「ウチの子には、どうも自主性が足りないみたいで……」という悩みをお持ちの方は多いかと思います。自主性とは、子どもが一人立ちし立派な大人になっていくため、なくてはならない要素です。できないことはすぐに親に頼ったり、なかなか自分から勉強を始めなかったりするわが子の姿を見ると、親としてはつい心配になってしまいますよね。本記事では、そもそも自主性とは何なのか、子どもの自主性を伸ばすためにはどうすればいいのか、詳しく解説していきます。自主性とは自主性とは、課題に対して自ら積極的に取り組む姿勢を指します。つまり「人から言われる前に、やるべきことをやる」力のことです。例えば「言われる前に宿題をやる」「ゲームがやりたいけれど、自分の意志で我慢する」というのが、自主性がある行動として挙げられます。自主性の獲得は、学習能力の向上や人格形成に欠かせません。教育方法などを専門に研究する井上史子教授(帝京大学高等教育開発センター)らが2004年に行った「自主性」に関する調査では、「自主性の下位尺度」として以下の10項目が挙げられました。ひとくちに「自主性」といっても、さまざまな要素で構成されていることがわかりますね。独立性:自習のときでもまじめに勉強する.主体性:やって良いことと悪いことをできるだけ自分の考えで決める.自律性:自分で発言しようと思ったら誰にいわれなくても進んで発表する.自発性:遊びやスポーツに自から友達を誘う.自己主張:自分が正しいと思えば仲良しの友達とでも口論する.判断力:自分がやろうとすることが人の迷惑になるかよく考えてからする.自己統制:おしゃべりをしてはいけない時にもついしゃべって注意される(※).責任性:皆で決めたことはどんなことがあっても守るよう努力する.役割認知:皆の役に立つことであれば進んでその仕事を引き受ける.独創性:新しいことを自分で考え出すことが不得意なので人のやったことをそのまま真似る(※).(※この行動をとる傾向が弱いほど、自主性が高いということになる)(引用元:J-STAGE|中学校における自主性尺度項目の開発)自主性と似た言葉に「主体性」があります。ほとんど同じ意味で用いられることも多いのですが、実は自主性と主体性の意味は微妙に異なります。例えば自主性が「言われなくても宿題をやる」状態を指すのに対し、主体性は「宿題がなくても自ら勉強する」状態です。つまり主体性は、自主性の次のステップであると言えます。主体性をもった子どもは、親や先生から課題を与えられなくても、自分でどんどん学びを深めていくことができるのです。とはいえ小学生以下の段階なら、ひとまず自主性を身につけられれば十分合格ラインでしょう。自主性がない子どもとは自主性がない子どもとは、どのような子どもを指すのでしょうか?具体的には以下の特徴が挙げられます。「嫌だ」と言わない「嫌だ」と言わない子は、親の目から見れば一見、いい子かもしれません。しかし「嫌だ」は大切な自己表現の一種。「嫌だ」を言えないということは、自分の意志が弱くなっているか、意志を押し込めてしまっているのかもしれません。嫌だと言えない傾向は「親からどう見られるか」を過剰に気にする優等生タイプの子どもによく見られます。親に自分の言葉を否定されたり、価値観を押し付けられたりした経験から、親が不機嫌になることを恐れるようになったのです。優等生タイプの子どもは、親の顔色をうかがっているうち、親が期待する答えを自分の本当の願望だと錯覚してしまっています。無意識に本当の思いを抑圧しているため、何かのきっかけで突然、感情を爆発させやすいという傾向もあります。言動が受け身例えば子どもに夕食に何を食べたいか聞くと「何でもいい」なんて答えが返ってくることはないでしょうか?子どもの「何でもいい」という言葉には、「(親が食べたいものなら)何でもいい」というニュアンスが含意されています。つまり、答えは人が与えてくれるものであり、自分はそれに合わせていればいい、という思考パターンが身についてしまっているのです。「良い子にしなさい!」「できるようになりなさい!」と高圧的な躾をしていると、子どもは自分の意見を発するのが怖くなり、「何でもいい」という受動性を身につけてしまいます。親の期待に応えられるよう、自己主張を抑えているのです。受け身の言動しかできない子どもに対しては、まず自分の気持ちを把握し、はっきりと主張できるよう促す必要があります。親は、子どもがストレスを感じる躾け方をしていないか、子どもの気持ちを無視してしまっていないか、見直してみましょう。感情表現が乏しい何かを嬉しいと感じたり、悔しいときに泣いたりするのは、立派な自己表現です。感情表現が乏しい子どもは、自分の好き嫌いがわからなかったり、周りの目を気にして自分の思いを抑圧したりといった可能性があります。感情は他者とのコミュニケーションを円滑にするだけでなく、やる気や好奇心の源でもあるため、自主性の発達と深く関係しています。例えば、トライ&エラーを繰り返した末に何かを成し遂げたとき、「やったー!」という強い喜びの感情を覚えますよね。自分で判断し、自分の手で何かをすることによって初めて、喜怒哀楽の感性は磨かれていくのです。もし親が、子どもに試行錯誤させることなく「もっとこうしたほうがいいんじゃない?」「そんなことしたらダメだよ」などと最初から手を貸してしまったら、せっかくの学びの機会が失われてしまいます。子どもの感情表現が乏しくなる原因のひとつは、親の過干渉にあるのです。「『嫌だ』と言わない」「言動が受け身」「感情表現が乏しい」という特徴が子どもに見られた場合は「自主性が弱いんじゃないか?」「自主性を妨げるような育て方をしていないか?」と少し疑ってみましょう。では、自主性のない子どもは将来どうなるのでしょうか?「指示待ち人間」になる自主性のない子どもは将来、自分から行動を起こせない「指示待ち人間」になってしまうかもしれません。判断力や実行力がない「指示待ち人間」は、世の中で活躍することが難しそうです。例えば、会社の上司や先輩は、学校のように「あれをやれ、これをやれ」といちいち指示をくれるわけではありません。一人前の大人として働くには、指示を待たずとも何をやるべきか判断できる能力が求められるのです。特に、人工知能(AI)が発達しつつある現代においてはなおさらです。「指示通りに動く」ことが求められる作業は、近い将来、ほとんどが人工知能に取って代わられてしまうでしょう。これからの時代には、自主的にやるべきことを考え、「自ら学ぶ」「自ら考える」姿勢を持つことがいっそう重要になってくるのです。自主性のない人間は、そのような時代を生き残っていけるのでしょうか。失敗を人のせいにする自主性のない子どもは、他人にばかり判断を委ねるので、すべての物事が「他人事」になっていきます。大事なことは人任せにし、言われたことしかやらないという姿勢は、学生時代にはまだ通用するかもしれませんが、社会に出るとそうはいきません。仕事においてもプライベートにおいても、自分から行動を起こし、行動の結果に責任を持つ必要があるのです。自主性がないままだと、責任感がなく、当事者意識の希薄な人になってしまう恐れがあります。失敗を他人のせいにし、チャレンジから逃げてばかりいる人にとって、社会の中で活躍することは困難です。子どもを社会で活躍させたいのなら、幼いうちから自分で選択・判断する経験を積ませて自主性を養うことが必須です。人に合わせてばかりになる社会生活を送るにあたって、自主性は欠かせません。会議で意見を述べたり、率先して仕事を進めたりなどはもちろんですし、自分から積極的にならない限り人間関係を築くこともできません。自己主張をして初めて、社会はその人の存在を認識し受け入れてくれるのです。そのため、自主性のない子どもは将来、社会から置いてけぼりにされたり、孤独感を感じたりすることになってしまいます。相手の期待に沿うコミュニケーションしかとれず、うまく自己表現ができなくなるかもしれません。自主性というものが、子どもの自立にとっていかに大切なステップか理解していただけたでしょうか。自主性を重んじる教育とは子どもの自主性を重んじた教育を施すには、なるべく子どもに対する束縛を少なくし、自分の力で物事に取り組ませましょう。かわいそう、まだ早いから、と何でもやってあげていると、いつまでも子どもの自立は促せません。あくまで、子供の意志や興味を最優先にし、親はそれを陰でサポートするだけ、という形がベストなのです。例えば、時間がかかっても服は自分の力で着てもらう、こぼしたり汚したりしてしまうとしても自分でご飯を食べさせるなど、やれることはできる限り任せるようにしましょう。子供の自主性を重んじた代表的な教育メソッドとしては、「モンテッソーリ教育」があります。モンテッソーリ教育は医師で教育者だったマリア・モンテッソーリが発案した方法論で、「子供には、自分自身を育てる力が備わっている」という教育方針のもと、子供の自発的な学びを尊重しています。モンテッソーリ教育に特徴的なのが、専用の「教具」(ブロックやタイルなど)です。教具で遊ぶことを通じて子どもの好奇心が育まれ、遊んだ後に自分で片づけさせることによって、自立心が高められます。ほかにもモンテッソーリ教育では、指導する際には決して命令口調を使わない、興味が向いたことを満足いくまでやらせてあげるなど、子どもの自主性を育てる保育を徹底しています。子どもの自主性を高める方法では、子どもの自主性を育む実践的な方法を見ていきましょう。口出しをせずに見守る自主性を育てるには、子どものやることになるべく口出ししないようにしましょう。親があれこれと先回りしてしまうと、子どものせっかくのやる気が奪われ、自主性が育ちにくくなってしまいます。わが子のためと思うとつい干渉したくなってしまいますが、ぐっとこらえてみてください。ただし、子どもに対し「無関心」になれ、というわけではありません。子どもから完全に目を離すのではなく、何か危険が迫ったときにすぐ飛び出せるよう、きちんと見ていてあげることが大切です。親の見守りがあってこそ、子どもは安心して自主性を伸ばすことができるのです。自分で考えさせ、選ばせる自主性を育む方法の2つめは、なるべく子どもに、自分で考えたり選んだりする機会を与えることです。例えばおやつの時間には、単にお菓子を渡すのではなく「どっちがいい?」とあえて複数から選ばせる。また、子どもが「わからない」「どうやればいいの?」などと頼ってきたときは、すぐ答えを教えずに「あなただったらどうする?」と思考を促す、といった小さなことを積み重ねましょう。『世界最高の子育て――「全米最優秀女子高生」を育てた教育法』の著者・ボーク重子氏によると、親は子どもに決して意見を押し付けることなく、あくまでも自由に考えさせることが、自主性を伸ばすためには何より大切なことなのだそうです。ニュースについて子どもの考えを聞く子どもが自主性を持って学ぶようになる方法としては、「毎朝、ニュースについて意見を交わす」というものがあります。小学生以下の子供にはまだ早い、と思われるかもしれませんが、考え、興味を持ってもらうことそのものが重要なのです。『家でできる「自信が持てる子」の育て方』の著者で教師の沼田晶弘氏は、自身が担当したクラスで毎朝、政治問題を取り上げています。「この問題はどうしたら解決できると思う?」などと問いかけると、子どもたちは知識がないなりに考え、自分なりの答えを出そうとするそうです。子どもを子どもと侮らず、対等に接することもまた、自主性を身に付けさせる秘けつなのですね。子どもの興味を肯定する自主性を育てる最後の方法は、子どもの興味を肯定してあげることです。興味を持つということは、何か特定のことをやりたい、特定の何かについて知りたいという欲求が芽生えているということ。その興味が親に肯定されると、子どもは自分自身の存在まで肯定されたような気になり、やる気はますます高まります。子どもの興味を肯定するだけでなく、「カマキリを捕まえられてすごいね。じゃあ図鑑で調べてみようよ」など、子どもの興味がさらに広がるような声掛けをしてみましょう。例えば、「図鑑に熱中するうちに漢字が覚えられた」というように、興味を追求することで、ほかの学習分野にも良い影響が及びます。自主性の向上を邪魔しないよう、子どもの興味は自由に伸ばしてあげましょう。***子どもの自主性を育む方法を解説しました。よかれと思ってやったことでも、過干渉は子どもの自主性や個性の発達を妨げてしまいます。子どもをコントロールしようとするのではなく、適切な距離感を保って接してみてくださいね。文/佐藤舜(参考)J-STAGE|中学校における自主性尺度項目の開発こどもまなび☆ラボ|心理学者が指摘する “いい子症候群” たちの未来――自主性のない子どもの特徴5つこどもまなび☆ラボ|「ママがやって」と言われたら黄色信号。子どもの考える力を奪う親のNGワードこどもまなび☆ラボ|“49” の失敗体験が子どもの挑戦力につながる!過干渉にならない会話のコツこどもまなび☆ラボ|子どもをぐんぐん伸ばす「早期教育」の意外なデメリット。危険なのは親同士の“ライバル心”!?こどもまなび☆ラボ|子どもの自主性を尊重し、集中力と柔軟な対応力を育む「モンテッソーリ教育」【愛珠幼稚園園長 天野珠子先生】こどもまなび☆ラボ|「モンテッソーリ」とは?子どもの才能を伸ばす教育メソッドを徹底解説こどもまなび☆ラボ|過干渉していませんか?子どもの「自主性」を伸ばすための4つの声かけこどもまなび☆ラボ|叱らなくても、子どもの「自主性」はどんどん育っていく――全米最優秀女子高生の母・ボーク重子さんインタビューpart1こどもまなび☆ラボ|「典型的ないい子」を育てるよりも大切な、伸ばしてやるべき子どもの「考える力」こどもまなび☆ラボ|子どもの「やる気」と「地頭」が育つ親の言葉とは?
2019年06月28日上の子供がまだ小さかった頃、日本に住む私たちのところへ、イギリスの義父母から一冊の本が届けられました。ジャン・ピエンコウスキーの Haunted House (日本語版:『おばけやしき』)という、飛び出す絵本です。その年にイギリスで出版された絵本の中から特に優れた作品に与えられるケイト:グリーナウェイ賞を1979年に受賞して以来、長い間愛されてきました。「日本語の絵本には興味を示すのだけれど、英語のものにはだんだん興味がなくなってきたみたいで……」と相談した後のことでしたから、心配してくれたのかもしれません。子供が一人でも遊べるポップアップ絵本の魅力義母は長いことイギリスの学校で、様々な理由で読書が苦手な子供たちの支援をしていました。そもそも英語が第一言語でない子供や、なんらかの識字障害を抱えている子供もいたようですが、そうした経験から、いろいろ考えて選んでくれたようです。「本ってね、本当に読めない子は、小学校に上がった時点で、どちらから開くとか、一ページずつめくるとか、そういうこと自体わかっていなかったりするのよ」まさか、と思いましたが、確かに縦書きの日本語の本と横書きの英語の本では、開き方が違います。移民の多いイギリスで、小学校に上がってくる子供たちの中に、一定人数、英語の本そのものを見たことがない子供がいてもおかしくはないのでした。「だからね、一人で開いて遊んでも楽しそうな絵本を選んだわ」子供に本を与える時に、私はついついお話の中身だけに気をとられていましたが、義母の視点には目からウロコが落ちる思いでした。現に上の子が英語の本を嫌がっていた時期も、この本だけは何度も手にとって、ボロボロになるまで眺めていたものです。まずは本の形をしたものに慣れさせることからまずは本の形をしたものに慣れさせること。そういえば、義母はよく子供と一緒に料理の本を眺めては、目次から食べたいお菓子を選ばせていました。「目次や索引をどうやって使うかについて知っているだけで、ずっと敷居が低くなるでしょう?」読み聞かせに適した素敵な本もたくさんありますが、むしろ本を「使って」様々な体験ができるインタラクティブな絵本の方が、子供が本に苦手意識を持ち始めた時には良いようです。さらに「読み聞かせ」においても、単純に親が読んで子供が聞くだけでなく、親子の対話を誘発するような仕掛けがされた絵本が数多くあります。今回は、受動的にただ読むだけでなく、能動的に楽しめるインタラクティブな絵本をご紹介しましょう。どこで何がしたい? 「親子の対話」を引き出す絵本Haunted House に続いて義母から送られた本書、You Choose もその一冊です。見開きに様々な絵があります。「どんな家?」と書かれたページには、様々な家が。「何が食べたい?」のページには、いろいろな料理が。文章は驚くほど短く、カラフルなイラストがぎっしりつまっています。単に読み聞かせるのでなく、むしろ、子供が指をさしながら「これがいいよ、だって……だから」と、話をすることが主眼の絵本です。日本語版は出ていませんが、使われている英語は単純なものですから、家庭で子供と一緒に指さしながら、日本語で話してみても楽しいかもしれません。ナンセンスな組み合わせが面白い!上下に分かれた絵本こちら、Ketchup on your Corn Flakes も英語の絵本です。先ほどと同じイラストレーターが挿絵を担当しています。絵本は実は上半分と下半分に分かれていて、「○○に△△はいかが?」というパターンを踏んでいきます。「コーンフレークスに牛乳はいかが?」でしたら普通の文ですよね。ところが、「コーンフレークスにケチャップはいかが?」「レモネードに歯磨き粉はいかが?」というようなナンセンスな文と挿絵が出来上がってしまうのが、この絵本の面白いところです。4歳ぐらいの頃、上の子がお腹を抱えて笑い転げていたことを覚えています。これもまた、一人でパラパラめくっては笑っているのを何度か見ることになりました。使われている英語は非常に簡単なものですし、絵がほとんどですから、日本語で読んでも面白いかもしれません。子供にも役目がある! 参加型の読み聞かせ絵本下の2冊は「読み聞かせ」に特化した本です。けれども、ただの読み聞かせではありません。子供が反応して返事をすることが組み込まれているのです。本書『ハトにうんてんさせないで』(Don’t Let the Pigeon Drive the Bus!)は2003年に、アメリカで出版された優れた絵本に与えられるコールデコット賞の次点となり、コールデコットオナー賞を受賞しています。最初のページをめくると、バスの運転手さんが、ちょっと車を離れるから見ててね、と読み手に頼みます。そして言うのです。ハトに運転をさせないでね、と。次のページからハトが出てきて、読み手に「お願いだから運転させて」と頼みます。あの手この手でおねだりをしてくるハトに、「ダメ!」「絶対ダメ!」と言うのが子供の役目。ささやかな仕掛けですが、これは盛り上がります。普段「ゲームはだめですよ」「甘いものはダメですよ」などと色々なことを禁止されている子供にとっては、あの手この手で(それこそ小さな子供のようなロジックで)バスを運転したがるハトに「ダメ!」と言うこと自体が、とても楽しいようなのです。将来、絵のない本を読む下準備として最適な絵本『えがないえほん』(The Book With No Pictures)は、日本でも20万部を突破した、大人気絵本です。個人的には、子供がより真面目な、「文字ばかりの本」をいつか手に取るときのために、これ以上に素晴らしい下準備はないと思っています。何度か下の子供の小学校にボランティアで読み聞かせにもいきました。有名なアンデルセンの物語と同じ題名ですが、内容は全く違います。『ハトにうんてんさせないで』同様、子供がダメ出しをするのが楽しい、読み聞かせ用の一冊です。文字通り、絵の全くない絵本で、絵がない本なんて真面目でつまらなそうに見えるでしょう?という問いかけから始まります。でもね、本っていうのは、書いてあることは全部読まなくちゃいけないものなんだ……。実はこれは、大人が普段だったら出さないような馬鹿げた音を出したり、馬鹿げたことを言ったりするのを子供が大喜びで聞く、という趣旨の絵本なのです。途中に何度か「ねえ、もう読むのをやめていい?」と尋ねなければならない箇所があります。「だめー!」と大声で答える子供たちの嬉しそうなこと。この本をある年のクリスマスにプレゼントされて以来、しばらく息子に「どれを読んであげようか」と聞くたびに、本書をリクエストされて、苦笑したものでした。著者が実際に子供の前で読み聞かせをしている動画もあります。子供たちの食いつきの良さにきっと目を見張るはずです。実は読み聞かせるのはなかなか疲れる本なのですが、この経験が「絵のない本」への子供の抵抗感を減らしてくれるのであれば、万々歳です。インタラクティブな絵本は、普段本好きでない子も虜にしてくれる本の面白さや楽しさを多角的に子供に紹介する、こうしたインタラクティブな絵本は、普段だったらそれほど本に興味を示さない子供たちの心をも鷲掴みにしてくれます。子供たちがこうした本を愛するのはほんの数年間のことですが、ゲームや動画といった競合メディアが多い現在の子供たちの間で、インタラクティブな本が非常に愛されていることに、ホッとすると同時に嬉しくもなるのです。(参考)Jan Pienkowski, Haunted House, (Walker Books, 2005)ジャン・ピエンコフスキー 著, でんでんむし 訳(2005),『おばけやしき』, 大日本絵画.Pippa Goodhart, Nick Sharratt, You Choose, (Puffin, 2018)Nick Sharratt, Ketchup on Your Cornflakes?, (Scholastic., 2006)Mo Willems, Don’t Let the Pigeon Drive the Bus!, (Disney Book Group, 2003)モー・ウィレムズ 著, 中川 ひろたか 訳(2005),『ハトにうんてんさせないで。』, ソニーマガジンズ.B. J. Novak, The Book With No Pictures, (Puffin, 2016)B・J・ノヴァク 著, 大友剛 訳(2017),『えがないえほん』, 早川書房.
2019年06月28日1人目を出産したとき、私は1年間の育児休暇を経て仕事復帰をしました。その後、2人目の妊娠を機に、退職して専業主婦に。専業主婦になった私が2人目の育児で感じたことや気付いたことがあります。 育児の大変さを改めて痛感した1人目の子どもは1歳から保育園に預けていたため、食事や排泄、服の脱ぎ着などの生活習慣の大半は保育園で覚えてきてくれました。トイレトレーニングも保育園でしてくれたので、働くママにとって本当にありがたい存在だったと今でも感じています。 ところが、2人目の育児ではそうはいきませんでした。専業主婦になり、親子の時間が増える……。とてもうれしいことではありましたが、育児の大変さを改めて痛感しました。時には仕事をしているほうが楽かもしれないと思うこともありました。 生活習慣は自然には身につかなかった食事や手洗い、歯磨きなどの基本的な生活習慣を、生活のなかで教えていかなければならない。そうわかっていても、日々の生活に追われ、保育園の先生たちのように子どもに生活習慣を教えていくことができませんでした。何も予定がない日は着換えもせずにパジャマで過ごしてしまうことも。 私の「しつけ」が甘かったからか、2人目の子どもは基本的な生活習慣があまり身についていません。生活習慣は教えていかないと自然には身につかないと感じました。 もっと意識して親子遊びをすればよかったたっぷりある時間のなかで、親子でさまざまな遊びを楽しもう! 最初はそう意気込んでいたものの、実際はテレビやおもちゃに頼ることがほとんど。にも関わらず、在宅の仕事を始めたことで、ますます子どもの相手ができない状況になってしまいました。 赤ちゃんのころは、ママやパパが一緒に遊んであげることでさまざまな体験ができる時期だと思います。それを犠牲にしてしまったことを、今では後悔しています。絵本の読み聞かせやごっこ遊びの相手など、自宅でもできる遊びはたくさんあったはずです。 ワーキングマザーから専業主婦になり、1人だった子どもが2人になり、それぞれの違いを実感しました。退職し、第二子を迎えるといった、私と同じような状況の方の参考になれば幸いです。著者:田中由惟一男一女の母。二人目の出産を機に食品会社を退職。現在は子育てのかたわら、記事執筆をおこなう。趣味はスポーツとピアノ、美味しいものを食べること。
2019年06月27日「読書」が子どもにもたらしてくれるものというと、国語の文章問題に強くなるといった学習面のメリットをイメージする人が多いかもしれません。でも、「そういったこと以上に大切なものがある」と、屈指の名門校、麻布中学・高校の国語科教諭である中島克治先生はいいます。その大切なものとは、「批評する力」「自ら考える力」を養えること。その理由と併せて、子どもを本好きにする方法も教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)言葉を知ることは「考える、感じ取る」ことの下地読書はいくつになっても大切なものですが、できればなるべく幼い頃から子どもが親しむことができるように導いてあげてほしいですね。というのも、中学生、高校生になると、子どもでも忙しくなってきて本を読む時間が取れなくなってしまうからです。子どもが本当に時間を気にせず本と向き合えるのは小学生までだと考えていいでしょう。読書は子どもにたくさんのものを与えてくれます。本を読んで言葉を覚えるということは、言葉と自分の間にある壁をなくすということであり、言葉によってものごとを考える、感じ取ることの下地になっていきます。読書をして語彙が増えれば、教科書の内容や先生の話をしっかり理解できるのですから、学力の向上にもつながります。また、読書によって増えた語彙は、感情コントロールという点でも力を発揮します。というのも、言葉によって自分の感情を相対化して見つめ直すことができるようになるからです。興味があることなら「読み癖」がつくでは、子どもはどんな本を読むべきなのでしょうか。親が読んでほしい本でもいいのですが、やはり子ども自身が興味を持つものがベストでしょう。内容は問いません。誰もが物語を好むわけではないのですから、たとえば野球やサッカーが好きな子どもなら野球雑誌やサッカー雑誌でも構わないのです。そういった雑誌にはいろいろな選手のインタビュー記事が載っていて、彼らが活躍した試合やそうでなかった試合などのデータも掲載されています。子どもが興味を持っている分野の雑誌ですから、書かれていることもすんなりと頭に入ってきますし、なによりもそれらの雑誌には、選手たち、人間のドラマが描かれています。そういうドラマに触れることは、子どもたちの心のなかと外の世界を結ぶ架け橋になり、もっといえば子どもが世界とかかわっていくときの羅針盤にもなるのです。また、どんな本でも子ども自身の興味に従って読むことのメリットには、興味があるからこそ読み続けることになり、「読み癖」がつくということもあります。この読み癖がとても大切なのです。読み癖について、スポーツ雑誌の例で考えてみます。たとえば不甲斐ない成績に終わったある選手の試合後の記事を読めば、「次はどうなるだろう?」と子どもは「続編」にあたるような記事を求めるようになる。当然、次号も読むことになり、しかも、その表現にまで注意を向けるようになります。次の試合でその選手が大活躍をしたとして、「この活躍をどんな文章にするのかな?」といった思いを持っているからです。この行為は、書かれているものに対して受け身ではなくなっているということに他なりません。つまり、積極的にアクティブに活字に触れる姿勢が生まれているのです。加えるならば、「批評する力」が育っているということでもある。先の例の子どもが次号を読んで、「あれ?」と違和感を覚えたとします。そう感じるのは、書かれていることがすべて正しいのではなく、自ら考える、批評力が育っているからです。これは、いわゆる「考える力」が重要だとされるいま、とても重要なことではないでしょうか。親が書店にいる時間を増やせば子どもは本に興味を持つここまではあくまでも理想であって、「子どもが自分から進んで本を読んでくれない」という悩みを抱えている人も多いはずです。そういう場合は、やはり子ども自身が興味を持っていることを親がつかむことが大切になる。そして、それらに関する本を与えるのです。そうすれば、本によって自分が興味を持っている世界が広がるという体験を子どもにさせてあげることができます。また、読むこと自体が苦手だという子どももいます。そういう場合には読み聞かせをしてあげましょう。全部を読む必要はありません。最初の何ページかを読んであげるだけで十分です。子どもは続きが気になって自発的に読むということもあるからです。大人だってそうですよね。映画の冒頭の数分だけを観せられたら、続きを観たくなるでしょう?それから、同じ作品が映像と本の両方になっているものもおすすめです。宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』なんて何度も映像化されていますし、宮崎駿監督の映画作品もいくつもノベライズされています。そういったものであれば、子どももすんなり本に入っていけるのではないでしょうか。そして、子どもに本への興味を持たせるもっとも簡単な方法は、親が子どもを連れて書店や図書館に行く時間を増やすこと。親が書店や図書館に長くいれば、子どもは大好きなお父さんやお母さんが本に興味を持っている、本を大切なものだと思っていることを体で感じ取ることができます。しかも、そういった場所には見たこともない世界を描いた本がいくらでもある。そのような場所に接することで、子どもは自然に好奇心を刺激されて本の世界に近づいていくはずです。『本物の読解力をつけることばパズル 入門編』中島克治 著/小学館(2019)■ 麻布中学・高校国語科教諭・中島克治先生 インタビュー一覧第1回:子どもの「言葉の力」を伸ばすには?名門麻布の国語教師が説く“親の心得3か条”第2回:先取り学習はこんなに危険。「した子」の成績が「しなかった子」に抜かれるのはなぜ?第3回:麻布中高の国語教師が断言。「絵本の読み聞かせ」の教育効果はやっぱり絶大だった!第4回:我が子に“読書好き”になってほしいなら。ぜひ身につけさせたい「読み癖」とは【プロフィール】中島克治(なかじま・かつじ)1962年生まれ、東京都出身。麻布中学・高校を経て東京大学文学部卒業。東京大学大学院博士課程修了。現在、私立麻布学園麻布中学・高校国語科教諭。『本物の読解力をつけることばパズル 初級編』(小学館)、『一生役立つ! 子どもの本当の読解力をグッと引き出す方法』(PHP研究所)、『1話5分! 12歳までに読みたい名作100』(新星出版社)、『小学生クロスワードBOOK 1・2・3年生』(星雲社)、『本物の国語力をつけることばパズル 中級編』(小学館)、『本物の国語力をつけることばパズル 入門編』(小学館)、『本物の国語力をつけることばパズル 初級編』(小学館)、『夏目漱石ほか文豪名著 書き写しノート』(朝日新聞出版)、『小学校入学前にことばの力をつける魔法の本棚』(小学館)など著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年06月27日むかしから家庭教育の大定番であるのが「絵本の読み聞かせ」です。それが子どもの成長に与える効果については、屈指の名門校、麻布中学・高校の国語科教諭である中島克治先生も手放しで絶賛します。絵本の読み聞かせは、子どもになにをもたらしてくれるのでしょうか。中島先生が「計り知れない」と語るその効果を教えてくれました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)絵本の読み聞かせが子どもの心を豊かにする日々、進化を続ける子ども向け教材ですが、やはりむかしながらの「絵本の読み聞かせ」は、いまも変わらず最高の教育ツールといえます。お父さん、お母さんに絵本を読んでもらえる時間は、子どもにとってはまさに至福のとき。親子の強い絆を生んでくれるものです。そして、絵本の読み聞かせは子どもの心を成長させてくれます。絵本というものは、言葉の世界とイマジネーションの世界がぴたっとつながっていくものです。言葉によってイマジネーションをつくっていく、あるいは絵で表現されているものを言葉で補っていく。そのプロセスは、幼い子どもの脳にとっていちばん大切なものといっても過言ではありません。それが子どもの心を豊かにしていくのですからね。教育熱心な親であれば、絵本の読み聞かせによって「読解力」を得られるのかという点も気になるでしょう。その疑問に対する答えは、もちろん「YES」です。小学校での国語のテストでは「この場面での登場人物の気持ちを答えなさい」という問題が出されますよね?その問いに解答するために必要なものとはなんでしょうか。それは、「共感力」です。その力を絵本が高めてくれます。たとえば、みなさんにもおなじみのかぐや姫が物語の最後に月に帰っていく場面をイメージしてください。そこでは、かぐや姫もおじいさんもおばあさんも別れを惜しんで悲しんでいます。実際には別れというものの重みが子どもにはまだわからないにしても、自分から切り離された物語の世界として仮想的に別れを感じることができる。それは、ある種、社会的な常識を学んでいるともいえます。子どもはその過程を経て、「どういう世界のどういう状況に置かれた人間がどういう感情を抱くのか」ということを知っていきます。そうやって、共感力が磨かれていくわけです。いまの世界に必要な「思いやりと優しさ」その共感力は、子どもの内面にも大きな影響を与えます。絵本の世界に触れている子どもとそうではない子どもには、「思いやりと優しさ」という点で大きなちがいが出るように思います。もちろん、思いやりと優しさを持つことができるのは、絵本の世界に触れている子どものほうです。いまの世界は弱肉強食とまではいわないまでも、どこか殺伐としたところがあるものです。価値観が単純化していて、「勝つことがいいこと、強いことがいいこと」だと多くの人がとらえています。だからこそ、負けること、弱いことを見下す風潮もどうしても出てくる。そういう世界ですから、弱い子どものなかではどんどん劣等感が膨らむし、そうではない子どもは優越感を持つために差別的になることも多いように感じます。でも、絵本の世界に触れていたとしたらどうでしょうか。絵本は、そもそも作者である大人が「こういう子どもになってほしい」「こういう世界が大事だよ」と考えて、絵と文章で子どもに訴えている内容がほとんどです。そこには、子どもに対する大人の強い願い、思いが込められています。そういう絵本を親が媒介して子どもに触れさせてあげれば、殺伐とした日常生活とは切り離されたところで「心の大切さ」を感じることになり、子どもは自然と思いやりや優しさに重きを置くようになるはずです。そういう子どもなら、たとえ目の前の世界がどれだけ殺伐としていて、タフな者しか勝ち残れないようなものに見えるとしても、その競争からこぼれ落ちること、こぼれ落ちた者にも価値を見出していけるのではないでしょうか。子どもが求める限り読み聞かせをしてあげようさて、絵本の読み聞かせというと、「何歳くらいまでやってあげればいいの?」という疑問を持っている人もいるかもしれません。その答えは、「子どもが聞いてくれるうちはいつまででも」です。子どもはある日突然大人になるわけではありません。ある部分は大人に近づいても、ある部分は子どものままというふうに、凸凹した状態で成長していきます。それは大人になったあとも変わらないのではないでしょうか。誰のなかにも大人の心と子どもの心が共存しています。そして、読み聞かせを求める子どもの心があるうちは、いつまでだって絵本の読み聞かせをしてあげればいいと思うのです。子どもは絵本の読み聞かせを通じて、絵本の内容とは別のものも受け取っています。それはたとえば親が自分のそばのいてくれることだとか、親が自分のために時間を使ってくれている、心を使ってくれているということです。それらの安心できる時間の大切さというのは、小学生になる前の幼い子どもでも、小学生でも変わらないはずです。子どもが求める限り、いつまでだって読み聞かせをしてあげてください。『本物の読解力をつけることばパズル 入門編』中島克治 著/小学館(2019)■ 麻布中学・高校国語科教諭・中島克治先生 インタビュー一覧第1回:子どもの「言葉の力」を伸ばすには?名門麻布の国語教師が説く“親の心得3か条”第2回:先取り学習はこんなに危険。「した子」の成績が「しなかった子」に抜かれるのはなぜ?第3回:麻布中高の国語教師が断言。「絵本の読み聞かせ」の教育効果はやっぱり絶大だった!第4回:我が子に“読書好き”になってほしいなら。ぜひ身につけさせたい「読み癖」とは(※近日公開)【プロフィール】中島克治(なかじま・かつじ)1962年生まれ、東京都出身。麻布中学・高校を経て東京大学文学部卒業。東京大学大学院博士課程修了。現在、私立麻布学園麻布中学・高校国語科教諭。『本物の読解力をつけることばパズル 初級編』(小学館)、『一生役立つ! 子どもの本当の読解力をグッと引き出す方法』(PHP研究所)、『1話5分! 12歳までに読みたい名作100』(新星出版社)、『小学生クロスワードBOOK 1・2・3年生』(星雲社)、『本物の国語力をつけることばパズル 中級編』(小学館)、『本物の国語力をつけることばパズル 入門編』(小学館)、『本物の国語力をつけることばパズル 初級編』(小学館)、『夏目漱石ほか文豪名著 書き写しノート』(朝日新聞出版)、『小学校入学前にことばの力をつける魔法の本棚』(小学館)など著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年06月26日「本選びのプロ」がとっておきの情報を教えてくれる連載『まなびの本棚』第7回です。もうすぐ夏休み。海にプールにと、楽しい思い出をつくるために今から計画を立てているご家庭も多いのではないでしょうか。時間がたっぷりある夏休みこそ、外で遊ぶだけではなく集中して本を読む時間をつくりましょう。旅行のときには、目的地に着くまで読書をするのもいいですね。この連載では、日販図書館選書センターで選ばれた本のランキング、そして選書のプロ・コンシェルジュによるコラムをご紹介します。きっと子どもの本選びのお役に立つはずです。選書センターについて、詳しくはこちらをお読みください→図書館司書や教育関係者が足繁く通う『日販図書館選書センター』って知ってる?今月の人気図書ランキング1位あめだまペク ヒナ 著長谷川 義史 翻訳ブロンズ新社2位ひなにんぎょうができるまで人形の東宝 監修田村 孝介 写真ひさかたチャイルド3位世界一おもしろい国旗の本ロバート・G.フレッソン河出書房新社4位ふしぎ駄菓子屋 銭天堂 11廣嶋 玲子 著jyajya 絵偕成社5位調べる学習百科 ひろって調べる 落ち葉のずかん安田 守 著・写真中川 重年 監修岩崎書店(※2019年5月集計)大人気シリーズ『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』の第11作目が4位にランクイン。幸運な人だけが見つけられる不思議な駄菓子屋“銭天堂”が舞台の物語です。小学生に大人気のこのシリーズ、親子でハマっている人も多いそう。第5位の『落ち葉のずかん』は調べ学習にぴったり。学校の校庭やいつも行く公園など、子どもたちの身近に見られる落ち葉について、深く学ぶことができます。落ち葉に関わって生きる生物についても解説しているので、自然の不思議にまつわる一歩進んだ学習につながるでしょう。コンシェルコラム"本選びのプロ"選書センターコンシェルジュのおすすめの本ひとりの夢見る少女は、いかにして世界初のプログラマーになったのかプログラミング教育の必修化にともない、「プログラミング」というワードがトレンドとなって久しい昨今。今回ご紹介するのは、世界初のプログラマーとされる女性の物語です。産業革命の時代、人間の代わりに計算をする「解析機関(コンピューターの原型)」の構想がありました。その解析機関を動かす計算式(プログラム)を考案したのが、イギリスのエイダ・ラブレスでした。コンピューターが発明されるずっと昔、蒸気機関が活躍していた時代にそのような計算法を考案しただけでも驚くべきことですが、エイダはプログラムが計算だけではなく、いずれは絵や音楽といったアートまでも生み出せると考えていたのでした。その結果は、現代の私たちの暮らしを見れば明らかです。少女の頃のエイダは、空を飛ぶ機械の馬を作りたいと夢見ていました。その豊かな想像力はどのように育まれ、開花したのでしょうか?コンピューターが好きなお子さんにも、夢を見るのが好きなお子さんにもおすすめの1冊です。『世界でさいしょのプログラマー エイダ・ラブレスものがたり』フィオナ・ロビンソン 作せな あいこ 訳評論社
2019年06月26日ベビーカレンダーの読者の方には、出産前の方や子どもが生まれて間もない方も多いことでしょう。そこでこれからの子育てをムリのないものにするために知っておいて欲しいことがあります。それは、子育てにまつわる話の中には、「こうすべきだ」「こうしなければならない」「こうしないと良くない」といった自分にとってプレッシャーになるものが少なくないことです。今回は子育てに起こりがちな、子育ての正解探し、そしてその対処法についてお話しします。 子育てのよくあるプレッシャー、悩み 先に述べたように、子育てにまつわる話の中には、「こうすべきだ」「こうしなければならない」「こうしないと良くない」といった自分にとってプレッシャーになるものが少なくありません。 例えば、こんなケースがあります。自身の親や義理の親から、 「子どもを母乳で育てなければよくない。あなたも子どものためを思うのならばちゃんと母乳で育てなさい」 このように言われ、それがプレッシャーになり子育てが気持ちよくおくれなくなってしまうといった悩みがしばしばあります。 子どもを育てるときは、なにかと不安になってしまうもの。ましてや、それが第一子であったり、赤ちゃんの子育て中だったりすると余計にそれはつのります。また、子育て経験の少ない人からすれば、自身の親や義理の親は子育ての先輩でもあります。そう思ってしまうと、それが難しい要求であってもそれを努力することが正しいのだという心理になってしまいます。 そのアドバイスしてくれる人たちにしても、ほとんどの人が良かれと思って言っているので、それはちょっと自分には厳しいと思っても、なかなかむげに突っぱねることもしにくいですね。 子育てに正解はないというのは本当?!よく、「子育てに正解はない」と言われます。 まったくその通りなのですが、子どものことを思うとついつい「子育ての正解を謳うもの」に気持ちがとらわれてしまいます。 もし、僕が子育ての正解めいたことをひとつだけ挙げるとしたら、それは「子育てする人にムリがないこと」だと思います。いくら子どものためになるという触れ込みであっても、それをする人に大きな負担がかかることであったり、自身の人生設計や自己実現をあきらめなければできないようなことであれば、それはちょっと考え物です。日本の子育てには、子育てを自己犠牲、とくに母親の自己犠牲として要求してくる傾向が強くあります。 子どもは身近な大人の心のあり方から、日々大きな影響を受けて成長しています。ですから、大人がしんどい思いをして頑張る「良い(とされる)子育て」よりも、大人も子どももムリのないボチボチの子育てを意識しておくことが大事ではないかと思います。 「〇〇させねばならない」と考えるのは要注意前回のこのコラムでは、子どもの遊びについて述べました。子どもの遊びは、発達段階に即して形成されていくので、ただ刺激に振り回されてしまうものよりも、その発達段階に適したものがよいというお話しでした。 こういった子育てのことを伝えると、人によっては「それは確かにそうだから、それをさせねばならない」という気持ちになって、そこを子どもに施すことに一生懸命になりすぎてしまう人がいます。 例えば、木の積み木で遊ぶことが大切ですよという話をしたとすると、なにがなんでも子どもに積み木で遊ばせなければという気持ちになってしまう人がいます。その子が、積み木遊びを楽しめる子であればさして問題はないですが、子どもにはもちろん個性があるのでなかには積み木を少しも好まないという子もいるものです。 こうしたとき、親の気持ちとしては「積み木遊びをさせなければ」という気持ちから、その子に余裕のない関わりになってしまったり、我が子がそれをしないことから不安になってしまったりします。普通ならなんでもないことでも、育児疲れのためになんだか脅迫観念的になってしまったりということも起こり得ます。 こうした子育てする人に特有の気持ちが、「正解探し」になってしまう気持ちです。 これは、積み木遊びといったことだけでなく、さまざまな成長の姿・到達点で出てきます。周囲の子と我が子を見比べて、我が子の成長が遅れているように感じられることもあります。 この「正解探し」の心理は、子育てする人の不安感から強まります。親ですから、子どものことで悩んでしまうのは当然のこと。それが悪いわけではありません。しかし、過剰になってしまうと、そこから子どもも不安になりさまざまな大変さを生んでしまったり、子育てする大人自身もよりしんどい方へ行ってしまいます。 子育てが不安なとき・正解探しになってしまうときの対処法こういうときは、誰かとお話することが安定化の鍵になるようです。子育ての悩みを話せる人がいるのであれば、それを聴いてもらうということでもいいですが、別に必ずしも子育ての話でなくとも構いません。人の心は、誰かと屈託のない話をするだけでも、安定する方向に向かうようにできているもののようです。 ただ、そうした他者との関係も少なくなりがちなのも、現代の子育ての特徴です。SNSなどで、自身の子育ての悩みやその時々の思いを表明するツールとして使い、それで乗り切っているという方がいるのも、また現代的な子育てのあり方だと感じます。 おすすめは「ふーん、できたらやってみるわ」のスタンス! 子どもの成長の姿には、個性があり大変大きな幅を持っています。同時に、子どもには「成長の力」があります。多少ゆっくりであったとしても、子ども自身が時間の経過や、さまざまな経験を経て成長していきます。子どもが成長するのに、必ずしも「私が○○しなければならない」ということはないのです。 極端なことを言えば、あなたが寝ていたとしても子どもは育ちます。子どもには自分で育っていく成長の力があるからです。しかし、世の人々はしばしば「あなたが○○しないと、子どものために良くありませんよ」という文脈で語りかけてきます。それが純粋に善意でなされているだけのことも少なくないのですが、必ずしもそれが良いアドバイスとは限りません。 子育てに不安感が強かったり、子育てに一生懸命だったりする人ほど、こうしたことを言われやすいですし、また真に受けてしまいがちです。 子育てのことはなんでも素直に「はい、頑張ります!」と受け取ってしまうのではなく、「ふーん、そうなのね。じゃあ、できそうだったらやってみるわ」くらいの気持ちでいるとバランスがとれるのではないかと思います。 著者:保育士 子育てアドバイザー・保育士 須賀義一子育てアドバイザー/保育士。大学時代はドイツ哲学を専攻。人間に携わる仕事を志し保育士になる。子育てのポイントや育児相談。保育士としての知識、主夫として子育てした経験を綴ったブログ『保育士おとーちゃんの子育て日記』が人気を博す。著書に『保育士おとーちゃんの「叱らなくていい子育て」』『保育士おとーちゃんの「心がラクになる子育て」』(PHP研究所)がある。現在は子育て講演や座談会、保育研修・監修、コラム執筆などをしている。個別の育児相談や講演依頼はブログ内リンク先のホームページより受付。 ブログ:「保育士おとーちゃんの子育て日記」
2019年06月25日小学校入学前の子どもを持つ親であれば、いわゆる「先取り学習」を子どもにさせるべきかといちどは考えたことがあると思います。子どもが小学生になるときには、親の側もいろいろと不安を抱えているものです。それらの不安を取り除いてもらうべく、屈指の名門校、麻布中学・高校の中島克治先生にアドバイスをしてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)就学前の「先取り学習」は必要ない有名小学校の「お受験」を考える場合は別ですが、基本的には就学前の先取り学習は必要ないとわたしは考えています。わざわざ先取り学習というかたちを取らなくても、ひらがなや数字は絵本のなかにも出てきますよね?親が絵本を読み聞かせをするだけでも、結果的に子どもはひらがなや数字がだいたいわかるようになります。また、単語についても、いろいろな出版社が出版している「ことばと絵じてん」といった本を与えるだけで十分。子どもは自分の好奇心に従って、自然と語彙を増やしていきます。それから、幼児の頃から英語を学ばせている家庭もあるでしょう。でも、ずっと続けられるならともかく、やめてしまうと学んだ英語も綺麗に忘れていくものです。わたしの子どもも幼いときに英語塾に通わせませましたが、やめたらやっぱりすぐに忘れてしまいましたからね……(苦笑)。もちろん、子どもが英語を学んでいるあいだの時間はすごく充実しているのでしょうし、それが悪い時間ということではない。「定着」ということを前提とせず「楽しむ時間」と考えるのなら、英語塾に通わせてもいいかもしれません。「知育」ではなく「体育」の先取り学習が大切そもそも、小学校に入学した時点での学力の差というものにはあまり大きな意味はありません。入学直後には、たしかに先取り学習をした子どものほうが成績は優秀です。でも、その後は成績が逆転してしまうことも珍しくありません。というのも、先取り学習をした子どもは、「これは勉強したことがある」なんて思って先生の話をまともに聞いていないことがあるのに対し、先取り学習をしていない子どもは一生懸命に先生の話を聞くからです。そうして、先取り学習をしなかった子どもが先取り学習をした子どもにただ追いつくだけではなく、加速度がついて追い抜いてしまうのです。そういう意味では、下手に先取り学習をさせることは危険だと見ることもできる。先生の話を上の空で聞くことが学習態度として定着することも考えられますし、最初に成績が良かった子どもが後からどんどん抜かれてしまうと、劣等感を持ってしまうかもしれないからです。先取り学習をさせるにしても、小学校入学後にはこれらの点に注意すべきではないでしょうか。わたしとしては、そういった「知育」の先取り学習ではなく、「体育」の先取り学習をすることをおすすめします。小学校に入学した直後は、まずは友だちと一緒に動けることが大事です。友だちから鬼ごっこやキャッチボールに誘われたらすぐに動けるか、あるいは逆に自分からなにかを提案できるか。それが、友だちと適切な関係を築き、すんなり学校生活になじんでいくことにつながるからです。大切になるのは、運動能力の高さではなくて、人に合わせられる感覚です。ですから、なにかのスポーツ教室に通わせるような必要はありません。子どもと一緒になってキャッチボールやサッカーをして遊んだり、公園で鉄棒などに触れさせたりというふうに、子どもの体の「経験値」を増やしてあげることをおすすめします。いまの親はとにかく「不安」でいっぱいそもそも、先取り学習に注目が集まるのも、いまの親の多くが「不安」だからなのでしょう。核家族化が進んだうえ、隣近所との関係性もかつてより薄まっているので、親は自分たちだけで家庭教育をしなければなりません。しかも、教育に関するたくさんの情報が入ってくるにもかかわらず、その多くは「こうしちゃいけない」「こうしなければならない」という内容のものがほとんど……。そんな時代ですから、親が不安になるのも仕方ありません。不安を抱えている親なら、小学校に上がった子どもの学校生活のことも気になることでしょう。学校から帰ってきた子どもに、学校での出来事をつい根掘り葉掘り聞きたくなるかもしれません。ただ、そういう聞き方だと子どもはなかなか話してくれないということもありますから、「待つ」ことをおすすめします。聞きたい気持ちをぐっと我慢して家事をしたりくつろいでいたりすれば、子どもは「ねえねえ」なんていって自分から話をしてくれるものですよ。そして、そんな不安に駆られている親にこそ「なにがあっても大丈夫」という気持ちを子どもに対して持ってほしいですね。『だいじょうぶ だいじょうぶ』(講談社)という絵本があります。これは、お子さんというより親に読んでほしい内容です。その絵本に登場する子どもは、自分の世界が広がるにつれて新しいことや楽しいことに出会う一方で、困ったことや怖いことにも出会います。そのたびにおじいちゃんがその子の手を握って「だいじょうぶ だいじょうぶ」とつぶやいてくれる。その瞬間は困ったり怖かったりしても、時間が経つにつれて状況が好転していくことを、おじいちゃんは人生経験を通じて知っているからです。親まで不安になっていれば、子どもも不安になります。みなさんにはそのおじいちゃんのように子どもに対して接してあげてほしいと思うのです。『本物の読解力をつけることばパズル 入門編』中島克治 著/小学館(2019)■ 麻布中学・高校国語科教諭・中島克治先生 インタビュー一覧第1回:子どもの「言葉の力」を伸ばすには?名門麻布の国語教師が説く“親の心得3か条”第2回:先取り学習はこんなに危険。「した子」の成績が「しなかった子」に抜かれるのはなぜ?第3回:麻布中高の国語教師が断言。「絵本の読み聞かせ」の教育効果はやっぱり絶大だった!(※近日公開)第4回:我が子に“読書好き”になってほしいなら。ぜひ身につけさせたい「読み癖」とは(※近日公開)【プロフィール】中島克治(なかじま・かつじ)1962年生まれ、東京都出身。麻布中学・高校を経て東京大学文学部卒業。東京大学大学院博士課程修了。現在、私立麻布学園麻布中学・高校国語科教諭。『本物の読解力をつけることばパズル 初級編』(小学館)、『一生役立つ! 子どもの本当の読解力をグッと引き出す方法』(PHP研究所)、『1話5分! 12歳までに読みたい名作100』(新星出版社)、『小学生クロスワードBOOK 1・2・3年生』(星雲社)、『本物の国語力をつけることばパズル 中級編』(小学館)、『本物の国語力をつけることばパズル 入門編』(小学館)、『本物の国語力をつけることばパズル 初級編』(小学館)、『夏目漱石ほか文豪名著 書き写しノート』(朝日新聞出版)、『小学校入学前にことばの力をつける魔法の本棚』(小学館)など著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年06月25日子育てをしていると、わが子の意外な一面を見てハッとすることもたくさんあるのではないでしょうか。親である自分とは考え方がまるで違っていたり、物の見方が正反対だったりと驚かされることも多いはず。そもそも、人には誰しも “持って生まれた気質” というものがあります。たとえ親子であっても兄弟であっても、それぞれが違うものを持ち合わせているのです。持って生まれた「気質」は変えられない親は子どもに対して、「こんな人間に育ってほしい」という願望を抱くもの。そしてその多くは、「活発で勉強やスポーツをがんばる優しい子」をイメージしているのではないでしょうか。しかし、現実は思い通りにいきませんよね。すると、ついカッとなったりイライラしたり……。親がイライラするときは、必ずと言っていいほど、頭の中に理想の子ども像を描いています。外で元気に遊び、自ら進んで勉強をやり、片づけがきちんとできて親の手伝いもよくする……。しかし、そうした親の勝手なイメージは子どもの気質とは異なるかもしれません。(引用元:AERA dot.|「9タイプ気質診断」で目からうろこ子どもの気質がわかればイライラしない!)そう述べるのは、NPO法人ハートフルコミュニケーション代表理事の菅原裕子さん。大切なのは、子ども本来の気質を理解し、それぞれの気質に合わせたコミュニケーションをとることだといいます。東海大学文学部教授で学校心理学が専門の芳川玲子先生も、「子どもに明朗快活に育ってほしいと願っている人も多いが、そもそも明朗快活になれない人もいることを理解するべき」と指摘します。芳川先生は、「性格」と「気質」はまったく違うものであることを前提として、子どもの「気質」に合わせた子育てをすることで親のストレスが軽減されると述べています。そもそも、「性格」は最初から固定されているものではなく、成長とともに足されていくものであり、学校や社会での役割に合わせて何層にも加わっていくもの。「性格」は変えることができるというわけです。一方で、性格の一番中核には、もともと持って生まれた「気質」があり、それを変えるのは難しいといわれています。「気質」は、改善することはできても、完全に変えることはできないのです。だからこそ、子どもの気質を把握して、どんな関わりをしていくかを考えることが大切です。「親がどうあるべきか」ではなく、「どうしたら子どもとよい関係が築けるか」という視点で子どもと向き合っていきましょう。9つの気質の強弱の組み合わせが “その子らしさ”およそ50年前、アメリカの精神科医であるトーマス博士らは、136人の子どもの乳児期から青年期の成長過程を追跡調査しました。その結果、「人間には9タイプの気質的特徴が、幼少時の段階ですでに備わっている」ことが明らかになったのです。■9つの気質とは1.活動の活発さ(活動性)・身体の動きがアクティブ、おとなしい、テンションが高い、など。・活発に動いている時間が長い子と、じっとしている時間が長い子がいる。また、動きの激しさにも差がある。・「○○くんは活発ね」「○○ちゃんは穏やかな子ね」など、その子の活動レベルの指標となる。2.集中力の持続性(注意の逸れやすさ・注意の幅と持続性)・ひとつのことに没頭できる、気が逸れやすい、飽きっぽい、など。・ひとつのことだけに注意を向けるのか、複数のことに注意を向けるのか、そしてそれがどれくらい持続するかの違いを指す。ひとつのことを何時間も集中して続ける子もいれば、いろいろなことに手を出す子もいる。・「勉強中、周りの物音に反応して集中できなくなる」といったネガティブなケースばかりではなく、「砂場でぐずりだしたので、滑り台に連れていったらケロッと機嫌が直った」などのポジティブなケースも含まれる。外的な刺激でどの程度気が逸れやすいかを指す。3.粘り強さ(行動の可変性)・へこたれない、言い出したら聞かない、すぐあきらめる、など。・行動を変えさせたり止めさせたりするのに、どの程度の刺激が必要かの違い。一度言うだけで修正してくれる子もいれば、何度も繰り返して言わないと変えられない子もいる。・難題を前に、どれだけ粘れるかを指す。4.新しい環境への反応の仕方(新しい刺激に対する接近、回避の傾向)・新しいことにワクワクする、もじもじする、など。・新しい環境、新しい人に出会ったときに、どう反応するかを指す・はじめて触れるものや経験することに対しての反応も個人差がある。珍しいものに自分から近づいていくのか、避けたり逃げたりするのかといった行動パターンの違い。5.規則正しさ(生理的な規則性)・身体機能(睡眠、食事、排泄)が規則的、ルーズ、など。・生物学的なものに基づく行動や機能が規則正しいかどうかの基準。・決まった時間にお腹がすく、毎日20時になると眠くなる、など行動パターンが読みやすいか。6.変化に対応する順応の速さ(順応性)・環境が変わったときの順応が早い、ゆっくり、など。・新しい状況や環境、人間関係などに対してスムーズに適応できるかどうか。順応性の有無により、環境を変えることがよい刺激になるのか、環境を変えないほうがいいのかを判断できる。・たとえば、外出しようとしたら突然の雨。予定変更となったとき、すぐに家の中での遊びに切り替えられるかどうか。7.五感の敏感さ・外的な刺激や内的な刺激に敏感、あまり気にしない、など。・周りの音にどう反応するか、気温の変化に敏感か、など五感がどれくらい敏感かを指す。・転んで膝から血が出ていても平気で遊んでいる子もいれば、尻もちをついただけで泣いてしまう子もいる。8.喜怒哀楽の激しさ(反応の強さ)・よく笑う、よく泣く、感情を外に出さない、など。・外的刺激や内的刺激(内部的な身体感覚)に対する反応の強さを指す。・転んだときにワンワン大泣きする子もいれば、しくしく泣く子もいる。はっきり反応する子に比べて、あまり表現しない子は親がしっかり観察しなければならない。9.ベースの気性(機嫌のよさ)・機嫌がいい、気難しいところがある、など。・日常の大半をどのような気分で過ごすか、物事をポジティブにとらえるか、ネガティブにとらえがちか、という一般的な傾向を指す。・「快」「不快」の刺激をどれだけ感じやすいのか。また、それをどのくらい直接的に表現するのかの違い。・敏感な子は不快感が大きな苦痛となり、ずっと気にしてしまう。逆に不快感をすぐに忘れられる子もいる。誰もが、これら9つの気質それぞれを<強・中・弱>と異なる形で持ち合わせています。そして、その子ごとに違うレベルで組み合わさったものが「個性」であり「その子らしさ」です。ですから、「うちの子は泣き虫で……」「人見知りが激しくて……」「言い出したら聞かなくて……」といくら悩んでも、それはその子に備わっている「気質」であり、簡単には変えられません。そして「気質」は子どもごとに違っていて当たりまえ。もともとにぎやかな場所が好きな子と、静かな場所を好む子では、同じ声かけをしても通用しないということを理解しておきましょう。わが子の気質を見極める目をもとう9つの気質を組み立てて、わが子の特性をつかみましょう。たとえば、「うちの子は、ひとつのことに集中するのが好きで粘り強さもある。環境の変化には敏感ですぐに泣きがち」「うちの子は、飽きっぽくルーズだけどおおらか。基本的にはいつも機嫌よく過ごしている」と、特性を具体化して客観視してみてください。今まで、ほかの子と比べて「できないこと」や「劣っていること」ばかりが目についていたことに気づかされるのではないでしょうか?しかし「気質」は基本的には変わらないことを理解すると、気になる部分を変えようとして必死にならなくてもよくなります。親が子どものためにできることは、「対応や接し方」を変えることです。・「うちの子は引っ込み思案な気質。だから、いろいろな場所に連れていって、場慣れをさせよう」・「うちの子は飽きっぽい気質。小さなゴールをいくつも設定して、目標をクリアする喜びを身体で覚えさせよう」・「うちの子は活発だけれど、新しい人間関係を築くのがあまり得意ではない気質。チームプレーが求められるスポーツよりも、陸上や体操などにチャレンジさせよう」・「うちの子は五感が敏感ではなさそう。自然の中に連れ出して、綺麗な景色に感動したり、土の感触を感じたりする経験をさせてあげよう」・「うちの子は気持ちの切り替えがすぐにできない気質。突発的な出来事にも対応できるように、10分前行動を徹底させよう」・「うちの子は集中力が続かず注意が逸れやすい気質。勉強机の周りには、気が散るものを置かないようにしよう」このように、根本的な気質は変えられなくても、親が注意深く見てあげたり経験値を高めてあげたりすることで、「できる」ことは少しずつ増えていきます。***もちろん親にも9つの気質は当てはまります。自分と子どもが正反対の気質を持っていると、理解し合うことが難しいと感じるかもしれません。しかし、子どもをひとりの個人として見てあげることで、その子らしさを活かした対応ができるようになるはずです。(参考)AERA dot.|「9タイプ気質診断」で目からうろこ子どもの気質がわかればイライラしない!かもめの本棚|「気質」に合わせてゆったり子育て|第1回兄弟でも性格が違うのはなぜ?かもめの本棚|「気質」に合わせてゆったり子育て|生まれながらに持っている「気質」とはAll About|子供の個性が見えてくる トーマス博士の「9つの気質」SHINGA FARM|わが子の個性が分かる!持って生まれた「9つの気質」を知ると子育てが楽になる
2019年06月24日国語はもちろん、算数や理科などあらゆる教科を勉強する際にも重要とされる「言葉の力」。子どもの「言葉の力」を伸ばすためにはどうすればいいのでしょうか。お話を聞いたのは、屈指の名門校、麻布中学・高校の国語教諭である中島克治先生です。まずは、「おしゃべりな子どもと無口な子どものちがい」についてのお考えから話してもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)ドリル学習では「言葉の力」はなかなか伸びない我が子が、まわりの子と比べて無口だと心配になってしまう親もたくさんいると思います。でも、ありていにいってしまえば、それは「個性」ということなのです。親がどんなにおしゃべりでも子どもは無口になることもあるし、その逆もある。同じような育て方をしても兄弟姉妹でちがいはありますし、親のアプローチいかんで子どもが多弁になったり寡黙になったりといったことはないのではないかとわたしは考えています。子どもには親とはまったく別の人格が備わっていて、おしゃべりであれ無口であれ、それはその子の「個性」なのです。そうとらえれば、「なんとか子どもの言葉を増やそうと努力しているのに……」と、頭を悩ますというような呪縛から解放されることになるはずです。とはいえ、おしゃべりか無口かということとは別に、「言葉の力」を身につけておくことはあらゆる勉強をするにあたって重要となります。そう考える教育熱心な親であれば、子どもにドリル学習などをさせているかもしれません。でも、ドリル学習にはあまり意味がないとわたしは考えています。子どもからすればドリル学習はやらされる、仕方なくやる受け身の側面が強いものです。しかも、紙の上での学習ということで、どうしても現実世界に応用しづらいものであるため、学習した内容の定着率も良くありません。たとえ勉強した直後には身についても、1カ月、1年といった時間が経つと内容がすっぽりと抜け落ちてしまうのです。単なるドリル学習というものは、どうしてもただ覚えること、テストでいい点を取ることに重点が置かれます。そういう学習で得た知識は、子どもにとって「生きた知識」にはならないのです。親との共通体験が子どもの学習を補強していくでは、「生きた知識」としての言葉の力をどのように伸ばしてあげればいいのでしょうか。その方法は、「実生活のなかでの親とのコミュニケーション」です。たとえば、親子で植物園に出掛けたときに、以前に図鑑で見たことのある花が咲いているのを発見したとします。そして、「これ、前に図鑑で見たよね?」「どんな花だっけ?」といった会話をする。すると、実体験のなかで実物と言葉がぴたっと結びついていくので自然に言葉が子どもの頭に入っていくのです。親に教えてもらったとか、親の質問に答えられてうれしかったとか、具体的な場面のなかでの親との共通体験が学習を補強し、そのときに得た言葉はしっかりと子どもの頭に刻まれます。共通体験といっても、わざわざどこかに出掛けて特別な体験をしなければならないということはありません。それこそ家庭での日常的な会話でもできることです。会話の内容も天気のことでもご飯のことでもいいし、幼稚園や小学校での出来事、親子それぞれが観たテレビ番組の感想をいってもいい。そういった親とのコミュニケーションを通じて、子どもは満足したり、安心したり、うれしく感じたりといったポジティブな体験とともに感受性を高めながら言葉を覚えていくのです。子どもに知識をただ詰め込もうとしても、身につくものではありません。喜怒哀楽などの気持ちが伴わなければ、学習したことが子どもの糧にならないからです。たとえば、子どもがはじめて真っ赤な美しい夕焼けを見たとき、「綺麗」という言葉を知らなくとも子どもの心はすでに震えています。そして、そばにいる親が「綺麗だね」とつぶやいた。自分の心の震えと「綺麗」という言葉が重なり合う。そんな言葉を忘れるわけがありません。親子のコミュニケーションにおける3つの注意点子どもとコミュニケーションを取る際の注意点もお伝えしておきます。ひとつは、子どもから「これ、なに?」というふうに質問をされたときに、すぐには答えないほうがいいということ。答えられることでもあえて答えず、「なんだろうね?」「うちに帰ったら調べてみようか」というふうに答えるのです。どういうことかというと、子どもに立ち止まる時間を与えるということです。そうすることにより、子どもは手探りで考えることになる。その時間が、その後の学習で得た知識の定着を高めることになります。次の注意点は、子どもの言葉を頭から否定しないということ。子どもは大人が忘れてしまったような感覚を持っていて、大人が考えもしなかった側面から考えることもあるものです。大人になってしまった親からすれば、子どもの言葉が間違っていると思っても否定してはいけません。また、子どもの言葉に親が本当に驚かされることもあるでしょう。そういうときは否定せずに「そんなふうに考えるんだね」といったリアクションをしたり、素直に驚きを伝えたりしましょう。子どもからすれば、自分より言語能力が長けていると思っている親にちょっと先んじることができたという優越感を得ます。その優越感によって、子どもは言葉に対してよりポジティブにかかわっていくようになるのです。そして最後のアドバイスとしては、なにより親自身が子どもとのコミュニケーションを楽しむことが大切だということ。子どもは「教えてもらっている」と思うと受け身になってしまい、学びに対する積極性を失います。でも、親自身が楽しんでいれば、それは親が子に教えるという姿勢ではありませんよね。子どもも親の楽しむ姿勢に引っ張られてコミュニケーションを楽しむようになる。そうして、親子のコミュニケーションによって言葉を得る効果も高まるわけです。『本物の読解力をつけることばパズル 入門編』中島克治 著/小学館(2019)■ 麻布中学・高校国語科教諭・中島克治先生 インタビュー一覧第1回:子どもの「言葉の力」を伸ばすには?名門麻布の国語教師が説く“親の心得3か条”第2回:先取り学習はこんなに危険。「した子」の成績が「しなかった子」に抜かれるのはなぜ?(※近日公開)第3回:麻布中高の国語教師が断言。「絵本の読み聞かせ」の教育効果はやっぱり絶大だった!(※近日公開)第4回:我が子に“読書好き”になってほしいなら。ぜひ身につけさせたい「読み癖」とは(※近日公開)【プロフィール】中島克治(なかじま・かつじ)1962年生まれ、東京都出身。麻布中学・高校を経て東京大学文学部卒業。東京大学大学院博士課程修了。現在、私立麻布学園麻布中学・高校国語科教諭。『本物の読解力をつけることばパズル 初級編』(小学館)、『一生役立つ! 子どもの本当の読解力をグッと引き出す方法』(PHP研究所)、『1話5分! 12歳までに読みたい名作100』(新星出版社)、『小学生クロスワードBOOK 1・2・3年生』(星雲社)、『本物の国語力をつけることばパズル 中級編』(小学館)、『本物の国語力をつけることばパズル 入門編』(小学館)、『本物の国語力をつけることばパズル 初級編』(小学館)、『夏目漱石ほか文豪名著 書き写しノート』(朝日新聞出版)、『小学校入学前にことばの力をつける魔法の本棚』(小学館)など著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年06月24日『子どもの能力を決める0歳から9歳までの育て方』の著者である田宮由美さんによると、「お風呂場は集中できるベスト空間」なのだそう。その秘密は、どうやら「脳」にあり。お風呂に入っているときの人間の脳はどうなっているのでしょう?■参照コラム記事はこちら↓お風呂場は最高の学び空間!リラックス状態の脳は記憶力が強くなる
2019年06月23日絵本の読み聞かせには教育効果があるということは、多くの方がご存じでしょう。しかし、読み聞かせの方法によって、伸びる能力の種類が変わるということは、あまり知られていないかもしれません。今回は、読み聞かせの方法別の教育効果や、読み聞かせのさまざまなコツについて紹介します。読み聞かせには親子ともにメリットあり人気ゲーム「脳トレ」の監修を担当した、東北大学・川島隆太教授の脳科学研究グループは、山形県長井市と共同で読み聞かせに関する研究を行ないました。約40組の幼児とその家族に読み聞かせをしてもらったところ、平均で約5歳3カ月相当であった子どもたちの語彙力が、8週間後には平均で約5歳9か月となり、8週間で約半年分語彙力が伸びたそうです。また、子どもの問題行動が減り、不安や抑うつ状態が減少したともいいます。さらには、読み聞かせの時間が長いほど、母親が育児中に感じるストレスが減っているという結果も出たのだそう。特に、子どもが言うことを聞かない、落ち着きがないといった際に感じるストレスが減少したそうです。これは、読み聞かせそのものが母親のストレス軽減につながったのではなく、読み聞かせを続けて子どもの問題行動が減ったことによって、母親がそれまで感じていたストレスの減少につながったと考えられています。読み聞かせには、親子ともにメリットがあるといえるでしょう。読み方を変えるとさらなるメリットが!さまざまなメリットがある読み聞かせですが、読み方を変えることで伸びる能力がそれぞれ違います。具体的には以下の通りです。・一音一音ハッキリ読む→集中力が上がる教育環境設定コンサルタントの松永暢史さんが推奨している、絵本に書かれた一字一字のすべてをハッキリ発音する読み方です。抑揚をつけたりせず、ゆっくり淡々と読み聞かせます。一音一音ハッキリ読むことで「今までじっと聞いていられなかった子どもが、じっと聞いている」という報告があったと松永さんはいいます。口をしっかりと動かしながら、母音を正しく発音して読み聞かせることで、子どもにとってより聞きとりやすくなるのでしょう。・感情を込めて読む→感受性が高まる絵本スタイリスト®の景山聖子さんは、感情を込める読み方について以下のように解説しています。子どもには、読み手の「自然な感情」が伝わります。その人の想いや生き様が、読み聞かせに如実に反映されるのです。(中略)感情を込めて行う読み聞かせは、子どもたちに様々な想いを伝えることで、子どもの感受性を豊かにします。(StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもの「感受性」と「想像力」。絵本の読み聞かせ方を変えるだけで、その両方が同時に育つ?)例えば、読み手が「『頑張ることの重要性』を伝えたい」と思いながら読み聞かせをすると、子どもが「頑張ることって大切なんだな」と気づくことにつながります。無理に感情を込めようとするのではなく、絵本のストーリーに沿って感じたままに読み聞かせをすれば充分です。・棒読みをする→想像力が高まるこちらも、絵本スタイリスト®の景山聖子さんが紹介しているメリットです。景山さんの絵本講座の参加者の方に、棒読みで読み聞かせをしてもらったところ、子どもたちは「絵が可愛い」「私ならこうする」など、絵本の内容から想像したことを感想として述べてくれたのだそう。読み聞かせにまつわるQ&A続いて、読み聞かせにまつわるさまざま疑問について解説していきます。Q. 子どもが毎回同じ本ばかり選ぶけど、どうすればいい?A. 子どもがお気に入りの本ばかり繰り返し読みたがったら、飽きるまで読んであげましょう。東京大学大学院教育学研究科の針生悦子教授は「子どもが同じ絵本を繰り返し読みたがるのを不思議に思われるかもしれませんが、大人が流行の歌を何度も聞きたくなるのと同じです」と述べており、同じ本を繰り返し読むことを肯定しています。親としては「色々な本を読んだほうが刺激になるのでは?」と思いがちですが、同じ本を何回も読むのは、まだその本についての探求心や好奇心があるということなのです。 Q. 子どもが読み聞かせの途中で質問ばかりしてきて、読み進められないときは?A. 読み聞かせの途中に質問攻めにあうと、つい「最後までしっかり聞いて!」と言ってしまいそうになりますよね。しかし、教育評論家の親野智可等先生によると、そんなときは子どもの質問にしっかり答えてあげることが重要とのこと。子どもが疑問に感じたページを一緒に読み返すのもおすすめです。大切なのは、本を最後まで読むことよりも、子どもに読み聞かせは楽しいと思ってもらうことです。 Q. 絵本よりも図鑑を好んで、読み聞かせの時間が作れないときは?A. 読み聞かせというとどうしても絵本のイメージが強いですが、子どもが好むものを一緒に共有することが大切です。教育評論家の親野智可等先生は、読み聞かせの本について「子ども本人が『おもしろい、楽しい』と感じる本を優先し、大人が読ませたい本もときどき入れるくらいでちょうどいい」とおっしゃっています。そのため、図鑑が好きな子どもであれば、無理に読み聞かせをせずに、一緒に図鑑を眺めて楽しむのもよいでしょう。図鑑の内容について子どもと話し合ったりするのも、好きなものを共有するという意味で有効です。 ***読み聞かせには、子どもはもちろん、親にもうれしいメリットがあり、読み方次第でさまざまな効果が期待できます。親子で読み聞かせの時間を楽しみましょう。文/田口るい(参考)東洋経済オンライン|「本の読み聞かせ」が親子共に効果絶大な根拠ベネッセ教育情報サイト|読み聞かせで気をつけること[教えて!親野先生]StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「読み聞かせ」でなぜ学力が上がるのか?絵本がもたらす ”驚きの効果”StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「心の脳」に直接働きかける読み聞かせ。語彙を豊かにし、学力向上につながる読み方とはStudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもの「感受性」と「想像力」。絵本の読み聞かせ方を変えるだけで、その両方が同時に育つ?すくコム|絵本の読み聞かせは同じ本を繰り返すより、いろんな本を読み聞かせる方がいい?
2019年06月23日近年、習い事に通っている子どもが増えています。その割合は、8歳で9割近くに至るのだそう。皆さんの中にも、お子さんに習い事をさせたり、今後通わせることを検討したりしている方は多いかもしれません。では、習い事に期待できる効果とは何でしょう?知識や能力が身につくことだけでしょうか?今回は、習い事のもつ「本当の効果」をお伝えします。習い事、「なんとなく」通わせてませんか?習い事は、大きく分けて3つのジャンルに分けることができます。学習塾・英会話・公文などの「学習系」、水泳・サッカー・体操などの「スポーツ系」、ピアノ・習字・プログラミングなどの「芸術・技能系」です。多くの場合、親が子どもに習い事をさせる目的は、ジャンルごとに大きく異なります。たとえば、「学習系」なら受験のため、「スポーツ系」なら体力をつけるため、「芸術・技能系」なら情操教育のため、といった目的が考えられますよね。また、「サッカーをやらせたい」「ピアノが弾ける子に育てたい」など、習う内容そのものが目的になることも少なくありません。一方で、ジャンルを問わず、特別な目的がない状態で習い事を始める家庭もあります。たとえば、「自分が昔やっていたから」「子どもの友だちが通っているから」といった事情が考えられるでしょう。もちろん、それらも習い事を始める立派なきっかけのひとつ。しかし、習い事には、じつはジャンルを問わず期待できる本当の効果があるのです。目的を持たずに「なんとなく」習い事をさせている方は、習い事の醍醐味を知らないままかもしれません。では、具体的にどのような効果が期待できるのでしょうか。習い事の本当の効果とは・多様性を知ることができるウェブサイト「中学受験情報局『かしこい塾の使い方』」主任相談員の小川大介さんは、習い事が子どもに与えるよい影響のひとつが「多様性を知れること」だと言います。習い事は、保育園や幼稚園、学校などでは出会う機会のない異世代の人たちや、価値観の異なるさまざまな人たちと一緒に物事に取り組むチャンスが多いのです。習い事には子どもの成長に好影響を与えることがいくつも含まれています。ひとつは「多様性を知る」こと。世代や価値観が異なるさまざまな人に交じって、学校の先生とはちがう先生と習い事に取り組む。子どもは、これまで知らなかった世界を知ることになります。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|“後伸び”する子としない子の違い。成長後に学力が急伸する幼少期の過ごし方)多様性を知り、受け入れることは、グローバル化が進む現代を生きる子どもたちにとって欠かせない経験です。それが早期にできるとすれば、非常に価値のあることと言えるでしょう。・自分の成長を実感することができる小川さんはもうひとつ、「成長感覚をつかめる」ことを習い事のメリットとして挙げます。もうひとつが、自らの「成長感覚をつかむ」ということ。習い事は、やったらやっただけ成果が見えるようにできています。スイミングでも書道でも、はじめたからには「○級になりたい、○段になりたい」というふうに思うものでしょう。そのために、教室以外でも練習をするようにもなります。そして、努力を続けることで技能が身についていき、目標を達成したという成功体験を得る。これが、自分が成長していく感覚や挑戦意欲を育ててくれるのです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|“後伸び”する子としない子の違い。成長後に学力が急伸する幼少期の過ごし方)目標を掲げ、練習に励み、結果を出す。そういった一連の経験により、子どもは自分の成長を感じることができるのです。こうした経験は、次なる挑戦に対する意欲を大きく高めてくれます。そして、その新たな挑戦が、さらなる成長へとつながっていくのです。・「やり抜く力」を身につけることができる教育ジャーナリストのおおたとしまささんが習い事の意義として掲げるのは、『やり抜く力』を育ててくれることです。習い事とは、子ども自身が求めるものをすることによって、夢中になり、達成し、挫折を味わい、そして壁を乗り越えることで、「やり抜く力」を育ててくれるものであり、なんらかのスキルを得るのは副次的な成果です(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「教育虐待」のやっかいな実態。今の子どもには “決定的に足りない” 時間がある)「やり抜く力」とは、自分でやりたいと言ったことを最後まで頑張る力を指します。別名は「GRIT」(Guts=度胸、Resilience=復元力、Initiative=自発性、Tenacity=執念の4つの頭文字をとった言葉)。成功者に共通する要素として、今注目されている言葉です。・語彙力を上げることができる子どもの思考の発達や乳幼児期の親子の関わりを専門研究分野とする、十文字学園女子大学教授の大宮明子さんは、「習い事をしている子どもは語彙力が高い」と主張します。習い事は多様な人たちと出会えるだけでなく、コミュニケーションが取れるからです。今、語彙力は国語だけでなく全教科に必要な力として注目されています。言葉を知らなければ、教科書の内容を理解したり、試験の問題文を読んだりすることができないからです。また、言葉を知り、文章を読みこなすことは、AI時代を生き残っていくために必要な力とも言われています。そのなかでも、わたしが注目しているのが語彙力です。わたしも携わったある研究では、なんらかの習い事をしている子どもは、一切習い事をしていない子どもより語彙力が高いという結果が出ました。大好きな習い事をしていれば、先生や同じ教室に通う友だちとも積極的に話すことになります。そのコミュニケーションによって、語彙力が伸びたのだと推測できます。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「親の言葉遣い」に見る、成績優秀な子が育つヒント。語彙力が伸びる会話の特徴)楽しく続けて、醍醐味を味わおうこのように、習い事に期待できる効果は次の2つに分けられます。・人とのコミュニケーションにより得られるもの(=多様性を知ることができる、語彙力が上がる)・本人が努力し続けることにより得られるもの(=自分の成長を実感する、やり抜く力を身につける)注意したい点は、いずれも習い事を始めたからといって、必ず得られるものではないということです。先生や、一緒に習う仲間たちと積極的に接して関係性を築いていくのには、ある程度時間がかかります。また、本人が目標設定をし、それを達成すべく努力するのにも、ある程度の期間が必要です。つまり、習い事の醍醐味を味わうには、本人が前向きな気持ちでその習い事を継続できなくてはなりません。親にできることは、それをバックアップしてあげることです。たとえば、親自身も習い事に来ている人たちと積極的にコミュニケーションを取ったり、子どもが頑張っているところを褒めてあげたりすることが大切です。「あれもこれも」とたくさんの習い事をさせたり、嫌がる子どもを無理矢理通わせたりしては、習い事のもつ本当の効果は享受できません。習い事は、本人が心から楽しめて、自信を持って続けられるものであるべきなのです。***今、子どもに習い事をさせようか迷っている方は、習い事にどんなことを期待しているのかを、あらためて考えてみてください。それが本当に叶えられそうかどうか、叶えるためのバックアップができるかどうか見極めることで、子どもにとってよい判断が導けるのではないでしょうか。(参考)StudyHackerこどもまなび☆ラボ|“後伸び”する子としない子の違い。成長後に学力が急伸する幼少期の過ごし方StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「教育虐待」のやっかいな実態。今の子どもには “決定的に足りない” 時間があるStudyHackerこどもまなび☆ラボ|「親の言葉遣い」に見る、成績優秀な子が育つヒント。語彙力が伸びる会話の特徴StudyHackerこどもまなび☆ラボ|成功者に共通するGRIT。「やり抜く力」をぐんぐん伸ばす、4つの家庭習慣PR TIMES|『子どもの習い事に関するアンケート調査』を実施株式会社バンダイ|「習い事に関する意識調査」結果mataiku|子供の習い事は本当に必要?専門家に聞く習い事の重要性と、親の心構え。ニュースイッチ|AI時代を生き残る術「教科書などの文章を読む力をまず身につけるべき」
2019年06月22日教育先進国として名高いフィンランド。そのメソッドが優れていることは世界的に有名ですが、実際にどのような教育や政策が実施されているかご存じですか?日本で行なわれている教育との差は、いったい何なのでしょうか?今回は、日本とフィンランドの教育を徹底比較していきましょう。フィンランドの学校教育フィンランドの教育が世界から注目されるようになったのは、1968年に行なわれた大々的な教育改革がきっかけでした。この改革により、フィンランドは「持てる資源のほとんどを教育に投資する」「男女、家族の背景、財力は関係なく、万人に教育の機会を与える」という方針のもと、1972年には初等学校・中等学校を総合学校として統合し、義務教育をこれまでの6年から9年に延長します。この総合学校とは、日本の小学校と中学校にあたるものです。9学年全てが同じ校舎で学ぶ場合と、1~6学年と7~9学年の校舎が分かれている場合があります。総合学校を卒業した後、子どもの約半数は普通高校に進み、大学または応用化学大学への進学を目指します。それ以外の子どもは職業高校へ進み、実際の現場や学校などで職業訓練を受け、職業資格、上級職業資格、専門職業資格という3段階の資格を取得するのだそう。いずれの学校も、卒業までに2~4年かかります。待機児童問題とは無縁なフィンランド日本ではここ数年、保育園不足や待機児童問題が深刻化しています。厚生労働省の調査によると、平成29年度の待機児童数は全国で26,081人。前年比2,528人の増加でした。一方、フィンランドでは保育が必要な全ての子どもに保育施設を24時間確保することが各自治体に義務づけられており、違反した場合は罰則があります。そして、親の就労状況に関係なく、0歳から保育園(日本の保育園・幼稚園に相当)を利用することができるのです。また、総合学校での初等教育が始まる前の1年間は、保育園もしくは学校内でのプレスクール(就学前教育)に通って社会性を育てることが義務教育に含まれています。フィンランドと日本の教育比較日本とフィンランドには、幼児教育や義務教育のシステム以外にも、さまざまな違いがあります。・教育費日本では、認可保育園の場合は保護者の収入に応じた保育料がかかり、高校や大学では学費などの負担があります。しかしフィンランドでは、プレスクールから大学・大学院まで無料で通うことが可能です。総合学校では、教科書や給食も無料。高校では、教科書代の負担はありますが、給食は無料です。家庭の経済状況にかかわらず、学びたい子どもはしっかり学べるという体制が整っているのです。昨今日本で増えている、大学卒業後の奨学金返済が生活を圧迫しているという問題も、フィンランドであれば起こることがなさそうですね。・読書量フィンランドの読書量は世界1位。図書館の数はもちろん、図書館を利用しにくい地域を巡回する移動式図書館の数も多く、国民が図書館利用に熱心であることで知られています。昨今読書離れが指摘されている日本とは対照的ですね。ところで、「読書量が算数の成績を左右する」ことはご存知ですか?「読書量の多い人は国語の成績が良い」というイメージを抱いている方は多いかもしれませんが、「読書量が多いほど算数の偏差値が高い」という研究結果も出ているのです。2016年から2017年にかけてベネッセが行なった調査によると、読書量の多いグループと全く読書をしないグループとでは、読書量の多いグループのほうが全ての科目において成績が良く、中でも算数の偏差値において最も大きな差が開いたのだそう。フィンランドが教育先進国として成績を残している理由には、読書量も関係しているかもしれませんね。・授業や休みの日数フィンランドの年間授業日数は190日程度で、日本よりも40日程度少なくなっています。加えて、夏休みが2ヶ月。さらに、小学生のうちは宿題やテストもほとんどなく、塾もないので、学習時間そのものが他の国と比べて短い傾向にあります。小学生のうちから塾に通うことが当たり前になっている場合も多い日本からすると「そんなに休んで、勉強は大丈夫なの?」と不安になってしまいそうですが、逆に遊びと勉強の切り替えがしっかりとできるようになり、限られた時間で集中して学習に取り組むようになるのです。・PISAテストの結果フィンランドは、経済協力開発機構(OECD)が3年に1回、世界各国の15歳の子どもを対象に実施している「国際学習到達度調査(PISA)」で常に上位となっていましたが、2016年には数学の結果が12位と順位を落としています。一方で日本の数学の成績は5位でした。しかし、フィンランドではこの結果を受けても教育制度の改革をする予定はないそうです。その理由は、フィンランドの教育指針は生徒の勉強時間を多くすること“ではなく”、「学校を楽しくおもしろい場所にすること」だから。順位という数字に一喜一憂することなく、教育の本当の目的をしっかりと見定めているのです。・地域の子育て支援日本では、ワーキングマザーや、子どもがいる共働き家庭に対する理解や支援が、まだまだ充分ではありませんよね。一方、フィンランドのヘルシンキ市には、「レイッキプイスト」という日本の学童保育と子育て支援センターを併せたような施設があります。ここでは、おやつ代のみという格安の料金で放課後の学童保育を利用できるほか、夏休み期間は子どもに無料で昼食を提供するサービスを行なっているそう。このように、社会全体で子育てをする文化があり、子育てと仕事が両立できる体制が整っているのです。フィンランド式教育のメリット日本に比べて授業時間が少なく、休暇を十分に取っているフィンランドの教育ですが、さまざまなメリットがあります。一般財団法人基礎力財団理事長の陰山英男氏いわく、勉強は短時間で済ませたほうが学力が上がるのだそう。小学校高学年では、2時間程度をピークに、3時間、4時間と学習時間が増えるにつれて成績が落ちていったという結果が出ていると言います。反対に、学習時間が短ければ、そのぶん集中して学習することができるようになり、脳が鍛えられていくのだそう。「○分だけ」と時間を決めて行なうことで、毎日続けやすくなる効果もあるため、勉強の習慣も身につきやすくなります。また、自由時間がきちんと確保されていることから、自分の得意分野を見つけたり個性や能力を伸ばしたりする機会につながり、子どもの自己肯定感を伸ばすきっかけになるのも利点です。幼少期から習い事や塾などの教育に熱心になるケースが多い日本ですが、たまにはフィンランドのように、「遊ぶ時間を十分確保して、限られた時間で集中して勉強する」ことを実践してはいかがでしょうか。***フィンランドと日本の教育には、それぞれ優れた面があります。子どもの性格や生活環境に合わせて、適宜使い分けてみるのもいいかもしれませんね。文/田口るい(参考)Compathy Magazine|日本も後に続け!世界一の学力を誇るフィンランドの教育とは?こどもまなび☆ラボ|「フィンランド教育」の特徴とは?「教育費無料」にとどまらない、教育大国のシステムホンシェルジュ|ゆとり教育風のフィンランド教育?特徴と課題、日本の教育との違いに迫るクーリエ・ジャポン|子供を高い私学に入れるのはカネの無駄?「PISA」の結果を各国メディアはこう報じた東洋経済オンライン|フィンランドのワーママに「罪悪感」などない厚生労働省|「保育所等関連状況取りまとめ(平成 29 年4月1日)」カレントアウェアネス・ポータル|フィンランドの公共図書HugKum|小1は15分、小2は30分。勉強は短時間で済ませるほうが、学力が上がる!【隂山英男の家で伸ばす! 子どもの学力】こどもまなび☆ラボ|読書量が算数の成績を左右する!?子どもの学力を上げるために「1日数分」からできること影山ラボ|子どもは無限に育つ
2019年06月22日世の中に「勉強が大好き」な人は、いったいどれくらいいるでしょうか?子どもだけでなく、大人の実社会を見渡しても「勉強が大好き!」という人に会うのはとても難しいことかもしれません。東大を首席で卒業し、現在は執筆業やコメンテーターとしても活躍する山口真由さんも、これまでの著書のなかで「勉強は楽しいものではない」と率直な感想を述べています。ただ反面、「その楽しくない勉強にも、すごくいい部分がある」ということも強調されています。「勉強しなさい!」と我が子にいうのは簡単ですが、「なぜ勉強をするのか」という具体的イメージの共有も大事なこと。そこで、山口さんが感じてきた、「勉強の良い部分」と、「勉強するうえで忘れてはならない大切なこと」をレクチャーしてもらいます。構成/岩川悟(slipstream)写真/川しまゆうこ勉強の良いところは、やればやっただけ成果が出ることわたしがこれまでの人生で努力を費やしてきた「勉強」について、思うことをお伝えしたいと思います。勉強の良いところは「やればやっただけ成果が出る」ところだと考えています。たとえば、音楽やスポーツなどは、プロとして稼いで裕福に生活していけるのは上位5%程度の厳しい世界。でも、勉強は活躍できる裾野が広く、勉強さえしていればがんばったぶんだけなにかが確実に手に入ります。つまり、たとえ勉強で上位5%に入れなくても、勉強したことが無駄になることはないのです(もちろん、音楽やスポーツの分野でも上位5%に入れなかったからといってそれまでのすべてが無駄になるわけではありませんが)。勉強はオール・オア・ナッシングではなく、社会にさまざまな受け皿があります。そのため、社会で生き抜いていくためには、じつは勉強はかなりコストパフォーマンスが良い方法だと見ることができます。なにごとも、将来の目標をしっかり持っていれば、努力を続けていくモチベーションになります。でも、ぜひみなさんにお伝えしたいのは、たとえその目標に勉強が必要なさそうに思えても、勉強はしておいたほうがいいということです。勉強がいつ役に立つのかは、人それぞれです。もちろん、受験や就職だけに役立つものではありません。勉強で得た知識そのものが役立つこともあれば、考える力や課題解決力、分析力、計算力など、人生のあらゆる場面において勉強した経験は役に立ちます。勉強をすれば、そのぶんだけ活躍できる場所が社会には用意されているのです。勉強でなにより大切なのは、細かく区切った「目標」を持つことわたしは、目標を達成するために、勉強をするという考えを持っています。となると、勉強でなにより大切なのは、まず「目標」を持つことになります。ただ、勉強を手段と割り切るだけでは、ふだんの勉強を続けていくのを難しく感じる人もいると思います。遠い目標や「なりたい自分」を思い描くのは大きなモチベーションになりますが、それだけでは、勉強の苦痛に耐えることが難しいのも現実。そこで、勉強の効果を上げるためには、最終的な目標だけでなく、その過程での小さな目標をいくつか立てることをおすすめします。たとえば、資格試験に臨むなら、そのための模試の判定でもいいし、TOEIC®なら、いまのスコアよりも少しだけ上のスコアを目標にするのです。このときのポイントは、少しがんばれば手が届くくらいの目標を設定すること。高い目標を設定して達成できずに挫折感を味わってしまうと、「根拠のない自信」も傷ついてもとも子もありません。具体的な目安としては、いまのプラス5%程度の目標値を考えると良いと思います。気合だけで勉強を続けることはできません。でも、小さな目標をクリアしていく「達成感」を意図的に配置していくことで、少しずつ最終的な目標へと近づいていけます。また、適度な負荷をかけ続けることで、ストレス耐性も増していくでしょう。※TOEIC®はエデュケーショナル・テスティング・サービス(ETS)の登録商標です。この製品はETSの検討を受けまたはその承認を得たものではありません***勉強というのは、覚えるべきことをひたすら覚え、同じルーティンを繰り返していく、まさに忍耐の作業です。でも、そこに苦痛を感じるのは子どもも大人も同様であって、むしろそれは正常なことなのです。ではなぜ、勉強をしなければならないのか――。それは、目標を達成するため、社会で生き抜くための手段といえるでしょう。もし、「勉強は楽しいものだ」と思える瞬間がくるとすれば、それはゴールに辿り着いたときなのかもしれません。そんなゴールを迎えることができるよう、子どもの勉強を考えていきたいものですね。※今コラムは、山口真由著『東大首席が教える 賢い頭をつくる黄金のルール』(セブン&アイ出版)をアレンジしたものです。『東大首席が教える 賢い頭をつくる黄金のルール』山口真由 著/セブン&アイ出版(2019)【プロフィール】山口真由(やまぐち・まゆ)1983年、北海道出身。東京大学法学部在学中3年次に司法試験、翌年には国家公務員Ⅰ種に合格。学業成績は在学中4年間を通じて「オール優」で4年次には総長賞も受けるなどし、同大学を卒業。卒業後は財務省に入省し、主税局に配属。2008年に退職し、翌年から2015年まで大手法律事務所に勤務し企業法務に従事。その後、1年間ハーバード・ロースクールへの留学をし、ニューヨーク州弁護士資格も取得。現在は、テレビのコメンテーターや執筆でも活躍している。レギュラー番組として、『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系/毎週月曜コメンテーター)。著書には、『東大首席が教える超速「7回読み」勉強法』、『東大首席が教える「間違えない」思考法』(PHP研究所)、『リベラルという病』(新潮社)、『東大首席・ハーバード卒NY州弁護士と母が教える 合格習慣55 家庭でできる最難関突破の地頭づくり』(学研プラス)などがある。
2019年06月21日ベビーカレンダー編集部がおすすめの「妊娠・出産・育児マンガ」をご紹介♪ 今回は、2018年1月生まれの息子さん、えーくんの様子をつづるマンガが人気のsawawa(@ageharumaki_life)さん。Instagramでフォロワー7,000人超えの人気イラストレーターさんです。その中から、「寝かしつけあるある」をピックアップしてご紹介します。 寝ない…寝ないけど 生後6カ月、寝かしつけ中の萌えすぎる一コマ。「もう寝かしつけなんて、どうでもいいわー!」っと叫びたくなる、そんな可愛さ。手がぷるぷるしてるところも、めりこんだほっぺも、なんとも言えない…♡ なんか生ぬるいなって思ったら… 生後8カ月。寝たふりして寝かしつけ中、「なんか耳が生ぬるいなぁ」なんて思っていたら、まさかのよだれー! ママを起こすには最高の技、かも?! 母の「?」を埋めましょう。 「A.寝てくれ」、ですよねー!!! 生後9カ月になるとハイハイもつかまり立ちも上手になって、運動量が足りない日は寝る前にバッタンバッタンと暴れまわるようになったそう。 セルフトントンで寝てくれるように!子どもが眠るときに落ち着くスタイルって、ありますよね。生後10カ月になったえーくんの場合は、自分のお尻を自分でトントンするという「セルフトントン」スタイル! もうすぐ寝そう…というタイミングで、そーっと離れてあげるほうが、眠りやすいみたい。自分でトントンしてくれるのは良いですよね~! 寝かしつけで苦労するママも多いですが、いずれは一人で眠れるようになるもの。寝かしつけが必要な時期もわずかだと思うと、この寝かしつけの変化も楽しめそうです。えーくんの成長を一緒に楽しめる、sawawaさんの育児マンガをぜひチェックしてみてくださいね! この投稿をInstagramで見る sawawaさん(@ageharumaki_life)がシェアした投稿 - 2019年 6月月3日午前8時30分PDT 協力/sawawa(Instagram:@ageharumaki_life)
2019年06月20日わが家には3歳と6歳の子どもがいますが、なかなか身につかないのが「お片付け」。部屋におもちゃが散乱し、結局片付けるのは私です。お片付けしやすいよう収納ボックスを設置しているのですが、それだけではダメなよう。今回は、先輩ママに聞いた「子どものお片付けを成功させるテクニック」をご紹介します。 おもちゃを片付けやすい量にする先輩ママの家に遊びに行ったときのこと。おもちゃの量が少ないことに気付きました。先輩ママは、今、夢中になっているおもちゃだけを選んで出しているそうです。 量が少ないと子どもが片付けやすいことを聞き、家に帰っておもちゃの整理整頓を開始。今はもう興味のないおもちゃをしまうと、驚くほど収納ボックスがすっきりしました。おもちゃの量を減らすことで大量に散らかることがなくなり、子どもが片付けやすい量になりました。 片付けの分類はおおまかにするわが家では、おままごと類は黄色のボックス、ボールは赤色のボックスなど、細かく分けていました。見た目もきれいで取り出しやすい。ところが、それは私の自己満足だったんです。子どもにとって分類が細かいとお片付けがしにくくて当然。特に2歳前後の小さな子どもだとなおさらです。 そこで先輩ママに教わったのが「片付けの分類はおおまかにすること」です。たとえばブロックだけは赤色のボックスに入れて、あとは大きな箱にしまえばOKなど。お片付けの難易度を下げられますよね。 イラストなどで収納ボックスをわかりやすくするたとえば車のおもちゃを収納するボックスに車のイラストを貼り付ける。最初は手間がかかりますが、一度やっておけば、あとがラクだと先輩ママは言います。 私は今まで黄色のボックスはおままごと入れなど、カラー別に収納をするよう説明していました。しかし、言葉だけでは大人だってなかなか覚えられませんよね。そのことに気付いたんです。なるべく子どもに伝わりやすくするためには、イラストが一番わかりやすいかもしれません。 子どもがお片付けをしてくれるようになれば、ママ自身もラクになりますよね。まずわが家で心がけようと考えているのは食事前などに必ずおもちゃを片付ける場面を明確につくること。お片付けの習慣化はまだまだわが家の課題です! イラスト:sawawa著者:田中由惟一男一女の母。二人目の出産を機に食品会社を退職。現在は子育てのかたわら、記事執筆をおこなう。趣味はスポーツとピアノ、美味しいものを食べること。
2019年06月20日近年、虐待に関する悲しいニュースが続いていますよね。同じ子どもを持つ親として、心を痛めている方も多いのではないでしょうか。しかし、こうした問題は決して他人事ではありません。なぜなら、虐待は悪意のもとになされるものだけではないから。「子どものためによかれと思って」なされた行動が、親の自覚のないままに虐待とみなされるケースもあるのです。特に、「教育虐待」にはその傾向があります。「教育虐待」は、ここ数年で広まってきた言葉ですが、どのような行為を指すかご存知でしょうか?「知らない」という方のなかには、気づかないうちに当てはまってしまっている方もいるかもしれません。そこで今回は「教育虐待」と「教育虐待を未然に防ぐ方法」についてお話しします。「教育虐待」は子どもの将来に多大なダメージを与えるみなさんは、自分の子どもに下記のような「しつけ」や「教育」を行なっていませんか?・宿題が終わっていないと、夜遅くまでやらせる・解けない問題があると、「どうしてできないの?」と責める・塾や習い事でスケジュール漬けにしている・親子間の約束が守られなかったとき、厳しく責め立てる・成績が悪いと、「努力が足りない」「人間のくず」などの暴言を浴びせる一見、よくある「しつけ」や「教育」のように思われるかもしれません。しかし、これらの行為が子どもを過度に追い詰めた場合、「教育虐待」とみなされることがあります。青山学院大学の古荘純一教授によると、「教育虐待」とは、教育を理由に子どもに無理難題を押し付ける心理的虐待のこと。2011年の「日本子ども虐待防止学会」で初めて発表された、新しい考え方です。「教育虐待」を受けている子どもは、大人になってからも、他者からの指示がなければ動けなくなる恐れがあります。また、自信が持てない、何をしても楽しめないなど、心の問題を抱えてしまうことも。学校生活や就職活動を機に不適応行動を起こす人も少なくありません。こうしたことから、「教育虐待」は子どもの将来に多大なダメージを与えるということがわかります。「子どものために」と言いながら子どもを追い詰める親たち「教育虐待」という言葉を広めた武蔵大学の武田信子教授によると、教育虐待に走りやすい家庭は、下記のような特徴を持っている家庭が多いと言われています。1. 親自身が、経済的事情などで進学を諦めた経験がある2. 母親が不本意に仕事を辞めて、専業主婦になった3. 子どもの両親ともに高学歴で社会的地位が高い上記の1と2の親が「教育虐待」をした場合の理由として考えられるのは、自らの生き方や学歴にコンプレックスを抱いているということ。子どもには同じ苦しみを与えたくないという強い思いから、自分が経験した失敗を避けるための教育に力を入れてしまいます。一方、3の親の場合は “失敗知らず” ですが、逆に自らの成功体験に依存しているということが考えられます。自分の知らない道を子どもに歩ませることを極端に恐れ、子どもにも高学歴・社会的地位の高い大人を目指すことを強制してしまうのです。社会福祉法人カリヨン子どもセンターの石井花梨事務局長いわく、教育虐待は決して特別な家庭に限った話ではないのだそう。表面的には「子どものために」という親心のもとに行なわれているのです。しかし、本当に子どものことを考えていると言えるでしょうか。本当に子どものことを考えていれば、子どもを追い詰めるほどの行為には至らないはずです。そう考えると、「教育虐待」をしている親は、「子どものために」と言いながら、実際には自分のために、過度な「しつけ」や「教育」を行なっているのだと言えますよね。その教育、本当に必要……?子どもを見て考え直そうとはいえ、「しつけ」や「教育」そのものを怠るわけにはいきません。親として、子どもに適切な「しつけ」や「教育」を行ないつつ、「教育虐待」しないようにするには、どうすればいいのでしょうか。小児科医の高橋孝雄さんは、親の「しつけ」や「教育」が虐待になるかどうかの分かれ目は、「親の関心が子どもにあるのか、テストの点数や合格した学校などの成果にあるのか」であると言います。前者であれば、自分の行為によって子どもが追い詰められていたら、すぐに気づいて対処できるはずです。しかし、後者の場合、子どもの変化に気づけないまま、子どもを追い詰め続けてしまうことがあります。教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏いわく、現在の教育虐待には、「親自身の不安を解消しようとしている」という構造があるのだそう。我が子が新しい時代を生き抜いていけるのかが不安で、親が思う解決策を与えようと無理やり難関大を目指させたり、子どもの望まない習い事でスケジュールを埋めたりしてしまうのです。しかし、子どもたちがこれから生きていくのは、親たちが生きてきた世界とは全く異なり、予想もつかない世界。おおた氏は、親が与える解決策にはあまり意味がないと言います。まずは、「親は無力である」と親自身が自覚することが大切なのだそう。「教育虐待」を未然に防ぐのに必要なのは、まず子ども自身に関心を持つことです。子どもの様子をよく観察し、今行なっている「しつけ」や「教育」が本当にその子に必要なのか、よく考えなくてはなりません。たとえば、子どもが習い事に行くのを嫌がったとき、たまたま気分が乗らないだけなのか、ずっといやいや通っていたのか、はっきりさせることが必要です。そのうえで、なぜその習い事に通わせているのか、親の考えを伝えます。最後は、「続けるのか辞めるのか、あなたが決めていいよ」と、子どもの意思を尊重しましょう。子どもの人生は子どものものであることを自覚したうえで、子ども自身の生きる力を信じてあげることが大切なのです。***子育てをしていると、子どもが自分の分身であるかのような錯覚につい陥ってしまうことがあるでしょう。だからこそ、より幸せな人生を歩めるように導かなくては、と考えてしまいます。しかし、子どもは親と同じひとりの人間であり、親の分身ではありません。どんな人生を歩むことが幸せか、決めるのは子ども本人です。親が特別なことをしなくても、自分の思う幸せを追い求め、たくましく道を切り開いていきます。親は、それを一番近くで応援してあげればいいのです。(参考)こどもまなびラボ|「教育虐待」のやっかいな実態。今の子どもには “決定的に足りない” 時間がある日経DUAL|「勉強しなさい」エスカレートすれば教育虐待に東洋経済ONLINE|中学受験で教育虐待しやすい親の2つの特徴東洋経済ONLINE|「あなたのため」が「教育虐待」に変わるときPRESIDENT Online|なぜ「教育」という名の「虐待」が増えているのか朝日新聞DIGITAL|しつけに名を借りた虐待…どの家庭でも起こりうる「考える力」を伸ばす『地図育®』コラム|教育熱心も度が過ぎると虐待になる?あなたのその行動が”教育虐待”にならないように気を付けよう日経DUAL|「教育熱心」と「教育虐待」線引きはどこに?
2019年06月20日男女平等の意識が高まった影響もあり、料理好きな男性が増えてききました。でも、「やっぱり料理は苦手……」という父親もいます。そういう父親の場合、いくらその重要性は知っていたとしても、「食育」についてはどうしても母親に任せがちになってしまいます。それでも、料理が苦手な父親にもできることがあるようです。アドバイスをしてくれたのは、食育、家族社会学を専門とするお茶の水女子大学生活科学部非常勤講師の松島悦子先生。食育に父親がかかわることの重要性、かかわり方を教えてくれました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)父親は自分ならではの料理を!母親の料理とのすみわけが大切料理に限らず、父親が子育てに積極的にかかわることは、子どもの成長にたくさんの好影響を与えます。というのも、子どもというのは接する大人からあらゆるものを吸収するので、接する大人は多ければ多いほどいいからです。どんなに「似た者夫婦」といわれても、父親と母親では人格も子どもとの接し方もちがいます。父親が子育てに積極的にかかわれば、子どもにとっては学ぶべきサンプルがひとり(母親)からふたりに倍増するわけですから、コミュニケーション能力が高まったり、人間関係をうまく築けるようになったりと、いくつものメリットを得られるのです。もちろん、調理に父親がかかわることも子どもに好影響を与えます。とくに男の子は、父親を真似たがって父親をモデルにして成長しますから、その傾向が顕著。ですから、父親が楽しそうに料理をつくっていれば、真似をしたがって楽しく料理をするようになります。両親ともに料理することが好きな家庭などでは、調理方法によって父親と母親のつくる料理の分野が決まっているという場合もあるでしょう。揚げ物は父親の得意分野という家庭だと、中学生くらいの男の子でも父親と同じように揚げ物をするというケースも見られます。わたしは、この父親と母親でつくる料理のすみわけをすることは、円満な家庭を築くうえでとてもいいことだと考えています。父親が料理をするときに母親と似たようなものをつくってしまっては、子どももつい比べてしまいますよね?でも、父親が「○○の素を使ったチャーハン」や「秘密の隠し味を入れたカレー」など、たとえ簡単な料理でも母親とはちがうタイプの料理をつくれば、子どもからすれば「お母さんの料理も美味しいけど、お父さんの料理もまたちがって美味しい」と、どちらも尊敬することになるのです。父親が調理に参加すれば食卓が楽しくなるまた、これは父親に限ったことではありませんが、好き嫌いも親に似る傾向にあります。親に好き嫌いがなければ、好き嫌いがある場合に比べて食卓に並ぶ料理や食材のバリエーションが豊かになる。すると、子どもは幼い頃からたくさんの味に親しむことになりますから、嫌いなものが限りなく少なくなるのです。もちろん逆に嫌いなものを親自身がずっと避けていると、子どもだってその食べものを嫌いになる確率は高くなります。ここで大切にしてほしいのは、食事をしている際の親の態度です。親が「美味しい!」といいながら食べているものは、子どもには美味しく見えますし、美味しく感じられるからです。また、そもそも好き嫌いというものは、なにか嫌な思い出を伴ってできてしまうことも多いものです。親からひどく叱られたときに食卓に並んでいたものがいまでも苦手だという人もいるのではないでしょうか。でも、お父さんもお母さんも食卓で楽しそうにしていて、なんでも「美味しい!」と食べていれば、食卓での嫌な思い出ともに好き嫌いを子どもに植えつけてしまうこともないはずです。「食卓を楽しくする」ため、父親はなんでも「美味しい!」と食べるだけでなく、調理に参加することも大切です。母親だけに調理を押しつけてしまうと母親の負担ばかりが増します。そうすると、お母さんは子どもの前でもついため息をついたり不機嫌になってしまったりするかもしれない。そんな食卓が子どもにとって楽しいわけがありませんよね?母親の肉体的、精神的な負担を軽減し、食卓を楽しくするために世のお父さんにはもっともっと積極的に日々の調理にかかわってほしいのです。料理が苦手な父親にもできる「食育」ですが、まったく調理経験がない父親がいきなり調理にかかわることは難しいでしょう。もちろんそこで無理をする必要はありません。調理というかたちではなくても、子どもの食育にかかわることはできます。子どもの好き嫌いをつくらないということとは別の意味でも、まずはなによりも、食卓を楽しくするということを意識してください。料理をしてくれたお母さんに対して、「ありがとう」と感謝とねぎらいの言葉をかけて、「美味しい!」といいながら料理を食べるのです。その姿を子どもはしっかり見て真似するようになります。また、食卓で話題を提供するということもできますよね。お母さんに「これはどうやってつくったの?」と質問すれば、子どもは調理法にも興味を持つようになるでしょう。また、子どもの知識を引き出すということもできます。小学生になれば子どもたちは学校で毎日学んでいますから、大人なら忘れてしまったようなことも知っていたり、現在進行形で勉強している子どものほうが最新の知識や正確な情報を持っていたりすることも珍しくありません。栄養のこと、食べものの旬、食の安全、環境といったことについての話をすれば、学校で学んだ知識と実生活が結びつくので、学びがより楽しいものになるはずです。その会話のなかで、わからないことや疑問が出てくれば、食後にインターネットや教科書で一緒に調べてみましょう。そうすることで、子どもの食への意識はぐっと高まります。このように、料理が苦手なお父さんでもできることはたくさんあります。ここで紹介したことは一例ですから、自分の知識や経験を生かして、子どものためにお父さんができる食育をたくさん探してみてください。『白熱教室 食生活を考える』松島悦子 他 著/アイ・ケイコーポレーション(2016)■ お茶の水女子大学生活科学部・松島悦子先生 インタビュー一覧第1回:「食育=食生活の教育」ではない!?常識を超えた、食育の“真のねらい”第2回:「家族で食べたい」と素直に言えない子どもたちに、親がすべき“食事の場”づくり第3回:子どもに「調理」をさせるメリット。料理をする子・しない子の“内面”の大きな違い第4回:「父親のかかわり」で食は2倍豊かになる!料理が苦手でもできる食育の方法とは?【プロフィール】松島悦子(まつしま・えつこ)お茶の水女子大学生活科学部非常勤講師。専門は食育、家族社会学、消費者科学。お茶の水女子大学家政学部食物学科卒業、同大学大学院人間文化研究科博士後期課程修了、博士(社会科学)。東京ガス都市生活研究所勤務、お茶の水女子大学食育プロジェクト講師、和洋女子大学家政学群准教授を経て現職。著書に『子育て期女性の「共食」と友人関係』(風間書房)、『白熱教室 食生活を考える』(アイ・ケイコーポレーション)、『食物学概論』(光生館)、『消費者科学入門』(光生館)などがある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年06月20日「食育」への関心が高まるなか、「親元を離れたときに困らないように……」と考えて、子どもを料理教室に通わせている親が増えています。でも、調理経験によって子どもが得るのは、調理の知識や技術だけではない――。そう語るのは、食育、家族社会学を専門とするお茶の水女子大学生活科学部非常勤講師の松島悦子先生。では、松島先生が考える「調理経験によって子どもが得られるもの」とはどんなものでしょうか。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)料理は子どもの自己肯定感と自己効力感を高める「食育」とひとことでいってもその中身は幅広いもので、「実際に調理をする」ということも含まれます。いま各地で子ども向けの料理教室やイベントが開かれていることを見ても、食育の重要性を親が強く意識していることがうかがえます。また、子ども向けの料理教室やイベントのニーズの高まりの背景にはジェンダーに関する価値観の変化もあるように思います。いまは男女問わずに料理ができる人が尊敬されるようになってきて、古くからある「料理は女性の役割」という偏見がなくなってきました。だからこそ、男の子であれ女の子であれ、子どもに料理を学ばせようとする親が増えているのではないでしょうか。もちろん、調理経験は子どもにさまざまなものをもたらしてくれます。多くの手順がある調理は「小さな成功体験」を積み重ねる作業ですから、自己肯定感を高めることになる。そして、「目標を達成できる!」という「自己効力感」も高めることになります。以前、わたしが中高生を対象に行った調査では、「普段、料理をする」という子どもは、料理をしない子どもに比べてチャレンジ精神や達成感、工夫する楽しさ、人に食べてもらうよろこび、褒められるよろこびなどを強く感じていて、自分の性格を肯定的にとらえるだけでなく、将来の夢を持つといった生きるうえでの積極性が強いことがわかりました。日本人の子どもたちは、外国の子どもたちと比べ自己肯定感が顕著に低いことが問題とされています。でも、料理をして小さな成功体験を積めば、自己肯定感と自己効力感を高められると推測できるのです。調理は成功体験を積み重ねるプロセスそれから、調理経験が子どもにもたらすもっとも重要なものとしては、問題解決能力が挙げられます。変動が激しいこれからの時代は、さまざまな問題が次々に立ち現れるでしょう。いままでのように知識と技能を習得するだけでは、それらの問題を乗り越えることはなかなか難しいはずです。そこで求められるものこそ、問題解決能力です。その力は、実際に問題を解決して成功体験を重ねることで得られます。調理というのは、わずかな時間でその一連のプロセスを完結できる素晴らしいものなのです。どんな料理をつくるかという課題を決めて、レシピや調理の手順という計画を立てる。その計画を実行してつくった料理を食べれば、美味しかったかどうかという評価、振り返りもできる。仮に失敗や反省すべきことがあれば、それは「次」への課題になります。しかも、その「次」は、それこそ翌日にだって試せるものです。成功体験を重ねるというプロセスを、どんなことよりも手っ取り早く家庭でもできるものが調理なのです。小学生くらいの子どもなら、それこそ目玉焼きをつくるという簡単なものでいいでしょう。子どもが一生懸命に目玉焼きをつくってくれたなら、つくってくれたことを褒めてあげてください。そして、「ありがとう」と感謝し、「美味しい」と褒めて、もし改善すべきところがあれば「今度はこうしようね!」とアドバイスしてあげましょう。目玉焼きのような簡単な料理をつくることであっても、先にお伝えしたプロセスを子どもはしっかり経験することになります。「興味を示したとき」が子どもに料理をさせるチャンス!子どもの発達はそれぞれ個人差がありますから、調理を経験させるべき適正年齢というものはありません。「子どもが調理に興味を示したとき」が、そのチャンスだと思ってほしいのです。料理をしている親の姿をじっと見つめたり、「やらせて」といってきたりする子どももいます。そのタイミングは、早い子どもなら2、3歳くらい。ピークは5歳頃です。もちろん、いくらそのタイミングがきたからといって、調理をするには多少の危険も伴いますから、親が忙しい平日に無理をして調理をさせる必要はありません。週末にでも時間をつくって、親自身がゆったりした気分でいられるときに子どもに調理をさせてみるのがいいでしょう。最初にやらせるのは、本当にちょっとしたもので構いません。調理器具を使ってなにかをかき混ぜるといったことでも、小さな子にはハードルが高いことなのです。最初は手を使ってレタスをちぎるとか、クッキーのうえにレーズンやアーモンドを乗せる、ハンバーグの種をこねるといったことがいいでしょうね。そのときのポイントは、あれやこれやと口出しをしないこと。危ないことをしようとした場合は別ですが、しっかり手順を教えたらあとは極力見守ってほしい。そうでないと、調理への興味を失いかねないからです。小学校に上がる頃になって危険性が理解できるようになったら、包丁やコンロを使った調理にも挑戦させてあげてください。大切なのは、子どもの成長を親がしっかり観察すること。ひとつできるようになったら、次は「ちょっとだけ難しそうなこと」をさせてあげることで、得られる達成感や次へのモチベーションも高まっていくはずです。ただ、そうした調理経験が子どもにもたらす「効果」に親が期待するのもわかりますが、わたしとしては別の視点も持ってほしいと思います。親子で料理をつくるときには、相対するのではなく基本的に横に並びますよね?狩りをして生きていた時代の名残なのでしょう。相対する相手に対しては、人間は本能的に「敵」だとみなします。一方、横に並ぶ相手は「味方」、大事な存在だとみなすのです。つまり、親子が同じ方向を見て並び、おしゃべりをしながら料理をつくることは、親子の絆を深めることになる。きっと、親子の関係をより良くしてくれるはずです。『白熱教室 食生活を考える』松島悦子 他 著/アイ・ケイコーポレーション(2016)■ お茶の水女子大学生活科学部・松島悦子先生 インタビュー一覧第1回:「食育=食生活の教育」ではない!?常識を超えた、食育の“真のねらい”第2回:「家族で食べたい」と素直に言えない子どもたちに、親がすべき“食事の場”づくり第3回:子どもに「調理」をさせるメリット。料理をする子・しない子の“内面”の大きな違い第4回:「父親のかかわり」で食は2倍豊かになる!料理が苦手でもできる食育の方法とは?(※近日公開)【プロフィール】松島悦子(まつしま・えつこ)お茶の水女子大学生活科学部非常勤講師。専門は食育、家族社会学、消費者科学。お茶の水女子大学家政学部食物学科卒業、同大学大学院人間文化研究科博士後期課程修了、博士(社会科学)。東京ガス都市生活研究所勤務、お茶の水女子大学食育プロジェクト講師、和洋女子大学家政学群准教授を経て現職。著書に『子育て期女性の「共食」と友人関係』(風間書房)、『白熱教室 食生活を考える』(アイ・ケイコーポレーション)、『食物学概論』(光生館)、『消費者科学入門』(光生館)などがある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年06月19日公共の場では静かに、邪魔にならないように…。子どもとのお出かけは周囲への気遣いでドッと疲れるというママ、多いですよね。わが子を育てるのはもちろん自分だけれど、どうしてここまで周囲に気を遣わなければならないのでしょうか?今回は「子育ては親だけに責任がある」という世間一般の風潮や子どものしつけについて 『今日からしつけをやめてみた』 (主婦の友社)を監修された柴田愛子先生にうかがいました。お話をうかがったのは…「りんごの木 子どもクラブ」代表 柴田愛子先生「子どもの心により添う保育」をモットーにした「 りんごの木 子どもクラブ 」代表。絵本作家。 保育者。育児書の執筆、雑誌への寄稿だけでなく全国で保育者向けセミナーや母親向け講演会をおこない支持を得る。NHK『すくすく子育て』出演。園で行っている「子ども達のミーティング」はテレビ・映画で取り上げられ「子どもの力を最大限に引き出している」と話題に。■子どものしつけ「それって、おかしくない?」――先生は 『今日からしつけをやめてみた』 のなかで「ママを脅かすしつけはいらないのでは?」という提案をされていますよね。では、ママやパパ自身が「子どもにどうしてもこれだけは伝えたい!」というしつけについては、どのようにお考えですか?柴田愛子先生(以下、柴田先生):そうね。伝えたいことってあるわよね。例えば「出されたものは食べる」というのがある。それは、残さず食べてほしいと思う「根拠」があればいいと思うの。――根拠、ですか…?柴田先生:「残さず食べなさい」というしつけの理由として「残したら、つくってくれた人に失礼でしょ」という人がいる。これ、ちょっと変じゃない…?つくってくれた人がいるのは分かるけど、だからおなかがいっぱいでも、すごく苦手なものでも苦しみながら食べなさいってことでしょ。それは、ちょっと変かなと思うのね。――残さず食べるのはいいことだと思うし、自分も親からそういわれてきました。でも、はっきりとした根拠ってなかったかもしれません。柴田先生:前にりんごの木クラブで遠足に行ったとき、お弁当がひっくり返ってしまった子がいた。中身は焼きそばだったんだけど、落とした子はそれを拾ってね…。1本ずつ水道の水で洗いはじめたの。――え…!柴田先生:洗った麺をお弁当箱に戻して、ゆすいで、食べはじめた。私は「え、食べるの?」と聞いたの。そしたら「そうだよ、食べなきゃいけないんだ」というのね。結局、全部食べたのよ。――全部ですか…!柴田先生:そのあと、子どもを迎えにきたお父さんに聞いたの。「お宅は、食べ物は残しちゃいけないとしつけているんですか?」って。そしたら「そうなんです」って。「どうして、そうやってしつけているんですか?」と聞いたら「僕の家は裕福じゃなかった。だけど食べることは親がきっちりやってくれたから、今の僕の体がある。僕はこの体があるから今、家族を養っていける。だから親に感謝している」と。――ふむむ…。柴田先生:そして「これ、やり過ぎですか?」って私に聞いたのね。だから「お宅のお子さんだから、それでいいと思います」と答えたの。それにね「妻はけして料理が得意じゃない。その妻が一生懸命つくっている姿を見たら、残していいっていえないですよ」だって…。いいお父さんでしょ! でも、お母さんは「落ちたものは食べなくても良かったのに…」って。そしたら、お弁当を落とした子は「え? 食べなくて良かったの?」だって。今度からこの子は落としたものは食べなくていいって分かるわよね。――そうか…! そうですね。食べなくていいときもあることが分かりましたね。柴田先生:こんなふうに、しつけはそれぞれの家によって違う。だから世間一般のしつけを取り入れたら数十、数百あるかもしれないけれど、親が大事にしていることを子どもに教えていけばそこに大きな柱ができる。そのあと、子どもがどう育っていくかは、その子の問題。苦しかったらしないし、感謝していたら同じようにやっていく。そうやって、つないでいくものなんじゃない? 親の思いを受け継いでいくことのほうが、きっと大事だと思う。■もっと頼って、もっと迷惑をかけて! 孤独をはね返す豊かな子育て――自分流のしつけでいいんですね…! 子育ての一般論にあてはめるより、自分流でやると自分もしっくりくる感じがします。柴田先生:そうね。お母さんはいろいろなものに脅かされることが多い気がするし、人を頼らない人も多い。「他人に迷惑をかけちゃいけない」というお母さんもいるわね。――あ、私もそうでした。夫も頼りにならないし、子育てはひとりでやらなきゃいけないものだと…。柴田先生:うんうん、そういうお母さんには「迷惑はかけるもの。迷惑をかけて人は生きていく。かけないのは孤独でしかない」って私はいうわね。――迷惑をかけたくない、と思うのは孤独…?柴田先生:迷惑をかけて、かけられるような人間関係をどれだけ築いているかが、お母さんや子どもの豊かさであると思うの。迷惑をかけられる人を何人持っているか。それが「生きやすいこと」につながる。りんごの木クラブでも具合の悪いお母さんがいると、おうちまで子どもを送り迎えするのね。お弁当をつくったりして。子育ては思うようにいかないものだから、自分が動けないときに「お願い!」っていえる関係を持っていると、生きやすいじゃない? 国や行政に頼ってもなかなかうまくいかないから、そんなときは地域力、友だち力なんかが力を発揮するわね。――何かあってもお願いできる人が側にいれば、ママも心強いですね…。柴田先生:そうね。でも、なかにはお手伝いしたら「本当に申し訳ない…」って私に謝るお母さんもいた。だから私は「頼まれるって、うれしいんだよ」と伝えたの。「お願いできますか?」といわれると、私が役に立てる! って、うれしくなる。あなたには申し訳なく思うことでも、私にとってはうれしいことなのって(笑)。――そんなふうにいわれたら、泣いてしまいます(涙)。柴田先生:「何かお返しがしたい」といわれたけど、それは違う人にするといい。ありがたかったことは「ありがとう」っていえばそれでいい。その人に返すのではなくて、今度は違う人の役に立つ。元気になったときに、頼まれたらうれしいって思う出来事がきっとあるから、そのときのためにお返しはとっておいてほしいわね。■子どものしつけは親だけの責任?――少しずつでも人を頼りにできたら「私はひとりなんだ」という子育て中の孤独が薄らいでいきそうですね。そもそも「まわりに迷惑をかけたくない」という思いは「子育ては親がするもの」という世間一般の空気感が影響しているようにも思えます。柴田先生:しつけって「子どものため」というより、周囲の目が怖いからやっているのかもしれません。例えば、電車の中で子どもが騒いだら「しーっ」というでしょう? でも黙るのは一瞬(笑)。親だって困ってるのよ。――そうです、そうです! いちばんなんとかさせたいと思ってるのは私たちなんです…!柴田先生:そうよね。そんなときって、親じゃない別の大人が「うるさいよ」っていえばいいと思う。子どもは親じゃない人からいわれると、ビクっとするわよ。――確かに、すごくびっくりしそうですね(笑)。柴田先生:困っている人に対して「親であるあなたがなんとかしなさい」って冷たくない? いくつになっても子どものことは親のせい。一生、親が責任を持っていかなきゃいけないなんて、そんなバカな話ある?――私も、そう思っていいんでしょうか…?柴田先生:子どもと大人は生まれたときから違う人間で別人格なの。だから、子どもがうるさくしたときに「本当に困っちゃうよね。元気なのはありがたいんだけどね~」っていってくれる人がいたら、どんなにありがたいかって思う。「親だけがしつけなさい」という考え方は違うんじゃないかしら。――そういう考えの人が増えたら、肩身の狭い思いをするママもきっと減っていきますね。柴田先生:保育園の建設で反対運動があったりするけど、反対する人は自分の子育てのときはうるさいなんて思わなかったと思う。でも、静かな環境でずっと過ごしていると、気になるようになってしまうのね…。自分の不都合は、遠ざけて排斥する風潮なんでしょうね。何よりも自分だけが大事。子どもがいてこその社会なのにね。でも、実をいうと私も「うるさい」と思うことはあるのよ。遠足でたくさんの子どもたちが電車に乗ってきたりすると、車両を変えたくなったりします。でも、ふと子どもの表情が目に入ると、「ああ…そうか、うれしいのね」って、はしゃいでいる子どもたちの気持ちが伝わってくる。自分の遠足のときの光景さえ浮かんでくると「楽しんできてね」なんて気分になるのよね。子どもを物体として見ていると「自分を脅かすもの」に感じる人もいるかもしれないけど、そんなときは表情を見てほしい。人として見ると表情があって、自分自身に置き換えたりできるのね。――子どもたちの顔を見ると、気持ちが変わることもある…。柴田先生:そう。そう考えると「うるさい」と思うのは、こちら側に余裕がないときなのかもしれないわね。■しつけなくても子どもはできる! あなどれない「観察力」――先生、ここでちょっと疑問です。自分流に根拠のあるしつけだけを実践してみたものの、本当にそれだけで社会のマナーや礼儀などが身に付くのか、不安になるママもいるかと思うのですが…。柴田先生:そうね。いいエピソードがあるわ。あるとき、りんごの木に通っている4~5歳の子どもたちを、隣の保育園の園長先生が招待してくれたのね。お正月に獅子舞がくるイベントだった。イベントが終わったあとで園長先生が「今から年長さんは部屋の中でお茶のお点前をいただきます。一緒にどうですか?」と誘ってくれたの。――楽しそう…!柴田先生:でも「うちは無理です(たぶん、落ち着いていられない)」って断ったの。園長先生は「そんなこといわず、どうぞ」って…。だから子どもたちに「これからごちそうしてくれるようだから、おじゃましようか?」と相談したの。そうしたら、子どもたちは玄関のほうにバーっと走っていって、靴をきちんとそろえてなかに入ったの。りんごの木では一切靴なんかそろえないのに…。――「ここは、ちゃんと靴をそろえるべき」と分かっている…?柴田先生:そう。きちんとする場所は「分かってる」ってことよね。それから部屋の中でも正座してるのね。お菓子にあんこ入りのおまんじゅうが出たんだけど、あんこが苦手な子が中身を知らず、口に入れてしまった。ペッと吐き出すかと思ったら、私の顔を見て「どうする…?」って泣きそうな顔をしてるの(笑)。「紙に包んで…」と小声でいったら、紙にそうっと包んだのね。――ここでは、いつもみたいにペッと吐き出しちゃいけない、と思ったんですね。柴田先生:そうかもね。こんなふうに子どもは大人を見ている。それに大人がどういうことを好むか、分かっていると思うの。だから家の中ではちゃめちゃでも、外にいくと「おはようございます」っていったりするじゃない?外だと良い子っているわよね。これは外面が良いというより、場をわきまえる子なの。――場をわきまえる子…。柴田先生:保育園の園長先生に「ちゃんとした子どもたちですね」っていわれて、私「はあ…(苦笑)」って。そのあと「何か質問はありますか?」って園長先生がいったら、子どもたちは「はい! はい! はい!」って手を上げて。「なんで、これはこうなんですか?」って質問攻め。そこは空気を読むんじゃなくて、自分を持っている。そこでのふるまいを心得ているんだと思ったの。――場をわきまえて、ふるまう。知りたいこと、興味のあることは素直に聞く(笑)。その姿勢って、すごく理想的ですね。心にストンと落ちる。柴田先生のお話はそんな表現がぴったりです。「子どものことは親だけの責任」という空気感に「私がしっかりしなきゃ」「迷惑をかけちゃいけない」と息苦しくなっているママは多いのではないでしょうか。みんなが心にゆとりを持てるような社会。そのためにまずは自分の心を楽にしてあげようと思いました。参考図書: 『今日からしつけをやめてみた』 (主婦の友社)あらい ぴろよ (イラスト), 柴田 愛子 (監修)「小さいうちから、きちんとしつけないと…」そうしておこなわれる「しつけ」は子どもにどんな影響を与えているのか? しつけなくして、親子が笑顔になる方法はあるのか? 子どもの目に映る世界は、大人が見ている世界とは違うもの。親子でストレスの溜まる「しつけ呪縛」から解放される一冊。
2019年06月18日2005年に食育基本法が制定されたこと、また、教育意識そのものの高まりもあって、子どもを持つ親の「食育」への関心は高まっています。ただ、食育、家族社会学を専門とするお茶の水女子大学生活科学部非常勤講師の松島悦子先生は、その傾向を歓迎しながらも、「懸念している部分もある」と語ります。それは、「孤食」をめぐる問題でした。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)子どもの好き嫌いに表れる食育意識の高まりここ十数年で「食育」への意識はかなり高まったように思うのですが、それは「子どもの好き嫌い」のデータにも表れています。30代、40代といういまの親世代が子どもの頃に嫌われていた食べものというと、ピーマン、セロリ、ナス、アスパラガス、グリーンピース、トマト、シイタケ……などが横並びで挙げられていました。ところが、いま、子どもたちがいちばん苦手としているのは、ニガウリ。いわゆる、ゴーヤだというのです。その嫌われ方は断トツで、ある調査データによれば2番目に嫌われているナスは小学生の9.4%が苦手としているのに対し、ニガウリはなんと27.5%の小学生が苦手としています。なぜこんな変化が起きたのでしょう?沖縄料理ブームによってゴーヤが全国的に浸透したことも理由のひとつとして考えられますが、健康志向が高まるなか、子どもに対して親が積極的にゴーヤを食べさせようとしているのだろうと推測されます。また、給食でも頻繁にゴーヤが出されるようになったということもあるでしょう。なぜゴーヤを子どもに食べさせたいのか?それは、ゴーヤが持つ栄養価の高さや病気の予防効果などにあります。ニガウリは、沖縄の伝統的な野菜のひとつで、ゴーヤチャンプルやてんぷらなどの料理で食されています。果実や種子には、ビタミンCやポリフェノールといった抗酸化物質や各種生理活性物質が多く含まれることから、古くから薬用として糖尿病予防などに用いられてきました。近年の研究では、血糖低下作用や脂質代謝調節作用、抗がん作用、抗炎症作用などの生理作用を有することが次々報告されています。また、特有の苦み成分は、食欲増進効果など、様々な生理作用があるといわれています。食育への意識が高まっている親たちが、健康への期待を込めてゴーヤを子どもに食べさせようとした結果、独特の苦味があるゴーヤが嫌われてしまったようなのです。ゴーヤと同様のことはレバーにもいえます。いまの親世代が子どもの頃と比べて、レバーが苦手という子どもの割合が増えているのです。これもまた、栄養豊富なレバーを親が子どもに食べさせようとした弊害なのでしょう。研究者としては面白く感じられて興味深いことですが、食育に対する関心が高まるなかでの結果としては、皮肉なものです。「孤食」の拡大は時代の流れによる必然?食育への関心が高まることは歓迎すべきことですが、わたしは懸念も抱いています。それは、「孤食」をめぐる問題……。孤食とは、現在はNPO法人食生態学実践フォーラム理事長である足立己幸先生が1983年に出版された『なぜひとりで食べるの 食生活が子どもを変える』(日本放送出版協会)の内容がテレビ放映されたことによって広まった言葉で、文字通り、「ひとりで食べる」食事形態を指すもの。当時は、高度経済成長期を経て、大型冷蔵庫や電子レンジが普及した時代でした。さらに、美味しい冷凍食品がどんどん登場し、お惣菜やお弁当を買ってきて家などで食べる「中食」という選択肢も登場したことで、子どもひとりでも食事ができるようにもなった。加えて、2000年代以降でいえば、共働き世帯が急激に増えたことも孤食の傾向に拍車をかけている要因だと見ることができます。しかも、いまは親も子どももすごく忙しい時代です。働き方改革が推進されているとはいえ、やっぱり長時間労働を強いられている親は多いですし、子どもだって小学校5、6年生になればお弁当持参で塾に通っている。そうなると、家族全員で食事をする機会は必然的に減っていきます。そんな時代にあって、家族がそろって食事をする「共食」に対して、「孤食は良くないものだ」ととらえられがちです。でも、これは時代の流れによる必然のことであり、わたしは「いい、悪い」の問題ではないと思っています。「共食」はその頻度より中身が大切それなのに、食育への意識が高まった結果、子どもに孤食をさせることに対して親が必要以上に罪悪感を抱いたりプレッシャーを感じたりするようになれば、それこそ問題ではありませんか?職業にはさまざまなものがあります。看護師など就業時間が不規則な職業もあるし、夜間に働いている親だっているでしょう。では、そういう親のもとに育ち、孤食をしがちな子どもがみんな健全に育たないかというと、そんなわけはありませんよね。もちろん、家族がそろって食事をする場合には必然的に品数が多くなり栄養面で優れているとか、家族の会話によってコミュニケーション能力が育つといったように共食のメリットはたくさんあります。ただ、共食については、その頻度というより中身が大事なのです。いつも家族全員がそろって食事をしたとしても、誰かがスマホをいじっていれば共食とはいえません。会話がなければ家族関係が良くなることも子どものコミュニケーション能力が育つこともないでしょう。つまり、共食の頻度が減っているいまだからこそ、週末など家族が集まれるときの食事をいかに楽しい場にするかということを意識してほしいのです。先述の足立先生が小学生を相手に行ったグループインタビューで、子どもたちは興味深いことを答えています。子どもたちは、「家族全員で食事をしたいと思っている」「でも、親にはそれをいわない」のだそうです。なぜならば、幼いながらも親が忙しいことをきちんとわかっているからです。その健気な思いを考えれば、家族みんなで食事ができる限られた時間こそスペシャルなものにしてあげてほしいですね。『白熱教室 食生活を考える』松島悦子 他 著/アイ・ケイコーポレーション(2016)■ お茶の水女子大学生活科学部・松島悦子先生 インタビュー一覧第1回:「食育=食生活の教育」ではない!?常識を超えた、食育の“真のねらい”第2回:「家族で食べたい」と素直に言えない子どもたちに、親がすべき“食事の場”づくり第3回:子どもに「調理」をさせるメリット。料理をする子・しない子の“内面”の大きな違い(※近日公開)第4回:「父親のかかわり」で食は2倍豊かになる!料理が苦手でもできる食育の方法とは?(※近日公開)【プロフィール】松島悦子(まつしま・えつこ)お茶の水女子大学生活科学部非常勤講師。専門は食育、家族社会学、消費者科学。お茶の水女子大学家政学部食物学科卒業、同大学大学院人間文化研究科博士後期課程修了、博士(社会科学)。東京ガス都市生活研究所勤務、お茶の水女子大学食育プロジェクト講師、和洋女子大学家政学群准教授を経て現職。著書に『子育て期女性の「共食」と友人関係』(風間書房)、『白熱教室 食生活を考える』(アイ・ケイコーポレーション)、『食物学概論』(光生館)、『消費者科学入門』(光生館)などがある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年06月18日「足が速いのは父親譲りね」「おっちょこちょいなところが私に似ているかも……」。こうしてたびたび、自分たち親と子どもの能力に似ている部分を感じている親御さまも多いのではないでしょうか。でも実際のところ、子どもの能力や身体的特徴などは、遺伝でどのぐらいの影響があり、環境はどのくらいの割合で影響するものなのでしょうか。今回は、学力のほか、運動能力や芸術的センス、性格、体格などについてもご紹介します。遺伝と環境の影響は、大まかに50%ずつ!人間は、父親と母親の遺伝子を受け継いで生まれてきます。したがって、遺伝の影響を受けることは必然ですよね。しかし一方で、遺伝によって子どもの能力や特性のすべてが決まるわけではなく、環境による影響も大きいということが科学的にも裏づけられています。慶應義塾大学文学部教授で行動遺伝学の第一人者である安藤寿康先生はこう言います。よく遺伝と環境はどっちが大事ですかと質問されます。でも、どちらも大事なもので、切り離して考えられません。遺伝と環境は複雑に絡み合って、重要な役割を果たしているのです。生命現象はもともと複雑なものです。それを単純な理論に落とし込むのでなく、複雑なまま理解することも大切です。(引用元:慶應義塾大学|遺伝と環境は人の成長にどう影響する?ふたごを調査して実証的に研究)環境は、人のあらゆる能力を伸ばすうえでとても重要な役割を果たすと言います。ここで言う環境とは、家庭や学校、習い事などを含んだ「教育」が当てはまるでしょう。では、「遺伝」と「環境」はどの程度、子どもの能力や特性に影響を与えるのでしょうか。それを研究しているのが「行動遺伝学」という分野です。そして、遺伝と環境がどのように働くのかという問題の解明には、「双生児法」という研究法が用いられています。この研究では、人間のさまざまな特性の形成や発達を、ひとつの受精卵で遺伝学的に同じ個体で同じ環境で育った「一卵性双生児」と、別の受精卵で生まれて同じ環境で育った「二卵性双生児」を比べることで、遺伝と環境の影響を解明しています。たとえば学力の場合、遺伝によるものが大きいのか、それとも環境が大きく関係しているのかは、親御さんとしては気になるところですよね。安藤先生によると、知的能力を測るIQは17~18歳ごろに向かってだんだんと遺伝の影響が大きくなっていき、ひとりで行動する時間が増えていくにつれて遺伝的な個人差が現れてくると言います。一方で、0~6歳ごろまでは遺伝の影響はまだそれほど見られず、家庭環境の影響が大きいと言えるそう。このように、学力の場合は年齢によって、遺伝の影響が大きい時期と、環境の影響が大きい時期が異なるようです。実際に割合の数値で見てみると、要素によっても異なりますが、大まかに言えば遺伝が「50%」、環境が「50%」影響すると言われています。体型は遺伝が強く、性格は環境の影響を大きく受けるしかし、要素別に細かく見てみると、遺伝と環境の割合は微妙に異なってきます。ここでは、要素別に遺伝と環境の影響の割合をご紹介しましょう。<学力>行動遺伝学の中で最も研究されている分野が、学力や知能に関すること。その研究結果によると、遺伝子の影響が60%程度、環境の影響が40%程度と言われています。また、知能に関しては、小さい頃は環境の影響が大きく、年齢を重ねるにつれて遺伝の影響が強くなることもわかってきています。<運動能力>運動能力の場合は、ほかの要素に比べて遺伝の影響が大きいようです。66%は遺伝要因で決まると言われています。また、トレーニングなどでどれくらい鍛えられるかというのも、遺伝的要素が関係してきます。<芸術的センス>芸術的なセンスは科学的な測定が難しいため、エビデンスはあまりありません。しかし、音楽の分野では、リズム感や絶対音感などは50%程度の影響があると認められています。<性格>性格の特徴には、さまざまな要素があります。例えば、「協調性」や「外向性」「開放性」「神経質」「誠実性」などです。そして、そのような要素が親から子へどのぐらい遺伝するかは、30~40%程度と言われ、環境の影響は60〜70%です。つまり、性格は遺伝の影響よりも、環境の影響が大きいと言えるでしょう。<体型>肥満になる遺伝の影響は非常に大きく70%、身長は80%ぐらいと言われています。要素別に見てみると、学力や芸術的センスはおおよそ半々の割合ですが、運動能力と体型は遺伝の影響が大きく、逆に性格は環境の影響を受けやすいことがわかります。安藤先生によると、「双生児法」を使った調査では、そのほかにもいろいろとおもしろいことがわかったと言います。たとえば、同じ遺伝的素養があっても、環境によって出る場合と出ない場合があるそうです。問題行動の遺伝的素養の場合は、しつけが厳しすぎたり一貫していない家庭のほうが強く出る傾向があり、しつけがきちんとしている家庭では遺伝的素養を持っていてもそれが表れにくいのです。また、読み聞かせをした子の問題解決力は高くなったり、無理に何かをさせず自由にさせていた子のほうが、知的能力が高くなるという結果も出ているのだそう。このように、親御さんの接し方や育て方によって、同じ遺伝的要素でも出方が違ってくるのです。最近では、『林先生が驚く初耳学!』(TBS系)の番組内で、文部科学省が発表したデータをもとに、父親の学歴よりも母親の学歴のほうが、より子どもの学力に影響を与えやすいとの発言がありました。その根拠はアメリカで発表された研究データで、「母親の遺伝子は大脳皮質と呼ばれる、記臆・思考・音声・知覚など認識能力を司るとされる部分に蓄積されやすく、いわゆる知性とされる部分に関わる遺伝子は母から子に受け継がれたときのみ機能」するから。一方で、精神科医の香山リカさんは、以下のように分析しています。努力して最高学府までたどりついた母親たちはそのことを“成功体験”として誇りに思い、若いうちに勉強に励むことに価値を見出す傾向があります。そのため、子供に対しても自然と、また心から『勉強は大切だ』『大学で学ぶために努力することはいいことだ』と伝えることができる。結果として子供の学力が向上するのではないでしょうか(引用元:NEWSポストセブン|子供の学力、父親の学歴よりも母親の学歴が影響大)やはり、遺伝子と環境の両方が子どもの学力に影響しているのですね。良い環境を整えてあげることが、親の役目それでは、遺伝と環境の影響がわかったところで、子どもの能力を引き出すために親は何をすればいいでしょうか。前出の安藤先生も、「遺伝的にある素質を持っていたとしても、その素質が発現するかどうかは環境次第。子どもが成長する過程で何より大切なのは、良い環境を親御さんが作ってあげること」だと話しています。それでは、“良い環境を整えるためのコツ” をご紹介しましょう。<1>なるべくたくさんの経験をさせる!子どもの才能を発見しやすくするために、それに出合うまで、できるだけさまざまな経験をさせることです。学校以外でも、興味を引いた習い事をさせたり、ワークショップなどに参加させたり、なるべくたくさんの大人の目に触れさせ、多角的に子どもを見てもらうことも必要。また、週末は自然の中でのびのび遊ばせる、家族で出かけてみる、などの体験をすることも大切ですね。<2>リビングに本や図鑑を豊富に用意するお子さんがいつでも好きな本を手にして読めるように、リビングなどにたくさんの本を用意しておきましょう。好奇心を持つことは知ろうとする意欲にもなり、学力アップにもつながります。また、定期的にお子さんと一緒に図書館へ行って、好きな本を選ばせて借りてくるのもいいですね。そして、親自身が読書をしている姿を見せるのも大切です。<3>親自身が好奇心を持り、学ぶことを忘れない親自身が学ぶ姿は、子どもにとっては大きな影響を与えます。語学の学習や資格の勉強、仕事のための読書など、親が日頃から学ぶ姿勢を忘れずにいましょう。すると、子ども自身も学ぶことが身近に感じられ、「勉強は楽しいもの」と思うようになります。また、さまざまなことに対して好奇心を持ち続けることも大切です。<4>早寝早起き、食事面など、規則正しい生活をする規則正しい生活は、学習面や運動能力、体格面でのメリットに。ベネッセ総合研究所の調査によると、生活習慣の定着している子どもほど、学びに向かう力が高いことが明らかになっています。また、太りやすい体質であれば、肥満を予防するなどの効果もあるでしょう。親御さんが不規則な生活をしていると、自然と子どもも不規則になりがち。家庭内で見直してみることが大切ですね。***このように、遺伝と環境の関係は、その割合こそ異なりますが、お子さんの能力や成長に複雑に絡み合って影響します。遺伝要素はすでに生まれたときから決まっていますが、それをどのように引き出すかは、家庭や教育現場での環境次第と言えそうです。お子さんが普段から好奇心を持てるようにさまざまな経験をさせるなど、親御さんができることはたくさんありそうですね。文/内田あり(参考)こどもまなびラボ|親の頭の良し悪しは、子どもに遺伝する?頭の良さと遺伝の気になるカンケイ日経DUAL|子どもの能力は遺伝と環境の“掛け算”で決まるベネッセ教育情報サイト|行動遺伝学者に聞く「遺伝」と「環境」はどれくらい影響する?【中編】ベネッセ教育情報サイト|行動遺伝学者に聞く「遺伝」と「環境」どちらが大事?【後編】慶應義塾大学|遺伝と環境は人の成長にどう影響する?ふたごを調査して実証的に研究NEWSポストセブン|子供の学力、父親の学歴よりも母親の学歴が影響大MBS|林修・父親が深夜帰宅の方が子どもの学力が高い週刊女性PRIME|わが子がデキないのは遺伝? 平凡な両親の子供でも特別な才能を伸ばす方法はあるか
2019年06月18日しつけをするのは「子どものため」ですよね。人にはやさしくあってほしい、ずるいことを考えず、正しいおこないをしてほしい。良い子になってもらうべく、私たち親は奮闘するわけです。けれど「これが本当に子どものためになるのだろうか」と迷い、悩むことがあるのはなぜなのでしょう。子育てで目指すべきゴールはどこにあるのでしょうか。今回は、子どもが「生きやすくなる」ために親ができることについて 『今日からしつけをやめてみた』 (主婦の友社)を監修された柴田愛子先生にうかがってきました。お話をうかがったのは…「りんごの木 子どもクラブ」代表 柴田愛子先生「子どもの心により添う保育」をモットーにした「 りんごの木 子どもクラブ 」代表。絵本作家。 保育者。育児書の執筆、雑誌への寄稿だけでなく全国で保育者向けセミナーや母親向け講演会をおこない支持を得る。NHK『すくすく子育て』出演。園で行っている「子ども達のミーティング」はテレビ・映画で取り上げられ「子どもの力を最大限に引き出している」と話題に。■親が自慢に思う「良い子」を演じる子どもたち――世のママやパパがしつけをするのは「良い子になってほしい」という思いがあるからですよね。でも「良い子」であることって、そんなに重要なことでしょうか?柴田愛子先生(以下、柴田先生):小さいときから「良い子」というものが評価されすぎているわね…。評価されすぎると、良い子は良い子を崩せなくなる。本当の気持ちがいえなくなってしまうの。空気を読むようになって、大人たちから褒められることが自分の生きがいになっていくのね。――褒められることが生きがい…。柴田先生:20~30代の人がこんな事を言ったりするの。「本当の私はいつ出したらいいんですか?」って。小さなころから、みんなに「良い子ね」っていわれてきた。だけど、本当の私は別にある。本当の自分をいつ出せばいいのか、分からなくなってしまったのね。――良い子の自分とは別に、本当の自分がいたんですね。柴田先生:そう。だから私は「今日から良い子をやめなさい。ひとつでもいいから自分の本音をいってごらん」といったの。自我のない人間はいない。でも、我が子が「良い子」の評価を受けると、親は満足するでしょう。それを見て、子どもは親を喜ばそうと、自ら「良い子」路線に進んでしまうの。――子どもも親の期待に応えたいと感じるんですね。柴田先生:でもそれは、人のために自分をつくることで、自分の人生じゃない。たとえ誰かに迷惑をかけても、非難されても、良い子じゃなくても…。我が子には「自分で良かった」と思って、生きてほしいじゃない?――はい…!■「好きなこと」があれば生きていける!――でも「あるがままでいい」と思うことは大人でも難しいことですよね…。まわりに振り回されず、自分の軸をしっかり保ちながら生きていくにはどうすれば良いのでしょう?柴田先生:そうね。私が小学校低学年のときに、母から「人間、好きなことがひとつあれば、生きていけるから」といわれたことがあるの。――好きなことがあれば、生きていける?柴田先生:当時「ピアノが習いたい」と母にいったら「そう。あそこにピアノ教室があるからいっておいで」って。私、1人で教室に「習いたいです」といいにいったの。ほかの友だちはみんな親がついてきてるのに(笑)。やりたいことは応援してくれたけど、手取り足取りじゃなかったわね。自分のやりたいことは自分の力で進まなくちゃいけない。――自分の力で…。「好きなことがあれば生きていける」というのは、好きなことを仕事にして食べていく、ということでしょうか?柴田先生:当時は私も意味がよく分からなかったけど「好きなことがあれば食べていける」ってことではなかったわね。「今、何かしら好きといえるものがあれば大丈夫」ってこと。――好きなことがあれば「大丈夫」…?柴田先生:母は専業主婦で大変だったけど「今日は民芸です」といって、月に1度、外出するときがあった。私はどこへでも母についていく子だったけれど、その日だけは「一緒にいく!」とはいえない空気があったの。18歳になったとき、ようやく「今日は一緒に民芸にいこう」と連れていってもらえたんだけど、劇団の芝居だったの。社会問題を扱った難しい芝居が多かったけど、一緒にいくことで私は母の考え方を知った。「母はこういう考え方を支持してるのか」と理解できたわ。――親がどういう考え方を持っているかって、聞く機会をつくらない限り分からないですよね。柴田先生:そうね。母は何より、自由を求めていた人だったと思う。「好きなことがひとつあれば生きていける」といったのはたぶん、好きなことがひとつあれば「自分がブレない」ってことじゃないかな。子育てや仕事で自分を見失ってしまうこと、いっぱいあるじゃない? そのとき、自分が好きといえるものに出会うと、自分を取り戻せるような気がしない? 好きなことって何でもいいのよ。「その先に何があるの?」ってよく聞かれるけど、そこに意味や価値はなくてもいいの。例えば、私は山登りが好きで、すごく疲れていても大自然を感じると、空気が体の中にはいってきてホッとできる。帰ってきたような気分になるのね。だから、好きなことがあると「私はこういうのが好きなんだ」「私はこう思うんだ」って自分を取り戻せる。まわりにおびやかされず、自分を守っていけるんだと思うの。■生き抜くために「たくさんの友だち」より大切なこと――それは、親だけではなく子どもにもいえることですよね。柴田先生:そう。子どもにとって、お友だちがいるかいないかはそんなに大事なことじゃない。自分がやりたいことを見つけられる力を持っていることのほうが、ずっと大事だと思うの。あるとき、りんごの木にお迎えにきたお母さんが「今日はお友だちと遊んでましたか?」って聞いてきたのね。だから私は「お友だちと遊ぶことは、そんなに大事なことではないです」って答えた。お友だちはだんだんできていくもので、つくろうとしてつくるものではないのね。ひとりぼっちでもいいじゃない? 昨日も2歳の子がずーっとひとりで泥遊びをしていたんだけど、「ああ…! たっぷり自分の時間を過ごしてるなあ」ってうれしく思ったの。――友だちは多いほうがいい、ひとりでいるより大勢でいたほうがいい。そう思い込んでいた気がします。柴田先生:大人も子どもも、基本は自分ひとりよ。ひとりでも不安にならず、夢中になれることがあることがどれだけ大事か。だから、他人の視線を気にするあまり、やってしまうのが「しつけ」だと思う。他人を気にしすぎて、自分がもろくなっていない? それより、まず自分を大事にしようって思うのね。――人の目を気にしていると、自分がもろくなる…。柴田先生:毎日毎日、子どもに「静かにしなさい」「良い子にしなさい」といっていると、お母さんは自分が自分じゃなくなるようでつらくなりますよね。もし、そう感じたのなら「うちの子うるさいな。耳栓買うか」くらいに思えばいいのよ(笑)。――耳栓!(笑)柴田先生:そう思わなきゃ、周囲に気をめぐらしすぎて自分を見失っていくと思う。今のあるがままが、どんなに大事かっていうことね。■「嫌です」面と向かっていえる? 正論が子どもを追いつめる――小学生の息子が私に「今日、友だちにひどいことをされた」と報告してくることがあります。そんなとき私は「嫌なら嫌っていわないと、相手には伝わらないよ」と答えるのですが、息子はぶぜんとした表情のままで…。息子の心に響いてない気がするんです。柴田先生:親は事実を確認して、一歩踏み込んで「あなたはこうするべき」と正論でいくことが多いわね。「嫌なことされたら、嫌っていいなさい」って。でも実際、自分より強い人に嫌っていえる人、いる?――…え?柴田先生:上司に「それ、嫌です」っていえるかしら? 自分より強い人に、嫌っていえる勇気を持っている人なんていないですよ。――確かに私も嫌といえないとき…あります。柴田先生:大人でもあるわよね。そんなときは「それはなかなかいえないよね~。いえればいいんだけどね…」と気持ちに寄り添う。それが、子どもの元気を取り戻すことになるのね。――子どもの元気を取り戻す?柴田先生:そう。子どもは「僕(私)は、こんなにひどい目にあってるんだよ!」とあなたに泣きついているの。だから「そんなにひどい目にあっているなんて…かわいそう!」って受け止めてあげるの。ここで共感してあげると、子どもはすごくホッとする。――そうか…。子どもを守りたい、という気持ちもあってつい正論で返していました。そうじゃなくて、元気を出してもらうように接すればいいんですね。柴田先生:そうね。それから嫌と言葉でいわなくても、嫌と伝える方法はいくつかあるよ、と伝えるのもいい。まず泣くのが何より効果的。それから先生やお母さんにいいつけるのも良し。その場から逃げるのもアリだよって。――確かに、いろいろな方法がありますね(笑)柴田先生:大人が正論ばかりいうから、子どもは生きる力を持てないの。嫌なときは嫌といいなさいとか、困ったら乗り越えなさいとか…。大人だって、お金使ったり、物の力を利用したりしているじゃない? なのに子どもには正論をいう。これは子どもの生きる力を奪っていると思う。――子どもにだけ正論をかざすのは、確かに変ですね。柴田先生:自分を守る方法を教えていけば、道はある。それに、わが子を分析し正論で判断ばかりしていると、親である自分も苦しくなってくるんじゃない? もちろん「今日も嫌なことをされた」と同じようなことが続くなら、何か別に理由があるかもしれない。そんなときは、先生に相談してみるといいと思う。いずれにせよ、最後の最後まで結論を追い求めるんじゃなくて、追いつめないことのほうが大事だと思うわね。良い子を強要するのは、もしかすると「本当の自分を隠しなさい」といってるようなものかもしれません。あるがままの自分を大事にすることが、生きる力になる…。ずっと忘れずにいようと思いました。次回は、「子育ては親だけに責任がある」という世間の風潮について、引き続き柴田先生にうかがいます。参考図書: 『今日からしつけをやめてみた』 (主婦の友社)あらい ぴろよ (イラスト), 柴田 愛子 (監修)「小さいうちから、きちんとしつけないと…」そうしておこなわれる「しつけ」は子どもにどんな影響を与えているのか? しつけなくして、親子が笑顔になる方法はあるのか? 子どもの目に映る世界は、大人が見ている世界とは違うもの。親子でストレスの溜まる「しつけ呪縛」から解放される一冊。
2019年06月17日我が子には健康に育ってほしい――。子を持つ親であれば誰もがそう願います。その観点からも、普段の食事の栄養面に気を配り、子どもの「食育」に対しての関心が高い人も増えています。しかし、食育の意味をぼんやりとはイメージできても、本来はどういったものを指すのかを知っている人は少ないかもしれません。食育、家族社会学を専門とするお茶の水女子大学生活科学部非常勤講師の松島悦子先生に、食育の定義や意義を教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)人間は食を通じて多くのことを学んでいく「食育」という言葉もいまではかなり一般的になりましたから、多くの人が聞いたことがあるでしょうね。その定義は、2005年に制定された食育基本法の前文に書かれた次の内容になるでしょうか。表現は固いのですが、食育とは「生きるうえでの基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものと位置づけるとともに、さまざまな経験を通じて『食』に関する知識と『食』を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てること」となります。したがって、食育は、心身の健康を維持増進するための食習慣を身につけ、食の管理能力を育てることを目標としているといえます。この定義でもそうですが、「食育」という言葉からも、食育とはどうしても食生活に限定された教育と思われがちです。食育で学ぶものというと、栄養や食品の知識、調理の技術といったものをイメージしますよね?もちろんそれらも食育の基本ですから、身につけることはとても大切です。ただ、食育はそこにとどまらないものだとわたしは考えています。というのも、人間は食を通じて本当にたくさんのものを学ぶことができるからです。ひとつ例を挙げるなら、親や友だちなどと食卓を囲めば、子どものコミュニケーション能力が伸びることは容易に想像できるでしょう。日本では現在進行形で外国人労働者がどんどん増えています。いまの子どもたちは、たとえ海外に行かなくても、価値観や文化がちがうたくさんの外国人と接していくことになる。そして、彼ら外国人とうまく共生して人間関係をきちんと築いていくために欠かせないものといえば、やっぱりコミュニケーション能力ですよね。コミュニケーション能力を磨けば、多様な人々と円滑な人間関係をつくったり、互いに譲り合って調和を図る協調性といった大切な能力を身につけたりすることにもつながります。そのように、これからの時代に必要とされるさまざまな力を食がもたらしてくれるのです。わたし自身は、食育とは「食を通じた人間教育」だと考えています。食を大切にすることは人生を豊かにすることもちろん、さまざまな力を身につけるという点以外でも、子どもにとって食育は大切なものです。たとえば、生活リズムを身につけることも食育の大きな目標のひとつです。食習慣はそれこそ離乳期から徐々に形成されていきますから、きちんと食事の時間を決めることできちんとした生活リズムを身につけることができます。また、食を大切にすることは、人生を豊かにすることにもつながります。たとえば、幼児期になると、自我が芽生えてなんでも自分でやりたがるときがきます。食べ物をスティック状にするなど子どもが自分の手で持って食べる楽しい経験を存分にさせてみる。一緒に食卓を囲んだ大人が子どもに話しかけながら、美味しそうに食事を食べる。そういった食卓での経験は、その子どもの人生における食への意識や態度に表れるようになります。食事が「楽しいもの」だと思えれば、それだけ人生は豊かになりますよね。では、逆にそういう経験がなかったとしたら、子どもはどんな大人に育つか想像してみてください。食事に対しての関心が薄く、食事が楽しいものだと思えなかったら、やっぱり人生のなかのひとつの大きな楽しみを自ら手放すことになるのではないでしょうか。1日に3回の食事が楽しいと思える人なら、長い人生のうちに何万回もの楽しみを味わえます。でも、それがまったくないとしたら……その人生はちょっぴり寂しいですよね。毎日の食事中の会話で行う食育また、食育と聞いて多くの人がイメージするのが、食品や栄養などの知識を得ることでしょう。もちろん、そのポイントも食育の重要な側面です。将来、親元を離れたときに、自炊は苦手だったとしてもより体にいい食事を選べることは大切です。それこそ、現在はさまざまな冷凍食品の他、「中食」と呼ばれるお弁当やお惣菜など、なにを食べるかという選択肢がどんどん広がっている時代ですから、きちんと知識さえ身につけておけば自ら調理することなく自分の健康を考えた食事を組み立てることができるのです。そういった教育は、なにも学校の家庭科の授業でしかできないものではありません。むしろ、家庭での普段の食事でこそ、子どもに学ばせることができるはずです。食事中には、積極的に食べ物に関する話をしてあげましょう。幼い子どもに対してなら、炭水化物だとかビタミンといった専門用語を使う必要はありません。「色の濃い野菜を食べると元気が出るよ」とか、「お肉を食べてパワーアップしよう!」といった栄養のことや、食文化、調理法、季節の食材などの話をしてみてください。もちろん、そのようにして親子でコミュニケーションが取れれば、家族の関係をより良くすることにもなります。せっかく目の前に料理という素晴らしい会話の題材があるわけですから、それを話の種にして家族の絆を深めていきましょう。それが子どもの食育にもつながれば一石二鳥だと思うのです。『白熱教室 食生活を考える』松島悦子 他 著/アイ・ケイコーポレーション(2016)■ お茶の水女子大学生活科学部・松島悦子先生 インタビュー一覧第1回:「食育=食生活の教育」ではない!?常識を超えた、食育の“真のねらい”第2回:「家族で食べたい」と素直に言えない子どもたちに、親がすべき“食事の場”づくり(※近日公開)第3回:子どもに「調理」をさせるメリット。料理をする子・しない子の“内面”の大きな違い(※近日公開)第4回:「父親のかかわり」で食は2倍豊かになる!料理が苦手でもできる食育の方法とは?(※近日公開)【プロフィール】松島悦子(まつしま・えつこ)お茶の水女子大学生活科学部非常勤講師。専門は食育、家族社会学、消費者科学。お茶の水女子大学家政学部食物学科卒業、同大学大学院人間文化研究科博士後期課程修了、博士(社会科学)。東京ガス都市生活研究所勤務、お茶の水女子大学食育プロジェクト講師、和洋女子大学家政学群准教授を経て現職。著書に『子育て期女性の「共食」と友人関係』(風間書房)、『白熱教室 食生活を考える』(アイ・ケイコーポレーション)、『食物学概論』(光生館)、『消費者科学入門』(光生館)などがある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年06月17日わが子は6歳と3歳。なかなか身の回りを片付けることができません。特に3歳の娘は片付けの声かけをしても行動に移せません。そんなとき、保育士さんに「片付けられるようになるポイント」を教えてもらいました。 いつしかママが片付けることが当たり前に娘には2歳前後から少しずつ「片付け」を教えていった私。ところが娘は「どっちが早くお片付けできるかな?」と誘ってみるものの、動こうとしません。結局、すべて私が片付けをしていました。 まだ小さいから仕方ないとそのころはあまり気にしていなかったのですが、3歳になってもお片付けができません。いつの間にかママが片付けるのが当たり前になっていました。小さいうちからお片付けの習慣をつけておくべきだったと後悔しました。 保育園に通っていたから?息子はお片付けできる2歳前後の子どもにお片付けを教えるには、まず親が見本を見せる、次に一緒にお片付けをするのが基本ステップかと思います。私のようにすべてやってしまうのでは、子どもに片付けの経験を積ませてあげられませんよね……。 一方、息子の場合は保育園へ通っていたからか、娘よりは身の回りを片付けることができました。保育園で毎日繰り返していたことが、自然と習慣化していたのだと思います。 「片付け場所がひと目でわかる工夫」そんなときに保育士さんから聞いたのが「片付け場所がひと目でわかる工夫」をすることでした。子どもはどこに何を置くのか、わからないからできないことが多いそうです。もしかしたら娘も片付けられないのではなく、置く場所がわからなかっただけかもしれないと感じました。 そこで「ボールは黄色い箱ね」など、本人と相談しながら片付ける場所を決めてみました。最初は一緒に片付け、徐々に手助けを減らしていくと少しずつ自分でできるようになりました。 お片付けが苦手な子どもは「どこに何を置くのか」わからないケースが多いことを知り、わが家では娘がお片付けできるようになるきっかけになりました。お片付けボックスにシールを貼るなどして目印をつくってもいいですね!著者:田中由惟一男一女の母。二人目の出産を機に食品会社を退職。現在は子育てのかたわら、記事執筆をおこなう。趣味はスポーツとピアノ、美味しいものを食べること。
2019年06月15日ここぞというときに学力をぐんと伸ばす子。東大などの難関大学に合格する子。困難なときも自分で道を切り開いていける子。そういった子どもと、そうではない子どもの違いって、いったい何だと思いますか?その答えは “家庭”にありました。さっそく、詳しくご紹介しましょう。子どもの伸びしろは家庭環境で決まる?入塾テストがないにもかかわらず、中学受験の第一志望合格率が7割以上、大学受験では難関大への合格率が8割以上という進学塾 VAMOS(東京・吉祥寺)を主宰している富永雄輔氏は、受験コンサルタントとしてこれまで2,000人以上の親と接してきた経験から、次のように述べています。そもそも、「伸ばしやすい子」とはどういう子なのでしょう?それは、十分な「伸びしろ」が準備されている子です。「伸びしろ」とは、さらに成長する余地であり、可能性のこと。しっかりと「伸びしろ」をつくられた子どもは、きっかけさえ見つかれば、飛躍的に学力を伸ばしていきます。そして、その「伸びしろ」を育てるのはそれぞれのご家庭なのです。(引用元:富永雄輔(2017),『東大生を育てる親は家の中で何をしているのか?』, 文響社. )親の心がけ、幼少期からの家庭での習慣、休日の過ごし方、環境づくりなどが、子どもの「伸びる」「伸びない」に関係しているということ。なにげなく過ごしている家庭での日々が、じつはとても大切なのです。1. まず心がけたい「心休まるおだやかな家庭」「陰山メソッド」に代表される基礎学力の向上や、『徹底反復シリーズ』をはじめとする教材開発などで知られる教育者・陰山英男氏はこう述べています。私は教員時代に毎年何十件と行っていた家庭訪問で、子どもの性格と家庭の雰囲気の関係を考えるようになりました。そうして振り返っていきますと、やはりおだやかな心地よさが感じられる家庭のお子さんは成績がいい子が多く、また年齢相応のしっかりとした話し方のできるお子さんが多いということが改めて感じられたのです。(引用元:ベネッセ教育情報サイト|陰山英男氏に聞く!子どもの学力を伸ばす勉強法・習慣とは?)また、これまで多くの子どもや親たちに指導を行なってきた「花まる学習会」代表の高濱正伸氏も、「家族関係の良さが子どもの安心感の源泉」であり、「家族で心からくつろげて安心できる家である」ことが、伸びる子を育むうえでとても大切なことだと指摘しています。両親は共働き、子どもは習い事や塾で忙しい……今はそんな毎日を過ごすご家庭も多いのではないでしょうか。だからこそ、家の中では家族全員が心から落ち着ける空間、良好なコミュニケーションが取れる雰囲気を意識的につくっていくことが必要かもしれません。伸びる子のベースには、「家庭で得られる安心感」があることを忘れないようにしたいですね。2. 伸びる子の親の褒め方伸びる子の親の特長として、「褒め上手である」こともかなり大きなポイントのようです。たしかに、褒められることで子どもは自信がつき、自己肯定感を高められる――というのは、よく聞く話ですよね。ただし、褒めすぎは要注意だそう。というのも、伸びる子は常にもっともっと上に行きたいという上昇志向を持っているから。子どもを伸ばしたいなら、この “ハングリー精神” は不可欠なのだそうです。たとえば、算数で80点の壁をなかなか超えられなかった子どもがいるとしましょう。努力の甲斐あって、85点を取ることができたとしたら、どんな褒め言葉をかけてあげますか?目標よりさらに5点高い85点を取れたのだからおおいに褒めてもいいのですが、ある親御さんはこう言ったのだそうです。「よく頑張ったね。さあ、これで90点を目指す準備ができたじゃない!」これこそ、絶妙な褒め言葉。85点を取れたことはしっかり褒めていますが、その先にも目を向けさせるような言葉です。褒めるのはもちろん必要ですが、時に大事なのは、「それはまだゴールではない」と子どもに感じさせることなのです。ほかにも、伸びる子の親の傾向として、以下に挙げた行動が挙げられるようです。ぜひ参考にしたいですね。■「勉強(宿題)しなさい」と言わない■テストの結果、成績の上下に一喜一憂しない■家族の目の届く場所(リビングなど)で勉強させる■平日も休日も生活リズムを崩さない■家庭菜園をする■お手伝いをしっかり任せる■無駄なものを家におかない■収納のしつけをする■子どもと一緒に図書館、劇場、美術館、博物館、科学館などに行く3. こんな環境づくりでさらに伸びる子に家の中にちょっとした “仕掛け” をつくって、家族みんなで楽しむこと。これも、伸びる子が育つ家庭の特長です。ポイントは、“自然と視界にはいってくるもの” “手を伸ばしやすい場所にある”です。ただし、強制はせず、うまくいけば儲けものくらいの感覚で試してみてくださいね。■ファミリーライブラリーを作る伸びる子の特長のひとつとして、“読書好き” あるいは “多読だった時期がある” が挙げられるようです。読書が子どもに良い影響を与えるのは、もはや周知の事実ですよね。問題は、「どうやったら読書好きになるのか」ではないでしょうか。そこで試していただきたいのが、「ファミリーライブラリー」。ファミリーライブラリーとは、いつでも目に入るところ、手に取りやすい場所に、親自身が読みたい本、親が子どもに読んでほしい本、子ども自身が読みたい本などを棚などに並べておくこと。そのうち何冊かは、表紙を向けて並べておくのが効果的だとか。そうすることで、子どもの視覚に訴えやすく、瞬間的に手を伸ばすようになるのだそう。さらに、親もなにげなく本を手に取ることが増えるでしょう。親の読書する姿を日常的に子どもに見せることも、子どもを読書好きにさせると言われています。子どもと一緒に調べものができるように、本の近くに辞書や辞典、世界地図、地球儀を置くのもおすすめです。■覚えたいことを紙に書いて貼る四字熟語、歴史の年号、英単語、漢字……覚えなくてはいけないことが増えてきたら、紙に書いて「トイレの壁」や「冷蔵庫のドア」に貼っておきましょう。そうすることで、記憶に残りやすくなり、ひとつやふたつは無意識のうちに覚えてしまうものなのだとか。メディアで活躍中の山口真由さんも、著書『東大首席・ハーバード卒NY州弁護士と母が教える 合格習慣55』の中で、「何かを記憶として定着させたいとき、毎日、何度か必ず行く場所に貼っておくのが効果的」だと言っています。また、山口さんはもっと効果的な方法として、「覚えたことを親子の会話の中で声に出してアウトプットする」と書いています。ポイントはゲーム感覚で楽しむこと、だそうですよ。***どれも、ちょっとした親の心がけや工夫でできてしまうことばかりでしたね。でも、そんななにげない些細なことが、知らず知らずに子どもに大きく影響を与えることは間違いないようです。ぜひ幼少期から家庭で取り入れてみませんか。文/鈴木里映(参考)富永雄輔(2017),『東大生を育てる親は家の中で何をしているのか?』,文響社高濱正伸,相澤樹(2018),『あと伸びする子はこんな家で育つ』,大和書房ベネッセ教育情報サイト|陰山英男氏に聞く!子どもの学力を伸ばす勉強法・習慣とは?Business Journal|学力の高い子ども、親の習慣や家庭環境に「共通の傾向」…文科省調査で判明東洋経済ONLINE|「勉強しなさい!」が不要な子の”家庭内習慣”山口真由(2018),『東大首席・ハーバード卒NY州弁護士と母が教える 合格習慣55』,学研プラス
2019年06月15日富士山のお膝元、長泉町にある自然豊かなエリア「クレマチスの丘」。そこには4つの美術館があります。「IZU PHOTO MUSEUM」(一時休館中)、「井上靖文学館」、そして「ベルナール・ビュフェ美術館」と「ヴァンジ彫刻庭園美術館」です。折しも今、子どもたちにぴったりの展覧会を開催中とのことなので、さっそく足を運んできました。自然もアートも両方楽しめて、子どももおとなも大満足な魅力いっぱいの美術館にご案内します!クレマチスの丘へミッフィーに会いにいこう!クレマチスの丘は、静岡県長泉町の愛鷹山中腹にある文化複合施設です。敷地は2つのエリアに分かれています。■クレマチスガーデンエリアヴァンジ彫刻庭園美術館とIZU PHOTO MUSEUMがあり、イタリア人彫刻家ジュリアーノ・ヴァンジの作品が館内と庭園に贅沢に散りばめられ、存在感を放っています。ガーデンはとてもよく手入れが行き届いていて、季節の花々が目を楽しませてくれます。広々とした芝生では、子どもたちが楽しそうにはしゃいでいました。■ビュフェエリアフランスの巨匠ベルナール・ビュフェの世界最大のコレクションを誇る、ベルナール・ビュフェ美術館。そして、併設されたビュフェこども美術館では、大人から子どもまでがアートを楽しむことができます。幼少期を伊豆で過ごした井上靖を記念して設立された井上靖文学館も見逃せません。違う表情を持つ2つのエリア――1日いても飽きることはありません。現在、2つの美術館でディック・ブルーナの展覧会が開催中です。どちらもミッフィーを通してアートと自然を楽しめる工夫がいっぱいで、親子で楽しめるものとなっています。■ヴァンジ彫刻庭園美術館【ミッフィーのたのしいお花畑ディック・ブルーナが描くお花と絵本の世界展】お花と植物がテーマとなっていて、美しい花々が咲き乱れるガーデンには、庭仕事やクレマチスガーデンのことをわかりやすく説明してくれる看板など、学びながら楽しめる工夫がたくさん。植物を好んで描いたブルーナさんの作品を見ることができるコーナーもあります。自由に参加できる「みんなのお花畑をつくろう」のコーナーは、「庭園でお花をスケッチして、テーブルにある4色の中から好きな紙を選び、ブルーナのようにできるだけシンプルに描いてみよう」というもの。大人も子どもも目をキラキラさせながら取り組んでいて、“お花畑” の白いボードには、個性的でカラフルな絵が咲き乱れていました。配布されている「オリジナルスケッチノート」は、庭園の楽しみ方を教えてくれて、見て触れて感じたことを書き込めるようになっています。最初にもらってからガーデンを楽しむことをおすすめします。■ベルナール・ビュフェ美術館【美術館に行こう!ディック・ブルーナに学ぶモダン・アートの楽しみ方】常設のビュフェの絵画とミッフィーがコラボ。ブルーナの絵本、『うさこちゃん びじゅつかんへいく』の内容に沿って、ビュフェの絵を見ていきます。こちらでも、鑑賞シート「美術館に行こう!ディック・ブルーナに学ぶモダン・アートの楽しみ方」を配布しているので、シートを見ながら鑑賞を楽しむことができます。または、最初は何も情報なしで好きな絵だけを見て、その後もう一度鑑賞シートのアドバイスを活用して鑑賞し直してみるのもおもしろいかもしれません。シートがなくても、ところどころでミッフィーが鑑賞のアドバイスをしてくれたり、ミッフィーの感想が書いてあったりするので、それだけでも楽しめますよ。独特の世界観を持つビュフェの絵は、子どもたちの想像力を掻き立てるに違いありません。また、後半にはブルーナの作品展示や絵本コーナーもあります。ブルーナとビュフェの違いを感じられるのも興味深いですよね。こちらにも、自由参加のワークショップコーナーがあります。「いろがみワーク」では、ブルーナが色を決めるときに用いた方法を体験できたり、「みみmiミッフィー」では、ミッフィーの耳を作ってかぶってミッフィーに変身することも!そのまま美術館を探索できるなど、子どもが飽きずに楽しめるイベントも充実!アートをとても身近に感じることができそうです。[ビュフェこども美術館]鑑賞中、ひと息入れたくなったら、ぜひ「ビュフェこども美術館」へ。ビュフェ作品のパズルや、作品の人物になりきる “ヘンシンコーナー” 、木をふんだんに使ったスペースでのびのびと気兼ねなく過ごすことができます。お父さん、お母さんもちょっとひと息つけるスペースです。自然豊かな土地に、心と五感が解放されるこんな場所はなかなかありません。長泉町は子どもの多い町ということで、“子どもと美術が出会う場所” として、この美術館が作られたそうです。ぜひ親子で訪れてみてくださいね。写真提供/クレマチスの丘写真提供/クレマチスの丘『クレマチスの丘』静岡県長泉町東野クレマチスの丘347-1開館時間:1月 10:00~16:302・3月 10:00~17:004・5・6・7・8月 10:00~18:009・10月 10:00~17:0011・12月 10:00~16:30※各館共通です(入館は閉館30分前まで)休館日:毎週水曜日(祝日の場合は開館、その翌日休)、年末年始入館料:■クレマチスガーデン・ヴァンジ彫刻庭園美術館4~10月大人 1200円、高・大学生 800円、小・中学生 無料11~3月大人 1000円、高・大学生 500円、小・中学生 無料■ベルナール・ビュフェ美術館大人 1000円、高・大学生 500円、小・中学生 無料写真/長野真弓(参考)Clematis no Okaベルナール・ビュフェ美術館ヴァンジ彫刻庭園美術館|開催中の展覧会© Mercis bv
2019年06月15日コミュニケーション能力の重要性が声高に叫ばれるなかで、「うちの子は引っ込み思案で……」と悩んでいる親も多いかもしれません。でも、もしかしたらそういう「気がねする」子どもにしてしまっているのは親自身かもしれないのです。その可能性を指摘するのは、長年にわたって「気がね」を研究テーマとしてきた東京都市大学人間科学部教授の井戸ゆかり先生。必要な場面ではしっかり自己主張できる子どもに育てるために、親はなにをするべきなのでしょうか。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)これからの時代に求められる適切なコミュニケーション能力日本人の特性のひとつとして、いいたいことをストレートにいわない、あるいはいえないということが挙げられます。これは、「他人に対して気を遣って自分が本当にしたいことをしないでいる」ということで、いわゆる「気がねする」ことです。「気がね」はわたしの研究テーマで、修士論文も博士論文もテーマは「気がね」でした。なぜかというと、わたし自身が気がねする子どもだったからです。自分でいうのも少し変ですが、子どもの頃のわたしはいわゆる一般的に見た優等生。それだけに、まわりの期待を強く感じてしまったり、ちょっと失敗をするだけで周囲の大人に驚かれたりしました。そういう経験の積み重ねによって、わたしは周囲の評価を怖がる、気がねする人間になってしまったのです。その後、海外で生活する機会があり、なぜ外国人はこんなにストレートにいいたいことを表現できるのかと感じたものです。一方で、この日本人の特性はあまりいいこととはとらえられない側面もありますが、「察する」ことが文化として根づいている日本の社会で円滑にコミュニケーションをするためには必要だという一面もあると思います。ただ、これからのグローバル社会を意識すれば、そうもいっていられないこともあります。外国人からすれば自分の意見をいわない日本人は「なにを考えているのかわからない」とも見られます。外国人たちと協働していかなければならないこれからの時代には、気がねすることなく、相手や場面に応じて適切に自己主張をしていくコミュニケーション能力を身につけることが求められるはずです。気がねする子どもにしてしまう「4つのNG」そもそもなぜ人は気がねするようになるのでしょうか。わたしは自分の研究を通じて、その要因は次の「4つのしつけ」にあると見ています。【子どもを気がねする人間にする4つのしつけ】(1)他人の目を気にするしつけ(2)他人と比較するしつけ(3)頭ごなしに叱るしつけ(4)禁止が多いしつけ(1)は、多くの親がやりがちかもしれませんが、「お父さんに叱られるよ」「先生にいいつけるよ」といったものです。静かにしなくてはいけない場所で子どもが騒いでいたら「静かにしていてね」といえば済む話です。でも、「お父さんに叱られるよ」といったいい方をしてしまうと、子どもは他人の目を気にするようになるのです。(2)は子どものきょうだいや友だちと比較するしつけです。「お兄ちゃんは1年生のときにはもっとしっかりしていたのに……」なんていわれると、子どもはまわりの評価を気にするようになります。(3)と(4)はわかりやすいかもしれませんね。やりたいことを全否定されたり禁止されたりすれば、子どもは自分の本心を親にも見せなくなってしまいます。子どもを気がねする人間にしないためには、まずはこれら「4つのしつけ」をしないように心がけること。それから、「待つ、任せる、見守る」という3つの姿勢を意識してほしいですね。子どもは子どもなりに自分で育っていく力を持っているものです。ですから、子どもがなにをするにも、まずは「待つ」。そして、「任せる」ことが大切です。とはいえ、放任では意味がありません。大怪我をするといった危険性がないか、あるいは子どもがSOSを発してサポートが必要になっていないかといったことを見落とさないため、「見守る」ことが大切になります。子どもの人生を決めるのは親ではないまた、親の価値観を優先しないようにすることも重要です。たとえば、子どもに「あの子とは遊んじゃいけません」なんてことをいってしまうことはありませんか?子ども自身はその子と遊びたいと思っているのに、本当の気持ちを無理に抑えつけているかもしれません。また、もう少し大きくなると、進路について親の価値観を優先してしまうということもありがちなケースです。子ども自身は小学校の同級生たちと一緒に公立中学に進みたいと思っていたのに、親が「子どもの将来のため」なんていって私立中学に進学させた――。子どもも納得していればよいのですが、そうでない場合、子どもは意欲をなくしたり、自分の気持ちを素直に話せなくなったりすることがあります。子どもの人生は子どものものであって、親のものではありません。親の勝手な価値観で子どもの人生を決めるのではなく、子どもと話し合いながら子どもの人生を一緒に考えていくスタンスが必要なのです。まずは、日頃から子どもが親になんでも話せる雰囲気をつくるよう心がけてほしいですね。そうするためにも親子の対話が大事になりますが、かといってなんでもかんでも聞き出そうとすればいいというものではありません。子どもも小学生くらいになれば、友だちと喧嘩するなど嫌な思いをすることもあります。それなのに、家に帰った途端に親から「今日はなにをしたの?」「宿題はないの?」「学校からのお手紙は?」なんて矢継ぎ早に聞かれれば、子どもも落ち着いて話をするどころではないと思うのです。まずは帰ってきた子どもにほっとひと息つかせてあげて、それからゆっくり会話を重ねる。家庭を子どもにとってのオアシスにしてあげてください。『保育の心理学 実践につなげる、子どもの発達理解』井戸ゆかり 編著/萌文書林(2019)■ 東京都市大学人間科学部教授・井戸ゆかり先生 インタビュー一覧第1回:あなたの子どもは大丈夫?絶対に見過ごしてはいけない「自己肯定感」低下のサイン第2回:「失敗を恐れない力」の育て方。子どもに「挑戦したい!」と思わせる、効果抜群な言葉かけ第3回:「辛抱強い子」を育てるヒント。「我慢する力」を伸ばすのは“○○上手な親”だった!第4回:「先生に言いつけるよ」がダメな理由。自己主張できない子が育つ“4つのNGなしつけ”【プロフィール】井戸ゆかり(いど・ゆかり)東京都出身。東京都市大学人間科学部教授。専門は発達臨床心理学、保育学、児童学。学術博士。横浜市子育てサポート研修講師、渋谷区子ども・子育て会議会長などを務める。二児の母。著書に『子どもの「おそい・できない」にイライラしなくなる本』(PHP研究所)、『「気がね」する子どもたち-「よい子」からのSOS-』(萌文書林)、編著に『保育の心理学Ⅱ 演習で学ぶ、子ども理解と具体的援助』(萌文書林)』、監修書に『1さいのなあに? のびのび育つ! 親子ふれあい絵本』『2さいのなあに? 「知りたい」がいっぱい! であい絵本』(ともにPHP研究所)などがある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年06月15日幼い子どもを抱える親の悩みのひとつに、公共の場で子どもが騒いでしまうということがあります。また、子どもが小学生くらいになれば、勉強やスポーツに辛抱強く取り組む子どもになってほしいと願うはずです。その悩みを解決し、願いをかなえる子どもの「我慢する力」はどうすれば育むことができるのでしょうか。発達臨床心理学、保育学、児童学を専門とする東京都市大学人間科学部教授の井戸ゆかり先生に、アドバイスをしてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)「生理的な我慢」は強いるべきではない「我慢」にもいくつかの種類があります。ひとつは「自己抑制」という意味での我慢。これは、なにかいいたいことややりたいことがあっても、自分で判断をして「この場ではいわないほうがいい」「やらないほうがいい」と自分を抑えることです。そういう意味での我慢は社会生活を営むうえでとても大切なものですから、幼いときからさまざまな経験を通して徐々に教えていくとよいでしょう。一方で、とくに幼い子どもの場合は、「生理的な我慢」を強いるべきではありません。トイレに行きたくなってしまう排泄欲などはその代表的なものです。そういう我慢を無理にさせると健康にも害が及ぶことがあります。たとえば電車に長時間乗らなければならないときなどは、乗車前にトイレに行かせるとか途中でトイレ休憩を取るなど、親が工夫してあげる必要があります。それらの工夫は、子どもにとって必要なルールを覚える訓練にもなります。たとえば、幼稚園や保育所のなかには、お昼ご飯の前に子どもたち全員をトイレに行かせるというところもあります。これには、食事中にはなるべくトイレには行くべきではないというマナー、ルールを教えるという意味も込められているのです。生理的な我慢を強いるべきではないといっても、野放しにしてしまっては問題です。まずはきちんとルールを学ばせる。そのうえで、どうしても体の具合が悪いときなどは遠慮しないできちんと親や保育者に伝えるということを教えることが大切です。無理な我慢をさせないように親が工夫する先にお伝えした自己抑制という意味での我慢についても、あまり幼いときから無理に我慢させることは注意が必要です。というのも、子どもは幼稚園や保育所での集団生活を通じて、徐々に自己抑制を学んでいくからです。3歳児たちの入園式では、どの子どもも落ち着きがありません。でも、3年後の卒園式では、みんなが静かにできて見違えるほどに成長した姿を見せてくれるものです。そう考えれば、電車やレストランなど、静かにしていてほしい場所に幼い子どもを連れて行く場合には、親の側が工夫するべきではないでしょうか。3歳くらいまでの幼い子どもは、走ってはいけない場所や静かにしておかないといけない場所というものがそもそもわからないのですから、まずはそういう場所にはなるべく連れて行かないという選択をすることを考えてほしいですね。どうしても行かなければいけないというときなら、短時間で済ませることも選択肢となります。または、静かなレストランで食事をするならば、お父さんとお母さんのどちらかが子どもに絵本を読んであげるとか、子どもを抱いて外に連れ出してあげるというふうに、両親が交代で子どもを見るということもできますよね。片方が子どもを見ているあいだに、食事は済ませればいいのです。あるいは、いまならキッズスペースを設置しているような子どもを連れて行きやすいような工夫をしているお店もありますから、そういうところを選ぶことも検討すべきことです。そもそも、親の都合で幼い子どもに我慢をさせることはなるべく避けるべき。なぜなら、3歳くらいまでの幼い子どもに無理やり我慢をさせたり、「ダメ!」とむやみに禁止したりすると、自発性が伸びなくなるからです。そのくらいの子どもにはなるべく伸び伸びとできる環境を用意してあげるように意識してほしいですね。「褒める」ことが子どもを我慢強くするその後、子どもが成長して小学生くらいになれば、勉強やスポーツなどに一生懸命に取り組める我慢強い子どもになってほしいですよね。そういう子どもに育てるためのポイントは、やはり「褒める」こと。子どもが我慢強くなにかに取り組めたとしたら、「頑張ったね!」「よく我慢できたね!」と褒めてあげて、「本当は遊びたかったのにね」と子どもの気持ちに寄り添ってあげましょう。我慢できたことを褒められた子どもは、我慢することに意味があると気づくようになります。同時に、褒めることは子どもの達成感を高めることにもなります。なにかを成し遂げれば、子どものなかで達成感は生まれますが、親に褒められることがその達成感をさらに高めてくれる。その体験を経て、子どもは自信を持って「次も頑張ろう」と思えるようになります。親などまわりの大人が褒めてあげることの重要性は、子どもには自分で自分を褒めることが難しいという点にあります。大人であれば、自分を客観視して「今日は頑張ったから自分にご褒美をあげよう」ということもできます。でも、子どもにはそれが難しいのです。だからこそ、子どもが我慢強くなにかに取り組んだのなら、たくさん褒めてあげて、「頑張って我慢してよかった」と感じさせてあげてください。『保育の心理学 実践につなげる、子どもの発達理解』井戸ゆかり 編著/萌文書林(2019)■ 東京都市大学人間科学部教授・井戸ゆかり先生 インタビュー一覧第1回:あなたの子どもは大丈夫?絶対に見過ごしてはいけない「自己肯定感」低下のサイン第2回:「失敗を恐れない力」の育て方。子どもに「挑戦したい!」と思わせる、効果抜群な言葉かけ第3回:「辛抱強い子」を育てるヒント。「我慢する力」を伸ばすのは“○○上手な親”だった!第4回:「先生に言いつけるよ」がダメな理由。自己主張できない子が育つ“4つのNGなしつけ”(※近日公開)【プロフィール】井戸ゆかり(いど・ゆかり)東京都出身。東京都市大学人間科学部教授。専門は発達臨床心理学、保育学、児童学。学術博士。横浜市子育てサポート研修講師、渋谷区子ども・子育て会議会長などを務める。二児の母。著書に『子どもの「おそい・できない」にイライラしなくなる本』(PHP研究所)、『「気がね」する子どもたち-「よい子」からのSOS-』(萌文書林)、編著に『保育の心理学Ⅱ 演習で学ぶ、子ども理解と具体的援助』(萌文書林)』、監修書に『1さいのなあに? のびのび育つ! 親子ふれあい絵本』『2さいのなあに? 「知りたい」がいっぱい! であい絵本』(ともにPHP研究所)などがある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年06月14日うちの家族、個性の塊です
夫婦・子育ていまむかし
めまぐるしいけど愛おしい、空回り母ちゃんの日々