Q. 発達障害にはどんな種類がありますか?A. 発達障害にはいくつかの種類があり・ADHD(注意欠陥・多動性障害)・自閉症スペクトラム(ASD)・学習障害(LD)の3つに大きく分けられます。Upload By 井上 雅彦3つの発達障害の関係はこの図のように示すことができます。Upload By 井上 雅彦それぞれ次のような特徴があります。・ADHD(注意欠陥・多動性障害):ケアレスミスが多い、じっとしていられない、考える前に行動するといった「不注意」「多動性」「衝動性」がある。・自閉症スペクトラム(ASD):人とうまく関われない社会的コミュニケーションの困難。狭い範囲の興味、行動などに強いこだわりがある。他人の感情が理解できないなど。・学習障害(LD):読む、書く、計算するなど、特定の分野の学習に困難がある。ほかにも、トゥレット障害や言語発達遅滞、発達性協調運動障害などが含まれることがあります。こういった発達障害による特性は、人によってあらわれる程度が違い、一つだけではなく、いくつか重なってあらわれる場合もあります。【図解】発達障害とは?もし「発達障害かも」と思ったら?分類・原因・相談先・診断についてイラストでわかりやすく解説します!【図解】学習障害(LD)とは?イラスト図解でポイントを解説!自閉症スペクトラム障害(ASD)とは?年代別の特徴や診断方法は?治療・療育方法はあるの?(注意欠陥・多動性障害)とは?症状の分類と年齢ごとの特徴 、診断方法や治療まとめトゥレット障害(トゥレット症)とは?症状や治療法、ほかの発達障害との合併は?言語発達遅滞とは?言葉の遅れ、言葉が出ない原因、家庭でできるトレーニング、相談先まとめ大公開!発達性協調運動障害とは?ただ不器用なだけではない?症状、困りごと、相談先、家庭での対応まとめ
2018年11月07日発達障害のある人が気をつけたい「二次障害」とは出典 : 発達障害は、注意欠陥・多動性障害(ADHD)や、自閉症スペクトラム障害(ASD)、学習障害(LD)などの先天的な脳機能の障害のことを言います。これらの障害のある人の中には、その人にあった支援やサポートが受けられない、自分の特性に合わない環境などの影響によって、二次的な合併症や行動の問題に至ってしまうことがあります。心身の症状や精神疾患、不登校や引きこもりなど、どんな二次障害が起きるかは人により異なります。また、大人になってから二次障害がきっかけで発達障害と診断されるという場合もあります。発達障害の二次障害が起きる原因出典 : 発達障害の二次障害は、家庭や学校、職場などの環境とのミスマッチによるストレスが原因で起こるものと考えられています。発達障害のある人は、その特性をまわりに理解してもらえないことが珍しくありません。そのため、発言や行動に対して、叱られたり否定的な対応をされたりすることもあります。また、感覚過敏やコミュニケーションの障害などがある人は、合わない環境で我慢を強いられたり、日常生活でも大きなストレスを感じていたりする場合もあります。このような対応が積み重なると、発達障害のある人が自分に対して否定的な考えを持ってしまったり、自尊心を低下させたりしてしまいます。それが原因で、気分の落ち込みや不安、引きこもり、暴力的な行動などが二次障害として現れることもあるのです。発達障害のある人すべてが二次障害を発症するわけではありませんが、あまりにストレスが大きかったり、ストレスへの対処がうまくいかなかった場合に発症しやすくなります。発達障害の二次障害、具体的な症状は?出典 : 二次障害の具体的な症状としては、引きこもりや暴力といった行動面の問題、不安や抑うつなどの精神的な問題、身体の不調として現れる心身症などが挙げられます。これらの症状は、「内在化障害」と「外在化障害」の2つに大きく分類されます。それぞれ詳しく見ていきましょう。自分に対するいら立ちや精神的な葛藤が、自分に向けて表現される症状のことを言います。分離不安障害、気分障害、強迫性障害などが典型的なケースとしてあり、具体的には、以下のような症状が当てはまります。・不安・抑うつ・引きこもり・対人恐怖・心身症中でも抑うつ症状は、発達障害がある青年にもっとも多い二次障害だといわれています。また、義務教育を終えた年代以降で引きこもりを続ける人には、発達障害が隠れている場合が多いことも指摘されています。これらの精神的な葛藤や問題が不登校などにつながることもあります。精神的な葛藤などが他者に向けられる形で現れる症状のことを言います。反抗や暴力、家出、ときには非行などの反社会的な行動として現れることもあります。特徴としては、思春期になってからこれらの問題を起こす子どもよりも、比較的小さいうちからそうした行動が目立つ子どものほうが多いことです。小学校低学年の頃から、他者への反抗が目立ったり、家出などを繰り返したりする子どもが一定数いるといわれています。発達障害の二次障害は、年代によって出やすい症状が異なるといわれています。・幼児期:軽度な適応行動の問題が見られることもある。・学童期:適応行動の問題が中心。学業面での問題、集団活動や対人行動における問題が目立つようになる。その他、情緒面の不安定さなどが見られることもある。・青年期:情緒面の不安定さ、精神面や行動面の問題、心身症が中心となる。適応行動の問題も見られる。・成人期:適応行動の問題、精神面や行動面の問題が中心。情緒面の不安定さなどが見られることもある。学童期において、対人関係などの問題が現れ始めた時点で適切な対応が得られないと、思春期以降になって二次障害としてさまざまな問題が前面に出やすくなると考えられています。参考書籍:齋藤万比古 (著)『発達障害が引き起こす二次障害へのケアとサポート』(学研プラス,2009)発達障害の二次障害は予防できる?出典 : 発達障害の二次障害を予防するためには、まずはまわりにいる人が発達障害に対して理解をすることが大切です。二次障害の原因となるストレスの多くは、家庭や学校、職場といった環境やそこでの人間関係から発生しています。そうしたストレスを軽減するためには、発達障害そのものの一般的な知識や、その人の特性、対応方法などを周囲が知っておく必要があります。また、本人が過ごしやすいよう環境調整を行うことも大切です。このような周囲の理解が、小学生までの早い段階で得られることによって、二次障害の予防につながるのではないかとされています。小学校に進学すると、学校の教員がどう対応するかも大きな影響を与えます。家庭だけでなく、学校の担任教員にも理解を求めることが重要です。しかし、どんなにまわりが丁寧に対応したとしても、すべてのストレスをなくすことはできません。本人の心の発達をサポートすることも大切です。・まわりの人たちに受け入れられているという安心感や信頼感を持てること・他者と接する中で学びの機会を得ること・トラブルへの対処方法を学ぶこと・自分自身の障害の特性について知ることこれらのサポートを早い段階から周囲が行っていくことで、ストレスに柔軟に対応できるようになり、二次障害も起こしにくくなるといえます。発達障害の二次障害は治るのか?出典 : 発達障害は先天的な脳機能の障害であるため、発達障害そのものを治すことはできません。しかし、生育環境によって引き起こされた二次障害については、症状に合わせて医療機関などで治療を行う場合もあります。抑うつや不安といった内在化障害の場合、認知行動療法や精神療法といった心理療法、家族に対する家族療法、薬を使った薬物療法などが、必要に応じて行われます。また、暴力などの外在化障害に対しても、攻撃性をコントロールするために薬物療法が行われることもあります。状況によっては、入院して治療する場合もあります。しかし、医療機関だけで二次障害をすべて解決できるわけではありません。家庭や学校、児童福祉機関などで連携して対応していくことが必要です。発達障害の二次障害のある人や家族が利用できる相談先出典 : 発達障害の二次障害の症状や対応について、本人や家族が誰にも言えずに悩んでいることも少なくないかもしれません。そうしたときに利用できるサポートがいくつかありますので、ご紹介しましょう。まずは相談先として、以下のような支援機関があります。・精神保健福祉センター・児童相談所・子育て支援センター・発達障害者支援センターなど各機関では、本人や家族から発達障害や育児全般に関する相談を受けたり、必要時には医療機関を紹介したりもしています。このほか、各自治体では、引きこもり・不登校に対して相談や家庭訪問を行っていたり、教育委員会でも不登校に対する教育相談を実施したりしています。また、障害者福祉施設では、強度行動障害に関する研修を終えた相談支援専門員が、相談を受けつけている場合もあります。まだ医療機関にかかっておらず、発達障害と診断を受けていない場合、医療機関に行くのはハードルが高いかもしれません。まずはこのような場所で、困っていることについて相談してみると良いでしょう。また、症状によっては障害者手帳の交付を受けたり、障害福祉サービスが受けられたりする場合もあります。地域によっては、発達障害の当事者の会や保護者の会がありますので、そうした場所で交流したり、情報収集したりするのも良いかもしれません。発達障害の二次障害がある人への対応方法出典 : では、二次障害がある人には具体的にどのように対応したら良いのでしょうか。家庭と学校、それぞれで必要な対応について見ていきましょう。親が子育てに対する自信や、子どもへの愛情を持てなくなる場合もあります。そのまま子育てに対する意欲を失ってしまうと、子どもは親から見捨てられたように感じ、二次障害から不登校などにつながっていくことも考えられます。また、子どもが自分の行動によって親や周囲の大人をコントロールできるという感覚を抱き、それが外在化障害につながる場合もあります。こうした問題に対応する方法として行われているのが、ペアレントトレーニングです。ペアレントトレーニングでは、親が子どもとの関わり方やその子の特性に合った子育ての方法を学びます。これが、子どもの過ごしやすい環境や、人間関係づくりに役立ち、二次障害の防止になるといわれています。学校での対応については、担当する教員だけではなく、他クラス・学年の教員や保健教諭、カウンセラーなど学校全体で連携して、支援を行っていくことが大事です。・本人に対し問題行動以外の部分に注目するつい問題行動ばかりに目がいってしまい、叱責が多くなることも少なくないでしょう。しかし、叱責ばかりが増えると自己評価の低下につながってしまいます。できていることをそのまま伝えたり、ほめたりすることも大切です。それによって、望ましい行動が増えたり、信頼関係を得たりすることにつながります。・本人以外の学級全体にも配慮する発達障害のある子どもが学級にいると、その子にばかり注意が向いてしまいがちになります。そうすると、ほかの子どもが不満を抱き、さまざまな問題が生じるきっかけとなることもあります。ほかの子どもにも、きちんと目を向けていることが伝わるような関わりを普段からしておくことが大切です。・学校全体で取り組む対応方針を教職員全員で共有し、実施していくことが重要です。一部で方針が違う対応をしてしまうと、本人の状態を悪化させたり、関係性が悪くなったりしてしまいます。・いったん対応方針を決めたら、しばらく続ける支援する方針を決めたら、効果を見るためにも2〜3週間は続けることが大事です。まわりの対応方法が変わるということは、本人にとってストレスであり、一時的に問題行動が増えてしまうこともあります。しかし、慣れればそうした行動が少なくなってくる場合もあるので、子どもの状態を見ながら継続するようにしましょう。対応方法について、ときには専門家に意見を求めることも大切です。まとめ発達障害の二次障害は、さまざまな形で現れますが、それらの多くは家庭や学校など周囲の人との関わりの中で生まれるものです。周囲の関わり方によって発生を予防していくことがまずは重要です。また気づいた段階でできるだけ早期に適切な対応を取ることができれば、悪化を防ぐことも可能だといえるでしょう。しかし、なかなか発達障害に気づくことができず、二次障害を発症して診断に至る人もいます。医療機関や支援機関などを利用しながら、日常生活における対処方法を学んだり、適切な生活環境を整えたりしていくと良いでしょう。宮本 信也 (編集), 日本発達障害福祉連盟 日本発達障害学会『発達障害医学の進歩〈23〉発達障害における行動・精神面の問題―二次障害から併存精神障害まで』(診断と治療社,2011)齋藤万比古 (著)『発達障害が引き起こす二次障害へのケアとサポート』(学研プラス,2009)古荘純一 (著, 編集), 磯崎祐介 (著)『神経発達症(発達障害)と思春期・青年期――「受容と共感」から「傾聴と共有」へ』(明石書店,2014)
2018年11月06日発達障害という言葉がずいぶん浸透してきたと感じますが、私は複雑な心境です。当事者として、思いを発信してきました。発達障害当事者も、そうでない人も、お互いに理解し合える世界を望んでいました。今の状況は、果たしてそういった世界なのでしょうか……。文・七海日常生活で ”発達障害” の使われ方が変わったネット上でもそうなのですが、私のもっと身近なところ、日常生活でも変化を感じるようになりました。ひと昔前まで、発達障害者は ”腫れ物扱い” されている印象がありました。さらにいえば、発達障害だということをカミングアウトしても、その単語自体を知らないという人もいました。今では発達障害という言葉を聞いたことがない人のほうが稀なのではないでしょうか。コミュニケーションが上手でない人を、”アスペ” と揶揄することすらありました。当人が当事者であるかどうかは別にして、差別用語として使用されていた認識です。今では、「もしかしたら私も発達障害かも……」「あの人は発達障害だから仕方ないよね」といった発言が見受けられます。以前まででも全くなかったわけではないのですが、こんなに多くなったように感じるのです。さらにいえば、ニュアンスも異なるように思います。差別用語としてではなく、ある意味 ”個性” として受け入れられている面はあるのかもしれません。錯綜する情報、発達障害の ”せい” にする人たち発達障害という単語が浸透したうえで感じるのは、情報が混乱しているというもの。主にADHDとアスペルガー症候群が取り上げられているように感じます。その2つを取っても、情報がごちゃ混ぜになっていると感じる場面が多々あるのです。例えばADHDの特徴として、長時間ひとつのことに集中できないといったものが挙げられます。いっぽう、アスペルガー症候群の特徴の中には、言葉を額面通りに受け取るといったものがあります。もちろんこれは一例で、症状はさまざま。その症状の出方も人それぞれです。上に挙げた例を見ると、どちらも社会生活を送るうえで不便をきたす可能性があります。しかしながら、ADHDとアスペルガー症候群は別物です。併発している方も確かにいますが、「集中力がないし空気を読めないから発達障害である」と決めつけるのは少々安直な考えに感じます。私はアスペルガー症候群当事者ですが、集中力がないときはないですし、不注意からミスをすることだってあります。だけど、ADHDの診断は降りていません。また、発達障害は、ADHDとアスペルガー症候群だけではありません。読み書きや計算などの能力のうち、習得や使用などに著しい困難を示す ”学習障害” も、発達障害のひとつです。よく聞くアスペルガー症候群は ”自閉症スペクトラム障害” のひとつであり、そのほかには知的障害や運動能力の遅れを伴うものなどもあります。発達障害は本来さまざまであるものの、情報が錯綜しているが故に「ADHDとアスペルガー症候群の症状の一部があるから発達障害だろう」と憶測する人も少なくないように思うのです。発達障害という言葉が浸透しているぶん、「自分は発達障害だ」「あの人は発達障害だ」と決めつけると楽になる気持ちもよくわかります。生きづらかった原因は障害の ”せい” だったのだ、と安堵した経験は私自身にもあるからです。偏見は確かに少なくなったかもしれない。だけど…前述した通り、ひと昔前はもっと偏見にあふれていたように感じます。アスペルガー症候群でいうと、”コミュニケーションができない人” というレッテルを貼られるような感覚です。しかし、私には接客経験があります。接客でいうと、クレーム処理が得意なほうでした。他の人のクレーム処理も任されていたので、そういった認識です。アスペルガー症候群と聞くと、クレーム処理が苦手なイメージがありませんか? 実際、私は真逆なのです。発達障害といっても、本当にさまざまなのです。「○○だから発達障害」というストレートな考え方は、今の状況だと少し危険だなと思います。発達障害の情報が錯綜しているぶん、「私(あの人)は発達障害だからこれもできないだろう」と、勝手な諦めも出てしまうかもしれないからです。憶測だけで自分や他人の可能性を潰すのは、非常に残念に思います。ひと昔前に比べて偏見は少なくなったと思います。偏見や差別意識をなくせれば、そういった思いもありました。その点で言えば、私の願った世界に近づいたのかもしれません。だけど、強い違和感を覚えるのはなぜなんだろう。何度も自問自答しました。今の結論では、発達障害自体が拠り所になっているだけの人が多くいるように感じるからです。発達障害は ”個性” という捉え方で良いのだと、私は思います。程度の差はあれど、みんなで手を取り合って生きていければ良いのでは、と。そういったポジティブな世界を望んでいたのだと思います。今は発達障害の ”せい” にする風潮が強すぎるのかな、と感じます。多少の安堵感は良いと思うんです。しかし、発達障害の ”せい” にして、可能性を摘んでいるような状況が、ネガティブな浸透の仕方のように感じています。当事者も、当事者であろう人も、そうでない人も。みんなが生きやすい世界が私の理想です。せっかく浸透するのであれば、わかり合い、助け合い、プラスを生み出せるような世界になるよう願っているのが、私の真意です。©PaulaConnelly/Gettyimages©fizkes/Gettyimages©praetorianphoto/Gettyimages
2018年11月05日Q. 自閉症スペクトラム障害(ASD)とは?A. 自閉症の特徴のある障害概念のグループです。それまで自閉症やアスペルガー症候群など様々な名称で呼ばれていたものが、「DSM-5」という診断基準で「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」として統合されました。Upload By 井上 雅彦アメリカ精神医学会が策定した最新の診断基準「DSM-5」で、それまで、アスペルガー症候群、高機能自閉症、早期幼児自閉症、小児自閉症、カナー型自閉症などさまざまな名称で呼ばれていたものが、この診断名に集約されました。診断や支援において、これらには明確な線引きがないことから、それぞれの障害に明確な境界線を設けない考え方が、医療の現場で使われることが多い「DSM-5」で採用されたことが経緯としてあります。そして、「連続体」という意味の「スペクトラム」という言葉が使われることになりました。これからこの概念が一般化していくと考えられています。「DSM-5」では、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害について、主に以下が特徴として挙げられます。■アメリカ精神医学会の診断基準の「DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)」A. 社会的コミュニケーションの障害B. 限定された反復的な行動様式C. 症状は発達早期に存在している診断ではA、Bの2つの症状を3段階の重症度で評価していきます。(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)について詳しく知るもっと詳しく知る自閉症スペクトラム障害(ASD)とは?年代別の特徴や診断方法は?治療・療育方法はあるの?広汎性発達障害(PDD)とは?年齢別に症状の特徴を解説!アスペルガー症候群(AS)とは?症状と年齢別の特徴を詳しく解説します。カナー症候群(カナー型自閉症)とは?アスペルガーとの違い、症状、年齢別の特徴、子育て・療育法を紹介!自閉症 | 文部科学省
2018年10月25日10月19日放送のドキュメンタリー番組「RIDE ON TIME」(フジテレビ系)にKing&Princeが出演。そこでメンバーの岩橋玄樹(21)がパニック障害であると明かし、話題を呼んでいる。岩橋は「はっきり言うと、パニック障害というものとずっと闘ってきて」と自身の病について告白。さらに「小学生のころにいじめに遭っていた」と明かし、「逃げられないような立場だったり、もうどうしていいかわからなくなると自分の感情のコントロールがわからなくなって」と病状を説明した。さらにパニック障害について「いつ治るかわからないですけど、それは自分が一生抱えていくもの」と語りながらも、いっぽうでステージに上がることへの不安を吐露。「プライベートの岩橋玄樹のままステージに出られるようなことはないですね。アイドルとしての僕でしか見せられない。じゃないとパニックになっちゃうから」と明かし、「でも、逆に隠すよりこうやって言ったほうが気楽ですね」と語った。人気アイドルによる切実な告白ーー。Twitterではエールが上がっている。《パニック障害を抱えながらアイドルをやるだけでも並々ならぬ覚悟が必要なのに、それを一切ファンに察されることなく今日この日まで隠し通してきた岩橋玄樹のプロ根性が凄い》《人気アイドルがパニック障害だったんだね。応援するよーっていうたくさんのファンの方がいて素晴らしいな、きっと支えになると思う》《パニック障害抱えてる中でアイドル続けてくれててありがとう》パニック障害とはその名の通り、突然“パニック”に陥ってしまう病。芸能界でも戦ってきた人は少なくない。「星野源さん(37)もその1人です。星野さんも岩橋さん同様に子供のころにイジメられ、発症したそうです。高校生になると、外に出ることすら難しく感じていたほど。そんなときクレイジーキャッツ『だまって俺についてこい』に出会い、気持ちがラクに。“そのうちなんとかなるだろう”というフレーズを支えに活動し、いまの大活躍ぶりがあるのです」(芸能関係者)岩橋にとっての“支え”は同じくKing&Princeメンバー・神宮寺勇太(20)だった。「岩橋さんはパニック障害について周囲になかなか打ち明けることができず、神宮寺さんにだけ伝えていたそうです。神宮寺さんもそんな岩橋さんの心情を理解し、これまで何度も手を差し伸べてきました。まさに二人三脚で歩んできたのです」(前出・芸能関係者)これからもそれぞれの活躍に期待したい!
2018年10月21日発達障害のある子と定型発達の子の子育ては、天と地ほどの差がある私は息子が生まれてすぐに、発達障害のある子どもと定型発達の子どもの子育てには天と地ほどの差があると知りました。・抱っこしても海老反りせず身を任せてくる・発語のない0歳の時でもこちらの言っていることは解っている・長時間泣かない・外出時、自ら手を握ってくる定型発達の子どもを育てている親御さんには当たり前のことでも、1人目の子どもが発達障害だった私にはすべてが新鮮でした。そして「世間一般の人が体験する子どもの夜泣きや迷子、発語の遅さはこの程度なのか。何て楽なんだろう」と感じたものでした。まだ小さいのに、気遣いができるなんて!息子にとって「お姉ちゃん」は生まれたときから「傍にいて当たり前」の存在でした。小さいころはゲームの取り合いなどで喧嘩もよくしましたが、自分より知識があり色々なことを教えてくれる姉を尊敬していました。息子が小学校に上がったころからでしょうか、娘が近くに来ると、それまで私の横に座っていた息子が遠い席に移動するようになりました。後で理由を聞くと、「僕とお母さんが仲良くしているとお姉ちゃんが寂しく思っちゃうから」と言いました。小学校低学年なのにそんな気遣いをするものなのかと、驚いたものです。息子8歳、高校生の娘は反抗期真っ盛り娘が高校生だったころ、何を言っても全否定!という時期がありました。いつものように、私と娘がバトルをしていたときのこと。息子が険悪な母娘の横で、お笑い番組をつけたのです。Upload By 荒木まち子息子がテレビをつけたことで、娘は気持ちの転換ができ、落ち着いたのでした。息子に話を聞くと…Upload By 荒木まち子息子10歳、深刻そうな顔をして…息子が深刻そうな顔をして、話しかけてきました。息子「今日、学校で友達が『障害者ってウザいよね』って言ったんだ。その言葉がすごく嫌だったんだけど、俺そのとき、黙っちゃったんだ」私「そうなんだ」息子「ムキになって『そんなことない』って言うのもどうかと思ってさ。でも友達のその言葉が心に突き刺さってホント嫌な気持ちになったんだ」私「うん、その気持ち分かるよ」息子「…お姉ちゃんってさ、障害あるんだよね?検査とかしてるの?」私「発達検査のこと?しているよ」息子「してたんだ。診断名は何?」私「自閉症だよ」息子「ふうん、自閉症か。俺、実は本とかで調べたんだ。いつからそうなの?」私「生まれたときからだよ。小さいころから周りの子と違うと感じてたんだ」息子「へぇ、お母さんは分かってたんだ?俺、ずっと気づかなかったよ。何が原因なの?」私「脳の伝達機能の問題らしいけど、まだはっきりとは解明されていないんだよ」息子は娘が病院に通っていることを知っていましたし、私が娘と進路や将来のことなどを話すのを聞いていました。でも生まれてからずっと一緒に暮らしてきた彼は・計算は苦手だけど絵が得意・本が好きで色々なことを知っている・泣いたり怒ったりもするけど、一緒に笑ったり冗談を言い合える・不器用だけどサボらず真面目・寂しがり屋で優しいという“個性”を持つ姉として彼女を受け入れていました。成長するにつれ、姉が自分や周りの友達と違うことに気づき始めた息子は、内緒で図書館やネットで姉の症状について調べたのでしょう。思春期の入り口に立った息子に私は息子の話を聞き彼の気持ちを受け止めます。質問に答えます。でも私は娘に関することについて「息子にはこうして欲しい」などの要望は言わないようにしています。なので、この日私は息子に「5、6年になると、そういうこと口にする子もいるよね」「それってどうなんだろうね」とだけ言いました。初めての発達障害児の子育ては分からない事ばかりです。それは、きょうだい児の子育ても同じです。私がしていることが正しいのかは分かりません。先日私は会話の中で息子にあるヒントを出しました。「私が『障害者の親の会』に参加しているのは知ってるでしょ?そこで私は経験した人にしか分からない悩みや情報を共有したり、笑い話をしたりして元気をもらっているんだ。世の中には他にも『認知症の親を持つ子の会』とか『がんの当事者会』とかいろいろな会があるんだけど『きょうだい児の会』っていうのもあるんだよ」障害がある子の親がそうであるように、きょうだい児にはきょうだい児にしか分からない悩みや苦労があるはず。苦しくなったり、壁にぶち当たったり、一人で抱え込めなくなったとき。そこに足を運べばきっと気持ちが楽になる、そんな場所があるんだよ、と。これから本格的な思春期を迎える息子の悩みが少しでも軽くなれば良いな、という願いを込めて。
2018年10月19日Q. 学習障害(LD)の定義はどんなものですか?A. 学習障害(LD)は、知的発達に遅れはないのに、主に「読む」「書く」「計算する」「推論する」といった能力の習得や使用に著しい困難があることを言います。Upload By 井上 雅彦定義は一つではありませんが、日本でよく使われる定義は、主に学校教育に関係する文部科学省のものです。文部科学省の学習障害の定義は以下の通りです。学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。ほかにも、医学的な診断基準「DSM-5」「ICD-10」における定義や概念があります。使われるシーンや状況、立場によって、定義を始め、含んでいる困りごとの種類や名称などには、少しずつ違いがあります。Upload By 井上 雅彦■医療:アメリカ精神医学会の診断基準の「DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)」(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)について詳しく知る■医療:WHO(世界保健機関)の医学の診断基準の「ICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10版)」、ICD-11とは?ICD(国際疾病分類)の概要について詳しく知る■行政・法律:日本でのさまざまな法制度の根拠となる「発達障害者支援法」発達障害者支援法では、「ICD-10」に基づいて学習障害が発達障害の定義に含まれています。困りごとの内容は、一つだけでなく複数あらわれたり、一人ひとり状態は異なります。定義にぴったり当てはまることはむしろ少ないとも言えます。もっと詳しく知る参考書籍 :(日本精神神経学会 (監修), 高橋 三郎 (翻訳), 大野 裕 (翻訳), 染矢 俊幸 (翻訳), 神庭 重信 (翻訳), 尾崎 紀夫 (翻訳), 三村 將 (翻訳), 村井 俊哉 (翻訳)『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』2014年・医学書院)(8)LD、ADHDの教育 | 文部科学省
2018年09月28日『こんなに毎日やらかしてます。トリプル発達障害漫画家がゆく』(ぶんか社)を8月に刊行した沖田×華さんは、自閉スペクトラム症にADHD、加えて学習障害のある“トリプル発達障害漫画家“。自身も自閉スペクトラム症とADHDがあるライター・鈴木希望が取材した。ハイパーADHDだった小学生時代。「みんなで遊ぶ」の意味がちょっと違ったUpload By 鈴木希望トリプル発達障害があるという漫画家の沖田×華さん。明るさと、人の心に寄り添うやさしさが感じられる漫画で人気の彼女は、いったいどのような少女時代を過ごしていたのだろうか。沖田さん(以下敬称略):「私、子どものころ、むちゃくちゃテンション高かったんですよ、ハイパーADHDで(笑)。『この子、いいかも!』と思ったら、弾丸のように突っ込んで行って、ものすごい勢いでしゃべりまくるという感じでした。」気に入った友達にはとことん話しかけ、自分のペースに巻き込んでがっつり関わるのが好き。その半面、集団行動になるとその関わり方は一変したという。沖田:「”みんなで遊ぼう”というときになると、周りから少し離れたところにポツンといるタイプ。そこの位置が一番楽っていうか、安心して全体図を見られるので。大人数で遊ぶゲームだったりすると、ルールが分からなくてつまらないから、他の人がやっているのを見て、自分もゲームに参加している、一緒に遊んでいるという認識をしていたんです。」だから、「ひとりでいるからといって孤立しているとは限らない」と沖田さんは言う。沖田:「親御さんや周りの大人が”孤立しているのではないか”と心配になってしまう見え方かもしれないけど、子どもの感じ方はまた違っていて、ひとりでいるように見えて、実は空間を楽しんでいる場合もあるんですよね。そういう可能性があると分かれば、見守る側も気が楽になるんじゃないかな。」――周囲と独特の関わり方をしていた沖田さん。長くつき合っている友達には共通点があるのでしょうか。沖田:「お互いにイチャイチャしないというか、必要なときにサクッと会ってサクッと帰るっていう感じ。例えば、「何月何日の何時から何時まで」と時間を決めて、一緒にごはんを食べて、終わったら別れる、というような。」お互いに仕事を持っていて忙しい身の上、とても効率的な交流の仕方だ。そんな沖田さんは、とりとめもなく続くガールズトークや、大人数が集まり、目まぐるしく話題が変わる場が苦手。いわゆる女子会は「さっぱり理解できない」という。沖田:「できれば1対1で会える子がいい。自分の趣味を持っていて、人に依存しないタイプ。そういう合理的な性格の人と気が合うなって思います。」自閉スペクトラム症の当事者である私(鈴木)も、ガールズトークや大人数での集まりが苦手だ。どの話についていけばいいのか分からないし、飛び交う会話に割って入ることができない。結果、”みんなでいるのにひとり”という状況になってしまうので、1対1もしくは少人数で話せる相手を選んでしまう。わが身を振り返ると、”飲み会で話に加わらずはじっこにいる人”というのは、その場の空気をぞんざいに扱っているのではなく、その人なりに人間関係や会話を大切にしてるのではないか、と思えてくる。曖昧な詰問ではなく、具体的な指示が欲しかったUpload By 鈴木希望ASDの特性として、意味や目的を理解しにくい曖昧な表現や指示が苦手、というものがある。沖田さんもこれには学童期から苦しめられてきたようだ。沖田:「答えても答えても『なんで?』ばかり言う先生がいて。例えば宿題を忘れたときに『なんで宿題をしてこなかったの?』って聞いてくるから、私は『忘れました』って返すと『じゃあ、なんで忘れたの?』ってまた聞かれて…忘れたからできなかった、というのが私の答えなので、それ以上返せない。」――「なんで?」と問われるばかりで、先生が求める答えが何か分からなかった…。沖田:「それで、場面緘黙症になってしまいました。どう答えれば良かったのか、大人になってから周りの人に聞いたら、”まず謝るのが先なんじゃないの?”、”忘れてきたことに対して申し訳ないと思わないの?”って…。質問に対して返すべき言葉が間違っていたら、その場で教えてほしかったです。」指示や指導の内容が具体的でないと動けないというのは、発達障害児・者にはよくある話で、沖田さんも例にもれなかった。沖田:「忘れないためにどうしたらいいのか先生に聞くと『自分のことなんだから、自分で考えて気をつけなさい』。気をつけ方が分からないから聞いているのに、おかしいなと。でも、それを親に言えばまた怒られるのが分かるわけです。結局、誰にアドバイスを求めたらいいのか分からなくなっていましたね。」顔が覚えられない!相貌失認の対処法Upload By 鈴木希望人の顔を認識できない、相貌失認という特性を持っている沖田さん。――作品(講談社刊『透明なゆりかご』)がドラマ化され、撮影現場に顔を出すなど、複数の人に接する機会も少なくないと思います。そうした場面ではどのように対処しているのですか?沖田:「『透明なゆりかご』の撮影現場に行ったときは、服装で判断してました。出版社の編集担当と映像会社の方が『あの茶色の服が○○さん、ピンクの服が●●さん』って説明してくださって、挨拶するタイミングも決めていただいて。2人にエスコートしてもらったのでなんとかなりました。」――相貌失認と一口に言っても程度はさまざま。同居されている彼氏など、繰り返し会っている人の場合、沖田さんはすぐ判断できるのでしょうか?沖田:「冬になると分かりづらい。っていうのは、冬になると似通った服装の男の人が増えちゃうんです、黒いダウンにジーパンとか。冬場に彼氏と一緒にスーパーに行ってはぐれたとき、どうにか見つけて”はい、これ買おう!”ってカゴに商品をポイッて入れたら、全然違う人だったり(笑)やっぱり、顔は覚えられないんだなって思いましたね。テレビで見ている方でも、実際お会いしたらずいぶん違う印象になりますし。その点、声は絶対変わらないから、一番の判断材料になりますね。」明るく語る沖田さんだが、ちょっと想像してみてほしい。似たようなお面を装着した人だらけの世の中で、声をかけるべき人を探し出したり、名前を間違わずに挨拶することを。大切な人の顔も、目の前からいなくなってしまった途端に霞がかってしまう悲しみを。私(鈴木)にも相貌失認がある。慣れてしまっているので正直そこまで深刻には考えないが、この特性のために先方を不快な気持ちにしてしまわないかという不安は常につきまとっている。”顔を覚えられない=関心がない”ではないことが、もっと認識されたら良いのだが。他人ごとだと思っていたのに!突然のメルトダウンが襲うUpload By 鈴木希望作品中、最も衝撃的なのが”メルトダウン”の描写。メルトダウンとは、精神的に追い詰められ、ストレスが極限に達した発達障害当事者の身に起こる、強いパニック症状のことだ。自宅マンションに修繕工事が入った際、騒音でストレスを溜め込んだ沖田さんは、人生初のメルトダウンを起こした。――希死念慮が沸き、飛び降り未遂を起こすほどの辛いパニックとは、一体どのような状態なのか…。またどのように対処をしたのでしょう?沖田:「メルトダウンって、いろいろな事が重なって対応できなくなったときに起こすパニックらしくて。お医者さんが言うには、小学校などで耐震修繕工事が始まると、発達障害の子は来られなくなることが多いそうです。授業中なのに、機械の音や作業員の声まで全部耳に入ってきてしまって、頭の中がぐちゃぐちゃになっちゃう。うちのマンションの工事の時は、私の部屋の前が作業員の溜まり場で。喧嘩している声とかが聞こえてくる。それを2週間ぐらい聞き続けていたら、頭がおかしくなってしまいました。睡眠を取れないのが一番きつかったです。どんなにストレスを溜めないようにと気を使っていても、物理的に騒がしい環境になってしまったら防ぎようがないので…。」――メルトダウンには前兆があるのでしょうか。それはどういうもので、どのように対処していますか?沖田:「メルトダウンの前兆は、私の場合、頭の中がサワサワサワサワって、そよ風が吹くような状態が起こるんです。これを放っておくとメルトダウンになるので、前兆を感じたら仕事をセーブします。本当は仕事が大好きなので、最初は”仕事がなくなっちゃうの嫌だ、迷惑かけちゃう!”とか思ってたんですけど、そんなこと言ってたら死んじゃうので。今は断ることを一所懸命勉強していますね。」――感覚過敏の程度は、メルトダウン中どれだけの変化がありましたか?沖田:「元々蛍光灯の光や、テレビがちょっと苦手なんですけど。この明るさ、この音量だったら大丈夫だっていうレベルがあるんです。それを超えて、ものすごく過敏になりました。すべての刺激が全部ダメになっちゃったんですよ。光が痛い!音が痛い!頭に響いて痛い!って。メルトダウン中って、混迷って言うらしいんですけど、体は寝たきりの状態でも、頭は活動していて、周りのことはすごく分かってるんです。」――つまり、休んでいるように見えても、絶えず刺激を受け続けているということ…。これは相当に辛いでしょう。感覚過敏がある子どもを持つ親にとっても気になるのはそんなときの対応です。周囲の人間はどのように対処したら良いのでしょう?沖田:「私は、暗くて静かなところで一人にしてもらうのが楽でした。カーテンを閉めてもらった部屋のベッドで、一人で何日も過ごして…そうすれば外部からの刺激が入ってこないので、光や音で痛みを感じることはありません。メルトダウンのタイプもさまざまで、子どもの場合はパニックを起こして暴れることも多いそうです。泣き叫んで、吐き出すだけ吐き出したら疲れて落ち着く、という場合もあるらしいです。感情や行動が制御できなくなって、視界も狭くなってしまうので、発作を起こしている人がいたら、周りの人はしつこく話しかけず、静かで安全な場所に連れて行ってあげるのがいいんじゃないかと思います。」初めて薬を服用することで見えた定型脳の世界とイメージの変化Upload By 鈴木希望メルトダウンをきっかけに通院、ストラテラの服用を始めた沖田さん。不安感を取り除き、注意欠如や多動を改善するADHDのための処方薬だが、副作用のひとつに、想像力やアイデアの鎮静がある。――漫画を描くにあたって必要な感覚が服薬によって抑制されることで、不便はなかったのでしょうか?沖田:「何もかもが鎮静されて。体調は良くなったのですが…、『透明なゆりかご』のネームを描くのが遅くなってしまった。それで、集中しやすくなる作用があるエビリファイ3mgを処方してもらって、それを飲んで一気にネームを仕上げるようにしています。それ以外の連載は、エビリファイを飲まなくても描けるようになりました。」服薬により、カクテルパーティ効果(たくさんの人がそれぞれ同時に話しているなか、自分が興味のある人の会話や自分の名前などを自然と聞き取ることができること)など、定型発達者が当たり前に感じている世界を体験するだけでなく、アイデアの浮かべ方までもが変化したと沖田さんは言う。沖田:「私は頭の中のイメージを可視化する癖があって、漫画のネタを考えているときって、ハムスターの回し車のような、回転する円のイメージがあったんですね。これが自分の中のメモリみたいな感じになっていて、これを逆再生して過去のことを思い出して、そこからネタを引っ張りだしてきて描くっていうスタイルだったんです。すごく簡単。調子がいいと色や音もついていて。そのうち周りからボコボコと泡が浮いてきて、それがネタや素晴らしいセリフなので、出てきたセリフを描いていけばよかった…でも、ストラテラを飲んだら、それが全部なくなっちゃったんです。」長年慣れ親しんだ思考と、仕事のスタイルを、メルトダウンによって失ってしまう沖田:「メルトダウン後って、ホワイトアウトするんです。頭の中が全部真っ白で、自分がどこにいるかも分からない、何をしたいのかも分からない。マンションから飛び降りたい気持ちは落ち着いても中身は壊れたまま。そのうち、真っ白な世界の中に、四角い場所が出てきました。最初は冷凍庫の中みたいな所にたたずんでいるばかりで動けなかったんですが、そのうち指示がメモ用紙で出てくるようになりました。『今日はシャワー浴びろ』とか。私はその指示のみ従える状態です。そのうちだんだん霧が晴れてきて、2~3週間経つと、地下駐車場みたいな、コンクリートの固い部屋が出てきて、でも、仕事がどこにもないんです。浮かばないんです、何ひとつ。昔は、床が丸くて柔らかく、音も色も匂いもあったのに、コンクリートの壁しか見えない…。漫画が描けない!って焦ったんですけど、でも一応部屋というものが見えたから、何日もかけてその部屋を探索しました。ある日、部屋の形がまた変わって五角形になりました。そのときに自分のペンを認識したんですよ。今までも、机の上にペンはあったんですけど、自分のペンであることを理解できなかったんです、何のときに使うのかな?って。やっと愛用のペンを認識して安心して、今まで仕事を休んでいたけど、これだったら描けそうかなって、ようやくパッと浮かんできたんです。そろそろあの連載に手をつけたほうがいいかなってぼんやり考えていたら、今度は頭の中の部屋の壁が全部引き出しになって。その引き出しを開けたらネタが出てくるようになったんですよ。」――紆余曲折があったものの、沖田さんは新しい仕事のスタイルを手に入れることができたのですね?沖田:「今はまだ整理中で、引き出しにラベルが貼られていないから、開けてみないと何のネタが入っているか分からないんですよ。ネタを探すのに時間がかかってしまうから、仕事のペースはメルトダウン前より3倍くらい遅くなりました。でも、無理はしていない感じがしています。以前は過集中に入って、倒れるまで仕事をしていたので、これはこれでよかったなと思います。」Upload By 鈴木希望カラフル?メロディアス?めくるめく共感覚の世界Upload By 鈴木希望ADHDのある漫画家でありクレパス画家・史群アル仙さんのクレパス画を見た沖田さんは、味や色、音楽を感じたのだそう。その緩やかで美しい移り変わりや共感覚(ある刺激に対して異なる種類の感覚をも生じさせる、特殊な知覚現象)についてのエピソードも本書に収められている。――絵を鑑賞するときなど以外の日常でも、こうした共感覚が生じることはあるのでしょうか?沖田:「私たち発達障害者って、自分や相手が疲れていることに気づきにくいじゃないですか。私の場合、それが、音や音楽のサインで現れるんですよ。担当編集者のIさんは、疲れると声が少し小さくなって、それと同時に、声がガラス玉みたいにバラバラバラバラーッって下に落ちちゃうんです。それで頭に入ってこなくなるんですけど。加えて、ワーグナーのウエディングマーチが流れてくるんです。パーンパカパーン~♪って…おまけに神父様の声まで聞こえてくる。めっちゃ辛いときなのに、『(厳かな声で)健やかなるときも、病めるときも…』って。これが流れてきたらうちらはおしまいだ!って気持ちになって、もう帰りたくて帰りたくて…。何回もIさんに訴えるんですけど、全く理解してもらえない(笑)仕事がうまくいっているときの音楽はマリオカート(ゲーム音楽)です。ピロリロリン♪テテテテ♪みたいな軽快な音楽で。あ、これ私調子いいぞ!って分かったり。」――共感覚に限らず、発達障害があると、疲れのサインなどが定型発達者とは大きく違う場合も。それゆえに誤解されたり、苦労したことはありますか?沖田:「私は発熱する前兆が分かるんです。指を机とかにトントンってタッチして、ビリビリッてしびれると、だいたいその30分後に熱が出るって分かる。学校で先生に『熱が出そうなので帰らせてください』って頼むんですけど、そのときは平熱なので帰してもらえなかったり。何言ってんの?って。で、あとから熱が出ちゃう。」自分の過去を振り返り、かつての子どもとして望むことUpload By 鈴木希望年齢に応じて経験を重ね、自分の特性の取り扱い方なども体得してきた沖田さん。しかし、幼いときは思いをうまく言語化できなかったり、どのように説明をすべきか分からず、辛い思いもしたのだとか。そんな自分の過去を振り返り、かつての子どもとして望むことについて、伺った。沖田:「小学校・中学校のころは分からないことだらけで、叱られて、誰に相談していいか分からなくて…近くの学童(センター)に逃避していましたね。学校では嫌なことがたくさんあったんですけど、学童は私にとって天国でした。そこにはトランポリンがあって…トランポリンでひとしきり飛び跳ねたあと、今度は漫画コーナーに行って漫画を読みまくて、ラミネートを作って遊んで…それが本当に楽しくてたまりませんでしたね。」自閉傾向がある人の行動に”常同行動”というものがある。くるくる回ったり飛び跳ねるなどの反復行動で、ストレスや疲れを和らげるため、安心するために行うのだと言われている。幼いころの沖田さんも、回ったり飛び跳ねるのが大好きだったそう。沖田:「意味もなく跳ぶのって、ほかの人から見たらおかしいじゃないですか。でも、トランポリンがあれば、いくら飛び跳ねてもおかしくない。だから、学童にトランポリンがあったのは、私にとって素敵なことでした。この学童は小学校までしか利用できなかったのですが、年齢を偽って、中学1年まで通いました。中学生には中学生なりの居場所というか、リラックスできるスペースがあればいいのにって思ってました。」――確かに、現状では幼い年齢に関しては、支援は手厚く、居場所も多いけれど、年齢が上がるにつれて、数も種類も減っていくような印象があります。そして、障害の有無が大きな壁となって、それぞれの居場所にも隔たりがあるようにも思えます。沖田:「学童の書籍コーナーに、知的障害があるおじさんが、いつも番頭さんみたいに座ってたんですよ。ニコニコしてて、私たちがいくら騒がしくても何も言わない、気のいいおじさん。そこは知的障害の人も、発達障害の子どもや定型の子どももいて、みんな自然に過ごしてて…。そういうふうに交流できる場所が増えたらなって思っています。」発達障害当事者として、願うことUpload By 鈴木希望取材時、私の目の前にいた沖田さんは、漫画の中の”×華ちゃん”そのもの、表情豊かで繊細、サービス精神旺盛な方だった。今の子どもたちに向ける話になると、大人としてではなく、自分の同志を慮るような口調になり、私たちが笑ったり、「面白かったです」と述べると、心底安心したような表情で「よかった!」と微笑んでいらしたのも印象的だった。大好きなサファイアブルーをそこかしこにあしらった仕事場で微笑む沖田さんは、今そこにはいない読者やファンに視線を向けているようにも見え、私はちょっと涙ぐみそうになっていたことを、ここに告白する。こんなに素敵な同志が漫画を通じてメッセージを送り続けてくれるのならば、大人も子どもも、”×華ちゃん”にはなれなくても、自分が心地よく過ごせる場所や方法を、必ず見つけ出せるのではないか、などと思うし、願ってやまない。Upload By 鈴木希望富山県出身。1979年生まれ。小学生のころにLD(学習障害)とADHD(注意欠如・多動障害)、中学生のころにアスペルガー症候群(現・自閉スペクトラム症)の診断を受ける。看護師、風俗嬢を経て、2008年漫画家デビュー。『透明なゆりかご』(講談社)で第42回講談社漫画賞(少女部門)受賞。TVドラマ化もされた『透明なゆりかご』で大ブレイクを果たした沖田×華さん。しかし、多忙な生活にパンクしてパニック障害を起こし、なんと自殺未遂まで起こしてしまいます。自閉症スペクトラム(アスペルガー)・ADHD(注意欠陥・多動性障害)・LD(学習障害)という3つの発達障害のある沖田さんが、日常生活での自身の「やらかし体験」をセキララに描く、大人気シリーズ第5弾。撮影:鈴木江実子聞き手(取材・文):鈴木希望鈴木 希望さんのページ
2018年09月28日学習障害(LD)とは?学習障害の特徴をまとめると、以下のようになります。Upload By 発達障害のキホン例えば、通級による指導の対象を示す場合など、教育現場で使われることの多い、文部科学省の学習障害の定義は以下の通りです。基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。他にも、医学的な診断基準による定義と行政的な定義などで若干の違いがあります。以下の図に示すように、使われるシーンや困りごとの傾向によってさまざまな名称が使われる場合があります。Upload By 発達障害のキホン「読めるのに書けない」など苦手や困りごとは、人によって一部だけに極端に表れることもあれば、いくつか重複していることもあります。自閉症スペクトラム障害やADHD、協調性運動障害や感覚過敏などの他の障害を合併している人もいます。特定の学習にだけ困難がある場合、周りから理解されにくく、「怠けている」などと誤解され、苦しんだり、不登校やうつなどの二次障害に陥ってしまう子どもも少なくありません。障害の名称や診断の有無などにこだわりすぎず、一人ひとりどのような特性や困りごとがあるか理解し、対処していくことが非常に重要になります。学習障害(LD)の3つのタイプと特徴・症状学習障害の困りごとには以下の3つのタイプがあります。症状や困りごとが全てあてはまる人はかえって少なく、特徴は人それぞれです。年齢によって困りごとや特性が変化したり軽減することもあります。複数のタイプが混じっていることもあります。※以下で紹介する症状・困りごとは年齢や学習の習熟度などによって、誰にでも見られるものもあります。当てはまるからといって学習障害であるとは限りません。学習障害と診断された人の中で一番多く見られるタイプで、見た文字を判別して読んで理解したり、音にするのが苦手です。読むことに障害があると、結果として文字を書くことにも困難を感じる場合が多いため、読み書き障害と呼ばれることもあります。Upload By 発達障害のキホン読字障害(ディスレクシア)を詳しく知る「文字が書けない」「書いてある文字を写せない」などの書く能力に困難があるタイプです。文字が読めるのにもかかわらず書けない場合もあります。Upload By 発達障害のキホン書字表出障害(ディスグラフィア)を詳しく知る数字や数式の扱いや、考えて答えにたどり着く推論が苦手な学習障害のタイプを算数障害・ディスカリキュリア(dyscalculia)と呼びます。数字に関する能力にのみ障害がある人が多いため、算数の学習を始めてから発見される場合がほとんどです。「1」「2」「3」などの基本的な数字や、「x」「+」などの計算式で使う記号を認識することに困難をもっていることもあります。Upload By 発達障害のキホン算数障害(ディスカリキュリア)を詳しく知る学習障害の原因は?学習障害の原因は、医学的にはまだはっきりとは解明されていませんが、以下のようなことが研究から分かってきています。Upload By 発達障害のキホン中枢神経は脳や脊髄、体のさまざまな部分の働きを指令する部分です。学習障害の症状は、情報を伝達し処理する脳の機能がスムーズに働いていないことで引き起こされると考えられています。学習障害の症状・困難の理由を理解しようじっと見つめたり、視線を上手に動かすことが困難で、行を飛ばして読んだり黒板の文字を写すのが苦手な場合があります。見た情報を脳が処理する視覚認知の機能が弱く、文字を認識するのが難しいこともあります。また見え方に特性があり、文字がぼやける、黒いかたまりになって見える、逆さまに見える、歪んで見えるなど違った見え方になってしまう人もいます。Upload By 発達障害のキホン文字と音を結びつけるのが難しいため、音声を聞いて文字を書いたり、文字を見て即座に読み上げるのが難しいことがあります。文字を書くという動作自体が苦手です。脳内で身体に指示を出し手を動かすという伝達機能がうまくいっていないからだという説が有力です。文字を揃えて書く、バランスを考える、筆圧を調整する、文字間の距離感を取るなどが苦手です。そのため、筆算の際に桁がずれることも多くなり、間違えやすくなることもあります。一度にいろいろなことをするのが苦手で、聞きながら書く、読みながら意味を考えるなどが難しいこともあります。記憶するのが苦手な場合、漢字の形や読み方をなかなか覚えられないこともあります。記憶や推論することが苦手だと、数字そのものの概念、規則性、推論が必要な図形の領域を認識するのが難しかったり、文章題を読み、意味を理解することや、グラフや表、図形などからイメージすることが苦手だったり、算数障害につながることもあります。Upload By 発達障害のキホン視覚過敏があって紙の白さが眩しく見えるなどで、文字が見えづらいことも。聴覚過敏・鈍麻のために話が聞き取りづらかったり、集中できないケースもあります。その子の困難の背景を考え、寄り添ってサポートを苦手さの理由や原因は一人ひとりのケースで違います。その子がどこに困難を感じているのか、またその理由はどこにあるのかを観察してみるとよいでしょう。環境を調整したり、やり方を工夫したりすることで対処法が見つかることがあります。現在は、見分けやすいチョークやユニバーサルフォント、音声読み上げ機能のある電子教科書、タブレットやキーボードなど、学習障害のある子をサポートする道具や機器もあります。その子がうまくいきやすい方法があれば、学校での合理的配慮を求めることもできますので、ぜひ、学習障害について理解を深め、サポートしていきましょう。学習障害をもっと知るためのリンク集学習障害についてもっと詳しく知る学習障害の診断・検査通級指導教室について知る障害者手帳の取得法、利用できるサービスを知る障害児が受けられる福祉サービスを知る障害者が受けられる福祉サービスを知る合理的配慮の受け方、具体例を知る学習障害の子どもへの接し方親子のヒント発達障害者支援法、ADHDの教育|文部科学省参考書籍:『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引』(医学書院)参考書籍:『ICD-10精神科診断ガイドブック』(中山書店)参考書籍:「怠けてなんかない!ディスレクシア~読む書く記憶するのが困難なLDの子どもたち」品川 裕香
2018年09月06日発達障害とは?発達障害は、発達障害者支援法では「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。具体的にわかりやすく言うと以下のような状態です。Upload By 発達障害のキホン発達障害はその発達過程やライフステージなどで困りごとや特性が強く現れ、初めて分かるケースがほとんどです。外見からはわかりにくく、大人になっても気づかない人もいます。その特性から「困った子」と捉えられてしまうこともありますが、その子が「困っている」ことに早く気づき、周りが理解し、一人ひとりに合った対応をすることがとても大切です。発達障害は特性や現れる困りごとによって、大きくASD(自閉症スペクトラム)・ADHD(注意欠陥・多動性障害)・LD(学習障害)の3つのタイプに分けられます。Upload By 発達障害のキホン発達障害の症状・特性と困りごとUpload By 発達障害のキホン診断基準によっては広汎性発達障害・自閉症・アスペルガー障害などの名前で呼ばれることもあります。知的障害や、言葉の遅れ、感覚過敏・鈍麻がある人もいます。子育ての違和感や園や学校、乳幼児健診での指摘で気づくケースが多いと言われています。自閉症スペクトラムについてもっと詳しく知るUpload By 発達障害のキホンこれらの特性は、幼い子どもには多く見られますが、成長するにつれ同年代の子に比べて特性が目立つようになります。そのために園や学校での集団生活が難しくなってしまったり、本人の努力不足や親のしつけの問題と誤解されることも少なくありません。についてもっと詳しく知るUpload By 発達障害のキホン全体的な知的発達に比べて、学習面で大きく目立って不得意なことがあります。読めるのに書けないなど、一部だけに困りごとが表れることもあります。授業についていけなくなる、宿題をこなせないなど、小学校に進学し学習が始まって明らかになるケースが多いと言われています。学習障害についてもっと詳しく知る発達障害は、その特性や症状が一人ひとり大きく違うことが特徴です。特性や疾患、合併症が重なっていることもあります。Upload By 発達障害のキホン上記のほか、てんかん、チック、トゥレット症候群、場面緘黙、吃音などが合併することもあります。「感覚過敏があって、音に耐えられず教室を飛び出してしまう」「言葉の遅れがあって気持ちをうまく伝えられず、癇癪を起こしてしまう」など、これらの合併症と特性は密接に関係し重なり合い、困りごととなってしまうこともあります。発達障害と定型発達の境目は明確にはありません。そのため診断基準は満たさない、あるいは未診断だが発達障害の傾向のある「グレーゾーン」と呼ばれる人もいます。診断がつかない=症状や困りごとも軽度だと考えられがちでが、明確な診断名がなく、外見からもわかりにくいので、理解や支援を受けにくいこともあります。分類や定義、診断の有無にこだわらず、一人ひとりの特性の傾向を知り、本人の生きづらさを減らすことに注力できるとよいでしょう。グレーゾーンについてもっと詳しく知る発達障害の原因は?発達障害は、生まれつきの脳の機能障害が原因となって現れると考えられます。以下に、発達障害に関係のあるのではないかと考えられている脳の機能を紹介します。Upload By 発達障害のキホン発達障害のある人の脳の場合、これらの部位が小さかったり、血流が弱かったりしてうまく機能しない傾向が報告されています。この機能障害を引き起こすメカニズムは、まだはっきりとは分かっていません。発達障害に関連がある遺伝子の発見や研究も進められています。ただし、遺伝子を持っていても必ずしも発症するわけではありません。また、親から子へ必ず遺伝するものでもありません。現在「様々な遺伝的要因と環境要因が相互に影響しあって発達障害の症状が表れる」という説が有力で、すべての方にあてはまるようなただ一つの原因はないといわれています。「親のしつけ方・育て方が悪い」「親の愛情不足」といった心因論も医学的に否定されています。発達障害かもと思ったら?症状チェック・検査・診断までの流れ発達障害のサポートは、家族や本人、周りの人が「特性のために困っている」「違和感がある」などに気づくことが、最初のきっかけになります。Upload By 発達障害のキホン専門機関の中には発達検査を行っているところもあります。相談や医療期間受診の後、療育的なサポートを受けたり、医療機関で治療を受けたりするなど、必要に応じた個別の専門的なサポートを受けることになります。診断を受けなくても発達相談や子育て相談、発達支援やペアレントトレーニングなどを受けることもできます。全国の相談窓口の情報を調べる|発達障害・支援センター発達障害診療医師名簿|一般社団法人 日本小児神経学会・子育ての違和感や子どもの困りごとに早く気付くことで、より早い支援につながる・自己診断は絶対にNG。その先の対処法や支援を知るためにもまずは専門家に相談を・専門機関に相談することで、必要であれば医療機関につないでもらえる・もし発達障害ではなかったとしても、子育て相談や発達相談などの支援を受けることもできる・検査で子どもの苦手と得意を把握することで、その子にあった対処法が見つかることがある・発達支援や療育を受けることで、症状や困りごとが改善する可能性がある・診断は必須ではないが、診断があることで受けられる公的サポートもあるなどが挙げられます。発達障害は治るの?発達障害は現在、根本から治療することは難しいとされています。ですが、症状を和らげるための薬物療法や、対処法を知るための応用行動分析学に基づく療育的アプローチなどを受けることで、困りごとが改善する可能性があります。発達障害を完全に治す薬はありませんが、症状を和らげるための薬がいくつかあります。人によって合う薬と合わない薬もあり、副作用などもあるなど、現在のところ、すべての人に必ず効果があるような薬はありません。また処方は6歳以上で、成人には認可されていない薬もあります。そのため、薬物療法を進めるときは医師の判断のもと、その人の症状や状態を慎重に見ながら行うことになります。薬で症状が和らいでいる間にスキルトレーニングなどを合わせて行うとよいでしょう。Upload By 発達障害のキホン子ども自身が何に困っているかやその背景などを探り、トレーニングをしてうまくいく方法を見つけ、得意な部分を生かします。また周囲の人の理解や環境の工夫によって、症状や困りごとの改善を図ります。そうして失敗体験を減らし、成功体験を増やして適応能力を伸ばしていきます。療育方法は様々なものがあります。子どもの場合、クリニックや発達障害外来などのほか、児童発達支援や放課後等デイサービスなどで療育的支援を受けることもできます。発達が気になるお子さまが利用できる施設を調べる|LITALICO発達ナビ施設情報発達障害の生きづらさと二次障害発達障害の特性が理解されないまま生きづらさが強くなると、心の病や行動の問題など、二次的な障害を引き起こすことがあります。以下に二次障害に陥りやすいプロセスをご紹介します。Upload By 発達障害のキホン二次障害を引き起こさないためにも、その子が困っていることに早く気づき、専門機関やサポートにつながることが大切です。発達障害の特性を理解し、その子に合った対処法と過ごしやすい環境を考えサポートしていきましょう。発達障害をもっとくわしく知るリンク集発達障害の診断・検査について知る発達障害の原因について知る障害者手帳の取得法、利用できるサービスを知る障害児が受けられる福祉サービスを知る障害者が受けられる福祉サービスを知る合理的配慮の受け方、具体例を知る親子のヒント参考:発達障害とは|LITALICOジュニア参考書籍:『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引』(医学書院)参考書籍:『ICD-10精神科診断ガイドブック』(中山書店)
2018年08月28日幼稚園生時代、夏休みの帰省で。「孫に障害はない!」と完全否定する祖母Upload By 荒木まち子私は娘が1歳頃の時から、周りの同世代の子どもとの違いや育てづらさを感じていました。健診時に指摘などはされていませんでしたが、娘の幼稚園入園前から療育機関などに相談をしていました。娘は人見知りをしなかったので、年に数回しか会うことがない祖父母は「本やテレビが好きな大人しい孫」「歌やお絵描き好きなおっとりさん」と感じていたのかもしれません。出典 : おじいちゃん、おばあちゃんっ子だった娘娘自身もおじいちゃんとおばあちゃんが大好きで、帰省の時は親ではなく祖父母と一緒に寝たがる程でした。電車に乗れるようになると一人で祖父母の家に泊まりに行ったり、旅行好きな祖母と一緒に旅にも行ったりしていました。高校生になるとPC検定の資格を持つ娘が祖母にパソコン操作を教えることなどもありました。おおらかで優しいお年寄りと過ごす時間は娘にとっても心地良かったのだと思います。出典 : 初めて、娘のパニックに遭遇した祖母娘が高校3年生の時、たまたまわが家に泊まりに来ていた祖母は娘のパニックに遭遇しました。この頃の娘は、就職活動中だったこともあり、とても不安定でした。「学校から配布された資料が見つからない」と家中の引き出しを開けて探しまわりました。私が「学校に電話して同じものをもらえば良いんじゃない?」と言っても「それは絶対ヤダ!」「あの先生は怖いんだ」と全く聞く耳をも持ちませんでした。同じ引き出しを何度も開けたり閉めたりすることを止められない娘。しまいには弟の机の引き出しやランドセルの中まで探し始めました。その時、祖母は…Upload By 荒木まち子祖母が娘をなだめている間に私は学校に電話をし、先生に娘の様子を伝え、翌日同じ資料をもらうことになりました。パニックは1時間ほどで治まりましたが、孫のパニックを目の当たりにした祖母はショックを受けたようでした。孫の将来を案じてその後、就職がなかなか決まらなかった娘を心配した祖母に「知り合いの会社を紹介しようか?」と勧められたことがありました。私は「いつまでも親が子供を守り続けられるわけじゃない。私たちは娘のことを理解して支援してくれるような人(ジョブコーチ)がいる会社を探している」と伝えました。祖母の思う幸せとは、違うかもしれないけれど就職後、娘は祖父母のところに行くことはほとんどなくなりました。孫のことが心配な祖母は、しょっちゅう電話を掛けてきます。「会社には休まず通っているの?」「会社の先輩とはうまくいっている?」「身だしなみはきちんとしているのかしら?」「お金は足りてるの?」「親としてちゃんと悩みを聞いてあげてる?」「また一緒に旅行に行きたいんだけど…」私はその一つひとつに丁寧に答えます。「会社は無理して毎日通うより、休み休みでもいいから彼女のペースで長く続いた方が良い」「娘は人間関係は時間をかけて築き上げていくタイプ」「完璧でなくても他人を不快にさせない程度の身だしなみはできていると思う」「まだ職場になれるのに精一杯でお金を使う暇もあまりないみたい」「職場の悩みを聞くのは親ではなくてジョブコーチという会社の上司なんだよ」「休みの日は趣味や友達と過ごす時間に充てているよ。もう家族と一緒に出掛ける年じゃないし」“おばあちゃんの思う『幸せ』とは少し違うかもしれないけれど、本人が辛いと感じることなく毎日を過ごせていれば、それが彼女にとっての幸せなのだ”と時間をかけて伝えていこうと思っています。
2018年08月10日「事前予告」によって得た自信出典 : 発達障害のある子どもを育てるうえで、「事前予告」の大切さは何度となく言われてきました。普段と違うことをする場合は、まず「事前予告」。見通しを立てることによって、想定外の出来事でパニックになるという最悪の事態は防ぐことができます。わが家の息子は自閉症スペクトラム障害とADHDがあると3歳のときに診断されました。言葉がまだしっかりと理解できない幼少期は、絵カードをつくって見せることで見通しを持たせるようにしていました。言語能力がついてきたら、言葉で予定を事細かに説明したものです。おかげで、息子は普段と違う状況であっても、パニックを起こすことがなくなりました。パニックを起こさずに過ごせることを積み重ねたことによって、息子は着実に自信をつけていきました。やがて、突然予定と違うことが生じても、息子はそれほど動揺することなく、取り組むことができるようになってきました。「事前予告」を積み重ねていくうちに、息子も成長したのです。しかし、その成長は、思わぬ余波をもたらすことに…。「事前予告」をすることがかえって息子のQOL(Quality of Life)を落としてしまう傾向が見え始め、私は愕然としたのです。成長と共に鍛えられていく「想像力」で思わぬ方向に…出典 : 今思えば、幼少期というのはまだまだ知っている世界が狭く、人間関係も表面的で、何かに対する想像力もかなり限られたものだったのかもしれません。想像力が限られているからこそ、想定外の出来事が起きたときに、パニックになってしまったということも考えられます。息子はさまざまな経験をし、何かに取り組む自信をつけていくと共に、その積み重ねた経験によって先のことを想像する力もついてきました。やがて、自らの想像力が生み出す「不安」に翻弄されるようになります。これは、私にとって予想もしてない「副産物」でした。息子がパニックを起こさないように事前予告をすると、息子は「うんうん、分かった、頑張るよ」と言うのですが、次第に想像力が暴走し、不安で身動きができなくなっていくのです。「もしかしたらこうなるかもしれない」「こうなったらどうしたらいい?」「やっぱ無理かも」「怖い」さまざまな想像に絡めとられ、うまくいかないイメージばかりが頭に浮かぶようになってしまいました。息子の自信をつけるために必要不可欠だった「事前予告」だったのに、今度は彼の生活が不安でぐちゃぐちゃになってしまいました。こんなにQOLを落としてまで「事前予告」をする必要があるのか…。私は本来の目的から結果がかけ離れてしまったことに迷いが生まれてきました。息子の申し出、そして先生から言われた「成長の証」出典 : そんなある日、息子が私にこんなことを言ってきたのです。「前々から言われると不安になっちゃうから、何があるとかもう言わないで。いきなりだったとしても、僕はちゃんとできるから」息子の言葉を聞いて、私は療育の先生に「事前予告」をやめることを相談してみました。そのとき、療育の先生がこう言ったのです。「先のことに対する想像力がついたんですよ。これは、成長の証なんですよね。想定外の出来事でパニックになることを防ぐために事前予告をしてきたけど、それはもう起きないってこと、本人も分かっているはずです。だからこそ、もう言わないでって言ったんじゃないでしょうか。これからは伝えなくていいと思います」私はこれを聞いて、通り一遍な"発達障害のある子どもへの接し方"ではなく、息子の成長をしっかりと見ながら、息子に合った接し方を考えていかなければならないのだと思い知らされました。発達障害の特性が一人ひとり全く違うのと同じように、成長の仕方も、それに応じて取るべき対処法も、きっと一人ひとり違うのです。「事前予告」にこだわっていた私の気持ちが、この時、一気に緩んだのでした。そしてまた、息子は着実に成長しているのだと、嬉しく思ったのでした。
2018年06月12日小学校入学のタイミングで子どもの学習障害が明らかになることがあります。そもそも「学習障害」とひと言でいっても、その内容は様々です。学習障害とはどんなものなのか?改善するためにはどんな方法があるのかを探ります。学習障害を持っていても活躍をしている人は沢山います。子どもの将来を考え、子どのを育てる時なにが一番大事なことなのか、ママテナの記事から「学習障害」についてまとめました。●学習障害とは?学習障害とは、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)、発達性協調運動障害というおもな4種類の発達障害のひとつです。「聞く、話す、読む、書く、計算する」など、特定の「学習」の基礎的な能力に困難を示す状態で「ただの勉強不足」と誤解されてしまうことも多いようですが、本の朗読でどこを読んでいるのかわからなくなるなどの詳しい症状です。▼続きはこちら▼●日本語では気が付きにくい「ディスレクシア」では学習障害はどのような状況で発覚するのでしょうか?その一つとして「小1プロブレム」があります。これは保育園や幼稚園から小学校への環境が大きく変わったタイミングで、小学校への不適応が見れらた事をキッカケに知能テストなどを受け、注意欠陥多動性障害(ADHD)や学習障害などと診断されるケースがあると専門家は指摘しています。▼続きはこちら▼●学習障害の疑いがわかるキッカケ小1プロブレムでは学習障害はどのような状況で発覚するのでしょうか?その一つとして「小1プロブレム」があります。これは保育園や幼稚園から小学校への環境が大きく変わったタイミングで、小学校への不適応が見れらた事をキッカケに知能テストなどを受け、注意欠陥多動性障害(ADHD)や学習障害などと診断されるケースがあると専門家は指摘しています。▼続きはこちら▼●学習障害改善のための方法発達障害と診断された場合、「療育」という障害をもつ子どもが社会的に自立することを目的として行われる治療と保育があります。医師の診察後、検査などでお子さんの状態を把握し、診断が出てから、作業療法士や言語療法士などによる訓練を療育センターで受けることになります。学習障害の対応は早い対応が大切です、学校に行ってもわからないことだらけになってしまい、だんだんと学ぶ意欲をなくし、「どうせ自分なんか」と自己評価も低くなってしまいます。中には学校に行きたくなくなってしまう子もいます。気になる事がある場合は、早い段階で相談し、子供の能力を伸ばしてあげたり、関わりを変えてあげた方が絶対にお子さんのためになる、と専門家は指摘します。▼続きはこちら▼●道具の利用学習障害を抱える子どもにとって黒板に書かれた事をノートに書き写すのが苦手な場合があります。このような場合、授業終わりに黒板をデジカメで撮影し、家でプリントアウトしてノートに貼る、などによって問題を解消する方法もあります。「できない」事を、道具の力を借りて「できる」ようにする方法にです。▼続きはこちら▼●学習障害をもった子どもを育てる一番大事なことアインシュタイン、トム・クルーズ、スティーブン・スピルバーグ、ジョン・レノンはディスレクシアでした。ミッツ・マングローブさんが「暗記が苦手だった」と告白しています。大きな功績を残してる人や第一線で活躍している人でも学習障害を持っている人はいます。学習障害を持った子供を育てる上で一番大事な事はなんなのか?専門家の意見です。▼続きはこちら▼
2018年06月11日入学や進学など、年度切り替えのこの時期は、障害があるなしに関係なく、親がナーバスになる時期。でも、発達障害のある子を持つ親にとっては、さらに頭を悩ませる時期なのではないでしょうか?通常学級、通級、支援級、支援学校…わが子が安心して楽しく通える環境はどこなのか? 親は、就学問題に長い時間と労力を費やし、時には夫婦で揉め心をすり減らしながら、やっとの思いでわが子にベストと思える居場所を決めます。でも、そんな親の努力をすべてひっくり返すような、無理解な担任の先生に当たってしまったり…。そんな思い悩むことが多いこの時期、再びNHK総合テレビで発達障害をテーマにした特番 「超実践!発達障害 困りごととのつきあい方」 が放送がされます。番組では、寄せられた約4000通の体験談から「感覚過敏」「忘れ物・片付けが苦手」「読み書き計算が苦手」「コミュニケーション」という代表的な4つのテーマを取り上げ、発達障害の当事者はもちろん、家族やその周囲がすぐに実践できる「対処法」「周囲への助けの求め方」などをできるだけ具体的に伝えていく。さらに、「困りごと」「周囲の無理解」からどうやって人生を好転させたのか、その転機をとなった方法や出会いを描くほか、栗原類さんをはじめ一般の発達障害当事者8人をスタジオに招き、一人ひとり微妙に異なる困りごとに対する対処法をトーク。「どうすれば困りごとに対処できるか」「どうすれば人生楽しくなるか」「発達障害の人とそうでない人が共存するにはどうすればいい?」などを生放送で話し合う。■「発達障害」に対する社会の認知は高まってきたけれど…ここ数年で、発達障害に対する社会の認知は高まって、園や学校ではずいぶんと理解が進んだように思います。でも、当事者や家族の目線から見ると、依然としてサポート体制が不十分で必要な配慮が受けられなかったり、相談したはずの困り事が放置されたままだったり、個々人の対応はまちまちだったり……まだまだ難しいと感じることが多いのが現実です。今回の特番担当プロデューサーからも、「これまで発達障害については何度も放送してきましたが、無関心層へのリーチはまだまだだと感じています。しかし、そうした層に届かない限り当事者の困り事は解決しないため、繰り返しを恐れず伝えたいとも思っています」とメッセージをいただきました。これ、まさに、その通りだと思うのです(冒頭でお話した、すべてをひっくり返すような無理解な先生がいることもしかり)。でも、みなさん、日々自分の生活でいっぱいいっぱい…。当事者や家族でない限り、「大変そうだけどよくわからない」とか「障害を言い訳にしてない?」などとスルーされてしまうのも仕方ないことなのかもしれません。■自分が生きやすくなるためには「相手のことを知る」が一番の近道そんな私も、息子が自閉症スペクトラムと診断されるまでは、「大変そうだけど、結局よくわからない」の人でした。障害について理解する前は、「親子でがんばればなんとかなる!」などと、ワケのわからぬ根性論で発達障害を改善しようとしていた時期もありました。そして、息子に無理強いをさせては、それが自分に跳ね返って、ますます自分自身がイライラしてしまう、そんな悪循環に陥っていました。結局、無理解は相手だけでなく、まわりまわって自分自身をも辛い状況に追い込んでしまうのです。私は、息子を通して、「基本的に人(子ども)を変えることはできない」という当たり前のことを改めて思い知りました。相手(子ども)に自分の価値観を強いることは、トラブルと双方のストレスのもと。喜びや苦しみは現実と期待とのギャップで生まれ、相手(子ども)にできないことを求める行為は、結果、自分に対するストレスを生むことになります。■「発達障害の人のため」ではなく、「自分自身のため」にちょっと変な言い方かもしれませんが、今回の放送、「発達障害の人がより生きやすくなるために」というような道徳的な視点よりは、むしろ、「自分自身がより生きやすくなるために」という自分視点で見た方が、より幅広い方々に響くのかもしれません。発達障害は、今や40人学級で2~3人の割合でいると言われているほど。子どものクラスメイト、親戚、会社、ママ友仲間にも、障害とまではいかなくても、グレーな方を含めれば「もしかして…?」と思われる方も少なくないでしょう。もはや避けては通れない問題です。「なんであの人は、いつもあんな嫌な言い方をするんだろう?」とか「どうしていくら説明しても、あの人には話が通じないんだろう?」など、あなたが苦手に思っている人との、上手な付き合い方のヒントが得られるかもしれません。また、番組で語られる、コミュニケーションが苦手な方や生きにくさを感じている方が、自身の人生を好転させるために編み出したノウハウには、私たちの生き方にも参考になるところがあるのではないでしょうか?今回、私は、息子のためではなく、自分のためという視点で、番組を見たいと思っています。文:まちとこ出版社N【NHK 発達障害プロジェクト】超実践! 発達障害 困りごととのつきあい方放送日時:2018年4月30日(月・祝)午前8:15~9:59 NHK総合テレビMC:中山秀征さん、近江友里恵アナウンサーゲスト:栗原類さん(「あさイチ」で自分が発達障害であることを告白)ほか、発達障害のご本人(一般の方)8人と専門家
2018年04月28日今回は、我が家の夫まことくんが付き合っている病気「強迫性障害」についてです。うつ病やパニック障害などに比べると認知度はイマイチなのですが、ひと口に強迫と言っても本当にさまざまな症状がありまして…。夫の症状を簡単に紹介したいと思います。専門書には以下のように書かれています。強迫性障害とは、自分でもコントロールできない不快な考え(強迫観念)が浮かび、それを振り払おうとして様々な行為(強迫行為・儀式)を繰り返して日常生活が立ち行かなくなってしまう不安障害です引用元:図解 やさしくわかる強迫性障害(ナツメ社刊)例えば、玄関の鍵をかけたかどうか気になって途中で引き返すという行為が1回だけならば、それはよくあることだし、ちょっとした心配性のレベルでしょう。しかし、強迫性障害になると、その行為が2~3回では済まなくなり、10回20回と同じ確認行為を繰り返すのです。そうなると、会社にも約束事にも遅刻するようになるでしょうし、日常生活のほとんどの時間を強迫行為にとられてしまうことになる。こうなると、もう日常生活にかなりの支障が出てきます。そこが、「心配性」との大きな違いだと思います。漫画に描いたように、まことくんは「車のサイドブレーキ」が強迫対象になりやすく、勝手に車が動いているんじゃないかというあり得ないようなことを怖がっては、何度も駐車場を確認しに行っていた時期もありました。そして調子が悪くなると…。 こういうことが、冗談ではなく我が家ではしょっちゅう起きます(笑)。決して本人はふざけているわけでもないし、わざとでもありません。そして、自分が不条理なことをやっていることも、わかっているのです…!!さっき免許証を返してもらったのは覚えている。だけど「確信」が持てない。「確信」が持てないのが不快だから、確認行為をせずにはいられない。こんな感じだそうです(本人いわく)。他にも、スーパーの買い物かごの中身が空になったか確信が持てなくて、いつまでもじっと見たり触ったりして確認を続けたり、コインロッカーの中に忘れ物がある気がしていつまでもその場を離れられなかったり、本当に様々なところに強迫の影響が出てきます。まだ認知度が浅い病気ですので、ただの心配性で片付けられることが多いのですが、日常生活に影響を及ぼすのであれば、一度専門機関に相談するのも1つの解決策になるかもしれません。※強迫性障害の症状は人それぞれです。ここに書いてある症状がすべての人に当てはまるわけではありません。
2018年03月27日あるとき突然苦しくなって、倒れてしまうことがありました。救急車で運ばれ、パニック障害だと診断されました。それからは、発作が起きるかもしれないという恐怖感との戦いです。さまざまな病気があるなかで、どのように理解が深まれば当事者の不安が軽減されるのか、悩ましくもあります。文・七海何が原因かわからないのに、苦しい。パニック発作の症状パニック障害は、人によってさまざまな症状が現れます。心臓がドキドキしたり、体が震えたり、しびれを感じたりといった具合です。「このまま死んでしまうのではないか」という不安感が伴うとよくいわれています。こういった症状は、パニック発作といわれます。発作は一過性のもので、病院で検査を受けても体に異常がないと診断されます。ときには「気のせい」と言われてしまうこともあるのですが、脳内物質が影響しているとされる病気です。私の主な症状は、強いめまいと吐き気です。同時に ”酸素がない” ような感覚になり、呼吸が苦しくなります。自分の体なのに思うように動かせず、倒れてしまうことがしばしばあります。最初にパニック発作が起きたときは、一緒にいた人が驚いて救急車を呼びました。救急車で運ばれる間はとても苦しかったのですが、病院に着いた頃には治まっていました。もともと他の精神疾患を持っていたこともあり、精神科に行くよう言われ、最終的にパニック障害だと診断されました。それからは、どんなときにパニック発作が起こるかわからず外に出るのが怖くなっていきました。私のパニック発作のきっかけは、いまだにわかっていません。突然起こるパニック発作への恐怖。周囲への説明の難しさパニック発作は、時間も場所も問わず、突然やってきます。不安感が強く作用するのか、一度起きた状況と似ている場面に遭遇すると、再び起きてしまうことがよくあります。また、エレベーターや電車といった閉鎖空間は「逃げ場がない」と思ってしまうためか、パニック発作が起こることが多いです。パニック発作を恐れて、行動範囲が狭くなってしまったと感じることは多々あります。発作自体は当然苦しいですし、周囲に迷惑をかけてしまっていることも自覚しているからです。しかし、パニック発作が怖いからといって全く外出しないわけにはいきません。発作が起こってしまいそうな状況はなるべく避けるようにしています。どうしても電車に乗らなければならないときは、イヤホンで音楽を聞き、ずっと携帯電話か本を見るようにします。外界をシャットダウンするようにすると、私の場合は落ち着くことが多いです。しかし、それでも症状が出てしまうことがあります。そういったときは、周囲の方がとても親切にしてくれることも。電車で席を譲ってくれたり、道端で声をかけてくれたり。ときには安全な場所まで肩を貸してくれることも、救急車を呼んでくれることもあります。非常にありがたく、優しさが身に沁みます。しかし、平衡感覚を失い強い吐き気に襲われている最中なので、私の場合は無理に移動しようとすると症状が酷くなってしまうことも。胃の中のものが込み上げてきて、呼吸もしんどくなります。こうなると、余計に心配をかけてしまうことになるのです。心優しい人に「ありがとう」と伝えられなくて。不甲斐なさと感謝と心配してくれて、手を差し伸べてくれた優しい人たち。パニック発作が起きてからでは、しゃべることはおろか頷くこともままなりません。私がどういった病気を持っていて、たった今どういった状況なのかを伝えることが難しいのです。助けてくれた人は、症状が悪化している様子を見てとても心配したのではないかと思います。それを思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになります。パニック障害は、見た目ではわかりにくい病気です。無理に動くとしんどくなってしまうということは、正直伝わらないのではないかと思います。さまざまな病気があるし、同じパニック発作でも治まり方は人によるので、ゆっくり休めるところに移動させたほうが良いと考えるのも自然な流れだと思います。だからこそ、どのように理解が深まればいろんな人が安心できるのかが悩ましいのです。そこに今、答えを見出せないでいます。だけど、手を差し伸べてくれた人に「ありがとう」と伝えたい気持ちだけは確かです。彼らが「お大事にね」と声をかけて去っていくそのときに、私はしゃべることすらできないことが多いです。「ありがとう」と言えなかったことが、悔しくてなりません。私と同じように、「ありがとう」を言えないような症状が出てしまう人もいるかと思います。でもきっと、その人も私と同じように「ありがとう」と思っているはずです。治療を受けていても、予防をしても、突然起こってしまうパニック発作。迷惑をかけたくない気持ちはずっとありますが、ひとりで外出しない生活はあまり現実的でないのが事実。認識を広めるためにどのようにしたら良いかを悩みつつ、私はとても感謝しています。苦しいときに触れる人の優しさは、ずっとずっと、温かいものです。そういった温もりが、快方の助けになっているのではないかと、そう思うのです。手を差し伸べてくれた人がいるということが、恐怖心に打ち勝つ勇気を与えてくれているのだと感じます。直接言えなかったけれど、心から伝えたい。「ありがとう」と。(C)Favor_of_God/Gettyimages(C)oneinchpunch/Gettyimages(C)Leylaynr/Gettyimages
2018年01月18日難航する仕事選び。障害者雇用枠で、最も多い求人は事務職。けれども…出典 : 私は、26歳のときにアスペルガー症候群、ADHDの診断を受け、同時に退職も余儀なくされました。就職をするまでの学生生活では、表面上のコミュニケーションや、日常生活、勉強という面では、これといった支障はなく、自分が発達障害であることにも気づいていませんでした。しかし、社会人になってから対人関係の困り事などが表出し、行く先々で、「常識がない」「もう少し場をわきまえろ」と言われてきました。そして発達障害の診断を受けた後、そのことを職場にカミングアウトしたのですが、残念ながら退職せざるを得ない状況に追い込まれてしまったのです。それからは就労移行支援事業所に通うことになり、支援員の方の手を借りながら障害者雇用枠での就職活動を進め、内定を獲得することができました。就労移行支援事業所は障害がある人の就労をサポートする機関で、職業訓練や職場探し、職場への定着支援など、さまざまな支援を受けることができます。しかし、その道のりは一本道というわけではなく、壁に直面したり、どうすればいいかわからないことも少なくありませんでした。特に悩んだのは、自分の特性と仕事の性質の兼ね合いです。障害者雇用枠のおよそ半分以上は事務職と言われれており、一般事務や経理、総務、人事などの職種で就職する場合が多いそうです。しかし、私は何か目新しさがないと注意や集中力を持続することができません。例えばExcelなどで売上伝票などを作成する際に、売上金などのデータ入力が必須になってきますが、ミスしないよう慎重に作業しているとスピードが他の人に比べて明らかに遅くなってしまうのです。するとそれが焦りに繋がり悪循環に陥ります。結果として、雑な仕上がりとなってしまったり、思いもしないようなミスをしてしまうのです。「働く」という字は、人と一緒に動くと書く。でも自分はコミュニケーションが苦手…出典 : また、空気が読めない、他人の気持ちに配慮した言動が難しいなどの特徴から、仕事上での困難に直面することも少なくありませんでした。営業の仕事にかかわっていたときは、相手の意図を汲み取りつつも、相手に探りを入れる高度なコミュニケーション能力が求められましたが、どうやってもうまくこなすことができませんでした。また、営業職は電話応対が頻繁に発生するため、他の人が話している電話の声が気になってしまったり、聞こえてくる会話内容を意図せずメールに書いてしまう事もありました。1つの作業に没頭すると他のことを忘れてしまうことも少なくなかったため、報告・連絡・相談がおろそかになるのは日常茶飯事。こうした自分の特性を考えたうえで就職をしようとすると、どうしても選択肢は数少ないものになってしまい、愕然とせざるえませんでした。自分には一体、何が出来るんだ!?出典 : 次第に頭のなかには、「自分には一体何ができるのか?」という思いが込み上げてきました。考えても出てくるのは「できることなんて無い」という答えばかり。私はどうすればわからず、毎日落ち込んでばかりいました。このとき、前を向く光をくれたのが、前職を退職してから相談を続けてきたカウンセラーさんです。障害の診断を受けて薬が処方されてからというもの、見知らぬ地でひとりぼっちのような気持ちでしたが、どうしたら生きやすくなるかの相談を続けてゆくうちに、自分がたどるべき道を何となくイメージできるようになってきたのです。検査結果ではわからなかった自分の数少ない強みカウンセリングでは、WAIS-III(ウェクスラー式知能検査)の結果を紐解いて、苦手なことと、苦手ではないことを分類していくことを行いました。私のWAIS-IIIの結果は、言語理解の部分が苦手ではない。しかし、決してずば抜けている訳でもないと言えるくらいで、他の項目はすべて平均より低いと言わざるを得ない状況でした。カウンセリングに行く度に話す内容をA4、1枚の紙にまとめて、ときには参考になりそうな資料なども合わせて準備していました。相談したいことがいくつかあった場合でも、話しているうちに相談しようと思っていたことを忘れてしまい、相談室を出た後で、話し忘れたと後悔することが多かったからです。そんな中あるとき、私の作った資料を見たカウンセラーさんが、ひょっとしたら自分の考えをまとめることが得意なのかもしれないと指摘してくれたのです。言われてみれば、心当たりがありました。以前仕事をしていたときは毎日が失敗の連続だったので、なぜ怒られたのか?何がいけなかったのかを自分で分析するために、日記に書くようになりました。1日の終わりに静かな自宅の部屋で、時間をゆっくりとかけながら何が問題だったのかを洗い出し、それはそしてときには視覚的に情報をまとめます。それは私にとってはまったく苦にならない作業であったことに気づいたのです。Upload By ツーちゃんこのことから自分で企画を考え、図やイラストで分かりやすく説明するような仕事内容にチャレンジしたいと思うようになりました。不注意傾向があってもソフトのスペルチェック機能を使えば、ミスが未然に防げたり、取りこぼしが減らせたりすることはできます。なので、Webデザイナーや、ライター、企画職など、クリエイティブ寄りの職種を志望し、就職活動を進めることにしたのです。Upload By ツーちゃん出来ることと(障害特性上)難しいこと=配慮して欲しいことを整理する出典 : 私の場合、障害者雇用枠での就職を目指すということは比較的早い段階で決まっていました。というのも仕事量や、割り振りなどに関して、会社側の配慮がどうしても必要だと強く感じていたからです。そのため、検査の結果なども加味して考え、障害を隠して働くという選択肢は消えていました。次に私は、自分の特性を面接官に分かりやすく説明する、「ナビゲーションブック」の作成に取り掛かります。そこで難しかったことは、障害の程度をいい塩梅で面接官に伝えるということです。文字などでまとめることは苦にならない私ですが、ありのまますぎて、より強烈な印象を与えてしまうような文章を書いてしまいがちでした。あまり欠点のみを書き過ぎてしまうと、人事担当も評価ポイントを見出しにくくなってしまいます。なので、自分自身の障害特性をしっかりと自覚し、そうした過去の失敗を繰り返さないように気をつけていると明記し、加えて過去の自分からの成長をアピールしました。また作成した当初は、できることと、配慮して欲しいことの2つのみを書いていましたが、それだと配慮してもらって当たり前というような印象を受けると支援員の方から指摘して頂いて、障害特性はあるものの、自分自身の努力でカバーできることもあると書くようにしました。Upload By ツーちゃんナビゲーションブックは就職活動を進める上で、どう役に立ったのか?出典 : 障害者雇用枠での面接では、仕事に対する熱意や志望動機以上に、障害のことや、それに対して必要な配慮について質問されました。そういったときにナビゲーションブックが役立ちます。2部、印刷して持参しておいたナビゲーションブックを、面接官と一緒に見ながら、事細かに説明しました。ナビゲーションブックを見た感想を、面接まで進んだ企業の採用担当者に聞いたことがあります。「障害者雇用によく使われる履歴書には3行程度障害について記載する欄があるが、3行程度の説明では、障害の多様さを理解するのは難しい。こういったナビゲーションブック等で障害に関して、詳しく説明して頂けるのは、とても助かる。また人事としても、障害に関してどこまで聞いて良いのか非常に気を遣う。求職者の方からオープンにして頂けると採用担当者からしてもやりやすい」と言われました。また別の面接官は「伝言ゲームだと、聞いた内容があやふやになりやすいが、こうした資料があれば、次の面接官への引き継ぎがしやすい」といった声もありました。総じて、障害を隠すよりも、かえって包み隠さず話した方が好印象と受け止められるケースが多かったです。またナビゲーションブックを用意しておく事で、その内容に沿った質問が多くなり、予想外の質問を減らす事が出来るというメリットもありました。臨機応変力があまり高くない私にとっては嬉しい誤算でもありました。必ずしもナビゲーションブックの作成をしなければいけない訳ではありませんが、ナビゲーションブックを用意する事で、障害についての理解が深まり、企業の採用担当の方にとっても不安が少なくなるのかもしれないなと感じました。参考: LITALICOワークス合理的配慮ガイドブック障害者雇用枠での就職活動を振り返って出典 : こうして就職活動を進めているうちに、半年が過ぎ、やっと内定を手に入れることができました。内定した会社は、スマートフォン向けのゲームアプリを開発する会社です。パソコンなどの扱いに精通していたことや、ADHDで新しいもの好き、好奇心旺盛な部分が、結果的に良い方向に働いたと感じています。配慮の面では、「困っていることはないか?」と人事の担当者が相談する時間を設けてくれたり、上司には指示が曖昧で分かりにくいといった、言いづらいことを代わりに伝えてもらうといった配慮を受けています。ただ、人事部と現場レベルで障害への理解、業務指示などを含めた接し方に対して、温度差が多少あるようには感じられます。また、環境の変化や、刺激の多い環境に対して疲れやすい特性を持っているので、最初の1か月間は、時短勤務を許可してもらっており、とても大事にしてもらっていると感じています。内定を得るまでには、合同就職説明会などで大量エントリーした企業も含めると、30社から40社ほどは受けたと思います。そのうち、面接に進んだのは6社で、最終面接に進めたのは4社。内定はたった1社のみという結果です。正直なところ、綱渡りのような状態で、これに落ちたらまた振り出しのような状況だったので、内定が出て胸をなでおろしたような気持ちです。就職活動が長引いてしまった理由としては、書類選考で落ちることも多く、モチベーションを保つのが難しかったこと、企業が特に精神障害・発達障害のある人の採用に対して慎重な姿勢を貫いていることから、選考期間が長期化してしまうことが挙げられると思います。障害者雇用については、まだどこも手探りのような状態で、書類選考に1ヶ月かかることも少なくありませんでした。新しい仕事は、すべてが未経験で「初めてづくし」な部分は大きいのですが、1年ぶりに仕事が出来ること、就労移行支援を退所した後も、支援員の方が定着支援として、企業と私との連絡係としてサポートしてくださることなどが、前職の時には無かった安心感を生んでいます。今から新しい門出にワクワクしています。私の経験は1つの例でしかありません。他にもさまざまな歩き方があると思います。それでも、私の歩んだ道が、少しでも役に立てば、これほど嬉しいことはありません。
2018年01月03日発達障害当事者による、発達障害当事者のための居場所「Necco」Upload By 発達ナビ編集部東京の高田馬場にある「Necco」は、大人の発達障害当事者による、大人の発達障害当事者のための居場所です。高田馬場にある雑居ビルの1室にあり、18時までは一般のカフェとして発達障害の当事者によって営業され、18時以降はフリースペースとして発達障害の当事者のために場が解放されます。スペースでは茶話会やゲーム大会といったイベントも頻繁に開催されており、発達障害の当事者が気軽に集まれる居場所づくりがなされています。大人(成人)の発達障害当事者のためのピアサポート Necco(ネッコ)取材に訪れた日もたくさんのお客さんで賑わっており、別フロアではフラワーアレンジメント講座が開かれていました。Upload By 発達ナビ編集部本棚には発達障害関連の本が多数並んでいます。Upload By 発達ナビ編集部Neccoは自由に集まれる居場所としては2010年、カフェとしては2011年に活動をスタートしており、大人の発達障害当事者のための常設の居場所としては、日本で最初に出来た場です。今回の記事では、このNeccoを立ち上げた方であり、ご自身も発達障害の当事者である金子磨矢子さんに、活動を始めたきっかけや、長年続けていく中での苦労、活動を続けるモチベーションや今後の展望についてお話をお聞きしました。金子さんは平成28年度厚生労働省より「発達障害者の当事者同士の活動支援のあり方に関する調査」を受託し、その報告会である「発達障害当事者会フォーラム2017」を開催された主催者のおひとりでもあります。この報告会は、1月にも「発達障害当事者会フォーラム2018」として大阪で開催する予定とのことです。金子さんのインタビューから見えてきたのは、当事者活動を続けることの大切さと、当事者活動としてどう外の社会と関わっていくかという問題意識でした。ずっと自分はちょっと変な子だと思っていたUpload By 発達ナビ編集部―金子さんがご自身の発達障害について知ったのは、どういったきっかけだったのでしょうか。金子さん: 子供のころからずっと、自分はちょっと変な子だとは思っていました。しかし本格的に自分のADHDを知るきっかけとなったのは、子育てに悩み、本屋で調べ物をしていたときですね。子どもが2才の時にプレイグループに参加させたんですけど、どうにもよその子と何かが違ったんです。なかなかうまく他の子どもと交わることが出来ず、自分のやり方で自分なりの遊びをつくるのを好む傾向があって。プレイグループには、参加している子供の他にその子たちの弟や妹にあたる赤ちゃんも何人かが場にいたのですが、赤ちゃんの泣き声を極端に嫌がるそぶりも見せました。うちの子はよその子となにか違うのかしら?という答えが知りたかったんですが、当時はインターネットも普及していなかったので、しょっちゅう本屋に入り浸っては答えを探し求めていました。その時に出会ったのが『のび太・ジャイアン症候群』という本です。落ち着きがない・忘れ物が多い・後先を考えずに行動する・いじめられる…この本を読んで、子どものことはひとまずそっちのけで「これは私だ!」って叫びそうになりましたね。その場で立ちつくし、購入して帰り、何度も何度も読みました。それまでも自分自身に対する違和感はずっと持っていたんですが、こんな変わった人は自分だけじゃない、特性というものなんだと知り、この本にとても励まされたんです。よその子とは何かが違うと感じていた子どもに関しては、その後、2004年ごろですかね…テレビ番組がきっかけで、アスペルガー症候群だということに気付きました。自分が発達障害だと気づいてから起こした私の行動Upload By 発達ナビ編集部―ご自身の発達障害特性に気付いた金子さんですが、当事者としてNeccoの活動をはじめるきっかけは何だったのでしょうか。金子さん: 最初は活動というまでのものではなかったんです。SNSが普及した頃に、そのSNSの発達障害コミュニティのメンバーでリアルでも会ってみようということになり、定期的にオフ会をするようになったのがはじまりです。そうやって集まるようになっていた中で結束が強くなったのは、リタリンの処方が制限されるようになったのがきっかけです。(編集部注:現在リタリンはナルコレプシーにのみ適応)メンバーの中にはリタリンなしではADHDの症状がしんどい人もいて、これはなんとか訴えないと!ということで、厚労省の会議に傍聴に行ったり、ネット上で活動を行ったりしました。結局私たちの訴えは聞き届けてはもらえなかったのですが、この活動がきっかけで2つの願いが強まりました。ひとつは、いつでも私たち発達障害の当事者が集まれる場所がほしいということ。当時は私の家のリビングに集まってミーティングをしていましたので。そしてもうひとつは、自分たちが集まる居場所を得るだけではなく、社会に対して働きかけを行い、当事者発信で発達障害を広く知ってもらうことです。リタリンの処方うんぬん以前に、当時の発達障害の認知度の低さを思い知らされましたね。私自身、自分の発達障害を知ることが出来てよかったと思っているんです。だから今度は私が、まだ自身の発達障害に気付かずひとりで悩んでいる人の気付くきっかけになったり、居場所になれたらいいなと思って、啓発や居場所づくりの活動を続けています。また、最近でこそ「発達障害」という名前だけは知られてきましたが、「それでは発達障害とはいったい何なのか」という本質的なことは、まだほとんどの人に理解されていないのではないでしょうか。発達障害の啓発活動の動機として、生きづらさを抱えながらも自分が発達障害だと気付かずに生きている方本人に、自分自身のことを気付いてもらいたいというのもありますが、本人だけじゃなくてもっと多くの人にも発達障害についてちゃんと知ってもらいたいと思っています。というのも、発達障害に対する無理解によって苦しんでいる当事者の人がたくさんいることを知っているからです。この人たちはこういう人たちなんだよっていうことを、目に見えないのでむつかしいとは思うのですが、発達障害じゃない人たちにも分かってもらいたい。学校の先生、役所の方、会社の上司…出来ないことは出来ないんだと分かってもらえないと、当事者の方はつらいばっかりです。わざとやらない、怠けたくて障害のせいにしている、そういう風にとられてしまいがちなんですが、本当にそんなことないんですよ。むしろ精一杯努力している真面目な方が多いと思います。必要としてくれている人がいる限り、続けていきたいと思ってるUpload By 発達ナビ編集部―Neccoを続けてきた中で、印象に残っていること、大変だったことはありますか。金子さん: もう、大変なことだらけです(笑)まずNeccoをはじめるにあたり、場所探しから大変でしたね。「借りた場所を発達障害の人の居場所にしますので物件を貸してください」と言って、理解してくれた上で快く貸して頂ける場所を探すのに1年ぐらいかかりました。現在Neccoの運営母体は一般社団法人としており、非営利で運営しています。カフェの店員はボランティアで、費用の持ち出しも発生しています。とはいえNeccoを必要としてくれている人がいる限り、なんとかして運営を続けていきたいと思っています。「Neccoという居場所があるから今、学校や会社に頑張って行けている」、そういう方がたくさんNeccoにいらしているんです。なかには毎週末、長野から夜行バスでNeccoに来ている方もいます。月から金までなんとかお仕事を頑張り、金曜の夜の夜行バスで東京に来て、日曜の夜の夜行バスで長野に帰っていくんですね。また以前は40才前後のいわゆる団塊ジュニアといわれる世代の方が多かったのですが、最近は高校生や大学生といった若い方も増えてきました。当事者としてどう社会と関わりを持つかUpload By 発達ナビ編集部―今後、Neccoの将来の展望はありますか。金子さん: Neccoに関していえば、"来たかったらいつでもここに来ていいんだよ"という居場所がある状態をこれからも維持していくだけだと思っています。発達障害の人は、かつての私がそうであったように、いろんな場所で苦労している方が多いと思います。そういった人たちの誰もが気軽に来れるような居場所を準備しておきたい。欲を言えばここだけじゃなくて、もっと日本中のいろいろなところにたくさんNeccoのような居場所ができたらいいなとは思いますね。また最近力を入れていたのは、大人の発達障害当事者会に関する調査報告書の作成ですね。これは厚生労働省から依頼を受けた調査事業で、私は事業責任者をしていました。長年Neccoに関わってきて、自分たちで自分たちの居場所をつくることももちろん大切だと思っていますが、当事者たちだけでやっていくのはなにかと限界があります。というのも、当事者の生きづらさは、自分の努力や行動で解消出来る部分もありますが、当事者の周りにいる発達障害ではない人や社会の理解、配慮や助けがとても重要です。また先ほどお話したように、私は私自身が発達障害だと分かったことですごく人生が楽になった経験から、まだ自分の特性に気付かず生きづらさを感じている人に発達障害というものを知ってもらいたい。ですから発達障害の啓蒙のため、まず私が出来ることとして、当事者や当事者会の情報を取りまとめ、私たちの生きる困難さや活動を社会に向けて発信し、知ってもらう必要があると考え行動しています。長年発達障害の当事者活動に関わってきましたが、課題はまだまだ山積みです。当事者同士の活動に関して言えば、とにかくいろんな特性を持った方が集まるので、運営のむつかしさがあります。こだわりの強い特性の人同士の意見が対立して分裂してしまったり、正直当事者同士での連携のむつかしさは感じています。なんとか意見をまとめてルールをつくってみると、今度は逆にそのルールを文字通りにとらえてしまって、ルールからちょっとずれる人がいるとこだわりから許せない人がいたり。たとえばNeccoでいうと、かつてはフリースペースのクローズ時間は22時だったのですが、スタッフが大変だということで21時に変更したんですね。たまに場が盛り上がってクローズが21時を過ぎてしまうことがあったのですが、そのことに対して「ずるい」と腹を立てる方がいたこともありました。同じ発達障害の当事者同士とはいえ、特性は本当に人によってさまざまなので、いろんな国の外国人同士が集まっていっしょに何かやろうとしているような困難さを感じています。当事者活動をどうしたらいいか、ずっとそればかり考えています。しんどいと思うことも多々あります。だけど続けている、それは、私は子供の頃からずっと自分のことをダメな人間で、人の役に立つことが出来る人間ではないと思っていたんですね。そんな私が今、活動を通して、目の前の人の支えになったり、社会に働きかけを行ったり出来ている。そのことが生きがいであり、生きるよろこびだからかもしれません。見えない障害とどう向き合うか「私は私が発達障害だと気付けて心から良かったと思っています」これは取材中に金子さんが繰り返しおっしゃっていた言葉です。この記事を掲載している発達ナビのユーザーさんからは、病院へ行き診断を受けることへの心理的抵抗感や、障害受容のむつかしさなど、日々さまざまなお悩みが寄せられています。自分や自分の子どもの生きづらさ・育てにくさをどうとらえるかについて、それぞれに多様な悩みを抱えられているのだと思います。「見えない障害」であり、また「ここからこっち側は障害です」と線を引くように切り分けることは難しいからこそ、その悩みは尽きないのかもしれません。いろんな考え方があって当然で、答えはないのかもしれません。金子さんの場合、彼女は子どもの頃からずっと「自分はちょっと変な子だ」「自分は努力不足でダメだ」と思い悩んでいたそうですが、一冊の本との出会いをきっかけとして発達障害を知ったことで、自分は努力不足でもなく、親の育て方のせいでもなかったということが分かり人生が前向きに進んだと語っています。今、人知れずしんどい思いをしている人、一人でつらい思いを抱えている方が、もしこの記事を読んでくださっていたら、こういった考えや経験をもとに活動をしている人がいることや、その人がつくった居場所があることを、選択肢のひとつとして心の片隅にとどめておいていただけるとうれしいです。大人(成人)の発達障害当事者のためのピアサポート Necco(ネッコ)
2017年12月01日パニックは、いつだって突然に…!出典 : 「き…き…キターーー」息子のパニックが爆発したとき、私はいつも思考停止しかけてしまう頭を茶化すために、こんな風に呟いていました。自閉症スペクトラム障害、ADHDと診断されている息子のパニックは、一切の予測ができません。いつ来るのか分からない、何が引き金かも分からない、突然訪れて、そして何時間も続く「地獄」でした。声をかけてなだめても火に油。抱きしめてみたら、暴れる息子に頭突きをされて自分がけがをすることも。私はなすすべもなく呆然とその場に立ち尽くすことしかできず、その様相は本当に滑稽で哀れとしか言いようがありませんでした。そんな息子も小学校1年生になり、最近はひどいパニックに陥ってしまうことはほとんどなくなりました。それは、息子が自分自身で「嫌な感覚」を説明できるようになったから。息子は「音がうるさい」「人が多い」「疲れた」「静かなところに行きたい」などと自分から言うことができ、周りの人に伝えることができるようになったのです。また、自分にとって嫌な刺激は、自分自身の行動で回避することができるようになったことも大きく関係していると思います。けれども、息子が自分の快不快の表現がまだできなかった頃を思い出すと、いまでも目を背けたくなるような辛い気持が思い返されます。知らず知らずのうちに不快刺激を我慢し続け、顔は青ざめ、道路に座り込み、耳を塞いだまま立ち上がれなくなったり。あるいは泣いて泣いてどうやっても泣き止むことができなかったり。こんなとき、いつも私は思いました。「パニックになることを予告してくれる警報機があったらなあ…」ストレスを感知できるリストバンドがある!?出典 : 発達障害のある子どもががパニックを起こす前に「ストレスがたまっています」「クールダウンさせてください」と警告してくれるような機械がもしあったら…。そんな夢のようなことを考えていたら、たまたまこんな海外の記事を見つけてしまったのです!"Sensor Detects Emotions through the Skin" (「センサーで皮膚から感情を測定」MITテクノロジーレビュー)2010年に書かれたこの記事には、アメリカのマサチューセッツ州にあるAffectivaという会社が、人の興奮や苛立ちを検知することのできるリストバンド型のセンサーを開発したということが書かれています。このリストバンドに組み込まれたセンサーが皮膚の水分量に応じて変化する電気伝導率を測定することにより、ストレス反応を検知することができると言います。この記事では、このリストバンドを自閉症の当事者の支援に活用できる可能性があるかもしれない、と書いています。自閉症の人はストレスを表現しづらいという特性を持つことが多く、またそもそも自分自身の「感情」や「ストレス」についてよく分かっていない場合もあります。そしてギリギリまで我慢した結果、パニックになるというのです。自閉症の人に限らず、人は誰でもこのような状態になると、交感神経の働きが活発になり、皮膚の水分量が増えて皮膚の電気伝導度が高まるのだそう。このリストバンドに搭載されたセンサーは、その電気伝導度の変化を、「ストレス反応」として捉え、ストレスレベルを測定するのです。交感神経が活発になるのは、必ずしも「ストレス反応」に限らないのですが、それでも自閉症の人の情緒に何かしらの変化が起こったことは分かると、この記事では言われています。製品化は進むのか!?その後の開発動向を追跡してみると…出典 : 待ち望んでいる人も多いであろうこのリストバンド。この記事で紹介されてから7年あまりの時間が経過した現在の開発状況はどのようになっているのでしょうか。気になった私は、開発に取り組んでいるマシュー・グッドウィン博士(ノースイースタン大学准教授)にコンタクトを取ってみることに。すると、この技術を継承したリストバンドが既に商品化されていることが分かりました。上で紹介したAffectiva社は開発・販売を休止しましたが、そこから独立して設立された会社が他社と合併を行い誕生したEmpatica社が、現在でもセンサーの販売行っているというのです。それがこちら!Upload By 林真紀Upload By 林真紀Empatica Inc.(Empatica社のホームページ)社が販売しているのは、このE4とEmbraceという2種類のリストバンドです。E4は、体温や心拍や皮膚電位等を検知することにより、自律神経系、交感神経系、副交感神経系の働きを計測することができるといいます。Embraceは、皮膚電位や体温、動き等に大きな変化があった場合に、アラートを出すこともできるとか。このような急激な変化は、身体になんらかの発作が生じたときに見られる場合が多いため、現在は主に医療目的で使われているようです。自閉症へのフォーカスはまだ。でも今後の発展に期待!出典 : 残念ながらこれらの製品のWEBサイトでは、まだ自閉症の人に対しての有効性などには触れられておらず、あくまで体の情報を取得するセンサーとして紹介されています。しかし、開発段階においては、自閉症児の子どもや保護者、支援者からの要望がとても多かったというのは事実のようです。また自閉症の当事者も、ストレスをうまく表現できない苦しみと、それを周りに違って解釈されてしまう辛さに悩み、自らの感覚を他者に伝えることができるセンサーの開発を待ち望んでいた人が多かったと言います。現在の製品は自閉症の人に特化した商品ではないものの、将来的にはデータの蓄積と精度の向上が進めばさらなる活用が期待できるかもしれません。また、リストバンドのお値段は日本円にして約18万円とだいぶお高いですが、これから開発が進み、一般向けに普及していくようになれば、もっと安い値段で手に入る日がきてもおかしくないでしょう!なにより、実用化すれば言葉や表情に頼らず、自閉症の人の感じている辛さをリアルタイムに知ることができる画期的なツールになるはずです。テクノロジーが、いろんな人の生きづらさを変えていく時代が来ているのかもしれない…私はこのリストバンドのことを知って、とても明るい未来を想像したのでした。
2017年11月10日先月、NHK総合テレビで 「深夜の保護者会/発達障害 子育ての悩みSP」 をはじめ、Eテレ「ハートネットTV」では 「自閉症アバターの世界1・2」 、NHK「あさイチ」では 「シリーズ発達障害/どう乗り越える? コミュニケーションの困りごと」 など、続々と発達障害特集が放送された。どれも見ごたえのある内容だったが、4歳の自閉症スペクトラムの息子を持つわが身としては、やはりリアル世代である「深夜の保護者会」が一番興味深かった。話し合いにのぼったテーマは、「周囲へカミングアウトはするべきか?」「カミングアウトするとしたら、どう説明したらよいのか?」「夫や子どもの本音は?」「ありのままのわが子を受け入れるには?」など。どれも、まさに発達障害の子育てをしている親の悩み、ど真ん中の内容だったと思う。現役ママの葛藤は、私には痛いほど伝わってきて、ちょっとホロッとしてしまうほどだったし、すでにさまざまなことを乗り越えてきた先輩ママたちが、試行錯誤の上生み出した、わが子との向き合い方はとても参考になった。■わが子を嫌いになる、自分が辛いそして、現役ママの苦しい胸の内を聞いて、改めて発達障害を持つわが子の「ありのままを受け入れる」ことの難しさを思い知った。「彼らを大好きなのに、大嫌いになる時がある自分が辛い」(番組に寄せられたファックスのコメント)「比べるものではないと重々わかっているけど、どうしても下の子と比べてしまう。下の子はできが良くて、かわいくてギュッって抱きしめられるけど、上の子にはできない…。できない上の子を受け入れられない」(番組に参加した現役ママのコメント) NHK総合テレビ「深夜の保護者会/発達障害 子育ての悩みSP」より そんなママたちの悲痛な叫びに、胸が締め付けられた。■本当に、子どものこと受け入れてる?ありのままのわが子を受け入れる――それは発達障害の子育てのスタート地点のように思えるのだが、実は、親にとっては、それが一番難しいことのような気がする。私自身も、「私は周囲にもカミングアウトしてるし、もう受け入れているから大丈夫!」と、すっかり達観したつもりでいたのに、自分でもビックリするほど些細な事で傷ついてしまうことがある。そんな時は、「実は、心のどっかでは息子のことを受け入れられてないのかも…?」と心が揺れる。ブレない自分でいたい。…なのに、なかなかなりきれない! それが自分でも、すごく歯がゆくて悔しいのだ。■子どもが笑ってくれる、そのために何ができるか?これに対して、先輩ママたちや尾木ママの意見は…「試行錯誤する、という作業がすごく大事。私たちも最初はどうしたらいいのかわからない状態で、いろいろ試して、今がある。のちのちつながっていくことだから、あきらめないで少しずつでも進んでいってほしい」「高望みせずに、『一個できたらすごい!』を積み重ねていけばいい。とにかく今できることを褒めて。『褒めるは認めること』って言葉に置き換えてもいい。良いところを褒めるのではなく、できていることを認めればいい。それが丸ごとの発達障害と付き合っていく姿勢につながっていくはず」「発達障害は、息子の世界と私たち世界の交わるところにある、『壁』みたいなもの。でも、その壁は環境や周囲の考え方、関わり方で低くもなる。息子の世界も尊重しつつ、私たち側もお互い気持ちよく過ごせるエリアが広がるように、私たち側が変わっていかなければならない」 NHK総合テレビ「深夜の保護者会/発達障害 子育ての悩みSP」より 様々なアドバイスが飛び交ったが、なかでも印象に残ったのは、先輩ママの次の言葉だった。「よっちゃん(息子さんの名前)に笑ってほしい。そのために自分がどうしたらいいか? それを考えれば自ずと変わってくる。それを変えただけ」私は、障害(発達障害に限らず)を持つ子どもの親というのは、何か高尚な考え方ができるような、立派なママにならなければならないような気がしていた。でも、そうではなくて、この先輩ママが言うような、子どもの毎日の笑顔の積み重ねの先に、いつの間にか生まれてくるような、もっと自然な感情なのかもしれない。そう思うと、私はまだまだ肩の力が入ってしまっているようで、まだまだだなぁ~と苦笑してしまった。■障害は敵ではないまた、当事者である子どもの発言にも考えさせられた。「悪いのはこの子ではなく、障害のせい」と、子どもと障害を別々に考えるということで気持ちが楽になったというお母さんに対してお子さんの考えは違った。「僕は、そういう考え方はやめてほしい。障害は敵ではない。生まれてしまった以上しょうがない。しょうがないから向き合う。うまく付き合っていけたら気持ちは楽になる」 NHK総合テレビ「深夜の保護者会/発達障害 子育ての悩みSP」より この2人のやり取りを見て、発達障害の子育てを描いたコミックエッセイ『母親やめてもいいですか』に書かれていた、自閉症当事者によって書かれた「私たちのことを嘆かないで」という詩の一節のことを思い出した。自閉症は人を閉じ込める殻ではありません中に普通の子どもが隠れているわけではないのです自閉症は私が私であること、そのもの私という人格から切り離すことはできません「うちの子が自閉症でなければよかった」「この子の自閉症がよくなりますように」その嘆き、その祈りは、私にはこう聞こえます。「自閉症ではない別の子がよかった」両親が語りかける夢や希望に、私たち自閉症者は思い知るのです彼らの一番の願いは、私の人格が消えてなくなり、もっと愛せる別の子が私の顔だけ引き継いでくれることなのだと… 『母親やめてもいいですか』(山口かこ・文/文春文庫)より引用 ■何を持って「息子」なのだろう?障害を持つ子どもの親であれば、誰しも、わが子の障害がなおることを願ったことが、一度はあると思う。私自身も、息子が自閉症スペクトラムと診断された当初は何度となく、この障害を息子から取り除きたいと願った。一生治らないものだと知った時は、夜中パソコンの前で号泣した。でも、1年経った今は、こう思うのだ。例えば、息子がいきなりおしゃべりで明るい社交的な子になったとしたら…? それはそれでうれしい面もあるのかもしれないけど、果たしてそれは息子なんだろうか? と。改めて、「何を持って息子なのだろう?」と考えると、思い浮かぶのは、なぜか、やっかいで面倒なエピソードばかり(笑)。むしろ、そのやっかいなところこそが、息子が息子であるための大切な要素なのかもしれない、と。最近ではそう思うのだ。最後に、先輩ママたち全員が、声をそろえていたことがある。それは、「まずは、お母さんが元気なことが基本。自分を犠牲にしちゃダメ。お母さん自身の人生も大事にしてほしい」ということ。子どもに笑顔でいてほしいなら、そのためには、まずはお母さん自身が笑顔でいることこそが大切なのだ。まちとこ出版社N NHK 発達障害プロジェクト 【発達障害についての記事一覧】▼大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界(全4回)▼「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら(全9回)
2017年10月12日昨今、メディアでも取り上げられることが増えてきた「発達障害」。身近に当事者がいない人でも、この言葉を耳にする機会は多くなってきているのではないでしょうか。そんななか、NHKが「発達障害プロジェクト」と銘打ち、今年5月から1年を掛けて特集放送を行っています。このプロジェクトのなかのひとつに、イギリスのTVドラマ『ハンク―ちょっと特別なボクの日常―』があります。このドラマは、ディスレクシア(読み書き障害)の少年ハンクを主人公にした学園ドラマ。もともと2016年にNHKで放映されていたものを、「発達障害プロジェクト」に合わせて選りすぐりの5本を再放映するというもの。日本ではまだ発達障害を扱ったエンタメ作品の数は少ないですが、このイギリスのドラマでは「ディスレクシアとはどんなものか」を視覚的にわかりやすく表現しています。当事者たちが学校生活を送る上でどんな困難を抱えているか、さらにその困難さを主人公のポジティブな性格と大胆な発想で乗り越えていくさまをスパイスたっぷりに、コメディタッチで描かれています。■ディスレクシア(読み書き障害)とは?ディスレクシアとは、発達障害のひとつである「LD(学習障害)」の一種で、知的発達に遅れはないものの、脳の働きに特徴があり、文字や数字の読み書きなどに困難が生じることをいいます。有名人では、俳優のトム・クルーズやオーランド・ブルーム、映画監督のスティーブン・スピルバーグなどがディスレクシアであると告白していて、多くの人が障害について知るきっかけとなりました。主人公ハンクは12歳の少年。彼の場合は文字を読もうとすると「字が躍っている」ように見え、書くこと、計算も苦手。「作文の宿題をやろうとしても、文字が躍ってなかなか書くことができない!」「ミュージカルの主役に抜擢(ばってき)されたのに台本が読めない!」など、たびたびピンチに陥ります。どんなふうにこのピンチを切り抜けるのだろう? と思っていると、作文を書かされる回では、考えて考えて考え抜いた結果、「作文ではなくて、工作で伝えよう!」というとっぴな方法を思い付き、立派な作品を作り上げてしまいます。そう、彼のすごいところは、どんなピンチに遭遇しても決してあきらめず、ユニークなアイデアで切り抜けること。じつはハンクは頭の回転がとても速く、行動力もあるのです。なんでも突っ走ってしまうので、先生には怒られてばかりだけど…。■ディスレクシアの子どもが学校生活を乗り越える処世術ディスレクシアであることを悲観せず、親友や家族に助けられながら学校生活を送るハンクですが、ちょっとだけ愚痴が出ることも。「成績はいつもビリだから、いじめられる。ディスレクシアだけど頑張ってるのに…。みんな結果しか見ないんだ」発達障害の子どもは、ときにいじめられたり、不登校になったりするとよく耳にします。これを「二次障害」と呼ぶのですが、まさにハンクも同じ。でも、彼はへこたれません! “成績ビリ”という自分のイメージを変えるためには、「何か得意なことをみんなに見せればいいんだ!」と考えることのできる強さがあります。ハンクの姿を見てハッとさせられるのは、そんな発想の転換。ディスレクシアの自分を受け入れ、ほかのことでカバーしたり名誉挽回を目指したり。とくに読み書きや計算についてはみんなと同じようにできないけれど、自分なりの方法でならゴールにたどり着くことができる。それがハンクの学校生活を乗り切る処世術であり、二次障害を深刻にしない助けになっているようです。■発達障害児子育てのヒントがいっぱいあった!筆者にも、発達障害の疑いのある息子3歳がいます(診断待ちの状態です)。まだ私自身も発達障害について初心者で、毎日迷いながら子育てをしています。療育や幼稚園、児童館など、ほかのお子さんたちと活動をする場所に行くと、つい「みんなと同じように」やらせたいと思ってしまいます。でも息子には「できること」と「できないこと」があって、それが息子にとって大きな負担になってしまっていると感じることも多くあります。そして私は、あとから反省することばかり…。また、同じような境遇のママたちと会話して思うのは、自分も含めみなさん真面目だということ。病院や療育の先生のアドバイスひとつ取っても、まっすぐ受け止めすぎてしまいます。子どものことを考えて、「少しでもできることを増やしたい」という必死な思いが、いつの間にか「アドバイスどおりにしなければならない」という強迫観念にも近いものに変わってしまい、そこから外れるものを許容できなくなってしまうのです。どんなことをするにも、答えはひとつではないし、手段もひとつではありません。ハンクの行動は、それを証明しているように思えます。ママの考え方にしてもきっと同じではないでしょうか。みんなと同じようにできなくてもいい。いろんなやり方を試して、生きる力を身に着けることの方がきっと大事なはず。ステレオタイプにとらわれず、柔軟な考え方・受け止め方ができれば、発達障害児の育児の窮屈さが少しでもやわらぐのではないでしょうか。そんな、ちょっとしたヒントを、ハンクから教えてもらった気がしました。TVドラマ「ハンク―ちょっと特別なボクの日常―」第4回は、NHKにて9月23日(土)23:25より、第5回は、NHKにて9月30日(土)23:35より放映。<NHK発達障害プロジェクト 今後の放送予定>・2017年9月24日(日)午後11:00~11:50 NHK「深夜の保護者会」「発達障害 子育ての悩みSP」・2017年9月26日(火)午後8:00~8:29 Eテレ「ハートネットTV」 「自閉症アバターの世界 ①」・2017年9月27日(水)午後8:00~8:29 Eテレ「ハートネットTV」 「自閉症アバターの世界 ②」・2017年9月27日(水)午前8:15~9:54 NHK「あさイチ」 「シリーズ発達障害 どう乗り越える? コミュニケーションの困りごと」※内容は変更になる場合がありますNHK 発達障害プロジェクト 【発達障害についての記事一覧】▼大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界(全4回)▼「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら(全9回)
2017年09月22日「とにかく勉強ができなくて。実は私、発達障害のひとつ、学習障害だというのが最近わかったんです。道理で、勉強してもいっこうに読み書きができなかったわけです。師匠がしゃべるのを聴いて覚える落語なら、すぐに頭に入ったんですがね」 そう話すのは、古典芸能の型を大切にしつつ、現代的要素を取り入れたスタイルで人気の落語家・柳家花緑師匠(46)。新刊『花緑の幸せ入門「笑う門には福来たる」のか?〜スピリチュアル風味〜』(竹書房新書)では、冒頭で発達障害をカミングアウトしている。 著書に掲載されている中学3年の通知表では、英語と音楽、美術以外はほとんどオール1。この通知表が学生時代の最後にもらったもので、中学を卒業すると祖父である故・5代目柳家小さん師匠に入門した。ところが……。 「“人間国宝・小さんの孫”と言われ続けると、自分が偽者みたいな劣等感に襲われて、若いころはそのプレッシャーに押しつぶされそうでした。八方ふさがりで精神的に不安定な時期がありまして。祖父がいなきゃ自分の存在意義がないんだと思い詰めて、死のうとさえ考えたことも」 笑顔を絶やさず冗舌で、羨ましがられるほどの落語界きってのサラブレッド。けれどだからこそ、心の奥底に苦しみを抱えていたのだ。その鬱屈した毎日から抜け出すべく、自己啓発やスピリチュアル系の本を読みあさったという。そして、幸福について考えたプロセスや結果を著したのが今回の著書だ。 さて、近ごろ師匠を満たしたラッキーな「福」は? 「この間ね、落語会で出囃子を頼める人がいなかったんですよ。10人も弟子がいながら、全員がそれぞれの高座に出かけてしまっていて。途方に暮れていたところへ、近々真打ちに昇進する立川流の落語家が挨拶しに訪ねてきたの。まさに渡りに船!『出囃子をお願いできる?』と(笑)。この縁、“シンクロニシティ”という偶然の一致なんですね。遭遇したら幸せな気分になりますけど、自分から意図して起こすことはできないんですよ。おもしろいでしょ」 10月には東京での独演会「花緑ごのみ」が控えている。その稽古にも余念がない。 「本を読んで興味を持ってくださった方に、落語も楽しんでいただければ!」
2017年09月11日知的障害者福祉法とは?出典 : 知的障害者福祉法(旧:精神薄弱福祉法)は、1960年に制定された法律です。知的障害のある人の福祉をはかることを目的とした法律です。2006年の改正前、その目的は「生活支援」という側面だけでしたが、現在は知的障害のある人の自立と社会参加を促進するよう法律で定められています。それでは実際の法律の文言を見てみましょう。(この法律の目的)第一条 この法律は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 (平成十七年法律第百二十三号)と相まつて、知的障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため、知的障害者を援助するとともに必要な保護を行い、もつて知的障害者の福祉を図ることを目的とする。また、この法律は2013年に制定された「障害者の日常及び社会生活を総合的に支援するための法律」、別称「障害者総合支援法」という障害のある人全般に適用される法律とあいまって、その内容が定められています。それまでは、障害種別によって個別の法律に基づき様々なサービスや制度が成り立っていました。その後、総合支援法ができたことにより、「知的・身体・精神」の3つの障害が同じ法律内で扱われることとなりました。そのため、従来の知的障害者福祉法がもっていた独自の法的な意義は希薄化しているのが現状です。それにともない、知的障害のある人へのサービスや制度も、障害者総合支援法に移行しています。知的障害者福祉法の概要出典 : 知的障害者福祉法は以下の4つから構成されています。・総則・実施機関及び更生援護(実施機関等、障害者入所支援施設等の措置)・費用・雑則総則とは、全体を通じて適用される法律のきまりのことです。つまり、法の根幹となる部分です。知的障害者福祉法における総則は、以下の4つの項目から成り立っています。◇目的知的障害のある人の自立と経済活動を促進させるために、知的障害者の福祉をはかることを目的としています。このために、国や自治体、施設などは知的障害のある人を保護し、適切な援助を行うことが定められています。◇自立への努力と機会の確保・知的障害のある人は、そのもっている能力を使って社会活動、経済活動に参加するように努力しなければならないとしています。・社会を構成する一員として、自立し、社会、経済、文化などの活動に参加する機会をもっているとされています。◇国、地方公共団体と国民の責務国や地方公共団体は、上の理念が達成されるために、国民の理解を促し、必要な援助と保護を行うことが定められています。国民は、知的障害のある人の福祉について理解を深め、社会経済活動参加する努力に対して協力することが定められています。◇職員の協力義務知的障害のある人に援助や保護を行う職員は、児童から成人まで一貫して福祉支援を行うことが定められています。このように、知的障害のある人が社会の一員として、社会的、経済的な活動に参加できるように、すべての国民、行政、職員が努めることを義務付けたのが、知的障害者福祉法です。この部分には、知的障害福祉法に関する支援を提供する機関について記載されています。・支援の実施は、市町村が実施の主体となっていること・知的障害者の判定は、知的障害者更生相談所で行うことなどの点が記載されています。この部分はのちの章で詳しく説明します。知的障害者福祉法のこの項では、知的障害のある人のための施設を運営、設立する際の費用を出す義務者が定められています。また、知的障害のある人がサービスを利用するときには、一部または全部の負担が課せられることになっていますが、その負担は、当事者および扶養者の自己負担の能力に応じることが記されています。知的障害者福祉法ができたわけ出典 : 知的障害のある人への総合的な福祉支援は、どのような理由から展開され、本格的に開始したのでしょうか。日本で、最初に知的障害のある人への福祉サービスを規定したのは、1947年の児童福祉法です。ここでは、障害の有無についての言及はなく、すべての児童が等しく、生活を保障されなければならないという理念が述べられています。その後、1953年に「精神薄弱児対策基本法」が策定されました。この法は、のちの1960年に成立する知的障害者福祉法の下敷きとなったものです。この法律の要綱では、成人をも視野に入れており、18歳を過ぎた知的障害のある人にも必要な施策がとられることとなっていました。しかし、この法律には様々な問題点がありました。というのもこの法律では、知的障害のある人の「隔離」と「保護」を前提としていた点です。そのために、具体的にとられた施策は、不良行為を行う知的障害のある人を収用する設備の強化や、優生手術の実施など、知的障害のある人を社会から排除するものでした。また、実際の福祉施策が適用されたのは、18歳未満の知的障害がある子どもだけでした。「隔離」を前提とするような法律の問題点を改善する声があがり、1960年に成立したのが知的障害者福祉法です。この法律でようやく、名実ともに児童から成人までの一貫した支援を提供する事業が整備されました。知的障害者福祉法の改正と障害者総合支援法出典 : 障害者制度は2003年、2006年、2013年と3度の変革を迎えています。これにともない知的障害者福祉法の位置づけや内容も変化してきました。まず2003年には、支援費制度が導入されました。ここでのキーワードは「障害者の選択の尊重」です。この制度の導入により、それまでは行政が定めたサービスしか受けることのできなかった利用者は、自分に合ったサービスを選べるようになりました。そして2006年には、「障害者自立支援法」が成立しました。ここで福祉サービスにおける障害者の位置づけが大きく変わりました。というのも、それまでは障害の種別によって提供されるサービスは分かれていたからです。障害者自立支援法の成立により、障害の種類や年齢にかかわらず、障害のある人たちが必要とするサービスを利用できるように、利用のしくみが一元化されました。そのために、それまで知的障害のある人を対象として提供されていたサービスの多くが障害者自立支援法という共通の制度のもとで一元的に提供されることになりました。2013年には、上記の障害者自立支援法の改正法として、障害者総合支援法が成立しました。ここで、よりよい支援を行うことで施設を退所する障害者が省令で追加されるなど、障害のある人が自立した日常生活、社会生活を営むことが法律の目的として定められいます。障害者総合支援法については以下の記事で詳しくご紹介しています。知的障害者福祉法の中で明確な定義がない「知的障害者」出典 : 「知的障害」という名称は、学校教育法や児童福祉法などの法律で使用されてから、一般的に福祉現場や医療の領域で、日常的に使われるようになりました。一般的には、知的障害とは、金銭管理、読み書き計算など日常生活や学校生活の上で知的機能を使う知的行動に支障があることを指す場合が多いです。しかしながら、肝心な法律においては、どのようなものを知的障害と指すのかを定める規定が見られません。このために、医学、心理学、教育学の領域でそれぞれ定義が定められており、共通した理解が得られていないのが現状です。またその呼び名も、教育分野では「知的発達障害」「知的発達遅滞」、医学関連では「精神遅滞」「精神発達遅滞」などばらばらです。支援の必要性の有無、障害の程度をもって、知的障害者を定義する法令は存在せず、客観的な基準を示していません。厚生労働省においては、知的障害を精神医学の領域における「精神遅滞」と同じものと定めていることから、法令上の用語もその基準にならっていることが多いようです。知的障害(ID: Intellectual Disability)は、医学領域の精神遅滞(MR: Mental Retardation)と同じものを指し、「知的発達の障害」を表します。すなわち「1. 全般的な知的機能が同年齢の子どもと比べて明らかに遅滞し」「2. 適応機能の明らかな制限が」「3. 18歳未満に生じる」と定義されるものです。「知的障害者更生相談所」知的障害のある人がより暮らしやすくなるための機関出典 : 知的障害者福祉法は、知的障害のある人がより暮らしやすくなるためのサポートを行う機関を、都道府県に設置することを定めています。それが知的障害者更生相談所です。主に18歳以上の年齢の人が対象となります。18歳未満の場合には、児童福祉法のもと設置された児童相談所を利用することとなります。知的障害者更生相談所では、以下の3つの取り組みが行われています。この施設では、知的障害に関する高度で専門的な知識や技術を必要とする人のための相談を受け付けています。医師やケースワーカーなどの知的障害者福祉司という専門の知識をもった職員が相談にのってくれます。知的障害者更生相談所では、知的障害の判定と療育手帳の交付を行っています。判定および交付は、医師や心理判定員によるものです。知的障害には、国の法律によって定められている定義が存在しません。そのため、障害の認定区分や基準は自治体により異なっています。おおまかには、知能や生活習慣、行動の特徴などから判定します。その他には、IQ(知能検査などの発達検査の結果でわかる知能指数のこと)や日常生活動作(身辺処理、移動、コミュニケーションなどの能力のこと)などが判定の材料に用いられることもあります。療育手帳の交付の詳しい方法は、以下の記事を参照ください。障害の状況や地理的な理由により、来所相談や定期相談ができない場合もあるかもしれません。そのようなときには、自治体によっては福祉士や心理判定員が、相談受付のため地域の巡回も可能ですので、利用するとよいでしょう。知的障害のある人に関連する制度や利用できる手当て出典 : 知的障害のある人に対する支援の体制にはさまざまなものがあります。現在、障害の種別に関わりなくサービスを一元化する動きのために、本法律を根拠とした知的障害のある人に特化した制度はありませんが、別の法律に準拠やガイドラインに定められた制度や手当をご紹介します。知的障害と判定された人に、一貫した相談や指導を行い、各種の福祉サービスを受けやすくすることを目的とした制度です。交付は、都道府県及び指定都市の長が行います。療育手帳制度は、法律で定められた制度ではなく、「療育手帳制度について(昭和48年9月27日厚生省発児第156号厚生事務次官通知)」というガイドラインに基づいた制度で、都道府県・政令指定都市ごとに要綱などを制定して行われています。療育手帳をもつことで、以下のような支援やサービスを受けることができます。・保育園への入園優待・就労支援・障害者医療費の助成・公共交通機関の割引・各種料金の割引、減免支援費制度とは、障害のある人自らがサービスを選択して、デイサービスや授産施設などの事業者と対等な立場で契約を結び、サービスを受けることのできる制度で、2003年に導入されたものです。当たり前のことだと思われた方もいらっしゃったでしょうが、導入以前は、利用者はサービスを選択することができず、市区町村などの行政が障害のある人の受けるサービスを決定していたのです。支援制度の「支援費」というのは、「利用者が施設を利用するための費用を市区町村が負担しますよ」ということです。ですので利用者は、直接何らかの金銭を受け取ることができるというわけではありません。障害のある人が施設を利用する際には、本来は全額費用を払わなければならないところから、行政がその利用料を負担するために、利用者が支払う費用が軽減されたという意味で「支援費」なのです。支援費制度は、現在障害者総合支援法に移行しています。それまでの支援費制度は、障害種別ごとのものであったり、利用できる施設が障害種別に応じて細分化されているという点から、複数の障害種別のある利用者からするとややこしいものでした。そこで、これらの課題を解決するとともに、障害のある方本人を中心とする個別の支援をより効果的に行っていくために、2005年に障害者自立支援法(のちの障害者総合支援法)への移行が行われました。成年後見制度とは、認知症のある高齢者、精神障害のある人、および知的障害のある人など、判断能力の十分でない人を支援する制度です。1992年に設けられました。この制度では、お金の管理や相続という手続きを、その人に代わって代理人が行うことができます。成年後見制度には二つの種類があります。一つは、法定後見制度といわれ、家庭裁判所が成年後見人などを選任し、すでに判断能力が低下している人に対して行われるものです。もう一つは、任意後見制度といい、あらかじめ本人が任意後見人を選び、近い将来に備え支援者と支援内容を決めておくものです。具体的な利用の方法や手続きについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参照ください。「もしも」のときのために、掛け金を積み立てておく制度です。精神、知的、身体に障害のある人の保護者が、亡くなったり、重度の障害になったときに、本人に終身一定額の年金が支給される制度です。対象は、・将来独立することが困難であると認められる、特に知的、身体障害の1~3級の手帳をもつ者の保護者・65歳未満の保護者・特別な疾病、障害がないなどの条件があります。対象となる保護者は、毎月1口~2口の掛け金を納めます。1口あたりの金額は、保護者の年齢により変わります。支給は保護者が亡くなった、重い障害をもった場合に、1口につき、月額2万円が本人に、終身支払われます。詳しくは、お住いの市区町村の保健所、保健局のHPをご覧ください。障害の等級によっては、以下の手当が支給されます。該当する手当をもらうことで経済的、精神的な負担の軽減することができます。・障害基礎年金・障害厚生年金・在宅重度心身障害者手当・特別障害者手当・特別児童扶養手当・障害児福祉手当など赤塚俊治/著『新・知的障害者福祉論序論』2008年/刊/中央法規出版山内一永/著『図解 障害者総合支援法早わかりガイド』2012年/刊/日本実業出版社まとめ出典 : 知的障害のある人のための法律は、刻々と変化しています。歴史的な背景から起こっている、障害のある人への差別や偏見から派生する社会問題を解決するために、国の施策が展開されています。法律の目的である「自立」「社会参加」という理念に向かう途上で、まだまだ課題点は多く残りますが、その達成に向けて私たちは着々と歩を進める途上にあるともいえるでしょう。
2017年08月30日NHK「あさイチ」シリーズ発達障害“ほかの子と違う?”子育ての悩みNHKが1年を通してさまざまな番組で、発達障害の多様な姿を伝えていく「発達障害プロジェクト」7/24(月)にも「あさイチ」で特集が放送されました。今回のテーマは、「“ほかの子と違う?”子育ての悩み」朝の番組で、発達障害のある子どもの子育てを取り扱ったことから、特に保護者の方々の視聴・感想が多かった様子です。発達ナビ編集部でもTwitterで番組の内容を実況し、視聴していた方々の感想もまとめました。以下の、Twitter「モーメント」機能によるまとめをご覧ください。「あさイチ」シリーズ発達障害“ほかの子と違う?”子育ての悩みワガママと発達障害の境界線は…?番組で投げかけられた問いと、視聴者の声今回の番組では、発達障害のある小学生の子どもが二人いるご家庭が取材されました。小学6年生の女の子が、学校から帰って来た場面。直前までお友達とおしゃべりしていた内容が心に残って、なかなか気持ちや行動の切り替えをすることができない、結果、宿題を始めるまでに50分もかかったという様子が映されます。お子さんの発達に違和感を感じたのは3歳児の頃。癇癪が激しく周囲に相談したが、その時は周囲から「大丈夫だよ」と言われるだけで、お母さんはギャップに苦しんだそうです。その後4歳児になったとき病院を受診、発達障害と診断されました。お子さんが「宿題をなかなかやろうとしない」「学校に行きたがらない」といった状況や悩み自体は、子育てしているご家庭なら大抵、一度は直面することかもしれません。ですが、発達障害のあるお子さんの場合、気持ちや行動の切り替えの難しさ、困りごとが起こる頻度や程度には大きな差があり、なかなか簡単には困りごとは解消されません。番組で映されるお子さんとお母さんのやり取りから、診断されてから今に至るまでの日々、積み重ねて来た工夫や理解、お子さんの成長の足跡も感じられます。それでもやはり、思うようにいかなくて、パニックや癇癪を起こしてしまうこともある。同じく発達障害のあるお子さんを育てる保護者の方や、ご自身も幼少期に似たような状態になっていたと語る、成人の発達障害当事者の方など、視聴者の方々から共感の声が寄せられていました。一方、スタジオゲストの方からは、「これが単なるワガママなのか、発達障害によるものなのか、わからない」という意見も出てきました。ワガママと障害はどう違うのか。そんな疑問に対して、Twitter上でも視聴者のさまざまな声が寄せられます。番組中でも、一見して誰にでも起こるような困りごとでも、発達障害の場合は、生活に支障がでるぐらい、程度や頻度が大きいという説明がなされていました。ですが、程度や頻度は違えど、起こっている症状や困りごと自体は、どんな子どもにも見られうるものであるゆえに、周囲の人からすると一見してその違いはわかりにくいのでしょう。どこまでがワガママで、どこからが障害なのか…発達障害が身近でない人からそのような疑問が呈されること自体は、無理もないことかもしれません。また、性質や程度の違うさまざまな凸凹のある人々が、連続体(スペクトラム)のように存在していると言われる発達障害それ自体の特性からも、明確な線引きをすることは非常に難しいと言えます。目に見えにくい、わかりにくい障害としての発達障害の性質を示すようなエピソードだったように思います。こうしたジレンマに対して、具体的にはどのように対処すれば良いのか。番組のゲストコメンテーターとして出演された、鳥取大学大学院の井上雅彦教授のコメントがヒントとなります。わがままと障害の線引きはどこかと線引きすることは、厳密には難しい。それよりも大切なのは、周りがどういう風に対応して工夫すれば本人が頑張れるようになるのか、という観点だと井上先生は語ります。線引きをすること自体を目的としても、議論にキリをつけることは難しいですが、その子が何に困っていて、周囲の人たちには何ができるのかと、個別具体的な対応・行動をベースに考えることができれば、発達障害かどうかに関わらず、どんな子どもにとっても有効な困りごと解決のアプローチが見つけられるはずです。番組の後半には、下のような声も寄せられました。どんな状況であれ、お子さんも、親御さんも、それぞれのありのままを受け止めて認めて合うことを願う声です。あさイチ出演、古山さんより保護者の方々へのメッセージ最後に、今回の番組のVTRに出演された古山さんからのメッセージをご紹介します。番組終了後、発達ナビ編集部宛にご連絡をいただき、いま、子育てに頑張っている保護者の方々へ伝えたい思いを語ってくださいました。Upload By 発達ナビ編集部「7月24日のあさイチで取り上げて受けていただいた、古山です観ていただいた皆様、本当に本当にありがとうございます井上先生はじめ、スタジオの皆様が沢山協力して下さり、短い時間でしたが、濃い内容になっていたと思います放送後も沢山の反響をいただき驚いています発達障害の子育てをしているママの沢山の方が涙を流しながら共感してくださったメッセージをいただき、勇気を出して良かったと思っています我が子の姿をさらけ出すことに抵抗がなかったわけではありませんその中で取材を受けた理由は、育児に悩んでいるママに伝えたい想いがあったからです毎日毎日、育児に行き詰まり悩んでいるかもしれません発達障害の子育ては育児上級者コースを受講しちゃったと私は捉えていますだから、もう、毎日100点は目指さないでください今日が20点だった日も落ち込んだり自分を責めたりしないで20点だったなら次の日60点以上を目指せばいい一週間で平均60点取れたら、花マルだから、40点が続いたらお休みの日に80点目指せばいいんですそれだって、1人で頑張らないで家族総出でかき集めたっていいんですあ、失敗した、言いすぎたって時は、素直に謝っちゃえばいいんですママが悪かったです、言い直すからさっきの言葉、消しゴムで消して欲しいっていま、悩んでいるママたち毎日、育児に奮闘していると一人で闘っている気持ちになるかもしれません誰にもカミングアウト出来ず誰にも共感してもらえず苦しくて寂しくて辛い毎日を過ごしているかもしれません私もそんな風な光の見えないトンネルの中にいた経験がありますでも少し勇気を出して周りを見てみてくださいあなたには必ず味方がいるはずですあなたは毎日毎日、子供に向き合い悩みながら色々なことを選択していることでしょうもしかしたら世間一般的には間違いかもしれない選択をしていることもあるかもしれません私自身が、子供達に学校以外の場所に行かせることを決めたように…でもあなたが真剣に子供達の幸せを想いながら出した選択ならたとえ、間違いかもしれない選択だとしてもあなたの決めたことなら応援してくれる人がいるはずです私にとっての実母のように味方がいればたとえ一緒に生活していなくても頑張れるチカラになります勇気を出してみてくださいまたもしも味方がみつからなくても覚えていてくださいあなたが真剣に子供達と向き合い孤独と闘いながら子育てしているとき同じ空の下で私も同じように過ごしていますあなたが今日も上手く対応してやれなかったと子供達の寝顔を見ながら涙しているとき同じ空の下で私も同じように涙していますあなたが真剣に子供達の幸せを想いながら頑張っているなら私はあなたの味方ですあなたは一人ではありませんつらいときくるしいとき良かったら私を思い出してくださいあなたとお子様達の幸せを心から願っています」
2017年08月07日些細な失敗で「死んでしまいたい」と口走る息子出典 : 先日、自閉症スペクトラムの診断が下りている息子と並んで歯磨きをしていた時のことです。私の真似をして舌磨きをする息子に、「力を入れ過ぎると、舌にある味蕾(みらい)っていう細胞が傷ついて、味がわからなくなったりするかもしれないんだって。だから気をつけてそっとやるんだよ」と声をかけました。「えっ、味がわからなくなるかもしれないの?」と言いながら息子は静かにキッチンへと消え、その直後に娘の「やめてよっ!」という怒鳴り声と、夫が息子を叱る声が聞こえてきました。どうやら、娘が氷を入れて飲もうと準備していたコップの水を、息子が勝手に飲んでしまったようなのです。パニックを起こし、「だって!!!味がわからなくなってたら困ると思って!!!早く確かめなきゃ、味が、味がぁぁぁ!!!」と泣き叫ぶ息子。息子の行動には、どんな気持ちが潜んでいたのでしょうか。一旦キッチンから寝室へ息子を移して気持ちを落ち着かせた後、息子とじっくり話をすることにしました。「いったい、どんな気持ちだったの?」「お姉ちゃんなんか、殴ってやりたいと思った」私にはその怒りの根底には別の気持ちが潜んでいることが感じ取れました。「どうしてそう思ったの?」「だって味が分からなくなったら大変なのに怒るから」どうやら、味が分からなくなるって言われたことを必要以上に真に受け、怖くなってしまったようです。そのため、いてもたってもいられず、娘の用意した水をとっさに飲んでしまったということのようです。「そうか、味が分からなくなったらどうしようと思って怖かったのね。でも、あなたにそんな事情があるってお姉ちゃんもパパも知らないから、突然やって来てお水を飲まれたらやっぱり怒っちゃうよね。先にきちんと事情を話していたら、きっと『早くこれを飲んで確かめてごらん?』って言ってくれてたと思うよ」しかし、その言葉を受けめることはできなかったようで、「もう、僕は、なんてバカなんだ!僕なんて死んでしまえばいい!」と叫んで、息子はまた泣き出してしまいました。終わってしまえば、ささいな間違いなのに出典 : いつもは温厚な性格の息子が、他人を恨んだり、自分自身を傷つける言動をする回数が、ここのところ増えてきたのが気になっていました。いい機会なので、ゆっくり息子と向き合い、失敗の受け止め方について話してみることにしたのです。「朝起きてから夜眠るまで、人はいろんな選択をして、いろんな行動をとっているから、大人でも子どもでも絶対に間違っちゃうことがあるの。何万という行動や選択のうち、たった一つを間違えたからといって絶望したり他人を恨んだりしなくていいんだよ。誰だって間違うの。ママも毎日たくさん間違ってるよ」「間違ったって気がついたときはね、単純に『あ、間違った!』って思えばいいんだよ。そうして周りを見回して、誰かに迷惑をかけたり辛い思いをさせてしまったと思った時は、きちんとごめんなさいの気持ちを伝えよう。たった一つ間違えたからって、誰もあなたを否定したりしないよ。みんなが大切にしている君を、君自身が粗末に扱わないでほしいの」そんな話をして「確かにママも間違ってるね。うっかりさんだもんね」と息子が少し落ち着いた頃に、夫が息子に謝りに来ました。「いつもは『これ飲んでもいい?』と声をかけて了解を得てから飲んでいる君が、どうしてあんな行動を取ったのか、事情も聴かずに怒って悪かった。きちんと君の意見を聞くべきだった。ごめんな」「パパが謝った!」と驚きを隠せない息子に、ようやく笑顔が戻りました。「あ、間違った!」と思ったときには素直にその気持ちを伝えるという良いお手本を見せてもらって、息子もようやく娘に「勝手に飲んでしまってごめんね」と伝えることができました。2年後、3年後の成長を見すえて今が踏ん張りどころ出典 : ここ最近、怒りや悲しみを表現することが増えてきた息子。でもそれは成長の証でもあるので嬉しくも思います。しかし、自分の気持ちや衝動を制御していくことは、自然に何かを学ぶということが難しい息子にとって大きな課題となってゆくはずです。ここからは丁寧にひとつひとつ状況や感情を整理しながら息子と向き合っていく必要があると感じています。我が家ではこれまでも、怒りを抑えることができないアスペルガーの娘と、どうすれば自身が楽になるのか話し合うことを続けてきました。そして2年の月日が流れ、娘は同一人物とは思えないほどの変化を遂げることができたのです。とはいえ、決して平たんな道ではないあの作業をまた繰り返していくのか・・・と思うと少し気が遠くなったりもしますが、おそらくここが踏ん張りどころです。息子が自分自身の気持ちの変化をきちんととらえ、自分も周囲も楽しく過ごすことができるように、私は子どもをよく観察し時間をかけて子どもの気持ちを聞き出し工夫を重ねていくことが必要なのでしょう。その子どもに寄り添いともに歩いていく時間が、きっと子どもたちを安定させてくれると信じて、私は今日も子どもたちと向き合っています。発達障害のある子供にとっては決して生きやすいとは言えない世界。いつか子ども自身がその世界を上手く泳いで行けるように、一緒にステキな泳ぎ方を見つけられるといいですね。出典 :
2017年08月06日先日、NHK 「あさイチ」 で「発達障害の子育て」についての特集が放送された。番組に出演した古山さん一家は、小6の長女と小3の長男が共に発達障害と診断されている。元気にあいさつしてリポーターを出迎える2人の姿は、障害があるとは思えないほどだが、3日間生活に密着しているうちに、「あれ?」と思うことが見えてくる。古山家のお母さんは、子どもとのコミュニケーションに、言葉ではなく筆談でそっと気持ちを伝えたり、タイマーを使って時間をわかりやすく提示するなど、随所に工夫を凝らしていた。また、お母さんは「長女の子育てに悩んだ末、4歳の時に1人で決めて1人で病院に行った」「旦那は診断を受け入れられず、障害者のレッテルを張ったのは私なのか? と悩んだ」とのこと。それから6年、今も整理できない気持ちを抱えながら、夫婦で手探りの子育てが続いているという。じつは筆者にも、8歳になる娘(定型発達)と4歳の息子(自閉症スペクトラム)がいる。決して感情的にならず、子どもの気持ちを受け止めて待つという古山家のお母さんの姿は、とても学ぶところが多かった。■子どもが発達障害と診断。その時、夫は……?しかし、今回の番組を見ていて私が一番気になったのは、子どもでもお母さんでもない。それは、お父さんの存在だ。当事者として出てくるのはほとんどがお母さんで、お母さんの話を通してからも、お父さんの存在があまり見えてこなかったのが気にかかった。個人的には「夫婦や家庭内の葛藤をもっと掘り下げて聞きたい!」と感じた。今回は放送時間の都合上、残念ながら「お父さんの存在」にはあまりフォーカスされていなかったようだ。次回以降のNHK「あさイチ」特集を含む、 NHK「発達障害」プロジェクト で、このテーマが深堀りされることを期待したい。「お父さんの存在」という問題。じつはこれ、療育ママの間では、よく聞く話である。「夫が子どもの障害を認めてくれない」「旦那が『就学先は絶対普通級』と言っている」「旦那が、幼稚園での発表会の様子を見てショックを受けちゃった…」などなど。他に、義理両親や自分の両親から理解してもらえないという話も時々聞く。「義理母に、あなたがちゃんと躾ければなおると言われた」「母親に、『あなたは甘やかしすぎ。このままじゃわがままな子になる』と注意された」などなど。こういう発言にはイラッとくるけれど、百歩譲って、祖父母世代に発達障害の理解は難しいのかもしれない。自分たちが子育てしていた頃には、きっと聞いたことのない話だろう。でも、同居していたらちょっとキツイ問題だけど、別々に住んでいるならうまくわかすこともできるし、子育てにそれほど強い影響もないはずだ。だが、夫の場合はそうはいかない。夫がきちんと向き合ってくれなければ、お母さんのストレスは2倍、いや数倍にも膨れ上がる。日々の小さなことまでフォローする必要はないと思うが、「ここぞ!」という時には、真剣に向き合ってほしい。意見が衝突することもあるかもしれないが、いざという時に一緒に本気で問題に取り組んでくれる同士(夫)がいると感じられれば、それは、お母さんにとって何よりも大きな心の支えになるはずだ。 ■他の子と比べすぎるお母さんと、比べすぎないお父さんまた、一般的に、子育てはお母さんが主役になることが多いので、同世代の友達と関わることも増えるが、お父さんは集団でのわが子の姿を見る機会がほとんどない。なので、年相応の発達状態を把握しにくく、「男の子なんてこんなもんじゃない?」とか「俺も子どもの頃そうだったよ」などと問題を見逃しがちな面がある。でも、これって悪い面もある反面、意外と良い面もあると思うのだ。わが家の場合は、私が他の子と比べてばかりいて、「普通」であることに縛られ、ふさぎ込んでしまっていた時期があった。だが、夫は、他の子と比べることは一切しなかった。「他の子と同じである必要はまったくない」、「比べることには何の意味もない。もし比べるなら、『他の子と』じゃなく『過去の息子と』」「『普通』の定義って何?」と、落ち込んでいる私を容赦なく詰めて(励まして?)くれたものだ。そんな夫に、「あなたは他の子のことを全然知らないからそんなに呑気なの!」と噛みついたこともあった。だが、文句を言いつつも、わが子のことだけをしっかり考えるという夫のブレない姿勢は、どこかで、とても心強い支えになっていたのだ。また、夫と私では子どもについての見方も全然違ったので、多面的に話し合えることもありがたいことだった。お父さんというポジションは、お母さんより、子育てを冷静かつ客観的に見られる位置にいると思う。お父さんには、ぜひそういう強みも活かしてほしいのだ。■「わがまま」と障害の線引きは?最後に、番組を見ていて、もう一つ気になったことがある。「わがまま」と障害の線引きは? ということだ。番組に出演した古山家のお父さんも、「どこまでが発達障害の特性なのか個性なのか切り分けが難しい」と葛藤していたし、スタジオの出演者たちもそのことについては判断つかないようだった。このことは、私も、よく健常児のママから聞かれるのだが、私も答えがわからずに困っている。専門家の井上雅彦さんも、「(線引きは)厳密には難しい」と言っていたので、かなり悩ましいテーマなのだろう。ただ、重要なのは、障害との線引きにこだわることではなく、「どう工夫すれば(生きにくさを感じている)子どもたちの努力が報われるか?周りがどう対応するか?ということの方に目を向けるべき」(井上雅彦さんコメント)とのこと。そう、私たちの目的は、子どもをカテゴリ分けしたり、レッテルを張ることではない。困っている子どもたちが、いかに生きやすくなるかを考えぬくことなのだ。まちとこ出版社N【発達障害についての記事一覧】▼大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界(全4回)▼「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら(全9回)
2017年08月01日7月24日(月)、NHK 「あさイチ」 では、子どもの発達障害についての特集が放送される。「あさイチ」からの事前情報によると、「これまで番組に寄せられたメールやファックスの中でも特に多かった、発達障害の子どもを持つ親の悩みに徹底的に向き合う」とのこと。じつは筆者にも、8歳になる娘(定型発達)と4歳の息子(自閉症スペクトラム)がいる。5月の NHKスペシャルの放送 から、ぜひ次回は、発達障害の子どもや子育て中の親にフォーカスした企画を! と思っていたので放送が楽しみだ。■当事者が語る、発達障害の子育てのリアル今回の放送では、3人(うち2人が発達障害)の子育て真っ最中の家庭を訪問し、発達障害の子育ての大変さや、それに対してどう向き合い、対応しているのかを伺っていくのだそう。子どもが診断された時の気持ちや、夫や祖父母、周囲の反応、子どもの将来への不安など、様々な角度から、当事者たちに発達障害の子育てをリアルに語ってもらうそうだ。さらに、番組では、ペアレントメンターなどの親を支援する仕組みなど、当事者の親に役立つ情報も紹介する予定だという。■娘とは桁違いの大変さだった、息子の子育て筆者のケースをお話しよう。定型発達児(娘)と発達障害児(息子)の両者を育ててみて思ったが、その子育ての大変さは、まさに桁違いだった。もちろん娘だって、成長の過程では、当然大変なこともあった。イライラして頭が沸騰しそうになったことだって、多々ある。でも、娘の怒りや泣きのツボはだいたい理解できたし、コミュニケーションもしっかり通じたので、私の理解の範囲内で対処することができた。ところが、息子の場合はまったく違った。指示が通らない。言葉の説明を理解してくれない。急に走り出したと思ったら、今度はテコでも動かないなど、動きが読めない。保育園ではイベント事が大の苦手で、隙あらば逃走。歯磨きやお医者さんの診察では毎回大暴れ…。何より困ったのは、コミュニケーションが通じないこと。変な言い方だが、言語も思考も違う異星人を相手にしているようで、本当にお手上げ状態であった(4歳過ぎた今では、ずいぶんマシになってくれたが)。■3歳で確定。「だから大変って言ったじゃん!」周囲に相談しても、「男の子なんてそんなもの」「上が女の子で楽だったんだよ~」などと言われ、なかなか理解してもらえなかった。だから、3歳で息子が自閉症スペクトラムと診断された時は、もちろんショックではあったが、同時に、「だから大変って言ったじゃん!」と、周囲にちょっと毒づきたいような気持ちも生まれた。今思うと、周囲は私が思い詰めないように、気を使ってくれていただけだろうに…。不健康な考え方に陥っていた当時は、ひねくれたとらえ方しかできなかった。 ■周囲にガードを張っていのは、私の方?息子は1歳半検診から疑いをかけられていたので、宙ぶらりんの期間が長かった分、私にとって診断は、腹をくくる良いきっかけになった。その頃には、この障害についてしっかり勉強して、一生向き合っていこう! という覚悟もできた。また、さまざまな専門書を読んで勉強するうちに、息子の特徴や対処法が少しずつわかるようになり、突飛な行動にも笑えるような余裕も出てきた。周囲にも、息子のことを説明しやすくなった。仲の良い園ママにはすでに話していたが、診断がおりるまでは、息子のことをクラス全体にどう説明したらいいのかわからなかった。保護者会で息子のことを説明した時はちょっと緊張したが、幸い、クラスのママたちからの理解も得られ、温かい言葉もかけてもらった。私の方も、長年抱えた秘密(?)をやっと言えたような気がしてとてもスッキリした。それまでは、保育園のイベントで息子が突飛な行動をするたびに、「他のお母さんにどう思われてるんだろう…」とビクビクしたり。お迎え時、他の子がお母さんと楽しそうにおしゃべりする姿を見るのが辛くて、園から逃げるように帰ったり。そんな日々の連続だった。だが、今にして思うと、周囲に対して変にガードを張っていたのは私の方で、私は、勝手に傷ついていただけだったのかもしれない。■自分の物差しだけに縛られない。意識して視野を広げることこうして振り返ってみると、一番辛かったのは、息子のことを周囲に話せず、ひとりで抱え込んでいた時期だった。そんな状況を変えてくれたのは、オープンにしたことと、やはり人との関わりであった。家族や両祖父母、療育の先生、取材で会った方々、そして、同じ悩みを持つお母さん仲間と繋がれたことはとても大きかった。発達障害の子育ては、子どもに手がかかる分、心も生活も余裕をなくし、周囲が見えにくくなってしまう。自分の偏った考えだけに浸食されて、それがすべてのように感じてしまいがちだ。でも、自分の物差しだけがすべて、なんてことは決してない。物事は、捉えようによって、どうにでも変わるし、世の中には変わった人(?)がいっぱいいて、いろんな考え方がある。発達障害の子育て中は、特に、自分とは違った考えを持つ人に会ったり、新しい考え方を学んだり、自分の視野を広げるという気持ちを、常に意識してもち続けた方が良いと思うのだ。今回の特集に関して、担当ディレクターからは「外からは『見えにくい障害』と言われる発達障害の子育ての苦労や、当事者のリアルな姿や声を伝えることで、少しでも誤解を解いていきたい」という、力強いメッセージをいただいた。また何か新しい発見があるかもしれないと、私も放送を心待ちにしている。・NHK「あさイチ」 シリーズ発達障害 「“ほかの子と違う?”子育ての悩み」 2017年7月24日(月)放送予定 ※内容は変更になる場合があります文:まちとこ出版社N【発達障害についての連載一覧】大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界(全4回)「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら(全9回)
2017年07月21日ある日突然、パニック障害を発症して出典 : 前回の記事で紹介したとおり、私はある日突然「パニック障害」になってしまいました。前触れなんて全然ありませんでした。電車の中で突如起こった、激しい動悸、吐き気、いてもたってもいられないほどのめまい、そして過呼吸発作。そのまま救急搬送されたその日から、私の生活は一変してしまったのです。私が生きる世界は、出来ないこと、行けない場所、怖い場所だらけになってしまって、これまで楽しかったいろんなことが、「怖いこと」に変わってしまいました。パニック障害は、激しい発作が起きていないときでも、心身に大きな負担がかかります。外の世界は怖いものばかりで、常に身体の変化に敏感になって身体がガチガチになっているのです。パニック障害が一番ひどかった時期、SNSなどに自分の写真を投稿すると、「なんか痩せました?」「やつれた?体調悪いの?」というようなコメントをたくさんもらいました。発作に翻弄され、疲れ果てていた私は、顔つきまでも変わっていたようでした。また、発作が起こる状況も、徐々に多様化してゆきました。ときには、階段を上ったり、ちょっと走ったりするだけで発作が起きてしまうこともあります。これは、運動をして心臓がドキドキしたり、呼吸が荒くなったりしてしまうと、身体が「パニック発作だ!」と勘違いして、臨戦態勢に入ってしまうためです。さらには、夏の暑さで発作が誘発されることもありました。暑い日というのは、ちょっと頭がくら~っとしたりするものですが、これを身体が「発作だ!」と間違って知覚してしまうのです。パニック障害になってから、私は暑さにことさらに弱くなりました。発作からの逃げ場のない状況を避けていればよかった初期と違い、このころには暑くても発作、運動をしても発作です。この地球上に私の逃げ場はどんどんなくなっていきます。そのうち、友達とお喋りして大笑いしたりするだけでも発作が出てくるようになりました。それがショックで、友達からの食事の誘いなども全て断るようになってしまったのです。こうして、日を重ねるごとに自分にできることが減っていき、最後は「家に閉じこもる」こと以外の選択肢が消えてしまったのでした。そうだった、できるところから少しずつだ!踏み出した回復への一歩出典 : もはや生きていることすらも辛く感じられたとき、私は医師に「認知行動療法」を薦められたのです。パニック障害の認知行動療法では、恐怖場面に直接臨み、「発作が起こらない」、あるいは「起こったとしても必ず落ちつく」ということを確認していくのだそうです。恐怖の対象から逃げれば逃げるほど不安が増すというパニック障害の悪循環を断ち、ある場面で条件反射のように発作が起こる反応を消去することを目的としています。重要なのは無理をしないことで、例えば電車に乗ることが怖ければ、最初は一駅だけ乗ってみる。それで大丈夫であれば、次の日はもう一駅乗ってみる。無理そうだと思ったら、一度休憩する。こうやって、少しずつ距離を伸ばしていくのです。最初は「電車に乗る」と考えただけで息が苦しくなりました。私は電車で発作を起こし救急搬送されたあの日から、それこそ「パブロフの犬」のように、電車に対して恐怖反応を示すようになっていたのです。そこで私はこう考えました。「電車に乗れた先に、ご褒美を設定しよう。どうしてもやりたかったことを、我慢せずにやってみよう!」そのとき、私にはどうしても見たかった映画がありましたが、パニック障害のためにずっと見に行けずにいました。映画館は、最寄りの駅から五駅ほど。さらに、私にとっては映画館も怖い場所でした。あの暗い空間に入った瞬間に、発作が起こってしまうのです。でも、平日の午前中なら、きっと映画館はガラガラのはず。発作が起きたら外に出ればいい!そうだった、発達障害の息子を育てながらいつも言っていたじゃないか。「できるところから少しずつ」私も、できるところから少しずつやっていけばいいんだ!私は勇気を振り絞って、駅に向かったのでした。パニック発作に向き合い、訪れた「クリア!」の瞬間出典 : 読者の皆さんの予測どおり、電車で5駅は遠い道のりでした。アロマを染み込ませたタオルで顔を覆って、リラックス音楽をガンガンかけて、とにかく気持ちを紛らわすためにありとあらゆることをやりました。しかし、電車の扉が閉まった瞬間に「そいつ」はやってきたのでした。「キ…キタ」「うううう、この感覚、ひえええええ」「倒れるっ倒れるっ」「もう帰ろう、ムリっムリっ!!!」頭の中はパニックに陥った自分の声でぐちゃぐちゃになっています。何度も諦めて電車を降りようとしましたが、「あともうちょっとで念願のあの映画が見られる」「きっとたどり着いて見ることができたら、自信になるだろう」と自分を励まし続けました。また、夫にお願いして常時連絡が取れるようにしておき、「発作きた!」「もう無理」「降りる~!!」などと辛い気持ちを送信し続けました。既読がつくたびに、ホッとする気持ち。そして、「頑張れ」「大丈夫」「君ならできる」という言葉が返ってくると、辛いけれど一人じゃないという気持ちになれました。そしてなによりも、これだけは自分に言い続けました。「パニック障害で死ぬことはない!」「たとえ発作が起こっても、10分もすれば必ずおさまる!」そして、発作と戦いながらとにかく気を付けていたこと。それは、「呼吸を整える」ということでした。パニック発作で怖いのは、過呼吸になってしまうことです。なったことがある方は分かると思うのですが、過呼吸ってびっくりするほど苦しいんです。私の場合、過呼吸で顔と手足まで痺れてしまい、手の指はこわばって変な方向に曲がってしまっていました。呼吸をし過ぎて辛いはずなのに、とにかく息が苦しくて、本当に空中をひっかきまわしながら空気を求めるような状態でした。私は心臓が激しく打ち鳴らされるのを感じながらも、冷静に自分に言い聞かせました。「過呼吸にさえならなければ、倒れることはない」発作で頭がめちゃくちゃな状態のなか、とにかく呼吸を整えることに集中しました。大きく1回息を吸って、10秒かけて吐く。これを繰り返すのです。そのうちに、ふと気づいたら、目的地の駅に着いていました。顔面は蒼白で、身体中が冷たい汗でぐっしょりになっていました。周囲から見たら、ちょっと心配な状態だったかもしれません。それでも私は、やり遂げた満足でいっぱいでした。降りた駅で空に向かってガッツポーズ。今でも忘れられない瞬間です。自分の中の「クリア!」を増やしていくために出典 : 映画館でも何度か小さな発作はありましたが、途中からは映画の内容に集中することができました。平日の午前中でお客さんが少なかったということも、リハビリとしては良い条件だったと思います。そして、なんと帰りの道中ではパニック発作を全く起こさずにいることができたのでした。そのときに、電車の窓から見えた空の青さを私は忘れることができません。パニック障害で一番つらかったころ、世界は色を失い、全ての景色が灰色に見えていたのでした。残念ながら、今でもたまに発作が起こることはあります。パニック障害は、一度発症してしまうと、長い付き合いになることが多いようです。その中で、私はパニック発作を怖がって、やりたいことを我慢することをやめました。会いたい友達がいれば、電車で会いにいくようにしました。参加したいイベントなどがあれば、閉塞空間でも頑張って出かけています。相手が理解してくれそうなときは、「実はパニック障害だから、途中で抜けることがあるかもしれない。そのときはごめんね。」と前もって言うようにしています。相手が分かっていてくれるというだけで、だいぶ気持ちが楽になるものです。「できることから少しずつ取り組んで、できることを増やして自信をつける」このことの大切さを教えてくれたのは、他でもない発達障害の息子です。息子と一緒に歩み続けた7年間が、パニック障害に苦しむ自分を救うヒントをくれたのでした。そしてもう一つ。「好きなことに取り組むこと」、最後はこれが回復への糸口になります。同じくパニック障害で長いこと苦しんでいた長嶋一茂さんも同じことを言っていました。私が行動療法の恐怖に立ち向かうことができたのは、どうしてもやりたいこと、好きなことを「やりたい」と強く思う気持ちでした。パニック障害をすぐに治すことのできる魔法は、残念ながらなかなかないようです。子育てと同じ、一歩一歩、できることをやっていくしかありません。その一歩一歩はとても辛いことなのですが、確実に前進している実感があります。だから今日も私は、できるところから一歩一歩、です。
2017年07月20日「知的障害者施設」とはどんな施設?受けられる支援・サービスはどんなものがあるの?出典 : 知的障害のある人を対象とした施設を指す言葉として、「知的障害者施設」という一般名詞がしばしば使われていますが、実は現在、法律や制度上では「知的障害者施設」という公的施設は存在しません。そのため「知的障害者施設」と聞いて、思い浮かべるイメージは人によってばらつきがあります。障害者施設は大きく「通所支援」と「入所支援」の2つに分けられます。前者は、施設に通いながら支援やサービスを受ける施設と、後者は、施設への一定期間の滞在が必要な施設です。また、一つの施設で複数の施設の機能を兼ねている場合もあります。この記事では、知的障害のある方が利用できる施設にはどんなものがあるのか、それぞれの施設で受けられる支援やサービスをご紹介します。まずは、国で障害者に対する支援を定めている法律とのつながりをご紹介します。「障害者総合支援法」の前身である「障害者自立支援法」の施行により、福祉サービスの内容や名称が変わりました。それまでは、障害の種類(身体障害、知的障害、精神障害)ごとに行われていた福祉サービスがひとつの福祉サービスに統一されたのです。現在では、知的障害のある方のみのための施設というものがあるわけではなく、障害者総合支援法で定められている「障害者」の方々のための施設とサービスが運用されています。これらの法律の改正により障害者施設の名称も変更になりましたが、以前からの名称を変更せずに「知的障害者」を施設名に使用している場合もあります。それぞれの施設で受けられるサービスの内容は、障害者総合支援法によって決められています。福祉サービスの詳細や手続きについては以下の記事をご覧ください。また、18歳未満の障害者児童を対象にした支援は児童福祉法によって定められています。児童福祉法では、障害のある子どもたちの健やかな発育を支えるためにさまざまな支援が定められています。どのような施設でどのような福祉サービスが受けられるのか、具体的にご紹介します。子どもを対象とする知的障害者施設出典 : ・児童発達支援センター/児童発達支援事業所主に未就学の障害のある子どもの発達や生活自立などを支援します。ソーシャルスキルトレーニングなどの療育を行う施設や、保育園や幼稚園のように遊びや学びの場としての機能のある施設もあります。お住まいの自治体によっても異なりますが、施設を利用できる条件に障害者手帳の有無は関係ない場合もあります。・放課後等デイサービス放課後等デイサービスとは、児童福祉法の中で定められている障害児通所支援のひとつです。種類は以下の2種類があります。小学生から高校生の就学児童が基本的な対象ですが、支援が継続して必要だと認められた場合は、20歳まで利用することができます。1.学習塾タイプ・・・学習面での支援を中心に行っている事業所もあります。2.預かりタイプ・・・学童保育のように、放課後の子どもに安心して楽しく過ごせる居場所を提供します。最近では、学習支援だけではなく、日常生活で必要になるソーシャルスキルなどを教える施設も増えてきました。放課後等デイサービスの中でも、実際に提供しているサービス内容に差がある場合もあります。お子さんが実際に通うかどうかを検討する際には、ぜひ一緒に施設に足を運んで、子どもの特性に合う施設かどうかを検討しましょう。さまざまな理由で保護が必要な障害児や、日常生活に関する障害児を対象に生活支援を行う施設が障害児入所施設です。知的障害に限らず、身体障害・精神障害・発達障害のある児童が対象になっています。さらに、この対象児童に手帳の有無は関係なく、児童相談所、医師等により療育の必要性が認められた児童が対象になります。障害者児入所施設には、医療型と福祉型の2種類があります。福祉型の施設では、保護、日常生活の指導、知識技能の付与に関する支援が受けることができ、医療型になるとそれらに、医師による治療が加わります。障害児支援について | 厚生労働省障害児入所支援 | 厚生労働省大人を対象とする知的障害者施設出典 : 大人を対象としている知的障害者施設で受けられる支援やサービスは大きく分けて2つです。1つ目は、食事や生活も含め自立した日常生活を送るために必要な訓練をうけることができる「訓練等給付」です。2つ目は施設に入所した際に主に夜間などに日常生活に関する支援や緊急の対応が必要になった場合に対応してもらえる「介護給付」があります。上記の2つの障害者福祉サービスのほかに、市町村にて障害者の方々の生活を支援・サポートを行う事業として、「地域生活支援事業」があります。この事業によって運営されている施設もあり、施設の名称や種類はさまざまです。いくつかのお支援やサービスを同じ施設は多機能型事業所と呼ばれています。施設名称から支援やサービスを判断することは難しいので、現在、自分に必要な支援やサービスを知ることが施設選びには重要になります。参考:厚生労働省サービスの体系・自立訓練(1)生活訓練障害者支援施設もしくは障害福祉サービス事業所などと呼ばれる施設で受けられる支援になります。入所施設を退所された方や、特別支援学校を卒業した方、継続した通所によって生活能力の向上のための支援が必要な方が対象になります。働くための第一歩をこのサービスで受けることが多いようです。簡単な作業やソーシャルスキルの練習などがあります。さらには、「自分らしい生活」を考えるためにヨガやダンスなどのプログラムを提供している施設もあります。自分にあった施設を選ぶことで、本人の自立につながるよりよい支援を受けることにつながります。(2)機能訓練知的障害と身体障害を合併している場合、リハビリなどの支援を受けることができます。それらの理学療法を含みながら本人の自立訓練を行うときには、この機能訓練を利用します。自宅で受けられる訪問サービスもあるので自身の症状にあわせてサービスを選ぶことができます。・地域活動支援センター職業訓練と地域との交流をメインとした施設がこの地域活動センターです。芸術品の作成などの文化的な創造活動などを行っている施設も多くあります。先ほど紹介した自立訓練や下記で紹介する就労支援を目的としているわけでなく、あくまでも相談支援やコミュニケーション活動を目的とした施設になります。・通所型生活介護自宅から通い、日中の入浴・排せつ・食事などの介護といった必要な日常生活上の支援や、創作的活動・生産活動の機会の提供のほか、身体機能や生活能力の向上のために必要な援助を行います。安定した生活を送るため、常時介護などの支援が必要な方を対象としており、障害支援区分が区分3以上(年齢が50歳以上の場合は、障害支援区分が区分2以上)に該当する場合利用できます。・日中一時支援普段、支援やサポートをしている方が何らかの理由で介助を行えなくなった場合に、一時的に預かってくれる支援があります。日中の時間を対象に行っているサービスです。年齢制限もなく、18歳以上でも利用することができます。詳しい受け入れ先の施設に関しては各市町村の窓口にお問い合わせください。参考:厚生労働省地域活動支援センターの概要参考:日中一時支援事業と児童デイサービス|厚生労働省・宿泊型自立訓練宿泊型自立訓練事業所は、障害者総合支援法に定められた自立訓練(生活訓練)の対象者のうち、日中、一般就労やほかの障害福祉サービスを利用している人を対象に、夜間の居住場所を提供します。この中には同じ敷地内の日中活動サービスを利用している人も含まれます。地域での自立した生活を目標に、食事や家事等の日常生活能力を向上するための訓練や、 日常生活に関する相談支援などを受けることができます。日中のサービスと併用すれば、昼夜を通して、自立に必要なさまざまなサポートを受けることができます。利用者ごとに、標準利用期間が決められていて、原則2年間(長期入院者等の場合は3年間)とされています。お住まいの市町村で利用者の現状に合わせて、施設の利用継続が可能かどうかが決められるので更新が必要になります。詳しくはお住まいの市町村の障害者福祉課などの窓口にお問い合わせください。・共同生活援助(グループホーム)日常生活に関する支援や訓練ではなく、入浴・食事などの介護や家事をしてもらいながら生活していく施設としてグループホームがあります。日中は地域の生活介護事業所を利用したり就労したりしながら、主に夜間の生活介護を受け、グループホームで暮らす人が多いようです。宿泊型自立訓練事業所と同じように、お住まいの市町村の障害者福祉課などの窓口にお問い合わせください。・施設入所支援主に夜間の生活介護の支援を行います。暮らしの場の提供、入浴、排せつ、食事、着替えなどの介助、食事の提供、生活等に関する相談、助言、健康管理などを行います。障害者総合支援法では日中の生活介護と別のサービスですが、同じ施設で生活介護、自立訓練または就労移行支援の対象者に対し、日中活動とあわせて、一体的に夜間のサービスを行う事業所が多いようです。・短期入所日中一時支援では日中のみでしたが、短期入所の場合は夜間でも必要な支援や介護を受けることができます。介護者の休息にもなる一面もあるので、様々な事情を踏まえた上で一度短期入所を利用することも可能です。参考:地域相談支援(地域移行支援・地域定着支援)の利用者数実績等 | 厚生労働省知的障害の方が受けられる仕事に関する支援には、本人の特性を生かすために職場に近い環境で自立訓練などを行ったり、職場を見つけ働き始めてからも周りの方からの理解を得るための支援が含まれています。就労支援の対象者は障害のある65歳未満の方で、就労を希望されている方になります。「障害者総合支援法」における就労支援は大きく分けて就労継続と就労移行の2つがあります。働くために必要な知識や能力を養ったり職場体験を行うのが就労移行支援です。就労移行支援を利用したけれども就労に繋がらなかった場合は、就労継続支援サービスを利用することによって、福祉事業所で仕事をすることができます。・就労移行支援事業所就労移行支援の利用者は、就労移行支援事業所に通所してサービスを利用します。そこでは、スタッフとともに個別の支援計画を作成し、働くために必要な知識・能力を身につけるトレーニングや、その人に合った職場探しのサポート、就労後の職場定着までのアフターケアなどを受けることができます。詳しくは以下の記事をご参照ください。・就労継続支援A型/B型事業就労継続支援A型とは支援を受けながら、施設と利用者で雇用契約を福祉作業所と結び働くことを指します。就労継続支援B型は、就労移行支援や就労継続支援A型の利用経験をした上で、年齢や体力の面で雇用が困難な方を対象としたサービスです。施設との雇用契約は結びませんが、生産性にこだわらず自分のペースで働くことができます。サービスの体系|厚生労働省それぞれの「知的障害者施設」に関する申請方法出典 : すべての施設において、市区町村に申請を行うことが必要です。受けたい支援に関する相談や申請に関する相談などを行える窓口として「障害者相談支援センター」が設置されている市区町村もあります。相談者の悩みに応じて支援計画を考えてもらうこともできるので、一人で悩まずに専門家に相談しましょう。障害者児対象の施設は以下の記事をご参照ください。その他の施設は障害者福祉サービスに含まれますので以下の記事をご参照ください。それぞれの「知的障害者施設」にかかる費用出典 : これまで紹介してきた施設は一定の金額を負担すれば、すべての必要な支援を受けることができます。年収によって負担する額は決められています。グループホームなどの特定の施設を利用する場合には負担額が変更になる場合もあるので、自身が利用したい施設とサービスにかかる費用をそれぞれの市町村の窓口で確認することをおすすめします。障害者の利用者負担|厚生労働省障害者福祉:障害児の利用者負担|厚生労働省まとめ出典 : 法律の改正によって変更された施設の名称が、世間一般には浸透していないことも多く、施設の名前から利用できるサービスを想像することが難しいこともあります。子どもの成長に合わせて、利用できる施設も変わりますし、必要になるサービスも変わっていきます。本人に必要な支援は医師からの診断などで知ることができますが、必要な支援を正しく行ってくれる施設を見つけることも重要になります。施設を見つける際には、本人がどんな支援やサービスを必要としているかを考え、お住まいの自治体の福祉担当窓口で受けられる支援・サービスを確認することをおすすめします。支援・サービスごとに施設がまとめられている場合が多いので探す手間が省けることもあるかと思います。実際に必要な支援を受けられる施設を探し、利用するまでの道のりは大変なときもあるかもしれません。周りの方や市町村の窓口にも相談しながらよりよい支援を見つけることにつなげていただければと思います。
2017年07月13日「正しい発達障害理解」を追求しつづける当事者たちの戦いUpload By 宇樹義子ここ数年、世間での発達障害についての認知は高まりつづけているように感じる。今年に入るとついにNHKが1年がかりの発達障害特集を開始し、当事者界隈はたいそうざわついた。NHKは「とにかく当事者の声を届けたい」という熱意を前面に出していたので、私も本気になった。特に第1弾のNHKスペシャル生放送時には、ブログで事前の情報記事を用意し、当日はTwitterで実況。後日、感想をやはりブログでまとめた。そもそもテレビが苦手な私が、仕事そっちのけでかじりつくようにテレビを見つめ、仲間といっしょに、放送される内容の正誤やニュアンスについてTwitterで意見する。「えっ? 正しくは『自閉症スペクトラム』だよねえ?」「これは誤解を招くからやめてほしいなあ…」「取り上げられた人たちばかりが当事者なわけではない。もっとこういうケースにもフォーカスを!」タイムライン上をいつ終わるともしれず流れ続ける、「もっと完璧な、正しい発達障害理解を!」という叫び。よく考えたらあたりまえだけど、発達障害者についてであろうがなかろうが、私が100%満足できる番組なんて世の中に存在するわけないんだし、仲間たちにとってもそれはそうだったと思う。私自身も皆も、どこか「どこでやめたらいいのか」「こうする代わりにどうしたらいいのか」をつかめずに困っているようにも思えた。「敵」と戦った日々と、「敵」と手をつなぐまでの日々Upload By 宇樹義子そこからの私は、いま振り返ってもずいぶん必死だったと思う。テレビやネットの発達障害特集の内容に誤りがあれば指摘し、親や当事者の不安につけ込むニセ医学を批判し、成人発達障害当事者の生きづらさを理解してくれない社会にブログで警鐘を鳴らし…そうやって毎日、戦っていた。「自分と同じような思いをする人たちを一人でも減らしたい」。先に述べた思いの通り、これまで発信してきたこと自体は後悔していない。だけど、そうして戦いつづけている間、いつもどこか虚しさのようなものを感じていた。…いまここで告白すると、この記事を書かせてもらっているLITALICO(りたりこ)も大嫌いだった。過去に、LITALICOが運営する就労移行支援「LITALICOワークス」を利用したことがある。結論としては、当時の私が納得できる支援は受けられず、私の心には大きな傷が残った。ここ「LITALICO発達ナビ」でも、サイト立ち上げ当初にライターに立候補したものの断られたことがある。保護者向けのコンテンツが多く、私たち成人発達障害当事者が無視されているような気がして、悔しかった。それで私はますます、LITALICOに負けるものかと、たったひとりでの「戦い」に必死になった。「絶対に発達ナビよりもいいコンテンツを作ってやる。彼らが見捨てた成人当事者の益となるコンテンツを」… そんな気持ちを原動力に猛然と仕事した。だけどそのうち、そんなやりかたも限界だと思った。きっかけは、NHKの発達障害特集だ。Upload By 宇樹義子私が必死にNHKの番組を実況しているとき、当然発達ナビも大きなリソースを注いで実況していた。今や発達ナビは、世間の発達障害者へのイメージを左右するような影響力と、それを実現できる経済的人的資源を持ったメディアに成長していた。発信するコンテンツも、大人の発達障害者をもカバーするようになってきており、質も日々上がってきている。私がずっと望んできた、発達障害者が一般の人たちに広く理解される大きなチャンス。私がこの期に及んで発達ナビに対してそっぽを向き続けるなんて、バカバカしいし不自然じゃないか。もうこんなことはやめよう…ある夜突然、発達ナビの編集長の鈴木さんに連絡をとった。そしていま、こうしてここで書いている。たったひとりで「発達障害者代表」の看板を背負う必要なんてない以上は、「いち成人発達障害当事者としての宇樹義子」のごくごく個人的な物語だ。けれど、私と同じように、自分が「マイノリティ」であることへの意識が大きくなりすぎて、かえって自分を追い詰めたり、苦しめたりしている発達障害当事者は少なくないんじゃないかと思う。だからこそ伝えたい。仮にあなたが発達障害当事者であったとしても、たったひとりで当事者全体を「代表」して戦う必要なんてないんだ、と。社会の発達障害への関心が高まったことはいいことなんだと思う。誰もが生きやすい社会のために当事者として声を上げること、誤った情報に対して批判を加えていくことにも、ある程度の範囲内であれば大きな意味がある。けれど、最近までの私がそうだったように、自分自身がその狂乱に飲み込まれ、もしかすると手をつなぐことができるかもしれなかった人たちを「敵」として、24時間戦闘状態に陥ってしまっては本末転倒だ。Upload By 宇樹義子誰かが何かの属性の看板を背負い、「お前はここが違うから仲間じゃない」「お前にわかってもらえるはずがない」などと声を枯らして叫びつづけることは、皮肉にもコミュニティをバラバラにしていってしまうことがある。なぜって私たちは、何かの属性を持つ者たちである前に、バラバラな違った個人の集まりだから。戦闘的になって違った属性を指摘しつづけていったら、最後には誰も残らなくなってしまう。たまねぎの「皮」を剥き続けたら最後には消えてしまうのと同じだ。言葉づかいの丁寧さの問題じゃない。発信に向かうときの心の態度の問題だ。私はこの点で、長いこと間違ったことをしていた、と思う。言葉は丁寧なものの、私は間違いなく「看板を背負って戦っていた」からだ。私がこよなく尊敬する精神科医・臨床心理士であり、日本におけるPTSD治療の第一人者である白川美也子先生の本がある。この本ではまず、トラウマを抱えた人は「3つのF」と呼ばれる症状を示すようになると説明される。・Fight(戦う)・Flight(逃げる)・Freeze(固まる)Fight(戦う)の項ではこんな説明がされている。私は上のくだりを読んだとき、ああ、これは私と仲間たちにそっくりだと思い、ひとしきり涙が止められなかった。そして、そのあとに出てくるこんなメッセージに、とても楽になった。やがて自分の苦しさをそっちのけにして、同じような被害に遭う人をなくすため、果敢に立ち上がり、戦い始めます。その戦いによって自分の身近にいる人を暴力や虐待から守ることができたとしても、世界にはたくさんの傷ついた女性や子どもたちがいて苦しんでいることに気づきます。戦いには終わりがありません。大切なことは、被害者にも加害者にも、そしてそれを傍観する人にもならない、三角形の3つの角の真ん中にしっかりと立つことなんだよ回復の過程において、あなたが誰かに過去のトラウマ体験を語ることだけが、誰かを救うメッセージになるのではありません。それを生き延びたあなたの身体の動きや声や、あなたの創る詩や奏でる音楽や描く絵が、人に何かを伝えます。あなたが生きているだけで本当に十分なのです。私たち発達障害者は、生きてきた中でたぶん、人よりも少し多くの傷を抱えてきた。だから、つい戦いに身を投じてしまうこともある。もちろん、それは本当に切実な情熱と願いのこもった行動だ。だけど、もしそれがつらいとか、虚しいとか、疲れたとか思う瞬間があるのなら… ときどき、ゴールがあまりに遠く感じられたり、ますますゴールから遠ざかっていくような気がするのなら…私は、あなたは、重たい戦士の鎧を脱いでもいいはずだ。Upload By 宇樹義子そして、どこかに傷を抱え、それをなんとか乗りこなしている「ひとりの人間」として、もっと自由に、軽やかに生きたとき、きっといつか、私やあなたが、そして仲間たちが願った「ゴール」が近づいてくるんだと思う。
2017年07月10日