阿川せんりさんの『厭世マニュアル』は、殻に閉じこもっていたヒロインが周囲の人と関わることで“ありのままの自分”を肯定できるようになる物語だ。安易な成長を描かない作風でデビュー時から注目を集めたが、最新刊『ウチらは悪くないのです。』もまた、何者かにならなきゃいけない、恋愛くらいしなくちゃいけない、とがんじがらめになっている人にエールを贈るような一冊だ。熱血じゃない青春だって楽しいんだ。元気になれるアンチ青春ストーリー。「小説やマンガでは、自分には何もないと悩む主人公が夢中になれる何かに出合って成長する物語が王道。でも、私の中には『もし何にも出合えなかったらどうするんだい?』という素朴な疑問があります」主人公は、これといった趣味や特技がない〈あさくら〉。美人なのにおしゃれや恋愛には興味なし。彼女の楽しみといえば、昔からの友人である〈うえぴ〉と、スタバでおしゃべりすることくらい。大学2年の選択必修科目のクラスで〈あさくら〉に話しかけてきた〈さわみー〉のお節介で、一度会っただけの〈にさか君〉とつきあうことになるのだが…。一見そつがなく思える〈さわみー〉や〈にさか君〉も、実は不器用な人。〈あさくら〉や〈うえぴ〉との意外な接点も見つかり、彼女たちのこじれた青春が笑いと涙を誘う。「大人になってから『学生時代に、もっと青春しておけばよかった』と言う人がいるけれど、そんなふうに記憶を上書きする必要はあるのかなと。友人と一緒だった他愛ない時間とかが『それなりに楽しかった』なら思い出上等。そんな青春があってもいいじゃないかと思うんです」ちなみに、小説家志望で文芸サークル所属、コツコツ作品を書き続けている〈うえぴ〉は、阿川さんの青春と大いに重なる存在だとか。「〈コシミズ〉のように批判してくる人もいたけれど、私の作品を『好きだ』と言ってくれる人もいました。あのころ、その言葉をもっと素直に信じればよかったなと。なので、〈うえぴ〉には、信じてがんばってもらおうと思いました」阿川さんの描く人物はみな、少しやっかいな人たちに見えるが、「個人的には、すごく変わった人たちだとは思っていません。このぐらいのめんどうくささを抱えているのが普通だし、よくいる人たちの物語を素直に書いたらこうなった、という感じですね(笑)」あがわ・せんり1988年、北海道生まれ。作家。’15年、野性時代フロンティア文学賞を受賞した『厭世マニュアル』でデビュー。『森見登美彦リクエスト! 美女と竹林のアンソロジー』(光文社)にも寄稿。『ウチらは悪くないのです。』小説家志望の親友〈うえぴ〉とスタバで話すのが楽しみな〈あさくら〉。ある日、〈さわみー〉からボランティアサークルに勧誘され…。新潮社1450円※『anan』2019年3月27日号より。写真・土佐麻理子(阿川さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年03月26日うどんやそば、おにぎり、お好み焼きなどの具材として使う天かす。調理方法がワンパターンになっていませんか? 今回は、そんな天かすを使ったレシピをご紹介します。天かすと梅干しで作る炊き込みご飯。材料を混ぜこんで炊くだけの、とっても簡単な調理工程で風味豊かなご飯ができあがり。天かすを入れることで、食感や味に深みを増してくれます。隠し味の昆布茶が風味のアクセントに。包丁を使わず、用意した具材を入れたらあとは炊飯器におまかせという簡単レシピなのに、見栄えもバッチリ! 忙しいママにとって嬉しいレシピです。ぜひレシピを参考にして、天かすを使った料理のレパートリーを増やしてみてくださいね!■天かす入り梅ご飯調理時間 1時間 1人分 282 Kcalレシピ制作:E・レシピ<材料 4人分>お米 2合 酒 大さじ2 昆布茶 小さじ1梅干し 2個天かす 大さじ6白ゴマ 小さじ1.5<下準備>・お米は水洗いし、ザルに上げる。<作り方>1、炊飯器に洗ったお米、酒、昆布茶、分量外の水を普通に炊く水量線まで加える。梅干しをのせて天かすを加え、スイッチを入れて普通に炊く。2、炊き上がったら10分蒸らし、梅干しの種を取る。全体にサックリと混ぜ合わせる。器によそい、白ゴマを振る。ヒント! しゃもじで炊飯器の周りを1周し、すき間をあけ、しゃもじを底に入れて持ち上げるようにご飯をほぐせば余分な水分が飛び、ご飯がべたつきません。 コツ・ポイント ・お米の洗い方。ボウルにお米を計量し、たっぷりの水を入れ、混ぜずにすぐに水を流します。ひたひたまで水を入れて両手でお米をすくい取り、すり合わせるように軽くお米とお米を何回かこすります。にごった水を流し、蛇口から水を勢いよく加え、白濁しなくなるまでこれを何度か繰り返してザルに上げます。最初に入れる水が最もお米が吸収しやすいので、より良質な水を使う事をおすすめします。 天かすはリーズナブルに手に入るのも魅力的。家計に優しい食材を使って、おいしいご飯が作れるなんて一石二鳥ですね!※炊飯器の機種によっては米の炊飯以外の使用を禁じているものもあります。詳しくは、取扱説明書をチェックしてください。
2019年03月13日原田ひ香さんの『DRY』。タイトルのこの一語に、物語のいくつもの鍵が込められている。この生き方しか知らないという女の言葉が重い。渾身の犯罪小説。執筆のきっかけは、ネットニュースで見た実在の事件だという。「加害者の娘は50代後半とかで、被害者の母親は70代。頭に血が上って衝動的に老親を刺してしまったというのは10代20代の子が起こすような未熟さを感じました。一方で、50にもなって親から些細なことでガミガミ言われたらきついだろうなぁと同情する部分もあったんです。それで妙に印象に残っていました」プロットをつめていく中で、加害者には娘がいて3世代の関係性を書くことや、家が袋小路のような閉鎖的な環境にあることなど、ディテールが決まっていった。不倫が原因で離婚した北沢藍は、事件を起こして収監されている母の孝子から、保釈を頼まれ、しぶしぶ力を貸してやる。金銭的な事情もあり、3世代同居を始めた藍だが、男にだらしない母やお金にうるさい祖母との生活は、想像以上に鬱憤がたまった。淀んだ空気が藍を蝕む。「そんな境遇もあって、藍は幼なじみの隣人・美代子と親しくなります。2代続きで介護をさせられていた美代子は、就職も結婚もできないまま40代になってしまった。美代子のようなヤングケアラーという存在に、私自身も関心がありました」やがて、藍は、美代子の家のおぞましい秘密を知ってしまう。「藍は美代子を同じ介護の問題を抱える友達と思えばこそ、踏み込みすぎないでいようという遠慮もします。そういう中で、藍が美代子の秘密に巻き込まれていくようにするにはどうしたらいいのか、自然な流れを作り出すのが難しかったですね」女性の貧困や介護など社会問題がモチーフになっているが、原田さんがつぶさに描くのは女性の心理だ。「本作は、先行の『ランチ酒』や『三千円の使いかた』のような作品と一見かけ離れているようですが、お金や家族の話という意味では地続きだと思っているんですね。藍や美代子が互いに関わる中で変わっていく、ギリギリを生きる女性たちのリアルにどこまで迫れるだろうと、『もっともっと』と編集さんに煽られるままに自分を鼓舞して(笑)ここまで書けた。できていなかったことができたような充足感はあります」『DRY』原田さんの小説らしく、つましい生活の中でもおいしい料理を工夫する藍や美代子。〈メンチカツの卵とじ〉などリメイク料理の描写も楽しい。光文社1600円はらだ・ひか1970年、神奈川県生まれ。シナリオライターとして活動後、2007年に「はじまらないティータイム」ですばる文学賞を受賞。『母親ウエスタン』『彼女の家計簿』など著書多数。※『anan』2019年2月27日号より。写真・土佐麻理子(原田さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年02月21日見た目は赤ちゃん、中身は有能なおっさん。部下たちのサポートを受けながらの武田本部長の日常を描いた、竹内佐千子さんの『赤ちゃん本部長』は、読まなきゃ損する傑作だ。ほんわかとした笑いに包みながらも、ジェンダーやセクシュアリティ、ハラスメントといった現代社会の問題に、切っ先鋭くモノ申している。社内での育児が前提なので、会社の仕様もそれに合わせて変化。「会社員生活をしたことがないため、社内の環境や上司部下の関係性などはほぼ想像です。でも私がイメージしていた“会社組織”は相当にホワイトだったみたいですね。『こんな会社で働きたい』とか『うちの上司に読ませたい』という読者の声に、私の方がびっくりでした。最初は社会的なメッセージを込めるつもりもなく、『大人が子どもになったら』という不思議な設定で描いたら面白そうだと思っただけなんですが」しかし、この設定の妙が功を奏す。無力で無垢な赤ちゃんの視点がフィルターとなり、凝り固まった社会通念や幅を利かせていた不寛容に気づかされるだけでなく、そうした空気が少しずつ変わっていくのが痛快だ。たとえば2巻では、結婚観や幸福観、ゲームなどのコンテンツについて前時代的な価値観を引きずっている営業二課の橘部長が登場。周囲の影響で、葛藤しながらも態度を軟化させていくさまが印象深い。一方、巻が進み、本部長の仰天のプライベートが明かされ始め、〈ザギンのチャンネーに会いたい〉と言うなどおっさん要素もましましに。「現実にも、おじさんって、赤ちゃんと似てませんか。妻や誰かにお世話してもらえないと生活できないような生態だったり、カツカレーのような脂っこいものが食べたいのに医者から止められていたり。食べられない理由は、『糖尿病だから』と『体が赤ちゃんだから』とで大きく違いますけど(笑)」赤ちゃん本部長のこれからが、気になってしかたがない!『赤ちゃん本部長』2朝起きたら赤ん坊になっていた47歳の武田本部長。愛妻家の坂井部長、ゲーマーとしての顔も持つ天野課長、実生活でもイクメンの平社員・西浦に世話され…。講談社700円たけうち・さちこマンガ家。東京都生まれ。2005年にデビュー。他の著作に『2DK』(既刊4巻)、『生きるために必要だから、イケメンに会いに行った。』などが。※『anan』2019年2月20日号より。写真・中島慶子取材、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年02月13日「カメ止め」(製作、公開開始は2017年)の愛称でブームを巻き起こした一本の映画『カメラを止めるな!』。その監督として一躍、時の人となった上田慎一郎さん。実は24歳で『ドーナツの穴の向こう側』という小説を処女出版していた。長らく絶版だったその作品が、著者あとがきを加えた新装版になって発売中。2018年破格の大ヒット映画の監督が書いた幻の処女出版が再刊行。物語は、18歳の女子高生・今井あやねの周辺に起きるちょっと不思議な出来事を追う形で進む。父親の死、母親との確執、恋や友情…。そんな現実を少しずらしてエンターテインメントに変える、上田さんらしいクリエイションが詰まった一冊だ。「10年以上前に書いたものなので、何もわかってないんだろうなと、かつての自分を軽く見ていたんです。でも再出版のために読み直してみたら、思ったよりずっといろいろ考えていたんだな、一行たりとも手を抜いてないな、と驚いたくらい」物語のカギになるのは〈トマンチキス〉〈炊飯器マラソン〉など思わず「何それ?」と引き込まれる言葉と短い解説。そこから連想されるイラストが添えられた、9つの章トビラだ。20代前半の上田さんが、親友や弟さんとオリジナルのポストカードを作り、手売りしていた頃に考えたものが本書の出発点になっている。「当時、アメブロに〈奇妙な辞書を創るブログ『あっちの世界の辞書』〉をやっていました(現在も閲覧可能)。この世界の理屈には一応合致するようなリアリティを持たせながら、どこまで変わった出来事にできるか。そのさじ加減は意識しました。あやねは、不条理を淡々と受け入れてしまわず、いちいちツッコむタイプ。読者と同じ目線なので、置いてけぼりにならずにこの奇妙さを楽しんでもらえると思います」加えて、上田さんのストレートな感情がほとばしるような表現によって、心を揺さぶられる箇所が数多く。「女子高生の声を借りて自分がしゃべっているみたいな状況が、むず痒くもありましたけれど、半分は自分がそう信じたくて書いたところもありましたね。(ペンライトで)〈あたしはその「不安」の顔を見ることができない〉とか〈世界がどうあろうと、あたしはあたしのやるべきことをやるだけだ〉とか」注目監督の頭の中をのぞき見る感覚。読んで、眺めて、楽しめる。上田慎一郎illustlation 上田悠二『ドーナツの穴の向こう側』23歳のとき短編小説「パンダレモン」を執筆。それを書き直す形で本書を完成させ、24歳で出版。その作品を、ほぼ手直しなしで再刊行。星海社1000円うえだ・しんいちろう1984年生まれ、滋賀県出身。映画監督。中学生の頃から自主映画を制作、高校卒業後も独学で映画を学ぶ。初の劇場用長編映画『カメラを止めるな!』が空前の大ヒットに。※『anan』2019年1月23日号より。写真・水野昭子(上田さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年01月19日三浦大知(31)が2月24日に東京・千代田区の国立劇場で開かれる「天皇陛下在位30年記念式典」にて、記念演奏すると発表された。三浦の国民的行事への参加に、ネットでは大きな反響を呼んでいる。各メディアによると今回三浦は、「歌声の響」を披露。天皇陛下が沖縄訪問時の思いを込めて作詞され、皇后陛下が作曲された楽曲だという。Twitterではファンからの驚きとともに、喜びの声が上がっている。《沖縄県出身の、MJに憧れて歌いはじめ、踊りはじめた小さな少年は、青年になってとうとう天皇陛下、皇后陛下の作られた楽曲を御本人達の前で歌い、舞い踊る事になりましたとさ。いや、すげえや》《天皇皇后両陛下はきっと、三浦大知くんの歌声が国民の心を少しでも和やかにしてくれるだろう、って。そんな風にお考えになっているんじゃないかと想像して今夜は眠りたいです》《驚きすぎて気持ちが成層圏を突破している》三浦は97年にパフォーマンスグループ・Folderのメンバーとしてデビュー。9歳にしてメインボーカルを務めていた。「当時から、その歌声はMISIAさん(40)といった数々の大物ミュージシャンから認められていました。ソロに転向してからも着実にステップアップし、17年には紅白歌合戦に初出場。昨年も出場し、30人のダンサーを引き連れたパフォーマンスで多くの視聴者を魅了しました。昨年12月にリリースした楽曲『Blizzard』のMVが、YouTubeで1,000万回再生を突破したばかり。そのタイミングでの今回の発表に、ファンは喜びもひとしおのようです」(音楽関係者)そのキャリアは20年以上。三浦はついに、国民的歌手としての階段を登りつめたようだ。
2019年01月17日三浦翔平(30)と桐谷美玲(29)夫妻が12月23日、都内のホテルで披露宴を行った。各スポーツ紙によると三浦はタキシード姿で、桐谷は白のウエディングドレス姿で登場。桐谷がキャスターを務めていた「NEWS ZERO」(日本テレビ系)をモチーフにしたVTRが流れるなど始終、和気あいあいとしていたという。「人望の厚いお2人ですから出席者も超豪華。佐藤健さん(29)や山田孝之さん(35)といった大活躍の俳優陣から、長谷部誠さん(34)や北島康介さん(36)といった一流アスリートも祝福していました」(ホテル関係者)各スポーツ紙によると、披露宴ではONE OK ROCK・Taka(30)が乾杯のあいさつをしていたという。Takaと三浦は、たびたび互いのSNSに登場。その仲はファンの間でもよく知られている。「山田親太朗さん(32)の紹介でTakaさんと三浦さんは出会ったそうで、今では親友同士。Takaさんは英語を猛勉強し、海外でも大活躍。そんな努力家なところが、三浦さんにとっても刺激となっているようです。Takaさんも2人の交際を側で見守ってきましたから、乾杯の挨拶ができて喜びもひとしおでしょうね」(芸能関係者)そんな関係が知られていることもあり、TwitterではTakaのファンからも《三浦翔平くんの結婚式の乾杯挨拶Takaってぇぇえええすばら》《Takaの乾杯のあいさつは心に響く言葉が沢山詰まってたんだろうな 改めておめでとうございます》と2人に祝福の声が上がっている。親友に見守られて、2人は新たな門出を迎えた――。
2018年12月24日連載時から大胆に改稿し、できあがった大長編『熱帯』は、森見登美彦さんご自身も“怪作”と言い切る、2018年の目玉と呼べる一冊だ。幻の本に魅入られた人々の「読む/書く」をめぐる冒険奇譚。作家の〈私〉は、ふと学生時代に出合った佐山尚一の『熱帯』という小説を思い出す。大切に読もうと思っていた〈私〉の元から忽然と消え、以来、図書館や古書店を探し歩いても見つからない謎の本。その奇書をめぐり、物語は進んでいく。「単行本化に取りかかるタイミングで『千一夜物語』を初めて読んでみたんですね。200話ほどしかなかった原型が、勝手に付け加えられて増えたり、バージョン違いが生まれたりと、成り立ちも含めて面白いと思ったんです。最初は、’80年代の京都を舞台に、作中作である『熱帯』の内容や誕生の経緯を書くのだろうと考えていたのですが、影響を受けてどんどん膨らみ、“謎の本”についてより深く考えることになりました」〈この本を最後まで読んだ人間はいない〉等、噂を聞けば聞くほど、『熱帯』についても、著者の佐山尚一についても、知りたくなると同時に、よくもこんな風変わりな物語を思いつくものだと、作家としての森見さんを、謎多き作家・佐山尚一に重ねてみたくなる。「彼は、この世界のどこかに穴があって、その向こう側に心惹かれるような人物ではあるので、そのメンタリティは僕自身と重なる部分かもしれません。実は、佐山尚一は平凡なようでいて、ネットなどで調べても、同姓同名の人が全然引っかからなかった名前なんです。自分が作り出したことで、初めてこの世に出てきた存在だと思うと興味深いですね」登場人物たちが、読書とは何かと考察する丁々発止も楽しい。突き詰めていく場面も出てくる。たとえば、同じ小説を読んでも人によって解釈はいろいろなのに、みな同じ一冊を読んでいるといえるのだろうか。「そもそも『熱帯』という魔術的な小説のことを書かなくてはいけない。それに重ねて、読書についてや、断片的な妄想が小説という形になっていく自分の小説が生まれてくる過程を、小説にしようとも考えていました。複雑に考えすぎて、納得できる形になるまで試行錯誤の連続。担当編集さんは、書き終わらなかった別バージョンの『熱帯』を山のようにお持ちです(笑)」もりみ・とみひこ1979年、奈良県生まれ。京都大学大学院農学研究科修士課程修了。2003年、『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞、’07年『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞を受賞。『熱帯』Amazonには佐山尚一の古書が用意され、作中の古書店「暴夜(アラビヤ)書房」プロジェクトも進行中。本好きの心をくすぐる仕掛けも。文藝春秋1700円※『anan』2018年12月19日号より。写真・土佐麻理子(森見さん)大嶋千尋(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年12月13日ののとはなというふたりの女性の、約30年にわたる絆を書簡形式で綴った『ののはな通信』が5月に。そして9月は、『愛なき世界』が。2018年は、三浦しをんさんの傑作長編が2冊刊行され、ファンにとっては当たり年だ。『愛なき世界』は、植物学の研究にいそしむ女子院生・本村紗英と料理人見習いの青年・藤丸陽太が淡い交流を深めていく恋愛小説といえるが、読みどころは“恋愛”だけにあらず。「東京大学大学院の塚谷裕一先生から『辞書作りが小説になるんだったら、きっと植物学の院生も小説になると思うんです』とお声がけをいただいたんです。研究室にお邪魔してみて感じたのは、先生や院生のみなさんの知りたい気持ちの強さです」作中に、本村がシロイヌナズナの細胞を光らせ、それを藤丸が顕微鏡でのぞき込む場面がある。「私も見せてもらったんですが、本当にキレイで宇宙みたいでした。ヒトも植物も同じ地球上でそれぞれが進化を遂げた結果、共通した仕組みも全然違うところも持っているけれど、同じように細胞は活動し、一生懸命生きている。そんな植物のことを彼らはもっと知りたいんだなとわかって、私はそんな彼らのことをもっと知りたくなったんです」本村がのめり込む葉っぱの発生遺伝子を調べる実験には、塚谷教授ら研究室のみなさんが全面的にバックアップ。研究者の日常なども参考にしたそう。好きな研究に打ち込みすぎて、本村と藤丸の恋模様など見えていない院生像も何だか好もしい。「でも、恋の空気に鈍感なのは、むしろ私なんですよ。周りは気がついているのに私だけわかっていなかったとか、よくあります(笑)」タイトルは、植物が〈愛なき世界〉を生きていることに由来する。「『植物には感情や思考がないのです』と言われたとき、はっとしたんですね。私たち人間はついつい人間の感覚に引き寄せて彼らの様子を解釈しようとしてしまうけれど、愛とか恋とか言わないと繁殖できない人間の方が、地球上では圧倒的少数派です。面白いのは、植物たちを研究している研究室の彼らは、めちゃめちゃ植物愛に溢れているということ。言葉で説明するならば、やはり世界は愛に溢れた場所だとしか言いようがないなぁと感じますね」『愛なき世界』青井秋さんの植物の挿画に、胞子や実験器具などが箔押しされた、うっとりするほど美しいカバーデザインにも注目!中央公論新社1600円みうら・しをん1976年、東京都生まれ。2006年、『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞、’12年、『舟を編む』で本屋大賞、’15 年、『あの家に暮らす四人の女』で織田作之助賞を受賞。※『anan』2018年11月28日号より。写真・土佐麻理子(三浦さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年11月26日一度読んだら、ずぶずぶとその魅力の沼にハマる平方イコルスンさんの世界。最新刊『うなじ保険』でも、既出作同様、女子高生や仲良しグループの休み時間や放課後、日常のちょっとした瞬間などが描かれている。しかし、最低限の状況説明しかされない中で、人物たちが放つキレのいいセリフがぴたりと決まり、よくある日常の印象ががらりと変わる。なかでも女子高生たちが古めかしい言葉遣いで小難しい理屈を振りかざす、セリフ回しの面白さは抜群だ。「セリフの内容については、自然と出てくるままに任せています。あとは、もっと無駄に語り続けたいところを自制したり、語らずに済ませたいところで説明せざるを得なかったり、というような工夫は必要になってきます。私が鑑賞する側になったときには、物語をその終わり方で評価しがちな性質なので、創作の際にもそこに重きを置いています」恋バナや思想ネタ、ホラーなど、テーマの守備範囲が広く、短い作品なのに展開が読めない。そんな独特の作品世界を彩るのが、〈山ぶり〉〈目も耳〉など内容とどこかズレた感覚で付けられたタイトルの妙だ。「題はほとんど毎回最後に決めていて、その作品の内容を通じて、一言であらわすとしたら何になるかということを考えて出します」手描きの斜線や横線、格子などを多用するタッチで、セリフの文字までが書き文字というのもすごい。「絵に関しては単純に、漫画を描き始めたときにスクリーントーンの使い方を知らなかったから、というところが大きいです。本当は線の少ない、すっきりした画面にも憧れがあるのですが、そもそも自身の画力や字にコンプレックスがあるため、拙い描線をごまかす意味でも線が多くなっているとか、ちょっといびつな字を書くとかが習い性になりました。吹き出しの配置については、どの作品もページ数が少なくて慌ただしいので、なるべく自分の思うようなテンポと順序で読んでもらえるように気をつけています」平方さんのマンガはよく「わからないけどすごくいい」と評される。「そういう評価がとても光栄というか、自分の目指しているものに近いと思われるので、嬉しいです。でも、具体的に言語化していただけるともっと嬉しいのも確かです」『うなじ保険』カップルを尾行調査することに情熱を傾ける女子高生・阿和&鳴見コンビの連作や、著者自身が特にお気に入りと語る「設置」「専用」は必読!白泉社800円©平方イコルスン/「楽園」/白泉社ひらかた・いこるすんマンガ家。同人活動を経て、2011年、白泉社『楽園 La Paradis』第5号で商業デビュー。’12年『成程』を刊行。『楽園』本誌&web増刊で連載中。※『anan』2018年11月28日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年11月22日グラビアアイドルの天木じゅんが11日、東京・新宿のブックファースト新宿店でカレンダー『天木じゅん 2019年カレンダー』(発売中 2,500円税抜き 発売元:トライエックス)の発売記念イベントを行った。アイドルグループ、仮面女子の元メンバーで現在はチャームポイントの95㎝のIカップバストを生かしたグラビアで大活躍の天木じゅん。そんな彼女の最新カレンダーは、B2サイズの8枚タイプで、自慢のIカップバストを大型ポスターで堪能できるものとなっている。胸元ガッツリのセクシー衣装を着用して取材に応じた天木は「前回のカレンダーは結構作り込んだモノでしたが、今回はグラビアの王道に仕上がり、年相応なモノになっていると思います。テーマがグラビアの"王道"なので、シンプルにやりました」と最新カレンダーを紹介。お気に入りを9~10月に掲載された透け感たっぷりのセクシーな白シャツを着用したカットをあげて「今回は色んな見せ方で胸を撮影しました。下乳が見えたりカップ付きのブラジャーで寄せたり三角ビキニがあったりしますが、このカットは一番開放的に脱いでいる感じだと思います。ちょっと本物の胸を見ている感じで撮ったので、一番エロいです」とセクシーアピールも、「透けちゃう感じだったので恥ずかしかったですね」と照れた。カレンダーのイベントということで、残り1カ月半となった2018年を振り返り、「今年は色んなお仕事をさせてもらいました。グラビアは相変わらずですが、お芝居のお仕事もさせてもらいましたのでバランスの良い1年だったと思います」と充実した表情。来る2019年は「グラビアも評価されてきたという感じなので、もっと皆さんに見てもらえるように撮り下ろしを増やし、最近変わったなと言われるようにしたいですね。お芝居も映画やドラマなど映像系に挑戦していきたいと思います」と意欲を見せた。また、最近ハマっているという麻雀についても言及。「来年はファンの方と麻雀イベントをやりたいですね」という天木に「麻雀の牌で隠すグラビアは?」と報道陣が提案すると「1個じゃ隠しきれない。3個で(笑)。いや、1個で大丈夫です!」と乗り気だった。
2018年11月11日ミランダ・ジュライの処女短編集『いちばんここに似合う人』が、岸本佐知子さん訳で話題をさらったのが8年前。最新作にしてミランダ初の長編となる『最初の悪い男』も、期待以上の、美しき出会いの物語だ。シェリルは、護身術エクササイズのDVDを販売するNPOの古参職員。43歳のイケてない独身女性だが、自分流の暮らし方ルール〈システム〉に則った日々はそれなりに快適らしい。だが、その自己完結した世界に、突如終わりがやって来る。上司夫妻の娘で20歳のクリーが、シェリルの家に転がり込んできたのだ。「シェリルは、ストレスがたまると喉に〈ヒステリー球〉ができるような凝り固まった人で、クリーは衛生観念ゼロで傍若無人な、絵に描いたようなビッチ。水と油のふたりは、最初は女性版『ファイト・クラブ』よろしく激しくぶつかり合います。しかし、フィジカルの権化ともいうべきクリーと同居するうちに、肉体や感情が自己と切り離されていたようなシェリルはそうした“生”の実感を取り戻す。それにつれて、ふたりの関係性もどんどん変わっていくんです」一見、クリーの強烈さに面食らうが、シェリルも妄想癖において負けてはいない。20以上年上のフィリップへの恋慕、運命の赤ん坊クベルコ ・ボンディとのテレパシーの会話、やがてクリーに対しても妄想の暴走が始まって…。「妄想って誰でもすると思うんですが、常軌を逸しすぎて人に言えないようなシェリルの妄想の数々にはとりわけ親近感を持ちました(笑)」シェリルの脳内世界の部分は、訳していてとても楽しかったそう。「赤の他人同士がつながる、というのは昔からミランダのアートの大きなテーマなんです。小説にせよ、映画にせよ、パフォーマンスにせよ、彼女の作品はつねに『人って、つながるって、生きるって、なんだろう』というところに向かっている気がするんですね。本書でも出会うはずのなかった人たちが出会い、何かが起きる。その先に、残ったものや残らなかったもの、変わったものや変わらなかったものが生まれて、それらを含めて人生は続いていく。そう語りかけられている気がするし、だからこそ最後に大きな感動を呼ぶのだと思います」『最初の悪い男』庭仕事が得意なリック、クリーの風変わりな両親カールとスーザン…。シェリルやクリーを取り巻く人々も、それぞれかなりクセが強い!新潮社2200円きしもと・さちこ翻訳家。ミランダ・ジュライ、リディア・デイヴィスらの作品の邦訳を手がける。エッセイストとしても評価が高く、2007年、『ねにもつタイプ』で講談社エッセイ賞を受賞。※『anan』2018年11月7日号より。写真・土佐麻理子(岸本さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年11月05日オーブンの天板って、どこに置いていますか?棚の中にしまうにしても大きいですし、使うときに物をかき分けて天板を取り出す、なんてことありませんか?そこで思い出したのがセリアのアイアンバー。セリアのアイアンバーだけでできる、オーブンの天板置き場をDIYをご紹介します。■ セリアのアイアンバーでつくるオーブンの天板置き場【事前チェック編】我が家の天板は、直接オーブンの上に置いちゃっていました。実はこれ、NGです。熱を逃がすために少しだけ、隙間を開けておかなければなりません。でも、しまうのが面倒で、ついつい出しっぱなしにしてしまうんですよね。収納場所として目をつけたのは、オーブンの上部にある隙間。大体25cmはあります。いくら放熱のためとはいえ、こんなにスペースは必要ないはずです。隙間があるから物を置きたくなる!ですので、あえてこのスペースを有効利用してみます。用意したのはセリアのアイアンバー。お世話になっている方も多いのではないでしょうか?今回使うのは、バーが横に3本あるタイプを2つ使います。ネジは8本必要です。オーブンの真上に取り付けてみます。バーを2本平行に取り付けて、天板が入る間隔を開け、バーの隙間に天板の持ち手を引っかけて収納しようと思います。ここで必ず事前に確認しておきたいことがあります。天板の両端が、アイアンバーに引っかかるかどうかはもちろんですが、アイアンバーの隙間に天板の奥行きが収まるかどうか。これによって、セリアのアイアンバーが使えるかどうかと、実際に天板を取り出す時の隙間の調整が必要かどうかが決まります。天板がアイアンバーにすっぽりと入るなら、天板が収まる最小のスペースで良いのですが、天板が入らない場合はアイアン同士を少し離すなどして、取り外す時に天板を傾けられるスペースを確保しなくてはなりません。■ 簡単10分!オーブンの天板(角皿)置き場を作る!【DIY編】設置位置はしっかり寸法を測ると一番正確で良いのですが……、今回はだいたいの位置で取り付けました。ここでお役立ちなのが養生テープ。いきなりネジを打つのは恐いので、養生テープを貼ったり剥がしたりしながらベストな位置を見定めます。これなら何度でもやり直しが可能ですよ。養生テープをつけたままネジを打ち始めても大丈夫です。ただし、ネジを完全に打ち込みきる前に外しましょう。そうしないと、ネジ頭と板の間にテープのカスが残ってしまいます。まずはアイアンバーを1つ貼り付けて、天板を置いて確認しながらスペースを確保。その後にもう一つのアイアンバーを取り付けると失敗しにくいですよ。これで完成です!ネジ打ちに慣れた人なら、10分ほどで出来ます。それではさっそく天板を収納してみましょう。どうでしょう?遠目に見ても、スッキリ収納できたと思いませんか?オーブンレンジの上にも、充分に放熱出来るだけのスペースが確保されています。天板は重みもありますし、強度が少し心配ですが、かなりガッチリとつきました。天板を置いた時のバランスをうまく設置できたなら、地震が起きても大丈夫そう。取り外すときはこんな感じ。天板の片側をアイアンの隙間に潜り込ませます。アイアンを壁際に寄せすぎてしまうと、天板が壁にぶつかるので注意が必要です。いかがでしたか?キッチンラックが木製で、クギ打ちできそうなお宅なら、簡単にセリアのアイアンを取り付けできます。天板のホコリが気になるならば、上段2つに天板を置くと、ホコリをかぶりにくくなりますよ。天板置き場にお困りでしたら、ぜひお試しください。
2018年10月21日映画化され、原作ともども大ヒットとなった『クレイジー・リッチ・アジアンズ』。その邦訳を担当した山縣みどりさんにお話を伺いました。究極に大切なのは、愛かお金か家族か。アジア版「SATC(セックス・アンド・ザ・シティ)」がいま熱い。15世紀後半、まだ欧米の統治下にあったマレーシアやシンガポールなど東南アジア各地に渡り、その地に根づいた中華系移民の末裔を「プラナカン」と呼ぶ。アジアの政財界で多大な影響力を発揮し、富を築いてきた一部の富裕層一族が、本書の主な登場人物たち。世界各国に高級物件を所有し、自家用ジェットで社交やチャリティに飛び回る。そんな家柄の御曹司とは知らずにニックと恋に落ちたレイチェルは、セレブ界のハードな洗礼を受けるはめに。映画化もされ、欧米ではアジア版「SATC」とも呼ばれ、原作ともども大ヒットとなった。その邦訳を担当したのが、山縣みどりさん。「ニックの一族は〈クレイジー・リッチ〉と呼ばれる格式高い名家です。富をひけらかす新興財閥とは一線を画す、アジア版ロスチャイルド家のような設定ですね。実は、著者のケビン・クワンはそうした血筋の出で、幼いころから自身が育った環境が創作のベースにあるそうです」軸になっているのは、レイチェルとニックによる王道のラブストーリー。ふたりは熱烈に愛し合っているが、ニックの母親のエレノアは、家柄を重んじるあまり、レイチェルにキツく当たる。「若いニックはエレノアとは違う考えの持ち主。ジェネレーションギャップや見えない階級の壁など、新旧の価値観の対立も読みどころです」アストリッドは、結婚をめぐり名門出身女性ならではの悩みを持ち、ペク・リンは、自立する道を突き進む。女性の描かれ方も多様だ。「共感できる脇役に注目して読むのも一興だと思います」また、作中に登場する固有名詞やその注釈などによって、彼らの絢爛豪華なライフスタイルや、愛用のブランドなどを知ることもできる。「レストランや高級ブランドなどの名前に、実在するものが頻出するので、これまであまり知ることのなかったプラナカンの超富裕層の生活を、リアルに感じてもらえるかも。ただし、ミシュランなどには載らない会員制クラブのレストランだとか、日本ではまだ紹介されたことがない知る人ぞ知る有名ブランドも多くて、翻訳する過程では、その確認やリサーチがひと苦労でしたね(笑)」実は本書は三部作になっているのだそう。続きも読みたい!『クレイジー・リッチ・アジアンズ』上・下ケビン・クワン 著山縣みどり 訳29歳のレイチェルは、学者仲間で、ハンサムで優しいニックと交際中。彼が桁外れにリッチな出自とは知らなかったがために、大騒動に。竹書房各1400円やまがた・みどりライター、翻訳家。小誌や『ELLE』などで記事の翻訳やインタビュー、映画評を手がける。著書に『恋と幸せのヒントがたくさんつまった恋愛STYLE BOOK』がある。※『anan』2018年10月24日号より。写真・土佐麻理子(山縣さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年10月20日スピリチュアル界のレジェンド山川紘矢さん、山川亜希子さん。その山川夫妻、心の旅30年。そこからお二人が見出した、幸せになるためにやるべきこととは?自分を大切に。人のためになることをする。そして人生を楽しむ!極意ともいえるメッセージに耳を傾けよう。夫妻が考える幸せになるためのアクション7つのうち、今回は4つをご紹介します。笑う「誰でも笑うと楽しくなります。健康にもなります」(紘矢さん)近年、笑いがもたらす健康効果への期待は高まるばかり。血糖値の上昇を抑える、免疫力を高めるなどの身体的な効果だけでなく、心の傷が癒される、ストレス耐性ができるなど精神面での効果もわかってきた。「エレベーターに乗り合わせた人と目が合って、にこっと笑顔を交わすだけでも、幸せな気分になりませんか?笑いヨガのように体を使うのもより効果があります。『やったーやったー、イエー!!』と腕も振り上げ、にっこり笑ってみましょう」(亜希子さん)信頼できるパートナーや仲間など、誰かと一緒に笑い合うことも、お二人は推奨する。人生を楽しむことを基点にすると、明るくて笑顔の多い人とつき合う方が自分もハッピーなはず。瞑想する世界的にも注目が集まっている、瞑想の幸福パワー。なぜ瞑想をするといい変化が表れるのか。「現代社会では、まったく音のない空間や時間帯というのは意外にないものです。瞑想の目的は、いわば脳内にそういう空の状態を作り出すこと。最初はいろいろな雑念などに惑わされますが、訓練すれば、頭の中が空白になる瞬間が生まれるはず。いつも忙しく切り替わっていた脳内がクリアになると、心の揺れ、ブレがなくなり、自分に自信が生まれてきます」(亜希子さん)世界には、さまざまな瞑想法があるが、自分に合ったものを取り入れてもいいし、自己流でもOKだ。「5分間目を閉じて、心静かに深い呼吸をするだけでもいい。これなら電車の中ででもできますね」(紘矢さん)集う「スピリチュアル的にいえば、ひとりでいる時間は心を磨くときで、寂しくないという考え方もあります。それでも人は、本当の孤独の中では幸せになれないものです。LINEやメール、SNSなどを使って繋がることもできる時代ですが、やはり直接集まる場を作って、お互いの笑顔を見ることが、心を満たしてくれると思います。私たち夫婦も、ヨガの会やダンスの会など仲間が集う場を定期的に作っていますが、その都度、いい仲間に囲まれている幸福を実感します」(紘矢さん)一緒に歌う。踊る。心を許せる友との繋がりは、助け合いや学び合い、情報交換の場にもなる。「若い人たちに広がるシェアという考え方は、すばらしいですね。いいものを共有し合う体験は、きっと心に刻まれると思います」(亜希子さん)極める好きなことにひたすら取り組めること以上に、幸せなことはない。「自分が本当に心惹かれるものを探し、それをどんどん深めていきましょう。料理でも写真でもスポーツでも、一生懸命にやっていれば楽しいし、仲間も集まってきます。得意なものができてくると、それは必ず世の中の役に立ちます。好きを極めることは、生きるすべてに繋がります」(紘矢さん)好奇心が長続きせず、次から次へと興味の対象が移ってしまうのであれば、それもよし。直感に従って進むうちに“これ”というものに出合える。「仕事を極めてみるのもいいでしょう。『事務職だし…』などと卑下せず、何を聞かれても答えられるくらいのプロフェッショナルになれば、自分がこの世で与えられた役割を果たしていると思えるはず」(亜希子さん)山川紘矢さん・山川亜希子さんこれまで多くの心の本を翻訳、日本に紹介してきたスピリチュアル界のレジェンド。セミナー、ダンスの会、読書会などイベントも精力的に行う。※『anan』2018年10月17日号より。イラスト・Margraph取材、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年10月16日『アウト・オン・ア・リム』『聖なる予言』など精神世界のベストセラーを翻訳し日本に紹介するかたわら、『引き寄せの極意』『受け入れの極意』などを執筆。30年以上にわたり、幸せになるためのメッセージを発信してきた山川紘矢さん、亜希子さんご夫妻。その集大成として見出した幸せになるための行動とは。「幸せになるには、何でも好きなことをすればいいんです。なかでも、歌って、踊って、笑って…。自分を楽しませ、自分のエネルギーを活性化してくれるこれらの行動を私たち夫婦は習慣にしていますが、それだけで心はいつも平和。体は健康。幸せな人生だと感じることができます」(紘矢さん)とはいえ、お二人も、自分の本当の気持ちを大切にし、好きなように生きていいのだと気づくまでには、時間がかかったそう。「そもそも日本人はマジメすぎて、最近まで、楽しむよりも“ねばならぬ”で生きている人が多かったように思います。そう考えると、いまの若者たちは義務と“快”とのバランスのとり方が上手だなと感心しますね。ボランティアなどを率先してやるのも、『人のためと言いつつ、実は自分が幸せになれる』と、無意識にわかっているからでしょうね」(亜希子さん)人のために何かをすると自尊心が満たされ、自信や落ち着きに繋がる。人との壁が取り払われ、これまで以上に、人とうまくつき合えるようになる。だが、自分をおろそかにしてまで、世のため人のために尽くすのは本末転倒。自分を大切にすることが、周囲を巻き込んで幸せになるための大前提だ。「幸せじゃない人は大抵、『自分が嫌い、自分を許せない』と、自分に対してとても厳しいですね。そういうタイプは他人にもきつく当たる。自分をもう少し褒めてあげれば、意識が変わって、人にも優しくなれますよ」(紘矢さん)亜希子さんも「誰かのために」を、難しく考えなくていいと語る。「例えば、いつも自分用に作っていたお弁当を、ついでに誰かのために作ってあげる。思わず相手が喜ぶ顔を想像しませんか?お裾分けしてあげたり、手紙を書いて送ったり小さなことでいい。人のためにしていることが、結局は自分の喜びでもあるとわかるはず」夫妻が考える幸せになるためのアクション7つのうち、今回は3つをご紹介。楽しむ幸せになるためのルールはとてもシンプルだと、紘矢さんは言う。「そのとき、その瞬間に、自分自身のたましいが『楽しい』『うれしい』と思うことをするだけです。その瞬間が続けば、自分は幸せで、周囲にも幸せな人ばかりが集まってきます」意識すべきなのは、“いまここ”に集中する、プレゼンスな生き方だ。「過去に囚われて生きたり、未来を憂えて生きたりしないこと。いまに生きる気持ちを大切にすれば、楽しむことが上手になります」(亜希子さん)例えば、食事をするときは五感をフルに使って味わい、仕事をしているときや誰かとおしゃべりしているときなどは、楽しいその時間に没頭する。「他人の評価に踊らされることも、自分を犠牲にしてまで何かをすることも、禁物です」(紘矢さん)歌う紘矢さん曰く、日本語は音の一つ一つに“言霊”が宿っているので、好きな歌を歌うだけで元気が出てくる。「それ以上におすすめしたいのが、『あわの歌』です。歌詞に自分流の節や曲をつけて、思うままに歌ってみてください。パワーのある歌詞を音読するだけでも神様が喜ぶので、開運に繋がります」「あわの歌」の言葉の並びなど歌詞を分解すると、日本語の成り立ちに関わっているという研究者もいるらしい。「歌は、祝詞や、マントラのような祈りの言葉に通じます。神社など聖なる場所で歌うのもいいですね。“ありがとう”という言葉は強いエネルギーを持っているのですが、紹介する2つの歌はそれ以上の高い波動を発しています。唱えるだけでその場のエネルギーが整っていくのです」(亜希子さん)踊る人前で踊るのは恥ずかしいと思っている人もいるかもしれないが、踊ることそのものが多幸感をもたらすことは、科学的にも証明されている。「どんな文明においても神と祭り事は結びついています。特に踊りは神様への奉納の意味もあるので、古代から人々は踊っていました」(亜希子さん)踊りというと、バレエや日舞など型があるものをイメージしがちだが、自由に体を動かして、リズムを取るだけでいい“自由ダンス”でも、十分に踊る楽しさは得られる。「踊っているうちに頭でっかちな状態から解放され、無心になります。すると、自分が囚われていた思い込みが何だったのかなど、多くの気づきが生まれます。モヤモヤが取れれば心が開き、自由になれる。踊ることは、幸せになるための端的な方法です」(紘矢さん)山川紘矢さん・山川亜希子さんこれまで多くの心の本を翻訳、日本に紹介してきたスピリチュアル界のレジェンド。セミナー、ダンスの会、読書会などイベントも精力的に行う。※『anan』2018年10月17日号より。イラスト・Margraph取材、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年10月14日妊娠出産の光と影を描いて反響を呼んだ『透明なゆりかご』。その著者である沖田×華さんの新刊『お別れホスピタル』は、終(つい)の住処(すみか)としての終末期医療がテーマだ。またも、命とは何か、人生とは何か、を考えさせる力作と、早くも話題に。「知り合いのナースをはじめ、いろんな方から、終の住処となった病棟で繰り広げられる、患者さんたちの個性の強いエピソードを聞いていたので、以前から描いてみたいと考えていました。患者さんそれぞれの“人生の最期を、この病院で迎えることになったわけ”を描けば、その人の人生のドラマが浮かび上がってくるのではないかと思ったんです」余命わずかなのに、死んでいくとは思えないようなパワフルな患者さんがいたり、家族と和解できないままお別れのときを迎える患者さんがいたり…。一話一話がリアルで、読む側の死生観をも揺さぶってくる。「私自身は終末期病棟で働いた経験こそありませんが、やはり看護師経験があることは描く上で大きいですね。そのベースがあるから、院内でこういうことはあり得るだろう、こんなことは起きないだろうといった、エピソードやディテールに対する価値判断ができるのだと思います」本作のヒロイン・辺見さんが働く△×病院の別館には、回復が見込めない患者ばかりがいる。〈陰では“ゴミ捨て場”と呼ばれている〉という一文は衝撃的だ。「実際にナースの知り合いから聞いた言葉です。強い印象が残っていて、作中で使いました」その辺見さんは、以前もターミナルケアを行う病院で働いていたらしいことがわかる。「『透明な~』のときより主人公の年齢を上げて、中堅看護師にしたのは、それなりのスキルや経験を持った看護師ならではの悩みや葛藤、人間関係を描きたかったからです。『結婚や人生をどうするか。家族との関係をどうするか』といった、辺見さんくらいの年ごろの女性が持つであろう漠然とした将来の不安なども、回が進めば描きたいですね。また、辺見さんは“自立したナース”という設定なので、働く女性としての理想的なあり方も見せていければ…と考えています」『お別れホスピタル』彼氏も親友もいないけど、ちくわとたまごという愛猫2匹に癒されて、日々がんばっている32歳の中堅看護師・辺見さん。看取りの現場で起きていることは…。小学館591円©沖田×華/小学館おきた・ばっかマンガ家。富山県出身。自身の発達障害を題材にした作品を発表、多くの読者の支持を得る。本作のほか「こんなに毎日やらかしてます。」「透明なゆりかご」を連載中。※『anan』2018年10月17日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年10月11日2016~’17年に、立て続けにエリート大学生らによる性暴力事件が報道されたのを覚えているだろうか。姫野カオルコさんの『彼女は頭が悪いから』は、そんな暴行事件のひとつ、東大生による集団わいせつ事件に着想を得て書かれた。読者自身の倫理観や価値観を映し出す、恐るべきミラー小説。「最初にラジオのニュースで聞いたときから、直感的にこれまで見聞きしてきた事件とはどこか違うと違和感を覚えました」姫野さんは、自分なりに報道等で事件を調べるとともに、裁判の傍聴にも出向いた。同じくこの事件について取材を重ねていたフリーライターの高橋ユキさんから話を聞いたりもしたという。結局、取材開始から出版まで、2年近くを要した。「事件そのものは、すでに法廷で裁かれており、細かい事情まで知らない私があれこれ言うことではありません。性衝動では説明できないような事件が起きたという結果の報道から、こうであったかもしれないという、自分にも多くの人の中にもある醜さを考えたいと思いました」のちに被害者となる神立美咲は、横浜の平凡な家庭で育ち、普通の女子大に進学した。加害者となる竹内つばさは、東京の一等地の公務員宿舎に住まいがあるような家庭で何不自由なく成長し、東大生となった。「私なりの調査から推測した女性像、男性像です。美咲は『ま、いっか』とその場の空気に流されてしまう女性で、つばさは東大ブランドを万能だと勘違いしているような男性」物語のほとんどは、美咲やつばさがどうやって育ってきたかに割かれており、それがわいせつ事件の背後に潜む、現代社会や市井の人々の歪んだ倫理観や価値観を際立たせる。「この作品に出てくるのは、加害者もその家族もSNSユーザーもイヤな人たちばかり。その中の誰に、どんな物言いに嫌悪感を覚えるかで、自分がどういう人間かが見えてきます。見たくないのに、できてしまったおできは鏡で見ずにはいられないですよね。そんなミラー小説と呼べるような作品になりました」問題作にふさわしいエンディングは、最初から決めていたのだろうか。「展開も含め、作者の意図が介在する余地がなかったですね。登場人物たちがみな自分で語りだし、行動し……、私はそれをただ書き留めていただけのような気がします」姫野カオルコ『彼女は頭が悪いから』カバー絵に、身分格差のある悲劇的な恋愛を描いたといわれるジョン・エヴァレット・ミレイの「木こりの娘」が使われているのも印象的。文藝春秋1750円ひめの・かおるこ1958年、滋賀県生まれ。2014年、『昭和の犬』で直木賞受賞。エッセイにも卓抜した才能を発揮。著作に『近所の犬』『純喫茶』ほか。※『anan』2018年10月3日号より。写真・大嶋千尋インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年09月27日初老に差しかかった個性派俳優・海馬五郎は、フランスの一風変わった文化賞の授賞式に出席するため、パリ行きを決意。それがトホホな道行きになっていく松尾スズキさんの『もう「はい」としか言えない』。同じく海馬五郎の語りで、幼少時より自意識でがんじがらめになっていた自らの生い立ちをたどる「神様ノイローゼ」。松尾ワールドにどっぷり浸る快感!“本人成分たっぷり”の2編を収録。読み進めるうちに、じわじわ気づくはずだ。「これ、かなり私小説的なんじゃ?」。松尾スズキさんも「僕の分身みたいな存在」と認める海馬五郎を主人公に据えた2編をカップリング。最新刊『もう「はい」としか言えない』が面白いのなんの。「『少年水死体事件』と名づけて新聞連載していた随筆にフィクションを加味して書き直したのが『神様ノイローゼ』。自意識と妄想でこんがらがっていた子ども時代の自分の話です。いままでインタビューなどでもしゃべってきたことなんですが、一度体系づけてまとめておこうと思ったんですね。もうこれを読んで、わかってくれと。僕という人間のマニュアルです」末恐ろしいほどシニカルで、冷めた思考の五郎少年。子どもが苦手だという松尾さんだが、作中に見る、あんな記憶があればさもありなん。「あいつらは自由にやってるくせに、いざ攻撃されると子どもという鎧に逃げ込むんですよ。僕もそういうガキでした(笑)」表題作もまた、松尾さんに起きた実際のエピソードや、周囲から聞いたリアルな悩みを投入してできた作品だという。道に迷いやすいという五郎のキャラもご本人と同じらしい。「でも迷ってる時間って自由だなと思うんですね。自分がどこにいるのかもわからずさまよえば、誰にも捕まえられない。究極の自由でしょう。僕が表現をやっているのも、結局は自由になりたいからだと思います。現実に対して感じている違和感を笑いに変えて、既成の価値観から逃れたい。僕の小説はドタバタしていると評されることが多いけれど、僕の中ではそれがリアルなので、そう言われるのは心外なんですよ」息苦しいルールを押し付けられていた五郎は逡巡の末、自由欲しさに、通訳を同行させるならと苦手な外国行きを承諾。しかし通訳となる斎藤聖の紹介者が、彼を〈少し新しいタイプの人間〉と説明していたわけを、五郎は行く先々で味わうことになる。「日仏ハーフの聖君が出てきた途端に、五郎がこの子によってもっと混乱に陥れられることがわかって、話に弾みがついてしまいました(笑)」自由に焦がれに焦がれた先で五郎を待っていた事態を見届けてほしい。『もう「はい」としか言えない』 妻に浮気がバレた海馬五郎。離婚回避のための誓約に汲々としていた彼は、わらにもすがる気持ちで「エドゥアール・クレスト賞」の授賞式へ旅立つ。表題作が3度めの芥川賞ノミネートとなる。文藝春秋1450円まつお・すずき1962年生まれ、福岡県出身。今年、旗揚げから30周年を迎えた「大人計画」主宰。12/18~SPIRALで「30祭」開催。作家、演出家、俳優、映画監督とマルチに活躍。※『anan』2018年9月5日号より。写真・土佐麻理子(松尾さん)大嶋千尋(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年09月02日セックスは誰からも教わらないし、誰に見せるものでもない。そもそも正解がわからない。だからこそ、思い込みや誤解、コンプレックスや不満、焦燥感などがあふれている。二村ヒトシさんは、AV監督でありながら、女性の琴線に触れる恋愛論を発信。二村さんが語る、いいセックスをするために必要なこととは。いいセックスをするためには、パートナーと“共犯関係”を築くべきだと、僕は思います。めくるめくセックスに憧れる人は多い。ですが時に女性は、愛させるため、あるいは愛してもらっていることを確認するために、セックスを使ってしまうことがあります(男性にもそういう人はいますが、もっと凡庸な“自分がモテることを証明するために、たくさん女性を口説いてただヤルだけの男”もいます)。そういう人たちは、じつはセックス以外の目的のためにセックスをしている。でも、カラダや社会的スペックや表面的な優しさをエサにして、恋愛ゲームの勝ち負けにこだわったり、モテや交際や結婚という“承認”のためにするセックスには、最良のオーガズムは訪れません。セックスが楽しいのは、セックスが“やばいこと”だからです。パートナーと密室で行う悪徳の儀式だから、最高の興奮を味わえる。でもそのことに罪悪感を抱いてはいけない。だから愛する相手との共犯意識が必要なんです。浮気や不倫を勧めてるわけじゃありませんよ(笑)。ただ、結婚したり周囲公認の恋人となって、セックスが悪いことじゃなくなると、ドキドキもなくなり、本来の甘美な背徳感が失われてしまうでしょう?世間から憧れられるキラキラなカップルが、じつはセックスレスという現象はとても多いんです。けれど、同じ一人の“愛するパートナー”と豊かなセックスをし続ける方法はあります。社会的な体面を忘れて、あなたと彼だけの個人的な、お互いが満たされるような欲望に溺れることです。男は案外、いいセックスは社会的なものではないということをわかっています。というのも僕らはオナニーするとき、自分には隠されたレイプ願望があるとか、逆にエロいお姉さんから誘惑されたいとか、興奮するオカズによって自分の欲望を具体的に知ることになるから。女性の中にもそれを知ってる人はいるけれど、「オラオラ系の男に強引にされるのがいい」とか「彼を感じまくらせてみたい」とか妄想することはあっても、そんな欲求を恥ずかしがりながらパートナーにちゃんと伝えられる女性は(とくに若い女性には)少ない。それはたぶん親から受けた「女の子は性に対して真面目じゃなきゃいけない、奥手じゃないといけない」という呪いのせい。その呪いが、女性にとっても“自分を解放できる時間”であるべきセックスを、中途半端なものにしているんです。そんな時間を持てるからこそ日常を続けていけるのに。社会の通念として、女性は受け身な性です。その分、女性は自分の欲望に向かい合わずに成長し、積極的になろうとしても、女性として許される範囲の「まともさ」を志向がちです。しかし人間がセックスに求めているのは、“無我”=個がなくなることです。あなたと私しかいない場所で、蕩(とろ)けて、いまだけの存在になる。「変性意識状態」と呼ばれる、エゴのコントロールが利かなくなるような一種のトランス状態です。どちらかが一方的に奉仕するのではなく、ふたりが溶けあって、あなたの“やりたいこと”が彼の“してほしいこと”になり、彼の欲望があなたの欲望になる。それがマッチングです。性愛の快楽は、手に手を取って共犯となり一緒に社会の外に出られるふたりにしか得られないのです。にむら・ひとし1964年、東京都生まれ。著書・共著に『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』(イースト・プレス)、『オトコのカラダはキモチいい』(角川文庫)、『どうすれば愛しあえるの幸せな性愛のヒント』(KKベストセラーズ)ほか多数。※『anan』2018年8月15・22日号より。インタビュー、文・三浦天紗子写真・Getty Images(by anan編集部)
2018年08月19日朝吹真理子さん7年ぶりの新刊だ。「『きことわ』を書き終わって、次回作の打ち合わせをするときには、『TIMELESS』という言葉はもう浮かんでいました。同時に、酒井抱一の『秋草鶉図』の中に不思議な距離感で並んでいる男女のイメージもあったのですが。そこがどこなのか、いつのことなのかがわからない。自分で紡いだ言葉を何度も読むことにより、次の1行が押し出されていく感覚で小説を書いているので、3~4行書いては戻って書き直すの繰り返し。6年そんな感じでした」誰かを愛しいと思ったことのない女性〈うみ〉は、高校の元同級生で被爆者の子孫であることを恐れている〈アミ〉と、恋愛感情も性的な関係もないままに結婚する。やがてふたりは交配し、生まれてきた子どもをアオと名付けた。その後アミは姿を消す。アオは、うみや祖母の芽衣子、血のつながらない姉のこよみ、うみや芽衣子の仕事関係の知り合いで奈良に住む桃さんや初子さんらと交流しながら17歳になっていた。江戸時代に江姫が火葬された場所から、南海トラフ地震が起きた2035年まで、浮かび上がっては沈んでいく、たくさんの人生と記憶と出来事。その物語構造は、朝吹さんが好きだという俵屋宗達の水墨画「蓮池水禽図」のイメージと重なる。「蓮の花が咲いて枯れるまでの時間の流れ、つまり違う時間に起きた場面を、同じ絵の空間の中に配置する“異時同図法”という手法で描かれているんです」2部構成をとる本書は、前半はうみの、後半はアオの語りで進む。風変わりな家族のサーガのようでいて、むしろ実に人間的な、温かな寄り添い合いにも見えるのだ。「うみは現代社会のルールでは薄情に映るかもしれませんが、人間の縁を血縁だとかでは縛らない人。生まれ変わるならクラゲになりたいと言ううみの心情を私なりに察すると(笑)、こんな家族のかたちも自然な流れだったように思うんです。クラゲは自分の力で泳ぐのではなく大きい海流に乗って漂うだけ。なんとなく吹き寄せられて集まり、また離れてもいい。その流れの中で交配の時期なら生殖し、個体としてはいずれ死ぬ。それはクラゲに限らず、やわらかな肉体をもった生き物の“ほがらかな宿命”という気がするんです」『TIMELESS』小説は、自分の中から湧き上がる感情やテーマを探すというより「これまで作られてきた芸術作品への応答のような気持ち」で書く、と朝吹さん。新潮社1500円あさぶき・まりこ作家。2011年「きことわ」で芥川賞受賞。エルメスの展覧会と連動し、物語「彼女と」を書き下ろす。ご希望の方は全国のエルメスブティックへ。なくなり次第終了。※『anan』2018年8月15・22日号より。写真・土佐麻理子(朝吹さん)大嶋千尋(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年08月17日サッカーJ2・横浜FCのカズこと三浦知良(51)、その妻でタレントの三浦りさ子(50)が8月2日に自身のブログで結婚25年目の「銀婚式」を迎えたと報告した。「もともと、ブラジルのプロリーグ在籍時のカズさんがりさ子さんのグラビア写真を見てひと目惚れ。人づてに電話番号をゲットし、Jリーグ元年の93年8月1日に都内の教会で挙式をあげました」(サッカー担当記者)りさ子はブログで「昨日は結婚記念日でしたしかも25周年!銀婚式!!」と報告。カズがチームの若手選手たちから祝われた写真をアップし、〈その子達と同じ練習を続けているのが凄いです〉と、いまだに現役を続ける夫をたたえた。また〈主人も現役サッカー選手で銀婚式迎えてる人、なかなかいないんじゃないか?と〉とカズの言葉を明かし、〈確かに!!笑〉と納得。これまでの結婚生活を振り返り〈25年、山あり谷あり子育てしながら色々ありましたが、子供達も大きくなり最近は大人だけの食事会にも夫婦で参加出きたりとまた別の幸せ楽しみを感じられてます〉としみじみ。今後について〈次は金婚式の50年?健康でいられるよう頑張ります〉とつづった。「ブログでもつづっているように、結婚生活はまさに『山あり谷あり』でした。結婚数年後にはカズとの別居報道が流れ、何度も離婚危機が報じられてきました。またカズが1人で夜の店を訪れたことが報じられるなどしたため“仮面夫婦”と言われたことも。しかしそうした周囲の雑音に惑わされることなく、りさ子さんは円満な家庭を守り続けてきたのです。今回、ブログには2人の子供とカズとの4ショット写真をアップしていましたが、非常に家族仲が良さそうでした。25年間紆余曲折あったからこそ、家族の絆はより強固なものになっているようです」(芸能記者)カズはいまだに現役を続けられていられるのも、そうした妻の献身があればこそのようだ。
2018年08月02日コミックエッセイ『離婚してもいいですか?翔子の場合』を描いたイラストレーター、野原広子さんにお話を伺いました。「離婚」の2文字を胸に秘めて結婚を続けている妻は、きっと多い。夫への不満は募るばかり。でも子どものことを思えば、離婚も簡単ではない。結婚生活の堂々巡りを描いて反響を呼んだ、野原広子さんの『離婚してもいいですか?』。その続編に当たる本書もまた、「結婚って、幸福って、何だろう」と考えさせる、共感必至のコミックエッセイだ。シリーズの始まりは、雑誌『レタスクラブ』の編集長からの「離婚をテーマにした、モヤモヤと答えのないものを描いてみませんか」という提案だったそう。「周囲を見渡しても、話を聞いてみても、多くの奥さんたちが『離婚したい』と思っていることを知りました。けれど、踏み出しているかといえばそうでもない。『3組に1組が離婚する』といわれる時代ですが、実際には翔子のように、離婚を考えても踏み出さない、踏み出せない人は、離婚した人よりずっと多いのではないかと思ったんですね」妻に作ってもらったごはんに、能天気に点数を付け、家では何もしない夫。専業主婦の翔子に対し、「翔子さんなんてラクしてるじゃない」と言う共働きの義姉。無神経な物言いで翔子を追い詰めていく、そんな無自覚さがリアルだ。「『聞いて聞いて』という人が本当に多くて、ネタには困りませんでしたね。むしろ、翔子に使ったネタはもっと闇が深くて、少し柔らかくしたくらいです」離婚に後ろ向きだった翔子だが、心療内科の医師の言葉で力を得たことが、その後の翔子を変えていく。「翔子のパート先の同僚が、『怒っていいんですよ』という弁護士さんの言葉に背中を押されたエピソードは実話。同僚は怒ることすらしなくなってしまっている状態で、その自覚さえ失ってました。第三者からの冷静な言葉に背中を押されるのは、大きな意味があると感じました」翔子の最後の選択。このラストには賛否両論あるかもしれないが、「結果として翔子が自分自身で決めたことなので、不幸な選択ではないと思っているんです。この本を読んでくれた読者が、自分の心を見つめて『あれっ、もしや私も?』と気づいてくれたらうれしいです」『離婚してもいいですか?翔子の場合』 専業主婦の翔子は、夫が大嫌い。けれど毎日夫の好物を献立に入れる。不満を押し込め続ける結婚生活の行方は?雑誌連載に描き下ろしを加え書籍化。KADOKAWA1000円©野原広子/KADOKAWAのはら・ひろこイラストレーター。神奈川県生まれ。出産を機にフリーのイラストレーターになり、『娘が学校に行きません』(KADOKAWA)で、コミックエッセイデビューを飾る。※『anan』2018年8月1日号より。写真・大嶋千尋インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年07月28日俳優の三浦翔平と女優の桐谷美玲が、結婚を発表!三浦さんの公式ブログには、桐谷さんとの連名でコメントが発表されている。三浦さんの7月26日付けのブログには「ご報告」と題し、「この度、私たち三浦翔平と桐谷美玲は入籍したことをご報告させていただきます」とのコメントが。2人の出会いは2016年7月期に放送されたフジテレビ月9ドラマ「好きな人がいること」での共演だったが、「仕事仲間として同じ時間を過ごすうちに、お互いの人柄に惹かれ、結婚を意識したおつき合いをするようになりました」と交際について言及。「互いに自分にないものを沢山もっている2人なので、これから起こるであろう苦労や困難も、2人で補い助け合いながら乗り越えていこうと思います。そして、私たちらしく、いつまでもくだらないことで笑っていられるような家庭を築いていけたらと思います」と2人での新生活について語り、「仕事も今まで以上に邁進して参りますので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致します」と報告。文末には直筆による三浦さん、桐谷さんの名前が並んだ。ともに人気俳優の2人だけに、「朝から幸せなニュースでハッピーだぁ」「美男美女すぎるよ? え、え?」「おめでとうぉぉ!!!美男美女すぎる!!」「桐谷美玲と三浦翔平が結婚か~ 美男美女だなぁ」「どことなく顔にてるよね。お似合い!! やっぱ 雰囲気にてたり どこかしら似てる人と結婚するもんなのかな」と、最強レベルの美男美女カップル誕生に喜びと驚きを隠せない声が続出。「あれやん! ドラマのやつ! すご~!!!」「まさかこのカップルが結婚だなんて嬉しい~最強すぎる~」と2人が共演したドラマのファンからの反響もあり、当時のドラマの番宣で共演者の野村周平と山崎賢人が盛り上がりすぎたためか「三浦翔平と桐谷美玲が若干困ってる映像見かけたことあったから この2人がくっついたの野村周平と山崎賢人のせいでおかげだと思ってる」といった声も。「三浦翔平と桐谷美玲の結婚とか、ドラマっぽくて現実感を感じられない」「三浦翔平を桐谷美玲にとられたから3分寝込んでくる」「家に帰れば桐谷美玲がいるのか、、、。いいねぇ」とうらやましがるファンもいれば、「きょうは仕事頑張れそう」といった声も上がっている。三浦さんは6月に30歳になったばかり。2007年、第20回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで「フォトジェニック賞」と「理想の恋人賞」をW受賞すると、翌年の「ごくせん」第3シーズンでドラマデビュー。日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した『THE LAST MESSAGE 海猿』(’10)、続く『BRAVE HEARTS 海猿』(’12)の服部拓也役で精悍な姿を見せる一方、「花ざかりの君たちへ~イケメン☆パラダイス~2011」などにも出演して人気を不動のものに。近年では「ダメな私に恋してください」「正義のセ」などでの好青年ぶりやツンデレぶりが話題となった。また、桐谷さんは現在28歳。高校時代にスカウトされ、雑誌「SEVENTEEN」(集英社)の専属モデルに。2011年まで約5年半、同・専属モデルを務めた。2006年に映画『春の居場所』で女優デビュー、映画『君に届け』、ドラマ「花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~」(’07版)、「人は見た目が100パーセント」などに多数出演。見事なコメディエンヌぶりを見せた2015年の映画『ヒロイン失格』は大ヒットとなった。女優・キャスターなど芸能活動をしながら、7年間かけて大学を卒業したことでも知られる。2人が共演した「好きな人がいること」では、桐谷さんが“恋愛弱者”の主人公のパティシエ・櫻井美咲役、三浦さんが初恋の相手である年上男子・柴崎千秋役を演じ、その弟を山崎さんと野村さんが演じていた。(text:cinemacafe.net)
2018年07月26日4人の女性たちの苦悩と葛藤を掬いあげた『誰かが見ている』で、デビュー直後から話題をさらった宮西真冬さん。期待の第2作『首の鎖』は、母の介護や妻の束縛で家庭に縛りつけられた男女の、声なき悲鳴のようなサスペンスだ。家庭に閉じ込められていた男女の、息が詰まるような心理サスペンス。執筆のきっかけは、介護殺人のドキュメンタリーだという。家族を思えば思うほど追い詰められてしまう状況を、主人公の勝村瞳子に重ねた。「介護の苦労などを打ち明けているサイトなどはよく見ました。なかには『毒親でも簡単に見捨てられない』とか『愛をくれなかった親に対して、愛をもって介護できるのか』という複雑な思いを綴るケースも多かった。『親を捨ててもよいのか』は、本書のテーマを決めるときに、私自身も迷いに迷ったことでした」40歳目前の瞳子は10代のころから祖母と母の介護を背負わされ、自分の幸せをすべて家族の犠牲にしてきた。母は自分の体の不自由さに苛立ち、瞳子にキツく当たる。重苦しい心が少しでも楽になればと通い始めた心療内科で、丹羽顕と出会い、心を通わせていく。ある日、顕から〈あなたを侮辱されて〉突発的に妻を殺してしまった、と打ち明けられた瞳子。遺体を埋めることを提案するが、妻の長い不在に、顕の妹や母が疑問を持ち始め…。果たして、この犯罪は隠し通せるのか。「家族の絆というのは、ときに鎖になるのではないでしょうか。切ろうと思っても、簡単には切れない。もし現実のニュースで、殺人の隠蔽の片棒を担ぐ瞳子のような女性が現れても、その背景にあった苛酷な人生が見えてくると、安易に非難できない気がしたんです」瞳子や顕のみならず、瞳子の家族や顕の妻ら、各登場人物のどろどろした部分まであぶり出す心理描写には容赦がない。読んでいて息苦しくなるほどだ。ゆえに、イヤミスと受け取られることもあるが、「1冊目も2冊目も人の嫌なところを書いたわけではなく弱いところを書いたつもりでした。イヤミスと言われるのはちょっと驚きです(笑)」事実、ラストには希望が見える。「自分で決めることのできなかった瞳子が、自ら道を選び取る。そんな変化も書きたかったのです」瞳子の大いなる決意を、ぜひ見届けてほしい。『首の鎖』男のずるさを描くのもうまい。「現実と照らし合わせてみれば、瞳子の前に突如、完璧な王子様が現れるのも変だから、顕くらいかなと(笑)」講談社1400円みやにし・まふゆ作家。1984年、山口県生まれ。2017年に第52回メフィスト賞受賞作『誰かが見ている』でデビュー。全寮制の女子校を舞台にした3作目は、年内刊行を目指して準備中。※『anan』2018年7月11日号より。写真・大嶋千尋インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年07月07日読み終えた時、きっとあなたの中で何かが変わっている。そう断言したくなるのは、蛭田亜紗子さんの新作長編『エンディングドレス』。「3~4年前から自分で洋服を作るようになったので、洋裁の話を書きたいなと思っていました」夫を病で亡くし、後を追うつもりの麻緒(あさお)は偶然見つけた「終末の洋裁教室」に通いはじめる。最終的に死に装束の製作を目的とした教室だ。「夫と二人だけで完結していた世界が壊れてしまったことにより、もう一度周囲と関わり直していく、という面もあるのかなと思いました」そこにいたのは寡黙な先生と、3人の年配のご婦人の生徒たち。「実際に手芸店で布を選んでいる年配の方たちをよく見かけていて、素敵だなと思って。登場する3人はそれぞれ違う印象になるよう、おっとりした人、ちゃきちゃきした人、ミステリアスな人と書き分けました」麻緒たちは〈はたちのときにいちばん気に入っていた服〉〈十五歳のころに憧れていた服〉といった課題に臨む。きっと読者も、自分ならどんな服を作るか考えるはず。「服によって過去が想起される課題を考えました。他の生徒のおばあさんたちも、90代、80代とそれぞれ年齢が違うので、作る服もまったく異なってくるだろうと思いました」課題をこなし完成品を披露しあうたび、それぞれの人生が浮かび上がる。麻緒も夫との過去を振り返ることになるが、そこには後悔や罪悪感も含め、複雑な心情が含まれる。「後悔なども抱えて人は生きていくものだから、清廉潔白な主人公にはしたくなかった。きれいなおとぎ話にはせず、あえて厳しい面も書きたいと思いました」教室での人生模様だけでなく、家族や旧友との関わりも描かれ、さらにはファストファッションのあり方など現代的な問題も垣間見える。丁寧に針を運んで縫ったかのような繊細な細部の設定、巧みな仕上げ方。エンディングドレスの製作についても、思わぬ展開が待っている。「洋裁は手順通りやればいつかは出来上がるし、作れば作るほど上手くなる。それは服作り以外にも影響する部分があると思いました」何かを作ること、着ること、人と関わること。かけがえのないものがいくつも見えてくる一冊だ。ひるた・あさこ1979年、北海道生まれ。2008年「女による女のためのR‐18文学賞」大賞を受賞、’10年『自縄自縛の私』でデビュー。著作に『凜』など。写真の洋服はご自身で製作したもの。病気で夫を亡くし後を追うことにした麻緒は、死に装束を作る洋裁教室に通いはじめる。だが、課題をこなすうちに心に変化が……。ポプラ社1500円※『anan』2018年7月4日号より。写真・水野昭子(蛭田さん)大嶋千尋(本)インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2018年07月02日悲劇の予感に満ちた母子の関係を描く押見修造さんの『血の轍』の待ちに待った第3集が刊行。一見、普通。でも何かがおかしい。鬼才の描く母というファムファタル。母・静子と一人息子・静一の“毒母もの”といわれてもいるが、簡単にそうとくくれない不穏さに満ちている。「静一の母をモンスターとして描くだけで終わらせず、母性の不可思議さに迫っていきたいと思っています。一方で、家族の和は取りもつが肝心なところは見落としている父親や、しょっちゅう家に来るいとこなど父方の親戚たちの様子も異様ですよね。『あれではお母さんがおかしくなるのも不思議はない』という、静子への同情の声も聞こえてきます」普通そうに見えて普通ではない長部家の様子を、もっとも端的に表しているのは食事の風景だ。「ごはんには、親子関係が表れると思います。静子が用意する朝ごはんが肉まんとあんまんの2択という設定にたどりつくまで、熟考しました。あからさまにおかしいわけではないですが、違和感がある。母親が息子をくすぐって起こすというのも、母子の関係性や母親のキャラクターによるでしょうが、静子と静一の場合はどう映るか。母は息子に対して彼氏を求め、息子は無自覚にそれを受け入れています。ふたりの間で、言語化されないまま関係性ができあがっているところが不気味だし、その空気感が出せていたらいいなと」静子の過剰な母性に、じわじわと搦めとられていく静一。そうとは知らず、クラスメイトの吹石さんは静一に好意を寄せる。「静一にとっては、違う世界への扉ですが、正義のヒロインというだけの存在にせず、彼女が抱えているものの正体も探っていきたいです」押見さんの圧倒的な画力に惹かれるファンも多い。母や静一のうつろな表情をどう読み取るかで、物語の印象が変わってくるのも面白さだ。「画では光もテーマです。顔にかかる影や逆光のときの表情、夏空などから、光を感じてもらえれば。斜線の塗り残しだけで輪郭線を出すなど、小さな実験を繰り返しています」トーンを使わずにすべて手描きにしているという本作は、押見作品の魅力を堪能できること間違いなし。押見修造『血の轍』3「思春期には親に気を遣うあまり、ちゃんとした反抗ができなかった」と語る押見さん。私小説的な要素も入っているとか。待望の第4集は、9月末ごろ発売予定。小学館552円。©押見修造/小学館ビッグコミックスペリオールおしみ・しゅうぞうマンガ家。1981年、群馬県生まれ。2002年にデビュー。映像化された作品が多く、『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』は7/14 公開。「血の轍」も現在好評連載中。※『anan』2018年6月20日号より。写真・大嶋千尋インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年06月19日俳優の三浦翔平(30)が6月3日、都内で写真集『&』の発売イベントに登壇。女優の桐谷美玲(28)との熱愛と結婚報道について「交際は事実です」と堂々と宣言。三浦の行動にネットでは「男らしくてかっこいい」と好評の声が寄せられている。 結婚報道後、三浦が公の場に姿を現したのはこの日がはじめて。集まった報道陣に対し「写真集イベントに来ていただいてありがとうございます」と感謝。つづけて「ちょっと世間を騒がせておりますが」と切り出し、「(桐谷との)交際については事実でございます」と自ら交際を認めた。 結婚については「まだ何も決まっていない」と否定。「いま一番ほしいものは?」と質問されると「そっとしておいてほしいですね(笑)」とコメントし、冗談ぽく「今日は写真集のイベントですからね!」とけん制。報道陣の笑いを誘った。 ネットでは「はっきり宣言するのマジでかっこいい」「イケメンは質問の返しもうまいな~」「付き合ってるの本当なんだ!」「いいカップルだね」といった反応があがっている。
2018年06月04日大阪土産・ひとくち餃子の「点天」から「餃子バル 点天」が誕生。2018年6月22日(金)JR新大阪駅在来線改札内エキマルシェ新大阪にオープンする。創業から一貫しておいしさにこだわり抜いてきた「点天」。看板メニューのひとくち餃子は、厳選した素材を使いこだわり抜いて作られている。そんな「点天」の新業態となるのは、ひとくち餃子はもちろん、出来立てのアレンジ餃子、クラフトビール、大阪発のワイナリー「カタシモワイナリー」醸造のワインなどを提供する餃子バル。イートインはもちろん、テイクアウトもOKで幅広い人が利用できる店舗づくりを目指す。店の名物となるのは「ぷりぷり手羽先ぎょうざ」は、丁寧に骨を抜き、香ばしく焼いた手羽先の中に、四季の食材を詰め込んだ。ビールやワインと相性がよいので、仕事帰りにサクっと1杯飲むアルコールのおつまみにオススメだ。特製エスニックフレークにつけて味わう、新感覚の餃子「エキゾチックスパイシー餃子」は、タレをつけて食べる従来の食べ方から距離をとった創作メニュー。エスニックフレークはピリ辛なので、暑くなるこれからの季節にぴったりな味わいとなっている。【詳細】餃子バル 点天オープン日:2018年6月22日(金)住所:大阪府大阪市淀川区西中島5-16-1 エキマルシェ新大阪※エキマルシェ新大阪はJR新大阪駅の改札内にあるため、乗車券もしくは入場券が必要営業時間:9:00~22:00(L.O. 21:30)<メニュー例>・名物ぷりぷり手羽先ぎょうざ(1本) 216円・エキゾチックスパイシー餃子(8個入り) 594円※価格は税込み。
2018年06月02日実在の日本の文豪や彼らの作品を、キャラクター化したマンガやゲームが巷で人気。そんな文豪たちの人となりや、作品の魅力を、友情というフィルターを介して浮かび上がらせた『文豪たちの友情』の著者が、石井千湖さんだ。取り上げた文豪たちの個人全集を、索引や月報にまで目を通し、自伝、随筆、書簡、日記、評伝などあまたの関連書籍も参考に。そこから掘り起こした文豪たちの友情のまぶしいこと。わくわくするような文学エッセイであり、日本の近代文学へのよきガイドにもなっている。「文豪たちの生涯について、あるいは、文学史的には有名な、谷崎潤一郎と佐藤春夫の細君譲渡事件、太宰治が芥川賞に執着した話など、入門書に載っているくらいの情報は知っていましたが、もとになった文献に当たると、実はもっと複雑で…。一行情報ではわからないことがあるなと、あらためて思いましたね」芥川龍之介と菊池寛、太宰治と坂口安吾など、13組の文豪たちの出会いから別れまでがまとめられている。「彼らの関係を履歴書的に整理しつつ、バカバカしくも人間味がある小さなエピソードが好きなので、それは入れるように意識しました」たとえば、文豪の中でも抜きんでて交友関係の広かった佐藤春夫が、芥川龍之介に脱ぎたての猿又(パンツ)を借りた話や、借金魔の石川啄木が、世話を焼いてくれた金田一京助の毛生え薬の秘密を小説に書いてしまい、ケンカした話。微笑ましい、文豪たちの知られざる一面だ。「書いていると、ダメ人間と思っていた作家も、みな好きになりましたね(笑)。とにかく一生懸命生きていたんだなとわかりました」それにしても、文豪たちの友情はなぜこんなに面白いのか。「距離感がおかしいんですよ。ライバルでもあるから互いに意識もするけれど、スポーツのライバル関係とも違う。一般的な友人関係よりずっとぶっちゃけ合っている。仲良くなるきっかけが、だいたい、“互いの作品を認め合った”ことなんですね。自分が好きで書いたものに共感して、『いいね!』と言ってくれた人はやっぱり特別なんだな、と。互いの文学の趣味も似ていることが多く、彼らにとって友と語り合うことはとても幸せだったでしょうね」いしい・ちこ1973年、佐賀県生まれ。早稲田大学卒業後、書店員を経て、書評家、ライターとして活躍。共著に『世界の8大文学賞』『きっとあなたは、あの本が好き。』(共に立東舎)がある。文豪たちの仲睦まじい姿をイラストにしたのは鈴木次郎さんとミキワカコさん。各章に付いているミニ人物相関図も関係性を理解する一助に。立東舎1500円※『anan』2018年6月6日号より。写真・土佐麻理子(石井さん)大嶋千尋(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年05月30日