IDCフロンティア(IDCF)は1月20日、同社のクラウドサービスである「IDCFクラウド」上で、パートナーが自社の製品やサービスを自由に公開し、それらを顧客(ユーザー)が無償で試用できる機会を提供する「エコアライアンス」を開始した。この「エコアライアンス」は、同社が昨年秋に発表したサービス戦略の1つである「データ集積地」の実現のための施策となっている。同社の取締役 兼 カスタマーサービス本部長を務める石田誠司氏は、「"サーバセンター"から"データセンター"にようやくなろうと決心した。これまではお客さまのサーバを預かり、それを運用するという"サーバセンター"であったが、ビッグデータやIoTをはじめとする、データをハンドリングする時代となり、ようやく本当の"データセンター"という定義ができるのではないだろうか。そうしたデータを集める場を、これから皆さまに提供していく」と語った。「エコアライアンス」は、クラウド上にマーケットプレイスを公開し、パートナーを顧客と有機的につなげるという構想。キーワードとして「Land and Expand」が掲げられており、まず1回使ってもらい、納得してもらったら拡大・拡張していくという考え方となっている。「フリーのエリアで、まずは使用感を味わってもらうことから始める」(石田氏)同社は昨年12月にコミュニティテンプレート機能を公開し、これまではIDCFクラウド上に作成したテンプレートをユーザー自身が使うことは可能だったが、同機能によって、ほかのユーザーに公開し、ユーザーはそのテンプレートから仮想マシンを作成することが可能となった。これにより、ユーザーはCMS(Contents Management System)やバックアップ、脆弱性診断や運用監視といった各パートナーによる専門性の高いアプリケーションをクラウド上で自由に試行錯誤して、自社に最適なインフラを構築できるようになった。同社のビジネス開発本部 パートナーセールス部 部長を務める霜鳥宏和氏は、IDCFクラウドを運営していく中で見えてきたという、アライアンスの成功パターンについて、次のように述べた。「1つめは、ユーザーに使ってもらう機会をかぎりなく増やすこと。2つめは、パートナー同士のサービスがつながること。ベンダー各社のサービスだけでは足りないものを、パートナーが補完することによって、付加価値のあるものに進化する。これがクラウド時代のアライアンスの新しいかたちではないだろうか」(霜鳥氏)現在、すでに20社が「エコアライアンス」のパートナーに認定されており、パートナーから公開されているテンプレートの数は5点だという。その中には、イノベーション・ファームが提供する秘密分散技術を活用した「分散PortKey」や、フィックスポイントが提供するシステム運用の自動化基盤「Kompira」などが挙げられた。IDCFでは、今後パートナーを拡大し、今年度中に100社の参加を目標に掲げている。
2016年01月21日ウォッチガード・テクノロジー・ジャパンとアクロニス・ジャパンは1月20日、都内で記者会見を開き、ランサムウェア対策においてアライアンスを締結することを発表した。冒頭にウォッチガード・テクノロジー・ジャパン 社長執行役員の根岸正人氏が2016年のセキュリティ動向予測について「ハッカーが新たな攻撃対象としてランサムウェアを中心に学校、iPhone、IoTを狙うほか、スピアフィッシングからIoT、マルバタイジング(マルウェア+アドバタイジング=悪意のある広告)など新たなセキュリティ脅威対策が必要になる。中でもランサムウェアによる被害が拡大し、これまでWindowsを中心としていたが、AndroidやAppleなど、ほかのプラットフォームでも動作するものが出現していくだろう」と指摘した。ランサムウェアは、PCやサーバを感染させることにより、コンピュータ内のファイルを暗号化し、ファイルの復元と引き換えにランサムウェアの作者が感染したコンピュータの所有者に対して身代金を要求する恐喝型のウイルス。2015年12月頃から日本でも被害が拡大しているランサムウェア「CrypTesla」はファイルを暗号化したうえでファイル拡張子を「.vvv」に変えることから、「vvvウイルス」という呼び名がメディアを通じて広まった。当初は日本での被害は限定的という見方があったが、個人ユーザーや企業ユーザーからの被害報告が日々増加している状況だという。ランサムウェアに感染したPCだけでなく、そのPCが接続しているファイルサーバやNASなどに保存されているファイルにも被害が及ぶなど、実害が深刻化。さらに、感染するプラットフォームもWindows環境から、Android、iOSなどに拡大しており、被害の急激な増加が懸念されている。そのうえでランサムウェアへの対策として「セキュリティソフトの導入、OSおよび利用ソフトウェアを最新状態にする、重要なファイルを定期的にバックアップすることだ。簡単なことではあるが、セキュリティモラルなどを周知徹底したとしても、対策をとらないこともある」と根岸氏は語った。そして、両社がアライアンスに至った背景として同氏は「共通のユーザーでランサムウェアの被害が発生したほか、復旧時間の短縮や新たなセキュリティ脅威対策(ライセンス追加)、中小企業への注意喚起・啓蒙活動などを図り、将来的にはクラウド、モビリティサービスに展開していきたいと考えているため」と述べた。次にアクロニス・ジャパン 代表取締役の大岩憲三氏が同社が強みとするシステム(イメージ)バックアップについて「システムバックアップはOSやシステムの環境、各種設定を含め、ディスク全体のバックアップが可能だ。最近のランサムウェアの攻撃は拡張子の数が300を超えており、システムに影響する拡張子にも影響を与えている。そのため、ファイルバックアップだけでは対応が困難になっており、システムバックアップすることでランサムウェアに対応できる」と説明した。今後、中堅・中小企業を中心に両社のソリューションによるランサムウェアへの効果的な対策と感染時のデータ消失のリスク削減を啓発するほか、データ保護とセキュリティの観点からランサムウェア対策のソリューションを企業に対し、提案していく方針だ。
2016年01月20日故マイケル・ジャクソンによる絵画コレクションが販売されるようだ。ジョセフ・ブラトニー氏が個人的に集めたという100点以上におよぶマイケルの絵画には、ビートルズやダイアナ妃、エイブラハム・リンカーン、チャーリー・チャップリン、バート・シンプソン、ピーター・パン、ミッキー・マウス、スヌーピー、ガーフィールドなどをモデルにした多岐に及ぶ作品が含まれているそうで、マクブラトニー氏はこの絵画による収益を恵まれない子供たちに寄付する意向だそうだ。マクブラトニー氏はニューヨーク・ポスト紙のページ・シックス欄で「これは大きな責任を伴うものです。私はこのコレクションを個人的に集めました」「子供たちを助ける非営利組織を立ち上げたいと思っています」「回復する機会や治療のチャンスを得られない子供や大人たちのためにこの素晴らしい癒やしの作品の数々を利用しない手はないと思います」と語っている。マクブラトニー氏はイーベイでマイケルの記念品の一部を購入したことがきっかけでこれらの絵画を集めるに至ったそうで、あるディーラーによってソニーで働いていた当時に数々のスケッチ画を手に入れたというメキシコ人女性を紹介されたことで、マイケルの絵画を手に入れたそうだ。すべての絵画にはマイケルによる署名が入っており、それが本物であるという鑑定も受けたという。マクブラトニー氏の代理人は「マイケル・ジャクソンがポップの王様であるというほかに才能あるアーテイストであったことは多くの人に知られていません。彼のアート界での指南役はジャクソン・ストロング・アライアンスを監修したブレット・リビングストン・ストロングだったのです」と説明している。またマクブラトニー氏は、この絵画の数々のエキシビションも開きたいと考えているようだ。(C)BANG Media International
2016年01月19日イベリア航空(本社: マドリッド)は現地時間の1月18日、10月19日より週3便運航で成田=マドリード線を開設し、日本とスペインを結ぶ唯一の直行便を運航することを発表した。同線へはエアバスA330-200型機を導入し、ビジネスクラス19席、エコノミークラス269席の全288席の仕様となる。 日本からマドリードへの利用者は、同社の持つスペイン国内29地点のネットワークに加え、欧州、アフリカ、米州の広範なネットワークへの乗り継ぎ便を利用できる。同線の往復運賃は新規路線の開設を記念した7万7,000円~となっており、1月20日より同社ウェブサイトにて購入可能(諸税や空港施設使用料などは別途必要。販売座席数には限りがある)。同社の会長兼CEOであるLuis Gallego氏は、「世界で最も時間に正確な航空会社の1社として、新しい長期路線用キャビンを備えた最新鋭の航空機と共に東京へ戻って来ることを誇りに思います。新路線は日本とスペイン間の経済、文化、観光における両国のつながりを一層強化することでしょう」とコメントしている。同社のハブ空港はマドリード・バラハス空港第4ターミナルであり、日本から同社のフライトにてマドリードへの旅行者は、バルセロナ、ビルバオ、グラナダ、セビリア、サンティアゴ・デ・コンポステーラ、バレンシアといった同社の持つスペイン国内29地点のネットワークに加え、リスボン、パリ、ロンドン、ベルリン、ブリュッセル、フィレンツェ、ハンブルグといった59地点の欧州ネットワーク、そのほかアフリカ、米州への乗り継ぎ便を利用できる。同社は1927年に設立されたスペインを代表する航空会社、および欧州とラテンアメリカを結ぶリーディングキャリヤであり、同区間において70年以上にわたりサービスを提供している。今回の成田=マドリード線開設を皮切りに、アジアへの就航を開始する。過去数年間で新しい長距離専用キャビン、新路線、新機材(A330-200型機13機、A350-900型機16機)を導入。また2015年には、航空会社の運航品質等の調査を行うアメリカのFlightStats(フライトスタッツ)の調査委において、定時到着率欧州1位、定時到着率世界2位を獲得した。子会社であるイベリア・エクスプレスおよびフランチャイズ・パートナーであるイベリア・レヒオナル/エア・ノストラムを合わせると、保有機数は135機に上り、一日に計約600便のフライトを運行している。さらに、同社はワンワールドアライアンスに加盟しており、加盟航空会社の一日の総運航便数は1万4,000便、就航都市は世界150カ国、1,000都市以上に上る。
2016年01月19日●KATANA 02をおさらいプラスワン・マーケティングはWindows 10 Mobile搭載デバイスとして、2015年11月30日に発売したFREETELブランドの「KATANA 01」、2016年1月8日から発売した「KATANA 02」という2つをラインナップしている。現在各社が、Windows 10 Mobile搭載デバイスのリリースを競い合っているため、同社としては"次の一手"が必要となるだろう。その答えを同社が14日に開催した「2016年戦略発表会」でCEOの増田薫氏に聞いた。○メディア初登場の「KATANA 02」「KATANA 02」は、2015年12月25日から先行発売を開始すると同時に、希望価格を2万9,800円から1万9,800円へ改定して、市場に大きなインパクトを与えている。読者のなかには、すでに同端末を使用中という方もおられると思うが、メディア向けに実機をアピールするのは今回の発表会が初めてとなる。本誌では詳しく紹介していなかったので、まずはKATANA 02について簡単に説明しよう。プロセッサーはQualcommのSoC「Snapdragon 210(MSM8909 Quad core 1.1GHz)」を採用している点はKATANA 01と同じ。内蔵メモリーを2GBに、ストレージを16GBとKATANA 01の2倍に増量している。また、ディスプレイサイズは4.5インチから5インチ(1,280×720ピクセル)に拡大し、換装可能なバッテリーも1,700mAhから2,600mAhに変更。Windows 10 Mobileデバイスとして、ミドルレンジモデルとはいい難いものの、エントリーモデルとして見ると"Windows 10 Mobileを試したい"と考えるユーザー層には手が届きやすい。KATANA 02は2枚のmicro SIMカードを挿入できるが、周波数などの問題が遠因で、国内では一方のSIMカードしか使用できない。メリットを享受できるのは海外渡航の際だろう、現地でSIMカードを調達することで、通信費の抑制につながる。海外出張の機会が多いビジネスマンには嬉しい仕様と言えるだろう。KANATA 02上のWindows 10 Mobileを操作すると、残念ながらKATANA 01と同じ"重さ"を感じる。上位SoCを搭載し、より高額な他社製Windows 10 Mobileデバイスと比較すると見劣りする観があるのは否めないが、約2万円という価格設定は十分魅力的である。あちらを立てればこちらが立たずという状況について、プラスワン・マーケティングCEOの増田薫氏と、同社ビジネスアライアンスグループ担当取締役の野村晴彦氏に伺った。●KATANA 03(仮称)の展望○「KATANA 03(仮称)」はContinuum for Phone対応?価格変更について野村氏は「社内で議論もあったが、まずはエコシステムにつながる(Windows 10 Mobileの)『広がり』が大切と考えた」と語る。増田氏も「我々は『デバイスを安く提供したい』という企業理念が根底にある。デバイスが広まればアプリケーションも充実し、(市場が)面白くなる」と、理由を説明した。その背景には開発工数を省くなど多くの企業努力を伴ったが、多くの人に使ってほしいという存意と、「(Windows 10 Mobileデバイスを)発売は未知数な部分も多かったが、SIMフリー市場を担う弊社はチャレンジする義務がある(増田氏)」という姿勢が大きかったという。その結果、KATANA 02の販売結果はどうだったのだろうか。野村氏は「初速はKATANA 01よりもKATANA 02の方が上回っている」と筆者に語った。同社は販売実績などは明らかにしていないが、「KATANA 01購入後にKATANA 02も購入したお客様や、フィーチャーフォンからスマートフォンに乗り換え先として安価なKATANA 01を選択したお客様もおられた」(野村氏)という。当初からコンシューマー以外に法人ユーザーもターゲットに加えていた同社だが、「Windowsを社内で使っている企業が実験的に数台から数十台購入して頂くケースも出てきた。法人向けソリューションも始まっている」と野村氏はビジネスソリューションが始まりつつあることを明かした。今後は日本マイクロソフトなど他社と協力したパッケージメニューの提案なども検討しているという。話を伺う限りKATANA 01/02は順調のようだが、筆者も本誌にたびたび寄稿しているように、Windows 10 Mobile用アプリケーションは決して多いとはいい難い。その点については増田氏も危惧していた。「だからこそデバイスを高く販売しても市場が萎むよりも、安く販売して市場を盛り上げた方がよい。その結果アプリケーションベンダーなどが購入してくれれば、アプリケーションの増加につながるだろう」と語る。また、筆者はODM(Original Design Manufacturing)メーカーから調達したデバイスを、そのままリリースするという流れも問題があると考えている。一部のスマートフォンは、ODMメーカーが開発したラインナップから自社が必要とする機能をチョイスし、自社製品としてリリースしている。その結果、似通ったWindows 10 Mobileデバイスが市場に出回ることになるが、この点について野村氏は次のように語った。「Androidと異なり、Windows 10 Mobile自体がOEMベンダーにとって差別化が難しいOSだ。我々もデバイスの解像度やバッテリーといった点にこだわりつつも、エコシステムを踏まえた他社との連係を重視した、多彩なパッケージ提供を目指したい」という。続けて「例えばカラフルな車よりも白や灰色を配色した車を選択するユーザーが多い。24時間常に身につけるスマートフォンも同じく、気兼ねなく使えるデバイスが大事」と、奇をてらったデバイスよりも、スタンダードなデバイスに存在価値があると語った。気になるのは次期モデルである。増田氏は「KATANA 01/02で終わるつもりは毛頭ない。よいタイミングで次のデバイスをリリースしたい」と説明し、野村氏は具体的な展開を筆者に説明した。「KATANA 01/02はContinuum for Phoneに対応しておらず、エンドユーザーも法人ユーザーも同機能を前提にされるため、市場状況を見据えた投入タイミングが最大の課題と考えている」という。つまりKATANA 03(仮称)は、Continuum for Phone対応デバイスと想定して構わないだろう。野村氏も個人の意見と前置きしながらも「ユーザーの皆さんが『許してくれない』と思っている」と前向きな姿勢を見せていた。ただ、Continuum for Phone対応デバイスは自社でイチから取り組む必要性があるため、開発チームの技術力が大きく反映される部分だ。その点について野村氏は「(中国のODMメーカーが)日本の大手キャリアで販売されるデバイスと比較すると、クオリティ面で競争するのは難しい。中国の某メーカーも大手キャリアのラインナップに加わるまでは、相当な努力をしてきた。その結果、東南アジアやアフリカの市場で存在感を示せるようになった」と過去のODMメーカーの努力を引き合いに出しながら、「提携しているODMメーカーの担当者を日本に招き、各社と協力して技術向上をつなげることで、(Continuum for Phone対応Windows 10 Mobileデバイスを扱う)他社との競争を目指す」と、技術的側面の対応姿勢を説明した。***今回の取材で印象的だったのは、増田氏の「各IT企業で営業責任者を務めてきたが、そこで感じたのが『利益だけを追いかけると、つまらなくなってしまう。製品に対する愛着を持てなくなる』」という発言である。同氏は個人の利益だけを求めるのであれば起業しなかったと説明しつつ、「よいモノを作って世に広める」という企業理念の上でWindows 10 Mobileデバイスにチャレンジする姿勢は、Microsoftが提唱する"One Windows"を実現する強い味方になるように感じた。
2016年01月15日●再挑戦は民間で始まった宇宙に向けて打ち上げられたロケットが、役目を終えた後にまっすぐ地上に帰ってくる。そんなSFでしか見られなかった光景が昨年、米国の宇宙開発企業「ブルー・オリジン」と「スペースX」の手によって、ついに現実のものになった。彼らは飛行機のように飛ばせるロケット、「再使用ロケット」を開発することで、ロケットの打ち上げコストを大きく引き下げることを狙っている。再使用ロケットの構想は古くから存在したが、挫折の連続だった。しかし、近年になり再び熱を帯び始めている。前編では、再使用ロケットの概要の歴史について取り上げた。今回はその現状と将来、そして再使用ロケットによって、本当にロケットの打ち上げコストは下がり、宇宙が身近な場所になるのかについて見ていきたい。○再使用ロケットの再興米航空宇宙局(NASA)や米国防総省、ロシアや英国でさえ一度は諦めた再使用ロケットの復権に向けた動きは、意外なことに民間から始まった。1996年5月、実業家で技術者のピーター・ディアマンディス氏は、個人でも団体でも企業でも、とにかく国のお金を一切使わず3人乗りの宇宙船を造り、高度100kmの宇宙空間に到達することを達成したチームに賞金1000万ドルを与える、「Xプライズ」というコンテストを立ち上げた。そしてこのXプライズではまた、もうひとつの条件として「再使用の宇宙船で、2週間以内に2回の飛行を行うこと」という項目も定められていた。この挑戦には世界中で30近い数のチームが参戦し、最終的に天才的な航空機設計者として知られるバート・ルータン氏が率いる「スケールド・コンポジッツ」が開発した「スペースシップワン」が、2004年9月29日と10月4日にこの条件を達成。賞を勝ち取った。スペースシップワンはサブオービタル機といって、人工衛星を打ち上げることはできず、単に高度100kmを超えて戻ってくることしかできない。それでも再使用ロケットの実現に向けた大きな一歩にはなった。スケールド・コンポジッツをはじめ、このXプライズに参戦したチームのうちのいくつかは現在も活動を続けており、再使用型のサブオービタル機による科学実験や宇宙観光をビジネスにしようとしている。さらに2000年には、Amazon.comの設立者として知られるジェフ・ベゾス氏が「ブルー・オリジン」を、また2002年には電子決済サーヴィスのペイパルを設立したことで知られるイーロン・マスク氏が「スペースX」という宇宙開発企業を立ち上げ、活動を開始した。両社はそれぞれ独自に技術を積み重ね、ブルー・オリジンは2015年11月23日に「ニュー・シェパード」という小型のロケットを打ち上げ、まっすぐ上昇して高度約100kmに達した後、そのまままっすぐ降下し、着陸することに成功。そして同年12月21日にはスペースXが、人工衛星を打ち上げた「ファルコン9」ロケットの第1段機体を、発射台にほど近い陸上に垂直着陸させることに成功する快挙を成し遂げている。ニュー・シェパードのように単に高度100kmまで飛んで帰ってくるだけの飛行と、ファルコン9のように人工衛星を打ち上げるために水平方向の加速が付いた状態のロケットを地上に着陸させるのとでは、技術的に後者のほうが圧倒的に難しい。ブルー・オリジンは技術的にスペースXに抜き返された形となったが、ブルー・オリジンも再使用型の衛星打ち上げロケットの開発を進めており、今後数年のうちに、両社の直接対決が見られることになるだろう。こうした民間発の、再使用ロケットの実現に向けた新たな動きに呼応するかのように、一度は諦めかけた宇宙機関や大企業なども、再び再使用ロケットに挑みつつある。たとえば米国の軍事衛星などを打ち上げる基幹ロケット「アトラスV」や「デルタIV」を運用するユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)は、次期基幹ロケットとなる「ヴァルカン」で、第1段ロケット・エンジンのみの再使用を検討している。同社によると、スペースXのファルコン9のように、第1段機体を丸々回収して再使用するのは無駄が多く、最も高価で複雑な第1段エンジンのみを回収するほうが良いという。ヴァルカンは打ち上げ後、エンジン部分のみを分離する。エンジン部分はパラシュートで降下し、それをヘリコプターで引っ掛けて回収する。一見奇抜にも思えるが、米国はかつて、偵察衛星が撮影した写真のフィルムをカプセルに入れて地球に落とし、それをヘリコプターで引っ掛けて回収するということをやっており、前例がないわけではない。またフランス国立宇宙研究センター(CNES)でも、ロケットの第1段エンジンのみを回収する「アデリン」という計画が始まっている。アデリンはヴァルカンのエンジン回収計画とは少し違い、エンジンと電子機器が収められたロケットの下部が無人の飛行機となり、タンクと分離された後単独で飛行し、地上に着陸する。この他、ESAや英国の民間企業、米空軍や米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)、さらにインドや中国でも研究が進んでおり、そして日本でも再使用観測ロケットの開発に向けて準備が進みつつある状況にある。そう遠くないうちに、ファルコン9やブルー・オリジンの再使用型衛星打ち上げロケットを筆頭に、世界中で再使用型のロケットが見られる日が来るかもしれない。●マスク氏はコストを100分の1にすると豪語○再使用ロケットで本当に宇宙は身近になるのかニュー・シェパードやファルコン9の成功で、ロケットが宇宙に行った後、地球に帰って来られるということは証明された。しかしまだ、本当にロケットを再使用することで打ち上げコストを安くできるのかという課題が残っている。スペースXのマスク氏によれば、ファルコン9の再使用化が軌道に乗れば、打ち上げコストは今の100分の1にまで下がるという。現在の使い捨て型のファルコン9は1機あたり6120万ドル(現在のレートで約72億円)であるため、これが約60万ドル(約7100万円)ほどになるということになる。実現すれば、宇宙ははるかに身近となり、これまで宇宙とは関係のなかった企業も宇宙利用を始め、さらに宇宙旅行や、宇宙ステーションや他の星への移住なども実現するかもしれない。実際マスク氏やスペースXは、有人火星探査や、火星への移住を最大の目的として掲げており、彼らにとって再使用ロケットは目的ではなく、その目標に向けた手段に過ぎない。マスク氏が2013年に語ったところによれば、ロケットのコストのうち、推進剤の費用が占める割合はわずか0.2%、また材料費も多く見積もっても2.0%ほどしかないという。つまりロケットのコストのほとんどは、ロケットを建造するための行為――材料を切り出したり、曲げたり、溶接したり、部品を組み立てたりなど――から発生しているということになる。これを無くすことができれば、ロケットのコストはグッと下げられるということになる。もちろん2回目以降の打ち上げでは、ロケットの建造費の代わりに整備費が新たに掛かってくることになるが、それは建造費を上回るほどのものにはならないという。マスク氏はその例として旅客機を挙げているが、同様の理屈で再使用化に挑み、そして敗れた宇宙機がすでに存在する。スペース・シャトルである。シャトルも飛行機のように運用できるロケットを目指して開発されたが、実際は再使用するために必要なコストが膨れ上がり、当初の目標を達成することはできなかった。ただ、シャトルとファルコン9には大きな違いがいくつもある。たとえば、シャトルは地球周回軌道からオービターが帰ってくるが、ファルコン9は高度80~100kmから第1段機体が帰ってくるだけなので、減速などの制御に必要な推進剤の量や、大気との抵抗で受ける加熱はずっと小さい。またスペースシャトルの固体ロケット・ブースターは、大西洋に着水させて船で回収し、洗浄して推進剤を詰めた上で再度打ち上げられていたが、ファルコン9の第1段機体は陸上の発射台の近く、もしくは整備や補給施設、発射台をも兼ねた海上のプラットフォームに降ろすため、輸送や整備はずっと簡単になる。マスク氏は「スペース・シャトルのコンセプトは間違っていなかったが、要求の変化によって機体が複雑になり、効率的な再使用ができなかった。私たちなら、迅速に再打ち上げができる、完全再使用ロケットは開発できると考えている」と語る。だが、本当にマスク氏の目論み通り事が進むかは、専門家の間でもまだ意見は分かれている。たとえば打ち上げコストを100分の1にするのであれば、同じ機体を少なくとも100回以上は再使用しなければならないことになるが、それだけの回数の飛行に耐えられるロケットを造るのは難しいだろう。もっとも、たとえ50分の1でも、10分の1でも、現在のロケットのコストから考えると、破格の安さになる。昨年末のファルコン9の着陸成功は、ひとまず「衛星打ち上げロケットの第1段を着陸させることは可能」であることを証明した。また、その後マスク氏は「着陸後の機体を検査したところ損傷は見つからず、エンジンの再始動も可能な状態である」と明らかにしている(これは「再打ち上げが可能な状態」と言い換えても良いだろう)。次に彼らは、実際に一度打ち上げに使ったロケットが再び打ち上げに使えること、そして、それによりコストが安くなることを証明しなければならない。マスク氏の計画は正しいのか間違っているのか。あるいは正しいものの、ヴァルカンやアデリンのようなエンジンのみの再使用のほうがより効果的なのか。それとも、現代の技術でもまだ再使用ロケットは成立し得ないのか。これら諸々の結論は、今後数年のうちに出ることになるだろう。そして結論が見えてきたころ、日本や世界のロケットはどういう方向に向かうのか。私たちは今、その分かれ道に立っている。【参考】・Background on Tonight’s Launch | SpaceX・Falcon 9 | SpaceX・Spaceflight Now | Falcon Launch Report | SpaceX achieves controlled landing of Falcon 9 first stage・Liveblogging Tech Renaissance Man Elon Musk at D11 - Liz Gannes - D11 - AllThingsD・SpaceX Grasshopper Makes Record Hop : Discovery News
2016年01月15日●「サムスンの動向は気にしていない」ソニーグループの役員である高木一郎氏は、米ラスベガスで開催された「CES 2016」においてインタビューに答え、「テレビ事業は黒字を維持できる体質が整った。今後も感動を直接届けられる音と映像にフォーカスしていく」などと語った。高木氏は、ソニービジュアルプロダクツ社長およびソニービデオ&サウンドプロダクツ社長も兼務する。○テレビ事業の黒字化達成と今後の方針ソニーはテレビ事業について、黒字化を最優先してきた。高木氏は、「2014年度にテレビ事業は黒字化した。この体質であれば、為替が劇的に変化するといった極端なケースがない限り、黒字を継続できると考えている。テレビ事業の黒字化はコミットしたものであり、この約束は必ず守る。そして、この方針は3年間は変えない」と語った。だが、「2015年は計画を超えた実績であり、その点では100点満点といえるが、目線はもっと高くしていきたい。8000億円規模で黒字が出ているという状況では、目線が低い。そして、1年黒字化しただけである。さらに上を目指していく必要があるが、具体的な経営指標を打ち出すには時期尚早」とし、手綱を締めた。また、「感動をお届けする」というスローガンを掲げ、画質や音質において究極のリアリズムを追求するなど、商品強化にも取り組んできた。高木氏は、「トップシェアの韓国サムスンの動向は気にしていない。出荷台数でソニーは、サムスンの5分の1の規模に留まっており、コンペティションにはならない。我々が重視するのはソニーのポジション。数を追わずに、価値を提供するのがソニーの手法。最もきれいなテレビはブラビアであるといわれる商品づくりをしていきたい」と述べた。ソニーが展開するプレミアム領域においては、米国や中国は75型以上が主力となり、欧州では55~65型、日本は49~55型が中心になる。「日本は大画面化よりも、4K化に関心が集まっている。一方で、インドはプレミアム領域の需要が少ない。地域にあった製品を投入していく」との方針を示した。○有機ELは? 4K HDRは? Android TVは?有機ELテレビについては、「生産設備を持たないという方針を前提とし、ディスプレイデバイスの選択肢のひとつとして考えている。ただし、高画質化や大画面化を進められるメリットがなければ、有機ELは採用しない。今回、Backlight Master Driveという技術を展示したが、これに比べてメリットがあるのか。コストがうまくはまれば、有機ELという可能性もあるだろう」とした。今回のCES 2016では、UHD Allianceによる「UHD Premium」が注目を集めたが、ソニーは同アライアンスに参加していながらも、UHD Premiumのロゴは使用せずに、独自の「4K HDR」ロゴを使用する姿勢をみせている。そして、このロゴは、他社に供給するものではなく、ソニーだけが使用する。この点について高木氏は、「UHD Premiumロゴは、標準化団体によって決定したものであり、リスペクトしている」と前置きしながらも、「ソニーは、顧客に対して、4Kというわかりやすさを訴求してきた。4K HDRロゴは、4KとHDRに対応していることを、ダイレクトに訴求できるものであり、ソニー全体の戦略にあっている。テレビだけをやっているメーカーとは違う」とした。2015年から投入したAndroid TVについては、あくまでも選択肢のひとつとであるとのスタンスを明確にした。「Androidは選択肢のひとつ。Googleと、強力なパートナーシップを組んだというつもりはなく、それは彼らも同じだろう。我々は、Android OSを使い切ることができるかが課題である。テレビ向けに最適化した機能がなければ、我々はAndroidをやらないということも、Googleには言っている」と述べた。●米国ではウォークマンは伸びない○欧米でハイレゾを広げるためには今後、ソニーにとっての大きなテーマがハイレゾオーディオ。日本ではもちろん、海外での普及戦略は大きな課題だ。高木氏は、「ハイレゾオーディオは、3年前に事業をスタートした時点で、欧米市場では、日本以上に時間がかかると考えてきた。昨年8月から、Best Buyの70店舗において、ハイレゾ対応のウォークマンとヘッドホンの店頭展示を強化した。Best Buyも戦略的にハイレゾを取り扱いはじめている」という。また、「日本では、2015年におけるソニーのオーディオ機器の出荷金額の40%がハイレゾ。今年中に50%を超える。米国では10%以下だ。日本において、ハイレゾ比率が高いことは、欧米市場に対して刺激になりはじめている。欧米市場におけるハイレゾ普及には、まだ、2、3年はかかるだろう。だが、あきらめることなく、力を注ぎたい」とした。ハイレゾの広がりにおいて、米国市場で重視するのは、ウォークマンよりもスマホやヘッドホンになるそうだ。「米国では今後も、ウォークマンの販売数が増えることは想定していない。一方で、スマホはハイレゾ対応モデルが普及しはじめている。そうしたなかで、ヘッドホンが重要な鍵になる」と高木氏は考えている。今年春から米国で「h.ear」シリーズの販売を開始するのも、「米国ではワイヤレスヘッドフォンが主流であるため、今回のワイヤレス対応製品の登場を待って、米国市場に初めて投入した」とタイミングを見計らってのことである。一方で、PlayStation VRが注目を集めているなか、今回のCES 2016では、一切展示をしなかった。ソニーの平井一夫社長は、ゲーム関連製品はゲーム関連イベント(E3など)で展開することを示している。高木氏は、「プレイステーションVRは、エンターテインメント分野において、独自の世界を確立する製品になるだろう。没入できる、新たなエンターテイメント空間として広がっていくだろう」と期待を寄せた。
2016年01月14日ソフトバンクは12日、電力サービス「ソフトバンクでんき」を4月1日より提供開始すると発表した。事前申し込み受付は28日から行う。「ソフトバンクでんき」は、電力小売り全面自由化に伴った電力サービス。ブランド名は昨年12月に発表されていたが今回、詳細が明らかになった。プランは、「スタンダード(S/L/X)」、「バリュープラン」、「プレミアムプラン」の3種類で、4月1日より東京電力エリア、中部電力エリア、関西電力エリアのユーザー向けに提供が開始され、順次全国へ拡大していく。利用料金は、ソフトバンクが提供する通信サービスとの合算支払いが可能。東京電力との提携により提供されるプランでは、支払う電力量料金に応じて1,000円につき5ポイントのTポイントが付与される。それぞれのプランの詳細は以下のとおり。スタンダードS/L/X「スタンダードS」はアンペアブレーカ契約で60Aまで使うユーザー向け、「スタンダードL」はユーザー取り付けのブレーカによる契約で6kVA以上のユーザー向けとなる。「スタンダードX」は、スマートメーターによって計測された30分ごとの使用電力量を使って、過去1年の使用実績から基本料金を決定するプランだ。バリュープラン東京電力とのアライアンスによる共同プラン。電力量料金が300kWhまでは定額、超えると割安になる単価設定が特徴。300kWhに満たない場合は、使わなかった電力量に応じてTポイントの付与もしくは、ソフトバンクの携帯電話で使用可能なデータ量での還元が受けられる。還元単位は月の使用量が300kWhより下回った5kWhごと(端数切り捨て、月最大100kWhまで)。付与されるTポイント/データは、50ポイント/0.15GB。プレミアムプラン電力量料金が400kWhまで定額、超えると割安になる単価設定のプラン。使用量の多い大家族などのユーザー向けだとしている。このほか、再生可能エネルギーに由来する電力の使用を希望するユーザー向けに「FITでんきプラン(再生可能エネルギー)」も今後提供するという。同プランの詳細については、準備が整い次第案内するとのこと。
2016年01月12日ルノー・日産アライアンスは1月8日、今後4年間で自動運転技術を10モデル以上に採用すると発表した。日本、欧州、米国、中国における主力車種に採用されるという。ロードマップとしては、2016年に高速道路上の単一レーンで安全な自動運転を可能にする技術を投入し、2018年には危険回避や車線変更を自動的に行う複数レーンでの自動運転技術を、2020年までに交差点を含む一般道でドライバーが運転に介入しない自動運転技術を導入するとしている。コネクティビティの分野では、遠隔でクルマとのやり取りができるモバイル端末向けの新アプリを今年後半に投入すると明かした。また、2017年には「アライアンス・マルチメディア・システム」と呼ばれる、スマートフォンと連動する機能や無線で地図情報を更新することができるナビゲーションシステムを導入する。さらに、2018年には、新型の「バーチャル・パーソナル・アシスタント」機能をサポートする専用のコネクティビティ プラットフォームを個人および法人向けに投入するとしている。
2016年01月08日2015年は、「爆買い」が話題になった一年だった。爆買いとは、中国を中心とする旅行者が、家電品や化粧品、衣料品、トイレタリーなどを一度にそして大量に購入すること。円安が追い風となってこの流れが続く中、「観光」が日本経済を立て直す成長戦略の柱として認識されるようになった。そこで注目を集めているのが、インバウンドマーケティングである。本稿では、インバウンドマーケティングを展開しているマイクロアド・インバウンド・マーケティングの代表取締役・中山洋章氏に話を聞いた。○観光立国へ - 鍵は"プル型"のアプローチ2013年に日本を訪れた外国人旅行者は、1,000万人を超えた。特に、韓国や台湾など近隣諸国からの旅行客は、週末で日本を訪れるというケースも多く、リピーターも少なくない。最近では、こういった訪日外国人旅行者が、日本国内での商品の購入や宿泊、食事などで消費することを「インバウンド消費」と呼んでいる。インバウンド消費は、今や日本経済を下支えするまでに拡大し、その恩恵は交通や飲食、宿泊、流通、製造、伝統工芸など、幅広い領域に及んでいる。インバウンド消費の増加を狙ったマーケティング活動が活発化しているのも、当然の流れといえよう。これまで、外国人をターゲットとしたマーケティング活動は、広告出稿に依存する「アウトバウンドマーケティング」がほとんどだった。例えば、展示会への出展や、現地での営業活動など、プッシュ型のアプローチが大多数を占めていた。しかし、アウトバウンドマーケティングは、莫大な資金を投入して市場を開拓していくことになる。そのため、資金が潤沢にある大手企業でなければ行うことが難しい。同時に、訪日外国人旅行者に対して、この手法はあまり有効ではないという課題もある。特に個人手配の訪日外国人個人旅行者は、ホームページやソーシャルメディアに掲載されている情報を自ら収集し、何を消費するか選択する傾向が強い。そういったターゲットにアピールするには、分かりやすい位置に自社のコンテンツを配置し、自らの手で情報を発見してもらう必要がある。この場合、プル型のアプローチである「インバウンドマーケティング」が効果的というわけだ。実は、インバウンドマーケティングの成功事例は多い。実際、インバウンドマーケティングに成功したドラッグストアやディスカウントストアには訪日外国人旅行者が大挙し、特定の銘柄の商品が「爆買い」されているという。つまり、インバウンドマーケティングを活用すれば、街の小売店が「爆買い」の対象となることも十分あり得るのだ。「インバウンドマーケティングのインパクトは大きいです。ある日を境に旅行客が殺到し、前年比300%の売り上げを達成するということも起こりうる。アウトバウンドマーケティングほど資金が必要ないことも幸いし、これまでマーケティング活動に積極的ではなかった小規模企業や団体などが、積極的にインバウンドマーケティングに取り組み始めていますね」(中山氏)○行政やアミューズメント施設もインバウンドマーケティングに注目マイクロアド・インバウンド・マーケティングは、広告配信サービスで知られるマイクロアドの海外事業部が母体となるマーケティング専門会社。APAC圏を中心に10カ国・18拠点に現地法人を設立し、現地の文化やIT環境に適用しつつ現地に根付いた幅広いサービスを提供している。「インバウンド市場の成長は著しいです。そこに目をつけた経営層が、マーケティング部門に対し、インバウンドマーケティングを実施するように指示するケースが増えてきていると感じます。しかし、国内を主戦場としていたマーケターにとって、各国の生活習慣やインターネット環境などを考慮した企画立案はハードルが高く、どこから手をつければいいのかわからない状況なのでしょう」と中山氏は分析する。当然のことだが、マーケティング活動を展開するのであれば、ターゲットに対してきちんと訴求することができなければ意味がない。闇雲にマーケティング活動をしても、効果が出ることはないからだ。そのためには、訴求したい国や地域ごとに企画立案していき、マーケティング活動を展開していく必要がある。ところが、それは決して一朝一夕でクリアできる課題ではない。だからこそ、マイクロアド・インバウンド・マーケティングをはじめとするマーケティング会社に相談するという企業が増えているのだろう。「実際、広告主となる業界の裾野が広がってきています。これまであまりお付き合いのなかった地方などの行政機関や、水族館といったアミューズメント施設からもお声がけいただいているんです」と中山氏。インバウンドマーケティングに対する期待の高さが垣間見れる。○"爆買いを誘発するため"のインバウンドマーケティングなのかインバウンドマーケティングで「爆買い」を誘発するためにはどうすればいいか、という相談も増えているという。これに対する明確な回答は難しい。しかし、タッチポイントを増やすことで、訴求力を強めていくことはできる。マイクロアド・インバウンド・マーケティングでは、現地法人が各国の状況に合わせて活動しており、メディアを形成している。例えば中国では、地元の人気情報番組「東京印象」で購買意欲を高める商品紹介を実施したほか、全日空商事とアライアンスを締結し、地方創生に特化したインバウンドメディア「ANA EXPERIENCE JAPAN」の運営も支援している。このようなメディアを使うことで、タッチポイントが増えるだけでなく、各国のそれぞれの状況に合わせ、都度訴求していくことが可能となる。このような取り組みが、ビジネスチャンスの獲得に結びついていく ―― しかし、今のビジネスだけに注目するのではなく、もっと広い視野を持ってインバウンドマーケティングに取り組む必要があるのではないだろうか。2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催される予定で、関連企業は急ピッチで準備を進めている。このイベントをきっかけに、訪日外国人旅行者が増加することはほぼ間違いない。私たちは、どうすれば訪日外国人旅行者が日本での滞在を楽しめるのか、いい印象を持ってもらえるかということを、今後きちんと考えていかねばならない。いい印象、いい体験があれば、必ずリピーターになってもらえるはず。おもてなしの心で旅行者に接し、よりいい体験をしてもらいたいと思うことこそが、インバウンドマーケティングの本質なのかもしれない。
2016年01月05日SC15の論文の採択率は20%強で、SCで論文を通すのは、なかなか、大変である。その関門を通って、今回のSC15で発表された日本の大学の論文発表は2件である。なお、論文の著者は全員が1つの機関の人だけという方が珍しく、世界中のあちこちの機関の人が1つの論文の共著者となっているという論文の方が多い。このため、何が日本の大学の論文かという明確な基準はなく、多分に筆者の恣意的な判断に依っている。SC15で採択された2件の論文の内の1件は、電気通信大学(電通大)の三輪准教授と東京大学(東大)の中村教授の共著の「Profile-Based Power Shifting in Interconnection Networks with On/Off Links」という論文で、もう1件は、九州大学(九大)の稲富准教授が第1著者で、同大、アリゾナ大学、ローレンスリバモア研究所、東大、京都大学(京大)、富士通の人たちが共著者に加わっている「Analyzing and Mitigating the Impact of Manufacturing Variability in Power-Constrained Supercomputing」という論文である。主に若い研究者の研究発表の場として設けられているポスター発表は、RIST(高度情報科学技術研究機構)と北海道大学(北大):GPU Acceleration of a Non-Hydrostatic Ocean Model Using a Mixed Precision Multigrid Preconditioned Conjugate Gradient Method東北大:An Approach to the Highest Efficiency of the HPCG Benchmark on the SX-ACE SupercomputerA Real-Time Tsunami Inundation Forecast System for Tsunami Disaster Prevention and Mitigation会津大学:Parallelization of Tsunami Simulation on CPU, GPU and FPGAs筑波大学:Large-Scale MO Calculation with GPU-accelerated FMO Program東大:Scalable and Highly SIMD-Vectorized Molecular Dynamics Simulation Involving Multiple Bubble NucleiDevelopment of Explicit Moving Particle Simulation Framework and Zoom-Up Tsunami Analysis System東工大:Out-of-Core Sorting Acceleration using GPU and Flash NVMDesign and Modelling of Cloud-Based Burst BuffersMulti-Level Blocking Optimization for Fast Sparse Matrix Vector Multiplication on GPUsDesign of a NVRAM Specialized Degree Aware Dynamic Graph Data Structure電通大:Memory Hotplug for Energy Savings of HPC systems大学ではないが、「JAEA Optimization of Stencil-Based Fusion Kernels on Tera-Flops Many-Core Architectures」を含めると、全体では日本の発表は13ポスターであった。中では4件のポスター発表を行った東工大が最多で、すべてのポスター発表に松岡先生の名前が載っている。SC15での日本の大学のブースは15(ただし、東京大学は3つのグループがそれぞれブースを出展)であった。なお、埼玉大学のブースは会場中央に近い良い場所にあり、会場の端に押し込められた他の日本の大学のブースと離れた場所であったために見逃してしまった。埼玉大学の皆様、申し訳ない。また、SC15では埼玉大学の隣にVR Study Meetingのブースがあった。前回の展示では、VR Study Meetingは埼玉工大、埼玉大、女子美大、東海大、中央大のチームと書かれており、日本の大学の展示に含めるべきであったが見落とした。大部分の大学は前回もブースを構えた常連であるが、前述のように、1件のポスター発表を行っている会津大学も過去に3回展示を行っている。初出時に、新たに参加と記述してしまったが、前回、展示がなかったので、勘違いしてしまった。○各大学の展示ブース今回から初参加の会津大学は平成5年に創立された県立の4年制大学で、コンピュータ理工学専門でその他の学科はないという珍しい大学である。当初は学部だけであったが、その後、平成9年に修士課程、平成11年に博士課程を開設している。日本の大学では最大の600平方フィートのブースを構えるOakleaf Kashiwaアライアンス。東大の平木研究室も毎年ブースを構える常連である。平木研はData Reservoirというプロジェクトで、遠距離の超高速通信を可能にする技術を研究している。今回は、SC15の会場に2台のPCを設置し、テキサス州オースチンから東京までの100Gbit/sの回線を使い、東京折り返しで2台のPC間でのデータ伝送実験を行った。通常のTCPを用いると、データ伝送速度は29Gbit/s(理論値の97.7%)であったが、超高速通信のために開発したLong Fat TCPを使うと73Gbit/sのデータ伝送が行えることを実証した。これは単一のTCP通信によるデータ伝送速度としては世界記録だそうである。日本の大学で発表ポスター数最大、TSUBAME-KFCのK80 GPUへのアップグレードでGreen500 2位を獲得した東工大は、Oakleaf Kashiwa Allianceと並ぶ600平方フィートのブースを構えていた。SC15で論文が採択された九州大学のブースである。椅子に座っている黒い服の人物が、論文の第1著者の稲富准教授。
2015年12月30日米国の宇宙開発企業「スペースX」は12月21日(現地時間)、人工衛星を打ち上げた「ファルコン9」ロケットの第1段機体を、打ち上げ場所のすぐ近くに、垂直に着陸させる試験に成功した。これまでSFの中では何度も描かれてきた光景が、歴史上初めて、現実のものになった。本稿では、この成功の意義と、これまでの挑戦の歴史、そしてスペースXの狙いとは何かについて解説する。○人工衛星を打ち上げたロケットが帰ってきた人工衛星を打ち上げたロケットが地上に帰ってくる―それは長い間、夢物語だった。多くのロケットは打ち上げごとに使い捨てているが、ロケットが地上に帰ってくることができれば、整備し、推進剤を補給すれば再度飛ばすことができる。そんな飛行機のように運用できるロケットが実現できれば、宇宙飛行にかかるコストが大幅に削減できると言われていた。だが、技術的な困難さから、世界中の宇宙機関が半ば諦めた構想でもあった。しかしスペースXは「打ち上げコストを従来の100分の1にする」という目標を掲げ、その困難に果敢に挑み、そして実験と試験を着実に進め、わずか4年ほどで着陸まで成し遂げた。スペースXは、ロケットの回収と再使用を行うという構想を2011年に明らかにした。そんなことが本当にできるのかと、当時は多くの人が訝しんだものだった。だが、そんな大方の見方をよそに、同社は動き始めたのだった。○着実に進められた試験まず同社は2012年に、ファルコン9の初期型の機体を流用した「グラスホッパー」いう実験機を開発し、地上から垂直に上昇し、上空で横移動したりしつつ、地上に垂直に降り立つという飛行試験を繰り返し行った。2014年からはファルコン9のv1.1と呼ばれる改良型の機体を流用した「F9R-Dev」を開発、グラスホッパーの跡をついで試験を繰り返した。さらにそれと並行し、2013年9月29日から、衛星を打ち上げたあとの第1段機体を太平洋上に着水させる試験が始まった。この最初の試験では、着陸のためのエンジンの再点火には成功したが、その後スピン状態に陥りエンジンが停止し、着水は果たせなかった。2014年4月18日と7月14日にも大西洋上への着水試験に挑戦、さらに着陸脚も装着された。エンジンの再点火と制御、そして着陸脚の展開にも成功したが、海が荒れていたことから、着水後に機体は破壊された。9月21日にはロケットの問題で着陸脚は装備されなかったが、エンジンの再点火、着水などには成功しており、またNASAの協力で再突入時の機体の挙動や温度変化などが観察された。その後同社は、ファルコン9の第1段機体が着陸するための広い甲板をもつ無人の船を開発した。甲板はサッカー場とほぼ同じ広さがあり、推進器とGPSを使用した位置制御システムにより、嵐の中でも安定して自分の位置を保ち続けることができる。そして2015年1月10日、国際宇宙ステーションに物資を運ぶ「ドラゴン」補給船運用5号機の打ち上げで、この船への着陸が試みられた。第1段の分離後、ロケットエンジンに再点火し、高度約80kmから大西洋上に浮かぶ船を目指して下降した。そして第1段機体は甲板上にはたどり着いたが、激突し、着陸そのものは失敗に終わった。同年2月11日にも船への着陸が試みられたが、このときは天候が悪く断念され、着水に切り替えられた。そして4月14日に実施された試験では、ふたたび甲板上にはたどり着いたものの、着陸直後に機体が倒れて爆発、失敗に終わった。続く6月28日には3度目となる船への着陸試験に挑む予定だったが、ロケットが打ち上げに失敗したため、実施できなかった。○2015年12月21日このあと同社は約半年間をかけ、失敗した箇所の改修を行うと同時に、ロケットの性能向上と、そしてより確実に、安定した着陸を実現するための改良を行った。この新たなファルコン9の、着陸技術に関する改良点がどのようなものであるかは、今のところ具体的には明らかにされていない。公開されている写真を見る限り、姿勢を制御するための窒素ガスの噴射装置の形と取り付け位置が変わっており、空力フィンも多少形が変わっている。また着陸脚も改良されたといわれている。さらにロケット機体の改良と並行し、ロケットを船の上ではなく、陸上に降ろすための準備も進められた。同社は今年2月、ファルコン9が打ち上げられるケイプ・カナヴェラル空軍ステーションの第40発射台から10kmほど南に位置する、第13発射台の土地を米空軍から借り受けている。ここはかつて、アトラス・ロケット発射場として使われていた場所であるが、スペースXは「第1着陸場」と新たに名付け、改装した上でロケットの着陸場所として使うことになった。実際に着陸ができるかどうかは米連邦航空局(FAA)の審査結果待ちだったが、12月に無事に許可が下り、そして12月21日を迎えた。6月の失敗以来初にして、さまざまな改良を施されたファルコン9は、日本時間12月22日10時29分(米東部標準時12月21日20時29分)、米国のフロリダ州にあるケイプ・カナヴェラル空軍ステーションの第40発射台から離昇した。ロケットは順調に飛行し、約15分後から、搭載していた11機の衛星を順次分離し、すべてを所定の軌道に投入した。その一方で、離昇から2分24秒後に分離された第1段機体は、まず機体を反転させ、逆噴射をかけた。そして今来た航路を戻るように飛び始め、約5分後に大気圏に再突入。ここでもエンジンを噴射して速度の上昇を抑制する。そして突入後は空力フィンと窒素ガスの噴射を使って機体の姿勢を制御しつつ地表に近付いていき、さらにエンジンを噴射しながら、第1着陸場に舞い戻った。着陸に成功した瞬間、スペースXの管制室は喜びに沸き、宇宙開発のフォーラム・サイトやSNSも賞賛の声で埋め尽くされた。かくして歴史は作られたのであった。○その歴史的意義飛行機のように運用できるロケットを造るという挑戦に挑んだのは、もちろんファルコン9が初めてではない。その夢物語の実現を目指し、これまでに多くの青写真や実験機が生み出されている。たとえば1990年代には米国防総省やNASAが「DC-X」という実験機で垂直離着陸飛行を実施しており、また今年11月にはスペースXのライヴァルでもあるブルー・オリジンが「ニュー・シェパード」も実施している。日本も「RVT」という実験機を開発した。ただ、DC-Xの最大到達高度は約3000m、RVTも約40mと、宇宙には到底満たない高度までしか到達していない。ニュー・シェパードは高度こそ100kmの、一般的に宇宙空間と呼ばれる高さにまでは達したが、ニュー・シェパードは人工衛星を打ち上げるためのロケットではないため、単純に真上に向かって上昇し、そのまま真下に向かって降下しただけである。一方、ファルコン9は人工衛星を打ち上げるためのロケットなので、打ち上げ後に徐々に機体を傾け、水平方向への速度を稼ぐ。そこからロケットを地上に着陸させるためには、高度の制御だけではなく、水平方向の速度を打ち消し、場合によっては飛んできた航路を戻るように飛行する動作も必要になる。ファルコン9の飛行経路はさまざまなので決まった条件ではないが、第1段の分離時点でおおよそ高度は80から100km、水平方向には時速約6000kmも出ている。ここから機体を制御し、エンジンを噴射して速度を落とし、さらに地上の狙った地点に着陸させるのは至難の業である。さらに、人工衛星を打ち上げるためのロケットは、とにかく軽く造らなくてはならない。しかし一方で、ロケットを着陸させるためには着陸脚や姿勢制御装置、追加の推進剤などが必要になる。ニュー・シェパードのようなロケットであれば、頑丈な着陸脚を装備したり、推進剤を十二分の余裕をもって積んだりすることもできるが、ファルコン9の場合はそうすると衛星を打ち上げられなくなるため、できる限り軽く、それでいて着陸できる程度には十分という、ぎりぎりの線を狙った設計をしなければならない。これらの点で、ファルコン9の成功は空前の偉業と言える。○再使用による低コスト化は実現できるのか今回のファルコン9の着陸成功が、歴史に残る大成果であることは疑いようもない。しかし、そもそもロケットの再使用が本当にコスト削減につながるのかはまだ未知数であり、その意味では今回の成功でようやくスタートラインに立てたに過ぎない。たとえば、今回着陸に成功した機体は外見からは無傷なように見えるが、本当に無傷なのか、また再打ち上げに耐えられるかどうかは検証しなければわからない。そして再打ち上げのための整備も含めた打ち上げコストは、ロケットを大量生産するよりも安価なるのかどうかも、今後実証を重ねなければわからない。ファルコン9とは技術的に大きく異なるものの、かつてスペース・シャトルは、再使用にかかるコストが莫大なものになり、当初の「再使用による低コスト化」という目標は達成できなかった。ファルコン9が同じ轍を踏まないという保証は今のところない。ただ、スペースXは楽観的な将来を描いている。たとえば、打ち上げ後に陸上まで戻ってくるのは再打ち上げまでの輸送や整備の面で利点は多いものの、ロケットにとっては大きな負担になるため、より近い海上の船に降ろす試験も継続するとしている。さらに、2016年中には打ち上げに使ったロケットをもう一度打ち上げたいとも語られている。また、ロケットの再使用に挑戦しようとしているのはスペースXだけではない。ブルー・オリジンもニュー・シェパードより大型の、人工衛星を打ち上げられるロケットで再使用をやろうとしている。また米国の基幹ロケットを運用するユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)や欧州では、第1段エンジンのみの回収・再使用を行うことを計画している。今後は、陸上や船上への着陸が頻繁に行われ、一度打ち上げに使われたロケットが再び飛び立つ光景が当たり前になるかもしれない。その中で、再使用ロケットによる低コスト化という概念が、本当に成立するのかどうかも自ずと見えてくることになるだろう。○三兎を追い、三兎を得たしかし、着陸に成功したこと以上に、スペースXにとって最大の収穫は、「三兎を追い、三兎を得た」ことだろう。今回の打ち上げは、今年6月の失敗以来初となるものであった。従来の宇宙開発の常識から考えると、再開1号機の打ち上げでは、前回の問題が再発せずに打ち上げが成功するかどうかに主眼が置かれるはずで、着陸試験をやろうという発想は出てこないだろう。おまけに、今回打ち上げられたファルコン9は、エンジンから機体の構造、推進剤に至るまで、全体的に大きな改良が加えられた実質の新型機でもあった。打ち上げ失敗からの再開1号機で、新型機を使い、さらに着陸もやるというのは、従来の常識からは大きくかけ離れている。それでも、スペースXはその三兎を追いかけ、そして三兎すべてを得ることに成功した。これは同社だけではなく、発射場を提供している米空軍、安全審査を行うFAA、さらにロケットにとってのお客であったオーブコム社も同意した上で行われたものであり、彼らが全員この挑戦を支持し、支援した結果、初めて実現した。すでに米国の宇宙開発の世界では、それが可能な体制ができあがっている。たとえ再使用ロケットの概念が夢物語に終わったとしても、この風土は、ライバルである欧州やロシア、日本などのロケットにとっては脅威であり、しかし人類の宇宙進出にとっては大きな希望になるだろう。【参考】・spacex_orbcomm_press_kit_final2.pdf・Background on Tonight’s Launch | SpaceX・SpaceX | Webcast・Live coverage: Falcon 9 rocket launches, and lands, at Cape Canaveral | Spaceflight Now・SpaceX Makes History with Successful Booster Return to Onshore Landing | Spaceflight101
2015年12月24日情報通信研究機構(NICT)は12月17日、Wi-SUN無線技術を用いるセンサネットワークをもずく養殖場のモニタリングに活用することで、世界で初めてWi-SUNの漁業分野への適用実証に成功したと発表した。スマートメータや各種センサに関するデータ収集・制御のための無線通信の需要増加に伴い、同機構は研究開発だけでなく、IEEE 802.15.4g/4e標準化や、Wi-SUNアライアンスによる認証の一連の取組みを通じて、省電力動作・マルチホップ通信を特徴とする国際無線標準規格Wi-SUNに準拠する無線通信システムの社会展開を推進している。今回同機構は、電池駆動の省電力Wi-SUN無線機を搭載した3基の海上ブイを沖縄県南城市のもずく養殖場内に配置し、そのうち2基に水温・塩分濃度センサを搭載。さらに地上に設置された収集局を含む2台のWi-SUN無線機と併せて、4段のマルチホップ通信により、当該センサが感知する水温・塩分濃度データを定期的に収集局まで集めることに成功した。また、収集局に集められたデータは、有線インターネット回線を介して同機構のクラウド上に格納され、遠隔地からも確認することができる。Wi-SUN無線機は電池による動作が大前提であるため、同機構が提案したIEEE 802.15.4e標準規格にも規定された間欠的通信機能により、大部分をスリープ期間に適用することで、平均消費電力の低減を実現しているという。
2015年12月18日森永乳業はこのほど、「リプトン CREAMY(クリーミー)」シリーズより、初の期間限定商品「リプトン CREAMY 紅茶ラテ メープルバニラ」をコンビニエンスストアや量販店などで発売した。販売は2016年4月上旬まで。○寒い冬に、疲れを癒やしてくれる甘い味わい「リプトン CREAMY」シリーズは、2015年3月に発売したチルドカップ容器入りのスタイリッシュなティーラテ。ミルクのコクと甘さやデザート感覚で楽しめる点などから、発売以降、多くの支持を得ているという。同商品は、同シリーズ初の期間限定商品。ユニリーバ社独自技術により、摘みたて茶葉の味わいを閉じ込めたティーエッセンス配合茶葉(レインフォレスト・アライアンス認証)を使用した紅茶に、生クリームを合わせたチルドカップ紅茶ラテとなる。生クリームのコク、メープルの華やかな香り、芳醇なバニラの香りが口中に広がる仕上がりとした。寒い冬にふさわしい、疲れを癒やしてくれる甘い味わいを堪能できるという。内容量240mlで、希望小売価格は140円(税別)。2016年4月上旬までの期間限定商品となる。
2015年12月17日ANAが加盟しているスターアライアンスはこのほど、LCC(低コストエアライン)およびハイブリッドエアラインとネットワークを展開する「コネクティング・パートナー・モデル」を導入することを発表。その第一モデルとして、南アフリカのLCCであるマンゴー航空と提携した。○加盟航空会社と同水準の運航基準を設定「コネクティング・パートナー・モデル」とは、LCCおよびハイブリッドエアラインの運航便を利用した際でもスターアライアンスのネットワークに乗り継ぎが可能となるシステムで、就航地やフライトの選択肢の拡大を目指している。コネクティング・パートナーに対しては、既存のスターアライアンスのネットワークへの適合性を慎重に評価する。選定された航空会社はスターアライアンスに加盟はしないものの、スターアライアンスが求める高度な運航基準に従って運航していくこととなる。スターアライアンス加盟航空会社コネクティング・パートナーとの乗り継ぎ利用者は、スルーチェックインやスルーバゲージなどのスターアライアンスの特典を受けられる。また、コネクティング・パートナーはスターアライアンス加盟航空会社と2社間で契約を通じて、マイレージプログラムをベースにした特典を追加することが可能になる。さらにスターアライアンス・ゴールドメンバーは、個別のコネクティング・パートナーの多様な特典サービスも利用可能となる。スターアライアンスのマーク・シュワブCEOは、「この革新的なコンセプトによって新モデルを切り開きます。航空業界では『従来型のフルサービス』と『低コスト』のビジネスモデルが収束していくという、確かな傾向が見て取れます」とコメントしている。今後はコネクティング・パートナーと協力することによって、まだ就航できていない市場へのアクセスも含め、より幅広いネットワークを狙う。○南アフリカ最大のLCCと提携同プロジェクト初となる契約は、南アフリカのLCCであるマンゴー航空。マンゴー航空は2006年11月15日に初フライトを就航し2016年には10周年を迎える。保有するボーイング737-800型機を4機から10機へと増やし、南アフリカ国内の主要都市に加えてヨハネスブルグとザンジバル間も運航。このほど、旅客輸送量で南アフリカ最大のLCCになった。マンゴー航空は、機内でWi-Fiサービスを提供するアフリカ唯一の航空会社であり、ワールドトラベル・アワードやスカイトラックスを含むさまざまな賞を受けている。マンゴー航空のニコ・ベザイデンホウトCEOは今回の提携にあたり、「スターアライアンスのコネクティング・パートナーに参画し、その最初の航空会社になることは、当社の中長期ビジネス目標にしっかりと組み込まれています。革新とエクセレンスの絶え間ない追及はマンゴー航空の基盤であり、わが社の企業文化の基礎を成すものです」と述べている。また、コネクティング・パートナーになることに対しても、「あらゆるLCCもしくはハイブリッドエアラインとの競争に優位性をもたらす」と考察している。マンゴー航空との提携に関してシュワブ氏は、「コネクティング・パートナーという新コンセプトを導入するにあたり、マンゴー航空の革新的で斬新なスタイルが決め手になりました。2016年第3四半期には、新しいかたちでサービスをご利用いただく最初のお客さまをお迎えできることを目指しています」とコメントしている。
2015年12月15日近年IoT(Internet of Things)という言葉を聞くようになりました。日本政府が出す「日本再興戦略」改訂2015でも、ビッグデータやAI(人工知能)と並び、ビジネスや社会そのもののあり方を根底から揺るがす改革の要因として扱われています。今回は、IoTのその先にある「WoT」について解説していただきます。○Webがインターネットにもたらしたもの「インターネット」が世界に浸透し始めたのは1980年代です。当時はさまざまな通信規格が存在していましたが、徐々にTCP/IPという通信規格の採用が広がり、世界中に散らばっていたネットワークが1つに繋がりだしました。しかしながら、ネットワークが繋がったといえ、情報は世界各地に散らばっている状況でした。例えるならば、世界中に手紙が届くようになったものの、人々はどこに手紙を送ればいいか分からず、手紙の文面の言語が目的ごとに異なったのです。ニュースを見たり、メールを送ったり、テキストを送ったり、ファイルを送ったり……etc。それぞれのサービスごとに言語があり、専用アプリケーションがありました。「Web」が登場したのは1990年代です。世界中にばらばらに存在していた情報を、テキストや画像で表現してドキュメント化し、「ハイパーテキスト」という方法でつなぎ合わせる仕組みと、その言語であるHTML(HyperText Markup Language)、通信規格のHTTP(HyperText Transfer Protocol) が生み出されました。その後、必要な情報を探すための「検索エンジン」も登場したことで、世界中の情報へ素早く、簡単にアクセスできるようになり、Webの求心力がさらに高まっていったのです。これらの技術を下支えしたテクノロジーが、「HTML/HTTP」を解釈し、PCやスマートフォン上で表示するアプリケーション「Webブラウザ」です。Webブラウザは、"基本的"にはOSやWebブラウザの種類などの環境に依存せず、同じように情報を利用できます。このように膨大な情報を容易に利用できる基盤ができたことで、ネット上の情報提供やビジネスが容易になり、その後の爆発的な普及の要因となりました。現在では、国際的な標準を定めるW3C (World Wide Web Consortium)で、さまざまなWeb技術の標準化作業が行われています。より多彩な表現ができる「HTML5」や、高性能化した「HTTP/2」への進化、「JavaScript」というスクリプト言語などを組み合わせて、今までOSごとに作成されていたアプリケーションが、Webブラウザ上で簡単に表現されるような世界になりつつあります。Webは多くのPCやスマートフォン上で動作します。つまり、単なる"情報"から、アプリケーション実行環境まで提供する巨大なプラットフォームへと成長したわけです。○WebがもたらすIoTの進化Webの存在や成り立ちは、IoTにも応用できます。今までのIoTは、個別のサービスごとに適した独自の通信規格や動作環境を用いて、独立したシステムを構築することが大半でした。それぞれのシステムが中に閉じてしまい、個別に情報が存在している状況です。それぞれのシステムとしての価値を生み出すことはできますが、"個"を超えて膨大な情報に基づいた、より付加価値のあるサービスを生み出すためには共通に利用できる基盤が必要です。そのために、最近ではIoT機器を共通に繋げるための規格や枠組みを議論したり、手を組んで広げていくコンソーシアムやアライアンスが組まれています。しかし、これらはIoT機器が繋がる通信規格のみや提唱するベンダーに依存したものとなってしまいます。一方で、このIoTの共通基盤をWebのプラットフォームを活用して実現する考え方が「WoT (Web of Things)」です。WoTの強みは、すでに広く普及している相互接続可能な通信規格と、ハードウェアやOSに依存しない「HTML5/JavaScript」による動作環境、さらにこれらは「IETF」や「W3C」という特定の組織に依存しないオープンな標準化組織による規格、取り組みという点です。オープンであることで、さまざまな環境に対して強靭に鍛えられ、自由に幅広く使えるものになります。これに加えて、通常のIoT開発では、ネットワークやソフトウェア、ハードウェアごとに幅広い知識が必要になりますが、WoTではHTML5/JavaScriptという広く普及した言語で開発でき、多くの技術者や情報が存在しています。また、繰り返しにはなりますが、基本的にハードウェアやOSへ依存しないため、さまざまなネットワークやデバイスで動作することができます。このIoTとWoTの枠組みの比較を下図に示します。WoTは、さまざまなデバイスで動作し、容易に開発できる共通のIoT基盤を志向するものです。これまでも相互接続という部分では、Web APIという形で、多くのサービスが外部に情報を公開する取り組みを行っています。例えば地図や天気、ニュース、特定の機器情報などはWeb API経由で取得可能です。また、情報にアクセスしやすいように「Linked Open Data」という"データのWeb"と呼ばれる情報ネットワークが提唱されています。WoTはこれらとも親和性が高く、既存の膨大な情報の活用も容易になるのです。動作環境も、Webブラウザ上で動くだけでなく、Webアプリケーションが各OS用のアプリケーションと同様に実行できる環境もスマートフォンを中心に整ってきました。さらに、「Web OS」という、ハードウェア上で直接Webアプリケーションが実行できる軽量なOSも登場しています。代表的なものは、PC向けのChrome OSやスマートフォン向けのFirefox OSです。すでに日本国内でもこれらの製品として「Chromebook」や「Fx0」が発売されています。さらに小型の機器向けには、JavaScriptが直接実行できるマイコンボードなどが発売されています。このようにWoTは幅広く発展してきたWebのプラットフォームを活用し、IoTをより加速、発展させる取り組みなのです。著者プロフィール○小森田 賢史(こもりた さとし)KDDI 商品・CS統括本部 商品企画部モバイル通信(SIP, IMS)の高度化に関する研究開発、IEEE標準化活動を経て、オープンソース系OSを活用したスマートフォン端末の企画開発、IoT機器・プラットフォームの企画開発、新規商品企画を担当する。
2015年12月11日東京工業大学(東工大)は12月9日、直径300mmのシリコンウエハを2µm級に超薄化することに成功し、この厚さにおいてはDRAMの特性が劣化する現象を初めて明らかにしたと発表した。同成果は、同大学 異種機能集積研究センター 大場隆之 教授と、同大学を中心とした設計・プロセス・装置・材料半導体関連の複数企業および研究機関からなる研究グループ「WOWアライアンス」によるもので、12月6日~9日に米国ワシントンDCにて開催されている国際電子デバイス会議「IEDM 2015」で発表された。同研究グループは、ウエハを薄化してから積層し、TSVで直接上下チップを接続配線するバンプレスTSV配線を開発している。同方法を用いることでバンプが不要になり、薄化プロセスの限界までウエハを薄くすることができるため、これまでにFRAM、MPU、DRAMに対して、10µm以下の薄化に成功していた。今回、ウエハを薄くできる極限を知るために、先端2ギガビットDRAMが形成された300mmウエハを厚さ775µmから約0.3%の2µmまで薄化した。このような薄化を行うことにより、ようやくデバイス特性の劣化が観察され、DRAMの限界厚さが4µm前後にあることを明らかにした。4µmレベルの厚さであれば、薄化前と薄化した後のリフレッシュ時間の累積故障率が変わらないことを確認、薄化による新たな原子欠陥が生じないことを実証している。なお4µmは、DRAMのデバイス層よりも薄く、可視光も透過する厚さだ。同薄化技術を利用すると、デバイス層を含めても10µm以下となり、この厚さがTSVの長さとなるため、従来のバンプを利用したTSVに比べ約1/10に短縮される。この際、配線性能の指標となる配線抵抗と電気容量の積は1/100に減少。このため4ギガビット、8ギガビット、16ギガビットといったメモリー容量の拡大に合わせて、WOWプロセスを使って4層、8層、16層積層しても、薄化したチップであれば電気的な課題が解消される。薄化チップを64層積層しても全体の厚さは800µm以下に収まり、仮に16ギガビットメモリーを積層すれば、小型ながら1テラビットの大規模メモリーを実現することができる。ウエハ厚さ4µmでこのようなTSVを利用すれば低周波数でも高帯域が可能となり、ギガビット転送速度当たりのエネルギー効率が向上する。このためビッグデータ向けのサーバーやスマートフォンをはじめ小型携帯端末の消費電力の大幅な削減が期待できるという。
2015年12月09日米国のユナイテッド・ローンチ・アライアンスは12月6日(現地時間)、国際宇宙ステーション(ISS)に物資を補給する「シグナス」補給船運用4号機(OA-4)を搭載した、「アトラスV」ロケットの打ち上げに成功した。シグナスは昨年10月に打ち上げに失敗しており、使用するロケットを変え、約1年ぶりの打ち上げ再開となった。関連記事・打ち上げ失敗から1年、「アンタリーズ」ロケットは再び輝く星になれるかロケットは日本時間2015年12月7日6時44分(米東部標準時12月6日16時44分)、米国フロリダ州にある、ケイプ・カナヴェラル空軍ステーションの第41発射台から離昇した。ロケットは順調に飛行し、打ち上げから約21分5秒後にシグナスを分離、所定の軌道に投入した。シグナスOA-4は太陽電池パドルの展開や、地上との通信の確立にも成功。この後、12月9日20時10分ごろに、ISSに到着する予定となっている。打ち上げは当初、12月3日に予定されていたが、天候不良により、この日まで連日延期を重ねていた。○シグナス補給船シグナス補給船は、米国のオービタルATKが開発、製造した補給船で、ISSに物資を補給することを目的としている。シグナスの打ち上げは今回が5機目となり、1号機は試験機ながらISSとの結合に成功。しかし4号機はロケットが打ち上げに失敗したことで失われている。また、2号機からはNASAからの物資輸送の発注を受け、オービタルATKがシグナスを運用する「商業補給契約」(CRS)に基づいて運用が行われている。今回のシグナスOA-4では、初めて「改良型シグナス」(Enhanced Cygnus)という新しい機体が使われた。改良型は従来型と比べ、物資を搭載する「与圧貨物モジュール」が広くなり、搭載できる物資の量が従来型の2トンから、最大3.5トンにまで大きく増えている。また、それに伴いバッテリーや電子機器などが収められている「サービス・モジュール」も大きく改良され、大型の円形太陽電池パドルが搭載されるなど、外見も大きく変わっている。シグナスOA-4には、食料品や生活用品、ISS内で使われる装置や部品、科学機器、ISSから放出される超小型衛星など、合計3350kgもの物資が搭載されている。シグナス全体やサービス・モジュールはオービタルATKが開発、製造、組み立てを手掛けているが、与圧貨物モジュールは欧州のタレス・アレーニア・スペースが製造している。同社はスペース・シャトルに搭載にされていた与圧コンテナの「多目的補給モジュール」も開発、製造した実績があり、その技術が活かされている。またシグナスには、過去に活躍した宇宙飛行士の名前を愛称として付けるという慣例があり、今回のシグナスには「S.S. ディーク・スレイトンII」という愛称が付けられている。○打ち上げ停止中のアンタリーズに代わりアトラスVで打ち上げシグナスは本来、同じオービタルATKが運用する「アンタリーズ」ロケットで打ち上げられているが、昨年アンタリーズは打ち上げ失敗事故を起こし、現在は打ち上げ停止となっている。同社は、失敗の原因とされているロケット・エンジンを別の新しいものに変え、打ち上げ能力も向上させた「改良型アンタリーズ」の開発を行っているが、完成は早くとも2016年の春ごろの予定で、その間は「アトラスV」ロケットを使ってシグナスを打ち上げることになった。アトラスVは、米空軍とロッキード・マーティンが開発したロケットで、主に米国の軍事衛星やNASAの衛星などの打ち上げで使用されている。2002年の1号機打ち上げ以来、安定した打ち上げを続けており、今回で60機目の打ち上げとなった。アトラスVによる打ち上げはもう1回分予定されており、オービタルATKは改良型アンタリーズの完成が遅れてもISSへの物資補給は滞らないように、体制を立てている。
2015年12月08日米ザイリンクス(Xilinx)は12月1日(現地時間)、FPGA向けデザインスイート「Vivado Design Suite」の「HLx Edition」を発表した。HLx Editionには、HL System Edition、HL Design Edition、および無償版のHL WebPACK Edition があり、すべてのHLx EditionにC/C++ライブラリを含むVivado高位合成(HLS)、Vivado IPインテグレーター(IPI)、LogicCORE IPサブシステムおよびVivado実装ツールスイートが含まれる。また、ザイリンクスおよびそのアライアンスエコシステムは、ビデオおよび画像処理用のOpenCV、先進運転支援システム(ADAS)やデータセンターアプリケーション用の機械学習など、固有の市場に合わせたCライブラリの拡張を引き続き行うとしている。これにより、ハードウェアエンジニアはAll Programmableプラットフォームを短時間で構築し、簡単にプログラミングできるようになる。さらに、ソフトウェアおよびシステムエンジニア向けに個別にカスタマイズしたSDx開発環境(SDSoC、SDAccel、SDNet)を提供することができる。また、HLxで構築したプラットフォーム上で、SDxファミリを用いてC、C++、OpenCLおよびパケット処理向けのP4言語などを組み合わせて設計することで、ソフトウェア定義での設計が可能となる。HLx Editionは現在、Vivado Design Suiteの2015.4リリースでアップグレードが可能であり、ザイリンクス7シリーズ、UltraScale、UltraScale+デバイスをサポートしている。最新のリリースは同社公式サイトよりダウンロード可能。
2015年12月02日●端末間をLTEでつなぐ11月26日と27日、NTTドコモは横須賀のドコモ R&Dセンターにおいて、最新の技術動向を展示するプライベートショー「DOCOMO R&D Open House 2015」を開催した。5G関連の展示については別記事で紹介したが、そのほかにも商品化の有無を問わず、さまざまなドコモによる新技術が展示されていた。ここでは展示内容の中から、筆者が気になった面白い技術について紹介していこう。○LTEによる端末間直接通信通常、LTEでの通信は基地局と端末を介して行うわけだが、これを端末間で行おうというもの。はじめは、PHSのトランシーバーモードのようなものを想像したのだが、そういった使い方のほか、端末同士の協調までは基地局を介して行い、データ通信だけを端末間で行うようにできるとのこと。これにより、たとえば屋外で対戦型ゲームのマッチングをしたり、特定の基地局の範囲内にある端末の情報をチェックして、その割合から最適な広告を表示する(たとえばサラリーマンが多いから髭剃りのCMを流すなど)といった使い方が想定されているという。同様の技術としては無線LANを使った「Wi-Fi Direct」などがあるが、LTEなので到達する距離が非常に長い点などが優位だという。展示されていたのはクアルコムのモデムのファームウェアを書き換えて機能が使えるようにしたものだということで、技術的にはいつ搭載されてもおかしくないところまできているようだ。あとは走査の際のパケット消費をユーザーがどこまで許容するかなど、気になる点もあるが、技術的には面白そうだ。●実用性の高い技術もたくさん○SNS翻訳で世界中に口コミ情報をNTTメディアインテリジェンス研究所が開発した「崩れ日本語正規化技術」を使い、崩れた日本語もかなり正確にニュアンスを含めて翻訳できるというシステム。東京オリンピックを前に、日本語SNSに流れている日本語の情報を外国人にも利用しやすくしようという試みで、来年中のサービス開始を目指しているとのこと。ドコモはこのほかにも翻訳サービスをいくつか展示しており、外国人とのコミュニケーションを円滑化するという意味では有効なツールになり得るだろう。○WiGigは来年登場?「ミリ波非接触高速転送システム」として展示されていたのが、60GHzのミリ波を使い、SUICAなどのように一瞬タッチ(実際には非接触なので触らなくてもいい)すれば動画などの大きなコンテンツも瞬時に転送できる機能。ここまで書いてお気付きの方もいらっしゃると思うが、これはWi-Fiアライアンスが策定したIEEE802.11adこと「WiGig」そのものだ。実際のところ、QualcomのSnapdragon 810は内部的にすでにWiGig対応しているそうで、来年のハイエンド端末はWiGig対応してくる可能性が非常に高い。300MBクラスの動画が2~3秒で転送できるそうなので、かなり実用性は高そうだ。○VoLTEにBGMや効果音がつけられるVoLTEでは「EVS」という高音質な音声コーデックを使っているが、これを単に音声通話の品質を高めるためだけでなく、通話にBGMや効果音を付けてみたら?という発想で開発中。実際に試してみたが、仲のいい友人となら、LINEのスタンプのような感覚で色々な突っ込み系効果音を鳴らしてみたくなる。BGMと効果音を同時に使えたらさらに面白いことになりそうだ。○スマホをエージェントにして電動車イスのトレーニング今年のグッドデザイン大賞にも選ばれた電動車イス「WHILL Model A」にスマートフォンを取り付け、インタラクティブなトレーニングシステムにしてしまおうという仕掛け。人員コストの削減に加え、走行ログなどから上達に合わせたトレーニングの提案が行えるというもの。シニア世代の生活に寄り添うパーソナルエージェントを目指しているとのことで、大変楽しみ。横須賀市の「ソレイユの丘公園」で実証実験を行っているそうなので、行かれる方はWHILLの乗り心地も含めて体験してみてはいかがだろうか。●いい意味でドコモらしくないアイディア○最もドコモらしくない?「イノベーションチャレンジ」最後に、社内の有志で開発され、ハッカソンなどに出展されるなどした、業務とは関係ない個人的なプロジェクトが「イノベーションチャレンジ」としてまとめて展示されていた。個人的にはこのコーナー、ドコモという大企業のイメージからかけ離れた自由な発想と熱意に溢れていて、非常に居心地がよかった。細かい説明はキャプションに譲るので、写真を中心にご覧いただきたい。***1日ではちょっと回りきれないほどの展示物があり、ここでは紹介しきれなかった技術発表も多数あった。プライベートショーにしておくのはもったいないと思ったほどで、ドコモという企業への印象がかなり変わった1日でもあった。それにしてもユニークな技術が多数、商品化もされないままになっているのは少々もったいない。ぜひ、周辺機器メーカーなどにも開示する機会を設けてもらいたいと思った。
2015年12月01日●東京オリンピックをターゲットに11月26日と27日、NTTドコモは横須賀のドコモR&Dセンタにおいて、最新の技術動向を展示する「DOCOMO R&D Open House 2015」を開催した。このなかで、次世代移動通信規格「5G」に関する展示も研究棟を丸ごと1つ使って行われていたので、5Gに向けた先端技術の研究開発成果の動向について紹介しよう。○2020年開始を目標に開発が進む「5G」1980年代に車載電話としてスタートした移動体通信の技術は、世代が新しくなるにつれ、概ね10年毎に高速・大容量を実現してきた。次世代通信の「5G」については2020年代をターゲットとして開発が進んでいる。2020年といえば東京オリンピックが開催される予定であり、自動車の自動運転の解禁など、社会インフラもこの年を目処に大きく変革しようとしている。こうした技術を支えるインフラである移動体通信もまた、ここをターゲットに新しい世代になるのは自然な流れだ。ドコモは次世代通信規格「5G」を、高速化・大容量化といった進化はもちろんだが、「あらゆるものが無線で接続されるスマートライフを実現する」ものとして5Gを規定しており、ドコモ自身のさまざまな技術やサービスも、こうしたスマートライフの実現に向けて開発が進められている。●5Gを支える要素技術その1・2○5Gを支える要素技術その1・2ここまで5G、5Gと連呼してきたが、実はまだ3GにおけるCDMAや4GにおけるLTEといったような、「5G」に特徴的な通信技術規格は具体的に存在していない。これまでドコモが折りに触れて紹介してきた、非常に高い周波数帯の「ミリ波」の利用や、特定端末に電波を集中させる「ビームフォーミング」、数十から数百ものアンテナを使った「マッシブMIMO」、高度化C-RANで行われているようなマイクロセルの活用、TDD方式の利用、信号波形の最適化などの技術もすべて、5Gを構成する技術要素にすぎない。今回の展示では、実際にドコモが共同開発している13社との実験結果が展示されていた。その中から代表的な技術として、Wi-Fiの世界でも高速化の用語として登場してきた「マッシブ-MIMO」「ミリ波」「ビームフォーミング」、それに近々策定される規格として「LTE-LAA」について取り上げてみよう。超高密度分散アンテナ技術高いトラフィックが発生するエリアに小型の基地局(分散アンテナユニット)を密に配置し、エリア内の容量を増加させる技術。干渉の影響を緩和するため、アンテナ同士の協調制御や柔軟な構成に対する最適化がポイントとなる。3GHz~6GHzでの適用を想定している。アンテナの制御によっては特定の場所だけ通信品質をよくしたり、通信品質のいい場所を動的に移動させ変化させるダイナミック仮装セル制御も検討されているとのことだった。超多素子アンテナ技術「マッシブ-MIMO」現在は1つの基地局につきアンテナが最大で8本程度だが、これを数十以上束ねて運用するのがマッシブ-MIMO。ユーザーだけでなくIoTでも5Gを使う時代になれば、現在よりも数倍以上の容量が必要になるが、これに対応するための技術だ。マッシブ-MIMOに非線形プリコーディングを適用することで、さらに周波数利用の高効率化を達成。来年から日本での実証実験も開始するとのこと。このほか、NECが5GHz帯を使ったマッシブ-MIMOの実験を行っている。●5Gを支える要素技術その3・4○5Gを支える要素技術その3・4ミリ波を使った高速通信従来の通信よりも高い周波数帯域を活用するのも5Gでのキーポイントとなる。周波数が高いとそのぶん遠くに飛ばないなどの特徴もあるが、競合が少なくまとめて広い帯域を利用できるというメリットもある。ノキアと共同で、70GHzという高周波数帯のミリ波を使って同時に8つの4Kストリーミング伝送をデモしていたほか、三菱電機と共同で、44GHz帯を使用し、仮想ながら768素子という大規模なマッシブ-MIMO構成と、16ビーム多重とビーム間干渉抑圧(プリコーディング)を併用して大容量伝送の検証を行っていた。さらに、スウェーデンのエリクソンと共同で、15GHz帯(実験では14.9GHz帯を使用)での超広帯域伝送(730MHz幅)の実験を実施。10Gbps以上のスループットを実現していた。アンライセンス周波数帯を用いたLTE通信(LAA)免許の必要なLTEなどの周波数帯に対し、BluetoothやWi-Fiで使用する2.4GHz帯や5GHz帯は国際的に免許不要で利用できる「アンライセンス周波数帯」をLTE通信に活用(LTEとWi-Fiのアグリゲーション)しようというもの。LTE LAA(Licence Assisted Access)や、LTE-Uともいう。米クアルコムやエリクソンなどが提唱しており、3GPPもRelease 13で規格化を検討中で、2016年3月にも規格化される見込み。ただし、同周波数帯を利用する無線LAN機器の承認団体であるWi-Fiアライアンスは5GHz帯の利用を反対しているほか、自身も11axなどの規格を提案しており、すんなり決まるかどうかは未知数だ。***順調に行けば光回線なみの速度を期待できる5Gだが、まだまだ超えねばならない技術的なハードルは多いようだった。2010年のLTE導入時は、思ったよりも速度が出ずにがっかりした記憶があるのだが、5Gではサービスインが東京オリンピックと重なることから、最初からある程度のパフォーマンスも期待されることになる。ドコモにはがんばって実験を進め、安定した5Gの実装に貢献してもらいたい。
2015年11月28日ロームは11月27日、同社の特定小電力無線通信モジュールが国際無線通信規格「Wi-SUN」の新たな規格「Wi-SUN Profile for Echonet Single-Hop HAN(Wi-SUN HAN)」の認証を取得したと発表した。「Wi-SUN HAN」は、Wi-SUNアライアンスが策定したHAN(Home Area Network)向けの無線規格で、スマートコミュニティ構築に欠かせないHEMSコントローラやエアコン、照明などのHEMS機器に適しているとされる。従来の「Wi-SUN Echonet Profile」規格がBルートと呼ばれるスマートメーターとHEMSコントローラをつなぐ1対1の通信に対し、「Wi-SUN HAN」ではHEMSコントローラと各家電製品をつなぐ1対多の通信が可能となる。同社は今回、新たに「Wi-SUN HAN」に対応したソフトウェアを開発し、「Wi-SUN HAN」の認証ならびにCTBU(Certified Test Bed Unit)認証を取得した。今後は、同ソフトウェアの提供を開始し、2016年1月に汎用無線通信モジュールとして量産・販売を開始する予定だ。
2015年11月27日マカフィーは11月24日、Cyber Threat Allianceが今週発表したCryptWallランサムウェアの調査結果の解説を同社ブログで公開した。Cyber Threat Allianceは、マカフィー(インテルセキュリティ)とフォーティーネット、パロアルトネットワークス、シマンテックが発足したアライアンスで、サイバー脅威への防御を改善するため、それぞれの顧客に対し脅威情報を共有している。調査では数千件のサンプルを研究しており、さらにその一部は詳細な分析のために手作業で抽出している。このアウトプットを基に、すべての情報を一連の大きなデータセットに集約した後、データの関連付けと分析を行い、調査したすべてのCryptoWall攻撃で使用されている最初のビットコインウォレットを特定した。次に、他のビットコインウォレットへのお金の流れを追跡したところ、被害者が払った身代金がすぐに別のビットコインウォレットに送金され、さらに別のウォレットへと次々と送金されることがわかった。このような送金が1日何度も行われるケースもあったという。こうして数千件の取引を分析した結果、これらの取引で得た多額のビットコインが集約された「マスターウォレット」にたどり着いた。CryptoWall攻撃は2015年2月に始まっているが、このマスターウォレットが開設されたのは2014年4月。2015年2月以前の取引元は不明だが、2月にCryptoWall攻撃が活発になってから分析を行い、ビットコインをドル換算した場合の平均的な価値を基に取引金額を計算した結果、2カ月の調査期間中にCryptoWallに起因する身代金の推定額は3億2500万ドル(約400億円)に達している。このレポートでは、このようなランサムウェアファミリの配信メカニズムとしてのAnglerエクスプロイトキットについても検討されている。10月にCisco SystemsのTalosグループの研究者が発表した「Anglerの背後にあるグループをどのように崩壊させたのか」というレポートでは、ランサムウェアによる年間の収益が6000万ドル(約74億円)に上ったとの試算がある。また、Anglerのプロキシサーバのうち、1つを除くすべてがCryptoWallランサムウェアに悪用されていた月もあったと報告されている。Anglerエクスプロイトキットにアクセスするには、一定の料金を支払う必要があるが、攻撃者はCryptoWallによる身代金を収益として得られるため、その料金を簡単に支払うことができたという。このように、サイバー犯罪者は、CryptoWallや同様のランサムウェア攻撃で得られる収益に引きつけられて、類似のランサムウェア攻撃やアフィリエイトプログラムに参加したり、 新しいサービスを「ransomware-as-a-service」として開発し始めたりしていると考えられる。この種の攻撃が今後増加すると予測されるが、Cyber Threat Allianceが開始した、セキュリティパートナー間で迅速に予兆を検知するサービスにより、この種の脅威を阻止できるという。
2015年11月26日野村総合研究所(NRI)とペガジャパンは今日、高度なデジタル・マーケティングの分野において協働を開始すると発表した。両社はまず国内の顧客に特化して、企業と消費者の様々な接点を最適化し、マーケティング改革を推進するソリューションの開発と、コンサルティングから運用までのサービス・メニュー開発を行うという。両社は2011年から、アライアンス・パートナー契約を締結して複数のシステム導入などの共同プロジェクトを実施してきたが、ソリューションの共同企画・共同開発は今回が初めてであり、またペガジャパンにとっては国内初の協業になるとのことだ。ペガのアプリケーションである「Pega Marketing」は、消費者の属性・状況・好みなどを分析し、見込み顧客に対して最適な情報を最適なタイミングとチャネルで提供する機能を持つという。今回NRIは、ペガに対してシステム・インテグレーション(SI)関連技術を提供すると共に、日本独特の商習慣や、顧客(業界)ごとに必要とされる業務知識などのノウハウを、同製品に追加するとのこと。一方、ペガはNRIに対して同製品に関する技術提供と、グローバル・トップ企業への導入実績で培ったというアプリケーション利用のノウハウを提供する。これにより、日本市場に特化した、高い品質と柔軟性を持ちながらも汎用的なデジタル・マーケティング・ソリューションを両社で開発・提供していくとしている。今後、協業を通じて開発するサービスは、顧客企業の経営戦略を始めとする上流工程から、具体的なソリューションの導入・運用までをトータルでサポートするものになるという。つまり、マーケティング戦略とそれを踏まえたシステム化計画、ソリューションの開発と提供、システム導入支援、及びPDCAを含む運用サービスまでを、ワンストップで支援する。両社は今後、多様な業界向けに、精度の高いテンプレートを準備すると共に、プロモーションを共同で行なうなど、日本での市場拡大に向けて活動していくという。
2015年11月25日●「KATANA 01」概要プラスワン・マーケティングは24日、Windows 10 Mobile搭載スマートフォン「FREETEL KATANA 01」のタッチ&トライイベントを開催した。25日に予約受付を開始し、30日から発売する。○当初の価格を改定Microsoftは、米国など一部地域で11月下旬から自社製Windows 10 Mobile搭載デバイスを発売するように、Windows 10 Mobileはほぼ完成の域に達している。Windows 10 Mobile Insider Previewも順調に開発が進み、11月18日(現地時間)の時点でビルド10586をリリースした。日本マイクロソフトからも、2015年末から来年にかけてWindows 10 Mobile搭載デバイスが多数登場するが、今回のKATANA 01もその1つである。まずはKATANA 01のハードウェアスペックからチェックしよう。ディスプレイサイズは4.5インチで解像度は480×854ピクセル。CPUはQuad core 1.1GHz、搭載メモリーは1GB。ストレージは8GBとなっており、どちらかといえばエントリーモデルに分類される。だが、注目すべきはその価格設定だ。当初の19,800円から12,800円に改定したことを発表すると、集まった記者からは驚きの声が漏れた。プラスワン・マーケティングのCEOである増田薫氏は「これなら試しに買ってみようかと、お求めやすい価格を選択した」とその理由を説明している。実際にKATANA 01を手にすると132gの筐体は軽く、他社のWindows PhoneデバイスやLumiaシリーズと同じく、バッテリーの取り外しも可能。スクロールなどの応答性はやや緩慢な面も見られるが、CPUクロック数を踏まえると十分である。開発担当者は「日本マイクロソフトから提供されたWindows 10 Mobileに搭載CPUのパフォーマンスを踏まえて、自社のチューニングを加えた」と説明していた。●ハイスペックな「KATANA 02」は来年1月発売○KATANA 02もContinuumには未対応以前から期待を集めていた「KATANA 02」は2016年1月に発売予定。Microsoftは、すでにWindows 10 Mobile搭載デバイスにディスプレイやキーボードなどを接続する「Continuum for Phone」の仕様を発表し、CPUはQualcomm MS8992/MS8994(Snapdragon 808/810)、メモリーは2GB以上(フルHD以上は3GB以上)、ストレージは16GBとかなりの高スペックを求めている。スライドに映し出したKATANA 02のハードウェアスペックを見ると、そのスペックを満たしているが、開発担当者は「KATANA 01はContinuum(for Phone)に未対応。KATANA 02は市場動向などを勘案しながら対応を検討したい」と述べていた。また、増田氏も「Androidデバイスと同じく、Windows Phoneも複数のラインナップを予定している」と語っている。●2強の牙城を崩せるか○KATANA 01は4年ぶりのチャレンジプラスワン・マーケティングのビジネスアライアンスグループ担当取締役である野村晴彦氏は、日本マイクロソフトでモバイルデバイスを担当し、昨年からプラスワン・マーケティングに参加した経緯を持つ。増田氏がDELLに勤めていた頃から付き合いがあり、今回のKATANA 01を「4年ぶりのチャレンジだ」と筆者に語っている。さらにMicrosoftが標榜する“One Windows”を例に「会社のPCとKATANA 01の連係は、ビジネスシーンで大きなメリットが生まれる」と、KATANA 01の法人導入をアピールしていた。さらにKATANA 01がNTTドコモおよびソフトバンクのプラチナバンドLTE対応やデュアルSIMに対応している点を強調し、「両スロットともLTE通信可能。海外出張時で電話待ち受けと現地の安価データ料金を両立できる」と語り、自社のSIMカードサービス「FREETEL SIM」のアピールも忘れなかった。なお、自社が取り扱うSIMカードとKATANA 01をセットで購入すると、最大3,000円お得になるキャンペーンを11月16日から2016年1月7日まで実施する。今回の発表会には多くの記者が集まり、Windows 10 Mobile搭載デバイスに対する注目度の高さを強く感じた。KATANA 01の価格設定が高級志向が強い日本市場に受け入れられるのか、iPhone&Androidデバイスの2強体制を突破できるのか、興味は尽きない。だが、安価なスマートフォンを必要とする一定のユーザー層にKATANA 01は歓迎されそうだ。
2015年11月24日●シンプル化の哲学を受け継ぐ「Dell Blueprint」PCやサーバ機器からソリューションベンダーへと変貌を遂げたデル。企業向けソリューションの展開に当たり、同社が長年取り組んできているテーマが「ITのシンプル化」だ。オープン化とIAサーバのコモディティ化により、ITはあらゆる企業がビジネスを行ううえで欠かせないツールになった。ただ、その一方で異種混在環境によるITの複雑化が進んだことで、多大な管理コストと運用負荷が企業の重荷になった。デルが取り組んだITのシンプル化は、企業が直面するそうした課題に、標準化、統合化、自動化でこたえるものだった。Ahmad氏によると、ソリューションベンダーとしての戦略も、デルが取り組んできたこのシンプル化の哲学の延長線上にあるという。「企業がベンダーにロックインされずに、ヘテロジーニアスな環境下で、オープンなアーキテクチャをスケーラブルに展開できるようにすることがデルのシンプル化の哲学です。買収によって製品や事業を統合するというよりは、さまざま企業とアライアンスを組み、ユーザーのIT環境をシンプル化していくことが我々のミッションです」とAhmad氏。そもそも、これまでにデルが買収してきたセキュリティ管理や運用管理、ネットワークやストレージ、仮想化製品などは、複雑化するソリューションのシンプル化を目指したものだ。製品開発からサービスのサポートまでを一貫して提供できるようになった現在でもオープンである意味ベンダーニュートラルな製品展開を続けている。たとえば、ソリューション提供においては、ネットワーク機器ではオープンないわゆるホワイトボックスを推進し、ストレージ機器ではVMwareやNutanixと連携したSDS製品を展開する。また、仮想化環境基盤ではマイクロソフト、VMware、RedHatなどをパートナーとしアプライアンス製品を展開する一方、OpenStackも積極的に推進する。そんなオープンさにこだわるデルが、ソリューション提供の基本戦略として提唱しているのが「Dell Blueprint」だ。「ユーザー企業はいま、従来のITと新しいITの両方に対応していく必要に迫られています。デルでは、両方のITに対応していくことをFuture-Ready ITと呼んでおり、そのための戦略がDell Blueprintです」とAhmad氏。文字通り、ユーザーに対してITのこれからを示した青写真となるものだ。○ユーザーに求められるワークロードを7つのカテゴリーに分類デルのDell Blueprintは「検証済みソリューション設計書」に位置づけられ、現在、ワークロードごとに7つのカテゴリーとして体系化されている。7つのカテゴリーとは、「UC&C」「VDI」「Business Processing」「Virtualization」「Cloud」「Bigdata & Analytics」「HPC」を指している。この分類は2014年からはじまり、少しずつ具体的なソリューションが展開されていき、今年の「Dell World 2015」で、ほぼかたちとして仕上がったという。UC&Cは、マイクロソフトの「Lync」や「Skype」といったユニファイドコミュニケーション&コラボレーションに関する製品を取り扱う。VDIは「VMware Horizon View」や「Citrix XenDesktop 」「Dell Wyse」といった製品群で、Business Process Workloadは、SAPやOracleのミドルウェア、業務アプリケーション製品群で構成。また、Virtualizationは、マイクロソフト、VMwareの各仮想化ソフトのほか、「EVO:RAIL」などのコンバージドインフラを扱い、Cloudはハイブリッドクラウドを構成するための製品が中心となる。Bigdata & Analyticsでは、マイクロソフトのAnalytics Platformや、Cloudera Apache Hadoop Solution、SAP HANA Applianceなどで構成。HPCでは、ハイパフォーマンスコンピューティング向けのサーバやストレージ構成の提供が中心となる。「従来のITと新しいITの両方で求められるワークロードごとに、ユーザーが対応しやすいようにカテゴリーを分類しています。事前に検証したソリューションのアーキテクチャを推奨構成として提示するとともに、ハードウェアやソフトウェアを統合した具体的なソリューション製品として提供します。これにより、ユーザーは、取り組みの進捗や必要に応じて、将来に向けたITをシンプルに利用することができるようになるのです」(Ahmad氏)●事前検証して提供される2つのソリューションこれら7つのBlueprintを具体的にソリューションとして実装したものが「リファレンスアーキテクチャ(Reference Architecture)」と「エンジニアドソリューション(Engineered Solution)」の2つだ。リファレンスアーキテクチャは、ソリューションのアーキテクチャを示した設計書で、どのような機器をどう構成すればいいかが詳細に記されている。Webサイトからダウンロードして参照することで、実装を容易に行うことが可能になる。たとえば、仮想化/クラウドのリファレンスアーキテクチャとしては、以下が提供されている。・「Reference Architecture: VMware vSphere 6.0 U1 on Dell PowerEdge FX2」モジュール型サーバ「PowerEdge FX2」における、vSphere 6.0 U1を使った仮想環境構築の推奨構成・「Hyper-V Dell PowerEdge VRTX Reference Architecture」小規模統合型インフラ「PowerEdge VRTX」におけるHyper-Vの推奨構成・「Dell Red Hat Cloud Solutions Reference Architecture」「Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform 7」を用いたクラウド基盤の推奨構成このリファレンスアーキテクチャで使用しているPowerEdge FX2やPowerEdge VRTXはデルが提供する統合型インフラ製品だ。それを最適に利用するための仮想化製品の構成例を推奨構成として提示することで、ユーザーの検証や運用時のトラブル対応などの負担を削減しているわけだ。リファレンスアーキテクチャでは、ユースケースごとにどのくらいのROIが期待できるかといった検証データも公開されている。そのうえで、このリファレンスアーキテクチャに基づいて事前に機器や構成をセットアップし、顧客の環境に合わせてすぐに利用できるように提供するのがエンジニアドソリューションとなる。たとえば、仮想化/クラウド/ビッグデータ&アナリティクスに関連するエンジニアドソリューションとしては、以下のような製品が提供されている。・「Dell Engineered Solutions for VMware EVO: RAIL」事前検証、セットアップ済みで提供されるVMware EVO: RAILのソリューション・「Dell XC Web-scale Converged Appliance」Dell PowerEdgeサーバとNutanixソフトウェアを統合したソリューション・「Dell Engineerd Solutions for SAP HANA」SAP HANAをPowerEdgeサーバに展開しモジュール単位で拡張できるソリューション導入当初は規模に応じたサイズ(L、M、S)を選択し、事業拡大とともにスケールアウトさせるといった展開も可能だ。エンジニアドソリューション自体は、アライアンスパートナーの新製品展開やユーザーニーズの変化にあわせて、随時拡充していく予定だという。○「Blueprintは日本市場に適している」Ahmad氏によると、Dell Blueprint、リファレンスアーキテクチャ、エンジニアドソリューションはグローバルで同一のものが展開される。各国の企業やパートナーとの取り組みで得られた知見やノウハウをグローバルレベルでまとめ、それを標準的なモデルとして、各国で横展開できることも強みだという。なかには、大規模企業を中心に固有のニーズが生まれることもあるが、そうした場合は、その企業に向けてカスタマイズを施せるようなソリューションの提供も行う。たとえば、自前でデータセンターを保有し、サービスを展開するサービスプロバイダーやテレコム企業、大規模なエンタープライズに対しては、Dell Datacenter Scalable Solutions (DSS)というソリューションの提供も開始することを発表した。Ahmad氏は、Blueprintとその実装であるソリューションは、日本市場のニーズにも適していると指摘と、次のように展望を示す。「日本は、7つのBlueprintすべてに対して高いニーズがあります。特に、成熟市場ということもあり、ハイブリッドクラウド、ビッグデータ、HPCの分野で、先進的な取り組みを行っているという印象を持っています。Blueprintのなかでも、ビッグデータとアナリティクスは新しいITへの取り組みの中心となるもの。アライアンスパートナーとの連携をさらに深め、ソリューションの拡充を進めていくことで、日本企業の取り組みを強力に支援していきたいと思います」(Ahmad氏)
2015年11月19日ルネサスエレクトロニクスは11月17日、2系統の通信アドレスを自動で判別可能な機能を搭載し、HEMS機器やスマートメーターの開発期間を短縮できるWi-SUN対応機器向けサブギガ帯無線通信ソリューションを発売すると発表した。今回発表されたのは、HEMS機器に必要となるスマートメータとの通信、および家庭内機器との通信の2系統に1チップで対応可能な無線通信LSI「RAA604S00」と高性能32ビットマイコン「RX63N」の組み合わせによるWi-SUN無線ソリューションおよび「RAA604S00」内蔵の低消費電力16ビットマイコン「RL78/G1H」によるWi-SUN無線ソリューション。開発環境として、評価ボード(テセラ・テクノロジー製)と通信制御ソフトウェア(ルネサス製)が用意されており、「RX63N」を搭載した評価ボードと通信制御ソフトウェアはWi-SUNアライアンスが策定するHAN(Home Area Network:家庭内ネットワーク)認証用標準器に世界で初めて採用されている。ルネサスは、同ソリューションを使用することで、すべての第三者製品との相互接続性を確保し、Wi-SUN規格に準拠したHEMS機器を早期に開発することが可能になるとしている。無線通信LSI「RAA604S00」は、9月からサンプル出荷を開始し、サンプル価格は250円(税別)で、2016年1月から量産する予定。一方、Wi-SUN対応低消費電力16ビットマイコン「RL78/G1H」は、同様に9月からサンプル出荷を開始し、サンプル価格は620円(税別)で、量産は2016年4月の予定。32ビットマイコンの「RX63N」は発売済であり、開発環境としての評価ボードもテセラ・テクノロジー社から発売済み。また、通信ソフトウェアはルネサスから試用版がリリースされており、2015年12月から正規版を発売する予定となっている。
2015年11月17日ホテルニューオータニ大阪(大阪市中央区)は2016年4月1日、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(大阪市此花区、以下USJ)のアライアンスホテルに加入する。ユー・エス・ジェイによると、ホテルニューオータニ大阪から徒歩3分の最寄り駅「大阪城公園」駅は、同パークの最寄り駅「ユニバーサルシティ」駅まで直通電車で22分。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンとの交通アクセスに優れており、また京都・奈良等へも至便なことから、「旅行体験価値を上げる関西エリアのレジャー拠点として、絶好のディスティネーション」とのこと。今回の提携により、今後は同ホテル内で「スタジオ・パス」を宿泊客に販売するほか、USJとのタイアップ宿泊プランの販売なども行うという。
2015年11月12日セールスフォース・ドットコムは11月10日、業種別ソリューション開発推進のためのパートナーシッププログラム「Salesforce Fullforce」を発表した。アクセンチュア、デロイト トーマツ コンサルティング、パソナテキーラ、プライスウォーターハウスクーパースの4社との協業が決定している。「Salesforce Fullforce」は、同社クラウド基盤を使った業種・業界に特化するソリューションを認定するプログラム。先行してプログラムを行っている米国では、すでに15社43ソリューションが認定されているが、日本では、まずは海外での実績があるソリューションから認定を行っていくようだ。同社アライアンス本部副本部長の手島主税氏は、急激に変化しているビジネス市場状況について、「市場変化をチャンスに変えるためには、いかに新規顧客との接点を作るか、その顧客接点で生まれる新しい経営戦略をいかに速いスピードで具現化できるか、スタートしたビジネスに対し、多くのユーザーからの声を収集して、ビジネスプランを継続的に改修・向上していくかが必要だ」と述べた。しかし、市場の要求に対して柔軟に対応するためには、プランニングに時間を取られ、おのずとIT戦略に掛ける時間が少なくなる。ジレンマを抱えている企業は少なくない。手島氏は「このジレンマを解消するなにかしらのソリューションを、パートナー企業を通じて提供するのが我々の役目」と述べ、上記の4社以外にも「近々、国内大手SIerとの協業もありうるだろう」と新たなパートナー企業の可能性も示唆した。
2015年11月11日アドバンテックと三井物産エレクトロニクス(MBEL)は11月5日、アドバンテックのIoT向けハードウェア/ソフトウェアソリューション活用支援プログラム「WISE-Cloud Alliance」の基本契約を締結したことを発表した。WISE-Cloud Allianceは、センサモジュールやゲートウェイなどのIoT向けハードウェア、およびこれらのハードウェアから生成されたデータをクラウドサービスで活用できるようにするためのソフトウェアプラットフォームである「WISE-PaaS」の活用支援を行うプログラム。同アライアンス契約の締結により、MBELにはサーバ/エージェントソフトウェア&SDK、サンプルコード・ソースコードの提供、Microsoft Azureの使用ライセンス、IoTデータ収集ゲートウェイ・IoTエンベデッドシステムなどのハードウェア、および製品トレーニングとサポートが提供される。また両社は、共同での営業活動・イベントプロモーションを通じ、IoT導入を進める顧客やシステムインテグレータに、ワンストップでのIoTソリューション提供を推進。特に、各種製造業の生産現場、公共・社会インフラ、環境・エネルギーなど、無線センシングを活用できる市場に注力していくとしている。
2015年11月05日うちのダメ夫
あの日、私はいじめの加害者にされた
私、「サレ妻予備軍」になりました。