インターネットが発達した現代において、連絡の手段としてはパソコンやスマートフォンのメールを使用することが一般化しています。しかしそんななか、「お客との関係づくりにおいて、『手書き』によるお礼はがきの重要性が高まってきています」と主張するのは、『1枚のはがきで売上げを伸ばす方法』(竹田陽一著、あさ出版)の著者。従業員100人以下の会社を専門にしているという経営コンサルタントです。■なぜ「お礼はがき」を出すことが重要なのかでも、お礼はがきを出すことが、なぜそれほどまでに重要なのでしょうか? 「お礼はがきを出すことは、決して軽視できる仕事ではありません」と著者が強調する理由は、果たしてどこにあるのでしょうか?そのことについて、著者はこう記しています。「お礼はがきを出し続けることによって、お客から好かれて気に入られ、忘れられない存在となり得るから」そして、それは、継続的に自社の商品や有料サービスの購入者になってくれることを意味するともいいます。そうしたお客が購入のために出してくれたお金が、自社の利益につながっていくということ。つまり本書ではそのような考えに基づき、お礼はがきを出す「仕組み」のつくり方から文例までを幅広く紹介しているわけです。では、お礼はがきの原点ともいえる「1枚のお礼はがきでuriagewonobasu12カ条」を見てみましょう。[第1条]すべての経営はお客からはじまり、すべての利益はお客のお金から生まれる[第2条]商品をどこで買うかの決定権は、お客が100%持っている。一方、売るほうの決定権は0%である。お客は自分の気に入ったところを優先して選ぶ、と心得よ。[第3条]お客は、自分に関心を示し、自分を知るために努力する人を好きになる。[第4条]もっとも価値ある知識は、お客について知ること。お客の仕事内容と生き方にもっと関心を示し、お客の情報を本気で集めよ。[第5条]真の財産はお客の数である。利益発生源のお客台帳をつくり、内容の充実にもっと時間と人手をかけよ。[第6条]訪問による面会やご来店、それにお客の紹介や銀行送金は新たな出会いである。そのつどお礼はがきを出し、出会いに感謝せよ。[第7条]商品をお買い上げいただいたお客を、決して忘れてはならない。と同時に、お客からも忘れられてはいけない。[第8条]お客との人間関係を維持するためには、売込みを抜きにした「まごころはがき」を年4回出し、固定客の増加に取り組め。[第9条]はがきは、形の変わった「営業パーソン」である。競争条件が不利な会社は、日本郵便の職員を嘱託営業社員と考え、もっと積極的に使って営業力を強化せよ。[第10条]お客との音信不通が、売り上げ不振のもっとも大きな原因になる。はがきを「ついでの仕事」と軽く見るな。自分のモノグサや筆不精を自慢するな。[第11条]社員全員がはがきを出しやすくするために、はがきを出すタイミングのルール化」「専用のはがき」「モデル文章」の3点セットを準備せよ。[第12条]1日30分、はがきを書く時間を確保し、お客への「まごころはがき」を1日あたり5通、年間では1,000通出し、お客への感謝を態度で示せ。この実行は、自分の人格を磨くことになる。■お礼はがきはコミュニケーション円滑ツールこの12カ条をご紹介したことには理由があります。これを見れば、ビジネスに対する著者の考え方がはっきりとわかるはずだから。すなわち、お客のことを考えることがビジネスパーソンにとっての重要な義務であり、大切なお客とのコミュニケーションを円滑にするためのツールとして、お礼はがきを利用すべきだということ。まずお礼はがきがあるのではなく、お客がいるからこそお礼はがきを大切にすべきだという考え方なのです。だからこそ、この考えを理解すればお礼はがきの存在価値も理解できるはず。*感謝の心は大切で、ひいてはそれが売り上げにつながっていく。そんなメッセージが、ここには込められているのです。ぜひ本書の内容にも目を通し、お礼はがきを実践的に活用してみてください。・なお、「客」という言葉そのものが「神」を意味しており、「客」1文字だけで尊敬語になるという考え方から、本書において著者は「客」を「お客様」ではなく「お客」と表記しています。今回の原稿も、その点に準じました。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※竹田陽一(2016)『1枚のはがきで売上げを伸ばす方法』あさ出版
2016年07月15日裁判と聞くと、自分の生活からは遠いものと思うかもしれません。しかし、職場や近所づきあいなど、身近な人間関係のなかにも裁判の事例はあふれています。そして、まさかと思うような判決が下されることもあるのです。『裁判官・非常識な判決48選』(間川清著、幻冬舎)では、弁護士である著者が、過去に行われた裁判で気になるものや、あまりに非常識と思える判決が下された事例を取り上げています。判決文というと難しく感じるかもしれませんが、実際は当事者同士の人間模様が垣間見えるもの。また平易な文章なので、専門的な知識がなくても理解することができます。今回は本書のなかから、身近なトラブルで思わぬ損害賠償が必要になったケースをご紹介します。■1:子どもが蹴ったサッカーボールの事故で損害賠償1,500万円校庭でサッカーをしていた11歳の男の子が蹴ったボールが道路に飛び出し、バイクを運転していた85歳の男性が避けようとして転倒してしまいました。それが原因でこの男性は認知症を発症するようになり、その後肺炎にかかって亡くなりました。この結果に対し、遺族は少年と両親を相手に損害賠償5,000万円を求める裁判を起こしました。第一審では、サッカーボールは蹴り方によっては事故が起こることは予想できるため、両親が少年を監督すべき立場にあったという判決が下りました。そして監督責任を怠った少年の両親に対して、1,500万円の支払いが命じられました。しかし普通、自分の子どもがサッカーボールを蹴ったことで、道路にいた人が死んでしまうなどとは予想できるでしょうか。親に監督責任があるとしたら、四六時中子どもを監視していなければいけないことになります。また、判決文だけでは不明な点もありますが、学校側の責任に言及されていないところも疑問に残ると著者はいいます。ボールが飛び出ないようなネットなどは設置されていなかったのでしょうか。その後、この一審判決は控訴されましたが、高等裁判所でも約1,180万円の責任を認めるという判決が出ました。ところが最高裁では一審二審とはまったく異なり、少年の責任を「認めない」という判決が下りました。「たまたま事故が起こったとしても、その事故を予想することはできなかったのだから責任を負わない」という判断がされたのです。たしかに人が死亡したという結果は重いものですが、その責任を誰に負わせるのかはまた別の問題ということなのです。■2:井戸端会議で悪口をいったら慰謝料20万円ある主婦が、近所の主婦からあらぬ噂を立てられたことが発端。「あの人は警察から窃盗犯として疑われている」「あの人が訪問した家では、ものがなくなる」「あの人は腹黒い」などといわれた主婦は、精神的にまいってしまい、家を引っ越す決意まで固めました。そして陰口をいっていた何人かを訴えたところ、名誉毀損が成立し、1人20万円の慰謝料の支払いが命じられました。刑法上、名誉毀損が成立するのは「公然と」名誉毀損していることが条件。これは不特定多数の人が知りうる状態のことを指すので、民事であってもこのケースのような主婦の井戸端会議は名誉毀損に当たらないはずです。しかし、この事件の場合は慰謝料請求が認められることとなったのです。民事上名誉毀損が成立したということは、刑事責任としての名誉毀損も成立する可能性もゼロではありません。この場合は3年以下の懲役や禁錮または50万円以下の罰金という重い罪が問われることになります。くれぐれも他人の陰口には注意しましょう。■3:職場の分煙を行わなかったら慰謝料5万円職場で十分な分煙がされていないために、受動喫煙で目や喉の痛み、頭痛に悩まされたという区の職員が、職場である区に対して慰謝料30万円を請求しました。職員は職場に分煙や禁煙を求めていましたが、分煙措置が徹底されなかったため急性咽頭炎などの病気にかかってしまったのです。判決では区の責任を認め、慰謝料5万円の支払いが命じられました。慰謝料の額は少ないですが、この判決は職場で分煙措置を怠った場合に損害賠償責任が発生するということが認められたというところに意義があると著者はいいます。職場での喫煙が常識であった時代の経営者からすると疑問に感じるかもしれませんが、時代が変われば常識も変化するということがわかります。*本書には他にも、もらい事故で賠償責任を負わされたケースや、自分の口座に間違って振り込まれたお金を引き出したら詐欺罪が成立してしまったケースなど驚きの判決も多く掲載されています。実際の判例や判決文を読むことで、裁判がより身近に感じられるのではないでしょうか。(文/平野鞠) 【参考】※間川清(2016)『裁判官・非常識な判決48選』幻冬舎
2016年07月14日「男女平等」が叫ばれてはいるものの、現実的には女性が我慢を強いられる場面がまだまだ多い。いまの日本の状況についてそう実感しているというのは、『くたびれない離婚 – じっと我慢したまま、もう何年ですか?』(吉成安友著、ワニブックス)の著者。2007年に弁護士になってから、多くの離婚事件に携わってきたという人物です。つまり、そのような経験を軸として、「抑圧された結婚生活にくたびれ、離婚を切望しているような女性たちの助けになれば」という思いで書かれたのが本書だというわけです。きょうはそのなかから、なにかと誤解されることも多い「慰謝料」についての記述に注目してみたいと思います。■一般的な慰謝料の額は100万円以下そもそも慰謝料とは、相手方が不貞行為、DV、モラハラなどの不法行為を行ったことによって被った精神的被害に対する賠償。そして離婚の際の慰謝料には、「不貞行為等によって生じる苦痛の慰謝のためのもの」と「離婚そのものによって生じる精神的苦痛の慰謝のためのもの」があるそうです。ただし、裁判の場合も、合意によって決める場合も、基本的には両者を区別せず、一括して処理するのが通常だとか。実際のところ、離婚の訴訟で認められる慰謝料は、それほど高額ではないのだといいます。よく芸能人の慰謝料が何千万円などというニュースが話題になることがありますが、「そうした報道の多くは、おそらく財産分与と区別がされていないのではないか」というのが著者の見解。実際、家庭裁判所が公表している2011年の認容件数は次のとおりだとか。・100万円以下208件(28.2%)・200万円以下196件(26.6%)・300万円以下183件(24.8%)・400万円以下53件(7.2%)・500万円以下60件(8.1%)・500万円以上37件(5.0%)このように100万円以下がいちばん多く、300万円以下が8割。不貞のケースでも、通常は100万円から300万円くらいだといいます。■慰謝料は3年が時効なので注意が必要少し意外ですが、慰謝料請求権は、事実を知ってから3年が経過すると時効によって消滅するのだそうです。ただし3年を経過する前に、裁判を起こして請求をした場合は、時効が中断するとか。また、相手がちゃんと払うと約束したり、「ちょっと待ってくれ」というような発言をした場合、つまり相手が債務を承認した場合にも事項は中断し、それから再度3年が経過しないと時効にならないといいます。さらに、3年が経過したあとでも、相手が慰謝料を支払うなどと言った場合は、時効の利益を放棄したことになり、請求ができるそうです。■浮気相手に慰謝料は請求できるのか?不貞の場合、不貞相手に慰謝料請求を行うことも可能。不貞相手にだけ請求することも、配偶者と不貞相手の両方に請求することもできるといいます。ただ、不貞相手が結婚の事実を知らずに関係を持ち、知らないことに過失もないような場合は請求することは不可能。婚姻関係がすでに破綻している場合にも、請求はできないそうです。なお、この点については浮気相手から、「結婚しているのは知っていたけれど、妻とはもう婚姻関係が破綻していて、離婚することになっていると聞いていた」との主張がされることがあるとか(よく聞く話ですね)。しかし実際には破綻していなかった場合、そう聞いていたからといっても、ほとんどの場合は責任を逃れることはできないといいます。特に別居もしていないような場合、婚姻関係が破綻していると信じたとしても、過失がないとはいえないものなのだそうです。ただし、一方から十分な賠償を受けた場合は、他方に請求することはできないといいます。精神的損害なので、どれくらいが十分なのかは曖昧な面もあるものの、片方から通常の上限の300万円を受け取っていたとしたら、もはや他方には請求できない場合が多いと著者は考えているというのです。■事情によっては慰謝料の額が低くなるまた、不貞相手にだけ請求をした場合、配偶者への請求の場合よりも額が低くなる傾向があるのだとか。判決になった場合の相場が100~200万円だといっても、事情によってはもっと低くなる場合もあるということです。学説上は不貞相手への請求を認めるべきではないとする見解や、制限すべきとする見解も有力になってきているのだとか。感覚的には、裁判所も以前よりは額の面で低くしている感じもあるのだそうです。*先に触れたとおり「離婚=高額な慰謝料」というようなイメージはたしかにありますが、現実はそれほど甘いものではなさそうです。しかしいずれにせよ、離婚問題で疲れている人は、本書で知識をつけておくべきかもしれません。もちろん、離婚することなく円満な夫婦生活を続けることこそが理想ですが……。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※吉成安友(2016)『くたびれない離婚 – じっと我慢したまま、もう何年ですか?』ワニブックス
2016年07月13日実現したい素敵なアイデアがあるにもかかわらず、資金が足りないと躊躇しているなら、“クラウドファンディング”も選択肢のひとつに入れてみませんか?日本で唯一、「寄付型」「購入型」両方のクラウドファンディング・サイトを運営する、佐藤大吾氏が監修する『ぼくらがクラウドファンディングを使う理由(わけ) 12プロジェクトの舞台裏』(学芸出版社)から、クラウドファンディングでの資金調達成功の秘訣に迫ってみましょう。■クラウドファンディング市場が急成長中!クラウドファンディングとは、“群衆・大勢の人々”という意味のクラウドと“基金”を意味するファンドを合わせた造語。インターネット上などで画像や動画を使ったプレゼンテーションを展開し、友人・知人を巻き込んで共感を広めていくことで不特定多数の人々から少額ずつ積み重ね、数十~数百万円規模の資金を集めるものです。日本における先駆けとなるサイト『JustGivingJapan(現・JapanGiving)』がオープンしたのは2010年のこと。その後3年で同サイトは調達総額10億円以上を記録。その間にも新たなクラウドファンディング・サイトが次々と誕生するなど、着実に浸透してきています。ちなみに「寄付型」は非営利の団体が運営するプロジェクトを対象とし、支援が税制上の寄付になるもの。一方、「購入型」はそうした厳格なルールはなく、税制上の優遇もない代わりに“お返し”として商品などのリターンを手にすることができるという特徴があります。■開始後1週間で目標の30%集まれば成功とはいえ、「ネットを使って資金を募集して、そんなに簡単にお金が集まるものなの?」と半信半疑の方も多いでしょう。本書の監修を務め、JapanGivingの代表理事でもある佐藤氏によれば、プロジェクト成功の秘訣は「スタートダッシュ」。最初の勢いが大切だということです。具体的には、開始後1週間で目標額の30%を集めることなのだそうです。JapanGivingのデータでは、この条件をクリアしたプロジェクトで最終的に目標金額に到達できなかったものはひとつもないというのですから驚きです。佐藤氏は、スタートダッシュが成功に結びつく理由を、「申請者が本気だということが支援を検討中の人たちにも伝わるから」だといいます。■プロジェクトを成功させる4つのポイント自分が「応援したい」と思ったプロジェクトに、できる範囲で資金を提供する。これがクラウドファンディングの大枠です。では、人はなぜ「誰かを応援するために」お金を出すのでしょうか。じつは、ここを知っておくことがクラウドファンディングで資金調達を成功させる上での大きなカギ。そこには、押さえておきたい4つの“心情”がありました。(1)純粋な利他性相手が喜んだり、相手を助けたりすることが自分自身の満足感になるという心情。寄付による資金調達を考えるときは、まずこの心情がクローズアップされます。(2)暖かな光他人を支援できる立場にある自分を誇らしく思う心情です。寄付するという行為そのものに満足感を覚えるタイプ。これも、支援者自身の内面にもともとある動機です。しかし、プロジェクトの中盤以降、支援者をもっと増やしたいときにポイントになるのは、これ以外の2つの心情です。(3)互恵性相手がお返しをくれたり、自分がお返しをしたりすることで満足感を得る心情。これについて、本書でおもしろい実験が紹介されています。コスタリカの国立公園で、お土産を渡したグループと渡さないグループに「公園のサービス向上のために寄付を」とお願いしたところ、お土産を渡したグループのほうが寄付した人が8%多かったそう。「購入型」クラウドファンディングでは、製品やオリジナルグッズなどをリターンとして提供することが通例。お返しを上手に活用することが、支援者を増やすためのポイントです。ただし、コスタリカの実験では、お土産を渡さないグループのほうが一人あたりの寄付金額は多かったそう。プロジェクトの肝は、活動の魅力と主催者の熱意。リターンで“釣る”発想は危険です。(4)同調性ほかの人たちと同じようにふるまうことで安心し、満足感を得る心情です。他人が寄付しているのを見て、その団体なら信頼できる、と同調するパターンが多いのもこのタイプ。「〇%のお金がすでに集まっています」「目標達成率〇%」といったカウントダウンは、この心情にうまく訴求するため有効です。*クラウドファンディングは、楽にお金を集めるシステムではありません。より多くの人々にプロジェクトを知ってもらい、共感してもらうことが必要です。多くのプロジェクトでは、実際にイベントも行って周知・PR活動を行っています。それでも、自分のアイデアを多くの人に賛同してもらう喜びはクラウドファンディングならでは。本書では、実際にプロジェクトを成功させた12組の体験談からそのメリットとデメリットを知ることができます。もし「資金がない」という理由で二の足を踏んでいるのであれば、本書を手に取ってクラウドファンディングの可能性を探ってみてはいかがでしょうか。(文/よりみちこ) 【参考】※佐藤大吾監修、山本純子・佐々木周作編著(2016)『ぼくらがクラウドファンディングを使う理由(わけ) 12プロジェクトの舞台裏』学芸出版社
2016年07月13日どんな業界にも、表向きには明らかにされていない裏事情があるもの。知らず知らずのうちに、お店が仕掛けた戦略に引っかかっていることもあるでしょう。そこで注目したいのが、『お客に言えないまさかのウラ事情』(丸秘情報取材班編、青春出版社)。さまざまな業界の商売のカラクリやタブーを取り上げた書籍です。「なぜあの店で衝動買いしたくなるのか」「なぜカット野菜はいつまでもパリッとしているのか」などという身近な話題から、「景気と赤い車の法則」や「モンスーンが服と金が値上がりする」など、知っていると雑談にも使えそうなネタまで盛りだくさん。今回はそのなかから、金融業界や経済にまつわるウラ事情をご紹介します。■1:銀行員は同期が出世したら全員出向しなくてはいけない銀行には、古くから特殊な人事の慣習があるそうです。それは、「同期から役員が誕生したら、その世代の行員は全員出向しなければならない」というもの。銀行では出世競争が激しく、昇進レースを勝ち抜けることができるのは同期のなかでせいぜい2~3%。40代半ばで支店長や部長に昇進する人が出はじめ、50代くらいで役員に昇進する人が現れます。ですから、新たに抜擢されたの役員の同期は他人事ではいられません。出向先は関連会社や取引先がメインで、待遇は出向前のポストによって異なります。そのため、銀行で働く人は出世レースはもちろん、途中で脱落したとしても出向先での高待遇を得るための努力が必要なのです。こういった慣習があるため、銀行においては支店長や部長が役員より年上になることはありえないということになります。■2:銀行のクレーム対応者はなにがあっても席を立たない!どの業界でも、避けて通れないのが顧客からのクレーム。最近では、理不尽なクレームをつけるモンスタークレーマーに悩まされるケースも少なくないでしょう。特に金融業界や銀行ではトラブルが起きやすいため、クレーム対応のための独自のルールが決められています。その大原則は、話し合いの途中で決して席を立ってはいけないということ。理不尽なクレームには、毅然とした態度で臨むのが大切。しかし話し合いの途中で何度も席を立ってしまうと、相手に次の一手を考える隙を与え、話し合いがこじれてしまいます。ですから、とにかく相手が引き下がるまでは、なにがあっても席を立ってはいけないのです。そのため、話し合いが決まっている日は、水を飲むのを控えたり、前日のお酒をやめたりする用意周到な担当者もいるそうです。これは他の業界でも使えそうなテクニックですね。■3:証券マンは相手が損しても決して自ら謝ってはいけない証券マンにとって、「すみませんでした」と謝ることは命取りになりかねないといいます。事実、どんなに株価が下がっても、クライアントに激しく責め立てられても、彼らは決して謝りません。非を認めてしまえば相手は責任を証券会社に押しつけ、裁判に持ち込むこともあるからです。たとえ自分が勧めた商品で相手が損をした場合でも、証券マンはその責任を負わないのが業界の譲れぬ方針なのです。だから証券マンが営業をする際は、「絶対~ですよ」というような断定的な表現はしないのだとか。「期待できると思いますよ」や「リスクは少ないですよ」という、曖昧な表現で通しているわけです。ただ、いくら責任がないからといっても、自分の勧めた商品で顧客の財産が目減りするということは精神的にきついもの。それだけが原因ではないでしょうが、証券マンの離職率はいまも昔も高いままです。■4:わずか20%の大口顧客が企業の主な売上を支えている世間がどんなに不景気でも、高級車を乗り回し、ブランド品で身を固める人たちは必ずいるもの。そういう人を見ると、どうして自分のところにはお金が回ってこないのかと嘆きたくなるかもしれません。しかし、これはれっきとした経済の法則。イタリアの経済学者であるヴィルフレド・パレート教授が100年も前に提唱したように「世の中の富の80%は20%の人に集中する」のです(パレートの法則)。経済学者の間では「80対20の法則」とも呼ばれ、20%の顧客が売上の80%をつくるとも解釈されています。どこの会社でも大口の取引先は20%程度。いくら取引先の数がたくさんあっても、その20%の中の1社と取引がなくなるだけで、あっという間に業績が悪化することもあるのです。ですから、営業マンが必死で開拓した取引先も大口取引でない限り、あまり会社に貢献しているとはいえないのです。*自分が働いている業界では当たり前のことが、周りから見れば驚きの対象だということもあるでしょう。いずれにせよ、ウラ事情を知っていると、買い物や大きな契約の際など、有利になることもあるかもしれません。(文/平野鞠) 【参考】※丸秘情報取材班(2016)『お客に言えないまさかのウラ事情』青春出版社
2016年07月13日みなさんは1日に何時間くらいスマホを使っていますか?この記事もスマホで読んでいただいている方が多いのではないでしょうか、MMD研究所が15~60歳未満の男女に行った調査では1日のスマートフォンの使用時間でもっとも多かったのは「2時間以上3時間未満」(22.4%)でした。3時間以上使う人をすべて合わせると68.2%にものぼります。それに加え、仕事などでパソコンを使っている時間も多いので、目は酷使され続けています。実はこのようにして知らず知らずのうちに溜まった目の疲れは全身の不調となって現れてしまうのです。『目を温めると身体が自然によみがえる!』(森岡清史著、サンクチュアリ出版)は付録のアイマスクを使って目を温めることで肩こりや頭痛、不眠など様々な不調を和らげることができるというもの。このアイマスクは特殊な素材でできていて目を「じんわり」温められるのが特徴です。今回は目の疲れを予防するための方法もご紹介します。まだ自覚症状がない人も習慣として取り入れておきましょう!■スマホやPCのせいで目の筋肉がカチカチ!私たちの日常生活では、朝起きてから夜寝るまで常に「光るもの」を見続けているといってもいいでしょう。仕事では一日中パソコンを使い、移動時間や待ち時間にはスマホをいじる。家へ帰ればテレビを夜遅くまで見ることもあるかもしれません。それ以外にも電子書籍から銀行のタッチパネルまで、ありとあらゆる場所で発光するものを見続けているのです。これは目にとっては非常に過酷なこと。このような生活習慣を続けていると目のまわりの筋肉が緊張してカチカチになってしまいます。すると目のまわりの血流が悪くなり、冷えを起こします。そんな状態になると交感神経が過剰に働き、顔面から首にかけての筋肉が緊張し、脳への血流が制限されてしまうのです。交感神経が過剰に働くとイライラや不安、疲れ、のぼせなども招きます。そのうえ、眠りが浅くなるのでいくら寝てもスッキリしないと感じるでしょう。こんなに不調のオンパレードなのに、「目」そのものにはほとんど症状がないのがやっかいなところ。「目が乾く」「しょぼしょぼする」「ごろごろする」というような症状はあっても我慢できる程度なので、目がこんなにも酷使されているとは気づきにくいのです。■なかなか治らない体の不調は目の疲れが原因現代人の多くは眼精疲労もしくはその予備軍だといえるそう。これを放置していたら体調はどんどん悪化してしまいます。とはいえ、いきなりパソコンやスマホを全てやめるというわけにはいかないので、毎日きちんと目のまわりの筋肉をほぐしていくことが大切です。そのために有効なのが「目のまわりを温めること」。ゆっくりと時間をかけて、じんわり温め続けることで、目のまわりの筋肉がゆるみ、血流がよくなり、自律神経が整います。それにより、身体も休息モードに入っていくのです。市販のカイロやホットタオルでもOKですが、短時間で急に温めるとカイロなどが冷めた後、反動で目のまわりの筋肉がこわばってしまうことがあります。本書に付属しているアイマスクは、特殊な素材でできていて、自分の身体の熱を使って温めます。一晩中かけてじんわり目のまわりを温めることができるため、より高い効果が期待できるのです。寝ている間に目の筋肉の緊張がゆるめば、身体の機能が内側から整い、全身の回復につながっていきます。■目の緊張がほぐれやすくなる簡単ストレッチスマホやパソコンなど、「ずっと同じものを近い距離で見ている」状態は、眼球やまぶたが固定されるのでだんだん目の筋肉がこわばり、血流も悪くなっていきます。仕事の合間に窓の外を眺めたり、外を歩いているときに空を見上げたりするなど、遠くのものを見て目のまわりの筋肉をゆるめましょう。また、パソコンの作業をするときは1時間に1回ほど「目のストレッチ」をしてみてください。自分の約30cm先にあるもの(パソコンのキーボードなど)と約3m先にあるもの(壁の時計など)などをそれぞれ5秒ずつ交互に見つめます。これを1分間続けるだけで目の筋肉がほぐれやすくなるでしょう。■スマホの画面はなるべく暗めに設定すべし!実は暗い場所にいるのは目にとってはよいことです。視力が悪くなるのではと心配する人もいるかもしれませんが、視力は暗いからではなく、近い距離を見続けたことで下がりやすくなります。ですから、できるだけ強い光が目に入りすぎないように工夫してみましょう。例えば外を歩くときはUVカットのサングラスをかけると日光の強い光をカットすることができます。そして特に注意が必要なのがパソコンやスマホから出るブルーライト。ブルーライトは照明に比べてはるかにパワーが強く、光源までの距離も近いのでかなり刺激的です。それにブルーライトの光は脳が昼間だと認識する光に近いので、寝る前に浴びると眠りが浅くなる恐れがあります。スマホの明るさは見えるぎりぎりに設定しましょう。はじめは暗く感じるかもしれませんが、目はすぐその暗さに慣れてくるので大丈夫です。*足や腕は疲れたら休ませますが、目はほとんど休まず1日16~18時間働き続けています。そのため、仕事や家事の間にまぶたを少し閉じるだけでも目を休める効果があるそうです。通勤時間はいつもスマホを見ているという人も、たまには窓の外の景色を見てみては?(文/平野鞠) 【参考】※森岡清史(2016)『目を温めると身体が自然によみがえる!』サンクチュアリ出版※2015年版:スマートフォン利用者実態調査-MMD研究所
2016年07月12日きのう、『マンガでわかる「続ける」習慣』(古川武士著、みつく作画)という書籍をご紹介しました。「習慣化コンサルタント」として有名な著者が、「続ける」ためのメソッドを明かした名著のコミック版です。そちらに続いてきょうは、同時発売された『マンガでわかる「やめる」習慣』(古川武士著、みつく作画)を取り上げてみたいと思います。タイトルからもわかるとおり、「続ける」とは対極にある「やめる」をテーマにしたもの。ちなみに原作は、2013年に発売された原作『新しい自分に生まれ変わる 「やめる」習慣』。心理学やコーチング理論に基づいた、合理的かつ理論的に悪い習慣をやめられるメソッドとして大きな話題を呼びました。その要点をマンガで紹介しているわけですから、わかりやすさも抜群です。主人公は、食べすぎを改めるべく「やめる」習慣をスタートさせた28歳のOL。その変化を確認しながら、「やめる」コツがつかめる内容になっています。■やめ続けるために必要なキーワードまず、悪い習慣を止めるために必要なのは、「なんのために」それをやめたいのかという「骨太の理由」。それは、次の3つに集約されるといいます。(1)危機感:この習慣をやめないときに起きる悪いこと(2)快感:この習慣をやめれば起こるいいこと(3)期待感:長期的に得られるメリットこのように3つのキーワードから骨太の理由を見つけ、危機感、快感、期待感が調和すると、モチベーションは最大化するそうです。■やめることを習慣化する3つの原則著者が本書で主張しているのは、「やめる習慣」を維持できれば好循環が生まれるという考え方。やめることを習慣化するということです。現実的に難しいことでもありますが、習慣化に失敗する原因を探してみると、それは3つに集約されるのだとか。(1)欲張ってあれこれ止めようとすること(2)すべてを一気によくしようとすること(3)短期的な目標に夢中になりすぎることそして、これらの失敗を招かないためには、守るべき3つの原則があるのだそうです。きのうの「続けるための3つの原則」と似ているようでいて、また少し異なっているところがポイント。[原則1]:一度に1つの習慣に取り組む複数の習慣を一気にやめようとすると、挫折の確率が高まるもの。一度に1つずつ、確実にやめることが大切だといいます。[原則2]:センターピンとボトルネックを明確にする習慣化にはキーとなる指標があり、それをセンターピンと呼ぶのだそうです。たとえば早起きのセンターピンは、「寝る時間」。起きる時間だけ早めても、睡眠不足で挫折してしまうということ。逆から考えれば、重要なセンターピンを明確にして習慣化すれば、自動的に結果が出るわけです。一方のボトルネックは、「急な飲み会で遅くなり、早起きできない」など、センターピンに集中すべきときに問題となる障害。「誘惑に負けそうになる瞬間はいつなのか」「要因はなにか」を考えておくことが大切だといいます。[原則3]:目標達成ではなくプロセスに集中する「5キロ減らす!」などと結果重視でがんばると、目標達成後はモチベーションがなくなるのでリバウンドが起きるもの。一方の習慣化は、「5キロ痩せるために1日1,800キロカロリーの食事にする」など、行動を無意識化するプロセス。しかし無意識化さえできれば、目標を達成するためのモチベーションは不要です。■禁欲期に誘惑に負けない3つの対策骨太の理由とやめる3原則を知って習慣化をスタートしたとしても、次に訪れるのは誘惑に負けそうになる禁欲期(第1週~第3週)。この時期に大切なのは、成功と挫折を繰り返す「山あり谷あり」を乗り切り、続けること。失敗しても引きずらず、3週間、習慣行動を続けるべきだというのです。[対策1]:誘惑を断つ環境をつくる有効なのは、誘惑の要因を避ける努力=誘惑を避ける環境づくり。たとえば本書の主人公のようなダイエットの場合なら、高カロリーなお店に行かない、食べ放題やスイーツ店などは避けるということが重要。[対策2]:行動を可視化する習慣行動は無意識に繰り返されるので、コントロールすることはなかなか困難。しかし記録して可視化すると管理が容易になり、自己コントロールする意欲が湧いてくるそうです。その際のポイントは、数値とともに感情も記録すること。「きょうの体重は56キロ、摂取カロリーは2,000キロカロリー、感情:きのうより食べる量をコントロールできている実感あり!」という具合。[対策3]:「投げやり」に上限をつくる一度の挫折で心が折れ、「投げやり思考」に陥らないための対策が必要。まずは「投げやり思考」に陥るケースをいくつも想定してみる。そして、挫折時の対策を考える。これが大切だといいます。なぜならこうしておけば、「投げやり思考」に陥りそうなときでも、「少しでも自分が定めたルールを守れた」という自己コントロール感を持てるから。ひいてはそれが、習慣を持続させることになるわけです。*『「続ける」習慣』と同様に、とても理解しやすい内容。マンガがハードルを引き下げてくれてもいるので、読みながらストレスを感じることもないはずです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※古川武士(2016)『マンガでわかる「やめる」習慣』日本実業出版社
2016年07月12日『マンガでわかる「続ける」習慣』(古川武士著、みつく作画)は、2010年の発売以来ロングセラーを続ける『30日で人生を変える「続ける」習慣』のコミック版。あることをきっかけに「フランス語が話せるようにならないとクビだ!」と難題を突きつけられた新人パティシエールを主人公に設定し、「続けるための」コツをわかりやすく説いた内容です。ちなみに著者は、「習慣化コンサルタント」として500人以上の習慣化をコンサルティングしてきた習慣化のオーソリティ。そんな実績を持っているからこそ、続かないのは「性格や根性ではなく、習慣化のコツや原則を知らないこと」が原因だと断言しています。だとすれば、習慣化についてもう少し詳しく知っておく必要がありそうです。著者によれば、習慣化には3つの「挫折の波」があるのだそうです。つまり、それを理解しておけば、挫折しないように対策することができ、習慣化のプロセスもイメージできるというわけです。それはどのような波なのか、ひとつひとつを確認してみましょう。■習慣化「3つの挫折の波」[ステップ1]反発期:やめたくなる時期(1~7日目)三日坊主という言葉がありますが、いちばん続けるのが難しい、やめたくなる時期は7日目までなのだといいます。習慣引力(「いつもどおり」を維持しようとする、いわば習慣化を阻害する力)の抵抗がもっとも強く、あたかも大雨洪水警報が発令されている暴風雨のなかを歩くような状態。性格や根性とは関係なく、誰もが挫折しやすい時期といえるのだそうです。[ステップ2]不安定期:振り回される時期(8~21日目)急な残業やプライベートの予定などに振り回されて挫折しやすい時期。予定どおりに行動が進まず、「もういいや」「やっぱりムリ」と思ってサボりがちな時期だといいます。[ステップ3]倦怠期:飽きてくる時期(22~30日目)マンネリ化を感じやすい時期。徐々に続けることへの意味を感じなくなったり、物足りなくなったりして、「意味ないかも」「つまらないなあ」「飽きてきた」という言い訳が出てきやすい時期だそうです。■習慣化のための3つの原則続かない人の傾向を見ていると、習慣化のスタート前の計画と姿勢に原因があることがほとんど。著者はそういいます。そして三日坊主に陥らないためにも、次の3つの原則を守ることが大切。[原則1]:一度に1つだけ取り組む一度に2つ、3つ同時にはじめることは、習慣引力が2重、3重にかかることを意味しているとか。いってみれば、重力が2倍、3倍かかっているなかで走るようなものだということです。だからこそ、たとえばダイエットなら、食事制限を習慣化できるようになってから、その次に運動に取り組む。それが成功の秘訣。[原則2]:複雑なルールにしないひとつの習慣について複雑な行動ルールを決めてしまうと、続かなくなってしまいがち。いろいろ詰め込むのではなく、「なにをやればもっとも効果的なのか」を考え、シンプルな行動に絞り込むことが大切だというわけです。[原則3]:結果よりも行動を重視する3つ目の挫折する原因は、結果にこだわりすぎて行動リズムを崩してしまうケース。たとえばフランス語のテストに向け、短期目標を設定して一気に加速するとしましょう。しかしその場合、どうしても結果主義になってしまい、目標を達成できたら、その後は学習を継続する意欲を失ってしまうそうなのです。ここで著者が強調しているのは、目標達成と習慣化は違うということ。目標達成の場合は短期的なゴールを設定し、成果を得るために一気に行動することになるでしょう。しかし習慣化は、結果よりプロセスに集中すべきもの。いつもどおりの行動を無意識に繰り返せるようになることが習慣化であり、その行動の積み重ねによって成果が出るということです。■慣れるまでは毎日続ける!先に触れた習慣引力の抵抗を受けている間は、一定の行動を続けることにこだわるべきだといいます。焦らなくても、習慣化できれば結果は返ってくるもの。焦らずに待つことが大切だということです。なお1ヶ月(30日)の行動習慣は、習慣化するまでの期間に関しては、毎日続けることが大前提なのだといいます。「週3回のペースでできるようになりたい」ということであっても、最初は毎日続けることが重要だということ。これには明確な理由があります。やったりやらなかったりというペースだと、どうしても習慣化のリズムが定着せず、忘れてしまいがちだというのです。ただし、1ヶ月で習慣化したあとは、週3回、4回と本来の頻度に落としても大丈夫だそうです。*マンガはもちろんのこと著者の解説文もわかりやすいので、「続けたい」人に最適。無理なく自然に習慣化を身につけることができるでしょう。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※古川武士(2016)『マンガでわかる「続ける」習慣』日本実業出版社
2016年07月11日子育て中の女性にとって、仕事と育児の両立は難題です。そのため90年代以降、企業側は育児休業や時短勤務制度の充実を図ってきました。でも、その流れは「制度を活用すればするほど、職場で経験を重ねるチャンスを失いキャリアアップから遠ざかってしまう」という問題もはらんでいます。両立のカギを握るのはやはり、夫の存在。朝日新聞社が主催したシンポジウムをまとめた書籍『「女性にやさしい」その先へ“資生堂ショック”から新しい働き方を考える』(AERA編集部・大沢真知子編著、朝日新聞社)を参考に、女性の新しい働き方について俯瞰してみましょう。■議論のきっかけは「資生堂ショック」女性の新しい働き方に関心が高まった直接のきっかけは、2014年に化粧品大手・資生堂が打ち出した、美容部員への働き方改革でした。育児中などで1日2時間の時短勤務制度を利用する美容部員の働き方を見なおし、可能な限り、来客が多い夕方以降の遅番や土日勤務にもついてもらうというもの。時短勤務の制度自体はそのままで、あくまでも面談で一人ひとりの事情をよく聞きとった上で「月1回から」など、柔軟に取り入れていくものです。それでも、週刊誌AERAが“資生堂ショック”と名づけたこの改革は、世間に賛否両論を巻き起こしました。そのなかには「女性にやさしくなくなった、後ろ向きな改革だ」といったネガティブな反応だけでなく、「育児はしっかりしたいけれど、キャリアもあきらめたくはない」という女性からの前向きな反応もあったのです。■あえて「育休期間を短縮する」企業も育児中の女性を積極的に戦力化していく流れは、ほかの企業でも動き出しています。キリンビールでは、育休期間を「子どもが3歳に達するまで」から「2歳に達するまで」にあえて短縮。一方で、時短勤務を長さによって3パターンに分けるなど働き方の選択肢を増やしています。みずほ銀行でもフレキシブルな勤務制度を再考。時短勤務中でも、忙しい五・十日や月末月初には、事前申請でフルタイム勤務できる体制を整えました。時短勤務が長引けば、それだけ職場での実務経験がほかの社員よりも減ることは事実。それだけ将来の昇進や昇格も遠ざかり、補助的な役割を担うことが多くなります。そしてキャリアアップをあきらめる――そうしたキャリアコースを陸上競技になぞらえた“マミートラック(ママ専用トラック)”という言葉も生まれています。「子育て優先」の働き方を選ぶのか、キャリアアップを視野に入れるのか。育児世代の女性が、働き方を自分で選択できる時代がはじまっています。■政府目標は男性の「7人に1人以上」本書は、これらを背景にことし1月と2月に行われた「女性と企業フォーラム」の議論の様子を収録。女性が「家庭」と「職場」とのバランスを自分で決めるためになにが必要か、企業、働く人それぞれの視点から議論されました。そこで特に議論されたのが、男性の育休取得について。シンポジウムでは、「男性が最低1ヶ月以上の育児休業を取って主体的にかかわれば、その後の夫の育児参加のきっかけになる」といった意見や、「『週何回』といった回数ではなく、育児や家事を旦那さんと『半分』というところからスタートしたらうまくいった」といった経験談も語られました。2014年度雇用均等基本調査によれば、男性の育児休業取得率は2.3%。政府目標は、2020年までに男性の育児休業取得率13%。割合にして7人に1人以上です。男性の育休取得者をいかに増やすかが、女性の新たな働き方のカギを握っているといえます。■男性の育休が女性の活躍を後押しする制度上は、男性も育児休業を取得することが可能です。育児・介護休業法とそれに基づく各制度は、男女労働者が対象。会社に規定がなくても、申し出れば育児休業を取得することができます。育休可能期間は、子どもの1歳の誕生日前日まで。夫婦ともに育休を取得した場合は1歳2ヶ月に延長され(パパ・ママ育休プラス)、その間にそれぞれが1年間を上限として取得できます。加えて、所得保障も拡充しています。育休期間中、資格を満たすと雇用保険から支給される「育児休業給付金」。これにより6ヶ月間、最大で給料の3分の2が支給され、所得税もかかりません。育休中は、社会保険の保険料も免除されます。つまり、6ヶ月間は手取りがほとんど減らないということ。出産後、妻が6ヶ月間育休をとって復職し、入れ替わりで夫が6ヶ月間育休をとれば、1年2ヶ月の間、世帯収入がほとんど減らない仕組みになっているのです。制度を積極的に利用し、夫が積極的に育休を取得していくことが、女性の本当の意味での「活躍」を後押しします。*本書では、「女性と企業フォーラム」シンポジウムで紹介された企業の事例や、実際に育児とキャリアアップを両立させているワーキングマザーの生の声を知ることができます。シンポジウムは700人の定員に合計1,500人の応募があったそう。このことからも、女性とキャリアへの関心の高さが伺えます。女性が、自分にとって最適な「仕事」と「家庭」のバランスを自分で考える。そのきっかけになる1冊です。(文/よりみちこ) 【参考】※AERA編集部・大沢真知子編著(2016)『「女性にやさしい」その先へ“資生堂ショック”から新しい働き方を考える』朝日新聞社※改正育児・介護休業法のあらまし―厚生労働省※育児休業給付の内容及び支給申請手続きについて―ハローワーク
2016年07月11日『悩みごとの9割は捨てられる』(植西聰著、あさ出版)の著者は、資生堂勤務を経て独立し、現在は人生論の研究に従事しているという、少し変わったキャリアの持ち主。「成心学」という独自の理論を確立し、“人々が明るく元気になる”著述活動を続けているのだそうです。人には、自分で自分を慌ただしい気持ちにさせるところがあるもの。しかし人生は、いくら慌てたところでどうなるものでもありません。どんなに悩んでみたところで、事態が大きく改善するわけでもないわけです。むしろ楽天的に、のんきに生きていくほうが賢く、人生はより豊かになる。それが著者の根本的なメッセージです。そして本書では「楽天的になる」という趣旨のもと、「自分を悩ませていることの9割は取るに足らないことであり、捨て去ってよいものである」と気づくためのヒントを紹介しているわけです。数字に関する大切なテーマ、すなわち「お金」に関する考え方を引き出してみましょう。■お金は精神的なゆとりを持つことが大切「金はよい召使いでもあるが、悪い主人でもある」ここで紹介されているのは、アメリカの政治家であり、科学者でもあったベンジャミン・フランクリンの言葉。お金は、いい使い方をすれば、生活を便利で楽しいものにしてくれます。そして、より充実した生活に役立ちもするでしょう。しかしその一方で、「もっとお金がほしい。もっと金儲けをしたい」と、金の亡者になってしまうこともあります。そうなると、結果的にはお金のためにこき使われ、お金に振り回され、お金のために悩まされることになってしまうもの。まさにお金という「悪い主人」に仕えるようなものなので、それでは本当に意味で幸せな暮らしとはいえないというわけです。お金に対して、心にゆとりがあるときは、お金を「よき召し使い」として上手に扱っていくことが可能。ところが、お金儲けのことしか頭になくなり、精神的なゆとりがなくなっていくと、お金は「悪い主人」になるということ。そして、大切なことは、必ずしも金銭的なゆとりを持つことではないと著者はいいます。いってみれば、お金について「精神的なゆとり」を持つことが大切だということ。■お金がなくても贅沢な時間は楽しめる!お金がなければ、贅沢な食事はできませんし、豪邸に住むことも不可能。高級な衣類を見にまとうこともできないでしょう。しかし、そういう意味での贅沢な生活はできなくても、「贅沢な時間」を楽しむことはできると著者はいいます。「贅沢な時間」を楽しむためには、必ずしもお金が必要なわけではないということ。むしろ、お金儲けに無我夢中になっていると、「贅沢な時間」を持てなくなる場合も出てくるもの。なぜなら、朝から晩までお金儲けのために働かなければならなくなるからです。「贅沢な時間」を楽しむために必要なのは、自分が自由に使える時間、気楽に過ごせる時間を持つことだといいます。そして「贅沢な時間」を持つために大切なことは、自分なりの工夫と情熱だと著者は考えているのだそうです。もしお金がなかったとしても、自分なりの工夫と情熱によって、真の「贅沢な時間」をたくさん持つことができるということ。そして、そんな時間が人生を豊かにしてくれるというわけです。■勇気と想像力で素晴らしい人生にできるここで引用されているのは、喜劇王チャールズ・チャップリンの次の言葉。「人生を素晴らしいものにするために必要なものは、勇気と想像力、そしてほんの少しのお金だ」まず「勇気」は、「チャレンジ精神」といいかえてもいいだろうと著者は記しています。「自分にはなにができるだろう。どんなおもしろいことが達成できるだろう。自分には、どんな秘められた才能があるのだろう」とワクワクしながら自分の可能性を見つけ、人生を切り開いていこうとするチャレンジ精神。仕事においても、またプライベートでも、旺盛なチャレンジ精神を持ちことで、より充実した人生を実現できるという考え方です。そして「想像力」とは、自分の将来、つまり、これからの人生をよりよいものとして創造する力のこと。将来を悲観するのではなく、「自分にはこの先、大きな喜びが待っているはずだ」と信じ、喜ばしい人生を具体的にイメージする力。素晴らしい人生にするためには、この2つの力さえあれば、それほど多くのお金は必要ないとチャップリンは主張しているわけです。つまり私たちも、お金の欲に振り回されることなく、自分なりの勇気と想像力に満ちた人生を追い求めていけばいいということです。*収録されているのは、実に84種ものメッセージ。しかもひとつひとつがコンパクトにまとめられているため、空いた時間を利用して楽に読み進めることができるはずです。精神的に追い詰められていたり、漠然とした不安感から抜けきれない人は、本書のなかから答えを探し出してみるのもいいかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※植西聰(2016)『悩みごとの9割は捨てられる』あさ出版
2016年07月10日きょうは、『40代を後悔しない50のリスト【時間編】―――1万人の失敗談からわかった人生の法則』(大塚寿著、ダイヤモンド社)という書籍をご紹介したいと思います。もしかしたらタイトルを見てピンときた方もいらっしゃるかもしれませんが、ベースになっているのは2011年のベストセラー『40代を後悔しない50のリスト 1万人の失敗談からわかった人生の法則』。ビジネスパーソンが意識しておくべき考え方を記した同書を軸としつつ、今回は40代にとっての「時間」に焦点を絞っているわけです。そして大きなポイントとなっているのは、「なぜ40代にとって時間の使い方が重要なのか」ということ。でも、なぜ40代にとってそれが大切なのでしょうか?■時間の使い方は「40代の重要事項」20代、30代の方はまだイメージしづらいかもしれませんが、40代は人生において非常に意味のある時期。やっと自分の裁量で仕事ができるようになり、自分のやりたかったこと、あるいは個性やセンスが発揮できるようになる年まわりだということです。また一方、子どもの進学や親の介護など、家庭においてあらゆる問題が起こってくるタイミングでもあります。しかしそんななかで40代は、「頭ではイメージできても、物理的に時間を奪われるため実行できない」というジレンマに悩まされることにもなるのだと著者は指摘しています。「やりたいけれど、やる時間がない」「30代と同じ感覚で仕事に時間をかけられない」というような現実に直面してしまうため、時間についての考え方を一新する必要に迫られるということです。■30代と40代では大きく違う時間術もちろん、時間の使い方はどの年代にとっても重要。しかし現実的に、20代、30代の時間術と、40代のそれは決定的に異なると著者は断言します。30代までの仕事の大半は、いかに速く作業を終えるか、いかに効率的に行うかという「作業スピード」でカバーできることが中心でした。でもそれは、成果を生み出すために時間を犠牲にしていたということでもあります。しかし40代が抱える業務量は、30代までの延長線上で「もっと努力」したり、「さらなる改善」を行うことでクリアできるものではないというのです。ちょっとスピードが上がった程度では、とても解決できる量ではないということで、そこをクリアすることこそが、40代にとっての仕事なのです。具体的にいえば、時間管理の方法を根本から見なおし、仕事の進め方や意思決定、ものの見方を大幅に変え、必要とあらばこれまで身につけた「勝ちパターン」を思い切って捨てることも必要だとか。勇気が求められるでしょうが、それを乗り越えることが40代の責務なのかもしれません。■時間配分を変えることで人生が変わるいうまでもなく、時間は有限の資源。決して増やすことができず、持ち時間の総量は常に一定であるため、「資源となる持ち時間を、なににどう振り分けるか」が重要な意味を持つわけです。だとすれば、人生を変えるために大切なのは、時間の配分を変えること。時間の振り分け方を見なおすことが、仕事の成果を生みだし、人生をよりよく彩ってくれるという考え方です。とはいっても、巷にあふれる時間術にあるように、「手帳を上手に使いこなす」とか、「スキマ時間を有効活用する」ことが、時間を上手に使うということではないでしょう。仕事の成果に焦点を合わせたり、自分の価値観や生き方に合わせ、「持ち時間をなににどう配分するか」にかかっているということです。■仕事でも人生でも時間配分を変えよう端的にいえばそれこそが、「40代が考えるべき時間の使い方」。別な表現を用いるならば、ドラスティックに時間割を見なおすことが、どの年代よりも求められているというわけです。もし小手先の技術でスケジュールを調整し、わずかな自由時間をひねり出すことができたとしても、それは決して根本的な問題解決にはつながらなくて当然。もちろん仕事の効率化も大切ですが、それだけですべての問題を解決できるほど、40代の役割は小さいものではないということです。そこで仕事においても人生においても、正しく優先順位づけを行い、それを実行するために時間配分を変えることが重要だというわけです。そのことについての重要なポイントを「計画術」「習慣術」「仕事術」「マネジメント術」「生活バランス術」とさまざまな角度から検証しているだけに、本書を活用すれば、きっと未来への道筋をイメージできるようになれるでしょう。*「40代までには、まだまだ時間があるから」と感じていたとしても、現実的にそこに到達するまでの時間は驚くほど早いもの。そうでなくとも、準備は早ければ早いに越したことはありません。いつか訪れる40代をよりよいものにするために、ぜひとも読んでおきたい一冊です。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※大塚寿(2016)『40代を後悔しない50のリスト【時間編】―――1万人の失敗談からわかった人生の法則』ダイヤモンド社
2016年07月10日肌の露出が増える時期になると、やはり気になるのがボディライン。しかし、毎年ダイエットに挑戦しているのに、なかなか目標が達成できないという人も多いのではないでしょうか。メディア関係者のためのトレンド情報ポータル『トレンド総研』が20代~40代の女性500人を対象に行った調査でも、目標体重まで減らすことができた人は17%ということがわかりました。そしてせっかく成功した人も、3人に1人はリバウンドしてしまっているというのです。『自宅でできるライザップ 運動編』(ライザップ著、扶桑社)は、「結果にコミットする」で知られるライザップのトレーニングが自宅で実践できるというもの。DVDつきなので、自宅にいながらトレーナーに教えてもらっているように活用できます。今回は本書のなかから、ダイエットのモチベーションを持続させるための「メンタルマネジメント」の方法をご紹介します。これさえ頭に入れておけば、三日坊主にならず、理想の体型を手に入れられるはず!■ライザップ式トレーニングは週2回部位別体重の減少を大きく左右するのは食事。ただ体重を落とすだけなら糖質オフの食事をするだけで痩せることができるでしょう。しかしこの場合、体脂肪は落ちても筋肉まで減少してしまうのです。そのため、ライザップのルールでは筋肉をつくるための「高たんぱく食」をとることと、「筋肉トレーニングを行うこと」が両輪となっているのだそうですトレーニングは週2回。「胸・肩・下背(腰まわり)・腹」「脚・背・腹」に分けて行います。本書には部位別のトレーニング方法が掲載されています。それぞれ自分の目標にあった回数を行いましょう。■ライザップ式「痩せるメンタル」の作り方(1)ダイエットが停滞したら睡眠不足やストレスを見なおす順調にダイエットが続いていても、ある時期になると体重が減らなくなってしまったという経験のある人もいるのではないでしょうか。これはライザップのメソッドを使っていても起きる現象。しかし、この「停滞期」には原因があることがほとんどだといいます。まずは以下の3つを見なおしてみましょう。・睡眠時間を見直す睡眠時間が少ないと食欲を抑制するホルモンが減り、代わりに食欲を増進するホルモンが増加してしまいます。できれば6時間半くらいの睡眠をとるのが理想ですが、無理な場合は朝8時までに日光を浴び、朝食をとることで体内時計をリセットしましょう。・生活の中のストレスを見直すストレスによって分泌されるホルモンは筋肉を分解してしまいます。また、食欲抑制に関わる「セロトニン」という物質を減らしてしまうことも。寝る前に「痩せて楽しいことをしている自分」を想像してみましょう。また、日光を浴びるのもストレス解消に効果的なので、積極的に外出するのもおすすめ。・食事を見直す糖質オフの食事をしていても体重が減らない場合、食物繊維が不足して便秘になっているのかもしれません。食物繊維と水分はしっかりとりましょう。また低糖質であっても夜9時以降はできれば食事を控えましょう。(2)やる気が出ないときは初心を思い出すライザップのメソッドのように、ルールが決まっていると行動がしやすいというメリット。しかしその反面、一度でもルールを破ってしまうと、挫折したような気がして諦めてしまう人がいるのも事実。トレーニングをしなかった日があっても、それは翌週に持ち越せばOK。糖質をとってしまったらトレーニングの他に有酸素運動などをして消費しましょう。気分がのらないときこそ、「なりたい自分」や「痩せてやりたいこと」をイメージして初心を取り戻すことが大切だといいます。(3)反省だけでなく自分をほめる筋力トレーニングは「前回よりもできるようになった」「できなかったことができるようになった」と成長を感じられるもの。変化を感じるほど楽しんで続けられるはずです。成長をより実感するには、「いつまでに◯kg痩せる」というような短期目標を設定するのがポイント。また「できなかったこと」を反省するだけでなく、「できている自分」を評価することも大切。ごほうびに、サイズダウンしたトレーニングウェアを購入して、「痩せた自分」を実感するのもいいでしょう。(4)ジムを活用する本書のトレーニングの内容は自宅でできるものですが、大幅に減量したい人や、より効率よく痩せたい人はジムを活用するのがおすすめです。ハードルが高く感じるかもしれませんが、ジムでは細かく負荷の設定ができるため、実は初心者向きなのです。また、周りでトレーニングをしている人を見ることで刺激になりますし、トレーナーに相談することもできます。*ライザップ式ダイエットでは、食事の仕方も重要。『運動編』と合わせて『食事編』もチェックしてみてください。CMのように劇的な変化を実感できる日も遠くないかもしれません。(文/平野鞠) 【参考】※ライザップ(2016)『自宅でできるライザップ 運動編』扶桑社※「夜バナナダイエット」に関するレポート-トレンド総研
2016年07月10日『30年後もお金に困らない! 共働き夫婦のためのお金持ちの教科書』(加谷珪一著、CCCメディアハウス)の著者は、日経BP 社の記者、投資ファンド運用会社での企業評価や投資業務を通じ、企業のオーナー社長やファンド出資者(個人投資家)など、多くの富裕層と接してきた実績の持ち主。そのようなバックグラウンドをバックボーンとして、お金に関する数々のベストセラーを送り出してもいます。いわば本作もそのひとつだというわけですが、特徴的なのは、「共働き夫婦のお金の残し方」に焦点を絞っているところ。しかも、お金(と、お金に対する向き合い方)を多角的に捉えているため、「必要なこと」「考えるべきこと」「すべきこと」を深く理解することができるのです。今回はそのなかから、「お金持ちのお金の使い方」をご紹介したいと思います。■まとめ買いは本当にお得?まとめ買いはたいていの場合、うまくいかないもの。著者ははっきりとそう断言しています。もちろん、まとめて買うことができ、その品物を余らせることなく完璧に消費できれば、1個あたりのコストは安くなることでしょう。しかし、それを最適に、そして常に実行していくためには、かなり綿密に計画を立てる必要があるというのです。また、日用品を安く買うことは、労力ほどの効果が得られないことがほとんどなのだとか。総額5,000円の買いものを1割安く済ませることができたとしても、1,000円のムダな買いものをしてしまうことは大いに考えられるわけです。だから、まとめ買いはホドホドにしておいたほうがいい。それが著者の考え方なのです。■お金持ちの服の買い方は?いうまでもなく、洋服はとても面倒な支出。いい洋服を着ていると、たしかに周囲の評価は高くなることでしょう。しかし、高いものを買おうと思えば、どこまでも値が張ってしまうのもまた事実。そればかりか洋服には流行があるので、同じ服を何年も着られるわけでもありません。では、どうすべきなのでしょうか?お金持ちになるための基本は「ムダな支出を抑える」ことで、それは洋服についても同じだと著者は主張します。そこで参考になるのは、服を10着しか持たず、うまく着まわしているといわれるパリジェンヌの考え方なのだとか。もちろんこの話には都市伝説的な側面がありますが、それでも学ぶべきところはあるというわけです。洋服は同じようなものを買ってしまうことが多く、ほとんど着ないままクローゼットに入れっぱなしになっていることもしばしば。しかし10着(トップス5枚、スカート3着、パンツ2本など)と決めてしまえば、そのなかで着まわしを考えるようになるため、ムダな重複支出を劇的に減らすことができるというのです。また、服の数が少なければ支出の絶対値も少額になるので、毎年思い切ってすべての服を捨てることもできそう。そうすれば、10着という制限こそあるものの、毎年、新しい服を着られるということになります。なお、同じことは男性のスーツにもいえるといいます。高いスーツをくたびれるまで着るよりも、それなりの価格のスーツを、毎年1着ずつ購入していくほうが経済的だという考え方です。そしてもちろん最悪なのは、計画性なく服を購入すること。■外食はどのように楽しむ?外食は魅力的。ですが、お金持ちになれる人と、お金に縁がない人では、その楽しみ方にも差があるのだそうです。具体的にいえばお金持ち体質の人は、事前の情報収集に力を入れ、質のよい食事を安い値段で楽しんでいるそうなのです。たとえば平日の夜にはとても入れないような高級店であっても、ランチや休日には特別メニューを設定していたりするもの。外食が上手な人は、そうしたプランをフル活用しているということです。一方、あまり計画を立てずに行動する傾向にあるのが、お金に縁がない人。いってみれば、お得なメニューに出会えるかどうかも運任せになるわけです。回数を重ねると、こうした違いも大きな金額になってくる可能性があるので、ばかにできないといいます。ちなみに、便利ではあるけれど注意しなければいけないのがファミレス。なぜなら、そこそこ満足できるとはいえ、客単価はそれほど安いわけではないから。それにファミレスと同じエリアの高級店が、時間帯によってはファミレスとほぼ同じ価格帯のメニューを提示しているケースもあるので、やはり事前チェックが大切なのだといいます。*夫婦ともに生きて行く以上は、当然ながらさまざまなお金の問題に直面することになるはずです。でも、だかといって、プロのコンサルタントやカウンセラーに解決策を求めるとしたら、そこでまたお金がかかってしまうことになります。だからこそ、まずは本書を活用しながら、夫婦二人三脚で将来について考えてみるべきかもしれません。それもまた、お金の節約につながるわけですし。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※加谷珪一(2016)『30年後もお金に困らない! 共働き夫婦のためのお金持ちの教科書』CCCメディアハウス
2016年07月09日ライザップといえば、「結果にコミットする」のCMですっかりおなじみ。CMに登場する人たちの見事な変身ぶりに、「本当にこんなに痩せるの?」と驚いた人も少なくないでしょう。しかし完全個室のプライベートジムであるため、そのメソッドはあまり知られていません。だからこそ読んでもらいたいのが『自宅でできるライザップ 食事編』(ライザップ著、扶桑社)。ライザップのトップトレーナーと管理栄養士が監修し、自宅で実践できるライザップ式の食事法を解説しています。「糖質オフを基本としたルールさえ守れば、1日3食とってもOK」という画期的な方法。何度もダイエットに挫折してきたという人も、チャレンジのしがいがありそうです。■ライザップ式では主食は完全にカット!近年、糖質オフダイエットは注目されていますが、ライザップ式の糖質オフにはいくつかのルールがあります。まず、主食ははじめから完全に抜くこと。少しずつ減らしていくというやり方もありますが、ライザップの場合は最初から糖質をしっかりカットするのです。ご飯、パン、そば、うどん、パスタはもちろんのこと、比較的血糖値の上昇がゆるやかとされている玄米やライ麦パンなどもNG。日本人はたんぱく質や脂質よりも糖質から多くのエネルギーを摂取しているため、最初に糖質をカットすれば効果が出やすくなるのです。ただし、体が変化し目標を達成したあとは、少しずつ糖質を取り入れてかまわないとか。糖質の量を見極めて自分でコントロールできるようになれば、理想の体型を維持していくことができるのです。主食をとらなければ、1日3食しっかりとってOK。筋肉をつくるために欠かせないたんぱく質を意識的に摂取することが筋肉量の維持につながります。それにたんぱく質を多くとると消費エネルギーのアップにもなるそうです。■ライザップ式「食材選び」5つのルール(1)牛肉や豚肉を食べてもOKメインのおかずは、たんぱく質の多いものをしっかりと。ダイエット中は敬遠しがちな牛肉や豚肉もOK。大豆製品や乳製品、魚介類も取り入れましょう。また、普段の食事では副菜となるような、野菜やきのこ、海藻類をつかったおかずをメインと同じくらいたっぷり食べるのもポイント。食物繊維やビタミン、ミネラルの供給源になるといいます。ただしケチャップやソース、みりんなど糖質の多い調味料には注意。また、トマトやニンジンなど暖色系の野菜や根菜類も糖質が多いので控えましょう。<OK食材>鶏むね肉(皮なし)、豚肩ロース、牛肩ロース、マグロ赤身、ゆで卵、大豆製品、ほうれん草、キャベツ、きのこ類など<NG食材>はんぺん、さつまあげ、バナナ、リンゴ、じゃがいも、さつまいも、春雨など<少量ならOK>ロースハム、ちくわ、トマト、ニンジン、レンコン、かぼちゃ、ひよこ豆など(2)調味料を工夫して味にバリエーションをつける糖質オフの食事では、ゆでる、焼く、蒸すなどシンプルな調理法が鉄則。衣を使わない素揚げなら揚げ物もOKだそうです。調味料を工夫することで味にバリエーションをつけることが可能。ただし糖質の多いものはNG。煮物をつくる際はだしをきかせるなどの工夫を。マヨネーズは味付け程度ならOK。桜エビや塩昆布など旨味がアップする食材もおすすめ。<OK調味料>しょうゆ、酢、天然塩、バター、マヨネーズ、オリーブ油、辛口みそ、粒マスタード、カレー粉など<NG調味料>砂糖、酒、みりん、ケチャップ、中濃ソース、焼肉のたれなど(3)市販の食材はラベルをチェックコンビニやスーパーで弁当や惣菜を購入するとき、栄養成分表示や原材料表示をチェックするクセをつけましょう。栄養成分表示には「糖質」という項目があります。記載がない場合は「炭水化物」から「食物繊維」を引いた値が糖質量になります。また、原材料の表示は重量の多い順に記載されています。砂糖や小麦粉、ジャガイモなどが多く入っているものは避けるべき。(4)外食は洋食やイタリアンをチョイスダイエットをしていると、つい和食などのヘルシーなお店を選びがちですが、和食は砂糖やみりんを使ったおかずが多く、ご飯が欲しくなってしまうことも。洋食でステーキやハンバーグを食べたり、イタリアンで生ハムやカルパッチョ、肉や魚のグリルを食べたりするのが正解です。焼肉もOKですが、たれではなく塩で食べましょう。(5)お酒はワインか蒸留酒ならOK糖質オフで飲んでいいのは、焼酎、ウイスキー、テキーラなどの蒸留酒や辛口の赤ワイン。日本酒、ビール、紹興酒、梅酒などはNGです。ただし、アルコールの飲みすぎは、筋肉を壊したり、肝臓の働きを弱めたり、満腹中枢を鈍くするなどボディメイクをするうえでの支障が出るのでほどほどの量を心がけることが大切。*本書には、ルールに基づいたレシピや2週間の献立例など、具体的なアイデアも掲載されています。しっかり食べて、理想の体型を目指しましょう!(文/平野鞠) 【参考】※ライザップ(2016)『自宅でできるライザップ 食事編』扶桑社
2016年07月09日『新入社員から社長まで ビジネスにいちばん使える会計の本』(安本隆晴著、ダイヤモンド社)の著者は、30年以上にわたって経営コンサルティングの仕事に携わってきたという人物。ユニクロ(ファーストリテイリング)、アスクル、UBICなど、複数の上場企業の社外役員を上場前から勤めてきてもいるのだといいますが、そうした活動のなかで気づいたことがあるのだそうです。多くの人は自社のビジネスの話は熱心に語るのに、会計の話になった途端に逃げ腰になるということ。会計数字の裏づけがないため、事業の内容を聞いてもまったくピンとこないというわけです。だから「会計」や「簿記」に自分から壁をつくってしまっていて、そのあたりは経理担当者や顧問税理士に任せっきりになっている人が少なくないというのです。そこで、多くの人が敬遠しがちな複式簿記の内容にはできるだけ触れず、決算書や会計の考え方が理解できるように解説しているのが本書だということ。しかし、「そうはいっても、やっぱり不安」だという方もいらっしゃるはず。そこできょうは、基本中の基本に部分に触れた「算数がわかれば『会計』は理解できる」に注目してみましょう。■会計は算数がわかればOK!世の中のすべての組織の活動を、ひとつの観点から説明するのは現実的に不可能。ところが、どんな会社の活動であっても、決算書でほとんど説明することができると著者は断言しています。会社で人が動けばお金が動き、お金が動けば会計がその動きを記録する。正しいルール(会計基準)に基づいて記録された数字(会計数字)は、絶対にウソをつかないというのです。端的にいえば、会計とはビジネスの行動指針になるとともに、事業の関係者に活動成果を報告するための道具。そして、それは決して難しいものではなく、小学校で習った加減乗除(+—×÷)がわかれば理解できるのだといいます。だとすれば、算数がわかりさえすれば会計は理解できるということになります。本当なのでしょうか?■会計の役割は舵取りと成績表そもそも社会に役立つようなビジネスにおいては、商品の品質や価格がお客様に受け入れられれば、必ず儲け(利益)が出るもの。そして儲けが出れば、少しずつ現金も貯まっていくことになります。しかし逆に、それが社会に役立たないビジネスで、お客様に受け入れられなかったとしたら、当然ですが儲けは出ません。やがて会社を立ち上げたころの元手資金も底をつき、いつかは倒産ということになるわけです。そのため経営者は、最初からきちんと儲けが出て、その儲けをどう使えば事業が続けられるのか、しっかり考えなくてはならないということ。そんなとき、「いけるぞ!」「このままだと危ない!」などのセンサーの役割を果たすのも会計なのだと著者は主張しています。大工さんが家を建てるのにノコギリやカンナを使うのと同じで、経営者は会社の舵をとるために会計という道具を使うという考え方です。そして会計のもうひとつの役割は、お金を出資してくれた株主や、お金を貸してくれた銀行などに対して「事業はこんな状況になっています」と説明するときの資料。言葉だけで説明するよりも、成績表のような数字の裏づけがあるほうが説得力は高まるということです。■会計の種類は覚える必要なしところで会計の本を読むと、「財務会計」と「管理会計」の違いが書かれていることがよくあります。「財務会計」とは株主、銀行、税務署などの社外関係者に情報を伝えるための会計。貸借対照表、損益計算書。キャッシュフロー計算書などの決算書、会計方針・注記など、法律で決められたルールをもとに書類がつくられているのだそうです。対する「管理会計」は、原価計算書や事業部別損益表などのように、経営者や管理者などの車内関係者に情報を伝えるための会計。法律で決められたルールではなく、自由な形式で資料がつくられているのだといいます。そしてビジネスの現場では、財務会計と管理会計の区別なく資料をつくったり、会計用語を使ったりしているのだといいます。また上場会社などでは、決算書の目的によって金融商品取引法会計、会社法会計、税務会計、国際会計など、いろいろな制度の会計があるのだとか。名称を並べられただけで頭が痛くなりそうですが、実際のところ、どこからが○○会計でどこからが別の会計だと定義しても難しくなるだけ。著者はそういい切ってくれるので、それだけでも少し気が楽になります。もっといえば、そのような観点に立っているからこそ、本書には一般的な会計の本のような堅苦しさ、難しさがあまりないのかもしれません。*以後も全体的に、会計の基礎をビギナー目線で手取り足取り教えてくれるようなスタンスが貫かれています。だからこそ本書を利用すれば、少なくとも会計についての“覚えておくべきこと”は頭に入れておくことができそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※安本隆晴(2016)『新入社員から社長まで ビジネスにいちばん使える会計の本』ダイヤモンド社
2016年07月08日2016年も半分が過ぎましたが、みなさん今年の目標は継続していますか?女性ならではの視点で、女性のためのさまざまな情報を発信する『womedia Labo*』が20~40代の女性1,000人に調査を行ったところ、2016年の目標を立てた人のうち43%が、1月末の時点ですでに挫折してしまっていることがわかりました。何日継続できたのかを聞くと、3日以内が40%と最多。約8割の人が10日未満で目標を断念してしまったそうです。「時間が確保できない」「労力がかかって続かなかった」「具体的になにをするのか決めていなかった」などがその理由です。みなさんのなかにも、同じような人がいるのではないでしょうか。そこでお勧めしたいのが、『まんがで身につく 続ける技術』(石田淳著、あさ出版)。「行動科学マネジメント」の観点から、やろうと決めたことを継続させる方法を紹介した書籍です。「やる気」や「意志の強さ」などの精神論ではなく、「行動」に着目しているのがこの技術の特徴。いままで三日坊主ばかりだった人も、この方法を習得すれば目標達成にグンと近づけるはずです!■「続けること」と「意志の強さ」は無関係ダイエットや英会話など、続けようと思ったことが三日坊主になってしまうのは「自分は意志が弱いからだ」と思うかもしれません。しかし、続けることと「才能」「意志」「やる気」はまったく関係ないそうです。自分がやりたいと思ったことはもちろん、やりたくないことや、苦痛なことも同様。続けるためには、精神論ではなく、人間の行動に焦点を当てて考えることが必要。本書のテーマとなっている「続ける技術」は、「行動科学マネジメント」がベースになっています。これは人の行動を科学的に解明したもので、いつ、誰が、どこでやっても同等の結果が得られる科学的なノウハウです。■すべての行動は3つの要素でできている!行動科学マネジメントにおいて、すべての行動は「A:先行条件(~だから)」「B:行動(~する)」「C:結果条件(その結果~になる)」という3つの要素から成り立っているとされています。たとえば、「A:暑いから」「B:エアコンをつける」「C:その結果、涼しくなる」のように当てはめることができます。行動には、必ず先行条件があるということであれば、逆に先行条件を整えることで行動をコントロールすることが可能なのです。■勉強するなら毎日テキストを鞄に入れよう自分がコントロールしたいと思う行動(ターゲット行動)は、「過剰行動」と「不足行動」の2つに分けられます。「過剰行動」は止めたい行動のこと。飲酒や喫煙、ギャンブルなど中毒性の高いものが対象になります。「禁煙する」という過剰行動の場合、「喫煙所のある場所へ行かない」「喫煙者と飲みに行かない」などといった先行条件が整うと行動が起こりにくくなります。そして「不足行動」は増やしたい行動のこと。ランニングや読書、英会話などがそれにあたります。「英会話の勉強をする」という不足行動の場合は「トイレにテキストを置く」「毎日鞄にテキストを入れておく」という先行条件を整えるとよいでしょう。そして不足行動には、それを阻害しようとする「ライバル行動」がつきもの。勉強すると決めたのについテレビを見てしまうというのは、このライバル行動です。「スマホの電源を切る」「勉強の時間にアラームを鳴らす」などでライバル行動の発生を抑えることができます。■続けるために行動を取りたくなる環境を!ここまでの内容なら今までにやったことがあるという人もいるかもしれません。実はしっかりと行動を続けるには「先行条件」をさらに詳細にすることが必要なのです。自分がどんなときにそのターゲット行動(英会話、ダイエットなど)を取りたくなるのかを明確にしていきましょう。たとえば英会話を勉強したくなるのはどんなときかと考え、「海外映画を見たとき」「街で外国の人に会ったとき」などが挙げられるなら、なるべくその条件を整えられる環境をつくればいいということ。反対に英会話をやりたくなくなるときが「テレビを見ているとき」や「残業をしたとき」であれば、そうならないように工夫してみましょう。また、「結果条件」についてもどんなメリットがあるかを詳細に考えてみます。メリットを強く感じられることで行動を促すことができるのです。英会話を勉強するメリットが「充実感を得られる」であれば、それをより強く感じられるよう、自分にご褒美を用意したり、SNSに投稿したりするとよいでしょう。*本書はコミックになっているため、気軽に読むことができます。「続ける技術」を身につければ、仕事でもプライベートでも使える強い武器になるはずです!(文/平野鞠) 【参考】※石田淳(2016)『まんがで身につく 続ける技術』あさ出版※2016年の女性たちの消費意欲と継続性-トレンダーズ株式会社
2016年07月07日『潜在意識を使いこなす人 ムダにする人』(井上裕之著、フォレスト出版)の著者は歯学博士ですが、他にも経営学博士、コーチ、セラピスト、経営コンサルタント等、さまざまな肩書きを持っています。歯科医師と並行し、ジョセフ・マーフィー博士の「潜在意識」と経営学の権威ピーター・ドラッカー博士の「ミッション」を総合させた「ライフコンパス」を提唱。また、セミナー講師としても活躍しており、著者のセミナー会場は常に満員。1,000名規模の講演も成功させてきているそうです。つまり本書ではそんな実績を軸として、潜在意識を使いこなす人とムダにする人の違いを明らかにしているわけです(これは、「成功する人」と「そうでない人」にも置き換えられそうです)。きょうはそのなかから、お金についての両者の考え方の差を見てみたいと思います。■お金は使う人の品性次第で変わる日本人の根底には多かれ少なかれ、「お金のことを口にするのは卑しい」「お金をたくさんもらうことは不誠実である」というような考え方があるもの。しかし、著者はそうした考え方に疑問を呈しています。お金がいちばん大事だとはいわないけれども、お金がないと心は豊かになりにくく、人生の選択肢を狭めてしまうこともあるから。そう考えると「お金がありすぎる苦労」より、「お金がない苦労」のほうがはるかに問題だというのです。「貧しくても心が豊かならば」というけれど、やはりお金はあるに越したことはないということ。ユダヤ人の格言のなかに、次のような一節があるそうです。「貧乏は恥ではない。でも、名誉だと思うな」いうまでもなく、「貧乏を清いと思い、名誉だと思うことは危険だ」という意味。世の中の万物はエネルギーであり、お金自体もまた、本質はエネルギー。いいとか悪いとかの問題ではないわけです。あくまでも使う人の品性次第で、よいエネルギーにも悪いエネルギーにもなるということ。だから、「貧乏」=「清い」、「お金持ち」=「悪」ではないという考え方。ユダヤ人はこうした格言を通じて「お金の本質をよく理解しているからこそ、ためらうことなくお金に執着し、お金儲けをするのだろうと著者は分析しています。■お金に対する偏見を取り除こうそこで、もしも「お金に不自由したくない」「お金持ちになりたい」と思うのであれば、まずはお金に対する偏見を取り除くことからはじめなければいけないともいいます。では、潜在意識を使いこなす人とムダにする人とでは、お金に関する考え方にどれほどの違いがあるのでしょうか?著者によれば、潜在意識を使いこなす人は、「お金の本質」をよく理解しているのだそうです。一方、潜在意識をムダにする人は、そのあたりがよくわかっていないのだとか。心のどこかに「お金は卑しい」というマイナスのイメージを持ち、否定的な思いを抱いているというのです。だからこそ、いつまでたっても「お金が寄ってこない」=「貧乏」だというわけです。だとすれば、果たして著者自身はどう考えているのでしょうか? このことについて、著者は興味深いことを書いています。「いま、なにが欲しいですか?」と聞かれたとしたら、「いろいろあるけど、お金もそのなかのひとつ」だと即答するというのです。そしてそれは、著者自身が「お金の本質」と「資本主義社会におけるお金の価値」を正しく理解しているからだとも断言します。なぜなら誤解を恐れずにいえば、資本主義社会においては、お金を持っていれば勝てることが多いのも事実だから。■お金持ちになるには目標設定をでも、もし「お金持ちになりたい」と思ってはいても、実際にお金持ちになれる人はほんのわずか。では、なぜお金持ちになれないのでしょうか?著者によればそれは、多くの人が「お金持ちになりたい」と願ってはいるけれど、なにをもってお金持ちなのか、その定義が曖昧だから。そこで、「なぜ、お金持ちになりたいのか」「具体的にいくらくらいを持つお金持ちになりたいのか」「そのお金をどのようにして稼ぐのか」「そのためにどういう自分であるべきなのか」などを見つめなおし、具体的な目標に落とし込んでいかなければならないといいます。「お金がないからビジネスをはじめられない」という人がいますが、そういう人は「いま、持ち得ているお金でなにをすべきか」を必死に考えるべき。もしも「自分にはビジネスのセンスがない」と思うのならば、いままさに稼いでいる人から学んだり、本を読んだりして、必死に勉強をすることが重要。ところが、お金持ちになれない人は、こういう作業を「労力」と捉えてしまい、「必要な作業である」という認識がないのだと著者は指摘します。でも、そのような作業を面倒くさがってやらないから、お金持ちになれないのだそうです。*潜在意識を操れるようになれば、常に正しい「選択」と「行動」ができるようになるのだと著者はいいます。お金に対するこうした考え方も、そのひとつなのでしょう。潜在意識をさまざまな角度から操れる人になるために、目を通してみてはいかがでしょうか?(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※井上裕之(2016)『潜在意識を使いこなす人 ムダにする人』フォレスト出版
2016年07月07日一般的に「計数感覚」とは、企業活動と計数の動きを関連づけて考えられる能力のことをさします。しかし『1%の人は実践している ムダな仕事をなくす数字をよむ技術』(前田康二郎著、クロスメディア・パブリッシング)の著者は、少し考え方が違うようです。計数感覚とは、「数字」と「行動」を関連づけて物事を正しく推察できる能力だというのです。そしてもうひとつ重要なポイントは、「できる人」は行動を数値化して管理しているということ。いったい、どういうことなのでしょうか?■そもそも会社の行動は数値化できる会社には、目標、予算、スケジュールなど、関係者全員に対して事前に伝えられた情報があるもの。それらを遂行し、「その結果がどうであったか」を踏まえたうえで評価が下されるわけです。そしてその結果として、予定どおりや目標どおり、あるいはそれ以上の結果であった場合、「できる人」と判断されることになります。ここからわかるのは、「会社における行動は数値化が可能」だということ。そして「できる人」は、事業計画やノルマ、スケジュールなど、あらゆる数字の管理が上手だということ。たとえば「できる人」は、会話やメールのやりとりをしていても、時系列(タイムライン)がしっかりしているもの。3日後に締め切りが設定されている仕事があったとしたら、「予備日として1日とり、その前日までに終わらせるためには、現場から明日までに情報をもらう必要がある。だから、きょうは『明日までに情報をください』とメールで連絡しなければいけない」というように、「時間の足し算引き算の感覚」が優れているというのです。■計数感覚が人からの評価を集める!いってみれば、特別な能力や学歴、職務経歴がなかったとしても、計数感覚や計数管理がしっかりしていれば、日ごろの行動の積み重ねだけで無理なく「できる人」になれるというわけです。そこで、朝、机の前に座ったら、「きょうは、これと、これと、これをやる」と、カレンダーやスケジュール表を見て唱えてみることが大切。そうすれば、1日のスケジュールを自分のなかで管理できるようになるわけです。当たり前ではありますが、しかし、実はとても大切なことではないでしょうか?著者の目から見ると、計数管理が苦手そうな人は、仕事の優先順位をあまり考えず、「来たものからとりあえずやっている」という印象が強いのだとか。しかし実際には、優先順位をつけるという、たったそれだけのことも、計数感覚を養うために重要。正しい計数感覚を備え、計数管理をすることによって、周囲からは自然と「仕事ができる人」と認識され、頼りにされるというのです。■数値化の習慣で計数感覚が身につくもしかしたら、「理論上は知っているから、プロセスを軽視したとしても問題ない。自分が知る意味はない」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、決してそういうことではないのだと著者は断言します。それではいつまでたっても、本質をつかむことはできないとも。計数感覚は、その基礎となるひとつひとつの数字に目を通し、「その結果はどうなったのか」ということの検証によって養われるものだというのです。それを繰り返し行うことで、ひとつひとつの数字から結果を推測する想像力が身につくということ。そして、みなさんのそれぞれの仕事のなかで、会社が重要視していることを数値化し、それを繰り返し検証することで計数感覚を養うことができるのだともいいます。著者の場合はそれが経理の仕事だったといいますが、営業であれば得意先の売上数値や個人の売上数値の推移がそれにあたるでしょう。数字と直接関係のない部署でも、自分自身のルーティン作業には、毎月どれくらいの時間がかかっているのか、あるいは一定時間の間にどれだけ作業をこなせたかをカウントすることも、計数感覚を養うために役立つわけです。つまり、身近のことがらについて、「もっとよい数値にするにはどうしたらいいか」を考える習慣をつける。そんなところから、計数感覚は身についていくということ。その結果、想像力=先を読んで行動する力も養うことができるそうです。*もしかしたら「数字は苦手」という人のなかには、「計数感覚」という言葉を聞いただけで身構えてしまうという方もいらっしゃるかもしれません。しかし実際には、このようにシンプルなことの積み重ね。だからこそ、日常的に意識しておけば、無理なく身についてくるものなのでしょう。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※前田康二郎(2016)『1%の人は実践している ムダな仕事をなくす数字をよむ技術』クロスメディア・パブリッシング
2016年07月07日「体の不調がなかなか治らない」「小さなことですぐイライラする」と感じることはありませんか?実はそれ、自律神経の乱れからくる症状の特徴でもあります。『聞くだけで自律神経が整うCDブック 心と体のしつこい不調を改善編』(小林弘幸著、アスコム)は、77万部突破のベストセラー『聞くだけで自律神経が整うCDブック』の第2弾。付属のCDに収録された音楽を聞くだけで自律神経の乱れが整うという点が特徴ですが、今回は特にしつこい心身の不調の改善や、仕事や勉強のパフォーマンスアップにフォーカスしています。まずは本書のなかから、自律神経を整えるための意外なルールをご紹介します。CDと組み合わせればさらなる効果が期待できそうです。■自律神経の乱れは心身の不調の原因にそもそも自律神経とは、内臓を動かしたり、血液を送ったりするなどの働きをするとても大事な神経。睡眠中も呼吸が止まらないのは自律神経の働きのおかげなのです。自律神経はアクセルのような働きをする「交感神経」と、ブレーキの働きをする「副交感神経」の2種類から構成されています。交感神経が活発になると血圧が上昇し、気持ちも高揚しますが、副交感神経が働くと血圧が下がり、穏やかでリラックスした状態になります。大切なのはこの2つがバランスよく働いていること。どちらかが乱れると様々な不調が現れるようになります。■女性は40歳から自律神経が乱れる!現代人に多いのは、「いつも交感神経が優位で、副交感神経の働きが下がっている」というタイプの人。副交感神経の活動レベルは男性が30歳、女性は40歳を境に急激に下がります。つまり年をとるほど交感神経が優位になりやすいのです。この状態になると血流が悪化したり、免疫力が低下したりするなどの体の不調や、1日中イライラしているなどの心の不調を招きやすくなってしまいます。このタイプの人は意識的に副交感神経の働きを高めれば、自律神経のバランスを整えることができます。自律神経が整うとやる気や集中力もアップし、心の余裕もできるので毎日の仕事にもいい影響が出るでしょう。■誰でも簡単にできる自律神経の整え方(1)昼寝は1時間までにする昼食後に短時間の睡眠をとると、頭がシャキッとすることがありますよね。しかし、1時間以上昼寝をしてしまうと、夜の睡眠時に活発になるはずの副交感神経の働きが悪くなってしまいます。昼寝をするなら長くても1時間までにしましょう。(2)大きなため息をつく深呼吸をすると副交感神経が刺激され、末梢血管の血流がアップする効果があります。それにより心身ともにリラックスすることができ、自律神経をコントロールできるのです。オフィスのデスクでため息をついてばかりいると周りに迷惑ですが、トイレに行ったときや昼休みなどに、大きくため息をついてみましょう。(3)寝る前はアルコールを飲まないアルコールを飲むと交感神経を刺激するため、心身ともに興奮状態になってしまいます。また、アルコールには利尿作用があるので寝ている途中で何度もトイレに起きてしまい睡眠の妨げに。寝る前2~3時間のアルコール摂取は避けましょう。(4)朝は運動より勉強をする朝は血管が収縮して体が硬くなっている状態のため、無理に運動をすると心筋梗塞を引き起こす恐れもあります。また、体調が不安定な時間帯なので、思わぬケガをする危険も。朝は脳がいちばん冴えている時間帯なので、運動よりも勉強など頭を使うことを習慣にするのがおすすめです。(5)ジョギングよりもウォーキングをするジョギングは運動量が大きいため、呼吸が速くなり、副交感神経の働きを下げることに。また、呼吸が浅くなると血流も悪くなってしまいます。深い呼吸をしながらゆっくりウォーキングをすると心身ともにリラックスできるでしょう。(6)音楽を聴く副交感神経を働かせるのは、自然に頭のなかに入ってきて、それが体の一部になるような音楽。アップテンポの曲やメロディアスな曲は交感神経を刺激することもあるので、リラックスする時間にはおすすめできません。付属のCDに収録されている音楽は、医学的根拠に基づいて音色やリズム、曲の長さを計算して作曲されているため、低下している副交感神経の働きを高め、交感神経の高まりすぎを抑えることができます。*自律神経を正常な状態に近づければ、血流や免疫力がアップするので、さまざまな不調を根本から改善することが可能です。自律神経を整える習慣と音楽を生活に取り入れれば、不調改善が実感できるかもしれません。(文/平野鞠) 【参考】※小林弘幸(2016)『聞くだけで自律神経が整うCDブック 心と体のしつこい不調を改善編』アスコム
2016年07月06日「太りやすい、やせやすいは、生まれつきの体質ではありません。腸に棲む細菌を整えれば、いつでもやせやすい体質に変われます」と話すのは、腸の研究の第一人者である藤田紘一郎先生。実際に10年ほど前までは、いまより体重が10キロ以上も多く、糖尿病と診断され、血糖値をコントロールするインスリンの注射を受けていたのだとか。そんな藤田先生が、自分の健康を守るために実践したのが、「腸の仕組みに合わせた食生活の見なおし」でした。従来の「カロリー制限食」は、身体の仕組みに合っていないことに気づき、自己流で編み出したのが、いい働きをする腸内細菌に役立つ「酢タマネギ」や「ヨーグルト・ホエイ」などの食材を取り入れた食生活です。この方法でやせやすい体への体質改善を図ったところ、4か月後には血糖値などの異常値が正常値になり、インスリン注射も不要に。体重はなんと半年で10キロ以上減り、周囲からは若々しくなったといわれたそうです。腸内細菌を味方につけてラクにやせる方法が紹介された『1000兆匹の腸内細菌を使って10キロ楽にやせる方法』(KADOKAWA)をもとに、腸の奥深い働きを知ってみましょう。■「やせ菌」を増やしてくれる魔法の食べ物理論的には、「食べるエネルギー」よりも「体を動かして使うエネルギー」が多ければ脂肪が燃焼されてやせるはずですが、人間の体には、この理論を覆すような仕組みが備わっています。それに関係しているのが、腸内に存在する3万種以上、約1000兆個といわれる腸内細菌です。食事の量を減らしても体重は減らず、便秘や肌荒れになったことはありませんか?それは、腸内に「おデブ菌」がたくさんいるせいかもしれません。肥満と深い関わりのある「おデブ菌」は、少ない食事量でもエネルギーをたくさんつくり出し、余ったエネルギーを脂肪に変えてしまうというのです。すると、やせにくい体になってしまいます。そんな「おデブ菌」をおとなしくさせるのが「やせ菌」です。「やせ菌」を増やして活発にするには、スライスしたタマネギを酢に浸けた「酢タマネギ」が大活躍!毎回の食事メニューに取り入れれば、約2週間で効果を実感できるはずです。逆に「おデブ菌」の好物は、「ご飯などの炭水化物」と「スイーツなどに含まれる砂糖」。甘いものに含まれる砂糖は、たった10秒ほどでブドウ糖に分解されて脳へと届けられます。脳がおいしいと感じる快感のまま食べ続けると、「おデブ菌」は増殖し、腸内環境は悪くなってしまうのです。■理想の腸内環境になっているかを知る方法そんな腸内環境の状態を知る手がかりになるのが、「ウンチ」。理想の腸内細菌の構成は、善玉菌が20~30%、悪玉菌が10%、日和見菌が60~70%です。「おデブ菌」や「やせ菌」の正体は、じつはこの日和見菌で、善玉菌と悪玉菌のどちらにも属さない細菌。そして、悪玉菌が増えると「おデブ菌」となって応援し、善玉菌が増えると「やせ菌」となって応援するのです。とくに女性は便秘に悩まされる人が多く、厚生労働省の「平成25年国民生活基礎調査の概況」によれば、男性で便秘の人は全体の26%に対し、女性は49%と約2倍にもなります。便秘は、悪い働きをする腸内細菌が増えている証です。理想の腸内環境になっているかどうか、水で流す前に、自分の便をチェックしてみましょう。[大きさ]・・・バナナ2~3本程度の200~300g。400gあると理想的。[形]・・・バナナやサツマイモのような形。コロコロと丸い状態はよくない。[硬さ]・・・ねり歯磨きや紙粘土のような硬さが目安。いきまなければ出ないような硬いウンチや、水分が多くてベチャベチャしているのはよくない。[色]・・・黄土色や赤茶色が目安。黒っぽいのは悪玉菌が増えている証拠。血が混じっているような赤いウンチや白っぽいウンチは、大腸や肝臓などの病気が潜んでいるかも。[におい]・・・くさいとあまり感じない状態が理想。悪玉菌が増殖するとにおいのきついウンチに。■腸は体の約6割もの免疫機能を担っているウンチは、食物繊維などの食べカスと思われがちですが、食べカスは便の約5%にすぎず、60%以上が水分で、残りは腸の細胞の死骸や、腸内細菌とその死骸になります。ところで、人間の腸の長さをご存知ですか?小腸がおよそ6~7メートルで、大腸は約1.5メートルあります。そこに棲む腸内細胞は、口から入った食べ物を吸収し、一緒に入ってきた外部の細菌などを撃退しています。そして、1000兆個もの細胞がうまく働くには、定期的に新しい細胞に置き換える必要があります。また、1000兆個いる腸内細菌の多くが大腸にいるため、古くなった細胞の死骸とともに細菌もウンチにまぎれています。つまり、腸がよく働いていると、腸の細胞が新しい細胞に入れ替わるので、古くて不要になった細胞と細菌が便と一緒に排出されるため、立派なサイズのウンチになるというわけです。さらに、腸は体内でももっとも多くの免疫細胞が集まっている気管で、体のおよそ6割もの免疫機能を担います。ところが、腸の働きが悪く、悪玉菌が増えている便秘状態では、体の免疫機能もうまく働かなくなります。すると体調不良に陥りやすく、風邪などにもかかりやすくなり、腸の老化を加速させることに。さらに下剤で無理にウンチを出すと腸内細菌も押し出されて細菌の数が減り、腸内細菌のバランスを壊してしまうことになります。食物繊維がたっぷりの酢タマネギなどの野菜や果物、ヨーグルト、納豆、味噌などの発酵食品、魚、タンパク質などをバランスよく摂って腸内環境を整えましょう。*ちなみに日本人のウンチの量は、第二次世界大戦を境に、大きく変化しています。なんと戦後は、食の欧米化などに伴い食物繊維の摂取量が減り、戦前の量の半分にまで減り続けているそうです。食べ物でそれだけ変わるとは驚きです。食事だけでなく、ストレスや睡眠の仕方によっても腸内環境は大きく影響を受けています。言葉を発しない代わりに、ウンチが腸の代弁者。汚いと決めつけず、ウンチと仲良く上手につき合って、健康な腸をキープし、太らない体を維持しましょう。(文/山本裕美) 【参考】※藤田紘一郎(2016)『1000兆匹の腸内細菌を使って10キロ楽にやせる方法』KADOKAWA
2016年07月05日「私は6年間1日45分以下しか睡眠をとっていません」と明かすのは、『できる人は超短眠!』(堀大輔著、フォレスト出版)の著者。もはや45分睡眠で活動することは、空気を吸うように自然なことなのだというのです。しかも活力がみなぎり、集中力も増し、ストレスも解消され、健康状態も良好なのだとか。そんな著者によれば、短眠の習慣をつけるためには「7つのルール」が大切なのだそうです。いったいどんなルールなのか、ひとつひとつを確認してみましょう。■習慣1:二度寝やスヌーズ機能使用の禁止二度寝をすると、(本来備わっているはずの)起床を促すホルモンが出なくなるのだそうです。また、目覚まし時計がないと起きられないような暮らしをしている人は、(本来備わっているはずの)本能的な睡眠力が減退してしまうため、睡眠障害や不眠症に陥りがちなのだといいます。そこで、起床がつらい人ほど、生活リズムを180度変えるようなつもりで、二度寝や目覚まし時計のスヌーズ機能を使わないと決断をすることが大切。■習慣2:自分の睡眠記録する食べたものと摂取カロリーを記録し続ける「レコーディング・ダイエット」のように、毎日の自分の睡眠時間を記録する習慣を。何時に寝て何時に起きたのかはもちろんのこと、入眠時の感覚、寝起きの状態、日中の活動記録などをつけておく。そうすることにより、自分の活動と眠気、睡眠時間との関係性を分析し、改善することが可能になるわけです。■習慣3:起床時間を固定する入眠時間を固定するよりも、大切なのは起床時間を固定するべき。たとえば7時に起きると決めたら、たとえ何時に寝たとしても7時に起きるということ。入眠時間がどのようなタイミングであっても、起床時間を固定すると、レム睡眠とノンレム睡眠のリズムを調整するコルチコトロピンというホルモンが有利に働き、寝覚めがよくなるのだそうです。その結果、生活のリズムが整いやすくなり、感情の揺れも抑えられるわけです。■習慣4:1日1回はパワーナップをするパワーナップとは、夜の睡眠(本眠)ではなく、昼間に眠気を感じたとき15分程度とる仮眠のこと。睡眠に“質”という概念はないのだと著者はいいますが、パワーナップに関しては短時間で眠気をとるための効率が期待できるそうです。日中の一度のパワーナップが、本眠の1時間半ぶんにも匹敵する睡眠効果を発揮することも珍しくないのだといいます。著者がオススメしているのは、日課(ルーティンワーク)として取り入れられる仕組みをつくること。パワーナップの時間を最初から決めておくとか、休憩時間やお昼休みに合わせるということです。なおパワーナップは長ければいいというものではないので、休み時間が10分しかとれないという場合でも問題ナシ。■習慣5:眠る前にストレッチをすることを習慣にするストレッチは短眠にとって大切な習慣。しかし難しいものではなく、手足の先端まで血液を流すこと、膝の裏の筋を伸ばしておくこと、そして股関節の鬱血した血液を流すだけで十分だそうです。たった2分のストレッチ運動でも、目覚めのスッキリ感は別次元だといいます。■習慣6:週に1~2回であれば、長時間睡眠OK短眠のカリキュラムを実行しているときでも、どうしてもつらかったり、のっぴきならない覚醒時の諸事情があったりする場合も考えられるでしょう。しかしそんなとき、週2回までなら長時間睡眠をしても大丈夫だと著者は伝えているといいます。ただし、2日連続の長時間睡眠はNG。恒常性維持機能(内部・外部の環境の変化によって身体のリズムが左右されないように維持する力)を長時間睡眠に合わせないためだそうです。たとえば土日が休みだからといって土日に寝だめしてしまうと、月曜日の朝やその後のウィークデーに、地獄のような睡眠不足の感覚を味わうことになってしまうというのです。■習慣7:本書を1日1回は広げて、短時間睡眠の知識を上書きする世の中には「長時間睡眠こそ正義」という理論が氾濫していて、意識しなくても勝手に情報が入ってくると著者はいいます。そして、だからこそ本書を何度も読むことが大切だとも。長時間睡眠に関する情報を遮断することも悪くはないものの、「短眠で生活することは間違っていない」と自分に刷り込むことが非常に大切だということ。*これ以外にも短眠を実現するための方法が細かく解説されており、その他、睡眠の常識を覆す新事実なども。当然のことながら、すべての人に適しているとは断言できないでしょうが、その一方にはこのメソッドを有効活用できる人もいるはず。短眠が自分に向いていると自負できる人にとっては、活用度の高い一冊になるかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※堀大輔(2016)『できる人は超短眠!』フォレスト出版
2016年07月04日「パラレルキャリア」という言葉を聞いたことがありますか?これは、複数の仕事を持ち、その境界を超えて活動する働き方のこと。たとえば、お笑いコンビ・ピースの又吉直樹さんが小説『火花』で芥川賞を受賞しミリオンセラーとなったことは、広く話題になりました。こうしたパラレルキャリアは、私たちの創造性やモチベーションに大きなメリットをもたらします。自身も映像ディレクターでありながらブックカフェ「6次元」を営み、作家としても活動する著者による『パラレルキャリア 新しい働き方を考えるヒント100』(ナカムラクニオ著、晶文社)から、その魅力を探ってみましょう。■「飽きる力」が人間に進化をもたらした!本書は、「パラレルキャリア」というまだ新しい考え方を自分のものにするヒントとして、100のトピックを紹介しています。たとえば、「人生7年周期説」。人間の脳にはもともと「一定の刺激に7年で飽きる」という性質があるという考え方です。世の中の事象に流行り廃りがあるのも、この性質によるもの。詩人で絵本作家の谷川俊太郎さんも、「あなたにとってクリエイティブとは?」という質問に「物事に『飽きる力』」と答えています。同時に、人間には「新しいものを好む」性質も強く備わっています。チャレンジを好み刺激を求めるからこそ、地球上で人間だけがここまで進化し、繁栄することができたといえます。いましていることに「飽きてしまう」のは当然のこと。「私って飽きっぽくって……」と欠点のように考える必要はありません。パラレルキャリアで複数の活躍の場を持ち、複数の課題を追い求めることは、創造力の源なのです。■労働時間を消費・浪費・投資の3つに分類「でも、いまやっている仕事で手一杯。新しいことをはじめるなんて無理」そう思う人もいるかもしれません。そんなときは、「働く時間」についてもう一度考えてみましょう。一見つかみどころのない「時間」のことを考える際には、「お金」の考え方を応用することが有効です。家計などの支出を振り返るにあたり、「消費」「浪費」「投資」の3つに分ける考え方を聞いたことがある人も多いはず。それを「時間」にも応用するのです。労働時間を「消費的労働」「浪費的労働」「投資的労働」に分けてみましょう。「消費的労働」とは「仕事をしてお金を稼いでいる時間」のこと。生きるために必要な、経済活動をしている時間です。「浪費的労働」は「必要のない労働をしている時間」。そして「投資的労働」は「将来に資産を増やすために使う時間」。勉強、読書、身体のトレーニングなど、現在の経済活動とは結びつかなくても将来の働き方につながる「時間の投資」を増やしていくことが、パラレルキャリアで幸せをつかむ秘訣です。■「20%ルール」でモチベーションアップGoogle社には、「20%は自分のやりたいことをやってみなさい」と積極的に社外活動を推奨する「20%ルール」というものがあるそう。パラレルキャリアを後押しする社内風土が根づいているのです。本業がおろそかになるなどのリスクも考えられるなか、なぜ社外活動を推奨するのか?その理由は、社員の「モチベーション向上」です。会社の枠組みに囚われず、心から「やりたい」と思えることにチャレンジする時間を持つことで、モチベーションを高めて創造性を生み出そうという試みなのです。新しいことへのチャレンジは、モチベーションのアップに役立ちます。そこで著者は、このGoogle社の「20%ルール」を自分自身に適用してはどうかと提案しています。たとえば、毎日20%の時間を、自分がやりたいと思ったことに使ってみるなど。仕事をしている時間が8時間なら、その20%にあたる1時間30分程度を読書や勉強、本業とはまったく違う生産活動に費やしてみるのです。なにが将来のパラレルキャリアにつながるかはわからないもの。家庭菜園やDIY、陶芸や裁縫などの趣味に費やすのもすてきです。もちろん、そうした活動がすぐにお金を稼ぐ仕事になるとは限りません。しかし、1日のこれだけの時間を「将来の自分のための時間」として使うことを自分のなかでルール化すると、本業へのモチベーションになり、気持ちもラクになるものです。*本書では、パラレルキャリアというテーマを通して、「働く時間ってどういうこと?」「自分にとって、幸せな働き方って?」など、「働く」ことへの自分のスタンスを確認することができます。「~ねばならない」から「~でありたい」へ思考を転換し、将来の自分にとってもっとも幸せな「働き方」を考える上でも役に立つ1冊です。(文/よりみちこ) 【参考】※ナカムラクニオ(2016)『パラレルキャリア 新しい働き方を支えるヒント100』晶文社
2016年07月04日ヨガはこれからのビジネスマンにとって、ランニングやウォーキング、ラジオ体操などと同じくらい一般的な習慣になる。そう断言するのは、『外資系エリートがすでに始めているヨガの習慣』(竹下雄真著、ダイヤモンド社)の著者。フィットネスクラブでウェイトトレーニングを中心とした肉体改造に携わったのち、心身をバランスよく鍛える手段としてのヨガの可能性に大きく共感。現在は会員制のヨガスタジオを、東京の広尾で運営しているという人物です。「姿勢」「呼吸」「瞑想」からなるヨガとは「フィジカル」と「メンタル」両方に作用する最強のエクササイズ。心と体が持つ本来のパワーを取り戻し、100%機能するように調整していくのだといいます。そして世界のビジネスエリートやトップアスリートは、ヨガの習慣がこれからの時代に必要であることを知っているのだとか。だからこそ著者のヨガスタジオにも、大企業の経営者からプロのアスリートまでが訪れているのかもしれません。■私たちには引き算エクササイズが必要興味深いのは、現代人に必要なのは「足し算」のエクササイズではなく、「引き算」のエクササイズであるという考え方。子どものころとは違って、大人になるとさまざまなものがのしかかってくるもの。たとえばテレビ、パソコン、スマホからは常に情報が垂れ流され、SNSでは嫌でも知人や友人の近況が飛び込んできて、しかも仕事に関する焦りやプレッシャーなど、あらゆる思いに囚われてしまうということ。その結果、朝の目覚めも悪くなり、起きたときから体はガチガチ。肩や首は重りが乗ったような感覚で、腰にも鈍痛。思考もモヤモヤし、幸福感とはほど遠い状況に……。いわば年齢を重ねるにつれ、体には余計な脂肪がつき、気持ちには余計な感情がこびりついてしまうということです。だとすれば、悲惨な状況から抜け出すために、心身をリセットする必要があるわけです。パソコンにたとえるなら、メモリがいっぱいになっているような状態だということ。そこでいったんリセット・リブートし、バージョンアップさせなければいけないわけです。■筋トレでは根本的な解決にならない!ちなみに本来の体調を取り戻し、健康でい続けるために、「筋トレ」を選ぶ人も少なくないはず。もちろん著者も、それを否定してはいません。体ががっちりとすれば、風邪もひきにくくなり、自信もつくはずだから。ただし、それが根本的な解決にはならないのも事実だというのです。筋肉をつけることで、ストレス耐性は高まるかもしれない。けれど、いってみればそれは鎧を着込むようなものだから。いい方を変えれば、“鎧を着込む”筋トレは「プラス」のエクササイズだということになるわけです。しかし、現代人のほとんどに必要なエクササイズは、むしろ余計なものをそぎ落とす「マイナス」のエクササイズではないか? 著者は、そう考えているのだといいます。そこで、ヨガに注目すべきだということ。なぜならヨガは、余計なものを取り除く「マイナスの」エクササイズだから。ストレスなど余計な情報をそぎ落とすことによって、「本来の自分の姿」が浮かび上がってくるのです。そしてその姿こそが、真の健康的なあり方だということ。■ヨガの瞑想がストレス解消にも効果的なお、ヨガは体だけではなく、心の健康にもよい影響を与えるのだといいます。ヨガを習いに行くと、一連のポーズをとったあとに5分から10分の瞑想(正確にはシャバーサナ)の時間があるもの。体の力を抜き、思考を空っぽにするわけです。近年、瞑想やマインドフルネスが注目されていますが、ポーズのイネージが強いヨガも、実は瞑想の要素が大きいということです。問題は、「ヨガは難しそうだ」というように感じている人が依然として多いこと。その原因は、「アーサナ」「プラーナ」「ニヤマ」など、難解な専門用語にあると著者も指摘しています。ヨガの思想は奥が深いので、そのすべてを理解するのはなかなか難しいわけです。しかし、それらを深く理解することよりも大切なのは、難しいことを考えず、楽しんでみること。呼吸を意識しながら、自分が気持ちいいようにポーズをとってみる。ストレスや情報で頭が混乱したら、軽く瞑想をやってみる。そうやって、少しずつ実践することによってヨガの楽しさに触れ、気軽に人生に取り入れることこそが重要だというのです。*本書には、ヨガに関する基本的な知識はもちろんのこと、すぐに実践できるヨガなども数多く紹介されています。気軽にそれらを取り入れてみれば、日々のパフォーマンスはきっと高まることでしょう。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※竹下雄真(2016)『外資系エリートがすでに始めているヨガの習慣』ダイヤモンド社
2016年07月03日『4歳~9歳で生きる基礎力が決まる! 花まる学習会式 1人でできる子の育て方』(箕浦健治、高濱正伸著、日本実業出版社)の著者は、1993年に「花まる学習会」を立ち上げた人物。ご存知の方も多いと思いますが、「花まる学習会」は「生きる力」を育み、「メシが食える大人=自立・自活できる人」、「モテる大人=魅力的な人」を育てることを最終目標にしているユニークな学習塾として知られています。いわば著者は、幼児から大学生まで、教育の現場で数多くの子どもたちを見てきた実績を持っているということ。興味深いのは、そうした経験に基づき、生きる力を育むうえで最良の時期は「4歳から9歳」の幼児期だと主張している点です。■人間は成長すると全く違う生き物になる子どもについて話すとき、花まる学習会では「人間は“変態”する生き物である」ということからはじめるのだそうです。変態とは、「全く違う生き物になる」こと。たとえれば、9歳くらいまではオタマジャクシ。個人差はあれど、10歳くらいは足の生えたオタマジャクシ。そして10歳以降は、しっぽの短くなった“ほぼカエル”=大人になるのだということ。オタマジャクシである9歳の子どもに「陸の上で飛び跳ねなさい」といっても、子どもにとってはつらいだけ。オタマジャクシがカエルのように振る舞うことは、どんなにがんばっても無理だからです。だからこそ、そのことを理解しない親の過度な叱責や期待は、子どもの自信喪失につながると著者は訴えています。自信を失った子どもは、時期が来ても陸に上がらず、水のなかで過ごすカエルになってしまうかもしれないとも。■4~9歳の子どもはできなくて当たり前著者はよく、4~9歳の子どもを持つご両親から「うちの子、じっと座っていられないんです」「何回いってもわからないんです」というような相談を受けるそうです。でも、それこそが4~9歳の特性。そう考えれば叱る理由はなくなり、「できなくて当たり前なんだ」と思えるはず。親にとってつらいのは、まれに「できる子がいる」ことだとか。そういう子がいると、したくないのに我が子と比較してしまい、「うちの子はこのままでいいのか」と心配になってしまうわけです。でも、子どものことはなんでも心配になるのがお母さんで、それが「母という生き物の特性」。たしかにそう考えると母としての自覚を持つことができ、子どもと向き合うことができるのではないでしょうか。子どもとは、母とは、どういう生き物なのか?その特性を知れば子育てが楽になり、子どもの成長の芽を伸ばす工夫ができるようになるということ。■両親の声かけや温かなまなざしが大事!個人差こそあるとはいえ、子どもは9歳ごろまでは、「自分はなんでもできる」と思っているのだそうです。でも実際は、できないことだらけ。生まれてすぐは立って歩くことすらできないのに、なんでもできると思っている。だから、はじめは臆することなく挑戦できる。挑戦した結果、できなかったとしても、お父さんやお母さんからのプラスの声がけや温かなまなざしがあれば、「自分はいつかできる」と思うことができ、また挑戦できるわけです。つまり、お父さん、お母さんがプラスに受け止めることで、子どももプラスに受け止めることができるという考え方。ここからもわかるように、4~9歳は、生きる基礎力が育まれる時期。そのため、「思いやりの心」「たくましい心」を“生きる基礎力”として身につけられるような経験、そしてまわりの人の態度や言葉が重要だというのです。■4~9歳は「経験の総量」を増やすべし私たち大人は経験上、「なにが大変でなにが危ないか」をわかっているもの。そのため子どもに対しても、つい先回りをして準備したり、子どもの行動を止めたりしてしまいます。たとえば雨が降りそうだと思ったら、傘を準備しておく。ケンカになりそうだと思ったら、ヒートアップする前に止めてしまうなどがそれにあたるわけです。しかしそれでは、いつまでたっても子どもは「わからない」まま。空がどんな色をしていたら、空気がどんな匂いだったら雨が降りそうなのか。相手にどんなことをしたらケンカになるのか、どんなことをいったら相手は起こるのか。経験しなければ、自然のことも、相手の気持ちもわからないまま。だとすれば結果的には、相手を思いやることができない大人に育ってしまうでしょう。そこで4~9歳の幼児期に、「経験の総量」をできるだけ増やしてあげることが大切だと著者はいいます。親としてはつい手を貸したくなりますが、4~9歳の子どもは激しいケンカをしても翌日にはケロッと忘れてしまうもの。「忘れやすい」「恨みを持たない」「自分はなんでもできると思っている」時期だからこそ、子どもに自由にやらせてあげることが大切。いいかえれば、この時期に「思いどおりにならない経験」をたくさん積むことが、子どもにとっても成長のチャンスだということ。*花まる学習会式の考え方は、ひとつひとつが核心を突いていて痛快。読んでみれば、気づけなかったことに気づくことができるかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※箕浦健治&高濱正伸(2016)『4歳~9歳で生きる基礎力が決まる! 花まる学習会式 1人でできる子の育て方』日本実業出版社
2016年07月02日「毎日残業ばかり」「やりたいことがあるのに、仕事が忙しくて時間がない」という人は多いはず。また、決してさぼっているわけではないのに、締め切りギリギリになるといつも時間が足らず徹夜になってしまうという人もいるのではないでしょうか。『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』(中島聡著、文響社)の著者は、元マイクロソフトの伝説的なプログラマー。「ドラッグ&ドロップ」や「ダブルクリック」などを現在の形にしたことでも知られています。本書は、著者がアメリカで優秀なプログラマーたちと仕事をするなかで編み出した時間術が紹介されたもの。人の能力がいきなり向上することはなくても、すべての人に等しく与えられている「時間」の使い方を徹底的に突き詰めれば、必ず成果をあげることができるといいます。それでは早速、具体的な方法を見ていきましょう。■常に締め切りを守れる人は100人中1人もいない著者が日米で優秀なプログラマーたちと仕事をするなかで、「常に締め切りを守れるような仕事をする人」は100人中1人もいなかったといいます。チームで仕事をする場合、誰かのタスクの遅れは他のタスクの完了に影響し、最終的に全体のスケジュールの遅れに発展してしまいます。そんな状況を避けるには、プロジェクトに関わるすべての人が「必ず期日内に仕上げる」という強い意志を持って仕事に臨まなければいけません。予測不能な事態が起こることは避けられませんが、スケジュールの立て方、仕事の進め方を改善すれば、常に締め切りを守ることは可能なのです。■「ラストスパートでなんとかなる」が諸悪の根源!締め切りに対して多くの人考えがちなのが、「予定通りに仕事が進むとは限らない」「締め切り目前になんとかしてがんばる」「どうしても間に合わなければスケジュール変更をしてもらうしかない」という3つ。締め切り=努力目標のような意識がどこかにあり、目標に向かって精一杯努力することが大切という体育会系の姿勢になってしまっているのです。そして、いちばんいけないのが「最後にがんばればなんとかなる」というラストスパート志向。これでは最後の最後までその仕事の難易度がわからないうえ、期間の後半に予想外のアクシデントが起きた際、タスク完了までの時間が延び、他の人に迷惑をかけてしまうこともあります。だからまず、この考えは捨てなければいけません。■最初の「2日で8割」終わらせれば余裕が生まれるたとえば上司から「この仕事を10日でやっておいて」といわれたとします。大事なのはまずここで「(10日で)できると思います」と安易に返事をしないこと。「まずはどのくらいかかるかやってみるので、スケジュールの割り出しのために2日ください」と答えましょう。そうしたら、その2日間は全力でその仕事に取り組み、「ほぼ完成」の状態にまでもっていきます。ここで「8割方できた」という感覚があれば、上司に「10日でできます」と伝えればOK。もしそこまで至らなかったら、相当難しい仕事と覚悟し、上司に締め切りの延長を相談してみてください。上司に延長を申し出るのは早いに越したことはありません。つまり、与えられた期間の2割で8割の仕事を完成させることが、締め切りを厳守するための仕事術なのです。締め切りが5日後なら1日、3日後なら半日、1日なら3時間が目安です。2割の期間で8割の仕事が終わっていれば、残りの8割の期間でゆったりと2割の仕事をすればいいだけです。次の仕事の準備やこまごまとした他の仕事をすることもできるでしょう。時間に余裕がある時期に全力疾走し、締め切りが近づいたら流す。これくらいハードなスタートダッシュをしない限り、ラストスパート志向はなかなか変えられないものです。■次回が大変になるので締め切り前の提出は絶対ダメただし、いくら2日間で仕事が8割終わったからといって、もう1日がんばって3日でそれを完成させて上司に持っていくのはNG。3日で終わらせれば、続けざまに次の仕事を依頼され、さらに同程度の仕事なら3日でできるだろうと締め切りを短く設定されてしまいます。2日間全力で働くことができても、永遠に全力で働くことはできません。いつも全力を出していると真の実力が出せなくなってしまいます。仕事を早く終わらせることより、安定して続けることを意識することが大切なのです。結果的には焦って仕事をしていたときよりも早く、高い完成度の仕事ができるようになるでしょう。さらに、2日で8割の仕事が終わっていると心の余裕も生まれるもの。生産効率も上がり、よい循環を生み出せるはずです。*著者は仕事を全力でやる初めの2日間を、「手を動かしながら考える」状態だといいます。メールもSNSもシャットアウト、仕事の合間に散歩したりコーヒーを淹れたりすることもないそうです。想像するより簡単なことではありませんが、これが時間を制する方法なのです。本書を参考に、自分の時間の使い方を振り返り、時間の主導権を自分の手に取り戻しましょう。(文/平野鞠) 【参考】※中島聡(2016)『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』文響社
2016年07月01日きょうご紹介したいのは、『聴くだけで集中力が高まるビジネス瞑想CDブック』(平本あきお著、きこ書房)。メンタルコーチである著者が豊富な経験に基づいて開発したという、ビジネスパーソンのための「ビジネス瞑想」というメソッドを解説した書籍です。その名称を聞いただけではイメージしづらいですが、著者によるとビジネス瞑想には次の3つの特徴があるのだそうです。(1)世界最速、短時間で深い瞑想に入れるので、その日からすぐに結果につながる(2)カフェやトイレ、満員電車の立ち姿勢でOK。どこでもできる(3)はじめての人でも驚くほど気持ちがいい。がんばらなくても続けられるそしてビジネス瞑想には、13もの効能があるのだそうです。ひとつひとつをチェックしてみましょう。■1:自分自身の思考に気づくことができる多くのビジネスパーソンの頭のなかには、常に膨大な思考が駆け巡っているもの。時間に追われながら正しい判断を求められ続けると、心も身体も疲れ果て、パフォーマンスが落ちていきます。そんなときビジネス瞑想をすると、思考を無理に鎮めようとせず、あるがままを受け止め、物事を静かに見つめられるようになるそうです。■2:心・身体・頭のリラックスがうながされる瞑想には、心・身体・頭が空っぽになって、十分なリラックス状態(スイッチがオフの状態)へと導く効果が。十分にリラックスできてこそ、オンの状態で集中力がアップし、高いパフォーマンスを発揮できるといいます。■3:立ち止まって日々の判断の軌道修正ができる目先のことにとらわれず、常にその先の「目的」を意識できるようになるのだとか。そこで無理なく心に余裕が生まれ、いつでも立ち止まって、柔軟に軌道修正する力が身についてくるというわけです。■4:折れない心をつくることができる想定外のことや、思いどおりにならないことが起こっても、折れない心を身につけておけば、ストレスはかなり軽減できるもの。ビジネス瞑想を習得すると、そんな力がつくようになっていくそうです。■5:本当の自分(人生の目的)を知ることができる瞑想をすると、自分では気づいていなかった感情に気づくことができ、湧いてくる喜怒哀楽すべての感情を受け入れられるようになっていくといいます。さらには、ネガティブな感情の内部に隠れた、本当の自分を知ることも可能。■6:目の前にある幸せに気づく瞑想の習慣が身につくと、過去のことを考えすぎて憂鬱になったり、落ち込んだり、未来を考えすぎて不安や心配ごとに惑わされたりすることもなくなっていくことに。■7:相手のありのままを受け入れられるようになるビジネスの世界では、相手の立場に立って受け入れる姿勢が大切。そしてそのためには、ありのままの自分を受け入れたうえで、それをいったん脇に置き、相手を受け入れていくというプロセスが必要。瞑想を実践していくと、そのプロセスが進んでいくそうです。■8:相手と深い信頼関係を築けるビジネス瞑想を実践していくと、真の思いやりや勇気づけの姿勢を発揮できるようになるため、相手と揺るぎない信頼関係を築いていくことができるようになるのだといいます。■9:複雑な問題を解決できる相手と意見が対立してしまうことは、どんな状況でもあるもの。しかしビジネス瞑想をすると、どんな状況であっても、お互いがwin-winになるような形で問題解決できるようになるとか。■10:大局観が身につく仕事に追われていると、目の前の仕事をこなすことに精一杯になり、視野が狭くなりがち。しかし瞑想をすることで、いつの間にかついてしまった思考の枠が取り払われていくそうです。■11:ブレない強靭な意志を持つことができる瞑想習慣が定着すると、意思決定する際に「間違いなくこれだ!」と確信が持てるようになるといいます。■12:目の前にあるすべてをチャンスにできる生きていくうえではあらゆる困難と直面することになりますが、瞑想が身についていくと、目の前の困難をチャンスにできる精神状態が得られることに。■13:シンクロニシティが起こるようになる瞑想をすると、思考・感情・行動(言動)・意識が一貫するため、シンクロニシティ(偶然の一致)が起こりやすくなるのだそうです。自分が望んでいるものや人との出会いに恵まれ、願いがどんどん叶っていくということです。*このように、ビジネス瞑想のメリットは多岐にわたっています。そして本書には瞑想状態を誘発するメッセージが収録されたCDが付属しているため、ビジネス瞑想の基本を目と耳から学ぶことが可能。日常生活に取り入れれば、パフォーマンスを高めることができるかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※平本あきお(2016)『聴くだけで集中力が高まるビジネス瞑想CDブック』きこ書房
2016年06月30日ここ数年でメディアに登場するようになった、「不食」という言葉を聞いたことがありますか?ダイエットでもない、断食でもない、ただ「食べない」という生き方を選んでいる人が、世界にはすでに10万人いるといわれているそうです。「でも、なにかしらは食べているだろう」と思うのが一般的な見解でしょうが、5月に発売された『不食という生き方』(秋山佳胤著、幻冬舎)の著者である秋山佳胤さんは、2008年の3月から一切の飲食をしないで現在に至っているそうです。水さえも飲まないと聞くと、にわかには信じられない気がしますよね。この本には、それまで普通に食事をしていた秋山さんが、どのようにして不食の道を選ぶに至ったか、そして不食が秋山さんにもたらした劇的な変化について書かれています。■不食者は「気」を摂取して生きている生きて活動するにはエネルギーが欠かせません。では、不食者はどうやって生きるために必要なエネルギーを得ているのでしょうか。本書によると、不食者は、「プラーナ」と呼ばれる、大気中に無限に存在するエネルギー、つまり「気」を摂取して生きているそうです。秋山さんが不食に出会ったのは、弁護士浪人中に気功に出会って、「気」の存在を知った後のことでした。もし気功を学んでいなかったら、不食のメカニズムを理解することはなかっただろう、と秋山さんは振り返っています。不食を知った直後に、体調を崩し、1週間食事がまともにできないという災難に見舞われた秋山さん。ところが、これが「災い転じて福と為す」となり、食べないことは可能かもしれないと思ったのだそう。とはいえ、秋山さんといえども、すぐにまったく食べないようになったのではなく、2年かけて、減食、少食、微食、そして不食になっていったといいます。■食べても食べなくてもOKなスタンス不食がダイエットや断食とまったく違うところは、我慢して食べないわけではないという点です。秋山さんは、「我慢をしない、食べたいときには食べる、期限を決めない」といった独自のルールのもと、だんだんと空腹に慣れていったそうです。プラーナは、リラックスして緊張しなくなると、摂取量が上がります。反対に、食べることに罪悪感を抱いたり、自分を裁いたりしてしまうと、緊張感が生まれ、プラーナを摂取する力は弱まります。そう考えると、競争社会のなかでストレスまみれの現代人が、暴飲暴食に走るのも無理はない気がしますね。秋山さんは「過食はストレスをまぎわらすための代償行為」と言っています。■不食は寿命が伸びるなどのメリットが不食を実践することで、次のようなメリットがあるそうです。(1)免疫力がアップする(2)若返る(3)寿命が伸びる食事は異物を人体に同化する作業。その作業には膨大なエネルギーが必要なため、食べれば食べるほど、体内の他のエネルギーはそちらに持って行かれます。逆に食べないと、エネルギーがセーブされ、それが免疫力を上げたり、寿命が伸びたりすることに使われるというのです。すぐに食べないことのメリットを実感することは難しいかもしれません。けれど、食べすぎると、頭が働かなかったり、体が重くなったりすることは、誰にも経験のあることですよね。まずは食事の量を減らすことで、自分の体にどんな変化があるか、みていくのはいかがでしょうか。■不食は健康なだけでなく地球も救う!食べる量を減らす、あるいは食べなくなると、自然界のあらゆる存在と自分の結びつきがみえるようになった、と秋山さん。蚊を殺しても、自分に痛みが走るようになったとか。また、秋山さんの職業のひとつは弁護士ですが、弁護士には裁判がつきもので、裁判には勝負が欠かせません。秋山さんは、訴訟相手にも「あなたのおかげで私がいます、ありがとう」と愛を送っているそう。そうすることで、面倒だと噂のあった訴訟相手が真摯な態度になったり、味方になったりしてくれるようになったというのですから驚きです。一見、弁護士のあり方の逆をいくような秋山さんですが、最近は、弁護士会から講演を依頼されることもあるそうです。不食者が増えれば、裁判のあり方さえ変わっていくかもしれません。不食の可能性は、ほかにもまだまだあります。世界の中でも日本は、年間の食品廃棄物が多いといわれています。事業系で1916万トン、家庭系で885万トンとも(2012年度・農林水産省による推計)。本書を読むうちに、不食は、人口問題や食糧難を含む環境の問題を一気に解決へと導く鍵になる気がしてきました。*筆者もそうですが、普段、特になにも考えず、食事の時間になったから食べている人も多いのではないでしょうか。最後は、秋山さんの言葉で締めくくりたいと思います。「本当にお腹が空いた時にだけ適量を食べ、少しずつ食べる量を減らしてください。食べる量を減らすだけで、私たちは地球に貢献できます。自然界をご覧ください。過食の動物はいません」(文/石渡紀美) 【参考】※秋山佳胤(2016)『不食という生き方』幻冬舎※食品ロスの削減・食品廃棄物の発生抑制-農林水産省
2016年06月30日若者の草食化が進んでいるといわれていますが、中高生の性行為経験率は上がる傾向にあります。その結果望まない妊娠へとつながることもあり、10代の人工妊娠中絶は年間2万件近くにのぼります。これは1日に換算すると約53件にもなるのです。『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(橘玲著、新潮社)のなかで、著者は「女子校の生徒より共学の生徒の方が、望まない妊娠をするケースが多い」といいます。それはただ単に女子校の生徒が、男子との交際機会が少ないからという理由ではなく、共学ならではの社会性が関係しているそうです。さっそくその理由を見ていきましょう。■そもそも男女の脳には明らかに違いがある男性と女性の脳組織には明らかな違いがあると言っても過言ではありません。例えば、脳の左半球に卒中を起こした男性は言語IQが20%低下しますが、右半球に卒中を起こした場合は言語IQの低下はほとんど見られません。一方、女性は、左半球に卒中を起こした場合は言語IQ9%の低下、右半球に卒中を受けた場合は言語IQ11%の低下となっています。つまり、男性は言語を使うときに右脳をほとんど使用していないのに対し、女性は言語機能が広範囲に分布していて、左右両方の脳を使っているということがわかります。こういった脳の機能的な違いは、興味や関心など様々な面に影響を及ぼすのです。■男女のクラス分けで望まない妊娠が減る!男女の脳の機能の仕組みに違いがあることにより、子どもの頃から男の子と女の子では見え方や聞こえ方、遊び方、学び方が異なります。そのため、男女を別の学校で教育するというのはある種、自然なことであるという見方もできるのです。例えば、モントリオール(カナダ)の低所得者地域にある共学校で、男子と女子のクラスを分けたところ欠席が1/3に減り、テストの点数は15%アップ、大学への進学率も倍になったといいます。そして驚くべきことに、このクラス分けによって望まない妊娠をする女子生徒の数が著しく減少したのです。以前は1年につき平均15人ほどいたのが、2人ほどになったのです。■共学の男女関係では性行為を拒否しづらい女子校では共学校に比べて望まない妊娠をする生徒が少ないのは、以前から調査で明らかになっていました。しかし、それは女子校の生徒が男子と知り合う機会が少ないからではありません。学校内での生徒どうしの関係性にあるのです。共学校では男子と女子はどのグループに属するかによって、付き合う相手が決まります。スクールカーストのトップのグループにいる女子は、同じ「地位」の男子と付き合うのです。そのため、女の子に彼氏ができれば、その彼氏は彼女が所属するグループの一員となり、彼女もその男子のグループに紹介されます。つまり交際はグループ単位になり、何をするのも一緒でオープンな関係になります。すると、彼女が彼氏にフラれた場合、それは男女のグループ全員の知るところとなり、彼女は「フラれた女」というレッテルが貼られます。それは学校での社会的アイデンティティをゆるがすことにもなりかねません。また、男子はグループ内の他のメンバーは彼女と性行為をしているのに、自分だけがしていないとグループ内でバカにされるかもしれないと思い、彼女に執拗に性行為を迫るようになるでしょう。そうすると、彼女にとってもグループ関係を守るためにそれを受け入れざるを得なくなってしまいます。こうしたグループ内でのプレッシャーが望まない妊娠につながることがあるのです。一方、女子校の生徒は彼氏ができてもそのグループと付き合うことはあまりありません。共学の男女と違い、個人対個人の付き合いになるわけです。彼氏にフラれたとしてもそれが学校内の地位に関わることはありませんし、性行為をするかどうかも自分の意思で決定できるでしょう。グループ交際は一見健全のように思えますが、実は性的な決定に対して自律性を保ちにくくなるという弊害があるのです。*日本では「男女平等」が唱えられ、同じ教育をすることが正しいと考えられていますが、実は別々に扱う方がいい面もあると著者はいいます。本書ではほかに、「努力は遺伝に勝てないのか」「あまりに残酷な美貌格差」など、賛否両論を生むような項目が掲載されています。話題となるようなネタをお探しの方におすすめです。(文/平野鞠) 【参考】※橘玲(2016)『言ってはいけない 残酷すぎる真実』新潮社
2016年06月30日ご存知の方も多いと思いますが、『「稼げる男」は食事が9割』(森拓郎著、KADOKAWA)の著者はフィットネストレーナー。足元から顔までを美しくするボディワーカーとして、運動の枠だけに縛られず、さまざまな角度からボディメイクを提案している人物です。これまでにも17冊もの書籍を出版していますが、少し意外なのは、そのうち食事に関するものが15冊を占めるということ。根底にあるのは、「運動指導者だからといって、運動だけしか選択肢がないのは間違っている」という思いだといいますが、つまりは本書も、そのような考え方に基づいて書かれたもの。タイトルからも想像できるように、ビジネスパーソンをターゲットとして「稼げる男」になるための食習慣を紹介しているわけです。でも、“稼げる男”と“食事”には、どのような相関関係があるのでしょうか?■高年収な男性は歩数が多く肥満率低め「平成26年度国民健康・栄養調査結果」によると、運動する習慣の有無は、それほど所得の差に関係はないそうです。ただし1日の歩数は、所得が200万円未満の世帯の男性が6,263歩であるのに対し、600万円以上では7,592歩。つまり後者の方が1,300歩ほど多いという結果が出ているわけです。1歩が70cmとすると、約900mの差。これについてはいろいろな解釈ができそうですが、たとえば営業マンであれば、それだけ多くの取引先を回っているということになるのかもしれません。では、体型と所得の相関関係?所得が200万円の世帯の男性の肥満率(BMI25以上)が38.8%であるのに対し、600万円以上では25.6%と、13%も低くなっているとか。いってみれば、年収が高いほど太っていないという傾向があり、乱暴にいえば「太っていると稼げる男になれない」という仮説が成り立つということ。■高年収な男性は自分の体を考えているそれから、所得の差によって大きく数値が変わるもうひとつの項目が「検診の未受診率」。所得が200万円未満の世帯の男性の未受診率が42.9%なのに対し、600万円以上では16.1%と大きな差があるというのです。この数値からは、自分の健康についてきちんと考えているか、考えていないかによって所得に大きな差が出ることがわかります。つまり、稼ぐための資本そのものである自分の体のことを普段から考えていて、さらには健康であることが、稼げる男の条件だということです。ちなみに稼げない男は、朝食にも問題があるようです。■朝食が米や甘いパンの男性は稼げない食事は自分への投資。そして、「食事をコントロールできる者こそが稼げる男になれる」と著者は断言します。そのためには、糖質中心の食事から、糖質オフ、さらにたんぱく質や脂質を十分にとる食事に変えていく必要があるのだとか。特に独身男性には、コンビニのおにぎりや菓子パンで済ませたり、あるいはジャムを塗った食パンを食べたりして家を出るという人も少なくないはず。「朝食はしっかり食べて、脳にブドウ糖を送らないといけない」と考えている人ほど、このようにいい加減な朝食をとっているといいます。しかも、なんでもいいから食べるべきだと考えている人ほど、お手軽なパンに走る傾向にあるのだとか。ところが、そのように糖質に偏った朝食のパターンを繰り返していたら、当然のことながらメタボまっしぐら。■糖質が少なくて高タンパクな朝食を!では、どのような朝食がいいのでしょうか?朝に糖質中心の食事をすると、過剰に血糖値が上昇。しかもそのあとインスリンの作用で急降下してしまうため眠くなり、パフォーマンスが下がることになります。そこで著者の場合は、朝食の糖質の量を減らし、スクランブルエッグやオムレツ、ゆで卵などのタンパク質や脂質が豊富な卵料理を中心に、納豆や鶏肉、サバ缶など高タンパクなものを摂るようにしているそうです。また、時間があまりないときなどは、サプリメントとしてプロテインを利用することも。プロテインには筋肉増強剤のようなイメージがありますが、それは大きな誤解だといいます。プロテインは日本語のタンパク質を英語に置き換えただけのものなので、糖質の塊である砂糖をシュガーというのと同じこと。それどころか、同じ量の米やパンを食べるくらいなら、プロテインを同量摂取した方がよほど体内では有益な栄養となり、体脂肪となる確率は格段に下がるというのです。*これはごく一部で、他にも有益な情報満載。なにより、食事を“稼げる”か“稼げないか”で捉えている点がユニークです。男性の場合は自分自身の、女性の場合はご主人や恋人の生活改善に役立ちそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※森拓郎(2016)『「稼げる男」は食事が9割』KADOKAWA
2016年06月29日メンバーの残業を減らすことは、リーダーにとって重要なテーマ。ですが、残業は減らせたけれど業績もダウンした……なんてことは避けたいですよね。「本気でチームの残業ゼロを実現させたい! でも成果は出し続けたい!」そんなときに参考にしたいのが、『残業ゼロだからこそ目標達成!! 本気でやるチーム時短術』(伊庭正康著、明日香出版社)。著者はリクルートグループ出身で、リクルート時代に残業レスのチームをつくり上げ、全国年間トップを4回達成。そのキャリアを通して数々の残業ゼロ時短術を編み出してきた、凄腕リーダーです。本書のなかから、勤務時間にまつわるアイデアを1日の時系列でピックアップしていきましょう。■1:始業前「朝イチの時間を活用する」勤務時間中は、部下からの報告や相談といったコミュニケーションに時間を取られがち。でも、リーダーの仕事はそれだけではなく、事務仕事などの通常業務も山積みです。そこでおすすめなのが、朝一番に出社して始業までに自分の仕事を片づけること。著者自身、毎朝7時に出社して9時の始業までに自分だけで完結する仕事を片づけていたそう。「朝の2時間は、夜の6時間に匹敵する」と、その効果を強調します。■2:始業時「メンバーに“今日の帰社時間”を申告させる」メンバーが出社したらまず、自分のパソコンに「〇時に会社を出る」という旗やふせんをつけてもらいます。ポイントは、本人に時間を決めさせること。部下それぞれに、朝の段階でその日に成し遂げたい業務を決めてもらい、何時までにそれを終わらせるか宣言させるのです。みんな、自分で決めた時間だからこそ守ろうと必死になるはず。その結果、業務がムダなく効率的に回ります。■3:勤務中「2時間ごとの“1行連絡”を徹底させる」成果を上げるリーダーは、メンバーの進捗状況をしっかり把握しているもの。しかし、一人ひとりに都度確認していたら、時間はいくらあっても足りません。効率的な方法は、メンバーの方から報告させること。2時間に一度、メールやSNSを活用して1行で簡潔に。「2件商談しました。16時にあと1件行きます」「いま、会議が終了しました。例の件、来週の月曜日が開始日になりました」といった具合です。■4:会議中「タイムキーパーを立てる」ダラダラと長引きがちな会議には、一人タイムキーパー役を決めましょう。会議終了3分前に「あと3分です」、1分前には「まとめに入ってください」とアナウンスしてもらい、時間が来たら「終了です」と告げてもらいます。この方法で「会議は5分前終了」を鉄則にすれば、会議自体のクオリティーを高められるだけでなく、次の予定にスムーズに移行できて1日のいい流れがつくれます。■5:ランチタイム「ひと月で2泊3日の研修に匹敵」お昼はチームのメンバーとのランチミーティングに。成績が上がらないメンバーや、まだ仕事になれないメンバーと、お昼を食べながらのざっくばらんなコミュニケーションがチームの風通しをよくし、強いチームに近づきます。1回1時間として、月20日で20時間。これは「2泊3日の研修に匹敵するほどの時間」と著者。職場の不満や問題点を聞き出すことは、チームの改善につながります。■6:終業時「1日の終わりに3分ミーティングを」チームを残業ゼロに導くには、「仕事は就業時間内に終わらせる」という意識を徹底させることが不可欠。新参メンバーや時間管理の苦手なメンバーにその意識を持ってもらうには、1日の終わりに3分程度でいいのでチーム全体でミーティングをするのが効果的。ミーティング後は仕事に戻らない、残る場合はリーダーの承認が必要というルールにすれば、メンバー全員に「終業ミーティングまでに仕事を終わらせる」という意識が育ちます。■7:残業時間「いきなり残業ゼロを目指さない」強引に残業ゼロを推し進めても、サービス残業や自宅作業が増えるだけ。成果の出続ける残業ゼロの秘訣は、1~2年かけてじっくり取り組むことです。たとえば月平均で「1日あたり3時間」残業していた場合。初めの半年~1年は「意識づけ」の期間とし、個人が工夫して「1日1.5時間」まで短縮します。その後、定例会議をやめるなど職場のルールや習慣にメスを入れるのです。*一人ひとり考え方の違うメンバーをまとめ、同じ方向へ向かわせるのがリーダーの使命であり、難しさでもあります。長く組織を率いてきた経験から、著者は「最初から全員を時短に向かわせるのは難しいもの。2:6:2の法則で考え、まずは2割を本気にさせましょう。すると6割にも引火します。8割が本気になれば、残りの2割も変わらざるを得ません」とアドバイス。初めから全員を本気にさせるのは至難の技です。2:6:2の法則で小さな成功を積み重ねることこそが、「本気でやるチーム時短」の秘訣といえそうです。(文/よりみちこ) 【参考】※伊庭正康(2016)『残業ゼロだからこそ目標達成!! 本気でやるチーム時短術』明日香出版社
2016年06月29日