学習障害(LD)で働いている人はどのくらいいるの?出典 : 学習障害とは、全般的な知的発達に遅れがないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力のうちいずれかまたは複数のものの習得・使用に著しい困難を示す発達障害のことです。英語ではLearning Disabilityと呼ばれ、LDと略されることも多いです。学習障害は、知的発達に遅れが見られないことから、障害者自立支援法の対象外とされてきました。現在では障害者基本法の改正により精神障害者保健福祉手帳の対象となりましたが、まだまだ学習障害を「障害」として認識している人が少ないのも現状です。学習障害の人の就職率として、はっきりとした数字は出ていません。厚生労働省のアンケート結果では学習障害を含む知的障害の見られない発達障害の人は普通学級に進学した人の割合が最も多いことが分かっています。また発達障害がある人の就職状況をみると、一般枠で就労した人の割合は全体の40%近く、障害者枠で就労した人の割合は25%以上いることが分かりました。これらのことから、学習障害の人の中には社会に出て働いている人もたくさんいることが予想されます。厚生労働省「発達障害のある人の就労の現状と課題 障害者権利条約への対応に向けて」大人の学習障害、いつ診断された?きっかけは?出典 : 学習障害は今でこそ知っている人が増えてきている障害ですが、昔はそれほどそうでもありませんでした。知的発達に遅れが見られないため気付きにくく、学習障害が障害として認識されないまま大学へ進学したり、就職したりすることも少なくありません。学習障害の症状は「勉強が苦手」や「やる気がない」などとひとくくりにされ、大人になって初めて発達障害だったと気づいた人も少なくないのです。現在では障害者基本法の改正により精神障害者保健福祉手帳の対象となりましたが、まだまだ学習障害を「障害」として認識している人が少ないのも現状です。以下では、大人になって学習障害と診断された方の小さい頃の症状や、きっかけなどの体験談をご紹介します。私は、注意欠陥障害と学習障害(算数障害で四則計算がまったくできない)です。小学1年生でついていけず、中学でも数学や化学は0点でした。でも、自分なりに数学0点でも他の教科で頑張って高校にも行きましたし、大学も行って、就職もしました。この人のように、学習障害であっても大学へ行き就職する人も多くいます。学習障害の場合、苦手な勉強分野に偏りがあるので、この人は苦手な数学以外に力をいれるという工夫をし、大学へ進学したそうです。小さい頃から勉強が苦手でした。計算ができなかったり、文書を作るのが苦手だったり、記憶力が無く一つのことを覚えるのに時間が掛かりました。よく天然だね!と言われて過ごしてきましたが、天然ではなくただ、発達障害の為、人の話や空気が読めなかったり、質問に対して違う返事を返してしまったりします。なので、上手く伝えられない自覚はあります。その為、自然と臆病になり、なるべく自分から発言したり行動を取らなくなりました。また、あまり考えれないので、とっぴおしないことをしだしたり、自分の思う様に出来ない苛立ちから、癇癪を起こすようになりました。小学生の時に一度学習障害ではないかと言われていたようですが、最近専門の病院で診察してもらったところやはり学習障害という結果でした。このように、大人になってから学習障害が発覚する人もいます。子どもの頃を振り返ってみると、学習障害の症状があった人が多いようですね。学習障害の人が向いている仕事、向いていない仕事は?出典 : 学習障害は、能力の凸凹や特性の偏りが多く、苦手なことにかなり個人差がある障害です。そのため、向いている仕事、向いていない仕事も人によって様々であると言えます。本人の特性を理解し、得意な分野を活かせる仕事につけることが理想ですね。向いていない仕事は一概には言えませんが、苦手な業務が多い仕事内容だと、困難な場面も増え、ストレスを感じることも多くなるかもしれません。一方、別の手段で代替できたり、職場の理解や協力があれば乗り越えられる可能性も大いにあります。たとえば、算数障害(ディスカリキュリア)の人の場合、日々、多くの計算が業務に必要な仕事は苦手かもしれません。ですが、計算機で解決できる場合もあります。同じ小売業でも、暗算が苦手な場合、お釣りを計算しなければいけないお店の会計業務は向いていないと言えますが、バーコードを読み取るだけのレジであれば、問題ないこともあるでしょう。また、書字障害の人は、文字を書く業務が苦手かもしれませんが、パソコンでタイプしてプリントすればよいこともあります。読字障害の人も、音声読み上げソフトを使用したり、録音することで困難が解消できることもあります。苦手な分野を避けることは働き続ける上で大切ですが、テクノロジーや手段を替え工夫することでうまくいくこともあるので、「この仕事は無理」と決めつけてしまう前に検討するのがよいでしょう。実際に、様々な障害特性を乗り越えて作家、映画監督、発明家、俳優など様々な職業で活躍している人もいます。障害特性と向き合いつつも、自分が希望する仕事に目を向ける、という進路も選択肢の一つかもしれません。学習障害の人の仕事の探し方Upload By 発達障害のキホン■学校の進路相談を利用する発達障害に関する就労支援は、現在、よりよい対応を整えている状態です。特別支援学校などでは、卒業後に就職できる企業の紹介もあります。通常学級でも高校、大学ともに進路指導の先生に相談することも可能です。■ハローワークなどの公的支援を利用するまず、最寄のハローワークでの相談をおすすめします。障害者雇用の窓口もあるので、そこでご自身の学習障害の特性について伝え、仕事を探していること、仕事で不安に感じていることなどの相談をすることができます。障害者を対象とする障害者合同就職面接会などの情報を得ることもできます。障害者向けの支援を希望しない場合でも、ハローワークできめ細やかな相談・支援を実施してくれます。適職があれば求人に応募してもよいでしょう。「若年者コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」として、発達障害などでコミュニケーションに困難を抱えている場合の支援も行っており、不安がある場合には、発達障害者支援センターや医師との連携をとってもらうことができます。適職を自分では探すことが難しい場合には、適職を探す方法や調べてもらえるところも紹介してもらえます。就職に不安をかかえている場合には、就労移行支援という方法で就職をすることもできます。これは障害者総合支援法に基づいた支援で、就労移行支援事業所が各都道府県や政令都市の認可を受けて民間が運営しています。この就労移行支援は手帳を取得していなくても支援を受けることができます。まずは最寄のハローワークや就労移行支援事業所に連絡をとってみましょう。ハローワークは発達障害のある人が就職された場合、その事業主に対して助成を行う「発達障害者雇用開発助成金」という制度を設けています。他にも「障害者トライアル雇用奨励金」という短期間の施行雇用を行い、仕事に慣れることで実際の雇用につなげる制度もあります。詳しい情報は以下のリンクを確認してください。実際に働いてみると仕事が想像していた仕事内容と大きく異なった、と離職を希望される場合も少なくありません。仕事を探す際には、似たような職種で職務経験を積んでいく方法や、希望の会社でまず一定期間働くことが可能なのか、聞いてみる方法もいいでしょう。より自分の得意・不得意を理解し、どの仕事ならこなせるか、やりがいを持てるかどうかを把握するヒントになるかもしれません。就職後も相談に乗ってほしい場合はジョブコーチによる支援を受けることもできます。これは、就職後、職場にジョブコーチが出向き、職場でうまく仕事をしていくための支援をしてくれる制度です。■障害者雇用制度を利用する手帳を取得している場合はいわゆる「障害者雇用制度」の対象となります。・手帳所持者を事業者が雇用した際の、障害者雇用率へのカウントの対象となり、障害者雇用枠での就職ができる・障害者職場適応訓練を受けられるなど、就職への支援が受けられます。実際に障害者雇用制度を利用して就労する人の数は年々増加しています。ですが、希望している職種や企業が障害者雇用枠で募集しているとは限らないこと、賃金などの面で希望と合わないこともあるでしょう。一般の求人に応募したい場合などには、手帳を持っているからと言って必ずしもこの制度を利用しなくてもよいですし、手帳取得者であることを報告する義務はありません。制度を利用するかどうか、よく考え、支援機関などと連携し、相談しながら進めていくとよいでしょう。厚生労働省「障害者トライアル雇用奨励金」厚生労働省「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発助成金」学習障害の会社への報告出典 : 大人になって学習障害に気づいた方は会社に報告するか迷うかもしれません。いままで何の問題もなく仕事をこなしていた人、困難があり失敗続きだった人、大人の学習障害は様々ですが、いずれにせよ「障害」という言葉は相手にマイナスのイメージを与える可能性もあるため、報告するかどうか、また誰に報告するかは慎重に検討するべきと言えます。学習障害と診断され、報告をする方の場合、理解のある会社であることが多いようです。何かを隠しながら会社で働くのは、自分へのストレスと、会社への負担を生みかねません。報告することで、「学習障害があったから苦手だったのか」「サボってるわけではなかったのか」と、周囲に理解してもらい、自分の得意・不得意に合った仕事に配慮してもらいやすくなる、というメリットも感じられます。会社に学習障害を報告した人の割合は分かっていませんが、発達障害の人で一般枠での就労後1年で離職する人の割合は37.5%と非常に高いという話もあります。離職の理由としては「仕事のミス」「上司の要求に応えられない」「毎日変わる仕事についていけない」などの仕事上での困難が挙げられました。会社に報告し、自分に合う仕事を担当させてもらうことで、それらの困難が軽減されることもあります。一方で、学習障害の間違った理解により「あいつは仕事ができない」「教えてもできないから教えても意味ないか」など、望まない結果になってしまうことも考えられます。伝える場合は、まずは障害を理解してもらえるよう、しっかりと説明するようにしましょう。厚生労働省「発達障害のある人の就労の現状と課題 障害者権利条約への対応に向けて」学習障害を伝えるとき、「学習障害と診断されました」と伝えるだけでは「障害がある」ということしか伝わりません。学習障害の中でも、どの部分に特性の偏りが見られるのかをきちんと説明し、自分の得意・不得意を理解してもらうことが大切です。1.自分が難しいこと・苦手なこと2.どうすればうまくいきやすいか3.会社・同僚にどうして欲しいのかなどをできる限り具体的に伝えるとよいでしょう。例えば、・書類に記入するのは苦手だが、パソコンは得意なので、パソコン入力を許可してほしい・書類を読むのは苦手だが、読みあげればわかるので、口頭で指示してほしいなど、自分の特性と工夫すればできることを伝え、お願いすれば職場でも対応しやすいでしょう。言葉で伝えるだけでは、理解が難しい部分もあります。その際は、文面に起こす、参考資料をもって伝える、などの工夫もいいかもしれません。同僚には要点をしっかりまとめ、配慮してもらいやすいよう、報告してみましょう。人事のみに伝える場合と、働いている同僚にも伝える場合と、両者のメリットやデメリットも考えてあなたにとって一番いい方法を選んでいきましょう。学習障害を報告した場合でも、職場や周囲に偏見が無理解があれば、職場で差別・虐待を受けてしまう可能性もゼロではありません。こうした深刻なケースでは、本人から周りに助けを求めるのが難しい場合もあるので、周囲の人が虐待に気づいた場合、各市町村の障害者虐待防止センターなどの専門機関に虐待の存在を知らせましょう。本人からの申告も可能性です。またこの虐待は就業場に限らず家庭内の虐待も含みます。障害者虐待防止センターに虐待を相談すると、支援・指導を受けることができ、問題の糸口を探す手伝いをしてくれます。強制的に仕事や家族から隔離されたりすることはありませんので、安心して相談することができます。学習障害の仕事での困りごと・よくあるミスと対処法Upload By 発達障害のキホン学習障害の人は職場で様々な困りごとに直面し、時にはミスを繰り返すこともあります。よくある職場での困りごとと、それを解消するための対処法をまとめてみました。中には、話を覚えるのが苦手で一度にいろんな物事を同時に理解するのが難しい方もいます。メモを取るのが苦手な場合もあります。事前に上司に障害のことを説明し、口頭だけでなく文字に起こした状態で伝えてもらうよう依頼するのもいいかもしれません。また、会議などではボイスレコーダーなどを使用して、あとで聞き返すのも効果的です。自分で話したい物事があっても簡潔にまとめたりその場で話すのが苦手な人は、あらかじめ文章にまとめ原稿を作成しておきましょう。会議中に作成した原稿を確認しながら提案すればスムーズにこなせるはずです。学習障害の中には、文章を読むのが苦手な人もいます。そういった場合には、理解が難しかった言葉や概念をカードやノートなどにまとめておきましょう。一度理解できなかったことは必ず意味を調べ、次に出てきたときにすぐに分かるように常備しておきましょう。読字障害のひとつに読んでいる部分が分からなくなる症状があります。会議の資料やメールなど社会では長い文章が多いですよね。読むのが困難に感じる場合は一行だけ見えるように切り取った枠をつかって対処しましょう。一行ずつ読んでいけば理解がしやすくなります。またタブレットやパソコンなどの音声読み上げ機能を使用するのもおすすめです。まとめ出典 : 学習障害の人が就業する場合、多少の困難はもちろんつきものです。職場の方から偏見を受けたり誤解されてしまうこともあります。学習障害は障害の中でも知的発達に遅れがない分、他人には障害であることが理解されにくい場合があります。自分でも自覚が少なく、仕事ができないと他人と比べて落ち込むこともあるかもしれません。しかし、自分の障害特性を理解することで適切な支援も受けられますし、必要な配慮を周囲の人に伝えやすくなります。自分の特性を理解し、自分にあった対処法を工夫し、やりがいの感じられる働き方ができるとよいでしょう。法令データ提供システム「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」2012年
2016年08月09日親が子どもの発達障害を受け入れられるようになるまで出典 : お子さんに発達障害があることが分かったとき、まず最初に「なんとかしたい」「どんなことをしてもいいから、普通の子にしたい」と考える親御さんも少なくないと思います。でもそんな親でも、専門家の先生から「子供に無理にストレスを与えてはいけません。逆効果です。」「子供のあらゆる行動は、子供の『こうしたい』という自己主張なので、子供の全てを受け入れて抱きしめて下さい」と言われると、当初の「普通の子にしたい」という思いから、「発達障害を何とかしようというのは間違っていた。子どものすべてを受け入れなければならないんだ」という気持ちにだんだんと変化していくようです。本当にお子さんの「障害を受け入れて」いますか?出典 : この気持ちの変化は、お子さんのありのままを受け入れて、お子さんに本当に必要な教育やトレーニング、支援方法は何なのかを考え得るために大切なことです。しかし、お子さんの「障害を受け入れる」ということの意味ををはき違えてしまっている保護者の方も多いように思われます。例えば、障害がない兄のことは厳しく育てていたのに、弟に発達障害があると分かった途端に何もしなくなり、なんでもその子の自由にさせているご両親がいました。その子が人の物を壊しても、「この子はこうしたかったんです。分かってください」といって、子どもに「謝る」というコミュニケーションをまったく教えようとしません。他にも、「この子は今まで大人しかったが、最近は癇癪がでてきた。これも立派に自己主張するようになったということ。成長を感じるよ。」と言っている保護者の方がいました。もちろんそういった場面でお子さんの成長を感じる場面はあると思います。でも、その方はあまり嬉しそうな顔をしていませんでした。これは本当にお子さんの「障害を受け入れている」と言えるのでしょうか。子どもの発達障害に向き合うということ出典 : 私は、「発達障害を何とかしよう」と考えることは、「障害を受け入れていない」ということにはならないと思います。むしろ、子どもに障害があることが分かった後「この子は障害があるから」と言って、その子が社会に適応するための支援や教育を何もしないことこそ、「障害を受け入れていない」ことになるのではないでしょうか。そういった親の教育の仕方は、問題を後回しにしているだけのように私は思います。私の娘は学校での勉強を習得するのに、他の子どもたちの何倍も時間がかかります。もしかすると、娘は他の子どもたちと同じように勉強ができるようになることは難しいかもしれません。でも私は、発達障害を理由に娘の成長を諦めたわけでは決してありません。私は娘に、勉強はほどほどにして家事を教えることにしています。娘には、洗濯物を干してもらったり、味噌汁を作らせたり、ご飯を炊いてもらったりしています。障害のある私の娘には、こういった社会に適応するための教育こそが必要なのです。確かに今はできなくても、成長とともに出来るようになることもあります。しかし、親が子どもの障害をきちんと受け入れられれば、子どもが将来自立して生きていくためには何を教えればよいのかが見えてくるのではないでしょうか。子どもが将来、社会の一員として生きていくために出典 : 障害のある子どもでも、将来は社会の一員として自立して暮らしていく必要があります。そしてそのように生きる権利もあります。そのため、障害があろうとなかろうと、社会で生きていくうえで最低限必要なスキルやマナーは身につけている必要があると思います。もしかすると、障害のある子どもとない子どもの育て方は違うと考えている人が多いのかもしれません。しかし、「その子の得意な部分を見つけて伸ばしてあげるようにすること」が親の役目だとするならば、基本的には変わらないと私は考えています。子どもにいろいろなことを経験させることで、その子のの得意不得意が分かると思います。その経験をさせるきっかけを与えたり、その後に子どもにとって適切な支援は何なのかを考えることが、本当に親がやらなければならないことではないでしょうか。どんな子どもでも、社会で生きていく1人の人間として育てる事に変わりはありません。子どもの障害を本当に受け入れられたのであれば、社会で生きるために必要なことを一つずつ教えていくのが、親の役目だと私は思っています。
2016年08月09日医学的に知的障害の発現時期は分かっているの?出典 : 知的障害とは、発達期までに生じた知的機能障害により、認知能力の発達が全般的に遅れた水準にとどまっている状態を指します。単に物事を理解し考えるといった知的機能(IQ)の低下だけではなく、社会生活に関わる適応機能にも障害があることで、自立して生活していくことに困難が生じる状態です。知的障害は、知的機能および適応行動(概念的、社会的および実用的な適応スキルで表わされる)の双方の明らかな制約によって特徴づけられる能力障害である。この能力障害は、18歳までに生じる。(AAMR,2002)。(栗田広・渡辺勧持/訳『知的障害定義、分類および支援体系』2004年,日本知的障害福祉連盟/刊p17より引用)知的障害は発達期の間に発症すると定義され、後天的な事故や認知症などの病気で知能が低下した場合は含みません。この発達期とはおおむね18歳までを指しますが、知的障害は障害の状態を指すため、障害が現れる道筋は人によってさまざまで、具体的な発現時期も人により異なります。知的障害を引き起こす原因についても出生前の胎児期に発現する先天的な場合が多いと言われていますが、出産後に発現する・成長段階に後天的に発現する場合まで人によって様々です。症状は成長するにつれて明らかになり、だんだんと家族や周りの人が知的障害の症状に気づくことが多いです。乳幼児期にはことばの発達や園での集団への参加の様子などから特性が目立つようになると言われています。ですが、軽度の知的障害は見た目からは判断しにくいため、見過ごされてしまう場合もあります。知的障害の原因は?出典 : 知的障害の原因は一つではありません。脳障害を引き起こす疾患や要因すべてが知的障害の原因となりうると考えられ、また知的障害を発症する道筋も一つではありません。原因不明の知的障害の人も多いとされていましたが、最近になって原因解明の研究が進んでいます。2014年にも脳内タンパク質の遺伝子変異が知的障害の原因の一つとなるという研究が発表されました。知的障害の原因は十分には解明されていない状況ですが、主な要因は病理的要因・生理的要因・環境要因の3つの面から分類できると考えられています。病理的要因は病気や外傷など脳障害をきたす疾患で、これらの合併症として知的障害が一緒に起きることがあります。この中にはてんかんや脳性まひなどのほか、ダウン症などの染色体異常による疾病も含まれます。一方、特に疾病などがなくたまたま知能水準が知的障害の範囲内にあるといった場合、生理的要因と呼ばれます。環境要因は、直接の原因となるわけではありませんが、脳が発達する時期に不適切な環境であることで知的障害の症状が悪化したり、脳の発達が遅れる原因になったりすると言われています。中日新聞 「脳内タンパク質の遺伝子変異、知的障害の原因に」 2014年知的障害を引き起こす病理的要因としては、主に以下のような病気・けがが挙げられます。・感染症によるもの(胎児期の風疹や梅毒、生後の脳炎や高熱の後遺症など)・中毒症によるもの(胎児期の水銀中毒や生後の一酸化炭素中毒など)・外傷によるもの(事故や出産時の酸素不足など)・染色体異常によるもの(ダウン症候群など)・成長や栄養障害によるもの(代謝異常や栄養不良など)・その他(早産、未熟児、仮死など)病理的要因を考え、もしその要因が治療可能であれば、知的障害を最小限に抑えることができるかもしれません。また、その要因が及ぼす影響を予防したり、支援の方向性を検討したりできます。参考:宮本信也・武田一則/編著『障害理解のための医学・生理学』(明石書店/2010年刊)浜渦辰二「ケアの臨床哲学 ー障がいとそのケアー (8)知的障害」 2013年時期によって発現する原因は変わります知的障害の原因はどのように発現するのでしょうか?出生前・周産期・出生後の3つの時期ごとにご説明します。この中には、まだ詳しい原因やメカニズムがわからないものもあれば、医学の進歩で一部原因が解明されたり、発症を防げるようになったものもあります。胎児期に発現する遺伝子変異や染色体異常といった先天的な原因が知的障害を引き起こす場合があります。また、まれに知的障害の素因となる遺伝子が親から子へ伝わることもあります。下記は胎児期に発現する知的障害の素因としてよく知られている疾病です。・先天性代謝異常(フェニールケトン尿症・メープルシロップ尿症など)・ダウン症・脆弱X症候群(FXS)・脳内タンパク質の遺伝子変異などダウン症などの染色体異常が原因の場合、出生前検査などでその可能性がわかる場合もあります。また胎児期はお母さんのおなかの中で身体や脳などの器官がつくられる大切な時期です。この頃にお母さんを通じて感染症や薬物、アルコールなどの外的要因が胎児に影響したり、お母さんの代謝異常などで栄養不足になったりして脳の発育が妨げられ、知的障害を引き起こす原因となる可能性もあります。出産前後の事故などによって脳に障害が現れることがあります。母体の循環障害、へその緒がねじれるなどで赤ちゃんの脳に酸素がいかなかったり、出産時に頭蓋内出血が起こったりして脳に障害が残る場合があります。また低体重や早産などにより、脳が未発達のうちに生まれることも原因の一つとなる可能性があります。これらの出産前後のトラブルは周産期医療の進歩や充実によって少なくなってきています。脳が未発達なうちはけがや病気の影響を受けやく、乳幼児期の感染症や頭部の外傷などが原因になることがあります。日本脳炎や結核性髄膜炎、ポリオ、麻疹、百日咳などに感染し重篤化して脳炎になると知的障害を引き起こす場合がありますが、予防接種により感染の危険を減らすことができます。また乳幼児期に栄養不足だったり、不適切な養育環境に置かれることで脳の発達が遅れることもあります。フェニールケトン尿症は出生後すぐの新生児マススクリーニング検査の対象疾患となっており、そこで自動的に検査されます。疾患が見つかったらすぐに食事療法によって血液中のフェニルアラニンを一定の範囲にコントロールすることで、発症を予防することができます。知的障害は遺伝するの?出典 : 知的障害の原因はさまざまですが、一部に遺伝性の疾患によるものがあることもわかっています。ですが、それは単純に「親から子に遺伝する」ということではありません。そもそも「遺伝子的な原因」とは、どのようなものなのでしょうか?■染色体の異常私たちの身体は60兆を超える細胞から成り立っていますが、細胞一つ一つの核の中には染色体があります。本来ヒトには23対46本ある染色体がありますが、細胞分裂がうまくいかず数や構造に異変が起こることがあります。染色体は遺伝子を乗せたDNAとタンパク質が集まったもので、たくさんの遺伝子情報がコードされているため、これらに異常があると障害の原因となる可能性があるのです。例えばダウン症は21番染色体が1本多く、脆弱X症候群はX染色体長腕末端部に異常があることがわかっています。■遺伝子の変異遺伝子は4つの塩基配列の組み合わせによって遺伝情報を表しています。その並び方に変異が起きるとその遺伝情報をもとに作られる物質がつくられなくなってしまいます。それが知的障害を引き起こす脳機能障害の素因となりえるのです。脆弱X症候群(難病情報センターHP)知的障害の原因は人様々ですので、遺伝を原因としない場合もありますし、まれに脆弱X症候群(FXS)をはじめ単一遺伝疾患(メンデル型遺伝疾患)など、原因となる遺伝子が親から子に伝わることで知的障害が発症する場合もあります。ですが、親が知的障害の原因となる素因を持っていても、それが子どもに必ず遺伝するわけではありませんし、遺伝しても必ず発現するとは限りません。つまり親が知的障害だからといって必ず子どもが知的障害になるわけではないのです。また、遺伝子の変異は誰にでも起こりうるものですし、遺伝性疾患のほとんどは正常な遺伝子や染色体が突然変異を起こすことによります。知的障害の合併症・併存症知的障害は脳の障害と関わりのある他の疾病と一緒に起こる場合もあります。以下に代表的な合併症・併存症をご紹介します。■てんかんてんかんは、神経細胞の過剰な放電によって発作を繰り返す慢性的な脳の病気です。様々な種類がありますが、ウエスト症候群やレンノックス・ガストー症候群などの難治性のてんかんは、知的障害を伴いやすいと言われています。また、知的障害の程度に比例して合併率も高くなります。てんかんの合併率は、重度知的障害で50%前後、中等度知的障害で40%前後、軽度知的障害では10%前後とされる。宮本信也・武田一則/編著『障害理解のための医学・生理学』(明石書店/2010年刊)p36より引用■脳性まひ脳性まひも知的障害を伴う場合のある疾患です。脳性まひは出生前、出生直後の周産期に受けた脳のダメージが原因で運動障害が起こります。てんかんと知的障害、脳性まひの3つを合併する場合もあります。■発達障害自閉症の場合、知的障害を伴う人も少なくありません。ことばの遅れや構音障害を伴う場合もあります。知的障害のある人でADHD(注意欠陥/多動性障害)のような症状が見られる人もいます。その場合、知的障害のある人にADHDの併存を認めるときは、精神年齢に対して過剰であるかどうか注意する必要があります。このように知的障害の場合、他の発達障害の症状がないかどうか、慎重に判断する必要があります。■その他の障害上記のほかにも、原因となる疾患によって、聴覚障害・視覚障害など様々な障害を合併することがあります。■二次障害(併存症)知的障害のある方に見られることの多い二次障害として、うつ病などの気分障害や不安障害があります。「できない」ことを注意されるなどして自己肯定感が下がったり、マイナス思考におちいったりすることが原因となることがあります。このような二次障害を防ぐためにも、早期に障害に気づき、その人にあった対応方法や支援につなげることが大切になってきます。有馬正高/監修『知的障害のことがよくわかる本』(2007年,講談社/刊)知的障害を検査する方法はあるの?出典 : 出生前に知的障害を検査する方法は現段階ではありません。羊水検査でその可能性を検査できるダウン症に関しても、知的障害の程度や可能性は出生前には確実にはわかりません。ダウン症・脆弱X症候群などの染色体異常は出生後の遺伝子検査で診断が確定することができます。フェニールケトン尿症については新生児マススクリーニング検査で検査が行われます。しかしながら必ずしもこれらの疾病=知的障害ではありませんので、羊水検査や遺伝子検査で異常があったからといっても知的障害であると断定するものではありません。また知的障害があってもその程度は人によって様々です。知的障害を検査する方法としては知能検査や発達検査を用いるのが一般的です。知能検査は、様々な種類があり使用する検査は病院などによって異なりますが、「WPPSI」「WISC」・「WAIS」や「田中ビネー」など標準化された知能検査や社会適応能力検査を用いて、知的障害の診断を行います。幼児期の子どもは知能検査や発達検査を受けたり、保護者が質問の回答や記入を行ったりします。検査機関によっても異なりますが、知能検査は正確な結果を得るため、通常1年に1回など期間をあけて測定します。また、知的障害は他の障害や疾患を合併していることもあるため、様々な検査が行われることもあります。てんかんがないか脳波を調べたり、脳の器質的な異常がないか調べるためにMRIをしたりといった、生理学的な検査を行うこともあります。知的障害の治療法はあるの?出典 : 知的障害は環境調整や療育・トレーニングによって改善することができると言われています。その他、代謝異常などの病気が原因の場合は、治療によって改善することもあります。しかし、現在のところ知的障害の直接的な治療法として薬や手術といった医学的治療法はありません。治療法は確立されていませんが、対応法を変えることによって大きな変化があります。例えば発達支援として療育プログラムを利用し、本人にとってよい環境で学ぶ機会をつくることで、成長を促すことができます。また、通う学校においてもその子にあった支援が得られるとよいでしょう。成人後は就職支援なども受けられ、社会人として働いている知的障害のある方も多くいらっしゃいます。扶養手当などの経済的支援も進んでいるので、それらを利用して、お子さんが過ごしやすい環境を作るように心がけましょう。ご家族はカウンセリングやペアレントトレーニングなどを受けることもできます。ペアレントトレーニングとはその名の通り、親に対する子育てトレーニングです。知的障害について理解し、子どもにどう接すればいいのかを学ぶことで、今後の生活と向き合いやすくなります。また、知的障害のあるお子さんをもつ親同士のつながりをつくったり、周りに相談したり、協力しながら子育てを進めることも大切です。疑いがある場合は、専門機関を受診しましょう出典 : 現在知的障害の原因として、染色体異常や先天性感染症などが考えられていますが、それらに当てはまらないものの原因は不明とされています。遺伝する確率や治療法も解明されていませんが、療育や経済的支援は進んでいますので子育てしやすい環境は整いつつあります。しかしながら軽度の知的障害に大人になるまで気づかず辛い思いをされる方も多くいます。早めに気づけるよう、お子さんを気がけるようにしたり、知的障害かもと思われた場合は専門機関での診断をおすすめします。専門機関は、児童の場合、各市区町村の保健センター、子育て支援センター、児童発達支援事業所等をさします。大人の場合は発達障害者支援センター、障害者・生活支援センター、相談支援事業所へ行ってみましょう。知能検査や発達検査は児童相談所や療育センターでは無料で行なえる場合もあります。まずは身近な相談センターに行ってみて、障害の疑いがある場合には発達を専門とする小児科、小児神経科など専門医を紹介してもらいましょう。以下は発達障害を診療できる医師の一覧です。参考にしてみてください。日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」参考書籍:栗田広・渡辺勧持/訳『知的障害定義、分類および支援体系』2004年,日本知的障害福祉連盟/刊参考書籍:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院/刊参考書籍:有馬正高/監修『知的障害のことがよくわかる本』講談社/刊
2016年08月04日知的障害とは?どんな症状?出典 : 知的障害とは、発達期までに生じた知的機能障害により、認知能力の発達が全般的に遅れた水準にとどまっている状態を指します。発達期とはおおむね18歳までを指し、それ以降に事故や病気などで知的機能が低下しても、知的障害とは言いません。厚生労働省は知的障害を以下のように定義しています。知的障害は精神遅滞とも表される、知的発達の障害です。知的機能や適応機能に基づいて判断され、知能指数により分類されます。様々な中枢神経系疾患が原因となるため、正しい診断を受けて、早期に治療・療育・教育を行う必要があります。本人のみならず、家族への支援もかかせない発達障害のひとつです。知的障害(ID: Intellectual Disability)は、医学領域の精神遅滞(MR: Mental Retardation)と同じものを指し、「知的発達の障害」を表します。すなわち「1. 全般的な知的機能が同年齢の子どもと比べて明らかに遅滞し」「2. 適応機能の明らかな制限が」「3. 18歳未満に生じる」と定義されるものです。中枢神経系の機能に影響を与える様々な病態で生じうるので「疾患群」とも言えます。知的障害は、染色体異常を原因とするダウン症のように出生後にすぐ診断できる疾病に合併する場合もあれば、自閉症のように、生後すぐには診断できない障害に合併することもあります。知的障害は「知的機能(IQ)」の検査のみによって診断がくだされるのではありません。「適応機能」という日常生活能力、社会生活能力、社会適応性などの能力を測る指数と併せて診断が下されます。知的障害の診断は医療機関や地域によって異なりますが、一般的に知的障害は「知的機能」と「適応機能」の評価で「軽度」「中度」「重度」「最重度」の4つの等級に分類されます。出典 : この図では、横軸に日常生活能力水準をaからdで取り、縦軸にIQのレベルをIからIVに取っています。日常生活能力水準はaに近づくほど自立した生活が難しいということになり、dに近づくほど自立した生活ができるということを表します。また同様にIQが低いほどIに近づき、IQが高いほどIVに近づきます。横軸と縦軸が合わさったところから、知的障害の程度を診断します。以上の図では、知的機能が低かったとしても適応機能が高ければ、ひとつ上の等級で診断されることがわかります。知的障害は知的機能検査だけで診断されると思われがちですが、このように知的機能と適応機能の2つが評価された上で診断が下されます。小林朋佳稲垣真澄 「精神遅滞」 2011年知的障害はいつ分かる?診断の年齢は?出典 : ダウン症の場合、出生時に知的障害が合併する可能性を示唆できます。しかし、保育園や幼稚園、小学校などで周りの子と比べた発達の遅さから疑いを持ち、医療機関での検査を受け、知的障害だと判明するケースが多いのです。知的障害は発達期の間に発症するとされ、診断は18歳以下が一般的ですが、子どもの頃に症状に気づかず大人になってから知的障害だと診断された方も少なくありません。検査できる年齢等は定められていませんが、症状がわかりやすい幼児以降の診断が多いです。幼い子どもや障害が重度の場合は保護者が代わりに質問に答えたり、記入してもらう方法が適用されます。出典元:内閣府「平成25年版障害者白書(概要)」>第1章障害者の状況(基本的統計より)知的障害の診断基準出典 : 医療機関では問診と簡単なテストを行います。知的障害の診断基準にはアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版テキスト改訂版)や世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)といった基準が使われており、検査結果から総合的に判断します。以下はDSM-5にある知的障害の診断基準です。以下を全て満たすと、知的障害だと診断されます。A 臨床的評価および個別化、標準化された知能検査によって確かめられる、論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、学校での学習、および経験からの学習など,知的機能の欠陥。B 個人の自立や社会的責任において発達的および社会文化的な水準を満たすことができなくなるという適応機能の欠陥。継続的な支援がなければ、適応上の欠陥は、家庭、学校、職場、および地域社会といった多岐にわたる環境において、コミュニケーション、社会参加、および自立した生活といった複数の日常生活活動における機能を限定する。C 知的および適応の欠陥は、発達期の間に発症する。(日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』2014年 医学書院/刊より引用)ほかにも使われる診断方法があります。知的障害は、知能検査と適応能力検査の2つによって総合的に診断が下されます。「田中ビネー知能検査 V(ファイブ)」、「新版K式発達検査」、「ウェクスラー式知能検査」が検査で使われることが多いです。年齢によって受ける検査が異なるものもあります。■田中ビネー知能検査 V(ファイブ)2歳から成人まで受けることができます。就学する5~6歳の年齢にフォーカスをあて、特別な配慮が必要かどうかを判断するための「就学児版田中ビネー知能検査V(ファイブ)」という検査もあります。子どもが興味を持てるように、検査に使われる道具が工夫されています。日常生活において必要な知能・学習する上において必要な知能の2つを測定します。■新版K式発達検査生後100日頃から14歳くらいまでの人が受けることができます。「姿勢・運動」(P-M)、「認知・適応」(C-A)、「言語・社会」(L-S)の3領域について評価されます。3歳以上では「認知・適応」面、「言語・社会」面に、重点を置かれ検査します。楽しみながら検査を受けることができるので、緊張していない自然な行動から判断することができます。試験者は子どもの検査結果だけでなく、言語反応、感情、動作、情緒などの反応も記録し、総合的に判断します。■ウェクスラー式知能検査ウェクスラー式知能検査は、年齢ごとに3つのテストに分類されます。・幼児(3歳10ヶ月〜7歳1ヶ月)→WPPSI・児童(5歳から16歳11カ月)→WISC・成人(16歳〜)→WAISIQが求められるだけでなく、脳の発達具合を下位検査を用いて導出し、総合的に判断することができます。ウェクスラーにはA式検査とB式検査の2種類があり、A式が言語性検査、B式が動作性検査です。教育相談情報提供システム 「発達検査」 国立特別支援教育総合研究所田研出版 「田中ビネー知能検査V」適応能力を評価する検査は大きくわけて3つあります。■適応能力検査の種類・vineland-II(全年齢)・ASA旭出式社会適応スキル(幼児〜高)・S-M社会生活能力検査(乳幼児〜中学生)これらの検査を年齢や状況に応じて使い分け、総合的に知的障害の診断が下されます。日本文化科学社 「心理検査カタログ」 2016年専門機関での診断は受けるべき?どこへ行けばいいの?出典 : 言葉を習得するのが著しく遅いなどの言語能力の遅れや、運動能力の遅れ、社会性の発達の遅れなどで気になることがあるなど、子どもの知的障害を疑ったら、一度は専門機関へ相談されることをおすすめします。医療機関で診断を受けるかどうか、決めるのは本人やご両親の判断となります。ですが、適切なサポートを受けられないまま、生活する上で最も困難さを感じるのは本人です。少しでも早く症状に気づいてあげられれば、フォローして困難の乗り越え方を手助けすることも可能になりますし、できるだけ生活しやすい環境を整えてあげることもできるかもしれません。親や家族で抱え込まず、専門家や周りの人たちの協力を得ながら、その子にあったやり方で接することが大切です。いきなり専門医に行くことは難しいので、まずは無料で相談できる身近な専門機関の相談窓口を利用するのがおすすめです。子どもか大人かによって、行くべき機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所など【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所などその後、すすめられた場合は、医療機関に行き医師からの診断を受けましょう。診断を受けて知的障害だった場合は今後どのように対応していけばいいか聞くことができますし、仮に知的障害でなくとも普段の行動を見直すきっかけになると思います。児童相談所などは電話やファックスでの相談にも対応してくれるため、事前に気になることを聞いてもいいですし、診断に抵抗がある方はまずは相談するだけでも大丈夫です。身近な相談センターに行って相談し、知的障害の疑いがあり、診断を希望すればそこから専門医を紹介してもらえます。自宅の近くに相談センターがない場合には、電話での相談に乗ってくれることもあります。知的障害を含め、発達障害の専門機関は他の病気に比べると少ないですが、発達障害者支援法などの法が整備されたことの影響もあり、年々増加はしています。診断を受けられれる医療機関としては、子どもの場合は小児科、大人の場合は精神科が一般的です。その他、神経科や心療内科なども挙げられます。また、保健センターなどでは知能検査や適応能力を診断する検査を受けられる可能性もあります。以下のリンクは発達障害の診療を行える医師の一覧です。日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」診断の流れ、必要な持ち物は?出典 : 使用する検査は病院などによって異なりますが、「WISC」・「WAIS」や「田中ビネー」など標準化された知能検査や社会適応能力検査を用いて、知的障害の診断を行います。幼児期の子どもは知能検査や発達検査を受けたり、保護者が質問の回答や記入を行ったりします。検査機関によっても異なりますが、知能検査は正確な結果を得るため、通常1年に1回など期間をあけて測定します。また、知的障害は他の障害や疾患を合併していることもあるため、様々な検査が行われることもあります。てんかんがないか脳波を調べたり、脳の器質的な異常がないか調べるためにMRIをしたりといった、生理学的な検査を行うこともあります。なお、検査のみで把握できないことも多いため、行動観察や問診などで総合的に考慮されて、知的障害と診断されます。また、一度の受診で診断されることはあまりなく、何度か経過観察を経て正式に診断を下されることが多いようです。診断に持っていかなければならない持ち物としては基本的に健康保険証とお金、小さな子どもの場合は乳幼児医療証が挙げられます。診察料は病院によってさまざまで検査によっても異なりますが、2万円以内に収まるケースがほとんどです。地域や年齢によっては診察代が無料の場合もあります。しかしながら、保険適用外の検査もあるため、事前に電話などで病院に確認しておくと安心です。知能検査や発達検査の他に問診でこれまでの生活状況について尋ねられることがあります。母子手帳や事前に子どもの行動や1日のスケジュールなどをメモしたものを持参すると質問された時に答えやすいでしょう。まとめ出典 : 軽度の知的障害の場合、本人や周囲の方が気づかないまま大人になることも少なくありません。一方、知的障害の診断を受けると、療育手帳を取得することが可能になり、社会からのサポートが受けやすくなるというメリットもあります。お子さんに知的障害の疑いがある場合、専門機関への相談も検討してみてください。専門家や支援センターの担当者、同じ悩みを抱えるご家族と相談することで、お子さんがより過ごしやすい環境やサポートを考えていくことができるでしょう。参考書籍:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院/刊参考書籍:栗田広・渡辺勧持/訳『知的障害定義、分類および支援体系』2004年,日本知的障害福祉連盟/刊参考書籍:有馬正高/監修『知的障害のことがよくわかる本』講談社/刊
2016年08月03日広汎性発達障害(PDD)の主な症状出典 : 広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders:略称PDD)は、コミュニケーションと社会性に障害があり、限定的・反復的および常同的な行動があることを特徴として分類される発達障害のグループ です。世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)の診断カテゴリで、このグループには自閉症、アスペルガー症候群のほか、レット症候群、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害という障害が含まれています。広汎性発達障害の症状として主に下記の3つが挙げられます。1.社会性・対人関係の障害人に関心を示さない孤立型、言われたことに何でも従う受動型、一方的に話し続ける積極・奇異型、横柄な態度を取る尊大型の主に4タイプに分かれます。孤立型の特徴としてよく言われるのが、視線を合わせない(避ける)などの症状です。2.コミュニケーションや言葉の発達の遅れ他人とのコミュニケーションや会話が苦手で、抽象的な言葉の意味や曖昧な表現、文脈を理解できていないなどの症状があります。言葉の発達が遅れる症状も見られるため、3歳になっても会話ができないということで障害を疑う親も多くいます。3.行動と興味の偏りある特定の物事に強い興味やこだわりをみせることがあります。環境の変化や予定の変更を嫌がったり、普段はできていることも初めての場所だとできないなどの症状があります。その結果パニックを起こしてしまう場合もあります。こだわりが強く偏食になったり、同じ行動を長時間続けるなども見られます。また、機械音やサイレンなど特定の音に苦痛を示したり、抱っこを嫌がったりするなど、聴覚や視覚などの感覚過敏が広汎性発達障害のある人の多くに見られると言われています。広汎性発達障害はいつ分かる?診断の年齢は?出典 : 広汎性発達障害は、なんらかの先天的な遺伝要因と様々な環境要因に起因する何らかの障害が脳が発達する時期に起こり、それが成長段階で「広汎性発達障害」として発見されるとされています。要は先天的な素因によって起こる発達障害の一つとして医学的には捉えられています。広汎性発達障害は親のしつけや育て方の問題で起こっているわけではないことがわかっています。広汎性発達障害は、だいたい3歳までの幼児期に何らかの症状が現れると言われています。広汎性発達障害の子どもをもつ親が、言語能力の遅れやこだわりなどの何らかの症状に気づく時期についても3歳未満が多いとされています。また、1歳半健診や3歳児健診などの乳幼児健康診断で広汎性発達障害を含む発達障害に関する何かしらの指摘があり、その後医師の診断により判明することもあります。中には子どもの頃に気づかず、大人になってから広汎性発達障害と診断された方もいます。思春期以降には、不安障害やうつ病などの気分障害・睡眠障害などのいわゆる二次障害と呼ばれる症状や状態となり、その検査を通して広汎性発達障害に気づく人もいます。まだまだ認知度が低い発達障害ですが、本人に何らかの困りごとや症状があることに気づいた段階で早めに専門機関などで相談し、医療機関を受診するなどして、療育などの必要な支援を受けることが大切と言われています。広汎性発達障害の診断基準は?出典 : 一般的に専門機関での診断はアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版テキスト改訂版)や、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』による診断基準によって行われます。アメリカ精神医学会の診断基準である『DSM-5』では広汎性発達障害の診断カテゴリ下にあったレット障害を除くすべての障害名が、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害という診断カテゴリに統合されました。そのため今後「広汎性発達障害」という診断名は少なくなっていくと考えられますが、本記事では行政や医療機関で広汎性発達障害の名称を使用している場合も多いこと、すでにこの名称で診断を受けた人も多いことから、『ICD-10』の診断カテゴリに準拠して広汎性発達障害の名称でご説明しています。以下は『ICD-10』における広汎性発達障害の診断基準になります。以下の基準の中で当てはまる項目が多い場合や気になる場合は、専門機関で相談することをおすすめします。F84.2レット症候群Rett’s SyndromeA.胎生期・周産期は明らかに正常,および生後5カ月までの精神運動発達も明らかに正常,および生下時の頭囲も正常であった.B.生後5カ月から4歳までの間に頭囲の成長は減速し、また5~30カ月の間に目的をもった手先の運動をいったんは獲得していたのに喪失すると同時に,コミュニケーション機能不全,社会的相互関係の障害を伴い,また歩行および/または体幹の協調運動障害/不安定さがあらわれる.C.表出性および受容性言語の重度の障害があり,重度の精神運動遅滞を伴うこと.D.目的をもった手先の運動を喪失時またはそれ以後にあらわれる。正中線上での常同的な手の運動(もみ手や手洗いのようなもの)があること.F84.3他の小児期崩壊性障害Other childhood disintegrative disorderA.少なくとも2歳までの発達は明らかに正常であった.2歳時あるいはそれ以後に,コミュニケーション・社会的関係・遊び・適応行動について,年齢相応の正常な能力が存在していたことが診断に必要である。B.発症と考えられる時点において,それまでに獲得していた技能を明確に喪失していること.診断には臨床的に重要な技能について,次に挙げる領域のうち2項目以上の喪失(できなくなる場合があるだけではなく)が必要である.(1)表出性または受容性言語(2)遊び(3)社会的技能または適応行動(4)排尿または排便のコントロール(5)運動技能C.社会的機能の質的な異常が,次に挙げる領域のうち2項目以上に存在すること.(1)相互的な社会関係における質的異常(自閉症で定義した型)(2)コミュニケーションにおける質的異常(自閉症で定義した型)(3)常同運動や奇妙な運動を含む,行動や関心および活動性の,限定的・反復的・常同的なパターン(4)物や周囲に対する関心の全般的喪失D.障害は,広汎性発達障害の他の亜型,てんかんに伴う後天性失語(F80.3).選択制緘黙(F94.0),レット症候群(F84.2),統合失調症(F20.-)などによるものではない。F84.4精神遅滞[知的障害]および常同運動に関連した過動性障害Overactive disorder associated with mental retardation and stereotyped movementsA.重篤な過動が,活動性と中言い関する次の問題のうち2項目以上に明らかであること.(1)走ったり,跳んだり,全身を使った運動に示される,持続する落ち着きのなさ.(2)じっと座っていられない,常同的な活度に没頭しているときを除いて,ふつうは長くて数秒しか座っていられない(基準Bを参照).(3)静かにしていなければならない状況での強度の過動(4)めまぐるしく活動を変え,通常行動は1分未満しか続かない(時々,お気に入りの活動により長い時間を費やしても,除外しない.また,常同的な活動にひどく長い時間を費やすことがあっても,その他のときにこの問題が存在すればよい).B.行動や活動の常同的・反復的なパターンが,次のうち1項目以上に明らかであること.(1)固定して頻繁に繰り返される奇妙な運動,全身を使った複雑な運動ないし,手をひらひらとさせるような部分的な運動のいずれかがある.(2)過剰で意味のない活動の一定の形の繰り返し,単一の物体(たとえば流れる水)との遊びや,儀式的な行為(1人でしたり他人を巻き込んだり)など(3)反復する自傷行為C.IQは50以下.D.自閉的なタイプの社会機能障害はない.すなわち,次のうち3項目以上を示すこと.(1)社会的相互関係を調整するうえで,視線・表情・姿勢を発達的に適切に使用すること.(2)発達的に適切な,同世代の小児と関心や活動などを共有できる関係があること.(3)少なくとも時々は他人に慰めや情愛を求めていくこと.(4)他人の楽しみを時々は分けあうことができる.社会機能障害の他のタイプ,たとえば見知らぬ人に平気で近づくことなどは,あってもよい.E.自閉症(F84.0とF84.1),小児期崩壊性障害(F84.3)または多動性障害(F90.-)の診断基準を満たさない.F84.8他の広汎性発達障害Other pervasive developmental disordersF84.9 広汎性発達障害,特定不能のものPervasive developmetal disorder, unspecifiedこれは残遺診断カテゴリーで,広汎性発達障害の全般的記載には合致するが,十分な情報を欠く,あるいは矛盾する所見があるために,F84の他のコードのいずれの診断基準も満たさないような場合に用いるべきである。(中根允文ほか/訳『ICD-10精神および行動の障害DCR研究用診断基準』2009年,医学書院/刊p158より引用)自閉症・アスペルガー症候群の診断基準に関しては下記の記事をご参照ください。専門機関での診断は受けるべき?どこへ行けばいいの?出典 : 上記で述べた症状や特徴などが見受けられる場合、専門家に判断してもらうことをおすすめしますが、いきなり専門医に行くことは難しいので、まずは無料で相談できる身近な専門機関の相談窓口を利用するのがおすすめです。また、1歳半や3歳児健診などの乳幼児健康診断がある場合は、医師や専門家もいるのでその際に相談してみるのもよいでしょう。子どもか大人かによって、行くべき専門機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所・発達障害者支援センターなど【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所など児童相談所などでは無料で知能検査や発達検査を受けられることも多いので、児童相談所で相談するパパ・ママも多くいます。まず身近な相談センターに行って、診断をすすめられたら、そこから専門医を紹介してもらいましょう。自宅の近くに相談センターがない場合には、電話での相談にのってくれることもあります。診断は、子どもの場合、小児科・児童精神科・小児神経科や発達外来などで受けることができます。(大学病院や総合病院などにあります)大人になって検査・診断を初めて受ける場合には、精神科や心療内科、大人もみてくれる児童精神科・小児神経科や精神科など専門の医療機関を受診することが一般的ですが、大人の発達障害を診断できる病院はまだ数が多くありません。上記の相談機関で紹介してもらえるほか、医師会や障害者支援センター、発達障害者支援センターなどでも調べることができます。発達障害の専門機関は他の病気に比べると少ないですが、発達障害者支援法などの施行によって年々増加はしています。以下のリンクは発達障害の診療を行える医師の一覧です。この他にも、児童精神科医師や診断のできる小児科医師もいます。担当者との相性も大切なので、納得のいく医療機関を選ぶようにしましょう。日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」診断の流れ、必要な持ち物は?出典 : 本人や保護者に対する問診(面接)や行動観察、家族・学校の先生による提供情報の精査などと、専門機関によっては知能検査や発達検査などを実施する場合もあり、筆記や口頭質問などの検査が行なわれ、様々な情報を総合的に評価して診断されます。検査は複数回に分けて行なわれたり、慎重に経過を見ながら行われるため、一度の受診で診断されることはあまりありません。知能検査は、田中ビネー知能検査Ⅴ(ファイブ)やウェクスラー式知能検査(3歳10ヶ月〜7歳1ヶ月の幼児の場合は「WPPSI」、5歳から16歳11ヶ月の子どもは「WISC」、16歳以上の成人の場合は「WAIS」)などの検査を受けることによって検査結果がでます。特性の現れ方や発達段階などを評価するため「CARS」や「新版K式発達検査2001」、「PEP-R」などを行う場合もあります。初診時に必要な物として保険証、子どもであれば母子手帳などがあります。服用中の薬などがあれば、お薬手帳なども持っていくとよいでしょう。また、生育や発達歴についての問診がありますので、言葉を話し始めた時期や日常生活での困りごとなどをメモして持っていくと質問に答えやすいかもしれません。発達外来などの専門機関によっては保育園や幼稚園の連絡帳、小学校の通信簿やホームビデオなどを参考にする場合もあります。事前に問診票をプリントアウトして持参する機関もありますので、専門機関の公式ホームページをチェックしたり、予約時に電話にて必要な持ち物を問い合わせてみてください。まとめ出典 : 広汎性発達障害の子どもをもつ親の中には子育ての仕方が悪いと自信をなくす方もいらっしゃいます。ですが広汎性発達障害は子育ての仕方が原因ではないことが医学的にわかっています。自信をなくすなど親がストレスを抱えていると、子どもにも気持ちが伝わってしまいます。専門機関に相談したりすることで、同じ悩みを持つ親と知り合える機会も増え、親にとっても子どもにとっても心の面でケアできる可能性があります。まずは相談や診断を受け、少しずつでも広汎性発達障害について理解し、じっくり子どもと向き合っていくことが大切です。広汎性発達障害と診断された場合、年齢に応じた療育相談や、理学療法士・作業療法士などによる個別訓練、てんかんなどに対する薬物療法などが行なわれます(専門機関によって異なる)。一般的に早期療育がよいと言われています。早めに広汎性発達障害と知ることで子どもにあった療育方法を見つけ、生活に必要なスキルを練習することで、子どもと家族にとって生きやすい環境をつくっていきましょう。
2016年08月02日こんにちは、ライターの渦マキです。今回は発達障害児童の問題行動について、対処法をご紹介したいと思います。発達障害にはさまざまなタイプがあり、同じ障害でも特性の現れ方には個人差があります。発達障害児の多くは、 通常の学級に在籍して他の子どもたちと学習しています。ケースバイケースで子どもの行動の特徴を理解し、対処法を考えていくことが大切になってきます。おもに学校生活で多く見られる行動についての対処法を、いくつかご紹介します。●(1)教室を飛び出してしまう●教室を飛び出してしまう理由・外の様子が気になり衝動的に出て行ってしまう・他の子どもにからかわれて感情的に出て行く・与えられた課題が終わり、次に何をやるのかがわからず出て行く●ポイント一度感情的になるとなかなか収まらない傾向が強いので、それを無理に制止すると逆効果になってしまいます。気持ちが収まってから 出て行った理由を聞いてみましょう。●注意点・力づくで押さえない・教室を出て行くことを黙認しない(無視されていると勘違いする)・他の子どもたちを放って追いかけない●(2)質問に上手に答えられない●質問に答えられない理由・先生の質問を聞いていない・話したいことがうまくまとめられない・先生の話の内容を理解できない・吃音などでうまく話せない●ポイントうまく答えられない理由を把握することが大切です。質問の仕方を変えながら、子どもが質問内容をどれくらい理解しているか を把握します。長い質問をところどころで区切ってみて、「ここまでの質問がわかりましたか?」と確認します。●注意点・罰を与えない・「聞いていないのが悪い!」と叱らない・「はっきり言ってみて!」と強要しない●(3)体育が苦手●体育が苦手な理由発達障害児には、手足の強調運動 が苦手だったり、体の動かし方自体に問題のあったりする子どももいます。こんな運動が苦手です。・球技が苦手・なわとびがうまく飛べない・音楽にあわせて動作することが苦手●ポイント・できそうなところからやらせる(到達目標を下げてみる)・周りの子どもがからかったら厳しく注意する●注意点・ほかの子どもと比べたり、できないことを責めたりしない・スムーズに動けない原因をしっかり見極め、どのようなトレーニングが必要か導きだす----------発達障害の子どもたちは得意不得意に偏りがあります。まずは、その子どもがどのような特性か、どんな偏りがあるかを見極めていくことが大切です。【参考文献】・『ケース別 発達障害のある子へのサポート実例集 小学校編』上野一彦・月森久江(共著)●ライター/渦マキ(フリーライター)
2016年07月27日私が適応障害と診断されたのは20代中盤のこと。今回は私と同じく適応障害やパニック障害、自律神経失調症などを抱える「心療内科に通う奥様」3名(20代~30代、結婚半年~5年)にお話を聞きました。病気を抱えたままの結婚。病気や通院をどう相手に説明したのか、どう義理の両親に打ち明けたのか、いまどんなことを思うのか。現在通院中で、「私、将来結婚できるのかな」と不安を持つかたに届けば幸いです。病気・通院はご主人と付き合う前から、それとも途中から?付き合う前から。付き合ってすぐに病気を告白。受け入れてくれました交際を始めた学生のころから当時の彼、主人に『どこかおかしい』と指摘されることはありましたが、心療内科へ行ったのは社会人1年半になってから付き合っている途中で。診断が下りた当時は遠距離恋愛でした。電話越しに病気のことを伝えましたが、相手はピンときてなかったと思うなかには同棲2年を経て結婚したものの、病気についてご主人が強く意識したのは結婚式後だったという奥様も。結婚式後に奥様の調子が悪くなり、何度も倒れ、病院に行く頻度が増えたのがきっかけ。そこで何度も話し合いをし、ご主人も病気について調べてくれるようになったそうです。結婚するとき、夫の家族に自分から病気のことを話しましたか?夫が最初に『結婚しようと思う』と義両親に話したときに、病気のことも伝えてくれました。義母が心理学科卒だったこともあり、あっさり理解してもらえ、とくに難色もしめされなかったそう結婚前に私からは話していません。でも主人が話していると思います。最初は隠せるところまで隠そうと思っていました。義実家はものすごく保守的な地域なので、こういった病気は理解されにくいかな、と勝手に考えていました。義実家とは飛行機の距離があるし、無理をすれば、盆正月の2泊ぐらいならできるし、と。しかし最近病気が悪化し、私から義母に伝えました。伝えてから、義母は病気のことをいろいろ調べてくれたようです。当たり前ですが、私より私の世話をする主人の心配をしていますね(苦笑)話していません。夫と話し合った結果、特に言わなくていいだろう、『すべて言わなくてもいい。すべて知らなくてもいい』と妊娠・出産、夫への感謝以下は特に質問をしなかったのですが、奥様たちから共通で出てきたのは「将来の子どものこと・夫への感謝」でした。妊娠についての悩み子どもはほしいけど、薬の影響や不妊もあり、心配なことはたくさんあります現在薬を飲んでいないので子どもも考えてはいますが、できればいいな、ぐらいの考えもし子どもができても、ちゃんと育てられるかな? と心配夫への感謝夫は毎日、私にどんな1日だったか、無理はしていないかを聞いてくれ、『いっしょに幸せになろう、いっしょに悩もう』と言ってくれ…。夫の理解と笑顔にどれほど助けられたか。感謝でいっぱい結婚して安心感が増え、肩の荷が下りました。 私が楽しそうにしているのをニコニコ見ている夫の存在は、本当にありがたい奥様たちから最近、病院を変えたことがきっかけで、依存性がある薬とない薬があることを知りました。皆さんにも知ってもらえれば嬉しいです薬は合う、合わないもあるので細かく主治医と相談してくださいね。また相性のいい主治医を見つけることも大切です。病気の身で結婚できるのかとても不安でした。結果論ですが、ちゃんと相性の良い相手であれば、病気込みで理解してくれるものなんだなと今は思います厄介な病気になってしまった、思うことは多々あります。でもそのぶん人の気持ちを考えるようになったし、弱い人の立場に立てるようになったかな、とも思います。同じ病気で悩んで いるひとがたくさんいることも、病気になって初めてわかりました「結婚は私もすごく悩んだから、ぜひ知ってほしい」と今回協力くださった奥様たち。もちろん、ただ「結婚したから安心!!」ではなく、妊娠・出産や、義実家との距離について悩む奥様も…。しかし、自分を受け入れてくれるご主人とふたり、結婚生活を送っている姿からはたしかに幸せが伝わってきました。病気をしてからも、パートナーと出会える。自分の家族よりも、結婚相手や義理の家族のほうが理解あるかもしれない。いま理解がなくても、今後変わることもある。いろんな可能性や希望があること、感じて頂けたらなによりです。ライター:三谷 アイ
2016年07月21日●連載の目次は こちら から●発達障害についての基本的な知識を持っておくことで、当事者(母や子ども)は、随分と楽になる。それは私が実体験を通じて感じていることだ。今回は、私が質問されて答えに困った「発達障害の診断」について、軽度の発達障害クリニックの院長である、司馬理英子先生にお話を伺った。■診断はレッテルを貼るのではなく、対処法を知るため私は息子を支援学級に通わせていたので、ママ友から子育ての相談を受けることがある。そのときに、よく聞かれることは、「発達障害の診断を受ける必要ってあるの?」ということだ。発達障害は病気ではなく、「脳の発達のかたより」。そうだとすれば、「診断は本当に必要なのか?」と思ったり、「わが子に、発達障害のレッテルなんて貼りたくない」と思ったりするのは当然のことだと思う。「診断は子どもにレッテルを貼るためのものではなく、それによってどんなことで困っているのかを教えてくれるものです」(司馬先生)診断は、いわば大きな方向つけ。「これから何をするのか?」「どんな対処方法があるのか?」を考え始めるスタート地点の指標のようなものだ。もちろん、わが子を育てる作戦(司馬先生は、よく“作戦”という言葉を使われる)を立てるのに、診断を受けるだけでは充分ではない。 ただ、ADHDといってもどんなタイプなのか、その子の能力のどんなところにどう影響しているのか、それらがわかればわかるほど作戦(対策)は立てやすくなる。また診断することによって、子どもが専門家から的確なアドバイスを受けられるほか、親が本や勉強会などから、ピンポイントで情報を得ることもできるようにもなる。■診断を受けるための一般的な経路「発達障害かどうかが気になるのだけれど、誰にどんなふうに相談すればよいかわからない」これも、よく相談される内容だ。一般的には、まずは学校の担任の先生に相談するのが良いだろう。学校には、週に1~2回ほど来て、子どもや保護者の相談に乗ってくれるスクールカウンセラーという職種の人もいる。また、自治体の教育相談所や教育センターなどで、相談業務を行なっていることもある。最近では、発達障害の診断や治療の経験がある小児科の先生も増えているので、かかりつけの医院の先生に相談してみてもよいだろう。■大切なのは、早く気づいて二次障害を防ぐこと私が相談を受けたときに必ず言っていることは、「発達障害の子を育てるのは、すごく大変だし、一緒に生活するのはしんどいよね。でも、発達障害の子を育てる上で、一番大切なのは、二次障害を防ぐことだと私は思っている。診断を受けることで、子どもの特徴に早く気づければ、必要とする支援がわかり、より二次障害を防ぎやすくなると思うよ」ということ。二次障害とは、発達障害に対する対応が十分に行われないために、二次的に起こる問題のことだ。たとえば、学校に行くのをイヤがったり、学校に行けなくなったり、うつ状態になって元気がなくなったり、親にひどく反抗したりというのが二次障害だ。発達障害の子は何かにつけて叱られることが多く、「ぼく(私)はダメなんだ…」というように自尊心が低下しがち。いったん二次障害が起きると、もともとの発達障害そのものへの対応以上に、扱いが難しいこともよくあると言われている。次回は、最終回。「発達障害の子育ては疲れます」です。
2016年07月17日●連載の目次は こちら から●ひとことで「発達障害」と言っても、その状態はさまざま。基本的な知識を持っておくことで、当事者(母や子ども)は、随分と楽になる。今回はさまざまな発達障害について、軽度の発達障害クリニックの院長である、司馬理英子先生にお話を伺った。「 発達障害って、何? 」で、発達障害には、おもに以下の3つがあるとお伝えした。今回はその内容を、もう少し詳しく見ていこう 1.不注意・多動性・衝動性が目立つ 「ADHD(注意欠如・多動性障害)」2.人との関わりが難しい「アスペルガー症候群」など「自閉症スペクトラム障害」3.特定の領域の学習がうまくいかない「LD(学習障害)」「発達障害のわが子」と向き合う本(司馬理英子/大和出版) ■ADHD(注意欠如・多動性障害)とは?不注意・多動性・衝動性を特徴とする。たとえば、忘れっぽくて集中力が乏しく、宿題などをしているときに気が散りやすい。落ち着きがなく、いつもそわそわしていて、順番を待てずなんでも我先にとやりたい。こんなふうに、年齢に応じた「注意力や行動・衝動などのコントロール」がうまくできない。そのため、毎日の生活習慣や学校での活動を行うのに苦労をする。■「アスペルガー症候群」など「自閉症スペクトラム障害」とは?「アスペルガー症候群」を含む「自閉症スペクトラム障害」の特徴はおもに「人との関わりの困難さ」にある。言葉やしぐさなどコミュニケーションをする力にかたよりがあり、興味を持つ範囲が狭く、興味のない活動には取り組めない。こうしたこだわりの強さがあるため、毎日の生活がスムーズに進まないこともある。「広汎性発達障害」や「自閉症」も「自閉症スペクトラム障害」に含まれ、なかでも言葉の遅れが見られないものは「アスペルガー症候群」と呼ばれている。 ■LD(学習障害)とは?LDでは特定の学習能力の困難さが見られる。全体的な知的発達に遅れがないのに、特定の学習能力での遅れが、小学校の低学年では1年程度、高学年では2年程度見られる場合に診断される。文章を読むことが困難な状態を「読字(どくじ)障害」、鏡文字が多く見られ、漢字や作文などを書くことに関する遅れを「書字(しょじ)障害」、計算または文章問題など算数の学力がほかの科目に比べて低い場合「算数障害」と言いわれる発達障害は決してまれなものではなく、多くの子どもにみられる。ADHDは5%、アスペルガー症候群などの自閉症スペクトラム障害の子どもは1~2%、LD(学習障害)は10%程度いると言われている。わが子に、こういった傾向を感じるとしたら、まずは本などから子どもへの対応の仕方を学んでみるのも一手だ。たとえば、『「発達障害のわが子」と向き合う本』(司馬理英子/大和出版)は、「ADHDの子どもの特徴」「ADHDの子育てのヒント」「アスペルガー症候群の子どもの特徴」「アスペルガー症候群の子どもの子育てのヒント」と、こどもの傾向別に説明と対処法の項目が分かれており、とても読みやすい。本などから得た情報で、少しでも子育てが楽になったら、ハッピーなことだと思う。また、本を読むことが、子どもへの支援を次の段階に深めるキッカケになるかもしれない。<次回は、「発達障害の診断を受けることは必要?」です。>
2016年07月17日●連載の目次は こちら から●正しい自己認識を持つこと。つまり、発達障害についての基本的な知識を持っておくことで、当事者(母や子ども)は、随分と楽になる。それは私が実体験を通じて感じていることだ。そこで、「発達障害って、何?」という基本的な疑問について、軽度の発達障害クリニックの院長である、司馬理英子先生にお話を伺った。■発達障害は「しつけ」や「育て方」が悪いわけではないほかの子に比べ、手のかかるわが子。「やっぱり、私の育て方が悪いのかしら?」と思ってしまうママもいるだろう。「夫に『子どもを甘やかすからだ』と言われる」「忙しくて充分にかまってあげられないからかな?」など、子育てがうまくいかないと、ママは自分を責めがちだ。けれども、「発達障害は、しつけの問題ではありません。多くの場合、生まれつきのものです」と、司馬先生は言う。生まれつきといっても、もちろん、生まれてすぐわかるわけではない。たとえばADHDなら幼稚園や保育園くらいまでは「活発で元気な子」という印象で、小学校に入り、生活の中心が勉強になってくると特徴が目立つ。また、アスペルガー症候群の場合は、赤ちゃんの頃から手がかかる子もいるが、「ちょっと違和感があるな」くらいの子も多い。だからこそ、難しいのだと思う。なぜなら、早い段階から障害に気づければ、親の側も「そういうものだ」と思い、ある意味、納得して育てられる。けれども、「ちょっと変わっているかな?」くらいだと、子どもの問題なのか、親側(しつけ)の問題なのか? というあたりで、ママがひとりで問題を抱え込み、グルグルと悩んでいることも多いからだ。■発達障害は病気ではない 前回 でも話したとおり、「発達障害とは、脳の発達のかたより」だ。発達障害の子どもは、すべての能力に問題があるわけではなく、“特定のある部分の発達だけ”がほかの子どもに比べて遅れている。「発達障害は、病気というわけではありません。脳の発達にかたよりがあったとしても一生がそれで決まってしまうというものでもありません」(司馬先生) ■わが子の特徴に気づいて、必要なサポートをする一般的な発達をとげている子ども(定型発達の子ども)に比べて、ある能力の発達のかたよりが目立っていて、そのために子どもが「生きづらさ」を抱えている場合、学校や家庭での状況、発育歴などのさまざまな情報を元に、発達障害かどうか?を見てみよう。たとえば、「忘れ物」。ADHDの子によく見られる忘れ物は、どの子も多少あるものだが、毎日いくつも忘れものをしていれば、そのために困ることがたくさん出てくる。個性といって片付けてしまうには困難さが際立っている場合、発達障害の診断がつけられる。「発達のかたよりに気づき、早く対処することによって、日常において困ることをずいぶんと減らすことができます」(司馬先生)発達のかたよりは、裏を返せば長所となる場合も少なくない。かたよりに早く気がつけば、子どものいい部分を生かしたり、得意な分野をしっかり伸ばしたりすることに、親子でエネルギーを使うことができる。「だからこそ、早めにわが子の特徴に気づいて、必要としているサポートをしていくことが大切なのです」(司馬先生)次回は、「発達障害のさまざまな種類」を少し詳しくみていこう。
2016年07月16日●連載の目次は こちら から●正しい自己認識を持つこと。つまり、発達障害についての基本的な知識を持っておくことで、当事者(母や子ども)は、随分と楽になる。それは私が実体験を通じて感じていることだ。そこで「発達障害って、何?」という基本的な疑問について、軽度の発達障害専門クリニックの院長である、司馬理英子先生にお話を伺った。■発達障害は、いわば「発達のかたより」育てにくいわが子。私の気にし過ぎかもしれないけれど、ちょっと心配。ママ友に相談すると「うちもそうよ。大丈夫」なんて言われて、「そうかな?」と安堵する。けれども、また別の日には、「これって、やっぱり普通じゃないよな」と思う。「でも、これはこの子の個性で、私の我慢が足りないのかもしれない」。そんな無限のループを、頭の血管が擦り切れるほど何年もグルグルと考え続けていた私。そうした状況にあった私に、司馬先生の発達障害の説明は、非常に腑に落ちるものだった。まず、発達障害の定義だが、「発達障害とは、いわば“発達のかたより”です。最近の考え方としては、全体的な知能の発達には問題がなく、以下のような特徴がある子どもを発達障害としています」(司馬先生)1.不注意・多動性・衝動性が目立つ 「ADHD(注意欠如・多動性障害)」2.人との関わりが難しい「アスペルガー症候群」など「自閉症スペクトラム障害」3.特定の領域の学習がうまくいかない「LD(学習障害)」「発達障害のわが子」と向き合う本(司馬理英子/大和出版) 発達「障害」と書くと、「障害」という言葉から重々しい感じがするが、症状の度合いは重いものから、「診断名をつけるほどではないけれど、特徴が見られる」という軽いものまで幅がある。 ■「発達障害の特徴があるかもしれない」という見方をしてみるママたちがいちばん気になるのは「うちの子が発達障害なのかどうか?」ということかもしれない。けれども、発達障害であったとしても、なかったとしても、子育てがうまくいかないのであれば、子どもの特徴を把握し、ちょっとした工夫をすることで、日々の生活は随分と楽になる。つまり、「もしかしたら発達障害の特徴があるかもしれない」という見方をしてみるのだ。■子どもの特徴に合わせた丁寧な関わり方司馬先生が教えてくださった「発達障害の子育て法」は、子どもの気持ちを尊重し、子どもの特徴に合わせた、子どもへの、より丁寧な関わり方だ。発達障害のない子どもは、さほど手をかけなくても自力で成長していけるが、それでも関わり方を丁寧にしてやることに越したことはない。つまり、子どもが発達障害でなくても、ちょっと似た部分はあるけれど診断されるほどではないというレベルでも、発達障害であっても、同じように使っていける子育て法なのだ。「発達障害かもしれないと怖がってばかりいないで、その子の特徴を見極め、その子に合わせたオーダーメイドの子育てしてみては?」というのが、司馬先生からの提案なのである。<次回は、「発達障害は、“しつけ”の問題なの!?」です。>
2016年07月16日2016年4月1日から、障害者差別解消法という法律が施行されたことをご存知でしょうか?この法律では、行政や事業者へ障害者に対して不当な差別を禁止し、社会のなかのバリアを取り除くべく「合理的配慮」に努めるよう定めています。障害者が必要としている「合理的配慮」とは、いったいなんなのでしょうか?また、この法律ができたことで、障害者の人たちは暮らしやすくなるのでしょうか?そんな問いに答えてくださったのは、「きこえないママ×まちプロジェクト」代表で、自身も聴覚障害があるまつもとまつりさん。耳のきこえないママたちと、地域の人たちをつなぐ活動をしていらっしゃいます。以前、お子さんが夜中に熱性けいれんを起こしたときに自力で救急車を呼べず、近所の人に助けてもらったため、日ごろから地域の人たちとつながっている必要性を感じたのだとか。今回はまつもとさんに、「聴覚障害者」の視点に立ったお話をお伺いしました。■聴覚障害者は想像以上に不便に感じているまつもとさんは以前クレジットカードを落としてしまったとき、母親にカード会社に電話をかけてもらったことがあったのだそうです。ところがカード会社の人に、「本人でないとダメ」といわれてしまったというのです。「だから、わざわざ会社を休んでカード会社に行って手続きをしなければならなかったんですよ。普通の人だったら休憩時間にちょっと電話すれば済むことなのに」(まつもとさん)また、銀行のATMに不具合があっても備えつけの電話が使えないため、窓口に行って事情を話してもう一度列に並びなおさなければならなかったこともあるといいます。それだけならまだしも、障害者割引のある駐車場に入っても出るときにモニターに障害者手帳をかざさないといけないことがわからず、結局は正規料金を払わざるを得なかった……などと不便に感じていることは多々あるそうです。健常者にとっては当たり前にできることだからこそ、聴覚障害者が不便に感じていてもなかなか気づきにくいものなのかもしれません。■行政にはその人に合った配慮をしてほしい「きこえる」人たちは、「耳がきこえない」といわれると、「じゃあ手話で通訳できる人がいればいいのね」と思いがちではないでしょうか。「でも、聴覚障害者のなかには手話を知らない人もいるんです。だから『耳がきこえない=手話通訳の用意』と考えるのではなく、筆談で対応する、ゆっくり話す、流れの決まっている手続きであればフローチャートを用意して指差ししながら説明するなど、その人に合った配慮をしてほしいと思います」(まつもとさん)まず、「聴覚障害者はみんな手話を知っている」という思い込みをなくすことが必要なのですね。■私たちにもできるちょっとした配慮とは?聴覚障害のある人だって、スキルアップのための学びの場や職場の会議、町内会の話し合いに参加する機会を望んでいるもの。しかし、話の流れがわからない、資料を読んでいると知らないうちに話が進んでいる……など、ハードルが高くてなかなか参加しづらいのだとか。そんなとき、「きこえる」人たちが「きこえない」人たちのためにできることはなんでしょうか?たとえば講座に参加するときであれば、前もって資料をもらう、隣に座った人にはいま話しているところを指差ししてもらう、資料を読むのに夢中になっているとき、講師が話しはじめたら肩を叩いて教えてもらう。そういう、ちょっとした「配慮」をしてもらえたらだいぶ助かるとまつもとさんはいいます。「手話通訳になにからなにまで依頼することはできません。でも、『ちょっと配慮がほしい』という場面は日常的にたくさんあります。ちょっとしたことでも協力してもらえたら、とてもありがたいです」(まつもとさん)■障害者差別解消法だけで社会は変わるのか最後に、障害者差別解消法ができたことで障害者が生活しやすくなっていくかどうかについて意見をきいてみたところ、「5分5分」という答えが返ってきました。法律ができたことで、いままで「予算がない」という理由でやらなかったことに対して「やらなきゃいけない」という意識が芽生えることはあるかもしれない。しかし、だからといって具体的になにをすればよいか行政や事業者の人たちにはわからないだろうから、聴覚障害者自身がもっと「こうしてほしい」と声をあげなければいけないといいます。「行政などに直接声を伝えるのはなかなか難しい。だから、まずまわりの人たちに『こういう不便がある』ということを伝えたいと考えています。その話を聞いた人からアイデアを出てくるなど、なにかいい方向につながっていくと思うから」(まつもとさん)現在、聴覚障害で障害者手帳が交付されている人は全国で45万人。でも、手帳交付に至らない軽度の方も含めると、聴覚障害者は1,000万人以上いるといわれています。障害の程度に関係なく、不便に感じる人たちへの配慮が自然にできる社会になれば、障害者もそうでない人もお互いにもっと気持ちよく暮らせるのではないでしょうか。(取材・文/あさき みえ) 【取材協力】※まつもとまつり・・・「きこえないママ×まちプロジェクト」代表。3人の男児の母。横浜市戸塚区にある親子カフェ「こまちカフェ」を拠点に、「きこえないママ」と地域の人たちとの交流会を月1回(第2火曜日10:00~12:00)おこなっている。コミュニティFMラジオ「エフエム戸塚」の番組にゲスト出演経験もあり。 【参考】※ココロもカラダもぽっかぽか※こまちカフェ※障害を理由とする差別の解消の推進-内閣府※厚生統計要覧(平成27年度)-厚生労働省※難聴者の数は、どれくらい?という事で調べてみた-L.S.B.information
2016年06月25日起きたときに身に覚えのない傷が体にできていたという経験のある人はいませんか? それはもしかしたら睡眠障害かもしれません。睡眠障害は不眠だけでなく、さまざまな症状、タイプがあることで知られています。今回は海外で大きな話題を呼んだニュースから、どのような睡眠障害があるのかを探っていきたいと思います!睡眠障害の4つのタイプ睡眠障害にはいろいろな症状があります。大別すると、以下4つのタイプがあると言われています。不眠寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚めてしまう、予定時刻よりも早く目が覚める、浅い眠りが続くなど。過眠夜にしっかり睡眠時間をとっているのに日中に眠くなる。抗えないほどの強烈な睡魔に襲われることも。リズム異常寝る時間と起きる時間が毎日バラバラになる。寝ようと思った時間に眠れず、起きようと思った時間に起きられない。違和感寝ようとしてベッドに入ると足がむず痒くなる、睡眠中に呼吸が苦しくて目が覚めることがある。一言で「睡眠障害」といっても、このようにタイプがあるということを覚えておいてくださいね。気になる症状がある場合は、早めに医師に相談するようにしましょう。変わった症状もある上記に挙げたものは睡眠障害の一般的な症状ですが、なかには変わった症状が出る人もいるようです。今回はいくつかピックアップして、紹介します。自分の手を齧った!?中国で話題を呼んだのは、「睡眠中に自分の手を齧ってケガを負い、病院に担ぎ込まれた人がいる」というもの。ケガをするほど齧るとは相当の力だったんでしょうね……。このような症状の場合、考えられる睡眠障害は、睡眠中に歩きまわったりする夢遊病や異常行動をとるレム睡眠行動障害などですが、実際のところ、これだけではどの睡眠障害かは確定できないようです。きっと、この人も目が覚めたらシーツが血だらけになっていて、さぞビックリしたことでしょうね……。夢遊病とは上記症状の原因の可能性がある「夢遊病」と「レム睡眠行動障害」について詳しく説明しましょう。まずは、夢遊病から。正式名称は「睡眠時遊行症」で、本人には自覚がない状態で睡眠中に歩き出す症状がみられます。起きたときも、本人には歩きまわっていたという記憶はないそうです。この睡眠障害の怖いところは無意識で歩きまわるので、ケガをする可能性があるところです。家の中ならまだしも、着替えて外に出ていってしまうこともあるというので家族の人は心配ですよね。周囲にこの症状がみられる人がいたら、早めに病院でみてもらうようにしましょう。レム睡眠行動障害とは続いて「レム睡眠行動障害」です。この睡眠障害は浅い眠りであるレム睡眠中に、大声で話をはじめる、手足をバタバタさせる、歩きまわるなどの異常行動をとるものです。物を投げてしまうこともあるので、室内の家具が壊れてしまう場合もあると言われています。このレム睡眠行動障害も、夢遊病と同様に本人に自覚症状はありません。そのため、治療には家族の理解と協力が不可欠です。睡眠中の異常行動がみられた場合は、「いつか収まる」と安易に考えず、ケガをしたり、事故に巻き込まれたりする前に医師に相談しましょう。睡眠障害の検査は?睡眠障害の疑いで病院へ行った場合、症状のタイプによってさまざまな検査が行われます。代表的なものを紹介します。睡眠ポリグラフ検査病院に1泊して、体にセンサーをつけた状態で睡眠をとる。呼吸数や心拍数、夜間の睡眠状態を確認することで、原因を診断するために行うもの。CPAP圧設定検査睡眠中に何度か呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群の疑いがあると診断された場合に行う検査。病院に1泊して、マスクを装着して眠ることで呼吸の状態を調べる。脳波検査頭に電極をつけて、脳波を検査する。これによって、てんかんなどの疾患があるかどうかを検査する。検査は他にもたくさんあります。どれも実施する前には医師からきちんと説明があるものなので、睡眠で悩みを抱えている方は一度病院へ行ってみましょう。photo by acworks
2016年06月24日睡眠障害にはさまざまなものがあり、症状や治療法も複雑なので、素人が自己判断でどうにかできるものではありません。今回紹介するレム睡眠行動障害もそのひとつ。本文のような症状が現れたら、早めに病院へ行きましょう。レム睡眠行動障害ってどんな睡眠障害?睡眠障害のひとつに「レム睡眠行動障害」というものがあります。私たちは夜間、レム睡眠(浅い睡眠)とノンレム睡眠(深い睡眠)を交互に繰り返していますが、この睡眠障害ではレム睡眠時に無意識のうちに体が動いたり、声をあげてしまうといった症状が現れます。通常、レム睡眠の最中は筋肉が緩んでいる状態なので、体を動かせないものと考えられていますが、レム睡眠行動障害の患者は悪夢などが原因で、大声で叫ぶ、手足をバタつかせてしまうなどの行動をとってしまいます。一般的に、高齢の男性に多くみられる睡眠障害で、薬物治療によって改善されることがほとんどだと言われています。周囲はどう対処すべきかレム睡眠行動障害の場合、当人は自分が睡眠中に声をあげたり、暴れているという自覚がないと言われています。そうなると、重要な役割を担うのは当人の周囲にいる人間です。もしも、あなたの家族や同居している人が寝ている最中に突然暴れはじめたら、どうしますか?推奨されている方法は、自然に目覚めるように誘導することだそう。たとえば、部屋の電気をつける、アラームを鳴らす、テレビをつけるなどで、朝目覚めるときと同じような環境をつくるとよいのだとか。強引にゆすって起こしたりすると、現実と夢の区別がつかず、より暴れてしまうことがあるそうなので、注意しましょう。早めに病院へ!レム睡眠行動障害は、加齢による脳内伝達物質の減少と不安定な心理状態が組み合わさったときに起こりやすいと言われています。高齢の方で強いストレスを感じていたり、トラウマを抱えていたり、生活習慣が乱れているときには注意が必要かもしれませんね。もしも、ご自身または周囲の方に上記のような症状が現れたら、早急に専門の病院を受診しましょう。先述した通り、レム睡眠行動障害の治療は薬物治療によるもので、今のところ生活習慣を見直すなどの行動療法では治らないと言われています。ただ、専門医の指導を受ければ、深刻になる病気ではないのだとか。気になる方は早めに病院へ行ってみましょう。photo by Didgeman
2015年12月13日京都大学(京大)は11月10日、重度の先天的障害のある野生チンパンジーを観察し、母親が過去の子育てとは異なる方法で障害児のケアを行っていた点、他個体が障害児に対して恐れや攻撃といった特異な反応を示さなかった点などを明らかにしたと発表した。同成果は、同大学理学研究科博士後期課程 日本学術振興会特別研究員の松本卓也氏、野生動物研究センター 中村美知夫 准教授、伊藤詞子 研究員、鎌倉女子大学学術研究所 井上紗奈 研究員らの研究グループによるもので、近日中に国際学術誌「Primates」にてオンライン公開される予定。今回の研究では、タンザニアのマハレ山塊国立公園に生息するチンパンジー集団において、2011年に重度の障害のある赤ん坊が生まれたことを発見し、その後赤ん坊が消失するまでの約2年間の行動を記録した。この結果、今回観察された障害児の特徴が、過去に報告されたダウン症様の個体の症例に酷似していることがわかった。野生下でダウン症様の赤ん坊が発見され、2年近く生き残った事例が報告されるのは今回が初めてだという。また、他個体からのケアとして、他個体がその赤ん坊に対して恐れや攻撃といった特異な反応を示さなかったこと、母親が腹に掴まった赤ん坊に片手を添えつつ移動するなど、過去の子育てとは異なる方法で障害児を育てていたこと、障害児の姉が母親の代わりによく世話をしており、その姉が自身の子を出産した約1カ月後に障害児が消失したことがわかった。重度の障害のある赤ん坊が野生下で2年近く生き残ることができた要因として、母親による柔軟な子育てや姉の世話といった他個体からのケアが影響を与えていた可能性がある。中村准教授は同成果について「マハレでのチンパンジー研究は今年で50年になりますが、障害のある赤ん坊が観察されたのは今回が初めてです。障害者などの弱者をケアできる人類社会の進化基盤を考察する上でも重要な観察事例だと考えています」とコメントしている。
2015年11月11日更年期障害と聞いて、みなさんはどんなことを想像しますか?アラサーのみなさんにとっては、まだまだ遠い先のことと感じる人が多いでしょう。でも実は30代で更年期障害のような症状があらわれる、「若年性更年期障害」の人が増えていることをご存知でしょうか?すぐに疲れてしまう、イライラして寝つきが悪いなど、病気とは言えない体の不調を感じたことはありませんか?これらは更年期障害の症状のひとつ。アラサーのうちから気をつけたい、若年性更年期障害について紹介します。そもそも更年期障害って何?更年期障害とは、閉経をはさんだ前後10年の間に起こりやすい心身の不調のことです。女性が閉経する年齢は平均で50歳前後といわれているので、一般的には45~55歳くらいの期間を更年期と呼びます。この期間は閉経に向けて、女性の体が大きく変化する時期。卵巣機能が低下するために女性ホルモンの分泌が少なくなる一方で、脳からは女性ホルモンを出し続けるように指令が送られ、このアンバランスが様々な症状を引き起こすのだとか。代表的なのは次のような症状です。【体調面】・月経不順・頭痛やめまい・のぼせ・寝つきが悪くなる・動悸や息切れ・手足の冷えやむくみ・汗が急に出る・食欲不振・肌のくすみやシミ、たるみ・便秘【心理面】・イライラして怒りっぽくなる・不安感が強く、落ち込みやすい・物忘れがひどくなる病気のようにはっきりした症状はないものの、こうした症状が重なるために、ひどいときは生活や仕事に支障をきたすこともあります。では、なぜ30代で更年期症状があらわれてしまうのでしょうか?生活環境とストレスが、アラサーに更年期障害を引き起こす30代の女性に更年期のような症状が現れる原因として、生活環境やストレスなどが関係していると言われています。不規則な生活や過剰なストレスがかかると、自律神経の働きが狂ってホルモン分泌にも影響を及ぼすことがあります。これが更年期障害のような症状を引き起こす原因になります。実際には30代で閉経する人は、ほとんどいません。そのため、生活習慣を改善してホルモン分泌が正常に戻れば、症状は改善します。無理なダイエットを繰り返して、一時的に生理が止まってしまう人がいますが、これも若年性更年期障害の原因になります。美しくなるためのダイエットが、更年期障害を招いてしまっては意味がありませんよね。「心地よい睡眠」で、若年性更年期を撃退できる!まずは快眠をしっかり確保することが大切。睡眠不足は疲労やストレスを増幅させて、症状を悪化させてしまいます。できれば10時までにベッドに入りたいところですが、難しい人も多いと思うので、次の点を心がけてみてください。「就寝前に湯船につかる」湯船にゆっくり浸かって、心身ともにリラックスしましょう。また体温が下がるときにに眠気を感じやすくなることから、入浴時に体温を上げておくと入眠しやすくなります。「就寝の2時間前までにスマホやパソコンの使用をやめる」スマホやパソコン、タブレットなどのブルーライトは、刺激がとても強いため睡眠の妨げになります。また睡眠の1時間前には、部屋の照明を落として暗くすることで、眠りに入りやすくなります。「起床時間を固定する」就寝時間の固定が難しい場合も、起床時間だけは固定するように心がけましょう。朝起きる時間をそろえるだけでも、生活が規則正しく整いやすくなります。早起きして朝食を食べると、便秘解消効果も期待できるのでおすすめです。休日も同じ時間に起きることで、週明けも睡眠リズムが狂いにくくなります。心地よい睡眠を得るためのヒントは、ピーリング麻里子さんのこちらの記事にも詳しく書かれています。こちらも、ぜひ参考にしてみてください。やっぱり女はデリケート・・・女性でも、バリバリ仕事をしている姿はカッコいいですよね。でもどんなに仕事のポジションが上がっても、体まで変化するわけではありません。女性らしさを極端に主張する必要はありませんが、女性としての心と体を丁寧に扱うことは、やはり大切なこと。「女はデリケート」それは昔も今も変わりません。忙しさにかまけて、あなたは女であることを忘れていませんか?
2015年02月11日テレビや雑誌などで「睡眠障害」という言葉を目にしたり、聞いたりしたことはないでしょうか?睡眠障害とは、その名称の通り、睡眠に関する何らかの障害のことで、日中に眠たくて仕方がなかったり(過眠症)、眠っているときに無意識に体が活動してしまったり(睡眠時随伴症)、呼吸が止まってしまう(睡眠時無呼吸症候群)などの総称として用いられます。なかでも、眠ることができなったり、睡眠の途中で目をさましてしまったりする「不眠症」は、日本国民の5人に1人がかかっているといわれており、よく知られています。国民病といわれている睡眠障害「不眠症」の4つのタイプ眠ろうと思ってもなかなか寝つくことができない「不眠症」には、大きく分けて「入眠障害」「熟眠障害」「中途覚醒」「早朝覚醒」の4タイプに分類することができます。入眠障害不眠症の中で、もっとも多いといわれているのが「入眠障害」です。ベッドや布団などに入ったものの、なかなか寝つくことができない状態が続く症状のことをいい、個人差はありますが、睡眠にはいるまでに30分から1時間近くかかる人もいます。「日常的にストレスを抱えている」「直前までテレビやパソコンなどの光を見ていた」「体内時計が乱れている」などの原因があると考えられています。熟眠障害入眠障害とは対照的に、十分な睡眠時間をとっているにもかかわらず、満足感を得ることができない症状を「熟眠障害」です。睡眠には、体が休眠していながら脳は活発に動いている「レム睡眠」、脳も体の機能も深く休眠している「ノンレム睡眠」の2つの種類があるといわれています。「熟眠障害」は、この「ノンレム睡眠」の量が少なくなってしまうことをいい、長期化すると、体調不良の原因になったり、自動車を運転している時に無意識に寝てしまったりといった、重大な事態に陥ってしまうことも考えられます。中途覚醒心理的理由、環境的理由などが原因で、睡眠の途中で目が覚めてしまう症状のこと。この状態が数日間続くと「一過性不眠」、1~3週間ほど持続すると「短期不眠」、1か月以上継続すると「長期不眠」といいます。とくに「長期不眠」の場合には、喘息、心不全、神経症などの重大な病気が背後に隠れている場合があるので、長期化している場合には、少しでも早く専門医師に相談することをオススメします。早朝覚醒会社や約束ごとで起床しようと目覚ましをセットしていても、いつもその時間よりも早く目覚めてしまう症状。日本人の8%は、この「早朝覚醒」を体験しているといわれています。とくに高齢者に多く見られる症状だと思われていますが、近年では、比較的若い世代においても目立ってきている症状です。日頃の生活で可能な対処法とは?日常生活でできる対処法としては、生活習慣を改めることです。夜更かしや寝坊、昼寝のしすぎを控えて「就寝や起床時間を一定にする」ように心がけたり、体内時計を調整するために「太陽光を積極的に浴びる」ようにつとめたりするだけでも効果的です。その他にもさまざまな日常生活の改善点があるので、簡単に紹介しておきましょう。・睡眠時間にこだわらない・自己流のストレス解消法をみつける・就寝前にはリラックスできる時間をつくる・寝酒を控える・眠りやすい環境づくりを心がける自分で「不眠症かな?」と実感できたら以上のことを実践してみるといいでしょう。ですが「不眠症」の裏には複数の原因が隠れている場合があるので、それぞれの原因に合わせた対処法が必要になってきます。他の睡眠障害でもある「睡眠時無呼吸症候群」「睡眠時随伴症」などが原因で、何らかの不眠症を併発している場合もあります。医師の診断や治療、専門施設での検査や診断が必要になってきます。自分ですべてを解決しようとは考えず、医師の判断を仰ぐようにしてください。参考:厚生労働省e-ヘルスネット
2015年01月08日子供の頃、よく悪夢にうなされたという経験はありませんか?今回は、子供の睡眠障害を紹介したいと思います。子供と大人の睡眠の違い子供の睡眠障害を紹介する前に、まずは子供と大人の睡眠の違いについて簡単に解説したいと思います。子供は生後3カ月ぐらいまでに5時間ぐらいの睡眠をまとめてとるようになりますが、1歳ぐらいまでは夜中に目が覚める時期があります。成長するにつれてレム睡眠(急速眼球運動睡眠/浅い睡眠)が増えていき、だんだんと大人と同じ睡眠へと近づいていきます。子供の睡眠障害は、ほとんどが一時的なもの、または周期的なものなので、その多くは治療の必要がないと言われています。子供の睡眠障害今回、紹介するのは「睡眠時随伴症」という睡眠障害です。これは4~12歳ぐらいの子供に起こりやすい睡眠障害で、無意識のうちに記憶に残らない行動をしてしまうというものです。具体的な行動としては、おそらく誰もが経験したことのある、就寝の際に体や脚がビクッと動いたり、短時間の映像が見えたり、歯ぎしりをしたり、歩き出したり、ということがあげられます。悪夢を見てうなされることもあります。これはレム睡眠時に起こるもので、熱があるときや疲れているときに頻度が高くなると言われています。特に子供は悪夢の内容を細部までよく覚えていて、怖がって眠れなくなることがあるそうです。悪夢の原因はなに?子供が悪夢によくうなされるという場合は、保護者の方にチェックしていただきたい点があります。それは子供が日中に「見ているもの」「体験していること」です。子供は素直で、正直なので、日中に怖いテレビ・映画やストレスを感じるような体験をすると悪夢を見やすくなると言われています。悪夢はかなり頻繁ではない限り、あまり心配をすることはないと考えられていますが、気になる保護者の方は子供の行動を日記につけるなどしてよく注意してみましょう。それでも原因を特定できない場合は病院へ行って、お医者さんに相談することも考慮する必要があります。Photo by Luciano Dinamarco
2014年12月11日元ディズニー・アイドルで歌手のデミ・ロヴァートは摂食障害や双極性障害、自傷癖といった様々な問題を抱えて2010年にリハビリ入りし、その明るく自信あふれるイメージとのギャップから世間を大いに驚かせた。休息期間を終えた後、彼女は以前よりさらに精力的に活動を行い、若者や同じ病気に苦しむ人々のための素晴らしいお手本であり続けている。そんなデミがTwitterにて摂食障害や精神障害についてのよくある誤解を語り、人々を啓蒙する力強いメッセージを発信した。彼女は以下のように語っている。「摂食障害であることが“強さ”を示すわけではないわ。強さとは、長いこと戦ってきた自分の中の怪物を乗り越えられるということよ」。「飢えることはダイエットではないし、吐くことは極端に痩せている人のみがすることではないわ。摂食障害は人を選ばないの。そのほかの精神病も同じ。それらは致死性の病気で、日常的に人の命を奪っている。だから、どうか摂食障害や精神病について語る時の言葉には慎重になって」。「拒食症や過食症は単なる選択の問題だと広く誤解されているわ。人々はよく“とにかく食べればいいじゃないか”“吐くのをやめればいいじゃないか”と言うけれど、その精神障害への無知・無学が精神のケアを後回しにさせている原因よ。この病気の流行はこの国を風靡し、毎日のように悲劇を生んでいるというのに」。壮絶な苦しみを乗り越え現在も病気と闘い続けているデミの言葉には大変な重みがある。実際に心の病気は目に見えない分、体の病気よりも軽視されることも多いだろう。ネガティブなイメージを恐れて公表しないという選択もあっただろうが、デミは自分の問題を共有しメッセージを発信し続けている。デミのように影響力あるセレブが問題に向き合い続けている事実は、世界中の同じ病気に苦しむ人々を勇気づけていることだろう。(text:cinemacafe.net)
2014年11月14日サム・ワーシントンやミア・ワシコウスカが出演するモンスター・パニック映画『マンイーター』のブルーレイ&DVDが発売&レンタル開始となった4日にモニター試写会が実施され、会場に集まった観客から好評を集めた。その他の写真本作は、『ピラニア3D』の製作総指揮陣が製作を、ホラーファンから高評価を集めた『ウルフクリーク猟奇殺人谷』の新鋭監督グレッグ・マクリーンがメガホンを執り、若者たちが、人喰いワニと想像を絶する死闘を繰り広げる様を描いたパニック映画。試写会には、「モンスター・パニック作品が好き」「『ピラニア3D』製作総指揮陣が製作した作品だから観たかった」という10~50代の観客が参加。作品上映後に行なわれたアンケートでは、「よくあるモンスター映画かと思ったが、ワニの登場や動きに工夫があり、先が読めなかった」「CGとは思えないワニの存在感に圧倒された」「このワニには出会いたくない! と思わせるだけの迫力があり、最後まで飽きずに楽しめた」など、映画の“真の主役”とも言うべき、人喰いワニに関するコメントが多く寄せられたほか、「心理描写もしっかりと描かれていてストーリーもおもしろい」「これまでにないサム・ワーシントンの一面が楽しめた」「無名の俳優の起用が思わぬ効果をあげていた」などの声も聞かれた。本作はTOHOシネマズ日劇などで公開され、大きな反響をよんだが、セル版のブルーレイ&DVDには本編だけでなく、メイキング映像やミニドキュメンタリー集、“伝説の人喰いワニ”に関する秘蔵映像などが60分以上も収録されており、映画館で観た観客もさらに深く映画を楽しめるアイテムになっている。『マンイーター』ブルーレイ&DVD、発売&レンタル中アンレイテッド・バージョン:ブルーレイ4935円(税込)DVD3990円(税込)発売元・販売元:ポニーキャニオン
2012年09月11日トム・クルーズの新作映画『All You Need Is Kill』(原題)の撮影中に起こった銃声が、閑静なイギリスの田舎町をパニックに陥れたようだ。今月6日(現地時間)、ハートフォードシャー州のアボッツ・ラングレー村にあるリーヴスデン・スタジオで同作の撮影が行われており、それを知らされていなかった村の住人は複数の銃声を聞いて同地の警察に通報したという。現地警察が捜査した結果、銃声は同スタジオからのものだと判明し「午後9時頃、アボッツ・ラングレーとウォトフォード北部地域の住人から遠方で銃声音がしたという通報を2件受け取りました。警察官がリーヴスデン・スタジオのセキュリティー担当者に連絡をとった結果、スタジオ内で午後、銃器の使用を含んだ映画のリハーサルが行われていたことを確認できました」と声明を発表した。日本の小説家・桜坂洋のライトノベルを映画化する本作は、エイリアンとの戦争を舞台に、何度殺されても人生最後の日をやり直す羽目になったひとりの戦士の姿を描いた作品だ。同作でトムは、エミリー・ブラント、シャーロット・ライリーらと共演する。■関連作品:ロック・オブ・エイジズ 2012年9月21日より全国にて公開© 2011 WARNER BROS. ENTERTAINENT INC.アウトロー 2013年2月、丸の内ピカデリーほか全国にて公開© 2012 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
2012年09月11日これまで、女性だけの症状と思われていた「更年期障害」。実は男性にもあるってご存じでしたか?更年期障害とは、加齢によりホルモンバランスが崩れることで、さまざまな不調が現れること。体だけでなく、心にも影響を与えます。閉経を迎える40代~50代の女性特有のものと考えられていましたが、近年、男性にも更年期障害が起こることがわかってきました。しかも中には、30代で更年期障害の症状を示す男性も!詳しい説明を、私のクリニック目白の平田雅子院長にお聞きしました。(以下、平田雅子先生)女性の更年期障害の場合、閉経前後に卵巣の機能が低下し女性ホルモンの分泌量が減少することで起こります。それと同じく男性の場合も、加齢による男性ホルモンの分泌が低下が原因と考えられています。まず、男性の場合、脳の視床下部から出されるホルモンの刺激で、性腺刺激ホルモンが分泌されます。性腺刺激ホルモンが分泌されると、男性ホルモンである「テストステロン」が睾丸(こうがん)から分泌されるのですが、テストステロンは、45歳くらいから緩やかに減少していきます。ですから、一般的に男性に更年期障害の症状が見られるのは、40代半ばからといえますが、若くても無縁ではないのです。それは、ストレスなどが原因で、30代でもテストステロンの分泌が減少してしまい、更年期障害の症状が現れる場合があるんです。症状は人それぞれで多岐にわたりますが、代表的なものはこちら。・ほてり、のぼせ・手足の冷え・頭痛・めまい、耳鳴り・肩こり・筋肉痛・便秘・腹痛・頻尿or残尿感・動悸(どうき)・不眠・倦怠(けんたい)感・不安・性欲低下・勃起(ぼっき)不全このように、身体面、精神面の両方にさまざまな症状があるにも関わらず、男性には女性の閉経のような分かりやすい変化がない上に、どれもすぐに病気につながるような症状でないため、見過ごされがち。また男性の場合も、更年期障害による身体的な変化により精神的に落ち込み、うつ状態になることが多いんです。もし症状に心当たりがあるのなら、男性の更年期障害について扱っている病院を受診してみましょう。(ビューティ&ダイエット編集部)
2012年03月18日