ミュンヒハウゼン症候群とは出典 : ミュンヒハウゼン症候群は周囲の関心や同情をかったり、懸命に病気と闘っている姿をアピールし精神的満足感を得るために病気や重病であることを装ったり、自傷行為や尿検査などの検体をすり替えたり、偽造工作などを繰り返し行う精神疾患です。「ミュンヒハウゼン症候群」は1951年にイギリスの医師リチャード・アッシャーが発見しました。ミュンヒハウゼン症候群という名前は『ほら吹き男爵』という物語で知られる、ドイツ貴族ミュンヒハウゼン男爵(実在の人物がモデル)の名前から命名されました。しかしこの名前は精神医学における診断名としては確立しておらず、「虚偽性障害」という別の診断名で診断されることが多いようです。虚偽性障害は世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)とアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)で定義されています。次は『ICD-10』が示す定義になります。・虚偽性障害身体的あるいは心理的な症状を意図的に捏造することが行われる障害であるが,特にその目的が経済的利益や医療上の恩恵を得るといった外的動機のためではなく患者の役割を得るという心理的動機によって行われるものを指す.出典:岡崎祐士/総編集『ICD-10精神科診断ガイドブック』(中山書店,2013)まだ日本での罹患率ははっきりとは分かっていませんが、病院の患者では約1%の人にミュンヒハウゼン症候群の診断基準を満たす病像があるといわれています。またミュンヒハウゼン症候群と関連して代理ミュンヒハウゼン症候群があります。代理ミュンヒハウゼン症候群も虚偽性障害という精神疾患の一部です。対象が自分自身ではなく代理の人に対して傷害を加え、自分に周囲の関心を引き寄せることで、自らの精神的満足を他者から得ようとします。多くの場合、対象は自分の子どもであるため児童虐待にあたります。ここでは主にミュンヒハウゼン症候群について紹介していきます。参考書籍:岡崎祐士/総編集『ICD-10精神科診断ガイドブック』(中山書店,2013)ミュンヒハウゼン症候群の主な症状出典 : ミュンヒハウゼン症候群の主な症状は、自分自身に負わせる身体的または心理的な徴候と症状のねつ造・ごまかしです。ときには病気や外傷をわざと誘発して周囲からの関心を求めています。これらがミュンヒハウゼン症候群の症状と認められるためには、保険金や休暇を得るなど個人的利益のためではなく、周囲の関心を引くために行っている場合に限ります。病気ねつ造の方法には大げさに表現したり、作り話をしたり、自傷行為などによる誘発などが含まれます。例えば神経症状(けいれん、めまい、失神など)のエピソードをごまかして周囲の人に話すといったことから、検査で異常がでるように尿に血液を加えるなど病気であるように見せかけます。または敗血症を誘発するために傷口に糞便を入れるなどの自傷行為が見られます。参考書籍:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院,2014)ミュンヒハウゼン症候群の原因出典 : ミュンヒハウゼン症候群の根本の原因はよく分かっていません。発症する背景としてミュンヒハウゼン症候群がある方は幼少期に精神的および身体的虐待を経験している場合があるといわれています。また小児期に重度の疾患を経験した場合や重病の身内がいた場合もあります。ミュンヒハウゼン症候群の人は自己肯定感の低さや不安定な対人関係といった問題を持っていることがあります。病気を装うのは自尊心や自分に対する関心を高め、維持しようとする手段だといわれています。ミュンヒハウゼン症候群の診断基準は?出典 : ミュンヒハウゼン症候群および虚偽性障害については世界保健機関(WHO)の『ICD-10』とアメリカ精神医学会の『DSM-5』が診断基準を示していますが、ここでは『DSM-5』の「自らに負わせる作為症/虚偽性障害」の診断基準で説明していきます。自らに負わせる作為症/虚偽性障害A.身体的または心理的な徴候または症状のねつ造,または外傷または疾病の意図的な誘発で、確認されたごまかしと関連している.B.自分自身が病気,障害,または外傷を負っていると周囲に示す.C.明らかな外的報酬がない場合でも,ごまかしの行動が確かである.D.その行動は,妄想性障害または他の精神病性障害のような他の精神疾患ではうまく説明できない.出典:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院,2014)この診断基準に当てはまる項目の他にも病歴の聴取やこれまでかかった病院遍歴などをもとに臨床的な診断をしていきます。いくつかミュンヒハウゼン症候群と同じような症状がある精神疾患があります。・詐病(さびょう)詐病とは、虚偽またはおおげさに強調された身体的・心理的不調を意図的に装うことです。いわゆる「仮病」と、広義では同じです。兵役を逃れる、仕事を避ける、金銭的な補償を獲得する、犯罪の訴追を免れる、薬物を得るといった動機が背景に存在しています。このような明らかな意図があれば詐病の診断が示唆されます。詐病と仮病との違いは、詐病の方がより大きな利益を求めて虚偽な言動を行う点です。またミュンヒハウゼン症候群と詐病との違いは、虚偽をするその目的です。詐病は利益を得るために行っていますが、ミュンヒハウゼン症候群は人からの関心を得て精神的な満足感を感じたいために行っているという違いがあります。・境界性パーソナリティ障害境界性パーソナリティ障害とは対人関係、自己像、および感情の不安定と、著しい衝動性を示す状態のことです。現実または想像の中で見捨てられることを避けようと、なりふりかまわない努力をします。例えば治療者が面接時間の終了を告げられたことに対して突然の絶望感を味わうことがあります。他にも自分にとって重要な人物がほんの2~3分遅れたり、約束を取り消さなくてはならなくなったりしたときにパニックや激怒することがあります。ミュンヒハウゼン症候群はこれらの障害と鑑別される必要があります。参考書籍:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院,2014)ミュンヒハウゼン症候群かも?と思ったら・・・出典 : もしかすると自分はミュンヒハウゼン症候群かも・・・と思った場合、また家族が身体の不調を訴えているけれどミュンヒハウゼン症候群の可能性がある場合、どの医療科目を受診するのが良いのでしょうか?基本的にミュンヒハウゼン症候群の専門科目は精神科になります。ミュンヒハウゼン症候群である可能性が高ければ精神科を受診してください。ミュンヒハウゼン症候群かもしれないという自覚症状がある場合は本人自らが精神科を受診することをおすすめします。精神科によって専門医に正しい診断と治療の手立てを受けましょう。カウンセリングなどの治療を早期に開始することで、症状が悪化することを防ぎます。一方で本人は自覚がなくとも周囲がミュンヒハウゼン症候群である可能性が高いと気づいた場合、いきなり精神科をすすめてしまうと本人の自尊心を傷つけてしまう恐れがあります。受診を促す際の声のかけ方などを工夫したり、付き添いながら受診したり工夫が必要です。または本人がかかっている内科や外科などの医療機関にミュンヒハウゼン症候群である可能性を伝え、精神科への受診を促してもらえるように協力してもらうことも一つの手段です。ミュンヒハウゼン症候群は特別な検査はなく、問診や家族からの聞き取りなどによる臨床的診断を行います。診断はこれまでの病歴の聴取や診察に加えて、本人が訴える身体疾患を除外するために必要な検査を行います。身体症状をおおげさに表現していること、作り話をしているのかなどを証明していきます。ミュンヒハウゼン症候群の治療法はあるの?出典 : ミュンヒハウゼン症候群の治療は難しく根本的な治療法は確立されていません。しかし虚偽によって処方されている過剰または不要な薬剤の使用を止めたり、避けたりする必要はあります。そのため早期に精神科または心理士とのカウンセリングなどの治療を開始することが重要です。しかしミュンヒハウゼン症候群の方が治療へ参加するきっかけをつくることは難しいですよね。そのためミュンヒハウゼン症候群がある本人に対して病気であると告げず、家族の了承を得て精神医学的治療を行うことを推奨する専門医もいるようです。治療は本人だけでなく医師・家族の連携が必要になってきます。ミュンヒハウゼン症候群の方が積極的に治療に参加すると症状が緩和していくことがあります。逆に治療を本人の意思とは関係なく、強制してしまうと本人の自尊心を傷つけ、怒りを買ったり、医師または病院を替えてしまったりすることがあるので注意してください。まとめ出典 : ミュンヒハウゼン症候群は虚偽性障害という精神疾患のひとつです。別名で「病院はしご症候群」、「医者めぐりをする患者」と呼ばれています。本文中で述べたとおり、病院の患者では約1%の人にミュンヒハウゼン症候群の診断基準を満たす病像があるといわれています。この病気に気づきやすいのは本人よりも、周囲の人たちの方が多いと言えるでしょう。治療法はまだ確立していませんが、カウンセリングなどの精神医学的治療を受けることで症状が緩和する場合があります。周囲の人たちの本人に対する接し方などを専門家に聞くこともできます。周囲の人も本人がどうして病気を装ってまで関心を引きたいと思っているのか考え、病気が悪化・再発しない環境を協力しながらつくることが大切だと思います。ミュンヒハウゼン症候群にかかってしまった本人の背景を理解しておくことが効果的な治療たのための手掛かりとなるかもしれません。
2017年01月31日ドコモ・ヘルスケアはこのほど、「月経前症候群(PMS)に関するアンケート」の調査結果を発表した。同調査は2016年10月31日~11月14日、アプリ「カラダのキモチ」を利用する20~40代の女性3,274人の回答を分析したもの。生理前に不調を感じるか尋ねたところ、97%が「感じる」と回答した。PMS(以下、月経前症候群)について知っているか聞くと、PMSを「よく知っている」「知っている」と回答した人は、生理前の不調がある人では86%、「不調を感じない」と回答した人では52%と、認知度に30%以上の差があることがわかった。どんな不調があるか尋ねると、65%が「肌荒れ」「むくみ」「ニキビ」「化粧のりが悪い」のうちいずれか1つ以上の美容トラブルを選択した。最も多い美容トラブルは「肌荒れ」(46%)で、「むくみ」(35%)、「ニキビ」(34%)が続いた。「カラダのキモチ」は、日々の体調や不調の症状を記録する機能があるアプリ。その機能の使用頻度を聞いたところ、59%が「常に記録している」「時々記録している」と回答した。体調や不調の症状の記録をしている頻度別に回答を分析すると、記録している頻度が高いほどPMSへの対処ができていると回答した比率が高かった。PMSの症状があると回答した人に、同アプリはPMSの対策に役立っているか尋ねると、63%が「とても役立っている」「やや役立っている」と答えた。役立った点を具体的に聞くと「体調不良の原因がわかる」(30代)、「PMSの症状や時期がわかるので、対策がとれる」(20代)といった回答が寄せられた。同アプリの総合監修を務める産婦人科専門医の宋美玄氏は、「生理前に吹き出物や肌荒れなどの美容トラブルがよく起こるなら、それはPMSかもしれません」と話す。PMSは肌や体だけでなく、イライラや落ち込みなど心の変化も生じさせるため、どんな不調がいつ生じたのか記録すると、自分のPMSのパターンが把握でき、対処しやすくなるという。「PMSの症状がひどい場合は、婦人科で行うホルモンの量を調節する治療法で改善もできます」と宋氏。いつ、どんな症状が出ているのか記録して持っていくと、診断にも役立つとのこと。
2017年01月26日成人後に、障害者として生きるということ出典 : 私は娘の診断をきっかけに、42歳のときにアスペルガー症候群と診断を受けました。その後、45歳の時に仕事先で障害をカミングアウトしたところ、大失敗。失意の中で退職するにあたって、「もう、一般就労でこれ以上傷つくのは無理。これからは障害者就労を目指して障害者として生きよう」と決意しました(このときのエピソードは、以下関連記事をご参照下さい)。しかし、アスペルガー症候群と診断されてからまだ3年目です。まさか自分に障害があるなんて思ってもみなかった私が、障害者として生きていくことは、想像以上に苦しみを伴うものでした。大人になってから発達障害と診断された方の中には、私のような体験をする方もいらっしゃるかもしれません。「こんな気持ちになることもあるんだ…」と、心の片隅に置いていただければ幸いです。障害福祉サービスを申請するステップ、それは自分自身と向き合うことだった出典 : 診断後、障害者向けのサービスにはどんなものがあるのか?調べてみることにしました。障害福祉サービスを受けるためには、いろいろな機関とつながる必要があります。まず私が頼ったのは、障害者自立生活センターでした。このセンターを知ったのは、娘の不登校でお世話になっていた親の会がきっかけでした。親の会で出会ったのが、障害者自立生活センターの相談員さんだったのです。もしこのご縁がなければ、まずどこに相談したらいいのかわからなかったかもしれません。後で知ったのですが、各市町村には相談支援事業所があり、そこが最初の窓口になることが多いようです。障害のある人に対する相談支援について出典 : 障害者自立生活センターの相談員に付き添われ、ハローワークに障害者として登録し、地域の障害者就業・生活支援センターに相談に行きました。そして、障害者就業・生活支援センターの相談員と一緒に障害者職業センターに行き、ジョブスキルトレーニングを受けつつ、合間にカウンセラーと一緒に自分の障害特性をまとめました。障害特性の中でも、仕事に就く上で困難さにつながるものについては、自分でどう対処するのか?企業にはどのような配慮を求めるのかを、まとめるのですが、この作業は心理的にとても苦しかったです。それはまるで、「自分はこんなにもできない人間だったのか」と突き付けられている感覚で、今までの人生を否定されたような気持ちになったこともありました。訪問調査では、自分の家事能力まで明るみにされ…出典 : あちこちに足を運ぶ生活をしながら、障害福祉サービスを受けるために訪問調査も受けました。訪問調査では、何度も相談に乗ってもらっていた障害者自立生活センターの相談員が担当だったので、安心していました。しかし、ホッとしたのも束の間。長時間の面談の中、自分の弱点を見つめざるを得なかったことは、精神的にかなり堪えました。ぐちゃぐちゃの冷蔵庫や押入れには、目をつぶって生きてきた私。働く主婦として、なんとか子どもも育ててきたけれど、自分の家事能力の無さに今更ながら愕然とし、落ち込みました。医師にも「今まで、よく頑張ってこられましたね」と言われましたが、まさにそういう気分だったのです。あきらめる人が多いと聞く、「障害年金」。その理由に納得Upload By ヨーコそんな日々の中、相談員さんと「え、障害年金もらってないんですか?」「え、もらえるんですか?」というやり取りがあり、障害年金の手続きをすることになったのですが…その手続きも、私にとっては地獄の苦しみでした。障害年金の手続きには初診証明が必要なのですが、私のように40歳を過ぎて発達障害と診断された場合、精神科に初めてかかったのが20年前というケースもザラにあります。病院が廃業している・カルテも無い、ということも多く、 初診証明を取るのが大変なのです。また、成人の発達障害についてきちんと理解している医師も少ないので、適切な診断書を書いてもらうのにも一苦労。こうした現実に、諦めてしまう人が多いのも納得です。私は最初に社会保険事務所に行ったときに「これはダメだ…」と思い、手続きを社労士さんに依頼したので、まだ苦労はしていないのかもしれませんが、昨年の5月に依頼し、度重なる打ち合わせを繰り返したものの、未だ受給の目途はついていません。ちょっと心が折れそうです。7ヶ月続いた、"障害者になる"ための手続き。その結果…出典 : こうして、障害者として生きていくための手続きに奔走した生活が、7ヶ月程続いたあたりから、日常的に微熱が出るようになり体が動かず、寝てばかりの日々が続くようになりました。頭痛・吐き気といった、私がストレスを受けると現れる症状も頻繁に出てきました。今振り返ると、あのときの状態は鬱そのものだったような気がします。薦められた発達障害専門の就労移行事業所も、「行かなくては」とは思うのですが、「本当は行きたくない」「もうイヤ」という気持ちがあり、結局体調不良ということで1度も正式には通うことはありませんでした。「就労移行の話は白紙に戻したので、ゆっくりしてください」と支援者に言われてから、だんだんと体調も気持も立ち直っていったような気がします。初めて自分の発達障害と向き合ってみて、わかったこと出典 : 支援を受けるようになってから、私は自分の発達障害特性が強くなったような気がしていました。だけどそれは、初めて「発達障害である自分」としっかり向き合ったからではないかと思います。先にご紹介した障害福祉サービスを受けるための聞き取り調査や、障害者職業センターでカウンセラーと振り返った自分の特性のまとめ、そして自分への理解を深めるために発達障害について学習したこと、そうしたことが重なって「これも自分の発達特性だったんだ」と意識するようになったのだと思います。診断がつく前は、無意識に「人並みに頑張ろう」と無理を重ねて頑張り、結局空回りしていたような気がするのです。そして、「どうして私はいつも上手くいかないのだろう…」と悩み続けていたのですね。"障害者になる"ための作業を進めるにあたって、辛いこともいっぱいありましたが、自分はどれくらいのことなら無理なくできるのか、休んだ方がいいという心や体のサインにも気づくことができました。それはまるで、等身大の自分と出会い直している気分です。娘のために、幸せになることをあきらめない出典 : 現在、本格的に福祉の支援を受けるようになりましたが、まだ就労の問題は全く進んでいませんし、年金の行く末も不安です。だけど、私は幸せに生きる権利がある。そして、娘のためにも幸せに笑っていたい。いつか同じ障害を持つ娘も歩むだろう道を、照らせる存在でありたい。だから私は、あきらめません。
2017年01月20日カミングアウトって必要?一般就労で障害者が働くということ出典 : 発達障害の診断を受けている方は、職場でカミングアウトしているのでしょうか?一般就労で働く方の中には、周囲に黙っているケースも多いようです。私も42歳までは自分が発達障害とは知らなかったので、一般就労で普通に働いていました。いえ、普通とはいえませんね。というのも、私は勤めては1年くらいで辞める、ということをずっと繰り返してきたのです。いつも理由はわからないのですが、周囲の人にだんだん嫌われ、「仕事の覚えが悪い」「やる気あるの?」と責められ、心身ともに限界になってやめるというパターンを繰り返してきました。これからご紹介するお話は、私が障害のカミングアウトに失敗し、結局退職に追い込まれた体験談です。一人でも同じ思いをする人が減ることを祈りながら書きます。障害を隠したまま仕事に就いた私。思わぬ展開で上司に障害を知られることに出典 : 私が当時働いていたのは、派遣会社に登録して応募したデータ登録の仕事です。ここは私が診断を受けてから、初めて職場でカミングアウトした勤務先です。応募時には障害のことは一切伝えませんでした。その後あっさりと採用された私は、出勤して間もなく指導係の上司に、納税関係の書類を書くよう指示を受けました。その書類には障害者かどうか書く欄がありました。「どうしよう…。」思い悩んだ私は上司に正直に伝えることにしたのです。私「あの、私、障害者手帳を持ってるんですが」上司「マジか。何の障害があるの?」私が「アルペルガー症候群です。」上司「何それ?」私はアスペルガー症候群を知らなかった上司に、自分の障害の説明をすることに。知られたときはどうなることかと思いましたが、脳性まひの妹さんがいるとのことで、私の障害にも理解を示してくれました。黙って普通に働くつもりでしたが、こうして私の障害は管理職全員と仕事のチームリーダーに知られることとなったのです。上司が教えてくれた私の個性。ショックだったけれど…出典 : その後、入社して2ケ月が経過した頃です。障害者手帳のことを打ち明けていた指導係の上司は、そのまま私の上司になりました。その日は上司との個人面談がありました。私「この頃なんだかAさんに避けられているような気がするんですよね。いつもそうなんです。気がついたら嫌われているんです」上司「君に言ったら傷つくかもしれないけど、はっきり言わせてもらうよ。君は動作が1つひとつ大げさで、『あっ!』『やってしもた』とか大きな声で独り言を言うよね。それが子どもっぽく見える。そうした振る舞いは日本の社会では異質なものとみられる。日本人は小学生の頃から横へ倣えの精神を叩きこまれるでしょ。異質なもの、変わった人は嫌われてしまう。僕も最初は君のことを『変わった人だな』と思ったよ。だけどアスペルガー症候群と聞いていたし、受け入れようという思いがあったからずいぶん違った。君のバックグランドを知らない人は、嫌ってしまうこともあると思う。知っているから受け入れられるという保証はないけれど、打ち明けてみるという選択肢もある。ちなみにAさんは逆に、『ヨーコさんに避けられてるみたいなんです』って気にしてたよ。」と言われました。これには正直ショックでしたが、「なぜか人に嫌われる」という長年の謎が解けたようでスッキリもしました。スタッフの誤解を解きたかった私は、困りごとを説明することに出典 : 上司との面談の数日後、上司抜きでスタッフとミーティングをする機会がありました。メンバーはいつも一緒に仕事している派遣社員たちです。その場で私は、普段から気になっていたことを聞いてみることにしました。私「私が質問しようとすると『何言ってるのかわからない』とBさんは仰いますが、どうしてなんですか?」Bさん「普通、自分で十分調べてからここがわからないと聞いてくるのに、あなたはそれもせず、やたら焦って聞いてくるから、何を聞きたいのかこちらもわからない」私「私にはちょっと人と違った特性があって、まず騒がしい環境で呼ばれても聴き取ることができません。それから、言葉で次々と説明されると理解が追い付かなくてパニックを起こしてしまうことがあります。あと空気が読めません。いろいろと失礼なことをしてしまうかもしれませんが、申し訳ありません。」このとき、「アスペルガーだ」とは言えませんでした。引かれるのが、偏見を持たれるのが、変に遠慮されるのが怖かったからです。Bさん「そんなこと言われても困る。まるで私がいじめているみたいじゃない」私は、「違うんです」とどれだけ説明しても、その後話を聞いてもらえませんでした。次の日から職場の空気が明らかに変わりました。ものすごく冷たいのです。後に聞いたことですが、みんなは「ヨーコさんはみんなの前でBさんに失礼な態度を取った」と思っていたそうです。そして、私の説明を「そんな私だから優しくして下さい」と訴えてきたと受け止めたようでした。もうこれ以上隠すことはできない…上司の勧めで障害を伝えることに出典 : そのミーティングからしばらく経ったある日、上司から声をかけられました。「スタッフが『ヨーコさんが何度も同じことを質問してくるから困っている』『ヨーコさんが目を合わせてくれなくなった』と訴えてきたよ」このときの私は、すっかり職場の人と接するのが怖くなり、最低限しかコミュニケーションをとらなくなっていたのです。明らかに私の雰囲気が変わったことに気付いた上司は「あのミーティングで何があった?」と聞いてきました。ミーティングでの出来事をそのまま伝えたところ、上司は「それは中途半端なカミングアウトでタイミングも悪かったね。もう、ちゃんとカミングアウトしないとやっていけないと思う。」と言いました。そこで、アスペルガー症候群についての基本的な説明と、医者から言われていた私の特性をプリントにまとめ、上司からみんなに説明してもらうことになったのです。出典 : 説明を受けた一部のスタッフは、私に妙に優しくなりました。一方でこれまでの態度と一切変わらない人や、「いろいろな個性があっていいじゃない。言ってくれてよかったと思うよ」といいながら、これまでよりも距離が遠のいたスタッフもいました。スタッフから言われた言葉の中で「ああ、わかってもらえないんだな…」と思った一言があります。「子どもの頃は学校でやってこれたんでしょ。個性の問題よ。みんな一緒。」どれだけ説明しても、「頑張っているのにできない」「努力ではカバーしきれない問題」だと、理解してもらうことは難しいな…と思った瞬間でした。また、「私がいじめているみたいじゃない」と言っていたBさんは、私の障害について「そんなこと言われても理解できない」と繰り返していたそうで、その後挨拶もしてくれなくなりました。それからしばらくして、出社拒否症のような状態になり限界を迎えた私は、会社を去りました。どうか私と同じ失敗をしないでほしい。カミングアウトするときに気を付けたいこと出典 : この会社を辞めてから、障害者相談機関でこのときの話をしました。すると、「カミングアウトはとても難しいんです。最初からジョブコーチや支援者に入ってもらって、その人から話してもらうことをお勧めします。」と言われました。今回のケースでは、私も最初は隠し通す気だったし、カミングアウトも場当たり的で失敗しても無理はなかったと思います。障害者職業センターでは、自分の特性をまとめ、「知っておいてほしいこと」「それについて会社に配慮してほしいこと」「自分ではどう努力するか」を表にする作業を一緒にしてもらいました。言いっぱなしでは誤解を招くだけになりかねません。しっかり準備して「会社や周りはどうすればいいのか」「自分でも努力すること」などを明示し、十分に計画を練ってカミングアウトすることをお勧めします。
2017年01月06日女の子は幼いころからオシャレに夢中!って聞くけど…出典 : 「まだ幼稚園生なのにオシャレにとっても気をつかってるみたいで、毎朝鏡の前でお洋服をとっかえひっかえ試着してるの。マニキュアは塗るし、お化粧もマネしてタイヘンよ!」女の子のお母さんからそんなお話を聞くたび、「我が子にもいつかそんな日が来るのね!」と心待ちにしていました。あれから数年…。アスペルガーの診断を受けている娘は小学3年生になりましたが、オシャレ心に火がつく気配はいまだ一向にありません。それどころか、着替えるという行為そのものが、娘にとってはこの上なく面倒くさい作業のようです。出典 : つい先日、「身だしなみを整えてね」と声をかけると、Tシャツ1枚とハイソックスを持ってきて着替え始めました。私「その組み合わせで本当にいいの?」娘「いいよ!だって、ママはこの間、Tシャツにズボンだと私のお尻が目立つからやめた方がいいって言ったでしょ?だからハイソックスにしたんだから、文句言わないで!」私「文句を言ってるわけじゃないんだけど…、何か忘れてない?」娘「忘れたりしてないよ!これでいいったらいいの!」私「それでいいんならいいけど、着替えたら1度鏡の前に立って、おかしい所がないかどうか確認してみてね。」数分後、パンツ丸出しの姿で鏡の前に立った娘。「ギャー!エッチ!見ないで!」と叫び声をあげていましたが、どちらかというとあなたが露出しているのですよ、ということを丁寧にお伝えしました。どうしてこんなことになってしまうのでしょうか?無頓着?いいえ、自分の服を適切に選ぶことができない理由があるんです出典 : アスペルガーの特性の1つに「服装に無頓着」というものがあります。「人からどう見られているか」ということに意識が向かない傾向があるため、大人になってからもTPOに合わせた服装をするのが難しいこともあるようです。娘と思考回路が似ている私も、自分が着る洋服を決めるというのはとても苦手です。子どもたちに着せる洋服は、「この組み合わせはおかしい」とか「この色はあまり似合わない」という判断がすんなりできるのですが、これが自分のことになるとサッパリわからなくなるのです。この組み合わせでおかしくないのか、この丈で大丈夫なのか、何1つ、判断できなくなるのです。オシャレを楽しめる人がいるということが信じられず、クローゼットや鏡の前でただただ不安を感じるばかり。その結果、1度組み合わせて誰にもおかしいと指摘されなかった組み合わせの服ばかりを選ぶようになり、「いつも同じような服を着ているね」と言われるようになります。なぜ、自分のことになると判断が難しくなるのでしょうか。答えは簡単です。自分がその服を着て動いているところを想像することができないからです。鏡の中で不安げに正面を向いて立っている自分の姿が全てなのです。同じ服を着ていても、かしこまって立っている時と動いている時とでは、印象がかなり違います。客観的に自分がどう見えるか、それがわからないので判断のしようがないのです。今のところ娘は困っていないみたい。でもいつか、助けを求めたときには…出典 : 娘も私と同じように、今のところ「その洋服を身に着けている自分」というのを全く想像できていないようです。ピンクのTシャツにピンクのパンツ、ピンクの靴にピンクのコートを着て、まるで林家パー子さんのようになっている時もある娘。今は1つひとつ「それはおかしいよ」「こういう風に組み合わせてみるといいよ」と説明しています。サポートをする前に、「今自分が何につまづいているのか」「どんなことが苦手なのか」に気づいてもらう段階ですね。娘が「自分は洋服選びが得意ではない」ときちんと認識できた後で、いずれは娘がそれぞれの洋服を着ている写真をアルバムのようにして、クローゼットに置いてみようかと思っています。私は出産前、スーツで人前に立つ仕事をしていましたが、その時には毎朝洋服選びで苦労しないよう、No.1~No.6までのスーツを用意していました。ハンガーに番号を振り、その番号順にスーツを着て出かけるのです。週5日の出勤でしたので、1着多めの6着を用意し、同じ曜日に会う人にいつも同じスーツだと思われないようにしていました。その頃は、私もアスペルガーの傾向があるとは思ってもいなかったので、洋服選びも満足にできない自分がふがいなかったのです。ただ今となって思い返せば、自分なりに工夫して、なんとか自分をサポートできていたのではないかと思います。つい先回りしがちな私たち。でも、ちょっと待って!出典 : 発達障害を抱える我が子たちにこれから必要なのは、まず自分が苦手だと感じているものは何か、何に困っているのか、という部分をきちんと認識できる力をつけてやることではないかと思っています。その認識があってこそ、自分に合った方法を模索することができるのだと思うのです。娘がきちんと洋服を選べるようにサポートをすることは簡単です。でも、すぐに手を差し伸べずに、子ども自身が苦手を認識するまでじっと待つのも親の仕事なのかもしれませんね。
2017年01月03日「睡眠時無呼吸症候群」(SAS)という病気の名前が近年、テレビや新聞などで紹介されることが多いですが、自分がひょっとするとこの病気である可能性があるのではないかと不安に思っている一方で、医療機関を受診するまでには至っていないという人々が実は少なくないのではないでしょうか。 睡眠時無呼吸症候群のタクシー運転手が主人公株式会社フィリップス エレクトロニクス ジャパン(本社:東京都港区、代表取締役社長:ダニー・リスバーグ)は、睡眠時無呼吸症候群について一般の人々でも容易に理解できるよう、その影響の深刻さや治療内容などについて啓発する動画を制作し、同社のウェブサイトで2016年11月1日から公開しました。動画では、SASと診断されたタクシー運転手が主人公で、SASと診断されたときの心情なども描いています。 睡眠時無呼吸症候群になると交通事故のリスクが高まるSASを含めた睡眠障害による経済損失は、年間3.4兆円に上ると言われています。これは、日中の眠気や集中力の低下などから作業効率が下がることと、欠勤・遅刻・早退をしがちであること、交通事故のリスクが高まることなどから推計されています。 睡眠時無呼吸症候群への取り組みは重要なリスクマネジメント国土交通省では、SAS対策の一環として、自動車運送業者におけるSAS対策マニュアルを策定しており、交通・輸送業界では、従業員向けにSASのスクリーニング検査を導入する企業も増えています。たとえば、日の丸交通も社員のSAS検査を推奨している事業者の一つ。交通事故や労働災害のリスクを考えると、企業によるSASへの取り組みは、重要なリスクマネジメントの一つといえそうで、同時に組織全体の生産性の向上にもつながります。動画は、以下の同社ブランド・ウェブサイトで見られます。「Healthy Japan(ヘルシージャパン) 」 URL: www.philips.co.jp/sasinfo Photo by Oleksii Leonov
2016年12月08日こんにちは、ライターの齋藤惠です。みなさんは『リーキーガット症候群 』という病気をご存じですか?日本ではその名前こそ知られてはいないものの、じつに70%もの日本人がかかっていて慢性的な症状に悩まされているという報告もあります。アメリカではすでに深刻な問題となっているとか……。そんなリーキーガット症候群とは、どんな病気なのでしょうか?●こんな症状ならリーキーガット症候群かも?リーキーガット症候群とは腸の病気です。英語では『Leaky Gut Syndrome』といい、直訳すると“Leaky=漏れる”、“Gut=腸”、“Syndrome=症候群”となります。腸の粘膜が傷ついたり穴が空いたりして未消化の物質や有害菌が体内へ漏れ出してしまう病気です。英語を省略して『LGS 』、または『腸管壁浸漏症候群 』とも呼ばれています。代表的な症状には、以下のものがあります。【腸】……便秘、下痢、胸焼け【皮膚】……にきび、発疹、湿疹、じんましん、アトピー性皮膚炎【脳】……慢性頭痛、うつ、自閉症、ADHDこれらはあくまで多くの人に共通して見られる症状の例であり、実際にはもっと多様な症状が起こる 場合があります。一つひとつを取ると独立した病気のように思われがちですが、根底にリーキーガット症候群という深刻な病が潜んでいる可能性があるのです。そう考えると、便秘も頭痛も軽視できませんね。●原因となる生活習慣『栄養医学研究所』によると、リーキーガット症候群は、乱れた生活習慣によって引き起こされる場合が多いようです。例えば、以下の過剰摂取が原因となる可能性があります。・アルコール類やカフェインなどの刺激物・(風邪薬などに含まれる)抗生物質・着色料、防腐剤、酸化防止剤などの食品添加物・精製食品炭水化物食品(白米、パン、砂糖など)・避妊用ホルモン(ピル)日常で多く摂り過ぎているものがあれば要注意です!なお、抗生物質があげられる理由は、“胃腸器官系の細菌、寄生虫、カンジダ、真菌類の異常繁殖を促すため ”だそうです。アルコールやカフェイン、精製食品などはとくに私たち現代人にとって身近な存在であるだけに、普段から過剰摂取しないよう気をつけなければいけないですね。●“腸の不調は万病のもと”と心得て!腸は人間の健康をつかさどる臓器の中でもとくにデリケートな部分 と言われています。腸の働きは単に食べ物の消化吸収だけにとどまらず、栄養をエネルギーに変えたり、解毒作用があったり、感染症に対抗する免疫を持っていたりと、生きるために必要な機能をたくさん担っています。そんな重要な腸のバリア機能が壊れ、栄養も病原体も漏れ出してしまう恐ろしい病気がリーキーガット症候群なのです。栄養過多やストレスによって日々、私たちの腸は病気の危険にさらされているかもしれません!そうならないために、毎日の生活習慣を見直しましょう!具体的にできることは、・胃に負担をかけない食生活をする・精製食品よりも玄米や黒糖などを食べる・食品添加物が多く含まれた食品を避ける・風邪薬やピルの気軽な使用は避けるなどです。できるところから実行して、健康な腸を保つ生活を送りましょうね!【参考リンク】・LGS(リーキーガット症候群)について | 栄養医学研究所()●ライター/齋藤惠(金融コンシェルジュ)●モデル/大上留依(莉瑚ちゃん)
2016年11月28日PDD-NOS(特定不能の広汎性発達障害)とは?出典 : とはPervasive Developmental Disorder Not Otherwise Specifiedの略で特定不能の広汎性発達障害のことです。自閉症スペクトラム障害やアスペルガー症候群などの、他の広汎性発達障害の特徴がみられるが、それらの基準を満たさない場合に診断される障害です。この障害はアメリカ精神医学会の『DSM-Ⅳ-TR』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第4版テキスト改訂版)という診断基準により分類されたものです。しかし、2013年、この診断基準の改訂版である『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版テキスト改訂版)において、PDD-NOSは自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害というカテゴリに変更されています。そのため、現在はPDD-NOSの診断名が下されることは少なくなりつつあります。とはいえ、すでにこの名称で診断を受けた人も多いこと、医療機関などでPDD-NOSの名称を使用している場合も多いことから、本記事では『DSM-Ⅳ-TR』において定義されているPDD-NOSについてご説明いたします。Upload By 発達障害のキホンこの障害は、発達障害の1カテゴリーである広汎性発達障害が含む5つの障害のうちの一つとして位置づけられます。(上図参照)広汎性発達障害が含む5つの障害とは、自閉症、アスペルガー症候群、レット障害、小児期崩壊性障害、PDD-NOSを指します。この広汎性発達障害という発達障害のグループの特徴として①対人関係・社会性の障害②コミュニケーションの障害③特徴的なこだわりや興味の3つが挙げられます。『DSM-Ⅳ-TR』によるPDD-NOSの定義は以下の通りです。対人的相互反応の発達に重症で広汎な障害があり、言語的または非言語的なコミュニケーション能力の障害や常同的な行動・興味・活動の存在を伴っているが、特定の広汎性発達障害、統合失調症、失調型パーソナリティ障害、または回避性パーソナリティ障害の基準を満たさない場合に用いられるべきである。例えば、このカテゴリーには“非定型自閉症”――発症年齢が遅いこと、非定型の症状、または閾値に達しない症状、またはこのすべてがあるために自閉性紹介の基準を満たさないような病像――が入れられる。引用:高橋三郎ら/訳『DSM‐IV‐TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』2004年医学書院/刊という診断区分を定めた『DSM-Ⅳ-TR』は最新の診断基準ではありません。そのため現在、PDD-NOSに相当する症状がある場合は、『DSM-Ⅳ-TR』以外の診断基準で診断をされることが多くなってきています。ここでは、PDD-NOSに相当する症状が、別の診断基準ではどのような名称なのか紹介いたします。・『DSM-5』におけるPDD-NOS『DSM-Ⅳ-TR』の改訂版であり、2013年に発行された『DSM-5』において、PDD-NOSは自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害というカテゴリに変更されています。Upload By 発達障害のキホン・『ICD-10』におけるPDD-NOS世界保健機関(WHO)が定める『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)(以下、本文中の表記は『ICD-10』とする)という診断基準では、『DSM-Ⅳ-TR』におけるPDD-NOSは非定型自閉症、他の広汎性発達障害、広汎性発達障害,特定不能のものという3つのカテゴリーに相当するとされています。Upload By 発達障害のキホン参考文献:神尾陽子/著『DSM-5を読み解く』2014年中山書店/刊PDD-NOSの診断基準出典 : は、1.広汎性発達障害にみられる症状がある2.広汎性発達障害に含まれる他の障害カテゴリー基準に当てはまらず特定できないという2つの条件をどちらも満たすものです。そのため、一言にPDD-NOSといっても、その症状は一人ひとり異なります。また、症状の程度は他の広汎性発達障害のなかでは比較的軽いと一般的には言われています。以下において、PDD-NOSの2つの条件についてそれぞれ説明いたします。1.他の広汎性発達障害にみられる症状があるPDD-NOSを除く4つの広汎性発達障害にみられる症状の特徴として以下の3点があります。・対人関係・社会性の障害人とのかかわりにおいて、お互いが快適に過ごすための振る舞いが難しく、良好な対人関係を築きにくいこと。・コミュニケーションの障害話し言葉や、表情や身振りなどのコミュニケーション能力において、なんらかの障害がみられること。たとえば、一方的な発話、独り言、言外の意味の組み損ねや話題の偏りやお決まりのフレーズなどが例に挙げられます。・特徴的なこだわりや興味特定の習慣や儀式にかたくなな興味をもつことや、特定の対象に対して持続的に熱中すること。参考ページ ペック研究所HP2.他の広汎性発達障害の基準に当てはまらない以下において説明する、4つの広汎性発達障害の基準を満たさない場合、PDD-NOSに分類されます。・自閉症自閉症は、目や耳から脳に入ってきた情報を「意味のあるまとまったこと」として認知することを苦手とします。原因は脳の器質的な異常によるもので、遺伝病ではありませんが、染色体異常や遺伝子異常などの遺伝的素因が強く、先天的に発症するという考え方が有力です。具体的な原因遺伝子はまだ解明されていません。詳しくは以下の記事をご覧ください。・アスペルガー症候群アスペルガー症候群(AS)は対人コミュニケーション能力や社会性、想像力に障害があり、対人関係がうまくいきづらい障害で、知的障害や言葉の発達の遅れがないものを言います。明確な原因は現在もわかっていませんが、何らかの脳機能の障害と考えられています。詳しくは以下の記事をご覧ください。・レット障害レット障害(レット症候群)は、ほとんどが女児に見られる脳障害で、少なくとも6ヶ月の正常な発達の時期を経た後に、重度の精神および運動の発達的後退がみられます。この障害の原因はX染色体上の遺伝子異常(MECP2、CDKL5、FOXG1)であることが1999年に解明されています。このため、『DSM-Ⅳ-TR』の改訂版である『DSM-5』では、自閉症スペクトラム障害から除外されました。参考ページ:レット障害|ハートクリニックHP・小児期崩壊性障害2~5歳頃まで健常な発達をしていたが、言語の理解や表出能力の退行が始まり、退行が終わったあとは自閉症と類似した症状を示すようになる障害です。原因はほとんど解明されていません。脂質代謝異常(コレステロールの蓄積)、はしかやウイルスの脳への感染、遺伝性疾患などとの関連がある可能性を指摘されています。参考ページ:小児期崩壊性障害|ハートクリニックHPPDD-NOSの発現時期出典 : 広汎性発達障害の子どもを持つ親が、言語能力の遅れやこだわりなどの症状から何らかの疑いを持つ時期は、3歳未満が多いとされています。また、1歳半健診や3歳児健診などの乳幼児健康診査で広汎性発達障害を含む発達障害に関する何かしらの指摘があり、その後医師の診断により判明することもあります。中には子どもの頃に気づかず、大人になってから広汎性発達障害と診断された方もいます。不安障害やうつ病などの気分障害・睡眠障害などのいわゆる二次障害と呼ばれる症状や状態となり、その検査を通して広汎性発達障害に気づく人もいます。PDD-NOSの原因特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)は、その名の通り特定の原因は不明とされています。現段階では正確な原因は解明されていませんが、脳機能の障害により症状が引き起こされるといわれています。その脳機能障害は、先天的な遺伝要因と、様々な環境要因が複雑かつ相互に影響し合って発現するというのが現在主流となっている説です。また、かつて言われたような親のしつけや愛情不足といった子育てのしかたによるという説は、医学的に否定されています。PDD-NOSかなと思ったら…?出典 : 上記で述べた症状や特徴などが見受けられる場合、専門家に判断してもらうことをおすすめします。ですが、いきなり専門医に行くことは難しいので、まずは無料で相談できる身近な専門機関の相談窓口を利用するのがおすすめです。また、1歳半や3歳児健診などの乳幼児健康診査がある場合は、医師や専門家もいるのでその際に相談してみるのもよいでしょう。子どもか大人かによって、行くべき専門機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所・発達障害者支援センター・児童相談所など【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所など児童相談所などでは無料で知能検査や発達検査を受けられることも多いので、児童相談所で相談するパパ・ママも多くいます。まず身近な相談センターに行って、診断をすすめられたら、そこから専門医を紹介してもらいましょう。自宅の近くに相談センターがない場合には、電話での相談にのってくれることもあります。以下のリンクにおいて全国の発達障害者支援センターを検索できます。発達ナビ地域情報|発達障害者支援センターの施設一覧・どの診療科にいけばいいの?PDD-NOSの診療が可能な診療科は、小児科、精神科、児童精神科、小児神経科、心身医療科、心療内科、発達障害外来など、病院により様々な名前となっています。どの病院に行けばいいか少しでも迷った場合は、まずは市町村の窓口や都道府県等の発達障害者支援センター等の相談窓口に電話で相談することをおすすめします。大人になって検査・診断を初めて受ける場合には、精神科や心療内科、大人もみてくれる児童精神科・小児神経科や精神科など専門の医療機関を受診することが一般的ですが、大人の発達障害を診断できる病院はまだ数が多くありません。上記の相談機関で紹介してもらえるほか、医師会や障害者支援センター、発達障害者支援センターなどでも調べることができます。発達障害の専門機関は他の病気に比べると少ないですが、発達障害者支援法などの施行によって年々増加はしています。以下のリンクは発達障害の診療を行える医師の一覧です。この他にも、児童精神科医師や診断のできる小児科医師もいます。担当者との相性も大切なので、納得のいく医療機関を選ぶようにしましょう。日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」発達ナビ地域情報|病院(発達障害の診療可)の施設一覧・ 診断・検査の流れ本人や保護者に対する問診(面接)や行動観察、家族・学校の先生による提供情報の精査などと、専門機関によっては知能検査や発達検査などを実施する場合もあり、筆記や口頭質問などの検査が行なわれ、様々な情報を総合的に評価して診断されます。検査は複数回に分けて行なわれたり、慎重に経過を見ながら行われるため、一度の受診で診断されることはあまりありません。知能検査は、田中ビネー知能検査Ⅴ(ファイブ)やウェクスラー式知能検査(3歳10ヶ月〜7歳1ヶ月の幼児の場合は「WPPSI」、5歳から16歳11ヶ月の子どもは「WISC」、16歳以上の成人の場合は「WAIS」)などの検査を受けることによって検査結果がでます。特性の現れ方や発達段階などを評価するため「CARS」や「新版K式発達検査2001」、「PEP-R」などを行う場合もあります。・診断に必要な準備や持ち物初診時に必要な物として保険証、子どもであれば母子手帳などがあります。服用中の薬などがあれば、お薬手帳なども持っていくとよいでしょう。また、生育や発達歴についての問診がありますので、言葉を話し始めた時期や日常生活での困りごとなどをメモして持っていくと質問に答えやすいかもしれません。発達外来などの専門機関によっては保育園や幼稚園の連絡帳、小学校の通信簿やホームビデオなどを参考にする場合もあります。事前に問診票をプリントアウトして持参する機関もありますので、専門機関の公式ホームページをチェックしたり、予約時に電話にて必要な持ち物を問い合わせてみてください。PDD-NOSは治療できるの?出典 : 広汎性発達障害のひとつであるPDD-NOSの根本治療はできませんが、症状を緩和するためには療育的アプローチと薬物療法の2つが効果的です。療育とは、障害のある子どもが社会的に自立できるように行う、治療と教育を組み合わせた発達支援の取り組みのことです。自分の問題を自分で解決できるようになるには、療育によりコミュニケーションスキル等の能力を身につける必要があります。療育は何歳からでも始めることができ、なるべく早くから通うことで、その子に合った学び方や人との関わり方を見つけやすくなります。療育とは医療、訓練、教育、福祉などの現代の科学を総動員して障害を克服し、その児童が持つ発達能力をできるだけ有効に育て上げ、自立に向かって育成することである。(出典:療育と教育の接点を考える|障害保健福祉システムHP)療育とは何か|LITALICOジュニアHP広汎性発達障害そのものを根本的に治す薬はありませんが、特定の症状を緩和するために使用することがあります。薬によって開始できる年齢や症状が決まっており、人によって副作用がある場合もあるので、主治医とよく相談し、用法用量を守って服薬していくことが大切です。薬物療法は、症状を一時的に抑えるためのものであり、症状が軽減している間に、その子の課題に応じた支援を行い、自分に合った学び方や人との関わり方の獲得を促していくと効果的であるともいわれています。PDD-NOSの場合、障害者手帳は取得できるの?出典 : 障害者手帳の取得により、就職時に障害に応じた配慮を受けやすくなったり、税金面での控除や医療費助成を受けたりすることができます。・療育手帳PDD-NOSと診断されただけでは療育手帳付与の対象とはなりません。しかし、療育手帳を申請し、知的障害を有すると認められた場合は療育手帳が取得できます。・精神障害者保健福祉手帳精神神経症状をともなう発達障害は、精神障害者保健福祉手帳の交付対象となります。そのため、PDD-NOSの症状によって、長期にわたり日常生活又は社会生活への制約があると認められた場合は、精神障害者保健福祉手帳を受けることができます。もし、知的障害と精神障害のどちらも有すると判断された場合は、療育手帳と精神障害者保健福祉手帳を両方取得することは可能です。まとめ出典 : 特定不能の広汎性発達障害)も、他の広汎性発達障害と同じく、早めに症状に気づくことで、療育や通院といった専門的な支援につながりやすくなります。お子さまの発達に何か違和感を覚えた段階で、お住まいの地域の発達障害者支援センターなどの相談窓口に連絡を取ることをおすすめいたします。専門家や支援機関のアドバイスも参考にしながら、子どもの課題に応じた支援を受け、その子らしい学び方、過ごし方を身につけることを応援していきましょう。
2016年11月21日「どうしたら一緒に遊べるの?」わからなくて独りぼっちだった幼児期出典 : 私と娘は親子揃ってアスペルガー症候群です。娘の診断をきっかけに、私も42歳で診断を受けました。今回は、私の学生時代を振り返りながら、その特性ゆえに友達作りで苦労したお話をご紹介します。私の母に言わせると、私は昔から友達ができない子どもだったそうです。幼稚園は1年しか行きませんでしたが、入園したとたんにつまづいてしまいました。いつの間にかクラスの子たちは打ち解けて自然に遊んでいるのですが、どうしたらああなれるのかもわからず、「一緒に遊ぼう」の一言が言えなくて、1人で遊ぶことが多かったのを覚えています。というか、仲良く友達と遊んだ記憶がないんですよね。先生は厳しい人で、松ぼっくりを蹴って遊んでいたら「松ぼっくりさんがかわいそうでしょ!」と怒られたことを覚えています。どうして松ぼっくりがかわいそうなのかいまだにわかりません…。幼稚園が楽しいとは、1度も思ったことはありませんでした。自分の言いたいことが言えない…!キレると拳で反撃していた小学生女子出典 : 小学校に入ってすぐに、印象的な出来事がありました。女子数人に次々に悪口を言われたのですが、悔しくて言い返そうとしても頭が真っ白になって何も思いつかないのです。悔しさのあまり、思わずその子たちを突き飛ばすと、帰りの会で「先生、ヨーコちゃんが○○ちゃんを突き飛ばしました」と言われました。先生は真相を確かめずに「ヨーコちゃんは謝って下さい」と言いました。私は悪口で何倍も心にパンチを受けたのに…。このときの「ごめんなさい」で、「女の子なんて大嫌い!!」「もう女の子とは関わらない!」と私の心は決まりました。それからはできるだけ男の子を相手に遊んでいたのですが、男子からもからかわれたりすることが多く、言葉で言い返せない私は暴力を振るうようになりました。気が付けば弟子入り志望の下級生が出てくるほどのケンカ常習犯に。友達が殴られたときも、問答無用でその男の子を投げ飛ばし、先生に追いかけられてトイレに逃げ込んだことを覚えています。でも、いつもそういうことばかりしていたわけではありません。一応女の子のグループにも入っていました。でも、仲間外れや分裂を繰り返し、自分たちだけにしかわからない言葉でしゃべったり…女の子同士の独特の付き合い方には、嫌悪感しか感じられなかったです。だから小学生時代もいい思い出はほとんどなく、卒業できてホッとしたのを覚えています。部活に没頭した中学校時代。他者との価値観の違いにはドライに対応出典 : 中学では剣道部に入り、すっかり武道の面白さに目覚めた私。なぜかと言えば、型から入り型で終わる武道は、アスペルガーである私の特性にとても合っていたのです。仲間と協力し合わなくても完結するのが、心地良かったですね。一緒に部活に入った子たちとも、最初は仲良くなって中学生らしく長電話を楽しんだりしていたのですが、部活に対する熱意の違いでいつの間にかぎこちなくなり、ライバル関係になってしまいました。昔から、人間関係が辛くなってきたらバッサリと切ってしまうか、自分から去っていくかのどちらかの方法ばかり選んできました。我慢してまで守りたい人間関係ではなかったし、修復する方法もわからなかったのです。友達は一応いたけれど、失って立ち直れなくなるほど執着を持ったことはありませんでした。キレやすさは相変わらず。でも、ルールに縛られずに過ごせた高校時代出典 : 高校は自由な校風で私服通学でした。同じ中学から進学した子はほとんどおらず、地元の狭い世界から解き放たれ、やっと一息ついたという感じでした。高校ではテニス部に入り「普通の子らしく」頑張っていましたが、先輩からの理不尽な嫌がらせにキレて、1年の夏休み明けには退部してしまいまいました。頭にきても手を出すことは中学でやめたのですが、カチンと来たときに言葉で相手に気持ちを伝えることは、いまだに苦手です。「なんでやねん!」と毎回思いますし、悔しい気持ちもあります。こうなると、行動に出るまでです。「黙って我慢する」「服従する」という言葉は私の辞書にはありません。大人になってもその傾向は変わらず、理不尽だと思ったら怒ってやめる、ということを繰り返してました。だんだん少しは「我慢する」ようになりましたが、それでも私の我慢の許容量は人よりはるかに小さいのです。出典 : 高校2年生から、学校の中にいるのが嫌になってしょっちゅう抜け出すようになりました。居場所は近所の喫茶店や、大きな公園、パチンコ屋。同級生と話すより、喫茶店のママやマスター、公園にいる路上生活の人と話したり、パチンコ屋の閉じられた世界に身を置く方が楽しかったのです。高校は3年間同じクラスで担任も一緒でした。担任の先生は途中から登校していつの間にかいなくなる私を気にかけ、親と話したり、私と話す時間を取ってくれました。「お母さんがしっかりしているからこの子は大丈夫」と親に言ってくれ、私が下手な嘘をついても、何もかも見抜いていながら泳がせてくれた先生には本当に感謝しています。もし当時、世間体やルール重視の指導をされていたら、私はきっと高校を中退していたことでしょう。大学生になり、始めて知った「人と付き合う楽しさ」出典 : 地元を離れ、他府県の大学に入った私。最初は友だちもできず寂しくて「別の大学に入り直そうか」と思ったくらいでしたが、軽音楽部に入ってから毎日が楽しくなりました。部活では、個性的な仲間と無理することなく打ち解けることができましたし、そこで初めて「しゃべり方が怖い」など、私の欠点を真っすぐに指摘してくれる人にも出会うことができました。下宿先では、夜通し友達とまじめな話をしたり遊びに行ったりと、「学生らしい」生活を堪能して、初めて人といることの楽しさを味わうことができたように思います。ありのままでいられる人間関係だってある。不登校の娘にも知ってほしいこと出典 : きっと、大学くらいになると友達付き合いが成熟してくること、友達も大人になって「ちょっと変わった子」の私と向き合う余裕ができたからなのでしょう。だからもし叶うことなら、娘にも大学に行って、友達とバカなことをしたり羽目を外す楽しさを味わってほしいなぁと願っているのです。大学時代の、成熟していながらも何事にも縛られない付合いって、この時期にしか味わえないものだと思うから。
2016年11月18日私の障害が娘にバレた!でもちょっと誤解しているようで…出典 : 娘がアスペルガーと診断されたのは小4のとき。その2年後に私も同じアスペルガーと診断されました。不登校でもあった繊細な娘には、ショックが大きいだろうと思い、告知はまだしていません。私は、自分がアスペルガーの診断を受けた後、張り切ってアスペルガー症候群の関連本を何冊か買い込んできては、部屋に思いっきり放置していました。それを見つけた娘がビックリした顔で「ママってメンヘラちゃんやったん!?」と詰め寄ってくるではないですか。私「ちょっと待て。メンヘラちゃんってなに?」娘「ママ、手首切ったりしてない?大丈夫!?」どんな斜め上の誤解なんだ(笑)。娘の解釈に驚きつつも、アスペルガーにそんな印象を持っていたことにショックを受けました。よく考えてみると、こういう誤解の仕方ってインターネットのサイトを見てる人にありがちなことなんですよね。そして内心「参ったなぁ、君も一緒なんだよ。こんな誤解してちゃダメだよなぁ」とため息をついたのでした。そう、娘への告知をのばし延ばしにしているうちに、自分の方が先にバレてしまったのです。これはどうしたものか…と、けっこう悩みました。そうだ!私の体験談を娘にシェアしてみよう!出典 : そこでまず私が思いついたのは、「そうだ、私を通してアスペルガーのことを理解してもらおう。そうすればいつか告知したときも自分のことを理解しやすくなるはず」というアイデアでした。それからというもの、特性がらみの困りごとを、日常会話にさりげなく取り入れるようになりました。「会社で上司に次々とやることを言われたんだけど、覚えきれなくて困った」「仕事で話しかけられても、周りがうるさいとその人の声だけじゃなくて全部聞こえるからわからなくなる」「一緒に買い物行ったとき、目の前にあったものをママは見つけられなかったでしょ?あれも特性なんだよ」「2つ以上のことを一緒にやろうとすると混乱する」人間関係の困りごとも話しました。「どうしてかわからないけど、いつも何ケ月か勤めると周りの人に嫌われてるんだよね」「嫌われていると思ったら、心のシャッターが下りるのよ」「空気が読めなくて変な人と思われてるみたい」解決法は教えてあげたくてもなかなか教えられませんでした。だって私自身、何も解決していないから。ただ、障害者職業センターで習ったことや、感動したことは「落ち着いて練習したら、失敗したことを上手に謝ることができたよ」などと伝えていました。娘は「ふーん」と聞き流しているように、そのときは見えました。今度は娘が自分を疑いだし…しかしそこで思わぬ本音が。出典 : そんなある日、突然娘が「ママ、私ってアスペルガーなの?」と聞いてきたのです。私の話にいろいろ思うところもあったのでしょう。嘘がつけない私は、あたふたとして「うーん、そうかもしれないなぁ」と言ってしまいました。でも、娘はそれ以上突っ込んできませんでした。「ねぇ、もしアスペルガーだったらどう思うの?」と私が聞くと「障害者にはなりたくない」と言ったのです。私自身は障害者手帳も取って、障害者として生きていく決意を娘にも明らかにしていたのに、この言葉はショックでした。気になりながらもよくよく聞いてみると、娘にとっての障害者は「言葉で意思の疎通ができない人」のことだったようです。彼女は保育所の年長のとき、保育所の先生がボランティアでやっているダンス教室で、予告なしに重度の障害を持った子と引き合わされました。話しかけても反応してくれない、無言で笑いながら抱き付いてくる、その様子に強い恐怖を感じてしまったようでした。このことを私の支援者に相談したのですが、「その引き合わせ方に問題がありましたね。言葉で言い聞かせるよりも、これからの人生での中でゆっくり理解していくしかないと思いますよ」と言われました。そして、娘の支援者・主治医などと相談した結果、もう少し彼女の自己肯定感が上がってきて、アスペルガーだということを冷静に受け止められる時期が来るまで、告知はしないことになったのです。これから娘に聞かれたら、「お医者さんに聞かないとわからない」と答えるよう、アドバイスされました。障害名は関係ない。1人の人間をあるがまま受け止める素直さに感動出典 : 娘はきっと、自分がアスペルガーだとわかっている気がします。時には疑い、時には否定しながらも、心のどこかではわかっている。でも認めたくないという風に見えます。そんな彼女ですが、ある日私のことをこう言ってくれました。「ママは自分のことアスペルガーって言うけれど、私にとっては『ママはこういう人』というだけで、『ママはアスペルガー』だとはいちいち思わないよ」障害名が付いた特性持ちの人ではなく、1人の人間として見てくれている…。この言葉は涙が出るほど嬉しかったです。今では誰よりも私の特性を理解し、さりげなく助けてくれるようになりました。その力を活かし、いつか自分の特性を深く理解して、助けを求められるような人に育ってくれたらいいな、と願っています。
2016年11月11日こんにちは、ライターの齋藤惠です。2016年10月22日に放送されたラジオにて、歌手の和田アキ子さんが『シェーグレン症候群 』という病気にかかっていることを発表しました。あまり聞き慣れない病名ですが、いったいどんな症状になってしまうのでしょうか?また、私たちにも起こり得る病気なのでしょうか?●難病『シェーグレン症候群』とは?難病情報センターの説明によると、『シェーグレン症候群』とは、『1933年にスウェーデンの眼科医ヘンリック・シェーグレンの発表した論文にちなんでその名前がつけられた疾患』だそうです。また、『日本では1977年の厚生労働省研究班の研究によって医師の間に広く認識されるようになりました』とのことです。一般の人々にはほとんど知られていない病気という印象がありますが、意外にも、潜在的な患者さんやアメリカでの報告を含めると年間10~30万 もの人々がこの病気によって病院にかかっているそうです。●具体的にどんな症状?シェーグレン症候群になると、下記のような症状があらわれます。・目の乾燥(ドライアイ)・口の乾燥・鼻腔の乾燥・唾液腺の腫れと痛み・全身の疲労感人によって個人差はありますが、実にさまざまな症状が起こってしまいます。ちなみに和田アキ子さんの場合は、涙や唾液が出にくいとのことで、常に水を手放すことができない生活を送っているそうです。歌手にとっては直接仕事に影響しそうな症状ばかりで、つらそうですね。●どんな人がかかりやすい?シェーグレン症候群の患者さんは、とくに50歳代の女性に多い と言われています。ただし、少数ですが子どもから高齢者まで広範囲にわたり発症する可能性はあるとのことです。女性ホルモンの変化や遺伝、ウイルス、免疫異常など複数の原因が考えられるようですが、やはりこれから更年期などをむかえる女性は特に気をつけたほうがよいでしょう。●どんな治療をするの?現在のところ、残念ながら病気そのものを治療する方法は見つかっていない ようです。ただ、患者さんの症状に合わせて乾燥対策を行うことで、10年後も20年後も現状と変わらない生活を送ることができるといいます。そのためには、定期的な健康チェックを行い、医師の指示にしたがって生活習慣を改善していけばよいとのことです。具体的には規則正しい生活や、過労を避け休息をたっぷりとること、適度な運動など、シェーグレン症候群に限ったことではなく、誰もが健康を維持するために理想的な生活をすれば自然と病気の悪化を防ぐことにつながります。根本的な治療方法がわかっていない難病と言われているだけに、かかってしまった人は極度の不安に陥ってしまうこともあるようですが、体の免疫力を落とさないためにも事態を暗く考えてはいけません。今回、和田アキ子さんが病気を公表したことで、シェーグレン症候群への理解が一般へと広がり、治療の研究が大きく進展することに期待したいですね!【参考リンク】・シェーグレン症候群 | 難病情報センター()・シェーグレン症候群 | 大阪大学 免疫アレルギー内科(大学院医学系研究科・医学部)()●ライター/齋藤惠(金融コンシェルジュ)
2016年11月07日ないと困るけど、あればあったで厄介なもの、それは月経。特に月経前のイライラや体調不良は、毎月のことながらうんざりしてしまいますよね。これは、月経前症候群(通称PMS)の症状で、ある程度は仕方がないとされてますが、排卵日から月経までって約2週間ですよ、2週間!長すぎっ!月の半分やんけっ!それを”PMS”なんて横文字に置き換えたくらいで、片付けられたくないんですよね。しかも年齢を重ねるごとに、PMS症状はひどくなってきている気がします。これって気のせい?いや、気のせいではないようですよ。アラサーはもっともPMSが辛くなる年代だった!PMSは10代~40代の女性に多く見られる症状ですが、実は年代によって症状の表れ方が変化するそう。20代までは胸の張りや下腹部の違和感など、どちらかというと身体的な不快感が症状として表れやすいのに対して、30代ではイライラしたり怒りっぽくなったり、時には気持ちが不安定になったりと、精神面での症状が表れやすくなる傾向があるのだとか。特に出産経験のある女性は、イライラ感や抑うつ症状が強く出やすくなるそうです。これは30代からのライフステージの変化も関係していると言われます。確かに20代の頃に比べると、30代は仕事もプライベートも責任が増して、精神的な負担が大きくなる年代。日ごろの忙しさに加えて、そうした重責からストレスを感じる機会が増えるのは事実でしょう。生理前は、通称「幸せホルモン」のセロトニン分泌が減少することもあり、気持ちが不安定になりやすい上に、日常のストレスが重なることでPMS症状が重く出てしまっている可能性があるそうです。「30代中期症候群」という言葉もあるほど、30代のPMSが重くなりやすいのは事実なんです。月の満ち欠けで月経周期を読むところで、月の満ち欠けが月経の周期に関係するという話を知っていますか?月経がそんなロマンチックなはずはないと思っていましたが、あながち迷信とも言い切れないようです。月の周期は約28日間ですが、これは人の月経とほぼ同じです。一説では、月の満ち欠けが潮の満ち引きを司るように、人の体にも月が影響をもたらすのだとか。人間の体の70%は水分で構成されていることから、月の引力が体にもなんらかの影響を及ぼすのではと考えられているんです。なんと原始時代には、ほとんどの女性が新月に排卵し、満月に月経が来ていたという仮説までもあるそう。現代でも新月月経と満月月経の人は、少なくないのだとか。実は私も新月月経です。まったく月の満ち欠けなど気にしていませんでしたが、この説を知って改めて確認してみたら、毎月新月付近に月経があることに気づきました。となると、排卵は満月付近にあるということになります。ん、これはPMS対策に使えるかも。そう、月経周期がはっきりわかっていることは、PMS対策にはとっても重要なんです。アロマでPMS対策月経周期がわかれば、あとは対策を打つだけです。排卵日付近になって、気分のゆれ幅が大きくなってきていると感じたら対策開始です。私が実際にやってみて効果があったと感じた、アロマオイルを使う方法をご紹介しましょう。「ゼラニウム」バラに似た華やかな香り。ホルモンバランスを整える効果が期待できるそうです。「クラリセージ」ほのかな甘みのある香り。女性ホルモン(エストロゲン)に似た働きをする、スクラレオール成分を含みます。「フェンネル」スパイシーなハーブ系の香り。女性ホルモンに似た働きが期待できる成分を含みます。「グレープフルーツ」柑橘系のさわやかな香り。気分を高揚させて緊張や不安を取り除く働きがあるそう。私の場合は朝夕2回、ココナッツオイルなどのキャリアオイル大さじ1杯(15ml)に、アロマオイルを3~5滴混ぜあわせて、腹部と腰にすり込むようにマッサージしました。マッサージをすることでPMS期にあることを自覚できたので、不安や緊張にむやみに振り回されることが少なくなったように感じます。紹介した中から気に入った香りのアロマオイルを選んで、ぜひ試してみてくださいね。PMS対策は大切な人への思いやりPMSのもっとも悪いところは、人によっては周囲に対して攻撃的な態度になってしまう場合もあるということ。当たられる方は、たまったものではありません。いくらPMSだからといって、月の半分もイライラされては、人間関係が崩れるのは時間の問題でしょう。その意味では、PMS対策は自分のためだけでなく、周囲への思いやりという点でも大切なことです。女性である以上、月経からもPMS症状からも逃れることはできません。だからこそ、大人の女性のたしなみのとして、PMS対策の方法を身に付けても損はありませんよ。
2016年11月01日みなさんは『まっしろ』(TBS)というドラマをご存知ですか?2015年に放送された堀北真希さん主演の、看護師の世界を舞台とした医療ドラマです。こちらの作品のとある回で「ナイチンゲール症候群」が描かれました。ナイチンゲール症候群とは、患者さんに対して基本的なケアを行っているだけなのに、特別な感情を抱いていると錯覚する症状。相手が回復するとこの感情は薄れるものの、今度は違う患者さんに対して気持ちが膨らんでしまうのです。◆ダメ男にハマるパターンとは?ダメ男ばかりに惹かれる女性の中には、このナイチンゲール症候群に陥っている人もいるでしょう。常に誰かの世話をしていたくて、世話をしている自分に恋しているケースですね。その他にも、次のようなパターンがあります。[1] 外見重視で相手の中身を見ない[2] 恋人と母親の線引きができない[3] 無価値感から自己批判を求める◆外見重視で中身を見ない恋愛に対して未熟だと、このようなケースに陥りやすくなります。若い女性が好みのアイドルグループに熱をあげるのと同じ。あるいは、流行のアクセサリーを買ってすぐ飽きるのと同じ。恋人を求めているのではなく愛玩する対象を求めているにすぎないので、そもそも恋愛とは呼べません。数ある人付き合いの中でも恋愛は、特に心を結びつける努力が必要となります。体当たりでぶつかりながら相手の人となりを知ろうとしないと、いつまでたっても「見た目だけはいいダメ男」から卒業できないでしょう。◆恋人と母親の線引きができない好きな人にはいろいろなことをしてあげたい、そう思うのは自然なこと。ただ「いろいろ」の内容について、きちんと吟味し、切り分ける必要があります。子どもが嫌がることは何もせず、なんでもかんでもやってあげて、結果、一人では何もできない子どもに育ててしまうことを心理学的に「優しい虐待」といいます。線引きができない人は、このような「優しい虐待」に通じるものがあるのです。経済的にも精神的にも自活し、自分の言動に責任を持つのが本来の大人ですが、人というのは楽ができるとついつい流され、自分で自分の面倒をみなくなるんですね。そうして尽くしすぎることで、相手の男性を「大きな子ども」にしてしまうのです。好きだから尽くしたいと思うのは悪いことではないのですが、自立した大人であることをわきまえる必要があるでしょう。◆無価値感から自己批判を求める小さい頃から親に愛されず虐待を受けていた、あるいはいじめの被害者だった。このような長期的に疎外感を感じる環境にいた人は、「他人から愛されない人間」というネガティブなメッセージを植えつけられ、それを信じ込んでいる場合があります。自分自身を「全く価値がない」「魅力がない」と思い込んでいることを、心理学的に「無価値感」といいます。このような「無価値感」が強いと中途半端な慰めや励ましに対してむしろ空しさを感じるようになり、通常であれば避けたくなるような否定的あるいは攻撃的な人が居心地よいと思えて、自分を傷つける男性ばかりと一緒になるのです。こういう人は、まず「愛されなかった自分」を受け留めることが重要。そうすれば自分に対して肯定的に接してくれる人も受け入れられるようになり、無価値感が次第に薄れていきます。段階を踏みながら、己の中にある「強み」と「弱み」を理解しましょう。◆まとめ自分を大切にしてくれない男性ばかりを好きになる傾向と対策、ご理解いただけましたでしょうか。未熟な男性に惹かれるのは、自分の中にある未熟さが原因です。大人の女性に成長することで、成熟した恋愛ができるようになるでしょう。過去を振り返り、自分のスタイルを見つめ直してみてくださいね。ライタープロフィール黒木蜜一般企業に勤めながら執筆した作品が日本文学館のオムニバス本に掲載され作家デビュー。古事記への造詣が深く、全国300ヶ所以上の神社紹介記事を執筆。現在、古事記の観点から紹介する神社コラム/恋愛コラムなども手がけている。
2016年10月28日アスペルガーだと公表してから、「困っていること」ばかり聞かれるようになった出典 : みなさんこんにちは、高校教師のゴトウサンパチです。36歳でアスペルガー症候群と診断を受けてから10年が経ちました。社会全体としても、発達障害に対する認知や関心が高まり、その間、ボクも著書を出したり、発達障害関連の学会での発表をやらせていただいたり、講演依頼もいただくようになりました。そうした場でお願いされることのほとんどは、発達障害への支援を充実させるために、ボクが何に困っているのかを話してほしい、というものでした。ボクが当事者の1人として話すことで、発達障害への研究や支援が進み、それでたくさんの方が救えるならありがたいことだと思い、ボクは一生懸命お話してきました。他にも大勢いる発達障害当事者たちの代弁者のつもりで、自分が何に困っているのかを発信してきたのです。でも、話しているうちに、何かが違うのではないかという感覚になってきました。当事者の代弁者になんてなれるのか。ボクの困り感をみんなに伝えることが、いったい何になるのか。今日は、そんな逡巡から始まった、ボク自身の内面の変化についてお話します。どれだけ話しても、自分の感覚を他人と分かち合うことはできない出典 : 多くの人からの相談に答え、講演などで話し続けるなか、ある時ボクは気づいてしまったんです。ボクには、「発達障害当事者」の代弁や代表なんてできないということに。そんな風に思ったのは、どれだけ話しても、当事者の代弁はおろか、ボク自身の気持ちを理解してもらえることは決して来ないのだということを知ったからです。ボクの感覚は、ボクだけの感覚なのでいくら説明しようと試みても伝わりませんでした。ボクが絵を描いて説明しても、こうして文章を書いても、それを見る人読む人のその時の感覚や知識に任せざるを得ないのです。つまり、全く同じ気持ちを、2人の異なる人間が分かち合うことはできないのです。それを言っちゃあおしまいよ、支援者の方々はそう思われるかもしれませんが、どうしようない事実です。他の多くのみんなの感覚と、自分の感覚は決して同じではないこと。当事者の方には一刻も早く気づいてほしい。でもボクはこのことをネガティブには捉えていません。決して絶望なのではなく、むしろスタートラインだと思っています。自分と他人は違うのだということを受け容れて初めて、ボクはボク自身の幸せを追求できるようになるからです。他人と比較すればするほど、「困り感」は増幅していく出典 : アスペルガーだと公表してから、周りからいただく質問は「何に困っているか」という話題がほとんどだとお話しました。でも、そもそもボクたちが抱く「困り感」とは、いったいどこから生まれるのでしょう?思うにボクらは、自分と何かを比較することで、差を見つけ、そこからやり場のない困り感を生み出している気がします。わかり合えるはずなのに戦ってみたり、できないことをしようとしてみたり、必要以上に不安に感じたり。できることだけをすればいいのに周囲と合わせなくちゃいけないからとか、仕事だからとか、成績だとか、これができなきゃ将来困るからだとか…そんな風にして周囲と比べ、差を埋める努力を重ねれば重ねるほど、良くも悪くも自分らしさを認めることが減っていく。ボクはそんな自分に疲れたんです。何をやっても上手くいかない日々、悲しくて泣いた日々を思い出すことさえ嫌なんです。実は未来に期待することも嫌です。それより今、幸せでいたい。自分らしく生きていたい。ボクの内側からそんな声が溢れていることに気づきました。そこからボクは、考え方を少し変えてみることにしました。困った時は、困っていることに注目するのではなく、「世界に自分1人であれば、こんなに困ることはないはず」「いつだって1人ぼっちになってもいいように、自分にできることを追求してみよう」そうやって考えることにしたのです。別に何かを始めることではなく、そんな風に意識を変えただけです。驚くことにそれだけで、徐々に葛藤が減り、トラブルが減り、心が穏やかになり、格段に楽しい日々を送れるようになりました。なぜか以前より友達も増えたんですよ。それからは、“他人”との差ではなく、“ボク自身”の内面の変化に気付けるようになりました。自分を観察し昨日とは違う自分を発見するのは楽しいことです。いろいろな実験をしてみることも楽しいです。例えば、散歩したり、食事の内容を変えたり、そんな些細なことで、今日という日は昨日とは違う展開を見せるのです。それは、社会でも、周囲でもなくボクが変化しているからに他なりません。「困っている人の支援」という発想から抜け出そう出典 : ボクに質問や相談をしてくれる人のなかには、発達障害のある人の支援をしたい、という人も多くいます。彼らと話していると、実は「支援したい人も困っている」のだということに気づきました。「困っている人を支援したいけど、どうしたら良いかわからない。彼らが何を感じているか分からない」そのことが彼ら支援者自身の「困り感」を招いていることがしばしばあります。ボクはそういう人たちにも、まずは自分の幸せを第一に考えてほしい、と伝えたい。困っていることを解消するというのは、お互いの間にある「差を埋めようとする」ことです。そもそもそんな期待を持つことを、やめてしまってはいかがでしょうか。あなたにできることだけをしてあげる。それしかありませんし、できないことを前もってハッキリ伝えてあげる方がいいと思います。抱えきれないことを引き受けると、支援者であるあなた自身の困り感が増えてしまいますし、困り感を抱えたもの同士のやり取りはお互いがより困るだけです。できないことをできないと言うと、その時はたしかにギクシャクしますが、大丈夫、正直な行動は時間がしっかり解決してくれます。ですから、あなたは自分の幸せを第一に考えてください。ボクは、他人に合わせることをやめ、自分の幸せを第一に考えるようになってから、不思議と相手の変化にも敏感に気付くようになりました。もしかすると、お互いの変化を認め合い、伝えることが本当の支援なのかもしれません。きっと、ボクもあなたも、お互いが正直に向き合うことで、すでに支援し、支援されているんですよ。さて、今回言いたかったことは言えました。最後まで読んでくださってありがとうございます。
2016年10月27日小学校と園をやめた姉弟。その後増えていったのは、子どもたちの笑顔だった出典 : 我が家には8歳の娘と6歳の息子がいて、それぞれアスペルガー症候群とADHDの診断が出ています。「学校をやめる」と宣言し、毎日家で過ごしている娘。後を追うように息子も「幼稚園をやめる」と決断し、のんびりと家で過ごしています。子どもが毎日家にいると大変では?と、聞かれることがありますが、実は私にとっては、子どもたちが学校や幼稚園へ行っていた時の方が大変でした。学校や幼稚園に通っていた頃は、帰宅後ぐったりと疲れていたりストレスで荒れたりと、子どもたちをフォローすることで精一杯。お互い心に余裕がなく、日常生活をなんとかこなすだけの日々で、何かを楽しむという時間は全くありませんでした。家で過ごすようになり、私は子どもたちが行きたくない場所へ送り出すエネルギーと、罪悪感から解放されました。そして、ストレスのなくなった子どもたちはとても明るく、元気になりました。うちの子たちって、こんなによく笑うんだな、と毎日とても新鮮な気分で眺めています。子どもたちをゆっくりと観察することもできるようになり、凸凹のタイプが異なる2人の違いも、より一層明確になってきました。一緒に過ごす時間が増え、子どもたちの得意なこと苦手なことがよくわかるようにUpload By GreenDays娘と息子の思考の違いに気付いたのは、娘とアイロンビーズに取り組んでいたときでした。以前、人によって物事を認知する能力が違う、というコラムを書かせていただきました。娘の場合、目で見る言語・耳で聞く言語にとても強く、頭の中も言語で埋め尽くされている状態です。アスペルガーの娘曰く、頭の中にはたくさんの引き出しがあって、きちんとインデックスがついており、全ての情報がしかるべき場所にきちんと言語化して収納されているそうです。ADHDの息子は視覚優位で、映像から物事を理解するタイプ。例えば「今日の午前中は何をした?」と聞いても「えっと何だっけ?」「思いだせない」と思いだすこともなく、考えることをあっさりやめてしまいます。娘に息子と同じ「今日の午前中、何をしたかな?」という質問をすると、「今日の朝は〇時〇分に目が覚めて、ママは起きていたけど弟はまだ寝てたよね。朝ごはんを食べている時に…」と、とても細かい部分まで正確に答えが返ってきます。娘とアイロンビーズを整理していたときです。綺麗に並べられたビーズを見ていてふと、「これは娘と私の頭の中みたいだな」と思いました。では、息子の頭の中をアイロンビーズで例えると、どんな風になっているのだろう?という疑問が湧いてきました。それから数日間、息子の言動を追いかけ、頭の中がどうなっているのかを想像してみました。娘とは違う方法で情報を記憶していた息子。大変なのは、その情報を取り出すときUpload By GreenDaysそして辿りついたのは、息子の記憶は1つひとつが細かく分かれていて、それが整理されることもなくどんどん放り込まれ、山積み状態になっているのでは?という考えでした。それは、色分け途中のアイロンビーズのようなイメージです。息子は何の脈絡もなく、突然昔のワンシーンを語り出すことがあります。数々の情報が整理されないまま記憶されているので、膨大な記憶の山から必要な情報を探し出すのに、途方もない労力が必要なのだと思います。そして、息子の記憶は言語化されておらず映像のまま残っているようなので、それを言語化して人に説明するためには、また多くの力を注がなくてはならないのでしょう。この分析が正解かどうかは、息子がもっと大きくなってから聞いてみないとわかりません。でも、「こんな感じなのかもしれないな」と想像するだけでも、息子が苦手なことにも理由があるのだ…と、イライラせずに済むので、子どもの特性を知ることは、大切な作業だと思います。努力では補いきれないときはどうすればいい?模索する中…出典 : さて、バラバラの情報が山積みになっている息子に、「お姉ちゃんのように、きちんと情報を整理しなさい」と言っても、脳の構造が違うので無理なものは無理です。これから息子に合ったやり方を一緒に見つけて行かなければなりません。とりあえず、「今日の朝からお昼まで」の情報を思い出す練習を、お昼ごはんの後に行うことにしました。毎日、手帳に箇条書きで書き出していきます。でも、お昼ごはんの前に何をしたかさえ、思い出せない息子。それでも毎日続けているうちに、「今日はこれを手帳に書いてみようかな」という言葉が息子から出てくるようになりました。もちろん、手帳を前にした時にはその出来事をすっかり忘れてしまい、「あれ?何を書こうと思ってたんだっけ?」ということの方が多いですが、それでも「今日の出来事を手帳に整理する」という意識が、少しずつ芽生えてきたことは大きな進歩です。子どものタイプによって苦手なことは違う。支援のコツは「その子が生きやすくなるかどうか」出典 : 自分が簡単に情報を引き出せるタイプではないことを理解した上で、いつかはその対処法として、必要なことはメモを取ったり、予定を忘れないようにアラームを設定するなどの行動をきちんとできるようになれば、息子自身が生きやすくなるのではないかと思います。子どもたちの色々な特性に気がつき、それで子ども自身や周囲の人が困っているのならば、こんな方法もあるよ、あんな方法もあるよ、と一緒に試しながら、その子にあった方法を見つけられるといいですね。
2016年10月25日アスペルガー症候群の娘が遊ぶ姿は、まるで蝶々出典 : 私の娘にはアスペルガー症候群があります。私が幼稚園を訪れると、園庭で遊んでいる娘を見かけることがあります。基本はひとりで遊んでいます。ふわふわと中途半端な位置で舞っていたり(笑)、ふわ~っと遊具のところへ行って遊んだと思えば、またふわ~っとどこかへ…その様子はまるで蝶々のようです。娘は自分のペースで、自分のイマジネーションの中で遊んでいるんだなぁと思いながら見ていると、私はとてもあったかい気持ちになります。幼稚園の先生方もそんな娘を暖かく見守ってくださり、空気や顔色が読めない娘の発言を「だからこそ真実味があって信用できて、心に響く」と評してくださったりします。周りの方のそんな言葉を聞くのはとても嬉しく、また娘を誇らしく感じていました。就学相談担当者から指摘された、娘の様子出典 : そんなある日、就学相談の担当者の方が幼稚園での娘の様子を観察しに来ました。その担当者の方の口から娘の様子を聞くと、・ホールに集合してみんなで先生の話を聞いているときに、誰に何の断りもなく水を飲みに行った・自分の近くに置いてあるペンをお友達に「取って」と言われても、名前を呼ばれるまで自分が言われていることに気づかなかったなど色々な指摘をされましたが、あの蝶々のように遊ぶ娘の様子についても報告がありました。ジャングルジムに登って、そこにいたお友達とちょっと喋ったと思えば、園庭の隅にある、娘お気に入りの葉っぱを取りに行き、そこへいた年少さんと少し言葉を交わし、今度は砂場で遊んでいたお友達に声をかけたと思えば、ふらふら~っと今度は鉄棒のところへ行って前回りを数回、その後…と、いつも見かけるような様子を微笑ましく聞いていたのですが、担当者の方はこう言いました。「お友達とじっくり関わったり、腰を据えてじっくり遊ぶことがなかったですね。」他の子にはない娘の良いところを、つぶしたくない!出典 : まるで娘の遊び方に問題があるかのようなその言葉に、私は考えさせられました。「うーん、私は全然そんなこと問題だと思わないんだけどなぁ…むしろ彼女の持つ空想力というか夢見がちなところを大事にしたいんだけどなぁ」そう思うと同時に、「ああ、これは大事にするっていうか、守ってやらなきゃ潰れてしまう!」と決意と危機感が合わさったような気持ちになったのです。娘の個性を大事にしたい。そう思えるようになったのは、自分の幼少期を思い出したから出典 : 今でこそこんな娘の様子を「守ってあげたい」と思うようになった私ですが、娘に「凸凹がある」と指摘されたばかりのころは、「娘のことがわからない」と悩んだこともありました。娘の個性を大切にしたいと思えるようになったきっかけは、自分の子ども時代を思い出したことです。親に「どんな子だった?」と聞くと、私は必ず「ちょっとませた、変な子だった。」と言われます。幼稚園の頃の記憶を思い返してみると、園庭の一角にあった小さな森のような場所が大好きでした。そこに一人で座って、リスやクマ、ウサギやシカなどの森の動物がやって来て、木の実でパーティーをやるという妄想をしながら遊んでいました(笑)。またある時は、朝食のパンに入っていた小さな四角いチーズを持って、「ここははネズミのお家に違いない」と思っていた建物のひび割れに空いた穴に詰めに行ったり。親や周りの大人からは「変な子」と思われていたかもしれないけれど、私にとってはとても幸せな思い出です。娘にもそんな素敵な思い出を大事にしてほしい。他の子と少し違うからといって、すぐそれを「問題」と決めつけて娘の個性をつぶしたくない。そう考えた出来事でした。「わが子のことが分からない」と行き詰まったときは、自分やパートナーの子どもの頃はどうだったか?と周りに聞いてみたり、思い返してみたり、家族で話してみてはいかがでしょうか。
2016年10月23日小5の長男が不眠症に。眠れない影響は様々なところに現れ…出典 : 去年の冬頃のことです。発達障害のある小5の長男が、「夜眠れない」と訴えるようになりました。就寝時間も遅く、夜中の2時や3時を過ぎることもありました。その頃の長男はひどく疲れた様子で、いつもイライラしていました。ちょっとしたことで泣き出したり、次男に言いがかりをつけてケンカになったり…。どうしてなのか原因を考えてみると、当時学校で勉強についていけず辛い思いをしていること、控えている学校行事の準備や練習などが、ストレスになっているのでは?と思いました。このため、「せめて家ぐらいは好きなことさせてよ!」と訴える長男が、できるだけ家でリラックスして過ごせるよう、テレビやゲームなどをあまり制限しないようにしてみました。出典 : しかし、しばらくしても不眠やイライラは無くなりません。私は心配になり、その頃通っていた教育相談の臨床心理士に相談したところ、次のようなことを言われたのです。「家で、テレビやゲームの時間はどのぐらいですか?彼のような子は感覚が過敏なので、テレビやゲームの画面や音の刺激が、非常に脳を疲れさせている可能性が高いです。脳の興奮状態が続き、疲れることで、不眠やイライラが起こっているのかもしれません。」これにはショックを隠せませんでした。彼のために、と思って好きなだけテレビを見せていたことが、かえってイライラや不眠を助長させていたとは…。長男ができるだけストレスをためないようにと、私はテレビやネット動画を見放題にさせていたのでした。しかし、好きなものを急に取り上げることは難しい。ではどうしたらいいのだろう?出典 : とはいえ、急に「テレビは禁止!」もしくは「時間を決めて!」と言っても反発されるだろうし、一緒に次男にも我慢させるのはかわいそう。そこで、まずは子どもの様子を観察することにしました。すると、実は楽しみにしている番組はそんなに多くなく、「ヒマだから」なんとなくテレビをつけ、好きなDVDや録画した番組を繰り返し見ている、ということがわかりました。それを踏まえ、私は子どもたちに話し合いを持ちかけました。私「お兄ちゃんが最近頭が痛かったり、眠れなかったりして辛そうでしょう。お医者さんに聞いたら、テレビの見過ぎが原因なんだって。どう思う?」長男「そっか…。本当にね、この眠れないのをなんとかして欲しいんだ。」次男「でも、じゃあ、テレビ見たらいけないの?やだよそんなの!」私「テレビを見ちゃいけないって言われても、嫌だよね。じゃあ、どうしても見たい番組って、どれ?」そう言って、紙に書きだしてみたところ…子どもたち「あれ、意外と少ないんだねえ。」こうして、自分たちが見たい番組以外は、暇つぶしでなんとなく見ていたことに、気が付きました。そこで、●見たい番組を決めて見る●夜7時以降は、寝る時間が近いから見ない。見たい番組は録画して次の日に見るというルールを決め、子どもたちと番組表を作ったのです。Upload By みくたくママその他、子どもが最近ハマっていたネット動画についても、●ゲームの時間と合わせて1時間まで●夜7時以降はやらないとルールを決めました。子どもが動画を見るのに使うタブレットには、ネットトラブルの防止の意味もあり、パスワードをかけています。どうしても見たい!と思っても、親に黙ってこっそり見られないようになっています。暇を持て余す時間を減らすために出典 : このように、テレビや動画、ゲームについてルールを作ってみましたが…ヒマな時間をどのように過ごすか、を考えるのが苦手な長男。暇を持て余すと、結局またテレビを見たがるようになるでしょう。そこで、いくつか方法を考えてみました。本を読むのが好きな長男ですが、図書館で本を借りてきてもそのことを忘れ、結局読まないことがよくありました。そこで、テレビを見たくなったら本が目に入るように工夫してみました。Upload By みくたくママUpload By みくたくママテレビ→読書誘導作戦!こうして以前よりも、本を読む機会が増えました。我が家では、漫画も積極的に与えています。療育の先生に「漫画は絵や擬音がストーリーの理解を助けてくれるし、おススメですよ!」と勧められたのです。大好きな少年マンガに加え、科学や歴史のマンガもよく読むようになりました。出典 : 長男はハリー・ポッターシリーズが大好きで、映画を録画して繰り返し見るほど。そんなに好きならばと、家にある本を読んだら?と勧めてみましたが、字が多すぎるという理由で却下。そこで、父親がハリーポッターのオーディオブックがあることを知り、買ってきたところ…これをとても気に入り、何回も繰り返し聞いては笑ったり夢中になったりしています。長男が苦手な「集中して聞く」ことの、練習にもなっているようでした。Upload By みくたくママまた、次男がUNO好きで毎日のように「UNOやろう~!」と声をかけるので、連日家族で遊んでいます。小さい頃は勝つことにこだわり、勝敗のつくゲームを頑なに拒んでいた長男ですが、このUNOはとても楽しめているようです。成長と共にこだわりが和らいできたこともありますが、UNOは「スキップ」や「ドロー4」など、途中で盛り上がれる仕組みがあり、勝敗が最後まで読めないところが、長男に合っているのかもしれません。出典 : 幸い長男は外遊びが好きなので、遊ぶ相手さえいれば喜んで外で遊びます。なので、近所のお友だちがいないときは、親がバトミントンやキャッチボールなどに付き合うようにしています。ですが、親も忙しいですし、体力にも限界が…笑。このため「できる範囲で付き合う」ことを、心がけています。また、レゴブロックは小さい頃から好きなので、「することがない」と言っているときはレゴブロックを出すと、兄弟で夢中で作り始めます。テレビ以外にも楽しいことがあるよ、と目を向けさせてあげることで、テレビへの執着が少しずつなくなり、決められた番組を見る以外は他のことをして過ごすようになってきました。長男の変化で痛感した、余暇の過ごし方出典 : このように、テレビや動画を見る時間を減らしていったある日のことです。久しぶりに「よく眠れた~!」と穏やかな顔で起きてきた長男。そして数日ですっかり不眠もなくなり、イライラが目に見えて落ち着いたのです。誰でもそうとは限らないのでしょうが、長男にとってはこんなにもテレビや動画の刺激が脳を疲れさせていたんだなと、本当に驚きました。学校で苦労している分、家では好きなように過ごさせてあげたい。親なら、そう思いますよね。でもこだわりがあったり、中毒のように同じものばかりに固執する子どもに対しては、テレビや動画、ゲームとの付き合い方は、大人も一緒にルールを作ることが大事だと、今回の件で痛感したのでした。
2016年10月17日こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。30代以下のみなさんにはあまり馴染みのない言葉だろうと思いますが、1990年代の前半にわが国でもメディアで大きく取り上げられた概念で、『フィンランド症候群 』というものがありました。フィンランド保険局が40歳から45歳までの管理職約600人を選んで定期検診・栄養管理・運動指導・酒タバコ塩分の抑制を義務づける一方で、同年代同職種600人の別グループを選定し定期的な健康調査票への記入だけを依頼したうえで、あとは自由になさってくださいとしました。1974年から1989年までつづけられた追跡調査の結果、15年後に出た答えは、「後者の健康管理されなかったグループの方が健康で死亡率も低い 」でした。この事実のことを当時のわが国のマスメディアが『フィンランド症候群』と呼んだのです。健康管理の専門家ともいえる医師たちの中に今、「フィンランド症候群には根拠がある」と言い、現代人の“過度な健康志向”に警鐘を鳴らす人が次々に現れています。今回は「フィンランド症候群には根拠がある」と言う医師たちの論拠について考えてみたいと思います。●熊本市の元ラガーマン歯科医師は“依存”と“免疫機能低下”を指摘熊本市で歯科医院を開業する歯科医師の菊川明彦先生は、東京医科歯科大学ラグビー部でプレーした元ラガーマンですが、ご自身の『菊川歯科』のホームページの中でフィンランド症候群について触れ、次のような主旨のことを述べています。“フィンランド症候群を初めて世間に紹介したロラン・ジャカールとミシェル・テヴォスの共著『安らかな死のための宣言』では、「治療上の過保護と生体の他律的な管理は健康を守ることにはならず、逆に依存・免疫不全・抵抗力の低下をもたらす 」と指摘している。むろん必要な医療は受けなければならないが、健康保持には平生、自ら抵抗力をつけ免疫機能を高める工夫が肝要だ”ラガーマンらしい捉え方ですが、フィンランド保険局の調査で心臓血管系の病気、高血圧、癌、自殺等いずれの調査項目においても健康管理をされなかった人々のグループの方がはっきりと好結果を示している事実をみると、菊川先生の考え方には注目すべきところがあるのではないでしょうか。●気鋭の精神科医が語る「ストレスフルな人生こそ身体に悪く、NK細胞の不活性を招く」次に紹介させていただくのは多彩な評論活動でも知られる精神科医の和田秀樹さんの見解です。和田先生は筆者が介護退職するのと入れ違いで『国際医療福祉大学』に就職され、現在は同大学大学院の教授として教鞭をとられています。和田先生がその著作である『50歳からの活力人生』の中で、フィンランド症候群の根拠について述べられていることの主旨は、次のようなものです。“フィンランド症候群の教訓は健康に気を配らなかったグループの方が最終的には長生きした点にあり、それは心の問題が身体に影響を及ぼした結果と考えられる。結局、ストレスこそが身体に一番悪い。やれ「コレステロール値が高い」とか、やれ「塩分が過多」だとか、ガチガチに管理され言われつづけることが精神に大きなストレスを与えていた ということだ。つまり、あまりに健康を意識するのではなく、生き生きとした毎日を送ることこそが大切なのである。楽しく生き生きと生活することはNK細胞(ナチュラルキラー細胞)を活性化し、結果的に健康に結びつく。NK細胞は身体に入ってきた細菌を殺してくれるとともに身体が作り出す癌のもとになっている「できそこないの細胞」をどんどん掃除してくれる細胞で、60代になると20代のときの半分にその活性が落ちてしまう。加齢とともに癌が増えるのはそのためである。研究結果から、うつ状態になるとNK細胞の働きが悪くなり、コントや漫才などで笑い転げるとNK細胞が活性化されることがわかっており、つまるところ健康を気にしすぎるのではなく、楽しみを見つけて生き生きと暮らしていればNK細胞が活性化し健康な人生を送れることにつながる。フィンランド症候群の事実はそのように解釈することができるのではないか”いかがでしょうか。精神科の医師ならではの視点でとても参考になるのではないでしょうか。●フィンランド症候群に関連して筆者自身が思うことおしまいに、フィンランド症候群に関連して筆者自身が思うことについて、お話しさせていただきたいと思います。この原稿を書いている時点で筆者は56歳。もうすぐ57歳になりますが、ここ20年来ずっと健康診断を受けるたびに指摘される“検査結果数値が正常範囲を超えた項目”が3つあります。その3つの項目の数値が大幅に正常範囲外だと、そのことはとても珍しいある難病に罹患(りかん)している可能性を示唆するため、30代後半のころの筆者はこの検査結果数値のことを気にするがあまり、これといって気になる身体症状もないのに、うつ状態を呈するようになってしまったのです。学校も仕事も休んだことがないくらい丈夫な筆者が、健康診断の結果の数値を気にするがあまり心を病んでしまった わけです。筆者はその後、お酒もタバコもやめていわゆる“摂生”を心がけたのですが、その3項目に関しては数値はあまり改善しないまま今日に至っています。そうこうしているうちに40代に入ったころでしょうか。腹部にちょっとした違和感を感じてかかった都内内科クリニックの院長先生(50代男性)が、こう言われたのです。『血液検査の結果に3つほど気になる数値の項目はあるけれど、それ自体には腹部の違和感との関係はない。今、違和感がもう消えたのであればそれでけっこう。数値よりも症状が大事。仮に万が一、検査結果数値が警鐘を鳴らしているような珍しい病気が潜んでいたとしても、その確定診断を受けたところでその病気は癌などとは違って現時点の医学では完全には治せませんよ。癌なら早期に発見すれば大方治せますがね。だから診断を確定することに無為な時間を費やすよりは、仕事もプライベートも思い切り楽しんで天寿を全うすることの方がよほど素晴らしい生き方ではないかと私は思います』筆者は目から鱗が落ちるように気持ちが晴れ、うつ状態もこのお話を聞いた日を境に治りました。その内科医によると、おそらく腹部の違和感も心身症的なものであったのではないかということでした。現在でも3つの項目の数値は正常範囲外ですが、仕事も日常生活も何の問題もなく、一般的な50代の男性よりも健康だと自分では思っております。うつ状態に陥っていたころの筆者はフィンランド症候群でいうところの第1のグループ、すなわち“ガチガチの健康管理によって精神に大きなストレスを受け、心が健康でいられなくなった 人々”の類型に属してしまっていたのだろうと思います。もちろんだからといって健康のことを全く気にせず酒もタバコもやりたい放題でいいというわけではありませんが、人間にとって一番の健康法は健康を気にしすぎずに楽しく生き生きとした日常を送ることであることだけは間違いないようです。フィンランド症候群の事実がわたしたちに教えてくれていることも、そういうことなのだろうと思うのです。【参考文献】・『50歳からの活力人生』和田秀樹(著)・『安らかな死のための宣言』ロラン・ジャカール、ミシェル・テヴォス(共著)【参考リンク】・フィンランド症候群 | 菊川歯科()●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)
2016年10月11日「定期的に睡眠外来へ行ったほうがいいですよ」とだれかから言われても、すぐに行く気にはなれないですよね。でも「睡眠に問題があるとガンになりやすいらしいですよ」と言われたら、どうでしょうか? 一度、睡眠状態をチェックしてもらおう、と思いますよね。今回は、ガンと睡眠の関係のちょっと“衝撃”の内容です。公約は「ガン検診受診率100%」?東京都知事に立候補したジャーナリストの鳥越俊太郎氏が、都政の政策を問われて、答えたのは「ガン検診受診率100%」。鳥越さん自身も闘病経験がありますが、数人に1人はガンになると言われるほど、日本人にとっては厄介な病気です。ガンについて調べてみると、さまざまな調査データがあります。たとえば、地域別で発症率が異なるというもの。国立がん研究センターが公表したデータによると、胃ガンは東北と日本海側、肝臓ガンは山梨県と西日本での発症率が高いそうです。その原因はまだ明らかになっていませんが、塩分の摂取量やウイルスの感染率と比例するという説もあるので、今後はさらなる研究が進み、新たなガンの予防策が生まれるかもしれませんね。睡眠時無呼吸症候群とガンの関係は?今回「ガン」を取り上げたのには理由があります。それは睡眠時無呼吸症候群という睡眠障害がガンと関係があるという説が、米国のウィスコンシン大学のザビエル・ニエト氏らによって、米国胸部学会国際会議 2012 で発表されたからです。こんな人は早めに睡眠外来へ睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が止まってしまう病気です。止まると言っても長時間ではないため、本人には自覚症状がないことも多くあります。つまり「まさか自分の呼吸が止まっているなんて……」という人が数多くいるということです。“隠れ睡眠障害”とも呼ばれる状態ですが、この状態を放っておくと危険なことがたくさんあります。たとえば、日中の事故に繋がる可能性。睡眠時無呼吸症候群の患者は、夜間に呼吸が止まり熟睡できていない状態なので、日中に突然強烈な眠気に襲われることがあります。これが車の運転中だったら……と、考えると怖いですよね。もしも家族や友人に睡眠状態の違和感を指摘されたら、早めに睡眠外来に相談しましょう。ガンと睡眠時無呼吸症候群の関係本題の「ガンと睡眠時無呼吸症候群の関係」について説明します。睡眠時無呼吸症候群が、不眠に繋がる可能性はよく指摘されます。夜間に熟睡できていないため、睡眠サイクルが乱れ、少しずつ眠れない状態になるというわけです。この不眠の状態は、私たちの免疫力を低下させ、さまざまな病気を引き起こしやすくさせます。風邪はその最たるものですが、ガンもその例外ではありません。通常であれば、免疫機構がウイルスから体を守ってくれるレベルでも、免疫が低下している状態では“防御レベル”が下がってしまうのです。低酸素状態だとガン細胞が……また、睡眠時無呼吸症候群の患者は、呼吸が止まっている間は「低酸素」状態にあります。マウスを使った実験では、低酸素状態ではガン細胞に入る血管が増えることがわかっています。その結果、低酸素状態にある人はガン細胞に対して、より多くの血液=栄養を送り込んでいることになります。そうなると、ガンは成長=悪化してしまうというわけです。日本のガン死亡者が減らない理由日本は「先進国の中でガンによる死亡者数が増加を続ける唯一の国」と言われています。なぜ、最先端医療が受けられる日本でガンによる死亡者は減らないのでしょうか?治療法や食事内容など、いろいろと指摘はあるようですが、1つだけ言えるのは「日本の高齢化が急速に進んでいる」という現実が深く関わっているようです。ガンは長生きするほど発症する確率がアップする病気なので、4人に1人が65歳以上になった日本は、まさにガン予備軍が多数いるという状態です。それに真面目な日本人は、自分の時間も顧みずに働く人がたくさんいるので、睡眠時間も十分にとれず、それがガンを呼び起こす原因になっている可能性もあります。私たちができることは、まずは睡眠を見直すこと。今日からたっぷり寝て、免疫力をアップさせるようにしましょう。<出典>F.J. Nieto, et al.Obstructive Sleep Apnea And Cancer Mortality: Results From The Wisconsin Sleep Cohort StudyATS 2012, Session A18, May 20, Abstract 30627photo by Varvara
2016年10月10日戦前生まれの父はアスペルガーだった!?出典 : 私の父は戦前生まれです。その激しく頑固で暴君ばりの性格は、まるでアスペルガー症候群そのものでした。その頃は発達障害やアスペルガーという言葉もなかったような時代。そんな中、不器用ながらも自分を貫き通した父。その人生に感じたこと、私たち母娘に残した言葉を振り返ってみたいと思います。自分のペースを乱されたくない父。必然的に仕事や人との関わり方も限定され…出典 : 学者だった父は、自分のペースを乱されるのが大嫌いでした。融通も利かないため、向いている職業も学者以外には考えられないような人でした。満員電車を嫌い、朝5時半に家を出て1時間半かけて通勤。大学についたらまず、着替えてランニング。決まった時間に運動を終えたら、教授室で朝食を摂り、仕事にとりかかります。この習慣は毎回同じ。アスペルガーの特性によくある、ルーティーンです。また、何でも1番への強いこだわりがあり、自分より先に研究室に学生がいたら「君、泊まったんだよな」と念を押すくらいの負けず嫌い。この問答は卒業生の語り草になっています。昼からは学生を指導。父の指導は大変厳しく、手書き論文に容赦なく赤ペンをぎっしり入れ、涙する学生さんも多かったそう。言葉にもこだわりが強く、自分の気に入らない表現は容赦なく直していたようです。そのあまりにも厳しい指導に、自宅に匿名で脅迫電話がかかってきたことも、何度かありました。父はそれを笑っていましたけどね。そして17時になるとさっさと帰ってしまいます。17時以降に入る会議は大嫌いで、帰ってくると鬼のような形相で、私はいつもおびえていたものです。振り回される家族。その辛さから母はカサンドラ症候群に出典 : 家庭は父を中心に回っていました。何でも1番は父。こたつでゴロゴロするのは許せない!と、こたつも出してもらえず、テレビを見る子どもたちが許せず、テレビは配線を切られました。こんな暴君のような振る舞いに対し、母は恐らくカサンドラ症候群になっていました。いつも顔色が悪く、父に逆らえずに自分を抑え込む辛さから、寝込むことも多かったです。母は父に振り回されたストレスが原因で、時々ヒステリーを起こすのですが、それを私にぶつけてくるのが、たまらなく嫌でした。子どもへの躾も厳格過ぎる程で、食事時はお説教ばかり。お通夜のような食卓で「おいしい、おいしい」と私は必死に家族を盛り上げていたのを覚えています。私たち子どもは、親に褒められることなく育ちました。●努力するのは当たり前●規則正しい生活しか認めない●勉強もできて当たり前という考えの父は、私が頑張って目標の大学に合格しても「なんだ、そんなレベルの低い大学か」としか言いませんでした。父の本心を知ることで、癒されていった子ども時代の辛さ出典 : 大人になった今振り返ると、父は自分の脆さをよくわかっていたように思います。実家を出て働いている頃、私は精神的に参ってしまい、神経症になって実家に戻ることにしました。そのとき私を出迎えた父は、「自然に触れて過ごすように。そして生活リズムが崩れると、心のリズムも狂うから気をつけなさい。」と優しく言ってくれました。そして動揺もせず、壊れた私に辛抱強く付き合ってくれたのです。父が律儀に繰り返していたあの規則正しい生活も、きっと自分のメンタルを崩さないための、父なりの工夫だったのだとそのとき気付きました。そして、私自身がアスペルガー症候群とわかり、父も間違いなくそうだっただろうと確信してから、父の厳格さ、暴君ぶりには理由があったのだと理解することができました。だからといって、全てを許せる訳ではありませんが、父の理由がわかったことで、傷付いていた子どもの頃の自分が少し救われたような気がします。自分を貫いて生きることは大変かもしれないけれど、必ずしも不幸ではない出典 : また父は、孫である娘のことを、とても愛していました。あの厳格だった父からは想像もできませんでしたが、不登校で学校に行けなくなった娘を、1度も責めませんでした。それから間もなくして、父に末期がんが見つかりました。「入院だけは嫌だ」とぎりぎりまで言っていた父。娘にとって最後のお見舞いとなった日のことです。父はひとこと、こう言いました。「人の中で生きなさい」その言葉は、今でも娘の心に残り続けています。きっと、父も苦しかったのでしょう。プライドが高く傷付きやすい、色々な特性を抱えながらも、父なりに苦労しながら「人の中で」生き抜いてきたのだと思います。その後、入院して10日余りで旅立ちました。父は最後まで自分を貫いて生きました。その姿は、私にも娘にも、いろいろなものを残してくれたと信じています。
2016年10月07日こんにちは。メンタルケア関係を中心に執筆しているメンタルケア心理士の桜井涼です。20代の女性に多くみられると言われてきた『過換気症候群 』。この病気は、多感な思春期を迎えた10代の子ども(女子に多い) でも発症することがあります。どのような子どもがなりやすく、発作を繰り返すのかなどの情報は、知っておいて損がありません。万が一、わが子がなったときに、慌てずに対処ができるからです。目次過換気症候群とは?原因・症状対策・親ができることおわりに●過換気症候群とは?過換気症候群は、『過呼吸 』とも呼ばれている、内科領域の心身症の1つです。過剰に酸素を体内に取りこんでしまうため、二酸化炭素の排出量が増えて、血液中のpHがアルカリ性に傾いてしまう状態です。そして、発作を伴う病気です。よく、自ら起こしていると勘違いをされてしまいますが、無意識のうちに起こります。突然息苦しさが襲ってくるため、本人もわけがわからない状態です。その後、あまりの苦しさに「もっと呼吸をしなくては!」と考えてしまうため、早い呼吸を続けてしまいます。過呼吸発作はストレスが多い環境や不安感が強く襲ってくる子どもに起こりやすい と言えます。子どもの場合、発作的に繰り返しますので、注意しておかなくてはなりません。●原因・症状原因の多くは、強いストレスです。・生活環境の中に原因があり、心と体に大きくストレスを受ける・成長過程において、愛情不足や虐待、「いい子でいなくては」というところから来ているという2つの理由が関係しているとされています。過換気症候群は、突然襲ってくる不安感・恐怖・怒り などが引き起こします。このときに起こる発作は、自分でコントロールすることができないため非常に苦しみます。症状は次の通りです。・急な息苦しさ・動悸やめまい・手足のしびれ・胸痛・嘔吐感などが最初にきて、その後にけいれんや意識消失といった重い症状が起こります。このような過呼吸発作は60分以内に収まることが多いですが、不安感が強すぎるなどの場合は数時間続くこともあります。●対策・親ができることけいれんや意識消失といった重い症状を起こさせないためには、紙袋を口に当てて酸素の摂取を抑える ことが必要です。紙袋を口に当てて呼吸をすると、二酸化炭素の排出量を減らすことができるのでいくらか楽になります。ただし、親が側にいるときに限定して、窒息などが起こらないように見てあげることが必要です。発作は突然起こるため親や側にいる人が大変驚きます。そうやって慌てふためいているうちに、けいれんや意識消失を起こしてしまいます。ですから、一番大切なのは、親や側にいる人が慌てないことです。親が側にいるときに起こったら、(1)紙袋を広げて子どもの口に当て呼吸をさせます。(2)その間、背中をゆっくりさすって「大丈夫だよ 」と声をかけ安心させましょう。(3)発作が収まったら横にして休ませます。これで収まることもありますが、発作が強い場合、何度も起こす場合、発作時間が長い場合は、心療内科・メンタルヘルス科への受診が必要です。ストレスが心と体に影響して出る症状ですので、原因となっているストレス元を何とかしないことには収まるものではありません。発作が続けば続くほど、不安感は強くなる一方です。決して責めるようなことは言わないで、安心させることを第一に考えていただきたいと思います。●おわりに思春期は心の成長の時期。そんなときに「いい子でいなきゃいけない」と頑張らせたり、ストレスを発散できない生活環境に子どもをおいたりすることは良くありません。「家は安心できて息がつける場所」と子どもが思えるように、環境を整えてあげることが大切です。過呼吸発作を過剰反応のように言ったり、責めたりしないでください。本人は、「このまま死んでしまうのでは?」というほど苦しい思いをしているのです。親が温かく見守り、安心させてあげて欲しいと思います。【参考文献】・『史上最強カラー図解臨床心理学のすべてがわかる本』松原達哉・編著●ライター/桜井涼(メンタルケア心理士)
2016年10月05日多くの女子が悩まされるPMS(Premenstrual Syndrome/日本語では月経前症候群)。生理がはじまる約2週間前から生理開始時にかけて起こる、心とカラダのさまざまな不調は、毎回ツライものが……。しかし、実はPMSの症状は、その期間中に食べるものによって、大きく左右されるということをご存じでしたか?医学的にもその効果が証明されている、生理前に女子が積極的に摂るべきもの、逆にNGなものについて詳しくご紹介します。まずはおさらい!多くの女子が悩むPMSって?生理がはじまる2週間くらい前から生じる、心と身体の不調。排卵期から生理前にかけて分泌される、プロゲステロンと呼ばれる黄体ホルモンが原因で、体調が不安定になると言われています。また、脳がハッピーを感じるために不可欠なセロトニンが急激に低下することでネガティブに陥りやすくなったり、ビタミンやミネラルが不足しがちになることで、肌の不調をもたらしてしまうのだとか。具体的に以下の症状が出たら、PMSを疑ってみてもいかも。・些細なことでイライラする・いつもよりネガティブ思考・ソワソワして落ち着かない・集中できずボーっとしてしまう・乳房のハリ・痛みがある・体重増加・肌荒れ・ニキビ・眠気がひどい生理前に摂るべきものとは?ニューヨーク在住の内科医、クリストファー・カラピ先生によれば、生理前に摂るものによって、PMSの症状を緩和することが可能なのだそう。ダークチョコレート前出の通り、生理前は神経伝達物質であるセロトニンが減少し、イライラしたり落ち込みやすくなりがち。ダークチョコレートに含まれるカカオには、このセロトニンを増やしてくれる働きがあります。そのため、気分のムラや鬱の改善に◎。普通のチョコレートよりも含まれるカカオの量が多いダークチョコレートは、生理前の辛い時期、一日2、3粒摂ってみると効果的とのこと。 水生理前は子宮と卵巣の動きがいつもより活発になります。養分が蓄えられていくことで子宮が膨張し、その結果、腸が圧迫されてぜん動運動が弱まってしまうことに。そのため、腸内の老廃物のデトックスが鈍くなってしまいます。体内の毒素をしっかり排出し、体内の水分の循環をスムーズにするためにも、常温の水を少量ずつ、こまめに飲むことが大切です。野菜生理前は、体内からカルシウムとマグネシウムが不足しがち。両者には、体内のミネラルバランスを整えるだけでなく、セロトニン・ドーパミンの生成にも役立ち、イライラや鬱の解消、胸のハリや痛みの緩和にも効果があることが知られています。生理前は積極的に、マグネシウムやカルシウムを多く含む野菜(ほうれん草、かぼちゃ、豆類など)を摂取するよう心がけましょう。野菜をたくさん摂るのが難しい場合は、サプリメントでもOKです。逆にPMSを悪化させてしまうNGフードって?PMSの症状を、逆に悪化させてしまう食べ物・飲み物もチェックしておきましょう。コーヒー朝の目覚めや午後の会議の前に欠かせないコーヒーですが、カフェインが体内に入ると、子宮が収縮するため月経痛を悪化させてしまうことに。生理前に不足しがちなカルシウムの吸収を妨げるだけでなく、女性ホルモンのバランスを崩してしまう可能性があるため、生理前は控えるのがよさそう。塩気のあるもの生理前に過剰に塩分を摂ると、身体が膨張しやすくなります。ただでさえ、体内の循環が悪くなり、不要物が排出されにくくなる生理前は、塩分が多く含まれたスナック菓子や缶詰などの加工食品はNGです。アルコールみんな大好きアルコールも、生理前はお休みしておいた方が無難。生理前に飲むと痛みが長引いてしまうのだそう。アラサー女子なら誰もが悩むPMS。食べる物によっても大きく左右されるので、是非意識しておきたいですね。
2016年10月04日アスペルガー症候群って?出典 : アスペルガー症候群(AS)とは、・コミュニケーションの問題・対人関係の問題・限定された物事へのこだわり・興味の3つの症状がみられる脳の機能障害であり、発達障害の1つです。知的障害や言葉の発達の遅れがないため、障害と認知されづらく、本人が生きづらい思いをしたり周りが理解に苦しんだりすることが少なくありません。アスペルガー症候群は約4000人に1人の割合で発症するとも言われていますが、本人や家族に自覚がない場合も含めると、その数はもっと多いと考えられます。では、アスペルガー症候群のある大人は仕事をしてどんなことに困っているのでしょうか?アスペルガー症候群の人が仕事で困りやすい10のポイント出典 : 普通の人が理解できる会話であっても、アスペルガー症候群の人は言葉の意味が読み取れず、理解できないことがあります。「これ」「それ」「あそこ」といった代名詞や比喩、あいまいな表現が苦手です。また、指示が分からず質問しようとしても「何が分かっていないのか」「何をどのように質問したらいいのか」が分からず、固まってしまうこともあります。きちんと指示されれば自分で仕事をこなすことができますが、いわゆる「気を利かせる」という暗黙の了解のようなものを理解するのが苦手です。他の人が忙しそうにしていても手伝おうとしなかったり、共同作業に参加しなかったりします。アスペルガー症候群の人は人の気持ちに共感したり、想像したりすることが苦手な傾向があります。相手の容貌の変化などについて「太ったね」と率直に口にしたり、上司のミスを見逃せず面と向かって注意してしまいます。そのため、職場でのコミュニケーションがうまくいかずに、自分でもよく分からないまま周囲から孤立してしまうことがあります。アスペルガー症候群の人は、相手との心理的な距離感を適切に取ることが苦手で、自分で気付かないうちに相手を不快な思いにさせてしまうことがあります。相手の立場に応じて自分の態度や言葉遣いを変えにくく、上司に向かってなれなれしい態度をとったり、逆に家族や親しい人に対して丁寧すぎる言葉づかいをすることがあるようです。相手の表情や口調から、その言葉が本音か建前かを察することが苦手です。「今度遊びにおいでよ」「今度誘うよ」といった言葉のはずみの口約束を文字通り真に受けてしまうことがあります。また、皮肉っぽい叱り方をしても通じないことがあります。わたしの弟はアスペルガーですが、学校で教師に「やる気がないなら帰れ」と言われ、はいわかりましたと頷いて帰りました。アスペルガーの人は、コミュニケーション障害があるので、言葉を額面通りに受け取ってしまうことが多々あります。言葉の裏にある真意を読み取ることは大変困難です。作業の一部分にこだわってしまい、それに熱中しすぎて他のことに手をつけられないことがあります。その結果、仕事の中でも些細なことが気になって自分が納得いくまでやり直し続けるので、納期に間に合わなくなってしまうこともあります。規則性を好むため、計画的に行動を行うことは比較的得意です。しかし、急なスケジュール変更やハプニングに対応することが難しい傾向があります。たとえば定例会議が都合で中止になると、その時間何をしたら良いかが分からず混乱してしまうこともあります。今やっている仕事の途中で他の仕事を頼まれたり、一度に複数のタスクがあると混乱してどうしたらよいか分からなくなってしまうことがあります。決まった手順で黙々と作業をするのが好きで、書類の細かな不備等を見つけるのは得意な方です。しかしルールが複雑(コロコロ変わる)だったり、集中している時に他の作業が入ってくるとグチャグチャになります。モノに対して強い好みを持つことが多く、モノを捨てることを極度に嫌がることがあるため、整理整頓が苦手な場合があります。また、散らかっている状態にしか見えない状態でも、本人とっては規則性があり、何がどこにあるかは分かっていることが多いです。アスペルガー症候群の人は、「ワーキングメモリー」といわれる短期記憶機能が弱いため、人の顔を覚えることが苦手な場合があります。何回か会っているのに「はじめまして」と挨拶をするなど、会社で取引先などの外部の人とかかわるときに支障が出ることがあります。私も、人の顔と名前がなかなか覚えられません。なので、職場などでも人の名前はわざわざ自分から聞かないようにしています。きいてもおぼえられないのに、きいてしまうと名前で呼ばなければいけなくなるので…。名前呼ばなくても「すいません、⚪︎⚪︎どうします?」みたいな聞き方で相手も、まさか自分の名前をおぼえていないとか気付かないし、気にしてないと思います。私の場合は、接する機会が多ければ覚えていけるのですが、覚える必要性を感じた時はメモですね。メモにどこの席に座っている、こういう人(似顔絵を描く)雰囲気、声の高さなど。あと、手帳の会った日付けのところに記入したりします。いつ、どこで会ってどんな話をした誰なのかを。顔と名前より、どこでその人と会って、どういう話をしたかの方が覚えやすいので。会社にアスペルガー症候群の人がいたら、周りはどうすればいい?アスペルガー症候群の診断がなくても、仕事をするうえでこのような傾向がある方はもしかしたら多いかもしれません。そんなとき、周りはどう対応すれば良いのでしょうか。出典 : あいまいな指示では何をすればいいか分からなくなってしまうため、「○○さんの書類整理を15分手伝ってほしい」というように、できるだけ具体的に指示すると良いでしょう。「ちょっと」や「すぐに」といった言葉もどの程度を指すのか良く分からないことがあるので、「5分間」「3時までに」というように時間をはっきりさせることも大切です。また、一度に多くの仕事を頼むのではなく、一つの仕事が終わってから依頼すると、本人の混乱が少なくなります。アスペルガー症候群の人は、耳から聴いた情報よりも目から入った情報のほうが処理しやすい傾向にあります。仕事を予定通りに進められない場合、スケジュールを視覚的に把握しやすい場所に置いたり、朝起きてからの準備をルーティンワークにして紙に書いて予定通りにできるか実行してみることが有効です。本人が障害を自覚しており、また会社にも障害を報告している場合は、どんなことが苦手でどのようなサポートが必要なのか、本人と相談し合うのも一つの方法です。本人も周りの理解を得ることで仕事がしやすくなり、悩みを相談しやすくなります。一方で、特にADHDであると共有されていない場合は、診断の有無を本人に聞くのはなかなか難しいですよね。まずは「どうすれば◯◯さんは仕事がしやすくなりそう?」と一声かけて、お互いの業務がきちんと完了する方法をさがしてみるのも良いでしょう。「アスペルガーだと仕事ができない」というわけではない出典 : アスペルガー症候群と一口にいっても、その症状は十人十色で様々で、全員がこの特徴に当てはまるわけではありません。また、本人に適した仕事内容、職場や本人との共通認識があれば、障害を感じることなく仕事することは可能です。周りのサポートはもちろん大切ですが、本人も自分の特性を理解し、対処法を考えることが大切です。特にアスペルガー症候群の人は、自分の関心に応じた知識を掘り下げ、専門性を高めていくことが得意です。興味のあるものはとことん突き詰める特性があるので、そういった分野ではかなりの集中力を発揮します。本人が自分の特性を理解し、周りもうまく障害とつきあいながら仕事をすることで、本人も周りも気持ち良く仕事ができるのではないでしょうか。
2016年10月01日自閉症スペクトラム障害とは?出典 : 自閉症スペクトラム障害は、社会的コミュニケーションの困難と限定された反復的な行動や興味、活動が表れる障害です。さらに知的障害や言語障害を伴う場合と伴わない場合があります。また、これらの症状は発達段階、年齢や環境などによって大きく変化するといわれています。自閉症スペクトラム障害と一言で言っても、生活に支障をきたすほど症状が強い方から、症状が軽度で日常生活にほとんど支障なく暮らせる方まで様々です。症状の強弱や、知的障害を伴う・伴わないなどによって十人十色の理解やサポートが必要な障害です。さまざまな議論が交わされていますが、自閉症スペクトラム障害の原因はいまだ特定されていません。しかし、何らかの生まれつきの脳機能障害であると考えられており、しつけや愛情不足といった親の育て方が直接の原因ではないとわかっています。脳機能障害を引き起こすメカニズムとして、遺伝的な要因が原因の一部であると推測されています。何らかの先天的な遺伝要因に様々な環境的な要因が重なり、相互に影響しあって脳機能の障害が発現するのではないかという説が現在有力とされています。文部科学省では自閉症スペクトラム障害を以下のように定義しています。自閉症スペクトラムとは,自閉的な特徴がある人は,知能障害などそ の他の問題の有無・程度にかかわらず,その状況に応じて支援を必要とし,その点 では自閉症やアスペルガー症候群などと区分しなくてよいという意味と,自閉症や アスペルガー症候群などの広汎性発達障害の下位分類の状態はそれぞれ独立したも のではなく状態像として連続している一つのものと考えることができるという二つ の意味合いが含まれた概念である。したがって,自閉症スペクトラム障害には下位分類がなく,自閉的な特徴のある子供は全て自閉症スペクトラム障害の診断名となる。自閉症スペクトラム障害という診断名ができた経緯出典 : 自閉症スペクトラム障害は、いくつかの自閉症状のある障害が統合されてできた診断名です。自閉症スペクトラム障害という診断名ができた成り立ちについて追ってみましょう。自閉症スペクトラム障害は、2013年に出版されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において、これまでアスペルガー症候群、高機能自閉症、早期幼児自閉症、小児自閉症、カナー型自閉症など様々な診断カテゴリーで記述されていたものを、「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」の診断名のもとに統合されました。『DSM-5』以前の診断カテゴリーである自閉症やアスペルガー症候群などは、それぞれの症状に違いがあるとされ、それに伴って診断基準も異なるため、独立した障害として考えられてきました。しかし、幼少期にアスペルガー症候群と診断された方が、年齢や環境などの変化によって自閉症と診断されたり、3歳以降になってから自閉症の症状が明確に表出する場合がありました。脳画像の研究ではそれぞれの差異が認められないこともあります。また症状の程度によって生活に支障をきたす方もいれば、ほとんど支障なく生活できる方もいます。さらに支援方法も共通であることが多いため、『DSM-5』では、「連続体」を意味する「スペクトラム」という言葉を用いて障害と障害の間に明確な境界線を設けない考え方が採用されたのです。自閉症スペクトラム障害の症状には多様性があり、連続体として重なり合っているという考え方が、「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」という診断名に込められています。これまで自閉症、アスペルガー症候群、特定不能の広汎性発達障害と診断されてきた症状も今後は「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」と診断されることが多くなると考えられますが、今まで同様の障害福祉サービスを受けることができます。また、コミュニケーションの障害はあっても限定的な反復行動の問題がない場合、自閉症スペクトラム障害と診断できない場合もあります。『DSM-5』によって、自閉症スペクトラム障害と判断しきれない場合は、「社会的(語用論的)コミュニケーション症/社会的(語用論的)コミュニケーション障害」の診断名に分類されることになりました。Upload By 発達障害のキホン『障害の兆候もまた、自閉症状の重症度、発達段階、歴年齢によって大きく変化するので、それゆえにスペクトラムという単語で表現される。参考書籍:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院,2014)『DSM-IVでは症状の数と程度によって、自閉症障害、Asperger障害、PDD-NOSの順に重症度は軽くなるよう位置づけられたが、これらの下位カテゴリーが量的に違うだけでなく質的にも異なる独立した障害単位であることを支持するに足るエビデンスはないと判断された。』参考書籍:神庭重信/著『DSM-5を読み解く 1 神経発達症群,食行動障害および摂食障害群,排泄症群,秩序破壊的・衝動制御・素行症群,自殺関連』(中山書店,2014)また以前は、自閉症、アスペルガー症候群などの自閉症スペクトラム障害に含まれる障害群とADHD(注意欠陥・多動性障害)は、併存することがない障害だと言われてきました。しかし自閉症スペクトラム障害がある方々の約70%が少なくとも1つ以上の精神医学的障害を合併しているという研究結果に基づき、『DSM-5』においては、障害の併存が認められました。自閉症スペクトラム障害の診断基準って?出典 : 自閉症スペクトラム障害に統合された自閉症やアスペルガー症候群は『DSM-5』以前は、「広汎性発達障害」という診断カテゴリーの中に属していました。広汎性発達障害には「3つ組の障害」と呼ばれる「社会性の障害」、「コミュニケーションの障害」、「限定的な行動・興味・反復行動」の3つの領域が存在していました。しかし、『DSM-5』によって広汎性発達障害という診断カテゴリーは廃止され「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」では「3つ組の障害」のうち、「社会性の障害」と「コミュニケーションの障害」は1つにまとめられます。その結果、「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」では、診断基準は「社会的コミュニケーション」と「限定的な行動・興味・反復行動」の2領域に統合・再編されました。また、これまでは3歳以前の発症が診断基準に規定されていましたが、自閉症スペクトラム障害では年齢の規定が緩められ、成人になってからの発症も診断基準として許容されることになりました。以下に、『DSM-5』における診断基準を紹介します。自閉症スペクトラム障害と診断するためには、「社会的コミュニケーション」領域のもとに分類される3項目すべてを満たしつつ、「限定的な行動・興味・反復行動」領域の4項目中2項目の合わせて5項目を最低限満たす必要があります。A. 複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的な欠陥があり、現時点または病歴によって、以下により明らかになる(以下の例は一例であり、網羅したものではない)。(1)相互の対人的・情緒的関係の欠落で、例えば、対人的に異常な近づき方や通常の会話のやりとりのできないことといったものから、興味、情動、または感情を共有することの少なさ、社会的相互反応を開始したり応じたりすることができないことに及ぶ。(2)対人的相互反応で非言語コミュニケーション行動を用いることの欠陥、例えば、まとまりの悪い言語的・非言語的コミュニケーションから、視線を合わせることと身振りの異常、または身振りの理解やその使用の欠陥、顔の表情や非言語的コミュニケーションの完全な欠陥に及ぶ。(3)人間関係を発展させ、維持し、それを理解することの欠陥で、例えば、様々な社会的状況に合った行動に調整することの困難さから、想像上の遊びを他人と一緒にしたり友人を作ることの困難さ、または仲間に対する興味の欠如に及ぶ。B.行動、興味、または活動の限定された反復的な様式で、現在または病歴によって、以下の少なくとも2つにより明らかになる(以下の例は一例であり、網羅したものではない)(1)常同的または反復的な身体の運動、物の使用、または会話(例:おもちゃを一列に並べたり物を叩いたりするなどの単調な常同運動、反響言語、独特な言い回し)。(2)同一性への固執、習慣へのかたくななこだわり、または言語的・非言語的な儀式的行動様式(例:小さな変化に対する極度の苦痛、移行することの困難さ、柔軟性に欠ける思考様式、儀式のようなあいさつの習慣、毎日同じ道順をたどったり、同じ食物を食べたりすることへの要求)(3)強度または対象において異常なほど、きわめて限定され執着する興味(例:一般的ではない対象への強い愛着または没頭、過度に限定・固執した興味)(4)感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ、または環境の感覚的側面に対する並外れた興味(例:痛みや体温に無関心のように見える、特定の音、感覚に逆の反応をする、対象を過度に嗅いだり触れたりする、光または動きを見ることに熱中する)C. 症状は発達早期に存在していなければならない(しかし社会的要求が能力の限界を超えるまで症状は明らかにならないかもしれないし、その後の生活で学んだ対応の仕方によって隠されている場合もある)。D. その症状は、社会的、職業的、または他の重要な領域における現在の機能に臨床的に意味のある障害を引き起こしている。E. これらの障害は、知的能力障害(知的発達症)または全般的発達遅延ではうまく説明できない。知的能力障害と自閉スペクトラム症はしばしば同時に起こり、自閉スペクトラム症と知的能力障害の併存の診断を下すためには、社会的コミュニケーションが全般的な発達の水準から期待されるものより下回っていなければならない。(『日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』2014年 医学書院/刊P.49より引用)自閉症スペクトラム障害の年齢ごとの特徴出典 : 自閉症スペクトラム障害の症状は成長とともに変化していきます。症状は人によって個人差が大きいのですが、大まかな年代別の症状を紹介します。これらの症状は、すべてがあてはまるわけではなく、症状の現れ方は人によって異なります。この特徴がみられるようになるのは、生後約2ヶ月から2歳前後が最も多いといわれています。発達の遅れが顕著にみられる場合は12ヶ月よりも早く、軽度であれば2歳を過ぎてから特徴が表出するといわれています。自閉症スペクトラム障害は発達障害のひとつですが、発達障害は、言語・認知・学習といった発達領域が未発達の乳児では、その特徴となる症状が分かりにくい場合があります。ですから、生後すぐに自閉症スペクトラム障害の診断がでることはありません。しかし、幼児期全体を通してみると、以下のような特徴的な行動をとっていたことが多いと言われています。以下にそれらの症状を紹介します。■周囲にあまり興味を持たない傾向がある視線を合わせようとしない子が多いです。また他の子どもに興味をもたなかったり、名前を呼んでも振り返らないことが多いです。定型発達の子が興味をあるものを指で指して示すのに対し、自閉症スペクトラム障害がある子は指さしをして興味を伝えることをしない傾向があります。■コミュニケーションを取るのが困難知的障害を伴う自閉症スペクトラム障害がある子は、言葉の遅れや、オウム返しなどの特徴がみられます。会話においては、一方的に言いたいことだけを言ってしまったり、質問に対してうまく答えられないなどの特徴があります。定型発達の子が友達とのごっこ遊びを好むのに対し、自閉症スペクトラム障害がある子は集団での遊びにあまり興味を示さないことが多いです。■強いこだわりを持つ興味を持つことに対して、同じ質問を何度もすることが多いです。また、日常生活においてあらゆるこだわりを持っていることが多いので、ものごとの手順が変わると混乱してしまうことが多いです。■集団になじむのが難しい年齢相応の友人関係がないことが多いです。周囲にあまり配慮せずに、自分が好きなことを好きなようにしてしまう子が多い傾向があります。人と関わるときは何かしてほしいことがあるときなだけのことが多く、基本的に1人遊びを好みます。人の気持ちや意図を汲み取ることを苦手とする子も多いです。■臨機応変に対応するのが苦手きちんと決められたルールを好む子が多いです。言われたことを場面に応じて対応させることが苦手な傾向にあります。■どのように・なぜといった説明が苦手言葉をうまく扱えず、単語を覚えても意味を理解することが難しい場合があります。また、自分の気持ちや他人の気持ちを言葉にしたり、想像するのも苦手です。そのため説明がうまくできないこともあります。■不自然な喋り方をする抑揚がない、不自然な話し方が目立つ場合があります。■人の気持ちや感情を読み取るのが苦手上記でも述べましたが、コミュニケーション能力が乏しく、人が何を考えているのかなどを考えるのも苦手な傾向にあります。■雑談が苦手目的の無い会話をするのを難しく感じる人が多いです。■興味のあるものにはとことん没頭する自閉症スペクトラム障害の人は物事に強いこだわりをもっています。そのため、興味のあることにとことん没頭することが多いですし、その分野で大きな成果をあげられることもあります。参考書籍:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院,2014)自閉症スペクトラム障害かもと思ったら、どこに相談したらいい?出典 : 自閉症スペクトラム障害の診断基準に当てはまり、自閉症スペクトラム障害の傾向があるかも?と思っても、いきなり医療機関を受診するのはハードルが高いと感じる人も多いのではないでしょうか。また、特に日常生活にも支障がない場合だと、誰にも相談せずに医療機関を受診するまでには踏み切れないこともあるでしょう。しかし、適切なサポートを受けなければ、本人にも周囲の方にも負担をかけてしまいがちです。自閉症スペクトラム障害の対人関係のトラブルなどは、障害への理解がない状態ではなかなか修復が難しかったり、本人が自分を責めてしまったりなど、状況が悪化してしまう場合もあります。専門機関への相談を事前に行うことで、そのような状態が起こらないようにできる限りのサポートを受けることができるかもしれません。たとえトラブルがあったとしても、上手く乗り越えていけるフォロー体制を家族以外の専門家も交えてつくっていけます。「いきなり医療機関を受診するのは抵抗がある」という方は、まずは無料で相談できる身近な専門機関の相談窓口を利用するのがおすすめです。早めに相談し、自閉症スペクトラム障害に対して正しい知識を得るのは重要です。家族で試行錯誤をして対処法を見つけていくよりも、専門機関に相談し色々な方法を教えてもらった方が、時間もかかりませんし、ストレスも少なくすみます。必要であれば医療機関を紹介してもらうこともできます。子どもか大人かによって、行くべき機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所など【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所など身近な相談センターに行って相談し、自閉症スペクトラム障害の疑いがあり、診断を希望すればそこから専門医を紹介してもらえます。自宅の近くに相談センターがない場合には、電話での相談に乗ってもらえます。自閉症スペクトラム障害を含む発達障害の専門の医療機関は他の病気に比べると少ないですが、発達障害者総合支援法などの施行によって年々増加はしています。医療機関での診断は、子どもの場合は、専門外来のある小児科、脳神経小児科、児童精神科などで行われることが多いです。また、18歳以上の場合は一般的に精神科や心療内科などで診断がなされます。また、保健センターなどでは知能検査や適応能力を診断する検査を受けられるところもあります。下記の参考リンクには全国の発達障害専門の小児科がリストアップされています。受診の際の参考にしてみてください。日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」自閉症スペクトラム障害はどうやって診断されるの?出典 : 自閉症スペクトラム障害の診断は、本人の年齢や状態によって検査のボリュームは変化します。また総合的に問診や検査の結果を受けて自閉症スペクトラム障害の診断をしています。医療機関を受診した際の臨床的な診断として、行動観察と生育歴について聞き取りを行います。■行動観察遊びの空間で子どもを遊ばせ、それを注意深く観察することと保護者の方へのインタビューに基づいて行われます。■生育歴産まれてから今までの社会性や対人コミュニケーション、言葉の発達、幼稚園・保育園での様子や1歳半健診・3歳児健診での様子などをヒアリングします。発達面で知的障害の疑いがありそうか、発達にどんな特性がありそうかなどを見立てていきます。自閉症スペクトラム障害について、より専門的な診断を行う場合には以下の検査が用いられることが多いです。■ADOS(エイドス)検査用具や質問項目を用いて、自閉症スペクトラム障害(ASD)の評価に関連する行動を観察するアセスメントです。発話のない乳幼児から成人の方まで、幅広く対応しています。■ADI-R対象者の行動の系統や詳細な特徴を捉える検査です。精神年齢が2歳0ヶ月以上であれば、幼児から成人まで、幅広い年代に対応しています。社会性、対人コミュニケーションや限定的な行動・興味・反復運動などに焦点を当てて構成されています。■PARS-TR自閉症スペクトラム障害がある方の特性理解を深め、一人ひとりに合った支援を可能にしていくために、日常の行動の視点から簡単に評価できるアセスメントです。対人、コミュニケーション、こだわり、常同行動、困難性、過敏性の評価項目をもち、全57項目から構成されています。自閉症スペクトラム障害には知的障害、てんかん、感覚過敏、鈍麻などの合併症を伴う場合があります。合併する障害があるかアセスメントを行ったうえで検査する場合が多いです。■知能検査知能検査は心理検査のひとつであり、精神年齢、IQ(知能指数)、知能偏差値などによって測定されます。最近では、ウェクスラー式知能検査、田中ビネー知能検査、K-ABC知能検査などがよく使われています。■脳波検査自閉症スペクトラム障害はてんかんとの合併症を伴っている場合があるため、CTやMRIといった脳波検査を行ういます。自閉症スペクトラム障害の子どもの場合は狭い空間に入るとパニックになることもあるので、検査をする際には注意が必要です。■感覚プロファイル自閉症スペクトラム障害をはじめ、発達障害の人たちの感覚特性を客観的に把握するためによく使われている尺度です。質問票は保護者と本人が記入し、聴覚、視覚、触覚、口腔感覚など、幅広い感覚に関する125項目で構成されています。■Vineland(バインランド:社会生活能力検査)0歳から92歳の幅広い年齢帯で、同年齢の一般の人の適応行動をもとに、発達障害や知的障害、あるいは精神障害の人たちの適応行動の水準を客観的に数値化する検査です。対象者にどんな特性があるのかを評価してくれます。また教育や福祉分野の個別支援計画の立案はVinelandの評価に基づいて行われることがあります。また、精神疾患との合併症の疑いがみられる方には精神病に関する検査を行う場合があります。「自閉症スペクトラム指数(以下AQ)」という評価尺度があります。AQは50項目の設問に本人が答えていきます。数値が高いほど自閉症スペクトラム障害の傾向が強いといわれています。しかし、AQが高いから低いからといって自閉症スペクトラム障害がある・ないと断定できるわけではありません。あくまで、本人の一人称的な視点から評価された指標であり、他者からは違った印象を持たれている可能性もあります。あくまで参考として捉えて、社会生活に大きな困難がある場合には専門機関への相談を行い、医療機関で診断してもらうことをおすすめします。自閉症スペクトラム障害は治せるの?出典 : 自閉症スペクトラム障害を根本的な治療法や手術といった医学的な方法は確立していません。しかし、早期からの療育や環境調整などを行うことで症状を緩和したり困りごとを軽減することができます。教育・療育によるアプローチで本人が困難への対応法を学んだり、保護者や家族が困難を未然に防ぐためのフォローなどを学び、お互いに生きやすい環境をつくっていくことが可能です。また、てんかん等の合併症を緩和させる薬が処方されることがあります。これは自閉症スペクトラム障害そのものを治すための薬ではなく、不安障害を抑える薬やパニックを抑える薬など、あくまで症状や合併症を緩和するためのものです。■ABA(エービーエー、Applied Behavior Analysis/応用行動分析)人間の行動を個人と環境の相互作用の枠組みの中で分析し、問題解決に応用していく理論と実践の体系です。自閉症スペクトラム障害に対する療育だけでなく他の障害や教育、福祉、医療、スポーツ分野でも利用されています。■TEACCH(ティーチ、Treatment and Education for Autistic and related Communication handicapped Children)米国ノースカロライナ州で生まれた、自閉症スペクトラム障害の当事者とその家族を障害支援する総合的なプログラムです。■PECS(ペックス、Picture Exchange Communication System)絵カードを使ったコミュニケーション援助プログラムです。上記のABAの原理に基づいて作成されています。■SST(エスエスティー、ソーシャルスキルトレーニング)対人関係をうまく行うための社会生活技能を身につけたり、障害の特性を自分で理解し自己管理をするためのトレーニングの総称です。■ペアレントトレーニング保護者の方々が子どもとのより良いかかわり方を学びながら、日常の子育ての困りごとを解消し、楽しく子育てができるよう支援する、保護者向けのプログラムです。■ピア・カウンセリング似た立場の親同士の横の関係をつくり、対等な立場から意見や情報を交換、正しい行動の選択についてみんなで考え、ペアレントトレーニングの一部に設けられている場合が多いです。■メンタリング「ペアレント・メンター」と呼ばれる発達障害がある子どもの子育て経験がある方が先輩として、初めて発達障害と向き合う親の相談やアドバイスに応えています。薬物療法は医師の指示のもと用法や用量を守って服用していかなくてはいけません。薬に頼り切って多用するのは避けましょう。薬の服用により特徴が緩和されている時には療育や教育の効果も上がりやすくなるとも言われています。以下が使われることの多い薬です。■非定型抗精神病薬自閉症スペクトラム障害によってみられる攻撃性、興奮、自傷およびチック(身体が勝手に動くこと)に使用されます。ただし、保険適応外使用になります。■SSRI、SNRI、三環系抗うつ薬こだわり行動、うつ、不安障害などに使用されます。■抗不安薬、SSRI、ベンゾジアセピン系不安、心身症、抑うつ、睡眠障害、緊張、PTSD(フラッシュバック)に使用されます。■ 抗てんかん薬気分変調、躁うつ、てんかん発作、イライラなどに使用されます。■抗ヒスタミン薬不安、睡眠障害に使用されます。自閉症スペクトラム障害の支援をする上で心に留めること出典 : 自閉症スペクトラム障害は早期から療育を行うことで二次障害や二次的問題を予防することができます。また自閉症スペクトラム障害がある子どもを支援する上で大切な考え方をご紹介します。自閉症スペクトラム障害の二次的問題とは、例えば対人関係が上手くいかない理由でいじめの被害を受けてしまったり、不登校・ひきこもりになることや、親や周囲からの期待に応えられずに常に怒られることでストレスが溜まり、うつや不安障害などを引き起こすといった問題です。自閉症スペクトラム障害には特有の発達過程・スタイルがあります。周囲の理解がない状態では、「不器用」「ちょっと変わった人」「無神経な人」「こういう性格なんだ」と理解され、それらによって二次的な問題が発生する場合があります。自閉症スペクトラム障害は、特有の発達過程・スタイルがあります。それを理解しながらサポートしていくことが大切です。例えば「子どもは○歳で○○ができます」という情報が広く一般の方に浸透しています。その情報は大勢の子どもたちを集めた実験研究から統計的に導かれています。あくまで参考程度の統計データのはずが育児本やインターネットに「1歳頃になったらバイバイを教えてみましょう」という書き方をした記事があることで、「子どもは1歳までにバイバイさせなければいけない」と思い込み、いつの間にかノルマにすり替わってしまっている場合があります。しかし自閉症スペクトラム障害特有の発達過程・スタイルがあります。発達の遅れや言動への困難さに悩むこともあるかもしれませんが、サポートする側が障害を正しく理解することが大切です。早期療育の効果は認められていますが、一人ひとりの発達の状態をアセスメントし、本人に合わせた課題を設定することが大切です。トレーニングによって獲得したり支援できることもありますが、困難な場合もあります。個々の障害のレベルや発達に応じた環境調整や支援グッズの活用も合わせて考えていく方がいいでしょう。まとめ出典 : 自閉症スペクトラム障害は自閉症関連の障害が統合された『DSM-5』における診断カテゴリーです。共通した症状があり、またその症状は発達段階や年齢、時には環境によって変化するため自閉症スペクトラム障害の診断名のもとに統合されました。よって、検査の結果や診断名も年齢やその時の状況によって変化する場合があります。周囲の方はその時々の本人の状態に合わせて接していくことが大切です。自閉症スペクトラム障害はその発達過程やスタイルが特有なものといわれています。これまでは、障害がある方が定型発達を基準として合わせていくような考え方がありました。ですが、発達に優劣をつけることはできません。本来ならば定型発達の方と比べるのではなく、障害の特性・個性に焦点を当て、理解し合うことでお互いにリスペクトし合った関係性がつくれるはずです。そのためにも、自閉症スペクトラム障害の特性を理解することが大切な一歩につながるのではないでしょうか。
2016年09月29日「言葉をそのまま受け止めてしまう」発達障害のコミュニケーション特性出典 : 畠山:僕の場合、例えば、中学受験の後の出来事が象徴的かもしれませんね。努力して努力して、試験当日までは応援されとやかく言われなかったのですが、試験が終わって合格発表までの間、親に「落ちたらどうなると思っているの?」「絶対合格しなさいよ!」など言われたんです。親も焦っていたのだろうとは思います。そこで「焦ってるんだな、まあしょうがないよな」と思えず、言葉のまま受け取り、「落ちたら一体どうなるのだろう!?」と不安が募るばかりでした。しかも、試験は終わってしまい合格発表までの数日間です。その間は、僕にはもう努力の仕様がない。でも「絶対合格しなさい」ということは、今から試験問題を管理しているところに忍び込んで、解答用紙を書きなおせば、いいのかな?とモヤモヤしました。編集部:そのときは、どうされたんですか?畠山:仕方ないから辛い思いしながら待っていました。(笑)辛かったですね。なぜ、「今終わってどうしようもないときに言うのか」と思いますよね。例えば、会社で「何でこんなに売上が少ないんだ!」と言われたらそのまま受け取るので「じゃあお年寄りを騙してでも営業してこなくてはいけない・・・」と考えてしまうのと同じでしょう。患者さんに納得してもらうため、コミュニケ―ションを変えようと思った編集部:ちなみに、医師として地域の患者さんとコミュニケーションの中で難しいなという場面はなかったのでしょうか?畠山:最初の1年くらいは、コミュニケーションが上手くいかないな、というのは多々有りました。何を言ったか、ではなくてどう伝えたか、相手はどう受け取ったか、を意識する必要があると。極端な話、ちゃんと診察して医学的に考えて正しいお薬を出しても「ちゃんと診てくれなかった」と感じる患者さんはいますよね。どんなコミュニケーションを取ろうが、出す薬も診断内容も診断できるまでの時間も同じなんです。むしろ客観的な事実で、感情に流されず、しっかり診断することが医学では大切だったりします。だとしても、どんなコミュニケーションをとったかで、その患者さんの納得が違う。伝わり方が違う。編集部:と、いいますと…畠山:例えば、診察を始めてすぐに「はい、◯◯ですね。じゃこのお薬で。」というよりも、「痛かったでしょう、いつから?あ、そうですか、なるほど。それは痛かったですね…」というやりとりがあった方が、患者さんの立場だったらどうです?編集部:うーん、安心感、がある。「わかってもらえた」という気持ちになるかもしれないですね。畠山:そう。伝わり方一つで「診てもらえていない」と感じ、不安や納得できないなと思ったら、薬を飲んでいただけない場合もあったんですね。そこで、少しコミュニケーションを変えれば、医師としてもしっかりと治療ができるし患者さんも治る。であれば、僕はコミュニケーションの引き出しを増やしたほうがお互いに良いと気づいたんです。そう思って引き出しを増やしました。編集部:なるほど。僕にとって、コミュニケーションは論理的につくるもの畠山:それでいうと、自分の雰囲気をつくる、というのは大事だなと考えています。堅苦しく始めるよりも、自分からよく話して笑うほうが、良いコミュニケーションが取れると思いませんか?なので今日は最初から明るく喋っているんです。(笑)編集部:あっ(笑)畠山:僕は、人の気持ちはわからないんです。でも、「コミュニケーションというものがある」のであれば、それを意識して動こうと思っています。相手の感情が伝わってくるから楽しく喋っているわけではないんです。でも、楽しい雰囲気というのは、コミュニケーションを円滑にする。だからこうする、というように僕にとってコミュニケーションは論理的につくるものなんです。編集部:たとえ頭ではわかっていても、意識し続けるのはしんどい、という方もいるのではないでしょうか。畠山:そうですよね。それは、「見えていない」んだと思います。「コミュニケーションが(自分はあまり)見えていない」ということを自覚しているかどうか。見えていない事を理解していないと、努力しているのになぜ?としんどくなってしまう。自分はコミュニケーションがわからない、というのを前提に努力すれば、「なんで人とぶつかってしまうんだろう」と悩むことはないんです。自己認識する、というのは言葉でいうは簡単ですけど、それを日常で実践するのは難しいんですよ。編集部:難しい、ですね。畠山:ええ。「コミュニケーションを理解するのが難しい」と発達障害のある方にたまに相談されるときに、わかりやすい初歩として、カラー診断をおすすめする事もありますよ。編集部:カラー診断?畠山コミュニケーションは、受け手の印象が大事だという事がありますよね?僕自身、黒い服をきるとすごく怖くなってしまうんですよ。だから柔らかく見える水色を選ぶようにしているんです。服や色でコミュニケーションを操る、などではなくて「そもそもの雰囲気作り」はロジカルに意識できることなんだよ、と。編集部:確かに。畠山:ええ。相手に失礼のないように、ちゃんとした服着ようと考えて2万円の服を買っても、その色との相性で、大したことを喋ってもいないのに印象悪くしてしまったらもったいないですよね。(笑)性格や話し方云々はもちろん大事。でも、まずは、柔らかくて好感よく見えるような色を選ぶ、から始めてもといいのでは、と思っています。見えないものを理解するよりも、わかりやすくて簡単な方法ですからね。(笑)医師(整形外科医)。1974年、大阪府生まれ。1998年、防衛医科大学校卒業後、自衛隊医官として仙台市で勤務。自衛隊退職後、大泉記念病院整形外科、石巻ロイヤル病院整形外科部長を経て2010年、八木山整形外科クリニックを開業。2011年、東日本大震災で被災。2012年維新政治塾に参加、衆院選(宮城4区)に立候補するも落選。現在は複数の病院の外来や在宅診療を掛け持ちで担当している。著書に、『ぼくはアスペルガーなお医者さん 「発達障害」を改善した3つの方法』(KADOKAWA)、『「糖質制限+中鎖脂肪酸」で確実にやせる! 驚異のMCTオイルダイエット』(幻冬舎)。畠山昌樹オフィシャルサイト
2016年09月29日トリプル発達障害の沖田×華さんが描く、発達障害と共に生きる日々出典 : 皆さんは「障害者」という3文字からどんなイメージを浮かべますか?かわいそうな人?大変だけど頑張っている人?今回ご紹介する方は、みなさんが抱いているであろう、様々な障害のイメージを覆すかもしれません。アスペルガー症候群(ASD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)の「トリプル発達障害」を公言する漫画家の沖田×華(おきたばっか)さん。彼女が描いた漫画『毎日やらかしています。』『ますます毎日やらかしています。』に登場するのは作者の沖田さんの他、発達障害を持つご友人や、その傾向が感じられる皆さんで、彼らの“やらかしエピソード”がいくつも綴られています。元々は、ギャグマンガ雑誌に連載されていたということもあり、その内容は面白おかしく、悲壮感がありません。ASDでADD、計算障害を持つ、やはり「トリプル発達障害」の私が読んでみて、「あるある~!」と共感できたかというと、意外とそうでもなかったのですが(笑)、「そういうふうに考えちゃうのは理解できる」という内容ばかり。特に自動車学校でのADHDらしいエピソードには、大笑いしながらも「ああ、発達障害の人って、こういう考え方からこういう言動になっちゃうんだね」と、1つのパターンを感じられました。発達障害を持つ漫画家、沖田×華(ばっか)さん(1)看護師修業、コミュニケーションや数字で苦労してでも、最初から「障害」を面白おかしく受け止めていた訳ではなかった出典 : さてそのようにして、失敗を笑いに変える作風の沖田さんですが、昔から自らの特性をポジティブに捉えていたのでしょうか?「看護師やっていたときは発達特性が全て欠点になっていた」「何もかもダメで、自分のことを否定し、悔やんでばかりいた」『ますます毎日やらかしています。』に収録されている対談の中で、沖田さんはそのように過去を振り返り、自殺をしようとしたことも明らかにしています。沖田さんは他の作品やテレビ出演した際にも、特性やご自身の過去について語っています。それを見聞きしていると「それだけ失敗してダメな人扱いされたら、そこまで思いつめても仕方ないよな…」と、他人ながらにして思ってしまうほどです。しかし、そういった体験を「面白い」と言ってくれる人と出会い、漫画家になったことで、「あのときは辛かったけど良かったな」と、自分の障害を肯定的に捉えられるようになったのだと語っています。誰しもが障害を笑いに変え、漫画家になれるわけではありませんし、すぐに特性を長所として活かす方法が見つかるとは限りません。でも、沖田さんが命を断ちたいとまで追い詰められた苦しい日々が、他の誰かにとっては面白い漫画のネタになりそう、と感じられるものであったように、自分では嫌でたまらない側面が、実はその人らしい魅力として他の誰かの目には映っているのかもしれません。今でこそ、障害特性について肯定的な内容のコラムを書いている私ですが、これまで失敗やトラブルが少なかった訳ではありません。むしろ落ち込み、自責することもしょっちゅうでした。だからこそ、発達障害の診断が下りたとき「工夫でカバーできる面もあるし、それでも失敗したら他のやり方を考えたらいいや」とポジティブに捉えるというか、ある意味開き直ることができ、今に至るのです。そういった自分自身の経緯もあって、「さんざん悩んだんだし、もう笑い飛ばしちゃっていいんだよね!」と、沖田さんの漫画を読んで励まされたような気持ちになったのでした。「障害」?「障がい」?沖田さんの障害の捉え方とは出典 : もうひとつ漫画の中で、とても印象的なやり取りがありました。こちらは『毎日やらかしています。』のあとがき漫画での、アシスタントさん(障害のある息子さんがいる)と沖田さんの会話です。「障害のことを“障がい”という表記にしたところで差別がなくなるわけではない。その前に、健常と障害は区別であって、差別で使っている人は恐らく少ない。わざわざ字を変えようと思うこと自体が差別的」というような内容でした。実際私も「“障害”という文字のイメージが悪いから、表記もしくは呼び方そのものを変えましょう」という風潮には首を傾げていました。確かにイメージは大切です。でも、文字表記や呼称といった表面的なものを変えたところで、中身が変わるわけではありませんし、差別する人がいたとして、「“障害”という文字だから」という理由ではないでしょうから、あまり意味がないように思えてしまうのです。「大変なのは社会と自分の間にあるズレであって、そのズレが“障害”。それをいかに埋めていくかが大事なのであって、ひらがなにするだの呼び方を変えるだの、はっきり言ってどうでもいいよね(笑)」と、障害当事者の友人たちとよく話しています。私に至っては、どうでもいいどころか「差別されがちな人」として一線を引かれたような気すらしてしまうのです。これは、自分を含めた周囲の障害当事者のほとんどが、“障害”という表記及び呼称に差別的な何かを感じていないからこその感想なのかもしれませんが…。なんてことを思いながら漫画を読み進めていたら、「どうせ変えるんなら“発達障害”の呼び名を“逸脱戦隊”にしちゃうとか!!」と沖田さん。笑いに落とし込もうという姿勢が徹底しています。逸脱戦隊、いいなあ。なんかかっこいいし、楽しい!障害のあるなしに関わらず、みんなが生きやすい方法はきっとある出典 : 『毎日やらかしています。』『ますます毎日やらかしています。』の世界に、「遠い世界にいる、差別されやすい可哀そうな人」はいませんでした。誤解されたり不便さを感じたりもしつつ“自分なりの普通”を生きている方ばかり。沖田さんの意図はわかりませんが、“やらかし”をコメディータッチで描くことで、特性がチャーミングに、そして発達障害当事者の方々が身近な存在に感じられてくるのです。まるで「発達障害者って特別じゃないんだよ!」と微笑みかけられているように。「うちの旦那、こういうところある!」「私は定型発達だけれど何となくわかる…」そんな風に、自分やご家族と照らし合わせて読むのも楽しいかもしれません。また、発達障害専門家のコラムや対談、沖田さんなりのトラブル対処法も載っているので、自分なりの工夫を見つけるヒントにもできますよ。そうそう、ちょくちょく下ネタが出てくるので、苦手な方はご注意ください!毎日やらかしてます。アスペルガーで、漫画家で沖田×華著
2016年09月26日普段はジェルやマニキュアで指先をきれいにしている人でも、地爪になると縦すじや二枚爪が気になる人もいるのでは?秋から冬にかけてはお肌の乾燥と同じように、爪も乾燥しやすくなってしまいます。お肌や唇の保湿ケアだけでなく、指先のお手入れにも力を入れたいですね。8割近い女性が「ドライネイル症候群」に悩まされている!秋冬の乾燥シーズンの到来にあわせ、ネイルケアブランドを展開する興和株式会社が20~40代の女性500人を対象に、「爪・爪まわりの乾燥」に関する興味深いアンケート調査を行っています。お手入れの参考になりそうな内容となっているので、早速見てみましょう!主な指先のトラブル、二枚爪や縦すじ、ささくれは「ドライネイル」と呼ばれる爪や爪まわりの乾燥が原因です。このドライネイルについて「秋冬シーズンにドライネイルを自覚することはありますか?」という質問に、じつに79%の女性が「ある」と回答しています。ドライネイルを自覚している人に「具体的なドライネイルの状態」を尋ねた質問では、「ささくれができる」(72%)がトップ、「爪のまわりの皮膚がカサつく」(66%)、「爪が割れやすくなる」(45%)、「二枚爪になる」(41%)、「爪のまわりの皮膚が硬くなる」(39%)、「爪にツヤがなくなる」(38%)、「爪の縦すじが多くなる」(38%)と続きます。「特にない」と回答した人は、わずか1%!ドライネイルを痛感している女性はたいへん多いことが分かります。さらに同アンケート調査では「秋冬シーズンの地爪の状態の点数」を尋ねるという、ちょっぴり残酷な質問も。この質問の結果は100点満点中、平均はわずか49点となりました。みなさんはいかがですか?爪に自信が持てないと、モチベーションも下がる!?名刺交換の際やデートの最中など、爪が割れていたりささくれができていたりすると、思わず隠したくなることはありませんか?同アンケート調査では、ドライネイルにより「気分やモチベーションが左右されるかどうか」についても尋ねています。69%の女性が「左右される」と回答しており、「指先が気になっていじってしまい、仕事に集中できない」(26歳)、「生活感が出て落ち込む」(42歳)といった声があがっています。またドライネイルがモチベーションを左右すると答えた人は多いものの、回答者の約4人に1人が「乾燥ケアをしていない」という事実も明らかに!「季節を問わずネイルケアをしている」人は4割に満たず(37%)、「秋冬シーズンはしている」人は3割弱(34%)ということで、日頃から指先のケアを習慣にしている人はそれほど多くないようです。指先のお手入れ方法カサカサのお肌に保湿が欠かせないように、ドライネイルのお手入れも保湿が肝心です。カサカサお肌にはハンドクリームという頼れる味方がいますが、ドライネイルに対してはどんな方法が効果的なのでしょうか?先のアンケート調査で「乾燥ケアをしている」と回答した人に、具体的な方法をあげてもらったところ「ネイルオイルを塗る」(45%)が約半数を占めていることが分かりました。指先のケアには乾燥した爪や爪まわりを保護しながら潤いを与える、爪専用のネイルクリームやネイルオイルを使ってみましょう。お手入れの際に指先のマッサージもしてあげると、血行が良くなり、栄養分が浸透しやすくなるそうですよ。水や石鹸に触れる回数が多いこともあり、手や指先はとても乾燥しやすくなっています。ハンドクリームでハンドケアをする際には、あわせて指先の潤いケアも習慣にしたいですね。
2016年09月23日自分の信念のためには、開業医のままではダメだと感じたとき…出典 : 編集部:前回、ルールを知っておくと理不尽かどうか、なぜそのことが起きているのか理解できる、と教えていただきました。畠山:はい。編集部:その理不尽を理解した後、「やっぱり理不尽だな」という場面では…畠山:理解した上で、そもそもの目的とブレている、間違っていると思ったら言いますね。勤務していた病院でも「それは病院のためであって患者のためではないですよね」という事も言ってしまう。自衛官として、人のために働くものだと思っていましたから、病院の利益のために働く、というのはおかしいと感じたら会議でも上申していました。編集部:そうなんですね。畠山:人のために働く、という点では、震災の後、開業医をやめましたね。お金を稼ぐことよりも大事なことがある、と。世のため人のためになることをするために自分は残りの人生を生きるんだという強い信念を持っています。東日本大震災がキッカケで、そう強く感じたんです。それまでは、地元で開業医。それも、「地域のためになるクリニックをやる」と決めていて、待ち時間30分以内の整形外科クリニックとして当時毎日200名くらい患者さんが来院していました。地域に貢献し、クリニックも儲けがでる、WIN−WINだと思っていたんですね。ですが震災のあと、スタッフは原発の影響を心配して出身地に帰ろうとする人もいましたし、患者さんが誰も来ない・来られない日もありました。でも、お年寄りは骨が弱くて避難所では怪我をしている。その時、自分が手の届く範囲の人だけを助けているだけじゃダメだと気づいたんです。僕の信念を達成するには、開業医ではダメだと思った。開業医は僕じゃない先生でも出来るから。「より多くの人の役に立ちたい」それが今の活動の中心。とくに親子のコミュニケーションは…出典 : 編集部:それで現在発達障害等の分野で書籍や講演活動をされているんですね。畠山:そうですね、子育てに悩む方は僕の開業した病院が手の届く範囲以上にいらっしゃいますから。僕の経験や知恵を伝えることは病院にいるよりも「より多くの人のためになる」と考えたのです。編集部:なるほど。畠山:それでいうと、親子のコミュニケーションの何が難しさになるのかといえば、「子どもは今何を思って、何に興味があって…」ということを親は意外と知らないことが多いことかなと感じます。子どもって3ヶ月ごとくらいにマイブームがあるでしょ?もっと早いスパンかもしれないですね。編集部:ありますあります!2週間くらいで興味が変わっているお子さんもいて。畠山:そうですよね。興味があること、というのは今脳が発達しようとしている分野なんです。その興味のあることに対して、理解が深まったり脳の回路が出来上がったり、十分に経験したら、次の興味に移ります。そのことを、ちゃんと理解してあげることが大事ですよね。ただ止める、ただ発達を促そうとアレコレやらせてみる、のではなくて、「今はコレに興味があるんだな」と理解してあげて、興味があることへのアクションをちゃんと認めて次にいく、というサイクルを覚えておけば、親子のコミュニケーションはスムーズになるのではないでしょうか。編集部:「興味や発達に段階がある」ということでしょうか。畠山:そうですね。なのに、「まだコレが下手だからやらせない」「コレが伸びないから、次に行く前にまずはコレをもっとやろう」など、せき止めてしまう事もありますよね。例えば、3,4歳の男の子で、消防車は覚えていても、まだ救急車をしらない子がいたとしましょう。救急車を街中で見かけて「あれ、消防車でしょ!」といったときに「違うよ、あれは救急車でしょ。なんで知らないの?図鑑で見たじゃん」と、言ったらどうでしょう。自己否定をされると、次からその子は「あれ、救急車でしょ!」と親に言いにくくなり、繰り返すとやがて言わなくなりますよね。その分野を学ぶこと、興味をもって親や大人に聞くことをやめてしまったり、シャットダウンしてしまうのではないでしょうか。だから、正誤ではなくて「興味を持っている」というそのものを認めてあげながら、次のことを教えてあげる。すると、知識は増えるし、学ぶことは楽しくなる。もっと興味をもって観察するようになる。先ほどの例なら、「消防車?どれどれ?すごいねえ。どうして消防車と思ったの?」「サイレン鳴ってて、赤く光っているよ!」「そうだね。あれは、緊急車両だね。でもあれは、人を助けに行く車だから、消防車じゃなくて、救急車っていうんだよ。おうちに帰ったら、絵本で見てみようね!」と説明すると、子供は自己否定されることなく、知識を増やすことができるんです。そして、「あれ、ママ、あの車は、青いけど救急車みたいに光ってるね、なんで?」「あれはガス会社なんだよ」ということになる(笑)編集部:詳細な違いまで興味を持てる(笑)畠山:そうそう。親御さんに「勉強が出来ないんです」、と言われよくよく聞くと、出来ないというよりは「取り組む意欲が削がれてしまっている」お子さんのほうが多いと感じます。例えば、「なんで出来ないの?!」と言われても、否定されたのではなくて問題の正誤を問われているだけ、解釈できているか聞かれているだけ、その発言の理由を解釈できる子もいるでしょう。でも、発達障害のある子の場合、言葉どおりに受け取ってしまう場合が多いのではないでしょうか。自己否定されたと感じるという意味です。先ほどの車の話と同じく、まずは認める、そして次、とコミュニケーションの特性を理解して声をかけていきたいですね。畠山さんがお仕事の中で考えた「コミュニケーション」について、詳しく伺っていきます。医師(整形外科医)。1974年、大阪府生まれ。1998年、防衛医科大学校卒業後、自衛隊医官として仙台市で勤務。自衛隊退職後、大泉記念病院整形外科、石巻ロイヤル病院整外科部長を経て2010年、八木山整形外科クリニックを開業。2011年、東日本大震災で被災。2012年維新政治塾に参加、衆院選(宮城4区)に立候補するも落選。現在は複数の病院の外来や在宅診療を掛け持ちで担当している。著書に、『ぼくはアスペルガーなお医者さん 「発達障害」を改善した3つの方法』(KADOKAWA)、『「糖質制限+中鎖脂肪酸」で確実にやせる! 驚異のMCTオイルダイエット』(幻冬舎)。畠山昌樹オフィシャルサイト
2016年09月22日アスペルガーの私。知らないうちに周囲の人を追い詰めていた?出典 : 歳でアスペルガー症候群の診断を受けた私は、自分の障害がどういったものなのかを調べる過程で、「カサンドラ症候群」という言葉にたどり着きました。カサンドラ症候群とは、アスペルガー症候群当事者との意思疎通が適わない配偶者や家族、友人が陥る二次障害のことです。体験談をつづったブログ等をいくつか読み、私は背中に冷たいものが伝うような気持ちに襲われました。「マイペース過ぎで思いやりがない」「こちらを糾弾するような物言いをする」「自分のことにしか興味がない。一緒にいても寂しい」カサンドラ症候群の方々が吐露するアスペルガー症候群当事者への思いは、かつて私がお付き合いした男性に言われてきた言葉だらけだったからです。私は知らず知らずのうちに相手を追い詰め、カサンドラ症候群にしてしまっていたのだと、今さらながらに気付いたのでした。では、アスペルガー症候群の人は、誰しもパートナーを追い詰めてしまうのでしょうか?また、わかり合う方法はないのでしょうか?私よりもアスペルガーっぽい父。では、母もカサンドラ症候群だったのだろうか?出典 : 「カサンドラ症候群」を考えたときに思い出したのが、私の父のことです。父は70代、未だに健在です。この父というのが私とそっくり。頑固でこだわりが強く曖昧が苦手、発する言葉は理屈っぽく、意図せず論破モードになることも多々あります。このように、診断は受けていませんが、アスペルガー症候群の特性にぴったり当てはまってしまうのです。父の偏屈ぶりは、今に始まったことではありません。母は父との結婚を決めたとき、「本当にこの変人と結婚しても大丈夫なのか」と、父の家族から随分と心配されたのだとか。「はい、もちろん大丈夫です」と笑顔で答えた定型発達の母。彼女は70代になった今、カサンドラ症候群のカの字も感じられないほど朗らかに、父と2人で暮らしています。なぜ、カサンドラ症候群にならなかったのか?母に聞いてみた出典 : 両親はとても仲が良く、大きな喧嘩をしている光景を私は見たことがありません。でも実は、カサンドラのような苦しみがあっても、それを見せないようにしていた時期もあったのかもしれない―そう考え、私は母に聞いてみました。すると、彼女はそんな私の疑いを母「あー、ないない。話があまりにも通じないから、イラッとすることは今でもあるけどね」と、すぐさま笑って否定したのです。私「へー。ほら、女の人ってさ、『察してよ!』みたいに思う人が多いって聞いたことがあるんだけど、お母さんはそういうのなかったの?」母「そんなあ、お互い超能力者じゃないんだから!相手の言いたいこととか、察して完全に理解するなんて私だって無理だもん。お父さんや、のん(私の呼び名)はその度合いが違うだけ。伝わらないなら伝わるように、通じてないなって感じたら、通じるようにすればいいでしょ?」私「ほう…素晴らしいお心がけでございますなあ…」母「だってしょうがないよ、あの人はああいう人なんだし」時折うっかり曖昧さを出してしまい、「それじゃあわからん」と父に苛立たれることもある母。そんなときは「あー、めんどくさいなあこの男」とぼやくなど、感情を出すことも忘れません(笑)それでも、会話の中では曖昧な表現を避ける、頼みごとをする際には方法や目的などもわかりやすく伝える等の工夫をし、母は自ら父に歩み寄っています。それもこれも「相手にどうにかしてもらおう」という期待をせず、「自分がどうしたいか」を主軸にしているからできることなのでしょう。父から聞いた母への感謝の言葉に、夫婦の支え合いを知った出典 : こういう母の言動を父はどう思っているのでしょうか?20年以上前の話ですが、「ノゾミ、お前の母親はとても素晴らしい女性だぞ」と、父が唐突に言い出したことがあります。父「俺にとっては、人の気持ちを察することはとても難しいし、曖昧なことを理解できないことがある。そういう俺がわかるようにして、伝えてくれるんだぞ。曖昧なことがわかる人にしたら面倒だろうし、もしかしたら、思いつかないことかもしれないよなあ」この言葉から察するに、アスペルガーの診断こそないものの、父は自分の特性について何となく理解をしていたようです。父「それを数10年も続けてるんだぞ?相当なことだよな。俺も(母に)歩み寄りたいんだけど、やっぱり曖昧なことはわからないから、せめて頼まれたことはこなしたいし、困っているときは支えたいんだよ」この会話で、父が母に対して日々感謝をしており、「できる限りで自分の妻を支えたい」という気持ちを強く抱いていることは、まだ10代だった私にもよく伝わってきました。違いを認め合うことで深まる、コミュニケーション出典 : アスペルガーとカサンドラの関係は、特性の出方や人間的な相性もあるので、私の両親の例だけで全てを語ることはできません。ただ、母の場合は父に対して過度な期待を持たなかったことが吉と出たように思えました。そして、「自分とは違う種類の人間なんだ」と感じて、コミュニケーションを投げださず、「どうしたら円滑なコミュニケーションができるか」と模索したからこそ、父の特性を受容できたのでしょう。父も父で、「自分にはどうしてもできないことがある」と諦め、自分なりの歩み寄りをしてきたからこそ、母と仲良く暮らすことができているように感じられます。「諦める」という字面は、なんだかネガティブに見えるかもしれませんが、言い方を変えれば「違いを認めること」と同義だと思います。これはアスペルガーとカサンドラの関係に限らず、円滑な人間関係を築く秘訣の1つかもしれません。「だってしょうがないよ、あの人はああいう人なんだし」母から話を聞き父のつぶやきを思い出すにつけ、この言葉が愛情に満ちた、とても温かいものに感じられるのでした。
2016年09月18日たび重なる転職に疲れてしまった結果、だとりついた結論出典 : 私と娘はアスペルガー症候群です。母子2人暮らしなので、私が家計を支えています。娘は現在中学2年生ですが、小2から不登校で学校には通っていません。私は昔から仕事が続かず、人間関係につまづき、仕事をうまくこなせない結果、転職する、というパターンが続いていました。最後に辞めたところも、人間関係が破たんし、上司から「もう続けるのは無理だろう」と言われたのが原因です。そこを辞めるとき、「もう一般就労は疲れた。これからは障害者就労で働こう。支援を受けて障害者として生きよう」と、45歳にして決心しました。決意の後、めまぐるしく変わっていった日常出典 : それからすぐに、障害者自立支援センターに相談し、障害者職業センターに約4ヶ月通いました。その後、障害者福祉サービスを受けるため、何度も市役所や自立支援センター、ハローワークへと通う忙しさ。加えて、娘の支援体制を整えるため、学校へ通ったり、ストレスが溜まらないようにと、娘を連れだしたりし、私はめまぐるしい日々を過ごしていました。そんなとき、体に異変が出典 : その頃から微熱が続くようになりました。合わせて胃の不調、疲れが取れず、だるくて体が動かない状態になり、就労移行支援に行くこともできず、家事もこなせなくなり、布団から出られない日が続きました。そのうち高熱が出たので、大きな病院で精密検査を受けることに。あらゆるところを調べましたが、結果は急性胃炎だけでした。特に病気が隠れていたわけではないので安心しましたが、次に湧いてきたのは、漠然とした将来への不安でした。頑張らなくちゃいけないのに、病気でもないのに、でも身体は辛い。この時私の本心は、行きたくない、頑張りたくない気持ちでいっぱいでした。娘のことばかりで、自分のことを後回しにしていた私出典 : そんなとき、ずっと見守ってくれていた、障害者自立センターの方に気持ちをぶつけてみました。「病気でもない、でもしんどい、私はこれからどうすればいいんでしょう?」すると、「娘さんのことを思い出してみて。学校に行けなくても、しんどいって言っても、責めたりせずにゆっくりしなさいって言ってあげていたでしょう?あなたも一緒よ。」と言われたのです。「あ、そうなんだ。」とストンと腑に落ちた思いでした。娘のことは許せていたのに、自分のことは許せなかったのです。「まともなものを娘に食べさせていない」、「掃除もできていない」、「働くための活動もしていない」と自分を責め続けていたのでした。医師やカウンセラーからはこう言われました。「罪悪感を感じながら休んでいては、心も体も休まりませんよ」娘を見守るときに自分に言い聞かせていた「信じて、任せて、待つ」。それは、自分にも当てはまることだったのです。体が辛いのは、心からの「ちょっと休ませて」のサインだと気付きました。そんなときは無理せずに、ゆっくり休んでまた心が立ち上がることを信じて、待てばよかったのです。子どもの成長と共に、大切にしたい自分の時間出典 : 自宅へ戻り、娘にこの話をしたら、「だから休めって言ったでしょ。料理も掃除も私、少しはできるし、野菜だってスーパーでサラダ売ってるし、キャベツちぎるくらいできるよ。」と言われました。「やっとわかったのか」と言いたげな彼女の顔を見て、今まで娘にしてきたことは正しかったなぁ、と嬉しく思う一方、自分のこととなるとダメだなぁ、という気持ちにもなりました。親だって動けなくなることがあるのです。そんなとき、助けを求めたり子どもに助けてもらったりしながら、自分を責めることなく、ゆっくり休むことが大切なのだと、学んだ出来事でした。
2016年09月16日