芥川賞受賞作『ニムロッド』などで、塔というモチーフを描いてきた上田岳弘さん。その集大成的大作が『キュー』であり、そして新作『引力の欠落』は、彼が新しいフェーズに入ったといえる一作だ。空虚に生きる女性が体験する、奇妙な一夜と人類の真実とは。「次は何をテーマに書くか考えた時、“穴”というものが浮かびました」主人公は財務責任者としていくつもの企業の上場に携わり、一生困らない大金を稼いだ女性・行先馨(ゆきさきかおる)。しかし彼女は虚無感を抱えている。「今は何をして人生の成功とするか分かりにくい。それはこの時代の資本主義の行き詰まりに似ている。そうした状況を活写しつつ自分が最後に何を書くのか興味がありました」ある夜、馨は謎めいた弁護士マミヤに、高級ペントハウスに招待される。そこにいたのは始皇帝と名乗る男や、水からガソリンを精製した本多維富(これとみ)と名乗る男など奇妙な人々。彼らは世界を支える9つの柱がそれぞれ肉体を持った存在だという。一体どういうことなのか。「僕の小説はデビュー作の『太陽』の頃から、真面目にとらえれば壮大なSFになるし、そうでなければ単なるホラ話になるんですよね(笑)。今回は9つの柱が世界を支えているという僕のSFビジョンを、リアリズム小説に収めるために人間として登場させました」柱はおのおの、「運命」「効率」「斥力」「引力」「遠方」「祈り」などといった要素を担当する。「9つの要素の中では最初に引力を思いつきました。引力があれば斥力もあるだろうし、たとえば錬金術などは、小説自体が錬金術といわれていることからひらめいたもの。本多維富は日本海軍を騙した実在の詐欺師で、いつか小説に出したいと思っていました。遠方については、僕がこの小説を書いた際の一番の収穫」という遠方の柱は、現在ロケット開発など宇宙系のスタートアップに関わっている。「これまでの小説では、人類が地球から出ていかないまま煮詰まったらどういう精神状態になるかという思考実験をしていました。今回、遠方担当を登場させたことで、人類は宇宙に行くと方向転換したんです」ペントハウスでポーカーに興じる彼らだが、その場に「引力」の柱はいない。上田さんは小学生の頃、引力がなければ物質はバラバラになる、という発想から「引力」=「寂しさ」だと考えていたという。「いまだ変わらずそれで小説を書いているんですよね(笑)。ただ、寂しさはもう役割を終えたと感じています。満たされない思いはなくならないけれど、寂しさを解消しようと自家中毒を起こし、自殺などが起きている。これからは寂しさを紛らわす方法を探るのではなく、一人で穴を掘って勝手に進んでいいですよ、と提案したほうが優しく響くんじゃないかという気がします」作中、〈現代人は目的中毒〉という言葉も出てくる。しかし人生は、努力して目的を達成すれば幸せになるとは限らない。「正解や成功、到達点というものは存在しないんだと一回了承した上で、自分は何を譲って何を取るのかを考えていかなければいけない」そうした事実を改めて突き付けられた時、馨の心に芽生える思いとは。この最終場面まで書ききった上田さん自身にとって、“一人で穴を掘る”とはどういうことだろう。「とにかく今は小説を書きまくっています。その一瞬一瞬の集まりが、生きている実感に繋がるような気がしています」現在は、意外にもストレートな恋愛小説を執筆中。こちらも楽しみだ。『引力の欠落』大金を稼ぎながらも空虚さを抱く行先馨は、奇妙な招待を受け、世界を支える9つの要素を担うと語る人々と出会う。AlexaとGoogle、セロトニンなど現代的モチーフをちりばめた壮大な一夜の物語。KADOKAWA2090円うえだ・たかひろ作家。2013年、新潮新人賞の「太陽」にてデビュー。’15年「私の恋人」で三島賞、’18年『塔と重力』で芸術選奨新人賞、’19年「ニムロッド」で芥川賞、’22年「旅のない」で川端賞受賞。※『anan』2022年6月15日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2022年06月13日1000年以上も前から人々の生活とともにあった「暦(こよみ)」。日々の営みを支え続けてきた古来の知恵を現代風に読み解き、今を生きる私たちにも役立つように解説しました。教えてくれたのは、運命学研究家のC.I.さんです。暦を読むとは、年月日時の運の流れを知ること。ここでは7月前半の「今日の全体傾向」をお届けします。7月の指針世の中に思いやりと熱意を送り届けること。人それぞれの形で世界に元気を生み出すのです。自分に合った表現方法を見つけて、そこにありったけのエネルギーを注ぎ込みましょう。あなたのその姿や作り上げた作品、成し遂げた仕事を通じて、意気消沈している人の心を勇気づけてあげましょう。ささやかでも幸せを感じてもらえたなら、そのとき世界は少し良くなっているはずです。今日の全体傾向7月1日(金)誰かを見習うという面と、自分の芯を持つという両面をうまく使うことがテーマの日です。出しゃばるわけでも卑下するわけでもなく、そのときに必要だと思ったことを素直に行うといいでしょう。欠点を指摘されても穏やかに受け止めて直す姿勢を見せること。円滑な人間関係のために今の自分にできることをしてみましょう。7月2日(土)天気さえ良ければ旅行にもってこいの日です。素敵な旅は心を伸びやかにし、気分を高揚させてくれます。また、たとえ物理的な旅行はできなくても心の旅ならいつでもできます。内なる自分の声と向き合うことで、大事なメッセージやアイデアを見出せるかもしれません。ゆったりとした気持ちで過ごしましょう。7月3日(日)七転び八起きを意味する日で、具体的な成果を求めて何度も挑み、良い評判を得るために頑張るでしょう。周りから見た自分のイメージが作られやすいときなので、マイナスイメージとならないように積極的に苦手意識やネガティブ面を克服するとよいです。また、必要だと思うなら尊厳や自信を回復することを優先しましょう。7月4日(月)今日のテーマは“自分の立場に固執しないで調和を考えること”です。先輩やOBが大きな顔をして口うるさくなると、とたんに場の雰囲気が悪くなることがあるように、本人はよかれと思ってしたことでも周りは迷惑しているかもしれません。自己満足の善意に陥らないこと、そしていま頑張っている人を温かく見守ることを心がけて。7月5日(火)忙しいときでも周りへの気配りを忘れないとか、仕事を雑にしないとか、広い視野で後々のことまで考えるとか、何か一つでも目を見張るものがあるとその人の評価がぐっと上がる日です。プレッシャーのかかる状況で自分も大変なのに他の人のことまで思いやれる器がある人なら、この後もっと多くの信頼を集めるでしょう。7月6日(水)判断力を鍛えることがテーマの日。自分自身のことも満足にできないうちは人の問題に首を突っ込むことはやめたほうがいい、と今日の暦は告げています。人の事情に深入りしてトラブルに巻き込まれたり、相手の気持ちを損ねて逆恨みされたりする恐れもあります。自分の力量を測り間違えないようにすることが大切です。7月7日(木)人は誰しも、一度くらいは絶望の淵に立たされ希望の見えない日々を送る可能性があるものです。スランプや人間不信、孤立、ハラスメントや差別・偏見など。こうした苦境をリセットすることは容易ではありませんが、どうにかこうにか立ち上がることはできます。また、苦悩がわかるからこそ支援の手を差し伸べることもできます。7月8日(金)世間一般の価値観や流行が自分に合わなくても気にせず、あなた自身の感性に素直になることがテーマの日。周囲や社会を客観的に見ることができるので観察力も高まります。自分の持って生まれた才能と可能性を信じて、どうすればそれを最大限に生かせるかを考えてみるとよいでしょう。きっと試行錯誤も楽しく思えるはず。7月9日(土)家族や友達との関わり方に自分なりのルールを設けようとするとき。身内や仲間だからと特別扱いすることに心苦しさを覚え、誰彼となく平等に接したい気持ちが強まるでしょう。とはいえ人間は情の生き物。スパッと割り切れず、葛藤も生まれてきます。どうしたものかと悩む中でフェアな関係を模索する日となりそうです。7月10日(日)目の前の幸せや恵みを大切にすることがテーマの日です。日々の豊かさを当然のことだと思っていると、ふとしたときにその恩恵は消えてしまいます。そのありがたみに感謝して、今の自分にできることで恩返しするように心がけていれば、必要なときに必要な恵みを得られるようになります。それが豊かさの原則というものです。7月11日(月)ちょっとしたトラブル処理とか幾つかの用事を済ませる必要があるなど、バタバタした状況を暗示する日です。しかし、その対処を通じて有能さを示せたり、責任感や甲斐性の高さを評価されたりする人もいるでしょう。そうした姿が美しく映え、または頼もしく思えて誰かの恋心を刺激するかも。しっかり者を印象づけるチャンスです。7月12日(火)切り替えを意味する日。頭と心をリセットして、あらためて前を向くのです。生活習慣を改善するのにも適しています。夜更かしや考えすぎをやめて睡眠の質を向上させましょう。食事内容を見直しましょう。運動不足ならウォーキングなどできることから始めましょう。何か指標があれば具体的な行動に移しやすくなります。7月13日(水)求めるものを自分から取りに行くのではなく、相手のほうから来るように仕向ける知恵、もしくはずる賢さが出てきやすい日。例えばアイデアや作品のライセンスとかブランド名のように、それを求める人を呼び寄せる力を表しています。ただし人間にとって欲深さは失敗の元凶ですので、何事もほどほどにするほうがいいでしょう。7月14日(木)「人材というよりも人財だ」という考え方があります。今日は物事が進みにくい日かもしれませんが、一緒に頑張ってくれる仲間がいればどうにかこうにかやっていけるでしょう。つらいとき、困ったときに助け舟があるのも、人は宝だという意識を持っている人の人徳のなせるわざです。これはリーダーの心構えでもあるでしょう。7月15日(金)上昇気流に乗りやすい吉日ですが、格付けランキングのような形で人を階層分けしやすい日でもあります。誰が誰より優れているかという基準はそれぞれの社会や個々の考えによって異なりますが、この日は精神的な成熟度のような基準で人を判断することが多そうです。誰と付き合いを深めるかの意思決定にも関わってくるはず。お話を伺った方 C.I.さん運命学研究家。易・四柱推命・西洋占星術・奇門遁甲などの運命学を学び、ブログ(With the I Ching)やツイッター(@CI_ONOFF)を通じて発信している。現在は6匹の愛猫たちと過ごす日々。写真の日めくりの情報はイメージです。※『anan』2022年6月15日号より。写真・中島慶子イラスト・カラシソエル(by anan編集部)
2022年06月08日著者の山内尚さんは、本作『魔女の村』の主人公である9歳の少女・桃のように、世間からは“おばさん”とか“おばあさん”と呼ばれる世代の人たちに、子どもの頃から親しみを感じていた。自分が自分であるために大切な、居場所と仕切り。「おばあちゃん子だったというのもありますが、渋くてかっこいいなあと思っていました。こういった世代の女性たちは、物語のなかではわりと脇に追いやられたり、いたわられるような存在として描かれがちですが、もっと能動的に生きている魅力的な姿を描きたいと思ったのです」そんな女性たちが暮らしているのが、通称・魔女の村。入り口に大きな鐘があり、バラなどの植物に囲まれたコーポ・レイコという集合住宅なのだが、“親戚のおばさま”である麗子が大家をしているこの住宅で、桃は一時的に暮らすことに。両親のいさかいが絶えず、家庭内で自分の声を失ってしまった桃は、いつの間にか他人の顔色をうかがって言いたいことを言えず、手洗いをやめられない神経質な状態になっていた。一方、男子禁制のこの集合住宅で暮らすのも、桃と同じように何らかの事情を抱えている人たちだった。「戸籍の変更をしていないトランスジェンダー女性のともみさんや、男の人が怖くて外に一歩も出られないゆきさんなど、一般的なアパートには入居しづらい人ばかりですが、本来は変な人でも、避けるべき人でもまったくない。いろんな過去がありつつ、今を普通に生きている姿を描こうと意識しました」年の離れた友人たちと交流しながら、山内さんいわく「桃の心は花が開くように、ふわりと緩んでいく」。弱い立場に置かれがちな人たちが、肩を寄せ合って暮らしているが、寄りかかったり、傷をなめ合ったりはしていないところも清々しい。「シェアハウスではなく集合住宅という設定にしたのは、居住空間だけでなく関係性にも仕切りは大事だから。自分の生活をきちんと送った上で、それぞれを尊重しながら連帯している様を描きたかったのです」反対に、仕切りのない関係として描かれるのが、桃と母親。「私のマンガは、居場所を作るような話がわりと多いのですが、健全な関係を築くためには、たとえ家族であっても、それなりの仕切りは必要だと感じています。私自身も自分のための居場所を持ったことが精神の安定につながって、周りの人との関係もうまくいくようになったので」巻末に収録されている商業誌デビュー作「帰る家」も、異父姉妹の居場所にまつわる物語。どんな人にとっても、“魔女の村”は必要なのだ。山内 尚『魔女の村』両親が離婚することになり、9歳の桃はおばの営むコーポ・レイコに一時的に入居することに。さまざまな事情を抱えた人と穏やかな時を過ごすことで、少しずつ心がほぐれていく、癒しの物語。秋田書店660円(電子書籍のみ)©山内尚(秋田書店)2022おやつとお茶を囲めば、そこに居場所が生まれる。同時発売の『クイーン舶来雑貨店のおやつ』は、『魔女の村』の後に描かれた作品。祖母が営む雑貨店の番を任される孫のジャックや訪れる人々が、やはり居場所を見つける物語。「『魔女の村』もそうですが、読んでくれた人に『自分もこういう場所が欲しい』とか『作りたい』と言ってもらえるのが嬉しくて。物語に出てくるような場所を、多くの人に持ってほしくて描いているところがあると思います」。秋田書店660円(電子書籍のみ)やまうち・なおマンガ家。「わたしの歯」で「アフタヌーン四季賞2018秋」佳作に選出。『エレガンスイブ』8月号より新連載スタート。4姉妹の物語。※『anan』2022年6月1日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2022年05月30日「はじめての独立短編集が出せて本当に嬉しいです」と、柚木麻子さん。新作『ついでにジェントルメン』は一編一編独立した話を収録した作品集だ。刊行を喜ぶわけは巻頭の「Come Come Kan!!」を読めば分かる。新人作家・覚子(さめこ)が、単発作品として書いた短編を元に連作集を書けと言われてスランプに陥る話なのだ。編集者からのダメ出しと説教に疲弊する彼女に、ある日突然話しかけたのは文藝春秋の創業者、菊池寛の幽霊。気ままな寛に振り回されながら、覚子は少しずつ解放されていく。女性も男性も解放してくれる、豪快で痛快な初の独立短編集。「私もデビュー当時、書くつもりのない連作集の依頼が続いて、断れずに悩んでいたんです。この短編を書いたことで勇気が芽生えて、これを収録する本は連作にしたくない、と伝えることができました」収録されるのは一話完結だからこそのユニークな設定&展開の作品ばかり。どれも女性陣は逞しく生きていて痛快。一方男性陣は、ホテルで子ども連れの客に翻弄される老作家や、独善的な考えで女性専用車両に乗り込む迷惑男もいれば、女性に協力的な人物も。たとえば「あしみじおじさん」では、秘密裡に貧困女性をサポートしようとする男性が登場。「『あしながおじさん』など小さい頃に好きだった欧米の少女小説の現代日本版をやってみました。大人になって気づいたのですが、ああいう児童小説って、富める者が貧しい者を支えるという、シェアの精神が描かれていたんですよね。明るくて物事をはっきり言う少女が周囲に気に入られるパターンも多かったんですが、あれは持たざる者だって自己主張していいというメッセージだったんだなって思って」印象に残るのはやはり菊池寛。最終話は昭和初期に実在した女性限定のアパートの話で、この建物の喫茶店に出資したのが菊池寛だという。「彼は当時にしては女性に理解があったようです。才能があれば男女関係なく起用したし、出資しても必要以上に口出ししなかった。彼のように、無理に女性を守るヒーローやナイトになろうとせず、“ついでに”存在するくらいのつもりでいたほうが、みんな楽になるんじゃないかな、と思いました」コミカルな展開でさんざん笑わせながらも、古くさい男女観を気持ちよく粉砕してくれる7編だ。柚木麻子『ついでにジェントルメン』編集者の堅苦しい説教に落ち込む新人作家・覚子が出会ったのは、自由すぎる作家・菊池寛の幽霊で――。愉快痛快な7つの独立短編を収録。文藝春秋1540円ゆずき・あさこ2008年に文藝春秋主催のオール讀物新人賞を受賞、’10年に受賞作を含めた作品集『終点のあの子』でデビュー。’15年に『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞受賞。近著に『らんたん』。©文藝春秋※『anan』2022年6月1日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2022年05月29日理想の小顔作りに頭皮マッサージが効くのは今や常識。しかし、やみくもに頭をほぐすよりも、頭がい骨の縫合部にアプローチした方がたるみ改善への近道だと、整体師の吉田佳代さん。「多くの骨から成り立つ頭がい骨の、骨のつなぎ目の部分を“縫合”と呼びます。縫合は歪みやすく、ガチガチになりがち。すると、血流やリンパの流れが滞り、老廃物が溜まり、たるみを招きます。特に、顔は皮膚で頭とつながっているため、縫合部の状態が顕著に表れ、顔の左右のバランスや、シワやほうれい線にも影響します」そんなさまざまな顔のお悩み解消に効果的なのが「縫合ツボほぐし」。頭がい骨の縫合部に沿ってほぐすというメソッドだ。「縫合部分には、美容に効くツボが多数あるので、歪みを解消しながら、ツボを刺激することで高い効果が得られます」頭がい骨には数十の縫合があり、今回はよりマスク老け改善を期待できる5つの縫合部に注目。頭の骨を感じながら、イタ気持ちいい程度の圧を加えるのがポイント。日課にすれば、顔がグングン引き上がっていく!まずは顔の歪みチェックから鏡を見て、今の自分の顔の歪み具合を確認してみよう。差があればあるほど、顔だけでなく、頭がい骨の縫合部も歪んでいる可能性大。左右差チェック頭頂部からまっすぐに下ろしたライン上に、あご先があるか確認。ない場合は、矢状縫合(しじょうほうごう)か前頭鼻骨縫合(ぜんとうびこつほうごう)が歪んでいる可能性が高い。頬の高さチェック左右の頬の一番高いところに指を置いて、高さに差がないか確認。差がある場合は、頬骨上顎縫合(きょうこつじょうがくほうごう)が歪んでいる可能性が高い。目尻の高さチェック目を開いた状態で、左右の目尻に指を置いて、高さに差がないか確認。差がある場合は、冠状縫合(かんじょうほうごう)が歪んでいる可能性が高い。口角の高さチェック軽く微笑みながら、左右の口角に指を置いて、高さに差がないか確認。差がある場合は、鱗状縫合(りんじょうほうごう)が歪んでいる可能性が高い。たるみを改善し、リフトアップ。耳の先端の指2本上から後頭部までをつなぐ「鱗状縫合」。ここをほぐすと、頬が引き上がり、シャープなフェイスラインに。顔全体がリフトアップでき、たるみや口角下がりなど、マスク老けに万能に効くので、まずはこの縫合ツボほぐしからスタート。小顔に効くのは…鱗状縫合ポイントになるツボ率谷(そっこく)…耳の先端から指2本上にあるツボ。顔全体のコリ解消に効果あり!天衝(てんしょう)…率谷から指1本ほど後ろ。頭皮を引き上げて、小顔効果をもたらす。浮白(ふはく)…耳の先端の後ろの生え際から親指1本ほど後ろ。むくみケアに。HOW TO 鱗状縫合ほぐし率谷に小指がくるように、縫合に沿って両手の親指以外の4本の指をあてる。そこから5秒かけて上に引き上げる。さらに縫合に沿って、少し手を後ろにスライドさせて、押す場所を変えて、再度5秒かけて引き上げる。吉田佳代さん整体師。手技療法士等さまざまな資格を持ち、施術実績は6万人以上。サロンのプロデュース、プロ向け技術指導、美容商材の監修にも携わり、近著『たった10秒で小顔になる頭のツボ』(SBクリエイティブ)では、1か所10秒で効果を発揮する頭のツボ押しを紹介している。※『anan』2022年6月1日号より。写真・中島慶子ヘア&メイク・浜田あゆみモデル・パク・メイディ取材、文・鈴木恵美(by anan編集部)
2022年05月28日クマ、シワ、顔のこわばりなど、気になるお悩みを一刀両断! たった10秒で効果てきめん。整体師の吉田佳代さんが、エイジングケアのツボを教えてくれました。ツボの押し方&指の形。指の腹を使い、頭の中心に向かって垂直にツボを押す。1か所のツボをほぐす場合は、両手の指を重ねて行うと、圧をかけやすい。ツボを刺激する時はゆっくりと押すこと。覚えておきたいエイジングケアのツボ5つツボ その1:目窓(もくそう)目のクマや小ジワを一掃。明るい目元で、印象激変!マスク生活で特に目立つのが目元。目の下のクマや目元の小ジワがあると老けた印象に。そんな目まわりをスッキリ整えてくれるのが、「目窓」。目元のトラブルだけでなく、頭痛やめまい改善も期待できる。瞳孔の真上で、生え際から指2本ほど上にあるツボ。HOW TO 目窓ほぐし目窓にそれぞれの人差し指をあてて、7秒かけて押して、3秒かけて緩める。皮膚に対して、垂直に圧をかけるのがポイント。強い力で長く押し続けるともみ返しが起こる場合があるので、心地よいと思える強さで押すこと。ツボ その2:百会(ひゃくえ)ストレスを緩和し、マスク疲れを解消。百のツボの道が交わるという意味を持ち、さまざまな悩み改善に役立つ万能なツボ。自律神経の働きを整える作用があり、マスク生活による顔の疲れを一気に吹き飛ばす。さらにストレスや不眠、頭痛、肩こり解消にも。折った両耳の先端を結ぶ線の中央と正中線が交わる場所。HOW TO 百会ほぐし【STEP1】百会に両手の人差し指を重ねてあてて、7秒かけて押して、3秒かけて緩める。上の指で下の指を押さえるようにして押すのがポイント。1回押すだけで、顔はもちろん、全身も緩み始め、緊張がどんどんほぐれていく。【STEP2】百会に手のひらの中央がくるように、手を“く”の字にして、頭の上にかぶせる。そこから10秒間優しくなでる。ツボの周りが温まっていき、心身ともにリラックスしてくるのを実感でき、ツボ押しと同じ効果が得られる。ツボ その3:巨(こ)りょうむくみ顔がスッキリ。頬が上がり、口角美人に。「笑顔のツボ」「若返りのツボ」とも呼ばれる「巨りょう」は、頬の筋肉を上げる役割があり、パンパンにむくんだ顔をキュッと引き上げてくれる。ニキビ、乾燥肌など肌荒れを防ぐ効果もあり、化粧ノリもUP。黒目から下へ、小鼻から横に引いた線が交わる場所。HOW TO 巨りょうほぐし小鼻の真横に人差し指をあてて押さえる。もう片方の手の人差し指で巨りょうを5秒かけて押し込む。支えにしていた小鼻の横の人差し指を離し、巨りょうを押したまま5秒間キープし、緩める。反対側も同様に行う。ツボ その4:角孫(かくそん)コロナ太りで加速!?目のたるみやほうれい線を撃退。暴飲暴食・運動不足による体重変動や加齢により、目のたるみやほうれい線が気になり始めた人が増加中。フェイスラインの始まりの場所に位置する「角孫」は、目元のハリや表情筋のキープに役立つので、毎日ケアしよう。耳を折り曲げた時、先端にあたる場所にあるツボ。HOW TO 角孫ほぐし両耳の上にある角孫に親指をあてて、ほかの4本の指で頭部を支える。骨を感じるぐらいの圧を1秒加えた後に、1秒押したまま1cmほど引き上げて5秒キープし、3秒かけて緩める。ツボ その5:下関(げかん)フェイスラインのこわばり、もたつき、二重あごに効く。フェイスラインをすっきりさせたいなら、頬にあるツボ「下関」をほぐそう。顔の血行を促進し、老廃物を排出してくれるので、こわばりやもたつきを改善し、弾力のある肌に導く。さらに全身の緊張もほぐす効果も。頬骨の下のくぼみで、口を開けた時に盛り上がる場所。中指の腹を下関にあてて、人差し指、中指、薬指を揃えて頬にあてる。口を軽く開き、息を吐きながら7秒かけて頬全体を耳上方向に押し上げる。息を吸いながら3秒かけて緩める。吉田佳代さん整体師。手技療法士等さまざまな資格を持ち、施術実績は6万人以上。サロンのプロデュース、プロ向け技術指導、美容商材の監修にも携わり、近著『たった10秒で小顔になる頭のツボ』(SBクリエイティブ)では、1か所10秒で効果を発揮する頭のツボ押しを紹介している。※『anan』2022年6月1日号より。写真・中島慶子ヘア&メイク・浜田あゆみモデル・パク・メイディ取材、文・鈴木恵美(by anan編集部)
2022年05月28日長引くマスク生活で、たるみやむくみなど、顔の変化を感じている人が続出中!そこであらゆるマスク老けと速攻サヨナラできる、頭がい骨の縫合部に沿ってほぐすメソッド「縫合ツボほぐし」を伝授。教えてくれたのは、整体師の吉田佳代さんです。顔の左右のバランスを整える。左右の頭頂骨をつなぎ、頭部のセンターライン(正中線)を走る「矢状縫合(しじょうほうごう)」。この縫合部が歪んでいると、顔がアンバランスに。目や口など各パーツのズレが増し、見た目に大きな影響を及ぼすので、しっかりほぐしてシンメトリーな顔をゲット!顔の歪みリセットに効くのは…矢状縫合ポイントになるツボ前頂(ぜんちょう)…髪の生え際から指4本半ほど後ろ。顔のむくみ取りに効果的なツボ。百会(ひゃくえ)…折り曲げた両耳の先端を結ぶ線の中央と正中線が交わる場所。自律神経を整える。後頂(ごちょう)…百会から指2本ほど後ろにあるツボ。不眠に効き、肌ツヤアップ。強間(きょうかん)…後頂からさらに指2本ほど後ろの場所。顔の血行を促進できる。HOW TO 矢状縫合ほぐし【STEP1】前頂の横に小指がくるように、矢状縫合に沿って、両手の親指以外の4本の指をあてる。5秒かけて指を外側にすべらせ、横に広げる。さらに縫合に沿って、指をあてる位置をやや後ろにずらして、同様に横に広げる。【STEP2】矢状縫合を人差し指と中指でジグザグに触り、ボコボコしていたり、硬くなっている箇所を探す。そこが特に歪みが強い箇所なので集中的にほぐす。STEP1と同様に、4本の指で、5秒かけて横に広げる。これを2回繰り返す。吉田佳代さん整体師。手技療法士等さまざまな資格を持ち、施術実績は6万人以上。サロンのプロデュース、プロ向け技術指導、美容商材の監修にも携わり、近著『たった10秒で小顔になる頭のツボ』(SBクリエイティブ)では、1か所10秒で効果を発揮する頭のツボ押しを紹介している。※『anan』2022年6月1日号より。写真・中島慶子ヘア&メイク・浜田あゆみモデル・パク・メイディ取材、文・鈴木恵美(by anan編集部)
2022年05月28日今年1月より2年目に突入した中島健人(Sexy Zone)がMCを務める映画情報番組『中島健人の今、映画について知りたいコト。』。6月3日(金)放送・配信の第18回では『シン・ウルトラマン』の樋口真嗣監督、尾上克郎准監督を迎え、特撮の世界に迫る。その放送・配信に先駆けてWOWOW公式YouTubeチャンネル、番組公式サイトにて、第17回に入らなかった模様が公開された。この度、公開された映像では、岡田准一が『ザ・ファブル』や『燃えよ剣』で実際に使用した銃が登場。中島のリクエストで10㎏超えのガトリング銃の重さを体感する様子、さらにガンアクション体験の未公開シーンや強風の撮影現場での舞台裏、 そして第18回の予告を含むプロモーション動画も公開中だ。本番組は、ハリウッドをけん引する映画監督やクリエーター、さらに世界へ羽ばたく日本の映画監督へのインタビューや、映画制作現場の取材等を通じて、中島が知りたい“映画の今”について学ぶ月1のレギュラー情報番組。第18回では「樋口真嗣監督 独占インタビュー~特撮の技と哲学~」と題し、特撮について学ぶべく、『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』をはじめ数々の特撮映画を生み出してきた樋口真嗣監督へのインタビュー、そして樋口監督をそばで支え、 『シン・ウルトラマン』 で准監督を務める尾上克郎のもとを訪ねた。インタビューでは中島が樋口監督の特撮に対する思いから最新作『シン・ウルトラマン』の裏側まで掘り下げる。中島が必見と語る『シン・ウルトラマン』制作ノートとは?乞うご期待。また、尾上のもとで中島が様々な特撮の技術を体験。特撮によって巨大化する中島もお見逃しなく。この模様をぜひ放送・配信でチェックしてほしい。<中島健人コメント>夢のような時間、そして夢が広がる時間でした。樋口監督と『シン・ウルトラマン』の話をさせていただきましたが、日本中の特撮ファンが痺れるような内容になっております。特撮はヒーロー物というイメージがついていると思いますが、実はそこには深い人間ドラマが描かれており、リアルとフィクションは地続きなのだと感じさせてくれるはずです。尾上さんは僕が大ファンである『パワーレンジャー』の特撮パートを担当されている方です。大興奮のインタビューとなっております。僕、中島健人、巨大化します!!お見逃しなく!!【番組情報】『中島健人の今、映画について知りたいコト。』放送日: #18 樋口真嗣監督 独占インタビュー~特撮の技と哲学~6月3日(金)22:00よりWOWOWプライム、WOWOWオンデマンドにて放送配信毎月第1金曜 22:00〜MC:中島健人(Sexy Zone)ゲスト:樋口真嗣 尾上克郎ナレーション:津田健次郎最新情報は番組オフィシャルサイト及び番組公式インスタグラム、WOWOW映画公式ツイッターにてお知らせいたします。番組オフィシャルサイト: 映画公式ツイッター: 公式インスタグラムアカウント:
2022年05月26日2020年『ザ・ロイヤルファミリー』で山本周五郎賞を受賞した早見和真さんが、新しい著書『八月の母』の執筆の裏側を語ってくださいました。母性という呪いに搦め捕られた女性たちがたどり着いた先には。2014年に、愛媛県伊予市の団地で、凄惨な少女集団暴行死事件があった。犠牲になったのは当時17歳だった少女。「松山に引っ越してから、あの事件を知っているかとよく聞かれました。調べてみると救いのない事件で、そのころの自分では書くことに立ち向かうこともできず、そのまま見て見ぬふりをしました」愛媛には期間限定で住むことを決めていた早見和真さん。愛媛を離れる数年前から、住んでみてわかったこの土地への複雑な思いや、自分の中の宿題だった罪とは何かを問う物語『イノセント・デイズ』に連なる作品を書きたい気持ちが湧き上がり、再び事件に向き合うことにした。だが、実際の事件はあくまでスプリングボード。早見さんが『八月の母』で描き出したのは、母性神話への疑義や、社会通念の罪深さだ。「あらためて報道記事などを読み直してみると、この事件の根幹にあるのは、主犯格とされた女性の母性ではないかという仮説が浮かんだんです。記事の中には、彼女は10代の子どもたちに愛情をかけていたというコメントもあった。いい母親になりたいという憧れと、母になる以外の生き方が許されないような空気と。その鎖に女性たちはがんじがらめになり、連鎖していき、事件は起こさないけれど苦しんでいる女性にはたくさん会ってきました」物語は、とある家族の仲睦まじさを描くプロローグがまず置かれ、続く第一部で、愛娘エリカを授かった喜びに満たされる越智美智子の幼少期の回想から始まる。1977年8月から時系列に沿って、第一部は美智子とエリカの、第二部はエリカとその娘の陽向や愛華、エリカの団地に出入りする紘子たちの関わりが描かれていく。閉塞感のある土地で、女性に生まれてしまったことの因果。3世代の女たちは、そこから抜け出そうとあがくのだが…。やがて、歪な愛憎が暴走した事件が起きる。「社会通念って、女性たちを縛ると同時に、あきらめたり流されたりすることの言い訳にも使えてしまう。愛媛で生まれて育って『ここしか知らない』と言う人と話していて、言葉が通い合わないと感じたことも多かったんですよね。絆や結びつきって肯定的に描かれることが多いけれど、この作品には、決別や分断から生まれる希望を託してみたいと思った。男の僕が母性について語っていいのかという不安は抱えつつ、だからこそ苦しみのシーンをしっかり書いていくほどこのエピローグが生きると思っていました。これまででいちばん手応えを感じましたね」物語全体を覆う重苦しさが、ラスト30数ページで反転する。読んだ人だけが知る、滂沱のカタルシスが待っている。はやみ・かずまさ1977年、神奈川県生まれ。作家。2015年『イノセント・デイズ』で日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)、’20年『ザ・ロイヤルファミリー』で山本周五郎賞を受賞。『八月の母』無垢で無自覚な人々が背負わせた罪を描いた『イノセント・デイズ』。本書もまた、女性ゆえに追い詰められていく悲劇が胸に刺さる。KADOKAWA1980円※『anan』2022年5月25日号より。写真・土佐麻理子中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2022年05月24日臨床心理士として相談者のこころの問題と長年向き合い、またその経験をもとにした著作が話題となるなど文筆業でも注目をされている東畑開人さん。新刊『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』で焦点となっているのは、“自助”の時代の中で、いかに人と繋がるかということ。本書が3月に発売となって以来、東畑さんがさまざまな感想を目にする中で抱いたのは、「これは寂しかった自分に気づく本なのかもしれない」という思いだった。「人は日頃、友達や組織などいろんなものに支えられ、あまり寂しさを感じないように生きているわけですが、ふと寂しくなることがある。その背景に隠されているのは、過去に受けた何らかのこころの傷。どうせ誰もわかってくれないだろうと、普段はその傷が見えないようにきちんとマネージメントしていながらも、やっぱり誰かにわかってもらいたい自分もいる。そういう寂しさとか孤独感が、この本を読んでいると露わになるんじゃないでしょうか」本書は、東畑さんがこれまで行ってきた相談者とのカウンセリングが事例となり、今の時代に生じやすいこころの問題との向き合い方が「7つの補助線」として綴られている。自分をコントロールする方法や人との距離感などのテーマがあるが、いずれも共通しているのは、こころは簡単に白黒つけられないということ。「例えば何か失敗した時に、ストレスを発散してスッキリするのはいいのですが、一方でモヤモヤすることも大切だと思うんです。失敗をモヤモヤ考えることで、それが教訓となり、成長に繋がることもありますから。現代にはどちらか一方に決めようという風潮がありますが、“も”という考え方は、複雑な今の時代を生き抜くために必要だと思います」自分のこころと向き合う営みは人間にとって大切で、その際に役立つ本であってほしいと東畑さんは言う。「同時に、こころの傷は他者との関わり合いの中で癒されるという側面もあって。恋人など信頼できる人と自分の傷をシェアすることで、だんだん修復されていく。そういう相手を見つけるのが難しいという人もいるかもしれませんが、自分に置き換えてみると、誰かに頼られるって案外嬉しくないですか?他者は思うほど恐れる存在ではないんです」『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』SNSなどで広く人と繋がっているように思える今の時代。でも、カウンセリングに訪れる人たちは孤独を抱えていて…。迷子になったこころの見つけ方とは?新潮社1760円とうはた・かいと1983年、東京都生まれ。専門は臨床心理学、精神分析、医療人類学。著書『居るのはつらいよ』(医学書院)で第19回大佛次郎論壇賞受賞、紀伊國屋じんぶん大賞2020受賞。※『anan』2022年5月18日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・保手濱奈美(by anan編集部)
2022年05月15日“東洋の化粧品王”となった男と時代に負けず強く生きた女の物語。高殿 円さんによる『コスメの王様』をご紹介します。「これまでに女性領主・井伊直虎が主人公の『剣と紅』や、江戸末期から昭和にわたる女性3人の物語『政略結婚』などを書くうちに、女性文化の風俗史への興味が深まっていて。それに、私は神戸生まれの神戸育ちなので、神戸の一番いい時期を書いておきたい気持ちもありました」と、高殿円さん。新作小説『コスメの王様』のモデルとなったのは、化粧品会社クラブコスメチックスの前身である中山太陽堂の創業者・中山太一だ。本作では永山利一という名前で登場している。「中山太陽堂は明治期の神戸の花街・花隈で創業しているんです。軽い気持ちで調べ始めたら、実はものすごい人で。女性のためのメイクアップアーティストの専門学校を作ったり、『女性』という雑誌を創刊したりと、フェミニストの走りみたいなこともしている人だったんです」1900年。神戸の花街に売られてきた12歳のハナは、ドブに落ちていた少年を助ける。彼の名前は永山利一。3歳年上の彼もまた、家族のために進学を諦め働いている。経済発展著しい神戸の町で二人は成長していく。そう、本作は利一だけでなくハナも主人公だ。「女性は男性の添え物のような扱いをされていた時代。その事実を歪めることなく、女性を男性の添え物ではない主役として書きたかった。それにこれは化粧品の話ですから、開発に女性たちが関わっていたはず。ハナは架空の人物ですが、こんなことがあってもおかしくなかったという人物像を膨らませました」品質の良さと宣伝の工夫で20代で成功をおさめた利一が大事にしていたのは、ベンジャミン・フランクリンの教訓「十三徳」。「中山太一さんも亡くなるまで実践されていたそうです。その十三徳には、人を恨みすぎてはいけないという内容もある。作中、利一が借金を踏み倒された時に恨み言を言わず真摯な対応をして銀行から信頼を得た話はわりと実話のままです。失敗をプラスの連鎖に繋げる姿勢は私自身も勉強になりました」執筆にあたっては当然、中山太一氏のご遺族にも許諾をとった。「クラブコスメチックスの現社長は太一さんの孫のユカリさん。会社にうかがって、モデルにしたい、でもダブル主人公にしたい、などと説明したんです。そうしたら快く資料室の使用まで許可してくださって。ちゃんとした社史も残っていて、専属の司書さんにも助けられました」苦労もあった。たとえば、太一がヒットさせた洗い粉の原材料にある「ジョッキークラブ」。これが何を指すのかどこにも記述がない。だが当時、他の大会社が香料に注目していたことから香水に着目したところ、アメリカで競馬の開催を記念して作られた香水の名前が「ジョッキークラブ」であることを突き止めた。「あれが分かった時は資料室の方も“100年ぶりに解明できた”と言ってくださって。執筆中にそうした喜びがいっぱいありました」作中ではこの香水のことはさらりと触れられているだけ。たった一単語を書くために、そこまで時間をかけて書き上げられた作品なのだ。男女のW主人公にしたことで、当時の男女格差も浮き彫りになるが、終盤で利一が漏らす本音も刺さる。「男性は男性で辛かったことがあったはず。そこをちゃんと書かないとフェアじゃないですから」幼い頃から惹かれ合う二人の人生はどこへ向かうのか。これがもう、なんとも痛快で沁みる結末が待っている。この後味の良さも、高殿作品の魅力だ。『コスメの王様』明治期の神戸。実直に働く行商の利一は、幼馴染みのような仲の芸妓のハナから無鉛の水白粉が開発されたと聞き、商機に気づく――。“東洋の化粧品王”と呼ばれた男と、自分の道を切り拓いた女の物語。小学館1760円たかどの・まどかテレビドラマ化された「トッカン」シリーズや「上流階級富久丸百貨店外商部」シリーズがベストセラーに。他の著作に『35歳、働き女子よ城を持て!』『グランドシャトー』など。※『anan』2022年5月4‐11日合併号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2022年05月05日いま最注目の体内美容トピックス。ここでは栄養たっぷりでGI値も低い、玄米ご飯に注目します。レンチン玄米ビタミン、ミネラル、食物繊維などを豊富に含むうえ、GI値も低く、ダイエットにもぴったりの玄米ご飯。自分で炊くには時間がかかるけど、レンチン玄米なら数分で完成!ブレンドなどにより食感がいろいろなので、好みのものを見つけて。1、ふっくらやわらかで白米感覚で食べられる。「東洋ライス 金芽ロウカット玄米ごはん」特殊な加工技術により、玄米の栄養をそのままに、白米のように食べやすくしたご飯。ふっくら美味しい食感で、玄米が苦手な人にもおすすめ。消化にも優れているため摂取できる栄養量は多いうえ、白米ご飯と比べて摂取カロリーと糖質は控えめ。150g オープン価格(東洋ライス TEL:0120・61・7550)2、「金のいぶき」は食物繊維も豊富。「からだスマイルプロジェクト 玄米ともち麦3割ごはん」玄米専用品種「金のいぶき」と国産もち麦を味わい黄金バランスといわれる7:3の割合で配合。金のいぶきは栄養の宝庫といわれる胚芽の大きさが通常の玄米と比較して約3倍あるのが特徴。1パックで1日に必要な食物繊維の3分の1以上の、7.5gを摂取できる。150g¥194(日本アクセス TEL:03・5435・5794)3、発芽させた玄米はGABAなどの栄養たっぷり。「ファンケル 発芽米ごはん」玄米を発芽させて栄養価を高めた「発芽米」のパックご飯。炊飯に最適といわれる富山アルプスの天然水を使用し、短時間高温殺菌を行う無菌充填製法を採用。手軽に発芽米の栄養と粒立ちの良さ、ふっくらした食感、炊きたての香りを味わえる。1袋(160g×5パック)¥1,080(ファンケル TEL:0120・750・210)4、玄米らしからぬ甘さともっちもちの食感。「YUWAERU 寝かせ玄米」もちもちの食感がクセになる寝かせ玄米の4種類の味を食べ比べできるセット。写真の黒米ブレンドは甘みが強くカレーにもぴったり。ほかにもっちりした小豆、食べ応えのあるもち麦、プチプチした食感の十五穀米のブレンドも。4種ミックス6食セット(180g×6パック)¥2,280(YUWAERU TEL:0297・63・5565)※『anan』2022年5月4‐11日合併号より。写真・中島慶子料理作製、スタイリング・田村つぼみ取材、文・古屋美枝(by anan編集部)
2022年05月03日“筋トレをする人に人気”というイメージのあるプロテイン食品。実は、体に欠かせないタンパク質を効率よく補給できる便利なアイテム。初心者も、豊富な種類からチェック!タンパク質不足は美容の危機を招く!最近巷でよく見るプロテイン入り食品。筋トレのお供でしょ、なんて思っていたら大間違い。管理栄養士の浅野まみこさんは、全ての人に欠かせない栄養素だと力説する。「プロテイン=タンパク質は筋肉や肌などの材料で、体重の約15%を占めます。しかし時短で簡単な食生活の人や、特に少食になりがちな女性は摂取量が不足しやすい。タンパク質が足りないと筋肉が減ったり、肌や髪、爪がボロボロになることも」タンパク質不足を防ぐには、毎日何をどのくらい食べればよいのか。「成人女性が1日に必要なタンパク質の目安は、体重1kgあたり1gで、体重50kgの人なら50g。食材で考えると、1日に鶏胸肉皮なしで約200g、卵なら8個とかなりの量。もちろん食事から摂るのが理想的ですが、毎日続けるのは難しいかもしれません。タンパク質不足だと感じたら、吸収率がよくなる朝の食事や運動後のおやつに、プロテイン食品を取り入れるのもよいと思います」プロテインひろこさん太鼓判。初心者におすすめの鉄板プロテイン!食べやすくて美味しくて続けやすい。数あるプロテイン食品の中でも代表的な3タイプの中から、プロテインひろこさんのお気に入りを教えてもらいました。ドリンクタイプパウダーを水や牛乳で溶くだけ、忙しい朝のごはんにぴったり。高コスパ商品や、初心者向けに登場している少量タイプも試しやすい。A、タマチャンショップ「タンパクオトメ」ホエイとソイのプロテインを配合。「ヨーグルトに混ぜたりコーヒーで割るアレンジも」(ひろこさん)。1食15gあたりタンパク質11g以上、56kcal。すこやか朝バナナ260g¥2,980(タマチャンショップ TEL:0120・385・246)B、ハリウッドコスメティックス「ソイプロビューティ」大豆プロテインとそら豆プロテインをブレンド。「100%植物由来成分で白砂糖、香料フリー」。1食20gあたりタンパク質10g、77.4kcal。レギュラー 200g¥3,780(ハリウッド化粧品 TEL:0120・430334)C、武内製薬「THE PROTEIN」ホエイプロテインを採用。「価格が高騰しているホエイ。こちらは高コスパなので続けやすいはず」。1食30gあたりタンパク質22.5g、119kcal。ロイヤルミルクティー 1kg¥2,980(武内製薬 TEL:03・6804・6659)バータイプ持ち運びに便利だしそのまま食べられるので、おやつ代わりに。カロリーはそれなりにあるので、1日1本までにするべし。A、丸菱関東販売「A SOYCHOCOチョコレート味」甘味としてラカントを使用。「大豆パフのザクザク食感で食べ応え抜群。糖質を抑えたい人におすすめです」。1本あたりタンパク質12g、150kcal。¥181*編集部調べ(丸菱関東販売 TEL:03・6712・4016)B、トップバリュ「プロテインバー シリアルチョコ」女性に嬉しいコラーゲンや鉄も配合している。「プロテイン業界で衝撃の高コスパアイテムを輩出したブランド」。1本あたりタンパク質15g、187kcal。FORビューティー¥138(イオン TEL:0120・28・4196)C、クレバー「チョコがおいしいプロテインバー」ホエイとソイのプロテインを使用。「糖質控えめ。焦がしバターとローストアーモンドの香ばしい味」。1本あたりタンパク質15g、206kcal。ビターチョコレート¥194(ネイチャーラボ TEL:0120・199・511)スープタイプ食事にプラス1してタンパク質を補える、優秀アイテム。冷凍野菜やオートミールをプラスすれば、立派な主食に早変わり。A、アサヒグループ食品「スリムアップスリム野菜ポタージュ」21種類の野菜の旨味が生きる。「栄養たっぷりなので、おきかえ食や+1アイテムに」。1食60gあたりタンパク質27g、191kcal。360g¥2,262*編集部調べ(アサヒグループ食品 TEL:0120・630611)B、ポッカサッポロ「きちんとチキン 鶏だし白湯スープ」鶏ムネ肉具材入りで大満足。「私はオートミールやモズクをちょい足しして、よく食べています」。1食あたりタンパク質10g以上、85kcal。¥216(ポッカサッポロフード&ビバレッジ TEL:0120・885547)C、マッスルデリ「プロテインコーンスープ」コーンの風味がしっかり。「とろり濃厚で、ホット、アイスどちらも美味。ギフトにしても喜ばれます」。1食あたりタンパク質15.1g、103kcal。7食セット¥2,268(マッスルデリ TEL:03・6555・5029)浅野まみこさん管理栄養士。株式会社エビータ代表。経験を生かし、食のコンサルティング、商品やレシピの開発、講演などを行う。著書『コンビニ・ダイエット』(星海社新書)は、健康的に痩せたい人の必読書。※『anan』2022年5月4−11日合併号より。写真・中島慶子取材、文・風間裕美子(by anan編集部)
2022年04月29日フジテレビではこの夏、「Hey! Say! JUMP」中島裕翔と吉川愛が初共演する新木曜劇場「純愛ディソナンス」を放送することを決定。中島さんが教師役に初挑戦し、吉川さん演じる女子生徒との禁断の関係を描く、純愛×ドロドロエンターテインメントとなっている。原作のない完全オリジナルとなる本作は、新任音楽教師と生徒との純愛を軸にストーリーが進んでいく。しかし、2人の純愛は常にタブーと背中合わせであり、次第に周囲を巻き込み、やがて“ディソナンス=不協和音”となり、ドロドロな展開を生み出していく。前半はとある高校が舞台。中島さん演じる新任音楽教師・新田正樹がやってくるが、校内では正樹の前任教師の失踪事件で大きく揺れていた。出勤前夜、音楽室でピアノを弾いていた正樹は、あることから逃げる生徒・和泉冴(吉川さん)と出会う。冴は、自身が副担任を務めるクラスの生徒であり、失踪事件を通して徐々に絆を深めていく。特別な感情をお互いに抱きつつも、本心で向き合えないまま決別。しかし、ひょんなことから5年後に再会。冴は成人を迎え、2人の間には障害は何も無いはずだったが、正樹には妻がいたのだ。5年後の舞台では“セカンドパートナー”という昨今話題となっている新しい概念も加わり、より複雑な関係性を生み出していく。青春と恋とサスペンスを描く第1部、恋と仕事における女同士・男同士のバトル、様々な思いが交差する大人の人間模様を描くその後の第2部と、2つの時系列を舞台に描く。闇を抱えた新任教師・新田正樹を演じる中島さんは「周りから見ると一見フレンドリーなのですが、どこか壁を作っている役」と役柄を説明。新田の心の闇を見抜く、複雑な家庭環境で育つ多感な高校2年生・和泉冴役の吉川さんも「本来はピュアで頭のいい子なのですが、家庭の事情だったり学校で起きている問題だったりが影響して、裏に何か秘めたものがある女の子。芯の強さがありますが、どこか弱い部分を持っている」と自らの役どころを明かす。また、中島さんは「2人がどういう関係性になっていくのか、そして2人の関係が周りにどのような影響を与えていくのかが見どころになっています」とアピールし、吉川さんは「見ているといろいろな感情が湧く作品だと思います。単純に面白いと思ったりもすれば時にはイラッとしたり、別のシーンではドキッとしたり…最初から最後まで、どういう展開になるのかなと次がどんどん楽しみになる物語」と話している。新木曜劇場「純愛ディソナンス」は7月、毎週木曜日22時~フジテレビにて放送開始予定。(cinemacafe.net)
2022年04月26日人生の先輩的女性をお招きし、お話を伺う「乙女談義」。4月のお客様は、料理愛好家、シャンソン歌手の平野レミさん。第4回目は子育てと、年をとってからの過ごし方についてです。夢中になれるものを持つって、大事ですね。寄り道が多い人生は、豊かだと思います。もう2人とも結婚しましたが、私たち夫婦には2人の息子がいます。上の子は、試験前日なのにギターを抱えて制服のまま寝ちゃうような子、一方、下は、塾も留学も一人で決めてしまう、ほっといても勉強をするような子。長男がバンドでデビューしたときに和田(誠)さんが、「あのとき“勉強しろ、勉強しろ”と言ってたら、彼の人生はこんなおもしろいものにならなかったかもしれないよ」と言ったのを聞いて、そうだな、と思いました。人生のゴールが先にあるとして、障害物のない高速道路を最速で進むパターンもあるけれど、高速道路の下には田んぼとかあぜ道とかがあって、そこには蝶が飛んで花が咲いていて。それを見ながらゆっくりゴールに辿り着くのも、ありだと思う。いろんな経験を背負って歩くことで、人の痛みがわかる人間になれるかもしれないし。子育てで大事なのは、親がレールを敷かないこと。放っておくほうが、自分の道を自分で見つけるものです。一人になった今からが、平野レミの第二章。最愛の夫である和田さんが亡くなり、今年の秋で3年。いつでも会いたくて、「どこに行っちゃったの?」と思っています。同時に、この気持ちはいつかは消えるのかしら…と思いますが、それこそ大昔から人間は、最愛の人を失った悲しみや苦しみと闘ってきたのよね。人は、一人で生まれ、一人で死んでいくもの。その意味が今、本当にわかります。もちろん今も悲しいけれど、でもそういう意味では、私の人生はここからかな、と思います。これまでの私は半人前だった。これからの人生は、一人前になるためのものなんでしょう。やりたいことといえば、やっぱり歌。とはいえ年をとったからか、声がガラガラになっちゃったのよねぇ。そういえばお友達の森山良子ちゃんは酔って歌ってもコロコロといい声が出るの、羨ましい(笑)。でも歌はいいわよ、心が豊かになる。年をとって一人になっても夢中になれるものがあるのは幸せよ。みなさんもぜひ、そういう何かを見つけてね。ひらの・れみ料理愛好家、シャンソン歌手。主婦の経験を生かし、テレビや雑誌で数々の料理を発信。新著に子育てと料理についてのエッセイ&レシピ集『おいしい子育て』(ポプラ社)が。※『anan』2022年4月27日号より。写真・中島慶子(by anan編集部)
2022年04月23日アイドルグループ・Sexy Zoneの中島健人、菊池風磨、YouTuberのHIKAKINが22日、都内で行われた「新スーパードライミュージアム in 東京ミッドタウン メディア発表会」に出席した。“スーパードライ生ジョッキ缶”のCMに出演中の中島と菊池、“新スーパードライ”のタイアップ動画を公開中のHIKAKINをゲストに迎えて行われた発表会。冒頭、中島は「ビールはスーパードライ、僕はセクシーダイナマイト、中島健人です。よろしくお願いします」、菊池は「二十歳を超えて初めていただいたお酒はアサヒスーパードライでございます。菊池風磨です」とそれぞれ挨拶。HIKAKINは「こんなイケメンの並びで立ったことことないので僕だけすごい緊張して入ってきました」と話した。イベントでは中島と菊池による「『新スーパードライ』セクシー辛口注ぎ対決」を実施。ビールサーバーからグラスにビールを注ぎ、どちらがビールと泡の黄金比率「7対3」できれいに注げるかを競い、最後に決めの一言も。判定はHIKAKINが任された。菊池は「僕ら2人CMもやらせてもらっていますし、一番大変なのはHIKAKINさんだと思います。すごい接戦になっちゃうと思うので」とコメント。HIKAKINは「ビールサーバーで7:3って」と難しいだろうと想像するも、菊池は「これができちゃうんですよ。いきなりいけちゃいますから」と自信満々だった。先行の中島は、丁寧に仕上げて「俺のスーパードライに酔いしれてみない?」と一言。菊池は「かっこいいな」とつぶやいた。そして、中島が「手の震え止まらない」と打ち明け、「こういう弱みを見せていくところもセクシーキュート」と言うと、菊池は「セクシーキュート入りました! なかなか出ないですから、セクシーキュートは」と伝えた。菊池も真剣にビールを注ぎ、最後は「セクシーダイナマイト」と中島の決め台詞を用いてコメント。「なりたいんだから、中島さんに」と言うと、中島は「ありがとう。うれしい、メンバーとして」と笑顔を見せた。HIKAKINによる判定は、菊池の勝利。「泡を入れるまでの迷わない感じとか、泡がふんわりしていたりとか。(中島は)ちょっと震えをごまかしたりしていたのでマイナスが入っちゃって」と説明すると、中島は「僕の手のバイブレーションは抑えられなかった」と話して笑い、菊池は「ずっとかっこいい」とにやり。さらに菊池が「僕、中島さんのセクシーダイナマイトいただいていいですか?」とお願いすると、中島は「ダイナマイト贈呈します」と快諾。菊池は「今日から僕がセクシーダイナマイトです。襲名式になっちゃいました」と喜んでいた。アサヒビールは、主力ブランド「アサヒスーパードライ」のフルリニューアルに合わせ、日本全国を巡る“新スーパードライ”のプロモーションを展開中。“新スーパードライ”を最高の品質で届けるために全国キャラバン中の「スーパードライミュージアムカー」、日本列島の空を周遊中の飛行船「新スーパードライ号」がいよいよ東京へ。4月22日~26日の5日間、関東エリアで見られる。
2022年04月22日戦争の極限下で異質な他者と出会い、人はどう変わるのか。古市憲寿さんによる、極上純愛小説『ヒノマル』。「この2年で、自由というのは脆いものだと痛感しました。ある出来事をきっかけに社会の空気はがらりと変わってしまうし、当たり前だと思っていた“自由”という権利すら、突然奪われてしまう。それが、またすぐに『いまはしょうがないか』と当たり前の形が変わって、いつの間にか窮屈さが増していくことだってあり得ますよね。そんなときに、社会の要請に従順に従うのか、徹底的に抗うのか。ただ、それ以外の第三の道というのはあるんじゃないのかなと思うんです」『ヒノマル』の舞台である戦時下と、コロナ禍にあるいまの状況に共通点を感じたという古市憲寿さん。「たとえば戦時下にも『不要不急』というスローガンがあったんです。そんな非常時だからこそ書けた物語かもしれません。戦争に対して、あるいはコロナウイルスに対してどう向き合うか。価値観が極端に対立していたり、親しい人同士でも本音と本音をぶつけ合えなかったり。そんなふうに疑心暗鬼になってギスギスした空気が蔓延する時代に、人と人はどうすれば信頼し合い、共に行動できるのかを考えたかったんです」主人公は、国家のために命を捧げたいと考えている軍国少年の新城勇二。ある日、中学の同級生で親友の小針啓介から〈魔女退治に行かないか?〉と誘われる。観音山公園内の洞窟に魔女が住んでいると噂があるのだ。探しに行くと、ひっそりとした洞窟に〈秘密の図書館〉を作っていた美しい女の子が現れて…。一ノ瀬涼子と名乗った彼女は、歴史学者の娘で、勇二より1学年上の高等女学校生。勇二は、「日本は負ける」と主張する涼子に反発を覚えながら、無意識に惹かれていく。だが、彼女は兄・優一の恋人だった。「聡明な兄と、国の教育のまま軍国少年になってしまった弟、リベラリストで自由奔放な女の子。いわゆる三角関係の物語なんですが、戦争中の物語なのでどうしても事件が起こるんです。兄が徴兵されたり、非国民呼ばわりされたり、空襲に怯えたり。極限状態で人はどうなるのか」第1稿のときの勇二は、国の勝利を疑いもしないような人間だったそう。書き直すうちに、内心では理知的な大人たちの言説を否定できなくなっていく“二重性”を、にじませるよう意識した。「勇二の正義感のゆらぎをどう書くかが、いちばん気を遣ったところですね。涼子は涼子で気ままに振る舞いすぎて、周囲とハレーションを起こしていますが、優一や勇二らとの交流を経て少し変わった部分もある。異質な他者との出会いによって人はどう変わるのか。それを見つめるのが大きなテーマでした」極限を苦悩しながら生きる若者たちの姿が描かれるが、読み心地は存外に明るい。「確かに重苦しい時代ですが、戦時中には戦時中なりの青春はあったと思うんです。たとえば、勇二らは勤労動員で軍需工場に行かされますが、夜中に涼子たちがいる女子寮に忍び込んだりします。実際にあったエピソードを参考にしたのですが、どんな大変な時代に生まれたとしても、楽しみ方はある。それは現代にもいえる話だと思います」本書には、機転が利いて要領よく立ち回れるような人物も多く登場するが、そんな人間でも時代の常識から完全に逃れるのは難しい。「ただそうした束縛を突破できる力があるとすれば、『自分や大切な人を守りたい。一緒に幸せになりたい』しかないのかなと。そんな思いを込めた作品です」シンプルだが力強いラストの一文まで、一気読み必至の大ロマンスだ。ふるいち・のりとし1985年、東京都生まれ。社会学者。同世代の視点からの新たな若者論『絶望の国の幸福な若者たち』で注目を浴びる。2018年に初小説『平成くん、さようなら』を発表し、コンスタントに作品を書き続けている。近著に『楽観論』など。『ヒノマル』物語は昭和18年、戦争の只中にある日本から始まる。大学生だった優一は学徒出陣で徴兵され、勇二らは勤労動員で駆り出される。重苦しい束縛をかいくぐり、青春を駆け抜ける彼らのたくましさが希望だ。文藝春秋2200円※『anan』2022年4月20日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2022年04月19日立春や立冬など二十四節気ごとに独自の行事がある藤巻家。この風変わりな家族の4世代にわたる物語が、瀧羽麻子さんの『博士の長靴』だ。「最初は編集者さんと、理系の人を書こうと話していたんです。家族というテーマにも興味があったので、理系の学者を軸とした家族の物語になりました。数世代の話にすることで、時代や価値観、家族観の変化も書けたらいいなと思っていました」第1章の舞台は1958年。スミが奉公する藤巻家の息子・昭彦は気象学の研究者。いつも空を見上げてばかりのちょっぴり不思議な青年だ。「空のことで頭がいっぱいで、地上のことにはあまり興味がない人、というところからイメージを膨らませていきました」そんな彼もやがて結婚し、子どもが生まれ…。令和に至るまでの藤巻家が描かれるが、各章の視点人物は家庭教師や隣人の主婦など、主に家族外の人物である。「家族の外の人から見たほうが、この一家の不思議なところ、面白いところがより鮮やかに伝わるかなと」章を進めるごとに親子の関係も変わっていく。時にはすれ違ったり、疎遠になったりすることも。「家族の中でも変化ってありますよね。小さい頃は反発していても、大人になるにつれ親心が分かったり、子どもが生まれてメンバーが増えて関わり合い方が変わったり」また、時代が進むにつれ、家族観や女性の生き方、さらには、研究に対する考え方の変化も見えてくる。「藤巻博士のように学問を追究する人の根っこには“知りたい”という情熱があると思うんです。でも最近は、学問でも“人の役に立つか”どうかが重視されるようになってきていますよね。そのバランスに悩む人も登場させました」そんななか、博士はいつだって人の好奇心を肯定してくれている。「年を経て多少は円熟しつつも、芯はぶれないイメージです(笑)」天気も時代の流れも家族内の関係も、時に望むようにはいかないが、「自分でどうしてもコントロールできないことってある。そのなかでどう生きていくか、考えて工夫していくしかないのかな、と。書き上げてからようやく、そうしたことが描きたかったのかなと気づきました」温かくおおらかなこの物語をぜひ。たきわ・あさこ1981年、兵庫県生まれ。2007年『うさぎパン』でダ・ヴィンチ文学賞大賞受賞。著書に『左京区桃栗坂上ル』『うちのレシピ』『ありえないほどうるさいオルゴール店』など。『博士の長靴』二十四節気ごとに行事のある藤巻家。一人息子の昭彦は天気の研究に情熱を傾けた人。そんな彼から始まる家族4世代を描く連作短編集。ポプラ社1650円※『anan』2022年4月20日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2022年04月18日・ちょっと怖いですが、美しい。・すごく幻想的。・一瞬ホラーかと思ったけど、かっこいい!一部のファンからそんな声が寄せられたのは、歌手の中島美嘉さんの投稿です。2022年4月15日、中島さんが投稿したのは、自身が写る2枚の写真。「先日の私」というひと言とともに投稿された写真が、こちらです!※画像は複数あります。左右にスライドしてご確認ください。 この投稿をInstagramで見る 中島美嘉(@mikanakashima_official)がシェアした投稿 中島さんが公開したのは、ロングヘアを細かく編み上げるヘアスタイル『コーンロウ』を2つに束ね、シルバーのアイラインを引いた写真。ファンをざわつかせたのは、おそらく、暗い部屋の隅に体育座りする中島さんの姿でしょう!笑顔ではありますが、家具も明かりもない部屋の隅に座り込む中島さんは、確かにホラー要素が強いように感じます…!独特なファッションでメイクでミステリアスな雰囲気を放ち、美しい歌声で多くの人を魅了してきた、中島さん。今後の中島さんの活躍にも、期待が高まりますね。[文・構成/grape編集部]
2022年04月17日人生の先輩的女性をお招きし、お話を伺う「乙女談義」。4月のお客様は、ご主人とのおしどり夫婦ぶりも有名だった平野レミさん。その出会いもなかなか衝撃的&ユニークです。そして今の仕事に就くきっかけもご主人だったそうで…。第3回目をお届けします。出会って10日で結婚。和田誠さんの魅力は…。ラジオで聴いた私の声を見(聴き?)初め、知り合いの番組スタッフを通じて食事に誘ってくれた男性が、私の夫になったイラストレーターの和田誠さん。それまでいろんな男性とデートをしていたけれど、和田さんが登場したとき、「この人だ!」って感じだった。私たち、出会って10日で結婚しちゃったの。本当に全部が素敵な人だった。特に、足の裏が大地にビタッとくっついていて、動じない感じがあったのが良かった。口数は少ないけれど言葉が知的で、品が良く、私の父ともきちんと話ができる人だったわ。実は和田さん、私がラジオで共演してた久米宏さんにも、私を紹介してくれって頼んだらしいんだけど、久米さんは「和田さんが一生を棒に振ることになるから、僕は紹介できない」って断ったんだって。でも随分後に和田さんに、「私との結婚、合ってた?」って聞いたら、「合ってた」って(笑)。久米さんに断られたときに諦めないでいてくれて、よかったわ。料理の道に進んだきっかけは、一本のエッセイ。今の仕事を始めたきっかけも、和田さんにもらったようなもの。昔、毎週金曜日になると和田さんの友達が我が家に遊びに来るので、私がせっせと料理を作って食べてもらっていたのね。その中に八木正生さんという食通の音楽家の方がいて、彼から、『四季の味』というグルメ雑誌のリレーコラムを書かないか、と誘われたの。もちろん私は断ったんだけど、「レミちゃんの料理は簡単でウマい。そういうのがいいんだよ」と…。根負けして、読んですぐ作れるような、“聞いただけでできる料理”みたいなことをいろいろ書いた。そうしたらテレビ局や出版社から、「そういうのをやってください、書いてください!」と連絡が来て、私は“平野レミ”になっちゃった。私は料理が好きで、結婚後は和田さんに料理を作ることが、私のやるべきことでした。好きなこととやるべきことが同じで、なおかつそれをいいと言ってくれる人がいた。幸せな人生をもらっちゃったな、と思っています。ひらの・れみ料理愛好家、シャンソン歌手。主婦の経験を生かし、テレビや雑誌で数々の料理を発信。新著に子育てと料理についてのエッセイ&レシピ集『おいしい子育て』(ポプラ社)が。※『anan』2022年4月20日号より。写真・中島慶子(by anan編集部)
2022年04月16日在宅時間が増えたこともあり、書店での売れ行き好調が続いている大人向けの学び直し本。多数ある中から梅田 蔦屋書店の人文コンシェルジュ・三砂慶明さんが厳選する、いま読みたい学び直し本を教科別にご紹介。生きるために必要な知識を改めて身につけよう。ブックコンシェルジュの三砂慶明さんによると、書店における“大人向けの学び直しブーム”は2015年頃始まったそう。学習参考書と、大人向けの学び直し本が、それぞれ別軸からヒット作を出し始め、流行になったとか。「コロナ禍で在宅時間が増えたこと、また不安定な世の中への不安と向き合うために、より本質的なことを学びたいというニーズが高まっているような気がします」進学ではなく、よりよい人生を生きるための勉強。それが大人の学び直しの目的だ、と三砂さん。「メールを書いたり、上司と話をするのに国語は必要ですし、実は数学だって必要です。また知識を得ると世界への理解が深まる。社会で生きていくために、自分に必要な、武器になる知識を、学び直しを通じて身につけられるといいのではないかと思います」国語日頃使う言葉や文章を、より良くできる2冊。話す、書く、読むなど、日常生活を送る上で最も大切なのは、国語力。あらゆる場面で根本的に問われるこの国語力を、普段使うような言葉を使って学んだり、磨いたりできる。『三行で撃つ〈善く、生きる〉ための文章塾』近藤康太郎「著者は朝日新聞の編集委員。文章を書くにあたり、ステレオタイプの表現を使わずに、いかに自分の言葉で言語化するかを掘り下げた本」。1650円(CCCメディアハウス)『増補版大人のための国語ゼミ』野矢茂樹「演習を解いて、国語力を鍛えていくタイプの参考書。国語の教科書は名文を使ったものが多い中、私たちが普段使うような言葉を例題にしているのが素晴らしい」。1980円(筑摩書房)数学中学で脱落した人でも絶対学び直せます!つまずいたり、投げ出しがちな教科No.1といえば数学…。でもその“わからない”を理解している人が書いた本であれば、かつての劣等生でもわかる教え方で、しかも励ましながら学ばせてくれる。『語りかける中学数学』髙橋一雄「数学のつらさに何度も涙を流してきた著者が、塾で教えた経験をもとに、語りかけるような口調で書いた中学数学のバイブル。正解だけでなく、誤答例が白眉」。3190円(ベレ出版)『東大の先生!文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!』西成活裕「著者は東大の渋滞学の教授。大人の学び直しは、中学数学レベルがわかればOKと説き、3年分の数学を約6時間に圧縮。中学時代に知りたかった」。1650円(かんき出版)社会理解させる力が強い教師の本に注目。いま社会で起きていることを深く知るには、歴史、そして地理の知識を身につけることは必須。体系を知ることで、“なぜそうなったのか”が理解でき、よりこの世界に興味が湧いてくる。『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』山﨑圭一「年号を使わず、地域ごとに歴史をまとめた入門書。著者は公立高校教師で、まるで一つの物語のように古代史から現代史までがつながる」。1650円(SBクリエイティブ)『一度読んだら絶対に忘れない日本史の教科書』山﨑圭一「世界史が人気で、第2弾として出たのがこちら。天皇や将軍、総理大臣など政権担当者を主人公に、1つの物語として日本史を把握できる」。1650円(SBクリエイティブ)『激変する世界の変化を読み解く教養としての地理』山岡信幸「予備校で地理を教える著者が、地理は暗記科目ではないと説き、因果関係や背景から教えてくれる学び直し本。世界の今とこれからが見えます」。1793円(PHP研究社)三砂慶明さん梅田 蔦屋書店 人文コンシェルジュ。大学卒業後、株式会社工作社などを経てCCC株式会社入社。梅田 蔦屋書店の立ち上げから参加。著書に『千年の読書 人生を変える本との出会い』(誠文堂新光社)がある。編著『本屋という仕事』(世界思想社)を上梓予定(5月下旬)。※『anan』2022年4月20日号より。写真・中島慶子(by anan編集部)
2022年04月16日家具が記憶した人の営みの気配を掬い上げ手渡していく、被災文学。清水裕貴さんによる、小説『花盛りの椅子』。「東日本大震災のあと、壊れた家の中にぽつんと置かれたままの家具などを被災地で見かけ、何か気配がするというふうに感じていました。それが意外と記憶に残っていて」その後、何年も経ってから親族が急死したために清水裕貴さんはマンションの後片付けなどを請け負う。そのときふと、それらの記憶が結びついた。「たとえば壁紙を剥がしたら、叔父の、さらに前の住人が貼った壁紙まで出てきて、部屋の中に歴史の層ができていたわけです。生活の痕跡を垣間見て、『被災地で見た傷だらけの家具の中にも生活の痕跡って膨大にあっただろうな』と。それで、家具の気配を感じる人や家具職人を交えた物語を書きたくなったんです」『花盛りの椅子』の主人公は、古家具を修理したり大きく作り直したりして販売する「森野古家具店」で働く〈鴻池さん〉だ。勤め始めて9年が経つが、リメイク職人としてはまだまだで、日々職人たちのアシスタントや事務仕事をこなしている。「人って災害のような大きな悲劇を、そんなに簡単に自分の中で処理できないと思うんですね。鴻池さんは『世界はこうあってほしい』とかがあまりない人で、空っぽだからこそ、死者のすごく小さな声や、ささやかな痕跡に気づけるのかなと思って。すごい長い時間をかけて物事を考え、静かなメッセージを受け取れる人に設定したという感じですね」津波にさらわれたのちに森野古家具店に持ち込まれたアンティークの椅子と、鴻池さんの不思議な縁。台風で水浸しになった箪笥のリメイクがなかなか完成しない本当の理由。豪奢な古民家の襖に宿る、一族のつらい歴史。家具が有機物のように人と人とをつなぎ、人の心の柔らかな部分に触れてくる。「小説内でも書きましたが、普通の古家具屋なら扱わないレベルの損傷具合です。その分、幻想譚として書けたところもあります。人間はどうしても忘れてしまうし、代謝するし、動く動物の忙しなさが虚しく思えることがあって。でも家具なら、その部屋の中にとどまっている。生活の些末なことさえずっと覚えてくれているとしたら、とてもいじらしい存在ではないかと感じるんですよね」本を閉じてなおさまざまな感情が湧き上がる。すばらしい小説集だ。清水裕貴『花盛りの椅子』リメイクを待つ家具をモチーフに描かれる、連作短編集。ヒロインだけでなく、家具店の社長や、常連客、腕利き職人たち…、魅力的な人物が活躍する5編。集英社1980円しみず・ゆき1984年、千葉県生まれ。武蔵野美術大学卒。2016年、三木淳賞受賞。著書に「女による女のためのR‐18文学賞」大賞受賞作を含む短編集『ここは夜の水のほとり』(新潮社)。撮影:村松聡※『anan』2022年4月13日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2022年04月12日もっとも簡単に運を呼び込む方法、それはラッキーモチーフを持つこと!ということで、可愛くて、なおかつ取り入れやすい幸運アイテムをご紹介。身につけたり、持ち歩いたり。日々一緒に過ごせば幸運度が上がりそう。この春、身につけたい!ラッキーモチーフ7【鍵】幸運を招く扉を、この鍵で開けましょう。“扉を開ける”アイテムとして、幸福を招くとされてきた鍵。また“閉じる”機能から、ヨーロッパでは古い鍵を魔除けとして身につける習慣もあったそう。こちらは18世紀のイタリアの教会の鍵をかたどった、シリコン製のキーホルダー。KEY key chain 全長約20cm各¥2,200(Areaware/ビームス銀座 TEL:03・3567・2223)【唐辛子】中国とイタリアで愛される開運モチーフ。中国では、“赤”は魔を払いのける色とされ、唐辛子は開運のモチーフとして人気。イタリアでは紀元前から“コルノ”という動物の角が幸福の象徴とされていて、それに似ている唐辛子も同様に扱われる。レトロ&サウスウエスト バンダナ 53.6×52.6cm¥1,320(HAV‐A‐HANK/ビームス 銀座)【月】その神秘的な魅力は時代を超え愛される。満ち欠けによって形を変える、神秘的な月。海外では月は女神に例えられ、優しさや母性を引き出すモチーフとして知られている。アクセサリーとして人気の月ですが、プリントされたアイテムも素敵。ホリゾンタルダックバッグ ムーン1990 W43×H31.7×マチ10.8cm¥6,380(BAGGU/ピクニック TEL:03・3469・1930)【ツバメ】幸福を呼び、運ぶツバメ。美しい形も愛される理由。日本では「巣を作ると、その家には幸運が訪れる」といわれることもあるツバメ。オスカー・ワイルドの小説『幸福な王子』でも、ツバメは幸福の使者として描かれるなど海外でも親しまれている。真鍮でつくった燕のブローチW2.3×H0.8cm¥6,050(中川政七商店)【蹄鉄】幸せを受け止め、そして与えるモチーフ。馬の蹄を守るために足に打ち付ける、蹄鉄(ホースシュー)。ラッキーチャームになった由来は諸説ありますが、Uの開いた側を上に飾ると幸福を受け止められる、ということや、逆に飾ると他者に幸福を与えることができる、なんて話が。K18YGホースシュー ダイヤモンド リング¥52,800(ete TEL:0120・10・6616)【ウサギ・フクロウ】ラッキーモチーフの傘があれば雨の日も楽しく過ごせる?世界的には知恵の象徴として知られるフクロウ。日本では“福が来る”や“不苦労”とも。またウサギは、海外ではその多産の性質から“子孫繁栄”、日本では跳ぶことから“飛躍”の意味でも愛されている。そんなモチーフをハンドルにした折り畳み傘 各¥13,200(Guy de Jean/オルネ ド フォイユ)※『anan』2022年4月13日号より。写真・中島慶子スタイリスト・古瀬絵美子(by anan編集部)
2022年04月11日1000年以上も前から人々の生活と共にあった「暦(こよみ)」。日々の営みを支え続けてきた古来の知恵を現代風に読み解き、今を生きる私たちにも役立つように解説しました。教えてくれたのは、運命学研究家・C.I.さんです。いつ、何を行うか。「よいタイミング」を知る。どんな日にも宝石のカットのように多面的な意味があり、その中でも強調されるテーマがあります。暦を活用するとは、それらの意味に応じて上手に立ち回るということです。そして大事な一日がどんな日なのかを知るのと同じくらい重要なのが、その日にアクションを起こすとその後どうなるのかを知ることです。いつ何を行うか、そのタイミングが未来を左右します。中長期的な展望と、背景事情を考えてみよう。まずは「今日の全体傾向」を軸に、行動が先々に及ぼす影響を知りましょう。暦の働きは当日中にすべて現れるわけではなく、その日を起点に積み重ねられます。特に中長期の予定を立てる際は、目的に近い内容の日を選ぶことが肝心です。また、忘れがちですが出来事の背景や事情にも目を向けましょう。そうすることで客観的な視点に気づけますし、現状に対する理解が進みます。そのうえで今を受け入れたなら、自然と明るい見通しを持てるようになるでしょう。4月の全体傾向をご紹介します!4月の指針新しい人間関係に伴うコミュニケーションが課題となる月です。周りにうまく溶け込めずドギマギしている人がいたら、優しく手を差し伸べてあげましょう。新入生や新入社員など新しく来た人の話によく耳を傾けることが、結局は全体の調和につながります。集団心理が大きな影響をもたらしやすい月ですので、周りの意見に流されずに、まずはしっかり自問してみるとよいです。今日の全体傾向は?6日(水)純真さや優しさ、温和な人柄が評価されやすい日です。といっても、それを狙ってやろうという目論見はうまくいかないでしょう。これは生まれ持った性格や長年の意識的な言動の結果として、無意識に自然と表れる振る舞いだからです。部下や後輩を優しく導き、手を貸してあげましょう。やがてその恩恵はあなたに返ってきます。7日(木)これまでの業績や立ち居振る舞いによって自然とトップに立つことになったり、精神的・指導的な支柱として頼られたりする人を象徴する日です。「実るほど頭を垂れる稲穂かな」ということわざもあるように、こうした人物はあまり自分語りをしないものなので、そのぶん周りが代わりにその人の武勇伝を話したがるでしょう。8日(金)塞ぎ込みたくなる気持ちと前を向かなきゃという気持ちの狭間を表す日です。周囲に馴染めないので一人で過ごしたいという場合もあるでしょう。こうでなければという思い込みや叶いもしない理想に振り回されないで、もっと素直になって周りとの関係を築いてみましょう。地味に思えても次第に楽しくなってくるはずです。9日(土)マイナスイメージでの葛藤を象徴する日です。「あの人と関わると周囲の目が…」という感じで、友達の誘いに乗るか、どのグループに入るか、上司や先輩に追随するか、距離を置くか、モヤモヤと悩むかもしれません。信念があってキッパリ決められる人ならともかく、そうでない人は時間が解決するのを待つことになりそうです。10日(日)家族旅行に出かける人は子供がはしゃぎすぎないように見張る必要がありそうです。待ちきれずにわがままを言ったり、一人で飛び出してハラハラするかも。仕事では個人技だけで乗り切ろうとしないで連携をとりましょう。気が急いて勝手なことをすると思わぬ批判を受けかねません。慎重さや丁寧さを心がけておきたい日です。11日(月)お試しキャンペーンとか体験入部のような機会を利用して自分に合うものを探すことを意味する日です。いろいろな可能性が開けていて迷うかもしれませんが、本当にやってみたいことが見つかったら足踏みせずに参加してみましょう。そこから新しいあなたのストーリーが始まるのですから。夢への第一歩となるかも。12日(火)地道にコツコツと取り組むことの大切さを説いた暦の日です。仕事を覚えるのも勉強を進めるのも、人間関係を構築していくこともすべて時間のかかること。焦らずゆっくりやればいいと自分に言い聞かせましょう。一歩一歩は小さくても、積み重ねていけば大きな夢にも届きます。失敗にめげず、心を癒しながら進んでいきましょう。13日(水)ハードな一日が終わってゆったりと過ごしたい気分なのに、周りが騒々しくて心が休まらないとか、静かに勉強したいのに他の人のおしゃべりが気になって集中できないといった様子を表す日です。注意すれば逆ギレされる時代、ヘッドホンでもするのが得策でしょうか。周りへの配慮や思いやりを念頭に置いて過ごしたい一日です。14日(木)心の通い合う間柄というのは本当に貴重なものです。お互いに相手のことを思いやれるのは、人を人たらしめている本質といっても過言ではありません。ただのお遊びで付き合う関係とは違い、その時間のすべてがお互いにとって大切なものとなる、かけがえのないものです。大事にしたい縁であればなおのこと誠実に向き合うべきです。15日(金)混迷の最中にある世の中で、私に何ができるだろうという思いで日々を過ごされている方も多いと思います。人一人にできることなど限られていますし、たぶん小さなことです。でも、思い悩んで手をこまねいているよりは、今できることで貢献するほうが遥かによいはず。屈託なく笑い合える世界をもう一度取り戻すために。16日(土)毎日のルーティンワークを繰り返すなかで本当の実力が身に付いていくことを表す日です。何か月も、時には何年にもわたって一つの事柄に取り組み続けるでしょう。精神的にも身体的にも苦しさを伴うかもしれませんが、その過程で確固とした基礎が作られ、習得したことの理解と技術は揺るぎないものになっているはずです。17日(日)モチベーションのコントロールに関係する日です。寝る前や起き抜けの自己暗示、体を動かす、楽器を奏でたり音楽を聴く、読書するなど、気分を高めたり落ち着かせたりする行動が個々にあるでしょう。その方法をうまく使って精神状態をよくしたうえで、仕事や勉強に向かい、人に会うならば、ずっと成果も上がりやすくなるはずです。18日(月)話し合いのなかで、もしくは自分で調べていく過程で、次第に物の見方や考え方に変化が表れてくることを意味する日。利かん坊の子供に何度も何度も言い聞かせてようやく少しわかってくれたようなものです。まだまだ先は長いのですが、これを第一歩として次のステップへと進むことができるでしょう。強い気持ちが求められます。19日(火)今年の2月24日、ロシアがウクライナに侵攻。平和な毎日が続くと思っていたなかで、ウクライナ国民は生命を脅かされる事態に直面しました。今日の暦もそんな教訓を暗に含みます。穏やかな日々だからこそ「もしものとき」のことを忘れてはいけない。豊かさと平和に感謝しつつ、それが成立する貴さをあらためて考えてほしい日です。20日(水)頼りない親や上司を見かねて、その子供や部下が窮地を救うべく立ち上がる、そんな意味の日です。家計を助けるためにバイトをする、残業の日々を過ごすなど尻ぬぐい感があるかもしれません。ただ、そのことで一家が救われ、あるいは業績が持ち直すのなら、それはそれで誇らしく、大変だった日々も受け入れられるでしょう。21日(木)培ってきたことを総ざらいするかのように、今やれることを盛り込みながら力を尽くすことを表す日です。これには地道で長い年月を要することが多いのですが、そうしてできることをしていくうちに次の目標が見つかり、新しい展望が開けてきます。今までとは違う生き方が待っているかもしれませんが、期待も膨らむでしょう。22日(金)文化・芸術の良質なところを楽しむセレブ的な意味がある日です。そうした贅沢な一面がある一方で、高慢だとか人を見下す一面を併せ持っている場合もあるでしょう。それが人によっては鼻持ちならないと映ることもあるかもしれません。ただ、優雅な生活を夢見て努力できるのは大きな強みなので、大変な仕事も頑張れるはず。23日(土)伝え方がよくないと相手の心には届かないことを痛感し、効果的な表現方法を考えるきっかけとなる日です。商品の魅力を上げるような写真や動画、キャッチコピーで購買意欲を誘う、ポイントを絞って強調するなどイメージ戦略が肝となるでしょう。ただし無理の利かない日なので、ガンガン行くのではなく無難をとるほうがよいです。24日(日)物事や人間関係を続けていくことの大変さ、または時代の波や運気の変わり目のような変化にどう対応していくかということがテーマの日です。何事もいつかは変化しますが、それまでは維持するために精一杯頑張るのが人の常です。新しい生き方、新しい考え方に対応していく柔軟性が問われている日でもあるでしょう。25日(月)いわゆる暴君や独裁者の顛末を象徴する日です。最初は大きな期待を込めて選ばれた人かもしれませんが、調子に乗って独断的なことをしてきたために人々の怒りと反発を買って失脚してゆく。上に立つ者の傍若無人さに振り回されるのに疲れてしまった人たちは、新しい体制への変革を求めます。そこに不確かな未来への希望を託して。26日(火)どっちつかずのフラフラした態度では周りの人もどうしてほしいのかわからず、力になりたくてもなれません。目標を見定めれば推進力が生まれます。しっかりと自分の意思を示してブレないこと。そうすれば理解してくれる人たちや一緒に頑張ってくれる仲間も集まるでしょう。とにかく自分自身の心を決めることが先決です。27日(水)昔の恋人や友人との約束が忘れられず、モヤモヤと逡巡してしまう様子を表す日です。年月が過ぎて雲散霧消することもあれば、かつての恋人や仲間とのヨリを戻そうと働きかけることもあるかもしれません。もし何のわだかまりなく今も好みが合うのなら、また一つの場所に集まって以前の夢を再開するという道もあるでしょう。28日(木)雑用や繰り返される呼び出しなどでバタバタし、思うように仕事や勉強が捗らない様子が浮かんでくる日です。子供やペットがはしゃぐなかでオンライン会議やテレワークをするのに似ています。または家族の看病や親の介護で忙しい状態など。落ち着く暇もないかもしれませんが、どうか自分自身の健康にも気を使ってください。29日(金)スマホで地図が見られる時代とはいえ、初めて来た場所を歩き回るのは誰しも不安なものです。それと同じように、初めてやることや初めて会う人たちとの関係も期待と不安が入り交じるのが普通です。他のことに気を取られていたり、慌てていたりすると思わぬ恥をかくかもしれません。落ち着いて少しずつ慣れていきましょう。30日(土)厳しい状況をどう乗り越えるかが問われている日です。心強い味方がいれば強く出られるのかもしれませんし、勇気を後押ししてくれる一言だけで十分かもしれませんが、最終的には自分次第です。でも、逆境に耐えるだけでなく自ら舵取りすることができれば、V字回復並みに望ましい将来をつかむことができるでしょう。お話を伺った方 C.I.さん運命学研究家。易・四柱推命・西洋占星術・奇門遁甲などの運命学を学び、ブログ(With the I Ching)やツイッター(@CI_ONOFF)を通じて発信している。現在は6匹の愛猫たちと過ごす日々。※『anan』2022年4月13日号より。写真・中島慶子イラスト・ネコポンギポンギ(by anan編集部)
2022年04月10日人生の先輩的女性をお招きし、お話を伺う「乙女談義」。4月のお客様は、シェフならぬ“シュフ”として、料理で活躍する平野レミさん。しかし実は、歌手として活躍した過去があるのです。第2回はそんな時代のおもしろエピソードをご紹介。主婦&料理家になる前は、シャンソン歌手でした。私の両親の教育方針は、“好きなことを徹底的にやりなさい”。なので、大好きなシャンソンを頑張ろうと先生のところに行ったら、「プロなんて考えちゃいけません」。なぜ?と尋ねると、「お金は汚らわしいもの。歌うことで、汚らわしいお金をもらうなんてとんでもない!」と。とか言いながら先生は、私から月謝をとってるんだけどね(笑)。でもやっぱり私は歌いたいので、内緒で銀座にあったシャンソンを歌わせてくれるサロンのオーディションに行ったら、受かっちゃった!それ以外にも同じく銀座の名門シャンソン喫茶〈銀巴里(ぎんパリ)〉でも歌わせてもらえることに。さらにスカウトされて、レコードを出せることに!そりゃぁ嬉しかったわよ。私の声がレコードから聞こえてくる、そんな夢みたいなことが現実にあるなんて、嬉しかったわ。しかし蓋を開けてみると、「今シャンソンは下火だから、まずは歌謡曲でデビューしましょう」と言われてしまい、もう愕然よ~。まさかの人違いでラジオに抜擢…?とりあえず歌謡曲でちょっと売れた私は、4枚目に『カモネギ音頭』というのを出すことに。しかもネギを背負って銀座で配るというキャンペーンをやらされそうになり、さすがにやんなっちゃって(笑)、やめました。無職になった私に突然、「新しい番組が始まるからオーディションに来てほしい」とTBSラジオから連絡が来たので行ったところ、ディレクターさんは私を見るなり「え、あなたが平野レミさん?」と。変な空気のままマイクの前で喋らされ、よくわからないまま出演が決定。後日その方が、「実はレミの顔を見たとき、驚いちゃって」って言うから、よくよく聞いたら、レコード会社の新人紹介のパンフレット、私の顔写真のところに“辺見マリ”って書いてあって、辺見マリさんの写真の下に“平野レミ”って書いてあったんだって。で、マリちゃんの顔を見てかわいいと思って声をかけたら私が来てびっくりしたって。いろいろひどい話よねぇ(笑)。*辺見マリさん…歌手・俳優で、辺見えみりさんのお母様。ひらの・れみ料理愛好家、シャンソン歌手。主婦の経験を生かし、テレビや雑誌で数々の料理を発信。新著に子育てと料理についてのエッセイ&レシピ集『おいしい子育て』(ポプラ社)が。※『anan』2022年4月13日号より。写真・中島慶子(by anan編集部)
2022年04月09日人生の先輩的女性をお招きし、お話を伺う「乙女談義」。4月のお客様は、料理愛好家、シャンソン歌手の平野レミさん。テレビでお見かけする姿同様、レミさんの人生も、明るく楽しく、おいしいエピソードが満載です!第1回目をお届けします。人は何もなくなると、自ら考え、動く生き物です。小さい頃から私はよく、父親と一緒に海外の音楽を聴いていました。当時日本は歌謡曲全盛で、それに比べるとフランスの曲はメロディがきれいでね。しょっちゅう私は床の間をステージ代わりに歌っていたわけ。で、高校生になり、みんなが東大を目指すような都立の進学校を、2年のときにやめました。つまらなくて(笑)。その後、文化学院という自由な学校に転校し、毎日あちこち遊びに行っていたんだけど、なんかふと、“これでいいのかな、何かを真面目にやらなくちゃいけないんじゃないか”と、立ち止まってしまった。そのとき、自分は何が好きだったかを考えたら出てきた答えが、“歌”。それでシャンソンを習うことになり、そこから人生が変わった。人は、独りぼっちになったり、持ち物がゼロになったときに、自分と向き合い考えられる生き物。みなさんにもきっとそういう瞬間があるから、そのときは、内側から湧き出る“自分の声”に耳を傾けることが大事よ。五感で楽しめる料理は、最高のエンタメよ。当時は歌のほうに夢中でしたが、小さい頃から料理にも興味はありました。覚えているのは実家の庭に家庭菜園があって、暑い夏の日にそこからトマトをもいで、台所にあったベーコンとうどんと一緒にコトコト煮込んだこと。白いうどんが徐々に赤くなっていくのが楽しくて、そして食べるととんでもなくおいしかった。食べられる食材を1つずつ足していったら、トマトとベーコンとうどんは、算数の考え方でいくと1+1+1=3になるわけだけど、料理の場合は、味はいくらでも膨らむから、1+1+1が100にも1000にもなる。しかも料理は五感で楽しめる。鼻で匂いを嗅いで、目で見て、手で触って、耳から料理をする音を聞いて、そして口に入れても美味しい。料理って本当におもしろい。昔からそうなんだけど、食材を見ると、“こんなふうにしたら美味しくなるんじゃないかしら?”ってひらめいて、ちょっとやってみたくなっちゃう。私の料理は全部それね。ひらの・れみ料理愛好家、シャンソン歌手。主婦の経験を生かし、テレビや雑誌で数々の料理を発信。新著に子育てと料理についてのエッセイ&レシピ集『おいしい子育て』(ポプラ社)が。※『anan』2022年4月6日号より。写真・中島慶子(by anan編集部)
2022年04月02日軸になる物語が少しずつ変容しながら繰り返される、藤原無雨さんの『水と礫(れき)』。あの無二の読み心地は忘れがたかった。新刊『その午後、巨匠たちは、』でも、期待を裏切らない特別な読書体験を味わえる。荒廃した町に、歳を取らない女性〈サイトウ〉がふらりとやって来て、山に神社建立を進言する。すると町にはさまざまな幸運が舞い込み始める。その〈サイトウ〉が、神社の石柱に6人の巨匠たちの名前を彫ると、北斎は卵の殻を割って世に現れる。それを皮切りに、レンブラントやダリ、モネ、ターナー、フリードリヒら画家たちが相まみえることに…。わかりやすさを拒否する、ユニークな物語の幕が開く。「さまざまな画家の絵が、すべて混ざって展開されるというモチーフが最初に浮かんだんですね。絵によって世界が影響されるというのなら、人間の画家では不可能だし、ならばそれは神様だろう…と、そんなふうに連想を膨らませていきました」それが帯文にもある〈注釈小説〉というスタイルとして結実する。「実在する画家や絵のこともたくさん出てくるので、その説明がいるという必要性があったのがひとつ。加えて、小説から注釈へ、注釈から小説へ、グラデーション的に戻ることによって小説を読むモード、つまり小説であるという視点を取っ払った上で、小説の中に入っていく瞬間がそこに現れるわけなんです。そういう感覚がこの作品を楽しんでもらう上で、とても重要だと思いました」作中では、〈幽霊みたいなものがそこいらにふよふよと浮いて〉世話役をしているモネの屋敷で巨匠たちが一緒に食事をしたり、町の裕福な一族〈朝倉家〉のテレビにはタレントがみな北斎の役者絵になってしまった番組が映し出されたり、〈サイトウ〉のアイデアで、磔刑図(たっけいず)をエンジン代わりに、天に昇ろうとするキリストの力を利用したトロッコが敷かれたり。想像するだけで面白い出来事が次々と起きて、物語はラストまでひた走る。「没頭して満足したり共感したりできる小説もいいのですが、僕自身には、小説自体が思考材料にならなければという意識がありまして。思考するためには混乱や新しい概念などがその作品に備わっている必要がある。そこはいつも僕の課題ですね」ふじわら・むう1987年、兵庫県生まれ。2020年、『水と礫』(河出書房新社)で第57回文藝賞を受賞。マライヤ・ムー名義の共著『裏切られた盗賊、怪盗魔王になって世界を掌握する』(一迅社)がある。©橘蓮二『その午後、巨匠たちは、』西洋画家と日本画家、過去と現在といった作品イメージとオーバーラップするような、コラージュが美しいカバーデザイン。タイトルの横に置かれた、注釈〈*0〉も見逃すなかれ。河出書房新社1760円※『anan』2022年3月30日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2022年03月29日今こそ切実に響いてくる、会いたい人に会いに行く喜び。売野機子さんによる、コミック『君に会いたい』をご紹介します。売野機子さんの本格ファンタジーと聞いて少々意外だったが、むしろ満を持してだったのかもしれない。「デビュー時から、ファンタジー含めいろんなジャンルを描きたかったのですが、世に出す機会がなかっただけで、私自身は勝手に頭の中で描いていました。中世っぽい世界観で、少年と少女がお互いに会いたくて会いに行くというお話を最初からイメージしていましたね」子どもだけが罹患する伝染病が蔓延する世界。キスリムとアルという少年は、初めて城塞の外に出て雪の中を旅している。旅の目的は、キスリムの許嫁として出会った火の国の姫ウルルと再会すること。純粋無垢だが、王の器ではないと判断されたキスリムは、心が通じ合っていたウルルと引き離されてしまったのだ。「私は心の美しさにかなうものはないとどこかで信じているのですが、キスリムがまさにそうだと気がついて。今回は自分の理想の主人公像をぶれないように描くのが目標です」同行するアルは、王族以外の血が入っていて王位継承順位は低いが、キスリムとは兄弟のような仲。「アルは器用で親切なんですけど、暗いところもある。私が感情を乗せやすいキャラクターですね」会いたい人と会う。当たり前のことさえままならなくなった今だから、より響くものがある本作。ただし物語を作る上で、コロナ禍はきっかけのひとつにすぎないようだ。「マンガを描く行為は、感情を分かち合える人を探すために手紙入りの瓶を海に放つような作業で、気づけばたくさんの人に見つけてもらえました。今回のキャラクターは今までより切迫してないというか、明るいのですが、それは私の思いがさまざまな人に届いていることを知っているから。主人公は絶対に会えると思っているし、相手もそう思ってくれていると信じている。自分と読者との関係性が反映されているんです」思いの詰まった作品だからこそ、作画にもいくつかのルールが。「会えない苦しさではなく、会いたい人がいる喜びを描いた作品なので、私が楽しんで描いていることが伝わる作画を目指しました。ストレスをなくすために、紙の角度を変えたり定規を使うことはせず、ペンの種類もGペンのみと決めました。キャラクターから背景、トーン貼りに至るまで自分が手がけることで、私自身が漫画の世界に没入して楽しむことを大事にしています」会いたい人に会うため、未知の世界を突き進んでいく高揚感が気持ちいい1巻。「会いたい」は希望だ。『君に会いたい』1翼のないドラゴンと共に未開の地を旅する少年たちを、疫病、魔物などの脅威が次々と襲う。2巻以降の驚きの展開も、ウェブ「くらげバンチ」で購読可能。新潮社682円©売野機子/新潮社うりの・きこマンガ家。2009年デビュー。『MAMA』『かんぺきな街』『売野機子のハート・ビート』『ルポルタージュ‐追悼記事‐』など著書多数。※『anan』2022年3月30日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2022年03月27日人生の先輩的女性をお招きし、お話を伺う「乙女談義」。3月のお客様は、ブライダルデザイナーの桂由美さんです。’60年代に仕事を始めた桂さん。以来日本も大きく変わりました。第4回は、そんな桂さんが令和の日本、そして若い世代に思うことについて語ってくれました。個人であること、社会の一員であること。令和4年を生きるみなさんにお伝えしたいのは、今の日本は昔に比べると、本当に男女平等になったということ。あの頃は「女のくせに」という言葉が普通にはびこっていましたし、私はファッション業界でしたから少なかったほうですが、それでも随分いろんな経験をさせられました。だからみなさんはご自身たちのことを、本当にハッピーな世代だと思ってほしい。とはいえ、日本は昨年のジェンダーギャップ指数のランキングでは156か国中120位…。正直ここはもうちょっとなんとかしなくてはいけないと思います。自分自身のことは大事です。でもそれだけではなく、例えば自分の仕事や活動が、住んでいる地域、社会、日本という国、もっと言えば世界に対してどんな意味があるのかを、考えてみてください。小さなことでも、絶対に関係があります。自分の存在が社会と繋がり、なにかの役に立っていると知ることは、生きるうえでとても大事だと思います。婚姻数が低下する今、私が思うことは…。私がブライダルの仕事を始めて57年、いろんなことが変わりました。当時は97%の人が和装だったのが、ドレスを着る人が圧倒的に増加。最初の1年、たった30着しかオーダーがなく、私が毎日経済的に行き詰まっていたことを考えると、隔世の感があります。また日本の男性のフォーマルも、かつてはタキシードとモーニングだけだったのが種類も増えました。私がヨーロッパで学んできたフォーマルの文化が浸透したこと、嬉しく思います。でも同時に、婚姻数は大きく減少しています。もちろん日本は人口自体が減っており、価値観が多様化しているのは重々承知ですが、’70年代には年間110万組あった結婚が、今は53万組くらい、約半分になってしまったのは、ちょっと悲しいですね。結婚に少しでも興味がある人は、前向きに考えてみてほしいです。とはいえ、結婚は一人ではできないもの。女性側だけでなく、お相手になるみなさんにもぜひよろしくお願いしたいです(笑)。かつら・ゆみブライダルデザイナー。1965年の創業以来、パリコレを含む世界30以上の都市でショーを開催。4月には日本のウェディングドレスの変遷がわかるミュージアム「YUMI KATSURA MUSEUM WAKASA」を福井県にオープン。※『anan』2022年3月30日号より。写真・中島慶子(by anan編集部)
2022年03月26日角田光代さんが5年ぶりに小説を上梓!新作『タラント』は、間違いなく胸が熱くなる長篇小説だ。与えられた命を、どう使うのか。心も魂も揺さぶる5年ぶりの長篇。「ずっと『源氏物語』の現代語訳にとりかかっていて、久々に小説を書こうとしたらプロットの立て方も資料の使い方も忘れていて大変でした」30代後半のみのりは、東京で夫と二人暮らし。故郷の香川に住む甥の陸が不登校と知り、しばらく預かることに。彼らは一通の手紙を機に、寡黙な祖父・清美の過去に思いをはせていく。戦地で片足を失い、義足をつけた祖父の秘めた思いとは――。表紙にも義足で高跳びをする人が描かれているため、未読の人でもこれがパラスポーツが関わる話だとは想像できるだろう。「最初に連載を頼まれた時、東京オリンピックについても触れてほしいという話があって。それで調べているうちに、パラリンピックはイギリスの病院で、戦争で脊髄を損傷した人たちのリハビリのために開いた競技会がおおもとだと知ったんです。平和の祭典と呼ばれているものが戦争がきっかけで始まったことに驚きました。そういうことを考えている時、ふと、“命を使うということ”について書きたいと思ったんです」本作ではみのりの過去も語られる。大学進学で上京、ボランティアのサークルに参加して国内外で活動していた様子も丁寧に描かれる。「日本って、ボランティアや寄付の文化が根付いていないと感じていました。自分がいいことをするのに対して照れと罪悪感があるし、誰かがいいことをすると“偽善だ”という声が出てくる。それこそ昨今はバッシング社会で、人の失敗を絶対に許さない風潮がある。そういう世の中で、なにか善意で行動して失敗したら、もう動けなくなってしまうことってあると思う。それをみのりという人に背負わせました」角田さん自身、NGOの活動に参加しているという。「国際NGOのプラン・インターナショナルのスポンサーになって、いろんな国を視察し、人身売買など女の子たちが虐げられている状況を見てきました。最初に誘われた時には私も、自分がボランティアをやって何になるんだろうと身構えたんです。実際に関わってみると、そういうことではないと思うと同時に、ボランティアの難しさや歯がゆさも感じるようになった気がします」みのりの周囲の人間も、ボランティアに対する姿勢はさまざまだ。きっと読者も、彼らの異なる立場からの言動に心揺れるはず。「迷いなくできる人や、使命を感じられる人もいる。でも大半の人はみのりのようにためらったり迷ったりするんじゃないかと思うんです」作中、何度か登場するのが「タラント」という言葉。〈才能〉〈賜物〉や、〈使命〉といった意味合いだ。「プロテスタントの学校に通っていたので、聖書に出てくる言葉として馴染みがありました。それとは別に大人になってから、人の才能の有る無しってなんだろうとつねづね考えるようになっていて」当初、本作では、どんな人にも与えられた使命があると書こうと考えていたという。だが、「書き終わった時、もしかして自分は、若くして亡くなった人たちにもタラントがあって、それは死んで失われるのではなく、他の人たちが受け継いで生きていくんだ、ってことが書きたかったのかな…と。私は、死んだ人たちのほうを書きたかったのかもしれないです」読み終えたら、角田さんのこの言葉が深く、深く響くはず。角田光代『タラント』東京で夫と暮らすみのりの故郷は香川県。寡黙な祖父にたびたび東京から手紙が届いていると知った彼女は、甥の陸と共に祖父の過去に興味を持つ。一方、そんなみのりには苦い過去があって…。中央公論新社1980円かくた・みつよ2005年『対岸の彼女』で直木賞、’07年『八日目の蝉』で中央公論文芸賞、’12年『紙の月』で柴田錬三郎賞、’21年『源氏物語』の完全新訳で読売文学賞など、数多くの賞を受賞。※『anan』2022年3月23日号より。写真・森山祐子(角田さん)中島慶子(本)インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2022年03月22日