「バンド名を省略されたくないから3文字にした」、というちょっとクスッとしてしまう由来の名前を持つ4人組ロックバンド、ミツメ。自主制作盤も含め、すでに4枚のアルバムをリリースし、その独自性で敏感なファンに熱く支持されている。約3年ぶりにリリースした『Ghosts』も、初めて彼らの音楽に触れた人にもスッとなじむ、とても日常的で心地よいサウンドだと感じた。「前作を作り終えた時に、次はシングルを2枚リリースして、その地続きになるようなアルバムにしよう、と決めていました。そういうことを今までしたことがなかったので、やってみたかったんです」(川辺素/Vo&Gt)シングル『エスパー』と『セダン』が国内外で幅広くヒットし、そこに、さらにミツメらしいサウンドプロダクションの作品を追加して完成したのが『Ghosts』だ。「4人のトラックにさらにシンセを重ねたり、かなり複雑なダビングをたくさんやり、相当汗をかいて作りました。でも聴いてみると重くなく、むしろ軽く聴けるところがいいなぁ、と思いますね」(大竹雅生/Gt)「ポップなんだけど、いい意味でつかみどころのないサウンド。レコーディング中もずっとワクワクしてました」(nakayaan/Ba)川辺さんが書く歌詞は、走り書きのようなてらいのないやさしい言葉が多く、湿度や温度をほのかに体感するサウンドもキメ細やかだ。ミツメの音楽は、初めて袖を通したシャツがずっと着ているかのように肌になじんだ時の気分にも似ている。「制作中は説明し合ったり、コミュニケーションはとらないんです。だけど好きな音楽が似ているし、プレイヤーとして信頼し合っているので、気持ちいいアレンジになり、いい音になっていくんですよね」(須田洋次郎/Dr)その魅力は海外にもじわじわと伝播し、特に中国を中心とする東アジアには熱狂的なファンがいる。「4~5年前に日本のインディーロックブームの第一波の時、ミツメの音楽が入っていたようです。4年前の初回の中国公演からたくさんの人が来て『煙突』を合唱してくれたので、びっくりしました」(川辺)そのほかインドネシアやタイ、韓国、台湾などでも大人気の彼ら。このアルバムで、海外のファンをさらに増やすことだろう。5th Album『Ghosts』。先行シングル曲「エスパー」と「セダン」に新曲を加えた全11曲収録。生活の一部のように響く新感覚のアンビエントミュージック。【CD】¥2,800【LP】¥3,000(mitsume)左から、川辺素(Vo&Gt)、nakayaan(Ba)、須田洋次郎(Dr)、大竹雅生(Gt)。5/26の札幌公演を皮切りに国内でレコ発ツアーを行った後、7月後半は北京など7か所の中国公演が控える。※『anan』2019年4月17日号より。写真・井手野下貴弘(HITOME)取材、文・北條尚子(by anan編集部)
2019年04月11日撮影は立ち位置を決めるジャンケンから始まり、見本誌を渡せばみんなで星占いのページで盛り上がる。日本のロックを’80年代から牽引してきたキャリアと功績のあるバンドでありながら、今も音楽とバンドに無邪気に向き合うユニコーンの5人。インタビューでは、彼らの楽しい雰囲気の中にある揺るぎない関係性や芯の強さが窺い知れた。――今年はユニコーン100周年だそうで、おめでとうございます。奥田民生:ありがとうございます(笑)。EBI:嬉しいね。――その100周年の“内訳”をひもときながら、お話を伺っていきたいんですが。まずは再始動から10周年。この10年で変わったことって何かありますか?奥田:まず年が違うよね、活動してなかった16年の間に老け込んでるから。川西幸一:久しぶりに会った時、テッシー(手島いさむさん)なんて誰かと思った!――1993年の解散以降は、お互いに会ったりする機会はなかったんですか?奥田:そんなになかったね。時々どこかの現場で見かけるくらい。解散当時は川西さん以外はまだ20代だったんですよ。EBI:だから30代はまるまるお互いを知らなくて。手島いさむ:その間に心持ちが広くなったというか。再始動後は以前よりも仲が良くなった感じがします。奥田:仲が良いっていうか、「助けてくれ」みたいなことですよね。手島:お互いにね。――ニュー・アルバム『UC100V』でも5人それぞれが曲を書いて歌も歌い、皆さんがやりたいことをバランスよくバンドの中で昇華している印象を受けました。奥田:そうですね。昔と比べて今は役割分担というか、誰かが代わる代わる音頭を取る感じが自然にできているので楽です。ABEDON:それぞれ実力があるので、やる気がある時に力を出してもらうのが一番。やる気を出せる時間はそれぞれに短いので(笑)、「この人が今がんばってるから僕は休んでいてもいいや」とランダムに誰かがやる気を出していればいい。あとの人は、その人が好きにできるようにバックアップをするように心がけています。――信頼関係のなせる業ですね。そして、今年のもうひとつの節目として、ABEDONさんの加入後初となったアルバム『服部』から30周年です。大事なターニングポイントだと思いますが、その頃バンドはどういう状況でしたか?ABEDON:僕が加入した時は、すでにユニコーンのメンバーとは一緒にレコーディングしたりしていたんです。奥田:それでそのままメンバーになってもらった感じ。ABEDON:ただ、それまで僕自身はユニコーンほど表に出る仕事をしてなかったので戸惑いました。その頃のユニコーンはミュージシャンでもあり、ちょっとタレントみたいな部分もありましたから。でも基本的には5人いるので、そんなに自分が背負わなきゃいけないこともないですし、みんなの胸を借りるようなつもりで加入しました。――そうだったんですね。ABEDON:当時、ユニコーン自体は音楽で実験的なことをやりたいという趣があるにもかかわらず、違うイメージに持っていこうとする世の中の流れもあり。でも、本当にみんな音楽が好きで…という雰囲気がその頃はあった気がします。僕はその橋渡しのような役割になるのかなと思っていました。――アイドル的人気もあったからこその、葛藤。奥田:そうよ、大変だったんだから(笑)。今は時代の流れも業界自体も変わって環境が違うので、当然、以前のようにできないことも多いですけど。僕らが音楽でやってることはそんなに変わってないです。だから周りのスタッフにも、なるべく環境が変わらないようにお願いしてます。――音楽と向き合う時の変わらない熱量がやっぱり大事なわけですよね。EBI:そこが変わったら、やってないですよ僕たちは。ABEDON:ほんとそうよ!――いろんな時代を経て、今年は川西さんが還暦を迎えられたことで60周年。それをプラスして計100周年となります。川西さん、ドラムを始めた当初は60歳まで叩くと思ってました?川西:いやいや、僕が音楽を始めた頃なんて天才はみんな27歳くらいで死んでたんで。こうしてずっと活動できることが幸せです。手島:天才じゃなかった、ってことだな!川西:うん、もう60ですよ(笑)。EBI:いろんな人がきっと、「こんな60歳もいるんだ」って励まされますよね。――本当にそうですね。手島:すごく元気だし、特殊な60歳かも。年下の僕らにとっても、いい見本です。「あそこを通過すればいいのか」って。ABEDON:もしくは「あそこを通過するまい」。全員:あははははは!川西:でも矢沢(永吉)さんも今年70歳であんなすごいステージをするわけでしょ。昔だったらミュージシャンも年を重ねるとどんどんやめていったけど、今は別にそんなこともないですよ。1枚目写真左から、ABEDON、奥田民生、川西幸一、手島いさむ、EBI。1986年に広島で結成、翌年デビュー。「大迷惑」や「働く男」「雪が降る町」など数々の名曲を生み、’93年に解散。その後はそれぞれ別の活動をしていたが、2009年に再始動を発表。実力と個性を兼ね備えた5人からなる日本屈指のロックバンド。アルバム『UC100V』は、ヘビーなギターに乗せてジム通いの回数をコミカルにカウントする「365歩のマッチョ」や、ユニコーン史上初となる奥田民生とABEDONのツインボーカル・ソング「OH! MYRAD10」など聴きどころ満載の全11曲を収録。DVDには再始動からの10年を追ったドキュメント映像を収録。【初回生産限定盤CD+DVD】¥4,800【完全生産限定盤(アナログ盤)】¥3,500【通常盤CD】¥3,000(Ki/oon Music)※『anan』2019年4月3日号より。写真・野呂知功(TRIVAL)スタイリスト・小川恭平ヘア&メイク・国沢 拓風間麻衣(共にsakura)インタビュー、文・上野三樹(by anan編集部)
2019年03月27日1stアルバム『Familia』から約1年8か月ぶりのアルバム『Chime』をリリースした4人組バンド、sumika。「フィクション」や「ファンファーレ」「ホワイトマーチ」などの人気ナンバーに新曲を加えた14曲は、従来の彼らの持ち味に新境地のサウンドも加わり、何度聴いても新しい発見があるアルバムだ。「この一枚を聴いてもらえたら、今のsumikaが全部分かるアルバムを作りたかったんです。やりたいことがいっぱいあって、それを全部やり切れた気がしています」とボーカル&ギターの片岡健太さん。昨年は3日連続の武道館公演と長期間のホールツアーを成功させ、大きく成長した4人。「様々なチャレンジをした1stアルバム『Familia』は、受け入れてもらえるか少々不安もありましたが、ツアーを通してファンの方々に楽しんでもらえて、どんどん自信がつきました。それがこの新作にも、相当いい影響を及ぼしていると感じます」(荒井智之・Dr&Cho)「曲作りからレコーディングまでを通して、バンドでやりたいことが、どんどん増えていったのが嬉しかったですね。sumikaらしいポップソングに、自分が好きなギターロックのエッセンスを入れたり、小川(貴之)君(Key&Cho)と一緒に共作曲を作ったり、チャレンジをどんどん広げていったアルバムです」(黒田隼之介・G&Cho)『Chime』に収録された14曲には、これまでの彼らにはなかったタイプの曲が目立っている。「『Chime』には個人的にも初挑戦した部分がたくさんあります。僕が書いた『Monday』は、こんな曲があったらアルバムの中で際立つかなと思って作りました。それができたのも、メンバー間の信頼感が高まり、同時に自由度が上がったことが大きいと思います」(小川)結成5周年を過ぎ、日本武道館という大きな舞台、さらに、彼ららしい音楽を最高のクオリティで奏でられるホールでのパフォーマンスを成功させ、自信をつけた成果がみなぎっているのが、この『Chime』だろう。そんな作品のタイトルには、「この音を届けに、みんなの家の玄関のチャイムを鳴らす」(片岡)という意味が込められている。スミカ左から、黒田隼之介(G&Cho)、片岡健太(Vo&Gt)、小川貴之(Key&Cho)、荒井智之(Dr&Cho)。武道館、横アリ、大阪城ホール公演を含む『Chime』のレコ発ツアーが3/14から開催。2nd Album『Chime』【初回生産限定盤CD+DVD】¥3,800「ファンファーレ」など新曲を含む全14曲。DVDにはスタジオでのライブセッションを収録。【通常盤CD】¥3,000(Sony Music Records)※『anan』2019年3月20日号より。写真・土佐麻理子文・北條尚子(by anan編集部)
2019年03月18日結成2年でメジャーデビューを果たし、MVを発表すれば瞬く間に数百万回も再生され、大企業から次々とタイアップのラブコールが送られる……そんな快進撃を続けているバンドが、ポルカドットスティングレイだ。ついに、待望のセカンドアルバム『有頂天』がリリース。「デビュー作の『全知全能』を作っている頃からすでに次回作はこういうことをやろう、タイトルは“有頂天”がいいな、と決めていました」と、ボーカルの雫さん。彼女はすべての楽曲を手がけ、バンドのコンセプトからプランニングまで決定する、リーダー兼プロデューサーのようだ。「子供の頃から何でも計画するのが好きでした。このバンドでも、いつアルバムをリリースして、こんな曲を入れて、タイアップを仕掛けてとか、全部私が考えています。音楽をやってなければ、広告代理店の仕事とかを、やってみたかった(笑)」そんな彼女のアタマから生まれ、メンバーと共に仕上げる曲は、どれも徹底的にポップだ。「私たちは邦楽ロックバンドの界隈にいながら、こんなのロックじゃないと言われます。じゃロックである、ロックじゃないって、何?という問いには誰も答えてくれない。自分がいま伝えたいこと、訴えたいことを叫ぶのがロックなら、私たちは真逆のやり方をしています。クオリティの高い音を奏でて、否定する人たちを黙らせればいいんだ、まとめてかかってこい、というアルバムが『有頂天』です」“真逆のやり方”とは「みんなが欲しいものを作る。超リスナーありき」というシンプルなコンセプトだ。自分の体験や心情で曲を書くことはないときっぱり。それを可能にするマーケティングとして、相当丁寧にファンの心をすくい上げ、音楽に反映していると感じる。「ファンに受けないことはしない、ポップだと感じられないことはしないというのがバンドのポリシーですね。だから制作中はメンバー間で『これ、わかりづらくないですか』という発言がめっちゃ飛び交っています(笑)。そんなふうにジャッジしながら、この4人で作れる、枠にとらわれない曲を作っています」2nd ALBUM『有頂天』【初回生産限定盤CD+Tシャツ】¥5,300【初回生産限定盤CD+DVD】約75分に及ぶ映像特典“負けられない戦い2”付き¥3,500【通常盤CD】¥2,800*すべて税込み(UNIVERSAL SIGMA)『ポルカドットスティングレイ』雫(V&G)、エジマハルシ(G)、ウエムラユウキ(B)、ミツヤスカズマ(D)から成る福岡県出身の4人組ギターロックバンド。今年7/17には初の日本武道館ワンマン公演を行う。※『anan』2019年2月20日号より。写真・内山めぐみ文・北條尚子(by anan編集部)
2019年02月18日洗練されたグッドミュージックを常に提供し、結成3年目ながら確固たる実力と人気を兼ね備えたバンド、ナルバリッチ。そんな彼らが約1年ぶりとなるアルバム『Blank Envelope』をリリースした。「昨年得た良質のインプットが生み出してくれた、自信作なんです」そう語るのは、ナルバリッチの中心人物であるシンガーソングライターのJQ。昨年は、初の日本武道館単独公演をソールドアウトで成功させ、海外フェスへの進出も果たした。「武道館で強く感じたことは、オーディエンスと共有できるこの場所を消したくないって想いだったんです。そのために僕たちに何ができるのか。それは、より広い場所を目指すことだろうと。もっとスケールを上げていきたい、そう思えたんです」新しい景色を知り、広い視野を手に入れた上でたどり着いたのは、意外にも、聴く人の日常に溶け込むように、どんなシーンにも寄り添う、とても実直なサウンドだった。「ただ楽しければいいじゃんっていうのではもうないのかなって。喜怒哀楽の“喜”だけじゃない、すべての感情を知った上でポジティブな音を鳴らしたい、見つけに行こう、というのはメンバー全員の共通の想いです。ナルバリッチはメンバー全員の自己表現の場。それぞれの日常の中で生まれた音、日々感じた想いが、そのまま詰め込まれていると思ってもらえればいい」TVCMに採用された「Kiss You Back」など全13曲を収録。全編通して心地よいグルーヴに酔えるのは当然として、珠玉のバラード「Toy Plane」や壮大なスケール感の「Stop Us Dreaming」など、彼らの行く先を感じさせる聴きどころも多い。「僕、ロールプレイングゲームのレベル上げが好きなんですよ。コツコツ敵と戦った積み重ねで自分がレベルアップするのが快感で(笑)。ナルバリッチもそうやって日々成長できたらと思う。まだまだレベル上げの旅の途中なんだと思うんです」ナルバリッチボーカルJQを中心として結成。ファンク、アシッド・ジャズ、ヒップホップなどのブラックミュージックをベースに唯一無二のグルーヴを奏でる。3/31よりワンマンツアーが開始。3rd Album『Blank Envelope』全13曲収録。【完全生産限定盤A(CD+RemixCD+Blu‐ray)】¥5,500 【完全生産限定盤B(CD+RemixCD+DVD)】¥5,000【通常盤CD】¥2,800(Victor Entertainment)※『anan』2019年2月13日号より。写真・土佐麻理子ヘア&メイク・沖永大暉インタビュー、文・梅原加奈(by anan編集部)
2019年02月06日アンダーカバー(UNDERCOVER)とスーパーオーガニズムによるコラボレーションアイテムが限定発売される。スーパーオーガニズムは、2017年に結成された8人組多国籍バンド。インターネット上に突如現れ、そのポップで中毒性のある楽曲でたちまち話題となった。アンダーカバーとは、2019年春夏メンズコレクションのランウェイでの楽曲使用や、雑誌『スイッチ(SWITCH)』でのファッションシューティングなどを通して関係を築いている。「ロングスリーブTシャツ」各1万1,000円「ショルダーバッグ」各8,000円今回発売されるコラボレーションアイテムは、TシャツやロングスリーブTシャツの他、パーカ、コーチジャケット、ショルダーバッグの全5型が展開。いずれのアイテムも、スーパーオーガニズムが発信するピースフルなイメージを元に、宇宙や花といったポップなモチーフを組み合わせた、特別デザインのオリジナルモンスターがプリントされている。取り扱いは、スーパーオーガニズムのジャパンツアー初日の1月19日より、各ツアー会場とアンダーカバーの一部店舗にて発売される。【取り扱い店舗】UNDERCOVER 青山、伊勢丹新宿、六本木ヒルズ、梅田阪急、GINZA SIX、阪急メンズ東京、阪急メンズ大阪、LUCUA 1100、仙台、金沢、名古屋、京都、岩田屋本店、DSM銀座、MADSTORE UNDERCOVER ラフォーレ原宿、名古屋PARCO【ツアー販売】札幌(1月19日)、東京LIQUIDROOM(1月21日)、東京TSUTAYA O-EAST(1月22日)、名古屋(1月23日)、大阪(1月24日)、福岡(1月25日)
2019年01月17日ワンマンライブは毎回即完。Gt&Voの常田大希が米津玄師の最新アルバムにアレンジと演奏で参加したことでも話題を呼び、急速に人気を高める4人組バンド、King Gnu。セカンドアルバム『Sympa』は混沌としたミクスチャー・ロックの興奮も、弦楽器が美しい調べを奏でるスロウ・ナンバーも収録し、デビュー当時から「鬼才集団」と呼ばれた彼らの凄みを感じさせる。オルタナティブかつ繊細な新作は大人向けのバラードも聴きどころ。「タイトルにあるように、僕らのシンパをさらに募る、名刺代わりの一枚。以前よりシンプルに伝えることを恐れなくなったこともあり、前作と比べてもキャッチーな要素が増えたなと思います。でも、アンアン読者の方には井口のセクシーさを推していきたいですね(笑)」(常田)セクシーかどうかはさておき(笑)、「It’s a small world」はMVも必見。役者としても活動するVo&Keyの井口理によるパフォーマンスが、コミカルでシュールな世界観を演出している。「バンドをやりながらMVで演技ができるって一石二鳥かなって(笑)。特殊メイクの力も借りて、撮影では世界観に没入できました」(井口)他にも「Slumberland」など、ライブで盛り上がりそうな熱気溢れる楽曲はもちろん、「The hole」は、鍵盤の音色と歌声がフィーチャーされた大胆なほどミニマムなアレンジに。“僕が傷口になるよ”と歌う歌詞の、癒しのメッセージが聴き手を包み込む。「『The hole』は奇をてらっていない大人向けのバラードで、アルバムの聴きどころの一つ。すごく手応えを感じています」(常田)「この曲は音数を削いでドラムも渋いラインを叩いています」(勢喜)気鋭の新人バンドながら、初期衝動、なんて言葉は似合わない。チェロやバイオリンを取り入れたクラシカルで繊細な音作りも得意だ。「基本的にライブのことは考えずに作品を作ってるので。ライブで演奏するには難しすぎるアレンジも多々あります(笑)」(新井)「音源とライブが必ず同じじゃなきゃいけないとも思わないし、自由なミュージシャンシップでやっています。一曲に込めるアイデアやこだわりは他のバンドに負けないし、作品ごとに進化するバンドへの信頼もそれぞれに強いと思います」(常田)音楽制作もアートワークにおいても真摯に、非常に高いクリエイティビティを発揮する4人。「これがちゃんと売れたら、世の中が変わるんじゃないかな」と、井口がポツリと呟いたのが印象的だった。だが、普段の彼らには、もちろん若者らしい野望もあるのだとか。「先日、後輩を連れてお酒を飲みに行ったらめちゃくちゃ楽しくて。バンドで成功して湯水のようにお金を使ってみたいです(笑)」(井口)アニメ『BANANA FISH』のED曲「Prayer X」を含む全13曲。初回盤DVDには昨年1月開催のワンマンLIVEの映像を収録。『Sympa』【初回生産限定盤CD+DVD】¥3,611【通常盤CD】¥2,685(Ariola Japan) 1/16発売。キング・ヌー左から、常田大希(Gt&Vo)、井口理(Vo&Key)、勢喜遊(Drs&Sampler)、新井和輝(Ba)の4人からなるバンド。2017年に始動。新世代のミクスチャーロックとポップセンスで、いま大きな注目を集める。※『anan』2019年1月16日号より。写真・井手野下貴弘(HITOME)取材、文・上野三樹(by anan編集部)
2019年01月15日ディーン・フジオカ(38)が東京を拠点に活動するバンド・どついたるねんとTwitterで交流し、ネットで大きな話題を呼んでいる。両者の交流は、Twitterにアップされたどついたるねんのライブ動画がキッカケ。それは、同バンドのメンバー・先輩が「この世で一番飛べるのはディーン・フジオカのダブステップ」と連呼するというものだった。すると1月14日ディーンの公式アカウントが動画に反応。「この曲のフルライブ映像ってどこで見れるか御存知ですか?」と、どついたるねんの公式アカウントに質問。どついたるねんサイドは「ライブではディーン様のお名前を使わせていただいております ディーン様大好き」とコメントし、同フレーズがリフレインする楽曲「人生の選択」のライブ動画をリプライした。そこでディーンの公式アカウントは「わざわざ映像を手配して頂き、本当に有難うございます」と感謝の返信。さらに「このフック #この世で一番飛べるのはディーンフジオカのダブステップ で一緒にTシャツ作ったら面白そうですね」とも返した。「どついたるねんはそのナンセンスな歌詞や破天荒なライブパフォーマンスが魅力のバンド。6008曲入りのCDをリリースするなど一風変わったスタンスで活動しています。またSUSHI BOMBERというバンド名を掲げ、世界各国でのツアーも開催。とはいえ、まさかディーンさん本人とつながることができるとは想像もしてなかったでしょう」(音楽関係者)Twitterでは、どついたるねんのファンが驚きの声を上げている。《成人の日、そしてどつがディーンに見つけられた日》《どつがディーン藤岡のファンに認知されていくの得体の知れない恐怖があるな》《めちゃくちゃ楽しい絡み。対バンやってくれ》またディーンのファンにとっても、どついたるねんの音楽は好感触のようだ。Twitterではこんな声が上がっている。《他の曲もめちゃめちゃgoodgoodvibes 音楽たのしまれてますね、どついたるねんさんcheckしときますね》《笑った笑った すごい気持ちが明るくなったよ どこまでもいつまでも飛べそう ありがとう》《ディーンさんとコラボ楽しみだわ》早速コラボTシャツのデザインをファンがネットに上げるなど、盛り上がりを見せる両者の交流。共演の日も近い?
2019年01月15日2018年、そして来る2019年に、音楽シーンでさらに活躍しそうなアーティストたちとは?音楽ライター・上野三樹さんにお聞きしました。才能豊かなアーティストが支持を集める時代に!「近年はCDだけでなく、YouTubeや音楽配信サービス、SNSなど、発信の場が増えたことで、本当にいい音楽がきちんとリスナーに届く時代になりました。その結果、’18年にブレイクしたあいみょんや米津玄師さんをはじめ、“売れているもの”ではなく、自分のやりたいことを媚びずにやる才能豊かなアーティストが支持を得る傾向が一層強くなりそう」その代表例が、YouTubeでMVの再生回数が195万回を超えるネクライトーキー。「初めてYouTubeで聴いた時、曲のクオリティの高さにびっくり。声のインパクトも強く、一度聴いたらクセになります」東京のインディーズシーンを盛り上げているのは、ロックバンドTENDOUJI。「中学の同級生4人が28歳で始めたバンド。何もわからず自分たちでレーベルを作ったり、手探りな活動を含めて愛されています」また、有名ミュージシャンによる口コミがきっかけで注目度が高まるケースも多く、「くるりの岸田繁さんが称賛している」と言うのが中村佳穂さんと折坂悠太さん。「中村さんはいきものがかりの水野良樹さんも大絶賛。折坂さんは宇多田ヒカルさんが“衝撃を受けた”と評したことで注目の的に」ネクライトーキー2017年結成。「鬱屈したネガティブな歌詞を軽快なメロディにのせて歌う4人組ポップロックバンド。活動歴は短いものの、以前からボーカル以外のメンバーが別名義で活動していることもあって、ファンからの信頼は厚いです」TENDOUJI結成は2015年。「バンドを結成してから楽器を始めたメンバーもいるそうで、その型にハマらないスタイルが愛されている理由。男のロマンを感じさせる歌詞とメロディセンスが抜群」。1月19日、渋谷WWW Xにてワンマン公演。中村佳穂1992年生まれ。「フューチャーソウルやベースミュージックというジャンルを日本語で追求していこうとする姿勢がすごい。新作『AINOU』は、ビートの合間に言葉が研ぎ澄まされた状態で浮かび上がってくるような傑作」折坂悠太平成元年生まれ。「幼少期をロシアやイランで過ごされたせいか、独特の歌唱法に民族音楽のようなものが織り交ざっていて強烈な刺激とノスタルジーを感じます。『平成』という曲では堂々と時代を射抜いて歌を放つ存在感に脱帽」上野三樹さん音楽ライター、Webサイト「YUMECO RECORDS」主宰。本誌のミュージックページや『音楽と人』など、さまざまな雑誌で執筆。※『anan』2019年1月2・9日号より。取材、文・菅野綾子(by anan編集部)
2019年01月02日幅広いサウンドで注目を集めるロックバンド[ALEXANDROS]。社会人経験を経てメジャーデビューという異色の経歴を持つ彼らの音楽にかける思い、4人の関係性とは。攻撃的な音だけでなく甘いメロディも得意とし、ロックファンのみならず多くの人から支持を受けるバンド[ALEXANDROS]。今年は、数々の音楽フェスに出演する一方で、千葉のZOZOマリンスタジアムでの単独ライブも成功させた。そんな4人が7枚目となるニューアルバムを発表する。――『Sleepless in Brooklyn』というタイトルの意味を教えてください。川上洋平(ボーカル&ギター):特にこれというコンセプトはないのですが、ずっとブルックリンに滞在して作っていたのがひとつ。本当に眠らないで作ったりもして(笑)、いろいろな意味が込められてます。磯部寛之(ベース&コーラス):レコーディングもさることながら、トータルで半年近くブルックリンに腰をすえました。制作というより、暮らしながらスタジオに通うという感じで。ボンボン、曲のネタが生まれましたね。川上:「SNOW SOUND」以外は全部、向こうで生まれた曲。エンジニアやプロデューサーも向こうの人。写真を撮ってくれたカメラマンはNY在住のチャド・ムーアというアーティストで、インスタグラムで見つけて声をかけました。ブルックリンという街や人、空気感を取り入れたかったんです。街の人も日本とは全然違いますね。磯部:駅のホームで天然のリバーブを生かして歌ったり、電車の中でドラムセットを組んでパフォーマンスしたりとか、ここに住んで影響を受けないほうが無理だなってくらい、才能があふれている。白井眞輝(ギター):僕は留学の経験もなくて、ずっと日本にいたから、新しい価値観にしっかりかぶれました。街の中で大きな声で歌っている人がいても、誰も干渉しない。それを見て、人の目を気にしすぎると動けなくなるし、もうちょっと自由に生きようかなって。庄村聡泰(ドラムス):たくさんライブを観に行って、いろいろなジャンルのビートや踊り方を見て、体感したことで、グルーブ感のようなものを広げて帰ってくることができたんじゃないかなと。それが生かされている曲もあるよね。川上:日本とは、音楽において大事にする部分が違うなと思いました。まずは、踊れるかどうかが肝心で、その後にメロディやコード感が乗ってくる。だからベースやドラム部分を最初に作るんだなと。あとは抜け感。ガーッと楽器を入れたり、賑やかにはしすぎないことで大人っぽくて気持ちがいい曲になるし、それぞれの楽器の音がわかりやすい空間を楽しめる曲になる。その感じを、どうにか僕たちの曲につなげていきたいと思って作りました。激しめの「Mosquito Bite」や「spit!」がそうで、リフで攻めていくから音にほとんど壁がない状態になって、すごく心地いい。磯部:通っていたスタジオにはルーフトップがあって、洋平がアコギを弾きながら曲を作ったりもしていて。そういう環境含めて、とても新鮮でした。――渡米先では4人で共同生活をされていたとか。磯部:そうです。一軒家を借りて。川上:昔、4人で暮らしていたときと同じ感じでした。じゃんけんで部屋決めをするんですけど、僕がめちゃめちゃ弱くて、ほぼ毎回負けて最後に選ぶんですよ。だから、いつも人気のなさそうな部屋が残っていて、ニュージャージーの部屋なんて、4畳の子供部屋でしたからね。“さあ、広大なアメリカで曲作りをするぜ!”という気持ちでいるのに(笑)。白井:洋平は曲を作るから、じゃんけんで負けたとはいえ、最初の頃は誰かが代わってあげたりして。磯部:じゃんけんで俺が勝つと「作曲できないなー、集中できないなー」ってずっとついてくるし。白井:でも、ニュージャージーのときは、誰も譲らなかった(笑)。川上:壁紙はすんごいメルヘンだし、コンセントがひとつしかなくて、クーラーをつけるとパソコンが充電できない。アリも出ました。庄村:でも最初の家は僕が負けました。天窓しかない部屋で、ある日、暑くて目が覚めて携帯を見たら“冷えるまで動きません”みたいな表示が出てた。どうやら、直射日光がずっと当たっていたみたいで、君にこんな表情(かお)があったんだって思いました。一同:(爆笑)――じゃんけんが強いのは?磯部:せーの、じゃんけんほい!一同:(10回あいこが続く)川上:いつも一回で決まるのに!アレキサンドロス一枚目写真右から、白井眞輝(ギター)、川上洋平(ボーカル&ギター)、磯部寛之(ベース&コーラス)、庄村聡泰(ドラムス)からなるロックバンド。2007年に本格始動。TVドラマや映画・CMなど多岐にわたって楽曲提供を行うなど、幅広い層に支持されている。7枚目のニューアルバム『Sleepless in Brooklyn』が11月21日に発売される。JR東日本2016‐2017 JR SKISKIのCMソング「SNOW SOUND」や映画『BLEACH』の主題歌「Mosquito Bite」など、話題の全13曲を収録している。【通常盤】¥3,000【初回限定盤A】¥6,800【初回限定盤B】¥5,800【完全生産限定盤】¥8,800(ユニバーサルミュージック)※『anan』2018年11月21日号より。写真・小笠原真紀ヘア&メイク・坂手マキ(vicca)インタビュー、文・重信 綾(by anan編集部)
2018年11月20日今年、まさに飛躍の真っ只中にいる男女4人組バンド、緑黄色社会。3月にファーストフルアルバム『緑黄色社会』をリリースし、その後のツアーはチケット即完。11月7日には早くもミニアルバム『溢れた水の行方』が到着。日本のポップシーンど真ん中へ踏み出せそうな一枚だ。「ずっと音楽が好きで前を向いてやってきたんですけど、始めたばかりの頃は手探り状態でした。最近はいろいろと経験させてもらって、4人の前の向き方がひとつにギュッとまとまった感じがしています」(長屋)「曲ができた時期はバラバラなんですけど、前作を超えようという想いで、いろんな性格を持った多彩な曲たちを入れました」(peppe)今作1曲目の「あのころ見た光」は透明感溢れる鍵盤の音色と伸びやかなボーカルが大きな躍動感を連れてくるポップ・ソング。サビの冒頭にある〈twenty‐one〉という歌詞が未来を掴むキーワードだ。「これは2年前、私たちが21歳の時に書いた曲。当時は不安や葛藤が大きくてあまり前向きではなかったので一度置いておいたんです。このタイミングで、歌詞を葛藤も含めて前向きな気持ちで書き直すことができて。21歳を越えた今の視点で、4人でがんばろうねっていう気持ちを込めて完成させました」(長屋)緑黄色社会は、メンバー全員がコンポーザーでもあることもひとつの強み。エッジの利いたギターリフと男女のボーカルが掛け合うシリアスな世界観で新境地を響かせた「Never Come Back」は小林と穴見の幼なじみコンビで手がけた。「去年、Beckがリリースしたアルバムを聴いて、UKロックやニューウェーブにどっぷり浸かる時期があって。その頃に作った曲だから、少し’80s感が出ています」(穴見)一方、長屋が作詞作曲を手がけた「視線」は、恋する気持ちをホロ苦さまで伝えきる女子ワールド全開。「恋愛をして誰かを好きな気持ちって、想いをただストレートに伝えたいだけではないと思っていて。伝えられない好きもあるし、伝えたくない好きもある。その天の邪鬼な感じを出したくて。私が感じていることを言葉にして、結果的に誰かが共感してくれたら嬉しいです」(長屋)ちなみに彼ら、普段から仲が良く「趣味は全然違う姉弟」のような関係性なのだとか。そんなリョクシャカの快進撃、まだまだ期待したい。「緑黄色社会」左から、穴見真吾(B/Cho)、長屋晴子(Vo/G)、peppe(Key/Cho)、小林壱誓(G/Cho)による愛知県在住4ピースバンド。2012年結成。今月からワンマンツアー「溢れた音の行方」が開催。リード曲「あのころ見た光」をはじめ、カラフルなだけじゃない憂いや繊細さで心躍らせるポップ・ソングを全6曲収録。Mini Album『溢れた水の行方』¥2,00011月7日発売(Epic Records Japan)※『anan』2018年11月14日号より。写真・内山めぐみインタビュー、文・上野三樹(by anan編集部)
2018年11月13日バンド結成20周年、メジャーデビュー15周年の節目を精力的に駆け抜けているストレイテナー。彼らがライブ活動を始めたのは1998年。当初はホリエアツシとナカヤマシンペイの2人からなるミニマムなバンド編成だったが、初期衝動をエモーショナルに掻き鳴らす様は当時のギターロック・シーンでも異端だった。「今でも当時のライブを見てくださってた方が『あの時の衝撃はすごかった!』と言ってくれることも。その頃は『やってやる!』というエネルギーに満ちていました」(ホリエ)「でも、ずっと自分たちのやってる音楽はカッコいいって信じてました。好きなことだけをやって20年続けられている、特殊な立ち位置のバンドかもしれないですね」(ナカヤマ)このアニバーサリー・イヤーに、ファン投票により選ばれた人気曲を収録した2枚のベストアルバムをリリース。時代ごとに移り変わる音楽性の幅広さと挑戦が詰まっている。「昔の曲から最近の曲までバランスよくランクインしたのは、バンドとしてのピークをちゃんと更新し続けられているからかな。ファンが僕らの音楽の本質を理解してくれているような結果で嬉しいです」(ホリエ)打ち込みを取り入れたり、ピアノの音色が美しいバラードがあったり、その時どきで多彩な曲調を奏でながら、ロックバンドとしてブレることのない存在感を発揮し続けている現在。ストレイテナーらしさとは、どんな音楽制作から生み出されるのか。「曲のアレンジにおいては、直感信じる系なんで(笑)。一発目に出てきたものが一番だと思ってるから、あまり練らないんですよ」(日向)そんなふうに、いたってシンプルな答えが返ってくるのは、バンドとしてのクリエイティビティを新鮮に持ち続けられる4人だからこそ。「音楽だけじゃなく、考え方や人間性も近いところで集まってバンドをやってるから。この先に方向性の違いで解散、なんて言い出したらギャグでしかないですよ(笑)。同じ時代に日本のバンドシーンで戦ってきて、いろんな苦労も乗り越えながら培ってきたものは大きいです」(ホリエ)「この4人で集まれば、4人でしかできないことに集中できる。だからこそ続いていくんだなっていう感じがしています」(大山)凄まじい音圧から放たれるダイナミズムも、ロマンティックなメロディラインから聞こえてくる繊細さも。ベスト盤を聴きながら、ストレイテナーの魅力とバンドとしてのまっすぐな歩みを、あらためて味わいたい。ファン投票の上位25曲に各メンバーが選んだ曲と新曲「Braver」を含めた全30曲を2枚に収録。『BEST of U -side DAY-』『BEST of U -side NIGHT-』発売中。【初回限定盤CD+DVD】各¥3,700【通常盤CD】各¥2,700(Universal Music)「ストレイテナー」左から、日向秀和(B)、ナカヤマシンペイ(Dr)、ホリエアツシ(Vo&G)、大山純(G)によるロックバンド。現在、12/21まで続く全国ツアー「My Name is Straightener TOUR」の真っ最中。※『anan』2018年11月7日号より。写真・映美取材、文・上野三樹(by anan編集部)
2018年11月03日「女性ロックバンド」に革命を起こしたチャットモンチー。彼女たちの曲に詞も提供したことのある作家・西加奈子さんが思う、7月の「完結」を迎えたラスト武道館ライブのこと、彼女たちのこと。「私は生きている」文・西 加奈子チャットモンチーはすごいバンドだ。私が知った時にはもうすごかったし、彼女らはデビューの時からすごかった。ちょっと怖くなるくらい格好いい演奏と、とても切実なボーカル。可愛らしい容貌を裏切るバンドだと散々言われてきただろうけど、私はバンドとしての彼女たちを「可愛い」と思ったことは一度もない。いつも、いつだって、ずっと格好良かった。なんだったら「北斗の拳」のラオウの集まりみたいに思っていた。彼女たちの音楽には、ずっと全力で応援されているような気持ちになった。その一方で圧倒的すぎて置いてきぼりにされているような気持ちにもなった。私のためだけに叫んでくれているようにも思えたし、自分たちのためだけに叫んでいるようにも見えた。とにかくどんな感想も想いも矛盾しなかった。自分が感じたことを、全部信じることができた。唯一共通点があったのは、彼女らの演奏を聞くと、いつもお腹いっぱいおにぎりを食べた後のような、とてもシンプルな幸福を感じることだった。彼女たちの潔い佇まいと、それは無関係ではないはずだ。どれだけ高度な演奏をしても、複雑な楽曲を披露しても、彼女たちの姿勢はシンプルだった。自分たちがいいと思う音楽を奏でる。つまり真っ向勝負をしていた(やっぱりラオウだ!)。おにぎりが私たちを生かしてくれているように、彼女たちの音楽に「生かされている」と思うことは多々あった。表現というものは、いつだって食べ物の救いよりは遅い。圧倒的に遅い。表現それ自体が物理的に人の命を救うことはないと、表現する人間ならみんな分かっている、はずだ。でも、私にとってチャットモンチーは限りなくおにぎりなのだった。なんかもう、ものすごく生きることに直結させてくれる音なのだった。そんなチャットモンチーが「完結」する。メンバーの脱退や変化を繰り返し、それでもチャットモンチーはずっとそこにあり続けるだろうと思っていた。勝手に私の常食にしていた、おにぎりが、なくなる?寂しくてめまいがしたけれど、彼女たちが「解散」という言葉を使わないこと、そこに何かすごく意味があるような気がした。これは絶対に目撃せねば、と思った。それで武道館へ行った。武道館のチャットモンチーは、いつもと変わらなかった。「CHATMONCHY MECHA」「たったさっきから3000年までの話」ラオウ的真っ向勝負をして、私たちみんなの口に、おにぎりを放りこんでくれた。「the key」「裸足の街のスター」演奏が終わるたびに、私の体はあたたかなもので膨らんだ。ああ、これがチャットモンチーだ。最初から私はずっと泣きそうで、結局泣いてしまって、すごく泣いて、その時思っていたことは「チャットモンチーを見れなくなるなんて嫌だ」ではなくって、「ありがとうチャットモンチー」なのだった。「私を生かしてくれて、ありがとう!」最近、みんな「ちょっとだけ死のう」としているように思う。本当に死にたいんじゃない。それどころか生きたくてたまらない。だから、自分が「本当に生きている」ことを実感したくて、ちょっとだけ死のうとしているように思うのだ。例えば分かりやすく手首をちょっと切ってみるだけじゃない。痛みを感じ、流れる血を見て「生きている」と思うのではなく、インターネットに誰かの悪口を書いたり、悪いお酒を飲んで酩酊したりして、チクチクと自分の心を刺すのだ。そうして見えない血を流して、それで「生きている」と思う。チャットモンチーの音楽は、「ちょっとだけ死ぬ」必要なんてないんだよ、と言ってくれていた。そんなことしなくても、自分を傷つけなくても、あなたは生きている。まごうことなく、完全に、全身全霊で生の只中にあるから、だから生きているんだよ。そう、叫んでくれていた。「砂鉄」「クッキング・ララ」「惚たる蛍」「染まるよ」私は生きている。「majority blues」「ウィークエンドのまぼろし」「例えば、」生きて、歌を歌う。「東京ハチミツオーケストラ」「さよならGood bye」「どなる、でんわ、どしゃぶり」熱狂する。「Last Love Letter」「真夜中遊園地」「ハナノユメ」体中を血がぐるぐると回る。それは、痛みを覚えるための血じゃない。生きている、それはもう圧倒的に生きている証拠の血が流れるのだ。「シャングリラ」「風吹けば恋」「サラバ青春」7月4日の武道館、私たちはみんなで生きていた。みんなで、ちっとも死なずに生きていた。チャットモンチーのへその緒に、みんなで繋がっていた気分だ。確かに彼女たちは「完結」した。そしてそれは同時に、生まれ直す行為だった。圧倒的に生きたまま生まれ直す行為。彼女たちの音楽が、その粒が私たちの体に入り込み、血になって、骨になって、細胞になって、心になった。そういえば武道館に下がった垂れ幕には、大きな字でこう書かれていたではないか。「Every day is your birthday」新しい誕生日おめでとう、私たち。新しい誕生日おめでとう、チャットモンチー。にし・かなこ作家。1977年生まれ、エジプト、大阪育ち。『サラバ!』(小学館)にて直木賞受賞。最新刊に『おまじない』(筑摩書房)。チャットモンチーの楽曲「例えば、」では、作詞を担当した。チャットモンチー2004年、地元徳島県にて結成。幾度かのメンバーチェンジを経て、橋本絵莉子(Vo、G)、福岡晃子(Ba、Dr)、高橋久美子(Dr)の3人での活動を始める。2005年、ミニアルバム『chatmonchy has come』にてメジャーデビュー。以降、テレビアニメ『働きマン』のエンディングテーマに抜擢された「シャングリラ」をはじめ、数々のヒット曲を世に出す。’11年の高橋の脱退以降は、サポートを迎えつつ2人体制で活動。’18年7月4日の日本武道館ライブ、そして同21日・22日の「徳島こなそんフェス」をもって「完結」。※『anan』2018年9月12日号より。写真・古溪一道上山陽介(by anan編集部)
2018年09月07日新刊「美尻バンドトレーニング 特製ゴムバンド付き」2018年8月23日、パーソナルトレーナー岡部友の新刊「美尻バンドトレーニング 特製ゴムバンド付き」が発売される。岡部曰く、座っていることの多い現代人は、お尻の筋肉をほとんど使えていないという。「美尻バンドトレーニング 特製ゴムバンド付き」は、お尻の筋肉をしっかりと動かし、さまざまな角度からアプローチしていく。お尻本来の機能を目覚めさせながら、自分史上最高の美尻を目指すことができる。トレーニング方法が詳細に、分かりやすい言葉で書かれているため、バンドトレーニングの初心者にもオススメだ。販売価格は1,620円。Amazon.co.jpにて予約を受け付けている。岡部友のプロフィール岡部友は1985年生まれ。神奈川県横浜市出身。株式会社ヴィーナスジャパンの代表取締役を務め、女性専用のフリーウェイトジム「SPICE UP FITNESS」を、南青山、原宿、名古屋にて運営している。美尻トレーニングのスペシャリストとして知られる。著書には、「美尻トレ~究極のヒップメイク~」、『筋トレが折れない私をつくる!』などがある。Instagramのフォロワー数は53,000人を超える。(画像は岡部友 オフィシャルブログより)【参考】※岡部友 Instagram※岡部友 オフィシャルブログ※Amazon.co.jp
2018年07月23日映画や展覧会、CM、舞台芸術にファッションと、あらゆるジャンルとコラボレーションするとともに、個人の作品も発表している蓮沼執太さん。多岐にわたるプロジェクトの中で、最も人数が多い「蓮沼執太フィル」としての新作をリリースする。「主にひとりで音楽を作ってきたんですが、最初は5人編成のバンドから、さらにもっと楽器の種類を増やしたアンサンブルにしたくて、欲しい楽器の演奏家にオファーして、フィルがスタートしました」当初はライブのためだけに集まる蓮沼フィルだったが、当時15人のメンバーと共に、2014年に1stアルバム『時が奏でる』を発表。その後、蓮沼さんはNYに活動拠点を移し、ソロ活動などに没頭。その間、蓮沼フィルの活動は休止に。「2年前に久々に集まって演奏してみたら、音が全然変わっていて、昔の曲もすごく新鮮に聞こえたんですよ。ひとりで音楽を作っている時とはまた違う感動がありました。またメンバーみんなと一緒に演奏したい、と強く思いました」その成果が4年半ぶりに完成した最新アルバム『アントロポセン』だ。フィルのメンバーも16人の大所帯となり、サウンドも進化。「16人がそれぞれクラシックやジャズ、バンドなど異なるフィールドで独立し、活躍している方々ばかりです。一緒にツアーを続けて、どんどん演奏が良くなる、ということはあるけど、この2年間ほとんど会ってないんです。だけど感動するほど音が変化したのは、時とともにひとりひとりの人間性が変化しているのではないでしょうか。そんなふうに解釈しています」出自が異なる10数人の楽器演奏者と女性ボーカリストにラッパー。コンダクターの蓮沼さんは歌も担当する。メンバー全員が思い思いに解釈して演奏するアンサンブルは、クラシックやポップス、ジャズとも違う新しい世界を感じさせる。ふわりとした浮遊感に包まれ、いい香りがするような、有機的なサウンドだ。失礼ながら、何度もリピートして聴いていると眠くなります、と言うと…。「眠気を誘うほど気持ちいい音楽は、いい音楽だと思っています。僕は耳触りの良さや音の質感を大事にして音楽を作っているので、このアルバムもマイナスイオン的なものが出ているのかもしれないですね(笑)」はすぬましゅうた・ふぃる2010年に結成された現代版フィルハーモニック・ポップ・オーケストラ。8/18東京・すみだトリフォニーホール、9/16名古屋・ナディアパークデザインホール、9/17大阪・千日前ユニバースでコンサート予定。2nd Album『ANTHROPOCENE(アントロポセン)』¥3,300*税込みクラシックからワールドミュージックまで、さまざまな楽器の音色が美しいハーモニーを紡ぎ出すアルバム。7月18日発売。(COLUMBIA)※『anan』2018年7月18日号より。写真・神藤 剛文・北條尚子(by anan編集部)
2018年07月17日チャットモンチーが7月に活動を《完結》する。昨年11月にふたりからのメッセージが発表されると、困惑と悲しみの声が巻き起こったが…。「いままでは次のアルバムはどうしようか、と考えてきたけれど、次の目標はチャットモンチーを終わらせる、完結させるという言葉が、さらりと出てきたんです」(橋本絵莉子)「えっちゃんからそう聞いたとき、なるほどと思いました。いい形で終わらせることができる気がして、すごく前向きになりました」(福岡晃子)11月の段階ではどんな完結になるか白紙だったそう。しかし、ふたりは最後に素晴らしいアルバム『誕生』を完成させた。しかもいかにもラストという“最終章”“集大成”という内容ではなく、新たな試みに溢れたポジティブな作品でもある。「ラストということをテーマにしてアルバムを作るのは難しかったので、いま私たちが一番興味のあるテーマで制作しました。それが生楽器をほとんど使わない、全編打ち込みというサウンド作りでした。最後に新しいことに挑戦するのもチャットらしい、という気持ちもあり、前進しながら作ったアルバムです」(福岡)主にトラックメイキングは福岡さんが手掛けたが、「打ち込み初心者なので、先輩のPOLYSICSのハヤシさんなどに、電話やメールをしまくって(笑)、あれこれ教えてもらいながら作り上げました」。そして完成した作品は、作り方は変わっても、まさしくチャットモンチーにしか奏でられないサウンドだ。「歌詞についても、こんなふうに思われるかな、ということをいつもより気にしないで書きました。リード曲の『たったさっきから3000年までの話』は、実家の父の姿と息子の姿を重ね合わせて、世代交代をしていく感じを詞にしました」(橋本)福岡さんが書いた「裸足の街のスター」は、そのままチャットモンチーのことをテーマにしている。「最後の歌詞になるから、いままでのことを書けたらな、と思って。裸足というのは、徳島のスタジオが靴を脱いで演奏するところだったので。昔のライブは靴下でやっていたんですよー!(笑)」(福岡)また「砂鉄」という曲は、元メンバーの高橋久美子さんが歌詞を提供している。3人の関係をストレートな言葉で綴る美しい曲だ。「3人で作ったもののCD化していない良い曲があったので、それを入れようと思っていたら、デモテープが見つからなくてメロディが思い出せなかったんです。それで、久美子にイチから新しい歌詞をお願いしてみました」(橋本)あまり語られない家族のこと、メンバーのことを彷彿とさせる歌が聴けるのも、嬉しいポイントだ。『誕生』リリース後は、武道館のラストワンマンと徳島のイベントで、いよいよチャットモンチーは完結する。完結後のことを聞いてみると、橋本さんは「分からないです。いまはまったく想像できない」、福岡さんは「決まっていません。転職してもいいかな(笑)」。ショックを受けるファンがいるかもしれないけど、「趣味になっても音楽は続けていくと思う」とも。どんな形であれ、またいつかふたりが奏でる素晴らしい音楽を聴ける日が来るだろう。写真左・福岡晃子(B&D&KEY)右・橋本絵莉子(V&G)7/4にラストワンマンを日本武道館で行う。7/21・22は地元・徳島で「チャットモンチーのこなそんフェス2018」を主催し、結成から18年の活動を完結させる。Last Album『誕生』【初回生産限定盤】¥3,000【通常盤CD】¥2,400全編打ち込みで制作された7枚目のオリジナルアルバム。全7曲。『誕生』と同日発売の6th Album『共鳴』【Forever Edition 2CD】¥3,4006thアルバムのリマスター盤。DISC2は『共鳴』の全曲の、2015~2016年に演奏されたライブテイクを収録したCD。(Ki/oon Music)※『anan』2018年7月4日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)文・北條尚子(by anan編集部)
2018年07月01日インディーズバンドに起こる奇跡を描く映画『EVEN~君に贈る歌~』(6月2日公開)に登場するロックバンド・EVENが劇中から飛び出しデビューする。ボーカルの桜田通さんをはじめ、メンバーはオーディションで選ばれた若手俳優5人。ずっと一緒にバンド活動していたかのような連帯感すら感じさせる。「ボーカル役のオーディションに行ったら(坂東)龍汰がいて、NY帰りだというし、エド・シーランの曲をアカペラで歌うし、ああ、僕は絶対に落ちたなと思いました」と桜田通さん。一方、ギター役を勝ち取った坂東龍汰さんは、「通君はそこにいるだけで存在感あるし、肌はつるつるだし、やばい、ダメだと思いました。でも結果は通君が主役になり、僕は彼の親友役になれて嬉しかったですね」とのこと。ベース役の才川コージさんは「ギター役という話だったのに、ベース弾ける?と聞かれて、できないのに、弾けますと言っちゃったんです。すぐに楽器を買って課題曲の(ビートルズの)『HELP!』を練習して。まさに《助けて!》という心境でした」とちょっと笑っちゃうエピソード。未経験ながらドラマー役に抜擢されたのは櫻井圭佑さん。「オーディションをきっかけにドラムにのめり込んでいます。難しい楽器だけど、電子ドラムを買っていろんな曲をコピーして自分なりの叩き方を模索中です」。唯一バンド経験を持つのが、Wギターのもうひとり、栗原吾郎さん。「5年間活動してきたバンドが解散し、俳優でやっていこうと決めてすぐにオーディションのお話を頂いたんです。ギターには自信があったのでワクワクしながら弾きました」とまさに適役だった。そんな彼らは、オリジナル曲『アイノウタ』でメジャーデビュー。映画に先駆け視聴できるMVでは、彼らのカッコ良さを堪能できる。「ライブシーンをMVと一緒に撮影したんですが、それまで5人で必死に練習し、本番を迎えました。みんなが一人前に弾いたり、叩いたりする姿を見て、一緒に成長できた感じがして、心打たれましたね。映画のワンシーンとはいえ、芝居を超えたものがあったと思います」(桜田)「バンドをやってきた自分から見ても、EVENは相当いけると思う。みんなイケメンだし(笑)、それぞれに個性があって自分を持っているんですよ。だからすごく刺激を受けるし、バンド経験者とはいえうかうかしていられないですね」(栗原)今は「役者が音楽に挑戦した」と言われているけど「ミュージシャンが芝居に挑戦した」と言われたら嬉しい、と口を揃える5人。「そうなったら本当にすごいね。でもそれが実現できちゃうようなメンバーだと思っています」(才川)イーブン写真左から、ギター・涼(栗原吾郎)、ギター・快(坂東龍汰)、ボーカル・武人(桜田通)、ドラム・春雄(櫻井圭佑)、ベース・充(才川コージ)。本格的に音楽活動を始める彼らに注目。Debut Single『アイノウタ』【初回限定盤CD+DVD】¥1,8003人組ロックバンド、サイダーガールの書き下ろし曲でメジャーデビュー。DVDにはタイトル曲のMVを収録。【通常盤CD】¥1,000(Universal Connect/UNIVERSAL MUSIC)※『anan』2018年6月6日号より。写真・内山めぐみ文・北條尚子(by anan編集部)
2018年06月05日ceroの音楽を初めて聴いた人は、不思議な感覚に包まれるかもしれない。普段聴き慣れているようなJ‐POPやロックにはないリズムのうねり、楽器のひとつのようなボーカル。新しい音楽のようで、どこか懐かしさもある独特のサウンドを聴かせるバンドだ。「もともとミュージシャンというより、リスナー寄りなので、この音楽のこの部分と、あの音楽のあそこが混ざり合ったら面白いなとか、そういうことを実践しているところはあります。あと、日本のシーンにないものを提供しようという気概もありますが、一番は自分たちが飽きない音楽を目指していますね。僕ら、飽きっぽいので(笑)」(高城晶平)新作の『POLY LIFE MULTI SOUL』は川や滝、魚など水を想起させる曲が多い。どこか冷んやりとクールな感触を体感する。「荒内君が『魚の骨 鳥の羽根』という最初の一曲を書き、僕が歌詞をつけてアルバム制作がはじまりました。3人とも曲を書くので曲を出し合いながらコミュニケートしているうちに、最終的にコンセプチュアルなテーマが決定していく、いつもそんなふうにできていきます」(高城)独特のリズムのうねり、と最初に触れたのは、音楽用語でいえばポリリズム、クロスリズムというもの。「異なる拍子が同時に存在する様式です。トライバルなリズムの上に、都会的なハーモニーがのる。そのレイヤーは、以前のアルバムと通じるところもありながら、このアルバムはアフリカンなリズムに、最近のジャズのコード進行を合わせた感じが多くなっています」(荒内佑)一昨年からceroは5人のサポートメンバーと共にライブを行ってきたが、新作のレコーディングもこの8人全員で行った。全員揃って一発録りで完成した曲も多いとか。リズムだけでなくさまざまな楽器の音の重なり、男女のコーラスの重なりまで、ニュアンスの違う複層的なサウンドが聴きどころだろう。造語だというアルバムタイトルも、まさに彼らの音楽をピタリと表している。「複雑なこともいろいろやっているんですけど、難しい音楽として聴いてほしくないというのが正直な気持ちですね。楽しんでもらうために作ったので、その気持ちが前面に出ているし、思いもよらずポップなアルバムになったと思います」(橋本翼)セロ写真左から、高城晶平(V&G)、荒内佑(K)、橋本翼(G)。’04年結成。これまで3枚のアルバムをリリース。5月末から全国12都市を回るツアー開催。『POLY LIFE MULTI SOUL』【初回盤ACD+DVD】¥3,400ライブDVD『CROSSING』付き。【初回盤B CD+BONUS CD】¥3,400ボーナスディスクには全曲のインストバージョン収録。【通常盤】¥2,900*すべて税込み(カクバリズム)※『anan』2018年5月23日号より。写真・内山めぐみ文・北條尚子(by anan編集部)
2018年05月22日デビュー10周年を迎えたサカナクションが、初のベストアルバムをリリースした。その名も『魚図鑑』。CD3枚組と2枚組の形態があるが、タイトルがそれぞれ『浅瀬』『中層』『深海』と名付けられていてニヤリ。まずその理由から、フロントマンの山口一郎さんに聞いてみた。「多くの人が好きなものと、受け入れられないものを組み合わせると、どうしても違和感が生まれます。でも僕は、良いものって違和感から生まれると思っていて、その違和感を組み合わせたものが『浅瀬』に収録した曲です。『中層』はもっと美しくて難しい要素が強まった内容で、『深海』は全て僕らの好きなものだけ。『浅瀬』を聴いているうちに、あれ『中層』もいいぞ、『深海』も聴いてみよう、と行きつき、最後は『深海』しか聴かなくなる、みたいなレイヤーになっています(笑)」つまり、サカナクション自身がキュレーター役を担い、10年間の作品をより深く楽しみ、知る道筋を作ってくれている選曲と構造なのだ。「辛くておいしいカレー屋をカレー初心者に勧めても、“辛い!”で終わってその奥の深みは分からない。それなら、最初はこの店、次はあの店…と道筋をつけて伝えた方がいい。本当に知ってほしいものは、そこまでしないといけないと思います」選曲にあたり過去の作品を聴いて、あることに改めて気付いたという。「すべての曲は14~15歳から24歳ぐらいまでの僕の心象風景がベースになっていました。いまはその貯金で作っている気がする。昔は映画を観て素直に泣けたけど、年齢とともに感情を開ける《フタ》が重くなったのか、なかなか持ち上がらない。そう思うと、モラトリアム期って無敵だなと感じます。東京で暮らしていると、出てくる感情が違って、流れ星みたいな感じ、かな。昔は星空を見てそのまま感動したけど、いまは一瞬の、通り過ぎる感動になってきた。いつも僕は、北海道への郷愁と、東京の日々の間で揺れているので、その集大成をこのベストアルバムで作れたな、と思っています」アルバムには『魚図鑑』または『魚大図鑑』という本が付く。収録曲の詳細なデータや解説はもちろん、生物図鑑風のフォーマットも精密で、アートとしての完成度も高い一冊だ。音楽以外の作品に対する、意欲の大きさが窺える。「“研究者的な第三者が、冷静にサカナクションを研究した”という本をベスト盤に付けたかったんです。今までもサカナクションは、音楽と他のカルチャーを結びつける試みをいろいろやってきましたけど、今後ますます音楽とカルチャーを結びつけることが大事になっていくと思うし、CDとライブしか表現手段がないというのも、時代遅れだと感じています。他のカルチャーと音楽を結ぶ、という大義のもとで音楽をやっていくのは素敵だと思っているし、テクノロジーの進化とともに、昨年行った『6.1chサラウンドライブ』のような実験的なライブも含めて、ロックバンドとして新しいシステムを作りたいし、アップデートしていきたいと思っています」山口一郎(Vo&G)、岩寺基晴(G)、草刈愛美(B)、岡崎英美(K)、江島啓一(Dr)の5人からなる北海道出身のロックバンド。6月から「SAKANAQUARIUM2018」で5都市10会場のライブハウスをツアー予定。BEST ALBUM『魚図鑑』【完全生産限定プレミアムBOX 3CD+BOOK】¥7,000Disc1浅瀬、Disc2中層、Disc3深海、魚大図鑑付き。【初回生産限定盤2CD+Blu‐ray+ BOOK】¥5,600Disc1、Disc2、20曲のライブ映像、魚図鑑付き。【初回生産限定盤2CD+DVD+BOOK】¥4,600Blu‐ray盤と同内容の映像をDVD収録。【期間限定生産盤2CD+BOOK】¥3,600(VICTOR ENTERTAINMENT)※Disc3深海、魚大図鑑は「完全生産限定プレミアムBOX」にのみ付く。コート¥66,000(kolor BEACON)パーカ¥39,000スラックス¥38,000(共にkolor)以上kolor TEL:03・6427・6226靴¥18,000(adidas by kolor/adidas fashion group showroom TEL:03・5547・6501)メガネは本人私物※『anan』2018年4月11日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・三田真一(KiKi inc.)ヘア&メイク・根本亜沙美文・北條尚子(by anan編集部)
2018年04月09日’17年、NTTドコモ学割のCMに本人役で出演し、大きなインパクトを残した3ピースバンドSHISHAMO。昨年末は、紅白歌合戦にも初出場。ニューシングル『水色の日々』は、「紅白明け初めてのリリースで、気合が入っています!」と、ギター&ボーカルで作詞作曲を務める宮崎朝子さん。「紅白は、自分たちが立っている姿を想像できない場だったので、選ばれてすごく嬉しかったですね」表題曲「水色の日々」は、カルピスウォーターのCMソング。大人になる喜びと怖さが入り交じった甘酸っぱい心情を、爽やかに歌う。「カルピスウォーターのCMソングは、ずっとやりたかったことでした。実は、SHISHAMOが知られていない頃から、勝手に『カルピス(仮)』を何曲も作っていたんです(笑)。私は、ドラマを見たり、本や漫画を読むように音楽を聴いてもらいたくて、その曲の物語を作るところから始めます。『水色の日々』では、卒業を迎えるまでの時間を描けたらと思いました」物語がいちばん膨らむのは、恋愛ソングだそう。「ドラマも漫画も恋愛モノが好き。自分で書いていても楽しいし、モチベーションが上がります。カップリングの『ドキドキ』は、恋が始まったばかりのワクワクが前面に出た、明るい曲を書きたくて作りました」もうひとつのカップリング曲「ロマンチックに恋して」は、ファンからの恋愛相談に対する、ある種のアンサーソングだ。「以前やらせてもらっていたラジオやSNSに寄せられる相談で意外と多いのが、『好きな人がいないんだけど、できますか?』『周りには彼氏がいるのに、大丈夫かな?』という声なんです。いつか好きな人はできるから、もう少し楽しみに待っていて、と伝えたかった。まだ恋を知らないけど、誰よりも憧れている女の子ってかわいいですよね」今年、バンドはCDデビュー5周年。ずっと大事にしてきたのは「“いい曲”を作り続ける」ことだ。「音楽を聴く側だった時間も長いので、一度抱いてしまったがっかり感って取り消せないってわかるんですよね。だから、SHISHAMOはいい曲しか出したくないんです」では、宮崎さんの思う“いい曲”とは?「自己満足ではなくて、人が聴いてくれる曲。私は、全力で作るからには誰かに聴いてもらわないと意味がないし、曲は聴いてもらって初めて完成すると思っています。自分は好きでも、SHISHAMOのシングルとしてアリかナシか、どの曲でもしっかり見極めています。『水色の日々』は、もちろん直感でアリだと思いました!」ししゃも写真左から、松岡彩(Ba)、宮崎朝子(Gt、Vo)、吉川美冴貴(Dr)。2013年、アルバム『SHISHAMO』でCDデビュー。7月28日(土)、地元川崎にある等々力陸上競技場にて初のスタジアムライブを開催。3曲収録のニューシングル『水色の日々』¥1,111ジャケットのイラストは、これまでの作品同様、宮崎さんによるもの。3月21日発売。(GOOD CREATORS RECORDS/UNIVERSAL SIGMA)※『anan』2018年3月28日号より。写真・内山めぐみ文・小泉咲子(by anan編集部)
2018年03月24日“破格”のバンドがデビューする。 そのバンドは「ジェニーハイ」。聞き慣れない名前だが、メンバーは川谷絵音(29)、小藪千豊(44)、くっきー(42)、「tricot」の中嶋イッキュウ(28)。そして“ゴーストライター騒動”の音楽家・新垣隆(47)だ。同バンドは3月16日にデビュー曲「片目で異常に恋してる」の配信を開始した。 「ジェニーハイ」は、小籔がメインMCを務める「BAZOOKA!!!」(BSスカパー)の企画で誕生した。同番組レギュラーの小藪、くっきー、中嶋の3人が、川谷にプロデュースを依頼したことから始まったという。さらにピアノに新垣を迎え、川谷もギターも担当することとなり“結成”となった。これで3つものバンドの“掛け持ち”となる川谷は「ジェニーハイで2度目の紅白を狙う」と野望を語っている。 芸人である小籔とくっきーはそれぞれドラムとベースの“リズム隊”を担当する。小籔のドラムの腕前は川谷からもお墨付きだ。昨年7月の同番組で川谷の所属する「ゲスの極み乙女。」の大ヒット曲であり難曲の「私以外私じゃないの」のドラムプレイを披露したところ、「凄い!普通に凄いです」と川谷も驚きの声をあげていた。くっきーも自身のバンド「盆地で一位」ではギターを長年担当しており、楽器経験は抱負だ。 さらに同バンドを異色づけているのは新垣の存在だ。新垣は14年、“全ろうの作曲家”佐村河内守(54)のゴーストライターを18年間務めていたことを公表していた人物だ。小籔とは、小籔が主催する音楽フェス「KOYABU SONIC」で共演してからの仲のようだ。もともと“天才音楽家”として名高かったが、「ジェニーハイ」でのピアノプレイにTwitterでは新垣を再評価する声が若い世代から上がっている。 《ジェニーハイ良い良い、新垣さんのピアノが気になっていたずっと》《新垣さんのピアノが凄すぎて笑い止まらなくなった》《あまりに新垣さんが刺さったので、ジェニーハイの曲、買いました》 新垣の、新天地での活躍が楽しみだ。
2018年03月16日カラフルでポップな楽曲で注目を集めるバンド、Czecho No Republic(通称チェコ)。男女ツインボーカルを含む5人体制となり5周年。バンド一丸となって「上を目指す」(武井優心)と宣言!――アンアン初登場ということで、まずは自己紹介がてら、チェコがどんなバンドか教えてください。武井優心(Vo/Ba):遊園地のような、ハッピー感のあるバンド。子どもの頃に戻って無邪気に楽しめる曲が多いですね。八木類(Gt/Cho/Syn):プラス、そこから家に帰る時のちょっと切ない感じもありますね。――よく“オシャレ”と評されていますが…。武井:砂川のメガネのことですか?砂川一黄(Gt):じゃなくて!5人でいる時の空気感とか楽曲の雰囲気で言ってもらえてるんでしょ。タカハシマイ(Syn/Vo):みんな服は好きなので、そう言われるのはありがたいです。八木:俺はこの中でオシャレから最も遠いけど、結成当初よりはマシになりました。多少ですけどね。――(笑)。新アルバム『旅に出る準備』は、まさにハッピー感に溢れた、オシャレな一枚ですよね。タカハシ:ウキウキして、掃除がはかどる音楽が詰まってます(笑)。八木:耳馴染みもいいし、BGM感覚で楽しんで聴いてもらえるはず。武井:気づいたら口ずさんでる曲があると思うので、もっと歌いたくなったら、ライブでぜひ一緒に。山崎正太郎(Dr):1か月という短い制作期間で全員が集中してレコーディングできたし、デビュー作のような熱量や初期衝動も感じられると思います。――この作品は、バンドにとってどんな位置づけですか?武井:新章の始まりですね。これまで、自分たちの好奇心を満たすために活動していたところもあったんですが、もっと上の位置に行きたいという明確な欲求が出てきた。このアルバムでギアを切り替えて、「やるぞ!」と。今は希望に満ちています。タカハシ:例えばライブも、今までは出たとこ勝負なところがありましたが、最近はすごく話し合って意思統一するようになりました。砂川:今は5人が同じ方向をしっかり向いてますね。タカハシ:そんな“バンドをよくしていきたい”というみんなの熱が、音源にも出ているんじゃないかな。――なぜ、そうした変化が?武井:’16年のライブの打ち上げで、PAの方に「このまま5人が独り相撲みたいなライブをしていても上に行けない」とはっきり言われたんです。確かにその通りで、ハロウィンの夜、外に飛び出して泣きました…。山崎:泣いてはいない(笑)。でも、お客さんも、自分たちも、100%楽しめるライブをしようという共通認識が生まれた出来事でしたね。武井:アルバムのタイトルを『旅に出る準備』にしたのも、この1年でバンドを見つめ直して、旅に出る準備が整ったから。山崎:今回のジャケットやブックレットは、これまでの僕らの写真の中から、自分たちで選んだんです。今年初めて撮ったチェコの写真は、“旅に出る”感じを意識して、船のイラストと組み合わせました。武井:あとは船出して、勝負するだけです!チェコ ノー リパブリック2010年結成。’13年より現体制に。写真左から、八木類(Gt/Cho/Syn)、タカハシマイ(Syn/Vo)、武井優心(Vo/Ba)、山崎正太郎(Dr)、砂川一黄(Gt)。5thアルバム『旅に出る準備』¥2,800ラッパーSKY‐HIとのコラボが話題を呼んだ「タイムトラベリング」や、アルバムタイトルにもなっている「旅に出る準備」を含む全11曲を収録。3月14日発売。(COLUMBIA)※『anan』2018年3月14日号より。写真・土佐麻理子文・小泉咲子(by anan編集部)
2018年03月12日Brian the Sunは昨年結成10周年を迎えた大阪在住のロックバンド。メジャーデビューしてまだ2年だが、彼らの音楽からはメロディとともに4人の信頼関係や音楽性の豊かさが伝わってくる。「ロックバンドって人間がやっているものだし、まとまりとか仲の良さからくる温もりを外に出す存在だと思っています」とボーカルの森良太さん。なるほど、キャリア10年の活動で育てたものは、そのままこのバンドの魅力になっていそうだ。「すべての楽曲は森君が書いているんですが、彼しかもっていないフィルターを通してできあがる曲は、どれも本当に名曲だと感じます。昔は、ロックはうるさいって偏見があった人なのに(笑)、洋楽も含めていろいろ聴かせたら、どんどんいい曲を書いてくれるようになったんです」と、バンド結成メンバーの白山治輝さん。幼いころは合唱団に在籍し、クラシックを聴いてきた森さんを、彼がいわば“不良の道”に誘い込み、ギターロックバンドとして成長してきた。「音楽とは崇高なもの、と思いすぎていたんですね。教えてもらって感謝しています。おかげでロックには歌詞とボーカルが重要だと分かり、そこから、歌うこと、曲を作ることがどんどん楽しくなってきた」(森)最新作『the Sun』は、従来の作品よりも、相当ポップな方向に向かったアルバムになったそう。「特に歌詞の面で、深く読み解くような曲が多かったんですが、このアルバムは直接的な言葉でメッセージを伝えています。かといってメッセージが強すぎて、バンドより《歌》が前面に出てしまうのは違う。そのバランスには気を遣いました」(森)「スタジオで曲をもらってアレンジしながらも、ワクワクするようなめっちゃいい曲がたくさんあります。早く聴いてほしいですね」(田中駿汰)「まるで音楽のジャンルが変わってしまったというほどの大きな軌道修正、だと思います。これをどうリスナーが受け入れてくれるか、いますごく楽しみなんです」(小川真司)バンド名を冠した意欲作『the Sun』を抱えて2月からは長いツアーがはじまる。4人の熱量が溢れるステージを見せてくれるはずだ。ブライアンザサン写真左から、田中駿汰(D)、白山治輝(B)、森良太(V&G)、小川真司(G)。2016年『HEROES』でメジャーデビュー。2月後半からワンマンも含む全国ツアーがスタート。2nd Album『the Sun』【初回生産限定盤CD+DVD】¥3,600TVアニメ『3月のライオン』EDテーマ「カフネ」など11曲収録。DVDにはMVベスト集を収録。【通常盤CD】¥2,700(EPIC レコードジャパン)※『anan』2018年1月17日号より。写真・内山めぐみ文・北條尚子(by anan編集部)
2018年01月15日メジャーデビュー5周年にあたる’17年、過去最大級規模のツアーを日本武道館2DAYSで締めくくり、ニューアルバム『GIRLS POWER』を完成させた“サイサイ”ことSILENT SIREN。「全国ツアーがあったので、余裕を持ってレコーディングをはじめましたが、今回は一曲一曲に向き合う時間がすごく長かったですね。歌詞にもメロディにもとことん悩み、こだわり、ゴールが見えない作業でした。1曲を10パターンのアレンジから選んだり、全く曲を変えてしまったり。そのぶん勉強になったし、みんな成長しました」(すぅ)「それぞれが違う悩みを抱えながら頑張ったと思います。私は歌詞に苦労したんですが、リスナーにより届く言い回しに、頭を使いました。あやふやでなく言いたいことを明確にしたかったので、新しい表現が生まれ、自分にもすごくプラスになったし一曲一曲の達成感がすごく大きい作品になりました」(あいにゃん)メジャーデビュー5年の’17年、レコード会社を移籍。スタッフが一新され、求められるものにも大きな変化が。その刺激が4人を奮い立たせ、まさにガールズパワーを振り切って作り上げたアルバムになった。「私たちはバンドがやりたくてはじめたのに、気づけば“ガールズバンド”と呼ばれ、ずっとその括りにモヤモヤがあったんですよ。かわいいと言われるのは嬉しいけど、曲がいいとか演奏がカッコイイと言われたい、みたいな。だけどそのモヤモヤを逆手に取って、女子の底力を見せよう、という意識で作ったのがこのアルバムなので、タイトルもそのまま付けました」(ひなんちゅ)「いまの私たちだから付けられるタイトルですね。やっぱり女子って強いなー、と言えるサイサイならではの歌詞とサウンドがこの一枚にギュッと入ってます。密度の濃いスケジュールの中で頑張って作った汗と涙の結晶!ですね。一曲一曲に濃厚な思い出があります」(ゆかるん)女子だけが分かり合える本音を吐露した曲や、恋愛のリアルな心情を切なく綴る曲など、何度も聴き返したくなるナンバーが並ぶ。「男の人にも聴いてほしいけど、やっぱり女の子に聴いてほしい。同性だからこそガールズバンドに対する評価は厳しいと分かっているけど、仲間というか女子の代弁者でありたいと思っているので、遠ざけないでまずは聴いて、と言いたいですね。絶対にみんなに響く曲になっている自信があるので、サイサイを聴いて抱えているものを乗り越えて、楽しい気分になってほしい」(すぅ)サイレントサイレン写真左から、あいにゃん(B)、ひなんちゅ(D)、すぅ(V&G)、ゆかるん(K)。2012年『Sweet Pop!』でメジャーデビュー。2018年3月から7月まで全国ツアー「“Girls will be Bears”TOUR」を開催。5th ALBUM『GIRLS POWER』【初回限定盤CD+DVD】¥3,800「フジヤマディスコ」など3曲のMVの他、「新世界ツアー」ファイナルの日本武道館公演から3曲をDVD収録。【通常盤CD】¥2,800(EMI Records/UMIVERSAL MUSIC)※『anan』2018年1月3・10日号より。写真・内山めぐみ文・北條尚子(by anan編集部)
2018年01月05日共和が、シリコーン製の輪ゴム『凜としたバンド』の店頭販売を、11月20日(月)に開始しました。一般的な天然ゴムの輪ゴムよりも熱さ寒さに強く、劣化しにくいのが特長です。『凜としたバンド』は60年以上続く輪ゴムのロングセラーブランド「オーバンド」の新製品です。(オーバンドは登録商標です。)オーバンドからシリコーン製の輪ゴムが新登場!天然ゴムとは一味違う個性を持つ『凜としたバンド』。ほんのり透け感のある鮮やかな色合いと、劣化しにくい丈夫さを兼ね備えています。また天然ゴム不使用なので、ゴムアレルギーの心配も少なく、気になるゴム特有の臭いもありません。『凜としたバンド』は、安心の日本製です。今までにない、凜と鮮やかな色合いが、輪ゴムの世界をより色鮮やかに彩ります。「あまり輪ゴムを使わない」という人でも、気軽にいろんな色を試しやすい30本入り。パッケージデザインが少しずつ違っており、バリエーションを楽しめます。「オーバンド公式ブランドサイト凜としたバンド」もっと広がる、輪ゴムの使い方時間が経つと、輪ゴム同士がくっついたり、伸ばすとちぎれてしまったり、といった輪ゴムの悩み…。シリコーン製の輪ゴム『凜としたバンド』は、そんな悩みを解決。劣化しにくいので、名刺・カードの保管や、年賀状・写真の整理など、大切なものを長く保管するのに最適です。紫外線(UV)にも強いので、庭や倉庫などの屋外でもどんどん使用できます。また、ゴムアレルギーの心配が少ないので、肌に触れるアクセサリーの材料などにも最適です。透明感がある6色のカラフルな輪ゴムを組み合わせることで、自分だけのオリジナルアクセサリーを楽しめます。[わゴムアクセサリー]作ってやみつき、着けておしゃれな手づくりアクセ!商品概要商品名:凜としたバンド販売開始日:2017年11月20日販売価格:オープン価格バンドサイズ:#16(内径38mm折径60mm切幅1.1mm厚さ1.1mm)内容量:30本カラー:雫(シズク)、若葉(ワカバ)、空(ソラ)、桃(モモ)、檸檬(レモン)、苺(イチゴ)材質:シリコーンゴム販売サイト:楽天市場楽天市場
2017年11月27日ロンドンブーツ1号2号の田村淳さんこと、haderuさんが中心のビジュアル系バンド「jealkb」。芸人の企画バンドでしょ?そんな誤解も、一度曲を聴けば完全に払拭!ガチさが伝わります。「誤解の多いバンドだけどライブでは必ず楽しませるんで」haderu(以下、ha):アンアンの爽やかなページの後に急に僕らを目にして、読者のみなさんが胸やけしないか、心配ですけど。急に油ものがきたみたいな。芸人というバックボーンがあるゆえに、誤解の多いバンドなんでね(笑)。――大丈夫です(笑)。バンドが10年以上も続いている理由は?ha:単純に楽しいから。僕、楽しくなかったらすぐ辞めちゃうんで。特にライブですね。お客さんが楽しい顔して帰っていって、メンバーで「いいライブだったね」って楽屋で話すときがいちばん楽しい。――ライブはどんな雰囲気ですか?ha:僕とhidekiがお客さんに絡んで、ノれてない人の気持ちを解きほぐします。物販にも必ず立つんですが、「普段、ライブであまりノらないけど、気づいたら暴れてた」って声も。EXILEがかっこいい、アイドルがかわいい、というのとは違う、楽しさがあります。hideki(以下、hi):自分も観客だとやりがちなんだけど、腕組んで観るんじゃなくて、もう一歩踏み込んでほしくて。――新曲『R‐P‐S』について教えてください。ha:タイトルは英語のじゃんけん、Rock、Paper、Scissorsの頭文字。ライブではいつも観客を巻き込んだじゃんけん大会をやっていて、そのために作りました。sapoto:作曲は僕とelsaさん、作詞はhaderuさんです。hi:ジャケットデザインはedieeさん。彼、多才なんですよ。――これだけ長く続いていると、メンバー同士の衝突などは?ha:僕とdunchが喧嘩するくらいですね。「ライブ直前に肉まん食うな」みたいなくだらないやつ。あの時は、僕が靴ぶん投げて「もう出ない!」って言ったんです。ediee:さすがに5分前はね…。本番後に食えばいい話だし。dunch:というedieeは、30秒前くらいに舞台袖で弁当食っても、なぜかおとがめなしで…。ediee:肉まんは匂うから。――(笑)。その時、他のメンバーはどうしてるんですか?ha:elsaはリーダーとして見守り、hidekiとedieeは後輩だから見守り、sapotoは後から加入したから見守ります(笑)。――ところでhaderuさんはお笑いやバンド活動に並行して行っている、大学受験も話題です。ha:今日も英単語帳持参です。この前は現代文で満点取りましたよ。手応えは十分!すべて全力でやってくから、読者の方も騙されたと思っての楽しさでは、他には絶対負けませんから。ライブに来てほしい!ライブの楽しさでは、他には絶対負けませんから。ニューシングル『R‐P‐S』。じゃんけんを耽美的に、激しく歌い上げる。「ライブでの盛り上がりを想定して作りました」(ha)。カップリングの「silver」は強い社会的メッセージが突き刺さる。11月22日発売。¥926(jealize)ジュアルケービー2005年、結成。本人たちの“20歳下の弟”という設定で、芸人活動とは一線を引き、本気でバンドに取り組む。ファンの総称は、ジュアラー。12月22日、Zepp Diver Cityでライブ開催。※『anan』2017年11月29日号より。写真・内田紘倫インタビュー、文・小泉咲子(by anan編集部)
2017年11月26日数多のロックスターを生み出した、輝かしい’66年生まれミュージシャンの中でも、ひときわ熱いストレートを投げ続ける男こそ、エレファントカシマシの宮本浩次さん。23年ぶりに髪を短くし、フレッシュさも漂う宮本さんにお話を伺いました。自分自身を信じるようになり、怒りをぶつけることがなくなった現在、デビュー30周年のツアーで47都道府県すべてを回っている最中のエレファントカシマシ・宮本浩次さん。どこの会場もチケットはソールドアウトだという。「日本全国を回るのも初めてですし、しかも、どこもかしこも売り切れというのも実は初めてのことです。ベテランの我々がどこに行っても、現役のバンドとして歓迎されていることが心から嬉しいし、デビュー30周年を自分のことのように祝福してくれているのをすごく感じるんですね。自分たちの歩みを肯定してもらっている気もして、なんかまた自信が湧いてきています」コンサートは初期の代表曲「ファイティングマン」から新曲の「風と共に」まで、この30年の間に生まれた名曲を披露している。歌いながら、決して平坦な道のりではなかったバンドのこれまでに思いを馳せることもあるという。「4人とも50歳を越えて、みんなシブい感じにはなってますけど、大人になったかというと、うーん、逆ですよね。バンドをはじめた中学生の頃からなんら変わっていない(笑)。外ではちゃんとした大人だと信じたいけど、4人集まると昔のまま。でもそこがいいんじゃないのかな。ただ、ひとつ変わったとしたら、僕がコンサートの途中、怒らなくなったことですね。もちろん性格は相変わらず短気だし、わがままだし。でも少なくとも(ファンの)みんなが敵じゃないということがわかったんです。エレカシのコンサートを楽しんでくれている、喜んでくれていると、経験値で感じられるようになった。だからステージ上でイライラを出さなくても済むようになったんですよ。これは自分のことを信じることができるようになったからだと思うんですけどね」かつては乱暴な言葉で目の前のファンにイライラをぶつけていたこともあった。しかしいまは「いい曲を作って、それを丁寧に聴かせる、伝える」ことに集中し、全身全霊で歌を聴かせてくれる宮本さんがステージにいる。コンサートだけに集中する日々から生まれた新しい歌。「そういう意味でも、いまやっている30周年ツアーはとても充実していて、とてもいい精神状態で音楽に集中できています。そういうリアルな毎日を歌にすることができたのが、新曲の『RESTART』と『今を歌え』なんですが、2曲ともアグレッシブでもなく、後ろ向きソングでもなく、僕の日常の<いま>を歌うことができました。自分が非常に調子いいことを、この2曲が本当によく表していると思うんですよね」俺はまだまだ勝負できる、命滅びるまで本気でやっていく、と歌う「RESTART」は、現在の宮本さんの心境そのものが歌詞になったかのようだ。それに、宮本ファンが黄色い悲鳴をあげそうな(?)短く切った髪型。あまりにも大変身。これも「RESTART」のミュージックビデオで、サラリーマンを演じたためだ。なんとPVの中で髪を切ったという。「23年ぶりに短くしたんですが、髪を切ると新しい自分を発見できますね。だから鏡ばかり見ちゃうんだよね(笑)。自分の中では、おーけっこういいじゃん、七三分け最高、って思っています。背広も仕立てたので、部屋の中で三つ揃いのスーツを着て、靴をいろいろ履き替えたりしながら鏡に向かって、うっとりしたり(笑)。長い髪よりも、僕は七三分けがいちばん似合うんだなぁと、いまは思ってます。まぁコスプレみたいなものなんだけど、遅ればせながら、大人になった気分を味わっているのかな。昔、毎朝ネクタイを締めて背広を着て出かける父親の姿が、僕が最初に感じた大人像でした。ツアーの合間の休日には、ネクタイ締めて背広を着こんで電車で出かけたりもしてみました(笑)」みやもと・ひろじ1966年6月12日生まれ。両A面シングル『RESTART/今を歌え』と映像作品『デビュー30周年記念コンサート“さらにドーンと行くぜ!”大阪城ホール』発売中。恒例の新春ライブは1/6・7大阪・フェスティバルホール、1/14東京・NHKホール。※『anan』2017年11月13日号より。写真・矢吹健巳(W)ヘア&メイク・茅根裕己(Cirque)インタビュー、文・北條尚子(by anan編集部)
2017年11月13日ヘアバンドを使ってオシャレに!こなれ見えヘアバンドアレンジ!普段のおでかけやデートで大活躍すること間違いなしのヘアバンドアレンジです!!「ヘアバンドをアレンジに取り入れるのが難しそう」と、思っていませんか?そんなことないですよ!!そこで今回は、ヘアバンドを使った簡単アレンジをご紹介します★実は、ヘアバンドとフィッシュボーンって、抜け感演出に相性ぴったり① 軽くブラッシングします。このときに、ヘアバンドをあらかじめ首に通しておいてください。② 耳よりも上の髪を取って、ひとつにくくります。ちょっとゆるいくらいに結ぶのがポイントです。③ くくった毛束をくるりんぱにします。④ 耳の位置の髪を、くるりんぱの毛束の上で結び、くるりんぱにします。⑤ さらにもう一位段下の髪を取って結びます。その毛束もくるりんぱしましょう。⑥ 残った髪をフィッシュボーンに編みます。毛先はヘアゴムで留めてください。⑥ 最後に、ヘアバンドを持ち上げたら完成です。ヘアバンドを付けるだけで、トレンド感アップ! オシャレ女子にヘアバンドを取り入れるだけで、コーデにトレンド感が増すので、ぜひ取り入れてみてくださいね。一言にヘアバンドといっても種類がたくさんあるので、いろいろと試しても楽しめると思いますよ。簡単なアレンジなので、ぜひチャレンジしてみてください。美容師/杉浦徹哉 (liberte)
2017年10月25日クラフトバンドの開発・販売を手がけ、作り方の教室も営む〔M’sFactory(エムズファクトリー)〕の代表・松田裕美さん。クラフトバンドとは紙製のバンドで、バッグなどの手芸品に使う材料。〔M’sFactory〕ではオリジナルのクラフトバンドを開発していて、豊富なカラーバリエーションが人気の理由です。かつては専業主婦だったという松田さんに、クラフトバンドとの出合いから極めるまでの道のりと、手作りする魅力についてお話を伺いました!“誰かのために作る”のがハンドメイドの楽しさ——〔M’sFactory〕が発信するクラフトバンドの作品は、“手芸”の域を超えたアートですね!松田裕美さん(以下、松田さん):ありがとうございます。紙のバンドとはいえ、応用の幅が広くて、実はいろいろできるんです。——クラフトバンド自体は、以前からあるものなんですか?松田さん:はい。もともとは、古くからある梱包用の紐でした。それが加工され、ハンドメイドの材料になっていったんです。ただ、いわゆる再利用の“エコバンド”のようなものが主流で、おしゃれとは言い難いものでした。——そうなんですね。まずお聞きしたいのですが、松田さんが思うハンドメイドの魅力とはなんでしょうか。松田さん:さまざまなジャンルのハンドメイドがあると思うのですが、共通することは“作る喜び”だと思います。誰かのために創作する、それを贈るという喜びもまたあります。——自分のためのものというよりは、ギフトですね。松田さん:はい。受け取った人が喜ぶ顔を想像しながら作っている瞬間が、実は一番楽しいと思うんです。「あの人は紺色を好んで着ているから、似合う色でバッグを作ってあげよう」と思い描きながらみなさんも作っていらっしゃるのではないでしょうか。——作る過程と手渡す瞬間、どちらもハンドメイドの魅力であると。松田さん:私は、贈り物はただやみくもに高級なものを買ってくればいい、と思っていません。包装紙のまま渡されるより、「あの人が私のために時間を割いてくれた」と伝わる方がインパクトも大きいですよね。そこで使えるのが、ハンドクラフトを用いたカゴやバッグです。——なるほど!松田さん:クラフトバンドなら、小さなカゴ1つが2時間ぐらいでできますし、材料代も500円ほど。そこにフルーツや、ちょっとしたクッキーを焼いて入れるのはどうですか?それが市販のクッキーでも、手作りのカゴに入って入れば、ぐっと価値が高まりますよね。さらに小物入れとして二次利用もできます。——形として残るのはいいですね。松田さん:見るたびに「これは、去年あの人が私の誕生日に編んでくれたもの」と、ずっと思いが残るでしょう?クラフトバンドで作ったものは、紙なのですが、何年でも使えるのがすごく良いところなんです。“手芸嫌い”の松田さんが協会を立ち上げるまで——松田さんご自身は、もともと手を動かすというか、何か作ることがお好きでいらしたのですか?松田さん:実は……私は“手芸”が大嫌いで(笑)。編み物も縫い物もできなかったんです。——意外ですね!松田さん:学生時代は家庭科の裁縫の授業が、もう本当に大変!針に糸を通して何か縫うとかボタン付けがとにかく嫌いで(笑)。子どもに持たせる学校の雑巾など、作るのに苦労しました。専業主婦になってからは、ビーズが流行ったら試して……とあれこれトライしてみたのですが、ダメですね。——そんな松田さんがどうしてクラフトバンドに目覚めたのでしょう!?松田さん:私、工作は得意だったんですよ。牛乳パックやダンボールで何かを作ったりする方が好きでした。“編み棒よりはノコギリ”というタイプですね。そしてクラフトバンドには、工作の要素があるんです。というのも、針や糸は必要ないし、使うのはほぼハサミとボンドだけ。——なるほど!工作の感覚。松田さん:クラフトバンドが広く受け入れられている理由も、そこかもしれませんね。道具が少なく、しかも手軽。“安い・早い・簡単”が特徴です。クラフトバンドの師匠を求めて静岡まで走る!——松田さんが、クラフトバンドに初めて触れたのはいつですか?松田さん:きっかけは、上の子が小学生の時に住んでいた地域での、PTAの集まりでした。同じクラスのお母さんたちで月に1度集まって、お茶をしながら何かを作る会があったのです。「手芸か……」と渋々足を運んだのですが、渡されたのは、紙のヒモとボンドとハサミ。「バッグを作りましょう」と言われて、私の大好きな木工用ボンドを使ってたった2時間でバッグが完成したのです。「これが材料費500円!?」とすごく感動してしまって。そこからクラフトバンドを使ったバッグの大量生産の日々が始まりました。——出会ってすぐにハマってしまったんですね。松田さん:当時は専業主婦だったから、暇な昼の時間をバッグ作りに費やしました。お世話になった方や、お姑さん、近所の人に編んであげたり。主婦のお小遣いは少なくて、贈り物に何か高いものを買う余裕もありませんでしたから。——松田さんの作品は、代官山あたりのセレクトショップで、数万円で売っていてもおかしくないクオリティだと思います。松田さん:バッグやカゴに限らず、コースター、ペン立て、ごみ箱など、家中のものがたいてい編めますよ。強度も特徴なんです。椅子のカバー、屏風なんかも編んでみました。何でもできることがわかると、楽しさはどんどん広がっていきます。——この棚にはまる収納グッズが欲しいけど、100均にも売っていない……という時に、ぴったりのサイズの収納を自分で作ることができるのですね。松田さん:そうです。私の場合は、はじめはハウトゥー本で学び、徐々に独学で作り進めていきました。でも、それでは何種類も編めません。周囲に「教えてほしい」という人が増えてきたのですが、そもそも教えるほど自分に技術がなく愕然として……。——独学から、教室を開いたのですか?松田さん:いえいえ!最初は友人相手のボランティアでした。そもそも友達からレッスン料を取るのはどうかと思っていましたし、資格もないくせに……と自信のなさもありました。それが、「もっとこういうものは教えられないの?」と友人からの要望が増えていったんです。そこで、クラフトバンドの材料の仕入れ先だった工場の社長さんに、「資格が欲しいのですが、編み方を教えてくれる先生はいませんか?」と相談しました。そうしたら、静岡に名人がいると。——静岡!?松田さんのお住いは千葉ですよね?松田さん:でも、静岡にすごい先生がいる、お免状を出してくれるかどうかわからないけどきっと教えてくれると聞いたら、居ても立っても居られなくて。夫に内緒で通うわけです。静岡まで、毎月。——もしかして日帰りで!?松田さん:ええ(笑)。朝の6時に主人を見送り、そこから急いで支度をして、子どもをおぶって新幹線で行きました。でも夕方には戻らないと、上の子も学校から帰ってきてしまうから、滞在2時間ぐらいで習って帰ってきて、先生からの宿題をやって、また翌週行って、というのを半年ほど続けました。——お免状はもらえたんですか?松田さん:はい。正式なものは世の中にはなかったのですが、先生が、「どうしても」と言う私に手書きのお免状をくださいました。——すごい情熱です!松田さん:静岡の先生には13種類の編み方を習いまして、いよいよ教室を開きました。会費は500円。やっとスタートです。でも、すぐに行き詰まるんです。私が半年で習ってきたことは、半年後には生徒さんが追い付いてしまいますから。それでまた「あれっ?」となりました。資格まで取ってきたのにこれは困った、と。そこで自分で協会を立ち上げる決意をしたのです。13種類ぐらいでは全然お話にならないからもっと編み方を考えよう!と。——それが現在の〔M’sFactory〕の礎(いしずえ)ですね。松田さん:編み物というのは世界中にいく通りもあります。バナナの葉で編んだ屋根や、木の皮やツルなど、どんな国にも“編む”技法があるんですね。世界中の編み方を集めて調査を始めました。あれこれ取り寄せ、自分で解体しては編み直して。半年がかりで100通りの編み方を1冊のテキストにまとめたのです。それを持って協会を立ち上げました。——100通りもですか!松田さん:それだけあれば、組み合わせが無限に広がっていきます。テキスト1冊をマスターしていただければ、ハンドクラフトで編むには一生困らないだけの知識が身に付きます。——応用していけばいいわけですね。松田さん:協会と同時に会社も立ち上げ、今年でちょうど15周年。今になって思うのですが、よくやったなあと思います。もともとは専業主婦の身でしたから。とにかく夢中で、辛いとは思いませんでした。——現在はたくさんの講師の方を育成されていますよね。松田さん:私がそうだったように、ビジネスを退いて主婦をしていても、ブランクがあっても、手に職を付けられる女性がもっと増えるように、協会を立ち上げたんです。実際、リタイア後に60歳から教室に通い始めて先生になった方もいらっしゃるんですよ。今うちで最高齢の先生は90歳です。——それはすごい!そんな風に“第二の人生”を始められるってステキです。松田さん:女性の人生って長いですよね。しかも途中には、就職、結婚、出産、退職、子育て、介護、自分の病気……とさまざまな出来事があります。そこで、うちの教室のコースは途中でお休みしてまた復帰できるようにしてありますし、価格もなるべく抑えているんです。カラーとネーミングは女性社員のアイデアの結晶——誰もが取りかかりやすい点もやはりクラフトバンドの魅力と言えますか?松田さん:そうですね。ハサミとボンド、固定するための洗濯バサミ。全部100均で買えます。作業する場も汚れないし、材料費も安い。私がこだわったのは、まさに“特別なものはいらない”ところです。——〔M’sFactory〕の特徴は、何といってもクラフトバンドの豊富なカラー展開ですよね。松田さん:現在は約200色ほど展開していて、業界でもここまで色を持っている会社はうちだけだと思います。——微妙なニュアンスのパステルカラーなどは、社内でアイデアを出し合って開発しているんですか?「イチゴチョコパイ」や「オレンジミルフィーユ」など、ネーミングもユニークです。松田さん:社員は全て女性なのですが、みんなに色や柄のアイデアを出してもらい、多数決で新色にするかを決めています。おいしそうな名前のものが目立ちますよね(笑)。——初めてハンドクラフトで何かを作る場合、どんなものがいいでしょうか。松田さん:小さめのバッグやカゴでしたらそれほど大変なことはなく、初回でも2時間ほどでできます。次のステップで、ちょっと難易度の高い“網代編み”に挑戦していただくと、また違った風合いのものができて楽しいですよ。かつて教室はご高齢の方が多かったのですが、近ごろは、「インスタ映えするから」と若い女性も増えています。——リミアユーザーのみなさんにもぴったりと言えそうです!松田さん:取りあえず手始めに、何かを作ってみていただきたいです。続けていくうちにアレンジができるようになって、楽しさが増していきますから。——ありがとうございました!【松田裕美(まつだひろみ)】株式会社M’sFactor代表取締役/クラフトバンドエコロジー協会会長。著書は『今日がときめくかご&バッグ』『クラフトバンドで作る毎日使いたいかご&バッグ』(きこ書房)など多数。M’s Factory●聞き手藤島由希●カメラ柏木鈴代
2017年10月11日新作『ラッキー&ヘブン』をリリースするザ・クロマニヨンズの甲本ヒロトさんと真島昌利さんに、制作の裏側について話をうかがいました。まだやり遂げた感がないから、気持ちは1stアルバムと変わらない。新作をリリースする度に、まだ味わったことのないR&Rショーを体感させてくれるザ・クロマニヨンズ。新作『ラッキー&ヘブン』も、フレッシュな柑橘の飛沫を浴びるような瑞々しさを感じるアルバムだ。「どんなアルバムにしようかって話し合いは、全然しないよ。普段から曲を作っているから、次のアルバムにはこれ入れたいなという曲を選んで、みんなに自分の曲を聴いてもらうことからはじまります」(真島)「そうそう。それまでは世界中で自分しか知らない曲だから、聴かせるときは毎回緊張するというか、ドキドキするよ。くだらねえ曲だなぁとか、思われないかなって」(甲本)発表するナンバーは、メンバー4人で30~40分のセッションを繰り広げるうちに、完成形に近づく。「マーシーがギターを弾きだしたらオレが追っかけながら歌い、ドラムはリズムはこんな感じかなって叩き、ベースも合わせてついてくる。その積み重ねがアルバムになります。それはもう何十年もやってきた経験がそうさせる≪手くせ≫としか言いようがないんだよね」(甲本)そうして生まれた12曲のメロディに魂を揺さぶられ、ビートに体ごと射抜かれ、何度も繰り返し聴きたくなる唯一無二のR&R。このアルバムを聴きながら、走り出したいような衝動にも駆られる。「R&Rは何十年演奏してきても、リスナーとしてもまったく飽きない。早く家に帰って、あのレコードを聴きたいとか思ってる(笑)。何だろう、永遠に追い続けるもの?まだ何かをやり遂げた感がないんだよね。これだけ長くやってきても、オレはこんなにすごい作品を書いた、というものがない。だからファーストアルバムとまったく同じテンションでやれるんだと思う」(甲本)10月26日からは本作を引っ提げた全国ツアーが始まる。全58公演という半年間に及ぶロングツアーだ。結成12年目を迎え、最高のチームワークを見せる4人のパフォーマンスは各地を盛り上げること必至。「いつも4人一緒にいるように見えるけど、年間で考えればツアーとレコーディングのときしか集まらないからそんなに多くもないんだよね。だからツアー中は一緒にいる瞬間を大事にしたいと思ってる」(真島)ちなみにカレー好きで知られるふたり。ライブ前の昼ご飯は必ずカレーとか。またヒロトさんは開演前にバナナを食べてステージに立つそう。「そしてステージが終わったあと、4人で食べるご飯がすごくおいしいんです。ときどき誰か用事があって先に帰ることがあると、すごく寂しい。ご飯だけでも食べていきなよー、みたいな(笑)。でも、一緒にテーブルを囲みたいと思える人たちと、音楽を作り上げるのが、いいことなんじゃないかな」(甲本)左・甲本ヒロト(V)、右・真島昌利(G)に加え、小林勝(B)、桐田勝治(D)の4人編成ロックバンド。THE BLUE HEARTSと↑THEHIGH-LOWS↓で活動を共にしてきた甲本と真島を中心に結成され、2006年デビュー。11th ALBUM『ラッキー&ヘブン』。先行シングル『どん底』など全12曲収録。【通常盤CD】¥2,913※初回生産分のみ紙ジャケット仕様。【完全生産限定アナログ盤】¥2,913(Ariora Japan╱Sony Music)10月11日発売。※『anan』2017年10月11日号より。写真・野呂知功(TRIVAL)文・北條尚子(by anan編集部)
2017年10月06日