「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015」のクロージングセレモニー&授賞式が2月22日(日)に開催され、グランプリにAV業界の一端を描いた、自身もAV監督である50歳の森川圭監督による『メイクルーム』が選ばれた。これまでクエンティン・タランティーノや入江悠など若き才能を発掘し、若手監督の登竜門というイメージの強い「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」だが、50歳はグランプリ受賞監督としては過去最高齢となる。『メイクルーム』は森川監督が自身の経験やメイクスタッフへの取材を基に、AV撮影現場のメイクルームでのドタバタを描いた群像劇。森川監督は約30年前に助監督としてキャリアをスタートさせ、元「AKB48」の中塚智実主演のホラー作品『エクステ娘 劇場版』で商業映画の監督を務めたこともあるが、基本的には「AVをメインで撮影、監督してきた」とのこと。4年ほど前に本作の元となる舞台を自ら制作し小劇場で上演したが「舞台でしかできないものをという思いで作ったつもりでしたが、十分に映画で行けると思った」とプロットやセリフ、設定などはそのままに、本物のAV女優を起用して今回の映画を制作した。グランプリとして『メイクルーム』というタイトルが読み上げられると、森川監督は壇上に上がるも「何と言っていいか…、何か(賞を)いただけたらと思ってましたが、まさかグランプリを獲れるとは思ってなかったです」と驚いた様子だった。一緒に映画祭を訪れた関係者は監督を残して既に夕張を後にしてしまっていたが「みんな、獲ったよ!」とトロフィーを掲げ喜びを口にした。「オフシアター・コンペティション」部門の審査委員長を務めた大森一樹監督は『メイクルーム』の受賞と森川監督について「50歳と聞いてびっくり。若いことばかりがもてはやされるけど、その意味で50歳の監督にあげられたのは嬉しい。映画はある程度年齢がいって、世の中を知ったところでメッセージを伝えられる芸術。若けりゃ若い方がいいという映画祭の風潮に対し、ひとつのメッセージになる」と50歳のグランプリ監督を祝福した。森川監督は改めて年齢および、AV監督という経歴について触れ「僕の周りでAVを撮っている方は、みんな名前を変えてます。一般の映画を撮れなくなる可能性が高いし、CMも撮れないので。でも自分は、名前変えずにどこまでやれるのか?とやってきた。延々と続けて、50になってこういう形で賞をいただけて…。僕くらいの年でも評価してもらえるという事実ができて嬉しい」と気概を口にすると共に改めて受賞の喜びを語った。本作は現時点では劇場公開は未定で、今後、公開に向けて動いていくという。次回作について尋ねられると「許されるならパート2をやりたい。(本作の)3か月後の話で、脚本も出来上がってて、完結編になります」と明かした。「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015」は2月23日(月)まで開催中。(text:cinemacafe.net)
2015年02月23日「映画づくりで大切にしているのは、常に正直であること。そしてドラマに込めた真実だ」。クリント・イーストウッドが来日し、映画監督としてのポリシーを語ったのは、いわゆる“硫黄島2部作”を完成させた2006年11月のこと。ご承知の通り、その言葉はいまも健在だ。当時のイーストウッド監督は『ミスティック・リバー』(’03)で称賛を浴び、『ミリオンダラー・ベイビー』(’04)で2度目となるアカデミー賞「作品賞」&「監督賞」を受賞。「ついにキャリアの到達点を迎えた」と称えられ、『父親たちの星条旗』『硫黄島からの手紙』は「集大成」だと絶賛された。ところがイーストウッド監督は、その後もペースを落とすどころか、次々と傑作を世に送り出している。もはや“量産”という言葉がふさわしいほどだ。『チェンジリング』『グラン・トリノ』『インビクタス負けざる者たち』『ヒアアフター』『J・エドガー』…この数年でイーストウッド監督がメガホンをとった作品群は、ジャンルもテーマも同一監督とは思えない多彩ぶりだ。さらに2014年、『ジャージー・ボーイズ』『アメリカン・スナイパー』という2本の傑作を一気に“撮ってしまう”驚異の生産性を見せつけられると、感動や尊敬以上に「ナゼ?」と純粋な疑問が沸いてきてしまう。イーストウッド監督はリハーサルを嫌い、どのシーンもほぼワンテイクで撮ることで知られる。「俳優でもある彼が、出演者の気持ちや立場を理解しているから、早撮りができる」と説明されれば、頭では理解できた気になるが、当然「ナゼ?」の答えには遠く及ばない。それでも、現在84歳のベテランが“残り時間”を意識しながら、興味や関心に対して正直に向き合い、作家として自分なりの真実を刻もうとする姿は、どの作品にも垣間見える。全米でキャリア最大の興行的成功を収めている最新作『アメリカン・スナイパー』も然りだ。愛国と正義、戦場の狂気…、“硫黄島2部作”にも底通するテーマを「いましか描けない」タイミングでスクリーンに焼き付けた志の高さに、第87回アカデミー賞はどんな反応を示すだろうか。監督賞候補に挙げなかった罪滅ぼしとして、「作品賞」を授けるサプライズもあるかもしれない(似たケースとして、一昨年前には『アルゴ』が作品賞に輝いている)。『アメリカン・スナイパー』は2月21日(土)より新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほか全国にて公開。(text:Ryo Uchida)■関連作品:アメリカン・スナイパー 2015年2月21日より全国にて公開(C) 2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
2015年02月20日ユアン・マクレガーがピューリッツァー賞受賞の小説の映画化で監督デビューすることになった。主演も兼ねるという。ユアンが監督するのはフィリップ・ロス原作の小説「American Pastoral」(原題)の映画化で、ベトナム戦争時代の物語。順風満帆な生活を送ってきたビジネスマンの主人公が、愛娘が反体制活動に参加しテロ行動を起こしたことによって、人生が大きく変わってしまう。当初は『ソルト』のフィリップ・ノイス監督がメガホンをとる予定だったが、降板が決まり、すでに主演に決定していたユアンが監督挑戦へ意欲を見せた。ユアンは「何年も前から監督をやりたいと思い続け、語るべき物語が見つかるまで待っていました。この脚本はまさにそのストーリーがあったのです」と18日(現地時間)にコメントを発表した。主人公の妻をジェニファー・コネリー、娘をダコタ・ファニングが演じる。監督・主演を兼ねる大役への挑戦を「楽しみにしています」と語るユアン。撮影はペンシルヴェニア州ピッツバーグで来月から開始を予定している。(text:Yuki Tominaga)
2015年02月20日映画『ムーミン南の海で楽しいバカンス』が間もなく公開になる。日本でも愛され続けているトーべ・ヤンソンの人気作を映画化した作品だが、監督を務めたハンナ・ヘミラは、原作のテイストをアニメに盛り込むことにこだわったという。来日時に話を聞いた。その他の写真『ムーミン』シリーズは1945年に発表され、今でも根強い人気を誇っているシリーズで、ムーミン谷で暮らすムーミン一家と仲間たちの物語を描いている。今回の劇場版ではムーミン一家とイタズラ好きのリトルミイが地中海沿岸のリビエラにバカンスに出かけて騒動に巻き込まれる物語が描かれる。本作は全世界で44の言語に翻訳されており、テレビアニメシリーズは124か国で放映された。当然、これまでもいくつもの映画化企画があがったが、ヘミラ監督は「近頃のアニメは3DやCGが主流ですがムーミンの場合、立体にすると造形が難しいので原作の資質を失わずにアニメ化するのはハードルが高かったのではないでしょうか?」と分析する。そこで監督たちは、トーべの姪ソフィア・ヤンソンの承諾を得て、全編を手描きの2Dアニメで映画化することにした。「2Dの手描きアニメは現在の主流ではありませんから、スタジオを見つけるのも苦労しました。しかし、私たちはトーべさんに対するオマージュとしてこの映画を作りたかったし、彼女の線の美しさを活かしたかったので、手描きアニメにしたのです」。製作陣のこだわりは脚本作りにも反映されている。「私たちはオリジナルに立ち戻りつつ、エンターテインメントとしてしっかりと楽しめる映画を作りたいと思いました。この映画はトーべさんの書籍のエピソードを原作にしていますが、そのまま映画化してしまうと15分か20分にしかなりません。ですから、彼女が描いた他のエピソードやスタイルを借りながら話を膨らませて、動きや音楽や色彩を駆使して映画作りを進めていきました。このドラマは1950年代にトーべさんがお母様とリビエラに旅に出た際の思い出や想いが反映されたものです。ですから、彼女の体験をムーミンに置き換えて綴った物語でもあるのです」。手間のかかる手描きアニメを採用し、白黒のコミックに色彩を追加し、原作を繰り返し読み込んで脚本作りがされた本作は、監督の語る通り、トーべ・ヤンソンが描こうとしたムーミンの世界そのままだ。アニメシリーズやグッズでムーミンに親しんできた日本の観客は、どこか懐かしく、同時に新鮮な想いを抱くだろう。「この映画はフィンランドやスウェーデンだけでなく欧州圏やアラブ諸国、香港、オーストラリアなど数々の国で公開が決まっています。私は『ムーミン』は“コミュニティ”と、大きな意味での“家族”を描いた物語だと思っていますから、異なったコミュニティでこの映画が公開されて、観客がこの映画をどのように観てくれるのか楽しみにしています」。『劇場版ムーミン南の海で楽しいバカンス』2月13日(金) 全国ロードショー
2015年02月12日ゴキブリが超進化する…という斬新な設定で連載当初から話題となったコミック「テラフォーマーズ」(集英社刊)が実写映画化されることが決定!三池崇史監督がメガホンを握り、2016年に公開することが明らかとなった。原作は、「このマンガがすごい!2013」オトコ編で第1位、「全国書店員が選んだおすすめコミック2013」では第2位を獲得し、現在11巻まで出版されている単行本の累計発行部数は1,000万部を突破している人気作だ。昨年には、テレビアニメ化&OVA化も果たしている。原作コミックでの物語は、火星のテラフォーミング(※人為的に惑星の環境を変化させ、人類の住める星に改造すること)用に放たれたゴキブリが人型へと進化…一方、地球では火星から飛来した未知のウイルスが蔓延する。そのワクチンを作るためウィルスのサンプルを手に入れようと、特殊な人体改造・MO手術を施された人間たちが火星で壮絶なバトルを繰り広げるSF作品だ。今回の実写映画化にあたり、原作の貴家悠さんは「映画になります…!! 母さん…『あんたの漫画ゴチャゴチャしてて全く何やってるのか分かんないけど、就職はいつすんの?』 とはもう言わせません…映画になるんですよ、母さんッ!!!」と喜びを爆発させる。一方、作画の橘賢一さんは「実写映画にしてもらえるかも、という話を聞いてはじめに出た言葉は『まじで!?』でした」とオファー当時をふり返る。「どういう風に実写映画にするのか…、僕にはまったく見当がつかなかったのです。しかし、メガホンをとるのが三池監督に決まり、『ああ、これはいける…ッ!』と直観しました」とすでに光明は見えたとコメントを寄せている。実写映画化にあたっては2年ほど前から準備を始めてきたそう。三池監督も「『スゲー漫画』から『スゲー映画』が生まれる事を証明しようと思う。映画をナメたら火傷するぞ!」と相当な気合いで臨む様子。ロケ地やキャスト情報などはまだベールに包まれているが、果たしてキャスティングは?火星に巣喰う人型ゴキブリ“テラフォーマー”は特殊メイクなのか、CGで描くのか?三池監督の手腕に注目が集まりそうだ。実写映画『テラフォーマーズ』は、5月中旬より撮影開始を予定、2016年に公開される。(text:cinemacafe.net)
2015年02月12日山田悠介の小説を基に繰り返し映像化されてきた『リアル鬼ごっこ』を園子温監督がオリジナルのストーリーと設定で映画化することが発表になった。登場人物は全員女性で、トリンドル玲奈、篠田麻里子、真野恵里菜がヒロインを演じる。小説『リアル鬼ごっこ』は、2001年に発表され、発行部数200万部を突破するベストセラーになり、映画が5作品公開され、連続ドラマ化されるなど現在も人気を集めている。今回、園監督は原作にインスパイアされたオリジナルの脚本を執筆。修学旅行中に謎の“瞬殺ストーム”に追われる高校生ミツコ(トリンドル)、なぜか花嫁になり豚の顔をした花婿と結婚式を挙げさせられる高校生ケイコ(篠田)、マラソンレース中にマシンガンをぶっ放す女教師に追われる高校生いずみ(真野)が必死に逃げる過程で、なぜ彼女たちが追われているかが明らかになっていく。園監督は「今、連続して、『ラブ&ピース』『ひそひそ星』と、オリジナルを作っていて、この作品もオリジナルストーリーとして3本目になりますが、前2本とも僕のファンが期待しているようなグロテスクな作品ではないので、そういう意味では、この作品はみんなが僕に求めているもの、期待している園子温作品を久々に出せると思います」と言い、「トリプルヒロインの3人とも、みなさんが思っている、例えば『トリンドルさんだったらこうでしょ』という像は破壊され、新鮮な新しい彼女達が見えるかと思います。彼女達にとっても今後、役どころが増えていくような幅の広がりが日々見えています」と語っている。プロデューサーの谷島正之氏は「本作は単なるリブート企画ではありません。まったく新しい、オリジナルなリアル鬼ごっこを作りたかった。だから園子温監督を招いた」と説明。「観客の想像を裏切り、期待を上回る、それが映画だと思ってつねに製作していますが、園子温は撮影の時点から、毎日目の前でそれが起こっています」とコメントしている。映画は10日のクランクアップを目指して現在、撮影中で、7月に公開される。『リアル鬼ごっこ』7月11日(土)、全国ロードショー
2015年02月09日『ドロップ』『漫才ギャング』『サンブンノイチ』など映画監督としても活躍する芸人・品川ヒロシの監督最新作『Zアイランド』。このほど本作で映画初出演を果たす、歌手でドラマーのシシド・カフカの“ゾンビ化”した姿が公開された。謎の病気が蔓延した島“Zアイランド”を舞台に、ヤクザ同士の抗争に加え、ゾンビとの熾烈な戦いを描く本作。主人公・宗形組組長の宗形を演じるのはベテラン俳優・哀川翔。さらに鶴見辰吾、鈴木砂羽、宮川大輔、窪塚洋介、般若など個性的な面々が名を連ねている。そんな本作でカフカさんは、ナースの直美役として登場。普段のクール&ビューティーな美貌を封印し“ゾンビメイク”での演技に挑戦したが、ゾンビ化の感想については「ゾンビに変身したのは初めてでしたので、何か強い仮面を与えられたようでゾンビ化した後の“直美”は、より大胆に演じられた様に思います」と語る。さらに、「なかなか自身の演技を素直には観る事が出来ないのですが、ある登場人物の指を食べているシーンは楽しんで観る事が出来ました」とも告白。カフカさんは本作で劇伴のドラムも担当しているとのこと。ドラマーと女優、2つのシシド・カフカの魅力に注目だ。『Zアイランド』は5月16日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2015年02月05日映画『アーティスト』のミシェル・アザナヴィシウス監督の新作『あの日の声を探して』が4月24日(金)より公開されることが決定し、ポスタービジュアルが発表された。アザナヴィシウス監督は、映画公開に合わせて、3月18日(水)と19日(木)に来日する。その他の画像本作は、アザナヴィシウス監督が、1946年にアカデミー賞4部門にノミネートされた名作『山河遥かなり』から着想を得て製作した人間ドラマで、1999年、ロシアに侵攻されるチェチェンを舞台に、両親を殺され、声を失った9歳の少年ハジが辿る運命を描く。「私が監督として立ちたい場所にある作品」とアザナヴィシウス監督が語る本作は、グルジアでのロケを敢行し、全編手持ちカメラを用いて、徹底的にリアリティを追求した作品になっているという。オーディションで選ばれた素人のチェチェンの少年が主人公ハジを演じ、『アーティスト』のベレニス・ベジョ、『キッズ・オールライト』のアネット・ベニングら実力派俳優が脇を固めている。『あの日の声を探して』4月24日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国順次公開
2015年02月03日今年、生誕100年を迎える市川崑監督の傑作『雪之丞変化』『炎上』『おとうと』が4Kデジタル復元され、2月から開催される第65回ベルリン映画祭のフォーラム部門で上映されることが決定した。その他の写真市川崑は、アニメーターとして活動した後、1948年に『花ひらく』で監督デビュー。『ビルマの竪琴』『東京オリンピック』『犬神家の一族』『ぼんち』『野火』など数々の傑作を発表し、徹底的にこだわり抜いた画作りと観客をアッと驚かせる語り口で人気を博した。このほど4Kデジタル復元されたのは3作品。『雪之丞変化』は名優・長谷川一夫の当たり役・中村雪之丞を主役に据えた作品で、大胆な色使いと構図が特徴的な1作。『炎上』は監督と繰り返しタッグを組んできた市川雷蔵を主演に迎えて三島由紀夫の小説『金閣寺』を映画化した作品だ。幸田文の小説を名脚本家・水木洋子が脚色した『おとうと』は岸惠子、川口浩を出演者に向かえた傑作で、カメラマン宮川一夫が“銀残し”という手法を用いて描いた色彩も高く評価された。今回の復元は現存する最良のフィルムを4Kを超える解像度でスキャンし、ゴミや傷、色むらをすべてデジタルで補正。公開時の質感を最大限に尊重して復元を行ったという。今回の映画祭出品について岸惠子は「深川の土手に桜の木を植えて、『おとうと』が撮影されたのは54年もむかし。その古いフイルムが、市川崑監督の生誕100年を記念して新技術のお蔭で蘇りました。女優としての私に大事な道しるべをくれた『おとうと』。今の若い方たちにはどんなふうに観ていただけるのでしょう?心配と希望で胸が高鳴ります」とコメントしている。また、3作品が3月に開催される第39回香港映画祭にも出品されるほか、監督の生誕100周年を記念する様々な企画が進行中だという。
2015年01月21日カンヌをはじめ各国の映画祭で高い評価を集める河瀬直美監督の映画『2つ目の窓』のブルーレイ&DVDが本日リリースされたのを記念して、河瀬監督が作品に込めた思いを語る特典映像の一部が公開された。特典映像の一部本作は、河瀬監督が自身のルーツである奄美大島を舞台に、ふたりの高校生の初恋と成長、そして彼らを取り巻く大人たちの生き方を通して、命のつながりや人と自然との共存について描いた作品。オーディションで選ばれた村上虹郎と吉永淳が主演を務め、杉本哲太、松田美由紀、渡辺真起子、村上淳らが共演する。『萌の朱雀』『沙羅双樹』『殯〈もがり〉の森』など河瀬監督がオリジナル脚本で手がけた作品としては7作目となる本作は、カンヌ映画祭コンペティション部門に正式出品されたほか、ウラジオストク映画祭でグランプリを受賞、サハリン映画祭では主演女優賞(吉永淳)を受賞した。このほど公開された特別映像は、ブルーレイ&DVDに収録される特典映像の一部を抜粋したもので、リリースに際して河瀬監督は「奄美大島の自然は世界一です。朝日の神々しさ、満月の夜の神秘、そのどれもがフィルムに刻まれている。そこに少年少女のほとばしる生命力。言葉では言い表せないものの数々を繰り返しブルーレイ&DVDで体感してください」とコメントを寄せている。本日リリースされたブルーレイ&DVDは特典映像満載の2枚組仕様で、初回版にはスペシャルアウターケースとブックレットが付いてくるほか、制作日記が封入される。特典映像には、メイキング・オブ・『2つ目の窓』、ナビゲーション番組(映画『2つ目の窓』から見える風景 カンヌの窓から/奄美の窓から)、カンヌ映画祭記などが収録される。『2つ目の窓』ブルーレイ&DVD 発売中ブルーレイ:5500円(税別)DVD:4500円(税別)発売・販売元:ポニーキャニオン(C)「FUTATSUME NO MADO」JAPANESE FILM PARTNERS, COMME DES CINEMAS, ARTE FRANCE CINEMAS, LUIS MINARRO
2015年01月21日映画『愛のむきだし』(2009年)や『ヒミズ』(2012年)などで知られる園子温監督が初めて特撮怪獣映画に挑戦する最新作『ラブ&ピース』が、主演に長谷川博己を迎え、2015年初夏に全国公開されることが决定した。園監督のオリジナル作品で、初の特撮を用いた演出で挑む本作は、一人の冴えないサラリーマンを主人公に、崩壊する東京の街に巨大化した"LOVE"=愛の怪獣が東京の街に現れるという驚愕の超展開。「血が出ない」「誰も死なない」「エロくない」とこれまでの"園子温ワールド"のイメージと一線を画しながらも、園監督らしい展開はそのままに、愛と希望と夢で綴られた極上エンターテインメントに仕上がっているという。園監督は「この作品は俺の魂の集大成だ」と本作への意気込みを語っている。キャスト陣は、うだつの上がらない日々を過ごすサラリーマンの鈴木良一を長谷川が演じ、彼が想いを寄せる女性・寺島裕子を麻生久美子、物語の鍵を握る謎の老人役を西田敏行が務める。そのほか、渋川清彦、奥野瑛太、マキタスポーツ、深水元基、手塚とおる、田原総一郎、水道橋博士、宮台真司、茂木健一郎、津田大介、真野恵里菜、神楽坂恵、松田美由紀と豪華出演陣が集結。さらには、本作の特撮を駆使したキャラクターたちの声に、星野源、中川翔子、犬山イヌコ、大谷育江と、個性的な俳優・声優たちが名を連ねている。園監督作品では二度目の出演となる長谷川は「一人の冴えないサラリーマンがロックスターになる、そして怪獣が出てくる特撮映画だ、と聞いて一体どんな映画なのか想像がつきませんでしたが」と前置きしつつ、「出来上がった作品をみて不覚にも涙しました。見る人たちそれぞれにカタルシスのある作品です」と称賛。「過酷な撮影は、二度と園監督の作品に出たくない! とも思わせましたが、やはりやって良かった! また新たな一面を引き出していただきました。園子温監督の自由な発想、魂の叫び、また皆さんが度肝を抜かれる事となるでしょう」と期待を寄せている。また、麻生は「ストーリーもファンタジーで心に響き、今まで観たことのない素敵なとんでもない映画。やっぱり園さんの才能は計り知れない凄さがあると思いました。」、西田は「出来上がった作品は素晴らしく、手に汗握りながら最初から最後まで楽しく観ました。とても園子温監督らしい映画だと思います」とそれぞれに太鼓判。特にTVドラマ『時効警察』で園監督作品に出演した麻生は「衣装合わせの時には、とにかくダサく、色気はゼロで麻生久美子だとわからない感じでやって欲しいと言われたので、今までにない自分を引き出して貰えそうでワクワクしたのを覚えています」と撮影を振り返っている。そして発表に合わせて、本作のティザービジュアルと特報映像も公開。ティザービジュアルを手がけたのは、漫画家・イラストレーターとして活躍している山田章博氏で、アートディレクションは本編で特技監督を務めている特撮界の俊英・田口清隆氏が担当している。(C)「ラブ&ピース」製作委員会
2015年01月20日サンフランシスコ映画批評家協会が、『6才のボクが、大人になるまで』を今年の最優秀映画に選んだ。同作品からは、ほかにリチャード・リンクレーター監督が監督賞を、パトリシア・アークエットが助演女優賞を受賞したほか、編集賞も獲得した。その他の写真主演男優賞に輝いたのは、『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のマイケル・キートン。主演女優賞は『アリスのままで』のジュリアン・ムーア、助演男優賞は『バードマン…』のエドワード・ノートン。脚本賞は『バードマン…』のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、脚色賞は『Inherent Vice(原題)』のポール・トーマス・アンダーソン、外国語映画賞はポーランドの『Ida(原題)』が獲得した。文:猿渡由紀
2014年12月16日特撮怪獣映画『ゴジラVSビオランテ』(1989年)をはじめとした平成『ゴジラ』シリーズの特技監督で知られる川北紘一さんが5日、肝不全のため都内の病院で死去したことがわかった。72歳だった。川北さんが代表取締役を務めるドリーム・プラネット・ジャパンがFAXを通じて発表し、葬儀、告別式は近親者で営まれた。喪主は妻繁子さん。後日お別れの会が予定されている。川北さんは、東宝の特殊撮影係を経て、『ウルトラマン』シリーズで知られる円谷英二特技監督をはじめ、有川特技監督、中野特技監督に師事。1972年には、特撮TVドラマ『ウルトラマンA』で特撮を初演出している。そして、平成『ゴジラ』シリーズと呼ばれる『ゴジラVSビオランテ』(1989年)から『ゴジラVSデストロイア』(1995年)までの計6作品で特技監督を務め、現在のところゴジラ映画における"特技監督"の肩書をもつ最後の人物だった。(『ゴジラ 2000ミレニアム』以降は「特殊技術」というクレジットに変わる)。初代・特技監督の円谷英二氏に師事した川北さんは、怪獣映画の草創期を知る人物で、文字通り"特撮の生き字引"として活躍した。2003年には、株式会社ドリーム・プラネット・ジャパンを設立して代表取締役に就任し、平成『ゴジラ』シリーズのスタッフを集めて特撮TVドラマ『超星神グランセイザー』を制作。以降の「超星神シリーズ」、2006年に公開された特撮映画『超星艦隊セイザーX~戦え!星の戦士たち』の特撮演出を担当した。2013年には、大阪芸術大学の客員教授も務め、「映像美術論」という講座で学生に特撮を教えていた。川北さんは今年9月のインタビューにて「今はデジタルで何度でも撮り直しが利くし後で加工もできるから、学生は片っ端からバシャバシャ撮っちゃうんだよ(笑)。だけどそれじゃあ新しい映像作りというものは生まれない。そのために特撮の、やり直しがきかない緊張感というものを教えてるんだ。やっぱり特撮は現場で学ぶしかないからね。座学なんかじゃ何も学べないんだ」「彼らの中から1人でも次の映像作りを支える監督やスタッフが育ってくれればいいなあと思ってるんだけどね」と自身の特撮への想いを伝えていた。twitterでは、川北監督が特技監督を務め、1989年に公開された『ガンヘッド』にマット画の助っ人として参加した"怪獣絵師"で知られるイラストレーターの開田裕治氏、『超星神グランセイザー』の制作時に企画デザインを描いたというアニメーション監督、メカニックデザイナーのさとうけいいち氏、『ガンヘッド』や『ゴジラVSビオランテ』などで従事したアベユーイチ監督など、多く関係者や親交のあった人々から続々と追悼メッセージが寄せられている。
2014年12月11日9月の東京開催に続き、京都、名古屋、神戸、福岡での開催を控える「第36回ぴあフィルムフェスティバル」(PFF)。東京では特別企画「映画監督への道~私を駆りたてるもの~」と題し、公開中の『超能力研究部の3人』や来年公開の『味園ユニバース』など話題作を発表し続ける山下敦弘監督のトークセッションが行なわれた。地方開催を前に改めて山下監督に、この特別企画のテーマに沿ってPFF、そして映画作りについて話を聞いた。その他の写真大阪芸術大学在学中から映画を制作してきた山下監督。PFFとの関わりについて「先輩の熊切(和嘉/映画監督)さんが、『鬼畜大宴会』でPFF準グランプリを獲ったこともあり、自分も出そうと思ったんですが、ちょうど自分の卒制の『どんてん生活』が大阪の作品の特集上映の形でPFFで上映されて、コンペには出せなかったんですよ」と語る。ゆえに自作を出品することはなかったが「僕は大阪で作っていたけど、PFFは全国から来た人たちが一堂に会して“同期”のような感覚で刺激し合っていて、そういう交流の場がうらやましい気持ちもありましたね」と明かす。「やはり認められたいという気持ちはあった。賞を獲れば次にも繋がるし自信にもなる。負けることも多いけど、それがバネにもなった。そこでの競い合いってすごく重要でしたし、自分の作品が海外の人の目に触れるというのはすごく感動的でした」。既にメジャー作品の監督として十二分に認知される存在になった。「まだ自分の中では“プロ”とか“映画監督”という立場に関して揺れ動いてる……」と苦笑しつつ、映画作りの“原動力”についてはこんな話も。「初期の衝動、自分の中から出てくる『やりたいこと』というのはすごく大事ですが、でもそれは最初の1~2本ですよ。そこから先、何ができるか?いまの自分は企画をいただいたり、原作にヒントをもらって作る場合も多いけど、例えば『このキャストなら魅力的な作品ができそう』とか『こうすれば面白い』という、他人の企画が“譲れない”自分の作品になる瞬間がある。その感覚が大事だなと思います」。さらに原動力を突き詰めれば「『他人と違うことがしたい』とか『モテたい』とかだった(笑)」。それでも「作ってる最中は夢中で、全力を注いだら、その分だけ返ってくるリアクションや感動があった」と言葉に力を込める。「それは映画祭であれ、大学であれ周りの人間がいたから。若い人たちにとっては機材などの点で映画作りが以前より手軽になったと思いますが、だからこそ『映画は一人では作れない』という言葉の意味を強く感じます」。取材・文・撮影:黒豆直樹第36回PFFぴあフィルムフェスティバル12月13日(土)から19日(金)まで京都シネマ12月18日(木)から21日(日)まで愛知県芸術文化センター12月20日(土)から23日(火・祝日)まで神戸アートビレッジセンター2015年1月3日(土)から9日(金)まで京都シネマで開催
2014年12月11日映画監督・写真家の長谷井宏紀が、ヴェネチア映画祭「カレッジシネマ部門」にて日本人として初めて選出されたことが発表され、イタリア・フィリピン合作で製作される長編映画『BLANKA』(仮)で長編映画監督デビューを果たすことが決定した。ヴェネチア映画祭の「カレッジシネマ部門」は、世界中から新人映画監督を発掘し育成するプロジェクトで、今年は世界中から約400ほどの応募があり、12企画(イギリス、イタリア、フランス、ポルトガル、ブルガリア、スリランカ、ニュージーランド、アルゼンチン、ブラジル、ブルガリアなど)が選ばれ、最終選考では3つのプロジェクト(イタリア、ポーランド、アメリカの企画)に絞られた。この3作品は、ヴェネチア・ビエンナーレとヴェネチア国際映画祭より出資を受け製作されることが決定。2015年9月のベネチア映画祭にてプレミア上映が行われる予定となっている。これまで、世界各国の映画や映画祭で活動する一方、CHARAや「THE BACK HORN」などのミュージックビデオなども手掛けるなど、幅広いフィールドで活躍してきた長谷井さん。今回の『BLANKA』(仮)では、脚本・監督を務め、現在イタリア人プロデューサのフラミーニョ・ザドラ(ドルジェ・フィルム)と制作に入っているとのこと。作品自体は、フィリピン・マニラの路上で生きる子どもたちを主人公としたロードムービーとなるようで、すべてストリート・キャスティングで俳優を採用するとのことだ。(text:cinemacafe.net)
2014年11月28日『ダラス・バイヤーズクラブ』のジャン=マルク・ヴァレ監督が、60年代末に活躍した歌手ジャニス・ジョプリンの伝記映画を監督することになった。主演にはエイミー・アダムスが決まっている。ジョプリンの人生を映画化する企画はハリウッドに長い間上がっており、ピンクやリリー・テイラーが主演候補に挙がったこともある。アダムスが主演に決まったのは4年前で、当時は『シティ・オブ・ゴッド』のフェルナンド・メイレレスが監督する予定だった。後にはリー・ダニエルが監督候補に挙がり、ようやくヴァレ監督に落ち着いた形だ。ヴァレ監督の最新作は、来月北米公開予定の『ワイルド(原題)』。主演のリース・ウィザースプーンは、来年のオスカーで主演女優部門の有力候補と言われている。また、ヴァレ監督は最近、ジェイク・ギレンホール、ナオミ・ワッツ主演の『Demolition(原題)』を撮り終えている。アダムスの次回作は、来月北米公開予定のティム・バートン監督作『ビッグ・アイズ』。過去に、レネ・ゼルウェガーもジョプリンを演じることに興味を示し、自ら主演とプロデューサーを兼ねる『Piece of My Heart』という企画を立ち上げたが、実現しないまま終わった。文:猿渡由紀
2014年11月25日1979年に劇場公開されたサンリオ製作の実写人形アニメーションを新生させた映画『くるみ割り人形』が公開になる。本作の監督を務めたのは、アートディレクターの増田セバスチャン。幼少期にオリジナル版を観たという監督は“過去から未来への接続”をテーマに製作にあたったという。その他の画像本作は、人形アニメーション『くるみ割り人形』のネガフィルムを使用し、CGを全篇に加え、まったく新しい作品として3D化するもの。雪の夜に大切な“くるみ割り人形”をネズミの大群にさらわれてしまった少女クララが、ネズミを追って迷い込んだ“人形の国”で、大切なものを守るため、自らの“いのち”をかけて奮闘する姿を描いている。オリジナルの『くるみ割り人形』は、サンリオ社長の辻信太郎が脚本を手がけ、中村武雄監督と日本を代表する人形アニメーターのひとり、真賀里文子が5年の歳月をかけて作り上げたコマ撮りアニメーションだ。幼少期に出身地の松戸でオリジナル版を観たという増田監督は「作品を再解釈する際にまず考えたことは“過去から未来への接続”でした」という。「現在は日本のポップカルチャーが世界に発信されていますが、それは先人たちの偉業や礎があった上で可能なことで、その功績が脈々と受け継がれていると思うんですね。だから、まずそのことを若い人たちにも伝えたかったですし、現代の観客が僕と同じようにこの物語に影響を受けてクリエイターになってくれたら、という想いがありました」そのために監督は丁寧にフィルムを見直し、現代の観客が楽しめるようにテンポを調整しながら新たな映像と立体処理を加えていった。「旧作を見たときに、まるで舞台を見ているように感じたんです。だから3Dも迫力を追求するのではなくて、箱庭の中に首をつっこんでいるような感じにしたかった。僕の思う“カワイイ”は、自分が好きなものだけを集めて自分だけの小宇宙を作ること。だから、この映画も箱庭的な小宇宙の中でクララが旅をしているようにしたかったし、声優さんたちにも最初に『一緒に舞台を作るつもりでやってください』とお願いして、アフレコの時には一緒に演技もしてもらいました」そうして完成した2014年の『くるみ割り人形』は、コマ撮りアニメの手作り感と、増田監督にしか描けないファンタジックな世界が見事に融合した作品に仕上がった。「僕はファンタジーは“どこにでもある現実の扉”だと思うんですね。現実とファンタジーは表裏一体で、ファンタジーにくるむことで真実が見えることがある。意外だったのは、この映画を観て僕に真っ先に話しかけてくれるのは30、40代の男性なんですよ。僕がいつも使っている色は、子供の頃に見えていたはずの色を復活させているだけなんです。だから、若い女の子はもちろんなんですけど、大人の方にも映画を観てもらいたいですし、大人だからこそ見つけられるメッセージがこの映画にはあると思います」『くるみ割り人形』11月29日(土)全国ロードショー(3D/2D同時公開)
2014年11月21日「女って怖いなって」と口を開いた大島優子。直木賞作家・角田光代のベストセラー小説を、『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督が映画化した『紙の月』の台本を読んでの第一声だ。物語のキーパーソンとなる相川を演じた大島が、監督と作品を振り返った。その他の写真年の離れた大学生と恋に落ち、銀行の渉外係としての立場を利用して巨額の横領事件を引き起こすことになる主婦・梨花。自分が自分でなくなるような、もしくは体の奥底に眠っていた本当の自分を引きずり出す運命の恋。そんな恋愛について「まだ経験はありませんね。恋愛でそれほど左右されるタイプではないので。でもそんな恋に出会えるのなら、落ちてみたいかな」と笑う大島。本作では原作小説には登場しない、ドキリとするような言葉を屈託のない笑顔でぶつけ、梨花を無意識に誘導していく役に扮した。「原作だと銀行の中の描写はそれほど多くないんです。梨花の同級生や昔の恋人が彼女を語ることで梨花という存在を浮き彫りにしていく。一方、映画では梨花が実際に横領に手を染めていくプロセスを画にしたかったので、銀行の場面を増やしました。そのうえで、梨花の葛藤、“揺れ”みたいなものを外側から映し出す存在として、相川と、小林聡美さん演じる隅を登場させたわけです」と監督。「最初は梨花とリンクしているとは思っていなかった」という大島。「現場に入ってから、監督から相川はひょっとしたら梨花自身かもしれない、梨花の中の悪魔としてささやいて欲しいと言われまして。役作りの段階ではそのように考えていなかったので、少し焦りました(笑)。あくどくなく、無邪気、こういう子って現実にいるよなと思ってもらえるように、カラッとしたイメージで演じました」。そして作品は完成。大島が感じ取ったのは当初抱いた“怖さ”だけではなかった。「怖さと同時に美しいんですよね。毒を持てば持つほど。それが毒かどうかも分からなくなってくるし。自由を求める梨花の姿は見ていて気持ちがいいんです。でも男性の場合はどう思うのかな。興味がありますね(笑)」。『紙の月』11月15日(土)全国ロードショー※取材・文・写真:望月ふみ
2014年11月14日デビュー作『カケラ』が国内外から高い評価を受けた新進監督の安藤桃子と、出演作ごとに圧倒的な存在感を放つ女優の安藤サクラ。実の姉妹であるふたりは“いつか一緒に映画を”との想いを互いに抱いていたという。その姉妹の想いがこのたび結実した。その他の写真安藤桃子監督の長編第二作にして主演に安藤サクラを迎えた『0.5ミリ』は、監督自身が書き下ろした同名小説の映画化。自身の介護経験に着想を得た物語は、当初から妹を想定して書き上げたという。「私がひとつなにか物語を創作しようとなるとき、いつも主人公はサクラなんです。実はデビュー作の『カケラ』もそう。ですから、小説の段階から“映画化したときの主人公はサクラで”と思っていました」(桃子)「そのことを姉から聞いて、小説はすぐに読みました。以前から姉は“次は一緒に映画を撮る”と決めていたので、それがついに実現できるのがうれしかったです。それにこの主人公は俳優としてもすごく憧れる主人公像。全力で“サワ”という人物を表現して、この作品で姉妹最強タッグを組みたいと強く思いました」(サクラ)安藤サクラ演じるのは、情の厚い介護ヘルパーの山岸サワ。“冥土の土産におじいちゃんと一緒に寝てもらえないか”との依頼を断りきれなかったばっかりに仕事もお金も家も失ってしまった彼女は生活のため、今度は困っている老人宅に居候する“おしかけヘルパー”となる。作品は、そんな彼女と老人たちの織り成す笑いあり涙ありの人情ドラマから、高齢化や格差といった現代日本の問題が透けて見えてくる。「姉はいろいろなところにアンテナを張っている。改めてすごい人だなと思いました」(サクラ)ただ、そういった社会風刺の効いたドラマである一方で、実に魅力的なヒロイン映画でもあるといいたい。196分の長さなど気にしないでほしい。なぜなら、おそらく山岸サワ=安藤サクラから目が離せなくなるから。今まで見たことがないチャーミングな安藤サクラがここに存在する。「私は生まれたときからサクラをずっと見てきた。彼女にはまだ隠された魅力がたくさんある。今回、その一端は引き出せたかなと思っています」(桃子)父・奥田瑛二、母・安藤和津という両親と同じようでいて重ならない、独自の道を歩み始めた安藤桃子とサクラの姉妹。今後のさらなる飛躍が期待されるふたりの互いの感性が存分に発揮された1作に注目したい。『0.5ミリ』公開中※取材・文・写真:水上賢治
2014年11月12日『アメリ』のジャン=ピエール・ジュネ監督の最新作『天才スピヴェット』が間もなく公開になる。本作は、ライフ・ラーセンの小説を映画化した作品だが、ジュネ監督は原作に深く共感し、じっくりと時間をかけて映画化したようだ。このほど原作者も登場する特別映像が公開になった。特別映像映画は、弟の死を機に家族がバラバラになってしまい「自分がいなくなればよかった」と考えている天才少年のスピヴェットが、権威ある科学賞の授賞式に出席するため、家族に内緒でアメリカを横断する様を描いている。これまで数々の奇抜な物語を描いてきたジュネ監督は本作では当初から“既存の物語”に基づいて作品を作ることを決めていたという。一方、『T・S・スピヴェット君傑作集』の著者ライフ・ラーセンは、ハリウッドの関係者に「映画化されるとしたら誰に監督してもらいたいですか?」という質問に5人の監督の名を挙げ、その中にジュネ監督の名前があったと振り返る。このほど公開された映像にはジュネ監督が小説を映画の脚本にしていく作業が丁寧に描かれ、監督とラーセンのメールのやりとりや、ふたりの対談が登場する。ふたりは生まれも年齢も異なるが、ジュネ監督はラーセンが書いた物語とスピヴェット少年の造形に圧倒的な“共感”をおぼえたようで、ラーセンもジュネ監督が作り出した映画について共感と満足感を得ているようだ。これまで“独自の作風”や“唯一無比”と称されることが多かったジュネ監督が、誰かが書いた物語を描くとどうなるのか? 公開が楽しみだ。『天才スピヴェット』11月15日(土)よりシネスイッチ銀座、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開(C)2013 Epithete Films - Tapioca Films - Filmarto - Gaumont - France 2 Cinema Jan THIJS (C) EPITHETE FILMS - TAPIOCA FILMS - FILMARTO - GAUMONT - FRANCE 2 CINEMA
2014年11月11日アイドルグループのももいろクローバーZが、『踊る大捜査線』シリーズなどで知られる本広克行監督が手がける映画・舞台『幕が上がる』で主演を務めることが5日、明らかになった。映画は2015年2月28日から公開され、舞台は同年5月公演を予定している。原作は、劇作家・平田オリザによる同名青春小説。弱小演劇部の少女たちが全国大会を目指し、本当の喜びと悲しみ、そして大切なことに気づいていく姿を描いている。主演には、本広監督と平田氏の「今、もっとも輝いている少女たちに演じてもらいたい」という考えが一致し、ももクロを抜てき。映画版の撮影は今年8月22日から静岡県富士宮市などで行われ、10月8日にクランクアップ。舞台版は映画版と同じく本広監督が演出を手がける。物語の舞台は、ある地方都市の県立冨士ケ丘高等学校。演劇部で作・演出を担当している高橋さおり(百田夏菜子)は演劇部として最後の1年を迎えるにあたり、看板女優で姫キャラの"ユッコ"こと橋爪裕子、部内のムードメーカー的存在の"がるる"こと西条美紀(高城れに)らと共に年に1度の大会に挑む。地区大会突破を目指していたが、東京の大学で舞台経験のある新任教師・吉岡美佐子(黒木華)の「何だ、小っちゃいな、目標。行こうよ、全国」の一言で少女たちの意識が変わり、男子よりも勉強よりも大切な日々が幕を開ける。演劇部のメンバーとして、ももクロの有安杏果は県内演劇部強豪校からの転校生・中西悦子、佐々木彩夏はさおりを慕う1年後輩の部員・加藤明美を演じるほか、演劇部顧問・溝口先生役にムロツヨシ、さおりの母役に清水ミチコ、国語教師の滝田先生役に志賀廣太郎といった俳優陣が脇を固める。「映画版は、脚本が完成し、キャスティングが決定した時には完成予想が見えていました」と語る本広監督。「このテンションを持続させながら、映画が完成したらすぐに舞台版の作業に一気に向かっていきたいです」と舞台への意気込みも語り、「自分が企画して監督した映画の集大成になることは間違いないと確信しています」と自信をのぞかせている。撮影前の7月から8月にかけて、平田氏による演劇のワークショップを実施。平田氏は「正直言って、ももクロさんが主演と決まったときには、期待と不安と半々でした」という思いがあったため、ワークショップを通じてももクロメンバーの演技力を向上させることと、作品のメインテーマである「演劇」について学んでもらう狙いがあった。最初は個々の癖も目立っていたが、見る見るうちに上達。平田氏も「おそらく、この作品を観た多くの観客の皆さんは、ももクロメンバーの"演技力"に驚くことでしょう。彼女たちは、このひと夏で、役者として驚異的な成長を遂げました」と太鼓判を押している。一方、百田はそのワークショップを「台本をもってここのセリフをこうしろじゃない。お芝居とはなんなのか、そこから教えてくれました! お芝居はこうでなくちゃダメとかない。アイドルがこうでなくちゃってのもない。その時、ジャンルを通り越してなにか新しいものが作れる気がしました!」と思い返す。撮影には「ただただ必死(笑)!」で挑み、モニターで演技を確認する機会は1度もなかったが、「自分の心でよし! と思ったときと、監督のOK! が重なる事が多くて、なんだか通じあってる気がしてうれしかったです!」と手応えも。「まだ途中の段階でもスタッフさんたちは映像を見るために集まるたびに興奮して帰ってきます(笑)! みんなニヤニヤしてて全然教えてくれません」とスタッフの反応を伝え、「大人ばっかりずるいよね~! なんてメンバーで話ながら、私たちも出来上がりをとっても楽しみにしてます! みなさんも楽しみにしててください!」と呼びかけている。(C)2015「幕が上がる」製作委員会
2014年11月05日作・演出家としての活動を舞台からスタートし、自身の劇団“ゴジゲン”の休止以降は、『自分の事ばかりで情けなくなるよ』『スイートプールサイド』など映画監督としての活躍が目立つ松居大悟。来年1月には橋本愛・蒼波純主演の映画『ワンダフルワールドエンド』も公開され、映像分野で順調な中、ゴジゲンを3年ぶりに復活させる。松居にその心境を、また橋本愛同席のもと、映画『ワンダフル~』についても聞いた。ゴジゲン『ごきげんさマイポレンド』チケット情報ゴジゲンの活動休止は、松居自身が「演劇(舞台)からちょっと距離を置きたいと思った」のと、劇団員の帰郷が主な理由。「その劇団員の目次(立樹)は島根で農家をやっているんですけど、眠れないと夜な夜な岩松了さんの戯曲を読んでるって聞いて。『それって超、演劇やりたいんじゃん!』と思って誘ってみたら、『やるか!』ってなったので、翌日に速攻劇場を押さえました」(松居)。タイトル『ごきげんさマイポレンド』の“マイポレンド”は、松居の照れが加わった“マイフレンド”のことらしい。彼らの実情が見える感動作かと思いきや、「面白いものにはしたくない」と挑発的な言葉が飛び出す。「面白くするって、何か理屈めいたものを作ることのような気がして。自分の頭の中でどんなに面白くてもそれを長期間、役者にやらせることの意味のなさというか。だから今、稽古場で役者に『生きてればいいんだよ!』って言ってポカンとされてるんですけど(笑)」(松居)。一方の映画『ワンダフルワールドエンド』は、注目のシンガーソングライター大森靖子の2曲のPVをもとに、追加撮影されたエピソードを加えて1本の劇映画にしたもの。橋本は、大森のインディーズ時代からのファンで、ライブにもよく足を運ぶそう。「大森さんのライブは決められたものをやる“発表会”じゃなくて、毎回『次は何をやってくれるんだろう』って気持ちになれるのが面白いです」(橋本)。「僕はあの歌詞が好きで。この映画の脚本も、曲を聴いて思いついた話をまず作ってみて、大森さんとやり取りしながら作っていきました。その過程でどんどんワケわかんないものに(笑)」(松居)。「何回読んでも全然わかんなかったので、『もういいや、わかんないままいこう』って(笑)。性格さえつかめていればいいから素直に入っていこうと思ってやりました」(橋本)。「もともと筋を通してくれる人だと思っていたけど、編集中に『マジで橋本愛に救われてるな』って何度も思いました(笑)」(松居)。橋本も「もちろん観に行きます!」と言うゴジゲン『ごきげんさ~』の休演日(11/17)には、『ワンダフル~』の上映イベントも開催。いわゆる男子の“こじらせ”が優しく昇華する松居ワールドは健在か否か?映像での活躍を経ての変化を確かめたい。演劇公演 ゴジゲン『ごきげんさマイポレンド』は、11月13日(木)~23日(日)まで下北沢 駅前劇場にて。また11月17日(月)同劇場にて映画『ワンダフルワールドエンド』先行上映会も実施。チケットはいずれも発売中。取材・文武田吏都
2014年10月30日『アメリ』のジャン=ピエール・ジュネ監督が新作『天才スピヴェット』を携え、開催中の第27回東京国際映画祭のために来日し、主演のカイル・キャトレットくん(10歳)と共に舞台あいさつに臨んだ。イベントにはゲストとして鈴木福くんも来場した。その他の写真芸術性の高い映像で支持を集めるジュネ監督が3Dに挑戦した本作。生まれながらの天才でありながら、家族にもなかなか理解されずに孤独を抱えた少年が、ある発明による科学賞の授賞式に出席するための旅路の中で、様々な出会いを通じて成長していく姿を描く。日本でも人気のジュネ作品をひと足早く観られるとあって会場は満席。ジュネ監督は「私のファンが日本にも“いくらか”いらっしゃるというのは知ってます。私はモンマルトルのカフェの近くに住んでいて、そのカフェに『アメリ』のポスターがあるんですが、日本人の女の子が来て写真を撮ろうとして『ちょっとどいてもらえますか?』とよく言われるので(笑)」とユーモアたっぷりに語る。今回、3Dで作品を製作したことについて「子供の頃、のぞくと映像が3Dになるオモチャを持ってて、それが大好きだったんです。今回の脚本を読むと3Dで撮るにピッタリの作品でした」と語った。そのジュネ監督から「絶対に現場で『疲れた』と言わず、アクションも全て自分でこなしたスター!」と紹介されたカイルくんは「コンニチハ、カイル・キャトレットです」と日本語であいさつし、さらに劇中のスピヴェットさながらに6カ国語で自己紹介を行ない天才の片鱗を見せつけた。福くんは「スピヴェットを意識した」というタキシード姿で登場。カイルくんの演技について「(演技は)初めてと聞いたんですが、たくさん出ているように見えるくらい素晴らしい演技だったし、アクションもかっこよかったです!」と絶賛する。カイルくんは10歳以下の武道選手権で3年連続優勝経験を持つが、この日はその腕前を披露!三節棍(※3本の棒が鎖などでつなげられた武器)と剣、そしてヌンチャクを使い分け、巧みな演舞を見せて会場をわかせた。一方の福くんは、最近、学校で流行っているというけん玉の腕前を見せたが、大勢の観客を前に「緊張して足が震えてます…」と苦笑い。大技にチャレンジするも惜しいところで失敗してしまったが、ジュネ監督はふたりの天才子役を称賛し「次はけん玉の少年とヌンチャクを使う少年のシナリオを書きます!」と語っていた。『天才スピヴェット』11月15日(土)よりシネスイッチ銀座、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
2014年10月27日ポール・グリーングラスが、『The Tunnels』を監督することになった。原作は、グレッグ・ミッチェルの著書。その他の情報『The Tunnels』は、1989年のベルリンの壁崩壊直前、西ベルリンに住む数人のドイツ人たちが、自分たちにとって大切な東側の人々を西側に逃げさせようとする物語。その過程で彼らは、アメリカのテレビ報道局の手助けを借りることになる。実話だが、これまで知られてこなかったヒューマンストーリーらしい。グリーングラスの最新作は、昨年の『キャプテン・フィリップス』。監督デビュー作『Bloody Sunday(原題)』をはじめ、『ユナイテッド93』『グリーン・ゾーン』など、政治色のある実話をスリル満点に映画化してきたグリーングラス監督は、この企画に適役と言えそうだ。文:猿渡由紀
2014年10月27日ジェームズ・ワン監督が、ホラー映画『死霊館』の続編でも監督を務めることに決まった。その他の情報ジェームズ・ワンが監督したオリジナルは、昨年、2000万ドルの予算で製作され、全世界で3億2000万ドルを売り上げる大ヒットとなった。ワン監督は、現在北米公開中のスピンオフ『Annabelle(原題)』でもプロデューサーを務めている。『死霊館2』は来年夏に撮影の予定で、北米公開は2016年。『ソウ』シリーズ、『インシディアス』など、ホラーのジャンルでヒットを生み出し続けているワン監督だが、次回公開作は『ワイルドスピード』の7作目。同作品は、今年夏公開予定だったが、昨年11月のポール・ウォーカーの事故死を受けて、来年4月公開に延期された。文:猿渡由紀
2014年10月23日多くの映画人、映画ファンに惜しまれながら2011年12月に急逝した森田芳光監督。そんな森田監督の死からもうすぐ3年が経とうとしている。そんな中、先日発表された1本の映画が、ファンの間で話題を呼んでいる。彼を慕う旧知のスタッフ・キャストが再集結し、主演に松山ケンイチを迎え、森田監督デビュー作『の・ようなもの』(’81)のその後を描くオリジナル作品『の・ようなもののようなもの』(仮題)。このほど本作のヒロイン役で、森田監督を恩師と慕う女優・北川景子が出演していることが発表され、北川さんからおよそ1000文字にもおよぶ長文コメントが到着した。本作の舞台は、現代の東京の下町。落語家一門の出船亭に入門した志ん田(しんでん/演:松山ケンイチ)は、師匠の志ん米(しんこめ/演:尾藤イサオ)に頼まれ、以前この一門に在籍していた志ん魚(しんとと/伊藤克信)を探し出す羽目になる。実はこの一門を財政的に支えてきたスポンサーの女会長は、クリクリした目玉が大好きという理由で志ん魚を贔屓にしており、志ん米師匠は彼女のご機嫌を取るため、志ん魚をもう一度高座に引っ張りだそうという考えだ。志ん魚を探し回る志ん田。師匠の弟弟子の志ん水(しんすい/演:でんでん)や、昔の門下生たちを訪ね、手がかりを集めようとするが、まったく上手くいかず――。森田監督作『間宮兄弟』(’06)でスクリーンデビューを飾って以降、松山ケンイチと共に出演した『サウスバウンド』(’07)、チョイ役でも出たいと『わたし出すわ』(’09)に特別出演と、森田監督に熱く尊敬の念を抱いていた北川さん。森田監督が亡くなった際、葬儀ならびに告別式の場で人目をはばからず号泣し、各メディアが大きく報じていたことも記憶に残っている人も多いだろう。そんな北川さんは本作では、志ん米師匠のひとり娘・夕美役を演じることとなる。今回の出演には並々ならぬ想いがあったようで、渾身の想いで撮影に臨んだとのこと。今回届いた長文コメントは、その片鱗を感じさせるものとなっている。<北川景子/コメント全文>「『間宮兄弟』という映画でスクリーンデビューさせて頂いていて、その時からほとんどのスタッフの皆さんが変わっていなくて、杉山組(※本作の監督・杉山泰一)だけど、森田組そのものというか、“また戻ってきた”という感じがしました。『間宮兄弟』の合格をもらった時に、『の・ようなもの』のビデオテープを渡されて、何度も見ていたので、そのオリジナルの作品のキャストの皆さんが集結する現場を見た時は、感動して鳥肌が立ちました。映画のデビューの時に、森田監督の現場を体感できたことは、すごく大きかったと思います。『間宮兄弟』のクランクアップの時に、森田さんが『女優をやめないでくださいね』って言ってくださったことがあって、これまでやめようかなと思った時もあったんですけど、その一言が最後の勇気になって、辞めずに続けられているので、その言葉がすごく胸に残っています。映像にこだわってやってこれたのは、森田さんのおかげだと思っています。亡くなった時は、前触れもなかったですし、ショックというか、ビックリしました、嘘かなと最初思いました。今回、声をかけて頂いたことはすごく嬉しいし光栄でした。錚々たる面々の女優さんが森田さんとご一緒されている中で、今回松山さんの相手役にと言って頂けたのは、ラッキーでしかないというか、自分で良かったのかなというのはちょっと思いますけど、でも嬉しかったです。このチームと出会えたのは(『間宮兄弟』の時の)夕美という役がきっかけだったので、みんなが、『あ、夕美が帰ってきたな』って楽しくなれるような、面影を沢山残した役にしたいなと思っていました。すごく純真で、天真爛漫で、明るくてパワフルっていうのが夕美のいいところだと思うので、そういうところは年をとっても変わらないところかなと思ったので、『間宮兄弟』の時のまま、きちんと残しつつ演じようとしました。夕美という役はすごく自分にとっても思い入れの強い役でもあるんです。森田さんはいつも、口を片方だけあげて笑ってくれていたんですが、だからそうやって笑ってもらえるようにしたいなというのが、一番強い思いかもしれません。亡くなった時は心が折れそうになったんですけど、悲しんでるだけではよくないですから、なるべく森田さんのやってた事を継承できるように、松山さんも含めてですけど、我々で頑張っていきたいと思ってます」。「私」ではなく、最後の「我々」という言葉は、まさに森田組の一員であることの証だろう。その決意と共に、どんな役を演じてみせるのか?続報に注目があつまりそうだ。『の・ようなもののようなもの』(仮題)は2015年、全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2014年10月17日日本を代表する鬼才漫画家・楳図かずおが27日に東京・新宿ピカデリーで行われた初監督作『マザー』の初日舞台あいさつに登壇した。映画は亡き母親をモチーフにした自伝的ホラーで「僕にとっては『14歳』から地続きになった、19年ぶりの新作。よくできた映画になった」と手応え十分だった。『マザー』初日舞台挨拶その他の写真本作は、鬼才漫画家・楳図と、彼の自叙伝を担当する女性編集者が、死んだはずの楳図の母の怨念が引き起こす怪奇現象に襲われるというホラー。楳図自身が脚本も手掛け、独特な作風に強い影響を与えたとされる実母との思い出を掘り下げた。舞台あいさつには楳図“監督”をはじめ、主人公である楳図を演じる歌舞伎役者の片岡愛之助、編集者を演じる元宝塚歌劇団雪組の舞羽美海、楳図の母親役を務めた真行寺君枝が出席した。初のホラー作品に挑んだ愛之助は「現場ではずっと笑いっぱなしで、まったくホラー感がなかった。『まことちゃん』世代なので、出演できて本当に嬉しい」と感激しきり。「歌舞伎と楳図先生の世界は、美の集大成という点で共通している。『グワシ!』は歌舞伎の見得と同じですし」と持論を展開し、「実は監督が、この映画でやり残したことがあると聞いている。ぜひ『マザー2』でそれが実現できたら」と続編に意欲を示した。宝塚退団後、初のヒロイン役に挑んだ舞羽は「映像作品は初心者。でも、監督がこと細かに描いてくださった絵コンテが演技の参考になった」。15年ぶりの映画出演を果たした真行寺は「若い頃に読んだ『へび少女』がトラウマになっている。今回は楳図先生へのリベンジのつもりで演技に臨んだ」と話していた。『マザー』公開中取材・文・写真:内田 涼
2014年09月27日新作映画『白ゆき姫殺人事件』の公開を控える中村義洋監督が3月21日、アップルストア銀座にて行われたトークセッションに出席。本作についてはもちろん、自身のキャリアやキャスティングの妙などについても語った。トークセッションの模様映画は、過熱報道、ネット炎上、口コミの衝撃といった現代社会が抱える“闇”に焦点を当てた湊かなえの同名小説を基にしたサスペンス。同僚の美人社員・三木典子を殺害した容疑で“疑惑の人”となった主人公・城野美姫(井上真央)を中心に、噂が噂を呼び、多くの関係者が翻ろうされる姿が描かれる。監督は本作の仕上がりに自信を持っているようで「ここ数年の“元気を与える”といった優しい言葉は置いといて、とにかくおもしろいものを作ろうと思った」と力強く語る。井上真央、綾野剛、菜々緒など旬のキャストが顔を揃えるが「みんな、これまでこういう役をやってないというおもしろさがあった」と監督自身も意外性を楽しんだよう。特に映画初出演の菜々緒については「オーディションなのに、いきなり『この役をやらせてもらうわけですけど』という感じで(笑)、据わってましたね、度胸が」と感嘆する。ちなみに中村監督自身、映画作りにおいて「名匠の方々も言ってますが『演出の8割はキャスティング!』と思ってるし、そこに時間をかけている」と明かす。堺雅人に鈴木福など、中村作品への複数の出演を経てからブレイクする例も数多く、この点については自身の“慧眼”に複雑な思いも?「堺雅人も『ジャージの二人』の時はまだまだで、プロデューサーから『もうちょっと名のある人に…』と言われたんですが公開の頃にNHK大河ドラマ『篤姫』の家定役が話題を呼んだ。被害妄想じゃないけど、『半沢直樹』なんて、堺雅人、香川照之、滝藤賢一も出てて『ゴールデンスランバー』でしょ(苦笑)!起用が早すぎるんです。損してる」と語り笑いを誘った。いまでこそ売れっ子監督として引っ張りだこだが、下積みと言える時代も長く、監督ではなく脚本家として過ごした時期も。「自分が監督するつもりで脚本を書くと『監督は誰にしましょうか?』という話になり、傷ついた(笑)。でも脚本生活が楽しくなって、それを極めようと思ったら、仕事がなくなったり、人生は望んだ通りにならないと学んだ」と語る。「小説の映像化の名人」と称される点についても言及。特に称賛を浴び、注目を集めるきっかけとなった出世作『アヒルと鴨のコインロッカー』について「原作を読んで、これに全てを捧げようと思った」と強い思いを語り、あくまで原作の素晴らしさがあってこその映画化の成功であると持論を口にした。『白ゆき姫殺人事件』3月29日(土)全国ロードショー
2014年03月22日松本人志の監督作第4弾『R100』が5日、全国で封切られ、東京・新宿バルト9で初日舞台あいさつが行われた。上映後の観客を前に、松本監督は「一人くらいこんなメチャクチャな監督がいてもいいのかなと思う」と独自の映画スタイルに自信を示し、「最後の最後は、常にビックリさせたいという気持ちがある。ドMがものすごいSと関わるとどうなるか……。海外でも上映中は受けに受けたが、最後のシーンでは皆ポカーンとなっていた」と結末への強いこだわりを語っていた。その他の写真舞台あいさつには松本監督をはじめ、大森南朋、大地真央、寺島しのぶ、佐藤江梨子、渡辺直美、渡部篤郎が登壇。映画は開けてはいけない扉を開き“謎のクラブ”へと入会してしまったドMな主人公・片山(大森)が、時と場所を選ばず派遣される個性豊かな“女王様”(大地、寺島、佐藤、渡辺ら)に翻弄される姿を描く。松本監督がプロの俳優を多数起用し、映画製作するのは初めてで「芸人だったらコントになってしまうシーンも、役者さんだと絶妙なバランスが生まれる。この経験は勉強になった」という。豪華な女優陣に関しては「ここにいる女王様とは、誰とも恋に落ちることがなく(笑)。ややこしい関係にならず良かった。撮影後、鞭が2つ足りないことが分かって、もしかして誰か目覚めちゃったんでしょうか!?」と笑いを誘っていた。主演を務める大森は「映画を観終わった皆さんが、僕をどんな目で見ているか気になりますが……(笑)。監督からお仕事いただき、嬉しかったですね。刺激的な時間を過ごすことができた」とドMな主人公という難役にも手応えは十分。「私にとっても挑戦だった」(大地)、「楽しい時間でした」(寺島)、「すごく知的な映画」(渡部)とキャスト陣も独特な“松本ワールド”に魅了されていた。現在開催中の第18回釜山国際映画祭「アジア映画の窓」部門への出品も決まっており、渡辺が劇中と同じボンデージ衣装で現地入りする予定。2014年の全米公開も決定している。『R100』公開中取材・文・写真:内田 涼
2013年10月05日山田孝之、ピエール瀧、リリー・フランキーが出演する映画『凶悪』が9月21日(土)から公開される前に本作を手がけた白石和彌監督がインタビューに応じた。その他の画像本作は、新潮45編集部編のノンフィクション『凶悪-ある死刑囚の告発-』を、白石監督が映画化したもの。“明潮24”編集部が死刑囚の告発をもとに取材を続け、ペンの力で警察を動かして凶悪な殺人事件の首謀者を逮捕するまでを描いたドラマだ。山田が事件の首謀者を追うジャーナリスト・藤井を、瀧が死刑囚・須藤を、そしてリリーが事件の首謀者である木村を演じる。実在の事件を映画化することは難しい。なぜなら映画作りの過程では、ショッキングな事実、痛ましい事実が映画的には“見せ場”になる可能性があるからだ。白石監督は「事件を“面白がることの是非”については悩みました」と振り返る。「事件を面白がることには違和感を感じていて、初めのうちは、事件を面白がって報道するマスコミに対して『そんなんでいいのか?』と問題提起するつもりもありました。でも、作業を進めていく中で、『自分も面白がっちゃっているな、同じことしてるな』と感じてしまった」その結果、本作の主人公・藤井は“事件の真相”を追い求めながら、同時に妻から“事件を面白がっているのでは?”と追いつめられる。正義のために、真実のために取材を始めた藤井は、いつしか事件に魅了されていく。そこで、本作はあえて“回想”という形式を捨て、過去と現在をシームレスに往復させながら次第に事件にのめり込んで行く藤井の脳内をそのまま映像化した。「回想をやっていくと“過去に何があったか?”が映画のテーマになってしまう。そうじゃなくて“これからどうなっていくのか?”を見せなければいけない。だから回想ではなく、“藤井が取材して、頭の中でまとめていき、紡いでいった映像”として描きました。藤井の紡いでいった映像で事件を描けば、“面白がる是非”がより浮き彫りになっていくだろうな、とも思いました」ひとりの死刑囚の告白から始まるこの物語は、ひとりの記者を魅了し、いつしか観客をも虜にしていく。極めて凶悪な事件が起こるのはなぜか? そんな事件を人が覗き見たいと思うのはなぜか?「前作で釜山国際映画祭のコンペに参加して、出品されていた作品をほぼ全部見てきたんです。みんな新人だけど、自分と自分の周りと政治に対して切実なんですよ。社会に向き合ってない映画が海外ではむしろない。このままいくと、日本では社会と切り離された映画が増えていくんでしょうね。普通に物語、キャラクターを掘り下げていけば、自然と社会との関係を入れざるを得ない。昔は日本にもそういう社会と密接な映画がたくさんあったのに。僕はそういう映画をつくっていきたいと思っています。“絶滅危惧種”のあがきとして」。『凶悪』9月21日(土) 新宿ピカデリーほか全国ロードショー
2013年09月20日SNS依存夫の裏の顔
そのピエロは帰ってくる
夫婦の危機