「インタビュー」について知りたいことや今話題の「インタビュー」についての記事をチェック! (2/30)
お付き合いをしながらもなかなか結婚に踏み切れない2組のカップルが7日間の海外旅行を経て、最終日に“結婚”か“別れ”かのどちらかを必ず決断しなければならないという、ABEMAオリジナル結婚決断リアリティ番組『さよならプロポーズvia ギリシャ』が最終回を迎えました。最終的には結婚を選び、実際に帰国後に晴れて入籍した2組ですが、旅ではさまざまな葛藤もあり、同じような経験をしたことのある人から大きな共感を呼びました。今回は、自分自身、そしてお互いと徹底的に向き合ったアオイ×モナカップル、シュウヘイ×カホカップルのクロストークを実施し、旅で学んだことや最終的な決断へつながった転機などについてお話を聞きました。■婚約延期を番組で公表することに不安は?――番組出演はどちらから声をかけたのでしょうか?出演を決めた理由とあわせて教えてください。モナ:私から出たいっていう話をしました。最初は「こういう話があるんだけど、アオイとモナは違うよね?」という感じの連絡をいただいたんですけど、私たちはカップルでSNSをやっているものの、正直二人の関係性って全然良くなくて。SNSってハッピーな時だけ載せるものだから、どうしても幸せって思われてる。でも、そうじゃないっていうのがすごく自分の中でつらかったので、アオイさんに「こういう番組があるんだけど……」って話をして、「分かったよ」って了承してもらった感じです。カホ:私も最初にお話をいただいた時は婚約をしていたので、正直関係無いというか、「私たち婚約してるからな〜」とくらいに思っていたんですけど、もし少しお悩みとかあればアンケートに答えてくださいという感じだったので、アンケートを書いてみたところ、出演に至ったって感じですね。――アオイさんとモナさんの場合は“幸せそう”“仲良いよね”というイメージがある中で、番組で実際の現場を曝け出すのは勇気がいりませんでしたか?モナ:私はそういう面での心配はありませんでした。というのも、結構リアルに生きてる人なので、自分がしんどいを思いしているのに、“幸せだけを感じている人”と思われるのはすごく嫌だったんです。ありのままをいろんな人に伝えたかったし、一応SNSではハッピーを伝えてるんですけど、その裏にもやっぱりしんどい思いっていっぱいあって……。そういうのも見せたいという思いが強くあり、どちらにせよYouTubeで出そうかとも考えていたので、出演に抵抗はありませんでした。アオイ:僕も、二人のそのまんまが出るっていうことに全然抵抗はありませんでした。僕自身も普段と変わらないですし、すごく忙しくてお互い向き合う時間が無いタイミングだったので、旅の中で改めて向き合えるのはすごく良いきっかけになるんじゃないかなと。――シュウヘイさんとカホさんはどうですか?視聴者もそうですが、家族や友人も現場を知ることになるので不安とか怖さは無かったのでしょうか。カホ:お互いが向き合える時間を作れるのは良いなと思ったんですけど、私の過去の話をすることは旅に行く前も、旅に行ってからも正直抵抗はありました。実際に話す直前まで話すのに迷ってました。でも、言わなきゃ伝わらないなって思ったので結果的に言いましたね。シュウヘイ:恋愛相談自体、人にしたことが無かったので、自分の恋愛を人に見られるのはすごく恐怖だったんですけど、それ以上に今の関係をカホちゃんとズルズル続ける方が申し訳ないなと思ったので、自分の殻を破って、何か話し合えて新しい関係が作れたらと思いました。■優しさは“当たり前ではない”――番組に出ることによってより明確になったお互いの価値観の違いや、新たな相手の一面などはありますか?アオイ:やっぱりモナはモナなんだなと。――(笑)。でも、最後の方の成長はすごかったように思います。アオイ:そうですね。その中でも僕が伝えて何か受けようとしてくれたのがうれしかったです。モナはモナなんですけど、その中でがんばろうとしてくれる部分に旅を通じて向き合うことができました。それは今後も「伝えていけば、モナも少しは分かってくれる」ということに繋がったので、ありのままのモナを受け入れていこうと思いましたね。――モナさんは逆に自分自身が気づいたことが多かったとおっしゃってましたね。モナ:私は彼と出会ったときから、彼のことを完璧と思ってたんですよ。私の理想すぎる人って。だから、彼が私のこと好きだからがんばって作ってる部分があったって気づかなかったんです。私のための思いやりや、気遣いや、いろんなものが重なっていて、それがアオイさんの魅力だったので、私が見えてないところで彼が意識してやってくれた部分も、番組を通して第三者目線で見ても“彼はそういう人”という風に、私の中では当たり前だと感じちゃってて……。でも、本当は“そういう人”じゃなくて、それは彼の中で人に対して思いやりをもって対応してたから。“当たり前”“こういう人”って捉えたのがちょっと間違ってたなと思いますし、それが分かったので、“私もちゃんとしなきゃ”って気づくことができました。――してくれないことより、してくれていることに目を向けるようになったのは、視聴者として見ていてもモナさんの大きい変化だなと思いました。モナ:アオイさんのしてくれていることが当たり前になってたんですよ。アオイさんに限らず、周りにいる友達とかに多分私は甘えきってたのかなってちょっと思うので、すごい勉強になりました。アオイ:今聞いていても変わったなって思います。自分自身がちゃんと納得しているからこその言葉なんだろうなとも思いますしね。――シュウヘイさんとカホさんは何かありますか?シュウヘイ:モナちゃんみたいまではいかないけど、カホちゃんなりに感情を出してくれるようになったというのはあります。それを見て僕も、「ダサい部分もあっていいんだ」「完璧すぎなくてもいいな」と思えたし、男としてかっこいいところを見せたくなるんですけど、自分のダサい部分を見せられるようになったのは旅を通しての自分の大きな変化でもあります。カホ:私は旅から帰ってきてシュウヘイくんが「ゼクシィを買いに行こう」とか「入籍いつにしよう」とか「結婚式どうしよう」とか、自発的に、楽しそうに未来の話をしてくれるようになったのはすごく変わった部分だと思うし、感動しました。ギリシャに行って本当に良かったなと。■お互いのカップルからの学び――2組のカップルが変わっていく様子が、見ていて本当に感動しました。ちなみに、同じ悩みを抱えつつも正反対なカップルだなと思っていたのですが、相手のカップルを見て学びになった部分とかってありますか?カホ:ありました!モナちゃんの思いをストレートに投げるところ!(笑)モナ:直球投げるよ!ってね。カホ:大事だなって思いましたね。変化球はいらない、直球。――名言みたいなのがでましたね!モナ:直球か変化球かじゃないです。直球か、直球か!(笑)――逆にモナさんは何かシュウヘイさんとカホさんから学んだことはありますか?モナ:シュウヘイくんがバスケしてるのをカホちゃんがずっと座って見ているのはモナにはできへん!と思いました。「はよしてや!暑いし!」とか私なら言っちゃう(笑)。アオイ:絶対言う!(笑)モナ:でも、自分の時間を相手のために使うというか、楽しそうにしているのを何も言わずに見届けて、終わったら普通に「お疲れさま」みたいな……。相手のことを思うってこういうことなんだって思いましたね。――なるほど。やっぱり正反対の2組だったからこその学びみたいなのはあったんですね。モナ:アオイさんの言う思いやりと、カホちゃんの言う思いやりが一緒で、私が思っている思いやりじゃなかったんですよね。私は“思いやってますよ”と相手に見せるのが大事だと思ってたんですけど、二人はそうじゃない。見せたり、言ったりせずに思いやりを持って行動してるし、それに相手が気づかなくても、認めてもらわなくてもいいっていう気持ちがあるなって。私は“やったから見て”って認識してほしい気持ちが強かったんですけど、二人の思いやりが本当の思いやりなんやなって思いました。――旅を終えたモナさんの成長はすごいですね。アオイ:大成長ですね。モナ:実感と、第三者目線で見るのでもすごく良い機会をいただいたなと思ってます。でも、アオイは元々言わないタイプだったのが、この番組を通してめちゃくちゃ言うようになったんですよ。それはちょっと腹立ちましたけどね!(笑)――シュウヘイさんはどうですか?シュウヘイ:二人を見てると別の生き物かなって思ったくらいです(笑)。でも、それってすごく良いな、うらやましいな、と思いましたね。あと、アオイくんはモナちゃんのストレートを全部受け止めて、全部言葉にして返しているところがすごいなと思いました。――関わり方も人それぞれっていうのはすごく見ていて思いましたね。カホ:私は怒りって感情にならないんですよ。その代わりに悲しいって感じですね。感情にコントロールされたくないんです。モナ:私は逆に波打ちたいタイプ。悲しいことがあって、ハッピーなことがあって、また喜んで、また泣いて……。これが人生なんじゃないの!?っていう。私は感情の波を平らにするみたいなのが全く想像できないので、この話をカホちゃんとしたときに真逆だなって思いました。■価値観や愛情表現が違う人同士の工夫――ちなみにアオイさんとモナさんはお互いの価値観や愛情表現が違っていた二人でしたが、旅を終えた後の変化や、うまくいくためにした工夫はありますか?モナ:愛を伝える5つの方法で“The Five Love Languages”ってあるじゃないですか。なんとなく知ってたんですけど、私はボディータッチが無いとダメなタイプなんですけど、アオイさんは相手を考えた行動を示さないとダメ。それがセックスレスになったきっかけだったんですよね。私が自分のやりたいことだけして、アオイさんのことを想定した行動しないから、愛を感じなくなった。――なるほど。モナ:ギリシャから帰国後もケンカになったんですけど、入籍のきっかけが、私が行動しようと思って朝ご飯作ったり、掃除したり、服を畳んだりとか、二人のためになることをやりだしたら、自然とボディタッチが増えたりっていう関係性になったからなんですよね。やっぱりアオイさんにとっては行動が大事なんだなというのは気づきました。アオイ:僕は旅の中でも今も意識してるんですけど、基本ロートーンで話したいんですよ。でも、モナがハイトーンで話すと釣られちゃう。そうなってしまったら、なってしまったことにまず気づくことが大事だと思うんです。お互いにやりたいのは建設的な話し合いや、前向きな話し合いだから、そうなるにはやっぱり笑顔でいないといけないな。お互いの笑顔が大好きだから、まず笑う。片方が笑うとお互い笑けちゃうから、そうすると、なんでこんなに言い合いしてるの?ってなれるんですよね。笑ってたら、笑ってる方に釣られる。――ありがとうございます。では、最後に結婚にあと一歩踏み出せないカップルに今だから伝えられるアドバイスをお願いします。モナ:結局は自分がどうしたいかだと思います。自分の覚悟を持つこと。例えば、私の場合だと「レスだったら他の人にいけば良いじゃん」っていう簡単な答えや道もあったけど、それでも“彼じゃないと嫌だ”っていう自分の決断があったし、それに対して、アオイさんが訴えかけてきたこともあったので、“自分が変わる”っていうことを選択しました。自分が納得できるまでぶつかることができたから、この答えにたどり着くことができたと思うんですよね。悩んでるってことは、きっとどこかで引っかかってるってこと。諦めるのは簡単だけど、そこを突き抜けた先に絶対答えがある。人生にはやっぱり波があるから、何回波がきても、“この人となら乗り越えられる”っていう自分の芯を結婚するときに持てば、どんな相手とでも絶対に大丈夫だと思います。結局誰を選んだって、自分の決断が全て。相手ではなく、自分軸。向き合うことを諦めないで欲しいですね。結局、諦めて他の人へいっても、その人と諦めるか、諦めないかの問題になるので、今目の前にいる人を諦めないで全力で向き合ってほしい。その結果駄目だったら、仕方ないですけど、自分がどう思うかだと思います。アオイ:僕も自分の心がどう思うかが大事だと思います。自分の声に素直になる。したくないんであれば、なんでしたくないんだろう?っていう気持ちは自分に確認する。何かが引っかかってるから、今したくないんだろうなと思えたし、そこの話し合いができたので。カホ:今って結婚してもしなくても幸せになれる時代。自分で幸せを選択できる時代だからこそ、迷ってしまうと思うんです。年齢とかいろんなことで悩んでしまうと思うんですけど、自分で納得できる選択をしてほしいなと思います。シュウヘイ:モナちゃんとアオイくんが言ったように、自分の感情に素直になること。日本で生活してると仕事やお金の不安があるけど、それをかき消した上で好きだなって思えるか。その気持ちと素直に向き合うことですかね。あと、家族の大切さを感じました。今って結婚しなくても幸せになれる時代かもしれないんですけど、結婚が家族が増えることってプラスに考えられるようになったら、結婚したからこそ得られる幸せが見えるようになるかなって思います。ABEMA『さよならプロポーズ via ギリシャ』年12月下旬には、旅を終えたシュウヘイ&カホカップルのその後を追ったスピンオフコンテンツを、「ABEMA」限定配信予定。帰国後の式場探しからドレスフィッティング、感動に包まれた結婚式当日までの約2か月間に完全密着した様子をお届けします。ぜひお楽しみに。インタビューの感想はこちらから(取材・文・撮影:瑞姫、編集:錦織絵梨奈/マイナビウーマン編集部)
2024年11月20日邦画にアニメーション映画、ハリウッドのアクション大作がひしめく中で、公開規模は小さくとも観る人の心に刺さる良質な洋画をいかにアピールし、その存在を人々に知らしめ、興味を持ってもらうか? 配給・宣伝会社の宣伝担当の腕の見せどころと言える。今回、【映画お仕事図鑑 番外編】として、11月に公開される4本の洋画のそれぞれの宣伝担当者による座談会を開催! 担当作品の紹介、および宣伝方針を語ってもらうと共に、同業他社の宣伝部員が自身の担当作品以外の作品の魅力や宣伝戦略について語り合うという、なかなかない企画が実現した。前編では11月8日(金)公開の『動物界』、11月15日(金)公開の『ぼくとパパ、約束の週末』について語り合う!<座談会参加者>有限会社樂舎渡辺(『動物界』宣伝担当)株式会社ウフル青木(『ぼくとパパ、約束の週末』宣伝担当)株式会社サーティースリー奥村(『ドリーム・シナリオ』宣伝担当)株式会社ツイン松本(『JAWAN/ジャワーン』宣伝担当)『動物界』(11月8日公開)© 2023 NORD-OUEST FILMS - STUDIOCANAL - FRANCE 2 CINÉMA - ARTÉMIS PRODUCTIONS.宣伝担当・樂舎 渡辺プロフィール:新卒で映画宣伝会社・樂舎に入社し、現在10年目。最近では『関心領域』などを担当。会社として宣伝のみならず配給業務にも進出しており、今年7月公開のデイジー・リドリー主演『時々、私は考える』を配給した。渡辺『動物界』はSF映画で、人間の身体が動物化していく奇病が発生した近未来が舞台となっています。描かれるのはシンプルに親子の絆であったりするんですが、宣伝の方針としては“アニマライズ・スリラー”という、かなりホラー寄りの方向で打ち出しています。注目していただきたいポイントは「フランスで100万人突破」という本国での成功と今年、日本でもかなり話題を呼んだ『落下の解剖学』とフランスのセザール賞で競り合った作品であるというところですね。こういうジャンル映画がセザール賞で評価されることは少ないので、ぜひそこは日本の映画ファンにもお伝えできたらと思います。SF映画でありつつ、社会的なテーマを描いているという部分も評判になっていて、自分たちとは別種の存在にどう向き合うのか? というのは、いま私たちが考えなくてはいけない社会問題でもあり、そこが多くの人に刺さったのではないかと思います。樂舎・渡辺(『動物界』宣伝担当)青木最初に予告を見た時は『グエムル-漢江の怪物-』っぽいなと感じたんですが、本編を観て泣きました。渡辺意外と感動ものなんです。まさにトマ・カイエ監督がインタビューで『グエムル』も参考にしたということを言っていました。これが長編2作目で、日本公開されるのはこれが初めてです。青木僕も監督のインタビューを拝見しましたが、(デヴィッド・)クローネンバーグの『ザ・フライ』と、あとは意外ですが小津安二郎の『父ありき』も参考にしたと語っていましたね。海外版のチラシを見ても父と子が並んでいるビジュアルなんですよね。松本新鋭監督でここまでの映画を撮れるってすごいですね。渡辺そうなんです。フランスの名優ロマン・デュリスが出ていたり、映画ファンに刺さる要素はあると思うんですけど、“アニマライズ・スリラー”とすることで、普段あまりフランス映画を観ない方たちも入りやすくなっているんじゃないかと。青木宣伝を打ち出す上でのジャンル設定が難しい映画ですよね。渡辺配給・キノフィルムズさんの中でもかなり議論があったようなんですけど、ただ最初に試写をした際に「泣いた」という声が多かったんですね。そこで「親子のドラマとして宣伝すべき」という声もあれば「いやいや“クローネンバーグ”という映評が出ているんだから、そっちを推していこう」という声もあったようで、最終的には、近年はホラーが人気というのもあってスリラーのテイストを押し出していこうということになったそうです。松本冒頭からいきなり羽根の生えた男が出てきて、最初から「これはこういう世界の話です」という描かれ方をしてるんですよね。そこにすごくびっくりしました。渡辺説明がないんですよね。人間が動物化していることが既に当たり前のこととして受け入れられている世界として描かれてるんです。青木普通はああなるまでのプロセスを描くものだけど、そうじゃない。最初から宇宙人が地球で暮らしているという設定で描いていた『第9地区』と同じ描き方ですね。渡辺導入も含めて見せ方がうまいですよね。青木いま、世界中で移民の問題があったり、「分断」が叫ばれる中で、自分と異なる存在にどう向き合うべきかを描いているのがうまいですね。奥村原題は『Le Règne Animal』で英語だと“The Animal Kingdom”ですよね。これを『動物界』という邦題にした経緯は知りたいです。渡辺当初はそのまま『アニマル・キングダム』でいこうかという話もあったんですけど、既に『アニマル・キングダム』という別の映画があるんですよね。加えて、『アニマル・キングダム』だと動物ドキュメンタリーみたいな雰囲気があるので日本語にしようという流れになったそうです。編集部オーウェルの「動物農場」を思い起こさせるような“ディストピア”感がある邦題ですね。青木結構、攻めている感じがあって、すごく良いと思います。奥村映画自体がヨルゴス・ランティモス監督の『ロブスター』を彷彿とさせるセンセーショナルな雰囲気がありますよね。青木たしかに“ランティモス感”ありますね。渡辺映画を観ると突然変異ということで『X-MEN』のほうがイメージとしては近いかもしれません。松本こういう映画だとどういう層の観客に向けて打ち出すことになるんですか?渡辺わりと大人向け、30~40代で映画を観慣れている層ですね。松本オープニングから、ただならぬ雰囲気というのがすごくありますよね。やはりジャンル映画としてホラー系の映画ファンに打ち出すのが正解なのかな。渡辺実は海外の予告編だと、“新生物”の姿は一切映ってないんです。青木場面写真もかなり抑えている印象がありました。渡辺本国から素材が全然こなかったんですけど、おそらく日本公開が一番最後ということもあって、予告は許可が下りたのかな? でも、その(新生物が映った日本版の)予告を観て反応する方がすごく多かったですね。「何が出てくるかわからない」よりは「これくらいの新生物が出てきます」というガイドラインがあると、反応する方が多いのかなと。松本それに関して実は今日、すごく聞きたかったんですけど、ホラー系の映画でいわゆるネタバレみたいな部分って、宣伝段階でどこまで出すものなんですか? 例えば最近だと『破墓/パミョ』は一切出してないですよね。「何が出てくるのか?」で終わらせているんですよね。どこまで踏み込んでいくべきか…。奥村ホラー系で言うと、何かしらのアイコンがいる場合は、僕はそれは出していきたいと思います。例えば『IT/イット“それ”が見えたら、終わり。』のペニーワイズや『LAMB/ラム』のアダちゃんのようなキャラクターです。逆に『破墓/パミョ』の場合は、出てくるものが本当の大オチなので、その場合は不穏な雰囲気を壊さないように「何が出てくるのか?」と想像力を煽る方が正解かなと思いますね。青木いわゆるネタバレに関しては、十数年前と比べて、難しい部分が多いですよね。渡辺『動物界』で言うと、本国は何が出てくるのか一切見せないというやり方でしたけど、フランスであればロマン・デュリスと若手ライジングスターのポール・キルシェが出ているというだけで「観たい」と思う人も多いですが、日本だとなかなかそれだけでは難しいですよね。松本出し過ぎると「ネタバレだ!」って怒られるけど、逆にあんまり出さないと「どんな映画かよくわからない」となってしまうじゃないですか。奥村“わかりやすさ”と“想像力”のバランスですよね。どこまで想像させたいか? というのを予告編でブレーキを掛けながら見せる感じです。『動物界』に関しても、新生物の姿をたくさん出し過ぎちゃうと「いろいろ出てるんだな」と予想がついちゃうけど、出す数を絞ったりチラ見せに留めることで「他にも出てくるのかな?」と想像が膨らむ。青木難しいですよね。あえて見せないで、ティザー感を出しているつもりでいたら「何も起こらない」ということもありうるし。煽っているつもりが何もしてないみたいな…(苦笑)。ただ『動物界』に関しては、実際に僕自身、観てみたら「こんな映画だったのか!」と驚いたので、良い衝撃を与えられるんじゃないかと思います。泣かされます。松本この予告やチラシの雰囲気で「泣ける」って思わないですよね。そこは公開後に口コミで広がるといいですよね。青木振れ幅がすごく大きな作品なので楽しめると思います。『ぼくとパパ、約束の週末』(11月15日公開)© 2023 WIEDEMANN & BERG FILM GMBH / SEVENPICTURES FILM GMBH宣伝担当・株式会社ウフル 青木プロフィール:映画配給会社、ビデオメーカーを経て、現在はIT企業の内部の映画事業部に所属し、映画宣伝を行なう。最近では濱口竜介監督『悪は存在しない』を担当。今回の『ぼくとパパ、週末の約束』では宣伝プロデューサーを務める。青木この作品は、自閉症の男の子と父親が、推しのサッカーチームを見つけるためにドイツ中のスタジアムを巡るというお話です。どう宣伝をしていくかと考える中で、静岡市にあるミニシアター「静岡シネ・ギャラリー」さんのXが時折、話題になるんですけど、ポストの特徴として、あえてタイトルを出さずにあらすじだけを書くというのがあって、作品によってものすごくバズるんですね。この作品について、シネ・ギャラリーさんに書いていただいた時、84万インプレッションもの反応がありまして、そこで「なるほど、みんなこういう作品を待っているんだ」という感触を得ました。奥村みなさん、どの部分に反応してたんですか?青木設定ですね。奥村自閉症の男の子がドイツ中のスタジアムを回る実話という部分ですか?青木加えて、お父さんが忙しい仕事をやりくりして、週末に弾丸ツアーで一緒に回るというのがポイントだったみたいです。この設定自体が宣伝のコンセプトになるんだなと感じました。あとは、別の記者さんに取材していただいた時に「ドイツで100万人を動員」という言葉がすごく引っかかったとおっしゃっていたんですね。ドイツで『ミッション:インポッシブルデッド・レコニング』を退けて大ヒットを記録したんです。『動物界』も「フランスで100万人突破」とありましたけど、「100万人」というのはインパクトがあるんですね。そうやって、宣伝を進めながら、みなさんの心に引っ掛かる部分に気づいていった感じでした。ウフル・青木(『ぼくとパパ、約束の週末』宣伝担当)もうひとつ、強調しておきたいのは「自閉症を抱えた男の子が…」ということで“感動のドラマ”と思われがちなんですけど、結構ハチャメチャで明るいエンタテインメントに仕上がっていて、試写会の感想でも「最初は構えて見たけど楽しめた」という声を多くいただいています。先日、主人公のモデルとなった本人達にもオンラインでインタビューをしたんです。いまはもう19歳になっていて、チューリヒの大学で物理学を学んでいるんですけど、映画化が決まった時から制作チームと綿密に話し合いながら進めていったそうで、自閉症というものと映画というエンタテインメントのバランスを特に気にしていたそうです。単に「かわいそう」とか「苦労を抱えながらも家族が頑張っている」という作品にはしたくないと。宣伝の難しい点としては、ドイツ映画であり、有名な俳優さんが出ているわけではないので、これからオンラインも含めて積極的に試写会を行なっていこうと考えています。奥村見た時に自分が宣伝を担当した『ワンダー 君は太陽』を思い出しました。『ワンダー』の主人公は生まれながら特別な顔をしているんですけど、それを周りの人々も含めて、普通のこととして受け止めていく物語の空気感がすごく似ていると思いました。『僕とパパ、約束の週末』でも、途中で宇宙が好きな主人公がヘルメットを被っているシーンが唐突に出てきましたけど、それを見て『ワンダー』とリンクするなと感じました。青木あのシーンは、もしかしたら『ワンダー』へのオマージュとして入れているのかもしれませんね。ただ、最近の映画、特に洋画に関しては、ホラーであったり強めで刺激的なジャンル映画のほうがヒットする傾向が強いですよね。こういうハートフルな作品を当てる秘訣をぜひ教えていただきたいです。奥村『ワンダー』に関して言うと、まず何よりも作品の良さがちゃんと伝わったという部分が大きかったですよね。宣伝側も「感動」という言葉は前面に出していきますけど、やっぱり一般のみなさんの口コミの「感動した」という言葉よりも強いものはなかったと思います。あとは主演のジェイコブ(・トレンブレイ)くんが来日して、いろんな話をしてくれたのもありましたし、彼自身、この作品をきっかけにいろんな活動をするようになって、そこでの言葉がすごく説得力を持っていたと思います。青木もう一点、『ぼくとパパ、約束の週末』という邦題についても触れておきたいと思います。原題(Wochenendrebellen)は「週末の反逆者」という意味で、映画の中で主人公のジェイソンくんは、普段は細かく守るべきルールを決めて、絶対に破らないで生きているけど「週末だけは反逆者になろう」と言うんですね。僕自身は、普段はあまり原題を変えたくないタイプなんですけど、この映画、このビジュアルで“反逆者”というのはなかなか難しいな…というのもありまして(笑)、『僕とパパ、約束の週末』としました。松本すごく良いと思いました。渡辺ハートウォーミングな感じが伝わります。ドイツ映画でサッカーが題材で“反逆者”だと…。青木フーリガンをイメージしちゃいますよね(苦笑)。渡辺その意味でも、この邦題で正解だと思います。奥村あとビジュアルとあわせて『6才のボクが、大人になるまで。』とイメージが重なりますよね。青木そうなんですよ。それはみなさんに言っていただけますね。松本ハートウォーミング作品ということで言うと最近では、どちらも松竹さんの配給ですが『花嫁はどこへ?』や『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』も評判が良かったですよね。こういうタイプの映画がきちんと当たるんだなというのを感じました。この映画も同じ匂いを感じますよね。青木方向性で言うと昨年の『パリタクシー』がありますよね。松本『パリタクシー』で流れが変わったというのは感じますね。奥村超大作やシリーズ物があふれかえる中で、規模は小さくともこういう良質な洋画があるのはすごく大事なことだと思います。青木最初にお話ししたシネ・ギャラリーさんの例もそうですが、みんな、面白い映画を探しているところはあって、そこをきちんと抽出して、宣伝を打ち出していくんですけど、何よりも基本は物語の面白さをきちんと伝えることなんだなと思います。邦画であればキャストや監督のインタビュー稼働も多いですし、制作のプロセスを宣伝材料にできるけど、洋画の場合は素材も限られる中で「物語を売る」という基本に立ち返って宣伝していくことが大事ですよね。あと今回、字幕監修に精神科医の山登敬之先生に入っていただいています。映画の中でジェイソンくんが同級生に好きなサッカーチームを聞かれて答えられないでいると、「FCコミュ障?」とからかわれるシーンがあるのですが、「コミュ障」という言葉が差別的でないか?普段使われてる言葉だからこのシーンで使用してもいいのではないかという議論を字幕ごとに検証していきました。やはり言葉ひとつにしても、いろんな受け止め方があるので、そこはいまの時代、きちんと考えていかないといけないんだなと勉強になりました。奥村僕自身、映画を観て心に残ったのが、自閉症の子が周囲の刺激をどのように感じているかというのをすごく丁寧に描いているなという点で、周りの音がどんなふうに聴こえて、どんなふうにパニックになってしまうかということなどをしっかりと描いているんですよね。経験していないからわからない感覚でしたが、例えばの話、道端やお店で騒いでいる子がいた時に、これまでなら「うるさいな」と思ってしまう人が、こういう映画に触れることで「もしかしたら、事情があるんじゃないか」と自分の中でひとつ立ち止まるきっかけを与えてもらえるなと。あとは、お父さんが自閉症の息子と向き合いたくなくて、忙しさを言い訳にしてジェイソンから逃げているという描写がすごくリアルでグサッと刺さりますよね。これは自閉症のお子さんのいる家庭に限らず、育児をするのがどうしても母親中心になりがちな部分はあると思いますし、お父さんはお父さんで「仕事をして稼がないと」という思いもあるんだけど、それが子育てに向き合わない逃げ口になっているというのは、すごくリアルな描写だなと思いました。そういう意味で他人事じゃなく身近に感じる映画だなと。青木決してすごく特殊な話ではないんですよね。そういう意味で広がりのある作品だと思いますし、みんな余裕がなくて殺伐とした世の中だからこそ、こういうハートウォーミングなものを求める気持ちが強いんじゃないかなと思いますね。大盛り上がりの洋画宣伝座談会、前半戦はここまで。『ドリーム・シナリオ』『JAWAN/ジャワーン』の宣伝戦略とは!?後半は後日、シネマカフェにて掲載予定。お楽しみに!(photo / text:Naoki Kurozu)■関連作品:JAWAN/ジャワーン 2024年11月29日より新宿ピカデリーほか全国にて公開©2023 All rights reserved with Red Chillies Entertainments Pvt Ltdぼくとパパ、約束の週末 2024年11⽉15⽇より新宿ピカデリー、⾓川シネマ有楽町ほか全国にて公開© 2023 WIEDEMANN & BERG FILM GMBH / SEVENPICTURES FILM GMBHドリーム・シナリオ 2024年11⽉22⽇より新宿ピカデリーほか全国にて公開© 2023 PAULTERGEIST PICTURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED動物界 2024年11月8日より新宿ピカデリー、 ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて公開© 2023 NORD-OUEST FILMS - STUDIOCANAL - FRANCE 2 CINÉMA - ARTÉMIS PRODUCTIONS.
2024年11月08日取材・文:瑞姫撮影:三浦晃一編集:錦織絵梨奈/マイナビウーマン編集部ヘアメイク:Hair&Make 寺本 剛(JYUNESU)、 Hair&Make TAKESHI TERAMOTO(JYUNESU)スタイリスト: 吉田ケイスケ政治、経済、芸能、裏社会にいたるまであらゆる情報に精通し、社会を裏で操る謎の情報屋“インフォーマ”・木原慶次郎(桐谷健太)と、ペンで権力に立ち向かうという信念を持つ週刊タイムズ記者・三島寛治(佐野玲於)。異色のコンビが、警察・ヤクザ・裏社会の面々を巻き込みながら、事件の裏に蠢く“巨悪”を暴く「INFORMA」の新シリーズ『インフォーマ-闇を生きる獣たち-』がABEMAオリジナルドラマに登場します。今回の舞台はタイ・バンコク。世間を騒がせている〈闇バイト殺人事件〉をきっかけに、木原と三島が日本とタイの2国に跨る、壮大な情報戦に巻き込まれていくというストーリーです。今回は1カ月半にも渡るタイでの撮影を経た佐野さんにインタビュー。新シリーズならではの魅力の他、タイでの撮影期間、生活する中で改めて感じたという日本との違い、そこで生まれた新たな価値観。作中の三島のように“頑張ろうとするのに上手くいかない”時の乗り越え方などについて聞きました。■佐野玲於演じる三島は“真逆のキャラクター”――『インフォーマ』のシーズン2にあたる『INFORMA -闇を生きる獣たち-』の制作決定と聞いた時はどう思いましたか?やると決まっていたわけではないんですが、製作陣や出演者の中で「やりたいよね、やるでしょ」っていうどこからかくる自信があって、ドラマが終わった後もちょこちょこ集まったりしていたんです。実際に企画・プロデュースの藤井道人さんが動いてくれていたので、ある日「決まりました!次、ABEMAで!」って言われて。その後に、(桐谷)健太さんから「祭りが始まるな」と電話がきたんですけど、「東南アジアで撮影ってどのぐらい帰ってこないんだろうな?」とか、それから30分ぐらい妄想電話をしてましたね(笑)。それくらい、ワクワクしていました。――楽しそうです(笑)。ちなみに、今シーズンで初めて『インフォーマ』を見る人に向けて、佐野さん演じる三島はどのような人物か教えてください。また、ご自身との共通点はありますか?記者としてくすぶっていたけど、木原と出会ってなかなか目の当たりにできない光景を目の前にしながら真実に迫るキャラクターが三島なんですけど、三島は見る人にとってのPOV(あるあるシュチュエーション)的な存在であり、『インフォーマ』は三島の成長物語でもあるんですよね。――たしかに、共感するというか、“こういう人いるよね”ってキャラクターですよね。三島はキャラクターとしては木原が言うように“ポンコツ”で、抜けてる。たとえば映画を見てるとゾンビから逃げていてピンチの時にコケちゃうようなキャラクターっているじゃないですか。そういう「ここでコケるなよ!」って、見ていてツッコミたくなるような部分を持っているのも三島だと思うので、演じる上でそういうところは意識しましたね。――では、佐野さんと三島は共通点があるというより真逆のキャラクターでしょうか。僕も僕で抜けてるとこはあるんですけど、三島みたいなところはないと思う(笑)!僕はどちらかというと普段は三島にイラッとしてるタイプの木原側の人間です。だからこそ、三島を演じるのがおもしろいんですよ。イラっとするポイントが分かるので、三島の役をやれているのかなとは思います。■1カ月半の海外撮影での心境の変化――今回は東南アジア・タイでの撮影になりましたね。お話を聞いたのが1年ちょっと前だったんですけど、最初に「来年3カ月くらいスケジュール空けられる?」とは確認されていたんです。ちょうど、自分のグループが2024年上半期は個人活動というか、個人で初めて時間を作る期間でした。海外にソロでDJのツアーに行くメンバーがいたり、留学するメンバーがいたりしたので、僕も留学しようと思っていて。なので、留学先がアメリカからタイになったぐらいの気持ちですね。――留学を考えていたのはなぜですか?10年以上、高校一年生の頃からエンタメの世界にいて仕事をしてきたので、20代もラストスパートになってきた今、海外も好きだったので、一人で異国の地で生活をしてみるのもインスピレーションにもなるかなと。語学ももっと上達したかったし、環境を変えてみるっていうのはすごく重要かなと思ったんです。――実際にタイに行ってみてどうでしたか?1カ月以上海外に滞在するのは初めてでしたし、40~50人の日本人クルーと共にタイに行ったので、遠征気分になりました。タイはエネルギーと活気を感じる国で、新しい生活ではあったんですけど楽しく過ごすことができましたし、タイ料理も大好きになりました。――それは何よりです。何か感じたことはありますか?タイの人たちの肩の力が抜けた感じというか、楽しんでいる感じは日本人も見習わないといけないのかなとは思いましたね。自分のいる日本という国は便利だけど、結構忙しくて頭が回ってなかったんだなと。早く帰りたくなるんじゃないかなっていう心配はあったんですけど、もうちょい(タイに)居れたなと。多分、40~50人ぐらいで行った中で僕が一番楽しんでたかなってくらい好きな国になりました。――異国の地で新しく得たご自身の学びや、成長みたいなものがあれば教えてください。国を跨いで生活すると、文化の違いとか、経済の流れとかも活気に出る。東南アジアってすごく伸びてきてるじゃないですか。日本と違ってタイは人口の半分以上Z世代で若い人も多いし、貧富の差もあるけど、やっぱり楽しくやってるし活気もある。俺は東京も日本も大好きだけど、東京とタイの働く人の顔つきって全然違う。経済や法律、いろんなことが活気に影響してるからおもしろいなって思ったし、このバイブスを持って帰らないとなとは思いましたね。まずは自分の周りから、自分の環境から、そういう空気を持ち帰ることが輪を広げていったり、楽しいことを起こすことに繋がるのかなと。■頑張っているのに上手くいかない時は?――作中で三島は頑張ろうとするのに上手くいかない時期を経験していますが、佐野さんにもそういった葛藤の時期はありましたか?また、そういった時の乗り越え方があれば教えてください。全然ありますよ。でも、全てが悪循環になって上手くいかず“苦しい”と捉えていた時期もあれば、それがありながらも“楽しい”と捉えられる時期もあるので、壁にぶち当たって“頑張ろうとするのに上手くいかない時期”にも何種類かあると思うんです。――なるほど。乗り越え方でいうと、壁にぶち当たっていても絶対どこかで楽しい思いをしている時があると思うので、それを思い出してみることって、自分も仕事をしていてすごく大事だなって思っていて。その時の自分のエネルギーとかバイブスってどんな感じだったっけなって考えてみると、どんどんいろいろな細かい情報が気にならなくなってくるんじゃないかなと思います。すっきり考えるようになれる。――視点や考え方を変えるってことでしょうか。「壁にぶち当たってる=上手くいっていない=自分は幸せじゃない」って全部紐付けちゃう場合もあるじゃないすか。それって何も楽しくないし、焦るだけ。だから、壁にぶち当たった時はどこかに抜きどころを作らないといけないのかなって思うんです。物理的な壁を想像して、その壁をどうやって乗り越えるのかを考えて見ると、工事現場にあるようなリフトで越えられたら最高だし、梯子でのぼったら、ちょっと体力が必要で大変だけど乗り越えられないことはないって分かる。壁にぶち当たってしまった時に、どうしようもないって思うとつらいし、苦しいと思うので、“壁を乗り越えるためにはどういう方法があるか”を考えるためには、冷静にならないといけないですよね。――たしかに素手で登ろうとすると“もう無理だ”って絶望してしまうかもしれないけど、道具を使っていいとなると希望が見えてきますね。素手で登ることも大事だし、素手で登ることを楽しめるんだったらそれでも良いと思うんですけど、そうじゃない時は、別の方法を考えても良いって感じですね。選択肢って本当に無限にある。その方法しか無いと思うとストレスになっちゃうんで。■ありふれた情報の多面性――では最後に改めてマイナビウーマン読者に向けて、今作の見どころとコメントをお願いします。『インフォーマ』を知っている人はもちろん、ここから見始めても全然楽しめる作品になっています。今回はエキサイティングな部分とサスペンスな部分があって、よりエンタテインメント性が深まった作品になっていますし、キャストも豪華で、国を跨いでいる分、本当にすごく壮大な作品になってます。1話1話ジェットコースターのように展開があるので、それをヒヤヒヤ、ワクワクした気持ちで楽しんでもらえたら。あと、この作品の持つメッセージとしては、この情報社会における、あり溢れている“情報”は一面的ではないということ。やっぱり多面的でいろんな角度があるので、一面的には何も判断できない……そういう裏テーマみたいなものが作品で描かれているので、そこも見ていただけたらなと思います。インフォーマ -闇を生きる獣たち-政治、経済、芸能、裏社会にいたるまであらゆる情報に精通し、社会を裏で操る謎の情報屋“インフォーマ”・木原慶次郎(桐谷健太)。ペンで権力に立ち向かうという信念を持つ週刊タイムズ記者・三島寛治(佐野玲於)。この異色コンビが、警察・ヤクザ・裏社会の面々を巻き込みながら、事件の裏に蠢く“巨悪”を暴く!「インフォーマ」新シリーズがABEMAオリジナルドラマに登場!!今回の舞台はタイ・バンコク。世間を騒がせている〈闇バイト殺人事件〉をきっかけに、木原と三島が日本とタイの2国に跨る、壮大な情報戦に巻き込まれていくーー。衝撃のストーリーと大迫力の映像、驚きの豪華キャストが織りなす、興奮のクライム・アクション・サスペンスが今、幕を開ける!配信ページ:予告はこちらから:
2024年11月07日フジテレビTWOとひかりTVの共同制作ドラマ第4弾『純喫茶イニョン』が、動画配信サービスFODにて、10月11日(金)20時より配信開始となることが決定しました。■ファン・チャンソンの日本初主演ドラマ同ドラマは、3月よりフジテレビTWO ドラマ・アニメとひかりTVの共同制作により放送した作品。商店街のはずれにあるレトロな喫茶店を舞台に、イケメン韓国人マスター・シウと、そこを訪れる人々が織りなすファンタジーラブストーリーとなっています。マスター・シウ役を演じるのは、2006年に韓国で俳優デビューを果たし、2008年に2PMのメンバーとしてデビューをしてからは日本でも人気を博しているファン・チャンソンさん(2PM)。同作が日本での初主演ドラマとなります。なお、FODでは、本ドラマの配信と合わせて、メイキング「Behind the scenes」を独占配信。本メイキングでは、チャンソンさんのインタビューをはじめ、クランクイン・アップの様子や共演者が語るチャンソンさんの印象など、ドラマ作りのこだわりが伝わる撮影の裏側を紹介しています。さらに番外編として、チャンソンさんが「縁」を感じたエピソードのほか、3月に行われた試写会でチャンソンさんがサプライズ登場した様子も収録。本編と併せて楽しんでみてはいかがでしょうか。■ストーリー『純喫茶イニョン』は、商店街のはずれにあるレトロな喫茶店を舞台に、イケメン韓国人マスター・シウと、そこを訪れる人々が織りなす物語。そこを訪れると“途切れた縁が再び繋がる”という不思議な噂がまことしやかに囁かれている純喫茶イニョンには再会したい人のことを想うお客たちが、毎度共通の目的を持って訪れている。行方不明になっている兄、疎遠になった友達、離婚した元妻、そして記憶のない誰か……。今日もシウの淹れるコーヒーの香りに誘われて、悩める人たちが店にやってきて……。訪れるお客たちそれぞれの再会への想いを描いたファンタジーラブストーリー。多くを語らず、ただただ美味しいコーヒーを淹れ続けるシウの正体とは―。■番組概要『純喫茶イニョン』配信:2024年10月11日(金)20時から本編全4話一挙配信、第1話無料配信メイキング「Behind the scenes」配信※配信日時は予告になく変更になる場合があります。予めご了承ください出演:ファン・チャンソン(2PM)、石川恋、水橋研二田中美麗、三浦獠太、宮里ソル(ENJIN)、濱尾ノリタカ、本田響矢、遊井亮子 ほかスタッフ:脚本:遠山絵梨香主題歌:「これからの君のために」チャンソン(2PM)(avex trax)音楽:菅野みづき演出:小林和紘(FCC)/朝比奈陽子プロデュース:田淵麻子(フジテレビ)プロデューサー:大瀬花恵(FCC) /小林和紘(FCC)特別協力:ひかりTV制作協力:FCC制作著作:フジテレビURL:(『純喫茶イニョン』公式サイト)(配信ページ)(60秒予告映像)(フォルサ)
2024年10月29日明治は10月8日より、女優の上戸彩さんをCMキャラクターに起用した「明治おいしいミルクコーヒー」の新CM「明治おいしいミルクコーヒー実況」篇を全国で放映開始します。■上戸彩さんのズルさが際立つ結果に同日発売の「明治おいしいミルクコーヒー」は、牛乳市場で売上No.1である「明治おいしいブランド」の新商品。「ミルクが本気の、ミルクコーヒー。」というキャッチコピーのとおり、「明治おいしいブランド」自慢の生乳のおいしさと、香り豊かなコーヒーが合わさった濃厚かつすっきりとした味わいが特長です。新CMでは、新商品の味わいを「ズルい!」の一言で見事に表現した上戸さん。この台詞にちなんで、上戸さんが「ズルい!」と思うことを聞くと、「子どもの無条件のかわいさはズルいですよね……。立っているだけでも、存在しているだけでもかわいくて、ズルい!」と、上戸さん自身がズルすぎるかわいさで回答しました。自身のミルクコーヒーデビューは小学3〜4年生の頃で、お父さんの影響で飲み始め、今でもその頃を思いだしながら飲むことがあるのだとか。子どもの頃については「とにかくお転婆で!鉄棒も、手にマメができても『逆上がりが連続で何回できた』と言いながら遊んでいました」と天真爛漫だった少女時代を明かした上戸さん。ナチュラルテイストの衣装とゆるふわ髪の上戸さんが、新商品のパッケージをモチーフにしたレトロな小屋の前で、天の声(ナレーション)と軽快なやり取りを繰り広げる新CM。上戸さんのズルいかわいさとくるくる変わる表情は必見です!また、「明治おいしい牛乳」公式Xでは、新CM放映開始に合わせて「オリジナルQUOカード」5,000円分が抽選で100名に当たる「#今日のあなたはどっちキャンペーン」を開始します。◇【明治おいしいミルクコーヒー 新CM本編、公式サイト、公式SNS情報】・明治おいしいミルクコーヒー 新CM「明治おいしいミルクコーヒー実況」篇30秒・本篇URL(YouTube):・明治おいしい牛乳公式サイトURL:・明治おいしい牛乳公式XアカウントURL:■【撮影ドキュメント】上戸彩さんの多彩な「ズルい!」に、監督も思わず欲張ってしまう!「おはようございます。よろしくお願いします!」と元気にあいさつしてスタジオ入りした上戸彩さん。旧知の間柄である監督を見つけるや否や「お久しぶりです」と笑顔を見せて、「監督もメイキング(映像)に映ってくださいよ〜」とキュートなリクエストをするなど、早くも現場を和ませていきます。撮影では、商品を持ち上げて見つめるシーンからスタート。カメラや照明の調整を待つ間、上戸さんは実際に商品を持ち上げて「監督、この角度で(商品を)見ちゃって大丈夫ですか?」と先回りして動きの確認を。映像の場合、演者がしっかり覗き込んでしまうと商品のロゴが隠れてしまう場合もあるため、ロゴが隠れないようにしながら見ているように見えるよう演じることが多々あるのですが、そういった事態を想定して早めに対応する姿に、経験の豊富さが垣間見えました。CMのキーワードである「ズルい!」のシーンでは、監督から「言いながらちょっと前に出てみよう」「ちょっと表情も付けてほしい」といった細かい演出が入りますが、上戸さんは「分かりました!」と歯切れよく返事をして次々に対応。ちょっと責めたニュアンスや純粋に感心したニュアンス、称賛の色が入ったニュアンス、ほのかに悔しさが混ざったニュアンスなど、「ズルい!」というひと言にこれほどの言い方があるのかと驚かされました。■「上戸彩さんインタビュー『ズルい』と思ったことは?」――撮影はいかがでしたか?自然光っぽい照明の中で撮影させていただいたので、外で撮影しているかのような雰囲気だったのが良かったなって思いました。監督さんとは何回もご一緒しているんですけど、今日は久しぶりにお会いできたのでとっても楽しい撮影になりました。――前回の「明治おいしい牛乳」のCMでは“自然体ダンス”を披露されましたが、反響はいかがでしたか?子どもたちに“自然体ダンス”を教えてもらったので、子どもたちもCMを見てすごく喜んでいましたし、ママ友さんも「テレビで見たよ」って声をかけてくれて、「子どもたちが教えてくれたの」なんて言いながら、会話が盛り上がりました。――今回のCMの見どころを教えてください。「明治おいしいミルクコーヒー」の魅力を、天の声さんと一緒にやり取りしながら紹介するんですけども、そのシュールなやり取りがどのくらいシュールに仕上がっているのか。私もまだ出来上がりを見ていないので、これから楽しみです!――「明治おいしいミルクコーヒー」は、誰とどんな時に飲みたいですか?そのうち自分の時間ができて家でドラマや映画を見る時間があったら、おやつと一緒にこのミルクコーヒーを楽しみたいという願望が生まれました(笑)。――「明治おいしい牛乳」のCM撮影時に、コーヒーに牛乳を入れて飲むのが好きだとおっしゃっていましたが、ミルクコーヒーを初めて飲んだのは何歳くらいの時ですか?小学校3、4年生だった気がしますね。父親がすごく好きで、いつも冷蔵庫に入っていたのを最初は控えめに飲んでいたんですけれども、やっぱりおいしいからいつの間にかゴクゴク飲んで。大人になった今でも、その懐かしさと一緒に飲んだりしています。――上戸さんはどんなお子さんでしたか?とにかくお転婆で!周りからは「天真爛漫」なんて言っていただきましたけど (苦笑)。鉄棒も、手にマメができても、「逆上がりが連続で何回できた」とか言いながら遊んでいるタイプでした。――「明治おいしいミルクコーヒー」はこだわりの生乳を使った商品ですが、上戸さんが「ついこだわってしまうこと」を教えてください。基本的にはあまりこだわりを作らないようにしていることがこだわりでもあるのですが、考えた結果、洗濯物は天日干ししたい派です!天気予報を結構まめに見て、今日こそ干せるぞという日にいっぱい干しています。室内干しだと2時間や3時間はかかりますけど、太陽の力だと、あっという間に乾く気がします。――「ミルクが本気の、ミルクコーヒー。」という今回のコピーにちなんで、上戸さんが本気になったエピソードを教えてください。基本的にずっと本気で生きているんですけど、子どもの風邪をもらってしまって「仕事までに、あと何日しかない!」という時に、本気を出して風邪を治します!気合で治しています(ドヤ)。――ちゃんと治せるのですか?治るんですよ。やっぱり仕事には間に合っちゃうんですよね。忙しい10代の時とかもそうでしたけど、休みになると高熱を出して……。お正月休みとか3日間もらったら、その3日間は高熱で寝込んじゃうんですけど、仕事の日には間に合っちゃうんです。昔からそういうタイプだったのですが、今は子どもから(風邪のウイルスなどを)もらう確率が高いので、それを気合で治すっていう感じです。――CMで「ズルい」というせりふがありますが、上戸さんが「ズルい」と思ったことは?子どものかわいさですね。子どもの無条件のかわいさはズルいですよね。立っているだけでもかわいいし、存在しているだけでもかわいい。あんなに何も考えていなくて計算していないのにずっとかわいいっていうのはズルい!――もう10月。上戸さんにとって今年はどんな秋にしたいですか?トレーニングの秋にしたいですね。なぜか忙しくて自分の時間が全くないんですよ。断捨離もしたいんですけど、部屋の片づけをするのにいっぱいいっぱいなくらいで……。だから、トレーニングをする時間もないんです(泣)。週に1回くらいできたらいいんですけどねぇ。体が緩む前に、もう1回締めたいなと思っています。◇【新CM公開記念!「#今日のあなたはどっちキャンペーン」】新CM公開に合わせて、抽選で100名に「オリジナルQUOカード」5,000円分が当たる、「#今日のあなたはどっちキャンペーン」をスタート。気分に合わせて、生乳のおいしさそのままの「明治おいしい牛乳」と、豊かなコーヒーが香る「明治おいしいミルクコーヒー」のどちらかを選んでいただく投稿キャンペーンです。<キャンペーン応募方法>・明治おいしい牛乳公式Xアカウント @meiji_oishii をフォロー・アカウントメンション&ハッシュタグ2種類(#今日のあなたはどっちキャンペーン + #明治おいしい牛乳の気分 もしくは #明治おいしいミルクコーヒーの気分)を投稿<応募期間>応募期間:2024年10月8日 10:00〜10月31日 23:59まで<キャンペーン賞品>オリジナルQUOカード5,000円分(100名限定)■新商品!「明治おいしいミルクコーヒー」(450ml)「明治おいしい牛乳」に使われるこだわりの生乳をふんだんに使用した(生乳50%以上)、コクはそのままですっきりとした味わいのミルクコーヒー。乳のおいしさを引き立てる、香り豊かなコーヒーとほのかな甘みが特長です。(エボル)
2024年10月08日1977年のハロウィン、深夜のトークショー「ナイト・オウルズ」の生放送中に怪異が起こった――。映画『悪魔と夜ふかし』は、全米を震撼させた衝撃映像とその舞台裏に迫ってゆくという設定で描かれるファウンド・フッテージ・ホラーだ。ほぼリアルタイムで展開するストーリー、ポップなトークショーのセットで起こる超常現象、映画ファンにはレトロで懐かしいホラー演出。全編にさまざまな仕掛けが施された本作は、Rotten Tomatoesで97%フレッシュという高評価を獲得した。監督・脚本・編集は、オーストラリアが生んだ鬼才コリン&キャメロン・ケアンズ兄弟。鮮やかでクリエイティブなホラー創作の秘密を聞いた。挑戦的なアイディアが生まれた背景――「生放送のトークショーで超常現象が起こる」というコンセプトはどのように生まれたのでしょうか。コリン:僕たちは、当初からひとつのロケーションで撮影できるホラー映画を作ろうと考えていました。過去に低予算ホラー映画を2本撮った経験から、次回作も同じく少人数のキャストと単独のロケーションでなければならないと考えていたんです。そのなかで少々変わったものに挑戦したいと考え、「テレビのスタジオが舞台のホラー映画」というアイデアを思いつきました。僕たちは2人ともテレビの世界で働いたことがあるので、生放送がどんなもので、いかにストレスフルで、また恐ろしいかを知っています。そのとき、刻々と時間が過ぎてゆくテレビの生中継はサスペンスの物語にふさわしいと思いました。そこに「スタジオに幽霊が出たら?」「悪魔が大衆にメッセージを伝えるのはどうか?」というアイデアを加え、少しずつ形にしていったのです。脚本を書くのは大変な作業で、時間もかかりましたが、いいアイデアだと思いました。――ファウンド・フッテージ/フェイク・ドキュメンタリーの形式でストーリーを語ろうと決めたのはなぜですか?キャメロン:この物語に最もふさわしいと感じたからです。はじめはトークショーの形式を忠実に守るつもりで、プロローグを用意せず、映画の冒頭からいきなり番組を始めていました。しかし脚本を書き進めていくと、プロローグがないために情報や説明を詰め込まなければならず、ストーリーに悪影響を与えることがわかってきた。そのときに「物語においてベストな選択は?」と考えた結果、ドキュメンタリー形式が最良の解決策だと思ったのです。ストーリーテラーとして多くの可能性を開きつつ、いくつかの情報を隠しておくことでサスペンスを生み出せる。説明過剰なセリフで観客に負担を強いることなく、映画に必要なリズムを作ることができました。コリン:(フェイク・ドキュメンタリーだと)劇中のトークショーがより直接的でインパクトのあるものになります。ジャックがカメラに向かって話していれば、この映画を劇場で観るのか、あるいは自宅から配信で見るのかは関係ありません。実際にテレビでトークショーやバラエティを見ているのと同じ感覚になれますよね。そのほうが劇的かつ効果的、かつ私たちと皆さん、劇中の観客がジャックとの関係を築きやすくなると考えました。70年代を選んだのは「説得力が生まれるから」――テレビ番組の文法でホラー映画を作ることにはどんな難しさがありましたか。キャメロン:もちろん限界があることはわかっていました。緊張感を高めるために恐ろしい音楽をかけることはできないし、ジャンプスケア(突然の大音量で観客を驚かせる演出)に頼ることも、背後からいきなり人を飛び出させることもできない。しかし、その限界を最大限に利用することにしたんです。番組のセットは明るく、ほとんどの場面でハッピーなジャズが流れている…そうした要素にひねりを加えたり、覆したりできれば、それは非常に強力な武器になる。この形式だからこそできたこともあると思います。――映画のプロローグで、70年代は「不安と不信、恐れと暴力の時代」だと語られています。現代とのリンクを思わせる要素でもありますが、70年代を選んだのはそうした理由もあったのでしょうか?コリン:(プロローグの内容と)ここ数年の出来事が、深い関連性にあると感じてもらえることで、この映画はより現代性を帯びた作品になったと思います。しかし果たして、世界から混乱や悲劇がなくなったと感じられる、あるいは「誰もが仲良しで幸福だ」と思えるような10年間は過去に存在したのか……。これらはいつでも、どこにでも当てはまることであり、時折アメリカで起きていることなのです。キャメロン:脚本を書き始めたのは2013年ごろで、本格的に執筆を進めたのは、ちょうどドナルド・トランプが政権を取ったころでした。当時はソーシャルメディアが普及し、「誰もが一夜で有名になれる」という考え方が広がった時期でもあった。脚本を書くときは必ず周囲の出来事に影響を受けるので、無意識のうちに、また明白ではない形で、当時の空気が反映された部分もあったかもしれません。コリン:しかし70年代を選んだのは、そういった理由よりも、作品の題材やテレビ番組の内容に説得力が生まれると感じたからです。80年代に悪魔的儀式虐待(悪魔崇拝者の儀式で子どもたちが身体的・性的虐待を受けた事件)が告発される以前、人々は悪魔や宗教をきわめて真剣に受け止めていました。ヒッピー以降・ニューエイジ思想の時代には、南アメリカのジョーンズタウン(カルト教団の設立した町)で数百人がジュースに毒物を混ぜ、喜んで自殺したこともあった。人々が宗教やスピリチュアル、悪魔崇拝の限界を求める、非常に奇妙な時代だったんです。名作映画へのオマージュも――本作では『エクソシスト』や『キング・オブ・コメディ』など、当時の名作映画にもオマージュを捧げていますよね。コリン:70年代は、僕たちの大好きな映画やテレビ、音楽が生まれた時代でもありました。だから70年代後半を舞台にする以上、『エクソシスト』と『キャリー』、また『キング・オブ・コメディ』や『ネットワーク』、そしてデヴィッド・クローネンバーグの『ヴィデオドローム』といった傑作を参照しないわけにはいきません。これらはジャンルを問わず素晴らしい映画であり、今回目指したテーマにも明らかに関係している作品です。最終的には独立した映画を作り上げなければいけませんが、僕たちが影響を受けていることは誰の目にも明らか。映画に対する愛情を、恥じることなく表現しようと思いました。(稲垣貴俊)■関連作品:悪魔と夜ふかし 2024年10月4日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国順次公開©2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED
2024年10月05日ストークメディエーションが展開するパーソナライズヘアカラーブランド「COLORIS(カラリス)」は、2024年9月6日で誕生5周年を迎えました。5周年を記念し、特別インタビューを公開。さらに、人気企画「ヘアカラー総選挙」を開催しています。■カラリス5周年特別インタビューママ・美容インフルエンサーのAYANAさん、STYLE WORKS代表の三輪詩織さん、ミキハウス子育て総研の大森菜生子さん。カラリスユーザーであり、それぞれの分野で活躍する3人に、5周年特別インタビューを行いました。動画と全文は特設サイトにて公開中。また、ユーザーより届いたたくさんのお祝いのメッセージも公開しているので、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。▼特設サイトはこちら◇ママ・美容インフルエンサーAYANAさん自分に似合う色やパーソナルカラーがわからない人でも、WEB診断で簡単カラーが選べるし、失敗しずらいのも嬉しいですね。子育てと仕事の両立でなかなか時間が取れない人も、おうちで綺麗なヘアカラーになれますよ!本当に髪がツヤっとします。サロン派の友達にも「良い色だね〜」と褒められました。◇Style Works代表三輪詩織さん「自分は絶対に美容室でしか染めない」と思っている方にこそ使ってみてほしいと思います。正直、私もヘアカラーは「絶対美容室派」という人間でしたが、それでもカラリスは使ってみて感動したので、自信をもっておすすめできます。パッケージもすごくおしゃれなので、届いた瞬間からストーリーが始まっている感じがしてワクワクします。◇ミキハウス子育て総研大森菜生子さんお子様のことに一生懸命なママさんほど、自分のことってすごくおざなりになってしまうので、そういった方にカラリスさんを知っていただければと思っています。絶対的に「こんな素敵な商品があって、私も綺麗になれるんだ」と分かってもらえると心から思っていて。■プレミアムトリートメントが当たる!ヘアカラー総選挙さらに、昨年に引き続き、皆様への日毎の感謝を込めた特別キャンペーン「COLORIS人気ヘアカラー総選挙」を開催。投票者の中から、抽選で300名に「COLORISプレミアムトリートメント」をプレゼントします。ぜひ、参加してみてはいかがでしょうか。期間:2024年9月6日〜9月30日参加方法:カラリス公式LINEより、好きなカラーに投票してください。当選については、キャンペーン運営事務局より当選者のみメールにて連絡します。結果についての質問には対応していません。◇COLORISプレミアムトリートメント・「プレミアムトリートメント 150g」3,300円カウンセリングデータを基に開発された、髪を内側から補修する濃密なトリートメント 。キューティクルを保護しながら、からまりを抑えて指通りの良い髪へ導きます。4つのプレミアム成分<加水分解ケラチン・加水分解シルク・コラーゲン・アミノ酸>が髪内部に浸透し、傷んだ髪を内側から修復します。詳細はこちら:(エボル)
2024年09月20日高橋文哉と田中圭が、4年ぶりに再共演を果たした。「ブラッシュアップライフ」の水野格監督がオリジナル脚本を書き下ろした映画『あの人が消えた』だ。高橋は担当先のマンションで巻き起こる事件から住人を救おうとする配送業者・丸子を、田中はお調子者に見えて、丸子を何かと気にかける先輩・荒川に扮している。初共演時、座長としての背中を見せた田中と、座長として迎え入れる立場にまで成長した高橋。「経験」をテーマに、それぞれの想いを語っていただいた。作品が重なる際の役への向き合い方――高橋さんと田中さんの初共演は2019年のドラマ「先生を消す方程式」ですね。教師と生徒という役柄でした。高橋:僕が初めて学生役を演じたのが「先生を消す方程式」でした。それも相まって、(田中)圭さんには先生のような先輩のような、大好きなお兄ちゃんのようないろいろなものが交わった感覚があります。田中:ただ、教師と生徒といっても、僕の役はとにかく嫌われて殺されそうになる役でした。役柄もあって当時はそこまで会話も無く、偶然プライベートで会ったときも一言二言挨拶して終わりだったので、いつの間にこんな信頼感が生まれたのか不思議に感じております(笑)。――そうだったのですね。田中さんは『あの人が消えた』制作発表時、「高橋文哉くんが主演とのことで、なんとか参加したいなと思っていました」とコメントされていました。田中:ちょうどそのとき自分が主演のドラマに入っていたので、タイミング的に難しいかと最初は思っていました。ただ主演が(高橋)文哉くんと聞いて自分に出来ることがあるならなんとか参加したい、という気持ちになりました。高橋:圭さんが出演して下さると聞いて、嬉しかったです。より一層気合が入りました。――ちなみに田中さんが働き方を変えたきっかけは、どういったものだったのでしょうか。田中:僕はかれこれ20年くらい作品を重ねる働き方をしてきました。撮影期間が重なっているため、1つの作品が終わって次の作品が始まるまでに空きがない状態をずっと過ごしてきて、半年間休みがないときもありましたが、その方が自分の性に合っていたんです。ただ年齢を重ねて、作品への出方や役に対する自分のアプローチの感覚が変わってきたこともあり「一つひとつに向き合う形でもいいのではないか。まずは1回やってみよう」と思い立って変えてみました。今は休む時間も増えて、バランス良く過ごせているなと感じ継続しています。――高橋さんは作品を重ねる際、どう切り替えているのでしょう。高橋:意識的に切り替えることはせず、勝手に切り替わると信じて取り組んでいます。例えば同時期に2本の作品に取り組んでいるときは、台本を持ったら切り替わるように身体が自然となっていきました。また、僕は作品と作品の間が数日空くことが多いので、その間に台本を一気に読んで集中を高めるようにしています。1つの作品に参加しているときに別の作品のお話をいただいてその台本を読む、といったことはありますが、それ以外では基本的に他の台本は読まないようにしています。読むと別の作品のことが頭に入ってきてしまうからです。なるべくいま入っている作品以外の情報は遮断して、次の作品のクランクイン数日前に一気に台本を読むことで切り替えている気がします。――1つの作品に入っている際は、例えば別の映画なども観ないのでしょうか。高橋:家でドラマを観たりはしますがなるべく抑えていて、映画館に足を運んだりは基本的にしないようにしています。観たい映画があったら「クランクアップしたときにまだ劇場でやっていたらいいな、ロングランしていますように」と祈っています。――そうした我慢も、すべてはお芝居のためになのですね…。高橋:そうですね。これはもう自分の勝手なルールといいますか、思い込みから生まれています。田中:1つの作品に取り組んでいるときに他の刺激を入れたくないのはすごくよくわかる。僕も自分では気づいていないだけで、マイルールがあるのかもしれないです。“座長”としての在り方とは?――高橋さんが「先生を消す方程式」の際に、田中さんから学んだ“主演の在り方”はありますか?高橋:スタッフさん・キャストさん含めたコミュニケーションの取り方、空気感の作り方でしょうか。生徒役も数十人と多く、緊張感が流れる瞬間もあった現場でしたが、圭さんが教壇に立って和ませる姿を見てきました。そのときはまだ気づけていませんでしたが、自分が主演をやらせていただくようになってあのときに圭さんがやって下さっていたことの意味をちゃんと再認識できるようになってきた気がします。田中:今回、文哉くんから座長としての頼もしさを感じました。タイトなスケジュールの中でも嫌な顔一つ見せず、まっすぐに自分の役と作品、そして現場に向き合っていました。だからこそスタッフさんも他のキャストも「ついていこう」「文哉くんの負担をちょっとでも減らしたい」と思えたのではないかと思います。色々なタイプの座長の在り方がありますが、文哉くんらしさと年齢やキャリアを考えたバランス的にもとても素敵だなと感じました。――田中さんご自身は、座長としての臨み方をどのように実践されているのでしょう。田中:僕は基本的に、みんなが楽しくやる気になってくれるような現場づくりを目指しています。どの現場も、キャストだけでなくスタッフさんもみんな大変だと思うんです。様々な大変な思いをそれぞれがするなかで、結果が出ないこともあります。それでもみんながこの仕事を続けるのは好きだからだと思っているので、その原点を思い出せるような現場づくりは心がけています。高橋:僕は今回、キャストの皆さんとたくさんコミュニケーションを取れたわけではありません。そんななかで、スタッフの皆さんが少しでも笑ってくれて疲れが取れるといいなと思い、なるべく自分から話しかけるようにしていました。田中圭、高橋文哉の「40代での変化」に興味――前回の共演から4年経ち、お互いに変化を感じられたのではないでしょうか。高橋:圭さんは変わらないなと思いました。自分が19歳のときに抱いていた包容力が数年ぶりに蘇り、背筋が伸びた気もしたし、逆に肩の荷が軽くなるような感覚もありました。田中:文哉くんは元々の可愛らしさや真面目さは変わらず、経験を積んだことで顔つき一つとっても違いましたし、自信があろうがなかろうが主演としてここに立つんだ、という意志が伝わってきました。4年前よりさらにお芝居が好きになったんだろうな、という印象も受けました。僕としては、悪い変わり方をした文哉くんも見てみたかったのですが…(笑)。「俺はスターだぞ。田中遅ぇな」みたいにわかりやすく変わっていないかなと期待して現場に臨んだら、全くそのようなことなく相変わらずいい子でした(笑)。文哉くんの中にキャリアが蓄積されているんだなということがわかりました。文哉くんが調子に乗るには、あと6年くらいかかるかもしれない…(笑)。――ちなみに田中さんの19~23歳頃の想い出はいかがでしょう。田中:バイトの想い出が強いかもしれません。仕事がないときはバイトに明け暮れていました。いま振り返ると大変でしたが、あのときはあの時で楽しい苦労をしていたなと思います。同じ19~23歳でも、文哉くんと僕には天と地ほどの差がある気がします。僕の19歳当時は息の仕方もわからないのに川の底を歩いているような時期でしたし、もちろんそういうものも込みで経験になりましたが、芸能という仕事における23歳までの経験値でいったら文哉くんは圧倒的です。そのぶん、文哉くんが僕と同じ40代に入ったときにどう変化しているかには興味があります。撮影現場においての対応力――おふたりは『あの人が消えた』の現場において、ご自身が事前に抱いていたテイストやトーン、テンションが違うかもと感じたとき、瞬時に切り替えたと伺いました。こうしたスキルは、やはり経験によって培われたものでしょうか。田中:経験は大きいと思います。やっぱり、自分ができないことを言われても対応できません。どんなリクエストが来ても対応できるようになるためには経験を積む必要があると思います。ただ基本的にはその人の性格だとも感じます。高橋:確かにそうですね。田中:役者には合わせることが得意な人、理解力が高い人、理解していなくても感覚で出来てしまう人もいますし、もっと言うと「合わせない」タイプの人もいます。もし文哉くんが合わせない人だったら切り替えなかったでしょうし、性格による部分も大きいように思います。高橋:僕はこの役においては、とにかくスポンジのように吸収する存在でいなければと思っていました。自分としても、この現場で主演を務めさせていただくのがどれだけ責任のあることなのかを意識していないといけないと感じていましたし、丸子も後半になるにつれて顔つきが変わっていくように作り上げたいと思っていたので、他の役よりは受け入れ態勢ではありました。▼高橋文哉ヘアメイク:KATO(TRON)スタイリスト:丸山晃▼田中圭ヘアメイク:岩根あやのスタイリスト:荒木大輔(text:SYO/photo:You Ishii)■関連作品:あの人が消えた 2024年9月20日より全国にて公開©2024「あの人が消えた」製作委員会
2024年09月20日アラサーにとって、恋愛や結婚の悩みはつきもの。価値観や金銭感覚、生活リズムや将来のこと。大人になればなるほど、自分の人生を大切に生きる私たちだからこそ、他人と一緒に生活することや、描く未来が一致することが簡単ではないことを感じてしまい、「どうして“好き”だけじゃ、結婚できないんだろう?」となかなか結婚に踏み切れずに悩む人も少なくはないはず。そんな人にこそ観てほしいのが、9月19日(木)21時00分から放送開始する、ABEMAオリジナル結婚決断リアリティ番組『さよならプロポーズvia ギリシャ』。本作はお付き合いをしながらもなかなか結婚に踏み切れない2組のカップルが7日間の海外旅行を経て、最終日に“結婚”か“別れ”かのどちらかを必ず決断しなければならない結婚リアリティ番組です。前シーズン終了後、約4年ぶりの放送で登場する1組目のカップルは、交際約3年でプロポーズしたものの、入籍に踏み切れないラグビー選手のアオイ(27)と、同棲をきっかけに愛情表現の減少に悩むモデルのモナ(30)。もう1組は「“好き”だけで結婚して良いのか」と悩む会社員のシュウヘイ(30)と、不安が募るものの嫌われたくないという気持ちから切り出せないエステティシャンのカホ(30)です。ヒコロヒーさんがMCを務め、スタジオ見届け人としてさや香・新山さん、第1話〜3話のスタジオゲストとして藤本美貴さん、三浦獠太さんと共に2組のカップルの旅を見守ります。放送に先駆けた合同取材会では、番組の見どころや、それぞれの結婚・恋愛観について語っていただきました。■両極端な2組のカップル――第1〜3話をご覧になって、それぞれのカップルへ抱いた印象を教えてください。新山:最初はカップルのポスターを見ても何も思わなかったんですけど、番組を視聴した後にこの2組の立ち方ってそれぞれのカップルをめっちゃ表してるやんって思いました。ちょっと背中を向けて拗ねてる感じとか、どこか平行線な感じとか……。勝手に考察して「そういうことか!」って。2組のカップルのシチュエーションは近いけれど、内容が結構逆で“静”と“動”という印象。対照的で、飽きずにずっと見られるなっていう感じでした。ヒコロヒー:シュウヘイとカホちゃんのカップルはお互いに言いたいことを言えてなくて、それが原因でやきもきしていて、アオイとモナはぶつかりすぎてやきもきしてる、対照的な2組だったなと思います。藤本:モナちゃんみたいに「わがまま言いたい!」みたいな女の子って世の中にたくさんいると思うんです。客観的に見ると「こうしたらいいのに!」ってすごいわかるのに、自分のことになるともういっぱいいっぱいになっちゃうのが恋愛だし、それが結婚となると人生の一大イベントなので人を悩ませるのかなって思いながら見てました。他人事だとわかるんですけどね。1回落ち着いてこのVTRを見せたいです。三浦:4人とも何か見る分には本当楽しく見れるんですけど、自分に置き換えたときに「果たして本当に自分はできているのか?」というところはあります。自分も同じようなことを言っちゃってるし、しちゃってるな、何か身に覚えがあるなってことが多いので、そういう意味ではすごく勉強になりましたね。――本番組は「プロポーズするか別れるかを決断」しますが、皆様ご自身が最近日常生活の中で「決断を迫られたこと」または「決断したこと」を教えてください。ヒコロヒー:この番組を受けたことですね。恋愛のいろいろな時間を見させていただくということで、ここであれこれしゃべることも責任を伴うし、人様のその大切な時間をどう使うんやっていうのを結構気にしたので、どうしようかなと思ってたんですけど、#1のVTRを見て「やめとけばよかった」って思いましたね(笑)。藤本:重いよね(笑)。ヒコロヒー:でも、すごく大切なものを見さしていただいてるなという感じがしました。三浦:僕もこの番組をやるってなったときに、しゃべるの苦手だし、バラエティーとかもすごく怖くて自信が無かったんですけど、やってみようって思ったのは最近決断したことですね。■大事なのは話し合い――もし恋人とすれ違いが生じたとき、ヒコロヒーさんと三浦さんが取る行動を教えてください。ヒコロヒー:私は話し合いです。とにかく話し合い。話し合いがめちゃくちゃ嫌いなので、なるべくしたくないんですけども、そこで話し合えない人はちょっと厳しいなと思います。ご飯食べに行こうって誘って、「ちょっとな、最近しんどいな、一緒にいてもな!」って切り出して、「これうまそうやな」って逃げながら「しんどいけど、どうしていく?」って回していく。三浦:僕は自分の非を全て認めて謝る。あと、プロフェッショナルな動画を一緒に見ます。例えば友達とかでもすれ違ったりしたら、イチローさんの動画を一緒に見る。藤本:なんで(笑)!?三浦:これが、プロだ!みたいな。――こんなことで悩んではいけない的な?三浦:そうです。そういうのを一緒に見たりするのが結構一番すっきりします。――なるほど。本番組でのカップルは 「結婚を決断するために旅に出る」 という行動に出ましたが、 藤本さんと新山さんが結婚を相手に決断してもらうために起こした行動、または相手から促された行動があれば教えてください。藤本:でも私は結婚するつもりがないときから結婚したいって言われたので、モーニング娘脱退を脱退して、自分の中で別れる選択肢が無いなって思ったのがきっかけになったので……。でも、旦那さんがしたいって言わなかったら、私は結構詰めて「どう思ってる?」って自分から言うタイプだと思います。新山:実際そうだったんですけど、授かっちゃう。結婚に対して、どちらかがしたい、したくないではなかったので、それこそほんまにわからないんですよ。ずっと付き合ってて、結婚するってなったとき、やっぱりいつどうしようってなるんです。何のきっかけがいいかわからないというか、何をもって紙に書いて、それを出すのかっていう。ただ、それをやるだけで、生活自体がそんな変わらへんやんってお互いが思っていた時期はありましたね。――シュウヘイも子どもが一つのきっかけになると言ってましたね。新山:何かタイミングが無いからこそ「これで結婚していいのかな?」って思う気持ちはわかりますね。■結婚に踏み切れない原因は?――“恋人としての最後の旅行”ということですが、みなさんが男女で旅行するときにしてほしくないことはありますか?ヒコロヒー:私、ここ行ってあれやって、みたいなスケジュールが全部決まってて、それ通りにいかなくてイライラされるのが嫌です。新山:僕やるタイプですね。スケジュールを全部決める。ヒコロヒー:でも、イライラするタイプじゃないでしょ?決めてくれるのが好きっていう人もめちゃくちゃいますから。新山:そうですね。余裕持ってスケジュールを組むみたいな感じではありますけど……。でも、ちょっとしたトラブルが起きたら、上手くいかなくて逆にしんどくなるというリスクも結構ありますね。藤本:歩くのが速いのも嫌ですね。地味に置いていかれるみたいな。新山:僕歩くのが速いんです。すごい、なんかも全部当てはまってる……(苦笑い)。ヒコロヒー:奥様とかなり合うんやろな。――三浦さんはどうですか?三浦:僕は無いですね。まぁイライラされたら嫌ですけど……。藤本:結構受け入れ型ですよね。ヒコロヒー:えー!君、次付き合う女によって随分変わるやろうな!――みなさんが“お付き合いしながらもなかなか結婚に踏み切れない”ような、付き合ってる時は許せるけど、結婚したら許せなさそうなポイントはありますか?些細なことでもOKです。藤本:いびきとかは嫌かもしれない。あと、タバコを吸うか吸わないかとか。ヒコロヒー:本音を話し合えるかどうかとかも結構大事ですよね。向き合うべきところと、向き合わないでいてほしいところのバランスとか新山:僕は詮索されるのとかが無理ですね。携帯見る人とか。信頼されてないことの最たるものだと思うので、それをずっとされたら嫌ですね。三浦:僕はないですね……。結構自分がだらしなくて、しっかりしてない料理もできないし、部屋とかめっちゃ汚いタイプなんで、多分嫌がられて文句を言われる。文句言われてもそうだよなと思いますし……。藤本:全部受け入れる今どき男子!ヒコロヒー:すごいね!?三浦:人に対してこれが嫌だって言う前に自分が怒られるし、人に対して直してほしいところがあっても、その前に自分が直すべき場所が多すぎる。なので、なるべく自分が頑張ろうと思いますね。――視聴者の皆様に向けて最後に、一言いただけますと幸いです。新山:休憩のたびにマネージャーがやってきて「最高の仕事ですね!現場にこれてうれしいです」「めっちゃおもしろいです。早く次見たいです」って言いにくるくらい。あと、ヒコロヒーさんと休憩中に喫煙所でずっとモナの話になったりとか、それぐらい入り込めるので、見ていただいたら絶対ハマっていただけると思います。ヒコロヒー:恋愛している人も、してない人も、恋愛や結婚ってどこまでいっても人間関係なので、自分のやり方とかをちょっと省みるような要素もあるんじゃないかなと思いますね。「こうならないようにしよう」も「こうしよう」もあるので、惚れた腫れたが好きな人も、そうじゃない人も、1回ちょっと楽しむことはできるんじゃないかなと思います。藤本:収録中好き勝手言わせていただいたんですけど……(笑)。4人全員ジャンルが違うので、何か自分もきっとどこかに当てはまるのかなって思うと、その人の気持ちがわかったりとか、「私だったらこうする」とか感情移入もできてすごいおもしろいと思うので、本当に皆さんに最後まで見届けてほしいなと思います。三浦:僕は恋愛リアリティショーを人生で見たことなかったので、そういう意味でも全く知らない世界に今日来たんですけど、すごく見るのが楽しくて、時間があっという間に進んで、本当に続きが気になりますし、早く最後まで見てどうなるのか知りたいです。見ている人もそういう思いになるんじゃないかなと。――ありがとうございました。(取材・文・撮影:瑞姫)
2024年09月14日※このコラムは『キミとオオカミくんには騙されない』第2話までのネタバレを含みます。8月11日(日)より、ABEMAのオリジナル恋愛リアリティーショーの最新作『キミとオオカミくんには騙されない』がスタート。“業界注目の女子高生”が集結し、恋するフリをする「“嘘つき”オオカミくん」が潜む8人の“イケメン最高彼氏”候補と、本気の恋に挑む様子をリアルタイムで追いかける本番組は、大人世代からも「ピュアな気持ちを思い出せる」「胸キュンする」「感情が揺さぶられて大号泣」など厚い支持を集めています。そんな『キミとオオカミくんには騙されない』の第2話では、“キミ”である視聴者の投票によって男性メンバーの中から脱落者が決まり、番組脱落の模様が生放送で発表されるという前代未聞の試みが実施されました。今回は、初の生放送での脱落者発表を見守ったばかりの番組MCを務める横澤夏子さん、菊池風磨さん、丸山礼さんにマイナビウーマンが独占インタビュー。直後の率直な感想と、今作ならではの魅力、3人だからこその空気感について語っていただきました。■初の生放送・脱落者投票直後の心境は?――第2話では『キミとオオカミくんには騙されない』の“キミ”である視聴者の投票によって決まった脱落者発表が生放送で行われました。生放送を終えたばかりの今の感想を教えてください。横澤:全然時間が足りなかった!もっと感想を言い合いたかったです。丸山:臨場感があってリアルでしたよね。(横澤さんは)泣いてましたし。横澤:「これからいっぱい思い出を作れただろうに、もう作れないじゃん」ってメンバーがかわいそうになってきて。菊池:メンバーくらい泣いてるんだもん。(笑)――丸山さんと菊池さんもグッとくるものがありましたか?丸山:めちゃくちゃ真っ直ぐに想いを伝えていたameくんが、やっぱり最後も熱い男で終わっていったので、最終的に誰かと結ばれるところまで見たかったですね……。横澤:ameは相当テクニックあるはずなのに悔しいわ。菊池:ameくんが落ちるとは想像してなかったですよね。誰が落ちるって想像していたわけではないけど、「ameが落ちることはないだろうな」ってどこかで思っていたので。夏子さんが言うように、これからのameくんが見たかったです。――ちなみに、視聴者からの脱落者投票の1位はダントツでこた(吉川康太)さんでしたね。丸山:私もこたが「オオカミくん」なんじゃないかっていうのがチラついてました。前回まで私はこた推しで、でも「こたがオオカミくんじゃありませんように」というスタンスだったので、やっぱりみんな同じこと考えてるんだなって。――でも、たしか菊池さんも特別企画『風磨くんは騙されない』の中で、こたさんを「オオカミくん」だと言ってましたよね?菊池:いや、こたはどう考えても「オオカミくん」でしょ。丸山:一緒じゃん!横澤:ただ、こたはまだ「オオカミくん」としての切なさが出てきてないんです。切ない表情をし出した時の“「オオカミくん」の責任を背負わされて潰されそうになってるじゃん……”っていうこたも見たい!今のこたはギラついていて「オオカミくん」っぽいので、いつ落とされるかわからないっていう怖さがありますね。――今回はみぃ(入江美沙希)が守ってくれたことによって残ることができましたもんね。菊池:だから上手いんですよ、こたは。真っ直ぐなみぃちゃんを見つけているんで。横澤:そう、そうなの!丸山:みぃちゃんのこと裏切らないでほしい!だってみぃちゃんはこたに初恋くらいの勢いじゃないですか。横澤:だからこそ、こたはみんなに見えないところでみぃちゃんの頭をポンポンってしてたり、ちゃんとしてるんですよね。丸山:そういう一つ一つが刺さるんでしょうね……。恋愛初心者のみぃちゃんには……。――たしかに……!菊池:でも僕たちがこんなことを直接みぃちゃんに言ったとしても響かないんですよ。横澤:そう、響かない……!でも、女の子的にはかなわぬ恋の方が盛り上がっちゃうよね。だから、きっとみぃちゃんは私たちが言えば言うほど、『大丈夫!それでも大丈夫だから!』って言いそう……丸山:かなわぬ恋と分かっていてもいっちゃうのも経験なんですよね〜!!――この気持ち、菊池さん分かりますか?菊池:全然分からない(笑)。横澤:信じるが好きに変わる瞬間があるんですよ……。丸山:すごい名言。菊池:今回で逆に拍車がかかったんじゃないですか?みぃちゃんが選んだこたが、ダントツで脱落者投票1位だったという事実を知ったので。横澤:私が守らなきゃみたいなね……。※こたが「オオカミくん」だと決定したわけではありません。■芸能界で活躍していきそうなのは?――『キミとオオカミくんには騙されない』ならではの参加者の魅力や見どころを教えてください。横澤:やっぱり女子高生というのはうぶでかわいいですし、パワフルで華がありますよね。一番青春ができる高校生という時期を私たちに見せてくれてありがとうって思います。丸山:年齢層も若いですし、あの時自分がやりたかった恋愛像みたいなものが見れたりするのが良いですよね。私も女子高生の時に、あの環境下で恋愛をしていいぞって言われたら……!横澤:選び放題ですからね。年上もいるし、同じ年もいるし、ちょっと下もいて。最高。――ちなみに、『オオカミ』シリーズではメンバーたちのその後の各界での活躍も注目のポイントかと思うんですが、今シーズンの注目メンバーはいますか?菊池:やはり、“そう(植村颯太)”じゃないですか?ちょっと今は松田元太(Travis Japan)という天然枠がありますので、あいつをどかさない限りは難しいですけど。全く同じジャンルなんですよ。100個にグループを分けても同じグループになると思います。横澤:私は全然最初そうが天然だとは感じていなかったんですけど、女の子との会話が少し噛み合ってないなってことに気付き始めて。(笑)菊池:えみたん(土方エミリ)と話している時、えみたんのことを犯人を見るかのような目で見ていて、あまり話が噛み合ってもなかったですからね。(笑)えみたんはそれすらも楽しいってなっていたから良いんですけど……。丸山:どうしよう。そうが「オオカミくん」だったら。横澤:でも、逆に投票を待って何も動かずにやってるパターンの“策士「オオカミくん」”もいるんですよ。だからあえて「今は静かに大人しくしとけ!」っていう。丸山:そうは「オオカミくん」だからこその“あえての”天然かもしれない。菊池:そうが「オオカミくん」だとしても、彼は計算してないと思いますよ。あれは天然だと思う。だからこそ、もし本当にそうが「オオカミくん」だったらすごいです!「そう、よくやった!」と思います。■MCの空気感は「家で見てる感じ」――MC3人の空気感はどういった感じですか?横澤:何か分からないけどずっと笑ってます。家で見ているかのごとく(笑)。楽しいですね。丸山:恋愛リアリティーショーはこうやって誰かと一緒に見て楽しむのが良いですからね。それをスタジオでやってる。菊池:本当に楽しいですし、まさに家で見ているような感覚です。今まで恋愛リアリティーショーを見ることはあっても人と見ることは無かったので、誰かと一緒に見るとこういう視点があるんだという純粋な発見がありました。人と一緒に見るものだなって思いましたね。丸山:『キミとオオカミくんには騙されない』は小さい一言も見逃さないし、1mmの心情の変化を全部映し出してくれるから追いつくのが大変なんですけど、それをスタジオで見ているのがおもしろいです。一人で見るより楽しんじゃってる自分がいますね。――参加者の恋愛を見て“学び”みたいなものはありましたか?丸山:菊池くんは言ってますよ。「俺、やろーっと」って。横澤:すぐ言ってる!菊池:こたのカメラが回ってないところでの頭ぽんぽんとか。あれは確実にやります。あと、こたが”男性とご飯食べるの初めて”っていうえみりちゃんに、さりげなく「かわいい」って言ってたと思うんですけど、あれもやります。不意にかわいいって言う。丸山:こっち(MC陣)で練習しとけば!?一回!――(笑)。ちなみに、みなさんが『キミとオオカミくんには騙されない』に参加するとしたら、誰に恋すると思いますか?横澤:だからまず、こたには1回いくよね。菊池:1回ね(笑)。横澤:でも、たいりにもいくよね。丸山:たいりにいきますか?横澤:たいりは一回親に紹介したい男じゃない?未来を見据えてるし、あいつはいい男だから……絶対。でも、エリヤにもいきたいんだよ私は。丸山:分かります。エリヤのファッションもすごく気になっちゃうんですよ。メガネ一つかけてるだけでオシャレに見える。菊池:僕はえみたんです。ただ、恋愛とかではなく、純粋に真っ直ぐ人に向き合うところを応援したくなる感覚。とにかく、えみたんの恋が上手くいってくれればそれでいい!!!――最後に『キミとオオカミくんには騙されない』の魅力をマイナビウーマン読者に向けて、一言ずつお願いします。横澤:あの時の青春をぜひ!今青春してる人も、昔青春してた方も、ああ、楽しいな〜って。エキスを吸い取って欲しい(笑)。菊池:真っ直ぐですからね。その良さを楽しんでほしいです。丸山:夏は喉乾いてると思うので、ここでうるおってください!――ありがとうございました!男子への想いが増す女子たちの運命は…!?第2回オオカミ投票募集中!!#オオカミくん #横澤夏子 #菊池風磨 #丸山礼— キミとオオカミくんには騙されない@ABEMA(アベマ) (@ookami_official) August 31, 2024◇ABEMA 『キミとオオカミくんには騙されない』放送日時:毎週日曜夜9時~放送チャンネル:ABEMA SPECIAL2チャンネル放送URL:公式 TikTok:公式 Twitter:公式 Instagram:公式YouTube:(取材・文・撮影:瑞姫)
2024年09月08日獄中結婚をモチーフに、元ヤンキーの児童相談員と死刑囚との運命的な出会いを描いた人気漫画を原作に、堤幸彦監督が映像化した同名映画『夏目アラタの結婚』。人生の中のミステリーとサスペンス、人間のグロテスクな一面とそこから垣間見える感情の煌めき、人が人と繋がることの尊さを描いた異色のボーイ・ミーツ・ガール物語だ。本作で黒島結菜は最後まで本性が見定められない不気味な死刑囚・品川ピエロこと品川真珠を熱演。可憐さやはつらつとした表情が印象的な役を多く演じてきた彼女が、共演の柳楽優弥を相手に、予想をはるかに上回る怪演で新境地を切り開き、またひとつ代表作を手にしている。難役は現場を信頼してのチャレンジ――原作のエッセンスが凝縮された見事な映像化作品でした。そもそも、俳優として本作に出演したい、品川真珠を演じてみたいと思った理由はどこにあったのでしょうか。原作を読んだときに、これは難しい役だなと実は迷ったんです。でも主演が柳楽さんで、監督が堤さんだったこともあって出演を決めました。堤監督とはもう何度もご一緒していますし、柳楽さんとは八年ぶりの共演で、是非もう一度一緒にお仕事してみたいとずっと思っていました。お二人がいてくださるなら、難しい役だけれども現場を信頼してチャレンジしてみようという気持ちでお受けしました。――この難しい役にチャレンジするにあたり、どのようにアプローチしたのでしょう。原作を読んでいても、脚本を読んでいても、本性が全く見えない、何を考えているか全く分からないキャラクターだったので、彼女を理解するのがとても難しかったですね。ただ、監督が、目線はここ、顎を引いて、手はここで、このセリフの時に寄って行ってとか、かなり細かく動きの演出をつけてくださったので、動きがあることで真珠の考えていること、気持ちの流れがすごく分かりやすくなった気がします。そうやって撮影しながら、少しずつ積み上げていきました。彼女の言い分に対して共感まではできなくても、ちょっと分かるなという気持ちも生まれて。すべては純粋さから来ていたのかなと思います。だから、彼女の言動のすべてを悪だと言うことはできないと感じるように。本当に素直に人と向き合っていた結果の言動かもしれない、そんなふうには思うから。だから、ただの邪悪な殺人犯という印象は最初から持たなかったですね。――捉えどころのなかった真珠という人物像を、原作や脚本を読み進め、彼女の言動をなぞっていくことで、彼女のピュアな部分を強く感じ取るようになっていったんですね。だから、最初の方でアラタを翻弄するシーンが結構あるんですが、そこに気持ちを持って行くほうが難しかったです。とにかく全編通してお芝居している時は必死で、撮影後は毎日ヘロヘロ。どっと疲れていたんですけど、全部終わって思い返すとすごく楽しかったです。原作へのリスペクトを感じる映像づくり――今回の現場で印象に残っていることはありますか?監督はすごく朝早く現場に入られるんですけれど、監督が一人で面会室に入って、一人でセリフを言って、アクリル板を叩いたりして、その日にやるシーンを確認しているんです。それを見てとても信頼できる方だと改めて思いました。監督がすごく考えてやっているというのを肌で感じたので、その思いに応えたいという思いがずっとありました。でも、とにかく演出のレベルがすごく高いんですよ。片眉だけ上げてと言われたりして、『ええ』と思って。一応頑張ってやってみたんですけれども、できなくて。撮影後、監督のところに行って『大丈夫でしたか』って言ったら、『うん、努力は認める』と言われて『すみません』という感じだったんですけれど(笑)。すごく鍛えられました。柳楽さんは上手いんですよね、片眉だけ上げるとか。さすがだなあと思って。――黒島さんも、柳楽さんも表情が、とても豊かで、良い意味ですごく漫画っぽかったですね。原作キャラクターのイメージそのものという感じでした。監督が柳楽さんのことを“顔面芸術”って言っていました。私も堤さんの演出に応えられるよう、必死に取り組みました。――本作ではワンシーンがとても長い場面も多く、お2人のやりとりは本作の見どころですね。一日の撮影が2シーンだけということもありましたね。特に拘置所の面会室とか裁判のシーンとか。堤監督は今回、長いシーンを一連で撮っていらして、裁判のシーンなどは特に、最初から最後までやってみようという感じでした。やはりワンシーンを一連で撮れたのは、わかりやすく現場が進んでいくので有り難かったですね。――裁判のシーンのあの臨場感というのは、皆さんの緊張感が反映されていたんですね。そうですね。それと寄りのシーンがすごく多かったんです。こんなに寄るんだ、こんなにカメラ近かったこと今まであったかなというぐらい(笑)。どこを見たらいいんだろうと。あと、臭いを嗅ぐシーンが多かったのですが、あらためて考えてしまうと意外と難しくて。監督が息遣いを大切にされていたので、別で音だけ録音することもありました。この作品ならではだと思います。――原作への敬意も感じつつ、映像でなければできない表現を見事に使った作品だと感じました。黒島さんから見て、ここは映像作品『夏目アラタの結婚』ならではの面白さだとどんなところで感じましたか。カット割りもそうだし、音楽もそうですね。音楽は昔のものも使われていたし、物語の疾走感や、その時のムードを後押しする、とても素敵な演出で、これも映像ならでは。漫画で、真珠が面会室のガラスを割る、壁と天井がぎゅっと迫ってくるなど、キャラクターの心理状態を表わすシーンがありましたが、それがちゃんと映像で表現されたところも凄いと思いました。原作へのリスペクトをすごく感じる映像づくりだと感じます。観た方が自分なりにジャンルを見つける作品――完成版を観てどう思われましたか?自分で演じたものなのに、自分じゃないような感じもするし、すごく不思議な感覚を覚えました(笑)。確かに自分で演じたんだけれども、当時のことをあまり詳しく思い出せないというか、覚えてないというか。本当に必死すぎたんですね。――グロテスクな表現で人間の闇の部分を描きつつ、その中から人間の強さや美しさ自由さのようなものが描かれていた気がします。狂気的な演技に気持ちを持っていくのが大変だったとのことですが、どのような心構えで演じていらしたのでしょうか。原作にもあるアラタの「寂しいから一緒に生きてほしいってだけなんだ」というセリフが印象に残って。誰かを好きになるのって、すごくシンプルなことでいいのかなという思いが頭の片隅にありました。だから、ただこの人と向き合う、ちゃんと人と人として会話する、そういう部分を意識していました。アラタに向き合う気持ちを常に心のどこかに持っていれば、言葉や態度で彼を翻弄したり、嘘を言ったり、言葉がめちゃくちゃでも、成立すると信じて演じていました。――アラタを翻弄するのも彼と向き合いたいがための、真珠なりの多彩なアプローチであると捉えていらしたということですね。そうですね。でも、全く知らない死刑囚の真珠に、いきなり結婚しようなんて、アラタはよくあの一言が言えたなと思いますね。普通に覚悟がいりますよね。怖いし。獄中結婚するなんてアラタはすごいなと思いました。でも、2人にしかわからないことがいっぱいあるでしょうね。――様々な要素が入り交じった本作はジャンルを特定できない作品という印象があります。黒島さんなら、本作をどのように表現しますか?難しいですよね。私もこの映画を何て表現したらいいのかわからなくて。新ジャンルっていうジャンルです(笑)。サスペンス要素あり、エンタメ要素あり、恋愛要素もある。ある人がサスペンスとホラーとラブストーリーの造語で、“サホストーリー”って言っていて、それは確かに新ジャンルに聞こえるけれど、ただ覚えられない(笑)。観た方それぞれが自分なりにジャンルを見つけていただく、そんな作品だと思います。(text:June Makiguchi/photo:Jumpei Yamada)■関連作品:夏目アラタの結婚 2024年9月6日より全国にて公開(C)乃木坂太郎/小学館(C)2024映画「夏目アラタの結婚」製作委員会
2024年09月05日取材・文:瑞姫撮影:洞澤佐智子編集:松岡紘子/マイナビウーマン編集部※このインタビューは『ラブ トランジット』シーズン2のエピソード1~4のネタバレを含みます。かつて恋人だった5組の元カップルたちが、約1カ月間のホカンスを通して、過去の恋と新たな出会いの間で揺れ動く姿に迫る恋愛リアリティ番組『ラブ トランジット』。シーズン2の情報が解禁されると、配信前からSNS上では注目が集まっていました。今回は『ラブ トランジット』シーズン2に参加している女性メンバーにインタビュー。本編では明かされていない詳しい参加理由やXとの関係、それぞれの恋愛観などに迫ります。■未練はあった?それぞれの参加理由とXとの関係性――『ラブトランジット』シーズン2に参加したきっかけと理由を教えてください。また、ご自身は誘った側、誘われた側どちらで、Xに対して未練はありましたか?私はXに誘ってもらって参加しました。不安もあったんですけど、普段の日常生活から離れることで、恋愛はもちろん、自分自身を見つめ直す機会になるかなと思って挑戦することにしました。私はXと別れた大きな原因があったんですけど、お別れしてからもXの良い部分や2人で過ごした楽しかった思い出が忘れられなくて、次の恋に行こうとしてもどうしても比べてしまっていたんです。それで「このままじゃ良くないな」と思い、自分自身が次のステップに進むためにXを誘わせていただきました。私はXを誘った側なんですけど、一番直近に付き合ってたというのもあるんですが、別れた理由に対しての後悔や罪悪感がXにだけあったので誘わせてもらいました。未練は30%くらいでしたね。私が誘った側なんですけど、別れてから4年経っていたので、復縁よりも新しい恋愛に期待を込めて参加しました。実は、Xとは別の人で、直近で最後に付き合ってた彼との関係に整理がついたタイミングで『ラブ トランジット』シーズン1が配信されていて。「他人の恋愛なのにこんなにも涙するんだ!」と心が動いて、私も参加してみたいと思ってたんですよね。その後、たまたまシーズン2の参加者募集を見かけて、前の恋人と別れてから全然恋愛していなかったこともあり、Xを誘いました。Xに対しては、私の中では人生で一番好きになった人で、1年間片思いして全力で気持ちを伝えて振り向いてもらえたという経緯があったので、誘うってなると彼以外考えられなかったです。私も誘った側なんですけど、Xとは別れた後も職場や生活の環境が近くて離れるに離れられない状況が続いたので、復縁したいというよりは、ちゃんともう一度向き合って次の恋愛に踏み出したいという気持ちで参加を決めました。私は『ラブ トランジット』シーズン1の配信を見ていた時、新しい恋に進もうとしていたのですが、元恋人への参加者それぞれの思いを見て、自分にも似たような感情があるのを感じたんですよね。この気持ちを抱えたまま新しい恋を進めるのもちょっと違う気がして、こういう機会があるなら自分が次に結婚を見据えた恋愛をするためにも、Xと向き合いたいなと思いました。■一目惚れ?フィーリング?それぞれの恋愛観が明らかにーー皆さんの恋愛の傾向を教えてください。私は最初に“なんかちょっと良いかも”っていうセンサーが働いた上で、その人のことを知っていって、だんだん好きになっていく感じですね。一回好きになると“めっちゃ好き”ってなるので、いっぱい愛情をあげたいし、いっぱい愛情をもらいたいっていうタイプなので、終わった後も結構その気持ちが残りがちなんですよね。だからその気持ちが未練なのか、情なのか分からなくて、Xに対して探り探りでした。私は一目惚れするタイプなんですよね。Xのことも一目惚れでした。高校生のころから知り合いではあったんですけど、久しぶりに再会して一目惚れして、そこから1年片思い。私の恋愛は基本的に一目惚れで、自分の好みから入って「この人のこと知りたい、好き!」から、好きバレして……っていう(笑)。好きになったらその人しか見えないですし、ストレートに自分の気持ちを伝えるから自分の気持ちにいつも正直に生きてます。でも、お別れしたら未練は残らなくて基本的には新しい恋愛に進んでいるタイプです。私はフィーリングから入るタイプですね。顔の系統も今まで付き合った人はバラバラで一致している人がいないです。なので、フィーリングが結構大事だなって。思っていることを素直に伝えるタイプなんですけど、デートの約束はできれば相手から誘って欲しいので、誘ってもらえるように誘導します(笑)。私も一目惚れするタイプだし、会った瞬間から、この人は“恋愛か恋愛じゃないか”を瞬時に分けちゃいますね。良いなと思ったら積極的に行くんですけど、他の人がいたら譲っちゃうタイプです。私も結構フィーリングタイプで、今までの恋を振り返ると出会って3カ月以内にお付き合いしているので、逆に一回友達に戻っちゃうとあまり恋愛対象には見れないかもしれないです。「あ、この人かも!」という直感で動くタイプ。■初対面の時の印象やホカンス生活の思い出は?――初めて皆さんで集まった時の印象やその場の空気感を教えてください。女性全員が新しい恋愛を望んで来ていたので、雰囲気は良かったと思います。誰かが復縁を望んできていたらバチバチしていたかもしれないけど、そうじゃなかったのであまりバチバチした感じはなかったです。私はみんなかわいい~って初対面の時に思いました。かわいいって武器なので、恋愛をしていくってなるとシンプルに大丈夫かなって不安は少しあったけど、逆に燃えました!いい意味で(笑)!――ちなみに異性でも同性でも良いんですが、「この人はモテそうだな」と思った人はいますか?私、ゆづきちゃん。なんか入った時にすごくニコニコしてて、キラキラしてたんですよ。第一印象を持っていかれました。男性はみなさん全然タイプが違うなって思いました。でもモテそうなのはスンギ。料理もできるし、優しいし、穏やかだし、かっこいいし。――ホカンス生活の中で印象に残っていることがあれば教えてください。楽しいことで言うと、ホカンスの最初の方で私とゆきこちゃんが誕生日だったので、みんなでパーティの準備をしてくれてたんですよ。でも、ゆづがクラッカーを不意打ちで鳴らしちゃって(笑)。そう、私が暴発させちゃった(笑)。しかも2、3回やってた。どでかいやつ!それめっちゃ覚えてる(笑)。まだ2日目の最初の頃だったんですけど、覚えてますね。やらかしましたね。ボウリングも楽しかったです。ももちゃんのスコアが……。スコアが4だったんですよ(笑)。ガーターにハマりまくったので後半はガーターをつけてもらいました。■配信がスタートした今の気持ちは?――いよいよ配信がスタートしましたが、今のお気持ちはいかがですか?番組の見どころも教えてください。前作のファンだったこともあって、不安もありますが、シーズン1とはまた違ったそれぞれの恋愛や向き合い方をして、最後の結末を迎えていると思います。今回は復縁よりも新しい恋を求めて参加している人が多かったからこそ、いろんなことが起こっていると思うので、そういった中でみんなが自分自身と向き合って、変わっていく姿を楽しんでもらえたらなと思います。普段見せない自分や弱い部分みたいな、自分の感情に正直になって感情が動くってところもしっかり映っていると思うので、そういうところも見てもらってより恋の行方を応援してもらえたらいいなって思います。私が心配してるのは、自分の表情の怖さ。前半は緊張していて顔がこわばっているので冷たく見えると思うんですけど、誤解ですよ~って言いたい(笑)。見どころはホカンスを通してみんなが変わっていったことですね。特に自分の気持ちを素直に伝えて行動する女性陣に芯の強さを感じたので、大人の女性としての魅力だなと思います。私の職業の料理研究家は自分ではなく料理が前に出る仕事なので、今回は自分のプライベートや恋愛、感情的になってるところを世の中に見せてしまうのは恥ずかしいし、大丈夫かな?っていう不安は今もずっとあります。ただ、参加者全員がXにだけ見せる表情があるので、そういうところとかにも注目して見てもらえるとおもしろいと思います。皆さんに見てもらえるという楽しみな気持ちはありつつ、恋愛はもちろん、自分の価値観や人間性に改めて向き合って葛藤している姿を見られるのは少し不安です。でも、逆に言うと私は表に出る仕事はしているけれど、自分自身の弱いところや悩みは見せたことがなかったので、そういうところも知ってもらえたらいいなと思います。――これからの展開が楽しみです。皆さん、ありがとうございました!『ラブ トランジット』シーズン2概要作品ページ:配信開始日:2024年8月22日(木)20時より独占配信中※配信内容・スケジュールは予告なく変更になる場合がございます。スタジオ MC:川島明(麒麟)、指原莉乃、長谷川忍(シソンヌ)主題歌:eill 「happy ever after」(ポニーキャニオン)話数:全8話8月22日(木)20時第1話-第4話8月29日(木)20時第5話-第6話9月 5日(木)20時第7話-第8話コピーライト: ©2024 Amazon Content Services LLC or its Affiliates.
2024年08月29日私たち「平成女子」には懐かし&エモの象徴であるサンエックスのキャラクターたち。前編では広報「コロニャ」との名刺交換に始まり、サンエックスの成り立ちやキャラクターを「育てる」というサンエックスの考え方について伺いました。後編では今ひそかに話題の映像作品のことや、さらなるサンエックスキャラクターの秘密について、引き続き私・マイナビウーマン読者パートナーのりんがインタビューしていきます!◇前編の記事はこちらから覚えてる?アフロ犬、こげぱん、にゃんにゃんにゃんこ……平成女子にはエモすぎるキャラクター【突撃!サンエックスショールーム前編】■全世界・全世代で話題!サンエックスの映像作品に迫るりん:最近はNetflixにて「リラックマ」のコマ撮りアニメが配信されたり「すみっコぐらし」の映画作品が現在までに3本も公開されるなど、サンエックス全体で映像作品にも力を入れている印象があります。和田:はい、私たちも想像以上の反響がありました。特に『リラックマとカオルさん』についてはNetflixで全世界への配信。もともと「リラックマ」は海外人気もあったのですが、それに輪をかけるようにより世界中からの人気が上がっていっているように思いますね。去年、「リラックマ」の20周年を記念し、アメリカ6州をまわるグッズツアーを行ったのですが、そこにも早朝から長蛇の列を作っていただくなど、確かな手ごたえがありました。りん:対して国内では「映画 すみっコぐらし」が空前の大ヒットと……!和田:ありがたいですね。「すみっコぐらし」は発売当初は小さな子ども中心に人気を伸ばしており、展覧会なども何度か開催していたキャラクターではありました。ただ、「子どもは好きだけど、親はよく知らない」というようなご家庭も多かったんです。それが映画をお子さまと一緒に見ていただいて、予想を裏切る切ない展開に「大人のほうが泣いてしまいました」という声も多くいただき……。2023年には3作目の映画を公開し、年齢・性別を問わず愛されるキャラクターになったのだなと思います。りん:先ほど「海外展開」のようなワードも出てきましたが、今後もサンエックスキャラクターたちの海外展開はありそうですか?和田:2年前に独立部署として海外事業部を立ち上げ、 社内としても本腰を入れているところです!最近ではシンガポールのチャンギ空港と「リラックマ」のコラボなど、海外企業とのコラボレーションも。今後もっと展開の余地があると思います!■実は……「ターゲット、決めてないんです!」。サンエックスキャラクターが愛される秘密りん:これほどまでにサンエックスのキャラクターが世間に浸透しているのを見ると、キャラクターを制作するときのターゲット決めなどがしっかりされているのかなと思いました。そのあたりの裏話も伺えますか……?富田:実は……サンエックスのキャラクターって、あんまり最初からターゲットを絞ってリリースしてないんです。いや、あんまりというか、ほぼやっていないかも……。りん:ええっ!?どういうことですか……!?富田:キャラクターたちは、社内のデザイナーによって生み出されますが、その時々の「自分のそばにこんなキャラクターがいてほしい!」を自由に提案してくれています。トレンドがこうだから、こんな設定を付けて……といった戦略的な企画はあまりしておらず、私たちもリリースと共に「こういう層に刺さったんだ!」と気づかされることもあるんですよ!りん:てっきり緻密な裏取りや下調べをもとに作られているのかなと思っていました……!和田:サンエックスのキャラクターたちって、ちょっと無表情なコが多いんです。目にハイライトが入っているコが少なかったり、口が一文字なコがいたり……。これは一例ですが、疲れて帰ってきた自分の部屋に、元気いっぱいのキャラクターのぬいぐるみではなく、ちょっと落ち着いた表情のぬいぐるみがあったほうが、なんとなく落ち着ける気がしませんか?りん:たしかに……! 「リラックマ」や「すみっコぐらし」なども、無表情のキャラクターが多いですよね。和田:私たちサンエックスのパーパスに「ずっといっしょに」という言葉があります。元気があるときもないときも、キャラクターがずっと一緒に居てくれ、寄り添ってくれるようなキャラクターが、サンエックスには多いのかもしれませんね(笑)。そしてそういったキャラクターに、人気が集まっているのだと思います。りん:「ずっといっしょに」がまさに体現された「サンエックスらしさ」をうかがえた気がします!■8月以降も新作グッズが続々と登場予定。注目のコは……りん:最後に、大人の女性ファンに向けておすすめ新情報を教えてください!和田:はい!やはり、注目ニュースとしてまずは「すみっコぐらし」の新キャラクター「えびてんのしっぽ」をご紹介させてください。このコは7月に登場しまして、「天使なえびてんアイドル」というテーマの名前にもあるように、たべもののアイドルになるために日々がんばっているコなんです。りん:食べてもらうためにアイドルを目指しているところが斬新ですね(笑)。ピンクを基調としたグッズがかわいいです!和田:情報解禁後、SNSでかなりの反響がありまして、今後も人気の高まりが予想されるキャラクターです。富田:また、ぜひ大人の女性におすすめしたい新グッズが、リラックマ『プチコレクション』。「もしも、リラックマたちがあなたの近くに暮らしていたら?」という発想から生まれた、リラックマが一緒にいる、なにげない、でも、かけがえのない毎日を描いた新シリーズです。フロッキー素材のプチマスコットはお部屋にもなじみますし、会社のデスクやPC周りなどに置いてもかわいいかと思います。りん:わぁ~!かわいい!ポーズといい、サイズ感といい、思わず集めたくなるかわいさです。大人になってからキャラクターグッズは少し離れてしまっていたのですが、実は大人でも楽しめるグッズが多いんですね。改めて魅力に気づけた気がします!今日はありがとうございました!■平成女子のそばにも、「ずっといっしょに」数多くの人気キャラクターを展開しているサンエックス。今回、映画やSNSでの活躍や、ぬい撮り、大人向けデザインの商品展開など、最新の楽しみ方を教えてもらって、またサンエックスの個性豊かなキャラクターたちに夢中になりそうです。私にとっては「みかんぼうや」が特に思い出深いサンエックスのキャラクターですが、振り返ってみると私たち平成女子は、サンエックスのキャラクターたちと一緒に大人になってきていたような気がします。それこそ、「ずっといっしょに」、大人になってくれていたのかもしれませんね。あなたのそばに「ずっといっしょに」いてくれたキャラクターは、何でしたか?ぜひマイナビウーマン編集部にも教えてくださいね!(取材:りん/マイナビウーマン読者パートナー、文:山口真央、撮影:三浦晃一、編集:錦織絵梨奈/マイナビウーマン編集部、取材協力:サンエックス)©2024 SAN-X CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.
2024年08月28日私たちが小学生の頃、文房具屋さんは夢のおもちゃばこのような場所のように思えていた人は、決して少なくないはず。えんぴつやえんぴつキャップ、落とすと大きな音がするカンのふで箱、友だちとの手紙用に買った小さなメモ帳……。そんななかで、ついつい目を惹かれるのがさまざまなキャラクターたち。とくに「サンエックス」のキャラクターは、知らず知らずのうちに手に取っていたという平成女子も多いのでは? 私ももちろんそのひとりで、友人からもらった「みかんぼうや」のぬいぐるみが忘れられず、いろんなグッズを買っていました。今日はそんな平成女子にはエモくてたまらないサンエックスに、マイナビウーマン読者パートナーである私・りんが訪問してきました!■お名刺交換は……まさかのキャラクター!コロニャがお出迎えサンエックス本社がある東京・神田。今日は社内にあるショールームを見せていただけるとのことで、ワクワクしながら向かいました。さっそく広報さんがお出迎えしてくださったのですが……「お名刺は、良かったら広報のコと交換していただけませんか?」と一言。えっ、もしかして……!なんと、サンエックスの広報さんには「ころころコロニャ」の“コロニャ”というキャラクターが!コロニャはもともと、サンエックスネットショップのバイトねことして働いていたそう。「ねこの手も借りたい!」という広報室の要求のもと、採用面接を実施。「うちで働く気ある??」と聞いたところ「ニャー」と答えたことで、2023年7月よりサンエックスの広報として働いています。人見知りのコロニャ。この日も「コロネがあったらはいりニャい……」ともじもじしていましたが、無事に私たちと名刺交換をしてくれました。■サンエックスって、実は90年の歴史があるんです!りん:……というわけで、コロニャさんは退場されていきましたね……(笑)。ここからは広報室の和田さん・富田さんにお話を伺っていきます。よろしくお願いいたします!和田・富田(以下敬称略):よろしくお願いいたします!りん:さっそくですが、私たち平成女子にとって「エモ」を感じるサンエックスのキャラクターたち。サンエックスは昔からキャラクタービジネスが盛んな会社だったのでしょうか?和田:今となっては「サンエックス=キャラクター」と思ってくださっている方がほとんどですが、実は最初、便せんや封筒などを販売・製造する個人商店からスタートしているんです。1932年の創業、2024年で創業92年になりました。りん:えっ、創業90年越え……!?和田:はい(笑)。よくこのお話をすると驚いてくださいます。それこそ最初の45年ほどはずっと紙製品を中心とする文具の製造がメインでした。創業45年ほどがたった1979年、初めてのオリジナルキャラクター「ロンピッシュクラウン」を生み出し、それ以降今に至るまで1000を超えるキャラクターを世に送り出しています。■ターニングポイントは「たれぱんだ」! その後「キャラを育てる会社」に富田:ところで、りんさんにとって印象深いサンエックスのキャラクターはいらっしゃいますか?りん:私はずっと「みかんぼうや」が好きでした!それ以外にも「たれぱんだ」や「アフロ犬」など……小学生の頃はサンエックスの文房具が身の回りにたくさんあったなと思います。富田:「小さい頃から身近にあった」とおっしゃっていただけるのはとてもうれしいです!特に今おっしゃっていただいた「たれぱんだ」は、弊社にとってもターニングポイントになったキャラクターでもありました。富田:「たれぱんだ」は1998年7月に発売されたキャラクターですが、ちょうどこの頃は、バブル崩壊後の時期。社会が不景気に苦しむなかで、「たれぱんだ」のタッチは女性や子どもだけでなく、男性にも人気が出たんです。今ではサンエックスの商品軸ともなっているぬいぐるみも、実は「たれぱんだ」が最初の製品化だったんですよ。りん:そうだったんですね!たしかに「たれぱんだ」のゆる~い感じは、老若男女問わず人気が出そうな気がします。富田:これまで「とにかくキャラを次々と生み出していこう!」という考えでいた弊社は、1カ月に30キャラクターほどを世に送り出していた期間もありました。それが、この「たれぱんだ」の人気を受け、「キャラを長く大切に育てていこう!」という考え方にシフトし始めたんです。現在は1年に1~2キャラクターほどがデビューしているんですよ。りん:「たれぱんだ」の5年後には「リラックマ」が登場。それこそ「大切に育てる」の結果が今に現れているのかなと思わされました。和田:そうですね、「リラックマ」をはじめとしたその後のサンエックスキャラクターは、しっかりとバックストーリーを作り込み、世に送り出していることも挙げられます。特に「リラックマ」はぬいぐるみが大ヒットし、現在のサンエックスの2軸「ぬいぐるみと文房具」が確立されたキャラクターでもありました。りん:とはいえ、「リラックマ」も登場から20年。長く多くの人から愛されるには、どんな工夫があるのでしょうか?和田:「リラックマ」に限った話ではないのですが、やはり多くの企業さんとコラボしていただいたり、アニメの配信などによる、認知度の高さは大きな要因だと思います。和田:その他にも、トレンドに合ったグッズを作り続けていることはサンエックスの強み。最近はくすみカラーなどがトレンドなので、そういったカラーをふんだんに使ったグッズを展開しています。お子さんだけでなく、「オフィスで使いやすい!」とOLさんにも人気なんですよ。■長く愛されるサンエックスキャラたちの秘密は、後編にも!たくさんのぬいぐるみに囲まれて、トキメキと癒しが止まらない、すてきなショールームでした!お話を聞いていると、それぞれのキャラクターとの懐かしい思い出が蘇り、童心に返って楽しい時間を過ごすことができました。こんなにも多くのキャラクターを世に送り出し続けている会社の始まりが、もともとは個人商店だったなんて驚き……!さらに、創業90年越えの老舗企業というところも驚きポイントでした!また、「たれぱんだ」のターニングポイントから始まった「キャラクターを長く大切に育てる方針」は、サンエックスキャラクターたちに向けた社員さんたちの愛を感じました。後編では、近年「大人も泣ける!」と話題になったサンエックスキャラクターの映像作品や、サンエックスキャラクターの秘密までさらに深く掘り下げていきます!◇後編の記事はこちらから気づけばいつも一緒にいた。アラサー女子の心にサンエックスのキャラが響く理由【突撃!サンエックスショールーム後編】(取材:りん/マイナビウーマン読者パートナー、文:山口真央、撮影:三浦晃一、編集:錦織絵梨奈/マイナビウーマン編集部、取材協力:サンエックス)©2024 SAN-X CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.
2024年08月27日「禁止」と言われると、さして興味のなかったものでも気になってしまい、かえって欲求が高まってしまう。そんな人間の性、いわゆるカリギュラ効果をそそるような、新たなNetflixシリーズ「恋愛バトルロワイヤル」が8月29日(木)より世界独占配信される。ドラマの舞台は“男女交際禁止”の校則が制定された超エリート高校。性交渉をした生徒は、校則違反で退学処分という厳しい内容に緊張が走る校内。生徒同士が見張り合う中、嫉妬・羞恥・背徳・憎悪が渦巻く前代未聞のバトルロワイヤルが始まるのだ。主人公の高校生・有沢唯千花を演じたのは大河ドラマ「光る君へ」の藤原彰子役や、主演映画『不死身ラヴァーズ』に出演するなど、活躍目覚ましい見上愛。そんな見上さん演じる唯千花が惹かれていく真木陵悟役となったのは、主演映画『恋わずらいのエリー』、ドラマ「くるり~誰が私と恋をした?~」など、こちらも数々の話題作に出演する宮世琉弥。勢いに乗る二人の若手俳優に、センセーショナルな新時代の学園ドラマ出演への思い、彼らの「絶対これは負けない」というバトル事情まで聞いた。2人の役が「ぴったり」ハマった作品――「恋愛バトルロワイヤル」は学園内の恋愛模様、友達との関係など、ハラハラやキュン要素の混じった新しい感覚のドラマです。完成作を観て、いかがでしたか?見上:自分の出ていないシーンもたくさんあったので、脚本を読んでいるだけでは想像できていなかった皆さんのキャラクター作りやお芝居にすごく心を動かされました。このドラマでは、登場人物が個性豊かに、それぞれが大事にしているものがあることまで描かれているので、そこも見どころの一つだと思いました。中でも印象的だったのは、真木くんとお母さんのシーン。撮影では見ていないところだったので、「ああ、お母さんといるときの真木くんってこういう感じだったんだなあ」と感慨深かったです。宮世:僕、実はすでに3回くらい見たんですよ。見上:ええ、すごい!私はまだ1.5回くらい(笑)。全部見ると8時間あるから、すごいね!――宮世さんは、毎回違う気持ちで観ていたんですか?宮世:1回目はそのときの撮影のシーンの思い出も蘇ってきながらの鑑賞でした。「ああ、こういうシーンもあったな。ここ行ったな~、ここ大変だったな」とか。2回目は作品として踏まえた上で観ました。3回目は作品のメッセージをすごく感じ取りました。今の世の中に対してのメッセージが、強く含まれているなと僕は思っていて。色々とリアルな要素も含まれているので、作品が世に出たときに皆さんがどういう感想や意見を持ったり、コメントをしていただけるのかなって、すごく楽しみになりました。――見上さんは有沢唯千花を、宮世さんは真木陵悟を演じましたが、役作りで大事にされたことは何でしたか?見上:普段から脚本を読むことを大事にしています。今回も、唯千花の目的や障害について、書き出したりもしました。あと今回は撮影期間が長くて、全部で7か月くらいあったんです。1~8話までバラバラにシーンを撮っていくので、前後のシーンを必ず読んでから撮影に入るようにしていました。宮世:シーンに入るごとに、僕も「このシーンの感情はどれくらいで」と常に意識していました。僕が演じた真木は、自分の弱みとずっと葛藤していたけど、ほかの人に弱みを見せることを最初はしない人間だったのが、唯千花と出会って変化があって、(弱みが)出てしまうんです。その変わっていく感じも、すごく意識していました。――お二人は共演シーンも多かったですよね。印象は役を通して過ごすうちに変わりましたか?見上:私の第一印象は、「真木くんにこんなぴったりな人いるんだ!」って。宮世:(独り言で)褒め言葉なのか?褒め言葉か!褒め言葉ですよね…(笑)?見上:もちろん褒め言葉です!だから聞いて(笑)。宮世くんは、おそらく顔の印象で何となくイケイケな感じに捉えられることも多いんじゃないかと思うんです。真木くんは、いたずらとかおちゃらけたことも好きで、でもお母さんといるときはすごく優しくて。宮世くんもすごく家族想いで、撮影中によくご家族の話を聞いていて、めちゃめちゃ家族思いなんだなと。そういう部分もこの役にぴったりだと思いました。――宮世さん、すごく良いこといっぱいでしたね。見上:だから話聞いてって言ったじゃん~(笑)。宮世:こんな褒めてもらったことないです(笑)、うれしい!だから言うわけじゃないんですけど…僕こそ見上さんは唯千花にぴったりだと思っていました。最初に脚本を読んだ印象は、唯千花がすごい真っ直ぐな子だと思ったんです。立ち止まって悩んでしまうときがあっても、すぐに決意して進んでいくじゃないですか。その役の印象のまま見上さんに会ったら、「あ、本当に唯千花だ」と。見上さんの性格も自分のやりたいことがはっきりしていますし、「自分はこうだから」というのがちゃんとある方なんです。それでいて、ちゃんと周りの人たちのことも見られているし、すごいなと思っています。本当に見上さんにしかできない役だなと思いました。――ぴったり同士がバチッとハマった作品なんですね。共通して「家族思い」なところは役の上でもご自身でも共通するところなんですね。宮世:そうですね!僕も見上さんからご家族の話をすごく聞いていたので、「見上さんも家族のこと大好きなんだな~、仲いいんだな~」とすごく思っていました。見上:(宮世さんに)ご家族に旅行をプレゼントしていたよね?4つも年下の方が家族孝行をしていてびっくりしましたし本当に素晴らしいなと思います!人生を変えるための行動、ターニングポイントは?――人生を変えるため、唯千花はエリート校に入学を決め生活を送ります。人生を変えるために起こした行動、これまでのターニングポイントなどはありましたか?見上:中3くらいのときに、(入学した)その大学に入ることを決めました。AO入試のためにハンドボール部を辞めて演劇部に入り直したり、当時、東京都がやっていた劇評があったので、応募して優秀賞をいただいたりもしました。そのときは努力とも思っていなくて、好きなことをやっているだけだと思っていたんですけど、今思うと人生を変えるために起こした行動だったのかもしれないです。――ストイックに、そして目標をしっかり達成することは、役ともちょっとかぶっていますよね。見上:確かに、そうですね!――ちなみに、今お二人が憧れている人はいますか?見上:寺山修司さんです。人間が元々多面的なものだから、いろいろやることをわざとマルチと呼ぶ必要もない、多面的であることが自然なことである、ということを言っていたんです。それで私も、「ああ、いろいろなことしていいんだ」と視界が開けました。もともと演出家になりたくて大学に入ったから、「役者もやりませんか?」という声がかかったときに、その言葉や寺山修司さんの生き様を知らなかったら、俳優はやっていなかったかもしれない。けど、その言葉に出会っていたから…。――縛られなくなったといいますか。見上:そうです。表現の一つの方法として役者もやってみようかなと思えたので。宮世:僕はお父さんです。ずっとお父さんに憧れていて。僕にはない男気があるので、自分にはないところを持っていることに、やっぱり憧れてしまうんですよね。お父さんが家族を愛している姿も見ていましたし、そう育てられたので当たり前と思ってしまいがちなんですけど、いろいろお父さんのすごさを感じています。自分が成長していくごとに、お父さんのやってきたことのすごさを年々実感するんです。――お父さまは今の宮世さんのご活躍について、何かコメントされたりしますか?宮世:僕の作品が解禁されてお母さんやお父さんに言うと、すでにチェック済み、みたいな感じです(笑)。見上:おお(笑)。でもわかるなあ、うれしいですよね。うちの家族も全部チェックしてくれて、応援してくれています。それに中・高・大、それぞれの同級生も「映画観たよ」、「これも観たよ」と連絡をくれるから、めちゃめちゃうれしいです!絶対負けない、負けたくないコト――最後に、タイトルの「バトルロワイヤル」にちなんで、絶対これは負けない、人に負けたくないようなものはありますか?宮世:はい!あります、牡蠣を人生で食べた数!全員:(笑)。宮世:うち(の実家)が宮城なので、おじちゃんたちがでっかい漁業のトラックでいっぱい持ってきてくれるんです。見上:えー!宮世:みんなでバーベキューして牡蠣を焼いて食べたりして、たぶん30個くらいは食べられるくらい。本当に牡蠣が大好きなんです。同い年で牡蠣を食べた数は負けられない、負けないと思います。見上さんは?見上:えーっと…どこでもいつでも寝られること。宮世:確かに(笑)!!見上:撮影中も、たぶんたくさん寝ている姿を見られていると思いますが…(笑)。宮世:作品内で「見上愛の寝顔カレンダー」が作られるぐらいだったもんね!見上:そう!お誕生日にもらったんですよ!学生時代も「眠り姫」とあだ名をつけられていたくらい、寝ていたんです。この現場でも「眠り姫(日め)くりカレンダー、31枚」をいただきました。――現場の雰囲気のよさ、見上さんの愛され具合までも伝わるようですね。見上:本当にありがたいです。飾ってあります。いろいろな方が撮ってくださって、まとめてくださったんです。隠し撮りの寝ている姿が、たくさん(笑)。――現場で寝られるということは、パッと起きてすぐに役に入れるということですよね。俳優業だと誰もがうらやむ特技では?見上:1日のうちに撮るシーンもバラバラで、泣くシーンが続いたり、感情的なシーンが続くこともあったので、そういうときにこそ寝ると切り替えられるんです。呼ばれたら一瞬で起きられるので、寝起きもいいみたいです。宮世:今この話を聞いていたら、自分ってあまり寝れていないほうなのかなって思っちゃいました(笑)。【見上愛】ヘアメイク:豊田健治スタイリスト:下山さつき【宮世琉弥】ヘアメイク:礒野亜加梨スタイリスト:鴇田晋哉(text:赤山恭子/photo:You Ishii)■関連作品:【Netflix映画】ブライト 2017年12月22日よりNetflixにて全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】マッドバウンド 哀しき友情 2017年11月17日よりNetflixにて全世界同時配信【Netflixオリジナルドラマ】オルタード・カーボン 2018年2月2日より全世界同時オンラインストリーミング2月2日(金)より全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】レボリューション -米国議会に挑んだ女性たち-
2024年08月26日取材・文:渡邊玲子撮影:洞澤佐智子編集:杉田穂南/マイナビウーマン編集部現在公開中の映画『お母さんが一緒』で、江口のりこさん、古川琴音さんと三姉妹を演じている内田慈さん。実は、内田さん自身も「3つ違いの三姉妹」という共通点がある。「慈」と書いて「ちか」と読む。芸名なのかと思いきや実は本名で、「厳格な教育指導をする父がつけてくれたこの名前から解放されたい」との思いから、なんと芸名を「内田地下」にしようと考えていた時期もあったのだそう(周りに大反対され、ギリギリのところで思いとどまったとか……)。■家を飛び出し始めた“家賃2万5000円の4畳半風呂無しアパート”生活「私は三姉妹の末っ子で。三姉妹みんな漢字一文字で、音(読み)は二文字なんですよ。末っ子ゆえ、特にあれこれ試行錯誤の上でつけてくれたようなんですが、文字通り『慈悲深い』とか『慈しむ』といった意味合いが込められていて。ことあるごとに父から『名前負けしないようにね』って言われていたので、私の中ではプレッシャーでしかなくて……。自分のことが嫌いだったので、演劇を始める時に名前を変えたいと思っていたんです」そう話す内田さんは、舞台を始め、数々の映画やドラマで活躍されていて、自分の好きな道を邁進しているように映る。でもじっくり話を伺ってみると、抑圧された環境から家出同然で抜け出し、20代半ばごろまでは、「阿佐ヶ谷の家賃2万5000円の4畳半風呂無しアパートを拠点に、バイトで食いつなぎながら小劇場の舞台に立つ日々を送っていた」というから驚かされる。「父は塾講師をしていたこともあって、教育に関してはとにかく厳格だったんです。だから私は何をやるにしても『どうせダメって言われるんだろうな』って、端から諦めがちでした。しかも、『ここは空気を読んでこうしとくか』みたいに、三女だからバランスを見てしまうところもあって。常に自分の感情を押し殺して生きている感覚がありました。でも、学生時代に演劇と出会って、初めて、ありのままの自分を認めてもらえた気がしたんです。『本当はもっとめちゃくちゃやってもいいんだよ』『別に変でもいいんだよ』って」阿佐ヶ谷時代は、まさしく「若い頃の苦労は買ってでもしろ」を地で行くような感覚で、「『いつかインタビューのネタにできるかも……!?』というくらい前向きに過ごしていた」という内田さんだが、「とはいえさすがにキツいと思う日もありました(笑)」と振り返る。「風呂無しどころか、洗濯機すら持ってなかったので(笑)。真冬に水しか出ないアパートのシンクで頭を洗ったり、溜め込んだ洗濯物を抱えて近所のコインランドリーまで何度も往復したりするのは、実際にやってみると『こんなにシンドイものなんだ!』って痛感させられたのも事実(苦笑)。ですが、『他の人があまり経験したことがないことを、いま私はやっているんだ!』という風に思えた、という意味では、どこか、自己肯定感のアップにもつながっていたというか。自分自身の新たな一面の発見になっていた気もします」■なかなか思うようにいかないフリー時代19歳で芝居を始めた当時は、役者をやるなら劇団や事務所に所属するのが一般的であることさえ知らず、チラシに印刷されていたオーディションの告知を見ては、芝居のジャンルや公演規模を問わず興味の赴くままに受け、フリーで活動していたという。芝居はあくまで自分が好きだからやっていることであり、「仕事と思ってなかったからこそ頑張れた」のだとか。25歳ごろから舞台だけでなく映像の仕事も始めたことで、自身でスケジュール管理をするのが難しくなり、事務所に所属。以降も、活動基盤を舞台に置きつつ、守備範囲も広げていった。だが、仕事環境にも慣れ、大抵のことは経験値で対応できるようになった世のアラサー女性が直面するのと同様、内田さんにも少しずつ心境の変化が生じ始めたという。「ちょうど30代半ばの頃に、『大きな冒険をするなら、今が最後のチャンスなのかもしれない』って、直感的に思ったんです。自分としてはまったく手を抜いているつもりはなくても、芝居を始めた時の衝動や情熱みたいなものが、だんだん持てなくなってきて……。どこか、こなしている感覚になっていたのかもしれません。他にもいろんなことが重なり、そのタイミングで長年所属していた事務所から離れる決断をし、マネージャーと2人体制での新たなスタートを切ったんです」だがそれからほどなくしてコロナ禍に突入。急に先行きが見えなくなったこともあり、「お互いもう一度見つめ直そう」と、マネージャーとそれぞれ別の道を進むことを決意。2年近く完全フリーランスとして活動していたものの、またしてもスケジュール管理の壁にぶつかって不安に感じていた時に、舞台『ガラスの仮面』で共演して以来、親交のあった貫地谷しほりさんから現事務所を紹介され、再び事務所に所属することにしたのだそう。■めんどくさい自分にとって芝居は「必要不可欠な心のリハビリ」慣れ親しんだ場所から離れ、予期せぬコロナ禍で完全フリーの大変さも身を持って知ったからこそ、自分にとってベストと思える環境と巡り合えた内田さんが、目指す未来とは?「4月クールのドラマ『Re:リベンジ-欲望の果てに-』で演じた岡田先生のように、キビキビ行動する役を振っていただくことも多いのですが、こう見えて私は、とてものんびりした人間なんですよ。役者の仕事の醍醐味って、自分が演じる役の人生を通して、分かり合えない他者とどう向き合い、いかに生きていくべきか……といった哲学的なテーマに、じっくり思いを巡らせることができることにあると私は思ってて。ゆっくりじっくりひとつのことに向き合える点が性に合っているなと思います」「年齢や経験を重ねるにつれ、『こういう時はこう対処すればラクなんだな』とか『こうすれば周りに迷惑をかけないんだな』ってだんだん分かるようになってきた部分もありますが、残念ながら私自身はまだまだめんどくさい自分のことを十分には飼い慣らせていません。きっと私は一生かけて自分自身となんとか折り合いをつけて生きていくんだと思います。役を演じる上でそれが活かせるのも、この仕事ならではですよね」1対1で真正面から向き合うインタビューというのは、どこかカウンセリングに近い部分もあって、普段自分では気づいていなかった“本当の私”に、ふとした瞬間向き合うことになったりもする。実際にこの日も、「いま、取材を受けながら自分でも初めて気づいたんですけど……」とちょっぴり戸惑いながら、内田さんは複雑な胸の内を明かしてくれた。「育った家庭環境によって抑圧されていなければ、きっとここまで自分のことをめんどくさいとは思わずに済んだかもしれないですが(苦笑)、もしもあの頃の私が自分のことをそれほど嫌いじゃなくて、もっと自分に自信があったとしたら、『芝居をしたい』とか『俳優になろう』なんて、思わなかったような気もするんですよね。だから、ひょっとすると全ての物事は、“表裏一体”とも言えるのかもしれないですね」「不思議なことに、お芝居をしている瞬間だけは自意識から解放されるんですが、舞台挨拶や何かで人前に立つ際は、無駄な自意識が邪魔をしていまだに緊張してしまうんです。それこそ、コロナ禍の緊急事態には『不要不急』という言葉が叫ばれましたけど、お芝居をすることは私にとっては決して不要不急ではなくて。ある意味必要不可欠な心のリハビリのようなもの。その切実さから生まれた表現が結果、観ている方たちにとっても切実に心動かすものであれば良いなと思っています」内田さんが言うように、自分のことを「めんどくさい」と思う瞬間は、日常生活を送っている中で私自身にもある。たとえば、SNSで何かを発信しようにも、「これを書いたらどう思われるだろうか……」と、躊躇してしまうこともたびたびだ。でも、内田さんが「自意識を忘れられる」芝居と出会い、めんどくさい自分と上手く付き合うためのリハビリを続けているように、私たちにも「自分で自分を認めてあげられる瞬間」が訪れると信じたい。そして「自分自身が何かに没頭するだけでなく、自分の推しが出ている作品を観たり聴いたりしている瞬間こそ、自己肯定感が得られているのかもしれない」と思ったりもする。ちなみに、内田さんいわく、「かつて、私が芝居をすることにあれだけ大反対していた両親も、今となっては手放しで応援してくれています。おかげさまで、父との関係も良好です(笑)」とのことなので、ご安心を。人間、何が自身を突き動かす原動力になるかなんて分からない。「表裏一体かもしれない」ことも自覚しながら心のリハビリに勤しみたい。『ありきたりな言葉じゃなくて』青春から遠くも近くもない32歳の藤田拓也は、町中華を営む頑固な父と愛想のいい母と実家暮らし。ワイドショーの構成作家として毎日徹夜でナレーション原稿を書き散らす日々が続いている。そんな時、先輩の売れっ子脚本家の推薦によって、ようやく念願の脚本家デビューが決まった。「脚本家」の肩書を手に入れ浮かれた気持ちでいる拓也の前に現れたのが、鈴木りえだった……。脚本家の青年と、どこにでもいる普通の“彼女”が出会い――。2024年12月20日(金)より全国公開©2024テレビ朝日映像
2024年08月21日取材・文:瑞姫撮影:佐々木康太編集:松岡紘子/マイナビウーマン編集部かつて恋人だった5組の元カップルたちが、約1カ月間のホカンスを通して、過去の恋と新たな出会いの間で揺れ動く姿に迫るAmazon Originalの恋愛リアリティ番組『ラブ トランジット』。シーズン1では誰が誰の“元恋人=X”かを予想する面白さや、嫉妬や未練など様々な感情に苛まれながら、復縁か新たな恋かを選択する様子が大きな話題となりました。今回はシーズン2の配信に先がけ、新たにスタジオMCを務めることになった麒麟の川島明さん、指原莉乃さん、シソンヌ長谷川忍さんの3名にインタビュー。恋愛リアリティ番組好きとして知られる指原さんに、夫婦でも見るという長谷川さん、これまで全く見たことなかったという川島さんまで、様々な角度からシーズン2の魅力と、自身は復縁“アリ派”か“ナシ派”か語っていただきました。■恋リア玄人でも予測不能な展開――指原さんは『バチェラー・ジャパン』のMCも担当されており、恋リア好きとして知られていますが、長谷川さんや川島さんは恋愛リアリティ番組を見たりするのでしょうか。僕は『ラブ トランジット』をシーズン1から見てたので、お話をいただいた時は嬉しかったです。『ラブ トランジット』は他の恋愛リアリティ番組とは少し一線を画しているというか、より大人というか……。結構心の揺れ動きがありますし、良い意味でも悪い意味でも人間の業が見えるので、そこが生々しくて面白いなと思っていたんですけど、今回も見事に楽しませていただきました。――川島さんは恋愛リアリティ番組をご覧になったことはありますか?なかったんです。なので大丈夫かなと思ったんですが、見たことのない、食わず嫌いの方が僕のような年齢には多いのかなと思って、オファーを受けさせていただきました。全くイメージが沸かないまま見始めたのですが、こんな絶叫マシンのようだとは思いませんでしたね。「ここまでリアルを出すんだ!」っていう……。恋リア初心者の川島さんがMCに居るからこそ、初心者の方もすごい入りやすいと思います。一緒に驚ける。恋リアあるあるもない状態で見てるので、初めての人が見ると結構つかまれるものは多いと思います。――なるほど。ちなみに今回のスタジオMCを務められる3人は、お仕事やプライベートでも面識があるかと思うのですが、このメンバーでMCをされることに対してどう感じましたか?家すぎますよね(笑)。楽しかった。良い意味でリラックスできましたね。写真とかも3人で撮るとドロンジョ一味みたいな。他の恋リアではMCには若い俳優さんとかがいたりする中、原点に帰ってバラエティ3人という。番組に出ている人も素をさらけ出しているけど、こっち(MC陣)も結構素をさらけ出してます。素のコメントをめっちゃ使いましたね。大いに素のコメントでしたね。全員。――3人でMCをやったからこそ初めて気づいたお互いの恋愛観などはありましたか?恋愛リアリティ番組をよく見てる2人なので、「ここはこうくっつくんじゃないか」とか「今のは結構地雷ですよ」とか、番組を見ながら色々とおっしゃってたんですけど、ほっっっっとんど外れてる。――今、さすが恋リア玄人!当たってる!って感じで言うのかと思いました(笑)。いやいやいやいやど素人です!!!難しかったんです!今回!!見事に1話から8話まで外しまくりました(笑)■復縁はアリ?ナシ?――『ラブ トランジット』は元恋人とホカンスをしますが、ご自身は恋愛に対して「復縁なんてありえない派」「未練アリアリ派」のどちらですか?実際に復縁をしたことはありますか?私はないですね。別れよって言って3日後に戻ったりするカジュアルな別れからの復縁はあるけど、1年後とかはない。僕もない……と思うんですよね。と言うのも、本当の墜落までいってないというか。鳥人間コンテストでもあるじゃないですか。落ちそうで落ちない……っていうパターン。落ちないぞ落ちないぞって踏ん張るっていうね。なので、ほんまにバーンと墜落して、別れて3年くらい経ってやり直しましょう、という経験はないですね。というのも、僕は別れた後にきれいに連絡先も写真も消してしまうんです。なので、ここに出ているみなさんたちはすごいですね。――ただ、シーズン1では、すでに5組中3組が復縁しています。もし完全に別れても、1カ月間一緒に過ごして、元恋人が他の人のところへ行こうとしたらちょっと気になる……みたいなことはあったりしそうじゃないですか?1対1で生活しても戻らない可能性の方が高いですけど、5対5だと、みんなと一緒に生活した時に相手に対して「こんなにいろんなことに気づくんだ」「こんなに変わったんだ」と価値を感じることもあると思いますね。これだけ復縁してるってことは、良い効果になっているんだなと思います。だから僕も、見ていたら“復縁しちゃうかもな”と思いましたね。私は好きな人が誰か新しい好きな人を追ってる姿を見たら心が動いちゃうタイプなので、もしかしたらまた好きになっちゃうかもしれないですね。■『ラブトランジット』は考察作品――では、最後に、今から楽しみにしている視聴者の方々に、シーズン2の見どころを教えてください。本当に良い意味で、生々しさが魅力だと思います。やっぱりすごくリアルですし、X同士がいることによって、僕らが知り得ないX同士の感情や、僕らが画面から見て取れる感情の動きが、他の恋愛リアリティより多めだと思うんです。なぜなら、新しいことと過去が同時に進行してるので。参加しているみなさんはつらいかもしれないけど、心の揺れ動きがすごく面白いなと思いますね。番組の面白さを知っている方も多いと思うので、また別の観点で言うと、美しい横浜のホテルと、別のすばらしいバカンスのホテルと、自分もしてみたいなと思えるようなデートと、おいしい食べ物が出てくるので、映像的な意味でもすごく楽しめると思います。ぜひ映像の美しさや編集の巧みさにも感動して欲しいです。恋愛リアリティ番組というだけで、「俺は見ないよ」と言ってる人にこそ見てほしい作品ですね。本当に考察もののドラマぐらい面白かったです。頭も使いますし、これ伏線だなって思ったり……。ノートとか用意して1話、1話を整理して相関図を作って、“何回、目が合ったか”とか細かい部分まで見た方がどんどん面白くなっていく。整理してないまま、次に行くのは非常にもったいないですね。――恋愛リアリティ番組はみんなで見て盛り上がるのも面白いですもんね。配信は夏だと思うので、そうめん・ビール・ホワイトボード。あと、みんなの顔パネルを用意して見てほしい。未解決事件の捜査みたいですけど、それくらいしないと無理なんですよ(笑)。恋愛リアリティ番組というより、本当に考察作品ですね。筋書きがないのによく最後までサビでいったなって思います。まじで一回も中だるみしないです。けれど、最後は納得の結末です。――配信がより一層楽しみになりました!ありがとうございました。『ラブ トランジット』シーズン2概要作品ページ:配信開始日:2024年8月22日(木)20時より独占配信開始※配信内容・スケジュールは予告なく変更になる場合がございます。スタジオ MC:川島明(麒麟)、指原莉乃、長谷川忍(シソンヌ)主題歌:eill 「happy ever after」(ポニーキャニオン)話数:全8話8月22日(木)20時第1話-第4話8月29日(木)20時第5話-第6話9月 5日(木)20時第7話-第8話コピーライト: ©2024 Amazon Content Services LLC or its Affiliates.
2024年08月20日舞台をパリに移したセルフリメイク『蛇の道』、第81回ヴェネツィア国際映画祭に正式出品された『Cloud クラウド』(9月27日公開)と、2024年は黒沢清監督イヤー。その内の一本であり、メディア配信プラットフォーム・Roadsteadでの独占販売という新たな形態に挑んだのが『Chime』である。本作は、45分という長さで黒沢が脚本・監督を手掛けたオリジナル作品。料理教室の講師・松岡(吉岡睦雄)の周囲で異変が次々に発生するサイコスリラーであり、黒沢独自の恐怖演出が全編にわたって冴えわたっている。4月に全世界999個限定のオーナーライセンスを販売し、8月からは劇場上映も行っている本作。『Cloud クラウド』のオフィシャルライターを務めるSYOが、黒沢監督の過去作品も絡めつつ、『Chime』の舞台裏と黒沢流・恐怖演出を聞いた。『Chime』 ©Roadstead――自分は『Chime』の配信直後に購入し、PCをテレビにつなぐ形式で観賞しました。黒沢監督は制作時、こうしたユーザーの視聴環境について意識はされましたか?配信という形でのスタートですが大きな映画館で上映されることもないとはいえないので、そのような場合に見劣りしないように、とは意識していました。いまや、スマホで観る方もいれば今おっしゃったようにテレビで観る方もいて、様々な見方が普及していますよね。僕だってそんな形で映画を観ますし、「どういう形でもお好きに観てください」という気持ちで特にこだわりませんでした。ただ、45分という長さは僕にとってほぼ初めてに近いもので、普通の映画の半分くらいだけれどいい加減にやると凄く退屈したものになってしまうし、色々盛り込もうとしてもあっという間に時間がなくなるし、どれが正解かは未だにわかりませんが試行錯誤しながら作ったつもりです。といっても、たかだか45分しかないので適当なところで終わっても観た人は怒らないだろう、と思ってもいました(笑)。これが2時間の映画だったら「結末をちゃんと作れ」とか言われちゃうのでしょうが、突然終わるのは45分ならではの自由だと信じて、作っていきました。――45分に収めるにあたって、脚本執筆や編集段階等で取捨選択は多かったのでしょうか。ある程度はありますが、シークエンスを丸ごとばっさり無くした等はないかなと思います。長すぎるシーンをちょっと短くする程度でしょうか。――となると、45分という初めての挑戦でもある程度は計算通りに進んだのですね。計算通りは計算通りなのですが、観た方がどう思うのかはさっぱりわかりません。内容も内容ですから観て幸せになれるものではないですし、こういうものを面白がってくれればいいなと願うばかりです。「本当にこれでいいのかしら」という想いは、いつまでも付きまとっています。――黒沢監督は本作に「幽霊の怖さ」「自分が人を殺してしまうのではないかという怖さ」「警察に逮捕されるのではないか。法律、秩序が自分にひたひたと近付いてくる怖さ」という“3大怖いもの”を盛り込まれたそうですね。僕はこれまで作ってきたドラマや、通常のホラー映画やサスペンス映画などで「映画の中でハラハラドキドキする/ぎょっとする」パターンはいくつかに絞られると考えています。それらは大体別の映画で扱われるものですが、『Chime』においては1本にまとめてみました。――『回路』ではインターネットが異界に繋がっていて、『Cloud クラウド』ではインターネットが狂気を増長させる装置として描かれています。黒沢監督ご自身は、人間が感じる怖さは時代と共に多様化したとお考えでしょうか。難しいところですね。根本は変わっていないと思いますが、ぱっと見の具体的な表現としては多様化してきた印象です。特に、怖い映画で使われる“音”については下手したら50年以上大きく変わっていないのではないでしょうか。もちろん、全く新しい怖さを追求している映画もあるのかもしれませんが、少なくとも僕はまだ観たことがありません。――しかし『Chime』には多様な怖さが詰め込まれていますよね。個人的にゾクッとしたのは、料理教室でカメラが何かに憑りつかれたかのように激しく動き出す部分です。その先に映るものというよりも、カメラワーク自体に恐怖したのは新鮮な体験でした。こういうものは脚本段階から想定されているのでしょうか。いえ、脚本段階ではそこまで具体的には考えていません。場合によりますが、多くはロケハンの中で決まっていきます。というのも、脚本に「料理教室」と書いたとしても、どんな場所か全くわからないからです。撮影に際して実際の料理教室を使わせていただけることになり、自分の目で見て「ここで撮るんだったらこうしたら面白いかも」という発想が生まれてくる形です。やはり現物を見ないと、文字だけではほとんど何も浮かばないものです。――主人公の妻が不自然なほどに大量の缶をしかも脈絡のないタイミングで捨てているシーンも鮮烈でしたが、あれはどういった発想から生まれたのでしょう。実はあれにほとんど近い人が近所にいるのです。そんなに狂った人ではないのでしょうが、毎週決まった時間にゴミ捨て場に「ガラガラガラ」と周辺にものすごく響くような大きな音を立てて大量に空き缶を捨てていて、「若干ストレス解消もあるのかしら。面白いな」と思い、使わせていただきました。――お知り合いの方に転売屋がいたことから「贖罪」や『Cloud クラウド』の設定に繋がったというお話も以前されていましたが、黒沢さんご自身の経験から引っ張ってきた部分もあるのですね。それを基に大きなドラマを作ることはそうそうありませんが、ちょっとしたアイデアで「これ使えそう」というものは身近なところから拾ってくることもあります。――『Chime』の料理教室で顕著な“ステンレスが持つ怖さ”は、クリント・イーストウッド監督の『ヒア アフター』の影響もあったそうですね。そうですね。実はもともと、料理教室から発想したわけではありません。「若い人たちに教えている」というアイデアを具現化できる場所として、「塾や大学にするか?もっと何か面白いものはないかな」と考えていく中でふと『ヒア アフター』を思い出しました。料理教室は撮りようによってはすごく無機的で不気味だし、刃物が平気で置いてある怖い空間だなと感じ、脚本に反映させていきました。ただ、実際に貸してくれるところは少ないんじゃないか、どこも貸してくれなかったら別の設定に書き直さざるを得ないかなと危惧もしていました。幸い、中野にある料理教室が内容も分かったうえで気軽に貸してくださって、有難かったです。――となると、電車の音や光が急に入ってくるような不気味な演出は撮影地が決まったことで生まれたのですね。そうですね。中野の料理教室を見に行き、実際にやたらと電車が通るので劇中でもそうした設定にしました。最初から狙っていたわけではなく、ああいうことが雑然とした都会の真ん中で起こるのはなかなか良いなと思い、加えた形です。――黒沢監督は以前、恐怖演出の方法論の一つで「タイミングをずらす」というお話をされていましたよね。『Chime』にもそうした要素を随所に感じました。何かが突然バーン!と起こる怖さよりも、「何かが起こりそうな感じがするけれどこれは怖いんだろうか?」と観ている人が判断できないような間(ま)は、上手くやると1番怖いのではないかと考えています。不思議なもので、怖いものがバーン!と起こると、怖いは怖いのですが安心もするように思います。あくまで映画の中の出来事で現実ではないものですから「ああ怖かった」とどこか安心しているんですね。対して「どっちなんだろう」と判断に迷うのが1番嫌な時間帯なので、その感じはなるべく長引かせてあります。ただ――あんまりやりすぎると結果として怖くも何ともならず訳が分からないものになってしまうので、「大丈夫です、怖いです」というものをどこかで入れるようにもしています。非常に感覚的なものですが、その塩梅は毎回難しいと思いながらも楽しんでいます。――『クリーピー 偽りの隣人』公開時に「田舎と都会の境目で事件が起きやすい」と話されていたのが記憶に残っています。松岡(吉岡睦雄)の家も、その系譜にあるのではないかと感じました。『クリーピー 偽りの隣人』では怪しげな人が住んでいる変な住宅地として表現しましたが、今回は脚本に「家を出たら何の変哲もない普通の住宅地が広がっている」と書きました。それをどう表現するか、あんまり交通量が多いと撮影できないし、田舎に行きすぎるととても東京郊外には見えないし――と悩んだ末に、国立の辺りで撮りました。雰囲気はまさにぴったりだったのですが、意外と車が通っていて車止めが大変でした(笑)。実際の場所を撮るときは、イチかバチかだと感じます。こっちは東京郊外の何でもない住宅地のつもりですが、にぎやかだと感じるか田舎と感じるか、これぞ東京と感じるかは観る方に委ねられていて、意図通りに伝わるかはわかりません。しかしそこが映画表現の危なっかしいところであり、面白いところでもあります。僕はアニメーションをやったことがないため滅多なことは言えませんが、アニメで「なんでもない町」を描くとなったら大変だと思います。でも実写だと、案外なんとかなってしまうんです。まだ中野あたりだと、誰が観ても大体同じイメージになりますが、国立辺りは観客次第でどうとでも見えてしまう。そうした雰囲気が、「本当に何でもないところにこんな人がいてこんなことが起こったんです」というこの映画にとってはプラスに働いてくれたようにも感じます。――黒沢監督はこれまでにも映画祭などでご自身の作品をお客さんがご覧になる瞬間を目撃してきたかと思いますが、「どういう反応をするか」は未だに“怖い”ものなのでしょうか。それはもう怖いです。どんな形にせよ喜んでくれたらそれに越したことはありませんが、経験を積んでいくなかで必要以上に考えないようになりました。「訳が分からない」とか「つまらない」と言う人もいっぱいいるでしょうし、様々な方が観てくれている以上、ああだこうだと反応されるのは仕方がないことだとも思っています。発表してしまったからには不可能だとわかってはいますが、「面白いと思ってくれる人だけ観てほしい」という夢はあります。観てみないことには面白いかどうかわかりませんから不可能な夢ではありますが、もしそうなったらとても健全だなとは思います。――ただ同時に、黒沢監督は映画制作において作り手側すらも「わからない」ことを愛していらっしゃるようにも感じます。おっしゃる通りです。映画とは文章などと較べると本質的にわけのわからないメディアであり、わかる方が不思議で仕方ありません。もちろんいくつかのことは苦労してわからせようとしていますし、最低限わかってもらえるのですが、ほとんどのことはわからない。しかしどうやらそれで許されてしまうようなのです。例えば2時間の映画というのは、ある人々が出てきて何やかやを繰り広げて最終的には何かしらの結末を迎える――というものかと思いますが、「この人たちはどこから来たのか」が必ずしも説明されるわけではありません。ちょっと混み入った話かもしれませんが、脚本で「シーン1」「シーン2」となっているものを実際に撮って編集で繋ぐと、時間も場所も別々なのに物語として繋がって見えてしまうんです。もちろんオーバーラップさせたり「3カ月後」とテロップを入れたりして説明する場合もありますが、「シーン1が会社」「シーン2が喫茶店」と場所が違っても会話が続いていたら受け入れられてしまうし、もっと言うと場所が変わったことに気づかない人もいる。脚本上には日時も場所も明確に記されていますが、映画では説明しなければ観客は次の日なのか1週間後なのかもわからない。しかしどうやら、わからなくても別にいいようなんです。こちらが説明のために衣装を替えたりしていても、誰も気づかなかったりしますから。つくづく映画って訳がわからないけれども、多くの場合人はそれでも構わないようで捉えどころがありません。――“わからなさ”でいうと、黒沢監督の作品では一貫して犯罪の動機を「周囲はおろか本人もわからないもの」として描いているように感じます。『CURE』でもそうした言及がありますし、『Chime』も同様に、明確には明かされません。本物の殺人犯に会ったことがないため実際どうなのかはわかりませんが、色々と本を読んだりドキュメンタリーを観たりすると、大変なことをしでかす人に限って「たまたまそこに包丁があった」「魔が差した」といったような理由が案外多く、本人もなぜそうしたのかがよくわかっていない場合が多々見受けられます。物語的にそれじゃあ困るというので「誰それに腹が立っていた」等々のドラマを設けていますが、実際はそんなもののようです。自殺の原因もいまでこそ色々と言われるようになりましたが、明治時代なんかは自殺の原因は「錯乱」でそれ以上の追求はありませんでした。でも皆さん「どうして錯乱したのか」を知りたがるものですし、これは殺人についてもそうです。「ついやってしまった」「なぜかわからないけど錯乱した」では、自分の中で処理できないんでしょうね。「そんなはずがない」という想いから一つの殺人に対してストーリーを創り上げる――警察とか裁判といったシステムにはそのような役割があるのではないかと思います。『Chime』においても、「45分だから許してほしい」と思い切って動機はほぼ描きませんでした。「頭の中でチャイムが鳴った」という「なんだそれは?」な説明だけなのですが、吉岡睦雄さんがその辺りはよくわかっていて「突然凶行に及び、その後は妙に落ち着いている」という状態を巧みに演じて下さいました。――『Cloud クラウド』の吉岡さんも絶妙でしたが、『Chime』においては何かお二人で話されたのでしょうか。いえ、特に何も話しませんでした。向こうも色々と聞きたかったかと思いますが、僕が何も言わないから聞いてこなかったし、聞かれたとしても僕がうまく答えられなかったと思います。ただ、吉岡さんとは以前から何度か組んでいましたし、他の方の作品も観ておりましたので不安はありませんでした。彼は切羽詰まったがけっぷちにいるキャラクターを演じると絶品ですよね。「この人は危ない、瀬戸際にまで行っている」というギリギリな感じを実に上手く出して下さるので、後は何をやっていただいても大丈夫だと思っていました。ご本人は全然そういう方じゃないので、不思議ですよね。――本日は貴重なお話の数々、ありがとうございます。黒沢監督は『蛇の道』『Chime』『Cloud クラウド』で「自分の“好き”を追求させてもらった」とお話しされていましたが、今後の創作欲について、最後に教えて下さい。映画はやっぱり奥が深くて、まだまだ撮れていない・やりたいものが山のようにあります。ここ最近は暴力的な作品が続きましたが、そうではないものもやりたいですね。特に自分は、たった一つのテーマをずっと追い続けるタイプの監督ではありませんから。スティーヴン・スピルバーグは次に何をやるのか全くわかりませんよね。自分もそうで、ただただ映画を作りたいという想いは尽きません。とはいえ、映画は予算がかかるものですから自分がやりたくても「じゃあやろうか」とパッとできるものではありません。プロデューサーなのか原作なのか俳優なのか、いい出会いがあってこそだと思っています。今回の『Chime』もRoadsteadさんが「45分で何をやってもいいです」と言って下さったから「これは滅多にないチャンスだぞ」とやらせていただきました。そうした出会い次第でどんどん可能性が広がっていくはずだ、いつもそんな気持ちでいます。(text:SYO/photo:You Ishii)■関連作品:Chime 2024年8月2日よりStrangerほか全国にて順次公開©Roadstead
2024年08月10日取材・文:瑞姫撮影:大嶋千尋編集:錦織絵梨奈/マイナビウーマン編集部2024年5月に、10年ぶりとなる書籍『ちゃんと自分を好きになる。』を発売した“くみっきー”こと舟山久美子さん。書籍では「ギャルの神様」と慕われ、キラキラとした表舞台に立ち続けていた反面、家族との関係や、友達との関係に悩む、普通の女子高生だった姿もつづられている。“くみっきー”の大ファンで、“くみっきー”が常に表紙を飾っていた『Popteen』を買い続けていた私は、当時のことを知って少し驚きもしたが、その悩みや苦労があったからこそ、今の軽やかに自分らしく生きる舟山さんがいるのだと改めて感じた。決して無理をせず、一つひとつ丁寧に、“ちゃんと自分を好きになる。”ために向き合ってきた過去があるからこそ分かる、本当の自分の幸せ。改めて今回、舟山さんが書籍に込めた想いと、忙しなく生きるアラサー女性が見失いがちな“本当の自分の見つけ方”のヒントを聞いた。■SNSと切り離すことで見えてくる“自分の生き方”10年ぶりとなる書籍の企画は、30代に差し掛かる頃から「こういう本を作りたい」と自ら事務所に志願していたことから実現したという舟山さん。「本当に20代の頃にたくさん悩んできた。仕事や恋愛、家族、対人関係……。“自分がどう生きていくのか”をすごく悩んできたんですけど、それを発信する場所が無かったんですよね」とこぼし、「SNSは日常のライトなことを書く所だと考えていたので、スタイルブックなどではなく、自分の悩んできたことや、その時どう乗り越えてきたかを、書籍として出したかったんです」と、執筆に至った経緯と思いを教えてくれた。書籍では、“自分が分からなくなった人”が、自分に向き合い、本当に好きなものを明確にして、“ちゃんと自分を好きになる。”ためのヒントが、自身の経験から書かれている。例えば、SNSが昔と比べて顕著に発達した昨今では、他人の生き方を見ることによって、無意識に周りと比較し、どんどんと自分が分からなくなることもあるだろう。「未来のことって一番見えづらい。私自身も20代後半で周りと比較して、結果自分が何したいか分からない状態に陥ったんですけど、SNSとの向き合い方として、自分の人生と切り離してみるのは大事かなって。じゃないと、人の情報が入ってくることによって、自分らしさみたいなのが見えてこなくなっちゃうんです。だからあえて遮断する時間が必要なんですよね」舟山さんの言葉にすごくハッとさせられたのは、同年代である自分に思い当たる節があるからだ。20代半ばから30代にかけて、女性は結婚や出産、昇進などでライフスタイルが大きく変わりがちだ。特に不満が無くても、自分が今本当にやりたいことをやっていても、毎日少しずつ自分の中に降り積もっていく世間の声や他人の情報は、“自分もこうじゃないといけないのかな?”と、自分の生き方を少し揺るがせてしまうように思う。「独身でも毎日楽しいけど、結婚した方が良いのかな」という、ライフステージに関することもそうだが、「もう30歳になるし、買うならハイブランドのバッグの方が良いのかな」など、身近な持ち物一つにとってもそうである。隣の芝は青いのではなく、見ているうちに青く見えてきてしまうのだ。そんな話をしていると、舟山さんは同じように頷きながら「でも、自分が買って持つものなら、自分の納得のいくものの方が結局はテンションが上がるし、本当に大切にできるんだなっていうのは、たくさん悩みや失敗があった上で思いましたよ」と自身の経験から話し、本当の自分を見つけるためのアドバイスをくれた。「もったいないお金や時間の使い方になってしまうから、自分の好きなブランドは何なのか、なぜこれが好きなのか、一つひとつ自分の人生に対してなぜそう思うのかの問いみたいなものを、20代から30代の頃にすごく見つめ直しました」思ってる以上に、人って自分のことを知らないんですよ、と語る姿に、思わず「自分はどうだろうか」と考えさせられる。「いくらでも目を背けられるけど、まずは自分に向き合って、なんでこの仕事を選んだのか、5年後何をしたいのか、それを実現するには何をしたら良いのかというのを考える癖づけをするのが大切だと思います」■長所を見つけ、弱さを見せられる大切さがんばりすぎてしまう女性は世の中に多い。舟山さんは「いろいろなことを同時にこなせてしまう女性って多いと思いますが、同時に、そういう人って良くも悪くも“器用貧乏”という悩みに陥ってしまいがちじゃないですか?」と話す。「周りと比較した時に“自分って何にも長けてないな”と思うと、自信が持てなくなって、自己概念が低くなって、どんどん悪循環に陥って自分が人生で何を求めてるのか見えなくなってきてしまいます」たしかに、アラサーにもなると仕事の上で「なんでもできるのが当たり前」になるが、その反面、「じゃあ、自分の強みって何?」と考え込んでしまうことがある。特に、総合職で働いている女性には“あるある”な悩みなのではないだろうか。「他の人から見たら良いと思える自分の長所が何かを知れるようになると、そこが活きてくるようになるし、長所に栄養が与えられるようになってくる。男性って自分のことを良く見せるのが上手い人が多いように思うんですけど、逆に私の周りの女性って自分のことを低く見積もりがちで、すごくもったいないと思うんです。私自身、ずっと男性社会で仕事をしてきてそれを感じたので、誇れる自分でいるというのは大事だと思いますね」自分を見つめ直すことは大切であると、きっと多くの人は分かっている。けれどそれができないのは、現実を知るのが怖いからだ。現実を知れば落ち込むことだってある。知らなければ、そんな気持ちにならずに済むので楽なのだ。現実を見なくていいように目の前のことだけに集中して、誤魔化す。そんな人も、少なくないのではないだろうか。そんな本音をぶつけると、舟山さんはやさしいアドバイスをくれた。「たしかに落ち込むこともあるんですけど、そもそもそれは誰かと比べているからだと思うんです。自分のことをきちんと分かってくれている、気の置けない人たちとの時間をプライベートでは長く持つ。誰かと比較することの無い状態を作って、“比べちゃう自分”をできるだけ遠ざける作業は最初に必要だと思います。落ち込んでしまった時は素直に弱いところを吐き出して、周りから引き上げてもらう。そういうコミュニティを大切にすることも大事です」■悩んだからこそ自分のことが分かった話を聞いていると、本当の自分の見つけ方が上手く、自己理解が深い印象を抱くが、この考えは20代で悩んできたからこそ、少しずつできるようになってきたものだったという。「『Popteen』時代がそうだったんですけど、表紙モデルであることや、売り上げ部数を守るために、家族に対してすごく冷たい態度をとってしまっていた時もあるんです。でも、そこで本当に大切なものを見られなくなる自分よりは、目指すところを少し下げてでも、背伸びしすぎないで自分の今の身の丈に合ったものを選べる自分でいるということが、自分のライフプランを考える上でも、自分の長所を見つける上でも大切だと思います」「ギャルの神様」として雑誌やテレビで生きていた当時を“完璧でいなきゃいけない”と考えていたからこそ「とにかく生きづらかった」と振り返る舟山さん。けれど、その時代があったからこそ、多くの人が経験する悩みに寄り添った言葉と、その現状を無理にではなく徐々に変えていけるように導く方法を書くことができたのだろう。「みんなの期待を壊してしまうかなってこれまで伏せていた気持ちもあるんですけど、私もいろいろ悩んだり、背伸びしてしまっていたことは、赤裸々に出していった方が自分にとってもすごく楽だろうなっていう思いがあったので、自分に向けても書いた一冊なんです。ついつい未来ばかり見てしまいがちだけど、きちんと立ち止まって見返す。立ち止まることは成長を止めることではなく、自分と向き合うために必要な時間なので、そういう時間を持てるような一冊にしたかったんです」■休養がくれた、解決への糸口そんな走り続けていた舟山さんが、休養をとったのは27歳のとき。立ち止まることに不安はあったそうだが、「芸能じゃない仕事をしてみようと思った」と一つのきっかけになったことを明かしてくれた。「そもそもなぜ芸能の仕事だけでいこうとしていたんだろう?ってところから考え始めて、私は『Popteen』を通して、困っている人や悩んでいる人の解決を一緒にすることや、元気づけられることに魅力を感じていたことに気づいたんです。ファンレターで『不登校なのに学校に行けるようになった』とか、『明日手術だけどくみっきーの笑顔見て頑張ろうと思えました』とか、そういう声を聞いた時に、ただの女子高生が誰かの人生に関われるってすごいことだなと思ってやっていた仕事だったので、“芸能の仕事に固執するのをやめよう”と思ったら、すごく気持ちが楽になりました」一生懸命走っているうちに目的が変わってしまっていることは多い。だからこそ、本当にやりたいことはなんなのかを思い出すためには、きっと一度走るのをやめて休息をとり、気持ちをフラットにした状態で考えるのが大事なのだろう。そして、舟山さんのこの経験は、今まで当たり前にやってきたことに対しても“why”を向けることで見えてくるものの大切さを知ることができる。そうやって休養をとり、立ち止まって考えた先に「ものづくりがずっと好きだった」と改めて感じたという舟山さん。22歳から続けていたアパレルブランドでものを通して人とコミュニケーションをとることが楽しかったことを思い出し、最初は深いつながりが持てるものづくりの仕事から少しずつ再開していったという。現在、舟山さんはライフスタイルブランド「Herz(ヘルツ)」を運営している。情報化社会の中ではなかなか気づけない自分のことだからこそ、日常の中に寄り添いながら“気づきを”与えて一緒に支え合えるブランドになれたらと願いを込めたそう。「商品を売るというより、思いに商品をのせているんです。今までは自分の作りたいものを作っていたんですけど、本当に必要だなって思うものにエネルギーと熱量をかけて、届けたい人に届けるのが先だと思って。そこが逆転するのは違うと思うので、丁寧に大切にブランドと会社を育てていきたいという思いがあります」■自分の幸せが分からない人へ最後に改めて、かつての“くみっきー”と同じように、自分の幸せや未来が分からない状況に陥ってしまっている人へのメッセージをお願いしてみた。「悩むことは悪いことじゃないと思うんです。悩むって成長しようとしてるからこそだと思うし。ずっと完璧じゃなくていいし、ダメな自分も含めて人間らしさになっていく。自信を持ってほしいし、自分を卑下しないでほしいです。みんな、すごくすてき」と舟山さんは優しく笑い、「私は自分の幸せや未来が分からない状況になった時は、自分と、本当に大切にずっと生きていきたい人が笑顔なのかどうか考えます」と悩んだ時のアドバイスを送ってくれた。歳を重ねると、自分のライフプランについて悩むことがどうしても増える。けれど、その悩みこそ“成長したい”という確かな未来への希望なのだ。自問自答して悩んでいると「病んだって仕方ないんだから」という人もいるが、そんなことはない。考えることは、自分を見つめ直すことだ。何が好きなのか、本当はどうしたいのか、どういう時に一番わくわくするのか……。そうやって一つひとつ考えることで、忙しなく走ってきた中で絡まっていた糸が解けて、硬くなった感情も綻んでゆく。答えが出ないからこそ、悩むのはつらい。一人でがんばってきたからこそ、弱いところを見せるのが苦手。走り続けてきたからこそ、立ち止まるのは怖い。きっとそういう人は多いだろう。けれど、舟山さんが言うように、悩むことも、弱いところを見せることも、立ち止まることも悪いことではないし、そうすることでしか見えない景色もいろいろとあるのだ。インタビュー中、アラサー女性にありがちな悩みを口にすると、いつだって「そうなんですよね」と包み込むように寄り添ってくれた舟山さん。自分自身も同じように悩み、苦しんだからこそ、「がんばれば変われる!」「悩むのはやめよう」なんて、上から目線なことは決して言わない。自分自身と向き合い、人生を豊かに生きるためのヒントを教えてくれるのだ。寄り添うような優しい言葉を話す舟山さんに、「あの時好きになって良かった」と改めて感じさせられたと同時に、“当時ギャルだった私たち”にとっては、今も変わらず、神様みたいな陽だまりのような存在なのだと感じた。自分が分からなくなった人へ。『ちゃんと自分を好きになる。』書評敏感肌でも使いやすい!舟山久美子プロデュース「Herz 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2024年08月09日『アナと雪の女王2』を抜き去り、アニメーション映画歴代No.1のヒット作となったディズニー&ピクサーの最新作『インサイド・ヘッド2』。人間の頭の中の“感情たち”の奮闘ぶりを描き、第88回アカデミー賞最優秀長編アニメ映画賞に輝いた『インサイド・ヘッド』(2015年)の続編となる本作では、主人公・ライリーが思春期を迎えたことにより、頭の中の感情のコントロールルームにも新たな複雑な感情たちが登場する。前作で監督を務めた天才ピート・ドクター(本作ではエグゼクティブ・プロデューサーを務める)からバトンを受け取り、本作で初めて長編映画監督を務めたケルシー・マン、プロデューサーのマーク・ニールセンが、いかにして世界中の人々の心を掴んだこの大ヒット作が完成に至ったのかを語ってくれた。「等身大の13歳の視点」今のティーンエイジャーの意見を参考に――本作では思春期を迎えた主人公・ライリーの姿が描かれていますが、マン監督はこれまでも「自分を受け入れ、愛すること」が本作のテーマであるとおっしゃっていました。マン監督:その通りです。この映画は10代になると出てくる感情を描いていますが、私自身が10代の頃、どうだったか? と思い返した時にすぐに浮かんできたのが、当時抱いていた「自分は(いまのままでは)充分じゃない」という気持ちでした。10代というのは、自分の評価がすごく厳しくなる時期であり、自分のことを外側から見るようになる年代でもあると思います。また他人が自分をどう見ているのか? ということもすごく気になるようにもなりますよね。それまでは、周りの人に面倒を見てもらっていたけど、自分で自分のことをしなくてはいけなくなり、大人になっていく中で、社会に自分がフィットしているのかが気になってきます。人間は社会的動物なので「周りにフィットしていないと生きていけない」という気持ちになり、「自分は社会にフィットしているのか?」「どう思われているのか?」と心配になるわけですね。でも、それが行き過ぎると、自分に厳しくなり過ぎてしまいます。そうしたことがこの映画に出てきますが、もう少し自分に対して優しくして、自分を受け入れようということをこの映画は語っています。ケルシー・マン監督――今回の物語に関して、どのようなプロセスを経てこのようなストーリーになったのでしょうか? 初期段階からの変遷なども含めて教えてください。マン監督:曲がりくねった道を進み、時に引き返したりもしながら、エピソードを削ったり、加えたり、より良い物語にするために様々な紆余曲折を経て、ここまで来ました。ニールセン氏:最初のバージョンではライリーはアイスホッケーをやっていなくて、単に友達のグループとのやり取りがあるだけだったんですけど、それを見て「やっぱりアイスホッケーがないと寂しいよね?」という話になったんです。マン監督:そうだったね。10代になると、いろんなプレッシャーを感じて大変になってくるけど、そのプレッシャーをSchool Talent Show(日本で言う学芸会のような催し)で感じるのはどうだろうか? とも考えたんですけど「でも、ライリーはもともとアイスホッケー選手だったよね?」と。小さい頃からスポーツをやっていると、いろんな仲間ができるけど、10代になると、そうした仲間の存在を越えてチームをつくるということも起こるので、そういう物語もいいかもしれないという話になりました。ニールセン氏:この映画はすごく複雑な構成になっていて、ライリーの頭の中と外といろんな世界が描かれています。ある時点で、あまりにも材料が多すぎるから、もう少し少なくした方がいいんじゃないか? という話になり、映画の中に出てくる“信念の泉”のエピソードを5回目のスクリーニングの段階で削ったんです。でも「やっぱりあった方がいい」となって、6回目のスクリーニングでもう一度、復活させました。そんなことの繰り返しでしたね。――劇中で描かれるライリーの言動は、いわば“思春期あるある”であり、多くの観客が「私もこうだった」と感じると思います。具体的なエピソードはどうやって集めたんでしょうか?マン監督:いろんな経験のエピソードが必要で、まずは自分たちの経験を基に考えました。10代の頃って忘れがたい思い出がたくさんありますよね。もちろん、私たちだけでなく、いろんなスタッフからも話を聞きました。ストーリーチームの半数は女性でしたが、彼女たちも自分たちが学生の頃のことを思い出しながら、物語をつくっていきました。とはいえ、私たちはもう13歳ではないですし、僕もマークもティーンエイジャーの子を持つ父親ではあるんですけど、やっぱりいまの等身大の13歳の視点がほしいということになりました。マーク・ニールセンプロデューサーニールセン氏:そこで実際に13歳から16歳の女の子たち9人を集めて、制作期間の3年にわたって、スクリーニングに参加してもらったんです。ZOOMミーティングで、スクリーニングを観てどうだったか? 共感できたか? ライリーと周囲の女の子たちの関係性を自分の周りにもあるものとして感じたか? そういうことをリサーチしました。私たちは、彼女たちを“ライリーのクルー”と名付けたんですが、リアリティを追求する上で、彼女たちによるフィードバックは非常に重要なものとなりました。多くの人に響く作品は「努力して、もがいてつくる…」――本作に限らず、多くの人を魅了し、感動させる作品をつくる上で大切にしていることはどんなことですか?マン監督:私の映像作家として仕事は「観客の感情を呼び起こすこと」だと思っています。僕自身、映画を見に行った時、映画から呼び起こされる感情に自分を浸らせるんですが、そこであまり感じるものがないという場合は、その映画があまりうまく機能していないということですし、最悪の場合、退屈してしまうこともあります。自分が映画をつくる時、観る人のどんな感情を呼び起こしたいのか? ということを考えるようにしています。ある意味で、私は(『インサイド・ヘッド』の感情たちのように)みなさんの頭の中にある感情の制御装置を操作しようとしているわけですね。もちろん、良い方向にね(笑)。――言葉も文化も違う世界中の人たちに届く作品を制作するというのは、決して簡単なことではなく、大変な苦労もあるかと思います。ニールセン氏:YES(笑)。ピクサーの作品は、平均して4年もの苦難の期間を経て制作され、完成に至るわけですけど、つくっている自分たち、そして観客の方々にも共鳴する作品をつくろうとすれば、それだけの時間が必要になります。そのために何度も何度もつくり直すんですけど、最初の段階の話は……。マン監督:ひどいものだよね(笑)?ニールセン氏:そうだね(笑)。そこから、練っては壊して、また練って…というのを繰り返して、最終的に自分たちも観客のみなさんも共感できるものをつくり上げていくんですけど、そのためには時間もかかるし、才能あふれる多くのピクサーのスタッフ陣と協力体制をもって進めていくわけです。努力して、もがいて、誰しもが人間としての根っこの部分で響くものをつくる――と同時に楽しく、娯楽的で、でも意味がある作品にしていくのです。――日本のアニメーション作品に対して、どのような印象をお持ちですか? お気に入り日本の作品などがあれば教えてください。マン監督:日本のアニメは大好きですし、17歳の息子は、いつも私の知らなかったアニメをいろいろと教えてくれるんです。「呪術廻戦」や「ヴィンランド・サガ」は息子から教えてもらったんだけど、大好きです。もちろん、宮崎駿監督によるジブリ作品も毎回素晴らしいですね。ニールセン氏:ジブリとピクサーは長年にわたって良い関係を保ってきましたし、宮崎さんがピクサーのスタジオを訪れて、作品を上映し、Q&Aセッションをしたこともありました。マン監督:この『インサイド・ヘッド2』のプロモーションツアーの最終到着地が日本だということは最高だし、この後、バカンスに入るんだけど、今回は家族も一緒に来ていて、仕事が終わったらアニメショップを巡っていろいろ収集するつもりです!アメリカではアニメと言うと、どうしても“子ども向け”の作品だと受け取られがちなんですけど、日本では子どもが楽しめるだけでなく、大人にも真面目に受け取ってもらえて、非常に複雑なことを扱っていると思います。それはまた、ピクサーがやろうとしていることでもあります。私たちは、子どもだけでなくあらゆる人たちに作品を楽しんでもらいたいと思っています。(photo / text:Naoki Kurozu)■関連作品:インサイド・ヘッド2 2024年8月1日より全国にて公開©2023 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
2024年08月03日【思春期】と聞いて何を思い浮かべるか? 頼まれてもないのに勝手に自身の10代の頃を思い出し、赤面し思わずその場で身悶えしそうになるという人も多いのではないだろうか?大人になる過程を描いた映画は幾多もあるが、言葉では言い表せない、何とも表現しがたいモヤモヤしたあの感情を斬新な切り口で、アニメーション映画として見事に描いたのがディズニー&ピクサー最新作『インサイド・ヘッド2』だ。人々の頭の中に存在する感情たちの“司令部(コントロールルーム)”での奮闘ぶりを描く本作だが、主人公・ライリーが生まれてから11歳になるまでを描いた前作(2015年)の続編となる今回、ライリーはついにティーンエイジャーに!これまでのヨロコビ、カナシミ、イカリ、ムカムカ、ビビリという感情に加えて、少しずつ成長していく中で芽生える複雑で新たな<大人の感情>たちが登場する。そのひとつである【シンパイ】の日本語版声優を務めているのが多部未華子だ。【最悪の将来を想像し、あたふたと必要以上に準備してしまう】という役割ゆえに、ライリーの頭の中に大騒動を巻き起こすことになるシンパイを「愛おしく感じた」という多部さんに話を聞いた。頭の中を描く物語「本当によくできたお話だなぁ」――第1作の『インサイド・ヘッド』を映画館でご覧になっていたそうですが、どのような感想を抱かれましたか?まず(頭の中を描くという)設定に驚いて、「どうやって描くんだろう?」と思って映画館に観に行ったんですけど、ライリーが小さな頃からの物語で、ライリーのことをみんなで協力して守ろうとする様子が色鮮やかに描かれていて、本当によくできたお話だなぁと思いました。――続編となる『インサイド・ヘッド2』への出演がわかった時の気持ちは?お話をいただいた時は、まずは前作を観ていた者として「え? 『2』やるんだ!」と単純に思いました。「なるほど! 感情ってたしかに増えていくものだもんね。すごいなぁ…」と思って、参加させていただけるならぜひやりたいと思いました。――ライリーが少しずつ成長していく様子が描かれますが、ストーリーについてはどんな印象を持ちましたか?あらすじの紙を最初にいただいたんですけど、ライリーが思春期を迎えて、先輩たちがいるアイスホッケーの合宿に行って…というのを読んで「なるほど! 思春期ってそうやって心が揺れたりするよねぇ。本当によくできたお話だなぁ」とその時も思いましたね。――ご自身の10代のころを思い出したり、ちょっと恥ずかしくなったりすることはありませんでしたか?ありましたね。共感するところばかりでした。先輩を前にカッコつけたり、髪の毛を真似しようとしたり、「いいなぁ」と思ったり、「こう答えたら幼稚って思われるんじゃないか?」と考えたり…。私は中学生で仕事を始めているので、高校生の時期にいろんな大人の人たちと会話をすることが多かったんですけど、「好きな映画は?」と聞かれて「こう答えたら『まあ高校生だしそんな感じだよね』とか思われるんじゃないか…?」とか考えていたなぁと当時のことを思い返しましたね。本当に映画の中のライリーと同じでした。――ご自身が声を吹き込んだシンパイというキャラクターについてはどんな印象を持たれましたか?シンパイはちょっと物語の中で大げさに誇張されていて、「そこまで心配しなくても…」というキャラクターになってはいますけど、でもシンパイが「シンパイは他の感情と違って、先回りして未来を予測しなきゃいけない」という意味のセリフを言うところがあって、その言葉を読んで「たしかにそういう感情はシンパイだけだよな」と思って、自分の中にも常にある感情だなと改めて思いました。――10代の頃だけでなく、年齢を重ねて、親になるなど、様々な局面で形を変えつつ、シンパイの種は常にあるものかと思います。そうなんですよね。ずっとあるんですよ。逆に、そういえば、子どもの頃って何も考えず、心配なんて何もなかったよなぁ…と思って、また本当によくできたお話だなぁと思いました(笑)。親たちの頭の中にも共感――最悪の将来を想像して、先回りするあまりあたふたとしてしまうシンパイですが、多くの人が多部さんに対して落ち着いた印象を持っているかと思うので、意外なキャスティングにも思えました。私自身は普段からわりとバタついているタイプだと思うので(苦笑)、そういう意味ではあんまり自分とシンパイがかけ離れているとは思っていないんです。みなさんが抱いている私のイメージとはちょっと違うのかもしれませんね。ただ、シンパイというキャラクターを演じる上では、一番最初に「あまり共感しながら声をあてることはできないかもしれません」という注意書きをいただいたんです。あまりに心配し過ぎて、みんなを巻き込んで、自分のやり方で自分の思い通りに動かそうとするキャラクターですし、すごく極端に描かれている部分も多いので。ただ、シンパイも愛をもって、そういう行動をとるので、そこに対して全く共感できないということもなかったですね。――シンパイ以外の新キャラクターとして、【ハズカシ】、【イイナー】、【ダリィ】なども登場しますが、これらの感情に対して共感を抱く部分はありましたか?全部共感しますよ。私、ずっと「だるいなー」と思いながら生きていますから(笑)。というか、私に限らずみんなの中に必ずあると思います。「めんどくさいなぁ」とか。――ライリーの頭の中だけでなく、親たちの頭の中が描かれるシーンもありますが、そちらに共感を覚える部分も多かったのでは?それはすごくありましたね。今回、特にライリーが思春期を迎えてイラっとしはじめた時、お母さんたちの頭の中で「これがウワサの…」と騒ぎ始めるところとか。私にはまだ、思春期を迎える子どもはいませんけど、「いつか、うちの子にも思春期が来るんだろうな」と思っているし、その時が来たら「(思春期の子を前に)あ、ちょっと態度が変わった」とか思うんでしょうね。ああいうシーンでの頭の中の感情たちの会話って、すごくリアルなんだろうなと思いますし、自分はまだ経験していないところも含めて、すごく想像できるシーンで面白かったです。いつか来るんだろうと思いつつ(笑)。――特にお気に入りのシーンや印象深いシーンはありますか?シンパイが泣いちゃうところですね。あのシーンがあるから、シンパイが愛おしく思えました。収録している時はいっぱいいっぱいで、なかなか見えていないんですけど、出来上がった映画を観て「あぁ、シンパイってここで泣くんだ…」と思いました。最初は周りを巻き込んでひっかき回す悪役っぽい、ややこしいキャラクターなのかなと思いつつ、あのシーンで一体感が生まれて、涙がじわっと出てきて愛おしく感じました。感情のコントロールは「全部吐き出すこと」――第1作から引き続き登場するヨロコビやカナシミたちも活躍しますが、ヨロコビが、失敗したり、ダメだった忘れたい思い出を全部捨ててしまおうとするところも、「失敗も含めて人生なんだ」という本作のメッセージを感じつつも、ついヨロコビの行動に共感してしまったり…。すごくわかります(笑)。そこも含めて、本当にどの感情も人生において必要なんだって教えてくれるんですよね。どの感情も恥ずかしいことじゃなく、自分を成長させてくれるし、何かが欠けているとやっぱり成立しないし、欠けている部分を補ってくれるのも別の感情なんですよね。感情のバランスとチームワークで人間って生きていて、自分の中で自分のことをコントロールして、問題を解決しようとする――まさに“インサイド・ヘッド”ですよね。本当にここに出てくるのは、言葉では表しにくいキャラクターたちなんだなぁって思います。――多部さん自身は、仕事やプライベートで、怒りや不安、緊張といった感情の波をどうやってコントロールされていますか? 気持ちを落ち着かせるために大切にされていることはありますか?感情を落ち着かせるために大事にしているのは…全部吐き出すことですね。思ったことを思った時点で目の前の相手に伝えます。――それは昔から? それとも大人になってから身に着けたことですか?大人になってからのほうが言いたいことを言ってますね(笑)。もちろん、特定の相手に対してですけど。――気持ちを素直に吐き出すことで、相手ともコミュニケーションを?コミュニケーションというよりは、一方的に伝えていますね。「はぁ、スッキリした!」って(笑)。口に出すことで自分の中で整理できる部分もあると思います。言って楽になることってすごく多い。――映画ではライリーの思春期がフィーチャーされていますが、多部さん自身、年齢を重ねる中で、これまでになかった新たな感情をかき立てられるということはありますか?最近、「図々しさ」と「開き直り」という感情が出てきましたね。いや、これは感情じゃないか…(笑)? 良いのか悪いのかはわかりませんが、図々しく生きてます(笑)!――最後にこれまでに繰り返し観てきたお気に入りのディズニー&ピクサー作品があれば教えてください。これは『モンスターズ・インク』一択です! これまでも何度も観ましたし、子どもが生まれてからも「ディズニープラス」で観てますし、それ以外の作品も幅広く観るようになったんですけど、やっぱり『モンスターズ・インク』だけは毎回泣いてます。一緒に観る友達にも「はい、いまから泣くんでしょ?」と言われながら、あのラストシーンのあの表情ですっごい泣きます。いま、思い出しただけでもグッときちゃうくらい、大好きです!(text:Naoki Kurozu/photo:You Ishii)■関連作品:インサイド・ヘッド2 2024年8月1日より全国にて公開©2023 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
2024年08月01日アニメーション映画と並んで、日本が世界に誇る映画ジャンルである怪獣映画。時に恐ろしく、時にユーモラスでかわいらしい、個性豊かな怪獣たちが映画の歴史を彩ってきた。デザイナーによってデザインされた怪獣を、様々な素材を用いて、アイディアと知識を駆使し、監督の望む質感で実際に具現化するスタッフが特殊美術造形――特に怪獣映画において“怪獣造形師”と呼ばれる職人である。そんな怪獣造形師の第一人者であり、『ゴジラ』シリーズにおけるモスラやキングギドラの造形など、数々の怪獣映画、特撮映画に携わってきた村瀬継蔵。今年の秋で89歳を迎える彼が、初めて“総監督”という立場でつくり上げた映画『カミノフデ ~怪獣たちのいる島~』が公開中だ。半世紀近く前に香港映画『北京原人の逆襲』(1977年)に参加した際に、プロデューサーから依頼されて書き上げたというプロットをベースに、自らの経験や新たな要素も加えて再構築したという。本作への思いを語ってもらうと共に、怪獣造形師としての村瀬さんのこれまでの歩みについて話を聞いた。「最初は怖いという気持ちしかなかった」――村瀬さんが特殊美術造形、怪獣造形の世界に足を踏み入れることになったきっかけ、経緯を教えてください。村瀬:私の兄が多摩美(多摩美術大学)におりまして、私は健康が不安定だったので東京に治しに来たんです。兄の家でブラブラしていたんですけど「お前、遊んでだってしょうがねぇだろ」と言われまして。故郷の北海道にいた頃に『ゴジラ』(1954年)を見ていたんですが「すごい映画だなぁ。怖いなぁ」と思っていたんです。その話を兄貴にしましたら「俺の知ってる人に『ゴジラ』を作ってる人がいる。俺は学校があるからできないけど、お前、代わりにやってみるか?」と言われたんです。それで(東宝で造形を手掛けていた)利光貞三さん、八木(康栄/勘寿)兄弟のお手伝いに入ることになったんです。そこでいろんな造りものをやったんですけど、これが非常に難しいんですね。師匠に言われて、金網でものをつくったり、ブリキを切ったりということをしながら造形のこともやるようになって、それから『ゴジラ』シリーズに参加するようになりました。正式に私が参加することになったのは『キングコング対ゴジラ』(1962年)からになります。私はゴジラを造るなんて「怖いもんを造るんだなぁ…」って思ってね。最初は「面白い映画をつくる」という感覚よりも「怖い」って気持ちしかなかったです(笑)。でも、そうやって造形の世界に弟子として入って、いろんなことをやってきて、利光さんと八木さん、それから開米栄三さんという方たちと一緒にお仕事をさせてもらったら、だんだん「いやぁ、これはおもしろいなぁ」と感じるようになりました。北海道で農業の仕事をやっているときの経験で、使えることがたくさんあったんですね。ゴジラにしても、金網で下地を作ったり、自動車のタイヤのゴムを焼いて加工したり、いろんな工夫を見てきて「これはおもしろいなぁ」と思いまして、八木さんの下で本格的に造形的なことをやるようになって「これを続けたら、子どもたちにいろんなものを見せられる」とも思いました。モスラを造ったり、キングギドラを造ったり、それから、私にとって代表作と言えるのが『大怪獣バラン』(1958年)のバランですね。バランは「背中にとがった部分がほしい」と言われて、じゃあ、透明なビニールやのホースを切って使えばいいなと思って、円谷(英二)さんに「こうやったら造れそうです」と言ったら「そりゃおもしろい!」と言ってくれました。「でもそれだと穴が見えちゃうな」と言われて、半透明のビニールで覆ってふたをしました。次に皮膚をどう造ったらいいかな? と考えた時、周りのスタッフさんが休憩時間に落花生の殻をむいてピーナッツを食べていたんです。それを見て、この殻の表面がすごくおもしろいなぁと思って、試しに粘土で殻を模した原型を作って円谷さんに見せたら「いやぁ、これはおもしろいな。植物が動物の皮膚になるなんて、考えたこともなかったよ」と驚いていました。あの経験が私の造形の仕事の始まりですね。円谷さんが「君は次から次へと新しいものを考えて生み出してくれる。それをこれからも映画の世界でやっていってほしい」と言ってくださったのを覚えています。――日本映画界における“特撮の父”ともいわれる円谷英二さんは、どんな方でしたか?村瀬:円谷さんという方は、自分で原型を造ったり、「こうやるんだ」といった技術的なことを言うことが一切ない人でした。できたものだけを見て「良い」か「悪い」としか言わないんです。それだけじゃ僕たちは、そう簡単に造れないですよね(苦笑)。それを円谷さんに言ったら「いや、それで十分だろ」と言われました。円谷さんが口を酸っぱくして言っていたのは「上に立つ人間が『これが良い』とか『こうやってやれ』と言ったら、君たちがやる仕事がなくなってしまう」ということ。監督・演出家は、うまく周りを動かして、それによって造形や美術ができあがれば、それでいいんだと。だから本当にできたものだけ見て「これはダメ」、「良い」としか言わない(笑)。でも、僕にとってはそれが力になりました。どんどん新しいものを考えてやるようになったけど、それは円谷さんがいなかったらできなかったと思います。ゴジラの爪も歯も昔は全て金網で下地を造っていましたが、一度戦うと曲がってきちゃうんですね。それじゃダメだということで「じゃあ、合成樹脂で造ったらどうですか?」と言ったら「合成樹脂って何だ? そんな材料があるのか!」と。そうやって、次から次へとこっちから提案をすると「やってみよう」と受け入れてくださる人でしたね。60年以上を経て再び撮影したヤマタノオロチのシーン――本作『映画『カミノフデ ~怪獣たちのいる島~』では怪獣ヤマタノオロチが出てきますが、ヤマタノオロチと言えば村瀬さんも参加された『日本誕生』(1959年/監督:稲垣浩/特技監督:円谷英二)に登場する八岐大蛇が印象的です。村瀬:あの映画では三船敏郎さんが須佐之男命(スサノオノミコト)を演じていて、八岐大蛇の上に乗って、剣を突き刺すというシーンがありました。でも、ただ刺すだけじゃおもしろくない。じゃあ、(刺したところから)何か吹き出す仕掛けにしようか? 金粉なんてどうですか? と言ったら、おやじさん(=円谷さん)は「いや、金粉じゃ生き物じゃないよ」という話になって、いろいろ工夫して、刺されたらパーッと血と金粉が吹くようなカットができまして、おやじさんも「これはおもしろい」と。八岐大蛇のボディは直径1メートル50~60センチくらいあったかな? 三船さんがそこに乗っかって、剣を刺すんですけど、八岐大蛇の首や体をうまく動かす方法がないか? という話になりまして。操演技師の中代文雄さんという方がおられたんですけど、相談したら「ピアノ線で上から吊って動かそうか?」という話になって、テストして、それでOKになりました。みなさん、僕が八岐大蛇を造ったと褒めてくださるんですけど、決してそうじゃなく、裏には操演技術や円谷さんのアイディアとか、いろんなものが合わさって、ああいう動きの八岐大蛇ができたわけです。八岐大蛇が酒を飲むシーンも、中代さんが「大きな桶に首を突っ込ませると、飲んでいる感じがよく出るんじゃないか?」と提案して、あのカットができたんです。――60年以上を経て、今度はご自身が総監督という立場で、ふたたびヤマタノオロチのシーンを撮影されていかがでしたか?村瀬:佐藤(大介/プロデューサー・特撮監督)くんに「昔の八岐大蛇はこんな感じだったよ」という話をして、佐藤くんからも「じゃあ今回はこんなのはどうですか?」という話をしてもらって撮ったんですけど、すごく良いものが撮れたと思います。――(インタビューに同席した佐藤氏に)実際、撮影されていかがでしたか? 『日本誕生』の八岐大蛇の動きを参考にされた部分などはあったんでしょうか?佐藤プロデューサー:『日本誕生』はもちろん資料として観ました。八岐大蛇はワイヤーで吊って首を操作した日本最初期の怪獣なんですよね。そういう意味で、まだまだ技術的には洗練されていない部分もあったんですけど、その後のキングギドラ(1964年公開の『三大怪獣 地球最大の決戦』で登場)では技術的な部分がかなり向上しているので、そちらを参考にさせていただいた部分はありましたね。村瀬:キングギドラの首の動きは八岐大蛇をアレンジしてつくったんです。そこでも中代さんのアイディアが活きたし、(特殊技術の)撮影の有川貞昌さんのやり方もうまくいったと思います。ぬらぬらと首が動く感じがすごく上手に撮れたと思います。――もうひとつ、『カミノフデ』の中で、怪獣造形師だったヒロインの祖父が、ある撮影でスーツアクターも務めて、火だるまになってビルから落ちるカットの撮影に参加したというエピソードが明かされますが、これも村瀬さんご自身が実際に経験されたことですよね?村瀬:あれは香港の『北京原人の逆襲』(1977)の時の話ですね。北京原人のスーツアクターがいなくて、スタントマンに「君が火だるまになって落ちてくれ」と言ったら「保険をかけてくれればやりますけど、保険がないなら火をつけてビルから落ちるなんてできません」と言われまして。そうしたら(特殊効果の)久米攻さんが「じゃあ、村瀬さん燃やしちゃおう」って言いまして…(笑)。それを聞いて「私を燃やしちゃう…?」って思ったけど、やっぱり造った自分がどこまで燃えても大丈夫かとか一番わかっているからね。もう、こうなるとしょうがないですよね。「じゃあ僕が入ります」と。撮影の有川さんが「北京原人の皮は何枚ある? 最低3カットはあるからね」と聞くので「1カットで撮っちゃえばいいんじゃないですか?」「いや、3カットはほしい」って(笑)。結局、3カットで3枚の皮膚は全部使っちゃいました。(製作のショウブラザーズ社長の)ランラン・ショウがラッシュ映像を見て「これは保険もなしに誰が火だるまになったの?」と驚いていて、「村瀬さんが自分でやったんです」と説明したら「いやぁ、すごい人だな」と言って、ランラン・ショウはその後、僕に金時計を贈ってくれました。自分で造って、自分で入って、燃やして、こんな立派なものをもらっちゃって良いのかなって思いましたけど(笑)。撮影そのものは自分ではあんまり危険を感じることもなかったんですけど、久米さんが火をつけて落ちて…だいたい1カットで4~5秒かな? 有川さんが「いやぁ、村ちゃんだからやってくれたんだなぁ」と言ってたけど「いやいや、やらされたんだよ!」って(笑)。あれは本当にラストカットの大事なシーンでしたからね。やってよかったなと思いました。経験や知識があるからこその“総監督”――今回、総監督という立場で映画をつくられていかがでしたか?村瀬:“総監督”という名前をつけていただきましたが、僕自身はそんなに重い立場にいるという感覚ではないです。ただいろんな経験や知識があるので、それをうまく活かして映画ができればという思いで、それをみなさんが「総監督」と呼んでくださるなら、それでいいかなという気持ちです。――映画の中でゴランザという名の怪獣が登場しますが、デザインされたのは、村瀬さんとも様々な作品でご一緒し、長年「仮面ライダー」シリーズの美術デザイン全般を担当されてきたことでも知られる高橋章さん(2023年逝去)ですね。ゴランザはどのように誕生したのでしょうか?村瀬:あれはね、香港から帰ってから高橋さんに「プロットの挿絵を描いてほしい」とお願いして、描いてもらったのが元になっています。彼の遺作になったけれど、良いものを描いてもらったなと思います。――これから映画の世界、特に特殊造形を志す人たちに向けて、アドバイスやメッセージがあればお願いします。村瀬:若い人たちがもっともっと伸びていって、腕を上げて、造形界を盛り上げていってくださったらいいなと思っています。――最後に、村瀬さんのお気に入りの怪獣を教えていただけますか? これまでご自分で手掛けた怪獣でも、それ以外のもの、海外のものでも何でも構いません。村瀬:僕は自分の仕事にずっと追われてきたので、海外の怪獣映画って『キングコング』くらいしか知らないんですね。自分で造った怪獣では、一番はやはりバランですね。私がこの造形の世界でやっていくことになったきっかけとも言える大事な怪獣ですからね。(photo / text:Naoki Kurozu)■関連作品:カミノフデ ~怪獣たちのいる島~ 2024年7月26日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開ⓒ2024 映画「カミノフデ」製作委員会
2024年07月26日前総統は女性、さらに同性婚が認められている台湾に、“自由でリベラル”というイメージを持っている日本人は多いはず。そんな台湾も、1949年から1987年まで38年もの間、国民党政権の下で戒厳令が布かれ、言論の自由は厳しく制限されていた。台湾の南東に浮かぶ離島・緑島には、その間に捕らえられた政治犯を収容する監獄があった。映画『流麻溝十五号』のタイトルは、その監獄の中でも、女性たちが収容されていた住所を指す。女性政治犯を扱った台湾初の映画である本作の周美玲(ゼロ・チョウ)監督に、この作品にかけた想いを聞いた。もっと早く作られるべきだった映画――戒厳令が布かれていた間、政治犯として多くの人々が投獄され、迫害された「白色テロ」。『流麻溝十五号』は、絵を描くことが好きな高校生の余杏惠(ユー・シンホェイ)、正義感の強い看護師・嚴水霞(イェン・シュェイシア)、妹を守るために自首して囚人となった陳萍(チェン・ピン)の3人を中心に、政治犯として捕らえられた女性たちの姿を描いています。このテーマを映画化したいと思った理由についてお聞かせください。台湾の人の多くは、かつて大勢の女性思想犯が収監されていたことを知りません。捕らえられた女性たちは、みんな自分自身の思想や考えを持ったインテリでした。この件は、台湾の若い女性をひどく傷つけたと思います。家庭や社会が、娘たちが勉強したり、自分の意思や考えを持ったり、正義を追求することを良しとしなくなったからです。その後、彼女たちのことが語られることはありませんでした。当時の女性は非常に保守的で、社会的地位も低かった。いまから70~80年前、娘が思想犯として捕まったことがあるなんて、受け入れられる家庭はありませんでした。そのため、釈放されても結婚するのは困難でしたし、様々な差別を受けました。だから当事者たちも自分が監獄にいたことを語らず、夫や子どもたちですら、何も知らないことが多かったのです。ですから、本当はもっと早くこのような映画が作られ、彼女たちの物語が世に知られるべきだったと思います。私は長い間、ジェンダーに関する映画を撮ってきました。誰も撮らないなら、この機会に私が撮らなければと思ったことが理由です。――この映画は「流麻溝十五號:緑島女生分隊及其他」という本が基になったとうかがっています。この本は、実際に収監された女性思想犯たちにインタビューした内容を収めた実録集です。著者の曹欽榮(ツァオ・シンロン)さんが6名の女性にインタビューしているのですが、その全員が台湾籍でした。この時代の資料をたくさん読んで気づいたのは、実は女性思想犯のうち台湾生まれは47パーセントだけで、53パーセントは大陸から来た女性だったこと。ですから、この部分を補足して、より史実に忠実になるようにしなければいけないと思い、映画には大陸から来た陳萍のストーリーを加えました。曹さんが大陸の女性に話を聞かなかった理由は分かりません。きっと見つけられなかったわけではなく、台湾人の歴史のほうに関心があったからでしょう。――演じるのはいまの時代に生きる俳優たちです。演出するうえで気をつけた点や、俳優たちにどんな準備を求めたのかを教えてください。ご存知のように、現在の若者は西洋文化の影響を受けています。特に台湾は米国の影響が大きいので、若い人の所作や振る舞いはアメリカ人のようなのです。まずは演技指導でそういった動きを全部取り除かなければなりませんでした。女性思想犯たちは、全員が同じ背景を持っているわけではありません。台湾生まれの人は(日本統治時代に)日本の教育を受けて育っているため、日本語と日本人女性的な所作を学ぶ必要がありました。一方、大陸からやって来た女性は、彼女たちとは全く異なるわけです。言語的、文化的背景が一人ずつ違う。ですから、日本語のできる先生、広東省出身の先生、山東省出身の先生など、様々な方言を話す先生方を集めて、登場人物一人一人に合わせたトレーニングを行いました。台湾の若者の多くは、この悲劇を知らない――この映画が描いた歴史について、台湾の若者はどの程度認識しているのでしょう?いまの台湾の若い人たちの多くは、この歴史を知りません。この映画の観客の7、8割は初めて知ったのではないでしょうか。内容が事実だということに驚いていました。台湾は民主化が実現して30年以上経っています。ですから半世紀前、まだ生存している自分の祖母たちの世代が、この映画のような経験をしていることをリアルにイメージできないのです。しかし、私たちは周到なリサーチを重ねたうえで、この作品を撮りました。内容がウソではなく真実だと、説得力を持って言うことができます。――台湾での公開時、レイティングを下げて子どもでも保護者同伴で観られるようにしたという話をうかがいました。この前に撮った映画『愛・殺』(2021年大阪アジアン映画祭で上映)は年齢制限のある作品でした。私は普段セックスを描くとき、露骨な描写を全く恐れません。でも『流麻溝十五号』はいつもの撮り方を変えて、控えめにしました。より多くの人に観てもらいたかったからです。台湾の教科書では、台湾の歴史をきちんと教えていません。中国の歴史に割かれる分量のほうが多いのです。映画のようなメディアを通して伝えなければ、自分たちの過去を知る術がない。ですから、この映画の製作にあたっては、最初から年齢制限なしでの公開を目指しました。女性思想犯たちは性暴力を受けて苦しんだという事実もあるのですが、その部分はあからさまに描かず、大勢の人に観てもらえるほうを選びました。共通していた「台湾には自治が必要」という認識――思想犯として捕らえられた女性たちについて、準備段階の調査の中で気づいた特徴などはありますか?資料から分かったことは、彼女たちの多くは教師や看護師、中でも最も多かったのは学生でした。第二次世界大戦が日本の敗戦によって終わり、これから台湾がどこへ向かうのかという時期に、知識層の多くが主張していたのは、台湾には自治が必要だ、つまり台湾は台湾人が自らの手で治めるべきだということでした。どこの国民か、どんな国旗を掲げるかは関係ありません。台湾の文化・歴史的背景は中国大陸とは違います。日本とも違います。独自の文化を生み出し、独自の言葉を持っている。そんな台湾の自治を推し進めようという動きは、日本時代から始まっていました。そして国民党がやって来て、台湾には自治が必要だという思いをより一層強めたのです。台湾の自治を求め、台湾の行く末について考えていた。それが思想犯たちに共通する理念でした。彼女たちは読書会や検討会を開き、どのような制度が台湾にふさわしいかを語り合っていたのですが、参加者たちは皆、捕らえられてしまいました。自分たちを上から統治していた政権が去り、台湾人が台湾を自ら動かしていくのだと立ち上がろうとしたときに、国民党政府がやって来て、日本時代よりひどい形で押さえつけた。知識人を全員捕らえて小さな島に隔離し、台湾の自治という考えを広めることを許さなかったのです。とても残念に思います。もしも蔣介石政権が、あれほど順調に台湾を統治できていなければ、もしもあれほど残酷に知識人を弾圧していなければ、台湾はとうに独自の道を歩き始めていたはずです。台湾に人材がいないわけではありません。人材はいたけれども、殺され、捕らえられてしまった。非常に胸が痛みます。助け合って生きる真実の女性の姿を描きたい――監督は、これまでもずっとジェンダーに関する作品を撮ってこられました。今回の作品も含め、難しいテーマに挑み続けるエネルギーの源は何でしょうか?女性が弱い立場にいるからです。それに、私以上に女性を愛し、女性を慈しんでいる監督はいないと思います。「女性思想犯の話を撮る」と言うと、「女同士の恨み妬みや腹の探り合いを描くのだろう」とよく言われるのですが、そんな考えがどこから来るのかさっぱり分かりません。私のそばにいる女性のパートナーや友人たちは、傷つけ合ったり、腹の探り合いをしたりする時間より、助け合っている時間のほうがはるかに長い。だから私は、別の視点で女性の世界を描きたいのです。『流麻溝十五号』に関しては、歴史を扱った作品なので、盛り込んだ話には必ず真実であるという裏付けが必要でした。きっかけになった本のほかにも、多くの資料を読み、実際に捕らえられていた人たちにも取材しました。映画の中には入れていませんが、非常に胸を打たれたエピソードがあります。看守に嫌われ、糞便を運ばされたという女性の話です。ろくに食事を与えられていなかったために体が弱っていた彼女は、担がされた糞便の重さに耐えきれず、地面にぶちまけてしまいました。怒った看守が棒で殴ろうとしたとき、走り出て彼女をかばった囚人がいたそうです。「すみません。彼女はご飯を食べていないから、こんなに疲れ切って、痩せているんです。わざとではありません」と。そして、「殴るなら弱っている彼女ではなく、私を殴って」と言い、糞便をぶちまけてしまった女性を抱きしめたそうです。これが私の伝えたい真実の女性たちの物語です。弱い者がいれば守る。女同士の競争心なんて、それほど強くはありません。『流麻溝十五号』は監獄についての話ですが、私がこれまでに撮った映画の中で、一番温かい作品だと思います。なぜ自分の思想を持つことが罪に?――最後に、ご苦労も多いと思いますが、映画監督という仕事を楽しんでいらっしゃいますか? イエスでしたら、仕事を楽しむ秘訣を教えてください。確かに映画監督は苦しい仕事ですが、苦しいながらも楽しんでいます。大学で哲学を学んだため、私にとって何より重要なのは“思想”なのです。なぜ、思想が罪になるのか? なぜ自分の思想を持ったために、捕らえられなくてはいけないのか? 私には絶対に受け入れられません。そして、いまこの時代に、私の思想を表現できる最適な媒体が映画なのです。映画というのは丹念に、細やかに、自由、ジェンダー、正義に対する私の考えを表現することができる。なおかつ、道理ではなく、物語で伝えることができます。道理で訴えて分かってもらえない話でも、物語なら伝えることができる。いくら思想を重視しているとはいえ、私が語りたいのは道理ではなく、物語です。人の心を揺さぶり、何か気づきを与えることができる物語を語ること。それが一生をかけてやりたい仕事だと思っています。周美玲(ゼロ・チョウ)ドキュメンタリーでキャリアをスタートさせ、のちに長編映画へ転向。長編デビュー作『Tattoo-刺青』はベルリン国際映画祭でテディ賞を受賞。そのほかの作品に『花様 たゆたう想い』(2013年)、『愛・殺』(2020年)などがある。(新田理恵)
2024年07月23日7月12日より放送開始される、ABEMAのオリジナル恋愛番組『シャッフルアイランドSeason5』。水着姿の美男美女たちが真夏の島に集まり、その島に存在する「毎日必ずピンクとブルー、2つの島にいるメンバーをシャッフルする」というルールのもと、参加メンバーたちが本能のままに島間を毎日シャッフル(入れ替わって)し、熱い恋愛を繰り広げていく内容になっています。MCを務めるのは、前シーズンに引き続き、お笑いコンビ・ニューヨークの屋敷裕政さん、タレントの峯岸みなみさん、“ゆきぽよ”ことタレントの木村有希さんの3人。『シャッフルアイランド』を見たことがない人も気になるような本番組の魅力と、最終話の収録を終えたばかりの3人に、製作陣から「今回は大人の恋」「キスの回数が史上最多」と声が上がる、Season5ならではの魅力を聞いてみました。■キスの回数、番組史上最多――3名それぞれが思う、『シャッフルアイランド』の魅力を教えてください。屋敷さん:逆に恋愛番組を見たくない人って、自分がのめり込めなかったり、キラキラしすぎてるのが苦手だったりする人だと思うんですけど、そういう人こそ『シャッフルアイランド』シリーズは見たらハマってくれるイメージがあります。立て付けはイケメンの筋肉があるムキムキの男と女性が恋愛するって感じなんですけど、意外とキラキラしたところだけじゃなくて、かっこ悪かったり、ださかったり、鈍臭かったりするので、親近感が湧くんじゃないかな。チャラいところはところんチャラいですけど、恋愛番組をあまり見ない人でもハマってくれるイメージがあるので、ぜひ食わず嫌いの人も見てほしいですね。峯岸さん:とにかく展開が早いのがすごくいいなって思います。華やかな男女が7日間という限られた時間の中で恋愛をするので、みんな細かいこと気にしてられないんですよ。東京とか、普通の場所で長期間やっていたら、こんな行動は起きないなとか、「こんな言動は見れないな」とかがたくさんあります。リゾートという非日常的な空間だからこそ燃え上がっているっていうのが、細かいこと抜きに楽しめるんですよね。ゆきぽよさん:勉強になるところですかね。恋愛番組を見ていると、30代前後の女性って結婚に悩んでいる方、不安を抱えている方も多いと思うんです。けど、『シャッフルアイランド』を見れば大丈夫な気がします。こう動いたらいいなとか、これしちゃ引かれるなとか、こういう男は選んじゃダメなんだとか。そういういろんなものを参考にもできるし、勉強にもなるのでぜひ見てほしいなって思います。――なるほど。ちなみに、今回のSeason5は“キスの回数が史上最多”と製作陣の方から聞きました。屋敷さん:でも過激って言っても、すごいエッチなキスとか、肌を露出してのキスとか、そういうことじゃないんですよね。今までのキスって両思いになったもの同士がイチャイチャするって感じだったんですけど、今回はまだ好きかどうかわからない段階でキスしてるというか……。――えっ!?屋敷さん:(笑)。二人の間で迷っているのに、そのうちの一人とチューしちゃうみたいな。で、もう一人ともほっぺにチューしちゃうみたいな、そういう過激さですね。――どちらが好きか迷っている段階でキスするのってどうなんですか……?屋敷さん:それは一緒に考えていきましょう!ゆきぽよ:どういう問題提起(笑)!屋敷さん:でもいいテーマかもしれないですよ。迷っている間にチューするとどうなるのかというのは。――ちなみに個人的にはどっち派なんですか?屋敷さん:個人的にはチューしたらチューしたなって事実が一つ残るので、もし僕が選ぶ立場なら気にするかもしれませんね。峯岸さん:でも、キスをしたからいい方向に動いたパターンと、しなかったからよかったというパターンがあるんですよ。だから、一概には言えないんですけど個々の緻密な計算と、タイミングで明暗が分かれるんだなと思ったので、キスをするかしないかじゃないっていう複雑さもあるんですよね……。――なるほど。相手によるし、その時によるし、みたいな……。屋敷さん:前回はキスしたせいで完全に嫌われた奴もいたんですけどね。今回はそれともまたニュアンスが違うかなって。■最終話まで「全然読めない」展開――最終話まで見られたとのことですが、“Season5ならでは”の魅力をあげるとしたらどのような部分でしょうか?ゆきぽよさん:海外っぽい。海外の映画を見ているみたいな感じ。過激なキスとかいっぱいあるんですけど、全部きれいなんですよね。生々しくないというか、アートっぽくて、すごくきれいな感じです。峯岸さん:今までは第一印象で全てが決まってしまうような展開も多くある中で、その分安心して見られるカップルが前半から何組かいたりすることが多かったんですけど、今回は本当に女の子の努力とか、粘りとか、そいういうものが大きく影響していて、最後までどのカップルが報われるのか全然読めなくて、屋敷さんが1万円賭けようぜっていうくらい(笑)。それくらい白熱してました。屋敷さん:完全に50%でしたね。バカラ。峯岸さん:ギャンブル性みたいなものはあったかもしれないです。全然予想できなくておもしろかったです。屋敷さん:そうですね。最後まで分からなかったというのがSeason5の特徴だし、全員主役やったっていうのが今までと違うかもしれないです。峯岸さん:私がこの状況下だったら諦めちゃうなっていう場面でも、女の子ががんばり続けたことでスポットが当たったりしていたので、恋愛に対して本当に前向きになれると思います。想い続けることって意味あるんだって、まさか『シャッフルアイランド』から学ぶとは思いませんでした(笑)。
2024年07月12日取材・文:ミクニシオリ撮影:洞澤佐智子編集:松岡紘子/マイナビウーマン編集部あの大人気恋愛リアリティショー『バチェラー・ジャパン』シーズン5で最後の一人に選ばれた女性は、番組の中でよく涙を流し、大きな声で笑う、感情表現の豊かな女性だった。大内悠里さん。リッチな男性であるバチェラーに選ばれるために、清楚な雰囲気の女性が多く参加する中で、金髪ショートヘアの彼女は目を引いた。そして、大内さんはバチェラーと結ばれ、2024年1月に彼と別れを告げた。リアリティショーの中での一面が取り沙汰されがちだが、ビジネスウーマンとしても、優れた才を持つ彼女。2024年4月に発売した彼女の著書『すっぴんメンタル 自分の感情に素直になれば仕事も恋愛も大事にできる』(大内悠里著/KADOKAWA)の中では、彼女が歌舞伎町や名古屋のキャバクラでNo.1になるまでの経緯や、起業後の飲食店経営術などについても触れられている。キャバ嬢、経営者としての大内さん、そして『バチェラー・ジャパン』の旅の中で大恋愛をした大内さん。その経歴からは、とても華やかで強かな女性を想像するけれど、実際の彼女は親しみやすく等身大だ。世間から注目を集める恋愛を経験したあとも、なぜ彼女は自分らしくいられるのだろうか。■「自信のない自分」変えたくて、もがいた20代リアリティショーという名前がついているせいか、どうしても私たちは、画面の中での彼女が“本当の彼女”そのものであるかのように受け取ってしまう。けれど今回の取材で現場に現れた大内さんは、全方位に気を配ってくれて、あの時感じた“感情表現の豊かさ”とは、また違った一面を見せてくれた。そして参加時を振り返りながら、エッセイ本の出版についてこう話す。「番組の中でも、私の自己肯定感の低さは露呈していたと思うんですけど(笑)、出版のお話をいただいた当初は、私に話せることなんてないだろって思いました。だけど、そんな等身大な姿が私の魅力なんだと担当さんが口説き落としてくれて、やってみようという気持ちになったんです。過去を語るにあたって避けられない、水商売時代のエピソードに対しても、世間の方々に必ずしも好意的に受け取ってもらえるわけではないと思っていたので、過去について話すのはかなり勇気のいることでした」他人からの目が気になってしまうという彼女は、よくエゴサをするのだという。幼い頃からあまり自分に自信がなく、大人の顔色を伺ってしまう子だったのだそう。だけど彼女は社会人になって、常に「人目に触れる」仕事を続けている。「人の目が気になるからこそ、接客業は向いていると思っています。気を遣って立ち回るのは得意ですし、周りが私にどんな役割を求めているのかが分かるから。だけど、バチェラーに会った瞬間に泣いちゃうくらい素直な性格なことも本当で、素直でありたい自分と、他人から求められる姿を演じたい自分の狭間で、ストレスを溜めてしまう時期もありました」接客業に従事していなくても、他人から求められる自分を演じたくなる気持ちが分かる人もいるのではないだろうか。だってきっと、その方が相手から愛されるはずだ。いくつかの自分を持っていれば、色々な人と仲良くできるだろう、と。だけど自分を偽るのは、やっぱりすごく疲れることなのだ。だから大内さんは、そんな自分と決別した。「キャバクラ時代、お客様に『もっと自然体でいいよ』って言われていたんですけど、その時にはそんな風にはなれっこないと思っていました。だけど自分で経営を始めて、変わることを意識し始めたんですよね。他人に合わせるのって、目先のメリットが欲しいからだと思うんです。でも、そんな関係って長続きしないじゃないですか。従業員を養っていく責任を負うために、中長期的な目標を立てるようになって、無理した人付き合いはやめました」幼い頃からの人目を気にしてしまうクセも、環境の変化とともに改善し、少しずつ「生きやすい選択」ができるようになったという。
2024年06月21日取材・文:ミクニシオリ撮影:渡会春加編集:杉田穂南/マイナビウーマン編集部「公認不倫」……最近よく目にすることも増えたワード。永遠を誓いあった相手がいながら、セカンドパートナーの存在を認め、それでもなお夫婦として、一緒にいたいと思える理由とは、なんなのでしょう。そんなセンシティブなテーマを扱い、2019年にはマンガ大賞にもノミネートされた渡辺ペコさんの漫画『1122 いいふうふ』が、Prime Videoにてドラマ化。公認不倫中のセックスレス夫婦、一子(いちこ)と二也(おとや)を演じるのは、高畑充希さんと岡田将生さんです。主演のお二人に聞いたのは、作品を演じたからこそありありと感じたという「結婚する意味」や「いい夫婦とはなんなのか」について。絶対的な答えのない問いに、真剣に向き合ってもらいました。初共演とは思えない、高畑さんと岡田さんの息のあったダブルトークにも注目です。■公認不倫する夫はクズ?演じた2人の意見は……ーー『1122 いいふうふ』はこれまでにない題材を扱ったドラマ作品ですが、原作や台本を読んでどう感じましたか?高畑充希さん(以下、高畑)原作をもともと読んでいたのですが、台本になった時もやっぱり面白いなと思いました。登場人物たちはみんな一生懸命で、みんな間違ってないようで、間違っている部分もあって……。ただ、何が正義で悪なのかをジャッジする作品ではないんですよ。人間って時に正しくないって分かっていても、止められない時があるなって。だからこそ共感できたし、どの人物もとても愛することができました。岡田将生さん(以下、岡田)僕は今回の話をいただいた後に初めて原作を読んで、みんなの感想なんかも色々調べてみたんですけど、公認不倫する夫に対して「クズ」と考える人が多いんだなあと。ただ、誰だって間違いを犯すことはあるし、僕が演じた二也は「クズ」ではないと思っています。原作を読んでそう思った人にも、改めてドラマを観てほしいですね。ーー扱っているテーマがテーマだけに、男女で見た印象が変わりそうな作品でもありますよね。高畑私は、原作を読んだ時も(二也のことを)クズだとは思わなかったです。ただ、実際ドラマ化したらどうなるんだろうとは思っていました。でも実際岡田さんが演じられて、役に人間が宿ることで、とてもチャーミングなおとやんだ!と思いました。岡田やっぱりそうだよね?僕、妙にクズ男っぽい役を演じることが多いんですけど、今回はそうじゃないんです!そのことが皆さんに伝わるといいんだけど。二也はすごく人間らしくて、優しい人なんですよ。ーー作中の演技もそうでしたけど、お二人はすごく息が合っていますね。岡田初共演ということもあって、クランクイン前から共通の友人を介して食事会をしていたんです。それがプラスに働いた気がしますね。高畑やっぱり夫婦だから、目を見ないでお芝居できるくらいの空気感は最初に作りたかったです。お互い人見知りなので、初対面で演じるのは難しい役柄でしたが、幸いなことに共通の友人が多かったので、周囲にも助けられました。■特殊な関係の夫婦を演じ、結婚観に変化がーー作品は、公認不倫を通して「夫婦のあり方を模索する」ことがひとつのテーマになっていたかと思います。一子と二也を演じてみて、結婚について学べたことなどはありましたか?岡田僕は結局、“結婚は恋愛の延長線上”なんじゃないかなって思った。婚姻届で家族になるんだけど、元は他人……だけど歩み寄っていかなきゃいけないから。難しいですよね。高畑私は一人っ子だから、結婚して家族が増えることを、すごくポジティブに考えています。家族仲はいいんですけど、今まで何でも1人でやらなくちゃいけなかったし、今後ずっと1人で抱えていかなきゃいけないと思っていました。恋人にはなかなか家族のことは頼れないけど、夫婦になったら頼れるのかもしれないなと。そういう意味では、理解あるパートナーがいる一子が羨ましかったです。岡田僕たちまだ結婚もしてないので、なんとも言えないですけど……ただ、作中で一子が夫の携帯を覗いちゃうシーンがあるんですけど、あれは僕にはできないなあ。絶対に修羅場になるじゃないですか。夫婦だからって、なんでもシェアし合うのが正解とは限らないのかなと。高畑私も、携帯は怖くて見れないなあ(笑)。ーー今回のお仕事を通して「いい夫婦像」に変化はありましたか?岡田今までは、理想の結婚像みたいなのがあったんですよ。でも逆に、一子と二也のことを見ていると、現実を思い知ったというか……。僕が描いてた理想なんて、結局理想でしかなかったんだと気づかされたかも。やっぱり、生きていれば何かしら問題は起こるし、笑顔でいられない日もあると思うんですよ。だけどそれでも、2人の正解を探していけるのが「いい夫婦」なんじゃないかと思いました。高畑すごく分かります(笑)。結婚しても歩み寄る努力は辞めちゃいけないんだなと。楽しいからとか、好きだからってだけじゃ解決できないこともあるかもしれないけど、難しい問題にもちゃんと向き合って、一緒に解決できることが大切なのかなと。夫婦って、チームなのかなと思いました。岡田まだ分からないですけどね。もし結婚する時が来たら、その答え合わせができるのかなと思います。■結婚、夫婦……「なんとなく」だった価値観を見直すきっかけにもーー最後に、どんな人に作品を楽しんでほしいですか?高畑これから結婚したい人も、そうでない人も、結婚して幸せな生活を送っている人も、とにかく面白く観れる作品だと思います。ただ、エンタメ性があるだけじゃなくて、リアルで人間臭い話ではあるんですが……とにかく、まずは1話だけでも見てほしいですね。岡田まずは1話だけ、って思っていても、気づいたら引き込まれて4話くらいまで観てるんじゃないかな(笑)。このドラマはPrime Videoさんだからこそ配信できるものだと思います。そのくらい尖ったテーマを取り扱っているんだけど、議論するにも面白い作品だと思うので、恋人やパートナーと一緒に観てみるのも面白そう。一子と二也の関係性は少し特殊だけど、僕は応援したくなったし、ずっと一緒にいてほしいなと思いました。結婚への理想とか、ずっと一緒にいられるパートナーってどんな人だろうとか、自分の今後についても、イメージが変わる部分なんかもあると思います。『1122 いいふうふ』妻・ウェブデザイナーの相原一子(高畑充希)。夫・文具メーカー勤務の相原二也。友達のようになんでも話せて仲の良い夫婦。セックスレスで子どもがいなくても、ふたりの仲は問題ない……だけど。私たちには“秘密”がある――。それは、毎月第3木曜日の夜、夫が恋人と過ごすこと。結婚7年目の二人が選択したのは夫婦仲を円満に保つための「婚外恋愛許可制」。二也には、一子も公認の“恋人”がいるのだった。「ふたりでいること」をあきらめないすべての人に届けたい——、30代夫婦のリアル・ライフ。一見いびつで特殊な夫婦の関係に見えるふたり。だけど、結ばれて“めでたしめでたし”で終わる物語のその先は……?6月14日(金)、Prime Videoにて世界独占配信開始!Ⓒ渡辺ペコ/講談社 Ⓒmurmur Co., Ltd.
2024年06月14日『由宇子の天秤』『サマーフィルムにのって』『PLAN 75』『ある男』『少女は卒業しない』等々、数々の力作で存在感を発揮してきた河合優実。2024年も『四月になれば彼女は』やドラマ「不適切にもほどがある!」「RoOT / ルート」、アニメ映画『ルックバック』、第77回カンヌ国際映画祭の監督週間に出品された『ナミビアの砂漠』ほか、話題作がひしめく彼女が、実在した人物を熱演した主演映画『あんのこと』が劇場公開中だ。幼い頃から母親に虐待され、売春を強要され、その過程で薬物依存症になってしまった21歳の杏(河合優実)。人情派の刑事・多々羅(佐藤二朗)とその友人でジャーナリストの桐野(稲垣吾郎)と出会い、どん底の人生をやり直そうと奮闘していく。生傷が広がっていくような壮絶な役どころを、一人の人物として寄り添い、文字通り「生きて」見せた河合さん。舞台裏と共に、表現者としての信念や葛藤を語っていただいた。映画を通して「世の中がよくなっていけば」――本作は新聞記事に掲載された実在の人物と事件をベースにした物語です。入江悠監督と共に記者の方にも入念な取材を経たうえで臨まれたと伺いました。公開を控えた今のお気持ちはいかがですか?何を言えばいいんだろうというくらい、怖いです。撮影中に自分自身が「つらい」と感じることはあまりなく、ただただ「杏を生きる。自分のところに来たからにはもう大丈夫だよ」という気持ちで臨むことに集中していたのですが、杏として追い込まれるというより彼女のことを映画にして届けることが重くのしかかっている部分があります。正直なところを言うと、どう捉えて自分が表に立ったらいいかまだ全部は整理がついていません。ただそんななかで、雑誌社で働いている高校の同級生がこの前本作の取材に来てくれて「この映画は絶対届けなきゃいけない」と言ってくれました。そして、こうやってインタビューをしてくださる皆さんの温度感で「ちゃんと受け取ってくれている」とも感じます。私自身も「作ったからには絶対にたくさんの人々に届けなきゃいけない」とは強く思っているので、そのことを自分に言い聞かせ、何とか奮い立たせて頑張って世に送り出そうとはしています。この作品をある種媒介にして、もう少し世の中がよくなっていけばいいなという感覚です。もうそれしか目指すところはないと思いますし、今まで出演させて頂いた全部の映画にたいしてもそうかもしれません。――『あんのこと』にはDV被害者の方等が暮らすシェルターマンションや薬物依存症からの更生を目指した自助会等々、各々の“再生”に向けた現実社会の事柄も描かれます。映画を通して「知る」「理解を深める」という効能もありますね。多々羅(佐藤二朗)という警察の中にいる人が、「薬物で捕まってしまった人を更生させてあげたい」という個人的な想いで自主的に作ったグループという点には驚かされました。「助けたい」「よりよい環境に連れて行ってあげたい」という人の想いで作られている組織の存在を、私は全然知りませんでした。「自分たちで助け合う」という気持ちがないとなかなかその状態から抜けだせないし、逆にいうとセーフティーネットがないから共助していかないとダメな状況なのだろうな、とも言うことがわかりました。出演後に変化した社会の見え方と心境――漠然とした質問で恐縮ですが、本作に出演されて河合さんご自身の社会の見え方は変化されましたか?変わったと思います。これまでも様々なニュースを観て「自分と違う境遇にある人がたくさんいる」ということを知識としてわかっているつもりでしたが、その当事者を演じるなかで自分自身が疑似体験したことや、映画にしていくことで感じた事柄によって見え方は変容しました。こうした社会問題について、どういう風に情報が発信されて人々がキャッチしているのかといった部分についても考えるようになりました。――先ほど河合さんがおっしゃった「怖さ」について思うのは、こうやって取材等で言葉にすることもそのひとつなのではないかということです。そうですね。言葉にすることへの怖さもあれば、難しさも感じます。そもそも、本作に限らず言葉で言えないから映画になっているところもありますし。言葉にしなくて済んだものを言葉にすることで、自分がそのとき感じていたことや、表現したことからズレてしまったり、より大きく伝わってしまったり小さくしか言えなかったり、そういったことは本当にたくさん起こります。ただ、映画に出た後に作品や自分のお芝居が何を表現していたかちゃんと言語化したいとも思うので、どんな作品でも頑張って言葉にしようとはしています。――ちなみに、本作のように実話から派生した作品に出演したことで、ご自身の観客としての心持に変化はございましたか?私が作品を観て感動するときは、そこにある人間や精神、命をとても尊重していると感じられた瞬間だと思います。いい作品にはモラルがあるものだと私は考えていて「これはフィクションではあるけれど、人の尊厳を踏みにじっているんじゃないか」と思うときはやっぱり、いい作品と思えません。これは『あんのこと』に関わっている際に、よく考えたことです。現実社会の課題を描く映画へ多数出演――河合さんがこれまで出演された作品には『PLAN 75』や「神の子はつぶやく」ほか、現実社会とリンクするものも多くありますね。確かに今までも、様々な社会の課題に対しての映画に出演させていただきました。そのなかで『あんのこと』は実在した人物の人生を映画にしたという意味で直接的ですし、そのぶん自分の中で重くのしかかるところはありました。――そうですよね。劇映画という性質上、どうしたってある種の暴力性や、見ようによっては搾取という部分から切り離すことはできないとも思いますし。そういった部分との折り合いについては、いかがでしょう。「ついている」とは言い切れないですね。でも、主演として、この作品を世に出していく立場としてそう言っていいのかもわかりません。だからこそ「どうしよう」と悩みはしますが、「絶対に映画にして世の中に伝えるべき」と信じた入江さんの気持ちや、私が取り組んでいた気持ちは本物です。他者の気持ちを完全に察することは難しいけれど、ご本人にお話を聞くことが叶わないぶん自分の中では「敬意を払う」ことしかできないから、できる限りのことはやり切りました。「観てほしい」と言っていい、と自分が思える材料はそこにしかないと思います。今現在はまだ客観的に受け止めきれておらず、「入江さんや自分が精いっぱいやった」ということだけが免罪符になっているような感覚です。――河合さんの全身全霊のお芝居を目の当たりにされたら、きっとその想いは伝わるのではないかと思います。今回は「生き返す」がテーマだったそうですね。入江さんが最初に下さった文章に書いてあった言葉です。「描きたいことを描くためにどういうシーンを構築していくか」や「そこにいる人をどう撮るか」を一端脇において、私の身体を通して彼女が生きているということをもう一度見つめようとしているのかなと感じました。そういった目標があったため、私自身のアプローチもこれまでとは違ったものになりました。普段は全体から入ることが多く「このシーンは全体の中でこれくらいの場所にあるから、こういう道のりを辿ろう」や「映画全体の中でこういう役割を果たす」と逆算してお芝居を考えていくのですが、今回は杏という人物に出来るだけフォーカスしようという考え方にどんどん近づいていきました。私自身も実在した方の役は初めてでしたし、歴史上の人物ということとも違い、何年か前まで生きていらっしゃった方ですから、強い気持ちがないとやれないと当初から感じてはいました。撮影もほぼ順撮り(脚本の順番、或いは時系列通りに演じること)だったので、よりそうした方向に進みやすかったとも思います。作品作りも“モラル”が重要「人間性で信頼できる方とご一緒したい」――河合さんは「入江監督との信頼関係」を語っていらっしゃいましたよね。物語としての全体を意識して動くのではなく、その瞬間の役に集中するということは、“見え方”をこれまで以上に監督に委ねることになりますから。そうですね。一つ記憶に残っているのは、高架下のシーンです。薬物をやめていた杏がもう一回使ってしまい、多々羅が迎えに来る場面ですが、撮影後に背中をポンと叩いて「よかったよ」と言って下さったんです。入江さんはいい/悪いをあまりオープンに役者に伝えない方という印象があったため、嬉しかったです。その後にも「僕は今日、あのシーンを撮って香川杏という人を尊敬出来ました」とメッセージを送ってくださいました。一緒に映画を作っていくうえで、もう一段階踏み込んで手をつなげたような気持ちになった出来事でした。――素敵なエピソードですね。例えばご自身が「組みたい」と思うクリエイターや「参加したい」と思う企画においても、先ほどお話しいただいた「モラル」が重要なのでしょうか。それは大きいかもしれません。これは映画に限りませんが、「決して善い人間ではないけど歴史的な芸術を生み出した」という人物もこれまでたくさんいますし、その人たちの作品を好きな自分はいます。ただ、自分が一緒に組むとなると、表現すること以前に人間性で信頼できる方とご一緒したいと現時点では思います。(text:SYO/photo:Jumpei Yamada)■関連作品:あんのこと 2024年6月7日より新宿武蔵野館ほか全国にて公開© 2023『あんのこと』製作委員会
2024年06月10日取材・文:ねむみえり撮影:洞澤佐智子編集:杉田穂南/マイナビウーマン編集部自分の好きなものを仕事にするというのは、一種の憧れがあるのではないでしょうか。今回お話しを聞いた望月真希子さんは、小学生の時から好きだったという文房具に携わりたいという気持ちで就職活動をし、キングジムに入社されました。キングジムにとって初のブランド「HITOTOKI」を立ち上げるまでには、さまざまな苦労があったそう。その苦労を乗り越えてきた望月さんからは、文房具への大きな愛が感じられました。キングジムにとって初のブランド「HITOTOKI」を立ち上げるまでには、さまざまな苦労があったそう。その苦労を乗り越えてきた望月さんからは、文房具への大きな愛が感じられました。■小学生の時から大好きな文房具に携わりたいまず初めに、現在どのようなお仕事をされているのかお聞きしたいです。私は入社してからずっと開発一本なのですが、今は開発本部のステーショナリー開発部というところに所属をしております。ファイルやノート、スタンプといった、いわゆる文房具屋さんに売っているような商品を担当しています。入社してから開発一本とのことですが、就職活動をされていた時から開発に携わることを意識していましたか?開発職に就きたいという希望はあったのですが、もし就けなかったとしても、とにかく文房具に携わりたいという気持ちが非常に強かったです。昔から文房具が大好きだったので、就職活動をしていた時は文具業界のみを受けていました。文房具にハマった理由はなんだったんですか?小学生の時にシール手帳を作ったり、手紙の交換をやったりしていて、その時から文房具は好きだったんです。大学ではプロダクトデザインを専攻していたので、専門的な文房具にも触れる機会が多くて、文房具全般が好きになりました。■女性3人から始まった、会社初のブランド「HITOTOKI」望月さんはキングジムのブランドである「HITOTOKI」に立ち上げから携わっているとのことですが、立ち上げるまでの経緯を教えて下さい。今までも特定の商品を作りこんでいくということはあったのですが、私としては、今自分が作っている企画たちを1つにまとめてブランド化していきたいという思いがありました。当時、会社にはまだその文化がなかったので、2年ぐらいかけて、私含め開発にいる2人と、営業女性の3人チームで「HITOTOKI」というブランドを作っていきました。女性3人から始まったブランドなんですね!でも、どうしてそんなに「ブランド化」にこだわったんでしょうか?ブランドを作ると、商品群全体を知ってもらうきっかけになるんじゃないかなと思ったんです。例えば、自分が好きな洋服のブランドって、そのお店に行けば好きなものが何かしらあると思うじゃないですか。ブランドの新作や、発信する情報を楽しみにしてもらう、それを文房具でもやりたかったんです。また商品単体でPRするよりも、ブランドで括ることでこの先いつか、大きな活動につなげられるのではないかとも考えていました。なるほど。でも、ブランドを立ち上げるのはそう簡単じゃなかったのでは……?そうですね。会社として初めての取り組みだったので、“ブランドにする必要性や優位性”を上層部の人たちに納得してもらうことから始めて……。まずはその伝え方に苦労をしました。「HITOTOKI」のサイトには「いい日と。」というタイトルでブランドメッセージを載せているんですが、これには「いい日が作れる文房具を作りたい」という思いが込められています。私たちが作る文房具を使ったり眺めたりして、楽しいと思える日が積み重なることでいい人生になるんじゃないかと。そんな文房具を作り続けたいとブランド化するにあたっては、社内でこういったコンセプト側の説明も何回もしていました。新しい試みだからこそ、丁寧に説明していかなければならなかったんですね。そうなんです。ブランドを作った実績が会社になかったので、そもそもブランドってどうやって作るんだろう、というところから始まりました。ブランド化が決まったあとには、コンセプトはどのように作り上げていこうかとか、ブランドってどう発表すればいいのだろうとか。基本的なことが全く分かっていなかったので手探りでした。そんな状況だったので、今までやったことのない仕事にまで手を伸ばしてやっていました。でも、こうして年齢関係なく好きなことを提案させてもらえる環境があって、関連部署のみなさん もたくさん手助けしてくれたので、なんとかブランドの立ち上げも成功し会社にはすごく感謝しています。■ブランドとしてコンセプトに沿った商品を出すことはユーザーさんとの約束次々と新しい商品を開発されている望月さんですが、アイディアを出し続けるのは大変じゃないんですか?アイディアが煮詰まることは多々あります。そういう時は、時間を決めて外に出て色んな商品を見てとにかくインプットします。その日は必ず最後にカフェに入り、その日に思いついたアイディアをノートに書きだすということをして、アイディアをどうにか出し続けています。入社してから書き溜めている“アイディアノート”はもう何十冊もたまりました(笑)。すごい……!アイディアを出すうえで大切にしていることは何かありますか?絶対に自分が欲しいものしか作っちゃいけないと思っています。どうしても企画件数の目標値みたいなものが毎年あるのですが、ブランドとして商品を出すってユーザーさんとの約束みたいなところがあるので、ブランドコンセプトに沿っていて、自分も欲しくて、絶対におすすめできるものを作るというのを必ず守りながら新しいものを企画しないといけないと思っています。ユーザーさんの期待を裏切らないという、強い信念を感じます。最後に、望月さんの今後のビジョンをお聞きしたいです。私たちが作っているスタンプやシールなどの文房具は、毎日仕事で使うような“必需品”ではなくてある意味“娯楽品”側の商品なんですよね。必要不可欠ではないんです。けれど、それが仕事をするうえでの活力になったり、それがあるから日々が楽しくなったりする。そういう意味での“必需品”としての立ち位置になる文房具を作り続けたいと思っています。「HITOTOKI」ブランドとしては、最近は雑貨屋さんに並ぶようなトートバッグやピンバッチ、レジャーシートといったものをオンラインストア限定で販売するなどアイテムの幅を広げて展開をしています。文房具ブランドですが、ライフスタイルブランドに少しずつ広げて、より皆さんにとって身近なブランドにしていきたいなと感じています。「HITOTOKI」のこれからのアイテムがとても楽しみです。ありがとうございました!
2024年06月07日6月7日(金)に公開となるアメリカ映画『東京カウボーイ』で、初の海外作品主演を果たした井浦新。冷静沈着、効率至上主義のビジネスマンが、米国モンタナ州で思いがけず人生の豊かさに出会う物語の中で、異文化と触れ合ったことを機に自らを再生させる主人公ヒデキを演じている。役柄同様、勝手の異なる現場を体験したという井浦さんに、撮影について、そして映画の魅力について聞いた。多くの人が共感できる題材だからこそ「僕自身が試される」――初めてのアメリカ映画主演作ですね。どのような経緯で出演されたのでしょうか。マーク監督はこれまでの私の出演作をずっと観てくれていて、それで私に出演依頼が来ました。これまでも、私はとくに海外作品に出たいという意識はなかったのですが、俳優として取り組んできたことが、米監督からのオファーにつながった…ということが、日本の俳優として素直にうれしかったです。――マーク・マリオット監督は、キャリア初期に来日し、山田洋次監督の『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』(1989)の現場に見習いとして参加したという日本映画通。「映画『朝が来る』を見て、新さんの素晴らしい自然な演技、純粋さに心を動かされて、この人が必要だ!とすぐに思い、今はそれは良い決断だったなと思います」とおっしゃっています。藤谷文子さんと共に脚本を担当したデイヴ・ボイル氏は、Netflixシリーズ「忍びの家 House of Ninjas」(2023)の脚本・監督も務めています。オファーを受け、どのように感じましたか。まず、好きな脚本だなと思いました。温かさを感じましたし、ある意味ヒデキの再生の物語でもありました。ヒデキを通して、人はどんな状況でも変化していくことができるという希望の物語でもあるとも思いました。とても普遍的で、自分の中にある身近なものにも寄り添える作品だと感じました。だからこそ、この作品で自分がヒデキを演じることで、その思いをどうパフォーマンスしていけるかという点でも、これはすごいチャレンジになると思いました。たくさんの人たちが共感できる題材だからこそ、それに対してどういうアプローチをするかで、見え方や伝わり方は変わっていきますから、僕自身が試されるとも思いました。――主人公のバックグラウンドはあまり語られていませんが、「再生の物語」と感じた理由は?ヒデキには壮絶な過去があるわけではないと思います。こういう人っているよなと思わせる人物で、誰でも自分を重ね合わせられるような側面がある、そんな男だと思うんです。人によって幸せの価値観って本当に様々で、幸せの種類も人の数だけあっていいと思いますが、ヒデキは凝り固まった考えを持ってしまい、自分で自分の可能性をシャットアウトしていた。きっと彼は、どちらかというと勝ち続けて来た人だったんだと思います。受験も、就職も勝ち続けて、周りが、もしくは自分が望むものをちゃんと手に入れてきて。恋人のケイコもそのひとつだったのかもしれません。ケイコは上司で、恋愛感情はあったとしても、どこか野心的な考えで付き合ったのかもしれない。そんなヒデキがモンタナでは何にも通用しない。言葉も通じないし、価値観も違うし、何も伝わらない。そうして大負けすることができたんです。だからやっと恋愛や仕事で人とちゃんと関われるようになった。人と人とのコミュニケーションの中から、いろいろな幸せが生まれてくるんだということを知ることになり、生まれ変わっていく。そういう意味で、ヒデキの再生の物語だと思いました。「ちぐはぐさを笑いにしない」それぞれの文化に敬意を払う――「勝ち続けることが幸せ」という考えが長く当たり前でしたが、今『東京カウボーイ』のような物語が各国で賞賛されているのは、価値観が多様化し変化していくタイミングだからなのかもしれません。世界中でみんながコロナ禍を同時に経験したというのも大きいかなと思います。当たり前だったものが当たり前じゃなくなって、既成概念が一回壊れて。新しい価値観を否が応でも受け入れざるを得なくなる。新しい考え方と共存して行くというか。もしくはこれはアップデートだと考えて変化をちゃんと受け入れていく、そんな価値観も生まれたのだと思います。この作品は再生の物語ですが、この“再生”はコミュニケーションが鍵になっている。コロナ禍で世界中の人がコミュニケーションの断絶を経験し、不安を感じ、それを越えて価値観を再構築したりアップデートしたりする過程を経た。だから、この物語に自分を重ね合わせやすいのかも知れないです。――モンタナの牧場でヒデキが「Languageが大切だ」と言われる場面が印象的です。直訳すれば、「Language」は「言語」という意味ですが、この文脈では相手の文化や習慣、考え方、服装までも含めた価値観などを意味していますよね。全く違う価値観を受け入れていくことは敬意のひとつであると感じました。監督、脚本の藤谷さんはじめ、みんなが共通認識として持っていたのは、郷に入れば郷に従うことの大切さ。それは異文化交流でもあるけれど、その過程で見えてくるのは、言語や人種が違っても変わらないことがあるということ。違いを認めることで共通するものに気づけるということも、この物語は伝えようとしているのでしょう。これは日本国内でも同じこと。物語の冒頭で、あるチョコレート会社を買収しますが、ヒデキはそこに気づけなかったから失敗した。共通する部分、変わらない思いに気持ちを寄り沿わせること、ヒデキがそれに初めて気づけた場所がモンタナだったんです。――サラリーマンのヒデキがスーツを着て大自然に抱かれた牧場の中に入って行く。かなり滑稽ではありますが、脚本や演出もそれをバカにするのではなく、彼を見守るような温かさがあり、日本の文化を嘲笑するようなものを一切感じませんでした。作る人々が、日米両方の文化に敬意を払っているのが感じられて、見ていてとても気持ちの良い作品でした。それは藤谷文子さんのおかげです。藤谷さんは日本にいた時期から俳優としてだけじゃなく、脚本家としても活動されていました。アメリカにフィールドを移した際に、日本の社会の中で浮いているアメリカ人やちょっと失敗している観光客をずっと観察し作品にしていらした。決して傷つけるようなやり方でなく。今回、モンタナで日本人ビジネスマンを映し出すときにも、そのちぐはぐさを笑いに変えるのではなくて、そこに違和感を憶えたりユーモアを感じたりした観客が自然に何かを受け取ってくれればいいという姿勢なんです。笑いを押し付けてないというか。だから脚本もバランスがいい。藤谷さんは両方の文化からの目線も持っているから、日本人サラリーマンをバカにしないし。人をちゃんと見て人を愛しているから、人や物事へのまなざしが温かい。だから作品の中で、日本人もメキシコ人もアメリカ人も、人種や文化、習慣、風習の違いを否定し合うことはないんです。役と重なることを実感した撮影現場――撮影は、東京以外に、映画『リバー・ランズ・スルー・イット』などのロケ地として有名なモンタナ州のパラダイスバレーでも行われましたね。モンタナ州で約15日間、撮影が行われました。初めてのアメリカでの映画撮影は、日本とは勝手が違って本当に戸惑うことばかりでした。モンタナへ出張したヒデキの現地での戸惑いと、まったく同じ心境でした。モンタナでの撮影現場で学んだことは多かった。共演した米俳優たちは、撮影でカットがかかるたびに、『今の自分のセリフはあまり気持ちが入っていなかったと思う。もう、一回、演じさせてほしい』など積極的に意見を出します。でも、実はいい作品を作るためには、そうやって現場で互いに素直に意見を出し合うことは、とても重要なことではないかと痛感させられました。監督が求めていたのは、いわゆる演技らしい演技をせずに、怒ったり興奮したり、どう動いていくかを見せていくことでした。演技をし過ぎた時はもう1回やってみようとなり、僕も監督がこの映画の温度感をどうしたいのかはキャッチしていたので、いつの間にかヒデキの境遇と僕の状態が一つになっていました。言葉が通じない撮影の現場に入っていくという点では、本当にヒデキと同じような状況になって、いつの間にかフィクションではあるけれども、僕の内側のところでは完全なノンフィクションになっていると、一つ一つ体感してみて感じました。ヘアメイク:山口恵理子スタイリスト:上野健太郎(text:June Makiguchi/photo:You Ishii)■関連作品:東京カウボーイ 2024年6月7日よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開
2024年06月07日【奈つやの中華そば】/下丸子【らぁー麺 なかじま】/広尾【麺楽軽波氏】/武蔵新城【麺銀座おのでら本店】/表参道【らーめん飛粋 武蔵新田店】/武蔵新田お話を伺ったのは…大崎裕史(おおさきひろし)さんラーメン評論家。日本ラーメン協会発起人の一人。東京ラーメンフェスタ実行委員長。1959年、ラーメンの地、会津生まれ。2005年に株式会社ラーメンデータバンクを設立、取締役社長に就任。2011年に取締役会長へ。「自称日本一ラーメンを食べた男」(2024年4月末現在約13,500 軒、約29,000杯実食)として雑誌やテレビに多数出演。著書に「無敵のラーメン論」(講談社新書)「日本ラーメン秘史」(日本経済新聞出版社)などがある。今年オープンした話題の人気オススメラーメン店、5選をご紹介!【奈つやの中華そば】/下丸子『奈つやのもちもち雲呑中華そば』 1150円2024年1月22日オープン。以前は不動前で週二日の間借り営業をしていたが、今年ようやく路面店へ出店。細部まで気を使う店主のこだわりラーメン。旨味と愛情がたっぷり詰まった中華そば。とにかく、トッピングの葱一つとってもすべてがおいしく、隙が無い。麺は菅野製麺所製の低加水で全粒粉入りの細麺。麺とスープの相性も抜群。2種類のチャーシュー、濃い色の手裂きメンマ、「もち姫」使用のもっちもち雲呑、程よい温度の清湯スープ、どれも素晴らしい!とにかく何から何までおいしくてスープまで飲み干したのに、食後、やたらとお腹が空き、身体が「もっとくれ~」と言ってるような、頭よりも身体が欲するラーメンはなかなかない。スープは和風出汁の香りや味を最大限楽しんでいただけるように店主が気を使った温度。女将さんの接客もサイコー。お腹も心も満たされるお店にはそんなに巡り会えないので貴重な一軒。間借り時代と比べて「自分たちの店」になったことが二人の表情や声にも現れており、こちらまで嬉しくなってくる。もちろん味だってパワーアップしている。水はπウォーターに替えてだしも出やすくなったようだ。今年のベスト3が1月に出ちゃった。そんな感じ。奈つやの中華そば【エリア】池上/洗足池【ジャンル】ラーメン【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】-【らぁー麺 なかじま】/広尾『特製らぁー麺』 1800円2024年2月1日オープン。際コーポレーション株式会社の創業から33年、社長自らの名前を店名に入れた日本料理店が2023年11月にオープンした【食十二ヶ月 中島武 西麻布】。そして、その食材を活用して、同店の昼の部に開店したのが、ラーメン専門店【なかじま】。まず初訪時のオススメは、メニュー右端の『特製らぁー麺』。今どき、具沢山の“特製”で1800円だと驚かない金額になってきた。しかし、出てきたのを見て、そして食べ始めると逆にその安さに驚くことになる。具の「どんこ」の大きさや歯応えに驚き、タケノコに関しては随分時間をかけて戻したもの。海老ワンタンにおいては、小海老は叩きペーストに、大きい海老は細切れとぶつ切りの計3種類の大きさにカットし、歯応え、食感、風味、味わいを出している。スープに使う羅臼昆布も日本料理店だから仕入れられる高級品。麺は高級小麦「はるゆたか」を使った特注で通常の麺の倍の価格。チャーシューは有名とんかつ屋さんがこぞって使う「銘柄豚林SPFポーク」を使用。ラーメン好きにはもちろん、外食でいろいろ食べてきている人にも食べて欲しいそんな“ラーメン”がここにある。らぁー麺 なかじま【エリア】麻布十番【ジャンル】ラーメン【ランチ平均予算】2,000円 ~ 2,999円【ディナー平均予算】-【麺楽軽波氏(かるぱし)】/武蔵新城『強煮干し鶏醤油』(950円)+『マトンわんたん』(200円)+『茄子のアチャール飯』(250円)2024年3月15日オープン。店名は「かるぱし」と読む。カレー好きなら「えっ!?」と思うだろう。カレーで人気の「カルパシ」店主、4店舗目にして、初のラーメン業態なのだ。麺メニューは4種類あり、強煮干し鶏醤油がオススメ。そしてマトンわんたんと茄子のアチャール飯も必須。ラーメン自体は、昨今、定番とも言える人気メニューが揃っている。しかし、驚くのは食べてから。チャーシューは2種類で1枚は低温調理のローストポーク、そしてもうひとつがインド産カシアシナモンで仕上げた豚バラチャーシュー。ここでカレー職人の技が効いてくるのだ。次に茄子のアチャール飯を食べてみる。マスタードオイルがばっちり効いており、米はタイ産高級ジャスミンライス。単品でもなかなかのサイドメニューだが、ラーメンの途中で食べることにより、口内にスパイシーさが残ったままスープを飲むと味変になって、しかも心地良い。そして次は、マトンわんたん。スパイスとハーブを利かせており、これを食べた後のスープがまたおいしい。この3種の組合せが絶妙。スープ自体は無添加無化調スープ。そこにインド産のスパイスなどが加わって、個性溢れるラーメンになる。いやはや、恐るべし新店の誕生である。麺楽 軽波氏【エリア】武蔵小杉/元住吉【ジャンル】ラーメン【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】-【麺銀座おのでら本店】/表参道『特製醤油ラーメン』(1450円)+『トリュフワンタン』(400円)2024年5月1日オープン。「銀座おのでら」がラーメンへ参入! 年初に行われる新春マグロ初競りでは、今年で4年連続5回目となった一番マグロを落札した会社である。グループ売上高1300億円、グループ社員数2万超の一大企業。グループ内でミシュランの星を獲ったシェフプロデュースのラーメン店が爆誕。さまざまな銘柄鶏から取った鶏清湯をベースに焼き鴨の香ばしさをプラス。道南昆布、しいたけ、まぐろ節、香味野菜など、多種多様な食材を長時間じっくり炊き上げたスープ。フライド鶏皮チップがいいアクセントになっている。最初は鶏が来て、やや円やかになっていき、途中からハーブバターを溶かすと洋風に変わり、コクも増す。トリュフワンタンも味変に貢献してくる。タレは本醸造醤油、丸大豆醤油、たまり醤油、魚醤など数種類の醤油を独自にブレンド。麺は北海道産小麦「きたほなみ」をベースにした特注麺。チャーシューは豚と鴨の2種類を用意。どちらもしっとり柔らかく、香ばしい。ハーブバターやトリュフワンタンなどのアイテムはフレンチシェフらしく、このラーメン店の個性や特徴を一番表現している。単なる異業種参入店ではなく、高品質ラーメンの新店誕生だ。麺 銀座おのでら 本店【エリア】原宿/明治神宮前【ジャンル】ラーメン【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】-【らーめん飛粋 武蔵新田店】/武蔵新田『チャーシューメン+キャベツ』1500円2024年5月1日オープン。池上線武蔵新田駅のほぼ駅前にオープン。蒲田の本店は常に1時間以上並ぶ行列人気店。新世代“家系”ラーメンである。私が行ったときはGWだったからか、開店間もないのに整理券方式で2時間待ちの大人気。店名が同じ2号店だが、麺やトッピングなどは本店と少し変えている。個人的にはチャーシューがおいしいのでチャーシューメンとキャベツトッピングがオススメ。具は、もも肉燻製チャーシューが3枚、バラ肉チャーシューが3枚と肉好きにはたまらないボリューム。麺は、「春よ恋」「ゆめちから」などの小麦粉を使った特注麺。スープは食後に唇がくっつく濃厚感で本店同様・そのまま。鶏油も醤油もパンチが効いているが、最後まで飲み干せるウマさ。チャーシューも柔らかくて香ばしい。トッピングのキャベツも甘くておいしいし、言うこと無し。らーめん飛粋 武蔵新田店【エリア】池上/洗足池【ジャンル】ラーメン【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】-
2024年06月03日