つい凹んでしまうことは、誰にでもあるもの。でも当然のことながら、凹んでいたのでは最高のパフォーマンスを発揮することは困難です。そこで読んでみていただきたいのが、『凹んだら読む本』(治面地順子著、クロスメディア・パブリッシング)。さまざまな企業や官公庁などで、これまで多くのストレスマネジメントを手がけてきたという著者が、凹んだ気持ちを回復させるための術を明かした書籍です。■1日3分「いいことだけ」を考える「好きなこと」や「楽しいこと」を考えましょう、やってみましょうといわれてもそれはなかなか難しいもの。習慣がない人は、戸惑ってしまったとしても無理はありません。だからこそ、まずは習慣化することからはじめるべきだと著者。そのためには、1日3分だけ「いいことだけ」を考える時間をつくることが大切だというのです。そして習慣化するためには、「決まった時間」を設けるのも得策なのだとか。たとえば電車で通勤している人であれば、朝、電車に乗ったら3分間、「いいことだけ」を考える時間をつくればいいということ。考えるだけなので、ぎゅうぎゅう詰めの満員電車であったとしても、無理なく実行できるわけです。満員電車に揺られているとネガティブな気持ちになってしまいがちですから、これは得策かもしれません。■いいことは花やかわいい子犬でOKちなみに「いいこと」は、ほんのちょっとしたことでかまわないのだそうです。朝起きて、駅にたどり着くまでに、道端に小さな花が咲いていたのを見たとか、通りすがりの子犬がかわいかったとか、コーヒーショップの店員さんとの会話が楽しかったとか、それらはすべて「ちょっといいこと」。奥さんのいる人だったら、週末に特別な料理をつくってくれたことを思い出してみる。お子さんがいるなら、きのうの夜に見た幸せそうな寝顔を思い浮かべてみる。そんな、ほんのちょっとした「いいこと」を考えるだけで、心は和むものだからです。あるいは、きょうこれから起こりそうな「いいこと」を考えてみるのも、凹まないためのちょっとした技術なのだそうです。午前中の企画会議で、「きっと自分の企画書が通る」と考えてみる。午後からの商談もきっとうまくいく。今晩のデートはきっと楽しくなる。こんなふうに、近しい未来についての「いいことだけ」を考えるわけです。もし実際にダメになったり、うまくいかなかったりしたとしても、それはそのとき。特に凹んだときは、まだなにも起こっていないにもかかわらず、悪いことを考えたり、心配したりしがちです。だからこそ、「きっとうまくいく」と考えることが、心を健康にしてくれるというわけです。■心配しすぎは病気につながりやすい著者は、心を健全に保つために思考や食の習慣を見なおし、うつなど心の不調を予防・改善する「メンタルセラピー」というメソッドを広める活動をしているのだといいます。その考え方によれば、うつや統合失調症などの精神疾患だけでなく、がんやリウマチなどの患者さんにも心配性が多いのだそうです。まだ起こっていないことを心配したり、悩んだりして、自分の心や身体に負担をかけ、自分で病気をつくっている人が多いということ。たしかに怒ったり、人を恨んだり、イライラしたりして、胃がキューっと痛くなったりすることはあるもの。感情は、身体にも大きな影響を与えるということです。つまりストレスを撃退するためにも、「いいこと」を考えるのは効果的であるわけです。だから著者自身も、あまり怒ったり、恨んだり、イライラしたりしないようにしているのだといいます。我慢強いとか精神力が優れているというようなこととは別の話で、「怒りや恨み、イライラは、身体にダメージを与え、いろいろな病気の原因になる」ことを知っているからなのだそうです。たしかに、悪いことを考えたり、心配したりするよりも、起こったらうれしいこと、楽しいことを考えたほうがいいに決まっています。そこで、凹まないためにも1日3分、「いいこと」を考える時間をつくるべきだというのです。*シンプルでわかりやすいアプローチが貫かれているだけに、抵抗なくスラスラと読み進められるはず。凹みやすい自分をなんとかしたいという方は、読んでみると気づきを得ることができるかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※治面地順子(2016)『凹んだら読む本』クロスメディア・パブリッシング
2016年05月03日人工知能(AI)とビッグデータ分析が飛躍的な進化を遂げていることは、いまや周知の事実。だからこそ、改めて強調する必要はないかもしれません。しかし『人工知能×ビッグデータが「人事」を変える』(福原正大、徳岡晃一郎著、朝日新聞出版)の著者は、私たちの思いを上回るような事実を明かしています。米国をはじめとする海外において、AIとビッグデータが人事評価制度に大きな影響を与えているというのです。つまりAIとビッグデータを活用することによって、企業の人事評価が、より客観的で正確なものへと進化しようとしているということ。■基本的に人事の情報は明かされないでは、人事の先進企業は、具体的にどのようなことを行っているのでしょうか?残念ながら、この答えに明確に答えてくれる情報はいまのところほとんどないのだとか。なぜなら、求職者に自社の魅力をアピールするため、人材育成カリキュラムなどの制度的枠組みが公表されることはあったとしても、ノウハウや具体的な施策の内容は秘匿されるものだから。公表して他者が模倣したとすれば、自社の採用活動に不利に働いてしまうわけですから、当然といえば当然の話かもしれません。■グーグルの人事情報は唯一の例外!しかし、そんななかでも唯一の例外といえる企業がグーグルなのだそうです。というのも、グーグルの人事担当上級副社長であるラズロ・ボック氏が、『ワーク・ルールズ!』(東洋経済新報社)という本のなかで、グーグルの採用、育成、評価について詳細に明かしているから。でも、なぜそれを明かしてしまうのでしょうか?それはグーグルにとって、デメリットとはならないのでしょうか?そんな疑問について、著者は「他社がグーグルの人事施策のなかから参考になりそうな一部を模倣することはできても、世界最高の職場だといわれるグーグルの人事すべてを模倣することはできないという自信があるからだろう」と分析しています。■一流エンジニアには300倍の価値ちなみに、そんな同書の印象的なエピソードとして紹介されているのは、グーグルのナレッジ担当上級副社長であるアラン・ユースタス氏の次の言葉。「一流のエンジニアは平凡なエンジニアの300倍以上の価値があるーーひとりの並外れた科学技術社を失うよりも、工学部大学院生の1クラス全体を失うほうがましだ」たしかにここには、優秀な人材の採用と、その能力を引き出す職場環境作りに力を注ぐグーグルの風土がよく表れていると著者もいいます。優秀な人材を獲得するためにじっくり時間とコストをかけ、グーグルは客観的な採用活動を行ってきたわけです。そうであるだけに同社が今後、AI×ビッグデータ活用を積極的に行うであろうことも十分に予測されるはず。ある意味において、効率化とコスト削減に注力する日本の人事とは正反対のことをやっているわけです。著者はそんな状況を確認したうえで、どう考えてもいまの日本企業が、グーグルよりも優秀な人材を勝ち取れるとは思えないと記しています。いまやAI×ビッグデータはそれほど、人事に欠かせないツールになりつつあるということ。■AIとビッグデータの研究が進行中著者は本書の執筆に先立ち、世界の最新動向を確認するため、アメリカへの取材旅行を敢行したのだそうです。いうまでもなくアメリカといえば、IT(情報技術)の本場。そうであるだけに、AI×ビッグデータの活用に取り組むベンチャー企業が続々と登場しているという実感を受けたといいます。たとえばそれは、各個人が自らに合ったキャリアを構築するために最適な企業の紹介、語学学習、クリティカル・シンキング力のテストなど、事業内容も各社さまざまで多岐にわたっているのだとか。「彼らはこうしている間にも、着々と研究開発を進めている。ファンドからの投資により、事業資金の潤沢さも日本とは比較にならないくらいである」というセンテンスにも、強い説得力があります。重要なのは、アメリカのそうしたベンチャー企業が、他のアメリカ企業から受け入れられ、着々とユーザー数、クライアント数を伸ばし続けていること。サービスを提供する側と受け入れる側が両輪として動きはじめており、AI×ビッグデータ活用が、事業として確実に根づきつつあるということ。*各社がどのような取り組みを行っているのかについては、以後さらに細かい解説がなされています。そんなこともあり、本書を読み込むことによって、読者はAI×ビッグデータと人事との新たな関係性をリアルに感じ取ることができるはずです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※福原正大、徳岡晃一郎(2016)『人工知能×ビッグデータが「人事」を変える』朝日新聞出版
2016年05月02日マインドフルネスの関連書籍は、これまでにもいくつかご紹介してきたことがあります。簡単にいえばそれは、心の体の疲れのもととなる雑念を取り除くことによって、“自分が自分らしくある状態”を実現するための手段。そして、きょうピックアップした『心を整えるマインドフルネス CDブック』(人見ルミ著、あさ出版)も、そんなマインドフルネスの効能をリラックスしながら実感できる一冊です。■著者はマインドフルネスによって人生が好転著者がマインドフルネスに出会ったのは、28歳のときのことだったのだとか。人生のどん底といっていい時期で、精神的にも肉体的にも疲弊しきっていたのだといいます。やがてインドに渡り、偶然に出会った師からマインドフルネスの考え方、そのエッセンスとなるヨガや瞑想法を学んだのだといいますが、結果的にはその体験が大きな意味を持つことになります。道場で1年半修行したのちに帰国して働きはじめたところ、携わった仕事のほとんどで大きな成果を得ることができたというのです。具体的には17年間にわたって黒字を出し続けた結果、会社で初の女性役員に抜擢されたのだそうです。まさに、マインドフルネスによって人生が好転したわけです。■マインドフルネスは世界中の先進企業が注目しかし、それは著者に限ったことではありません。マインドフルネスの効果に対しては、近年、世界中で注目が集まっているからです。たとえば世界トップレベルの頭脳集団であるグーグルにおいても、約5万人の社員のうち10人に1人がマインドフルネスを実践して効果をあげたという結果が出ているそうです。また、フェイスブック、インテル、ツイッター、ナイキ、ドイツ銀行、マッキンゼー・アンド・カンパニーなどなどの先進的企業、さらにはアメリカ海軍やペンタゴン、アメリカ農務省森林局などの政府機関でも導入されているといいます。■活用したいなら「奇跡の90秒ルール」を!そんなマインドフルネスの活用法のひとつとして、本書では「奇跡の90秒ルール」というものが紹介されています。ついイラッとしてしまうことは誰にでもあるものですが、そんなときは90秒だけ、どこかへ避難してしまおうという考え方。そして、ここで紹介されているのが、神経細胞学者であり、ハーバード大学医学部で脳と神経の研究に携わっているジル・ボルト・テイラー博士の著書『奇跡の脳—脳科学者の脳が壊れたときー』(新潮社)から抜粋された文章です。「自発的に引き起こされる(感情を司る)大脳辺緑系のプログラムが存在しますが、このプログラムの一つが誘発されて、化学物質が体内に満ちわたり、そして血液からその物質の痕跡が消えるまで、すべてが90秒以内に終わります。たとえば怒りの反応は、自発的に誘発されるプログラム。ひとたび怒りが誘発されると、脳から放出された化学物質がからだに満ち、生理的な反応が引き起こされます。最初の誘発から90秒以内に、怒りの科学的な成分は血液中からなくなり、自動的な反応は終わります。もし90秒が過ぎてもまだ怒りが続いているとしたら、それはその回路が昨日し続けるようにわたしが選択したからです」(「第15章自分で手綱を握る」より)つまり怒りの感情は、「90秒」で血中からなくなるというのです。だとすれば、その90秒さえやりすごすことができれば、落ち着いた対応が可能になるともいえるのではないでしょうか?だからこそ著者は、かっとなって部下を怒鳴りつけそうになったり、子どもに手をあげそうになったりしたら、まずはその場を離れることを勧めています(もちろん、子どもの様子は見える場所に)。そして、ゆっくり深呼吸をしてみる。お水を飲んで一息つくのもいいそうです。その後、90秒経って落ち着いたら、もどって問題に向き合えばいいということです。*こうした記述からもわかるとおり、マインドフルネスは決して難しいものではありません。むしろ楽に取り入れることができ、そこから最大の効果を引き出せる可能性があるということ。なお本書には、自律神経を整えパフォーマンスを最大化する効果があるという528Hzオリジナル曲が4曲収録されたCDもついています。目と耳からマインドフルネスを実感できるわけで、とても充実した内容だといえるでしょう。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※人見ルミ(2016)『心を整えるマインドフルネス CDブック』あさ出版
2016年05月02日『ディズニー 「感動」のプロフェッショナルを育てる5つの教え』(ブルース・レフラー、ブライアン・チャーチ著、月沢李歌子訳、朝日新聞出版)はその名のとおり、ディズニーの「感動」の秘密がわかる興味深い書籍。ディズニーで人材育成プログラムを作成した著者が、最高のサービス精神を育てる「I.C.A.R.E.(アイケア)」の5原則を明らかにしているのです。■ディズニーが大切にする5原則ウォルト・ディズニーは「舞台裏で行うことが結局は舞台上に現れる」といっていたそうです。だとすれば企業がつくり出す体験に関しては、従業員、マネジャー、経営陣には、自分がすべきことを知り、目指すべきものを理解し、改善のための計画やプロセスを策定する責務があるはず。「I.C.A.R.E.の原則」はそのための手段だというわけです。I:印象(Impression)・・・絆の構築を促す触媒C:つながり(Connection)・・・絆を結ぶための要A:考え方(Attitude)・・・考え、発言、行動のフィルターR:応対(Response)・・・サービスは個別の対応によって決まるという考え方E:最上のもの(Exceptionals)・・・人間関係構築のスキルの実践これこそ、ディズニーなどの優良企業がライバルと一線を画す要因となっているということ。そして著者いわく、感動体験には5つのレベルがあるのだとか。ひとつひとつを確認してみましょう。■5つのサービス感動体験レベル(1)有毒な体験<人間味がなく、不快感を与えるような体験を提供し、やる気のなさ、無関心、無気力が感じられるサービス>“有毒”な企業が提供するサービスは顧客を怒らせ、苛立たせるもの。ここでいう有毒とは、やる気のなさ、無視、無関心など、従業員のネガティブな態度。サービス体験として最低の水準であるため、顧客を失い、倒産する危険を冒していながら、それを現場の人間は気にせず、リーダーも認識していないということ。(2)平均的な体験<従業員は形だけのサービスを提供し、現状に満足している。ありきたりで、味気のないサービス体験>有毒な体験ほどではないにしても、平均的な体験も同じように受け入れがたいもの。この水準の企業は、顧客のニーズを満たしていないわけです。よくも悪くもなく、ただ形だけのことをするのみ。しかし凡庸なサービスを提供する企業や人間は、他者の心を動かすことができなくて当然です。たとえば子どものことを思う親は、「がんばって“平均点”をとりなさい」とはいわないはず。もちろん平均的な水準で我慢できる人もいるかもしれないけれども、卓越したサービスを期待する人には耐えられないものになってしまうわけです。(3)よい体験<従業員が前向きで、親しみやすく、感じがよい。顧客やクライアントの多くがポジティブな体験をし、尊重され、歓迎され、重要視されていると感じる>少なくとも、この水準を出発点とすべきだと著者。現実的にはレベル1とレベル2が全体の約60%を占めるそうですが、成功を望むなら、そこに甘んじてはいけないということ。このレベル3をスタートラインとして、卓越した体験を確立していく必要があるといいます。(4)すぐれた体験<一貫してすぐれた顧客体験を重視するサービス。従業員が個々の顧客に応じた対応をしたり、関係を構築する体験を生み出したりしようと努めている>この水準の企業や個人は、顧客のために格別な努力をするもの。従業員にとって好ましい環境を用意し、すべての面において超一流のものをつくり上げるといいます。独自の発想、積極的な考え方、強いエンゲージメントが見られ、ライバルとの差別化を図るために尽力するのが特徴。(5)卓越した体験<すべての従業員が顧客ひとりひとりにとって特別な「体験」を、ライバルを大きくしのぐ水準で創出。卓越したサービスはその一部>サービスをまったく新しい水準に引き上げる卓越した企業は、他に類のない、心に残る体験を創出するもの。それによって、機会あるごとにその体験を口コミで広めてくれるアンバサダーを育成するのだといいます。そして、もっとも重要なのは、お客様に口コミで体験を広めてもらうこと。そのためにはすぐれたサービスが不可欠なので、1レベルずつ改善を図り、レベル4やレベル5の体験の提供を実現することが重要だと著者は主張します。*ディズニーは見事にレベル5を実現しているだけに、こうした著者の考え方には強い説得力があります。サービスの本質を突き詰めたい方にとっては、大きな意味を持つ一冊であるといえます。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※ブルース・レフラー、ブライアン・チャーチ(2016)『ディズニー 「感動」のプロフェッショナルを育てる5つの教え』朝日新聞出版
2016年05月02日『逆境を生かす人 逆境に負ける人』(アル・シーバート著、林田レジリ浩文訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、とてもユニークな経歴の持ち主です。なにしろ心理学博士でありながら、元落下傘部隊隊員だというのですから。その結果、「逆境に負けず生き抜いた人」を40年以上にわたって研究し続けているというのだとか。つまり落下傘部隊隊員としてのキャリアが、結果的には大きくプラスに作用しているわけです。たとえば2001年に世界を震撼させたアメリカ同時多発テロ事件後は、生存者、介護者、救急隊員の心理ケアのサポートを積極的に展開してきたのだといいます。また著者としての評価も高く、1996年の『「逆境に負けない人」の条件 「いい加減さ」が道を開く』(邦訳は2005年、フォレスト出版刊)によってベストセラー記録を打ち立ててもいます。そんな著者の最新刊である本書では、ここでは「誰でも心の弾力性を身につけることができる方法」を紹介しています。■1:論理的に問題解決するどんな人の人生にも、多かれ少なかれ問題はつきもの。しかしどんな種類の問題であれ、大切なのは疑問を持つことだと著者はいいます。特に倫理的に問題を解決する場合には、次の手順が大切なのだとか。(1)正確に状況を読む「なにが問題なのか?事実はなんなのか?深刻度はどれほど?緊張度は?時間の猶予はあるか?他に知るべきことは?誰が行動するべきなのか?」このように、客観的な状況を把握するべき。(2)自分がすべきことはなにかを考える状況と自分をここで結びつけるということ。「自分はなにを得たいのだろうか?自分の行動のゴールはなにか?」と考えてみる。(3)どうしたら(2)にたどり着けるかを考える。ひとつだけでなく、複数の選択肢を用意し、そこにリスクや落とし穴はないかを考える。もし時間があるなら、何人かで話し合うのもいいとか。(4)行動を起こす不安があるのは当たり前。でも「どうすればいいのか」が事前にわかっていればできるはず。(5)自分の行動の成果を見てみるフィードバックを得られるような質問を、周囲の人にしてみるという方法も。時間がかかりそうな問題なら、「解決の兆しがあるかどうか」を見て、そのまま進んでいいかどうかを判断。(6) (5)で得られたフィードバックをもとに軌道修正をする(7)もう一度、行動によって得られた成果を見てみる「満足のいくものだろうか?」「この問題は解決されただろうか?」など。(8)今回の問題から学ぶべきことを考える「問題になるまで見過ごした兆しはなかっただろうか?」「教訓はなんだろう?」「今後、同じような問題が起こらないようにするには、どんな手を打ったらいいのか?」■2:クリエイティブに問題解決するクリエイティブな問題解決とは、ありえないような方法で解決に導くこと。「そうだ!」とひらめく瞬間をいいあらわす「アハ体験」という言葉がありますが、いかにして自分の心の宇宙の膨大な情報から「アハ」を引き出すかが重要だというのです。そしてクリエイティブであろうとするなら、自分を追い詰めることは禁物。問題から気持ちが離れたときにこそ、解決の道が開けるものだから。つまり問題を解決したいと思うとき、ついている人は、いったん問題について考えるのをやめ、リラックスし、気持ちを整理したうえで解決の道を探るものだということ。クリエイティブな問題解決は、「いままで考えもしなかったようなユニークな解決法があるはずだ」と思うことからはじまるのだとか。それを忘れてはいけないと著者は記しています。■3:現実的に問題解決する学校の勉強ができなかったとしても、成功をつかんだ人は多いもの。なぜなら彼らは、現実的な知恵に長けていたから。高いIQが、現実的な問題解決を可能にするわけではないということです。そして、賢い問題解決ができるようになるためには、(1)「問題を解決する」という意志を持つ(2)「自分の力で解決する」という心構えを持つ(3)いままでの思考パターンを飛び出す(4)感情的にならないという4つが大切。そしてこれらは、人生で起こってくるあらゆる問題に役立つはずだと著者は説いています。* 大きな逆境を生き抜いた人たちについての研究を確認してみると、彼らはどんなに大変なことであれ、起こったことを受け入れることからはじめていると著者はいいます。起こってしまったことを恨んだり、怒ったりはしないということで、これは多くの人が応用できそうな考え方でもあるでしょう。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※アル・シーバート(2016)『逆境を生かす人 逆境に負ける人』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年05月02日以前、「フレッシュパーソンのためのあたらしい教科書」として創刊された『やるじゃん。』ブックスシリーズのなかから、『社会人1年目からの「これ調べといて」に困らない情報収集術』(坂口孝則著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)をピックアップしたことがあります。きょうご紹介する『社会人1年目からの仕事の基本』(濱田秀彦著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)も、同シリーズのなかの一冊。タイトルどおり、仕事の進め方、人間関係、ビジネスマナー、企画力・問題解決力、人間力などなど、社会人に求められる38種の「仕事の基本」を取り上げているわけです。■仕事の力は5つの要素で構成されるどんな仕事に就こうとも、ビジネスマンとしての基礎は身につけることができるもの。そして、そこで身につけた基礎こそが、自分自身の将来を決定づけるのだと著者はいいます。ちなみに基礎を身につけるための期間は3年間。その3年間でついた差は、なかなか埋まらないものだといいます。研修の講師として16年間で2万5千人以上のビジネスマンを見てきた結果、著者にはそう断言できるのだそうです。そんな著者は本書において、仕事の力は5つの要素で構成されていると述べています。しかもそこには、「3つの柱」が含まれているというのです。それは、「コンセプチュアルスキル」「ヒューマンスキル」「テクニカルスキル」。ひとつひとつを確認してみましょう。(1)コンセプチュアルスキルコンセプチュアルスキルとは、ひとことでいえば「考える力」。たとえば計画立案能力、企画力、問題解決力などがこれにあたり、職位が上がるにつれて重要度が増してくるといいます。(2)ヒューマンスキルヒューマンスキルとは、その名称から想像できるとおり「対人関係力」。話す力と聞く力を使って、説明、説得、交渉をする力だというわけです。いうまでもなくヒューマンスキルは、新入社員から経営トップに至るまで、変わらず求められるもの。(3)テクニカルスキルそしてテクニカルスキルは、「業務に必要な知識・技術」。たとえば営業なら商品知識、経理なら財務の知識、製造なら加工技術など。特にはじめのうちは重要度が高く、これらがなければ仕事にならないといいます。また、この3つの柱に加え、成果を出すために必要なのが「人間力」だとか。目標達成意欲やストレスに耐える力、粘り強さなどマインド系のもので、当然のことながらすべてのビジネスマンに求められるわけです。そして、これらすべての土台になる最後のひとつが「ビジネスマナー」。これは新入社員だけではなく、あらゆるビジネス活動の土台になるもの。■優先順位は「重要度」を意識しようところで著者がかつて働いていた建設業界では、「段取り八分」が合言葉になっていたのだそうです。仕事の出来の8割は段取り、すなわちPDCA(計画=Plan、実行=Do、確認=Check、改善=Action)におけるPlanで決まるということ。そして、これはどんな仕事にもあてはまるのだそうです。そのPlanのなかでも、もっとも重要なのがスケジューリング。多くの場合、仕事は同時進行で進めなければなりませんが、やりたいことから手をつけたり、手当たり次第にやったりしていたのでは、納期に間に合わなくなるなどの問題が発生するもの。そこで大切なのが、優先順位を決めること。なかでも特に強く意識すべきは「重要度」だといいます。そして重要度は、職場の業績への影響度で測るべきもの。業績に大きく影響を与える案件は、たとえ緊急度が低かったとしても優先する必要があるということ。だとすれば、ここで問題になるのが、A「重要だが緊急ではないこと」とB「緊急だが重要ではないこと」をどう両立させるか。Aを優先させるからといって、Bを放置することはできないからです。■締め切り間際に仕事をしてはダメ!そこで著者が提案しているのは、Aの仕事に「フロントローディング」という方法を活用すること。わかりやすくいえば、「着手を早くする」ということです。たとえば、顧客向けの提案書の作成という仕事があって、納期までに1か月あるとします(なお、これは職場の業績に影響する重要な仕事だと考えてください)。完成までに3日かかるとしたら、まだまだ時間があったとしても早めに着手し、(ファイルと目次だけつくるなど)できることをしておくべき。そうすることで、意識が働くからだといいます。つまり、その時点で「完成までになにが必要なのか」を意識することができるので、残った時間を有効に使いながら、人に聞いたり自分で調べたりすることが可能になるのです。そして結果的には、仕事の質も上げることができるということ。逆に避けるべきは、締め切り間際のギリギリに3日かけること。それまでなにもやっていなかったのでは意識もそちらに向けにくく、人に聞いたり自分で調べたりする時間もないので、よい結果を生み出すことはできないのです。*『社会人1年目からの「これ調べといて」に困らない情報収集術』と同じく本書も、新社会人のみならず、中堅ビジネスパーソンにとっても便利な内容。忙しい日常の中で忘れていた基本を、改めて目の前に提示してくれるような魅力があります。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※坂口孝則(2016)『社会人1年目からの「これ調べといて」に困らない情報収集術』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年04月28日雑談は、効果的に使うことによって潤滑油としての役割を果たす、人間関係のコミュニケーションツール。しかし『お金持ちの雑談』(田口智隆著、総合法令出版)の著者は、それ以上の価値が雑談にはあるのだと主張します。雑談は、お金持ちになれるかどうかを決めるくらいのインパクトを持っているというのです。それどころか、「幸せな人生を送るために必要不可欠な道具」といっても過言ではないのだとか。雑談とお金持ちとの間にはあまり関連性がないようにも思えますが、「お金持ちの人ほど、意識的に雑談をしている」がポイントなのだといいます。ただなんとなく会話をするのではなく、相手との相性を見極めるリトマス試験紙として雑談を活用しているということ。そこで、「雑談によって、日々のご縁がお金に換わる」と意識しながらひとつひとつの出会いを大切にすべきだという思いから、本書を執筆したというのです。■お金は必ず人からもたらされる本書において最初に著者が強調しているのは、「良縁が良円を生む」ということ。いつの時代においても、どんなビジネスでも、お金は人との縁(出会い)から生まれるもの。これは、すべてのお金持ちが大事にしている「お金の原理原則」なのだと著者は強調します。「お金持ちになりたい」と拝んでみたところで、お金が目の前に現れるわけではありません。そうではなく、お金は必ず「人」からもたらされるものだということ。だからこそ、人との縁がお金を運んできてくれるという考え方です。つまり、出会った人と縁をつくり、それをビジネスにつなげていけるかどうかが、お金持ちになれるかどうかの分かれ目になるということ。■雑談するとビジネスにつながるでは、よい縁を見つけて次につなげるためには、どうすればいいのでしょうか?著者は、その最速な手段こそ「雑談」であると断言するのです。当たり前ですが、初対面の人といきなりビジネスがスタートしたり、お客様になってもらえたりすることはありません。なにかの縁があって出会ったら、まずは多くの場合、会話などを通じてコミュニケーションをとることになるでしょう。そこからおつきあいがはじまったり、お客様になっていただいたりするわけです。そして、雑談で話すことは以下のようなものがあります。・どんな仕事をしているか?・どうしてこの場にいるのか?・どんなことに興味があるか?・どんな趣味を持っているか?・最近どんなことに関心を持ったのか?こうした話をしているうちに、共感したり、盛り上がったり、意気投合したりすることがあります。著者の経験上、そうした出会いは良縁であり、その後ビジネスにつながることが多いといいます。■雑談の充実度が判断材料になる著者も講演の依頼を受けたとき、受けるかどうかをギャランティー(講演料)の金額だけで決めているわけではないのだそうです。実際に主催者とあって雑談をし、「その人と楽しく話ができたか」「その人の主催するセミナーで講演したいかどうか」、自分自身の気持ちを確かめてから受けるようにしているというのです。理由は明白で、最初の雑談で盛り上がったり、好印象を抱いたりした相手でなければ、楽しく仕事ができず、その後もビジネスにはつながっていかないということを経験的に学んできたから。■実は雑談で9割が決まっているそして著者は、最初の雑談で、第一印象の9割が決まるといっても過言ではないといい切っています。もしも同じような条件の仕事がふたつあって、どちらかを選ばなければならないとしたら、雑談が盛り上がった人と仕事をしたいと思うのが人情。もし金銭などの条件が多少悪かったとしても、「一緒に仕事をしたい」「商品を買いたい」と思わせる相手は少なくないはずです。そして長い目で見れば、そうした縁は長く続いていく可能性が高い。だからこそ、お金持ちは初対面の印象を決定づける「雑談」をとても大切にするというのです。よく「見た目が9割」だといわれることがありますが、いくら見た目の印象がよかったとしても、雑談が盛り上がらなければ次につながる可能性は低いでしょう。効果的に縁をつなげるには、相手の記憶に刻まれるようなコミュニケーションが必要になってくるということ。そこで、お互いの印象に残る雑談をする必要があるわけです。著者いわく、お金持ちが雑談を単なる世間話と考えていない理由はここ。雑談を、良縁をつないでくれる大事なビジネスツール(強力な接着剤)として位置づけているというのです。*お金を「人との縁」という観点から語った書籍は、意外に少ないかもしれません。そういう意味でも、目を通してみれば気づきを得ることができそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※田口智隆(2016)『お金持ちの雑談』総合法令出版
2016年04月27日『1日36万円のかばん持ち――三流が一流に変わる40の心得』(小山昇著、ダイヤモンド社)の著者は、株式会社武蔵野代表取締役社長。2001年から同社の経営の仕組みを紹介する「経営サポート事業」を展開しており、現在、600社以上の会員企業を指導しているのだといいます。「かばん持ち同行」もそのひとつで、著者のあらゆる場面に同行・同席するというもの。その仕事ぶりを身をもって感じることで、経営者としての心構えを会得する「3日間プログラム」であり、多くの社長が参加しているのだといいます。費用はなんと「1日36万円」。プログラムは3日間なので、108万円(税込)を支払わなければならないことになります。著者は多い日は1万歩歩いているといいますから、一歩36円の計算。しかしそれでも、多くの社長がかばん持ちをしようと著者のもとを訪れ、そして値段以上の価値を実感しているというのです。つまり、3日で108万円の現場研修を、たった1冊読むだけで体感できるようにしたのが本書だということ。きょうはそのなかから、お金に関するいくつかの「心得」をご紹介したいと思います。■「売上」と「現金」はイコールではない著者の「かばん持ち」をした多くの社長は、「売り上げを伸ばせば、会社はつぶれない」と考えていたそうです。しかし著者によれば、それは間違い。銀行の格付が7以下の会社(業績が不安定な要注意先の企業)が「3年間125%以上」の増収増益をすると、資金ショートで黒字倒産するとも。なぜなら、「売上」と「現金」は必ずしもイコールではないから。「売掛・在庫」という概念がないと、倒産の危機を招くことがあるというのです。現金で仕入れていて、売掛で販売していたら、帳簿上は利益が出ていても、実際には現金は減っていくということ。見逃すべきでないのは、会社が上げる利益の50%は税金だという事実。残りの半分、つまり利益の25%を予定納税として納付するので、残りは利益の25%。ところが今度は、借入金の返済が待っている。しかし、その25%が在庫や売掛金になっていたとしたら、資金難に陥って倒産してしまうことに。これが黒字倒産のカラクリだというわけです。■経営は「現金にはじまり現金に終わる」だからこそ著者は、現金は会社の血液だと断言します。現金である以上、止まると倒産するわけです。どんなに儲かっていたとしても、現金がなければ、賞与も給料も支払うことができなくなります。しかし逆に、たとえ赤字だったとしても、B/S(貸借対照表)を見ながら資金調達の仕方を変えていけば倒産することはないということ。だから会社には最低でも、「月照と同額の現金」を用意しておくことが鉄則。「経営は現金にはじまり、現金に終わる」と著者がいい切るのは、そんな考えが根底にあるから。モノの長さをはかるのは「ものさし」。重さを量るのは「はかり」。そして、経営をはかるのが「現金」だというのです。■繰上げ返済をしてはいけない3つの理由多くの社長が「銀行に金利を払うのはもったいない」といいますが、著者によればそれは間違い。「金利は会社が成長するための必要経費」と考えているため、金利をたくさん払っても、「たくさんのお金を借りて、現金をたくさん持っていること」が正しいというのです。「金利はもったいない」と考えている社長は、借入れをすると「繰上げ返済をしたい」と考えるもの。でも、資金に余裕があっても、繰上げ返済をしてはいけないと著者。理由は3つあるそうです。(1)会社が赤字でも、現金が回れば倒産しないから先に触れたとおり、黒字倒産の原因は現金を持っていないこと。でも、銀行から融資を受けて現預金を持っていれば、会社が赤字でも倒産はしないものだといいます。(2)銀行が損をするから銀行は融資をするとき、「期限の利益」を考えているもの。「この会社にこれだけ貸せば、これだけの金利が得られる」とわかっているわけです。ところが期限より前に返済されると、利益が少なくなってしまいます。銀行は会社が危ないときでもお金を貸してくれたのですから、こちらの都合で繰上げ返済をするのは、恩を仇で返すことと同じだと著者はいいます。(3)銀行は、緊急支払い能力の高い会社に貸すから銀行は、なにがあっても返済してくれる会社にお金を貸すもの。月照の3倍の普通預金(最低でも月照と同額の現金)を確保しておけば、銀行は「この会社はキャッシュポジションがいい(手持ちの現金がたくさんある)」と判断し、融資をしてくれるそうです。借りた額が半分くらいになったら、銀行に「折り返し」でもう一度借りることが大切だとか。たとえば「5,000万円を期間5年」で借りていて、3年で2,500万円を返済したとしたら、もう一度2,500万円を借り、新たに5年の長期融資をしてもらうということ。このように常に現金を確保しておけば、たとえ赤字でも会社はつぶれないということです。*著者の経営方針はユニークかつパワフル、そして理にかなったもの。だからこそ経営者は本書から、それらを吸収することができるのではないでしょうか?(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※小山昇(2016)『1日36万円のかばん持ち――三流が一流に変わる40の心得』ダイヤモンド社
2016年04月26日退職金は、会社が知らないところで準備しているもの。それはきわめて一般的な解釈だと思いますが、『誰でもできる 確定拠出年金投資術: ほったらかしで「年率10%」を目指す方法』(山崎俊輔著、ポプラ社)の著者によれば、そうともいいきれないようです。なぜなら会社員の6~7人にひとりは、自分の残高を毎日チェックできる退職金制度になっているから。その制度の名前は「確定拠出年金」で、簡単にいえば自己責任型の退職金制度。お金は会社が出すけれど、運用は自分で方法を決定するというものです。その増減が、自分の退職時の受取額に直結する仕組みだというわけです。■確定拠出年金のメリットとデメリット確定拠出年金には、多くのメリットと、少しのデメリットがあるとか。まずひとつ目のメリットは、「月々の積立額」と「いまいくら積立額があるか」を常に確認できること。ふたつ目のメリットは、会社の倒産や金融機関の破綻から、自分の老後の財産を保全する仕組みが整っていること。そしてもうひとつのメリットは、(制限はあるものの)自分の財産分については好きな運用方法を選択できること。一方、「原則60歳までもらえない」「運用の責任は自分で負う」というデメリットもあるものの、注目に値するのは間違いないようです。そんな確定拠出年金の適切な運用方法は、著者にいわせれば「ほったらかす」こと。とはいえ、ただ定期預金に預けてほったらかしておくのでは、当然のことながら無意味。より効率的な運用を行うためには、次の手順を踏まえる必要があるそうです。1.最初に毎月の投資金額を決める2.次に投資割合を決める3.投資信託のなかからマシなものを選ぶ4.具体的な運用指図を行う5.あとはほったらかすそれだけ!それぞれの手順の詳細については以下の通り。■ほったらかし確定拠出年金5つの手順(1)最初に毎月の投資金額を決める企業型確定拠出年金の場合、会社が退職金制度の一環として定期的な積立金額を拠出するため、金額は個人で選べないのだとか。しかし、確定拠出年金に入るか入らないか選べる場合は、必ず入るべきだと著者はいいます。入らない場合、給与課ボーナスに現金化して上乗せしてもらってしまうため、退職時はゼロになるからです。個人型確定拠出年金の場合は、自分のお金から積立金を出していくため、家計に支障のない範囲で、毎月の積立額を5,000円以上1,000円単位で決めるのだそうです。(2)次に投資割合を決める確定拠出年金に投資する資金のうち、何割を投資し、何割を安全資産に置くか考えるということで、これがいちばん肝心だといいます。できれば60%以上は投資してほしいと著者は主張していますが、儲かるチャンスと値下がりする可能性のバランスを考え、自分がチャレンジできる投資割合を決めるわけです。(3)投資信託のなかからマシなものを選ぶ投資信託については、2つのポイントからフィルタリングして「ベターなもの」を選ぶべきで、このとき「ベストの選択」などと考えないことが大切。なぜならベストの選択をする努力は、労力がかかるわりに実効性が高まらないから。なおフィルタリングのポイントは、「運用方針はインデックス(パッシブ)のもののみを選ぶ」「手数料がもっとも安いものを選ぶ」の2点。(4)具体的な運用指図を行う実際の購入指示(注文)を出すということ。その後は毎月自動的に積立金が引き落とされ、注文どおりの購入が行われる仕組みなので、「ほったらかし」をしたければ注文は最初の一度ですむといいます。このとき、以下の2パターンからどちらかを選ぶといいそうです。[パターンA]:バランス型ファンドをひとつだけ選んでまとめ買い国内の株式、国内の債権、外国の株式、外国の債権の4種をブレンドして購入したことになるのがバランス型ファンド(投資信託)。ほったらかしをして分散投資をしたければ、これが基本になりますが、バランス型ファンドなら1つ買うだけで4種類の投資を組み合わせたことになるといいます(大前提は、手数料が安いこと)。[パターンB]:自分で4資産の投資信託を買う国内の株式、国内の債権、外国の株式、外国の債権の4種に投資する4本の投資信託を選び、購入の指示を出します。(5)あとはほったらかすそれだけ!ここまでの作業ができれば、「ほったらかし投資」はスタート。少なくとも1年くらいは、そのままほったらかしておいてもOKだといいます。最初のうちは株価が上がったか下がったかが気になるでしょうが、なにもせずにほったらかしておけば大丈夫。*こうした基本ルールを軸に、以後はこの方法の有効性などが詳細に明かされます。将来のためにも、目を通しておいて損はなさそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※山崎俊輔(2016)『誰でもできる 確定拠出年金投資術: ほったらかしで「年率10%」を目指す方法』ポプラ社
2016年04月25日『自分に合った脳の使い方』(石川大雅著、フォレスト出版)の著者は、脳科学や心理学を使って生活や仕事のパフォーマンスを上げる術を、40年にわたって研究してきたという人物。これまで約3万人の成功者にインタビューし、NTT、NHK、帝国データバンクなどの大企業の要人、国会議員、スポーツアスリートなど、10万人もの人々を成功へと導いてきたのだそうです。そんな著者は本書において、「成功人格」と「失敗人格」という2つの考え方を紹介しています。パフォーマンスの高い状態にあることを「成功人格」、パフォーマンスが低い状態にあることを「失敗人格」と呼んでいて、「どうしたら成功人格を確立することができるのか?」が重要な意味を持つというのです。■成功人格の活用で人生が変わるそして、多くの人にインタビューを重ねてきたプロセスにおいて、自分の能力を必要以上に低く見て、自分を責め続けているような「残念な人」にもたくさん会ってきたのだとか。夢や目標を抱く前から、すでに成功をあきらめてしまっている人が多いということですが、これまでの経験や研究を通して断言できることがあるといいます。それは、誰でも自分のなかにしかない「成功人格」を持っているということ。そして、自分の成功人格を確立し、その成功人格を活用できれば、間違いなく人生をすばらしい方向に変えることができるというのです。■成功人格がもたらす3つの効果著者のこれまでの経験によれば、成功人格がもたらしてくれる効果は、おもに3つあるそうです。「常に高いパフォーマンスを発揮することができる」「ネガティブな状態からすぐに脱出できる」「招待状を受け取りやすくなる」それぞれを順番に見ていきましょう。(1)常に高いパフォーマンスを発揮することができるこのことを考えていく際の重要なポイントは、「自分には自分だけのパフォーマンスが高い『パターン』が存在している」ということだそうです。つまり成功人格とは、「パフォーマンスが高い状態のパターン」を確立した状態だということ。たとえばメジャーリーガーのイチロー選手が、毎日同じルーティンで試合を迎えるというのは有名な話。それも、そのルーティンが自分にとってもっとも高いパフォーマンスを発揮するということを自覚しているからだというのです。いわば一流のスポーツ選手や業界トップクラスの人たちは、「パフォーマンスが高い状態のパターン」(成功人格)を感覚的にわかっているということ。(2)ネガティブな状態からすぐに脱出できる成果の出ない人ほど、いったんネガティブな状態になってしまうと、そのネガティブな状態からなかなか抜け出せなくなるもの。自分を責め続け、ネガティブな状態にどっぷり浸かってしまうわけです。しかしそんな人でさえ成功人格を確立すると、自分の心身状態(ステート)にとても敏感になるのだといいます。具体的にいえば、自分自身を客観視できる能力(専門用語で「メタ認知」と呼ぶそうです)が高まるため、「成功人格でないときがわかる」というのです。成功人格を確立したからといって、ネガティブな状態にならないということはありえないもの。でも大切なのは、ネガティブな状態になったとき、すぐにそのパフォーマンスをよい状態に戻せること。それがなにより重要だと著者はいいます。だからこそ、ネガティブな状態をすぐに脱出し、パフォーマンスの高い状態に戻す音ができること、それが成功人格がもたらす効果の2つ目。(3)招待状を受け取りやすくなる意識すべきは、この世の中に大きく3つの世界があるということなのだといいます。まず大半の人がいる世界が、成功とは無縁の世界。2つ目が、成功者の世界。そして3つ目が、真の成功者の世界。当然ながらこの世界に入れるのはほんのひと握りの人たちだといいますが、だとすれば、どうしたらその世界に行けるのでしょうか?著者によれば、それは、成功者の世界や真の成功者の世界の人たちから「招待状」を受けることなのだとか。つまり、「今度おもしろい会合があるんだけど、一緒に来ない?」というように、お誘いをうけることなのだといいます。それしか方法はないのに、成功と無縁の世界にいる人ほど、「招待状」をもらっていることに気づかず、いつの間にかその招待状を破り捨てているというのです。つまり、それを見逃さないことこそが、成功の秘訣だということ。*こうした考え方を軸に、本書内ではさらに具体的なメソッドが紹介されています。脳科学的な能因はそれほど多くないように感じましたが、純粋な気持ちで受け入れることができれば、それを糧にすることはできるかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※石川大雅(2016)『自分に合った脳の使い方』フォレスト出版
2016年04月24日タイトルが示すとおり、たしかに『話し方で、男は決まる』(櫻井弘著、フォレスト出版)は男性をターゲットとした書籍。しかし内容に目を通してみると、そこに書かれていることの多くは、男女を問わずさまざまな人に訴えかけるものであることがわかるはず。そういう意味では、「大人のための」話し方メソッドであるともいえるでしょう。ちなみに本書は、よくある「話し方本」のように、テクニックやスキルを重要視しているわけではありません。たしかに、それらも重要なこと。しかし現実的に、「あるもの」がなければ、身につけたスキルは活用できないというのです。それは、相手に対する「意識」。「相手は自分になにを求めているのだろう?」「この話の目的はなんだろう?」など、相手の思いや考えを想像し、それを意識してコミュニケーションをとる(=相手の感情に気を配る)必要があるというわけで、十分に納得できる考え方です。著者はコミュニケーションにおける「魅力(みりょく)」を、「三力(みりょく)」ともいいかえることができると考えているそうです。なぜなら魅力を上げるためには、3つの力が必要だから。それは、「思考力」「行動力」、そして「言語力」だといいます。■コミュニケーションに必要な「三力」(1)思考力たとえば相手になにかを説明するとき、「具体的な説明」ができなかったとしたら相手にははっきりと伝わりません、つまり、具体的に説明するためには、「具体的な思考」が前提となっていなければならないということ。そして同じように、肯定的に伝えるためには、「肯定的な思考」が必要になってくるもの。また論理的に話す必要があるときには、「論理的な思考」が前提となってくるでしょう。つまり、しっかりと聞いて、話して、伝えるためには、「しっかり考える」、すなわち「思考」が前提条件になるということです。(2)行動力「考えてから行動するか?」「行動してから考えるか?」「考えながら行動するか?」「行動しながら考えるか?」……なにか行動を起こさなければならないときには、行動する前につい、いろいろ考えてしまいがちです。しかし現実的には、そんなことばかりを考えていると、相手や状況はどんどん変化していってしまうもの。いいかたを変えれば、「行動力」は「スピーディーに」「速やかに」がキーワードになってくるということです。そして、そのために重要なのは、考えながら行動したり、行動しながら考えたりするという「同時進行」。いわば、「思考」と「行動」はセットになっていなければならないということです。(3)言語力またコミュニケーションという観点からすると、「行動」のなかには、口を動かす言語活動としての「口動」という行為も必要になってくるのだとか。すなわち、それが「言語力」だということ。たとえば朝の挨拶であるにもかかわらず、ボソボソッと低い声で「おはようございます……」などと挨拶したら、相手から「朝っぱらから暗い声で挨拶してきて……感じ悪い」というマイナスの印象を抱かれても当然。それでは、コミュニケーションが成り立たないことになります。■言語力・思考力・行動力が「大前提」「気持ちは、態度や声に現れる」とよくいわれます。たしかに気持ちが暗ければ、声も暗くなりますし、お辞儀も暗い感じになるでしょう。だからこそ、実際に「相手に確実に届く挨拶」をしたいなら、「言葉に心を込めて行動する」ことが大切だといいます。そして著者はこのことを、「3つのコ」と呼んでいるのだそうです。それは「言葉(コトバ)」「心(ココロ)」「行動(コウドウ)」、すなわち「言語」「思考」「行動」だということです。いってみれば、これら3つが揃っていて、なおかつバランスがとれていなければ、相手には伝わらない。しっかりとそう認識し、理解し、身につける必要があるわけです。一例として、「謝罪」の場面を思い浮かべてみましょう。たとえ「申し訳ございません!」とすまなそうに頭を深々と下げていたとしても、もしポケットに手を入れたままだったとしたら、相手は間違いなく不快感を抱くことになります。なぜならそれは「言行不一致」の状態だからで、相手に不信感や不快感、懐疑心といったマイナスの感情を意識させてしまうわけです。したがって、「言語力」「思考力」「行動力」の3つの力がバランスよく、しかも違和感なく相手に届いていることが、人間同士のコミュニケーションにおける大前提だということです。*著者はコミュニケーションの原則に基づいた、日常の話し方・聞き方の指導を行う「話し方・コミュニケーション」の第一人者。そんな立場を前提として書かれているからこそ、本書には説得力があるのだともいえそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※櫻井弘(2016)『話し方で、男は決まる』フォレスト出版
2016年04月24日『患者は知らない 医者の真実』(野田一成著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、NHKの記者から医師に転身したという異例の経歴の持ち主。きっかけは、事件や事故の取材に明け暮れるなかで、しばしば医療問題に接する機会があったことだといいます。記者の立場から見た医療界は、専門性を壁として外部の目をシャットアウトする、閉鎖的な世界だったのだそうです。そしてそんななか、以前からあったという医療への関心がどんどん高まっていくことに。そこでNHKを辞めて医学部へ編入学し、医療を学んだ末に医師になったというのです。しかし現場に足を踏み入れてみ実感したのは、医療状況がさまざまな問題を抱えているという現実。たとえばそのひとつが、「よりよい治療を受けたい」という患者さんと、理想の医療を目指して奮闘している医師との間に「溝」ができてしまっていることです。そこでその溝を少しでも埋めたいという思いから、本書を上梓したのだといいます。ところで医療について考えるとき、私たちにとって切実な問題は「時間」です。特に大病院では、時間どおりに診てもらえないことが常識化しつつあるということ。なぜ、そんなことになるのでしょうか?■大病院では予約時刻が守られない理由せっかく予約しておいたのに、予約時刻をすぎても一向に呼ばれなくて次第に苛立ってくるということはよくあるもの。当然のことながら、医師の数が十分でないこと、もしくは大病院を受診する必要のない患者さんも大病院に集中してしまうことが。患者さんを長時間待たせてしまうことの一因だと、著者も認めています。医師のがんばりと患者さんの忍耐がギリギリのバランスをとることで、なんとか成り立っているというのが現状なのだそうです。ちなみに著者は都内の公立病院に勤めていたころ、15人から20人の患者さんを病棟で受け持っていたそうです。みんな、がんや肺炎の患者さん。しかもそこは臨床研修指定病院という、研修医を育てる病院でもあったので、医学部を卒業したばかりの研修医とともに患者さんを診察していたといいます。本書のなかでは、そのころの状況の一例が紹介されていますが、これがなかなかハード。■遅れても無理はない診察スケジュール・外来がはじまる8時半、一緒に回診していた研修医に、その日行うべきことを記したメモを渡して指示を出し、外来へ。・外来の診療枠はほとんどが予約で埋まっているものの、近隣のクリニックから紹介状を持参して来院する患者さんや当日突然受診する患者さんもいるため、診療スケジュールは次第に遅延していくことに。・予約時間をすぎて苛立つ患者さんへ、受付の事務員や看護婦が対応。・診療室に入ってきた患者さんに医師からもう一度遅れた理由を説明して頭を下げ、診療開始。・午前10時半に病棟から、長らく診療していた進行肺がんの患者さんの心拍が止まりそうだとの連絡。・診療スケジュールはすでに1時間遅れとなっていたものの、いったん診療を中座して病棟へ上がり、ご家族が見守るなかで死亡宣告を行う。・死亡診断書を記載し、外来診療部門に戻るが、結局11時の予約患者さんを診察室に呼び入れることができたのは午後1時前。たしかにこんな感じなら、予約時刻に遅れてしまってもむしろ当然かもしれません。■ランチは時間どおりに食べられない!ちなみに著者の場合、平日の外来診療で、昼食を食堂や医局で食べることができるのは週に一度程度。なんとか外来を抜けることができ職員食堂にたどり着いたとしても、定食がすでに品切れなので、コンビニでおにぎりとお茶を買うということも珍しくないのだとか。それは著者に限ったことではなく、多くの勤務医も同じような状況だそうです。・そんな昼食後は複数の検査をこなし、すべてが終了したのは午後4時。・その後は病棟に戻り、研修医と夕方の回診(家族との面談も)。・研修医が姿を消した午後5時以降は、彼らの記載した診療録(カルテ)のチェックと追加の記載。・入院患者に翌日の点滴や処方を出し終えると午後7時すぎ。そこからが自分の時間で、学会発表のためのプレゼンテーション資料を準備したり、論文を読んだり。その後、午後9時半に病院を出て、帰宅は10時半。ただし、がんや重症の患者さんを担当しているときは、自宅にいても看護婦さんから相談の電話がかかってくることが。緊急の場合は病棟に戻らなければならず、深夜でも容赦なく携帯がなるのだといいます。そこで緊急の出勤ができるよう、枕元に着替え一式とカバンを常に置き、連絡を受けてから10分以内に出られるようにしていたのだそうです。医師が多い大学病院や一般病院の一部の診療科では、夜間や休日の呼び出し当番をつくって対応しているものの、著者の所属する呼吸器科のように医師が不足している科では、このように勤務は決して楽ではないのが現実。しかし著者も書いているとおり、それは「医師にとっても患者さんにとってもむしろ害悪」であるはず。なんとかして、こうした状況を改善していくことが急務であるようです。*他にも医師としての立場から、治療や投薬など、さまざまな角度から医療の現実を切り取っているため、とてもわかりやすい内容。医師との間によりよい関係を築くためにも、読んでおいたほうがいかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※野田一成(2016)『患者は知らない 医者の真実』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年04月22日『よく通る声、伝わる声に5秒で変わる!ビジネスがうまくいく発声法』(秋竹朋子著、日本実業出版社)の著者は、ビジネスボイストレーニングスクール「ビジヴォ」代表として、多くのビジネスパーソンの声指導を行ってきたという人物。いわば声に関するプロフェッショナルですが、だとすれば聞いてみたいのは、「どうしたらいい声になれるのか」ということではないでしょうか。自分の声や話し方が好きになれなくて、それが自信のなさにつながっているという人は、決して少なくないはずですから。ところが著者は意外なことに、「自分を変えようなどと思う必要はない」と断言するのです。なぜなら、ちょっと声を変えてみれば解決できるから。しかも声は、ほんのわずかな努力で変えることができるのだとさえいいます。そんな本書ではさまざまな「声テク」が紹介されているのですが、そのなかからすべての基本である「腹式呼吸」についての記述を引き出してみたいと思います。■腹式呼吸で自律神経も整えられるヴォイストレーニングの基本は腹式呼吸。しかも難しく考える必要はなく、ちょっとしたコツを学べば、誰にでもできるようになるのだそうです。腹式呼吸によって期待できるものの第一は、ダイエット効果。インナーマッスルが鍛えられ、代謝アップにもつながるというのです。当然のことながら、インナーマッスルが鍛えられると、ウェストサイズダウンや体の引き締まりが期待できるわけです。また代謝がアップすると、肌のトラブル解消や便秘解消などにもつながるのだとか。そして腹式呼吸は、自律神経を整えてくれるのだそうです。短い「胸式呼吸」では、吸い込んだ空気は肺の奥まで到達できません。その結果、肺には炭酸ガスなどの不要なものが溜まってしまうのだといいます。この状態が長く続くと、血液循環が低下したり、自律神経失調症担ったりしてしまうこともあるのだというのですから油断は大敵です。一方、腹式呼吸をすると、肺の下の横隔膜が上下運動することになります。横隔膜には自律神経が密集しているため、腹式呼吸をすると自律神経が刺激されることに。すると副交感神経が優位になり、リラックスすることが可能に。現代社会においては、ストレスと緊張状態の多い生活を強いられるもの。しかし腹式呼吸をすることで、心の平安も得られるのだとすれば、それは無視できません。そればかりか、腹式呼吸はひらめきや直感ももたらしてくれるのだといいます。腹式呼吸をしばらく続けると、脳波がアルファ波へと移行するわけです。ひらめきや直感は、体がリラックスし、脳がアルファ波を出しているときに生まれるもの。それが、大きな効果につながるということ。なぜならビジネスシーンでは、多くの場面でひらめきが必要になるものだから。■腹式呼吸は百利あって一害なし!たとえば新製品のアイデアを出さなければならないとか、お客様の問題を解決するための提案書を書かなければならないなどがそれにあたるでしょう。そんなとき、腹式呼吸を身につけていれば、斬新なアイデアがひらめく可能性があるということ。また、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンも、腹式呼吸のときに分泌されるそうです。つまり、腹式呼吸はいいことだらけで、害になることはひとつもないと著者は断言します。「百害あって一利なし」という言葉がありますが、その正反対で「百利あって一害なし」だというのです。では次に、「腹式呼吸の3ステップ」をご紹介しましょう。(1)正しい姿勢で立つ(プリマドンナ姿勢法)足は肩幅より少し狭く開き、両足に均等に体重を乗せます。重心は、かかと側ではなく、前方のつま先寄りに。このとき、お尻、背中、肩、首、頭が一直線になるように背筋を伸ばします。プリマドンナが舞台に立つようなイメージだそうです。(2)お腹に力を入れて息を吐きます右手をお腹にあてて、左手は口の前に置いてください。冬の寒いときに、手を息であたためるようなイメージで「ハァー!」と息を吐いてみます。それが腹式呼吸。息を吸うときは、鼻から自然に入ってくる感じ。(3)10秒間、息を吐く練習をします「1、2、3、4、5、6、7、8、9、10」」と10秒間、腹式呼吸で長く息を吐いてみましょう。これを3回続けたら、今度は20秒間、長く吐く練習です。それを3回続けたら、今度は30秒間にチャレンジ。毎朝5分間、練習をしてみるといいそうです。1日のはじまりに腹式呼吸をすると、爽やかな気分で活動できると著者。*これは基本中の基本ですが、他にもさまざまな呼吸法、そして「伝わる声」を実現するためのメソッドがぎっしりと詰まっています。実践的な内容なので、きっと役に立つはずです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※秋竹朋子(2016)『よく通る声、伝わる声に5秒で変わる!ビジネスがうまくいく発声法』日本実業出版社
2016年04月22日『社会人1年目からの「これ調べといて」に困らない情報収集術』(坂口孝則著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、「フレッシュパーソンのためのあたらしい教科書」と銘打って創刊された「やるじゃん。」ブックスのなかの一冊。タイトルからもわかるように、「情報収集術」に関するノウハウがわかりやすく解説されています。きょうはそのなかから、大切な基本について解説された「情報収集5つの鉄則」をご紹介したいと思います。■1:情報収集は、上司へのヒアリングから社会人になると、上司から「◯◯について調査して報告しなさい」と要求されることがあります。しかし、ネットで検索しただけではよくわかりませんし、誰に聞いたらいいのかも検討がつかないもの。それどころか、資料が世の中のどこに存在するのかすらわからなかったりします。そんな新社会人に対して、著者は自らの経験値をもとにアドバイスをしています。資料を作るに際しては、次の表の項目を明確にすることが大事だというのです。・いつまでにつくればいいのか・資料の目的は明確になっているか・対象者は上司だけか、あるいは、さらに上の役員なども見るものか・報告手段はなにを求めているか・できれば、どういう結論を導きたいのか・上司はどのくらい詳しいのか︎特に重要なのは、「できれば、どういう結論を導きたいのか」。上司の意見を尊重しつつ、上司の仮説をていねいに修正し、適切な資料をつくることが大切だということです。■2:資料は「会社に役に立つもの」でなくてはならない情報収集とは、調べる行為だけではなく、考えることでもあり、さらには仮説を検証し続ける行為でもあると著者。しかも仕事でつくった資料は、会社のなかで使われるもの。だからこそ、会社が得するのか、効率化するのか、コスト削減できるのか、売り上げが伸びるのが、社員の職場環境が改善するのかなどの「実利」を追求することが必要。そこで資料をつくる前には、次のことを意識して情報収集をすることが大事。・ネットだけのつぎはぎ資料になっていないか・そのほか、情報源として信頼のおけないソースに拠っていないか・書籍、雑誌、テレビといった情報の単なるまとめになっていないか・あまりに原則論の、誰でもわかっている情報ばかりになっていないか大切なのは、その情報から新たな発見を導くことだといいます。■3:情報には「種類」がある著者によれば、情報には、一次情報、二次情報、三次情報があるそうです。一次情報とは、その情報源に直接当たったもの。誰かについて調べるとき、その人と会話したりインタビューすることです。二次情報は、新聞や書籍、テレビ、ラジオ、論文などから得た情報。誰かの発言を間接的に得る場合もあてはまるのだとか。一次情報を元につくりあげられているだけに密度は濃いものの、一次情報の「次」にあたるということを意識する必要があるといいます。そして三次情報は、情報源すらわからなかったり、何重にも編集しなおされたりしたもの。正式かつ厳格さを求められる資料であれば、避けるべきだということです。また、どの情報であれ、それが「事実」なのか「分析」なのか「希望」なのかを意識しなくてはならないわけです。■4:情報は常に疑おう!一次、二次、三次に限らず、その情報が信頼に足るものかどうかを意識することはとても大切。そして一次情報を使うときは、それを裏づける他の一次情報か二次情報を探すべき。つまり、重要なのは二重で確認すること。そのうえで大切なのは、直感的にも正しいかを常に自問すること。新しい内容に接するときは、「ほんとかな」と5回くらい疑うべきだといいます。■5:情報収集は「時間」が命資料提出に際しては、なによりも「期限」を守ることが大切。期限ぴったりに資料を報告したら及第点、期限より早ければ得点は3割増し、遅延は3割減だと著者はいいます。さらにもうひとつ重要なのは、情報の鮮度。つまり「いつの時点の情報を使うか」。常に資料の趣旨・目的をとらえ、多くの人たちが納得してくれるかを自問するとよいそうです。*情報収集は社会人に必須のスキルであるだけに、目を通してみればきっと役立つはず。また新社会人のみならず、すでに相応のキャリアを身につけている中堅ビジネスパーソンにとっても、忘れかけていたことを再確認するのに最適だと思います。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※坂口孝則(2016)『社会人1年目からの「これ調べといて」に困らない情報収集術』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年04月21日『金利を見れば投資はうまくいく』(堀井正孝著、クロスメディア・パブリッシング)の冒頭には、「炭鉱のカナリア」の話題が登場します。ご存知の方も多いとは思いますが、改めてご紹介しておきましょう。カナリアは周囲の異変に敏感で、それまでさえずっていたとしても、危険を感じると鳴き止んでしまう習性を持っています。そこで炭鉱労働者は昔、坑道に入る際に3羽のカナリアを鳥かごに入れて持っていったというのです。いうまでもなく、そのうち1羽でも鳴き止んだら、「炭鉱内にガスが発生しているなど、なんらかの変調が起きている」という合図だと認識したわけです。つまりカナリアは、一種の警報(アラーム)として使われていたということ。でも著者はなぜ、こんな話を持ち出したのでしょうか?理由はいたってシンプル。つまり投資の世界にも「炭鉱のカナリア」が存在していて、それは「金利」だというのです。なぜなら金利は、まだ表面化していない景気の変調をいち早く教えてくれるものだから。それが、投資の世界におけるカナリアだという根拠なのです。だとすれば、金利について知っておけば投資の確実性は向上するでしょう。投資家にとっては、とても頼もしい味方だということです。そして著者は、「3つの金利」を「炭鉱のカナリア=警鐘」として機能させれば、景気の変調に気づいていけるとも主張しています。そこで今回は、この「3つの金利」に焦点を当ててみましょう。■1:政策金利(短期金利)まず金利には、「短期金利」と「長期金利」があります。短期金利は一般的に、期間が1年未満の金融資産の金利のことで、政策金利は短期金利のひとつ。政策公純は簡単にいうと、中央銀行が一般の銀行に融資を行う際に受け取る金利のこと。日本では2006年まで「公定歩合」といわれていたものです。金融政策とは、景気を安定的に拡大させるため、中央銀行が政策金利を変更し、市中に出回るお金の量(通貨供給量)を調節すること。中央銀行は、景気がよいときは政策金利を上げて通貨供給量を減らし、景気が悪いときには政策金利を下げて通貨供給量を増やします。こうして政策金利を引き上げることが「利上げ(金融引き締め)」で、引き下げることが「利下げ(金融緩和)」。政策金利は、金融政策の影響を大きく受けるといいます。預金やローンの利率など、私たちがふだん接している金利で、期間の短いものについては、政策金利が基準のひとつになるそうです。また、時期によってその利率が上下するのも、政策金利が上下することが理由のひとつ。私たちは日常生活のなかで、知らず知らずのうちに金融政策の影響を受けているわけです。■2:10年国債利回り(長期金利)長期金利とは、一般的には期間が1年以上の金融資産の金利。10年国債利回りは、長期金利の指標のひとつだそうです。債券とは、国や企業が期間や利率を決め、一般投資家から資金調達をするために発行するもの。そして10年国債とは、国が10年間利率を決めて発行する債券のこと。10年国債利回りとは、債券市場における10年国債の流通利回りのこと。そして流通利回りとは、債券市場で債券を購入し、満期まで保有し続けた場合の1年あたりの利回り(%)。つまり流通利回りは債券の収益率のようなもので、お金を借りるときに支払う金利だと考えればいいそうです。■3:社債利回り社債は、企業が発行する債券のこと。社債利回りとは、債券市場におけるその社債の流通利回りのことで、企業が資金調達をする場合のコスト。流通利回りには債券の構成要素がすべて盛り込まれているため、同年減で発行体が異なる社債をくらべた場合、社債利回りの差は発行体となる企業の信用力の差と考えられるそうです。信用力とは、満期が来たら借りたお金をきちんと返済できるか、定期的に利息を支払えるかという返済(支払い)能力。いわば、企業の信用力が社債利回りに大きく影響するわけです。私たちもなにげなく、この信用力を使って生活しているのだとか。いい例が、「お金を誰に貸すか」ということ。誰かにお金を貸して欲しいといわれたら、返してもらえるかと不安になるもの。でも、銀行になら安心してお金を預けます。銀行なら利息を払ってくれるし、必要なときにはお金を返してくれると、無意識のうちに銀行の信用力を評価しているからです。たしかにこうして考えていくと、金利を身近に捉えることができそうです。*著者は25年以上にわたって運用の世界に身を置き、金融市場と奮闘してきたという人物。そのような経験に基づいて書かれているからこそ、本書の内容にも説得力があるのです。著者のいうとおり金融市場の「炭鉱のカナリア」を意識してみれば、投資を成功させることができるかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※堀井正孝(2016)『金利を見れば投資はうまくいく』クロスメディア・パブリッシング
2016年04月19日『あなたのまちの政治は案外、あなたの力でも変えられる』(五十嵐立青著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、茨城県のつくば市で8年間にわたって市議会議員を務めてきたという人物。そのような活動を通じ、感じたことがあるのだそうです。それは、多くの人が「どうして保育園に入れないのか」「なぜ街灯が少ないのか」など日常生活の不便さには関心を持っているのに、その原因となっている“政治”には関心を持っていないということ。しかし現実的に、私たちの毎日の生活は政治から切り離されたものではないはず。だからこそ、多くの人々に政治への関心を持ってもらいたい。そんな思いから、本書を執筆したのだといいます。主人公で主婦の香織、夫でサラリーマンの大輔、小3で長男のソウタ、2歳の長女ヒナタからなる「香織一家」を軸としたストーリー仕立て。話の要所要所で、ママ友や市議会議員、市役所職員などが絡んできます。そのやりとりを読み進めるうちに、子育て、介護、交通、都市計画などさまざまな問題への疑問を無理なく解消できるわけです。きょうはそのなかから、“政治とお金”についての気になる話を引き出してみたいと思います。■市議会議員の報酬は人口によって変わるこの項で、「政治家ってやっぱり儲かるの?」というストレートな疑問が浮上します。市議会議員の山下の回答によれば、議員は“報酬”を受け取っており、彼の議会の場合、額面は月額45万円なのだそうです。「やっぱり多いんだな」という印象を否定できませんが、詳しく説明を聞くと、どうやらそうともいい切れないようです。なぜならこれは、会社でもらう給料とは違って、税金などが引かれていないものだから。ここから所得税、国民健康保険税や市県民税、国民年金などをマイナスすると、手取りは月平均で24万円くらいだというのです。それに加え、「期末手当」というボーナスのようなものももらえるので、実質は年450万円くらい。なお、業績に関係なく支払われるのだそうです。ちなみに全国どこの市区町村でも同じ額だというわけではなく、人口が多いところは金額が多く、人口が少ないところは金額も少ないのだといいます。人口によって仕事が変わるわけでもないので、仕組みとしてはちょっとおかしい気もします。また報酬の他に、政務活動費というものも支払われるそうで、山下のまちの場合は月額3万円なのだそうです。■県議会議員と国会議員の報酬はいくら?しかし、もしも県議会議員になったとすると、金額はずいぶん上がるのだとか。額面で年収約1,200万円だといいますから、税金や年金を払ったあとの手取りもかなりの額になりそう。しかも県議会議員の場合、政務活動費は月額30万円。つまり市議会議員のひと月の手取りとほぼ同じ額が政務活動費としてもらえるわけです。さらに国会議員になると、年収は約2,200万円。そして報酬の他に文書通信費が月額100万円もらえることに。しかも領収書がいらず、つまりはなにに使ってもいいということ。秘書給与費なども合わせると、年間約7,000万円くらいがもらえるというのです。また、公務ということになると新幹線のグリーン車が乗り放題になるなどの特典も。■市会議員にはなにが求められているのかしかし、そういう話を聞くと、「はたして金額に相当した仕事をしているのか」ということが気になります。その点については、市議会議員の場合だと、議員として必ず出席しなければいけないのは年に4回の定例会で、年間で30日くらいだそうです。それに加えて、委員会が開催されたり、全員協議会という会議が開催されたりしますが、すべてを合わせても公務は年50~60日くらい。それだけで何百万円ももらえるとはうらやましい気もしますが、議員としての活動は、公務以外の部分で差が出てくるのだといいます。たとえば政策の勉強や現場の声を聴くことに時間をかなり割く議員もいれば、もっぱら地域のお葬式やお祭りに有力者として顔を出す冠婚葬祭専門というような議員もいるということ。「冠婚葬祭専門議員」には1年で100~150回も出席する人がいるそうで、そのため新聞のお悔やみ欄をしっかりチェックしているのだとか。そんな議員に税金から高い給料を払ってほしくないと感じても不思議はありませんが、議員報酬を高いと思うか低いと思うかは、その人が政治家になにを期待するかということとも関係しているもの。葬式や結婚式に来てほしいとか、道路などの陳情を市に届ける役割をするとか、仕事の口利きをしてほしいとか、姿勢の問題点を追求してほしいとか、いろいろなニーズがあるわけです。つまりそう考えると、政治家を育てるのは、選挙で投票している市民の仕事ということになるのです。*話の大半が会話形式で進んでいくため読みやすく、知りたいことを無理なく知ることができる良書。政治に関心を持つために、有効な内容だといえそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※五十嵐立青(2016)『あなたのまちの政治は案外、あなたの力でも変えられる』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年04月18日時間を効果的に使うことはなかなか難しいだけに、時間管理についてモヤモヤした気持ちを常に抱いている方も多いはず。そこでぜひご紹介したいのが、『世界で一番シンプルな時間術[新装版]』(マリオン&ヴェルナー・ティキ・キュステンマッハー著、佐伯美穂訳)です。著者の一人であるヴェルナー・ティキ・キュステンマッハーは、プロテスタントの牧師であると同時に、イラストレーター、作家としても活動する人物。そして共著者のマリオンは彼の妻です。そんなふたりが2006年に発売した本書は、以来10年間にわたり支持され続けてきたロングセラー。そして今回お目見えしたのは、そんな名著をコンパクトサイズにした新装版です。タイトルから想像できるとおり、テーマは時間と上手につきあうこと。「いま、この瞬間」を生きていることを、純粋な気持ちで楽しむためのアイデアが紹介されているわけです。だから、ここに書かれていることを実行すれば、ゆったりとして満ち足りた気持ちになれると著者はいいます。やるべきこと、やりたかったことはたくさん。だから実際のところ、1日中あわただしく動きまわっていた。にもかかわらず、その日の終わりに1日を振り返ると、きちんと達成できたことがひとつも見つからなかった……。そんな経験は、誰にでもあるのではないでしょうか? 著者も、そんな「収穫ゼロ」の日は誰でも経験するものだと認めています。とはいえ、「みんなもそうなんだ」と満足してみたところで進歩はありません。そこで意味を持つのが、“時間の上手な使い方の4つのコツ”を取り入れること。そうすることで、1日の充実感はまったく変わってくるというのです。■1:短時間でも運動する時間をとるやらなければならないことがたくさんあって、時間がまったく足りない。そんなとき、時間を得るために多くの人は、ランニングやフィットネスジムに行く時間を削ってしまうと著者は指摘しています。しかしそれは、もっともやってはいけないことなのだとか。体を動かして心拍数を上げると、必ず気分はよくなり、「やった!」という達成感も味わうことができるもの。しかも時間をかける必要はなく、たった30分で十分だといいます。それだけで、その後の時間もずっと、充実した気分で過ごすことができるわけです。また短時間の運動をすることには、判断力が向上するというメリットも。その結果、「重要なことと、そうでないこと」がはっきり見えてくるというのです。いいかえれば、運動することで「時間を上手に使う能力」が高まるということ。しかも定期的に体を動かしていれば、疲れにくい体質になり、頭痛や風なども予防することが可能。良い体調で集中できるようになり、充実した時間が増えるといいます。■2:毎日、計画する時間をとる「イライラした気分だ」「集中できない」「やる気が湧いてこない」などと感じるなら、仕事を続けず、いったんその場から離れてしまうといいのだとか。そして5分程度、その日の仕事について「やるべきことはなにか?」「やり終えたいことはなにか?」「達成したいことはなにか?」と考えをめぐらせ、計画してみる。それが、時間の効率化にとっては大切だという考え方。ちなみに著者のいちばんのおすすめは、1日の計画を考える短い時間を、1日のはじまりの習慣とすることだといいます。■3:机の上を片づける机に向かっているのに集中できないというときは、机の上を片づけて、余計なものをどかしてしまうのがいいそうです。とはいっても、大掃除になってはいけないといいます。あくまで片づける場所は机の上だけ。時間も短く区切り、ちょっとだけ瀬尾入り整頓をするということです。目的は、集中すべきこと以外のものが、目に入らないようにすること。自分の目の前に「これだけをやる」と絞った仕事に必要なものだけを置くようにすれば、気が散ることも少なくなるわけです。■4:小さな愛情表現をする友人や恋人、妻や夫、両親や家族など、大切な人に感謝と愛情を伝えることは、つい先送りにしてしまいがち。しかし著者はこのことについて、「愛情とは、植物のようなものだ」と記しています。普段は放っておいて、1年に1回、ゴージャスに水と肥料をあげても効き目はないということ。こまめにやさしい気持ちを注がないと、いつの間にか枯れてしまうわけです。だからこそ、ほんの少しの気遣いをすることが大切。コツは、堅苦しく考えず、「相手のちょっとした望み」を叶えること。*このように、著者の主張はいたってシンプル。しかし考え方のひとつひとつは理にかなったものであり、上記の「小さな愛情表現をする」のように、一見すると時間管理には関係がなさそうにも思えることにもあえて注目。そこから、本質を見事に引き出しています。だからこそ、読んでみればきっと「忘れかけていた多雪なこと」を思い出せるはずです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※マリオン&ヴェルナー・ティキ・キュステンマッハー(2016)『世界で一番シンプルな時間術[新装版]』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年04月17日『「話し方」に自信がもてる 1分間声トレ』(秋竹朋子著、ダイヤモンド社)の著者は、声楽家としてのノウハウ、そして音に対する敏感な聴覚(絶対音感)を生かし、「ビジヴォ」というビジネスボイストレーニングスクールを運営している人物。スクールでの授業、全国各地での企業研修・セミナーなどを通じ、これまで250社以上の企業、3万人以上のビジネスパーソンに対してボイストレーニングを指導してきたのだといいます。そして、そんな実績があるからこそ、「声が変わるだけで、仕事の成果が上がる」と断言できるというのです。特にビジネスの現場においては、話の内容を相手にきちんと伝えるために、話し方がとても重要。その土台を支えているのが「声」だということ。いい発声・発音で話しているかどうかによって、話の伝わりやすさの大部分が決まり、それが説得力につながるというわけです。■声と年収は比例していることが明らかに声についての情報発信を行っている「声総研」が、20代から50代の働く男女を対象としてアンケート調査を実施したのだそうです。自分の声に自信があり、「声をほめられたことがある」「声の通りがよいほうだと思う」などの要素・経験を持つ人を「モテ声(ちゃんとした声)」、対して自分の声に自信がなく、「他人に声が暗いといわれたことがある」「声にハリがなくなったと感じる」などの要素・経験を持つ人を「老け声」と名づけ、それぞれのタイプにどのような傾向があるかを探ったものだとか。質問のなかで、「現在、役職がついている、または管理職に就いている」と回答した人の割合は、「モテ声」の人が「老け声」の人を約1.3倍上回るという結果になったのだといいます。また、「自分の声が仕事で有利に働いたと感じたことがある」割合も、41.2%もの差をつけて「モテ声」の人が上回る結果に。つまり、いい声をした人のほうが上の役職につきやすく、また仕事もうまくいくということが、データから明らかになったというわけです。役職が上がれば給料も上がりやすくなるので、「声のよさと年収は比例する」傾向があるということになる。著者はそう主張するのです。■とくに魅力的な声を持っているのは誰か実際のところ、著者がビジネスの現場で見ていても、一流のビジネスパーソンは声に気を使っているのだといいます。ビジネスパーソンに特化したボイストレーナーとして3万人以上と接してきた経験のなかにおいても、間違いなく、できるビジネスパーソンはいい声の人が多かったといえるというのです。なかでも、特に魅力的な声を持っているのは、若くして大きな成功を収めたベンチャー企業の社長。それはおそらく、彼らが活動的でエネルギッシュであり、また体力もあるので、そのパワーが声になって表れているからだといいます。もちろん、声がいまひとつだったとしても、大企業のトップに上り詰めたり、ベンチャー企業を成功させたりした人はいます。ただしそういう方でも、ビジネスエリートになったことで「人に見られている」という自覚が芽生え、その結果、改めてボイストレーニングをして声を改善するというケースがよくあるのだそうです。だから、そういう人たちも結果的には声がよくなる。そのため、ビジネスでトップに立つ人は、必然的にいい声の人が多くなるというわけです。■いい声は「ビジネスチャンス」にもなるそこで著者は、「ビジネスで多少なりとも上を目指すのなら、いい声を手に入れることが必修科目」だと断言するのです。ところが、ビジネススキルとしての声に注目し、完全するためのトレーニングを受けようという人は、まだあまり多くないというのが現状。そのような考え方が浸透しているとはいえない以上、仕方のないことかもしれません。けれど、「あまり意識している人がいない」以上、それはビジネスチャンスにもなりうるはず。意識していない人に先んじて「いい声」を手に入れることができれば、他の人と差をつけることができるということ。昨今では、個人に対してコーディネートなどのアドバイスをしてくれるパーソナルスタイリストを活用するビジネスパーソンも出てきました。彼らは服装に気を使うことによって、イメージ戦略を実現しているわけです。そんな時代だからこそ、「声」にもしっかり気を使うべきなのだというのが著者の考え方。*このようなコンセプトに基づき、本書では「声トレ」の具体的なメソッドがわかりやすく紹介されています。声をなんとかしたいと感じている人にとっては、必読の一冊だといえそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※秋竹朋子(2016)『「話し方」に自信がもてる 1分間声トレ』ダイヤモンド社
2016年04月16日『相手を完全に信じ込ませる禁断の心理話術 エニアプロファイル』(岸正龍著、フォレスト出版)は、アップル、IBM、コカ・コーラ、P&G、トヨタなどの大企業も採用しているという「エニアグラム」について解説した書籍。「破壊力は劇薬並み!」などというキャッチフレーズを見ると少なからず胡散臭さを感じてもしまいますが、著者は「胡散臭いことは認めます」とはっきり記しています。その理由は明快で、つまりは「相手を完全に信じ込ませる」と大上段に構えているため、いかがわしさはぬぐい切れないと自覚しているのだということ。しかしそれでも、エニアグラムをベースに開発されたエニアプロファイルは、相手を完全に信用させるというのです。でも、そもそもエニアグラムとはなんなのでしょうか?きょうは、基本というべきその点に注目してみたいと思います。■人の基本的な性格の働きを描いた地図エニアグラムとは、ギリシャ語で「9の図」という意味の幾何学図形。そして、この図形をシンボルとした「性格タイプ論」なのだそうです。人間を「1.改革する人」「2.助ける人」「3.達成する人」「4.個性的な人」「5.調べる人」「6.忠実な人」「7.熱中する人」「8.挑戦する人」「9.平和をもたらす人」という9つの基本的な性格に分類したもの。なお、「エニアグラム研究所[日本]」のサイトには、その9つの性格の位置関係が表示されていますので、ぜひチェックしてみてください。いずれにしても、つまりはこの9つに相関関係があるということです。著者はそれを、それぞれの性格の働きを描いた“こころの地図”だと表現しています。エニアグラムは、心理学的研究が急速に発展してきた現在、もっとも効果的な自己成長のシステムとして、ビジネス、コーチング、カウンセリング、教育などのさまざまな分野に取り入れられているのだといいます。具体的にいえば、個人の特性を9つのタイプに分類し、世界中のすべての人は、そのうちのひとつに当てはまると定義しているわけです。なお、タイプは生まれた瞬間に決まっていて、死ぬまで変わることはないとか。とはいえ、自分がどのタイプであったとしても、9つすべてのタイプを自分のなかにある程度は持っているのだそうです。そして、そのなかでいちばん強く表面に現れているものが自分のタイプだということ。つまり、エニアグラムのタイプは「ありなし」ではなく、「強弱」だというのです。■エニアグラムは今も進化し続けている各タイプは人生観や価値観、行動の動機や選択の基準、コミュニケーション方法やストレスへの対処法などにおいて、それぞれ特徴的で共通の「やり方」を持っているのだそうです。いわば、それを丹念に観察し、研究し、性別や国籍を超えて等しく当てはまる知見としてまとめたのがエニアグラム。古代ギリシャ時代に誕生し、やがてアメリカに渡ったエニアグラムは、スタンフォード大学やバークレー大学で、心理学や精神医学の見地から研究や検証が行われるようになったのだといいます。そしてフロイトやユング、カレン・ホーナイなどの研究、対象関係論、DSM-IV(精神疾患の分類と診断の手引き)など、精神医学の理論との比較研究をしながら、詳細な理論として編まれてきたという経緯があるそうです。いわば完成系ではなく、いまも日々進化していて、年を追うごとに奥深さを増しているということ。■触れた人が100%驚くほど見抜く!そんなエニアグラムは本当に、驚異的な確度で人の内側を見抜くのだと著者は断言しています。その精度の高さに、エニアグラムに触れたことのある人は100%、驚くのだとか。ちなみに自分のタイプがわかったとき、いちばん多い反応は「笑っちゃう」。「なんでそんなに自分のことがわかるのか」と衝撃的すぎて、「笑っちゃう」という反応しか出てこなくなるというわけです。「そんなことがあり得るのかなぁ?」と疑いたくもなりますが、アップル、トヨタ、コカ・コーラ、IBM、ソニーなど世界のそうそうたる企業が注目し、取り入れているという事実は、エニアグラムの精度の高さの証明だといえるかもしれません。*エニアグラムの活用法をここで明かすことはできませんが、少なくとも著者がいうような「胡散臭い」ものではなさそう。だからこそ、信じるか信じないかは別としても、読んでみる価値はあると思います。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※岸正龍(2016)『相手を完全に信じ込ませる禁断の心理話術 エニアプロファイル』フォレスト出版
2016年04月15日『マンガでよくわかる怒らない技術』(嶋津良智著、アサミネ鈴作画、星井博文原作、フォレスト出版)は、「怒り」「イライラ」をテーマにしたベストセラー『怒らない技術』シリーズ(『怒らない技術』『怒らない技術2』『子どもが変わる怒らない子育て』)をマンガ化したもの。食品会社の営業部に所属し、いつもイライラと怒ってばかりだった主人公が、ふとしたことから「怒らない技術」を知り、少しずつ変化していくというストーリーになっています。とはいえ、ここにマンガを掲載することは不可能。そこで、もうひとつの重要なポイントである著者の解説のなかから、数字に関連したトピックを引き出してみたいと思います。■怒りの背景「第一感情」を探す著者によれば怒りとは「第二感情」であり、その背景には「第一感情」があるのだそうです。第一感情とは、不安、ストレス、痛み、悲しみ、苦痛、寂しさ、弱さ、絶望、悲観など。人はそれらに対して怒りを感じるものなので、原因となっている第一感情を探すことがとても大切だということ。たとえば、夜遅くなっても高校生の娘が帰ってこないので、父親が「どこへ行ったんだ、連絡もしないで」「帰ってきたら叱りつけてやろう」とイライラしているとします。でも、ここで落ち着いて、「このイライラの第一感情はなんだろう」と考えてみると、それは「心配」だということがわかってくるはず。つまり、「娘になにかあったのではないか」と心配しているからイライラしてしまうわけです。そして第一感情に気づくことによって、気持ちを「怒りの感情」として表に出すのではなく、「自分の気持ちをきちんと伝えるにはどうしたらいいか」と考えることができるようになるといいます。その結果、感情に流されることなく、冷静に、素直に伝えることができるようになるということです。■職場で人にイライラしない方法同じことは、さまざまなトラブルによってイライラしてしまいがちな職場にもいえるでしょう。本書のマンガにも、仕事の遅い人に対して、主人公がイライラしてしまう場面が登場します。つい、感情的な言葉を投げつけてしまいそうになるわけです。けれど、そうしなかったのは、落ち着いてイライラの第一感情を探したから。すると、それが「不安」であることに気づいたのです。いわば、「怒らない技術」の本質は、解決方法に焦点を当てること。部下の仕事が遅いことについて、いくらイライラしても怒っても、状況が変わるわけではありません。「急ぎなさい!」と感情的に叫んだら、仕事があっという間に終わるなどということもありません。だとすれば、そんなことにエネルギーを注いでも意味がなく、まったく無駄だということになります。つまりコントロールできないことに集中するのではなく、あくまでもコントロールできることに集中すべきだということ。■イライラのもとは価値観の違い「腹が立つ」「かっとする」「むかつく」といったイライラは、価値観の違いから生まれるものだと著者はいいます。自分が仕事の早い人だった場合、仕事が遅い人に対してイライラする。自分が明るい性格であれば、暗い人にイライラするのだということ。きれい好きな人はだらしない人が気になるとか、神経質な人は無神経な人が鼻につくとか、時間を守る人は時間にルーズな人が気になるなど、さまざまな状況にあてはまるはず。しかし、それは自分の価値観に合わないから気になるだけのこと。自分のやり方に合わないからイライラしているだけだということです。でも、その人はそれでいい、それが普通だと思ってやっているわけですから、そのことで自分がイライラしているのは、相手の問題ではなく、自分の問題だということ。自分で勝手にイライラしているだけなのだから、自分が受け止め方を帰る必要があるわけです。たとえばミスばかりする新人にイライラするのであれば、「自分も新人だったころは、あの人と変わらないことをやっていたな」と考えなおしてみればいいということです。*まずマンガで見せて、そののち平易な文章で解説されているため、「怒らない」ための技術を身につけやすいはず。方の力を抜いて読んでみれば、日ごろのイライラを解消できるかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※嶋津良智(2016)『マンガでよくわかる怒らない技術』フォレスト出版
2016年04月14日『フジテレビはなぜ凋落したのか』(吉野嘉高著、新潮社)とは辛辣なタイトルですが、それもそのはず。現在は筑紫女学園大学現代社会学部教授であるものの、著者は1986年にフジテレビに入社し、情報番組、ニュース番組のディレクターやプロデューサーのほか、社会部記者などを務めてきた人物なのです。つまり、いい時代もそうでない時代も見てきたわけであり、だからこそ、ここに書かれている内容にはとてもリアリティがあります。しかも共感できるのは、内部にいた人間だからと主観に偏ることなく、可能な限り中立な立場をとることを意識している点。フジテレビの歴史を1970年代までさかのぼり、以後の番組改革や組織の変化を確認しつつ、その軌跡を再確認しているのです。つまり“ファクト”を主軸として据えることにより、内部からの視点を維持しつつも、客観性を失っていないというわけです。そうすることによって、タイトルにもなっている「フジテレビがダメになった理由」を明らかにしようと試みているわけですが、なかでも特に注目すべきは、著者が最終章で「企業の寿命」に焦点を当てている点です。■フジテレビは本当に寿命なのか?「フジテレビは終わった」「もうだめだ」と、その凋落がメディアを賑わせるようになったのは、2011年あたりから。ご存知のようにフジテレビは、結果として多くの大ヒット番組を生むことになった「80年改革」によって“テレビの王者”としての立場を獲得したわけですが、はからずもそこから30年ほどを経たことになるわけです。ここで著者が指摘しているのは、企業経営者にとって「30年」という数字が不吉なものであるということ。1983年に『日経ビジネス』が打ち出した「会社の寿命30年」説によれば、企業が「繁栄を謳歌できる期間」は平均で30年だというのです。また、それから30年後の2013年に、改めて時価総額をベースに「日本の企業が輝いていられる時間」を算出したところ、わずか18.07%とかなり短くなっていたとか。つまり日本企業の短命化が、急速に進んでいるというわけです。だとすればそれは、80年改革から30年以上を経ているフジテレビは、もはや寿命が尽きたということなのでしょうか?その点について、著者は次のように記しています。「フジテレビの現状を振り返れば、フジ・メディア・ホールディングスが誕生して、事業の数が増え、組織運営が複雑化した。次第に個性的な“テレビバカ”は絶滅危惧種となり、社員が事務作業をそつなくこなすような優等生タイプに均質化されてきた。まさに“会社の老化現象”にぴったりとあてはまるのだ。(208ページより)」■起死回生のチャンスはきっとあるそれはともかく、そうなのだとすればここでひとつの疑問が持ち上がります。現在のフジテレビを覆っている沈滞ムードは、企業のバイオリズムにおける“波”にすぎないのかということです。つまり、業績が再び上向いてくれば消えてなくなるものなのか、それとも人間の老化現象のように、不可逆的なものなのかということ。このことについて著者は、前者だと考えていると記しています。つまり、フジテレビにも起死回生のチャンスはきっとあるはずだということ。■再生に必要なのは「社風の一新」そして、そのために必要なのは「社風の一新」。社風が変われば、社員の表情が変わり、行動が変わるもの。つまり社風を一新することで、それが再生の力になるということです。しかし、だからといって、イケイケだった80年代の社風に戻るわけにもいかないはず。それは、自殺行為ともいえるかもしれません。では、どうすればいいのでしょうか?その結論として著者が提示しているのは、“場”をつくること。立場の違いを超えて、異質な人とも腹を割って話し合う“場”を設けるという手法は、これまで多くの日本企業の労働慣習として行われてきたこと。そんな、価値観や目標を共有する“場”を再生させ、“ものづくり共同体”を復活させることができるかどうか。そこにフジテレビの未来がかかっているというのです。*フジテレビを肯定するか否かは別としても、“フジテレビ論”としては非常に優れた内容であると感じます。しかし、ここに書かれていることの多くはフジテレビだけでなく、伝統を持つ多くの大企業に同じことがいえるのではないでしょうか?そういう意味でいうと本書は、企業社会への警鐘だとも表現できそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※吉野嘉高(2016)『フジテレビはなぜ凋落したのか』新潮社
2016年04月13日ソクラテスといえば、だれもが知る古代ギリシアの哲学者。いまから2400年前、生まれ故郷であるアテナイの街に出て、若者に質問を投げかけて対話をしていたということで知られています。本人すら気づかない「本当の考え」を引き出す「ソクラテス式問答法」という対話法を得意としていたことも有名な話。『ソクラテスに聞いてみた 人生を自分のものにするための5つの対話』(藤田大雪著、日本実業出版社)は、そんなソクラテスが登場人物として活躍するユニークな書籍。現状に不安や不満、疑問を感じる27歳の青年と、いきなり目の前に現れたソクラテスとの対話を軸に、ストーリーが展開されていくのです。きょうはそのなかから、第4章「お金お金との「ちょうどいい距離」とは?」に注目してみたいと思います。■投資は確実に富をもたらすものではない将来の生活を不安に思っていたサトルは、その打開策として「投資」に注目し、その重要性をソクラテスに説きます。ところが意見は噛み合わず、ソクラテスはサトルに「投資をする人の人生を吟味しよう」と提案します。将来の生活を憂えて投資をはじめようとしているということは、投資によって将来の生活不安を和らげたいと願う心が宿っているということ。では、その心は、それが宿った人間の魂を全体としてどのようなものにつくり変えていくものなのか?すなわち、投資家のメンタリティを持つことが、人間の生き方にどういう影響を与えるのか?ここで重要なのは、投資が必ず儲かるものではなく、不確実性が伴うものであるという事実。どんなに優秀な投資家であっても、損をする可能性はゼロではないということ。つまり投資は、確実に富をもたらす性質のものではないとソクラテスはいうのです。■備えあれば本当に「憂いなし」でもないだとすれば、投資によって将来の生活不安を和らげたいと願う投資家たちは、自分の意のままにならない事柄に自らの運命を委ねているということになるはず。ところで、自分の意のままにならない事柄に運命を委ねる人は、内面的になにかの不安を抱え込みやすくなるのではないか? ソクラテスはそう疑問を投げかけます。サトルはそれに対して「備えあれば憂いなし」と反論しますが、ソクラテスはそこを指摘します。本当に「憂いなし」なのか?ほかならぬ「備え」のために、ずっと大きな憂いを抱えているように見えると。■なにを愛し求めるかで人の価値が決まる次にソクラテスはサトルに対し、一般的にいって、「なにかを追い求めようとする場合、そのなにかの点で不安になったとすれば、それについて考えることはいっそう多くなる」と指摘します。だとすれば、財産の点で不安を感じやすい投資家は、お金のことを気にしやすく、お金に執着した人間になりやすいということになるとも。つまり、お金に執着した人間になることは恐ろしいということをサトルに伝えたかったわけです。そして、このような趣旨のメッセージを伝えます。・人間の値打ちは、「なにを愛し求めるか」によって決まる。・立派なものを愛し求め、徳のために最善を尽くす人は、もうそれだけで立派で幸せな人である。・逆にお金の魔力にとらわれた人は、心が狭く、お金以外の価値を信じられない人間になる。・その結果、幸福な人ならだれもが持っている大らかさや朗らかさをうしなっていく。だからこそ私たちは、自分の心にお金への執着が生まれないように気をつけなければならないというのです。金儲け以外のことにはいっさい心を向けず、ただ「できるだけたくさんお金がほしい」と願いながら一生を送るなどということは、恥ずべきことだと。なぜならそれは、たった一度しか生きられない人生の価値を、自分自身の手によって、小さく、みすぼらしく、つまらないものにしてしまうことだから。■ソクラテスの考える正しいお金の使い方そしてお金は、「いい使い方」をすることが大切。そう主張するソクラテスは、自分が考える「いい使い方」とは、大切な人のために使ったり、立派で美しいことのために使ったりする、そういうお金の使い方だといいます。そういう使い方ができない人は、いくらお金を持っていても不幸せだというのです。なぜなら、友だちや恋人よりもお金のことを気にかけるような人は、決して「幸せ」ではないはずだから。*ここでは簡略化していますが、実際のサトルとソクラテスとの対話は、まるで禅問答のよう。つまりは堂々巡りの連続であるわけですが、だからこそ最終的には“真理”へとつながっていくことになるわけです。ソクラテスをホームレスのようなキャラクターに設定しているなど、見方によってはかなり強引な部分もありますが、そこが本書のおもしろさだともいえそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※藤田大雪(2016)『ソクラテスに聞いてみた人生を自分のものにするための5つの対話』日本実業出版社
2016年04月12日『聞くだけで脳が目覚めるCDブック』(山岡尚樹著、あさ出版)の著者は、「超脳トレ」全脳活性プロデューサー。そう聞いただけで活動内容をイメージすることは難しいかもしれませんが、つまりは脳をより活性化させるためのオーソリティ。具体的にいえば、人の脳に秘められた潜在能力を、音、イメージ、気の力を通じた実践ワークによって引き出しているのだそうです。つまり本書においては、これまで10万人以上に実践してきたという脳トレのノウハウを凝縮しているということ。CDも付属しているので、聴くだけで無理なく効果が望めるのだといいます。■脳は3%しか使われていない!ところで著者は脳のことを、あえて「道具」だと位置づけています。いってみれば、それはスマートフォンのようなもの。いろいろなアプリが入っていて、さまざまな使い方ができるという意味です。だとすれば、一般的に「頭がいい」「デキる」「効率がいい」といわれるような人は、総じて「道具としての脳の使い方がうまい」ということになるでしょう。ところが多くの人は現実的に、「電話をかける」「メールをする」といった程度の使い方しかできていないのだといいます。せっかくの多機能を、まったく使いこなせていないというわけです。しかも一説によると、ほとんどの人が脳をわずか3%しか使えていないというのですから驚き。だとすれば必要なのは、残り97%の「脳力」をどう引き出すかということになるはずです。■右脳・左脳・間脳・脳幹の役割そこで、まずは脳の役割をおさらいしてみましょう。ご存知のとおり、脳には大きく分けると「右脳」「左脳」「間脳」「脳幹」という部位があり、それぞれ次のような役割があります。[右脳]ひらめきやイメージ力、調和などをつかさどる脳。「芸術家肌の人は右脳優位」といわれるのは、このような理由があるからです。[左脳]計算や分析が得意な脳。言語、計算、論理、理屈といった理性的で論理的なところをつかさどるわけです。[間脳]脳内ホルモンの分泌を調整し、感情の操作をつかさどる役割。[脳幹]呼吸、体温調整といった、生きるための調整を担当。本書のトレーニングにおいては、まず「右脳」を活性化させ、多くの人のなかに眠っている未使用の脳力を引き出すのだそうです。■新しい「脳力」を目ざめさせる日常生活においてほとんどの人は、左脳が優位に働いているもの。著者によれば7~8割以上の日本人が左脳優位だというデータもあるそうですから、日本人は左脳民族であるともいえるのかもしれません。左脳優位である以上は、計算、論理、理屈など、現実的に判断・実行する力をしっかり持っているということになります。では、そんな実行力ある左脳に加え、右脳を活性化するとどうなるのでしょうか?答えは次のとおり。・与えられたことだけではなく、斬新な発想、ひらめき、イマジネーションを現実的に判断・実行できる。・ひとつのことだけでなく、同時に複数のことを実行できる(効率がよくなる)。・直感力や判断力が上がり、課題・問題に対して「検討→解決」の時間が短くなる(問題解決が格段に速くなる)・ものごとを俯瞰的に見ることができ、マネジメント脳力が上がる。つまり、一般的な「デキる人」「頭がいい人」のイメージと重なっていくということです。現代人は、もともと左脳が鍛えられているもの。だからこそ、右脳や間脳、脳幹などで眠っている“新しい脳力”を目ざめさせることにより、また異なった脳力を生かすことができるということです。■聴くだけで脳が活性化する理由よくある計算ドリルなどの脳トレは、左脳中心の訓練しかできないことが難点。一方、右脳を刺激できるのが、本書に採用されている「音」のトレーニング。なぜなら脳は「音」「イメージ」「気」という3種類のアプローチで活性化できるからだそうです。「イメージ」することは、人によってうまい・下手の差があるでしょう。「気」にしても、感じられる人と、そうでない人がいるはずです。しかし「音」は、誰にとっても、耳に届く内容は同じ。また、そもそも脳に伝わるエネルギーの約90%は、耳から入ってくるといわれているのだそうです。こうしたことから、「音」は脳を活性化させるための、もっともベーシックで優れた刺激だといえるのです。*しかも、脳は何歳からでも鍛えることができるのだとか。「脳を鍛える」という発想自体があまりなじみのあるものではありませんが、音を聴いているだけで鍛えられるならば、ぜひ試してみたいところではあります。CDに収録されている音源は、クラシック、オペラ、落語までバラエティ豊か。著者のノウハウが凝縮されているだけでなく、リラックスして聴くこともできるというわけです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※山岡尚樹(2016)『聞くだけで脳が目覚めるCDブック』あさ出版
2016年04月11日忙しい毎日を過ごしていると、あたかも自分が充実した人生を送っているかのように錯覚してしまいがちです。しかし、それは大きな勘違いだと指摘するのは、精神科医・医学博士である『ぼんやり脳! 上手にボーッとできる人は仕事も人生もうまくいく』(西多昌規著、飛鳥新社)の著者。充実しているどころか、常になにかをやって忙しくしているのは、脳にとって「非常に不健康な状態」だというのです。そして、だからこそ「なにもせずにボーッとしている時間」が必要なのだということが本書の考え方。実際、ボーッとしているときには、脳内において意識的課題を行っているときの15倍にもおよぶエネルギーが使われているというのですから驚きです。ちなみに、ぼんやりしているときの脳活動システムは「デフォルト・モード・ネットワーク」(本書では「ぼんやりモード・ネットワーク」と呼ばれています)。脳をすこやかにキープしていくためには、その機能を落とさないようにしていくことが重要だというのです。■ボーッとすると脳の健康にいい!書店には、「時間術」「手帳術」などをテーマにした本や雑誌がたくさん並んでいます。しかし、その多くに書かれているのは、「ほんの数分の時間もムダにすべきではない」「すき間時間をフル活用しよう」というようなことばかり。たしかに時間は大切で、有効に使うに越したことはないでしょう。しかし、ほんのわずかな時間に対して汲々とするのは、ちょっと余裕がなさすぎると著者はいいます。すき間というすき間をすべて予定で埋めてしまったら、ほっと一息つく時間すらなくなってしまうということです。むしろ、ビジネスや自分磨きなどにおいて他人に差をつけるために重要なのは、「いかに効率的にぼんやりするか」なのだとか。脳を健やかに機能させていくためには、ボーッとする時間が不可欠。だからこそ、仕事と仕事の合間のすき間時間になるべくボーッとするようにしていれば、脳の疲れがスッキリとれて、その後の仕事に対してフレッシュな頭で臨むことができるということ。■ボーッとするといい企画が浮かぶまた、ボーッとしていると、ひらめきが湧きやすくなるのだともいいます。つまり、いい企画や、仕事上の懸案に対しても「そうか、こうすればよかったんだ」という解決策が浮かぶ可能性が高まるということ。また、ぼんやりしているときの脳内においては、過去のことを反省したり、未来に対する準備をしたりしながら、自分の現在の状況を立てなおすようなネットワークが働いているのだそうです。無意識のうちにぼんやりと頭に浮かべている反省や準備のイメージが、あとあと自分の思考や行動を修正する際に生きてくるのです。だからこそ、「時間術」を学ぶよりも「ぼんやり術」を学ぶほうが、より脳の力を引き出して自分を伸ばしていけるという考え方。■活動時の15倍もエネルギー消費ちなみに「デフォルト・モード・ネットワーク」の存在を世界で初めて明らかにしたのは、ワシントン大学のM・E・レイクル教授。その研究においては、脳の活動エネルギーの大半をデフォルト・モード・ネットワークが使っていたという点に多くの注目が集まったといいます。レイクル教授によれば、脳が消費するエネルギーのうち、本を読んだり仕事をしたりといった「意識的活動」に使われるエネルギーは、全体のわずか5%程度。約20%のエネルギーは脳細胞のメンテナンスにあてられ、残り75%のエネルギーが「なにもせずにぼんやりしているときの活動」のために使われているそうなのです。「なにもせずにボーッとしているとき」には、「意識的な活動をしているとき」の15倍ものエネルギーが使われているということです。■ボーッとする時間を大切にしようつまりエネルギー消費という側面からみれば、「なにもせずにぼんやりしているとき」の活動のほうがメインだったことになるわけです。逆に、仕事や作業に集中するなどの「意識的な活動」は、脳のエネルギー消費量からすれば“どうでもいい”という程度のものであったということ。私たちは多くの場合、「なにもせずにボーッとしていること」に価値を見出すことはなく、むしろ「意識的に働いていること」を重要視して日々の生活を送っているのではないでしょうか?事実、ぼんやりしている姿は、周囲の人から「仕事や作業をなまけている」「集中力を欠いている」と見られがちでもあります。ところが、そんな「ぼんやり時間」にこそ、脳は大量のエネルギーを投入して重要な活動を行っていたというわけです。だからこそ私たちは、これまでの先入観や価値観をいったんリセットし、「なまけモード・ネットワーク」「ぼんやりモード・ネットワーク」の大切さを見なおしていく必要があるのではないか?著者はそう提言しています。*たしかに著者がいうように考えれば、ずいぶん気が楽にもなります。精神的な負担を意識せず、最良のかたちで物事を進めるために、「ぼんやり時間」を意識してみるべきかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※西多昌規(2016)『ぼんやり脳! 上手にボーッとできる人は仕事も人生もうまくいく』飛鳥新社
2016年04月10日「Ameba」や「Ameba FRESH!」を筆頭とするインターネットメディア運営、インターネットの広告事業などを推進しているサイバーエージェント。『成長をかけ算にする サイバーエージェント 広報の仕事術』(上村嗣美著、日本実業出版社)は、そんな同社において、実に13年にわたり広報事業に携わっているキーパーソンによる著作です。大成功を収めた同社は現在、社員数3,500以上の規模。しかし著者が同社で広報の仕事をはじめたときは、まだ30人そこそこの会社にすぎなかったのだそうです。つまり、30人の会社の広報から、3,000人規模の会社の広報まであらゆる広報戦略に携わってきたということになります。30人程度の社員数なら、社員全員がなにをしているのか、どこに行っているのかを実感として把握できる規模だといえます。しかし3,500人となると、すれ違った人が社員なのかどうかさえわからなくても当然。そして著者の感覚からいえば、社員全員のことがわかり、「なにを誰に聞けばよいのか」を把握できるのは、社員数が300人くらいまでの規模なのだそうです。事実、サイバーエージェントでは、300人を超えた2002年に「社員の顔を伝える」ことを目的として社内報を立ち上げたのだとか。そして多くの場合、ステークホルダーも事業の幅も、社員数に比例して変わっていくもの。つまり、社員数が変われば、広報の活動も変わってくるわけです。■1:社員数30人のときの広報活動社員数が30人のときのサイバーエージェントの広報は、完全に社長中心の活動だったそうです。理由は、このくらいの会社規模のときは、会社の顔といえば経営者だから。名もない会社だからこそ、社長が語るビジョンや会社の将来性に価値があるということです。会社のトップである社長がどんどん表に出て行かないと、なかなかメディアに取り上げてもらえない規模なのです。また取り上げてくれるメディアも、トップがチャレンジャーであるスタートアップ企業には好意的なことがほとんどなのだそうです。■2:社員数300人のときの広報活動サイバーエージェントが300人規模になったのは、設立から5年経ったころ。経営者が象徴的な存在であることには変わりがないものの、なんでもかんでも「経営者頼み」という広報活動から脱却するタイミングです。会社の成長を現場で見てきた著者の実感は、「300人くらいの規模は人数がたしかに増えてきたけれど、まだある程度社員の顔や人柄はわかる。でも、少人数だった昔のような一体感は失われつつある」というものだったといいます。つまり300人とは、組織としても少しずつ一体感が失われていく規模だということ。また企業としてそれなりの社会的責任や影響力も出はじめてくるため、広報としてもそれを踏まえつつ、企業ブランドをつくっていく必要があったそうです。そこで、このときにサイバーエージェントの広報として著者が取り組んだのが、「経営者依存による広報露出からの脱却」。そこで社長以外に、会社のスポークスパーソンとなりうるスター社員を何人か発掘したのだといいます。その結果、それまではすべて社長が受けていた取材の一部を、そういった社員に振り分けて取材慣れさせることで、「必ずしもいつも社長がメディアに出なくてもいい」という体制になってきたというのです。社員を出すことは、会社で働いている人の姿を見せること。その積み重ねから、働く社員の姿を通じて共感を得たり、企業イメージが形成されたりしていくというわけです。■3:社員数3,000人のときの広報活動ベンチャー企業としてスタートしたサイバーエージェントも、現在ではグループで社員数3,500人。より企業としての一体感やメッセージの発疹が重要な局面に来ていると著者はいいます。そして急成長してきたいま、広報の現場づくりにも必要になってくるものがあるとも主張しています。社員の意識が取り残されてはいけないだけに、いま取り組まなければいけないことは、「社格」を高める企業ブランドづくりだというのです。そのために欠かせないのは、「自分たちの言動や行動が会社のイメージに関わってくるんだ」といった社員の意識。また、事業が多岐にわたり、どうしても縦割り組織になってしまうからこそ、改めて社内広報が重要になってきたともいいます。そこで現在は、社内報やプロジェクト史などを通して、社員の啓蒙活動を強化しているのだそうです。常に新しいことをしなければ、企業イメージは衰退の一途をたどってしまうことになるため、広報としても常に自分の取り組みを見なおす必要があるということ。会社の規模が大きくなったいま、サービス広報の観点では、サービスの認知向上や利用価値促進はもちろん重要。しかし企業広報という観点では、会社として常に新しいイメージを保つこと、さらに企業ブランドを高めることが重要になっているということです。*短期間で急成長を遂げた会社の歴史を紐解けば、広報活動のあり方を確認できるはず。ぜひ一度、手にとってみてください。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※上村嗣美(2016)『成長をかけ算にする サイバーエージェント 広報の仕事術』日本実業出版社
2016年04月09日「花まる学習会」といえば、「数理的思考力」「国語力」「野外体験」を三本柱とし、将来「メシを食える人」「魅力的な大人」を育てることを主眼とするユニークな学習塾として有名です。きょうご紹介する『60点でも伸びる子、90点なのに伸び悩む子』(相澤樹著、あさ出版)の著者は、同塾の講師として約10年間、2,000人の子の学習指導に携わってきたという人物。また、豊富な事例に基づく講演「後伸びする子の家庭の習慣」も、全国の小学校や企業から好評なのだそうです。つまり本書においては、そのような実績を軸として、子どもに身につけさせたい大切なことをつづっているわけです。■伸びるために大切なのは「家庭習慣」長いキャリアのなかで著者は、当然のことながらさまざまなタイプの子どもたちを見てきたといいます。印象的なのは、低学年のときにテストの点数が悪くても、高学年からぐんぐん伸びていく子がいるということ。さらに中学、高校、大学、そして社会に出てからも活躍していく子も多かったといいます。また反対に、低学年のころはテストの点数がとてもよかったにもかかわらず、高学年から伸び悩む子、中学、高校でうまくいかず挫折してしまう子、社会に出てから引きこもったり、転職を繰り返したりするような子たちも見てきたのだとか。では、高学年以降に伸びていく子たち(著者は「後伸び」する子と呼んでいるそうです)は、なにが違うのでしょうか?著者によれば彼ら「後伸び」する子には、テストの点数では計れない「力」が備わっているのだそうです。それは、問題を見つける「発見力」、筋道立てて考えられる「論理性」、物事を「検証する力」、折れない「精神力」、「体力」など、解答の正誤だけでは計れない「力」。親は、子どものテストの点数が悪いと心配になるもの。しかし重要なのは、「いま点数が悪くても、大切な力を持っている子がいる」ということ。そして、その力を育てるのは「家庭習慣」なのだといいます。■子どもがお手伝いするとなぜいいか?ところでそんな著者が、よい習慣だと強調しているのが「お手伝い」。なぜならお手伝いをさせることにより、「試行錯誤」を経験させることができるから。お手伝いをすると、失敗や成功を繰り返し、工夫する力、よりよくしようとする力、つまり「検証力」が身についていくというのです。たとえば、料理をしているお母さんのお手伝いを習慣的に行う子は、ハンバーグをこねて形にするとか、サラダのレタスを洗ってちぎるとか、餃子の餡を皮で包むとか、ちょっとしたことでも「お母さんのようにできない」という壁にぶつかるはず。そこで試行錯誤を重ね、「どうすれば上手にできるようになるんだろう」と、さまざまな工夫と検証を繰り返した末に、思いどおりの結果に行き着くことになる。それが、検証力や成功体験、達成感を生み出すわけです。また料理においては、実感を通した学びが無数にあることも魅力。たとえば料理をつくるときは、「完成のイメージを持ち、そこに至るまでの過程を考え、必要なものを準備し、実行に移す」というサイクルを無意識のうちにこなしているもの。そして食後には、その料理がどうだったのかを自然と検証し、無意識で次回への工夫を蓄積していくことに。こうしたことから知識と経験が合致し、深い理解につながる。それもまた、料理を通したお手伝いの副産物だという考え方です。■お手伝いで子どもの責任感が養われるさらに料理には、「重さを計る」「時間を気にする」など、生活のなかで体験できる学びの要素も豊富。火や包丁を使うなどリスクがあるものには細心の注意が必要ですが、「やらせない」のではなく、危ないということをきちんと伝えたうえで「経験させる」ことが大切。料理に限らず、最初から上手にできることなどないものです。むしろ重要なのは、同じことを何度も繰り返し、試行錯誤することだということです。またお手伝いは、「責任感」を養うことにもつながるのだといいます。つまり、子どもに「家のなかでの役割(自分が家族に必要とされていること)を認識させることができる」というメリットも備わっているということ。「あなたがいないと困るのよ」という家のなかでの役割を認識させることにより、子どものなかで責任感が芽生えるということ。そのような責任感から生まれる継続力、行動力もまた、伸びるこの重要な要素。結果的にはそれが、社会でたくましく生き抜くことの源泉になるというわけです。*本書の魅力は、ただ「学習力をつける」ということだけに偏らず、広い視野で子どもの可能性を見つめていること。だからこそ、子育てに悩んでいる方に対して、大きなヒントを与えてくれることでしょう。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※相澤樹(2016)『60点でも伸びる子、90点なのに伸び悩む子』あさ出版
2016年04月08日『社会人1年目からのお金の教養』(泉正人著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、そのタイトルどおり、新社会人を対象とした“お金の教科書”。入社3年目までに身につけておくべきだと著者が考える「お金の教養」43をピックアップし、わかりやすく解説しているわけです。きょうはそのなかから、いくつかのトピックスを抜き出してみたいと思います。■「消費」「投資」「浪費」の違いとは当たり前のことですが、自分が稼いだお金だけで生活する社会人は、お金をコントロールして使う必要があります。なにを買うべきなのか、なにを買ってもいいのか、なにを買ってはいけないのか、すべてを自分で判断しなければならないということです。そのためにはまず、お金の使い方が「消費」「投資」「浪費」の3つに分けられることから知る必要があるのだと著者はいいます。消費とは、毎日を生きていくうえで欠かすことのできないもの。電気・水道・ガスといった光熱費や家賃、通信費、毎日の食費、日用品などが含まれます。投資は、株や不動産など将来の資産形成につながるもの。キャリアアップのために資格取得や、健康維持のための食費などの自己投資も含まれます。そして浪費は、必要以上に飲み食いしたお金とか、欲に任せて買う高級品や嗜好品など、生活に不要なもの。いい方を変えれば、「消費=買ったものが払ったお金と同等の価値を持っているもの」「投資=買ったものが払ったお金以上の価値のあるもの」「浪費=買ったものが払ったお金より価値がないもの」といえるそうです。■新社会人は消費に慣れることが重要!社会に出たばかりの人についていえば、「買うべきもの」は投資であり、「買っていいもの」は消費にあたり、「買ってはいけないもの」が浪費にあたるものだと大別できるそうです。そして、毎月決まって十数万円以上のお金が振り込まれる経験が初めてであるはずの新社会人にとっては、心がけるべき重要なことがあると著者。当然のことながら、浪費を控えるように心がけ、まずは「消費」に慣れることが重要。どのような生活をすれば、毎月の消費が「使っていい金額」のなかにおさまるのか、その感覚をつかむことが大切なのです。次に投資ですが、社会に出たばかりのときは、日常業務に追われ、3~5年後を見据えて行動することなどできないのが普通。しかし、そんな時期だからこそ、自らの成長に投資をする「自己投資」を意識することが大切。そうすることによって、社会人として一気にライバルを引き離すことすらできると著者はいいます。■毎月の支出と収入を正確に把握しようお金をコントロールするためには、毎月いくら稼いでいるのか、なににいくら使っているのかという「お金の現状」を把握することが必要。住居費や食費などの出て行くお金(=支出)と、毎月会社から振り込まれる給与(=収入)を正確に把握しなければならないわけです。収入とは、新社会人にとっては給与に当たるものですが、給与には「額面金額」と「手取り金額」があります。額面金額は、基本給に時間外手当や通勤手当、住宅手当などの手当を足したもの。会社から支払われる報酬のすべてを合計した金額だということ(一般的には給与明細に「総支給額」と書かれています)。手取り金額は、「差引支給額」と書かれたもので、額面金額から税金(所得税、住民税)や社会保険料(健康保険、厚生年金、雇用保険)などが差し引かれたもの。つまり自由に使えるのは、手取り金額だということです。■把握しづらい支出を管理する方法は?支出の基本は「毎月の生活費」であり、固定支出と変動支出に分けられます。固定支出とは、住居費や月払いの保険料、教育費といった毎月一定に支払っているもの。預金通帳を見れば、すぐに把握できるものです。対する変動支出とは、食費や光熱費、通信費、レジャー費など、月によって変わる支出。特に食費やレジャー費は把握しづらいので、レシートや家計簿を活用して、1週間、1ヶ月単位で管理するべきだといいます。他にも年払いの保険料や冠婚葬祭費、家電・家具の購入費など「年に数回の支出」、学校の入学金、住宅購入の頭金、自動車購入など特定の年にだけ発生する「一時支出」が。いずれにしても収入と支出は、ひとり暮らしで生計を立てていくうえでの基本。必ず把握することが大切です。*このように基本がわかりやすく解説されているため、聞くに聞けない疑問も解消できるはず。ぜひ、手にとってみてください。(文/書評家・印南敦史) 【参考】※泉正人(2016)『社会人1年目からのお金の教養』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年04月07日「リーダーの資質」というと、あたかも大層なものであるようにも聞こえるかもしれません。しかし、それはもともと備わった才能ではなく、あくまでもチームで仕事をするときの「役割」にすぎないもの。そう主張するのは、『99%の人がしていない たった1%のリーダーのコツ』(河野英太郎著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者です。だからこそ「リーダーである自分は偉くなければ」と考えてしまうと、さまざまな障害と直面することになってしまうわけです。「リーダーはあくまで役割だ」ということを、しっかりと意識しておくべきだということかもしれません。でも、リーダーとしての役割を全うする以上、そこにはさまざまな問題が生じることにもなるはずです。具体的にいえば、「メンバー選び」と「依頼の仕方」が大きな意味を持つということ。そこで、この2点をスムーズに進めるためのコツをチェックしてみましょう。■4番バッターばかり集めない仕事は、チームをつくることからはじまるもの。だから自分がリーダーだった場合、「ドリームチーム」をつくりたいと思ってしまうこともあるわけです。理由は簡単で、つまり実績あるメンバーが多いチームのほうが、成果が出るに違いないと思ってしまいがちだから。しかし、そこで注意すべきことがあると著者はいうのです。それは、「チームというのは、バランスのとれたメンバー構成にしなければならない」ということ。野球でいえば、4番バッターばかり、エースばかりを集めすぎないというわけです。■4番級ばかりだとまずい理由それはなぜなのでしょうか?いたってシンプルなことで、4番級、エース級ばかりをチームに入れると、必ずうまくいかなくなるものだから。しかし、それはある意味では当然のことだともいえるのではないでしょうか?なぜなら過去の経験や実績があればあるほど、人は自分のやり方でやりたいと思うものだからです。また、そのような人材は、いい意味で自己顕示欲が強いもの。つまり、自分が支援にまわることを望まないわけです。ところが、各人の「主張合戦」がはじまってそれぞれが譲らなかったり、もしくは誰かが強い不満を持ったまま仕事を継続したりするということも往々にしてあります。でも、そんな状態が続いてしまうと、いつか誰かがチームを去らなければならなくなるという、最悪の結末になってしまうわけです。だからこそ、重要なことがあるのだと著者はいいます。チーム編成をするときには、「前に出て引っぱる人」「全体を冷静に見渡す人」「専門分野で貢献する人」「それぞれを支える人」など、個々のリーダーシップの特徴を見極めることが重要だという考え方。■異分子を招き入れて評価するチーム内で反対意見が出ると、それは「議論」につながるもの。ここで重要なのは、議論とは、新しい価値をつくるためにするのだということ。いま、自分が正しいと考える意見を「正」とすると、それに反する意見は必ずあるものです。この「正」と「反」をくらべ、合意された「結論」を出すことが「議論」です。そして議論という作業で導き出せた結論は、もとの「正」意見や「反」意見のいいところを取り込んで、より高いレベルになっているのだといいます。いわばそれが、チームを組んで仕事をすることの醍醐味。チームを組んで仕事をするとき、合意された結論に対して新たな意見が出てきたとしたら、さらに高いレベルに届かせるための議論がはじまるといいます。つまりそうして、新しい価値をチームのなかでつくり出していくわけです。この価値をつくり出すきっかけが、メンバーによる「反対意見」の表明だということ。価値をつくる議論を生み出すために必要なのは、異なる意見を持っているメンバー(つまり異分子)をチームに迎え入れることだと著者はいいます。いわば、新しい価値を生み出すリーダーというものは、常に「意見」を持つ人を歓迎し、そして招き入れ、それを評価できる人だということです。*これらからもわかるとおり、著者の考え方は非常に客観的で、そして冷静なものです。強い共感を意識させるのは、つまりそれがあるから。だからこそ、広い視野を軸としてリーダーシップのあり方を考える際には、本書が大きな力になってくれるはずです。(文/書評家・印南敦史) 【参考】※河野英太郎(2016)『99%の人がしていない たった1%のリーダーのコツ』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年04月06日『あなたの年齢は「意識」で決まる』(ディーパック・チョプラ著、渡邊愛子、水谷美紀子訳、フォレスト出版)の著者はインド出身の医学博士だそうですが、その功績はひとことで語り尽くせそうにありません。代替医療のパイオニアであり、心と体の医学、ウェルビーイング分野における世界的第一人者。そして、人間の潜在能力分野における世界的に有名な指導者。多くの著名人たちのメンター役を務めており、故マイケル・ジャクソンやレディー・ガガにはじまり、ミランダ・カー、マイク・マイヤーズ、マドンナ、デミ・ムーアなど多くのハリウッドセレブたちから厚い信望を得ているというのです。そんな著者は本書において、時間に支配されることなく、それどころか意識によって時間をコントロールし、若さを保ったまま生きていく方法を説いています。まず、「時間は決して敵ではない」ということを受け入れることができれば、時間による破壊を逃れることが可能になると著者はいいます。そして、もし世界中のすべての時間を自由にしたいと望むのであれば、次のシンプルな演習を通して訓練することが可能なのだそうです。2つの演習をピックアップしてみましょう。■1:内的対話を鎮めるこれは、意識の源である静止と静寂の場に接するシンプルな方法。心に、元来の自然な状態である静けさと、無理なく集中できることを再発見させるための演習だそうです。(1)目を閉じて、静かに座る。(2)呼吸を落ち着かせる。(3)胸の中心に注意を集中させる。(4)息を吸うとき、「ソー」という音節に意識を置き、吐くときは「ハム」という音節に意識を置く。(5)空気が自分の体に入ってくるのを感じ、音がやさしく巡るのを感じる。(6)空気が自分の体から出ていくのを落ち着いて感じる。「ソーハム」「ソーハム」これは古代インドのマントラで、「アイアム」や「アーメン」「オーム」といった音に置き換えても同じ効果がもたらされるのだとか。これを10分から20分間続けるといいそうですが、このシンプルな瞑想は、絶え間ないおしゃべりから心を解放してくれるのだといいます。著者によると、気を散らす原因は3つあり、それは(1)外部の騒音、(2)体内の感覚、そして(3)思考。だからこそ、いずれかに気づいたら、「ソーハム」という音に合わせた呼吸に楽な気持ちで戻るといいのだそうです。大切なのは、一定のリズムを保とうとしないこと。そして、自分に催眠をかけようともしないこと。■2:緊張を解放する意識は流れる水のように、なにものにも遮られることなくスムーズに流れるもの。しかし意識が滞ると、体のなかに緊張感が生まれます。そんなときに効果を発揮するのが、ヨガまたは深いエネルギーワーク。体の記憶を解放してくれるのだといいます。(1)入眠する前にベッドに横になる。(2)まくらを使わずに、平らな仰向けの体勢をとる。(3)手を横に広げて大の字になる。(4)深くゆっくり息を吸い込み、口からため息をつくように息を吐く。自由に、自然に、体が欲するまま、口から息を吐く。(5)吐く息は、あえぐような速い息になったり、うめき声のような深い息になったりすることもあるとか。安堵感、悲しみ、嘆き、高揚感、もしくは他の感情を意識することもあるといいますが、そんな、湧いてくる感情を意識するわけです。そうしているとき、ただ身体的な緊張を解放しているだけではなく、同時に身体的記憶にアクセスしているのだといいます。緊張が自然に解放されれば、思考、感情、感覚がひとつにまとまり、一度にすべて解き放たれるのだそうです。10分間にも満たないこの演習を行ってみることにより、非常に強い効果を生み出すことが可能。ちなみに、もし体が欲するのであれば、そのまま眠ってしまっても大丈夫だとか。なぜならそれもまた、解放のプロセスの一部だから。*たとえばこのような手段を通じて「時間」と共存する術が、本書では他にも紹介されています。向き不向きはあるかもしれませんが、もし感覚的にフィットするなら、相応の効果を実感できる可能性があります。(文/書評家・印南敦史) 【参考】※ディーパック・チョプラ(2016)『あなたの年齢は「意識」で決まる』フォレスト出版
2016年04月05日『こんな時代に たっぷり稼げる株の見つけ方』(天海源一郎著、幻冬舎)の著者は、個人投資家が儲けるための投資の啓蒙をライフワークにしているという株式ジャーナリスト/個人投資家。本書は「“いまそうなっていること”に素直になる(いまの株式相場の枠組みを知る)」「株価を動かす主体をイメージする(投資家が株価を決定している)」という考え方に基づき、個人投資家が「流れに乗る」ことを手段として書かれているものだといいます。それは、「枠組み」と「投資家の動き」を意識するところからはじまるのだとか。いわばヤマ勘との決別だということで、地に足のついた考え方だといえるのではないでしょうか。きょうはそのなかから、「イマイチ相場がビックリ高値になる背景」を取り上げてみたいと思います。■食品株や薬品株がなぜかブレイク2015年前半相場の特徴的な動きは、薬品株や食品株の上昇が派手だったこと。しかもそれは、“ド派手”といっていいほどのものだったのだとか。8月初旬に日経平均採用銘柄(225社)の年初来騰落率をランキングしてみると、上位10社中6社が薬品株もしくは食品株で、これは過去にあまり例を見ない状況なのだそうです。少し前に話題となった「食べるラー油」のように大ヒット商品が出ることはあるものの、よほどのことがない限り、売り上げが大きく浮き沈みすることがないのが食品業界。なにしろ食品は必需品なので、コンスタントに売れる反面、それほどの変化はないわけです。風邪などの病気は景気とは無関係なので、薬品にしてもまた同じ。つまり食品や薬品を手がけている企業の業績は、景気の波にあまり左右されず安定しているということ。安定=「変化がない=目立たない=地味」というわけで、食品株や薬品株は典型的なディフェンシブ(防衛的)銘柄に位置づけられているもの。高騰は期待しづらいながら、暴落のリスクも低いわけです。逆にいえば相場の上昇が顕著な局面では、見過ごされるべき銘柄群なのです。■インデックス運用が拡大したからなのになぜ、食品や薬品が2015年前半相場でさかんに物色されていたのでしょうか?その一因として考えられるのは「インデックス運用」の拡大だと著者はいいます。インデックス運用とは、日経平均株価やTOPIXなどといった指数に連動するパフォーマンスを、着実に得ることを目的としたもの。つまり、平均点狙いの投資ということ。指数をしのぐ成果は望めない代わりに、指数を下回る結果に甘んじることもあまりない手法なのだそうです。こうしたことから、保守的な運用を重んじる機関投資家などの間では、インデックス運用が主流となってきたのだといいます。個人投資家においてはコストが圧倒的に低いという観点から、インデックス運用の具体的な投資対象となってくるのはおもにETF(指数連動型上場投資信託)。株と同じく証券取引所(市場)に上場しており、取引時間中ならいつでも時価で売買が可能。現にETFの運用資産残高は拡大の一途をたどっており、それは世界的に見られる現象でもあるといいます。■イマイチ銘柄が高値をつけた背景そして数あるETFのなかでも保守的な機関投資家が選考しがちなのは、よりボラリティリティが低い(値動きが穏やかな)タイプ。つまり、リスクの低いものが好まれているということです。では、そのような低ボラリティブのETFがどうやってリスクを抑えているのかといえば、ディフェンシブ銘柄に属するセクターの組み入れ比率を高めることにより、運用の安定化を図っているのだとか。つまり、「インデックス運用の拡大に伴って低ボラリティリティのETFが盛んに買われて運用資産残高が拡大→おのずとディフェンシブ銘柄がさらに組み込まれていく→株価が動き出すことから、トレンドフォローの投資家から追随買いが入る→株価高騰」という流れが生じたということ。これが、「イマイチ銘柄」が驚くほどの高値をつけた背景だというわけです。*これはほんの一例ですが、わかりやすく解説されていることがおわかりなのではないでしょうか?いわば、株のことはよくわからないという方でも、その動き方を無理なく解釈することが可能なのです。目を通してみれば、株に対する考え方が変化するかもしれません。(文/書評家・印南敦史) 【参考】※天海源一郎(2016)『こんな時代に たっぷり稼げる株の見つけ方』幻冬舎
2016年04月04日