11月12日公開の映画『恋する寄生虫』にW主演する林遣都さんと小松菜奈さん。限られた取材時間の中でも、ものづくりへのひたむきな姿勢が窺える二人は、“恋”ד虫”という一風変わったテーマにどうアプローチしたのか。自分と向き合い、受け入れることも大事だと思った。――林さん演じる潔癖症の高坂と、小松さん演じる視線恐怖症の佐薙(さなぎ)が恋に落ち、そして“虫”によって予想外の展開を見せる異色のラブストーリーですが、初めて脚本を読んだ時はどう思われましたか?林遣都:これまであまり演じたことのないジャンルの作品で、最初は、このファンタジックな世界観を生身の人間が表現するのは難しそうだな…と。でも共演するのは小松菜奈ちゃんで、監督は話題の映像作品を手掛けてきた柿本(ケンサク)さんだと聞き、新たな題材に挑戦するにはとても心強いメンバーだと思いました。高坂と佐薙の心の変化を丁寧に、繊細に描くことで、二人をより身近に感じられると思い、高坂の人生をしっかり自分の中に落とし込まなければ、と気合が入りました。小松菜奈:私は、人間に寄生して生きようとする虫と、それを理性で止めようとする人間の関係性みたいなところに面白さを感じました。感情的にぶつかり合うシーンでも、まずは現場に行って演じながら作っていくという演出のスタイルがこの物語には合っていて、頭で考えるのではなく、心が動いていく様子をリアルに表現したいなって。林:菜奈ちゃんと柿本監督は感覚派でもあり、現場で起こることを楽しんでいらっしゃいました。みんなでたくさん話し合い、同じ方向を見て撮影ができたと思います。小松:さらに柿本監督のCG編集によってどう広がっていくのかを楽しみにしながら完成作を観たのですが、高坂の部屋から始まる冒頭のシーンからこの作品の世界観に引き込まれて、ワクワクしました。そして二人の小さな世界観の中に、ぎっしり詰まった感情がちゃんと表現されていたんです。――“恋”ד虫”の斬新な掛け合わせに、共感する部分は?林:僕自身は潔癖症ではないけど、高坂の人とのコミュニケーションが苦手な部分には共感しました。でも無理に自分を変えたり、他人に合わせたりせず、自分と向き合って受け入れることも大事だと、この作品を通して思ったんですよね。考えすぎたり、孤独を感じやすい世の中でもあるので。小松:私は、実は以前からずっと気になっていた「目黒寄生虫館」に行こうとしたことがあって。その時は休館で行くことができなかったのですが、その数日後にこのお話をいただいたので、すごい!運命かもって(笑)。もともと寄生虫とか深海魚とか、未知なものが好きで。――コロナ禍になる前に撮影されたそうですが、奇しくも今の時代にリンクする部分も多くて…。小松:潔癖症やマスク越しのキスなど最初はピンとこなかったので、先取りした感じはありましたね。――ちなみに今年もあとわずかですが今年のお二人のトレンドは?林:メジャーリーガーの大谷翔平選手。異次元な活躍を同じ時代に見られるというのはすごいです!小松:私は、Googleマップでの仮想旅行。今までは作品が終わる度に海外旅行でリセットしていたのですが、それができなくなったので。国内外、行きたい場所にピンを刺していたら引くぐらいピンだらけになりました(笑)。はやし・けんと1990年12月6日生まれ、滋賀県出身。2007年主演映画『バッテリー』で俳優デビュー。今年7月には、主演映画『犬部!』が公開に。また出演映画『護られなかった者たちへ』が現在公開中。こまつ・なな1996年2月16日生まれ、東京都出身。主演映画『ムーンライト・シャドウ』が全国各地にて現在公開中。映画『余命10年』が2022年の春に公開を控えているなど、活躍中。トップス、ベルト、ジュエリー すべて参考商品(以上シャネル/シャネル カスタマーケア TEL:0120・525・519)パンツ 参考商品(ラムシェ/ブランドニュース TEL:03・3797・3673)ブーツはスタイリスト私物『恋する寄生虫』極度の潔癖症で社会に適応できずに生きてきた高坂賢吾は、視線恐怖症の高校生・佐薙ひじりの面倒を見てほしいという奇妙な依頼を受ける。やがて、ともに孤独を感じていた二人は恋に落ちるが…。11月12日より全国ロードショー。※『anan』2021年11月17日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)スタイリスト・菊池陽之介(林さん)遠藤彩香(小松さん)ヘア&メイク・主代美樹(GUILD MANAGEMENT/林さん)小澤麻衣(mod’s hair/小松さん)取材、文・若山あや撮影協力・バックグラウンズ ファクトリー(by anan編集部)
2021年11月15日劇場公開前から予告編の再生回数が異例の340万回を超え、上映館数も一気に拡大するなど、大きな注目を集めている話題作『梅切らぬバカ』。そこで、本作についてこちらの方にお話をうかがってきました。塚地武雅さん【映画、ときどき私】 vol. 429「演技が上手い芸人ランキング」には必ず名前が上がる塚地さん。今回は、母親と自閉症を抱える息子が懸命に生きていく姿を描いた本作で、「忠さん(ちゅうさん)」こと息子の忠男を演じています。役作りの過程で初めて知ったことや50代を目前にしたいまの心境、そして理想のお嫁さん像などについて語っていただきました。―今回は本当に難しい役どころだったと思いますが、脚本を読まれたときのお気持ちはいかがでしたか?塚地さん最初は、かなり不安でした。というのも、お笑い芸人である僕が登場したら、作品の邪魔になってしまうと思ったからです。いわゆる無名の役者さんのほうがより本物に見えるんじゃないかなとも感じたので、「僕が出たらマイナスになりませんか?」と監督に相談したこともありました。そしたら、監督から「そんなことはまったくないので、いままで通り、役に対する真面目な姿勢とこだわりを持って忠さんを膨らませてほしい」と。それなら全力でやろうと思って、受けることにしました。―思わず塚地さんであることを忘れてしまうほど、忠さんそのものだったと思います。塚地さん観てくださった方々が、僕を見ると「忠さん!」と呼んでくださるんですが、役柄の名前で呼ばれるのはうれしいですね。―今回は、役作りのために自閉症の方々やご家族とも面会されたそうですね。実際に会われてみて、いかがでしたか?塚地さんグループで住まわれているところを訪問させていただき、いろいろなお話を聞かせてもらいました。自分の周りに自閉症の方がいなかったこともあり、知識がまったくなかったので、行動を予測できないところが実はちょっと怖いと思っていたんです。でも、この映画を通じてさまざまなことを知っていくうちに、ただ喜怒哀楽の表現がストレートなだけなんだということに気づかされました。そんなふうに、自閉症の方の性格や行動パターンを理解すれば、見方は変わるものなんだなと。いままで自分が抱いていた印象は、あくまでもこちらの勝手な先入観で作り上げられているものだったと知ることができました。自閉症の方との関わりを通して、しっかりと役に臨めた―ということは、役へのアプローチもかなり変わったのでは?塚地さんそうですね。たとえば、自閉症の方の大半が忠さんと同じように、時間に正確だったり、ものすごい几帳面な性格だったりするというのは驚きました。そういったさまざまな特徴を知ったうえで、しっかり役作りに臨めたので、自閉症のみなさんと会う前と会ったあとでは、演じ方もかなり変わったと思います。―塚地さんは文字や数字に色がついて見えたりする「共感覚」の持ち主で、珍しい現象とされているそうですが、ご自身が演じる役を色で考えることもあるのでしょうか。塚地さん子どもの頃から、名前と人が合わさると色は見えますね。でも、ただ色が見えるだけ。この話をすると「私って何色ですか?」と尋ねられることも多くて、「その色はどういう意味ですか?」と聞かれちゃうんですが、僕も理由は何もわからないんですよ……。―オーラが見える人と間違えられているのでは?塚地さんそうなんですよ!「わからない」と伝えると、毎回がっかりされるので、それが嫌でだんだん僕も言わなくなってきてますね。―確かに、それはちょっとつらいですね。塚地さんイメージとしては、着ている服の色みたいに見えるだけなので、「あの人は赤いシャツを着てる人」くらいの感覚です。役に関しても色は見えますが、それを役作りに投影することはないです。―ちなみに、忠さんは何色ですか?塚地さん青ですね。だからといって、クールに演じようとか、そういうわけではないですよ。でも、見えることは見えるんです。―すごく興味深いです。意味はないということは、この機会にみなさんにもちゃんと知っておいてもらえるといいですね。塚地さん色を言ったあと、「ということは?」となるのが、本当に怖いです(笑)。ウケるためなら何でもできるが、役者の仕事は不安だらけ―塚地さんはご自分の出演作は毎回観たくないと思うそうですが、本作はすでにかなりの反響があるので、今回は自信を持ってお届けできるのでは?塚地さんいや、ないですね。それよりも、「イケメン俳優かアイドルでないと予告編の再生回数がこんなに行くことはないですよ」とか「予告編だけで泣けた」とか言われて、その方々が本編を観たときに「あれ?」となったらどうしようと逆に不安しかありません。―みなさんの期待値が上がりすぎてないか、いままで以上に心配になっている感じですか?塚地さんまさにその通りですね。とはいえ、いつも不安な気持ちはあります。撮影中も監督と役者さんはモニターでチェックをされていますが、僕はそれさえも見ることができません。「ああ、俺が邪魔してるわ」と思っちゃうので。だから、試写とか見てられないですね。ほかの方のシーンは「素晴らしいな」と楽しめるんですが、自分が映ると「登場するな!」と言いたくなりますから(笑)。―コントのときも、そうなりますか?それとも、役者のときは別の感覚なのでしょうか。塚地さんそう言われたら、コントのときはしっかりチェックしてますね。たとえば、「もっとこの表情をしたほうがウケるな」とか「この画角ならこっちの動きのほうがいいな」とか考えますから。ウケるためなら何でもできるので、欲深い人間ですね(笑)。―つまり、基準となっているのは、ウケるかどうかであると。塚地さん僕のなかで大きくは一緒ですが、分けているとすれば、映画やドラマはリアリティで、コントはどこかファンタジー。役者のほうはリアルな自分により近いから見ていられないのかもしれないですね。加賀まりこさんは、本当のお母さんのようだった―なるほど。リアルといえば、今回は加賀まりこさんとのかけあいは本当の親子のようでした。現場での様子はいかがでしたか?塚地さん段取り的なリハはしましたけど、本番はほぼアドリブ。僕は決められたルーティンをひたすらこなしているだけで、それを加賀さんがサポートするという流れでした。特別なことをしているわけではないのに、ちゃんと親子に見えるのは、加賀さんの懐の深さと慈愛に満ちた母性のおかげだと思います。加賀さんのお芝居は、本当にすごかったです。―撮影以外にも、印象に残っている加賀さんとのエピソードがあれば、教えてください。塚地さん役柄についてのアドバイスはもちろん、「一人で大丈夫?」「ちゃんと食べてる?」などプライベートの心配までしてくださって、お母さんのようでした。加賀さんの周りの方もこの作品を観てくださっていたようで、あるとき「私の友達が塚地くんのことを褒めていて、『素晴らしい役者さんと共演できてよかったね』と言ってたわよ」と教えてくださったことがありました。で、それを言ってくださったのが女優の浅丘ルリ子さん(笑)。そんなすごい方に言ってもらえる立場じゃないのに、と驚いたこともありました。―それはかなりすごいですね。塚地さんあとは、天海祐希さんも観てくださっていて、ドラマでご一緒したときに現場で「嘘がなくて、めちゃくちゃよかったよ。淡々としているけど、人生ってああいうものだから」と熱弁してくださったときもうれしかったです。でも、加賀さんがよかったという意味で、僕がよかったわけではない可能性もありますから……。まだ、認められませんね。―ただ、浅丘さんと天海さんは嘘をおっしゃるタイプではない気がします。塚地さん確かに、それはありますね。でも、公開されて観てくださったみなさんの声を聞くまでは、とにかく不安で仕方ないです。バカがつくほど好きなのは、15年追いかけているK-POP―忠さんといえば、几帳面で分刻みのルーティンをこなす性格。塚地さんにも毎日絶対に欠かせないルーティンはありますか?塚地さん朝は起きなくてはいけない時間の30分前に起きて、まずお風呂にお湯を溜めます。ボタンを押したら二度寝して、お風呂の準備ができたら半身浴を15分ほどするのが毎朝のルーティンです。家に帰ってきたら、まず玄関で「ただいま」と言います。もちろん、一人ですけどね(笑)。そのあと、ソファに座って大声で「よいしょー!」と必ず言うんですが、そこで自分のスイッチをオフにして一日を締めています。ただ、たまに間違えてマンションのエントランスで「よいしょー!」と言っちゃって焦ることもありますが……。―(笑)。では、スイッチをオフにしたあとの楽しみといえば?塚地さん韓流ドラマとか、韓国のオーディション番組を欠かさず見ています。―忠さんはバカがつくほど梅を大切にしていますが、塚地さんがバカになってしまうほど好きなものといえば?塚地さんやっぱりK-POPは大好きですね。15年くらい前に、周りから勧められて見た東方神起がきっかけでしたが、そこからはCSのチャンネルをいくつも契約して、K-POPも韓流ドラマも片っ端から見ています。最近、BTSが急に盛り上がっていますけど、僕はデビュー当時からずっと見続けていますからね(笑)。あとは地方ロケの前後に自分の時間を取って、ご当地名物を食べたり、街を散歩したりするのが、好きな時間の過ごし方です。50代も、僕の未来は明るいと感じている―劇中では、忠さんが「お嫁さんがほしい」とたびたび口にする姿がかわいらしかったです。塚地さんにとって理想のお嫁さん像とは?塚地さん笑っていてくれていたら、それだけでいいです。あとは、たとえ面白い話ではなかったとしても、「今日こんなことがあってね」みたいなことを一生懸命話してくれたら最高ですね。家に帰ったときに、「ただいま」と言って返事が返ってくる生活を夢見ています。―11月25日には、50歳の誕生日を迎えられます。お気持ちに変化はありますか?塚地さん実は、めちゃくちゃビビってます。でも、もう50歳になるのにまだ若手みたいな扱いで、お笑いの世界って何なんですかね(笑)。僕が若い頃に見ていた50代の芸人はベテランだと思ってたんですけど、僕なんてつい最近も学生服着て収録してましたから。何でいまだに、若手扱いなんだろうと驚いています。ただ、先日ドラマの現場で「僕、今年で50歳なんですよ」とメイクさんに言った瞬間、隣にいた小日向文世さんが「若っ!これからできることがいろいろあるね」とおっしゃったんです。僕が20歳の子にするみたいなリアクションでびっくりしましたが、そのときに「俺はまだまだ若いのか」と気がついて力になりました。僕が知っている諸先輩方はみなさん本当にパワフルなので、いまは僕の未来も明るいなと感じています。―それでは、50代をどんなふうに過ごしていきたいかを教えてください。塚地さんまずは、大切な伴侶を迎えて、東京に家を買い、さらに地方に別荘を持てたらいいですね。最近は地方の暮らしに憧れているので、ゆっくりと過ごしていけたらいいなと思っています。インタビューを終えてみて……。塚地さんの笑顔にこちらまで笑顔になり、笑いと癒しをたくさんいただいた取材となりました。あれほどの名演技を披露し、周囲から絶賛の声が届いているにもかかわらず、不安な思いを抱えていらっしゃるのは意外でしたが、謙虚な姿もまた塚地さんの魅力。俳優・塚地武雅さんの素晴らしい熱演は必見です!人生を豊かに育ててくれるのは、人との間に生まれる絆何気ないささやかな日常のなかにある幸せや親子の深い愛に、心の奥がじんわりと温かくなるのを感じられる本作。偏見にとらわれ、人間関係が希薄になりがちな現代で、他者と向き合うからこそ得られる喜びについても改めて考えさせてくれる珠玉の物語です。写真・山本嵩(塚地武雅)取材、文・志村昌美ストーリー都会の古民家で占い師として生計を立てている山田珠子は、自閉症の息子・忠男と二人暮らし。ささやかな毎日を送っていたが、息子が50回目の誕生日を迎えた日、母はこのままでは共倒れになるのではないかと気がつく。悩んだ末、珠子はグループホームに忠男の入居を決めるが、環境の変化に戸惑った忠男は、ホームを抜け出してしまう。近隣住民からの反発を受けるなか、珠子は大切に育ててきた庭の梅の木を切ることを決意するのだが……。目頭が熱くなる予告編はこちら!作品情報『梅切らぬバカ』11月12日(金)より、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー配給:ハピネットファントム・スタジオ©2021「梅切らぬバカ」フィルムプロジェクト写真・山本嵩(塚地武雅)
2021年11月11日ドラマ『あいつが上手で下手が僕で』は、売れない芸人たちが集まる寂れた劇場が舞台の青春群像劇。そのなかでお笑いコンビ、エクソダスのツッコミ担当・島世紀を演じるは和田雅成さん。明るいキャラに軽快な関西弁は、まさに本人そのまま。売れない漫才師の役で世界を救う!?「役のポジティブさは尊敬します」「芸人志望の役は経験ありましたけど、今回は売れてないとはいえ芸人さんの役だけにプレッシャーでしたね。漫才って、舞台のコメディのテンポともまた全然違うので。ただ、相方の時浦がまっきー(荒牧慶彦さん)っていうのは心強かったです」荒牧さんとは舞台『刀剣乱舞』をはじめ数々の舞台で共演している仲。「お互いに、今ボケてくるだろうなとか、このタイミングでボケたらツッコんでくれるなとかが、空気感でなんとなくわかるのはありがたかったです。逆に第1話でコンビを結成する設定なので、合いすぎても気持ち悪いからって最初の漫才のシーンはへんに練習せずに臨みましたから。それくらい信頼感ありますね」なんとこの作品、1台のカメラが劇場や芸人たちの間を縦横無尽に動き回り、ひとつの場面を1カットの長回しで撮る手法が用いられている。出演者には相当の対応力が必要に。「僕らよりカメラマンさんが大変だったと思います。しゃべる順に顔を撮ったら、人と人の間を抜けてこっち側にカメラが移動するので、このタイミングでちょっと避ける、とかを全部場当たりしてやってました。途中でNGを出したら頭から撮り直しなので、最初こそ緊張感がありましたけど、途中からはそんなリスキー感も楽しみつつやってました」島は調子に乗りやすく、肝心な場面で大遅刻するようなキャラクター。「でも太陽みたいな人なんですよね。そのポジティブさは尊敬するし、それでも上を目指すって素敵だなって。僕、いろんなところで言ってるんですけど、暗いニュースが多い今、笑顔になれる作品だし、マジで世界を救えないかなって思うんです」和田さん自身も、つねに周りに目を配り、笑いで場を盛り上げてくれる人。この取材中もしかりだ。「僕は自分で面白ができないので、上手にボケる人がうらやましいです。でも、周りの人は笑顔にしたいし、幸せになってほしいんです」その笑いのスキルはどこから?と尋ねると、「そんなん全然ないんです」と、照れつつも全力否定。「もともと地元では全然ツッコミもしなかったし。ただ、飲食店でアルバイトを始めて、こんなふうにお客さんと話したら笑ってもらえるかなってお笑い番組を見ながら考えるようになったんですよね。フットボールアワーの後藤さんとか千鳥さんが発するワードのパワーは、今もすごいなって注目して見ちゃいます」今作はドラマ終了後に舞台になることも発表されている。名コンビの漫才をぜひ生でも体験したい!『あいつが上手で下手が僕で』 売れない芸人たちが“島流し”される湘南劇場。ここにやってきたピン芸人の時浦(荒牧)は、島(和田)とエクソダスという漫才コンビを組み、現状脱出を目指す。毎週水曜24:59~日本テレビ、毎週土曜24:58~読売テレビで放送中。わだ・まさなり1991年9月5日生まれ、大阪府出身。舞台『刀剣乱舞』や舞台『おそ松さん on STAGE』など舞台を中心に、近年は映像作品でも活躍。出演映画『映画演劇 サクセス荘』は12月31日公開予定。シャツ¥27,500パンツ¥29,700(共にSHAREEF/Sian PR TEL:03・6662・5525)Tシャツ¥8,250(WIZZARD/TEENY RANCH TEL:03・6812・9341)※『anan』2021年11月3日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・石橋修一ヘア&メイク・西田総子インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2021年11月01日凶悪な脱獄犯が平凡なサラリーマンの妻と子を人質にした立てこもり事件。そこから起こる波紋を描いた舞台『THE BEE』。その驚愕の展開のみならず、紙や鉛筆など身近な小道具を別のものに見立てることで観客の目の前に予想外の世界を見せていく野田秀樹さんの演出は、世界各地で大きな衝撃を巻き起こした。その傑作舞台が新キャストを迎え、9年ぶりに国内で上演される。現代の闇、人間の二面性を描き出し、演劇の面白さと深さを味わえる大傑作!野田秀樹:稽古が始まって数日ですが、長澤さん素晴らしいですよ。もう少しできないと思っていたのに(笑)、ちゃんと自分で流れを掴んで、僕が言ったことをとても的確に、的確なテンションで出されるから。長澤まさみ:無駄のないダメ出しをピンポイントでいただけるおかげです。稽古時間が限られるなか、その場その場で解決して進んでいけている感じが楽しくて。それも周りの先輩たちがすごいんですけどね。とくに阿部(サダヲ)さんがまとめてくれて…。野田:井戸はテンションがコントロールできる役者じゃないとできない役だけど、サダヲはちゃんと自分のテンションを持っているからね。長澤:もともと好きな俳優さんですけど、もう場の操縦者みたいな感じで引っ張っていってくれるので安心感があって。ただ、こっちはついていくのに必死ですけれど。野田:いや、長澤さんもすごいですよ。この芝居は、それぞれの役者が何を思ってどう変わっていくかという動機がとても大切だと思っているんだけど、そこが的確だから。長澤:この作品って非日常を描いているようですけど、私は日常の中によくあることのような気がしているんです。自分の中にも二面性って存在していて、いつどういう状況で井戸さんのようになってしまうかわからない…そういう怖さを感じながら理性を保っていると思うから。それに、実際にあったことが気づけば目を向けられなくなって、まるでなかったことのようになっているのって、普段のニュースを見ていても思うことで。そういう普遍的なものが描かれているのかなって感じています。野田:まさにそれが、最初にこの作品を作ろうと思ったキーワードのひとつなんだよね。どんなに注目を集めた事件も1か月もあれば忘れられていく。事件が消費される。今って、消費することが良しとされているけれど、それがどんどん進んで浪費になっているよねって。ロンドンでこの作品を作っていた当初、消費の象徴として小道具に卵を使おうかってアイデアもあって。結果的に紙や鉛筆を使って歌舞伎なんかで取り入れられている“見立て”をしてるんだけど、この見立ての演出は世界に通用するとわかったのは収穫でした。長澤:視覚的にとても楽しい作品ですけれど、それを効果的にしているのが音ですよね。紙が破れる音や、俳優の動きから生まれる音とか息遣いが、お客さんの体感と連動して、深く記憶にこびりつくというか。野田:人間って何かひとつボタンを掛け違えると、誰でも堕ちていってしまう。価値観さえ揺らぐ。そういうことが底辺に流れている作品なので、広くいろんな人に届くといいなと思っています。NODA・MAP番外公演『THE BEE』ある日、平凡なサラリーマン・井戸(阿部)の留守中に、凶悪な脱獄犯・小古呂(川平)が井戸の妻子を人質にして家に立てこもるという事件が起こる。井戸は妻子を救出するために百百山警部(河内)率いる警察に頼るが、小古呂の妻(長澤)も巻き込み事態は思わぬ展開に…。11月1日(月)~12月12日(日)池袋・東京芸術劇場 シアターイースト演出/野田秀樹原作/筒井康隆~「毟りあい」(新潮社)より~英語脚本/野田秀樹&コリン・ティーバン日本語脚本/野田秀樹出演/阿部サダヲ、長澤まさみ、河内大和、川平慈英S席9000円ほかNODA・MAP TEL:03・6802・6681(平日11:00~17:00)大阪公演あり。ながさわ・まさみ1987年6月3日生まれ、静岡県出身。映画『マスカレード・ナイト』が現在公開中。映画『コンフィデンスマンJP 英雄編』が来年1/14公開予定。ワンピース¥46,200(バウム・ウンド・ヘルガーテン/エスアンドティ TEL:03・4530・3240)スカート¥53,900(イザベル マラン エトワール/イザベル マラン TEL:03・5772・0412)ブーツ¥56,100(ロランス/ザ・グランドインク TEL:03・6712・6062)左手親指のリング¥96,800イヤカフ、上¥14,300下¥22,000(以上トムウッド/ステディ スタディ TEL:03・5469・7110)左手中指・薬指のリング¥13,200(ソワリー TEL:06・6377・6711)のだ・ひでき1955年12月20日生まれ、長崎県出身。NODA・MAP主宰。日本を代表する劇作家で演出家であり、現在、東京芸術劇場芸術監督を務めている。※『anan』2021年11月3日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・木村真紀(長澤さん)ヘア&メイク・佐川理佳(長澤さん)取材、文・望月リサ(by anan編集部)
2021年10月31日いまや私たちの生活と切っても切れないSNSですが、手軽に楽しめるいっぽうで、計り知れない怖さを感じている人もいるのでは?そんななか、オススメ映画としてご紹介するのは、SNSを使って社会に立ち向かおうとした女子高生たちを描いた注目作『プリテンダーズ』。今回はこちらの方々に、お話をうかがってきました。小野花梨さん & 見上愛さん【映画、ときどき私】 vol. 419SNSとアイディアだけで世界を変えようと抗う女子高生を描いた本作で、引きこもりでひねくれ者の花田花梨を演じた小野さん(写真・左)と、花梨の唯一の理解者で親友の風子を演じた見上さん(右)。今後さらなる活躍が期待されている若手女優として注目されているおふたりに、撮影秘話やお互いの意外な一面、SNSとの付き合い方などについて語っていただきました。―小野さんにとっては本作が長編映画初主演となりますが、これまでの現場と違いはありましたか?小野さんいままでは「監督のやりたいことを形にするのが俳優」と考えていたので、監督から聞いたイメージを自分のなかに落とし込んで提示するという方法でずっとやってきました。ただ、今回は自分と役が近かったということもあり、監督に対して自分の意見をはっきりと伝える場面が多かったですね。性格的に普段はあまりこういう主張はしないほうなので、私にとってはこれも初めての経験だったなと。生意気にも言いたいことを言わせていただきましたが、それは熊坂出監督が撮影の前に信頼関係を築いてくださったからこそ。いままで知らなかった新しいコミュニケーションの取り方を教えていただきました。―見上さんは今回の撮影を通して、得たものはありましたか?見上さんこの仕事を始めてから1年も経っていないくらいの頃に撮影したので、右も左もわからない状態。しかも、これだけ長い時間同じ役を演じるのも初めてのことだったので、私にとってはすべてが発見でした。現場では「こんなにも私の意見を取り入れてくれるのか」と驚きましたが、ほかの現場を経験してから、それが当たり前ではないことを知りました。未熟な私とあそこまで対等に話し合っていただいたこと、役について掘り下げる時間をきちんと取ってくださったことは、本当にありがたかったです。つらすぎて、二度とやりたくないと思うこともあった―劇中では、渋谷のスクランブル交差点で自分の思いを叫ぶシーンが非常に印象的でした。とはいえ、ゲリラ撮影でかなり大変だったと思いますが、舞台裏はどのような感じだったのでしょうか?小野さんあれは、本当に大変だったよね……。見上さん絶対に1回で撮らなきゃいけないというプレッシャーと緊張感が撮影前にあって、それもすごかったよね。でも、結局は2日間に渡って3回も撮りました。小野さん正直言って、もう二度とやりたくないですね(笑)。それくらい本当に苦しくて、とにかくしんどかったです。―それは役としてか、それとも撮影環境の厳しさか、どこからくるしんどさでしたか?小野さんいままでの現場ではスタッフさんをはじめ、絶対的な味方のなかで撮影していたんだということに改めて気づかされました。なので、今回のように私たちに見向きもしない人たちに囲まれてお芝居することが、こんなにも苦しいものだとは知らなかったので、それがつらかったです。見上さんでも、だからこそ、あのシーンにはうそがないんじゃないかなと。もちろん、街中で大きな声を出すのは嫌でしたけど、役としてただそこにいればいいという状況だったので、しんどそうにしていた花梨ちゃんとは逆で私はすごくやりやすいと感じていました。とはいえ、それは経験が少なく、いろいろなことがわからないからこその強さだったのかなといまは思います。小野さんなるほど。愛ちゃんにとってはリアリティでしかなかったってことだよね。それはすごい。見上さんそれよりも、私は人のほうが怖かったかも。渋谷でのゲリラ撮影は、貴重な経験になった―その場にいた一般の方の反応は、どんな感じでしたか?小野さん私たちがセリフを言い始めたら、「気持ち悪っ」とか「邪魔」といった声が聞こえてきましたし、その場を離れる人もけっこういましたね。でも、発見だったのは、意外と誰もこっちを見ないんですよ。見上さんそうそう。背中で感じてはいるけど実際には見ないよね。今回はカメラマンさんが遠くにいたこともあり、おそらく撮影だということに気づいてもらえていなかったから余計にそうなったのかなとは思いますが……。小野さんおかしな2人が意味のわからないことしだしたから、“見ちゃいけないもの”みたいな扱いになってたのかもしれないですね(笑)。見上さんそうかもね。ただ、貴重な経験にはなりました。小野さんそれは間違いないね。―直接は目も向けないけど、ネットだったら遠慮なく叩くというのがいまの社会なんでしょうね。おふたりは物心ついたときからネット社会とともに育っていると思いますが、SNSとの付き合い方など、気をつけていることはありますか?小野さん実は、私はプライベートでも仕事でも、SNSを一切やっていません。それはSNSに便利であるがゆえの大きなリスクを感じているからです。匿名で相手を叩く人に対しては疑問を覚えていることもあり、たとえポジティブな内容であったとしても自分の言葉や情報を提示することへの恐怖があるんだと思います。人の気持ちや心の傷のように目には見えないものを伝えるのは、すごく難しいことですから。ただ、プラスの感情を届けられる方もいるので、人それぞれだとは思いますが、いまの私にはまだその勇気がないので、「距離を置く」という選択をしました。ですが、見る側として情報を得ているところもあるので、矛盾していると感じる部分はありますね。何年か先に自信がついたら挑戦するかもしれないですが、いまの段階では「SNSは怖いもの」と思ってしまっているほうが大きいです。自分のSNSで元気になる人が1人でもいればいい―見上さんはSNSを活用されていますが、意識していることはありますか?見上さん私はお仕事を始めてからすぐにInstagramを開設して、最近はTwitterも始めました。そのなかでいいコメントもあれば、ときには傷つくようなものもありますが、私はあまり気にしていません。ただ、私のSNSが何かプラスのことに使われていればいいなとは思っています。ただ、自分が発信する言葉で誰かが嫌な思いをしていないかなとか、言葉選びには気をつけています。とはいえ、伝えたいことや載せたいものは、わりと自由にしているほうかなと。SNSでは芸能活動している自分と普段の自分に距離はない状態なので、そういう意味では私は向いているのかもしれないです。―本作でいうところの「Pretend」、つまり何かのフリをしたり、違う自分を演じたりするようなこともないと?見上さんまったくないですね。なので、あまり気負うことなく、楽しく使えているんじゃないかなと。もちろん、私のSNSを見て自分とは合わないと思う人もいるかもしれませんが、元気になってくれる人が1人でもいれば、それでいいと考えています。愛ちゃんとの出会いは、私にとって奇跡的だった―今回の撮影を通じて感じたお互いの印象について、教えてください。見上さんそもそも私たちって、違いすぎるくらい正反対だよね?小野さんうん、そうだね。見上さんでも、だからこそ一緒にいて、すべてがおもしろいというか、何を話していても興味深いんです。全部が発見でもあるので、花梨ちゃんとの出会いは、私にとってはすごく大きいものになりました。正反対なのに、つながれる不思議があった気がします。小野さんそれは私も同じで、本当に奇跡的な出会いだったなと。愛ちゃんみたいな人はなかなかいないですからね。ちなみに、雰囲気的に私のほうが強く見られがちなんですけど、実は愛ちゃんのほうが強いんですよ。私がもう無理となっていても、愛ちゃんはケロっとしていて、飄々とやってのけてしまうくらい。「世間のみなさんが思っているよりも、見上愛はめちゃくちゃ強いんだぞ」というのは言いたいですね(笑)。見上さんあはは!でも、確かに私のほうが強いかもね。私はメンタルが強いおかげか、自分から出る言葉自体はあまり強くないと感じています。何とも戦っていないので、強い言葉を使う必要がないというか……。小野さんそれ、すごくよくわかる。言葉が強い人って本当に強いんじゃなくて、自分を守ろうとする意識が働くから強い言葉を使っているだけだと思うので。たとえば、私は傷つきやすいほうなので、自分を守るために言葉のなかに“刃物”をちらつかせてしまうところがあるんですけど、愛ちゃんはそれがないんですよ。そういう意味でも、私たちって正反対なんだろうね。見上さんでも、花梨ちゃんは自分だけじゃなくて、周りの人も守ってくれて、その人たちのために一緒に戦ってくれる人。それは私にはできないことなので、本当に素敵だなと今回すごく感じました。私もそういう優しさを身に着けたいと思っています。小野さん私は痛みを感じやすいほうなので、「もし誰かがその痛みを伴っているならなんとかしたい」というそれだけです。私も花梨ちゃんのような優しい人間になりたい―本作の主人公たちは、「社会や自分を変えたい」という思いに突き動かされていますが、おふたりもご自身のなかで変えたいことはありますか?見上さんいまの話につながりますが、もっと優しい人間になりたいですね。私はあまり生きづらさみたいなものを感じたことがないので、ちゃんと人に寄り添えていないんじゃないかと考えることがあるからです。痛みを知っている人は、上辺だけでなくきちんと人の痛みを理解できると思うのですが、私の場合はまだ「感覚的にわかる」くらいのレベルなんじゃないかなと。なので、本当の意味で優しい人になりたいと思っています。小野さん正直に言うと、私はいま変えたいと思うことはないかもしれません。といっても、「いまの自分最高だぜー!」という意味ではないですよ(笑)。そうではなくて、何かを変えたいとわざわざ考えなくても、自分がよりよくなるように変わりゆくものだと思っているからです。実際、1年前の自分も2年前の自分も、いまとは全然違いますから。そんなふうに、状況に応じて日々よくなっていくように心がけているので、あえてこれを変えたいと思っていることがないというのが正しい答えです。ただ、そのためにはすべてに対して真摯に向き合う必要がありますし、毎日を一生懸命生きていかなきゃいけないな、というのはあります。―それでは最後に、観客へのメッセージをお願いします。小野さん私が演じた花田花梨に対しては賛否両論あるかもしれませんが、私自身はこの作品にすごく救われました。「こんなにがんばってるのに誰もわかってくれない」みたいな絶望や生きづらさを抱えていたのは自分だけじゃなかったんだなと。ただ、受け止め方については観る方の自由なので、それぞれの“正解”を見つけながら観ていただけたらと思います。見上さんこの作品では、いままで向き合わなくてよかったことにも向き合わされる嫌悪感を抱く人もいるかもしれません。でも、そこに少しでも向き合えた瞬間、世界がすごく広がると私は思っています。自分が見ている世界だけが世界じゃないし、違う視点から見る世界もあると知れるのは大きなことですから。そうすれば、みんながお互いにもう少し寄り添い合えるんじゃないかなという期待もあります。人によって感想が全然違うので、そういったおもしろさも感じていただきたいです。インタビューを終えてみて……。性格やタイプは正反対ではあるものの、だからこそお互いを補い合ってステキな関係を築けている小野さんと見上さん。劇中の花梨と風子の関係性は、この組み合わせでしか体現できないものだったというのもうなずけます。全力で挑んだゲリラ撮影のシーンを含め、おふたりが見せる体当たりの演技は必見です。ブラックなのに、ハートフルな異色作!誰もが“Pretend”しながら過ごす現代で抱えている葛藤や違和感に迫り、あらゆる感情を呼び起こさせる本作。日々変化し続けるネット社会に加え、日常も常識も一変させたコロナ禍で生きるいまだからこそ観るべき1本です。写真・北尾渉(小野花梨・見上愛)取材、文・志村昌美ストーリー「前にならえ」「空気を読め」を美徳とするニッポン社会に反抗する17歳の花田花梨。父と妹と暮らしながら、半ば引きこもりの生活をしていた。そんななか、父との言い争いをきっかけに家を飛び出した花梨は、海外赴任の両親と離れて一人暮らしをする親友・風子のアパートへ転がり込むことに。ある日、電車内で病人に席を譲った花梨は、得も言われぬ感覚を味わったことをきっかけに、型破りなドッキリで“世直し”することを思いつく。そこで、「プリテンダーズ」を結成し、動画を次々とアップするのだが、ふたりを待ち受けていたのは社会からの“しっぺ返し”だった……。胸がざわつく予告編はこちら!作品情報『プリテンダーズ』10 月 16 日(土)ユーロスペースほか全国順次公開配給:gaie©2021「プリテンダーズ」製作委員会写真・北尾渉(小野花梨・見上愛)
2021年10月15日熱狂的信者を生んだ『ルパンの娘』がついに映画化!役者としても、観る人の心を奪い続けている深田恭子さんが、映画の魅力を語ります。“ロミジュリ”の世界観が昔から大好きでした。日用品から国宝級のお宝まで、盗品にまみれて豪華な暮らしをしている通称“Lの一族”。先祖代々続くこの泥棒一家に生まれた三雲華(深田恭子)と警察官の桜庭和馬(瀬戸康史)が育む禁断の恋、家族の絆、アクション、SF、歌やダンスまでを描き、様々なエンターテインメントを詰め込んだのが『ルパンの娘』。ドラマシリーズから根強いファンを多く持つこの作品が、待望の映画化!「優しさと強さを持った華は、とても素敵な女性。ドラマが始まった当初から監督は、華と和馬の関係に“ロミジュリ感”を出したいとおっしゃっていたんですが、私もその揺るぎない愛や切ない世界観が昔から大好きでした。泥棒を軸にしながらもワクワクするミュージカルシーンもあり、私自身がこの非日常感に魅せられてしまって、毎回現場に行くのが楽しみで。ただ、アクションを演じるのは大変。いつも次のアクション動画が送られてくるたびにビクビクしながら練習へ行き、準備体操が終わると『ありがとうございました』と逃げ出しては『コラコラー』と怒られていたのですが、映画でも、それは変わりませんでした(笑)」舞台はスケールアップして海外へ。謎に包まれた敵と戦いながら、王家の秘宝と一族の秘密を追う。「家族を最優先に考え、決して人を殺あやめないというLの一族の掟は一貫して守りながら、今回はさらに家族の絆が強く描かれています。私も思わず笑ってしまう、お父さん(渡部篤郎)とお母さん(小沢真珠)の小芝居も増えてパワーアップしているし、所々にパロディも含まれているので楽しみにしていてください」お馴染みの“泥棒スーツ”には、すっかり愛着があるそう。「最初は硬かった泥棒スーツは、着込むうちにどんどん柔らかくなっていくんですが、アクションをするのでほつれては直して、を繰り返してきました。撮影の時期によって着心地は変わりますが、映画の撮影時は真冬で、想像を超えた寒さでした。防寒のしようがなかったので耐えるしかなくて。でも季節ごとに改良するわけにはいかないですから。だって“(秘密戦隊)ゴレンジャー”とかもそのままじゃないですか。だからこの手のスーツの歴史を変えることはできないので、自分自身がどんな季節にも対応していきたいと思いました(笑)」ドラマから映画まで続投のレギュラーメンバーに会うと「ホッとするし自然体でいられる」と言う深田さん。演者としてエンタメの魅力を伝え続ける一方で、プライベートでは気分によって様々なジャンルの映画を楽しんでいるそう。「たまに、このシーンの撮影は何日かかったのかな、大変そうだな、なんて演じる立場で観ていることもあります。また一人では観返すことのない自分が出ている作品も、友達から『どうしても観たい!』と言われたら、恥ずかしいと思いながら一緒に観ることも(笑)。最近は、キアヌ・リーブスさん主演の『コンスタンティン』を久しぶりに観たら、若い頃に観た時の懐かしさが蘇って胸がキュンとしました。音楽と同じように映画もまた、昔の気持ちに戻れるんですよね。私は父と仲が良くて、10代の頃から2人でよく映画館に行っているんですが、父を誘って『コーヒーが冷めないうちに』を観に行った時は、私が号泣してしまいました。映画観賞にはいろんな思い出がありますが、いつでも欠かせないのは、お気に入りのブランケット。季節問わずすっぽりくるまりながら映画を観ると、安心してその世界に浸れるので、家ではもちろん映画館にも持っていきます。みなさんもそうだと思いますが、映画は日常にない刺激がある、自分とは全く違う人生を擬似体験できるエンターテインメント。だから私は、現実世界とはかけ離れた作品が好きなんです」My 名作映画『パラサイト 半地下の家族』2019年に公開され、第92回アカデミー賞作品賞などを受賞したポン・ジュノ監督の韓国映画。「最後は壮絶な展開になる、スリル満点の作品。いろんな家庭や生き方があると考えさせられつつも、観ていて各家庭の匂いまで感じられました。そういう感覚になる映画はなかなかないので、強く印象に残っている作品です」『劇場版 ルパンの娘』“Lの一族”と呼ばれて警察に追われながら、世間を騒がす泥棒一家の三雲家。唯一の常識人である華は家族のために渋々泥棒を働きながら、一族を追う警察官の桜庭和馬と恋に落ちて結婚。2019年、‘20年にドラマ化された人気シリーズで、劇場版ではディーベンブルク王国のお宝を狙う一家に驚愕の展開が…。監督/武内英樹出演/深田恭子、瀬戸康史、橋本環奈、観月ありさ、渡部篤郎ほか10月15日全国ロードショー。©横関大/講談社 ©2021「劇場版 ルパンの娘」製作委員会ふかだ・きょうこ1982年11月2日生まれ、東京都出身。‘97年に俳優デビュー。ドラマ『隣の家族は青く見える』や『初めて恋をした日に読む話』など、数々の主演作を持つ。※『anan』2021年10月20日号より。写真・野呂知功(TRIVAL)スタイリスト・亘つぐみ(TW)ヘア&メイク・板倉タクマ(ヌーデ)取材、文・若山あや撮影協力・バックグラウンズ ファクトリー(by anan編集部)
2021年10月14日クールな役での凛々しい印象の一方で、コメディエンヌとしても最高に魅力的。そんな天海祐希さんが思う名作映画には、心を掴まれる“あるモノ”があるらしい。いいリズムとテンポ、これが名コメディの肝です。今やドラマや映画で大活躍の天海祐希さんですが、もともとは舞台育ち。異なる芝居フィールドをよく知る天海さんにとって、映画とはどんな存在なのか。「劇場で、たくさんの方々と一緒に観る、目の前のものを共有できるという意味では、いわゆる生のお芝居と似ている部分がありますし、一方で映像作品ということで考えると、ドラマと近しいともいえる。なので私にとって映画は、舞台とドラマの真ん中にあるエンターテインメントです」コロナ禍で映画館に行きづらい状況があり、また自宅にいても配信で映画が観られるようになったといえども、映画は映画館で観るのが一番、と力説する。「やっぱり私は大きなスクリーンで観るのが好きですね。声には出さなくても、同じシーンでみんながクスッとなったり、びっくりしたりする、それが空気で伝わってくる感じは、映画館ならでは。あの瞬間は、本当に楽しいです」10月30日より、主演映画『老後の資金がありません!』の公開がスタート。この作品のテーマは、タイトル通り“老後の資金”。一昨年、“人生100年時代、生き抜くには老後資金が2000万円不足”というニュースが流れ、日本中に相当なインパクトを与えたこと、覚えている人も多いだろう。「社会的な問題をテーマにすることで、今までそこに視線を送っていなかった方々がちょっと気がついたり、徐々に意識を向けるようになったりすると、私たちの仕事も少しは役立っているのかな、と思います」テーマがテーマなだけに、重い映画…?と思ったら大間違い。実はこれ、コメディ映画。天海さんと大女優・草笛光子さんをはじめ、若村麻由美さんや松重豊さんといった出演陣が、これでもかと笑いを仕掛けてくる。厳しい現実を描いているにもかかわらず思わず笑ってしまうのは、実力派俳優たちが生み出すテンポの良い芝居ゆえ。天海さんご自身も、コメディでの芝居においては特にリズムを大切にしているのだそう。「どんな芝居でもリズム感は大事で、特に“笑い”は、タイミングがずれるとまったく笑えなくなる。今作に、私と夫役の松重さん、松重さんの妹役の若村さんとその夫役の石井正則さん、4人で食卓を囲んで話し合いをする場面があるのですが、みなさんコメディにも長けていらっしゃるから、ちょっとしたことを拾って笑えるアドリブを仕掛けてくる。そのテンポの素晴らしいこと!演りながら笑ってしまい大変でしたが、きっとあのおかしさはスクリーンを通じても伝わることと思います」またこの作品は、役者の表情にも笑いの引き金が潜んでいるのも見どころ。聞くと天海さんにとっての名作映画とは、“心を掴まれる表情がある作品”なのだとか。「2時間弱の映画の中で、一瞬でも、“あぁ、この表情、素敵…”と思える瞬間があれば、それはもう私にとっては名作。今回推薦させていただいた2作とも、そんな心を掴まれる表情があります。役者としては、どのシーンでもどのカットでも、常にそういう瞬間をと思い演技を積み重ねてはいますが、なかなか簡単に作れるものではないですね。ちなみに『老後の資金がありません!』で私が“名作!”と思う表情はたくさんありますが、妻にリストラされたことを伝えるときの、松重さん演じる夫の表情。驚かされながらもつい笑ってしまうあの顔を、ぜひみなさんにも観てほしいです」上映スケジュールを調べ、予定を調整し、チケットを買い、映画館に出かける。そのように人を動かす力を、映画は持っていなければならない、と天海さん。「暗い劇場から外に出て日常に戻ったとき、おもしろかったと感じるのはもちろん、頑張ろうと思えたり、自分の現実を生きていこうと思ってもらえること。映画はそういう存在であってほしいです」My 名作映画『ある日どこかで』タイムトラベルとラブストーリーが融合した、ラブファンタジーの傑作。「男性劇作家(クリストファー・リーブ)が時をさかのぼり、過去を生きる女優(ジェーン・シーモア)と恋に落ちるのですが、二人の表情が素晴らしい。音楽、衣装、全てが素敵。好きすぎて宝塚の公演で演じさせていただきました(笑)」『HANDIA アルツォの巨人』18世紀後半から19世紀のスペインが舞台。「巨人症になってしまった弟と、その兄の物語。兄は弟を見世物にしながら各地をまわり、お金を稼ぐのですが、弟役の役者さんが、目でいろんなものを語る演技をなさる。演技というものは“嘘”ですが、その中で“嘘のなさ”を表現されている。その表情から目が離せません」『老後の資金がありません!』節約をモットーに老後の資金をコツコツ貯めてきた主婦の篤子(天海祐希)。ところが、舅の葬式、娘の結婚式とどんどんお金が飛んでいく。さらに自分はパートをリストラ、夫(松重豊)の会社が倒産してしまう!姑(草笛光子)への仕送りができなくなり仕方なく引き取ることになったが、姑は驚くほどの浪費家で…。退職金もなく、目の前に迫る貯金0円。老後どころの話じゃない…。他に出演は新川優愛、瀬戸利樹など。10月30日全国公開。©2021映画「老後の資金がありません!」製作委員会あまみ・ゆうき1967年8月8日生まれ、東京都出身。主な出演作にドラマ『離婚弁護士』『緊急取調室』、映画『最高の人生の見つけ方』など。ナレーションを務めるドキュメンタリー映画『私は白鳥』が11月27日公開。ブラウス¥30,800パンツ¥36,300(共にアドーア TEL:03・6748・0540)イヤリングパーツ各¥22,000パーツ(右耳)¥25,300パーツ(左耳)¥74,800※すべて片耳売り(以上シンティランテ/イセタン サローネ東京ミッドタウン TEL:03・6434・7975)パンプスはスタイリスト私物※『anan』2021年10月20日号より。写真・森山将人(TRIVAL)スタイリスト・大沼こずえ(eleven.)ヘア&メイク・林 智子(by anan編集部)
2021年10月14日パルコ・プロデュース 2021『ジュリアス・シーザー』は、女性キャストたちだけで描かれるシェイクスピア劇。その見どころを吉田羊さんに聞きました。意外にも、シェイクスピア劇への出演は初めてだという吉田羊さん。「観客として観るシェイクスピアって難解で、途中でセリフを聞き逃すと置いていかれてしまうんですよね。役者としては、舞台上の俳優の胆力とパッションに圧倒されるのだけど、それをどう楽しんでいいかわからない。でも、今思えば、自分と関係のないものだと決めつけて、その魅力に向き合おうとしてこなかっただけなのかなと感じています」というのも、今回初タッグとなる森新太郎さんの演出を受けて、これまで抱いてきたシェイクスピア戯曲のイメージがガラッと変わったそう。「森さんは演出するうえで、英語の原典を引用されるんです。たとえば、同じ“自由”という言葉でも、自ら闘って得ていく“liberty”と人間がもともと持っている権利としての“freedom”では、ニュアンスが違いますよね。そういう言葉ひとつひとつを読み解いて、シェイクスピアが表現しようとする真意を理解して演じさせようとしてくださる。ひとつひとつに時間をかけるので、稽古が始まって10日ほどですが、まだ本読み段階(笑)。それでも、シェイクスピアで大事なのは言葉で、役者同士が言葉という武器を手に戦う作品ですから、着実に理解は深まっていると思います」森さんの稽古は声を荒げることなく淡々と快活に、でも何度も何度も何度も同じ場面を繰り返すスタイル。「98点では満足しない方なんですよね。だから100点が出るまで何度も繰り返すんです。でもそれって、役者を信頼してくれているからで、だからこっちも食らいついていけるんです。何より森さん自身がおもちゃを与えられた子供みたいに、誰より稽古を楽しんでいますから。あと、演出するときに用いる比喩の表現が本当に面白くて」そんな森さんからは、「役の感情に流されないように」ということも。「今回は、言葉を伝えることを重視しているため、感情を作るのは大事だけれど、流されずに言葉をしっかり相手に投げていく訓練をしています。これまで、『セリフを歌うな』というダメ出しはされてきましたが、今回は逆。言葉のリズムが音楽の旋律のようで、口にするうち自然に体に馴染んで気持ちよくなっていく。今まで感じたことがない体験です」舞台『ジュリアス・シーザー』は、共和制ローマの最高実力者・シーザーの暗殺を巡る権力闘争と愛憎の物語。吉田さんはシーザーの親友ながら、暗殺に力を貸すことになるブルータス役。なんと今作は、すべての役が女性キャストによって上演される。シェイクスピアの時代の上演スタイルを踏襲して全役男性で演じられることはときどきあるが、オールフィメールは珍しい試み。「最初こそ俺という一人称に違和感がありましたけど(笑)、戯曲の中の性別を固定するようなセリフは今回ほぼカットされていますし、性別を超えた人間の物語として観ていただけるんじゃないでしょうか。ジェンダーレスが声高に叫ばれる昨今ですが、根本にあるのは、性別で人間をはかるなってことだと思うんです。どんな感情も人間が等しく持つもので、性別によって区別されるものではない。この作品を通じて、そういうメッセージを発信できたらと思うし、そういう意味でまさに今やるにふさわしい作品ですよね」嫉妬や欲が渦巻く中で、ブルータスは「私利私欲がなくて、誠実だと誰もが評する人物」。「人望が厚く優しいけれど、ここぞというときに詰めが甘くて、その優しさが自分の首を絞めていく。そんな人間味のあるブルータスをお見せしたいと思っています」近年の吉田さんといえば、ジェーン・スーさんのエッセイをドラマ化した『生きるとか死ぬとか父親とか』や、異色の設定で話題を呼んだドラマ『きれいのくに』など、ひと癖ある作品に出演している印象が。「脚本、演出家、企画…判断基準はいろいろありますが、基本的にやりたいかやりたくないかの直感です。お芝居って心なので、自分が面白いと思って取り組めないと伝わってしまう。だからこそ心を大事に作品を選んでいきたいなと思うんです」ならば今回の舞台、出演を決めた最大のポイントはどこですか?「優先順位をつけるのは難しいですが、一番はPARCO劇場かな。選ばれた俳優しか出られない劇場のイメージ。長く小劇場で演劇をやってきて、あそこに呼ばれるようになりたいと奮闘してきたので、成功させるぞという思いで臨みます」共和制末期のローマ。次々と戦果を挙げ権力を増大化させていくシーザー(シルビア)の存在を危ぶんだキャシアス(松本)。ブルータス(吉田)を仲間に引き入れ、シーザーを暗殺する。その知らせを聞いたアントニー(松井)は…。10月10日(日)~31日(日)渋谷・PARCO劇場作/ウィリアム・シェイクスピア演出/森新太郎出演/吉田羊、松井玲奈、松本紀保、シルビア・グラブ、三田和代ほか全席指定1万1000円ほかパルコステージ TEL:03・3477・5858大阪、山形、福島、宮城、富山、愛知公演あり。よしだ・よう福岡県出身。舞台を中心に活動する中、2009 年の『returns』や‘11年の『国民の映画』などの三谷幸喜演出舞台に出演し注目を集める。最近の出演作にドラマ『恋する母たち』など。ブラウス¥75,900 スカート¥86,900ピアス¥26,400(以上sacai TEL:03・6418・5977)※『anan』2021年10月13日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・梅山弘子ヘア&メイク・井手真紗子インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2021年10月12日世界30か国以上で翻訳されている、吉本ばななさんの小説「ムーンライト・シャドウ」が、33年の月日を経て映画化に。メガホンを取ったのは、エドモンド・ヨウ監督。主人公のさつき役に小松菜奈さん、等役に宮沢氷魚さんに加え最旬の若手俳優が配役され、物語の世界観を昇華させた。小松菜奈:お話をいただき、日本の名作をマレーシア出身の監督が手がけるという異色な組み合わせに興味を持ちました。個性的なメンバーで、生と死に向き合う重さをファンタジーに描くのも魅力的で。この先「間違いなく自分の人生に必要だった」と言える作品になると思いました。宮沢氷魚:僕も脚本を読んだ時すごく素敵な作品だと思ったんですが、そのあと原作を読んだら、この世界観をどう映像化するんだろうという不安も出てきて。でもエドモンド監督と一緒に撮り重ねていくうちに、情熱的でチャーミングなこの監督に任せたら大丈夫だ、と自信が持てました。小松:画面越しですが、宮沢さんとは以前、リモートのお仕事でお話ししたことがあって。初対面なのに自然に話せる不思議な雰囲気を持っていて、絶対いい人だ、って思ってましたね(笑)。宮沢:あははは(笑)。うれしい。小松:(佐藤)緋美くんも臼田(あさ美)さんも(中原)ナナちゃんも、役柄にピッタリで、演じているうちに役ではなく本人なんじゃないかという感覚になるぐらい。それがとっても素敵に映像に表れています。――4人のほのぼのとした日常から始まるものの、等と、中原さん演じるゆみこが突然事故で死んでしまうところから物語は一変。恋人を失ったさつきの苦しみと向き合いつつも、完成作を観た時には、役作りについて納得できたという小松さん。小松:監督はさつきを変わった女の子に描こうとしていたんですが、私は現実を受け止めている普通の女の子を演じたくて、現場では2パターン撮ったりもしたんです。それがすごくうまくつながれていました。そして深いテーマですが、カラフルな衣装やポップな美術演出の効果で、とても見やすくなっていて。以前に監督の別の作品を映画館で拝見した時も思ったんですが、監督のちょっと現実離れした感覚と原作の世界観が見事にマッチしていました。宮沢:完成作では、映像の美しさに加えて個性的なキャラクターの思いや訴えかけるものをとても色鮮やかに感じました。ただ、僕が12月の寒さの中で水に浸かって撮ったシーンはいつ出てくるんだろう…と思っているうちに、映画が終わって。緋美くん演じる柊のダンスシーンは想像の倍以上ありましたけど(笑)。小松:あはは(笑)。監督イチオシのおしゃれなシーン。でも冬の橋の上や川沿いの撮影は本当に寒かった!――寒さと引き換えに、澄んだ空気は、夜空や川原の自然をより美しく見せてくれたのも印象的だったよう。小松:物語の核になる“月影現象”が起こるシーンは一発撮り。役者もスタッフも、天気も見事にぴったりハマった。その一体感とともに自然との共存が得られた気がして、カットのあとには拍手が起こりました。宮沢:重いテーマではあるけれど、希望を与えてくれる作品です。小松:誰にでも共感できる部分があるはず。構えずに観てほしいです。――物語のキーアイテムとなる“鈴”と“セーラー服”のように、お二人にも大切に持ち歩くものがあるそう。宮沢:15年使っているポール・スミスの財布がもうボロボロなんですが、これを親がプレゼントしてくれてから大学受験もうまくいったし、この仕事も始められたので幸運のアイテム。いつもそばにないと不安なんです。でも穴が開いてしまい一円玉が落ちるので、そろそろ替えないと…。小松:私は小さい頃に撮った家族写真。紙焼きだからボロボロだけど、それがよさでもあるんですよね。『ムーンライト・シャドウ』恋人の突然の死に直面し、深い悲しみに打ちひしがれているさつき。満月の夜の終わりに死者と出会えるかもしれないという不思議な“月影現象”に導かれていく…。原作は『キッチン』に収録。全国公開中。©2021映画「ムーンライト・シャドウ」製作委員会こまつ・なな1996年2月16日生まれ、東京都出身。2008年にモデルデビューし、’14年に映画『渇き。』で俳優デビューを果たす。映画初主演は’16年公開の『溺れるナイフ』。映画『恋する寄生虫』が11月に公開予定。ジャケット¥163,900トップス¥71,500パンツ¥82,500(以上パトゥ/イザ TEL:0120・135・015)リング、人差し指¥121,000中指¥148,500薬指¥77,000(以上シハラ/シハラ ラボ TEL:03・3486・1922)みやざわ・ひお1994年4月24日生まれ、サンフランシスコ出身。2022年春に放送予定の連続テレビ小説『ちむどんどん』(NHK)に青柳和彦役として出演。代表作はドラマ『偽装不倫』、映画『his』『騙し絵の牙』ほか。ジャケット¥108,900シャツ¥39,600パンツ 参考商品(以上コム デ ギャルソン オム ドゥ/コム デ ギャルソン TEL:03・3486・7611)その他はスタイリスト私物※『anan』2021年9月29日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・遠藤彩香(小松さん)秋山貴紀(宮沢さん)ヘア&メイク・小澤麻衣(mod’s hair/小松さん)取材、文・若山あや(by anan編集部)
2021年09月25日松田龍平さんが舞台に立つのは数年に一度。今回出演する舞台『近松心中物語』を含め、近年は3作とも長塚圭史さんの演出作。長塚舞台の何が松田さんをとらえるのだろうか。「なんというか…感覚的なことなんですけど、今まで僕が出演させてもらった長塚さんの舞台は、装置を使わずに身ひとつで作る、といった感じの舞台でしたね。体と声を使って、演奏して。シンプルなんですけど、昔からあったであろう芝居の形というか、骨組みがしっかりしている気がして。観客にどう見せたら伝わるか、みたいなところは長塚さんに見てもらって、僕自身は、役と向き合うことに没頭させてもらうという、贅沢な時間でしたね。もちろんシンプルになる分、役者が埋めなくてはならないところは大きくなるわけで、大変さもピカイチだから、楽しみな気持ちと不安な気持ちに挟まれてました。終わってみれば、長塚さんの演出、楽しかったな…みたいな(笑)」胸を軽く叩きながら「本当の思いはここにあって。それが観る人に伝わるかってことに集中できるから、自分には居心地がいいのかもしれない」とも。今回は共演に、以前も長塚作品で共演した田中哲司さんと、親同士の交流を通じて幼い頃からよく知る石橋静河さんが名を連ねる。「哲司さんは包容力が半端ないですね。人生相談とかしたくなりますよ(笑)。本番で台詞が飛んでも助けてくれそうな安心感があるので、その安心感に包まれすぎないように頑張らないとですね。静河はめちゃめちゃまっすぐで素敵なレディです。久々に会うと嬉しくてハグしたくなっちゃうんですけど、『やだ!』って断られてます(苦笑)」松田さんは、その石橋さんと夫婦の役。石橋さん演じるお亀は、恋焦がれる旦那の与兵衛がひょんなことから窮地に陥ったことを知り、共に心中しようと持ちかける。「それまでの与兵衛は、自分の不甲斐なさを盾にお亀と別れたかったんじゃないかと思うんです。家からも離れて乞食になって自由に生きるのもいいなと。でも、お亀が死のうとした時に“お前が死ぬなら一人で死なせはしない”という男気というか、愛はあるんですよね。これから台詞を頭に入れて稽古で芝居を交わすなかで、どんな気持ちになっていくのか気になります。静河の芝居を目の前にしたら、辛くて、ほんと、どうしようもない気持ちになりそうですね。楽しみです」どこかとらえどころがなく、肩の力が抜けた印象を抱いていた。それだけに、松田さんの演技に対して語られるまっすぐな言葉の数々に少し驚かされる。「もう、そろそろ親父と同い年になっちゃうので、どうしようかなと。今まで俳優を続けてきたなかで、僕の指針になっていましたから。ほんとに、新たに面白いことにもっと敏感にならないとですよね。それでも、自分ひとりでバランスを保つのはなかなか難しいですから、皆と一緒に作品を作る機会をいただいて感謝してます」だからなのか、映像でも舞台でも、“役を演じる”のではなく“役としてそこに居る”と思わせる俳優だ。「もっと役に酔いたいですね、もっと役と話さないとだし。役として居ながら、それができるようになれたら楽しいだろうな」KAAT神奈川芸術劇場『近松心中物語』飛脚宿の養子の忠兵衛(田中)は、偶然行き合った遊女・梅川(笹本)と恋に落ちる。しかし、梅川に身請け話が持ち上がり、焦った彼は先に手を打とうと金の工面に奔走し…。9月4日(土)~20日(月)横浜・KAAT神奈川芸術劇場作/秋元松代演出/長塚圭史音楽/スチャダラパー出演/田中哲司、松田龍平、笹本玲奈、石橋静河、朝海ひかる、石倉三郎ほかS席9500円A席6000円ほかチケットかながわ TEL:0570・015・415(10:00 ~18:00)地方公演あり。まつだ・りゅうへい1983年5月9日生まれ、東京都出身。’99年に映画『御法度』でデビュー。最近のおもな出演作に、ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』、映画『泣き虫しょったんの奇跡』『影裏』など。※『anan』2021年9月1日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・石井 大ヘア&メイク・赤松絵利(ESPER)インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2021年08月29日雨に濡れた緑が際立つ古民家の中庭に、やわらかなシルエットの白シャツを纏い、すっと立つ眞栄田郷敦さん。撮影の空気感を敏感に掴みとり、胸元を緩めたり、シャツの裾を遊ばせながらナチュラルにポーズを決めていく。寡黙でありながら、優しさと強さを合わせたようなオーラを放ち、時々ふとカメラに向ける真っすぐな視線が印象的。本格的に演技を始めたのは2019年だが、放送中のドラマ『プロミス・シンデレラ』で大注目の役柄に抜擢。派手な金髪に染め、生意気で怖いもの知らずな老舗旅館の次男で御曹司という個性的なキャラクター、片岡壱成を演じている。「壱成は、僕にとってすごく新しい役どころで、今は持っている引き出しをすべて開けながら演じている感じです。シリアスなシーンもあればコメディタッチのシーンもあり、振り切っていろんな表情を見せられるように心がけています。こういう新しいチャレンジをしていくなかで、現場の空気感がいいことはとてもありがたいですし、主人公の早梅(はやめ)を演じる二階堂(ふみ)さんとのお芝居はすごく楽しく、勉強になります」離婚宣言をされた専業主婦の早梅と出会った壱成が、暇つぶしを理由にゲームを持ちかけて、次第に恋愛感情へと発展していくという物語。好意を素直に表現できず、見ていてやきもきするような、少しひねくれた壱成の行動を、彼自身の恋愛観と比較すると…?「恋愛に発展する道のりでいうと、僕の場合は、ゲームのような駆け引きなどもしないし、一目惚れよりも友達から始まることの方が多いかもしれません。同じ場所や時間を共有していくうちに、一緒にいると楽だなと感じると、それが恋の始まり。とはいえ、自分の空間にいきなり入ってこられるのは好きじゃなくて。気がつけば自然に入りこんでいた人との時間が心地いいなと思えれば、今度はずっと同じ空間にいてほしい。…って、僕、面倒くさいですね(笑)」照れながらも、自身の恋愛観をそう語ってくれた眞栄田さん。演じる壱成のツンデレキャラにかけて、「ご自身はツンデレですか?」という質問には、意外にも「僕はデレデレですよ(笑)」と即答。「ツンとデレのバランスなんてどうでもいいと思っちゃう。家族全員で同じ部屋にいようが、そこに友達がいようが、(恋人には)自分の気持ちに素直でいいと思う。でも、中学生の時にアメリカから日本に引っ越してきて、日本ではそうではないというのも知って。だから中高生時代は、周りを見て浮かないようにバランスをとってきたんですが、もう大人だしいいかな、って。だからきっと彼女にはベタベタです」生まれ育ったロサンゼルスの学校で受けたバンド演奏の授業をきっかけに、サックスにのめりこみ、中学時代から本格的にプロのサックス奏者を目指した経験もある眞栄田さん。それもあってか音楽には感情が出やすいそうで、恋をすると演奏が変わって、周りの人にバレバレだったこともあるんだそう。「実は…気分が演奏に出てる、なんてよく言われてました(笑)。もちろん恋愛だけではなく、悩みとか喜びなど、精神面や感情はそもそも誰でも演奏に影響しやすいんです。好きな女性のタイプは、“陽”の要素が多くてよく笑う人。素朴な女性が好きですね。とはいえ、いま現在は仕事が一番で、僕の中で恋愛が占める割合は0%かも…。今は恋愛はなくてもいいかな。ただ、もし結婚したら、理想は仕事が50%、家庭が50%。結婚願望は昔から強い方で、子供も好きだし、それに仕事が終わったあとに帰れる場所があるって素敵ですよね。あまり周りに理解されないんですが、そもそも結婚できると思えるぐらいの相手じゃないとお付き合いもしません。だから極端な話、いま彼女がいれば明日結婚してもいいと思うくらい。相手には、経済的にも気持ち的にも、不自由な思いはさせたくない。お互いに素でいられて楽しい、そんな関係性が理想です」俳優/眞栄田郷敦(まえだ・ごうどん)2000年1月9日、アメリカ・ロサンゼルス生まれ。’19年、映画『小さな恋のうた』で俳優デビュー。出演映画『東京リベンジャーズ』が公開中。また出演しているドラマ『プロミス・シンデレラ』(TBS系)は毎週火曜22時から放送。シャツ¥130,900パンツ¥119,900ベルト¥35,200シューズ¥132,000(以上ANN DEMEULEMEESTER/CORONET CO.,LTD. TEL:03・5216・6524)写真家/山元彩香(やまもと・あやか)絵画専攻の学生時代に写真を始める。今秋、ギャラリーと美術館で展示を予定し、展示に合わせ写真集を制作中。Instagramは@ayakayamamotoo。「眞栄田さんは、最初にカメラを構えたときから、自然な佇まいにムードがあって圧倒されました。若い方ですが、ぶれない芯と包容力を感じさせます」※『anan』2021年8月25日号より。写真・山元彩香スタイリスト・MASAYAヘア&メイク・Misu(共にADDICT_CASE)取材、文・若山あや撮影協力・AWABEES(by anan編集部)
2021年08月24日9月10日公開の映画『先生、私の隣に座っていただけませんか?』にて結婚5年目で関係がゆらぐ夫婦を演じ、サスペンス展開に夫婦の空気感を吹き込んだふたり。役者として考える、人間ドラマにおける恋愛とは。夫婦を演じた二人が語る、恋愛・夫婦・結婚の話。黒木華さんと柄本佑さんが映画『先生、私の隣に座っていただけませんか?』で演じているのは、結婚5年目を迎えた漫画家の夫婦。これまで同じ作品に出演していたことはあるけれど、共演するのは意外にも初めてのこと。しかし、お互いにどこか親近感があったのだそう。柄本:黒木さんとは以前にうちの弟が共演していたのもあって勝手に親近感を抱いていて、今回の夫婦役は、すーっと入っていけるような気がしていたんですよね。そしたら想像以上に、すんなりなんの違和感もなく入っていけて。黒木:嬉しいです。私もです。柄本さんは最初からとても優しい方で、どっしりと、そして常にフラットに構えてくださり、待ち時間も気負わず、お互いにいい距離感でいられました。ほんわかしたやりとりに、仲の良さが窺えるが、作中の夫婦を取りまく状況はかなり深刻。柄本さん扮する俊夫は、あろうことか黒木さん扮する佐和子の担当編集者と浮気をしている。そんななか、佐和子が不倫をテーマに新しい漫画を描き始め、その設定が自分たちに酷似しているため、俊夫は浮気がバレたのではと疑心暗鬼に。そしてついに漫画の中に、佐和子の浮気相手(!?)が登場し…。柄本:俊夫さんの立場で見ていると、佐和子さんの言動がいちいち「こうくるか!」ってことばかりで。核心は突かれないのに、気づいたらコーナーにまで追い込まれていたような感覚がありました。黒木:フフフ…(笑)。柄本:ずっと何も聞かず何も言わず、意味深な行動をとってきた佐和子さんが、いよいよ「俊夫くんは本当に不倫してるの?」って核心に迫る場面があるじゃないですか。あの時の黒木さんの言い方があまりにもまっすぐで、こんなにストレートに来るのかぁって。餌で誘導されて、上からパタッて籠が落とされたみたいな(笑)。黒木:そこまで計算してたわけではないですが、何気ない感じで聞くほうが辛いだろうなと思って。その後の二人のやり取りで、俊夫さんが佐和子に即答するシーン、私、あの時驚いたし、何だかすごく傷ついたんですよね。あんなに何の逡巡もなくすぐに嘘をつくんだっていうことがショックで…。柄本:長いシーンだったのもあって、やってるうちに自然とああなったんです。でも俊夫の見え方として、極力愚かしいほうがいいので流れとしてはよかったのかなと。黒木:そうですね。柄本:冷静に見ると、どう考えても不倫に向かない男なんですよね。なんか流れでうっかり不倫しちゃったけど、根本的に嘘をつけない正直者というか。だからどう見ても俊夫が悪いんだけど、観終わった後に、憎めない奴だなってところに落とし込めたらいいなって。黒木:私は、俊夫さんの想像の中の佐和子なのかリアルな佐和子なのか、観てる方がどっち?となるような微妙な振れ幅について監督とよく話していました。佐和子自身の気持ちの揺れも表に出すぎないよう気をつけました。柄本:黒木さんがそのゾーンに入れば入るほど、俊夫としてはドキドキで…。佐和子の言動いっこいっこに驚いちゃうっていう(笑)。黒木:めっちゃ汗かいてましたね。柄本:じつはこの夫婦って、コトが始まる前の、世話(日常の些細なやりとり)な部分ってあまり描かれていないんですよね。ただ、佐和子さんの行動原理の中に夫婦を意識したものがあって、そこでふたりの普段の関係性みたいなものが見えてくるのがおもしろくて。黒木:確かに。ふたりで佐和子の実家に帰ってくる場面で、亀の水槽を俊夫さんが持っているんですが、現場でそれを佐和子が手伝うか手伝わないかって話になって。結果的に手伝わないんですが、「持てるよね?」と言葉を交わさなくてもいい夫婦の距離感が、そこに見えたりするのはおもしろいですよね。作中の夫婦関係は危険水域だけど、恋愛関係、そして結婚生活をうまく続けていくには、どうしたらいいと思いますか?そして恋愛がもたらしてくれるものとは何だと思いますか?黒木:これは恋愛に限らずだと思いますが、お互いに思っていることを素直に伝え合い、会話をするということが一番大事だと思います。あと、相手の言葉をいったんきちんと受け止めるってことですかね。柄本:ウチで言ったら…無理しないっていうことかなぁ。それでも生活を共にするとお互いに無理しちゃう部分は出てくる。でもだからこそ、そこを意識しておくってことが大事なのかなって。黒木:恋愛すると、私は相手のことをよく考えるようになるので、いろんな経験値が上がっていくと思っていて、その経験が役者として役に立つことも多いです。あと、家族や友達とも違う相手と、考え方や趣味を共有したり、逆にこれが合わないなって知ったりすることもあって、単純に自分の世界が広がります。柄本:これは結婚してから思ったことだけど、結婚がもたらしてくれた自由っていうのはあったかなって。付き合ってる時は、お互いに「一緒にいなきゃ」みたいな意識が強かった気がするんだけど、結婚してからは、それぞれ別々に飲みに行くことが増えて、感覚的に自由になった気がしてて。ウチだけのことかもしれないけれど、それは結構意外だったかも。黒木:いいですね。柄本:なんかね、結婚生活楽しいよ。安心感がちょっと違う。自分を一番よく理解してくれる仲間みたいな存在ができた感じ。黒木:素敵ですね。羨ましいです。そんなおふたりに、役者として恋愛作品に取り組む時の想いも伺ってみる。柄本:恋愛ものっていう恋愛もの、そんなやってきてないから…。黒木:私の場合、自分の役割として、観てくださる方が投影しやすいようにということは意識しているかもしれません。あとは、監督、カメラマンさんにおまかせするのみです。柄本:わかる、そこ大事!俺も頑張るけど限界あるぜ。照明とか角度重要だぞ!何卒、よろしくお願いいたします、と(笑)。『先生、私の隣に座っていただけませんか?』2018年にTSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILMで準グランプリ受賞の、新進気鋭の映画作家・堀江貴大さんによるオリジナル作品。夫の不倫から始まった漫画家夫婦のヒリヒリするような心理戦は、サスペンス的なおもしろさも。9月10日よりロードショー。えもと・たすく東京都出身。11/3公開の映画『川っぺりムコリッタ』、来年公開予定の映画『真夜中乙女戦争』など、今後も出演作が相次ぐ。くろき・はる1990年3月14日生まれ。大阪府出身。9/5まで、舞台『ウェンディ&ピーターパン』に出演中。9/28~30に朗読劇『湯布院奇行』への出演も控える。黒木さん・ドレス¥86,900ブーツ¥126,500(共にSacai TEL:03・6418・5977)Tough Ear Cuff¥152,900Attack Ring¥218,900Attack Ring¥272,800Noise Ring¥269,500(以上RIEFE JEWELLERY/リーフェ ジュエリー TEL:03・6820・0889)柄本さん・シャツ¥18,700(サウス2ウエスト8 TEL:011・280・7577)モックネックニット¥20,900(ニードルズ/ネペンテス TEL:03・3400・7227)パンツ¥30,800シューズ¥30,800(共にエンジニアドガーメンツ TEL:03・6419・1798)※『anan』2021年8月25日号より。写真・田邊 剛スタイリスト・申谷弘美(黒木さん)林 道雄(柄本さん)ヘア&メイク・新井克英(黒木さん)星野加奈子(柄本さん)取材、文・望月リサ(by anan編集部)
2021年08月23日『偶然と想像』(今冬公開予定)がベルリン国際映画祭審査員グランプリ(銀熊賞)を受賞し、いま世界が、最も注目を寄せている濱口竜介監督が村上春樹の短編集『女のいない男たち』収録の同名短編小説を映画化。7月のカンヌ国際映画祭で、邦画初となる脚本賞をはじめ4冠に輝いた『ドライブ・マイ・カー』で主人公を演じる西島秀俊さんは、濱口作品に魅入られた一人だ。この撮影中は、とにかくテキストまみれでした(笑)。「出演している俳優さんが他の作品では見たことのない演技をしているので、演じる側の感情を大事にする演出方法をかなり研究されている方だなと。そして、脚本の力、映像の力が作品を重ねるごとに強くなっているように感じます。『寝ても覚めても』に関しては監督としての総合力が素晴らしく、いま世界で起きていることがちゃんと映り込んでいる。凄まじい才能が日本に現れたなと」村上春樹の小説と濱口監督の映像は、どんな共鳴を見せたのだろう。「どんなに完璧な夫婦でも、人間としてわかり合えている二人でも、どうしてもわからない部分はある。そういう原作の核にあるものが、濱口さんの視点と重なっているなと。濱口作品は、登場人物にも観客にも“この人はこういう人”として見えている姿が何かの瞬間に一気に変貌する。人は底知れないものだというリアリティが根底にあるから、観る者をドキドキさせるんでしょうね」役者自身の中で起きる嘘のない感情がカメラに記録される濱口作品においては、感情を乗せずに脚本を読み上げる稽古、“本読み”が鍵となる。「このキャラクターだったらどう答えるかという質問を自分たちで考えたり、脚本にはないシーンを仮定してやったりもしましたが、この撮影中は、とにかくテキストまみれでした(笑)。空き時間は全部本読みで、録音をホテルに帰って聴く。感情を込めないという意味で、句読点のひとつまで間を厳密に潰していく。そのプロセスのなかで、共演者の方々の声を聴いているとだんだん気持ちよくなってきて、彼らのことが好きになるというか。だから、本読みが楽しくて。その時間をみんなが待っているくらい、豊かな作業でした」その作業を何度も繰り返した後に自由に演じると、そこに説明のできない何かが確実に生まれる。「あのプロセスはいまだによくわからないんですけど、本番で初めて相手の感情が目の前に表れると、初めて見る人が出てきたみたいで感動的で、びっくりする。頭に相手の台詞が完全に入っていると余計なことを考えずに済むという理屈を超えた、不思議な作用があって。ちょっと魔法みたいなものにかかるんです」人間が根底に抱える、わかり合えなさ。その先を、コロナの前後をまたぎ撮影された本作はどう描くのか。「以前と以後で人生が完全に断絶した出来事が実際に起きていましたが、絶望の先に行くために必要なのは、やっぱり言葉なんじゃないかな。だから登場人物は話し合う。濱口さんもそれができるのかを考えながら、それでも乗り越えてほしいという希望を持って撮っていたと思います」『ドライブ・マイ・カー』写舞台俳優で演出家の家福悠介は、妻がある秘密を残したまま他界してから、喪失感を抱えながら生きている。2年後、演劇祭のために向かった広島で、寡黙な専属ドライバーみさきと出会う。8月20日より全国公開。©2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会にしじま・ひでとし1971年3月29日生まれ、東京都出身。’94年、『居酒屋ゆうれい』で映画初出演。声優を務めた『劇場版オトッペ パパ・ドント・クライ』が10月15日、映画『劇場版 きのう何食べた?』が11月3日公開予定。※『anan』2021年8月25日号より。写真・小川久志スタイリスト・カワサキタカフミヘア&メイク・亀田 雅インタビュー、文・小川知子(by anan編集部)
2021年08月22日NHK連続テレビ小説『おちょやん』での活躍も記憶に新しい前田旺志郎さん。少年のようなあどけない笑顔で、明るい人柄で親しみやすい雰囲気ながら、ふいに覗かせる憂いには知的さも漂い、その存在感に惹きつけられる。しかし、本人曰く「基本的にありのままというか、見たまんまの普通の大学生だと思います」とのこと。そんな前田さんが憧れるのも、自分を飾らない人。「少し前、阿部サダヲさんと共演させていただいたんですが、あれだけお芝居がすごくて大河ドラマに主演されるような方なのにまったく驕らないんです。すごくピュアで、いい意味で普通の感覚を持っていて素敵だなと」今回、撮影用に私物の漫画をお借りしたけれど、持参してくれたのは『SLAM DUNK』を筆頭に“ザ・少年マンガ”なラインナップ。恋愛ものはあまり見ないとか。「映画とかを観て、自分事としてとらえるってことはなくて。役に恋するみたいな瞬間はあるんですけど」それでも、「羨ましいと思うことはある」らしい。「告白されるなら、めちゃめちゃベタですけど、校舎裏に呼び出されて…とか(笑)。淡々と会話する落ち着いたカップルより、ふざけて笑ったりするような和気藹々とした関係が理想です。僕、しゃべるのが好きなんで、話を聞いてめっちゃ笑ってくれる人はいいですね。あと、どんな人に対しても、ちゃんと心で接することができる人。たとえば、お店で料理が運ばれてきた時に、ありがとうございますって言えるとか。そういう場面での人に対する態度は気になるかもしれない。それから不意の笑顔には弱い気がします。以前、醍醐虎汰朗くんとごはんに行った時に、何気ない場面で『ありがとう』って笑顔を向けられて、かわいいなぁと思っちゃいました」現在20歳。自身も恋愛を描いた作品に出演する機会も増え、「演じる恥ずかしさはもうないです」と話す。「自分が好きになる側だとしたら、恋愛スイッチというか、役として相手の役を好きになるようにはします。その女優さんのインスタをフォローすることもあるし。すでに好きになっている設定だとしたら、どんな出会いで、どこで好きになったのか自分で考えることもあります」恋愛すれば、相手のことを想像したり深く考えたりしてしまうもの、時に感情が大きくゆさぶられることも。「人として成長できるなって思います。他人の価値観に触れて、合わせていこうとするって、恋愛以外ではなかなか経験できないこと。自分以外の人を理解しようとするのはどんな場においても大切だと思いますし、役者としては芝居にも影響すると思います。『おちょやん』で共演した方とも、大恋愛したら人間力が上がって芝居がうまくなると思うって話をしてました。あと、単純に好きな人がいたら頑張れるっていうのはありますよね」結婚にも憧れるけれど、今は仕事が何より大事。「中学までは大阪にいて、高校進学の時に、仕事を辞めて地元の友達と一緒に進学するか東京に出るかっていうところで、初めて自分が今までやってきたことって何だったんだろうって考えたんです。それまで受け身でやってきたけれど、好きだからやってきたんだなって自覚して、そこから現場での取り組み方や姿勢が変わりました。今までは単に現場が楽しくて行っていたけれど、仕事として意識するようになって、徐々にお芝居がすごく楽しいなって思うようになって。たまに、人との掛け合いの中で、自分でも予想しなかったお芝居になる時があるんです。その本番中に起きる化学反応が面白くて仕方ない。とくに『おちょやん』はそれの連続。後半は(杉咲)花ちゃんの顔を見ただけで泣けてくるくらい。そこまでいけたのが、本当に楽しかったしありがたかったです」ここからますます活躍の場が増えるのは間違いない。やってみたいのは「仕事に就いている役」だそう。「学生役やニートが多いので、刑事ものや弁護士に憧れています。今、自分の中にないキャラクターを演じる演技レッスンを受けているんですけど、根本から自分とは違う人をやるってどういう感じなのか興味ありますね」俳優/前田旺志郎(まえだ・おうしろう)2000年12月7日生まれ、大阪府出身。お笑いコンビ・まえだまえだとして活動。近年は俳優として活躍し、近作に映画『キネマの神様』など。出演映画『うみべの女の子』は8月20日公開、『彼女が好きなものは』は秋公開を予定。Tシャツ¥9,900フルジップパーカ¥28,600(共にFilMelange TEL:03・3473・8611)羽織シャツ¥5,280(CORD TEL:03・3313・5744)パンツ¥17,600(HOLLYWOOD RANCH MARKET TEL:03・3463・5668)写真家/持田 薫(もちだ・かおる)1991年生まれ、東京都出身。雑誌の他、CDジャケットや「私が撮りたかった女優展 Vol.3」等で活躍。「撮影前、『写真は慣れなくて、苦手です…』と前田さんがおっしゃっていて。でも撮影が始まると勘が鋭いというか、表情も動きも場所に応じて求められることをくみ取ってくださるのが印象的でした」※『anan』2021年8月25日号より。写真・持田 薫スタイリスト・小宮山芽以ヘア&メイク・佐藤健行(HAPP’S)取材、文・望月リサ(by anan編集部)
2021年08月22日少女の頃に宝塚の世界に魅了され、自らもその道を歩いてきた。一作ごとに進化を遂げた先に辿り着いたトップスターという場所。そこで大輪の華を咲かせ、この4月に退団した望海風斗さん。宝塚でも屈指と謳われた歌の名手が、新たな世界で見つめるものとは。そして今あらためて、歌への想いを伺った。美しく深い歌声を携え、新たな航海へ漕ぎ出す。歌詞に綴られた想いをひとつひとつの音に込め、深く豊かな歌声で歌い上げる。宝塚歌劇団でも群を抜く歌唱力の持ち主だった元雪組トップスターの望海風斗さん。「歌は小さい時から好きだったみたいです。最初の頃は、ただ叫んでいるようにしか聞こえなかったと思いますが、ずっと歌っていたんだとか。自作で何か歌いだしたと思ったら、途中から『おもちゃのチャチャチャ』に変わっていたり。とにかく今の楽しいと思う気持ちを歌で表現するような子供で。それを毎日のように聞かされていた親は、さぞかし大変だっただろうと思います(笑)」もちろん音楽の授業も好きで、「とくに歌う時間が好きだった」。そんな少女がある日、宝塚と出合い、タカラジェンヌとなった。しかし、「下級生の頃はあまり歌を披露する機会がなかった」という。「当時、私が在籍していた花組に歌のうまい方がたくさんいらしたんですね。こういうのをやってみたかったとか、このメンバーに入りたかったと思うような場面があっても選ばれることはなくて。上級生の方からも『下級生で歌の出番をもらえる機会はなかなかないから、ダンスを頑張ったほうがいい』と言われました。その時、もちろんダンスを頑張らなきゃというのと同時に、ちょっとうまいくらいじゃ選んでもらえないならば、相当練習しないといけないんだとも思ったんです。その頃からずっと、『この人の歌をもっと聴いてみたい』と言っていただけるような歌を歌えるようになりたい、と思い続けてきた気がします」正確なピッチ、声の伸びや声量、声質。歌に必要とされるものはたくさんあるが、望海さんの歌が高く評価されるのはそれだけではない。その歌から、情感がじわりと染み出すように、時に溢れ出てきて、それが深く心に刺さるのだ。「下級生時代、厳しい先生がたくさんいらして、あまり歌で褒められたことがなかったです。それどころか“面白みのない歌”だとか言われて、どうしたら歌って面白くなるんだろうと考えるようになっていきました。声にばかり頼って歌うと、中身のないつまらないものになってしまう。とくにミュージカルにおいては、お芝居の途中に突然歌いだすわけです。感情がうわーってくる瞬間があって、だから音楽が始まって、その想いが音にのって歌になっていく。音楽がかかったから歌うわけではないんです。それに気づかせていただきましたから、あの時に厳しく言っていただけてよかったです」その望海さんが4月の退団後初のソロコンサート「SPERO」を開催することを発表。男役でもタカラジェンヌでもない、ソロアーティストとしての本格始動となる。「これまでは男役という、ある種、作り込まれた世界のなかでやってきました。まずは、無理して女性を作っていくのではなく、いったんニュートラルな状態になって、そこから新たなところに進んでいこうと思っているところです。今の、新しい一歩を踏み出そうとする瞬間を、コンサートという形でお届けしたいと思っています」ゲストには、ブロードウェイやウエストエンドで『オペラ座の怪人』や『レ・ミゼラブル』の主役も務めるラミン・カリムルーさんのほか、井上芳雄さん、海宝直人さんという、これまた屈指の歌い手たちが名を連ねる。「ラミンさんと井上さんは、在団中の『NOW! ZOOM ME!!』という公演に出演いただく予定でしたがコロナ禍で叶わなかったんです。こんな状況のなかラミンさんが来日し出演してくださることが信じられないですし、井上さんとは男役としてご一緒する機会はありましたが、今回、違った視点でさせていただけるのが楽しみです。海宝さんとは初めての共演。一緒に歌わせていただくことでどんな世界が広がるかワクワクしています。初めての世界に飛び込む時に、こんな素晴らしいプロフェッショナルの方々に支えていただけてありがたいです」この謙虚な学びの姿勢が、望海さんの今を築き上げているのだろう。気になるのは、ここからどんな活動をしていくかだけれど、「まだとくに考えていない」そう。「コロナ禍で自宅にこもっていた時間、タイのドラマをはじめいろんな作品を見たんです。視野も広がったし、そこにいろんな発見がたくさんありました。今はもっといろんな人に出会って、いろんな景色を見て、もっといろんなことを知りたいという気持ちでいっぱいです。そしてそこから得たものを何かの形で還元できるようになったらいいなと思っています」Q.エンターテインメントのどんなところに魅力を感じていますか?フィギュアスケートが好きなんです。競技でもありますから、エンターテインメントだけでは括れませんが、観るたびに感動をいただきます。フィギュアは、積み重ねてきた練習の成果を、一回にすべて出しきるわけです。観続けていると、その時その瞬間、その人からしか生まれない“何か”に出合えることがあります。それは必ずしもうまくいった時ばかりではなく、何か不測の事態が起こった時の見事な対処の仕方に惹きつけられる場合もある。どちらにせよ、「今、すごいものを見た!」という体感がしたくて観ているのかもしれない。それはつねにあるわけじゃないからこそ、見逃したくないし、目撃した時に応援し続けてきてよかったと思うんです。Q.エンターテインメントが自身にもたらしたものとはなんですか?昨年春、『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』という作品の東京公演が開幕したばかりのタイミングでコロナ禍になり、予定していた半分以上の公演が中止になりました。それまで、エンターテインメントは自分を元気にしてくれるものと思ってきたけれど、自分はエンタメを作るほうの側にいて、みんなが元気になるものをお届けする側なんだということを意識するようになりました。それにはただ毎日を漫然と過ごすのではなく、自分自身をもっともっと磨いて、次に生まれてくる作品を観た人が幸せになるような素敵なものにしなくてはいけない。そう考えるようになった今、エンターテインメントは、自分を高めてくれる存在なのかなと思います。望海風斗コンサート「SPERO」望海さんの宝塚歌劇団退団後初となるソロコンサート。宝塚時代の思い出の楽曲のほか、ジャズやポップスなどのスタンダードナンバー、海外ミュージカルの楽曲などを歌い上げる。8月11日(水)まで梅田芸術劇場メインホール、9月26日(日)~10月5日(火)KAAT神奈川芸術劇場 ホールほか、福岡、愛知でも公演あり。梅田芸術劇場 TEL:0570・077・039のぞみ・ふうと神奈川県出身。2003年に宝塚歌劇団入団。その歌の実力で注目され、’14年『エリザベート』で演じたルキーニで注目を集める。その後、雪組に異動し、’17年に雪組トップスターに就任。今年4月に『fff/シルクロード』で退団。退団後の初舞台『エリザベート TAKARAZUKA25周年 スペシャル・ガラ・コンサート』のトート役も大きな話題に。衣装はすべてスタイリスト私物※『anan』2021年8月11日‐18日合併号より。写真・樽木優美子(TRON)スタイリスト・菊池志真ヘア&メイク・国府田 圭取材、文・望月リサ撮影協力・AWABEES(by anan編集部)
2021年08月17日ドラマ『ドラゴン桜』の第2シリーズで昆虫好きの原健太を好演した細田佳央太さん。初主演映画の『町田くんの世界』でその名を知った人も多いだろう。そんな彼の最新出演作は、沖田修一監督の映画『子供はわかってあげない』。ちょっとクセのある変わった人物たちが次々に登場し、思わず元気になれる“沖田ワールド”全開の青春映画だ。「僕が演じるもじくんは、心が広くて誰でも受け入れる優しさを持っている高校生。美波(上白石萌歌)が習字に書き残した“暗殺”の文字が急に気になって、付き合ってもいない美波のお父さんの家にまで行くとか、後先考えずに突っ込んでいく感じは、他の人物たち同様にやっぱり変わっているし愛らしい。最初に原作漫画を読んだ時は、もじくんの存在がこの世界観にとても合っていて、僕が演じさせてもらうことにも迷わなかったんです。でも台本を読んでみると、美波との間だけで使われる言葉や言葉尻などが言い慣れていないものばかりで難しくて」さらに沖田監督からの言葉も、細田さんを悩ませたという。「セリフはもじくんぽさをちりばめていて必然的にもじくんになれるから『あとは細田くんの好きに演じていいよ』って言われて困りました。雰囲気やキャラクターがある中に、自分らしさを入れるとどうなるんだろう、自分ってなんだろう…って(笑)。でも僕、『町田くんの世界』の時に、めちゃくちゃ芝居が面白いと感じた瞬間があったんですよね。あの感覚をまた味わいたくて、お芝居を続けているところもあるし、演じている瞬間は他のことを忘れて“無”でいられるから、悩みながらも楽しく演じられたと思います」1年余りの延期を経てようやく上映される今作だが、コロナ禍を経験したからこそ、この作品のよさがより伝わるはず、と細田さん。「僕は実家暮らしだからまだ気が紛れるけれど、もし一人暮らしで人と会えずに話す相手もいないと、いろいろと深く考えすぎて心が弱くなってしまう人もいるのかなぁと。僕も一人の時はそういうタイプなので、気持ちがわかるんです。そんな人もそうでない人も、この映画では人とのあたたかい繋がりを感じることができるはず。後半の海のシーンのロケ地は真夏の静岡で、すごく景色が美しくて。余生を静かに暮らすならここだ、って思いました(笑)」『子供はわかってあげない』高2の夏、水泳部の美波は書道部のもじくんと運命的に出会い、父捜しの旅に出ることに。部活、家族、アニヲタ、夏休み、元教祖…胸騒ぎワード満載!豊川悦司、千葉雄大、斉藤由貴ほか出演。8月20日より全国公開。©2020「子供はわかってあげない」製作委員会©田島列島/講談社ほそだ・かなた2001年12月12日生まれ、東京都出身。’19年の主演映画『町田くんの世界』では、町田一を演じて、第29回日本映画批評家大賞で新人男優賞を受賞。シャツ¥41,800パンツ¥39,600(共にNULABEL/STUDIO FABWORK TEL:03・6438・9575)※『anan』2021年8月11日‐18日合併号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)スタイリスト・岡本健太郎ヘア&メイク・菅野綾香(ENISHI)インタビュー、文・若山あや(by anan編集部)
2021年08月13日ドラマのみならず映画、舞台で活躍し、俳優としての才能を発揮する、我が家・坪倉由幸さん。来年の大河ドラマにも出演が決定。ますます注目の芸人俳優バイプレイヤー筆頭です!演技がうまい若手が今はとにかく怖い!お笑いトリオ・我が家の坪倉由幸さんは『下町ロケット』や『あなたの番です』『わたし、定時で帰ります。』など話題のドラマに続々と出演する芸人俳優バイプレイヤー代表格のひとり。なかでも『アンナチュラル』第4話で演じたバイクの事故で亡くなる父親役はメッセージを託す物語とともに強い印象を視聴者に与えた。さぞ、ご本人もこの役柄のお芝居に満足されていることだろうとお話を伺ったら、意外な返事が返ってきた。「満足どころかお芝居をすることがずっと不安なんですよ。『アンナチュラル』なんてひとりでオンエアを見るのが怖くてテレビをつけられなかった。でも、放送終了後にはすぐエゴサーチをして(笑)。そうしたら“すごくよかった”といいコメントがいっぱい並んでいたんです。それで、ほっとしつつも、でも自分としては“そんなによかったかな?”とずっと半信半疑でした」かつて俳優の養成所に通っていたものの根っからのお笑い志望。ドラマ初出演も『主に泣いてます』で、イケメンだけど帽子を取るとハゲている警察官という役柄がぴったり、と見た目重視のキャスティングだった。「だから演技は下手でもいいのかなと思っていました。それでも自分としては一生懸命やってみたんです。でもその時に演技がうまくできないな、もっと自然にセリフを言えたらいいのにと思った。その気持ちが今もずっとあります」コントで見せる大ボケ役のキャラクターのように飄々とドラマの現場をこなしているのかと思いきや、一つの役柄、一つのセリフをとことん吟味し、自分の中で反芻してから現場に挑みたいと言う。演じることへの繊細さが言葉の端々にうかがえる。「いや、それは多分僕が芸人だからです。舞台だと笑いが起きてスタッフさんやお客さんのリアクションをダイレクトに感じられる。ネタも何回も舞台にかけて練れるじゃないですか。ドラマの現場はそれがない。シーンとしていてリアクションはないし、チャンスはリハと本番の2回だけ。本当に厳しい世界です。だから不安になってあれこれ考えちゃう。せめて自分なりにどう演じるか準備しておかないとってなりますよ」その真摯さがあるからこそ、多くのドラマプロデューサーや演出家のお眼鏡にかなうのだろう。来年はじまる三谷幸喜脚本による大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に抜擢され、初となる大河ドラマ出演が決まった。「3月に放送された三谷さん脚本のドラマ『死との約束』にまず呼んでいただいたんです。その時も驚いて。現場に三谷さんがいらした時にお話をしたら(アメリカのドラマシリーズの)『ブレイキング・バッド』に登場する弁護士役が好きで、その役者さんが僕とよく似ていると。だから、そんな感じで演じてねと言われた。え、もう撮影中盤過ぎているのにどうすればいいの?ってその時は思ったけど(笑)、うれしかったですね」大河の撮影も順調に進み、秋には新しい舞台も決まっている。俳優業はいよいよ順風満帆?「いや、もう若手の台頭がとにかく怖いですよ。かが屋とかハナコ岡部とか今、コントやっている後輩の子たちは本当に芝居がうまいじゃないですか。何か言われた時の受けの演技がめちゃくちゃいいんですよね。あれはドラマの現場でも求められているものだと思いますよ。…いや、もうこれ以上褒めるのはやめましょう。僕が今スベっちゃうわけにはいかないんで。役者としてスベったらもう我が家ごと崩壊しちゃうかもしれないから(笑)。ここは、僕が今、ふんばっておかないといけない場所だぞって思ってます」Masterpiece『アンナチュラル』過労死した父親役をナチュラルに好演。石原さとみ主演の法医学ミステリー。坪倉さん出演の第4話は過労死をテーマに“誰のために働くか”を問いかける。新井順子プロデューサー作品にはその後『わたし、定時で帰ります。』『着飾る恋には理由があって』にも出演。『主に泣いてます』民放連ドラ初出演のコミックドラマ。東村アキコ原作のコミックを菜々緒主演でドラマ化。“美人至上主義”のハチャメチャな警官・勅使河原耕三を演じた。「現場がとにかく楽しかった思い出があります。これが最初のドラマでよかったなと思ってます」Reviewお顔立ちは二枚目ですし、ニヒルなイメージもあって、いい人も悪人もできる変幻自在の感じがすごい魅力だと思います。芸人ぽさを封印するのもうまく、演技に引き込まれます。(ドラマプロデューサー・岩崎愛奈さん)バイプレイヤーに欠かせない存在。『アンナチュラル』では、演技に泣かされてしまいました。短い出番でも、この人の人生にはいろんなことがあったんだろうなと想像をかきたてられます。(ライター・西森路代さん)つぼくら・よしゆき1977年生まれ、神奈川県出身。2003年に杉山裕之、谷田部俊と我が家を結成。舞台にも熱心に挑み、9/19~本多劇場で上演される『物理学者たち』にも出演。いわさき・あいなドラマプロデューサー。2020年に手がけた『私の家政夫ナギサさん』が大ヒット。現在、重岡大毅さん主演のファミリードラマ『#家族募集します』が放送中。にしもり・みちよライター。香港、台湾、韓国と日本のエンタメ事情に精通。共著に『韓国映画・ドラマ──わたしたちのおしゃべりの記録2014~2020』(駒草出版)がある。※『anan』2021年8月11日‐18日合併号より。写真・土佐麻理子イラスト・岡田成生取材、文・梅原加奈(by anan編集部)
2021年08月10日ベテランから若手まで、気になる名バイプレイヤーをプロの視点からチェック。脇役でもキラリと存在感を放つ演技派芸人たちが今、業界で熱視線を集めています!名コント師から“おじ枠”、独自型まで揃ってます!「演技上手はやはりコント師に揃っているように思います。人力舎の芸人さんにはシティボーイズ(大竹まこと、きたろう、斉木しげるによるコントユニット)の系譜があり、塚地武雅さんや児嶋一哉さん、そして東京03の3人はみなさんドラマで活躍。芝居がとにかく上手です」(ライター・西森路代さん)若手でもコントができるコンビが注目を集めている。「最近、コントを見て気になるのはかが屋ですね。2人とも上手です。リアクションのつけ方などドラマでも生きそうなリアリティがあります」(ドラマプロデューサー・岩崎愛奈さん)「自身で脚本も手がける、シソンヌのじろうさんや空気階段の水川かたまりさんも要チェック。“おじさん”枠でいうとカンニング竹山さんの次にくるのは、同じく空気階段の鈴木もぐらさんでしょうか。あとは、独特の空気感を持っている元巨匠の岡野陽一さんの“オジ芝居”も、もっと見てみたい!」(西森さん)南海キャンディーズの山崎静代さんはじめ、女性芸人も映画やドラマで活躍中。そこもバイプレイヤー化が進んでいる。「女性から見ても共感を抱くキャラを演じられる方が増えていると思います。丸山礼さんは今どきの女の子を演じさせたらピカいち!ヒコロヒーさんもミステリアスな雰囲気があってどんな役もハマりそうです」(岩崎さん)「独自系だと、かもめんたるの岩崎う大さんやハライチの岩井勇気さんを推したいところ。出演する作品もちょっとマニアックで、はずれがない。このままの感じで突き進んでほしいです」(西森さん)芸人俳優バイプレイヤーズ名鑑(画像・右上から左へ、五十音順)飯尾和樹(ずん)いいお・かずき端役でも個性が光るキャラで人気。『私の家政夫ナギサさん』『着飾る恋には理由があって』などに出演。『アンナチュラル』の坂本誠役では『MIU404』にも出演。岩井勇気(ハライチ)いわい・ゆうき近年、NHK制作のドラマ作品などに出演。渡辺あや脚本、松坂桃李主演の『今ここにある危機とぼくの好感度について』では若者論客風の准教授を好演。岩崎う大(かもめんたる)いわさき・うだい『生きるとか死ぬとか父親とか』の芝居が話題。劇団かもめんたるを主宰。公演作が2年連続で岸田國士戯曲賞候補に選ばれるなど劇作家としても注目される。岡野陽一おかの・よういち以前は巨匠というコンビを組んでいたが今はピン芸人として活動。大九明子監督・脚本の『私をくいとめて』でコロッケ屋店主を演じインパクトを残す。岡部 大(ハナコ)おかべ・だいトリオのボケでキングオブコント2018王者。NHK連続テレビ小説『エール』の演技で多くの視聴者の涙を誘った。『私の家政夫ナギサさん』にも出演。かが屋かがや日常の一コマを題材にしたコントを得意とする。シチュエーションコメディ形式のドラマ『でっけぇ風呂場で待ってます』などに出演。本作で賀屋壮也は脚本も担当。片桐 仁かたぎり・じん2000年代から俳優として活躍。『99.9‐刑事専門弁護士‐』『あなたの番です』などに出演。’05年の舞台『ダブリンの鐘つきカビ人間』では主演も務めた。カンニング竹山カンニングたけやま『花子とアン』『いだてん~東京オリムピック噺~』ほか数々のドラマや映画にも出演。ドラマと劇場映画化もした『ねこタクシー』では主演も務める。空気階段くうきかいだんコントでも中年役が多い鈴木もぐらは『甘いお酒でうがい』など映画出演も多数。水川かたまりは『でっけぇ風呂場で待ってます』で脚本も手がける。児嶋一哉(アンジャッシュ)こじま・かずや2008年の『トウキョウソナタ』出演以降、ドラマ・映画の出演が急増。硬軟問わず演じ分け、大河ドラマ『龍馬伝』『真田丸』や最近では『半沢直樹』などに出演。今野浩喜こんの・ひろきTVCMでの大地真央さんとの共演が印象的。2人はドラマ『最高のオバハン 中島ハルコ』でも共演。数多くのドラマ、映画に出演。代表作に『下町ロケット』など。じろう(シソンヌ)職人的なコントでの女性役から風変わりなおじさんまで演じ切る憑依型の芝居が人気。出演作に『カンナさーん!』『いだてん~東京オリムピック噺~』など。ドラマ脚本も執筆。塚地武雅(ドランクドラゴン)つかじ・むが『間宮兄弟』ではキネマ旬報、ブルーリボン賞、毎日映画コンクールの3冠映画賞新人賞を受賞。テレビドラマ版『裸の大将』の山下清役などハマリ役も多数。東京03とうきょうぜろさん『大豆田とわ子と三人の元夫』で一躍脚光を浴びた角田晃広だけでなく『コウノドリ』や『この恋あたためますか』など豊本明長、飯塚悟志も出演作多数。ヒコロヒー独特の雰囲気とヒリッとさせるネタで今、注目の女性ピン芸人。ジェーン・スー原作の『生きるとか死ぬとか父親とか』でドラマ初出演。今後の活躍が期待される一人。福田麻貴(3時のヒロイン)ふくだ・まきゆめっち、かなでと共にお笑いトリオとして活動。ドラマ出演にも意欲的で『危険なビーナス』などに出演。他アイドルや劇団にコントや芝居の脚本も書く。藤井 隆ふじい・たかし大河ドラマ『真田丸』、『逃げるは恥だが役に立つ』などに出演。宮本亞門、三谷幸喜、野田秀樹、宮藤官九郎などが演出を手掛ける舞台にも参加。マキタスポーツジャンルを問わない活躍で数々の作品に出演。2012年の『苦役列車』では第55回ブルーリボン賞新人賞を受賞。最近の出演作に『劇場版「きのう何食べた?」』がある。丸山 礼まるやま・れいロバート・秋山竜次、土屋太鳳などのモノマネで知られる。YouTubeで披露するなりきり動画も話題。現在、『#家族募集します』に重岡大毅の後輩役で出演中。山崎静代(南海キャンディーズ)やまさき・しずよ愛称は「しずちゃん」。2006年、映画『フラガール』で第30回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。『笑える恋はしたくない』など主演作も。にしもり・みちよライター。香港、台湾、韓国と日本のエンタメ事情に精通。共著に『韓国映画・ドラマ──わたしたちのおしゃべりの記録2014~2020』(駒草出版)がある。いわさき・あいなドラマプロデューサー。2020年に手がけた『私の家政夫ナギサさん』が大ヒット。現在、重岡大毅さん主演のファミリードラマ『#家族募集します』が放送中。※『anan』2021年8月11日‐18日合併号より。写真・土佐麻理子取材、文・梅原加奈(by anan編集部)
2021年08月09日脇役でもキラリと存在感を放つ演技派芸人たちが今、業界で熱視線を集めています!なぜ今、芸人がドラマで引っ張りだこ?その秘密を徹底チェック!ドラマにリアリティとワクワクを与える存在。『大豆田とわ子と三人の元夫』の東京03・角田晃広や『テセウスの船』の霜降り明星・せいやなど主役ではないが、それを食わんばかりの存在感で活躍をみせる芸人たちが気になる。昨今増えている芸人俳優バイプレイヤーズ。その理由は業界の“ひな壇化”にあり?「かつてお笑い芸人がドラマに出るといえば人気トップの芸人を主演で迎える形が主流でした。でも、今やバラエティ番組で言うところの“ひな壇”芸人が急増してきています。ドラマ界もそこに目をつけてキャスティングをしているんだと思います」(ライター・西森路代さん)いわゆる“ひな壇枠”は中堅といわれる30~40代。ドラマで不足しがちな世代の役どころをうまくカバーしてくれるという。「主人公の同僚やいきつけの店の人…そういう役柄を芸人さんに演じていただくとなんでもない普通のシーンも“何か起きそう”というワクワクできる雰囲気を作ってくれる。また、笑いを入れたいこちらの意図も読み取って、いい塩梅で色をつけてくれることも。とてもありがたいんです」(ドラマプロデューサー・岩崎愛奈さん)かつてのトレンディドラマ一辺倒の時代と違いドラマもテーマや設定が多様化。その中で、リアリティを持って役に入り込んでくれる演技派芸人は貴重な存在なのだ。「キラキラしたメインキャラだけのドラマはいまや主流ではありません。そこに自分たちの生活と地続きのようなリアルな存在がいてこそドラマが面白くなる時代です。見ていて“こんな人ほんとにいるよね”を与えてくれるのが芸人俳優バイプレイヤーズなのだと思います」(西森さん)芸人俳優のココがスゴい!ドラマプロデューサーの岩崎さんとドラマ批評家であるライターの西森さんに芸人俳優バイプレイヤーズのここを見ろ!ここがスゴい!というポイントを教えていただきました。【1】ひな壇芸人だからこそハングリーに爪痕を残す!「脇役だからと萎縮せず結果を残せるのは普段、バラエティの戦場で鍛えられている芸人だからこそ」(西森さん)。「アドリブの度胸や瞬発力はさすが。場の空気を掴む勘のよさに現場でいつも助けられてます」(岩崎さん)【2】ちょうどいい空気感の普通の人を演じられる。「芸人さんはちょうどいい感じの“おじさん”がたくさんいる。あの普通っぽさ、身近にいそうな感じはドラマ、映画に絶対必要」(西森さん)。「第7世代など若い世代も“今どきの若者”枠で気になってますね」(岩崎さん)【3】旬な芸人登場が作品の話題性UPのカギに。「舞台やコント番組を見るなど常に新しい芸人さんがいないかとチェックをしています。あの人がどんなお芝居をするんだろう?と気になる方が出演するとドラマの話題としても盛り上がります」(岩崎さん)にしもり・みちよライター。香港、台湾、韓国と日本のエンタメ事情に精通。共著に『韓国映画・ドラマ──わたしたちのおしゃべりの記録2014~2020』(駒草出版)がある。いわさき・あいなドラマプロデューサー。2020年に手がけた『私の家政夫ナギサさん』が大ヒット。現在、重岡大毅さん主演のファミリードラマ『#家族募集します』が放送中。※『anan』2021年8月11日‐18日合併号より。イラスト・岡田成生取材、文・梅原加奈(by anan編集部)
2021年08月08日ノワール映画好きの度肝を抜いた前作を超え、孤狼な男たちが再び帰ってきた。壮絶な物語の裏にあったのは、熱い思いと、互いへのリスペクトでした。『孤狼の血 LEVEL2』で共演した、松坂桃李さんと鈴木亮平さんによるクロストークをお届けします!なぜ人は悪を描くエンタメに惹かれるのか。二人が思う、人の心の奥底にある“何か”とは。――この作品への出演依頼が来たときどう思われましたか?松坂桃李:嬉しい気持ちと、“続編、本当にやるんだろうか…”という思いが半々でした(笑)。というのも、キーパーソンであった主人公の大上さんが前作で亡くなっているわけで、その役回りを日岡を通して僕がやるのかと思ったら、ぞっとしたんです。役所(広司)さんが担っていたことを、僕がやるのか、と…。鈴木亮平:役所さんは俳優界のチャンプみたいな存在ですから(笑)。松坂:そう、そうなんですよ。でもいざ現場に入ると、それこそ亮平さんをはじめとするキャストの皆さん、監督、スタッフが、「前作を上回るものを作るぞ」と意気込んでいて。その思いに触れ、自分は一人じゃないと実感することができ、プレッシャーから解き放たれました。鈴木:僕はお話をもらった段階では、正直できないと思いました。まず一般的に“続編”は、1作目を超えるのがすごく難しいので僕はかなり慎重になります。特に『孤狼の血』に関しては、前作がとにかく素晴らしすぎる。でも脚本を読ませていただいたら、それを凌ぐような強烈なキャラクターでのオファーで、この役を僕にと言ってくれているのかと思うと嬉しくて「やります」と即答。松坂:即答だったんですか(笑)。鈴木:そう(笑)。それで、やはり前作が持つリズムを自分に染み込ませたいと思い、再度『孤狼の血』を観たんです。そこで、改めて役所さんのとんでもなさに気がつきまして。松坂:観れば観るほど気がついちゃうんですよね。鈴木:さっき俳優界のチャンプって言いましたけど、例えばボクシングを始める前までは世界チャンプのすごさってわからないけれど、一歩足を踏み入れたら、とんでもない存在だって思い知らされるじゃないですか。役所さんは、そういう存在です。関わった全員が役所さんが演じた大上の影を背負いながら撮ったからこそ、この作品が生まれ、形になったのだと思います。松坂:日岡は大上さんの形見のライターを持っているんですが、実はそれ、前作のクランクアップのときに僕が役所さんから譲り受けて、3年間お守りのように持っていたものなんです。実際に使ったりもしていたんで、手のなじみはかなり良くなっていて。今回それをカメラの前で使えるのはすごく嬉しかった。――レベル2なだけあり、1作目を上回る悪と壮絶さ、エンタメ性もかなり高くなった印象が。鈴木:僕が演じた上林は、監督曰く「日本映画史に残る悪役」。でもその裏には、彼が感じてきた痛みや感情がある。ただそれを生々しく演じてしまうとエンタメにはならないんですよね。キャラクターづくりの段階から、どうエンタメに寄せていくかはすごく意識しましたね。松坂:亮平さんが上林をやるなら一筋縄ではいかないだろうなとは思っていたんですけれど…。まずビジュアルを見て、「もみあげが、ない!!」(笑)。鈴木:(笑)。クランクインの1年くらい前に準備稿を読んで、最初に浮かんだのがあの髪型だったんです。準備稿では、もはや人間じゃないくらいのキャラだったんですよ。でも最終稿では結構人間になってたのでやめようと思ったら、監督から「あれでいってください」と。松坂:白いスーツとサングラスも、最高に似合ってましたよ。「この人には勝てないな」って思わせる説得力があった。僕はちょっと遅れて現場に入ったんですが、すでに亮平さんのシーンは撮影が進んでいて、最初に白石さんに言われたのが、「早く上林を捕まえてくれ」(笑)。鈴木:確かに、コロナで久しぶりの撮影だったから、肩が温まってたんだよね(笑)。――白石監督の作品は今作も含め“悪”が大テーマです。悪を扱うエンターテインメントになぜ人は惹かれるのでしょうか?鈴木:僕は、こういうエンタメは自分が“善”であるための必要悪なんだと思うんです。たぶんみんな、善人でありたいと思いながらも、自分の中の凶暴性に怯えながら生きていて。フィクションの中で他者が悪を行使しているのを見ると、自分の中の悪が解放されて、安心して日常に戻れるんじゃないかな。松坂:もともと人は悪を持っていて、悪を使うことへの強い興味と欲求があるのが人間だと思う。それを理性で抑え込んでいるからこそ、悪に惹きつけられるのかな、と感じます。暴走する日岡や上林から目が離せないのは、そういう理由なのでは。鈴木:予測不可能さって、エンタメでは重要だしね。松坂:確かに。そういう意味でこの作品は、悪と物語性とエンタメ性のバランスが絶妙。常に何が起こるかわからない中で、驚いたり、その先に悲しみが待っていたり。マジックみたいな映画だなって思います。『孤狼の血 LEVEL2』狂気と暴力がはびこる広島の呉原。街の平和のために清濁併せ呑む日々を過ごす刑事・日岡の前に現れた、圧倒的“悪”の上林。暴力団抗争、警察組織の闇、嗅ぎ回るマスコミ…。血みどろの戦いが今始まる。8月20日より全国公開。まつざか・とおり(写真右)俳優。1988年10月17日生まれ、神奈川県出身。映画、ドラマ、舞台と幅広く活躍中。2020年には映画『新聞記者』(’19)で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。『空白』が9月23日、『流浪の月』が来年公開予定。スーツ¥418,000シャツ¥110,000(共にエルメネジルドゼニア/ゼニアカスタマーサービス TEL:03・5114・5300)その他はスタイリスト私物すずき・りょうへい(写真左)俳優。1983年3月29日生まれ、兵庫県出身。主演を務めるドラマ『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(TBS系、毎週日曜21:00~)が放送中。また、映画『燃えよ剣』が10月15日より公開予定。スーツ¥297,000(エトロ/エトロジャパン TEL:03・3406・2655)その他はスタイリスト私物※『anan』2021年8月11日‐18日合併号より。写真・野呂知功(TRIVAL)スタイリスト・丸山 晃(松坂さん)徳永貴士(鈴木さん)ヘア&メイク・髙橋幸一(Nestation/松坂さん)宮田靖士(THYMON Inc./鈴木さん)(by anan編集部)
2021年08月07日11歳の時に出演した映画『万引き家族』での演技が国内外で注目され、その後も『約束のネバーランド』やドラマ出演など、着実に俳優としてのステップアップを果たしている城桧吏さん。世代を問わず愛され続けているジュブナイルミステリー小説の実写化である今作『都会(まち)のトム&ソーヤ』では、14歳にして映画初主演を務めた。“やった!”っていう嬉しい気持ちと、“どうしよう”っていう不安の両方がありました。「主演のお話を聞いた時は、“やった!”っていう嬉しい気持ちと、“どうしよう”っていう不安の両方がありました。いつもは引っ張られる側だったのが、今度はみんなを引っ張らなくちゃいけないっていう緊張感があって…。その分、やり切った時は、みんなでいいものを作れたという達成感と楽しさを感じました」城さん演じる、自称“どこにでも居る平凡な中学2年生”だが実はサバイバル能力に長けた内藤内人(ないと)と、その同級生で、学校一の秀才かつ大企業の御曹司という竜王創也(酒井大地)の凸凹コンビが、街中を舞台にした「リアルRPG」の世界で、謎解きを駆使して世界を救おうとするアドベンチャー。子供の頃、誰しもが抱いていた冒険の楽しさを思い出させてくれる、スリルや友情に溢れた物語だ。「作品の中にさまざまな謎解きが出てくるので、まるでリアル脱出ゲームをプレイするように楽しめる映画です。そうやって次々に現れる困難に、性格の全く違う内人と創也が、互いの良さを生かして立ち向かっていく…。とても素敵な関係性だと思うんです。実際の僕と大地もいい関係性を築けました。リハーサル以外でも電話で話したりすごく仲良くなれたので、撮影が終わってから会えなくなったのが寂しいです」活発で明るいキャラクターの内人とは共通点があったそう。「内人ほどサバイバル能力は高くないけど(笑)、僕自身も元気でかなり明るい性格なんです。だから、そういう自分の性格を出しつつ、サバイバル指導の先生に教えてもらった歩き方や動き方を意識して演じました。今までクールな役やおとなしめな役が多かったので、おとなしい性格だと思われたりするんですけど、これを機会に“本当は明るいんですよー”って伝えたいです(笑)」『都会のトム&ソーヤ』監督/河合勇人脚本/徳尾浩司出演/城桧吏、酒井大地、豊嶋花、中川大志、玉井詩織、森崎ウィン、本田翼、市原隼人ほか原作/はやみねかおる7月30日よりTOHOシネマズ 日比谷、イオンシネマほか全国公開。©2021マチトム製作委員会じょう・かいり2006年9月6日生まれ、東京都出身。第71回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した映画『万引き家族』で注目を集める。映画『約束のネバーランド』、ドラマ『グッド・ドクター』などに出演。※『anan』2021年8月4日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・伊藤省吾(sitor)ヘア&メイク・松原美穂(Nestation)(by anan編集部)
2021年08月02日3年ぶりの新作舞台『物語なき、この世界。』の公演を発表した、劇作家の三浦大輔さん。三浦さんの手がける中でもとくに舞台は、過激でスキャンダラスな題材や人間の生々しい生き様を描いた作品が知られるが、今回の主人公に岡田将生さんを抜擢したことで、双方の新境地を期待する人も多いのではないだろうか。「三浦さんとは、映画『何者』でご一緒させていただいた時に、口数が少なくてもお互いになんとなく分かり合える部分を感じましたし、芝居をしっかり見てもらえたという思いもあって、もっと三浦さんの演出を受けたいと思っていました。そういう感覚は結構大切にしていて、三浦さんの作品ならどんなジャンルであろうとやりたいと思っていたので、このお話をいただいた時は、すぐにやらせていただきたいとお返事しました。脚本がないままお受けするのは初めてだったのでドキドキしていますし、新たなチャレンジになるという恐怖もあります」岡田さんと共に挑むのは、個性派やベテランの役者たち。「峯田(和伸)さんの音楽が元々好きなこともあり、今までにないセッションが期待できますし、大先輩の(寺島)しのぶさんは舞台上に一緒に立つだけで頼れる存在で。10代から知っている柄本時生とは舞台で初共演が叶って『やっとだね』なんて話してて。みなさんとこの作品を濃密に作り上げるのが楽しみです」ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』では、理屈っぽくてひねくれた“元夫”を演じ、そのどこか憎めないキャラクターが目を引いた。「自らクセのある役を選んでいるところもあって。僕にとっては欠点がある人の方が魅力的だし、それを理解しながら生きている人に愛着が湧くんです。とくに最近はそういう役柄が続いていて、楽しんで演じさせていただいています。一時期は責任感に囚われすぎていたこともあったけど、今は力を抜いてお芝居を満喫したいと思うようにも。その転機となったのが2016年のドラマ『ゆとりですがなにか』。同年代の役者と呼吸をするように会話をした現場が強く印象に残っていて、あの呼吸を思い出すために必死にお芝居をしている部分もあります」一方、舞台では歴史的名作を含めいろんな役柄に果敢に挑戦できたり、セリフで遊べる部分にやりがいも感じているという岡田さん。「生の芝居で自分のダメさを実感したかと思えば、翌日には最大限の力を発揮できたりするのも、舞台の面白さ。自分自身を見つめ直せて、どこかリセットできるような魅力があります。毎回刺激的な三浦さんの作品も、30代の今こそ“そっちの世界に”っていうのも変だけど(笑)、飛び込めることに覚悟しつつ、呼んでいただき感謝しています」「僕自身はクセはない、つまらない人間ですよ」と笑う。「同世代でイケメンの決め決めの役をやってくれと言われたら、僕よりも似合う役者がいる。そこは手は出せないから、自分の役割は見つけていかなくちゃとは考えていますが、どんな役でもハマれる人にはなりたい。その時どきで、柔軟に対応できる役者でありたいです」おかだ・まさき1989年8月15日生まれ、東京都出身。出演映画『Arc アーク』が公開中。また映画『ドライブ・マイ・カー』は8月20日、『CUBE』は10月22日公開予定。12月には舞台『ガラスの動物園』が上演予定。ジャケット¥31,900Tシャツ¥20,900パンツ¥22,000(以上NEEDLES/NEPENTHES TEL:03・3400・7227)『物語なき、この世界。』売れない役者・菅原裕一と売れないミュージシャンの今井伸二が10年ぶりに新宿歌舞伎町で出会い、二人のドラマは幕を開けたかのように見えたが、そもそもこの世界に物語など存在するのだろうか…。7/11(日)~8/3(火)Bunkamuraシアターコクーン8/7(土)~11(水)京都劇場※『anan』2021年7月14日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)スタイリスト・TAKUROヘア&メイク・小林麗子(do:t)インタビュー、文・若山あや(by anan編集部)
2021年07月12日惹き込まれるような大きな瞳。凛とした佇まいの中に、妖艶さを漂わせる。宝塚歌劇団在団中、独特の存在感と作り込んだ演技で高い人気を誇った美弥るりかさんが、音楽劇『GREAT PRETENDER』で、退団後初となる男性役に挑戦する。原作は、脚本家・古沢良太さんが脚本とシリーズ構成を手がけ、壮大でスリリングな展開が話題の同名アニメ。詐欺師たちが世界を股にかけ、騙し騙されの壮大なコンゲームを繰り広げる物語で、美弥さんはフランス人詐欺師のローランを演じる。「原作のアニメがとても面白くて、見始めたら引き込まれて、一気に見てしまいました。私が演じるローランはクールでエレガントさもありながら、どこか異色さも感じさせる存在。退団した自分がもう一度男性を演じるのはすごく不思議な感じですが、オファーをいただいたということは、これまでに培ってきたものが役に立つ部分があるんだろうと思ったんです。ただ、宝塚時代はメイクもすべて足し算で作り込んでいましたが、同じやり方ではみなさんの中で浮いてしまう気がするんです。退団していろんなことを経験した今の私が演じるのが、たまたま男性の役だったというつもりで、ビジュアルにしても演じ方にしても、これまでの延長ではなく新たな表現に挑戦していけたらと思っています」ローランは主人公の枝村真人(通称・エダマメ)を、大掛かりなコンゲームに巻き込んでいくキャラクター。このエダマメを演じるのが、Kis-My-Ft2の宮田俊哉さん。「ビジュアル撮影の時に宮田さんにお会いしたら、すでにエダマメの雰囲気そのもので、完成度が高くて驚きました。ふとした時に周りの空気を柔らかくしてくださる方で、私とは別の角度で物事を見ていらっしゃるのがとても印象的でした。考えが深くて、さりげなくおっしゃった言葉に私自身考えさせられることが多いんです。作品において、ローランとエダマメは濃い関係性です。お互いの作品や役への想いを通わせながら、作っていけたらと思いますし、それがすごく楽しみなんです」役柄や作品と同様に美弥さんの心を動かしたのは、退団後に開催したショー『MIYA COLLECTION』の演出も務めた演出家・河原雅彦さんの存在。「男性を演じようと思ったのも、河原さんが演出だからというのが大きい」と話すほど。「絶妙な感性をお持ちの方で、ちょっとしたところにも妥協しない。例えば、間がダレてしまわないよう場面転換のわずか1秒の差に気を配ったり、開場時に流れる音楽を開演に向けてお客さんの気持ちを徐々に高揚させていく選曲にしていたり、本当に細かいところまで徹底されているんです。ただ、前回はショーでしたが、お芝居の稽古になると厳しいらしいと宮田さんから伺って、優しい面しか知らないのでちょっとドキドキしています(笑)」美弥さんといえば、在団中から、中性的な役柄や女性役など幅広く演じ、他の男役にはない唯一無二の魅力を放っていた人。「自分が本当にやりたいことを選んできたら、いつの間にかみなさんからそう言っていただくことが増えていった感じなんです。それを受け入れられるようになったのは、2015年くらい。そうなってから個性的で面白い役をいただいて、自分なりの表現を探していくのも楽しいと思うようになって、少しずつ人と違う色を意識し始めた気がします。いま大事にしているのは、人と比べるよりも、まずは、美弥るりか、そして本名の自分自身として、ちゃんと胸を張れるような生き方をすること。そうすることが、結果的に素敵な表現に繋がっていくんじゃないかと思っているんですよね」音楽劇『GREAT PRETENDER グレートプリテンダー』自称“日本一の天才詐欺師”エダマメ(宮田)は、旅行中のフランス人・ローラン(美弥)を騙したつもりが逆に騙されてしまう。リベンジを決意した彼は、ローランを追ううち、もっと大きなコンゲームに巻き込まれ…。7月4日(日)~25日(日)池袋・東京建物 Brillia HALL監修/古沢良太脚本/斎藤栄作演出/河原雅彦出演/宮田俊哉、美弥るりか、加藤諒、山本千尋、仙名彩世、福本伸一、平田敦子、三上市朗、大谷亮介ほかS席1万2000円A席9000円サンライズプロモーション東京 TEL:0570・00・3337(月曜~金曜12:00~15:00)大阪公演あり。みや・るりか2003年に宝塚歌劇団に入団し、男役ながらも、女性役も含め幅広い役柄をこなし高い人気を博す。’19年の退団後は、舞台のみならずファッションや美容などの分野でも活躍。ジャケット¥69,300パンツ¥33,000(共にクチュール ド アダム)リング、人差し指¥44,000薬指¥73,700小指¥81,400(以上ジジ) すべてホワイトオフィス TEL:03・5545・5164左耳上マラカイトイヤカフ¥93,500左耳下オーバルイヤカフ¥88,000(共にプライマルsupport@prmal.com)その他はスタイリスト私物※『anan』2021年6月30日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・古田千晶ヘア&メイク・AYAインタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2021年06月28日なかなか収まらない新型コロナ。モヤッとした世の中に必要なのは、スカッとさせてくれる笑いです!ということで、大人計画の個性派の面々が愉快な舞台『3年B組皆川先生~2.5時幻目~』を上演します。学園モノ。皆川猿時さんが先生、荒川良々さんは学級委員。テーマは2.5時幻…って、え、2.5次元じゃないの?!どういうこと?!観終わったあとに感慨深くなることが皆無。そんな笑いをお届けします。細川 徹:このメンバーで舞台をやるのは、3年ぶり?皆川猿時:そう。(大人計画の)社長から電話で「なんか、やるよ」って言われたの。内容の説明は何もなく…。荒川良々:あ、僕も。半笑いの電話で「やるよね?」って。もう決まってた(笑)。しかも、事務所の社長だからスケジュールも全部把握されてるじゃないですか。「いや、その期間旅行なんで」とか嘘も言えないし、このご時世。細川:断りづらい案件(笑)。皆川:内容も知らないのに承諾せざるを得ない(笑)。でも、細川さんって面白い作家だよね。台本があるのに「それ、まだ覚えなくていい」って言うんだから。みんな稽古場に稽古しに来てるっていうのに。荒川:以前、赤塚不二夫先生のマンガ原作で『レッツラゴン』をやった時なんて、台本、紙ペラ1枚もなかったんですから。その代わり、みんなで原作を読んで、マンガに描かれている走り方や手の動かし方なんかを、ひたすら真似させられたっていう“稽古”もあった…。細川:(笑)。今回、乃木坂46の清宮レイさんが参加してくれていて、彼女にとってはこれが初舞台なんですが、共演の池津祥子さんが「普通の演劇は、こういうんじゃないからね」って、ちょいちょい正しいアドバイスをしてくれるのがとてもありがたいです(笑)。荒川:でも、幕が開く時にはちゃんと形になっているから不思議ですね。皆川:しかもお客さんからドッカーンていう笑いが来る。すごいですよ。俺、モテた気になっちゃうもん。荒川:細川さんが作る笑いは、観終わったあと噛みしめるものが何もないっていうのが、またいいんですよ。細川:その、どうでもいい、くだらない笑いを、お二人をはじめ、演技力抜群の人たちにやっていただけるからこそ、面白い舞台になるんですよ。今回は、2.5次元ミュージカルばりに、お二人には歌ったり踊ったりしていただく予定ですからね。荒川:やりますよ、歌い踊りますよ。で、イメージとしては照明がキラキラしてるショーパブみたいな感じ?皆川:え、俺たちがショーパブ?!細川:いや、それはちょっと違うと思います(笑)。皆川:あの、今、『バイプレイヤーズ』とかに出てる世代のおじさんたちがいますが、それより若めの、僕らみたいなおじさんもいるよ、かわいいよっていうことに、この舞台で気がついてくれると嬉しいです。荒川:あの世代は締まった顔の人が多いけど、僕らの世代はぽわっとした顔が多いですからね。細川:ぽわっとしたおじさんたちの歌い踊る姿を、ぜひ(笑)。あらかわ・よしよし俳優。ドラマ『俺の家の話』などに出演。8月に宮藤官九郎作・演出の舞台『大パルコ人(4)マジロックオペラ「愛が世界を救います(ただし屁が出ます)」』に出演。みながわ・さるとき俳優。ドラマ『あまちゃん』でのコミカルな熱血教師や、『あなたの番です』での人情派刑事など、個性的な役を演じ分ける実力派俳優として人気。ほそかわ・とおる演出家、脚本家、映画監督。シティボーイズライブの作・演出をはじめ、多くの舞台を手掛ける。7月開始のWOWOWドラマ『男コピーライター、育休をとる。』の脚本も。『3年B組皆川先生~2.5時幻目~』6月17日(木)~7月4日(日)下北沢・本多劇場作・演出/細川徹出演/皆川猿時、荒川良々、池津祥子、村杉蝉之介、近藤公園、上川周作、清宮レイ(乃木坂46)、早出明弘、本田ひでゆき(本田兄妹)全席指定7000円ほか大人計画 TEL:03・3327・4312(月~金曜11:00~19:00)6月26日には公演ライブ配信あり。*掲載した情報は変更される可能性があります。※『anan』2021年6月23日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)(by anan編集部)
2021年06月20日俳優や歌手として活躍中の崎山つばささんは、神社検定3級を取得するほど、神社をこよなく愛している。神社は心がフラットになる場所。毎日を丁寧に生きることの大切さを知った。「ミュージカル『刀剣乱舞』の石切丸をはじめ、神社に関連する役が続いたことで、神社を深く知りたいと思うようになったのがきっかけです。開運や願いを叶えるためというよりは、神様に日頃の感謝を伝えるために行くことが多いです」そんな崎山さんが神社に必ず持っていく“三種の神器”があるそう。「手水舎で使うハンカチ、境内を撮影する高画質のカメラ、それとご朱印帳です。ご朱印を見返すことで、神社の情景やその時感じた気持ちを思い出すことができるんです。神社を定期的に訪れることで、日常の中の小さな幸せに、より気づけるようになり、一日一日を大切に生きようと思うようになりました」【田無神社】ご利益の効果が5倍に!?五柱の龍神様を祀る。鎌倉時代創建で、商売繁盛、金運、縁結び、子宝など、さまざまな神様が祀られる。「龍神にゆかりのある神社で、境内には赤龍・青龍・白龍・黒龍・金龍が鎮座し、ご神徳がそれぞれ異なるので、五龍神様にお参りします。お清め塩もあり、僕は赤龍神の塩を自宅の南方にお供えして、邪気を払っています」たなしじんじゃ東京都西東京市田無町3‐7‐4TEL:042・461・4442西武新宿線田無駅から徒歩6分境内には七福神の恵比寿様、大黒様も。【小野照崎神社】東京下町の願掛けのパワースポット。俳優の渥美清さんが「禁煙するから、大きな役をください」と、ここの神様に願掛けしたところ、『男はつらいよ』のオファーが来たと伝わる。「願掛けはあまりしないのですが、ここでは誓いを立て、それに向かって精進しています。ご朱印も素敵。人生の指標を与えてくれています」おのてるさきじんじゃ東京都台東区下谷2‐13‐14TEL:03・3872・5514地下鉄入谷駅から徒歩3分博学広才として知られた小野篁を祀る。【品川神社】昇り龍と降り龍が刻まれた双龍鳥居が圧巻。祈願成就の神様として親しまれる神社。「昇り龍は水蒸気となって天に昇る水、降り龍は雨となって大地に還る水で、自然の循環を表しています。双龍鳥居は都内に3社しかなく、特にこの鳥居から大きなエネルギーを感じます」。お金に水を注ぐと、金運を引き寄せるという「一粒萬倍の御神水」も立ち寄りたい。しながわじんじゃ東京都品川区北品川3‐7‐15TEL:03・3474・5575京浜急行新馬場駅から徒歩1分平安時代の末に源頼朝が創建。【箱根神社】芦ノ湖畔に佇む、関東総鎮守。源頼朝をはじめ、多くの武将から尊崇された名社。「僕の崇敬する神社で、年2回、ごあいさつに行きます。箱根神社だけでなく、近辺の九頭龍神社(本宮)と、駒ヶ岳山頂の箱根元宮を巡る『箱根三社参り』が地域に根付いており、豊かな自然に触れながら参拝すると、より清らかな気持ちになります」はこねじんじゃ神奈川県足柄下郡箱根町元箱根80‐1TEL:0460・83・7123小田急線箱根湯本駅からバスで元箱根下車、徒歩10分さきやま・つばさ1989年生まれ、千葉県出身。作詞も手がけた3曲の新曲を収録した全6曲のミニアルバム『latte』が好評発売中。※『anan』2021年6月16日号より。取材、文・鈴木恵美(by anan編集部)
2021年06月13日舞台『虹む街(にじむまち)』に出演する、俳優・安藤玉恵さんのインタビューをお届けします。起きていることを体験して、これって何かを考えたり、感じていただけたら。横浜中華街近くの劇場に野毛の街が出現した。そう言われてもピンとこないだろうけれど、現在上演中の舞台『虹む街』は横浜・野毛の街を描いた作品。居酒屋やパブ、コインランドリーなどが立ち並ぶ多国籍で雑多な街の景色を切り取った、リアルなセットが組まれている。「今回私は“脚の悪い女”を演じるんですが、台本をいただいたら全体の9割…いや9割8分くらいがト書きなんですよね。セリフがなくて自由度が高いぶん難しさはあるけれど、考える楽しさはあるし、肉体で表現するという意味でスタンスは他の作品と変わりません。ただ演じるうえで、自分の心情を表現するというよりは絵のなかのパーツになる感じがします。コインランドリーで回っている洗濯物と同じ存在というか」そう安藤さんが語るのも、むべなるかな。今作は’16年に『地獄谷温泉無明ノ宿』で岸田國士戯曲賞を受賞したタニノクロウさんの手によるものだが、この作品もセリフでドラマを紡ぐというより、目の前の風景のなかで生きている人々の何気ない姿を、ただただ観察しているような感覚になる演劇作品だ。「来てくださる方がどうご覧になるかに関しては、人智の及ばぬところというか…わかりません(笑)。観る方によってはおそろしく退屈な可能性もある。ただ、現代美術を観た時に、全然わかんないけど、これってなんだろうって考えたり、何を表現したいのだろうと想像したり、ひとつひとつ自分にフィードバックさせていく感覚ってありますよね。それに近い気がするんです。お客さんの想像力をお借りするにもほどがあるんですが、あのオバさんに似た知り合いいるなとか、いい匂いがしてきてお腹すいたなとかでもいいので、そこで起きていることを体験して、プリミティブな感覚を楽しんでいただけたら面白いのかなと思います」街の一部になる。そう聞いて思わず深く納得してしまったのは、安藤さんという存在感にだ。近年、映像作品でも活躍しているが、その居住まいから、役が暮らす土地の匂いや暮らしの気配、生活感を醸し出せる人だ。そう伝えると、「お話をいただけるなら、プリンセスもやりたいんですけどね」と笑って返された。「どんな役も楽しいし、楽しみたいと思っているんですよ。チェーホフとかもやりたいし。でも、いまのところそういうのは求められていないみたいです。存在が若干ハレンチなのかもしれません(笑)。ただ、普段、とっても普通に生きていると思っているので、カッコつけられないんですよね。どこかで、私がカッコつけて演じるなんておこがましい、という気持ちがあって。どこを見られてもいいのでどうぞ、という気持ちで臨んでいたりします。今回の役に関しては、動きが振り付けのように見えたくなくて、あくまで生活の一部でありたいなとは思っています」あんどう・たまえ1976年生まれ、東京都出身。早稲田大学在学中に演劇を始め、舞台、映像で活躍。近作に、ドラマ『今ここにある危機とぼくの好感度について』など。『虹む街』多国籍の人々が行き交う古い飲食店街で、唯一のコインランドリーが閉店することになった。その営業最終日、さまざまな人がここを訪れ洗濯していく姿を描き出していく。上演中~6月20日(日)KAAT 神奈川芸術劇場 中スタジオ作・演出/タニノクロウ出演/安藤玉恵、金子清文、緒方晋、島田桃依、タニノクロウ、蘭妖子ほか全席指定4500円ほかチケットかながわ TEL:0570・015・415(10:00~18:00)※『anan』2021年6月16日号より。写真・小笠原真紀インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2021年06月12日Amazon Prime Videoで4月より独占配信されている『キコキカク』にハマる人が続出。そこで、この番組の企画・出演・演出・プロデュースをしている水原希子さんを直撃!素の自分をさらけ出しまくっています。山田孝之さんと滝行したり、巣鴨で購入した服でファッションショーをしたり。おもちゃ箱をひっくり返したような新感覚のエンタメ番組『キコキカク』は、希子ワールド炸裂で、「希子ちゃんの新たな一面が見られる」と話題!「1話30分とは思えない情報量の多さで、脳みそがパンクしそうになりますよ(笑)。『キコキカク』を一言で説明すると、今の水原希子がわかる番組。ファッション、アート、音楽など、今まで興味を持っていたことを深掘りするだけでなく、気候変動やエコなど、今こそ学ぶべき問題にも目を向けています。亀甲縛りなど偏見を持たれそうなことにも挑戦しているのは、その世界を自分もみんなも知ることで、興味の種がどんどん増えて新しい扉が開かれると思ったから。さらに全体を通して意識したことは“今”。2021年のこの瞬間をキャプチャーしたいという思いで、東京の空気感を感じられたり、いま必要なエネルギーも詰め込んでいるので、アドレナリン多めの番組になっています」もともと自分を表現するのが得意なイメージが強い水原さんだが、この番組では、さらに素の自分を100%さらけ出しているそう。「以前は、芸能人だし、完璧な自分を見せなくちゃ!と取り繕う部分がありましたが、人間らしい一面もバンバン見せています。そんな私を見て、みんなも今の自分のままでいいんだよと、伝えたい。コロナ禍で、当たり前が当たり前でなくなり、エンタメ業界も大打撃を受けていますが、その一方で表現方法もどんどん多様化していて、自由な空気が流れ始めている。私と同じように自分を表現することを止められずにいる人が多いと思うんです。だから、今こそ、私のように、自分をさらけ出して、どんどん表現してほしいです!」『キコキカク』アート、ファッション、音楽、カルチャー、エコなどをテーマに、水原希子さんが約2年間の構想期間を経て創り上げた番組。毎回多彩なゲストを迎え、多種多様な企画に挑戦。全20話配信。毎週金曜12:00更新。視聴にはプライム会員登録が必要。巣鴨で購入した洋服を大胆&斬新にアレンジ!全身全霊でチャレンジ!人生初の極寒滝行。全身青塗り姿にも!笑いもふんだんに。みずはら・きこ1990年生まれ、アメリカ出身。モデル、女優として幅広く活躍。4月に配信された、Netflixの日本発オリジナル映画『彼女』の主演を務め、こちらも話題に。※『anan』2021年6月2日号より。写真・小笠原真紀ヘア&メイク・RIE SHIRAISHI取材、文・鈴木恵美(by anan編集部)
2021年06月01日映画『茜色に焼かれる』に出演する、尾野真千子さんにお話を伺いました!「石井(裕也)監督とは以前もご一緒したことがあるんですけど、すごい人だなと再認識しました。作品への愛や思いがすごく強い。悪い意味じゃなく、重いくらい。それって、私たちにとってすごくありがたいし、気持ちがいいことです」そんな石井監督がコロナ禍を経験して書き下ろした最新作で尾野真千子さんが演じるのは、田中良子。7年前に交通事故で命を奪われた夫への賠償金を受け取らず、花屋のバイトと夜の仕事を掛け持ちしながら、中学生の一人息子・純平を育てている。理不尽なことだらけの世の中で、もがきながらも懸命に生きているシングルマザーだ。「脚本を読んで、何がなんでもやりたいと思いました。この作品の最後の台詞が言いたくて。その台詞が本当に言えるのか、そのときにはどんな気持ちでいるのか。全然わからなかったんですけど、“この台詞を絶対言いたいな”と思いました」良子のその魂の叫びは、本編でお確かめいただくとして、実は良子はかつて演劇に傾倒していたという経歴の持ち主。オープニングで画面の隅に映し出される「田中良子は芝居が得意だ」というフレーズが、ずっと意味を持ち続ける。「良子は自分が生きていくために、息子を育てるために、必要な嘘をついて、自分の気持ちとは逆の顔をしながら、がむしゃらに頑張っている。脚本のお芝居が上手だということを軸に演じてましたね。“あっ、上手いんだ。頑張らなきゃ”みたいな。その芝居の上手い下手についても、“それはちょっとやりすぎの『上手い』です”とか、監督からはいろんな注文がありました(笑)」生きるためにお芝居をする一方で、お金で苦労をすることになっても自分の信念は貫こうとする。そんな良子の生き様は、結果、和田庵さんが演じる純平をとびきりの「いい男」に育てることに。純平世代の女の子たちには、まだその魅力はわからないだろうけれど、大人女子なら胸アツ確実の「いい男」ぶりです。「すごいかわいいでしょ(笑)。和田くんが息子でよかったなと思いましたよ。現場に対する向き合い方を見ていても、本当にかわいくて、守ってあげたくなるんですよね。この子なら、ちゃんと正面から愛をぶつけられるかもという感覚を持ちましたし、この子がいいお芝居ができるといいなとか、いろんなことを考えました」理不尽な世の中で愛と希望を信じさせてくれる良子と純平。そのリアルな空気感がスクリーンにあふれている理由、納得です。『茜色に焼かれる』理不尽な世の中を懸命に生きる母と息子に、次々と試練が。監督・脚本・編集/石井裕也出演/尾野真千子、和田庵、片山友希、オダギリジョー、永瀬正敏ほか全国公開中。©2021『茜色に焼かれる』フィルムパートナーズおの・まちこ1981年生まれ、奈良県出身。’97年に河瀨直美監督の『萌の朱雀』で映画主演デビュー。NHK連続テレビ小説『カーネーション』(’11年)のヒロインを演じて国民的人気を得る。出演した瀬々敬久監督の映画『明日の食卓』が5月28日公開予定。シャツ¥31,900(オットダム/ストックマン TEL:03・3796・6851)ピアスはスタイリスト私物※『anan』2021年6月2日号より。写真・魵澤和之(まきうらオフィス)スタイリスト・伊藤真弓(BRUCKE)ヘア&メイク・稲垣亮弐(マロンブランド)インタビュー、文・杉谷伸子(by anan編集部)
2021年05月29日映画、ドラマ、演劇と出演作が常に高いクオリティを保ち、話題を呼んできた高橋一生さん。新たに挑んでいるのは演劇界を牽引する野田秀樹さんの最新作『フェイクスピア』。初タッグを組む野田さんとの創作活動、そして、いま高橋さんが考える「演じるということ」について知りたく、稽古場を訪れた。膨大な言葉と美しく抽象性の高い演出で、観客の想像力を最大限に刺激。演劇の面白さを提供し、その世界の第一線を走り続ける演劇人、野田秀樹さん。その野田さんが率いるNODA・MAPの最新作『フェイクスピア』に高橋一生さんが出演中。かつて野田さんのワークショップに参加したこともあるというが、意外にも出演は初。さぞや強い意気込みが…と思いきや、静かな口調で「思ってもみなかったので、光栄なことだなと思いました」と淡々と。そして「基本的に僕は、舞台でも映像でも、自分で“やりたい”ということを持たないようにしているんです」と続けた。「恵まれていると思いますけれど、お芝居として自分がやってみたいことは、この5年ほどですでにやれてしまっているんです。だからといって熱意や情熱がなくなったという意味ではなくて“離見の見”といいますか…。お芝居でもそういうアプローチが、少なくともいまの自分には心地いいんです」“離見の見”とは、演じ手が自己の視点から離れて自分の演技を客観的に見つめること。そんな境地にある高橋さんから見たNODA・MAPの稽古場とは?「とても純度が高いなかでお芝居を作っていっている感覚があります。ワークショップに参加させていただいていた時から感じていたんですが、野田さんは、ある種の変なプライドを持たない方で。若い方たちの意見にも『それもいいよね』と耳を傾けられるので、誰でも意見しやすい雰囲気が稽古場にあるんです。一緒に劇団をやっている青年みたいに思えて、昔、同期とエチュード(即興の芝居)を作っていた時のような、しばらくぶりの感覚を味わっています。ただ、あまりにもスムーズに進んでしまうものだから、作っていくことに没頭しすぎて視野が狭くなってしまうかもしれない。観ている側の人たちの存在を忘れないよう、少しだけ意識してみようといま思っているところです」自身のことを「人の顔色を窺うのは得意なので(笑)」と皮肉めいた言葉で語る。だからこそ「制作側から“一生さんのここを期待しています”と言われることは、なるべく聞かないようにしている」とも。それを意識してしまえば「作品世界にいろんな雑味が入ってしまう気がして」。これまでもきっとそうやって、つねに主観と客観を行き来しながら作品や役をとらえ、表現を精査してきたに違いない。今回の作品は、“フェイク+シェイクスピア”というタイトルから“偽物”と“演劇”がテーマだと推察される。俳優という仕事は、まさに作り物の嘘を“まこと”にしていく仕事だけれど…。「僕らは“まこと”にするつもりは最初からありません。演技だとわかってやっていますから。どれだけ熱量を持ってやっていたとしても、僕らはどこか引きで見ている部分があって、今日のお客さんは緊張しているなと思うと、それをほぐすように少し匙加減を変えてみたりするわけで。目の前の嘘をまことにするかは、僕はお客さま次第だと思っています。“あの俳優が演じている”と思って観ていたとしたら、それはやっぱり嘘でしかないわけですから」それでも高橋さんの演技には、どこか嘘であることを忘れさせてくれる“まことしやか”がある。「もしあるとしたら、それは観客の方々を騙すためではなく、自分を騙すためだと思います。舞台でも映像でも、自分を騙さないと演技なんてできません、恥ずかしくて(笑)。自分を騙すには、自分の芝居を自分がちゃんと納得できるまで腑に落ちるものにしないといけない。そうなれば、お客さまにもきっと嘘がまことしやかに見えてくるだろうと信じています」野田作品の面白さは、ひとつの言葉やひとつのセリフが視点を変えることでさまざまな意味に解釈でき、ひとつの物語からあらゆる方向へと想像力が豊かに喚起させられるところ。「ご自身が書かれたものですから、野田さんなりの解釈はあると思いますが、僕らにもそれは明かさない。あえて添え木を外して、俳優の自由な解釈に委ねている。そこが心地いいなと思うんです。もちろん演じる側は自分なりの最適解を持っていないといけないとは思いますが、観る側はもっと自由でいいと思っています。なんか面白かったとか、なんか悲しかったとか、泣けちゃったとか。へんに分析したりすることは必要なくて、感覚的に楽しんでいただけたら、俳優として幸福だなと思います」たかはし・いっせい1980年12月9日生まれ。東京都出身。近作にドラマ『岸辺露伴は動かない』や『天国と地獄 ~サイコな2人~』などがある。6月4日公開予定の映画『るろうに剣心 最終章 The Beginning』に桂小五郎役で出演。ジャケット¥94,000シャツ¥41,000パンツ¥56,000靴¥66,000(以上ルメール/スクワット/ルメール TEL:03・6384・0237)NODA・MAP 第24回公演『フェイクスピア』演劇というエンターテインメントを通して、世の中の矛盾や歪みに警鐘を鳴らし続けてきた野田秀樹さん。新作は、霊魂を自らの身体に憑依させるイタコが登場する恐山を舞台に繰り広げられる。7月11日(日)まで東京芸術劇場 プレイハウスにて上演中。7月15日(木)~25日(日)には大阪公演あり。作・演出/野田秀樹出演/高橋一生、川平慈英、伊原剛志、前田敦子、村岡希美、白石加代子、野田秀樹、橋爪功ほかS席1万2000円ほか問NODA・MAP03・6802・6681※『anan』2021年6月2日号より。写真・森山将人(TRIVAL)スタイリスト・秋山貴紀ヘア&メイク・田中真維(マービィ)取材、文・望月リサ(by anan編集部)
2021年05月26日今泉力哉監督の新作『街の上で』が公開となる。下北沢に住む青年・青と彼をとりまく人々や出来事を描いた群像劇。そこで青の元恋人・雪を演じるのが穂志もえかさんだ。実は日常って幸せにあふれてる。それをこの作品で感じてもらえたら。「撮影は一昨年の夏。当時は役柄を考えすぎて力んでいました」と苦笑しながら振り返る。「私と雪に共通点がないんです(笑)。浮気がバレて青を振る奔放な雪ですが、私にはそんな発想が全くなくって。でも青にとって雪は忘れられない女性。どうしたら魅力的に説得力を持って演じられるかと…」そんな迷える穂志さんの支えになったのが、青役の若葉竜也さん。「若葉さんは“駆け込み寺”みたいな人。普段はアイス片手にサンダル履きのガキ大将だけど(笑)、若葉さんのアドバイスはすごく心に響くんです。お芝居の技術がある方なので、共演してて安心感もあるし。…あれ、なんか“若葉竜也を語る会”になってる(笑)。でもそんな彼の魅力が詰まった一本になったと思います」作品は全編下北沢ロケ。この街特有のモラトリアムな空気感や個性的な人物も物語の味わいを深めている。「私にとって下北沢は、若い人が一度は夢中になる街という印象です。道が複雑で、一人だと目的地にたどり着けなくなるんですけど(笑)」そう笑う穂志さんのかわいい不器用さは、雪の魅力とも重なる。「上り坂の途中で自転車に乗る、という場面では自転車に乗れず、そのまま押して走り去りました(笑)。私が演じたことで雪も不器用な人になったけど、結果的にはそれがよかったのかな、なんか人間っぽくて」街の上で人と人が出会い、喜んだり落ち込んだり。作品にあるのは、ありふれた“日常”。でもコロナ禍という非日常を経たいま、その情景は一層まぶしく私たちの目に映る。「生産性のない会話とか沈黙とか、ムダと切り捨てられがちなことに人の幸せや愛おしさがある。今泉さんが撮りたかったのは、そういうことだと思うんです。だからこの作品を観て『ああ、日常って幸せにあふれてるんだ』って思い出してもらえたらうれしいですね」『街の上で』今泉力哉監督の長編最新作。変わりゆく下北沢の街を舞台に紡がれる古着屋の青年・青と4人の女の子、そして街の人たちのゆるやかな日常。若葉竜也さんの映画初主演作としても注目。4月9日より全国公開予定。ほし・もえか1995年生まれ、千葉県出身。語学堪能な才女にして注目の若手女優。「ミスiD2016」グランプリを経てデビュー後、映画やドラマで活躍中。趣味は相撲観戦で、憧れは昭和の大女優、山田五十鈴さん。ドレス¥62,500(シーバイクロエ/クロエ カスタマーリレーションズ TEL:03・4335・1750)※『anan』2021年4月14日号より。写真・山口 明スタイリスト・中根美和子ヘア&メイク・北原 果インタビュー、文・大澤千穂(by anan編集部)
2021年04月13日