こんにちは、親子でADHD(注意欠陥・多動性障害)をやっています、ママライターの木村華子です。事の発端は今年の4月。年度始めの家庭訪問で担任から「療育センターで教育相談を受けてみては?」と勧められたのが始まりでした。それから今日に至るまで、検査や今後の支援・教育方法にまつわる相談を重ねています。そんなある日、ADHDの支援を受けようとする私たち親子のことを知った近所のママ友から声を掛けられました。要点をまとめると、それは以下のような意見です。・『療育センターを勧めるなんて、なんて失礼な担任だ!』・『私だったら、「うちの子の何を見て、そんなことを言うんですか!?」とキレると思う』・『木村さんちのお子さんは全然良い子!担任が間違っている。療育センターなんて行く必要はない』じつは、彼女のような意見は少数派ではありません。多くの親が、わが子の発達障害を受け入れられない心境に陥る といいます。今、この記事を読んでいただいている方の中にも、心あたりのある方がいらっしゃるかもしれませんね。しかし、実はその思考や姿勢が、子ども自身をさらに苦しめてしまうことをご存じでしょうか。今回は、発達障害を持つお子様のパパ・ママが現実を受け止めることの重要性についてお話しします。●「わが子に限って、そんなこと……!」親の姿勢が子どもを傷つけた悲劇3つ息子の教育相談を受ける中で、さまざまな方から両親の姿勢が子どもの支援を阻害してしまったというエピソードを耳にしました。以下に、「わが子に限って、そんなこと……!」と拒否してしまう心が招いた3つの悲劇を紹介します。●(1)療育センターを勧められたのが納得できなくて……!『知り合いの息子は療育センターを勧められたけど、ママは納得していなかった。学校から提出を求められた教育相談の申込書に子どもの能力についてのアンケートがあったが、“障がい者”になってしまうのが怖くて、本当はできないことも「できる」と回答。その結果、支援は不要だと判断され、息子には何の改善策も取られなかった 。支援も無く、能力に見合わない教育を受ける息子は学校の勉強からどんどん取り残されていった』(Sさん/30代・主婦からのエピソード)●(2)パパの理解が得られないため、家庭のムードが険悪に『同級生に、発達障害があるお子さんがいた。ママは比較的早くに娘の状況を飲み込んでいた。問題点を理解したうえで、受けられる支援や教育方法の改善を前向きに学んでいたようだけど……。パパがそうも行かなかったみたい。ママが「こういう支援があるみたいだから、考えてみよう」と提案しても、「そんなもの必要ない!あの子は普通!甘やかしたら、それこそ将来ろくでなしになるぞ!」などなど、理解ゼロな発言でママを罵倒していた らしい。ママ友と愚痴っているのをよく聞いた。お仕事の関係か、パパが家にいるのは平日の夜と休日。つまり、子どもがいる時間帯に言い争いをしていた様子。いつもニコニコとかわいい笑顔を浮かべていた同級生のお子さんも、次第に卑屈な性格に変わってしまった 』(Mさん/30代・主婦からのエピソード)●(3)通級指導教室へ通うことを、親子ぐるみで隠し通しているうちに『通常学級に在籍しながら、週1回の通級指導教室へ通うある親子のお話。決められた曜日に通常学級の授業を抜けて通級に行くため、他のクラスメイトから「どこへ行くの?」と聞かれることもあるようです。その子のママはわが子が通級へ行くことをできるだけ他言したくなかったため、「同級生には、毎週病院へ言っていると言いなさい 」と言い聞かせたそうです。お子さんもママの言いつけを守り、「病院へ行くんだ」と答えていたようなのですが、毎週ウソを重ねることがストレスになり 、次第に「ウソをつかなきゃイケナイことを、私はしているの?私は隠さなきゃイケナイ悪い子なの?」と、心が不安定な状態に。ママの考え方や言動が自己肯定感を引き下げてしまった出来事でした』(福岡県で通級教室の指導員を行う女性からのエピソード)●子どもの障がいを認めること、まわりに隠さないことの大切さわが子の発達障害を受け入れることや、周囲の人たちにそれを隠さないことには大きな勇気が必要です。私たち夫婦も、当初は「ちゃんとした大人になれるのか……これからどう育てていくべきか……」などと不安を抱きながら、何度も話し合いを重ねました。そんな大人たちの懸念を吹き飛ばしてくれたのは、息子本人です 。療育センターへ行くことに対し、お友達から「どこへ行ってるの?」と聞かれた彼は、臆することなく「僕って、大人のお話を集中して聞けないじゃん?それを直してくれるトコロがあるみたい!」と返していたのです。そしてまわりのお友達も、「へえ、そうなんだ!頑張ってね!」と送り出してくれていた様子。あっけらかんとした子どもたちのやりとりに、覚悟が足りていないのは大人の方だった ことを思い知らされました。息子はとっくの前から自分の不得意に悩み、受け入れ、そして改善させようと前を向いていたのです。わが子が“その気”になっているのに、大人が後ろを向いているわけにはいきません。一口に学習障害といっても症状や程度はさまざまで、ケースごとに抱く不安も異なるかと思います。とはいえ、極端にまとめれば、“できないこと・苦手なことに悩んでいる ”ということに変わりはありません。不得意なことができるようになるためには親がその事実を認めることと、周囲の方に隠さず伝えることで積極的にサポートを仰ぐことが重要なのではないでしょうか。●世間体は、お子さまの“できない”を受け入れることより大切でしょうか?私事ですが、このたびの“息子のADHD騒動”の最中(さなか)、母親である私自身のADHDも発覚しました。昔から物忘れが激しく、お勉強も決して得意ではなかったことには原因があったのです。そんな私ですが、発達“障害”を障害だと感じたことはありません 。特別忘れっぽい性格をしている私は成長の中で、「お、提出物だ。こういうの、私はすぐ忘れちゃうんだよね〜、だから今すぐ済ましちゃおう!」といった具合に、自分なりの対処法を編み出してきました 。発達障害の有無に限らず、すべての人間に得意・不得意があって、おそらく私のように自分なりの対処法を見出してきたはず。それぞれが持つ不得意やそれに応じた対処法は、それぞれがうまく生きていくためのノウハウです。決して特別なことではないと感じませんか?昨今注目度の高まっている発達障害児への支援については、要は私のような小学生に対して早い段階で“自分なりの対処法”を教えてあげるサポート なのだと思っています。「私が小学生のころにこんなサポートがあったらよかったのにな」と、正直わが子がうらやましい……。障がいと言ってしまえば、確かに聞こえは良くないかもしれません。しかし、「頑張ってるのに、まわりの友達と同じようにできない……」と不得意なことにわが子が苦しんでいることだけは確かです。小さな胸に芽生えたコンプレックスは、パパやママが気にする世間体よりも無価値でしょうか?優先すべきは、お子さまの“できない”に真っ向から立ち向かってあげること。親子で逆上がりや自転車の練習に励んだときと同じテンションで、お子さまの“できない”を受け入れてあげてみてはいかがでしょうか。●ライター/木村華子(ママライター)
2016年10月12日お父さんだって子育てに参加したい!出典 : 障害のある子どもの子育てに、父親はどう協力できるのでしょうか。例えば、子どもの障害やその支援について情報収集をするとき、どのような療育や対処が必要なのか?書籍やインターネットで調べることはできると思います。ただそうした情報だけでは、自分が住んでいる地域の情報などの身近な情報は、私は思うように得られませんでした。一方で妻には、子どもの療育施設に通うママ友を通じて、地域の情報が少しずつ入ってくるようになりました。でも、父である私は、昼間は仕事をしているため、子どもと関わる時間にも限りがあります。様々な情報が妻を通じて入ってくるようになった一方で、何もかも妻にまかせっきりの自分に、いつも不甲斐なさを感じていました。娘の療育先で聞いた「父親の会」の存在出典 : 毎朝、子どもがまだ寝ている間に仕事に行き、夜、子どもたちが寝静まった頃に帰宅。そうした日々の中で、家族のためになることを考えようと思うのですが、何からすればいいのか情報が全くありません。そんなある日、娘が療育施設に通いだして半年ほど経った頃でした。父親だけの集まりがあることを、スタッフから聞きました。「何か情報が得られるかもしれない!」そう思った私はさっそく参加してみることにしました。そこは、「子どもと妻を支えたい」気持ちを持った父親の集まる場所だった出典 : 私が入ったのは、その療育施設を利用している、もしくは利用していた子どもの父親による集まりです。もともとこの会は、療育施設を利用していた1人のお父さんの、「自分は普段、仕事で家に関われないから、たまには子どもと関わる時間を持ちたい。」「嫁さんの負担を軽くしたい」という思いから、今から10年ほど前に設立しました。ただし、「父親の会」と言っても組織的なものではなく、メールリストに登録するだけで、入会金などはありません。主な活動内容は、子どもとのデイキャンプや1泊の野外キャンプなどです。加えて年2回の会合があり、イベントの詳細を決定します。「年2回の会合」って、それ飲み会でしょう?と思われる方もいるかもしれませんね(笑)確かに飲み会です。でもこの飲み会には、意外と重要な意味があるのだと、後から気付きました。わかりあえる人同士だからこそ、言える本音出典 : 私たち父親が職場の上司や同僚に、子どもの障害について話すことは、とても勇気がいると思います。少なくとも、私は大変勇気が要りました。障害児の父親というのは(母親もそうかもしれませんが)、「仕事」と「子どもの障害」という2つのストレスを抱えています。仕事については、同僚と話す機会もあるかもしれません。しかし、子どもの障害のことは、誰かに話したくても話す機会が無いのが現実です。こんな時、父親の会では、普段からなかなか言えない本音も、わかる人同士だからこそ、話しやすいのです。また、全てを話さなくても、周りはみんな察しがつくので、言葉にしにくい気持ちもわかってもらえ、心がラクになります。このことは父親の会に参加している全員が、実感していることです。貴重な情報が得られることも出典 : 私たちの会ではその他に、地域情報や障害の知識などについて、メールリストで意見交換することがあります。これは、地域情報をずっと探していた私にとっては、大変ありがたく有益な情報交換の場でした。もしかしたら、他の地域ではもっと活動的な父親の会も、あるかもしれません。私たちの会でも、「勉強会を企画したらどうか?」という意見が出たこともありました。しかし、企画から準備まで自分たちでやるため、仕事との掛け持ちが大変なので「できる範囲でやっていこう」ということに留まっています。活動範囲については、会によってそれぞれ特色があると思うので、事前にいろいろ調べてみることをお勧めします。何でも話せる場が必要なのは、母親だけじゃない出典 : 父親の会というのは、情報交換以外にも、お父さんたちの普段言えない本音をさらけだす場としては、最適です。そして、心をリフレッシュすることで、仕事も頑張れるのではないかと思います。子どものために、何かしたいと思っているお父さん、父親の会、おススメです。
2016年10月12日発達障害の大人が医療機関を利用するとき、どんな問題が生じるか出典 : 児童精神科医の吉川徹です。これまでの連載では「発達障害と医療」をテーマに、医療機関や診断を受けるタイミングなど、様々な角度から執筆させていただきました。今回は、発達障害と医療の問題を考える際に特に悩ましい、成人された方の医療の利用についてです。この問題は大きく分けて、●子ども時代から大人への医療の引き継ぎ(移行医療)の問題●成人期になって初めて、発達障害を主なテーマとして医療を利用するときの問題の2つがあります。大人になってもスムーズに医療機関を受診し続けるには出典 : 近年では子どもの発達障害を診療できる医療機関はかなり数が増え、診断を受けている子どもも急増しています。こうした子ども達はいつ大人の医療に移行していくのか。これは遠からず全国的に問題になることは目に見えています。子ども時代に診断を受けた方のうち、大人になっても医療が必要な方は、実はそれほど多くはありません。ただ継続した投薬が必要であったり、前回の記事にあるような診断書が必要であったり、どうしても医療のサービスを継続して利用する必要がある方もいらっしゃいます。特に小児科で診断、治療を受けていた場合、必然的に移行が必要となることが多いです。児童精神科などの場合では、医療ニーズが高い場合には継続して診療を受けられることもあるでしょう。最近では発達障害の診療に対応できる、成人の医療機関も増えてきています。成人医療への移行に備えて、地域の医療事情について早めに情報収集を行っておけると安心です。移行が必要になる時期はおおむね15歳〜20歳前後であることが多いのですが、できれば20歳ごろ、総合支援法医師意見書と障害基礎年金の診断書が揃っていると、後の移行がスムーズです。その時期の移行が可能かどうか、通院中の医療機関に相談してみる価値はあります。大人になってから初めて発達障害がわかったとき、医師による診断が必要だとは限らない出典 : もう1つ悩ましいのが、大人になってから初めて発達障害をテーマにして、医療機関を受診する際の問題です。成人期の発達障害診療を受け入れていると広報している医療機関はまだ少なく、たどり着くのが難しい地域もあります。それ以外にも成人期の医療には様々な課題があるのです。まず、そもそも大人になった方の発達障害の確定診断を行うことは、医師にとってもかなり難しいという問題があります。発達障害の診断の多くの部分は、乳幼児期や子ども時代のエピソードの聴き取りに拠っています。成人するころまでには、養育者の記憶も曖昧になり記録も散逸しており、どんなに頑張っても診断を確定できるだけ根拠が得られないことがあります。こうなるとせっかく受診しても「特性はありそうだけれど、診断は確定できない」と伝えられてしまいます。特に専門性の高い医師ほど、正確な診断と診断基準を意識するので、このような伝え方が多くなります。乳幼児期の情報が充分得られない場合、発達障害診断のみを目的にした医療機関受診の効率は下がってしまいます。次に、不眠や不安などの発達障害以外の症状がなく、発達障害の疑いしか医療への「入場券」がない場合、医療機関への受診はそれほど実りのあるものにはならないことも多いという問題があります。成人になるまで診断を受ける機会がなかった方の場合には、当面の主要な問題は発達障害そのものよりも、不眠や不安、抑うつ、強迫症状や精神病症状などであることのほうが多いのです。このように他の精神症状がある場合には、むしろそれを入り口として、優先して相談、対応することが望ましいことが多いのです。その場合、受診できる医療機関の間口も広がるので、通える医療機関を見つけやすくなります。「発達障害の診療はしていません」というクリニックでも、通院中の患者さんの疾患の背景にある発達障害には、気づいてくれたり対応してくれたりすることもしばしばあります。この場合でも支援者の口コミなどで、発達障害の対応に慣れた医療機関を選んでおけるとなお良いですね。何のために受診するのかよく見定めて、効率的に医療機関を使おう出典 : 診断書や薬物療法が不要である場合、本人や周囲の人がその特性に気づき、実際に工夫しながら対応する中でそれを確かめることが可能であれば、発達障害の確定診断は、必ずしも必要ではありません。極めて限られた専門医療機関を別にすると、一般の成人精神科医療機関の診療の時間や構造は、障害特性そのものへの対応を相談するのには、あまり適していないことも多いのです。成人期の発達障害医療はまだまだ発展途上です、今後大きく状況は変わっていくかも知れませんが、現時点では医療機関を受診する目的をよく見定める必要があります。それは診断なのか、診断書なのか、薬物療法なのか。あるいは得意な医療機関は限られますが、自己認知の支援なのか。それともむしろ併存する他の精神疾患の診断や治療なのか。ご本人や支援者の方にはうまく見極めていただき、医療機関を効率よく使っていただけるとよいと思います。
2016年10月12日とにかく体を動かしたい息子。止まらないその衝動性に限界を感じ…出典 : 広汎性発達障害と診断されている息子は、小さい頃からすぐに転んだり、多動傾向なのか落ち着きがなく、どこでもぴょんぴょん跳ねたりと、とにかくじっとしていませんでした。散歩に行くときも、走っている方が歩くよりも楽なのか、うっかりすると、とことこ走って行ってしまい、追い付くのが大変でした。自宅でもぴょんぴょん跳ねる息子に、落ち着くよう声をかけていましたが、言っても聞かず、どうも体が勝手に動いてしまう様子。私は正直、息子がぴょんぴょんする姿を見るのが嫌で、どうしたら治まるんだろう?と、ずっと考えていました。そんなとき、発達障害に関する本を読み、多動傾向の子どもは体を動かしたい衝動が強いという記述を読み、それならやめさせるのではなく、思う存分体を動かせるようにしよう!と考えました。購入の決め手となったのは、作業療法での様子色々と調べ、息子の特性に合っていると思ったのが、トランポリンでした。トランポリンはぴょんぴょん跳ねて、発達障害の方の脳幹を刺激を入れることによって、運動機能の改善や言語発達に良いと言われています。息子の療育でもOT(作業療法)を行っていて、そこでトランポリンや、ボールプール、ボール投げなど、体を使った様々な動きを経験してきました。●感覚統合で発語を促したい●体幹を鍛えたい●体を動かしたい気持ちを満足させたいこうした目的と、息子が療育先で楽しそうにトランポリンをしていることを思い出し、それならばと、思い切って3歳の誕生日に家庭用のトランポリンを購入しました。発達障害の理解と作業療法富山県作業療法士会 発達部会とことん跳びはねてみた結果…Upload By たっくんママ最初はどのくらいやらせたらいいのだろう?と悩んだのですが、時間を決めたり強制されたりするのを嫌がるので、息子の跳びたい時に自由に跳んでもらうことにしました。楽しそうに跳ぶ中、息子から誘われることもあり、運動不足の私もときどき一緒に跳んでいました。1人で跳んだり、一緒に跳んだり、特に回数や型は決めずにフリースタイル(笑)トランポリンの下には、落ちたときに怪我をしないよう、クッションマットを敷いて使っています。跳び終わったあとは、息子もすっきりとした表情で、体を動かしたい気持ちも満たされた様子。また、最初は運動不足で使っていた私ですが、実は自宅作業で煮詰まったときにも、トランポリンを使っています。思い切り飛び跳ねて体を動かすと、その後は頭がリフレッシュでき、仕事にも集中できるんです。自分でもこうした実感があったので、息子には必要だったんだ、買ってよかったなと思いました。特性との付き合い方はさまざま。抑え込むだけではなく、時には思い切り楽しんで出典 : 正直、当初期待していた発語を促したい、体幹を鍛えたいということに対し、どれほど効果があったかはわかりません。しかし、トランポリンを跳んだ後の息子の表情は、すっきりしていたこと、無理せずに取り組んだので運動を楽しむという観点から、トランポリンは良かったと思います。頻繁に使った期間は1年程度でしたが、雨の日などで、外に遊びに行けないときも重宝しました。体の使い方が不器用だったり、体幹が弱かったり、まだまだ課題はありますが、小学2年生の今では、衝動的に跳ぶことや転びやすかった傾向も、なくなってきました。障害の特性によって対応は様々あるかとは思いますが、時には我慢させるだけではなく、子どもの気持ちを満足させてあげることも大事なのだな、と今振り返って思います。
2016年10月12日言葉の遅れがある2歳半の娘。ダメもとで胎内記憶を聞いてみた!誰もが我が子に1度は聞いてみたい、胎内記憶…。2歳までは、お母さんのお腹の中にいたときのことを覚えてるって言いますよね!私も気になって、広汎性発達障害のある娘が2歳半のときに聞いたことがあります。Upload By SAKURAしかし、このころ娘は単語すら話せない状態…胎内記憶を聞くことはできませんでした。4歳になり会話ができるようになった娘に、めげずにもう1度聞いてみると…胎内記憶を覚えているのは2歳までというけれど…どうしても聞いてみたかった私は、4歳になり会話が成立するようになってきた娘にもう1度聞いてみました。Upload By SAKURAいまいち話が通じていない…?いや、めげてなるものか!Upload By SAKURA惨敗でした…。そして現在…5歳5ヶ月になった娘にもう一度、「ママのお腹にいたんだよ~覚えてる?」と聞いてみると…Upload By SAKURAもう完全に忘れていました。娘から胎内記憶を聞くという夢は、諦めたほうがよさそうです…。
2016年10月12日わかってはいても、なかなかできないのが「気持ちの切り替え」出典 : 我が家には、8歳の娘、6歳の息子がいて、それぞれ自閉症スペクトラムの診断が出ています。発達障害を抱える子どもたちと過ごす日々は平穏なものではありません。その中で最近、特に私が苦痛に感じていたのが、「もう寝る時間だよ~!」などの声かけをすると、「え~!!!もっと遊びたかったのに!!!」と泣いたり怒ったりしながら私を睨みつける、子どもたちの視線です。毎日毎日毎日…幾度となく繰り返されるこの反応。寝る時だけではありません。「ご飯を食べるよ~」「ピアノの練習をするよ~」「習いごとに行く時間だよ~」どの予定を告げても、恨めしそうに私を見るのです。スケジュールを一緒に書き出し、「今は何をする時間だ」ということは子どもたちもわかっているのです。それでもなお、「もっと〇〇したかった!!!」という悔しい思いには行き場がないようで、終了の合図を送った母親を疎ましそうに見てきます。わかります。かつては子どもだった私にも、その気持ちはよ~くわかるのです。でも、毎日負の感情をぶつけられると、私もだんだん辛くなり、ムカッと来て、荒い言葉で子どもを押さえつけてしまいます。このままでは子どもたちの恨みがましい気持ちは蓄積し続け、いつか私を憎む日が来るかもしれません。親が子育てで困っているときは、子どもも困っているサイン出典 : 「このままではいけないな」と思ったら、それは私たち親子が前進する合図。子どもたちとある晩、ゆっくり話し合ってみました。夜、寝室を暗くして温かいランプの灯りをともします。わが家の場合、話し合いはリラックスした状態で行うのがベストだからです。子どもはどうしても親の顔色を見がちです。目を合わせて話をすると、なかなか本当の気持ちを聞き出せないため、みんなでベッドに寝ころがり、お話ししています。私「あのね、さっきママが『もう寝る時間だよ』って声をかけた時、『え~!もっと遊びたかったのに!』って言って泣いて怒ってママを睨みつけたよね?あれって、どうしてママを睨むのかな?」息子「え~、だってまだまだ遊びたいのに、ママが寝るっていうから!」私「そっか、もっと遊びたいのにママが『もう終わり』ってあなたたちの楽しみを断ち切ってるような気がするのね?」娘「そうそう!いつだってママは楽しいことを終わらせるからさ~」私「そっか。じゃあ、ママの言い分を発表します。毎日毎日夜が来るのはママのせいじゃないと思うの。ママは親切に『〇〇する時間が来たよ』ってお知らせしてるだけなのに、どうして怒りをぶつけられないといけないのかな?」娘「そりゃ確かに、夜が来るのはママのせいじゃないけどさ~、もっと遊びたいのに!!って思っちゃうもん。」出典 : 私「じゃあ、ママは親切な気持ちでお知らせしてたけど、これからはお知らせするのをやめるね。」娘「ちょっと待って!それは困っちゃう!だって夢中になってすぐに時間が過ぎちゃうから、教えてくれないと習いごとにも遅れるし、いろいろやりたいことが出来なくなっちゃう。夜も眠れなくなるし・・・」私「だったら、ママが『〇〇する時間だよ』ってお知らせした時は、ママに怒りをぶつけないで。」息子「だって、すごく悔しいもん。どうすればいいの?」私「悔しいのはわかるよ。でも、もっと遊びたいならどうすればいいのか考えてみて。夜は決まった時間に寝て、ちゃんと朝早く起きればたくさん遊べるし、ごろごろしている時間を減らせば、もっと遊べるはずだよ?まず、『え~、もっと遊びたかったのに!』っていう言葉から変えてみない?」娘「言葉を変えるの?」私「そう。なんて言ったらいいか、一緒に考えてみよう!」こうして、『〇〇する時間だよ』と言われた時は何と返せば良いか、悔しいという気持ちがあるのを前提に考えてみました。ただ、話し合いに真剣になり過ぎると子どもは強制されたと感じてしまうので、「こんな歌はどう?」と誰かが変な歌をうたうと、まだその替え歌を誰かが作ったり、できるだけ険悪な雰囲気にならないよう、ゲラゲラ笑いながら進めていきます。そしてわが家がたどり着いた答えは・・・ぐずぐずして行動できない時はコレ!みんなで決めた「のに退治」出典 : そのうち、「じゃあ、『お名残惜しいですけど、また明日!』とかどう?」という言葉が娘から飛び出しました。私「そうだよね!『悔しいな、もっと遊びたい』の後に、『だから、また明日思い切り遊ぼう!』が入るとすごくいいね!『悔しい』っていうマイナスの気持ちで片づけちゃったら、それを誰かにぶつけたくなる。今まではママが受け止めてきたけど、それだと今度はママが苦しくなってイライラしちゃうからね。プラスの言葉で終わらせてくれたら、ママも『じゃあ、明日思い切り遊ぼう!』って笑顔で言えるよ!いい考えが出たね~!」息子「『〇〇なのに』で終わらないで、その後に『だから』を付けるっていうこと?」私「そうだね~!もし、『〇〇したかったのに!』で終わったら、今度からママが『のに』を退治しに行こう!『だ~か~ら~?』って聞くから、その後に前向きな発言をしてね。言葉は人を作るんだよ。プラスの言葉をたくさん使ったら、前向きな気持ちになれるからね!」娘「『のに』を退治するの?『おに退治』みたいで面白いね~!明日からシャキーン!シャキーンって、『のに』をやっつけてね!」こうして、わが家流の「のに退治」法が決定しました。親が強制したルールではなく、話し合いの中からみんなで見つけた答えなので、翌日から「出たな!『のに』!成敗してくれる!」と大げさに指摘しても、子どもたちは否定されたと感じることはありません。楽しそうに慌てて「だから、〇〇するね!」と前向きな発言をするようになりました。「~なのに…」親だってついついやっているかも!出典 : 時々、もしも発達に凸凹がなく、子どもたちの感情の起伏が穏やかだったら、どんな暮らしになっていたのかな?と想像することがあります。すごく楽に日常生活を送れるんだろうな、と思う反面、ここまで子どもたちと色々な話をすることは、なかったと思います。実際、子どもの発達に凸凹があると「困ったな」と思うことはとても多く、「もう前に進めない」とグッタりすることもあります。でも、工夫を重ねて子どもたちの笑顔が増えた時には、普通の子育てよりもはるかに大きな喜びを得ているのかもしれません。親である私たちも、日常生活を送るだけでも大変な「のに」…で終わらずに、「だから、できることが増えていくと、すごく嬉しいんだな」という前向きな気持ちで締めくくれるといいですね。
2016年10月11日注意欠陥障害がある栗原類さん。モデルの仕事を掴むまでには親子での努力があったUpload By かなしろにゃんこ。栗原類さんの『発達障害の僕が 輝ける場所を みつけられた理由』を拝読しました。類さんのクールなイメージから、注意欠陥障害といってもそんなに困っていないのでは?と勝手に考えていましたが、家のルールである朝のゴミ出しを、玄関先まで持ってきたのに忘れてしまったり、とにかく物をなくしたり、遅刻が頻繁だったりと、発達障害がある人の特性そのものを持っていて、息子の姿とも重なって親近感を感じました。お母さんの泉さんが、耳にタコができるくらい何度も同じ注意を類さんにしているあたり、少年の成長物語がとてもリアルです。モデルのオーディションや撮影に出向く際には必ず迷子になってしまう類さん。お母様である泉さんが、遅刻が厳禁な業界に発達障害の我が子を1人送り出す心中を想像すると、子どもの行動を先回りして考えたり、もしものケースを何通りも考えておいたりと、ご苦労があったと思います。仕事をしながら類さんのサポートを続けたことはさぞ大変だっただろうと沁みてきました。類さんは容姿が良いから今のように活躍できているのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。でも、我が家の上の子も子役をしていたことがあるので、仕事をする大変さが分かります。駆け出しのころは10オーデション受けて1つ受かるか?という世界ですから、容姿や運だけで生きていける世界ではありませんよね。類さんが今、お仕事をいただいて輝けているのは、泉さんがいろいろな方々に感謝をする心を持つよう類さんにしっかりと伝えていったことや、情緒を育てる土台作りを母子家庭でも手を抜かなかったことが大きな理由なのではないかと思ったのでした。母、泉さん流。考え方が偏らないよう一緒に話し合い、伝える療育Upload By かなしろにゃんこ。映画やゲームやアニメなど映像を観るのが好きな類さんに、母親の泉さんが「ネット映像を視聴するときの注意」を促すところは参考になります。泉さんは、類さんが好きになったものはどんなものでも禁止はしないけれど、見たままをうのみにしないよう、作り手の意図は本当はこうである!という視点を持つことを教えていました。発達障害がある子は素直ゆえに考え方が偏ってしまったり、独特の思想を持つようになる子も中にはいると、専門家に聞いたことがあります。栗原さん親子のように、物の見方について思春期の早いうちから頻繁に話し合う機会を持つことが必要だと感じました。もし泉さんがゲームやアニメを最初から禁止していたら、きっとそんな話し合いを親子で持てなかったかもしれませんよね。頭ごなしに禁止せずに、子どもが好きになったものに親が対応することが大切なのかもしれません。思春期、反抗期の息子との付き合い方のヒントにもなるな~と思ったのでした。思わずハッとさせられた言葉…子どもにこんな要求しているかも!?Upload By かなしろにゃんこ。類さんがアメリカで最初に発達障害の診断を受けた際に、「親ができたことを子どもに要求しないで」と泉さんはアドバイスされたそうです。この言葉、うっかりやっちゃっていた私にズズ――ン!と響いてきました。子どもに要求しないように、できないからって嫌味も言わないように今日から気をつけよう!発達障害の僕が 輝ける場所を みつけられた理由 栗原 類 (著)KADOKAWA出典 :
2016年10月11日医療機関による受診が必要になる、「診断書」の取得出典 : 前回はいつ医療機関による受診をするのか・勧めるのか、というテーマでしたが、一方でどうしても受診、診断が必要なタイミングというのがあります。その代表的なものが、診断書が必要になる時期です。発達障害を持つ子どもや大人が健康に成長し暮らしていくためには、様々な支援が必要になることがあります。その入場券になることが多いのが診断書です。今回の記事では診断書が必要になる代表的な場面と、その時期を解説します。ただし、診断書を巡る状況は、地域によって少し異なることがあります。地元の支援者や先輩の親御さんにも確かめてみるとよいでしょう。18歳未満で診断書が必要となる場面出典 : 子ども時代には診断書が必要な場面は、実はあまり多くありません。知的障害を伴う方の場合、愛の手帳や療育手帳などと呼ばれる知的障害の福祉手帳の取得には、原則として医師からの書類は必要ありません。地域の役所の窓口から申請でき、その手帳があることで多くのサービスが利用可能です。以下では、医師の診断書が必要となる場面をご紹介します。知的障害の手帳の対象ではない場合、精神保健福祉手帳という精神障害の福祉手帳を取得することがあります。子ども時代の取得はまだ多くはありませんが、だんだんと取得する方が増えているようです。精神保健福祉手帳の取得には必ず医師の診断書が必要となります。子ども時代の取得にはそれほど多くの利点はありませんが、必要であれば診断書の発行を受けることが可能です。福祉手帳の取得をしていない場合、児童福祉法に基づくサービスを利用するための「受給者証」を発行してもらうために、医師の診断書が必要となる地域があります。制度本来の主旨からするといかがなものかと思うのですが、残念ながらそのような運用が広がってきているようです。また地域によっては、通級指導教室や特別支援学級などへの入級にあたって診断書を求められることがあります。幼稚園などの場合でも、園への助成金などの支給のために、診断書の提出を求められることがあります。これも文部科学省などが通達している特別支援教育の方向性からすると、本来あってはならないことだと思うのですが、残念ながらそのようなルールが設定されている地域もあるようです。また障害の状態によっては、特別児童扶養手当の支給対象となることがあります。やや厳しい世帯の所得制限などもありますが、支給にあたっては医師の診断書が必要です。18歳以上で診断書が必要となる場面出典 : 歳以上になったときに、障害者総合支援法による様々な福祉サービスを受けるためには、診断書ではないのですが、「医師意見書」が必要になります。また20歳になると、障害基礎年金の対象となる方も出てきます。障害年金の受給には必ず医師の診断書が必要です。この中で特に注意しなければならないのが、子ども時代に医療機関を受診し診断を受けた後、経過が順調な場合、特に身近で適切な支援が受けられている場合です。このとき、どこかの段階で医療機関の受診が不要になり、通院を止めていることが少なくありません。しかしその場合であっても、18歳以降に福祉サービスの利用の可能性がある場合、障害基礎年金が受給できる可能性がある場合には、それに備えて少なくとも1,2年前からは通院医療機関を確保しておいた方がスムーズです。初診でいきなり診断書の発行を受けることは困難です。16歳、17歳という年齢であれば、成人の精神科医療機関に受診できるので、通院先の選択肢は格段に広がります。初診には予約が必要であることもありますので、将来の診断書の発行に備えたいという受診の意図を伝えて、事前に確認しておくとよいでしょう。この他、就労支援を受ける際に医師の意見書を求められたり、障害が重度である場合には特別障害者手当の受給のためにも診断書が必要となったりします。必要な時期に診断書の発行が受けられるように情報収集しておけるとよいですね。
2016年10月10日紙芝居をよーく見ていると思ったら…Upload By 荒木まち子Upload By 荒木まち子2歳の娘、いよいよ社交場デビュー!出典 : 娘が2才の頃、私はママ友に誘われ、近くの地区センターで行われている「赤ちゃん広場」に参加しました。そこは「地域の子どもはみな1度は訪れる」ともいわれている有名な場所で、ボランティアの方が未就園児を対象に、親子のリトミック体操(リズム体操:音に合わせて体を動かすもの)や、紙芝居の読み聞かせなどを毎月していました。公園とは一味違う、初めての子どもの社交場に私は胸を膨らませ向かったのでした。ところが、いざ参加してみると期待通りにはいかず…出典 : ところが親子体操が始まり、音楽に合わせ20組の親子が踊りだすと、娘は驚き怯え、カーテンの影に隠れてしまったのです。娘を抱っこして参加しようとしても、娘は泣いてすぐにカーテンの影に戻ろうとします。私が「ほら、楽しいよ~」と誘っても、決してカーテンの影から出ようとはしません。結局私は他の親子が楽しそうに体操をする中、最後まで1人で踊り続けたのでした。体操の後の紙芝居では、娘は表の絵よりも紙芝居の裏の方が気になり、1人だけボランティアさんの横に立っていました。絵本の読み聞かせにも娘は全く興味を示さず、部屋中をウロウロ、ウロウロ。最後の方はお菓子をせがんだり、早く帰りたがったりと、部屋の中に引き止めておくのも難しい状態でした。同じ年頃の子ども達が紙芝居を興味深そうにジッと座って聞いている姿と、娘の姿とのギャップに、私はとてもショックを受けたのでした。慣れれば違うかも、と再度チャレンジするも玉砕!うちの子、他の子と違うの?出典 : 翌月、私は「前回は初めてだったからみんなと遊べなかったのかも。慣れれば大丈夫なはず!」そんな望みを胸に、再び赤ちゃん広場に参加しました。結果は前回同様、娘は体操の時はカーテンの影、読み聞かせの時は部屋をウロウロ。私達親子がその会に参加することは、2度とありませんでした。その後、色々な親子教室やサークルなどに参加してみましたが、やはり娘は上手く楽しむことができず、周りの子ども達との違いを感じた私は、役所に相談をしたのでした。紹介で参加した療育センターの体験。あれ?何だか楽しそう…出典 : その後、役所で紹介された療育センターの親子体験に参加することになりました。そこで私は衝撃を受けたのです。娘が体操や紙芝居、絵本の読み聞かせにも自ら進んで参加したのです!地域のサークルでは頑なに参加しようとしなかった娘が、なぜ? その理由は単純なものでした。●人数分の椅子を並べ、どこに座れば良いのかを子どもたちにわかるようにし●大人が読んでほしい、やってほしい絵本や体操ではなく、子どもたちが興味を持ちやすい絵本やリズムを選び●声に抑揚をつけたり、顔の表情を変えたりしながら、常に子どもたちの顔を見て接していました療育センターの先生は、子どもに合ったものを、子どもに合った方法で示していたのです。その、子どもたちの食いつきぶりに私はビックリしました。子どもが多少ウロウロしても周りに気を使うこともないので、親たちもゆったりリラックス。この時の私は、正直「プロってすごいなぁ」と感じました。娘が興味を持った絵本はコチラ。その後療育に通いだし、現れた変化出典 : その後、正式に療育センターに通い始めた娘。そこで出会った絵本や紙芝居はどれも、娘の興味を引くものばかりでした。出典 : 出典 : 療育センターで絵本や紙芝居に興味を持つようになった娘。家での読み聞かせもスムーズにできるようになり、それまでとは一転、「本好きの子」になったのでした。
2016年10月10日反抗挑戦性障害(ODD)とは?出典 : 反抗挑戦性障害(ODD)とは、別名「反抗挑戦症」とも呼ばれ、親や教師など目上の人に対して拒絶的・反抗的な態度をとり、口論をしかけるなどの挑戦的な行動をおこしてしまう疾患です。症状の現れ方によって過興奮型、すね型、マイペース型に分類される場合があり、症状を発症する場面・相手が多いほど重度であると診断されます。反抗挑戦性障害が発達期を通じて何年間も続く場合、両親、教師、監督者などの目上の人だけではなく、同年代の友人、恋人ともトラブルを起こしてしまい日常生活に様々な障害が発生します。反抗挑戦性障害は捉え方によって特徴が異なる疾患です。とくにアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)と世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)では診断基準などが違う場合があるので注意が必要です。反抗挑戦性障害の主な症状出典 : 反抗挑戦性障害の症状として大きく3つのパターンがあげられます。・怒りっぽくイライラする:周囲からの刺激に過剰に敏感になり、すぐにイライラしてしまいます。そのためしばしばかんしゃくを起こしたり、腹を立てて怒ったりしてしまいます。・周囲に挑発的な行動をする、口論がすき:権威のある目上の人物や、子どもの場合は大人から決められたルールに従うことに積極的に反抗し、口論をふっかけます。そしてわざと周囲の人をイライラさせ、自分の失敗、または失礼な行動の原因を他人のせいにしてしまいます。・意地悪で執念深い:周囲の人との間に起こった出来事を根に持ち続け、他人に対して優しくなれない状態が半年に少なくとも2回発生します。反抗挑戦性障害と反抗期の違い出典 : 通常子どもの健康な育成に反抗期は必要なものとされています。反抗期には誰でも親に反抗的な態度をとったり、いらいらしたりするものです。そのため反抗期と反抗挑戦性障害を見きわめることは難しい場合があります。見分けるためには反抗的な行動がどのくらい続いているのか、どのくらいの頻度で発症するのかを考えることが重要です。例えば第一次反抗期にあたる5歳未満の子どもの場合、周囲の人に対して怒ったり、乱暴な言葉をもちいて反抗したり、かんしゃくを起こしたりする行為が1週間に1回、少なくとも半年間続くことが条件となっています。しかし反抗挑戦性障害か見分けるためには、これらの条件だけではなく発達水準、性別、文化の基準などさまざまな条件を考慮する必要があります。これらすべての条件をふまえた上で発症頻度・症状の重さが通常の反抗期を超えている場合は、反抗挑戦性障害と診断されます。判断することが難しい場合は専門家に相談することをおすすめします。反抗挑戦性障害を発症しやすい人出典 : 反抗挑戦性障害は通常就学前に発症し、青年期初期以降の発症はあまり見られないといわれています。発症率の男女比は思春期以前は1.4:1となっており、男児のほうが発症率が約1.4倍高いです。しかし思春期以降は性別による発症率の差はあまり見られなくなります。2~5歳児を対象とした調査では反抗挑戦性障害を発症している人の割合は、それ以外の疾患を発症している人の割合より格段に多く、16.8%のという研究結果がでています。そのうちの半数は重い症状があると診断されました。参考文献: ロバート・ヘンドレン/著 『子どもと青年の破壊的行動障害―ADHDと素行障害・反抗挑戦性障害のある子どもたち』 2011年 明石書店/刊反抗挑戦性障害の主な原因出典 : 反抗挑戦性障害の要因として、育った環境が関わっている場合があるといわれています。その理由として、反抗挑戦性障害は、目上の人からの指示などに対して拒否する拒絶症状が症状の中核となっていることが挙げられます。拒絶症状は一日で現れるものではなく、反抗的な感情がだんだん積み重なって発症してしまうと考えられており、主に幼少期の環境に左右されやすいのです。保護者や周囲の人と対立してしまったときに、大人が次はこうしようかという改善策を提示せず、子どもをただ批判、非難することによって抑圧してしまうことはとても危険です。これにより、子どもは自分を守るため挑戦的で反抗的な感情をおこしたり、行動してしまう可能性が生まれるのです。しかし環境要因は決定的な要因ではなく、気性が荒い、我慢することを苦手などのもともとの気質要因、遺伝的要因なども関わり合うともいわれているため、はっきりとは原因が解明されていないのが現状です。反抗挑戦性障害の診断基準出典 : アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)による診断基準は以下の通りです。A. 怒りっぽく/易怒的な気分、口論好き/挑発的な行動、または執念深さなどの情緒・行動上の様式が少なくとも一人以上の人物とのやりとりにおいて示される。怒りっぽく/易怒的な気分:(1)しばしばかんしゃくをおこす(2)しばしば神経過敏またはいらいらさせられやすい(3)しばしば怒り、腹を立てる口論好き/挑発的行動:(4)しばしば権威のある人物や、または子供や青年の場合では大人と、口論する(5)しばしば権威のある人の要求、または規則に従うことに積極的に反抗または拒否する(6)しばしば故意に人をいらだたせる(7)しばしば自分の失敗、または不作法を他人のせいにする執念深さ:(8)過去6ヶ月に少なくとも2回、意地悪で執念深かったことがある注:正常範囲の行動を症状とみなされる行動と区別するためには、これらの行動の持続性と頻度が用いられるべきである。5歳未満の子どもでは、ほかに特に記載がない場合、その行動は1週間に1回、少なくとも6ヶ月間にわたって起こっていなければならない(基準A8)。このような頻度の基準は、症状を定義する最小限の頻度を示す指針となるが、一方、その他の要因、たとえばその人の発達水準、性別、文化の基準に照らして、行動が、その頻度と強度で範囲を超えているかどうかについても考慮すべきである。B.その行動上の障害は、その人の身近な環境(例:家族、同世代集団、仕事仲間)で本人や他社の苦痛と関連しているか、または社会的、学業的、職業的、またはほかの重要な領域における機能に否定的な影響を与えている。C.その行動上の障害は、精神病性障害、物質使用障害、抑うつ障害、または双極性障害の経過中のみ起こるものではない。同様に重篤気分調整相の基準は満たされない。■現在の重症度は軽度:症状は一つの状況に限局している(例:家庭、学校、仕事、友人関係)中等度:いくつかの症状が少なくとも二つの状況でみられる重度:いくつかの症状が三つ以上の状況でみられる『DSM-5』では、反抗挑戦性障害と素行症を別の疾患として定義しています。素行症とは、周囲の人に反発して、学校のずる休みや繰り返しの嘘をつくなどの挑発的な行動をとったり、激しい喧嘩をしたりすることに加えて、放火や盗み、物に対しての破壊行為などの法律違反に当たる行動をとることを指します。一方、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)では、反抗挑戦性障害は素行症という疾患の中に含まれて定義されます。ここでは、反抗挑戦性障害はおよそ9~10歳未満の子どもに発症する行為障害(素行症)の軽度の症状であると位置づけられます。参考文献: 『ICD-10』 2013年 中山書店/刊反抗挑戦性障害の合併症出典 : ■素行症反抗挑戦性障害の代表的な合併症として素行症が挙げられますが、これは小児期発症型のをもつ子どもによくみられる併存症です。合併してしまう主な原因は、自分より偉い人との間に挑戦的な感情をもってトラブルを起こしてしまうという、共通の症状があることと言われています。反抗挑戦性障害が重度になるにつれて素行症の症状もあらわれてきてしまうのです。しかし反抗挑戦性障害と違い、素行症には人や動物に向けた殴るなどの攻撃的な行動や、物の破壊、または盗みや詐欺など違反行為がみられるため、しっかりと区別することが重要です。■ADHD(注意欠陥・多動性障害)もう一つの代表的な合併症としてADHD(注意欠陥・多動性障害)があげられます。ADHDとは、不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(考えずに行動してしまう)の3つの症状がみられる発達障害のことです。 年齢や発達に不釣り合いな行動が社会的な活動や学業に支障をきたすことがある障害です。ADHDを発症している子どもの20~56%は二次障害として反抗挑戦性障害を発症するといわれており、発症する確率は3歳の子どもが一番高いと言われています。その他にも反抗挑戦性障害は不安症群やうつ病の合併のリスクも高いと言われています。その理由は怒りっぽい、気分の波が激しいなどの症状が一致している傾向にあるからです。発達障害に関連のある行動障害についてl 国立特別支援教育総合研究所ADHDの二次障害としての反抗挑戦性障害出典 : 反抗挑戦性障害とADHDは強い関わりがあるといわれており、年齢を重ねるとともに合併する可能性が高くなると言わています。そのときは、元々ADHDがある人が“人間不信的行動”という二次障害として反抗挑戦性障害を発症する場合が多いです。人間不信的行動とは、自尊心・自己肯定感が低下して自分はダメな人間かも知れないと思い、そんな自分のことを誰も理解してくれないという気持ちから、周囲の人を信じれなくなったときに起こしてしまう行動のことを指します。ADHDを発症している人は、自分自身がADHDであることを認識していないケースも多く、周りから理解が得られていない場合も多いです。そのため知らない間に人間不信になり、反抗挑戦性障害を発症しているということも少なくないのです。またADHDには主に、不注意優勢型、多動性・衝動性優勢型、混合型の3つのタイプがあります。その中でも、不注意優勢型のADHDのほうが反抗挑戦性障害の症状が比較的軽い傾向にあります。ADHDのある子どもとその家族の間でおこる衝突の多くは、合併症としての反抗挑戦性障害が関与している場合があります。そこで衝突・喧嘩をする回数が過度に多いときはADHDではなく、反抗挑戦性障害が原因かもしれないと考えることが重要です。ADHDに反抗挑戦性障害が合併すると、対立や怒りの感情の発生、コミュニケーション障害によって、単なる衝突・喧嘩にとどまらない対人関係への悪影響の及ぼし合いが多く発生します。例として母親との関係を挙げると、ADHDと反抗挑戦性障害が合併している10代の子どもの多くで、その青年の症状に加えて母親の精神的苦悩が加わり、親子間の対立や悪影響の及ぼし合いが発生することが分かっています。反抗挑戦性障害が気になったときの相談先出典 : 反抗挑戦性障害は素行症(行為障害)やADHD、うつ病などの、様々な合併症と関わりあっている場合が多く、年をとるにつれて症状が複雑化しやすい傾向があります。また、年齢が上がってからの治療は、反抗挑戦性障害がある子どもが治療に対して抵抗することがあるため、早期に診察・治療することがおすすめとされています。明らかに感情の波が激しく怒りっぽかったり、口論が絶えなかったりする場合は以下の相談先に相談するか、医療機関の受診をおすすめします。■児童相談所:「子どもの養育に関する相談」、「障害に関する相談」、「性格や行動の問題に関する相談」などの育児に関する相談ができる機関となっています。全国児童相談所一覧l 厚生労働省■全国精神保健福祉センター:各県、政令市にはほぼ一か所ずつ設置されている窓口であり、精神保健福祉に関する相談をすることができます。相談については、予約制、健康保険の適応があるところがあります。詳細は、それぞれのセンターにお問い合わせください。全国精神保健福祉センター一覧l 厚生労働省■精神科・心療内科:心の症状、心の病気を扱う科です。心の症状とは具体的に不安、抑うつ、不眠、イライラ、幻覚、幻聴、妄想などのことです。心療内科は心と体の不調だけではなく、ほてり、動悸などの身体的症状とその人の社会的背景、家庭環境なども考慮して治療を行います。反抗挑戦性障害の治療法出典 : 反抗挑戦性障害の治療は・症状の重さと発症する頻度を減らすこと・患者が社会生活を送る上で発生するトラブルを少なくすること・家族のストレスを軽減すること・行為障害へ進行することの予防を目的として実施されます。治療法として主に薬物療法、社会技能訓練、認知的技能訓練、ペアレント・トレーニングなどがあります。薬物療法に関しては、反抗挑戦性障害の原因に直接的に効果がある薬はまだ開発されていないため、興奮や衝動性などの症状を抑える薬が処方されます。社会技能訓練とは反抗挑戦性障害がある人が、大人や友だちがいる場で周囲の人のサポートを受けながら行う、社会の中での過ごし方を取得する訓練です。正しいコミュニケーション方法のとり方、怒りや拒絶の感情が発生したときの対処方、目上の人との適切なやり取りの仕方などの練習を行います。また、反抗挑戦性障害がある人が否定的な物事の捉え方や考え方を修正し、トラブルが起こらない意見の言い方を獲得するための治療を認知的技能訓練といいます。そこでは主に反抗挑戦性障害がある人がトラブルをおこさないように、自分で課題解決が行えることを目的としています。反抗挑戦性障害がある人を訓練するのではなく、その保護者の子どもとのかかわり方を訓練する、ペアレント・トレーニングという支援方法もあります。主に、保護者の子どもへの行動、対応方法を変えられるようになることを目的としています。親は子どもの反抗的な行動の動機、行動のパターンを理解・分析する訓練をすることによって、問題行動にたいして上手く対応し、子どもの反抗的な行動を減少させることを目指します。日本ではアメリカで開発されたペアレント・トレーニングをさらに日本向けに改良した治療法が実施されており、訓練を受けたトレーナーの指導の下で行われています。反抗性挑戦性障害がある子どもへの周囲の人の対応方法・接し方出典 : 反抗挑戦性障害には主に過興奮型、すね型、マイペース型の3つのタイプがあります。タイプ別の対応法を解説します。■反抗-過興奮型過興奮型の子どもは指示に素直に従えず、無視するか、返事はするものの結局やらない傾向があります。このような状態にも関わらず指示を繰り返すと、子どもが興奮して暴言を返してくるなど、売りことばに買いことばとなってしまいがちです。「指示に従うことは自分の負けだ」などと、誰に対しても、勝ち負けの気持ちが働いてしまうことが主な原因です。このような過興奮型には、前もって約束する方法が適切です。その場ですぐに「~しなさい」と命令するのではなく、前もって約束したことを思い出させるようにします。そうすることで子どもにとって親との戦いではなく、約束を守るかどうかという「自分との闘い」となるように誘導します。具体的なポイントとして、子どもが約束を思い出せないときは、「何を約束したっけ?」と内容を聞きだすのではなく、まず約束したという事実を伝え、「お風呂、遊ぶ、どっちかな?」と二択の質問にします。ことばだけでは伝わらないときには、絵カードを用いて選ばせることもおすすめです。■反抗-すね型すね型の子どもは衝動性が高く、思いついたら計画性なくすぐに行動してしまいます。しかし、自分の思い通りにならないことがあると、ちょっとした拍子ですねていじけてしまったり、ケンカをしてしまったりします。すねていじけてしまう原因として、数多くの失敗体験が心の中にたまり自信が持てなくなり、どうせやっても失敗してしまうとネガティブな思考が染み付いてしまったことが挙げられます。そのため、自分は上手になれる、上達できるという成功体験を実感してもらう必要があります。おすすめは、運動や料理などを通じて、成功体験を実感してもらうことです。例えば縄跳びでは、跳ぶ回数や跳び方でランクをつくり、徐々に上手くなっているという実感を体験してもらいます。ここで重要なポイントは、・何をやるべきかを明確にする・どこまで到達することができたか分かりやすくするために段階的な目標を示す・子どもの取り組みのモチベーションを維持するために結果のみではなく過程を評価することです。また子どもは。本当に自分にできるかと、心の中では不安を感じています。そのため、「本当に上手くなってきたね、こうやっていけばもっと上手くなるよ」と語りかけをしつつ、自信をつけてあげることが大切です。■反抗-マイペース型マイペース型の子どもは集団で遊ぶことや、他の子との共同作業を苦手とします。幼児期では集団に入るよう誘うとパニックを起こしてしまうことがあります。その後、小学校の半ばあたりになると、周りの子どもたちと興味やペースが合わないことがはっきりとしてきます。マイペース型は、じっとすることは苦手であるにも関わらず、好きなものには集中することができるといった子どもによく見られます。また、人の気持ちを理解することを苦手とする一面がある子もいます。このような子どもに対しては、本人の興味やペースなどを配慮して、周囲との距離感を調整してあげることが主な対応方法となります。子どもが嫌がっているような素振りや表情を見せた場合は、無理強いしないで合わせてあげることが重要です。出典 : と反抗挑戦性障害を合併している子どもと家族がうまく関わっていく上で、重要な4つのポイントを紹介します。1. 感情的に対応しない:子どもが感情的に話をする場合には「静かに話すこと」を促し、落ち着くまで相手をしないようにしましょう。ちょっとしたことでも感情的に反応してしまう傾向があり、周囲の人々がそれに対して感情的に接してしまうと状況が悪化してしまう恐れがあります。2. パパに理解してもらう多くの家庭は子どもと多くの時間を過ごすのはママである場合が多いです。そのため、たとえ子どもとママの関係が悪化してもパパはあまり状況をつかむことができず、子育てから離れるようになってしまうケースは少なくありません。一方、子どもは普段一緒に過ごす時間が少なく、あまり反抗する相手とはならないパパの話にはよく耳を傾けることも多いため、パパが話し合いに加わることでみんなで冷静な話し合いができるということも考えられます。思春期を乗り越えていくときのことも含めて子どもを上手に育てていくには、パパの理解を得てみんなで協力していくことが重要です。3.約束を守りきる経験を積ませる:ADHDと反抗挑戦性障害を合併している子どもは約束したことをなかなか守れないという傾向があります。しかしそのような傾向があるからといって諦めたり大目に見ることを続けたりすると、子どもはどんどん約束を守ろうとしなくなります。そのため子どもの特性を理解し守りきれる約束をすることが大切です。守れたらいっぱいほめる、破ったらなんで守れなかったのかきちんと話し合うとあらかじめ明確に決めておくことがポイントです。また約束を守れなかったときには簡単に許さず、譲らないようにしましょう。4. 子どもに期待し、ポジティブになる:過去のことを責めても子どもの自尊心が低下し、状況や症状が悪化する場合が多いです。これからの成長に期待しネガティブになりすぎないことが子どもの心の健康のために重要です。の理解と対応l 公益社団法人発達協会まとめ出典 : 反抗挑戦性障害とは、通常子どもが発症する障害であり、青年期早期以降の発症はあまりみられません。発症する症状として怒りっぽい、口論が絶えない、執念深く根に持つなどの症状が少なくとも半年続くことが挙げられますが、現れる症状は人それぞれです。通常、反抗期そのものは子どもの健康な成長には必要なものです。それゆえ、反抗期と反抗挑戦性障害の見極めが難しい場合があります。また反抗挑戦性障害はADHD・素行症などの他の障害とも合併・併存しやすい疾患であり、症状が複雑化しやすい傾向にあります。気になることがある場合は、専門家に相談しながら、症状の見極めや対応方法を検討すると良いでしょう。
2016年10月09日不自然なまでに文字を間違える息子…病院の診察で判明したのは?出典 : 発達障害のある小学生の息子は、ディスグラフィアの診断を受けています。ディスグラフィアとは、知的な発達は遅れておらず、文字を読むこともできるのに、文字を「書く」ことに大きな困難がある障害を言います。小学校1年生のときの息子の字は、枠からはみ出たりして乱雑だったのですが、学校の先生も私も「丁寧さに欠けているだけ」だと思っていました。ただ、100点ばかりのテストでも、名前だけ赤ペンで「ていねいにかきましょう」と直されていたことがありました。しかし1年生の終わりごろになって、文字の汚さ以上に間違い方に特徴があることに気が付きました。例えば「お」の点が無かったり、1つの単語の中にひらがなとカタカナが混ざったり、漢字の「へん」と「つくり」が逆だったり、鏡文字になっていたり…ちょうど発達障害について専門機関にかかり始めた頃だったので、合わせて相談すると、「書く」ということが特に難しいディスグラフィア(書字障害)があるとわかったのです。とにかく「書けるように」訓練する日々…息子と私の葛藤出典 : その後、字が書けるようになるための訓練が始まりました。息子はなぜ字を書けないのか、そしてどうすれば書けるようになるのか。通級の時間も漢字を覚える練習をたくさんして、言語聴覚士さんによる訓練も受けました。このとき特に役立ったのは「ハイブリッド・キッズ・アカデミー」の遠隔評価キットです。子どもの読み書きの遅れがどの程度であるのか?の評価を、在宅で受けることができ、どういった対処が望ましいか?までのアドバイスがもらえます。ハイブリッド・キッズ・アカデミーしかし、通級の時間全てを漢字を覚えることに費やして、その時間には覚えても、家に帰るともう書けない…息子は決して怠けているわけではなく、何度も何度も練習しています。でも書けるようになったと思っても、それも束の間で、覚えた漢字がポロポロと頭の中から消えていく…それがどれ程悔しく辛く、そして切なかったことでしょう?いつしか息子は「文字を書く」行為にものすごい拒否反応を示すようになっていました。そんな息子の様子を見ていて、私は葛藤していました。確かに今後、受験などで字を「書かなければいけない」ことはあるかもしれない。でも、ここまでさせなければいけないのだろうか。「文字が書ける」ことはそこまで大切なことなのだろうか、と。「文字が書けない」ことは障害なのか?息子の成長を本当に阻んでいたものは出典 : 息子はパソコンを使ってローマ字のタイピングもできますし、正しい漢字を選んで変換することもできます。それに、自分で字を書くことは難しいですが、「作文」は出来ます。私が代筆すれば、原稿用紙2~3枚の良い文章を書くことができるのです。そんな息子の様子を見ているうちに、息子に対する「文字を書けるようになってほしい」という思いは消えていました。それよりも「書く」ことが前提の課題を前にしたとき、「書く」という最初のハードルにとらわれて、課題自体に取り組む意欲を失くしてしまう方が大問題だと思うようになりました。何か自分のやりたいことを始める前に、「自己紹介」「説明」「作文」などが求められると、未だに息子は顔が暗くなります。「これ、書かなきゃいけないの?」「…やっぱりやめようかな…」と恐る恐るつぶやきます。「パソコンで打ち込めばいいんだよ。何なら喋ってくれたらママが打ち込んでもいいから。」と私が言うと、息子はホッとして取り組む気になってくれています。目の前の「できないこと」にとらわれて、子どもが意欲を失わないように出典 : まだまだ社会にはこういった障害は認識されておらず、学校側に理解してもらえないこともあるかもしれません。私も学校の先生にはICT機器の導入などをお願いしたのですが、難色を示されてあきらめたという経緯があります。「できないこと」ばかりにとらわれて、子どものやる気や意欲の芽を摘んでしまわないよう、「こういう子もいるんだ」という認識が浸透してほしい。そして「合理的配慮」として快く代筆やICT機器などを使わせてあげてほしい!心からそう思います。
2016年10月09日ADHD息子の洋服選び…洗濯物を畳んでいて気づいたこと皆さんは、子ども服をどういう基準で選んでいますか?もう好みがはっきりしていれば、「自分で選びたい」という子どももいると思いますが、我が家の息子たちは服に対してこだわりも関心もないため、私の好きなものを買っています。好きなブランドがないわけではないのですが、元気が良すぎる我が家の息子たち…。汚される頻度と破られる頻度を考えてなるべくリーズナブルなもの、かつ伸びる素材に重点を置いています。オシャレ心より動きやすさを重視してしまうのは、わんぱく男子を持つ親の定めでしょうか(笑)。先日、大量の洗濯物をたたんでいたときのことです。Upload By ラム*カナ長男の服を見て、あることに気が付きました。服の色がほとんど蛍光色だったのです。「今日も無事に帰ってきてほしい」そんな気持ちを思い出したそういえば、ADHDの長男が小学校に入って徒歩通学になることは、私の中で一番の心配の種でした(そして今も…)。“いつでもチョロチョロぴょんぴょんしているあの子が、親の手を離れて歩いて通うなんて…!”と。毎日毎日長男が無事に帰って来ることを、私は何よりも願っています。その思いからか、服を買うにあたって自然と蛍光色(特に黄色)の服を選んでおりました。Upload By ラム*カナUpload By ラム*カナ「どうか、今日も無事に帰ってきますように」そんな祈りがこもった私なりの愛情カラーなのでした。
2016年10月08日「触っちゃダメ」と注意しても、子どもにはつい触りたくなるときがある出典 : 発達障害のお子さんにしばしば見られるトラブルとして、「触ってはいけないものに触ってしまう」ことがあります。例えば遊びの場面では、ボードゲームをしているときに、他の子のコマを勝手に動かしたり、誰かが一生懸命積み上げた積み木を、崩してしまったり…。学習場面では、目新しい教材が配られたときに、先生の指示の前に触り始めたり、調理実習や図工では刃物を勝手に触ったりし、叱られてしまうこともしばしばです。こうした行動は、注意した時にはなくなっても、別の場面で繰り返されることが多く、対応に困っている親御さんや先生が少なくありません。大人と子どもでは関心の持ち方が違う出典 : 実は、「触っていはいけないものに触る」ことの背景には、大人とは異なる子どもならではの関心の持ち方が関わっています。まだ言葉を持たない1歳半くらいまでの子どもたちは、色や音・手触りといった、感覚的な刺激に興味を持っていますが、それが大人に成長する過程で、感覚的なものから、概念的なものに少しずつ興味・関心が移っていきます。幼児から小学校低学年のお子さんの場合、こうした関心の移り変わりの過渡期にあり、ゲームのルールのような概念的なものも理解できる一方で、色や音、手触りへの興味が、大人よりずっと強く残っています。つい触りたくなってしまうけれど、阻止すると…Upload By 松本太一たとえば、キラキラと輝く宝石が目を引くこちらのボードゲーム。大人がこれをみたら、まず「この宝石はゲームの中でどう使われるのだろう?」という関心を持つと思います。ところが子どもの場合は、「この宝石はどんな触り心地なのだろう?」「手にたくさん持って上から落としてみたら、どんな音がするのだろう?」という感覚的な興味が優先します。こうした理由から子どもたちは、手を出してその宝石を触ろうとするのです。出典 : 大人からすると、ゲームの説明もしないうちから宝石を触ろうとするので、つい「宝石を置いて、ちゃんと説明を聞きなさい。」と注意しがちです。しかし、この状態では子どもの感覚的興味は満たされていないので、説明の途中で再び宝石に触ったり、プレイ中宝石をいじってゲームに集中できないことがあります。では、どうすればいいのか?出典 : こんなときは逆転の発想で、ゲームを始める前に、コマやチップ、ボードなどを自由に触っても良い時間を作ります。子どもは存分に触って感覚的興味が満たされるので、その後のルール説明に集中できるのです。危険な物は使う直前に見せ、説明する出典 : ゲームなどのおもちゃであれば、自由に触らせても安心ですが、調理実習で使う包丁やカッターなどの刃物は危険なので、自由に触らせるわけにはいきません。その場合は、道具を使用する直前に、お子さんに渡すようにしましょう。お子さんの目の前に物を置いてから、使い方を説明するのではなく、まず説明をした後で道具を渡すのです。そうすれば、お子さんは興味のままに道具をもてあそぶことなく、すぐ作業に入ることができると思います。
2016年10月08日発達障害の疑いがあるとき…医療機関を受診する適切なタイミングはいつ?発達障害の疑いのある方、またそのようなお子さんがいる保護者の方で、「医療機関をいつ受診するか」にお悩みの方もいらっしゃるかと思います。また、「発達障害の存在が疑われる子どもに医療機関の受診をすすめる際、どんなタイミングがよいのでしょうか」というのは、支援者の方もしばしば口にされるご質問です。発達障害のある子どもの場合であれば、保護者は様々なプロセスを経て、子どもの発達特性に気づき、その特性と長くつきあっていくための準備を進めます。その過程は男女が出会って、結婚に至るプロセスに少し似ています。Upload By 吉川徹このプロセスは、もちろん全てをたどっていく必要はありませんし、正しい道筋というものもありません。最近では結婚式を挙げない人も増えてきました。どうしても診断書やお薬が必要でなければ、かならずしも確定診断を受ける必要はないのです。ただ、もしできることであれば、発達障害の特性とずっとつきあっていく準備がそれなりに整った段階で、医療機関の受診ができると、きっとよい節目になるでしょう。医療機関を受診する前の大切なプロセス「障害とつきあう準備」は、どうすれば整うのか出典 : では、「発達障害とつきあっていく準備」はどうすればできるのでしょうか。前回の記事でも触れましたが、診断を受ける前の支援が大切になってくると私は考えています。最初に発達障害の特性に気づいた誰かが、診断を受ける前から上手く支援を始めて、医療による支援へと繋げてくれる。そうすると保護者は、子どもの特性に合わせた関わり方をすると、少し物事が楽になる、前に進みやすい、という感覚をもつようになります。このように、保護者が発達障害とつきあう準備ができていたほうが、診断は正確になり、その後も医療のサービスを最大限有効に使えることになります。もしもその準備が整っていない段階で、「あなたの子どもさんは発達障害の疑いがあるので病院に行って下さい」と言われてしまったら、何が起こるでしょうか。おそらく、一部の保護者は「絶対に障害だと言われたくない」と思って病院の門をくぐります。そうすると、「赤ちゃんの頃は?」「普通でした」「保育園では?」「年少さんは問題ありませんでした。年中になってから行くのを嫌がるようになりました」「ああ、それはきっと担任の先生が……」といった、診断に結びつかないやり取りになってしまいがちです。発達障害の診断には、もちろん子ども自身の状態の観察なども参考になりますが、それまでの発達の経過、道筋の情報が極めて重要です。ここが上手く聞き出せないと見落としや誤診に繋がってしまうのです。「『仮に』理解して、『実際に』支援する」。これはある児童精神科医が編集した書籍の副題ですが、とても良い言葉だと思います。支援を始める時に診断は不要です。まず特性に気づいた人がその「仮の理解」に基づいた支援を実際にやってみる。それが上手くいったときには、その子どもが少数派のものの見方、感じ方、考え方の道筋を持っていること、その理解に基づいた支援が上手くいったこと、その特徴がいわゆる発達障害の特性であることを保護者に伝え、専門機関を受診することで、より効率のよい支援ができる可能性があることを伝えます。準備段階の支援がうまくいかなかったときには出典 : もし最初の支援が上手くいかなかった場合はどうすればよいのでしょうか。その時には「仮の理解」に基づいて援助してみたが上手くいかなかったこと、更にほかの「理解」や援助の方法を見つけるために専門家への相談、受診が望まれることを伝えられるとよいでしょう。このときに必要なのは、受診を勧めようとする人が、子どもの特性を理解しようとしてくれて、実際に手を動かしてくれる、信頼できる人だと保護者に思ってもらうことです。診断を受けても、その支援者が引き続き関わってくれると安心できるとき、保護者は「本当は障害なんて言われたくないけど、あの先生が勧めてくれるなら」と思って、診察に臨むことができるのではないでしょうか。いつ受診を勧めるのか、その答えは、勧める人と勧められる人の間に少し信頼関係が出来てきたとき、ということになるのでしょう。
2016年10月07日親子で発達障害と診断された、栗原類さんと母の泉さんUpload By モンズースー栗原類さんの著書『発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由』を読ませていただきました。幼少期からの出来事をご本人、お母様、主治医の先生と、3人の視点から書かれていてとても面白かったです。ADHD当事者の私は、類さんご本人のエピソードに共感できることも多く、お母様の泉さんのお話は育児の参考になることがたくさんありました。中でも私が一番印象に残ったのはこのお話です。Upload By モンズースーUpload By モンズースー我が家も栗原さんのご家庭と同じく、親子で発達障害です。そのため、子ども達の特性で共感できる部分もありますが、違う部分もたくさんあります。私は就学前、文章や絵で何かを表現することができましたが、長男は現在絵も字も書けません。私も運動神経は良い方ではありませんでしたが、ジャンプは自然とできました、でも長男は教えてもらっても中々できませんでした。自分が苦労なくできたことを、他者ができないと「なんでこんなこともできないの?」という気持ちになってしまいます。これは定型発達の方でも、大人でも同じことが言えるのではないでしょうか。私も長男が成長するにつれ、できることとできないことの差が広がっていくと、よくこの気持ちになっていました。特に気になったのが偏食です。私はアレルギーのため、自分から食べたくない食べ物はありましたが、食べろと言われて食べられない物は基本的にありませんでした。なので、ほとんどの料理が食べられない長男の気持ちが、なかなかわかりません。でも、栗原さんのお母様のエピソードを読んで、少し気持ちが静まりました。私と子ども達は別々の個性を持った人間、あたりまえのことなのですが、私はつい忘れてしまっている気がいました。栗原さんのお母様が「一生忘れることのできない大切な言葉」と書かれていらっしゃいましたが、私も印象に残るお話でした。出典 : 発達障害の僕が 輝ける場所を みつけられた理由 栗原 類 (著)
2016年10月07日戦前生まれの父はアスペルガーだった!?出典 : 私の父は戦前生まれです。その激しく頑固で暴君ばりの性格は、まるでアスペルガー症候群そのものでした。その頃は発達障害やアスペルガーという言葉もなかったような時代。そんな中、不器用ながらも自分を貫き通した父。その人生に感じたこと、私たち母娘に残した言葉を振り返ってみたいと思います。自分のペースを乱されたくない父。必然的に仕事や人との関わり方も限定され…出典 : 学者だった父は、自分のペースを乱されるのが大嫌いでした。融通も利かないため、向いている職業も学者以外には考えられないような人でした。満員電車を嫌い、朝5時半に家を出て1時間半かけて通勤。大学についたらまず、着替えてランニング。決まった時間に運動を終えたら、教授室で朝食を摂り、仕事にとりかかります。この習慣は毎回同じ。アスペルガーの特性によくある、ルーティーンです。また、何でも1番への強いこだわりがあり、自分より先に研究室に学生がいたら「君、泊まったんだよな」と念を押すくらいの負けず嫌い。この問答は卒業生の語り草になっています。昼からは学生を指導。父の指導は大変厳しく、手書き論文に容赦なく赤ペンをぎっしり入れ、涙する学生さんも多かったそう。言葉にもこだわりが強く、自分の気に入らない表現は容赦なく直していたようです。そのあまりにも厳しい指導に、自宅に匿名で脅迫電話がかかってきたことも、何度かありました。父はそれを笑っていましたけどね。そして17時になるとさっさと帰ってしまいます。17時以降に入る会議は大嫌いで、帰ってくると鬼のような形相で、私はいつもおびえていたものです。振り回される家族。その辛さから母はカサンドラ症候群に出典 : 家庭は父を中心に回っていました。何でも1番は父。こたつでゴロゴロするのは許せない!と、こたつも出してもらえず、テレビを見る子どもたちが許せず、テレビは配線を切られました。こんな暴君のような振る舞いに対し、母は恐らくカサンドラ症候群になっていました。いつも顔色が悪く、父に逆らえずに自分を抑え込む辛さから、寝込むことも多かったです。母は父に振り回されたストレスが原因で、時々ヒステリーを起こすのですが、それを私にぶつけてくるのが、たまらなく嫌でした。子どもへの躾も厳格過ぎる程で、食事時はお説教ばかり。お通夜のような食卓で「おいしい、おいしい」と私は必死に家族を盛り上げていたのを覚えています。私たち子どもは、親に褒められることなく育ちました。●努力するのは当たり前●規則正しい生活しか認めない●勉強もできて当たり前という考えの父は、私が頑張って目標の大学に合格しても「なんだ、そんなレベルの低い大学か」としか言いませんでした。父の本心を知ることで、癒されていった子ども時代の辛さ出典 : 大人になった今振り返ると、父は自分の脆さをよくわかっていたように思います。実家を出て働いている頃、私は精神的に参ってしまい、神経症になって実家に戻ることにしました。そのとき私を出迎えた父は、「自然に触れて過ごすように。そして生活リズムが崩れると、心のリズムも狂うから気をつけなさい。」と優しく言ってくれました。そして動揺もせず、壊れた私に辛抱強く付き合ってくれたのです。父が律儀に繰り返していたあの規則正しい生活も、きっと自分のメンタルを崩さないための、父なりの工夫だったのだとそのとき気付きました。そして、私自身がアスペルガー症候群とわかり、父も間違いなくそうだっただろうと確信してから、父の厳格さ、暴君ぶりには理由があったのだと理解することができました。だからといって、全てを許せる訳ではありませんが、父の理由がわかったことで、傷付いていた子どもの頃の自分が少し救われたような気がします。自分を貫いて生きることは大変かもしれないけれど、必ずしも不幸ではない出典 : また父は、孫である娘のことを、とても愛していました。あの厳格だった父からは想像もできませんでしたが、不登校で学校に行けなくなった娘を、1度も責めませんでした。それから間もなくして、父に末期がんが見つかりました。「入院だけは嫌だ」とぎりぎりまで言っていた父。娘にとって最後のお見舞いとなった日のことです。父はひとこと、こう言いました。「人の中で生きなさい」その言葉は、今でも娘の心に残り続けています。きっと、父も苦しかったのでしょう。プライドが高く傷付きやすい、色々な特性を抱えながらも、父なりに苦労しながら「人の中で」生き抜いてきたのだと思います。その後、入院して10日余りで旅立ちました。父は最後まで自分を貫いて生きました。その姿は、私にも娘にも、いろいろなものを残してくれたと信じています。
2016年10月07日感覚の過敏さ(感覚過敏)、鈍感さ(感覚鈍麻)とは?出典 : 「感覚過敏(過剰反応性)」とは、光や音などをはじめとする特定の刺激を過剰に受け取ってしまう状態のことを指します。逆に、刺激に対する反応が低くなることを「感覚の鈍感さ(鈍麻・低反応性)」といいます。どちらも感覚のはたらきに偏りがあることが原因です。感覚過敏があると、多くの刺激を受け取りすぎることによってストレスが増したり、多くの人にとって平気な刺激を過剰に怖がることがあります。また、感覚の鈍感さがあると、遊びの呼びかけの声を聞き逃してしまい、仲間に入れないなど、集団の中でうまく過ごせないことがあります。身体の痛みに気がつかず、病院で手当てを受けるのが遅れてしまうこともあります。このように感覚の感じ方に過度な偏りがあると、日常生活に支障をきたす場合があります。感覚プロファイル,日本文化科学社感覚は、個人の主観的なものであり、個々によって刺激の受け取り方はそれぞれです。そのために、感覚の偏りがある人の困難さは、他の人からは理解されにくいものです。以下に、感覚の偏りのある子どもの情報のとらえ方を表した映像があります。ご覧ください。映像では、子どもが、環境の中にあふれる情報や刺激を細かく大量に拾ってしまう様子が表現されています。多くの人が何も感じない場面でも、感覚に偏りがあると、その場所にいるだけで耐えがたい苦痛を感じることがあるのです。感覚の偏りは4つのパターンに分けられる出典 : 感覚の偏りに関する問題は、その傾向によってパターンに分けて整理することができます。以下に感覚刺激への反応傾向のプロファイリングで使用される4つの分類をご紹介します。なかなか理解のされにくい感覚の偏りについて、客観的な把握をすることで役立てることができるでしょう。■感覚過敏刺激に対して過剰に反応することで、環境の変化やちょっとした刺激も極度に気になるという状態を指します。■感覚回避刺激に対する過剰な反応があるため、刺激のある環境を回避する行動をとることです。■低登録刺激に対する反応が弱く、感覚が鈍い傾向があるとされます。低反応・感覚鈍麻(どんま)のことです。■感覚探求刺激に対して反応が弱いがゆえに、強い刺激を求める行動をすることです。青年・成人感覚プロファイル|日本文化科学社それぞれの感覚ごとの症状刺激の感じ方は個々によりさまざまで、症状も多岐にわたります。感覚の偏りが引き起こす具体的な症状とはどのようなものなのでしょうか。ここでは、五感と呼ばれる視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚と、体の動きをつかさどる固有感覚、体のバランスをつかさどる平衡感覚について、それぞれに分けてお伝えします。出典 : ■情報の刺激がいっぺんに目に飛び込んできてしまう人は多くの刺激がある環境でも、注意を向けたい刺激を無意識的に選ぶことができます。しかし、視覚過敏がある場合には、全ての刺激情報を均等な濃さで受け取ってしまいます。ビビッドでカラフルな色のものや、たくさんのもののある場所は苦手です。■白いものや光をまぶしく感じる視覚過敏でない人にとっては気にならないような光や白いものが、視覚過敏のある人にとっては目に突き刺さるほどまぶしいことがあります。蛍光灯の光や、テレビやパソコンの液晶画面、白い紙を苦手とします。授業中に席を離れてしまうといった問題とされる子どもの行動の背景には、感覚の偏りがある可能性があります。出典 : ■音がやけに大きく聞こえる、響く賑やかな場所にいると疲れやすいなどが聴覚過敏の症状です。聴覚過敏の症状が強い場合、耳をふさぎたくなるほど耳の奥が痛くなったり、頭痛が起きたりするような身体的な痛みを伴うことがあります。人によって気になる音は異なりますが、例として、女性の甲高い声や、休み時間のチャイム、合奏の音、掃除機などの機械音などが挙げられます。■周囲の全ての音が等しく同じように聞こえてくる選択的に音を拾い集めるのが困難になってしまいます。音の刺激に対して適切に注意を向ける処理ができないために起こります。一生懸命聞こうとしていても、たくさんの音が聞こえてしまうので本人は混乱しています。■音が聞き取りにくい逆に聴覚への反応性が低い場合には、音を聞き取ることができないために、結果的に、授業中に上の空になったり、呼びかけても応じなかったり、またテレビの音を大きくしたりといった様子が見られることがあります。埼玉県立総合教育センター特別支援教育担当 『自閉症の特性と支援 Q&A集』p6出典 : ■においに過剰に反応する少しのにおいを過敏に受け取ってしまうことが嗅覚過敏です。少しのにおいでも過剰に受け取ってしまうあまり、ストレスが増加します。においに耐えられなくなって、吐いてしまうこともあり、ひどい場合には身体的、精神的ともに支障をきたすことがあります。■においがわからない逆に、嗅覚の鈍感さがみられる場合には、適切ににおいを感じることができません。においがわからないと、同時に味も分かりにくくなるので、嗅覚と同時に味覚の感覚にも支障をきたすことがあります。出典 : ■偏食がはげしい味覚に感覚の偏りがみられる場合、多くの人にとって美味しいと感じられる味がそうではないように感じたり、変わった味を好むようなことがみられることがあります。例えば、特定の味に対して、非常に強い不快感を感じたり、味が混じることを嫌がり、分けて食べたがったり、食べ物、飲み物の苦みや酸味を過剰に感じたりします。結果的に食べ物の好き嫌いの差が顕著で偏食の傾向が見られるようになったり、刺激的な味を好むゆえに調味料や香辛料で過剰に味付けすることがあります。出典 : ■触るのを嫌がる触覚が過敏な場合には、皮膚に触れる刺激を過剰に感じて不快感が生じます。触ることができないものとしては、のりやねんど、スライムなどのぬるぬる、べたべたするものや、たわし、毛糸、洋服のタグが代表として挙げられます。触覚に対する過敏さからくる反応として、以下のような例が挙げられます。・他人から離れて座る、近づこうとする人を押しのける・特定の服ばかり着たがる・爪切り、耳かきを嫌がる・自分からは人懐っこいかかわりをするのに、触れられることを嫌がる・触ることのできないものがある(よって、遊び・活動の幅が制限される)■痛みや熱さに気づきにくい触覚の鈍さがみられる場合には注意が必要です。というのも、触覚が鈍いときには、痛覚(痛みを感じる感覚)、温覚(温度を感じる感覚)も同時に鈍いことがあるからです。温度、身体的な痛みを感じることができないと、身体の異変に気がつかず、その結果適切な対処をできないこともあります。例えば、転んで怪我をしたときにも、本来ならば病院に行って手当をしなければならないはずなのに、その痛みや怪我をしていることに気が付かず、即座に適切な治療を受けることができない場合もあります。■刺激を求めて自傷行為をしてしまう自分が感じることのできる刺激を求めるあまり、血が出るまで腕を掻いたり噛んだり、頭をぶつけるなどの自傷行為を行うことがあるので注意が必要です。■筋肉に対する刺激を過剰に求める固有感覚とは、筋肉の張り具合や関節の曲げ伸ばしを感じとる感覚です。自分の体の位置や動きを把握する役割があります。固有感覚につまづきがあると、筋肉に対する刺激を過剰に求める「感覚探求」が生じます。その結果として、見られる子どもの行動特性には以下のようなものがあります。・強く足踏みをする・体の一部を動かし続ける(常同行動)・他人に思いっきりぶつかる、激しく関わる■動きの刺激を過剰に好んだり、過剰に怖がったりする平衡感覚とは体のバランスをとるときに働く感覚で、主に姿勢のコントロールや体のバランスを保つことに関わっています。平衡感覚に偏りがある場合には、体の揺れや傾きを自身で調節することが難しく、その結果、刺激を求める探求行動があります。例えば、刺激を求めて頭を振りながら走ったり、ぐるぐる回ったり、席を立ったりすることや、まわる遊具やブランコなどが大好きで離れようとしなかったりします。逆に、平衡感覚が敏感な場合には、動きの刺激に対して恐怖心や不安を持ちます。例えば、ブランコや高い場所に行くことを嫌がったり、頭を傾けたり体が傾いたりするのを嫌がったりします。ります。感覚の偏りの原因は? 発達障害と関係があるの?出典 : 感覚に偏りがみられる原因はあいまいではっきりとはわかっていませんが、中枢神経系(辺縁系や視床下部など)における感覚情報処理の問題によるのではないかと考えられています。感覚の過度な偏りと発達障害には密接な関係があります。その中でも、自閉症スペクトラム障害(ASD)では、幼いころから感覚の偏りが見られることが多いといわれています。発達障害のある子どもは、刺激に対して適切な感情を生じさせる機能に特性があると考えられています。そのため本来は有害でない刺激に対して過度な恐怖、不安の感情をもつことがあります。また、適切に外部の刺激を取捨選択し、注意を向けたり調整することが難しいために、発達障害のない子どもに比べて、過剰に反応をしてしまうのです。その結果、新しい活動を避けるようになってしまったり、多動傾向になったり、パニックになったり、周囲に対する不安感が強くなったりします。そして、子どもの場合には、そのような不安を適切な方法で表現できないために、癇癪(かんしゃく)や自傷行為などの問題行動につながりやすい傾向にあります。また、逆に感覚の鈍感さがあるときの行動の一つとして見られるのが、手をふらふらする、首をふるなど、「常同行動(自己刺激行動)」と呼ばれる行為です。これは、感覚刺激を求めたり、不安を紛らわせたりするための、自己調整の行動ではないかと考えられています。常同行動だけを見てしまうと、その行動は不思議に見えてしまいますが、その理由には感覚の偏りがあるといわれています。このような刺激に対して、適切にコントロールすることができれば、本人の不安やストレスは軽減され、そのような行動が減るようになります。子どもの行動が気になるときには?出典 : 子どもの行動が気になったときには、まず子どもの行動をよく観察してみましょう。観察するときは、特定の気になる行動が起こったときに、「どのような状況だったのか(時間、場所、その場にいた人、出来事)」と、「その行動に対してどうしたのか、その結果どうなったのか」という前後の状況を記入しておきます。そうすることで子どもの困りごとやその行動がどこからきているのか把握するための手立てとなります。また、行動をするときにはその背後に何らかの理由があります。子どもが気になる行動をとったときには、その行動がどのような刺激や、どのような理由によって引き起こされているのかを知ることが必要です。つまり、子どもがどのような種類、強さの刺激に対して過敏なのか、嫌悪感を感じているのか、受け取りにくいのかを周囲の大人が知っておくことが大事です。子どもの感覚の偏りを知ることによって、日々の子育てに役立てることができたり、幼稚園や保育園、学校の先生に具体的なサポートをお願いすることができます。また、子どもの感覚の特性を把握するために、保護者が簡単に利用できる感覚のチェックリストもあります。このようなチェックリストを参照することで、気を付けておくべき子どもの行動特徴を知ることができます。判断がつかず心配な場合には、病院の小児科や、地域の子育て支援センターを訪れ、専門家に相談してみましょう。日本版感覚インベントリー改訂版(JSI-R)感覚過敏、感覚鈍麻のある子どもへの4つの対応方法出典 : 上で述べたように、お子さんの様子を注意深く見て、困りごとを発見することで、子どもの困りごとに対する適切な対処方法を考えることができます。感覚に過剰な偏りのある子どもの困りごとを軽減させるためには環境を整える方法と、個人にアプローチする方法があります。感覚の偏りは、刺激に対して過剰に反応する、または感覚に対する反応が鈍いというあくまで「状態」であり、病気とは異なります。医師の間でもその定義はあいまいで、処方箋や治療方法は確立されていないのが現状です。ここでは、感覚に偏りのある子どもの苦痛や困りごとを軽減するための方法についてお伝えします。■感覚に過敏である場合子どもの感覚過敏を理解する上で重要なことは、「無理に刺激に慣れさせることは逆効果である」ということです。感覚過敏自体は、訓練や練習で急激に改善することは難しい場合もありますが、時間の経過や子どもの発達とともにある程度緩和されていくことがあります。刺激に嫌な経験が結びつくと、さらに刺激に対して嫌悪感を強めるようになります。無理に刺激を受けることを強要せず、軽減する方法を考えます。運動会やお祭りといった行事など、いつもと異なる環境で強い刺激が想定される場合・一部のみの参加にする・ピストルの音を子どもが受け入れることができる音(ホイッスルなど)にしてもらうなど刺激を軽減してもらうことも検討します。■感覚が鈍い(低反応である)場合触覚が鈍い子どもは、自分の感じることのできる刺激を過剰に求める「感覚探求」と呼ばれる行動をとる場合があります。例えば、なんでも触って回る、絶えず洋服を触っている、など落ち着きがなかったり、周りの人にべたべたして距離が近いなどの行動が例として挙げられます。このような落ち着きのない行動がみられる背後には、本人の脳に必要な感覚が十分満たされていないことがあるのではないかと考えられています。本人の感覚への欲求を満たせるような遊びや課題を提供してあげるのがよいでしょう。例えば、タオルや人形など、別の触っても構わないものを渡すことで、それらの感覚要求はは満たされることもあります。その結果、子どもは落ち着きのない行動をとる必要がなくなり、安心してじっとしていることが可能となります。自分で刺激を回避する方法を学ぶことも、感覚過敏による苦しみを軽減するひとつの手段です。子どもと大人の間で、このような出来事が起こったときにはこうする、というルールを決めておくとよいでしょう。感覚が過敏である場合について考えます。例えば、教室が賑やか過ぎて落ち着かないときに、黙って教室を飛び出るのではなく、イヤーマフを自分でしたりして、適切な対処方法をとることができます。また、視覚が過敏な場合には、サングラスをかけたりすることにより回避することができます。「音がうるさいときには、イヤーマフをする」「外に行くときにはサングラスをする」というように子どもに決まりごととして認知することにより、自ら刺激を回避できるようにします。感覚過敏のある子どもは、思ってもみなかったタイミングで音や光が突然に入ってくる場合に、不安やパニックなどの不快な情動が特に起こります。ゆえに、子どもを不安にさせないためにはこれから入ってくる刺激に対して、その量や質、そのタイミングを予測できるようにすることが大切です。また、なぜその刺激が生じるのか、刺激に直面した場合、どのように対応したらいいのかを理解することで、刺激に対する不安を軽減することができます。例えば触覚に偏りがある子どもの場合だと、突然に体に触れられると、驚いてパニックになってしまうことがあります。子どもの体に触れたり、水をかけたりする前に、あらかじめ声をかけてあげるようにしましょう。特に「触覚」「平衡感覚」「固有感覚」の発達については、運動や遊びによって日常生活に必要な感覚を整えることができます。これは、「感覚統合療法」と呼ばれ、療育の場面で使われています。感覚統合とは、人の持つ複数の感覚を組み合わせて、整理したりまとめることです。人は、環境からの刺激を受けると、無意識のうちに複数の感覚を連携させながら、反応を起こします。例えば、床に置いてある水の入ったバケツに足をぶつけてしまったときの例を考えてみましょう。バケツに足をぶつけた瞬間、①足にぶつかった感覚を「触覚」で確認し、②身体の現在位置を「固有感覚」で把握し身体に力を入れます。③その情報を受けた「平衡感覚(前庭感覚)」が、こけないように姿勢を保ちます。④ぶつけた音を「聴覚」で聞き、⑤足元にあるバケツを「視覚」で見て、このように、人は複数の感覚を「統合」し、日常生活を送っています。この感覚の統合がうまくいかないと環境から感じた刺激に対して体がうまく反応できません。この感覚統合のプロセスが適切に生じるように促していくくのが「感覚統合療法」です。感覚統合療法を受けるには、自治体の療育センターや、リハビリ、小児の医療機関を訪れ、感覚統合療法に専門性のある作業療法士(OT)に治療を行ってもらうことができます。また、専門のスタッフに治療を行ってもらうほかには、家庭や学校で遊びを通して感覚統合を行うこともできます。家でできる感覚統合の遊びが以下の書籍で紹介されていますので、参考にしてみるとよいでしょう。太田篤志/著『イラスト版発達障害児の楽しくできる感覚統合―感覚とからだの発達をうながす生活の工夫とあそび』2012年/合同出版/刊太田篤志/著『「発達障がい」が気になる子がよろこぶ!楽しい遊び』2016年/PHP研究所/刊森嶋勉・太田篤志/著・監修『ちょっとしたスペースで発達障がい児の脳と感覚を育てる かんたん運動』2011年/合同出版/刊川上康則/著『発達の気になる子の学校・家庭で楽しくできる感覚統合あそび』2015年/ナツメ社/刊おわりに出典 : 感覚に偏りがある場合には、子どもの生活空間に存在する不快な刺激をコントロールする同時に、感覚の偏りによる困難さを理解し、子どもが生きやすい環境をつくることが大切です。子どもが安心して過ごすことのできるように、周囲の大人が子どものことをよく見て、感覚の偏りがあることを本人が知ることで、適切に対処できるようになるといいですね。
2016年10月06日栗原類さん、自身の発達障害について語る初の自叙伝発売!モデル・俳優として、テレビや舞台、ファッションショーなど様々な分野で活躍する栗原類さんが、10月6日に自身の生い立ちから現在までを綴った著書『発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由』を発売されました。LITALICO発達ナビでは、書籍の出版を記念して栗原類さんに単独インタビューを実施。ご自身の発達障害(ADD: 注意欠陥障害)を公表し、書籍を出版するに至った背景、自身の特性を理解し俳優として「輝ける場所」をみつけられるまでの日々、お母様である泉さんと歩んできた21年間の日々について、たっぷりと語っていただきました。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)栗原 類さん: 1994年生まれ。イギリス人の父と日本人の母を持つ。8歳のときNYで発達障害と診断される。中学時代にメンズノンノなどのファッション誌でモデルデビュー。17歳の時バラエティ番組で「ネガティブタレント」としてブレイク。19歳でパリコレのモデルデビュー。21歳の現在は、モデル・タレント・役者としてテレビ・ラジオ・舞台・映画などで活躍中。2015年に情報番組でADDと告白し話題となる。実は「カミングアウト」したつもりなんてなかった!?―出版おめでとうございます。出来上がった本を今日手にとってみて、ご感想はいかがですか。栗原類さん(以下、類さん): いやー、本当に思った以上に時間がかかってしまって、担当の方には、正直ご迷惑をかけっぱなしだったと思います…Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)―初の長編エッセイですもんね。やはり大変でしたか。類さん: これまでも雑誌の連載などで文章を書いたことはあったのですが、今回のように自分の過去を深く掘り下げて書く本は初めてで。僕はあまり記憶力が良くないので、昔のことはほとんど覚えていなかったんですよ。母親や友人、主治医の高橋猛先生などに自分の過去を聞いて回って、そこから思い出して書くまでにものすごく時間がかかりました。それに、これまでのファッションやアートの分野での執筆ではなくて、発達障害をテーマにしたエッセイですから、どうやって興味を持って読んでもらえるかはかなり悩みました。担当編集の方に、全然進んでいない原稿を見せては、「この状態では出版も出来なくなりますよ」などと言われる始末で…。長い間辛抱強く待ってくださって、本当に感謝しています。―それはそれは…本当にお疲れ様でした。今回の出版は、類さんにとっても新しい挑戦だったと思うのですが、なぜ、ご自身がADD(注意欠陥障害)であることを公表し、書籍まで出版されようと思われたんでしょうか?類さん: そもそも僕は、自分がADDであることを隠していたことはないんですよ。―え、そうだったんですか。類さん: 最近まで、他人から「発達障害なんですか?」なんて聞かれたこともなかったし、聞かれていないなら答える必要もないかと思っていただけで、この仕事をする前から、ブログやツイッターでは自分の発達障害について書いていました。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)―へえぇ、知らなかった…類さん: だから僕としては、「書いているんだから、みんなもう知っているだろう」ぐらいに思っていたし、テレビ番組で話した時も、「カミングアウトする」というような気持ちでは全くなかったんです。それが、いざテレビに流れるとすごい反響で…―昨年5月、NHKの「あさイチ」ですね。放送後、ネットで話題になっていたのをよく覚えています。類さん: 僕も放送直後に自分の名前でツイッター検索をかけたら、本当にたくさんの方がコメントされていて。自分で言うのもおこがましいんですけど、賞賛のコメントも多く、「公表するのは勇気があることだ」とか「私も勇気をもらった」とか…色んな声をいただけてすごくありがたかったです。―ポジティブな反応も多かったですよね。類さん: KADOKAWAさんから出版のお声がけをいただいたのは、それからしばらく経ってからのことでした。自分と母がこれまでやってきたことや、生まれ育ったアメリカの教育制度など、僕の人生を紐解くことで、もっと多くの人が発達障害に興味を持ってくれるかもしれない。いま発達障害に悩んでいる人たちにとっても何か励みやヒントになるものを提供できるかもしれない。そんな思いで、今回のお話をお受けしました。他人の気持ちが分からなかった少年が、「演じる」楽しさに目覚めるまでUpload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)―ここからは本を拝見していくつか印象に残ったところを中心に、お話をお聞きできればと思います。ご自身の特性として、感情表現や人の気持ちを読むことが苦手だと書かれていましたが、俳優やモデルといった、むしろ、感情理解や表現をかなり求められる世界に飛び込んだというのが印象的でした。類さん: やっぱり傾向としては、発達障害のある人って、他人の気持ちを読み解くのが苦手な人が多いようで、僕もそのタイプでした。原因としては色々あると思うんですけど、僕の場合は、そもそも自分自身の内面にも興味がなかったというのが大きかったです。自分に興味がないから、他人にもそこまで興味を持てなかった。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)―もともと自分にも他人にもあまり興味がなかった。そこからどうしてお芝居の世界に?類さん: ニューヨークにいた頃、小学1年の担任の先生の勧めで、コメディ映画を観始めたのがきっかけです。―コメディ映画を。類さん: 僕は昔から冗談が通じない子で、周りの冗談を真に受けてすぐにカチンと来てしまうなところがありました。先生は、このままでいると僕が人間関係で躓くことになると予見して、人の感情、特にユーモアを学ぶ必要があると言い、コメディ映画を観ることを勧めてくれたんです。特にハマったのはアニメの「サウスパーク」ですが、他にも色んなアメリカのコメディ映画やドラマを観ていました。僕が気になった部分があると一時停止して、「この人はこんなセリフを言っているけど、内心こういう感情で、本当はこういうことを伝えたいから、こんな表情をしているんだよ」っていう風に、母がひとつひとつ解説してくれたんです。おかげで、少しずつ登場人物の気持ちや意図が予想できるようになっていきました。―お母様が横で解説を入れてくれたんですか!セリフと表情のギャップを学ぶという点では、コメディはピッタリの教材かもしれませんね。類さん: そこからは僕も予想外だったのですが、ユーモアを理解するためにコメディ映画を観ていたのがきっかけで、お芝居自体に興味を持つようになったんです。自分ではない、色々な人になりきることの面白さを感じ、自分も俳優になりたい、と思うようになりました。―なるほど、そこから俳優を目指すように。類さん: モデルの仕事はもっと早くからやっていたのですが、本格的に芝居に取り組んだのは高校の演劇部に入ってからです。そこからバラエティ番組に出て、2012年にNHKのドラマで役をもらったのが、俳優として初のお仕事でしたが、最初は右も左も分からず、自分のセリフを覚えるだけでも精一杯で…Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)―自分から興味を持って飛び込んだ世界とはいえ、集中を要したり、シーンに応じた振る舞いを求められたりと、大変な部分も多かったでしょうね…類さん: そうですね。実際、今でも苦労している部分はありますし、これからもたくさんあると思います。でも、先輩の役者さんにアドバイスをいただいたり、舞台を観に行ったりと、学ばせてもらう機会にはとても恵まれていて、いま少しずつ吸収、成長していく時期なのかなって思います。―コメディ映画に学んでいた頃のように、今後は周囲の先輩たちから学んで吸収されているのですね。類さん: すぐにはうまく出来なくても、ひとつひとつ訓練していけば、いつかは壁を突破して成功できる。そうやって、長い目で見る気持ちは忘れないようにしようと思っています。自分のことを「ネガティブ」だなんて思ったことはない?Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)―お話を聞いていると、類さんは、身の回りの物事への注意集中が難しいという特性がある一方で、ものすごく楽観的だったり、長期的な視野を持っている印象を受けます。先ほどの話のように、「いつかは成功できる」と思って苦手なことも続けられたり、かと思えばバラエティ番組で人気沸騰だった時期にも、「この人気が続くわけがない」と、パリコレのオーディションに挑戦したり…類さん: バラエティは毎年旬が変わっていくものですし、そもそも自分に向いていないと思っていたので、ずっと続けていくつもりはありませんでした。それよりも、今までやったことがない新しい挑戦をしたいなと思ったんです。―とはいえ、まとまった期間で日本を離れると、連ドラなどの仕事は断らなければいけないし、オーディションに落ちてしまったら仕事が全部なくなってしまうかもしれない。なかなか勇気の要る挑戦だったと思いますけど。類さん: 確かに、僕にとっては大きな挑戦でしたね。でも、パリコレは21~24歳ぐらいの若いモデルが求められていて、僕のこの年齢で飛び込むのがむしろベストなのかなとは思っていました。結果的に、「Yohji Yamamoto」では4期連続、2年間を通して出演させていただきました。―周りからは当時、「ネガティブすぎるモデル」とか言われていましたけど、ネガティブというよりむしろ戦略的というか、かなりリスクを取って挑戦するタイプじゃないですか…類さん: というかそもそも、僕は自分のことを「ネガティブです」と言ったことは一度も無いんですよ!Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)類さん: 僕は普通に振る舞っていただけなのに、気づいたら周りからそのような煽りが付けられていて…僕はメディアの取材などでは毎回「言っていないです」って説明してたんですけど、必ず毎回カットされるんです。―メディア的にはあまり美味しくはないセリフなんでしょうね…(笑)類さん: まぁでも、周りからの評価も含めて客観的に受け止める性格なので、そういうことが2, 3回続いたあとは諦めて受け容れてましたね(笑)親子というより友人―母、泉さんのことUpload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)―焦らず、長期的な視点を持つというのは、「人生はマラソン」だと語られた類さんのお母様、泉さんの影響も大きかったと思うのですが、類さんにとって泉さんはどんな存在ですか?類さん: 僕の一番の理解者ですし、すごく尊敬しています。本にも書きましたし、どんだけお母さん好きなんだって言われるかもしれないけど、やっぱりあの人の影響によって今の自分が成り立っているんだと思います。好きな音楽とか役者とか、映画のセンスも、あの人が見ていたものを一緒に見たりとか、こういうオススメがあるよって連れて行ってもらうなかで確立したものがあって。僕がどうして今この仕事をするようになって、これから何を目指したいのか、僕自身がちゃんと理解して歩んでいけるようになったのは、母の影響がすごく大きいです。―なるほど。類さん: それから、母は自分が出来ることだからといって、子どもの僕に決して同じようには要求しない人でした。母自身もADHD(注意欠陥・多動性障害)だと言われているんですけど、同じ発達障害といっても、お互いに真逆な性質なんです。母はものすごく記憶力が良いのに、僕は極端に忘れっぽい。母は他人に言われた嫌なことも全部覚えてストレスになっちゃうけれど、僕はどれだけ怒られても翌日にケロっと忘れたりすることがしょっちゅうありました。僕は忘れ物や同じミスを繰り返すので、そのつど耳にタコが出来るぐらい母に怒られていましたが、「長い目で見たらあなたの性質の方が気楽だし、メンタルも安定していて良いわよね」なんて言われたりもします。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)―ほんとに真逆の凸凹なんですね。人生の先輩として厳しい言葉をかけつつも、長い目で類さんの成長の過程に伴走していこうという泉さんの思いが、本を読んでも伝わってきます。類さん: お互いの長所も弱点も理解しながら、20年以上ずっと二人暮らしてきているので、息子と母親というよりは、むしろ心を開ける友人という感じがしますね。普通の親子なら言わない冗談とか言葉遣いもけっこうあったりします。発達障害に悩める人たちへ―「背負い込まず、一人でも仲間をみつけて」Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)―最後に、自分やお子さんに発達障害があって悩んでいる人たちにメッセージがあれば、お願いします。類さん: 大人の当事者の場合でも、子どもに発達障害がある保護者の場合でもそうですけど、全部自分一人で背負い込んでしまわないことが大切だと思います。これまで親子の関係について多く話してきましたが、信頼できる第三者の相談相手がいると、すごく良いと思います。僕にとっては、主治医の高橋猛先生がそうでした。誰だって、どうしても親には話したくないことだってありますし、親子だけだと視点が偏って閉塞的になることもあります。そんな時、信頼できる第三者の意見を聞くことが出来れば、新しい発想やアプローチも出て来ると思います。大人の場合でも、仕事がうまくいかないからといって、自分のせいだと背負い込みすぎたら絶対身体も心も持たないです。全員に100%発達障害のことを理解してもらうなんて出来ませんが、上司や同僚、相談できる相手が一人いるだけでだいぶ違うと思います。一人でもいいので、信頼できる人を見つけること。それから、自分の特性や周囲の人たちと、長い目で見てじっくり付き合っていくことだと思います。―信頼できる人を見つけて、焦らずじっくりと。人生は「マラソン」、これからもずっと長い道のりが続きますものね。今日はありがとうございました。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)聞き手・書き手: 鈴木悠平写真撮影: タナカトシノリ出典 : 発達障害の僕が 輝ける場所を みつけられた理由 栗原 類 (著) , KADOKAWA
2016年10月06日娘には優しい育メンの夫。しかし息子には…出典 : 我が家には定型発達の娘と、発達障害の息子がいます。夫は、娘にとってはとても素晴らしい父親です。そして、近所でも評判の「育メン」でした。ところが、そんな理想的な父親だった夫が、息子にはひどく声を荒げることが多くなりました。ADHDの息子は、人の話をきちんと聞くことができません。何度言っても同じことを繰り返し、新しい場所に行けば、パニックを起こして道に座り込む息子に対し、激しい罵声を浴びせるのです。「どうしておまえはそうなんだっ!!!」「やめろっつってんのがわかんねえのかっ!!!」「気に食わないなら帰れっっ!!!!」「だからおまえなんか連れてきたくなかったんだよ、バカ!!」夫の叱責を恐れるあまり、おかしくなっていった息子出典 : 夫に怒鳴られることで、息子はますますパニックに。週末で夫が家にいる日は、息子の調子が崩れることが増えていきました。普段は起こさないような困りごとをたくさん起こすのです。「どうしてパパやママを困らせることばかりするの?」私はいつも泣きたい思いで息子に聞いていました。恐らく、その当時は息子にも理由は説明できなかったのでしょう。でも今になると分かります。息子は、夫に怒鳴られることを恐れて、行動の統制ができなくなっていたのでしょう。そのことでどれだけ息子が困っていたか、私は長いこと気付くことができませんでした。夫に協力を頼んでみたけれど…出典 : 夫に怒鳴ることをやめて欲しい、息子に対して穏やかな声かけをして欲しい…。そんな願いを込めて、私はペアレントトレーニングや発達障害児向けの声かけの本などを買ってきては、「会社行くときに電車で読んでね」、と夫の仕事鞄にそっと入れておきました。いつも半分ぐらいは読んでいる形跡がありましたが、それを息子に対して実践しようとする素振りは、見えませんでした。息子と一緒にいる時間が短い夫にとって、声かけを学ぶことは、それほど急を要することではなかったのかもしれません。知らぬ間に追い詰められていった息子は、とうとう…出典 : ある日のことでした。夫は息子の何かにまたひどく腹を立て、激しく怒鳴りつけました。息子はオタオタと慌てふためき、私の後ろに隠れ、目に涙をいっぱいためてこう言ったのです。「こんな風に毎日毎日お父さんに怒られる僕は、小学校に入っても毎日毎日先生に叱られるんだ。僕はもっと優しいお父さんがいる家族の元に、生まれてきたかった」このとき私は初めて、夫が息子を怒鳴り散らすことに対して、危機感を感じたのでした。私が思っていたよりもずっと、息子は傷ついていたのです。このままでは息子の自己肯定感は下がっていく一方だ、どうしたらいいんだろう…と。なぜ、夫に「いい父親」を求めていたのだろう出典 : 夫の存在は私にとっては本当に支えでしたし、娘にとってもいい父親でした。でも、どうしても息子に対するきつい態度は治りませんでした。私はこのとき悟りました。「親子にも相性がある」のだと。これ以上、夫を変えることに時間を使っていたら、そのうち息子と夫の関係は取り返しのつかないものになってしまうと思いました。相性が悪い者同士は、物理的に引き離して、なるべく接する時間を少なくするしかないのです。私はずっと「発達障害児の育児に協力的な夫」であることを求めていました。けれども、一番大切なことは、夫を理想的な父親に仕立て上げることよりも、息子の心を守ってやることだと気付いたのでした。私は夫に、息子にはなるべく関わらないようにお願いしました。優先順位を夫から息子へ変えたら…出典 : その後、息子の情緒は明らかに安定しています。息子と夫を引き離したことで、結果的に私と娘の情緒も安定することになりました。どうしても子どもと相性が悪くて、相手が全く変わる様子を見せないのであれば、物理的に引き離すというのも一つの手だと思います。一緒にいることに拘る必要はありません。大切なのは、子どもの心の安定です。
2016年10月06日発達障害の診療のための医療機関にはどんなものがある?それぞれが担う役割は?出典 : これまでの記事では、発達障害のための医療機関が少ない原因や、医療機関でできる支援についてお話させていただきました。今回は医療機関の種類をご紹介していきます。発達障害の診療に携わる医療機関には様々な種類がありますが、その分け方も色々あるのです。医療機関の種類というと、もちろん小児科や精神科などの診療科による分類が思い浮かぶのですが、今回の記事では別の切り口で分けてみたいと思います。いくつかの医療機関は日本の、時には世界の発達障害研究を担っていく役割を持っています。こうした先進的な医療機関にかかると厳密な手続きを経た診断が受けられたり、他では利用できない治療法が使えたりすることもあります。日本の、世界の発達障害支援の質の向上に貢献できる可能性があるというメリットもあります。一方でこうした機関の医療者は診療以外の業務が多く多忙です。また機関の数も限られるので、通院時間が長くなるなどアクセスも良くないことが多いでしょう。また研究途上の新しい治療には、確かめられていないリスクも伴います。良くも悪くもハイリスク、ハイリターンな選択です。その他に、地域の中核的な発達障害診療を担っている医療機関もあります。小児や障害者の病院、療育センターに附属している診療所などがこうした役割を担っていることが多いでしょう。こうした機関の専門性は高く、既存の診療技術に限って言えば、研究機関と比べても遜色がないことが大半です。また入院治療の機能を持っていることもあります。一方でこうした医療機関は比較的広域(都道府県単位)などから患者がきていることが多く、地元に密着した支援機関や学校の情報などはやや医療者に集まりにくくなります。また地域への医療サービス提供の責任を負っているので、新規患者優先、診断と投薬優先になりがちです。発達障害専門の小児科や児童精神科のクリニックなどを中心とした地域密着の医療機関も増えてきました。こうした医療機関は医師によっては、非常に高い専門性を持っていることもありますし、アクセスも良く比較的患者数も少なく、丁寧な診療が可能であることもあります。また何よりも地元の情報が集まりやすいことがメリットです。ただし地域によっては医療機関の不足のため、こうしたクリニックが中核的医療機関の役割を担わざるを得なくなっていることもあります。また最近では、地域のかかりつけ医、つまり一般の小児科医や内科医の役割にも注目が集まっています。こうした医療機関は、発熱やワクチン接種などの日常の身体的な問題に対応できるのはもちろんですが、典型的な事例の診断や専門的な医療機関での診断後のフォローアップなどが期待されています。平成28年度からは厚生労働省によるかかりつけ医向けの発達障害の診療研修も開始されました。こうした医療機関は極めてアクセスがよく、また発達障害の特性を知ってもらった上で、身体医療が受けられるという大きなメリットがあります。医療以外の支援者に恵まれている場合、医療の役割は限られるので、必要な時にかかりつけ医に相談するというスタイルでも、充分に対応が可能である場合があります。年齢の高い方の場合、成人の精神科医療機関も受診先の候補になります。現状では全ての精神科医療機関が発達障害の診療に対応できるわけではありませんが、着実にそうした機関は増えています。こうした医療機関のメリットはアクセスの良好さと、何よりも併存する他の精神疾患への対応への熟練度と手立ての豊富さです。ただし構造的に成人精神科の診察時間は短いことが多いので、それに合わせた受診の工夫を考えておく必要があります。医療機関に迷ったら、身近な支援者に相談を出典 : こうした分類は医療機関の看板に書いてあるわけではないので、利用者の方からは見分けにくいかもしれません。受診の前に保健センターなどの身近な支援者や、先輩の親御さん、ペアレント・メンターなどに受診先を相談するのはよい方法です。最後に、多くの種類の医療機関があるので、専門機関のいいとこ取りをしたい、かけ持ちをしたいという気持ちはとてもよくわかります。しかし極めて恵まれた一部の地域(ほんとにそんなのところが日本にあるのでしょうか……?)を除けば、現状ではそれはマナー違反であると考えるべきでしょう。必要な人が、少しでも早く、少なくとも正しい診断と診断書、時には薬物療法にたどり付けるような気遣いができる、余裕が持てるとよいですね。
2016年10月05日パパとママのえくぼは、「ニコニコスイッチ」!広汎性発達障害のある5歳の娘。その育児は大変なことばかりですが、我が家には笑顔があふれています。その秘密の1つが「ニコニコスイッチ」です。Upload By SAKURAUpload By SAKURAUpload By SAKURA私たち夫婦には、私は左に、主は右にえくぼがあります。そして娘には…ない。(うまくいけば、両えくぼだったのに~)私たちにあるこのえくぼのことを、娘は「ニコニコスイッチ」と呼びます。Upload By SAKURAえくぼを押せばニコニコになる~という遊びを、私たちと娘はよくやります。ママとパパがニコニコになるこのスイッチ。娘にとって素敵すぎるスイッチです。娘はこの遊びが大好きです。ニコニコになれないときだってある!?このニコニコスイッチで、いつも楽しく遊んでいるのですが…娘は私に叱られた後でも、娘はこのスイッチを押してきます。Upload By SAKURAスイッチ壊れてるわけじゃないから…。怒っているのを察してくれ~!!
2016年10月05日三国志が好きすぎて、武将たちが凸凹仲間に見えてきた!出典 : こんにちは、アスペルガー症候群(ASD)と注意欠陥障害(ADD)でフリーライターの鈴木希望です。普段『発達ナビ』さんでは、自分と同じくASDとADDを持つ息子の親として、また発達障害当事者としてのコラムを寄稿しています。さて、私は友人知人の間で「三国志の人」と呼ばれています。書店に入ればもちろん三国志コーナーに直行。「そうそう(相槌)」を「曹操(三国志の武将)」と誤変換したことに気付かず原稿を送信してクライアントさんに大笑いされてしまうほどです。半ばノイローゼですね(笑)知識で言えば初心者レベル。ですが熱量ばかりはそこそこにありまして、少し前には「初心者の視点で三国志について語る」という趣旨のコラムの執筆を始め、以前にも増して意欲的に三国志について学んでおります。そんなふうに三国志漬けで過ごしておりましたら、「あれ?この人、発達障害っぽいんじゃない?」と感じられる人物が結構いることに気付いたのです。というわけで、今回はいつもと趣向を変え、『あの英雄が自分とそっくり!?発達障害当事者が読む、凹凸だらけの三国志』と題して、その一部をご紹介いたします!※以下、『三国志演義』他、歴史小説としての三国志を主に参照しています。ご承知おきください。素直すぎる最強武将・呂布奉先はADHD!?Upload By 鈴木希望まずは呂布奉先(りょ・ふ・ほうせん、以下呂布)。羅貫中(ら・かんちゅう)の小説『三国志演義』では序盤に登場し、最強の武人と謳われる人物です。1日に千里を駆けるという名馬・赤兎馬に跨る姿は、「人中に呂布あり、馬中に赤兎あり」と賞賛されました。異民族の血を引く美丈夫だったという説もあり、ドラマなどではイケメン俳優さんが演じる姿も見られます。戦場では敵なしだったというこの呂布ですが、とにかく気が変わりやすい!というか、目先の利益にとらわれがち。1度目は前述の赤兎馬欲しさに、2度目は女性関係のトラブルが原因で、あろうことか義父を2人も殺しちゃっています。出典 : 他にも、世話になっていた領主の留守中に領地をのっとったり、かと思えばその相手に和解を申し出たり…。要は「そのとき、そのときに1番魅力的なものを選ぼう!」と、後先について深く考えずに動いてしまっているんですね。結果、周りからの信用を獲得できず、部下に裏切られて絞首刑という最期を迎えてしまったのですが…。心のままにパッパッと動いてしまう呂布の衝動性に、ADHDっぽさを私は感じています。衝動性だけではありません。前述したとおり、武勇に関しては他を抜きん出ていた存在。120歩離れた場所にある戟(げき。武具の一種)を矢で射るなど、ここぞという瞬間にはずば抜けた集中力を発揮しています。興味のないことにはずぼらにさえなるけれど、好きなことや得意なことにはとことん取り組める部分もまた、ADHDの匂いがしますよね。猪突猛進、でもうっかり!張飛の愛されADHD説。Upload By 鈴木希望お次は張飛益徳(ちょう・ひ・えきとく、以下張飛)、多くの三国志作品で主人公に据えられる劉備玄徳(りゅう・び・げんとく、以下劉備)の部下で、義弟だった武将です。戦では劉備軍の中心となって功を上げ、24回行われた一騎打ちでは無敗という猛将中の猛将。武勇は敵国の将にも知れ渡り、高く評されていました。一方『三国志演義』や中国の民間伝承では、短気で無鉄砲、大酒飲みなそこつ者として描かれています。出典 : 先に言っちゃいます、張飛はADHD!真っ先に思い出したのが次のエピソード。敵軍迎撃のため劉備軍が出陣した際、張飛とわずかな部下が城を守ることになりました。張飛の酒癖を心配した劉備は禁酒を言い渡し、張飛自身も「絶対に守る!」と約束するのです。が!舌の根も乾かぬうちに「景気付けだ!」とばかりにさっそく飲む!酔った勢いで部下と仲違い。恨みを抱いた部下は呂布と内通。そして張飛は呂布に城を奪われてしまうという、取り返しのつかない大失態を犯すのです…。たぶん、「劉兄貴に内緒で飲めばいいや」などと考えていたわけではないのでしょう。「(禁酒を)絶対に守る!」と本気で思っていたのでしょう。でも、飲みたくなったから飲む!そしてうっかりミス!ザッツADHD!戦場での猛々しい姿との対比もあって、張飛のうっかりぶりはなんだか憎めない、可愛らしい一面に見えてきます。ずるいぞ張飛!後年には頭脳戦に持ち込むなどの“やればできる子”っぷりも発揮。適応能力の高さもADHD的ですね。軍神・関羽。お前、アスペだろ!?Upload By 鈴木希望続いて関羽雲長(かん・う・うんちょう、以下関羽)、張飛と同じく劉備の部下にして義弟。張飛にとっては義兄です。忠義に厚い武将として知られており、顎に美しいヒゲをたたえた“美髯公”とも呼ばれていました。元は塩の密売人で、中国式簿記の生みの親とも言われている関羽。文武両道で、特に歴史書『春秋左氏伝』を好み、そのすべてを暗唱できたのだそうです。私は、そんな関羽をASD認定しています。規則性を見出しルールを作るのが得意だとか、1つのものをこよなく愛し、暗唱できるまでになってしまう面は、ASDの特性に当てはまりますよね。出典 : 関羽はやむなく敵将・曹操孟徳(そう・そう・もうとく、以下曹操)に投降、客将になっていた時期があるのです。曹操に気に入られた関羽は厚遇され、さまざまな贈り物を受けるも一切手を付けず。衣服を贈られたときなどは、主君・劉備からもらった衣服を脱がず、上から身に着けたありさま。それを見た曹操は「関羽は真に義の人」と讃え、劉備を大層羨みました。しかしASD当事者である私は、「変化が嫌いで慣れない物に不安を抱いたのでは?」「あ、もしかして感覚過敏?曹操からもらった服は肌触りが不快だった?」などと邪推してしまうのです(笑)。また、戦場で腕に毒矢を受け、取り除くための外科手術に臨んだときには麻酔を拒否、肉を食い酒を飲み碁を打ちながら平然としていたのだとか。これって豪胆というより感覚鈍麻では!?余談ですが、我が家の小学1年生ASD息子が保育園児のころ、5針を縫うほどの切り傷を作って流血しているにも関わらず、まったく気付かず遊び回っていたことがありました。あいつ、関羽かな?超世の傑・曹操に凸凹が!?見える、私には…。Upload By 鈴木希望最後は1番書きたかったような、書きたくなかったような…中原の覇者・曹操孟徳です。劉備のライバル的存在で、『三国志演義』ほか多くの作品では冷徹な悪役とされています。天才的な軍略家で政治家、そして詩人としても名を残している多才ぶり。徳を重んじる儒教の考えが根強かった時代に、「才能さえあれば他は不問」という画期的な求人を出した合理主義のフロンティア。このように書くと「え?どこに凸凹が?」と疑問ですよね。でも、私には強烈な凹凸ぶりが感じられてしまうのです。前項で書いた関羽へのプレゼント攻撃。そもそも関羽は「主君・劉備の生存が確認したらすぐに駆け付ける」という前提で身を寄せていたまで。一生曹操の元で暮らす気なんてありません。でも関羽を自分の部下にしたくてたまらない曹操は、「自分だったら喜ぶんだけどな~」という基準で、美女やら財宝やらを贈り続けていたのですが…関羽、一切手を付けないんですよ。喜んでないんですよ。ねえ曹操、気付こうよ。関羽、何をしてもあなたに振り向くことはないから。相手の顔色が読めてないのかな?「どうにかすればなんとかなる」って思い込んじゃっているのかな?その行動、すっごくASDっぽいよ…?出典 : あと、劉備があなたを欺くための猿芝居を「へ~、畑仕事が好きで雷が大嫌いなんだ~」って信じちゃうのもASDっぽいよ。それでうっかり逃げられちゃうあたり、ADDっぽくもあるかもしれない。ADDっぽいといえばね、敵国の策略として送られてきた軍師を、そうとは知らずにあなたは大はしゃぎで大歓迎、その言葉を素直に信じて大敗を喫してしまったよね…。何やってんだよ、曹操!!!いちいち私みたいなことするなー!!!!!そうなのです、曹操ファンのお叱りが来ることを覚悟で書くと、彼は『三国志』作品の中で私がもっとも近親憎悪を感じる存在。自分と同じくASD・ADDだと見ています。「自分の好きなものは相手も好きになるかも!」と信じて疑わず、それこそ延々三国志の話をしてしまったり、嫌味やからかいに気付かずニコニコ喜んでいたり…そんな過去の失敗エピソードが曹操の姿と重なって、私はいたたまれない気持ちになるのです。「近親憎悪」と書きましたが、親しみも感じており、大好きなんですけどね。稀代の英雄に自分みたいな面が見えると、「あ、やっぱり人間なのね」って思えるじゃないですか(笑)。物語の向こうの誰かが、特性の魅力を教えてくれるかも出典 : いかがでしたか?異論、反論、「まったくわからない」などなど、さまざまなご意見があると思います。もちろん、発達障害の診断名は現在の基準ですから、はるか昔の武将たちが実際に該当するかどうかは分かりませんし、私自身も他人を「○○っぽい」と断定することは本来好みません。ですが、こうして昔の人たちの特性を分析してみると、遠い存在に思えていた英傑たちが身近に感じられたり、自分と似た面を持つ人物を発見し(私にとっての曹操ですね)、一歩引いた位置で特性を捉えられたりし、「あれ?結構面白いかも!」という思えるきっかけになるのかもしれません。三国志に限らず、小説や漫画を読みながら「あれ?もしかしてこの人も?」などと、登場人物の言動を発達障害の特性と照らし合わせてみると、物語の見え方が、そして発達障害に対する印象が変わってくるのではないか、と私は思っています。そんな風にして発達障害を身近なものとして捉え、気軽に話せる場が増えていくことを、当事者のひとりとして願って止みません。三国志を様々な角度で紹介中!『三国志情報バトル』:鈴木希望プロフィール
2016年10月05日どんな言葉も真に受ける息子は、私の井戸端会議を聞いて…Upload By かなしろにゃんこ。たいていの子どもはある程度の年齢になれば、親が他人と話すときには自分の子を謙遜して話すものだという「社交辞令」がなんとなくわかると思います。しかし発達障害のある息子は、私の言葉を真に受けて怒り出す始末…。井戸端会議の空気は最悪になってしまいました。これではいかん!と思い、家に帰った後、息子に大人の事情を説明しました。「大人の会話はそういうもの」と教えてみるも…Upload By かなしろにゃんこ。「社交辞令というものがあって、大人は自分のことや家族の自慢はせず悪くいうものなのよ!」と伝えると、「大人のおしゃべりってめんどくさいね」と息子に言われてしまいました。うっ!その通り…大人の話ってそうだね、と私も思います。ん!?でもちょっと待てよ…うちの場合、我が子の話は悪く言ってるというか、本当のことを言ってるだけなんだけどな~(笑)。確かに「めんどくさい」かもしれないけど…これも社会に出る準備!Upload By かなしろにゃんこ。その後も社交辞令の種類やその意図について教えると、高3になった今は分かってくれるようになりました。社会に出る準備の一つとして、世の中には「社交辞令がある」ということを少しずつ覚えていってほしいな~と思っています。
2016年10月04日目を離せばすぐあちこち走り回る子どもたち。当然外出なんて場所を選べる訳もなく…出典 : 我が家には2人の発達障害児がおり、毎日がご想像の通りのハチャメチャぶりです。衝動性の高い子どもたちと出かけることはもちろん至難の技。私の手を振り払って後方へ走り出す次男、それを追いかけるうちに勝手にエスカレーターに乗ってしまう長男。想像しただけでどっと疲れませんか?(笑)そんな子どもたちを連れてわざわざ出かけようという気も、いつしか起きなくなりました。ましてや「子連れで遊ぼう」というお誘いなんて夢のまた夢。行きたいなあ、と思いながらもずっと断ってばかりいました。そんな我が家でも、思いっきりレジャーを楽しめる「キャンプ」があったのです!どんな様子か気になる?ご紹介しましょう!東京都自閉症協会「おやじの会」主催のキャンプに家族で参加出典 : 私も会員として参加している東京都自閉症協会には「おやじの会」という自閉症児の父親の会があり、いろいろなイベントを企画、運営しています。例えば先日参加したキャンプ「エンジョイアウトドアスポーツ」や、障害児のきょうだいにフォーカスを当てた「きょうだいキャンプ」、そして初夏と新年に開催されるBBQなど、家族で楽しめるイベントが盛りだくさんです。ここなら、衝動性の高いうちの子を連れていっても安心です。先日は、主人も連れて家族全員でキャンプに参加してみました。東京都自閉症協会おやじの会母親が子どもにつきっきりにならなくて済む理由出典 : 「迷惑をかけているのでは」と人の目を気にしたり、「迷子になってしまうのでは」と神経を尖らせたり…そんな思いから解放され、心置きなく楽しめるこのキャンプ。それには大きな理由が2つあります。1つ目は、皆が「お互い様」の気持ちでいられる環境であること当事者とその家族が集まってのキャンプなので、普段の生活で感じる気疲れがありません。もう1つは学生などのボランティアさんがたくさん参加していることボランティアさんが野外活動、子どもたちの見守り、イベントの進行や食事の支度など何から何までおやじたちと一緒に取り組んでくれているのです。ボランティアさんの中には、おやじの会のイベントに何度も足を運んでくれている方もいて、あまり人の顔や名前を覚えない長男も、大好きなボランティアさんの名前を覚えて一緒に遊べるのを楽しみにしていました。普段私が「もう休憩させて…」と言ってしまいそうな激しい遊びでも、若い力と優しさでずっと付き合ってくれる姿には、感謝の気持ちでいっぱいになりました。予想を裏切る働きっぷりに、おやじを見直す3日間出典 : このキャンプで家族として得られる大きな収穫、それは「おやじって、結構頼れるんだな」という瞬間です。普段は園や療育への送り迎え、地獄のようなスーパーでの買い物、体力の限界を感じる外遊び…これらを一手に引き受ける母親からすると、「こんなおやじに、子どもを任せても大丈夫かいな」と失礼ながら思ってしまうのも、やむを得ないかもしれません。でも、彼らは違いました。ベテランになると、持っている情報量も多く、ネットワークも広い。そして障害を見つめる切り口が母親とは違う。普段社会で働いているからこそ、イベントの運営もきめ細かくスムーズです。やっぱりいざという時、パパは我が家を立派に支えてくれる存在なんだな。そんな気持ちが何度もよぎる3日間なのです。母親が1人で抱え込まないよう、父親にも子育てに積極的に参加できるきっかけを出典 : パパには日頃、ついつい「療育手帳と受給者証の違いもわからんのか!」「就労移行支援と移動支援は別モンよ!」なんて、偉そうについ言ってしまう私。でも、おやじにはおやじの活躍の場所がたくさんあって、私たちでいう「ママ友」みたいなおやじのコミュニティーってとっても大切だな、と改めて感じました。普段、療育関係のことは私が全て管理したり実際に出向いたりしているので、主人には仲間を増やす機会がなかなか無いことから、同じ環境にいる父親に会えるというのは、主人にとって貴重な時間。また主人が、こんな風に仲間を作ってくれることにより、障害への理解が高まったり育児へ積極的になったりしてくれたので、今回のキャンプの参加は、結果的に家族みんなにとって良かったのでした。自閉症協会に関わらず、全国各地にいろいろな「当事者の会」や「家族会」などが発足されています。気を遣って生活している日々の息抜きとして、同じ気持ちをわかってくれる人のところへ出向いてみるのも、いいかもしれません。きっと新しい発見や仲間が待っているはずです。
2016年10月04日この1年で、怒りっぽい娘に変化が出典 : 発達障害を抱える子どもたちは、私たちが想像する以上に傷付き、生き辛い毎日をなんとかこなしているのかもしれません。もしあの時、児童精神科の門を叩かずに「怒るのをやめなさい」と娘に言い続けていたら、どうなっていたのでしょう。もしかすると、「生きていたくない」という思いがどんどん強くなり、自分を傷つけるような行為に繋がっていたかもしれません。些細な出来事が怒りに直結し、毎日苦しむ娘を見かねて児童精神科の門を叩いたのは、およそ1年前のことでした。その後、アスペルガーの診断が下り、この1年で娘は大きく変わりました。四六時中、口を開けば誰かを攻撃して怒りを爆発させていた頃が嘘のように、笑顔でいる時間のほうが多くなりました。自分を責め、否定し、卑屈になっていた娘が、褒められれば「ありがとう」と素直に受け入れられるようになったのです。これは大きな変化でした。ふとした時に漏れた衝撃の本音。娘の辛さを理解してやれなかった私は…出典 : ところが、そんな娘の笑顔を眺めてホッとしていた矢先、ある日のことでした。衝撃の言葉が娘の口から漏れたのです。「私、児童精神科に行くまで、自分のことが大嫌いだった」「どうしてこの世に生を受けてしまったんだろうって、ずっと思ってた」たった7歳の娘が、産まれてきたことを後悔し、誰にも打ち明けられずに悩んでいたなんて…その事実に打ちのめされました。これまで精一杯、愛情を注いで来たつもりでいたけれど、でも…。タイプの違う娘と息子を抱えて奮闘していた私は、毎日の生活を送るだけで精一杯でした。パニックを起こして泣き叫ぶ息子に容赦なく怒りを振りかざす娘に対し、「どうしてそんな些細な事で怒らなければならないの!?」とイライラをぶつけたことも多々ありました。怒りをコントロールできずに苦しんでいたのは、誰よりも娘自身だったのに、私は苦しんでいる娘にさらに追い討ちをかけ、追いつめていたのです。アスペルガーの娘には「嫌な記憶が何度もフラッシュバックされる」という特性があります。その特性を持つ娘は、母親から浴びせられた否定的な言葉を、何度頭の中でリピートしたことでしょう。そのたびに「私はダメなんだ」「どうして私はこうなんだ」と、自分を責め続けていたのだと思います。娘の本心をやっと理解し、反省した私。しかし、これで解決する訳でもなく出典 : 娘と私の8年間。振り返ってみると反省すべき点はたくさんあります。たとえ親であろうと、間違ってしまったことはきちんと謝らなければ、前には進めません。「わかってあげられなくて、ごめんね。ずっとずっと辛かったね。」「よくがんばってここまで来てくれたね。これからは一緒に前に進もうね。」失敗を取り戻すことはできませんが、私の腕の中で大きな安堵のため息をつく様子を見ていると、娘の心は少しずつほぐれていったような気がします。これで娘の苦しみが消えてしまった訳では決してありませんし、これから先もずっと、悲しい記憶が何度も蘇り、娘の心を傷つけ続ける事でしょう。娘が生まれてきたことを後悔する理由は、他にもたくさんあるのだと思います。少し笑顔が増えたからといって、今までの出来事がなかったことにはならないのです。忘れられない悲しい記憶と共に生きていく、というのは、そういうことなのです。傷ついた娘に、親がしてやれることはあるのだろうか?出典 : 私自身、娘の診断が下りる前は「診断がつくのかどうか」「発達障害の中でどこに分類されるのか」、そればかりを考えていたような気がします。もちろん、診断名は大切です。何をどうすれば良いか、どんな特性があるのか、どんな思考の偏りがあるのか、調べるのに便利だからです。でも、診断名が出たからといって、何かが大きく変わる訳ではありません。親が自ら変わっていかなければ、何も変わってはくれないのです。私は娘ではありませんから、完全に娘を理解することなど不可能です。それでも、娘の話をさえぎらずに聞いてみたり、いろんな文献に目を通して「こうかな?」と想像してみたりすることはできます。親が懸命に寄り添おう、理解しようとしている姿を見せるだけでも、子どもの中で何かが変わり始めるような気がします。出典 : まずは小さなところから、何でもいいから良さそうだと思ったものは実行してみる。その方法が自分たちに合わなかったら、すっぱりとやめて違う方法を探してみる。その繰り返しが、きっと財産になっていくはずです。まだまだ、一度怒りに火がついてしまうと消火するのが大変で、正義感が強いため、自分に関係のない人の行動も咎めずにはいられない娘。それでも、もう2度と「生まれてこなければよかった」と娘に思わせないために。「このお母さんの元に生まれて来て良かった」と、心の底から思ってもらえることを目標に、これからも日々子どもたちと向き合っていきたいと思います。
2016年10月04日発達障害のある人のため、医療機関ができること出典 : 年現在、多くの地域で、発達障害の診療に携わっている医療機関は著しく不足しています。医療従事者、それを利用する他領域の支援者、時には本人やご家族も、限られた地域の医療資源をできるだけ効率よく活用することを考える必要があります。発達障害のある本人や家族には様々なサポートが必要です。その中には医療機関が提供できる、提供しているものもたくさんあります。その代表的なものを挙げてみます。Upload By 吉川徹けれどもこの中で、どうしても医療機関でなければ提供できない支援というのは、実はあまり多くありません。そして、医療以外でも提供できる支援は、実は他の領域の支援者の方が、有利であったり、得意であったりすることも多いのです。医療でなければできない発達障害支援は何か出典 : 医療でなければ提供できない支援の一つは「診断」です。一方で、広く診断といったときに、その人に発達障害の特性があるのかどうか、発達障害の特性を考慮に入れた支援が有効であるのかどうかという「見立て」は、必ずしも医療機関のみでなされているわけではありません。むしろ本来はこうした見立ては、保健、教育、福祉などの領域でも必要になってきますし、仮に医学的診断を後に受けるとしても、それより前から見たての作業が始まっていることが望まれます。また、「見立て」に限られた時間しか充てられない医療機関に比べて、生活を共にする時間が長い人は、そもそもとても有利でもあるのです。ここは医師の間でも見解が分かれるところなのですが、自分は発達障害のある人すべてが、医療による診断を受ける必要は必ずしもないと考えています。ただし見立てや診断において、どうしても医療機関が必要になる場面があります。それは、・患者の困りごとが、発達障害以外の他の疾患から起こっている可能性を見極め、排除する必要がある場合・患者の困りごとの背景にある疾患を診断する必要がある場合上記の2点です。特に生物学的な検査が必要である場合、医療抜きにこれを行うことはほぼ不可能です。発達障害によく似た状態を示す疾患はたくさんありますし、また発達障害のある人には、脆弱X症候群やダウン症など様々な障害が背景にあることも少なくないのです。このため、何らかの点で典型的ではない、他の際だった特徴のある人の場合、医療機関を受診しておくメリットは大きくなります。そして診断書の発行も医療機関の重要な役割であり、優先度の高い仕事です。一般に医師は診断書の発行を面倒がる傾向があるのですが、これはどうしても医師免許が必要であり、医師が(好まずとも)独占している業務なので、嫌がらずにやらないといけないと自分に言い聞かせています。そしてもう一つ、どうしても医療でないとできない業務は、処方箋の必要な薬物を使うことです。これは当然ですが、では処方箋のいらないお薬、サプリメントはどうか、ということになります。しかし、これらの中に現時点で効果と安全性が実証されているものは、ほぼありません。医師と相談せずに使うことは更におすすめしにくいので、できればそこも医師と相談できると手堅いでしょう。結局、どうしても医療でないとできない主な支援は、診断、特に診断書の発行と薬物療法ということになります。医療でも出来る支援には、他に幾つもありますが、その優先度は低くなります。医療機関が不足している地域では、医療資源はまず診断と投薬のために活用する、その姿勢が求められています。医師の側もその業務を独占している以上、優先的にそれを提供する義務があると言えるでしょう。医療の強みは、卓越した経験と専門性にある出典 : それでは診断や薬物療法以外には、医療のアドバンテージはないのでしょうか。医師の立場からすると「それはある」と言いたくなるのですが、実際にはどうでしょうか。一つには、医師、特に発達障害を専門とする医師は、他の領域の支援者と比べても桁違いに多くの事例に接しているということがあります。一人の専門の医師が同時に診療している発達障害の患者さんは、数百人から時には千人を越えることがあります。医師人生の中で会ってきた患者は数千人ということも珍しくありません。そして多数例の報告に基づいた研究論文がたくさんあるのも医療領域の大きな特徴です。また多くの医師は、ライフステージをまたいで、患者さんに関わり続けています。幼児期早期に受診した子どもが成人し、時には老年期まで診療することがあります。自分一人でそれを見届けることができなくても、連綿と書き綴られたカルテから、比較的若い医師でも目の前の患者の若い頃の姿を確かめることができるのです。多数の患者に関わる医師は、残念ながら養育者や他の領域の支援者に比べると「その子自身」の専門家になれる機会は限られます。そのかわり「自閉スペクトラム症」の専門家、「注意欠如多動症」の専門家などには、なりやすい立場です。多くの例に長く関わっているからこそ、行いやすい見立てや助言があります。それは例えば、・将来を見越して今優先すべき支援の領域を考えること・本人や家族のリソースの配分を考えること・進路の決定などの場面でのアドバイスです。このように医療による支援のなかには、医療でないとできないこと、医療でもできること、そして医療が得意なことと苦手なことがあります。皆さんにはこうした医療による支援の特性をうまく理解して頂いて、上手につきあっていただきたいと思います。
2016年10月03日学習障害の長男。努力ではカバーしきれない困難さを抱えた結果…出典 : 小5の長男は、ADHD、アスペルガー症候群、そして学習障害という診断を受けています。その中で、今彼を最も困らせているのが、「学習障害」です。上下斜視で2度の外科手術をしている長男ですが、視力は順調に育ちながらも、視機能や視覚認知面での遅れがありました。このため、●本の字を追って読むのが苦手●漢字や図形の形を把握して覚えるのが苦手●黒板の字を視写するのが苦手●先生の口頭の指示を覚えられない●繰り上がりなど複雑な計算が苦手こうした影響が、学習に現れています。医師の診断によると、「今は、彼が本来持っている理解力や思考力を十分に発揮できず、努力をしても定着が進まない状態です。そんな中で失敗経験が積み重なり、勉強自体に『苦手意識』『拒否感』が強まってしまったのでしょう。そのため学習場面で、パニックを起こしたりチック症状が出たりといった、二次障害が出ています。」ということでした。本来、好奇心が旺盛で好きなことなら熱心に知識を取り込み、あっという間に覚えるほど、学ぶことに対して前向きな長男。それが、読み書きという「方法が合わない」ことが原因で、学ぶこと自体が嫌になっているのです。この状況を前にし、親としては可哀想で仕方ありませんでした。タブレット学習が長男を変えた!出典 : そんなとき、通っている療育先や教育相談の先生から、「タブレットを使ってみてはどうか」と勧められました。長男に「こんなのあるけど、やってみない?」と聞いたところ、興味を示して「やってみたい!」とノリノリに。こうして、小3から通信教育のタブレット講座を始め、今ではその他のアプリも取り入れて続けています。なぜ、勉強嫌いの長男がそんなに続いているのか?お勧めの教材4つを紹介しながらお話したいと思います。出典 : こちらは、進研ゼミのタブレット教材です。国語・算数・理科・社会の4教科を、動画や音声で学習できるので、「読む」のが苦手だったり、説明を読んでイメージするのが苦手だったりする子もわかりやすいです。長男にとっては、とにかく「書かなくてもいい」のが良かったようです! 問題の答えの記入は、タッチペンを使った選択制なのです。また、間違えたら再チャレンジする仕組みになっていたり、わからないところがあったら説明や動画をもう一度見ることができたりするので、長男にとっては記憶力の強化にもなります。このシステムの面白いところは、学習をすすめるごとにご褒美(ポイントやゲーム)があるので、やる気につながるようです。「チャレンジタッチ」タブレットの仕様出典 : 長男が視覚認知・視機能の検査を受けた病院で、ビジョントレーニングとして勧められたのがこちらです。これはパソコンにダウンロードして使用するアプリケーションです。視覚認知機能5領域(注意・記憶・形状識別・空間認知・運動統合)のトレーニングができる、16種類のとてもわかりやすく楽しいゲームです。練習ステージをしてから本番に入る形だったり、前回までの記録に合わせて難易度を自動設定してくれたりと、子どものやる気を上手に引き出してくれます。また、保護者メニューでは5領域の力のバランスや、これまでの成績の変化をグラフやチャートで見ることができるので、子どもの成長状態がよくわかります。この記録をもとに、力を付けた方が良い領域のゲームを「今日のおすすめ」として自動表示してくれるので、子どもだけでもまんべんなく、力をつけていくことができると思います。視覚認知バランサー出典 : 苦手な「書く」を補うため、パソコン入力ができるようにと考え、ローマ字を負担なく覚えることができるアプリを探しました。こちらは、タブレット向けのアプリケーション。表示されたひらがな又はカタカナと同じローマ字を4択の中からタッチして選ぶ、学習アプリです。「道場」というだけに、剣道の試合のようにどんどん文字をヒットさせるのが、面白いみたいです。学校の「書いて覚える」学習では泣いて嫌がり、全くローマ字が覚えられなかった長男でしたが、このアプリはタッチするだけで覚えられるので、繰り返すうちに、少しずつですがローマ字が読めるようになってきています。剣道でおぼえるローマ字道場出典 : 漢字を書けなくてもいいから、読めるようになって欲しい。そんな気持ちで、楽しく「漢字の読み」が学習できるアプリを探しました。これもタブレット向け無料アプリです。子どもが大好きなRPGゲームの感覚で、海賊になって問題を解きながら、ステージをクリアしていく楽しみがあります。漢字の正しい読みを選択する問題、漢字の正しい形を選択する問題に回答することで、視覚的に漢字を覚えることができます。ステージを1つクリアする毎にカードやコインをもらえるのもやる気に繋がります。国語海賊〜2年生の漢字編〜その子に合った学習方法さえ見つかれば、子どもは伸びる出典 : 最近読んだ本に、こんなことが書いてありました。「勉強をその子ができる形にしてやることで、子どもは自然に力を伸ばすことができます。また、時期がくれば自然と力を伸ばすこともあります。だから、子どもを勉強に合わせるのではなく、勉強を子どもに合わせてやればよいのです。小学校に入学し、気を張って1日を過ごしてきた子どもに追い打ちをかけるのではなく、家に帰ったらほっこりさせてやりたい。だから、まずは『宿題なんかできなくても大丈夫』と考えてほしいのです。」「宿題をするのは当たり前のこと」と親子で考えていた頃は、確かに毎日が苦痛でした。私はカッとして声を上げ、長男は泣きながら宿題をしていました。でも今は、このタブレット学習を「この子の宿題」として学校に認めてもらい、やったことを記録して報告しています。自分から学習に取り組む今の姿は、以前の彼からは想像できないものでした。その子に合った学習方法を用意すれば、子どもは伸びることができる。そのことを、強く実感しています。(「宿題なんかこわくない発達障害児の学習支援」塚本章人・著かもがわ出版)
2016年10月03日息子はアスペルガー症候群Upload By ニャンタ小5の息子は、アスペルガー症候群。知的な遅れを伴わないアスペルガー症候群の中でも、軽度のほうだと言われている。でも、そう表現される度に傷付く私がいる。私の心にもたれかかっているこの負担は、本当に「軽度」なのだろうか?と。息子と年長の娘を寝かしつけるときに、本の読み聞かせをする。毎日のことなのに、私が絵本を読み始めると、きまって2人の言い合いが始まる。原因はいつも「ベットのフチに手を置く」「置くな」という些細なこと。息子の声が荒く大きくなると、娘は黙る。息子の大きな声が怖いから。「妹が怖がっているよ」と何度伝えても息子は分かってくれず、黙っている妹を責め立て始めるのだ。こんな時、私はいつも思う。「そんなに大騒ぎをして、怒るような事だろうか?」でも、専門家はこう言うのだ。「それはね、お母さんの主観だよ。息子さんにとってこの出来事は、怒るべきことなんだよ。」この説明は耳にタコができるくらい聞いてきたし、そうなのだろうと頭では十分に理解している。でも、それでも、大声で相手をなじるような態度を許していいのかというと、違うのではないか。一度スイッチがはいると、息子の暴言は止まらないUpload By ニャンタとりあえず、多少なりとも娘にも落ち度はあったので、そのことを話し、どちらもベッドに手を置くのをやめさせる。娘はすぐに置いていた手をどけて、読み聞かせの続きを待つ。息子は「なんで僕だけやめさせられなくてはならないのか!」と大声でキレはじめる。私は怒ってしまいそうな気持ちを抑えてこう言う。「2人ともやめさせたでしょう。置きたかった事が叶わなくて嫌だ、という気持ちになるのはわかるけど、大声で相手を責め立てる態度はよくないよ。」それでも1度怒りだした息子の激情が止まることはなく、妹と私への不満を垂れ流すように、わめき続ける。息子のわめきは、ペアレントトレーニングによるところの「好ましくない態度」だ。講座で教わった通り、伝えるべきことだけ伝え、あとはスルーする。これが正しい対処だと頭ではわかっている。わかっているが、スルーしてもわめき声は私の耳に聞こえてくるし、言葉は次々伝わってくるのだ。そんな日々に心は傷つく。恐らく娘も同じように感じているのだろう。疲れて、疲れ果てて、それでも願うことはただ1つUpload By ニャンタ息子が荒れるのはこの日だけではない。こんな時、私は本当に疲れる。心の底から、息子のことががわからなくなる。どうしたら、あなたの心に私の声が届きますか?私はあなたが責め立てる程に、あなたの言葉を受け止めていないのですか?心の底に重石を置かれたような、泥の中を腰まで浸かって歩いているような感覚。そんな心の中で願うことはただ1つ。どうすれば、あなたと一緒に心地よくいられますか?わかっている。息子には家族の理解と支援が必要不可欠だということUpload By ニャンタ息子との穏やかな日々。それは簡単には叶わないことだとわかっている。息子には家族の支援が必要で、私が1人で抱え込まなくても済むよう、療育が必要だということも。それでも成長は緩やかで、進んでいるのか後退しているのかわからないような日々。支援者から言われるのは「以前に比べてできることは増えているでしょう?」「他の子と比べないであげてください」という言葉。そんなこと、もちろんわかっている。わかっている。ただ、あまりにも息子と心を通わせる事が少なくて、途方にくれてしまうのだ。兄妹2人とも、大切に思う気持ちは同じなのに。24時間365日「障害に理解のある、穏やかで良い母親」は演じられないと思うUpload By ニャンタ知的な遅れや、言葉の成長に遅れがないからといって、息子がいつも自分の気持ちを「伝えられる」とは限らない。出てくる言葉が多少高度であっても、的確に自分の気持ちを表現している訳ではないのだ。そんな複雑な脳の仕組みをもつ息子。それを支援する家族。この家族の負担へ目を向けてくれる人は、一体どのくらいいるのだろうか?このコラムで、1人でも多くの方に頷いてもらえたり、孤独感を和らげてもらえたら。日常に散らばる苛立ちや孤独を「辛いと」言っていい、そう感じてもらえる一助になれたら、私の日常も捨てたものではないかもしれない。
2016年10月03日障害者差別解消法とは?出典 : 年4月1日より、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下、障害者差別解消法)」が施行されました。この法律は、障害による差別を解消し、誰もが分け隔てなく共生する社会を実現することを目的として制定されました。注目すべきポイントは、ここで言う「障害者」が、障害者手帳を持つ人のみに限られないという点です。障害者差別解消法では「障害者」を次のように定義しています。障害者身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。ポイントとなるのは“障害及び社会的障壁”という文言です。個人の心身の機能障害だけでなく、社会の制度や環境が障壁となって、その人の生活に障害をもたらしているとする、障害の「社会モデル」という考え方を反映しています。ここでいう「社会的障壁」とは、「手話のついていないテレビ」や「点字ブロックのない道」などの物理的な障壁のみではありません。見えづらい障害に対する理解不足や、それに伴う対応不足なども人が社会で感じる「障壁」になりうるのです。そんな誰しもが持ち得る「障壁」に対して社会全体が「気づく心」を持ち、柔軟に対応していくことを求める法律、それが障害者差別解消法なのです。障害者差別解消法が制定されるまで出典 : 障害者差別解消法が成立した背景には、2006年12月に国連総会本会議で採択された「障害者の権利に関する条約」(通称、「障害者権利条約」)の存在があります。この障害者権利条約は、障害者に対する差別禁止や障害者の尊厳と権利を保障することを定めた条約で、日本政府は翌年2007年9月に署名しました。日本はその障害者権利条約を国内でも批准することを目指し、2009年12月から国内法の整備を進めていきました。そして2013年に「障害者差別解消法」を制定したことで、翌年2014年に「障害者の権利に関する条約」の批准がなされたのです。障害者の権利に関する条約|外務省障害者の権利条約|特定非営利活動法人(認定NPO法人)DPI(障害者インターナショナル)日本会議「障害者差別解消法」制定までの経緯と概要について|独立行政法人 福祉医療機構障害者差別解消法における「差別」の2つの意味出典 : 障害者差別解消法に書かれている「差別」には、2つの意味が含まれています。1つ目は「不当な差別的取扱い」という意味での「差別」、2つ目は、合理的配慮が行われていないという意味、すなわち「合理的配慮の不提供」という「差別」です。それぞれについて詳しくご説明します。「不当な差別的取扱い」とは、役所(国・都道府県・市区町村)や企業が、障害者に対して正当な理由がないにもかかわらず差別をすることです。障害を理由としてサービスの提供を拒否したり、障害のない人とは違う扱いをしたりすることが、この「不当な差別的取り扱い」の中に含まれます。具体的には以下のような例が挙げられます。・お店に入ろうとしたら、車いすを利用していることが理由で入店を断られた。・アパートの契約をするとき、障害があることを理由にアパートを貸してくれなかった。・スポーツクラブや習い事の教室などで、障害があることを理由に入会を断られた。リーフレット「障害者差別解消法が制定されました(わかりやすい版)」|内閣府2つ目は、合理的配慮を行わない、という差別です。「合理的配慮」とは、一人ひとりの特徴や場面に応じて発生する障害・困難さを取り除くために行う、個別の調整や変更のことを指します。障害のある人が障害を理由として差別されることがなく、障害のない人と同じように社会生活を送れることを目的としています。たとえば、合理的配慮には次のような例があります。・文字の読み書きが困難な方が、タブレットや音声読み上げソフトで学習できるようにする・肢体不自由の方が自力で移動できない場所にスロープなどを追加で設置する・複数の指示理解が難しい方に、指示を1つずつ分けて伝えたり、イラストを交えて説明したりする・疲労や緊張が大きい方のために、休憩スペースを設けたり、業務時間等を調整するUpload By 発達障害のキホン障害者差別解消法においては、障害のある人への合理的配慮の提供を行政や事業者に対して求めています。ただし、ある人に配慮を行うことで、他の人たちの生活や活動が困難になるほどの影響が生じたり、あまりにも大きな負担を伴う場合は、「合理的」ではないとして、行政機関・事業者はその配慮を断ることができます。その配慮が「過度な負担」かどうかは、以下の観点を考慮しながら、行政機関や事業者が、個別の場合に応じて判断すべきとされています。・事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)・実現可能性の程度・費用・負担(必要性・負担を参考に判断)・事業規模・財務状況ただし、負担が大きく合理的配慮が難しいと判断した場合でも、事業者は障害者に理由を説明し、理解を得られるよう努めるよう決められています。「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮」におけるポイント出典 : 上記の「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮」に関する取り決めは、国や地域の役所などの行政機関と、お店や会社などの民間事業所とで少し異なります。障害者に対して差別的な対応をするという「不当な差別的取扱い」については、行政機関も民間事業所も、「行ってはいけない」という法的義務が課されている点で一致しています。一方、一人ひとりのニーズに対して適切な配慮を行う「合理的配慮の提供」については、行政機関は「しなければならない」(法的義務)のに対し、民間事業所は「実施するように努める」(努力義務)という違いがあります。また、民間事業者についての補足として、たとえばお店のお客さんなどの、サービス利用者に対しての合理的配慮は努力義務であるが、みずからが雇用した労働者に対しての合理的配慮は法的義務となることが、厚生労働省の指針にて定められています。Upload By 発達障害のキホン障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律Q&A集<地方公共団体向け> |内閣府どのように「差別」を「解消」するの?出典 : 障害を解消させるためにどんなに理想的な法律を定めても、その法律が実際に活用されなければ意味がありません。障害者差別解消法では、各分野においてしっかりと法が浸透していくよう、「対応要領」と「対応指針」というものを策定することが定められています。Upload By 発達障害のキホン国や都道府県、役所の人々がこの障害者差別解消法に基づいて適切な対応ができるよう、自らの職員に向けて作ったものを「対応要領」といいます。これは、障害のある方からの意見を取り入れながら、不当な差別的取扱いや合理的配慮についての基本的な考え方や具体例を定めたものです。関係府省庁における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領|内閣府対応要領が役所の人に対しての取り決めであるのに対して、対応指針は会社やお店などの事業者に向けられたものです。事業者を所管する国の役所によって定められています。こちらも障害のある人の意見を取り入れながら、不当な差別的取扱いや合理的配慮について詳しく書かれています。各事業者はこの対応指針を参考に、自らで差別解消への取り組みを進めていくよう求められます。法律に反することを何度も行う、もしくは自主的に改善する様子が見受けられない場合には国に報告を求めたり注意したりすることがあります。対応指針をもう少しわかりやすく説明するため、今回は教育、交通機関に注目し、具体的な内容について紹介します。教育文部科学省は主に私立学校を対象に、対応指針を取りまとめました。公立学校は合理的配慮の提供が法的義務として定められていますが、私立学校においても不当な差別的取扱いを禁止し、合理的配慮に努めることが具体的な例とともに示されています。■不当な差別的取扱い・受験や入学、その他の学校生活において参加を拒んだり、拒まない代わりの条件を、正当な理由なく付けてはならない。・試験などにおいて合理的配慮の提供を受けた場合に、それを理由として本人を評価の対象から外したり、差を付けたりしてはならない。■合理的配慮・施設や施設内において、車いす利用者のためにキャスター上げなどの補助をしたり、段差に携帯スロープを渡したりして配慮を行う。・疲れやすい障害者から休憩の申し出があったときは、別室の確保などで対応を行う。それが困難である場合は、本人に説明をした上で臨時の休憩スペースを設けるように努める。文部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針について(通知) |文部科学省文部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別の 解消の推進に関する対応指針 |内閣府不動産・交通機関国土交通省は、国土交通に関する分野を不動産・設計・鉄道・バス・タクシー・海外航路・国内航路・航空・旅行業の9つの分野に分けて取りまとめました。ここでは主に不動産や一般的な移動手段に関する具体例をご紹介します。■不当な差別的取扱い・ 物件広告に「障害者お断り」として入居者募集を行ってはならない (不動産)・ 障害があるということで、乗車を拒否してはならない(鉄道、バスなど)・ 身体障害者補助犬法に基づく盲導犬、聴導犬、介助犬を同伴しているということを理由に車を拒否してはならない(鉄道、バスなど)■合理的配慮・ 障害者の求めに応じて、バリアフリー物件等、障害者が不便と感じている部分に対応している物件があるかどうかを確認するよう努める(不動産)・ コミュニケーションボードや筆談により対応を行って対応する(鉄道、バスなど)国土交通省所管事業における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針|国土交通省差別を解消するための仕組み出典 : 差別を確実になくしていくためには、差別が起こらないように対策する仕組みや、何か問題が起きたときに相談を受けたり解決したりする仕組みが必要です。障害者差別解消法では、障害者差別に対応する機関を新たに設置することは定められていません。その代わりに今すでに存在する行政の相談機関などを充実させ、活用することが求められています。さらに地方公共団体は、条例を策定して障害のある方が実際に相談したり、紛争を防止・解決したりするような体制を整えることも期待されています。また、障害による差別で悩む方が、複数の機関の間でたらいまわしにされることがないよう、国や地方公共団体は「障害者差別解消支援地域協議会」を設置することができます。この協議会は障害に関する差別が起きたときに解決のための支援を行う組織であり、現在もさまざまな地域で組織作りが進んでいます。差別的な扱いや合理的配慮の不提供が見られても、それをした人や事業者がただちに罰則を受けるということはありません。ただし、差別が繰り返し行われる場合や、自主的な改善ができないと思われる場合には、その事業者が行う事業を担当している大臣が、事業者に対して報告を求めたり、助言や指導、勧告をしたりできます。なお、求めた報告に対して報告を怠ったり、虚偽の報告をしたりした場合は、20万円以下の罰則が科せられる場合もあります。障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十五号)|内閣府障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律についてのよくあるご質問と回答<国民向け>|内閣府差別のない社会へ・・・出典 : 障害者差別解消法とは、障害がある人の不当な取扱いを禁止し、個々のニーズに合った合理的配慮の提供を求めることによって障害による差別を解消しようとする法律です。教育の分野においては、近年考え方が広まってきたインクルーシブ教育を後押しするような効果も持っており、子ども一人ひとりが「障壁」を感じることなく生きていくために重要な動きとなったと言えるでしょう。この障害者差別解消法が、あらゆる人にとってお互いの違いを認め合い、共に生きていく社会の第一歩となることを願います。障害者の権利条約|特定非営利活動法人(認定NPO法人)DPI日本会議リーフレット「障害者差別解消法がスタートします」|内閣府厚生労働省における障害を理由とする差別の解消の推進|厚生労働省障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針|内閣府「障害者差別解消法」制定までの経緯と概要について|独立行政法人福祉医療機構障害を理由とする差別の解消の推進|内閣府障害者基本計画|内閣府障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律 (平成 25 年法律第 65 号)障害者差別解消法ってなに?|日本障害フォーラム日本会議/編『合理的配慮、差別的取扱いとは何か ―障害者差別解消法・雇用促進法の使い方― 』2016年解放出版/刊
2016年10月02日我が家の2人の息子は、タイプが正反対!我が家には、ADHDで小1の長男、お調子者で年中の次男と2人の息子たちがいます。ADHDの長男の魅力は、何時間走っても大丈夫な有り余る体力!ズッコケエピソードには欠かせない記憶力の悪さ!好きなものにだけずば抜けて高くなる集中力!色んな部分が枠におさまりきらず、とにかくパワフルです。一方で次男は、適度に疲れつつもオールマイティになんでもこなします。兄が幼稚園で手こずっていた運動会や工作をスムーズに切り抜ける姿に、いちいち私は感動しています。そんな2人の息子たちの魅力が際立つ、ある出来事がありました。どこか呑気なADHDの兄。ある日、宿題をするよう声をかけると…Upload By ラム*カナ長男に宿題を促したときのことです。「はーい」というものの、テレビを見ながら返事をしたので、どうも信用できません(笑)ADHDの特性からか、ひとつのことに集中すると、他のことには目も耳も向かなくなるんです。その後、テレビは消したものの…やはり「あれ?今なんて言われたんだっけ?」「ぼく次に何すればいいんだっけ?」という状態に。お兄ちゃんが困っている…すかさず助けてくれたのは弟Upload By ラム*カナなんと次男は、何気ない母の声を聞き取り宿題を用意してくれたのです!しかも普段の様子から宿題事情を把握しているのか、毎日の宿題にある「音読」で使う国語の教科書を手渡してくれました。これには私もびっくり!ケンカもするけど、とにかくお互いが大好きな仲良し兄弟出典 : 普段から、よく遊びよくケンカする2人。感情的になりやすい長男に振り回されることも多々あり、次男は理不尽に泣かされたりもします(汗)でも、やっぱりお互いが大好きなんですよね。次男は、自分にはないパワフルさを持つお兄ちゃんのことをいつも尊敬のまなざしで見ていて、なんでもマネをして、マネしきれずケガをして…(笑)そして長男が落ち込んでいるときは一番オロオロしています。一方長男は、国語のノートに「おとうととあそぶことがいちばんたのしい」と書いてくるくらい弟が好きで、弟が叱られているときは、一生懸命フォローしています。まだまだ小さい子どもなのに、自然に助け合っていることが私はとても嬉しく、そして私の力にもなります。これからも、お互いの良いところは高め合い、苦手なところは補い合い…そういう兄弟になってくれたらいいな。そんなことを強く願う私なのでした。
2016年10月01日育児に遅れと混乱が生じてる !!
ムスメちゃんとオコメちゃん
ドイツDE親バカ絵日記