4月の入園・入学に向け、お子さんたちの心の中はいま、ワクワクすると同時に不安でいっぱいの時期。親御さんたちも、持ち物の用意や名前付けなどで忙しくしつつも、新生活のスタートを控えたお子さんたちのことが心配なのではないでしょうか?ベネッセが実施した調査によれば、親御さんが子どもの入園・入学前に心配なこととして最も多いのは「友だち付き合い」。新しい環境で、うまくお友だちを作ることができるか、新しいお友だちの輪に入って行けるか……。良いお友だちに恵まれ、楽しく園・学校生活を過ごしてもらいたいというのは、多くの親御さんの共通の願いのようです。そこで今回は、入園・入学が楽しみになる絵本をご紹介します。「保育園・幼稚園・小学校では、毎日こんなことをするんだね」「お友だちがいっぱいで楽しそう!」「早くみんなと遊びたい!」と、不安を解きほぐしながら期待を高めていけるような絵本です。細部まで行き届いた細かいイラストも、見ていて楽しめますよ。『ほいくえんのいちにち』おかしゅうぞう・文/かみじょうたきこ・絵保育園って、どんなとこ?楽しいのかな?友だちいっぱい、できるかな?保育園の一日をスケッチ風に描いた絵本です。ドキドキ、ワクワク、保育園の楽しさ、素晴らしさが、画面いっぱいに広がる、大型ガイド絵本です。お昼ごはんのあとは「おやすみなさい」。保育園のお昼寝ってどんな感じ?【編集者コメント】朝の送りから、夜のお迎えまで、保育園で子どもたちが一日どんな風に過ごしているのか描かれた、ロングセラー絵本です。赤ちゃんクラスから年長さんまで紹介しているので、初めて保育園に預ける親御さんはもちろん、もう保育園に通っているお子さんが来年、再来年はどうやって過ごすのか、予習ができる一冊となっています。部屋のすみずみから子どもたちの表情やポーズまで、細かなところにもご注目ください。『ようちえんのいちにち』おかしゅうぞう・作/ふじたひおこ・絵幼稚園の子どもたちは、どんな一日を過ごすのかな?お友だちと乗る通園バス、歌やダンスの時間、楽しみなお弁当、年の違う子との交流……。ワクワクすることがいっぱいの幼稚園の一日を紹介する、大型ガイド絵本です。お揃いの制服・帽子に通園かばん。おにいさん・おねえさんぽくてかっこいい!【編集者コメント】憧れのバス通園や、お揃いの制服など、保育園とはひとあじ違う幼稚園での生活。様々な遊びや行事を通じて、お友だちを思いやりながら仲良く生活する様子が描かれています。ご自宅での読み聞かせの他にも、これから入園されるお子さんへのプレゼントとしてもご好評いただいております。季節ごとの行事を紹介した、続編の『ようちえんのはる・なつ・あき・ふゆ』と合わせてご覧ください。『いちねんせいのいちにち』おかしゅうぞう・作/ふじたひおこ・絵一年生になったら、どんな一日を過ごすのかな?朝の集団登校、国語や算数のお勉強、おいしい給食、たくさんの友だち……。楽しいことがいっぱいの新一年生の一日を紹介する、大型ガイド絵本です。教室には、机も椅子もひとりにひとつ。お友だちとわいわいしているのも楽しそう。【編集者コメント】遊びの要素が多かった保育園や幼稚園から、様々な決まり事があり、本格的に勉強も始まる小学校へ。お子さんだけでなく、親御さんの不安も一番大きい時期ではないでしょうか。ですが、小学校の生活には、学ぶことの楽しさや、今までよりももっとたくさんの友だちとの出会いがあります。この絵本を通じて、楽しい学校生活を想像しながら、入学への期待感を高めていただければと思います。続編の『いちねんせいのがっこうたんけん』『いちねんせいのはる・なつ・あき・ふゆ』と合わせてご覧ください。***絵本の読み聞かせを通して、子どもたちの入園・入学前の“不安”を、ぜひ“楽しみ”に変えてあげてください。四月になり園・学校生活が始まれば、絵本で見た風景と実際の生活とを重ね合わせることができます。「きょうはこれとおんなじことをしたんだよ!」なんて会話もできて、長く楽しめますよ。子どもたちの新生活が、お友だちいっぱいの楽しいものになりますように。(参考)ベネッセ教育情報サイト|子育てノウハウ これでバッチリ!入園・入学準備ベネッセ教育総合研究所|第3回【ベネッセ研究員より】 小学校入学前後の子どもを持つ親の悩みと課題 ~『幼児期から小学1年生の家庭教育調査』(自由回答分析)より~
2019年03月01日親ならば、「子どもには頭が良くなってほしい」と願うことはあっても、「頭が悪くなってほしい」と願うことはありません。では、そもそも学力を高めるためにはどんな力が必要なのでしょうか。素人だと教科によってちがうと思ってしまいがちですが、V-net教育相談所を主宰し、さまざまな独自教育メソッドを開発している松永暢史さんは、「学力を高める力とは言語能力」だと断言します。構成/岩川悟(slipstream)取材・文/清家茂樹(ESS)写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)勉強ができるということは言語能力が高いこと親御さんが子どもに「勉強ができるようになってほしい」と願うのなら、「言語能力」を伸ばしてあげることを心がけてください。「勉強ができるということは言語能力が高いことに他ならない」というのが、教育に長く携わってきたわたしの結論です。言語能力というと国語というひとつの教科に限られた力だと思われるかもしれませんが、あらゆる勉強は言葉を使ってするものです。数学だって言語で説明されて理解できればいいのですからね。言語能力は、大きくふたつにわけられます。耳にした、目にした言語を正しく受け取る「了解能力」と、自分の意志を正しく相手に伝える「運用能力」です。これらを伸ばすには、実践するしかありません。つまり、「本を読み、文章を書く」ということ。ただ、どちらもまだ難しいような幼い子どもの場合、まずは「聞かせる」ことからはじめます。子どもにきちんと言語を理解させるには、「読み聞かせ」が重要です。人間というのは知能がすごく発達した動物です。それこそ、親が話していることを聞いているだけでしゃべれるようになるのですから、本当にすごいことですよね。赤ちゃんは、言葉を覚えようと大人以上に注意深く親の言葉などの周囲の音を聞いている。その前提を思えば、幼少の時期に正しいリズムの日本語を聞かせてあげる必要があります。言語能力を高めるには過去の名作を音読する正しいリズムとは、例を挙げると石焼きいもの移動販売車から聞こえてくる「いしや~きいも~」の呼び声。「たけや~、さおだけ~」もいいですね。これらに共通する特徴とは「一音一音切っている」ということ。これが日本語の音読のベースなのです。「ショッピング」という言葉も、英語の正しい発音だと日本人には「ショピン」に聞こえますよね。英語は子音で終わることが多い言語であることに対して、日本語は一音一音に母音がつく言語なのです。幼い子どもには、きちんと一音一音切って遠くに話しかけるような日本語に触れさせることが大切です。では、具体的になにを読み聞かせればいいのでしょうか。わたしは、「古典」を聞かせることを提唱しています。もちろん、子どもが言葉を理解しはじめれば、本人に音読をさせます。古典を読み聞かせること、音読させることに驚いた親御さんもいるでしょう。ただ、これには明白な理由があります。『徒然草』をきちんと一音一音で切って音読すると、子どもの国語の力はぐっと伸びます。どういうことか説明しましょう。言葉は時代につれ徐々に変化していますが、当然、その変化は前の時代の言葉を受けたものです。『徒然草』は、江戸時代に寺子屋と藩校でもっとも音読された随筆で、当時の役人や作家など文章を書く人間に『徒然草』を知らない人はいません。つまり、前の時代にテキストとしてよく読まれたものを音読すればするほど、その後ろの時代――この場合であれば、現代の言葉の力が高まるというわけです。では、『源氏物語』や『枕草子』を楽に読めるようになるにはどうすればいいのか。その答えは、その前の時代の『古今集』を音読することです。そしてさらに、『古今集』を楽に読めるようになるには、その前の時代の『万葉集』を音読するのです。読み方の手本は「宮中歌会始」です。新春恒例の行事ですから、ニュース等で目にしたことがある人も多いでしょう。そのイメージで、『徒然草』なら「つ、れ、づ、れ、な、る、ま、ま、に」と一音一音切って読んでみてください。読むだけで子どもの頭が良くなる本があるわたしは、実験として幼い子どもがいるお母さんばかりを集めて古典の音読会を2年間ほど続けたことがあります。その結果、子どもたちの国語力は爆発的に伸びました。まだ小さいのに、みんなが長いセンテンスでしゃべることができるようになったのです。とはいえ、古典にとっつきにくさを感じる親御さんもいるかもしれません。でも安心してください。戦後に生まれた文学作品や絵本のなかにも、正しい日本語の系譜を受け継いでいる作品はたくさんあります。それらは、わたしの著書『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる!』(すばる舎)で「読むだけで頭が良くなる厳選本145冊」として紹介しています。これは、400冊を超える作品のなかからわたしが実際に音読して選びました。選んだ本は、一音一音切って読んで、意味が綺麗に伝わってくる作品ばかりです。作家、絵本作家のなかにも日本語本来のリズムがきちんとわかっている人がいるのです。ただ、「何歳のお子さんにはこの作品」と、年齢別におすすめ作品を紹介することはできません。子どもはそれぞれ成長に差があるので、一概にどの本がいいと決められないからです。とはいえ、著書で紹介した145冊はいずれもわたしが自信を持っておすすめできるいい作品ばかり。そのなかから気になる作品を選んで子どもに読み聞かせをしてあげたり、子どもに音読させたりしてみてください。間違いなく、子どもの国語の力は大きく伸びていくはずです。『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる!』松永暢史 著/すばる舎(2015)■ 教育環境設定コンサルタント・松永暢史さん インタビュー一覧第1回:“AIに勝つ力”は学校教育では育たない。親にしか伸ばせない子どもの「7つの力」第2回:国語力は“〇〇の音読”で爆発的に伸びる。読むだけで子どもの頭がよくなる名作本の選び方第3回:思考と行動、男女の違いを徹底解説。“男の子らしさ”“女の子らしさ”が伸びる教育方針(※近日公開)第4回:学力を伸ばすコツは男女で違う!子どもの性別で見る学習傾向と、勉強法のひと工夫(※近日公開)【プロフィール】松永暢史(まつなが・のぶふみ)1957年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学文学部哲学科卒業。V-net教育相談事務所主宰。教育環境設定コンサルタント、学習アドバイザー、能力開発椅子トラクター。「サイコロ学習法」「ダイアローグ法」「抽象構成作文法」など多数の教育メソッドを開発。子どもの個性に合わせてどのような教育をすることが正しいかを導き出し、学習計画、教育機関利用法、進学計画等を提案する。個人授業では国語を担当。『頭のいい小学生が解いている 算数脳がグンと伸びるパズル』(中経出版)、『落ち着かない 話を聞けない マイペースな 小学生男子の育て方』(すばる舎)、『「ズバ抜けた問題児」の伸ばし方』(主婦の友社)、『新 男の子を伸ばす母親は、ここが違う!』(扶桑社)など、教育関連の著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年03月01日「先行きが見えない」と異口同音に語られる時代。これから長い人生を歩まなければならない子どもたちは、どんな力を身につけておくべきなのでしょうか。V-net教育相談所を主宰し、さまざまな独自教育メソッドを開発している松永暢史さんは、子どもたちに必要なものとして、7つの力を掲げています。そして、そのなかでも根幹となり得るのが「感受性」だといいます。構成/岩川悟(slipstream)取材・文/清家茂樹(ESS)写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)「判断力」と「創造力」の礎となる「感受性」子どもに必要な力として、わたしはまず「判断力」と「創造力」を挙げます。判断力がなければ、知識を持っていたとしてもそれを正しく使うことができません。それから、「他の誰もやっていないことをやりたい」「つくりたい」「描きたい」といった願望はいつもわたしたちのなかにある。いわば、創造力は、人間らしくあるための力といえるでしょう。ただ、それらふたつの力に先行して必要なものが「感受性」です。ものを感じ取る力がなければ、正しい判断もできないし、新しいものを生み出すこともできません。判断力、創造力、それに先立つ感受性――この3つが、子どもにとってもっとも大切な力です。それらに加えるなら、「観察力」「探究心」「着想力」「思考力」も大切な力になります。観察は目だけでなく頭でもおこなうもの。言葉がなければ、鋭く深い観察はできません。動物は、人間が仕掛けた罠を観察して見破るということはそうできませんよね?でも、人間なら「あれは罠じゃないか?」と言葉で考えて罠の存在を見破ることができる。動物よりはるかに優れた観察力を持つのが、人間という生き物なのです。そして探究心。ものごととは、目に見えている部分ではなくその下に重要なものが埋まっているものです。だとすれば、なにかに興味を持ったら立ち止まってとどまりそれを突き詰める必要があります。着想力は創造力のベースになる力です。なにかをつくりあげる力があったとしても、そもそもその「なにか」を思いつく力がなければつくる課程に進めません。そして、いうまでもなく、考える動物である人間には思考力が求められます。「7つの力」を伸ばすには家庭環境が重要でも、残念ながら、いまの学校教育はこれらの力を伸ばそうとしているようには思えません。何十人かでまとめてクラス分けされ、先生の話をちゃんと聞くことが求められ、たくさんの宿題を課される。わたしには、近い将来AIに取って代わられる仕事の訓練をされているように見えるのです。では、先に述べた「判断力」「創造力」「感受性」「観察力」「探究心」「着想力」「思考力」はどんなものかというと、これらは「AIが持てない力」です。「AIにできないことはなにか」と考えたわけではありません。「これからの人間にとって大切なものはなにか」と考えると、結果的にAIにできないことに行き着くのです。そして、これらの力を学校教育で伸ばしてくれないのであれば、家庭環境の在り方こそが重要になります。たとえば、感受性というものは、誰かに壊されることなくゆっくり育まれて徐々に良くなるものであって、ある教育によって突然良くなるものではない。「これから感受性を伸ばす教育をします」といった具合に伸ばすことはできません。ということは、子どもの感受性を向上させることは親にしかできないことなのです。感受性を伸ばすには「甘いお菓子」はNG!?子どもの感受性を伸ばしてあげたいのなら、まず「甘いだけのお菓子」をあげることをやめましょう。甘みというものは強烈な味覚ですから、甘いものを口にし続けると他の味を感じる力が鈍くなってしまいます。同じ甘みを持つものでも、果物だったらどうでしょうか?甘いけど酸っぱさも含むなど、味わいが多重です。そういった複雑さを感じ取れる力こそ感受性でしょう。子どもの感受性を伸ばすには、甘いお菓子ではなくて果物を与えるべきです。もちろん、これは一例です。他のさまざまなことについても、刺激が強いものを受け取って反応するのではなく、できるだけ余計な刺激物がない、いい自然環境に触れることが大切です。たとえば、同じことが聴覚についてもいえます。人間の耳は20キロヘルツまでの音しか聞き取ることができません。でも、自然界には20キロヘルツ以上の高周波の音がたくさん存在します。じつは、人間というものはこれらの高周波音を肌で感じ取っているのです。そして、その経験が豊かであるほど感受性も豊かになります。そう考えると、土があって草が生えていて海や川から心地いい風が吹くような環境に子どもを置いてあげる必要がある。ただ、特に都会の子どもだとそういう場所にひとりで行くことはできるものではありません。つまり、自然に囲まれた場所に子どもを連れて行ってあげるのが親の重要な役割なのです。『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる!』松永暢史 著/すばる舎(2015)■ 教育環境設定コンサルタント・松永暢史さん インタビュー一覧第1回:“AIに勝つ力”は学校教育では育たない。親にしか伸ばせない子どもの「7つの力」第2回:国語力は“〇〇の音読”で爆発的に伸びる。読むだけで子どもの頭がよくなる名作本の選び方(※近日公開)第3回:思考と行動、男女の違いを徹底解説。“男の子らしさ”“女の子らしさ”が伸びる教育方針(※近日公開)第4回:学力を伸ばすコツは男女で違う!子どもの性別で見る学習傾向と、勉強法のひと工夫(※近日公開)【プロフィール】松永暢史(まつなが・のぶふみ)1957年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学文学部哲学科卒業。V-net教育相談事務所主宰。教育環境設定コンサルタント、学習アドバイザー、能力開発椅子トラクター。「サイコロ学習法」「ダイアローグ法」「抽象構成作文法」など多数の教育メソッドを開発。子どもの個性に合わせてどのような教育をすることが正しいかを導き出し、学習計画、教育機関利用法、進学計画等を提案する。個人授業では国語を担当。『頭のいい小学生が解いている 算数脳がグンと伸びるパズル』(中経出版)、『落ち着かない 話を聞けない マイペースな 小学生男子の育て方』(すばる舎)、『「ズバ抜けた問題児」の伸ばし方』(主婦の友社)、『新 男の子を伸ばす母親は、ここが違う!』(扶桑社)など、教育関連の著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年02月28日子どもが学校から帰ってきてもなかなか宿題に取りかからない、机に向かってはみるけれど勉強に集中できていない様子だ、といった悩みを抱えていませんか?勉強の時間や場所を決めて実行しても、なかなか集中モードに入れないお子さんも多いようです。そんなときのお子さんは、「脳が覚醒していない」のかもしれません。実は、集中して勉強するには「脳が覚醒している」ことが大切なのです。脳が覚醒しているというのはどのような状態をいうのか、覚醒レベルはどうしたらアップできるのか、さらに子どもがあっという間に集中する簡単なエクササイズを3つご紹介します。脳が覚醒すれば集中できる集中して勉強する方法には、さまざまなアプローチがあります。たとえば、食後は血流が脳よりも消化器官に優先して流れるので勉強するなら食前がいい、他に気を取られないよう机の上には勉強に使わないものは置かない、勉強が終わったらゲームやおやつなどのご褒美を用意するなど――。実際にご自身の学生時代やお子さんの勉強対策に試したことがあるでしょう。しかし現実には、環境や条件を整えても、さっと集中モードに切り替えて勉強するのは難しいですね。集中して勉強するには、「集中している」ときの脳の状態を知るとヒントが見えてきます。脳科学者の篠原菊紀先生は、以下のように話しています。脳科学の観点から説明すると、「集中できている」というのは、脳の線条体(せんじょうたい)という部分が活動している状態。線条体とはいわゆる「やる気スイッチ」です。行動と快感を結びつけている器官で、移動する動物のすべてが持っているものとされます。というのも、行動に快感を感じられなければ、動物は生き抜くことができないからです。(引用元:Study Hackerこどもまなび☆ラボ|子どもの「やる気」と「集中力」を引き出す脳科学的テクニック)線条体は、脳の奥にある大脳基底核という神経細胞体の一部で、運動の始まりや持続、制御を司っている部位です。体への刺激を伝えるはたらきがあり、ここから出される信号が「淡蒼球(たんそうきゅう)」という部分に届くことで、脳の「やる気スイッチ」がオンになります。つまり、脳を集中している状態にするには、体に運動などで刺激を与えて線条体を活動させ、淡蒼球に刺激を与えることが必要で、運動によって脳をうまく騙せれば集中できるといえるでしょう。脳の集中力を上げるには、体幹の筋肉を動かす実際、運動をすることで集中力が上がるという脳の仕組みを生かして、授業が始まる前に外遊びや運動の時間を取り入れている学校や園も各地にあるようです。同じように帰宅後、家でも宿題や勉強の前に運動を取り入れて集中力をアップさせることができます。その際、「体幹」の筋肉を意識することがポイントです。東京大学名誉教授の小林寛道氏は、体幹の筋肉(体幹深部筋)を動かす効果について、次のように述べています。「体幹深部筋というのは、背骨や骨盤周辺、また四肢の付け根にある筋肉の総称です。姿勢を保ったり、歩く・走るといった人間の基本的な動作にかかわる重要な働きをする筋肉であり、その代表的なものが、背骨と脚をつないでいる大腰筋です。そして、これらの筋肉に刺激を与えると、意欲や根気、集中力が高まることがわかっています」(引用元:プレジデントムック(2017),『プレジデントFamily 小学生からの知育大百科 2018完全保存版』, プレジデント社.)※太字は編集部で施した本来は、勉強の前に外遊びをさせて体をのびのびと十分に動かせるのが理想ですが、環境や状況によって難しい場合は、体幹の筋肉を動かすことで同じような効果が期待できます。脳に効く!集中力が高まるエクササイズ脳の「やる気スイッチ」である線条体は、体を動かせば活動してくれます。そのため、特に決まったエクササイズを行なう必要はありませんが、ここでは例として、小林教授が提唱する大腰筋を動かすエクササイズを3つご紹介します。【仰向けで行なうエクササイズ】1)仰向けで床に寝ます2)膝を90度に曲げ、お尻を浮かせます。おへそを天井へくっつけるイメージでゆっくり持ち上げます3)持ち上げたらゆっくり元に戻します4)2と3の動きを8回繰り返し、2セットを目安に行ないます【正座で行なうエクササイズ】1)正座の姿勢になります2)両手を前に伸ばし、背筋がまっすぐになるように前屈して伸ばします3)伸ばした姿勢のまま、前を見るように首を上げます4)そのままおなかの筋肉を引き締めて体をゆっくり元に戻します【あぐらで行なうエクササイズ】1)足の裏を合わせて胡坐の姿勢になります2)両手でそれぞれの足首をつかんで、背中はまっすぐ伸ばしたまま、頭と肩でぐるっと大きな円を描くように上体をまわします3)次に肩をまわさず腰だけをまわします正座やあぐらはヨガや座禅にも取り入れられているように、集中したいときやリラックスしたいときに適していると小林教授はいいます。そして、正座やあぐらで姿勢良く座るには、お尻を後ろに突き出すくらい腰をしっかり伸ばすのがコツだそう。また、これらのエクササイズで効果を上げるには、背骨と脚をつないでいる大腰筋をイメージしながら行なうように声をかけてあげるといいですよ。もちろん、上記エクササイズでなくても、ストレッチやスクワット、逆立ちなどでも効果を得ることができます。親子で軽く体を動かしたあとに、タイマーなどを使って「宿題何分で終わるかなゲーム」をしてみてはいかがでしょう。いつもはダラダラとやっている宿題があっという間に終わるかもしれませんよ!***勉強前だけでなく仕事、スポーツ、芸術など分野を問わず、集中力はさまざまな場面で必要になる能力です。それぞれの分野で必要になる記憶力、思考力、技術力、創造力といった能力を十分に発揮する場合でも、高い集中力を自在に操れることが大きなアドバンテージになります。(参考)Study Hackerこどもまなび☆ラボ|子どもの「やる気」と「集中力」を引き出す脳科学的テクニック親力講座|簡単な問題でやる気スイッチの線条体を活性化するさぽナビ(Z会)|<あなたのまわりのサイエンス>集中力と継続力を発揮するしかけをつくるベネッセ教育総合研究所|やる気は脳ではなく体や環境から生まれる(池谷裕二インタビュー)プレジデントムック(2017),『プレジデントFamily 小学生からの知育大百科 2018完全保存版』, プレジデント社.
2019年02月27日子どもにはたくさんの経験を通して心も体も成長してほしい。そう考えている親御さんも多いことでしょう。しかし、子どもたちがこれからするであろうたくさんの経験のなかには、うまくいかないことやできないこと、失敗なども数多くあるはず。こうした困難に向き合うには、子どものメンタルは強いに越したことはありません。今回は、子どもにとって「メンタルが強い」とはどんな状態のことをいうのか、メンタルが強いとどんな利点があるかを考えてみます。また、メンタルが強い子どもは、普段どのようなことを習慣にしているのかも紹介します。逆境や困難に適応する「レジリエンス」メジャーリーグで活躍するイチロー選手、サッカー日本代表の長友佑都選手、フィギュアスケートの羽生結弦選手など、スポーツ選手が逆境を跳ね返して活躍する姿には、彼らの強靭なメンタルを感じます。メンタルの強さは超一流のスポーツ選手だけでなく、子どもたちにも必要となってきます。なぜならば、この先、子どもたちにはさまざまな逆境や困難が立ちはだかり、それを乗り越えていかなければならないからです。メンタルの強さというと、「負けず嫌いな性格」や「苦手なこと立ち向かう勇気」、「泣きたい気持ちを堪える我慢」のような強気な心と思われがちです。しかし子どもたちに必要なのは、もっとしなやかで折れない心なのです。最近注目されている「レジリエンス」をご存じでしょうか。レジリエンスは、ストレスのかかった状態に耐え、ほかの誰かに心ない言葉を投げられても傷つかず、トラブルに臨機応変に対応できるような生きのびる力です。レジリエンスは、勉強、スポーツ、人間関係、仕事などで、私たちの心が「折れない」ようにしてくれる心の筋肉のようなもので、誰もが持っているのだそうです。「レジリエンス」が高い人の特徴3つ海外では、レジリエンスについてすでに40年近く研究されています。欧米の学校では、子どもたちに心の強さを教える「レジリエンス教育」を取り入れているところも2,000校にのぼり、国内でもレジリエンスを育成しようという動きが学校や会社で広まってきています。国内でレジリエンスを活用した人材育成に携わっている久世浩司さんは、レジリエンスが高い人の特徴として、「回復力」「弾力性」「適応力」の3つが備わっているといい、それぞれについて次のように述べています。・「回復力」困難に直面しても、すぐに元の状態に戻ることができる、心のしなやかさをもっています。柔軟な心理は、レジリエンスの高さの証です。・「弾力性」これは、予想外のショックやストレスなどがあっても、弾力性をもって耐えることができる精神を表します。人から批判され、嫌なことを言われても、心の傷とならずに守ることができます。・「適応力」予期せぬ変化に抵抗するのではなく、それを受け入れて合理的に対応することができる思考をもっています。(引用元:久世浩司著(2015), 『マンガでやさしくわかるレジリエンス』, 日本能率協会マネジメントセンター.)※太字処理は編集部で施したこの3つの特徴は、特別な能力として一部の人にだけに備わっているものではなく、誰にでもあるものです。そして、レジリエンスは心身の疲労によって衰えることもありますし、反対に大人になってからでもトレーニングで十分に高められるといわれています。メンタルは強くできる!レジリエンスを鍛える4つの習慣お子さんのメンタルを強くするには、日頃の考え方や行動を変えてあげることが重要です。今回は、心理学者のアルバート・バンデューラ博士が提唱した「自己肯定感」を高める4つの要因にフォーカスした、レジリエンスを鍛える方法をご紹介します。【習慣1:成功体験を積みかさねる】小さな成功体験が「やればできる」の大きな原動力になります。例えば、「漢字テストで100点を取る!」という目標を立てたら、まずは出題範囲をいくつかに分けて、小分けにした範囲でパーフェクトを目指します。縄跳びで100回跳べるようにするには、いきなり100回達成にチャレンジするのではなく、まず10回、20回と小刻みに目標を立てて、クリアしていきます。【習慣2:お手本を見せる】私たちの脳には、誰かが上手にやっているのを近くで見ることで「自分にもできそうだ」と共鳴する運動神経細胞「ミラーニューロン」があります。スポーツでもピアノでも、「自分にもできる」と思えるようになるきっかけはお手本を見ること。ぜひ、プロのパフォーマンスを実際に見せてあげましょう。また、動画を見せることでも十分な効果があります。コンサートDVDを活用したり、日本代表選手のプレーをテレビ観戦したり、積極的に取り入れてみてください。【習慣3:プロセスを励まし、褒める】家族や先生からの「あなたならできると思うよ」という言葉は、子どもの背中を押してあげる効果があります。このとき、できるかできないかを重視した励ましではなく、到達できたところまでのプロセスを励まし、褒めることが大切です。プロセスで励まされた子どもは、「自分は前と比べてここまでできるようになった」と振り返ることができるようになり、やればできるという気持ちに自信がつきます。【習慣4:前向きな気分で盛り上げる】グループ学習やチームスポーツでは、ポジティブな気分や感情が自己効力感をアップさせます。「ドンマイ」「次は成功するよ」「1勝したらお祝いしよう!」と盛り上げることで、子どもは「もしかしたら、やればできるのかもしれないぞ!?」と考えることができます。本人に自信がないようなときでも、「〇〇君ならきっとできるよ!」と子どもを信じて言い続けましょう。どの方法も、最初から子どもひとりでできるものではなく、家族や先生など周りの大人のサポートが必要となります。しかし、考え方の習慣化が定着すれば「やればできる」の自己効力感は高まりますし、それが「回復力」「弾力性」「適応力」を備えたメンタルの強さにつながります。***この習慣は、大人も取り入れることが可能。自己効力感がアップし、レジリエンスを高めることができます。メンタルを強くしたいと思っている親御さんは、お子さんと一緒に取り入れてみてはいかがでしょうか。(参考)久世浩司著(2014),『なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?』, SBクリエイティブ.久世浩司著(2015), 『マンガでやさしくわかるレジリエンス』, 日本能率協会マネジメントセンター.ジェシカ・ジョエル・アレキサンダー・イーべン・ディシング・サンダール著、鹿田昌美訳(2017),『デンマークの親は子どもを褒めない 世界一幸せな国が実践する「折れない」子どもの育て方』, 集英社.NHK クローズアップ現代+|“折れない心”の育て方~「レジリエンス」を知っていますか?~Z会さぽナビ|特集 折れない心を育てる(1)
2019年02月26日健康で丈夫な体を作るには、毎日の食事が大切。子どもたちには、栄養のあるものをバランスよく食べさせてあげたいですよね。特に、習い事などでスポーツを頑張る“スポーツジュニア”をお持ちの親御さんにとって、「パワーチャージできる栄養満点の食事づくり」は大きなテーマでしょう。とは言え、カロリー計算や栄養素のチェックなんて難しいし、忙しい中で品数を多く作るのは大変なこと。そこで、運動量の多い子どもたちに最適な、「栄養満点・簡単に作れる・美味しい」の3拍子が揃った“スポーツごはんレシピ”をご紹介する連載がスタートします!監修は、さまざまな競技のアスリートを栄養面でサポートするほか、食育活動を広く実施している株式会社明治。書籍『かんたん! おいしい!ジュニアのためのスポーツごはん栄養満点パワーチャージレシピ』(金の星社刊)に掲載された人気メニューから、明治イチオシレシピを5回に渡ってご紹介します。栄養面でのワンポイントアドバイスも盛りだくさん!どうぞお楽しみに。第1回のテーマは「色とりどりの野菜でビタミン補給」です。カラフルで栄養バランス◎!『コンディショニングパスタ』その名の通り、コンディションをととのえやすいひと皿です。たんぱく質やビタミンB1が豊富なハムと、ビタミンCが豊富なパプリカやピーマンを使いました。■ 材料(2人分)パスタ(乾燥)……200gむきえび(背わたをとる)……中4尾(50~60g)玉ねぎ(7~8mm幅の薄切り)……1/2個赤・黄パプリカ、ピーマン(それぞれ太めのせん切り)……各1/2個ハム(短冊切り)……70gバジルの葉(ざく切り)……10枚(A)オリーブ油……大さじ2(A)にんにく(薄切り)……1/2片塩、こしょう……各少々粉チーズ……適量※パスタの量は、1人分100gを基準としています。成長段階や目的に応じて調整してください。■ 作り方(1)鍋に湯をたっぷり沸かして塩適量(分量外)を入れ、パスタを袋の表示時間通りにゆでる。パスタがゆで上がる1分ほど前にむきえびを加え、ゆで汁を玉じゃくし1/4杯分取り分けて、湯をきる。(2)フライパンに(A)を入れて弱火で炒め、香りが立ったら玉ねぎ、赤・黄パプリカ、ピーマン、ハムを加えて中火で炒める。弱火にして塩、こしょうで味をととのえ、(1)で取り分けたゆで汁を加えてのばす。(3)(1)のパスタとえびを加えてざっくりと炒め合わせ、火を止めてバジルの葉を加える。(4)器に盛り、粉チーズをたっぷりふる。【栄養士より:ここがポイント!】・サポートしていたチームの海外遠征時に何度も作ったひと皿です。「ビタミン類を確保して体調維持につとめてほしい」という思いからつけた料理名です。選手にも好評でした。・“色とりどりできれい”ということは、たくさんの食材を使っているということ。食材の多さは栄養素の多さにつながります。***子どもが大好きなパスタにひと工夫するだけで、栄養満点のメニューに仕上がります。鮮やかな見た目も食欲をそそりますよね。ぜひ、レパートリーに加えてみてください。■ 『かんたん! おいしい!ジュニアのためのスポーツごはん栄養満点パワーチャージレシピ』株式会社 明治(監修)/2017年、金の星社■ この書籍の監修者インタビューを掲載しています試合当日の朝食には「炭水化物をたっぷり」。スポーツ栄養学にもとづいたメニューとは?不足しがちな「たんぱく質」と「カルシウム」、朝ごはんに取り入れるコツ
2019年02月26日子どもの中には、「自ら考えて行動する挑戦力のあるタイプ」と、「何でも親に頼ってしまう依存心の強いタイプ」がいるようです。幼少期の子どもが親に頼りがちになってしまうのは当然ですが、そのまま成長して大人になると、自分の意志のない人間になってしまう可能性があります。今回は、依存心の強い子どもが自ら行動できるようになるために親はどうすればいいのかについて、解説していきましょう。挑戦が苦手で依存心の強い子どもとは?依存心の強い子どもには、以下のような特徴がみられます。・自分の意見を言えない・親の言うことを聞くのが当然だと思っている・親の顔色をうかがう・何事もすぐにあきらめる・自己中心的で相手の立場になって考えることができない子どもの依存心の背景には、親に十分に甘えられていないことや、親からの過干渉があると考えられています。子どもは、親に甘えたいときに甘えられないと、不安を感じて自立を恐れるようになるのです。この “甘え” というのは「欲しいものを買ってほしい」などの物理的な要求ではなく、「抱きしめてほしい」「かまってほしい」という精神的な欲求のこと。子どもが自立し、新しいことに挑戦していくためには、この精神的な欲求が十分に満たされていることが重要なのです。また、親からの過干渉とは、親が子どもに対して「あなたは私がいないと何もできないんだから」と決めつけ、あらゆる行動をすべて先回りしてしまうことを指します。例えば、子どもが何かを食べようとした際に「すぐこぼすから」と親がすべて食べさせてあげたり、ジャングルジムなどで遊ぶ際に「落ちたらケガをするから」と始めから終わりまで手伝ったりすることです。過干渉された子どもは「親がやってくれて当たり前」という意識を持つようになるだけでなく、物事に対する成功体験を持たないために挑戦することを避けて、ひとりでは何もできなくなってしまいます。さらに、過干渉している親も、子どもに対して世話をすることに喜びや生きがいを感じていることも多く、この場合は親子で共依存している状態といえるでしょう。依存心をなくすためには「成功体験」がポイント子どもの依存心をなくし、自立を促すためには、成功体験を積み重ねることが大切です。そのためには、以下のポイントを押さて、子どもが成功体験をできるように導いてあげましょう。【ポイント1:子どもの行動を先回りしない】前述したように、子どもの行動を先回りする過干渉は依存心が強くなる原因のひとつです。ケガや事故の危険がない範囲で、できる限り子どもを見守るようにしましょう。例えば「時間がないから」という理由で、子どもが着替えようとしているのに親がすべてやってしまうのを繰り返していると、当然ながら子どもはいつまで経ってもひとりで着替えることができません。時間に余裕があるときは、子どものペースに合わせて「ひとりでできた!」という成功体験をさせてあげるようにしましょう。【ポイント2:失敗から学んだことを一緒に考える】依存心の強い子どもは、失敗することを極度に恐れる傾向があります。その背景には、「失敗したら怒られる」「失敗するのは悪いこと」という考えがあることも多いので、そうではなく「失敗してもいいから挑戦する」「失敗から学べることもある」ことを積極的に伝えるようにしましょう。そうすることで、失敗を恐れず成功に向かう子どもになっていきます。「お母さん(お父さん)もこんな失敗をしたけど、そこからこんなことができるようになったんだよ」と、親自身の失敗談を話してあげるのも有効です。【ポイント3:「スモールステップ」を取り入れる】スモールステップとは、応用行動分析(ABA)の考え方のひとつ。目標達成までの道のりを細かいステップに分けて、ひとつひとつステップをクリアしていき、最終的な目標達成を目指すことです。例えば、「手を洗う」という習慣をつけたいときには、まず「洗面台に向かう」「蛇口をひねって水を出す」「手を濡らす」「ハンドソープをワンプッシュする」「手をこすり合わせて洗う」「蛇口をひねって水を止める」「タオルで手を拭く」と、手を洗う行動を細かく分けます。そして、ひとつのステップができるようになったら「よくできたね!」と褒めて、次のステップに挑戦させることを繰り返します。すると、子どもはステップごとに成功体験を得られるため、徐々に自立心が育っていきます。***子どもが心配でついつい手助けしてしまうのも親心ではありますが、そこをぐっと堪えて見守ることは、子どもが成長していくうえで必要不可欠です。子どもとの距離感や接し方を見直して、挑戦力や自立心をはぐくんでいきましょう。文/田口るい(参考)All About|子供を自立させる甘えと、ダメにする甘やかしプレジデントオンライン|「勉強しない子」「やる気のない子」は変われますか?ベネッセ教育情報サイト|子どもの自立心を育みたい!保護者ができることって?PHPファミリー|子どもを成功に導く!「スモールステップ」の言葉がけ
2019年02月25日「木の上に秘密基地を作りたい」多くの人にとってはぼんやりとした夢のままで終わるであろう発想を、話し合いや調べ学習を何度も繰り返し、クラウドファンディングという形で見事に叶えたのはなんと小学生の子ども達。彼らが自分達の力で夢をかなえることができた理由は、教育方法にありました。クラウドファンディングで「夢」を叶えた子ども達茨城県つくば市にある英語学童保育「Kids Creation Afterschool」は「自分で人生を切り拓く実践力のある子どもを育てること」をモットーに、子ども達に主体的に考えさせる授業を中心に真の国際人を育むための教育を行っているアフタースクールです。そんなKids Creation Afterschoolの行っている授業の一つが「探求プログラム」です。テーマを設定し、子ども達で意見を出し合って探求することによって「考える方法」や「問題解決能力」を身につけることを目標としています。ある日のテーマは「学童の庭を楽しくするには?」。話し合いの結果「木の上に秘密基地を作りたい」という夢を抱いた子どもたちは、なんと実際にクラウドファンディングで集めた資金で園庭にツリーハウスを作ってしまいます。完成したツリーハウスに登った子ども達。眩しい笑顔です!小学生の子ども達が、何度も話し合い、調べ学習を繰り返し、時に大人のアイデアや協力を求めながら自力で夢を叶えられたのはまさにKids Creation Afterschoolの教育モットーの通り「自分で道を切り拓く力」が身についていたからだと言えますね。―いったい子どもたちはどのように「道を切り拓く力」を身につけることができたのでしょうか。Kids Creation Afterschool代表の宮嶋さやか先生に詳しくお話を伺いました。「道を切り拓く力」とは?なぜ今必要?――そもそも、「道を切り拓く力」とはどのようなものなのでしょうか?なぜ今、「道を切り拓く力」が必要なのでしょうか?「AI時代の到来により、今ある職業の半分はいずれなくなると言われています。明確な答えのない不確かな時代だからこそ、『道を切り拓く力』がとても重要です。仮に自分の職業が無くなっても、絶望したり時代のせいにしたりするのではなく、新しい職業を作ってしまえばいい。そのように自分の手で困難な状況を打破するのが『道を切り拓く力』です。『道を切り拓く力』を持つ前提として、自分がどう生きたいのかを知っている必要があります。幼児期からたくさんの経験をし、他者とだけでなく自分とも対話を重ねてきた人は、自分の強みと弱み、好きなことと嫌いなことがよく分かっているため、自分の歩むべき方向もよく見えています。その道を歩むうえで障害物があった時には、登るのか、壊すのか、迂回するのか、空を飛んでゴールに近道するのか、あらゆる方法を考え、実践します。上手くいかなくても絶望せず、考え得ることを実践し続ければ必ず状況は好転します。これが『道を切り拓く力』なのです」夢を叶えた子ども達を育てた極意とは――『道を切り拓く力』を鍛えるには『発想力』と『考える力』そして『問題解決能力』を身につける必要があると思います。幼少期に具体的に何をすればこれらの力が育つのでしょうか。「まず『発想力』は自由な発想が認められる場でないと育ちません。例えば絵を描くことで言うと、髪の毛は黒、唇は赤、と指導するような教育環境では子ども達の発想力はどんどん失われていってしまいますよね。でも、”何色に塗るべきか”ではなく、”何色に塗りたいのか”を尊重すれば、子ども達はのびのびと自由に創造していきます。例えば、髪を緑色に塗っても、虹色に塗っても認められ、褒められる環境にいると、他人と違うことを恐れる気持ちがなくなります。そして『お友達と自分が違う』ということが当たり前になっていきます。そして、自身が自由な発想で表現することに加え、自分とは違う友人の発想にも毎日触れていく中で意識せずとも自然と発想力が育っていくのです。『考える力』を培うためには、日頃から子ども達にたくさんの問いかけをすることが大切です。2~3歳の幼児の場合、例えば「靴を自分で履けない」と訴えてきたらすぐには手伝わずに、「どうしたら履けるだろうね」と問いかけをします。すると子どもはどうしたら靴を履けるのか「考える時間」を持つことができます。もう少し大きくなると、「なんで水は氷になるの?」「この虫は何を食べるの?」「赤ちゃんはどうしてご飯を食べないの?」と子どもから質問されることが増えてくると思います。そんな時は「あなたはどう思う?」と問い返すことで子ども自身が「考える時間」を作ることができます。もちろん答えが間違えていても叱ったりはしません。時間があれば、図鑑やインターネットを使って一緒に調べてもいいですね。子どもから質問がなくてもこちらからさりげなく問いを投げかけるのも面白いです。「夕焼けがきれいだね。夕方になるとどうして空はオレンジになるんだろうね」などという日常の中での会話が、考える習慣をつくり、子どもの考える力を鍛えます。日常は考える力を育む機会の宝庫です。特別な訓練もワークブックも必要ないんです。何度も話し合いながら、協力してポスターを作る子ども達です。『問題解決能力』は経験でしか得られないものです。そのためには子ども達を信じてある程度のリスクをとらせることも必要です。当校の子ども達は木登りをしたり、山からジャンプしたりと非常に活発に遊ぶため、当然ケガのリスクを伴います。ですが、禁止事項を設けなくても不思議と大けがをする子はいません。子ども達が自分で考え、リスク回避をしているからです。考えながら遊び、たくさんの経験をする中で、子ども達は自然に問題解決することを学んでいます。ここで、お友達とコミュニケーションを取ることも重要な要素になってきます。一人ではなく、仲間と協力したほうが上手くいく場合も多くありますし、友達と話し合い協力することで、自分一人ではできなかった解決法が可能になることも、遊びの中で学ぶことができます。問題解決の方法は一つではありませんので、大人が望む答えとは違う選択をする場合もあります。その場合には「それも一つの方法だ」と尊重した上で、大人の考えを伝えることも良いでしょう。焦らなくても、挑戦できる環境、選択できる環境をつくっていけば、問題解決能力は必ず育つものなんです」子ども達の将来はどうあるべき?――「道を切り拓く力」を身につけた子どもたちは、将来どのような活躍ができると思われますか?「子ども達の将来は、十人十色で良いと思っています。自分が生きたいように生きることができれば、それが一番幸せなことです。一般的に世の中の人がいう「活躍」の定義に当てはまらない自己流の生き方をする子もいるかもしれません。それでも、それはそれで素晴らしいということを前提にしてお話しますね。私は『道を切り拓く力』を身につけた子ども達は、大きく言えば、世界を平和にするような大きな働きができる人になるのではないかと思っています。『大きな山は一気に登ることはできなくても、一歩一歩、歩みを進めることで登りきることができる』ということを経験している人は、小さな一つ一つの問題解決の積み重ねの先に何が待っているのかをイメージすることができます。途方もないことのように思える日々の繰り返しにも、明るい希望を持つことができるのです。これは机上では学べない大切なことです。道を切り拓く力を身につけた子ども達は、世の中の多くの課題を好転させていけると思います。活躍の場は、日本を超え、世界を超え、きっと宇宙にまで広がっていくはずです」***「ツリーハウスを作りたい」という大きな夢を自分達の力で叶えることのできた子ども達にとって、今回の成功体験は糧と自信に繋がったことと思います。道を切り拓く力を身につけた子ども達はきっとこれからも希望を見出しながら人生を歩んでいけるはずですね。【プロフィール】宮嶋さやか(みやじま・さやか)茨城県ひたちなか市出身。 茨城県立医療大学看護学科卒。小児科看護師として勤務した後、自分の子どもを通わせたい保育環境が見つからなかったため、看護師を退職し、2007年につくば市でプリスクール Kids Creation TSUKUBAを開講。0歳から小6を対象に、「人生を切り拓く、しなやかで折れない心を育てる」ことをモットーに、独自の教育を行っている。【Kids Creation Afterschool】〒305-0003茨城県つくば市桜1-18-1029-869-5830日本の子ども達を対象にした英語で学ぶアフタースクール・学童保育。英語を第二言語として学ぶ子ども達のためにデザインされた指導カリキュラムに、日本語で学ぶ「探求プログラム」を組み合わせることでグローバル時代に必要とされる真の国際人へと育てる教育を行っている。
2019年02月24日「秘密基地を作りたい」、「ツリーハウスで遊んでみたい」多くの人が、幼い頃に一度は思い描く夢ではないでしょうか。筆者も幼少期にツリーハウスの出てくる小説を読み、未だ見たことのないツリーハウスを想像して「いつかツリーハウスで遊んでみたいなあ」とぼんやり夢見ていた記憶があります。そんな憧れのままで終わりかねない夢を「クラウドファンディング」という形で叶えたのは、小学生の子ども達でした。「自分の力で道を切り拓く」子ども達の挑戦グローバル化が進み、人工知能時代にも突入している昨今、私たちの身の回りは絶え間なく変化し続けています。英語ができることはもはや必須条件。勉強ができても、発想力の弱い人は淘汰されかねない。そんな激動の時代を生き抜くために大切なことこそ「自分の力で道を切り拓く力を身につける」ことではないでしょうか。茨城県つくば市の英語学童保育「Kids Creation Afterschool」は日本の子ども達を対象にした、英語で学ぶアフタースクールです。「自分で人生を切り拓く実践力のある子どもを育てること」をモットーに、子ども達に主体的に考えさせる授業を中心に、真の国際人をはぐくむための教育を行っています。今回は、そんなKids Creation Afterschoolで行われる「探求プログラム」という授業を通して生まれた、子ども達の「挑戦」に迫りました。子ども達の作ったツリーハウスのポスターです。「考える力」を身につける授業から発生した夢探求プログラムの様子。真剣な眼差しで取り組んでいます。Kids Creation Afterschoolでは毎回一つのテーマを設定し、子ども達で意見を出し合って探求することによって「考える方法」や「問題解決能力」を身につけることを目標としている「探求プログラム」という授業を行っています。今回の探求プログラムの議題は「学童の庭をもっと楽しくするには?」。「秘密基地があったらおもしろいんじゃない?」「でも、園庭に秘密基地なんか作ったら遊び場が狭くなっちゃうよ」まだまだ、話し合いと調べ学習は続きます。みんなとっても楽しそう!そんな話し合いと、本やインターネットを使った調べ学習の末に、子ども達はツリーハウスを作ることを思いつきます。しかし、子どもだけの話し合いではどうしてもツリーハウスの作り方や資金の集め方が分からず、先生に相談することに。そこで「クラウドファンディング」というシステムの仕組みを教わり、「仲間が増えれば夢が叶うかもしれない」と世界に向けて自分達の夢を発信することを決意しました。子ども達の挑戦の始まりです!クラウドファンディング開始そして「夢」が「現実」にCAMPFIRE × Tsukuba 主催のイベント「クラウドファンディングで最高の仲間をみつけよう」にて、子ども達が壇上に上がってプレゼンをしました。沢山の人の前で緊張しながらも頑張りました!緊張しながらも懸命に思いを伝えた甲斐あり、公開直後から少しずつ支援者が増えていきます。しかし、目標には簡単には届きません。もっとたくさんの人に活動を知ってもらうにはどうしたら良いか、子ども達で調べ学習や話し合いをした結果、マスメディアに情報を伝えてもらうための文書である「プレスリリース」という言葉を発見。マスメディアに向けて自分達の夢を伝えるべく、みんなで悩み、真剣に話し合いながらプレスリリースも作成しました。その他にも、ポスターを作って貼り出したり、チラシを配ったり、自分達で活動報告を更新したりと努力を重ねた結果、ついに目標金額に達成!みんな飛び跳ねて大喜びです。その後も話し合いを続け、「ハンモックを下げたい!」「ブランコを作りたい!」と新たなネクストゴールを設定します。新たな目標金額にも着々と到達していきましたが、そんなさなかの9月6日、北海道胆振東部地震が発生。緊急のこども会議を開き、先生から被災地の現状について説明を受けながら真剣に考え、話し合いました。その結果、元々は先生側から提案するつもりでしたが、子ども達自身が「今度は自分達が北海道の人たちの仲間になって助けたい」と支援金の寄付を即決。9月8日以降に集まった支援金は全額義援金として寄付するという決断をしました。仲間と力を合わせれば大きな力になり得ることを体感した子ども達だからこそ生まれた決断ですね。クラウドファンディングが終了!最終的な支援者数はなんと197名。目標の1,300,000円に対し、総額2,035,900円の支援金が集まり、そのうちの9月8日以降に集まった279000円を被災地に送金しました。満を持してツリーハウス建築工事の始まりです。ツリーハウス建設のリターンイベントに応募してくれた支援者や保護者と共に、プロの丁寧な指導を受けながらみんなで少しずつ建築作業を勧めます。初めての経験に子ども達も真剣な眼差しに。大人も子供も、それぞれのできることを役割分担しながら力を合わせて汗を流しました。そして、ようやく念願のツリーハウスが完成!オープニングパーティーを開催し、クラウドファンディングの参加者の方々と共にツリーハウスの完成をお祝いしました。可愛いツリーハウスに子ども達も大はしゃぎ。理想のツリーハウスを完成させることができました。みんな眩しい笑顔です!「学童の庭を楽しくするには」というテーマで話し合いを始めてから7カ月。ついに子ども達は「園庭にツリーハウスを作る」という大きな目標を自分達の力で達成することができました。このクラウドファンディングを通して、子ども達は新しい資金調達の方法だけでなく、想いの伝え方、あきらめないこと、仲間の大切さなど、様々なことを学びました。この経験はきっと大きな自信になり、心の糧になったことでしょうね。***自分達の力でクラウドファンディングを大成功させた子ども達。自力で考え、実行し、夢を叶えた彼らの「道を切り拓く力」はどのように身につけられたのでしょうか。次回の記事では、Kids Creation代表宮嶋さやか先生に子ども達の「道を切り拓く力」について詳しくお伺いします。【Kids Creation Afterschool】〒305-0003茨城県つくば市桜1-18-1029-869-5830日本の子ども達を対象にした英語で学ぶアフタースクール・学童保育。英語を第二言語として学ぶ子ども達のためにデザインされた指導カリキュラムに、日本語で学ぶ「探求プログラム」を組み合わせることでグローバル時代に必要とされる真の国際人へと育てる教育を行っている。
2019年02月23日「どうしてそんなことを…!」男の子を持つママからはよくこんな声が聞こえてきます。予想もしないことをやってのけるので、あるときは驚いたり、あるときはあきれはてたり…。どうしてそんな行動をするのか、意味が分からない! と嘆くママも多いことでしょう。今回は「母親の理解しがたい行動をとる男の子…その理由は?」について考えてみました。■「謎過ぎる…」男の子の意味不明な行動って?男の子の謎に満ちた行動にはどのようなものがあるのでしょうか? それは例えば…・ダンゴムシをポケットに入れて飼っている(つもり)。・段差を少しでも見つけるとジャンプして飛び降りる。・登れそうなところを見つけたら、とりあえず登り始める。・くしゃくしゃの連絡プリントがランドセルの底から出てくる。・お願い事をしても、すぐに忘れる。・「誰と遊んでいたの?」と聞いても「名前は知らない」とケロっと言う。ママたちからすると「なぜ…?」と思うことを楽しそうに、平然とする男の子。こちらの想像を超えてくるその言動には、男の子ならではの脳の発達が関係しているようです。■「今を生きる!」男の子と「先を見通せる」女の子なぜ、男の子のやることなすことがママたちには理解できないのでしょうか?それは男の子の行動・言動に次の傾向が強く見られるからのようです。・目の前にあることだけを見ている。・やりたいことしかやらない。・一度にひとつのことしかできない。これは、男の子ならではの傾向で、男女の脳の成長が関係しています。脳には右脳と左脳があり、一般的に左脳は「言語」「会話」「記憶」を、右脳は「感覚」「イメージ」などをつかさどっているといわれています。この右脳と左脳がお互いに情報を伝えたり、制御したりするための重要な役割を担っているのが、「脳梁(のうりょう)」。この脳梁は、一般的に脳の成熟が早い女の子のほうが一足早く発達します。そのため女の子は、自分が感じた感情や状況を言葉にしたり、「○○しないとママに怒られる」といった先の見通しを立てるようになるのが早いといわれています。これは、脳の情報伝達や制御を行う脳梁が、男の子よりひと足早く大きくなるからだそうです。男の子は男性ホルモンの影響で、体と脳の成熟が一時的におさえられる期間があります。そのため、女の子の脳梁が大きくなっていく時、男の子の脳梁はまだ小さいままなので、感情を言葉にして伝えたり、先の見通しを立てることが女の子ほどうまくできないわけです。また、男の子は女の子に比べ、相対的に右脳が発達していく傾向にあるので、図形や空間などの認識が得意なケースが多いようです。そのため、目の前にあるものを認識し「これは何だろう?」と興味を持って集中してしまうため、ほかのことは目に入らなくなってしまう場合が多いようです。■女の子の「共感思考」、男の子の「目的思考」男女の違いは、「遊び方」にも大きく反映されます。まずは、女の子が遊ぶときを考えてみましょう。例えば、女の子は「〇〇ちゃんと一緒」など、誰と遊ぶのかを意識することが多いですよね。それから同じ場所で、同じように楽しめるかどうかということも大事にしています。遊び終わった際も「楽しかったね」と感情を共有し合います。そして「また明日、遊ぼうね」など、先の見通しを立てたような声がけをすることもありますね。女の子の遊び方は「共感思考」といえるでしょう。一方、男の子の場合、相手が誰であるかはあまり気にしていません。大事なことはゲームやサッカーをするための人数が集まるかどうか、なんですね。目的はゲームやサッカーをすることにあるため、友だちと一緒にいても会話がなく、ひたすら目の前の遊びに集中します。また、遊び終わったら「家に帰る」という目的だけがインプットされるので、自分のゲーム機や遊び道具を友だちの家に置いて帰ってしまうことも日常茶飯事。こうした遊び方は「目的思考」といえるでしょう。■男の子育児「あきらめることも大事」男の子の「謎過ぎる行動」には、脳梁の成長スピードや思考など、さまざまな理由があるようです。男の子ならではの傾向なので、「うちの子、大丈夫かな?」と不安に感じたり、心配する必要はありません。遊びに夢中で遅く帰ってきたり、落とし物や忘れ物が多かったり、危ない遊びでケガをしたりすると、「また同じことをして…」と、ついつい声を荒げたくなるときもありますよね。そんなときは「わが子は今だけに生きている男の子なんだ」と思い出すようにしてみましょう。人の迷惑になったり、命にかかわることならきつく注意する必要がありますが、「恥ずかしいから」「きちんとしていないから」程度の行動なら、「ま、いいか」とあきらめることも必要。子どもはママに「ほめられる」「愛される」ことで何よりの幸せを感じます。加えて男の子は女の子と違い、性染色体がXYと異なるため、一つが傷つくと片方が補完…というのができません。そのため、小さいころは女の子より病気がちだったり、身体が弱い傾向にあるといわれています。誰かに守ってもらわなければ生き延びられない、と本能が働くことから、母親への愛着は女の子より人一倍強いといわれているのです。大好きなママから、ほめられ愛されることが喜びとなり、生きるエネルギーになる男の子。そのためママが「理解できない、分からない」と注意したり叱ることは逆効果。「え、どうして?」という我が子の行動に出くわしたら、「あ、また謎なことをしている」とあきらめ、観察者に徹して見守るのが、ママにとっても息子にとっても一番良い方法ではないでしょうか。参考資料: 『男の子と女の子は脳のつくりが違う! 脳と性質に合った子育ての方法(「幸せ力」の育て方 Vol.8)』ウーマンエキサイト
2019年02月21日イギリスの小学校は4歳から始まります。4歳から1年生になるのではなくて、「レセプションクラス」(Reception class、入学準備学級)に入るのです。4歳ではまだ日本のような入学式で静かにしていることなどとても無理ですから、登校初日は先生と顔合わせをして校長先生とご挨拶をし、学校に慣れるための日、といった位置付けのようです。もっとも、日本のような、みんなが座って長い時間お話を聞く形の入学式は、イギリスでは一般的ではありません。ケンブリッジ大学に入学した時も、所属カレッジの「入学式典」は、一人でカレッジ長の部屋を訪れ、今までの全ての学生がサインをしてきた大きな本のページに自分の名前を書き加え、カレッジ長と握手をする、というものだったように記憶しています。とにかく、自分の所属する学校の先生たち、そして校長先生とちゃんとお話をするのが大切、といったスタンスのようで、一方的に先生のお話を聞いているだけではないというのが、違いを感じて面白いところです。さて、生まれて初めて制服を着て、小学校に行った下の子は、とても興奮して帰って来ました。教育目的のおもちゃがいっぱいあり、たくさんの同い年の子供がいる環境がとても刺激的だったのでしょう。校長先生と一対一で言葉を交わしたのも嬉しかったようで、たくさんお話をしてくれましたが、彼が大興奮していた理由はもう一つありました。なんと!「クラスのぬいぐるみ」を一番最初に手渡されたのです!毎週ぬいぐるみがクラスメイトの家を旅して回る!?クラスのぬいぐるみ(Class teddy)とは、特に小学校低学年のクラスで、学期の最初に先生たちが用意してくれるぬいぐるみです。そのぬいぐるみは一年間、毎週クラスのお友達の家を旅して回ることになります。ぬいぐるみと一緒についてくるのが「クラスぬいぐるみ日記」。ぬいぐるみが子供達と一緒にどんなことをしたのか、文章を書いて写真を貼ります。下の子供の学年の先生が選んだのは、ジュディス・カーの古典的な名作『おちゃのじかんにきたとら』のトラのぬいぐるみでした。『おちゃのじかんにきたとら』(The Tiger Who Came to Tea)は 1968年に出版されて以来50年以上、イギリスの子供達に愛されてきた名作です。日本語にも訳されていて、長く親しまれてきました。ある日、ソフィーという小さな女の子がお母さんとお茶を飲んでいると、玄関のベルがなって、トラがやってきます。そしてトラは、お茶菓子だけでなく、家にあるものを全部食べてしまうのです。本当だったら困った話のはずなのに、ソフィーはいろいろなものをパクパク食べていくトラを、なんだか嬉しそうに見つめています。そんな主人公の表情や絵柄もとても可愛らしい作品です。食べるものがなくなっちゃった!と説明するママとソフィーに、パパが出す解決策もまた素敵なのです。英語版の読み聞かせ動画も多くあります。『おちゃのじかんにきたとら』は、上の子供が3歳くらいの時に、イギリスの祖父母から日本に送られてきたため、我が家にも一冊ありました。何度も読み聞かせようとしたのですが、入学するまでは下の子供は全然興味を示していませんでした。ところが、ぬいぐるみがやってきた途端、本棚から引っ張り出してきて「よんで!」とリクエスト。一緒に本を読んで、それから「トラの週末」にどんなことをするべきなのか話し合うことになりました。絵本はトラが色々なものを食べてしまうお話ですから、お寿司やサラダを作ってぬいぐるみと一緒に食べている写真を撮り、公園で一緒に遊んでいる写真を撮りました。まだ字は書けなかった時期ですから、私が写真を貼り付けて、日記を書いている間じゅう、隣でそわそわ「これ書いて!」「あれ書いて!」とリクエストを繰り出していました。後で一人でトラのぬいぐるみと遊んでいるところをこっそり覗いてみたら、「ぱくぱく」と、トラが色々なものを食べていました。どうやらお話の内容もちゃんとわかっていたようです。「クラスのぬいぐるみ」の効果とメリット4歳という年齢は、小学校に上がるには早く、入学準備学級は半分日本でいう保育園のような空気を残したまま、小学校での生活に慣れていくための1年間になります。けれど、そうした早期教育はとても大切なものだと考えられています。たとえば、移民の家庭からきて、英語の本があまり家庭にないような場合、まだまだ挽回が容易な4歳から、必ず学校で英語の読み聞かせに出会うわけです。家庭というのはそれぞれ違うものですから、4歳時点では子供の英語力も知識量もみなバラバラです。そんな中、先生たちは、子供達が勉強は楽しいものだと思えるように、色々と考えてカリキュラムを組みます。まだ字が読めない、書けない子供も多い4歳児のクラスで、絵本のぬいぐるみがクラスメイトの間を旅することには、幾つものメリットがあります。実は親の間では「あー!ぬいぐるみが来ちゃった!いったい今週末は何をしよう!」と悲鳴が上がることもあるのですが、それでもクラスのぬいぐるみがやってくると、子供達は大喜びです。ぬいぐるみの元になる絵本を読んでもらったり、お話の内容を考えて週末の計画を立てたり。お母さんやお父さんが文章を書いているのをそわそわ覗き込みながら「字が書けるっていいな」と思ったりもします。もっと年齢が高い子供達だと、今度は子供達自身が文章を書くので、クラス全体の交換日記のようになります。我が家はトップバッターだったので、残念ながら私は他の家庭の日記を読むことができなかったのですが、学期が進んでからぬいぐるみをもらった家庭では、トラがいったい他の家庭ではどんな冒険をしたのか、今までの軌跡をたどるための読み聞かせも発生していたようです。入学して数ヶ月くらいした頃には、下の子はクラスメイトのお母さんやお父さんに「○○くん、トラの日記読んだよ!お寿司美味しそうだったね!」と話しかけられていましたから、そんな効果もあったようです。お話の主人公のおもちゃは、絵本への興味を高めてくれるクラスのぬいぐるみがやってくるまであまり意識していなかったのですが、自分のための絵本が一冊一冊、目の前で増えていった上の子と比べ、気づいた時にはすでにたくさんの本が周りにあった下の子は、あまり絵本に興味を示さない子供でした。もちろん、読み聞かせは同じように行っていましたし、上の子が本を読む様子も目にしていたのですが、上の子の時と違い、本を欲しがったり、自分から「読んで」とリクエストしたりすることが、少なかったように思います。けれど以前、イギリスでこよなく愛されている絵本としてご紹介した『グラファロ』だけは別格で、何度もリクエストをされました。さすがベストセラーだな、と思っていたのですが、考えてみると、下の子が『グラファロ』の絵本に積極的に反応し始めたのは、3歳ぐらいの頃、おもちゃ屋さんで、グラファロのモチーフのついたお皿やスプーン、ぬいぐるみなどを目にしてからのことでした。たくさん本が周囲にありすぎて、どれに興味を持っていいのかわからない状態になっていたのかもしれません。街角で見かけたぬいぐるみに何かのセンサーが反応したのでしょう。グラファロも、はらぺこあおむしも、ピーターラビットも、古典的に愛されている絵本のキャラクターには、ぬいぐるみやおもちゃになっているものが数多くあります。おもちゃへの興味と、絵本への興味がうまく噛み合った時、子供の文字への欲求がぐっと高まるのだ、ということを、クラスのぬいぐるみは教えてくれます。本のキャラクターのぬいぐるみは、読書と無関係なおもちゃではないのです。(参考)ジュディス・カー, 晴海 耕平 訳(1994),『おちゃのじかんにきたとら』,童話館出版.Judith Kerr, The Tiger Who Came to Tea, (HarperCollins, 2006)Official Gruffalo Shop|Gruffalo Sitting PlushDonaldson Julia, The Gruffalo, (Macmillan, 1999)ジュリア・ドナルドソン, 久山太市 訳(2001),『もりでいちばんつよいのは?』,評論社.Amazon|The Tiger Who Came to Tea Plush
2019年02月21日ビル・ゲイツのような敏腕実業家や、世界で活躍するトップアスリートたちにとって、成功を収めるために自身のメンタルをいかにいい状況に保つかはとても重要です。先日「スポーツ界のアカデミー賞」と呼ばれる「ローレウス・スポーツ賞」を受賞した、女子テニス世界ランク1位の大坂なおみ選手も、コーチによるメンタルトレーニングが多大な力になったことは今や有名ですね。そのメンタルコントロールに非常に大きな役割を果たしているのが「マインドセット」です。チャレンジを恐れず、努力できる人へと成長できるか否かの鍵となる「マインドセット」について知っておきましょう。育った環境が大きな影響を及ぼす “心の持ち方”まず、「マインドセット」について見てみます。「マインドセット」とは、経験や教育、その時代の空気、生まれ持った性質などから形成されるものの見方や考え方を指す言葉です。信念や心構え、価値観、判断基準、あるいは暗黙の了解や無意識の思い込み、陥りやすい思考回路といったものもこれに含まれます。(引用元:コトバンク|マインドセット)つまりは個々人の “心の持ち方”です。マインドセットは、育った環境が大きな影響を及ぼすため、保護者や先生の接し方もとても大事になってきます。マインドセット研究の第一人者でアメリカ・スタンフォード大学心理学教授、キャロル・ドゥエック氏によると、人は2種類の「マインドセット」タイプに分けられるのだそう。■硬直マインドセット (Fixed Mindset)自分の能力は固定的で変わらないと信じている人。「努力しても人は変われない」と思っているため、自分を誇張することに腐心し、他人の評価をとても気にします。失敗に弱いタイプ。■しなやかマインドセット(Growth Mindset)人の資質や知能は努力次第でいくらでも伸ばせると考える人。失敗を恐れずに挑戦を続けられる前向き思考を持つタイプで失敗に強い。「硬直マインドセット」は自分で枠を作ってその狭い世界で生きていこうとするタイプ、「しなやかマインドセット」は枠を取っ払って、自分の世界をどんどん広げていくことに喜びを感じるタイプと言えるでしょう。ドゥエック教授は、シカゴのある学校の10歳の子どもたちに、難しい課題を課すことでマインドセットを探る調査を行ないました。その結果、成績が悪かった子どもたちの中には、より点数が下の子を探して自分を納得させる子や「次はカンニングしよう……」と言う子までいたそうです。その一方で、「むずかしい問題だいすき!」「これやったら頭がよくなるよね!」と驚くほど前向きな反応を見せた子も。その差は何なのでしょうか?マインドセットで何が変わるのか、また「しなやかマインドセット」を持てるようになるにはどうすればよいのかについて、順に見ていきましょう。マインドセットで人生が変わる――「まだ」が持つ力人は、赤ちゃんのときは失敗を恐れず成長し続けます。それが、いつしか「硬直マインドセット」が芽生え始めると、挑戦をやめて成長を止めてしまいます。もったいないですね。そのマインドセットを再び変えてあげることができたら、どんなプラスなことが起こるのでしょうか。■成績が変わる!シカゴのとある高校では、卒業に必要な単位を取るのに失敗した生徒たちに、「不合格」ではなく「未合格」と通知するそうです。“まだ合格ではない” とすることで、合格が待っている未来を描かせ、努力するよう促せるのです。“まだ” には、人の可能性を信じる力が潜んでいます。指導する側が、失敗を「結果」ではなく「経過」として捉えて子どもに接すること、それこそが「しなやかマインドセット」への誘導です。それを証明した事例があります。ドゥエック教授の調査で、アメリカ・ニューヨーク州のハーレムやブロンクスなどの慢性的学力不足の学校に “まだ” づくしの「しなやかマインドセット」教育を施しました。結果は、成績が学区最下位だったその学年は、約1年後に1位になるという驚異的進歩を遂げたのです。「人は変わることができる」ことが証明された出来事でした。■人間関係が変わる!「硬直マインドセット」の人は自己顕示欲が強く、他人の目を気にするため、人に拒絶されると自分を全否定されたように感じ、恨みを抱きがちです。一方「しなやかマインドセット」の人は相手を許す余裕があり、チームワークを大切にし、円満な人間関係を築けます。成績と人間関係が変われば、人生に大きな影響を及ぼし得ます。子供たちが自分の可能性を信じられるようになるために、大人はどんな手助けをしてあげればいいのでしょうか?「しなやかマインドセット」になるための3つのポイントさあ、3つのポイントをみていきましょう!【ポイント1】過程と努力を褒め、“まだ” の声かけをテストやスポーツの成績において、重視すべきは結果や能力ではなく、過程と努力です。結果はどうあれ、その点をまず褒めてあげましょう。そして、望んだ結果が出せなかったときは、「今回はまだできなかったけど、次があるね」と声かけを。そして、「次はどうしたらいい結果になるかな?」と考えたり、話し合うことも大切。この繰り返しが、“失敗は成功への通過点” という前向きな「マインドセット」を植えつけることになります。【ポイント2】「脳の仕組み」を教える脳の仕組みについて話すことでも、マインドセットを変えられることが証明されています。調査対象の子どもたちに「何か新しいことや困難なことに取り組むと、脳内のニューロンという物質が分泌されて脳が活性化するから、どんどん頭が良くなるんだよ」と教えました。すると、進級して勉強がぐんと難しくなっても、彼らの成績は急激に伸びたそうです。逆に脳の仕組みを教えられなかった子どもたちは、残念ながら成績が伸び悩んだと言う結果に。“失敗で脳は鍛えられる、賢くなれるチャンス”と知ることが学びへの安心感となり、がんばる源になるのでしょうね。【ポイント3】偉人たちに学ぶ発明家のトーマス・エジソンは「私は失敗したことがない。ただ1万通りのうまくいかない方法を見つけただけだ」、松下幸之助は「失敗したところでやめてしまうから失敗になる。成功するところまで続ければそれは成功になる」と言っています。歴史的人物でもスポーツ選手でも、興味を持った人の本を読むなどして先人に学び、自分のロールモデルを見つけられるといいですね。小さいお子さんの場合は、「こんな人がいたんだよ」「こんな考え方をしていたんだね」と、偉人たちの成功への道のりをかみ砕いて説明してあげましょう。***マインドセットは自分で変えることができます。性格だと思って諦めていたことも、マインドセット次第で変えられるかもしれません。しかし、元陸上選手の為末大さんもおっしゃっていますが、“マインドセットを変えること” は “自分の世界観を変えること” で、想像以上にとても大変なのだそう。だからこそ、まだ頭が柔軟な子どもの頃からいいマインドセットを持てるよう、大人の導きが必要なのだと思います。「失敗は成功のもと」、昔からあるこの言葉の深さを感じますね。(参考)学研キッズネット|「賢い子ども」の育て方挑戦するということStudy Hackerこどもまなび☆ラボ|失敗を成長の糧にするためのポイント。親は我が子の失敗とどう向き合えばよい?All About|子供が伸びる秘訣は「失敗」への対応にあったPRESIDENT Online|必ずできる!うまくいく人の「マインドセット心理学」PRESIDENT Online|大坂なおみの「メンタル」が激変したワケコトバンク|マインドセットTAMESUE|マインドセット(第12回メルマガより)TED|必ずできる!—未来を信じる「脳の力」—キャロル・S・ドゥエック著 今西康子訳(2016), 『MINDSETマインドセット「やればできる!」の研究』,草思社.
2019年02月20日よく「潜在意識は子どもの成長に大きく関わっている」といわれます。そもそも潜在意識とは何なのでしょうか。今回は、潜在意識の基本的な知識に加えて、子どもの潜在意識を自信でいっぱいにするための親の関わり方について紹介しましょう。潜在意識とはすべての記憶の蓄積潜在意識とは、日々の生活の中で自覚のないままに行動する際の意識のことです。潜在意識には、生まれてきてから現在までのすべての記憶が蓄積されています。例えば、歩いたり走ったりという行動は、必要に応じて自然と行なっていますよね。これは、歩く・走ることが潜在意識の中に刷り込まれているためです。また、自転車の運転や、スプーンやフォーク、箸の使い方などは、子どもの頃はうまくできずに何度も練習しますが、そのうちスムーズにこなせるようになります。これは、意識的に行なっていた行動が潜在意識の中に刷り込まれていったということです。大人の場合、昔好んで聴いていた音楽を久しぶりに聴いたり、子どもの頃に大好きだったお菓子を食べたりしたときなどに、その当時の他の思い出まで自然とよみがえってきたという経験のある方は多いでしょう。これは、潜在意識の中に残っていた記憶が、関連のある行動によって呼び起こされたためです。また、自分自身を「明るくて人付き合いが得意」「内向的で人見知り」などと分析することも、かつて第三者に「あなたは明るい人だね」「人見知りしてるんじゃない?」といわれた記憶が潜在意識に蓄積していることが大きく関係しています。潜在意識と顕在意識潜在意識の対極にあるのが、顕在意識です。潜在意識とは違い、自分自身で決定した意識的な行動のもととなる部分ですね。例えば、「今日のお昼はカレーを食べよう」「今日はこの洋服を着て出かけよう」などと考えて行動することが顕在意識といえます。私たちは日々の生活で、すべて自分自身の意思で選択したり、行動したりしているように思えますよね。しかし実は、顕在意識が働く割合は多くとも1割程度で、残りは潜在意識が占めているのです。そのため、顕在意識でやろうと思っていても、潜在意識の中に「本当はやりたくない」という考えがある場合は、失敗したり、挫折したりしてしまう可能性が高くなります。何か実現したい目標があったり、自分自身を変えたいと思ったりしたときは、潜在意識に働きかける必要があるのです。子どもの潜在意識子どもの潜在意識は、6歳ごろまでにどんどん情報を吸収していくといわれています。良い情報も悪い情報も、区別なく蓄積されていくのです。そして6歳以降は、それまでに溜め込んだ潜在意識をもとに考えたり、行動したりするようになります。ゆえに、子どもの潜在意識を自信でいっぱいにするために、親は以下の点に注意することがポイントになります。■ポジティブな言葉がけをする子どもの潜在意識を自信でいっぱいにするためには、ポジティブな言葉がけが重要です。苦手なことに取り組もうとしている子どもに「きっとできるよ」、何かをやり遂げた子どもに「よく頑張ったね」などと声をかけるのはもちろん、日常的にも「大好きだよ」「毎日元気に過ごしてくれて、うれしいよ」と子どもの存在そのものを肯定するような言葉を使いましょう。また、「おはよう」「おやすみ」「おかえり」「お疲れさま」といった日常のあいさつも、子どもが毎日元気に過ごせていることへの感謝や喜びを表現する役割があります。短い言葉であっても、実はしっかりと愛情が伝わっているため、子どもの自己肯定感アップに有効です。■振る舞いに注意する子どもの潜在意識は親の言葉だけでなく、振る舞いからも大きな影響を受けています。セラピスト・中野日出美さんは、著書『女の子の育て方 子どもの潜在意識にこっそり“幸せの種”をまく方法』『男の子の育て方 子どもの潜在意識にこっそり“成功の種”をまく方法』(ともに大和出版刊)のインタビューの中で、こうおっしゃっています。どんな人でも、子どもの頃に親から様々な「種」を植えられています。たとえば親のちょっとした仕草や振舞い、生き方などがそうで、直接親から言われた言葉とは別のところで親のあらゆる行動を子どもの潜在意識はメッセージとして受け取っているんです。そうした潜在意識に植えられた「種」は、後々子どもの人生によくも悪くも影響します。(新刊JP|子どもの未来は幼少時に決まる子育てで作る「人生脚本」とは)親が他者に攻撃的な振る舞いをしていれば、子どもの潜在意識には「相手に攻撃的に接してもいい」と刷り込まれてしまうのです。また、親がパートナーをばかにする、本人のいないところでパートナーの悪口を言う、などの行動も注意が必要です。子どもが学校生活で同じような振る舞いをするかもしれません。逆に、親が他者に感謝をし、相手の気持ちを考えた公平な振る舞いをしていれば、子どもも自然にお友だちを大切にし、優しく接することができるでしょう。よく「子どもは親の言うことは聞かないが、結局親と同じような生き方をする」といわれますが、これはまさに親の行動が子どもの潜在意識が関わっているためだといえます。***子どものうちから潜在意識に着目して接することは、子どもの将来の基盤を作ることにつながります。普段の言葉がけや振る舞いを意識しながら、子どもの自信を育てていきましょう。文/田口るい(参考)齋藤直美著(2018),『「潜在意識」が子どもの才能を伸ばす』,さくら舎.野坂礼子著(2007),『絶対、子供の運がよくなる! 「笑顔」と「ありがとう」の子育て』,PHP研究所.Study Hackerこどもまなび☆ラボ|私たちが知らなかった、幼少期に絵本の読み聞かせをするべき”本当の理由”名古屋聖心こころセラピー|潜在意識療法
2019年02月20日長年にわたり、人気の習い事として名が挙がる「ピアノ」。ピアノが弾けるようになると、楽譜が読めるようになる、音感が身につくなど、さまざまなメリットがあります。この記事を読んでいる親御さんのなかにも、習ったことのある方は少なくないでしょう。では、東大生の多くが幼少期にピアノを習っていた、ということはご存じでしょうか。もしそれが事実なら、ピアノを習うと頭がよくなるの? と、期待が高まりますよね。実際はどうなのか、ピアノが脳にもたらす影響について調べてみました。ピアノが東大合格に役立った!?ミキハウス子育て総研が2017年に行った調査「Weekly ゴーゴーリサーチ(第815回分析結果)」によれば、ピアノを習っている子どもは全体の23.9%。これはスイミングに次いで2番目に多い割合です。およそ4人に1人がピアノを経験しているといえます。また、別の調査では、東大生のおよそ2人に1人がピアノを習っていた、と判明したそうです。また、ヴァイオリンやエレクトーンなど音楽系全般となると、その数は全体の約6割を超えるといいます。この調査を行なった教育ジャーナリストのおおたとしまささんは、この数字について下記のようにコメントしています。世の中全体では楽器を習っている子供の割合は1:3くらいで女子が圧倒的に多いのに、東大は4:1の割合で圧倒的に男性が多い母集団であるということも考慮すれば、「6割以上」という数字がいかに突出した数字であるかがわかるだろう。(引用元:東洋経済オンライン|東大生にピアノ経験者が圧倒的に多い理由)さらに、東京大学新聞社では、東大生を対象に小学生時代の習い事が東大合格に役立ったかどうかの「貢献度」についての調査が行なわれました。この調査では、習い事の種類ごとに、「とても役に立った」なら4点、「ある程度役に立った」なら3点、「少し役に立った」なら2点、「役に立たなかった」なら1点を加算していき、平均点を算出します。ピアノは2.5点で、学習塾や英会話などを除く非学習系の習い事のなかでは、習字に次いで2番目に高い貢献度でした。つまり、小学生時代にピアノを習っていた現役東大生の多くは、ピアノの経験が少なからず東大合格に役立ったと考えているようです。ピアノはすべての脳機能を高めてくれる習い事では、科学的にピアノと学力向上に相関関係はあるのでしょうか。結果からいうと、「ある」と示す論文や調査結果が数々発表されています。例えば、ヨーロッパで8~10歳の小学生を対象に行われた研究では、小学生を2つのグループに分け、片方にはピアノを、もう片方には演劇を週1回習わせました。4カ月後、8カ月後に問題解決能力を測定すると、ピアノを習っていたグループのほうが能力の伸びが明らかに大きかったと発表されています。同じくヨーロッパで行なわれたほかの研究では、ピアノを習うことでIQ(知能指数)が向上する効果が認められました。これは、片手で弾くピアニカや、両手の動きが異なるヴァイオリンには、まだ認められていない効果だそうです。また、脳科学者の澤口俊之さんは、ピアノを習うことでHQ(人間性知能)が向上し、夢の実現や社会的成功、器用さなどにつながると話しています。さらに澤口さんは、左右の脳のバランスがよくなること、海馬と呼ばれる部分が発達し記憶力がアップすることなど、ピアノが脳にもたらすよい影響を複数述べています。ほかにも、「ピアノは両手を複雑に使い、楽譜を一時的に記憶し、楽譜を先読みする」ことで、脳機能がまんべんなく鍛えられるとしています。地頭がよくなり、スポーツにまで効果を及ぼすそうですよ。一見、勉強とは何の関係もないような習い事ですが、ピアノはこんなにも多くのメリットを脳にもたらすのです。であれば、多くの東大生が習っていたという事実にもうなずけるでしょう。グループレッスンなら協調性も身につくピアノがもたらす影響は、脳に関するものだけではありません。例えば、ピアノに向かい座って演奏することで、落ち着きをもたせる効果があるといわれています。それは、机に向かい集中して勉強することにもつながるかもしれません。また、グループレッスンの場合、生徒どうしでパートを分けて演奏する「アンサンブル」を通して、協調性が身につくといわれています。グループレッスンを行なっているヤマハ音楽教室には、生徒の親から下記のような声が寄せられるそうです。「アンサンブルを経験するうちに、自分ばかりが出過ぎるのではなく、お友達との兼ね合いに気を配れるようになった」「自分が練習しないと友達に迷惑をかけるという意識が芽生えた。皆のために練習しようという気持ちになれるのは、グループレッスンならでは」(引用元:日経デュアル|小学校で差がつくヤマハ音楽教室幼児科の秘密)協調性を身につけることは、学力向上に直接関係するわけではありません。ですが、ライバルと切磋琢磨したり、仲間と勉強や受験に関する情報交換を行なったりするなど、大学合格までのプロセスに役立てられる可能性があると考えられます。このように、ピアノの経験は、勉強する子どもをあらゆる角度から支えてくれるのです。***音楽の能力を高めてくれるだけでなく、勉強にもよい効果をもたらしてくれるピアノ。「習い事をしながら、難関大学を目指したい」「成績を下げることなく、勉強以外に打ち込めることを見つけたい」と考えているお子さんには、ピッタリの習い事かもしれません。ぜひ、候補として検討してみてはいかがでしょうか。(参考)ハッピー・ノート ドットコム|Weekly ゴーゴーリサーチ(第815回分析結果)東洋経済オンライン|東大生にピアノ経験者が圧倒的に多い理由東大新聞オンライン|東大生の65%が習っていた習い事とは?デイリー新潮|なぜ東大合格生の2人に1人は「ピアノレッスン」経験者なのか3つの理由を分析日経デュアル|小学校で差がつくヤマハ音楽教室幼児科の秘密PTNA|今こそ音楽を!第3章 脳科学観点から~澤口俊之先生インタビュー(1)脳科学者はかく稽ふ|【10/09/01】ピアノ稽古の良さ:一般知能gFの向上
2019年02月19日「本選びのプロ」がとっておきの情報を教えてくれる連載『まなびの本棚』第4回です。新しい年を迎えてようやく落ち着いてきたこの時期。しかし一方で、入園や入学の心配や次の学年に上がる準備で緊張感が高まる時期でもあります。そんなときこそ、ぜひ親子で一緒に「読書時間」を楽しみませんか?今のお子さんよりも少し上の年齢を対象にした本を一緒に読んで、ワクワクドキドキの気持ちを味わってみるのもいいですね。今回ご紹介する本も、お子さんが物事を多角的な視点で見るきっかけにつながるものばかりですので、ぜひご参考にしてください。この連載では、日販図書館選書センターで選ばれた本のランキング、そして選書のプロ・コンシェルジュによるコラムをご紹介します。きっとお子さんの本選びのお役に立つはずです。選書センターについて、詳しくはこちらをお読みください→図書館司書や教育関係者が足繁く通う『日販図書館選書センター』って知ってる?人気図書ランキング1位みずとはなんじゃ?かこさとし 作・鈴木まもる 絵小峰書店2位みえるとかみえないとかヨシタケシンスケ/伊藤亜紗アリス館3位またまたねえ、どれがいい?ジョン・バーニンガム 作評論社4位天皇と元号の大研究 日本の歴史と伝統を知ろう(楽しい調べ学習シリーズ)高森 明勅 監修PHP研究所5位失敗図鑑いろは出版 編著いろは出版(※2018年11月26日~12月27日に集計)今回のランキングでは、選書センター2周年期間に選ばれた図書を紹介しています。1位の『みずとはなんじゃ?』は、かこさとしさんが手がけた最後の絵本です。私たちの生活に欠かせない水の不思議な性質を知ることで、科学への関心を高めるきっかけになるかもしれません。2位の『みえるとかみえないとか』は、視覚障害がある人の世界を通して「普通ってなに?」と問いかける絵本。「みんな一緒」で共感して安心することもときには必要ですが、「自分とは少し違う」ことを楽しいと感じる心を育てることも大事ですね。コンシェルコラム"本選びのプロ"選書センターコンシェルジュのおすすめの本先住民族アイヌの歴史や文化がよくわかる!QRコード付きで音声も。アイヌの文化については、小学校の社会(5・6年)や国語(6年)、中学校の社会(1年)、国語(2年)にて学習します。また、週刊ヤングジャンプで連載中の『ゴールデンカムイ』(野田サトル)のアニメの影響もあり、アイヌについての関心が高まっています。小・中学校の学習においては、地理、歴史、人権の切り口から触れる機会が多い話題ですが、類書は少ないのが現状です。先住民族アイヌの文化を正しく知るため、衣・食・住や歴史をイラストや写真でやさしく解説されている本書では、QRコードで楽器の音やアイヌ語の音声を聞くこともできます。ここで本書より、豆知識をご紹介。私たちが日常的に使っている「トナカイ」や「シシャモ」という言葉、実はもともとアイヌ語なんです。このようなことを知ると、アイヌがより身近に感じますよね。『アイヌ もっと知りたい!くらしや歴史』北原 モコットゥナシ/蓑島栄紀 監修岩崎書店
2019年02月19日「みなさんの時代の学校と今の学校は違う。自分たちの時代とはまったく違う国になっていると思ってください」と話すのは、「ダンシング掃除」「勝手に観光大使」などがメディアに取り上げられ、その斬新な授業法がアクティブラーニングの先駆けといわれ、AI時代に負けない教育法といわれている沼田晶弘先生。「子どもにやる気があれば、勝手にがんばって子どもは伸びていきます。それが子どもの自信につながります」と沼田先生は話します。しかしそれを阻害する「大人の都合で貼られてしまうレッテル」についてお話を伺います。【AI時代を生き抜く「自信が持てる子」の育て方】 第1回 子どものやる気を引き出す親、ブレーキをかける親 第2回 子どもの「考える力」を見逃さない方法 ■子どもの前にある「すべての石」を拾うことはできない沼田先生のお話をうかがっているうちに、小学生の娘がいる筆者が思ったことがあります。それは、親として子どもに対して説明し尽くさなければいけないことを曖昧に終わらせて、本来ならば見守らないといけないことを手とり、足とり教えてはいないかということ。沼田先生はこう言葉を寄せます。「僕からすると、今のお母さんとお父さんはがんばりすぎています。自分の子どもが進もうとする道があるとします。そこにいっぱいの石ころが落ちている。子どもがつまずいたり、転んだりすることを心配し、先回りして親御さんは石ころを拾い始める。しかも、そのすべてを。何もないまっさらな道にしようとしているように見えるときがあります」さらにこう続けます。「僕の意見ですけど、石ころを拾いきることは不可能です。それよりは転んだときの受け身の仕方や、起き上がり方を教えてあげたほうがいい。転んだら、こういうリスクがあることを伝えることの方が重要。そこにあるものをないものにしてしまっては、なんの対処もできない人間になってしまうのではないでしょうか」沼田先生は、昔に比べて、親の目が子どもに行き届いていないという指摘に対しても、「むしろ届きすぎている。しかも、そこは届かなくてもいいのではというところに届いている気がします」と話します。■子どもを成長させるのは「失敗」からたしかに思い当たるところがあります。筆者も「上着を1枚余分に着なさい」とか、「マフラーをしていきなさい」と、子どもに任せていいことも、ついつい先んじて注意をしてしまう。子どもの自主性に任せていいところまで口を出してしまっているのかもしれません。沼田先生はこう続けます。「目が届きすぎるということは、子どもの学ぶ機会を奪っていることになりかねないんです。学ぶ機会がなければ、そのことはいつまでたって上達しないし、子どもの成長を妨げることにもなってしまう」たとえば、箸が苦手な子どもにスプーンでばかり食べさせていたら、箸がうまくなるはずがないし、野菜が嫌いな子だからと、ずっと食卓にあげないでいたら、あたり前ですけど食べられなくなると沼田先生はいいます。「たとえば、子どもに洗い物を頼んで、水浸しにされて、怒ったなんて経験がある方もいるのではないでしょうか? でも、任せると自身が決めたなら、怒るのは子どもに理不尽。もし、水浸しにされたくなかったら、子どもに事前にしっかりと洗い方を教える。それができないなら、頼まない。その上で、頼んだなら、黙って途中で口を出したりしない。失敗したら怒るのではなく、何が原因だったか教えてあげればいい。そうでないと、子どもの成長はないと思います。」そんな沼田先生ですが、「日々失敗の連続」だといいます。ある日の給食がポトフだったとき、沼田先生は、忙しくて子どもに配膳を任せてしまったところ、ポトフの鍋がどうなってしまったか…!?ここで大人は「汁だけが大量に残った」と思いがち。しかし実際には、具だけが残ってしまったそうです。「汁だけが大量に残っていたと考えるのは、大人の考え。逆なんです。なぜかというと、子どもたちにとって、ポトフはスープ。スープだと味噌汁ぐらいの具の量でいいと認識して、結果、具だけが残る。これは僕の失敗。説明すべきことを怠ってしまった。だから、子どもを責められないんです」■「トイレに行ってもいいですか?」と聞いてはいけないワケ「目が届きすぎるということは、子どもの学ぶ機会を奪っていることになりかねない」という考えは、授業においても常に頭に入れていることだと沼田先生は言います。「先生が教えすぎることって必ずしも正解ではない。もしかしたら、子どもの学ぶ機会を奪っている可能性がある。教えすぎると、本当はもっと伸ばせた子どもの能力を伸ばせないで終わってしまう可能性がある。だから、僕は常にそうならないように注意を払っています。ついつい口を出したくなる気持ちはわかるのですが、時には黙って見守ることも大切かなと」また沼田先生が重んじるのは自主性。沼田先生のクラスでは「やっていい」とか「やっていいですか?」という言葉が、学期が進むにつれどんどん減っていくそうです。なぜかというと、沼田先生から「自分で考えろ」と言われることが生徒たちはわかっているから。「授業中に『トイレに行ってもいいですか?』と聞かれたら、『尋ねるな、ダメといったらもれちゃうだろう』と。『トイレに行ってきます』でいいと言います。言い切れと教えています。まずは自分で判断させる。そこで間違ったことをしたら教えてあげればいい。先回りして、それはダメとしてしまうのも子どもの学ぶ機会を奪っていること。もっと子どもの自主性を大切にしていいと僕は思っています」■大人の一言が子どもを「いい子」にも「悪い子」にもするまた、子どもの能力を伸ばすために、“うちの子はこんな子”と決めつけるのも注意したいところと沼田先生。ついつい、「うちの子は得意なことがなくて」なんて人前で言ってしまったりすることないでしょうか?沼田先生は「この子はこんな子」と決めつけないでと訴えます。「ボクは教師として、いろんな子どもたちと出会ってきました。明るい子、おとなしい子、勉強が得意な子・苦手な子、スポーツが得な子・苦手な子。「いい子」といわれる子もいれば、「悪い子」といわれる子もいます。でも、本来子どもに良いも悪いもない。大人が大人の都合で、レッテルを貼っているにすぎません」出典: 『家でできる「自信が持てる子」の育て方』 (沼田晶弘(著)/あさ出版)「子どもたちはみんな、まだまだ伸びている最中です。いろんな一面があるのに、大人の都合や常識に照らし合わせ、一部を取り上げて、『この子はこんな子』とするのは、その子なりの事情がまったく考慮されていません。決めつけると、『自分はそうなんだ』と子どもは思ってしまう。そこで成長をやめてしまうかもしれません。」さらにこう続けます。「大人の何気ないひと言が、その子を『いい子』にすることもあれば、『悪い子』にすることもあります。そのことを忘れないでいてください」この言葉はちょっと子を持つ親としては胸にぐさりと刺さるのではないでしょうか。そして沼田先生は最後にこうメッセージを贈ります。「親が子どもに期待することは上限がない。少しでも上を目指してほしいと願う。そして、子どもをけっして見捨てることはありません。なので、悩みは尽きない。たぶん、親御さんたちは子どものことでずっと悩み続けるんです(苦笑)。ですから、力まず、ほどよく距離をとって、その大きな愛をもって、子どもと寄り添ってもらえればと思います。」日々、子どもたちと向き合うお父さん、お母さんにとって、沼田先生の言葉は、何かしらの気づきを与えてくれることでしょう。■今回のお話を伺った沼田晶弘さんのご著書 『家でできる「自信が持てる子」の育て方』 (沼田晶弘/あさ出版 ¥1,400(税込み))「ダンシング掃除」「勝手に観光大使」など、ユニークな授業で各種メディアの話題を集める東京学芸大学附属世田谷小学校教諭 沼田晶弘の最新刊。どうしたら子どもたちの中に自信が芽生えるのか? どうしたら何事にもやる気が起きるのか?そんな子どもの自主性や自立性、自己肯定感、やる気を引き出す方法のヒントになるメソッドが満載の一冊です。沼田晶弘さん国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。学校図書生活科教科書著者。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカへ。インディアナ州立ボールステイト大学大学院で学び、インディアナ州マンシー市名誉市民賞を受賞。スポーツ経営学の修士を修了後、同大学の教職員などを務める。その後、2006年から東京学芸大学附属世田谷小学校に赴任。児童の自主性や自立性を引き出す、ユニークな授業が新聞やテレビに取り上げられ、大きな話題に。その授業はアクティブラーニングの先駆けと言われる。
2019年02月19日子どもの言葉づかいが自分やパートナーとそっくりだと感じたことはありませんか。普段の夫婦間コミュニケーションは、子どもの言動に表れやすく、その家のありのままの姿が透けて見えるといってもいいほどです。家庭でのパパとママのやりとりが子どもの人間関係を形成する力を左右するのであれば、日頃から夫婦間のコミュニケーションの取り方は意識しておきたいもの。子どもが対人関係を上手に築くための良いお手本になるには、どのような言葉の選び方や会話のキャッチボールを心がけるべきかご紹介します。夫婦の会話は、子どもの対人スキルを左右する「○○してって言ったのに、何でやってくれないの!」「どうせ○○できるわけないよ」こんな言葉をお子さんが口にして、ご自身がパートナーに対して話す口調に似ていることにハッとしたことはないでしょうか。おそらく家の中だけでなく、こうした言葉は園や小学校でもお友だちに使っていることでしょう。子どもたちの言葉づかいや話し方は、一番近くにいる家族の影響を大きく受け、対人関係を築くうえでのお手本になります。子どもの目の前でパパとママがお互に責めるような口調や頭ごなしに否定するようなコミュニケーションを日常的に行なっていれば、子どもも自然と同じような形で家族や友だちとコミュニケーションをとるようになります。自分が伝えたいことを相手にきちんと届けたくても、コミュニケーションの方法が適していなければ、相手には正しく伝わりにくくなりますし、もしかすると相手の気分を害して聞く耳をもってくれないこともあり得ます。逆に、相手にきちんと伝わるコミュニケーションの方法を身につけていれば、対人関係においても良い効果が期待できます。そのためにも一度、夫婦間のコミュニケーションの在り方を振り返ってみませんか。子どもの前で積極的に使いたい3つの言葉子どもがより良い対人関係を築けるようなモデルとして、夫婦のコミュニケーションで積極的に取り入れてほしい3つの言葉をご紹介します。【1】主語は「私」一緒にいる時間が長くなればなるほど、「言わなくても伝わるだろう」「これくらいは分かっているだろう」という気持ちから誤解やズレにつながることがあります。そこから「どうして分かってくれないの?」と相手を責める気持ちが生まれやすいのです。この状況を避けるには、「相手に言う言葉の主語をあなた(YOU)から私(I)に変えて言ってみる」方法が良いと、東京女子医科大学附属女性生涯健康センターの小菅二三恵さんはいいます。相手に非があると責めるよりも、「私は心配している、不安に思っている、悲しい」と自分を軸にして思いを伝えるようにすることで、ギスギスしたコミュニケーションになりにくいのです。子どもが同じように「I」を主語にした言い方をするようになれば、お友だちとのおもちゃの取り合いや順番待ちなどのトラブルでも、相手を責めるのではなく、自分の率直な気持ちを伝えられるようになります。【2】感謝の言葉皆さんも実感されたことがあると思いますが、小さなことであっても「ありがとう」や「助かったよ」という感謝の言葉は、コミュニケーションの潤滑油になります。また、謝らなければいけないときにも、感謝の言葉は重宝します。「ごめんね」と言いにくかったり、タイミングを逸したりするとき、「ありがとう、助かったわ」という一言なら自分のプライドも保ちつつ、相手に気持ちを伝えることができます。この感謝の言葉が自然に出るような子どもは、新しい場所でもすぐに仲間を作ることができるでしょう。「ありがとう」と言われたお友だちは嬉しい気持ちになり、その子のことを好意的に受け入れてくれるはずです。【3】誉め言葉褒める言葉も夫婦間のコミュニケーションで積極的に使いたい言葉です。「さすがだね」「すごいね」「いいね」といった言葉は、相手の「認めてほしい」「すごいと思ってほしい」という気持ちを満たします。これは、近年SNSに関連して話題になることの多い「承認欲求」で、誰もがもっている欲求です。たとえば子どもたちが「○○するから、見ていて!」というのも承認欲求のひとつです。そして誉め言葉を受け取った相手は、承認欲求が満たされ「自分は価値ある人間で周りからも認められている」という「自己重要感」を高めます。こうして良い対人関係を築けるようになるのです。このような親のやりとりを見ている子どもは、お友だちに対しても「すごいね」という言葉がスッと出てきます。承認欲求が満たされたお友だちとのコミュニケーションはきっとうまくいくでしょうね。「自己重要感」が良い対人関係を築く「自己重要感」は、自己肯定感にも似ていますが、定義が少し異なるようです。心理カウンセラーである大場慶夫さんは以下のように話しています。人の存在の根底には「自己肯定感」があり、「自己肯定感」の上に「有能感」というものがあり、両者を合わせたものが「自己重要感」であると考えています。「有能感」とは、何かができるとか資格を持っているとか、地位や名誉、立場など、能力がある自分をすごいと感じる感覚です。一方、「自己肯定感」とは、なにかができるとかできないとか関係なく、どんな自分であっても存在すること自体に価値があると感じる感覚です。生きているだけで幸せと思える感覚といっても良いかもしれません。(引用元:解決!アスクミー|自己重要感を理解すれば人間関係は上手くいく!)この自己重要感を構成する「自己肯定感」と「有能感」を伸ばすのが「褒め言葉」で、人は小さなことでも褒められるとうれしいですし、幸せを感じます。それが次第に自分のなかで自信となり、対人関係や学習、仕事にも好影響を与えるようになるのです。自己重要感が高い人は、自分の軸で自信をもっているので、他人と自分はどちらが上か下かと比べることもありませんし、相手の良いところを素直に認めることができます。子どもが将来、良い対人関係を築くための土台となるのが「自己重要感」だといってもいいでしょう。家族で自己重要感を高め合えるような会話をしていれば、子どもの自己肯定感も自己重要感も高まります。そして、お友だちに対しても家族でかわしているような言葉を投げかけてあげることができますよ。子どものお手本にとなるような振る舞いをしたいものですね。***大好きなパパとママが感謝の言葉や誉め言葉をたくさん使っていると、子どもにとってそれが当たり前の光景になります。自己重要感は、何か特別な経験をさせなくても毎日のコミュニケーションで育むことができるので、さっそく取り入れてはいかがでしょうか。(参考)NIKKEI STYLE|「言い方」を少し変えるだけで夫婦関係は改善(日経ヘルス プルミエ)リクナビNEXTジャーナル|夫婦で「ホメ合う」と“スーパーサイヤ人”になれるワケ――山口拓朗の「夫婦円満法」リビング京都|違いを理解し合って、コミュニケーション夫婦の会話術解決!アスクミー|自己重要感を理解すれば人間関係は上手くいく!All About|夫婦仲を良くして子どもの成績を上げる方法Study Hackerこどもまなび☆ラボ|「自己肯定感の高い子どもは学力も高い」は本当?自己肯定感アップに効果的な3つのこと。
2019年02月18日子どもたちがやる気を引き出すためには、「仕掛けて、仕掛けて、さらに仕掛ける」と語るのは、現役の小学校の先生ながら、児童の自主性・自立性を引き出す斬新でユニークな授業が新聞やTVでも取り上げられて話題となっている沼田晶弘先生。沼田先生は、「これからの子どもたちに求められる能力は、『考えを言葉にする力』」といいます。ではどうやって子どもたちに考え、学び、自分の意見が言えるようなきっかけを作れるのでしょうか。【AI時代を生き抜く「自信が持てる子」の育て方】 第1回 子どものやる気を引き出す親、ブレーキをかける親 ■学ぶ楽しさを知るために必要な3つのこと沼田先生は、「子どもは勉強をしないといけないことはわかっている。いかに、楽しく学べるかが重要」と話します。そのための勉強を楽しくする方法とは? 親にもできるアプローチ法を教えてもらいました。まずは、第1回 「子どもの“やる気”を引き出す親、子どもの心を動かせない親」 について触れます。親としては、「やる気にさせることを見つけることこそ大変なんだ」と思うかもしれません。でも、意外と発想の転換をするだけで、変わることもあると沼田先生は言います。「本来学ぶことは楽しいはず。知識が増え、考えが深まって、できないことができることに変わっていく。でもそれを教えてくれる大人がいない。にも拘らず『これをやりなさい』『あれもやりなさい』と言われ、子どもたちにとって勉強は『やらされるもの』になりがちです」。そこで、沼田先生が学ぶ楽しさを知ってもらうために必要な3つのものを教えてもらいました。「一つめは、「課題」。「やってみよう」と提案するとき、必ず「これから何をやるのか」「どうやるのか」をわかりやすく説明します。二つめは、「制限」。「課題」を出すとき、同時に何らかの「制限」をつけるのです。できることが限られると、子どもたちは許された範囲でできる最大限のことは何か、どうすればそれをやれるのかと、ワクワクしながら考えはじめるからです。三つめは、「報酬」。「課題」を達成したあかつきに、子どもたちが手にすることのできる成果やご褒美について、最初にきちんと提示してあげます。出典: 『家でできる「自信が持てる子」の育て方』 (沼田晶弘(著)/あさ出版)沼田先生のクラスではこの「課題」「制限」「報酬」をうまく利用したテストがあります。先の回でも触れた「U2(ユーツー)」。これはUnder 2minutes、つまり制限時間が2分で行う「81ます計算」のことです。この計算テストを行う際に、沼田先生は音楽をかけます。沼田先生とっては、音も子どもたちをやる気にさせる小道具のひとつで、「音」を流すことで子どもたちの気持ちをワクワクさせます。「テスト開始のときも、まずファンファーレが鳴り響く。次にクイーンの『ウィ・ウィル・ロック・ユー』(We Will Rock You)がかかって、これが準備時間。そしてテストがはじまると、F1のテーマソングでおなじみのT-SQUAREの『TRUTH』がかかる。すると、みんなもう一生懸命、集中してテストに挑みます」2分という「制限」があるので、みんなそれを切りたくなる。すると自然と練習にも熱が入るそうです。さらにこのテストで2分を切った子にはシールという「報酬」が与えられます。「1日5枚練習してきたり、休み時間にU2をしたりする子もいる。あるお母さんから『家から帰ってきたら、一目散でU2をやっている』」と連絡が入ったことがありました(笑)。1枚に81問あるわけですから、5枚といえば400問を超える。それは早くなりますよね。記録があがれば誰もがうれしい。だから、みんな知らず知らずのうちに集中して打ち込む。そして、気づけば学力もあがっているというわけです」 ■子どもにも意見はある。その瞬間を見逃さないためにはやる気スイッチは、子どもの中にもあるといいます。沼田先生はこうヒントをくれます。「子どもはアイデアマン。僕がニュースを見て、北方領土のことをやっていたら、子どもたちに『ロシアは何で還してくれないのかな?』と聞いてみます。すると子どもたちも一生懸命考えて、そもそもロシアってどこにあるんだっけと、地図で探し始めたりして、自分なりの意見を言ってくれます。子どもは子どもなりにしか話せないけど、彼らにはちゃんと意見がある。それを僕は受け流さないし、耳をきちんと傾けます。すると子どもたちがどんなところに興味をもって、乗ってくるのかがわかるときがあって、それがアイデアのタネになったりするんです」沼田先生のメソッドとして「勝手に観光大使」というものがあります。これは、子どもたちが自分で担当する都道府県を決めて、その地域の魅力は特色をPRするというもの。沼田先生いわく「担当する地域を自身で決めたということは、この地域について自分は勉強するぞと宣言したことに等しい」とのこと。まず、その地域を知らなければPRのしようがないですから、子どもたちは一生懸命調べることになります。沼田先生はここで終わらせません。次にあらたな課題を与えます。それはパワーポイントでのプレゼン資料作り。すると生徒たちは、「誰よりもかっこいい資料を作りたい」と、みんな、自分で率先して学び、調べ、工夫をして資料作りに邁進(まいしん)していくそうです。最後には、その地域の自治体の関係者にお願いし、実際に子どもたちはみごとにプレゼンをやり遂げます。「調べる」という能力において、人はAIには太刀打ちできません。では、子どもたちにこれから求められる能力は何かと考えたときに、「考察する力」そして「考えを言葉にする力」ではないかと、ボクは思っているからです。出典: 『家でできる「自信が持てる子」の育て方』 (沼田晶弘(著)/あさ出版)みなさんも、子どもと話していて自分でも想像していなかったことに子どもが興味を示したり、くいついてきたりする瞬間があるのではないでしょうか? 沼田先生はそういった子どもの気持ちや興味を絶対に見逃さないとのこと。親もこの瞬間を見逃さずに仕掛けることで、子どものやる気スイッチを入れられるようになるのかもしれません。■親の時代の価値基準で子どもを判断してはいけない沼田先生と話していて、筆者が1番に痛感させられたのは、親の意識改革こそが必要ではないかということです。沼田先生は、親に向けて次のようにお話するそうです。「みなさんの時代の学校と今の学校は違う。教育法も違う。自分たちの時代とはまったく違う国になっていると思ってください」と。「あるお母さんが自分はバスケット部だったから、子どもにもバスケ部に入ってほしいと言ってきたら、『いいですよ』と言います。ただ、今の部活動の在り方は昔とはまったく違う。旧態依然としているところもあれば、すごく進歩的なところもある。一律ではない。学校や指導者によっても大きくかわる。昔のイメージではなく、現状をきちんとみてくださいね」とアドバイスを贈るそう。とかく年齢を重ねると「昔はよかった」と思いがちなところがあります。たとえば、ちまたでは、ゆとり世代は使えないとか、コミュニケーション能力が低いとか言われたりもしています。しかし沼田先生は、今の若い子にもすごいところがいっぱいあると話します。「今の学生に調べものを頼むと、ネットを駆使して必要な情報をパパっと調べてきます。若い企業家は、ものすごいスピードで仕事を処理していく。ただ、若者に苦手なのはアポイントをとること。なぜなら、彼らにはもともとメールやスマホがあって、都合が合えば即決があたり前。でも、上の世代は、アポは2週間前ぐらいから先方に伝えてないと失礼にあたると思っています。だから若者が直前にアポをとったりすると、『若い奴らはなってない』と判断してしまう。でも、それは若い世代は知らないだけで、教えてあげれば済むことなんです」沼田先生は、「自分たちの時代の価値基準で、子どもたちのことを判断しないで」と話します。「これからの子どもたちは、こういう価値観のある時代を生きていくんだということをお父さんもお母さんももっと意識したほうがいいと思います」たしかに世の中の環境は大きく変化しているのに、昔からの固定観念にしばられて、これは絶対にいいこと、これは絶対に悪いことと思い込んでいることってけっこうあるのではないでしょうか? でも、時代も変われば価値も変わる。こう考えることで、子どもを見る目が変わってくるかもしれません。■今回のお話を伺った沼田晶弘さんのご著書 『家でできる「自信が持てる子」の育て方』 (沼田晶弘/あさ出版 ¥1,400(税込み))「ダンシング掃除」「勝手に観光大使」など、ユニークな授業で各種メディアの話題を集める東京学芸大学附属世田谷小学校教諭 沼田晶弘の最新刊。どうしたら子どもたちの中に自信が芽生えるのか? どうしたら何事にもやる気が起きるのか?そんな子どもの自主性や自立性、自己肯定感、やる気を引き出す方法のヒントになるメソッドが満載の一冊です。沼田晶弘さん国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。学校図書生活科教科書著者。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカへ。インディアナ州立ボールステイト大学大学院で学び、インディアナ州マンシー市名誉市民賞を受賞。スポーツ経営学の修士を修了後、同大学の教職員などを務める。その後、2006年から東京学芸大学附属世田谷小学校に赴任。児童の自主性や自立性を引き出す、ユニークな授業が新聞やテレビに取り上げられ、大きな話題に。その授業はアクティブラーニングの先駆けと言われる。
2019年02月18日人間の「やる気」は、2種類あることをご存じですか。ひとつは、達成感や充足感、行動そのものに対する喜びといった自分の内部から生み出される「内発的動機づけ」。もうひとつは、報酬や評価、賞賛といった外部からの刺激により生み出される「外発的動機づけ」です。どうやら、やる気を持続させるためには「内発的動機づけ」が大切なようです。■参照コラム記事はこちら↓子どものやる気をグイっと引き出す、3つの「ご褒美」テクニック
2019年02月17日「AI時代が来て、仕事の半分以上はコンピューターに取って代わられる」などと言われても、親としては子どもにどういったスキルを身に着けさせればいいのかわかりません。そこで、ぬまっち先生の愛称で各メディアでも取り上げられ、話題を集める現役小学校教員の沼田晶弘さんに、現在の教育現場の現状、そしてこれから来るAI時代を踏まえて、親として何ができるのか、お話を聞きました。沼田晶弘(ぬまたあきひろ)さん国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。児童の自主性や自立性を引き出す、ユニークな授業が新聞やテレビに取り上げられ、大きな話題に。その授業はアクティブラーニングの先駆けと言われる。■大人の「注意」は、子どもに届いているのか?子どもがどういった将来を描くのかは未知数。でもまずは子どもに「やってみたい」という気持ちが起きないことには始まりません。しかし、「どうしたら子どもをやる気にさせられるのか?」は、親にとっての永遠の命題ともいえます。この問題に、沼田先生は、「子どもは楽しいことは自然とやりたくなる」といいます。沼田先生の著書 『家でできる「自信が持てる子」の育て方』 を読んで、筆者が思い出されたのは自分の子ども時代。漫画やおもちゃが部屋に散乱していると、当然のごとく、親から“片づけなさい”の声が飛んでくる。しぶしぶ片づけると、今度は“それで整理したことになるのか”となる。そんな大人の言い方が嫌だったのに、いざ自身が小学生となる子の親になってみると、意外と同じ轍を踏んでいたりする。沼田先生はこう言います。「たとえば、みなさん、子どもに“ちゃんと”とか“きちんと”って口癖のように使っていませんか? でも、単に“ちゃんと”と“きちんと”といっても子どもはわからない。それぞれ基準が違うんです」。沼田先生は、たとえば部屋の片づけならば、床に散らばっているものを片づけるのか、それとも棚を片づけるのか、具体的に基準を明確に伝えることを提案します。以前、沼田先生のクラスで、夏場に生徒が扉を開けっ放しにしてクーラーの効果がゼロになったことがあったそうです。「僕としては、なんで“開けたら閉める”の当たり前のことができないんだとなる。そこでまず扉を開けた子どもに聞くと、『後ろに来ていた子がいたから開けたままにした』と。その後ろにいた子に聞くと、『後ろにすぐ来る子がいると思った』という。みんな開けたら閉めないといけないことはわかっている。でも、次の人のためにという意識があったんですね。それで、クラスで合言葉を変えたんです。“開けたら閉める”ではなく、このクラスは“開けなくても閉める”と」これにより翌日から常にピシッと扉が閉まるようになったそうです。「開けたら閉める」では、他人に任せてしまうときがある。そこで、開けたら閉めるのはもちろん、扉が開いていたら気づいた人が閉める。「扉は必ず閉めた状態にする」というルールを徹底したことで子どもは理解したわけです。つまり沼田先生が伝えたいのは、「ルールの共有が大切」ということ。家庭でもそれぞれルールがある。でもそのルールさえ共有できれば、親がカリカリしなくても子どもがすんなり行動してくれることもたくさんあるといいます。「なんでこの子は何度言ってもしっかりできないんだろう?」とついつい考えてしまうけれど、その前に「曖昧な指示だから、子どもがわからないのかも」と考える必要がありそうです。明確な説明がなければ、それにむけてのやる気持ちも高まらない。むしろ、やる気を削ぐ可能性さえある。■子どものやる気は、どうやって引き出すのか?さて、本題の“子どもからどうやってやる気を引き出すのか?”沼田先生が実践しているさまざまなメソッドには、共通点があることに気づきます。それは、どれも子どもが学ぶ楽しみを見つけているものであること。沼田先生は、子どもが楽しく学ぶためならば労を惜しまないといいます。「『勉強は誰がするの?』というと、子どもなんです。だから、僕は『子どもがどうしたら楽しく学ぶことができるか?』にポイントを置いて、工夫をしているだけなんです。ただ、「勉強しなさい」といっても子どもの心は動きません」ささいなことかもしれませんが、ネーミングひとつで変わることもあります。沼田先生の現在のクラスには勉強のやり方にネーミングがついています。たとえば、「N1(エヌワン)」、「U2(ユーツー)」(※)。※●N1(エヌワン):「Notebook for the one」の略で、日記のこと。●U2(ユーツー):Under 2minitus(制限時間2分)で行う「81ます計算」のことそして、漢字テストでは子どもたちが「漢字なので『KG(ケージー)』、『N1』『U2』があるから『KG3』にしよう」と決定したそうです。沼田先生は心の中で、「漢字はKANJIだから“KJ”だと思うけど」と思ったそうですが…。しかし、それに止まらず、先生は「せっかくだから“3”にも意味を持たせよう。3回連続で満点をとったらライセンスをあげよう!」と提案。すると子どもたちはがぜんやる気になって、「KG3(ケージースリー)チャレンジ」が始まったそうです。こんなネーミングだけで、勉強がなんとなくゲームのような楽しいイメージに変わるような気がしないでしょうか?■与えっぱなしでは、子どもの心は動かない沼田先生はこう言います。「僕は小道具を大量に使います(笑)。地声でいえばいいのに、あえてちょっとしたマイクを使ったり。スタンプやシール、ライセンスなどいろいろと作って、子どもたちの目標にする。学ぶことをワクワクするものにしたいんです」「やる気を引き出せるまで、あの手、この手、あっちの手、そっちの手と、あらゆる手を尽くして子どもたちに仕掛けていきます。また、「これは楽しい!」とやる気になってくれたからといって、安心してはいられません。今度は、また違う手を使って、子どもたちのやる気が失われないように工夫します。ときには、他人の手でも、機会の手でも、猫の手でも、子どもたちを飽きさせないためなら、ありとあらゆる手を使います。彼らが夢中になってからも、“その手”も“どの手”も“誰の手”でも利用して、その興味が長続きするようにチャレンジします」出典: 『家でできる「自信が持てる子」の育て方』 (沼田晶弘(著)/あさ出版)そう、つまりは子どもたちに“とにかくやれ”の一点張りで、親は「やる気を引き出す創意工夫」をちゃんとしているのか? そこに「楽しい」を見い出させてあげることができているかということなのです。たとえば、ネットかなにかで評判のいいドリルがあったら、それをとりあえずやりなさいと渡しっぱなしにしてしまいがち。でもドリルなら自分で一度目を通してみて何か子どもが興味をもちそうにアレンジしてみる、何分で解けるか競争してみるといった楽しくなるように提案することが大切です。沼田先生は、子どもに各教科の専用ノート以外に必ず1冊ノートを用意してもらい、必ず毎日提出してもらうそう。このノートに子どもたちが書くのは翌日の時間割から、連絡事項、自分だけの連絡事項(たとえば忘れ物をしたら、それを持ってくるといった伝言)、先生との日記など。そして、このノートはどんな勉強に使ってもいいことにしているそうです。その理由は、子どもが勉強しようと思ったとき、その教科のノートを探す時間の無駄を省けることと、せっかく芽生えた子どものやる気をしぼませないようにしたいという考えから。また、学校の授業以外、自宅でやった学習についてはこのノート1冊にまとめることで、自主勉強の成果をひとつにまとめることができる。こうすることで、子どものがんばった証の蓄積を可視化できるといいます。つまり、子どもも自分がどれだけがんばったかがわかるというわけです。与えっぱなしでは、子どもの心も動かない。そういう意味で、子どものやる気を引き出すか否かは、親の姿勢や工夫次第ということなのかもしれません。■今回のお話を伺った沼田晶弘さんのご著書 『家でできる「自信が持てる子」の育て方』 (沼田晶弘/あさ出版 ¥1,400(税込み))「ダンシング掃除」「勝手に観光大使」など、ユニークな授業で各種メディアの話題を集める東京学芸大学附属世田谷小学校教諭 沼田晶弘の最新刊。どうしたら子どもたちの中に自信が芽生えるのか? どうしたら何事にもやる気が起きるのか?そんな子どもの自主性や自立性、自己肯定感、やる気を引き出す方法のヒントになるメソッドが満載の一冊です。沼田晶弘さん国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。学校図書生活科教科書著者。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカへ。インディアナ州立ボールステイト大学大学院で学び、インディアナ州マンシー市名誉市民賞を受賞。スポーツ経営学の修士を修了後、同大学の教職員などを務める。その後、2006年から東京学芸大学附属世田谷小学校に赴任。児童の自主性や自立性を引き出す、ユニークな授業が新聞やテレビに取り上げられ、大きな話題に。その授業はアクティブラーニングの先駆けと言われる。
2019年02月17日“BENTO”ブームが欧米を中心に巻き起こり、今やその言葉は世界共通語になりつつあります。アメリカのランチボックスといえば、サンドイッチにりんごが定番の簡単なものですが、日本のお弁当は「栄養バランスがよくヘルシー、しかも見た目も綺麗!」と高く評価されています。小さなお弁当箱の中には、作り手の愛情、気遣い、センス、こだわりなどなど、さまざまな “想い” が詰まっています。その様は、まさに “日本の文化・美徳” で、とても日本的です。そんな「学びが詰まったお弁当作りを子どもたちに」とブームを起こした方がいらっしゃいます。子どもたちが自分でお弁当をつくることによって「生きる力」を身につけてもらおうとされたのです。このすばらしい取り組みと、効果についてご紹介します。地方の小学校で始まった「弁当の日」「弁当の日」は、2001年に香川県綾川町立滝宮小学校の校長だった竹下和男氏が始めた取り組みです。その効果が認められ、徐々に広がっていきました。その結果、2018年12月には、全国で「弁当の日」を実施する学校はなんと約2,000校に達するほどに。共同通信社がこの活動を支援しており、関連イベントなども実施されています。竹下氏が「弁当の日」を始めるにあたっては、さまざまな “壁” があったそうです。例えば、刃物や火を扱うことによる安全性の確保、家庭環境の違いによる弊害、授業時間の確保、親の負担など。しかし、何か新しいことを始めるときに問題があるのは当たり前。それを凌ぐメリットがあるのならばやるしかない。「案ずるより産むが易し」と決断、スタートを切られたのです。■滝宮小学校「弁当の日」ルール1. 弁当をつくるのは子ども。保護者は手伝わない。2. 「弁当の日」の対象は5・6年生のみ。3. 献立、食材の購入、調理、盛りつけのすべてを子どもたちの手で。4. 実施するのは10月以降の第3金曜日で月1回。年間で5回。※調理に必要な最低限の知識や技能は、1学期をかけて、5・6年生にだけにある家庭科の授業で指導する。この取り組みが広がった現在、「弁当の日」は学校により独自のルールで実施されています。福岡県福岡市立愛宕小学校の稲益義宏先生は、「弁当の日」導入に際して生じるいくつかの難題を、独自ルールによって解決しました。まず、「弁当の日」は遠足などの行事のときのみ。これで授業時間を割かずに済みます。そして、活動を以下の4コースに分けました。①完璧コース:自分だけで作る。買い物とご飯は、家族の協力もOK②親子で弁当コース:親と一緒に作る③おにぎりコース:おにぎりをむすんで、弁当におかずを詰める④エンターテイメントコース:作ってもらった弁当を全部食べ、派手に感謝の言葉を伝える(引用元:ひろがれ!“弁当の日”連載第7回|子どもらをその気にさせたコース別の「イナマス方式」)ハードルを下げたこのルールは「イナマス式」として広がりを見せ、その後福岡では、原点の香川を凌ぐほど「弁当の日」を実施する学校が増えることになったそうです。「弁当の日」という食育による5つの気づき「弁当の日」で最も大切なのは、子どもが自分のお弁当づくりに参加すること。そこには竹下氏の強い思いが込められています。子どもの生活は「まなび」「あそび」「くらし」の大きく3つの時間で占められています。「まなび」は学校、「あそび」は地域、「くらし」は家庭で主に営まれます。核家族化し、家族皆が忙しい現代では、「くらし」の質と時間が低下してきており、竹下氏はそれを危惧していました。この「くらし」の部分を補う活動が「弁当の日」なのです。そこには5つの大切な気づきがありました。【1】知識や理解力が身につく自分で買い出しすることで食材に詳しくなります。食べ物の種類、栄養価、味覚など、「弁当の日」実施1年後には明らかな知識向上が見られたそうです。また、買物することは、物価に対する経済的関心や、「なぜ中国産の野菜が多いのだろう?」などの社会的関心も呼び起こします。そして興味の広がりは知識を深めることにも繋がります。【2】感謝の気持ちが芽生える自分でつくることで “弁当の向こう側” が見えてきます。ある生徒は気づきます。お弁当に入っている鮭やお米は自分でつくったものではないことに――。お弁当のおかずになるまでに携わった人々の存在に気づき、感謝の心が生まれるのです。また、ある生徒は「準備や早起きしてつくるのは大変。もうつくりたくない!」と思って気づきます。「お母さんは毎日こんなに大変なんだ……」。自分でつくったからこそ、いつもつくってくれる人への感謝の気持ちが芽生え、その気づきは心の奥に深く刻まれ、その後の生き方に影響を与えるでしょう。【3】好き嫌いを克服食べ物の好き嫌いには脳の扁桃体が作用しています。扁桃体は生死に関わるリスクを判断する機能を司っていて、身を守るべく “扁桃体がNOをだす食べ物=嫌いな食べ物” となります。しかし、その脳の判断は「自分で調理すること」で変えることができます。自分が調理したものほど安全なものはないからです。実際に、椎茸嫌いの子が自分で初めてつくった椎茸ご飯をおいしく感じることができたという例など、好き嫌い克服に料理が一役買えそうです。【4】家族団欒を促す子どもがお弁当づくりに取り組むとき、家族の協力が必要です。「弁当づくり」そのものは手伝わないとしても、メニューを相談したり、自分の手づくり弁当の感想や反省、お友だちのお弁当はどうだったのかなど、会話が増えます。さらに「家族皆で美味しいものを食べることは楽しい!」という気づきにつながれば大成功ですね。【5】「食べることは生きることそのもの」と気づく人はもちろん食べなければ生きていけません。これは「体の空腹感」を満たす行為です。しかし、もうひとつ、食べることで満たせるもの、それが「心の空腹感」です。そして「心の空腹感」を満たせるものは親が手間をかけた食事――。例えばこんな例があります。忙しいお母さんが買ってきたお惣菜をお弁当としてそのまま持たせようとしたら、子どもは拒否しました。そこで、お弁当箱に詰めなおしてあげたところ、その子は大喜びでそのお弁当を持っていったそうです。ちょっとしたことで、食事に愛情は込められるのですね。「食べること」で心と体の両方が満たされてこそ人は生きていけることに、今こそ気づく必要があるのでしょう。***「弁当の日」に対する懸念もいろいろあったなかでの竹下氏の実感は、「子どもたちはやらせればできる」ということ。周りの保護者や教職員の方が大変だったのは想像に難くないですが、そのことで大人も成長したのだそうです。竹下氏は、教育界最大のテーマ「生きる力」が子どもたちに足りない原因は、“やらせるべきことをやらせていない” ことにあるともおっしゃっています。同氏の著書の中で何よりも印象的なのは、写真に写る子どもたちの生き生きとした笑顔です。「弁当の日」は登校一番にそれぞれのお弁当を見せ合い、興味津々だったそう。食べることは皆大好き。そこから学べることは、人としての根っこになる最強の体験学習であることは間違いありません。子どもの調理体験、家庭でもぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。最後に、竹下氏が卒業生に送った感動的な言葉をご紹介します。食事を作ることの大変さがわかり、家族をありがたく思った人は、優しい人です。一粒の米、一個の白菜、一本の大根中にも「命」を感じた人は、思いやりのある人です。食材が弁当箱に納まるまでの道のりに、たくさんの働く人を思い描けた人は、創造力のある人です。自分の弁当を「おいしい」と感じ「うれしい」と思った人は、幸せな人生が送れる人です。「弁当の日」で仲間が増えた人、友だちを見直した人は、人と共に生きていける人です。「いただきます」「ごちそうさま」が言えた人は、感謝の気持ちを忘れない人です。(引用元:竹下和男著(2003), 『シリーズ 子どもの時間3 “弁当の日“がやってきた』, 自然食通信社.)(参考)All About|子どもの力を引き出す「弁当の日」NIKKEI STYLE|暮らしの知恵「弁当の日」、子供が手作り生きる力を発見共同通信社|弁当の日応援プロジェクト竹下和男著(2012), 『世の中への扉 弁当作りで身につく力』, 講談社.竹下和男著(2003), 『シリーズ 子どもの時間3 “弁当の日“がやってきた』, 自然食通信社.竹下和男著(2006), 『シリーズ 子どもの時間4 台所に立つ子どもたち』, 自然食通信社.ひろがれ!“弁当の日”連載第7回|子どもらをその気にさせたコース別の「イナマス方式」
2019年02月16日小学校に入学してすぐの頃は、学習内容を先取りしている子のほうが「賢い」と思われがちです。ですが、高学年になって学習の難易度が上がってきたとき、実際に伸びるのは「自ら机に向かう」ことができる子だそう。机に向かって勉強する習慣がついている子は、机の上の教材に関心をもち、課題が終わるまで取り組む集中力が養われます。すると勉強がどんどん理解できるようになり、さらに勉強が好きになるという相乗効果を生むのだとか。幼少期から生活の中に「机に向かう時間」をつくる机に向かう習慣づけをするには、やはり幼いうちから親が土台づくりをしてあげるのがいいようです。『最強の働き方』の著者であるムーギー・キム氏との共著に『一流の育て方 ビジネスでも勉強でもズバ抜けて活躍できる子を育てる』がある、ファミリー・コラムニストのミセス・パンプキン氏は、「勉強嫌いな子でも幼少期に学習習慣を身につけてやることは、どの時期よりもたやすい」と言います。歯を磨くのと同じように、机に向かう時間を生活リズムに組み入れることができれば、「その後は放っておいても、その学習習慣が子どもを導いてくれる」とも。また、灘中学校・灘高等学校校長の和田孫博先生が推薦する『どこまでも伸びていく子どもに育てる』の中でも、「学習の習慣化」について以下のような記述があります。生活のリズムにも気を配り、できるだけ無理のない形で机につけるようにする。そうすることで、机に向かうことへの気持ちの抵抗を小さくできます。また、机についたときに、スッと課題に向かえます。(引用元:鶴田秀樹・坂元京子(2008) ,『どこまでも伸びていく子どもに育てる』,実務教育出版.)では、その習慣をどのように身につけさせてあげればよいのでしょう。この本の著者であり、京大医学部、京大法学部、東大理科一類に進学した3人兄弟を育て上げた坂元京子さんは、子どもが幼稚園年中の頃、週に1時間、同じ曜日の同じ時間に机の前に座ることから始めたそう。またミセス・パンプキン氏は、息子たちが小学生の頃はいくら言っても自分だけでは勉強しなかったので、夕食前の1時間を母子一緒に勉強する時間と決めて、その時間はどんな都合が生じようとも勉強時間にしたのだとか。集中できる環境づくりと机に向かう習慣づけのポイントとはいえ、机や床の上におもちゃが転がっていたり、目の前に賑やかなテレビ番組が写っているような状態では、大人でも集中することができません。「家庭教師のトライ」を全国展開する(株)トライグループ取締役の森山真有さんは、勉強する場所について次のように話しています。とにかく「マンガやゲームは勉強机以外の場所で」と徹底することです。勉強をはじめるときのパターンを決めることが、学習習慣を身につけさせます。ゲーム機やテレビなど、勉強の集中を妨げるものは部屋から出してしまいましょう。(引用元:森山真有(2007) ,『伸びる子の法則自ら学ぶ習慣が身につく学習法』,PHP研究所.)そこで、勉強に集中できる環境をつくり、子ども自身に負担を感じさせずに机に向かう習慣をつけてもらうためのポイントをまとめてみました。1. できれば小学校入学前から準備を小学生になるとほぼ毎日宿題が出るので、家庭でも1日1回机に向かう力が求められてきます、しかし、幼稚園や保育園では遊んでばかりだった子に、いきなり毎日机に向かうように促しても無理があるため、入学前から習慣づけを心がけるとよりスムーズに。小学校で授業を受ける練習にもなります。2. 机と椅子は子どもと選ぶ子ども自身に「机でやりたい!」と思ってもらうには、その場所を気に入ってもらうことも大切。机とイスは大人が選んで買い与えるのではなく、できれば親子で一緒に選ぶようにしましょう。「自分だけの特等席」という意識が芽生え、ワクワクした気持ちで自ら机に向かうようになるはずです。3. 生活パターンに無理なく組み込む先述の坂元京子さんやミセス・パンプキン氏の例のように、子どもに合ったペースを見つけ、時間を決めて取り組むことが大切です。できる限り、後回しにしたりパスしたりすることなく、決めた時間には机に向かうにしましょう。4. 机に向かう時間は数分からでOK習慣づけのための取り組みを始めるのが小学校入学前〜低学年ならば、内容はいかにも勉強らしいものでなくてもOK。幼稚園生なら、簡単な線や丸などをなぞる程度のことを2~3分間取り組むことから始め、少しずつ時間や内容を増やしていくのがオススメです。5. 整理整頓も大切に机の周りのお片づけも大切なトレーニング。いつもキレイにしておくことで毎日気持ちよく机に向かえるほか、余計なものが目に入らないことで集中力もより高まります。また、算数で図形問題を理解する際に必要な「空間認識力」も養われるそう。いちばんのお手本は「親が学んでいる姿」子どもは身近な存在をまねて育つもの。いくら子どもに机に向かうことを勧めても、親がテレビを見ながらダラダラしていたり、スマホゲームに夢中になっているようでは、子どもだって納得がいきません。わが子が自ら机に向かう習慣づくりのために、親が真っ先に行うべきは、親の側が自ら机(リビングテーブルなど)に向かう習慣、すなわち学んでいる姿勢を見せることです。学ぶことがたまらなく楽しい状態、学習を「楽習」と捉えることです。親が、その姿勢を背中で示しましょう。(引用元:PRESIDENT Online|自ら机に向かう子の親が欠かさない習慣)このように、親の背中をしっかりと見せることが大切なようです。また、子どもが机に向かっていれば問題なし、というわけではありません。宿題やワークをこなすことばかりにとらわれて、内容をきちんと理解せずに突き進んでしまっては、せっかくの勉強時間も有益ではありません。宿題の丸つけの際は、「どこにつまずいているのか」をチェックしたり、「学んだ内容を理解しているのかどうか」をさりげなく質問したりといった対応が大切です。***親が学ぶ姿を見せることで、子どもの学習習慣が身につくのなら、まさにウィン・ウィン。親の学びは、なにも勉学だけでなく、キャリアアップや趣味や、家庭経済のことなどでもよいのです。与えて導くだけではなく、親である自分自身も成長を望んでいければ、きっと子どももいい影響を受けてくれるはず。机に向かって学ぶ楽しさを、親子間で共有できるといいですね。文/酒井絢子(参考)PRESIDENT Online|自ら机に向かう子の親が欠かさない習慣All About|子供の勉強習慣いつからどうやって始めるべきか?ベネッセ教育情報サイト|1年生からの勉強はどうする? 家庭で机に向かう習慣を身につけるためのポイント森山真有(2007) ,『伸びる子の法則自ら学ぶ習慣が身につく学習法』,PHP研究所.見尾三保子 (2002) ,『お母さんは勉強を教えないで』,草思社.鶴田秀樹・坂元京子(2008) ,『どこまでも伸びていく子どもに育てる』,実務教育出版.ムーギー・キム、ミセス・パンプキン(2016) ,『一流の育て方–ビジネスでも勉強でもズバ抜けて活躍できる子を育てる』,ダイヤモンド社.
2019年02月14日「いつも元気で、あまり風邪を引かない」「集中力、やる気がある」「好奇心が旺盛」「落ち着きがある」これらは、まさに “心身ともに健康な子ども” の特長です。そんな子どもにするための大きなカギが「腸」にあるのをご存じですか?子どもの「腸内環境」が、体はもちろん、心にも大きな影響を与えるのです。その理由と、子どもの腸内環境を整える効果的な食事法についてご紹介しましょう。緊張するとお腹が痛くなるのはなぜ?人間の体の中でも、腸は「第二の脳」とも呼ばれ、その役割の大きさ・重要性が指摘されているのはご存じの方も多いでしょう。アトピーや花粉症などのアレルギー性疾患や、メタボリックシンドロームなどの発症に、腸内細菌が関係していることもわかってきています。また、最近では、腸内環境を整えることを「腸活」と呼んだりして、ちょっとしたブームにもなっていますよね。腸の役割は、食べたものを消化し、栄養分や水分を吸収して便をつくることですが、実はそれだけではないのです。腸内細菌学・微生物分類学が専門で、理化学研究所特別招聘研究員・農学博士の辨野義己先生は、腸は「脳」ともつながっていて、感情や頭の働きを変化させることが明らかになってきたと言います。例えば、「意欲」や「集中力」に関係する神経伝達物質のドーパミン。多く作られすぎると精神疾患の引き金になるといわれていますが、腸内細菌は、このドーパミンの産生を抑制する働きを持ち、血流を介してドーパミンの量のバランスをとっているのだそう。また、「感情や気分のコントロール」や「精神の安定」に深く関わっているセロトニンにも腸内細菌が関わっています。これが不足すると、脳の機能の低下が見られたり、心のバランスを保つことが難しくなったりするのだそう。子どもにとっても大人にとっても、重要な神経伝達物質と言えるでしょう。まさか腸内細菌が、意欲や集中力などに関係する神経伝達物質の量を調整したり、精神安定の一助になっているなんて、ちょっと驚きですよね。でも皆さん、仕事やプライベートで極度のストレスを感じたときに、なぜかお腹が痛くなった経験はありませんか?この “脳と腸がお互いに情報を伝えあっている状態” は「脳腸相関」と呼ばれ、いま多くの研究が進められています。どうやら、心身ともに健康な状態を保つためには、腸内環境を整えることが重要なようです。小学生の3人に1人が便秘&便秘予備軍となると、自分の子どもの腸内環境はどうなっているのだろう、と疑問が湧いてきますよね。ここで興味深いデータをご紹介しましょう。NPO法人日本トイレ研究所の調査(2017年)によれば、小学生の3人に1人は便秘状態・便秘予備軍であることが判明しました。さらに、便秘の小学生のうち約半数が便秘を誰にも相談をしたことがないという結果も。毎日もしくは2日に一度でもスッキリ快便な場合はひとまず安心ですが、便秘の場合は心配です。便秘=「腸が健康ではない」ことの証だからです。便秘の子どもが増えている背景には、「野菜嫌いで肉食の子が増えたこと」と辨野先生は指摘します。肉類中心の食生活は、腸内の悪玉菌を増やしてしまうのです。周知の通り、悪玉菌は有害物質を作って体に悪影響を及ぼす菌。腸には200兆個(計1~1.5㎏)の細菌が生息していますが、理想の割合は、善玉:悪玉:日和見(未知の菌)=2:1:7と言われています。悪玉菌が増えると、便秘になり、便秘になるとますます悪玉菌が増えるという悪循環にも陥ってしまいます。さらに辨野先生は子どもの便秘の要因として、「夜型生活で朝に排便の時間をとりにくい」「運動量が減っている」ことも挙げています。子どもが便の話をすると「汚いからやめなさい」と言ってしまいがちですが、便はもともと体の中にあったもの。腸内環境を推測する大切なツールとして積極的に便の話をできる関係を保つことが、子どもはもちろん、家族の腸内環境を把握するのに役立つでしょう。便秘の子どものいい食べ物、食事とは?子どもが便秘の場合、食事にどう気をつけたらよいでしょうか。30年間で4万人の大腸内視鏡検査を実施した腸のエキスパートである、松生クリニック院長の松生恒夫先生によれば、以下の食べ物が効果的とのこと。■食物繊維が白米の25倍含まれるというもち麦■納豆や味噌などの発酵食品■オリゴ糖が多いキウイなどの果物■海藻やきのこ類■オリーブ油そのほかの改善法としては、「朝起きたら、お水かお茶を一杯飲む」「夕食から寝るまでの時間をなるべく空ける」「毎日湯船につかる」なども挙げています。「うちの子、便秘かも?」と思ったら、ぜひ実践してみましょう!子どもの腸はまだまだ未熟!子どもの腸内環境を整えるうえで、もうひとつ頭に入れておいてほしいことがあります。それは「食事」です。アレルギーや免疫学などを医療に導入し、自身のクリニックで多くの子どもの治療を行ってきた医学博士の西原克也先生は、著書の中で次のように書いています。呼吸や腸、免疫などのシステムが大人の人間と同じように働き出すには6歳くらいまで時間がかかります。さらに、小学生のうちはまだ人間として“駆け出し”の段階であり、腸や免疫の働きが成熟してくる12歳くらいまでは食事や生活習慣などに引き続き注意を払っていかなくてはなりません。(引用元:西原克也(2018),『子どもの腸には毒になる食べ物食べ方』、青春出版社)小学生ともなれば大人と同じような食事をすることが多いと思いますが、子どもの腸はまだまだ未熟だというのです。西原先生は、子どもの腸に良い食べ物、悪い食べ物として以下を挙げています。<子どもの腸に良い食べ物>煮魚、焼き魚、野菜の煮物、温野菜スープ、温めた豆腐、玉ねぎ(加熱したもの)、ゴボウなどの根菜類、トマト、梅干し、ニンニク(加熱したもの)、乾燥シイタケ、シメジ、きくらげなどのキノコ類、40度以上に温めた飲み物<子どもの腸に悪い食べ物>玄米などの雑穀類、カレー・明太子・キムチ・ショウガなどの辛い刺激物、うどん・パン・パスタなどの小麦製品、刺身などの生魚、ユッケなどの生肉、インスタント食品、ファーストフード、アイス・かき氷などの冷たい食べ物、冷たい飲み物特に、日頃から冷たい飲み物を飲む習慣がついてしまっている場合は、気をつけてください。腸の内部の温度が、0.5~1度下がると、消化力や免疫力がガタ落ちの状態になって、悪玉菌も増えてしまうのだとか。ただ、うどん・パン・パスタなどの小麦製品などは学校の給食でも出てくるものですし、アイスやかき氷は子どもの大好物です。外出時やお祝いの席ではお寿司やお刺身を食べることもあるでしょう。これらすべてをいきなりNGにするのは難しいと思います。日々の食生活ではなるべく腸に良い食べ物を増やし、腸に悪い食べ物は食べすぎないように心がけていきましょう。***西原先生のクリニックでは、アトピーや食物アレルギー、潰瘍性大腸炎、発達障害やうつ病、自閉症などの子どもたちに、こうした腸に良い食事法とその他適切なアドバイスをしています。アドバイスを受けた子どもの中には、顔つきがキュッと引き締まり、目が輝くようになり、言葉も性格も快活になって、学校の成績が急に伸びるようになった子もいるそうです。大人もそうですが、子どもにとっても腸内環境を整えておくのはとても大切なこと。子どものうちから健康な腸にして、明るい毎日を送りましょう。文/鈴木里映(参考)AERA with Kids 2018冬号,朝日新聞出版西原克也(2018),『子どもの腸には毒になる食べ物食べ方』、青春出版社日本トイレ研究所|「小学生の排便と生活習慣に関する調査」ハッピー・ノート・ドットコム|子どもの腸活~腸内環境を整える食事~森永|ヨーグルトなんでもQ&A 第10回子どもの腸内育菌には家族のコミュニケーションが大切って本当?「カルピス」由来健康情報室|〝脳腸相関〟とは
2019年02月12日「子どもが話を聞いてくれず、困っている」「他の子に比べて落ち着きがなく、人の話を聞く力が弱い気がする」というのは、子育て中によくある悩みのひとつです。「聞く力」は、他者とのコミュニケーションには欠かせないものであり、学習能力に関わってくる部分でもあります。今回は、子どもの聞く力の必要性や、聞く力を育てるために家庭の中でできるコツについて紹介しましょう。コミュニケーション能力が高い人は「聞く力」がある聞く力は、人間が生きていくうえで欠かせない、さまざまな能力の土台となります。その代表的なものは、コミュニケーション能力でしょう。会話を通したコミュニケーションでは、当然ですが相手の話を聞く場面が出てきます。その際に的確な返しをするためには、相手の話をしっかりと聞いて理解することが前提です。話が理解できていないと、的外れな返答をしてしまったり、会話がスムーズに進まなかったりしてしまいますよね。話が上手な人のことを「コミュニケーション能力が高い」と褒めることがよくありますが、話が上手な人は同時に聞き上手でもあります。相手の話をしっかり「聞いて」いるからこそ、相手に伝わる話ができるのです。また、思いやりの気持ちや共感能力を持てるかどうかにも、聞く力がかかわっています。人の話をじっくり聞くということは、話の背景や前提条件を想像したり、ちょっとした言葉尻や話し方の抑揚から相手の本音に気づいたり、その話を自分の立場に置き換えて考えたりすることにつながるのです。相手の気持ちを的確に汲み取ることができれば、さまざまな人に愛され、信頼されるようになるでしょう。「聞く力」と「学力」は関係している!話をしっかりと聞けるというのは、ただ話に耳を傾けることではありません。話を聞いて、その内容を理解し、自分なりに考えるということです。また、話をしっかり聞くためには、話をしている相手に意識を傾ける必要があります。これは学習するうえでとても大切なことです。聞く力が育っている子は、以下の能力も伸びていくとされています。■思考力・理解力言葉をしっかり聞くことができれば、聞いた分だけ知識を増やすことができます。クラスの中でも先生の話をきちんと聞いている子は、テストの点が高かったり、間違いや勘違いが少なかったりすると思いませんか?聞く力は、学力を伸ばすために非常に重要な条件のひとつなのです。■読む力・書く力集中して人の話を聞ける子どもは、言葉の世界が豊かです。聞いた言葉はいつか必ず、その子のものになります。そして、その言葉は、学校生活が始まったときの「読み言葉」や「書き言葉」の基礎になるのです。読解力は国語だけでなく、算数の問題理解にも役立つはずです。言い方を変えれば、聞く力を養うことで、これらの能力も身につきやすくなり、学習能力の向上が期待できるのです。幼児期の今こそ、家庭で「聞く力」を伸ばそう学習面のみならず、生活面でも役立つ聞く力は、子どもの頃の生活習慣を工夫することで育てることが可能です。そのために、家庭では以下のことを意識しましょう。1.「話すこと」に注目するのをやめる最近の子どもたちは、「人の話を聞けない」「聞かない」傾向があるようです。その理由のひとつは、幼少期の子どもの発達過程で「どれだけ話せるようになったか」が注目されてしまうから。そして、その次の段階では「自分の意見をしっかりと言えるかどうか」に重点が置かれてしまうからです。話す力も大切ですが、その根底には聞く力があります。「しっかりお話を聞けたね!」と子どもを褒めるなど、「聞くこと」も意識してみましょう。2.絵本の読み聞かせをする子どもの教育や発達に良い影響があるといわれている絵本の読み聞かせですが、聞く力を育てるうえでも非常に有効です。子どもが絵本の楽しさを知り、もっと物語の続きを聞きたいと思えるようになれば、集中力もついていきます。そのためには、親も一緒に絵本を楽しむ姿勢を示しましょう。たくさんの言葉を聞くことで「読み言葉」や「書き言葉」の基礎ができるというメリットもお忘れなく。3.「あとで聞くね」の約束は必ず守る忙しいときに子どもに話しかけられて「今は忙しいから、あとで聞くね」と言ったことのある親は多いのではないでしょうか。子どもの話はできる限りその場で聞いてあげるのが望ましいですが、実際にはなかなか難しい場合もあります。そんなときは、「あとで聞くね」という約束を必ず守り、話を聞く時間を作りましょう。自分の話をしっかりと聞いてもらう習慣のある子どもは、人の話を聞くことも大切にするようになります。4.子どもの話を聞く余裕を持つ聞く力を育てるためには、まずは子どもの話を聞くことが基本です。しかし、親もひとりの人間であり、ストレスが溜まっていたり、疲れていたりする場合は子どもの話を聞く余裕がなくなります。そうならないためにも、ストレス解消や休息の機会を十分に設けましょう。家族や祖父母に協力してもらったり、行政や民間のサービスを使ったりするのも良いでしょう。子どもとしっかり向き合うためには、親のコンディションが整っていることが前提です。***聞く力を大切にすることは、子どもが持つさまざまな可能性を広げるきっかけにもなります。吸収力の高い幼児期のうちから積極的に育てていきましょう。文/田口るい(参考)PHPファミリー|幼児期が大切です「聞く力」で伸びる 7つの能力NIKKEI STYLE|絵本の読み聞かせ 子どもの「自己肯定感」を伸ばすベネッセ教育情報サイト|子どもが話を聞かないのはなぜ?原因と可能性をプラスに変える方法とは船津 徹 著(2017),『世界標準の子育て』,ダイヤモンド社.
2019年02月12日学校では学べない力を手に入れることができるという「旅育」。文字通り、「旅を通じて行う教育」ですが、じつは旅そのものだけではなく「旅の後」も重要なのだそう。そう語るのは、旅育の第一人者である旅行ジャーナリストの村田和子さん。「遠足は家に帰るまでが遠足」といわれますが、旅育は家に帰った後も続くようです。その他の、旅育で重要となる考え方や具体的メソッドと併せてアドバイスをしてくれました。構成/岩川悟(slipstream)取材・文/清家茂樹(ESS)写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)旅は時間感覚をつかむ機会にあふれている移動が伴う旅は、子どもが「時間の感覚を学ぶ」にも最適です。そのためにも、まずは「スケジュールを共有する」ことが大切です。幼い子どもと旅行するときに親御さんがいちばん気を遣うのは、電車などでの移動中に子どもが静かにできるかというところでしょう。よくあるパターンとしては、移動中に子どもが「あと何分?どれくらい?」と大きな声で何度も聞いてくるというもの。それに対して「あと少しだから静かにして」なんて言う親御さんもいますが、そもそもなぜ子どもがそうやって聞いてくるのかと考えたことはあるでしょうか?じつは、「不安」が子どものぐずる要因になることが多いのです。スケジュールを知らなければ、いまある状態がいつまで続くのかわからず、大人だって不安になるでしょう?その不安を解消してあげるために、まずはスケジュールを共有してあげてください。「今日はここからここまで行くよ」「時間は何分くらいかかるから、なにをして過ごそうか」と事前に話してあげれば、子どもは安心感を得られ、静かにできることが多いと感じます。同時に、スケジュールを共有することが時間感覚をつかむことにもなります。子どもというのは、どのくらいの時間になにができるかという感覚をまだつかめていないものです。旅にはその感覚をつかむ機会があふれています。たとえば、電車の乗り継ぎに15分かかるとしましょう。「15分あるからなにをしようか」と子どもに考えさせるのです。経験を重ねるうち、「15分だとご飯を食べるのは難しいから、トイレに行って飲み物を買う」というふうに、徐々に時間の感覚をつかんでいくはずです。そして、移動時間を家族のコミュニケーションに使うというのもおすすめです。家族旅行を敬遠する人は、移動中に子どもが騒がないかと心配することが多いようです。でも、よく考えてみてください。家族といっても、親が仕事をして子どもが保育園や学校に通っていれば、全員が一緒に過ごせる時間は朝食や夕食の時間など本当に限られたものです。しかも、子どもが大きくなるにつれその時間はさらに減っていきます。でも、家族旅行での移動時間は必然的に家族が一緒に過ごすことになる。考え方を変えて、移動時間を貴重な家族のコミュニケーションの時間ととらえてはどうでしょうか。子どもにチャンレンジを促す父親の役目そして、旅先では子どもにいろいろなチャレンジをさせてあげてほしいですね。さまざまな体験プログラムなどの他、日常から離れた環境だからこそできるチャレンジも旅にはあふれています。もちろん、チャレンジすることには不安も伴います。それでもチャレンジをしたというその事実が、「次もまたやってみよう!」という積極性を子どもにもたらしてくれます。そういう意味では、お父さんと子どもだけの時間、父子旅行などもおすすめですね。その間、お母さんはひとりの時間を楽しみ、リフレッシュすれば一石二鳥です。共働き家庭が増えているとはいえ、子育ての中心はお母さんが担うことが多いものです。そのためお母さんは、一生懸命さや責任感から「危ないことはやっちゃ駄目!」と保守的になったり、「ちゃんと野菜も食べなさい」と、旅先でも日常と同じように細かいことを子どもに言ったりしがちです。なにを隠そう、わたしにもその傾向がありますしね(笑)。でも、お父さんはワイルドというか、大人になっても冒険好きな部分を持っている方が多いようです。ちょっとくらい危ないことでも「やってみよう!」と子どものチャレンジを促す傾向が強い。子どもにとってまだ難しいことでも、少し背伸びをさせてチャレンジさせるのがお父さんという存在です。それでたとえ失敗したとしても、子どもは必ずなにかを得るはずです。食事も、お父さんと子どもだけなら、「今日1日くらいいいよな」「お母さんには内緒だからな」なんて言って、揚げ物やスパゲティーなど好物だけを食べるということもあるかもしれない(笑)。そんなお父さんと子どもだけの秘密の体験も、子どもにとっては印象深いものになります。それに、仕事が忙しいお父さんが日常のなかで子どもと一緒に過ごせる時間は本当に限られています。お父さんと子どもの絆を深める意味でも、父子旅行はとてもいいと思いますよ。旅の記録を「モノ」として残して成功体験を思い出させる最後に、旅が終わった後についてアドバイスをしておきましょう。子どもは未来を見て生きています。つまり、日々起きたことは脳の奥にしまわれていくのです。でも、せっかくなら、家族旅行の思い出や、旅先での成功体験を日常で思い出し、そのたびに子どもが自己肯定力を高めることにつなげたいものです。そうするために、旅をなんらかのかたちで「モノ」として残してあげましょう。写真もデータのまま保存するのではなく、子どもと見返してプリントしてアルバムにする。あるいは、子ども自身が選んだイチオシの写真を部屋に飾ってみる。写真じゃなくても、旅先でつくった「モノ」を飾るということでもいいでしょう。それらを見れば、子どもは旅の経験、自分が頑張った経験を思い出すのです。わたしの家庭では、旅先から家族それぞれがちょっとずつコメントを書いた絵葉書を自宅に送るようにしていました。息子に「パパとママがけんかした」なんて書かれたこともあります(笑)。写真に残っていないささいなことは意外と忘れてしまうものですが、こうしてコメントがあればしっかり思い出になるのです。しかも、これは子どもの成長記録にもなります。幼いときは大きく拙かった字がだんだん小さくなり、そのうち難しい漢字も交じってくる。思春期になると面倒なのでしょうね。ほんのひとことになったりもする(笑)。写真のアルバムとはまたちがった思い出の残し方なので、ぜひトライしてみてください。『家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ 旅育BOOK』村田和子 著/日本実業出版社(2018)■ 旅行ジャーナリスト・村田和子さん インタビュー一覧第1回:子どもの人生は“旅”で幸せになる。いまの時代こそ親子で旅に出るべき理由第2回:旅先での行動は“親子別々”に。“親の不在”が深める子どもの「自信」第3回:旅の計画には“正解がない”。子どもの「考える力」を育む旅行プランの立て方第4回:忘れてはいけない“旅の記録”。旅先での成功体験を思い出すたび「自己肯定力」が高まる【プロフィール】村田和子(むらた・かずこ)1969年8月29日生まれ、神奈川県出身。旅行ジャーナリスト。2001年、生活情報サイト「All About」運営スタート時に旅行情報のガイドに就任したことを機に執筆活動を開始。モットーは「旅を通じて人・地域・社会が元気になる」。現在は家族旅行を応援する旅行情報サイト「家族deたびいく」を運営しながら、消費者視点での旅の魅力や楽しみ方を年間100以上の媒体で紹介する他、旅行に関する講演、旅行サイトや宿泊施設のコンサルティングもおこなう。得意なテーマは旅育、家族旅行、ひとり旅、記念日旅行、ヘルスツーリズムなど。特に旅によって子どもの生きる力を育む旅育を村田式教育メソッドとして著書等を通じて啓蒙を進めている。一児の母。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年02月11日子どもの心の教育のひとつとして大切なのが、「倫理観を育てる」ことです。倫理観を育てるためには、敏感期と呼ばれる時期の過ごし方が大きく関わっています。今回は、倫理観と敏感期の関係や、倫理観を育てるための具体的な方法についてご紹介しましょう。「自分さえよければいい」という行動倫理観とは、「人として守るべき社会的な秩序や規律に対する考え方」を指します。倫理観が欠如してしまうと、自己中心的な考え方になってしまったり、「自分さえよければいい」と、相手の気持ちや周囲の人々との関係性を全く考えない行動を起こしたりするようになってしまいます。また、善悪の判断がつかなくなってしまうこともあり、最悪の場合は犯罪に走ってしまうことも。昨今、問題視されているSNSに非常識な行動をアップするという行為や、「SNS映え」のために所かまわず写真を撮るといった行為も、倫理観の欠如が関わっているといわれています。そうならないためには、敏感期に倫理観を育てる必要があるのです。子どもの吸収力が非常に高い時期は?敏感期とはモンテッソーリ教育に基づいた考え方で、子どもが母親のお腹の中にいる7ヶ月の胎児期~6歳前後までの間にさまざまな物事に興味を持ち、ある一定のこだわりが強くなる時期を指します。この敏感期は、子どもの吸収力が非常に高い時期なので、親は子どもが興味を持った物事を肯定的に見ることが大切です。・胎児7ヶ月~3歳前後【話し言葉の敏感期】子どもはこの間に聞いた言葉や音をもとにして話し始める・生後6ヶ月〜3歳前後【秩序の敏感期】物の位置や順序などにこだわりを持つ・0~3歳前後【運動機能の発達の敏感期】歩く・座る・持つ・運ぶといった動きの獲得※3~6歳になると今度はそれらの動きよりもさらに高度な運動を獲得するための敏感期が訪れる・4~6歳前後【数の敏感期】数字に対して興味を持つ【文化の敏感期】生き物、地理や歴史に興味を持つイヤイヤ期と考えないで!子どもの倫理観を育てるためには、上記の中でも「秩序の敏感期」が重要となってきます。場所に対して強いこだわりを見せる時期なので、自宅のダイニングテーブルで自分の定位置以外の席に座ることを嫌がる子が多いようです。また自分が座る位置はもちろん、家族がいつもと違う席に座ることにも抵抗を感じます。ほかには、おもちゃの置いてある場所がいつもと変わったというだけで大泣きすることも。このとき、親は単なるワガママやイヤイヤ期だと考えてしまいがちですが、子どもとしては場所が変わったことに対する抵抗の背景に「秩序を守りたい」という意識があるのです。子どもはまだまだ、この世の中がどんなふうに回っているのか、どんな仕組みになっているのかわかりません。そのため、毎日自分が慣れている場所や物事(秩序)を確認します。そして、その通りになっていないと、途端に不安になってしまうのです。逆に、場所や物事が一定だと、安心して生活を送ることができたり、新しいことに挑戦できたりするようになります。ゆえに、場所へのこだわりを認めてあげることは、物事に正しい道すじがあることへの理解や自分の中での基準を作ることにつながり、倫理観を育てるのに非常に有効なのです。子どもの倫理観を育てるには?子どもが場所へのこだわりを見せるようになったら、以下のポイントに注意しながら生活してみてください。「秩序を守りたい」という子どもの気持ちを優先することで、「イヤイヤ!」や「ダメー!」といった行動が改善されるかもしれません。そして、秩序を守ることが、子どもの倫理観を育てることになるでしょう。■何事も一定を保つ自宅のダイニングテーブルの席などはもちろん、洋服や靴を置く場所、おむつを替える場所など、できる範囲で位置・場所を決めておきましょう。子どもにとっての「ここは○○をする場所だ」という秩序を守ってあげることで、倫理観を育てることはもちろん、日々の行動がスムーズになりますよ。「○○はここに片付けようね」と導いてあげれば、子どもが率先して片付けをするように。■変更時には理由を説明する自宅の場合はある程度、子どもの秩序を守った場所を決められるものの、外出先などではそれが難しいこともあるでしょう。そうした場合は「なぜ今日はいつもと違うのか」についてしっかり説明し、子どもの不安を取り除いてあげることが大切です。大人にとっては些細な変化でも、子どもにとってはパニックになってしまうほどの大きな変化だということを理解してくださいね。***場所の敏感期の子どもは、イヤイヤ期と混合されるような行動も多いため、親としてはストレスが溜まったり、イライラしてしまったりすることもあるかもしれません。しかし、場所の敏感期の過ごし方は、子どもの倫理観に大きく影響します。敏感期の仕組みを理解して、倫理観を育てるチャンスを逃さないようにしましょう。文/田口るい(参考)東洋経済オンライン|家でもできる「モンテッソーリ教育」のコツ東洋経済オンライン|超厄介な2~3歳児にイライラしない人の心得日経 xTECH|第12回・価値観力を高めるためにStudy Hackerこどもまなびラボ|モンテッソーリ教育に学べ!子どもの才能が伸びる「敏感期」に親がするべきこと。社会福祉法人 聡香会 きたしば保育園|言語敏感期はいつごろから
2019年02月10日いま注目度を増している「旅育」とは、「旅を通じておこなう子ども教育」のことです。でも、ただ子どもと旅に出ればいいのでしょうか?旅育初心者のため、その第一人者である旅行ジャーナリスト・村田和子さんが具体的なアドバイスをしてくれました。旅育をするにあたってまず重要となるのは「子どもを子ども扱いしない」ことだそう。そして、「体感をもって学ぶ」ことの重要性に子ども自身に気づかせることだとも。構成/岩川悟(slipstream)取材・文/清家茂樹(ESS)写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)「子どもを子ども扱いしない」という姿勢旅育とは「旅を通じておこなう子ども教育」。つまり、旅によって「子どもが大人に向かって成長する」ことが目的です。であれば、まず重要となるのは「子どもを子ども扱いしない」ことではないでしょうか。大人の友人同士で旅行するというときに、行き先を告げないとか相手の希望を聞かないということはあり得ませんよね。でも、家族旅行となると、親はどうしてもそうしてしまいがちです。そこで、子どもを子ども扱いしないために、「旅の計画から子どもと一緒にする」のです。ただ、小学校に上がる前くらいの幼い子どもだと、現実的な旅行プランを出すことは難しいでしょう。それに、せっかく子どもが「あれをしたい」「これをしたい」と言ったのに、現実的に難しいからと却下してしまうと、教育という点から見れば逆効果。自己肯定力を下げることになってしまいます。そこで、夏休みに海に行くのか山に行くのかといった複数の案から選択させるのです。ただ選択するだけですが、それでも子どもにとっては自分が決めた旅になるので、旅に臨むモチベーションがまったくちがってきます。意欲的に旅に出るわけですから、旅がもたらしてくれるさまざまな効果(インタビュー第1回・第2回参照)も格段にアップするというわけです。旅の計画を立てることは頭を使うことだらけもう少し子どもが大きくなったら、計画を立てるときに家族会議をしてください。家族それぞれが行きたい場所を挙げてプレゼンをするのです。どうしてその場所に行きたいのかといった理由を各自が訴え、他の家族はそれをしっかり聞く。すると、子どもは、「パパの案もいいな」と思ったりもします。そして、自分の案とどう折り合いをつければいいのかと考えて答えを導こうとする。こうして、社会に出たときにも重要となるコミュニケーション力や他者理解の力が自然と養われるのです。小学校中学年になれば、旅の計画の一部を思い切って子どもにまかせてみてください。目的地への行き方もひとつではありません。車がいいのか、電車がいいのか、電車でも新幹線を使うほうがいいのかと考えさせてみるのです。旅の計画というのは、本当に頭を使うことが多いものです。宿はどうするのか、観光はどうするのか、さらに予算も絡んでくる。考える要素がたくさんあるうえに、正解もない。それこそ、「正解がない」といわれる時代に必要な「考える力」を育むことになるのです。これにはインターネットの普及が好影響を与えてくれています。インターネットがない時代に、時刻表とにらめっこして予定を組むのは子どもには難しかったことでしょう。しかも、目的地周辺の観光や宿の情報を得る手段も限られていました。でもいまなら検索をすれば複数の経路に宿や観光の情報がすぐに示されます。いまの時代だからこそできるようになった教育だともいえます。身をもって「百聞は一見にしかず」を知るただ、インターネットにはデメリットもある。幼いときからあたりまえのようにインターネットに触れてきたいまの若い世代は、頻繁に旅行をする人とまったくしない人というふうに二極化しています。以前ならなかなか得られなかった情報に触れたからこそ「実際に体験してみたい」と思う人と、「家にいて得られるものになぜ時間やお金をかけるのかわからない」と思う人にわかれているのです。後者には「情報=リアル」という価値観が根底にあるのだと思います。でも、実際に旅先で本物を見ると、思っていたものとちがうということはよくあることですよね。それは、「思っていたよりも良かった」でも「思っていたほど良くなかった」でもいいのです。重要なのは、「情報とリアルはちがう」と体感すること。つまり、身をもって「百聞は一見にしかず」を知ることなのです。わたしの息子が小さいときにはじめて海に行ったときのことです。息子もテレビなどを通じて海も波も知っていて、海が見えてきたときには「わー!海だ!」とはしゃいでいました。ところが、実際にビーチに立ったら、「波が怖い」と言って海に近寄ろうともしなかった。息子はまさに五感で海を体感し、息子なりに海というものを知ったわけです。幼いときから体感をもって学ぶことの大切さを知る。そういう経験があれば、どんな情報化社会になろうとも、本物の重要性を見失うことはないと思うのです。『家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ 旅育BOOK』村田和子 著/日本実業出版社(2018)■ 旅行ジャーナリスト・村田和子さん インタビュー一覧第1回:子どもの人生は“旅”で幸せになる。いまの時代こそ親子で旅に出るべき理由第2回:旅先での行動は“親子別々”に。“親の不在”が深める子どもの「自信」第3回:旅の計画には“正解がない”。子どもの「考える力」を育む旅行プランの立て方第4回:忘れてはいけない“旅の記録”。旅先での成功体験を思い出すたび「自己肯定力」が高まる(※近日公開)【プロフィール】村田和子(むらた・かずこ)1969年8月29日生まれ、神奈川県出身。旅行ジャーナリスト。2001年、生活情報サイト「All About」運営スタート時に旅行情報のガイドに就任したことを機に執筆活動を開始。モットーは「旅を通じて人・地域・社会が元気になる」。現在は家族旅行を応援する旅行情報サイト「家族deたびいく」を運営しながら、消費者視点での旅の魅力や楽しみ方を年間100以上の媒体で紹介する他、旅行に関する講演、旅行サイトや宿泊施設のコンサルティングもおこなう。得意なテーマは旅育、家族旅行、ひとり旅、記念日旅行、ヘルスツーリズムなど。特に旅によって子どもの生きる力を育む旅育を村田式教育メソッドとして著書等を通じて啓蒙を進めている。一児の母。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年02月10日家族旅行の計画を立てる場合、普通であれば「家族みんなで楽しめるもの」にしようとします。ところが、「旅を通じておこなう子ども教育」――「旅育」の第一人者である旅行ジャーナリスト・村田和子さんは、意外な提案をしてくれました。「いつも家族一緒に行動するという考え方を捨てる」というのです。果たして、その真意はどんなものなのでしょうか。まずは、旅育が子どもだけではなく親にもメリットをもたらしてくれるという話からはじめてもらいました。構成/岩川悟(slipstream)取材・文/清家茂樹(ESS)写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)旅先ではいくらでも「褒めポイント」が見つかる「旅を通じておこなう子ども教育」というと、「子どものためのもの」と考えるのが普通です。でも、親子で旅をすることは、じつは親にもいろいろなメリットをもたらしてくれるのです。まずは「褒め上手になれる」こと。子どもの自己肯定力を育むために、「子どもは褒めて育てることが大事だ」といわれますよね。でも、日常生活のなかで子どもを褒めるのはそう簡単なことではありません。子どもが毎日できていることを褒めるには、親にもスキルが必要とされます。日常生活では、きちんとできなかったことのほうが目につくので、どうしても叱ることのほうが多くなってしまいます。でも、旅先では「褒めポイント」がいくらでも見つかります。旅では時間と場所がスケジュールによって区切られていくので、それぞれに小さな目標を立てやすいからです。たとえば電車で1時間の移動をするとしましょう。子どもに「1時間、なにをして過ごそうか」「まわりには寝ている人もいるから静かにできることがいいよね」「じゃ、静かに絵本を読んでみる?」と話しながら一緒に目標を立てるのです。宿に着く前には、「これから宿の人たちがみんなで『いらっしゃいませ』って言ってくれるから、大きな声で『こんにちは』とあいさつをしようか」という具合です。もちろん、目標をきちんと達成できたら、たくさん褒めてあげましょう。子どもの自己肯定力は、親に「あなたはすごい」といくら言われたところで伸びるものではありません。お父さん、お母さんと一緒に立てた目標を達成し、「できた」「うれしい!」と自ら感じる――そういう実体験がなければ、本当の自己肯定力は身につかないのです。旅行中は日常生活とは異なる刺激も多く、親も気持ちに余裕があるので、自己肯定力を育む絶好の機会となります。子どもにとって大事なものは「親が元気であること」それから、「リフレッシュできる」ことも親にとっての大きなメリットだととらえています。そもそも子どもにとっていちばん大切なものはなにかというと、お父さんとお母さんがいつも元気でいてくれることなのです。そういう意味では、旅行では、親御さんもしっかりリフレッシュして、英気を養うことも重要です。忙しい毎日のなか、子どもに対して「本当ならああしてあげたい(でもできない)」という罪悪感から、「家族旅行ぐらいはずっと一緒にいてあげよう」と考える親御さんも多いものです。でも、わたしは親がリフレッシュすることも重要だと考えているので、「いつも家族一緒に行動する」という考え方を捨てることを提案しています。わたしの家族の場合、夫は温泉が好きでわたしは美術館が好き。もちろん子どもに体験させてあげたいこともたくさんある。家族みんなでつねに行動すると、誰かが我慢することになります。そうしないために、数時間であっても家族それぞれが好きなことをやる時間を設けるのです。そうすれば、家族みんなが満足できる旅になる。小さい子どもがいても心配無用です。いまは、短時間の託児サービスや、自然体験やサバイバル体験など子どもが楽しめるキッズプログラムを提供している宿泊施設が増えていますから。それらを利用して、親御さんもなにかひとつくらいは自分が好きなことをやるというわけです。しかも、これは子どもの成長という点でもメリットがあります。子どもが他人に褒められたら謙遜はご法度わたしがそういうプログラムをはじめて利用したのは、息子が4歳のとき。わたしと夫はスキーをして、息子は森を探索するプログラムに参加しました。プログラム終了後、ちょっと心配しながら息子を迎えに行ったのですが、息子は目をきらきらさせて「ママ、動物の足跡を見つけたよ!」と報告してくれたのです。これは、家族みんなで体験したら起こり得ないことでした。なぜなら、子どもが自分の体験をわざわざ説明する必要がありませんからね。親子別々に過ごしたことで、その間に味わった感動を子どもが一生懸命に親に伝えようとする。それこそ、子どものコミュニケーション力を大きく伸ばしてくれます。ひとつ注意しておくとすれば、「親は謙遜してはいけない」ということでしょうか。こういう子ども向けのプログラムを利用したときなど、旅先では他人に子どもが褒められる機会が多いものです。ところが、そういうときに親はつい謙遜してしまいます。大人の社会ではあたりまえの謙遜ですが、子どもが褒められたときに限っては絶対にNGです。これにはわたしの反省も込められています。息子ひとりでそば打ち体験プログラムに参加したときのことでした。終了後、指導してくれた人に「お子さん、本当に頑張っていましたよ」と褒められたのに、わたしは「ご迷惑をおかけしなかったですか」とつい言ってしまった。すると、息子は「僕はひとりで頑張ったのに、ママは全然わかってない!」と激怒したのです。それこそ子どものプライドを傷つけることになり、自己肯定力を高めるどころではなく、深く反省しました。旅先で子どもが褒められたのなら、「ありがとうございます」と素直にただお礼を言って、子どもには「褒めてもらえたね、良かったね」と言ってあげる。そうして子どもの自信とよろこびを深めてあげるようにしましょう。親がいない世界で子どもは素顔を見せるまた、子ども対象のプログラムを利用する際に、親がついて行ったりすることは、わたしはおすすめしません。子どもがよろこぶ顔を見たいとか、写真を撮りたいと同行する親も多いようですが、それなら親子一緒に参加するプログラムを選べばよいのです。子どもだけが対象のプログラムに親が同行することは、先にお伝えしたメリットを失うばかりか、デメリットをもたらします。子どもは、親の前では無意識のうちにどこか自分の役割を感じながら行動していることも多いと感じます。たとえば兄弟なら、上の子どもは無意識に「お兄ちゃんらしく」振る舞おうとして、本来したいことを我慢してしまう。子どもなりにストレスを感じることもあるでしょう。ところが、親がいない、まわりが自分の日常を知らないなかでは、役割から開放されお兄ちゃんも意外にやんちゃな一面を見せたりすることもあります。まさにそれは、その子の素顔ですよね。他にも、参加している子どもたちが、素直な姿で本当に好きなものを見つけられるように、子どもだけの世界に浸って集中できる環境にしてあげることも大切だと思うのです。『家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ 旅育BOOK』村田和子 著/日本実業出版社(2018)■ 旅行ジャーナリスト・村田和子さん インタビュー一覧第1回:子どもの人生は“旅”で幸せになる。いまの時代こそ親子で旅に出るべき理由第2回:旅先での行動は“親子別々”に。“親の不在”が深める子どもの「自信」第3回:旅の計画には“正解がない”。子どもの「考える力」を育む旅行プランの立て方(※近日公開)第4回:忘れてはいけない“旅の記録”。旅先での成功体験を思い出すたび「自己肯定力」が高まる(※近日公開)【プロフィール】村田和子(むらた・かずこ)1969年8月29日生まれ、神奈川県出身。旅行ジャーナリスト。2001年、生活情報サイト「All About」運営スタート時に旅行情報のガイドに就任したことを機に執筆活動を開始。モットーは「旅を通じて人・地域・社会が元気になる」。現在は家族旅行を応援する旅行情報サイト「家族deたびいく」を運営しながら、消費者視点での旅の魅力や楽しみ方を年間100以上の媒体で紹介する他、旅行に関する講演、旅行サイトや宿泊施設のコンサルティングもおこなう。得意なテーマは旅育、家族旅行、ひとり旅、記念日旅行、ヘルスツーリズムなど。特に旅によって子どもの生きる力を育む旅育を村田式教育メソッドとして著書等を通じて啓蒙を進めている。一児の母。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年02月09日「子どもの年齢があがるにつれ、絵本では物足りなくなってきた様子……」「もうすぐ1年生。いつまでも絵本ばかり読ませていていいの?」「小学生になり、あまり本を読まなくなった我が子。もっと本を楽しんでもらいたい!」今回は、親御さんたちのそんなお悩みにおこたえするべく、佼成出版社オススメの幼年童話シリーズをご紹介します。読み聞かせから一人読みへ。絵本から児童文学への移行のコツ本の紹介をさせていただく前に、幼少期のお子さんにとって「幼年童話」がいかに大切であるかをお伝えしたいと思います。子ども向けの本には「絵本」や「児童文学」がありますね。皆さんおなじみの絵本は、ふんだんに描かれた絵と言葉を一緒に楽しむもの。一方の児童文学は、挿絵が入るものの、主として言葉による物語です。実はその中間に、「幼年童話」というものがあるのをご存じでしたか?幼年童話の特徴について、金沢学院大学准教授の米川泉子先生が次のように解説しています。幼年童話は、(中略)大きな文字と絵によって描かれている。絵本と比べると絵よりも言葉に主軸が移っていながらも、児童文学に比べると絵が多く描かれている。また、言葉はひらがなを主体として書かれており、漢字が使われる場合にはルビがふられている。そして、絵は、児童文学のような挿し絵としてではなく、言葉だけでなくストーリーを伝える役割を十分に持っているのが特徴である。(引用元:米川泉子(2013),「絵本と児童文学のはざまにある幼年童話を考える」, 聖霊女子短期大学紀要, 第41号, pp. 81-91.)太字は引用にあたり施したこうした幼年童話のおおよその対象年齢は、就学前の5・6歳から小学校低学年の8歳ごろまで。米川先生によるとこの時期は、絵本を読む楽しみを持ちながらも、主に文字から楽しみを味わう児童文学へと進んでいく時期。この年齢にある子どもは、言葉による秩序の世界に入っていく過程にあるものの、まだ論理的に考える力が備わっていないのだそう。そんな時期に、言葉がメインであり、かつ絵にもストーリーを伝える役割がある幼年童話を読むことで、子どもは言葉を獲得しながら、これまで知らなかった世界へとスムーズに向かうことができるのだそうです。また、『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる!』の著者で、受験のプロとしても知られる松永暢史氏は、幼年童話を読むことの意義を次のように述べています。子どもの頃、物語に挿絵があるとうれしかった記憶はないでしょうか。絵本からいきなり文字だけの世界へ移るのは、子どもにはハードルが高く感じられます。そこでまず、絵本に比べると絵の量は少ないけれど、文章が良く、挿絵に作り手の神経が行き届いているような幼年童話へ進みます。この手の幼年童話であれば、親が読み聞かせることもできる長さです。早い子で小学校入学前から読み始め、小学校中学年くらいまでに最適です。こうした幼年童話の中には、単純な物語に複数の登場人物が出てくるものがあります。こうした本を一人で読み切れるようになると、難関私立中学の国語の入試問題をラクラク解けるくらいの国語力がつきます。(引用元:Googleブックス|『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる!』書籍のプレビュー)太字は引用にあたり施した読み聞かせにも、一人読みの練習にも最適で、国語力アップにも効く幼年童話。ぜひ子どもに読ませてみたいと思いませんか?はじめての幼年童話におすすめ!「おとのさま」シリーズ幼年童話にチャレンジしたいと思ったら、質に定評のある“シリーズもの”から始めてみてはいかがでしょう。そこでご紹介したいのが、「おとのさま」シリーズ。“現代の日本に住むおとのさま”がいろいろな経験をする様子を楽しく描いたこのシリーズは、全部で7作品(2019年2月現在)。保育士やミュージシャンなどユニークな経験をもつ中川ひろたかさん作、お2人のお子さんをお持ちの絵本作家・田中六大さん絵による、人気シリーズです。■シリーズ作品一覧はこちらからご覧いただけます。今回は、この中からおすすめの3作品をご紹介しましょう。『おとのさまのじてんしゃ』ここはお城の天守閣。双眼鏡で街の様子を見ていたおとのさまが、ある日不思議な乗り物を発見しました。「わしは、あれにのりたい」。初めて見る自転車に、おとのさまは興味津々。さっそく街に下りて自転車を買いにいきます。最初は転んでばかりのおとのさまでしたが――。現代の日本に住む、ちょっとおとぼけなおとのさまとお供のさんだゆうとの会話が楽しい、ユーモアたっぷりの幼年童話。「おとのさま」シリーズの第1作です。【編集者コメント】初めてこのお話を読んだとき、おとのさまとさんだゆうとのとぼけた会話に笑いが止まりませんでした。その面白さやそれぞれのキャラクターの魅力を画家の田中六大さんがさらに倍増させて、最高に楽しい1冊にしてくださいました。おとのさまはお城に住んでいますが、時代は現代の日本。だから、街の人たちとはちょっと感覚がずれています。でも、何度転んでもひたむきにがんばる姿や、知らないものにも興味を持って挑戦する姿を見ていると、いつのまにかおとのさまのことが大好きになってしまうのです。『おとのさま、ゆうえんちにいく』お城の近くに、遊園地がオープンしました。さっそくお供のさんだゆうを連れて遊園地に向かうおとのさま。観覧車、ジェットコースター、メリーゴーランドと遊園地を満喫するおとのさまでしたが、最後に入ったおばけ屋敷で……。子どものように楽しむおとのさまと、乗り物が苦手なさんだゆうとの対比がおもしろい、シリーズ第4作目です。【編集者コメント】「おとのさま」シリーズの第4弾。今作では、初めて遊園地を訪れます。尻込みするさんだゆうをよそに、アトラクションを満喫するおとのさま。観覧車では隣のカップルにちょっかいを出したり、相変わらず自由な行動でさんだゆうを困らせます。しかし、臆病なさんだゆうも、おばけ屋敷だけは得意な様子。平気な顔をしてどんどん進んでいくのですが……。初めて遊園地に行ったときの、あのドキドキを思い出すことができる1冊です。最新作!『おとのさま、ほいくしさんになる』作者の中川ひろたかさんは、実は「日本で最初の男性保育士」。保育士としての勤務経験をもとに、保育園の様子をおとのさまの目線で楽しく描いたのが、最新作『おとのさま、ほいくしさんになる』です。ここはお城の天守閣。お城の前をおさんぽする保育園児たちを見て、どうしても保育士をやってみたくなったおとのさまは、近くの保育園で1日保育士体験をすることになりました。やんちゃな子どもたちの前では、さすがにたじたじのおとのさまでしたが、だんだん調子が出てきて……。子どもの心を持ったおとのさまと保育園の子どもたちとの会話が楽しい、シリーズ第7弾です。【編集者コメント】今回はおとのさまが保育士さんになって、子どもたちのお世話をします。元保育士の中川ひろたかさんならではの、実体験を元にしたリアルなエピソードも満載。いつもは自由な行動で周りを困らせるおとのさまが、子どもたちに振りまわされる姿が見ものです。***「こどもまなび☆ラボ」をお読みの皆さんのお子さまたちにピッタリの幼年童話をご紹介しました。はじめての幼年童話は、ぜひ「おとのさま」シリーズから始めてみてはいかがでしょうか。(参考)米川泉子(2013),「絵本と児童文学のはざまにある幼年童話を考える」, 聖霊女子短期大学紀要, 第41号, pp. 81-91.Googleブックス|『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる!』書籍のプレビュー
2019年02月08日先行きが見えないといわれる時代――。ただ単に学校での勉強ができるのではなく、さまざまな力を伸ばしてあげたいと考えている親御さんも多いはずです。そんななか、学校の勉強だけでは学べない力を身につけるために効果的なものとして、「旅を通じておこなう子ども教育」、「旅育」が注目されています。その第一人者である旅行ジャーナリスト・村田和子さんに、旅育とはどんなものなのかを教えてもらいました。構成/岩川悟(slipstream)取材・文/清家茂樹(ESS)写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)旅育の本質は「親子のコミュニケーション」一般的に旅育といった場合、旅先での子ども向けの体験プログラムを指す場合が多いように思います。ただ、わたし個人としては、「旅を通じておこなう親子の関わり方」こそが旅育の本質だと考えています。わたしがひとり息子と一緒に旅をするようになったのは、息子が生後4カ月のときからでした。非日常の世界でとびっきりの笑顔を見せる様子を見て、「どうせならいろいろなところへ一緒に旅したい」と思って、息子が9歳のときまでに47都道府県をすべて踏破しました。ただ、親子での旅をはじめたときから、旅育を意識していたわけではありません。はじめての子育てがとにかく大変で……自分のストレス発散のために旅に出たというだけのことでした。ところが、子どもと一緒に旅をすると、いろいろな発見があった。こうして、旅を通じた教育というものを意識するようになったのです。そしてこの旅育は、いまの時代にこそ必要性を増しているように感じています。教育においてもビジネスにおいても、その重要性が声高に叫ばれているもののひとつが「グローバル化」です。でも、いまの子どもが考える世界というものは、むしろ以前より狭くなっていると感じるのです。子どもにとっての世界は日常の延長でしかない子どもにとっての世界をつくるのは、子どもが出会う大人たちです。いま、日常生活で子どもが出会う大人というと、親、学校や幼稚園の先生、お友だちのお母さんくらいのものでしょう。核家族化が進み、おじいちゃんやおばあちゃんと日常的に接することも少なくなりましたからね。ましてや親は、子どもの安全のために「知らない人と話しちゃいけない」としつけます。一方、わたしが子どもの頃は地域のイベントが頻繁にあって、買い物をするのも近所の商店街。お店のお兄ちゃんやお姉ちゃんのことを好きになったり、あるいは口うるさいおじさんがいたりと、親以外のいろいろな大人に関わり、そういう大人に自分の存在を認めてもらったり、時に叱られることもあたりまえでした。私も母親になってわかりましたが、子どもというのは、自分が住んでいる日常が延々と広がっているものが世界だと思っています。となると、いまの子どもたちが考える世界は、以前と比べて単一的で狭くなっていることは間違いありません。だからこそ、あえて、もっと広い世界やさまざまな価値観を見せてあげる必要があると思うのです。親子で旅に出ると、親も気づいていなかった子どもの良さを褒めてくれる人にも出会います。そうすると、子どもは「自分にはこんないいところがあるんだ」と自信を持ちますし、「そういう見方もあるんだ」と親にとっても勉強になる。そういう「世界の広さ」「多様性」に気づかせるという意味で、子どもたちにはいまこそ旅育が必要だと思うのです。子どもに対する親の究極の願いを旅がかなえるまた、世界の広さや価値観の多様性に気づくことは、子どもが幸せな人生を送ることにもつながります。いま、グローバルな考え方と同様に、これからの子どもたちに必要なものとして挙げられるのが「生きる力」です。新しい学習指導要領では、それを育むために「生きて働く“知識・技能”」「未知の状況にも対応できる“思考力・判断力・表現力等”」「学びを人生や社会に活かそうとする“学びに向かう力・人間性”」の3つを偏りなく育成することが重要だとしています。これらをすべて持ち合わせていれば、確かに素晴らしく理想的な人間です。でも正直なところ、「では親としてどうすればよいか?」と考えると、戸惑うこともあります。そこで、教育現場とは別に、親として「息子にどう生きてほしいのか」とわたしは考えてみたのです。すると、答えはとてもシンプルでふたつに絞れました。ひとつは「自分らしく、豊かで幸せな人生を送ること」。それから「夢や理想を持ち、それに向かって歩むこと」です。親が子どもに願うものは、健康に育ってほしいということは当然として、究極にはこのふたつに行き着くのではないでしょうか。まわりからどんなに幸せに見えても、本人が幸せと感じられなければ、幸せな人生とはいえません。また、現状の幸せに満足してしまうとチャレンジ精神を失うことになりますから、より良い人生を歩むためにも夢を持って進む力も手に入れてほしい。欲をいえばきりがありませんが、これらを子どもが満たしてくれれば親としても大満足だと思いませんか?そして、このふたつを満たすためには、それこそ世界の広さや価値観の多様性を知っておくことが大切です。いろいろな世界や価値観を知ることで、誰かに決められて凝り固まった幸せではなく、子どもそれぞれの幸せや夢、理想というものを見つけていくことができるからです。『家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ 旅育BOOK』村田和子 著/日本実業出版社(2018)■ 旅行ジャーナリスト・村田和子さん インタビュー一覧第1回:子どもの人生は“旅”で幸せになる。いまの時代こそ親子で旅に出るべき理由第2回:旅先での行動は“親子別々”に。“親の不在”が深める子どもの「自信」(※近日公開)第3回:旅の計画には“正解がない”。子どもの「考える力」を育む旅行プランの立て方(※近日公開)第4回:忘れてはいけない“旅の記録”。旅先での成功体験を思い出すたび「自己肯定力」が高まる(※近日公開)【プロフィール】村田和子(むらた・かずこ)1969年8月29日生まれ、神奈川県出身。旅行ジャーナリスト。2001年、生活情報サイト「All About」運営スタート時に旅行情報のガイドに就任したことを機に執筆活動を開始。モットーは「旅を通じて人・地域・社会が元気になる」。現在は家族旅行を応援する旅行情報サイト「家族deたびいく」を運営しながら、消費者視点での旅の魅力や楽しみ方を年間100以上の媒体で紹介する他、旅行に関する講演、旅行サイトや宿泊施設のコンサルティングもおこなう。得意なテーマは旅育、家族旅行、ひとり旅、記念日旅行、ヘルスツーリズムなど。特に旅によって子どもの生きる力を育む旅育を村田式教育メソッドとして著書等を通じて啓蒙を進めている。一児の母。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年02月08日あり子のワーママ奮闘記
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たんこんちは ボロボロゆかい