3歳児健診の目的は?印象的なAくん親子を例に…出典 : 歳児健診は、子どもと保護者の、身体・心の健康を総合的にチェックする健診です。その中では、発達障害疑いの子どものスクリーニングをすることもあります。ただスタッフは、決して子どもを「発達障害」と決め付けたい訳でも、保護者の皆さんの育児を批評したい訳でもありません。成長に凸凹が見られる子どもには成長しやすい環境を、育児に悩む保護者には皆で協力し合う環境を、提案し、皆が幸せになれる方法を一緒に考えていきたいのです。私はこれまで保健師、看護師として、沢山の子どもと保護者の支援に携わってきました。この記事では、発達障害疑いのAくん親子を例に、スタッフである保健師の目線から3歳児健診の裏側をご紹介します。保護者の皆さんにとって、少しでも参考になれば幸いです。スタッフにとっては当日の前から「健診」は始まっている出典 : 保健師にとって健診は、前日までに健診対象者全員の生まれてから今までの記録をチェックするところから始まります。記録には過去の新生児訪問・健診で保護者から直接得た、出生時の身長・体重、予防接種歴、3~4ヶ月健診、1歳半健診の情報が記録されています。「今度3歳児健診に来る予定のAくんは、生まれてから夜泣きがひどくて、3~4ヶ月の時にお母さんが5kgも痩せちゃってたのよね。1歳半の時は、言葉も出ていて、お母さんも笑顔だったわ。保育園には行かずに、3歳過ぎたら幼稚園に行く予定って言ってたけど、今は元気に子育てしてるかしら。」そんな風に、これまでの記録を振り返りながら、健診にやってくる親子の姿をイメージします。3歳児健診当日にお子さんの様子を見たときに、それがその子にとって順調な成長なのか、少し心配で様子見した方が良いのか、専門家の相談に繋げた方が良いのか…適切に見極めるためにも、あらかじめこれまでの成長の記録をチェックし、頭に入れておくことが大切なのです。そして3歳児健診当日!舞台裏のスタッフ達は…出典 : 健診には、小児科医、保健師、看護師、心理相談員、管理栄養士、歯科衛生士、保育士など(自治体により多少の差あり)が参加します。診前には、スタッフ全員で対象者の情報共有を行います。「Aくんは、生まれてから夜泣きがひどくて、○○○な子です。Bくんは、○○で、○○な子です。Cちゃんは、○○で、○○な子です。・・・」ようやく健診開始!健診で見ていることは…?出典 : 健診は、まずは保護者に対する問診から始まります。ここで、親子のニーズを把握し、必要があればアドバイスをします。生まれてから今までの大きな病気やケガ、睡眠や食事等といった生活のリズム、子どもの普段の状況、保護者の困っていること等を聞き、育児ストレスについて聞くこともあります。また、家で行った視聴覚検査の結果を確認します。子ども自身には、名前を聞いたり、ボタンで遊んでもらったり、丸を描いてもらったりして、その様子を観察します。問診は、保健師、看護師が行いますが、皆、小児保健の知識・経験があるので、誰がどの親子を担当するかはランダムに割り当てられることが多いです。もし保健師が問診をしていて、病気に関する悩みがあり、アドバイスは看護師の方がいいと思えば、その部分は看護師にアドバイスをもらうなど、皆、臨機応変に保護者のニーズに対応しています。さて、それではAくん親子との問診の様子を覗いてみましょう。保健師: Aくん、お名前教えてください。Aくん: Aです!(元気に名前を言える)あ!救急車!(他の子が持つトミカを見て走り出そうとする)Aくん母(以下Aママ): Aくん、ダメよ!あの救急車は、お友達のものよ!(走り出そうとするAくんを捕まえる)Aくん: イヤーーー(A母の手が緩むと、すぐに逃げて走り出そうとする)Aママ: はぁ(ため息)、いつもこうです。全然じっとしていられなくて(暗い表情)。保健師: そうなんですね。Aママ: この子、他の子と違うのかな。それか私の子育てがいけないのかしら……(涙を浮かべる)保健師: お母さん、頑張ってきたんですね。お母さんがAくんを大事に思っている気持ちは、Aくんにきっと伝わってると思いますよ。Aママ: そうでしょうか。保健師: 今まで沢山の子どもを見てきましたが、親の子どもへの愛は、必ず伝わっています。お母さんの愛も、Aくんに必ず伝わってますよ。誰か、子育てを手伝ってくれる人はいますか?Aママ: ありがとうございます(涙を流す)。夫は仕事で毎日夜遅くて、実家も遠方なので、ほとんど頼れません。どうやればAをちゃんと育てられるのか、分からなくて。保健師: そうなんですね。もし良ければ、後でゆっくり子育ての相談をお聞きすることも出来ますよ。Aママ: そんなことができるんですか。(悩みながら)お願いします。いろんな専門家が一堂に集まる機会出典 : 問診が終わったあとは、小児科医の健診、尿検査、歯科医の健診、管理栄養士の栄養相談を行います。疑問や悩みがあれば質問し、アドバイスを受けましょう。おそらく何千人という子どもを見てきただろう専門家のアドバイスを聞ける絶好の機会です。遠慮して聞かないなんてもったいないと思いませんか?先ほどのAくん親子の問診では、お母さんがずいぶん思いつめて悩まれていた様子。管理栄養士との栄養相談ではどのようなお話をするのでしょうか。管理栄養士: Aくんのご飯で困っていることはありますか?Aママ: 緑の野菜が嫌いで自分でよけてしまうので、刻んでカレーやハンバーグに混ぜています。刻み方が少し大きいと出してしまうので、かなり小さくしています。小さくしてしまえばよく食べてくれるので、そんなに困ってないです。管理栄養士: 頑張ってらっしゃるんですね(Aくんは敏感な子なのね、痩せ型だけど標準範囲内だし、食事の量と質は大丈夫だわ)。色や見た目での好き嫌いはこの年齢ではよくあることですけど、お母さんがそうやって工夫をされて食べることができているのは、素晴らしいと思いますよ。必要があれば個別相談も出典 : 健診では、身体の健康だけでなく、子どもと保護者の心の健康もサポートします。3歳児って、なかなか大人の言うことを聞きませんし、こだわりも強くてイヤイヤも多く、待つこと、じっとしていることが苦手です。どの子どものお母さんも悩み、一生懸命色んな声かけや方法で、しつけを行っています。Aくんのお母さんも同じように悩み、問診時に希望したため、心理相談員の個別相談を受けることにしました。心理相談員は、臨床心理士などが行っています(自治体により違いあり)。問診、栄養士相談を経て心理相談員の部屋にやってきたAくん親子。心理相談員は、ゆっくりと時間をとり、お母さんに普段のAくんとの生活や悩みを聞き、お母さん、傍らで遊ぶAくん、2人のやりとりの様子を観察し、今、お母さんが出来るAくんの育児アドバイスを行いました。心理相談員: Aくんの育児はいかがですか?Aママ: 毎日いっぱいいっぱいです。Aは優しい子なんですが、とにかくじっとしていられないんです。家ではおもちゃ箱を引っくり返したり、トミカを投げて遊んだりします。公園でも、割り込みをしたり、他の子を押しのけたりしてしまって。私は子どもの頃から大人しいタイプで、Aを産むまで子どもと縁がない生活だったので、Aみたいな元気な男の子の気持ちが分からないんです。どうしたらじっと遊べるようになるんでしょうか。心理相談員: そうなんですね。Aくんは、よく一緒に遊ぶお友達がいますか?Aママ: 私自身が社交的じゃないので、人に気を遣うのが苦手で、Aと2人で遊ぶことが多いです。幼稚園から通わせようかと思っていますが、まだ入園まで半年あるので、それまでは今の状態かな、と思っています。Aくん: (傍らで保育士と静かに遊んでいる)心理相談員: (Aくんがじっとして遊べないことが困っていると言っているが、ママの一番の困り事は「子育てを相談する人がいない」ことだな…)お母さん、ではまず今日から、Aくんと話をするとき、耳よりも目で見せるよう意識してみて下さい。例えば、割り込みをしてしまったら「割り込んじゃダメよ」と言うのではなく、割り込みをされたお友達が悲しんでいる姿を目で見せて「割り込みをしたらお友達が悲しいよ」と伝えるようにしてみて下さい。家でも外でも、言葉だけでなく、Aくんの目で視覚的に分かるよう意識してみて下さい。3歳児健診の目的は…Aくんには、ADHDの子どもの特性が見られましたが、発達障害は、1度の観察で分かるものではありません。Aくんはものすごく快活な子で、毎日の生活でエネルギーが発散できていないだけかもしれません。そして、そもそも私達は、診断することが目的ではありません。Aくんとお母さんにとって一番良い方法を、一緒に探していきたいと思っているのです。まずは、お母さんがAくんの子育てを一人で抱え込まないこと、それがスタートだと思いました。Aくんのお母さんは、心理相談員のアドバイスを活かして育児をしてみます、とおっしゃり、また3ヶ月後に個別相談のフォローアップを受ける予約をして帰宅されました。健診が終わっても保健師の仕事は終わらない!出典 : 健診後はスタッフ全員で、今日の健診の子どもや保護者、今後もフォローしたほうがいいと思われることに関して、情報共有をし、スタッフはそれぞれの専門性を生かして、意見を出し合います。Aくん親子のことも共有され、「まずは3ヵ月後、フォローアップの予約に来てくれるといいね」と皆が同意見でした。Aくんのお母さんが「言葉だけでない視覚的なしつけ」のアドバイスを活かせなくてもいい、まずは何よりも、一人で悩まないで欲しい、スタッフは皆、そう思っています。3歳児健診、怖がらずにこの機会を利用して出典 : 歳児健診は、皆さんが無料で平等に利用できる機会です。スタッフは、今までに、何千人という子ども達を見てきました。この健診をぜひ活用して、少しでも子育ての役に立てていただけたら、と思います。もし、健診日にスケジュールが合わない方は、別の日に変更することも可能です。お住まいの自治体にご連絡下さい。ぜひ、私達に気軽に悩みを相談して下さいね。
2017年06月28日TEACCHプログラムとは?出典 : 「TEACCHプログラム」は、米ノースカロライナ州で1972年以来行われているASD(自閉症スペクトラム障害)の当事者とその家族を対象とした生涯支援プログラムです。このプログラムは人生を通して行われるもので、「自閉症児の診断・評価」、「構造化を特徴とした療育プログラム」、「家族・支援者サポート」、「就労支援」など様々なサービス群から成立しています。自治体と大学が主体となり、研究機関・専門家・家族・本人・地域コミュニティが一体となってプログラムを運用。その理念、成果には注目が集まり、世界的にその枠組が広がっています。「TEACCH」は「Treatment and Education of Autistic and related Communication-handicapped CHildren」(自閉症及び、それに準ずるコミュニケーション課題を抱える子ども向けのケアと教育)の略で、米ノースカロライナ州で行われているプログラムには下記のような特徴があります。「自治体規模の介入」ノースカロライナ州政府の全面的なバックアップと全州規模での実施。「ゆりかごから墓場まで」幼児期から成人して地域で生活するまで、障害児の一生を地域で生活するための長期的体系的プログラムである。「自閉症児の文化」自閉症の人々の行動様式を文化の一つとして捉え理解しようとする。「親は共同療育者」専門家のセラピストの支援と同等以上に、親の療育への関与が期待される。「構造化された教育」予測不能な状態が苦手である特性を持つ自閉症児に対して、整理され、構造化された環境をつくる。TEACCHプログラムを言い換えると、ASD(自閉症スペクトラム)の当事者の生活の質(QOL)向上の為に、彼らの周囲の物理的環境、及びコミュニケーション環境を生涯にわたって設計し続けるプログラムであるといえます。参考:TEACCHプログラムによる障害児者の地域ケアに関する実践的研究TEACCHの価値観出典 : の人々が持つ「コミュニケーションの困難」「視覚優位」「こだわりの強さ」などの特徴のことを、「自閉症の文化」(Culture of Autism)と肯定的に表現します。自閉症のある人を特異な障害者として見るのではなく、「世界の捉え方が一般の人とは異なる」という態度で向き合います。無理に彼らを世間の常識に合わせるのではなく、周囲の人々がASDの人々の捉え方を理解し、許容し、その上で彼らの特性が社会に適応できるようにすることで、QOLを高めていこうと考えるのがTEACCHの基本的な理念です。TEACCHは、ASDの人々の人生を長期的かつ包括的に支援することで、彼らの自立とQOL向上を目指しています。TEACCHプログラムを実施しているノースカロライナ州立大学のウェブサイトには、TEACCHの目指すところを下記のように表現しています。「地域に根付いたサービス提供を実現すること」TEACCHのスタッフはASDの人々とその家族、コミュニティに科学的根拠に基づくサービスを提供するため、最新の方法論を常に学び続けている。「成人後のその先のニーズに応えること」ASDの成人の人々、家族、彼らの支援者のニーズに応えるためにTEACCHの臨床研究プログラムは日々発展を続けている。「生まれてからすぐのニーズに応えること」TEACCHは、ASDの幼児、その家族、支援者のニーズに応え、ASDの早期発見、介入を行うために臨床研究プログラムを発展させ続けている。「ASDの人々の労働力の質を担保すること」TEACCHは、増加しているASDのある労働者のニーズに応えるため、職業訓練プログラムを就業前の学生、及び現在の就業者に提供する。「継続すること。次の40年を見据える」「TEACCH」はノースカロライナ州、ファンドレイジング活動、研究費助成など、多様な収入源から成立しているプログラムである。以上のような目標からは、人生単位で継続的にASDの人々に関わる姿勢が感じられます。 University of North Carolina TEACCH Autism ProgramTEACCHの「構造化のアイデア」その4つの考え方出典 : の傾向がある子どもは、自分の周囲で「今、何が起きているか」「この後、何が起きるか」「自分は何をすればいいか」が明確に整理されていない場合、状況理解が難しくなり混乱してしまいます。そのため、「構造化」という手法を用いて環境を整理することで、状況理解を容易にします。環境が整理されると、心理的にも安定し、活動や学習へ参加することができるようになります。例えば、活動別に場所を決める。「休む場所」「一人で勉強する場所」など、活動と場所を結びつけることも有効な手段の一つです。これを「物理的構造化」と言います。また、コミュニケーションにおいては、特に「話しかける」などの音声コミュニケーションよりも、イラストや写真で提示する視覚的なコミュニケーションの手法に強みがあります。そのため、指示や、意思表示をイラストや写真を使って行うようにします。これを「視覚的構造化」と言います。これらの、「構造化」の詳細についてさらに見ていきましょう。彼らの周囲を物理的に整理することで不安を軽減し、これから起きることを予測可能にします。この為に、「物理的構造化(Physical Organization)」という手法をとり、環境の意味、構造を整理します。物理的構造化の手法は、大きく以下の2つです。・エリアと期待される行動を対応させる(勉強する場所、遊ぶ場所、落ち着く場所)・エリアを明確な仕切りで分ける(ついたて、棚、囲い、カーペット)また、活動エリアは大きく4種類に分けられます。1.ワークエリア(作業、勉強をする場所)2.プレイエリア(遊ぶ、落ち着くための場所)3.トランジションエリア(中継地、その日あるいはこの後何をすればいいかなど、個別スケジュールが確認できる場所)4.その他、カームダウンエリア(感情的になったとき、冷静になるための場所)などASDの子どもは、時間の概念を理解することが難しく、自分から先のことを見通すこと、先を想像することに困難があり、「Here and Now」(いま、ここ)の世界に生きています。そのため、前もって何が起こるか、何をすればいいかがわからないと不安やパニックに陥りがちです。不安を回避し、安心して学習や作業に取り組むために、「スケジュールを決める」ことが有効です。また、ASDの子どもは、視覚的な理解の方が得意な場合が多いため、写真やイラストを用いてスケジュールを提示すると理解が容易になります。例えば、イラスト入りの時間割のカードを作り、順番にボードに貼るとこの後するべきことが分かります。終わったら外すというルールにしておくと、先に何が待っているのか、何が終わっているのかがわかり安心して行動ができるようになります。今の状況を理解したり、先を見通すことに困難があるASDの子どもでも、「一人で自立して」一連の学習や作業などの活動ができるようにするための方策を、「ワークシステム」といいます。ワークシステムでは下記のような事柄を設定し、わかりやすく伝わるように環境を整えます。①どんな活動(学習や作業)をするのか②どのくらいの時間、あるいは量の作業や活動をするのか③その課題や活動はいつ終わるのか④終わった後は何をするのか、何をしてもよいのか佐々木正美, 『自閉症児のためのTEACCHハンドブック (ヒューマンケアブックス) 』, 2008年, 学研プラスの人々が、教室や作業所で不適応行動(かんしゃく、暴れるなど)を起こす場合、上記のようなことが整理されていないために、困惑や混乱をしている場合があります。逆に先の見通しが立ち、何を期待されているか、できるのかがわかるだけで安心を与えることができます。例えば学習机の左側に棚を置き、勉強の種類ごとに書類入れを作り、やる順番に宿題のプリントを入れます。子どもは上から順番に書類入れを出し、中に入っている宿題をやったら机の右側の「終わったものを入れる箱」に入れていきます。左側の最後の書類入れには、「ゲームをする」など宿題が終わったらやっていいことを書いたものを入れておきます。このように左右に動かすというシステムのほか、色や数字、マーク、文字を使うなど子どもの理解に応じた環境調整をしていきます。発語によるコミュニケーションに困難を抱えているASDの子どもにとっては、「視覚的構造化」が有効です。視覚的構造化とは、会話によるコミュニケーションではなく、「実物」「絵、イラスト」「写真」、場合によっては「文字」を通してコミュニケーションを整理する方法です。Upload By 発達障害のキホンえこみゅUpload By 発達障害のキホンTEACCHのコミュニティ出典 : ノースカロライナ州のTEACCHプログラムでは州の支援のもと、大学が中心となり、当事者、家族、支援者の他、様々な関係者が共同でASDの人々の自立に取り組んでいます。「親は共同療育者」と言うように、TEACCHでは家族への支援も充実しています。家族への教育を行うと同時に、関係機関(教育機関、就職先企業)へのスタッフによるコンサルティングも行っています。学校教育が終了した後も、人生を通しての自立とQOL向上のために、居住、就労支援を実施するなど、自治体、家族、支援者が長くお互いを助け合うコミュニティとして成立しています。このように包括的に人々を巻き込んでいく仕組みがTEACCHプログラムの特徴の一つです。 Support and Education Consultation and TrainingTEACCHとABA(応用行動分析)の違いや関係性は?出典 : 同じくASDのある人への支援の方法として注目される方法として、応用行動分析(ABA)というものがあります。ABAは、人間の行動を個人と環境の相互作用の枠組みの中で分析し、実社会の諸問題の解決に応用していく理論と実践の体系です。TEACCHはASDの人々の自立とQOL向上を目指す包括的な「支援の枠組み」であるため、厳密には比較できるものではありません。TEACCHのプログラムの中にも行動分析の強化の原理や課題分析、スモールステップなどのさまざまな技法やテクニックが取り入れられています。また、ABAをベースにした支援技法を採用している療育施設やサービスで、TEACCHの「構造化」の考え方を組み合わせるなど、必ずしも相反する手法ではありません。TEACCHプログラム自体は、科学的に根拠のある手法ならば広く取り入れる姿勢をとっています。まとめ出典 : はASD(自閉症スペクトラム障害)の人々をその人の一生という長期にわたって、そして家族、支援者、地域を巻き込みながら当事者を包括的に支援する枠組みです。その目的は、ASDの人々の「自立とQOL(生活の質)向上」。TEACCHのプログラムから学ぶことができるのは、指導の方法に留まらず、周囲がASDとその人自身を理解すること、そして当事者や家族だけでなく、教育関係者、就業先なども広く一体となって生活に関与することの重要性ではないでしょうか。参考文献:自閉症児のためのTEACCHハンドブック (ヒューマンケアブックス)ノースカロライナ州TEACCHプログラム公式サイト(英語) to TEACCH(Youtube/英語)
2017年06月28日フリースタイルダンション化する、息子との口喧嘩!Upload By かなしろにゃんこ。ネットなどの記事を読んで言葉の使い方を少し学びだした息子リュウ太は中学生になるとメキメキ早口でまくし立てる話し方を身に着けていきました。親の失敗を見つけてはバカにしはじめたり、叱られるときは必ず逆ギレしてつっかかってきます。「母が傷つくトドメ」のことばのつもりが…Upload By かなしろにゃんこ。ある日の口喧嘩で負けそうになった息子は私が傷つくであろう言葉を連射してきました。「キモイ」「マジ死ね」「変態S野郎」など散々な言葉です。アメリカドラマの影響や海外のギャングゲームの影響で禁止用語に近い汚い言葉を背伸びしながら使うことが楽しいようでした。思春期のそういう気持ちは私もよく分かるのですが、親に対して使うのはNGです。どうやったら親に対してヒドイ言葉を使わなくなるかな~と考えました。嫌がるとまた言ってくる気がしたので、「そうです!お母さんは変態で頭のオカシイ大人だって自分で分かっているから、ちっとも悲しくない」と伝えてみました。息子は「え~……」と意外な顔をして黙ってしまったのでニヤリ!うまくいったかもしれないと思いました。「さり気なく褒めて、空気を変える。それが勝因ね」(ヒーローインタビュー)Upload By かなしろにゃんこ。「お母さんはクソババァだし、性格悪いし、それが何か?」と開き直ってやりました。自分を卑下しすぎですが、まぁ…本当のことです(笑)。それに、少しくらい変人扱いされていたほうが嬉しいこともありました、漫画家という職業なので常にオモシロイことを体験したり考えたりしたい自分がいて「普通の人」と思われることのほうがツライのです。私が息子に「キモイ」「マジ死ね」「変態S野郎」と言われても傷つかないのはそういう理由だと話すと言わなくなりました。それとケンカの最中に「しゃべるのうまくなったね!」と褒めると調子が狂うのか、怒りで声を荒げていたのに大人しくなっていくのでした。そしてあっという間にケンカは終了していきます。溜まった負のエネルギーをぶつけてスッキリしたのかもしれませんが、イヤなケンカを早く終わらせたいと息子も思っているのだと感じます。こんな感じで現在も口論になったら「どこか褒めて空気を変える」方法で、ケンカをさっさと終わらせるようにしています。
2017年06月27日我が家も「ラン活」開始!でも少し不安なことも…出典 : 「毎年前倒しになっている」と噂のランドセル商戦。気に入ったデザインのものは早めにゲットしなければあっという間に売り切れてしまうのだそうです。昨年の夏には我が家も例に漏れず、子供のランドセルを選んで購入する、通称「ラン活」をスタート!実はこれでも遅いそうなのです。正直私の中では「行く学校がまだ決まってないのに、ランドセルを買ってしまっていいのだろうか…?」となかなか踏み出せずにいたのでした。当時、自閉症スペクトラム・ADHD・知的障害のある長男の、就学相談真っ只中。私の壮大な「ブレ」によって希望進路を「支援級」→「通常級」→「やっぱり支援級」とウロウロしていた頃でもありました。特別支援支援学級の中にはランドセル必須でない学級もあるようでしたし、もし特別支援学校に進学する場合、長男の学区ではランドセルではなくリュックになります。張り切ってランドセルを買っても無駄になるのでは…そんなことを思いながらも、「小学1年生の象徴」とも言えるピカピカのランドセルを背負う姿を見たい気持ちで、心をゆさぶられていました。まんざらでもない表情で試着する長男。そんな顔を見せられたら…!!出典 : ある日、義母と一緒に大型スーパーのランドセル売り場へ行くことになりました。スーパーに着くと、長男、主人、義母の3人からなるランドセル試着チームが結成されます。私はというと、試着を待っていられない次男と一緒にスーパー内をウロウロ。そんな折に試着チームからは、長男がランドセルを背負う姿の写真が送られてきます。絶対に背負うのを嫌がると思ったのに、まんざらでもない表情の長男。後から聞いた話では、長男の好きな「黄色」のデザインが入ったランドセルだけ気に入り、唯一それだけ試着したそうです。「このランドセルなら背負うから買ってあげようか」「でも、もしかしたらランドセルの要らない学校に行くかもしれないし…」「支援学校だとランドセル必要ないけど、支援学校には入学しないでしょ。支援級か普通級ならランドセルでいいんだよね。」そんな家族会議を経て、最終的にそのランドセルを買ってもらうことになりました。そして入学!ランドセルの行方は・・・出典 : そして、結論から申し上げますとそのランドセルは入学式の写真撮影時、たった1回しか使っておりません長男は当時のおおかたの予想を覆し、ランドセルを使う「通常学級」でも「特別支援学級」でもなく、リュックで登校する「特別支援学校」に入学したのです。長男の通う特別支援学校では、扱いやすく、すべての荷物が中に入る、45L程度の登山用リュックを購入することになっています。45Lって…背負えるのかしら?と不安になりましたが、体の小さい1年生たちも一生懸命自分で背負って登校しているようです。教科書やノートではなく着替えや給食セットが主な荷物ですので、リュック登校はランドセルよりずっと理にかなっているわけです。が、しかし、我が家の片隅でまあまあな存在感を放つランドセル…。買って頂いたものでもあるし、それなりに愛着も湧いてしまったので誰かにお譲りする気持ちにもなれず…。次男の入学式で使うまでは箱に入れたままになりそうです。入学準備はどうぞ急がず焦らず確実に…。出典 : というわけで、我が家のラン活はちょっと残念な結末を迎えてしましました。とはいえ我が家の場合、支援学校への進学が決まったのが新学期ギリギリだったので仕方ないかな、と思っています。今小学校の進路に迷われている方はどうぞ我が家と同じルートを辿られませんように、ランドセルに限らず、進学の可能性がある学校指定の持ち物は早めにチェックされることをおすすめします。そして、購入はできるだけ「進学先が決まってから」にされると安心ですよ!と、身を呈してお伝えしたいと思います(笑)
2017年06月26日楽しいはずの食卓が…息子の偏食で長男はADHDを伴うアスペルガー症候群です。私を悩ませた息子の特性のひとつに、偏食があります。子どもの好き嫌いは少なからずあるものですが、味覚が過敏な発達障害児の偏食は一筋縄では行きません。息子の偏食の兆しは離乳食が始まった直後から。食べるのは某メーカーの瓶詰めのみで、私が時間をかけて作った離乳食は食べないというこだわりがありました。瓶詰めだと食欲は旺盛で二瓶くらいぺろりと食べてしまうのに、私の作ったものだと食べるのは軟飯くらい。離乳期間が終わり、レトルトに頼らない食事になると食欲は激減。息子の食へのこだわりはますますはっきりしてきて、アンパンマンのようにまるまる太っていた息子はみるみるやせていきました。出典 : 食べられるものは、米、蕎麦、根菜、かぼちゃ、青魚、卵、納豆や豆腐などの大豆の加工品……以上です。どんなに工夫して調理してもそれ以外のものは食べません。さらに、環境が変わると普段食べているものも食べられなくなるし、調理法が変わっても食べられません。学校給食では牛乳しか飲まない。実家を含め、よそのお宅でご飯が食べられない。外食は蕎麦屋しか行けない。しかも生蕎麦で茹でたてでないと食べません。空腹に耐えられなくなると、食事を採る努力はせずに角砂糖をなめてカロリーを補給する。さらにダラダラと長い食事も私にとっては悩みの種で、楽しいはずの食卓は親子でイライラして辛い時間でした。子供の偏食が不安で仕方がない出典 : 子どもの偏食を私が必要以上に大きな悩みにしてしまったのは、「健康に影響が出るのではないか?」「このままだと一生食べられないのではないか?」という、ふたつの不安があったからでした。だから私は一生懸命工夫して、なんとか食べさせようと躍起になりますが、結果が全く伴わなかったためイライラを増幅させて、息子にとっても食事をさらに辛いものにしてしまったのだと思います。息子には食べられないと分かっていても、食べられない食材を使い、食べられないものを作り、食べてくれないとイライラする。「食べなさい」「イヤだ」の押し問答の挙句、私はひとつも手をつけない息子の食事を取り上げて、シンクにバーンと捨てて、自己嫌悪するなんてこともありました。偏食は気にしなくて良い???そんな私の偏食に対する考えが変わったのは、児童精神科医の佐々木正美先生の言葉です。「子どもの健康に影響が出ていないのなら、偏食は気にしなくていい。無理強いしないで食べられるものを作ってあげなさい。無理強いしなければそのうち食べられるようになる。」と先生の著書にありました。先生のお子さんも偏食があったこと、給食を無理に食べさせないで欲しいと学校にお願いに言ったこと、佐々木先生の家ではビュッフェスタイルで自分で食べたいものを取り分けていたこと、成長と共に偏食は自然に改善したこと……本に書かれていた先生の実体験にずいぶん励まされました。早速我が家でもトライ!出典 : それからの私は息子の偏食を治そうとやっきになることはやめ、息子が食べられる食材で食べられるメニューを考えるようになりました。こうして向き合ってみると、食べられる食材は少ないですが、意外とバランスが取れた「偏食」だと気づきました。佐々木先生の家のビュッフェスタイルをアレンジし、お皿に全てのおかずを少量ずつ盛り、全部食べることが出来たら、魚や豆など好きなものをお代わりできるルールとしたのです。その結果、限られた食材なのでメニューは工夫してもマンネリになってはしまいますが、イライラは激減しました。給食も食べることを無理強いせず、帰宅後におにぎりなどの軽食を用意し対応しました。また実家に帰るときは今も息子が食べられるものを作って持っていくようにしています。外食も「蕎麦屋しか行けない」と考えず、「蕎麦屋だけでも行けるところがある」と考えるようになりました。息子の偏食に変化が…出典 : 息子に変化が現れたのは小学校3年生の時。それまで学校給食は仕出し弁当だったのですが、学校に給食室が出来て学校調理に変わり、温かい給食が提供されるようになりました。そして学校での周囲の友達の「美味しい」という反応が後押ししたのか、自然といろんな物を口にするようになったのです。5年生のとき、から揚げをしのぐ給食人気メニューの「洋風かき玉汁」を家でも食べたいと言われ、どんな食材が入っているのか?どんな味付けなのか?と息子に聞き取りをしながら家で作ったことは今でも忘れられません。息子は「学校はもう少し野菜が少ないよ」と言いつつ完食してくれました。「洋風かき玉汁」は今も我が家の定番です。味覚だって、その子のペースでゆっくりと発達していく息子の偏食は、人並み・・・とまでは行きませんが、食事に苦労しない程度には徐々に改善していきました。今では、ポトフなんてゴロゴロ野菜が入ったスープを喜ぶほどの変貌ぶりです。外食の際の選択肢も広がりました。いろんな物をゆっくりと食べられるようになっていく息子の姿を見て、思ったことがあります。それは、「発達障害児は味覚の発達もゆっくりなのかもしれない」ということです。佐々木先生の言葉は、「ゆっくり、でもちゃんと発達はしていくのだから待ってあげなさい」というメッセージが含まれていたのかもしれないと思います。それに食事は、ただカロリーや栄養素を補給すれば良いわけではありませんよね?体だけではなく心にも栄養を補給する大切な時間だと思います。それは、子どもだけでなく親にとっても同じなのかもしれません。子供の偏食を治そうとしないで、子供が食べられる食材で食べられるメニューを家族で楽しみながら、味覚の発達を待ってみませんか?笑顔のある、穏やかな食卓で。
2017年06月26日「友達と一緒にいても、ポツンと一人でいるような気がしてた」出典 : アスペルガー症候群と診断されている9歳の娘は、今は小学校に通っていません。ある日「もう学校へは行かない」と宣言してからはホームスクールで毎日を過ごしています。学校へ通っていた頃の話は今でもよくするのですが、ある時こんなことを話してくれました。「みんなで机を並べてお喋りしていても、私だけがいつもみんなから離れた場所にいるような気がしてた」「私が話すことなんて、誰も聞いていないような気がして怖かった」「友達と一緒にいても、ポツンと一人でいるような気がしてずっと孤独だった」娘と同じような特性を持つ私にも、この気持ちはとてもよくわかります。一般的に見れば、娘の学校生活は充実していたように思います。お友だちが多く、先生との関係も良好。通学路の見守り隊の方々にも可愛がられていて、今でも外出時に顔を合わせると「最近見かけなくて心配していたよ。元気だった?」と声をかけてもらったりしています。他人と関われず、1人で過ごしていたわけではないのです。むしろ1人でいる時間の方が少なく、担任の先生から見れば「特に問題なし」と分類されるタイプだった娘。しかし、そんな娘がなぜそこまで孤独感を感じていたのでしょうか。同じ「アスペルガー症候群」でも女性と男性は違う!?出典 : 一般的にアスペルガー症候群の特徴として挙げられるものは、男性のアスペルガー症候群の方にぴたりと当てはまるものが多いのだそうです。もちろん個人差はありますが、女性の方が社交性を身につける能力が高い傾向にあるため周囲に溶け込みやすく、こだわりの強さやコミュニケーションに関わる問題が露呈することが少ないためだといわれています。では、ある程度の社会性を身につけた女性のアスペルガー症候群の方は何の困り感もなく過ごせるのかというと、それはまた別問題。原因不明の体調不良や、女性同士の他愛ないお喋り(いわゆる「ガールズトーク」)について行けず人間関係に悩んでしまうことが多いそうです。娘が感じていた「孤独感」は、この「ガールズトークの苦手さ」から来ているのだと思います。本を読むのが大好きな娘は、お友だちと登場人物やストーリーについてあれこれお話ししたいのですが、まず読んでいる本が違うのです。学校の女子の間で流行っているのは恋愛小説や友情物語。娘が好きな『十五少年漂流記』や『ぼくらの七日間戦争』、探偵ものや推理小説を読んでいるのは上級生の男の子ばかり。娘もみんなに合わせて『一期一会』や『1%』を図書館で借りて目を通してみましたが、あまり興味を持つことができないようでした。なので、学校でその話題になると「おもしろいよね」「すごかったよね」と適当に相槌を打って過ごしていたようです。また、みんなが夢中になっているアイドルは好きになることはできず、内心ではつまらないなと思っていても、にこにこ笑って一緒に盛り上がったふりをすることに疲れていたのだろうと思います。上手にやってるように見えても、心の中は...出典 : お友だちに囲まれてお喋りをしている姿を見ると、保護者や先生方は「楽しく過ごせているな」と感じがちです。私も参観日にそんな娘の姿を遠くから見て「お友だちとうまくやっているんだな」と安心していました。しかし、自分が本当に好きなことは話せず、興味の持てない話題にその場しのぎで対応をしている時間は、娘にとっては苦痛な時間だったのです。そんな休み時間に疲れ果てたとき、娘はそっと校庭に出て、ジャングルジムの頂上から一人でプールを眺めていたそうです。誰もいないその場所で、安堵のため息をつきながら季節の移り変わりを感じている時が、唯一自分でいられる時間だったそうです。娘が興味を持つものや、それについて一生懸命調べて得た知識を分かち合える相手は、今の段階では同じアスペルガー症候群のお友だちか大人しかいませんが、今はそれでいいと思っています。同学年の集団の中で揉まれることももちろん大切だとは思いますが、自分を押し殺さず、興味のある分野で共感し合える相手がいる環境を見つけるのも、アスペルガー症候群を抱える子どもたちにとってはとても大切なことだと思います。娘の場合は、いろんな大人と知り合い、興味のある分野のお話しを聞いたり情報を共有したりすることが、“娘らしく生きる”ということに繋がっているのだと思います。絶対的な安心感の中で育ってほしい。私の願い。出典 : さて、娘と同じような特性を持っていた私が子供だった頃は、学校に行くのが当たり前の時代でしたので、私は何の疑問も持たずに学校に通っていました。しかし、自分を理解してくれる人は1人もいない孤独感と、自分が周囲の友だちと同じように感じられない焦燥感は常に付きまとい、私は自分を出来損ないの人間だと思って生きてきました。友達はたくさんいましたし、運動部にも入っていましたので、集団生活になじめていないわけでもなかったのですが、自分を押し殺して他人に合わせて過ごすたびに「ここは自分の本当の居場所ではない」と感じていたのです。そうして、“こんな自分を必要としてくれる人はいない”と思って生きていましたので、誰かに必要とされると、それが同性であっても異性であっても「ずっと必要とされたい」「失望されたくない」という思いから、相手の嫌な部分には目をつむり、“自分さえ我慢すれば必要としてもらえる”という歪んだ思考に陥って、精神的にボロボロになることも少なくありませんでした。でも今は、子どもを産み育てる中で「この子たちから必要とされている」という絶対的な安心感を感じ、ようやくありのままの自分で生きられるようになりました。できれば、自分の子どもたちにも、そして同じように発達障害を抱えるお子さまたちにも、「自分を絶対的に受け入れてくれている人がいる」という安心感の中で育ってもらいたい。そうすれば、いろいろな問題に直面しても自分を卑下せず、工夫しながら前に進む力を持つことができるのではないかと思うのです。そんな風に願いながら、よく子どもたちに「ママのところに生まれて来てくれてありがとう」「ここにいてくれるだけで幸せだよ」「大好き」と声をかけます。「家族なんだからそんなことをわざわざ言わなくても伝わるでしょ?」と言われることもありますが、環境から学ぶことが苦手な子どもたちですから、なるべくたくさん伝えた方がいいのです。普段から言い慣れていないとちょっと恥ずかしいかも知れませんが、まずはメモ程度のメッセージからでもいいと思います。お子さまたちに「君は大切な存在なんだよ」ということをご自身の言葉で伝えてみませんか。子どもたちが困りごとに立ち向かう大きなパワーに繋がるかも知れませんよ。
2017年06月25日とにかく朝から晩まで元気なんですADHDの長男はとっても元気。Upload By ラム*カナUpload By ラム*カナUpload By ラム*カナと、思っていたけど…Upload By ラム*カナなんと、寝ている間も多動だった件…!Upload By ラム*カナ
2017年06月24日子どもの癇癪(かんしゃく)とは?出典 : 癇癪(かんしゃく)とは、声を荒げて泣いたり、激しく奇声を発したりする状態を指します。怒りや不安などの感情を持つこと自体は誰にでも起こる自然な現象ですが、気持ちのコントロールがうまくできないときに癇癪は起こります。癇癪を起こした子どもには、・床にひっくり返って泣きわめく・物を投げたり、叩いたりする・周りの人を殴ったり蹴ったりするというような状態がよく見られます。それまでは問題なく穏やかに過ごしていた子どもが突発的に癇癪を起こすこともあります。また過度な場合だと癇癪を起こしているときに、自制できない衝動的な行為として自分を傷つけてしまうこと(自傷行動)もあります。癇癪は、子どもにとっての何らかの不都合を取り除く機能をもっています。例えば、おもちゃを取り上げられてしまって癇癪を起している子どもの状況を考えてみましょう。おもちゃを取り上げられた子どもにとっては「おもちゃが自分の手元からなくなったこと」が不都合なことです。そのおもちゃを取られたという状況をなくすために、手段として癇癪を起こすという行動の流れになります。ですので子どもの癇癪をただ「怒っている」「泣き叫んでいる」という単なる一つの行動ではなく、「不都合な現実(原因)」→「不都合を取り除く方法(手段)」→「目的の達成」というグループ化された行動のまとまりとして捉えていくことが大切です。上の例でいうとおもちゃを自分の手元に取り戻すことが「目的の達成」です。もうひとつ大切な点は、癇癪を起こす子ども自身も怒りの爆発を抑えられず困っている場合があるということです。泣き叫ぶ子どもを見ると「どうして早く泣き止まないの?」とイライラすることもあるかもしれませんが、癇癪がひとたび始まると本人も感情を抑えようとしても抑えられないのです。詳しいことはあとで述べますが、これは子どもの癇癪を理解するために重要な、もうひとつのポイントとなります。癇癪は赤ちゃんから幼児期、児童期にも見られ、思春期や大人になっても続くこともあります。発達段階やその場の状況によって原因は異なるものの、癇癪が起きているときには、「何か不都合を取り除こうとしている」そして「困っているよとサインを発している」という2つの点を思い出してみてください。子どもはなぜ癇癪を起こしてしまうの?出典 : その場の状況や子どもの気質によって、癇癪を起こす原因はさまざまです。癇癪を起こす子どもにはどのような背景があり、癇癪がどのような目的を達成するための役割を果たしているのかを考えていきます。子どもが生まれてからしばらくの間は、保護者がする通りにご飯を食べたり、服を着替えたりします。ですが、1歳頃になると、保護者のしたいことと自分のしたいことが違う場合があることをぼんやりとわかり始めるようになります。自我が芽生えるのです。この頃から、保護者の行為に対して拒否的な反応を示すようになっていきます。癇癪を起してしまうのは、どうしても不都合で回避したい出来事があるようなときでしょう。これらの反応は、自分が保護者とは別の意図をもった人間であるということに、子どもが次第に気付いてきたという成長のあらわれです。これはだいたい1歳頃から始まるとされており、2・3歳になると言葉も加わって「いやっ!」といいながら自分の意見を主張します。これがイヤイヤ期といわれる時期です。周囲の人と言葉でコミュニケーションができる子どもであれば、苦痛や拒否、要求などを適切に表現して伝え、助けを求めることができるでしょう。しかし、言葉をまだ覚えていない乳幼児期の子どもの場合には、泣き叫んだり、暴れたりするなどの行動によってしか、自らの気持ちを伝える手段がありません。癇癪を起こすときには、注目、要求、拒否の3つの場合があります。【注目】注目を引きたい、かまってほしい【要求】物が欲しい、活動を行いたい【拒否】活動をやめたい、ある場所を避けたい等、嫌だという気持ちを伝えたいつまり過去に、癇癪を起こすことによって結果的に要求を叶えたり、嫌なことしなくて済んだりしたといった経験があった場合には、コミュニケーションの手段として癇癪が習慣化してしまっていることが考えられます。例えば、癇癪を起こすと母親が駆けつけて抱きしめてくれた、癇癪を起こしておもちゃを貸してもらったなど、親にとっては癇癪をやめさせようとしてとった行動が、子どもにとっては「癇癪を起していいことがあった」というご褒美になっていることもあるのです。癇癪はそれぞれの子どもの状況において別々の原因がありますが、こうした経験が重なることで、かまってほしいときに行うコミュニケーション行動として「泣き叫ぶ」「暴れる」ことが学習され、定着してしまっている可能性があります。癇癪と発達障害って関連はあるの?出典 : たびたび癇癪が起こるからといって発達障害があるというわけではありません。ですが発達障害のある子どもに強く見られる傾向が癇癪が起こるきっかけと絡んでいる場合があります。◆気持ちのコントロールが難しい成長するにつれて人は自分のストレスを減らすために工夫を行います。例えば、不快になりそうな状況そのものを避けたり、状況を変えるように働きかけたり、気晴らしをしたり、考え方を換えたり、「この悪いことには何か特別な意味があるに違いない」と状況の意味づけを行ったりです。このようにストレスや興奮を減らすことを専門用語で「自己調整」といいます。発達障害のある子どもたちは、この自己調整を行うことが難しい傾向があります。このような行動の工夫を行うことが苦手なので、不快な状況をそのまま経験することになり、ストレスが蓄積されていきます。最後には自分の気持ちをコントロールすることができずに不満や怒りが爆発して癇癪を起こすことがあります。◆他者と自分の意図をすり合わせるのが苦手である私たちは、自分の思いと相手の思いの両方を考えながら、時には譲ったり、自分の願いを優先させるために交渉したりして、他人との関わりの中で生きていきます。発達障害のある子どもたちは、他者の思いと自分の思いを調節することが難しい傾向があります。自分と他者の思いを調整するためには、まず相手の気持ちを把握した上で、「これぐらいなら譲れる(または要求できる)」という2つのステップが必要です。自閉症スペクトラム障害といわれる発達障害のある子供の場合、まず最初に必要な相手の気持ちや意図を理解するというステップを通過することが難しく、そのために自分と相手の意図を調節するための材料を持ち合わせていない状態に陥りやすいのです。他者の思いが見えないままに、自分の思いのみで物事が進行するときに、相手から「これをしてはだめ」と行動の抑止が入ると、それが「自分のしたいことを邪魔するものだ」として不快な気持ちが起きます。また、ADHD(注意欠如・多動性障害)といわれる発達障害の場合は、「やりたい」という気持ちを抑えるのが難しいために、相手の気持ちが分かったとしても、「これくらいなら」と程度を見極めてさじ加減をはかることができません。気持ちを譲ることができないことと、感情がすぐに表面化することで、爆発的に怒ってしまうことがあります。◆言葉に遅れがある発話が困難であったり、身振りや手振りでうまく伝えるのが苦手であることで、その伝わらないもどかしさや要求を伝えるための手段となり、癇癪を起こしやすくなります。発達障害のある子どもは、全体的に言葉の発達のスピードがゆっくりな傾向があります。発話が困難であったり、身振りや手振りでうまく伝えるのが苦手であることで、その伝わらないもどかしさや要求を伝えるための手段として、癇癪を起こしやすくなるのです。癇癪を起こさないために普段から気を付けたいこと出典 : いったん始まってしまうと、癇癪を鎮めるのは難しいので、普段の生活から子どもに十分配慮をし、癇癪が起きないように回避することが重要です。自我の芽生えと共に、子どもは自分の意思をもって、自分でやりたい!という気持ちを持ち始めていきます。自分が主人公でありたいという思いを認めてあげることが大切です。あまりに幾度となくやりたい気持ちを発散する機会を奪ってしまうと、子どもは泣いたり癇癪を頻繁に起こすようになるばかりか、やがて周りの環境にはたらきかけたいという気持ち(やる気)がなくなってしまい、発達が遅れることもありうるので注意が必要です。気持ちの切り替えを行うことは子どもにとっては難しいことです。いきなり遊びを中断されたりすることは子どもにとって大変ストレスなことなので、癇癪を起こす要因の一つとなります。次の行動に移るためには、気持ちの準備をする時間が必要です。「●●したら、ご飯にしようね」など、次の行動が予測できるような声掛けを行うことで、子どもは行動を切り替えるための心の準備をすることができます。スマートフォンやゲーム、テレビなどの利用時間を制限したい場合には、タイマーなどを使用して終わりの時間を視覚化するのもおすすめです。「今、自分はこんな気持ちだ」ということが周囲に知ってもらうだけでも、気持ちが楽になっていくこともあります。言葉で気持ちを伝えるのが難しい場合、絵カードやコミュニケーション支援アプリを使って視覚的に気持ちを伝える方法を教えるとよいでしょう。ここでは、ツールの例をひとつご紹介します。癇癪は徐々にいらだちが募り、爆発を起こすというパターンが多くなります。ですので、爆発を起こしてしまう前のイライラしているという状態を視覚的に示すカードを用意します。「落ち着いている」「少しイライラしている」「とてもイライラしている」「我慢できない」などとカードに感情を表す絵を描いて子どもの目に見える場所に置いておきます。簡単なことですが「困ったらどうしたらいいか」を教えてあげることも、子どもが癇癪を起さないためのひとつの方法です。というのも子どもの場合には、ネガティブな感情をもったときにそれをどのように処理したり扱ったりしたらよいか分からないことがあります。例えば、「どうしたらいいかわからないときには『困った』って言うんだよ」などと、困ったときに口に出すべき具体的なセリフを教えてあげることで、「困ったときには人に頼ってもいいんだ」という安心感が生まれます。Upload By 発達障害のキホン言葉を理解し、話すことができるくらいの年齢の子どもに対して有効な方法です。怒りの真っただ中にいるときには大人でさえ、冷静さを取り戻すのは大変難しいものです、子どもならばなおさらです。このようなコントロールの難しい心理状態でも、あらかじめ対処方法について大人と子どもが一緒に考えることで備えることができます。普段穏やかな状態のときに「怒っちゃったときにはどうするのがいいかな?」と子どもと大人で話し合って、ルール化するのです。例えば、以下のような方法が考えられます。子どもによって、落ち着くことの出来る方法はさまざまなので子どもに合わせた方法を選びましょう。・子どもが好きな匂い袋を嗅ぐ・つぶやくと落ち着く言葉を覚える(魔法のことば)・新聞紙を破る・(家庭/園/学校などの場合)特定の落ち着く場所を決め、不安になったときに行くようにする・布団や毛布にくるまるなどまた以下のコラムでは、「景色を見ながら、そこにあるものを読み上げ」て、自らの怒りを抑えることを子ども自身がが編み出したエピソードが掲載されています。このように対処方法をルール化することで、怒りの感情から抜け出すための「いつもの方法」をもつことができ、癇癪が起こったときに子どもが自分で冷静さを取り戻すことも可能となります。子どもが癇癪を起こしてしまった!対処方法は?出典 : 癇癪が起きるタイミングは、予測できるものばかりではありません。子どもが癇癪を起こした時にどのように接するべきか前もって知っておくことで、焦らずに対応しやすくなります。癇癪が起きた時は、まずは子どもが怪我をしないように安全を確保します。頭を床や壁にぶつけるなどの癇癪の場合には、クッションや枕を子どもと物の間に挟んで怪我を防ぎましょう。もっとも避けたいのは子どもが怒り狂っている様子に周囲の大人が引きずられてしまうことです。癇癪のときの子どものエネルギーは絶大なもので、自分が攻撃されていなくとも、子どもの隣にいるだけでイライラしたり、気分が荒れたりすることもあります。まずは、保護者自身の気持ちが乱れたりがストレスを受けたりしないようにしましょう。保護者の方の心が乱れていては、子どもに冷静に対応することはできません。物が飛んできたり、殴りかかってきたりと怒りの矛先が自分に向いたときにはもちろんのこと、甲高い泣き声が長い時間続くときには、精神的な危機にさらされているんだということを理解してください。あまりに真摯に向き合いすぎると、精神的に過度なストレスが溜まってしまい病気になってしまうこともあります。そばにいなければ、子どもの身の安全が確保されないという場合には、大きな声が耳に届かないように耳栓をするなど、子どもの癇癪に自分が引きずられないように工夫をします。子どもが癇癪を起こしたときに避けたいのは、罰と報酬です。罰とは、頭ごなしに叱りつけたり、暴力をふるったりすることです。報酬とは、お菓子をあげたり、おもちゃを買ってあげたりすることです。おもちゃやお菓子を与えると子どもの癇癪が止むこともあるので、癇癪の対応方法として一見効果的に思われますが、子どもに「癇癪を起こすととなにかいいことがある」と思わせてしまう要因となります。また、要求を通さないと最初に子どもに言ったならば、その態度を貫き一貫性をもって接することが大切です。ただ、乳児期の子どもの泣きやぐずりについては、子どもと保護者の愛着関係を作り上げるための大切なコミュニケーション手段となり、その後の子どもの気持ちの発達の基礎となるので、子どもの要求に合わせて応対するという姿勢が必要です。癇癪が止まり、子どもが完全に冷静さを取り戻したタイミングで落ち着けたことをしっかり褒めるようにしましょう。「別の部屋に行って落ち着けたね」「我慢できて偉かったね」などと褒めてあげることで子どもは安心感を抱き、さらには「癇癪をやめた方がいいことがあるんだ」と感じやすくなり、予防にもつながります。時間が経ってからだと、癇癪を起して落ち着いたという一連の流れを忘れてしまうので、落ち着いたらその場で褒めてあげることを心がけましょう。子どもの癇癪に悩んだら、早めに相談を出典 : 子どもがたびたび過剰に癇癪を起こす場合、保護者が一人で継続して向き合うことは簡単ではありません。また癇癪が起こる場面を予測し、予防の方法を考えるには、専門性が求められることがあります。特にプランを見直しながら継続するのは負担が大きいので、専門家と連携しながら取り組むとよいでしょう。もし現在子どもとの関わり方や癇癪への対応に一人で悩まれているのでしたら、なるべく早く相談できる味方を見つけることをおすすめします。子育て支援センターは、乳幼児の子どもと子どもを持つ親が交流を深める場です。市区町村ごとに、公共施設や保育所、児童館などの地域の身近な場所で、乳幼児のいる親子の交流や育児相談、情報提供などを行っています。子育てをしている家庭の支援活動を行う施設であり、保護者にとっては、育児に関する不安の相談に総合的に応じてくれる心強い施設です。詳しくはお住いの市区町村のHP内の子育て・育児のページをご覧ください。子どもの特性や困りごとに応じた支援を行う、いわゆる療育プログラムを提供している福祉施設です。事業所によっては相談支援事業も行っており、保護者からの子育ての相談にも乗ってもらえます。また事業所にもよりますが、言語聴覚士や理学療法士、 作業療法士などの専門家による支援を受けらレル場合もあります。利用までにはお住まいの自治体の福祉担当窓口への申請が必要となりますが「通所受給者証」を取得することで、低い自己負担額で利用できます。発達障害の当事者、及びその周囲の関係者(保護者や教師など)を支援する機関です。大人の発達障害や、その関係者の支援が充実している施設ですが、基本的に年齢に関わりなく相談できる場所です。子どもの問題行動について機能分析の知識をもつ発達支援の専門家がいることもあります。癇癪があまりに強すぎると、反抗挑戦性障害や破壊的気分調節不全障害 、行為障害として診断される場合があります。そのようなときには何らかの医療・福祉的な配慮によってトラブルを解決できることもあります。あまりに高頻度で長時間の癇癪が続いたり、自傷行動を行うなど身体的、精神的にダメージが大きいときや、解決に緊急性が求められるときには医療機関への相談も選択肢の一つです。医療機関に相談する場合、「発達外来」や「小児神経科」「児童精神科」が専門となります。まとめ出典 : どのように対応したらよいのかわからない困りごとにぶつかったときには、同じく子どもも困っています。言葉がなかなか出ずに、自分の気持ちを表現できないもどかしさがあったり、相手の気持ちが見えづらいために自分の思いだけが先行してしまったりするというように、癇癪には何らかの背景が隠れています。癇癪を起こす子どもが何に困っているのだろうという視点をもつことが癇癪を理解するために大切なポイントです。
2017年06月24日強迫性障害とは出典 : 強迫性障害は自分の意思に反して不安・不快な考えが浮かび、抑えようとしても抑えられない、もしくはそのような考えをなくそうと無意味な行為を何度も繰り返すことで日常生活に支障が出てしまうこころの病気です。具体的な症状としては、汚れているのではないかと不安になって手を異常なほどに洗ったり、鍵をかけたか何度も確認して生活に支障が出てしまったりするような例があります。そういった行為には何にも意味がなく、やり過ぎだと自分で分かっていてもやめられないことが特徴です。英語ではObsessive Compulsion Disorderと表記され、略してOCDと呼ばれます。発症率は100人あたりおよそ2.3人といわれていて、決してまれな病気ではありません。10代~20代に多く発症しますが、小児期から症状が始まることもあります。原田 誠一『強迫性障害のすべてがわかる本 (健康ライブラリーイラスト版) 』強迫性障害の症状とは出典 : 「手をいくら洗っても、きれいになった気がしない」「ドアの戸締りが気になり、無意味に何度も確認してしまう」など、なんらかの考えが自分の意思に反して繰り返し浮かび(強迫観念)、それによって生まれる不安や恐怖などの感情を解消するために、同じ行動を繰り返すことを自分に強いる(強迫行為)のが「強迫性障害」の症状です。強迫観念は繰り返し、そしていきなり浮かんでくるもので、コントロールするのは困難とされています。強迫観念によって引き起こされる不安や恐怖は強迫行為を行うことで一時的に和らぐものの、強迫観念の出現は時間をおいて繰り返されます。強迫行為を行うと、一時的には不安を抑えることができますが、特定の場面に遭遇すると再び強迫観念が現れ、また強迫行為を繰り返してしまいます。この悪循環にはまってしまうと、自分で症状をコントロールすることが困難になり、強迫行為の程度が悪化していく人もいると言われています。一口に強迫性障害といっても、人によって症状の現れ方はさまざまです。以下では、中でも代表的な3つの症状を紹介します。■不潔恐怖汚染への強い恐怖により、長時間洗浄してしまうことをいいます。身体が汚れる、もしくは健康を害してしまうという強迫観念が、汚れや細菌汚染に対して恐怖を感じさせ、過剰に手を洗ったり繰り返し入浴・洗濯するといった強迫行為を引き起こします。またドアノブや手すりなどを不潔と感じ、手を触れることができないこともあります。■確認行為鍵をかけたか不安になり、何度も確認するような症状が出現します。「もしかしたら開いているかもしれない」「実は消えていないかもしれない」という強迫観念が玄関の施錠や、ガス栓・電気器具のスイッチを異常なほど確認する強迫行為を引き起こします。確認しても大丈夫だと確信を得ることができず、心配になって頭から離れません。自分で確認することに満足せず、家族に確認させる「巻き込み型」となることも少なくありません。その場合重症化することも少なくないので、注意が必要です。■加害恐怖誰かを傷つけたり犯罪を犯してしまったという思いに駆られ、確認したり罪の意識に苦しむことをいいます。誰かに危害を加えたかもしれないという強迫観念が新聞やテレビ、警察や周囲の人に確認する確認行為を引き起こします。危害を加えていないことを確認しても安心することができず、何度も確認してしまいます。このほか、自分の決めた手順でものごとを行なわないと恐ろしいことが起きるのではないかという不安を抱く儀式行為や不吉な数字・幸運な数字、配置や正確性・対称性に異常なほどこだわることなどが挙げられます。強迫性障害は、症状が重くなることで日常生活や社会生活に大きな支障をきたす可能性のある病気です。強迫性障害の人の中には、強迫行為に大半の時間をとられて他のことをする余裕がなくなってしまったり、自宅の外に感じる汚染への恐怖や戸締りの心配を理由にひきこもりになってしまったりする人がいるのです。強迫性障害の症状について理解するうえで重要なのは、患者さん本人は自分自身が強迫行為をしてまうことに対して精神的な苦痛を感じているということです。頭では意味のないことを繰り返しているとわかっていながら、それでもやめることのできない自分に対してネガティブな感情を抱いてしまうのです。症状に苦しむ生活が続くことで、気分が落ち込みやすくなるなど精神的に不安定な状態に陥ってしまうこともあります。そのため、強迫性障害の患者さんはうつ病を発症する可能性も高いと言われています。強迫性障害を引き起こす要因出典 : 強迫性障害の発症に関わる決定的な要因は、未だに特定されていません。しかし、気質要因、環境要因、遺伝要因・生理学的要因が何らかの形で影響を与えることがわかっています。■気質要因幼少期に教え込まれたこと、または感情や行動を強く否定されたことがあることが考えられます。■遺伝要因・生理学的要因セロトニンという神経伝達物質との関連や脳の部位に機能的な異常がみられる可能性も指摘されています。これにより強迫性障害が発症する背景には、脳の部位を結ぶ神経ネットワークに問題があると推定されています。■環境要因強いストレスを引き起こすような出来事や虐待などは強迫性障害の発症の危険性を高めると考えられています。また神経免疫機能との関連が考えられています。以上のような要因に加え、受験や結婚、育児などのライフイベントによる強いストレスから発症することもあります。強迫性障害になりやすい人出典 : 強迫性障害を世界的に研究している機関OCCWG(Obsessive Compulusive Cognitions Working Group)によると、几帳面な人や完璧主義などの性格の人が強迫性障害になりやすいと言われています。しかし、こういった性格があるからといってすべての人が強迫性障害を発症するわけではなく、その他の要因や環境との相互作用によって症状があらわれます。自分の性格を理解し、ストレスをためこまないよう上手にコントロールしましょう。原田 誠一『強迫性障害のすべてがわかる本 (健康ライブラリーイラスト版) 』強迫性障害と併発しやすい病気出典 : 強迫障害の人は他の精神疾患を併発することが多いと言われています。不安障害、強迫性パーソナリティー障害、チック症の併存が見られる場合があります。原田 誠一『強迫性障害のすべてがわかる本 (健康ライブラリーイラスト版) 』不安障害とは不安を主症状とする神経症で長時間続く病的な不安をいいます。強迫性障害と関連のあるものとして、人との接触を恐れる社会不安障害や特定のものや場所・条件を恐れる恐怖症、突然パニック発作が生じるパニック障害が挙げられます。強迫性パーソナリティー障害とは秩序や規則に対して強いこだわりを持ち、本人や周りの人が日常生活を送る上で支障が生まれることをいいます。強迫性障害と似ていますが、異なります。両方の症状がある場合は、両方の診断を下すことができます。チック症とはまばたきや首振りなど一見癖のように見える行為が現れる精神疾患です。摂食障害とは食行動に関する障害で、一般には拒食症、過食症と呼ばれます。食欲が単に増減するということではなく、体重や体型の認知が歪み、自分で食欲がコントロールできず、極端なやせ願望や太ることに対する恐怖心があることが特徴です。摂食障害のある人は食について、「食べてはいけない」という強い強迫観念を持つようになります。強迫性障害の診断におけるチェックポイント出典 : 国際連盟の専門機関の一つであるWHO(世界保健機関)が作成する疾患の分類である『ICD-10』によると、強迫性障害において重要とされるのは以下の3つのポイントです。・強迫観念や強迫行為といった症状が2週間以上の間、ほとんど毎日現れること・自分が行う強迫行為は過剰で無意味なものであると自覚していること・症状が社会生活や日常生活の妨げになっていること診断基準によって細かい違いはありますが、もし何らかの強迫観念にとらわれることがあり、症状の様相が上記のポイントを満たす場合には強迫性障害と診断されることがあります。強迫性障害に関する相談先出典 : 強迫性障害かもしれないと思った時は精神保健福祉センターなどの専門機関へ相談、または精神科もしくは心療内科を受診しましょう。強迫性障害はうつ病や統合失調症の初期や脳炎、脳血管障害、てんかんなど、脳器質性疾患と似たような症状をもっています。医療機関では識別するため、血液・髄液(ずいえき)などの検査や頭部CT、MRIなどの画像検査をする場合があります。全国の精神保健福祉センター一覧|厚生労働省他の強迫性障害の患者さんとの交流を通して、普段は話さないような悩みに共感し合ったり、治療法や症状への対処法に関する知識を共有を行うのもよいかもしれません。強迫性障害に特化した自助グループやコミュニティがありますので、ご紹介します。■OCDの会強迫性障害で悩む患者と家族のサポートグループです。の会■OCDサポート 強迫症/強迫性障害の案内板強迫性障害の症状をかかえる人や家族が、他の患者さんや家族と交流し、情報交換をしています。サポート強迫症/強迫性障害の案内板■強迫友の会OBRI(オブリ)強迫性障害という個性を持った子どもたちと家族のための自助グループです。情報交換や啓発活動を行っています。強迫友の会OBRI(オブリ)強迫性障害の治療方法出典 : 強迫性障害の治療法としては、薬物治療と認知行動療法の2つがあります。この2つを併用すると、より効果的であるとされています。強迫性障害は発症の仕方や症状が人によって異なります。本人の状態や併存する他の疾患を考慮に入れたうえで、治療方針を相談しましょう。薬物療法とは投薬することにより治療する方法です。一般的には「SSRI」という脳内のセロトニンに効果のある薬が使われます。一定期間継続して服薬しすることで、強迫行為をしたくなる衝動が薄れ、気分に余裕が生まれるといった効果が期待できます。強迫性障害では、薬のみの治療で症状をある程度改善できる人とそうではない人がいるようです。『強迫性障害のすべてがわかる本 (健康ライブラリーイラスト版) 』原田 誠一認知行動療法とは、ものの受け取り方や考え方を見つめなおし、気持ちを楽にする精神療法です。そのなかでも、強迫行為を引き起こす不安な状況に慣れる訓練をする「曝露反応妨害法(ばくろはんのうぼうがいほう)」という方法がよく取られています。認知行動療法は、実施できる専門家がまだまだ少ないのが難点ですが、薬物と同等以上の効果があります。認知行動療法を希望する場合は、かかりつけ医もしくは保健所や精神保健福祉センターなどに相談しましょう。強迫性障害に対する望ましい周囲の対応出典 : 強迫性障害のある人は、家族に不審がられることをためらって相談できないケースも少なくありません。またクセや強いこだわりと捉え、心の病気だと気付かないことがあります。放っておくと症状がエスカレートしやすくなるので、普段とは異なる行動がみられる場合や、生活に著しく支障を及ぼす場合は、早めに専門医を受診することを促しましょう。一方で、強迫行為を無理やり止めることは避けましょう。本人も止めたいと思っているのに止められないのが強迫性障害です。無理強いさせてしまうとパニック状態に陥ったり暴力をふるってしまうことがあります。薬物療法や認知行動療法などにより改善するものなので、強迫行為を無理に止めるようなことはせず、早めに医療機関などに相談しましょう。また、強迫症状が進むと自らの強迫行動を監視させる、強迫行為を強制するなど家族を巻き込むような行動がみられ、家族の日常生活に影響を及ぼしてしまうこともあります。こういった、「巻き込み型」の強迫性障害は約3人に1人が発症すると言われています。拒絶すると本人の不安を強めてしまいますが、むやみに従うと、かえって症状を悪化させるおそれがあります。そのため、基本的に家族は強迫行為や、患者本人の強迫観念を一時的に和らげるための行為に協力しないことが重要になります。主治医と相談し、適切な治療方法を相談した上で対応しましょう。出典:強迫性障害|厚生労働省まとめ出典 : 不安や恐怖にさいなまれたり、自分の意思と反して同じことを何度も繰り返したりしてしまうのが強迫性障害です。強迫性障害の治療には、本人はもちろんのこと家族や学校など周囲の理解・支援が不可欠です。正しい知識を得るとともにお互いに適切な距離感を保ちながら生活しましょう。症状の再発・悪化を予防するには、強迫性障害の悪循環にはまらないことが大切です。強迫観念→強迫行為→強迫観念→強迫行為・・・・という悪循環にはまりそうになったら一度落ち着き、深呼吸をしましょう。また、強迫観念が現れた時への対処法としては、「他のことに注意を向ける」のも有効とされています。あえて他のことを考えたり、気分転換に音楽を聞いたりするのです。このとき、「強迫観念をなくそう」と意識してしまうとかえって頭から離れなくなってしまうので、「この曲を聞きたいから聞くんだ」というように、強迫観念とは別の動機で他のことに注意を向けるようにすることがポイントとされています。さらに、疲れを溜めないよう、適度な休憩をとるようにすることも大切です。ストレスとうまく付き合い、無理のない生活を送ることで、少しずつ症状をコントロールできるようになることを目指しましょう。厚生労働省「知ることからはじようみんなのメンタルヘルス強迫性障害」「若者のこころの病 情報室「強迫性障害」ってどんな病気?」国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター「認知行動療法とは」原田 誠一『強迫性障害のすべてがわかる本 (健康ライブラリーイラスト版) 』原井 宏明、岡嶋 美代『図解やさしくわかる強迫性障害』
2017年06月23日そんなに不登校が怖いですか?出典 : 我が子が不登校になって日が浅い…。そんな親御さんによく見られる様子があります。「もう1ヶ月も学校に行ってないんです。このまま行けなくなったらどうしよう...」「せめて朝ちゃんと起きて欲しい」「勉強だけでもしてくれなければ心配で...」といった反応です。でも、これって結局「不登校していても体や心を休ませないで、いつでも学校に戻れるようになって」というメッセージを子どもに送ってしまっていることになると思います。うちも、娘が小学校2年生で不登校になったときは、周りから「勉強が遅れたら大変よ」「甘やかしていたら本当に学校に行けなくなるわよ」「将来進学や就職ができなかったらどうするの」と言われていました。なので、不登校の子を持つ親御さんたちが周りから受けるプレッシャーのつらさはよくわかります。それを承知で言わせていただきますが、そんなに不登校が怖いですか?怖がっているのは「学校へ行かないとまともな大人になれない」と思い込んでいる親御さんだけではないですか?どうして不登校になるのでしょう?出典 : 大人も子どもも、エネルギーがなみなみと入ったコップを心に持っていると想像してください。職場や学校、家庭などでストレスにさらされ続けると コップの中のエネルギーはどんどん減っていってしまいます。でも、底をついてしまう前に環境を調整したり、たっぷりと休養を取れば、コップの中のエネルギーはまた溜まっていきます。ですが、そのまま何も手を打たずに無理を続けるとコップは空になり、ついにはマイナスの状態になってしまうのです。私も、発達障害の二次障害で神経症になったときに、主治医に「あなたのエネルギーはマイナスの状態です。そこまで行ったらプラスになるには、マイナスになるまでの倍の時間が必要です」と言われたことがあります。不登校になる子どもたちも、 コップのエネルギーがマイナスになった状態だと思います。行けなくなったときには、すでに何らかの原因で疲れ切ってしまっているのですよね。うちの娘も私が気づいたときにはコップのエネルギーはマイナスになっていて、 朝起き上がることもできなくなっていました。本当は気づいていたのに、どうして休ませてあげなかったんだろう。のちにそう後悔することになりました。ようやく少しずつ動けるようになってきたのは中学2年生のとき。期間にして5年ほどかかったことになります。ただ、今でも体調には波があり完全に元気になる見通しはまだありません。どうしても学校というシステムには合わない子もいます出典 : 学校というところは、子どもたちに一斉に同じ課題を与え、それをこなしてついてくることを要求します。そして誰とでもみんな仲良くしましょうと指導します。それは実際にはとても難しいことで、学習についていけなくなったり、友達付き合いがうまくいかなくなったりする子が一定数出てくるわけですが、先生はなかなかそこまで面倒を見てくれません。先生たちは忙しく過労気味。職員室でも自分のクラスの悩みを打ち明けられない先生が増えているそうです。脱ゆとり教育、早期教育の負担は確実に学校を蝕んでいっているのでしょう。子どもたちはそんな体制に窮屈さを感じ、ストレスを抱え込んでそれを弱い子にぶつけます。そんな中でサバイブするには、ある程度のメンタルの強さや適応力、いい意味での鈍さなどが必要になります。ストレスを感じても、うまくかわしながらやっていける子がいる一方で、真面目で繊細な子ほど学校という場に起きている矛盾にぶつかって「行きたくない!」となってしまっているように見受けられます。不登校はいつ終わるのでしょうか出典 : 不登校がいつ終わるのか。正直、こればかりはわかりません。義務教育が終わり、高校進学を節目として立ち上がるになる子は多いですし、もっと早い段階で学校へ戻る子もいます。逆に、通信制高校などに進学してもスクーリングに行けず退学してそのまま引きこもる子もいます。高校、大学で不登校になる子も増えているようです。ただ、みなさんが恐れるように、不登校からそのまま引きこもりになる子も少なくないのが現実です。ですが、親の会で当事者の青年に話を聞くと、引きこもっている間も「何とか世間とつながれないか」と自分の頭で必死に考えています。「これでいいや」と思っている子はいません。 無理に引っ張り出すなど不適切な対応をしない限り必ず自分の力で立ち上がります。5年遅れて高校に進学して大学へ通っている子、引きこもっていたけれど居場所を見つけて週3日アルバイトをしている子、30歳を過ぎてから当事者活動であちこち飛び回っている子、私が行っている親の会だけでもいろいろなケースがあるのです。ぐるりと回り道はするけれど、人一倍真剣に「なぜ生きるのか、どう生きるのか」考え、自分のペースで生きていく、そんな生き方があってもいいのではないでしょうか?私がたどり着いた答え出典 : 親は「子どもは学校に行って育つものだ」と思っています。 私もそうでした。不登校になるということは安心できるレールを外れて、どこをどう走るかわからないトロッコにのる感じです。だけど、親が「学校第一」の価値観を持ったままで、家の中まで学校の価値観でいっぱいにしてしまったら、学校へ行けない子どもはどこで生きていけばいいのでしょうか。私も娘が学校に行っている間は、家の中が学校化してました。「宿題はできたの?」「もっと丁寧に字を書きなさい」「ちゃんと明日の用意をして」「先生に怒られないようにちゃんとやりなさい」って。これがどれだけ学校がつらい子どもたちを追い詰めていたか、親の会に行くようになり、不登校中に死のうとした当事者の青年たちの声を聞いてよくわかりました。どうかお子さんが不登校になったら、まずは黙ってゆっくり休ませてあげてください。そして、一直線に学校に通う以外の生き方もある、そういう生き方しかできない子どももいるということを理解してあげて欲しいと思います。今は大人でも仕事で追いつめられて、精神を病んでしまう人が多い時代です。親世代の頃よりも世の中は確実に生きにくくなっていて、それは子どもの世界にも浸透しています。大人も子どもも苦しいのです。だけど、コップの中のエネルギーがたまれば人はまた立ち上がります。さんざん我が子を追い詰めて病気にまでさせてしまった私が、今やっとたどり着いた答えです。
2017年06月23日自傷行為とは出典 : 自傷行為とは、ネガティブな気分を軽減する、人間関係のトラブルを解決する、ポジティブな気分になるといったことを期待して自分の体を意図的に傷つける行為です。自傷行為の方法は人それぞれ異なります。具体的には次のようなものがあります。・リストカット・鉛筆や針を腕に刺す・消しゴムで繰り返し皮膚をこすって、やけどをつくる・火のついたたばこを皮膚に押し付ける・自分を叩いたり、頭を壁にぶつけたりする・薬を過剰に飲む・治りかけた傷口をこするなどどれも死に至るレベルの傷がつくことはありませんが、周りからすると痛々しく見えます。自傷行為は、10代から20代の人がすることが多いと言われています。もっと低年齢で、頭を壁に打ちつけるなどの行動が見られる場合は、「自傷行為」ではなくてコミュニケーションの困難などからくる「自傷行動」である可能性があります。コミュニケーションが困難な子どもが、親にかまってほしいことなどを伝える手段として自らを傷つけたり、感覚が鈍い子どもが感覚遊びとして頭をどこかにぶつけたりすることがあります。このような行動が自傷行動です。自傷行動は自閉症などの発達障害のある人や、知的障害のある人に見られる場合もあります。自傷行為と自傷行動は、どちらも自分を傷つける点では共通ですが、その理由や対処法は異なるので注意が必要です。自傷行動に関しては関連記事を参照してください。誤解されやすいのですが、自傷行為そのものは自殺するための行動ではありません。自傷行為と自殺行動にはどのような違いがあるのでしょうか。自傷行為と自殺行動の背景には、どちらも精神的苦痛があると考えられていますが、この苦痛の性質に違いがあります。自殺行動の要因となる苦痛は「もうなにをやってもだめだ」という絶望感や無力感から生じることが多いです。そして、自殺行動に至るような人は、「この苦痛はいかなる方法でも回避することができないものだ」と考えてしまいます。そのため、自殺を考えている人は、「自殺」が今のつらい状況から解放される唯一の手段だと確信していることも珍しくありません。自傷行為をする人は、精神的につらい時期とそうでない時期を繰り返しています。つらいときに、一時的につらくないようにするための手段が自傷行為なのです。自傷行為を理解する上で注意しなくてはいけないことは、自殺とは目的が違うということなのです。参考書籍:『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計のマニュアル』第5版)参考書籍:松本俊彦/著者『自傷・自殺する子どもたち』(合同出版・2014)なぜ自傷行為をするのか出典 : 自傷行為を経験したことがない人は、リストカットをはじめとする自傷行為は周囲の関心を集めたり、周囲に自分の状況をアピールしたりするために行われるのだと考えがちです。しかし、自傷行為は必ずしも周囲の人へのアピールのために行われているとは言えません。自傷行為の経験がある人の話を聞いていくと、自傷行為は一人でいるときに周りの人に気づかれないように注意して行われていることが少なくないことがわかります。もし本当に自傷行為が周囲に向けて行われているなら、人の多いところでしたり、積極的に自傷行為をしていることを告白したりしていくはずです。では、なぜ自傷行為をするのでしょうか。これまで研究・分析されて来た結果によると、自傷行為には次のような理由があるとされています。◇不快感情の軽減のため気分が落ち込んでいた時やストレスがたまってしまった時に、そのつらい感情から解放される手段として自傷行為を行うことがあります。自傷が安定剤の役割を果たしていたり、ストレス解消の唯一の手段になっていたりと、自殺願望はなく、むしろ生きていくために行っていると述べる方も少なくありません。これは本人が認識することの難しい「心の問題」を、痛みとして認識しやすい「身体の問題」に置き換えることで不快感情を軽減しているとも言えます。◇自己懲罰的な自傷行為自分自身を罰したいと考えて自傷行為をする人もいます。このような人は自分の理想や親の期待に対して現実が追いつかなかったときに、「どうしてこんなこともできないんだ」と考えてしまいがちです。自傷行為の背景にある本人の心理として、周囲に悩みを打ち明けることが苦手で自分ひとりで抱え込んでしまったり、自己評価が低く自分が傷つくのは当たり前だと考えたりしていることもあります。上記の理由ほど多くはありませんが、一部の人は周囲に自分が愛されているのか知りたかったり、自分がどれだけ絶望しているか伝えたかったり、仕返ししたりするために自傷行為をする場合もあるようです。自傷行為の多くは「周囲に気づいてもらうため」にするのではなくて、なんとかしたいけれどもどうしようもなくて「一人で解決するため」にしているSOSだと理解するといいでしょう。参考:自傷行為|厚生労働省参考書籍:松本俊彦/著者『自傷・自殺する子どもたち』(合同出版・2014)参考書籍:キース・ホートンカレン・ロドハムエマ・エヴァンズ/著者『自傷と自殺思春期における予防と介入の手引き』(金剛出版・2008)自傷行為のメカニズム出典 : 自傷行為をしている話を見たり聞いたりしたときに、どうしてわざわざ痛い思いをしてまでそんなことするのか不思議に思ったことはありませんか。「痛み」を伴う行為によって脳内物質が変化するといわれています。「自傷行為をした時に不快感が軽減される」という一見逆説的な現象がなぜ起こるのか?そのメカニズムをみてみましょう。ヒトには外傷を負ったり、過度な負荷が身体にかかったりしたときに、脳内で内因性オピオイドと呼ばれる物質を分泌して鎮痛効果を得る仕組みがあります。具体的には、エンケファリンやβエンドルフィンなどです。例えば、マラソンのような長距離を走るとき、はじめのうちは苦しく感じますが、だんだんその苦痛が和らいでいき、最終的には高揚感に包まれることがあります。この現象はランナーズハイと呼ばれ、脳内でβエンドルフィンが分泌されることで引き起こされています。ランナーズハイと同じように、自傷行為によっても脳内でこれらの物質が分泌されます。そのため、人によっては自傷行為で痛みをあまり感じません。それどころか精神的な安らぎを感じることもあるのです。ここで注意しなければならないのが、自傷行為にも「慣れ」と「依存」があることです。例えば、リストカットをしている人でもだんだんと刺激に慣れてきて、頻度が増えたり、より深い傷をつけたりするようになる場合があります。自傷行為をやめたくてもなかなかやめられない人は、タバコやアルコール依存のように、自傷行為によって脳内物質を分泌することに依存しているのかもしれません。参考書籍:松本俊彦/著者『自傷・自殺する子どもたち』(合同出版・2014)自傷行為と精神障害の関係は?出典 : 自傷行為をする子ども・若者に精神障害が多く認められることが知られています。また精神障害が原因となり、自傷行為が繰り返されることもあります。これらの子ども・若者の精神障害としては、摂食障害と物質使用障害が多いです。摂食障害とは極度に食事を拒んだり(拒食)、逆に極端に大量の食事をとったり(過食)する状態で、場合によっては生命の危険に関わります。物質使用障害は、アルコール依存症やたばこ依存症のように、あるものをやめたいと思っていても、使い続けてしまうような症状です。他にも、気分の浮き沈みの激しい気分障害、過剰に不安や恐怖心を感じてしまう不安障害、社会のルールを守らないで行動してしまう行動障害、うつ病やADHD(注意欠如・多動性障害)などの並存が、自傷行為を行う子ども・若者の中にしばしば見られます。先天的な特性としてADHD傾向のある人が、その特性ゆえに周囲の人との関わりにつまづき、強いストレスを抱えている場合や、気分障害や不安障害などがあり冷静に物事を考えられない状態にある場合、自傷行為を行うリスクがより高まると考えられます。また、昔は自傷行為は境界性パーソナリティ障害の症状の1つだと誤解されていました。しかし、境界性パーソナリティ障害と自傷行為には、いくつかの似た特徴がありますが、自傷行為をしたからといって必ずしも境界性パーソナリティ障害だということではありません。ただし現在では、自傷行為が単体でなんらかの精神障害や疾患の症状として定義されてるわけではないことに注意が必要です。自傷行為をしているから必ず精神障害というわけではありませんし、逆に精神障害のある人が全員自傷行為をしているわけでもありません。参考:摂食障害|厚生労働省参考書籍:『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計のマニュアル』第5版)自傷行為はやめないとだめなのか出典 : 自傷行為をする人の中には、自傷行為をすることで自分自身の身体は傷ついているかもしれないが、他人に迷惑をかけていないのだからやめなくてもいいと考えている人もいます。精神科医の松本俊彦氏が中学や高校で薬物乱用防止講演を行い、その講演後にアンケートをすると次のような結果がでました。自傷行為をしたことのない人が「薬物乱用は絶対にしない」などの感想を持ったのに対して、自傷行為をしたことのある人には「他人に迷惑をかけているわけではないのだから、やりたい人は勝手に薬物を使えばいい」という感想が多くみられたのです。出典:松本俊彦/著者『自傷・自殺する子どもたち』(合同出版・2014)自傷行為は確かに、あまり他人に迷惑をかけてはいないのかもしれません。しかし自傷行為をすることで絶望感や不安から解放されるからといって、自傷行為をやめなくてもいいということではありません。自傷行為は自殺の意図が含まれていない行為だとされています。しかし、ある程度自傷行為を繰り返した人の場合には、「消えてしまいたい」や「いなくなりたい」という自殺に繋がってしまう感情を抱くことも珍しくありません。もし自傷行為が不安への臨時的な対処法になったとしても、絶望感や不安に駆られる根本的な原因には対処することができないのです。自傷行為がエスカレートして自殺に発展するリスクも考慮すると、自傷行為を放置するのではなく、背後にある根本的な原因にアプローチし、本人が自傷行為をしなくても済むための適切な支援を行っていくことが重要であると言えるでしょう。参考書籍:松本俊彦/著者『自傷行為の理解と援助「故意に自分の健康を害する」若者たち』(日本評論社・2009)自傷行為をやめるには出典 : この章では、具体的に自傷行為をやめるためのステップを見ていきましょう。自傷行為をやめるためには、2つのステップがあります。人それぞれ自傷行為をする状況が異なるため、まず第一にどのような状況になると自傷行為をしてしまうのか特定することを目指します。自傷行為が日常生活の一環になってしまっていると、どのような状況で自傷行為をしているのか説明することが困難です。本人の説明に頼ることなく、トリガー(引き金、要因)を特定するために日々の生活を記録するといいでしょう。例えば、1日の行動を1時間単位で記録していきます。自傷行為をしたタイミングやどこにいたのか、誰といたのかなどの情報も一緒に記録しましょう。記録をとることで、自傷行為について客観的に判断できるようになったり、記憶がない時間帯が見つかり解離症状が発見されたりします。自傷行為をやめるためには、トリガーを取り除くか、心理的な苦痛を自傷行為以外の方法で解消できるようになる必要があります。置換スキルというのは、心理的な苦痛を棚に上げて回避する方法ではなく、一時的に心理的な負担を軽くして根本的な問題と向き合うために行われる方法です。すぐに取り組むことのできる置換スキルに以下のような方法があります。◇刺激的な置換スキル・スナッピング…手首に輪ゴムをはめて、輪ゴムで皮膚をはじくことで、自傷行為の衝動に駆られたときに意識を切り替える。・香水をかぐ…刺激的な香水の香りで、気持ちを切り替える。・氷を握りしめる…氷を握りしめることで、冷たい感覚が痛覚と区別できず、気を紛らわせる。・腕を赤く塗る…血を見ると安心するような人に有効な方法です。・大声で叫ぶ…大声で叫ぶことで、自傷したい衝動を抑えられます。・筋トレをする…筋トレをすることで、「自傷」から気を紛らわすことができます。このような刺激的な置換スキルは、何度も同じ方法を行っていると慣れで効果が減少してしまいます。そのため、いずれは鎮静的な置換スキルへ移行していくことが好ましく、できるだけ早いうちから鎮静的な置換スキルの練習を始めることが望ましいと言われています。◇鎮静的な置換スキル鎮静的な置換スキルは、「身体の痛み」以外の刺激によって気をそらすのではありません。呼吸法や瞑想法を行いマインドフルネスを得ることで、不安や緊張といったネガティブな感情そのものを鎮めるようにする方法です。マインドフルネスというのは、過去や未来にとらわれず今この瞬間の体験に意識を向けて集中している状態を指します。しかし、マインドフルネスに至るための呼吸法はいきなりやっても効果が得られにくく、一定の練習や習慣づけが求められます。比較的落ち着いているときに練習しておくといいでしょう。具体的には次のように行います。1.背筋を伸ばして、両肩を結ぶ線がまっすぐになるように座り目を閉じます。2.なにも意識せず、自然と呼吸をします。3.雑念や感情が湧いてきたら、心の中でリセットして考えないようにします。4.呼吸が身体全体に行き渡っているかのように意識を広げていきます。5.身体だけでなく、部屋の雰囲気にも注意を広げていきます。6.そっと目を開けて、瞑想を終了します。これらの一連の流れをはじめのうちは10~15分を目安に行うといいでしょう。うつ病などの治療を受けている場合は、必ずかかりつけの医師に相談してからはじめてください。参考:ストレスから脳を守れ~最新科学で迫る対処法|NHKスペシャルキラーストレスシリーズ参考書籍:松本俊彦/著者『自傷・自殺する子どもたち』(合同出版・2014)精神科を受診をするかどうかの基準出典 : 友人や家族に自傷行為をしている人がいても、焦って無理に自傷行為をやめさせることは好ましくありません。自傷行為を見つけた時は、どのような精神的苦痛があるのかと自殺につながる危険性がないかの2つの観点から評価するのがいいでしょう。評価の判断基準には、おおまかに以下の5つの基準があります。1.周囲に助けを求めていない傷を隠したり、自傷行為について話さなかったりするのは周囲の人を信頼していないメッセージで、周囲に助けを求めていない状態です。2.自傷をコントロールできていない服で隠れるところにしか自傷行為していなかったのに、見えるところにしてしまったり、TPOを無視して自傷行為してしまったりしている状態です。3.自傷がエスカレートしている頻度が上昇するだけでなく、傷つける部位や自傷の方法が増えているかで判断します。4.痛みや記憶がない自傷が習慣になっていると痛みを感じない場合があります。また人によっては、「気づいたら傷が増えていた」のように自傷行為をしている記憶がすっぽり抜けてしまう場合があります。5.自傷以外に健康を害する行動がみられる薬の乱用や過度な飲酒、喫煙が見られたり、危険な性行動や摂食障害が生じたりしているかに注目しましょう。この5つのポイントから評価したとしても、精神科に紹介するかどうかの絶対的な基準はありません。一応の目安としては、1~3の項目のうち2つ以上に該当する場合や4,5のいずれかに該当する場合は、精神科に相談に行くことを検討するといいでしょう。上記に該当しない場合でも、明らかに気分の上下が激しく気分障害が疑われるなど他の精神障害が疑われるときには精神科を受診するようにしてください。参考書籍:松本俊彦/著者『自傷・自殺する子どもたち』(合同出版・2014)自傷行為を見つけたら?周囲が気をつけること出典 : 自傷する子ども・若者は、複数の機関で複数の人によって支えていくことが理想的です。そのため精神科に紹介してからも、周囲の人が積極的に関わっていくことが重要になります。自傷行為をしている人を見つけたり、相談されたりした場合にどのような行動をとればいいのでしょうか。先ほどの章では、精神科に紹介する目安について紹介しました。自傷行為している人が家族にいる場合と友達にいる場合をそれぞれ見ていきましょう。◇家族に自傷行為している人がいるとき自傷行為している人に挑発的な態度をとったり、感情的に説教をしたりすることは避けましょう。「どうせ死ぬ覚悟もないくせに」や「勝手にすれば」などの挑発的な言葉を使うことは、望ましくありません。また口論になって、「腕を切ってやる」などと言われた時は感情的にならず冷静に、「切る切らないはあなたの問題かもしれないけど、私はそれを望んでいない」と伝えるといいでしょう。挑発的な態度や感情的な説教と同じくらい避けるべき行動は、「自傷行為していることを見て見ぬふり」することです。気づいていないふりは、案外そのことがばれているケースが多いです。自傷行為に気づいたら、無視するのではなくやさしく寄り添って声かけをするように心がけましょう。このときに決して無理強いだけはしないようお願いします。◇友達が自傷行為しているとき友達に自傷行為していると打ち明けることは珍しいことではありません。知識のない子どもは相談されたとき、適切な対応することが困難です。相談された子どもが「もう2度とこんなことしないで」と、できない約束を押しつけてしまったり、「誰にも言わないで」と頼まれたために相談された子どもが一人で問題を抱え込んでしまったりします。では実際に相談されたときには、どうすればいいのでしょうか。まず第一に、自分は味方であり、なんとか助けになりたいということを伝えるようにしましょう。自傷行為はつらさを紛らわせる最善の方法ではありませんが、最悪の方法でもなく頭ごなしに否定するものでもありません。自傷行為には専門家や大人の支援が必要です。仮に「誰にも言わないで」と頼まれたとしても、信頼できる大人に伝えるようにしましょう。参考書籍:松本俊彦/著者『自傷・自殺する子どもたち』(合同出版・2014)まとめ出典 : ここまで自傷行為について詳しく見てきました。自傷行為の背景には、周囲へのアピールやかまって欲しいという感情ではなく、どうしようもない精神的苦痛があるのかもしれません。精神的に苦しんでいる人に、精神論で説教したり、安易に大丈夫だと話したり、今すぐ自傷行為をやめるように約束させたりすることは、かえって追い詰めることになってしまいます。もし周囲に精神的に苦しんで自傷行為する人がいたら、話を聞いたり、味方であることを伝えたりと寄り添っていくようにしましょう。自傷行為するまで精神的に追い込まれる要因は、本人の性格的な問題や今までの経験、周囲の環境など複雑です。だれかが自傷行為したからといって、周囲の人が責任を感じる必要はありません。むしろ自傷行為をやめられるように、環境を整備したり、協力したりしていくことが重要です。
2017年06月22日悩みはみんな同じ、それは「偏食」!出典 : 息子が幼稚園の頃、同じ発達障害の子どもを持つお母さんたちと園で会うたびに話した共通の話題は「偏食」についてでした。発達障害のある子どもの多くは、食にこだわりがあったり、初めての食べ物に対する恐怖感が強かったりで、偏食傾向があります。うちの息子は味覚過敏もありましたので、「混ぜ込んで食べさせる」ということも通用しませんでした。苦手な食材の、ほんの少しのかけらが舌に当たった瞬間に、嘔気を催してしまうのです。同じ幼稚園で出会った、他の発達障害のお子さんたちもそれぞれ偏食には悩まされていましたが、その現れ方は様々でした。なかには、「パンの固さ」や「ごはんの温度」にまでこだわりがあるお子さんもいて、それぞれのお母さんは毎日のお弁当作りに、それはそれは苦労していました。息子の場合は、食べられる食品の種類は両手で数えられる程度。混ぜ込みは受け付けないので、おかずのバリエーションも増えません。ごはんにかけるふりかけさえ、こだわりがありました。息子の幼稚園は毎日お弁当でしたので、両手で数えられる程度のおかずを毎日順番に詰めるだけの毎日。結局幼稚園の3年間で、そのバリエーションが増えることはありませんでした。ある日幼稚園の先生から言われた意外な一言出典 : 世の中には「キャラ弁」や「食育」という言葉が「母の愛情」の象徴としてあちらこちらで語られています。我が家はそんな「母の愛情」とは無縁のお弁当。全く頭を使わせることのない、同じ食品のオンパレードでした。そんな味気のないお弁当を作って楽しい気持ちになるわけもなく、「食育」という言葉を聞くたびに責められているような気持ちになりました。ある日、私はふと妙なことを思いつきました。「もしかしたら、みんなが一緒に食べていることに触発されて、嫌いなものでも食べるかもしれない」それまでは息子の食べられるものだけをお弁当に詰めていた私ですが、ある日を境に息子の苦手な物を1~2品入れるようになりました。ある日はプチトマト、ある日はブロッコリー、ある日は野菜炒め…。しかし息子は見事にそれだけは残して帰ってきました。それでも私は毎日、息子の嫌いなものを一品ずつ入れました。「いつか食べられるようになる」という気持ちと、「私だって食育に無関心なわけじゃないんだよ…好きなものだけ食べさせればいいと思って手を抜いているわけじゃないんだよ…」という、後ろめたい気持ちに、私は勝てなかったのでした。祈るような気持ちで息子の苦手な食べ物をお弁当に詰めていたある日、幼稚園の先生から突然お電話がかかってきました。そして、こう言われたのです。「お母さん、お弁当は、お母さんと息子さんとの信頼関係の一つです。息子さんの嫌いなものはお弁当に入れなくて大丈夫です。食べられるものだけを入れてあげてください。息子さんの大好きなものだけを詰めてあげてください。後になってその意味が分かると思います。」幼稚園の先生からの電話を受けて、私は呆気に取られてしまいました。それまで言われていた「食育」とは真逆のことを言われたからです。本当にいいのだろうか、栄養のことは考えなくていいのだろうか、このまま偏食を治さなくていいのだろうか…。幼稚園の3年間、私は迷いながらも息子の好きなものだけをお弁当に入れ続けたのでした。小学校に入って分かった、先生の言葉の意味出典 : そして息子は小学校に入学しました。小学校に入学して、私が一番嬉しかったことと言えば、給食が始まったことです。毎朝毎朝、同じような食材を詰めるだけの幼稚園のお弁当は、私にとっては本当に苦痛でした。しかし、そんな私の喜ばしい気持ちとは裏腹に、息子にとっては小学校生活で一番頭が痛いことが「給食」だったのです。バランスを考えていろいろな食材が混ぜ込まれて作られている給食は、息子にとっては食べられない物のオンパレードです。息子いわく、「僕はクラスでお残しナンバーワン」だそうです。前日に給食のメニューや食材を見せて、予告はしていますが、それを食べられるかと言われれば全く別問題です。お腹が空けば、そのうち食べられるようになるだろう、と周囲は楽観視していますが、どんなにお腹がすいても息子は初めての食べ物が怖いのです。何が出るのか分からない、どんな味か分からないものが毎日提供される給食。一口手をつけようと頑張ってみはするものの、固まってしまう息子。「こんなに残すのはあなただけ」と周囲にたしなめられ、がっくり肩を落として帰宅します。そんなある日、小学校が1日だけお弁当の日がありました。毎日給食のことでがっくりとして帰ってくる息子のために、息子の好きなものだけてんこ盛りのスペシャル弁当を作って持たせました。今思えば、幼稚園時代はそれがスペシャル弁当だという認識はありませんでした。息子の好きなものだけを詰めるということは、苦痛でしかなかったからです。久しぶりのお弁当デー。息子は目をキラキラ輝かせて帰ってきました。帰ってきて一言。「お母さんのお弁当には、僕の嫌いなものは絶対入ってないんだ。幼稚園の頃はいつも、安心しきってお弁当箱を開くのが当たり前だと思ってたんだ。給食みたいに、出てくるときに怖い気持ちにならなかったんだ。お母さんのお弁当は、安心できたんだ。」この言葉を聞いて、かつて幼稚園の先生が「息子くんの好きなものだけを入れてください。それは信頼関係なんです」とおっしゃってくださった意味が分かり、私は幼稚園時代が懐かしくて、涙が出てきてしまいました。出典 : 初めてのものが怖い息子にとって、いつも安心して弁当箱の蓋を開くことのできた3年間は、宝物のような時間だったのです。そして、その安心感を親が与えずに、誰が与えられるでしょうか。「食育」とは、栄養をバランスよく与えることではなく、「食べる」ということを楽しいことだと感じられるようになる教育だと私は思っています。そう考えれば、偏食の多い発達障害児が、安心感を持って食事をできるようにすることも、立派な「食育」ではないかと私は思います。
2017年06月22日カナー症候群とは?出典 : カナー症候群(カナー型自閉症)とは、自閉症の中で知的障害を合併する場合を指す用語で、医学的な診断名ではありません。カナー型自閉症、カナータイプなどと呼ばれることもあります。「言葉の発達の遅れ」「コミュニケーションの障害」「対人関係・社会性の障害」「パターン化した行動、こだわり」などの自閉症の特徴と知的機能の発達の遅れをもつ障害で、3歳までには何らかの症状がみられると言われています。1943年にアメリカの児童精神科医レオ・カナーによって報告されたため、カナーの名前をとって呼ばれています。現在、最新の診断基準である『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)では、自閉症状のある障害は「自閉症スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」(ASD)という診断名に統一されています。しかしかつては、症状によってカテゴリー分けされており、アスペルガー症候群、高機能自閉症、早期幼児自閉症、小児自閉症などさまざまな名称で呼ばれていました。そのような中でカナー症候群という用語が生まれ、広がった背景には、アスペルガー症候群や高機能自閉症という用語の広がりとの関係があるようです。アスペルガー症候群や高機能自閉症という、知的障害を伴わない自閉症の概念が拡大するにつれ、それに対する、知的障害のある自閉症を表わす概念としてカナー型・カナー症候群・低機能自閉症などの用語が使用されてきたと考えられます。つまり、スペクトラム(連続体)と捉えられるようになり、知的障害がない自閉症のタイプが広く知られるようになったことで、逆説的に知的障害のあるタイプを指す用語が必要とされる場が増えてきたということです。またこれらのタイプは認知機能や言語面での発達に遅れが見られることから、自閉症に対する支援と知的障害に対する支援の両面が必要になり、一様な「自閉症スペクトラム」への支援だけでは不十分なことも多いです。そのため、この記事では「カナー症候群」という用語を用い、その症状や特徴、対処法や受けられる支援を具体的に説明します。カナー症候群をはじめ、さまざまな自閉症状のある障害が自閉症スペクトラム(ASD)と総称されるようになりましたが、知能指数(IQ)と自閉症状の程度の関係をみると、カナー症候群は以下の図のように位置づけることができます。Upload By 発達障害のキホン【図表は『自閉症スペクトラム入門―脳・心理から教育・治療までの最新知識』を元に作成】【図表は『自閉症スペクトラム入門―脳・心理から教育・治療までの最新知識』( )を元に発達ナビ編集部にて作成】図にもあるようにそれぞれのボーダーラインは曖昧で、一人ひとり特徴の表れ方もそれぞれです。障害名や疾患名に基づいて治療・療育をするのではなく、一人ひとりの子どものニーズや特徴にあわせた療育やサポートを柔軟に行っていくことがとても大切になっていきます。カナー症候群の原因は?出典 : さまざまな議論が交わされていますが、 カナー症候群(自閉症スペクトラム)の原因はいまだ特定されていません。しかし、親のしつけや愛情不足が直接の原因ではないことがわかっています。カナー症候群をはじめ、自閉症スペクトラムは生まれつきの脳機能障害であると考えられており、その機能障害を引き起こすそもそもの原因は遺伝子にあるとみられています。しかし、遺伝子が関与しているからといって親から子に必ず遺伝するタイプの「遺伝病」ではありません。また遺伝的要因だけではなく様々な環境要因も関わっていると考えられています。現在の医学では妊娠中の羊水検査、血液検査、エコー写真などの出生前診断でカナー症候群と判明することはありません。また、出生後も遺伝子検査や血液検査といった生理学的な検査では診断できません。これは自閉症スペクトラムの原因が完全には解明されておらず、またその原因も複雑で単一ではないと考えられるためです。生理学的な検査方法を確立するのはかなり難しいとも言われています。参考:鶴田一郎『自閉症スペクトラムの臨床心理』ふくろう出版(2008)p.24, 25カナー症候群の年齢ごとの特徴出典 : カナー症候群のある人は、成長していくにつれて症状の特徴も人それぞれ変化していきます。自閉症状や知的障害の程度の重さや特性は人によって違いますが、乳幼児期から成人以降までのライフステージに分けて、それぞれよく見られる症状や特徴を説明します。0歳から1歳までの乳児期は・声をたてて笑うこと・「いないいないばぁ」への反応・抱っこへの積極的欲求・指さしなどにおいて同月齢の子どもと比べると表出に遅れがみられることがあります。また、人見知りが強い場合もあります。他にも、個人差がありますが、バイバイの動作や後追い、喃語の発声においても遅れがみられることがあります。2歳から就学までは以下のような特徴があります。・こだわりや興味関心の偏りが見られる気にいったものを見続ける、特定の数字やマークを好む、ドアや窓の開け閉めを繰り返すなどの強いこだわりが見られる場合があります。遊びもミニカーを並べるなどの一人遊びを好み、他の人の介在を拒むこともあります。・周囲にあまり興味を持たない傾向があるコミュニケーションの中で視線が合いにくいと感じられる子が多いです。また他の子どもに興味をもたなかったり、聴力に問題がないにも関わらず、名前を呼んでも振り返らないことも多いです。また、他の人の動作を模倣するのが苦手な子もいます。・コミュニケーションを取るのが苦手満2歳までは言語理解がなかなか進まないなどの言葉の遅れや、オウム返しなどの特徴がみられることがあります。自発的になかなか声を発さず、指さしをして興味を伝えることをしない代わりに、クレーン現象といって相手の手をそこに持っていって意思表示をすることがあります。集団での遊びにあまり興味を示さず1人で遊ぶこともよくみられる特徴です。勝ち負けの概念やゲームのルールの理解が難しい場合は他の子との遊びに参加できないこともあります。・パニック・自傷行動が起こりやすい要求がうまく伝わらないときや、好きなことやこだわりをやめさせようとすると突然泣き出したり、わめいたり、自分の手を噛んだり、頭を殴りつけたりといった行動が生じることがあります。コミュニケーションの発達に伴い改善されることもありますが、学童期にも夏の暑い時や、スケジュールの変更時、勉強中などにパニックを起こしてしまうこともあります。・視覚、聴覚、味覚などの感覚に特徴がある視覚に関しては、横目でじっとみつめたり、自分の顔になにかを極端に近付けたりする傾向がある場合があります。鏡、光の点滅、扇風機のような円運動に夢中になったりすることもあります。聴覚に関しては、騒音や大きな音、サイレンのような不快な音を避けようとして耳をふさぐ傾向がある子もいます。その逆で、紙などでカサカサと小さな音をつくり耳元で聞いて落ち着くケースもあります。味覚に関しては、極端な偏食がある子も少なくありません。このような光や音などをはじめとする特定の刺激を過剰に受け取ってしまう状態のことを感覚過敏(過剰反応性)と呼びます。逆に、刺激に対する反応が低くなることを「感覚の鈍感さ(鈍麻・低反応性)」といいます。どちらも感覚のはたらきに偏りがあることが原因です。これらの特徴は学童期に落ち着くことも多いとされています。・こだわりが強く臨機応変に対応するのが苦手きちんと決められたルールを好む子が多いです。言われたことを場面に応じて対応させることが苦手な傾向があり、時間、道順、手順、物の位置など習慣化されたものを変更することに抵抗を示すこともあります。・集団になじむのが苦手年齢相応の友人関係が少なく、周囲にあまり配慮せずに、自分が好きなことを好きなようにしてしまう傾向があります。人と関わる時は何かしてほしいことがある時なだけのことが多く、基本的に1人遊びを好む傾向があります。また、学校などの集団生活の中で他者のペースに合わせるのが難しい場合、パニックや自傷が増えてしまうこともあります。・話を聞いて、理解するのが苦手視覚的な認知能力が聴覚的な認知能力より優れた人が多く、目に見える物事の理解は得意な場合があります。認知力の発達の遅れから、抽象的な概念の理解が困難であったり、過去の出来事や自分の気持ち、行動の理由の説明などがうまくできないこともあります。相手の話を聞いて内容を理解したり、相手の気持ちを想像したりすることが難しい場合も多いです。子どもに合わせた視覚支援を行い、適切な教育環境を整えることによって、できることも増えてきます。自己コントロールや集団参加も少しずつできるようになり、知的障害の程度により個人差はありますが、認知能力やコミュニケーションも発達してきます。改善されにくい特徴として、1人でいることを好む、興味や関心の偏り、変化や変更に対する困難などは、成長や療育によっても改善されにくいことがあります。思春期に癲癇(てんかん)などを発症する場合もあります。心配な症状があれば医療機関に相談しましょう。てんかん発作については以下の記事をご参照ください。参考:自閉症とてんかんQ&A|茨城県自閉症協会知的障害の程度や自閉症状の重篤度によって大きな幅があり、生活で必要とする支援の内容は変わってきます。身辺自立に加えて簡単な調理や買い物、洗濯などの日常生活スキルを学ぶとともに、本人に合うように構造化された環境の中で安定した生活を送れるように支援していく時期です。しかし、周りに理解を得られなかったり、ASDの特性に配慮されない環境だったりすると、自傷・他害、パニックなどの行動の問題が生じたり重篤化してしまうこともあります。このような場合は、早めに支援機関・医療機関に相談するようにしましょう。参考文献:鶴田一郎/『自閉所スペクトラムの臨床心理』(ふくろう出版,2008)カナー症候群(自閉症スペクトラム)かな?と思ったら出典 : 「カナー症候群(自閉症スペクトラム)ではないか?」と気づき始めるのは生後6~7ヶ月頃です。この頃になると、親と目を合わせない、呼んでも反応しないなどの症状が目立つようになります。しかし、こうした特徴がみられるすべての子どもがカナー症候群(自閉症スペクトラム)と診断されるわけではありません。一般的に自閉症スペクトラムと診断されるのは2~3歳になってからですが、知的障害のあるカナー症候群の子どもの場合は、早くて1歳代から診断が可能なケースもあり、知的障害のないアスペルガー症候群よりも早期の診断が可能といわれています。いきなり医療機関を受診するのには抵抗があったり、ハードルが高いと感じられることがあると思います。そのような場合、まずは身近な相談機関に行ってみるとよいでしょう。自分の子どもが困っていることに気づけたり、参考にできる子育てや支援方法を知ることができたりなど、メリットがたくさんあります。専門的に相談や診断を行っている機関を紹介します。【子どもの場合】・児童精神科・子ども発達クリニック・保健センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所・発達障害者支援センターなど日本児童青年精神医学会認定医一覧発達障害者支援センター一覧【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所などカナー症候群の診断出典 : 近年は、カナー症候群やその他の自閉症もひとまとめに「自閉症スペクトラム」と診断されることが定着してきています。カナー症候群は医学的な診断名としては使われることはあまりありません。診断は、本人の年齢や状態によって検査のボリュームが変化します。以下、具体的な診断方法を紹介していきます。医療機関を受診した際の臨床的な診断として、行動観察と生育歴について聞き取りを行います。自閉症スペクトラム障害について、より専門的な診断を行う場合には以下の検査が用いられることが多いです。・ADOS(エイドス)検査用具や質問項目を用いて、自閉症スペクトラム障害(ASD)の評価に関連する行動を観察するアセスメントです。発話のない乳幼児から成人の方まで、幅広く対応しています。・ADI-R対象者の行動の系統や詳細な特徴を捉える検査です。精神年齢が2歳0ヶ月以上であれば、幼児から成人まで、幅広い年代に対応しています。社会性、対人コミュニケーションや限定的な行動・興味・反復運動などに焦点を当てて構成されています。・PARS-TR自閉症スペクトラム障害がある方の特性理解を深め、一人ひとりに合った支援を可能にしていくために、日常の行動の視点から簡単に評価できるアセスメントです。1)対人、2)コミュニケーション、3)こだわり、4)常同行動、5)困難性、6)過敏性の6つの領域に関する全57の評価項目から構成されています。自閉症スペクトラム障害には知的障害、てんかん、感覚過敏、鈍麻などの合併症を伴う場合があります。合併する障害があるかアセスメントを行ったうえで検査する場合が多いです。その際に以下の検査が用いられることが多いです。・知能検査知能検査は心理検査のひとつであり、精神年齢、IQ(知能指数)、知能偏差値などによって測定されます。最近では、ウェクスラー式知能検査、田中ビネー知能検査、K-ABC知能検査などがよく使われています。・脳波検査自閉症スペクトラム障害はてんかんとの合併症を伴っている場合があるため、CTやMRIといった脳波検査を行ういます。自閉症スペクトラム障害の子どもの場合は狭い空間に入るとパニックになることもあるので、検査をする際には注意が必要です。・感覚プロファイル自閉症スペクトラム障害をはじめ、発達障害の人たちの感覚特性を客観的に把握するためによく使われている尺度です。質問票は保護者と本人が記入し、聴覚、視覚、触覚、口腔感覚など、幅広い感覚に関する125項目で構成されています。・Vineland(ヴァインランド:社会生活能力検査)0歳から92歳の幅広い年齢帯で、同年齢の一般の人の適応行動をもとに、発達障害や知的障害、あるいは精神障害の人たちの適応行動の水準を客観的に数値化する検査です。対象者にどんな特性があるのかを評価してくれます。また教育や福祉分野の個別支援計画の立案にも役立てることもできます。カナー症候群の治療・療育出典 : カナー症候群の根本的な治療法や手術といった医学的な方法は確立していません。しかし、子どもに、社会で暮らしていくために必要な技術や技能を教えたり、生活上の問題点を軽減させる方法を見つけたりするなどの教育的な援助を行うことが、カナー症候群をはじめとした自閉症スペクトラムに対する効果的な治療法になります。こうした対応の方法を「療育(治療・教育)」といいます。療育は、薬による治療のようにすぐに効果が表れるものではありませんが、長期的に続けることによって自閉症の子どもの生活を安定させ、社会への適応力を養うこともできるようになっていきます。代表的な自閉症スペクトラム障害の療育方法を紹介します。・ABA(エービーエー、Applied Behavior Analysis/応用行動分析)人間の行動を個人と環境の相互作用の枠組みの中で分析し、問題解決に応用していく理論と実践の体系です。・TEACCH(ティーチ、Treatment and Education for Autistic and related Communication handicapped Children)自閉症スペクトラム障害の当事者とその家族を障害支援する総合的なプログラムです。自閉症児のためのTEACCHハンドブック・PECS(ペックス、Picture Exchange Communication System)主に話し言葉に遅れがある場合に、話し言葉の代わりに絵カードや写真カードを使ったコミュニケーション援助プログラムです。・SST(エスエスティー、ソーシャルスキルトレーニング)対人関係をうまく行うための社会生活技能を身につけたり、障害の特性を自分で理解し自己管理をしたりするためのトレーニングの総称です。その他にもDIR、感覚統合療法、太田ステージ、VB(言語による行動変容法)、PRT(機軸反応訓練)、RDI(アールディーアイ、Relationship Development Intervention/対人関係発達指導法)などさまざまな療育方法があります。子どもの症状の特徴を考慮して、子どもにあった療育方法を選んでいきたいですね。自閉症の根本的な原因と推測される脳の機能障害を薬で治すことはできません。ですが、子どもに厳しい症状があらわれたときに、それを抑えるために薬を用いることがあります。たとえば、昼夜問わず走り回っている、こだわりやパニック症状が強い、自傷行動が激しく親子ともに苦しんでいる場合などは服薬したほうがよいと判断される場合があります。このようなケースでは「向精神薬」(精神安定剤、抗うつ薬、抗精神病薬)が使われます。また、症状を緩和するための薬が用いられることもあります。最初は少量からスタートして効果や副作用の有無を観察しながら、医師の指示に従って調節していくとよいでしょう。また、ただ薬を利用するのではなく、症状が緩和されている時には必ずスキルトレーニングなどを行いましょう。カナー症候群の子育てにおいて大切な考え方や悩みと対処法出典 : 子育てをしていく中で、ときに子どものことがわからなくなってしまったり、自分の子育てに不安や悩みを抱えることが多いと思います。子育てにおいて「正解」や「こうすべき」という決まりはありませんが、子どもの特性に合った適切な接し方を知ることが子育てにおいてとても重要となります。1. カナー症候群の子どもは、自分とは物事の感じ方が違うことを理解するカナー症候群を含め自閉症のある人の中には、定型発達の人と比べて特定の感覚に過敏性や鈍さ(鈍麻)があったり、独特の物事の理解の仕方や受け止め方があったりする場合が多いです。そのため、子どもが「自分とは違う感じ取り方をしているかも」ということを意識し理解することが重要です。「このくらい言わなくてもわかるだろう」「この程度の音なら我慢できるはず」と思わずに、子どもがどう感じているかに耳を傾け、何に困っているかを想像して接するようにしましょう。2. 本人がわかりやすい方法で具体的に伝えてあげる自閉症の中でも特にカナー症候群のある人は認知機能や言葉の発達の遅れがみられることが多く、言葉でのコミュニケーションに大きな困難を持つ人がいます。言葉でくどくど説明しても、子どもは混乱してしまうだけです。子どもにとってわかりやすい指示や対話の方法は一人ひとりの特性によって違います。本人が理解しやすいやり方を考え、説明して納得させてあげてください。以下は代表的な方法です。◇短い言葉で具体的に指示する「椅子に座って」「靴を履いて」など、短い言葉で具体的に伝えます。状況や理由などの説明をしたり、一度にあれこれ指示をしたりするとわかりにくくなってしまいます。シンプルなステップに分け、一つが終わってから次の指示をします。◇視覚的な方法で説明する自閉症のある子どもは、耳で伝えられる情報は理解することが難しいことが多い一方、絵や写真といった視覚的な情報による理解は得意であることが多いようです。言葉の指示や説明に加えて、絵や写真を補助的に使用すると、言葉だけでなく視覚でも理解ができるようになります。言葉でのコミュニケーションが苦手な自閉症の子どもにとって理解しやすい環境になり、何をして欲しいのか明確にわかるようになります。予定や約束ごとなども、絵にして知らせると、理解しやすく安心できます。3. ほめることで「できる」を増やしていく自閉症のある子どもに教える上では「ほめる」ことが大きなポイントになります。◇スモールステップで「できた」を増やす日常生活上でできないことに対しては、少しずつ、ステップごとに教えていく方法が効果的です。まずは手順を細かくわけ、分かりやすい方法で一つひとつ説明します。やってみて、一つできたら思いっきりほめてあげます。子どもに「できたら嬉しい」「自分にもできる」ことがある、という成功体験をたくさん味わわせることがとても重要なのです。◇のぞましい行動をほめる自閉症のある子どもは相手の言葉の意図をくみ取ることが難しい場合があります。そのため「してはダメ」なことを叱るよりも、「してはいけない」ことはできるだけスルーし、「してほしい」ことをしたときにストレートな表現でほめるほうが効果的です。うまくいったことや頑張ったことがあれば、どんな小さなことでも思い切りほめます。同じことでも何度もほめることで「よい行動」が印象づけられ、定着していきます。4. 不安な気持ちに寄り添う自閉症のある子どもは環境の変化がとても苦手であることが多いと言われています。「いつもと違う」ことに強い不安と拒否感を感じ安く、例えば、いつもと違う道を通った、部屋の家具の位置が違うといった場合など、他の人には些細に思えることでも気持ちが動揺しパニックになってしまうことがあります。◇見通しを持たせて安心させる先の見通しを立てられるように予告しましょう。これから何をするか理解し、予測できると安心して行動できます。そのためには絵などを使って子どもが分かりやすい方法で、かつその子が安心できるタイミングで伝えるようにしましょう。伝えるタイミングは直前だとパニックの原因になりますし、早すぎると意味がなくなったり、他のことが手に付かなくなったりすることもあります。5.特徴からくる行動を理解するにおいを嗅いだり、くるくるまわったり、ジャンプを続けたり…このように常同行動と呼ばれる変わった行動や癖があると、親としてはやめさせたくなりますが、無理に止めるといっそう落ち着けなくなります。危険な行動や人に大きな迷惑がかかることでなければ、落ち着くために必要であることも理解し、ある程度は容認してあげることも大切です。また、年齢とともに不安に対する適切な対処法、例えば深呼吸、散歩、音楽を聴く、ヨガをするなどを、常同行動に代わる行動として教えていくとよいでしょう。自閉症のある子どもは、何もすることがないと時間をもてあまして不安になる傾向もあります。病院の待合室や電車の中などで手持ち無沙汰を解消できるよう、絵の描けるホワイトボードやパズルなど、好きな遊びを準備しておくと落ち着いて過ごせることがあります。6.感情的に怒らないこちらが感情的になると、いつもと違うできごとに不安を感じ、かえって混乱させてしまいます。何かを伝えたい時は、冷静に短い言葉で簡潔に伝えることを心がけてください。できるだけ否定的な言葉は使わず、「○○してほしい」「○○しましょう」と言い換えるようにしましょう。◇パニックになってしまう原因を避けたり、落ち着くまでゆっくり見守ってあげる親や周囲の大人としては、感情的に怒りたくなることもあるかもしれません。自閉症の子どもにとっては、どうして怒られているのか理解することが難しく、パニックになってしまう場合もあります。パニックになると落ち着くまでに時間がかかりますし、その間は周囲の大人が何を言っても聞く耳を持つことができません。しかし、ゆっくり感情的にならず説明すると、理解しやすくなります。パニックが起きたらおさまるまでしばらく見守ってあげましょう。頭を壁に激しくぶつけるなどして危険な場合は壁にクッションを当てるなどしてけがをしないようにします。更に詳しく自閉症の子どもの接し方について紹介している記事があるので、以下の記事をご参照ください。参考文献:前川あさ美 /『「心の声」を聴いてみよう!発達障害のこどもと親の心が軽くなる本』(講談社,2016)子育てをしていると、周囲に気を使ったり、子どもの様子に気を配ったりと、体力的にも精神的にも毎日へとへとになるパパママも少なくないでしょう。これでいいのか、子育てに自信がなくなることもあるでしょう。そんな時は、誰かに相談したり頼ったりしましょう。公的支援をはじめ、さまざまなサポートがあります。◇専門機関に相談する地域の子育て支援センターや児童発達支援センター、児童相談所などでは、子どものことや子育てについて、気軽に相談ができます。必要があれば医療機関や療育施設などの専門家を紹介してくれます。◇親の会に参加する自閉症の家族を対象とした家族会やサポートグループが全国にあります。親の会は障害のある子どもを持つ親同士がつながり、障害について学んだり情報交換をしていく活動です。また、発達ナビのQ&Aコーナーやコミュニティでも、子育ての悩みを相談することができます。誰かにつらい気持ちを話すだけでも、気持ちが楽になり、一人で悩みを抱え込まずにすみます。◇ペアレントトレーニングを受ける親が子どもとのより良いかかわり方を学びながら、日常の子育ての困りごとを解消し、楽しく子育てができるよう支援する、パパ・ママ向けのプログラムです。子どもをのばすほめ方、環境調整の仕方、指示の出し方、行動の教え方などを具体的に学べます。◇レスパイトケアで意識的に休息をとるがんばりすぎて、余裕がなくなっているときは、リフレッシュが必要です。育児を軽減するサポートを利用するなどして、自分の時間をつくりましょう。児童発達支援、放課後等デイサービスの中には預かり型の支援サービスもあります。また、障害児を受け入れているファミリーサポートもあります。一時的預かりのサービスを行っている地域もあります。地域の福祉相談窓口などで相談してみてください。カナー症候群の人が受けられる支援出典 : 療育手帳とは知的障害者福祉法に基づき、知的障害のあるために日常生活に支障がある方に、適切な支援をすることを目的として作られました。療育手帳は、児童相談所または知的障害者更生相談所で知的障害であると判定された方が取得できます。そのため、カナー症候群の特徴がみられる子どもの場合、療育手帳を取得できることが多いです。療育手帳制度の概要(厚生労働省)療育手帳の呼び方は自治体によって異なります。多くの自治体は療育手帳としていますが、東京都や横浜市では”愛の手帳”、埼玉県やさいたま市では”みどりの手帳”と呼ばれています。療育手帳は都道府県知事または指定都市市長が交付します。療育手帳を取得することによって、さまざまなメリットがあります。1.保育・教育面の援助を受けられる2.就労に向けての支援を受けられる3.各種サービス・割引を受けられる(交通機関、障害者医療費、災害時の支援、施設・サービスの割引4.給付・税の減免や控除に役立つ申請方法や詳しい申請の流れは以下の記事をご参照ください。通院による精神医療を継続的に受ける人の医療費を、公費で一部負担してくれる制度です。申請が通ると「自立支援医療受給者証」が交付され、外来診療・処方薬・病院での療育等の自己負担割合が原則1割になります(ただし、所得によって窓口負担の上限が定められています)。「特別児童扶養手当」とは、障害のある子どもを対象に、その保護者や養育者へ給付される扶養手当です。この法律は精神、または身体に障害がある児童について特別児童扶養手当を支給することで、生活の豊かさの増進を支援することを目的とします。児童が20歳になるまで、障害の等級に応じて一定の金額が保護者もしくは養育者に支払われます。児童発達支援とは、障害児通所支援の一つで、小学校就学前の6歳までの障害のある子どもが主に通い、支援を受けるための施設です。日常生活の自立支援や機能訓練を行ったり、保育園や幼稚園のように遊びや学びの場を提供したりといった障害児への支援を目的にしています。障害のある子どもが住んでいる地域で療育や支援を受けやすくするために設けられました。それまで障害種別だった施設が一元化されましたが、障害ごとの特性に応じた専門的な支援に特化した施設もあります。具体的なサービス・支援としては以下のようなものがあります。・児童発達支援子どもの個別支援計画に応じて聴能訓練や言語聴覚訓練などの専門的な機能訓練を行います。・地域支援(主に児童発達支援センター)地域の保育園といった障害児を預かる施設の訪問などを行い、連携をとっています。また通所していない子どもについても親の相談を受けるなどの相談支援を行っています。・放課後等デイサービス障害のある就学児童(小学生・中学生・高校生)が学校の授業終了後や長期休暇中に通うことのできる施設です。障害児給付費の対象となるサービスで、受給者証を取得することで国と自治体から利用料の9割が給付され、1割の自己負担でサービスが受けられます。カナー症候群などの知的障害を伴う自閉症スペクトラムの子どもの場合、特別支援教育を受けることができます。特別支援学校は心身に障害のある児童・生徒が通う学校で、幼稚部・小学部・中学部・高等部があります。基本的には幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準じた教育を行っていますが、それに加えて障害のある児童・生徒の自立を促すために必要な教育を受けることができるのが大きな特徴です。小・中学校では障害のある子どもの教育環境として、通常学級・通級・特別支援学級があります。それぞれの対象となる障害の程度に明確な基準はありませんが、一般的に通級・特別支援学級・特別支援学校の順に障害への支援量は大きくなります。そのため、障害が軽度の場合は通級、より専門性の高い支援が必要な場合、特別支援学級や特別支援学校を検討する場合が多いと言えます。学校によっては見学会や説明会を行っているところもあります。また、文化祭などのイベントに行くことでも雰囲気や様子をつかむことができます。お子さんと学校へ見学に行ったり、周りの学校の先生やお医者さんなどに相談しながら、お子さんにとって最善の教育環境を考えてみてください。カナー症候群のある人の家族や周りの人の関わり方で大切なこと出典 : まずは家族全員がカナー症候群の特徴を正しく理解し、同じ認識、同じ方針のもとで子どもに接することがとても重要です。また、家族としては症状や関わり方を理解していても、外に連れていくことには不安を抱いてしまう、ということもあると思います。ですが、外の世界に触れて刺激を受けたり、さまざまな経験をすることは、カナー症候群のある子どもの社会性を伸ばしていくチャンスにもなります。そのためには家族だけでなく、学校や近所の人を含め地域みんなでその子の特性を理解し、関わっていくことが必要です。以下では、カナー症候群のある人と関わる人のうち、保護者以外の存在ーきょうだいや地域の人たちへの情報発信や関わり方についてご紹介します。■きょうだいのためにできることきょうだいたちの中には、カナー症候群のある子どもをケア親の姿をみて「自分はいい子でいないと」と気持ちを我慢して孤独感や嫉妬を抱えている子もいます。また、親も「いろんな我慢をさせている」「親が死んだらきょうだいどうしで支えあっていけるのか」と不安になってしまうこともあります。まずは、障害について正確な知識を共有してあげて、色々な感情を無理に抑え込まなくていいことを伝えることが大切です。親としてはどうしてもカナー症候群のある子どものことばかりに目が行きがちですが、きょうだいが親と一緒にゆっくり過ごせる時間を積極的につくってあげることも大切です。■地域のひとを味方によく会う近所の人や、行きつけのお店などには、子どもの特徴についてあらかじめ説明しておき、理解を得ることで、「見守り役」として手を差し伸べてもらえるようにするといでしょう。見かけたときは、お互い挨拶をして、必要であればなにかあったときに連絡をもらえるようにしておくことも助けになるでしょう。まとめ出典 : カナー症候群とは自閉症の中で知的障害を合併する場合を指す用語で、医学的な診断名ではありません。現在の医学的な診断名として、いくつかの自閉症状のある障害が統合されてできた「自閉症スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」(ASD)と診断されることが定着してきています。カナー症候群を含め、自閉症は生まれつきの脳機能障害であると考えられており、親のしつけや愛情不足が直接の原因ではありません。一人ひとり、個性があるようにカナー症候群の特徴の表れ方もそれぞれです。障害名や病名に基づいて治療・療育をするのではなく、その子どもの特徴にふさわしい療育やサポートを柔軟に行っていきましょう。ときに、子育てに悩んだり親として自信を無くしたりしてしまうこともあると思います。一人で抱え込むのではなく、周囲に正しい理解を持ってもらったり、専門機関や同じ悩みを持つコミュニティに相談したり、頼ったりすることが親子にとって重要です。子どもの心の声に耳を傾け、それぞれの親子にあったスタイルで向き合っていくことが大切になってくるのではないでしょうか。
2017年06月21日前回、無事発音がきれいになるまでをお話しましたが、今回は、私が娘と療育の先生にレクチャーいただいたおうちでできる、ことばの訓練方法に実際に取り組んだ話を紹介したいと思います。言語訓練の先生から習った、おうちでの訓練方法広汎性発達障害のある娘は、「さしすせそ」の発音がとにかく難しかったです。本来、「さしすせそ」の発音をするとき、舌は、下の前歯の裏にあり、息を「すぅ~」と、上下の歯の隙間から吐くようにします。しかし、発音が正しく出来ない子の多くは、舌に力が入り、舌の位置が正しくないようです。舌の力を抜き、吹くように息を吐く…。一番近いのは、「静かに」と口の前に人差し指を立てて、「しーっ」というときの吐き方。この方法をすると「し」だけは、きれいな発音になりやすいです。Upload By SAKURAしかし、会話の聞き取りや理解がまだまだ出来ない娘に、舌の位置や、息の吐き方…というのを、言葉だけで教えるのは思った以上に難しい。そんな時に使えるのが、平たい棒付きの飴!ペロペロキャンディー!この飴を舌の上に乗せ、上の歯と下の歯で挟み、息を吐きます。舌を飴と一緒に挟むことによって、舌が奥に引っ込まないようにすることが出来ます。これを何度も繰り返します。Upload By SAKURA娘の場合…聴覚からの情報収集が苦手。耳から入る「さ」と「た」の違いがわかっていないようだったので、言語の先生から、「先にひらがなを書くことを覚えましょう!」と言われました。ひらがなを書く訓練をすることで、「さ」という文字と、「た」という文字の形を覚えさせ、それぞれが別物だということを理解させるようにしました。書くことに、思った以上に興味を示した娘。「さしすせそ」も「たちつてと」も書けるようになり、耳から入る言葉については、それぞれが別のものだと理解したようでした。Upload By SAKURA我が家流の遊びとして、取り入れてみたこと耳から入った「さ」と「た」を区別できるようになった娘でしたが、自分で言うと、「さしすせそ」は、「たちつてと」になっていました。しかも、本人は言えていると思っているため、自分の発音に耳を傾けることが必要になってきました。Upload By SAKURAそこで私は、カードでポーズ遊びを作りました。「『さ』ポーズ」と「『た』のポーズ」をカードにし、娘にどちらかを言わせます。『さ』のカードを選んだ娘が、『さ』を言うことが出来ず、「た!た!『た』のポーズ!」と言います。私は、聞こえたまま『た』のポーズを取ります。すると、『さ』と言っているつもりの娘は、「ちがうよ!た!た!」と訂正します。その時に「え~…『た』に聞こえたよ~?」と言い、自分の発音を気にかけるきっかけを作ります。Upload By SAKURA娘が、もう『さ』と『た』の違いを理解し、自分の発音に意識を向けさせることが出来たら、あとは繰り返すことだけ!しつこく言わせたりして、娘が発音を嫌がってしまっては、逆効果。厳しく発音を訂正したりしないように、気を付けます。日々の生活の中で、『さしすせそ』の言葉に触れ、さりげなくたくさん発音させます。発音が間違っていても、指摘はさらっと。しつこく言い直させることはせず、気持ちとしては、「気が向いたら覚えといてね~」という軽い感じを心がけました。Upload By SAKURA振り返ってみれば、かけがえのない親子の歩みでした娘が言葉が出始めた3歳ごろから、5歳まで向き合ってきた発音。現在、6歳(小学一年生)の娘は、きれいに『さしすせそ』が発音できるようになりました。私の方法が正しかったか…。(他の人から見たら)もっと早く言えるようになる別の方法があったか…。今となってはわかりません。でも、大切なのは、目標に向かって、我が子と一緒に歩んできたということ。一緒に訓練して、どうすれば良くなるか?を考えながら模索しながらやってきた。私と娘にとっては、なくてはならない重要な時間でした。これからも私は、こうやって一緒に寄り添って歩いていきたいと思っています。Upload By SAKURA
2017年06月21日ネグレクトとは?出典 : 一般的にネグレクトとは、「幼児・児童・高齢者・障害者などに対し、その保護、世話、養育、介護などを怠り、放任する行為」を指します。中でも特に、子どもに対して行われるネグレクト、すなわち「育児放棄」を意味して使用されることが多いようです。厚生労働省によると、ネグレクトは「身体的虐待・精神的虐待・心理的虐待とならぶ虐待の一つ」とされています。ほかの3種類の虐待が一般的に「子どもに有害なことをする」ものであるのに対して、ネグレクトは「子どもが必要とするものを親が提供しない」ことであると言えます。またネグレクトは、その背景によって、物理的・経済的条件が整っているのにもかかわらず保護を遺棄する「積極的ネグレクト」と貧困や知識不足などが原因で保護ができない「消極的ネグレクト」とに分けられます。両者とも、親の注意が子どもに向いていないという点では共通していますが、根本的な背景が異なるために解決の方法も変わってきます。児童虐待の定義と現状|厚生労働省厚生労働省の報告資料によると、平成27年度に全国の児童相談所が対応した児童虐待に関する相談のうち、約4分の1にあたる2万4438件がネグレクトであったとされています。また、年度別の推移を見るとネグレクトの相談件数は増加傾向にあります。相談件数が増加している要因としては、後述する児童相談所全国共通ダイヤルの3桁化189(イチハヤク)が広く知られるようになってきたことや、児童虐待事件の報道によって国民の児童虐待に対する意識が向上したことが指摘されています。そのため、相談件数の増加は必ずしもネグレクトの数そのものの増加を示唆するわけではありません。平成27年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数|厚生労働省平成27年版 子ども・若者白書 > 犯罪や虐待による被害|内閣府ネグレクトに気付くためのサインはあるの?出典 : ネグレクトを受けている子どもには、どのような特徴があるのでしょうか?一般的に、以下のようなサインが見られる場合、ネグレクトの可能性が考えられると言われています。ただし、これらのサインが見られる子どもすべてがネグレクトを受けているわけではないので、あくまで一例として参考にしてください。・子どもの身長・体重が同年齢標準よりも極端に低いまたは軽い・冬なのに上着を着ていないなど季節はずれな服装をしている・皮膚がかさかさで目の下に黒いクマがある・虫歯がある、予防接種を受けていないなど医療的ケアを受けていない明白な兆候がある・いわゆる「ゴミ屋敷」に住んでいる等、住居が不適切である・親の監督不行き届きのためにたびたび危険な行為に参加している・不潔な身なりをしている・平日の昼間なのに公園にいるなど、学校に行っていないように見える・夜遅くまで外で遊んでいるなど、家に帰りたがらない・空腹のため、食べ物をせびったり盗んだりする・気だるそうで、何事にも無関心に見える現実では、断片的な情報しか得ることのできない家庭外の第三者がネグレクトがあるかについての判断をすることは容易ではありません。次章では、どこから虐待といえるのか、厚生労働省が示す虐待の捉え方について解説します。バーバラ ローエンサル『子ども虐待とネグレクト』(明石書店、2008)どこからが虐待になるの?出典 : 親による子どもに対する行為が虐待にあたるかどうかの判断は、以下で紹介するような児童虐待防止法の定義に基づいて総合的に行われるのが基本ですが、厚生労働省はその過程における重要な観点として「子どもの側に立って判断すべき」という点を明らかにしています。厚生労働省のホームページでは、虐待を判断する上で有効な考え方として、小児科医・小児精神科医である小林美智子氏の言説が引用されています。「虐待の定義はあくまで子ども側の定義であり、親の意図とは無関係です。その子が嫌いだから、憎いから、意図的にするから、虐待と言うのではありません。親はいくら一生懸命であっても、その子をかわいいと思っていても、子ども側にとって有害な行為であれば虐待なのです。我々がその行為を親の意図で判断するのではなく、子どもにとって有害かどうかで判断するように視点を変えなければなりません。」(小林美智子,1994)つまり、親に虐待の意図があろうとなかろうと、子どもにとってその行動が虐待であると感じられれば、それは虐待であると考えられているのです。ネグレクトを含む児童虐待に関係する法律の一つに、児童虐待の発生予防、早期発見・早期の適切な対応、虐待を受けた子どもの保護・自立に向けた支援などの推進を目的に制定された「児童虐待防止法」があります。この児童虐待防止法において、虐待は以下のように定義されています。<児童虐待防止法 第二条>>この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。一児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。二児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。三児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。四児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。出典:児童虐待の防止等に関する法律ここで挙げられている4種類の行為のうち、「三」がネグレクトにあたります。しかし、堅い表現で書かれた法律の条文を読むだけではあまりイメージがわかない方もいるかもしれませんね。より具体的には、以下のような行為がネグレクトに該当するとされています。<ネグレクトに該当する行為>●子どもの健康・安全への配慮を怠っているなど。(1)家に閉じこめる(子どもの意思に反して学校等に登校させない)、(2)重大な病気になっても病院に連れて行かない、(3)乳幼児を家に残したまま度々外出する、(4)乳幼児を車の中に放置する など。●子どもにとって必要な情緒的欲求に応えていない(愛情遮断など)。●食事、衣服、住居などが極端に不適切で、健康状態を損なうほどの無関心・怠慢など。(1)適切な食事を与えない(2)下着など長期間ひどく不潔なままにする(3)極端に不潔な環境の中で生活をさせる など。●親がパチンコに熱中している間、乳幼児を自動車の中に放置し、熱中症で子どもが死亡したり、誘拐されたり、乳幼児だけを家に残して火災で子どもが焼死したりする事件も、ネグレクトという虐待の結果であることに留意すべきである。●子どもを遺棄する。●祖父母、きょうだい、保護者の恋人などの同居人がア、イ又はエ(心的虐待、性的虐待又は心理的虐待*)に掲げる行為と同様の行為を行っているにもかかわらず、それを放置する。子ども虐待の援助に関する基本事項|厚生労働省から抜粋、一部編集、*は編集部註一口にネグレクトといっても、衣服の着替えなどの不十分なまま登校してくるような事例から、飢えなどによって子どもが命を失ってしまうような事例までが存在し、その範囲は広いものとされています。ただし、どのような種類・程度のネグレクトであったとしても、それが子どもに大きな悪影響を与える可能性が高いということは紛れもない事実です。次章では、ネグレクトが子どもにどのような影響を与えるのかについて見ていきます。ネグレクトが子どもに与える影響は?出典 : 虐待の一つであるネグレクトは、子どもにさまざまな悪影響を与える可能性があります。本章では、身体的影響・知的発達面への影響・心理的影響の3種類に分類してネグレクトが子どもに与える影響について解説します。ネグレクトが子どもに与える身体的影響としては、十分な食事が与えられず栄養障害になってしまったり、愛情不足により成長ホルモンが抑えられて成長不全を引き起こしたりという身体的発育への悪影響のほか、保護者の監督不十分により子どもが事故に巻き込まれたり、保護者の関心あるいは知識不足によって治療すべきケガ・病気が放置され悪化したりという直接的な悪影響が挙げられます。事故に巻き込まれた結果、大きなケガを負ったり、命を落としてしまったりするケースも報告されています。ネグレクトのなかには、子どもが学校に行けていないケースも存在します。そのようなケースでは、子どもの言語発達に遅れが生じたり、学力が同年代の子どもと比べて低くなってしまったりする可能性が高いです。学年に応じた学力が身に付かないことで、その後の進学や就職において困難を抱えてしまうことが予想されます。ネグレクトが原因で、親との間に適切な愛着関係が築けないと、愛着障害や感情のコントロールに関する障害を発症することが多く、そのために対人関係で困難を抱えるようになってしまうことがあります。また、ネグレクトを受けた経験がトラウマとなり、長い間苦しむこともあります。さらに、保護者からの愛情・関心を十分に受けることのなかった子どもは極端に自己肯定感が低いことも少なくなく、自分自身を大切に思えない感情から自傷行為をしたり、自殺を試みたりする確率が高いといわれています。子ども虐待対応の手引き(PDF版)|厚生労働省日本弁護士連合会子どもの権利委員会『子どもの虐待防止・法的実務マニュアル【第5版】』|厚生労働省ネグレクトを引き起こす要因出典 : 子どもの虐待は、身体的、精神的、社会的、経済的などいくつもの要因が複雑に絡み合って起こると考えられています。そのためネグレクトを解決するためには、単純に虐待をする側を罰したり責めたりするだけでは解決しないことが少なくありません。虐待をしてしまう状況に陥りやすいリスクに早く気付き、そこに支援の手を差し伸べることが、結果的に子どもを虐待から守ることにもつながります。保護者側の要因としては、さまざまなものが考えられます。まず要因の一つとして、親が子どもを受け入れられていないことが挙げられます。残念なことに、望まない妊娠であったり、子どもが何らかの障害や疾患などを持って生まれてきたりしたために、子どもを自分の子として受け入れられず、ネグレクトに至ってしまうケースがあるのです。ほかにも、「再婚相手の連れ子だから」という理由で子どもを愛せず、ネグレクトをしてしまう事例も報告されています。そのほかには、保護者の知識不足がネグレクトの要因となることもあります。育児知識が不足しているために子どもに与えるミルクの量が不適切だったり、子どものケガや病気に対して、例えば病院に連れていくなど適切な対応を取れていなかったりする場合もネグレクトとなります。また、保護者自身が虐待を受けて育った場合、自分の子どもに対しても虐待をおこなう可能性が高いとされています。子ども側の要因として共通してポイントとなるのは、「養育者にとって何らかの育てにくさを持っている」ことです。子育てにおける「困りごと」によって親のストレスなどがたまり、ネグレクトへとつながってしまうことがあるのです。例えば、乳児、未熟児、障害児、慢性疾患を抱える子どもは、そうでない場合の子育てに比べて虐待のリスクが高まると言われています。養育関係の要因としては、家庭の経済的困窮と社会的な孤立が大きく関係しているとされています。経済的な困窮のために医療費が払えず、治療を必要とする子ども病院に連れていくことができないケースや、なんとか生計を立てるために保護者が長時間・夜間労働をしている間、子どもが「放置状態」になってしまうケースなどがあります。孤立した家庭は子育てに関する知識・情報を持たなかったり、そうした情報にアクセスしにくかったりするほか、頼りにできる人がいないために保護者が精神的に追い詰められてしまうなどの理由で、ネグレクトを含む虐待全般が生じるリスクが相対的に高いと考えられています。ネグレクトを受けている可能性のある子どもを見つけたら?出典 : 虐待から子どもを救うためには、第一に虐待が行われている疑いがあることが外部に認識され、その情報が関係機関に伝えられる必要があります。虐待を受けているのではないかと思われる子どもを見つけた場合、その内容を児童相談所に連絡することを「通告」と言います。速やかな通告がされないと、行政機関も虐待の防止に向けた活動を行うことができず、虐待を受ける子どもの生命や心身に大きなダメージを与える危険性が高くなります。そのため、虐待の通告は「児童虐待対応において極めて重要」とされており、したがって、児童虐待防止法では以下で示す通り、すべての国民に通告義務を課しています。<児童虐待の防止等に関する法律第六条>児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。出典:児童虐待の防止等に関する法律通告の時点で通告者が本当に虐待であるかどうかを判断する必要はなく、「一般の人の目から見て主観的に子どもの安全・安心が疑われる場合」であれば通告してよいのです。また、もし仮に通告の後で虐待の事実がないと判明したとしても、虐待の事実がないことを知りながら故意に虚偽の通告したという場合などを除けば、法的責任を問われることはありません。また、通告した人が特定されるような情報や通告内容が漏れることはありません。子ども虐待対応の手引き(PDF版)|厚生労働省日本弁護士連合会子どもの権利委員会『子どもの虐待防止・法的実務マニュアル【第5版】』■「189」で電話相談しましょう「189」は、児童相談所や市区町村が「いちはやく」児童虐待に対応できるよう、厚生労働省により設けられた全国の児童相談所の共通ダイヤルです。「189」に電話をかけ、音声ガイドに従うことで最寄りの児童相談所につながります。Upload By 発達障害のキホン「189」への相談は24時間365日いつでもすることができます。電話の通話料金自体は相談者の負担となりますが、相談料などはいっさいかかりません。また、相談者の氏名や相談内容に関する秘密に関しては口外されないよう定められているため、相談者にとって安心して相談しやすい環境が整えられています。児童相談所の担当者に対して氏名を明かしたくない場合は、匿名での相談もおこなうことができます。しかし、いざネグレクトを受けている疑いのある子どもを見つけたとしても「自分の通告によって親子の関係を引き裂いてしまうのではないか」と不安に感じ、通告をためらってしまう方もいるのではないかと思います。そのような感情を抱くのは自然なことですが、そんなときに知っておいてほしいのは、「児童虐待の通告は、子どもだけではなく、保護者をも救う」ということです。多くの場合、ネグレクトが起きてしまう背景には「保護者が抱えている何らかの困難」が潜んでいます。ネグレクトをしてしまう保護者は、経済的に苦しい生活をしていたり、自分自身が病気や発達障害、精神疾患などを抱えていたり、子どもをしつける方法がわからなかったりという困難を抱えているにも関わらず、身近に相談する相手もいなくて、社会的にも精神的にも孤立状態にあることが多いと考えられているのです。通告によって行政がネグレクトの存在を知ることができれば、それは保護者にとって子どもとの関わり方を見直し、自分自身が抱える困難への対処を行うきっかけとなります。また、貧困や疾患が背景にある場合や子育て方法がわからない場合など、保護者自身への支援につながることもあるのです。さまざまな思いが浮かんで通告をためらってしまうことは自然なことですが、それでも勇気を持って行動することで、親と子ども、両者を救う手助けとなるのです。児童相談所全国共通ダイヤルについて|厚生労働省児童相談所全国共通ダイヤルの利用状況|厚生労働省「189」(児童相談所共通ダイヤル)について|全国民生委員児童委員連合会児童虐待の通告義務について|東京都八王子市◇ネグレクトをやめたいと苦しむ親の相談先「ネグレクトをやめたい」と苦しむ親への支援として、社会福祉法人子どもの虐待防止センター(CCAP)が、研修を受けた相談員による電話相談を行っている他、ケースによっては虐待などの悩みをもつ母親同士が自分の体験を語ることによる治療的グループケアなども行っています。また、社団法人子どもの虐待防止センターでは、電話での相談を受け付けているとともに、育児スキルトレーニングの教室の実施なども行っています。「虐待をやめたい」と悩み苦しむ親への支援社会福祉法人子どもの虐待防止センター (CCAP)まとめ出典 : 保護者の愛情や関心が子どもに向かないことで生じるネグレクトは、子どもの精神的・身体的な発達に大きなダメージを与えます。精神面で例を挙げると、幼児期に保護者との間で愛着を築けなかったり、ネグレクトの経験がトラウマとなったりすることで長期的な影響を与えることが多く、それらの影響が多動性や気分のコントロールに関する障害、対人関係に関わる障害などとなって現れることも少なくありません。直接的な影響としては、親の注意監督不足によって子どもが事故・事件に巻き込まれて大けがを負ったり命を失ってしまったりする事例が報告されています。虐待を受けている子どもは、日常的に虐待を受けていながら、それを虐待とは感じていないこともあると言われています。また、小さい子どもは自分でSOSを出すことができません。ネグレクトを受ける子どもを救うためには、周りの人が気づき、支援の手を差し伸べることが極めて重要です。もし疑いのある子どもを見つけたら、勇気をもって行動するようにしましょう。
2017年06月20日食卓で派手にこぼして、母の顔色をうかがう息子(笑)Upload By かなしろにゃんこ。もしや本当に見えていない?想像以上に視野が狭い?子どもは大人ほど視野が広くないことは聞いていたけれど、うちの息子は特別に視野が狭いのかしら?と思ったのは、物を「落とす」「こぼす」「倒す」回数が尋常じゃないぐらいに多いと気づいたことからでした。テーブルの上にある物が見えていないみたいなので、見えていそうな位置に物を移動させたり「その位置だと落とすよ」など注意していました。回数が多いとこちらもイヤになるので、ついついガミガミ言ってしまいます。ガミガミ言う自分もとてもイヤなので、小学校高学年の時期から「粗相をしたら自分で片づける!」と約束を交わしました。母が心に決めたルールはシンプル。「息子が自分で片付けるなら、怒らない」Upload By かなしろにゃんこ。怒ったところで変わらないですし、治るわけでもないので自己責任にした感じです。もちろん粗相をした際に怒った顔をしてしまっては何も言わなくても怒ったことになりますから、私は怒らないように顔を作ったのでした。その顔作りも、息子に「本当はお母さんは怒ってるんじゃないか?」と思わせてはいけないので必死です。結果、何か言いたそうな、なま温か~い顔になっていたそうです。Upload By かなしろにゃんこ。「怒りんぼの顔」をやめてみたら、楽になったUpload By かなしろにゃんこ。息子がお皿を割ってしまっても「日常に使っている物はいつか壊れる運命」と伝えました。片づけを自分でするようになると、次第に「怒られるんじゃないか」と怯える気持ちはなくなっていったようです。私もいちいち怒らないという自分の中に決まりを作ったことでスゴク楽になりました、息子のやらかしに対して簡単に許すことができるようになってきたのです。でもま、息子の片づけは拭き取りが甘かったりするので結局私がやり直すことになるのですが…「もっときれいに掃除しなさい!」と神様が私に伝えたくて息子に粗相をさせたんだろうな~と、床やテーブルを拭きながら思う今日この頃です(笑)
2017年06月20日実は私、「選択性のかんもく」のある子でした。出典 : 今でこそ、凸凹3兄妹の子育てをしながら、「楽々かあさん」として支援・執筆活動を続け、学校の先生方と連携し、ママ友さんやご近所づきあいも無難になんとかこなせている「大人の凸凹さん」の私。でも、実は、小学生の頃は「選択性のかんもく」のある子でした。「選択性のかんもく」(場面緘黙症)では、家などで慣れた人とは話せるけど、それ以外の場所・人ではだんまりになる…などの特徴が現れます。(※「選択性のかんもく」表記について:現在日本では、本人の意思に関わらず、話すことに困難さがあることから「場面緘黙症」という呼称が一般的なようですが、この漢字表記は、視覚にやや過敏性のある筆者が、若干の圧迫感を覚えますため、このコラムでは「選択性のかんもく」という表現を使用させて頂きます。)選択性のかんもくになる原因や、発達障害との関連性は明確ではないようですが、私自身のことを振り返ってみれば、元々の体質的な凸凹などから不安感が強く、いろいろと空気を読み過ぎていたように思います(あくまで私自身の自己分析であり、選択性のかんもくになる理由はさまざまだと思います。)そんな私から、人と話すことが苦手なお子さん・大人の方、そしてお子さんを心配されながらも子育てしている母さん・お父さんに今、伝えたいことがあります。休み時間の過ごし方が分からなかった出典 : 私は、小さな頃から感覚が敏感な体質で、小学3年生の頃まで「選択性のかんもく」がありました。私の場合、軽く頷いたり、「うん」とか「はい」程度は言えたので、ある程度の意思疎通はでき、「内向的で大人しい子」といった印象だったように思います。そのため当時は「発達障害」や「場面緘黙症」などの言葉を、周囲の大人は知る由もありませんでした。でも、首を横に振るなど「ノー」という意思表示は苦手だったように記憶しています。そして、不思議と学校の授業中は発言できていたので、さほど問題にはされませんでしたが、その実、私はとっても困っていました。授業中は、「1+1は…?」と聞かれれば、答えは「2」と決まっています。「教科書の◯ページを読んで」と言われれば、そこを書いてある通りに読めばいいだけです。ところが、休み時間や、給食、登下校などの「お友達と自由に話していい時間」には、一体何を話したらいいのか、何をして過ごせばいいのか、さっぱり分かりませんでした。そこには「正解」がなかったからです。更に、こだわりも強かったので「こうしなければならない」という自分ルールがたくさんあり、自由に身動きできなくなっていました。だから、当時の私は、授業中よりも休み時間のほうが緊張して過ごしていました。今思うと、凸凹傾向で感覚が敏感だった私にとって「休み時間」=「予測のつかない時間」で、とても不安だったように思います。教室はざわざわとして情報量が多く、予測不能に自由に動き回る男子達にも、宇宙語のような言語を操る女子達にも、私の情報処理は全く追いつかなかったのです。当時の私には、学校の休み時間は混沌として、居場所のない空間でした。そして、どうしたらいいのか分からずにだんまりを決め込んで、自由帳に黙々と絵を描き続け自分を守っていました。お絵かきの中だけは自由に過ごせる居場所があったんです。Upload By 楽々かあさん今でこそ、いろんなアイデアが出て来る私ですが、当時は、クラスの寄せ書きの大半に「生真面目」と書かれるくらい真面目過ぎる子で、決められたルールや規則に従って動くことはできても、柔軟に、臨機応変に動くのは苦手だったんですね。大人になってからも、話すことは苦手。自分自身を療育した私そんな私も、小3の時の約1ヶ月間の不登校と、担任の先生のある言葉をきっかけに、少しずつクラスの子達とも話せるようになっていったのです。それでも、複数の人前で話すことや、雑談には苦手意識があるまま大人になりました。以前は、公園のママ友さん達の井戸端会議の輪の中では情報量が多過ぎて、一体誰を見て、どのタイミングで話せばいいのか分からなくて、帰宅後どっと疲れてしまったり、悶々と一人反省会をして眠れない、なんてこともありました。娘にも「ママ、いつもおばあちゃん達とお話するばっかじゃなくて、お母さんのお友達も作ったら?」と促される始末(笑)出典 : でも、うちの子達にソーシャルスキルやセルフコントロールを教えるために学んだことを、私自身が目の前で実践し、お手本を見せていく必要に迫られたのです。子どもに一つひとつ、人づき合いの仕方を教えていくのと同時進行で、私はアラフォーになってから独学で自分自身を療育し、苦手さと上手につき合えるようになりました。(療育は、何才からでも遅過ぎるということはありません!)うちの子と同じように、人づき合いを「自然と学ぶ」ができて来なかった私。だから、社交的な方なら自然と当たり前にできることも、ひとつひとつ、自分自身に再度プログラミングするように、それまでのこだわりや思い込みを書き換えていきました。そして、感じてはいけない感情などない、ということも発見しました。その結果、今では人づき合いで大きく困るということもなく、自分にちょうど良い距離感を掴み、ほどほどに人間関係に無理しない線引きができるようになって、なんとかお母さん同士の雑談も、たまには楽しめるようになりました。そして、そんな子ども時代を過ごした私が、前著の出版を機に、お母さん達の前で講師としてお話する機会を、ほんの少しだけ頂くこともできたのです。この機会を通じて「自分は意外と話すことが好きだったんだ」と、生まれて初めて知りました。そんな私から、今「人と話すのが苦手」だと感じているお子さん・大人の方に向けて書いたメッセージを、お伝えします(以下、著書より引用して公開)。今、人と話すのが苦手なあなたへーそして、小学生の頃の私へーUpload By 楽々かあさん”人と話すのが苦手なあなたは、きっととても心優しい子・方なのでしょうね。もしかしたら、誰も傷つけないように、一生懸命言葉を選び、相手の期待する「正解」を探して、言葉が出てくるまでに、すごく時間がかかったり、ましてや、グループの会話だと、誰に返したらいいのかも分からないし、せっかく「正解」らしきものを思いついても、その間にお話はどんどん進んで、今頃言ったら雰囲気が壊れるかも……なんて、結局言葉を飲み込んでいるのかもしれませんね。でもね。実は、他の人は「正解」を知りたいのではないんです。あなたに話しかけてくる人は、自分の話を最後まで聴いて欲しいだけか、あなたの素敵な声が、ほんのちょっと聞きたいだけか、あなたに興味があって、自分との違いを知りたいだけなんです。でも、自分の心がよく分からないうちは、無理に話さなくても大丈夫です。優しいあなたは、誰よりもまず、自分の心の声をよく聴いてあげて下さいね。よく知らない子・人と、そんなにお話できなくてもいいから、今は、自分の心と仲良くなって、できるだけホンネで話せれば、それで充分です。そして、もし、自分の心の声がはっきりと聴こえてきたら、自然と、だれかにそれを伝えたくなるかもしれません。もしかしたら、人を気遣って思いやり、相手に合わせてあげられる……そんな優しいあなたを必要としている人が、いつか、どこかで、待っているのかもしれませんね。人と話すのが苦手だった、私より。”出典「発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て法」p.146よりおわりに出典 : 今、「選択性のかんもく」のあるお子さんや、人と話すのが苦手だと感じている子・方、そんなお子さんを見守っているお母さん・お父さんは、話すことに対する不安やプレッシャーを強く感じられているかもしれません。私もそうでした。だから、「私が大丈夫になったんだから、お子さんも大丈夫」なんて、私には言えません。お子さんにはお子さんのペースがあるし、背景となる理由も人それぞれですものね。でも…かつてそんな子だった私も、無事大人になり、この通り、なんとか元気でやっているということ、頭の片隅で覚えていて下さると嬉しいです。Upload By 楽々かあさん大場美鈴/著『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て法』2017年/刊/ポプラ社
2017年06月19日ある日突然始まった食わず嫌いUpload By ぽんぽん離乳食期の終わりころまでなんでも食べていた長男ですが、ある日突然、野菜を拒否するようになってしまいました。大好きだったトマトも一切、口に入れてくれなくなりました。初めての育児。食生活は大切に育んできたつもりでしたUpload By ぽんぽん独身時代に子どもを持つ先輩ママから、「小さいころの食生活が、好き嫌いを左右する」と言われました。育児書にもそのように書いてあったので、離乳食期は毎日いろんなものをすり潰し、みじん切りにし、様々な食材や料理を口にできるよう頑張ってきました。栄養バランスを考えた献立に、彩りや盛り付けもこだわって食べさせていました。それなのに結局食べなくなってしまいました。Upload By ぽんぽんUpload By ぽんぽん子どもの好き嫌いは「親の責任」だと思っていた日々好き嫌いは親の責任!と思っていた私は、とにかく一口だけでもいいから食べさせようと頑張りました。「野菜を食べている」ことを分かってもらい、「野菜って美味しいんだ」と気づいて欲しかったので、野菜の色や形が分かる状態で食べさせようとしていたのですが、全くダメでした。食べさせるために笑わせたり、歌ってみたり、泣き真似したり、褒め倒したりもしましたが、どれも上手くいかず、イライラして怒ってしまうこともありました。Upload By ぽんぽん嫌いな野菜も細かく刻んだりペースト状にして、好きなおかずに混ぜ込めば食べてくれていたのに、この頃の私は、学校給食ので苦労しないようにと、とにかく「野菜を野菜だと分からせて食べさせること」に非常にこだわっていました。発達障害の特徴の1つとして偏食があることを知り…Upload By ぽんぽんあまりにも食べてくれず、私が作る野菜が入った食事を頑なに拒否。食べさせようとすると酷い癇癪を起こし大泣きする様子や、気付かないように口に入れても吐き出す様子に、「もしかして、特性による感覚の違いで、食べれないものがあるのかな」と思うようになりました。その頃はちょうど、食事以外のことでも発達が気になっていた時期でもありました。発達障害について調べ物をする日々の中、子どもの食事の好き嫌いに特性が関係している可能性も知りました。私たちが美味しいと思っているものも、長男にとっては「口の中に砂を入れられている」ような感覚なのかもしれない…。無理矢理食べさせようとするのは長男にとってものすごいストレスになっているはず…食べなかったら諦めて少し様子を見よう。食べる気になるまで待ってみよう。発達障害と食事の関係に調べるにつれ、食事の好き嫌いについても柔軟に考えられるように、少しずつ気持ちが変化していきました。出した食事を残されるのはつらい。でもそれは誰のため?Upload By ぽんぽん食べないことを「仕方ないかも」と思うようにしてからも、好き嫌いをする様子を見てしまうと、まだまだ長男のためにあんなに頑張ったのに…という気持ちが出てしまうことがありました。深呼吸して肩の力を抜いて考えてみると、ふと我に帰ります。「食べないものの分の栄養は、他で摂れば良いし、無理に野菜を見せて食べさせなくたって良い」と。無自覚だった今までの私、好き嫌いは親の責任。人前で子どものことで私が恥をかきたくないという思い。このことで、とにかく頭がいっぱいだった今までの寄り戻しがきていました。Upload By ぽんぽん考え方を切り替えた事で、長男の偏食との向き合い方が少しずつ変わっていきました。嫌がった時は無理に食べさせようとせず、楽しい食事の時間になる事だけを心掛けるようにしました。起こったりすることも減っていったように思います。偏食に悩んだ日々から1年…。療育にも通うようになってきっといつか、環境が変わったり、同年代の友達が食べていたら自分から食べようとする日が来るはず。そう期待しながら食べてくれないおかずをただ目の前に置く日々を送っていたのですが、3歳健診で言葉の遅れを指摘されたことをきっかけに、療育にも通いはじめました。Upload By ぽんぽんお友達も増えたことで、友達が食べているものに興味が出て、決して口に入れなかった野菜にもチャレンジしてくれるようになりました!!まだまだ小さい長男。これから先いろんな経験をして、好きなものが嫌いになったり、嫌いだったものが好きになったりすることもあるはず。そういう部分も含めて、育児を楽しめたらと思っています。
2017年06月18日可愛い0歳の姪っこちゃん、抱っこしてた時のこと…Upload By ラム*カナUpload By ラム*カナUpload By ラム*カナUpload By ラム*カナ赤ちゃんを抱っこしている私を優しい眼差しで見つめていた長男。ところが赤ちゃんが泣きながら私の抱っこを拒否。どうやら赤ちゃんに逃げられた私を目の当たりにして、長男はいたたまれなくなったようです。すぐに「良かったらぼくをどうぞ」と言わんばかりに、私の膝に乗ってきてくれました。ADHDのその発想力と瞬発力。その力は、いつも私に温かい気持ちをくれるのです。
2017年06月17日注意してもなおらない、長男流ごはんの食べ方夏休み、子供達と主人の実家に帰省したときのことです。私と義母はテーブルに朝食を並べていました。そして全員が食卓につき、「いただきます」の声とともに食事が始まります。おはしがまだ上手に使えない長男も、スプーンを動かしながら必死に食べています。ふと見ると、長男のテーブルにみそ汁が少しこぼれています。長男が白ご飯にみそ汁をかけてスプーンで混ぜて食べるからです。Upload By シュウママ実はこの食べ方は、いつものことです。ご飯をそのまま食べることができず、みそ汁を混ぜて食べるため、家で注意し学校でも指導してもらっているのですが一向に直りません。Upload By シュウママ見た目もあまり良くないし、みそ汁がないと白米が食べれないというのも困ります。特に礼儀作法に厳しい年代の義両親が、どう感じるだろうか、そう思い私も気が気ではありません。そんな時義父が、すっと長男の所に寄って行ったのです。注意するだろうと思ったのに…義父の言葉は義父は、長男の頭を撫でながら言いました。Upload By シュウママ「そうなんですか?」と私が訊ねると、義父は「まだ私がシュウくらいの小さい時にねえ。ご飯とみそ汁を混ぜてよくおふくろに叱られたよ。でもこの食べ方が好きでねえ。なかなかやめられなかった。シュウは私によく似てるなあ」目を細めて長男を見る義父には、あたたかさが滲んでいました。義父は普段口数が少なく、子供たちを抱っこしたり遊んだりしてくれることもほとんどありません。けれどその言葉と表情でどれほど長男のことを可愛く思っているか、表に見えない感情が垣間見えた気がして、なんだかとても嬉しい気持ちになったことを覚えています。Upload By シュウママ長男を特性ごと愛し、受け入れてくれる人が周りにいる幸せ私はそれまで、ご飯とみそ汁を混ぜるという食べ方に固執し、なかなか直らない長男の姿に、これは自閉症特有のこだわりなんだと切なく思っていました。けれどいいじゃないか。それがシュウのやり方なんだから――大きく優しく受け止めてくれた義父が、まさしく小さなことにこだわっていた私の心を解きほぐしてくれたような気がしたのです。高齢の義父は、自閉症という言葉を聞いても詳しく理解してはいません。けれど長男の知的障害ははっきりとわかっているはずです。それでも義父はそんなことは関係なく、長男の中に自分と似たものを感じ、血のつながりを見い出して喜んでくれました。発達障害を持つわが子を、丸ごと愛してくれる人の存在に気付いた時、親にとってこれ以上の幸福はないんだな、そう感じた出来事でした。
2017年06月16日低身長とは出典 : 低身長とは、その年齢の子どもの平均身長と比べて大幅に身長が低い状態を指します。低身長は「周りの子どもと比べると身長が低い」「身長順に並ぶと自分の子どもはいつも先頭だ」など、単純に周りの他の子どもとの比較で認められるものではありません。低身長と認められている子どもの割合は、どの年齢においても全体の2%程度と言われています。この割合は、身長のSD値に基づいて割り出されています。SDとは、標準偏差(StandardDeviation)の略称で、低身長を考えるうえでは平均身長からどのくらい高いか、低いかを客観的に判断する基準として用いられています。成長科学協会身長基準・成長速度基準(男女)低身長はSDが-2以下の数値を取った場合に認められます。ただ、SDが-2以下で低身長であると判断されたとしても、必ず医療的な治療をしなければならないわけではありません。むしろ、低身長の中で治療が必要だったり、何か病気が隠れていたりするケースは珍しいといえます。はぐはぐキッズクリニック附属東出低身長治療研究室低身長の原因には何があるの?出典 : 低身長の背景には何があるのでしょうか。4つにわけて解説していきます。身長のSD値が-2以下であっても、特にこれといった原因がない場合が大多数といわれています。子どもの身長の伸びには個人差があり、早い段階でぐんぐんと伸びる子どもや、ゆっくり時間をかけて伸びる子どもなどさまざまです。特に病気などとの関連が見られず、生活習慣も良好である時は、「この子のペースでゆっくりと伸びていくのだな」と長い目で子どもの成長を見守ることが大切です。親御さんの中には、「子どもが低身長なのは自分の身長が遺伝的に影響しているからなのでは?」と不安に思ったり、責任を感じたりしてしまう方もいるかもしれません。確かに、子どもの身長には、ある程度両親の身長が影響するということがわかっています。身長や子どもの身体発達に関する本には、しばしば両親の身長から子どもの最終身長を求める計算式などが紹介されていることもあります。ですが、子どもの身長の伸びは親の遺伝のみで決定されるものではありません。食事や睡眠などの生活習慣や、スパートをかけるように身長が伸びるとされている思春期がどのタイミングで訪れるかなど、さまざまな要因が絡み合って身長は伸びていきます。両親の身長から子どもの身長を求める計算も、あくまでも目安の1つにしか過ぎません。遺伝的な要因を気にするよりは、子どもの生活習慣を整えたり、成長記録をこまめにつけたりすることを意識する方が大切です。子どもが親から愛情が得られず、精神的なストレスが増えると、子どもの成長を促す重要なホルモンである成長ホルモンが分泌されにくくなる、という研究結果が出ています。親が子どもへ愛情をもって接することができていないなど、精神的ストレスを与える環境が原因で子どもが低身長になることを愛情遮断症候群(母性剥奪症候群)といいます。子どもに精神的ストレスを与える、というと虐待やネグレクトなどを想像してしまいがちですが、そのような極端な場合でなくても愛情遮断症候群による低身長は起こることがあります。例えば、親同士のケンカが絶えないことを子どもが思い悩んだり、親が子どもにプレッシャーをかけてしまい、子どもが家庭で安らぐことができなかったりすることが、低身長の一因となる可能性があるのです。親同士の不仲や子どもへの接し方が子どもの成長に大きな影響をもたらす、ということを親自身が自覚し、子どもにとって家庭が安心できる場になるように環境を整えておくことが、愛情遮断症候群の予防になります。成長科学協会 研究年報 No.37 2013精神的ストレスに応じて成長ホルモン分泌を抑制する分子の探索額田 成/著『子どもの身長を伸ばすためにできること―小児科専門医が教える食事と生活習慣』2004年/PHP研究所低身長が何らかの病気によってもたらされている場合、次のような病気が考えられます。■成長ホルモンや甲状腺ホルモンの分泌異常による病気(成長ホルモン分泌不全性低身長症や甲状腺機能低下症など)出産の時に仮死状態になったり、事故など何らかの原因で脳が傷ついてしまったり、脳腫瘍など脳の機能障害になったりすることにより、成長ホルモンが分泌される脳下垂体という部分に障害が残ることがあります。そうなると、成長ホルモンの分泌が十分に行われず、低身長につながります。■染色体の病気(ターナー症候群やプラダー・ウィリ症候群など)ターナー症候群とは、染色体の全体または一部が欠けることによって、低身長や女性ホルモンの不足を引き起こす疾患です。女性だけに発症するという特徴があります。プラダー・ウィリ症候群とは、15番染色体という染色体の異常により発症する症候群です。症状は、低緊張、母乳を吸うための筋肉が弱い哺乳障害、幼児期からの過食と肥満、発達の遅れ、低身長などが特徴とされています。■子宮内発育不全(SGA性低身長症)母親のお腹の中でゆっくりと成長したため、お腹の中にいた期間の割に小さく生まれてきた赤ちゃんがいます。このような赤ちゃんは、8割以上が2, 3歳までに急速に成長し、標準身長に追いつきます。しかし、これらの赤ちゃんのうち、2, 3歳になっても標準身長に追いつくことができない場合、SGA性低身長症と呼ばれます。SGA性低身長症は何も治療をしないと低身長のまま大人になる可能性が高いだけでなく、肥満や思春期が早く来る、糖尿病になりやすいなどの傾向があります。3歳から成長ホルモンによる治療を始めることが可能です。■骨や軟骨の病気(軟骨異栄養症)骨や軟骨そのものに何かしらの異常があることが原因で、低身長になることがあります。骨や軟骨の病気で低身長になっている場合、胴体にくらべて手足が短いなど、体のバランスに気になる点が見られることが特徴です。■心臓・肝臓・腎臓などの臓器の異常心臓や肝臓、腎臓などの重要な臓器に病気があると、体に十分な栄養を取り込むことができないために身長の伸びが悪くなり、低身長になることがあります。一般社団法人日本小児内分泌学会身長が伸びる仕組みとは出典 : そもそも、人間の身長はどのように伸びていくのでしょうか。身長が伸びるということは、骨が伸びるということを意味しています。子どもの骨の両端には、軟骨層と呼ばれる隙間があります。X線にはこの軟骨層が線となって映るため、軟骨層のことを骨端線(こったんせん)ということもあります。軟骨層には軟骨細胞というものがあり、これが子どもの時にはどんどん増殖していきます。そしてこの増殖した軟骨細胞にカルシウムが沈着することで、しっかりとした骨になっていくのです。このようなメカニズムで子どもの骨は伸びていきます。この軟骨層は成長とともに薄くなっていき、最終的にはなくなってすべて硬い骨になります。この状態でX線写真を撮ると骨端線が見えなくなります。これを「骨端線が閉じる」と表現することがあり、この段階に至ると身長はそれ以上伸びることはありません。また、低身長を治療していく場合、「骨年齢」を調べることがあります。骨年齢とは、現時点どのくらいまで骨が育っているかをわかりやすくするために年齢という数値で表したものです。骨年齢は実際の年齢と一致することがほとんどですが、多少のずれが生じることもあります。低身長の人が骨年齢を測定した時に、実際の年齢との間にあまりに差があると、その低身長の裏に何か病気が隠れていると考えられます。骨年齢は手のX線写真をもとに判定されます。骨年齢を把握することは、低身長の原因が病気であるかどうかを探るだけでなく、この先いつ頃までどの程度身長が伸びていくのかについて予測することに役立ちます。野瀬 宰/著『子どもの身長が気になったら読む本 親がわが子にしてあげられること』2012年/幻冬舎低身長で受診する時の検査内容って?出典 : 子どもの身長の伸びが悪かったり、平均よりぐんと低かったりすると、「子どもの身長が低くて不安…病院で診てもらった方がいいのかな?」と心配になる親御さんも少なくないと思います。以下、どのくらい身長が低い場合病院へ行くべきなのか、また受診したらどんな検査を受けるのかについて説明します。子どもの身長に対して、病院へ相談してみる・検査を受けてみることをおすすめする基準は、主にこの2点です。・子どもの身長が-2SD以下・身長の伸びが悪い状態が2年続く一般社団法人日本小児内分泌学会子どもの身長の伸びが心配になったら、まずは子どもの成長曲線をつけてみましょう。成長曲線とは、子どもが生まれてから身長の伸びが止まるまでの間、身長と体重の伸び方や増え方をグラフに記録したものです。多くの成長曲線には、平均身長だけでなく-2SDから+2SDの身長も記載されていますので、子どもの身長を成長曲線にしてみて、身長が-2SD以下の場合は一度専門家に相談してみましょう。また、身長自体は-2SD以上でも、身長の伸び率が急に微々たるものになったり、全く伸びなくなったりする状態が2年以上続いている場合も、専門家への相談をおすすめします。相談先として、かかりつけの小児科医がある場合はまずはそこを受診するのがよいでしょう。そのほかにも小児内分泌科や内分泌内科でも低身長を取り扱っていたり、低身長専門外来などを設けていたりするクリニックもあります。かかりつけ、もしくは近所の小児科に相談し、場合によってはより専門的に診てもらえる病院を紹介してもらうのも良い手段です。日本小児内分泌学会横断的標準身長・体重曲線(0-18歳)男子(SD表示) (2000年度乳幼児身体発育調査・学校保健統計調査)日本小児内分泌学会横断的標準身長・体重曲線(0-18歳)女子(SD表示) (2000年度乳幼児身体発育調査・学校保健統計調査)実際に低身長かも?と思って病院へ受診すると、どんな検査を受けるのでしょうか。大きく分けると、まず最初に受けるスクリーニング検査と、スクリーニング検査によって成長ホルモン分泌の異常が考えられる時に行われる、成長ホルモン分泌刺激試験(負荷試験)があります。■スクリーニング検査スクリーニング検査では、成長曲線の記入・手の骨のX線撮影・尿検査・血液検査を行います。まずは過去の身長記録をもとに成長曲線を正確に記入することで、子どもの生後から受診時までの成長スピードやパターンを把握します。そのため、低身長で初めて病院に受診する、スクリーニング検査を受ける場合、子どもの成長がわかるもの(母子手帳、学校での身体測定の結果など)を持参しましょう。また、手の骨のX線からは、骨年齢や骨の成長度合いがどの程度か確認することができます。血液検査や尿検査からは成長ホルモンをはじめとするホルモン値が正常かどうかだけでなく、肝臓や腎臓などの内臓機能の異常や、ウイルス感染などの有無も調べることができます。また、ターナー症候群やプラダー・ウィリ症候群などの染色体の病気が疑われる場合は染色体を詳しく調べる検査も行われることがあります。スクリーニング検査は基本的に1回の受診ですべて行うことができ、2週間程度で結果がわかるところが多いようです。なごやかこどもクリニック■成長ホルモン分泌刺激試験(負荷試験)スクリーニング検査の結果から、成長ホルモンの分泌に問題がありそうだ、と診断された場合、成長ホルモンの分泌に関してより精密な検査を行います。成長ホルモン分泌刺激試験では、子どもに成長ホルモンの分泌を促進する薬を投与し、一定時間ごとに採血をします。その血液中に成長ホルモンがどのくらい出ているかを見ることで、成長ホルモンの分泌状態を確認します。薬を使って意図的に成長ホルモンの分泌を促しても血液中に成長ホルモンが分泌されない、またはごく少量である場合、成長ホルモン分泌不全性低身長症の診断がつくことになります。成長ホルモン分泌刺激試験で成長ホルモン値が正常であることがわかった場合は、成長ホルモン治療などの必要性がないため、経過観察という措置が取られます。ぬかたクリニック成長ホルモン治療Q&A低身長に有効な成長ホルモン治療ってどんな治療法?出典 : 低身長に何かしらの治療が有効であるという診断がついた時は、多くの場合成長ホルモン治療が行われます。成長ホルモン治療は先ほど説明したような検査の結果によって、成長ホルモンの分泌に異常があると認められた場合のみ適用されます。成長ホルモン治療は、毎日寝る前に注射で成長ホルモンを注入するという方法で進められます。成長ホルモンは本来、脳下垂体から毎日分泌されるものです。そのため、治療によって成長ホルモンを外から補完する際も、本来のホルモン分泌の仕組みと同じように毎日少しずつ補う方が、効果が高く、副作用も出にくくなると言われています。自らで注射を打たなくてはならない、と聞くと「自分で注射を打つなんてできるだろうか…」などと不安に感じる親御さんもいるかもしれません。成長ホルモン治療に使われる注射はペン型で操作しやすいものですし、針も非常に短くて細いものを使用します。注射をする箇所は臀部や太腿などです。病院でも医師や看護師が使い方を丁寧に教えてくれるので、過度に心配になる必要はありません。成長ホルモン治療は、取り入れてすぐに効果が出るようなものではありません。治療開始時にどのくらい骨が成熟しているかにもよりますが、基本的には数年を見越した長期的な治療となります。骨端線が閉じて骨が完全に大人の骨になると、いくら成長ホルモンを補っても骨の伸びにはつながりません。定期的な病院での検査で、大人の骨になったという結果が出ると、成長ホルモン治療は終了となります。成長ホルモン治療は長期間の治療であることに加え、毎回注射でホルモン剤を打つということは子どもにとってストレスになる可能性があります。そのため、治療の継続には周りの大人のサポートが必要不可欠になってきます。注射を打つ必要性を理解するには難しいような低年齢の子どもには眠った後に注射をしてみる、低身長への自覚・治療の理解ができる年頃の子どもには、注射が寝る前の習慣になるように声をかけてみるなど、さまざまな工夫で子どもをサポートしている親御さんもいるようです。治療を計画通りに進めることはもちろん大切ですが、子どもに無理をさせたり、ひどく不安を与えたりしないように寄り添いながら治療と向き合っていきましょう。成長ホルモン治療を考えている、または治療が決まった親御さんの中には治療による副作用が心配な方もいるかもしれません。成長ホルモン治療で使うホルモン剤は、もともと人間の体内で分泌される成長ホルモンと同じものを人工合成してつくっています。そのため副作用はほとんどないと言われています。まれに、治療を開始した初めごろに頭痛を訴えたり、骨や関節に軽い痛みを感じたりするケースもありますが、多くが一時的なものであると言われているので特に心配する必要はないと言われています。成長ホルモン治療は在宅治療が中心となりますが、定期的な検査の受診は必須です。定期的に専門家に診てもらうことで、万が一副作用かも?と思った時も的確なアドバイスを得ることができます。とびた整形外科・内科クリニック低身長の治療費用・保険適用についてご紹介!出典 : 低身長を治療していくにあたり、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。また、保険の適用によって治療費の負担が軽くなることはあるのでしょうか。身長が-2SD以下で成長ホルモン治療が認められた場合、その治療費に対して健康保険(社会保険、国民健康保険)が適用されます。そうすると自己負担分は治療費全体の3割となります。西新宿整形外科クリニック成長ホルモン治療には健康保険が適用され、自己負担は治療費の3割で済みます。ですが実際のところ、成長ホルモン治療の治療費は健康保険の助成のみではまだ高額で、支払いが厳しいと感じる人も少なくありません。成長ホルモン治療は、子どもの体重によって1ヶ月あたりのホルモン剤投与量が決まります。そのため子どもの成長に伴って治療費も高額になってきますし、長期的な治療ともなれば当然金銭的な負担も大きくなってきます。そのため、成長ホルモン治療にはいくつかの補助制度が用意されています。■高額療養費制度高額療養費制度とは、病院や薬局で、1ヶ月間に支払う医療費が一定の金額を超えた場合に、超えた分の医療費が返ってくるという制度です。成長ホルモン治療の費用は健康保険のみの助成ではまだまだ経済的負担が大きいことが多いため、高額療養費制度が適用できることがあります。自己負担限度額は、保護者の所得や生活状況、年齢によって異なります。詳しくは、治療を受けている病院やお住まいの地域の役所窓口などに問い合わせてみてください。厚生労働省保険局高額療養費制度を利用される皆さまへ■小児慢性特定疾患による医療費補助骨端線がまだ閉じていない、つまり成長ホルモン治療がまだ有効であるという条件のもと、以下の病気が原因で低身長であると認められると、小児慢性特定疾患による補助が出ます。・-2.5SD以下の成長ホルモン分泌不全低身長症・ターナー症候群・プラダー・ウィリ症候群・軟骨異栄養症・慢性腎不全病気ごとに、補助対象となる身長のSD値や成長ホルモンの分泌量の基準などが異なりますので、詳しい情報は以下のサイトをご覧ください。小児慢性特定疾病情報センター小児慢性特定疾病における成長ホルモン治療の認定について小児慢性特定疾病情報センター成長ホルモン(GH)分泌不全性低身長症(脳の器質的原因によるものを除く。)助成を受けるためには、身長や成長率が定められた基準を満たし、小児慢性特定疾患であるという認定を受けたうえで地域の保健所へ申請する必要があります。助成を受ける詳しい条件や詳しい手続きの方法については、専門家に直接尋ね、指導を受けることをおすすめします。牛乳を飲むと本当に背が伸びるの?寝る子は育つ?身長の伸びに関する噂のウソホント出典 : 「牛乳を飲んだら背が伸びる」「寝る子は育つ」など子どもの成長・身長の伸びに関する噂や情報を耳にしたことはありませんか?このような噂は果たして本当にあてはまるのでしょうか。牛乳には骨にとって大切な栄養源であるカルシウムが多く含まれています。このイメージが広まっているせいか、背が伸びるようにと子どもに牛乳を積極的に飲ませる親御さんは少なくないようです。ですが実際のところ、牛乳をたくさん飲んだところで背が伸びる、というわけではありません。その理由は、カルシウムのはたらきは骨を伸ばすことではなく、「骨を強くすること」だからです。骨を伸ばすために必要なのはタンパク質です。タンパク質が骨をつくり、背を伸ばす役割を果たしています。つまり、骨をつくるタンパク質と骨を強くするカルシウムをバランスよく摂取することが、身長の伸びにつながるのです。身長を伸ばすため!と思って牛乳を1日に何杯も飲んでしまうと、満腹になって食欲がなくなったり、脂肪分の多さから肥満の原因になったりすることがあります。親として、牛乳に含まれるカルシウムが、骨にどのようにはたらくかをきちんと理解したうえで、子どもには適度に牛乳を飲ませるようにしましょう。インターネットや雑誌などで、「身長が伸びる!」などとうたわれたサプリメントや民間療法などの広告を見たことはありませんか?使ってみた人の体験談や著名人のコメントなどが載っていると、「本当に身長の伸びに効果があるのかも!」と気になってしまいますよね。今の時点で、低身長の治療できちんと効果がある、と科学的・医学的に認められたものは成長ホルモン治療のみです。サプリメントや民間療法に関する体験談は利用した本人の個人的な意見に過ぎず、科学的・医学的に根拠があるという証明はまだありません。子どもの身長の伸びが不安だと、手軽に試せるようなサプリメント・民間療法はつい魅力的に思えてしまうかもしれません。「身長がぐんぐん伸びた、身長が平均に追い付いた」などの体験談があったとしても、それは個人の体験でありすべての人にあてはまるとは限らない、という考え方を忘れずにもつことが大切です。「ぶら下がり運動をすると背が伸びる」「バレーボールやバスケットボールをすると背が伸びる」など、身長と運動に関してはさまざまな噂があります。無理のない適度な運動をすることは、食欲の増進や質の良い睡眠など正しい生活習慣につながります。また、適度な運動は成長ホルモンの分泌も促されるので、結果として運動が身長の伸びに良い影響を与えるといえます。ここで注意したいのは、「ぶら下がり運動」「バレーボール・バスケットボール」などある特定の運動が背の伸びに効果があるわけではない、ということです。大切なのは、子どもにのびのびと思いっきり身体を動かす機会を与えてあげることなのです。日本には「寝る子は育つ」ということわざがありますが、これは科学的にも正しいと言われています。それは、成長ホルモンの分泌の特性に由来しています。身長を伸ばすために大切な成長ホルモンは、夜寝ている時に多く分泌されます。そのため夜にしっかり寝ることは成長ホルモンのはたらきを最大限得ることができるという意味で、身長の伸びに効果があるとされています。ですが、だからといって長く寝ればいいというわけではありません。睡眠は眠りに入った直後にもっとも深い眠りとなり、その後は浅い眠りと深い眠り(いわゆるレム睡眠とノンレム睡眠)を繰り返していきます。成長ホルモンは寝入った直後の深い眠りの時にもっとも多く分泌されると言われています。そのため、子どもがリラックスして寝つけるかどうかが重要になってきます。親は寝る時間が近くなったら照明や電子機器の利用を控える、小言や愚痴など、子どものストレスとなるようなことを就寝前に与えないようにするなど、子どもがぐっすり眠れるよう配慮してあげましょう。まとめ出典 : 低身長とは、-2SD以下の身長の伸びを記録している状態のことです。子どもの身長を成長曲線に書き起こしてみた時に、-2SDを下回る、またはここ数年身長が極端に伸び悩んでいるという場合は、一度かかりつけの小児科医などに相談してみましょう。また成長ホルモン治療を受ける場合、自宅での注射や長期間の治療などに対して不安に思う親御さんも多いと思います。そんな時、少しでも不安に思ったことは専門家に聞いてみたり、親自身が子どもの成長や身長の仕組みに関する知識を得たりすることが大切です。子どもの身長の伸びは生活環境や家庭環境に影響されることも多くあります。食事や睡眠はもちろん、子どもが安心して過ごせるような環境を整えてあげることで、低身長の改善や低身長の子どもの心のサポートを進めていきましょう。
2017年06月15日動けなくなるほどの疲労。息子の反応はというと…。出典 : 発達障害のある子どもを育てていると、親の側も知らず知らずのうちに小さな疲れが蓄積してしまうことがあります。音や味覚などに敏感なために、気を遣わなければならない部分が多かったり、学習上のサポートが毎日のように必要だったりすることも少なくありません。常にそばにいる親は、無意識のうちに生活環境や学習環境を先読みし、発達障害の子どもが不本意な癇癪などを起こさなくて良いようにアンテナを張り巡らしているふしがあります。もちろん、親の生活は発達障害の子どものケアが全てではありません。仕事をしている人もいるでしょうし、兄弟・姉妹のケア、そして地域社会での活動などにも常に心を砕いているはずです。そんな目まぐるしい日々の中で、私自信もたまに、夕方になると動けないほど疲れきってしまう日があります。子どもたちに心配をかけてはいけない…分かってはいても、少しでも休まなければ夕食を作ることもできないのです。同じ発達障害の子どもを育てるお母さんたちとみんなで話していると、同じようなことを言う人が結構多いことに気づきました。「週末は疲れきってしまって動けなくなる」「自分は何かの病気ではないかと疑ってしまうほど疲れてしまう…」そんな声をよく聞きました。動けなくなるほどの疲労に襲われながらの毎日。でも、現在小学校1年生の息子はそんな私を気にかけている様子は全くありませんでした。倒れている私の横でゲームをしているし、どんなに私が辛くとも、決まった時間になると「お腹すいた!」と揺り起こしてくる子です。息子は、私が疲れて動けなくても、気に病んだりしない子なのだな、と私はちょっと気楽に考えていました。けれども、息子は決して気にしていないわけではなかったことを、私は後で知ることになります。ある日、友達の母さんから届いた息子の本音。出典 : ある日、いつものように帰宅してからお友達の家に遊びに行った息子。そのときに、訪問先のおうちのお母さんから、突然メールが来ました。「息子が何かやらかしたかな!??」とドキドキしながらメールを開くと、そこには「ママさん、体調大丈夫ですか?」という言葉が書いてありました。なんだろう、と思ってメールを読み進めてみると、息子が「うちのママはいつもすごく疲れていて、変な病気じゃないか心配になる。もしかしたら僕のせいで疲れているのかもしれない。僕はママにいっぱい迷惑をかけているのかもしれない。」とずっと心配していたそうなのです。私はびっくりしました。そしてとてもショックでした。息子は私が疲れて横になっていることで、自分自身の存在に罪悪感を感じ、自信を失っていたのでした。思い出した、あの言葉出典 : 息子が言っていた言葉をお友達のお母さんに聞いたとき、私は自閉症作家の東田直樹さんが言っていた言葉を思い出したのです。東田直樹さんは、こう言いました。「僕たちが一番辛いのは、自分のせいで悲しんでいる人がいることです。 自分が辛いのは我慢できます。しかし、自分がいることで周りを不幸にしていることには、僕たちは耐えられないのです。」東田さんのこの言葉を聞いたときは、「私は別に息子がいるからって自分が不幸だとは思っていない」と思い、それほどこの言葉の意味について深く考えることはありませんでした。けれども息子にとって私が寝込んでいるそのことこそが、自分が誰かを不幸にしている出来事に他ならなかったのです。私の取った選択は、出典 : 発達障害の子どもを育てていると、どうしたって疲れて動けなくなるようなこともあります。であれば、どうしたら息子が見てないところで倒れる時間を確保できるかを考えたのです。そして私は、週に2回息子を放課後デイサービスに預けることにしました。最初は仕事をするために預けていましたが、今は息子の前で倒れないためにも、預けている間は横になっています。また、夕方倒れそうになったら、1時間でも早く帰ってきて欲しいと夫に連絡します。夫が帰る時間まで頑張って持ちこたえて、夫が帰ってきたら即家事育児をバトンタッチして早めに寝ます。どんなに息子に幸せになって欲しいと願ったところで、私が頑張り過ぎて倒れてばかりいたら、本末転倒。それに気付くことができた出来事でした。
2017年06月15日話し始めた3歳前からずっと、発音が苦手。広汎性発達障害のある娘は、発音が苦手です。3歳前に話せるようになってから、長い間「さしすせそ」は「たちつてと」になっていました。本人は「さ」と言っているつもりでも、音は「た」になっている…。子どもっぽくて愛らしくもある半面、家庭の外での子ども同士のやりとりなどで、発音のあいまいさがコミュニケーションのトラブルにならないか心配もしていました。Upload By SAKURAたわいもないおしゃべりが原因で、しょっちゅうトラブルに…Upload By SAKURAある日、病院に行った時の話です。キッズスペースにいた4歳ぐらいの女の子に、話しかけていた娘。名前を聞くとその子は「さえ」と答えました。娘は、「さえ」という音は聞き取れているのに、それを音に出すと「たえ」になってしまい、「たえちゃんね!」と言います。名前を間違えられたと思った女の子は、必死に訂正。しかし、娘は自分が正しく言えていると思っているので、相手に何度も名前を言われる理由がわかりません。なかなか正しく名前を言ってくれない娘に対して、女の子は怒りだしてしまい、娘も最後は困り果ててしまい、結局2人は一緒に遊ぶことが出来ませんでした。人懐っこい娘ですが、発音が悪いことでこういうトラブルが絶えなかったのです。本人は言えているつもり。でも…。「さえちゃん」という女の子より、明らかに年上だった娘。きっとさえちゃんは、「何で言えないんだろう…」と思ったことでしょう。当時、何とかしなきゃ!と積極的に訓練に取り組み、定期的な言語訓練でも家でも頑張り続けましたが、発音はなかなか直りません。焦ってはいけない…とわかっていても、やってもやっても正しい音が出ませんでした。子ども同士のトラブルが連発したりするとなおさら、頭を抱えてしまう日もありました。Upload By SAKURAこのままの発音、小学校でホントに大丈夫かな?幼稚園の年長さんになっても発音はなかなか直らず、ついに卒園式が近づいてきました。あと1か月で、小学生。これからどんどん、お友達や先生とコミュニケーションが増えていきます。このままで大丈夫か?と心配していたある日…。娘は、さらっと「さしすせそ」を正しく発音したのです。これにはびっくりし、すぐに言語の先生に確認してもらうと、「言えてるよ!」と言われ、2人で大喜び!Upload By SAKURA取り越し苦労だった…!だから、胸を張って言えます。「療育に焦りは禁物!」療育に「焦りは禁物」―。わかっていても、差し迫った小学校入学に焦ってしまい、私は1人ものすごく心配していました。しかし、娘はラストスパートをかけて、今までため込んでいたものを、見事爆発させてくれました。そうして、きれいな発音が出来るようになってからは、ぐんぐん成長し、発音に関しては違和感がなくなりました。3歳から5歳まで向き合い続けた発音…。6歳になった今となっては、以前がどうだったか思い出せないほどです(笑)改めて「療育に焦りは禁物」、そう思いました。現在、小学1年生になった娘。いろんな問題もありますが、娘を信じて、焦らずのんびりと向き合っていけたらと思います。
2017年06月14日2020年度末には障害者の法定雇用率が2.3パーセントに出典 : 厚生労働省は、2017年5月30日、民間企業に義務付けている障害者の法定雇用率を段階的に引き上げていくことに決めました。現在の障害者法定雇用率は2.0%ですが、2018年4月には2.2%に、2021年3月末までには2.3%にまで引き上げていく計画とのことです。また国や地方自治体、独立行政法人の障害者法定雇用率は2018年4月までに2.5%、2018年4月までには2.6%に引き上げられ、各都道府県の教育委員会の障害者法定雇用率は、まずは2.4%に、その後、2.5%にまで引き上げられます。民間企業の障害者雇用率を段階的に2.3%に引き上げることを了承(平成30年4月1日から2.2%、3年を経過する日より前に2.3%)障害者の法定雇用率が引き上げられることになった背景は?Upload By 発達ナビニュースこれまでも、障害者の雇用の促進等に関する法律(以下、障害者雇用促進法)に基づき、障害者雇用率制度として、事業主は一定数以上の障害者を雇用しなければならないということが厚生労働省によって義務付けられていました。(対象障害者の雇用に関する事業主の責務)第三七条全て事業主は、対象障害者の雇用に関し、社会連帯の理念に基づき、適当な雇用の場を与える共同の責務を有するものであつて、進んで対象障害者の雇入れに努めなければならない。(一般事業主の雇用義務等)第四三条事業主(常時雇用する労働者(以下単に「労働者」という。)を雇用する事業主をいい、国及び地方公共団体を除く。以下同じ。)は、厚生労働省令で定める雇用関係の変動がある場合には、その雇用する対象障害者である労働者の数が、その雇用する労働者の数に障害者雇用率を乗じて得た数(その数に一人未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。第四十六条第一項において「法定雇用障害者数」という。)以上であるようにしなければならない。しかし、この法定雇用率に基づき雇用義務が課せられる障害者は、これまで身体障害者または知的障害者のみでした。精神障害者については、2006年以降は雇用義務の対象ではないものの、雇用した場合は雇用している障害者の数に入れることができる、という位置付けだったのです。障害者雇用率制度の概要しかし2013年の障害者雇用促進法改正に伴い、2018年4月からこの法定雇用率の対象となる対象障害者に、身体障害者と知的障害者に加え精神障害者も含めることとなりました。ここでの精神障害者とは、精神障害者保健福祉手帳を持っている方です。第三十七条2 この章、第八十六条第二号及び附則第三条から第六条までにおいて「対象障害者」とは、身体障害者、知的障害者又は精神障害者(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)第四十五条第二項の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているものに限る。第三節及び第七十九条を除き、以下同じ。)をいう。どういうことかというと、これまで労働市場にいる障害者の数は、身体障害者と知的障害者の数によって定められていたのです。上の図の分子の部分に当たります。しかしこの度、精神障害者が法定雇用率算出の対象になることによって、分子の部分の障害者とされる人の全体数が多くなります。結果、この度の障害者法定雇用率の引き上げにつながり、障害者の雇用が増えるということです。2018年4月以降、各企業において精神障害者の雇用が義務化されるわけではないですが、法定雇用率自体が引き上げられることにより、社会全体として、精神障害のある方の雇用機会も広がっていくことが期待されます。発達障害者の雇用はどうなる?出典 : 障害者雇用促進法において、発達障害は、精神障害の一部として定義付けられています。(用語の定義)第二条障害者身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。第六号において同じ。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者をいうしかし一方で、障害者雇用の対象となる「対象障害者」である精神障害者とは、精神障害者保健福祉手帳を公布されている方とされています。もちろん、手帳を取得せず、通常の雇用枠での就職を目指すことも可能ですが、発達障害のある方が障害者雇用枠での就職を目指す場合は、精神障害者保健福祉手帳の取得が必要になります。発達障害に関しては、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)において精神疾患のカテゴリーに含まれていることもあり、精神障害者保健福祉手帳の交付対象となっています。しかし、二次障害による精神症状の有無など、交付判定に細かい基準が設けられているため、詳しいことはお住まいの市区町村に相談することをおすすめします。企業は法定雇用率を満たさないとどうなるの?出典 : 現在の企業の障害者法定雇用率は2.0%ですが、この法定雇用率を達成している企業は2016年6月時点で48.8%にとどまっており、過半数の企業は法定雇用率が未達成となっています。平成28年障害者雇用状況の集計結果法定雇用率が未達成であり、常時雇用している労働者数が100人を超える企業は、障害者雇用納付金制度に基づき、法定雇用障害者数に不足する障害者数に応じて、1人につき月額50,000円の障害者雇用納付金を納付しなければならないこととされています。逆に、法定雇用率を達成しており、常時雇用している労働者数が100人を超える企業は、障害者雇用調整金として、法定雇用障害者数を超えて雇用している障害者数に応じて、1人につき月額27,000円が支給されます。また、常時雇用している労働者数が100人以下の事業主で、各月の雇用障害者数の年度間合計数が一定数(各月の常時雇用している労働者数の4%の年度間合計数又は72人のいずれか多い数)を超えて障害者を雇用している場合は、障害者雇用報奨金として、その一定数を超えて雇用している障害者の人数に21,000円を乗じて得た額が支給されます。今後、法定雇用率の引き上げを見越して、障害者雇用をより積極的に行っていく企業も増えていくのではないかと予想されます。しかし、障害者雇用枠であろうとなかろうと、働く上での障害や困難がある方には、その方が力を発揮できるような業務上の配慮や調整ー「合理的配慮」を各企業で推進していくことが重要です。法定雇用率の変更を契機に、障害のある方も含めた多様な人々が働ける環境作りに積極的になる企業が増えていくことを願います。障害者雇用納付金制度の概要
2017年06月13日何を言っても、否定された気持ちになってしまう娘出典 : 我が家には9歳の娘と7歳の息子がいます。ともに自閉症スペクトラムと診断済みで、娘は特にアスペルガーの要素が強く出ています。ある日、ふらふらと歩く弟を見て、私が注意するよりも先に娘が怒りを爆発させました。「ちゃんと前を見て歩かないと危ないでしょ!」「いつも言ってるのにどうして分からないの!」と怒鳴りつけると同時に、娘は後ろから息子の首根っこを掴んで引っ張ったのです。体幹の弱い息子は、もう少しでなぎ倒されるところでした。私「注意してくれるのは本当に助かるし、言ってることは正しいんだけど、そのやり方だと相手には恐怖しか残らないからすごくもったいないなと思うの」娘「でも、誰かにぶつかってからじゃ遅いでしょ!ママだっていつも相手に怪我させちゃいけないから前見なさいって言ってるじゃない!!!」そうなのです。娘は弟や私のことを思うあまり、それが怒りとして表出してしまうのです。私は娘に続けます。私「うん、確かにそうなんだけどね、周りの人がビックリして振り向いちゃうぐらい、すごく怒ってたよ?」娘「わかってるわかってるわかってる!!!何度言われても怒っちゃう!私なんて最低の人間なんだ!」娘は、自分がすぐ怒ってしまうことを自覚しています。それでも、どうしても湧き上がる怒りを押さえられず、あとから自己嫌悪に陥ってしまうようなのです。私「そんなことないよ。ママだって怒っちゃうこと多いもん。あなたがすごく優しい気持ちで弟を守ろうとしてくれたことも、ちゃんとわかってるよ」娘「そうだよ!私は弟が心配だっただけなのに!誰かにぶつかったら弟だって怪我すると思って!なのにどうしてこうなっちゃうの!もうイヤだっ!」私「そうだよね、イヤだよね、苦しいよね。せっかく優しい気持ちで行動したのに、ママに注意されると全部否定された気持ちになって、すごく孤独な気持ちになっちゃうかも知れないね」娘「そう、すごく孤独になる。私なんて、いなくなればいいのにって、そう、思う……」そんな風に思わなくてもいいよって伝えても、それは難しい様子。私は、その時々の対処法だけではなく、根本的な予防法を考えることが必要だと感じました。こうして、娘が自分自身を否定せずに怒りと向き合える方法はないものか、探してみることになったのです。怒りの裏に隠された「第一感情」を、相手に素直に伝えてみよう出典 : そこでふと気がついたのですが、私も娘も、アンガーコントロール自体についての本はたくさん読みましたが、“感情”というものについてきちんと学んだことがなかったのです。発達障害を抱える子どもたちは、日々の暮らしの中で、周囲を見て自然と立ち居振る舞いを覚えたり、コミュニケーションの取り方を学んで行くのが苦手です。しかし、道筋を立ててわかりやすく教えることができれば、ものにできることは多いのです。ならば、感情についてもきちんと学び、「こういうことだったのか!」「こうすればいいんだ!」と整理して頭の中に入れてあげる方が、その都度対処法を伝えていくよりも娘にとってはわかりやすいのかもしれません。そこで、書店で感情に関するさまざまな本を見て、数ある本の中から選んだのがこちらの本です。Upload By GreenDays『マンガでよくわかる怒らない技術』嶋津 良智 著 フォレスト出版これは累計90万部を突破した『怒らない技術』『怒らない技術2』『子どもが変わる 怒らない子育て』の内容がマンガ化されたものです。食品会社の営業部で働く女性が、イライラと怒ってばかりの毎日から脱却していく様子が描かれており、間には解説も書かれています。この本を選んだのには理由があります。・「怒りの裏に隠された感情」についてのお話しが、とてもわかりやすく詳しく載っていたこと・ 大人向けの本であるため、娘が主人公を自分と重ねて自己嫌悪に陥ってしまうことがないこと・ 大人でも怒りの感情で悩んでいる人がたくさんいると知ることで、自分を否定する気持ちを薄めることこれらを考慮し、数ある書籍の中からこの本を選ぶことにしたのでした。「ママも感情についてきちんと学んだことがなかったから、あなたと一緒にお勉強してみようと思うんだけど、まずはこの本を一緒に読んでみない?」この本を手にした娘は、声を出して笑いながら読んでいたかと思うと、「この人の気持ち、すごくよくわかる」としんみりしてみたり、娘なりにいろんなことを吸収してくれたようです。以前から娘に伝えたかったこと。・「怒り」というのは第二感情であり、その元になっているのは「不安・心配・寂しさなど」の第一感情である・「怒り」を感じた時は、それを口にする前にまず第一感情を探り、心配なら心配していた気持ちを、不安なら不安な気持ちを、そのまま素直に相手に伝えるこれらが、きちんとした形で綴られていて、娘にとっては大きな学びとなったはずです。私自身も、とても勉強になる内容がたくさんあったので、手元に置いていつでも見られるようにしておくことにしました。「第一感情は何だろう?」親子で探す日々出典 : この本を読んでから、娘が怒りを爆発させてしまった時は「第一感情はなんだろう?」と声をかけることで、怒りを一時停止させて自分の心を探る時間を作れるようになりました。すると娘からは「ちょっとうらやましかったかも」「すごく心配しちゃったから」という回答が返ってきます。そこから「そういえば、第一感情を素直に伝えるといいって書いてあったね」と娘に促すことで、はにかみながら「私も一緒に遊んでほしい」「お姉ちゃん、君がケガをしたら心配だから手を繋いで歩いてね」などと言えるようになってきました。今はまだ怒りを爆発させてしまった後で第一感情を探していますが、この手順が定着すれば、いずれ怒りの言葉を口にしてしまう前に自分の本当の気持ちを探る時間が取れるようになるのではないかと思います。「伝授」するのではなく、対等に「学ぶ」出典 : 娘はもうすぐ10歳。精神年齢が幼いとはいえ、少しずつ自立心が芽生えてきているため、今後は親の言うことを素直に聞き入れるのに抵抗を感じる瞬間も増えてくると思います。親がなにかを教えるという方法では、なかなかうまく行かないことも多くなるでしょう。そこで、今回は私自身が娘に方法を伝授するのではなく、同じ本を読んで怒りについて学ぶという方法を取りました。自分自身を直接知らない第三者の話というのは、意外と素直に入ってくるものです。それはおそらく、「一般的にはこうだ」というだけで「自分自身が否定されているわけではない」という距離感を持つことができるからだと思います。また、同じ本で同じことを学ぶということは、娘と私は対等の立場。いわばクラスメイトのような関係でいられるので、「あっちの本にはこう書いてあったけど本当かな?」「今度やってみる?」とフランクな会話も成り立ちます。それゆえ、親が正しいと思っていることを押し付けられるという圧迫感も少ないのではないかと思うのです。お子さまが思春期に差し掛かり、話し合いのつもりがついケンカ腰になってしまって、上手く子どもに伝わらないとお悩みの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度、同じ教材で同時に学ぶという方法を取ってみてはいかがでしょうか?思いがけず、楽しく時間を過ごせるかも知れません。
2017年06月13日障害がある2人の子ども…お兄ちゃんになります!出典 : 小学1年生の長男と、年長の次男はそれぞれ発達障害と知的障害があります。2人の障害児がいる4人家族の我が家。春を間近にして長男の特別支援学校進学が決まった頃、我が家に大きなニュースが…私が3人目を妊娠したのです。「いつか3人目ができてもいいよね、まあ授かりものだからできなくってもいいけど。どちらでも。」そんなことをたまに話してはいたものの、「3人目」についてはなんとなく強く意識することを避けていた私。実は「欲しい!」思っていたタイミングにはなかなか授からずに残念な思いをしたので、あまり考えないようにしていたのです。しかし30代半ばに差し掛かり、もう子どもはできにくいかなと思っていたところに嬉しい嬉しい出来事でした。障害児の親同士だから言える、率直な本音出典 : 身体的に辛い妊娠初期を経てようやく安定期を迎えたある日、長男と同じ支援学校のママ友とお茶をしました。その方には先天性の遺伝子疾患があるお子さんと健常のお子さんがいます。支援学校のママ友とは変に気を遣い合うことや探り合うこともなく、話していて心から楽しいと思える関係です。そんな仲だからこそ、ママ友が私に言いました。「でも偉いよね。上に2人障害児がいたら、もう下の子産むことは考えられないかも。」…確かに!!私はそこではじめて「上の子2人が障害児で、更にもう1人って、世の中的には無謀かも」と気づいたのです。障害児2人の子育てを経て感じること世の中的には、世論的には「無謀」な気がするこの【3人目】ですが、実は私にとってはそうではなかったのです。お腹の子を妊娠してからというもの、上の子2人のときには芽生えなかった気持ちが毎日湧いてくるのです。「どんな子でも、本当にどんな子でも大丈夫だから、生まれておいで」毎日毎日そんな気持ちに溢れています。私はまだ短いながら上の2人の子育てを経て、「障害があろうと我が子は可愛くて自分の命より大切だということ」を実感し「どんな子でも任せとけ、バッチ来いや」と言う謎の自信が付いてしまったようなのです。あんまり大したことはできないし、どうせ大したものも遺せないだろうけど、愛情だけは自信がある。サポートし尽くす用意もある。元気があればなんでもできる。イジイジした性格の私でしたが、障害のある2人の子育ては、いつしか私を肝っ玉に育て上げてくれたようです。出典 : 「大丈夫よ!どんな子が生まれても3人とも育て上げる!別に健常児でもOK!私ならイケる!」とママ友にガッツポーズをする私。爆笑しながら「確かに!」と応えてくれるママ友もまた、「そういえば以前私たち夫婦もね、もう1人同じ障害の子が欲しいって言ってたな〜。」と語ってくれました。誤解を恐れず言うとすれば、障害児のおかげで親は大きく育てられ、人生も心もどんどん豊かになっていく気がしています。「世の中に生まれる障害者の人数が決まっているのなら、どうぞ遠慮なく我が家へおいで!!」肝っ玉のビッグマウスはとどまることを知りません。どんな子でも生まれておいで!優生思想の世の中において、このコラムを書くことでバッシングを受けるかもしれません。妊婦のお花畑、兄弟の身にもなれと言われるかもしれません。それでも私は「どんな子でも生まれておいで!」と大きな声で言いたいです。そして、これから出産される方にも「生まれてきた子がどんな子でも大丈夫よ。」と伝えたい。生まれる前から過剰に心配したり、生まれてから絶望の淵に立ったり…それも大切な時間だとは思うけれど、そのトンネルは必ず抜けるし仲間もお友達もできる。日本の医療は充実しているし、海外に劣るとは言われていてもちゃんと支援は受けられる。熱意を持って接してくださる専門家がいる。そして日本人はなんだかんだ結局優しい。だから障害のある子どもが生まれてくることをそんなに怖がらなくても大丈夫よ、と親となる方々へ伝えたいと日々感じるのです。出典 : ちなみに、「どんな子でも生まれておいで!」という気持ちに一片の曇りもありませんが、あわよくば鼻はパパに似て欲しいなと願っていることだけは一応お伝えして、コラムの結びとさせていただきます。
2017年06月12日登校前は大忙し?Upload By ラム*カナUpload By ラム*カナUpload By ラム*カナUpload By ラム*カナUpload By ラム*カナポケットがないんじゃなくて、反対に履いていたせいで見えなかったという…。ポケット探してる途中でせめて自分で気付いてくれ!!と思いつつも、間もなく出発時間。ツッコんでいる暇はありません。Upload By ラム*カナUpload By ラム*カナ一息つこう、とリビングに戻るも…Upload By ラム*カナこんな毎日です。そして、その日の帰宅後、長男から楽しい報告が。Upload By ラム*カナお道具箱って…、とっても便利…デスネ☆
2017年06月10日オキシトシンとは?出典 : オキシトシンとは、人間の脳から出るホルモンの一つです。ホルモンとは、体の働きを調整する役割を果たすもので、血液中にある物質です。オキシトシンは、出産時においては子宮を収縮する作用があり、陣痛をうながす役目を持っています。子育てにおいては、授乳時にオキシトシンの分泌が増加し、乳腺を刺激して母乳を出すように働きます。また、赤ちゃんも抱っこされて乳首を吸う際にオキシトシンが分泌されます。母子の関わり合いの中で、ともにオキシトシンの分泌が促進されていくのです。また、オキシトシンは出産や子育てだけではなく、男女の愛情にも関わっていることが分かってきています。男女の営みの際には、子宮頸部を刺激することでオキシトシンの分泌がおきます。それにより、親密感が促進されるといわれています。また、信頼関係の構築や共同作業にも効果的であるようです。スキンシップからもオキシトシンの分泌が促進されることから、一部では「幸せホルモン」ともいわれています。妊娠出産に関わっていない女性、また男性にもこのホルモンが分泌されることが、近年の研究で明らかになってきました。オキシトシンによって対人交流や親密感が上がることは、人間に本来備わっている機能であるともいえるでしょう。参考:棟居俊夫「自閉症のオキシトシンによる臨床試験の難しさ:その背景にあること」 コミュニケーション障害学, Vol.31, No.3. p.176, 2014.参考:橋川成美「幸せホルモン? オキシトシンが母から子に与える影響」ファルマシア, Vol.50, No.9. p.913, 2014.参考:東田陽博ほか「自閉症スペクトラム障害とオキシトシン (特集 自閉症の分子基盤)」分子精神医学, Vol.14, No.2. p.77, 2014.近年、オキシトシンの研究が進むにつれ、対人交流や親密感の形成が難しい自閉スペクトラム障害のある人に対してオキシトシンを投与することで、他人の感情を読み取る、目を見る、顔を認識するなどといった、対人関係改善のきっかけとなる効果があるのではないかと考えられるようになってきました。(なお、自閉症スペクトラム障害の原因はいまだ特定されていませんが、何らかの生まれつきの脳機能障害であると考えられています。しつけや愛情不足といった親の育て方が直接の原因ではないとわかっています。)オキシトシンの研究でどんなことが分かってきたの?出典 : この章では、オキシトシンは対人関係の改善のきっかけとなるのではないかとの仮説から、2005年にスイスで行われた研究をご紹介します。スイスの研究グループは、健康な20代男性58名に臨床実験を行い、オキシトシンの点鼻薬を投与した結果、「他人への信頼」の増加がみられたという研究結果を発表しました。この研究では、健康な男子大学生を対象として、「信頼ゲーム」というゲームの中で、お金をもつ投資家29名とお金を運用する立場の信託者29名に分けました。さらに、点鼻薬の形をした本物のオキシトシンと偽のオキシトシンに分けて投与しました。その結果、本物のオキシトシンを投与した人は、45%の割合において、相手への愛着感が増し、信頼・信用し、全額に近いお金を信託者に預けました。一方で、偽のオキシトシンを投与した人は、21%のみ信託者にお金を預けました。この結果を受け、オキシトシンは将来への不安や恐怖を増加させない効果があるのではないかと考えられたのです。ここで点鼻薬を用いたのは、オキシトシンを鼻から吸引すると、他者の感情の理解などの機能を担っているとされる、内側前頭前野と呼ばれる脳の部位が活性化されるからです。オキシトシンの点滴投与によって、朗読の際の情感の理解困難などの症状が改善したという報告もあります。このような研究結果から、「オキシトシンは対人関係の改善のきっかけになるのではないか」と考えられ、効果が期待される人に対して、臨床での治験に向けての研究が進められました。出典:Kosfeld M, Heinrichs M, Zak PJ et al :Oxytocin increases trust in humans, Nature 435, pp.673-676, 2005.参考:山本英典「オキシトシン点鼻薬の自閉スペクトラム症に対する臨床応用」内分泌・糖尿病・代謝内科, Vol.43, No.1. pp.73-78, 2016.参考:東田陽博ほか「自閉症スペクトラム障害とオキシトシン (特集 自閉症の分子基盤)」分子精神医学, Vol.14, No.2. p.77. 2014.参考:共同発表:自閉症の新たな治療につながる可能性~世界初オキシトシン点鼻剤による対人コミュニケーション障害の改善を実証~参考:東田陽博・棟居俊夫「オキシトシンと発達障害」脳21, Vol.13, No.2. pp.100-101. 2010.参考:山本英典「オキシトシン点鼻薬の自閉スペクトラム症に対する臨床応用」内分泌・糖尿病・代謝内科, Vol.43, No.1. pp.73-78. 2016.オキシトシンと自閉症スペクトラムに関する研究動向出典 : オキシトシンが対人関係改善のきっかけになりうるという報告を受け、多くの研究者が自閉症スペクトラムに関する議論を交わすようになりました。自閉症スペクトラムは社会性やコミュニケーションの障害が特徴であるため、オキシトシンが自閉症スペクトラムに効果的なのでは?と考え始めたのです。そして、これらの議論が盛んになるにつれ、自閉症スペクトラムに対するオキシトシンの効果についての研究も数多くなされるようになりました。例えば、目もとから感情を推し量る能力の改善や、協調性のある行動が促進されたという報告です。また東京大学医学部の研究チームが、18歳から55歳の男性自閉症スペクトラム者18名のうち、9名にオキシトシンを6週間投与したところ、一部の投与しなかった対象者に比べ少しばかり自閉症スペクトラムの特性ゆえの社会性、行動発達、常同行動が改善しているとの研究結果が出ました。一方で、オーストラリアのシドニー大学の研究チームが、12歳から18歳の自閉症スペクトラム男児50名のうち、26名にオキシトシンを8週間投与しました。こちらの研究では、オキシトシンの投与を受けていない24名の対象者と比べても、自閉症スペクトラムにおける社会性、行動発達、常同行動のいずれにおいても改善されたという結果は出ませんでした。このように、現段階では研究チームによって、また実験方法、対象人数、評価などによってばらつきがあり、効果についての明確な立証には未だたどり着けていません。またオキシトシンが鼻からどのような経路で脳内に入るのか、判明していません。さらには、適切な投与量や投与期間も分かっていません。オキシトシンの効果は個人の性質によっても異なることや、時には逆の作用をすることもあります。また、オキシトシン投与時の経過観察における、研究者(定型発達者)と自閉症スペクトラムのある当事者の関係性にも着目する必要があるでしょう。オキシトシンを投与された当事者にどのような効果が出るのかを判断するのは、その研究者自身です。つまり、「当事者である自閉症スペクトラムのある人が、観察者である定型発達者に視線をよく向けるようになった」ということを研究成果としてよいのかという疑問も残っています。同時に、これらの研究は、実生活とはかけ離れた環境で行われた実験であり、実際の治療においての結果ではないことを理解しておかなければなりません。出典:Guastella et al. “The effects of a course of intranasal oxytocin on social behaviors in youth diangnosed with autism spectrum disorders: a randomized controlled trial” J Child Psychol Psychiatry. Vol.56, No.4. pp.444-452. 2015.出典:Watanabe et al. “Clinical and neural effects of six-week administration of oxytocin on core symptoms of autism” Brain, Vol.138, No.11. pp.3400-3412. 2015.参考:山本英典「オキシトシン点鼻薬の自閉スペクトラム症に対する臨床応用」内分泌・糖尿病・代謝内科, Vol.43, No.1. pp.73-78, 2016.参考:棟居 俊夫「自閉症とオキシトシン (特集 自閉症研究の最前線)」精神科, Vol.27, No.4, pp.282-286, 2015.参考:東田陽博ほか「自閉症スペクトラム障害とオキシトシン (特集 自閉症の分子基盤)」分子精神医学, Vol.14, No.2. p.77. 2014.参考:棟居俊夫「自閉症のオキシトシンによる臨床試験の難しさ:その背景にあること」 コミュニケーション障害学, Vol.31, No.3. p.176, 2014.最新研究にみる自閉症スペクトラムの新薬としての期待出典 : いままで世界中の研究チームによって、自閉症スペクトラム児・者へのオキシトシン点鼻薬の投与を通した研究が行われてきましたが、いずれも社会性やコミュニケーションの障害という自閉症スペクトラムの代表的な症状に有効であるということをデータで実証することはできていませんでした。しかし、2015年に東京大学医学部付属病院の研究チームが行った、男性自閉症スペクトラム者18名へのオキシトシン投与では、一部の協力者において社会性やコミュニケーションの障害への顕著な改善が見られました。さらにはその改善が脳機能の改善にも関連しているということを世界で初めて報告し、オキシトシン点鼻薬の臨床試験を進める根拠になりうると言及しました。このように、一部の人には効果があることが分かり、新薬の実用化に向けた臨床試験が進められています。過剰な期待は禁物ですが、この研究成果が実現すれば、自閉症の症状に対する治療法の一つになる可能性があるのではないでしょうか。出典:オキシトシン経鼻剤連日投与による自閉スペクトラム症中核症状の改善を世界で初めて実証|東京大学医学部附属病院オキシトシンの副作用出典 : オキシトシン点鼻薬の場合、薬成分の血中濃度が半減する時間が10分未満で、すぐに体内から排泄されます。そのため、ほかの薬剤との併用による副作用がほとんどないと言われています。出典:Study Protocol. ECSSIT – Elective Caesarean Section Syntocinon® Infusion Trial. A multi-centre randomised controlled trial of oxytocin (Syntocinon®) 5 IU bolus and placebo infusion versus oxytocin 5 IU bolus and 40 IU infusion for the control of blood loss at elective caesarean section | BMC Pregnancy and Childbirth |参考:中村秀文「薬物動態と薬力学」日臨麻会誌, Vol.29, No.7. pp.789-796. 2009.しかしながら、まれに、錯乱、けいれん、呼吸困難、めまいなどの副作用があります。また妊娠中であったり、高血圧、心臓疾患、腎臓病、甲状腺異常、精神不安症、鬱病、喘息、またはこれらに疑いがあったりする場合は使用ができません。注射液・点滴においても多くの副作用があります。例えば、過強陣痛(子宮の収縮が非常に強く、長く続く)、血圧低下、蕁麻疹(じんましん)といったものです。2016年には、アナフィラキシーショック(血圧が低下して意識がもうろうとし、脱力するようなショック状態)が副作用として追加されています。参考:Syntocinon Side Effects in Detail|Drugs.com参考:オキシトシンの「使用上の注意」の改訂について | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構自閉症スペクトラムのある人にオキシトシンを投与した場合の副作用は、まだ詳しく分かっていません。ですが、オキシトシンの投与によって接近行動を起こす効果がある場合、人によっては接近行動が起こることで、かえって新たな問題につながる可能性もありうると指摘をする臨床医もいます。オキシトシンの入手について出典 : 現在、ヨーロッパでは授乳促進の目的で成人にオキシトシン点鼻薬の販売が認可されていますが、日本国内では認可されておらず、もちろん自閉症の治療薬として購入することはできません。個人輸入で入手した医薬品で健康被害が起こった場合、自己責任となります。輸入代行業者なども存在してはいますが、自己判断で購入したり使用したりすることは控え、まずは主治医とよく相談しましょう。参考:オキシトシン経鼻剤連日投与による自閉スペクトラム症中核症状の改善を世界で初めて実証~新しい治療法の確立をめざして~参考:医薬品等の個人輸入について|厚生労働省まとめ出典 : ここまでオキシトシンの効果や研究動向について紹介してきました。現時点ではオキシトシン点鼻薬はヨーロッパで授乳促進の薬として販売されているに留められているため、日本国内において自閉症スペクトラムの薬としては認可されていません。現在は研究段階ですので、臨床実験がすすみ、さらに実際に治療に導入されるようになるにはもう少し時間がかかるとみられます。仮にオキシトシンが認可されたとしても、全ての人に効果があるとは限らないことも理解しなければなりません。また、たとえ適用となった場合でも、薬のみに頼るのではなく、その後の環境調整も大切となります。特性に合った働きかけ、相互交流をすることで、長期的に好ましい影響が出るのではないでしょうか。
2017年06月09日テーマは「家族支援」−第10回教育実践フォーラム開催!Upload By LITALICOニュース2017年7月23日(日)の13時より、東京・品川の立正大学にて、子どもの発達と家族支援をテーマとしたイベント、「教育実践フォーラム」が開催されます。登壇者は、家族支援研究の第一人者である立正大学心理学部の中田洋二郎教授、鳥取大学大学院の井上雅彦教授ほか、教育と家族支援に携わる研究者、実践者、保護者の方々。「障害のない社会をつくる」をビジョンに、児童発達支援事業や就労支援事業などを展開する株式会社LITALICOが主催し、教育を取り巻く課題と実践、未来の展望を考える「教育実践フォーラム」。2012年の初回企画から数えて、今年で10回目の開催となります。第10回のテーマは「家族支援」。子どもの発達が気になる家族に対する有効な支援方法として行われている「ペアレントトレーニング」の最新の実践・研究動向を取り上げながら、子どもと向き合う保護者たちがどんな困難や悩みを抱えているのか、保護者に対して学校の先生たちや専門家はどのような支援をすべきか、登壇者や来場者の皆さまと一緒に考えていきます。第10回教育実践フォーラム専門家と保護者、それぞれの立場から語る「ペアレントトレーニング」の意義フォーラムの基調講演は、家族支援の第一人者として、長らくペアレントトレーニングの研究と実践を積み重ねてこられた立正大学心理学部教授の中田洋二郎先生。子どもの「困った」行動を分析・修正し、より良い行動を促すペアレントトレーニングは、これまで子どもの養育に悩み苦しんできた保護者の方々にとって、具体的な問題への対応方法を習得し、自信を取り戻す手段として有効だと言われています。一方で、子どもの困難や障害に対する理解を深め、自分自身の行動を変化させていくことは、保護者の方々にとって新たな不安や負担にもつながる可能性があります。ペアレントトレーングが成功し、子どもも、保護者も過ごしやすい環境を作るためには、専門家が単なる技法の伝授にとどまるのではなく、子どもの障害への保護者の認識の変容過程を踏まえ、保護者が孤立しないための配慮や支援が必要になります。中田先生の講演では、保護者の障害認識のあり方などペアレントトレーニングを実施する上で支援者が理解しておくべきことについてお話いただき、家族支援とは何かを会場の皆さんと一緒に考えていきます。Upload By LITALICOニュース中田 洋二郎立正大学心理学部教授専門は発達臨床心理学、発達障害の家族支援。東京都立の知的障害児通園施設の心理判定員を務めた後、国立精神・神経センター精神保健研究所 思春期精神保健研究室長、福島大学大学院教育学研究科教授を経て現職。臨床心理士。基調講演のあとは、専門家・保護者それぞれの立場からペアレントトレーニングについて語るパネルディスカッションです。モデレーターは、鳥取大学大学院教授の井上雅彦先生です。Upload By LITALICOニュース井上雅彦鳥取大学大学院 教授/LITALICO研究所所長(アドバイザー)応用行動分析学を理論的基盤として障害や不適応状態について「環境」と「個人」両方向からの心理的支援や教育を研究。ペアレントトレーニングシステムなどの支援プログラムの開発をはじめ、著書も多数。パネリストは、東京・江戸川区の「まめの木クリニック」にてペアレントトレーニングを実践されている臨床心理士の庄司敦子先生、LITALICOジュニアでのペアレントトレーニングの作成・研修・実施を担当する井田美紗子の2名。それぞれの現場での取り組みが発表されます。中田洋二郎先生は基調講演に引き続きメインコメンテーターとして登壇。また、実際にペアレントトレーニングを受けたことのある保護者の方にもコメンテーターとしてご登壇いただき、ペアレントトレーニングを受けてよかったこと、フォローアップの要望なども含めたペアレントトレーニングのニーズをお話いただきます。7/23(日)教育実践フォーラム詳細開催日時: 7月23日(日) 13:00~17:50(12:30~受付)定員:500名参加費:無料(事前申込制)対象:小学校~高等学校、幼稚園、保育施設の職員、スクールカウンセラーなど、子どもの教育や医療・福祉・行政機関など子どもの支援に関わられている方その他、子どもの発達が気になる保護者の方、教育や発達支援について研究している方など、ご興味のある方はどなたでもお申し込み・ご参加いただけます。会場:立正大学 品川キャンパス 石橋湛山記念講堂(東京都品川区大崎4-2-16)アクセス:「大崎駅」より徒歩5分「五反田駅」より徒歩5分「大崎広小路駅」より徒歩1分お問い合わせ:03-5704-7361(地域教育相談室 岡野)※お申込みは下部ボタンのお申込みフォームよりお願いいたします。お申し込み締め切り:7月22日(土)13:00まで主催:株式会社LITALICO(LITALICOジュニア)12:30~受付開始13:00~開会挨拶&LITALICOの家族支援について(20分)13:20~ペアレントトレーニングの有効性に関する研究報告(20分)13:40~中田洋二郎先生による基調講演(120分)15:40~質疑応答&休憩(15分)15:55~パネルディスカッション(100分)17:35~質疑応答、閉会挨拶、インフォメーション(15分)17:50~教材・展示コーナー自由閲覧(20分)学校や幼稚園、保育園の先生やカウンセラーの方々、子どもの発達が気になり、ペアレントトレーニングに関心がある保護者の方々をはじめ、「家族支援」にご関心がある方はどなたでもご参加いただけます。たくさんの方のご来場をお待ちしております!※2017年6月13日追記:満席のためフォーラムの申し込みは締め切りました。たくさんのお申し込みありがとうございました。残念ながら今回ご参加いただけなかった方も、次回以降のイベント情報をお待ちいただければ幸いです。第10回教育実践フォーラムジュニアペアレントトレーニング
2017年06月09日子どものころから家事が大嫌いだった私出典 : 私の母親は「娘に家事を仕込まなくては」と使命感があったようで、「お母さんと一緒に台所に立って料理を覚えなさい」と口を酸っぱくして言われました。母は料理が上手で、とても手際よくおいしい料理を品数多く作ってくれました。だけど、いざ手伝おうとしてもその手順を見ているだけで目が回るような気がして、何をすればいいのかわからず呆然と立ち尽くすありさま。母には呆れられ、それ以来「絶対に嫌!」と二度と台所には立ちませんでした(皿洗いはできたんですけどね)。大学に行って一人暮らししてからは、餃子や肉を焼くだけ。あとは味噌汁とカレーライスくらいでしょうか。それさえも作っていることを忘れ、鍋を真っ黒に焦がしてしまったこともありました。部屋の床はろくに見えず、もはや汚部屋と呼べるレベル。実家に戻ってからは無理やり初心者向けの料理教室に行かされましたが、なぜかいいところは他の人に全部取られてしまって私は米洗い係。あほらしくなって1回で行かなくなってしまいました。結婚してからは、「これからはちゃんとした料理を作らなきゃ」と意気込んで、料理本を積み上げて3時間以上かけてご飯を作っていました。ただの家庭料理ですよ?別に特別なごちそうを作ろうとしていたわけではありません。掃除も嫌いで、「掃除しなくちゃ」と思うだけでうんざり。「私って家事嫌いのズボラ人間なんだな」こんな日々の中で、私の自己肯定感は地に落ちていました。「頑張らなくちゃ」と自分を追いつめる日々出典 : その後、31歳で子どもが生まれ、「ちゃんとやらなきゃ、頑張らなくちゃ」と、私はどんどん追い詰められてゆきました。「できないのはだらしない性格で今まで怠けていたからだ」と自分を責める日々。持てる力の200%を発揮して必死で料理を作り、部屋も掃除していましたが、それでもなかなか自分の育った家庭のような状態にはなりません。せめて母がしてくれたことくらいは、子どもにもしてあげたいのに。いくら頑張ってもどうしてうまくいかないのかわからず、無理して家事をこなすと心身ともにどんどん疲れがたまっていき、次第に鬱状態になってしまいました。昔から家事をすると疲れの余り機嫌が悪くなる傾向があった私。掃除しているとき、小学生にもならない娘に「邪魔だから出て行け」と言ってしまったり、料理をしながら「どうしてこんな思いをしなきゃいけないんだろう」と声に出して言うようになってきてしまいました。娘は泣くし、私も泣きたいし、もう消えてしまいたいほど苦しかったです。発達障害専門医にかかってから苦手の正体がわかってきた!出典 : それから、46歳で発達障害の専門医にかかり、アスペルガー症候群に加えてADHDの診断が下りました。先生に掃除と料理が苦手なことを話すとこういわれました。先生「掃除は段取りを組む必要があって、それは発達障害の人は苦手なんです」私「ルーチン化してできるだけ迷わないようにしたのですが」先生「そうすると、掃除を遂行するのに過集中を起こして疲れてしまうんですよ」まさにその通りで、掃除が嫌いなのにアスペルガーのこだわりゆえに隅々まできれいにしようとして疲れて泣きそうになったり、逆に怒りが湧いてきて子どもに当たり散らしていました。私「先生、私料理が大嫌いなんです」先生「料理はマルチタスクが必要な上、段取りよく進める必要があります。手早くすることも必要になりますね。(検査結果を見て)あなたの苦手なことばかりですから、苦手なのはしょうがないのです」そういえば、2品同時に作ろうとしたら片方は失敗する、何度作ってもレシピが頭に入らない、レシピを何度も見直さなければ手順を忘れるということがありました。ちなみに同じアスペルガー症候群の娘も、レシピと首っ引きでないと料理を作ることができません。やはり同じ特性があるのだなと納得しました。こうして解説してもらうと、自分の力ではどうしようもないことで苦しんでいたことが分かり、「苦手なものはどうしようもないんだ」と心が軽くなりました。障害福祉サービスを利用してヘルパーさんに来てもらうことに出典 : 市の相談支援事業所で相談したところ、生活の自立能力が低いということでヘルパーさんが派遣されることになりました。最初の月2回からだんだん増やして、今月からは週2回の計4時間になります。私の場合は、料理を主にお願いすることにしました。材料は適当に野菜や肉を買っておきます。それが難しければ買い物に同行してもらうことも可能です。ヘルパーさんが来たら、一緒に冷蔵庫を見ながら「今日は小松菜はベーコンいためにして肉は唐揚にしよっか」という風にヘルパーさんに案を出してもらい作ってもらうものを決めていきます。そのときに古くなった調味料やダメになってしまった肉や野菜など、冷蔵庫の腐海を整理してもらうこともあります。あとはおしゃべりしながらヘルパーさんがメインで料理を作っていきます。毎週決まった日に4~5品の作り置き料理を作ってもらうことで、「あと3日間は何もしなくてもごはんがある」と思うことができるようになり、ものすごく心が軽くなりました。それまで、疲れたときはお惣菜を買ったり、冷凍食品に頼っていましたが、コンスタントに手作りの料理が食べられるようになり、罪悪感が減って心が明るくなってきました。娘は味覚が敏感なので、「ママが作った料理が食べたい」と言うこともあります。これだけ料理の負担が減ると、ストックがなくなった日にリクエストされた料理を作る余裕もできてきました。それにヘルパーさんが作る料理にもだいぶ慣れてきたようです。今では、料理が出来上がったらすぐ味見に来るほどになりました。また、うちの場合は、ヘルパーさんが来てる間に見守ってもらいながら掃除をすることにしました。そうすると過集中を起こすことを避け、掃除をすることができることに気づいたのです。ヘルパーさんが来ることで、家の中に吹き込んだ新しい風出典 : うちは母子家庭かつ娘が引きこもりという特殊な環境であるため、家のなかは閉じられた空間でした。だけどヘルパーさんという新しい風が入ってきたことで、私も人としゃべる機会が増えて元気が出てきましたし、娘に家事のことで当たることもほとんどなくなってきました。ヘルパーさんに聞くと、だんだん発達障害の利用者さんが増えているそうです。苦手なことは人に手伝ってもらうことで、日常の困難を軽減し、より充実した時間を過ごせるようになるといいですね。困難なことを助けてもらう。それは甘えではありませんから。
2017年06月09日