編集部:学研キッズネット編集部2020年教育改革まであと1年を切り、多くの小学校でプログラミング教育がスタートしています。小学校だけでなく、今後は中学校、高校でもプログラミング教育が必修・拡充化され、大学入試にもプログラミングなどの情報科目の導入が検討されています。まずは今後の教育改革への理解を深め、早めの準備を検討してみてはいかがでしょうか?教育改革はこう進む90秒でわかる今後の教育改革ムービーパソコン学習、関心はあるけどお子さんに使わせるのはやっぱり不安…?お子さんがパソコンを使うことに不安を感じられる親御さまがいらっしゃるのも事実。有害サイト、課金、パソコンばかりで外で遊ばなくなる…確かにそんな話を聞いたら消極的になってしまうかもしれません。でも、その不安もかんたんな設定でクリアできます。パソコンから広がるお子さんの可能性に、安心して期待できる環境をつくってはいかがでしょうか?その不安、「ファミリー機能」で解決できます。「ファミリー機能」の安心ポイント【ポイント01】フィルタリング機能で有害サイトへのアクセスを制限できます「ファミリー機能」の「フィルタリング機能」を使えば、お子さまが有害なサイトにアクセスするのを防ぐことができます。また制限のレベルやコンテンツのカテゴリー別に制限をかけるなど、より細かな設定も可能です。【ポイント02】使えるアプリとゲームを制限できます「ファミリー機能」を使えば、アプリやゲームへのアクセスを制限したり、特定のアプリやゲームの利用を禁止することができます。またクレジットカード番号の入力の際に暗証番号を設定しておけば、不用意にお子さまが課金できなくなります。【ポイント03】パソコンの使用時間を制限できますお子さまがバーチャルの世界で時間を費やしすぎないように、使用時間を制限することができます。方法は2つ。パソコンを使用できる時間帯を設定する方法と、パソコンを1日何時間まで使用できるかを決める最大時間数を設定する方法です。たとえば平日は1日2時間までに制限し、週末はもっと長く使えるようにすることも可能です。今年の夏休みの自由研究で、パソコンにチャレンジしませんか?タイピング、プログラミングなど、パソコン学習にもいろいろとありますが、今年はパソコンを使った自由研究にチャレンジするのはいかがでしょうか?学研キッズネットの自由研究プロジェクトなら、豊富なテーマの中から自分の研究したいテーマが選べ、自由研究に必要な要素が予めデザインされたテンプレートを使えば、簡単にきれいな作品が作れます。夏休み限定で、「パソコンでつくる自由研究コンテスト」も実施していますので、この機会に是非ご参加ください!学研キッズネット編集部(がっけんきっずねっと)『学研キッズネット』は、1996年にオープンした小・中学生のためのWebメディアです。学研の子ども向け書籍や雑誌の編集ノウハウを活かし、子どもたちが安全に楽しめるサイトとして運営しています。子どもたちのしあわせのために、家族のしあわせのために、有益な情報やサービスをお届けできるよう、いつも精一杯がんばっています。すくすく伸びる子どもたちのために
2019年07月19日夏休み前の数週間、イギリスの小学校は楽しい行事が目白押しになります。6年生は全国統一の学力テストSATSを終え、再び体験型の学習が始まります。お天気に恵まれ、遠足や地元の自然観察が盛んになるのもこの時期です。ある朝、学校にいくと4年生がみんなスーツケースを持っていました。「どうしたの?」「ニューヨークにいくの!」教室のドアを開けたのは、フライトアテンダントさんの格好をした先生たち。前日からガイドブックを読んで観光名所を調べたり、歴史を調べたり……。飛行機での旅行を疑似体験する学習だったようです。あとで聞いたところ、授業中に「お飲み物はいかがですか?」と先生方がジュースを配ってくれたとか。こんなふうに体験学習を得意とする下の子の小学校で、学年末に学校中の子供たちが参加するのが「エンタープライズ・ウィーク」。一週間丸々かけて、金曜日のエンタープライズデイのために準備をします。子供たちがとても張り切るエンタープライズデイは、一学年の終わりを飾るとても大切な行事です。さて、一体どのようなことをするのでしょう?子供がビジネスの基礎を学ぶ「エンタープライズ教育」エンタープライズ教育は、子供にビジネスの基礎を学ばせるための教育です。国で定められているコア・カリキュラム(日本の学習指導要領のようなもの)には入っていませんから、どの程度重要視するかは学校によって違いがありますが、多くの学校で取り入れられています。公民(シティズンシップ)の授業と絡めている学校や、お金のやり取りをすることで伸びる算数の能力を重視している学校もあるようですが、下の子供の学校では、様々な技能を組み合わせた総合的な学習の時間として、かなり重要な位置を占めているように思います。一週間かけて、班ごとに事業計画を立て、売り物を準備し、当日の仕事の手分けを決めます。当日は2ポンド(約300円)分の小銭を持って買い物を楽しみ、決められた時間には自分の班に戻って売り子をするのです。時計が読める年齢ですから、時計を見ながら時間配分を考えなくてはなりません。校庭まで含めた学校中に小さなお店が出ているのですから、時間管理ができないとあっという間に1日が過ぎてしまいます。事業計画をたて、ものを作り、そして売る子供たち週の終わりの金曜日にお祭りになるエンタープライズウィークですが、週のはじめの月曜日は事業計画作りから始まります。子供の手で作ることができるものを、子供たち同士が話し合って決めるのです。1年生の頃は先生がかなり手伝って、ブレスレットを作っていました。材料はリボンと穴の空いたシリアル、Cheerios(チェリオス)。まさに「食べられるブレスレット」です。イギリスの小学校一年生は4歳。年齢の低い子供でも作れるし、食べてしまっても問題がない。よく考えられた商品でした。一箱どこかの家庭が寄付したものを使ったようです。もう少し年齢が上がると売り物も多様化してきます。空き箱で工作をして売り出す班もあれば、家庭から持ってきた布切れや輪ゴムを元に、使えそうなものを器用に作ってしまう高学年の班も。小麦粉や砂糖を手分けして集め、学校の調理室でカップケーキを焼いて売り出す子供達も現れました。出来上がったものは10ペンスから50ペンス(15−75円程度)の値段がつけられます。ものを売るだけがお金の稼ぎ方じゃない!?色々と話し合っていた下の子の班は、最終的に「ものを売るだけがお金の稼ぎ方ではない」という結論に達したようです。「それじゃあ、どうするの?」「ママ、きれいなスポンジある?スポンジ投げをするの!」よく日本の観光地にあるような、穴から顔だけ出すことのできるパネルを班全員で作り、班員がモグラ叩きのようにそこから顔を出す。水を含んだスポンジを投げて、顔に当たったら景品の紙で作ったおもちゃがもらえる──1回スポンジ3つで10ペンス。当たっても外れても大笑いです。「先生が “まと” の役で顔を出してくれたらすごく盛り上がると思って、交渉したんだけど、うまくいかなかったの」素晴らしいアイデアですが、それはさすがに先生も断るでしょう。お菓子を作ることが得意な子供はお菓子を作り、楽器が得意な子供たちは集まって楽器を演奏し──と、「今の自分の得意なこと」を中心に考えながら、「他の人は何を楽しいと思うのか」聞いて回ったりと、初歩的ながらも市場リサーチのようなこともしたようです。楽しいお祭りを通して、デザイン力・観察力・交渉力を育む子供にとっては楽しいお祭りの一週間、「エンタープライズウィーク」。親の視点からは、そこにいかに多くの学びのチャンスが仕込まれているのかが、ありありと見て取れます。ディスカッションを大切な技能だと考えるイギリスの小学校ではおなじみの光景ですが、みんなで話し合って制限時間内に計画を立てたり、自分の身近な場所にどんなニーズがあるのか探したり、どの程度の値段付けが適切なのか考えたり、と多岐にわたる技能が使われています。観察し、デザインし、交渉し、そして最後にお金のやり取り、計算をする。もうすぐ夏休みが始まり、しばらく学校から離れるこのタイミングでは特に、自分の身の回りにある商業活動が一体どのように成り立っているのかに目を向けることは重要だと思います。子供たちの意識を「机の上での学び」から「日常生活全体に応用できる学び」へと優しく導く、そんな効果もありそうです。お互いを楽しませながら様々な知識や技能を身につけていくこと。学んでいると感じさえさせず、子供が活躍できる場所を作ること。親は入ることができない子供だけのお祭りですが、毎年「できること」が確実に増えていっていることに気づかされる、とても大切な節目でもあるのです。
2019年07月19日たくさんの動物がいる動物園は見どころが満載ですが、「学び」を意識して観察するためには、どんなところを見れば良いのでしょうか?動物園のおもしろさやすばらしさを伝えるために活動されている上野動物園教育普及係の井内岳志さんに、ポイントをお聞きしました。構成・編集/木原昌子(ハイキックス)取材・文/田中祥子写真/児玉大輔(※)動物の観察で、着目するポイントを頭にいれておく小さな子どもでもわかりやすいのは、体の大きさですね。とても背が高いキリンの頭は小さく見えますが、じつは人間の子どもの胴体とおなじくらい大きいのです。キリンが頭を下げたときには、ぜひ観察してみてください。逆に、小さくて驚くのはネズミ類です。上野動物園にいるコビトハツカネズミは世界最小のネズミといわれ、500円玉とほぼ同じ大きさしかありません。実際の大きさが体感できるのは、テレビや図鑑ではわからない動物園ならではの楽しみですね。ウンチも観察のポイントです。形や大きさはまちまちで、体が大きな動物だからといってウンチも大きいわけではありません。ゾウのウンチは1個が1kgもある大きなものですが、キリンはポロポロの小さなウンチをします。パンダのウンチは良いにおいがするといわれていて、上野動物園では、毎週水曜日にボランティアが解説をする際に、実際ににおいをかぐこともできますよ。動物園で生まれた赤ちゃんが公開されている場合は、パンフレットやホームページ、動物舎の掲示で確認することができます。親と子で模様や色がまったく違う動物もいます。たとえば、マレーバクの大人は胴の途中で白と黒にはっきりと分かれていますが、子どもは “うり坊” と呼ばれるイノシシの子どもと同じような茶色の斑模様です。サルのアビシニアコロブスの親は白と黒ですが、子どもは真っ白い毛に覆われています。ゴリラの子どもはお尻に白い毛があります。子どもの頃は多少いたずらをしても許されていますが、成長するにしたがって白い毛が抜け始めると大人として扱われるので、いたずらをするとほかの大人に怒られてしまうんですよ。アビシニアコロブスの親子。子どもの毛は真っ白(公財)東京動物園協会提供動物はなにを食べているのでしょうか。動物園によっては、エサやりの時間を案内しているところもあるので、エサやりタイムを巡るのもおすすめです。残念ながら上野動物園では、人が集中して危険な場合があるためエサの時間は公開していませんが、食べているところが見られなくても、食べ残しを観察することもできます。ちなみに、ツキノワグマにミカンやドングリをあげると、きれいに中身だけ食べて皮は残します。クマの口や舌先が器用だということがわかりますね。ツキノワグマ(公財)東京動物園協会提供動物園だからこそできる調べ学習のテーマを考えよう調べ学習のおすすめのテーマとして、動物の体の部分の細かな特徴を見比べるというものがあります。観察をして、なぜその違いがあるかを考えてみるとおもしろいと思います。たとえば、目は動物によってついている場所が違います。草食の動物の目がついている場所は、頭の横のほう。そうすると視界が広くなるので、肉食の動物が自分を襲おうとして近づいてくるのが、真後ろ以外なら察知できるのです。逆に、肉食の動物の目は前の方についています。正面を左右の目でしっかりと見られるため、獲物との距離を正確に測ることができます。肉食ではありませんが、サルも目は前の方についていますね。これは枝から枝へジャンプするときの距離を知るためです。人間もサルの仲間なので、目は前についていますね。蹄があるか、指が何本あるかなど、足の形もさまざまです。馬は1本指、ウシやキリン、シカは2本指(さらに小さな2本の指をもつことも)、バクの後ろ足やサイは3本指です。鳥の場合は、前に向いている3本の指のほかに、後ろに向かって親指が1本ついているものがあります。これは、木に止まるための支えです。こういった小さな部分を観察するには、双眼鏡を持っていくと便利ですよ。日本古来の在来牛の見島牛。ウシの足は2本指。キリンやシカもウシの仲間で2本指です。いろんな動物の足の形を見比べてみよう上野動物園で会える動物たち上野動物園の園内では、「アイアイのすむ森」や「アフリカの動物」のように場所や種類により分類して展示しています。とても広いので、1日で全部見ようとせず、1つの部分だけをじっくり見るのがおすすめです。たとえば「クマたちの丘」では、エゾヒグマ、ツキノワグマ、マレーグマ、ホッキョクグマを比べて見ることができます。同じクマの仲間でも、大きさも毛の色も姿もそれぞれ違うもの。今いるエゾヒグマは、北海道で保護されたクマです。上野動物園に来たときは子どもだったので、リードをつけて園内を散歩していましたが、今では体重が300kg以上に成長しました。クマ舎の壁の色が黒くなっているのは、背中をこすり付けてマーキングをしているからです。クマが立ち上がったときの大きさがわかるので、注目して見てください。隣にいるツキノワグマは体重が60kgほど、熱帯のマレーグマはさらに小さなサイズです。ヒグマを見た後にマレーグマを見ると、「これなら俺でも勝てる」と言う若い男性がいますが、人間は猫より大きな肉食獣にはとても敵いませんよ。マレーグマヒグマより一回り小さいマレーグマの園舎には、同じ地域に住んでいるコツメカワウソとハクビシンが同居しています。それぞれのテリトリーには電気柵を張っているので、クマに食べられる心配はありません。電気柵を使うことは可哀想だという意見がありますが、多くの動物は1度触ってショックを受けると、もうそこには近づかなくなります。哺乳類は基本的に学習能力が高いので、電気柵は効果的です。また、不忍池では飼育動物と野鳥が同居しています。島の中に巣をつくって繁殖しているカワウソの隣には、飼育しているモモイロペリカンがいます。また、天然記念物のオオワシも池の島で飼育しています。天然記念物ですが、違法に撃たれて飛べなくなってしまったため、保護したものです。池のそばにある施設「不忍ラボ」には、池にどんな鳥がいるかの定期観察や、自然に見られる昆虫などの展示をしています。図鑑も用意していますので、調べ学習や夏休みの研究の参考にもなりますよ。不忍池のオオワシ***「エサ」や「ウンチ」は、小さな子どもでも喜びそうなテーマですね。高学年になってきたら、体の特徴や生育地域などを、図鑑や地図と照らし合わせて調べると、より学びを深められそうです。じつは、動物園は飼育展示ということのほかに大切な役割があります。次回は、井内さんに大切な動物園の役割について教えていただきます。(※写真クレジット注記:(公財)東京動物園協会提供写真および記事冒頭画像を除く)■ 上野動物園教育普及係・井内岳志さん インタビュー一覧第1回:動物園は学びの場!上野動物園の学芸員が伝授する、親必見の「動物観察準備テク」第2回:解説のメモなんてしなくていい。「目の前の動物」から最大限学びとるコツ第3回:「夏休みの自由研究」は動物園で。上野動物園おすすめの“調べ学習”のテーマとポイント第4回:動物園は子どもの「心」を育てる場所。“楽しみながら動物を知る”ことの大きな価値(※近日公開)【プロフィール】井内岳志(いうち・たけし)恩賜上野動物園教育普及係主任(学芸員)。大学ではサルの生態を研究。恩 賜上野動物園、葛西臨海水族園、井の頭自然文化園などの動物園・水族館で30 年以上、 動物園教育に関わる。大哺乳類展などの国立科学博物館との企画展 や、上野動物園で毎年恒例の夜間開園「真夏の夜の動物園」の企画など、さまざまなイベント・企画で動物たちの生態を紹介している。
2019年07月19日どうも、うえだしろこです!現在二人の男子(長男 桃太郎 6歳、次男 金太郎 3歳)を絶賛子育て中でございます!さて、今回は、我が家の子どもたちの生活においてかなり重要な位置を占める「図鑑」がもたらした効果について書きたいと思います!■なぜか「きのこ」に興味を持った長男の場合大量の図鑑を所持している桃金兄弟であるが、最初に我が家に図鑑がやってきたのは、長男 桃太郎(現在小学一年生)が、年中さんの時でした。もともと、自然物に対して興味があるようだったので、本屋さんへ図鑑を買いに行ったところ…えぇ~!?最初は昆虫とか動物とかじゃないの~~!?マニアック~~!!「図鑑」…それはめくるめく知識の宝庫…!ちょうど同じ時期に公園で偶然本物のキノコに出くわしたこともあって、どんどん「きのこ図鑑」ワールドにハマって行き、そうしているうちに…ひらがなは母により教えられたものですが、カタカナについては、完全に図鑑を読んでいるうちに自然と覚えてしまったのです!カタカナを習得した長男は、すっかり一人で図鑑を読めるようになり、どんどん自らその知識欲を満たしてゆくのでした。■言葉の遅い、動物好き次男の場合次に、次男の場合ですが、我が家の次男坊(現在年少)は、とても言葉の発達が遅い子でした。動物が好きで、少ない語彙の中でも、動物に関わるものが多かったのですが、それでもこの程度。動物好きな次男坊ですので、ごく自然に買い与えた「動物図鑑」。とても興味を持って、指差しで「これは何?」といつでも聞いていました。そして、3歳7ヶ月現在。最近まで「ライオン」すら母の言葉を繰り返して言うこともできなかったこの子が、図鑑の中のめくるめく動物ワールドへの興味から、「この動物の名前が知りたい」という知識欲に発展し、苦手な言葉の反復も頑張ってこなし、かなりマニアックな名前まで把握し、言えるようになったのです…!兄弟と図鑑との関わりを通して自発的な「学び」とは、やっぱり「興味」の先にあることなのだなぁ、ということをしみじみ感じました。そして、我が家の兄弟には「図鑑」というのがすごく合っているなぁと思います。そして我が家には続々と図鑑が増え続け、ただいま本棚の中で16冊の図鑑が幅を利かせているのでした…!
2019年07月18日「うちの子はおしゃべりが苦手だし、コミュニケーション能力が低いのかも……」と悩む親は少なくありません。しかし、コミュニケーション能力の高さは、おしゃべりがうまいかどうかだけでは判断できません。今回は、これからの社会で必要とされる本当のコミュニケーション能力について紹介しましょう。コミュニケーション能力はこれからの社会でより必要とされる学校や職場、買い物や通院、役所での手続きなど、人は毎日の生活の中でさまざまな人とコミュニケーションを取りながら生きています。それは、子どもたちにもいえること。保育園や学校では、先生や友だちとのやりとりが欠かせません。昨今では、教育現場においても、コミュニケーション能力がより重視されるようになってきています。幼稚園教育要領や小・中学校の学習指導要領で「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」に重点が置かれていることは、ご存じの方も多いでしょう。また、2020年度から大学入試センター試験が大学入学共通テストへ変わり、マークシート方式のみだった試験に記述式問題を導入して、コミュニケーション能力とも深い関わりのある「思考力・判断力・表現力」をより適切に評価する方針に変わります。加えて、英語は、読む・聞く・話す・書くの4つの評価を通して、実践的なコミュニケーション能力が求められるようになるのも知られているところ。このように、学習面ではもちろんのこと、今後、社会全体のグローバル化や人々の生き方の多様化が進むにつれ、よりいっそうコミュニケーション能力が求められるようになっていくでしょう。そもそもコミュニケーション能力って?日本コミュニケーション能力認定協会は、社会や企業が求める「コミュニケーション能力の高い人」の特徴を次のように述べています。わかりやすく伝えることができる人のやる気(モチベーション)を高めることができる聞き上手で、相手がどんどん自分のことを話したくなってしまう相手の気持ちを察することができるもっと聞きたい!と思わせる魅力的な話ができる相手に共感することができる的確な質問ができる話をまとめることができる人に好感を与えることができる人を動かすことができる(引用元:日本コミュニケーション能力認定協会|コミュニケーション能力とは?)同協会は、コミュニケーション能力の要素を、「聴く力」「伝える力」 「人の気持ち(心理)を汲み取る力」の3つに集約できると述べています。「コミュニケーション能力が高い」と聞くと、「おしゃべりが上手な人」をイメージすることが多いかもしれません。でもじつは、相手の話を聞く力や引き出す力、共感する力もコミュニケーション能力のひとつとされています。つまり、おしゃべりが苦手な子どもでも、じつは友だちの話を聞くのが上手というケースもあるということ。子どものコミュニケーション能力が気になったときは、話す力だけではなく、聞く力や、相手の気持ちを理解する力にも注目することが大切です。社会を生き抜くためのコミュニケーション能力を育てるにはさまざまな種類があるコミュニケーション能力ですが、それらを伸ばすためには以下のポイントに注意しましょう。・人と関わる力→「人や地域に関する経験」で伸びる東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所が2015年7~8月に実施した「子どもの生活と学びに関する親子調査2015」によると、「リーダーとしてグループをひっぱる」「グループがまとまるように協力する」「いろいろな人と仲良くする」といった人と関わることが得意な子どもは、夏祭りなどの地域の行事に参加する・お年寄りの世話をする(手伝いや介護など)・ボランティア活動に参加する・親から仕事の楽しさや大変さを聞くなどの「人や地域に関する経験」が多いことがわかりました。核家族化が進み、地域との交流が少なくなっている現代では、意識的に地域と関わることが、コミュニケーション能力を伸ばすうえで重要だといえるでしょう。・話したり聞いたりする力→「母親が子どもの話を聞こうと意識すること」で伸びる創価大学教育学部教授で臨床心理士の園田雅代氏は、母親が子どもの話を聞こうとすることには、「子どもがお母さんへの信頼感を持ちやすくなる」「子どものコミュニケーション能力が育ちやすい」という2つのメリットがあると言います。もちろん、母親だけでなく父親や祖父母も、子どもの話をしっかり聞く姿勢を保つことが大切です。ただ、子どもとの関わりがより密であり、影響力が大きいと考えられる母親が、子どもの話をしっかり聞こうとすることで、コミュニケーション能力がより伸びやすくなるのではと園田氏は述べています。忙しくて相手をできないときにも、「あとで聞かせて」と言った場合は、忘れずに「さっきの話、詳しく教えて」とたずねるようにするなど、子どもの話をきちんと聞こうとしている姿勢を見せることが大切です。・感情をコントロールしながら表現する力→「子どもの感情を代弁してあげること」で伸びる自分の感情をしっかりと認めつつも、「相手に伝えるかどうか」「その場で話してもいいかどうか」「相手を不快にさせる表現ではないかどうか」などを考えてコントロールする力は、他者と関わるうえで非常に大切です。そうした力を伸ばすために必要なことについて、法政大学文学部教授で発達心理学・発達臨床心理学・学校心理学が専門の渡辺弥生氏は次のように述べています。子どもが初めての感情に向き合っている時、「切ないんだね」「感激しているのね」など保護者が一歩先に立って気持ちに当てはまるボキャブラリーや表現で代弁してあげると、子どもも感情と言葉をリンクさせて習得していくことができます。自分の表現に自信がない保護者のかたは、感情表現が豊かな絵本を子どもと一緒に読むなどして、親自身が感情表現をともに学んでいくことも有効です。(引用元:ベネッセ教育サイト|子どもの感情表現を人間的成長につなげる方法)子どものどんな感情も否定せずに、寄り添いながら気持ちを代弁してあげることで、子ども自身が感情をコントロールできるようになっていくのです。***子どものコミュニケーション能力を伸ばすと、自分の感情表現をうまくできるようになることはもちろん、他者への思いやりを持つことにつながります。子どもとの普段の関わりの中で、コミュニケーション能力を育む工夫をしてみましょう。文/田口 るい(参考)こどもまなび☆ラボ|コミュニケーション能力を育てよう!会話をグレードアップさせる3つのヒント。PHPファミリー|「聴く」ことは信頼感につながる~子どもの心を整えるお母さんの「聴き方」PHPファミリー|自己主張ができず口下手。いじめが心配~子育て相談室ベネッセ教育サイト|家庭内の会話から子どもの思考力、表現力を育む[やる気を引き出すコーチング]ベネッセ教育サイト|ふだんの経験でコミュニケーション力に大きな差が出る?ベネッセ教育サイト|子どもの感情表現を人間的成長につなげる方法日本コミュニケーション能力認定協会|コミュニケーション能力とは?
2019年07月18日調べ学習や夏休みの自由研究では動物や生き物のテーマが人気です。動物園を活用するときは、どういった目線で動物を観察すれば良いのでしょうか?上野動物園教育普及係の井内岳志さんに詳しくお聞きしました。構成・編集/木原昌子(ハイキックス)取材・文/田中祥子写真/児玉大輔動物はいろんな視点でじっくり時間をかけてみると面白い親子で動物園を楽しむときに重要なポイントは「1日で全部を見ようと思わないこと」です。特に大きな動物園になると、全部の動物を見るにはとても時間がかかるため、子どもは疲れてしまいます。また、ひとつひとつの印象が散漫になって、なにも得られないまま終わってしまいがちです。そのため、何かテーマを絞っておくと良いでしょう。たとえば、今日はこのエリアだけ、この動物の種類だけ、と決めることで、じっくり観察することができますね。もちろん、見ているうちに子どもが別の動物に興味を持ち始めたら、それを中心に見るように変更してもかまいません。無理に最初に決めたテーマにこだわる必要はないと思います。子どもが見たいと思うものを、時間をかけて満足するまで見せてあげてください。数年に一度の来園だと、親子ともたくさんの動物を見たくなってしまいますが、年間パスポートなどを利用して年に何度か来園すると、余裕のある観察ができます。動物は、ひとつの動物をなるべく長い時間見ているほうがおもしろいと思います。最低2~3分は観察するようにしてください。もしも動物が見当たらなくてもそのまま立ち去らず、子どもに「どこにいるかな?」と声をかけて探してみるのもおもしろいですよ。よく見ると、やぶや水の中にじっと隠れていることがあります。どうしてそこに隠れるのかを考えるのも良いですし、どれくらい水に潜っていられるのか測ってみるのも楽しいですね。動物が見えなかったり寝ていたりしても、観察するポイントはあります。動物舎は、その動物の生態や本来の生活に合わせて作られているもの。水辺の動物にはプールを設置していますし、木登りが得意な動物には木のジャングルジムが作られています。昔は衛生管理が第一条件になっていましたので、コンクリートの平らな動物舎が多かったのですが、最近はさまざまな方法で清潔にすることができるようになり、より自然に近づけることができるようになりました。動物舎を観察するだけでも、動物がどんな場所に住んで、どんな動きをするのかをイメージすることができるんですよ。また、周囲の足元を見ると動物の足跡が描かれていることもあるので、大きさを比べたり、指の本数を調べたりすると良いでしょう。動物園が企画するガイドツアーもおすすめさまざまな動物園でガイドツアーやスポットガイドなどを設けています。ボランティアや解説員・飼育員が動物の詳しい話を聞かせてくれるので、積極的に活用してください。上野動物園や葛西臨海水族園(東京)では、スマートフォンなどで楽しめる「Tokyo Parks Navi」を公開しています。動物舎に貼ってあるタグにタッチするかQRコードを読み込むと、テキストや動画などで詳細情報を説明するものです。ほかにも、旭山動物園(北海道)や天王寺動物園(大阪)などでは、スマートフォンアプリ「one zoo」で、園内マップや音声ガイドが利用できます。鳴き声やにおい、爪や動き方など実際に感じたことを記録する動物の解説ラベルを書き写すのに夢中になっている子どもがいますが、せっかく目の前に本物の動物がいるのにもったいないですよね。図鑑でも得られる知識は家に帰ってから調べるようにしましょう。動物の動きや鳴き声、におい、細かな部分が観察できるのが動物園のおもしろさです。子どもの記念写真を撮るときは、園内にある動物のオブジェなどと一緒に撮るのがおすすめです。上野動物園にあるゴリラやヒグマ、ゾウガメなどの像は、実際の大きさを忠実に再現していますから、子どもを横に並ばせて写真を撮れば、あとで改めて大きさを比較できますよ。家に帰ったら、その日に見た動物の仲間を図鑑で調べてみましょう。たとえば「今日はクロサイを見たけれど、図鑑で見るとインドサイは角の本数が違うね」などと親が少し誘導してあげれば、子どもの興味は広がっていきます。さらに「恐竜のトリケラトプスにも同じような角があるけれど、あれはサイの仲間なのかな?」とほかの分野に興味を広げてあげることもできます。動物園の次に、動物の剥製や骨格標本のある博物館を訪れるのもおもしろいですよ。絶滅した動物の模型や、恐竜の骨、化石なども観察できるので、子どもの興味がさらに広がっていくでしょう。朝、昼、夕方、夜。それぞれに動物の見どころがあります動物の時間帯ごとの習性に着目して観察するのもおもしろいものです。たとえば、トラは朝一番に自分の縄張りをパトロールするので、開園すぐの時間がおすすめです。うろうろと動き回る姿を見ることができます。上野動物園では朝、お客さんの見えるところに骨付きの肉を用意しているので、肉を食べる様子も観察できますよ。キツネザルは体温調整が苦手な動物なので、朝は太陽に向かって手を大きく広げて日光浴をするかわいい姿も見ることができます。上野動物園のゾウは、夕方に室内へ入るとき、前のゾウの尻尾を鼻でつかんで一列で行進します。これは狭い入り口に殺到すると危ないために訓練させたものです。ショーではありませんが、とても人気があります。また、昼間とは違った動物の姿を観察することができる貴重な機会として夜間開園があります。暗くならないと活発に動かない夜行性の動物を観察できるチャンスとして、最近ではさまざまな動物園や水族館などで企画されていて、たいへん人気がありますね。上野動物園では、毎年お盆の時期に10日間ほど開催しています。こうした夜間公開や特別展示などの企画イベントでは、動物の生態をより楽しめるものがそろっています。ぜひチェックして親子で出かけてみてください。***動物園で1日を過ごすには、お弁当を食べる場所や園内のレストランを確認しておくことも必要ですね。レストランでは動物にちなんだメニューが用意されているところもあるようですから、チェックしておくとより楽しめるでしょう。次回は井内さんに、動物のどんなところに注目して観察したら良いかをお話しいただきます。■ 上野動物園教育普及係・井内岳志さん インタビュー一覧第1回:動物園は学びの場!上野動物園の学芸員が伝授する、親必見の「動物観察準備テク」第2回:解説のメモなんてしなくていい。「目の前の動物」から最大限学びとるコツ第3回:「夏休みの自由研究」は動物園で。上野動物園おすすめの“調べ学習”のテーマとポイント(※近日公開)第4回:動物園は子どもの「心」を育てる場所。“楽しみながら動物を知る”ことの大きな価値(※近日公開)【プロフィール】井内岳志(いうち・たけし)恩賜上野動物園教育普及係主任(学芸員)。大学ではサルの生態を研究。恩 賜上野動物園、葛西臨海水族園、井の頭自然文化園などの動物園・水族館で30 年以上、 動物園教育に関わる。大哺乳類展などの国立科学博物館との企画展 や、上野動物園で毎年恒例の夜間開園「真夏の夜の動物園」の企画など、さまざまなイベント・企画で動物たちの生態を紹介している。
2019年07月18日たくさんのことに興味関心が高まる時期の子どもを連れて行きたい場所として、いつの時代も人気なのが動物園です。ゾウやキリンなど大型の動物や、愛くるしいモルモットなど、子どもは動物が大好きですよね。では、動物園でより楽しく学び多い時間を過ごすためには、どんな準備が必要でしょうか。上野動物園の教育普及係を務める井内岳志さんにお聞きしました。井内さんは、30年にわたって動物園で教育活動を担当している大ベテラン。さまざまな広報活動のほか、学会での発表など研究活動、学芸員として博物館との連携活動など、動物園に関わる幅広い活動を続けていらっしゃいます。構成・編集/木原昌子(ハイキックス)取材・文/田中祥子写真/児玉大輔動物園に行く前に、動物図鑑などを見てみよう動物園は親子で休日に訪れる場所として人気がありますよね。どういう目的で動物園に行くかというアンケートでは「家族と一緒のレジャー」という答えが最も多いものでした。そんなレジャーイメージが強い動物園への訪問には、実は少しの工夫で、楽しむだけでなく学びの要素をプラスすることができます。お父さんお母さんが事前にできる準備を伝授しましょう。まずは、家であらかじめ親子で本や図鑑を読んでおくと、動物や動物園について興味が深まると思います。『(楽しい調べ学習シリーズ)動物園のひみつ』(PHP研究所)という本には、展示の工夫や飼育員の仕事を子どもでも読めるようにやさしく書いてありますよ。実際に園内を回るときには小さな図鑑を持って歩くと面白いですね。ポケット図鑑シリーズ『絶滅危機動物』(学研プラス)は小さなお子さんにはちょっと難しいかもしれませんが、小学生の調べ学習などで役に立ちます。どうしてその動物が絶滅しそうになっているのかを、動物園で実際に動物を見ながら考えられます。動物園で専用のガイドブックを作っている場合もありますから確認してみると良いでしょう。売店で購入できるので、入園したら最初に立ち寄って探してみてください。無料のフリーマガジンやパンフレットも参考になりますよ。上野動物園の園内で配布している『ZOO TODAY』は毎月発行しているニュース紙です。園内で生まれた赤ちゃんや、冬毛から夏毛に変わる動物などその季節ならではのタイムリーな観察ポイントを紹介しています。『みんなの上野動物園』は年に5冊出している無料の情報誌です。“鳥のくちばしを観察してみよう”“日本に暮らす動物を観察しよう”など号ごとにテーマがあり、こんな視点で見ると面白いというヒントを提案しています。双眼鏡やスケッチブックがあると、動物観察をより楽しめます動物の足や角などの細かいところを観察するには双眼鏡が役に立ちます。大型のものでなくても2~3倍のオペラグラス程度のもので充分ですよ。気がついたことをメモしたり、動物をスケッチしたりするノートと筆記用具も忘れないようにしましょう。カメラで撮るのも便利ですが、写真撮影が目的になってしまって観察そのものがおろそかになってしまう場合もありますから、一緒に行く大人が写してあげると良いと思います。そのほか、動物園は野外施設ですので、暑い季節は熱中症対策にも気をつかってください。帽子や飲み物のほか、保冷剤を持っていくと首筋に当てて体を冷やしてあげることができるので便利です。動物たちとのマナーも大事。相手を思いやる気持ちを育みますお子さんには「自分がされて嫌なことは動物にもしないでね」と教えてあげましょう。たとえば、動物をおどかさないこと。寝ているからといって、ガラスを叩いたり、大声で呼んだりして起こそうとしないでください。エサをあげるのも絶対いけません。人間が食べるものでも動物にとっては毒になるものもありますし、栄養の偏りも出てしまいます。時々「動物が喜んでいるからいいのでは」という声を聞きますが、もしも自分の子どもが誰かに晩御飯を食べられないくらいお菓子をもらっていたら困りますよね。大人も自分に置き換えて考えてみることが大切です。混雑している場合、最前列である程度見たら、後ろの人に譲ってあげることも大切です。動物園は大人が公共のマナーを教える場でもあるんですよ。動物とお子さんを一緒に写真を撮る際にも周囲への配慮をお願いします。また、写真を撮るときはフラッシュをオフにしてください。動物はフラッシュの光が苦手です。特に薄暗い場所にいる鳥の場合、フラッシュに驚いて急に飛んでしまい、ガラスにぶつかって怪我をすることがあるからです。それから、動物を見るときに大人が「気持ち悪い」「汚い」「臭い」などのマイナスの言葉を言わないようにしましょう。子どもに伝わってしまうと、その言葉通りにしか見られなくなってしまいます。子どもが自分の感性で動物を知る姿を大人は見守ってあげてください。入園したときに写真を撮っておくと迷子対策に園内は広いので子どもは走り回ってしまいがちですが、しっかりと見ていてあげてください。親が動物の撮影に夢中になっていると、後ろにいた子どもに目が届かなくなりがちです。特に迷子がたくさん出るのは土日祝日です。もしも子どもが迷子になってしまったときは、スタッフが無線でやりとりをしてその子を探します。その際に便利なのが「子どもの写真」。親御さんにはお子さんの迷子対策として、動物園に入園したらまず入り口で子どもの写真を撮っておくことをおすすめします。その写真を見せていただければ、スタッフ間で子どもの特徴や洋服の色などを共有しやすくなるからです。また、上野動物園では混雑時に、案内ボランティアがかわいいパンダのイラストの迷子札を配布しています。名前や連絡先などを書いておくと早期解決の手助けになるので、ぜひご活用ください。***動物園に行く前に少し工夫して準備すると、動物園をより一層楽しむことができそうです。それでは、たくさん動物のいる広い園内では、どんな視点で動物を観察すれば良いのでしょうか?次回は動物園を楽しみながら学びを深める秘訣を井内さんにお聞きします。■ 上野動物園教育普及係・井内岳志さん インタビュー一覧第1回:動物園は学びの場!上野動物園の学芸員が伝授する、親必見の「動物観察準備テク」第2回:解説のメモなんてしなくていい。「目の前の動物」から最大限学びとるコツ(※近日公開)第3回:「夏休みの自由研究」は動物園で。上野動物園おすすめの“調べ学習”のテーマとポイント(※近日公開)第4回:動物園は子どもの「心」を育てる場所。“楽しみながら動物を知る”ことの大きな価値(※近日公開)【プロフィール】井内岳志(いうち・たけし)恩賜上野動物園教育普及係主任(学芸員)。大学ではサルの生態を研究。恩 賜上野動物園、葛西臨海水族園、井の頭自然文化園などの動物園・水族館で30 年以上、 動物園教育に関わる。大哺乳類展などの国立科学博物館との企画展 や、上野動物園で毎年恒例の夜間開園「真夏の夜の動物園」の企画など、さまざまなイベント・企画で動物たちの生態を紹介している。
2019年07月17日イライラしているときに、子どもが何かをやらかしてしまった……。そんなとき、私はカッとなって、子どもを叩いてしまったことがあります。そのときに思った気持ちとその後の行動、どう子育てをしていくのか考えさせられた経験をお伝えします。 子どもを叩いてしまった…私は子どもを毎日のように叱っています。それは子育てをしているママなら、きっとよくあることだと思います。その日は、3歳の長女が1歳の次女を物で叩いたことが原因でした。幸いなことに、次女はケガをしませんでしたが、いつもよりイライラしていた私はカッとなって長女を叩いてしまったのです。 そのときの子どもが泣いている状況と背中についた赤い手跡に、ただただ申し訳ないという気持ちと、やり過ぎてしまったという罪悪感だけが残りました。 叩いてしまったあとの長女への対応罪悪感に苛まれ後悔しましたが、長女を叩いてしまったことは事実です。私は冷静になってから、泣いている長女の目をしっかりと見て、なぜこんなことをしたのか聞き、妹に物を投げてはいけないと説明をして妹に謝らせました。 そのあと、「痛かったね、ごめんね」と私も手をあげたことを謝りました。そして「〇〇ちゃんも同じように痛かったと思うよ」と言うとその日以降、長女は妹に手を出さなくなりました。 改めて考えた子育てのことその夜、帰宅した夫に、私はその日にあったことを伝えました。「人はどうしても感情や気分で怒ってしまう。けれど、子どもに対しては怒るのではなく、“やったことに対して叱る”ことをしていこう」と夫は私に言いました。 私は夫の言うことに納得し、この日のできごとを反省しました。そして何よりも子どもを叩かないでいいような教育と環境づくりが大切だということに気付かされました。 子どもを叩いてしまったことがある方は、私と同じように罪悪感に苛まれたのではないかと思います。後悔しても叩いてしまった事実は変わりません。でも、その後の行動、これからどうするかが大事だと私は思いました。 イラスト:imasaku著者:鳥居香咲三姉妹の母。夫の両親と二世帯同居にて、子育て生活を楽しんでいる。現在は自身の経験をもとに、妊娠・出産・子育てに関する体験談を中心に執筆している。
2019年07月16日昨今、EQ(心の知能指数)やSQ(社会的指数)など、さまざまな能力について取りざたされていますよね。しかし、「やっぱり “頭の良さ” として馴染み深い、IQ(知能指数)が気になる」「子どもの将来のためにIQを高めてあげたい」と考えている親御さんも多いことでしょう。そこで今回は、「IQが高い子どもの特徴」や、「子どもの社会的な成功とIQとの関係」についてご紹介します。そもそもIQって何?そもそもIQとは、「人間が知能を使って物事を処理する能力を表す数値」のこと。知能検査によって測定された精神年齢を実年齢で割り、100倍にした数値です。85~115が平均といわれています。日本でトップクラスの学力を誇る東大生のIQは、平均120ともいわれていますが、IQが高いからといって、必ずしも学力が高いとは限りません。また、IQの高さは遺伝や環境の影響も大きいといわれています。慶應義塾大学(行動遺伝学)の安藤寿康教授いわく、IQはおよそ5割が遺伝の影響を受け、残りの5割のうち3割は家庭環境が影響するのだそう。安藤教授は、親からどんな遺伝子を受け継いだとしても、学習をすれば必ず能力は伸びるといいます。IQが高い子どもの特徴IQが高い子どもには、どのような特徴があるのでしょうか?詳しくみていきましょう。・頭が良くて賢いIQの高い子どもは、頭が良くて賢いといわれています。勉強ができるという学習能力としての賢さだけでなく、大人びた物言いや考え方をするなど、精神的に賢い場合もあるのが特徴です。IQの高さについて、医学博士の青木聡氏は次のように述べています。IQテストにおける「正答率の低い問題」とは、共通ルール(共通点)を見つけるのが難しい問題のことです。つまり、テストの結果がいい人(IQが高い人)は、「共通点を見つける能力」に優れていることになります。(中略)「共通点を見つける能力」とは、簡単に言うとパターン認識能力のことです。たとえば、友だちの妹とすれ違ったときに、「あ、似ている」と、友だちの顔が脳裏に浮かぶことがあるかと思います。どこか似ていると感じるのは、共通する特徴(共通点)を無意識に読みとっているからです。(引用元:ダイヤモンド・オンライン|「考える」「悩む」「時間がかかる」問題に対して、IQの高い天才はなぜ迷わず瞬時に答えを出せるのか?)IQが高い子どもの賢さには、パターン認識能力によって物事の共通点を読み取っていることが影響しているといえるでしょう。・言葉を覚えるのが早いIQの高い子どもは、会話や字の読み書きができるようになるのが、ほかの子どもに比べて早いといわれています。小児精神科医のクラウディア・ヤンケッチ氏いわく、IQの高い子どもは、脳の柔軟性が高く、ふたつの脳半球(中脳と大脳半球)を結ぶ間脳が発達しているのだそう。そのため、脳を最大限に利用することができるのだといいます。IQの高さには脳の発達も関係しているようです。・困難を乗り越える力が弱いIQの高い子どもは、賢さが目立つ反面、苦手な分野に対して向き合う力が弱い場合があります。前出のクラウディア氏いわく、IQの高い子どもは、完璧主義であるせいで、間違えることよりも諦めることを選択してしまうのだそう。そのため、困難に直面したらすぐに諦めてしまう傾向にあると言います。IQの高い子どもには、失敗は成功の源だということをしっかりと伝えてあげるべきですね。IQが高いと社会的に成功する?IQの高い子どもは学習能力が高いケースもよくみられるため、「IQが高ければ社会的に成功できるのでは?」と考える人も少なくありません。しかし、それは間違いです。東京大学名誉教授で白梅学園大学学長、日本保育学会会長の汐見稔幸氏は、次のように述べています。私たちは「文字が読める、うまくブロックを積み上げられる、三角形と四角形と五角形を区別できる」といった、目に見えて知的に賢くなったと感じる認知的な能力を重視しがちです。しかし、幼児期に認知的な能力を高めることが、その後の人生の成功や安定につながっているのか、いろいろ調べた結果、あまり関係がないことがわかってきました。大事なことは、うまくいかないときに諦めず「どうしてかな」「こうやってみよう」「これがだめなら、ああやってみよう」など、あくまで目標の達成まで頑張る姿勢を身につけることです。我慢できること、感情をコントロールする力なども大事です。(引用元:すくコム NHKエデュケーショナル|世界で注目される非認知的能力って?)IQなどで測ることのできる能力は、「認知的能力」と呼ぶのだそう。一方で、引用内で述べられているような「目標に向かって頑張る」「我慢する」「感情をコントロールする」などの能力は「非認知的能力」と呼ばれています。AI技術が発達し、グローバル化が進みゆく昨今。先の見えない社会を生き抜いていかなければならない子どもたちが伸ばすべきなのは、「やり抜く力」や「自制心」といった「非認知的能力」ではないでしょうか。***子どものIQが高いと、つい「頭が良いなら、将来レベルの高い大学にいけるかも?」「エリートになれるかも?」と期待してしまうこともあるかもしれません。しかし、育児や教育においては、IQや学校の成績といった目に見えるものばかりを気にするのではなく、「この先、子どもが生きていくために必要な力は何なのか」という目線を持つことが重要ですね。文/田口 るい(参考)こどもまなび☆ラボ|感情を書き出すとEQが伸びる!IQよりも大切な「心の知能指数」を高めようこどもまなび☆ラボ|「SQ」って知ってる?今を生きる子どもたちに「社会的指数」が重要なワケ進路のミカタ|ずば抜けたIQの天才児!?クラスにもいるかもしれない「ギフテッド」ってどんな人?All About|マシュマロ実験で判明!学力に重要なのはIQより○○All About|世界中が注目する「非認知能力・自制心」を育む方法All About|世界トップが実践!子供の「非認知能力」を育むヒントNEWSポストセブン|子供の学力、遺伝とともに母からの愛情で大きく変わるものすくコム NHKエデュケーショナル|世界で注目される非認知的能力って?ダイヤモンドオンライン|「考える」「悩む」「時間がかかる」問題に対して、IQの高い天才はなぜ迷わず瞬時に答えを出せるのか?Swiss info.ch|周囲と同化し、識別しにくいギフテッド・チャイルド
2019年07月16日ひとことで自然体験といっても、その種類はさまざま。1年を通じてできるものもあれば、季節によって特徴的な自然体験もあります。後者について、「プロの自然解説者」であるプロ・ナチュラリストの佐々木洋さんは、「ものごとを大きくとらえる視点を育ててくれる」と語ります。そこで、佐々木さんがおすすめする季節ごとの自然体験を教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)カブトムシが採り放題の「スーパーバナナトラップ」四季の移ろいがはっきりしている日本でなら、ぜひ、季節ごとに特徴的な自然体験をしてもらいたいですね。自然観察というと、ひとつの花や虫を観察するということをイメージしがちです。でも、自然には季節による変化というものもある。双方を感じるということは、ミクロの視点に加えて、ものごとを大きくとらえるマクロの視点を育てることにもつながるはずです。そこで、季節ごとにわたしがおすすめする自然体験をお伝えします。春におすすめするのは、わたしが「春のパレット」と呼んでいる遊びです。紙をパレットに見立てて、花や草などをこすりつけて色をつけていくのです。タンポポなら黄色、ヨモギなら緑という具合です。ヨモギは渋くていい緑色を出してくれますよ。茶色なら土でOK。スペシャルなのがカラスノエンドウの花です。花自体は赤みが強いのですが、これを紙にこすりつけるとなんと濃い紫になる。わたしは、「魔法の絵の具」と呼んでいます。もちろん、これは季節を問わずにできるものです。でも、花を咲かせる草木が多くて、植物が元気でみずみずしい春にやるのがやっぱりおすすめですね。ただ、花壇や畑など、草木を自由に摘んではいけないところではNGですから、そこは注意してください。それから、夏はやっぱり「カブトムシ採り」でしょう。ここで、わたしが長年かけて開発した「スーパーバナナトラップ」をお教えしましょう。これは、とにかくカブトムシやクワガタをめちゃくちゃ集められるという黄金比率の餌です。バナナを使ったただの「バナナトラップ」なら知っている人もいるかもしれませんが、わたしのスーパーバナナトラップはその改良版です。まず、女性が使うストッキングに皮をむいたバナナを入れます。シュガースポットと呼ばれる斑点がたくさん出た完熟のものがベストです。それを木に引っ掛けて石などでバナナをつぶします。ここまでが普通のバナナトラップですが、ここでわたしはふたつの隠し味を使います。ひとつは泡盛など度数の高いお酒。ちょっともったいないですが、つぶしたバナナにドボドボとたくさんかけましょう。それから、黒酢を大さじ1杯ほど加えます。そうすると、カブトムシやクワガタが餌とする樹液とほとんど同じ匂いが出るようになる。これでもうカブトムシやクワガタが採り放題です。自然の圧倒的な美しさを味わう「落ち葉並べ」秋におすすめするのは「落ち葉並べ」です。まずは幼稚園や小学校のグラウンド、近所の公園などで落ち葉を集めます。落ち葉といっても、色はさまざま。緑色のままで落ちてしまった葉に、種類のちがいによって黄色や赤に変わった葉。それから、完全に枯れて茶色になった葉。それらを10枚ずつくらい集めて色ごとに並べるのです。できれば、黒い模造紙の上に並べるのがいいですね。そうすると、大人でも思わず「うわーっ!」と声を漏らすほど見事なグラデーションを落ち葉が見せてくれます。もちろん、黄色いイチョウや赤いカエデなど植物の種類や、虫に食われた跡などについての会話で子どもとのコミュニケーションを膨らませることもできます。また、本当に美しい「インスタ映え」する写真が撮れますから、SNSをやっている親御さんにもおすすめですね(笑)。冬には「その木になろう」というゲームをやってみてください。これは「その気になろう」という意味も含んだゲームです。芝生広場の周囲にたくさんの木が生えているような広い公園に行ってみましょう。すると、冬ですから葉が落ちて、木の幹や枝のかたちがよくわかるようになっているはずです。その木になったつもりで真似をして、「どの木でしょう?」と親子であて合うのです。けっこう体を動かしますから、体が温かくなるという点でも冬におすすめです。「定点撮影」で自然記録と子どもの成長記録をする先に、季節の移ろいを感じさせることで子どものマクロの視点を育てられるとお伝えしました。その狙いという点でおすすめできることも最後にお伝えしておきましょう。それは、「定点撮影」です。たとえば、ある公園に行ったときには必ず同じ木の前で親子の写真を撮るようにするのです。季節の移ろいがわからなければなりませんから、常緑樹では駄目ですよ。おすすめはやっぱり桜。1年を通じて見た目が劇的に変化しますからね。それを2年でも3年でも続けてみてください。春には桜が花を咲かせるといった変化の他、親子それぞれの服装も変化していく。また、子どもがちょっとずつ大きくなっていくということもわかるでしょう。自然記録と同時に子どもの成長記録をするというわけです。小さいうちは、子どもはその記録の貴重さには気づかないかもしれません。でも、そうしてたくさんの愛情を注がれ、自分が成長していくことを親が心からよろこんでくれたという経験は、その子どもが大人になって子どもを持つようになったときに、きっと親への感謝の気持ちにつながるのではないでしょうか。『ナンコレ生物図鑑 あなたの隣にきっといる』佐々木洋 著/旬報社(2015)■ プロ・ナチュラリスト 佐々木洋さん インタビュー一覧第1回:「自然だし、仕方ない」現代の恵まれた子どもたちが“自然体験”から学ぶ重要なこと第2回:「虫が怖い」はこうして克服。ダンゴムシすら触れない子に、親は何をすればいい?第3回:自然観察=現場検証!?生き物の“痕跡”探しから始まる、都会でもできる自然体験第4回:カブトムシやクワガタが採り放題!夏休みに親子で作る“スーパーバナナトラップ”【プロフィール】佐々木洋(ささき・ひろし)1961年9月30日生まれ、東京都出身。プロ・ナチュラリスト。公益財団法人日本自然保護協会自然観察指導員、東京都鳥獣保護員などさまざまな立ち場で自然解説活動をしたあと、「プロ・ナチュラリスト 佐々木洋事務所」を設立。「自然の面白さや大切さを多くの人とわかち合い、そのことを通じて自然を守っていきたい」という思いのもとに、25年以上にわたって、自然観察指導、自然に関する執筆・写真撮影、講演、テレビ・ラジオ番組の出演・企画・監修、エコロジーツアーの企画・ガイド等の活動をおこなう。著書に『ぼくはプロ・ナチュラリスト 「自然へのとびら」をひらく仕事』(旬報社)、『モリゾー・キッコロ 森へいこうよ! 会える! 虫図鑑』(宝島社)、『「調べ学習」に役立つ水辺の生きもの』(実業之日本社)、『よるの えんてい』(講談社)などがある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年07月16日子どもに自然体験をさせてあげたいと考えても、実際に現地でなにをすればいいかわからないという人も多いはずです。そんな悩みに対するアドバイスをお願いしたのは、「プロの自然解説者」であるプロ・ナチュラリストの佐々木洋さん。生きものの「生活痕」である「フィールドサイン」を探す遊びを教えてくれました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)想像することは科学に対する好奇心の芽生え「フィールドサイン」とは、生きものが残した足跡や食べ跡のことです。そこに生きものがいた、あるいはいる、という自然界の「証拠物件」ですね。子どもたちを連れてフィールドサインを探す場合、わたしはよく「ネイチャーポリス」という名前をつけて遊びます。自然界の刑事や探偵になったつもりで、証拠物件を検証し、「どんな生きものが残した証拠だろう?」と推理をするのです。この推理をする――つまり、想像をするということがとても大切。それは、子どもたちの科学に対する好奇心のいちばん最初の小さな芽といっていいでしょう。ただ、フィールドサインを探したから子どもたちがなにかを得られるというわけでもありません。自然に対しては親しむこと自体に意味があり、さまざまな「効能」があります(インタビュー第1回参照)。フィールドサインを探すことは、自然と親しむ方法のひとつだと考えてください。とはいえ、フィールドサイン探しには、ある長所があります。それはなにかといえば、見つけやすいということ。生きもの自体を見つけることはそんなに簡単なことではありません。でも、都心部であっても生きものはたくさんいますから、生きものがいる以上、フィールドサインはどんどんできる。だから見つけやすいのです。そして、親子でフィールドサインを見つけたら、「どんな生きものがいたのかな?」と想像しながら会話も膨らみます。親子間の会話のキャッチボールを増やす意味でも、フィールドサインは有効なものだと思います。探偵になって自然観察を現場検証にたとえるそのキャッチボールをさらに面白くするには、先ほどお伝えしたように、親が刑事や探偵になり切ってみることです。絵本の読み聞かせが得意な親なら、きっとうまくできるのではないでしょうか。たとえば、ハトがタカに襲われた場所を見つけたとします。まわりにはハトの羽が散らばっている。それを見ながら、こんなふうにいってみるのです。「刑事、君はこれをなんだと思う?」「被害者はハトのようだね」「犯人は誰だろう?」「おそらく犯行動機は空腹じゃないかな」「これを撮影して鑑識に回しておいてくれ」といった具合です(笑)。自然観察を現場検証にするというわけです。ハトが襲われた場所というと、子どもからするとちょっぴり怖く感じるかもしれません。でも、こうやって親が面白おかしく演じれば、きっと子どもも楽しくフィールドサインを観察することができるのではないでしょうか。めったに見られないモグラも「痕跡」は見つかるでは、地域にかかわらず見つけやすいフィールドサインをいくつかお教えします。【見つけやすいおすすめフィールドサイン】・モグラ塚・ミミズの糞・ナメクジ、カタツムリの食べ跡・セミの脱出口ひとつ目はモグラ塚。モグラがトンネルを拡張したり補修したりした際、地表に捨てた余分な土のことです。これをわたしは「モグラのチャーハン」と呼んでいます。というのも、形が皿に盛られたチャーハンにそっくりだからです。モグラというと、都会にはあまりいないと思っている人もいるかもしれません。でも、じつはどこにだっているのです。公園にも学校の校庭にもいます。それこそ、モグラそのものはめったに見ることができないでしょう。でも、「そこにいる」という痕跡は見つけられます。もし見つけたら、地表に出ている部分の土を除いてみてください。モグラのトンネルを見つけることができるはずです。ミミズの糞も公園や校庭などでも見つけやすいものです。小さな団子状になった土が盛り上がっていたら、それはミミズの糞。今度はチャーハンではなくて、担々麺のひき肉のようなイメージです。子どもに糞だと教えると、「臭い!」なんていうものです。でも、ミミズの糞は土でできていて、他の動物の糞のように未消化の有機物もほとんど含みませんから、嫌な臭いはありませんのでご安心ください(笑)。それから、ガードレールや道路標識の裏などでよく見つかるのがナメクジやカタツムリの食べ跡。もしかしたら、見たことがあってもそれがなにかを知らなかったという人もいるかもしれませんね。ナメクジやカタツムリはガードレールの裏などにあるカビなどを削って食べます。それがグネグネとした線状になって残されているのです。最後がセミの脱出口。地上に出る際、セミの幼虫が掘った穴ですね。羽化のために出る穴ですから、木がある場所に見られます。穴の大きさによって種類のちがいもなんとなくわかります。大人の小指くらいの太さの穴ならツクツクボウシやニイニイゼミなど小型のセミ、人差し指くらいならアブラゼミなど大型のセミの穴です。もしセミの脱出口を見つけたら、ぜひ子どもに指を入れさせて、ひんやりした感触を味わわせてあげてください。夏でも土のなかは涼しいということを体感できるはずです。これらは誰でも見つけやすいフィールドサインです。子どもが興味を示すようなら、親子で勉強をして、他のフィールドサインも探してみてほしいですね。『ナンコレ生物図鑑 あなたの隣にきっといる』佐々木洋 著/旬報社(2015)■ プロ・ナチュラリスト 佐々木洋さん インタビュー一覧第1回:「自然だし、仕方ない」現代の恵まれた子どもたちが“自然体験”から学ぶ重要なこと第2回:「虫が怖い」はこうして克服。ダンゴムシすら触れない子に、親は何をすればいい?第3回:自然観察=現場検証!?生き物の“痕跡”探しから始まる、都会でもできる自然体験第4回:カブトムシやクワガタが採り放題!夏休みに親子で作る“スーパーバナナトラップ”(※近日公開)【プロフィール】佐々木洋(ささき・ひろし)1961年9月30日生まれ、東京都出身。プロ・ナチュラリスト。公益財団法人日本自然保護協会自然観察指導員、東京都鳥獣保護員などさまざまな立ち場で自然解説活動をしたあと、「プロ・ナチュラリスト 佐々木洋事務所」を設立。「自然の面白さや大切さを多くの人とわかち合い、そのことを通じて自然を守っていきたい」という思いのもとに、25年以上にわたって、自然観察指導、自然に関する執筆・写真撮影、講演、テレビ・ラジオ番組の出演・企画・監修、エコロジーツアーの企画・ガイド等の活動をおこなう。著書に『ぼくはプロ・ナチュラリスト 「自然へのとびら」をひらく仕事』(旬報社)、『モリゾー・キッコロ 森へいこうよ! 会える! 虫図鑑』(宝島社)、『「調べ学習」に役立つ水辺の生きもの』(実業之日本社)、『よるの えんてい』(講談社)などがある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年07月15日2歳くらいに訪れるイヤイヤ期。何を言っても嫌。あれも嫌。これも嫌。この時期は、子どももよくわかっていないし、なんでも「嫌!」と言ってみているんだなとおおらかに構えていられました。娘が3歳を迎えるころになると、言葉はたどたどしくても、いろいろ理解して会話らしきものもできるようになってきました。ここで、娘との言い合いが増えてきたのです。 娘のわがままにイライラ! 思わず手が出そうに3歳近くになると、「嫌」と言う以外にも、「これをしたい」「あれをしたい」という要望も多くなってきます。たとえば、よくあるのは「お菓子を食べたい」「アンパンマンを観たい」など。こちらとしては、お菓子を食べるのはごはんを食べてから、アンパンマンを観るのはお風呂に入ってからなど、親としての都合がいろいろあります。 そこで、「ごはんを食べてからね」などと言うのですが、「お菓子を食べる!」と言って頑として聞かない。こちらも負けじと「ごはんを食べてから」を繰り返すわけですが、繰り返しているうちに娘が大泣きしてヒスを起こす……。こうなると、こちらもイライラして思わず手が出そうになります。 母に言われた「半分しかわかっていないんだから」これを毎日のようにやられると、イライラ度も増してきます。毎日、娘に対して怒っている自分を振り返り、「これって虐待に近いのかも……」と不安になることも。 すっかりイライラして、実家の母に愚痴をポロリとこぼしました。「本当に頑固で嫌になる。言い出したら聞かないし、言ってもいうことを聞かない」すると、母に言われたのです。「まだ半分しかわかっていないんだから」と。 まだ3年しか生きていない会話ができるようになって、すっかり対等に娘と話すようになっていましたが、相手はたったの3歳。まだ3年しか生きていないんだと、ふと我に返りました。娘にとっては、「今」したいことがすべて。なぜ、お菓子を食べたいと言っているのに、ごはんを食べなくてはならないのか、因果関係としてまだわからないんですよね。 そう思えてから、娘にとっての「今」を中心に話すように心がけるようにしてみました。たとえば、「お菓子を食べたい」という要望には、「ごはんを食べてから」という回答ではなく、「今はあげられない」と回答して、気を逸らせてから「ごはんを食べよう!」と違う話題に振ってしまう、という具合です。 子どもにもよると思いますが、この時期も今思えばちょっとの期間でした。3歳を過ぎた今では、「◯◯したら、お菓子食べようね」と自分の要望を叶えるためにまずしなければならないことを自分から言うようになりました。イライラしてしまったら、まだまだ半分くらいしかわかっていないんだと思ってみると、ちょっと心が軽くなるかもしれません。 イラスト:imasaku著者:ヒロコ ラメッシェ4歳女児の母。旅行雑誌編集デスク、アルバイト情報サイト編集長を経て、フリーのWEBプロデューサー&ライターとして活動中。現在、モロッコ在住。自身の経験からママたちと共有したい情報を発信中。現在、モロッコ在住。自身の経験からママたちと共有したい情報を発信中。メンタル心理カウンセラー・上級心理カウンセラーの資格を持つ。
2019年07月14日ついつい口に出てしまう「勉強しなさい!」という言葉。いくら繰り返したところで子どもがやる気を出すようにならないのはわかっていても、黙っていられない!という親御さんはきっと少なくないはず。しかし、主体的に学習する姿勢が子どもに身についていれば、自ら考え行動できるはず。したがって、「勉強しなさい」という声がけは、そもそも必要なくなります。では、どうすれば子どもの主体性を引き出すことができるのでしょうか?勉強の強制は逆効果!?「勉強しなさい!」と机に向かうことを強要し続けると、学年が上がるほど、いわゆる「馬の耳に念仏」に。すると、ますます親のイライラは募り、子どもは「ウザい」と感じるようになり、主体的な勉強からはさらに遠ざかっていくばかり……。そのような悪循環に陥るのを防ぐためにも、なるべく早い段階から「勉強しなさい」という言葉を避ける必要がありそうです。つまり、勉強は強制するのではなく習慣化するよう心がけるのが、伸びる子を育てるポイントになります。実は、成績の良い子ほど親から「勉強しなさい!」と言われていません。良い成績をおさめることができている子は、小学生のころから親にガミガミ言われなくても学習する習慣がついているのです。私の経営する学習塾でも、成績が良い生徒には、「親に言われる前にやる」タイプが多く、彼らは自分で考え、前向きな気持ちで勉強を楽しんでいます。(引用元:安村知倫(2017) ,『子どもの成績を「伸ばす親」と「伸ばせない親」の習慣』, 明日香出版社.)また、東大生の6割は「勉強しなさい」と言われたことがないといいます。彼らは、子ども時代に自主性・主体性を重視した教育を受けてきたおかげで、「好きなことに思いっきり没頭できた」のではないかと言うのは、東北大学加齢医学研究所教授で医学博士の瀧靖之氏。脳は、「好き」「興味がある」とポジティブなレッテルが貼られた情報ならば、思考が深まり、しっかり理解して記憶するようになるそう。「勉強しなさい」「やらなくちゃダメでしょ」などといったネガティブな声かけでは勉強が楽しいものだと感じることができず、拒絶するようになってしまうのも無理はありません。まずは行動を認める声がけをそうはいっても、いつまでも机に向かおうとしない子どもを黙って見過ごすことはできないですし、放っておいても進歩は望めません。まずは現在進行形で子どもの行動を認める言葉かけをするとよいと、学習コンサルタントでステージメソッド塾代表の西角けい子さんは言います。たとえば、宿題をしているときに「宿題、頑張っているね」と、声をかけてみましょう。これは宿題や勉強に限らず、ごはんを食べているときに「おいしそうに食べているね」、ゴロゴロしているときに「疲れているみたいね」といった、子どもの「いま」に対する共感の言葉がけを心がけると、家の雰囲気もよくなり子ども自身も親から行動を認めてもらえると感じるようになり、自信につながってきます。「宿題をやらなくちゃだめでしょ!」「今やろうと思ってたんだよ!」と言い合うような、怒る親とふてくされる子どもという悪しき構図からひとまず抜け出す簡単な方法です。また、「褒めて伸ばす」とはよく言いますが、テストの点を褒めたり成績を褒めたりするのももちろんですが、まずは途中の頑張りを認めて褒めてあげることも大切です。誰が見てもわかるような成果がなくても、姿勢よく机に向かっている、字を丁寧に書いている、難しい問題も投げ出さずに取り組んでいる、というような努力の過程の具体的な部分に注目し、「頑張っているね」「いいね!」と声をかけてあげましょう。これは、いちばん身近にいる親だからこそできること。小さな努力を認められ褒められて育つ子は、やる気も出て、その積み重ねで大きな成果を生むはずです。強制ではなく、きっかけづくりを子どもの「いま」を認め、さらにはテストの結果などがんばった面を評価することができたら、次に、わかっていない部分を親子で確認し合います。そこで親が「こんなふうに勉強してみたら」と提案するなどして、子どもが自分に合った勉強の仕方を発見するきっかけを作ってあげることが、勉強への姿勢を変えていくコツ。勉強して賢くなることが実感できれば、子どもは面白がってそれに打ち込むようになります。例えば練習を重ねて50メートル走のタイムがどんどん早くなったり、あるいはピアノが上手に弾けるようになったりするのと同様、勉強することで賢くなるのは、誰にとっても快感なのだから。賢くなり、難しい問題が解けるようになると、子どもなりに手ごたえを感じてくれるものなのです。(引用元:松永暢史 (2007) ,『子どもを親より賢くする本子どもを賢くする親は、ここが違う!』, PHP研究所.)子どもよりも少しだけ上のレベルの目標を設定し、「この目標を達成させるためにはどうしたらいいと思う?」と声をかけ、一緒に目標を達成するための方法や段取りを考えます。ただし、一緒に考えているようで最終的に親が「こうしなさい」と決めてしまうのはNG。あくまでも、学ぶのは子ども自身。本人から「こういう方法があると思う」という考えを引き出すことが大切です。それによって成果を得ることができれば、自ら勉強に取り組む姿がみられるようになるはずです。子ども主導で勉強時間を決めておくしかし、まずは大前提として、宿題や勉強に取り組む「時間」を生活の中に作らなくてはなりません。そこで親が「夕食前に1時間は勉強するようにしなさい!」と押しつけても、子どものモチベーションは続きません。自分で決めさせて実行させるほうが、子どもの責任感も育つというのは、チャイルドコーチングアドバイザーで桜ゼミナール塾長の安村知倫氏。子ども主導で、平日の何時から何時は宿題、何曜日の何時から何時は理科の復習、といったようなスケジュールを決めさせるのです。まずは、1週間のうちで時間が決まっている行動を書き出し、空白時間を見つけ、そこに勉強時間を設定していきます。ただし、空白時間には勉強だけでなく遊び時間もしっかり組み込み、勉強内容は最終的に子ども自身が決めるとよいといいます。効率的なスケジュールを組むことができれば、親は決まった時間に「そろそろ時間だね」と声をかける程度で済むようになるはずです。これは学習面だけでなく、健康で規則正しい生活を送るためにも有効な手段といえますが、親の協力も不可欠。できるだけスケジュールに沿った時間に子どもが夕食や入浴を済ませられるよう、生活の土台となる部分は崩さないようにしていけるといいですね。努力の「見える化」がさらなるやる気を引き出すさらに安村知倫氏は、子どもが自分で努力したことを「見える化」すると効果的だといいます。壁かけカレンダーを用意して、学校の宿題を含めたその日の家庭学習がきちんとできたら、カレンダーに◯をつけていく。学校のプリントを見直ししたら、ひとつの箱に入れていく。漢字練習や計算などの自学ノートを終わったら、同じ場所に積み上げていく。カレンダーに◯が並んだり、箱にプリントがたまったり、ノートが積み重なったりしていけば、頑張った証拠が目に見えることで満足感が得られ、さらなるやる気を引き出すことができるのです。この「見える化」した部分を親も一緒に喜ぶようにすれば、ますます効果的かもしれません。前述しましたが、親だからこそ知ることができる努力の過程を見逃さないことが大切です。テストや試験の「結果が全て」ではなく、それまでの努力が大切で尊いものだとわかっている子どもは、学習習慣が自ずと身につき、いずれ成績に反映されることでしょう。***家事や仕事を「頑張りなさい」と言われるよりも、「頑張っているね」と言われたほうがモチベーションを保てるのは、大人も同じ。何かを「やりなさい」と言われると逆効果になることが多いのは、振り返ってみれば合点が行くのではないでしょうか。「勉強しなさい!」を封印することができれば、親も子も少しずつ良い方向へ変わっていくはずです。文/酒井絢子(参考)こどもまなび☆ラボ|「勉強しろ」は逆効果!統計でわかった、親が本当にやるべき3つのことベネッセ 教育情報サイト|「勉強しなさい」よりも効果的!?な、子どもの学習意欲を高める関わり方PRESIDENT Online|自ら机に向かう子の親が欠かさない習慣「勉強しなさい」と言わない理由SankeiBiz|「勉強しなさい」は逆効果勉強嫌いな子を変貌させた家庭の特徴安村知倫 (2017) ,『子どもの成績を「伸ばす親」と「伸ばせない親」の習慣』, 明日香出版社.明光2020教育改革室 (2018) ,『開始5分の「振り返り」から子どもの学力はぐ〜んと伸びる!』, 主婦の友社.西角けい子 (2010) ,『子どもの成績は、お母さんの言葉で9割変わる!−−普通の子が次々日本一になったニシカド式勉強法』, ダイヤモンド社.小林公夫 (2009) ,『「勉強しろ」と言わずに子どもを勉強させる法』, PHP研究所.江藤真規 (2009) ,『勉強ができる子の育て方』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.汐見稔幸 (2007) ,『親子のハッピーコミュニケーション』, 岩崎書店.瀧靖之 (2018) ,『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える究極の子育て「賢い子」は図鑑が育てる』, 講談社.松永暢史 (2007) ,『子どもを親より賢くする本子どもを賢くする親は、ここが違う!』, PHP研究所.
2019年07月14日たまの休みくらいは、思いっ切り子どもを自然のなかで遊ばせてあげたい――。都市化が進み、誰もが多忙な時代だからこそ、そう考える親も少なくないでしょう。でも、親子ともに自然に触れる機会が減っているいま、親は子どもにどのように自然体験をさせてあげればいいのでしょうか。「プロの自然解説者」である、プロ・ナチュラリストの佐々木洋さんにお話を聞きました。アドバイスに先立って語ってくれたのは、子どもたちとの自然体験活動を通じて佐々木さんが感動したというエピソードです。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)いまもむかしも子どもたちの本質は変わらないわたしがおこなう子ども向けの活動は本当に多岐にわたっていて、それこそ虫ばかりを追いかけるようなこともあれば、ただのんびりと山を歩くということもあります。過去25年以上にわたっておこなってきた活動のなかでとくに印象に残っているエピソードをお伝えしましょう。その日、出掛けたのは干潟で、「泥んこ体験」をさせることが目的でした。幼い頃に干潟や田んぼで遊んだことがあれば、足の指と指の間を柔らかい泥が抜ける独特の感触を思い出すという人もいるでしょう。なんともいえない気持ち良さがありますよね。地方であれば、いまも干潟や田んぼで泥まみれになって遊んでいるという子どももいますが、都心部だとそうはいきません。連れて行った子どもたちは幼稚園の年長さんたちで、ひとりも干潟で遊んだ経験はありませんでした。当然、子どもたちはおっかなびっくりです。しかも、「汚れるとお母さんに怒られる」なんて思っている子どももいて、なかなか泥んこになりません(笑)。ところが、ある男の子が転んで泥だらけになっちゃった。すると、その瞬間、子どもたちが一斉に「わーッ!」と叫んで泥まみれになって遊びはじめたのです。わたしは、その光景を見ていて子どもたちにかけられた「現代の呪文」が解けた瞬間だと思いました。いまもむかしも子どもたちの本質は変わりません。ただ、いまの子どもたちは自然に触れる機会が激減しているというだけなのです。「ついに子どもたちの『本能』に火がついた」と、感動したことを強く覚えていますね。擬人化して虫への恐怖心を取り除く子どもたちが自然に触れる機会が減っていることを思えば、子どもを自然に親しませるには親などまわりの大人が工夫してあげることも必要かもしれません。虫が苦手だという子どもも多いものです。虫の怖さは人によってさまざまでしょうけど、ひとつは「自分でコントロールできない」ということが考えられます。自分で飼っている犬などのペットなら、その行動もある程度コントロールできますし、行動の予測もできるでしょう。でも、触った経験のない虫の場合はどんな動きをするのかがわかりません。だから怖いのです。だとしたら、それこそペットのように思わせてあげればいいのです。自然体験が少ない子どもなら、おとなしくて危険でもないダンゴムシでも触れないという子どももいます。そういう子どもにはダンゴムシに親近感を持たせてあげましょう。何匹かのダンゴムシがいたら、「どのダンゴムシが好き?」と聞いてみる。ダンゴムシを怖がる子どもなら、「いちばんちっちゃいダンゴムシ」なんて答えるかもしれません。そうしたら、「お父さんはこの大きくて格好いいヤツがいいな」「大きさがちがうから、もしかしたら親子かな?」なんて話してみる。いわば、擬人化するというわけです。そうすると、子どもは自分が選んだダンゴムシに親近感を持ちはじめます。他の虫には触れなくても、「『僕の、わたしのダンゴムシ』なら大丈夫」というふうに虫への意識が変わっていくのです。そうすれば、徐々に他の虫に対しての恐怖心も和らいでいくはずです。「子どもと一緒に体験する」という意識また、以前と比べて自然体験が減っているのは、大人も変わらないかもしれません。そういう親が子どもに自然体験をさせようとすると、つい「もっと勉強してから」と思ってしまいがちです。とくに教育熱心な親の場合、全部勉強してから教えようと考える真面目な人が多いのです。でも、そんなことをしているうちに子どもはどんどん成長してすぐに親と一緒に外で遊ぶような年齢ではなくなってしまいます。大切なことは「子どもと一緒に体験する」という意識です。公園で子どもに「この花、なに?」と聞かれて、その場で答えられなくてもなんの問題もありません。「なんだろうね?」「うちの近くにもあるかな?」なんて答えて、帰宅してから子どもと一緒に調べればいいのです。子どもとは、親が上から下に向かって教え諭すだけの対象ではありません。親もわからなくて知らないことであれば、子どもと同じ目線に立って一緒にワクワクドキドキしながら学んでみてはどうでしょうか。また、「同じ目線」という意味でいえば、実際の目線の高さを親子で交換することもおすすめします。親子で散歩をしているとき、子どもは目ざとく虫や花を発見しますよね。もちろん、目がいいということもあるのですが、それは子どもの目線が物理的に低いからです。地面に近いのですから小さな花にも気がつきますし、草木の葉の裏に隠れている虫も見つけられるというわけです。そこで、親が実際に子どもと同じ高さで周囲の自然を見てみる。逆に、子どもを抱っこしてあげて大人の目線から見える風景を味わわせてあげる。きっと、親子ともに新たな発見や感動があるはずですよ。『ナンコレ生物図鑑 あなたの隣にきっといる』佐々木洋 著/旬報社(2015)■ プロ・ナチュラリスト 佐々木洋さん インタビュー一覧第1回:「自然だし、仕方ない」現代の恵まれた子どもたちが“自然体験”から学ぶ重要なこと第2回:「虫が怖い」はこうして克服。ダンゴムシすら触れない子に、親は何をすればいい?第3回:自然観察=現場検証!?生き物の“痕跡”探しから始まる、都会でもできる自然体験(※近日公開)第4回:カブトムシやクワガタが採り放題!夏休みに親子で作る“スーパーバナナトラップ”(※近日公開)【プロフィール】佐々木洋(ささき・ひろし)1961年9月30日生まれ、東京都出身。プロ・ナチュラリスト。公益財団法人日本自然保護協会自然観察指導員、東京都鳥獣保護員などさまざまな立ち場で自然解説活動をしたあと、「プロ・ナチュラリスト 佐々木洋事務所」を設立。「自然の面白さや大切さを多くの人とわかち合い、そのことを通じて自然を守っていきたい」という思いのもとに、25年以上にわたって、自然観察指導、自然に関する執筆・写真撮影、講演、テレビ・ラジオ番組の出演・企画・監修、エコロジーツアーの企画・ガイド等の活動をおこなう。著書に『ぼくはプロ・ナチュラリスト 「自然へのとびら」をひらく仕事』(旬報社)、『モリゾー・キッコロ 森へいこうよ! 会える! 虫図鑑』(宝島社)、『「調べ学習」に役立つ水辺の生きもの』(実業之日本社)、『よるの えんてい』(講談社)などがある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年07月14日共働き家庭が増え、親も子どもも忙しいいま、子どもが自然に触れる機会は以前と比べて減りつつあります。そもそも、幼いうちから自然に触れることは、子どもになにをもたらしてくれるのでしょうか。お話を聞いたのは、佐々木洋さん。職業は「プロ・ナチュラリスト」で、ご本人いわく「プロの自然解説者」です。まずは、プロ・ナチュラリストの仕事内容から語っていただきました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)老若男女を相手に自然の面白さを説く「自然解説者」わたしの仕事は「プロ・ナチュラリスト」です。耳にしたことがあるという人はあまり多くないかもしれません。というのも、これはわたしが商標登録をしているもので、一般的に広く知られた職業ではないですからね(笑)。仕事の内容をひとことでいえば、「プロの自然解説者」です。活動にはいくつかの柱があります。まずは幼稚園や保育所、小学校などで授業の一環として自然の大切さや面白さを話すというもの。それから、各地のホールなどでおこなう講演会や講習会。これらにはただ話をするだけではなく、実際に自然のなかで自然観察の指導をおこなうというものもあります。それから、書籍などの執筆活動に、テレビやラジオ番組の企画、出演です。講演会や講習会の対象は子どもたちということもあれば、子持ちかどうかにかかわらず大人の場合もあるし、外国人ということもある。場所、対象によって内容もさまざまですね。そもそもなぜわたしがこの仕事をはじめたかというと、単純に自然が好きだったということに尽きます。でも、学生時代の専門は英語音声学でした。学生の頃は英語を使った仕事をしようと考えていたのですが、自然の世界が懐かしくて戻ってきたという感じですね。わたしの出身は東京ですが、都内とはいえ河川敷がすぐそばにあって自然豊かな場所でした。その原風景がわたしをこの仕事に導いてくれたのです。「ありのままの自分でいい」と思わせてくれる自然の多様性いまの子どもたちは、かつてと比べて自然に触れる機会が圧倒的に減っていると感じています。とはいえ、自然の豊かさそのものは以前とほとんど変わっていません。都内であっても動物も虫もたくさんいて季節の草花も豊かに咲き誇るのに、それに触れる機会が減っているだけなのです。それが本当に残念でならない……。とくに幼児期から自然に触れることは子どもにたくさんのものを与えてくれます。それこそ、その「効能」には枚挙にいとまがありませんが、なかでもわたしが大切だと思っている3つの効能をお伝えします。第一に「多様性を知る」ということ。子どもは自分が好きなことであれば大人以上に熱心に知識を蓄えていきます。新幹線が好きな子どもであれば、どんな新幹線でもひと目見れば名前を答えることができるでしょう。でも、自然だとそうはいきません。どんなに虫が好きな子どもでも、幼稚園の園庭にやって来るすべての虫の名前をいうことはできないでしょう。わたしにも無理です。なぜかというと、それだけ多くの種類の生きものがいて、多様性に富んでいるのが自然というものだからです。しかも、もっといえば、それらのいろいろな生きものにはなにひとついらないというものもありません。人間からは嫌われることが多いカラスだって、自然界では食物連鎖の一部を担ってしっかり役に立っています。この意識は人間教育にもつながるものです。人はそれぞれすべてちがっていて、しかもちがっていていい。ありのままの自分を受け入れて力強く人生を歩むためには、幼い頃に自然を通じて多様性を知るべきなのです。思いどおりにならないなかで最大限の創意工夫と努力をするふたつ目の効能は、「究極の癒やしを与えてくれる」ということ。大人のみなさんだって、仕事や人間関係でストレスがたまれば、海を見たくなったり森のなかを散歩したくなったりすることもあるでしょう。これは子どもにもあてはまることです。子ども自身が大人のように意識しているかどうかは別として、自然のなかで受け取る癒やしが子どもの心をほぐして健やかに育ててくれるのです。3つ目は、「思いどおりにならないことがあると知る」こと。いまの子どもたちはかつてと比べて物質的には恵まれていますし、大人も以前ほど厳しく怒らなくなりました。ともすれば、そういう環境にある子どもは「なんでも思いどおりになる」と感じてしまいそうですが、自然だけはいまもむかしも変わらず思ったとおりにはなりません。どんなに丹精を込めて植物を育てても花を咲かせてくれないということもあります。「昨日、アゲハチョウを見た!」という友だちの話を聞いてその場所に行ってみても、今日は見つからないということもあるでしょう。そこで、子どもは子どもなりに「自然だし、仕方ない」と「あきらめる」ことを知ります。この「『あきらめる』ことを知る」ということが重要なのです。「あきらめる」というと、努力をやめるというイメージを持つかもしれませんが、そうではありません。努力や、それからお金などではどうにもならないということもあるのが世のなかです。自分がなんでも支配できるわけではないということです。仕事をしている大人でもそうですよね?人間関係などさまざまな要素が絡む仕事では、ひとりの人間が思いどおりにできることは限られています。でも、その制約のなかで最大限の創意工夫と努力をする。「どうすれば花を咲かせられるか」と考える。自然と触れるなかで得るその姿勢こそが、子どもを大きく成長させてくれるはずです。『ナンコレ生物図鑑 あなたの隣にきっといる』佐々木洋 著/旬報社(2015)■ プロ・ナチュラリスト 佐々木洋さん インタビュー一覧第1回:「自然だし、仕方ない」現代の恵まれた子どもたちが“自然体験”から学ぶ重要なこと第2回:「虫が怖い」はこうして克服。ダンゴムシすら触れない子に、親は何をすればいい?(※近日公開)第3回:自然観察=現場検証!?生き物の“痕跡”探しから始まる、都会でもできる自然体験(※近日公開)第4回:カブトムシやクワガタが採り放題!夏休みに親子で作る“スーパーバナナトラップ”(※近日公開)【プロフィール】佐々木洋(ささき・ひろし)1961年9月30日生まれ、東京都出身。プロ・ナチュラリスト。公益財団法人日本自然保護協会自然観察指導員、東京都鳥獣保護員などさまざまな立ち場で自然解説活動をしたあと、「プロ・ナチュラリスト 佐々木洋事務所」を設立。「自然の面白さや大切さを多くの人とわかち合い、そのことを通じて自然を守っていきたい」という思いのもとに、25年以上にわたって、自然観察指導、自然に関する執筆・写真撮影、講演、テレビ・ラジオ番組の出演・企画・監修、エコロジーツアーの企画・ガイド等の活動をおこなう。著書に『ぼくはプロ・ナチュラリスト 「自然へのとびら」をひらく仕事』(旬報社)、『モリゾー・キッコロ 森へいこうよ! 会える! 虫図鑑』(宝島社)、『「調べ学習」に役立つ水辺の生きもの』(実業之日本社)、『よるの えんてい』(講談社)などがある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年07月13日この記事では、イライラして子どもを叩いてしまうことについてパパと話し合った体験談をママが紹介しています。ママやパパが子どもを叩いていたことで、次第に子どもも暴力的に。夫と話し合い、叱るときは冷静になることで子どもの暴力的な行為がなくなっていったそうです。 子どもがひとりで立てるようになり、少なからず自分の意思が出てきて、できることが増えてくる1歳ごろ。お手伝いなどもしてくれるようになる一方で、いたずらや言うことを聞いてくれないことも増えました。このころは子どもへの伝え方、叱り方、夫との子どもへの接し方の違いに悩んだ時期でもありました。 手をあげると子どもも同じように…ついカッとなって手が出そうになってしまったり、実際に手を出してしまったり……。私は子どもをどうやって叱ればいいのかわかりませんでした。また当時、次男を妊娠していたこともあって精神的にも不安定で、ちょっとしたことでイライラしやすくなっていました。 しかし、手をあげることが多くなると、次第に子どもも同じように怒りを暴力で表現するようになってしまいました。ほかの子を叩くことはありませんでしたが、怒っているときに私や夫を叩くようになっていきました。 夫との話し合いこのままではダメだと思い、子どもを叱るときにはまずは冷静になるように意識して接するようにしました。しかし、夫も子どもを叱るとき、つい手が出てしまうタイプ。最近、子どもが私に対して暴力的になってきてしまっていることなど、子どもの日ごろの様子を夫に話し、子どもへの接し方について夫婦できちんと話し合うことにしました。 だんだんと変わっていった私も夫も、子どもへの接し方を意識して変えていくうちに、子どもが怒ったときも物や人を叩くことが少しずつなくなっていきました。子どもは親の接し方でこんなにも変わるのだと実感しました。 もし万が一、子どもに間違ったことを覚えさせてしまっても、あきらめなければ自分次第で軌道修正することは可能なのだと思います。 私も夫も親として至らないところばかりですが、これからも子どもに教えてもらいながら、一緒に成長しつつ育児に向き合っていきたいと思います。 イラスト:imasaku著者:小鳥遊美代二児の母。2歳年上の夫と2歳差兄弟、インコ2羽と暮らしている。好きなものは麻雀と読書、子どもを産んでからは育児本を読むのが楽しみのひとつ!妊娠・出産・子育てに関する体験談を中心に執筆中。
2019年07月12日子どもがひとりで立てるようになり、少なからず自分の意思が出てきて、できることが増えてくる1歳ごろ。お手伝いなどもしてくれるようになる一方で、いたずらや言うことを聞いてくれないことも増えました。このころは子どもへの伝え方、叱り方、夫との子どもへの接し方の違いに悩んだ時期でもありました。 手をあげると子どもも同じように…ついカッとなって手が出そうになってしまったり、実際に手を出してしまったり……。私は子どもをどうやって叱ればいいのかわかりませんでした。また当時、次男を妊娠していたこともあって精神的にも不安定で、ちょっとしたことでイライラしやすくなっていました。 しかし、手をあげることが多くなると、次第に子どもも同じように怒りを暴力で表現するようになってしまいました。ほかの子を叩くことはありませんでしたが、怒っているときに私や夫を叩くようになっていきました。 夫との話し合いこのままではダメだと思い、子どもを叱るときにはまずは冷静になるように意識して接するようにしました。しかし、夫も子どもを叱るとき、つい手が出てしまうタイプ。最近、子どもが私に対して暴力的になってきてしまっていることなど、子どもの日ごろの様子を夫に話し、子どもへの接し方について夫婦できちんと話し合うことにしました。 だんだんと変わっていった私も夫も、子どもへの接し方を意識して変えていくうちに、子どもが怒ったときも物や人を叩くことが少しずつなくなっていきました。子どもは親の接し方でこんなにも変わるのだと実感しました。 もし万が一、子どもに間違ったことを覚えさせてしまっても、あきらめなければ自分次第で軌道修正することは可能なのだと思います。 私も夫も親として至らないところばかりですが、これからも子どもに教えてもらいながら、一緒に成長しつつ育児に向き合っていきたいと思います。 イラスト:imasaku著者:小鳥遊美代二児の母。2歳年上の夫と2歳差兄弟、インコ2羽と暮らしている。好きなものは麻雀と読書、子どもを産んでからは育児本を読むのが楽しみのひとつ!妊娠・出産・子育てに関する体験談を中心に執筆中。
2019年07月12日夏休みの計画を立てるとき、毎年の恒例行事として家族キャンプを組み込んでいるご家庭も多いのではないでしょうか。または、未経験でも「子どもが小さいうちに一度は家族でキャンプしたい!」と考えている親御さんもたくさんいるはずです。キャンプでは思い切り身体を動かし、家族で協力して楽しい思い出を作りたいですよね。ただし、キャンプや自然体験で得られるメリットは、それ以外にもたくさんあります。今回は、自然体験に科学的な学びの要素を取り入れて、いつもとは違う楽しみ方ができる「キャンプ×サイエンス」についてお伝えします。子どもはみんな理科が好き!?子どもを公園や海や山へ連れていくと、放っておいても泥いじりや草花の観察、虫とりをするなど、自然科学への好奇心があふれて止まりません。ではなぜ、いわゆる「理科離れ」が進んだといわれているのでしょうか。子どもたちに自然体験の場を提供する活動を行なう、NPO法人『野外遊び喜び総合研究所』によると、子どもたちを取り巻く現代の環境から原因が見えてくるといいます。遊び場からは危ないものや不衛生なものを排除するために、自然の要素がどんどん失われています。理科の授業で学ぶテーマは日常的なものであるものの、現代の子どもたちにとっては日常から切り離されている題材であることが多く、さらに学習が進むと難しい概念や数字が出てきて、そのころにはもう難解なものになってしまっているのではないでしょうか。このように、日常からかけ離れているように感じることが、理科や科学に対する苦手意識に結びついているのです。このまま「理科離れ」が進むことで、将来の研究者や技術者が育ちにくくなると懸念されています。そこで、このような状況を受け、小学生のうちから理科に興味をもって取り組む環境づくりを目的として、さまざまな企業や自治体が小学生向けのサイエンス教室を実施しているのです。特に夏休みには、キャンプなどの自然体験活動とサイエンスを組み合わせたプログラムを実施しているところが多く、子どもたちにとっても濃密な科学体験学習ができる良い機会になっています。そして、自然に囲まれた環境でキャンプ体験をすることで、子どもたちは自然の不思議に触れ、理科への興味関心を満たすたくさんの経験ができます。子どもに本来備わっている「なぜ?」を追求できる環境を与えてあげることで、いつもよりももっと理科を身近に感じさせられるでしょう。キャンプとサイエンスの相乗効果で子どもの能力がぐんぐん伸びる!東レとJTB、リバネスが共同で開催している宿泊体験型教室『青空サイエンス教室』は、自然体験を通して理科の原理を学ぶことができると毎年人気のプログラムです。「理科好きの小学生を増やす」ことを目的としたキャンプなので、大自然を教材にして子どもたちの好奇心を育成するプログラムで進めていくのが特徴です。ぎゅっとサイエンスの要素がつまった2泊3日のキャンプ。バスに揺られて到着すると、すぐにその活動が始まります。森の中を散策して不思議な生き物の秘密を解き明かしたり、生き物の力を使って私たち人間に役立つこと(アメンボの力を使った水上移動、ミミズの力を使った掘削装置など)を考えたりと、体力と知力をフル回転させます。そして、昼食のバーベキューでも「食のサイエンス」が。火を起こすとき、酸素が入りやすい炭の置きかたは?お肉が美味しく焦げる温度は?など、仮説を立てて実験しながら食事を楽しみます。夜は、炎色反応を利用したカラフルなキャンプファイヤーをしたり、星座アプリを使った星空観察をしたりと、眠りにつく直前まで、子どもたちの好奇心は満たされ続けるのです。そして最終日、キャンプで学んだことをプレゼンテーション形式で発表します。このアウトプットの作業があることで、学びがしっかしと身につき、さらなる意欲につながっていきます。家族でキャンプをするときも、自然体験のなかで学んだことをまとめると、立派な自由研究ができあがりますよ。自然体験から得られる「学びに対する姿勢」フィールドワークに特化した野外型の理科教室『早稲田こどもフィールドサイエンス教室』では、「自然の不思議さを実感できる感性」を育むことを目的とした活動を行なっています。そこでは、子どもたちから自然とわきあがる「なぜ?」「どうして?」という疑問を大切にして、自分で考えて自分で解決する力を身につけられる指導を心がけているそう。他にも、次のようなことを意識して教えているといいます。■自然の成り立ちを理解する動物も植物も、それぞれが何らかの関係やつながりをもって存在していることを理解させます。■観察ができるようになる子どもは意外と「じっくりと観る」ことができないもの。自然と向き合う基本的な技術として身につけさせましょう。■違う視点をもつ物事は一面だけではとらえきれません。多角的な視点をもつと、見えなかったものが見えるようになり、真の理解につながります。■「わかった」と簡単に言わない物事の表面だけを見てわかったつもりになっていたら、そこで成長は止まります。■物事を大局的にとらえる大木の葉っぱ一枚にこだわっていては、木そのものが見えなくなることを理解しましょう。物事を大きくとらえる思考力を身につけることが大切です。このように、自然体験を通して学べることはたくさんあります。日常とは違うスケール感で物事を見ることができる経験は、子どもにとって忘れられない貴重な体験となるでしょう。家族でできるキャンプ科学体験□火をつかう大人は毎日料理で火を使いますが、子どもにとって火を使う体験はとても貴重です。風向きを気にしながらマッチを擦る、小さな炎がだんだん大きな焚き火になる様子を観察する、煙が目に入ってしみる……など、どれも不思議で刺激的な体験になります。□さまざまな石に触れるどこにでも転がっている「石」ですが、自然に囲まれたキャンプ場では、普段見慣れないようなゴツゴツした大きい石がたくさんあります。小川の近くなど場所によって形や模様などが違うので、じっくり観察すると驚きの発見があるかも!?□水の流れを目で感じる小川の流れを利用して、葉っぱや花びらを流してみましょう。「どの葉っぱが一番速く流れるかな?」と親子で競争すると、子どもは夢中になって葉っぱを集め始めるはずです。場所によって流れが穏やかだったり激しかったりするので、安全に気をつけて複数の場所で試してみてもいいですね。***キャンプや自然体験をきっかけとして、苦手だった理科が好きになった子もたくさんいるのでは?自然の中には、私たちの想像以上に、サイエンスの要素がふくまれています。火を起こすことも満点の星空を眺めることも、太陽の位置と時間との関係を知ることも、すべては科学的な好奇心の刺激に結びつくと言っても過言ではありません。(参考)Study Hacker こどもまなび☆ラボ|「科学好き」な子どもには、好奇心と我慢強さが身につく。子どもが理科・科学に親しむメリットと方法NPO法人 野外遊び喜び総合研究所|ABARENBO CAMP|サイエンスシリーズTORAY|青空サイエンス教室|実施概要早稲田こどもフィールドサイエンス教室|TOPページ早稲田こどもフィールドサイエンス教室|教室概要・クラス一覧|早稲田こどもフィールドサイエンス教室とは
2019年07月12日成長、発達、認知――。教育関係の記事ではあたりまえのように使われる言葉ですが、その厳密な意味となると答えられない人も多いでしょう。お話を聞いたのは、『しまじろうのわお!』(テレビ東京)などの幼児教育番組や幼児向け教材の監修を行っている、静岡大学情報学部客員教授の沢井佳子先生。それらの言葉の意味に加えて、幼児教育の世界で流行語となっている「非認知能力(非認知的スキル)」という言葉がはらむ問題についても持論を語ってくれました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)成長、発達、認知という言葉の意味とは?成長、発達、認知という言葉のうち、その意味合いからも混同されるのが成長と発達ではないでしょうか。子どもの成長、発達といった場合、一般の会話においては大きなちがいはありません。でも、アカデミックな意味でいうと両者にはちがいがあります。「成長」とは、「数値」でわかる身体の量的な変化です。つまり、子どもでいえば身長が伸びたり体重が増えたりした場合に、「成長した」というのです。そして、「発達」とは「働き」や「質」に焦点をあてた心身の変化です。たとえば、「子どもが手指で柔らかいものを上手につまめるようになる」という動作の「器用さ」の変化や、そして「頭のなかで言葉や数や論理を理解する」というような、見た目だけではわからない心理的変化も「発達」に含まれます。この発達の過程において、生涯にわたってドラマチックな変化を見せるのが「認知の発達」です。「認知」とはごく簡単にいえば「ものごとがわかる」ということです。一般に認知能力というと、文字を書く、計算する……といった「学力」と同じ意味だと、非常に狭い意味でとらえられがちです。しかし、認知は人間のあらゆる「知覚」「運動」「学習」「判断」「記憶」などに関わります。たとえば、生活習慣の獲得。子どもが服を上手に着られるようになったなら、そこには、方向や位置関係がわかる……という空間認知や、見て触った情報をもとに動作を実行するという認知の発達がみられるのです。友だちとの付き合いにおいても、表情を認知し、視点を動かして相手の気持ちを察し、出来事のつながりから因果関係を推理し、行動の社会的な結果を予測して意思決定をする……といった認知の過程がたくさん含まれているのです。生活習慣から社会生活、おしゃべりから数の理解、砂場の遊びからスポーツの試合まで、子どもの頭のなかでは認知的な営みが忙しく繰り広げられているのです。子どもの教育から少し話はそれますが、この「認知」に関する言葉で、個人的に残念に思っているのが、2004年末に日本で「痴呆症」に代わるものとして「認知症」という名称が採用されたということです。「認知症」という名前は、そのままの意味でとらえると、「わかる病気」ということになってしまいます。当時、厚労省が行ったアンケートでも、ほとんどの有識者が「認知障がいという名称が適切」と答えていました。「認知」を「歩行」に置き換えて考えてみましょう。歩行器で歩く人も、車椅子を使う人も「歩行障がい」があるわけです。が、それを「歩行症」と呼んだらおかしいですよね。「うまく認知できないこと」は、本来なら「認知障がい」と呼びたいところです。「でも、厚労省側が『少しでも字数が少ないほうがいい」と判断して『認知症』という言葉に決まったんですよ」と、その検討会の座長を務めた医師の長谷川和夫先生から、直接お聞きしたことがあります。こうして「認知症」という名称が生まれて15年がたったいま、「うちのおじいちゃん、『ニンチ』になっちゃって……」といったふうに、ずさんに略されて使われるのを耳にします。認知という言葉が真逆の意味で使われるのです。わたしは「みんなの認知症情報学会」で、認知症や発達障がいの当事者の方々のお話を聞く機会があるのですが、そのなかのひとりの女性が「わたし自身の認知の特徴について正確に説明しようとしても、ニンチという言葉は、得体の知れない深海魚か怪物のように思われ、人の誤解を解くのは大変です」とお話しくださったことが忘れられません。「認知症」のように、名前と意味の関係をあいまいにした言葉は、誤解に悩む人を増やしてしまうのです。「社会情動的能力」を「非認知能力」と呼ぶべきではない「認知」の意味への誤解を広げている名称がもうひとつあります。現在の教育界で頻繁に聞かれる「非認知能力(非認知的スキル)」がそれです。米国の経済学者のヘックマン(J.J.Heckman)の著書『子どもたちに公平なチャンスを与える(”Giving Kids a Fair Chance”)』邦訳『幼児教育の経済学』(東洋経済新報社)のなかに「非認知能力」は登場します。ヘックマンは米国の公教育が、子どもたちを到達度テストの点数で評価し、「学力優位の教育に偏っている現状」を批判しています。多くの人が社会で成功し、経済格差を解消するためにも、到達度テスト(認知テスト)では測れない、意欲や長期計画を実行する能力、他人と協働するのに必要な社会的・感情的制御という「非認知能力」を伸ばす教育が重要である。そして幼児期こそ「非認知能力」を育む最適期なので、幼児教育にかかる費用を、社会が家庭へ「事前に分配」すれば、効率的に社会的格差が解消される――。と、幼児教育への社会的投資を促しました。わたしは、この結論には賛成です。経済階層や家庭環境のちがいにかかわらず、どの子どもにも適切な幼児教育の機会が与えられるように社会システムを作ること。そして、学業のみならず、社会性や情動コントロールの能力を育む「幅広い領域の教育」の恩恵をすべての子どもが得られるように、社会が幼児期にお金と手間をかければ、子どもが年を取るまで望ましい効果が得られ、人生も社会全体も豊かになる……というヴィジョン。これは、わたしが30年以上前から、テレビ幼児教育番組のコンテンツ開発の仕事をしながら思い描いてきた理想と重なります。しかしながら問題は、社会性や情動コントロールの能力を「非・認知能力」と名づけ、学業に関わる能力だけを「認知能力」と名づけたことでした。わたしは、その意味する「事柄」ではなく、「名称」を問題視しています。ヘックマンは当初、「(研究者が)数値で量的に認知しやすい能力」と、「(研究者が)数値では認知しにくい能力」とを区別するつもりで、認知能力と非認知能力と命名したようですが、そんな名称では「子どもの頭のなかの認知能力」と区別がつきませんし、実際、混同されています。社会性や情動コントロールの能力のなかには膨大な認知過程があるにもかかわらず、それを「非認知」と呼べば、一般の人は「人付き合いや、我慢ができることなどに、認知は入っていないのだな」と誤ってとらえてしまうでしょう。そもそも、「非(Non-)」が頭について、「認知『じゃないもの』が大事だ」……という造語の仕方が誤解のもとです。大事な事柄は、否定ではなく肯定で、端的に表現すべきでした。ヘックマンは学業の能力(彼のいう認知能力)と社会情動性の能力(彼のいう非認知能力)の両立を重視したはずですが、教育者の間では「非認知能力」あるいは「非認知スキル(Non-cognitive skills)」という名称のみが流行語になり、両者のバランスは崩れていきました。さらに「非」という接頭辞が、続く「認知能力」を排除するか、または時間的に後回しにする解釈へと迷走させています。「<我慢ができて、友だちと仲良く協力し合い、自分の感情をコントロールする力>は非認知能力であり、これが育ったあとに認知能力を伸ばせばよいのです」と、幼児教育の現場で語られるのを聞きましたが、これは、ふたつの能力を同時に重視するヘックマンの論旨に反します。また、赤ちゃんのときからの「顔や声のパタンを見わける認知能力」がベースにあってこそ、特定の大人への愛着が深まり、観察と模倣の学習も進み、社会情動的能力が発達するのだという、心理学の知見ともかみ合いません。学術的な知見と「つじつま」が合わないまま、「非認知能力」という名称は、一般の人々の「認知」への理解をゆがめているのです。幼児期にこそ「認識の枠組み」を与えたい2011年の東日本大震災のとき、米国の『TIME』誌は、被災者の写真とともに「“Gaman”=ガマン」という言葉を「日本人独特の精神性」を象徴するものとして紹介していました。米国人のヘックマンが想定した「忍耐力や情動の抑制のレベル」をはるかに越えるマグニチュードの「被災者の我慢」に、米国のジャーナリストは驚いたのです。幼児教育の現場はもちろん、日常の現実やアニメでも「我慢強い子」のモデルを多く目にする日本は、「他者と協働するための社会性」への期待が重過ぎるほどです。ですから「非認知能力」と呼ばれる「社会・情動性」の教育の旗を振らなくても、日本の幼児教育の先生方はすでにそれをたっぷりと教育なさっていると思います。が、近年の「非認知能力」という流行語の副作用として「認知能力」が狭く解釈され、「文字や数を学ぶ認知能力は、小学校から伸ばす」とみなされ、幼児の幅広い認知能力が論じにくくなったのは問題です。他方、小学校はといえば、STEAM教育(科学、技術、工学、芸術、数学)を代表するプログラミング教育に加えて、英語の教科化で忙しく、6歳からの知識学習はどんどん増やされています。6歳を境に幼児教育と小学校の教育の内容には、崖のようなギャップがあります。それを不安に思う親は、非認知能力重視をうたう幼稚園に子どもを通わせつつ、さらに国語、算数、英語の「学業の先取り」を助ける塾へも通わせ、ダブルスクールの行き来で親子はヘトヘト。楽しいはずの幼児期がこのような疲労感で終わっては、「意欲」を育むどころではありません。そこで思い出すのは、わたしが2004年にハンガリーの保育園を訪ねたときの驚きです。保育士が「さあ、論理で遊びましょう!」と、3歳から6歳の子どもたちを集め、おもちゃや絵本、ボールなどを使って、仲間わけの論理遊びをはじめました。子どもたちは、異年齢同士で相談しながら、おもちゃを選び、ボールを転がして「考える遊び」を楽しんでいたのです。「考えること」は運動であり、友だちとのコミュニケーションであり、答えを探すための忍耐も遊びの内でした。ブダペストの明るい教室には、「子どもの思考」への洞察と、「考える遊び」を開発する技術があり、芸術的なバランスがあることに、わたしは心打たれました。ブダペストの小学校も見学しましたが、幼児教育から滑らかにつながり、校長は「幼児から児童への認知発達を考え、自分で論理的に考えられるように、遊びや学びを開発しているんですよ」とお話しくださいました。論理、社会性、物語、数学、運動、音楽などが、一体となった教育は、面白い幼児教育番組を見ているような印象を残しました。1973年にはじまった幼児教育番組『ひらけ!ポンキッキ』(フジテレビ)は、ガチャピンとムックが有名ですが、東 洋、永野重史、新田倫義、藤永 保という4人の発達心理学者が監修して、幼児期の認知発達を支援する目的でつくられました。わたしは1984年から1988年まで心理学スタッフとして制作に携わりました。放送がはじまった頃は、批判の電話がたくさんあったそうです。「幼児期はココロを育てる情操教育が重要なのに、『ポンキッキ』は知識の詰め込みの早期教育でけしからん」という批判です。「知性と情意性、どっちを重視するのか?」という、能力を分割する議論は、むかしもいまも変わらず繰り返されるんですね。『ポンキッキ』の監修者は、「幼児が主体的に情報を処理する能力を育て……質の良い知的構造の形成と深化を目指す」という理念を掲げ、論理概念すらも面白いアニメで見せ、社会性や情動性をテーマにした歌やダンスも開発しました。いま、わたしは『しまじろうのわお!』(テレビ東京)という幼児教育番組の監修者として、ピーマンの悲しみの理解から、転んでも立ち上がる意欲の歌、ジュースの量を比べる遊びまで、幼児の生活全体を対象に、『認識の枠組み』を与える映像を開発しようと、制作仲間と議論を重ねています。ハンガリーの「社会的な論理遊び」、そして「生活のなかで考える面白さ」を伝える『ポンキッキ』、こうした「認知と情意性の発達を丸ごと支援する教育」を、いろいろなメディアで増やしたいものです。大人のかたも、子ども時代の記憶を思い出して、「3歳のわたしが面白かったことは?大好きな人のなにを真似たのかな?」とご自分の発達を振り返ってみませんか?「認知=ものごとがわかること」について考えはじめると、高齢者になるという発達も面白くなるように思います。■ 静岡大学情報学部客員教授・沢井佳子先生 インタビュー一覧第1回:“○歳だからこれができないとダメ!”その思い込みから親を解放する「発達心理学」入門第2回:幼い子どもの言葉が格段に豊かになる、親から子への「実況中継」という方法第3回:「10まで言えるのに、5個が数えられない」?未就学児への“数”と“時間”の教え方第4回:「非認知能力」という名称の流行が生んでしまった“誤解”と“困った副作用”【プロフィール】沢井佳子(さわい・よしこSAWAI, Yoshiko)1959年生まれ、東京都出身。チャイルド・ラボ所長、静岡大学情報学部客員教授。認知発達支援と視聴覚教育メディア設計を専門とする。学習院大学文学部心理学科卒業。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了。同大学院人間文化研究科博士課程単位取得退学。専攻は発達心理学。幼児教育番組『ひらけ! ポンキッキ』(フジテレビ)の心理学スタッフ、文教大学人間科学部講師などを経て現職。他に、日本こども成育協会理事、人工知能学会「コモンセンス知識と情動研究会」幹事、日本子ども学会常任理事などを務める。幼児教育シリーズ『こどもちゃれんじ』(ベネッセコーポレーション)の「考える力」プログラム監修、幼児教育番組『しまじろうのわお!』(テレビ東京系列/2016年国際エミー賞子ども番組部門ノミネート、2019年アジアテレビ賞受賞)の監修など、多様なメディアを用いた幼児向け教材やテレビ番組の制作におけるコンテンツ開発に携わっている。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年07月12日お絵描きをしたり、お箸を使ってごはんを食べたり…。器用に指先を使うようになると、わが子が右ききなのか、左ききなのかが分かってくるようになりますよね。けれど、なかには「左も右もどっちも使っている…」「左ききみたいだけど、なおしたほうがいいの…?」という不安や疑問がわいてくる人もいるようです。そこで今回は『 左対右きき手大研究』 (化学同人)の著者である八田武志先生、に子どものきき手にまつわる疑問についてうかがってきました。お話をうかがったのは…関西福祉科学大学学長 八田武志先生専門分野は、脳と行動とのしくみ解明を目指す神経心理学。特に左ききの脳のしくみ、左右脳の働きの違い、中高年者の加齢による脳の働きの様子を調べ、脳機能低下を予防する研究をおこなっている。■「右ききか、左ききか」きき手は何歳ごろに決まる?――わが子がスプーンやフォークを使ってごはんを食べはじめたとき「この子のきき手はどっちかな?」と気になったことがありました。そもそも左きき、右ききというのは、いつ頃から分かるものですか?八田武志先生(以下、八田先生):親が子どものきき手に関心を持ちはじめるのは、2歳ごろからが多いでしょうか。でも2歳だと、きき手はまだ確かではないんですね。――何歳くらいから分かってくるんですか?八田先生:そうですね。アメリカの著名な発達心理学者の研究によると、0~1歳ではまだ左手、右手のどちらを多く使うなどの偏りは見られません。2~3歳になると偏りは多少あるけれども、どちらの手も使っている状態になります。そして4~6歳になるともっぱら片方の手を使うようになり、7~14歳で安定して一方の手を使うという結果が出ているそうです。――長い…! きき手が決定するまでには、思ったより時間がかかるんですね…!八田先生:人が手を自由に動かし、細かい運動ができるようになるには生まれてから5年以上の年月が必要になります。きき手が分かるのは自由に手先を動かせるようになってから…の話なんですね。――なるほど! きき手の判明は身体の発達とも関係しているんですね。■「9割が右きき、1割が左きき」その意味は?――先生、世間では圧倒的に右ききの人が多いですよね。右ききの私は、左ききの人に出会うと昔からなぜか「かっこいい…!」と思ってしまうのですが(笑)。右ききの人が多いことに理由はあるのでしょうか?八田先生:研究によれば、きき手の決め方や文化差による違いを考慮しても、全世界で右ききではない成人は10%程度といわれ、90%は右ききといわれています。――左ききの人は10人中、1人…! やっぱり少ないですね…。八田先生:「なぜ右ききが多いのか?」という疑問は多くの人が持っているかもしれません。でもこの問いに対する明確な答えは「今のところない」といえるでしょうね。――右ききが多いのはなぜなのか。はっきりとした理由は解明されていないということでしょうか?八田先生:そうです。考えられる説はいくつかあるのですが…。現時点で私がお答えするとすれば「右ききが生存に適していたため」でしょうね。――右ききが生存に適している…?八田先生:人は生まれてから死ぬまでの発達過程で、環境と相互に関わり合いながら遺伝子情報があらわれます。手の運動は、脳の運動野がコントロールしています。手指の運動に関しては、右ききの人は左脳の運動野、左ききの人は右脳の運動野の働きが優れるようになるんです。人類の祖先には、このような左右脳の差を持たないケースも存在していた可能性はありますが、右ききの遺伝子情報を持つ方が、なんらかの理由で生存に適していた、と考えられるのではないでしょうか。――右ききが生存に適しているのなら、どうして全員が右ききではないのでしょうか?八田先生:左ききの人がいなくならないのは、左ききの人も人類にとって重要な役割を担っているからでしょう。右ききが生存に適している理由、左ききが担っている重要な役割は、残念ながらはっきりとした答えはまだない状態です。でも、全員が右ききにならず、1割の左ききが存在しているのは事実ですよね。この事実が何を示すのか? これからの研究で明らかにされていくかもしれませんね。■子どものきき手はどっち? 簡単に見極める方法――子どものきき手がどちらかハッキリしないと、もやもやすることもあります。きき手を見極める方法などはあったりするのでしょうか?八田先生:きき手を見極めたいときは、片手で行う日常生活での動作について、どちらの手を使うかをたずねる質問紙法というのがあります。――質問紙法…?八田先生:片手動作をできるだけたくさん挙げたうえで、判別力の高い動作を再現性などをふまえたうえでふるいにかけます。さらに、統計学に基づく手続きをへて、10~20項目程度に精選して作成されたのが、質問紙法です。――質問紙法に答えていけば、きき手がある程度は分かる…?八田先生:そうですね。大体の傾向は知ることができます。でも片手で行う動作は、例えば近年出現したスマホでの文字打ち動作などのように時代とともに変化していくので注意が必要です。ただし、質問紙法は大人のきき手を見極める場合に有効で、文章の理解力などを考えると、幼児や年少の児童には不向きでしょう。――なるほど…。では、わが子のきき手を見極めるにはどうすればいいのでしょうか?八田先生:先ほどもいいましたように、きき手が分かるまでにはある程度の時間がかかります。質問紙検査よりも簡単な動作を行わせることで判定するのが良いでしょう。――具体的にどんな方法になりますか?八田先生:身体の正面、右側、左側にオモチャなどを置いて、どちらの手で取り上げるかを観察することです。オモチャの位置に関係なく、距離が近い・遠いに関係なく、手を正面でクロスしてでもオモチャを取り上げる場合は、その手をきき手とみなして良いでしょう。――なるほど…! それは分かりやすいですね。何度か位置を変えてオモチャを置いてみる。どちらの手で取ろうとするかで、その時点でのきき手が分かるんですね。■きき手を決めるのは遺伝子? 大人になってもきき手が変わらない理由――先生、大人になってから自然にきき手が変わることってありますか?八田先生: 気づかないうちに自然にきき手が変わることはないでしょうね。――大きくなってからきき手を変えるのは相当難しい…ということですか?八田先生:そうですね、難しいです。その理由として、きき手は遺伝子情報による脳の働きで、手指の運動をコントロールしているからです。つまり一定の年齢になると遺伝によって左右どちらからの手を偏って使用する傾向が生まれる、ということです。――持って生まれた遺伝子情報にそって、きき手が決まる…。八田先生:そうです。きき手の変更は絶対不可能ではありませんが、あらわれてきた遺伝子情報に逆らうことになりますよね。だから、自然に変わるのは無理なんですね。――自然にさからって変えようとするのは、大変なんですね。八田先生:そうですね。運動行為は自動性が強いのが特徴です。だから一旦できた左右手の運動プログラムは、意識しなくても自動的に発動します。そのため、消したり変えたりするのは簡単ではありません。もし変えようとするなら、かなり意図的な訓練作業が必要になると思います。子どものきき手は遺伝情報にともない、自然に決まること。きき手がしっかりとあらわれるまでには数年の月日が必要なことが分かりました。まだまだ知りたいきき手のこと。次回は「左ききは右ききになおすべき!?」というテーマでお話をうかがいたいと思います。参考図書: 『左対右きき手大研究』 (化学同人)著 八田武志「なぜ右ききが多いの?」「きき手はどうやって決めるの?」「スポーツ選手は左ききが有利?」などなど。世の中の「きき手」にまつわる素朴な疑問やうわさについて、研究例を基に紹介。きき手の不思議を探求する一冊。
2019年07月11日大人ならあたりまえのように使っている「数」。日常的に使うものだけに、子どもの頃にどのように理解したのかをほとんどの大人が覚えていません。算数が苦手な子どもにしないため、小学校に入る前に「せめて数だけでも教えておきたい」と考えても、その方法はなかなか思いつかないのではないでしょうか。そこで、『しまじろうのわお!』(テレビ東京)などの幼児教育番組や幼児向け教材の監修を行っている、静岡大学情報学部客員教授の沢井佳子先生に、数や時間の概念を子どもに教えるためのアドバイスをしてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)数を数えられても数を理解できない子ども子どもに数を教えようとして、お風呂の湯船につかるときに「最後に10まで数えたら上がっていいよ」といったことをしている親は多いのではないでしょうか。それで、きちんと順に1から10まで数えられるからといって、子どもが数を理解しているとはいえません。たとえば、10まで数えられる子どもに7つのドーナツを見せて、「ドーナツがいくつあるか、数えてごらん」といってみると、一つひとつのドーナツに対応しない指さしをしながら「1、2、3……10!」と10まで数えてしまうことはよく見られます。これは、10までは数を唱えることができるけど、「何個」という個数を表す数の意味はわかっていないからです。ひとことで数といっても、さまざまな概念が含まれます。7つのドーナツの個数が7だと示す数は「集合数」と呼ばれます。また、1番目、2番目というふうに順番を示す数は「順序数」といいます。他にも、住所の番地など、いわば「名前」のように使われる数もあります。このように、数の概念は、単純ではありませんから、数の意味を正確に学ぶのにはかなりの時間がかかるのです。また、順序数を理解できても、集合数は理解できないということもあります。7つのドーナツの順番はわかって「1、2、3……7」というふうに、7番目のドーナツでちゃんとストップして数えたのに、「じゃ、ドーナツは全部でいくつ?」と聞いてみると、「10!」とか「8!」などと答えるケースも珍しくありません。「全部」を「10」だと信じていたり、あるいは次の数だと思ったりしている子ども多いのです。お風呂の例のように、1から10まで数の名前を順番にいうというのは「数唱(すうしょう)」というものです。子どもが集合数や順序数を理解しないまま、ただ数を10までいえるよう鍛える教え方は、それは意味もわからずにお経を唱えさせることとなんら変わりません。ただ「長い言葉」を覚えただけなのです。10までの自然数を理解できれば足し算も引き算もできるこれまでわたしが監修をしてきた幼児向けの教材では、3歳は5までの集合数、4歳は10までの集合数を教えるようにしています。「少ないのではないか?」と思う人もいるかもしれませんね。でも、10までの順序数と集合数の「意味」さえ確実に理解できれば、足し算も引き算も、数のイメージを思い浮かべながらできるようになります。それは、自然数というものの構造を理解できたということだからです。10までの順序数と集合数を家庭で教えるにはブロックを使ってみてください。まずは紙に「1、2、3……10」と10番までの数字、つまり順序数を書きます。そして、それぞれの場所に順序数と同じ数のブロックを積み上げる。こちらは個数ですから集合数になります。すると、1個から10個までのブロックが階段状に並ぶことになります。1番目には1個、3番目には3個、というふうに、横方向の順序数と縦方向の集合数の関係は一目瞭然です。これは、数の階段のイメージであり、「nの数の次はn+1の数」という自然数の系列の姿を表します。このような「数の階段」を自分でつくれば、5番に並べられているブロックの数は3番に並べられているブロックより2個少ないということも見ればわかりますから、足し算や引き算についての理解を助けることにもなるのです。生活のルーチンの繰り返しと体感が導く時間と時計の理解また、「数の保存」という概念も子どもにとってはなかなか理解できないものです。5つのブロックは、間隔を空けて点々と並べても、ぎゅっと縮めて並べても同じ5個です。でも、子どもの場合、「どっちが多い?」と聞くと、あたりまえのように「こっち!」と前者を指すことがあります。個数とは関係なく、ものが置かれている面積が広いほど、個数も多いと感じてしまうのです。この「数の保存」を子どもが学ぶには、ブロックなどを使って何度も置き方を変えながら個数を数えて、どんな置き方をしても個数は変わらないという経験を、親が増やしてあげる必要があります。重要となるのは、ブロックなどの具体物を使って手で触れさせながら教えること。この手を動かす「実感」こそが、子どもの理解を助け、小学校に入った後には算数の文章題を読んだときのイメージを助けることにもなります。また、「実感」が必要ということでいえば、「時間概念」の理解にも実感が欠かせません。幼い子どもは「朝、昼、晩」「朝ご飯、昼ご飯、晩ご飯」といった日々の生活習慣の繰り返しのなかで徐々に時間というものを感じていきます。そして、3、4歳になれば、季節の移り変わりを1年前、2年前と比べることもできるようになる。その記憶を伴った実感が時間概念を子どもに理解させるのです。そうして、時間の大きな流れを理解すると、今度は生活習慣が「時計」の理解を助けてくれます。同じ朝といっても、6時と7時ではちがいます。とはいえ、時計の存在を知らない子どもにとってはそのちがいはなかなかわからないでしょう。でも、毎日6時に起きる子どもが、その日はたまたま7時に起きてしまったなら、テレビでやっている番組もいつもとちがうことがわかります。こういった経験によって子どもは時計の存在、時計を読むことの重要性に気づいていくのです。数にしても時間にしても、幼いうちから無理やり詰め込むような教え方にはほとんど意味はありません。とくに、人間の数量概念や時間の知覚などの発達にまったく関心がない大人が数字や計算ばかりにこだわって教えることは、子どもを数嫌いにさせかねません。焦ることなく、「実感を伴った経験」を増やしてあげてください。それが、結果的には子どもの数や時間の理解を深めてくれるでしょう。■ 静岡大学情報学部客員教授・沢井佳子先生 インタビュー一覧第1回:“○歳だからこれができないとダメ!”その思い込みから親を解放する「発達心理学」入門第2回:幼い子どもの言葉が格段に豊かになる、親から子への「実況中継」という方法第3回:「10まで言えるのに、5個が数えられない」?未就学児への“数”と“時間”の教え方第4回:「非認知能力」という名称の流行が生んでしまった“誤解”と“困った副作用”(※近日公開)【プロフィール】沢井佳子(さわい・よしこSAWAI, Yoshiko)1959年生まれ、東京都出身。チャイルド・ラボ所長、静岡大学情報学部客員教授。認知発達支援と視聴覚教育メディア設計を専門とする。学習院大学文学部心理学科卒業。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了。同大学院人間文化研究科博士課程単位取得退学。専攻は発達心理学。幼児教育番組『ひらけ! ポンキッキ』(フジテレビ)の心理学スタッフ、文教大学人間科学部講師などを経て現職。他に、日本こども成育協会理事、人工知能学会「コモンセンス知識と情動研究会」幹事、日本子ども学会常任理事などを務める。幼児教育シリーズ『こどもちゃれんじ』(ベネッセコーポレーション)の「考える力」プログラム監修、幼児教育番組『しまじろうのわお!』(テレビ東京系列/2016年国際エミー賞子ども番組部門ノミネート、2019年アジアテレビ賞受賞)の監修など、多様なメディアを用いた幼児向け教材やテレビ番組の制作におけるコンテンツ開発に携わっている。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年07月11日今、じわじわと科学人気が高まっています。その背景として、物理学、科学、医学の分野で日本人のノーベル賞受賞者が相次いだことや、アクティグラーニングの導入によって「ロジカルシンキング(論理的思考)」が求められるようになったことが考えられます。わたしたち親世代では苦手意識を持つ人が圧倒的に多かった理系分野ですが、今ではそのイメージをがらりと変えて、子どもたちにとって科学はより身近で日常の中に溶け込んでいるようにも感じられます。体験できる場所やきっかけがたくさんあるということは、子どもの「なぜ?」にとことん付き合えるチャンスです。ぜひ親子で一緒に、身近なところから科学の面白さや奥深さに触れてみませんか?すぐに答えが出ないことがおもしろい!?最近では幼児を対象にしたサイエンス教室や実験系のワークショップなど、以前に比べて格段に「科学に触れられる機会」が増えたように感じませんか?2000年ごろに子どもの「理科離れ」が浮き彫りになってからというもの、全国各地の自治体や科学館などの施設で積極的に理科系のイベントが開催されるようになったことも一因ですが、AIの進化によって「子どもを理系に強い人間に育てたい」と願う保護者が増えたことも大きな要因だと指摘されています。とはいっても、まだまだ理科・科学に対して「難しい」「苦手だな」と思い込んでいる人が多いのも事実です。筑波大学生物学類サイエンスコミュニケーターで次世代科学者育成プログラムに携わる尾嶋好美先生によると、その原因のひとつとして現代の「すぐに結論を求めてしまう風潮」が関係しているそう。今は、インターネットで検索すれば「何でも答えが出てくる」時代になっています。子どももわたしたち保護者も、すぐに結論を求めてしまう風潮があると思います。そうした社会においては、自ら考え、答えを導き出す過程が少し面倒に感じられてしまうのではないでしょうか。その過程を楽しむことができれば、きっと理科の面白さに気付いてもらえるはずです。(引用元:ベネッセ教育情報サイト|理科好きの子どもを育てるには【前編】理科好きの共通点とは)正確な知識や情報に基づき、仮説を立て、検証するといった地道な努力を経てはじめて“科学的思考力”は身につきます。それはすぐに手に入るものではなく、むしろじっくりと時間をかけて育んでいくもの。現代のスピード重視な世の中では、その過程を見守ることも難しいのかもしれません。科学が好きだとメリットがたくさん!科学好きになるとさまざまなメリットがもたらされます。そのひとつは、好奇心が高まりチャレンジ精神が育まれること。サイエンスプロデューサーの米村でんじろう先生は「実験を楽しみながら理科に親しむことで、好奇心に加えて新たなことにチャレンジしていける力を養うことができる」と述べています。さらに脳医学者の瀧靖之氏は「好奇心がある子どもは、知ることに対し純粋な喜びを感じるので、楽しみながら新しい知識を学ぶことができる」と解説しています。つまり、知的好奇心があると自発的に考えて自ら調べる癖がつき、学びへの意欲がぐんと高まるのです。ほかにも、合理的な考え方や実用的な知識も身につきます。食品パッケージの栄養表示から機械の取扱説明書まで、私たちの身の回りには科学的な情報があふれています。理科や科学を学びはじめると、日常生活の大部分は科学技術によって支えられていることに気づくのではないでしょうか。非科学的な情報に流されず、しっかりとした根拠に基づいた思考力を育てるためにも、科学に興味をもつことが大切です。最後に、精神科医の和田秀樹氏は「算数や理科が得意な子は、きちんと答えを求めようとするので我慢強い子になる」と述べています。ノーベル医学・生理学賞を受賞した京都大学の本庶佑教授は、「自分で知りたいという好奇心と、簡単に信じないということ」を心がけているそう。自分の目で見て確かめたうえで、納得できるまで諦めない姿勢も身につくのですね。理科好きな子に見られるある特徴前出の尾嶋先生は、理科好きの子どもには「ある共通点」があるといいます。それは『センス・オブ・ワンダー』、つまり身近な出来事に「不思議だな」と思える感性を持っていること。小さな子どもはみんな、「どうして空は青いのか」「どうして蟻は連なって歩くのか」など小さな疑問を抱きながら毎日を過ごしています。しかし成長するにつれて、いつしか日常の小さな不思議を見過ごすようになっていきます。この「なぜ」を中高生になっても持ち続け、追求し続ける意欲を失わないことが、理科好きの子どもに共通している点だそうです。また、学研教育総合研究所が保護者を対象に「理科好きな子どもの性格・行動特性」を調査したところ、次のような結果が導き出されました。理科を「とても好き」と答えた子の8割以上が、「やり始めたら集中して取り組む」「好奇心旺盛」「思いついたら自分で試してみる」「ものごとの仕組みを知りたがる」といった性格や行動特性を持っているというのです。つまり理科が好きな子どもは、なにかに集中して取り組んだり、ものごとを追求することに興味・関心をもち、行動を起こしたりする傾向が見られるというわけです。「理科が苦手」は親の思いこみ!?「生まれながらに『理科が嫌いだ』という子どもはいません」とは、山梨大学の松森靖夫教授の言葉です。いつもぼーっとしていて何も考えていないように見えるお子さんでも、動植物や天体、目の前の自然科学に対して「どうして?」と疑問をもち、しっかりと自分の頭で考えているそうです。だからこそ「大人の常識を押し付けたり、先回りして答えを教えたりするべきではない」と松森教授は指摘します。大切なのは、子どもに「思考を温める時間」を与えること。それにより、“仮説を立てて検証する”という思考のステップの構築につながるので、口を出したくてもぐっと我慢するようにしてください。中学受験教育を専門に手がける小川大介氏によれば、8~10歳くらいになると「自分はこうだ」と強く思い込み始める傾向があるといいます。親から「私に似てあなたも理科が苦手ね」と言われるなどして理科や科学に対する苦手意識を一度持ってしまうと、その意識を変えるのは難しいでしょう。ですから、より早い段階で理科に対して関心を抱かせることが重要なのです。そのきっかけとして、家庭の中で行われていることを、きちんと定義づけてあげるようにするといいでしょう。おすすめは、お手伝いをしてもらいながら科学的思考を伸ばしてあげること。お手伝いには、子どもを理科好きにするヒントがたくさん隠されています。“おうちサイエンス”で子どもの科学的好奇心を刺激しようお手伝いを通じて“科学の芽”が育つ「お手伝いサイエンス」を提唱している『ママとサイエンス』主宰の理科教師・田中幸先生と、理科の教科書執筆にも携わる結城千代子先生は、「料理や洗濯、さまざまな暮らしの知恵は科学の原理の応用」だと説明します。とくに料理にまつわる一連の作業には、サイエンスの要素がもりだくさん!おすすめのお手伝いサイエンス□野菜を洗う大きめのタライに水を張り、夕食に使う野菜をすべて入れてみましょう。どの野菜が浮いて、どの野菜が沈むかな?水に入れる前に「お母さんはにんじんが沈むと思うな」「○○くんはどれが浮かぶと思う?」と予想してから実験するとより効果的です。□きゅうりの塩もみきゅうりを薄く刻んで塩もみをします。「太く刻んだらダメなのかな?」「きゅうりがしなっとしてきたね」などの声かけをしながら、変化の様子を一緒に観察しましょう。□鍋の音を聞くぐつぐつ、ぷくぷく、ことこと……、鍋の中身が煮える合図は音で判断することもあると教えます。「ぐつぐつ聞こえ始めたら教えてね」と見張り番をお願いすると、子どもは驚くべき集中力を発揮して観察します。□ホットケーキを焼く焼く前のホットケーキはフライパンに広がるのに、火を通すと広がりが止まり、やがて膨らみます。「ぷつぷつしてきたね」「ふくらんできたからひっくり返してみようか」「真ん中がぷっくりふくらんでいるね」など、変わっていく様子を言葉にして確認しましょう。田中先生と結城先生は次のように述べています。「科学に限らず、子どもに何かを体験させたいと思ったとき、わざわざものを用意したりどこかに行かなくても、日常にチャンスはあふれています」特別な場所へ行き、特別な道具がないと、科学への理解を深めることは難しいと考えていませんか?実は、私たちの日常はサイエンス要素に満ちているのです。***子どもの科学的関心を高めて理科好きにするには、『3つの力』を大切にしてあげましょう。「観察力」(注意深く世界を見る力)「好奇心」(何でだろう?と不思議に感じる力)「探究心」(その理由を考える力)これらの力を発揮したとき、大人は答えを用意するのではなく、「なぜかな?」「不思議だね」と共感してあげてくださいね。(参考)ベネッセ教育情報サイト|理科好きの子どもを育てるには【前編】理科好きの共通点とはStudy Hacker こどもまなび☆ラボ|「科学好き」な子どもには、好奇心と我慢強さが身につく。子どもが理科・科学に親しむメリットと方法学研教育総合研究所|小学生白書Web版|1.「理科好き」を伸ばす子どもの性格・行動特性ベネッセ教育情報サイト|「子どもの科学」を大切にし、理科好きの子どもを育てる『できる子になる!0歳からのお手伝い』クーヨンBOOKS12,2015年6月,クレヨンハウス.
2019年07月10日我が子が、果たして順調に言葉や文字を覚えてくれるだろうか――。幼い子どもを持つ心配性の親なら、そんな不安を抱えているかもしれません。そこで、発達心理学を専門とし、『しまじろうのわお!』(テレビ東京)などの幼児教育番組や幼児向け教材の監修を行っている静岡大学情報学部客員教授の沢井佳子先生に、言葉や文字を子どもに効果的に教える方法を聞きました。まずは、その前の段階、まだしゃべらない子どものコミュニケーションについて教えてもらいます。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)赤ちゃんのときの動作に言葉を覚える前兆を見るまだしゃべらない子どもでも、あとあときちんと話せるようになるかどうかを確認する方法があります。その方法は、生まれて間もない赤ちゃんの段階でもできることです。対話の基本はキャッチボールのように交互に話すことですよね?Aさんが話しているときはBさんが聞く。そして、Aさんが話し終わったあとでBさんが話す。それと同じことが赤ちゃんの行動にも見られるのです。親が「○○ちゃん、かわいいね」というと、赤ちゃんは親を見てじっとしている。そして、いい終わったあとに自分の手足を動かす。こういう答えるような動作が見られるようでしたら、心配ありません。こうした行動から、その子どもには対話へと発達するベースが備わっていることがわかるのです。また、2、3歳になってもなかなかしゃべらないとなると、やはりおうちのかたは心配でしょう。その段階になるまでに、発達上の問題がないかをチェックする方法があります。赤ちゃんは1歳になる前頃から「指さし」をするようになります。あるいは、はっきりとした指さしをしなくても、親が見る方向を一緒に見ます。たとえば、お母さんが犬を見て、「あ、ワンワンがいるよ」といったとします。その言葉を聞いて、子どもはお母さんが見ている方向を見る。これは「共同注視」と呼ばれます。別のパターンとしては、親の前でテレビを見ていた子どもが、ある場面で親のほうを振り返るということもあります。これは、まだしゃべれなくても、「面白いよね?」「お父さんも見ているよね?」と伝えようとしているということで、「社会的参照」と呼ばれ、他の霊長類にはあまり見られない、人間の子ども特有の行動です。これらは「前言語的コミュニケーション」と呼ばれる行動で、いわば「言語のもと」といえます。こういう行動が見られるようであれば、言葉が出てくるのは時間の問題。心配の必要はありません。ひらがなを覚えるための第1ステップは「音節分解」こうして子どもがしゃべるようになると、熱心な親なら五十音を順に書かせるなどして幼い子どもにひらがなを覚えさせようとするかもしれません。でも、残念ながら、しゃべりはじめたばかりの子どもにいきなり文字を覚えさせることにはあまり意味がないのです。なぜなら、まずは「聞き取る」ことが大事だからです。その視点から、ひらがなを読む、覚えるために必要となる準備として「音節分解」があります。たとえば、「たぬき」という文字を覚えるにも、まずは「た・ぬ・き」と音節ごとに分解できる必要があります。幸い、日本語のひらがなは一部の例外を除いて1音節に1文字が対応しています。英語の場合、「ノック」という1音節の発音の言葉でも文字にすると「knock」と5文字にもなる。つづりを覚えるのがやっかいですよね。英語と比較しても、日本語の「ひらがなの読み」は幼児にとって学習しやすいのです。言葉や文字の勉強というと、つい紙と鉛筆でするものをイメージしてしまいます。でも、紙と鉛筆では音節という概念を学ぶことは簡単ではありません。目と耳と口と動作を通して、音節の区切りを学ぶことが大切です。この音節分解を学ぶためには、わたしが監修したものも含めて音声や映像で教えるビデオ教材がありますから、そういうものをご覧になるとわかりやすいでしょう。注意してほしい点は、「音節分解ができなくても文字が読めるように見える」子どもがいるということ。電車が好きな子どもなら、「とうきょう」という駅名標のひらがな表記を見て「トーキョー」と声に出すことがあります。ただ、それはきちんとひらがなを読んでいるわけではなく、「とうきょう」という文字の連なりを絵のようなまとまり(パタン)として記憶し、それに「トーキョー」という音をペアにして覚えているに過ぎないのです。そこで勘違いして、「うちの子はもうひらがなが読めている」なんて思ってはいけません。まずは音節分解ができるようになること。それができてから、本当に、ひらがなという表音文字を読む……という言葉の学習がはじまるのです。とくにオノマトペの学習に有効な「実況中継」そして、子どもの語彙を豊かにしてあげたいのなら、親が「実況中継」するということをぜひ心がけてください。いまこの瞬間に起きていることを、いちいち言葉で表現して、目の前の出来事を実況中継するのです。そうすることで、紙と鉛筆で書くという学びでは得られない、生活の感覚の「実感」を伴って子どもが言葉を覚えることにつながります。これは、とくに擬態語や擬音語などのオノマトペ(※)を子どもが学ぶ際にはとても有効な手段です。たとえば、子どもがご飯を食べているときに口のまわりを汚してしまったなら、「口のまわりが『べたべた』になっちゃったね」「水で洗ったら口のまわりが『さっぱり』して『さらさら』になったね」というふうに言葉で実況するのです。そうすると、子どもの脳には「べたべた」「さっぱり」「さらさら」という言葉の音が、べたべたの触覚などの、ライブの身体感覚を伴って入っていきます。これらの感覚は紙と鉛筆で学べるものではありません。紙と鉛筆を用意してわざわざ勉強をするという場面をつくらなくてもいいのです。親が実況中継をすれば、日常のなかで子どもは、微妙なニュアンス、感覚の違いとともに言葉をどんどんと覚えていくのですから。※オノマトペ:自然界の音や声、ものごとの状態や動きなどを象徴的に表した語。擬態語、擬音語、擬声語など■ 静岡大学情報学部客員教授・沢井佳子先生 インタビュー一覧第1回:“○歳だからこれができないとダメ!”その思い込みから親を解放する「発達心理学」入門第2回:幼い子どもの言葉が格段に豊かになる、親から子への「実況中継」という方法第3回:「10まで言えるのに、5個が数えられない」?未就学児への“数”と“時間”の教え方(※近日公開)第4回:「非認知能力」という名称の流行が生んでしまった“誤解”と“困った副作用”(※近日公開)【プロフィール】沢井佳子(さわい・よしこSAWAI, Yoshiko)1959年生まれ、東京都出身。チャイルド・ラボ所長、静岡大学情報学部客員教授。認知発達支援と視聴覚教育メディア設計を専門とする。学習院大学文学部心理学科卒業。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了。同大学院人間文化研究科博士課程単位取得退学。専攻は発達心理学。幼児教育番組『ひらけ! ポンキッキ』(フジテレビ)の心理学スタッフ、文教大学人間科学部講師などを経て現職。他に、日本こども成育協会理事、人工知能学会「コモンセンス知識と情動研究会」幹事、日本子ども学会常任理事などを務める。幼児教育シリーズ『こどもちゃれんじ』(ベネッセコーポレーション)の「考える力」プログラム監修、幼児教育番組『しまじろうのわお!』(テレビ東京系列/2016年国際エミー賞子ども番組部門ノミネート、2019年アジアテレビ賞受賞)の監修など、多様なメディアを用いた幼児向け教材やテレビ番組の制作におけるコンテンツ開発に携わっている。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年07月10日「同じ月齢のよその子どもはもうおしゃべりが達者なのに、うちの子どもはまだ話す気配すらない」――。そんなことがあれば、誰もが我が子を心配してしまうものです。そんな不安を解消すべくお話を聞いたのは、静岡大学情報学部客員教授でチャイルド・ラボ所長の沢井佳子先生。発達心理学を専門とし、『しまじろうのわお!』(テレビ東京)などの幼児教育番組や幼児向け教材の監修を行っています。沢井先生は、「子どもの発達は、『何歳でなにができるか?』ではなく、『できるようになっていく順序』が大事」だといいます。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)発達とは、生得的なプログラムが順に発動していくこと親であれば誰もが我が子の発達が遅れていないかと気になります。でも、「○歳だからなにができなくてはいけないはずだ」と思い込んで、「遅れているのは能力に問題があるから?」と心配をする必要はありません。人間の発達は、「あることができてから、次のことができるようになる」といった、発達段階の順序が定まっていて、多少の遅れがあったとしても、順番を踏んで、あとあと発達していくからです。なぜそのような順序の定まった発達が起こるのかというと、人間にはサバイバルのためにあらかじめさまざまなプログラムがインストールされているからです。たとえば、生まれたばかりの赤ちゃんにお母さんが「ベーッ」と舌を出す姿を見せると、赤ちゃんは、お母さんの顔をじっと見つめたあと、なんと舌を出します。わたしも息子が生まれたときに実験して確かめました。つまり、人間は生まれつき模倣のプログラムを持っているということになる。いちばん身近にいる養育者――親を模倣することは、赤ちゃんにとってサバイバルのすべを学ぶということなのです。よく「子どもは試行錯誤して学ぶ」といいますが、じつはそうではありません。試行錯誤とは、たとえば手足をめちゃくちゃに動かすような、無駄な行動を何度も繰り返して、目的のために効果的なものを選んでいく過程を指します。でも、赤ちゃんの場合はそうではありません。意外なほどすっと無駄なくいろいろなことができるようになる。それは、身近な人を「観察して模倣するプログラム」がインストールされているからに他なりません。このように、あらゆる発達に関するプログラムが、人間にはインストールされています。つまり、発達とはなにかというと、もともとインストールされている生得的なプログラムが、身近な人とのやりとりと、まわりの環境の刺激に誘発されて、順々に発動するということ。ですから、発達段階に合っていない知識や技能を詰め込むような教育は、効果がないばかりか、自ら行動的に遊んで学ぶ「思考の機会」を奪うことにもなりかねません。子どもとのおしゃべりや遊びを心掛けながら、次の段階を「待つ」ことが大切なのです。まだしゃべらない子どもの発達は「動作」で確認するでは、幼児の発達の順序についてかいつまんでお伝えします。0〜2歳のあいだは、論理の基礎となる大事な事柄を体全体で学ぶ時期です。それは、「ものは隠されてもそこにあり続ける」ことの理解。心理学では「対象の永続性」といいます。赤ちゃんは「いないいないばあ」が大好きですよね。0歳はじめの赤ちゃんにとって、「ものは隠されていてもそこにあり続ける」ということや「もののなかにものが入る」ということは大発見なのです。それから、2歳までのあいだはものの並び方の順序の規則性、「系列」を学ぶ時期でもあります。わたしが1980年代に心理学スタッフを務めた『ひらけ! ポンキッキ』(フジテレビ)でも系列を課題にした映像をたくさん放送しました。たとえば、「シマウマ、ペンギン、シマウマ、ペンギン、シマウマ、次はなにかな?」という遊びです。「シマウマ」と「ペンギン」の絵が順に登場するのですから、系列を理解している子どもは「次はペンギン!」としっかり答えます。こうした順番の規則性を読み取る「系列」についての理解は、「朝・昼・夜」「春・夏・秋・冬」といった、時間の繰り返しの理解や、自然数の系列(1、2、3……)の構造の理解にもかかわります。また、言葉の順番から意味を予測するという文法の理解も助けるのです。世界を理解するためには、ものの並び方の規則性を発見し、順序を予測することが大事です。でも、2歳だとまだしゃべらない子どももいますから、おうちのかたは心配なさるでしょうね。そこで、子どもの発達を言葉ではなく「動作」で確認してみてください。1歳半頃になると、まだしゃべれなくても系列などをすでに理解した子どもは「機械の操作」ができるようになります。わたしの息子が1歳6カ月のときは、『くまのプーさん』のレーザーディスクを観たいがために、テレビとレーザーディスクプレーヤーの電源を入れて、セレクターも含めたスイッチをきちんと順番に押すということをしていました。つまり、そこには系列はもちろん、因果関係についての論理的理解があるということです。また、たとえしゃべらなくても、言葉を理解しているということもわかります。子どもに向かって、指さしをしながら「○○ちゃん、あのウサギのぬいぐるみを持ってきて」というとぬいぐるみを正しく持ってきてくれる。「ウサギはどれ?」と尋ねれば、ウサギのぬいぐるみを指さす。こういうことができていれば、言語理解や指さしによる表現はできていますから、言葉を話しはじめるのも時間の問題でしょう……と安心できるのです。短期記憶が増える5歳半で一気に大人びる3歳になると、思い浮かべる力、「表象能力」がものすごく発達します。2歳児の場合は、語彙は一気に増えますが、まだ表象能力は十分に育っていません。なにかの病気で子どもが入院しないといけないというとき、2歳児に「入院だから今日は病院で寝るのよ」というと、「入院だね、わかった!」なんて答えますが、いざ病院から親が帰ろうとすると泣いて怒ってしまう。なぜなら、自分が病院でひとりで寝るということを頭に思い浮かべられないからです。でも、3歳になればそういう未来のことも、話を聞くだけでイメージできるようになります。また、表象能力が発達するということは、目の前に電車がなくても、ロープを電車に見立てて電車ごっこをして遊んだり、姿やかたちのちがうもの同士の共通性を見つけて「生きもの」「乗りもの」などの仲間に分けたりするなど、抽象的な話も次第にできるようになります。つまり、抽象物への理解が進み、文字や数について学ぶ体勢が整う時期といえます。続いて、4歳では爆発的に語彙が増えます。電車や図鑑が大好きな子どもだと、大人が知らないようなマニアックな知識も持っているということもありますよね。それらの知識にまつわる多種多様な言葉はこの時期に覚えるものです。でも、一気に増えた言葉や知識をきちんと整理できていないので、大人顔負けの膨大な知識を持ちながら、子どもらしい勘違いをしている例もしばしば見受けられ、大人が思わず笑ってしまうような面白い時期ともいえます。それから、次の大きな発達が訪れるのが5歳半頃。この時期の子どもは、短期記憶が大人の半分くらいにまで達します。コンピューターもメモリが増えるとできる作業が格段に増えますよね?それと同じように、頭のなかでふたつのことを思い浮かべて比較する、いまのことを考えながら未来の話をするということもできるようになるのです。それによって、物語のような文章をつくらせても、物語のはじまりから終わりまでの流れを認識する余裕があり、かなりのレベルのものをつくることができて、一気に大人びたように見えてきます。ここでは一般的な年齢での発達の過程をお話しましたが、先にお伝えしたように「○歳だからなにができなくてはいけない」といった思い込みや心配は無用です。年齢を輪切りにして着目するのではなく、発達の順序の進み方をご覧になって、順調ならば安心して見守ってください。逆に、親が指さしをしても一緒に見てくれないし、自分で指さしなどの動作のやりとりをしないのに、文字には関心がある……というように「発達の順番がおかしいかな?」などと感じるようなら、地域の小児専門病院、いわゆるこども病院で診てもらうことをおすすめします。■ 静岡大学情報学部客員教授・沢井佳子先生 インタビュー一覧第1回:“○歳だからこれができないとダメ!”その思い込みから親を解放する「発達心理学」入門第2回:幼い子どもの言葉が格段に豊かになる、親から子への「実況中継」という方法(※近日公開)第3回:「10まで言えるのに、5個が数えられない」?未就学児への“数”と“時間”の教え方(※近日公開)第4回:「非認知能力」という名称の流行が生んでしまった“誤解”と“困った副作用”(※近日公開)【プロフィール】沢井佳子(さわい・よしこSAWAI, Yoshiko)1959年生まれ、東京都出身。チャイルド・ラボ所長、静岡大学情報学部客員教授。認知発達支援と視聴覚教育メディア設計を専門とする。学習院大学文学部心理学科卒業。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了。同大学院人間文化研究科博士課程単位取得退学。専攻は発達心理学。幼児教育番組『ひらけ! ポンキッキ』(フジテレビ)の心理学スタッフ、文教大学人間科学部講師などを経て現職。他に、日本こども成育協会理事、人工知能学会「コモンセンス知識と情動研究会」幹事、日本子ども学会常任理事などを務める。幼児教育シリーズ『こどもちゃれんじ』(ベネッセコーポレーション)の「考える力」プログラム監修、幼児教育番組『しまじろうのわお!』(テレビ東京系列/2016年国際エミー賞子ども番組部門ノミネート、2019年アジアテレビ賞受賞)の監修など、多様なメディアを用いた幼児向け教材やテレビ番組の制作におけるコンテンツ開発に携わっている。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年07月09日最近は地球の温暖化が様々な形で自然環境に影響し、体が暑さに慣れる前にいきなり暑くなることがよくあります。また、日本の夏は高温多湿でじめっとした暑さが続くので、からだの調子を崩しやすいもの。いわゆる「夏バテ」の経験があるお子さんも多いかもしれませんね。さらに、体調が良くないと「熱中症」のリスクも高くなります。今月は、夏を元気に乗り越えるために子どもたちの生活を見直してみましょう。夏バテとは何か?「夏バテ」という言葉はよく使いますが、夏バテとはどのような状態をいうのでしょうか。一般的には、「食欲がなくなる」「体がだるくなる」などがよく知られていますが、暑くて夜よく眠れなくなると自律神経の働きが崩れ、「疲れやすい」「イライラする」「やる気がなくなる」など心身両面に影響が及ぶのです。お子さんに「食が細くなる」「すぐに疲れたと言う」「お部屋でダラダラしている」などの様子が見られたら、それは夏バテの兆候の可能性があります。これが続くと、夜眠れなくなったり、朝起きられなくなったりするほか、体重が増えなくなるばかりか減ってしまう子どももいます。「たかが夏バテ」と侮っていてはいけないのです。また、夏バテになると熱中症にもなりやすくなるので注意が必要です。夏バテ、熱中症の子どもが増えた背景実は最近、子どもたちに夏バテや熱中症が起こりやすくなっています。その背景について詳しく説明しましょう。人間は恒温動物ですから、外気温が暑くなっても寒くなっても体温を一定に保つ能力をもっているはずです。しかし、1978年にNHKが、故正木健夫先生(日本体育大学教授)の調査をもとにした「警告!子どものからだは蝕まれている」という特集を報道し、子どもたちの体がおかしくなっていることに警鐘を鳴らしました。その後1979年に立ち上げられた「子どものからだと心連絡会議」は、子どもの体温に関する調査を随時行っており、朝の体温が低い低体温の子どもや、暑くなっても汗がかけなくて体に熱がこもってしまう高体温の子どもたちが出てきたことを報告しています(※1)。人間の体温の日内変動は0.5度ぐらいといわれているのですが、2度以上も体温が上がってしまう子どもたちが出てきたのです。こうした高体温の子どもは、熱中症にかかる危険率が高くなります。私の養護教諭としての経験のなかでも、9月の新学期に体調の悪さを訴える子どもたちが増え、午前と午後の体温を測定してみたところ、午前は36度台だったのに午後は38度以上に上がってしまったという子どもが何人もいてびっくりしたことがあります。子どもたちの体温調節能力(自律神経の働き)が弱くなっていることがよくわかる例だと言えるでしょう。一般的に南国の人は暑さに強く、北国の人は寒さに強いといわれていますが、この違いはどこから出てくるのでしょうか。生理学の見地から見ると、以下のように言われています。●寒さに強い体をつくる機能:生後3週間までに寒さを経験させ、自ら熱をつくる働きを高めることが必要。●暑さに強い体をつくる機能:3歳ぐらいまでに暑さを経験させ、暑くなったら汗をかいて体温を下げるための能動汗腺を発達させることが必要。今は、「暑くなればクーラーで」「寒くなれば暖房で」と常に快適な室温が保たれていますね。そのため、子どもたちが幼少時期から暑さや寒さを乗り越える経験をする機会がないまま成長してきていることで、暑さにも寒さにも耐性が弱くなったと言われているのです。このように、子どもの体が変わってきてしまったことと、近年の気候変動とが相まって、子どもたちに夏バテや熱中症が起こりやすくなっていると考えられます。夏バテ、熱中症になりやすい子の特徴子どもはもともと自律神経の働きが未熟なため、大人に比べると夏バテや熱中症になる危険性が高いと言えます。なかでも、私の経験からすると、生活リズムが崩れていて特に夜更かしをしているような子どもの方が夏バテをしやすい傾向にあります。先ほども述べたように、夏バテになると熱中症にもかかりやすくなりますので、普段から生活リズムを整えておくことが大切です。睡眠不足や栄養不足にならないようにご家庭で心がけましょう。今の親御さんたちが小学生だった頃と比べ、今では学校の教室にもクーラーの導入が進んでいます。ですが、文部科学省の平成29年度のクーラー設置率調査を見ると、高いところでは東京都が8割、沖縄が7割で、低いところだと暑さの厳しい九州でもたった3割というところも。クーラーのない教室で過ごさなければならない子どもたちはまだ大勢いるのです。また、体育館はさらに設置率が下がります。子どもたちの体が暑さに慣れていないと、学校で夏バテや熱中症になることは容易に考えられ、実際に熱中症の子どもが増えているというデータがあります。帽子をかぶる、汗拭きタオルで汗をこまめに拭く、水分をしっかりとるなど、学校でもできる直接の暑さ対策は進んで行ないましょう。今では、子どもに自宅から水筒を持参させる学校も多くあります。とはいえ、冷たい飲み物をとりすぎると、食欲がなくなったり体がだるくなったりすることもあるので、水筒の中身は冷たすぎないもののほうがいいかもしれません。子どもは「暑い!」と感じやすい夏に多くの親御さんがお困りになる問題に、いくつかアドバイスをしたいと思います。【親御さんからの質問 1】エアコンのかけすぎは体に良くないと思い、室温を高めに設定するのですが、子どもは「暑いからもっと下げて!」と言います。親にとってはじゅうぶん涼しくても、子どもにとっては暑く感じられるようです。体に負担をかけず、かつ大人も子どもも快適に過ごせる室温調整の仕方を教えてください。子どもは大人に比べると体の機能が未発達です。汗腺から出る汗の量が大人より少ないため、皮膚の血管を拡張させて放熱し体温を下げようとしますが、子どもの体温調節機能はまだ完全ではないので暑さを感じやすいのです。ですので、子どもの体温が下がるまではエアコンを少し強めにし、涼しくなり体温が下がったら設定温度を変えるなど、こまめな調節をするといいでしょう。また、扇風機を合わせて使うこともいいかと思います。一般的には、昼間の活動中には温度設定を低くし、就寝時にはそれより高く設定するなどの対応がいいと思います。ですが、室温には風通しの良し悪しや部屋の広さ、人数なども影響しますので、数値よりもそこで生活する人の感覚で調整することが大切です。ただし、子どもは大人より外気温に影響されやすいので、その点を考慮した温度設定をするように心がけましょう。1日に一度はたっぷり汗をかかせて【親御さんからの質問 2】うちの子どもは「暑いから外に出たくない」と言います。他の子に比べて汗っかきなので、汗をかくのが嫌なようです。外に出てもお店やデパートに入りたがり、外遊びもあまりしません。親としては楽ですが、このままではひ弱な子どもになりそうで心配です。汗をかくことを避けて過ごしていてもいいのでしょうか?夏の外遊びは熱中症が気になりますよね。でも、体の成長のためには夏でも運動することが必要です。熱中症予防の観点から、直射日光が強い炎天下での外遊びはできるだけ避け、朝夕の比較的涼しい時間に外で活動できる工夫をするといいでしょう。1日一度はたっぷり汗をかく程度の外遊びを、ぜひさせたいものです。それが暑さにも強い体をつくるのに役立ちますよ。それ以外の夏の外遊びとしては、プールや水あそびなどを活用するといいと思います。アイスの代わりに○○をおやつに【親御さんからの質問 3】子どもは暑いと、問答無用でアイスを欲しがります。でも、体が冷えすぎる気が……。子どもが「暑い」と言うのなら1日に何回かアイスを与えても問題ないでしょうか。また、食事ではそうめんぐらいしか食べたがらず、栄養面が心配です。夏バテ予防にもなって食べやすい食事があれば、ぜひ知りたいです。私が小学校に勤めていた頃、冷たい水を飲みすぎた子どもたちが腹痛を訴えて保健室に来ることがよくありました。おなか全体が冷たく、中には手足も冷たくなっている子どもがいて、湯たんぽやカイロでおなかを温めてあげると治りましたが、冷たいものの取りすぎはやはり良くないのだということが分かりますね。アイスの食べすぎも同じです。人間の体の内部温度は37度ぐらいですが、体が冷えすぎると血行が悪くなり、胃腸の働きだけでなく、自律神経の働きも悪くなり、体全体の調子が悪くなってしまいます。アイスは手軽なのでついつい食べすぎてしまいますが、子どもと一緒にフルーツやゼラチン、かんてんなどを使ったおやつづくりをするなどの工夫をしてみたらいかがでしょうか。お砂糖の取りすぎもそれによって予防することができますよ。それから、暑いからといって冷たい飲みものばかりになり、食事をとらないのは要注意。特に子どもは1日3食食べることが大切です。魚やお肉もしゃぶしゃぶなどにして、さっぱり食べられるよう工夫してあげましょう。また、汗をかくと水分だけでなく塩分やミネラルも失われますので、食事には果物や野菜を添えることも忘れないでください。暑いときこそ生活リズムを重視しよう夏を元気に乗り越えるポイントは、普段からの生活リズムにあります。生活リズムが崩れている子どもは夏バテや熱中症にもかかりやすいので、暑い時期こそ生活リズムをしっかり整えられるよう、親御さんが気を配ってあげることが大切です。寝る前の冷たいものの取りすぎは体を冷やし、寝つきを悪くしますので要注意です。また、暑いからと運動不足にならないよう、プールを活用したり比較的涼しい時間帯に運動したりして、しっかり体を動かしぐっすり眠る生活を送れば、暑い夏を元気に過ごせることでしょう。(参考)(※1)野井慎吾,中島綾子,鹿野晶子著,「発育発達研究第51号 」,2011.阿部茂明,野田耕,正木健雄(1996),「子どものからだの調査’95」の結果報告,日本体育大学紀要,31,pp.121-138.阿部茂明,野井真吾,野田耕,成田幸子,正木健雄(2006),「子どものからだの調査2005」の結果報告—”からだのおかしさ”の教育者の“実感”とその実体の究明—,日本体育大学紀要,36,pp.55-76.正木健雄監修(1995),『心とからだいきいき学習1基本定期生活習慣をみなおすせいかつのリズム』,ぱすてる書房.
2019年07月08日人は、どうしても他人と比べてしまう生き物です。「〇〇ちゃんよりかけっこが速い」「〇〇君より計算が得意」などと、話す子どもも多いのではないでしょうか。ただ、もしかしたら、親のほうが先に我が子と誰かを比べているのかもしれませんね。「他者との比較」を前提に生きていては、本当の幸せや生きる意味を見出すことはできません。では、どうすべきなのか——。自分を好きになり、「自分の幸せ」を見つけるための方法を、脳科学者の中野信子さんにうかがいました。構成/岩川悟(slipstream)写真/塚原孝顕他人がどう思うかではなく、自分が「心地良い」と感じることをして生きる幸せに生きるためには、他人の価値観や「ものさし」ではなく、まず自分の価値観による幸せがどういうものかを、自分自身で把握しておくことが大切です。簡単にいえば、自分が「どんなときに気分が良いのか」、あるいは、「どんなことが心地良いのか」をはっきりと認識し、その状態をつくり出していくことに力をそそぐわけです。脳には、快感を生み出すことにかかわる部分がいくつかあり、総称して「報酬系」と呼ばれています。自分が「心地良い」「気持ちいい」と感じることをするのは、この報酬系を刺激していることになり、理想の自分と現実の自分が一致する「自己一致」の状態になっていきます。これは、いわば「あるがままの自分」を受け入れている状態であり、自分で自分のことが好きな状態ともいえます。そして、こうした状態はすべて、他人の「ものさし」ではなく、自分の「ものさし」で生きることからはじまるのです。「もっと成功したい」「もっと美しくなりたい」「もっとお金がほしい」そんな他人との比較に心がとらわれていると、自分の幸せを見出すことは永遠にできません。それよりも、自分だけの幸せを打ち立てることに全力を尽くすのです。「自己一致」の状態になると、つねに「心地良い」と感じているので、生きることがどんどん楽になります。そんな人はまわりの人も穏やかな気持ちにさせるので、人にも好かれやすくなっていきます。そうして、さらに「心地良い」と感じられる環境が、自然と自分のまわりにつくられていくのです。学歴やIQが生き延びていくのに必要かどうかは、誰にもわからない他人の「ものさし」という意味では、学歴やIQは、一般的にとても大切だと考えられているもののひとつですよね。たしかに、IQが高ければ成績が良くなる傾向にあり、学歴が高ければ、将来的に高い報酬の仕事に就ける可能性は高まるでしょう。ただ、学歴やIQが、生き延びていくために本当に必要なものかどうかは、じつは誰にもわかりません。なぜなら、「その人がどんな人生を選ぶのか」によって、必要な条件なんていくらでも変わるからです。ひとつはっきりいえることは、生物の目的はもっとシンプルだということ。あなたがいま存在するのは、前の世代の「生き延びる力」が高かったためで、その遺伝子を持つあなたという子孫を残すことができたからです。生物学的な観点では、個体としてというよりは、集団として生き延びることが重要であり、一個人が「優秀であること」にはそもそも重きを置いていないのです。でも、わたしたちは社会的な存在でもあるので、つい特定の社会や条件下のみでうまく生きていくための、狭い範囲での勝負に拘泥してしまいます。ただ、そこでの勝負と、「生き延びていけるかどうか」は直結していません。たとえ学歴やIQが低くても、それらが高い人より圧倒的に成功している人はたくさんいます。そこで大切になるのは、学歴やIQを高めることにこだわるのではなく、まず自分が「どんな人生を送るべきか」を決めること。そして、それを達成するための力をつけることのほうが、生き延びていくにはよほど大切なことなのです。***中野信子さんが教えてくれたことは、あるがままの自分を受け入れ、どんな人生を送るべきなのかは「自分自身で決める」というものでした。いたってシンプルなのに、心に響くものです。我が子に、「自分だけの幸せを打ち立てることに全力を尽くす」という力強い信念を持った人間に育ってもらうため、親ができることを模索していきたいものですね。※今コラムは、中野信子著『脳科学で自分を変える!自己肯定感が高まる脳の使い方』(セブン&アイ出版)をアレンジしたものです。『脳科学で自分を変える!自己肯定感が高まる脳の使い方』中野信子 著/セブン&アイ出版(2019)【プロフィール】中野信子(なかの・のぶこ)1975年、東京都出身。東京大学工学部卒業後、同大学院医学系研究科修了、脳神経医学博士号取得。脳科学者・医学博士・認知科学者として横浜市立大学、東日本国際大学などで教鞭を執る。脳科学や心理学の知見を生かし、マスメディアにおいても社会現象や事件に対する解説やコメント活動を行っている。レギュラー番組として、『大下容子 ワイド!スクランブル』(テレビ朝日系/毎週金曜コメンテーター)、『英雄たちの選択』(NHK BSプレミアム)、『ホンマでっか! ?TV 』(フジテレビ系)。著書には、『サイコパス』、『不倫』(ともに文藝春秋)、『ヒトは「いじめ」をやめられない』(小学館)、『シャーデンフロイデ他人を引きずり下ろす快感』(幻冬舎)、『メタル脳 天才は残酷な音楽を好む』(KADOKAWA)、『あの人の心を見抜く脳科学の言葉』(セブン&アイ出版)、『キレる!脳科学から見た「メカニズム」「対処法」「活用術」』(小学館)などがある。
2019年07月08日脳医学者の瀧靖之教授は、「脳の発達過程を踏まえると、親の頭の良し悪しは子どもにはあまり影響を与えない」と話しています。また、行動遺伝学の第一人者である安藤寿康・慶應義塾大学教授によると、IQの遺伝の影響は約50%なのだそう。ということは……!?■参照コラム記事はこちら↓親の頭の良し悪しは、子どもに遺伝する?頭の良さと遺伝の気になるカンケイ
2019年07月07日日々、子育てをするなかで、「うちの子は、ちょっとネガティブな感情に陥りやすいかも」と思う瞬間があるかもしれません。でも、だからといって急にポジティブ人間に大変身できるわけではないですし、大人だってそう簡単に性格は変えられないのが実情です。子どもがネガティブな感情になったり、マイナスな出来事に遭遇したりしたとき、親はどうやって乗り越える方法を伝えるべきなのでしょう。親自身も備えておきたい「思考」を、脳科学者の中野信子さんがレクチャーしてくれます。構成/岩川悟(slipstream)写真/塚原孝顕ネガティブな感情をうまく活用すると、良い結果が出るポジティブシンキングの大切さは広く語られるところですが、だからといって、無理やりポジティブになろうとしても、生まれ持った性格などもあるので、実際はなかなかうまくはいかないもの。じつは、「努力」という面に関していうと、ネガティブな感情を利用したほうが良い結果が出ることもたくさんあります。なぜなら、ネガティブな感情のほうが、モチベーションを保つうえで圧倒的に強いパワーを持っているからです。「あいつを絶対に見返してやる!」「いまの境遇に耐えられないから必ず追い抜く!」そんなネガティブな感情は、油断すると「妬み」や「恨み」に変わりやすいため、一般的には良い感情とはされていません。でも、そこにさえ気をつければ、むしろネガティブな感情が持つパワーをうまく利用してしまえばいいのです。また、未来を悲観しがちな人もいます。でも、逆にいえば、それは未来に対してしっかり準備ができる可能性が高いということ。考え方を変えるだけで、自分だけの強い武器になる場合があるのです。自分の性格や感情の傾向を無視していると、かえってストレスを溜めてしまい、心身に良いことはありません。ネガティブな感情を無下に否定せず、しっかりと受け止めて活用していけるからこそ、健全な自己肯定感が育まれるのだと思います。「マイナスの出来事」にこだわらず、事実として受け入れることから、プラスの出来事が生まれる多くの人は自分にとって「マイナスの出来事」が起きたとき、ネガティブな感情に陥ります。そして「マイナスの出来事」は、およそどんな人にでも起こるもの。むしろ、なにかを達成したり成功したりした人のほうが、そうではない人よりも「マイナスの出来事」をたくさん体験している場合もあるようです。でも、そんな人たちは、「マイナスの出来事」のとらえ方が異なります。そのときは深く落ち込むこともあると思いますが、すぐに「どうすればよかったのだろう」「いまなにができるだろう」と、気持ちを切り替えることがとても上手なのです。これは言葉でいうのは簡単ですが、実行するのは難しい。でも、チャレンジしてみる価値はあります。そのためのコツは、「マイナスの出来事」にこだわらないようにすること。うまくいかない人は、失敗などにこだわり過ぎて、自分で自分の状況を悪くしている場合がほとんどなのです。考えてみると、人生の運命が決せられるほどの、よほど大きな「マイナスの出来事」でない限り、ほとんどの「マイナスの出来事」は、俯瞰すればそのときどきの揺らぎ程度のものととらえることもできます。また、よくいわれるように、「失敗は成功の母」であることは、これまでの人間の歴史が証明しています。自分に起きた「マイナスの出来事」を、まず事実として受け入れることから、プラスの出来事が生まれるのです。***小さな子どもがこうした思考を身につけるのは、そう簡単ではないでしょう。でも、徐々にでも習慣づけていく努力をすることや、親がこうしたスタンスで生きる姿を子どもに見せることはできるはずです。「ポジティブに生きよう!」と口に出すのは簡単ですが、いちど、ネガティブな感情やマイナスな出来事に対して、親子で一緒に向き合ってみてはいかがでしょうか。※今コラムは、中野信子著『脳科学で自分を変える!自己肯定感が高まる脳の使い方』(セブン&アイ出版)をアレンジしたものです。『脳科学で自分を変える!自己肯定感が高まる脳の使い方』中野信子 著/セブン&アイ出版(2019)【プロフィール】中野信子(なかの・のぶこ)1975年、東京都出身。東京大学工学部卒業後、同大学院医学系研究科修了、脳神経医学博士号取得。脳科学者・医学博士・認知科学者として横浜市立大学、東日本国際大学などで教鞭を執る。脳科学や心理学の知見を生かし、マスメディアにおいても社会現象や事件に対する解説やコメント活動を行っている。レギュラー番組として、『大下容子 ワイド!スクランブル』(テレビ朝日系/毎週金曜コメンテーター)、『英雄たちの選択』(NHK BSプレミアム)、『ホンマでっか! ?TV 』(フジテレビ系)。著書には、『サイコパス』、『不倫』(ともに文藝春秋)、『ヒトは「いじめ」をやめられない』(小学館)、『シャーデンフロイデ他人を引きずり下ろす快感』(幻冬舎)、『メタル脳 天才は残酷な音楽を好む』(KADOKAWA)、『あの人の心を見抜く脳科学の言葉』(セブン&アイ出版)、『キレる!脳科学から見た「メカニズム」「対処法」「活用術」』(小学館)などがある。
2019年07月06日キャンプや水遊び、ハイキング、昆虫採集など、自然の中で体を思いきり動かす体験は、普段の生活では味わえない、子どもにとって貴重な時間です。お子さんが小さいうちは、なるべくいろいろな体験をさせたいと思うご両親も多いでしょう。では、実際に自然体験の中で、子どもたちはどのような力を育むのでしょうか。今回は、この夏に親子で楽しみたい、3〜10歳までのお子さん向けの自然体験をご紹介します。探究心やコミュニケーション能力など、生きる力を育む!かつての子どもたちは、放課後や休日には野山を駆け回り、昆虫採集をしたり、秘密基地を作って遊んだりと、思いきり体を動かして遊んだものです。しかし、現代の子どもたちは、のびのびと遊べる場所が限られてしまったり、習い事や塾が忙しかったりで、体を動かして遊ぶ機会が減ってしまっています。また、近年はテレビやゲーム、スマートフォンなど、屋内で遊べるものが充実していて、家の中にいても退屈しないことも、外遊び離れの一因かもしれません。信州大学の平野教授の調査によると『夜空に輝く星をゆっくり見た』『太陽が昇るところや沈むところを見た』『海や川で泳いだ』『チョウやトンボ、バッタなどの昆虫を捕まえた』といった自然体験のある子どもが、年々、少なくなってきています。平成17年の調査では、日の出や日の入りを見たことのない子どもが43%、昆虫を捕まえたことがない子どもが35%もいるという結果が出ました。(引用元:Coleman|自然が子どもを成長させる〜自然体験が子どもに与える影響について〜)※太字は編集部にて施したこのように、自然の中で体を動かす体験が少ないと、さまざまな力を育める機会も少なくなってしまいます。前述の信州大学の平野吉直先生が小学4〜6年生を対象に調査によると、自然体験活動をたくさんした経験した子どもには、課題解決能力や豊かな人間性など「生きる力」が備わっているのだそう。また、自然体験活動をたくさん行なったグループほど、「わからないことは、そのままにしないで調べることが多い」、「誰とでも協力してグループ活動ができる」「相手の立場になって考えることができる」などの項目に「当てはまる」と答えており、自然体験活動を行なわなかったグループほど、それらが「当てはまらない」と答えた子どもが多いという結果が出ています。では、その「生きる力」とは、実際にはどのような力なのでしょうか。○自然に親しみ、理解する○環境に対する意識を持ち、生命の大切さを知る○想像力○発想力○表現力○豊かな心を持つ○疑問を解決しようとする気持ちが生まれる○探究心が芽生える○自主性が芽生える○協調性、コミュニケーション力○健康で丈夫な体○情緒の安定たとえば、自然の中で見つけたおもしろい形の葉っぱでどんな遊びができるのか考えることで、発想力や想像力を養われます。また、生き物に触れることで生命の大切さを知ったり、土や水に直接触れて遊ぶことで健康で丈夫な体や情緒の安定が身についたりします。自然体験はやはり、子どもにとって良い影響があるのですね。年代別、おすすめの自然体験自然の中で遊ぶ機会が減った現代の子どもたちにとって、休日や夏休み、連休を使っての自然体験は貴重な経験です。そこで、年代別におすすめしたい、自然体験をご紹介します。3、4、5、6歳向け・水遊び……自然に親しみ、理解する環境に対する意識を持ち、生命の大切さを知る・落ち葉遊び……想像力発想力表現力・貝殻拾い……探究心が芽生える想像力・昆虫採集……生命の大切さを知る探究心が芽生える・動物との触れ合い……生命の大切さを知る豊かな心を持つ・家族でキャンプ……疑問を解決しようとする気持ちが生まれる協調性、コミュニケーション力自主性が芽生える発想力・星空を見上げる……自然に親しみ、理解する豊かな心を持つ 7、8、9、10歳向け・川遊び、海遊び……自然に親しみ、理解する環境に対する意識を持ち、生命の大切さを知る・魚釣り……探究心が芽生える環境に対する意識を持ち、生命の大切さを知る・シーカヤック、シュノーケリング……自然に親しみ、理解する環境に対する意識を持ち、生命の大切さを知る協調性、コミュニケーション力・木登り……自然に親しみ、理解する探究心が芽生える健康で丈夫な体・アスレチック……自然に親しみ、理解する探究心が芽生える健康で丈夫な体・山登り……自然に親しみ、理解する協調性、コミュニケーション力探究心が芽生える健康で丈夫な体・星空観察……自然に親しみ、理解する探究心が芽生える想像力・酪農体験……環境に対する意識を持ち、生命の大切さを知る・家族でキャンプ……疑問を解決しようとする気持ちが生まれる協調性、コミュニケーション力自主性が芽生える発想力・火おこし体験……自主性が芽生える疑問を解決しようとする気持ちが生まれる親子におすすめの自然体験サイト自然体験を家族で計画するのもいいですが、子ども向けプログラムを利用するのもおすすめです。特に、同世代のお友だちや家族以外の大人と一緒に何かを体験することは、コミュニケーションを育むために大切なこと。ネットや電話で簡単に予約ができるので、週末や夏休みを利用して申し込みしてみてはいかがでしょうか。■ネイチャーキッズ酪農体験、カヌーキャンプ、サイクリングキャンプ、山村留学キャンプ、自然探索キャンプ、フィッシャーマンキャンプ、スキーキャンプ、海遊びキャンプ対象年齢:小学生〜中学生(プログラムにより異なります)■国際自然大学校サマーキャンプ、昆虫博士キャンプ、リバーアドベンチャー、海遊び、キャンプマウンテンバイクツーリング対象年齢:4歳〜高校生(プログラムにより異なります)■そらまめキッズ大冒険キャンプ、海キャンプ、秘密基地キャンプ、シュノーケリング、体験ダイビング、ドルフィンスイム&イルカトレーナー体験、キャニオニング、川遊び対象年齢:年中〜小学生(プログラムにより異なります)■こども自然体験塾リバートレッキング、シーカヤック体験、クライミング、忍者修行、生き物観察、ボルダリング体験、イルカウォッチング、化石発掘アドベンチャー対象年齢:小学1年生〜6年生(プログラムにより異なります)お子さんが興味を示したプログラムを体験させてみるのもいいですね。ひとりで体験するのが心配な場合は、仲良しのお友だちや兄弟、親子で利用できるプログラムを選んでみるのもいいでしょう。自然体験を通して、新しい友だちとの出会いもまた、すばらしい経験になるはずです。***自然体験の中で、豊かな自然や生き物と触れ合ったり、家族や友だちと関わったりするなかで、子どもはさまざまな力を育むことができます。ただし、自然体験をいざさせようと思っても、親御さんが不慣れな場合も多いもの。子どもや親子向けの自然体験プログラムを上手に活用して、今しか経験できない自然体験をさせてみましょう。文/内田あり(参考)文部科学省|中央教育審議会ヒヤリング資料「自然体験活動」の成果と意義名古屋経済大学 機関リポジトリ|自然環境のなかで育まれる子どもの成長Coleman|自然が子どもを成長させる〜自然体験が子どもに与える影響について〜ネイチャーキッズ国際自然大学校そらまめキッズこども自然体験塾
2019年07月06日いよいよ夏本番!夏休みにキャンプを計画しているご家庭も多いのではないでしょうか?最近では、気軽にキャンプを体験できる施設も増えています。「今までやったことがないけれども、今年はチャレンジしてみようかな」と準備をはじめている方もいるようです。キャンプでは、自然と触れ合ったり、不測の事態に家族みんなで立ち向かったりと、日常では味わえない特別な体験が目白押しです。さらに、キャンプや自然体験をしたあとの子どもは、自己肯定感が高まるという研究結果も出ています。いいことづくめのキャンプです。さっそく、この夏家族で体験してみましょう!キャンプ体験は子どもの内面にどんな影響を与えるのか近ごろよく耳にするのが、「日本人の自己肯定感の低さ」です。もちろんそれは、本音と建前を使い分ける国民性ゆえに、アンケートでは控えめに答えてしまうことも理由として考えられます。しかし、東京都市大学人間学部教授の井戸ゆかり先生は、実際に最近の学生たちと接していると自己肯定感の低下が伝わってくるといいます。井戸先生は、その原因のひとつに「親が先回りしてしまうこと」を挙げています。子どもが何か問題にぶつかりそうになったとき、その問題の芽を事前につんでしまう親が増えてきているそう。本来ならば、成長過程において、自分で問題を解決することで達成感を感じ、周囲から褒められて認められることで自己肯定感が高まります。ですから、そのきっかけを奪うことは、自己肯定感を育むチャンスを逃していることにもなるのです。そこで、子どもの自己肯定感を高めるのにぴったりなのがキャンプです。過酷な自然環境では、思い通りにいかないことばかり。困難や不便さを排除して安全を保ち続けることは、ほぼ不可能ですよね。むしろ、とっさのハプニングに対応してこそ、キャンプの醍醐味ともいえるでしょう。キャンプ体験は、子どもに「自分でできる」という自信を与えられるのです。国立青少年教育振興機構の調査によれば、自然体験の経験が多いほど「今の自分が好き」「勉強は得意なほうだ」「自分らしさがある」など、自己肯定感が高いという結果が出たそうです。また同調査では、子どものころに積極的な自然体験をした人のほうが最終学歴が高いということもわかりました。さらに、信州大学の平野吉直教授によると、自然体験活動をたくさん行なった青少年は、課題解決能力や豊かな人間性など「生きる力」があるといいます。自然体験によって好奇心や探究心が刺激され、わからないことはそのままにせずに調べる、誰とでも協力し合える、相手の立場に立って物事を考えられる、というプラスの作用がはたらくのでしょう。刻々と変化する多様な刺激を同時に受けて、主体的な行動としてアウトプットすることで、「生きている」ことの喜びや楽しさを実感するというわけです。やっぱりキャンプは自己肯定感を高める!平成20年、ガールスカウトの事業に参加した少女たちを対象に実施した調査結果があります。それによると、活動前には低かった「自分を褒めてあげたいと思うことがある(自己受容感)」という項目が、活動後にはぐんと伸びたというのです。つまり、ガールスカウトの活動を通して、自分を受け入れる気持ちが高まることがわかりました。それ以外にも、「なりたい自分になれるように努力できる(自己実現力)」や「失敗を恐れずチャレンジできる(行動力)」「自分の考えをしっかり持てる(自己判断力)」「気分が落ち込んでいるとき、なぐさめてくれる友人がいる(友人関係構築力)」「自分を表すものを培うことができる(自己表現力)」など、自己肯定感を構成する8項目すべてにおいて、活動前にくらべて活動後の平均値が上がったのです。キャンプでは、仲間たちと一緒に同じ体験をすることで、多様性を受け入れたり自分の意見を伝えたりすることの大切さを学びます。そして、さまざまなアクシデントを自分たちの力で乗り越えられたとき、「やればできる」という自信につながり、達成感を得られるのです。野外での生活は、日頃の便利な生活とは比べものにならないくらい過酷です。その不便さに不満を感じるのではなく、困難な状況を克服するために努力することが成長につながり、自己肯定感を高めるきっかけにもなります。教育研究家の征矢里沙さんは、子どもに自然体験をさせるコツとして「親はなにも教えないこと」を提案しています。何よりも大切なのは、親が子どもと一緒に自然を見つめ、一緒に感動したり、子どもの感動に共感したりすることだそうです。自己肯定感を高めるには、「他者からの承認」が必要不可欠。その子のよいところをきちんと認め、しっかりと伝えることが、大人の大事な役割だといえるでしょう。“原体験” 満載のキャンプで地頭を鍛える!キャンプや自然体験による子どもへの好影響は、自己肯定感を上げることだけにとどまりません。尾木ママこと教育評論家の尾木直樹氏は、「自然のなかの原体験にこそ地頭を鍛えるカギがある」と述べています。そして、それを体験できるのが家族キャンプです。「地頭がいい」とは、脳科学的にいうと「HQ(人間力指数)」が高いということ。つまり、社会の中で生きていくための能力が高く、社会性や創造性、企画力、決断力などの能力に優れていて、相手の気持ちを汲んだ行動ができたり、諦めずに未来を切り拓く意志を持っていたりすることを意味します。その「HQ」を鍛えるのは、キャンプなどの自然体験です。「原体験」とは、土や木のぬくもりを感じたり、昆虫や動物を間近に見たり触れ合ったりと、五感をフルに使う体験を指します。8歳ごろまでに「原体験」の蓄積があると地頭を向上させるといわれているので、ぜひ就学前からキャンプに連れていってあげたいですね。人間の力ではどうにもできないことを体験すると、自然に対する恐怖や畏敬の念が生まれます。それにより、人間の小ささや限界を知ることができ、ありのままの自分を認めて受け入れられるようになるのです。自己肯定感や地頭力を上げるには、まずはその「体験」が必要だといえるでしょう。***自然の中での失敗や未知の経験は、自己肯定感を高めて地頭を鍛えます。予定通りにいかないことも含めて、キャンプでの体験は子どもにとって忘れられない貴重な思い出になるはずです。そして、親も一緒に困難を乗り越えて達成感を味わうことで、家族の絆もより強くなるでしょう。(参考)Study Hacker こどもまなび☆ラボ|あなたの子どもは大丈夫?絶対に見過ごしてはいけない「自己肯定感」低下のサインColeman|Coleman×体験の風をおこそう国立青少年教育振興機構|子供の頃の体験がはぐくむ力とその成果に関する調査研究社団法人 ガールスカウト日本連盟|少女の自己肯定感を高めるキャンプTOKYO GAS|ウチコト|【教育研究家に聞く】やる気・協調性・最終学歴に影響がある?!「自然体験」の効果とは?Study Hacker こどもまなび☆ラボ|かわいい子にはキャンプをさせよ。自然体験は「生きる力」を育ててくれる文部科学省|中央審議会ヒアリング資料「自然体験活動」の成果と意義(PDF)Coleman|尾木ママが語る 家族キャンプの“すごい力”
2019年07月05日猫の手貸して~育児絵日記~
うちはモフモフ暮らし
めまぐるしいけど愛おしい、空回り母ちゃんの日々