梅雨真っ只中だと、つい気分までジメジメしてしまうことはありませんか?そこで、今回ご紹介するのは、フランスから届いたカラッと晴れやかな気分にしてくれるオススメの注目作です。『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』【映画、ときどき私】 vol. 396オリンピックの銀メダリストとして活躍していた水泳選手のマチアス。ある日、同性愛者への差別発言によって世界水泳大会への出場資格をはく奪され、罰としてゲイのアマチュア水球チーム「シャイニー・シュリンプス」のコーチをすることとなる。彼に課されたミッションは、弱小チームを3か月後にクロアチアで開催されるLGBTQ+のオリンピック“ゲイゲームズ”に出場させることだった。ところが、メンバーは勝ち負けにこだわらないパーティ好きなお調子者ばかり。マチアスは適当にやり過ごそうとしていたが、悩みを抱えながら明るく生きるメンバーたちと触れ合うなかで、少しずつ心を開いていくことに。次第にまとまってきた彼らを待ち受ける結末とは!?本国フランスでは、2019年に公開され、初週動員数No.1に輝くなど、大ヒットとなった本作。そこで、実在するゲイの水球チームにインスパイアされて誕生した物語の裏側について、こちらの方々にお話をうかがってきました。セドリック・ル・ギャロ監督 & マキシム・ゴヴァール監督共同で監督と脚本を務めたのは、実生活で「シャイニー・シュリンプス」に7年間所属しているセドリック監督(写真・左)とプロデューサーの紹介によってセドリック監督と運命の出会いを果たしたマキシム監督(写真・右)。作品が完成するまでの道のりや実際のメンバーたちによる驚きのエピソード、そして日本への思いについてお話いただきました。―今回、おふたりでの共同作業は、どのように進められたのでしょうか?2人だったからこその強みなどがあれば、教えてください。マキシム監督まず、僕はセドリックとは違ってチームのメンバーでもないし、ゲイでもないので、脚本を書くにあたっては、僕が彼にインタビューをするような形式を取りました。そうすることで、彼にとっては普通のことでも、外から見たらおもしろいと感じることを見つけられるのではないかなと。それから、最初に同性愛者へ理解のなかったマチアスを描くうえでも、当事者ではないからこそ僕の意見が活かせると思ったのも理由です。なので、セドリックが素材で、僕が視点というバランスで作業を進めていきました。―なるほど。その過程で、意見が食い違うことはありませんでしたか?セドリック監督どういう流れでストーリーを展開させるかということや映画のトーンに関しては、最初から僕たちの意見は同じでしたね。もちろん、細かい部分やセリフの言い回しなどで話し合わなければいけないときも多少ありましたが、作品の方向性やアイディア、ユーモア、感情の部分などの本質的なところは一緒だったかなと。違いといっても、本当にちょっとしたことでした。ただ、フランスでは「悪魔はディテールに潜む」と言いますからね……。マキシム監督そうだね(笑)。世界選手権の結果については意見が正反対にわかれましたが、それぐらいかなと思います。今回、僕たちが目指したのは、LGBTQ+のコミュニティの人たちだけではなく、誰もが楽しめる作品にすること。そのために、お互いにインスピレーションを与えながら、修正をかけていくことを心がけました。結果的に、現実を裏切ることのない楽しい作品に仕上がったと思っています。勝つことより大事なのは、一緒に体験すること―映画のなかに、実際のチーム内で起きた出来事が反映されているシーンなどもありますか?セドリック監督具体的なエピソードというのはありませんが、チームのスピリットや雰囲気というのは、そのまま活かされていると思います。特に、試合に勝つことよりも、みんなで一緒にいることや笑い合って過ごすことの大切さを重視しているところは、まさに僕のチームと同じですね。―個性豊かなメンバーが繰り広げるウィットに富んだ会話のやりとりも、非常に面白かったです。モデルになっている方はいますか?セドリック監督実際のチームには35人のメンバーがいて、20代の学生からすでに退職した60代の人まで、幅広い年代で構成されています。本当に多様性に富んだ人たちが集まっているチームなので、映画のキャラクターはそれぞれのメンバーの個性を散りばめて作り上げました。劇中で、ジャンという人物が「世の中には、ゲイじゃないのに不幸な人もいるんだよ」といったことを言いますが、それは僕のチームメイトがよく「ゲイで幸せだ」といった言葉を口にするので、それが基になって生まれたセリフです。―マキシム監督は、実際のチームと一緒に時間を過ごすなかで新たな発見もありましたか?マキシム監督僕が驚いたことは、2つありました。まずひとつめは、スポーツに対する考え方がまったく違うこと。僕は体育会系なので、どうしても勝つことに重きを置いていますが、彼らは勝つことに全然興味がないんですよね。なぜなら、彼らにとって大事なのは、行動をともにし、体験をシェアすることだからです。それを知ったとき、「この映画を撮る価値はある」と確信しました。もうひとつは、おもしろかった話なんですが、セドリックの友達のひとりにコスプレ好きがいて、トーナメントに出発する際、衣装を詰め込んだ大きなスーツケースを持ってきたんです。それほど衣装を持ってきたにもかかわらず、唯一持ってくるのを忘れたのが競技用の水着でした(笑)。でも、これこそまさにチームの精神性を体現している出来事だなと感じたので、僕の大好きなエピソードです。理解し合うのに必要なのは、お互いに対する寛容さ―ますます「シャイニー・シュリンプス」を好きになるお話ですね。セドリック監督は、チームに入ったことでご自身の人生にどのような変化がありましたか?セドリック監督実は、このチームに入るまで、僕にはゲイの友達がいませんでした。もちろん普通に友達はいたので、決して不幸だったわけではありません。でも、同じ価値観や思考を持っている友達の存在が、人生においてこんなにも大事なことだとは知りませんでした。それまで自分が経験してきたことを自由に話せることも、それを共有してお互いにアドバイスし合えることも、自分にとってこんなに大きなことだったとは考えもしなかったので。それに、彼らは他人と違うことに対してとてもオープンマインドなので、これまでだったら人と違うと敬遠されていたものが、むしろ違うことを褒めてくれるのです。そういう考え方のおかげで、自分のことをより“開拓”できるようになったのではないかなと思います。あとは、こうして日本から取材を受けていること自体、人生が大きく変わった証拠ですよね(笑)。―劇中では、同性愛者に偏見があったマチアスがどんどん変わっていく姿が描かれていますが、そんなふうに違う者同士がお互いを理解しあうのに必要なことは何だと思いますか?セドリック監督まず大切なのは、寛容な心だと思います。ただ、どちらかが寛容さを持てばいいというわけではありません。つまり、お互いが相手の社会に対して寛容な心を持つことが必要だという意味です。たとえば、いまはSNSで相手を中傷した場合、傷つけられた人はすぐに激しく反論してしまいがちですが、その前に「なぜ自分は傷ついたのか」ということをきちんと説明するべきだと僕は思っています。社会にはまだ同性愛に嫌悪感を抱いている人や道理が通じない人もいますし、そもそも同性愛に対してまったく知識がない人もいるので、そういう人たちには、まず教えるところから始めるべきなのかなと。特に、SNSだとヒートアップしやすいので、対立してしまうかもしれませんが、罵倒し合うのではなく、わかってもらう努力をする必要もあるように感じています。だからこそ、それぞれの人物の人生をじっくり描ける映画を通して理解してもらいたいです。マキシム監督セドリックが言ったことに付け加えるなら、大切なのは好奇心。相手のことを無視したりすることなく、好意的な目線を持つことも重要だと僕は考えています。日本での撮影がいまから楽しみで仕方ない―ありがとうございます。話は変わりますが、エンドクレジットでセーラームーンのコスプレをしている写真が非常に気になりました。実際の試合のときに撮られたものですか?セドリック監督セーラームーンの衣装は、パリのトーナメントのときに僕たちが実際に着ていたものです。僕のチームはみんなコスプレがすごく好きで、つねに新しいアイディアを探していますからね。おそらくそれは、メンバーのひとりに日本のカルチャーオタクのような人がいて、彼が日本のアニメや歌が大好きなので、その影響もあると思いますが。とはいえ、フランスでも僕らの世代は日本のアニメが大好きで、小さいころは「セーラームーン」はもちろん、「キャッツ・アイ」とかもよく見ていました。そういったこともあって、劇中にも取り入れることにしたんです。マキシム監督もしかしたらですが、第2弾でセーラームーンが再登場するかもしれませんよ。―それはどういう意味でしょうか?セドリック監督実は、本作の続編は日本での撮影を予定しているんですよ!そのときにセーラームーンを登場させるかどうかをいま話し合っていて、アイディアとして盛り上がっているので、みなさんがスクリーンで見れる可能性は高いんじゃないかなと思います。―次回作でのコスプレも、日本を舞台にどのような展開が繰り広げられるのかも楽しみにしています!セドリック監督うまく行けば、今年の10月に日本で撮影をすることになりますが、僕たちもキャストたちも日本のカルチャーのファンなので、「早く日本に行きたいね!」と話しているところです。マキシム監督そうだね。僕は日本の伝統と近代性のコントラストや料理、音楽など、すべての文化が大好きです。もちろん、日本の女性もね(笑)。なので、日本に行けることが夢のようです。セドリック監督僕は日本の楽しいゲイのみなさんのことも好きですよ(笑)。以前、1度だけ仕事で日本には行ったことがありますが、滞在時間が48時間くらいしかなかったので、また絶対に戻ってきたいと思っていました。本当に、楽しみにしています。笑いと感動が止まらない!さまざまな悩みを抱えつつも、ユーモアとノリで我が道を突き進む「シャイニー・シュリンプス」のメンバーたち。自分が目指すべき“ゴール”とは何かを決められるのは、自分だけだと気づかせてくれるはず。笑いながら、思わず涙が出ちゃう最高のラストシーンも必見です。取材、文・志村昌美笑顔にしてくれる予告編はこちら!作品情報『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』7月9日(金)全国公開配給:ポニーキャニオン、フラッグ© LES IMPRODUCTIBLES, KALY PRODUCTIONS et CHARADES PRODUCTIONS
2021年07月08日6月は「プライド月間」と呼ばれ、LGBTの権利について啓発を促す活動が世界各地で行われています。そんななかでオススメしたいのは、海外でも高く評価されている話題のドキュメンタリー映画『息子のままで、女子になる』。今回は、こちらの方々にお話をうかがってきました。サリー楓さん&杉岡太樹監督【映画、ときどき私】 vol. 388建築デザイナーやモデル、コメンテーターなど、幅広い分野で活躍し、トランスジェンダーの新しいアイコンとして注目を集めているサリー楓さん。本作では、楓さんの新たな挑戦や日常生活だけでなく、初めて家族と対話する瞬間にまで杉岡監督が鋭く切り込んでいます。そこで、おふたりに撮影の裏側や多様性のある社会に必要なものについてそれぞれの思いを語っていただきました。―約1年半にわたる密着となりましたが、ご自身で作品をご覧になっていかがでしたか?楓さん今回は、私のライフイベントが次々と発生するところにたまたまカメラが居合わせていただけなので、私にとっては日常の記録みたいな感じでしたね。ただ、自分では普通だと思っていたのに、私は日常を過ごすことにこんなにもエネルギーを使っていたんだということを改めて知りました。―最初に楓さんに会ったとき、監督はどのような印象を受けましたか?監督まずは、フォトジェニックな存在だと思いました。彼女は外見的な美しさを持ち合わせているだけでなく、内面にあるものが表情や動きにそのまま出るタイプだったので、撮る人間からすると最高の被写体だなと。撮っていて楽しいと感じる人じゃなければ、もしかしたら1回目の撮影でやめていたかもしれませんね。―撮影するなかで、忘れられない瞬間といえばどの場面ですか?監督やっぱりお父さんとのシーンですね。あの場にいた全員が極限状態だったと思います。楓さんとお父さんだけでなく、もし僕にもカメラが向けられていたら僕もすごい表情になったいたんじゃないかなというくらい。でも、あのシーンを見れば僕らがどういうことを訴えたいのかというのは伝わると思っています。当事者とその親御さんにも発信したいと感じた―とはいえ、楓さんとしては葛藤もあったのではないでしょうか?楓さん実は、私は両親が出ることに最初は大反対でした。これまで両親とジェンダーについて話すことをずっと避けていたというのもありますし、そういう気まずいことをあえてカメラの前ですることが嫌だったからです。でも、トランスジェンダーのリアリティを伝えるためのドキュメンタリーなのに、親子関係という一番リアルな部分が映っていなければ、何も伝わらないんじゃないかなと。そこが腑に落ちてから納得はしましたが、内心では「両親が『出るわけないだろ』と断ってくれないかな」と期待していました(笑)。監督あはは!それは残念だったね。楓さん両親が出ると言ってから私にとっての"地獄"が始まったわけですが、それによってトランスジェンダー当事者だけでなく、カミングアウトされた親御さんに向けても発信できるのではないかと思うようになりました。ある日突然、自分の子どもにカミングアウトされたお父さんやお母さんは、当然困惑しますよね。おそらくそこでほかにも同じような親子がいるのかを調べると思いますが、そのときにこういう映画があるのとないのとでは、理解度が違うのではないかなと。当時、私に乗り越えられるかどうかわからない壁でしたが、いまはやってよかったなと感じています。ちゃんと乗り越えられたどうかは自分ではわかりませんが……。監督ゴールはないかもしれないけど、僕から見ると乗り越えていたと思うよ。だから、いまこうしてインタビューを受けることになっているんじゃないかな。楓さん私が勇気を出したとか、努力をしたというよりも、両親がこの話に乗って来たことで、ジェットコースターに乗せられちゃったみたいな感じです(笑)。監督(笑)。ただ、僕からも補足したいのは、彼女が抱えていた親子関係というのは、日本のLGBT当事者における懸念事項の大きな部分を占めていると言われていて、多くの人が共有できることだという思いから撮りたいと伝えました。それともうひとつの理由は、(映画の中で出てくる)講演活動やメディア出演のなかで彼女は「自分のジェンダーを親に認めてもらえない」という話をするのですが、それを一面的に発信するのは、フェアではないと思ったから。なので、もし出演を断られたとしても、お父さん自身の言葉を聞くアプローチはするべきだと考えていました。なぜなら、それが表現をする人間としての責任だと感じていたからです。事なかれ主義で自分だけ逃げたくなかった―なるほど。作品のなかでもお父さんのリアルな表情は非常に印象的でした。監督お父さんが本当にすごいなと思ったのは、初めてレストランで会ったシーンを撮影したとき。映画では空席から始まって、楓さんとご両親が入ってくるんですけど、その前に挨拶や「ここから入ってくる振りをしてください」といった打ち合わせがあったわけではなく、お店に入ったらいきなり撮影が始まっているという状況だったわけですよ。内心はどう思われていたかわかりませんが、何も言わずにそれを受け入れてくれたところに楓さんへの愛や親としての責任といった大きな何かを感じました。―実際、この映画を経て親子関係は変わりましたか?楓さんそうですね。それまではジェンダーについては触れてはいけないとモヤモヤしていましたが、いまはそれがなくなって話しやすくなったようには感じます。でも、以前の私たちのようなぎこちない親子関係というのは、おそらく日本中にたくさんあるんじゃないかというのは、今回の撮影を通じて考えるようになりました。私はたまたまこういう機会があったので、乗り越えられましたけど、実は私もずっと避けてきたことでしたから。同じようなことに思い悩んでいる人はたくさんいるはずなので、いまはそういう方々にこの映画が届けばいいなと思っています。―これまでに私もトランスジェンダーの俳優さんや監督に取材したことがありますが、どこまで踏み込んでいいのかについて悩んだことがあります。監督はどのような意識をされていましたか?監督事前に楓さんにも伝えたのですが、僕はカメラを持ったらブレーキが効かないタイプだという自覚がありますし、そもそもカメラは“暴力的な装置”だとも思っています。なので、もしかしたら傷つけてしまうことがあるかもしれないから、それが起きてしまったときはきちんと教えてほしいというのは伝えました。撮影の合間でも、不当な扱いをされていると感じないか、差別的なことを言われたと感じないか、ということは何度も楓さんに確認しながら進めるようにしました。ただ、そのいっぽうで僕が勝手にボーダーを決めて「これ以上は踏み込まない」とすることは僕のエゴなのではないか、という思いがあったのも事実です。覚悟を決めてカメラの前に立ってくれている人に対して、事なかれ主義で自分だけ逃げるのは失礼なのではないかと。なので、「自分が聞きたいことは聞く、撮りたいものは撮る」という部分も同時に心がけてはいました。ジェットコースターのような作品に仕上がった―そういう監督だから、楓さんも自分をさらけ出せた部分もあったのでは?楓さん私としてはさらけ出さなきゃというよりも、ただありのままでいただけですね。監督が“いじわるな人間”であることは知っていたので(笑)。監督あはは!楓さん最初はカメラの前でいつもよりもメイクをがんばって気合いを入れていましたが、それもだんだん飽きてきて、スッピンを1回撮られたらどんどん気が抜けていってしまって。でも、そういう瞬間が一番リアリティがありますよね。ちなみに、私的に映画に使ってほしくない映像が全体の5%あったとしたら、その5%全部が使われていました……。なので、映画を観たときに「あれもこれも映ってるの!?」みたいな(笑)。でも、最初から“いじわるジェットコースター”に乗ってしまったとわかっていたので仕方ないですよね。監督ただのジェットコースターから、いじわるジェットコースターになってきましたけど……。インタビューの終わりにはすごいことになってそうだな(笑)。楓さん(笑)。まあ、自分からジェットコースターに乗ったのに、「なんでここで落ちるんですか!」とクレームをつけられないですからね。観る方によっては、泣いてスッキリしたという人もいれば、落ち込む人もいるかもしれませんが、ジェットコースターのようだということだけは伝えておきます。監督そうだね。メリーゴーランドやティーカップだと思っていたら、振り落とされるかもしれないね。世の中にある間違ったイメージを払拭したい―では、みなさんには覚悟してご覧いただくということで。劇中で楓さんは、「世の中に広がっているトランスジェンダーのイメージが間違っている」とおっしゃっていましたが、実際にはどのような違和感を抱かれていますか?楓さん私がカミングアウトしたのは大学院生のときですが、当時はまだトランスジェンダーという言葉がいまほど普及していなくて、私もLGBTという言葉を知ったことでようやく自分が何者であるかを知ったほどでした。大学では、私より先にカミングアウトしていた方がいたのですんなり受け入れられたんですが、それ以外のところだと、「どんだけ〜」とか言われたり、「男の声出してみて」とかおもしろいことを求められたりすることが多かったですね。あとは、逆に「それはつらかったね」という反応もありましたが、私としては「そんな山あり谷ありみたいな人生送ってませんけど……」みたいな感じでした。そんなふうに、カミングアウトした瞬間に突然エンターテインメントみたいな扱いをされたり、感傷的に見られたりすることに違和感があったんです。でも、その原因はトランスジェンダーで検索したときに芸能情報のようなものはたくさん出てきても、就職や実生活の役に立つような情報がまったく出てこないことにあるんじゃないかなと。このままだとカミングアウトしようとしている人が私と同じような思いを味わうことになると思ったので、ロールモデルとして参考にしていただけるように、ブログやSNSを使って発信することにしました。カミングアウトされる側にも伝えたいことがある―当事者の方々には大きな助けになったと思います。ただ、いっぽうでカミングアウトされる側の情報が少ないことも、どういう対処をしていいかわからない原因かもしれません。そのことについて楓さんから伝えたいことはありますか?楓さん自分らしくいることや多様性がこんなに肯定される時代ってこれまでなかったんじゃないかなと感じています。だからこそ、誰かにカミングアウトされたときに、「“LGBTフレンドリー”が目指されている時代だから、受け入れなきゃいけない」みたいに気負ってしまって、本当はまた受け入れられていないのに、理解した振りをしている人もいるのではないかなと。でも、そんなふうに装ってしまうことほど悲しいことはないと思っています。たとえば、私の父はカメラの前でも嘘つくことなく、「自分はまだ理解できていない」といったことを言っています。確かに、18年間ずっと息子として一緒に生活してきたのに、突然「女子です」とメイクして現れた息子を急には受け入れられないですよね。多様性が尊重されている時代だから受け入れなきゃというよりも、自分なりに考えてわからないことがあれば、「わからない」とちゃんと伝えたほうがいいと私は思っています。そうしないと、お互いに学び合う機会を失って、表面的な理解だけにとどまってしまうと感じているからです。―正直に話してくれている相手には、正直な思いを伝えたうえで向き合うことのほうが大事なんですね。監督ただ、これは親子だから言える部分もあるのかなとは思います。他人が同じことをした場合、それが許されるのかな?楓さん確かに、難しいところかもしれないですね。家族や親友にカミングアウトされたとき、受け入れるのが困難な場合もあると思いますが、その裏には「就職活動で不利にならないかな」とか「これが原因でいじめられないかな」といった相手を気遣うがゆえに想像力が働くこともあるじゃないですか。つまり、守りたい相手の幸せを願うからこそ理解が示させない場合もあるので、私は理解が示せないことが一概に悪だとは思っていません。だから、理解できる人がいい人で、できない人が悪い奴みたいな単純な話ではないのかなと。理解できない人にもできないなりの愛や思い入れがそこにはあるのだということも、この映画を通して発信していけたらいきたいですね。無理に自分らしく振る舞わなくてもいい―非常に興味深いお答えをありがとうございます。では、多様性の尊重される社会に必要なのはどんなことだとお考えですか?監督僕は、寛容さだと思います。さまざまな価値観が肯定されようとしているいまの時代は自分が承服できないものであふれているという側面もあるはずなので、ストレスを感じている人も多いかもしれません。でも、そこにストレスがあったら、おそらく多様性がある社会で生きるのは難しいので、自分が受け入れられないものに対しても、「だからこそ世界は豊かだよね」と、でこぼこ道の人生を楽しめるマインドになれたらいいですよね。楓さんまず「多様性」という言葉はLGBTや弱者のためのものではなく、他者を認めず排除しようとしている人や多様性を望まない人たちも含まれると私は考えています。それこそが多様性なので、誰が間違いとかではなく、それぞれが一人称の視点を持つことが必要だと思います。あと、いまは自分らしさや他人と違うことを求められることが多いですが、あまり多様性に理想を抱きすぎないというのも大事かもしれません。もちろん人と違うということが自分らしさにもつながっているところはありますが、「人と違わなきゃいけない」と思いながら発見する自分らしさは、結局のところ自分らしさではないと思います。奪われそうになっても絶対に譲れないものや削っても削っても自分の内側にある”燃え残った芯”のようなもの、それこそが本当の自分らしさだと私は思っています。ただ、「無理に自分らしくしなくてもいいんじゃない?」というのも付け加えたいですね。自分らしくしないという決断もありだと思うので、そういう選択肢がある社会になったら素晴らしいんじゃないかなと。監督確かに、自分らしさなんて自然と生まれてくるものなので、そこで焦らなくていいと僕も思います。いっぽうで、「あれはダメ」とか「こうしなきゃいけない」とか周りから言われることもありますが、これから未来で活躍する人たちには窮屈な思いをせずにありのままの自分でいてほしいですね。そういったこと含めて、まずはこの映画を観ていただければ、わかると思います(笑)。インタビューを終えてみて……。この作品を通して、何でも言い合える“戦友”のような関係になったことが感じられる楓さんと杉岡監督。ユーモアを交えつつも、核心をついたひと言ひと言は、どれも興味深いお話ばかりでした。今後もおふたりがどのような発信をされていくのか、注目していきたいと思います。決められるのは自分自身だけ!誰もが葛藤や挫折を経験する日々のなかで、自らの手で道を切り開いていく楓さんの姿に、自分のなかにも眠っていた“何か”が目覚めていくのを感じられるはず。ジェットコースターのような106分の先に、新たな自分と出会ってみては?写真・安田光優(サリー楓、杉岡太樹)取材、文・志村昌美サリー楓ヘアー&メイク/TAYAストーリー男性として生きていくことに違和感を持ち続けていた楓は、これからの人生を女性として生きていくと決断する。幼いころから夢見ていた建築業界への就職も決まり、新たな人生は動き始めていた。そんななか、ビューティコンテストへの出場や講演活動がきっかけとなり、メディアでも注目を集める楓。セクシャルマイノリティの可能性を押し広げたいと語るいっぽうで、父親に認められたなかった息子というセリフイメージから抜け出せずにいた。そして、自分らしい未来を手にするため、ある決断をすることに……。心を揺さぶる予告編はこちら!作品情報『息子のままで、女子になる』6月19日(土)より、ユーロスペースほか全国順次公開配給:mirrorball works© 2021「息子のままで、女子になる」写真・安田光優(サリー楓、杉岡太樹)
2021年06月18日世界中のLGBTQ映画を上映する映画祭である「第29回レインボー・リール東京」(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)の開催が決定。シネマート新宿およびシネマート心斎橋が2会場となる。NPO法人レインボー・リール東京が、LGBTQなどのセクシュアル・マイノリティをテーマとした映画を、ジャンルを問わず国内外からセレクションし、1992年より毎年上映してきた本映画祭。日本のLGBTQコミュニティの中では最も古いイベントの1つであり、LGBTQに特化した国内でも珍しい映画祭。また、企画・運営はすべてボランティアスタッフが担っている。昨年2020年は新型コロナウイルス感染拡大予防のため開催を見送られていたが、第29回にあたる今年は、シネマート新宿、およびシネマート心斎橋の2会場にて開催。これまで特に要望の声が高かった関西エリアでの開催は、第9回(2000年7月)以来、実に21年ぶり。上映ラインナップの発表は6月中旬を予定しているという。NPO法人レインボー・リール東京 代表理事・宮澤英樹氏よりコメントようこそ、レインボー・リール東京へ。昨年は、私たちの映画祭も新型コロナウイルスの影響から逃れることはできず、1年に1回行ってきたこの大切なイベントをお休みせざるを得ませんでした。大切にしてきた私たちと同様に、きっと大切に思ってくれている人たちも残念な気持ちだったことと思います。でも、それだけ大変な日々が続いています。そんな中でも、当然だけど地球は回転をやめないし、私たちは生き続けることをやめたりしない。生きて、笑って、泣いて、怒る。私たちは人を愛する、同性も異性も関係なく。それはウイルスであっても止められない。その証は、私たちの選んだ作品の中にあります。ぜひ見つけてください!レインボー・ リール東京初のオンラインイベントも開催なお、レインボー・ リール東京では東京レインボープライド 2021を記念して、5月 3日(月)~5日(水)の3日間、初のオンラインイベントを開催。今回は、LGBTQ先進国・台湾のLGBTQ専門動画配信サービス「GagaOOLala」の特別協力の下、映画『迷い子たちの物語』(第26回レインボー・リール東京上映作品)の上映と映画業界人によるトークイベントを通して、台湾のクィア映画の魅力に迫る。台湾はクィア映画の分野でもアジアをリードし続け、古くは90年代のアカデミー賞外国語映画賞ノミネート作『ウェデ ィング・バンケット』から、近年では『先に愛した人』『君の心に刻んだ名前』のような台湾年間興収トップランクの大ヒット作まで、数々の名作を生みだしている。第29回レインボー・リール東京(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)は7月16日(金)~7月22日(木・祝)シネマート新宿にて、 7月23日(金・祝)~7月29日(木)シネマート心斎橋にて(各会場:計7日間 合計:14日間)開催。(text:cinemacafe.net)
2021年04月23日おうち時間が増え、動画配信サービスにハマる人が続出。そこで、配信で観られるハートフルなヒューマンドラマを6つ紹介します。教えてくれたのは映画ライターの山縣みどりさんです。『Lの世界 ジェネレーションQ』(2020年/Huluにて独占配信中/全8話)LGBTQ+への理解が深まる傑作。女性同士の恋愛にフォーカスした革新的な人気ドラマの続編。LGBTQ+にフレンドリーな街として知られるシルバーレイクを舞台に、セクシュアル・マイノリティの恋愛や家族問題、さらにはジェンダー・アイデンティティを切り口にした物語が展開する。知識として理解したつもりの“性の多様化”を可視化し、マジョリティな人々と何ら変わらないと実感させてくれる傑作。シーズン2の製作も決定した。©2019 “The L Word: Generation Q” ShowtimeNetworks Inc. All Rights Reserved.『トゥループ・ゼロ~夜空に恋したガールスカウト』(2020年/Amazon Prime Videoにて独占配信中/97分)自分らしさと多様性を大事にしよう!宇宙オタクな少女クリスマスと、はみ出し者の仲間が、ガールスカウト大会優勝を目指して奮闘する姿を追う友情の物語。女の子らしいのが美徳とされた時代に、ブレずに自分らしくあり続ける子供たちがキラキラと輝いている!スカウト活動をしながら友情を培い、それぞれの特技で自信を深め、互いを思いやる姿には大人も学ぶ点が多数。キッズの物語だが、多様性を認めることの重要性も教えてくれる。『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』(2020年/Apple TV+で配信中/全10話)思いやり&ウィットが人心をつなぐ!ひょんなことからイギリスのプレミアリーグの監督に就任した大学アメフトのコーチが、チーム立て直しに奮闘!サッカーのサの字も知らない新米監督は、思いやり&ウィットという強力な武器を持ったポジティブな男性で、人心に訴えかけるコーチングを披露する。人間同士は結局、腹と腹を割って話すことが重要と思わせる心温まるコメディだ。部下とのコミュニケーションに悩む上司必見かも。『これからの人生』(2020年/Netflixにて独占配信中/95分)寛容と愛の大事さが伝わってくる。元娼婦のマダム・ローザは、知り合いから頼まれ、セネガル移民の孤児モモを預かる。二人は徐々に絆を深めていくが、老いたマダムが病に倒れ…。ホロコーストのトラウマを抱えながら、寛容と愛を持って不良少年を受け入れるマダムの人間性が素晴らしい。毒舌マダムに「約束を守る子だ」と言われたモモが彼女の信頼を支えに、人間として成長していくクライマックスは涙なしには見られない。『この茫漠たる荒野で』(2021年/Netflixにて独占配信中/119分)分断された社会に希望を示す物語。南北戦争後、退役軍人キッドは各地でニュースを読み聞かせている。ある土地でネイティブ・アメリカンに育てられた白人少女と出会った彼は、彼女を親戚宅に送り届ける旅に出る。トム・ハンクスが演じる主人公は、戦争で疲弊し、分断に困惑する人々に真実の重要性を伝える存在だ。そこに家族と引き離された少女が絡む図式は現代アメリカと重なり、物語が示してくれる癒しと希望が胸に響く。『パーマー』(2021年/Apple TV+で配信中/110分)偏見に負けず、自分らしく生きる。窃盗で有罪となり、プロになる夢を断念した元アメフト選手と、母に捨てられた少年の絆を描く人間ドラマ。保守的な田舎町で偏見に晒される青年が、ジェンダー規範にとらわれない少年の強さにインスパイアされる展開を情緒的に描いている。ドラマの核となる少年を演じるライダー・アレンはこれが初めての映画出演だが、彼のエモーショナルな熱演と、主役J・ティンバーレイクの相性が素晴らしい!やまがた・みどり映画ライター、セレブ・ウォッチャー。レビューやインタビューなどを中心に、弊誌をはじめ、数多くの女性誌や映画雑誌、ウェブサイトなどで幅広く執筆。※『anan』2021年2月17日号より。(by anan編集部)
2021年02月16日SNSやカルチャーシーンを介して身近になってきたフェミニズム。現在は第4波といわれ、性暴力に抗議する「フラワーデモ」のような社会運動にもつながっている。その立役者のひとりが、松尾亜紀子さん。フェミニズムの歴史を俯瞰してみたい人のための3冊。「黙っていても良くならない。声を上げなければと感じる10年でした」出版社勤務時代からフェミニズムに通じる本を手がけ、2018年に専門出版社「エトセトラブックス」を立ち上げた。『エトセトラ』と名付けた雑誌は、VOL.1で「コンビニからエロ本がなくなる日」を特集。大いに話題となった。編集長を毎号替えるスタイル。最新号VOL.4の特集はバックラッシュだ。編集長を、#KuTooを提唱した石川優実さんが務める。「フェミニズムが盛り上がる一方で、バックラッシュと呼ばれる揺り戻し、反フェミニズムも強くなっています。石川さんとの打ち合わせを重ねる中で、日本では、欧米や韓国ほど#MeTooの熱気が高まらなかったのはなぜかが見えてきた。実は日本でも女性運動は連綿と引き継がれていたのですが、2000年代に起きたバックラッシュで世代が分断されてしまったことが大きい。また、石川さん自身がバックラッシュに遭っていたので、女性運動の歴史を知るとともにそれについて学んでみようと考えました」石川さんへのヘイトスピーチの悪質さはご存じの読者もいるだろう。「心身ともに傷ついていた石川さんが、先輩たちの体験を聞く取材を重ねるにつれ、みな仲間で連帯して苦境をはね返してきたとわかり、元気を取り戻してきたんです」松尾さんはシスターフッド(女性同士の連帯)の大切さを強調する。1月に専門書店もオープンさせた松尾さんからのおすすめ本は下記。刊行から15年、いままた本国フランスで熱い支持を集める22万部超の『キングコング・セオリー』は、性暴力の問題やポルノグラフィー、身体の尊厳について語り尽くす。「著者自身が性被害当事者で、被害事実を受け入れる過程を自らの言葉で語っています。母性の過大評価にしても、『その言葉は誰に言わされているのだろうか』『男性が権力の道具にしているのではないか』などと常に問いかける。過激ともいわれるけれど、真摯なフェミニズム書です」。『ウーマン・イン・バトル』は、女性運動の歴史を俯瞰するのには格好のバンド・デシネ。「世界の女性たちの闘いを知れば、その連なりに自分たちがいるのだと感じることもできます」女性の数だけフェミニズムの形がある。「伝えられていない声を伝えたい。『専門の出版社や書店なんてあるんだ』という驚きをきっかけにフェミニズムの枠が拡がっていくのを願っています」『ウーマン・イン・バトル自由・平等・シスターフッド!』マルタ・ブレーン著 イェニー・ヨルダル絵枇谷玲子訳1600円(合同出版)『エトセトラ VOL.4』1300円(エトセトラブックス)『キングコング・セオリー』ヴィルジニー・デパント著相川千尋訳1700円(柏書房)『エトセトラブックス BOOKSHOP』東京都世田谷区代田4-10-18ダイタビル1F木・金・土曜12:00~20:00(週に3日のみ)※『anan』2021年2月10日号より。写真・土佐麻理子取材、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年02月06日社会問題や新しい価値観など、時代の声を知りたいときには、親切で等身大に自分ごと化しやすいエンタメに触れるのがぴったり。エンタメ通のライター・小川知子さんに、まさに今の時代性に気づくきっかけとなる、チェック必須のドラマ作品をセレクトしていただきました。フィクションだからこそ自分ごとに転換しやすい。ジェンダー問題や多様性、ブラック・ライブズ・マターなど、世界的に大きなトピックとなっているこれらのキーワード。一人ひとりがよりよく生きるために、それぞれの本質を理解したい。そのための一助となるのがエンタメ作品。「近年は単純に楽しめる娯楽作品の中にも、多様性や平等性といった社会的なテーマに目配せをしているものが主流となっています。こうした作品を観たり、読んだりすると、無意識の偏見や価値観の違いを自覚できる。自分の中の“当たり前”を壊すことが生きやすさにつながるかなと」(小川さん)意識してみると、最近のエンタメには社会の大きな流れが反映されていることが多々。なかでも当事者の立場を察することができたり、自分との関連に気づけたりする作品を小川さんがセレクト。「今回はフィクションから選びました。というのも、シビアな現実を見せるノンフィクションは、自分ごととして咀嚼しづらい場合も。一方フィクションは、ある意味、安全に、主人公の辛い状況を想像したり、おもんぱかったりすることができる。より自分だったら…と問いかけやすいと思います」ハラスメントへの各人のスタンスがリアル!『ザ・モーニングショー』…女性のエンパワーメント、シスターフッド朝の人気情報番組「ザ・モーニングショー」の男性アンカーが、セクハラで解雇されるところから物語が始まる。「彼と組んでいた女性司会者・アレックスは、保身のために型破りな地方キャスター・ブラッドリーを担ぎ出し、女性2人の二枚看板で番組を仕切ろうとします。興味深いのは、#MeTooや男女平等に対する意識が、世代や立場によって違うという現実を見せていること。男性対女性という単純な図式でもない、多角的な視点から考えさせられます」。Apple TV+で配信中。©Apple国柄の違う女性同士、時に対立し、共闘する。『エミリー、パリへ行く』…女性のエンパワーメント、多様性シカゴのマーケティング会社で働くエミリーは、パリの子会社へ出向することに。「英語しか話せず押しの強いエミリーを、フランス人の女性上司は受け入れられずにいますが、それでも仕事で必要なときはお互いに協力し合うという関係。一方、クライアントが制作したあるCMをエミリーは性差別的と否定し、フランス人の同僚はセクシーだと肯定。対立しますが、どちらかが100%正しいというわけでもない。やや極端な文化摩擦を横目に、自分のスタンスを再認識できます」Netflixオリジナルシリーズ『エミリー、パリへ行く』独占配信中Z世代の性の揺らぎと、前時代的な価値観の狭間に。『ユーフォリア/EUPHORIA』…多様性、ラベリングソーシャルメディアが蔓延する、アメリカのティーンたちが抱える闇や、希望を求めてもがく姿が描かれる。主演は注目の若手女優・ゼンデイヤ。「Z世代は、ジェンダー自認を完全な異性愛者と位置づけている人が約半数だそう。それほど性の揺らぎを当たり前としている自由な世代であっても、社会には“女性らしく”といったラベルがまだあるし、多様な在り方に対応するシステムも整っていない。その現実に苦しむ彼らの姿は、無自覚なラベリングを防ぐための戒めになる」「BS10 スターチャンネル」で3月放送予定 ※インターネットTVでも視聴可能©2020 Home Box Office, Inc. All Rights Reserved. HBO(R) and related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.学歴がなくても成功できる!今の時代の働き方の提示。『スタートアップ:夢の扉』…キャリアデザイン、格差社会能力はあるものの、高卒を理由に正社員になれないソ・ダルミが、起業をしようと奮闘する。「これまで韓国では学歴や家柄が就職に有利に働いてきましたが、映画『パラサイト』やBTSなど韓国のエンタメが世界を席巻しているように、実力があれば夢は叶うという風潮に変わってきている気も。このドラマもその一つ。しかも、視覚障害者に向けた画像認証システムの開発など、社会的な意義はあっても、ビジネスにならないとされてきた分野で成功しようとする姿に励まされます」Netflixオリジナルシリーズ『スタートアップ:夢の扉』独占配信中男子で描かれがちだった青春物語の女子版が登場。『私の“初めて”日記』…LGBTQ、多様性高校1年生では車いす生活を送っていたインド系アメリカ人のデービー。2年生で再び歩けるようになり、イケてる男子とのロストバージンを目論むが…。「ベースは王道の青春ラブコメディ。ただ、これまでと違うのは、主要キャストにアメリカ的な白人がいないこと。主役はインド系だし、親友はアジア系、もう一人もアフリカンアメリカンとメキシカンのミックスでレズビアン。キャラクターの背景から多様なんです。脱童貞の物語は多数あるけれど、移民二世の女性が主役なのは新鮮」Netflixオリジナルシリーズ『私の“初めて”日記』独占配信中キーワード女性のエンパワーメント…女性が抑圧されることなく、自分の力を発揮すること。リーダーシップなど。シスターフッド…女性同士の連帯を指す。姉妹的な絆もあれば、目的を同一とした共闘も含まれる。多様性…性別、年齢、人種、ハンディキャップなど、さまざまな性質の人が存在すること。ラベリング…人や物事に対して「こうだろう」と周囲がレッテルを貼り、決めつけること。キャリアデザイン…自分の経験やスキル、性格などを考慮して、職業を主体的に設計すること。格差社会…富裕層と貧困層の間で生じる経済や所得の差。近年は先進国の格差が問題に。LGBTQ…セクシュアルマイノリティの総称のひとつ。LGBTQIA、LGBTQ+とも。小川知子さんライター。映画宣伝・配給会社、『ecocolo』 編集部を経てフリーに。現在は『GINZA』『花椿』などで執筆。共著に『みんなの恋愛映画100選』(オークラ出版)。※『anan』2021年1月13日号より。取材、文・保手濱奈美(by anan編集部)
2021年01月07日小説『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』が『腐女子、うっかりゲイに告る。』の題名でドラマ化され話題となった浅原ナオトさん。新作『#塚森裕太がログアウトしたら』は、高校のバスケ部のエースの塚森裕太がインスタでゲイだと告白、そこから広がる波紋を、さまざまな立場の視点から、同じ時間軸のなかで繰り返し描く青春小説。学校の人気者が突然カミングアウト。周囲、そして本人の心の揺れの行方。「最初の構想として、何か大きな出来事があり、そこから巻き起こる小さな世界の話、というのがありました。カミングアウトって、告白したら終わりではない。そこから後に引く部分を書いてみたかった」視点人物を担うのは彼の告白を迷惑に思う同じ学校の隠れゲイの生徒、学校の教師、塚森のファンの後輩女子、ゲイに嫌悪感を抱くバスケ部の後輩、そして塚森本人だ。「隠れゲイの子は、違う立場の当事者として出しました。大人の視点も入れたくて教師を書きましたが、この人は相手の属性にとらわれているタイプ。ファンの後輩は、自分に自信がなくて塚森の存在に依存してきた子。バスケ部の後輩は、今はカミングアウトを受け入れる人が多いけれど、それができず逆にマイノリティとなって疎外感を抱く人物です」互いと接点を持ち、相互作用しながら自分と向き合っていく彼ら。最後に登場する塚森本人に関しては、「人気キャラだけど、実は無理している。その無理を書きたかった。SNS時代の今はみんながいろんな顔を持っているし、人は場面場面によって違う顔を持っていて当たり前。ただ、ゲイは人より仮面の数が多いというか、仮面に厚みがあって、自分を偽っている感覚がある。それと、塚森は人を好きになることに罪悪感がある。人に弱みを見せたくない部分もありますが、彼にとって人を好きになることは弱みなんです」登場人物みんなにとって大切なのは、人に認められることより、自分で自分を認めること。「自分を認める」と「自分が好き」は少し違って、「自分の手札に納得できなくてもそれで戦おうとするのが“認める”で、最初から強い手札を持っていると思えるのが“好き”という気がします。塚森の場合、強い手札を持っていると見せかけてきたんです」そんな塚森はじめ、脇役も含め、全員の変化に胸が熱くなるはず。『#塚森裕太がログアウトしたら』成績優秀、容姿端麗、性格の良さも評判のバスケ部のエースがSNSで同性愛者だと告白。周囲のさまざまな反応、そして塚森の本心は…。幻冬舎1400円あさはら・なおと小説投稿サイト「カクヨム」に『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』を投稿、’18年に書籍化。『腐女子、うっかりゲイに告る。』としてドラマ化された。他の著作に『御徒町カグヤナイツ』。※『anan』2020年12月23日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2020年12月22日ここ数年、タイを筆頭にBLドラマが熱い!フレッシュな美形スターが繰り広げる胸キュンな恋愛模様に誰もがときめいている。「実はタイのBLは、日本のやおい文化が原点です。LGBTQに寛容で、多様性を認めている国なので、セクシュアル・マイノリティの描き方が温かい。主人公たちが不必要に差別されないから、見る側もストレスを感じない。作品タイプも多様で、好みに応じて楽しめます」(ライター・横川良明さん)同性愛描写に規制がある中国では、BL原作が男性同士の親密な関係を描くブロマンスものへと姿を変える。「人気BL小説をブロマンスドラマ化して大ヒットした『陳情令』。原作はラジオドラマやアニメにもなり、ファン層が拡大」(編集者、ライター・小俣悦子さん)ブライト×ウィン『2gether』[2020年](THAILAND)ある事情から恋人のふりをすることになった大学生の2人の恋の行方は?「ハンサムなコンビは、見ているだけで目の保養に。キュンとする一方でコメディ要素も多くリピート必至」(編集者、ライター・川口恭子さん)。「最悪の出会い方をした2人が徐々に恋に落ちていく、わかりやすくポップなBLドラマ。胸キュンする甘いシーンが毎回登場。ラブとコメディのバランスが絶妙だし、性描写も生々しくないのでハッピーな1時間。2人の関係性が素敵で、応援したくなる人が多いはず。台詞のインパクトが強く、ロマンティックな口説き文句はSNSですぐにバズります」(横川さん)©GMMTVクリス×シントー『SOTUS』[2016年](THAILAND)大学工学部伝統の新入生教育制度SOTUSで反発し合う先輩アーティット(クリス)と後輩コングポッブ(シントー)が徐々に絆を深めていく物語。「タイBLドラマの火付け役といわれる学園ドラマです。高圧的な先輩にいきなり『先輩を僕の妻にします』と宣言する意外性が思わずのめり込む理由のひとつ。先輩からのパワハラのようなしごきは少ししんどくなりますが、それも物語を楽しむためのアメとムチ。コングポッブにアプローチされて、どんどん可愛くなるアーティットがツボ」(横川さん)。「クリスのインスタの、猫との絡みも可愛い」(川口さん)提供:アジアドラマチックTV(アジドラ) ©GMMTVテイ×ニュー『Dark Blue Kiss~僕のキスは君だけに~』[2019年](THAILAND)恋人同士のピート(テイ)&カオ(ニュー)、恋が始まるサン&モークが周囲との関係に悩みながら成長する姿を描く。「カミングアウトが焦点となる社会性の高い作品です。同性カップルがどのように社会や家族から理解を得ていくかを真摯に描いています。よく口論する喧嘩ップルだけど、根っこには愛と信頼があり、揉め事を解決し絆をより確かなものにしていくピート&カオの関係も魅力。そしてサン&モークが付き合うまでを丁寧に描いているのも見どころです」(横川さん)提供:アジア・リパブリック13周年 ©2019 GMMTV COMPANY LIMITED. All Rights Reserved.CS衛星劇場にて10月12日23:00放送スタートオフ×ガン『Theory of Love』[2019年](THAILAND)大学で映画製作を学ぶサード(ガン)は、女好きな友人カイ(オフ)に片思いをしていた。恋は実らないと思いつつ、サードはカイに告白!?LINE TV AWARDS 2020でベストカップル賞受賞の名作。「泣ける、というか切ない度が高い作品です。前半はサード視点で後半はカイ視点で進行し、それぞれの本当の思いが見る側に伝わって胸がジーンとなります。名作映画をオマージュした場面もしゃれてるし、別作品でもカップルを演じたオフ&ガンの相性が抜群なのも魅力ですね」(横川さん)©GMMTVウェイン・ソン×ホアン・ジュンジー『HIStory3 那一天~あの日』[2019年](TAIWAN)様々なBLカップルの恋模様を描く、台湾発大人気シリーズ。イケメンのラブストーリーに熱狂するファンが世界中に増殖中!「女子からもモテるクラスの中心的人物を演じたウェイン・ソンと、彼に好かれる優等生役のホアン・ジュンジーが、2人揃って日本のBLドラマ『Life 線上の僕ら』にゲスト出演して話題に。本当に仲良さそうな2人の姿にほっこり&ドキドキ!フレッシュなキャストを起用し、どれも青春風味でどこかキュートさもある愛すべきシリーズです」(小俣さん)提供:ビデオマーケット/楽天/コンテンツセブン ©CHOCO Media Co., Limitedシャオ・ジャン×ワン・イーボー『陳情令』[2019年](CHINA)怪事件を解き明かしながら絆を深めていく青年2人の苦闘と友情を描くブロマンス。人気は中国からタイ、韓国、そして欧米へと拡大。「端正な顔立ち&ファンタジーの世界観を崩さない古装姿がかっこいい」(川口さん)。「シャオ・ジャンとワン・イーボーがとにかく美しい!2人を眺めるだけでも満たされる。次々に起こる事件の謎を解き、陰謀に立ち向かう2人が信頼と絆を深め、2人はどうなるの?誰が黒幕?と、物語の世界に引き込まれて、あっという間の50話」(小俣さん)提供:ソラシア・エンタテインメント/コンテンツセブン ©2019 Shenzhen Tencent Computer Systems Company Limitedリエン・ビン・ファット×アイザック『ソン・ランの響き』[2020年](VIETNAM)’80年代のサイゴンを舞台に、取り立て屋ユン(リエン・ビン・ファット)と、伝統歌舞劇俳優リン・フン(アイザック)の淡い恋を描く。この作品で映画デビューしたリエンは、第31回東京国際映画祭で東京ジェムストーン賞を受賞。劇中で肉体美を披露したワイルドなリエンと対照的なのが、リンを演じる美しきアイザック。「アイザックはYouTubeの再生回数4億回を超えるボーイズグループ365dabandメンバーから、演技派俳優に転身。キリッとした男らしさが素敵」(川口さん)配給:パンドラ ©2019 Studio68ヤン・イクチュン×チョン・ガラム『詩人の恋』[2020年11月13日公開](KOREA)売れない詩人のテッキ(ヤン・イクチュン)は、妻の妊活に協力中。彼はある日、ドーナツ店の店員セユン(チョン・ガラム)の美しさに見惚れてしまい……。「ヤン・イクチュンは40代ですが、『息もできない』で大人気となった彼と、『恋するアプリ』でフレッシュな魅力を発揮したチョン・ガラムとの共演に期待大です。韓国は、年齢差や正反対キャラなどの意外な組み合わせがうまいし、役者同士も共演で経験が積めます。本作もお互いの新たな魅力を引き出すはずです」(ライター・西森路代さん)配給:エスパース・サロウ ©2017 CJ CGV Co., Ltd., JIN PICTURES, MIIN PICTURES All Rights Reservedアジア男子…エンタメ界でアジアの男たちの勢いが止まらない。SNSやストリーミングサービスの普及で、その熱狂は国境を超えますますグローバルなものになっている。ドラマ『2gether』がツイッターで世界トレンド1位になり、タイのBLドラマに沼落ちする人が続出という一大ムーブメントを巻き起こしているのを筆頭に、俳優としても目覚ましい活躍を見せるボーイズグループメンバーや、華流イケメンの台頭など、今、アジア男子に世界が夢中!おまた・えつこ編集者、ライター。編プロで数年、出版社で10年勤務の後フリーランスに。台湾が大好きで『台湾エンタメパラダイス』(キネマ旬報社)20号分を企画・編集。その他『華流日和』『華流スター&ドラマガイド2020』(共にコスミック出版)などを編集。かわぐち・きょうこ編集者、ライター。1989年生まれ、愛知県出身。映画・ドラマをこよなく愛し、ファッション誌でカルチャーニュースを執筆中。ステイホームをきっかけに、人生最大のアジアブーム到来。やりたいことは、ドラマ『梨泰院クラス』と『2gether』のロケ地巡り。にしもり・みちよライター。愛媛県出身。テレビ局勤務を経て上京。2000年代から編集・ライターの仕事を始める。アジアのエンターテインメントを伝えるラジオ番組のディレクターなどを経て、現在は、特に韓国映画と日本のドラマについて数多く執筆している。よこがわ・よしあきライター。1983年生まれ、大阪府出身。テレビドラマ・映画・演劇を中心に、エンターテインメントを幅広く取材。男性俳優のインタビュー集『役者たちの現在地』(KADOKAWA)が好評発売中。『2gether』を見てから、タイのBLドラマに沼落ちしている。※『anan』2020年9月30日号より。取材、文・山縣みどり(by anan編集部)
2020年09月26日南カリフォルニアを拠点とするグローバルライフスタイルブランドのUGG(R) は、ジェンダー・インクルーシブな考え方に基づき、LGBTQ+のコミュニティを支援することを目的として、オールジェンダー対象の「PRIDEコレクション」を発売いたします。UGG(R)本社アメリカでは、LGBTQ+の受容とLGBTQ+の平等を推進する非営利団体でグローバルパートナーであるGLAAD (www.glaad.org)との継続的な関係を尊重し、GLAAD Media Instituteなど、カルチャーに変革をもたらすGLAADのプログラムを支援するため、2020年に12万5000ドルを寄付しました。日本でも、一部店舗を除く全国のUGG(R)直営店、UGG(R)公式サイト(にて、7月22日(水)より販売を開始する「PRIDEコレクション」対象商品の売上の一部として200万円を特定非営利活動法人 東京レインボープライドに寄付いたします。パレードやフェスティバルの運営、教育・社会啓発事業などすべての人が、より自分らしく誇りをもって、前向きに楽しく生きていくことができる社会の実現をめざしている団体で、UGG(R)はその活動を支援いたします。【PRIDEコレクション対象商品】1.Disco Checker Slide(ディスコ チェッカー スライド)3色新発売のチェッカーボード柄のふわふわのファーとレトロなプラットフォームソールが特徴の楽しくて新しいステートメントスリッポン。ロゴをあしらったゴムのバックストラップとプレミアムシープスキン、UGG(R)独自の柔らかなUGGplush™ウールブレンドを採用し、スタイルと快適さを兼ね備えています。2.Fluff Yeah Slide(フラッフ イヤー スライド)3色Disco Checker Slideと同様、プレミアムシープスキンとウェッジプラットフォーム、安定したフィット感をもたらすロゴをあしらったゴムのバックストラップ、そしてグリップ力の高いラバーアウトソールを採用。一日履いていてもリラックスできる屋内外兼用スリッパに仕上がっています。UGG(R)は、カプセルコレクションの発売を記念し、2020年2月にUGG(R)の親会社であるDeckers Brands本社で開催された「PROUD Prom」の会場で、#UGGPRIDEキャンペーンの撮影を行いました。「PROUD Prom」はPacific Pride FoundationとUGG(R)によって毎年、共同開催されています。このイベントには、サンタバーバラ郡やカリフォルニア沿岸のコミュニティからLGBTQ+とアライの若者たちが招待され、インクルーシビティやダイバーシティ、平等を祝います。自己肯定感を高め、社会的なつながりを強める今年のイベントには、俳優のトミー・ドーフマン(Tommy Dorfman)や、LGBTQ+アクティビストのコーラ・デラニー(Cora Delaney)とカイ・アイザイア・ジャメル(Kai-Isaiah Jamel)のカップルなど、ソートリーダー(思想的リーダー)やビジビリティ・アクティビストらが参加し、個性と団結に賛辞を贈る空間を創り上げました。「Pacific Pride Foundationと共にPROUD Promを主催するのは、今年で4回目となります。安全で温かい雰囲気の中でプロムを祝うリアルで大胆ですばらしい人々や、ブランドのその他のアライ、そしてトミー・ドーフマンのようなLGBTQ+アクティビストにスポットライトを当てるため、今年はここで#UGGPRIDEキャンペーンの撮影を行うことにしました」と、デッカーズブランズ、ファッション・ライフスタイルブランド プレジデント、アンドレア・オドネルは述べています。「私たちは、人とは違うところにこそ美しさがあり、自分が誰を愛するか、あるいは何を愛するかについて罪悪感をもつ必要など決してないということを表現したいと思いました」「UGGは、PROUD PromとカラフルなオールジェンダーのPrideコレクションの両方を通してさらに前進し、LGBTQ+の人々、特にLGBTQ+の若者たちは、6月に自分たちのプライドを示すためのユニークでクリエイティブな方法を見出してくれました」と、GLAADシニアディレクターのジョン・マッコート(John McCourt)氏は述べています。「UGGは、GLAADとのパートナーシップを通して、人々の心を動かす次世代のストーリーテラーやアクティビスト、チェンジメーカーを育てるGLAADの活動を支援してくれています」About UGG(R)1978年、カリフォルニアの海岸で一人のサーファーによって設立されたUGG(R)は、アイコニックなクラシックブーツで知られるグローバルライフスタイルブランドです。ハリウッドのセレブリティに続き、ファッションエディターに愛用され、やがて世界中に広がりました。以来UGG(R)は、品質、クラフトマンシップに対する妥協のない姿勢を貫きながら、フットウエア、アパレル、ファッション小物、ホームウエアのデザインと販売を手掛けています。世界各国の一流小売業者と提携しながら、UGG(R) のコンセプトストアおよびアウトレットストアを、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンジェルス、パリ、ロンドン、東京、上海、北京など、世界主要都市に130店舗以上を展開し、年間10億ドルを超える売上高を実現しています。詳しくは、www.ugg.com/jp/ @UGGJAPAN #uggprideをご覧ください。企業プレスリリース詳細へ本記事に掲載しているプレスリリースは、株式会社PR TIMESから提供を受けた企業等のプレスリリースを原文のまま掲載しています。FASHION HEADLINEが、掲載している製品やサービスを推奨したり、プレスリリースの内容を保証したりするものではございません。掲載内容に関するお問い合わせは、株式会社PR TIMES()まで直接ご連絡ください。
2020年08月01日山下紘加さんの『クロス』は、既婚者の〈私〉こと市村ゆうじが、同じビルで働く不倫相手の愛未(まなみ)とふざけて女装してみたのをきっかけに、自分の性のありようやアイデンティティに迷っていくさまを刻々と追う、衝撃作だ。ゆうじは、女装しているときは〈マナ〉と名乗っている。物語は、マナとバーで出会った恋人タケオとの濃厚なセックスシーンから始まる。「私自身が異性愛者なので、異性装者や同性愛者の心理を、感覚的にはわかる部分もあるけれど、本質から理解するのは難しいだろうなと。その『わからなさ』をむしろ大切にして書きたいと思いました」LGBTQをモチーフにした小説は増えてきたし、その切り口に、作家の個性も垣間見える。本書では、自分を異性愛者だと思っていた既婚男性の揺れる気持ちがつぶさに拾われているところに瞠目する。「女装趣味やゲイをカムアウトしている人たちのノンフィクション番組などを見ていると、自分の性自認や性的指向がはっきりしているんですよね。けれど、誰もがそこまで明確に自分の性別や性の対象を意識してないと感じていました。ならば、主人公が己の性に身も心も揺れていくさまを書くことで新しさが生まれるのではないかと思ったんです」この作品のために取材もした。二丁目の女装クラブや、女装愛好者のためのSNS、女装パフォーマーとして活躍中のブルボンヌさんからのレクチャーなど。クリスチャン・ザイデル著『女装して、一年間暮らしてみました。』(サンマーク出版)には、強く影響を受けたそう。「異性愛者で妻もいる彼が、女性の服を着て生活し、どんな心境の変化があったかをありのまま綴ったノンフィクションなんですが、ストッキングのような女性のアイテムを身につけただけで、心のありようが変わるのが興味深かったです。一方で、私自身も女装している人たちと話をしていると、女の子と普通にはしゃぐような気持ちになるのが不思議」ゆうじの目を通して観察される、タケオや妻の典子、大学時代からの先輩・澤野らの反応に、共感も反発も新しい発見も生まれるだろう。簡単には噛み合わない、性と自分らしさと幸福感。その深淵をのぞき込むような一冊だ。やました・ひろか1994年、東京都生まれ。2015年、ユリカと名付けたラブドールへの恋慕に依存していく少年の、危うい心理を繊細に描いた「ドール」で文藝賞を受賞。同年デビュー。『クロス』警備会社で働く28歳の〈私〉はタケオと名乗る美しい男性と出会い、女装した姿でのセックスに溺れていく。〈私〉の思いの行方は。河出書房新社1600円※『anan』2020年7月8日号より。写真・土佐麻理子(山下さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2020年07月04日6月はプライド月間。LGBTQ+の権利について訴え、あらゆる性的指向や性自認にプライドを持ち、互いを尊重し合うという趣旨のもと、パレードをはじめとした様々なイベントが行われる。現在広がり続ける「Black Lives Matter」とも深い関わりがあり、『名探偵ピカチュウ』のジャスティス・スミスが黒人の同性愛者、トランスジェンダー差別の抗議活動の中でカムアウトしたり、Netflixの人気シリーズ「クィア・アイ」でお馴染みのカラモ・ブラウンがLGBTQ+コミュニティにおける人種差別について言及したりするなど、当事者からの発言によりさらなる関心を集めているところだ。プライド・パレードの始まりとされる1969年6月のニューヨーク「ストーンウォールの反乱」も警察との衝突がきっかけ。トランスジェンダー女性で、ドラァグクイーンにして活動家である黒人のマーシャ・P・ジョンソンさんとラテン系のシルビア・リベラさんの抵抗から始まったといわれる(彼女らの生涯と死については『マーシャ・P・ジョンソンの生と死』としてドキュメンタリー映画にもなっている)。黒人のゲイを主人公にしたアカデミー賞受賞の『ムーンライト』(2016)やチリ初のアカデミー賞受賞作『ナチュラルウーマン』(2017)、アフリカ・ケニアから誕生した女性監督による『ラフィキ』(2018)など、有色人種が主人公のLGBTQ+映画の傑作も続々と生まれているが、では、アジアではどうだろう?今回は家父長制や家族主義が根強く残るアジアの人々を描いた6作品をピックアップした。人生の岐路に立つ母と娘『素顔の私を見つめて…』(2004)今年のNetflixオリジナル映画で“賞レースに絡むのでは?”といわれるほど高い評価を集めている『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』。その中国系アメリカ人のアリス・ウー監督は、「IndieWire」誌による「2020年に知っておきたい期待の女性監督20」のひとりにも選ばれているが、『素顔の私を見つめて…』は16年前に発表したデビュー作。ウィル・スミスらが製作に加わったアメリカ映画であるものの、ニューヨークの中国系移民コミュニティが舞台。レズビアンであることを隠しながらもバレエダンサーのビビアンと恋に落ちる医師のウィルと、高齢妊娠が判明した彼女の母親がそれぞれに自分の人生を見出していく姿を描いたヒューマン・ドラマ。日々仕事に追われるクールなウィルは、久しぶりの恋なのか、初めてビビアンと過ごした日はがっちがっちに緊張してぎこちない。それでも次第に母に対しても、ビビアンに対しても自分の気持ちをぶつけられるように変わっていく。また、誰が父親なのかを頑として言わず、コミュニティから疎外されてしまう母親も自分の本心と向き合わざるを得なくなる。今作もまた、いまいる場所から新しい世界、新しい段階へと一歩踏み出していく爽やかな結末が待つ物語で、監督自身の経験が基になっている。場合によっては嫌味になりがちな母親役を演じる「ツイン・ピークス」や『ラストエンペラー』のジョアン・チェンがキュート。お互いの存在が絶望を癒やす『私の少女』(2014)新進気鋭の女性監督チョン・ジュリの長編デビューとなる力作を、『バーニング 劇場版』『オアシス』などの名匠イ・チャンドン監督がプロデュースした『私の少女』。韓国の映画・ドラマからハリウッドでも活躍するぺ・ドゥナと、『冬の小鳥』『アジョシ』『守護教師』と名子役から成長を遂げてきたキム・セロンという実力派2人の共演が見もの。ペ・ドゥナが演じるエリート警視イ・ヨンナムはレズビアンであることが周囲に発覚し、ソウルから海辺の小さな村に左遷される。そこで出会った少女ドヒは義理の父親ヨンハと祖母から日常的に虐待を受けていた。見かねたヨンナムが手を差し伸べ、甲斐甲斐しく世話をするうちにドヒから慕われ、傷心の自分も癒やされていくが…。母親が蒸発し、酒を飲んでは暴力をふるう継父のもとで暴力にさらされながら育ったドヒ。しかも継父は不法滞在者を雇いながら、村を支える漁業に貢献していることから、地元の警察も、村人たちもみな見て見ぬ振り。誰もが顔見知り、うわさがすぐに広まる漁村に“異質な存在”ともいえるヨンナムがやってきたことで、決して他人事ではない様々な問題が表面化していく。少女を加護することで救われていく主人公を演じたペ・ドゥナは、「ポン・ジュノ監督と仕事をしたときも本当に怒らない監督だなぁと思っていましたが、チョン・ジュリ監督はそれ以上です(笑)。まさにこの映画のシナリオのような方」と監督についてコメント。不穏なシーンが続きながらも、ラストには微かな希望が見える。エロスと愛が溢れるラブシーン『お嬢さん』(2016)フェミニズム映画としても高い支持を集めている『お嬢さん』。『オールド・ボーイ』『親切なクムジャさん』などの復讐3部作で知られるパク・チャヌクが、英ヴィクトリア朝を舞台にしたサラ・ウォーターズによるミステリー「荊の城」を1939年、日本統治時代の韓国に舞台を移して大胆に映像化。世間から切り離された和洋折衷の広大な屋敷と、そこで繰り広げられる幽閉されたお嬢さまの信じがたい日常を、雅で甘美な映像と細部まで考え抜かれた美術セットによって描き、2016年カンヌ国際映画祭で芸術貢献賞を受賞。小説の本質を残しつつも、ラストには映画オリジナルの視点を加え、原作ファンからも太鼓判を押されている。お嬢さま・秀子(キム・ミニ)の莫大な財産を狙い、詐欺師(ハ・ジョンウ)がなりすました伯爵、変態的趣味を持つ秀子の叔父(チョ・ジヌン)、そして侍女スッキ(キム・テリ)が観る者も欺く騙し合いを繰り広げる。騙す相手だったはずが、美しく孤独なお嬢さまに恋してしまうスッキの視点から描かれる第1部、秀子からの視点となる第2部、真実と愛の行方が明らかになる第3部の構成で、先の読めない展開と2人の女性の想いが高まっていく妖艶なラブシーンに引き込まれる。お嬢さまの「人生を壊しに来た救世主」とのセリフが全てを物語る。映画批評サイト「ロッテントマト」の最も優れたLBGT映画ベスト200では、韓国映画としてもアジア映画としても最高の14位に。キム・ミニは儚げだが芯のあるお嬢さま役がハマり、まだ少女の面影が残るスッキを演じたキム・テリは今作が映画デビューとは思えないほど堂々たる熱演を見せる。“春の嵐”が5人の男女をかき乱す『スプリング・フィーバー』(2008)『天安門、恋人たち』(06)により中国電影局から5年間の映画製作・上映禁止処分を受けていたロウ・イエ監督がその決定に逆らい、南京の街でデジタルカメラを使ってゲリラ的に撮影を敢行した香港・フランス・中国合作映画。2009年カンヌ国際映画祭コンペティションにて上映され、脚本賞(メイ・フォン)を受賞。検閲下では絶対に実現しなかった、愛の衝動と移ろうセクシャリティを真っ向から描き、ロウ・イエ監督の日本での人気を決定づけた作品のひとつともいえる。登場するのは、“春の嵐”により愛の形をかき乱されてしまった男女5人。夫ワン・ピン(ウー・ウェイ)の浮気を疑う女性教師リン・シュエ(ジャン・ジャーチー)は探偵のルオ・ハイタオ(チェン・スーチョン)に調査を依頼、相手がジャン・チョン(チン・ハオ)という青年であることを突き止める。夫婦関係は破綻、ワンとジャンの関係も冷え込む中、探偵ルオはジャンに惹かれていく。やがてジャンとルオ、その恋人リー・ジンの3人で逃避行が始まるが…。春の終わりには、その関係性がまるで別物になってしまう5人。愛は水面に浮かぶ蓮の花のように、ときに衝動的に、刹那に男と男、男と女の間をたゆたう。窮地の策か、それとも意図的か、ゲリラ的な撮影がまるで覗き見る探偵の目線のように身体を重ねる者たちをヒリヒリと映し出す。ゲイクラブでドラァグクイーンとして名を馳せたジャンの艶めかしさには、夢中になること必至。台湾のスター、ロイ・チウが“内縁の夫”を熱演『先に愛した人』(2018)『先に愛した人』(英語字幕)Netflix配信中の台湾映画『先に愛した人』も、夫が同性の恋人のもとに走ってしまう物語だが、こちらは思わずクスッとするところも、もちろん考えさせるところもあるヒューマン・コメディ。第92回アカデミー賞国際長編映画部門に台湾代表作品として出品された話題作。夫が息子と妻を置いて出ていき、元恋人のもとで病気のため帰らぬ人となった。その夫の保険金が息子ではなく、赤の他人で自称・“内縁の夫”ジエに渡ることを知り激怒した妻は、保険金をめぐり相手と戦おうとするが、思春期の息子はなんとその夫の相手と同居をすることに!自分の父親が愛して、死ぬまで一緒にいた人物はどんな男性なのか。最初はヒステリックになる母への反抗心からだったとしても、息子は彼に興味を示し、心を開いていく。一方、母は自分が女性として至らなかったのかと自暴自棄になりかけるも、息子のために健康食や着替えをジエの部屋に持っていくうちに、小言を言いながらも掃除をして帰っていくように。“内縁の夫”と妻それぞれが、いまは亡き愛した人との日々をふり返っていくうちに、お互いの心境が変わりはじめていく。同性カップルが迎える、いうなれば究極的な物語でもあり、同性パートナーは給付金すら受け取れない日本から見れば、まだまだ地平の彼方のような(?)物語。でも、いずれは必要になる物語だろう。日本でも人気のスター俳優ロイ・チウがちゃらんぽらんな青年ジエを好演し、台北電影奨主演男優賞を受賞、“中華圏のアカデミー賞”と呼ばれる金馬奨でも主演男優賞にノミネートされた。私の精神と恋心は自由『マルガリータで乾杯を!』(2014)インドで生まれ育ったフランス人女優カルキ・ケクランが、明るい笑顔を持つ脳性麻痺の少女をずみずしく演じ、新進女性監督ショナリ・ボースが自身の従妹をモデルに描いた青春映画(といっていいと思う!)。歌をこよなく愛する聡明な19歳のライラは、同じく車いす生活を送る幼なじみとキスを経験したり、バンドのイケメンボーカルに恋して失恋したり…。母の計らいでニューヨーク大学に留学すると、ボランティアスタッフのイケメンにまたもときめく。そんな中、抗議活動に参加していた盲目の女子学生ハヌムと恋に落ち、同棲することに。いつかちゃんと、どんなときも自分を支えてくれた母には、“バイセクシャル”であると告白したい。そんな矢先に母の病気がわかり…。インド映画でこれほどの性描写は珍しいといえ、日本映画『37セカンズ』と同様、障がい者の性や母娘関係にも踏み込んでいく。マルガリータが飲みたければ、自らストローを差して飲む。ライラの精神と恋心はどこまでも自由だ。そんなライラの前向きさ、バイタリティが彼女の笑顔に現れる。彼女の次のデートの相手は、いったいどんな人なのか気にならずにはいられない。今回紹介した作品のほか、『ブロークバック・マウンテン』のアン・リー監督が四半世紀前に撮った偽装結婚とゲイのカミングアウトをコミカルに描く『ウェディング・バンケット』(93)、『ムーンライト』に影響を与えたという『ブエノスアイレス』(97)、80年代の中国のレズビアンを描いた『中国の植物学者の娘たち』(05)なども傑作として数えられるだろう。日本発としては生田斗真がトランスジェンダーの女性を熱演した荻上直子監督作『彼らが本気で編むときは、』、宮沢氷魚×藤原季節による今泉力哉監督作『his』など、“その先”を考えさせてくれる作品も登場している。(text:Reiko Uehara)■関連作品:スプリング・フィーバー 2010年11月6日よりシネマライズほか全国にて順次公開【Netflix映画】ブライト 2017年12月22日よりNetflixにて全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】マッドバウンド 哀しき友情 2017年11月17日よりNetflixにて全世界同時配信【Netflixオリジナルドラマ】オルタード・カーボン 2018年2月2日より全世界同時オンラインストリーミング2月2日(金)より全世界同時オンラインストリーミングお嬢さん 2017年3月3日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開© 2016 CJ E&M CORPORATION, MOHO FILM, YONG FILM ALL RIGHTS RESERVED
2020年06月09日ゲイであることを公言しているアダム・ランバートが、LGBTQ+団体を支援するNPO基金「フィール・サムシング・ファンデーション」を設立した。アダムが発表したSNSの投稿によると、同基金のミッション(使命)は、「すべての年代やバックグラウンドを持つ人たちのコミュニティに目に留まる変化をもたらす、LGBTQ+団体をサポートすること」だという。「Billboard.com」が入手した声明文によると、より具体的には「教育、ホームレス問題の解消、自殺防止などのチャリティー活動を行うLGBTQ+団体とタッグを組み、変化をもたらしたい」とのこと。また、アダムが立ち上げた基金には、「誰かを定義するには、ただ純粋にその人であればいい」という思いから、「『カミングアウト』という言葉を廃止しよう」という動きがあるのも特徴だ。アダム自身、過去に「アメリカン・アイドル」に出演中、何か月にも及んでセクシュアリティについてうわさされるという困難な時期があったことを告白している。同番組への出演終了後、アダムは「カミングアウト」。当時、すでに友達や家族にはゲイであることを伝えていたため、複雑な気持ちもあったようだ。(Hiromi Kaku)
2020年01月23日音楽、テレビ、演劇、アニメ、漫画など、それぞれの世界に刺激を与えている面々の仕事ぶりに迫りました!今回はNHK制作局ドラマ番組部の上田明子さん。昨年、NHKのよるドラ枠で放送され、話題を呼んだドラマ『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』の創り手。LGBTQを題材に、世間が無自覚に押し付ける“普通”になれず、苦しむ人たちの姿を、切実に丁寧に描いた作品だ。これを企画したのが上田さん。“テレビドラマとして描くことで、少しでも生きやすい社会になれば”「企画を立ち上げたのは、私が妊娠中のこと。ちょうどその時、局で立ち上げに動いていた企画があって、みんなで話し合いを進めていたんです。でも、妊娠がわかった途端、周りに善意から『子供を大事にして』って言われるようになったんですね。私にとっては、仕事も生まれてくる子供と同様に大事なものなのに、それがなかなか理解してもらえない。男性は“子供も仕事も両方大事”が許されるのに、なぜ女性が両方を選んだらいけないんだろうと思ったんです。そんな時に読んだのが、浅原ナオトさんの原作『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』です。主人公の純くんは、ゲイで同性の恋人がいますが、結婚して子供を作るという“普通”の幸せも手に入れたいと願う。彼の、なぜ全部を欲しがっちゃいけないのか、という叫びにすごく共感したんです」自分をごまかさず、懸命に“空気”に抗う主人公たちの姿に魅了され、「このことをドラマにすることでもっと多くの人たちと考えてみたいと思った」そう。「これをテレビドラマにすることで、ある種の生きづらさや息苦しさを感じている人に、自分自身でいいんだと少しでも思ってもらえればと。そして、少しでも生きやすい社会に変わればと…。実際、放送が始まるとSNSを中心に多くの方に盛り上がっていただけたんですよね。なかにはこちらの意図していなかった深いところまで読み取って発信してくださる方もいて、視聴してくださる方々と一緒に番組を育てていくことができたような気がしています」じつはNHK入局当初は、ドキュメンタリー制作を志望していたそう。しかし、地方局に在籍中にオーディオドラマの制作に携わったことで、本当にやりたかったことに気がついたという。「もともと物語を読むのが好きでしたし、学生時代は演劇部でお芝居を創ったりもしていました。結局好きだったんですよね」ドラマ制作に携わるいま、NHKという公共放送のプロデューサーであることは意識しているとも。「みなさまからいただく受信料で制作されているわけですから、創るならば、ちゃんと社会的に意味のあるものをと思っています」そんな上田さんがいまプロデューサーとして携わっているのが、2月より放送開始のドラマ『伝説のお母さん』。RPGの世界に生きる伝説の魔法使い・メイ(前田敦子)が、専業主婦となりワンオペ育児に奮闘するという内容だ。「企画したのは、先輩の男性ディレクターなんです。とにかく忙しいドラマ制作の現場にいて、どちらかといえば仕事人間。その彼が、お母さんたちにとって切実で、共感の詰まった原作を、ドラマにしたいというのが面白いと思ったんです。これが、個人的体験をリアルに描いた作品だったとしたら、きっと彼は興味を持たなかった気がするんです。ファンタジーの世界を通すことで届くものがあるということですよね。子育て世代のお母さん方に見ていただきたいのはもちろんですが、子育てなさってない方たちにも見ていただけたらと思っています」うえだ・あきこNHK制作局第4制作ユニット(ドラマ)プロデューサーNHK甲府放送局在籍時にオーディオドラマ『祖父と手紙と僕と』の演出を手がける。その後、東京に移り現在の部署へ。連続テレビ小説『まれ』、大河ドラマ『真田丸』助監督、ドラマ10『この声をきみに』などで演出を務める。2月1日放送開始のよるドラ『伝説のお母さん』よりプロデューサーに。※『anan』2020年1月15日号より。写真・土佐麻理子取材、文・望月リサ(by anan編集部)
2020年01月13日5GやAIといったテクノロジーの革命的発展、より進むボーダーレス化、新世代の登場。2020年は、トレンドやエンタメ、そして私たちの暮らしが劇的に変わる“始まりの年”になる気配。そんな世界の“NEXT”について識者の方々にお話を伺いました。革命的な変化一時代の区切りとなり、新時代が本格始動。“2020年”について取材をすると、頻繁に“劇的な変化”を表す言葉が聞かれる。「エンターテインメントの世界でいうと、大容量通信環境5Gのスタートは大きいでしょう。エンタメの在り方が革新的に変わり、自宅でライブ会場にいるような体験ができたり、さまざまな視点からスポーツ観戦を楽しめたりする時代へと舵を切ります」(セレブウォッチャー・さかいもゆるさん)「音楽業界でも“みんな”でアガれる曲が人気の時代から、主語が“私”になり、個人の想いに心揺さぶられる曲へと回帰。ヒップホップブームもその象徴です。これからはさらに、ジャンルを超えて人々の情緒に訴えかける歌が重要になってきます」(音楽ライター・矢島大地さん)各所の変化が時代を一新する。ジェンダーレス、ボーダーレス壁はいよいよ消え、個々の心地よさを尊重する時代に。LGBTQという言葉が日常的に使われるようになったように、ジェンダーの枠組みや定義はより自由なものになりつつある。「映画やドラマ、本でもLGBTQを描くことが自然になってきています。ただ、繊細な問題でもあり、表現の仕方によっては誰かを傷つけてしまいかねない。そういった感覚の重要性はいよいよ高まります」(さかいさん)また、国はもちろん、ライフスタイルや年齢の壁もどんどん薄く。「カップル文化が根強く残る欧米で、最近ビッグスターからも“セルフパートナー”という在り方が支持されています。恋人がいてもいなくても、自分が幸せなら構わない、それをお互いに尊重しようという一歩進んだ個人主義の時代に入ってきているのではないでしょうか」(さかいさん)コンテクスト歴史や、文脈への敬意が作品の完成度に表れる。ボーダーレス化がますます進む時代のヒット作は、さまざまな分野から生まれる。「今はSNSで熱意や応援を可視化できる時代なので、さまざまな分野で盛り上がっている作品や人物を簡単に知ることができるし、楽しめます。だからこそ、ニッチな分野からでもメジャーヒットが生まれる傾向も」(アニプレックス・高橋祐馬さん)だからこそ、作り手には、背後の歴史や文脈までのこだわりが求められる。「より多くの人の心をつかむ作品が生まれるには、その音楽の文脈に対する理解が欠かせません。礎を作ったものや背後の歴史についての理解があるからこそ、解体と再構築が可能になって、今までに聴いたことのないものが生まれる」(矢島さん)ジェネレーションZ自分の意思を表現する人に脚光が。2000年代生まれの“ジェネレーションZ”は、生まれた時からインターネットがある世代。「まだ10代ですが、アイコンともいえる人物が何人も登場しています。彼らは、自分の意見をちゃんと主張できたり、中身を伴った発言ができる人が多い。物心ついた時にはSNSがあり、習わずとも使いこなしている世代だからでしょう。冷静に社会を見ていて、政治や環境問題への意識も高い。自分事として世の中を見ています」(さかいさん)それは、これからの時代に求められる資質ともいえる。「日本のみならず、世界的に社会不安は否めません。政治的な活動や発言、それをチェックする視点はいよいよ厳しくなりそうです」(さかいさん)格式やお墨付き“特別”の存在意義が増す。一瞬で世界に自分を発信でき、一夜にしてスターが生まれることにも、もはや驚きはない昨今。「だからこそ、逆に本当にひとにぎりの人しか入ることのできない、王室への注目が上昇中。伝統や格式…。秘されている部分が多いからこそどうしようもなく惹かれるのでしょう」(さかいさん)「YouTubeで番組を持ったり、支持者を得ることだってできる今、“有名人”へのハードルはとても低くなっています。その反動で、マスメディアでのデビューは一層価値が上がっているように感じます。オーディション番組に注目が集まったり、ドラマや映画の出演で脚光を浴びるのはやはりマスによる“お墨付き”があるから。今後、その線引きは、より一層、濃くなっていくのではないでしょうか」(メディア研究者・田島悠来さん)さかいもゆるさんセレブウォッチャー。海外セレブや恋愛にまつわる記事をメインに執筆。ウェブマガジン「mi‐mollet」で「セレブ胸キュン通信」を連載中。矢島大地さん『MUSICA』副編集長を経て、現在は編集、ライター、ラジオナビゲーター。これまでに『ヒプノシスRADIO』の番組ナビゲーターも務めた。高橋祐馬さんアニプレックスの制作プロデューサーで元宣伝マン。劇場版『Fate/stay night[Heaven’s Feel]』やTVアニメ『はたらく細胞』などを担当。田島悠来さんメディア研究者。ポピュラーカルチャーなどを研究。帝京大学助教。著書に『「アイドル」のメディア史:『明星』とヤングの70年代』が。※『anan』2020年1月1日‐8日合併号より。取材、文・重信 綾尹 秀姫©Tara Moore(by anan編集部)
2019年12月28日心をとらえて離さない、もっともっと知りたいと思わせるそんな力を持ったコンテンツが熱いムーブメントを生んでいる。トレンドに詳しい識者たちに、そんな“今、熱狂を巻き起こしているもの”について伺いました!ネットフリックス、Amazonプライム…。世界中が動画配信サービスに夢中。テレビや映画に加え、私たちのエンタメにおいて欠かせない存在となった動画配信サービス。その流れは、日本だけでなく全世界でも同様だという。「予算をかけた面白いオリジナル作品や、バイヤーが努力をして買い付けた新しい作品を手軽に見られること。それが、エンタメ好きの“新しいものを見たい”という心に刺さりました。最近、アメリカでは、ケーブルテレビを解約する“コードカッターズ”、一度もケーブルテレビを使ったことのない“コードネバーズ”と呼ばれる人たちの割合が増加し、呼び名とともに話題に。また、気になる子を家に誘う時の文句も、これまでの『カウチ!(=ケーブルテレビを家に見に来ない?)』に対し、『ネットフリックス見ない?』に変化。そのくらい、私たちの生活に不可欠なものとなりました。また、11月にローンチされたApple TV+のほか、大手スタジオが次々と自社サービスを開始予定。さらに盛り上がること必至です」(映画ライター・よしひろまさみちさん)バラエティ番組は、自分を肯定できる作品がヒット。日本で大ヒットしているネットフリックスのコンテンツに、現在シーズン11まで制作されているドラァグクイーンたちが魅力を競う『ル・ポールのドラァグ・レース』と、それぞれ各分野のプロである5人組“ファブ5”が、悩みを抱える人を心身ともに変身させる『クィア・アイ』がある。その2作品には、リアリティショーであること以外にも共通点が。「『ル・ポールのドラァグ・レース』は、その人気から出演したクイーンが世界を巡るツアーを行っていますが、来年の3月、初めて日本でのパーティが決定しました。また、『クィア・アイ』は、11月から日本を舞台にしたシーズンが配信されています。どちらも、自分をきちんと知り、尊厳を持つことの大切さを教えてくれる内容で、“私は私のままでいいんだ”と、許され、鼓舞されます。ただ見て楽しむだけじゃなく、自分と向き合う機会を与えてくれるような、一歩進んだ番組に心を熱くする人が多いようです」(「She is」編集長・野村由芽さん)Netflixオリジナルシリーズ『ル・ポールのドラァグ・レース』シーズン1~11独占配信中。個性豊かなクイーンたちの自己表現と思いに、胸打たれます。性に向き合い、発信するムーブメントに大きな支持が!漫画『生理ちゃん』や、サンシャイン水族館で開催された、海の生き物たちの性にまつわる展覧会「性いっぱい展」がヒット。これまでは、少し後ろめたいトピックであった性をテーマにしたコンテンツがバズったり、話題に上るようになっている。「多様性やLGBTQなどについて話したり考える機会が増え、性に対する意識が高まったことが背景にあるのでは」(マーケティングアナリスト・原田曜平さん)「ブランド『エミリーウィーク』から生理周期に合わせたプロダクトが発売されたり、ハヤカワ五味さんが“より多くの人が、より多くの選択肢を持ち、自由に選択できますように。”と始めた、生理用品にまつわるプロジェクト『イルミネート』も話題になりました。ただ声高に主張するのではなく、デザインの力やポジティブなパワーを通じて、性について表現、発信することが一つの大きな動きになっていると感じます。大事なことなので、これが一過性の熱狂ではなく、スタンダードなものになれば何よりです」(野村さん)漫画家の小山健さんが手がける、生理をキャラクター化した作品。多くの共感を呼び、今年には映画化もされて話題になった。©小山健/KADOKAWA「イルミネート」では、生理用品が紙袋に入れられることについて考えたり、国内外の生理用品を集めたセレクトショップをオープンするなど、さまざまな活動を実施。ハヤカワ五味さんが主宰。タピオカブームも!大きな熱狂の背景に、インスタグラムあり。いま日本中を席巻しているものといえば、タピオカドリンクをおいてほかにない!これまでに2度もブームを起こしながらも消えていった過去と違い、今回は、長く続く要因があるという。「第1&第2次ブームの時は、ほかのドリンクに取って代わられるなどしてすぐに衰退しました。しかし第3次となる今回は、インスタグラムの存在が大きな要因となり、いまだ勢いが衰えません。というのは、タピオカの支持層がセルフィー文化の中核を担う層とかぶっており、タピオカそのものというより、“タピオカと一緒に写真を撮る”こと、つまり、インスタの中におけるタピオカが流行っているのです。顔に寄せて撮る方も多いですが、もし、タピオカのカップが今よりも細く、並んだ時に小顔に見えるサイズでなかったとしたら、ここまで流行らなかったかもしれません。インスタとタピオカの流行は、もはや一心同体。インスタに取って代わる新しいSNSが現れない限り、タピオカブームは続きそうです」(甲南大学文学部教授・栗田宣義さん)よしひろ まさみちさんオネエ系映画ライター、編集者。小誌をはじめ、『otona MUSE』『sweet』『SCREEN』など、さまざまな雑誌で執筆。『スッキリ』の映画紹介コーナーに出演している。野村由芽さんライフ&カルチャーコミュニティ「She is」の編集長。“自分らしく生きる女性を祝福する”ことをモットーに、カルチャーや思想などを発信している。原田曜平さんマーケティングアナリスト。若者やメディア文化を中心に次世代の研究を行う。著書に『平成トレンド史』(角川新書)など。「マイルドヤンキー」の名付け親。栗田宣義さん甲南大学文学部教授。美容化粧服飾と流行を主に研究。著書に『マンガでわかる社会学』(オーム社)など。『新社会学研究』(新曜社)にて「ファッション&パッション」を連載。※『anan』2019年12月18日号より。イラスト・山中玲奈取材、文・重信 綾(by anan編集部)
2019年12月14日筆者は、ライターとして教育記事を手掛けることが多いのですが、とりわけ特別支援教育に関心があります。なぜなら、私には広汎性発達障害の診断を受けた息子がいるからです。彼は、小学校の低学年の時に支援学級(通級)に通い、適切な特別支援を受けることができました。そのおかげで、今は通常学級のみの在籍で楽しそうに学校に通ってます。》 「「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら」 発達障害の子、LGBTQの子、外国にルーツのある子など、教室のなかには多様な子どもたちがいます。それぞれの子のニーズに合った支援の必要性が、ようやく認知されるようになってきました。そういう意味で、最近の教育現場では、「多様性」がキーワードのひとつになっています。【LGBTQとは】L(レズビアン)、G(ゲイ)、B(バイセクシュアル)、T(トランスジェンダー)。そして「Q」はQuestioning(自分の性別がわからない、もしくは意図的に決めていない人)、Queer(セクシュアルマイノリティの総称、枠組みに囚われない人)として使われています。■クラスの中にLGBTQの子どもたちはいる筆者は、ある教育雑誌の記事に「13人に1人がLGBT。この数字は日本の左利きの人口とほぼ一緒です」というフレーズを書きました。割合から推測すれば、LGBTQの子どもたちはクラスに2~3人はいるのかもしれません。そんな子どもたちが安心して過ごすために、大人ができることは? パナソニックセンター東京で行われた、教育関係者を中心とした『LGBTQ』のワークショップに参加してきました。私が参加したワークショップグループのメンバーは、「養護教諭」、「ユニバーサルデザインに関心がある建築家」、「企業のダイバーシティ推進室所属の会社員」、「当事者の発信者」、そして教育ライターの私の5人です。さまざまな立場の人が、それぞれの立脚点から、このトピックに関心を寄せていることがわかります。質問に対して、グループのみんなで話し合い、その後、登壇者の方たちも、同じ質問に回答をするという形式で進められました。 ■LGBTQの子どもたちの苦しみとは最初の質問は、「映画を見た感想を語り合いましょう」。オーストラリアの映像作品でトランスジェンダーの少女(出生時男性→女性)が主人公の映画『新入生』(原題:First Day)を見たあと、グループに分かれてワークショップを行いました。【映画『新入生』とは…】トランスジェンダーの少女ハナーは小学生の時、男の子として過ごしていました。進学は本当の自分になるチャンスです。ところが、入学初日が近づくにつれて、ハナーは不安になっていきます。トランスジェンダーだということが他の生徒に知られてしまったらどうしよう?登壇したそれぞれの方の「背景」が垣間見えたので、それを含めてご紹介します。小林 りょう子(こばやし りょうこ)さん子どもからカミングアウトを受け、性的マイノリティの子の親として、LGBT当事者や家族の支援活動を行っている。小林さんの38歳になる息子さんは、出生時の性は女性でした。小林さんが映画の中で最もグッときたのは、ハナーちゃんが制服を着た時の表情だったそうです。息子さんに、「男性の制服を着せてあげたかった」と、涙ぐんでいらっしゃったのが印象に残りました。浅沼 智也(あさぬま ともや)さんトランス男性(出生時女性→男性)。看護師。LGBTQであり、精神疾患や発達障害、依存症などの複合的な問題を抱える当事者のぴあサポートをしている団体カラフル@はーと代表。浅沼さんは、「自分は何も悪いことをしていないのに、トランスジェンダーということは隠し通さなければいけないと感じてしまう、その苦しさを思い出した」と。浦田 幸奈(うらた ゆきな)さんトランス女性(出生時男性→女性)。 愛知県の中学校教諭。2017年、学級・学年・職員に性同一性障害をカミングアウト。2018年度より女性名・女性の装いで教壇に立つ。特定非営利活動法人ASTA所属。浦田さんは、映画の中での、いわゆる「誰でもトイレ」の話に言及。「『男子トイレ(たくさん)』『誰でもトイレ(ひとつ)』『「女子トイレ(たくさん)』。 この『たくさん・ひとつ・たくさん』とあった時の、『ひとつ』を使うということは、隅に追いやられている感じがして、思った以上に孤独感を味わう」と。「映画の中では、ハナーの事情を知らない同級生が、『今度私もそこに行きたい!』言うのですが、その発言に歩み寄るというか寄り添う感じがした」とも。知花 梨花(ちばな りか)さんトランス女性(出生時男性→女性)。ジェンダークリニックで看護師をしながら女優として活動。ジェンダークリニックで性に違和感を抱える方のケアをされている実感として、「性別を移行するということは、世間体、家族、会社などとの関係性もあり、長い時間を要します。現実として、『女性ホルモン(男性ホルモン)を打てれば幸せなんです』と、外見の見た目は変わらないという人も多いです」と。■「無知」が多様な性を阻害している次の質問は、「多様な性を阻害しているものは、何だと思いますか?」。私たちのグループから出た意見は、「無知」「世間体」「旧態依然とした制度」の3つでした。登壇者の方からの意見も大別すれば、この3つのどれかに含まるのでは? と、感じました。小林さんからは、「無知である」ということを象徴する具体的なエピソードとして、「文部科学省から2016年4月1日に教員向けの手引書が出されているのに、現場の先生に浸透していない」という問題が指摘されました。手引書は、ネットで誰でも見ることができるので、ぜひご覧ください。教育現場のLGBTQの子どもたちへの対応については、情報インフラがまったく整っていないと感じます。私が取材を通じて遭遇した教育現場の現実をいくつかご紹介しましょう。■共生社会をつくるには「多様性を目指す教員の会」の勉強会に参加したときのこと。多様な性に関する教育現場などでの発信をされている中島潤(なかじまじゅん)さんのお名刺に、「生まれた命が、生き抜ける社会を」と印刷されていました。中島さんは、「今年から、この文言を印刷しました」とおっしゃっていました。どんな現実があるのか、ぜひ今後、ウーマンエキサイトでもご紹介していきたいと考えています。▼性を揶揄する言葉が教室内で使われている当事者の子どもたちは、性を揶揄(やゆ)する言葉で傷つくことが多々あるそうです。そうした言動を、先生方が見て見ぬふりをしているというのは、LGBTQの子どもたちや保護者の集まりで必ず話題になる事柄だそうです。▼性に対しての配慮と合理的配慮の混同LGBTQの子への配慮が合理的配慮と混同され、診断書の提出を求められることが多いことも教育現場の混乱のひとつでしょう。合理的配慮を受ける場合は、たしかに診断書が必要です。ただ、性に対しての配慮は、合理的配慮とは別物です。たとえば、「名前シールで、赤・青といった性別二元論ではない対応をして欲しい」というのは、けっしして「わがまま」という範疇の話ではないのです。■すべての子がありのままの自分でいられるためにこうした教育現場の現実を踏まえ、最後の質問に突入します。「すべての子どもがありのままの自分でいられる社会を実現するために必要なことは?」私たちのグループから出た意見は「まずは、知ることなのでは?」ということでした。私は今年に入ってから多様な性に関する記事を書くようになりましたが、正直なところ、いまだ「手探りで書いている」という状態です。2019年現在、多様な性を知るための情報が、圧倒的に少なすぎる…。浦田さんは、「知ることで、できることが見えてくる。多様性を知ることを楽しみつつ、その人たちが笑顔になるために自分ができることを考える人が増えたらうれしい」と、おっしゃっていました。ワークショップのチラシには、「目に見える違い、見えない違い、それぞれの人が『人と人との違い』にさまざまな思いを持ちながら過ごしています」と、書いてありました。「知らないこと」に対しては、誰だって身構えてしまいます。そんな自分を、「だから悪いんだ」と思うのではなく、「何に対して自分は身構えているのだろう?」 そういったことから、ゆっくりと自分と対話を始めてみようと思いました。知花さんが、「今日感じたことを、まずは、みなさんの言葉で伝えて、広げていって欲しい」と、おっしゃっていました。私が感じたことの何かひとつでも、皆さんの心に届くとうれしいです。<参考サイト>●文部科学省: 「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、 児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について」 (教職員向け)[pdf]●多様性を目指す教員の会: 公式HP DIVERSITY&INCLUSIONイベント第6弾『LGBTQ』~すべての子どもがありのままの自分でいられる社会を目指して~
2019年12月01日近年、耳にする機会が多くなった「LGBTQ」という言葉。それぞれに、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クエスチョニング・クィアを表すセクシュアルマイノリティの総称であり、今の時代、理解していてもはや当然。そんな中、より深く、きちんと学ぶための教科書となるのが、LGBTQの人物が登場する映画。実際、現代の状況を反映してか、セクシュアルマイノリティの主人公が登場する映画が時を超えて公開されたり、ヒットするケースが増加。その実情を、映画ライターのよしひろまさみちさんに伺った。対話をして相手を知る大切さを映画で学べます。「9月末に公開されるアンドリュー・ヘイ監督の『ウィークエンド』は、2011年の作品です。第21回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭などのイベントで上映されたことはありますが、いよいよ日本で初めて劇場公開されることになりました。これは実は、ゲイを主人公にした作品の作風が大きく変わった、ターニングポイントとなる映画です。それまでは、『ブロークバック・マウンテン』に代表されるように、結ばれてもそうでなくても最後には死ぬといったドラマティックな悲恋ものがほとんどでした。でも、『ウィークエンド』で描かれていたのは、クラブで出会った二人の週末だけの物語。お持ち帰りや年齢差のあるカップル、意見の食い違いなど、ゲイの出会い系における“あるある”が満載で、これまでになかった日常を描くということに切り込んだのです。以降、市井のセクシュアルマイノリティや、異性愛者の社会保障に入りにくいなど現実的な悩みが登場する作品が主流となっています」昨年公開された『ゴッズ・オウン・カントリー』も、その一つ。「牧場を営むジョニーと季節労働者のゲオルゲの男性同士の恋物語です。イベントや映画館での限定上映からスタートし、口コミやSNSでその評判が広がって、全国公開にまで拡大しました。ただ、日本映画にそういったムーブメントがあるかというと、まだないのが実情です。『俺のスカート、どこ行った?』『きのう何食べた?』『腐女子、うっかりゲイに告る。』が同時期に放送されたように、ドラマ界には新しい動きが起こっているだけに残念といえます。今後に期待したいところです」先述の2作以外にも、セクシュアルマイノリティが登場する名作は、数多く存在する。そこには、LGBTQの現状を知るヒントがたくさんあると、よしひろさん。「例えば、1980年代イギリスを舞台にした『パレードへようこそ』は、サッチャー首相と警官という共通の敵を持つ炭鉱町とLGBTQコミュニティが手を組む物語です。最初はセクシュアルマイノリティに偏見を持っていた人たちが、対話をし、一緒に戦うにつれて、相手を理解し始める姿には感動してしまいます。また、ゲイであることを告白した父と戸惑う息子を描く『人生はビギナーズ』は、監督であるマイク・ミルズの実体験がもとになっており、カミングアウトをする方とされる方の気持ちが繊細につづられています。それぞれの映画を観ると、自分とは違うセクシュアリティを持つ人を異質なものとして突っぱねるのではなく、対話をして理解し合うことの大切さを教えてくれます。それは、性にまつわることはもちろん、どんな問題と向き合ううえでも大切なことですよね。映画は、“違う人がいるのが社会”ということを、理解のない人に知ってもらうための良きツールだと思います」よしひろさんおすすめの注目作品をピックアップ。観て、さらに理解を深めてみよう。『WEEKEND ウィークエンド』ライフガードのラッセルは、一夜限りの相手を求めて訪れたクラブで、アーティストを目指すグレンと出会う。年の離れた二人は会話を通じて、お互いの秘密やこだわりについて知っていくが…。9/27~、YEBISU GARDEN CINEMAほかで公開。『ゴッズ・オウン・カントリー』イギリスのヨークシャーを舞台に、2人の青年の出会いから愛が生まれる瞬間までをつづった名作。ベルリン国際映画祭やサンダンス映画祭など、多数の映画祭で賞を受賞。監督はフランシス・リー。Blu-ray&DVD発売中発売・販売元:ファインフィルムズ『キャロル』デパートで働くテレーズと、そこへ買い物に来たキャロル。同性ながらも強く心惹かれ合い、異性のパートナーがいながらも逢瀬を重ねるようになる。「キャロルの眼差しから、その思いが伝わってくる。演じるケイト・ブランシェットの美しさに魅了されます」DVD¥3,800発売・販売元:KADOKAWA『人生はビギナーズ』75歳の父親・ハルに、ゲイであることを告白されたオリヴァー。内気な彼だったが、父が亡くなった後に行ったパーティで運命の女性と出会う。「余生を若い恋人と過ごすハルを見ると、親には、彼のように幸せに、自由に暮らしてほしいと感じるはずです」DVD¥1,500発売元:クロックワークス販売元:アミューズソフト©2010 Beginners Movie, LLC. All Rights Reserved.よしひろまさみちオネエ系映画ライター、編集者。小誌をはじめ『otona MUSE』『sweet』など、様々な媒体で執筆を行う。『スッキリ』(日本テレビ系)では、月1オススメ映画紹介を担当している。※『anan』2019年8月14日-21日合併号より。取材、文・重信 綾(by anan編集部)
2019年08月18日「シネフィル(映画通)な母親の影響で幼い頃に映画が人に与える影響力を実感。将来は映画を作る人になりたいと夢見るようになりました」俳優と紹介されても納得する端正な顔でニッコリと微笑むのは、ルーカス・ドン監督。脚本・監督を手がけた『Girl/ガール』が昨年、カンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)を受賞。ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞候補にも選ばれ、一挙に注目度が上昇している。長編監督デビュー作である本作は、バレエダンサーを夢見るトランスジェンダーの少女ララと、彼女の葛藤に焦点を当てた青春ドラマだ。「LGBTQ映画というとセクシュアリティに悩む主人公と外界との軋轢を描く作品が多いけれど、僕は自身を受け入れたララという少女の人間性や葛藤に注目した。彼女を取り巻く人々が最初からララを応援している設定にすることで、なおさら、少女の内面で何が起きているのかが際立ったと思う」性転換手術前なので肉体的には男性であるララはトゥシューズに苦労し、クラスの女子による残酷ないじめにも遭う。“理想の自分”を目指すララの悩みはある意味、誰もが共感できるものだ。「女性の摂食障害なども同じで、『私はこうあるべき』と考えると精神的にも肉体的にも自分を傷つけてしまいがち。ありのままの自分でいるには強さが必要だから。ララの行為はそのメタファー。物議をかもすテーマだけど、僕はきっと、本当の自分で生きるという人間の側面を掘り下げていきたいんだと思う」監督が“個人的な作品”と呼ぶ本作は、実は学生時代に知り合ったダンサー、ノラ・モンセクールに着想したもの。ノラは企画段階から完成まで監督と密にコラボ。キャスティングにも深く関わった。「ララを演じたビクトールは現役のダンサーで、(身体的性と性自認が一致する)シス・ジェンダーだけど役柄に近い資質を持っていると感じた。柔和でエレガントで、自身のフェミニンさも自然に受け入れている。彼の演技を見ると、ジェンダーの考えにはパフォーマンスの側面があるとわかるんじゃないかな」『Girl/ガール』監督・脚本/ルーカス・ドン出演/ビクトール・ポルスター、アリエ・ワルトアルテ、オリバー・ボダル、ティヒメン・フーファールツほか7月5日より新宿武蔵野館ほか全国公開。©Menuet 20181991年、ベルギー生まれ。映画学校在学中に制作した短編がアカデミー賞短編部門選考対象となり、才能に注目が集まった。本作でカメラドールのほかクィア・パルムも受賞。※『anan』2019年7月3日号より。写真・小笠原真紀インタビュー、文・山縣みどり(by anan編集部)
2019年06月27日年上美女との一夏の経験を経て真実の愛に気づく少年の成長を描く『青い麦』や、元高級娼婦と息子ほどの年齢の美青年の恋を描く『シェリ』などの名作を生み出した作家コレット。いまなお文学界で尊敬される彼女は、舞台『ジジ』の主役に無名の新人女優オードリー・ヘプバーンを抜擢したことでも有名です。元祖お騒がせセレブ作家の半生を知って!フランスで初めて国葬にされた女性と聞くと、お堅い女性作家像を想像する?でもコレットは、我々の予想を軽やかに超えた女性でした。キーラ・ナイトレイがヒロインを演じる映画『コレット』は、片田舎で生まれ育った少女が己の本質に気づき、自由奔放な作家コレットになるまでの物語です。時代が移り変わろうとしている19世紀末、シドニー=ガブリエル・コレットは、父の友人ウィリーと結婚。14歳年上の彼は名門出身のジャーナリスト兼作家で、コレットは夫の勧めで筆をとります。ただしウィリーにはたいした文才はなく、大衆受けするプロットを思いついては無名作家たちに文章を書かせ、それを編集・加筆して自身の名で発表していただけ。コレットが書いた学生時代の思い出話に加筆した「クロディーヌ」シリーズはバカ受けし、レズビアンめいた女子学生は社会現象に!?ここでプロデュース能力を発揮したウィリーが「クロディーヌ」ブランドで金儲けをし、素敵カップルはデカダンなサロンでも注目を集めます。とはいえ女性の権利などないに等しい時代なので、コレットはウィリーのゴーストライターに甘んじなければなりません。でも不満を発散し、自己を解放する方法を見つけるのがコレット流。芸術家たちとの交流でアートに開眼し、バレエやパントマイムを習い始めた彼女は、女優として舞台活動をスタート。浮気性で金銭面にルーズな夫をよそに貴族女性ミッシーとの恋愛を楽しんだり、男装にトライしたり、舞台上で女性とキスして暴動寸前になったり。元祖お騒がせセレブの名に恥じない奔放ぶりで世間を騒がせたコレットですが、ジェンダーを超えて自由奔放に生きる姿の進歩的なこと!LGBTQという言葉ができるよりもはるか以前に“ありのままの自分”でいることを決意し、男性優位の社会で自由闊達に生き抜いたのです。まさにフェミニズムの先駆者といえるコレットの生き方が現代の私たちをインスパイアしてくれます。主演のキーラが聡明な眼差しと勝ち気そうな言動で不屈のコレットを熱演。両親に隠れて納屋でウィリーと密会する冒頭で感じさせる反骨心は物語が進むにつれ強まり、燃え上がっていくことに。今回はしかもウィリーを演じたドミニク・ウェストとの相性が抜群で、愛憎入り交じる複雑な感情が手に取るように伝わってきます。憎みきれないロクデナシに息を吹き込んだドミニクの好演も光るし、キーラとコスチューム劇の相性が抜群なのも再確認できるはず。衣装デザイナーのアンドレア・フレッシュが再現したベル・エポック時代の華麗な衣装はため息が出るほど。東京ガールズコレクションのように、気に入ったドレスをすぐにスマホで買えないのが残念?なんてことはさておき、100年以上も前にダイバーシティを体現していた女性がいたことは知っておいても損はないはずです。監督・脚本/ウォッシュ・ウェストモアランド脚本/リチャード・グラッツァー出演/キーラ・ナイトレイ、ドミニク・ウェスト、デニース・ゴフほか5月17日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開。©2017 Colette Film Holdings Ltd / The British Film Institute. All rights reserved.※『anan』2019年5月22日号より。文・山縣みどり(by anan編集部)
2019年05月14日ゲイで女装をした教師・原田のぶお(古田新太)が強いインパクトを放つ、放送中のドラマ『俺のスカート、どこ行った?』。高橋ひかるさんは、原田が担任を受け持つ2年3組の生徒、川崎結衣を演じている。原田先生を見ると、“こんな先生に出会いたかった”と思うはずです。「結衣ちゃんは、今どきのキャピキャピしたおしゃれ番長で、現代っ子って感じがします。自分を強く持っていながらも、長いものには巻かれがち。悪いことをするのがカッコいいと思っているようなところがあります。彼女のようなスクールカーストの上位にいる女の子を演じる機会はこれまでになく、私自身はわりとクラスの片隅にいるようなタイプなので(笑)、ドキドキしたし、自分の発言でクラスの空気が変わるのが気持ちいいんだろうな、という発見もありました。無意識のうちに悪いことをしているタイプだから、罪悪感を持たないように演じています。自分とは違う人を表現することは難しいけど、役にたどりつくまでのプロセスはすごく面白いし、もっと楽しめるようになりたいです」撮影は、古田さんを中心に、楽しく進んでいるそう。「初めて古田さんが現場入りされた時は、その姿に、どよめきが起こりました(笑)。撮影は、古田さんのおしゃべりのおかげで楽しく、和やかです。着ているブラウスが薄くて透けてしまうからカイロが貼れず、『寒い!』とおっしゃっている姿を見た時は、お茶目な方だなと思いました。もし、原田先生が自分の担任になったら?最初は驚くと思うけど、嬉しいです。これまで女装をする方に会う機会がなかったので話を聞いてみたいし、いつかは男装をしてみたいのでコツを教えてほしいです。原田先生が生徒たちと向き合い、ぶつかり、導く姿を見ると、“こういう先生と出会いたかった”と感じるし、“このままじゃダメかも!”“原田先生のようにもっと自分を表現しよう”と、自分を変えるきっかけをもらえると思います。“現代版『金八先生』”じゃないですが、新しい学園ドラマなので、ぜひ、見てほしいです!」『俺のスカート、どこ行った?』真の多様性を教師と生徒に学んでもらうため、豪林館学園高校の校長(いとうせいこう)は、2年3組の担任としてゲイバーで働いていた原田のぶお(古田)を迎え入れることにする。毎週土曜22:00~、日本テレビ系で放送中。たかはし・ひかる2001年9月22日生まれ。滋賀県出身。ドラマ『高嶺の花』『詐欺の子』、NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』に出演するなど演技力に定評あり。雑誌『Ray』の専属モデルをつとめる。※『anan』2019年5月15日号より。写真・内山めぐみインタビュー、文・重信 綾(by anan編集部)
2019年05月08日先週末、ブリトニー・スピアーズがイギリス最大の「LGBTQの祭典」といわれる「Brighton Pride」に、ヘッドライナーとして出演した。ブリトニーがイギリスでライブを行うのは実に7年ぶりということもあり、会場のプレストン・パークに集まった5万7,000人の観客から大歓声を浴びたと「Independent」紙が伝えた。ブリトニーは2013年からラスベガスで行っていた常設公演「Peace of Me」を引っ提げて「Brighton Pride」にやってきた。「...Baby One More Time」、「Oops!...I Did It Again」などの往年のヒット曲を中心とした90分間のライブで、約20人のバックダンサーたちと華やかなパフォーマンスで観客を魅了。非常に露出度の高い大胆な衣装にも注目が集まった。アンコールではブリトニーがLGBTQのシンボルが入った旗を振り、さらに盛り上がりをみせたそうだ。しかしライブ終了後、会場近くのブライトン駅では大混乱が起きた。帰宅のために多くの人が駅に押し寄せ、「動くことも、息することもできないような危険な状態」が続き、警察が駅の一時的な閉鎖を要請。その結果、ベンチで一夜を明かすなど、帰宅難民になってしまった人もいたとのことだ。ブリトニーは5万7,000人という数が同イベントの「過去最高の動員数だと聞いた」とライブ後にSNSで明かしている。(Hiromi Kaku)
2018年08月06日女性を虜にしている話題の最前線を、流行に詳しい方々に教えていただきました。同世代女性の活躍やアメリカで動画配信から火が付いた話題の番組などをご紹介します。共感にときめく!同世代クリエイター。近年、女性監督の活躍が目覚ましい映画界にも、新たな動きが。「私たちと同世代の、20代~30代の才能ある女性が作る映画が観られる機会は、どんどん増えていると思います。年齢が近い方が作る作品は、衣装ひとつをとっても自分たちの感覚に近いものがあったりと重なる部分が多く、同時代の人のモノづくりを体験できることは面白いし、共感しながら驚けると思います。たとえば、『レディ・バード』を監督したグレタ・ガーウィグ監督もその一人。また、日本でいうと、山戸結希監督が、’80年代後半~’90年代生まれの女性監督を集めた『21世紀の女の子』プロジェクトを進めています。どんな作品に仕上がるのか、私も今から楽しみです」(「She is」編集長・野村由芽さん)グレタ・ガーウィグ女優、脚本家、監督として活躍する34 歳。監督と脚本を担当し、自伝的要素を盛り込みつつ描いた『レディ・バード』は、今年のアカデミー賞監督賞・脚本賞にノミネート。Getty Images山戸結希「21世紀の女の子」プロジェクト企画・プロデュースを務める山戸結希監督のほか、12名の新進監督が参加。ひとつのテーマを各々の視点から8分以内の短編で表現し、一本のオムニバス映画を作り上げる。海外ドラマで多様性を見れば未来は何でもあり。ネットフリックスなどの動画配信サービスのおかげで、海外の良質な作品を楽しみやすくなった。「『クィア・アイ』や『ル・ポールのドラァグ・レース』のような、人の多様性を考えさせられる作品が人気。“人と違っていい”と、自分を肯定し、“明日”を生きる勇気がわきます」(野村さん)「以前からアメリカのTV界は出演者を決める際に多様性を重視していたけれど、最近はそこにLGBTQ枠も加わりました。リアリティを追求すれば多様性を盛り込むことが当然なので、自然な流れといえます。でもそれは、番組の制作側にリベラルな人が多く、視聴者側にも多様性を受け入れる素地ができているからこそ、作れるものですよね」(編集者、ライター・山縣みどりさん)『ル・ポールのドラァグ・レース』ドラァグクイーン界のカリスマであるル・ポールが主催する、勝ち抜きコンテストの様子を映す。「彼女たちの華やかさと苦悩する姿の両方から目が離せません」(野村さん)。Netflixオリジナルシリーズ 独占配信中。『クィア・アイ』ハイセンスなゲイ5人がイケてない男性を変身させる。「同名番組のリブート版。前作はゲイを身近な存在にし、今作は自分たちと同じ人間だと実感&共感させました」(山縣さん)。Netflixオリジナルシリーズ 独占配信中。自分の好きを突き詰めた、世界で一つだけのアイテム。“みんな”ではなく“自分”がいいと思うものに無上の価値を置く人が増えている。「誰かが決めた値段やブランドにとらわれず、自分にとって価値あるものを発見することこそが喜びと感じる人が増えてきました。たとえば、石や鉱物、貝殻などに同じものがない自然物を収集するのも、そのひとつ」(野村さん)自分だけのものを求め、カスタマイズを楽しむ人も多い。「近ごろ話題となっているのがバレットジャーナルです。普通のノートに線を引いたりシールを貼ったりと、使いやすく、自分好みにカスタムするというもの。あまりの人気に、『伊東屋』ではポップアップイベントも開催されたほどです」(『日経トレンディ』副編集長・三谷弘美さん)バレットジャーナルノートに自分で日付などを記入して使う手帳のこと。タスクを「・」で書き留め、完了したら「×」をつける。過去にしたことや将来の予定が明確に見えるのがポイント。鉱物鉱物とは、天然の作用で生成される結晶質の物質のこと。個性豊かな表情や美しい佇まいに、収集する人が続出中。展示即売会には、大勢の女性ファンが押しかけている。※『anan』2018年8月8日号より。文・重信 綾(by anan編集部)
2018年08月03日