「メディアリテラシー」という言葉を聞いたことがありますか?情報の洪水の中に生きている私たち。溢れる情報の中から、自分にとって有益なものを正しく選び取ることができる能力は、人生においてとても重要なことです。子どもの頃からその術を知り、訓練していくことが、いま求められています。子どものお手本になるべく知っておきたい「メディアリテラシー」についてみていきましょう。メディアリテラシーとは『日本大百科全書:ニッポニカ』によると、メディアリテラシーは以下のように定義されています。新聞やテレビなどの内容をきちんと読みとりマスメディアの本質や影響について幅広い知識を身につけ、批判的な見方を養い、メディアそのものを創造できる能力のこと。(引用:コトバンク|メディアリテラシー)多くの情報を評価し、識別し、選択するための能力と言えます。日々、テレビや新聞、ネットニュースなどでたくさんのニュースが配信されていますが、まずはそれらが “全て” ではないことを知ることが大事でしょう。何気なく入ってくる情報をやり過ごしてしまいがちな忙しい日々ですが、これからはますます必要となってきそうな能力です。なぜ「メディアリテラシー」を学ぶ必要があるのか近頃は“フェイクニュース”も氾濫しているため、知りたい、知る必要があることなどについて、時には受け身ではなく、自分で情報を収集し、総合評価できるようになることが特に重要です。子どもへのメディアリテラシー教育の普及に尽力されている、元TBS報道キャスターの下村健一氏は次のようにおっしゃっています。「フェイクニュースかどうか調べるためのファクトチェックのサイトの信用性まで疑われる今、結局メディアを信じられなくなり、自分の気にいる偏った情報だけを信じてしまうようになると、社会の分断は進むばかり。最初に得た情報以外の他の情報も受け止められるキャパシティーを残しておくためにも、情報の受け取り方を子どもの頃から身にしみこませるように学んでおかないと手遅れになります。」情報に踊らされないために、偏った情報で偏見を持った人にならないために、そしてダイバーシティの世界で生きていくために、メディアリテラシーを身につけなければいけないのですね。またメディアリテラシーを学ぶことは、子どもの視野を広げることにもつながっていくでしょう。メディアリテラシー教育の現状実際に世界では、子どもへの教育はどのようになっているのでしょうか。いくつかの例をご紹介します。【イギリス】イギリスでは国営放送BBCの取り組みが注目されています。2002年に「CBBC(6~13歳向け)」と「CBeebies(幼児・親向け)」の放送を開始した当初から、インターネットを安全に使うための方法を楽しく説明する、親向けにもアドバイスを提供するなどの試みを行っています。また、学校の授業の一環として活用できるようなビデオ製作や編集のためのツールを教師用指導ガイダンスとともにウェブサイト上で提供するなどした取り組みは非常に評価されています。そのほかにも1972年に放送開始した「Newsround」という子ども向けニュース番組も、子どものメディア学習支援を意識した内容を充実させてメディアリテラシー教育に貢献しています。【フィンランド】フィンランドはメディアリテラシー教育に関してとても熱心な国で、初等・中等教育のカリキュラムに「メディアスキルとコミュニケーション」というテーマで組み込まれ、社会、国語、アートなどの授業の中で実践されています。メディアのプロや専門教師が授業をするなど、取り組みが進んでいます。また、フィンランド公共放送協会(YLE)は、家庭と学校の両方向けの「Mediakompassi(メディアコンパス)」というプロジェクトを2000年半ばに立ち上げ、テレビ、ウェブサイト、イベントなど多方面からメディアリテラシー教育にアプローチ。テレビ番組は学年層別に5番組を展開して、目指すのは、「メディアへの理解」「メディアスキルの上達」「メディア制作の経験」です。サイトにも年齢別に映像を含めた多様な情報が提供されており、家庭での学習に活用されています。13〜18歳を対象にした最終的な段階では、プライバシーの保護やメディア所有の集中化の問題、情報の背後にあるメッセージやメディアリテラシーの習得自体についてなど、かなり難しい切り込んだ内容になっていて本格的です。その他にもスウェーデンでは1980年代からすでに学校教育にメディアリテラシー教育が取り入れられていますし、アメリカでは2000年にアメリカ教育省と全米芸術基金がアメリカで初めてのメディアリテラシー教育助成金制度を開始し、成果を挙げています。メディアリテラシーの重要性は世界中で認知されていると言ってもいいでしょう。***こうしてみてくると、メディアリテラシー教育にはまず「メディアそのものを知る」ことが大事なのがわかります。ニュースは単に事実を伝えているだけなのではなく、裏に意図が潜んでいる場合があります。それを汲み取れる思考回路形成のために、子どもの頃からのトレーニングが有効なのですね。次回は日本の取り組みについてご紹介します。(参考)コトバンク|メディアリテラシー東洋経済 ONLINE|子どもが間違った報道に踊らされないために 出す側の理屈と受けての注意を絵本で学ぶNHK放送文化研究所|「メディア・リテラシー教育をめぐるヨーロッパの最新動向小林俊哉(2017),「アメリカにおけるメディアリテラシー(3)—2000年から2000年代中葉までー」,新島学園短期大学紀要 第37号 1頁-17頁.
2019年01月27日お子さまには、時間を忘れるほど夢中で遊べるものがありますか?それがゲームであってもブロックであっても、ぜひその集中力を褒めてあげてください。なぜならば、この遊びに向けられる「集中力」を上手に育てていくことで、学習時の集中力へつなげることができるからです!■参照コラム記事はこちら↓遊んでいる子どもを叱るのはNG!?「集中力」を作り出す、たった2つの方法とは
2019年01月27日昨年の全米オープンに続き、2019年の全豪オープンでも優勝を飾った大坂なおみ選手。アジア人として初の世界ランキング1位の座も確定し、テニス界の今後を担うスーパースターとして世界中で注目されています。大坂選手のここ1年の躍進の裏側にあったもの、それは日々のメンタルトレーニングです。以前は試合中に感情を爆発させてしまうことがあったものの、彼女が頻繁に「我慢」という言葉を口にしているように、メンタル面でも大きな成長を遂げていたのです。そこで今回は、「怒り」の感情が心身に与える影響や、大坂なおみ選手から学ぶ、子どもでも感情のコントロール(アンガーマネジメント)ができるようになるために家庭内でできることをまとめてみました。「怒り」が子どもの成長に与える悪影響ここでは感情の中でも「怒り」に着目し、怒りが心身に与える影響を見てみましょう。筑波大学で行われた研究では、怒りの感情に適切に対処しない状態が続くと、怒りの感情が持続し、心身共に悪影響を及ぼすことが実験の結果示されています。特に、身体に与える影響としては副交感神経の機能低下が挙げられるとのこと。副交感神経とは自律神経のひとつで、体を緊張状態に導く「交感神経」と対をなしたリラックス状態に働く神経です。副交感神経の機能の低下は交感神経の優位につながり、緊張状態が維持されることから、だるさや倦怠感、冷えやこり、胃腸の不調等の症状に悩まされるのだそう。しかし同時に、この研究では「怒りの持続を避けるための2つの対処法」が示されています。ひとつは怒りの感情を適切に相手に伝えようとすること。もうひとつは相手を見返すために何か行動を起こすことです。反対に単純に怒りの感情を爆発させた場合、怒りは持続し、相手の怒りの感情も喚起させてしまうことがわかっています。この研究結果は、思わず怒りの感情が芽生えたときには怒らないようにするのではなく、怒りという感情に適切に対処できる術を学ぶことの重要性を示していると言えます。また、両親が感情のコントロール方法を学ぶことも重要です。名古屋大学の研究では母親が怒りやすい性格の場合、子どもも怒りやすい性格になることがわかっています。子どもは両親の姿を見て育ちます。自分自身が子供に悪影響を及ぼさないよう、怒りやすいと実感している方はまず自分から変わるよう心がけましょう。感情を爆発させた子どもへの対処法感情を爆発させた子どもへの向き合い方によって、子どもの感情への対処の仕方は変わります。ここでは「親が子どもの気持ちに寄り添う方法」を紹介します。【1】気持ちをしっかりと受け止める感情の爆発に対して叱ったり無視したりすると、子どもの自己肯定感の低下や両親への不安感につながります。まずは子どもの話をじっくり聞いてください。そして「お友だちに嫌なことを言われたんだね。それは悲しいね」など、子どもの気持ちをしっかりと受け止めてあげましょう。子どもによってはうまく感情を言葉にできない場合もあります。そんなときはギュッと抱きしめてあげることも効果的です。「お父さん(お母さん)はあなたの気持ちをわかっているよ」と態度で示してあげるのです。【2】心を解きほぐす手伝いをする感情の爆発は子どもが自分自身の感情をうまく言葉にできず引き起こっている場合に多く見られます。気持ちをしっかり受け止めることで子どもが落ち着いたら、「〇〇ちゃんは、お友だちと一緒に折り紙で遊びたかったけど、お友だちは別の遊びをしたいって言ったんだね。それで〇〇ちゃんは悲しくなって泣いちゃったのね」など、子どもの混乱した心を一緒に整理していきましょう。ただし、一方的な意見の押し付けは禁物。あくまで子どもが自分で考えるお手伝いをするスタンスで臨むことがポイントです。【3】気をそらせる感情の爆発の原因となる出来事には解決できない問題や回復までに時間のかかる問題もあります。その際は別のことで子どもの気をそらしてあげることも大切です。公園やスーパーに行くなど場所を変えたり、美味しいものを食べたり、一緒に子どもの好きなテレビ番組を見たりなど、子どもに合わせて注意を他のところに向けてあげましょう。そんな簡単なことで!?と思うかもしれませんが、大人だって気分転換をしたあとはケロリと嫌なことを忘れてしまう場合もありますよね?子どもだって同じことですよ。普段からできる!家庭内アンガーマネジメント子どもが自分で感情をコントロールできるようになるためには日頃からの習慣づけが必要です。そのアプローチ方法は、「感情から行動にアプローチする方法」と、「行動から感情にアプローチする方法」の2つがあります。今回は大坂なおみ選手も実践していた行動から感情にアプローチする方法を、アンガーマネジメントと呼ばれる1970年代にアメリカで誕生した心理トレーニングから2つ紹介します。【1】「待つ」ことを習慣づける子どもが負の感情を抱いた際にすぐに表現するのではなく、少し待って考えてみるように促しましょう。そうすることで成長してからも自分の気持ちを整理して伝えることが習慣づけられます。たとえば、「時計の3のところまで(怒ることを)待ってみようか」などと言って具体的な時間を示し、無事達成することができたら褒めてあげるなどすると良いです。また、ご褒美を設定することも効果的です。ただし、待つ際に提示した条件を破ることは子どもへの悪影響になります。あくまで約束を守れることだけ条件として提示しましょう。【2】交換日記をする子どもが文字を書けるようになったら連絡帳のような交換日記を始めることをお勧めします。その日にあったことを書いてもらうことで、親が子どもの現在の状況を確認できることはもちろん、子ども自身も自分の気持ちを言葉にすることを習慣づけられるからです。また、一方的に提出を求めるだけでなく、親自身も日記を書くことで、きちんと自分のことを気にかけてくれているのだと子供は実感することができるでしょう。書く時間を設けることが難しい場合はコメント程度でもかまいません。短くてもよいので毎日続けていくことが大切です。もし学校で嫌なことがあったときでも、紙に感情を書き出すことでストレスが軽減されます。この感情を書き出す作業は「エクスプレッシブ・ライティング」と呼ばれ、1日最低8分間書くだけでメンタルが強くなり、ストレスが解消されるとのこと。もしかしたらこちらは、大人にこそ必要かもしれませんね!そして親の側も、家事のことや仕事のことなどを子どもと共有してみるのもオススメです。いつもとちょっと違う、“密度の濃い” 親子の会話ができますよ。(参考)NEWSポストセブン|大坂なおみを勝利に導いた行動から感情に働きかける方法東洋経済ONLINE|大坂なおみが世界の称賛と同情を集めたワケ山内星子(2009),「母親の怒り特性が幼児の怒り特性に与える影響 -媒介変数としての感情会話に着目して-」, Human Developmental Research Vol.23,175-188ベネッセ教育情報サイト|急に怒り出す!感情がコントロールできない子どもの対処法は?YOMIURI ONLINE|子どもでも実践できる!怒りのコントロール方法東海学院大学紀要3(2009)|感情のコントロールプログラム研究の展望:発達障害への適用に向けて東洋経済ONLINE|「感情を紙に書く」習慣でストレスは減らせる
2019年01月27日「今度のテストを頑張ったら、おもちゃを買ってあげるね」「お手伝いしてくれたら、お小遣いをあげるよ」——このような、“もので釣る”という行為をしたことのある方は少なくないと思います。実は、こうした行為が「アンダーマイニング効果」という現象を引き起こし、子どものやる気を奪ってしまう可能性があることをご存知でしょうか。今回は、子育て中の方にぜひ知っていただきたい、子どものやる気と「アンダーマイニング効果」の関係性について詳しく説明します。どっちが大事? やる気には2種類あるやる気(=動機づけ)には、2種類あります。ひとつは、達成感や充足感、行動そのものに対する喜びといった自分の内部から生み出される「内発的動機づけ」。もうひとつは、報酬や評価、賞賛といった外部からの刺激により生み出される「外発的動機づけ」です。例えば、掃除をするとき、「部屋がきれいになるのが嬉しいからやる」というのは「内発的動機づけ」、「掃除をしたらお菓子がもらえる約束をしているからやる」というのは「外発的動機づけ」です。やる気を持続させるためには「内発的動機づけ」が大事だといわれています。なぜなら、「外発的動機づけ」には物理的な限度があり、長続きしないからです。例えば、親が子どもに「掃除をしたらお菓子をあげる」と約束しても、掃除をするたびにずっとお菓子をあげ続けることはできません。また、「外発的動機づけ」による行動の場合、次第に行動の質が落ちていくことがあります。例えば、「お菓子がもらえればいいや」と適当に掃除を終わらせたり、親が見ているときだけ掃除したりといった悪知恵が働くからです。一方、「内発的動機づけ」によって掃除をする場合は、掃除そのものにやりがいを見出して行うため、やればやるほどもっと掃除が好きになったり、上達したりといったことも期待できます。子どもの成長を願うなら、「内発的動機づけ」を引き出してあげることが必要なのです。やる気を奪う!?「アンダーマイニング効果」ところが、親が知らず知らずのうちに、子どもの「内発的動機づけ」を奪ってしまっていることがあります。それは、「アンダーマイニング効果」によるものです。「アンダーマイニング効果」とは、もともと持っていた「内発的動機づけ」に対して、「外発的動機づけ」がマイナスの影響を与え、やる気を減少させてしまうことです。ウィキペディアでは、下記のとおり定義づけられています。内発的に動機づけられた行為に対して、報酬を与えるなどの外発的動機づけを行うことによって、モチベーション(やる気)が低減する現象である。例えば、好きでプレイしていたゲームに金銭的な報酬を与えられると、やる気がなくなってしまうなど。抑制効果ともいう。(引用元:ウィキペディア|アンダーマイニング効果)例えば、もともと勉強が好きな子どもに、もっと頑張ってほしいからと、親が「勉強を頑張れば、ご褒美をあげる」と約束するとします。そうすると、子どもはご褒美があるうちは頑張りますが、ご褒美がなくなると頑張らなくなってしまう――これが「アンダーマイニング効果」です。もともと勉強が好き(内発的動機づけ)で、自ら進んで勉強をしていた子どもでも、ご褒美を与えられることにより、それをもらうこと(外発的動機づけ)を目的として勉強をするようになってしまうのです。そして残念なことに、一度そうなってしまった場合、「好きだから勉強する」という気持ちはどんどん薄れてしまい、もとに戻りにくくなってしまいます。やる気を最大限に発揮してほしいという親心から与えたご褒美により、子どものやる気がなくなってしまうわけです。これでは、意味がありません。やる気を育てる、3つの「ご褒美」テクニックでは、子どもにご褒美をあげることは、やめたほうがいいのでしょうか。これに関しては、必ずしもそうとは言いきれません。「アンダーマイニング効果」の特徴を生かし、うまく子育てに取り入れれば、良い効果をもたらすことも。そこで、3つのご褒美の活用例をご紹介します。1. ご褒美を形のないものにするご褒美は、一時的なやる気を引き出すには強力な効果を発揮することがあります。ですから、「アンダーマイニング効果」さえ起こさなければ、ここぞというときには積極的に導入していきたいものです。生活情報サイト「All About暮らし」子育てガイドの佐藤めぐみさんによれば、「アンダーマイニング効果」は、お金やおもちゃ、お菓子など目に見えるご褒美によって起こる現象だそうです。逆に、目に見えないご褒美では起こりにくいといわれています。つまり、形のないものをご褒美にすればいいのです。例えば、子どもがお手伝いをしたらギュッと抱きしめる、宿題を早く終わらせたら「すごいね」と褒めてあげる——こうした形のないご褒美は、親子のコミュニケーションにもなるのでおすすめです。2. ご褒美をポイントカード方式にするすでに、子どもにご褒美を与え、「外発的動機づけ」によりやる気を引き出している場合は、そこから徐々に「内発的動機づけ」によるやる気に移行させていく必要があります。その手段の一つを、「All About暮らし」子育てガイドの福田由紀子さんが紹介してくださっています。目標を達成できたらシールやスタンプを与えて、一定の数が集まったら、何かと交換できるというシステムです。(中略)また、達成するまでに、たくさんのほめ言葉をもらうことによって、目的が「モノと交換すること」から「認められること」に移行していきます。そして、ほめられることを繰り返すうちに、自分で自分をほめることができるようになっていきます。それが、内発的動機づけ(自発的なやる気)に繋がっていくのです。(引用元:All About暮らし|やる気を育てる! 良いごほうびと悪いごほうびの違い)このように、急ではなく、徐々に移行していくことがポイントです。このやり方であれば、もともと「内発的動機づけ」がなく、ご褒美がなければ行動できなかった子どもも、徐々にご褒美なしで行動できるようになるかもしれません。3. ご褒美を、好ましくない行為をやめさせるために使う書評サイト「新刊JP」には、書籍『行動経済学漫画ヘンテコミクス』(佐藤雅彦、菅俊一、高橋秀明著、マガジンハウス刊)のこんな一コマが紹介されています。ある日、子どもたちが落書きをしていると、いつもとは違って笑顔のおじいさん。「こどもはいたずらするぐらいが元気があってよろしい」そう言うと、なんとおこづかいを渡しはじめました。次の日もその次の日も、おじいさんは落書きをした子どもにおこづかいをあげます。しかし数日後、「すまんがもう今日からこづかいはやれなくなった」「もうお金がないんじゃよ」と急にあげるのをやめてしまいました。すると子どもたちは、すっかり落書きをする意欲をなくしてしまったのです。(引用元:新刊JP|行動経済学を使って「いたずら書き」をやめさせる?その驚きの方法とは)これは、「もともと持っていた『内発的動機づけ』に対して、『外発的動機づけ』がマイナスの影響を与え、やる気を減らしてしまう」という「アンダーマイニング効果」の特徴を逆手にとり、子どものいたずらに対するやる気を消滅させた例です。子どもにやめさせたい行為があるなら、その行為に対してあえてご褒美を与えることで、やめさせることができるかもしれません。例えば、テレビゲームをやめさせたいなら、下記のようなプランを試してみてはいかがでしょうか。(1) テレビゲームのステージを一つクリアするごとにシールをあげる(2) 子どもはシールが欲しくて、ますますテレビゲームに熱中する(3) しばらくしたら、「シールがなくなった」と言って、シールをあげるのをやめる(4) 子どもはシールがもらえないから、テレビゲームをやらなくなるこのように、子どものゲームが好きという気持ち(内発的動機づけ)に対して、シールをもらうこと(外発的動機づけ)がマイナスに影響し、やる気をなくすという展開が期待できます。***“もので釣る”というと聞こえが悪いですが、ご褒美を与えるという行為も、我が子を愛する親の気持ちの表れです。「アンダーマイニング効果」の特徴を知り、ご褒美を上手に取り入れ、子どものやる気を引き出すことに役立ててくださいね!(参考)株式会社日立システムズ|人を活かす心理学【第17回】報酬はやる気を削ぐ? 内発的モチベーションプレジデントオンライン|アドラー心理学で解明「やる気」の出し方ウィキペディア|アンダーマイニング効果URANARU|心理学のアンダーマイニング効果の例と逆の効果All About暮らし|ご褒美を子供のやる気アップに使っていいの?All About暮らし|やる気を育てる! 良いごほうびと悪いごほうびの違い新刊JP|行動経済学を使って「いたずら書き」をやめさせる? その驚きの方法とは
2019年01月26日この春、お子さんが小学校入学を控えている親御さんのなかには、小さな心配事をいくつも抱えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。登下校や給食、トイレ、授業態度、宿題……うちの子、大丈夫かな?と、数え上げればキリがないくらいいくつもの不安が押し寄せてきますよね。また、先輩ママからは「今はクラスのほとんどの子が、入学前にひらがなをマスターしてるよ!」と言われたかと思えば、入学説明会では先生から「ひらがなや数は入学後に教えるので、今から勉強しなくても大丈夫ですよ」と言われるなど、一体どこまでできていれば大丈夫なの!?と混乱しているかもしれませんね。学校や地域によって多少ばらつきはありますが、入学後にお子さんが困らないために、「本当に身につけなければならないこと」があります。今回は、お子さんが無事に楽しい小学校生活がスタートできるように、入学前にできておいた方がいいことをまとめました。「ひらがな」「時計」は基本。「時間を意識する」ところまで発展させよう!幼稚園や保育園とは違って、小学校では一人ひとりに先生が細かくフォローしてくれることはあまりありません。もちろん勉強面やお友だちとの付き合い方などは指導してくれますが、基本的な生活習慣や、学校生活をスムーズに送るための基本的な知識は、入学前に家庭で身につけておくのが一般的です。とくに「ひらがなで書かれた自分の名前を読むことができる」「時計を見て行動できる」この2つはぜひ入学前に身につけておきましょう。「うちの子、まだ時計が読めない!」と焦ることはありません。以前ご紹介した記事で時計の数え方を詳しく説明しているので、ぜひ参考にしてみてください。(小学校1~3年生の算数「時間と時刻」につながる【レベル別 時計の数え方】)ただし、時計が読めるようになったとしても、そこで終わりではありません。できれば、「時計が読めること」から一歩進んで「時間(時計)を意識する生活」を送る練習ができるとなおいいでしょう。『1人でできる子が育つ「テキトー母さん」のすすめ』(日本実業出版社)の著者・立石美津子さんは、「幼稚園・保育園では、「次は○○をするよ」と、その都度細かい指示を出してくれました。しかし小学校では、時計を見て次の時間割を確認したり、休み時間にトイレに行くタイミングを考えたりと、子ども自身が時計を見ながら行動する必要があります」と述べています。そのためにも、お子さんとの普段の会話を少し工夫して、日常生活の中で意識的に時間を強調してみるといいですね。「早くしなさい!」と言うだけでは、子どもは時間の感覚がつかめないまま「言われたからやる」という状態に陥ってしまいます。自分で時計を見て時間を逆算したり、あと○分でこれをやる、と計画性をもって行動できるように、アナログ時計を見せながら次のような声かけをしてみましょう。□「早く起きなさい!」→「おはよう。ほら、時計見て、もう7時だから起きようね」□「早く食べちゃいなさい!」→「学校へ行く準備があるから、7時30分までには食べ終えてね」□「早く準備しなさい!」→「あと10分で8時よ。それまでに着替えようね」このように、会話の中で「○時○分までに」「あと○分で○時だよ」という時間表現を入れることで、子どもは意識的に時計を見るようになります。すると自然に「時計を見て行動する」ことが習慣づいて、入学後はスムーズに学校生活を送ることができるでしょう。45分間じっと座って集中できる?小学校の授業は1コマ45分なので、この時間は集中できなければなりません。ただし、入学したての子どもはほとんどがソワソワして落ち着きがないもの。先生もそのことがわかっているので、最初のうちは子どもたちの興味を引きつける工夫をしたり、途中で声を出して話し合う時間を作ったりと、45分の中でメリハリをつけて飽きさせないようにするはずです。その後、学校生活にも慣れてしばらくしたら、多くの生徒に落ち着きが出てきて、45分間集中を保てるようになっていきます。しかし、いつになってもぼーっとして頭の中で別のことを考えたり、周りのお友だちにちょっかいを出したりする子もいます。子どもの身体についての研究を行っている日本体育大学教授の野井真吾氏は、「座っているとき、背もたれに寄りかかったり、頰づえをついたりしてぐにゃぐにゃになる子が最近増えている」といいます。授業に集中できない理由として、次のふたつの原因が考えらます。ひとつは「前頭葉の発達が未熟である」こと。そしてもうひとつは、「セロトニン神経の弱化」です。前頭葉機能の発達が未熟であると、物事に集中することも気持ちを抑えることもうまくできないといいます。そのため、授業中も集中を維持できず、いつもそわそわとしていて落ち着きがなくなってしまうのです。また、良い姿勢を保つために重要な役割を果たす「セロトニン神経」の活性が低下していることも、集中力を欠く原因になっていると言われています。セロトニンは、日中に太陽光を浴びることで増加します。昼間に体内で作られたセロトニンをもとに、夜にはメラトニンという体温を下げて眠りを誘うホルモンが生成されます。夜になってもコンビニや塾、テレビやゲームなどにより必要以上に明るい光刺激を受けることで、メラトニンの分泌が抑えられてしまい、体内リズムが狂い、よく眠れない、朝起きられないといった現象が起きているのです。(引用元:ベネッセ 教育情報サイト|授業に集中できない小学生「前頭葉」と「セロトニン」がカギ)つまり、外遊びをしないことで良い姿勢を保つために重要な神経が十分に機能せず、体内リズムが乱れて睡眠不足になり、結果的に授業に集中できない状態になってしまうのです。日中はできるだけ外遊びをして、早寝早起きなど規則正しい生活を心がけるようにすると、授業に集中する体勢を整えることにつながるでしょう。整理整頓、持ち物の管理は自分で!ライフオーガナイザーの鈴木尚子さんは、「入学前の春休みまでには、子どもが自分で持ち物を管理できる環境づくりを整える必要があります」と述べます。小学校は幼稚園や保育園に比べて、自分で管理しなければならないものが格段に増えます。それなのに、おもちゃや絵本がいっぱいで勉強道具を収納するスペースがない!ランドセル置き場が確保できない!となると、子ども自身も整理整頓の習慣が身につきません。入学前の春休みは、学校に行く準備がしやすい環境を整えてあげて、少しずつ整理整頓を身につけさせるチャンスです。また、片付けの習慣を身につけることで思わぬ相乗効果も期待できるそう。モノの管理は、勉強、生活、仕事の基本です。それが身につくと、頭の中の管理までできるようになってくるので、時間の管理やコミュニケーション(対人関係)の管理にまでつながってきます。(引用元:Milly|【小1の壁 対策】来春の新一年生ママが今からすべきこと「新生活は早めのキッズスペース作りでスムーズに!」)「見えるものが管理できなければ、見えないものは管理できません」と鈴木さん。さまざまな管理の基礎を築き上げる最初のステップとして、小学校入学は絶好のタイミングなのです。まずは、親御さんと一緒に整理と収納について考えます。「机の一番上の引き出しにはよく使うものを入れよう」など、子ども自身が使うときに取り出しやすく、片付けるときにしまいやすい方法を見つけましょう。また、何年生でどれくらい必要なものが増えるのか、先輩ママにリサーチするのもいいでしょう。お習字道具、ピアニカ、リコーダー、彫刻刀など、学年によって持ち物が増えていきます。コツは「パンパンに詰め込むのではなく、空間に余裕をつくる」こと。つねに「八分目」を目指すことで、何か新しいことに取り組むときに必要なものを追加しやすくなります。入学前のこの時期、これから先の楽しい6年間を想像しながら、ぜひ親子で一緒に部屋と心を整える有意義な時間を過ごしてください。ほかにも「保護者の名前、電話番号、だいたいの住所(町名)を言うことができる」「学校までの道順がわかる」「和式トイレで用を足せる」などがあります。今はまだ完璧ではなくても、できるようになると親も子どもも安心して学校生活が送れることばかりなので、早い段階から積極的に身につけさせるといいですね。***■入学前にぜひ読みたい!『小学生になったら図鑑』(ポプラ社)入学準備から小学校生活まで、楽しくなる366のコツとヒントが満載です。この1冊があれば入学準備はバッチリ!(参考)Study Hacker こどもまなび☆ラボ|小学校1~3年生の算数「時間と時刻」につながる【レベル別 時計の数え方】立石美津子(2014),『1人でできる子が育つ「テキトー母さん」のすすめ』,日本実業出版社.ベネッセ 教育情報サイト|授業に集中できない小学生「前頭葉」と「セロトニン」がカギMilly|【小1の壁 対策】来春の新一年生ママが今からすべきこと「新生活は早めのキッズスペース作りでスムーズに!」
2019年01月25日子どもの心身の健康に欠かせない「睡眠」。必要な睡眠時間は、幼児期(3〜5歳)で11〜13時間、学童期(6〜12歳)で10〜11時間といわれています。しかし、不足している子どもが多いのが現状です。みなさんのご家庭ではいかがでしょうか?子どもの睡眠が足りているかどうか、きちんと把握し、十分な睡眠時間を確保してあげられていますか?今回は、子どもの睡眠不足の危険性についてお話ししたうえで、寝不足な子に共通してよく見られる傾向と、十分な睡眠をとらせるための秘策をご紹介します。睡眠不足は「学力」や「人格形成」にも影響する!睡眠不足は健康にはもちろんのこと、学力や心にも影響をおよぼすことがわかっています。具体的には、どんなことが懸念されるのでしょうか。【健康への影響】睡眠不足は、体に様々な症状を引き起こします。その一つが、免疫力の低下です。通常、睡眠中は様々なホルモンが分泌され、それらが体の機能を整えるうえで重要な働きをします。それが、睡眠不足になると少なくなり、体のバランスが崩れてしまうそうです。また、睡眠不足は体温や交感神経、副交感神経の異常を招くといわれています。それらの異常は、朝起きれなくなったり、肥満や高血圧を引き起こしたりする、非常に厄介なものです。さらに、幼少期の睡眠不足は、その後の生活習慣にも影響するといわれています。手遅れにならないうちに改善しないと、大人になってから健康に支障をきたすこともあるのです。【学力への影響】学力への影響も無視できません。ある調査では、成績が上位の子ほど早い時刻に寝ていることがわかっています。睡眠には、レム睡眠(浅い眠り)とノンレム睡眠(深い眠り)があり、およそ90分おきに訪れるレム睡眠の間に、脳が記憶を整理するといわれています。ですから、睡眠時間が短ければ短いほど、そのチャンスが減ってしまうのです。つまり睡眠不足は記憶が定着せず、せっかくの学習努力が無駄になってしまうかもしれません。勉強したことをしっかり身につけるには、十分な睡眠が欠かせないのです。【心への影響】子どもが睡眠不足になると、感情のコントロールが難しくなるということが指摘されています。遊んでいてもイライラしてしまい、友だちと喧嘩してしまうことも。気づかないうちに友人関係を悪化させてしまうかもしれません。昌仁醫修会瀬川記念小児神経学クリニック理事長の星野恭子先生は、「夜型の幼児は攻撃性が高く、不注意が多い。夜型の5歳児は三角形が書けない」と話しています。このように、睡眠が不足すると、心にも影響がおよびます。小さな子どもが、コントロールのきかない感情を抱え、心を痛めてしまうのです。寝不足な子が出している3つのサインさて、こうした様々な危険にさらされている寝不足な子たちは、共通して何かしらのサインを出しています。それを親御さんが敏感に察知することで、早期に睡眠不足を解消させてあげられるかもしれません。そこで、下記に寝不足な子によく見られるタイプや行動、様子を挙げていきたいと思います。【寝不足のサイン1:自己肯定感が低い、イライラしている】子どもの態度や発言に注目してみてください。理由やきっかけもなく常にイライラしていたり、「どうせ自分なんか」「頑張っても無駄だし」といった投げやりな言葉を口にしたりしていませんか?文科省の調査から、睡眠不足の子どもには、自己肯定感が低く、イライラしやすい子が多いということがわかりました。自己肯定感が低いということは、自分の能力に自信がなく、自分の存在価値が見出せないということ。自分で自分のことを好きになれないのです。子どもの態度や発言に「あれ?」と思うような点があれば、それが要注意のサインと考えられるでしょう。【寝不足のサイン2:昼間の居眠りが多い、休日に遅くまで寝ている】日常的な行動にも、睡眠不足のサインは潜んでいます。昼間に居眠りをしていることが多かったり、休日に寝溜めをしたりする行動は、まさに普段の睡眠が足りていない証拠です。授業中も居眠りしてしまい、授業の進度についていけなくなってしまうことも。対応が遅れると、不登校になるケースもあるといわれています。こうした行動は、周囲から「怠け者」と誤解されることが少なくありません。せめて親だけでも、子どもの睡眠が足りていないということに気づいてあげたいところです。【寝不足のサイン3:毎日忙しい、何事にも頑張りすぎてしまう】何事にも真面目に、一生懸命取り組む頑張り屋さんは、睡眠不足になりやすいといわれています。学校や塾、習い事など、忙しい毎日を送る子どもは少なくありません。それらを無理矢理すべてこなそうとすれば、睡眠時間を削るしかない、ということになってしまいます。子どもの様子を見て、「ちょっと頑張りすぎているな」と気になるなら、それが要注意のサインといえるのではないでしょうか。まずは親の睡眠時間を確保するべき我が子の睡眠が足りていない――。その事実に気づいたとき、親はどのようにして、子どもの睡眠時間を確保すればいいでしょうか。実は、親だからこそできる秘策があるのです。睡眠文化研究所が行なった調査「都市生活における家族の睡眠の現状」によれば、親子が同じ部屋で眠る家庭は全体の80%で、子どもの睡眠は親の睡眠と密接に関係しているそうです。そして、「夜型の母親が夜型の子どもをつくる」「両親の睡眠の健康が悪いと、子どもの睡眠健康も悪い」ということが明らかになっています。つまり、子どもの睡眠時間を確保するなら、その前に親の睡眠時間を確保するべきなのです。とはいえ、家事や仕事で忙しい親にとって、睡眠時間を増やすことは大変なことでしょう。その場合は、親子で寝る部屋を別々にしてみたり、夜行なっていた家事を朝に回してみたりと工夫してみましょう。子どもの未来を決めかねない「睡眠」。家族で話し合い、できることから少しずつ試してみてくださいね。***子どもの睡眠不足に気づき、それを改善できるのは、親だということがわかりました。これを機に、ぜひ家族で睡眠について話し合ってみるのはいかがでしょう。部屋の環境を整えたり、就寝時間を調整したりなど、家庭ごとに異なる最適な改善策が見つかるかもしれませんね。(参考)ALL About暮らし|子どもの夜型化には危険がいっぱい!オークローンマーケティング|子どもの睡眠に関する調査結果東洋経済オンライン|「成績のよい子」は、だいたい何時に寝るのかダイヤモンドオンライン|睡眠不足で脳に恐ろしい影響が?子どもの最適な勉強・読書時間とは睡眠屋オンラインショップ|理想の睡眠時間で子供の成長の手助けをヤフーニュース|大人よりも深刻――子どもの「睡眠負債」その実態とは文科省|睡眠を中心とした生活習慣と子供の自立等との関係性に関する調査の結果(概要)産経WEST|「早く起きることが苦痛」塾通い・スマホで体内時計リズム“崩壊”、寝不足の子供続出…睡眠教育の効果は睡眠文化研究所|都市生活における家族の睡眠の現状
2019年01月25日ウーマンエキサイトで人気連載中のimo-nakさんの記事 「園でのお友達トラブル…親はどう対応するべきか悩んで私がとった行動とは」 で、保育園、幼稚園でのお友だちトラブルに関するアンケートを実施しました。子ども同士のトラブルは、まだ自分たちでの解決が難しいため、保護者の介入が必要となることもあります。アンケートには、トラブルの経験談やそのときのモヤモヤした気持ち、家庭でどのように対応しているかなどの回答が寄せられました。■保育園、幼稚園トラブルの経験者は7割以上!まず、保育園、幼稚園トラブルを実際に経験したことのある保護者はどれくらいいるのでしょうか? もっとも回答が多かったのが「たまにある」で51%。約半数の人が、なんらかの形で保育園トラブルを経験していることに。これに「よくある」の回答23%と合わせると、74%という数字になり、大多数の人がトラブルの当事者になっている現実が見えてきました。Q1.園でのお友達トラブルを経験したことはありますか?よくある 23%たまにある 51%ほとんどない 15%全くない 8%その他 3%保育園での子ども同士のトラブルは他人ごとではなく、いつか自分たちにも降りかかると思っておいたほうが良いのかもしれません。では、いったいどんなトラブル例があるのでしょうか? 保育園、幼稚園トラブルの実例を知っておくことで、どう対応すればいいのかヒントが見つかるかもしれません。寄せられたコメントを見てみましょう。■小さい年齢で多発する「かみつき」トラブル保育園、幼稚園トラブルとひと口にいっても、年齢や状況によってその内容はいろいろです。年齢が低く、発達にも差があるといわれる2歳ごろは、まだまだ言葉より手が先に出てしまうことも…。保育園に入りたてで集団行動に慣れていない時期の場合はなおさら、トラブルが発生しても不思議ではありません。突然お友だちがかんだという報告を受けました。うちの息子が何かしたわけでも、そのかんだ子の機嫌が悪かったわけでもなく、ガブッとかまれたそうですおもちゃで遊んでいる子の近くを通っただけらしいが、その子はおもちゃを取られてしまうと勘違いしたみたいでうちの子の顔をガブリとかんでしまい…。ようやく傷が薄くなり、いやな気持ちも薄まりました。が、当時は顔の傷がいたいたしくて、何とも言えない気持ちになりました。お友だちの女の子にかむクセがあり、よくかまれます。かさぶたができるほどのこともあり…。子ども同士のことだからとか先生も見てくれてるから…と思うと言いにくいですが、やはり傷口から菌が入ってきたらどうしようとか心配になります。保育園や幼稚園で、トラブルがあった際に、ケガをさせた相手を教えるかどうかは各施設の判断によって異なることだと思います。ただ最近の保育園や幼稚園などの施設では、かみつきなど、軽いケガの場合については、保護者に相手の名前を伝えないことが多い気がします。これは、「園や学校であったことは、施設側の責任」という考え方があるのかもしれません。ただ、もしかしたら保護者同士のトラブルを避けるためという考えもあるのかも。けがも「お互いさま」と思えるレベルならいいですが、傷がしばらく残るような場合は、やっぱり気になってしまいますよね。「園で話し合いの場を設けてほしい」というコメントもありました。■わが子がトラブルを起こす側になってしまった筆者の子どもが通っている施設でも「けがをしたこと」の報告はありますが、相手の名前は教えてもらえません。そして、こちらが「手を出した側」だった場合、トラブルがあった事実すら知らされないので少しだけモヤモヤする気持ちもあります。「けがをしたこと」があったとしても、おそらく、わが子も「やってしまったこと」があるのではないかと思うのですが…。コメントの中にも「相手の子を引っかいてしまった」「お友だちにしつこくしてしまった」などの報告がありました。お片付けをしないお友だちを注意したけど聞いてくれなくて、お友だちを引っかいてしまった。年中の娘です。とても遊びたいお友だちがいますが、毎回「遊ぼう」と誘っても「遊ばない」と言われ、とても悲しいそうです。私が「ほかに遊べるお友だちと遊んだら?」と言っても「明日もう一回がんばって言う」と、意地になっているようで困っています。相手の子もしつこくてイヤなのではと心配です。これらのコメントから、やはり子どものトラブルの原因の多くは「口でうまく伝えられない」「友だちとの距離感がまだつかめていない」というようなことではないかと感じます。成長とともにできるようになる部分が多くあると思いますが、見守るしかできない親としては、どうしたってハラハラしますよね。■仲間はずれやいじわるが始まると問題が複雑に…?imo-nakさんの記事では「男の子にいやなことを言われた」というトラブルが描かれていました。年齢があがり、子どもも自由に言葉が出るようになると、こういうケースが増えるイメージがあります。こうなってくると人間関係も本番というか…ただ「かみつかれた、たたかれた」という段階よりも、物ごとが複雑になり、親の対応も難しくなってくる印象です。年少の娘が、年長のお姉ちゃんたちが集まっているところに行こうとしたら「こっちはダメだよー」と集団で言われたようです。悪気はなかったと思うのですが、娘は悲しくて泣いてしまったみたい…。同じ年齢のグループで遊んでいるときに、下の年齢の子が来たら邪魔にしちゃうという構造って、子ども同士のトラブルの「あるある」ではないでしょうか。年長ぐらいでは、また自分のやったことで相手が傷つくという想像力がとぼしくても仕方ない気もします。でも、それをわかっていたとしても、実際にわが子が悲しんでいる姿を見るのは親にとってつらいこと。なかなか有効なアドバイスも難しいので、気持ちに寄り添うことくらいしかできず、歯がゆいパターンだと思います。また、上記のような悪気のない出来事とは違い、ひとりの相手からターゲットにされているというコメントも…。保育園年中の娘がいます。同い年の女の子が、うちの娘にことあるごとにちょっかいをかけてくるそうです。たとえば、娘が使おうとしていたおもちゃを横から先に奪い取る、使っていたものを少し置いた瞬間にサッと取る、横入りをするなど…。話を聞くと、どうやら娘をターゲットにしてやっているようです。私は、話を聞いて娘の感情に同調してから、当たり障りのないアドバイスをします。できれば、わが子には、トラブルでいやな思いをしてほしくない。でも集団生活をしていく上では、そういった人間関係も避けては通れません。またトラブルが起こったときに、わが子には対処する方法、気持ちを前向きにする方法も学んでほしい力のひとつです。そのためにも、親としてどういうアドバイスができるのかを家庭で考えておくといいのかもしれません。子どもの気持ちに寄り添いながら、子どもが対応する方法を見守っていかれればと思います。■どこまで大人が介入していいのか子どもの言うことをうのみにして介入してしまったら、過保護なのかも…。でも、わが子が泣いたと聞けば心配になるのが親心。そんなとき、どのように対応すればいいのでしょうか?頼りになるのは、やっぱり日中の子どもの様子を見てくれている先生たち。子どものお友だちのことで悩んでいたことも「相談」という形で話してみると、解決の糸口が見えたというコメントが。下の兄弟が生まれたばかりの女の子に、娘がいじわるをされました。赤ちゃん返りが理由かなと思い、娘の気持ちにも同調しつつ話を聞いていましたが、1年過ぎてもあまり変わらず。「娘も態度が悪かったのかもしれない、でも過保護と思われてもいい」と、保育所の先生にたずねると、その子はみんなにそのような態度だということを教えてくれました。ちょっと胸のつかえが取れた気がしました。その後、娘には受け流すように教えました。「●●ちゃんとケンカした」、「嫌いって言われた」、「もう遊ばないって言われたから、今日はずっと1人で遊んでたの…」、と悲しそうな顔で報告されたことがあります。娘、年中5歳です。「ついに女の子の人間関係がゴタゴタし始めたか?」と思いましたが、先生に話を聞いてみたらそんなに深刻なことではなく、「毎日ささいなことでケンカして、その後は抱き合って仲直り」というのを毎日繰り返していると。モヤモヤするなら先生に相談という形で聞いてみるといいと思います。子どもの話がすべてではありません。毎日ケンカして、でもすぐに仲直り! 子どもらしくて、ほっとするエピソードです。子どもの言うことをそのままうのみにせず、冷静に先生に聞いたからこそ、普段の様子がわかってよかったという例だと思います。寄せられたコメントにも「子どものことに、大人同士のような対応を求めない。お互いさまと考える」というものがありました。大人ですら人間関係に悩むことがあるというのに、まだ家庭以外での活動の場が広がったばかりの子どもでは、うまくいかないことの方があたり前なのかもしれませんね。これから小学校、中学と大きくなれば、人間関係はさらに複雑化し、悩みも深刻になっていく場合もあるかもしれません。そういったときに親は何がしてあげられるのか? いつまでも親がトラブルを未然に防ぐことはできないでしょう。保育園や幼稚園は、親の手元から離れて、子どもが社会とつながる第一歩となります。必要に応じて、先生に相談することも必要となるかもしれません。また子どもの話をよく聞いたり、普段の行動からどういった個性を持っているのかを観察することも大事でしょう。保育園、幼稚園のトラブル解決は、もしかしたら親子にとっても人間関係をどうわたり当たっていくのかの試練の一歩なのかもしれませんね。Q1.園でのお友達トラブルを経験したことはありますか?回答数:118Q2.園でのお友達トラブルについてのエピソードやご意見を教えてください。回答数:30アンケート集計期間:2018/11/29~12/27
2019年01月25日イギリスの小学校では、クリスマスの時期によく、教会でクリスマス発表会を開きます。上の子はキリスト教系の公立校に行ったので、もちろんですが、宗教と特に関わりのない公立校に通っている下の子も、7歳になった今年、教会での発表会デビューをしました。クリスマスの歌を歌ったり、クリスマスの話をしたり。楽器の得意な子は楽器を弾きますし、詩を朗読する子供もいます。7歳から12歳までの子供たちが、生き生きと発表をしていったのですが、今回特に興味深かったのは、発表のテーマが単純に「クリスマス」ではなく、「世界の冬の祭り」だったことでした。キリスト教の(より詳しく言えば英国国教会の)建物の中で、キリスト教ではあるものの、異なる風習を持つロシア正教やギリシャ正教、さらにキリスト教とは異なる宗教であるユダヤ教やヒンズー教のお祭りが紹介され、歌が歌われたのです。これは、イギリスの小学校できちんとカリキュラム化されている「RE」と地理、音楽や国語などの勉強がすべて渾然となったような、とても面白い催し物でした。世界には異なる文化やしきたりがあふれているイギリスは移民の多い国です。ですから、お互いの文化的背景を、幼い頃からある程度理解していくことがとても大切になります。実際にこの国に暮らす私は、ディーワリー(ヒンズー教のお祭りで10月から11月頃に行われるもの)の時期には道路が渋滞することに気づくことがあります。同僚をお茶に誘って、ラマダン(イスラム教の断食月)が終わったらまたねと断られたことも、引っ越したばかりの頃はありました。さすがに今では日付を気にしていますが、その頃は全く考えていなかったのですね。ちょうどクリスマスのあたりには、ユダヤ教のハヌカー(光の祭り)がありますから、「良いクリスマスを!」ではなく「良いハヌカーを!」という挨拶を時折耳にすることになります。イギリスの小学校の必須科目「RE」とは自分の家庭のものとは異なる文化はどうしてもわかりにくいものですから、イギリスの小学校や中学校では、RE(Religious Education「宗教学」)が必須となっています。必ずしも信じるために学ぶのではなく、不必要な摩擦をさけ、お互いを尊重するために学ぶのです。グローバル化が進み、様々な人々が肩を並べて暮らす現代社会を生きるための基礎素養だと考えられているとも言えるでしょう。REの時間は、地方自治体ごとに、何を教えるのかが変わりますが、多くの場合、子供達にとっては日々の生活に密着した情報を学ぶ時間でもあります。イスラムの人たちは豚肉を食べないから、お弁当のベーコンサンドイッチをあげちゃだめですよシク教徒の男の子たちは髪の毛を神様からもらった大切なものであると考えているから、学校でふざけてでもターバンをとろうとしちゃいけませんよこのように、REの時間は、まさに「自分にとってはふつう」のことが、同じクラスで勉強するお友達にとっては「ふつう」ではないのかもしれない、ということを、学ぶ時間でもあるのです。ニュースの理解度を左右する!?哲学、公民、地理と共にさらにセカンダリースクール(日本でいう中学校のようなもの)に通う上の子供をみると、小学校で学んだREの知識が、上の学校で学ぶ哲学や、公民、地理といった教科に密接に結び付けられていることがわかります。イスラム教がどのような宗教なのか、シク教は一体どのような教義を持っているのか。知っているか知らないかで、ニュースの理解もまるで変わってしまうことでしょう。日本の教育には多くの長所がありますが、イギリスの子供達がREの時間に学ぶような基本的な知識を、まだあまり偏見を持たない年齢の時に教えられることがないのは、残念なことだと思います。異なる文化やしきたりが学べる絵本日本で育つ子供達も今後、様々な習慣や文化をもつ人々と触れ合うことが多くなると予測されます。そういった人たちが近所にやってくる可能性もあれば、自分たちがやがて日本の外へ出ていく可能性もあるでしょう。様々な文化を持つ人たちに囲まれた社会で育つ子供達のために、平易な言葉で様々な習慣を説明する絵本があります。そのうちのいくつか、日本語に訳されているものを中心にご紹介しましょう。■『イライジャの天使―ハヌカとクリスマスの物語』舞台はアメリカ。年老いた黒人のキリスト教徒であるイライジャが、白人のユダヤ教徒の男の子マイケルに、自分が彫った木彫りの天使を渡すのですが、ユダヤ教では偶像崇拝は禁止されていますから、マイケルは困ってしまいます。宗教も人種も年齢も飛び越えて、友情は友情であると力強く訴える、心温まる物語ですが、同時に、こういった文化的ルーツを持つ家庭のしきたりも垣間見ることができます。■『ラマダンのお月さま』イギリスの作家、ナイマ・ロバートによる本書は、本国でも高い評価を得ている絵本です。1ヶ月間のイスラム教の断食を家族と過ごし、月の満ち欠けを見まもる少女の気持ちが、美しい絵と言葉で表現されています。これを読んでいてわかるのは、ラマダン(断食)が、必ずしも「苦しいこと」「我慢をすること」なのではなく、世界中のイスラム教徒たちにとって、共に信仰を確認し、月を見上げる1ヶ月であるということです。■Rama and Sita: The Story of Diwali英語絵本に目を向けると、日本ではなかなか馴染みのないような文化にも触れることができます。例えばこちらは、ディーワーリー(ヒンズー教のお祭り)の起源を描いた、ポップな色彩の楽しい絵本です。探せば日本語の絵本も数多くある、世界の風習や信仰、そしてしきたりの本。自分の家庭の中にいるだけでは見えないもの、より多様性のある社会への道しるべとなる本を、ぜひ意識的に選んでいただきたいと思います。(参考)マイケル J.ローゼン 著, さくま ゆみこ 訳(2012),『イライジャの天使―ハヌカとクリスマスの物語』,晶文社.ナイマ・ロバート 著, 前田 君江 訳(2016),『ラマダンのお月さま』解放出版社.Malachy Doyle, Rama and Sita: The Story of Diwali, (A & C Black, 2012)
2019年01月24日「人は教えることによって、もっともよく学ぶ」という古代ローマの哲学者セネカによる名言や「教うるは学ぶの半ば」という中国のことわざにもあるように、学習の定着にはインプットとともにアウトプットも大切です。学校ではアクティブ・ラーニングを取り入れ、子どもたちがアウトプットする機会が増えてきているとはいえ、まだまだ「学習=インプット」というイメージが根強いのが現状ではないでしょうか?今回はアウトプットの効果にくわえて、アウトプットの具体的な学習方法を紹介します。アウトプットは脳内の記憶を定着させるインプットとは、脳の中にさまざまな情報を「入力」することを、逆にアウトプットは脳の中に取り込んだ情報を処理して外へ「出力」することをいいます。子どもの勉強で言えば、インプットは教科書を読んだり先生の話を聞くこと、アウトプットは問題を解いたりテストを受けたり、あるいは文章を書いたり発表したりすることが当てはまるでしょう。インプットとアウトプットの最も大きな違いについて、精神科医の樺沢紫苑氏は自著において「運動」があるかどうかだと述べています。「書く」「話す」といった運動神経を使った記憶は、「運動性記憶」と呼ばれます。運動性記憶の特徴は、一度覚えるとその後はほとんど忘れることはないということです。3年ぶりに自転車に乗ったら乗り方を忘れていた、ということはないはずです。(引用元:樺沢紫苑(2018),『学びを結果に変える アウトプット大全』p.22, サンクチュアリ出版)これを学習面に置き換えると、「手で書いて覚える」「声を出して覚える」などの動きを伴うアウトプットは記憶を定着させることになります。また皆さんが学生のころ、友だちから「分からないから教えて」と言われたり、分からないところを教え合ったりしたことはありませんか?いざ、教えるとなると分かっていたつもりなのにうまく教えられなかったことや教えてみてはじめて本当に理解できたと感じた経験は多かれ少なかれあるでしょう。「教える」ことも記憶を定着させるための重要なアウトプットのひとつなのです。『強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話』の著者である宝槻泰伸氏は小さいころに以下のようなアウトプットをしていたとのこと。たとえば、本を読んだら感想文を書く。もし感想文が長くなりそうであれば、口頭で説明(ドライブ中や入浴中)をさせられたそう。これは、本やマンガ(歴史ものや伝記など)の内容の定着をはかり、プレゼンの練習にもなりますよね。(引用元:Study Hackerこどもまなび☆ラボ|知識の詰め込みではない「答えを導き出すための力」をつける、今注目の「探究学習」とは?)アウトプットはこんなに効果があるのですね。であれば、ぜひ子どもたちにもアウトプットの機会を増やしてあげたいものです。記憶定着のためのアウトプット法7つ家庭でできる学習や記憶が定着しやすいアウトプットの方法を7つご紹介します。お子さまの生活にどんどん取り入れて、学習効果をアップさせたいですね。■覚えたいことは手で書く「書く」という動作は記憶を定着しやすくさせます。プリンストン大学とカリフォルニア大学ロサンゼルス校との共同研究で、講義でとったノートが「手書き」か「ノートパソコン」かで学生を分けて試験を行なったところ、「手書き」の学生のほうが良い成績をとったことが明らかになったそうです。■落書きは見つけても叱らない授業中、教科書の人物写真や肖像画にこっそり落書きをしたりノートの端にパラパラマンガを描いたりして遊んだことはないでしょうか? 実は、落書きをしている間、私たちの喜怒哀楽の感情が刺激され、それが記憶力を高める効果があるそうです。■教科書はサッと確認して問題集をたくさんこなす教科書に書かれていることを完全に理解してから問題集に取り組むよりも、サッと確認してすぐに問題集を解き、間違ったところを教科書で確認して再び問題集に取り組むようにしましょう。細切れでインプットとアウトプットを繰り返すことで記憶が定着しやすくなります。■本を読み終わったら内容や感想を聞く子どもが本を1冊読み終わったら、「どんなお話だった?」と内容を尋ねたり、「どんな気持ちになった? それは、どうして?」と感想を聞いてみましょう。■普段の会話で質問するときは「教えてほしい」という姿勢で学校でその日にあったことを子どもが話してくれたら、「それって、どういうこと?もうちょっと聞かせて」のように、1つでも質問をするようにして「教える」体験を積み重ねるといいようです。■叱るときも「教えてほしい」を意識して何か態度を改めさせたいときや反省を促したいときにも親の意見を聞かせる(インプットさせる)のではなく、「どうして、○○だと思うの?」などの質問を通して「教えてほしい」と意思表示をするようにします。■教える手段は「言葉」以外でもOK言葉で伝えたり言い表すことがスムーズにできなかったり苦手に感じていたりするお子さんには、無理に話をさせる必要はありません。自分の気持ちを表現する手段は、紙に文字で書いたり絵を描いたりしてもいいのです。「アウトプット:インプット=7:3」が最適アウトプットをインプットより多くする上で最適な割合は「7:3」と言われています。これは心理学者アーサー・ゲイツ博士によるコロンビア大学での実験結果から明らかになったものです。小3から中2までの100名を超す子どもたちを対象に、「紳士録」(人名年鑑)にある人物プロフィールを9分間で記憶し暗唱させました。この実験で最も高い結果を出したのは、「覚える時間」に約40%を使ったグループで、さらに、年上の子どもの場合は約30%を使ったグループの得点が高かったのだそう。慣れないうちはインプットの時間を4割ほど費やし、だんだん減らして3割にすると、アウトプットとインプットのバランスが良い状態だと言えます。これは前述のアウトプット法「教科書はサッと確認して問題集をたくさんこなす」で言えば、教科書を読む時間を3~4割、残りを問題集に充てるのが最適です。かなりアウトプットの比率が大きいように感じますが、逆に言えば私たちはインプット過多の傾向が強いのかもしれませんね。今回ご紹介したアウトプット法に限らず、子どもに対して常に「意見を教えてほしい」という姿勢で接することが、子どものアウトプットの機会を増やすことになるようです。さっそく、できるところから試してみてはいかがでしょうか。(参考)Study Hackerこどもまなび☆ラボ|知識の詰め込みではない「答えを導き出すための力」をつける、今注目の「探究学習」とは?ベネッセ教育情報サイト|インプットよりアウトプットで子どもは伸びるSTUDY HACKER|世界の教育、基準は “アウトプット” に移行中!グローバル人材になるための「アウトプット力」の磨き方。名古屋商科大学|インプットからアウトプットへ福島みんなのニュース|今週の名言【人は教えることによって、もっともよく学ぶ】セネカ樺沢紫苑(2018),『学びを結果に変える アウトプット大全』, サンクチュアリ出版
2019年01月23日子どもに「書き出しを工夫したい!」と思わせようこの世に「書き出し」が重要でない作文はひとつもありません。書き出しで読む人の興味を引くことができれば、読む人は「これはおもしろそうだ!」と、前のめりになって、その続きをしっかり読んでくれるかもしれません。一方で、書き出しで興味をひくことができなければ、「これはつまらなそうだ」「どれも似たような作文だ」と、読む人は続きを読み流してしまうかもしれません。書き出しの差は“微差”ではなく“大差”なのです。【平凡な書き出しの例】お題:遠足平凡な書き出し:きのうは○○にえんそくに行きました。お題:お母さん平凡な書き出し:わたしのお母さんは、とてもやさしいです。お題:好きな食べ物平凡な書き出し:わたしの好きなたべものは、カレーライスです。お題:学校平凡な書き出し:ぼくの学校は○○小学校といいます。お題:読書感想文平凡な書き出し:わたしは『〇〇』という本を読みました。おそらく、子どもに向かって「書き出しは平凡にならないようにね」と“書き出しの重要性”を説いたところで、ピンとこない子がほとんどでしょう。それどころか、「難しい」「よくわからない」「面倒くさい」と、書き出しを工夫することを、嫌がる子もいるかもしれません。では、どうすれば、子どもに「書き出しの重要性」を実感してもらうことができるでしょうか?いちばんいいのは、個性的な書き出しにたくさん触れさせることです。童話、小説、エッセイ、他の子どもの作文……どんな種類の文章でも構いません。親が「個性的だな」「おもしろいな」「続きを読みたくなった」という書き出しを見つけたら、「この文章の書き出し、おもしろいよ!」と子どもに見せてあげてください。子ども自身が「おもしろい」「いいね」「楽しそう」と思えば、その子は、似たような「書き出し」を書いてみたいと思うでしょう。大事なことは、子どもに強いるのではなく、子ども自身が自然と「書き出しに工夫をしてみたい」と思えるよう、親がさり気なくナビゲートしてあげることです。もちろん、これから紹介する12個の「書き出しパターン」を子どもに見せてあげるのも効果的。子どもが、「書き出しにもいろいろあるんだね」「楽しい書き出しだね」「こんなふうに書いてもいいんだ!」と思ってくれたら最高です。子どもの意識が「書き出しを工夫しないといけない」から「書き出しを工夫したい」へと変わるはずです。作文の「書き出し」に使えるパターン12選では、さっそく「書き出し」のパターンを紹介していきます。【1】「自分の声」から入る「やばい!」先生がガラっとドアをあけたしゅんかん、ぼくたちはさけんでいた。「うっ、これは、うまい!」こんなにおいしいラーメンをたべたのは、うまれて初めてです。【2】「他人の声」から入る「こら、ユウタ!はやくおきなさい!」いつものようにママが大声をあげている。「よくがんばったね」コーチのその言葉で、ぼくはうれしくなりました。【3】音から入るピュー、ピュー。あまりの風のつよさに、ぼくは泣きそうになりました。ガッチャーン!花びんがわれたしゅんかん、ぼくのからだからヘンな汗がふきだした。【4】「自分の意見」から入る友だちの悪口だけは、ぜったいに言わない。わたしはそう決めています。ぼくは勉強がきらいだ。でも、それでいいと思っています。【5】「疑問」から入る「たすうけつ」で決めたことって、本当に正しいのだろうか?前から思っていたぎもんです。子どもはどうしてお酒をのんではいけないのかな?ぼくはふしぎに思った。【6】「たとえ」から入る赤オニが来た!と思ったら、おこって顔をまっ赤にしたママでした。まるで、雪をかぶった富士山のようでした。ぼくのお茶わんにつがれた大もりごはんのことです。【7】「くり返し」から入る食べた、食べた、食べまくった。きのうは、ひさしぶりにやき肉を食べました。いたい、いたい、いたい。キズ口にしょうどくやくをぬられるときが、イヤでイヤでたまりません。【8】「気づき&発見」から入るついに、朝ねぼうしない方法をはっけんしました!逆あがりのコツがわかったぞ!【9】「物語」っぽく入るそれは、ねつがさがった日の夜のことでした。としょかんで、むちゅうになって本をよんでいたときのことでした。【10】「告白」から入るじつは、いままでママとパパにかくしていたことがあります。きょうは、ぼくの本当の気もちを書きたいと思います。【11】「悩み」から入るぼくはあまり足がはやくありません。わたしは、かん字をおぼえるのが、ものすごく苦手です。【12】「会話」から入る「バナナっておいしいよね?」「えー、ぼくはきらいだ」「じゃあ、なんのくだものが好き?」「うーん、トマト!」そこで、みんなが大わらいした。文章の「書き出し」には、さまざまなパターンがあります。親子でそれぞれ気に入ったパターンを発表したり、平凡な「書き出し」と何が違うのか、一緒に話し合ったりしてもいいでしょう。あるいは、紹介したパターン以外に、どういう「書き出し」がおもしろそうか、出し合ってみるのもいいですね。もちろん、はじめはマネから入ってOKです。好きなパターンを利用して、子どもに「書き出し」を書かせてみましょう。くれぐれも「マネしないで、自分で考えなさい!」などと野暮なことは言わないように。作文に限りませんが、マネから入ることは技術習得のセオリーです。大いにマネさせましょう。「書き出し」を制する者は「作文」を制す?「書き出し」は読む人の興味を引くだけでなく、書き手自身にも大きな影響を及ぼすものです。「きのう、えんそくに行きました」よりも「ジャッポーン! 気がついたときには、わたしは池におちていました」でスタートする文章のほうが、作文を書く子ども自身も楽しいはずです。頭に映像が浮かぶため、続きのエピソードが書きやすくなります。説明的な文章からスタートすると、そのあとも説明的な文章になりがちです。一方で、イメージが浮かぶ場面からスタートすると、そのあとの文章もドラマチックになりやすくなります。気がつけば、オンリー・ワンな作文に仕上がっていることも珍しくありません。先ほどご紹介した12個のパターンも、読んだ瞬間にイメージが浮かびやすいものを優先して選びました。10歳未満の子どもにとって大切なのは、「説明力」よりも「体験の描写力」です。自身の体験を引き合いに、自分の感性や考えを自由に表現することができるようになると、その子の作文能力は、どんどん伸びていくでしょう。「書き出し」は単に「作文の冒頭」ではありません。作文全体のトーンやその後の展開を左右する重要なパーツです。古今東西、名のある作家たちも、そのほとんどが「書き出し」の名手です。「『書き出し上手』は『作文上手』」といっても過言ではないのです。
2019年01月23日お子さんに「月はいくつあるの?」と聞かれたことはないでしょうか。丸い月、半分の月、バナナのような月、夜空の月、朝や昼に見る月、オレンジの月、黄色い月、白い月——月が見せるさまざまな表情に気づき、子どもが「なぜ?どうして?」と思ったら、その興味を学びにつなげましょう。夜空を見上げて一緒に月や星を観察したり図鑑などの本や博物館で調べたり……子どもの「もっと知りたい」を家庭でサポートする方法について紹介します。子どもの4人に3人は月や星を見るのが好き夜空に浮かび上がる大きな満月、ピンと張りつめた冬の空に輝く星たちに興味をもつ子どもは多いようです。ベネッセ教育情報サイトが小学生の保護者を対象として2014年9月に実施したオンラインアンケートによると、「お子さまは月や星を見るのが好きですか?どのように?」と尋ねた結果、「とても好き(6.7%)」と「まあ好き(58.4%)」となりました。合わせて約75%、実に4人に3人の小学生が月や星を見るのが好きだということが判明したのです。「とても好き」「まあ好き」と答えた人に理由を聞くと、●理科の宿題で空を見てから好きになりました●保育園の時にプラネタリウムに行って好きになりました●山奥のキャンプに行った時、満天の星空を見て感動したようです●寝る前に部屋から空を眺めることが増えました●月の向きが変わったとか、満月がきれいだなどと話します(引用元:ベネッセ教育情報サイト|オンライン投票【小】【小学生】お子さまは月や星を見るのが好きですか?どのように?)などが挙がったほか、スーパームーンについてのニュースが興味をもつきっかけになったり、天体望遠鏡をほしがるようになったりするお子さんもいるようです。子どもたちにとって、夜空の月や星は位置や形が変わる不思議な存在であり、もっとよく知りたいと思う対象だといえるでしょう。月や星に興味をもったら、親は「ハマる」環境を整えるこの「もっとよく知りたいと夢中で取り組む経験」、つまり「ハマり体験」は、子どもの学習に対する姿勢を育みます。では、なぜハマり体験が学力と結びつくのでしょう。東北大学加齢医学研究所・瀧靖之教授は著書『東大脳の育て方』の中で、好奇心から物事を突き詰めることで、やる気物質ドーパミンが放出され、脳のいろいろな部分の体積が大きくなると言っています。また東大医学部卒の男性は小学生のころにハマった虫取り体験について、「わからないことを自分で調べる理科系の考えがしみついた」と話していました。もし子どもが、月の満ち欠けや動きに違いがあることに気づいて不思議に感じていたら「もっと知りたい」を引き出すために、こんなアプローチをしてみてはいかがでしょうか。〇今晩の月はこんな形で、一昨日の形と違うよね。明後日はどんな形になっていると思う?〇月は朝や昼にも見えることがあるんだよ。何でだろう?〇雨や曇りの日って、月はどこにいるんだろう?もしかすると、子どもは月の「見える形」や「見える時間」が変わっていくことを何となく気づいていて、「違う形になるんだよ」「僕も朝、月が見えるのは知っているよ」「月は空にあるけど見えないんだよ」などと答える子もいるでしょう。そこでもう一歩、「何でだと思う?」と聞くことで知的好奇心をくすぐると、「なぜ?どうして?」という学びにつながるきっかけを与えられます。この分からないことや疑問に対して自分からすすんで取り組もうとする意欲は、学校の授業での調べ学習など「主体的な学び」の力を育みます。子どもの「なぜ?」をサポート「なぜ?どうして?」から始まる子どもの知的好奇心や探求心を満たす方法はさまざまです。冒頭のアンケート回答のように、プラネタリウムへ連れていった経験が宇宙への興味につながるケースもあります。お子さんが月や星に興味関心をもったら、次のような方法で学ぶ力をサポートしてはいかがでしょうか。■図鑑や本を見ながら親子で調べる小学館、講談社、学研などが子ども向けにシリーズで出版している図鑑には、目を見張る精緻なイラストはもちろん、迫力あるCGの映像が見られるDVDや3D体験できるデジタルコンテンツが付録としてついているものも多くなりました。こうした図鑑や本を親子で見てコミュニケーションを取りながら調べることで、気づきや発見を共有して楽しみながら学ぶことができます。■プラネタリウムを楽しむ日本プラネタリウム協議会(JPA)によると、全国には153館のプラネタリウムがあるそうです。常設のプラネタリウム以外にも国内各地でイベントや天体観測も企画されているので、検索して子どもが興味を示したものに出かけてみましょう。また、市販の家庭向けのプラネタリウムを購入してホームプラタリウムを楽しみながら天体について学ぶこともできます。■科学館や博物館へ連れていく常設のプラネタリウム施設がある科学館や博物館であれば、月の満ち欠けや自転公転、天体模型などでより詳しく学ぶこともできます。自治体が運営する施設は、在住もしくは通学している子どもの料金は無料または割引になるなど優遇されていることも多いので活用したいものです。■家の庭やベランダから天体観測図鑑やプラネタリウムなどで調べたら、実際に庭やベランダに出て親子で天体観測してみましょう。近年は、スーパームーンや流星群など天体に関する報道を詳しい解説とともにテレビや新聞で目にすることも多くなりました。このようなタイミングを上手に使うと、子どもは実際に見た月や星について園や学校でお友だちや先生へ話したくなり、これが自分の意見を自分の言葉で相手に伝えるトレーニングにもなります。■大自然の中でキャンプ周囲が真っ暗な大自然の中で、宇宙のスケールを感じて数えきれないほどの星が降り注いでくるような体験をするなら家族キャンプがおすすめです。都会では見られないわずかな輝きの星も見られ、これは星に限らず「普段は見えていなくても、そこにはちゃんと存在している」という感覚を養うこともできます。月や星への興味は小学校4年生の理科につながるこうした経験は学校の授業を先取り学習することにもなります。現在、月や星の特徴や動きについては、小学校4年生の理科で取り扱っています。月や星を観察し,月の位置と星の明るさや色及び位置を調べ,月や星の特徴や動きについての考えをもつことができるようにする。ア月は日によって形が変わって見え,1日のうちでも時刻によって位置が変わること。イ空には,明るさや色の違う星があること。ウ星の集まりは,1日のうちでも時刻によって,並び方は変わらないが,位置が変わること。(引用元:文部科学省|小学校理科の観察,実験の手引き第4学年B(4)月と星)すでに先取りで身につけた月や星についての知識や経験は、学習単元の中で改めて体系立てて定着させることができます。逆に、学校で学習した内容について上記のような方法を取り入れて、子どもの理解をより深めることもできます。***また、月や星について知る上では、星座をモチーフにした戦隊シリーズのテレビ番組や少年向けの格闘マンガ、または星占いやギリシャ神話なども、「楽しみながら天体について知る」大切な教材のひとつです。「遊んでばかりいないで勉強しなさい!」と言う前に、遊びの中に学びがあるかもしれないという視点で子どもが夢中になっているものを見つめ直してみるのもいいかもしれません。(参考)Study Hackerこどもまなび☆ラボ|知的好奇心がぐんぐん伸びる!東大生の多くが経験している「ハマり体験」とはベネッセ教育情報サイト|一度見たら忘れられない小学生は月や星を見るのが好きベネッセ教育情報サイト|オンライン投票【小】【小学生】お子さまは月や星を見るのが好きですか?どのように?JPA(日本プラネタリウム協議会)|全国プラネタリウム一覧Walker+|プラネタリウム・天体観測イベント文部科学省|小学校理科の観察,実験の手引き第4学年B(4)月と星
2019年01月22日頭の知能指数を表す「IQ」とは別に、心の知能指数を表す「EQ」という言葉があることをご存知でしょうか?昨今、子どものEQを伸ばすことはIQをアップさせること以上に重要だとされており、そのためのツールのひとつとして日記が挙げられています。今回は、EQの意味やEQを伸ばすことで得られる能力について、そしてなぜ日記をつけることでEQが伸びるのかについて解説していきます。心の知能指数 EQとは?EQは心の知能指数、すなわち「生きる力」をどれくらい持っているかを表しています。EQが高いほど、自分の気持ちをコントロールする力や、相手の気持ちを理解する力を持っているといえるでしょう。人間は、自分が置かれている状況や精神的な影響によって、考えや発言が変わることがありますが、EQが高ければ感情をコントロールしたり、相手の気持ちを考えたりするのをスムーズにこなせます。そのため、EQが高い人はコミュニケーション能力が高く、またポジティブな環境を作り出せるのです。逆にEQが低いと、自己中心的な振る舞いをしてしまったり、他人のミスを許せなくなったりします。自分の気持ちが抑えられず、友達の気持ちも理解できないので、ケンカやトラブルを引き起こしたり、集団生活になじめなかったりすることもあるでしょう。一方、頭の知能指数であるIQは、平均値を100として115~130程度であれば高いとされ、85以下ですと低いとされます。また、70以下の場合は日常生活に支障が出てくる可能性も。ただし、テストで100点を取るなど一般的に成績が良いとされている場合でもIQが高いとは限らず、あくまでもひとつの目安となります。かつてはIQが高い=優秀であるという認識が強かったものの、IQが高い人は特定の分野では優れていてもコミュニケーション能力や協調性に欠けている、自分が興味のあること以外には積極的に取り組めないという指摘も出てきました。さらに、人々の生き方が多様化している現代では、他者への共感性や理解力が求められる傾向が高まっているため、EQはIQ以上に生きていく上で欠かせないものとして重視されるようになったのです。とはいえ、EQが示している「感情のコントロール能力や人の気持ちを考える力」は、本来誰にでも備わっている力です。そのため、EQが高いということは「自分の中のEQをしっかりと発揮できている」ということ。逆にEQが低いということは「まだ自分の中のEQをうまく発揮できていないだけ」という見方もできます。EQは工夫次第で伸ばしていくことが可能なのです。EQをはぐくむための効果的な日記のつけ方子どものEQをはぐくむための方法としては以下の方法があります。■落ち着ける空間で、絵本の読み聞かせや音楽鑑賞をする■勉強や読書などは、まず親がお手本となって行う■普段の生活の中で、より愛情を持って接することを意識する■日々の出来事を日記として綴るこの中でもおすすめなのが、日記をつけることです。EQを高めるためには、自分の中にある喜びや楽しさといったポジティブな感情だけでなく、怒りや悲しみといったネガティブな感情とも冷静に向き合う必要があります。ネガティブな感情をうまく発散できなかったり、心に溜め込む癖がついてしまったりすると、ある日突然感情が爆発する可能性もあり、精神面に悪影響を及ぼしてしまうためです。日記にできる限り素直な感情を書き出し、その内容について客観的に向き合うことは感情をコントロールする訓練になるので、EQの向上に非常に効果的ですよ。また、日記には「今日は○○をして、△△だと思った」などと漠然とした内容を綴るのではなく「なぜそう思ったのか」という理由も忘れずに加えることが大切。より具体的な内容にすることで、自分の感情と冷静に向き合うことができるようになります。親子で作る、EQを高めるための日記やり方をご紹介しましょう。まず親が子どもの感情を引き出すための質問をし、その答えを日記にしていきます。質問内容は以下の通りです。まだ日記が書けない年齢の子どもや、文章を書くのが苦手な子どもの場合は、まずは親がサポートしてあげましょう。①その日の出来事回答例「友達の○○ちゃんとお店屋さんごっこをした」②それをしてどう思ったか回答例「楽しかった、明日も遊びたいと思った」最初は①②の内容のみ、2行程度でいいので日記として書く習慣を作りましょう。②に答えることに慣れたら、少し踏み込んだ質問をしていきます。③そんな自分をどう思うか回答例「また遊べるように、○○ちゃんを誘いたい」④これからどんな自分になりたいか回答例「○○ちゃんと仲良しな自分でいたい」ある程度、日記を書き溜めることができたら、親子で「こんなことがあったね」「この時はこう言ってたけど、いまはどう思う?」と、ぜひ振り返ってみてください。こうした振り返りもまた、自分を客観視することや自分が置かれている環境を冷静に分析することにつながります。***子どもがさまざまな経験をして成長していく過程では、精神面に大きく左右されることもあります。しかし、EQをはぐくむことで感情との付き合い方がうまくなり、子ども自身が生きやすくなることにもつながります。毎日の隙間時間を利用して親子で日記をつけ、子どものEQを伸ばしましょう。文/田口るい(参考)Study Hacker こどもまなび☆ラボ|時代はIQからEQへ……。心の知能指数「EQ」って何?ダニエル・ゴールマン著,土屋京子訳(1998),『EQ こころの知能指数』,講談社.みんなのお金ドットコム|EQとは?心の知能指数?EQが高い人・低い人の特徴や高める方法!
2019年01月21日「プログラム学習」というものを知っていますか?2020年度から小学校で始まる「プログラミング教育」とは別物です。この「プログラム学習」とは、現在は大学などで幅広く利用されている「eラーニング」や子ども向けタブレット教材などの基盤になったもの。心理学の理論を応用した、専用の機械を使う学習方法です。難しそう……と思われるかもしれませんが、プログラム学習の概要を知っておくと、家庭における子どもの教育に応用できたり、タブレット教材ならではの学習効果を理解しやすくなったりします。そこで今回は、プログラム学習についてわかりやすくご紹介しましょう。スキナーのプログラム学習とはプログラム学習(programmed instruction)を提唱したバラス・フレデリック・スキナー(1904~1990)は、米国の心理学者。人間や動物の感情よりも行動に着目して実験・観察を行う「行動分析学」の祖として知られています。スキナーの成果として特に有名なのが「オペラント条件づけ(operant conditioning)」です。これは簡単にいうと、人間・動物が特定の行動をとるように条件を与えること。たとえば、箱に入れたネズミに、箱のなかのレバーを押してほしいとします。その場合、まずネズミが偶然レバーを押したとき、ネズミにとって「報酬(reward)」となるエサを与えます。これを、行動を「強化(reinforcing)」するといいます。そして、ネズミがまたレバーを押した際にはエサを与えます。繰り返すと、ネズミは積極的にレバーを押すようになるのです。このようなプロセスはオペラント条件づけと呼ばれます。ご存知のように、犬や馬の調教に使われている手法ですね。そして、オペラント条件づけを人間の教育に応用したのがプログラム学習です。プログラム学習には、「ティーチングマシン(teaching machine)」という専用のデバイスが使われます。ティーチングマシンは学習者に対し、説明および説明を理解したか確認する設問を次々に提示します。学習者が解答すると、正解・不正解がすぐに知らされ、次の問題に移行します。これを繰り返すうち、最終的に当初の学習目標を達成できるようになるのです。ゲーム機やPCの普及した現代、多くの人がこのような形式のクイズゲームや教材に触れたことがあるのではないでしょうか?プログラム学習における5つの原理スキナーのプログラム学習には、5つの「原理(principle)」があると考えられています。スキナー自身の言葉とともにご紹介しましょう。学習者が積極的である学校における一斉授業の多くは、教師がしゃべり、生徒が聞くという形式です。皆さんも経験があると思いますが、このやり方では、先生の話をぼーっと聞き流すことも可能。生徒が何も学習しないまま授業が終わる、ということもありえます。しかし、プログラム学習で用いられるティーチングマシンは、常に学習者自身が動かす必要があります。問題が出題され、学習者が「解答」という行為をしてはじめて次に進むのです。そのためプログラム学習においては、常に学習者の積極性が必要とされています。プログラムと生徒のあいだでは常にやり取りが発生する。講義や教科書、一般的な視聴覚教材と違い、ティーチングマシンは持続的な行動を引き起こす。生徒は絶えず集中し、やることを抱えている。(引用元:Burrhus Frederic Skinner (1968), The Technology of Teaching, New York, Appleton-Century-Crofts.)学習者に即時のフィードバックを与える学校の宿題やテストは、子どもが問題を解いてから正解・不正解がわかるまで、およそ数日のブランクがありますよね。答え合わせ・採点が終わり結果がわかったときにはもう、問題を解くときに自分が何を考えていたかなど忘れていることが多いのではないでしょうか。しかし、プログラム学習においては、学習者が問題に答えた直後に正誤が判明します。時間をおいてからまとめて結果を通知されるよりも、1問答えるごとにフィードバックをもらえるほうが、より強い印象を受けるはず。ティーチングマシンは家庭教師のごとく、正しい返答をするたびに生徒を強化する。このような即座のフィードバックを利用し、生徒の行動を最大限効果的に形成するだけでなく、一般人が「生徒の興味関心を保つ」と表現するような方法で、行動を維持するのだ。(引用元:同上)ゆるやかに難易度が上がるプログラム学習において、教材の作り方は非常に重要です。皆さんも想像できるように、簡単な問題ばかりやっても難しい問題ばかりやっても、効果的な学習にはなりません。また、それまでは順調に問題をクリアしていたのに、ある時点から急激に難しくなって先に進めなくなったら、学習者は意欲を失ってしまうでしょう。そうならないよう、プログラム学習の教材の難易度は、ほんの少しずつ上げる必要があります。それぞれのステップを難なくこなしていくうちに、いつのまにか目標を達成しているというわけです。生徒は複雑な行動を修得するにあたって、慎重に設計された、多くの場合は相当に長い一連のステップを経なければならない。それぞれのステップは、生徒が必ず理解できるくらい小さく、かつ行動の充分な修得にいくらか近づくものでなければならない。ティーチングマシンは、これらのステップが慎重に規定された順番で提供されるようにしなければならない。(引用元:同上)学習者に合ったペースで学べるスキナーはプログラム学習を提唱するにあたって、教室に生徒を集めて講義する従来型の教え方を批判しました。現在の学校制度も同じですが、大勢を一度に教えようとすると、指導側はどうしても平均的な理解度の人に合わせがち。そうなると、理解のスピードが遅めの人には難しすぎてついていけず、理解が速い人には簡単で退屈です。しかし、プログラム学習においては学習者がそれぞれのペースで学びを進めるので、あらゆるタイプの人に対応できるのです。優れた家庭教師のように、ティーチングマシンは生徒が次の段階に進む前に、教えた要点をひとつひとつ完璧に理解することを要求してくる。一方、講義や教科書、それに類する機械は、生徒が理解したかどうかを確認せずに進行してしまい、生徒をたやすく置き去りにしてしまう。(引用元:同上)ティーチングマシンの成功を説明するにあたっては、それぞれの生徒が自分のペースで自由に進められるという事実も重要だ。教育的な目的から、生徒たちを一つのクラスにまとめて収容することは、おそらく教育における非能率性の最大要因である。複数の生徒を一度に指導しようとすれば、速い学習者も遅い学習者も害することになる。優秀な生徒の窮状はこれまで認識されてきたが、遅い学習者はさらに悲惨な結果をこうむっているのだ。当人の自然なスピードを超えて進行することへのプレッシャーの効果は累積する。最初のレッスンを完全にマスターしていない生徒は、次のレッスンもマスターしにくいものだ。(引用元:Burrhus Frederic Skinner (1999), Cumulative Record: Definitive Edition, Xanedu Pub.)学習者によって検証されるプログラム学習の教材が優れているかどうか決めるのは、作成者ではなく学習者です。そして、学習者がプログラム学習をどのように行ったかのデータを通じて、教材は改良されていきます。たとえば、複数の学習者たちが教材の同じ部分でつまづくのであれば、そのレッスンにおける解説が不充分だということです。教材の解説を手厚くしたりといった対応をとることで、プログラム学習の教材はより効果的なものへとアップデートされるのです。優れたプログラムは芸術でありつづけるべきか、それとも科学技術となるべきか。最終的に決定するのは生徒であると知ることは安心材料となる。ティーチングマシンによる学習が持つ予期せぬアドバンテージは、プログラム作成者へのフィードバックであることがわかった。(引用元:Burrhus Frederic Skinner (1968), The Technology of Teaching, New York, Appleton-Century-Crofts.)プログラム学習の例では実際、プログラム学習の教材はどのように「プログラム」されているのでしょうか?以下はスキナーが提示した、小学生に「manufacture(製造する)」という動詞のつづりを覚えさせるための設問です。1.manufactureとは、作る(make)ことや建てる(build)ことを意味します。Chair factories manufacture chairs.(椅子工場は椅子を製造する。)単語をここに写してください。□□□□□□□□□□□2.この単語の一部は、factoryという単語の一部と似ています。どちらの部分も、makeやbuildを意味する古い言葉に由来します。manu□□□□ure3.この単語の一部は、manual(手動の)という単語の一部と似ています。どちらの部分も、hand(手)を意味する古い言葉に由来します。かつて、多くのものは手で作られていました。□□□□facture4.どちらの空欄にも同じ文字が入ります。m□nuf□cture5.どちらの空欄にも同じ文字が入ります。man□fact□re6.Chair factories □□□□□□□□□□□ chairs.(引用元:同上)このように丁寧な解説と設問があれば、manufactureという単語を初めて知った人でも、つづりを覚えられそうですね。ひとつひとつのステップは非常に簡単ですが、こなしているうち、最後には目的を達成できるのです。プログラム学習の優れた点さて、スキナーのプログラム学習を知ったところで、私たちはそれをどう現在に応用できるのでしょう?注目してほしいのが、上で挙げた5つの特徴。これらはプログラム学習だけでなく、一般的な勉強においても知っておいてほしいことばかりです。あらためて振り返ってみましょう。インプットとアウトプットを交互に行うプログラム学習においては、学習者の積極性が必要とされます。教材をぼーっと見たり聞いたりしているだけでは学習は進まないのです。上で挙げた例のように、プログラム学習ではインプットとアウトプットを交互に行います。これは非常に学習効果のある方法。ただ教科書を読んだり授業を聞いたりしているだけでは、インプットに偏りすぎ。インプットしたことを記憶として定着させるには、アウトプットが不可欠なのです。勉強というものは、単純化するとインプットとアウトプットの繰り返しです。新しい知識を頭に入れて、それを問題を解くという形式でアウトプットする。この流れがスムーズに行えれば、たいていの問題は解くことができるはずなのです。(引用元:StudyHacker|効率的勉強法 —— これだけは知っておきたい5つの基本。)脳には出力依存性というものがあるので、「インプットしよう、記憶しよう」とするだけでは情報はなかなか入っていきません。逆に、「情報を使おう」「表現しよう」とすれば入っていきやすくなる。記憶するために「情報を使う」ことは、「アウトプットする」ことですよね。これが重要になるのです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|記憶力の要は「記憶の仕方」にあり。親が知っておくべき「記憶の脳科学」)即時のフィードバックが受けられるプログラム学習においては、学習者が問題に答えた直後、正解・不正解がわかります。この「即時フィードバック」は、学習者の能力を引き出すのに非常に重要です。「フロー理論」を提唱したことで有名な心理学者、ミハイ・チクセントミハイ教授(クレアモント大学院大学)によれば、人間は特定の条件が整うと「フロー」もしくは「ゾーン」という極度に集中した状態に入ることができます。そうなると、その状況を心から楽しいと思い、集中しても疲労を感じず、優れたパフォーマンスを発揮することができるのです。その「フロー」になるために必要な条件のひとつが「明確なフィードバックが即座に得られる」状態です。自分の行動に対する反応がすぐに返ってこないようでは、「フロー」は生まれません。たとえば、学校の宿題を自宅でやり、翌日の授業で答え合わせをする。学校でテストを受け、数日後もしくは1週間後に答案が返却される。このような状態では、行動とフィードバックのあいだにタイムラグがありすぎるため、「フロー」は生じません。しかし、プログラム学習ならば「フロー」発生の条件を整えることができるのです。子どもが自宅で勉強する際も、できるだけ速いペースでフィードバックが受けられるようにしましょう。たとえば、1ページ分の問題を解いたらすぐに答え合わせをさせる、もしくはしてあげる。タブレットなどのデジタル教材で勉強するのも、即時フィードバックという意味では効果があります。勉強でわかりやすいフィードバックと言えば点数でしょう。テストや練習問題の正誤で自分の取り組みの成果を確認することができます。しかし、テストのための勉強はするけれど、参考書の章の終わりなどにある練習問題をおろそかにしていませんか?この練習問題は、理解の確認はもちろん、勉強の成果を自分で実感し次の集中につなげるために必要なものです。(中略)テストや練習問題は狭い範囲ごとに細かく行うことが大事です。章の途中などで、区切りが難しいときは、その日やった問題をもう一度やり直すだけでも効果を実感できるはずです。(引用元:StudyHacker|「勉強に集中」のコツは、身近な “ゲーム” に隠れていた!?『集中力アップ』3つのきほん)スモールステップ学習法プログラム学習において、出題される課題はほんのわずかずつ難易度が上がっていきます。「急に難しくなって分からなくなった」という断絶が起こらないよう、注意して設計されているのです。このような学習法は「スモールステップ」と呼ばれています。最初から高い目標を掲げるのではなく、目標を細分化することで、“小さな成功” が得やすくなります。この成功体験を少しずつ積み重ねることで、最終目標に近づいていけるのです。(引用元:StudyHacker|「何をやっても続かない人」が陥っている “3つの大いなる誤解”)そして「スモールステップ」は、上述した「フロー」状態をもたらす必要条件にも関係しています。なぜなら、「フロー」になるには、向き合っている課題の難易度が適切でなければいけないから。余裕でこなせるくらい簡単でもいけないし、達成不可能なほど難しくてもいけないのです。少しずつ難易度が上がっていくプログラム学習ならば、「フロー」になりやすい条件が整っているといえるでしょう。最もフロー状態に入るためには、取り組む課題が簡単すぎても、難し過ぎてもいけません。適切な難易度は、自分の能力を少し超える、「背伸びすれば何とか達成できる」程度の難易度だと言われています。ですので、取り組む課題の難易度を、ちょうどいいレベルになるようきちんと設定することが大切です。(引用元:StudyHacker|フロー状態で勉強が効果的?コツは “ちょっと高め” の目標設定)自分のペースで学ぶ自分のペースで学ぶということは、プログラム学習だけでなく、学ぶという行為全般において大切なことです。物事に関する説明を読んだり聞いたりして理解できる速度は人によって違うものですし、学ぶジャンルによっても異なるでしょう。個人個人のペースに配慮しない一斉授業では、「全然わからなかった……もう嫌だ」「簡単すぎて退屈。授業に出る意味がない」というストレスを生みかねません。自分のペースで学べるプログラム学習は、そのような問題を解決してくれます。海外のオルタナティブ教育として知られる「イエナプラン」や「ドルトンプラン」では、生徒が自分で計画を立てて科目の自習を進めることが重視されています。日本でも、学校の一斉授業についていけない子どもを1対1の個別指導塾に通わせる親は珍しくありません。一斉授業の弊害を危惧している人は多いのですね。子どもに合った教材を選ぶ何かを自習するとき、目的に応じた教材が必須です。そして教材を選ぶときに考慮するべきなのは、「ベストセラーだから」「著名人が書いたから」ということではなく、それが学ぶ人に合っているかどうか。当たり前といえば当たり前ですが、意外と忘れてしまうこともあるのではないでしょうか。たとえば教材に書かれていることが難しすぎてわからないと感じても、「理解できないのは自分が勉強不足だから。もっとよく読まなければ」と思うのではないでしょうか?それで解決する場合もあるかもしれませんが、実はその教材自体がそもそも説明不足だったり、学習者に合っていなかったりするかもしれません。「すごくわかりやすい!これならスムーズに学習できる」と確信できる別の教材を選び直したほうが、学習の目的を達成しやすいのではないでしょうか。お子さんの勉強を応援するのであれば、お子さんの理解度やペースに適した教材を吟味して選んであげましょう。最初はどの本や参考書を選べばいいか分からず、とりあえずネットで評判がいいものを探してみるかもしれません。しかし、どんなに評判がよくても、名著といわれていても、必ずしも自分にとっていい本とは限らないといいます。何を選べばいいか分からないとき、柳川氏(※)の場合はまず信頼できる人に紹介してもらうそう。しかし、それでも自分に合う本と出会うためには試行錯誤が必要とのこと。自分が理解しやすいパターンと、その本の説明や論旨の展開がかみ合っていないと、内容が頭に入ってこないからです。自分の学びスタイルの確定にもつながるので、数ページ読んでやめてしまう本があっても気にせず、合う本が見つかるまで試行錯誤を繰り返しましょう。そのほうが、結果的には効率がよくなるはずです。(※東京大学大学院経済学研究科教授・柳川範之氏)(引用元:StudyHacker|東大教授とハーバード合格者が教える「最高の独学法」)***ともすれば、古典的な知識だと思われてしまうプログラム学習。しかしその理論には、効果的な学びに欠かせない要素が詰まっていたのです。明日から使えそうなものはありましたか?(参考)Burrhus Frederic Skinner (1968), The Technology of Teaching, New York, Appleton-Century-Crofts.Burrhus Frederic Skinner (1999), Cumulative Record: Definitive Edition, Xanedu Pub.eLearning Industry|Instructional Design Models and Theories: Programmed Instruction Educational ModeleLearning Industry|Cognitive Flow And Online Learning: 4 Steps For Putting Your Learners In The Zone脳科学辞典|オペラント条件づけコトバンク|プログラム学習The B. F. Skinner Foundation|DifinitionSimply Psychology|Skinner – Operant ConditioningStudyHacker|効率的勉強法 —— これだけは知っておきたい5つの基本。StudyHacker|「勉強に集中」のコツは、身近な “ゲーム” に隠れていた!?『集中力アップ』3つのきほんStudyHacker|「何をやっても続かない人」が陥っている “3つの大いなる誤解”StudyHacker|フロー状態で勉強が効果的?コツは “ちょっと高め” の目標設定StudyHacker|東大教授とハーバード合格者が教える「最高の独学法」StudyHackerこどもまなび☆ラボ|記憶力の要は「記憶の仕方」にあり。親が知っておくべき「記憶の脳科学」StudyHackerこどもまなび☆ラボ|尾木ママ絶賛!“日本教育の3周先を行く“オランダの「イエナプラン教育」StudyHackerこどもまなび☆ラボ|ドルトンプランの学校が日本にもできるってホント?知っておくべき3つの基本
2019年01月21日なにかと忙しい朝……。ついつい朝食づくりは手抜きになってしまいがちです。ただ、オリジナルの育脳レシピ開発で子どもを持つ親御さんのファンも多い管理栄養士・小山浩子さんは、「子どもの脳は朝食で決まる」と語ります。時間が限られるなか、どんな朝食を用意すれば子どもを賢く育てられるのでしょうか。そのための秘訣を教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)朝起きたときには「脳のガソリン」は空っぽの状態健康のためには「朝食が重要だ」という話はほとんどの人が聞いたことがあるはずです。そして、「脳のため」という観点からすれば、その重要性はさらに高まります。なぜなら、朝は脳を動かすガソリンが空っぽの状態になっているからです。朝食を食べさせずに子どもを学校に送り出してしまうと、給食までの午前中の授業では、子どもはガソリンが切れた自動車と同じ状態にあるということ。そんな状態でしっかり勉強をすることなんて、できるわけもないのです。その脳のガソリンにあたるのはブドウ糖で、主に炭水化物が分解されてできるものです。ブドウ糖は、グリコーゲンというものになって肝臓にためられるのですが、じつはこの貯蓄量がすごく限られています。最大限にためたとしても、12時間後には空っぽになる量しかためられません。夜の7時に夕食を食べたとして、12時間後の朝7時には完全に空っぽです。つまり、ご飯やパン、麺類などの炭水化物は、朝食に必須のものだというわけです。でも、ただ食べればいいというものではありません。炭水化物を一気に大量に摂ると、血糖値が急上昇しインスリンが分泌されます。すると、子どもが2時間目の授業を受ける頃には低血糖気味となり、眠気を催すことになってしまうのです(インタビュー第2回参照)。そのため、ブドウ糖をゆっくりと脳に送る作用があるカリウムや食物繊維を一緒に摂取できる食事を心がけましょう。また、玄米や胚芽米、全粒粉のパンなど、もともと食物繊維など血糖値の急激な上昇を妨げる成分が豊富な炭水化物食品を選ぶのもいいですね。最近のシリアルは手抜き朝食などではないまた、脳を働かせる神経伝達物質の材料となるレシチン、脳の材料となるDHA・EPAは、炭水化物とともに、「育脳」のための3大栄養素と言えます。レシチンは主に卵や大豆製品、DHAとEPAは魚に含まれるもの。これらの3つを必ず朝食で摂る習慣をつける、これがとても重要です。子どもの昼食は給食ということが多いでしょうから、親御さんがコントロールできるものではありません。もちろん、夕食で摂取してもいいのですが、朝食とちがってメニューが変動的ですから、脳のための栄養素を摂ることも入れ込んでしまうと献立を考える難易度が上がってしまいます。であれば、朝食を「育脳のためのもの」と決めてしまうのがおすすめですね。とはいえ、難しく考える必要はありません。シリアルに牛乳をかけて、エゴマ油ときな粉をかけてあげるだけでも十分。これには、炭水化物にカリウム、食物繊維、レシチンが含まれていますし、エゴマ油は体内でDHAやEPAと同じ働きをしてくれます。シリアルというと「手抜き朝食の代表格」のように思っている人もいるでしょう。でも、最近のシリアルはとっても優秀です。パッケージの栄養成分表示を見て、必要な栄養素が入っているかを確認してみてください。なかには、炭水化物や食物繊維はもちろん、3大栄養素以外にも脳に有効なビタミンB群や亜鉛などを含むものもありますよ。脳細胞の働きを邪魔する塩分に要注意!それより、手抜き朝食といえば、ふりかけご飯だけというものはやめたほうがいいですね。おそらく共働き家庭などで親御さんも忙しいのでしょう。ご飯さえ炊いておけば、家族それぞれが好きなふりかけをかけて食べてくれる。それが毎日の朝食だという家庭が意外に多いようなのです。もちろん、ふりかけにも含まれる栄養素を強化したものもありますが、多くの製品は塩分が強過ぎる傾向にあります。塩分は脳のなかの血流を悪くしてしまうもの。つまり、脳細胞の働きを邪魔してしまうものなのです。ただでさえ、日本人は塩分が強い食事を好みます。幼い頃から塩辛いものばかり食べていると、子どもは「これが美味しいんだ」と思ってしまいます。そして、そういう食事を続ければ、当然、将来的に大きな病気を引き起こすことにもなる。子どもの腎臓は小さいので、たくさんの塩分を処理することができません。脳のためだけでなく、子どもの健康を保つために食事の塩分量には気をつけてあげてほしいですね。黄色アイテムと噛むことが目を覚まさせるそれから、食事の内容以外の部分でいえば、よく噛むことも大切です。朝食だけに重要なことではありませんが、特に朝食ではしっかり噛むことを子どもに教えてあげてください。朝に目が覚めたときには、脳はまだ寝ぼけている状態です。噛むという行為が脳を目覚めさせてくれるうえ、脳の神経細胞の発達も促してくれるのです。また、ランチョンマットやマグカップなど、朝食に使うアイテムにいくつか黄色いものをチョイスすることもおすすめです。これには、朝日を見ることと同じ効果があります。黄色を目にすることが、しっかりと脳を目覚めさせるのです。逆に、紫や濃紺は脳を休ませてしまいますから要注意。ちょっとした工夫でできることですから、子どもの脳をスタンバイ状態にして学校に送り出してあげてください。最後にお伝えしたいのは、とにかく愛情を持って料理をしてあげてほしいということ。料理には、脳や体に有効な栄養素といった知識も必要ではありますが、子どもにとってはなによりも母親の愛情を感じられることが最重要です。親に愛されて育ったかどうかで、大人になったときの笑顔ひとつもちがってきます。賢い子どもに育てたいというのは親として当然の願いでしょうけれど、まずは料理を通じてしっかり愛情を注ぎ、人の気持ちを感じられる健全な人間に育ててあげることを意識してほしいと思っています。『かしこい子どもに育つ! 「育脳離乳食」:脳をはぐくむ食事は0歳から』小山浩子 著/小学館(2018)『こどもの脳は、「朝ごはん」で決まる!』小山浩子 著/小学館(2015)■ 管理栄養士・小山浩子さん インタビュー一覧第1回:子どもの脳は“親の愛情”と“食事”で育つ!「育脳」に効く食材の選びかた第2回:“パン&〇〇”で最高の朝食になる!脳が育つ食べ合わせ「5つの黄金ルール」第3回:“美味しい”か“美味しくない”か。結果がすぐにわかる料理は、子どもがPDCAを学ぶのに最適第4回:「お米さえ食べさせておけば大丈夫」が危険な理由。手抜きでも脳に効く朝ごはんとは【プロフィール】小山浩子(こやま・ひろこ)1971年9月5日生まれ、愛知県出身。料理家、管理栄養士、フードコーディネーター。大手食品メーカー勤務を経て2003年にフリーに。料理教室の講師やコーディネート、メニュー開発、健康番組への出演など幅広く活動する。料理家としてのキャリアは20年以上。これまで指導した生徒は5万人以上に及ぶ。著書『目からウロコのおいしい減塩「乳和食」』(社会保険出版社)で、2014年グルマン世界料理本大賞イノベイティブ部門世界第2位を受賞。健康とつくりやすさに配慮したオリジナルレシピにファンが多い。2015年には日本高血圧協会理事に就任。また、日本ではじめて育脳をコンセプトにした離乳食を監修()。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年01月20日あと1年後の2020年、いよいよ教育改革がスタートします。変化の激しい社会で活躍できる人材育成を目指して、戦後最大規模の教育改革が行われるのです。今後、子どもたちが学校生活や社会生活を送るうえで重要視されてくるのが「自主性」。そんな未来に向かって、子どもたちだけではなく、親の私たちも少し “意識改革” をしてみませんか。なぜ「自主性」が必要?2020年の教育改革。その大きな柱のひとつは、“アクティブラーニング” と呼ばれる「主体的・対話的で深い学び」です。これは、「生徒自身が主体的・能動的に参加する授業・学習」を意味しています。これまでは、先生による一方通行の授業がメインに行われ、「学んだことをきちんと理解しているか」の評価が大きなウエイトを占めていました。しかし、今後はそうではなくなります。知能や技能を習得するだけではなく、それを元に「自分で考え、表現し、判断し、実際の社会で役立てる」ことが求められてくるのです。今後、子どもたちにとって「自主性」「主体的行動」がとても重要な課題になってきます。「自主性」とは、そもそも「自分がやりたいことを見つけ、判断し、行動を起こすこと」。確かに、それを実践している子どもを想像すると、それだけでいきいきと輝いて見えますよね。余計な手出し、口出しをせず、じっと見守るでは、一体どうしたら「自主性」のある子に育つのでしょうか。明治大学文学部教授で、これまで100冊もの教育・心理関係の本を執筆した諸富祥彦さん、哲学者・心理学者で、大ベストセラー『嫌われる勇気』の共著者である岸見一郎さんが薦める方法をご紹介していきましょう。例えば、子どもがお店で何かを選んでいるとします。子どもがなかなか決められないでいるとき、つい「これにしたらいいんじゃない?」などと、親の都合で選ばせたりすることはありませんか?ほかにも、遊ぶおもちゃや着る洋服など、子どもの意見を聞く前に自分の考えで決めてしまうことはないでしょうか。子どものために、と余計な先回りをしてあれこれ手を差し伸べること(=過干渉育児)は、子どもの自主性ややる気を奪ってしまうのだそう。「じっと子どもがやっていることを見守って、子どもが失敗しようが何をしようが自由に遊ばせるのが大事」と諸富さんは言います。ただ、ひとつ注意点が。“見守る” ときに、「スマホをいじりながら」はNGだそう。「“見守る”とは裏を返せば、“いつでも出て行けるように用意をしておく”ことでもあります。スマホばかり見ていたら、子どもが危ない場面に遭遇したときに、ぱっと俊敏に動くことはできないはずです」(岸見さん)。「“過干渉”と“無関心”は違います。子どもは1人で遊んでいるように見えても、時々親が自分のことを見てくれているか確認しています。親が自分のことを見守ってくれていると感じると、安心してまた自分の世界に戻っていけるのです」(諸富さん)見放すのではなく、見守る育児。簡単なようで、意外と難しいことかもしれません。つい手出し口出ししたくなるときも、時間がかかってじれったい場面も、ぐっとこらえて “見守り” に徹してみましょう。そうすれば、きっとお子さんの自主性は自然と育まれていくはずです。子どもの自主性を重んじながら注意する方法「自主性を重んじて、じっと見守る」といっても、ゲームばかりして勉強しない子どもを見守るわけにもいきませんよね。ほかにも、「部屋を片付けない」「朝なかなか起きない」などの問題があるでしょう。「~~しなさい!」と頭ごなしに叱るのは簡単ですが、子どもはその通りには動いてはくれないもの。親の意見を一方的に押し付けることなく、自主性を重んじながら注意する方法、声かけをご紹介しましょう。■意見を伝える前に「前置き」をする「最近のあなたの様子を見ていると勉強をしていないようだけれども、勉強について一度話し合いをしてみない?」などと「前置き」を入れながら、まずひと声かけるのが有効。この声かけをすることで「子どもの課題」が「親と子どもの共同の課題」となるのです。もし親がこのあとになにかしらの意見を伝えたとしても、子どもの課題や問題に「土足」で踏み込むことにはならないでしょう。■子どもに相談をする「お母さん、仕事に遅刻するわけにはいかないから、あなたが毎朝寝坊しないようにしてくれたら嬉しいんだけど、一体どうすればいいかしらね。何かいい考えはある?」など、子どもに積極的に相談するのも◎。子どもは親から対等な存在と認められたと感じ、解決策を一生懸命考えて提案してくれるのだそう。自分で考えた解決策ならば、子ども自身が納得しているため、実行に移しやすいということですね。■「偉いね」ではなく、「ありがとう」を問題が解決した場合に必ず伝えたいのが「ありがとう」という言葉。つい、「偉いね」と言ってしまいそうになりますが、子どもを対等な存在として、協力してくれたことに感謝し、ありがとうと伝えるのが適切だそう。子どものほうも、『親の役に立てた』という自信につながります。■丁寧な言葉使い、「NO」と言える余地を残す子どもに対して、なるべく丁寧な言葉使いをすることも大切です。お願いする場合も、「~~してくれませんか」「~~してくれたら嬉しいんだけど」というように子どもが「NO」と言える余地を残しましょう。こうやって見ると、私たち親の心がけや根気が必要な内容ばかりですね。でも、ここは可愛い我が子の明るい将来のためにぐっと耐えて頑張りましょう!自分で“選ぶ”大切さ「自主性」を育むうえで切っても切り離せないのが「自己選択力」。昨今注目を浴びる、モンテッソーリ教育でも重要視されている能力で、諸富さんも「自己選択こそが人生なのです」と言っています。ズバリ、自己選択力を高めるポイントは、極力自分で選択させること。例えば、シャツ、ズボン、スカートなど洋服を決める際は、「今日はどっちにする?」と2択にしてあげると良いそう。ただ、5歳以下の子どもの場合、3つ以上の選択肢から選ぶのは難しいので気をつけます。また、大人が選択肢をまったく挙げず、「どうするの?」と問うのも小学生以下の子どもには難しいので避けましょう。タイガー・ウッズやイチローといった超一流アスリートたちも、ゴルフや野球を親からやるように指示されたことはなかったそう。「ゴルフが好き」「野球が好き」という根っこがあり、さらに「自分で選択した」という始まりがあるからこそ、さらなる高い境地を目指してこられたのかもしれませんね。文/鈴木里映(参考)日経DUAL|過干渉育児の恐ろしい弊害子育ては根気が一番ベネッセ 教育情報サイト|2020年大学入試改革で教育が変わる!学研キッズネット|子どもの自主性についてアドラー流で考える藤崎達宏(2017),『モンテッソーリ教育で子どもの本当の力を引き出す!』,三笠書房
2019年01月19日「賢い子どもに育てたい」と、子どもが幼い頃からさまざまな習い事に通わせている親御さんも多いでしょう。でも、「自宅でできる『育脳法』があるのに」と少し残念がるのは、オリジナルの育脳レシピ開発で子どもを持つ親御さんのファンも多い管理栄養士・小山浩子さん。その育脳法とは、なんと「料理」なのだそう。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)料理にはPDCAサイクルのすべてが含まれている子どもをより賢く育てたいと思えば、子どもであってもPDCAサイクルをまわせるような人間にしていく必要があります。なぜかというと、結局、勉強ができる子どもというのは、自分で勉強の計画を立て、実行し、自分の問題点を見つけ、それを改善してくことができる人間だからです。まわりの優秀な子どもを観察して、どういう勉強法がもっとも無駄がなく効果的なのかということを導ける観察眼も必要とされるものでしょう。もちろん、こういった能力は大人になれば仕事などその他のことにも応用できるもの。人間としての成長を大きく助けてくれるものです。子どもにPDCAサイクルをまわさせるというと、驚く人も多いはずです。でも、じつは5歳くらいまでの間に大人の脳の9割ができあがるとされています。つまり、5歳児の脳は、その能力でいえば大人の脳とそれほど変わらないということ。もちろん、知識や経験は圧倒的に足りませんから、子どもがPDCAサイクルをまわせるようになるには、大人がそのやり方を教えてあげる必要があります。そして、そのやり方を教えるために最適なものが、「料理」なのです。なぜかというと、料理にはPDCAサイクルのすべてが含まれるからです。レシピという計画書があり、実際に調理をして、美味しくできたのかを確認して、失敗すれば改善点を探す。まさに、PDCAサイクルそのものですよね。それに、お母さんの料理の仕方を観察して、うまく取り入れるということもできます。料理は脳を育てるためのメリットだらけ!また、料理には他にも「育脳」に適した点がたくさんあります。まずは、「指」をいっぱい使うこと。脳の発達には指を動かすことが効果的だという話は耳にしたことがある人も多いでしょう。料理は、どんなプロセスも指を使うものばかりです。また、「五感」のすべてを使う点でも料理は育脳に効果的です。料理をするには、指でさまざまな道具や食材に触れることはもちろん、音の変化で火の通り具合をたしかめたり、匂いを嗅いだり、美しく盛り付けようと視覚を働かせる必要がある。そして最後は美味しい料理をしっかり味わう。料理をして食すという過程で、五感のすべてを使い、脳をたくさん刺激することができるのです。さらには、「結果」がすぐにわかるということも料理のメリットです。小さい子どもの場合、はっきりした結果がすぐにわからないと、なかなか次へのやる気にはつながっていきません。じつは、こういう脳に対するメリットを持った行為は、ありそうでなかなかないもの。お絵描きも育脳にはいいとされますが、明白な結果が見えるかというと、ちょっとちがいますよね。子どものお絵描きコンクールで受賞などすれば話は変わりますが、それも受賞発表までには時間が必要です。それに、アートの世界ですからその評価は見る人によってまったくちがってきます。その点、料理の結果は美味しいかどうか。子どもであっても、美味しいものは美味しい、美味しくないものは美味しくないときちんと判断できます。それが、「次はもっと美味しくしたい」「今度こそ頑張る!」というやる気につながるのです。母親との料理体験は子どもの一生の宝もの料理に育脳効果があることを知ってか知らずか、子どもに料理の手伝いをさせているという親御さんは少なくないでしょう。ただ、そのやり方には問題があるというケースが多いようですね。カレーをつくるにも、米をとがせたり、ジャガイモやニンジンの皮むきだけをやらせたりしていないでしょうか。それは、ただ親の指示に従ってやる作業、つまり、下働きです。残念ながらそれでは脳はまったく育ちません。そうではなくて、皮をむいた材料を切る、炒める、味つけをする、味をみるといった、レストランでいえば料理長がやるようなメインのプロセスを子どもにやらせてあげてください。そのときは、一切、指示を出してはいけません。責任を子どもに持たせるのです。そうしてできた料理を家族みんなで食べる。たとえばニンジンが硬かったとしましょう。そうすると、子どもは「次はもう少し小さく切ってみよう」「煮込む時間を長くしてみよう」と自分で考えるようになる。なぜかというと、そのプロセスを子ども自身がおこなったからです。そうして、子どもは徐々にPDCAサイクルのまわし方を身につけていくのです。そして、美味しく料理ができたのならうんと褒めてあげてください。そうすれば、子どもは自信を持ち、料理以外のことにも意欲的に取り組める人間になっていくはずです。できれば、10歳頃までの間にこういう料理の経験をたくさんさせてあげてほしいですね。10歳を過ぎると、子どもの行動範囲や興味の範囲は大きく広がります。でも、それ以前の子どもにとっては、お母さんがこの世界のすべて。大好きなお母さんから教わったり、褒められたりしたことは、子どもの一生の宝ものになるのですからね。『かしこい子どもに育つ! 「育脳離乳食」:脳をはぐくむ食事は0歳から』小山浩子 著/小学館(2018)『こどもの脳は、「朝ごはん」で決まる!』小山浩子 著/小学館(2015)■ 管理栄養士・小山浩子さん インタビュー一覧第1回:子どもの脳は“親の愛情”と“食事”で育つ!「育脳」に効く食材の選びかた第2回:“パン&〇〇”で最高の朝食になる!脳が育つ食べ合わせ「5つの黄金ルール」第3回:“美味しい”か“美味しくない”か。結果がすぐにわかる料理は、子どもがPDCAを学ぶのに最適第4回:「お米さえ食べさせておけば大丈夫」が危険な理由。手抜きでも脳に効く朝ごはんとは(※近日公開)【プロフィール】小山浩子(こやま・ひろこ)1971年9月5日生まれ、愛知県出身。料理家、管理栄養士、フードコーディネーター。大手食品メーカー勤務を経て2003年にフリーに。料理教室の講師やコーディネート、メニュー開発、健康番組への出演など幅広く活動する。料理家としてのキャリアは20年以上。これまで指導した生徒は5万人以上に及ぶ。著書『目からウロコのおいしい減塩「乳和食」』(社会保険出版社)で、2014年グルマン世界料理本大賞イノベイティブ部門世界第2位を受賞。健康とつくりやすさに配慮したオリジナルレシピにファンが多い。2015年には日本高血圧協会理事に就任。また、日本ではじめて育脳をコンセプトにした離乳食を監修()。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年01月19日論理的思考力は、英語でのプレゼンや英作文だけでなく、どんな教科においても重要な力です。将来、お子さんが仕事をするときにも、高い論理力を持ち合わせていれば、様々な分野で活躍できることでしょう。幼いうちから育てておきたい能力の一つである「論理的思考力」。実は、英語でのプレゼンテーションの仕方を学ぶことで、訓練することができます。なぜなら、英語でのプレゼンテーションでは、論理展開が非常に重視されているから。前回に引き続き、プレゼンテーションの仕方、中でも論の展開の仕方をご紹介しましょう。1. 定義し、例を示す「例えば」プレゼンテーションでは、「鍵となる概念」がよく導入されます。「正義」や「平和」、「人間の尊厳」などがその例です。こういう概念は、定義しなければ、話の内容が曖昧になってしまいます。そこで、定義付けをする必要があるのです。「ここでは『この言葉はこのような意味で用いる』」というのが、定義です。・……をこのように定義します。I’ll define “…” this way.しかし、定義だけでは、なかなか実感を持ちづらいものですね。そこで、実際の例を示すといいでしょう。・例えば……For example, ….「平和とは、例えば……な状態」と具体的にイメージできるように話すことで、自分が本当に届けたいメッセージを聴衆に的確に伝えられるでしょう。2. グラフや表を見せる「調査結果によると」説得力を持たせるために重要なのは、証拠を示すこと。ここで活躍するのが、データです。グラフや図、表などを見せるときは、こんなフレーズが使えます。・……を見てみましょう。Let’s have a look at….データから何がいえるかを示す表現はこちら。・我々の調査結果では……。Our findings show….・この数字は……を示している。The figure indicates….信頼できるデータをもとに話を展開することで、「なるほど!」と納得してもらいやすくなるでしょう。3. 因果関係を示し、予測する「その結果として」データをもとに、自分なりの考察を加えることで、あなただけのプレゼンテーションができるようになります。考察をするときに大切なのが、因果関係を説明すること。【結果→原因】の順で話すときは、次のような表現が便利です。・AがBによって引き起こされているA was caused by BA resulted from B【原因→結果】の順で話すときはこうなります。・BがAを引き起こすB leads to AB causes Aまず原因について話した後に、こんな一言を加えてもいいですね。・その結果として……As a result, ….このような考察をふまえ、将来の予測をたてることもあるでしょう。・……を予測しています。We expect(predict / forecast)….因果関係を明確にしたり、将来の予測をたてることは、プレゼンテーションだけでなく、記述式のテストをはじめとして、様々な分野で大切になります。ぜひ幼少期から鍛えておきたいポイントです。4. 言い直す「つまり」何か大切なことを話した後、聴衆に伝わりにくいかな、と感じたときは、言い直しをするといいでしょう。・言い換えると……。In other words,….・つまり、……。That is,….別の言葉に言い換えることで、よりわかりやすく表現することができるはずです。5. 話しながら要点を示す「私が言いたいのは」日常会話だと、いろいろな話をした後に「つまり、私が言いたいのは……」といった表現をすることがありますね。話が混乱してきたときは、論点を明確にすることが必要になります。これは、プレゼンテーションでも同じです。・私が言っているのは……。What I’m saying is….・要点は……。The point is….このような表現を使いこなせるようになると、話にメリハリをつけることができて効果的です。6. 話題を変える「……に移りましょう」プレゼンテーションでは、1つのテーマについて、複数の観点から話すものですね。でも、いきなり話題を変えると、唐突に聞こえてしまいます。そこで、このような慣用表現を知っていると便利です。・……に移りましょう。Let’s move on to….・……に戻りましょう。Let’s go back to….次の話題に移ることもあれば、前の話題に戻ることもありますね。そんなとき、一言加えてからトピックを変えると、自然な形で話を進めることができるでしょう。7. 要約し、結論を述べる「まとめると」プレゼンテーションの最後に、今までの話を要約し、結論を述べ、そして締めくくる必要があります。要約するときは、今までの話の中におけるポイントのみを、改めて伝えるといいでしょう。・まとめるとTo sum upTo wrap up結論を述べるときは、文字通り「最後の一言」を伝えます。・結論としてTo conclude締めくくりでは、感謝の意を表すと同時に、通常は質疑応答に入るシグナルを送ります。・ありがとうございました。Thank you.・質問はありますか?Do you have any questions?定義付けに例示、データに基づいた因果関係の解明、将来の予測、そして要点の整理……。どれも、論理的に話を展開するために、とても大切なことばかりです。これらを意識して英語のプレゼンテーションを準備する経験を重ねることで、論理的思考力を訓練できるはずです。ぜひ、お子さんと挑戦してみてくださいね。
2019年01月18日小さな子どもは、大人が当たり前と思っていることに対しても、一つ一つ「なぜ? どうして?」と聞いてくるもの。でも、子どもの好奇心には丁寧に向き合ってあげたいものの、「なんで? なんで?」の質問責めを、時には面倒に感じてしまったり、適当にあしらってしまったり…そうしてしまうことも少なくないのでは?「ここできちんと、子どもの『なぜ? どうして?』に向き合うことはとても大事なのです」と力説するのは、国立大学法人お茶の水女子大学附属小学校の藤枝真奈先生。「子どもの好奇心をしっかり受け止めることで、考える力や学ぶ力をグンと伸ばすことができるのです」(藤枝先生)そんなお茶の水女子大学附属小学校の先生たちが、子どもの好奇心に徹底的に寄り添う視点で、百科事典のような児童書 『頭のいい子を育てる なぜ? どうして? ふしぎ366』 (主婦の友社)を監修しました。掲載項目は、生活の中からわいてきた身近な疑問がいっぱいで、なかには、答えがないような問いも。そこで、藤枝先生に、この本に込めた思いをうかがって来ました。国立大学法人お茶の水女子大学附属小学校「自主協同」の精神を養い、自分で判断し、他者と関わり合って主体的に学んでいく子どもを育てている。公共性を育む「シティズンシップ教育」や、人間性・道徳性や思考力を育む新教科「てつがく」など、今日的な教育課程に対応したカリキュラムを編成。140年に及ぶ長い歴史と伝統とともに、未来へ拓かれる最先端の教育実践の場は、毎年行われる「教育実際指導研究会」などで、全国の多くの先生方に公開されている。■「答えは一つではない!」全国の子どもたちから集めた「なぜ? どうして?」――この本に掲載されている「なぜ?」の疑問は、「どうしてパンツをはかなくちゃならないの?」や「サッカーボールはどうやってまるくなっているの?」など、子どもたちの目線に近い疑問が多いように感じましたが、そこは意識して作られたのでしょうか?藤枝真奈先生(以下、藤枝先生):多くの子どもたちは年齢が上がるにつれて、「勉強しなくちゃ!」というシーンが増えてくると思うのですが、低年齢のうちは、そういった気持ちにとらわれることなく、普段の生活の中から関心事を見つけて、没頭できる時期だと思います。この本は、子どもたちが生活している日常での「ふとした疑問の声」を拾い上げて作られています。掲載疑問は、全国の子どもたちから編集部に寄せられたアンケート回答のなかから、声の多かったものを中心に構成されています。――なかには、「友だちって何?」というような答えが一つではない疑問や、「死んだら何も残らないの?」というような、大人でもちょっと答えにつまってしまうような疑問もあります。こういった疑問を入れた意図は、どんなところにあるのでしょう?藤枝先生:答えが一つではない問いや正解のない問いは、世の中にたくさんありますよね? 自分が思う答えと他者の思う答えは違ったり、似ているところがあったり…そういった経験を繰り返すことで、子どもはいろいろな発見をして自分の考えを作り、自己を見出していくのだと思います。正解のない問いについて、この本には、考えるヒントがちりばめられています。「あなたはどう思う?」「お母さんはこう思うよ」などと対話を楽しみながら、子どもと一緒にページをめくってもらえればと思います。■「本っておもしろい?」子ども発信の疑問を話し合う「てつがく科」――他者の意見との相違を学びながら、自分の考えを作り出していくのですね。藤枝先生:そういった学びのために、当校には「てつがく科」という教科があります。この時間では、子ども自身が問いを作り、みんなが輪になって顔が見えるように座り、発言者は次の発言者を指名して、対話をつないでいろいろな意見を出していきます。そして、お互いの意見の違いを学んだり、違う意見をすり合わせたりして自分の意見を作っていきます。――例えば、どんなことを話し合うのでしょう?藤枝先生:私は今、3年生の担任をしていますが、この本にも掲載している「友だちって何?」という問いで話し合ったことがあります。この問いに関しても、「友だちといると楽しい」「いろいろ相談できる」「大切」という意見から、「いなくてもなんとかなる」「一人でも平気」というような意見まで、さまざまな答えが出ました。また、「友だちっていなくちゃいけないの? 一人じゃダメなの?」という新しい問いも展開していき、非常におもしろい授業となりましたよ。――公立の小学校でいえば、道徳の授業のようなものでしょうか?藤枝先生:道徳の授業との違いは二つあります。一つは、道徳には教科書がありますが、「てつがく科」は子どもたちが問いを作る点です。もう一つは、道徳は落としどころがあって、教師が子どもたちをそこに導くものですが、「てつがく科」では落としどころは決めていないという点です。ただし、単に「みんな違ってみんないい」で終わるのではなく、「私が考えていることと〇〇さんが考えていることはここが一緒だ」などと他者との共通点を探したり、考え方の違いについて話し合ったりすることで、異なる意見を自分の中に受け入れた上で自分の意見を持つこと、自分の中に多角的な見方を持つことをとても大事にしています。――ただ自分の意見を言って終わるのではなく、他者の意見を受け入れたうえで、改めて自分の意見を考えるのですね。藤枝先生:「本って、そんなにおもしろい?」という疑問を持っている子がいて、「本はおもしろくない!」という意見からはじまったこともありました。「どうしておもしろくないの?」と、みんなが聞き出していくのです。この時大切なのは、否定するのではなく、まず問いを立てること。なぜなら、社会の中で他者と共存して、答えのない問いに関して自分が働きかけていくには、最初は「問う」ということがとても大切ですからです。――確かに、「そんなことないよ。本はおもしろいよ」とただ否定するだけでは、その子には何も響かないでしょうし、こちら側も、なぜつまらないと思っているのかわからないままで、そこからは何も広がりませんよね。藤枝先生:いろいろ聞いていくうちに、その子は「本の中に、わからない言葉があるとおもしろくない」と言いました。そこで、今度は「わからない言葉があったらどうしたらいいか?」という話になり、ある子は「だいたいの話がわかれば、わからない言葉は飛ばしてしまってもOK」という意見を出し、ある子は「お母さんに聞く」という意見を出しました。そして最終的に、「本がおもしろくない」と言った子は、対話しながら読み方や考え方の選択肢が増えたのか、以来、本当に本が好きになったのですよ。――この姿勢は、学校の授業だけでなく、家庭でも同じですね。藤枝先生:もちろんです。子どもの考えに対して親が「それ、違うんじゃない?」と否定してしまうと、それで終わってしまいますけれど、「どうしてそう思ったの?」と一言引き出してあげると、ぜんぜん違う方向に広がっていくと思います。私自身は、これからの世の中に大切な力は、自分の頭で考えて、他者と対話することができる力だと思っています。そして、子どもたちのその力は、きっと、より良い社会を作る力につながっていくと思います。親としてできることは、親自身が自分の頭で考えて、より良い社会を作っていく姿勢を見せることだと思っています。難しいことではなく、身近なことで良いのです。例えば、落とし物が落ちていたら、だまって見過ごすのではなくて、きちんと警察や駅の係の人に届けるなど、ごく普通のことで。そういった姿を子どもに見せることが大事なのだと思います。そういう当たり前のことに気づくヒントも、この本の「こころ」のジャンルにたくさん紹介されています。■子どもの言葉や疑問「まずは全部受け止めて」――一般的に、大きくなるにつれて、物事に対しての純粋な疑問は減っていくことが多いように思いますが、それを損なわないために、親としてできることは何でしょう?藤枝先生:子どもって、小さいうちは思った通りのことを言いますよね?例えば、小さい子が丸い月を見て「お皿!」と言った時に、お母さんが「月がお皿のワケないでしょう?」と返してしまったら、その子は二度とそんなことを言わなくなると思うのです。でも反対に、「本当だ。お月さま、丸くてお皿みたいだね」と返してあげれば、子どもは自分が言ったことを受け止めてもらえたうれしさと、「本物じゃない時は『〇〇みたい』」と言えばいいんだ」というふうに適切な表現を学ぶこともできます。そうやって子どもが感じたこと、表現したことを、親が一つ一つきちんと受け止めてあげることがとても大事だと思います。――ここでも、否定はNGということですね。藤枝先生:少し大きくなると、知りたいことや疑問に思うことを、子どもの方からどんどん聞いてくるようになると思います。その時に「どうしてだろうね」と受け止めて、「私も知りたいから調べてみようか」と一緒に考えたり調べたりすることを手伝ってあげたらいいと思います。そこで親が調べる姿を見て、子どもは、「何か調べる時は図鑑や本の目次や索引で探せばいいのか」などと学ぶこともできるでしょう。そんな時に、この本を役立ててもらえればうれしいですね。他者の意見が自分と違う時に、単に否定するのではなく、なぜそう思うのか問う姿勢。一見当たり前で簡単なことのように思えますが、本当にそれができている大人って、意外と少ないのではないでしょうか? 子どもが感じたこと、表現したことをきちんと受け止め、それを大人が広げてあげることの大切さを、改めて学ばせていただいた取材でした。参考図書: 『頭のいい子を育てる なぜ? どうして? ふしぎ366』 (主婦の友社)お子さんからの「なぜ?どうして?」に毎日ひとつずつこたえることで、好奇心を育て、モノの考え方や見方など、学ぶ力をグングン伸ばす。「ことば」(国語)、「かず」(算数)、「しぜんかがく」(理科)、「よのなか」(社会)、「おんがく」(音楽)、「アート」(図工)、「せいかつ」(家庭科)、「からだ」(体育)、「せかいのことば」(外国語)、「こころ」(道徳)と、小学校での学びのきっかけになるコンテンツが満載!写真やイラストが満載で、ひと目でわかりやすい構成。取材・文/まちとこ出版社N
2019年01月17日3〜5歳くらいは「なぜなぜ期」とも言われるように、子ども自身に疑問が溢れ出てくる時期。空はなぜ青いのか、悲しくなるとどうして涙が出るのか、ダンゴムシが丸くなるのはなぜか……。大人が簡単には答えられないような質問を、次から次へと投げかけてくる子も多いはず。また、そんな「質問攻撃」にやれやれ、と疲れを感じてしまう親御さんもいることでしょう。しかし、この質問こそが多方面への好奇心の表れであり、順調に知能が発達している証拠なんだそう。半分は親との受け答えを楽しんでいるだけとも捉えられますが、実はこの“なぜなぜ期”、子どもが“勉強好き”“理科好き”に育つチャンスなのです。「これなあに?」から「なぜ?どうして?」へ「これなあに?」に対して「◯◯だよ」と答えるだけでよかった2〜3歳の頃に比べ、3〜4歳になると質問も多様化。ことばと文字が頭の中で一致し、覚えたことばを上手に使えるようになる時期だからこそ、探究心が溢れ出てくるようです。子どもというのは元来、強い探究心を持っています。これは人間がまだ野生動物だった頃の名残なのです。野生動物は生まれた瞬間に、過酷な自然環境の中に急に投げ出されます。その瞬間に周囲から様々な情報を入手して分析し行動しなければ、たちまち天敵の餌食になってしまいます。そのため動物には、先天的に強い探究心が備わっているのです。幼い子どもが何にでも興味を示し、「なぜ?」「なに?」と訊いてくるのはそのためです。それを上手に育んでいけば、あとは勝手に「理科が得意の子」に育っていきます。(引用元:All About|理科のできる子に育てる低学年からの学習法)いろいろな科目の中でも、答えを導き出すにあたり、数値を使って計算したり、いろいろな作業をしたりしないといけない問題が多いのが理科。ひょんな「なぜ?」をきっかけに、答えを見つけ出すための姿勢が身についていけば、理科がきっと楽しいものと感じられるようになるはずです。子どもの好奇心を肯定し同じ目線に立つでは、「なぜ?」と聞かれたらどう答えるのがベストなのでしょうか。子どものためには、なんでもすぐに答えられるのが立派な大人、という認識は捨ててしまいましょう。すぐ答えが与えられることが習慣になっていると、子どもは「ママに聞けばなんでも答えがわかる」と頼り切ってしまい、自分で考える力が伸びないのだそうです。(引用元:曽田照子(2013) ,『ママ、言わないで!子どもが自信を失う言葉66』,学研パブリッシング.)子どもから科学的な質問をされたとき、知的探究心を伸ばすポイントをまとめてみました。【1.質問を肯定する】まず「よくそこに気づいたね!」と疑問に思ったこと自体を肯定してあげましょう。ただし調子を合わせて形式的にそう言っても、子どもには見抜かれてしまいます。「どうして寒いと体が震えるの?」と聞かれたら、たとえ当たり前だ、そういうものだ、と思っていても、本気で考えてみるのです。大人が何気なく理解しているつもりになっていることも実はよくわかっていなかったりするもので、たしかに不思議がいっぱいです。【2.すぐに答えず、一緒に疑問を持つ】質問にすぐ答えられてしまった子どもは、考えることの面白さを実感することができません。また、答がすぐに導き出せない問題は投げ出してしまう、根気のない子に育ってしまう可能性も否定できません。もしも答えがわかっていたとしても「どうしてなんだろうね」と寄り添い、自ら答えを探し始めるように促してあげましょう。【3.わからなかったらネットや図鑑に頼ってOK】親たるもの、なんでも答えられなくては!と威厳を保とうとする必要はありません。知ったかぶりは最もNG。親の役割は、知識を与えることではなく勉強の仕方や調べ方を伝えること。ネットや図鑑の力を借りながら、子どもが理解できるよう、かみくだいて説明してあげましょう。するといずれ、子ども自らが疑問解決のために勉強する姿勢が見られるはずです。なぜ?に対する「NGワード」「NG行動」逆に、質問に対してNGなのは、以下のような受け答え。いずれもせっかくの好奇心・探究心を、根元からスッパリ切り落としてしまうような残念な答え方です。×「そんなこと知らなくていいのよ。」×「そういうものなの!」×「そんなの◯◯に決まってるじゃない」このほかにも「またあとでね」とその場をやり過ごした場合は、実際にあとになっても何もしないでいると子どももがっかり。信頼を失いかねません。もちろん、手が空いてから改めてこどもの質問に向き合うのであればOKです。また、子どもの質問は無邪気なものでつい笑ってしまいたくなることもありますが、一笑に付すのもNG。子どもは大人が思っている以上にナイーブ。一度笑われてしまうと恥ずかしさや恐怖心を覚え、質問できなくなってしまう場合もあります。幼い子の場合は、質問自体がうまく説明できず、何を言っているのかわかりにくい時も。そんなときは「なにがききたいのかわからないよ」と切り捨てるのではなく、やさしく寄り添って質問内容を引き出してあげましょう。実際の観察や体験を通して説明を本や図鑑で調べるのももちろんよいですが、「百聞は一見に如かず」。勉強の楽しさを知っている子は、机の上以外のあらゆる場所から学びのチャンスを得ています。本来、何かを学ぶことは心をウキウキさせ、楽しいものです。「勉強」感覚が希薄な幼児期にこそ、その「楽しさ」を体感させることが大切なのです。(引用元:祖川泰治(2015) ,『IQがみるみる伸びる0歳から6歳までの遊び方・育て方』,廣済堂出版.)わからないなら机に向かって調べましょう!ばかりではなく、体感することで理解につながれば、親も子も学びの楽しさを実感できるはず。「なぜ?」をきっかけにして、近所の図書館や川や公園へ出かけたり。また、答えを見つけられそうな動物園や博物館、キャンプや登山などを週末に計画すれば、親子一緒にワクワクできますね。***子どもの疑問に寄り添いたいのはやまやまだけれども、毎日忙しくそんなに余裕はない、という親御さんも多いことでしょう。ならば、ときには「◯年生になったら学校で教えてもらえるよ」と未来へ希望をもたせてみたり、「お母さんもわからないから、◯◯くんが大きくなったら勉強して教えてくれる?」とお願いしてみたり。夏休みの自由研究のテーマにしよう、と提案し、疑問を忘れないようにメモしておくのもいいですね。その時はわからなくても、ほかのことを勉強していくうちに知識と知識が結びつき、「なんだ、そういうことか!」と心から納得できる時が来ることもあるはずです。親が真摯に向き合うべきなのは、質問自体ではなく、こどもの“好奇心”の方。「なぜ?」は勉強の楽しさを知るワクワクの芽。大事に育てていけるといいですね。文/酒井絢子(参考)ベネッセ教育情報サイト|「なんで?」と言われても、「間違っているから違う」としか言えません[中学受験]AERA dot.|「9歳のころがカギ」 自分の子どもを「理系」にする方法gooニュース|子どもの 「なぜなぜ攻撃」に、正確な知識で答えるのはNG!?All About|カンタン! 子どもの知的好奇心を引き出す方法All About|理科のできる子に育てる低学年からの学習法All About|これからの教育キーワードは「没頭力」汐見稔幸・高濱正伸対談祖川泰治(2015) ,『IQがみるみる伸びる0歳から6歳までの遊び方・育て方』,廣済堂出版.キャシー・ウォラード(2012) ,『なぜ?どうして?身のまわりの疑問、まるわかり大事典』,飛鳥新社.立石美津子(2014) ,『1人でできる子が育つ「テキトー母さん」のすすめ』,日本実業出版社.曽田照子(2013) ,『ママ、言わないで!子どもが自信を失う言葉66』,学研パブリッシング.
2019年01月17日脳の発達を促し、しっかり働かせるための栄養素を知れば、あとはそれらを食事で摂取するだけ。それで十分だと思ってしまいますが、じつは「それでは不十分」なのだそう。そう語るのは、オリジナルの「育脳」レシピ開発で子どもを持つ親御さんのファンも多い管理栄養士・小山浩子さん。小山さんによると、それぞれの栄養素が最大限に力を発揮するための「食べ合わせ」こそがもっとも重要なのだそうです。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)ブドウ糖を持続的に脳に送るカリウム・食物繊維健康な脳をつくりしっかり働かせるには、脳に必要な栄養素がしっかり力を発揮することが大切です。まず、わたしが提唱している、脳に効く食べ合わせルールを紹介しておきましょう。【脳に効く食べ合わせ「5つの黄金ルール」】1:炭水化物×カリウム・食物繊維2:レシチン×ビタミンC3:DHA・EPA×ビタミンE4:ビタミンB12×クエン酸5:ビタミンB群×亜鉛×色素成分このうち、脳に絶対に欠かせない炭水化物、レシチン、DHA・EPA(インタビュー第1回参照)が含まれる1番から3番までのものが特に重要なものです。では、一つひとつ解説していきましょう。まずは1番目の「炭水化物×カリウム・食物繊維」。炭水化物(ブドウ糖)は脳を動かすガソリンの役目を果たします。ダイエットの敵だとして避けられることも多い炭水化物ですが、脳をしっかり動かすためには欠かせないもの。ご飯やパン、麺類など、なんでもいいので特に朝食できちんと子どもに食べさせるようにしてください。ただ、注意してほしいことがひとつ。炭水化物ばかりを大量に摂取すると、血糖値が急激に上昇してしまいます。すると、インスリンが分泌され、子どもが学校に行って2時間目の授業の時間くらいには低血糖状態に……。眠気を誘って集中力が削がれてしまうことにもなってしまいます。これでは授業をきちんと受けられませんよね。それを避けるため、炭水化物と一緒にカリウムや食物繊維を摂取しましょう。これらを含むのは、野菜や果物、ヨーグルトです。カリウムと食物繊維の働きにより、脳にガソリンであるブドウ糖をゆっくりと持続的に送ることができるのです。少しの工夫が重要栄養素の働きを助ける2番目の「レシチン×ビタミンC」は、脳の神経伝達物質をつくるレシチンとおすすめの食べ合わせです。レシチンは卵や大豆製品に含まれる栄養素。ただ、このレシチンはそんなに吸収率がいい栄養素ではありません。なぜなら、汗や尿と一緒に流れ出やすいものだからです。その流出を抑え、吸収を助けるのがビタミンC。もちろん、大豆にもビタミンCは含まれていますが、他の野菜や果物でさらに効果を高めようというわけです。たとえば、お豆腐を食べるにしても、プチトマトなどの野菜を添えるような工夫をおすすめしますね。続いては3番目「DHA・EPA×ビタミンE」。ここでの主役はDHAとEPA。これは脳をつくる材料となる栄養素です。これらは油ですから、空気に触れただけで酸化がはじまり、体内に入ってからも酸化は進みます。酸化してしまうと、DHAとEPAは十分な働きをしてくれません。この酸化を抑えるのが、ビタミンEなのです。含まれるのはブロッコリーやサニーレタス、カボチャなど、いわゆる緑黄色野菜です。ビタミンEには、DHAとEPAの酸化を抑えることだけでなく、脳に持続的にDHAとEPAを送る働きもあります。また、緑黄色野菜を取るのが手間だというなら、オリーブオイルを使ってもOK。オリーブオイルも豊富にビタミンEを含むものですからね。調理に使う他、調理後の魚にかけるだけでも十分です。ふたつの補助的ルールで完璧「育脳」食に「5つの黄金ルール」のうち、3番目までは「3本柱」とも呼ぶべき重要なものなので、できれば毎日の食事に取り入れてほしいですね。そして、残る4番目、5番目は補助的なものとなります。余裕があるようなら、これらも踏まえてもらえれば脳にとって完璧といえる食事になりますよ。4番目は「ビタミンB12×クエン酸」。ビタミンB12は「血液のビタミン」とも呼ばれ、血液の状態を良くする働きがあります。血流が良くなければ、炭水化物にしても、レシチン、DHA、EPAにしても、脳にしっかりと届けることができませんから、ビタミン12の働きも大切なものなのです。ビタミンB12は豆製品にも入っていますが、豚肉やレバーなどに含まれる動物性のものがその働きが強く、特におすすめです。そして、その吸収を高めるのがクエン酸。レモン汁やお酢などを豚肉やレバーと一緒に食べる工夫をしてみてください。最後は「ビタミンB群×亜鉛×色素成分」です。これらは脳全体の活性化を図る栄養素。この食べ合わせは代謝を高める働きがあるので、炭水化物など、摂取した栄養素の働きの即効性が上がるのです。ビタミンB群を取るには、胚芽米や玄米がいいですね。あるいは、シリアルにもビタミンB群が強化されたものがありますので、そういう商品を使うのも手です。亜鉛はワカメやヒジキ、カキなど海産物に多く含まれます。手軽に摂取するためにわたしがおすすめしているのがアサリの水煮缶。カレーやクラムチャウダーに入れるなど、使い勝手がいいですよ。最後の色素成分は、トマトのリコピン、ナスのナスニンなど、緑黄色野菜が持っているものです。おすすめ「育脳朝食メニュー」最後に、わたしがおすすめする「育脳朝食メニュー」を少しだけ紹介しましょう。(画像提供:小学館)【育脳朝食メニュー】材料(4人分)■シリアルフルーツグラノーラ 200gミックスナッツ 30gバナナ 2本プルーン 4粒豆乳 600ml(つくり方)① 器にシリアル、プルーン、バナナを入れて豆乳をかけ、刻んだミックスナッツをかける。■もみもみソーセージ豚ひき肉 200gハーブソルト 小さじ2こしょう 少量牛乳 60mlオリーブオイル 小さじ2チャック付きビニール袋 1枚(つくり方)① チャック付きビニール袋に豚ひき肉を入れ、ハーブソルトとこしょうを混ぜて牛乳を加えてよくもみながら混ぜ合わせる(前日に仕込みをしておく)。② フライパンにオリーブオイルを熱し、①の袋の先を2cm切り、約6cmの長さで絞り出す。③ 表面を焼いてフライパンのふたをし、なかまで加熱する。④ お皿に盛り、お好みでケチャップと粒マスタードを添える。(画像提供:小学館)■カボチャのツナサラダ(常備菜)カボチャ(冷凍品) 400gタマネギ 1/4個※みじん切りツナ缶 小1缶(80g)マヨネーズ 大さじ4こしょう 少量(つくり方)① カボチャは凍ったまま耐熱容器に入れて電子レンジに7~8分かける。② 熱いうちに、タマネギとツナを混ぜてこしょうをかけ、マヨネーズであえる。※サンドイッチのフィリングにしても美味しい。(画像提供:小学館)■グレープフルーツグレープフルーツ 1個(つくり方)① グレープフルーツを8等分のくし型に切り、切り込みを入れておく。シリアルに含まれる食物繊維によって血糖値を安定させ、集中力をアップさせます。また、プルーン、バナナ、牛乳の食べ合わせにより脳に栄養がスムーズに送られ、神経細胞の動きも活発になり、脳全体が活性化。さらに、豚肉のビタミンB12で記憶力がアップ。カボチャのビタミンEでDHAの酸化を抑え、グレープフルーツのビタミンCで豆乳のレシチンの吸収を助けるというメニューです。『かしこい子どもに育つ! 「育脳離乳食」:脳をはぐくむ食事は0歳から』小山浩子 著/小学館(2018)『こどもの脳は、「朝ごはん」で決まる!』小山浩子 著/小学館(2015)■ 管理栄養士・小山浩子さん インタビュー一覧第1回:子どもの脳は“親の愛情”と“食事”で育つ!「育脳」に効く食材の選びかた第2回:“パン&〇〇”で最高の朝食になる!脳が育つ食べ合わせ「5つの黄金ルール」第3回:“美味しい”か“美味しくない”か。結果がすぐにわかる料理は、子どもがPDCAを学ぶのに最適(※近日公開)第4回:「お米さえ食べさせておけば大丈夫」が危険な理由。手抜きでも脳に効く朝ごはんとは(※近日公開)【プロフィール】小山浩子(こやま・ひろこ)1971年9月5日生まれ、愛知県出身。料理家、管理栄養士、フードコーディネーター。大手食品メーカー勤務を経て2003年にフリーに。料理教室の講師やコーディネート、メニュー開発、健康番組への出演など幅広く活動する。料理家としてのキャリアは20年以上。これまで指導した生徒は5万人以上に及ぶ。著書『目からウロコのおいしい減塩「乳和食」』(社会保険出版社)で、2014年グルマン世界料理本大賞イノベイティブ部門世界第2位を受賞。健康とつくりやすさに配慮したオリジナルレシピにファンが多い。2015年には日本高血圧協会理事に就任。また、日本ではじめて育脳をコンセプトにした離乳食を監修()。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年01月17日筋肉をつくるにはタンパク質、骨をつくるにはカルシウムが必要という具合に、食事と体の関係に関しては多くの人が少なからず知識を持っているはずです。でも、いい脳をつくるために必要な栄養素、食事といったら……?詳しく知っているという人は、そう多くはないでしょう。そこでお話を聞いたのは、オリジナルの「育脳」レシピ開発で子どもを持つ親御さんのファンも多い管理栄養士・小山浩子さん。脳に欠かせない栄養素を教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)脳を「つくる」材料となる栄養素子どもの頭が良くなるかどうかは、遺伝の影響が大きいと考えている人も多いでしょう。もちろん、頭の良し悪しには遺伝も大いに影響を与えます。ただ、その影響がはっきり表れはじめるのは、13歳くらいから。それまでは、赤ちゃんの頃からの脳への刺激や本人の好奇心といった外的要因、それから「食事」が大きな影響を与えます。食べものによって体がつくられることは、多くの人がイメージするものでしょう。でも、脳も体の一部ですから、当然、食事による影響を大きく受けます。子どもをかしこく育てたいのなら、食事にきちんと気を配る必要があるのです。脳のなかではいろいろな栄養素がチームとなって働いています。そこでまず意識してほしいのは、脳を「つくる」栄養素、「働かせる」栄養素、「動かす」栄養素をしっかり摂るということです。脳を「つくる」栄養素を紹介するにあたって、ひとつ質問をしましょう。脳はなにでできていると思いますか?じつは、脳の6割は脂肪でできているのです。そして、いい脳をつくる材料が、有名なDHA、それからEPAという油状物質。特にDHAは脳にとっての最重要栄養素と言えます。DHAをきちんと摂取しないと、脳の発達障害を起こしてしまうことも……。DHAの摂取量が十分な子どもとそうでない子どもでは、脳の神経回路の発達の度合いはい大きくちがいます。ただ、これは後からでも取り戻せるものです。オックスフォード大学の実験では、3カ月間、DHAを投与された子どもは、脳の神経回路がしっかりと改善されました。親の愛情が子どもの脳の発達を促すこのDHA、EPAの特徴として、体のなかでつくることができないことが挙げられます。つまり、食べものからきちんと摂取する必要があるということ。青魚に多く含まれることが知られていますね。ただ、意外にも、サバやイワシなどの青魚より多くのDHAを含むのがマグロのトロの部分。でも、お値段も高いですし……毎日のように食卓に出すのは難しいですよね。日常的に食べられるものとしては、サバの水煮缶や魚肉ソーセージ、それからツナ缶をおすすめしています。もちろん、魚が大好きなお子さんになら、ときには奮発してマグロのトロを食べさせてあげてください。その際、「頭が良くなるからね」と言ってあげましょう。子どもは100人いたら100人が「頭が良くなりたい」と思っています。そして、大好きなお母さんが自分の応援をしてくれていると感じるだけで、子どもは「頑張ろう」と思うもの。その気持ちが、脳の発達も促すのです。お子さんが魚嫌いという場合も安心してください。じつは、アマニ油とエゴマ油が、体内でDHAやEPAと同じ働きをするということがわかってきたのです。これらをドレッシング代わりに使うだけで、魚を食べるのと同じくらいの効果を発揮してくれます。脳を「働かせる」「動かす」栄養素IQが高い子どもの脳には、脳を「働かせる」アセチルコリンという神経伝達物質が多いという特徴があります。じつは、このアセチルコリンは、生まれたときには誰もがいっぱい持っているもの。神様は本当に平等に人間をつくっているんですね。ただ、その量は5歳くらいまでの間に徐々に減っていくのです。つまり、アセチルコリンをなるべく減らさないようにキープできた子どもがかしこくなる。5歳くらいまでの間に将来の脳の土壌ができるというわけですね。それだけ、幼い頃の食事が脳の発達には重要だということを意味します。このアセチルコリンの材料となるのが、卵や大豆に含まれるレシチンという栄養素。卵は1日に1個は子どもに食べさせてほしい。また、豆が苦手だという子どもには、きな粉をうまく使うことをおすすめします。朝食なら、「きな粉トースト」なんていいですよね。きな粉とはちみつと練乳を混ぜると、自家製のきな粉ジャムになります。これをトーストに塗るだけ。すごく手軽ですよ!それから、脳を「動かす」ガソリンとも言えるのが炭水化物です。脳が消費するエネルギーは、体全体の消費量のなんと20%に達します。低炭水化物ダイエットがはやっていますが、脳のためには、ご飯やパン、麺類をしっかり食べさせることが必要です。牛乳は体にも脳にも効く完全栄養食品そして、脳にいい食事のカバー役として欠かせないのが「牛乳」です。ここで、牛乳の偉大なパワーを紹介しましょう。これは、ここまで紹介したDHA、EPA、レシチン、炭水化物以外に脳が必要とする栄養素、そしてそれらを含む主な食べものです。【牛乳は万能育脳食材】ここで挙げた栄養素の多くを含むのが牛乳なのです。牛乳というと完全栄養食品とも呼ばれ、健康な体をつくるために欠かせないものですよね。学校給食でも何十年にもわたって出されてきました。その理由を裏付けるように、脳にとっても牛乳は完全栄養食品になっているのです。『かしこい子どもに育つ! 「育脳離乳食」:脳をはぐくむ食事は0歳から』小山浩子 著/小学館(2018)『こどもの脳は、「朝ごはん」で決まる!』小山浩子 著/小学館(2015)■ 管理栄養士・小山浩子さん インタビュー一覧第1回:子どもの脳は“親の愛情”と“食事”で育つ!「育脳」に効く食材の選びかた第2回:“パン&〇〇”で最高の朝食になる!脳が育つ食べ合わせ「5つの黄金ルール」(※近日公開)第3回:“美味しい”か“美味しくない”か。結果がすぐにわかる料理は、子どもがPDCAを学ぶのに最適(※近日公開)第4回:「お米さえ食べさせておけば大丈夫」が危険な理由。手抜きでも脳に効く朝ごはんとは(※近日公開)【プロフィール】小山浩子(こやま・ひろこ)1971年9月5日生まれ、愛知県出身。料理家、管理栄養士、フードコーディネーター。大手食品メーカー勤務を経て2003年にフリーに。料理教室の講師やコーディネート、メニュー開発、健康番組への出演など幅広く活動する。料理家としてのキャリアは20年以上。これまで指導した生徒は5万人以上に及ぶ。著書『目からウロコのおいしい減塩「乳和食」』(社会保険出版社)で、2014年グルマン世界料理本大賞イノベイティブ部門世界第2位を受賞。健康とつくりやすさに配慮したオリジナルレシピにファンが多い。2015年には日本高血圧協会理事に就任。また、日本ではじめて育脳をコンセプトにした離乳食を監修()。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年01月16日「遊び」というと大人にとっては悪いこととも思われるものですが、子どもを健やかに育てるためにはとても重要なもの。そして、子どもがしっかり遊べるように、遊びを大事にする大人を増やそうと活動しているのが、2010年に設立された「一般社団法人TOKYO PLAY」。その代表理事・嶋村仁志さんは、当然ながら「遊びの達人」。子どものときにどんな遊びを経験しておくべきなのか、その遊びへの親の関わり方も含めて教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)冒頭写真提供:嶋村仁志子どもを遊び場の「つくり手」にしてあげる遊びが子どもにもたらす効果を最大限に引き出すために、どういう遊びをさせればいいかということも親御さんたちは気になるところでしょう。でも、そもそも遊びは子どもが主体的におこなうものです。であれば、子ども自身の発想や想像力に委ね、自由にやらせるべきものです。つまり、「どういう遊びをさせればいいか」というのは、ちょっとナンセンスな疑問とも言えるかもしれません。ですが、大人がちょっとしたきっかけを与えることはできます。子どもが楽しく感じる、ドキドキする要素というものがあるのです。家庭では難しいものですが、例を挙げましょう。わたしも関わっている川崎市子ども夢パークの滑り台は38度という角度にしています。これは一般的な滑り台に比べて、ちょっと急な角度です。わたしの考えでは、滑り台にはドラマを生む角度というものがあるんです(笑)。その角度は、登れなくはないけど、普通に登ろうとしても簡単には登れない角度。失敗した子どもは、今度は後ろのほうから助走して挑戦する。あるいは、滑り台の上にいる子どもに引っ張り上げてもらおうとする。そういう角度が子どもにとって面白い。しかも、川崎市子ども夢パークの場合は、「つくるプロセス」も子どもたちと一緒に進めました。遊具をつくる作業をしていると、近所の子どもたちが「なにやってるの?」と見に来ます。「一緒にやろうか!」と、子どもたちと手づくりしました。そういう過程を経ていますから、子どもたちはただのサービスの受け手ではなく、遊び場自体のつくり手でもあるわけです。そんな遊び場が、子どもたちにとって面白くないわけがないですよね。こんな大掛かりなものではなくても、子どもと一緒に遊び場をつくってみればいい。そういうことなら、家庭でもできるものかもしれません。写真提供:嶋村仁志子どもが体験すべき「小さな危険」と「小さないたずら」また、「どういう遊びをさせればいいか」ということなら、幼いうちから「小さな危険」を伴う遊びをきちんと体験しておくことも大切。なぜなら、そうすることで実感を持って危険を知り、成長した後により大きな危険を招かないようになるからです(インタビュー第2回参照)。わたしが代表理事を務めるTOKYO PLAYでは、一般の人たちへのアンケートで「10歳までに経験しておきたい危険なこと」を集めました。栄えある第1位は「高いところ」。木登りや塀昇り、階段からジャンプといったことですね。それから、アイロンやライターを使う、たき火といった「火を使う」こと。また、包丁やナイフを使う、鉛筆を削るといった「刃物を使う」ということもランクインしました。わたしの子どもも、2歳のときに包丁で手を切ってしまったことがあります。2歳児に刃物を使わせるというと、「早過ぎるのでは?」と思う人もいるでしょう。でも、早いからいい。2歳児なら、2歳児の力なりの怪我しかしないのです。これが、中高生になって大人同様の力を持ってからはじめて刃物を使ったとしたら……それこそ危険ではありませんか。また、小さな危険の体験と通じるものとして、「小さないたずら」も経験しておいてほしい。大人としては大手を振っておすすめするわけにもいきませんが、いわゆるピンポンダッシュのようなものです(苦笑)。そういったいたずらに対し、他人がどう反応するのか。面白いと思うのか、あるいは怒られるのか……。その反応を感じるなかで、子どもは「しゃれでは済まされないこと」を体感的に知るようになる。いってみれば、一度は振り切ったいたずらをやってめちゃくちゃに怒られるという経験をしたほうがいいのです。それを5歳でやるか、中高生になってやるかで社会へ与える影響も、自分が受ける罰もちがってきます。幼い頃に「しゃれでは済まされないこと」を知った人間ならば、いたずらと称して誰もが眉をひそめるようなことをやったうえ、それを得意げにSNSにアップして非難されるようなことにはならないのです。子どもの興味関心の「ツボ」を感じるその他、子どもが体験しておくべきこととして、自分が「やりたい」「好きだ」と思うことをいちばん身近な大人に受け止めてもらう体験というものもある。つまりこれは、大人側が取る姿勢が重要ということになります。子どもって、「見て見て!」とよく言いますよね。それをいちばん身近で大切な大人に見てもらって「すごいね!」なんて言われることが、どれだけその子の力になるか。間違いなく、その子は自分に自信を持ち、自己肯定感を高めることができます。逆になにかに失敗して落ち込んだり、怒られてしょげてしまったりしているときも同様です。その気持ちを受け止めてもらうことで感じる安心感が、次なる力を生んでいく。立ち直り、「また挑戦しよう」という気持ちにさせてくれるのです。そういう意味では、遊びは子どもが主体的におこなうものとはいえ、子どもの遊びへの大人の関わり方はとても重要なものということになる。親御さんは、第一に、子どもが「なにをしたいのか」ということに気づくことが重要です。子どもには、それぞれに興味関心の「ツボ」があります。普通は親が子どもをどう育てるかというふうに考えるものですが、子どもは子どもなりに「自分がどう育ちたいか」ということがわかっているのです。そういったことが、子どもの遊びのなかに見えてくる。目の前のものでなにをしたいか、どうしたいのかというところに表現されるのです。たとえば、長靴をはいて水たまりでバチャバチャと延々と遊んでいる子どもがいたとしましょう。その子は、自分の行動によって目の前のものが変化することに面白さを感じています。もしかしたらその行動は、自分の手で目の前のものを変化させて作品をつくり出すアートといった方向への興味関心の表れなのかもしれません。そういう目線を持って、世間でいいとされている教育を闇雲に与えるのではなく、その子のツボの延長線上にあるものを用意してあげれば、子どもの世界が一気に広がることもあるでしょう。子どものツボを感じられるようになれば、子育てがもっともっと楽しくなってくるはずです。『子どもの放課後にかかわる人のQ&A50 子どもの力になるプレイワーク実践』嶋村仁志 他 著/学文社(2017)■ TOKYO PLAY代表理事・嶋村仁志さん インタビュー一覧第1回:遊具なし、プログラムなし。異例だらけの“ガラクタ遊び”が欧州で大人気の理由第2回:大切にしたい遊びの“リスク”。子どものチャレンジを支える遊びのルールとは?第3回:子どもの工作が“失敗作”でも、親はアドバイスしてはいけない第4回:中高生では遅い。子どもが体験すべき「小さな危険」と「小さないたずら」【プロフィール】嶋村仁志(しまむら・ひとし)1968年8月6日生まれ、東京都出身。子ども時代は野球と自転車と缶けりざんまいの日々を送る。英国・リーズ・メトロポリタン大学社会健康学部プレイワーク学科高等教育課程修了。1996年に羽根木プレーパークの常駐プレーリーダー職に就いて以降、プレイワーカーとして川崎市子ども夢パーク、プレーパークむさしのなど各地の冒険遊び場のスタッフを歴任。その後フリーランスとなり、国内外の冒険遊び場づくりをサポートしながら、研修や講演会をおこなう。2010年、「すべての子どもが豊かに遊べる東京」をコンセプトにTOKYO PLAYを設立。2005年から2011年までIPA(子どもの遊ぶ権利のための国際協会)東アジア・太平洋地域副代表を務め、現在はTOKYO PLAY代表理事、日本冒険遊び場づくり協会理事、大妻女子大学非常勤講師。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年01月15日2020年度に大きく変わる「大学入試共通テスト」では、知識の詰め込みだけではなく、思考力や判断力が問われるようになります。このような力を養うためには、机の前での「The 勉強」では身につきません。実は、日常生活の中の新しい経験や楽しい体験こそ、思考力や判断力が自然と身につけられるチャンスなのです。そこで今回は、その具体的な方法をご紹介します。日常や非日常の体験の中でこそ記憶に残る!子どもの考える力は、無限の可能性を秘めていると言われています。しかし、小さな子どもの思考力を引き出すには、親の手助けが必要です。なかでも日常生活と勉強をリンクさせる方法が、もっとも有効なようです。意識的に、日常生活に学校で学んだことを応用させることで、学習内容をより定着させることもでき、さらに思考力や判断力、さらには応用力も養うことができるのです。そこで実践したいのが、買い物やスケジュール管理、お出かけの計画などの経験や体験。大人にとっては当たり前のことでも、子どもにとっては初体験のことばかり。初体験というのは、子どもにとってすべてが学びであり、その経験から大切なことをどんどん吸収していきます。子どもは自分の体験で得た知識はそう簡単には忘れません。理科・社会は私たちの生活と関わる教科なので、日常生活の中でも様々な体験ができますが、いつもと違う場所でいつもと違う体験をするほうがより記憶に残ります(引用元:日経DUAL|中学受験にも生きる!冬のおでかけ学習【社会編】)子ども主体で考え、判断させる実例集それでは、実際にどんな方法があるのか実例をご紹介します。子どもの年齢や、学校で習っている学習内容に合わせて、どんなことに挑戦できるかをご両親が判断してみてください。■決まった金額内で買い物をする足し算や引き算、掛け算などを学校で勉強し始めたら、子どもに買い物を頼んでみましょう。慣れるまでは一緒に買い物に出かけて、後ろから見守ってあげるのでもいいですね。500円や1000円など、あらかじめ予算を決めておいて、その予算を越えないように買い物をするよう伝えます。余ったお金でお菓子を買っていいよとご褒美をあげれば、足し算と引き算を使って、いくらのお菓子が買えるのかを一生懸命計算するでしょう。ほかにも、一緒に買い物へ行って会計をする時に、お釣りの小銭が少なくなるように考えさせると、思考力が身につきます。小さなお子さんであれば、100円を渡して駄菓子を自分で計算させながら買うのもいいですね。<この体験で身につく力>思考力判断力計算力■お出かけの目的地や交通手段を考える親子でのお出かけは、子どもにとって新しい経験がいっぱい。いつもは親が決めてしまう休日のお出かけ先を、たまには子どもに決めさせてみましょう。子ども主導で計画を立て、家族で出かけてみることもよい経験です。ガイドブックやインターネットを見ながら、目的地を決めましょう。そのときに、日帰りでも行ける場所なのかを地図で確認しながら決めるといいですね。地図を学習している時期であれば、学習内で勉強した地名などを絡ませて、行き先を決めるのもおすすめです。行き先を決めたら、そこまでの交通機関を一緒に考えてみましょう。地図上で目的地を見ながら、電車で行きやすい場所なのか、駅からは徒歩なのかバスなのか、車で行く方が便利なのか、ご両親がアドバイスしながら経路を考えてみます。このような経験を通じて、子どもは自ら考える力や、交通手段などを比較して決定する判断力を養うことができます。また、実際にその場所に行ってみると、計画通りにいかないことも出てくるでしょう。その時に、どうして上手くいかなかったのか、どうすれば上手くできるのかをもう一度考えてみると、そこで応用力も育まれます。そして、地図を見ながら目的地までも、ぜひ子ども主体で動いてみましょう。親にとっても新しい発見があり、親子で新鮮な体験になるはずです。<この体験で身につく力>思考力判断力応用力地図を読む力■お出かけ先でのスケジュール管理時計が読めるようになったら、日常的な声掛けで、「○時に家を出るけど、あと何分ぐらいある?」などと、クイズ感覚で問いかけてみることで日常生活と勉強を“リンク”!子どもの「判断力」「応用力」「計算力」を鍛えるよい方法ですね。そして、日常生活の中で時間の管理がある程度できるようになったら、お出かけ先でのスケジュールを子どもに組み立てさせてみてはいかがでしょうか。一日のスケジュール表を紙に書いて、「○時にここに着くには、何時に出ればいいかな?」「お昼には何分ぐらい時間を取ろうか?」など、最初はご両親と一緒にスケジュールを組み立ててみましょう。慣れてきたら、自分で考えさせてみて、ご両親が無理のないスケジュールになっているかを確認してみるのもいいかもしれません。そして実際に現地へ行ってみて、スケジュール通りに回れたのか、回れなければどこで時間がかかったか、時間が足りなかったのかなどを、一緒に話し合ってみるのもおすすめです。子どもはその体験をもとに、次回は時間の管理を工夫することができるでしょう。時間の配分を予測したり、改善したりすることができるようになると、日常生活や学校生活の時間の使い方も上手にできるようになるでしょう。<この体験で身につく力>思考力判断力時計を読む力時間の使い方臨機応変に動く力3つのアプローチを親が意識しておく!買い物やお出かけの計画などを、ただ経験させるのではなく、以下のようなことを親御さんが意識しておくのがより効果的なようです。【「考える」とは】「自分の言葉で語れること(What)」「疑問に思うこと(Why)」「手段や方法を思いつくこと(How)」のいずれかのことをしているときに、「考えている」という状態になると考えます。通常の教育では、「これは何?」「どこ?」「いつ?」「どっち?」が多く、このようなインプットばかりのアプローチでは、考えるという行為は起こりにくいのです。(引用元:東洋経済ONLINE|「考える力がない子」を変える3つの問いかけ)意識しておきたいのが、この3つのアプローチです。集団で行う学校での学習では、自分の言葉で伝えたり、じっくり時間をかけて手段や方法を考える機会が少ないのが現状。しかし日常での経験の中であれば、その機会は親御さん次第でたくさん与えることができるのです。〇自分の言葉で語れること(What)〇疑問に思うこと(Why)〇手段や方法を思いつくこと(How)買い物やお出かけなどをきっかけに、自分の言葉でどうしたいかを人に伝えられたり、そこで疑問に思うことを言葉にしたり、手段や方法を考えたりという経験をたくさんさせて、自然と考える力を身につけさせましょう。***知識をインプットするような机の上の勉強だけではなく、日常の中の経験と学習内容をリンクさせることで、自らの力で考え、判断する力が自然と身につきます。これが親子での楽しい体験であれば、子どもは「またやってみたい!」「もっと何かしてみたい!」という意欲にもつながります。たっぷり時間が取れる長期休みなどに、ぜひ親子で実践してみてくださいね。文/内田あり(参考)ベネッセ教育情報サイト|親子で過ごす時間が子供の学習能力を底上げする!日経DUAL|中学受験にも生きる!冬のおでかけ学習【社会編】東洋経済ONLINE|「考える力がない子」を変える3つの問いかけ
2019年01月15日「すべての子どもが豊かに遊べる東京」をコンセプトに、2010年に設立された「一般社団法人TOKYO PLAY」。その代表理事・嶋村仁志さんは、子どもが子どもらしく遊び、心身ともに健全に成長できるようにと、遊びを大事にする大人を増やそうと奮闘しています。そんな嶋村さんは、遊びが子どもにもたらしてくれるもっとも重要なものは、「自主性と安心感」だと語りますが、それを得る機会を奪われている子どもも少なくないのだそう。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)冒頭写真提供:嶋村仁志遊びで子どもが得るのは「自主性」と「安心感」遊びのなかで子どもが得られるものとしては、まず「体力」が挙げられるでしょう。最近は、体力は「行動体力」と「防衛体力」にわけて考えられています。行動体力とは、行動を「起こす」筋力などの能力、行動を「持続する」持久力や柔軟性などの能力、行動を「調整する」素早さや器用さ、バランス感覚などの能力のことです。一方、防衛体力は、寒さや暑さ、振動、化学物質など「物理化学的ストレス」に対する抵抗力、細菌など「生物的ストレス」に対する抵抗力、空腹や口の渇き、疲労といった「生理的ストレス」に対する抵抗力、不快、苦痛、恐怖など「精神的ストレス」に対する抵抗力が挙げられます。これらが強くなれば、当然、子どもは健康に育つと期待できます。とはいえ、わたし自身は、遊びが子どもにもたらすものとして、なにより「自主性」と「安心感」が重要だと思っています。遊びとは、自分がやりたいと思うことを主体的にやること。やりたくないことは絶対にやらなくてもいい。遊びとは、そういう「自主性」の塊なのです。でも、いまの子どもは自主的に遊ぶ権利を奪われつつあると見ています。幼い子どもでも、毎日がスケジュール漬けになっていることも少なくないですよね。何時に起きて保育園に行き、午前はなにをしてお昼ご飯を食べて、お昼寝をして迎えに来てもらってあれこれ習い事をして、家に帰ったらご飯を食べてお風呂に入って歯を磨いて……。やることもやる時間も決まっています。そういう生活のなかで、子ども自身が「いま」を決めている時間ってどれくらいあるのでしょうか?本来、それは遊びの時間として残されていた部分です。そういう時間を積み重ねて大人になれば、たとえお金持ちにはならなかったとしても、本人が面白そうだと思ったことは積極的にやるし、ひとりでやるのは難しいことなら遊びのなかで培った力によって他人を頼って協力することもできる。それこそ、自ら考えて行動できる「21世紀型」といえる人間になれるのではないでしょうか。「面白そうだからやってみる」というマインドが人生を豊かにする他人と比較されない、他人に評価されない、自分で決めて、失敗も含めて「自分で自分の人生を手づくりできる時間」が生活のなかで確保されている。その「安心感」が、チャレンジ精神にあふれ、適応力や柔軟性や発想力を備えた人間に子どもを育ててくれます。遊びというものは、じつはここでいう「安心感」を得るためにあるものだと思っています。ところが、いまの子どもの多くは自分自身でやることを決められず、大人の誰かが決めた基準で比較、評価され続けられています。すると、子どもはその基準に自分が見合っているか、他人に劣っていないかと気になり成果ベースでものごとを考えるようになる。そうなると、本当なら持っているはずの力を十分に発揮できません。できることはやるけれど、できないかもしれないことはやらないという選択肢をチョイスするようになるからです。それでは、将来社会に出て仕事をするにも、ちょっと問題がありますよね。できないかもしれないけれど、やっていくなかでなんとかする。そういうことも仕事には必要な力です。仕事に限らず、やってみたことはないけれど面白そうだからやってみようというマインドを持っているほうが、きっと豊かで楽しい人生を送れるはずです。失敗する経験を奪われつつある子どもたち大人って、つい子どもに口を出してしまうものですよね。でも、それではよくない。子どもの自主性を尊重し、大人が口をつぐむ。まずはそこからはじめてはどうでしょうか。わたしがあるプレーパークで見た子どもたちは、ベンチを一生懸命につくっていました。使っていたのは薄っぺらの廃材だし、足は細くて長さもバラバラで心もとない。それでも、子どもは「完成した!」と、平気で座るわけです。どうなるかはわかりますよね?当然、グラグラと揺れるし、すぐに壊れてしまいそうになる。でも、それでいいんですよ。子どもたちにとってのドラマと学びはそこにあるわけですから。ところが、大人によっては「ここに筋交いを入れよう」なんてアドバイスをする、さらには「貸してみろ」なんて道具を取り上げてしまうような人もいます。また、プレーパークとちがって、すでに立派な工作キットが用意されている「ベンチをつくろう」というような体験プログラムの場合は、ただ説明書のとおりにつくらされるだけ。絶対に失敗しない代わりに、子どもには面白くもないし、なにももたらしてはくれません。いまは、一度の失敗もなく最短の時間で「体験」できるパッケージ化された商品があふれています。子どもが思ったとおりにやって、失敗する経験を手に入れる機会が本当に少ないのです。この時代に生きる大人の役割は、そのような機会を子どもに保障してあげることなのではないでしょうか。失敗も含めた「偶発的な学び」を得る機会を大切にしてあげてください。『子どもの放課後にかかわる人のQ&A50 子どもの力になるプレイワーク実践』嶋村仁志 他 著/学文社(2017)■ TOKYO PLAY代表理事・嶋村仁志さん インタビュー一覧第1回:遊具なし、プログラムなし。異例だらけの“ガラクタ遊び”が欧州で大人気の理由第2回:大切にしたい遊びの“リスク”。子どものチャレンジを支える遊びのルールとは?第3回:子どもの工作が“失敗作”でも、親はアドバイスしてはいけない第4回:中高生では遅い。子どもが体験すべき「小さな危険」と「小さないたずら」(※近日公開)【プロフィール】嶋村仁志(しまむら・ひとし)1968年8月6日生まれ、東京都出身。子ども時代は野球と自転車と缶けりざんまいの日々を送る。英国・リーズ・メトロポリタン大学社会健康学部プレイワーク学科高等教育課程修了。1996年に羽根木プレーパークの常駐プレーリーダー職に就いて以降、プレイワーカーとして川崎市子ども夢パーク、プレーパークむさしのなど各地の冒険遊び場のスタッフを歴任。その後フリーランスとなり、国内外の冒険遊び場づくりをサポートしながら、研修や講演会をおこなう。2010年、「すべての子どもが豊かに遊べる東京」をコンセプトにTOKYO PLAYを設立。2005年から2011年までIPA(子どもの遊ぶ権利のための国際協会)東アジア・太平洋地域副代表を務め、現在はTOKYO PLAY代表理事、日本冒険遊び場づくり協会理事、大妻女子大学非常勤講師。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年01月14日「ドルトンプラン」という言葉を聞いたことがありますか?1910年代に米国で始まった、自主学習を重視する教育方法です。モンテッソーリ教育やシュタイナー教育と比べて日本での知名度は低いかもしれませんが、いま日本でじわじわと注目を集めている様子。ドルトンプランとはどのような教育なのか、そして東京都で2019年に開校する、ドルトンプランに基づいた学校をご紹介します。ドルトンプランの発祥ドルトンプラン(Dalton Plan)を考案したのは、米国の教育者ヘレン・パーカースト(1887~1973)です。教育方法史を専門とする宮本健市郎教授(関西学院大学)によると、パーカーストはワシントン州の小学校で1年生の担任を務めた際、読書の時間にフォークダンスを行ったり、地理の時間に子どもを外に連れていったりなど、斬新な授業で注目を集めました。1910年に地元で大規模な競技場が完成した記念の祭典では、生徒のダンスを指揮して大成功に導き、教育委員会から表彰されたそうです。このことから、パーカーストが子どもの身体表現を重視していたことがうかがえます。同年、パーカーストは「実験室案(laboratory system of education)」という実験的な教育を実施しました。これは、教科ごとの「実験室」を設け、それぞれの部屋に担当教師を配置するというもので、のちのドルトンプランにつながっています。イタリア発祥のモンテッソーリ教育について学び、米国での普及活動を熱心に行ったあと、1919年、パーカーストはニューヨーク市に4年生~8年生を対象とした学校を設立しました。これが、2019年現在は幼児から高校生までが通う「ドルトン学校」の前身なのです。そして1920年に、マサチューセッツ州のドルトンという町で、上述の「実験室案」を実施しました。このときの教育法は、1922年に出版された『ドルトンプランの教育(Education on the Dalton Plan)』にまとめられました。ドルトン学校によると、この本は14の言語に翻訳され、世界的に受け入れられたそう。そして今でも、その独自性は高く評価されているのです。ドルトンプランの原則『ドルトンプランの教育』によると、ドルトンプランには「自由(freedom)」と「協働(co-operation)」という2つの原則があります。自由ドルトンプランにおいて、子どもには、邪魔されることなく自分の勉強に没頭できる自由が与えられなければいけません。子どもが物事に深い興味を抱いているときは意欲に満ちているのであり、勉強の過程で出現する困難さも乗り越えやすいからです。そのため、ドルトンプランにおいては、ベルによって授業時間を強制的に区切ることはされません。協働パーカーストの考えによれば、旧来の教育において、子どもは同じ教育課程の仲間と過ごすあいだ以外は集団で生活しないため、学校を卒業したら非社交的になりがち。しかし、社会生活とは「協働」および「相互作用(interaction)」なので、学校の成績がよいだけで生きていけるわけではないのです。そのため、ドルトンプランでは、子どもが意識せずとも社会の一員として動き、それを楽しめるような環境が整えられています。ドルトンプランの方法論実際、ドルトンプランは具体的にどのような教育を行っているのでしょう?パーカーストによると、ドルトンプランは固定のカリキュラムやメソッドではなく、時代を経て変化するもの。なので『ドルトンプランの教育』に書かれていることとは異なる点もありますが、現在のドルトン学校におけるキーワードと特徴を紹介しましょう。1.ハウス(House)ドルトン学校において、ホームルームのクラスは「ハウス」と呼ばれています。これは、ドルトンプランの原則である「協働」の精神を養う大事な基盤です。担任は「ハウスアドバイザー」といい、子どもひとりひとりの学習状況をサポートします。ドルトン学校のハイスクール部門(9~12年生)では、ハウスは学年混合で編成されます。実際の社会では、年齢が異なる人と共に活動するのが当たり前なので、より本物の社会に近い状態だといえるでしょう。2.アサインメント(Assignment)「アサインメント」とは、先生と子どものあいだで交わされる「契約」の意味。大学におけるシラバスをさらに詳細にしたような、授業で扱われる主な内容・宿題・レポートの規定・評価基準などが記されている冊子です。子どもはアサインメントを参照し、自分に何が求められているか把握しつつ学習を進めます。たとえば、ドルトン学校が公開している、8年生の歴史のアサインメントは、以下のような内容です。日本の学校や大学で、ここまで詳しい学習のガイドラインを提示してくれることはほとんどないのではないでしょうか?主要な問い:このユニットを読み進める際、以下の問いについて考えてください。これらはアメリカ独立もしくは現代にどう当てはまりますか?教室でのディスカッションや自分のノート、課題レポートなどで、これらの問いについて自由に言及してください。・「権力」や「力」を与えるのは誰ですか?いつ、どのようにして、権力は正当に(不正に)行使されますか?・権力を疑うことは、どのようなときに正当化されますか? 権力が尊重されるべきなのは、どのようなときですか?・すべての人間に共通しているのは、どのような「自然権」ですか?・暴力の行使は常に正当化されますか?暴力を避けるのであれば、変化を生み出すのにほかにどのような方法が可能ですか?(後略)課題読書についての説明:・それぞれの課題読書は、規定の締切日までに終わらせる(正確な締切日については、ムードル[※学習管理システム]またはホワイトボードの掲示を参照)。・自由に読み、先に進んでよい。・課題読書のメモをとる際、リーディング・クエスチョン(※)を使う。自分にとって最もよいやり方でメモをとる。・社会科の宿題に使うのは、30~45分のみ。(後略)(※「英仏間の戦争が『世界大戦』だとみなされうるのはなぜですか?」など、テキストの内容についてより深く考えるきっかけとなる質問)(引用元:The Dalton School|Assignment: Revolutionary Argument)3.ラボ(Lab)「ラボ(ラボラトリー)」とは、子どもと先生が1対1もしくは小グループで行う話し合い。課題について相談したり、授業内容について発展的な質問をしたりできる、貴重な時間です。9~12年生の場合、ラボは各教科専用の部屋で行われます。これは、生徒がいつでも使えるよう、専門的な本を並べた場所。パーカーストはこれらの部屋を「Laboratory」と呼び、生徒が勉強に没頭できる場所として重視していました。そもそも、ドルトンプランの元の名称は「ドルトン・ラボラトリー・プラン」。理科の実験を重視していると誤解を受けないよう、「ラボラトリー」が外されたという経緯があります。ドルトンプランのなかでも特に核となるのが、ラボだといえるでしょう。日本にドルトンプランの学校はある?モンテッソーリ教育やイエナプランのように、異なる年齢の子どもたちを一つのクラスに編成するオルタナティブ教育は珍しくありませんが、ドルトンプランの「アサインメント」「ラボラトリー」はかなり独特ですね。このような教育課程を経た子どもは、自主性や学習に対する意欲を育みそうです。ニューヨークに留学することなく、このような教育を受けさせたいと思ったら、どうすればよいのでしょう?実は2019年4月、東京都調布市に「ドルトン東京学園中等部・高等部」が開校するのです。ドルトンプランを全面に押し出し、「主体的に学び、探究・挑戦し続ける」「多様性を理解し、他者と協働する」などの生徒像を掲げています。ドルトン東京学園では、ドルトンプランの重要な3要素であるハウス、アサインメント、ラボラトリーが実施されます。まず、クラスとは別に、中等部1年~高等部3年のそれぞれの学年から編成されるハウスが組まれ、「異なる学年の生徒集団が、主体的に活動内容を考え、協働して実践していく」コミュニティとなるそう。また、学習内容ごとに作成されるアサインメントには、学習の流れや評価方法などが書かれており、生徒が計画的に学ぶ姿勢を身につける手助けとなるのだとか。そして、ラボラトリーは生徒が自由に使える時間。中等部1年では週に2時間程度ですが、高等部では増えます。生徒はこの時間に教員からアドバイスを受けたり、グループ学習をしたり、一人で学んだりと、自分で設計した学習計画に沿って勉強するそうです。ドルトン東京学園では、生徒がさまざまな経験をし、主体的に発信を行える機会を持てるよう、多くの個性的な行事が予定されています。仲間と協力し、努力した成果を大勢の人の前で見せることを通じ、コミュニケーション能力や主体性が養われることは間違いありません。-スポーツフェス:ハウスの一体化を目的に、ハウス対抗の団体種目を行う。-STEAMフェス:個人およびハウスで科学技術を研究し、発表する。-アートフェス:本格的な舞台装置のある講堂で、演劇や演奏を発表する。また、ドルトン東京学園は「グローバル市民」の育成を目指しており、英語教育にも力を入れています。中等部・高等部の6年間で生徒全員が2回の海外研修を経験するほか、英語を日常生活だけでなくビジネス、アカデミックの分野でも使えるように授業が行われるのだとか。一般的な日本の学校で行われている画一的な詰め込み教育とは、何もかもが違うといえますね。***自主性と、他者との協働。ドルトンプランは、まさに21世紀のグローバル社会で必要とされているこれらの能力を伸ばしてくれる教育だといえるでしょう。意欲を持って自ら勉強に取り組み、さまざまな立場の人たちとの交流を楽しみ、自分の活動を積極的に発信できる人間になってほしい――。そんな願いを持つ親御さんは、ぜひチェックしてみてください。(参考)Helen Parkhurst (1922), Education on the Dalton Plan, New York City, E. P. Dutton.The Dalton SchoolDalton 100|22. Education on the Dalton PlanJ-STAGE|ドルトン・プランの成立過程とヘレン・パーカーストの思想形成ドルトン東京学園中等部・高等部
2019年01月13日都会では子どもたちの遊ぶ場がどんどん減っているなか、さまざまな「遊び」をしかけている人たちがいます。それが、2010年に設立された「一般社団法人TOKYO PLAY」。活動の主な目的は、子どものために遊びを大事にする大人を増やすこと。お話を伺った代表理事・嶋村仁志さんは「プレーパーク」のエキスパートでもあります。プレーパークで遊ぶことが、子どもにどんな影響を与えるのでしょうか。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)冒頭写真提供:嶋村仁志モットーは「自分の責任で自由に遊ぶ」デンマークで生まれ、イギリスで発展した冒険遊び場(インタビュー第1回参照)は、日本でも「プレーパーク」という名称で徐々に広がりつつあります。公園の一角や河川敷、里山など私有地を使わせてもらって不定期で設置する、あるいは月に1回、年に数回といった具合に定期的に設置するものについてはだいたい400カ所くらい。常設のものは20〜30カ所といったところでしょうか。国内初の常設プレーパークが、東京・世田谷の羽根木プレーパークです。開園は1979年。そこで、プレーパークについての重要な考え方が根づくきっかけとなった出来事が起こりました。開園間もない羽根木プレーパークで子どもが怪我をしてしまった。運営者と地域住民の話し合いのなか、ルールをきちんと看板にして掲げようという話になりました。当初は「自由に遊ぶ」ということだけを掲げるという案もありました。でも、本当に自由に遊ばせるためには、大人から子どもに「責任」を返してあげないとならないのです。大人の世界でもそうですが、なにかにチャレンジするというときに「失敗したら責任は誰が取るの?」なんて言われたら、それは「チャレンジするな」と言われていることとほとんど同じですよね。そうなると、チャレンジしたい、「やってみたい」という気持ちが奪われてしまうのです。であるなら、子どもに責任を返していこうという表現をした方がいい。そういう経緯があり、「自分の責任で自由に遊ぶ」という看板を掲げました。これこそ、プレーパークのモットーです。自由な遊びで「責任」を学んだ子どもたち「責任」についての話をもう少ししましょう。あるプレーパークによく遊びに来ていた小学生の兄弟が泥だらけになって帰ったときのこと。お母さんが帰宅したら、ふたりで仲良くお風呂に入っていたのだそう。しかも、洗濯機には脱いだ服がちゃんと入っている。いつもはお風呂にはなかなか入らないし、服は脱ぎっぱなし。でも、このときはちがった。兄弟は、泥だらけになって服を汚してしまったことに対して、小学生なりに「責任」を感じたようだということを、次の日になってお母さんが教えに来てくれたことがあります。別のプレーパークでは、ちょっとした怪我をした子どもがいた。「念のため、おうちの人に連絡しようか?」と聞くと、「嫌だ」と言う。これはよくあるパターンなんです。怒られたくないとか、「もうプレーパークに行っては駄目」と言われるかもしれないとか、子どもはそう思うんですね。でも、あまりにも頑なに拒絶するので、その子に理由を聞くと、「僕がやりたいことをやって怪我をしたのに、プレーパークの人に謝らせたくない」と言うではありませんか。ちょっとびっくりしましたね(笑)。自分のやったことを人のせいにせず自分で責任を持つというのは、あたりまえですが、大人になったときにすごく大事な価値観ですよね。でも、それは誰かに言われてできるようになるものではありません。遊びを通じて実際に泥んこになったり、怪我をしたりするなかで、実感として感じることで「責任」がどういうものかを学ぶわけです。遊びは、体力や発想力、想像力といったものを育てるものでもありますが、もっと「心の奥行き」みたいな部分を深めるものなのだと思います。写真提供:嶋村仁志子どもと一緒にリスクを考えるもちろん、「子どもに責任を返す」とはいえ、本当の危険は取り除いてあげないといけません。そこでわたしたちは「リスクとハザード」という考え方を基本にしています。リスクは、挑戦につきものの危険です。株投資はリスクを伴うものですが、そのリターンはお金ですよね。子どもの遊びの場合、リターンは達成感や友だちと協力した思い出などになるでしょう。それらは大いに味わわせてあげなければなりませんが、一方でハザードという危険もある。これは、子どもの目には見えない隠れた危険、子どもが自ら選びようがない危険のこと。たとえば、子どもがいかにも走り込みそうな場所にある柱から飛び出ている釘などです。そういったものは、大人がきちんと排除しなければなりません。また、「リスク・ベネフィット・アセスメント」という考え方もあります。リスクに対してベネフィットとは「利益、効果」といった意味。いわゆるデメリットとメリットと考えてもらったほうがわかりやすいかもしれませんね。いま、目の前で子どもがある遊びに挑戦しようとしている。それに伴うリスクはどれくらいのものなのか、どんな工夫をすればどれだけ減らせるのか。そして、子ども自身がどれだけ「やりたい」と思っているのか、やったことでどんなものを得られるのか。それらを総合的に判断し、子どもにチャレンジさせるかどうかを決めるのです。もし、本当にやめたほうがいいものであれば、子どもと話をしながら「今回はあきらめよう」と伝える。ある程度の年齢になれば、子どもでもしっかり話せばわかってくれるものです。本人抜きで大人が一方的に判断するのはやっぱり良くありません。写真提供:嶋村仁志遊びを大事にする大人を増やさなければならない子どもにとっての危険という点では、いまは高まっている時代だと感じますね。それは、危険な場所が増えたというような外因的なものではありません。あるプレーパークで出会った子どもなのですが、段ボール箱に入って、なんと7、8メートルもある急斜面の崖から滑ろうとしていたのです。なぜそんなことをするかといえば、もっと小さい頃から、より軽い危険を伴う経験を積み重ねていないからなんですね。いわゆる「恐怖心」が育っていないのです。高さの感覚は5歳までに80%が育つのだそうです。公園に登り棒などの遊具があるのも、高さという感覚、高いことが怖いという感覚を育てるためです。でも、そういう感覚を持てないまま中高生になったとしたらどうでしょう?幼い子どもより力があるだけに、悪ふざけのつもりで命が危険にさらされるようなことをやりかねません。ところが、いまは子どもからどんどん危険を遠ざける傾向にありますよね。放課後児童クラブなどの子どもを預かる場では、とにかく危なそうなものはすべて「なし!」。「ジャングルジムは2段目まで」「ブランコの立ちこぎは2年生から」といったルールがいくつもある。これは、雇用の問題も関係しています。職員は嘱託社員やパートなど雇用形態がバラバラですから、子ども教育に対するモチベーションもバラバラ。結果、親御さんからクレームを恐れて、少しでもリスクがあれば「やめておきましょう」ということになってしまうのです。そんな環境で育った子どもは、チャレンジできないまま体だけが成長し、本当の危険や恐怖を実体験のなかで得ることができない。そうなると、自分の痛みを知らないばかりか、他人の痛みにも共感することができないのです。それは、子ども自身はもちろん、その周囲の人間にとっても危険なことでもあります。子どもたちだけでしっかり遊べる世のなかであれば、わたしたちのような大人は必要ありません。ただ、これだけ子どもが遊べない社会になると、遊ぶことを大事にできる大人を増やさなければなりませんね。そして、大人たちには、遊んでいる子どもの表情にぜひしっかり注目する目線を持ってほしい。子どもはなにか面白いものを見つけると、口を開けたまま顔が固まります。これが最大の関心を示している表情なのです。この表情こそ、挑戦したい気持ち、失敗してもへこたれない気持ち、発想力、集中力といった、遊びをとおして得られるものの原点です。その芽生えを見逃してしまうのは、親としてすごくもったいないことですよ。『子どもの放課後にかかわる人のQ&A50 子どもの力になるプレイワーク実践』嶋村仁志 他 著/学文社(2017)■ TOKYO PLAY代表理事・嶋村仁志さん インタビュー一覧第1回:遊具なし、プログラムなし。異例だらけの“ガラクタ遊び”が欧州で大人気の理由第2回:大切にしたい遊びの“リスク”。子どものチャレンジを支える遊びのルールとは?第3回:子どもの工作が“失敗作”でも、親はアドバイスしてはいけない(※近日公開)第4回:中高生では遅い。子どもが体験すべき「小さな危険」と「小さないたずら」(※近日公開)【プロフィール】嶋村仁志(しまむら・ひとし)1968年8月6日生まれ、東京都出身。子ども時代は野球と自転車と缶けりざんまいの日々を送る。英国・リーズ・メトロポリタン大学社会健康学部プレイワーク学科高等教育課程修了。1996年に羽根木プレーパークの常駐プレーリーダー職に就いて以降、プレイワーカーとして川崎市子ども夢パーク、プレーパークむさしのなど各地の冒険遊び場のスタッフを歴任。その後フリーランスとなり、国内外の冒険遊び場づくりをサポートしながら、研修や講演会をおこなう。2010年、「すべての子どもが豊かに遊べる東京」をコンセプトにTOKYO PLAYを設立。2005年から2011年までIPA(子どもの遊ぶ権利のための国際協会)東アジア・太平洋地域副代表を務め、現在はTOKYO PLAY代表理事、日本冒険遊び場づくり協会理事、大妻女子大学非常勤講師。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年01月13日2010年に設立された「一般社団法人TOKYO PLAY」。「すべての子どもが豊かに遊べる東京」をコンセプトに、東京でさまざまな「遊び」を仕掛けています。今回取材を受けてくださった代表理事・嶋村仁志さんは「プレーパーク」のエキスパート。TOKYO PLAYの活動、そして、「プレーパーク」とはどんなものなのかを教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)主な活動は「遊ぶことの大切さ」を伝える啓発「TOKYO PLAY」は、もともとわたしが2007年に立ちあげた「子どもの遊びと大人の役割研究会」というものがベースとなっています。それを発展解消させるかたちで、2010年に設立しました。主な活動は、「遊ぶことの大切さ」を伝えていく啓発にあります。いま、いちばん力を入れているものが、都内のあちこちで仕掛けている「とうきょうご近所みちあそびプロジェクト」。地元地域に暮らす人たちが町会や商店街と協力し、使用許可を取った道路で多世代の人が楽しみ、交流する場所をつくることを支援するというものです。普段ならお互いにすれちがうだけの関係の人たちが、「遊ぶ」というキーワードによって交流する。近所の子どもたちの育ちの場、世代を超えた交流の場にしたいと考えています。ただこれは、むかしであればどの地域でもあたりまえにできていたことかもしれません。でも、いまはなかなか難しい。車の交通量は増え、社会の少子高齢化が進むなかで静かに暮らしたい人たちも増えています。その結果、住民同士のコミュニケーションは、都会に限らず、田舎でもなくなりつつあります。そうした傾向が影響しているせいもあるのか、子どもが道で危ないことやご近所に迷惑がかかることをしているのをそばで見ているにもかかわらず、注意できない親や、夜中まで家の前でバーベキューをして、注意されても「え?なにが悪いの?」といわゆる逆ギレするような人もいます。「将来の大人」をきちんと育てなければならないこういう人たちは、「道路族」として呼ばれることもあるようですが、その背景として、子どもの頃に近所の人にかわいがられたり、逆に迷惑をかけて怒られたりしたような、ご近所の他人とのコミュニケーション経験がないまま大人になってしまったのかもしれません。本来、家のすぐ近くの環境というのは学びの宝庫でした。そこで遊んでかわいがられたり怒られたりして学んだ経験があり、近所に断りを入れる、気を使うといったあたりまえのことができれば、本来はこんな問題は起きませんよね。せっかくいい大学、いい会社に入ったにもかかわらず、近所の人たちと必要最低限のやり取りもできないような大人を再生産しないためにも、家のすぐ近くの環境の使い方を見直さないといけない時代になってきているのです。わたしたちのプロジェクトが公園ではなくご近所の道に着目していることには、そうした理由があります。そういう意味では、「将来の大人」をきちんと育てなければならないということになる。2060年の日本では、子どもと大人の数の割合が1対9.96になるという試算があります。ひとりの子どもを約10人の大人たちがどんな目線で見るのか、それが重要です。子どものことを、邪魔なものであったり「自分には関係ない」と思ったり、あるいは子ども教育の専門家などが自分のサービスの「お客」として見る。そういうものばかりだとしたら、その社会では子どもをきちんと育てることができないのではないでしょうか。そうではない、ご近所できちんと子どもを育てられる環境を確保したいのです。デンマーク発祥の「冒険遊び場」わたしが子どもにとっての遊びの役割に興味を持ったのは、「冒険遊び場」との出会いがきっかけでした。冒険遊び場が生まれたのはまだ第二次世界大戦中だった1940年代のデンマーク。コペンハーゲン郊外で住宅地を造成しているなか、新しい公園をつくることになった。その都市計画に関わっていたソーレンセン氏は、大風の日に倒れた木に子どもたちが群がって遊んでいる姿を見たことがありました。また、廃材置き場にも面白さを見出していたそう。その構想を生かして生まれた新しい公園が、「廃材遊び場(Junk Playground)」です。そして、第二次世界大戦が終わったイギリスのロンドンでは、がれきのなかで子どもたちが遊んでいました。「大人よりも早く子どもたちはがれきのなかで復興をはじめている」と言われるなか、今度はイギリスの都市計画家、アレン・オブ・ハートウッド氏がデンマークの廃材遊び場を見て、「これだ!」と思ったのだそうです。ただ、そのままの名称ではイメージがあまり良くない。そこで、当時、子ども教育に熱心だったイギリス王室関係者が「いま、子どもたちが必要としているのは『冒険』だ」として、「冒険遊び場(Adventure Playground)」と名前を変えてイギリスに広まることになりました。現在、イギリスでは250カ所くらい、ドイツでは400カ所くらいの冒険遊び場があります。これが、日本では「プレーパーク」という名称でも広まっているのです。写真提供:嶋村仁志子どもの発想と想像力によって変化する遊び場プレーパークは、一般的な公園とはまったくちがうものです。大人が完成品として用意した遊び方も決まっている遊具やプログラムのようなものはありません。あるのはいわゆるネコ車やのこぎり、金づち、シャベルといった道具に木、土、水、火など、それからさまざまなガラクタです。それを、子どもたちが「やってみたい」と思ったふうに使って遊ぶ。大人が遊び方を指示するなんてことはありません。子どもの発想と想像力によってつねに変化していく遊び場というわけです。もちろん、置かれているガラクタもつねに変わっていきます。たとえば、ある日突然、古タイヤが置かれるといった具合です。写真提供:嶋村仁志先日わたしが視察したロンドンの冒険遊び場では、ロンドンオリンピックのときに公園で使われ、廃棄予定だった大きな滑り台が設置されていましたね。こういうふうに、海外ではけっこう大規模なものもあります。ドイツには、プレーパークで働くプレイワーカーの指導を受ければ、子どもたちだけで高さ4メートルまでの建物をつくってもいいというルールがあるところも。中高生くらいになると、自分たちでスケボー用のランプをつくったという例もありますよ。写真提供:嶋村仁志当然、危険はつきものです。ただ、子どもたちは小さなけがから学ぶことも多い。ですから、危険をどう判断するかが重要です。冒険遊び場では、子どもの目が届かないような本当の意味での危険は排除し、大事故につながらないための介入はします。でも、チャレンジという意味での危険は残すことを大切にしています。なぜなら、それらは子どもたちの「心の冒険」だからです。生活のなかでドキドキ、ワクワクすることが、子どもにとってなによりも大きな学びになるのです。『子どもの放課後にかかわる人のQ&A50 子どもの力になるプレイワーク実践』嶋村仁志 他 著/学文社(2017)■ TOKYO PLAY代表理事・嶋村仁志さん インタビュー一覧第1回:遊具なし、プログラムなし。異例だらけの“ガラクタ遊び”が欧州で大人気の理由第2回:大切にしたい遊びの“リスク”。子どものチャレンジを支える遊びのルールとは?(※近日公開)第3回:子どもの工作が“失敗作”でも、親はアドバイスしてはいけない(※近日公開)第4回:中高生では遅い。子どもが体験すべき「小さな危険」と「小さないたずら」(※近日公開)【プロフィール】嶋村仁志(しまむら・ひとし)1968年8月6日生まれ、東京都出身。子ども時代は野球と自転車と缶けりざんまいの日々を送る。英国・リーズ・メトロポリタン大学社会健康学部プレイワーク学科高等教育課程修了。1996年に羽根木プレーパークの常駐プレーリーダー職に就いて以降、プレイワーカーとして川崎市子ども夢パーク、プレーパークむさしのなど各地の冒険遊び場のスタッフを歴任。その後フリーランスとなり、国内外の冒険遊び場づくりをサポートしながら、研修や講演会をおこなう。2010年、「すべての子どもが豊かに遊べる東京」をコンセプトにTOKYO PLAYを設立。2005年から2011年までIPA(子どもの遊ぶ権利のための国際協会)東アジア・太平洋地域副代表を務め、現在はTOKYO PLAY代表理事、日本冒険遊び場づくり協会理事、大妻女子大学非常勤講師。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年01月12日9歳で「子どもの環境団体」に興味を持ち、12歳でリオデジャネイロの環境サミットに団体の代表として参加し、子どもの視点から環境問題についてスピーチをした少女、セヴァン・カリス=スズキを知っていますか?1992年、「世界を5分間沈黙させた少女」として世界中で有名になり、その翌年にはUNEP(国際連合環境計画)の「世界の尊敬すべき500人」の勲章を受けました。物怖じせず、自分の考えを強く、はっきりと話す姿は、とても印象的でしたね。彼女ほどでなくても、海外では、自分の意見を持ち、それを的確に周囲に伝える力が非常に重視されます。欧米の小学校では、生徒一人一人が特定のトピックについてスピーチをしたり、調べ学習をした上でプレゼンテーションをしたりする機会もたくさんあります。そこで求められるのは、論の展開です。論理展開には、問題発見、現状分析、物語展開、問題解決など、その目的によって、いくつもの展開方法があります。幼少期から、効果的な論理展開ができるように練習しておくと、記述式の試験や、入試の面接、英語4技能試験のスピーキングテストなどでも有利になるでしょう。ここでは、英語のプレゼンテーションを例にして、論の展開の仕方をご紹介します。今回注目するのは、冒頭部分。慣用表現を使って、プレゼンテーションにおける思考の流れをナビゲートするのがポイントです。1. 開始のシグナル「はじめます」日常会話では、「あのさあ」「ねえ、聞いて」「ほら」のような言葉を使って、話し出す前に相手の注意をひきますね。英語では “Hey” “Listen” “Now” “Look” “Well” などにあたります。しかし、プレゼンテーションのような改まった状況では、これらは礼を失した表現と受け取られてしまいかねません。そこで、次のような表現で口火を切るのが普通です。・では、そろそろはじめましょうか。OK, now, shall we begin?・そろそろはじめさせていただきます。OK, I’d like to start now.司会者がいる場では、司会者が使う言葉でもあります。2. 謝辞「話をする機会をいただき、光栄です」開始のシグナルの次に、感謝の意を表すことがあります。・この会議にお招きいただき、感謝しています。Thank you so much for inviting me to this conference.・ここでお話しする機会をいただき、光栄です。I’m honored to have an opportunity to talk here.政治家の演説などでは、冒頭で謝辞を述べる場面がよく見られますね。3. エピソードや有名な言葉の引用「……によると」何かを発表する際に肝心なのは、プレゼンテーションの狙いを述べること。時にはいきなり目的が何なのかを明らかにすることもありますが、多くの場合、その背景について述べてから目的に入るでしょう。そんな時は特に、聞き手を意識した語りをする必要があります。そのためには、聴者を巻き込むために、次のような表現を使います。・(皆さん)ご存じのように。as you (all) know・もちろん、皆さんお気づきのことですが……。I’m sure you are all aware of …あるいは、エピソードから始めることもあります。第7代国際連合事務総長コフィー・アナンがノーベル平和賞受賞の際に行った有名な演説は、あるエピソードで始まりました。今日、アフガニスタンで女の子が生まれるでしょう。彼女の母親は彼女を抱き、授乳し、彼女をあやし、彼女の世話をするでしょう。それは、ちょうど、世界中のどこにあっても母親がやっているように。こうした人間の本性ともいえる最も基本的な行為において人間に区分はありません。その後に、貧困をはじめとする、アフガニスタンが直面する状況の厳しさについて語ったのです。また、これから話したい話題の背景を述べる時に、有名な人物の言葉を引用する方法も、よく用いられます。・ジョン・デューイによると、教育は人生のための準備ではなく、それは人生そのものである。According to John Dewey, “education is not a preparation for life; it is life itself.”・ネルソン・マンデラは「教育は世の中を変える最も強力な武器である」と述べたことがある。Nelson Mandela once said, “Education is the most powerful weapon one can use to change the world.”権威ある知識人や著名人の言葉を引用することで、説得力が増しますね。4. 話の目的を述べる「今日の狙いは……」ここで本題に入るわけですが、まずは話の目的を明らかにすることが大切です。聴衆は、最初に告げられた話の目的が、今後どう展開していくかに期待を寄せるのです。・今日私がここにいるのは、……について話すためです。I’m here today to talk about ….・私のプレゼンテーションの目的は……です。The purpose of my presentation is to ….まずおおまかに、その後に細かく、目的を伝えることもできます。・大きなテーマとしては……についてお話ししたい。Generally, I’d like to discuss….・もっと具体的に言うと……に焦点を当てたい。More specifically, I’d like to focus on….どこに着目するつもりかをあらかじめ伝えることで、聞き手も重要なことを聞き逃さずに、話に集中できるようになりますね。5. 話の順序を伝える「3つの話をします」トピックの数や話の順番を事前にはっきり伝えることは、とても大切です。なぜなら、聞く側が話の道筋を予想でき、プレゼンテーション全体の内容を理解しやすくなるからです。スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で行った有名なスピーチにも、この手法が用いられています。世界最高の大学の1つの卒業式にこうしてみなさんとご一緒できることを光栄に思います。正直に言いますと、私は大学を卒業していません。これが、大学の卒業式というものに私が一番近づいた瞬間です。今日、私の人生経験から3つのお話をしたいと思います。私がお話するのはまさにそれです。大げさな内容ではありません。たった3つの話です。感謝の意を示し、簡単なエピソードを入れて、話の目的を述べた後、3つの話をすることを伝えています。さて、このように「3つ」と述べたら、それが何であるかを明らかにしなければいけません。順序立てて話をするためにジョブズは、それぞれの内容をこのように一言で説明しています。・1つ目の話は、点と点をつなぐことです。The first story is about connecting dots.・2つ目の話は、愛と喪失についてです。My second story is about love and loss.・3つ目の話は、死についてです。My third story is about death.話のポイントと話す順序を明確に示すことで、話全体の「構造」が明らかになるのです。トピックが2つであれば、“One is”(1つは) “The other is”(もう1つは)と、列挙するまでもありません。しかし3つになると、スティーブ・ジョブズのように、助数詞などを使って列挙する方法が有効です。・まずはじめにTo begin(start)with・第1に・First / Firstly / First of all・第2にSecond / Secondly・第3にAnd third / Thirdlyトピックが4つ以上ある時は、上記の表現に加え、「最後に」 “Finally” で締めくくるといいでしょう。これらの5つの点を押さえれば、英語でのプレゼンテーションはぐっとわかりやすいものになるはずです。それだけでなく、様々な分野で活用できるポイントがたくさんあります。特に、常に目的を意識することは、試験や学校の授業において、とても重要です。さらに、これからどんな話をするのかを事前にまとめて伝える力は、英語4技能テストや入試の面接でも、効果を発揮するでしょう。
2019年01月11日『男の子も、女の子も、ステレオタイプにはまらない生き方を。子どもの本棚のバランスを考える』という記事で以前、男の子が主人公の物語は、女の子が主人公の物語よりも多く出版されていることをお話ししました。ジェンダーバランスと同様、物語におけるバランスの悪さが指摘されている分野がもう一つあります。それは、家族のあり方や性自認、人種や障がいのあるなしなどの様々な「多様性」です。多様性を子供の本棚に子供達は本を読む時、単純に字を読むことを覚えるだけでなく、社会規範も学んでいきます。「これがふつう」「これはめずらしいこと」「それはいいこと」「あれはわるいこと」といった規範は、必ずしも本の中に直接的に現れるとは限りません。本の中心となるテーマが友情や勇気だったとしても、出てくる主人公たちが全員お父さんとお母さんと一緒に暮らしている白人の男の子ばかりだったら、子供達はそういった「背景」までひっくるめて、メッセージを受け取ってしまいます。現実の世界には、片親の家庭もあれば、障害を持つ子供や大人もたくさんいます。子供たちはきっといつか、様々な背景や事情を持つ人々に出会うでしょう。今後、今よりもっと多様性が重要視されるようになると思います。そんな社会を生きる子供たちにとって、「様々な人々のあり方」をあらかじめ知っておくことは、とても大切です。幼少期から楽しめる絵本を通して、親子で考えてみませんか。多様な家族のあり方を描く絵本小さな子供にとっては、自分の家族だけが「ふつうの家族」です。お父さんがお仕事をしていて、お母さんが専業主婦の家庭の子供にとっては、それが「ふつう」。お母さんが会社で働いていて、お父さんがフリーランスで一人っ子の子にとっては、それが「ふつう」。昔だったら、絵本に出てくるのは、お父さんとお母さん、そして子供が2人ぐらいまでがスタンダードだった、と言っても良いでしょうか。けれど、今の社会において、現実の家族はもっともっと多様なものです。ここでは、多様な家族についての絵本をご紹介しましょう。■『タンタンタンゴはパパふたり』パパが2人のペンギンの家庭の子供、タンゴの物語。ニューヨークのセントラル・パーク動物園での実話が絵本になりました。米国図書館協会の Notable Children’s Book(注目すべき子供のための本)に選定され、数々の賞を受賞した話題作 And Tango Makes Three の邦訳版です。■『いろいろいろんなかぞくのほん』まさに家族の多様性をテーマにした本。大家族もいれば片親家庭もあり、離婚の結果、兄弟が違うお父さんやお母さんを持っていて、それでも一緒に暮らしているケースもある。お父さんとお母さんの肌の色が違う家庭もあるし、養子として受け入れられた子供達のいる家族もある。こうした多様な家族のあり方を明るく描いているのが特徴的な一冊です。人と違って大丈夫——様々な個性が許される社会を描く英語絵本■Here Comes Frankieフランキーは、とても静かな家に暮らしています。お父さんもお母さんも、音がないほうがいいと言います。そんな家で育ったフランキーが初めてトランペットを吹くと「汚れた皿洗いの水の色と、玉ねぎの漬物の匂い」の音が飛び出してしまうのです。フランキーのトランペットから出てくる音は、どんどん綺麗なものや大胆な柄に変わっていって……。まるで空想の世界の物語のように感じられますが、実はこれは「共感覚」というコンディションを持っている子供達の世界を描いた絵本です。共感覚とは、色が「聞こえて」しまう、音の「味がして」しまう、というように、複数の感覚が一つの刺激に反応してしまうコンディションのこと。「モダン・ジャズの帝王」と呼ばれる、アメリカのジャズトランペット奏者のマイルス・デイヴィスや、フィンランドの作曲家シベリウス、そして抽象絵画の創始者とされるロシア出身の画家、カンディンスキーも共感覚者でした。本書の最後のページには共感覚の説明があり、このような共感覚者の有名人が挙げられています。■Mixed中国系アメリカ人作家のアリー・チャンによる Mixed(まざっちゃった)。三原色の青・赤・黄色たちは、お互いにどの色が一番優れているのかで対立します。でも最後には、お互いを認め合うことに。混ざった時に生まれてくる色の華やかで美しいこと!人種のメタファーとして読むこともできますが、母親でも父親でもない、独特の個性を持って生まれてくる「子供」の独自性を、とても強く肯定する物語にもなっています。■Freddie and the Fairy「もはやイギリスの子供で聞いたことがない子供はいない!」というほどの知名度を誇る絵本、『グラッファロー』については、前にもご紹介しました。その『グラッファロー』の作者、ジュリア・ドナルドソンによる可愛らしい絵本です。ある日、妖精を助けたフレディはお礼に願いを叶えてあげると言われるのですが、妖精は実はあまり耳がよくなくて……。フレディのお願いは変な形で叶えられてしまいます。さあ大変!ジュリア・ドナルドソンのトレードマークとも言えるリズムの良さと、ユーモラスなストーリーラインが印象的。さらに、耳がよく聞こえない人たちと話すときに気をつけなくてはならないことが自然とわかる内容になっています。どれも日本語訳はまだないのですが、英語でのよみきかせの際に、ぜひ手に取っていただきたい絵本です。ジェンダーの問題と同様、多様性についても、様々な取り組みが進められていますから、書籍そのものはそれなりに出ています。今必要とされているのは、読み手がそういった本を、積極的に手に取ることなのです。(参考)ジャスティン リチャードソン, ピーター パーネル 著, 尾辻 かな子, 前田 和男 訳(2008),『タンタンタンゴはパパふたり』, ポット出版.メアリ ホフマン 著, 杉本 詠美 訳(2018),『いろいろいろんなかぞくのほん』,少年写真新聞社.Tim Hopgood, Here Comes Frankie, (Macmillan Children’s Books, 2015)Arree Chung, Mixed, (Macmillan Children’s Book, 2018)Julia Donaldson, Freddie and the Fairy, (Pan Macmillan, 2012)
2019年01月10日「もしも」を使うと作文が書きやすくなる!?途中で書くことに詰まってしまう。子どもにはよくあることです。そんなときは、子どもに魔法の言葉「もしも」をふりかけてあげてください。「もしも」をきっかけに想像の世界へ飛び立つことで、意識下にある、その子の考えや気持ちが表に出てくることも少なくありません。そうして表に出てきたものが、作文を魅力的なものにしていきます。魔法の言葉「もしも」には、大きく“変身する役割”と“願望達成の役割”のふたつがあります。どちらも、作文を書くうえで有効です。作文を書く子どもの手が止まったら「もしも」を使って、親がさり気なく誘導してあげてください。「もしも」で他の誰かに大変身!?ひとつ目の「もしも」は“変身するためのもの”です。あたり前のことですが、子どもは、子ども自身の視点で物事を考えようとします。そうすると、自分の意見や考えを書いた段階で「もう十分に書いた」「もうこれ以上は書けない」とブレーキをかけ始めます。そんなときに、変身の「もしも」を使えば、子どもは迷い込んだ袋小路から抜け出して、新たな世界へと旅立つことができます。◆「もしも」を使った変身例・もしも、わたしがママだったら〜・もしも、わたしがこの本の作者だったら〜・もしも、わたしが、ケーキ屋さんの店長だったら〜・もしも、ボクが日本でいちばんえらい人だったら〜・もしも、ボクが宇宙飛行士だったら〜・もしも、わたしが校長先生だったら〜・もしも、わたしが動物園の飼育員さんだったら〜・もしも、わたしがディズニーランドのスタッフだったら〜・もしも、ボクがユーチューバーだったら〜・もしも、わたしがAKB48のメンバーだったら〜「もしも」を使って、自分以外の何者かに変身することで、子どもの想像力が一気に活性化します。変身した立場から、それぞれ個性的な考えや提案を書き始めることでしょう。もしもボクが、日本でいちばんえらい人だったら、おじいちゃんとおばあちゃんに、広くて安全なおうちをプレゼントします。おじいちゃんやおばあちゃんが転ばないようにせっけいした家で、ボクやお父さん、お母さんともいっしょにくらせる大きなおうちです。それから、まちにゴミをすてる人からは「ばっ金」をとります。ふけつな町になると、みんなが気もちよくないからです。あと、歩きながらスマートフォンをいじっている人からはスマートフォンをとりあげます。じこがおきるとあぶないからです。もしも、ボクがユーチューバーだったら、まい日、コンビニやスーパーでうっているおかしを食べて、しょうかいしたいと思います。日本のおかしを食べつくしたら世界のおかしもしょうかいしたいです。今までに見たこともないおかしをしょうかいできたら、見てくれる人たちも楽しいと思います。味だけではなく、おかしの形や、おかしの入ったふくろや箱、おかしの名前なども、しょうかいしたいです。どちらの作文も、変身先の世界で、自由に想像力を発揮しています。作文を読んだ親は、作文の内容がどうであれ、ホメてあげてください。「スマートフォンを取り上げるのは、ちょっと厳しいんじゃない?」「毎日、お菓子を食べたらお金がかかるよ」などという正論やジャッジは無粋です。子どもの想像力を讃えて共感してあげることが大切です。「もしも」で願望が達成する!?もうひとつの「もしも」は“願望を叶えるためのもの”です。どんな子どもにも「こうなったらいいなあ」と思っている願望があるはずです。「もしも」を使って、その願望が満たされた状態を作り出します。すると、子どもの感情が動き、新たな発想が生まれやすくなります。◆「もしも」を使った願望達成例・もしも、ママがボクにガミガミおこらなくなったら〜・もしも、九九がすらすらと言えるようになったら〜・もしも、かん字テストで100点とれるようになったら〜・もしも、クラスでいちばん背が大きくなったら〜・もしも、かけっこがはやくなったら〜・もしも、夏休みのしゅくだいがひとつもなかったら〜・もしも、学校に行かず、一日中、好きなだけゲームをしてもいいなら〜・もしも、わたしがお姫さまだったら〜・もしも、お兄ちゃんと別々の、自分だけの部屋があったら〜・もしも、この世からびょうきがなくなったら〜願望の裏側にあるのは、その子の思想・価値観のようなものです。「もしも」で願望を叶えることによって、その子が大切にしている“宝物”が見えてきます。もちろん、願望が達成した状態ですので、子どもも活き活きと言葉を紡いでいくはずです。もしも、夏休みのしゅくだいがひとつもなかったら、ボクは朝から晩まで野山をかけまわりたいです。昆虫さいしゅうをするためです。まい日、山や林に行ってカブトムシやクワガタをつかまえます。お昼はおにぎりをたべます。川ではザリガニやカエルをつかまえます。海に行くことができたら、パパといっしょにつりをしたいです。海にもぐって貝をとるのも楽しそう。おおきな魚をつったら家にもちかえって、おさしみにしてみんなに食べてもらいます。もしも、お兄ちゃんと別々の、自分だけの部屋があったら、どんなにうれしいかわかりません。本だなには、大好きな「ワンピース」のマンガをならべます。いっしょうけんめいに作ったひこうきとクルマのプラモデルはつくえの上におきます。青色が好きなので、カーテンとまくらは青色にしたいです。ともだちがあそびにきたら、いっしょにマリオのゲームをします。お兄ちゃんに「うるさい!」「外であそんでこい!」といわれるしんぱいがありません。そうなったらうれしいです。いずれの作文も“その子らしい”言葉で書かれています。願望が達成した状態をイメージすることは、大人だけでなく、子どもにとってもワクワクすることなのです。それゆえ筆も進みやすくなります。「もしも」という乗り物で自由に旅させよう!もちろん、「もしも」は、ネガティブなアプローチで使うこともできます。たとえば、「もしも、大きなじしんがおきたら〜」「もしも、おさいふをおとしてしまったら〜」「もしも、たいようが消えてなくなってしまったら〜」「もしも、テストで0点をとってしまったら〜」という具合です。親としては少しドキっとするかもしれませんが、ネガティブなアプローチも“その子らしさ”であり、“個性の片鱗”に違いありません。したがって、ネガティブなアプローチで「もしも」を使ったとしても、とがめずに見守ってあげてください。くり返しになりますが、子どもが「もしも」という乗り物でどこへ行こうとも、大人がその事実を受け止めてあげることが肝心です。「もしも」には、子どもの想像力や発想力のスイッチを“オン”にするパワーがあります。ふだんから「もしも」で考えるクセをつけておくと、いざというきに(作文を書くときに)オリジナリティが生まれやすくなります。「もしも」という乗り物で旅することは、子ども自身にとっても、楽しく刺激的なはず。きっと今まで以上にワクワクしながら作文を書くようになるでしょう。
2019年01月09日メンズかーちゃん~うちのやんちゃで愛おしいおさるさんの物語~
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