「世界自閉症啓発デー」とはUpload By 発達ナビニュース2007年の国連総会において、毎年4月2日を「世界自閉症啓発デー」とすることが定められました。それぞれの加盟国が、自閉症(自閉スペクトラム症)についての理解が進むように意識啓発の取り組みを行うことなどが求められています。また、日本では、4月2日から4月8日は発達障害啓発週間となっています。自閉症(自閉スペクトラム症)について十数年前に比べ日本での認知度は高まったものの、今もなお偏ったイメージやあいまいな情報も存在しています。自閉症(自閉スペクトラム症)に関しての研究は世界で現在も続いており、はっきりとした原因はいまだ特定されていません。しかし、何らかの生まれつきの脳機能障害であると考えられており、しつけや愛情不足など育て方が直接の原因ではないことが分かっています。自閉症(自閉スペクトラム症)のある子どもはこだわりが強かったり、感覚過敏や感覚鈍麻などの特性があります。そのため、育てにくさを感じたり、適切な接し方が難しいと感じる場合があります。しかし周囲の自閉症(自閉スペクトラム症)についての理解や支援が十分であれば、自閉症(自閉スペクトラム症)があっても住みやすい環境で、その人らしく充実した生活をすることができます。「世界自閉症啓発デー」は、自閉症(自閉スペクトラム症)に関する理解を深めることで、自閉症(自閉スペクトラム症)のある人を含めたすべての人が過ごしやすい世界を実現していくための日なのです。「Warm Blueキャンペーン」に参加しよう!Upload By 発達ナビニュース「癒やし」や「希望」などを表すブルーを、自閉症(自閉スペクトラム症)のシンボルカラーとしています。毎年4月2日はナイアガラの滝やピラミッドなど世界中のさまざまなランドマークが青に染められ、また青い服を身に着けるなどの青をテーマにした啓発イベントが各国で行われます。4月2日に向け青いものを身に着けたり、ブルーにデコレーションした施設などの写真をSNSに投稿してみませんか?以下のハッシュタグをつけてぜひ投稿してください!#自閉症啓発デー #WB_2022 #2022TT #LIUB発達ナビ連載陣にも「青」をテーマにイラストを描きおろしてもらい、SNSで発信中です。ぜひチェックしてくださいね。東京都自閉症協会、Get in touchを中心としたTT2022実行委員会主催のオンラインイベントが予定されています。発達障害当事者のふわふわおさん、ミス日本グランプリの河野瑞夏さんが司会。ゲストとして自閉スペクトラム症のある方々、Get in touch代表で俳優の東ちづるさんが登場し、さまざまなブルーアクションを紹介します。日時:2022年4月2日16:40配信スタート予定※詳細ボタンをクリックすると発達ナビのサイトからYouTubeに遷移しますUpload By 発達ナビニュース4月2日に向け日本でもさまざまな取り組みが行われます。東京都で行われる取り組みの一部をご紹介します。■東京都都庁、東京ゲートブリッジがブルーにライトアップされます。■渋谷区4月8日まで渋谷区役所本庁舎、渋谷区子育てネウボラ、中央図書館がブルーでデコレーションされます。また自閉スペクトラム症や発達障害について、理解を深めてもらうための啓発パネル展示や関連書籍の展示を行うほか、区内障害者施設で制作したオブジェの展示やシブヤフォントを使ったオリジナルの啓発ステッカーも配布しています。■丸井グループ商業施設運営を行う丸井グループでは、各店舗にて、Blueの装飾やBlue商品コーナーの展開を行い、スタッフもBlueのアイテムやバッジを着用して、お客さまへ自閉症啓発デーの周知を行います。■SHIPSセレクトショップのSHIPSでは、各お店のウインドーをブルーで色どり、スタッフもブルーのコーディネートに。また、異彩を、放て。をミッションに掲げる福祉実験ユニット「ヘラルボニー」とのコラボ商品の販売がされます。■日本障がい者サッカー連盟武蔵野の森総合スポーツプラザ(東京都調布市)で東京のJクラブや障害者チームと一緒にまぜこぜウォーキングフットボールが開催されます。■アクサ生命ブルーのリストバンドと啓発ステッカーの制作、配布を行います。ほかさまざまな企業や自治体など100を超える団体がこのキャンペーンに参加しています。自閉症(自閉スペクトラム症)がある人だけでなく、どんな人もさまざまな個性をもっています。誰もが自分らしく日々を過ごせるように「世界自閉症啓発デー」を通して一人ひとりにできることを考えてみませんか。
2022年04月01日Get in touchの最初の活動が、「ウォームブルー・デー」、世界自閉症啓発デーのイベントだった発達ナビ牟田暁子編集長(以下――):発達ナビの読者には、東ちづるさんが理事長を務める一般社団法人Get ㏌ touch(ゲットインタッチ)の活動について、あらためてGet ㏌ touchはどういう団体なのかお話しいただいてもいいでしょうか。東ちづるさん(以下、東):Get ㏌ touchは、「誰も排除しないまぜこぜの社会」を目指すプロボノ団体です。主にアート、音楽、映像、舞台などのエンターテイメントを通じて活動しています。私たちは、まぜこぜ・多様な社会で暮らしているということを見える化・体験化していきます。メンバーはそれぞれ本業があり、さまざまな職種においてプロフェッショナルで、それぞれが培ってきたスキルやアイディア、人脈などを提供しています。特徴的なのはクリエイターやエンタメ業界に関わる人たちが多い、という点です。私個人は、30年前から社会的な活動をしていますが、ずっと何かモヤモヤしていたんですよね。それは、講演やシンポジウムに参加すると、同じような顔ぶれになりがちということ。社会課題への意識が高い人たちは集まっているけれど、本当は、こうした課題について無関心な人たちをどう巻き込むかを考えなくちゃいけないんじゃないの?と。――どんな活動がスタートだったんですか?東:最初は自閉スペクトラム症を啓発する活動からでした。4月2日の世界自閉症啓発デーのイベント「ウォームブルー・デー(Warm Blue Day)」の企画ですね。この4月2日には、先進国ではさまざまな形で「青くなっている」と知ったとき、「私は20年以上活動しているのに知らなかった」ということがショックだったんですよね。それが10年前です。「青くなる」というのは、街のライトアップをはじめ、新聞の文字をブルーにしたり、アーティストや芸能人、ニュースキャスターが、その日はこぞってブルーの服を着たり、ブルーのものを身につけたりしてメディアに登場するということなんです。そして、ブルーにするのは自閉スペクトラム症の啓発であることをみんな分かってやっている。これって、日本でもできるんじゃない!?と思ったんです。それも楽しみながら。はじめてのウォームブルー・デーのプロジェクトは批判が殺到!?Upload By 発達ナビ編集部――それが10年前なんですね。東:それまでも、自閉症協会さんや厚生労働省の働き掛けで、全国各地で青くライトアップされたり、青を使ってアピールしたりといった動きはあったけれど、「世界自閉症啓発デー」だからということは、一般の人にはほぼ知られていないという状況でした。なぜならメディアになかなか取り上げられないから。メディアに取り上げられるにはどうすればいいの?と考えて、エンタメでやっていこう!となったわけです。第1回は、東京タワーでウォームブルー・デー(Warm Blue Day)と名づけて、全国各地の自閉スペクトラム症があるお子さんのご家族や当事者、そうではない人たちが「まぜこぜ」に集まるというイベントを開催しました。ショップのウィンドウをブルーにデコレイトしてもらったり、ブルーにペイントされたスーパーカーのパレードがあったり、コスプレイヤーがブルーの服を着て歩いたり。にぎやかな祭典となりましたが、その裏では、警察や厚生労働省、自閉症協会をはじめ、さまざまなところに、私たちは一から企画の説明をして、文字通り泥臭い地道な調整をして実現したイベントでもありました。…でもね、この初回は、叩かれたりもしたんです。――そうだったんですか?それは、なぜでしょうか。東:エンターテインメントでしたから。こうした啓発活動をするときには、真面目にやらなくてはならない、というムードが日本にはありますよね。楽しいことは後ろめたい、というような。だから、「お祭り騒ぎをして何が啓発だ!」というお叱りをたくさん受けました。当事者ご家族、支援団体さん、厚生労働省からも、それはもうかなり賛同を得られませんでした。ところが、です。実際に蓋を開けてみたら、ものすごくたくさんの人が集まりました。そして、自閉症協会さんはじめ、自閉スペクトラム症や発達障害に関するサイトが問い合わせでパンクしたのです。そこでようやく、「ああ、これも啓発なんだ」と理解していただけました。今振り返ると、本当によく闘ったなと思います。――そうだったんですね。今やGet ㏌ touchは、自閉スペクトラム症や発達障害の啓発活動ではすっかり頼りにされている存在ですよね。東:ウォームブルー・デー(Warm Blue Day)に関しては、現在は東京都自閉症協会さんが都内の関連団体に呼びかけて集まった「東京タワー実行委員会(TT実行委員会)」に引き継いでいます。もはや私たちが始めたということも忘れられているくらいの盛り上がりになりました。これはGet ㏌ touchの成果の一つだと思っています。社会的に知ってもらうということが最初の目標でしたから。でも、4月2日には日本全国でさまざまな人たちが自発的に青い服を着たり、SNSで発信するのがあたりまえのように日常に溶け込んだ社会になったらいいなと思っています。たとえば、ハロウィンのようにね。障害がない人だけにマーケットが用意されているということへのモヤモヤUpload By 発達ナビ編集部――まぜこぜの社会を顕在化することを達成して、10年で解散することが目標ということでしたが、解散していないのはまだまだ課題があるということですね?東:新たなことがどんどん出てきますからね。でも、確実に社会はアップデートされています。その半面、分断はまた広がっているというか、生きづらさを抱える人が増えているのが現実です。私は、芸能界がグレードアップするといいなと思っています。「まぜこぜ一座」を立ち上げたときに、マイノリティの表現者たちのすごいスキルを目の当たりにしました。彼らの才能と努力は素晴らしい、けれども発揮する場が限られている。その才能を広く披露するチャンスがあらかじめ絶たれているという現実があります。最近気づいたことなんですが、私には、マイノリティの表現者たちに対する「後ろめたさ」もあるのだと思います。私は劇団出身でもないし、偉大な師匠について修行したわけでもない。そういうベースがなくても、芸能界で仕事をさせてもらってきたんですよね。もちろん、努力はしてきましたけどね。一方でマイノリティの表現者には、プロダクションもなく、活躍できるチャンスがまずない。私にはそれがあったんです、障害がないから。フラットにみんなにチャンスがある方が、私自身も気持ちよく仕事ができると思っています。ドラマや映画で当たり前のように共演したいんですよ。「まぜこぜ一座」のように、私が脚本を書いて演出するステージではなくて、オファーをいただいてドラマに出てみたら、私の上司がマメ山田さんで、部下が後藤ひとみさんで、同僚にかんばらけんたさんがいる、なんていう設定。すごく面白いと思う。海外では実際にそういう風にキャスティングされた映画やドラマがあって、いろいろな人たちが出演しています。海外のドラマを見ていると、普通にLGBTQの設定の役柄がある。主役ではなくて、障害やマイノリティを「克服する」といったテーマでもなくて。社員の一人だったり、近所の住人だったり、学校の生徒の一人とか、そういう方がいる日常が表現されているんです。それこそが多様性ですよね。日本でもそういうドラマや映画が増えたら、見る側の意識もかなり変わるはず。家族や友達、同僚の間でも、「そういえば、うちの学校・会社にはこういう人がいないよね、なんでだろう」とか、そういう話題が出てほしいと願っています。――当たり前だと思っていることについて、見直してみるといいんですよね。東:そうですね。見える人が見えない役を、聞こえる人が聞こえない役を演じるのもいいけれど、実際に聞こえない俳優もいるし、見えないタレントもいるので、チャンスはあった方がいいですよね。社内研修は、社会貢献じゃなくて社内貢献だった!Upload By 発達ナビ編集部――これから2022年度、やっていこうと思っていることは?東:やりたいことは、やっぱり解散ですよ、本当に。解散して、「まぜこぜ一座」も寄付による運営ではなく、ビジネスとして進めていけたら最高ですね。それから、今年はGet ㏌ touchとつながってくださっている企業さんでの、「まぜこぜの社会」についての社内研修に力を入れたいです。オンラインで研修ができるので、私とGet ㏌ touchのメンバーから、LGBTQの専門の人、自閉スペクトラム症に詳しい人などのチームで研修プログラムを展開します。実際に研修を行った企業さんからは、「社会貢献だと思っていたら、社内貢献だった」と言われるんです。家族に障害者がいる人が、実はこんなに社内にいたんだと気づかれたそうなんです。それまではあえてオープンにしていなかったんですね。うちの子は耳が聞こえないとか、発達障害のある子どもを育てているとか、親戚にダウン症のある子どもがいるんだということを。それが、社内研修をしてみると、多くの社員がそういう話をし始める。人事や取締役の方たちはびっくりしています。――そうしたことを言えないと、周りに遠慮したり、休みたくても休めなかったり、無理がたたって会社を辞めてしまうことだってありますよね。東:そうなんですよね。研修のディスカッションでそういう話がシェアできたら、その後は言いやすくなることもあります。だから社内貢献。そういう意味でも、発達ナビのユーザーさん、保護者のみなさんは、ものすごく頑張っていますよね。頑張り過ぎていない?ということが気になっています。グチを言ったり弱音を吐いたり、そういうことを発信できる場はあるので、そこでのびのびと心身を開放して、リフレッシュしてほしいと思います。――サードプレイスは大事です。肩書きとか立場とか関係なく弱音を吐けるところは必要です。そういう意味では、エンタメとしての劇場に、「まぜこぜ一座」の舞台がサードプレイスになりうるんじゃないかと。東:なると思います。劇場にはなかなか来られない方たちも多いので、ライブ配信したり、編集した映像をYouTubeで気軽に見られるようにしたりもしています。『月夜のからくりハウス渋谷の巻』4月2日には、#世界自閉症啓発デー#ブルーコーデをつけて発信をUpload By 発達ナビ編集部――今年の4月2日、ウォームブルー・デー(Warm Blue Day)も、みんなで楽しんで発信していきたいですね!東:そうですね。まずは、4月2日は国連が定めた世界自閉症啓発デーであると知ってもらうことが大事なので、青いものを見つけてハッシュタグをつけてSNSなどで発信していきましょう。Get in touchからは、#ブルーコーデ#世界自閉症啓発デー#WB_2022をつけて、青い服を着たり、青いアイテムを身につけたりした写真を、ぜひ投稿してほしいという提案をしています。――発達ナビ編集部でも盛り上げていきますね!文/関川香織撮影/鈴木江実子俳優。一般社団法人Get in touch 代表。広島県出身。会社員生活を経て芸能界へ。ドラマから情報番組のコメンテーター、司会、講演、出版など幅広く活躍。プライベートでは骨髄バンクやドイツ平和村、障がい者アート等のボランティアを30年間続けている。2012年10月、アートや音楽、映像、舞台等を通じて、誰も排除しない、誰もが自分らしく生きられる“まぜこぜの社会”を目指す、一般社団法人「Get in touch」を設立し、代表として活動中。自身が企画・インタビュー・プロデュースの記録映画「私はワタシ~over the rainbow~」が順次上映。『東京2020 NIPPONフェスティバル』のひとつとして世界に配信されている「MAZEKOZEアイランドツアー」の総合構成・演出・総指揮を担当。「私はワタシ~over the rainbow~」「MAZEKOZEアイランドツアー」
2022年03月20日21歳になった息子の様子現在、自閉症(自閉スペクトラム症)のある息子は21歳になりました。以前は多かった腕を噛むなどの自傷や、パソコンのマウスを思い切り叩きつけるなど物に当たり散らすこともたまにありますが、そうしたことは減ってきました。Upload By 立石美津子自分自身を傷つけるという行為は、形を変えながらも今も続いているのではないかと感じています。幼児、小学生のころの自傷身体への自傷が最も激しかったのは幼児期です。息子は6歳になるまで言葉が出なかったので、思い通りにならないとき自分の身体を傷つけるしか、方法を知らなかったのではないかと思います。Upload By 立石美津子例えば・自分の頭を叩く・腕を思い切り噛む・(普段は適切な量を口に入れることができるのにもかかわらず)入りきらない量の食べ物を口に押し込む・壁に頭を打ちつける・顔を叩くただ、「これ以上やると痛いぞ」のギリギリのところまでのラインでやっているように見えました。ですから、大けがをするようなことはありませんでした。言葉で自分を傷つけている?言葉がでるようになってからは、自分の身体を傷つけるだけでなく、言葉によって自分を傷つけるようになってきました。例えば、気持ちと反対のことを叫び、そして癇癪をおこすのです。「もう、帰る!」と家に居ながら叫ぶ。(←どこに帰る?)「入院する」(←入院したくない)「注射する」(←注射したくない)「家出してやる」(←家出したくない)「死んでやる」(←死にたくない)「9時58分に寝る!」(←毎日必ず10時に寝るこだわりがあるのに、僅かに時間をずらして叫ぶ)心にもない言葉を言うときの対応法これらの言葉は、実は息子の心にもないこと、望んでいないことだろうとわかるので、息子の言った言葉をオウム返ししながら、共感の形をとるようにしています。息子「もう、帰る!」と家に居ながら叫ぶ。私「もう、帰りたくなっちゃたんだね」息子「入院する」私「入院したくなっちゃったんだね」息子「注射する」私「注射したくなっちゃったんだね」息子「家出してやる」私「家出したくなっちゃったんだね」息子「死んでやる」私「死にたい気持ちになっちゃったんだね」息子「9時58分に寝る!」私「9時58分に寝たくなったんだね」火に油を注がないようにもし、「家出する!」と言ったとき、「気をつけていってらっしゃい」と家出を推奨するような言葉をかけたとしたら、特性のある息子は字面通り受け止めて、出て行ってしまうかもしれません。ですので、そのような言い方はしないようにしています。Upload By 立石美津子また、以前、次のように言ったことがあるのですが…「なんでそんなこと言うの!」「いい加減にしなさい!」これらは、火に油を注ぐ結果になってしまい、息子は激しい癇癪を起こしてしまいました。切り替えの手段を探す私は、身体への自傷も言葉での自傷も、自分の混乱した心の安定を図るためにやっているような気がしています。そんなとき親が止めようとすればするほど、混乱して自傷が続くことがあります。先に述べたように、癇癪をおこし自傷までするときは、共感する言葉をかけるのも一つの方法ではありますが、状況によっては、その言葉がけ自体が刺激になることもあるかもしれません。そんなときは時間経過によりクールダウンするのを待つしか方法がありません。わが家は共感の言葉でも息子が落ち着かないときは、黙って見守りながら、ぬるめの湯加減のお風呂を用意し、入浴を促します。息子の場合は、風呂につかり気分が変わると、気持ちの切り替えがしやすくなるようです。お子さんによって、切り替えられるきっかけはそれぞれだと思います。それを一緒に探してあげるのも大切なことだと感じています。執筆:立石美津子(監修者・鈴木先生より)思い通りにならないときの癇癪は自閉スペクトラム症の易刺激性からきていると考えられます。マンションの壁を蹴って穴をあけたり、ドアを壊したりするケースも多いです。自傷や他傷は抗精神病薬で調整することも可能です。爪をかむお子さんには、「爪はばい菌がたくさんついていてきたないよ」と説明したりしますが、それでも難しい場合は、逆に透明なマニュキアを塗ってきれいにして「噛まないでおきたい」と思わせるようにしてみるのも一つの手です。いい景色を見て散歩したり、何か運動したり、音楽を聴いたりするのもいいですね。また、リズムが乱れると癇癪をおこしやすくなるので、サーカディアンリズム(睡眠覚醒リズム)を規則的にすることも重要です。
2022年03月01日マンガで自閉症スペクトラム(ASD)を学ぼう!マンガで分かりやすく発達障害が学べる『マンガで学ぶ発達障害』シリーズ。自閉スペクトラム症(ASD)について分かりやすく解説した3つのコラムをまとめてご紹介します。主に社会性と対人関係、コミュニケーションの困難、行動や興味の偏りなどの特徴があると言われている自閉スペクトラム症。その特徴の詳しい説明や、自閉スペクトラム症の診断や治療方法、困りごとを解消するために行いたい療育について、強いこだわりがある場合が多いASDのある子への接し方など、公認心理師の井上先生の解説とともに詳しく解説します。自閉スペクトラム症(ASD)は先天的な発達障害の一つで、・社会性と対人関係・コミュニケーションの困難・行動や興味の偏りの2つの特徴があると言われています。このコラムでは自閉スペクトラム症の特徴や原因について解説します。自閉スペクトラム症の医学的な治療の話や療育方法を解説します。自閉スペクトラム症の特性に合わせてトレーニングをしたり、環境調整をすることで、困りごとを改善したり、得意なことを伸ばしたりできるのが療育です。そんな療育の原則『SPELL』についても詳しく説明!自閉スペクトラム症のある子どもは、強いこだわりや特性などを持つことが多いです。どのように接すればいいのか、9つのポイントとともに解説します。まとめ自閉スペクトラム症のある子は、ものしりだけど、興味の対象が独特だったり、知識に偏りがあることが多く、一人で遊ぶのが好きでお友達に関心をしめさない、初めてのことが苦手で不安にもなりやすいです。ですが、そのユニークな感性を尊重し、接することで、唯一無二の個性となっていきます。まずは自閉スペクトラム症のある子どもそれぞれが抱える苦手なこと、困っていることを知って、その世界を一緒に楽しむことが成長や生きやすさにつながっていくはずです。
2022年01月23日成長と共にオムツ交換スペースを利用しずらくなってくる自閉スペクトラム症のあるPが、3歳のころの話です。外出先でオムツ交換スペースを利用したくても、「ベビールーム」「赤ちゃん休憩室」と書かれている場合が多く、3歳になり身長も大きくなったもう赤ちゃんではないPが、赤ちゃんや小さな子たちと同じスペースでオムツを交換するという行為が気になるようになりました。3歳になったPは自分より小さな子たちに「お兄ちゃんまだオムツなの?」と言われたり、不思議な目で見られたりしてしまうこともありました。Pは自分の気持ちを言葉にすることがまだまだ難しく、3歳を過ぎてもオムツ交換スペースへ行くと言うことをP自身がどのように考えているのかまでは分かりませんでした。実際本人は全く気にもしていなかったかもしれません。それでもPの立場になって考えて想像してみると、やはりもう赤ちゃんではないPがオムツ交換スペースを利用するのは本人にとっても恥ずかしいことなんじゃないかな?と考えるようになりました。Upload By みんオムツ交換スペースの次に利用し始めた場所は?それからはなるべく車の中でオムツを交換するようにしていましたが、すぐに駐車場へは戻れない場合や、身長が高くなってからは車の中では狭くて交換しにくい場合もあり、なかなか不便なことも多かったです。そこで新たに利用するようになったのは「多目的的トイレ」です。多目的トイレにはオムツ交換のしやすいベッドもあったりするので、多目的トイレがある場合はそこに入るようになりました。それまで多目的トイレは「本当に必要な人を待たせてしまうことにつながる」のでなるべく利用しないようにしていました。でもPのオムツが外れてトイレを利用できるようになってからも、変わらず多目的トイレを利用させていただいています。Pが5歳を過ぎたあたりからは、夫や長男と男子トイレに一緒に行けるようになりました。ですが、私と2人だけで出かけたときなど、一緒に女子トイレにつれていくのはPと同じくらいの歳の女の子への配慮を考えるとやはり難しいです。でもPをトイレの外で待たせて、私だけが女子トイレへ入ることは絶対にできません。逆に、Pを一人で男子トイレに行かせることもまだまだ難しく、外出先で私もPも両方が安心してトイレを利用するためには多目的トイレが1番使いやすいのです。Upload By みん利用しずらかった多目的的トイレを、私たちが利用するためには…今まで多目的トイレは、車椅子の人、オストメイトが必要な人の為のトイレだと思っていたので、なるべく利用しないようにしていましたが、私たちのような親子にとっても外出の際にはとても大切で必要な場所となりました。今ではどこにでもあって当たり前のようになってきた多目的トイレですが、昔は限られた場所にしかなく、トイレ問題が壁になり外出したい場所へ自由に行くことのできない障害のある方や困った方も多かったと思います。しかし、車椅子、お年寄り、赤ちゃん連れの人など見た目で分かりやすい場合は堂々と利用ができても、私たち親子のように一見見た目では何に困っていて多目的トイレを使うのかが分からない場合は、「必要ないのに使っている人がいる」と誤解されてしまう場合もあります。そんな誤解を避けるために、外出するときには普段からPにヘルプマークをつけるようにしています。(※ヘルプマークとは、義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、または妊娠初期の方など、外見からは分からなくても援助や配慮を必要としている方々が、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることで、援助を得やすくなるよう、作成したマークです。)ヘルプマークで、外見だけでは分からない障害などがあることを知らせ、周りの人へ多目的トイレの使用を理解してもらうことも必要だと感じています。そして同時に、一見普通の親子連れに見えるかもしれませんが、そのような理由があり、多目的トイレを使う場合もあることを少しでも覚えておいてもらえると嬉しいです。参考:東京都福祉保健局 ヘルプマークUpload By みん執筆/みん(監修:三木先生より)これは難しい問題なのですが、「本当に必要な人」にP君は含まれているように思います。見た目では何が困るのか、ご本人以外には分からないこともあります。ヘルプマークをつけるのは周りの理解を得るために良い方法の一つに思えますが、そういったものがなくても「きっと何かあるんだろうな」とお互いに思える社会になると良いですね。
2022年01月09日自閉スペクトラム症のあるPには兄がいます。長男が3歳のときに弟のPは生まれました。Pが赤ちゃんだったころは、長男は弟が生まれたのが嬉しそうで一緒に遊べるようになることをずっと楽しみにしていました。でも待てども待てども、弟とはほとんどコミュニケーションが取れないし、関わろうとしても無視され、癇癪につながるからと母親の私から自分の行動を止められることもあって、なかなか弟と一緒に遊べず、長男は「Pはいつしゃべるようになるの?」「Pはずっとこのままなの?」と疑問や不安を感じるようになっていました。Upload By みん「弟には障害がある」ということに、長男はどのように理解を進め、どのようなことに悩んでいるのか?私たち夫婦は長男の前でもPの障害についての話を自然にしていたので、長男は大人の会話を聞いてなんとなく「Pは普通の子とは違うんだ」ということを理解していたようです。それに自分の友だちの弟や妹はしゃべったり兄姉にくっついてきたりするのにPはそういうことはまったくしないし、自分と同じ幼稚園へは行かずに、家から遠い普通の園とは少し雰囲気の異なる園に通っているということ、病院へ定期的に何回も通院していることなどからも、自閉スペクトラム症のことはまだ詳しく分かっていなくても「弟には何らかの障害がある」ことを長男なりに感じるようになっていました。そんな長男ですが、Pは自分の物を平気で取ったり壊したりするし、自分は何もしていないのに急にかまれたり引っかかれたりすることもあるし、家族がいつもPを中心に、Pに合わせた行動ばかりしていることに、日頃から不満を感じたり我慢したりしている部分は多々あるのではないかと思います。そのため、たまに「Pが僕の弟じゃなければ良かった!」「このまま大人になったら心配だよ!」「Pと一緒にいたら恥ずかしい!」と言ってしまうこともあります。私はそんな風に思ってしまうのは自然なことだし仕方がないと思い、長男のそのような発言も言いたいときは言わせていたし、聞いてあげるようにしていました。Upload By みん弟の困った行動に振り回される日々…そんなある日、PがAIアシスタントで音楽を聴きたがっていたのですが、自分ではうまく発音ができないので、長男がPのために音声操作をしてあげていたことがありました。Pは同じ曲を繰り返し聴きたがるので、長男はAIアシスタントに向かって「リピート再生」「戻って」などと延々と言ってあげなければなりません。長男は止めどきが分からず、ずっとPに付き合うのにも嫌気がさしている様子でしたが、急に止めるとPが癇癪を起こして大変なことになるのも分かっていたので、『どうしたらいいかな?』と私に相談してきました。私は「次が最後の1回だと予告してから再生して、終わったらおしまいのジェスチャーをしてみたら?」と長男にアドバイスをしました。そのアドバイスを聞いた長男は「本当にそんな風に言うだけで終わることができるのかな?」と半信半疑の様子でした。Upload By みん弟の特性に合わせた対応をしたことで、長男は弟の成長を感じることができて…しかし、実際にそのように言ってみるとPは長男の指示をちゃんと理解し、スッと音楽を聴くことを止めることができたのです。そんなPの様子を見て長男は感動したらしく思わず涙を流していました。私は長男が泣いて喜んでいる様子に驚き、何で涙が出たのかを聞くと、長男は「Pに言ったってどうせ無理だと思っていたのに、ちゃんと僕の指示を聞いてくれたから感動したんだ!物凄く嬉しかった!」と言いました。そんな長男の言葉を聞いて私は、親である私がPの小さな成長を感じては喜ぶのと同じで、兄である長男にとっても、弟の成長を感じるとたとえ小さなことだとしても、こんなにも嬉しく感動できるものなんだなと思いました。きょうだい児は、普通のきょうだいより不安や苦労もいろいろとあるかもしれません。でも普段からきょうだいのことを考える機会も多く、障害のあるきょうだいから学べることも沢山あるのかもしれないなと長男を見て思っています。まだまだ成長過程ですが、長男にとって弟のPの存在は、良くも悪くも影響があることを忘れず、長男とPとの関係も一緒に見守っていきたいと思っています。Upload By みん執筆/みん(監修:井上先生より)子育てをしていると、つい発達障害のある子の方に手を掛けてしまうことも多くなりがちです。幼いきょうだい児にとっては、自分にかまってもらえないことで感情を爆発させてしまうこともあると思います。このコラムで素晴らしいのは、この年齢のきょうだい児さんに「〇〇障害とはこういうものなんだよ」と言葉で説明するのではなく、「こうしたら弟が受け入れてくれるんだよ」「こんな声かけをしたら伝わるかもしれないよ」ということを体験的に理解させてあげられたことです。このような工夫すればうまくいく、という体験が、将来的な障害理解にも結びついていくのではないでしょうか。きょうだい児も成長とともに障害を言葉や概念としても理解できるようになってくると思います。ご家庭で発達障害について、話すことをタブーにしない雰囲気をつくっていくことが重要かと思います。
2021年12月20日株式会社AP Signatureは、20歳の自閉症アーティストGAKUがクラウドファンディングで実施したプロジェクトを見事成立させ、自身初となる画集「byGAKU-20(Twenty)」を、2021年12月3日に発売することをお知らせします。過去3年間で描き上げた600点もの作品の中から、人気の作品を厳選した、SDGsアートの最前線で活躍する20歳になったGAKUの記念画集です。自閉症であるGAKUが成し遂げたことは、障害の有無に関わらず、「すべての人の可能性」に新たな光を与えてくれたと思います。【URL】GAKUの近況報告はこちらをご覧ください。「byGAKU」 記念画集プロジェクトのクラウドファンディング クラファン■プロジェクト概要「byGAKU-20」自閉症アーティストの記念画集プロジェクト実施期間:2021年7月1日~8月30日支援者 :220人支援総額:11,940,000円(目標金額:2,500,000円)■いま、画集を出した想い自閉症アーティストとしてSDGsアートの最前線で活躍するGAKU。重度の自閉症・知的障害を持ち、言語能力は幼児程度です。そんなGAKUが16歳の時に奇跡の扉を自ら開きます。遠足の時に岡本太郎の絵に出会った翌日から突然絵を描きはじめ、今では年間200以上の作品を生み出すまでになりました。そこで、これまで彼を支え応援してくださった皆さんへの感謝の気持ちを込めて、20歳の節目にこれまでのGAKUの歩んできた形跡を、一冊の本にまとめたいと思いました。同時に、この画集は将来の創作活動へ向けたGAKU自身の「宣言」となります。■商品情報定価 :15,000円(税込)発売日 :2021年12月3日(金)入手方法:「byGAKU」 より購入可能。画集1画集2■参考情報:画集「byGAKU-20(Twenty)」の概要過去3年間に生み出してきた600点以上の作品の中から、人気の作品を厳選した、SDGsアートの最前線で活躍する20歳になったGAKUの記念画集です。多くのアーティストやクリエーターが絶賛する抽象画シリーズを含め、皆さんから要望の高かった動物シリーズも充実しています。さらに今回の画集本には、最前線で活躍しているフォトグラファー6名に撮影をお願いし、GAKUが初めてモデルとなって撮っていただいた写真を掲載。彼自身の作品とモデルGAKUのコラボによる楽しい写真にご期待ください。●飯田かずな Iida Kazunaベストセラーとなった『ブスの瞳に恋してる』本のカバーで有名なフォトグラファー。思わず笑顔が溢れるポップでキュートなGAKUをお届けします。 GAKU(撮影:飯田かずな Iida Kazuna)●猪原悠 Inohara Yu3年前からGAKUのポートレートをお願いしているファッションフォトグラファー。繊細な雰囲気が魅力的です。 GAKU(撮影:猪原悠 Inohara Yu)●遠藤アスミ Endo Asumi撮影現場ではK-Popから飛び出してきたようなGAKUがいました。20歳のピュアな姿から少し背伸びをしたGAKUまで。 GAKU(撮影:遠藤アスミ Endo Asumi)●田口まき Taguchi Maki少女マンガの一コマのようなメルヘンチックなGAKU。淡い色彩の優しいタッチでの表現は見ているだけで心が和みます。 GAKU(撮影:田口まき Taguchi Maki)●宮川舞子 Miyagawa Maiko様々な演劇や舞台の撮影をしているフォトグラファー。ポップでちょっとパンクなGAKUにチャレンジ。 GAKU(撮影:宮川舞子 Miyagawa Maiko)●宮原夢画 Miyahara Muga数多くの有名な広告を手掛けているフォトグラファー。大人の品格をも感じさせるクールでスタイリッシなGAKUを見事に表現。 GAKU(撮影:宮原夢画 Miyahara Muga) 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2021年11月22日自閉症の子どもへの接し方のポイントは?Upload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホン自閉症の子どもと接するときの9つのポイントを解説自閉スペクトラム症(自閉症)のある子どもとは、どのように接するといいのでしょうか。強いこだわりやコミュニケーションが苦手など、特性によるさまざまな困りごとも接し方で大きく変わります。自閉スペクトラム症のある子どもに接するときには、以下の9つのポイントに気をつけましょう。1.言葉は短く具体的に伝える長く説明されたり一度にたくさん指示されたりすると自閉スペクトラム症のある子どもは混乱してしまうことがあります。「おやつよ。座って食べてね」のように一文にいくつもの指示があると分からないこともあります。まず「座ってね」と一つ伝え、できてから「おやつを食べてね」と次の行動を伝えましょう。「うろうろしないで椅子に座って食べてね」というような言い方だと、言葉の中に『おやつを食べる』という目的が抜け落ちていたり、『うろうろ』という「座る」以外の余計な言葉が入っていることにより分かりづらくなってしまいます。指示は短く簡潔に、理解しやすい言葉で伝えましょう。2.視覚的な手段を使って説明する自閉スペクトラム症のある子どもは、耳で伝えられる情報は理解することが苦手な場合が多く、絵や写真といった視覚的な情報は理解しやすい場合が多いようです。これからする予定について、知らせるときに短く分かりやすい言葉と同時に絵や写真を提示することで、コミュニケーションが苦手な自閉スペクトラム症の子どもにとって理解しやすい環境になり、何をして欲しいのか明確に分かるようになります。予定や約束ごとなども、絵にして知らせると、理解しやすく安心できます。3.のぞましい行動をほめる自閉スペクトラム症のある子どもは相手の言葉の意図をくみ取ることが難しい場合があります。そのため「してはダメ」なことを注意するよりも、「してほしい」ことをしたときにストレートな表現でほめるほうが効果的です。うまくいったことや頑張ったことがあれば、どんな小さなことでも思い切りほめます。同じことでも何度もほめることで「よい行動」が印象づけられ、具体的に分かります。4.叱るだけでなく、して欲しいことを具体的に伝える接するときに気をつけたいのが、何かを説明するときに怒らないということです。保護者や支援者が感情的になると、伝えたい意図が伝わらなくなってしまいます。何かを伝えたいときは、『〇〇しない』という禁止だけでなく、どうして欲しいのかを具体的に短い言葉で簡潔に伝えることを心がけてください。否定的な言葉ではなく、「○○してほしい」「○○しましょう」と言い換えるようにしましょう。自閉スペクトラム症のある子どもは接し方を工夫すると、パニックを起こすことも少なくなり、本人も家族も生活を共にするのがとても楽になります。生活のパターンを掴むまでは時間がかかりますし、大変なこともいろいろあると思いますが、少しずつ問題は解決していきます。諦めずに医師に相談しアドバイスをもらいながら対処していきましょう。5.スケジュールが変わるときは事前に説明する自閉スペクトラム症の特性として、突然の変化が苦手ということがあります。いつもと違うことやスケジュールの変更は自閉スペクトラム症のある子どもにとってとても不安なことです。変更を伝えるときには、事前に絵に書いて見せるなどして説明しましょう。本人が理解でき、見通しが持てることでパニックを緩和したり減らすことができます。6.指示のタイミングを考える自閉スペクトラム症のある子どもが何か行動を始めたときに、その行動を途中でやめるように指示すると、パニックになってしまうことがあります。パニックになると落ち着くまでに時間がかかりますので、本人も周りの大人も体力を消耗してしまいます。次の行動にスムーズに移れるためには、指示のタイミングとして行動を始める前が重要です。子どもが好きな活動に取り掛かる前に、終わる時間をタイマーで示したり、終わったあとの次の行動をあらかじめ写真カードなどで知らせておくなどの工夫が考えられます。活動をする前の指示がうまくいかなかった場合には、子どもの様子を見て一通り区切りが良いところを見て指示するようにしましょう。活動をうまく切り替えることができた場合には、ほめることが大切です。7.感覚過敏に配慮する自閉スペクトラム症のある子どもは感覚過敏がある場合も多いです。特定の音や、活動、場所を嫌がったりすることもあると思います。これは単純な好き嫌いやわがままではないことがあります。感覚過敏が背景にある場合は叱ったり無理強いしても解決しません。音に敏感な場合はイヤーマフなどを使用するなど、まずは環境調整から考えていきましょう。成長するにしたがって、場面に応じてコントロールできたり 理由が分かることで、我慢できることも広がってくることも多いです。8.興味・関心のあることで不安を解消し、得意なことを増やす自閉スペクトラム症のある子どもは、何もすることがないと時間を持て余して不安定になる傾向があります。病院の待合室や電車の中などで手持無沙汰を解消できるよう、絵の描けるホワイトボードやパズルなど、好きな遊びを準備しておくと落ち着いて過ごせるかもしれません。本人に合った習いごとに取り組むなど、余暇の過ごし方を教えることも重要です。興味・関心のあるものを増やしていくことで、本人の得意なことも増やすことができます。9.困ったことがあれば子ども自身がヘルプ要請を出せるようにする自閉スペクトラム症のある子どもは自分ではうまくできず、困る場面があります。しかしコミュニケーションをとるのが苦手なことも多くあります。そこで、困ったことや、できないことがあったときに、自分でサインを出して助けを求められるようにすることがとても大切です。そもそも自閉スペクトラム症のある子どもは自分が「困っている状況」だということを本人が理解できず、パニックになったり固まってしまう場合もあります。まずは子どもに「イライラする」「どうしたらいいのかわからない」「涙が出る」など、自分の感覚や感情がどんなときに「困っている状況」なのかを教えます。そして困った状況になったら誰に助けを求めればいいかを教えます。「どうしたらいいのですか?」「分からないので教えてください」など、なんと言うかもできるだけ具体的に説明するとよいでしょう。
2021年10月18日自閉症って医学的な治療はできるの?現在、自閉スペクトラム症(自閉症)を根本的に治す薬や手術などの医学的な治療法は開発されていないため、自閉スペクトラム症を完全に治療することはできません。しかし、療育や環境調整を通して接し方や伝え方を工夫することで、発達の促進や、日常生活における本人の困りごとを解消することができます。自閉スペクトラム症のある子がのびのびと暮らしていくためにUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホン自閉スペクトラム症のある子がのびのび生活するためには、周囲の理解と協力が必要です。保護者はまず本人の性格や特性をよく理解し、過ごしやすい環境を整えましょう。周囲の人によく伝えることも大切です。幼稚園や保育園、小学校に通うようになると、コミュニケーションの困難から、自分の思いをうまく伝えられなかったり、周りから孤立してしまったりすることも考えられます。上手にコミュニケーションをはかるためにも、日頃から自分の思いをどう伝えたらよいかを個々の子どもの発達に合わせて教えていきましょう。また、こだわりとの付き合い方やパニックになったらどうしたら良いかなど、落ち着いて生活する方法を一緒に考えましょう。興味や関心の高い分野を伸ばすなど、特性や強みを生かして本人の自己肯定感を高めることも重要です。自閉スペクトラム症の治療の判断基準は?いつから始めるのがいいの?■どのような症状があれば治療を行うべきなの?自閉スペクトラム症の症状は大きくわけて二つの症状があります。一つは『社会性と対人関係・コミュニケーションの困難』、もう一つは『行動や興味の偏り』です。それぞれの症状が発達期に現れると定義されています。自閉スペクトラム症の子どもは早ければ1歳ごろから症状が出始めます。お子さんによっては3歳ごろになると「周りの子ども達と比べると話すのが遅い」「目を合わさない」などの症状が、より目立ってきます。乳幼児健診などのときに気づかれることもありますが、見過ごされてしまうこともあります。子どもの発達で気がかりなことがあれば、家庭で判断するのではなく、まず身近な相談できる専門機関や、かかりつけの医師に相談してみましょう。専門の医療機関を紹介してくれるかもしれません。できるだけ早期に症状に気づくことで支援につながり、適切な対応をすることで子どもの状態が大きく変わることがわかってきています。■療育を始める年齢は?いつまで続けるのがいいの?療育などの専門機関に通い始めるのは早いほうがよいと言われています。本人や家族がなんらかの困りごとに直面している場合、相談機関や医療機関の相談を経てできるだけ早いうちからその子に合った療育や環境調整を行うことが望ましいでしょう。自閉スペクトラム症の人は、自分が好きなことに集中することが得意な人が多くいます。子どもでも大人顔負けの知識を持っている子もいますし、大人になってから仕事などで専門性を発揮する方もいます。その子に合った環境設定を行い、早期からの支援を受けることは、得意分野を伸ばし、特性を活かす力を育むことに繋がります。上述の通り、自閉スペクトラム症そのものを根本的に治療することは困難ですので、「こうなれば療育や支援は終わり」という明確な線引はありません。しかし、年齢があがるにつれ、環境調整、その子の特性や発達段階に合わせた支援によって、サポートの内容や頻度を減らしても安定した生活を送れるようになる人もいます。自閉スペクトラム症の療育法自閉スペクトラム症の症状は、個人の性格や特性によって少しずつ違います。そのため療育では、個々に合った対応法を組み合わせた支援プログラムを受けていきます。自閉スペクトラム症の療育法にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、一般的な療育法・投薬を紹介したいと思います。自閉スペクトラム症の療育を行うときの原則療育とは医療、訓練、教育、福社などの現代の科学を総動員して障害を克服し、その児童が持つ発達能力をできるだけ有効に育て上げ、自立に向かって育成することである。自閉スペクトラム症の特性に合わせてトレーニングをしたり、環境調整をすることで、困りごとを改善したり、得意なことを伸ばしたりできるのが療育です。小さいうちから療育に通うことで、精神的・身体的機能に対してある程度の効果が表れることが多くあります。自閉スペクトラム症の療育方法にはいろいろありますが、どの療育方法に限らず大切な点は以下のとおりです。①Structure(構造化): 自閉症の人たちに周囲の環境の意味をわかりやすく整理し伝える。時間や空間、意図の視覚化をする②Positive(肯定): 子どもを肯定しほめる(自己肯定感を高める)③Empathy(共感): 自閉症の特性を深く理解し、共感する④Low arousal(低刺激): おだやかな刺激や環境にする(過激な刺激や興奮を避ける)⑤Links(連携): 地域と連携し協力するそれぞれの頭文字をとってこの原則を「SPELL」と言います。(参照:SPELL(英国自閉症協会))自閉スペクトラム症の症状への投薬治療その子に合わせた環境調整、療育をして、それでも難しい場合には投薬治療を併用することも考えられます。現時点では根本治療のための薬は開発されていませんが、自閉スペクトラム症そのものを治すための薬ではなく、衝動性・不安障害を抑える薬や、パニックを抑える薬など、自閉スペクトラム症の特性から起きる生活上の困難を緩和するために薬が処方されることがあります。そのほかにも医師によって個人に合った薬を処方されますので、信頼できる医師に困っている症状を相談し、まずは環境をうまく調整しながら、療育を行い、それだけでは改善が難しい場合服薬を併用するのが理想的と言われています。薬の服用により特性が緩和されているときには、療育や教育の効果も出やすくなるとも言われています。薬物療法は医師の指示のもと用法や用量を守って服用していかなくてはいけません。薬に頼り切って多用するのは避けましょう。その子に合った環境を設定し、療育を行うことで、困りごとの改善や得意なことを伸ばし、特性を活かすことにつながっていくでしょう。
2021年10月10日オーストラリアのビクトリア州で暮らすデイブ・ギャンブルさんは、息子のティムくんと一緒にスーパーマーケット『コールズ』に買い物に行きました。親子がお菓子売り場を通りかかると、ちょうど店員の男性がビスケットを陳列していたといいます。ビスケットが大好物のティムくんは、その店員さんに近付いて、仕事の様子を興味しんしんで見物。すると、そんなティムくんの視線に気付いた店員のシェーンさんは手を止めて、商品をティムくんに見せながら、「陳列をやってみたいかい?」と聞きました。ティムくんは自閉症をもっていて、言葉でのコミュニケーションがうまくできません。しかし、シェーンさんは彼が手伝いたがっているのが分かったのでしょう。こうして2人は5分ほど、一緒にビスケットを棚に並べました。ティムくんはとても楽しそうだったといいます。さらにその10分後、デイブさんとティムくんが別の売り場にいたところ、シェーンさんがやってきました。そしてティムくんに「さっきは手伝ってくれてありがとう。素晴らしい助っ人だったよ」といい、ご褒美にチョコレートを渡したのです。Hey Coles! Shout out to this amazing team member from this morning at your Cardinia Lakes store! When my non verbal,...Posted by Dave Gamble on Thursday, September 9, 2021Hey Coles! Shout out to this amazing team member from this morning at your Cardinia Lakes store! When my non verbal,...Posted by Dave Gamble on Thursday, September 9, 2021写真のティムくんの笑顔を見れば、彼がどんなに嬉しかったかは一目りょう然ですね。シェーンさんの優しさに感激したデイブさんは、「あなたのお店の素晴らしいスタッフに感謝を伝えたい!」とこの出来事を『コールズ』のFacebookに投稿。コメント欄には「ハートが温かくなった」「なんて思いやりのある店員さんだ」など、シェーンさんへの称賛の声が上がっています。デイブさんたちが来店した日は、ビクトリア州は新型コロナウイルス対策のロックダウン中で、ティムくんも外に出て人と接する機会が少なかったのだそう。そんな時だからこそ、シェーンさんとの触れ合いによってティムくんはとても幸せな気持ちになれたようです。シェーンさんにとってはほんの5分ほどのやりとりでも、ティムくんはきっとこの日のことをずっと忘れないでしょうね。[文・構成/grape編集部]
2021年09月27日好きな物事ほどなかなか「終わり」「切り替え」ができなくて困る日々自閉症と知的障害のある息子、Pは遊んでいるときや、テレビを見ているときなどに、こちらがそろそろ終わりにさせたいと思っても、終わりの意味を理解していなかったので、まだ自分が納得するタイミングではないのに急に終了されることで癇癪につながるということがよくありました。例えば集団療育中に、自分の好きなおもちゃで遊んでいるときに、次の設定を行うためにおもちゃは片付けないといけないという場面があります。そんなときに先生やお友達が片付けを始めたとしてもPは「片付けないといけない」という周りの状況や空気が理解できていないので、まだ遊びたいという自分の気持ちの方が勝り、片付けを促すと癇癪が起こってしまいました。Upload By みん療育で教えてもらった方法は?そんなPに有効だったのは「10数えたら終わりにする」という方法でした。何かを終わりにする前には必ず10数え、最後に「おしまい!」と言うのですが、言葉で指示をするだけではなく指を上に向けて開いた両手をすぼめながら下におろす、「終わり」を意味する手話でのジェスチャーで同時に視覚支援もしていました。最初のほうはそんなことをされても意味が分からなかったPは勿論大泣きしていましたが、泣こうがわめこうがおしまいと言ったらおしまいという形を徹底し、おしまいと言われたら必ず終わらないといけないことを理解するまでスモールステップで何度も繰り返し教え続けました。ここで重要だったのは、ただ「おしまい」にするのではなく、その前に「10秒数える」ということです。この10カウントがあることで、終わりの予告にもつながり、10秒の猶予があることで突然終わらされるという不安が少し解消されるのです。Upload By みん10カウントを積み重ねると…それを理解し始めてからは、10数えたら「おしまいにされる!」と気づき、数字を読み始めるだけでも泣いたり怒ったりするようにもなって来ましたが、泣きながらもおしまいと言われたらおしまいしないといけないことが少しずつ身についてきたので、自ら終わらせたり片付けたりするようにもなって来ました。このようにおしまいが理解できるようになってからは、かなり切り替えがスムーズにいくようになり、出先でそろそろ帰りたいというときなどにもずいぶんラクになりました。Upload By みん今ではもう10数えなくてもおしまいの一言だけでも終われるようになって来ましたが、それはこれまで「終わり」を理解するために何度も行った10カウントの積み重ねがあったからこそだと思っています。執筆/みん(監修:鈴木先生より)今回のような10秒ルールや感情を抑える6秒ルールなど、カウントを利用する方法が多くみられます。時間のルールはスポーツや将棋などの世界でもみられます。プロレスの場外にいられる時間、テニスのサーブを開始するまでの時間、将棋の指すまでの時間などなどです。人間は時間を決められると何とかやろうと努力できるのです。秒単位だったり、分単位だったり、日単位だったりとさまざまな時間に私たちは日常において縛られているのです。今回のお母様の工夫でよかったことは、「視覚支援」・「おしまいという徹底」・「スモールステップ」です。時間というルール以外にこういった工夫を重ねるといいでしょう。
2021年09月27日自閉症(自閉スペクトラム症)とは?Upload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホン自閉スペクトラム症は先天的な発達障害の一つで、・社会性と対人関係・コミュニケーションの困難・行動や興味の偏りの2つの特徴があると言われています。略称としてASD(Autism Spectrum Disorder)と呼ばれることもあります。社会性と対人関係・コミュニケーションの困難とは① 対人-情緒的な相互性の障害例)他者の感情の読み取りや予測が難しい、思い込みが激しい、共感性が乏しいなど② 非言語的コミュニケーションの障害例)目を見て話さない/話すのが苦手、目線を合わさないまま会話する、声が大きい(小さい)、他人との身体的な距離感が分からないなど③ 発達水準に相応した仲間関係を築くことの障害例)遊びのルールへの固執、皮肉やお世辞を理解できない、曖昧な表現が理解できない、言葉を字面通り捉えるなど行動や興味の偏りとは① 常同的または反復的な身体の運動、物の使用、または会話例)おもちゃを一列に並べる、物をずっと叩いたりする、言葉のオウム返し、独特な言い回しなど② 同一性への固執、習慣への頑ななこだわり、または言語的・非言語的な儀式的行動形式例)ほんの小さな変化への苦痛、移行することの困難さ、思考の柔軟性のなさ、質問を繰り返す、儀式のような毎日の挨拶などの決まった習慣、同じ食べ物を食べ続けるなど③ きわめて限定され執着する興味例)車や乗り物、恐竜など好きなものに関する情報や知識を集めることにこだわる、何時間もかけて時刻表を書き出すなど④ 感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ、環境の感覚的側面に対する並外れた興味例)痛みや体温に無関心に見える、特定の音、触感に対して逆の反応をする、対象を過度に嗅いだり触れたりする、光や動きを見ることに熱中するなど自閉症(自閉スペクトラム症)の原因は何?自閉スペクトラム症とは、さまざまな要因が関与して起こる先天的な脳機能障害です。自閉スペクトラム症の原因に関しては諸説あり、医学的にはっきりとした原因は分かっていませんが、脳や心身が発達する時期に、何らかの先天的な遺伝的要因に加えてさまざまな環境要因が相互に影響し合って生じた脳機能障害が原因になると考えられています。つまり自閉スペクトラム症は生まれ持った障害です。以前は「テレビを見過ぎたから自閉症になった」とか「親の愛情不足で自閉症になった」と言われたこともありますが、親の育て方やしつけのせいではありません。また、自閉スペクトラム症を完全に治療することはできません。しかし、幼児期に関しては、お子さんによって症状の出方が変化することもあり、早期からの療育による効果も期待されます。周囲からの理解や環境づくりなどを進めることで、本人の困りごとを解消し、得意なところを伸ばすことで発達の促進ができます。
2021年09月26日生後10ヶ月から動き回っていた太郎太郎は生後10ヶ月ごろから1人で動き回っていた。とにかく元気で休む暇なく歩き回っていた。動きが激しく追いかけるのに必死な毎日。1つのおもちゃで集中して長いこと遊ぶことが少なく、おもちゃで遊んでいてもすぐに癇癪を起こしていた。周りの反応や表情を見ることも少なく、動き回っていた。私は小さい子どもと触れ合う機会もあまりなかったため、子どもとはこういうものなのかと思いながらも「大変だ」「きつい」「育て難い」と思っていた。育児に対して「体力的にきつい」とは言えるけど、わが子に対して「育て難い」と思うことさえもしてはいけないという思いがあり周りに打ち明けきれずにひた隠しにしていた。(この考えは、さらに自分を苦しめていたことに後ほど気づくことになります)Upload By まゆんUpload By まゆん保育園の運動会での出来事1歳7ヶ月のころ、保育園で開催された運動会。保護者の膝上にわが子を座らせ同時に身体を横に揺らしたり、向かい合ってぎゅーっと抱擁したりする親子の触れ合いのプログラムがあった。プログラムに参加している同学年の親子は、落ち着いて音楽と先生のアナウンス指示に合わせ楽しそうに参加していた。わが子と目を合わせニコニコしたり、抱き合ったりとお互い笑顔になっていた。Upload By まゆん私たち親子はというと…太郎は指示に合わせて、私の膝上になかなか座ろうとはしなかった。膝上に立とうとして足をパタパタさせたりしていた。何とか座らせることはできたが、落ち着きがなくずっと、もぞもぞそわそわ(しかし、めっちゃ笑顔)Upload By まゆん続けて先生が「手を握りましょ~」と言うと、周りは保護者が子どもの手を取ると、子どもはそれに誘導されるように手を握って音楽に合わせることができていた。太郎のもぞもぞそわそわはどんどんエスカレート。ニコニコしながら私の膝上に立とうとしたり跳ねようとしたり、全く手も取れなかった。私とは一切目も合わさなかった。「もう…ちょっと落ち着いてくれ…手を取ってくれ…目を見てくれ…」と落ち着きがない太郎に疲れを感じ、周りからどう思われているかな…なんて考えている私がいた。Upload By まゆん太郎は私と触れ合うことがうれしくてずっとニコニコしているのに、私は太郎の笑顔をまっすぐに受け止められていなかった…。母の直感Upload By まゆんこのころから、周りとの「違い」を少し感じ始めていた。そしてこの時期、私は看護師として病棟勤務から外来勤務へ部署異動した時期でもあった。小児科の発達相談外来にも助っ人として少し携わる機会があった。発達相談では、保育園~小学校低学年の子どもについての相談が多かった。その外来に来ていた子どもたちは、注意力が続かなかったり、静かに座っていることが難しかったりする様子が見られた。医師の呼びかけに「はい!」と返事はするものの、医師の目は見ず、違うところに意識はいっているようだった。Upload By まゆんここから私は「もしかして…」と考えるようになっていった。この時期に発達外来の医師に太郎の相談をしていましたが、1歳7ヶ月で年齢も低く評価が難しいとのことで、しばらく経過をみることになっていました。たしかに1歳や2歳の時期はみんな元気に動きまわってて、周りからはなんの問題もないように見えたと思います。しかし、日常生活をずっと一緒に過ごしている私は、ハッキリとはわからない「何か」にずっとひっかかりがありました。「何かが違う」「でもなんだ」という母親の直感というものをずっと感じていました。この活発さは子どもだからか?いや、それにしても……という風に。看護の世界でもあるのですが、「看護師の直感」というのは重要視されています。同じように、親としての直感と言うものもあるのではないかと思います。根拠は明確ではないが何かが違うという直感、その直感を無視せずに誰かに伝えたり、相談したりするということは私が経験した子育ての中では重要なポイントになっています。執筆/まゆん(監修:井上先生より)自閉スペクトラム症に関しては、近年、2歳代で診断するシステムが確立しようとしていますが、一般にはまだ十分に普及していません。2歳以下の場合は、まゆんさんのような気づきはあるものの、どこに相談をすればよいか分からなかったり、相談に行くことがためらわれたりといったことがあるかもしれません。最初から医療機関に相談することに不安や抵抗がある場合は、お子さんの特性に合わせた子育てについて、園の先生や子育て支援センターなど身近な方や機関に相談してみてはどうでしょうか。
2021年09月08日障害ではなく個性なのか。発達障害のある子どもを育てる親の思いお子さんに障害がある親御さんが、「うちの子には障害はない、個性的なだけ」と言っているのを耳にしました。このように話す背景には、わが子の発達の凸凹を障害ではなく個性と捉えて、「前向きに育てていこう」という気持ちから出ている言葉かもしれないと感じました。個性だから特別視はしない!? 園での対応知り合いが、わが子が通う保育園に「うちの子は発達障害があるかもしれないので、特別な配慮をしてほしい」とお願いしました。すると、園側から「それは個性の一つですよ。どの子も性格も違い個性があるのですからお宅のお子さんだけ特別扱いは出来ません。みんなと一緒に分け隔てなく保育をしていきますから」と言われたそうです。この場合は、「個性」という言葉が、「特別視せずに平等に見る」とか、「配慮をしない」という意味で使われています。「個性」という言葉を使うとき、その背景にある思い・考えは、人や場面によって異なっているようです。自閉症の息子を育てる、私の思い私自身は「障害か個性か」の論争にはあまり関心がありません。あえて言うならば、「障害そのもの=個性」ではなく、障害によって、むしろ自閉症や知的障害によって、息子の個性が見えづらくなっているような気がします。こんな絵を描いてみました。私は、個性の上に大きく障害が被さっているように感じています。Upload By 立石美津子もしわが子に障害がなかったら…妄想する息子に障害がなかったら、あなたはどんな性格、個性をしていたの?お母さんと普段どんな会話をしていたの?定型発達の20歳だったら、彼女くらいはできていたかな?友達と週末は出かけたりしていたのかな?こんな風に思い始めると切なくなります。けれども、息子から知的障害と自閉症を取り去ったら、息子ではなくなってしまうのでそれはそれで嫌だと思うわがままな母親です。Upload By 立石美津子障害=個性、ではないと思うから現代の医学では発達障害について、採血などの検査で明確に数値が出て、それだけで客観的に「はい、発達障害です」とわかるような生物学的マーカー(指標)はありません。そのため、どこまでが個性でどこからが障害か、の線引きが難しいのかもしませんし、育てている親にとっても分かりにくい部分です。そもそも個性は、万人に存在します。それは、障害の有無に関わりません。障害のある子どもの親に対して第三者が「障害のある子は天使よね」などと、「障害そのもの=性格」のような言い方をしているのを耳にすることがあります。私自身もそのように言われたことがあります。でも、そんな型にはまったものではないと思います。知的障害、ダウン症、自閉症…、確かにそうやって「障害名」ごとに分類したときに、ある程度共通する先天的な特性はあるでしょう、けれど一人ひとりが育つ環境の中で、優しかったり、好奇心旺盛だったり、いたずらだったり…、さまざまな性格が形成されていきます。「障害そのものがイコール個性だ」としてしまうのは、違うのではないかなと思うのです。(監修:鈴木先生より)私はいつも外来で「障害は個性ではなく“特性”と考えてください」と保護者のみなさんに話しています。個性であれば外来受診する必要性がなくなります。自閉スペクトラム症+ADHD+二次障害によってその人本来の姿が見えなくなっていると考えていいと思います。ADHDなどを治療すれば本人や家族の肩の荷が下り、自閉スペクトラム症の特性は治らなくてもそれ以外の要素を軽くすることはできるのです。自閉スペクトラム症を完全に取り去ることはできません。周りの人たちに発達障害を理解してもらい、発達障害の特性と共生していけばいいのではないでしょうか。
2021年09月05日自分の思う道順や場所でないと癇癪を起こすので気をつけていた日々Pは散歩でも、車に乗っているときでも、自分の思う通りの道順で、必ずここへ寄ってこれをしないと…という強いこだわりがありました。こちらの都合で寄り道したり、もと来た道を引きかえしたりするのにも強い抵抗があります。私はそのこだわりに付き合ったり、遠回りしてでもあえて違う道順にしたりしながら、なるべく癇癪が起きないように気をつけていました。そんなPは、療育園の施設内での移動でも場所へのこだわりがあり、移動した先が自分の思う場所ではなかったときには混乱、癇癪を起こすこともありました。療育園では同じ施設内に、自分のクラスの部屋、言語療法の部屋、作業療法の部屋、医務室や発達検査の為の部屋などがあり、そのときの目的に合わせて部屋の移動をします。移動する前に言葉で「次は〇〇の部屋にいくよ」と予告していても、Pは今から何処へ行くのかをちゃんと理解しておらず、自分の行きたい場所を勝手に予測、期待してしまい、目的地が自分の思っていた場所ではなかったときにはパニックを起こしてしまうのです。Upload By みん困り果てた私は、先生に相談してみることに…例えば本当は言語療法の部屋へ行かないといけないのに、そこへ向かっている途中で作業療法のときに使っているトランポリンやブランコが目に入ってしまうと、「作業療法の部屋のほうへ行きたい!」となってしまい、施設内の移動は毎回スムーズにいかず、困り果てていました。その困りごとをクラスの先生、担当の療法士の先生に相談し、どうすればスムーズに移動ができるようになるのか?を一緒に考えていただきました。言葉で説明するだけでは理解するのが難しいのなら、写真や絵カードを使って視覚支援をしてみましょうということになりました。そして、全員で連携して目的の場所へ行く前に必ずその場所の写真や、担当の先生の顔写真をPに見せながら移動する場所の説明をすることにしました。Upload By みん言葉だけではなく視覚支援をしながら予告をすることが有効私も各部屋の写真、先生の写真を撮らせてもらって写真を印刷して携帯したり、手元に写真を持っていないときなどは、スマホで撮影した画像の画面を見せたりしながら視覚支援を続けました。すると、最初は写真や絵カードに混乱していたPも、「次はこの写真の先生に会うのか」「この絵カードの部屋にいくのか」と徐々に理解してきたのか、移動がスムーズにできるようになってきました。移動の前には言葉だけで予告するのではなく、写真や絵カードなどで視覚支援も合わせて予告する。そうすることで理解が進み、本人も納得してから安心して移動できることを学びました。Upload By みん今では、療育園内なら言葉だけの予告でも移動ができるようになりましたが、ほかの場所だとまだ視覚支援が必要な場合もあります。必要ならば撮影の許可をいただいた上でカメラでその場所の写真を撮り、出かける前には写真を見せ、行き先を予告し、Pが安心して出かけることができるように心がけています。Upload By みん執筆/みん(監修:井上先生より)自閉症スペクトラムのあるお子さんの特性として、耳から入る情報よりも、目から入る視覚的な情報の受け止めやすさがあります。耳から入る情報は一瞬で消えてしまいますが、視覚的な情報はそこに残り続けるので理解しやすいです。みんさんのように初めて行く場所や初めて会う人の場合も、あらかじめ子どもに写真や絵を見せておくとその後の流れがスムーズに行く場合があります。場所の写真の撮り方のコツとしては、単に建物の全体像を撮るだけではなく、子どもが注目しそうな特定のアイテムを画面にいれることです。例えば、公園に行く場合、全景だけでなく、その子どもが好きな遊具などを入れ込んでおくとより理解しやすくなると思います。
2021年08月27日「ひゅーちゃんが自閉症と診断されて」第2話。Twitterで人気のさばまる(@funeido45)さんの育児マンガをご紹介! ひゅーちゃんが自閉症と診断されたときのお話です。 ひゅーちゃんが自閉症と診断されて 第2話 ひゅーちゃんが自閉症と診断され、療育について調べ始めたさばまるさん。 すすめられて参加した保健センターの相談会でも望むような内容を受けられず、苦労が続きます……。 さばまるさんのマンガは、このほかにもTwitterで更新されています。ぜひチェックしてみてくださいね♪監修/助産師REIKO著者:イラストレーター さばまる2017年4月息子ひゅーちゃん出産/育児漫画と版権イラストごちゃまぜ/自閉症と診断され発語ゼロ。会話してみたい
2021年08月13日小学校1年生夏休みの宿題Upload By まゆん夏休みに、アサガオの絵を描く宿題があった。ある日、アサガオもきれいに咲いていたため太郎に「アサガオの絵を描こう」と誘った。すると、太郎の顔は一瞬で曇った。太郎は保育園時代から何かを見て描くことが苦手だった。このときも、スムーズにはいかないだろうなとは感じていた。それでも太郎はアサガオの前に座って観察をしていた。が…Upload By まゆん太郎は「ううう」「うあああああ」「むずかしい」「むずかしい」と言いながら身体を反らせたり、寝転がったりしていた。しかし決してアサガオの前からは逃げようとはしなかった。悶えながらも眉間にしわを寄せ、真剣にアサガオと向き合っていた。Upload By まゆんUpload By まゆん太郎にこのくねくねはどこの部分か尋ねると、顔をこわばらせ、答えなかった。答え方がわからないのかと思い、具体的に指を差してこう質問した。Upload By まゆんUpload By まゆんUpload By まゆん太郎は、ゆっくりとアサガオの花びらの縁を指さした。私は気づき、そしてハッとした。「たしかに、そうだ」Upload By まゆんこの花びらのくねくねのリアルさを太郎は一生懸命描こうとしていた。「難しい」とうなっていた理由がわかった。アサガオの花弁はくねくねしていて、それをもっとクローズアップして見てみるとさらにくねくねしていた。太郎はきっとそこまで観察していたに違いない。3時間も…。Upload By まゆんこのほかにも「木を描いてください」という課題で、「難しい」「難しい」と言いながら描いたのは木の根っこというエピソードもあります。全体像をとらえることが苦手で、細かいところに焦点をあてがちな太郎は、私とは全く違った物の見え方をしているのではと感じました。細かくものを見るため、「難しい」という言葉が出るのはあたり前なのかなと思ってます。しかし全ての絵が苦手ではなく、想像画は得意としてます。想像画では太郎の世界を楽しく、私を魅了させるほどのかわいい絵を描いてくれます。肉眼で見たものを模写することが苦手なようで、スケッチの授業でも先生の手助けを受けながら描いていました。このアサガオの絵も結局太郎の画力が追いつかないこともあり、私と一緒にシンプルなアサガオを描いて学校には提出することになりました。シンプルなアサガオは、太郎にとってはアサガオに見えていなかったようで「全然違う…」とつぶやいていたのを覚えています。親子ともども悩みながら、新しい発見ができた夏休みとなりました。執筆/まゆん(監修:井上先生より)アサガオというものを全体像としてとらえるのではなく、花の特徴の細部をとらえることができたのは、研究者のような視点ですね。周りの方は、こうしたとらえ方ができることを否定せずに、その子の強みとして認めてあげることが大事だと思います。一般的なフレームで描かせたい場合は、対象物を写真に撮ってアプリなどで輪郭線がはっきりした絵に加工したものを見せると、描けるようになることが多いです(字が書けるお子さんの場合)。ただ、そうすると個性を活かせなくなってしまうかもしれませんね。
2021年08月04日わが家の第1子は、幼稚園入学直前に自閉症スペクトラムの診断を受けました。私はショックで何も手につかず、不安で涙が出てくることも……。それでも、幼稚園が始まってみると問題行動を起こし、その対応に追われ、泣いている暇さえなくなりました。そんな幼稚園時代、困り事はいろいろありましたが、特に目立った行動への対応の仕方についてご紹介します。 じっと座っていられない本人を観察してみると、「座っていないといけない」ということを理解しているけれど、そのことをふと忘れて席を立ってしまっているように感じました。そして、ただ座っていなさいというのは苦痛のようで、「座って色塗りをしなさい」など課題をつけると座っていられることが増えました。 さらに、自閉症児の特徴として、先の見通しがたたないと不安になるとも言われています。そのため、「時計の長い針が〇にくるまで」といったようにゴールを明確にして座る練習をしました。 覚えるのが苦手幼稚園では「のり、はさみ、画用紙を用意して」など、複数の指示がありますが、それを覚えるのが苦手なようです。自閉症児の特徴として、聴覚より視覚のほうが指示が入りやすい子もいるようですが、わが子は発達検査の結果をみても、聴覚のほうが優位なようです。 それなのに、なぜ覚えて行動に移せないのか観察してみると、指示の声はBGM化して覚える気がないようです。そこで、要件を話す前に「〇〇君」と声をかけて意識を集中させてから要件を伝えると、覚えられることが多いとわかりました。 音に過敏! 運動会どうなる?当時、あまり意識していなかったり、経験もそうなかったので不思議だったのですが、運動会の練習を始めると嫌がる、脱走するということが起きていました。今思えば、運動会のダンス、組立体操の太鼓の音が苦手なようでした。これについては、当時の私の勉強不足でなすすべがなく、どうしてあげることもできず……。 今なら、苦手な音があることがわかりますし、イヤーマフを使うなどの方法も思いつきます。健常な私たちには理解できない不快感のなかで戦っていたのかと思うと、申し訳なくなります。 発達障害の診断を受けるまでは子育てに希望をもっていましたが、いざ発達障害と診断され、しかもそれは治らないと聞いたとき、一時期はどん底の思いでした。それでも、わが子のためにと療育の本で知識を深めたり、発達検査の結果や目の前にいるわが子と向き合うことで、少しずつ理解が深まっていき、サポートに繋げることができたと思っています。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 ベビーカレンダーでは、赤ちゃん時代を卒業して自己主張を始めた2~6歳までの子どもの力を伸ばし、親子の生活がもっと楽しくなる【キッズライフ記事】を強化配信中。今よりもっと笑顔が増えてハッピーな毎日なりますように! 監修/助産師REIKO著者:小林 香穂自閉症スペクトラムの13歳の長男と、グレーの10歳の次男のママ。療育、育児、学習サポートの面で試行錯誤しつつ、その経験を執筆中。「それぞれが居心地のいい場所作り」を目標としている。
2021年08月01日「プリズン・ブレイク」のウェントワース・ミラーが、自閉症と診断されたことをインスタグラムで公表した。「この秋、自閉症であると非公式な診断を受けてから1年になります。先に自己診断し、後に正式に診断が下されました」と明かしている。診断を受けるまでの過程を「とても長く、欠陥のある一連の作業で、アップデートが必要だと私は思います」と指摘。「ショックではあったけれど、驚くことはなかったです」と自閉症であるとわかったときの心境もつづっている。現在49歳のウェントワースは「自閉症について、十分に知識があるわけではありません。(学ぶことがたくさんあります)。現在は、自分の理解を深めているところです。50年の人生経験を、新しいレンズを通して見直しています。時間がかかることでしょう」と前向きだ。しかし、自閉症という診断を受けたからといって自閉症コミュニティを代表するかのように「知識不足のまま大きな声を上げるようなことはしたくない」とも。「現在のところ、自分ができる範囲」として、自分より自閉症について知識豊富なクリエイターたちを紹介することなどを挙げている。「これは私が自分で変えられるものではありません…自閉症であることは、私自身の中核をなしている、なしていたというのをすぐに理解しました。いままで達成してきたことや発言してきたことの中核でもあったということも」と過去の自分とも向き合った。コメント欄には「13の理由」のブランドン・フリンからのハートマークや、ウェントワースと同様、大人になってから自閉症と診断されたという人たちからの共感メッセージ、サポートを表明する声などが寄せられている。(Hiromi Kaku)■関連作品:プリズン・ブレイク [海外TVドラマ]
2021年07月28日はじめまして!中度知的障害を伴う自閉症スペクトラム6歳の男の子「P」です!Pはわが家の末っ子の次男として生まれました。私は2人目の育児ということもあり、乳幼児期のPに対しては成長や発達の違和感などは全く感じておらず、むしろ育てやすい方だと思っていました。Pは笑顔も見せるし、目も合う、こちらの言うことにも反応し、簡単な模倣もしていました。離乳食が始まってからも偏食は全くなく、何でも食べるような子でした。私はこのころ既に、発達障害に対する知識も少しはあったのですが、乳幼児期のPを育てていても定型発達だと思っていましたし、少し言葉の遅れがあるくらいで焦らずとも2歳になったら流石に自然に話すようになるだろうし、全然大丈夫だろうと気楽に考えていました。しかし、それから何ヶ月経っても言葉は全く出て来ず、それどころか今までできていたことも少しずつできなくなって行き、定型発達の子に追い付くどころか差は広がる一方でした。どんどん自閉傾向が出てきて…Upload By みんそして、1歳半を過ぎたあたりから自閉傾向がどんどん現れて来たのです。激しい癇癪。偏食。呼びかけに反応しない。目を合わせない。物を並べる。横目、流し目で物を見る。動きの速い物、回る物、光る物が好き…などなど、自閉症の特性が見られるようになり、専門機関で相談や受診をする前から「発達障害?自閉症?」と素人目にも分かるようになったくらいでした。これはもうPには確実に何かあるんだろうなとモヤモヤしながら、ラクだと思っていたはずのPの育児は壮絶になり、毎日1分1秒を何とか乗り越えているような状態になりました。「自閉症っぽい」から「自閉症だ!」に変わった瞬間そんなある日、私自身の中で疑惑がはっきりと確信に変わる出来事がありました。それはPが2歳を過ぎたころです…。Pは言葉が出ない分、要求のときは私の手を引くクレーンをしていたのですが、一方的に腕をぐいぐい引かれていた私は、そのとき何気なく自分の手を服のポケットにしまってみたのです。するとPは今まで見たことのないようなパニック状態になり、私の手をポケットから必死に出そうとしていました。私の目や顔は一切見ず、手ばかりを見ている様子のPを見ながら「あぁこの子は私にお願いしていたんじゃなく、今までずっと手にお願いしていたんだな…」と何かが崩れ落ちるような感覚になり、私の中で最後の最後まで何とか繋ぎ止めていた細い希望の糸は完全に切れてなくなってしまい、パニックになっていたPと一緒に私も声を震わせながら泣きました。まだ医師にハッキリ診断されたわけではなかったのですが、「Pは自閉症っぽい」から「Pは自閉症だ!」と確信に変わった瞬間でした。Upload By みん療育に、医療機関に、奔走の日々ここからは、もう悩む暇もなく動くのみでした。できるだけ早く療育を受け、専門の医療機関とつながりたい!すぐに受給者証を申請し、療育を受ける為の準備をし、小児神経科と、こころ科がある近辺で1番大きな小児専門の病院に紹介状を書いてもらい、自閉症のほかにも何か隠れた基礎疾患はないかを検査をした上で医師に診断してもらおうと思い通院をすることにしました。そして3歳で療育手帳も取得し、療育園へも通う流れになりました。Upload By みん2歳半から療育を始めたPは現在年長。毎日療育園へ通いながら、月に数回作業療法と言語療法と音楽療法を受け、元気に楽しく過ごしています。私の方も、信頼し相談できる先生方やママ友達と出会うことができました。SNSでPのことを発信するようになってからは、さらにさまざまな人たちと出会い「1人じゃないんだ」と、皆さんから勇気や希望を頂いたり励ましてもらいながら、心にゆとりを持てるようにもなりました。もちろん、障害児の育児は大変なこともあります。でもそれ以上に学びや得るものもたくさんあり、決してつらいことばかりではありません。細やかな喜びや幸せを実感しながら、ゆっくりでもPの成長を皆で見守っていきたいです。そして、これからそんな私たちの日常をお届けし、子育てに悩んでいる誰かが「私だけじゃない!」「ひとりじゃない!」と少しでも共感していただけるようなコラムを書いていければと思っています。よろしくお願いします!Upload By みんLITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年06月28日タオルと指しゃぶりがあれば平気Upload By かさはらあやこ息子の指しゃぶりが始まったのは生後2ヶ月ごろ。ベビージムを与えても、あまり遊ぶことはなく、指をちゅっちゅと吸いながら、ぼーーーっとしている時間が多かったのを記憶しています。当時は、手の存在に気づいたんだな、可愛いな。ぐらいに思っていました。あまりにもずっと吸っているので、見かねた実母に「吸い出したら遊んであげないと…」などと言われましたが…。産まれてから2ヶ月間、毎日 朝から夜中まで泣いてぐずぐずだった息子が、指しゃぶりを始めたことで少し泣かなくなったような気がして、自分のせいかもしれないと気にはしつつ、やめさせることはできませんでした。ある晩、いつもの時間に寝付かずに泣き続けるということがありました。息子は寝かしつけや添い寝は必要なく、眠くなったらひとりで寝るタイプだったのですが、眠くて眠くて仕方がないのに、指を咥えても眠ることができず、いつもと違う泣き方で5時間近く泣き続けました。どこか痛いのだろうか?熱があるのか…?両親が交代で抱っこしながらあやすも原因は全くわからず、疲れ果てて〝ノイローゼになりそう…〟と思ったころ。いつも頭に枕がわりに敷くタオルを敷き忘れていることに気がつき、敷いたところ、「秒で寝る」という出来事がありました。え…?今までの泣きはなんだったんだろう。もしかして、タオルなの?息子は、タオルと指しゃぶりがないとダメだということがわかりました。逆にいうと、タオルと指しゃぶりさえあれば平気。高級でふわふわなタオルより、使い古したガサガサな触感が好きというこだわりはありましたが、幸い〝これじゃなきゃだめ!〟というこだわりが無かったため、洗い替えを何枚か用意することができました。また、指しゃぶりの指も、親指ではなく、右手の人差し指・中指・薬指、の3本と決まっており、歯が生えるのが圧倒的に遅かったため、歯並びに影響する心配もありませんでした。「愛情不足で起こるのではない」に勇気づけられてUpload By かさはらあやこ2歳を過ぎ、わが子が〝発達障害〟なのか、そうじゃないのかわからなかった私は、いつでもどこでも指をしゃぶっている息子に嫌気がさすこともありました。やめなさいと強く言ってみたり、指に苦いクリームを塗ってみたりしましたが、効果は全くありませんでした。〝ブランケット症候群〟や〝指しゃぶり〟について検索し、無理にやめさせないほうがいい、やめさせたほうがいい、という情報にいつも葛藤していました。そんなときに何気なく、このことについて悩んでいると児童発達支援の先生に相談しました。「タオルや指しゃぶりはお母さんの代わりだから、無理にやめさせなくてもいいと思う」と言われて、とても心が軽くなりました。その後も何度か不安になり、同じことを訊きましたが、先生はその度に「愛情不足で起こるのではない、大丈夫」と勇気づけてくれました。先生のおかげで、深刻に捉えることもなく、無理に辞めさせようともせず、安心するならいいかと黙認することができました。コロナ禍の悩みもあってUpload By かさはらあやこそんな中、コロナ禍になり、衛生面が気になりだしました。買い物などに連れていった際は、息子が触る場所や手をアルコール除菌シートでこまめに拭くなど、配慮が必要でした。出かけるときは必ずタオルを持ち、冬はマフラーがわりにガサガサのタオルを首に巻きました。4歳近い子が首にタオルを巻き、奇声をあげ、指をしゃぶりながらキャラカートに乗っている様子が不思議なのか、息子より幼い子が、珍しいものを見る目で何度も確認しにくるので、いたたまれない気持ちになり、その場を後にしたこともあります。何よりつらかったのは、3年以上も吸い続けて少し変形した指や深爪、指にできた吸いだこが気になり、それをガリガリと指で削り取ろうとして赤くなり、取ってくれとクレーンで要求してくる。そういうちいさな手や姿を見ることでした。自然と必要がなくなっていた…?Upload By かさはらあやこ4月に入り バタバタして少し落ち着いたころ、最近、指をしゃぶっている姿を見ていないし、タオルも持っていないということに気づきました。写真を確認すると、3歳9ヶ月の4月4日を最後に指をしゃぶっている姿がなく、寝るときのタオルも必要なくなっていました。きっかけは全くわかりませんが、可能性があるとしたら、保育園入園を機に「親指さんが痛い痛いだからやめようね」と、指しゃぶりをしている娘に描いた親指の絵。もしくは、アルコール除菌をしたあとに吸ったら不味かった…とか?3年7ヶ月もの間、指を吸い続け、タオルに依存してきた息子。自然と必要がなくなったようです。決して格好いいものではないし、いつも指はふやけているし、指やほっぺはよだれくさい。あんなに嫌だったのに、もう、赤ちゃんのようなあの姿は見られないのだと思うと少し寂しい気分で、いまでは写真、もう少し撮っておけばよかったなぁ…と思っています。次に何か嫌だなぁと思う癖や困りごとが起きたとき、〝これは今しか見られないんだ、写真撮っとこ〟と、少し余裕を持って対応できるようなお母さんになりたい…‼︎LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年06月21日初めての幼稚園生活初めての幼稚園生活。といっても、幼稚園で何一つ活動に参加せず、それを「幼稚園生活」と呼んでいいかわからなかったです。とりあえずは登園時間に登園し、木の上からみんなの活動を見守る任務を果たす日々を送り、降園してくる状態だったので…それでもそれを見守ってくださる加配の先生。そんな毎日も、そのことがとってもありがたかったです。なぜならショッピングモールやファミレスでは、肩身の狭い思いをしてばかりで足が遠のいたし、公園ではひとつの場所にじっとしておらず、移動しすぎて公園常連の子たちに認識されていませんでした。さながら忍者でした(笑)Upload By beth(ベス)そんな毎日のなかで、幼稚園では加配の先生や担任の先生、他クラスの先生、園長先生が気にかけてくれて、存在そのままを受け入れてくれていることを肌で感じました。そんなある日、ちょっとだけ不思議なことがありました。お迎えに行くと、担任の先生が興奮気味にかけよってきました。「今日ハルくん、すごかったんですよ!」ちょっと不思議なクレヨン事件わたしは先生のリアクションを見て、『えっ!ハル、ついに自分のクラスに入ってみんなとの活動に参加できたとか!?』と思いました。でも聞いてみると…ちょっと予想とはジャンルの違うお話でした。クレヨンが大好きなハル。クレヨンで絵を描くのではなく、クレヨンそのものが好きなのでした。幼稚園に着くと、木に登る前に、クレヨンの箱を開けるのが日課だったそうです。等間隔に並んだその色とりどりのクレヨンたちを眺めたり、中身を確認しては、ふぅ…と満足げにまたしまっていたそうなのです。ところがこの日は、朝からクレヨンがない!先生たちはハルのお道具箱を一目見て、気がついたそうです。周りの子に聞いてもわからない。ハルに聞いても、もちろん答えないのでわからない。ハルは当時、「なくて困った」とか、「なくしちゃった」とか言えませんでした。先生たちは、「ハルくんは顔にはでないけれど、さぞ困っているだろう…」と心配し、必死に探してくれたそうです。ハルのほかの持ち物も、ほかの子のロッカーも、そのほか、教室中。みんながクレヨン探ししてくれている中、ハルは…ないない、と探してくれる先生がふと後ろを見ると、ハルが立っていたそうです。普段なら木に登りに行きもう教室にはいない時間なのに。めったに近い距離に自分から来ないのに。ハルのその手には…自分のクレヨンを持っていたそうです…!(笑)Upload By beth(ベス)先生たちは「あれえええ!?」となって、「ハルくんクレヨンあったのね!?どこにあった??」「先生たちが探してて困ってたから、持ってきてくれたの!?」と口々にいったそうです。するとハルはひとこと…「ここだよ」と言ったそうです。それを聞いて、わたしもびっくりしました。にわかに信じられなかったです。えっ。ハル…、誰かがものを探してる様子を見て、何を探してるか理解できるんだ…それで自分である場所がわかってて、持ってきたりするんだ…そして、そしてさらに、「ここだよ」と自分から言った?????人に呼びかけるコミュニケーションをしなかったハルの、突然の変化要求以外で、普段は人に呼びかけることはなかったハルが、場面に合っているワードを言ったこと。これは、当時のハルにとって、とても珍しいことでした。正直に言うと、このころはまだまだ、どうしてもほかの子と比べてしまう自分がいました。クラスの可愛い幼稚園児たちが、毎日目に入ると、どうしても比較してしまったのでした。でもそれは、ネガティブというよりは、ほかの子が小さいながらどんどん色んなことができていく姿がかわいくて愛おしくて、ああハルはいつあんなことができるようになるんだろう…!とワクワクしながら待っていたのでした。まだまだ、待てばほかの子たちと同じ成長をたどれると思っていました。Upload By beth(ベス)ハルのビッグバン今回のような『クレヨンここだよ事件』のほかにも、「あなたそんなことできたん!?」という驚きは、幼稚園に入って何度かありました。ああ、ハルは幼稚園で集団生活には入れていなくても、幼稚園に来たことで、毎日ビッグバンが起きているくらい刺激を受けて成長をしているんだな…と。そのたび自分も考え直させられました。ほかの子と同じ成長を望むよりも、ハル自身の変化を喜んでいきたい。それがどんなに小さなことでも。そうして、ハルのおかげで成長できる部分を実感するのでした。今回で、ハルの幼稚園編は終わりたいと思います。見てくださった読者の皆さまに感謝申し上げます!ありがとうございました!LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年06月20日考えないわけにはいかない、「きょうだい児」の妹のことUpload By かさはらあやこ障害や病気がある子の兄弟姉妹のことを〝きょうだい児〟といいます。私がこの言葉を知ったのは 自閉症について調べるようになってからなので、一般的にみるとたぶん知らない人の方が圧倒的に多いだろうし、当事者の気持ちになって考えることなど身近にいない限りはないと思います。そして自閉症育児に奮闘しているわたしが、きょうだい児について悩んでいると言ったら、周囲の人はきっとこういいます。まだ小さいのに考えすぎ大丈夫育て方次第そう、そうかもしれない。でも、考えないわけにはいかないのです。兄に手がかかって我慢を強いてしまうのではないか。しつけが不平等になってしまうのではないか。好きな人と結婚できないのではないか。この先に感じるであろう疑問や将来への不安に、しっかり耳を傾けてあげられるだろうか。食事中に首をひたすら振る兄をみて喜んで笑いながら真似をする。突然泣き叫んで酷い癇癪を起こす兄を不思議そうにみつめる。おもちゃを奪い合った後にこちらに視線を投げてくる…。そんな娘に、なんと声をかけてあげればいいのか、どうやって接していけばいいのか、ずっとずっと悩んできました。医者から言われた「誤学習をする可能性がある」Upload By かさはらあやこ娘が1歳になったばかりのころ、息子の通院している病院で、娘について「みたところ発達が非常に良いので、早く集団に入れたほうがいい。誤学習をする可能性がある」と言われました。兄の真似をして首を振ったり、兄が食事を口に運んでもらう様子をみて自分で食べなくなったり、〝誤学習〟に心当たりがあったわたしは、とても焦りました(その日のうちに某幼児教材を契約したくらい焦りました)。翌日に児童発達支援の先生が、「私はそれを誤学習だとは思わない」とはっきり言ってくださったため、モヤモヤした気持ちは打ち消すことができましたが、医者からの「誤学習」という強いワードは心の中から消えることがなく、いまも、ことあるごとに脅かされています。妹が保育園でお友達を押してしまった。押し寄せる不安Upload By かさはらあやこ4月から保育園に入園。慣らし保育が終わって少し落ち着いたころ、妹がお友達に対して「だめ!やだ!」と言ったり、ときには手が出て、押してしまったりする案件が発生。家で遊んでいるとき、兄におもちゃを奪われることが多い妹は、大きな声を出して抵抗し、奪い返しに行きます。兄も、こだわりのあるおもちゃであれば何度でも奪いに行き、奪い奪われ癇癪を起こし、妹は大声で泣く。そんなことが目の前で起こっているとき、両者にどう声を掛けていいのかわからず、ただ呆然と見ているしかない状態で、こちらに余裕がないときは特に、息子に癇癪を起こされては困ると、「いっちゃんはいいの!」と兄を庇うこともあり…。そのせいで、「だめ!いいの!」と、娘も混乱しているような言葉を発しながら、おもちゃを奪うようになってしまいました。私が母親だから、兄が自閉症だから、というような家庭環境のせいで、このまま娘が保育園という社会の中で、横暴な振る舞いをするようになったらどうしよう。どうしよう。どうしたらいいんだろう。そんな気持ちが一気に押し寄せてきて、涙が止まりませんでした。きっと正解なんてない。関わってくれる人たちと一緒にUpload By かさはらあやこすぐに保育園の担任の先生に相談し、それから児童発達支援の先生方にも相談。先生方はすぐに時間を割き、真剣に話を聞いてくれました。そして、いま私が悩んでいる娘の行動は問題行動ではなく、年齢的には相応しい2歳児の遊びであり、コミュニケーションの取りにくい兄とのやり取りの一つであること。物を取られるかもしれないという不安感をなくすため、取られても戻ってくる見通しを持たせる遊びを取り入れて、物の永続性を学習させる。家庭でのルールを少し緩和する(兄によしとすることを妹にもよしとする)。など〝私に対しての〟具体的なアドバイスをくれました。(先生方、本当にありがとうございました!!)〝きょうだい児〟の問題に関しては、同じように悩んでいるひとたちが数多く存在すると思います。沢山いるはずなのに、〝きょうだい児・喧嘩・正しい声の掛け方〟と検索しても、欲しい答えは見つかりません。どう声をかけたらいいのか。どう接したらいいのか。正解なんてないのだと思います。だから、・聞いてもらう・色々な人の意見を聞いて考える・いまはやりすごす(成長を待つ)・目を瞑ってなんとか乗り越える・一人で悩みすぎないそんなことが必要なのだと思いました。そして、この問題に関しては、成長と共に悩みの種類も変化し、一生悩みは尽きない気がします。自分ひとりで抱え込むのではなく、関わってくれている人たちみんなに育ててもらうつもりで悩みとうまく付き合っていかなくてはと思います。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年05月20日Upload By スガカズ私は長男の3歳児検診で、列に並べない長男を捕まえて検診を受けさせることができず手をこまねいていました。そのうち、会場が閑散としていき…最後の方でやっと保健師さんと落ち着いて話ができました。そのときに、「よかったら子ども発達支援センターに相談してみてはいかがでしょうか?」と言われました。私にとっては思ってもいなかった言葉でした。Upload By スガカズ確かに外出するとひやひやする場面がありましたが、どちらかと言えば癇癪の少ない子でした。家や保育園では、もの静かで他害もなく、黙々と2~3歳には難しいパズルなど興味のあることに打ち込む子だったので、「この子はものづくりの才能があるのかも知れない」なんて、呑気に考えていました。自発的に言葉を発しないことも、「話せない訳ではないし、理解力はあるし、この子は大人しいからだ」と思っていました。とはいえ呼びかけに反応がないことが大半だしなかなか寝ない子だし、外出先で気がつくといなくなっているなんてこともあったので、「うちの子はちょっと育てづらい子なのかも」と潜在的に感じてはいました。5歳で知能検査を受けました。結果は…Upload By スガカズ子ども発達支援センターは順番待ちが多いです。長男を見てくださった心理士の方は療育センターにいることが多く、子ども発達支援センターには週に2度ほどしかいないため、1年は待つとのことでした。ようやく順番がまわってきたのは5歳のころ。5歳9ヵ月で田中ビネー知能検査Vを受けました。検査中は、椅子を左右前後に揺らしたり、離席したり…器具が提示されると何もいわずすぐに触ってしまうなどの動きの多さは目立ったものの、声をかけると続行は可能で、全体的に見て意欲的だったようでした。検査結果は6歳6ヵ月相当。「平均の上」の範囲に位置しました。相対的にみて特に大きな課題は見受けられないようで、様子見という判断となり、療育の紹介は受けませんでした。心理士さんからの検査結果と見解を聞き、当時は「心理士さんがそう言うのであればそうなのだろう」「今回の検査結果はポジティブに捉えて、この子の興味のあることはたくさんさせよう」と思うことにしました。平和主義すぎるところがあり、共感して結果人に合わせすぎたり変化に対応することが少し苦手な私の悪いクセです。当時の私にもっと強い信念があったなら、療育につなげることができたのかもしれません。後に長男の就学後に後悔することになるのでした。長男の発達障害がハッキリとわかったきっかけは、学校からの一本の電話Upload By スガカズ通常学級で小1の2学期を迎えたころに、担任の先生から呼び出しがありました。そこで長男が学校生活に適応できていないことを知りました。・授業中は絵を描いているか、教室の外に脱走する。・クラスメイトとの関わりを拒絶する。・特定の音に敏感で、音楽の授業を受けられない。などの指摘を担任の先生から受けます。たまたま学校公開の日に、同学年の生徒さんに「ねーねー、この子(長男)キモいんだよ」と率直な意見を言われ、とてもショックだったのを覚えています。そこでようやく、「自分の子どもは明らかに他の子と違う」「長男にこの先どんなことが起こる可能性があるのか」理解しました。言われたときは目の前に長男もいましたが、本人自身は「この子」が「どの子」を指しているのか分からなかったし、「キモい」の意味を理解していなかったようで、反応はなく、無表情でその場にいました。学校から帰宅してからというもの、私の頭の中は疑問でいっぱい。うちの子が何故?先天的な障害と聞くけど、私のしつけが悪かったの?妊娠中に「はしか」になってしまったのがいけなかった?私の遺伝?考えても仕方ない「原因さがし」の日々。その後しばらく私が子どもの障害を受容するまでメンタルが低迷する期間が続きましたが、担任の先生、スクールカウンセラー、療育の医師、心理士、作業療法士のお世話になり…小5でようやく特別支援教室に通えることになり、現在中2になりました。少しずつ少しずつ道が開けたという感じです。穏やかな発達障害は、優先順位が下がりやすいUpload By スガカズうちの長男のようなタイプは社会性秩序だとしても、学校生活を送る中で、どうしても優先順位は低くなりがちです。学校生活で本人が困ったことがあっても本人は助けを求めないし、学校も明らかに困るようなことがないからです。通級の見学に行き、トレーニングを受けているお子さんたちの様子を見て、「あぁ。自分の子は優先順位が低いと言われるだろうな」と直感で思いました。案の定「もっと課題の多いお子さんがいるので…それに空きもないし…」と、やんわり断られました。こういったときの雰囲気がどうも苦手です。発達障害だとわかり、支援を受けたくても受けづらい。今思えば療育センターにも通えているし、担任の先生にも配慮いただいているので、可能な支援は受けているのだろうと思いますが、当時の私は「声を大にして、『わが子により良い支援を受けさせたい!』と言っても、今までと同じように断られるに違いない。長男が今通級を選ばないことでほかのもっと優先順位の高いお子さんが支援を受けられるのかもしれない。それに、期待して断られて落ちこむくらいなら素直に受け入れたほうが自分の精神衛生にもいいはずだ」こんな風に思っていました。次回はその長男での経験が、年中から小1までトラブル続きだった次男の発達障害がわかったときにも影響したお話です。
2021年04月29日アメリカ・ヴァージニア州に住むライアン・ローリーさんは自閉症をもっています。2021年2月、高校卒業を控えたライアンさんは就職活動をスタート。ビジネスに特化したSNS『LinkedIn』に履歴書とカバーレターを投稿することにします。カバーレターとは履歴書に同封する手紙のようなもので、面接の担当者に宛てて志望動機や自己紹介などを書きます。一般的にはパソコンで作りますが、ライアンさんは手書きで仕事に対するやる気と熱意をつづったのです。親愛なる未来の雇用主様私の名前はライアン・ローリーです。19歳で、ヴァージニア州のリーズバーグに住んでいます。私は自閉症をもっています。また独特のユーモアセンスと数学の才能があり、テクノロジーが得意で、覚えがいいです。私はアニメーションかITにちなんだ仕事に興味があります。あなた方のような方々は私に賭けてみるべきだと思うのです。私は普通の人たちと同じようには学べません。仕事を教えてくれるメンター(指導者)が必要ですが、早く覚えますし、一度説明されたら理解します。もしあなたが私を雇って仕事を教えてくださったら、あなたが喜んでくださることを約束します。私は毎日出社し、あなたに指示されたことを行い、一生懸命に働きます。NBC Nightly News with Lester Holtーより引用(和訳)青年のやる気に感銘を受ける人が続出海外メディア『CNN』によると、ライアンさんの履歴書とカバーレターを『LinkedIn』に投稿するのは父親のアイディアだったのだそう。このアイディアは大成功。彼のカバーレターは700万回以上閲覧され、コメントが殺到し、複数の企業から仕事のオファーがきたのです!それだけではありません。なんとロサンゼルスにある自閉症の若者のためのコンピューター・アニメーションスタジオ『Exceptional Minds』が、ライアンさんに「奨学金でアニメーションを学ぶプログラムに参加しませんか」と申し出たのです。Ryan Lowry wrote a powerful handwritten letter to a future employer that was viewed by millions online. Now Ryan, who...Posted by NBC Nightly News with Lester Holt on Friday, March 19, 2021Ryan Lowry wrote a powerful handwritten letter to a future employer that was viewed by millions online. Now Ryan, who...Posted by NBC Nightly News with Lester Holt on Friday, March 19, 2021このストーリーは多くのメディアで紹介され、ライアンさんへの祝福と称賛の声が上がっています。・おめでとう!あなたの幸運を祈ります。・いつかきみが手掛けたアニメーションが見られるのを楽しみにしているよ。・私の15歳の息子も自閉症なの。あなたに感銘を受けたわ。自閉症をもちながらも自らの能力や得意なことを堂々とアピールし、大好きなアニメーションの仕事をするという夢に一歩近付いたライアンさん。これほどのやる気と行動力があれば、きっと彼は将来大きな仕事を成し遂げることができるでしょう。[文・構成/grape編集部]
2021年03月31日Upload By 発達ナビ編集部自閉症者の独特な世界観を表現した作品編集部(以下、――) 映画の原作となったエッセイ『自閉症の僕が跳びはねる理由』は、自閉症者の内面の感情や思考を分かりやすい言葉で伝えたことで注目され、34か国以上で出版され、117万部を超える世界的ベストセラーになりました。書著を書こうと思われたきっかけを教えてください。話せなかった僕が気持ちを伝えられるようになってから、母は僕の行動について「なぜ、そんなことをするの?」と、ことあるごとに聞くようになり、僕の説明を聞いては驚いていました。僕の行動の理由が分かるようになり、僕に接する母の態度に余裕が出てきたと思います。僕は母に尋ねられなければ、自分の行動を言葉にすることはなかったのではないでしょうか。なぜなら、それが僕にとっての日常だったからです。僕の世界が母の世界と違うと知ってから、僕が見たり感じたりしている世界を母に伝え、母からは“普通”と呼ばれている人たちが見たり感じたりしている世界について教えてもらうようになりました。当時の母は僕の行動の理由を知り、親子関係がよりよくなったと感じていたようです。自閉症者である僕の気持ちを知ってもらうことで、自閉症者に関わる人たちの気持ちが少しでも楽になればと思い、この本を出版しました。――映画は「自閉症と呼ばれる彼らの世界が“普通”と言われる人たちと、どのように異なって映っているのか?」を世界各地の5人の自閉症の少年少女たちの姿やその家族たちの証言を通して追い、明らかにしていく内容でした。著書がこのような形で映画化されたことについて、どのように思っているか教えてください。すばらしい映画にしてくださり、制作者のみなさまに感謝しています。僕は、自閉症者の生きづらさや独特な世界観について文章で表現しましたが、ジェリー・ロスウェル監督は映像で表現してくださいました。多くの方にこの映画をご覧いただき、自閉症とは何かということについて考えていただければうれしいです。――本作では、自閉症のある人が世界をどのように感じているのか、視覚や聴覚で伝えている描写がありました。東田さんが完成した映画の映像を見て、感じたことを教えてください。とても芸術的な映像だと思いました。自閉症者が見ている風景のように描かれている場面がありましたが、僕が日常のすべてにおいてこのような風景を目にしているわけではありません。僕は著書の中で世界の見え方について「最初に部分が目にとびこんできます。その後、徐々に全体が分かるのです。」と書いていますが、僕の視界にそう映っているというよりは、意識の向け方がそういう感じだということです。意識というのは本人にしか分からないものだと思っていました。意識下で起きていることを映像で表現し、それを見ている人に自分の視界で起きているかのような錯覚を起こさせる映画の技術に感動しました。Upload By 発達ナビ編集部「繰り返し行動」「動きを制御できない不安」、言葉にするなら――「不安に感じるとき、繰り返し行動を行うと安心する。不確かさから自分を守ってくれる」という言葉がありました。映画のなかでも、ある女の子がキラキラしたひもをいつも持っていて、集中している時は平穏、目を離すとさまざまな刺激が飛び込んでくる描写があります。東田さんも、繰り返し行動をしていないとさまざまな刺激が飛び込んでくるのでしょうか。また、どのようなことをすると気持ちが落ち着きますか?繰り返し行動をしていないとさまざまな刺激が飛び込んでくるのではなく、さまざまな刺激が飛び込んでくるために繰り返し行動をしてしまうのです。どちらが先でも同じではないかと思われるかもしれませんが、繰り返し行動は、したくてしているのではないという意味では、自分を守るために繰り返し行動をしてしまうという表現の方が、自閉症の人の心境をよく表しているのではないでしょうか。僕も刺激には弱いです。気になる音や風景が目に入ると、自分を落ち着かせるために、いつも見ている絵本や昔の写真を見たり、手で耳をふさいだりしていました。今は、周りの刺激にもだいぶ慣れました。――発達ナビを読んでいる人たちのなかには、お子さんが突然家を飛び出してしまったりすることにどうしたらいいか悩んでいる人もいます。東田さんもよく家を出て外にいらっしゃったと言います。外に飛び出すことで得たかったものはなんですか?外に出ることで自分が何かを得たかったわけではなく、脳が僕にそう指令を出すのです。外に出てしまったら、あとは歩き続けるだけです。赤い靴を履いた女の子のように、僕はただ目的地に向かって足を動かします。目的地といってもどこを目指しているのか、自分でもよく分からないのです。自分がどうなるのかなんて考えませんでした。自分の行動を自分でうまくコントロールできないというのは、なぜこんなことをしているのか、自分でも説明できない状況なのだと思います。僕の場合は、警察に保護されたり、車にひかれそうになったりしたことで、勝手に外に出て行かなくなりました。――東田さんは、記憶は線でつながっておらず点としてばらばらに存在し、突然思い出されるといいます。そのような時間の感覚を持っていることで大変だと思う点、逆に良いと思っている点等があれば教えてください。大変だと思っているのは「前にやったでしょ」「もう忘れたの?」などと注意されることです。普通の人たちは、これくらい覚えているのは当たり前という前提のもと、僕たちが記憶していないことに対して、叱ったり怒ったりします。けれど記憶というのは本来、意思の力だけでどうにかできるものではなく、脳の機能も関係しているものではないのでしょうか。僕がこんな文章を書けることを不思議に思われる方もいますが、僕が言う「点のような記憶」というのは、記憶が線のようにつながらないだけで、場面ごとの記憶はあるということです。場面としての記憶があれば、言葉や知識そのものは増えていきます。僕の記憶で良かったと思っているのは、過去から現在、どの地点においても、自分という人間の存在感が変わらないことではないでしょうか。小さい頃の自分も今の自分もそれほど変わらないのです。過去に思いをはせ遠い昔を振り返るというよりは、自分がたくさんいるようなイメージです。自分という人間がこの世に無数にいるような感覚は、時間を超越しているとも言えるでしょう。フラッシュバックに怯えることもありますが、もしかしたらこれは、四次元を体感している状態なのかもしれません。――自分の体や行動を制御できない不安はありますか?そのような不安から守るためにしていることがあれば教えてください。僕は、体の機能に問題がないにもかかわらずみんなのように動けない自分のことを、「壊れたロボットのようだ」と表現してきました。大人になった今も、あまり違いはありません。指示に従うことも、集団行動も上手くできないのです。じっとしていることさえ苦痛です。そんな自分を不安に思う気持ちはずっと続いています。特別な対策はしていませんが、失敗してもそれほど落ち込まなくなりました。なんとかなると、自分で自分を励ませるようになったからだと思います。――「人間にどれだけ否定されても、自然は僕を抱きしめてくれる」という表現がありました。東田さんはどのように自然とふれあい、感じてきたのでしょうか。光を浴びれば僕の体は分解し、分子となって周りに飛び散るような感覚になります。風が吹けば風よりも速く走りたくなり、水中に潜れば自分に手足がついているのを忘れてしまいます。僕は自分が人であることが、いまだに信じられません。人の中にいる自分より、自然の中にいる自分の方が安心できるからです。嫌なことがあったら空を眺めます。流れる雲やまたたく星を見ているだけで、気持ちが癒されるのです。自閉症者として、人として、自分に向き合うUpload By 発達ナビ編集部――思ったことを会話で伝えられないことで、人とのコミュニケーションに苦労されてきたと思います。そんななか、人との関わりで癒されたり救われたりした経験はありますか?僕が心から信頼しているのは家族です。僕がここまで元気に生きてこられたのも、家族の支えがあったから。自分が信じた道を歩くことの大切さを身をもって教えてくれた母には、感謝しています。父からは、世の中にはさまざまな価値観が存在するということを教わりました。学校の先生も、僕に優しかったです。僕が友達に笑われることはあっても、いじめられることはありませんでした。先生は僕をいつも気にかけてくれていました。僕が人を嫌いにならなかったのはこのような経験も影響していると思います。僕はコミュニケーションでずっと苦労していますが、人との関わりを拒絶しているわけではありません。むしろ、人にとても興味を抱いています。――人の、どのようなところに興味があるのですか?人はいつも正反対の性質を持って生きています。「善と悪」「やさしさと厳しさ」「期待する気持ちと失望する気持ち」…どんな人もさまざまな一面を持っています。誰でも自分の気持ちに正直に生きたいと願う気持ちと、人として正しくありたいという気持ちの間で揺れ動いているし、それは僕も同じです。だから、そんな思いは自分だけではないと知ることで、僕は未来に希望を感じるのです。僕の悩みも自閉症だからではなく、人として生まれたからだと思えるからです。――映画に出てきたある自閉症の方は、文字盤で意思を伝えられるようになる前の学校教育について、苦い思いを語っていました。東田さんは、受けてきた教育についてどのように感じていますか?僕は小学校時代、5年生まで地域の学校(通常学級)で学びました。ただし、授業中も母がずっと付き添ってくれていました。小学校6年生から中学3年生までは特別支援学校に通い、高校は障害のある生徒も受け入れてくれる通信制の学校に在籍しました。普通の学校も特別支援学校も、一長一短があったと思います。子どもには教育を受ける権利があります。どんな人生を歩みたいのか、学校の選択も含め本人が決められれば理想だと思っています。――東田さんは、どのようにご自身の学校を選択してきたのでしょうか。学校は、基本的に自分で選択してきました。小学校では、とにかくみんなと一緒に勉強したかったです。けれどもだんだん周りが見えるようになり、他の人との違いに気づき始めたのです。自分はいったい何者なんだろうと、思春期の入り口で深く考えるようになりました。みんなとの違いは努力だけではうめられないことも知りました。当時は、みんなのことがまぶしかったです。そこで小学6年生から特別支援学校に転校することを決めました。小学校の卒業まであと1年、せっかくだから頑張ったら?と言われたこともありましたが、将来のためにも、自分で自閉症という障害を受け止めるべきだと思いました。特別支援学校では、自閉症である自分と向き合うことができたと思います。世界中の自閉症者が、自分らしく生きられるように――発達ナビの読者は、主に保護者や支援者です。自閉症など、特性がある人の保護者、支援者に対して伝えたいことがあれば教えてください。当事者にとっては、自分のことを心配し、気にかけてくださる方々の存在が生きる希望につながっています。人が生きるうえで最も大切なものは、希望ではないでしょうか。どうすればできるようになるのかを考えることは大切ですが、そのためにも次も頑張ろうと思えるよう応援をしてあげてください。――映画に出てくる自閉症の人たちを見て、何を感じましたか?僕が気になったのは、やはり自閉症であるために差別されている人たちがいるということです。人は生れながらに平等で誰もが幸せに生きる権利を持っているはずです。そして、幸せかどうかを決めるのは、周りの人ではなく本人だと思います。世界中の自閉症者が自分らしく生きられることを祈っています。そして、これからもどうして差別が起きてしまうのか考えていきたいです。――自閉症のある人とまわりの人たちには、どの様な対話が必要だと思っていますか。また、どの様な人に対話へ加わってほしいですか。特別な対話はいらないと思います。ただ普通の人たちとは少し違う人たちも、社会の中にいることを知ってほしいのです。「どの様な人に対話に加わってほしいですか」というご質問には、「どなたでも」と僕は答えます。――今日はありがとうございました!インタビューを終え、東田さんの繊細かつ独特な感受性と、人に対する温かいまなざしの伝わってくる言葉の数々が印象に残っています。著書では自閉症者の見ている世界観が言葉で的確に表現されていますが、映画では映像と音声で、その世界観を体感することができます。ぜひ鑑賞してみてください。※インタビューは、東田さんにお送りした質問事項に文章で回答していただく形と、オンライン対面で質問してその場で文字盤を使いながら回答していただく形の2つをとりました。この記事は、その両方の回答をあわせて執筆しています。Upload By 発達ナビ編集部東田直樹さんの著書『自閉症の僕が跳びはねる理由』が原作となった映画、『僕が跳びはねる理由』 が、4月2日(金)より、角川シネマ有楽町、新宿ピカデリー、アップリンク吉祥寺 ほか全国順次公開。東田さんが文字でつづった自閉症のある人の感じている世界を、東田さんの言葉と美しい映像とともに描いた作品。アメリカをはじめ、さまざまな国で暮らす自閉症当事者の暮らしや夢、友情などを丁寧に取材している。原作:東田直樹『自閉症の僕が跳びはねる理由』(エスコアール、角川文庫、角川つばさ文庫)翻訳原作:『The Reason I Jump』(翻訳:デイヴィッド・ミッチェル、ケイコ・ヨシダ)監督:ジェリー・ロスウェルプロデューサー:ジェレミー・ディア、スティーヴィー・リー、アル・モロー撮影: ルーベン・ウッディン・デカンプス/編集: デイヴィッド・シャラップ/音楽: ナニータ・デサイー原題:The Reason I Jump2020年/イギリス/82分/シネスコ/5.1ch/字幕翻訳:高内朝子/字幕監修:山登敬之/配給:KADOKAWA
2021年03月26日自閉症スペクトラムのあるウリと、その父親の暮らしを描くイスラエル映画Upload By 発達ナビニュース障害のある子どもを育てている親にとって、子どもの自立は大きな課題であり、心配や不安を感じることも多いのではないでしょうか。今回紹介する映画『旅立つ息子へ』は、自閉症スペクトラムのある一人息子・ウリと、妻と別居し息子と二人で暮らす父親のアハロンの、自立と子離れの物語。美しい映像描写で定評のある、イスラエル映画です。アハロンとウリは、まるで一心同体。二人の毎日は平穏で、言葉はなくても通じ合っています。2人がイキイキと自転車で街を疾走する様子、楽しそうに電車に乗るウリと寄り添うアハロン…静かで穏やかな風景、美しい色合いで描かれる二人の日常。ですが時に理解の無い周囲の視線が、観る人の心をチクりと刺します。その視線から息子を守るように寄り添うアハロンに、自分の姿を重ね合わせる人も多いのではないでしょうか。父子二人の平穏な生活に訪れた、ある変化二人の平和な毎日に、突然の激震が走ります。別居している母親が、ウリを施設に入れるというのです。母親もまた、親なきあとのウリが路頭に迷わないようにと、最善を尽くそうとしてるー。自分よりウリを理解してくれる者はいないと頑なな父の気持ちも、父の愛情に包まれた暮らしの中に安心を見出しているウリの気持ちも、どちらも分かるからこそ、切なさがこみ上げます。そしてまた、二人の間に入っていくことができない母の嘆く姿に、入り込む余地のない父子二人の強固な関係を、改めて感じさせられるのです。Upload By 発達ナビニュース父親は意を決して、息子と家を出ます。「いつもの電車の旅とは何か様子が違うぞ。これが最後の旅、別れの旅になる。旅の先には、父と離れて住む施設がある」そう感じたウリは駅のホームでパニックを起こします。そして、パパと一緒にいたいと訴えるのです。改めて「ウリを手放したくない」と痛感したアハロンは、施設や妻との約束を破って、リゾート地に向かってしまいます。アクシデントの中でふと垣間見えた、息子の成長Upload By 発達ナビニュース二人の旅は、さまざまなアクシデントに見舞われます。そしてアクシデントが起こるたびに、アハロンは考えないようにしてきたことに、少しずつ気づくのです。同い年くらいの女の子を見て思わず近寄って行くウリを必死で止めるアハロン。目を離したすきにどこかへ行ってしまったウリを必死に探すアハロン。ようやく見つけたとき、ウリがいた場所は…。ウリの年相応の成長、楽しみ、興味に。それは父親とともに過ごしたのでは得られない、ウリに秘められた可能性なのかもしれないと。「自分の人生を生きているのか」という問いUpload By 発達ナビニュースそしてまた、訪れる人との会話を通して、私たちは父親の人生についてもまた、深く考えさせられる機会を持ちます。今は職なし、一文無しで、妻に養ってもらっているアハロンですが、実は第一線で活躍する優れた才能の持ち主だったこと。息子のために輝かしいキャリアを捨てて、息子のためだけに生きてきたこと。でも本当に息子のためだけにキャリアを捨てたのか。自分の人生をかけて育ててきた息子だから、自らのエゴのために手放せないのではないか。父は息子に依存し、また息子も父に依存しているのではないか。その問いもまた、観る人の胸に刺さるのです。親はいつか、子どもを手放さなくてはいけません。そして子どもは親元を離れていかなくてはいけない。そんなとき、どこで、だれと暮らせるなら、我が子は幸せなのだろう。親の愛以上に子どもの力となるものとは、なんだろう。今は、毎日のことに必死かもしれません。でもいつか来る巣立ちの日のために、親自身も自分の人生を生きるという事、そして子どもには子どもの道があるということを忘れてはいけない。この映画は、あたたかく私たちを包みながら、そんなことを教えてくれるのではないでしょうか。『旅立つ息子へ』上映情報映画『旅立つ息子へ』は、3月26日(金)TOHOシネマズ シャンテをはじめ、全国公開。公開日:2021年3月26日(金)上映館:TOHOシネマズ シャンテ他、全国公開イラスト:かなしろにゃんこ2021年3月14日に、公開を記念してオンライン座談会を行いました。その様子がアーカイブでもご視聴いただけます。発達ナビユーザーにもご協力いただいた、障害がある子どもの自立や、保護者自身のキャリアについてのアンケート結果をひきながら、つながりたい支援や、これからの社会に願うことまで話しました。座談会登壇者牟田暁子(LITALICO発達ナビ編集長)田中康雄(北海道大学名誉教授/児童精神科医)橋謙太(NPO法人ファザーリング・ジャパンメインマンプロジェクト・リーダー)
2021年03月19日いよいよ幼稚園へ!入園面談では…案の定、ハルは全然座っていませんでした。かろうじて面談の部屋には入れましたが、「いってちます」と爽やかに出ていこうとしては連れ戻し…変な汗をかきました。普段のようすは私の口から説明しました。園長先生は、ハルや私をずっと穏やかにエレガントに見守ってくださり、ほっとしたものです。ですが、おそらく他のお子さんはされなかったであろう「加配の先生のお話」は、さりげなく出してくださいました。(加配とは担任の先生の補助として、心配のある子をサポートしてくれる先生のことです)ハルと一緒にいると何一つ聞く余裕もなく、元気な印象だけでも残そうとハキハキ挨拶したのを覚えています(笑)。一つ上の従兄弟が在園していたこともあり、一応問題なく入園は決まりました。スーパー多動児ハル、幼稚園に入園しました!ハルは私の実家にとって初孫。初孫が初めて幼稚園に入園するとあって、家族一同お祝いフィーバーでした。私も新生活にドキドキわくわく!というよりは…正直…疲れ切っていて精神的に余裕がゼロだったため、数時間でも離れられることで心の平穏を得られると期待していたりもしました。ごめん、ハル…。本気で可愛かった。ぷにぷにのほっぺも肩も、座っている姿だけでも涙が出るくらい可愛かったです。ずっと抱きしめて穏やかな愛情を注ぎたい。それでも、それは叶いません。道路へ、歩道橋へ、電話ボックスの上へ。手を繋いでも一瞬。するりと逃げるんだもの。ハーネスも軟体動物のように縄抜け。一日数十回追いかけていると、母は…鬼の形相にもなってしまうのでした。Upload By beth(ベス)集団生活に入れば、少しは協調性やルールが身につく…?との期待もありました。幼稚園に入って、同年代の子どもたちがみんな教室で楽しそうなら、一緒に何か活動したり、するかな…?と。ところがどっこい、やはり母の期待の斜め上を生きるハル。集団生活に、そもそも入りませんでした…。Upload By beth(ベス)木の上です(笑)。ちょっと木登りとかでなく、てっぺんまで登ってようやく、動きが止まるのでした。速攻で園のほうから加配の先生を付けていただいたハル。そこから、集団生活ではなく、加配の先生との濃密な時間が始まりました。優しかったです!担任の先生も、加配の先生も、園長先生も、温かく見守ってくださいました。これは、本当に救われました。ハルが木の上にいたこと、用具入れの屋根に登ろうとしたこと、非常用のすべりだいを逆走してさすがに止められたこと、従兄弟の教室に乱入したけれどそのあと一緒に過ごさせてもらったこと。これらのことすべて、「困ったこと」としてではなく「微笑ましいエピソード」として語ってくださったので、正直、面食らいました。「すみません」しか言っていなかった気がします。今なら胸を張って、「そんな風に見守ってくれてありがとうございます!」と言いたいです。毎日外で「すみません」だらけの私は、家族以外でも、こんなにハルを受け入れてくれる場所があるんだ…!と思いました。Upload By beth(ベス)「ハルくんのお母さんー」、降園時間に迎えに行くと私だけ呼び止められます(笑)。「今日…どうでしたか?」恐る恐る聞くと…「ずっと木の上にいました」と、清々しい笑顔で教えてくれました。「なので私はハルくんの下でずーっとボーッとしてました。ハルくんといると、忙しいけど、時間がゆっくり流れる気がしますね」と。…!先生ありがとう。そう、そうなんですよ。わかってくれますか!!なんだかしょっちゅう感動してました。育児で大変な反動か、いつの間にかかなりの感動屋になっていました。感受性を豊かにしてくれたハルには感謝しかないです。幼稚園の先生たちは、木の上の世界にいるハルを下ろして集団に入れようとすることは一度もありませんでした。それで、迎えに行くときの心持ちが軽くなりました。大変なことは、多くても数時間離れて再会するハルは、可愛くて可愛くて仕方なかったです。なんてまあるいほっぺなんだろう。なんて小さい手。先生が「ハルくん!ママきたよ」というと駆け寄ってくるハルを見て、ああ~わたしの迎えを心待ちにしていたんだな、とわかりました。抱き上げると、数時間しか離れていないのに、愛おしさがこみあげました。なぜこんな可愛い子を怒れたんだわたしは…と思ったりもしました。ハルが可愛いと罪悪感が湧いてくる。不思議で面倒臭い心理状態でした。子育てをする上で、不思議でメンドクサイ複雑な気持ちは、山ほど経験しました。一色では表せない気持ち、これもまた愛と呼ぶのだと思っています。Upload By beth(ベス)なんて可愛いんだと感動したり、普段の鬼母な自分に反省したりするものの、まあ数分も経てば、現実に直面するのでした。いくら言ってもつないでくれず、振り払われる(先程愛しかった)小さな手。その手をがしっと捕まえ、鬼の形相で叱るけれど、ハルには響かず、道ゆく人は振り返るのでした…。帰りに公園に寄って遊ばせて、お母さんたちと喋ることに最初は憧れていましたが、2分もできなかったです。まず公園内に留まっていない…。そんな帰り道。幸い自転車は好きだったので乗せて、後部座席に「きょうは何したのー?」と話しかけながら帰りました。返事が返ってくることはないけれど、その時間がけっこう好きでした。そして信号待ちで自転車の後ろを振り返ると、ハルはだいたい寝落ちしていました。その寝顔を見ると、ハル自身もまた、なかなか慣れない幼稚園生活のなかでとても疲れるよね、と気づくのでした。お疲れさま、ハル。人の世は慣れないことばかりでしょう。あれ?ふと、疑問が沸きました。人の世で生きていけるのかしらこの子…?と。そんな心配は、そっとしまって、帰路についたものでした。Upload By beth(ベス)次回は、幼稚園でのさまざまなイベントでのハルの様子や、ちょっと不思議だった出来事などを書いていきます!LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年03月18日今や、生活に欠かせないものとなったマスクだが、様々な事情からマスクの着用が困難な人もいる。自閉症はその理由の1つだ。米アーカンソー州リトルロックに住むキャリー・キンボールさんは先週金曜、LCCのスピリット航空を利用し夫と4歳の息子カーターくんと共にラスヴェガスに住む家族を訪ねた。往路は何の問題もなかったが、復路で思いもよらぬ対応をされた。カーターくんがマスクをしなければ飛行機には乗せられない、と搭乗を拒否されたのだ。カーターくんは自閉症で、発語がない。キンボールさんはCBS系列のKTVH-TVの取材に対しこう語る。「自閉症スペクトラムの子どもたちは、たいてい何かにとても夢中になっています。カーターは飛行機が大好きで、席に座って静かに窓の外を見ていただけなのに、女性乗務員が突然『降りなさい!』と言ってきたんです」。キンボールさんは、往路はマスクを着けなくても乗せてもらえたことを伝え、「マスクを着けさせると呼吸を止めたり、パニックになって自分を傷つけてしまうため、マスクの着用は免除される」という医師の診断書も見せたが、その女性乗務員はカーターくんに降りるよう求め続けたという。「この子には障害があるんです。アメリカ障害者法で保護されているんですよ」と反論しても、「いやいやいや、自閉症は障害じゃないでしょう。マスクを着けられないなら降りるべきです」ととりつく島もなかったとか。一家は飛行機を降り、アメリカン航空のチケットを買い直して帰路に就いた。カーターくんの診断書を提出したことで、マスクの着用は求められなかったという。CBS NEWSの報道によると、スピリット航空の広報担当者は「当社のマスクポリシーにおいてはいかなる医療上の免除も認めておりません。着用を免除されるのは2歳以下の子どものみです」とコメント。キンボールさんは「自閉症児の親でいることは困難の連続ですが、人からこのような差別を受けたことは人生で初めてです」と涙ぐみながらKTVH-TVの取材に語った。
2021年03月17日自閉症スペクトラムの当事者が、その内面の感情や思考、記憶を言葉で伝えた世界的ベストセラーをドキュメンタリー映画化した『僕が跳びはねる理由』。この度、彼ら特有の時間感覚が語られる本編特別映像が解禁となった。映像は、草原を自由に駆ける少年の映像から始まる。まるで時間の感覚を忘れるような、その大自然の風景の印象とシンクロするように「今言われたことも、ずっと前に聞いたことも、僕の頭の中ではあまり変わらない」「みんなの記憶は多分線のように続いている、でも僕の記憶は点の集まり」と、これまで一般的にあまり知られていない、自閉症スペクトラムの時間感覚を告白。“古い記憶”のみならず、“そのときの感情”も突然の嵐のようにやってくるイメージを過去様々な人生の記憶と時間をコラージュすることで表現した映像となっている。『僕が跳びはねる理由』は4月2日(金)より角川シネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:僕が跳びはねる理由 2021年4月2日より角川シネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国にて公開ã2020 The Reason I Jump Limited, Vulcan Productions, Inc., The British Film Institute
2021年03月12日