プロローグはおどろおどろしい。ペット以下の環境で監禁、虐待されている女性。そのみじめな姿をあざける犯人。それは、茨城県水戸市内の安ホテルで発見された男の刺殺体と、さらに彼が起こした先の女性監禁事件へと結びつく。犯罪の背景に何があったのか。櫛木理宇さんの『虜囚の犬』は、ゆがんだ家族関係や、閉鎖的な地方都市の陰湿さを浮かび上がらせる問題作だ。弱者の痛みが幾重にも絡む事件を、若き元家裁調査官と県警刑事が追う。「同時にこれは劣等感の物語でもあるんです。極端に感情が欠如しているサイコパス的な人間はおらず、加害者も被害者も自己評価が低い人物ばかり登場します。メッタ刺しにされた薩摩治郎(さつまじろう)は、女性たちを監禁して服従させ、女性に対して一見『強者』のようですが、過去を遡れば、決してそうではない人物だったことが見えてくる。最終的に絶対的な強者というのは存在するのかというのもテーマです」事件につながる要因を解き明かそうとするのが、白石洛(らく)という30代の元家裁調査官。かつて少年事件で治郎や関係者家族と関わったことがあり、治郎の過去について知る数少ない人物。洛の友人で、茨城県警捜査一課の巡査部長・和井田瑛一郎は、引きこもりだったという事件前の治郎について調べるよう洛に依頼する。「今回、捜査官だけではなく素人探偵役の洛を据えたのは、事件捜査だけでなく、少年という弱い存在に焦点を当てて見てくれる人が必要だったからです。洛がいまは妹と暮らす専業主夫にして、刑事の和井田と高校時代からのノリのままじゃれ合う会話を繰り広げる場面を入れたのは、そうしないとあまりにも陰惨な話だけになってしまうかなと。重い物語の緩衝材的な役割もあります」物語は、司法では裁けない罪や悪意にどう向き合うかも問いかける。「他者への寛容性がないというのが始まりだと思うんです。怒りの矛先が間違った方向に向かうという問題があって、より弱い存在が被害者になるのは社会の縮図のようです」櫛木作品では、犯罪をめぐるリアリティにも瞠目させられる。「もともと犯罪心理などには興味があって、作家になる前、シリアルキラーについてのコンテンツの管理人を10年くらいやっていたことがあるんです。本もいろいろ読みました。そのころの知識がいろいろ補填してくれているのかもしれません」くしき・りう作家。1972年、新潟県生まれ。2012年『ホーンテッド・キャンパス』で日本ホラー小説大賞・読者賞を、同年、『赤と白』で小説すばる新人賞を受賞。『虎を追う』など著書多数。『虜囚の犬』1986~’87年、米国オハイオ州で黒人女性ばかりが狙われたゲイリー・ヘイドニックという男による実在の拉致監禁事件がモチーフ。KADOKAWA1700円※『anan』2020年7月22日号より。インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2020年07月20日7月18日に亡くなった三浦春馬さん(30)。突然の訃報はファンのみならず、大きな衝撃を与えた。本誌は、三浦さんを3月初旬に目撃していた。都内の自動車学校で大型バイクの卒業検定を受けていたのだ。「三浦さんは濃い紫色のキャップに黒いマスク。手には黒いフルフェイスのヘルメットを持っていました。バイク用の黒いアウターに生地の厚い青いデニムを履き、そしてリュックサック姿。ライダーとしてお手本のような姿で、バイクに対して真面目に向き合っているんだなという印象でした」(卒業検定を受けていた男性)検定の説明を受けるまで、三浦さんは10名ほどが集まる教室で待機していた。前出の男性はこう話す。「三浦さんは、一般人に混じり机に座ってスマホを触ったりしていました。InstagramやTwitterなどのSNSをチェックしながら、教官が来るのを待っていました」その後、三浦さんは教習コースに出て検定を受けた。大型バイクにまたがると、次々と課題をクリアしていった。俳優として多忙を極める日々。だがその合間を縫って、このときは大型バイクの免許取得へ意欲を見せていた三浦さん。バイクに目覚めたのは、昨年7月期の主演ドラマ「TWO WEEKS」(フジテレビ系)だった。「ドラマでバイクに乗るシーンがあり、彼は普通二輪免許を取得しました。そこですっかりバイク好きになったそうです。これまでも中型バイクを楽しんでいましたが、やはりアメリカンタイプの大型バイク、それもハーレーダビッドソンに乗ることを夢見ていたようです。そこで大型バイクの免許を取ることにしたと聞きました」(芸能プロダクション関係者)検定が終わるとすぐに合否の発表となり、教官は個別に参加者の名前を呼んだ。三浦さんは満点に近い点数で合格だったようで、結果を伝えられると「あ、本当ですか。よかったです。ありがとうございます」と教官に話す。そして微笑んでみせると、颯爽とその場を後にしていたーー。
2020年07月20日2020年7月18日、俳優の三浦春馬さんが30歳の若さで亡くなりました。警察によると、三浦さんは自ら命を絶った可能性が高いとのこと。ドラマや映画、舞台など、数々の作品に出演し、芸能界での交友関係も広かったという三浦さんの突然の訃報に、衝撃が広がっています。大竹しのぶ「春馬、悲しいよ。」過去に舞台で共演した俳優の大竹しのぶさんは、同月19日に自身のInstagramを更新。写真とともに追悼の言葉を寄せました。※画像は複数あります。左右にスライドしてご確認ください。 この投稿をInstagramで見る 大竹しのぶ(@shinobu717_official)がシェアした投稿 - 2020年 7月月19日午前8時27分PDT何を書けばいいのだろうか。昨日から、ずーと答えはみつからない。一緒にお仕事したのは5年前の舞台「地獄のオルフェイス」だった。イギリスの演出家のフィリップを中心に、私達はモノを作り上げる同士になった。毎日毎日、より良い芝居を作り上げることに皆で必死になった。そして思い切り笑って、悩んで、一緒に喜んでいた。みんな、春馬が大好きだった。昨夜も夜中に、西尾まりちゃんと、寝られるわけないよねと語り合った。フィリップは遠いイギリスで、心の中を嵐が吹き荒れているようで、言葉が見つからないと嘆いた。春馬、悲しいよ。わかっていることは、あなたの事を忘れないという事だけだよ。もう逢えないと思うと辛いので、去年会った時、一緒にバカなこと言って思い切り笑って、青春ドラマの様に肩組んで歌った事を思い出して、しのぶさん俺頑張る!春馬、私頑張る!って誓い合ったことを守ってゆくよ。写真は、大阪公演の帰り、新幹線の中でずーと芝居の話をして、帽子を忘れて先に降りた私に忘れ物!と送ってきてくれたものです。お誕生日にたくさんのコメントを頂いていたのに、お礼も言えずごめんなさい。温かいコメントありがとう。おひとつおひとつに感謝でした。ほんとにありがとうございましたshinobu717_officialーより引用2015年に公演された舞台『地獄のオルフェウス』で共演した時のツーショット写真を投稿し、悲しみを吐露した大竹さん。また3枚目の写真は、大竹さんが新幹線の中に忘れていった帽子をかぶりチャーミングな表情をみせる三浦さんが写っていました。コメント欄には舞台を見た人やファンから「素敵な舞台を思い出します。どうか安らかに」「昨日からこの舞台の時の春馬くんを思い出していました。かっこよかったよなぁと」「今、この写真を見て涙があふれました」など追悼の言葉が多数寄せられています。才能にあふれ、さまざまな人に慕われた三浦さん。早すぎる別れに、多くの人が心を痛めています。[文・構成/grape編集部]
2020年07月20日俳優の三浦春馬さんが7月18日、30歳という若さで死去した。突然の予期せぬ死に、衝撃が広がっている。日テレNEWS24によると三浦さんは同日に仕事の予定が入っていたが、現場に現れなかったという。関係者が自宅を訪れると、首を吊っている三浦さんを発見。搬送先の病院で死亡が確認されたという。また三浦さんの自宅で、遺書のようなものが確認されたとも報じている。97年に連続テレビ小説『あぐり』(NHK総合)で、子役デビューした三浦さん。その後『ブラッディ・マンデイ』(TBS系)や『ごくせん』(日本テレビ系)、『TWO WEEKS』(フジテレビ系)といった話題作で幅広く活躍した。三浦さんは、松岡茉優(25)主演の9月ドラマ『おカネの切れ目が恋のはじまり』(TBS系)にも出演が決まっていた。お金を正しく使うことにこだわる主人公と男性3人の繰り広げる“恋愛合戦”が見どころで、三浦さんは「台本を読み進めるのがとても楽しみでした」と語っていたという。本ドラマ出演者の三浦翔平(32)とは、08年の『ごくせん』(日本テレビ系)と09年の映画『ごくせんTHE MOVIE』以来の共演。約11年ぶりに披露する“W三浦”にも、注目が集まっていた。また来年には三浦さんが武将・松平元康(後の徳川家康)を演じる、映画『ブレイブ 群青戦記』の公開も控えていた。三浦さんのインスタグラムでは、14日に投稿した新ドラマの告知が最後の更新だった。そこには、《テレビの前の皆様に9月から、より笑って頂きたく撮影に励んでおります!楽しみにいていてください!(原文ママ)》と笑顔の姿が添えられていた。突然の訃報に、三浦さんを偲ぶ声が広がっている。《なぜ、ショックすぎる、、、》《えっ?信じられない。今すごい動揺してます。嘘であって欲しい》《信じられない…どうして…天国で安らかにお眠りください》《端から見たら人気絶頂で、何の心配もないように思っていました。でも、ご本人にとってはそうではなかったのですね… 何が死に急がせたのかわかりませんが、ご冥福をお祈りいたします》
2020年07月18日大学院を修了しても知識を活かす場や安定した仕事がない…。高学歴ワーキングプアの問題は、昨今日本でもよく耳にする。そうした状況はティファンヌ・リヴィエールさんが暮らすフランスをはじめ、海を越えた世界各国でも若い学生や学者たちを悩ませている。そんな院生の苦難と悲哀のあるあるを詰め込んだバンド・デシネ(BD)をブログで発表。書籍化されたのが『博論日記』だ。世界中の大学院生が共感した、アカデミズムという砦の不条理。「自伝ではないのですが、自分の経験からインスピレーションは受けて描きました。主人公のジャンヌは典型的な文学系院生像。25歳くらいの女性で、研究への情熱もあるけれど、論文を読んでもらうために指導教官に関心を持ってもらわねばならず、一握りの院生以外はあまりに理不尽な状況に直面します。それをブログにしたら、ジャンヌに起こる出来事に対して最初はみんな笑ってくれました。でも彼女のつまずく落とし穴の数々が、さらに暗い世界へと繋がり、気が滅入ってしまう。それは私も経験したことです」研究ばかりのジャンヌに、恋人のロイックは愛想を尽かし、ふたりの関係はギクシャクしていく。「こうした経験は女性の院生だけでなく男性もしていますし、それに関する研究もあります。博論を書いていると強迫観念にかられ、終わらせるために狂信的になってしまう。パートナーにはしんどいんですよね」フランスでは、院生の3分の2は博論中にパートナーと別れるという統計もあるそう。高学歴の問題だけでなく、夢をあきらめられない人にも当てはまりそうだ。「女性の抱えるもっとも大きい問題は子ども。育児が始まると、女性のキャリアは狡猾に着々とゴミ箱に捨てられていく。基本的に男女平等のフランスでも珍しくないことです」マンガは独学で身につけた。「博論が終わりかけのころ、両親の結婚30年のお祝いに、兄妹で一緒にマンガを描いたんです。家族間であったエピソードなどを描いただけなんですけれど、それにものすごくハマってしまった。暇があればそれしかしなくなり、ついには博論そっちのけで心を奪われていきました。同じお金を稼げないのなら、バカみたいに研究するより自分のしたいことを全力でしようと(笑)。10年もの間、著名な文芸作品の書き方を研究してきたことが、私がマンガを描くのに役立っています」『博論日記』作・ティファンヌ・リヴィエール訳・中條千晴カフカの博士論文を3年で書き上げることを目標に、希望を抱いて院生生活に踏み込んだジャンヌだったが…。女性のキャリア形成の難しさにも通じる必読BD。花伝社1800円©Editions du Seuil、中條千晴、花伝社ティファンヌ・リヴィエールBD作家。フランス生まれ。自らの博士課程体験を軸に本作を発表。英、中など8言語で出版。※『anan』2020年7月22日号より。インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2020年07月15日9月スタートのTBS系新火曜ドラマは、松岡茉優主演「おカネの切れ目が恋のはじまり」を放送することが決定。三浦春馬、三浦翔平、北村匠海と人気俳優の出演も明らかになった。本作は、おカネ修修行を通してひと夏の恋物語が繰り広げられていく、大島里美脚本による完全オリジナルラブコメディ。中堅おもちゃメーカーの経理部で働く主人公・九鬼玲子は、とある過去が原因で「清貧」という価値観で生きるアラサー女子。金銭感覚が独特で、お金の価値ではなく、自分が愛するモノの本質を大切にして暮らしている。そのおもちゃメーカーの御曹司・猿渡慶太は、浪費にかけては天賦の才能を持った男。浪費のしすぎで経理部に異動になり、2人が出会い、ひょんなことから玲子の実家に慶太が住み込むことに…というあらすじ。そんな一風変わった価値観を持つ“清貧女子”玲子を演じるのは、ヒロインを務めた『劇場』の公開&配信がもうすぐ始まる松岡さん。玲子とは正反対のキャラクター、お金にルーズな浪費男子・慶太は、『コンフィデンスマンJP』「TWO WEEKS」などに出演する春馬さんが演じる。今回、TBS連続ドラマ初主演となる松岡さんは、春馬さんとは初共演。「ラブキュン物語なのですが、私が演じる玲子さんと三浦さんが演じる慶太の成長物語として、ほころんでいる2人がどんどん成長していくところも注目していただきたい」とアピールし、「三浦さんと私では、普段も違う性格な気がするので、二人三脚で、この暑い夏、そしてこの状況ですけど乗り切っていきたいなと思っています」と意気込み。「ぜひ視聴者の方にはご自身と照らし合わせながら、玲子が人としての喜びを得ていく様子を見守っていただきつつ、おカネの使い方に関しても役立つプチ情報が入ってますので、おカネの部分と恋の部分とそして2人の成長物語を楽しんでいただけたらうれしいです」とコメントしている。春馬さんは「僕が演じさせていただく役どころは、玲子の働く会社の御曹司なのですが、彼のキャラクターはとても気持ちの良い青年で、すごくポジティブです。ただおカネの捉え方に関しては少し突き抜けているので、登場人物のセンシティブな金銭感覚や問題に関して土足で軽快に乗り込んで、前を向かせようとする部分があり、ポジティブにかつ嫌味なく演じるのがすごく難しいなと感じています」と自身が演じるキャラクターについて説明している。さらに、玲子の初恋の相手・早乙女健を、主演ドラマ「M愛すべき人がいて」が大きな話題となった翔平さん。慶太の後輩・板垣純を、『砕け散るところを見せてあげる』『とんかつDJアゲ太郎』『東京リベンジャーズ』など待機作が多く控える北村さんが演じる。早乙女は公認会計士の資格を持ち、容姿を生かしてお金の専門家として人気コメンテーターとしても活躍する「顔面を金に換える男」。玲子が“清貧”になった過去の出来事を知る存在であり、キラキラしている表の顔の一方で謎めいた裏の顔も持つ。そして板垣は、とある理由で将来の貯蓄に大きな不安を抱いており、恋よりお金な「ドケチ節約男子」。あることがきっかけで玲子に恋をしていくという役どころ。旬な俳優たちによる4つ巴の恋愛合戦に注目だ。翔平さんは「早乙女という役を通して、この作品のいいスパイスになればと思いながら演じています。見てくださっている人々が元気になれるような、笑って、泣けるところは泣いて、明日への活力になるようなドラマになればいいなと思いますので、ぜひお楽しみにしていてください」と視聴者へメッセージ。「全話通して“かわいらしく憎めないやつ”として演じられたら」と語る北村さんは、「1話から純が何を抱えているのか描かれますが、話を重ねるごとにかわいらしかったり、コミカルな部分もあるので楽しみです。おカネは身近なものではあるけれど、人それぞれ価値観がすごく違うと思うので難しい部分もありますが、見てくださった方々がパーッて明るく笑顔になれるように、ドラマを通してエネルギーを発信できたらいいなと思っています」とコメントしている。あらすじ中堅おもちゃメーカーの経理部で働く主人公・九鬼玲子は、過去のある出来事が原因で、「清貧」という価値観で生きるアラサー女子。そんなある日、めったにものを買わない玲子が買い物をする、「お迎えの日」がやってきた。古道具屋で一目惚れした1,680円の豆皿を1年間、何日も店に通い、じっくり考えて、やっと買う決意。しかし、女性を連れた派手な装いの若い男が、バーベキュー用にとその豆皿を雑に購入していく姿を目の当たりにする。その男は、玲子が勤める会社の御曹司・猿渡慶太――。数日後、玲子の働く経理部に、豆皿を奪った慶太がやってきた。慶太のひどい浪費ぶりに社長である父が激怒し、お金の勉強のため経理部に異動になったという。玲子は不本意にも慶太の指導係に任命され、慶太に対する玲子のおカネ修行が始まる…!火曜ドラマ「おカネの切れ目が恋のはじまり」は9月、毎週火曜日22時~TBSにて放送予定。(cinemacafe.net)
2020年07月14日今年開設された公式チャンネルには、お笑い芸人ばかりでなく俳優の方々も続々登場中。仲里依紗さんの「仲里依紗です。」は、始めてから1か月でチャンネル登録者数が30万人を突破するほどの人気。その秘訣は、動画からうかがえる“飾らない”仲さんのお人柄。すっぴんで自宅も寝姿も公開、黒ギャルメイクだって果敢に挑戦。仲さん、売れっ子女優なのに、そこまで見せてくれていいの!?って心配になります……。仲 里依紗「仲里依紗です。」チャンネル登録者数:48.5万人撮影・編集・アフレコ……ぜーんぶ自分でやってます!いいんです!まさにそれを変えていきたかったんですよね。女優というパブリックイメージってみなさんあると思います。お手伝いさんがいて、家はピカピカでおしゃれな生活してそう、みたいな。でも、私、めちゃくちゃ普通だよ、と思って(笑)。ママチャリも乗るし、半額のお肉も買うし。そういうそのままの取り繕わない私を知ってもらいたかったんです。たとえば、生理前のイライラをストレートに話すとか、体重をぶっちゃけて公表したのも、ナチュラルな自分を出すことで、みんなと同じだってことを知ってもらいたかったから。芸能人だから特別で、自分はダメなんだと思わないでほしいんです。“みんな一緒なんだよ、安心して”って伝えたい。だから、コメントで「周りの目が怖いと感じた時に動画を見てがんばります」とか「救われました」「共感した」と言ってもらえると、本当にうれしいです。企画もみんなのコメントを参考にしてます。あれ、やって!とか言ってくれるの、ありがたいです。動画作成は撮影から編集まで全部自分ひとりでやっています。編集の仕方はそれこそYouTubeで編集動画を見て勉強しました。夫のキツネさん(中尾明慶さん)も個人でチャンネルを持っていて(「中尾明慶のきつねさーん」)、彼はすごく勉強家でデータ派。サムネイルはこういう傾向がいいとか、視聴者層の年齢に合わせて何時頃にアップすべきとか言うんですが、私はあまり気にしない。正反対のタイプで、向こうからはかなりライバル視もされていますが、それもあまり気にしない(笑)。でも、ネタは取られたくないので、そこは家族でも線を引いていますね。家庭内バトルです(笑)。彼が家にいる時に、私が収録をしないといけないような時は、キツネさんには別の部屋にいてもらって、耳栓もしてもらいます。聞かれるのがちょっと気恥ずかしいというのもあります。もともとYouTubeが大好きで、ずっと自分でもやってみたいなと思っていたので、実現して、しかもみなさんに受け入れていただけてよかったなと思います。お芝居だけだと役柄のイメージで判断されてしまうことも多いから、これからはそのままの仲里依紗も知って、楽しんでもらいたいです。仕事的には、ドラマや映画は待ち時間が2~3時間あるとかザラ。なのでその時間を楽屋で編集作業にあてています(笑)。これが集中できて意外といい。二足の草鞋も上手に両立できそうです!なか・りいさ1989年10月18日生まれ、長崎県出身。ドラマ、映画に出演するほか、ファッション誌ではモデルとして活躍。近年では、ドラマ『10の秘密』『美食探偵 明智五郎』、現在NHK連続テレビ小説『エール』に出演中。※チャンネル登録者数、視聴回数は、6月25日時点のものです。※『anan』2020年7月15日号より。写真・小笠原真紀取材、文・梅原加奈(by anan編集部)
2020年07月10日三浦春馬主演「ブラッディ・マンデイ シーズン2」が、7月20日(月)より「Paravi」にて全話一挙配信が決定した。主演の三浦さん演じる天才高校生ハッカー“ファルコン”こと高木藤丸が、最凶最悪のウイルステロから家族や仲間、そして地球を救うべく立ち向かうノンストップアクション・サスペンス「ブラッディ・マンデイ」。現在、シーズン1が配信中となっており、配信開始から 1週間(6/20~6/26)のParavi内再生数ランキングで1位を記録するなど、大きな反響を呼んでいる。続編となるシーズン2の舞台は、史上最悪のウイルステロ「ブラッディ・マンデイ」から2年後。「魔弾の射手」を名乗るテロ組織が核を入手し、日本再起動計画を開始。核爆発までのタイムリミットが刻一刻と迫る中、ファルコンが同級生・九条音弥(佐藤健)と共に再びテロの脅威に挑む。三浦さん演じる藤丸、佐藤健演じる音弥のほかにも、吉瀬美智子、松重豊、芦名星、川島海荷、成宮寛貴らがシーズン1に引き続き出演。誰が味方で誰が敵なのか、予測不可能なハラハラする展開の先に、衝撃の真実が隠されている。「ブラッディ・マンデイ シーズン2」は7月20日(月)0時~Paraviにて全話一挙配信。(cinemacafe.net)
2020年07月10日山下紘加さんの『クロス』は、既婚者の〈私〉こと市村ゆうじが、同じビルで働く不倫相手の愛未(まなみ)とふざけて女装してみたのをきっかけに、自分の性のありようやアイデンティティに迷っていくさまを刻々と追う、衝撃作だ。ゆうじは、女装しているときは〈マナ〉と名乗っている。物語は、マナとバーで出会った恋人タケオとの濃厚なセックスシーンから始まる。「私自身が異性愛者なので、異性装者や同性愛者の心理を、感覚的にはわかる部分もあるけれど、本質から理解するのは難しいだろうなと。その『わからなさ』をむしろ大切にして書きたいと思いました」LGBTQをモチーフにした小説は増えてきたし、その切り口に、作家の個性も垣間見える。本書では、自分を異性愛者だと思っていた既婚男性の揺れる気持ちがつぶさに拾われているところに瞠目する。「女装趣味やゲイをカムアウトしている人たちのノンフィクション番組などを見ていると、自分の性自認や性的指向がはっきりしているんですよね。けれど、誰もがそこまで明確に自分の性別や性の対象を意識してないと感じていました。ならば、主人公が己の性に身も心も揺れていくさまを書くことで新しさが生まれるのではないかと思ったんです」この作品のために取材もした。二丁目の女装クラブや、女装愛好者のためのSNS、女装パフォーマーとして活躍中のブルボンヌさんからのレクチャーなど。クリスチャン・ザイデル著『女装して、一年間暮らしてみました。』(サンマーク出版)には、強く影響を受けたそう。「異性愛者で妻もいる彼が、女性の服を着て生活し、どんな心境の変化があったかをありのまま綴ったノンフィクションなんですが、ストッキングのような女性のアイテムを身につけただけで、心のありようが変わるのが興味深かったです。一方で、私自身も女装している人たちと話をしていると、女の子と普通にはしゃぐような気持ちになるのが不思議」ゆうじの目を通して観察される、タケオや妻の典子、大学時代からの先輩・澤野らの反応に、共感も反発も新しい発見も生まれるだろう。簡単には噛み合わない、性と自分らしさと幸福感。その深淵をのぞき込むような一冊だ。やました・ひろか1994年、東京都生まれ。2015年、ユリカと名付けたラブドールへの恋慕に依存していく少年の、危うい心理を繊細に描いた「ドール」で文藝賞を受賞。同年デビュー。『クロス』警備会社で働く28歳の〈私〉はタケオと名乗る美しい男性と出会い、女装した姿でのセックスに溺れていく。〈私〉の思いの行方は。河出書房新社1600円※『anan』2020年7月8日号より。写真・土佐麻理子(山下さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2020年07月04日昨今のベストセラーリストに必ず食い込んでいるのが現代の哲学書や思想書。そのブームを分析し、おすすめの本を選書してくれたのは、2015年からロングセラーを続けている『哲学用語図鑑』の編集者で自著も持つライターの斎藤哲也さん。クールな思想家たちが牽引する、イケてて面白い哲学&思想書に注目。「日本の将来の不透明さがもたらす危機感や不安から、物事を根本的に問い、考えようとする書物に手を伸ばす人が多くなったように感じています。メジャーなビジネス誌が哲学特集を組むのもその表れでしょう」昨今の思想家たちはイケメン揃いなところもハートをくすぐられる。「最近は、ハラリやガブリエルのようなテレビによく登場するスター思想家が出てきました。佇まいもカッコいい彼らの本は総じて読みやすく、語られている内容も刺激的です」『21 Lessons21世紀の人類のための21の思考』ユヴァル・ノア・ハラリ著柴田裕之訳河出書房新社2400円世界的なベストセラーとなった『サピエンス全史』で人類の過去を、『ホモ・デウス』で人類の未来を説いた著者が、現在に焦点を当てて書いた最新刊。「雇用、自由、平等、ナショナリズム、移民、ポスト・トゥルースなど、現代人が直面している課題を明晰に整理する手さばきが見事です。と同時に、本書は、ハラリ自身のエピソードや世界観について多くを語っている点も読みどころ。既出作と併せて読めば、その語り口に魅了されることうけあいです」『世界は贈与でできている―資本主義の「すきま」を埋める倫理学』近内悠太著ニューズピックス1800円お金では買えないものやその移動に「贈与の原理」という概念を用いる著者。贈与は人や社会にどう影響しているのか。「若き在野の哲学研究者が書いたデビュー作。私たちが普段何気なく行う贈与という行為はとても不思議なものです。人はなぜお返しを求めず贈り物をするのか。交換と贈与は何が違うのか。著者が親しんできた哲学や思想を渉猟しながら贈与の秘密に迫っていく本書を読むと、いままでとは違う世界の景色を発見できるかもしれません」『世界史の針が巻き戻るとき 「新しい実在論」は世界をどう見ているか』マルクス・ガブリエル著大野和基訳PHP研究所960円著者は、ポスト・トゥルースの時代における「新しい実在論」の提唱者であり、“哲学界のロックスター”と称される。「ガブリエルの主著『なぜ世界は存在しないのか』は、硬派な哲学書としては異例といっていいほどヒットしました。が、それでもけっこう難解なので、語りおろしで言葉も平易な本書から入るのがおすすめ。気候変動やグローバル資本主義、AI、GAFAなど時事的なテーマも多く、哲学者ならではの挑発的かつ反常識的な議論を楽しめます」※『anan』2020年7月8日号より。写真・中島慶子文・三浦天紗子(by anan編集部)
2020年07月02日天祢涼さんの『あの子の殺人計画』は、社会派とホワイダニット(犯行の動機を解く)が融合したミステリー『希望が死んだ夜に』のシリーズ第2弾だ。追い詰められる子どもや女性など弱者に光を当てる社会派ミステリー。「『希望~』で事件解決に大きな役割を果たした生活安全課の女性刑事・仲田巡査部長にまた活躍してもらいたいと思い、彼女の再登場は最初から頭にありました。所轄の刑事課・宝生巡査部長とのコンビで一度は書き上げたのですが、誰に事件を語らせるかを考えたときに、前作で仲田と組んだ神奈川県警刑事部の真壁が適任と判断して書き直しました」捜査を進めるうちに、椎名綺羅が一時期、殺された風俗店のオーナー・遠山菫が経営していた〈ラバーズX〉で働いていたことがわかる。だが綺羅はアリバイを主張。娘・きさらの証言もそれを裏付けているのだが…。一方で、きさらは自分が母から受けている〈水責めの刑〉などが躾ではなく虐待ではないかと思い至る。味方になってくれた翔太の言葉に感化され、ある計画を練り始める。「現実にはもっとひどい虐待もあるかもしれない。でも『この程度で、子どもがそんな大それたことを考えるだろうか』と読者に疑問を持たれたら、物語が成立しない。その案配が難しかったですね。なので、小芝くんのような目立つ貧困児童を置いたことも腐心した点のひとつ。それによって、そこそこ普通に見えてしまうきさらのような子の虐待は見逃されやすくなると思ったんです」本作では、謎解きの要素もたっぷり。真壁、宝生、仲田が追うのは、遠山殺しの犯人であり、動機であり、トリックだ。そこに、現代の貧困や貧困からくる虐待など社会問題が絡み合う。重層的な展開が魅力。「『希望~』ではじわじわ追い詰められていく少女たちの境遇や感情に読者は揺さぶられたと思うのですが、その分、大人のつらさにはあまり触れることができなかった。その反省もあったので、今回は大人の事情や問題も盛り込みたいと思いました」ある時期まで、貧困や虐待などの社会問題はノンフィクションのほうが向いていると考えていたそう。だが、本シリーズの反響の大きさから、いまは思いを新たにしている。「フィクションにしかできない伝え方があるとわかりました。これからも書いていきたいテーマです」あまね・りょう1978年生まれ。2010年にメフィスト賞受賞作『キョウカンカク』でデビュー。’19年『希望が死んだ夜に』で本屋大賞発掘部門で最多票を獲得。『謎解き広報課』など著書多数。『あの子の殺人計画』貧しい母子家庭で育つ小学5年生の椎名きさら。ある日、川崎の風俗街の狭い路地で、大手風俗店の女性オーナーの刺殺体が発見される。文藝春秋1650円※『anan』2020年7月1日号より。写真・土佐麻理子(天祢さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2020年06月24日ヒップホップブームやツイッターなど、誰もが言葉をつぶやく場が広がった影響もあるのかもしれないが、ひっそりと書店の隅にいた詩が、いま新たな存在感を見せている。詩の人気が再燃。ブームを引っ張る女性詩人に注目。「長い小説などを読むまとまった時間が取れなくても、純粋な言葉に触れたい、という読者のニーズが詩に向かっているのかもしれません」と言うのは、雑誌『現代詩手帖』(思潮社)の編集者で、’10年代以降、多くの詩集を世に送り出してきた出本喬巳さん。若い詩人たちの台頭が著しいゼロ年代と’10年代の詩について、出本さんに解説していただく。「ゼロ年代は、若者にとって大変生きづらい時代でした。そういった状況の中で自己のギリギリの生存を見つめ、切迫感や加速感をともなった詩編、たとえば中尾太一や岸田将幸、安川奈緒らの言葉は読む者の心をひりつかせ、その後の書き手たちにも影響を与えています。一方、’10年代に登場した詩人たちは、自己の内面を突きつめる以上に、まず外界へと意識の目を向けました。ベーシックな身体感覚を現代詩にとり戻すことでゼロ年代詩を乗り越えていったと読むことができるかもしれません。またSNSの隆盛やジェンダー観の変化など生活主体の多様化や揺らぎが顕著になった’10年代は、それに呼応した詩が増え、アーティストとのコラボなど表現にも広がりが。このころ暁方ミセイ、大崎清夏、岡本啓らが登場し、なかでも突出した存在感を放ったのが最果タヒです」詩に対して構えすぎなくていい、と出本さんは言う。「今日わからなかった詩が、閃きのように明日わかるかもしれない。10年後にわかる日が来るかもしれない。自分に刺さる一編や好きな詩人と出会っていくうちに、詩の世界の奥深さ面白さにきっと魅入られるはず」出本さんイチオシの詩集をご紹介。まず気になるのはどれだろう。水沢なおフィジカルな感覚と物語性を融合する独自の世界観。『美しいからだよ』(思潮社、2019年)「淡い色づかいの画集を思わせる趣、会話体による展開、短編小説のようなテイストが特徴的。〈これが最後の転生だからね。もう、無理に子孫を残す必要もないんだよ〉(「かいわれ」より)など、身体をもつことへの複雑な感情が全編渦巻いています。BLや百合、ポケモンから着想を得ていたり、感性に未来の可能性を感じます。今年の中原中也賞受賞作」紺野ともガールズカルチャーを、軽やかな言葉で描写。『ひかりへ』(思潮社、2019年)「『渋谷ヒカリエ』を連想させるタイトル。実際、各詩編の主人公は、渋谷あたりをそぞろ歩き、さまざまな地名や街景が書き込まれます。〈女の子たちは消費している/(略)/女の子たちは消費されない〉(「たわむれろ」より)など、都市の片隅にあることの自由と孤独、そして切なさ。今を生きる“女の子たち”への応援歌でありたい、というのが詩人本人の弁」マーサ・ナカムラ現実実現の先にひそむ超現実の世界をあらわに。『雨をよぶ灯台』(思潮社、2020年)「〈母の布団に針を撒いた/(略)/病院の窓硝子に心臓が映った〉(「鯉は船に乗って進む」より)といった予測のつかない展開と鮮やかなイメージによって、どの詩も良質な映画を観るように楽しめると思います。目論んでいるのは現実離れしたおとぎ話ではなく、細部まで世界を凝視しあらわにする超現実の芸術。詩人の驚異的なビジョンと直感におののくこと必至」※『anan』2020年6月17日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2020年06月15日歌手の三浦祐太朗(36)が6月12日、声優の牧野由依(34)と結婚したことを発表した。三浦と牧野はそれぞれの公式サイトで「私事で大変恐縮ではありますが 私共、三浦祐太朗と牧野由依は、本日6月12日に結婚致しました事を ここにご報告させて頂きます」と報告。また「これからの人生力を合わせ、私達らしい歩みで 朗らかな家庭を築いていけたらと思っておりますので どうか温かく見守って頂けましたら幸いに存じます」とつづっている。三浦の両親といえば、三浦友和(68)と山口百恵さん(61)だ。各メディアによると友和は「今年3月の初めに長男祐太朗から由依さんを紹介され、結婚の意思を伝えられました」「2人が並んで私と妻の目の前にいることに、何の違和感もなく、心から祝福できる2人の姿が、そこにありました」といい、「きっと、幸せな家庭を築いてくれると信じています」とコメントしたという。80年に結婚した友和と百恵さん。今年で結婚40周年となるが、その愛はいまだ変わらないようだ。「2人は10年に1度、お揃いの結婚指輪を新調するそうです。また今でも月に1回以上は必ずデートしていて、共通の趣味である映画や旅行に出かけていると聞きます。子離れしてからその絆はさらに強いものになり、親戚からは『夫婦喧嘩を一度も見たことがない』と言われるほどです」(芸能関係者)友和は18年12月、夫婦円満の秘訣について本誌で明かしている。夫婦喧嘩をしないことについて「相性としか言いようがない」と述べたが、相性の良さだけで等閑にしたくないことがあるという。それは、感謝の言葉だ。彼の両親の介護をしている百恵さん。2人は認知症ではないが“要介護1”であるため、百恵さんは同じ敷地の別棟に住む2人に食事を作ったりしているという。友和はこう語る。「(三浦の)姉夫婦もちょくちょく顔を見せては世話をしてくれています。それでも妻は大変ですよ。病院は、妻が車で連れていっています。介護で自分の時間が削られるだけでもストレスになっているはずですから、ここは相性ですませず『ありがたく思っている』と、言葉に出して伝えています。なるべく妻が楽に介護できるようにしたい。それが夫の務めです。下の世話が始まったら、施設に入れることも今から考えています」また筋金入りのドラマファンである百恵さんは、彼の出演ドラマは全てチェックしているという。友和も笑いながらこう語っていた。「妻のドラマを見る目は厳しいですよ、真剣に見てますから。ただし、感想を言うときは、いいことしか言いません。妻は何に関しても、マイナスの発言がないんです。すごくいいです。助かります」言葉できちんと感謝を伝える。そして、パートナーの仕事に関してはマイナスな発言をしない。この夫婦ルールを継げば、祐太郎夫婦も円満間違いなし!?︎
2020年06月13日玉の輿に乗った美也(みや)の幸福と安寧が、中学の同級生・糸子(いとこ)との再会によってじわじわ脅かされていく…。そんな女の愛憎劇が、わたなべまさこさんの『秘密―ひめごと―』だ。裕福な専業主婦と“悪女”を生きる女。91歳のレジェンドが描く愛・憎・哀。「最初の発想は、出会った人の人生をためらいなく壊すことに満足感を得るような、生粋の悪女の物語でした。けれど、考えるうちに糸子の背景が見えてきました。タイトルに込めた“秘密”が何かは徐々にわかっていただけると思います。私自身もそれに思い至ったとき、彼女が人間として哀れでならなくなりました」見た目も地味で女性的な魅力に乏しかった糸子だが、次第に「魔性」的なつかみどころのなさが開花していく。とりわけ、彼女が放つ体臭は独特らしい。それに美也の夫や弟は翻弄されていくのだが…。「女性はそれを異様な臭いだと感じ、男性はえもいわれぬ匂いだと思う。彼女の武器のようなものですね。それがどう展開に関わっていくのかも読んでいただけたらと思います」人間心理の綾も描かれる白熱のサスペンス。全14回で完結する最後まで、目が離せない。絵のタッチもミステリアスで、ひと目でわたなべさんの作品だとわかる。また、西洋の洋館や上流階級の暮らしなどを、いち早くマンガを通して紹介してくれたひとりでもある。「時代ものや外国を舞台にした作品なら、参考資料や空想で補えるのですが、現代ものは、イマドキらしさをどう出すか、人物像やコスチュームに悩みますね」わたなべさんはいわずと知れた少女マンガ界のレジェンド。ホラーやサスペンス、ミステリー、怪異譚といったハラハラドキドキする作品を連綿と手がけてきた。特に“悪女”を描いたものは名作揃い。対照的なふたりの女性、出生の秘密、裕福さへの憧れなど、本作にちりばめられたモチーフは、マリサとイサドラが活躍した『ガラスの城』にも通じるものがある。「現実の生活では、理性が勝つので、普段抑えているものを創作の中では思い切り描くことができる。私の心の奥には、悪女に対する憧れがあるのかもしれませんね。なにしろ、悪女を描くことは面白いんです」現在は『Jour』(双葉社)で「中国怪異譚」を連載中。創作意欲はいまなお盛んだ。わたなべ先生の歴史的名作に触れてみたい人は、電子版をチェック。’52年に貸本マンガからキャリアをスタートさせ、今年で画業67周年を迎える。なかでも、わたなべさんの大きな功績は、西洋仕込みのサスペンスなどを取り入れた、それまでの少女マンガになかった物語を描いたこと。そのターニングポイント的な作品が『ガラスの城』(集英社)。現在は電子書籍のみの流通になるが、こちらを入り口にワールドをもっと楽しんで。『秘密~ひめごと~』美也と糸子の運命を追う。本作は集英社より9月下旬に電子書籍化を予定(価格未定)。連載は終了しているがマンガアプリ「マンガMee」で現在も購読可能(一部無料)。わたなべまさこ1929年、東京都生まれ。少女マンガの黎明期から活躍。代表作に『ガラスの城』『聖ロザリンド』など。女性マンガ家で初めて旭日小綬章を受賞。※『anan』2020年6月17日号より。インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2020年06月12日あのあやのさんの『人の息子』は、日本の里親制度や児童福祉の状況を題材に、心優しい独身男性と、境遇に負けず健気に成長する少年との交流を描くコミックだ。小さき者を守り抜く覚悟はあるか。血か絆かを問う、里親と里子の物語。“鈴木ササカマ”のペンネームで活躍している31歳のマンガ家・鈴木旭。彼のもとに届いたファンレターの差出人〈山本たかね〉という名前を見て、旭ははっとする。高嶺(たかね)は以前、旭が保育士をしていたころに実の母に捨てられ、児童養護施設へ送られた子だった。手紙を媒介に、ふたりは3年ぶりに再会。高嶺の境遇に心を痛める旭は、高嶺の里親になりたいと考え始めるが…。「私自身も子育て中で、子どもが育つ環境については思うことがいろいろあります。里親制度についてよく知っていたわけではないのですが、取材するうちに、単身者で、しかも男性だと里親になるのがとても難しいとわかりました。でも、夫や周囲のパパさんたちを見ていても、育児は男性も普通にします。子どもが好きで養育環境も用意できるのに、独身で男性だというだけで門前払いされる状況には違和感がありました」そこで旭のように、里親になるハードルが高い人物を据え、旭と高嶺が正式に里親里子になれるかを追った。ふたりの親交が深まるにつれ、制度の壁や周囲との価値観のずれなども浮き彫りに。高嶺が大人びた振る舞いをすればするほど、言葉にしない彼の孤独感に、胸が痛む。「職員さんが辞めたり、18歳になった年長の子どもたちが先に施設を出たり。常に“別れ”を意識する流動的な環境で育つわけですね。だからわがままになる子もいれば、過剰に達観してしまう子もいる。高嶺は後者のように描いていますが、旭といるときは安心して子どもっぽい面を見せたりする。そういう変化も描けたらいいなと思っています」第2巻は9月に刊行予定。果たして旭は里親の認定試験に合格し、一緒に住むことを叶えられるのか。「こんなマンガを描いていてなんですが(笑)、私は『泣ける』みたいに謳うエンタメが苦手で、編集さんとの打ち合わせでもそういうふうにしないと決めました。旭と高嶺がハッピーになり、読者もほっこりした気持ちになる世界を目指したいです」おそらく試練はまだ続く。だからこそ、ふたりを応援していきたい。『人の息子』1サイドストーリーとしてラブ要素もちょっぴり。旭は児童福祉司をしている美女の秋山さんを意識しているよう。秋山さんも少しずつ旭を信頼していく様に注目。講談社640円©あのあやの/講談社あのあやのマンガ家。東京都出身。元書店員、1児の母。少女マンガ誌への投稿、育児雑誌の連載などを経て現在、Webマンガ誌「Dモーニング」にて本作を連載中。※『anan』2020年6月10日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2020年06月04日三浦知良(53)と三浦りさ子(52)の長男・三浦りょう太(22)が芸能事務所「トップコート」に所属したと、6月1日に発表された。新たな門出にエールが上がるいっぽう、思わぬ形で注目を集めることとなっている。「トップコート」といえば、中村倫也(33)や松坂桃李(31)、菅田将暉(27)といった大人気俳優たちを抱える大手所属事務所。各メディアによると三浦は知人の紹介でオーディションを受け、所属が決まったという。昨年には木村拓哉(47)主演のドラマ「グランメゾン東京」(TBS系)にも出演していたりょう太。その本格的な芸能界進出に、Twitterでは《カズの息子さんトップコート入ったのか!》《キングカズの息子が倫也くんの後輩!!!!!!すごっ》《頑張って欲しいね!》といったエールが上がっている。いっぽう、りょう太は思わぬ形で注目を集めることとなった。「りょう」という漢字が機種依存文字であるため、ネットニュース記事にこんな言葉が躍っていたのだ。・スポニチアネックス三浦りょう(けものへんに寮のうかんむりなし)太(22)が1日付で芸能事務所「トップコート」の所属となった・スポーツ報知三浦●(けものへんに寮のうかんむりなし)太(りょうた、22)が、芸能事務所「トップコート」に所属したことが1日、事務所の公式サイトで発表された・ORICON NEWS三浦りょう太(りょう=けものへんに寮のうかんむりなし/22)が、芸能事務所「トップコート」に所属したことが1日、わかったこうしたメディアの「けものへんに寮のうかんむりなし」という説明は、大きな注目を集めることに。ネットでは、こんな声が上がっている。《三浦けものへんに寮のうかんむりなし太さん》《けものへんに寮のうかんむりなしって説明じわる》《けものへんに寮のうかんむりなし、ってアマテラスオオミカミみたいな神々しい名前になってしまってる》《草なぎ剛氏や李スンヨプ氏に続く逸材現る》機種依存文字のあるタレントといえば、草なぎ剛(45)が有名だ。当初は「なぎ」の字について、多くのメディアが「弓へんに前の旧字体その下に刀」と説明していた。だが最近では、そうした注釈もあまり見かけられなくなってきている。記事から「けものへんに寮のうかんむりなし」という言葉が消えるとき、それは彼が大スターとなったことの証明といえるのかもしれない。
2020年06月02日動物のレプリカ工場で働く主人公が残業中に、絶滅したはずのシロクマを目撃、その正体を追うデビュー作『レプリカたちの夜』。エリートとして温存されすぎ、73歳でデビューしたスパイの市長暗殺の行方を見守る『ざんねんなスパイ』。現実と二重写しになるような架空の世界を舞台にした長編を発表してきた一條次郎さん。『動物たちのまーまー』は、またも「よくまあこんなぶっ飛んだ物語を思いつくな」と感心しながら笑いが止まらない初の短編集だ。「私はプロットを練りあげ、設計図に従って作業をしていくタイプではなくて。小さな着想の、その世界に暮らす人物や動物になってみて、その様子や日常がどんなものなのかを実際に感じられないと書けないんです。また、登場人物たち全員の声がちゃんと聞こえてこない限り、そのお話はいかにも作り話っぽくなってしまい、自分でも好きになれません。短編にしろ長編にしろ、毎回そういうところから延々と考えるので、ずいぶん時間がかかる気もします」奇想や諧謔、言葉遊びのセンスは一條さんの十八番。そんな趣向に富んだ7編の中で、ご本人が特に気に入っているのは、「ヘルメット・オブ・アイアン」。芥川龍之介の『杜子春』の主人公のようにうまいことやってやろうともくろむ〈おれ〉が、仙人の鉄冠子(てっかんし)と出会って…。「そもそも、この現実世界はわからないことだらけだと私はいつも感じています。ずっと前から現実と非現実との関係をあれこれ考えていて、書いてみたその結果のひとつとして、こういう形になりました。ロシアのヴィクトル・ペレーヴィンという作家がそういった主題の作品をたくさん書いているのですが、読者としてとても波長が合います。そのせいか、作中のタクシー運転手の名前が、ヴィクトルになってしまいました」一見不条理な世界も、一條さんにとっては「自分にとって自然なものを自然に書いている」だけらしい。「もしかしたら世間のみんなは、この現実世界のことをちゃんとわかっているのかもしれない、わからないのは自分だけなのかもしれないとも思ったりもします。だとしても、自分にもどうしようもありません。病院へいってもだめかもしれません」テノリネコ、ネコビト、吸血鬼…。彼らに翻弄される世界は楽しい。いちじょう・じろう作家。1974年生まれ。2015年、新潮ミステリー大賞受賞作『レプリカたちの夜』でデビュー。絶賛された一方で「これはミステリーなのか」と物議を醸したという伝説も。『動物たちのまーまー』カバー装画は木原未沙紀。「写実的なタッチと非現実が合わさった絵。幻想的な空気がありありと感じられてすごい」と著者もお気に入りとか。新潮文庫630円※『anan』2020年6月3日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2020年06月02日人にあたってしまったり、関わり自体を持つのが面倒だったり…。人間関係を築くのが苦手なら、心の内を見つめる読書で、自分と対話してみて。ライター、ブックカウンセラーの三浦天紗子さんが、“セルフコミュニケーション”に役立つ本をご紹介!世間の物差しに迎合して人も自分もジャッジしない。対人関係が苦手な人は、そもそも主体となる自分自身とのコミュニケーションに問題があるのかも。その場合、自分との対峙を促す本が、自分への理解を深める一助になってくれそう。「自分で本を選び、意識的に読み進めないと進まない読書は、能動的な行為です。書かれている意味を意識的に掴もうとするので、自然と自分の感情や体験と向き合うことになります」と、三浦さん。内面を見つめるきっかけとして選んでくれた本が、韓国のイラストレーターが自問自答を繰り返す『あやうく一生懸命生きるところだった』。「韓国では、“お金持ちになってください”というCMのキャッチコピーが流行語になり、著者は“お金持ちになりさえすれば、あとはすべて上手くいく”と視野狭窄に陥ります。そして、本当に大切な、自分はどう生きたいのかということを見落としていたことに気づきます。世間が言う“当たり前”に自分を押し込めず、他人も、自分の枠に当てはめてジャッジしない。基本中の基本ではありますが、それが、いい人間関係を築くのには肝心です」三浦さんが自らにも問いかけたいというフレーズが、「仮に後れをとったとして、それはそんな大ごとだろうか」。「スピード感が求められる時代ですが、“なぜ、もっと効率よくできないのか”と自分の至らなさを責めても、意味がないんですよね。その人なりの速度を大事にしてほしいです」『あやうく一生懸命生きるところだった』ハ・ワン岡崎暢子・訳自分らしい生き方を見つける韓国エッセイ。韓国で25万部超えのベストセラー。イラストレーターと会社勤めのダブルワークをしていた著者が、40歳を目の前に突然、退社。自分を見つめ直し、自己嫌悪から抜け出す。ダイヤモンド社1450円三浦天紗子さんおすすめのもう3冊『やらない理由』カレー沢 薫自虐で人気の漫画家が自己肯定!?「32ある全エッセイが、“自分は浮気したいが、されるのは嫌”など、自己中心的なわがままから始まります。誰もが“理想の自分”を描きますが、著者は皆が理想に挫折することを見越し、努力すべきではない理由を読者に代わり発見。逃げ出すことを肯定してくれます。同時に、なぜ自分は“そうあるべき”だと考えるのか、思考実験もできます」。マガジンハウス1100円『まとまらない人坂口恭平が語る坂口恭平』坂口恭平さまざまな顔を持つ著者の自伝。建築家、作家、アーティストと、多方面で活躍する著者。「ご本人は自分の好きなものを何でもやる方式で、ひとつに集中することなく片っ端からやり、“やりたいことやったら、人付き合いとかいらないことに気づく”のです。“人に認められないほうがいい。…自分で認めてあげればいい”など、他人の評価が気になる人に刺さる言葉が見つかります」。リトルモア1500円『僕は僕のままで』タン・フランス安達眞弓・訳Netflixの人気者によるエッセイ集。『クィア・アイ』のファッション担当として人気を博す著者が幼少期から振り返り、自分を信じる強さを手にするまでを記す。「ゲイでパキスタン系移民3世。人種差別や性差別に傷つくたびに、自分の心に徹底的に向き合い、ベターな方法を模索します。そうした自分との対話が、本心を見つけ、自分自身と仲良くなるためにも大切なのだと感じます」。集英社2100円三浦天紗子さんライター、ブックカウンセラー。本誌のほか、『CREA』『サンデー毎日』や文芸誌などで著者インタビューや書評を担当。漫画にも詳しい。著書に『そろそろ産まなきゃ』(CCCメディアハウス)などがある。※『anan』2020年6月3日号より。写真・大内香織取材、文・小泉咲子(by anan編集部)
2020年05月29日笹生那実さんの『薔薇はシュラバで生まれる』は、’70年代の少女マンガ誕生をめぐり、元アシスタントの目線から裏話が楽しめる貴重な一冊。70年代少女マンガ。金字塔的作品が次々と生まれた舞台裏はこうだった。「もともと10ページくらいしかなかったマンガを、エピソードを足したり膨らませたりして1冊分に描き直しました。読者が『へえ~っ』と驚くような秘話をこぼさないようにしようと意識しました」くらもちふさこさんの『わずか5センチのロック』や山岸凉子さんの『天人唐草』についての感動的な秘話、樹村みのりさんが笹生さんにかけてくれた温かな励ましの言葉…。どの逸話も濃い!そして面白い!驚くのは、笹生さんご自身が〈私の頭の中が録画保存庫だった〉と振り返るように、ほぼ記憶だけで描かれているという点。「詳しく“記録していた”のは美内すずえ先生と大ファンだった中学生の私との初対面の話だけです。その手帳を発見したときには、我ながら『なんて不気味な中学生なんだ…』と驚きました(笑)。正確な時系列までは覚えていないので前後している部分もあるかもしれませんが、他のエピソードはすべて記憶だのみです」また、作中に登場する美内さんや故・三原順さんら諸先生方のご尊顔が、それぞれが描く絵にみなよく似ている。そんなワザも、読んでいて胸がときめくポイントだ。「当初、先生方のお顔をどうするかはすごく悩みました。当時のお写真もないのに、ご本人の似顔絵にするのは無理。というか、芸能人じゃないのだからそっくりに描いたところで読者には意味がないし…と悩んでいるうちに『そうだ、その時代に各先生方が描かれていた絵柄を使って先生のお顔を描こう!』と思いついたんです。読者もこれなら『この絵柄はまさしくあの先生』と、すぐにわかってくれるだろうと」本書を描く前から、’70年代当時の名作少女マンガを後世に伝えていきたいと思っていた、と笹生さん。「同時に、それらが描かれたのはどのような時代だったかを伝えることで、それぞれのマンガの良さがさらに十全に伝わるのではないかとも思いました。作品を読むだけではわからない時代背景も伝えたいという気持ちは、最初から強くありましたね」熱き制作現場や先生とアシスタントたちの連帯に、拍手喝采。さそう・なみマンガ家。32歳で引退後、同人活動などを経て32年ぶりに本書を出版。次は’60年代少女マンガをリスペクトした作品を描きたいとのこと。『薔薇はシュラバで生まれる~70年代少女漫画アシスタント奮闘記~』著者がアシスタントを務めた、巨匠たちの仕事ぶりと交流。創作秘話や笹生さんらアシさんたちの青春模様もたっぷりと詰め込まれている。イースト・プレス1091円©笹生那実/イースト・プレス※『anan』2020年5月27日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2020年05月25日奇想の天才作家・石川宗生さんの第2作となる『ホテル・アルカディア』は、またも突き抜けた博覧強記の世界がどーんと眼前に現れる。突き抜けた先に広がる無限大の奇想。読書の喜びに浸る理想郷(アルカディア)へようこそ。ホテルに投宿していた7人の芸術家たちが、引きこもりになってしまった支配人の娘プルデンシアを癒すために朗読会を開く、というところから物語は進んでいく。物語は、愛、死生、文化など7章からなる。「月に2本ずつショートショートの連載をすることになり、好きだった『千夜一夜物語』や『デカメロン』のような枠構造にすることを思いつきました。カルヴィーノの『見えない都市』にも影響を受けています」カルヴィーノのその作品は、収録されている掌編の数の配置に工夫があるのだが、石川さんも、そんなふうに数で遊んでみようと思ったそう。「僕は完全数を採用することにしました。7、6、5……と1まで順番に足していくと完全数の28になるのですが、掌編を大まかなテーマで区切って7編、6編……と配し、全体でひとつの完結した世界を表現してみようと挑戦しました。その過程で、愛や都市など世界の構成要素みたいなものとして、アトラスという章のテーマを7つ考え、分けました」また、美女プルデンシアのエピソードは、ジョン・レノンがインド滞在中に書いたというビートルズの楽曲の誕生秘話がベースだとか。「瞑想小屋から出てこなくなった女の子に、外に出ておいでよと優しく呼びかける曲『ディア・プルーデンス』。僕はその小説版でいこう、と。『古事記』の天の岩屋戸のようなイメージが重なるのも面白いかなと」各掌編は、意中の女性と“ファックする”ための練習相手がガイア(大地)だの、語り手が訪ね歩くさまざまな専門家たちの専門性が変わりすぎだの、どれも「よくもまあ、こんなことを思いつくな」の連続だ。「エッシャーのだまし絵のように、最初に決めた物語の枠自体も変化させていこうと思いました。本作の裏テーマに物語で世界一周というのがあります。現実の世界も、隣り合う国や地域はなだらかに文化や言語や人種が移り変わっていくものです。この作品でもそんなふうに、ゆるやかな変化のなかで各章を動かしていこうと。そのたくらみが成功しているといいのですが」いやもう、脱帽です。いしかわ・むねお作家、翻訳家。1984年、千葉県生まれ。オハイオ・ウェスリアン大学天体物理学部卒業。「吉田同名」で創元SF短編賞受賞、2018年、同作を収録した『半分世界』を出版。『ホテル・アルカディア』文学や芸術作品への言及やくすぐりが随所に。次回作は、’17年の中央アジア、コーカサス、東欧訪問の記録をまとめた旅行記を予定。集英社2000円※『anan』2020年5月27日号より。写真・土佐麻理子(石川さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2020年05月21日新宿二丁目のレズビアン・バーがつなぐ、ひと、思い出、運命。李 琴峰さんによる小説『ポラリスが降り注ぐ夜』。「新宿二丁目は、わずか1km四方ほどの面積に、セクシュアル・マイノリティのための店が約400軒も立ち並ぶ、世界でも稀有な繁華街です。台湾から来た私から見たら、いろいろな属性の人が立ち寄ったり、つながりを持ったりするちょっとしたコミュニティという印象でした」李琴峰さんの『ポラリスが降り注ぐ夜』で、物語のハブとなるのは、その二丁目にあるレズビアン・バー〈ポラリス〉。章ごとに主人公は入れ替わり、ある章でモブだった人物が別の章では大きな役割を果たす。北斗七星にちなんだ7つの連作で女性たちの人生の断章が描かれる。既存の小説では、二丁目といえば、ゲイタウンや男性同士の関係ばかりがフォーカスされてきたが、「かつて花街や赤線地帯だった興味深い背景もあります。なので私はいつかそうした歴史も重ねながら、この街に集う女性たちの物語として書いてみたいと思っていました」バイセクに警戒心を持つレズビアンの日本人女性〈ゆー〉、誰に対しても恋愛感情や性的欲求を持たないAセクシュアルゆえに理不尽な攻撃を受ける中国人女性〈蘇雪〉、自身の性と社会の差別に苦しみながらトランジション(性別移行)をしていく台湾人女性〈蔡曉虹〉…さまざまな性的指向と性自認を持つ女性たちの想いが吐露されていく。ひと口にセクシュアル・マイノリティと言っても、それぞれの認識はもっと複雑でデリケートなものだと改めて思う。「ある人は自分で決めたいし、ある人は決めたくない。絶えず揺らぎながら生きている人もいます。言葉は不思議で、ありように名前をつけることで定義できる面もあるけれど、一方ではその言葉に縛られてしまう苦しさも。諸刃の剣なんです。そうした切実さを避けず、リアリティをもって書きたいと思いました」台湾はアジアで最初に同性婚を認めたが、その法制化や社会の価値観にも大きな影響を与えたという〈ひまわり学生運動〉など、史実を踏まえた作品もあり、生々しく重い。だが李さんが何より危惧するのは、わかった気で他者をくくることだ。「マイノリティ同士でもすんなりわかりあえたりしない。必ずしも連帯できない。それは私が大事にしている問題意識で、これまで、あまり書かれてこなかったものだと思います」り・ことみ1989年、台湾生まれ。早稲田大学大学院日本語教育研究科修士課程修了。2017年、「独舞」で群像新人文学賞優秀作を受賞。’19年、「五つ数えれば三日月が」が芥川賞候補に。『ポラリスが降り注ぐ夜』著者の意向により本書の電子書籍の印税の一部が、新宿二丁目の足湯cafe&bar『どん浴』に寄付される。筑摩書房1600円※『anan』2020年5月20日号より。写真・中村ナリコ(李さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2020年05月18日文豪作品の空気感を踏襲しつつ、画の魅力を加味した世界へようこそ。マンガで文豪に親しもう!マンガやアニメの人気が追い風になり、若い世代を中心に、文豪や文豪の作品のブームが続いている。だがこれまでスポットが当たってきたのは、主に明治から戦後すぐぐらいまでの日本の小説だった。しかし、いよいよ世界文学にもマンガ化の波が起きてきた様子。今回は、原作の色を大切にコミック化した3冊をピックアップしてご紹介。村上春樹の短編「螢」とディストピア小説として有名なG・オーウェルの『1984年』を手がけたのは、これまでも世界文学のマンガ化に積的に挑んできた森泉岳土。フランスの文豪マルグリット・デュラスの作品の中でも特に有名な『愛人(ラマン)』に挑んだのはフランスのマンガ「バンドデシネ」の影響を感じる高浜寛だ。物語のエッセンスを自身の解釈で抽出しているので、原作とはまた違った感想を持つだろう。著名な海外文学作品のあらすじと読みどころを、面白おかしくまとめてくれている久世番子のコミックエッセイは、原著を読むハードルをぐっと下げてくれる。文豪の世界にアプローチするきっかけになりそう。水と墨と楊枝で描かれる、繊細なモノクロームの魅力。『村上春樹の「螢」・オーウェルの「一九八四年」』マンガ:森泉岳土原作:村上春樹、G・オーウェル河出書房新社1100円©森泉岳土/河出書房新社人の心情をわかったふりをして腑分けすることを避け、それゆえにいかようにも想像が広がる村上春樹の世界。歴史や過去が修正され続ける徹底した監視社会下でささやかな抵抗を試みるウィンストンの変化が怖くなる世紀の傑作。マンガで読んでも最高だ。原作の雰囲気を見事に再現。ずっと眺めていたくなる。『愛人 ‐ラマン‐』マンガ:高浜寛原作:マルグリット・デュラスリイド社(トーチ comics)1500円©高浜寛/リイド社原作は、1984年にフランスの名誉ある文学賞「ゴンクール賞」を受賞した、M・デュラスの自伝的小説。貧しいフランス人少女と裕福な華僑の青年との切なすぎる初恋物語は感涙必至だ。オールカラーで描かれたひとコマひとコマがうっとりするほど美しい。有名すぎる文豪作品にも本書なら気軽に触れられる。『よちよち文藝部 世界文學篇』久世番子文藝春秋1000円©久世番子/『よちよち文藝部 世界文學篇』文藝春秋『高慢と偏見』『風と共に去りぬ』『百年の孤独』などタイトルもあらすじも知っているが、実はちゃんと読んだことがないという人率が高そうな名作たち。本書ではそれらを読破するための面白注目ポイントをガイドしてくれているので、今度こそ制覇できるかも。※『anan』2020年5月20日号より。写真・中島慶子文・三浦天紗子(by anan編集部)
2020年05月14日女優の仲里依紗(なか・りいさ)さんが、2020年5月9日に自身のインスタグラムを更新。自撮りショットを投稿すると、多くの人が仲里依紗さんの『鼻の下』に注目しました。仲里依紗の鼻下に注目!この日、仲里依紗さんは少々お疲れの様子で「髪も肌も唇もボロボロだけど」とコメント。それでも「アプリでなんとかなる時代に感謝」とつづり、色合い鮮やかな自撮りショットを公開しています。 View this post on Instagram A post shared by Riisa Naka / 仲 里依紗 (@riisa1018naka) on May 9, 2020 at 2:21am PDTクールな表情で決めた仲里依紗さんですが、鼻の下には何やら物体が…。これについて、仲里依紗さんは「鼻クソじゃないよ」「勝手にアプリが付けたよ」とお茶目に説明。「なぜこの位置についてしまったのか」と頭をひねっているようでした。投稿には「かわいい」「かっこいい!」と称賛の声と、謎の加工についてのツッコミも多く寄せられています。・かっこいい!最初、画面にゴミが付いているのかと思いました!・変な加工がされても、きれいなのがすごい。・口にピアスしてるのかと思った。驚いた。そんな仲里依紗さんは、2020年4月1日に自身のYouTubeチャンネル『仲里依紗です』を開設。かなりぶっ飛んだ企画力が話題となり、着々と登録者数を伸ばしています。まだまだ続きそうな『おうち時間』。仲里依紗さんのYouTube動画を見ながら過ごすのも楽しそうですね。仲里依紗YouTube動画『おうちでサウナ屋さん』仲里依紗と中尾明慶はケンカ中でも仲よし?不倫に関する考えかたがスゴい[文・構成/grape編集部]
2020年05月11日日本のソウルフードおにぎり。中の具材を変えればアレンジも未知数ですが、もっともっと味変してアレンジを楽しみたい方にオススメなのが、ご飯に天かすと青のり、刻んだ大葉を混ぜて作る「まるで天むす!天かすと青のりのおにぎり」です。天かすおにぎりは「悪魔のおにぎり」とも呼ばれて大評判にもなりましたね。温かいご飯に混ぜこんだ天かすから、ジワジワと油分が米粒に染み出して、その味わいはびっくり。まさに天むすです。おにぎりを食べる時ってなんだかワクワクした気持ちになりませんか。なかなかお出かけができなくても、天むすのような味わいを楽しむことができるこちらのレシピで、おうちでピクニック気分を味わうのもなかなか良いものです。混ぜて握るだけで簡単に作れるのでぜひ試してみてくださいね。悪魔‥の名の通り癖になる美味しさですよ!■まるで天むす!天かすと青のりのおにぎり調理時間 10分 1人分 201kcalレシピ制作:金丸 利恵<材料 2人分>ご飯(炊きたて) 茶碗に軽く2杯分天かす 大さじ2青のり 小さじ2しょうゆ 小さじ1~2大葉 3~4枚<下準備>・大葉は軸を切り落とし、粗みじん切りにする。<作り方>1、ボウルにご飯、天かす、青のり、しょうゆを入れ、サックリと混ぜ合わせる。ご飯は1人100~120gくらいで少なめです。ご飯が多い場合は混ぜる材料を調整してください。2、(1)を4等分にしてラップの上に置き、それぞれ丸く丸める。器に盛り、大葉を飾る。忙しいときはおにぎりにしないで、お茶碗によそってもいいですね。混ぜて握るだけの簡単レシピ。おにぎりの奥深さを知る新しいレシピです。なかなかお出かけができなくても、おにぎりを食べる時のワクワク感を大切に、気分転換も兼ねてぜひ作ってみてくださいね。
2020年05月10日マンガを投稿するツイッターのフォロワー数は54万人超え。現在は、ピクシブなどの連載、ウェブサービスの「note」でも発信しているもちぎさん。毒親育ちといった境遇にも負けず、おのれのセクシュアリティと向き合い、健気に幸せの足元を固めてきた。一読すれば、その優しさに惹かれること間違いなし。『ゲイバーのもちぎさん』は、ゲイバー勤め時代の回想を軸にしたエッセイコミックだ。「ノンケ(異性愛者)とかタチウケ(性行為時のポジション)とか、ゲイ業界で当たり前に使っている符牒を、担当さんやノンケの方々に話したときにすごく面白がってもらって、逆に自分自身が驚いたくらいです」好奇心はくすぐられるけれど、同時にハードルが高くも感じられるゲイやゲイバーのカルチャー。その実相をユーモアたっぷりにガイドしながら、自身の経験や傷をも率直に明かしてくれるところにぐっとくる。「自分なりに消化したい、世間の反応を見てみたいという感情があったのは確かです。ゲイ業界で完結したり、仲のいい子たちだけで慰めあったりするのではなく、自分の培ってきた人生経験の偏りに気づくためにも、もっと広くの人に知ってもらいたかったんですね…。『同じ立場だから誰もが共感できる』というほど人間は単純ではないと思うし、あたいが描いているのはあくまであたい個人の経験や考え。マイノリティや同環境の人たちの代表のような主張はしないように自戒しています」ひとの真心を感じるエピソードが多いが、なかでもバーのママ、イチガヤさんがもちぎさんにかけた〈あんたはここで自分を愛して一から堂々と働いてみなさい〉という言葉には、思わず涙腺がゆるむだろう。「弱っていた自分を弱いまま受け止めてもらった。いまの社会にはなかなか見当たらない場所を差し出してもらえた感じでうれしかったです」白くてふわふわ(なのか?)なフォルムで描かれているもちぎさん。「人間って描くのしんどいので、よく描くキャラは楽にしておこうかなと思った次第です。あと、あたいは北半球一美しいゲイなので(自称)、それを表現するにはあのフォルムにせざるを得ないというか(笑)」そんなナゾの見た目も含め癒し効果抜群のシリーズに今後も期待。『ゲイバーのもちぎさん』1マンガは独学。いまはタブレットを使うが、最初のころはボールペンで紙に描き、その写真をネットに上げていたのだという。特別収録のページもたっぷり。講談社1000円©もちぎ/講談社もちぎ作家兼学生。ギリギリ平成生まれ。ネチコヤン(猫)2匹と暮らす。彼氏募集中。『ゲイ風俗のもちぎさん 2 セクシュアリティは人生だ。』も発売に。※『anan』2020年4月29日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2020年05月02日俳優の三浦春馬が26日、自身のインスタグラムで、ゆずの「からっぽ」を弾き語りしている動画を公開した。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため外出自粛が求められている中、SNS上で芸能人がリレー形式で歌唱動画を公開する「うたつなぎ」が展開中。このたびJUJUから三浦春馬へとつながった。三浦は「僕は中学時代に友人に誘われてギターを始めさせてもらいました。そのときによく弾いていたのがゆずさんの楽曲で、今日は僭越ながらそんな大好きなゆずさんの『からっぽ』という楽曲を弾かせていただきます」と説明してから、弾き語りを披露した。三浦の弾き語りに、「ギターも歌も素晴らしい」「歌上手い」「歌うますぎます」「元気出ました」「心が温まりましたありがとうございます」「素敵な歌声ありがとうございます」「弾き語り最高です」「歌もギターも素敵」などと絶賛の声が寄せられている。なお、三浦は「どなたに繋ぐか悩みに悩んだ結果…おこがましいとは思いましたが、北川悠仁さんにお願いをさせていただきましたとても光栄です悠仁さんおねがいします」とゆずの北川悠仁にバトンをつないだ。
2020年04月27日詩の投稿に熱中する男子高校生のストーリーを描いた小説『坂下あたると、しじょうの宇宙』の著者・町屋良平さんに作品に対する思いを聞きました。詩作に懸ける男子高校生ふたりが友情や才能をめぐり、問いかける。佐藤ダブリスという筆名で詩の雑誌や小説投稿サイトに自分の詩を投稿していた高校2年生の佐藤毅。彼のそばには、毅が天才的な文学的才能の持ち主だと信じてやまない親友の坂下あたるがいる。ふたりが投稿しているサイトやSNSでもあたるはちょっと知られたスターだ。「そのあたるの言葉に刺激されて、毅も詩を作ります。ただ、その後、彼らの関係がどう変わっていくのかは僕自身もわからないまま、書き進めました」ある日、小説投稿サイトに〈坂下あたるα〉というあたるの偽アカウントが登場してくる。本家の作品やレビューの中の言葉を少しだけ変えてアップするという行動を繰り返す偽あたるの存在によって、ネット界隈はざわつき、毅とあたるの関係までもがぎくしゃくし始め…。「AIに作品を乗っ取られる事件が起きるのは予感があったのですが、ふたりの関係の変化は僕自身書いていていちばん意外なところでした」現実に人工知能に小説を書かせるソフトもあり、絵空事ではない。「AIがいつかすごく面白い作品を書くのかなと、僕自身、とても興味深いんですよね。ただ、小説っておそらく書かずにはいられないという初期衝動も大きくて、そういうモチベーションをAIは持ちうるだろうかとも思ってしまう。僕が好きなのはみな、いびつさがある作品なんです。それは生きるという試行錯誤の中で生まれるものだし、創作に関しては案外楽観視しています」最果タヒさんや文月悠光さんら、いま注目を集めている若手詩人たちの作品が、多く引用されている。「特に中尾太一さんや、本作には織り込めなかったけど暁方ミセイさんは本当に好きで。『詩とかわからないから』と自分の興味の外にあるものに人は案外冷たいよなというのが僕の長年のフラストレーション(笑)。なので、あたるの心情とシンクロしながら、若い人がもっと小説や詩の世界に入ってきてくれたらなという“祈り”を織り込みました」とても意味深なタイトルは、「自分の中では、詩情と至上がまずあり、でもひらいたら、ダブルミーニングやトリプルミーニング…もっと言葉の可能性があるなと。作中でもあえてひらがなを使うのは、僕自身がひらがなが好きだからですね」町屋良平『坂下あたると、しじょうの宇宙』詩の投稿に熱中する高2の佐藤毅。親友で文学的才能のある坂下あたるや彼の恋人の浦川さとか、京王蕾らとのザ・青春的丁々発止も楽しい。集英社1600円まちや・りょうへい1983年、東京都生まれ。2016年に『青が破れる』で文藝賞を受賞しデビュー。‘19 年、『1R1分34秒』で第160回芥川賞を受賞。他の著作に、『ショパンゾンビ・コンテスタント』など。※『anan』2020年4月29日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2020年04月23日2015年にノーベル文学賞を受賞したベラルーシのジャーナリスト、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ。第二次世界大戦の独ソ戦に従軍した女性兵士や関係者など500人以上に取材し、まとめた『戦争は女の顔をしていない』は、世界的な評価を受けているノンフィクションだ。そのマンガ化に挑み、大きな反響を呼んでいるのが、小梅けいとさん。洗濯兵、狙撃兵、書記など、さまざまな任務に就いた女性たちの証言はどれも心を揺さぶられるものばかり。1巻には7話が収録されている。「たとえば、夫婦で一緒に出征していて、戦死した夫の遺体を国に運んでくれるよう前線の総指揮官を説得する妻の回想や、特別な石鹸で洗濯をしていたら爪が抜けてしまったといった経験など。この本の入り口として印象的で多く関心を集めたエピソードをまず拾いました」大戦中、女性兵士は存在したが、最前線で戦う役目をも担ったのはソ連だけだそう。生理中も経血処理用品はおろか下着の配給さえ配慮はされず、血はしたたり落ちるまま。戦争は女性たちにあまりに過酷だった。「従軍して最初のころは、男みたいに振る舞おうと思っていた女性兵士たちが、数か月したらお化粧をしたくなったり、配給される砂糖を少し取っておいてヘアセットに使ったり。人間らしく生きることって消せないんだと思えていじらしかったです」当時の状況など、勉強しなければいけない部分は多い。兵士たちのロシア帽や軍用コートなども、監修者からリアルなディテールなどを教わり正確を期して修正したりもする。美少女キャラクターを得意とする小梅さんの絵の愛らしさに救われる部分もあるが、原作には極力忠実に描かれており、内容は重い。それでも続きが読みたくなる。「当時の音声テープが聞ければ声のトーンなどからさまざまな類推もできるんですが、実際は文字しかないので、感情を自分なりに想像して…というふうにならざるを得ない。可能なら、2巻以降は原作者の登場するエピソードを多く取り上げて、女性兵士たちの声がより際立つように、また作品としての背骨を持たせたいと思っています」小梅さんは、このマンガをきっかけに、原作にもアプローチしてもらえたら本望、と語っている。こうめ・けいとマンガ家、イラストレーター。山口県生まれ。京都大学大学院工学研究科中退。2000年にデビュー。代表作に『狼と香辛料』(全16巻)。『戦争は女の顔をしていない』1原作/スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ監修/速水螺旋人戦争の中にも、愛や友情、暮らし、希望があったことが、ひしひしと伝わってくる。Webマンガサイト「ComicWalker」で連載中。KADOKAWA1000円©Keito Koume 2019Based on WAR’S UNWOMANLY FACE by Svetlana Alexievich©2013 by Svetlana AlexievichJapanese comic edition published by arrangement with Sevetlana Alexievich in care of Literary Agency Galina Dursthoff, Koln, Germany through Tuttle-Mori Agency, Inc., Tokyo※『anan』2020年4月22日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2020年04月18日愛と性と生殖という、女性がいつか直面する問題に切り込む意欲作、高瀬隼子さんによる小説『犬のかたちをしているもの』。「セックスをしないでも仲のいい、同棲中のカップルというのがまず浮かんできたんです。展開はそのつど考え、『こうだったらもっとつらいだろうな』と薫が思うような状況に、少しずつ追い込んでいきました」高瀬隼子さんの『犬のかたちをしているもの』の主人公は、〈わたし〉こと間橋薫(まはしかおる)。卵巣の病気をきっかけに性交に抵抗を感じるようになり、それで別れた恋愛も経験している。〈セックスしなくなるよ、わたし〉と言う薫に、いまの恋人・郁也は〈薫のこと、好きだから大丈夫〉と答えてくれた人。実際、セックスレスになってからの方がずっと長い。そんなある日、郁也は、自分との子を妊娠している〈ミナシロさん〉という女性に、薫を引き合わせる。ミナシロさんから「産むけれど、薫と郁也にもらってほしい」と告げられ、薫はあらためて、愛や子どもを持つことの意味を考え始める。「薫、郁也、ミナシロさん…、それぞれの立場に身を置いてみたら、どの葛藤も困惑もわかるというか、彼女たちが『こうなったかもしれない自分』に思えたんです」郁也とミナシロさんは金銭を介した性のみの関係で、ふたりの間に愛はない。それでも、薫の気持ちは千々に乱れる。また、ミナシロさんの数々の言葉にハッとする読者も多いだろう。たとえば〈わたしは子どもを育てないけど、産むわけだから、なんか、クリアした感じ〉。出産も、女性自らが望んで、というだけでなく「なんとなくそうすべき」と思いがちなことだ。女性というだけで、当たり前のように課されてきた役割やタスクへの違和感を問いかけてくる。「子どもの頃から友だちが『いつか結婚したい、子どもが欲しい』と無邪気に言うのがよくわからなかったんです。それは自分の親とかを見ていて、ひとつの理想として『あんな人生が欲しい』という意味なんでしょうが、『子どもがいる人生が欲しい』と『子どもが欲しい』は、重なる部分はあっても、実は別の話という気がするんですよね」本書には、女性にとってのたくさんの問題提起が含まれている。「読者からの感想を見て、確かに女性の苦しさを書いていたのだとあとから気づきました。これからもそうしたテーマで書いていきたいです」たかせ・じゅんこ1988年、愛媛県生まれ。立命館大学文学部卒。2019年、本作で第43回すばる文学賞を受賞し、デビュー。次回作は、歩きスマホの問題にもの申す作品になる予定。『犬のかたちをしているもの』愛のあるセックスとは何か。したくない気分の相手に性行為を求めるのは愛と呼べるのか。性なき愛は可能か。自問自答しながら読みたくなる。集英社1400円※『anan』2020年4月15日号より。写真・土佐麻理子(高瀬さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2020年04月10日女優の仲里依紗(なか・りいさ)さんが、2020年4月8日に自身の公式YouTubeチャンネル『仲里依紗です。』を更新。カバンの中身を公開し、「すごすぎる」と話題を呼んでいます。仲里依紗のカバンの中身に驚きの声続々この日、『女優の抜き打ち 持ち物検査』と題し、カバンの中身を公開する動画を投稿した仲里依紗さん。概要欄には「今までずっと事務所に止められていたのだけど」とつづり、いつも持ち歩いているという重そうなバッグとリュックサックの中身を紹介しています。女優の抜き打ち持ち物検査まず、バッグからは帽子やタブレット端末、充電器、サングラス、財布、タッパーに入ったりんご、アーモンド、エコバッグ、マッサージ器具3点、ポーチといったアイテムが次々に登場。その量の多さに「こんなに入っていたのか…」と本人も驚いた様子を見せます。一方、ネオンカラーの派手なリュックサックにもトレーニングウェアや靴、美顔器など多くのアイテムが入っていました。改めて自身の荷物の多さを実感した仲里依紗さんは「多分ね、女優一、荷物が多い」とお茶目な予想をしています。動画を見た人からは驚きの声が殺到。このほか、仲里依紗さんの私物を見られたことを喜ぶ声も寄せられています。・荷物が多くてびっくりした!女子力が高いね。・持つだけで筋トレになりそう。・里依紗さんのバッグの中身を見られるなんて貴重すぎる!ありがとう!!Youtubeでも、飾らない姿を見せてくれる仲里依紗さん。これからも、ファンを驚かせる動画を投稿してくれるのではないでしょうか。仲里依紗と中尾明慶はケンカ中でも仲よし?不倫に関する考えかたがスゴい[文・構成/grape編集部]
2020年04月10日