オヤジ臭全開の映画である。『アゲイン 28年目の甲子園』というタイトルからして汗の匂いが漂ってきそうだ。さて、これを若い世代、特に女性にどうしたら観てもらえるか…?「こんなこと言うと後で怒られるんだけど…(苦笑)」。中井貴一はそう前置きし、優しくマイルドな口調で、それでいて遠慮なく言うべき言葉を続ける。「いつも言ってるんです。『子どもは観なくていい。観てもらいたいなんて思ってないもん』って(笑)。そういう強さをいつも持ちたいと思ってます」。ここで「じゃあ観ない」とケンカ腰にならず、どうか少しだけ、彼の言葉に耳を傾けてほしい。それは大切な、いつかは必ずこの映画の中のオヤジたちと同じように年をとることになる、若い世代に向けたメッセージであると思うのだ。原作は「とんび」、「ビタミンF」など映像化もされた人気作品を手がけてきた直木賞作家・重松清が現在も「小説すばる」に連載中の小説。ある事件のせいで甲子園の土を踏む機会を逸した中年オヤジたちが、元高校球児たちの祭典「マスターズ甲子園」を目指し奮闘する姿を描く。中井さんが演じるのは妻と離婚し、離れて暮らす娘とも絶縁状態の坂町。高校時代に県大会決勝まで進んだチームのキャプテンであり、亡くなったかつてのチームメイトの娘である美枝(波瑠)の勧めでもう一度、グローブを手に取る。当然、野球のシーンは必須である。当初、中井さんは本作のオファーを断った。運動神経に自信がないから…では決してない。野球経験はないが、学生時代はテニスにかなり打ち込んだ経験を持つ。いや、だからこそ断った。「僕自身、スポーツ映画が大好きですが、テニスの映画を観ると、プレイ以前にラケットを握る姿を見た瞬間に『この人はやったことないんだ』と分かっちゃう。ましてやこの映画は野球という、日本では国技に近いスポーツを描いて、みんなで甲子園目指すのに、バット持った瞬間に『こいつ嘘だ』って分かったら映画に申し訳ない。だから、お断り申し上げたんです」。だが、それでも製作陣は「ぜひ中井さんに」と譲らず大森寿美男監督と会って話をすることになった。「監督は『中井さん、これは野球の映画じゃなくて、人間の心の葛藤を描いた映画にしたいんです。野球は出てくるけど、そっちの方が大きいんです』と、子どもに諭すように言われて(笑)。でも『大きな嘘はいいけど、小さな嘘はついちゃいけない』というのが僕の主義ですから、野球の部分に現実性がないと全てが嘘になると…。『いやでも』『だから』というやりとりが8回くらいあって、最終的に映画の野球監修を務める大石慈昭さんにお会いすることになったんです」。こうして今度は、元プロ野球選手である大石氏に会い、大森監督に対して語ったのと同じ考えを伝えた。「大石さんは『中井さんの話を聞いて嬉しいです。僕も大事にしたいのはそこなんです』と。『これでいいじゃない』と言う俳優とではなく、そこで嘘をつきたくない俳優と一緒に仕事がしたいと仰って『中井さん、僕には何の権限もないけど、やってもらえませんでしょうか?その代わり、野球に関しては一切、恥をかかせませんので』と真摯で真っ直ぐなスポーツマンの目で言ってくださったんです。それでお引き受けしたんですが、よく考えると『恥をかかせない』ということは、特訓をするってことだと炎天下のグラウンドに立った時に気づきました(苦笑)」。9月の炎天下にトレーニングを開始。その後「普通は『野球をやってはいけませんよ』と言われてる時期で、プロ野球選手もグァムやハワイで自主練を積むような(苦笑)」真冬に撮影は行われた。オヤジたちの苦難、推して知るべし。一方で映画で描かれるのは、やはり単なる野球の勝ち負けではなく、家族の物語…とりわけ、器用に思いを伝えられない父親と娘、息子たちの関係性である。「監督が言っていたのは“家族”ですよね。家庭の中で父権が弱くなっているけど、子どもとの関係をやり直したい――そこにも『アゲイン』があるということ。甲子園を目指す28年ぶりというスパンだけではなく、日常の中に『やり直したい』というものがあるし、それが一番大きいですね」。いつの頃からだろうか?例えばドラマ「風のガーデン」の医師・白鳥、『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』の主人公・筒井、決して出演時間が長いとは言えない『麒麟の翼』の殺人の被害者の青柳でさえもそうだ…。枚挙にいとまがないが、作品の中を生きる中井さん演じるキャラクターからは、若い世代、未来への強いメッセージを感じさせられることが多い。同時に、作品の中だけでなく20代、30代の若い世代の俳優たちを導き、何かを託そうとしているようにも…。「50歳を過ぎてからかな…。20歳の成人式の時は『大人になった』なんて気持ちはなかったし、30歳、40歳で世界観が変わるかと思ってたけど、そんなことなかったんです。『年齢なんて関係ないな』と思い始めていたんですが、50歳を超えた時に“エンド”が見えてきたんですよね。人生が山だとすると、40歳じゃまだ頂上しか見えないけど、頂上の向こうの下り坂が見えてくるのが50歳。そこでね、ここから守りに入るのではなく“攻撃的”に生きていこうって決めたんです」。先ほどの野球の話ではないが、肉体的な意味でのピークはとっくに過ぎている。「五十にして天命を知った」わけだが、そこからさらにアグレッシヴな生き方を志した。「その“攻撃的”という言葉には、オレたちが先輩から受け継いできたものを後輩にバトンタッチするという意味合いも含まれていると思います。オレたちも『いまどきの若いモンは…』って言われたけど(笑)、若い人は若い人なりのポリシーも持って生きてるんだから。オレたちができるのは、そこにプラスアルファとして先輩に乗っけてもらったものを伝えること。それは意識してやっているけど、口で伝えるよりも自分が精一杯やっている後ろ姿を見てもらいたいという気持ちが強いかな。こちらが『こうした方が…』と言うのではなく、『あの人はこうしてたな』と思わせるものを残せたらいいなと思ってます」。こちらから伝えるばかりでない。本作では波瑠、門脇麦といった若い世代と共演しているが、若い世代から「逆に勉強させられることの方が大きい」とも。「デビュー時に、ある先輩に『貴一、お前がこれからどんなに頑張っても、デビュー作を抜くことはできないからな』と言われたんです。その意味がずっと分からなかったけど心の中にあって、いまになって、あんなに無作為にカメラの前に立つことはもうできないってことだと分かります。いま一番やりたいのは、まさに純真無垢にカメラの前に立つこと。ピカソが写実的な技巧を極めた末に、子どもが描くようなあの絵にたどり着いたように。小津安二郎監督の映画で(笠智衆が演じる父親が)『やあ、どうしてる?元気かい?元気にしてるよ』と本当に(口調は)平坦なんだけど、そこに関係性や喜びや哀しみを感じさせるように。技巧がないとそれはただの“出来ない人”なんだけど、技巧を捨てて、そこにたどり着きたい。いま、まだ経験のない若い子たちの芝居をカメラの横で見ながら、純粋にカメラの前に立つ精神性を学ばせてもらってます」。何とも楽しそうに語る中井さんの表情が唯一、曇ったのが、映画でも触れられる東日本大震災に話が及んだ時だ。震災で亡くなったかつてのチームメイトの墓参りに被災地を訪れるシーンがあり、背景には実際の仮設住宅が映し出される。「本当にあそこから見る海って、震災の映像でも出ていた海なんです。穏やかな海で…でも海抜1メートルあるかないかで、本当に海と共存してきた人たちがああいう惨劇に遭ってしまったんです。演じていてふとお墓を見ると、震災の日付が刻まれていて、8歳とか2歳の子の名前の墓石がたくさんあり、胸が痛くなりました。仮設住宅にもうかがい、住んでいる方ともお話をしたんですけど、『早く仮設でなくなるといいですね』と言ったら、『なんかね、(仮設住宅に)慣れてきちゃってね…。それが自分では怖いと思ってる』と仰ってました。総選挙で税金を700億円も遣うなら仮設住宅や被災地に回せばどれだけのことができるのか…。そういう優先順位を政治が間違っているということになぜ気づかないのか?あの場に行って、話を伺ったことをふり返ると本当にそう思います」。では、最後に観客側の若い世代にこの映画の魅力を…というこちらのお願いに対して、出てきたのが冒頭の「子どもは観なくていい」という暴言(!)である。さて、その真意は?少し長いが、ここまで来たら最後まで読み切っていただければ幸いである。「昔、オレらがガキの頃ってね、子どもに不親切な時代だったと思うんです。大人のものが中心で、それを横から『(TVを見ながら)あ、チューしそう…』って見てたら親が『早く寝なさい!』って(笑)。妄想とか想像力が膨れ上がって、大人に対する憧れが生まれた。でも、ある時期から子ども主体の世の中になって、10代、20代がターゲットの映画やドラマ作りが始まって、それはふり返ると、子どもが『大人になりたくない』って言い出した時代なんですよね。いまは子どもがコーヒーなんか飲んでたりして『お前、コーヒー飲んでるの?』って驚くもん(笑)。昔は『カフェイン入ってるものなんてダメ!』とか言われて…よく考えると日本茶は飲んでたわけだし、矛盾はあるんだけど(笑)。ともかく『子どもはダメ!』という区別、それは差別ではなく『早く大人になりたい』と思わせるようなものがあったし、それがいまの世の中にはなくなってる。オレはずっと『大人向けのドラマや映画を作ろう』って言い続けてきたんです。この映画はまさにオヤジ向けで、オヤジたちが観たら、相当泣くと思う(笑)。でもそういう作品が当たり前に作れるようになったら、本当の意味で日本映画の力が付いてきたってことだと思います。アメリカ、フランスじゃ40、50代が主役の映画は当たり前にあるし、こびへつらってないところがいい。でも、そういう作品を若い世代や子どもが観ても理解できるし、楽しんでもらえる。そういう思いで作った映画なんです。『最後から二番目の恋』というドラマの時も、小泉(今日子)くんと『子どもは見なくていいから!』って言いながら作ってて、でも鎌倉のロケ地に子どもたちが来たりするんです。『お前ら見てないだろ?』って聞くと『お母さんが録画で見てる…』って。それで母親と一緒に見て、僕と小泉くんの掛け合いが子どもにはコントみたいに見えてたりする。そうやって作っていく中で、新しい日本の“強さ”が作られていくんじゃないかと僕は思ってます」。「五十にして天命を知り、六十にして耳順う(=五十歳で天から授けられた運命を知り、六十歳で他人の言葉に素直に耳を傾けられるようになる)」というが、この男、果たして…?さらにアグレッシヴに山を下っていく背中を見せ続けてほしい。(photo / text:Naoki Kurozu)■関連作品:アゲイン28年目の甲子園 2015年1月17日より全国にて公開(C) 重松清/集英社(C) 2015「アゲイン」製作委員会
2015年01月16日りそなグループのりそな銀行はこのたび、近時の急激な円安への対応に苦慮する中小企業等の取引先への支援として、『りそな円安対策緊急プログラム』を開始した。急激な円安進行は、中小企業等の取引先にとって、仕入れコストや原材料高騰など、新たな経営課題の発生につながっているという。りそな銀行では、同社のサポート機能を活用しこの課題解決の手伝いをするという。りそな円安対策緊急プログラムの概要りそな銀行の各営業店が相談の窓口となる専用ヒアリングシートを活用し、経営課題の認識を顧客と共有する資金繰りへの対応、販路開拓の為のビジネスマッチングなど、幅広く対応する開始日:12月11日(木)相談受付:円安進行により発生した経営課題の共有。課題解決への対応策の相談サポート策の検討:各種資金ニーズへの対応。仕入コスト等安定化策。販路、仕入先拡大の手伝いなど各種サポートの検討にあたっては、決算書等の資料が必要。また、同社所定の審査の結果、希望に応えることができない場合があるとしている。相談の窓口:最寄りのりそな銀行各営業店(電話での相談も承る)りそな銀行コーポレートビジネス部(東京)『りそな円安対策緊急プログラム』担当受付時間:銀行営業日9:00-17:00
2014年12月15日宮沢りえ7年ぶりの映画主演作となる『紙の月』が第32回トリノ映画祭の“Festa Mobile”部門で公式上映され、吉田大八監督が公式上映と記者会見に出席した。その他の写真公式上映前に行われた記者会見には世界各国から記者が参加。溝口健二や小津安二郎など日本の名監督が自身の描く女性像を作品の重要なポイントに置いていることから、「日本の古典的な映画の要素、女性像を取り入れているか?」と質問されると、吉田監督は「かつての映画の中の女性像というのは、実際、それらの映画を通じて、私も経験していますし、影響はおそらく受けていると思います。しかし、『紙の月』は、2014年の今に作っている映画です。私が普段に接している女性たち、そして、原作の小説の中で生きていた女性たちのことを考え作りましたので、あえて、過去の作品のどれかの女性像をモデルにしたということはありません」と回答。主人公の梨花が劇中で起こす出来事の原因について質問されると「私の考えでは、光太との出会いというのは、あくまできっかけで、彼女の行為は、彼女が本来の自分自身に戻っていく過程、プロセスだったと思っています」と分析した。また、「日本では賛否両論です。梨花を絶対許せないという女性はすごく多いし、反対に、とても共感するという女性も多い」という吉田監督が「イタリアの人がどう思っているのかすごく興味があります」と語ると、記者から「梨花に共感します」の声があがり、吉田監督が笑みを見せるひと幕もあった。その後に行われた公式上映のチケットは完売。上映前に登場した吉田監督は「女性がお金を使っていく中で、どう変化をしていくか、そういうことを表現したくて作りました。楽しんでください」とあいさつ。上映後には観客から大きな拍手があがった。映画は、角田光代の同名小説を原作に、『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督がメガホンを執ったヒューマンサスペンス。ごく平凡な主婦・梨花(宮沢)が起こした巨額の横領事件を通して、彼女の抱える心の闇が描かれる。『紙の月』公開中
2014年12月01日岡田将生が本格アクションに初挑戦し、染谷将太、成海璃子に高月彩良、黒島結菜ら若き実力派の豪華キャストが“特殊能力”を持つ若者たちを演じる映画『ストレイヤーズ・クロニクル』。このほど、岡田さん演じる“昴(スバル)”チームと敵対関係にある、染谷さん演じる学が率いるアゲハチームのメンバー・モモ役に、「あまちゃん」「銀二貫」「GTO」などで活躍する若手演技派女優、松岡茉優が決定。哀しみを背負った“人間マシンガン”を演じていることが分かった。本作は、次々と作品が映像化されている気鋭のベストセラー作家・本多孝好による新感覚アクション巨編小説を、『アントキノイノチ』の瀬々敬久監督と『桐島、部活やめるってよ』の脚本・喜安浩平により完全映画化。宿命を背負う若き異能者たちと、彼らの周囲で暗躍する政治家たちによる群像劇を、鮮烈な映像表現といまをときめく実力派俳優たちが高次元の融合で実写化する。今回新たに発表されたのは、『桐島、部活やめるってよ』の野崎沙奈役や、NHK朝ドラ「あまちゃん」東京編の「GMT47」リーダー・入間しおり役が高い評価を受けた、松岡茉優。松岡さんといえば、映画・テレビで活躍し、最近では「オサレもん」や「めざせ!2020年のオリンピアン」でMCを務めるほか、2015年には反町隆史主演のNHK土曜ドラマ「限界集落株式会社」(1月31日スタート)や『リトル・フォレスト冬・春』『サムライフ』(ともに2月公開)が控える注目の女優。松岡さんが演じるモモは、口内の歯の矯正器具から鉄びょうを発射させるという能力を備え、あるときは後方から味方を援護、あるときは敵の急所にヒットさせ致命傷を与える役割を担い、スクリーンを所狭しと躍動する。彼女が所属する殺戮集団“アゲハ”のメンバーには、リーダー・学を『神様の言うとおり』『寄生獣』など引っ張りだこの染谷さんが演じるほか、敵を幻惑させて動きを止め、キスで毒素を注入する静(シズカ)を『思い出のマーニー』の高月彩良、身体硬化能力を持つヒデを「弱くても勝てます」「黒服物語」の柳俊太郎、超高速で移動できる豪腕の壮(ソウ)を「劇団EXILE」の鈴木伸之、そして通常の人間には聞こえない高周波を発射して捜敵するレーダー能力を持つ碧(アオイ)を新鋭の黒島結菜が、いずれも体当たりで演じている。本作の瀬々監督は、松岡さんについて、「若い出演者が多い中で、ただ一人、円熟の芸域に達していると言ってもよいのが松岡さんでした。他の人の芝居を確認して、生かし、その中で自分のベストバウトを提示していく姿勢、そして演技力の高さ。まるで小津安二郎の映画の中の杉村春子のようでした(笑)」と往年の名女優を引き合いに出し絶賛。さらに「(彼女は)昭和顔。ホッとさせられます。芝居の中にも昭和的な情念を発する瞬間が何度もありました。それでいて、勢いがあって、POPで、松岡茉優さんは女優版“椎名林檎”だと密かにずっと思っています」と言い切っている。また、松岡さんも「瀬々監督から頂戴したコメント、ちょっと言い過ぎだよと思いながらも嬉しくて、母に送りました(笑)」と喜びを表し、さらに「『桐島、部活やめるってよ』で佐藤プロデューサーとご一緒させていただいてから、久々に声をかけていただいたのが、いままで演じたことのない役柄でキャラクターとしても興味深い設定だったので、感謝しています」と真摯にコメント。「モモは“テンションが高いとき”と“非常に現実的なとき”の両側面を持った女の子で、逆手にとると何でもありの役でした」と、その役どころをふり返りながら「その何でもあり感は楽しかったです」と演技派の片鱗を覗かせた。そんな松岡さんのオーラには、主演の岡田さんも「思わず『松岡さん』と敬語で話しかけてしまうほど(笑)」(佐藤プロデューサー)だったとか。スタッフ、キャストから絶大なる信頼を寄せられている彼女の、さらに磨かれた演技力に期待がかかる。映画『ストレイヤーズ・クロニクル』は2015年6月、全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2014年11月13日フジテレビ系『うつけもん』『オサレもん』などのバラエティ番組のMCとしても注目を集めている女優・松岡茉優が、映画『ストレイヤーズ・クロニクル』(2015年6月公開)で、"人間マシンガン"を演じることが12日、明らかになった。松岡は、2008年4月から2010年3月までテレビ東京系の子ども番組『おはスタ』で"おはガール"を務めた後、女優として数々の作品に出演。特に2012年に公開された映画『桐島、部活やめるってよ』を機に出演作が増えはじめ、翌年のNHK連続テレビ小説『あまちゃん』で多くの人に知られる存在に。さらに、『うつけもん』『オサレもん』では同じくMCを務めるお笑いコンビ・おぎやはぎに負けじと軽妙なトークを展開するなど、バラエティの才能も開花させた。本作は、作家・本多孝好による同名の新感覚アクション小説を、映画『アントキノイノチ』(2011年)の瀬々敬久監督が実写化する作品。岡田将生、染谷将太、成海璃子らが出演し、生まれながらにして特殊能力をもった若者たちと異能力者の殺りく集団"アゲハ"、暗躍する政治家との戦いが描かれる。松岡が演じるのは、昴(岡田)と敵対するアゲハのメンバー・モモ。口内にセットされた歯の矯正器具から鉄びょうを発射することができ、ある時は後方支援、ある時は致命傷を与える役割をチーム内で担っている。松岡は今回の役どころについて、「『テンションが高い時』と『非常に現実的な時』の両側面を持った女の子で、逆手にとると何でもありの役でした」と説明し、「なので撮影当日、皆さんの演技を見て、どういう風にやろうかといろいろ考えるのは、その中で何を選択するのかは難しいですけど、その何でもあり感は楽しかったです」とコメント。「今まで演じたことのない役柄でキャラクターとしても興味深い設定だった」と受け止めているが、そんな彼女に白羽の矢を立てたのが、『桐島~』も手掛けた佐藤貴博プロデューサーだった。佐藤氏にとって松岡は、『桐島~』を共に戦い、青春を過ごした「戦友」で、「心から尊敬し信頼している」役者。『桐島~』と同じく喜安浩平氏が脚本を担当していることから、モモ役の台詞は当て書きを依頼した。その理由について、松岡氏は「どんなに言いにくそうな難しいニュアンスの台詞も、松岡茉優ならば、そのキャラクターの放つ生きた言葉にしてくれるから」。『桐島~』の速いテンポの会話は松岡が作り出したと断言し、「今回もアゲハチームの会話のスピード感は松岡が担ってくれています」と全幅の信頼を寄せている。一方の瀬々監督も「松岡茉優さんには本当に助けられました。若い出演者が多い中で、ただ一人、円熟の芸域に達していると言ってもよいのが松岡さんでした。他の人の芝居を確認して、生かし、その中で自分のベストバウトを提示していく姿勢、そして演技力の高さ。まるで小津安二郎の映画の中の杉村春子のようでした(笑)」と絶賛。「ご本人には決して面と向かっては言えませんが、昭和顔。ホッとさせられます。芝居の中にも昭和的な情念を発する瞬間が何度もありました。それでいて、勢いがあって、ポップで、松岡茉優さんは女優版『椎名林檎』だとひそかにずっと思っています」とコメントしている。
2014年11月13日現在開催中の第27回東京国際映画祭で、今年から新設された「SAMURAI (サムライ)」賞の初年度の受賞者として北野武監督が10月25日(土)、六本木ヒルズにて行われたトークイベントに登壇。これまで大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』(’83)での俳優業に加え、『その男、凶暴につき』(’89)や『ソナチネ』(’93)、『座頭市』(’03)、『アウトレイジ』シリーズなど映画監督としても国際的に支持を得てきた、北野監督。この日は「ぴあフィルムフェスティバル」各賞の受賞監督、「日本学生映画祭」の受賞監督らも出席し、トークショーの前半では若手監督たちからの質問に対し、北野監督は「自分が描きたいものを自分なりに描けばいい。でも、嫌いなものも認めるという余裕も必要で、自分の好きなことを他の意見もあると思いながらつくっていけばいいんじゃないか。みんなマジメすぎるよね。余裕をもって、常に自分を客観的に見た方が追い詰められなくていいと思う」と、独自の映画論について時に冗談を交えながら語る。トークショー後半では、日本映画に造詣が深いトニー・レインズ氏(映画製作者/映画評論家/キュレーター)とクリスチャン・ジュンヌ氏(カンヌ映画祭代表補佐)も登壇し、日本映画について議論が交わされた。日本映画に興味を持つきっかけとして、黒澤明や溝口健二、小津安二郎などの名監督の名を挙げたレインズ氏とジュンヌ氏。最近の日本映画について、レインズ氏は「映画の未来は今、この舞台の上にいる若い監督たちによって作られます。かのオーソン・ウェルズ監督(『市民ケーン』など)の有名な言葉で、『彼らは、未来を使い果たしてしまった』というものがありますが、大会社による映画製作は終焉を迎えています」と自身の見解を語る。これにジュンヌ氏も同意し、「映画の未来は若手監督にあり、これは日本映画に限らず、全世界的な映画製作について言えることです。世の中の変化と共に監督も変わり、映画のメッセージもその伝え方も変わるでしょう。若手監督の皆さんが伝えたいメッセージを発信できることを願っています」と胸の内を明かした。いまでこそ“巨匠”と呼ばれ、カンヌ・ヴェネチア・ベルリンなどの海外の映画祭でも大勢のファンを抱える北野監督。この日は、映画監督として駆け出しの頃のエピソードも披露した。「日本で作品の悪口ばかり言われていた時に初めて評価してくれたのがトニーさんで、いまだに恩義を感じている。だから若手監督のみなさんも、誰がどこで見ているか分からないので、好きな映画を撮った方がいい」。さらに、映画監督としてどうすれば大成するのか?という話になると「何が必要かなんて、どうすれば宝くじが当たるかというような話だから、それは自分で探すしかない。参考意見として(周りの意見)は受け止めていいけども、作るのは自分だから。自分の世界を構築することがベストであって、自分で新しいものを見つけるかもしれない。私は『がんばれ』とは言いません。若い芽は早く摘んでおいた方がいいですから」と、最後は辛口のコメントで若手監督たちにエールを贈っていた。第27回東京国際映画祭は10月31日(金)まで開催。(text:cinemacafe.net)
2014年10月27日モデルに栗原類をキャスティングしたことも話題となったヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)の15SSメンズコレクション。会場となったのは、パリのショールーム。インスピレーション源となったのは、小津安二郎の映画『東京物語』。人間の生と死までをも見つめた深淵なこの映画のストーリーから、「PERDU(失われたもの)」というテーマを導き出しコレクションに落とし込んだ。ジャカード織りのスーツには、プリントのシャツを合わせてモチーフ・オン・モチーフに。ホルスターやハーネスのようなベルトのジャケットがあるかと思えば、ノマド風のケープが登場し、バリエーション豊かなシルエットを見せた。ピンストライプの生地をくり抜いてアップリケ刺繍したスーツや、ボタンを沢山縫い付けたジャケットなど、手の込んだアイテムも。ゆったりしたシルエットのデニムのセットアップも印象的だ。刷毛で汚したようなモチーフのシーチング地のシリーズでは、バックサイドに迷いネコや迷い犬の写真をプリントし、山本耀司本人の写真に「使い捨てOK」と書かれたジャケットも登場。様々な素材を駆使し、様々なスタイルを見せたが、ヨウジヤマモトらしいシックなコードは終始失われず、最後にユーモア溢れる遊び心を見せて締めくくった。
2014年08月03日東京国立近代美術館フィルムセンターは、上映企画「日本の初期カラー映画」を開催する。会期は4月8日~5月25日(月曜、3月31日~4月7日、5月26日~29日休館)。会場は同施設の大ホール(定員310名/各回入替制)。入場料は一般520円、高校・大学生・シニア310円、小・中学生100円。この上映企画は、国内外のさまざまなカラー方式やカラーフィルム、巨匠たちの意欲的な取り組み、さらには記録映画やアニメーションを通じ、日本映画が本格的に色彩を獲得し始めた1950年代の作品(42プログラム・57本)を振り返るというもの。「天然色」化を実現した映画が、日本人や日本の風土を、色彩によって再創造していく過程を見直す機会となることを狙いとしている。また、同企画で取り扱うカラー方式は、淡彩な色彩が特徴である小西六写真工業(現コニカミノルタ)の「コニカラー」、1950年代以降、世界のカラー映画市場の中心を占めた米イーストマン・コダックの「イーストマンカラー」、イーストマンカラーを追いかけ世界第2位のカラーフィルム生産会社へ発展した富士フイルムの「フジカラー」、イーストマンカラーが台頭するまで、世界のカラー映画の代名詞的な存在だった米テクニカラーの「テクニカラー」、日本での評価が高く、小津安二郎が好んで用いたことでも知られる独アグファの「アグファカラー」、多くのイタリア映画で用いられたが、日本映画では松本清張原作の『点と線』(1958)のみに使われた伊フェラニアの「フェラニアカラー」の計6種類となる。なお、各作品とも発券・開場は開映の30分前から行い、定員に達し次第締め切る。カラー方式ごとの上映作品と上映日時のリストは、同施設のWebページにて参照することができる。
2014年03月28日安蘭けいが、ジャズ史に残る歌姫ビリー・ホリデイを描いたレニー・ロバートソン作のソロミュージカル『レディ・デイ』に出演する。1986年にオフ・ブロードウェイで初演された作品で、レディ・デイと呼ばれたビリーが死亡する4か月前に行ったライブを再現したもの。観客はライブのオーディエンスに見立てられ、安蘭演じるビリーが歌い、MCとして自らの体験も語る。ソロミュージカル『レディ・デイ』チケット情報情感豊かな歌声と共に、奔放な男性遍歴、麻薬やアルコール依存など壮絶な人生で知られるビリー・ホリデイ。その代表曲のひとつ『奇妙な果実』は、彼女も経験した黒人差別の歌で、安蘭は初めて聞いた時、「こんなダークなジャズもあるのだな」と驚いたという。「私が自分自身の歌として歌うとしたら、理由というか、乗り越えなくてはならないものが多い。でも今回はビリーとして歌えるのでやりやすいです」。実在の人物を演じるにあたっては「かつては真似から入ることが多かったのですが、私の体を通してお客様はビリーをご覧になるわけだから、私らしさがないと意味がない。どれだけ、ビリーに共感できるところをみつけてお客様と共有できるか。その辺りを突き詰めていきたいです」と語る。「以前私が演じたエディット・ピアフもそうですが、ビリーはどんな境遇にあっても這い上がる強さやエネルギーをもった女性。それでいて脆さもあり、全てが歌に表れている。すごく素直なんですよね」。こう語る安蘭もまた、舞台では嘘がつけないタイプだ。「なんとなく歌ってしまうと歌詞が出てこないし、気持ちが伴わないまま台詞を言うと絶対に間違えたり噛んだりするんです。プロなのにと思われるかもしれないけれど、そこは自分の好きなところ。この作品でも、私がビリーになるという嘘はあるけれど、自分に嘘はない状態で演じたいと考えています」。宝塚歌劇団退団後5年目。波乱に富んだ役柄を多く演じてきた。「癖のある役柄は演じ甲斐があります。巡り合わせもあるでしょうが、もしかしたら私が呼んでいるのかもしれません」とほほ笑む。今年は3月に森新太郎演出によるヘンリック・イプセン作『幽霊』、そしてこの栗山民也演出『レディ・デイ』と、初タッグの演出家の舞台が続く。「いつも新しいことに挑戦したいと考えています。イプセンも初めてだし、『レディ・デイ』は初のひとり舞台。今年は越える山が多いですね。登る前の今は怯んでいますが、結局、こういうチャレンジが私にはすごく楽しいんです」。ソロミュージカル『レディ・デイ』は6月12日(木)から29日(日)まで東京・DDD AOYAMA CROSS THEATER、7月5日(土)・6日(日)に兵庫・宝塚バウホールにて。東京公演のチケット一般発売は3月1日(土)午前10時より。取材・文:高橋彩子
2014年02月27日満腹商事に勤めるOL、ミトゥ子とチャー子。 チャー子:「ミミミ、ミトゥ子ぉぉー」ミトゥ子:「なによチャー子。お金なら貸さないわよ」チャー子:「まだ何も言ってないじゃん! 」ミトゥ子:「ほー。じゃ、何の用なの? 」チャー子:「…。おかねかして…」ミトゥ子:「ホラやっぱり! あんたはこの給料日前になると、いっつもそうなんだから~」チャー子:「たのむよぉ~ ご飯も食べれないよー。家に米がないのよぉー」 ミトゥ子:「ったく、しょうがないわねー。お金は貸さないけど、アンタの家にある材料で出来る安飯を教えてあげるから、それで乗り切りんさい! 」 というわけで、今日はチャー子のように給料日前ヒーヒー言っているみなさんにお届けする、簡単安メシレシピ。 材料(2枚分) ☆小麦粉 100g☆片栗粉 大さじ2☆かつお削り節 3g☆塩 小さじ1/3 ・卵 1個・水 100g ◎新玉ねぎ(薄切り) 1個◎ツナ缶(水煮・オイル漬 どちらでも可) 1缶(80g)◎黒胡椒 少々 ・ごま油 適量 <タレ>★醤油 大さじ1★米酢 大さじ2/3★きび砂糖 大さじ1/2★豆板醤 小さじ1/2★マヨネーズ 大さじ1/2★白すりゴマ 大さじ1/2作り方1. ボウルに☆を入れ、泡だて器でざっと空気を入れるように混ぜる。そこに卵と水を入れ、滑らかになるまで混ぜる。2. そこに◎をいれ、箸などでざっと混ぜる。3. フライパンにごま油を大さじ1ほど入れて熱し、2を1/2量流しいれて丸く薄く広げ、弱めの中火で焼く。4. 裏返して全体をへらで抑えながら焼き色が付くまでじっくり焼く。残りの1/2量も同様に焼く。5. タレの材料(★)をすべて混ぜ合わせる。6.焼きあがったチヂミを食べやすい大きさに切り、タレを添えて完成! あとは簡単な味噌汁でも添えれば立派なディナー! 料費は安くても、大満足間違いなし。新玉ねぎのシャキシャキした甘みがポイントのモチモチしたチヂミ。小麦粉は強力粉を使うとモチモチ感が増しておすすめだが、もちろん無ければ薄力粉や中力粉で作ってもOK。も冷蔵庫に余っているハンパ野菜や肉などを一緒に入れて焼いても、色んなチヂミが出来る。 みなさんもぜひお試しを!
2013年05月07日映画『東京家族』が1月19日(土)に公開を迎え、山田洋次監督を始め、橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、林家正蔵、妻夫木聡が都内劇場で行われた第1回上映後の舞台挨拶に登壇した。山田監督の監督生活50周年を記念して、小津安二郎監督の名作『東京物語』をモチーフに制作された本作。田舎から成人した息子たちに会うために上京してきた老夫婦と、両親を気にかけつつも自らの生活にかまけてすれ違ってしまう子供たちの姿を通して、失われつつある家族の在り方を描き出す。見終わったばかりの観客の拍手に迎えられた山田監督。2010年の秋に始動したものの、東日本大震災の発生を受けての延期があった上でようやく公開にこぎつけたことに「長い間、心待ちにしていた日でした」と感慨深げ。震災を経て日本の家族の姿の変化を感じたということで「悩みましたが延期してよかったと思います」としみじみと明かした。橋爪さんはエンドロールでカップルごとに出演者の名前が出てくることに触れ、「あそこが好きで、いい映画に出させてもらったなという気持ちが最後に込み上げてきました」と嬉しそう。撮影時のエピソードを尋ねると、監督とは家が近く、訪れたマッサージ店が偶然にも監督も通っている店だったことを明かし、「2度目に行ったとき、店の人に『いま、監督が奥にいらっしゃいますけど何かお伝えしますか?』と言われて、『いらない!』って断りました。せっかくリラックスしに行ってるのに」と語り笑いを誘っていた。吉行さんは劇中、妻夫木さんが演じた次男の部屋を訪れ、そこで彼の恋人(蒼井優)と対面するが「そんなこと一生ないと思ってたので、役のこととはいえウキウキしました」と満面の笑み。撮影が終わっても子供たち、特に末っ子の妻夫木さんのことが気にかかるそうだが「以前に出た作品を観たら、クレイジーな役ばかりやってるから気持ちが吹っ切れました」とも。妻夫木さんは慌てて「今度、温かいやつをお送りします」と苦笑いを浮かべていた。医者の長男を演じた西村さんは、母が次男ばかりをかわいがることに嫉妬気味?司会者にそうツッコまれると「僕はそんな小さな人間じゃないので大丈夫です」とスネたような口調で語り、会場は再び笑いに包まれた。妻夫木さんは、橋爪さが演じた父とはなかなか心を開くことができない役柄ということで、意識的に現場で橋爪さんと距離を置こうとしたそうだが「橋爪さんが割とよくしゃべる方で距離を近づけてきてくださるので…(笑)」と述懐。すかさず橋爪さんがムッとした口調で「迷惑だった?」と返し、妻夫木さんは「そんなことないです」としどろもどろ。妻夫木さんが「橋爪さん」と言おうとして、吉行さんと混ざって「ハシユキさん」と言ってしまい、橋爪さんに詰め寄られる一幕もあり、最後まで笑いの絶えない舞台挨拶となった。なお、本作はベルリン国際映画祭にてベルリナーレ・スペシャル部門において上映されることが決定。香港、台湾、シンガポールでの公開も決定すると共に欧州、北米、インド、韓国など世界各国から劇場公開のオファーが届いていることも明らかになった。『東京家族』は全国にて公開中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:東京家族 2013年1月19日より全国にて公開(C) 2013「東京家族」製作委員会
2013年01月20日監督生活50周年となる山田洋次が、小津安二郎監督の代表作である『東京物語』を現代の設定に置き換えて描いた『東京物語』。本作の中で、島に暮らす中学生で、周吉(橋爪功)ととみこ(吉行和子)を実の祖父母のように慕うユキ役として純真無垢な魅力を見せているのが、今年13歳の荒川ちかだ。その他の画像「出演が決まったときは、驚きました。(最終オーディションまで残っていた中で) ゲストで出ていたバラエティ番組を、山田洋次監督が見てくださってたみたいで。それが決め手になったって聞いて、さらに驚きました。番組ではずっとアニメの話を熱く語ってるだけだったので、どこを気に入っていただけたのか不思議でした(笑)」当人はそう語るが、スクリーンを観れば誰しも納得だろう。無邪気な愛くるしさと、その演技力は世界も認めるところで、すでにして国際派。セルゲイ・ポドロフ監督も、『ヤクザガール 二代目は10歳』(2010年)で彼女を主演に抜擢。ルーマニアのコメディー・クルージュ国際映画祭では最優秀主演女優賞を受賞している。「山田監督は巨匠といわれる方なので、怖い人なのかなって緊張したんですけど、優しい方で、撮影中も面白い話をしてくださって。演技指導もわかりやすくて、魔法使いみたいだなって思いました」演出においては厳しいことで知られる監督が和やかだったのも、彼女を認めていればこそだろう。「好きなシーンは、蒼井優さんに島を紹介するところと、あとおじいちゃんとおばあちゃん(平山夫妻)が観覧車を見てるところ。ほのぼのした感じがいいなって。撮影は楽しかったです。島(広島・大崎上島)もいいところで、地元の人たちと交流会でバスケをやったんですよ。誘われて楽しそうだったから、行く行く!って。でも、運動オンチで持久力がないから、迷惑を掛けてばっかりで(笑)」そんな彼女の好きなものが、本人いわく、「トリプルA」のアクション・アート・アニメ。「アクションも挑戦してみたいです。運動オンチでもアクションは瞬発力でなんとかなります(笑)」将来が楽しみな逸材だ。『ぴあ Movie Special 2012-2013』より文:渡辺水央撮影:キム・チャニ『東京家族』2013年1月19日全国公開『ぴあ Movie Special 2012-2013』発売中
2012年12月26日山田洋次監督の81作目となる監督作『東京家族』の完成披露試写会が12日、都内で行われ、山田監督をはじめ、橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優ら“家族”が勢ぞろいした。名匠・小津安二郎の『東京物語』(1953)へのオマージュとして、現代を舞台に家族の絆を描いた監督生活50周年を記念する本作。山田監督は「ここにいる8人全員が主役。すてきな八重奏のアンサンブルを奏でてくれた」とキャスト陣をたたえた。その他の写真2012年5月の東京を舞台に、橋爪と吉行演じる老夫婦が、成長した子どもと会うため瀬戸内海の小島から上京する姿を通して、家族の絆や老い・死についてメッセージを投げかける本作。昨年の東日本大震災を受け、製作が約1年延期されただけに「お披露目の日を迎えて、本当に特別な感慨があります」と山田監督も感無量。この日は小津監督の110回目の誕生日でもあり「先祖の仕事を受け継ぎ、伝承しながら、この映画は完成した。感謝したい気持ちでいっぱい」。また、先日は2012年度文化勲章を受章し「ビックリしているが、映画界を代表し、章をいただこうと思う」と語った。主演を務める橋爪は「ぜひ皆さんの満足したお顔を見ることができれば」と上映を前に静かな自信。吉行とは3度目の夫婦役で「撮影が終わると、吉行さんと一緒に帰りそうになった」(橋爪)、「いい意味で緊張感なく共演できた」(吉行)と本当の夫婦のよう。「緊張で今も胸がいっぱい」(西村)、「誇りであり、今後大きな影響を与える作品」(夏川)、「撮影中は楽しくて、楽しくて。出演できた幸せをかみしめた」(中嶋)、「家族って本当にいいなと思える作品」(正蔵)とキャストたちは山田作品への強い思いを明かした。妻夫木にとっては、初めての山田組参加で「嬉しいと同時に、現場では緊張するんじゃないかと不安もあった」と告白。それでも「監督の丁寧な演出から、愛情を感じた。人間って、家族っていいなと思える作品なので、幸せの連鎖が生まれれば」と“山田マジック”にすっかり魅了された様子。恋人役で共演する蒼井は、『おとうと』以来2度目の山田組で「実家に帰ってきた感じ」。これにはベテラン俳優の橋爪も「うまいこと言うね」と感心していた。『東京家族』2013年1月19日(土)全国ロードショー
2012年12月13日山田洋次監督の81作目となる最新作『東京家族』の完成披露試写会が12月12日(水)に都内で行われ、山田監督を始め、主演を務める橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優ら“家族”が顔を揃えた。震災を受けて、当初の予定から1年延期しての製作及び完成に、山田監督は「本当に特別な感慨がある。ここにいる8人全員が主役であり、素晴らしい家族のアンサンブルを奏でてくれた」としみじみ語っていた。小津安二郎監督の不朽の名作『東京物語』をモチーフに、山田監督が2012年の東京を舞台に“今の家族”の物語を描いた本作。2012年5月、瀬戸内海の小島で暮らす平山周吉(橋爪さん)ととみこ(吉行さん)夫婦が上京する。東京の郊外で個人病院を営む長男・幸一(西村さん)、美容院経営者の長女・滋子(中嶋さん)、舞台美術の仕事をしている次男・昌次(妻夫木さん)たちは、東京滞在中は両親に楽しく過ごしてもらいたいと世話を焼くが、のんびりとした暮らしをしてきた2人とは、あまりにも生活のリズムが違い、家族の間には少しずつ隙間ができ始める…。橋爪さんと吉行さんは、今回で夫婦役を演じるのは3度目となり「撮影が終わると、吉行さんと一緒に帰りそうになるほど」(橋爪さん)、「でも私のこと、古女房だと思っているのか、ちっとも話しかけてくれない」(吉行さん)とさすがのコンビネーション。一方、山田組に初参加した妻夫木さんは「最初は緊張で演技ができないんじゃないかと思っていた。でも実際には丁寧な演出をしていただき、そこから監督の愛情を感じた」のだとか。その妻夫木さんと恋人役で共演した蒼井さんは「まるで実家に帰ってくる感覚」と『おとうと』以来2度目となった山田監督との仕事をふり返っていた。先日にはその功績が称えられ、2012年度文化勲章を受章した山田監督。「かなりびっくり。映画界を代表し、章をいただきましたが、いまの日本映画界は厳しい状況。今後も一丸となって頑張っていくと共に、国もしっかり(映画製作を)サポートしなきゃいけない」と巨匠になったいまもまだ、監督として邁進する姿勢を見せる。また、この日は小津安二郎監督の110回目の誕生日で「こうして『東京家族』が完成したのも、小津さんのおかげ。感謝したい気持ちでいっぱい」と挨拶した。『東京家族』は2013年1月19日(土)より全国にて公開。■関連作品:東京家族 2013年1月19日より全国にて公開© 2013「東京家族」製作委員会
2012年12月12日来年1月19日(土)に新作『東京家族』の公開を控える山田洋次監督が、1日にアップルストア銀座にて行われたトークイベント“Meet the Filmmaker”に登壇し、本作誕生についてや自身の映画観を語った。その他の画像“Meet the Filmmaker”は、これまでも海外のApple Sroreで開催されたイベントで、メリル・ストリープ、トム・ハンクス、ジェームズ・キャメロン監督など世界的に著名な俳優や監督が登壇し、その模様がPodcastでも配信された。今年文化勲章を受章し、監督50周年を迎えた山田監督。この日は81作目となる『東京家族』の公開に先がけ、本作についてや、監督がテーマとして多く扱う“家族”について語った。「“家族”を題材にする事は全然意識していないけど、振り返れば結局そういう素材に惹かれて常に映画を作ってきた。どんなジャンルの映画でも、“家族”の要素を入れると落ち着くから家族映画が多くなったんです」と話し、「(本作のモチーフとなった)小津安二郎の『東京物語』は、何年も前からストーリーがいいと思っていたし、このフレームを使うことによって現代の家族が描けると思った」と、本作が誕生したきっかけを明かした。また、最後に「僕は映画で人間や社会を学んできたが、今、日本で上映されている全ての映画がそういう役割を持っているとは思えない。映画を観るにも、シネコンは観客が管理されているようで嫌いだし、窮屈だ。もっと画面と観客が向き合い、感動や興奮のある生き生きとした劇場であってほしい」と訴えた。『東京家族』は、1953年の小津安二郎監督作『東京物語』へオマージュを捧げた作品で、家族の絆を描いた物語。子どもたちに会いに東京にやってくる夫婦を橋爪功、吉行和子が演じ、西村雅彦、中嶋朋子、妻夫木聡がふたりの子どもを演じる。ほかに夏川結衣、林家正蔵、蒼井優らが出演。『東京家族』2013年1月19日(土) 全国ロードショー取材・文・写真:滝島千尋
2012年12月03日ラーメン屋さんは儲かるのでしょうか? チェーンの激安店が1杯290円といった金額でラーメンを出す時代ですが、一方で「人気行列店」が大繁盛といったことも。ラーメン屋を開いて元が取れるかを考えてみました。ラーメン屋さんを開業したいという希望を持っている人は多いようです。「ラーメン屋を始めるには」といった本も多くあります。それらによると「開業資金は1,000万円以上を用意すべき」、あるいは「1,000万円はかかる」と書かれています。確かに、何も造作のない、スケルトンの状態の賃貸物件を借りて、思うままに内装工事を行い、厨房設備も新しく揃えるということになると、これは高くつきます。1,000万円の資金が手元にないと開業できないでしょう。これを「松」プランとしましょう。松プランにかかる経費は以下のように計算します。例として、賃料22万5,000円/月の物件(礼金2カ月/敷金2カ月)を考えます。松プラン物件取得費用 : 22万5,000円×6カ月分(礼金2+敷金2+家賃1+不動産屋1) = 135万円内装工事費用 : 300万円外装工事費用 : 100万円厨房設備工事費用 : 200万円空調設備、レジ設備など工事費 : 100万円什器類(備品)購入費用 : 100万円その他 : 50万円合計:985万円中堅不動産屋の営業マンに聞いたところ、「スケルトン物件で設備、内装を一からすると、初期費用で少なくとも500万円程度はかかる」とのことです。手っ取り早く開業するという激安プランも考えてみましょう。「居抜き」という、そこで営業をしていた飲食店の内装などをそのまま受け継いで店を出す方法はどうでしょうか。賃貸物件はスケルトンにして不動産屋に戻すのが原則ですが、それをしないで済む分、前の借り主は助かりますし、こちらも造作をしないで済む分出費がありません。ここで気をつけたいのは、設備が無料譲渡されるかです。別途、譲渡料を取られることがないか確認が必要です。最近は、「居抜き」物件などもネットで検索できるようになりました。例えば、『飲食.com』では店舗探しが簡単にできます。試しに探してみると、浅草の小料理屋をやっていた居抜き物件で譲渡料無料、礼金2カ月、敷金2カ月、賃料92,400円という物件がありました。自分の条件に合う安価な物件を見つければ、「とりあえず開業」というのはできそうです。家賃がざっくり10万円として、礼金2+敷金2+家賃1+不動産屋1として物件取得で60万円。什器類はまとめて15万円としましょう。看板なんか自分でやる! ということでしたら予備費も足して計100万円の資金で開業できるでしょう。このとりあえず開業を「梅」プランとしましょう。梅プラン物件取得費用 : 10万円×6カ月分(礼金2+敷金2+家賃1+不動産屋1) = 60万円内装工事費 : 0円外装工事費 : 0円厨房設備工事費 : 0円空調設備、レジ設備など工事費 : 0円什器類、備品購入費 : 15万円その他 : 25万円合計:100万円前述の営業マンの話では「現在、ラーマン屋、焼き鳥屋など、開業したい人はたくさんいるようで、居抜きの物件は人気。逆にスケルトンの物件はテナントを見つけづらいようです」とのことでした。ラーメン屋を運営するのにかかる経費はどのくらいでしょうか。自分の1人でお店をやって、とりあえず人件費は0とし、利益が出たらそれを取ることを考えます。ラーメン屋を実際に生業(なりわい)としている人から「月々、水道代が7,000円、電気代が7万円、ガス代が8万円」であると聞きました。この方は商店街で10坪ほどのお店を営んでいます。松プランでは10~15坪、梅プランでは10坪未満を想定していますので、ざっくりとした計算になりますが、この数字をこのまま当てはめてみましょう。ただ、トンコツラーメンを作る時はこの数字では無理だそうです。というのは煮込みを続けるためガス代がとても高くつき、ガス代が月額20万円を超えるといったこともあるそうです。ラーメン店は「1日に100杯売れる店は繁盛店」と言われるそうです。1日の営業時間が、お昼に3時間(11時-14時)、夜に4時間(17時-21時)の計7時間だとしましょう。すると、1日100杯売るためには、1時間に14人以上のお客さんが必要です。これは繁盛店ですね。行列ができていてもおかしくありません。前述のラーメン屋さんに聞いたところ、そのお店では「1日60杯-70杯」というお答えでした。そこそこ繁盛しているお店ではないでしょうか。初期にかかった経費やランニングコストはどのくらいラーメンを売ればリクープできるでしょうか。ラーメンの原価率から考えてみましょう。どのくらい材料費をかけてラーメンを作るかにもよりますし、また、さすがに有名店のラーメンは原価率が高いという話もあります。(あくまでも)筆者の調べた範囲では30-35%という原価率でした。ここでは、仮に原価率を35%としましょう。ラーメン1杯の価格を500円にしてみましょう。原価率が35%であれば、残りの65%が粗利。1杯あたりの粗利益は、500円×65%=325円バカな計算ですが、松プランの場合、初期費用の985万円をリクープするには、985万円÷325円=30,307.7杯30,308杯のラーメンを売って初めてリクープできます。梅プランの場合には、初期費用の100万をリクープするには、100万円÷325円=3,076.9杯3,077杯のラーメンを売って初めてリクープできます。1カ月の売上と利益を計算してみましょう。1日に100杯売れる繁盛店であれば、1日の売上は、500円×100杯=5万円営業日が月に25日(1週間に1日は定休日)であれば、5万円×25日=125万円原価率が35%ですので、125万円の35%は材料費などのコスト。ですから、43万7,500円がそれに当たります。500円のラーメンを1日に100杯売った場合売上 : 125万円材料費などコスト : 43万7,500円電気代 : 7万円ガス代 : 8万円水道代 : 7,000円家賃 : 松プラン:22万5000円/梅プラン:10万円粗利:松プラン:43万500円/梅プラン:55万5,500円月額の粗利はこのようになります。ここから上記で計上されていない、電話代などの通信費や諸経費も引くことになります。1人でお店をやっての計算ですから、人を使うとさらに利益は減ります。ラーメンの価格を上げれば、粗利も良くなりますが、そこはお客さんに来てもらえるかを考えなければならないでしょう。「松プラン」の初期費用1,000万円を借入金でまかなう場合には、月々の返済額が上記粗利よりさらに引かれることになります。どんな商売もそうですが、なかなか大儲けとはいかないようです。「複数店舗を経営!」なんて状況になればまた違うんでしょうが。(谷門太@dcp)【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年11月12日黒澤明や小津安二郎と並び、現代でも数多くのファンをもつ日本映画界を代表する巨匠・木下惠介監督(『楢山節考』)。生誕100年を迎える記念すべき今年、記念映画となる『はじまりのみち』で、加瀬亮が主演を務めることがこのほど明らかとなった。戦時下、政府から戦意高揚の国策映画づくりが要求された時代。木下惠介(加瀬さん)が昭和19年に手がけた『陸軍』は、その役割を果たしていないとして、当局から睨まれ、次回作の製作も中止されられてしまう。すっかり嫌気が差した木下は松竹に辞表を提出し、脳いっ血で倒れた母・たま(田中裕子)が療養している浜松市の気賀に向かう。失意の中、たまに「これからは木下惠介から木下正吉に戻る」と告げる惠介。戦局はいよいよ悪化の一途をたどり、気賀も安心できる地ではなくなり…。『映画 クレヨンしんちゃん』シリーズで知られる日本アニメ界の第一人者・原恵一監督の初実写映画作品となる本作。先日、本作『はじまりのみち』の製作が決定して以来、この一大プロジェクトのキャストには誰が選ばれるのか?と、各方面で注目を集めていたが、今回その主人公・木下惠介にいまや日本を代表する国際俳優となりつつある加瀬亮が大抜擢を受けた。このオファーに、加瀬さんは「時代の激しい流れに巻き込まれながらも、青年時代の木下惠介監督がどうしても手放せなかったもの、その大切なものを、原監督と一緒に同じ道をゆっくりと辿りながら、見つめていきたいと思っています」とコメントを寄せている。そのほかにも、母・たま役に田中裕子、惠介の兄・木下敏三役にユースケ・サンタマリア、そして次々と話題作で主演を務める濱田岳が、惠介と敏三と共に行動を共にする“便利屋”を演じることも明されている。手放しの人間讃歌ではなく、人間の美しさも醜さも、そして弱さと強さをありのままを肯定し、名もなき市井の人々の本当の姿を見つめ続けた木下惠介監督。その実像と木下監督の精神を、原監督がどのように描き出すのか、そして、日本映画界屈指の実力派俳優たちのコラボレーションに注目が集まりそうだ。本作は今年11月にクランクインし、撮影は浜松ほかにてオールロケを敢行する予定だ。『はじまりのみち』は2013年6月1日(土)より全国にて公開。■関連作品:はじまりのみち 2013年6月1日より全国にて公開
2012年11月07日山田洋次監督の最新作『東京家族』の予告編映像が公開された。時代にあわせて変わっていく家族のあり方と、時を経ても変わらぬ家族の“絆”を描いた感動作だ。予告編『東京家族』の物語は、瀬戸内海の小さな島で暮らす周吉と妻とみこが息子たちが暮らす東京を訪れるところから始まる。個人病院を営む長男、美容院を経営する長女、舞台美術の仕事をしている次男はそれぞれに両親のことを想い、東京で快適に過ごしてもらいたいと願うが、生活のリズムがあまりに違うために関係はぎくしゃくしてしまう。本作がオマージュを捧げている小津安二郎監督作『東京物語』の舞台は、映画公開と同じ1953年だった。そして、本作の予告編ではまず「2012年“いま”を生きる家族の物語」というコピーが登場する。続いて、橋爪功と吉行和子が演じる老夫婦が東京で子どもたちと再会する場面と、西村雅彦、中嶋朋子、妻夫木聡が演じる子どもたちの日常が映し出される。また、妻夫木演じる昌次の恋人・間宮紀子(蒼井優)も登場。短い予告編ながら、俳優陣の会話のトーンや仕草まで山田監督の繊細な演出が行き届いているのがわかる。また映像には、東京スカイツリーやイルミネーションに彩られた巨大観覧車など、東京の“現在”を感じさせるロケーションも数多く登場。本作は名作のコピーや、古めかしいドラマではなく、2012年の観客のために作られた“現代の家族”を描く作品のようで、予告編のラストは「これは、あなたの物語です。」というコピーで締めくくられている。『東京家族』2013年1月19日(土) 全国ロードショー
2012年11月02日『家族』、『幸福の黄色いハンカチ』、『息子』、『学校』シリーズ、『おとうと』、そして『男はつらいよ』シリーズと、その時代、時代の家族を見つめ続け、先日にはその功績が称えられ、2012年度文化勲章を受章した山田洋二監督による最新作『東京家族』。小津安二郎監督の不朽の名作『東京物語』をモチーフに、山田監督が2012年の東京を舞台に“今の家族”の物語を描いた本作の待望の予告編が遂に解禁となった。2012年5月、瀬戸内海の小島で暮らす平山周吉(橋爪功)ととみこ(吉行和子)夫婦が上京。東京の郊外で個人病院を営む長男の幸一(西村雅彦)、美容院経営者の長女の滋子(中嶋朋子)、舞台美術の仕事をしている次男・昌次(妻夫木聡)たちは、東京滞在中は両親に楽しく過ごしてもらいたいと世話を焼くが、のんびりとした暮らしをしてきた2人とは、あまりにも生活のリズムが違い、家族の間には少しずつ隙間ができ始める…。山田監督にとって81作目となる最新作で描かれるのは、2012年現在を生きる家族の物語。今回公開となった予告編では、橋爪さん演じる周吉が妻夫木さん演じる昌次に「のう、昌次。母さん、死んだぞ」と言葉をかけ、泣くのをぐっとこらえていた妻夫木さんが思わず涙してしまうシーンからスタートする。上京してきた周吉、とみこに対する反応は同じ家族でも様々。そして平山夫妻を取り巻く家族の風景が、久石譲の音楽と共に丁寧に映し出され、予告編ラストには「親をもつ、子をもつ、すべての人へ―」というメッセージが流れる。小津安二郎監督が家族の絆と喪失を描いた『東京物語』から60年――。これはスクリーンの中の家族の物語ではなく、私たち一人一人の物語でもあるのだ。巨匠・山田洋二が紡ぎ出す、現代の“家族”の姿にあなたは何を思うだろうか?『東京家族』は2013年1月19日(土)より全国にて公開。※こちらの予告編映像はMOVIE GALLERYにてご覧いただけます。MOVIE GALLERY■関連作品:東京家族 2013年1月19日より全国にて公開© 2013「東京家族」製作委員会
2012年11月02日日本映画界に輝く巨星・小津安二郎監督の『東京物語』(’53)にオマージュを捧げ、妻夫木聡や蒼井優をキャストに向けて贈る『東京家族』。このほど、本作の監督を務めた山田洋次が、文化勲章を受章したことが明らかとなり、山田監督を始めキャスト陣より喜びのコメントが届いた。震災後の2012年の東京を舞台に“今の家族”の物語を描く渾身の一作。瀬戸内海の小島で暮らす老夫婦が息子たちに会いに上京し、一時はバラバラだった家族が久しぶりに揃うも、その生活の違いから徐々に関係に歪みが生じていく様を描く。文化勲章とは、科学技術や芸術などの文化の発展や向上にめざましい功績のある者に授与される日本の勲章。これまで『幸福の黄色いハンカチ』を始め、『学校』シリーズや『おとうと』、そして『男はつらいよ』シリーズでその時代ごとの家族を丁寧な人間描写で描いてきた山田洋次監督。そんな監督自身、今回の受勲には格別な思いがあると言い、「京都で電話を受け、びっくりしました。映画人の一人として映画界を代表して日本映画のためにこの章を頂こう、という気持ちでお受けしました」と喜びと使命感が同居する胸中を語った。。さらに、「作りたいと思う、作ること自体が楽しい、面白い。作ることを楽しんでいると観客にとっても楽しい作品ができるだろう、そんなことを信じてやってきたつもりです」とこれまでの50年の監督人生をふり返る。さらに、『男はつらいよ』の渥美清(寅さん役)がこの場にいたら何と言うと思うか?という質問には「(寅さんは)そんな立派なものもらってどうするんだい。オレみたいな出来損ないの映画を作っていてそんな章を取るなんてと、きっと冷やかしそうですね。そして渥美さんが生きていたら、きっと喜んでくれたでしょう」といまは亡き盟友に思いを馳せた。『東京家族』は2013年1月19日(土)より全国にて公開。■関連作品:東京家族 2013年1月19日より全国にて公開© 2013「東京家族」製作委員会おとうと 2010年1月30日より全国にて公開© 2010「おとうと」製作委員会幸福の黄色いハンカチ デジタルリマスター 2010年4月10日より東劇ほか全国にて順次公開© 1977、2010 松竹株式会社
2012年10月30日映画『二十四の瞳』や『楢山節考』など、数々の名作を世に送り出し、黒澤明と共に日本映画界の一時代を築いた映画監督、木下惠介。その木下監督の生誕100年を記念して、戦後の銀座を舞台にしたコメディ映画『お嬢さん乾杯』が2013年の初春新派公演で初めて舞台化される。10月18日、都内で会見が行われ、出演の水谷八重子、波乃久里子、瀬戸摩純、歌舞伎俳優の市川月乃助が登場した。1949年に公開された『お嬢さん乾杯』は、没落華族の令嬢と戦後成金の青年との不似合なふたりの恋を明るく軽快に描いた上品なコメディで、女優・原節子が唯一出演した木下作品としても知られている。また、今年5月に惜しくも世を去った新藤兼人監督が、映画脚本家としての地位を確立した作品でもある。今回の新派では成金実業家の青年・圭三を市川、没落華族の令嬢役で原節子が演じた泰子を瀬戸が演じる。また、本作が上演される来年は、新派にとっても創始から125年目を迎える節目の年でもある。劇団新派の要として長年劇団を支えてきた水谷と波乃は「来年も今年の続きとして、そのまんま走り続けていきたいです。『麥秋』『東京物語』(いずれも小津安二郎の名作を山田洋次が舞台初演出・脚本を手掛けた)に続いて戦後の昭和の姿を表現するという新しいジャンルを確立できれば嬉しいです」(水谷)、「その時代を感じさせるような劇団として、いい作品にできればと思います」(波乃)とそれぞれコメントした。物語の中心となる男女を演じる市川と瀬戸は「新派はまだ4度目ですが、新派125年の節目の公演に出させていただけて光栄です」(市川)、「劇団一丸となり必ず良い作品にしたいと思います」(瀬戸)と意気込みを見せていた。公演は2013年1月2日(水)から23日(水)まで東京・三越劇場で上演。チケットは11月30日(金)より一般発売開始。
2012年10月22日長野県茅野市の蓼科高原で第15回となる「小津安二郎記念蓼科高原映画祭」が開催される。開催日時は10月27日(土)、28日(日)の2日間。上映場所は茅野市民館と新星劇場の2か所。日本映画史上、黒沢明、溝口健二と並び三大巨匠と称される小津安二郎監督は、蓼科高原を気に入り、蓼科にある山荘でシナリオライターの野田高梧とともに多くの作品を生み出した。この映画祭は、小津、野田両氏にゆかりのある蓼科高原・茅野市で「小津映画・小津のこころ」に触れるとともに、小津に続く国内外の映画の上映やさまざまなイベントをとおして、この地から21世紀の映画が生まれることを願って平成10年にスタートした。今回の上映作品は小津安二郎監督作品「父ありき」、「東京の合唱(コーラス)」。追悼・新藤兼人監督として「一枚のハガキ」、「午後の遺言状」のほか、日本映画監督協会新人賞作品、市民公募作品など13タイトル。さらに短編映画コンクールも行われる。ゲストは女優の樹木希林、川上麻衣子、映画監督の原田眞人、三島有紀子、砂田麻美、鈴木健介、活動弁士の澤登翠、近代映画協会社長兼プロデューサーの新藤次郎、共同通信社編集委員の立花珠樹各氏が出演の予定だ。なお、ゲストはやむを得ない事情により変更になる場合がある。映画上映のほか、シネマカフェ、交流パーティーなどが行われる。また、茅野市民館ロビーで新藤兼人監督写真展も企画されている。上映スケジュール、料金など詳細は蓼科高原映画祭ホームページで確認を。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年10月22日山田洋次監督の最新作『東京家族』の特別試写会が4日(木)に京都四條南座で行われ、舞台あいさつに山田監督が登壇した。その他の写真本作は、1953年の小津安二郎監督作『東京物語』へオマージュを捧げた作品で、橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優らをキャストに迎え、現代の家族の絆を描く。京都四條南座では、8月18日より山田監督の監督生活50周年を記念したイベントが連日行われており、『男はつらいよ』シリーズや『幸福の黄色いハンカチ』など全80作品を上映。イベント期間中の4日(木)に行なわれた『東京家族』の特別試写会には、3年ぶりの山田監督作を心待ちにしていた約500人の観客が集まり、山田監督が舞台あいさつを行った。山田監督は、「今日は、皆様がどういう風にこの映画を感じるか、判決を待つ被告のような気持ちでおります」とコメントし、さらに先日、世界の映画監督が投票で決める映画史上最も優れた作品に、本作のベースである小津監督の『東京物語』が選ばれたことについて、「2位の『市民ケーン』を抜いて1位になったと、世界中で話題になりました。時を越え、国を越えても、家族というものはやっかいなもんだという悩みを、世界中の人が共有できる、そういうところが評価されたのでしょうか」と話した。『東京家族』2013年1月19日(土)全国ロードショー
2012年10月05日監督生活50周年を迎える山田洋次監督の新作『東京家族』が来年1月に公開されるのを記念して、全50品目が入ったオリジナルおせちが、大丸松坂屋百貨店から販売されることが決定した。その他の写真映画は、“家族”をテーマにした作品を作り続けてきた山田監督が、巨匠・小津安二郎監督の傑作『東京物語』にオマージュを捧げた作品で、橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優らをキャストに、現代の家族の絆を描く。このたび販売されるオリジナルおせちは、近年、「新年を家族で迎えたい」「家族で過ごす時間を大切にしたい」といった家族回帰の傾向に対応し、おせちを拡充している大丸松坂屋百貨店が販売するもの。オリジナルおせちは、角うに、味付数の子、ローストビーフ、ローズサーモン、豚バラあぶり焼き、穴子昆布巻など全50品が入ったボリュームのある和・洋風3段で、10月3日(水)より12月中旬まで、大丸・松坂屋・関係百貨店19店舗で予約することができる。価格は税込21000円。また、オリジナルおせちの購入者には、抽選で100組200名に映画『東京家族』のペア・チケットがプレゼントされる。『東京家族』2013年1月19日(土)全国ロードショー
2012年10月01日日本映画界の巨匠・山田洋次監督の3年ぶりの最新作にして監督生活50周年の記念作品となる『東京家族』で、このほど音楽界の巨匠・久石譲が音楽を手がけることが明らかとなった。夢の初タッグを組んだばかりの2人の巨匠から興奮のコメントが到着!いまなお海外の映画ファンから支持を集める小津安二郎監督の不朽の名作『東京物語』をモチーフに、山田監督が2012年の東京を舞台に“今の家族”の物語を描いた渾身の一作。瀬戸内海の小島で暮らす老夫婦が息子たちに会いに上京し、一時はバラバラだった家族が久しぶりに揃うもその生活の違いから徐々に関係に歪みが生じていくさまを丁寧に映し出す。久石さんは、『風の谷のナウシカ』などのスタジオジブリ作品を始め、北野武監督作『HANA−BI』や『おくりびと』、『悪人』などの作曲を手がけており、その類まれなる音楽センスは海外でも高く評価されている、日本映画界に欠かせない存在。7月半ばに収録が行われた『東京家族』の音楽は、ピアノ演奏が終わった瞬間、山田監督に「ブラボー!」と言わしめるほどの会心の出来に。久石さん自身、山田監督作品の大ファンだそうで「『男はつらいよ』シリーズや、『幸福の黄色いハンカチ』、『武士の一分』、『おとうと』などこれまでいっぱい観てきているので、ぜひ一度参加させていただきたいなと思っていました!」と初タッグの興奮を明かす。レコーディングでは、何度も打ち合わせを重ねながらじっくりと丁寧に収録していったというが、その出来栄えに日本映画界の巨匠の口からは「僕がイメージしていたような、“そんな音楽が聞きたかった”と思っていたようなメロディであり、楽想、音色でありました。大変、満足しています!」と手放しの称賛の言葉がこぼれる。一方、久石さんは「山田監督はすごく芝居を大切にされる方なので、音楽もできるだけ控えめというか、“あまり主張はしないんだけど、後ろでしっかり支える”ような、そういう音楽が書けたらいいなと思って取り組みました」と音楽へのこだわりを明かした。久石さん曰く“しっかり支える”音楽が、どのように山田監督の紡ぐ物語とキャラクターの感情にリンクしていくのか?いまや遅しと完成が待たれる本作は既に撮影を終えており、現在はポストプロダクション中。完成は8月末になるようだ。『東京家族』は2013年1月19日(土)より全国にて公開。■関連作品:東京家族 2013年1月19日より全国にて公開© 2013「東京家族」製作委員会
2012年08月16日山田洋次監督の最新作『東京家族』の製作報告会見が30日に東京・成城の東宝スタジオで開かれ、山田監督をはじめ、橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優が出席した。そのほかの情報名匠・小津安二郎の『東京物語』へのオマージュとして、現代を舞台に家族の絆を描いた、山田監督にとっては監督生活50周年を記念する作品。当初は 2011年4月にクランクインの予定だったが、東日本大震災の発生を受け、山田監督の意向によって、撮影が延期されていた。今年3月1日、正式にクランクインし、5月末に撮了を迎える。山田監督は「延期は正しかった。もしあのまま製作を続けていたら、とっても後悔していたはず。3.11という大惨事を無視することはできなかった」と断言。その上で「この国が今後どうなるのか。作品の最後に提示することができれば。本質的には人間喜劇で、キャストの皆さんの連帯と情愛のおかげで、楽しく仕事することができた」と手応えを示した。81本目のメガホン作だが「そもそも巨匠といわれる人は80本も作品を撮らないもの。今回、改めて小津安二郎がいかにすごいかしみじみ分かった」と語った。2012年5月の東京を舞台に、橋爪と吉行演じる老夫婦が、成長した子どもと会うため瀬戸内海の小島から上京する姿を通して、家族の絆や老い・死についてメッセージを投げかける。「思いもよらない大役。作品がダメだったら、監督のせいですけど(笑)」(橋爪)、「山田監督とは初めてのお仕事で、大緊張の毎日。同時に楽しく幸せな気持ち」(吉行)。老夫婦の次男・昌次(妻夫木)と、その恋人の紀子(蒼井)は被災地である福島でのボランティアで出会ったという設定。妻夫木は「親には面と向かって『ごめん』や『ありがとう』が言えないもの。橋爪さん演じる男親の厳しさ、吉行さんの女親の優しさが身に染みた」としみじみ。蒼井は大女優・原節子が演じた紀子役を受け継ぎ「大きすぎる役柄なので、意識してしまうと家から出れなくなってしまう(笑)。監督からも言われた通り、『感じること』を大切に演じたので、ぜひ寛大な心で受け止めてください」とアピールした。この日は日本映画界で最高齢の映画監督だった新藤兼人氏が100歳で死去したと報じられ、山田監督は「仰ぎ見る先輩がいなくなるのは、さみしいこと。地を這うような苦労をなさって映画を作った方」と追悼のコメントを出した。『東京家族』2013年1月全国ロードショー取材・文・写真:内田涼
2012年05月30日山田洋次監督の最新作『東京家族』の製作報告会見が5月30日(水)、東京・成城の東宝スタジオで行われ、山田監督を始め、橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優が出席した。同日、日本最高齢の映画監督だった新藤兼人監督(享年100歳)が亡くなったことが報じられ、山田監督は「仰ぎ見る先輩がいなくなるのはさみしいこと。地を這う思いで映画を作り、スクリーンから“肉声”が聞こえてくるような監督だった」と追悼の意を表した。山田監督にとって81作目のメガホンにして、監督生活50周年を記念した『東京家族』。当初は2011年4月のクランクインを予定していたが、東日本大震災の発生を受けて、山田監督の意向で撮影が延期されていた。小津安二郎の『東京家族』(1953)にオマージュを捧げ、震災後の2012年5月の東京を舞台に、老夫婦と次男坊の絆を通して、観る者に普遍的な家族愛を問いかける。山田監督は「延期は正しかった。3.11は無視できない大惨事だし、もしあのまま製作を始めたら、とても後悔していたはず」と述懐し、「日本という国がこの先どうなるのか…。作品の最後に提示できればと思った。本質的には人間喜劇」と確かな手応えを感じている様子だ。実力派俳優が顔を揃える本作だが、意外にも蒼井さんを除き“山田組”には初参加。主人公の老夫婦を演じる橋爪さんと吉行さんは「思いもよらない大役」(橋爪さん)、「大緊張の毎日」(吉行さん)とそれぞれふり返る。次男を演じる妻夫木さんは、山田組への参加を先輩俳優の永瀬正敏に報告したと言い「永瀬さんから『良かったな、勉強になるぞ』とメールをいただいた。大切にしたのはフィーリング」と満足そうな笑顔を見せた。一方、山田組に関しては“先輩”にあたる蒼井さんは「私だけロケ参加が1か月遅かったんですが、その間にすっかり抜かされていて、焦りました(笑)」と苦笑しきり。演じるヒロインの紀子は、往年の大女優である原節子が演じた役柄とあって「紀子は、私には重過ぎる名前。意識してしまうと家から出られなくなるので、新鮮な気持ちを心がけた。寛大な心で受け止めてください」と控えめなアピールながら、やはり自信をのぞかせた。『東京家族』は2013年1月、全国にて公開。■関連作品:東京家族■関連記事:山田洋次監督が「第二の故郷」柴又を練り歩き!『東京家族』製作は来年春に再開
2012年05月30日開催中の第65回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で、5月21日(現地時間)、イランのアッバス・キアロスタミ監督の『ライク・サムワン・イン・ラブ』が上映され、奥野匡、高梨臨、加瀬亮がキアロスタミ監督と共に満場の喝采を浴びた。映画は『桜桃の味』(’97)で同映画祭にてパルム・ドール(最高賞)を受賞したキアロスタミ監督が、日本で全編撮影したラブストーリー。3人は元大学教授、デート嬢として働く女子大生、彼女の暴力的な恋人をそれぞれ演じている。上映後、スタンディングオベーションを浴びた高梨さんは、感激の面持ちで目を潤ませていた。長年、舞台を中心に活動し、84歳にして映画初主演となる奥野匡さんは、上映前の会見でキアロスタミ監督の独特の演出方法について、「長く芝居をしていますが、脚本なしで演じるのは初めてで少し戸惑いました。監督からは『演技をしてはいけない』と言われました。たとえば、眩しい顔をするときは眩しい演技をするのではなく、本当に1度暗くしてから、パッと光を当てるんです。加瀬さんが息を切らしているシーンでは、撮影前に『ジャンプを20回しろ』と言ったり。私が下手な役者だから、演技をしないのがうまくいったんでしょうね」と謙遜した。キアロスタミ監督は日本人キャストで日本での撮影を選んだことについて聞かれると、「長年、イランで撮っていましたが、想像力をもっと掻き立てるために、新しい場所に行くことが必要だと思い、日本を選びました。でも私は、いままでもイラン人としてイランを描こう、などと思ったことは一度もありません。日本人とイラン人ではかなり違いもあります。奥野さんに、怪我をした高梨さんの顔を触ってほしいと言ったら、『どうしてもそれはできない』と言われました。『日本では老人が若い女性の顔に触ったりしないんです』と、そこだけはとても頑固でした。私は彼の考えを尊重しましたし、それでよかったと思っています。でも、喜びや痛みの感覚は日本人もイラン人も同じです。何か少しでも共通の感覚がないと、映画は成立しませんから」と語った。また、日本映画についての質問には「日本には何度も行っていますし、日本映画は、監督を目指す以前から、小津安二郎や、溝口健二らの映画を観ていました。いまの日本映画も、今回キャスティングをするためにいくつか観ましたが、なんだかハリウッドのリメイクのようでしたね。私には多くの日本人の友人がいますが、最近の日本映画には、そこには私の知っている日本人の感性が反映されていない気がしました。もっとも、そういう繊細な映画を私が観ていないだけかもしれませんが」と、日本映画の現状に対する苦言も呈した。『ライク・サムワン・イン・ラブ』(原題)は9月、渋谷・ユーロスペースにて公開。第65回カンヌ国際映画祭は今月27日(現地時間)まで開催。(photo/text:Ayako Ishizu)特集:第65回カンヌ国際映画祭■関連作品:ライク・サムワン・イン・ラブ 2012年9月、渋谷・ユーロスペースにて公開
2012年05月22日井上靖の自伝的小説を原田眞人監督が映画化した『わが母の記』が公開されている。本作は、原田監督が「巨匠・小津安二郎監督の作品に近づきたい」と撮り上げた作品だ。そこで、『早春』(1956年)以降の6作品で、小津組のプロデューサーを務めた山内静夫氏に作品を鑑賞していただいた。山内氏は本作をどう観たのだろうか?その他の写真本作は文豪・井上靖が自身の人生や家族との実話を基に綴った『わが母の記~花の下・月の光・雪の面~』を原作に、普遍的な家族の愛を描いた物語。役所広司が作家・伊上洪作を、樹木希林が母親の八重を、宮崎あおいが三女の琴子を演じている。試写室から出て、原田監督と対面した山内氏は「監督さんのいる前だと緊張するね」と笑みを見せながら「とても爽やかな印象。映画としてどっしりしているし、そこに“人生”が描かれている」と鑑賞した直後の印象を述べる。「一家がいて、それぞれが人生を背負っている。映画は物語だけではなくて、そこに“人生”があるのがいい。みんなが色々な気持ちで生きている空気がしっかりと漂っていて、ここ最近の映画にはない日本映画を観た気がしました」。原田監督は「改めて小津安二郎監督の作品を集中して勉強して、これまで小津作品の“本当の良さ”に気づいてなかったな、と。小津さんという存在には憧れていましたが、この3年で画期的に印象が変わりました。その結果としてこの映画が出てきた」と振り返り、山内氏は「映画を観ている間は集中していたので小津作品のことは思い出すことはなかった」と語るも「主人公の作家と母の姿を観たときに小津作品のことが頭に浮かびました」という。大学で教鞭をとっている原田監督は「今の若い世代は小津監督や黒澤明監督を知らなくても、少しガイドをしてあげると、とてもいい感性をもっている。だからこそ、良い芸術をちゃんと伝えるのが僕らの世代の役割なのではないかと思うようになった」と言い、山内氏は「撮影所がなくなってしまったのが大きいですよね。かつては撮影所で映画だけではなく色々なことを先輩から学ぶことができた。映画の世界にとって撮影所がなくなったことが本当に悲しい」という。以前より原田監督は「この映画は若い人に観てもらいたいし、僕が小津さんへの愛を込めたこの映画を観てもらうことで、そのうちの何パーセントかの人が小津映画に興味をもってほしいんです。そうやって文化を継承していかないと新しいものは生まれない」と語っている。本作を公開中の劇場では、若い観客も多く足を運んでいるそうだが、彼らが本作をどのように観たのかも気になるところだ。『わが母の記』公開中
2012年05月02日第35回モントリオール世界映画祭で審査員特別グランプリに輝いた『わが母の記』の外国特派員協会主催記者会見が18日に都内で行なわれ、役所広司、樹木希林、原田眞人監督が登壇した。その他の写真文豪・井上靖の自伝的小説を映画化し、昭和の家族の姿を描き出した原田監督は本作について「小津安二郎監督や黒澤明監督へのオマージュがある」と語り、役所は「監督には、ふんだんの予算と時間の中で映画を撮っていただきたい。でもハリウッドからオファーがきたとしても、監督は『この予算で4本撮らしてくれ』と言うと思う」と、監督の手腕をたたえた。記者から「認知症のリサーチはどのように行なったのか?」と質問された樹木は、「私は大ざっぱな役者なのでリサーチはないんです。日本映画は貧しいんです。『マーガレット・サッチャー』のように、メイクアップアーティストがついて時間をかけてはいただけない。なので、自分で状況に合わせて若返ったり、老けたりしました」と回答し、集まった外国人記者から大きな拍手が起こった。さらに樹木は「アカデミー賞外国語映画賞のノミネートはあると思いますか?」と質問されると、義理の息子である本木雅弘が主演した『おくりびと』が第81回の同賞を受賞していることに触れ、「婿が受賞していますので、頭にはありません」と回答。対して役所は「僕は英語でスピーチできるように準備しています」とユーモアを交えて答えた。『わが母の記』4月28日(土)全国ロードショー
2012年04月19日