっぱりな」という思いと、「これからどうしよう」という絶望感の両方がありました。これまで勉強して得た知識から、立て直しは大変だろうと感じ、途方に暮れましたね。当時は障害者差別解消法(2013年)ができる前で、職場等での合理的配慮もなかなか期待できない状況だったので、何も受けられる支援がないと思っていたんです。診断が下りて公私ともに行き詰まった状態になり、もう死のうと思ったこともありました。でも、そこでもう一度自分の人生を振り返ることにしました。1人で記憶の蓋を開けていく中で、これまでの自分の過去と向き合うのが怖くて、自分のことをちゃんと見ていなかったのに気づいたんです。小学校の卒業式で記憶を押し込め、自分の人生をなかったことにしたのもその一つでした。自分では責任を持たず、周りのせいにして問題を放棄していたんですね。そこと向き合いながら、自分はどんなことを辛く感じ、どんな援助が必要なのか、どんな課題があるのかを書き出して、自分ですること・他人に頼ることを分けて整理していきました。そのときに、「やれば普通になれる」という考えはやめ、代わりに「生きやすく、自分なりに生きよう」と思ったんです。仕事はパズルを解くような面白さ。「共感」ができなくても心情は聞き取れるUpload By 姫野桂――そのような経験を経て、いま再び心理士として働いていらっしゃるんですね。心理士の仕事をする上で、ご自身のASD特性がどのように影響するかや、困りごとがあったときの対応方法などについて、お聞きしたいです。難波: 自分のできる方法で自己対処しつつ、自分の特性についてはあらかじめクライエントさんに伝えるようにしています。子どもの療育であっても、発達障害のある大人のカウンセリングであっても、僕は相手に「共感」することってほとんどないんですよ。基本的に共感性がないんです。表情などの視覚的な情報から相手の気持ちを推し量るのも、挑戦はしましたが、自分には無理だとわかりました。それでも、スキルとして話の聴き方や声のかけ方は身につけましたし、耳からの情報なら相手の感情が若干読み取れるので、徹底的に聴いて理解するトレーニングをしました。30歳以降もずっと続けた結果、今はわりとうまくカウンセリングで寄り添えるようになったように思います。そして、僕はクライエントさんやその保護者にも、「発達障害があります」「コミュニケーションに難があります」と開示していますが、それによってカウンセリングをやめていく方はいないですね。僕の本を読んでくださっていて、「知ってますよ」と答える方もいます(笑)。守秘義務等も含む約束事や支援方針について、最初にきちっと話し、了解を得てから仕事に取り組んでいます。――反対に、ご自身も発達障害の当事者であることが役立つこともあるのでしょうか。難波: 忘れ物対策や、怒りの感情のコントロールを支援するときは、すごく役に立っています。また、僕自身が服薬していると話しているので、薬への抵抗感が強い人にも、試してみるという選択肢を増やすことができているかなとは思います。療育を受けているお子さんの保護者さんからすると、僕自身が「こうやって乗り切ってきた大人がいる」という一つの希望にもなるかもしれないですね。――たしかにそうですね。どんなときに仕事のやりがいは感じますか?難波: えーっと、「やりがい」っていうのは正直あまりなくて、基本的にはプレッシャーばかりです。相手の人生を背負っているわけですし、大学院生のときからこの道一本で、他の仕事は多分就けないだろうと思っているので、1回1回が勝負という気持ちでやっています。でも、僕は発達障害や障害のある人たちの療育・カウンセリングに、パズルを解くような楽しさを感じるんです。何か困りごとがあってクライエントさんは来るわけなので、その問題をどうすればその人たちが面白く、楽しくできるか、パズルを解くように考えていく。それで、うまく支援を組み立てて実行できると楽しいんです。そうやって、どんどん来るパズルのピースを解きまくっているような感覚で...。それが、やりがいと言えばやりがいなのかもしれません。できないことはできないから、福祉的な支援を借りる――毎回真剣に仕事に取り組みつつ、そういった楽しさも味わっているのですね。少しプライベートな話になってしまいますが、現在難波さんはご結婚されていて、パートナーの方もASDの診断を受けていると著書で書かれていますよね。パートナーシップに関して意識していることがあればお聞きしたいです。難波:気をつけていることがいくつかあって、一つはギブアンドテイクです。自分がした分の見返りを求めるという姿勢は、経験上ダメになりやすいので(笑)、相手がやってくれたことに関して、自分もできることを探してやろうというスタンスでいます。もう一つは、それぞれの人生がある個人として考えること。彼女には彼女の人生があり、子どもには子どもの人生があって、僕はその人生に一緒にいるだけなので、相手の考えや意見を尊重する。自分は自分で、まだまだうまくできませんが、自分のしたいことを言葉で伝えるようにしています。「察して」は、どちらにとってもやっぱり難しいですね。あとは、できないことはできないので、福祉的な支援を借りることでしょうか(笑)。今は、それぞれが訪問看護、病院、カウンセリングなどから必要な支援を受けています。僕は僕で悩みを話すし、彼女は彼女で話すと思うので、主治医が板挟みにならないよう、主治医はそれぞれ違う人にしています。診断時にプライドを捨てることができたからこそ、今はできないことを「できない」と言って助けてもらったり、適切に声を上げたりすることができていると思います。Upload By 姫野桂――適切に声を上げるというと、なかなか難しいですよね。何かコツはありますか?難波:困りごとに応じて、相談相手を変えることですかね。全て同じところに相談したり、相談先を間違えたりすると、適切な支援が受けにくくなってしまうので。問題が出てきたときに、これは福祉の相談支援専門員の人に相談するのか、それとも主治医か、カウンセラーか、親か...などと、妻と話し合って考えるようにしています。「生きやすく生きること」がゴール――このインタビューの読者には、進路や人間関係で悩みを抱えている人もいるかと思います。そんな人に向けて、何かアドバイスをお願いしたいです。難波:僕がいつも発達障害の当事者さんに言うのは「まあ、ほんとによぉ生きとぉわ!」ということです。みなさんがその場に存在していること自体が、僕にとっては嬉しいんです。苦しさや不安を抱えながら生活している人も多いと思うので、そんなときは、藁にもすがる思いで相談したり、しんどさを打ち明けたりしてもいいんだよ、と伝えたいですね。これから頑張ろうと思っている人たちには、チャレンジをやめないでほしいです。僕も30歳で、他人の感情がわかりにくいと言われるASDの診断が下りましたが、それでも心理士を続けています。僕は周りに「(心理士は)無理じゃない?」と言われ続けてきましたが、結果がどうなるかはわからないことだったとしても、自分がやりたいことには、まずはチャレンジしてほしいなあと思います。あとは、「いい会社」「いい学校」に入ろうとするのではなく、自分が大切にされる場所を選んでもらいたいですね。理想を掲げるのはいいのですが、居場所がないことも実際はあるので...大切にされない思いをしてまでそこに行くというのはちょっとおすすめできません。これは、すでに働いている人たちにも言えることですが、自分の居場所になりそうな場所を考えて動いていってもらえたらいいなと思います。就職しても、進学しても、なんとでもなりますよ。ちょっとでも無理だと思ったら、二次障害になって調子が悪くなる前にさっさと辞めてしまったらいいと思います。人生はいろんな選択肢があって、いろんな生き方ができるから、「こうでなくてはいけない」というものはないと伝えたいです。働くこと、進学することがゴールではなくて、生きやすく生きることがゴールだと思うので。自分なりに納得した生き方をすることを、応援したいと思っています。――では最後に、今後の目標を教えてください。難波:理想としては、当事者ファーストの支援ができたらと思います。日々、困っている人たちの最前線で寄り添いながら、講演会や啓発活動、カウンセリングなどの活動をしていきたいです。「ありえへんことが、ありえる」のがこの発達障害じゃないですか。いろいろな当事者さんが社会に出て行って、「別にいいじゃん」「みんな一生懸命生きてるじゃん」「君は君でいいじゃん」と受け入れられて、生きやすく生きることが社会で実現するような流れになったら、僕の出番はなくなるかなあと思います。僕はこんなぐちゃぐちゃした人生ですが、行き着いたところが心理士なので、なんとかやれるところまでやってみたいなと思っています。あとは、いつかテレビに出てみたいですね(笑)。Upload By 姫野桂終始、穏やかな語り口で、時折冗談も交えてお話をしてくれた難波さん。「仕事にやりがいがない」と言われると、「なぜその仕事を続けているの?」と疑問を持つこともあるかと思いますが、難波さんの場合は、やりがいとはまた違う仕事の面白さを感じているとのことでした。このお話からは、難波さんならではの思考と特性が見えた気がします。難波さんの話すとおり、身を守りつつチャレンジしていく精神を、わたしも持っていたいと思ったインタビューでした。取材・文:姫野桂編集:鈴木悠平・佐藤はるか撮影:鈴木江実子LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2020年12月20日親にとって、お友達トラブルはできれば回避したいものですが、子どもの発達にとっては大切なもの。友達関係はどのように変化して、どんなトラブルが起こりやすいのか。園ではどのようにサポートして、親はどう関わると良いのか。発達心理学の専門家である岡本依子先生に聞きました。お話を聞いたのは:岡本依子さん立正大学 社会福祉学部 子ども教育福祉学科教授。専門は発達心理学。特に親子のコミュニケーションの発達について研究。共著「エピソードで学ぶ保育のための心理学〜子ども理解のまなざし」他、保育者を目指す学生向けのテキストなども執筆している。友達関係の発達段階を知ろう友達関係は、発達につれて変化していきます。年齢ごとの特徴や、起こりやすいトラブルを知っておきましょう。イラスト/杉浦さやか◆3歳頃「一時的な関係」性別関係なく、同じ場所にいる子と遊ぶ集団生活に慣れていない時期には、一緒に遊ばなくても、近くにいる子どもに興味を持ったり、隣の子の遊びにつられたりする様子が見られます。その後、友達と遊び始めますが、3歳では「その場にいる子と遊ぶ」という一時的な関係。男女が入り混じり、気が向いたら同じ場にいる子と遊び、飽きたら違うところに行ったり、一人遊びに戻ったりと、こだわりなく遊ぶ段階です。この時期のトラブルは、まだ友達同士のルールが分かっていないために起こる、アクシデントのようなものです。おもちゃを取ってしまうのも「それは今、使っている子のもの」という「所有」の概念が未発達なためで、悪意はありません。取られた子が怒ることもありますが、多くは「ああ、持っていったな。じゃあ今度は何を使おう」という感覚です。感情のコントロールはまだ上手ではないので、感情的になっているときは寄り添って落ち着くのを待って。園の先生は、こうした場面を「ルールを学ぶチャンス」と捉え、「貸してって言おうね」などと適切な言い方を伝えていきます。◆4歳頃「一緒に遊ぶから友達」好きな遊びが同じ子と一緒にいるように4歳を過ぎると、率先して自分の好きな遊びを選ぶようになります。すると、自然と好きな遊びが同じ子と一緒にいるようになり「一緒に遊ぶから友達」という関係に。ただ、あくまでも主軸は自分の遊びなので、「外で遊ぶ友達」「ままごとをする友達」などと分かれることが多いでしょう。3歳までは「ありのままの自分」で生きていますが、4歳頃からは「すてきなおねえさん、かっこいいおにいさんでいたい」など、「自分はこうなりたい」というイメージを持つように。「ルールを守っている自分は偉い」という正義感も芽生え、ルールを守らない子を見ると告げ口をすることも出てきます。自分と友達の正義が違うと、屁理屈をこねたり、言葉がきつくなったりすることもあるでしょう。4歳後半くらいから仲間外れも見られるようになりますが、これは「友達は大切だから、仲間外れにすることが(相手にとって)罰になる」という友情関係が分かってきた証拠。その発達を理解しつつ、園の先生は相手がイヤな気持ちになること、仲間外れは良くないことを伝えていきます。◆5歳頃「友達だから遊びたい」一緒に遊びたいから自分の意見は後回しこれまでは「一緒に遊ぶから友達」だった関係が、「友達だから遊びたい」に変化する時期。「◯◯ちゃん、一緒に遊ぼう。何して遊ぶ?」と、遊ぶことを前提に、何をするかという交渉が始まります。自分の遊びが主軸だった時期はやりたいことが違う相手とは遊びませんが、この頃になると、その友達と遊びたいがために、自分のやりたい遊びを後回しにして、友達の意見を優先できるようになるのです。これは、学童期の友情関係である「心の友達」につながる出発点。とても重要な変化です。また、友達がどう思っているかを気にするようになるのもこの時期。4歳では一方的だった正義感も「他者の立場に立つ=他者視点」が発達して柔軟になってきます。例えば、滑り台を滑る側から上ろうとする2歳児を見たとき、4歳では「ダメだよ」と決め付けますが、5歳では「まだ小さいから分からないのか」と考えられるようになります。園の先生は自己主張と他者視点がバランス良く発達するように、トラブル解決をサポートしていきます。親はどうする? 友達関係の心配事読者アンケートで「わが子の友達関係に関する心配」について聞き、多かった声について岡本先生にアドバイスをもらいました。親の役目はトラブル前の園との信頼関係作り以前に比べ、今は「園での友達トラブルは、園の責任で解決する」という方針が広く定着しました。また、何か問題があれば教えてもらえますから、子どもが元気で楽しそうに通園しているなら、基本的に心配はいらないでしょう。とはいえ、子どもに「◯◯ちゃんとケンカした」と言われ、その相手を知らないと、親は不安になるもの。普段から、誰と仲が良いか、何をして遊んでいるかといった情報を、先生と親で共有しておくことが大切です。また、子どもはボキャブラリーが少なく、ささいなことを大げさに話したり、誰と遊んだか記憶があいまいで「一人で遊んだ」と言ったりすることも。元気をなくして登園をしぶる日もあるでしょう。心配事があれば、「こんな様子なんですけど、心配し過ぎですか?」「親からは見えない子どもの姿があると思うので、先生からどう見えるか教えてください」など、親の気持ちも含めて先生に相談しましょう。友達トラブルは、子どもが社会性や協調性を身に付けていく上で、大切な成長の糧でもあります。親の役目はトラブル回避よりも「トラブルが起こっても大丈夫」と思えるように、園との信頼関係を作っておくこと、と考えるといいですね。自分の意見を言えない、それも子どもの個性 友達を優先しているのかも新しい集団に入ったばかりなら、子どもの個性なので問題ありません。まわりの様子をしっかり見て、少しずつ自分を表現するタイプなのでしょう。もし集団に慣れた時期になっても意見が言えないなら、意見を言わない環境に慣れてしまっている可能性も。家庭で子どもが自由に意見を主張できているか、振り返ってみましょう。4〜5歳になって、友達の希望を優先することで「友達を喜ばせることができた」と満足感や誇りを感じているようなら、成長の証。褒めてあげるといいですね。友達ができない 遊びに没頭しているなら大丈夫 子どものペースを見守ってひとりで遊んでいても、遊びに没頭できているならまずは見守ってみましょう。遊びに没頭するのは、むしろ発達的には大事な時間です。もし、一人遊びの最中も友達の様子が気になっているようであれば、じっくり集団の様子を観察してから加わりたいタイプなのかもしれません。子どもは「友達になって」と言わなくても、集団の後ろから付いて歩いているうちに仲間に入ったり、離れて遊んでいる子をまねしているうちにお互いが気になって、一緒に遊ぶようになるもの。子どものペースで関係が出来ていくので、親はヤキモキせず、おおらかに構えていましょう。怒りっぽい 今は感情コントロールの練習中 言葉で表現する方法を伝えて怒るのは、悔しさやイヤなことがあったから。怒りはある種の原動力になり、うまくコントロールできるようになると、「これをバネにして頑張ろう」というやる気につながります。幼児期はそうした感情コントロールの練習期間と捉えましょう。また、怒っていることを表現できない方が困ることもあります。「イヤなことされたら、僕だって怒るんだよ」ということを相手にうまく伝えた上で、「もうやめてね」と言えるのが理想的。そのためには、「イヤだったから、怒ったのね」など、感情を言葉で表現する方法を伝えていきましょう。同じ子としか遊ばない 友達だから遊びたい段階 閉鎖的になったらフォローをこれは気にしなくて大丈夫。幼児なりに「気が合っている」ということで、「友達だから遊びたい」の段階に進んでいると考えられます。さらに発達して他者視点が身に付いてくると、友情関係を試すかのように「他の子としゃべっちゃダメ」などと言うこともあるかもしれません。この場合、本気の意地悪ではありませんが、関係が閉鎖的になっているようなら、「お友達がイヤな気持ちになるからね」など、良い方向に導くように声を掛けましょう。友達をしつこく遊びに誘う どのくらいしつこくすると相手が怒るか試すことも大事な経験そもそも子どもはしつこいもの。あまりにしつこくすると相手の子が怒るかもしれませんが、「どのくらいやると相手が怒るのか」を試すのも大事な経験です。相手の子が遊びたくないのなら「◯◯ちゃんはイヤって言っているから、他の子を誘ったら?」、誘っている遊びがイヤなら「違う遊びで遊ぼうって言ってみたら?」など、アドバイスしてみるといいでしょう。友達に対して言葉がきつい 相手が気分を害していると分かれば徐々にマイルドな言い方に言葉がきつくなるのは4歳頃に多く見られ、基本的には一時的なもの。まだボキャブラリーが少ないためで、相手を不快にさせようとしているわけではありません。友達が自分の言葉で気分を害しているのが分かると、言い方を考えるようになり、徐々にマイルドな表現ができるようになっていきます。親は、子どもの言葉がきついと感じたときに「◯◯って言おうね」と、言い換え方を提案してみましょう。また、言葉に関しては「親を映す鏡」という側面もあります。家族の間でも、きつい言葉は避けるといいですね。これも気になる もしも園の友達が新型コロナにかかったら子どもにどう説明する?友達が感染した場合は、下手に隠したり、ごまかしたりせず、子どもが知りたい「単純な事実」をきちんと話すことが大切です。「病気だから治るまでは一緒に遊べないけど、治ればまた遊べるよ」と事実を伝えれば安心できるでしょう。それ以上の説明は、子どもの理解力に合わせて。くどくど説明して、ちゃんと理解できないまま「コロナはすごく恐ろしい」という恐怖心だけを植え付けるのは避けましょう。また、「◯◯ちゃんは、手洗いしてなかったからコロナになったのかも」「悪い子がコロナにかかるから、あなたはいい子にしなさい」という言い方もNG。友達に対して「手を洗っていなかった子」「コロナになった悪い子」など、誤ったイメージを持たせないように気を付けましょう。
2020年11月14日「うちの子は、ほかの子供より敏感かもしれない……」と親が感じるようであれば、お子さまはHSCかもしれません。「HSCとは?」「HSCは遺伝なのか」「HSCが必ずもっている4つの面(DOES)」「子供がHSCだったときの関わり方」などについて詳しく説明しましょう。HSCと呼ばれる子供とはHSCとは、Highly Sensitive Child(ハイリー・センシティブ・チャイルド)の略で、「ひといちばい敏感な子ども」という概念です。HSCは、生まれつき非常に敏感な感覚や感受性をもっているため、刺激を受けやすく、些細なことが気になってしまいます。また、ひといちばい敏感な大人は、Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)、略してHSPと呼ばれます。このHSPという概念は、1996年に心理学者であるエレイン・アーロン博士によって明らかにされました。アーロン博士の研究によって、HSPでない人(非HSP)から「恥ずかしがり屋」「怖がり」「臆病」などと表現されやすいHSPの特徴は、HSP特有の「敏感すぎる気質」が原因であるということがわかったのです。そしてアーロン博士は、2002年に『The Highly Sensitive Child』という、ひといちばい敏感な子どもの特徴や育て方について詳しく書いた本を出版しました。自身もHSPであり、HSCを育てる親でもあるアーロン博士は自著のなかで、「HSCの敏感さは、病気でもない、障害でもない、単に生まれもった気質によるもの」と言っています。そう――、HSCである子どもたちの敏感さは、病気でも障害でもないのです。5人に1人の子供がHSCHSCである子どもは、人種に関係なく、どの社会にも15~20%の割合で存在します。たとえば、1クラス30人であれば、クラス内に5、6人はHSCがいるということ。5人に1人がHSC――意外と多いと感じた方も多いのではないでしょうか。しかし社会は、約80%のHSCでない子どもたち(非HSC)向けになっています。ですから、児童精神科医の長沼睦雄先生が『子どもの敏感さに困ったら読む本』のなかで言うように、HSCにとっての日常生活は疲れることが多いのです。ちなみに、HSC・HSPの70%は内向的ですが、30%は外向的なのだそう。この外向的なHSC・HSPは、HSS(High Sensation Seeking)と呼ばれ、「好奇心旺盛で新しいもの好き」「退屈さを嫌う」などの特徴をもつ、刺激を追い求めるタイプとされています。しかしHSC・HSP特有の敏感すぎる気質から、刺激を追求しつつも、その刺激に疲れてしまうとのこと。にぎやかな場所は好きだけど、楽しむ前にぐったりしてしまうような子供は、外向的なHSCであるHSSの可能性が高いかもしれません。子供がHSC、原因は遺伝?HSCの子供たちは、なぜひといちばい敏感なのでしょう。どうやらHSC・HSPは、非HSC・HSPの人と比べて、脳内の神経が高ぶりやすい傾向にあるようです。HSPについての発信が多い、渡邊真也先生が統括院長を務める新宿ストレスクリニックHPでは、HSPの敏感さについて次のように説明されています。ストレスを感じやすいHSPの人はもともとストレスを処理する「扁桃体」が活発で、不安や恐怖を感じ取りやすいのです。さらに、激しい感情などが起こったときに分泌される「ノルアドレナリン」や、俗にストレスホルモンとも呼ばれる「コルチゾール」も非HSPの人に比べて分泌されやすいため、さまざまなことを警戒し敏感に反応してしまいます。(引用元:新宿ストレスクリニック|HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)とは?~HSPはうつ病になりやすい!?~)HSC・HSPの脳は、不安や恐怖を感じ取りやすいのですね。そして前述したように、HSCの敏感さは生まれもった気質。ということは、HSCは遺伝なのでしょうか?HSC・HSPの原因が遺伝子なのか否かという研究はまだ続いているようで、結論は出ていません。ですが、アーロン博士が自著のなかで「ひといちばい敏感であるという性質は『主に』遺伝子で決まる」と書いているように、遺伝子要因は強いけれど、遺伝子以外の要因もあると考えられています。前出の長沼先生も同じ意見のようで、「HSCやHSPは遺伝的なもの」と肯定しつつも、「HSPではない親からHSCの子どもが生まれることについて、遺伝ですべてを説明することは難しい」と主張しています。HSCの子供が必ずもっている「4つの面(DOES)」次に、HSCの子供たちの特性を見てみましょう。アーロン博士は、2015年に発売された『ひといちばい敏感な子』の巻末「――日本語版の発刊に際して――」のなかで、HSCが必ずもつ「4つの面(DOES)」について説明しています。HSCであれば、以下に挙げる「4つの面(DOES)」すべてが当てはまるのだそう。逆に、ひとつでも当てはまらないならHSCではありませんとのこと。【D】(Depth of processing):深く処理する【O】(being easily Overstimulated):過剰に刺激を受けやすい【E】(being both Emotionally reactive generally and having high Empathy in particular):全体的に感情の反応が強く、特に共感力が高い【S】(being aware of Subtle Stimuli):ささいな刺激を察知するD:深く処理するHSCは、物事や情報を深く受け取って考えます。それゆえ、「行動を起こすのに時間がかかる」場合も多いかもしれません。お子さまに次のような傾向はありませんか。物事の本質をつくような深い質問をする聞きかじりの言葉を使って大人びたことを言うユーモアのセンスがあるいろいろな可能性を考えてしまうので、なかなか決断ができないじっくり観察してから考えるので、行動するのに時間が必要優柔不断などと言われがちなHSCですが、「HSC=優柔不断」ではありません。HSCが判断を迷っているときは、「この人は〇〇と言っているけど、あまり嬉しそうな顔をしていないから、もしかしたら△△なのではないか?」など、情報を「深く処理している最中」なのです。O:過剰に刺激を受けやすいHSCは、自分のまわりで起こっているすべてのことに気がつき、深く考えます。ですから、HSCは過剰に刺激を受けやすく、非HSCに比べて疲れやストレスを感じやすい。たとえば、以下のような反応・行動です。楽しいはずのイベントや旅行なのに、ぐずったり、ぐったりしたりする興奮することがあった日の夜は眠れない大きな音が苦手痛みに弱い暑さや寒さ、サイズの合わない靴、濡れている・チクチクする服に文句を言うサプライズが苦手人に見られる・実力を試される場面などで普段の力を発揮できないE:全体的に感情の反応が強く、特に共感力が高いHSCは、自分の感情にも敏感ですが、自分だけでなく他者の感情に対しても敏感です。たとえば、掃除機をかけながらキョロキョロしている母親の様子を見て、「はい、メガネだよ」と探しているものを持ってくるといった行動。HSCには、人の様子を観察し、その人がなにを求めているのかを察する力があるのです。しかし一方で、人の心を読むことに長けているがゆえ、他者の悲しみや不安などの感情にも強く共感してしまいます。そのため、家族や友だちだけでなく、初めて会った人や動物のストレスまでも感じ取ってしまうのです。以下のようなことはありませんか?親は妹を叱っているのに、なぜか隣にいる兄のほうが泣き出してしまうペットの死から数ヶ月たつのに、まだ落ち込んだ状態が続いている動物の気持ちに共感してしまい、「牛がステーキになる」などの事実にショックを受けるS:些細な刺激を察知するHSCは、小さな物音や、かすかなにおい、わずかな味の違いなど、些細な刺激や変化によく気がつきます。思考や感情のレベルが高いため、非HSS・HSPが気がつかないほどの刺激や変化に敏感に反応するのです。たとえば、次のようなことでしょうか。肌触りが違うからか、お気に入りのバスタオルしか使わない店内や乗り物のにおいにものすごく敏感夫婦喧嘩になるかならないかのときに、悲しそうな顔をしたり泣き出したりするいつも食べ慣れているおかずの味を少し変えただけで「おいしくない」と言う遠くの鳥の声や飛行機のエンジン音が聞こえる「前髪を切った」「小物を移動させた」など、人や場所の小さな変化によく気がつく他者の視線やあざ笑い、お世辞などにすぐ気がつくしかし、決して悪いことばかりではありません。アーロン博士によると、HSCである子供は、「深く考える」という特性から、芸術鑑賞の際などに大人が驚くような洞察力を発揮するそうですよ!HSC診断テストでチェックしてみようHSCである子供に見られる特性、「D:深く処理する」「O:過剰に刺激を受けやすい」「E:全体的に感情の反応が強く、特に共感力が高い」「S:ささいな刺激を察知する」の説明を読んでも、「ちょっとまだうちの子がHSCなのか判断がつかない……」という方は多いかもしれません。そんな方は、アーロン博士がつくったセルフテスト「Is Your Child Highly Sensitive?」(※チェックリスト・得点評価は日本語です)をやってみてください。「親から見た子ども」についての23の質問を読んで、「当てはまる(どちらかというと当てはまる)」項目のみにチェックを入れます。13個以上の質問に当てはまった場合、あなたのお子さまはHSCでしょう。また、当てはまった質問が1~2つしかなかったとしても、その度合いが極端に強いようであれば、お子さまはHSCの可能性があります。次項では、HSCの子供が成長する過程(0歳~12歳)で親が気をつけることについて見てみましょう。HSCの子育てアドバイス【乳児期・幼児期・学童期】お子さまがHSCの親御さん、もしくは、「HSCかどうか判断が難しいけれど、ほかの子供と比べて敏感すぎる……」と感じている方に向けて、HSCの年齢別アドバイスを紹介します。【乳児期(0歳~1歳)】アーロン博士によると、敏感な乳児は過剰な刺激が原因で泣き続けることがあるそうです。生後4ヶ月以上の乳児(*)で、「一度に2時間以上泣く」「1日に3時間以上泣く日が週に3日ある」ときは、赤ちゃんのまわりにある「刺激」を減らしてみましょう。たとえば、以下のようなことです。無理に喜ばせようとしたり、大きな声であやしたりしないおもちゃ、写真、スマートフォンなどをベッドまわりから排除する夜だけでなく、日中の音も抑えるお風呂や食事は、できるだけ毎日同じ時間に行なう知り合いの訪問はなるべく避ける綿100%の柔らかい服を選ぶ1歳になるまでは引っ越しや旅行を避ける親は子供の近くで興奮しないようにするまた、生後6ヶ月頃のHSCは、非HSCに比べて「眠りにくい」「すぐに目を覚ます」といったことが多いでしょう。その場合も、刺激を減らすことを意識してみてください。*…栄養状態も体格もよく、病気ではない乳児【幼児期(1歳~5歳)】HSCのストレスの原因は、過剰な刺激です。そして幼児期のHSCにとって最大の刺激は「変化」なのだそう。弟や妹ができたとき、食べたことのない料理を出されたとき、日々の習慣が変更されたとき、新しいことに挑戦するとき、突然の計画変更などです。HSCが変化に対応するときは、脳内で刺激を処理する必要があります。AがBに変わるならば、Aに合わせてつくり上げてきた脳の処理プロセスを、今度はBに合わせてつくり上げなければなりません。親が考える以上に、HSCにとって変化への適応は大変なのです。ですから、HSCである子供には、次のような「変化を負担に感じさせない工夫」をするとよいでしょう。「あと5分だよ」「あと1分だよ」と約束の時間を前もって知らせる。時間になったら、「ご飯の時間だよ」と声をかける初めての食べ物を出すときは、「これもお母さん(お父さん)がつくったご飯だよ」「このソースは、昨日食べたトマトからつくったよ」など、変わっていない点を伝える「朝ごはんを食べたら、歯磨きをして、幼稚園に行こうね」と、これからやることを伝え、子供に心の準備をさせる「お母さん(お父さん)に手伝ってもらいたい?それとも自分で着替えたい?」と、子供に選ばせて、次のステップへの不安を取り除く「パーティーではこんなことをするよ」など、子供がびっくりしないように、これから起こることについて話をしておくHSCの敏感さを理解していない親は、変化に戸惑う子供に対して「このくらい大丈夫でしょう!」と責めることが多いそうです。しかし長沼先生は、「HSCの子供を頭ごなしに叱ったり、イライラをぶつけたり、バカにしたり、あざ笑ったりしないで」と訴えます。親が子供の感じ方や考え方をできる限り尊重することで、「お母さん(お父さん)にわかってもらえた」と子供は安心するのです。【学童期(5歳~12歳)】アーロン博士は、HSCの学童期について「独特の才能を開花させる時期」だと言います。どうやら、HSCのなかには、音楽、絵画、数学、自然科学などのさまざまな分野で、すばらしい才能を発揮する子供がいるらしいのです。また、ベストセラーとなった『「繊細さん」の本』著者で、HSP専門カウンセラーの武田友紀さんも、テレビ番組『世界一受けたい授業』のなかで、HSPは想像力が豊かだと話しています。毎日の生活でクタクタにならないように、親が気を配ってあげてください。そうすれば、HSCの好奇心や創造性をめいっぱい伸ばすことができるでしょう。十分な睡眠時間をとらせるHSCにとって、睡眠時間はダウンタイムです。ダウンタイムがとれないと、気分が落ち込んでしまいます。睡眠の専門家である成田奈緒子先生(文教大学教育学部教授)の調査によると、23時以降に就寝する小学生は「イライラすることが多い」「自分なんていないほうがいいと思う」と答える子が多かったそう。非HSCの子供でさえ、心の不調を訴えるのです。子供が慢性的な睡眠不足にならないよう、毎日十分な睡眠時間を確保してあげてください。できれば21時にはベッドに入れるといいですね。もし子供が疲れているなと感じたら、学校を休ませてゆっくり寝かせてもよいでしょう。連休や長期休みは「いつも決まった場所」で過ごす連休や長期休みには、いつも決まった場所に行くなどの習慣的な過ごし方がおすすめです。HSCにとって刺激の強いイベントや遠出ですが、習慣にすることで刺激を抑えることができ、休日を楽しめるようになります。また、年末年始やお盆などにありがちな「突然の来客」や「多すぎるお客さん」は、HSCの負担になることが多いようです。挨拶ができればそれだけでOK。無理に大人の会話に引き込んだり、愛想よく話すことを求めたりしないように気をつけてください。子供が熱中できる習い事を探す長沼先生は、子供が「やりたい」と言った習い事はできるだけ挑戦させるべきだと話します。著書『子どもの敏感さに困ったら読む本』によると、音に敏感なHSCの子供がピアノレッスンを始めてみたら、どんどん上達したそう。また、運動系の習い事では、単純な動きを繰り返し練習することで「できた」という感覚を知り、自分の運動能力に自信をもてるようになります。HSCは熱中できるものを見つけると心が安定するので、必ず “子供が希望する習い事” をやらせてあげてください。HSCの子供の敏感さは長所になる!敏感すぎるという面だけ見ると、ネガティブなイメージが強いHSCの子供たちですが、最近の研究では、ポジティブな側面も多いことがわかっています。人間発達学が専門のジェイ・ベルスキー氏(カリフォルニア大学デービス校教授)は、HSCの敏感さについて、「良質の子育てを受けるなど、よい環境に置かれた場合には、ほかの子よりもプラスに作用します」と主張しています。HSCは非HSCよりも感受性が強いため、同じような幸せな環境にいた場合、非HSCよりも幸せを感じることができるのです。また、物事を深く考えるので、勉強に集中できる環境であれば、成績もよいのだそう。ほかにも以下のようなポジティブな面がありますよ。幸せを感じやすい病気や怪我が少ない成績がよいモラルのある行動ができる他者への気づかいができるでは、「良質な子育て」とはどのような子育てなのでしょう。アーロン博士は、HSCが幸せな人生を送るためには、自己肯定感を育むことが大切だと言っています。HSCの子供は、「叱られたときに自分はダメな人間だと感じる」「間違いをひどく後悔して自分を戒める」「友だちに言われたことを深く考える」といったことが多いでしょう。ですから、自己肯定感という心の土台がないと、悪いことがあったときに、その影響をまともに受けて傷ついてしまうのです。自己肯定感とは、「自分は自分であっていい」という揺るぎない気持ちであり、「ありのままの自分に価値がある」と考えられること。HSCである子供の自己肯定感を高めるには、次のようなアプローチがよいでしょう。敏感さは「すばらしいことだ!」と伝えるHSCの敏感さについて、「とてもすばらしいことなんだよ」と折に触れて教えてあげましょう。もちろん、親自身が本当に「わが子の資質はすばらしいのだ」と心の底から感じることが大切です。もしあなたが少しでも「うちの子は敏感すぎて将来が心配」などと思っていたら、その不安はHSCである子供に伝わってしまいます。ありのままのわが子を誇りに思うことが重要です。「優しい」「深く考える力がある」など、敏感さのメリットを伝えてもよいでしょう。HSCの感じ方や気持ちを受け止める子供の感じ方や気持ち、意見を尊重しましょう。たとえば、「このお店のなか、変なにおいがする」という感覚は、親には理解できないかもしれません。でも、頭ごなしの否定はしないようにしましょう。「そうなんだね。買い物を済ませたらすぐに帰ろうね」と、気持ちを肯定することで、子供は「この感覚は間違いではなかった」と安心することができます。この安心感が、「自分は自分でいいんだ!」という気持ちにつながるのです。親が受け止めてあげることで、HSCの子供の自己肯定感はアップしますよ。HSCの子供について書かれた本、おすすめ3冊「もっと、HSCの子供について情報が欲しい」という方におすすめの3冊をご紹介します。『ひといちばい敏感な子』「HSCとは?」という概念から、年齢別のアドバイスまで詳しく書かれているので、この1冊でHSCについての基本的なことが理解できます。「もしかしてうちの子ってHSC?」と感じたら、まずこの本を購入することをおすすめします。子供の敏感さをよい方向に導いていくためのアドバイスが満載です。『子どもの敏感さに困ったら読む本』著者は、日本では数少ないHSPの臨床医・長沼睦雄先生。「困ったときの子育てアドバイス」や「こじらせないために親がすべきこと」など、子どもの敏感さに困っている親に向けた助言にページが多く割かれています。神経発達症との違いなどについても詳しく書かれているので、さまざまな不安を抱えた親御さんにおすすめです。『HSCの子育てハッピーアドバイス』著者の明橋大二先生は、『ひといちばい敏感な子』の訳者でもあります。敏感すぎるHSCの子供をもつ親御さんがハッピーになるアドバイスばかりが詰まっているので、読み終えるころには、「私、この子の親でよかった!」と感じるはずですよ。子育てに息苦しさを感じている親御さんにこそ読んでほしい1冊。HSCの子供のSOSサインを見逃さないために……HSCは、非HSCの子供に比べて、とても生きづらい世界を生きています。親であれば、そのストレスを少しでも軽減してあげたいと思いますよね。そこで、子供のストレスケアについてもっと知りたいという方や、「子供のことを考えていたら、自分もストレスを感じるようになってしまった……」などの悩みを抱える親御さんに「青少年ケアストレスカウンセラー講座」をご紹介しましょう。以下のように、子供のストレスだけでなく、親のストレスについても学ぶことができます。青少年とストレスについてストレスとうまく付き合うための対処法ストレス解消法コミュニケーションや自己表現の仕方育児ノイローゼや虐待について引きこもりなどのメンタル疾患ほかにも、子供のSOSサインを見逃さないためのポイントや、困っている子供をサポートする技法などが身につきます。自宅学習できるので、時間に縛られることなく「ストレスケア」について学ぶことが可能です。ストレスケアを知ることで、HSCの子供だけでなく、親御さん自身の心も軽くなるはずですよ。また、子どもとのコミュニケーションについて以下のように考えている方であれば、ヒューマンアカデミーの「心理カウンセラー講座」をおすすめします。子どもの悩みを一緒に解決したい子どもともっと上手にコミュニケーションをとりたい自分の感情をコントロールしたいたとえば、「みんなが私のことを嫌いって言った」というお子さまの悩みを解決する場合。親が適切な質問をすることで、「じつは、ひとりの子の言葉が記憶に残っていただけ」と判明することもあるそうです。心理学者であるアーロン博士によると、親自身が感情をコントロールできないと、HSCの自己コントロール力は下がってしまうとのこと。心理学は、子どもの心だけでなく、自分自身の心までも知ることができる学問です。デジタルパンフレットで詳細を確認してみてくださいね。心理学を学ぶことで、HSCである子供とのコミュニケーションが、楽しい時間に変わるはずですよ。***「HSC」や「ひといちばい敏感な子ども」という言葉を知る前は、筆者自身、敏感すぎるわが子を少し面倒だと感じることが多々ありました。食器棚から出したコップに「食器棚の匂い」を感じたり、スーパーで売っているカット済み野菜を食べたときに「変な味がする」と言ったり――。しかし、執筆を通して、HSCの感じ方や考え方を理解することができました。アーロン博士は著書の最後に、「慎重に考え、深く感じ、些細なことに気がつき、最終的には対局を見ることができる人材」であるHSCは、いま、社会で必要とされていると言っています。HSCの子供たちが、敏感さを「強み」にすることができますように――。(参考)エレイン・N・アーロン著 明橋大二訳(2015),『ひといちばい敏感な子』, 1万年堂出版.長沼睦雄(2017),『子どもの敏感さに困ったら読む本』, 誠文堂新光社.The Highly Sensitive Person|Is Your Child Highly Sensitive?HSS型HSPの才能を生かす生き方を実現する「ブレーん塾」|好奇心旺盛なのに傷つきやすい。複雑な特性を持て余す才能豊かなHSS型HSPたちダイヤモンドオンライン|コロナで「生きにくい」が加速、「HSP」とはどんな人たちか新宿ストレスクリニック|HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)とは?~HSPはうつ病になりやすい!?~日本テレビ|5人に1人?「繊細」すぎて疲れてしまうHSPって何?King’s College London|Vantage Sensitivity: Individual Differences in Response to Positive Experiencesお茶の水女子大学|繊細な子どもの情緒的発達は良い学校環境から良い影響を受けやすい~発達における脆弱性を可塑性として捉え解析~STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|自己肯定感も勉強への姿勢も“熱中体験”の先で生まれる
2020年10月30日「保育園に行きたくない……」そう子どもが言ったら、困る半面、何かあったのではと心配になりますよね。まだ自分の気持ちや状況をうまく伝えられない年齢だけに、親がどう向き合い、対処してあげると良いのでしょうか? 今回は、臨床心理士で現在は保育園で保育士へのコンサルテーションをおこなっている塩﨑尚美先生にお話を伺いました。 子どもが登園を渋る原因は? 子どもが登園を渋る理由で一番多いのが、“ママと一緒にいたい”“離れたくない”というケース。特に、ずっと一緒に過ごした休み明けや病気で園を休んでママに看病されていたあとに登園を嫌がる子が多いようです。“ママと一緒にいたい”と似たケースで、“家で好きなように遊んでいたい”という理由もあります。 ほかにも、お友だちとケンカした、先生に叱られた、嫌なことをされたなど“人間関係で嫌な出来事があった”とき。“体調が悪い”ときもくずります。まだ熱が出ていなくても、だるいなどの予兆を感じて行きたくなくなることも。“プールに入りたくない”“先生が代わった”“体操の時間が苦手”“集団行動が好きではない”など、嫌いなカリキュラムをやりたくないケースも。ママと離れたくない以外は、大人が「会社に行きたくないなぁ」と、思う理由と似ていますよね。 大切なのは「行きたくない」気持ちを受け止めること 2歳くらいまでの後追いの時期や他者とのコミュニケーションがしっかり確立できない時期は、ママと離れる寂しさが先立ちますが、年中さんくらいになると明確な理由が出てきて、言葉で表現できることも少しずつ増えてきます。 「行きたくない」と言ったら、「どうして?」と理由を聞いてあげることが大切です。うまく答えられないようなら「友だちとケンカしたの?」「どこか痛いの?」「ママとバイバイが嫌なの?」など、回答を促してあげるといいでしょう。 ただ、理由を聞いてあげるといっても、体調不良などお休みする正当な理由ならまだしも、それ以外はむやみに休ませるわけにはいきません。まずは理由を聞いて、「寂しいよね。ママも寂しいよ」「ケンカしたのね? 悲しかったね」と、子どもの気持ちを受け止めて、落ち着かせてあげることを最優先に。 「行きたくない」とき、親ができるサポートは? 行きたくない理由を受け止めたら、次はどう対処すべきでしょう? お友だちとのケンカなら仲直りの方法を提案するなど解決方法を教えてあげたり、先生に叱られたのなら、登園時に先生に叱られた理由を聞くなども1つですが、忙しい朝になかなか腰をすえて対応するのは難しいものです。そこで、そんなときは、下記のような声かけや対応をするようにしてみましょう! ・「今日はお迎えに早く行くね」と、伝えてあげましょう。子どもは寂しい気持ちをわかってくれたと感じてくれるはずです。 ・「ママも会社で頑張ってくるから、園で頑張ってきて。一緒に頑張ろう!」ママと一緒に自分も頑張ろうという意識が芽生えます。 ・お気に入りの洋服やかわいい髪型にしてあげると、みんなに見せたいという気持ちから園に行こうと思えたり、テンションも高まります。 ・食いしん坊なら、お弁当に大好物を入れてあげたり、キャラ弁などでお昼ごはんの楽しみを作ってあげるのも◎。 ・帰宅後のご褒美を提案。帰ってきたら○○で遊ぼう、○○に行こうなどと、子どもの園生活が終わったら、楽しみにできることを伝えてあげるのも良いでしょう。 逆に、登園前にお菓子やご褒美でつるのはNG! 「行きたくない」と言えば、買ってもらえるという知恵がつき、悪しき習慣になってしまうケースがあるからです。また、怒って連れていくのもNG! 結果的にヒートアップして余計に行きたくなくなってしまいます。困ったなと思ったら、まずは1つずつ試してみましょう。うまく気持ちの切り替えができるかもしれません。 登園渋りの多くの場合、子どもはその日の気分で行きたくないことが多く、1~2日様子を見れば気分が変わり何ごともなかったかのように笑顔で登園するようです。ただ、登園渋りが長く続くようなら、保育士さんやママ友などにお友だち関係や園での様子などを相談して対処法を探ってみると良いでしょう。 ベビーカレンダーでは、赤ちゃん時代を卒業して自己主張を始めた2~5歳までの子どもの力を伸ばし、親子の生活がもっと楽しくなる【キッズライフ記事】を強化配信中。今よりもっと笑顔が増えてハッピーな毎日なりますように! 著者:井上 裕紀子監修者:臨床心理士 日本女子大学 人間社会学部 心理学科 教授(臨床心理士・公認心理師) 塩﨑 尚美1986年上智大学文学部心理学科卒業、浜松医科大学精神神経医学教室研修生を経て、精神科病院、精神科クリニックに 勤務しながら、保健所発達相談も行う。その後お茶の水女子大学大学院に入学。2002年お茶の水女子大学大学院人間文化研究科人間発達学専攻博士課程単位取得満期退学2003年相模女子大学学芸学部人間社会学科講師、准教授2007年日本女子大学人間社会学部心理学科准教授2015年同大学教授に就任 著書に「子どもを知る・臨床心理学」(共著北大路書房)「実践に役立つ臨床心理学」(編著北樹出版)「子育て支援の心理学」(共著有斐閣)「保育相談支援―保育内容・方法を知る」(共著北大路書房)「乳幼児・児童の心理臨床」(共編著放送大学教育振興会)などがある。
2020年10月29日ミドルエイジの先輩たちが「自分らしい生き方」に至るまでーー綾屋紗月さん東京大学先端科学技術研究センターで、特任講師として発達障害の当事者研究(※)や、当事者研究の研究などを行っている綾屋紗月さん。幼い頃から家庭や学校で違和感を抱いていましたが、そこにASD(自閉症スペクトラム)の特性が関係していると知ったのは大人になってからだと言います。自分の身体や他人との「つながれなさ」を感じていた綾屋さんが、自分を理解し、社会とつながっていくまでのプロセスをお話しいただきました。当事者研究とは:一人ひとりが自分自身の困りごとや生きづらさについて研究者となり、周囲の仲間たちと語り合うなかで困りごとへの理解を深めることや、よりよい付き合い方を探していく営みのこと。綾屋紗月さんが主宰する、発達障害当事者による当事者研究活動「おとえもじて」をはじめ、さまざまなテーマ・共通点ごとに当事者研究コミュニティがある。子ども同士の「暗黙のルール」がわからなかった――綾屋さんは、発達障害のある人を中心に当事者研究を行う会「おとえもじて」の発起人で、ご自身も大人になってからASDの診断を受けていますよね。幼少期はどのように過ごされていましたか?綾屋紗月さん(以下、綾屋):3〜4歳の頃、家では、「なんでこんなに自分の思っていることが両親に伝わらないのだろう」「どうしてわたし、いつも泣いているのかな」と感じていました。父に怒られたわたしは悔しくて泣くのですが、後から「あのとき、あなたはこういうつもりだったんだよね」と通訳のように言葉にしてきて。「わかってるんだったら、なんでさっきあんな風に怒ったんだよ」と腹が立って、余計に泣いてしまうようなこともありました(笑)。母はわたしが何を考えているのかが本当にわからなかったようで、「この子も大きくなれば、自分のことを自分で説明できるようになって、生きやすくなるだろう」と思いながら育てていたらしいです。それでもどうにか家庭の中ではやっていけたのですが、幼稚園に入ってからは、子どもたちの間にあるルールや、今何が起きているのかがよくわからなくて。ちょっと怯えながら様子を見ているような状態でした。Upload By 姫野桂――集団の「暗黙のルール」のようなものの難しさを、幼稚園ですでに感じ取っていたんですね。綾屋:他の子たちが遊んでいる輪に、わたしが「入れて」と言ったら「ダメ」と言われるけど、他の子が言うと「いいよ」と言われる。他方で、何も言わなくても自然と一緒に遊び始める子もいて。どうしたらあんな風に加われるのかがわかりませんでした。先生の指示に従うのも難しかったですね。手順が明確でない説明がだらだらと続くと、まず何から始めればいいのか、具体的な行動が把握できないし、そもそも園内では音がすごく反響しているようにわたしには聞こえていたので、聞き取るのがとても難しくて。わからないから質問をすると、「さっき言ったでしょ」「ちゃんと聞いていなさい!」と怒られてしまいました。――ちゃんと聞いていたにもかかわらず、そのように怒られてしまうのはつらいですね……。小学生になって、変化はありましたか?綾屋:小学校に入って過ごす校舎が変わっても、音がワンワンと反響して聞き取りづらいのは続きました。人との関わり方については、成長するにつれてだんだんわかるようになるだろうと予想していたので、ますますわからなくなったのにはちょっと驚きましたね。「もしかすると、いじめだったのかな?」と思うようなこともあったのですが、嫌なことをされたら反撃したりもしていたので、ある意味ではやり過ごせていました。集団のルールのようなものがあるらしいことや、自分がそのルールを理解していないので仲間はずれにされているようだ、ということは感じていましたが、わたし以外にもいろいろな人が順に仲間はずれの対象になるのが見えていたので、そんなに気にすることでもないのかなとも思っていましたね。――綾屋さんはその後、中学受験をして私立の女子校に進学されたんですよね。綾屋:はい、中高大一貫でエスカレーター式の私立女子校に入りました。いじめのようなものをさほど気にしていなかったとはいえ、「自分には友達ができないなぁ」ということを気にしてはいたんですよ。そんなときに、親が「勉強ができる子たちのところに行けば、お友達ができるかもしれないよ」と中学受験の話をしてきたので、そんなものかなあと信じて近くの私立を受験し、進学しました。「自分は一体どうなっているんだろう」という疑問――中学に入って、人との関係に変化はありましたか?綾屋:わからなさは、むしろ増しましたね。小学校の頃とは違い、やり返したら大変なことになりそうだと感じたので、攻撃されないようになるべく無難に動くようにしていましたが、孤立していました。今になって振り返れば、周囲の環境にも原因があったのだと考えることができますが、当時は「人とうまく関われないのは、自分のせいなんじゃないか」と自分を責める気持ちにもなりました。人間関係に向かう以前に、「自分は一体何者なんだろう」というような感覚があったんですよ。ものの見え方や聞こえ方、たくさんの人の中にいるとすぐに具合が悪くなってしまうこと。そういった他の人との「ズレ」に、一つひとつ気づいては驚いていました。自分の身体との付き合い方もわかりませんでしたし……。自分のことも、自分を取り巻く社会のことも混沌としていて意味付けができない。檻の中に閉じ込められているような窮屈で息苦しい感覚でしたね。それは30歳を超えて、仲間とつながるまで続きました。Upload By 姫野桂――学生時代からさまざまな症状があったようですが、「心療内科を受診してみよう」といった話は持ち上がらなかったのですよね?綾屋:親から言われたことはなかったですね。「心療内科」ができたのはわたしが成人してからですし、当時は「発達障害」という言葉もメジャーではありませんでした。そもそも父方の家系には強烈な特性をもつ人がたくさんいて、むしろわたしはマイルドなほうだったんですよ(笑)。だから、親も単に「神経質な子」ぐらいに捉えていて、病院に行くなんて考えつきませんでした。ただ、わたし個人としては、「この原因不明の心身の具合の悪さを抱えて、社会で働くことに耐えられるわけがない」と就職をあきらめていたので、大学を卒業する頃、覚悟を決めて精神科を受診しました。しかし「あなたは大丈夫ですよ」という言葉と、体に合わない大量の薬を処方され、「医者でもわたしの困難を見つけてくれないのだ」と思い、それ以上、医者に期待するのをやめました。ASDという「物語」を通じて、これまでの記憶が整理された――綾屋さんは大人になってから発達障害の診断を受けたとのことですが、そのきっかけを教えてください。綾屋:書店で見かけて手に取った本の中に「自分によく似た体験が載っている!」というものがあって、それがASD当事者の書いた本だったんです。それまでも心理学などの専門書は読んできましたが、そこには当事者の視点から見たことは書かれていませんでした。専門家が使っている言葉が具体的にどんな体験を指し示しているのかピンと来なくて、自分のことを書かれているという意識も持っていませんでした。「コミュニケーション障害と言ったって、別に親との日常会話は成立しているしなぁ」などと思っていたんですよ。でも、その本に書かれている具体的な経験には、自分と重なる部分が多かった。ASDの診断を取ることで人とつながれるようになるのなら、自分にも診断がほしいと思い、31歳のときに医療機関を受診しました。ASDと診断されたときは、特にうれしくはありませんでしたが、少しホッとしたような感じでした。――診断を受けたことで、何か変化はありましたか?綾屋:記憶に時間軸ができました。それまでは、わたしの記憶は瞬間ごとの写真を平面にぶちまけたように散らばっている状態だったんです。それが、自分の中にASDという「物語」を得たことによって、「ああ、幼稚園のときはこういう理由で大変だったんだ」という風に意味付けができるようになりました。ばらばらだった記憶が一直線に並び、今の自分にしゅーんとたどり着いていくような感覚でした。そのときに過去から現在へ続く「時間」というものがわたしの中にできたのだなと思っています。とはいえ、学生時代に同級生にされたことなど、まだ自分の中で疑問が残っていて意味付けができていないものは、今でも整理されておらず、時々バーンと写真のように頭に浮かぶことはあります。――一部ではあるものの、幼少期からの「わからなさ」が、少し解消されたのでしょうか。周囲には、診断について話されましたか?綾屋:親や当時の夫、つながりの残っていた高校・大学時代の同級生には言いました。親は「それで何が変わるの?」という感じで、ピンと来ていませんでしたね。夫はその後離れていきましたが、今から振り返れば、そもそもお互いにいろいろなことを共有できていなかったんだなと思います。親戚には親から話が伝わり、わたしの研究活動も知っているので、困りごとを抱えている子どもたちの相談を受けることはありました。いとことは「わたしたちの特性って、ただの家系だよね」「『ちょっと変わった子』ぐらいだったのに、社会的にマッチしてないことになっちゃったね」みたいな感じで話しますね。Upload By 姫野桂――現在も、感覚過敏の症状はあるのですよね。何か対策されていることはありますか?綾屋:人がいるところに行きたくても、無理だなと思ったら早めに引き返すとか、耳栓をするとか。具合が悪くなってきたら、とりあえずその場で15分ぐらい寝て、帰宅するだけの力を回復させる、などはしています。あともう一歩行きたいというときに、自分のキャパシティを踏まえて「いやいや」と撤退することが増えましたね。「実際はそんなにいいものじゃないよ」と言われても、ワイワイ楽しんでいるところを見ると惹かれるんですよ。先日も学生街の駅付近で盛り上がっている人たちを見かけて、面白そうにしているなあと近くに寄ってみたら、思ったよりもドロドロした感じであまり楽しくなさそうで。「遠くから見ると楽しそうでも、近くではこんな感じなのかあ」となんだかしょんぼりして帰ったり(笑)。わたしは「セクシャルよりソーシャルが好物です」と表現しているのですが、触れるだけで痛い感覚過敏の特性も影響しているのか、恋愛などのセクシャルな関係への欲望よりも人の輪に入っていくというソーシャルなことへの欲望が強いんです。今は、適度な社会的なつながりを仕事を通じて得られているので、それがすごく幸せですね。(後編に続く)「自分は一体何者なんだろう」と、ずっと違和感や疑問を抱いて生きてきたという綾屋さん。自分の経験に意味付けをし、記憶を整理することができたのは、同じASD当事者の物語との出会いがきっかけでした。インタビュー後編では、綾屋さんが取り組む「当事者研究」について、そして、研究を続ける中で出会った仲間たちとのつながりについてお話しいただきます。取材・文:姫野桂編集:鈴木悠平・佐藤はるか撮影:鈴木江実子
2020年10月28日コミュニケーションが取れる年齢になっても、子ども自身の怒りや感情の高揚を自分では制御できず、「すぐ手が出てしまう」と悩むママは多いです。「暴力はいけない」と言い聞かせても、反射的に手が出てしまうという子も。 そこで、今回は暴力的になってしまう子どもにはどんな声かけや対応をすればいいのか、また、子どもが攻撃的になってしまう理由などを日本女子大学 人間社会学部 心理学科 教授の塩崎尚美先生にお話を伺いました。 子どもが攻撃的になってしまう理由とは 攻撃的になる原因は、家庭環境や子どもの特性などさまざまな要因が考えられ、1つに限定することはできませんが、まだ会話もつたない1~2歳ごろの幼少期の子どもの多くは、自分の気持ちを言葉で表現できないため、子どもによってたたく、噛むなどの攻撃的な行動で怒りや要求を訴えてしまうことが多いです。そのため、3歳以上になって手が出たり、噛みついたりする子は少なくなりますが、3歳以上でも言葉で伝えるのが苦手な性格だったり、反射的に手が先に出てしまう子もなかにはいます。 また、言葉のつたなさ以外では、例えば入園や引っ越しで環境になじめていなかったり、下の子が生まれて赤ちゃん返りしたりなど、大きく環境が変わったときの精神的ストレスで攻撃的になるケースも。ほかには、子どもとの関わりの中で、ママをたたくことで意思表示することを容認していると、お友だちをたたくことで意思の疎通をしようとすることも考えられます。 攻撃的な行動には、こんな声かけを 2歳ごろになれば、親の言っていることを理解できるようになり、会話による意思の疎通も少しずつできるようになってきます。もし、たたいたり噛んだりする行動に出たら、どんな声かけをすると良いでしょうか? ①子どもの言い分を聞いてあげる大人は慌てず、どうして叩いてしまったのかを聞いてみましょう。うまく説明できないときは、大人が「○○が欲しかったのね」「仲間に入りたかったのかな」と、感情をくみ取ったり、子どもの気持ちに寄り添ったりして気持ちを落ち着かせてあげましょう。 ②「たたくのはいけない」ことを伝えるハッキリと「たたくのはいけないこと」をその場で伝えます。叩かれたら痛いこと、悲しいことなど相手の気持ちも教えてあげましょう。 ③たたく以外の解決策を教える「たたかずに貸してと言ってごらん」「こういうときは、ちょっと待っててねって言うのよ」など、たたく以外の解決策を教えてあげましょう。「たたくのは悪い子!」「誰も遊んでくれなくなるよ」といった否定的な言葉は禁物です。 いずれも感情的にならず、冷静に伝えることが大切です。子どもの年齢によって理解できる言葉にかみくだいて説明し、暴力ではなく口で伝えることの重要性を根気強く、いずれも手短にその都度繰り返し伝えるようにしましょう。 第三者に相談するという手段も有効 子どもに叩かれたり、お友だちをたたいたりしたとき、「叩いたらこんなに痛いのよ! 」「ダメでしょ! 」と、大人は決して叩き返してはいけません。叩いた子どもに対して叩き返すことは、欲求を解決する手段として暴力を振るっても良いという誤ったメッセージを与えてしまう可能性もあるからです。 また、子どもの発達上では、戦隊ヒーローのような番組を見て、子ども同士の遊びの中で攻撃性を発散することが大切です。むしろそれをしないことで、攻撃性がコントロールできなくなっている子どもが今増えています。遊びの中で戦いごっこなどをして発散することは、攻撃的な子どもへの対処として必要なほか、それによって手加減を学んでいくことになるからです。 いろいろと試してみても「全然改善されない」という場合は、第三者に相談すると良いでしょう。親族やママ友、保育園の先生など身近な人でもいいですが、身近な人だと相談しにくいという場合は、地域の子育て支援を利用することをおすすめします。専門機関に相談することで、より適切な対処やサポートをおこなってくれるからです。 集団生活では、お友だちに手をあげてしまうと、周囲のママ友からは「しつけが悪い」「一緒に遊ばせたくない」と敬遠され、親子で悲しい思いをすることがあります。例え叩いてもママは焦らず、適切な対処法でサポートしてあげてください。そして、叩かずにいられたら思いっ切り褒めてあげてください。また、どうしても無理な場合は、ひとりで悩まず、第三者の手を借りることも頭に入れておきましょう。 ベビーカレンダーでは、赤ちゃん時代を卒業して自己主張を始めた2~5歳までの子どもの力を伸ばし、親子の生活がもっと楽しくなる【キッズライフ記事】を強化配信中。今よりもっと笑顔が増えてハッピーな毎日なりますように! 著者:井上 裕紀子監修者:臨床心理士 日本女子大学 人間社会学部 心理学科 教授(臨床心理士・公認心理師) 塩﨑 尚美1986年上智大学文学部心理学科卒業、浜松医科大学精神神経医学教室研修生を経て、精神科病院、精神科クリニックに 勤務しながら、保健所発達相談も行う。その後お茶の水女子大学大学院に入学。2002年お茶の水女子大学大学院人間文化研究科人間発達学専攻博士課程単位取得満期退学2003年相模女子大学学芸学部人間社会学科講師、准教授2007年日本女子大学人間社会学部心理学科准教授2015年同大学教授に就任 著書に「子どもを知る・臨床心理学」(共著北大路書房)「実践に役立つ臨床心理学」(編著北樹出版)「子育て支援の心理学」(共著有斐閣)「保育相談支援―保育内容・方法を知る」(共著北大路書房)「乳幼児・児童の心理臨床」(共編著放送大学教育振興会)などがある。
2020年10月25日気持ちの切り替えがスムーズにできない…。そんなわが子への対応のヒントを、公認心理師・佐藤めぐみさんが教えてくれました。イラスト/杉浦さやか公認心理師:佐藤めぐみさん育児相談室「ポジカフェ」主宰。欧米で心理学を学び、ポジティブ育児メソッドを考案。ポジ育ラボにてスマホで受講できるママ向け子育て心理学講座を配信中。HP:■あんふぁんママに聞きましたQ.嫌なことがあった後や好きなことに熱中している時、わが子はスムーズに気持ちの切り替えができる方だと思いますか?※2020年6/3~7/1あんふぁんWebアンケート。有効回答数13143人に1人のママが「わが子は切り替えが苦手」と感じている嫌なことがあった後や好きなことに熱中しているときなどに「そろそろ次のことをしようか」と声を掛けても、全く聞く耳を持たない…。子どものそんな姿を見て、途方に暮れたことはありませんか?右のアンケート結果のように、ママの約4割弱が「わが子は気持ちの切り替えが苦手」と感じていることが分かりました。上手に気持ちを切り替えることができれば、親子両方にとってうれしいこと。では一体どのように声を掛けたり、行動したりすれば良いのでしょう。それにはまず、気持ちの切り替えが「早い・遅い」の原因について知ることが大事!その原因について紹介していきます。気持ちの切り替え要因は気質と学習ケンカの後、お友達はすぐにケロッとしているのに、わが子はいつまでもぐずぐず…。同じ環境で育っているはずのきょうだい間でも、気持ちをサクッと切り替えられる子とそうでない子がいます。これはなぜなのでしょうか?気持ちの切り替えの「早い・遅い」には、大きく「気質」と「学習」の2つの要因があります。気質的なことの場合、その気質がどういう場面で使われるかで状況が変わります。粘り強い・集中しやすいタイプの子は、親に指示されることを「自分の意思が妨げられた」と感じ、強く反発することがあります。親としてはとても困るシーンなのですが、前述の通り、ある程度は生まれついたものである、と認識しておくと良いでしょう。気質の見極めには、生後21カ月(1歳9カ月頃)に見られる姿が一番参考になると言われています。自我が芽生え始め、かつイヤイヤ期突入前のこの時期の様子は、子ども本来の気質である可能性が高いようです。その頃の子どもの様子を振り返ってみると、適切な対応の仕方のきっかけが見つかるかもしれません。そしてもう一つの要因が「学習」です。これは、生まれた後の経験などから習得したもののこと。自分の気持ちを自分でなだめるということは、成長する上で必要なことですが、園児の場合、それができる子とできない子の差が顕著な時期でもあります。そのため、「うちの子はできていない」ということが悪目立ちしてしまい、親は余計に気になってしまう…ということになるのです。これら生まれ持った気質的な素因と、生まれた後の学習が掛け合わさることで切り替えの得手・不得手が決まっていきます。例えば、気持ちが一点集中して意固地になってしまう気質を持った子が、さらに「自分が粘ればママ・パパは折れてくれる」と学習すれば、親にとっては一番大変な状況になってしまうのです。わが子はナゼ早い?遅い?気持ちの切り替え、原因はコレ「気のそれやすさ」という気質気質とは、その子が持って生まれた素因のこと。気がそれにくい子は一般的に集中力が高いとされ、反対に気がそれやすい子は、他のことに目が行きやすいです。それやすい=気が散りやすいことはあまり良いイメージを持たれませんが、「他のことを提案すると気がそれる=気持ちの切り替えがしやすい子」ともいえます。集中しやすい子はその逆の素質を持っているので、「切り替えは苦手」という子が多いようです。生まれた後に「学習」したこと0歳時の絶対的依存期(感情を他者によってなだめてもらう期間)を過ぎ、自分で感情コントロールできるようになっていく過程で、誰もがいろいろなことを学びます。切り替えが遅い子の場合、切り替えないことでメリットがあるから遅くなることがありますが、これは「10分泣けば、ママは折れてくる」と学習し、切り替えないことが自分の意思を通すツールになっているケースと言えます。どうしたらいいの? 子どものこんなときあんふぁんママに子どもの「こんなとき困った!」をアンケート。みんなの切実な声を、一部紹介します。● 夜、自分の見たいテレビやDVD、動画を見ていると、「あと1回だけ!」を繰り返してなかなか消そうとしません。● 公園で遊んでいるとき、帰る時間だと声を掛けるとまだまだ遊ぶとだだをこねます。何度もあと10分あと10分と繰り返し、1時間帰れないことも…。● 集中していると声掛けしても聞こえなくなるほど入り込んでしまいます。そういうときは何を言ってもやめないし、自分のタイミングで終わりにしないと泣いて怒ります。● 兄弟げんかをしたりママに怒られたりするとしばらくすねています。最近は「ママはもううちの子じゃない、出ていけ!」と部屋の角で座っています。仲直りだよと言っても拒否。「ママ1人でゲームしよっかなぁ」と言うと僕も!となるのですが、やめる時間を過ぎてもやり続けているとまたママに怒られ、そうすると…繰り返しです。● 仲間に入れてもらえなかったり、おもちゃを貸してもらえなかったり、鬼ごっこで捕まったり…と自分の思いが、通らないと大声でわめき、八つ当たりがひどくなります。● 子どもが眠いとき、疲れているとき、空腹のときなど、切り替えがうまくできません。試してみよう!ケース別、気持ちの切り替え方子どもの気持ちを上手に切り替えるために、声掛けはとても大切。誰かに説得されると反抗したくなる心理を「心理的リアクタンス」と言います。この心理を理解した上で、どういった言葉を掛けると良いのかを紹介します。case.1子どもが熱中していることを無理やり中断させられたとき、いつまでも機嫌が直らない先々の良いことを想像して、今我慢するという「満足遅延耐性」力が、まだまだ低いのが子ども。大人でも、ダイエットしているからとケーキを食べることを我慢できる人もいれば、できない人もいますよね。子どもであれば、目の前にある好きなこと・楽しいことに流れるのは当たり前。その方向を変えなくてはいけないのだから、少し言ったくらいですぐにやめられるわけではない、と理解しておきましょう。その上で、声を掛けるときに気を付けたいのは、突然一方的に中断しないこと。まずは先を見越して前振りをしつつ、先々の楽しみを提示してみましょう。[例]「18時からごはんだよ。タイマーかけておくから、鳴ったらテレビはおしまいね」→タイマーが鳴る5分前に「あと5分でタイマー鳴るからね」と声を掛ける。このときは必ず、子どもと目を合わせて、聞いていることを確認しましょう。→「18時だからテレビはおしまいね。きちんとごはんが食べられたら、食後に大好きなデザートがあるよ」case.2叱られると、いつまでもぐずぐずと気持ちを立て直せない子どもを叱るとき、どんな言葉で叱っていますか?その子の行動を改めようとするあまり、子ども自身を否定していないでしょうか。「あなたなんかいらない」というような、子どもを全否定する叱り方をすると子どもも引きずりがちです。もし言い過ぎてしまった場合は、「ママが間違っていた、ごめんね」ときちんと謝りましょう。親の謝罪は、子どもが気持ちを切り替えるきっかけにもなります。そして、完璧にできていなくても、少し良くなった部分を認めてあげると、子ども自身に対する信頼感が深まり、次はもっと頑張ろうと感情をコントロールする意欲が高まります。[例]「この間より短い時間で泣きやめたね!」「幼稚園のお支度、昨日よりテキパキできたね」など、小さな成長もどんどん褒めてあげましょう。case.3自分の思い通りにならない・こだわりが受け入れられなくて不機嫌に生まれたばかりの子どもはとにかくかわいいもの。だから、好きなようにさせてあげないと傷つけてしまうのでは?と必要以上に丁寧に扱ってしまうことがあります。そうすると基礎的なしつけができず、感情を切り替える機会を得ないまま、園生活に突入してしまいます。結果、自分の思い通りにいかないことに子ども自身も折り合いがつかず、気持ちの切り替えがスムーズにできないことも。我慢を体験せずに育ってしまうと、ママ自身を追い詰めてしまうことになりかねません。子どもが負の感情を持つことをあまり怖がらないようにしましょう。[例]「遊びたい気持ち、分かるよ。楽しいもんね。でも今はこれをする時間だよ」と、まずは受容する言葉を掛け、でも譲れない部分では毅然とした態度は崩さない。→「じゃあ、今ママの言うことを聞いて褒められるのと、聞かないでずっとママがプンプンしているのと、どっちがいいかな?」「今日頑張って遊びをやめておうちに帰れたら、明日もこの時間に遊びに来られるよ」など、選択肢を与えて子どもに選ばせましょう。自分で決めた!と言う感覚に落とし込めると、子どもは行動に移しやすいです。case.4生理的欲求(食欲・睡眠欲など)が満たされないと、怒りだす大人であっても、睡眠を削られればイライラしますよね。生理的欲求が原因で悪くなった機嫌は、その欲求を満たしてあげないことには変えることは難しいもの。だから、そのような状況に陥らないよう工夫するしかありません。お腹が空くのが予想できる時間に子どもをおでかけさせるのならば、その前にごはんを食べる、などです。また、規則正しい毎日を過ごしている子の方が、機嫌が良いという研究結果もあり、就寝時間が遅いとぐずりがちになる傾向も。テレビやゲーム、スマートフォンなどに長時間触れて就寝時間が遅くなると、就学後に歯止めが効かなくなることがあります。園時代にスクリーンとの付き合い方をきちんと導いてあげることは、正しい生活習慣にもつながりますよ。パパ・ママ注意!やってはいけないNG声掛け【1】突き放し言葉子どもが感情的になってグダグダしてしまうと、つい突き放すような言葉を使っていませんか?その子の存在を全否定する言葉はやめましょう。[NGワード]●「どこかに行っちゃいなさい」●「あなたはもう、うちの子じゃない」【2】過保護・過管理・過干渉子どもにご機嫌でいて欲しいがために、先回りして手を出し、失敗を拭ってしまったりするのはNG。失敗を経験しないで育つことで、自立心が育たず、感情をコントロールする機会を失ってしまいます。「寂しい」以外の負の感情を持つことは、いけないことではありません。その状態から学び、自分で気持ちを切り替えるチャンスだと捉えましょう。【3】選択肢を与えるときは「没収系」ではなく 「収穫系・報酬系」気持ちを切り替えるための声掛けとして、子ども自身が決められるよう、選択肢を与えるのは良いことです。しかし、その内容が「片付けないと、捨てちゃうよ」という没収系はやめましょう。注意する割に結局捨てられないことが多く、「ママは本気じゃない」と話半分で聞くように。「片付けたら、ママと遊びに行けるよ」などの収穫系・報酬系にすると、子どもも受け入れやすいようです。【4】物質的欲求を満たすのは、ほどほどにおもちゃを買って~と言われるとつい買ってしまう…。このように、物欲が満たされすぎると「言ったら願いがかなう」と考えるようになり、感情のコントロールが苦手になることも。物を欲しがったら、例えば「お誕生日のプレゼント候補リスト」を子どもと一緒に作り、そこに書いてみましょう。リストを作るだけで気持ちが一時的に満たされます。そして誕生日前にそのリストの中から一つを子どもに選ばせるようにしましょう。頑張るママ・パパに佐藤さんからエール!園という集団生活の中で、わが子だけが気持ちを切り替えられていない場面に遭遇すると、周囲の目が気になってしまうことがありますよね。どうしてうちの子だけ…と自分を責めてしまう親御さんも多いようです。でも、切り替えの得意・不得意は、生まれ持った気質が理由の場合もあるので、自らを責め過ぎないでください。そして子どもは、辛い・しんどい・嫌だ・やりたくないなどの負の感情と向き合うことで、たくさんのことを学びます。親がなんとかしなくては!と思わず、今まさに学習しているのだと考え、立ち直れた時にたくさん褒めてあげることで、良い循環・環境を作っていきましょう。外出自粛などの行動制限で、他の子と会う機会が減っているかもしれません。でも、裏を返せばわが子に集中・知ることができるまたとない機会とも言えます。子どもの昨日と今日を比べて、ここがちょっとだけマシになった!そんな小さな成長を見付けて、どんどん褒めてあげてください。2020年度のあんふぁんは、「幼児期の子どもが“今持っている力“を見つけて育てることが将来を生き抜く力になる」と捉え、「みつけようコドモノチカラ」をテーマにさまざまな情報を発信していきます。「あんふぁん」と姉妹誌「ぎゅって」、そして小学館の子育てメディア「HagKum」では、新しい時代の“つながり”を応援しています。今回は家族(=いえ)の応援がテーマです。
2020年10月17日両手に男児
めまぐるしいけど愛おしい、空回り母ちゃんの日々
ヲタママだっていーじゃない!