漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第27回アクマの辞典ザ行【ジ】➤「自己肯定感」(じここうていかん)…今後、肯定力に実力が追いついてない問題が深刻に今回のテーマはザ行から「自己肯定感」である。私の文章はよく「自虐系」と言われるのだが、正直そういうノリはもう流行らないだろうし、むしろこれから「うちの子が真似したらどうするんですか」と怒られる側になっていくと思う。つまり売れもしない内から芸風がオワコンになるという、2019年の目標は「転職」に決定なのでは、という状態だ。だが冷静に考えたら私は無職だった。無職ほど世相に振り回されない安定した職業はない、悪いが今年も安泰である何故自虐がもう流行らないかというと、今は無駄な謙虚さより最初に言った「自己肯定感」のほうが大事だからである。日本人は諸外国の人々に比べて自己肯定感が低いと言われている。何故そうなったかと言うと日本には「自信満々な奴はその自信がなくなるまでハンマーで殴って良い」という法律があるからだ。目の前で人が屠殺されれば誰だって「俺はハゲだし嫁はブスです」と卑屈なまでに謙虚になってしまうだろう。しかし、それはもう古い。そうやって他人の自信を奪おうとする奴こそ、ネイルハンマーの釘を抜く側で殴ってやるべきだ、という声がだんだん大きくなってきているのだ。自分の価値は他人が決めるものではない、どれだけ自分が自分を認めてやれるかのほうが大事だということである。つまり、人様に向かってブスだデブだと言ってくる連中なんぞに認められることなんかより、鏡に映った自分を見るたびに「どうして石原さとみがこんなところに?」と思えるようにしたほうが良い、ということだ。つまり鏡に石原さとみの写真を貼れば解決である。もちろん個人が「俺は誰が何と言おうと卑屈で行く」「はじめましてチンカスです」という方向性で行くなら止める権利はない。しかし自信のある人に対し他人が「もっと謙虚になれ」「身の程を知れ」というのはもはや、大きなお世話な世の中なのだ。だから私も、あまり自虐的なことを書きすぎると、親御さんたちから「うちの子のセルフリスペクトがロストしたらどうするんですか」と怒られるかもしれない、ということである。だが私も、昔に比べて「自己肯定感」は格段に上がっているのだ。今から10年前、私はその時も無職だったのだが、当時のブログにはもっと「ニートですみません」「無職の分際で」というようなことを書いていたと思う。それに対して今は「無職である自分に誇りを感じている」というスタンスだ。それもセルフリスペクトだけではない。「働かずに食う飯は美味いか?などとおっしゃいますが、農家さんが一生懸命作った米は誰が食っても美味いに決まっているでしょう、失礼じゃないですか?」という他者に対するリスペクトまで持てるようになったのだ。自分を肯定できない奴が心から他者を肯定できるわけがない。恋愛においても、自己肯定感の低い女は愛され下手で恋人ができなかったり、クズ男にハマったりといいことがないと言われている。とりあえず鏡に憧れの芸能人の写真を貼るところからはじめよう。【ザ】➤「財力」(ざいりょく)…相手に求めるのは古い【ジ】➤「自己肯定感」(じここうていかん)…今後、肯定力に実力が追いついてない問題が深刻に【ズ】➤「ずるい女」(ずるいおんな)…30歳以上はつんく♂が歌い出す【ゼ】➤「ゼクシィ」(ぜくしぃ)…あの厚さはズルズルつきあって結局結婚しないまま別れる男を撲殺するため【ゾ】➤「ゾンビ映画」(ぞんびえいが)…「ゾンビ映画好きだよ、バイオハザードとか」と言ったら怒られる世界プロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2019年02月07日旦那が休みだと家の中が片付かない。旦那が帰って来ると途端に汚れる。こっちが忙しくしてても知らんぷりしてスマホのゲーム…。そんな状態ではイライラしてしまっても仕方がありません。しかし、こちらばかりがイライラしていても何の解決にもなりませんよね。まずはこの気持ちを沈めるための方法を考えていきましょう。1. 「期待した自分が悪い」と、自分のせいにする忙しくしてたらお皿を洗ってくれるかも、お風呂を洗ってくれるかも、少しは整理整頓してくれるかも…。そう期待するから腹が立つんです。そんなときは「旦那に期待したわたしがバカだった!」と、気持ちを切り替えてしまいましょう。期待さえしなければ、ちょっと何かをしてくれたときに嬉しいとすら感じられるようになりますよ。2. 家計のお金でプチ贅沢をする家計のお金、自分のお小遣い、それぞれ分けているという人がほとんどですよね。旦那に腹が立ったら、家計のお金から小さな贅沢をしちゃいましょう。自分じゃ買わないスイーツを買ってこっそり食べる、友だちとカフェに行く、など、ちょっとした贅沢でストレスを発散させるのです。家計から出せば自分のお小遣いも減らないし、500円程度のお会計であればお金が足りなくなるということも防げますよね。回数を重ねるたび、徐々に金額が上がらないようにだけ注意すれば、自分もおいしい思いができるので怒りが収まりますよ。3. 大掃除するもし旦那に対してのイライラが爆発しそうになったら、シンクやお風呂、洗面所やトイレなどの水回りを大掃除しちゃいましょう。苛立った気持ちを雑巾にぶつけ、ひたすら拭き続けるのです。そうしているうちに、だんだんと気持ちが落ち着き、冷静に考えられるようになりますよ。気持ちが冷静になったら、どうしてこう思ったのか、旦那にどうして欲しいのか、自分の中でまとめることができます。イライラから解放されるために、気持ちを旦那から掃除に移動させるのです。掃除したところもキレイになるので、一石二鳥ですよ。4. ひとりカラオケに行く最近あまり珍しくなくなったひとりカラオケ。大きな声を出すと気分がスカッとしてストレス発散になります。でも、ひとりでカラオケ店に入れないという人もいますよね。友達を誘えたら良いのですが、急にカラオケに付き合ってくれる友達がいるのかどうかが問題です。そんな人はスマホアプリでカラオケができるものがあるため、そういうものを利用すると良いかもしれません。とにかく大きな声を出して、イライラを吹き飛ばしてしまいましょう。5. 海や高いところに行くイライラがピークに達したら、海や展望台のような高い場所に行くのがオススメ。どちらにも共通しているのは“見晴らしがいいところ”。大きな海を眺めていれば自分の悩みや苛立ちは小さなものに感じられるし、高い場所から下を見下ろせばイライラする旦那自身が小さい存在に感じられます。見晴らしのいいところに行き、ボーっとしているだけでも、リフレッシュするには十分な効果が得られるのです。いかがでしたか?好きで結婚したはずの旦那がイライラする存在でしかなくなったとき、「どうしてこの人のことを好きになったんだろう」と自分でも不思議に思いますよね。恋人から家族になったという証でもあるのかもしれませんが、それでもイライラしっぱなしはストレスがかかります。上手に息抜きができれば、それなりに幸せに暮らしていけるかもしれませんよ。
2019年02月03日「初世尾上辰之助 三十三回忌追善狂言」として『義経千本桜 すし屋』『暗闇の丑松』『名月八幡祭』を上演する二月大歌舞伎。尾上松緑が、父・初世辰之助(三世尾上松緑を追贈)への思いを、合同取材会で語った。【チケット情報はこちら】「父が死ぬまでの日数を、自分が超えるとは思っていませんでした。死ぬか、役者を辞めるかだと考えていた」と語る松緑。初世辰之助が40歳の若さで亡くなったのは1987年のこと。松緑(当時、二代目尾上左近)は12歳だった。2年後には祖父・二世尾上松緑も他界。2月に44歳となる松緑は「40を超えてから、父だったら、祖父だったらどうだろうと考えるようになりました。33年経ち、父をご存知ないお客様もいらっしゃるかもしれませんが、父という役者がこういうものを演じていた、ということを感じていただけるよう一生懸命勤めます」と意気込む。いがみの権太を演じる『義経千本桜 すし屋』は今回が初役。「権太には不良青年なりに親不孝を償わなければならないという気持ちがある。悪ぶっているけれどシャイなところが僕に近いと思います。祖父のイメージが強い役ですが、父の権太にも若さゆえの魅力がありました。(尾上)菊五郎のお兄さんのもとで音羽屋の権太をいちから勉強しながら、どこかに祖父、父、自分と続く“紀尾井町”らしさを出したいですね」『名月八幡祭』の縮屋新助役については「父は粋でいなせな役のイメージが強く、『名月八幡祭』なら(新助よりも)三次役の人だったかもしれませんが、2度か3度、新助をやった時、朴訥とした、人の良い田舎の商人が、恋をして自分の中で消化しきれなくなるという演じ方をしていました。最後は逆上する凄みもあり、強く印象に残っています。父は“陰”か“陽”かでいうと“陰”の強い役者で、後半に怒りを爆発させる役が得意でした。今回はその父と36年前に共演された(片岡)仁左衛門のお兄さんと(坂東)玉三郎のお兄さんが、三次役、美代吉役で出てくださいます。思いがけないことで有難いですし、おふたりにリードされながら自分なりの新助を作っていけたらと考えています」父が得意とした「後半に怒りを爆発させる役」として、松緑がほかに、自身も国立劇場で一昨年に演じた『坂崎出羽守』とともに例に挙げたのが『暗闇の丑松』の丑松。今回は菊五郎が演じる。「父は丑松や出羽守を演じる時、家でも機嫌が悪かった(笑)。一方、僕も昨年演じた『素襖落』のようなお狂言ものの時は祖父も父も普段からリラックスしていました。役者というのは演目によって変わるんだなと子供心に思った記憶があります。父、祖父が死に、自分も子供ができて感じるのは、実在の人物にしろ歌舞伎のために書かれた役にしろ、他人の人生を演じるのは結構な責任を伴うということ。だからこそ、『名月八幡祭』新助も『すしや』権太もそうですが、人間の心理を細かくえぐる役は面白いし、素敵だなと思うんです」公演は2月2日(土)より、東京・歌舞伎座にて。チケットは発売中。取材・文:高橋彩子
2019年02月01日「第51回ミス日本コンテスト2019」が21日、東京・新宿の京王プラザホテルで行われ、愛知県出身で東京大学2年生の度會亜衣子(わたらい あいこ)さん(21歳)さんがグランプリに選ばれた。今年で51回を数える同コンテストは、過去に藤原紀香らを輩出した歴史あるミスコンテスト。この日は、2,354人の応募者から選ばれたファイナリスト13名が最終選考に臨み、着物・ドレス・水着の審査を経て、度會亜衣子さんがグランプリに選出された。自分の名前を呼ばれた瞬間に手で顔を隠し、うれしさのあまりに涙をこぼした度會さん。グランプリ受賞に「このような素晴らしい賞をいただき、本当にありがとうございます。まさか自分がこのような賞をいただけるとは夢にも思ってもいませんでした」と信じられないといった表情で、「ミス日本の名に恥じないよう、これから精進して参ります」と意欲。続けて「私たちを支えてくださった事務局の皆さま、勉強会でお世話になった先生方、そして何よりもともに何カ月も頑張ってきたファイナリストの皆さんに感謝しています」と話した。度會さんは東京大学の前期教養学部 理科3類で学んでいる大学2年生。将来的には「まだ医学の入り口に立ったばかりですが、最先端の研究などで貢献できたらいいなと思っています。神経病理学に興味があります」といい、尊敬する人物を「ナイチンゲールを尊敬しています。白衣の天使と呼ばれていますが、彼女は優しさを振りまいた存在だけでなく、病院の衛生にも注目して行動を示した女性。私もそのように行動できるようになりたいですね」と目を輝かせた。応募のきっかけは「人間として成長するために広く社会のことを勉強したいと思いました。勉強会が開かれていると聞いたミス日本に応募したら、ファイナリストに選んでいただき、たくさんの勉強会に参加させていただきました」と明かしつつ、ミス日本になったことで将来の医療界にどう貢献するかを問われて「ミス日本で様々な人と出会って、視野を広げたことが必ず人生経験として生きると思っています」と回答。また、芸能界への興味は「ありません。今は医学の道に進みたいと思っているので、芸能活動は考えていません」ときっぱりと否定した。度會さんは、今年新設されたミス日本「ミススポーツ」もダブル受賞。スポーツは得意ではないというが、「大学に入って水泳を始めました。最初は息継ぎもできませんでしたが、同期の支えなどで今は400mや2時間のメニューも泳げるようになりました」と自身の努力や周囲の支えで泳げるようになったという。また、好きな男性のタイプと理想のデートを問われた際は「まだしっかりとお付き合いしたことがないのでよく分かりませんが」と断りを入れるも「優しい方がいいです。理想のデートは何か美味しいモノを食べにいけたらいいですね」と話していた。なお、準ミス日本には東京都出身の西尾菜々美(にしの ななみ)さん(21歳)、ミス日本「海の日」には千葉県出身の高橋梨子(たかはし りこ)さん(20歳)、ス日本「みどりの女神」には東京都出身の藤本麗華(ふじもと れいか)さん(26歳)、ミス日本「水の天使」とミス日本「ミス着物」には東京都出身の谷桃子(たに ももこ)さん(22歳)をそれぞれ選出。また、特別賞「和田静郎特別顕彰ミス日本」には早稲田大学生の南谷真鈴(みなみや まりん)さん(22歳)が選ばれた。
2019年01月21日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第26回アクマの辞典ガ行【ギ】▶「疑似恋愛」(ぎじれんあい)…他人の恋路を邪魔すると馬に蹴られて死ぬ、たとえ相手が二次元でも今回のテーマはガ行から「疑似恋愛」である。疑似恋愛とは、二次元やアイドル、まともに見たら網膜が焼けてしまうイケメンや美女など、自分のものになる確率が極めて低い相手と、脳内でだけ「つきあっている」設定で楽しむ恋愛である。つまりただの「妄想」なのだが、脳内というのは唯一何をやっても罰せられない、世界一治安が悪い、無法地帯である。逆に、脳内で二次元やアイドルとつきあわなかったらどこでつきあうのだ、ここ以外で交際しようとしたら、国家権力や医療機関を呼ばれる恐れがある。もちろんあくまで妄想なので不毛と言えば不毛なのだが、そうすることにより、本人がセロトニンでビショ濡れになれると言うなら、それはそういう健康法でもあるのだ。それを止めるというのは、ジョギングをしている人に体当たりをかますに等しい。だが、ジョギングや筋トレがそんなに体当たりされないのに対し、この「疑似恋愛」には、未だに後ろから追突してくる人間がいるのだ。何故ぶつかってくるかというと「コースアウトしている人間を正しい道に戻してやるため」である。先日「二次元の男に夢中な30過ぎの友達に三次元の男を紹介してやった」という記事を見て「これは戦後のエピソードだろうか」と思った。平成も終わる今だからこそ、あえて昔の悲惨な歴史を振り返ろうという企画なのかと。だが残念なことに平成30年の話だった。もちろん、その二次元好きの友人が男を紹介してと言ったわけではない、「二次元の男などというクソの役にも立たないものに現実逃避している友人の目をこの私が覚まさせてやらなければ」という「正義感」略して「大きなお世話」によるものである。逆に文字数が増えてしまったが、これは疑似恋愛趣味だけではない、世の中には妙齢の女がリアルの男との恋愛や結婚には目もくれず趣味に没頭している姿を全部「現実逃避」と呼ぶ勢がいるのだ。恋愛以外現実じゃないとは、お前はリアルの範囲が狭すぎやしないか、と思うが、そういう人間にとっては全ての趣味が「恋愛以下」もしくは「恋愛の代替」なのである。男が「俺様たちに興味がないなんて、どうかしてんじゃねーの?」と、趣味没頭女を悪く言うのは2兆歩譲ってまだわかるが、同性までもが「画面と話してる暇があるなら、合コンにでも行こうよ!時間がもったないぞ!」と言ってくるのは絶望的すぎる。それは親切ではない、三次元の男のほうが二次元の男より優れているという、自らの価値観の押しつけである。こういった「オタクの目を覚まさせようとする人」というのは未だいなくならないのだが、そろそろオタクたちは「ちゃんと起きている」ということに気付いたほうが良いのではないだろうか。起きて、顔を洗い、メガネをかけた上で「三次元より二次元のほうが良い」と言っているのだということを、メガネをかけてちゃんと見てほしい。【ガ】▶「ガールズトーク」(がーるずとーく)…ガールたちの年代によって、美容、健康、など話題が変わるが、他人の悪口だけが普遍【ギ】▶「疑似恋愛」(ぎじれんあい)…他人の恋路を邪魔すると馬に蹴られて死ぬ、たとえ相手が二次元でも【グ】▶「グーグル」(ぐーぐる)…グーグルに話しかけられるかどうかで年がわかる気がする【ゲ】▶「減点方式」(げんてんほうしき)…美人は初対面が最高点で後は字が汚いだけで減点されるというが、字が綺麗でも「隙がなくて可愛くない」と減点される【ゴ】▶「ご飯デート」(ごはんでーと)…パパ活のパパ側はそう言ってそうプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2019年01月21日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第25回アクマの辞典ワ行【ヲ】➤「ヲタ夫婦」(をたふうふ)…「結婚したんだから足洗うよね」と言ってくる者もいるので油断はならない今回はワ行から「ヲタ夫婦」だ。最近は「ヲタ婚活」などヲタク同士でパートナーを見つけようという催しも活発だが、そもそも「ヲタ同士なら仲良くできんだろ」というのも乱暴な考えだったりする。インターネットでは日夜、ヲタク同士が「戦に次ぐ戦」「学級会が終わって学級会が始まる」という、一般人がその場で吐いてしまうような陰惨な戦いを繰り広げているのだ。むしろヲタク同士というのは「ケンカのネタに困らない」間柄だったりもする。しかし、人生の大半を二次元と向かい合ってきたため、いざ三次元に向かうと何を話してよいかわならない、というヲタクがいることも確かだ。そして、ヲタクの特徴に「得意分野の事なら饒舌になる」というのがある、つまり何を話してよいか全くわからない一般人相手より、ヲタク相手のほうがお互い話しやすいだろう、というのも一理ある。だが、ヲタクは得意分野の話になると、饒舌にもなるが同時に早口にもなってしまうし、興が乗り過ぎると会話ではなく、独り言と化すので、本当にそれでコミュニケーションが取れているかは別の話である。このように、話すだけならヲタ同士のほうがスムーズかもしれないが、それが結婚となると「同じアニメが好き」というだけでは難しい。むしろ片やジャニヲタで片や軍ヲタという、全く趣味が違う二人でも趣味にかける金銭感覚や、時間の感覚が似ていればそんなに揉めることはない。逆に、同じゲームの同じキャラが好きでも「課金は月1万まで」の人間と「リボ払いにしてでも出るまで回す」という人間が一緒になっては上手くいくはずがない。じゃあリボ払い同士が結婚すれば上手く行くのかというと、それはそれで早急に破滅すると思うが、少なくとも「どちらか一方が我慢を強いられる」という状況にないだけマシだ。そもそもヲタクがパートナーに求める「自分の趣味を理解してくれる人がよい」というのは「私の推しカプがどれだけシコいか相手にも理解してほしい」「2人で“尊い!”と叫んで気絶したい」という意味ではない。理解してほしい、というのは「否定はしないでほしい」つまり「ほっといてくれ」ということである。つまり、私の推しカプがどれだけSSS(スーパーシコシコ)かはわかってくれなくてよいから、それが私にとって大切なものだということはわかってほしい、ということである。しかし、世の中には、自分が理解できないもの=ゴミと見なし、配偶者の趣味のものを勝手に捨ててしまったりする人もいる。趣味がわからないのは仕方ないが、少なくとも「パートナーの大事なものをゴミ扱いする相手」とは一緒にならないほうがよいだろう。つまり共通の趣味を持つことより、お互いの趣味を否定しないことのほうが大事なのだ。「我ら推しているものは違えど、推しを大事に思う気持ちはわかり哲也」とお互い認め合っているのが理想の「ヲタ夫婦」ではないだろうか。【ワ】➤「忘れられない男」(わすれられないおとこ)…大体「この恨み忘れてなるものか」という動機で覚えられている【ヲ】➤「ヲタ夫婦」(をたふうふ)…「結婚したんだから足洗うよね」と言ってくる者もいるので油断はならない【ン】➤「N’夙川BOYS」(んしゅくがわぼーいず)…ンしゅくがわボーイズ、辞典の「ん」項目に現れた新たな救世主、バンドプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2019年01月07日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第23回アクマの辞典ラ行【リ】▶「理想が高い」(りそうがたかい)…顔によって言っていい条件の数が変動する、ブスは1個でも「高い」と言われる今回のテーマはラ行から「理想が高い」だ。日本は「理想の相手は?」と聞かれて二項目以上答えると「ブスのくせに理想高い」「だから結婚できないんだよ」と口を極めて罵倒される国なので、多くの女が「優しい人」という薄らぼんやりした返答をすることを余儀なくされている。特に相手に「年収いくら以上」を求める女は嫌われがちだが、ここを完全に不問にしろと言われたら、結婚生活以前に人間生活が破綻してしまう。相手に「結婚生活をやっていける年収」を求めるのは当然だろう。では「やっていける年収」「毎日見ても健康を害さない顔」程度の相手ならそこで妥協すべきでありそれ以上を求めるのは贅沢で、理想が高い身の程知らずということになってしまうのだろうか。そんなことはない。何故なら、交際も結婚も妥協してまでしなければいけないことではないからだ。「とにかく日本国籍が欲しい」「何がなんでも姓を変える必要がある」という特殊事情があるなら妥協もやむなしだが、そうでないなら理想を下げてまでするほどのことではないだろう。むしろこの「妥協」のせいで「しないほうがマシだった」な結果になることもままある。しかし世の中には「女は30までに結婚しないと」などという脅迫が満ち溢れており「結婚はしなくてはいけない」→「結婚するためには妥協が必要」→「妥協できない理想が高い女は結婚できない」→「そういう女は地獄の業火に焼かれて死ぬ」ということにしたい人間が多いため、妥協は必要で理想が高いのは悪という考えが蔓延してしまっている。ともかく「結婚」の称号を得ることが最重要で、その内容に関しては細かく問い過ぎるな、ということである。そんな世の中において、それでも「理想が高い」人間はそう言った脅迫や一般論に屈しなかった鋼のメンタルと確固たる自分を持っている人間と言える。脅迫に屈し、妥協に妥協を重ねた相手と結婚し野垂れ死ぬより「年収1000万以下の男と結婚するぐらいなら野垂れ死んだほうがマシ」という高潔な精神の持ち主である。同じ野垂れ死にでも後者のほうがその死に顔は安らかだろう。「結婚すれば安泰」というのがもはや都市伝説であると判明している昨今、むしろ理想は高く持ち結婚に対しては「結婚?まあ俺のお眼鏡にかなう相手が見つかったらしてやってもいいけどな?」と乙女ゲーに出てくる俺様野郎みたいなスタンスを取ることが、妥協づくめの結婚をするより幸せになれるのではないだろうか。【ラ】▶「ラブホテル」(らぶほてる)…女子会や外国人旅行客の宿泊先として活躍、カップルはヤれればどこでもいいだろうから譲るべき【リ】▶「理想が高い」(りそうがたかい)…顔によって言っていい条件の数が変動する、ブスは1個でも「高い」と言われる【ル】▶「ルックス重視」(るっくすじゅうし)…毎日見るなら形が良いものが良いだろう。【レ】▶「連絡を待つ女」(れんらくをまつおんな)…連絡が来たら来たで「すぐに返信しないほうが良い」というしゃらくさいテクを使おうとする【ロ】▶「ろくな男がいない」(ろくなおとこがいない)…自分ですらわからない自分の魅力をわかってくれる男がいないことプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年12月21日「ん?」と思わず首をひねってしまうこのタイトル、『ベランダは難攻不落のラ・フランス』。掲載されている短編の作品名を部分的に組み合わせているのだが、この妙に収まりのいい不思議な感覚が、衿沢世衣子さんの描く物語の魅力ともいえる。「読む人もなんとなく心構えができるので、まともなタイトルにしなくてよかったと思います(笑)。マンガだからなんでも描けるはずなのに、縮こまっちゃうときがあるんですけど、そういうときは絵本などを思い出すんです。小さい子どもでもわかるように、日常に沿っているのに、その延長線上でとんでもないことが起こったりして、でも意外と腑に落ちて楽しい、みたいな」廃墟で出会った少年と少女の密やかな実験を描いた「リトロリフレクター」。母親が留守の晩、男の子を自宅に連れ込む姉と共謀する妹を描いた「ラ・フランス」。ある日、ひとり暮らしの女性の家に無愛想な少女がベランダからやってきて、いつの間にか居座っている「ベランダ」など、子どもたちが生き生きと動いている世界では、あり得ないようなことがごく自然に起こってしまう。「性的なものや、死が関係するもの、アクションなどがエンタメとして盛り上がる要素だとしたら、それらが薄くなるといわゆる日常系に括られるのだと思うんです。だけどこの3つはどれも実はすごく身近にあって、その境界線がもやもやしているところをマンガで探ろうとしているのかもしれません」“流浪のマンガ家”。衿沢さんは自身のことを、こんなふうに表現する。この短編集にもマンガ誌だけでなく、文芸誌やファッション誌、はたまたZINEなど幅広い媒体で発表された作品が収録されているのだが、いろんなスタイルやテーマで描くことで、自らも新たな出会いや発見を楽しんでいるようだ。「お題を与えてもらうと思いもよらない話ができることが多くて、それで担当さんがびっくりしてくれるとすごく嬉しいですね。改めて読み返すと、何を考えてこうなったのか、自分でも覚えていないようなものも あったりして(笑)。いろんな媒体から影響を受けているので、試してみたいことが常にあるんです」日常と非日常を行ったり来たりする危うさとワクワク感と切なさを、ぜひとも味わってみてほしい。『ベランダは難攻不落のラ・フランス』子どもや音楽などをモチーフに、2008年から2018年にかけて発表された短編を収録。セルフライナーノーツも付き、衿沢ワールドを堪能できる。イースト・プレス894円Ⓒ衿沢世衣子/イースト・プレスえりさわ・せいこマンガ家。2000年「カナの夏」でデビュー。著書に『おかえりピアニカ』『うちのクラスの女子がヤバい』など。本作と同時期に、よみきり集『制服ぬすまれた』を刊行。※『anan』2018年12月12日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2018年12月11日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第23回アクマの辞典ヤ行【ユ】▶「ゆとり世代」(ゆとりせだい)…30代のゆとりも増えるので、「若く見られた」と喜ぶゆとりも出てくるかも今回のテーマはヤ行から「ゆとり世代の恋愛」だ。「ゆとり」とは何か若い奴の悪口を言いたいが、語彙が死んでて何も出てこない時にとりあえず繰り出される言葉として有名だが、そもそも「ゆとり世代」とは正確にはどこを指すのか。ウィキペディアによると、主に悪口で使われている「ゆとり世代」は1987年4月2日から2004年4月1日生まれを指すらしい。つまり、初代ゆとり世代は、もう30歳ぐらいなのである、若者を揶揄する言葉として「ゆとり」を使うのはもはや「マンモスうれピー」級の遅れ感なのだ。しかし「ゆとり」という言葉はすっかり悪口として定着していて、その枕詞は「これだから」が大半であり「さすが」とか「俺たちにできないことをやってのける」とかはあまり言われない。そんな「これだからゆとりは」と言われるゆとり世代だが、その元となった「ゆとり教育」を思いついたのは、当たり前だが当時子どもだったゆとり世代ではなく、大人だ。つまりゆとりを生み出した元凶である、ゆとりより上の世代が「これだからゆとりは」と言っているのだ、海原雄山が自分で作ったあらい(※)に対し「このあらいを作ったのは誰だあ!」とブチ切れているようなものである。そんな、ある意味被害者と言えるゆとり世代だが、その特徴として「主体性や積極性がなく何事に対しても興味が薄い」というのがある。中高年の大好物としておなじみの「若い者の○○離れ」である。特に「若者のセックス離れ」という言葉はよく聞く話題だ。よって「ゆとり世代は恋愛にも積極的ではない」となってしまうのだが、これはゆとり世代が消極的性格だからというより「暇つぶしの選択肢が増えた」せいではないだろうか。私が若いころは、文明があまり発達しておらず、竪穴式住居に住んでおり、当然娯楽も、石を遠くに投げて爆笑するか、男と女、もしくは男と男、女と女、組み合わせは何でもいいが、人が二人以上いればできる「恋愛」という原始的な遊びしかなかったのである。つまり「セックスしないと時間が経たない」からやっていたのである。それが今では、スマホやパソコン一台あれば一日容易につぶれる、というか意図せず潰してしまうこともしばしばだ。それだけではなく、娯楽はひと昔前に比べ飛躍的に多様化し安価で手軽なものも増えた。そんな数ある暇つぶしの中で「恋愛」というのはかなりコスパが悪い。時間も使うが「風が吹けば桶屋が儲かる」と同じく「サイゼリヤを初デートに使うとネットが炎上する」ということわざがある通り「安く済まそうとする奴は恋愛する資格がない、出直して来い」という風潮さえある。つまり、恋愛は娯楽のレビューサイトでは「コスパ☆1」だ、コスパ重視の若者はまず選ばないだろう。このように恋愛というのは割と贅沢品なのだ、贅沢せずに慎ましく生きてるんだから逆に恋愛しない若者を褒めてもよいだろう。※「あらい」…さしみの一種。こい・くろだい・すずきなどの肉の生身を冷水や氷で洗いちぢませたもの【ヤ】▶「ヤンデレ」(やんでれ)…リスカ画像を送ってきた後にデレられるとさらに怖いので現実向けではない【ヰ】▶「ヰタ・セクスアリス」(ゐた・せくすありす)…バンド名かと思ったら森鴎外の小説。キラキラネーム創始者の底力【ユ】▶「ゆとり世代」(ゆとりせだい)…30代のゆとりも増えるので、「若く見られた」と喜ぶゆとりも出てくるかも【ヱ】▶「ヱビス」(ゑびす)…発泡酒しか買わない奴が、たまに奢りでヱビスビールを飲んでおいて「ヱビスはクセが強い」と言っている印象※個人の感想【ヨ】▶「嫁姑」(よめしゅうとめ)…両方自分がいじめられてると思っているプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年12月07日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!☆第22回アクマの辞典マ行【ミ】▶「(人を)見る目」(みるめ)…モテないわけではなく、周りの人を見る目がない今回のテーマはマ行から「(人を)見る目」である。これはデカい虫しかいない無人島に生まれたというのでなければ、ある意味最重要なものだ。たとえ容姿や才能、金などに恵まれていたとしても、これがないと、何一つ恵まれずに裸一貫で生まれてきた上ケツが汚ねえヤツより最悪な人生を送る羽目になる。むしろ恵まれた人間ほど人を見る目が必要になる。そもそも何もないヤツには「何か目当て」のヤツが寄ってこないのである。もちろん何か目当てのヤツどころか何も寄ってこず、たまに勢い余ったカナブンとかがぶつかってくるだけの、デカい虫しかいない島に生まれてきたのと大して変わらない人生にもなりがちだ。だが、何も寄ってこないということは当然変なのも寄ってこないのだ。片や、何か持っている人間のところには人が集まる、集まれば集まるほどその中に「変なの」が混ざる率が上がる。よって変なのを掴まないための「人を見る目」が必要となってくる。例えば小室哲也さんなど、全盛期にもう一生働かなくていいぐらいの収入を得たはずだ。だがその後、何故あんなワイルドをゲットした展開になってしまったかというと、チープなスリルに身を任せたり、理由はいろいろあるだろうが、寄ってきた変なヤツの話に乗ってしまったからというのも大きいだろう。「才気がある人間ほど人を見る目がない」という説もある。容姿や才能に恵まれた人間は、幼少より周りに褒められ、素直に育っているため「まさかこの誰もが認める砂場の砂で堅い団子を作るのが天才的に上手い俺様をだますヤツなどいるはずがない」というように「人を疑う心」にパラメータを振り忘れて大人になってしまったりするのだ。よって、実際1~2度だまされてやっと「あ、俺をだますヤツがいるんだ」と気づくことになるのだが、1~2度だまされた時点で人生が終わっている可能性もある。片や何も持っておらず、周りから褒められた経験がない人間は、少し褒められただけで舞い上がる「チョロい」人間になってしまうケースも多々あるが、逆に「この祖父母にも塩対応された俺様に優しくするとは、こいつ何を企んでいるのだ」と猜疑心の塊となり、「てめえドコ中だよ?」と絡んでくるヤンキーの如く、人を見たら「お前、ナニ教だよ?」と自分に近づく人間は全員宗教の勧誘と思っているヤツも多い。これは人を見る目があるというよりは、素直な人間が「全員信じる」のに対し「全員信じない」という全てをシャットアウトする戦法である。こうすれば、変なヤツにだまされることはなくなるが、純粋な好意の人間も追い出すことにもなり、当然「孤独」である。「人を見る」というのは人を疑うことであり「人を見て態度を変える」というのは下品な行為だと思われがちだ。だが、「おかしい」「合わない」と思った人間から距離を取れないようではワイルドをゲットすることになる。だからと言って人を見すぎると、孤独になる。人を見る時は「視力0.7」ぐらいで見るのがベストかもしれない。【マ】▶「マウンティング」(まうんてぃんぐ)…優位を取ろうとする女をマウンティングゴリラと呼べるようになった、功績の高い言葉【ミ】▶「(人を)見る目」(みるめ)…モテないわけではなく、周りの人を見る目がない【ム】▶「無償の愛」(むしょうのあい)…無償労働をさせるために使われる言葉【メ】▶「メシウマ」(めしうま)…アイスはバニラ、のように「FXで大損した人」などがシンプルで一番うまい【モ】▶「モテ期」(もてき)…生まれた瞬間に終わっているケースが多いプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年11月21日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■アクマの辞典ハ行【ハ】▶「腹黒女」(はらぐろおんな)…女から見て気に入らない女は全部「腹黒」ということになる今回のテーマはハ行から「腹黒女」だ。腹黒とは、表面上は白を装いながら、その振る舞いは全て自分の利益のためという、腹の中は真っ黒のイカみたいな奴のことである 。しかし、デキ婚のことを本人たちや新婦の親が「授かり婚」と言い変えたりするように、腹黒女たちは自分たちのことを「腹黒」などと言ったりはしない。何と言うのか?「あざとかわいい」だ。これは「なんでもヤバいと言っておけばいいと思ってるだろ」と怒られるの承知で「ヤバい」と言うに等しいパワーワードだ。ちなみに「パワーワード」も最近、多用されすぎの思考停止用語としてよく怒られる。つまり二倍怒られてでも使いたい「ヤバいパワーワード」=「あざとかわいい」なのだ。読んで字の如く、計算しつくされた、あざといファッション、メイク、しぐさをしつつも、男にはそのあざとさを勘づかれてない、もしくは「もう、あざといんだから!」と言われながら飯を奢られている女のことである。昔からよくいるブリっ子じゃねえかと思うかもしれないが、本物のあざとかわいい女はバカを装ったりしない。なぜなら、それが何の得にもならないとわかっているからだ。「バカを装え」は女の鉄板モテテクであり、合コン「さしすせそ」などその代表だろう。確かにそれがヤリコンだというなら、前戯から後戯まで「すごーい」だけでよく「さしせそ」すら不要なのだが、真面目な結婚をしたい女に対して、婚活コンサルタントが「バカを装え」とアドバイスしているところもあるというから驚きである。そこがペットショップなら「バカそうだけどクソカワイイ」で決めても良いと思うが、結婚相手として「バカ」かどうかで女を選ぶ男はそれ以上のバカか「バカだから操りやすい」と思っているかのどちらかだ。もちろんホンモノのバカの方でいらっしゃるなら、そのようなお相手と結婚しても「ベストマッチング」かもしれないが、コンサルのアドバイスに盲従し「バカを装って」結婚した場合、その相手はちょっと口答えしたり自分の意見を言ったりしただけで怒りだす可能性が非常に高い。「バカ(自分より下)と思って結婚した」のだから当然だ。それも、カワイイだけのバカ女が1人、2人肩に乗っていても余裕で歩ける、むしろちょうどいいハンデという、手足に重りをつけて生活しているサイヤ人のような真の高スペック男ならまだ良いかもしれないが、そこまでの甲斐性もなく「バカな女(共働き必須)希望」の男はもはや結婚相手を探しているとも言い難く、素直に「お母さん希望」と言ってくれたほうが助かる。よってモテるために「バカを装う」というのは、そういう男を寄せ付ける「雑魚モテ」をするだけである。本当に「あざとかわいい」女はそんなことはせず、むしろ平素は「しっかりした女」、ともすれば「1人で生きていける女」のようにふるまうという。それでは男を寄せ付けないと思われるかもしれないが、もちろんツッパリ倒した女ではなく、弱みやバカさも見せる、ただその弱みやバカさを見せる相手を「厳選」するのだ。そうすれば相手は「俺にだけ本当の自分を見せてくれている」「頼られている」思うのである。あざとかわいい女は「一本釣り」なのだ。いらぬ雑魚に時間をかけないのが、その「あざとさ(頭の良さ)」の所以である。【ハ】▶「腹黒女」(はらぐろおんな)…女から見て気に入らない女は全部「腹黒」ということになる【ヒ】▶「姫扱い」(ひめあつかい)…王族に生まれなくても高いシャンパンを入れればなれる、良い世の中【フ】▶「不意打ちキス」(ふいうちきす)…性犯罪【ヘ】▶「平成」(へいせい)…自分が平成だったら二十代のうちに終わらせてほしかったと思う【モ】▶「モラハラ男」(もらはらおとこ)…「間違ってるお前」を正しにやってきた間違ってる男プロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年11月07日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第20回アクマの辞典ナ行【ナ】➤「涙(は女の武器)」(なみだ)…使ったら死ぬ(社会的に)系アイテム今回のテーマはナ行から「涙(は女の武器)」だ。女のみなさん、涙を武器に使ったことがあるだろうか、女たるもの、眼球から涙を散弾銃のように撃ち相手をハチの巣にするぐらい朝飯前のはずだ。でもそれを使うと、力の差が圧倒的になってしまうので使わないであげていると思う。だが、液体状の涙を武器として使っている者はいる。特に子どものころ、涙は「切り札」として常用されていた。幼少時の涙というのは、日本の道路交通法みたいなもので、どれだけ歩行者が全裸に靴下のみ着けて道路に大の字で寝ていようと、とりあえずそれを轢いた車が悪い、となってしまうように、どんな事情があろうと「泣かせたほうが悪い」となり、先生などに怒られていた。つまり泣いたもの勝ちである。これは男子でも使えるが、男子は3才ごろから「男の子は簡単に泣いてはいけない」という男女差別にさらされており、泣くのは恥ずかしいこと、まして女子に泣かされるなど即刻腹を切るべき、と刷り込まれているので、なかなかこの切り札は使えないものである。では、大人になってから涙を武器とするのはどうだろうか。タイマン、特に痴情の場でなら大人になってからも使っていいと思う、別れ話で女が泣き出したり、逆にゴールデンボンバーのPVのように男が縋り付いて、女々しくて女々しくて辛くなったりしても、これは二人のことである。しかし、ビジネスなど、社会的な場で涙を武器にするというのは下策である。たとえ涙でビジネス上のピンチを切りぬけたとしても、それは「泣いてるお前が可愛くて」許したわけではなく「うわあ」という、許すというより引いたため「退いた」だけである。しかも1人涙を武器にする女がいると、一瞬にして「女は泣けばいいと思っている」という、主語巨大化現象が起きてしまうため、社会的な場で液状の涙を武器にする女は、涙を武器にするぐらいなら口から溶解液を出して戦う、という女から蛇蝎の如く嫌われる。大人になってからの涙を武器にするという行為は子どもの時より「切り札」度が上がっており、一度公の場で使うと「そういう人」と思われるし、何度も通用するものではない。ドラクエなら「メガンテ(※)」と思ったほうがいい、自分も無傷では済まないからだ。しかし、涙も尿と同じで、我慢に限界があり、どれだけ出すまいと思っても出る時は出る。そんな「限界まで我慢したが断腸の思いで漏らした」という涙に対しても「泣けばいいと思って」と言われてしまう時もある。この時の悔しさは筆舌に尽くしがたいものである。涙を武器として自在に操っているものもいるかもしれないが、そんな器用なことできない女のほうが多い。職場などで大の大人が涙を堪えきれないほど追いつめられるというのは異常事態なのだ。それを「泣けばいいと思っている」と女なら誰でも自在に使える武器扱いし、パワハラがうやむやにされている側面もあるのではないだろうか。※「メガンテ」…自らの命と引き換えに大爆発を起こし敵を砕けさせるという自爆呪文【ナ】➤「涙(は女の武器)」(なみだ)…使ったら死ぬ(社会的に)系アイテム【に】▶「肉食女子」(にくしょくじょし)…ヤリマンと同一にされがちだが、肉なら緑に変色した鶏肉でも食うというわけではない、結構選ぶ。【ヌ】▶「ヌーブラ」(ぬーぶら)…勝負服は綺麗に着られるが、勝負下着としては最悪な諸刃の剣【ネ】▶「猫」(ねこ)…猫がいれば男はいらないと言っている女はマジで言っているので「そんなこと言って~」と茶化すと殺される【ノ】▶「呪い」(のろい)…女はこうするのが一番幸せ、など、幸せのフリした呪いがたくさんあるプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年10月20日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第19回アクマの辞典タ行【ツ】▶「都合のいい女」(つごうのいいおんな)…わかっててそのポジションを守ってる女もいるので営業妨害は良くないのかも今回のテーマはタ行から「都合のいい女」である。「都合のいい女」という言葉が浸透したのは、そういうタイトルのドラマがあったところからだろうと、調べてみたところ、すでに25年前のドラマであることが判明し戦慄した。ちなみに主演はW浅野のゆう子のほうである。一応、若者に言っておくがそういう漫才コンビがいたわけではない。では都合のいい女とは具体的にどういう女なのか。まず「呼んだらすぐ来る」が、都合のいい女の標準搭載機能のようだ、むしろこの「フットワークの軽さ」がない女は都合のいい女とは言えず、車だったら「タイヤがない」みたいなものだそうだ。ちなみに「すぐ来る」というのは暇だからというわけではなく「先約があっても男の呼び出しを最優先する」のが、都合のいい女であり「今日は女子だけで盛り上がっちゃお~!」と言った三秒後に男からLINEが来たら、即そっちに行くのである。そして次に欠かせないのが「すぐ体を許す」という点だ。もうこの時点で「都合のいい女」というのは「無料デリヘル」というボランティア活動だということがわかる、五輪ボランティアよりもよほど就活に使えるのではないだろうか。他にも奢りや借金の肩代わりなど「ATM扱い」や八つ当たりをされる「サンドバッグ代わり」などが、都合のいい女の条件に挙げられている。しかし、それらの理不尽に「耐えてる」ようでは都合のいい女としては徳が低く「彼に頼りにされている」「私にだけに本当の自分を見せてくれる」という「ありがたさ」を感じてこそ一人前だという。また、都合のいい女には度量のデカさも必要であり、彼に他に女がいても受け入れるという。それも「自分が本命だから」という受け入れ方ではなく、セカンド、サード、ついにはホームを回ってしまうような位置でも、そのポジションを懸命に守るのが都合のいい女だ。それ故に都合のいい女は、彼の周囲の人間に紹介してもらえないことが多いそうだ。万が一会っている時に、彼の知人に遭遇してしまっても彼女ぶるのではなく、瞬時に「友達の鳩子」然とした態度を取れるのがデキる都合のいい女である。このように、尽くすというより「搾取」に近いわけだが、都合のいい女自身が、自分が都合のいい女であると気付いていないかというと気付いている場合のほうが多いのではないか。なぜ我々がコンビニをよく利用するかというと便利だからである、つまり自分が便利になればなるほど好きな男にご愛顧いただけるなら、そりゃ便利になるっきゃないでしょと言う話だ。企業戦略としては当然であり、ライバルに負けないためにはどんどん便利になって当たり前である。ただ、コンビニとしてリピートしてもらえることに満足なうちは良いが、ある日突然「伊勢丹扱いしてほしい」という気持ちが芽生えたら不幸である。それに24時間営業も月日が経つごとに体に堪えるようになるだろう、頃合いを見て、自分を少なくとも「駅ビル扱い」ぐらいにしてくれる男を見つけたほうが良いかもしれない。【タ】▶「タラレバ」(たられば)…二兆円あったら二兆円さえあれば年とともに仮定のスケールがデカくなる【チ】▶「ちやほや」(ちやほや)…若いころに全くちやほやされなかった女は加齢に強い【ツ】▶「都合のいい女」(つごうのいいおんな)…わかっててそのポジションを守ってる女もいるので営業妨害は良くないのかも【テ】▶「手料理」(てりょうり)…バナナがおやつに入るかより、クックドゥが手料理に入るかで揉めがちな昨今【ト】▶「友達の恋人」(ともだちのこいびと)…危険な恋など起こらず、だいたい「友達がトイレに行っている間の無言」がキツイ存在プロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年10月06日月曜日から金曜日の午後6時より放送中のネットラジオ『A&G ARTIST ZONE THE CATCH』。10月より木曜日のパーソナリティに、声優の沢城千春が決定した。アニメ『Caligula -カリギュラ-』、『中間管理録トネガワ』など人気作品に出演している沢城。実は大の音楽好きで、自身でバンドを組んで活動しているほど。番組はギターを片手に音楽と向き合う1時間の生放送。番組では「沢城千春に聞きたいこと」、「沢城千春に番組でやって欲しいこと」、「応援メッセージ」、「ふつおた」などメールを募集中。■『A&G ARTIST ZONE THE CATCH 沢城千春のTHE CATCH』日時:2018年10月4日(木)スタート毎週木曜日18時~19時レギュラー生放送媒体:超!A&G+動画配信出演:沢城千春
2018年09月26日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第18回アクマの辞典サ行【サ】▶「サレ妻(夫)」(されつま・されおっと)…彼女らがシタを退治するのが現代の桃太郎今回のテーマは「サレ妻(夫)」である。サレ妻(夫)とは、配偶者に不倫されている者のことを指す。日本は昔から不貞に対する罪が重く、不義密通は重ねて4つだし、切る奴の腕が悪いと1.5ぐらいにされちゃうのである。今でこそ刑事罰はないが、どう見ても社会的には「こいつは不倫したんだから死ぬまで殴って良い」扱いされているとしか思えない。よって、サレが報復し、シタがヒドイ目に遭う勧善懲悪ストーリーは特にネット上では人気である、ジャンルとしては水戸黄門や、暴れん坊将軍と同じだ。つまり、したら最後、バレたら絶対悪として成敗、一件落着大爆笑されてしまうのが不倫である、IQが0.5以上あるなら、しないほうが良いとわかる。しかし、不倫をしている人間は多い、つまり不倫は人のIQを0.4以下というもはや視力ならメガネがいるレベルまで下げるということである。だが、そういうリスクがあるからこそ不倫は燃えるとも言う。つまり、不倫をしている人間は、銃口を口に突き付けられながら「狂気の沙汰ほどおもしろい…」というアカギ状態というわけだ。しかし全員、闇雲に舞い降りた天才、というわけではないので、きっちり不倫のツケを払わせられたりするのだが、そもそも「不倫はツケを払う行為」だと理解しないまま不倫をしている人間が多いと言う。特に独身の者は、自分は独身だからノーダメと思って気軽に既婚者と関係を持ってしまったりするが、もちろん相手の配偶者に訴えられ、慰謝料を払うはめになる場合があり、証拠があれば、戦ってもまず勝てない、何故なら不倫したほうが悪いからだ。さらに、バレた途端、不倫相手が妻や夫側に寝返るケースもある、バレても、された妻や夫が許せばシタ妻(夫)はノーダメだからだ。多額の慰謝料を請求された上、禁断の愛を交わしあっていた相手の、熱い手のひら返しを見ることになるのである。だが一番ハイリスクなのは既婚者同士の不倫、つまりダブル不倫だ、これはバレた場合、最悪、配偶者から離婚&慰謝料請求、さらに不倫相手の配偶者から慰謝料を請求という「慰謝料倍プッシュだ」状態になるのである。このように、金銭的にも社会的にも大きな損失を被る恐れがある不倫だが、残念ながら、不倫によって負うダメージは女のほうが遥かに高い。不倫ニュースを見ても、若い女の不倫は村1つ焼いたのか、というぐらい騒がれ、片や大御所男性芸能人の不倫は「あいつなら愛人の一人や二人いても不思議ではない」とほぼ完スルーだったりするのだ。だがここで「男女差別だ」などと叫んでも誰も聞いてくれない、何故なら不倫してしまったのは事実だからだ。「誰にも話を聞いてもらえなくなる」これが不倫の一番恐ろしいツケかもしれない。【サ】▶「サレ妻(夫)」(されつま・されおっと)…彼女らがシタを退治するのが現代の桃太郎【シ】▶「しまむら」(しまむら)…ユニクロよりセンスが問われてしまうので、ファッションに興味がなくても穏健派は行かない【ス】▶「据え膳」(すえぜん)…据え膳食わねば男の恥という心意気で逮捕者が出る【セ】▶「セクハラ」(せくはら)…「そんなこと言われたら何も話せない」というが、最初から仕事のこと以外何も話す必要はないのだ【そ】▶「ソロ男」(そろお・そろおとこ)…結婚しない男、この理屈で行くとオナニーはソロセックス【プロフィール】カレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年09月20日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第17回アクマの辞典カ行【カ】▶「格差婚」(かくさこん)…した瞬間に「上手くいきっこない」の呪いをかけられる今回のテーマは「カ行」から「格差婚」である。みなさんは「格差婚」と聞いて何を思い浮かべるだろう、『永遠にともに』だろうか。このように「格差婚」というのは、女の収入が男のダブルスコア以上だったり、女はハリウッド女優のようで豹を飼っているが、男はネルシャツをパンツインしてヤモリとルームシェアしている場合だったりと「女のレベルが男より遥かに高い」時に使われているような気がする。それも「ハイスペックな女」と結婚したのだから「ハイスペック婚」と呼ばれても良いようなものだが、何故かそうは言われない。おそらくこれは「男の収入は女より上で当たり前」なる考えが残っているからだろう、よって「女がハイスペック」という部分に焦点を当てず「男が女より格下」という部分をフィーチャーした「格差」などという厳しい言葉が使われている気がする。割と女に対しても男に対しても失礼な言葉であるしかし、世間の「なんか気に入らねえと思われてる度」からすると、ハイスペック婚も、格差婚も大差はない。「ハイスペック婚」は「上手いことやりやがって地獄に落ちろ」と思われているし、格差婚は「女の下でヘラヘラしやがって恥知らず地獄に落ちろ」と思われている。つまり両方、ゴートゥーヘルを願って止まれない関係である、この辺は男女平等なので安心できる。このように、男が上だろうが女が上だろうが、お互いに差がありすぎる結婚は、妬みの対象であり好奇の目にさらされる関係である。そして決まってこう言われる「どうせ長続きしない」と。もちろん全ての格差婚が上手くいかないわけではないが、“永遠にとも”にいなかった例も多いので格差が別れを招く可能性はある。しかし「部屋が暗い時、諭吉に火をつけて灯り代わりにする」など、第一次世界大戦中の成金みたいな金銭感覚と価値観についていけねえ、という場合もあるが、格差離婚の原因は、その格差に対し「俺の嫁は稼いでいてすごい」と認められるか「こいつは稼いでいることを鼻にかけて俺を見下している」と卑屈になるかの違いだという。また稼いでいるほうも「自分がこれだけ働けるのは夫のおかげ」と感謝するか「こいつは私が食わせてやっている」と見下すかでは大きな違いがある。つまり、どっちのスペックが上だろうが下だろうが、リスペクトがなければ上手くいかないということである。また、どこを買うかも人によって違う「こいつは無職のヒモ野郎だが、野菜にすら“さん”づけするところが推せる」ということもある。それを、たかだか収入や社会的地位、容姿の差だけでお他人様の結婚を「格差」呼ばわりするのは良くない。そんな言葉で自分の妬みをオブラートに包むぐらいならドストレートに「なんか気にいらねえ婚」と言ってしまったほうがいい。【カ】▶「格差婚」(かくさこん)…した瞬間に「上手くいきっこない」の呪いをかけられる【キ】▶「聞き上手」(ききじょうず)…聞いているフリが上手い人【ク】▶「黒歴史」(くろれきし)…自分の歴史のみならず「あいつとつきあったのは黒歴史」と他人の歴史の一部になっている場合がある【ケ】▶「ケチ」(けち)…そいつはケチな男じゃない、君に金を使いたくないだけだ【コ】▶「小室哲哉」(こむろてつや)…彼の人生に文句を言うより、曲を聞いたほうがとても有意義プロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年09月06日2019年2月から松坂桃李主演で上演される舞台「ヘンリー五世」の全出演キャストが決定しました。埼玉県「彩の国さいたま芸術劇場 大ホール」にて、吉田鋼太郎の演出で贈る史劇は「彩の国シェイクスピア・シリーズ」の第34弾。出演者たちから届いた、喜びのコメントをご紹介します。彩の国シェイクスピア・シリーズ 舞台「ヘンリー五世」埼玉県「彩の国さいたま芸術劇場 大ホール」にて、2019年2月8日(金)~2月24日(日)の期間上演される松坂桃李主演の舞台「ヘンリー五世」。吉田鋼太郎の演出で贈る史劇は、1998年以降、国内外で次々と話題作を発表してきたシェイクスピア全37戯曲上演を目指す「彩の国シェイクスピア・シリーズ」の第34弾目の作品です。「ヘンリー五世」では、イングランド王ヘンリー五世の活躍を中心に、英仏百年戦争の激戦のひとつ、アジンコートの戦いに臨む、イギリスとフランスの民衆や貴族、軍人たちの姿が描かれています。出演者のコメントを一部ご紹介!ヘンリー五世役松坂桃李 “2013年の『ヘンリー四世』から月日を重ねて再びシェイクスピアの世界に戻ることができるのは、大変光栄に思います。と同時にシェイクスピアの言葉と対峙することを考えると怖くもあります。あの時、座長だった吉田鋼太郎さんが演出される『ヘンリー五世』に出演することは深い縁を感じています。成長したハル(ヘンリー五世)の姿をお届けできるよう精一杯、頑張ります。2019年、劇場でお会いしましょう。”出典:演出・コーラス役吉田鋼太郎 “―次回作が決まった喜び『ヘンリー五世』は、日本ではこれまでほぼ上演されたことがない戯曲です。何百年も前のイギリスの歴史劇ですから、現代の日本人にとってはどうでもいいといえばどうでもいいお話なのですが、“今”の世の中に通じる様々な要素が含まれています。立ち回りなんかもあって、非常に活き活きとした作品なので、お客さまがみて面白かったと思えるような、そういう芝居にしたいと思っています。―松坂桃李について松坂桃李くんとは、(『ヘンリー五世』の前作にあたる)『ヘンリー四世』という舞台で共演しています。彼にとってシェイクスピア作品を演じるのは初めてだったのですが、非常に勘が良く、シェイクスピアのセリフを語ることのできる口跡の良さ、声量、気品を持ち合わせていました。『ヘンリー四世』は彼が演じた主人公のハル王子が王になって終わったのですが、今回の『ヘンリー五世』は正にそこから始まる、いわば続きものになっています。そういう意味では、『ヘンリー四世』をご覧になった方には是非またお楽しみいただければと思いますし、桃李がこの役をやることを快諾してくれたことはとても嬉しいです。あいつはホントにいい奴です。―松坂桃李に期待すること前回の『ヘンリー四世』では、(稽古を通じて)非常にシェイクスピアのことを理解し、「桃李はシェイクスピア演劇の中心に立てる俳優だ」と思いました。今回の舞台ではさらに成長し、皆を引っ張って、桃李ならではのシェイクスピア、桃李にしかできない『ヘンリー五世』を出現させて欲しいと思っています。そのためにふたりで話しながら、切磋琢磨していきたいと思います。”出典:フランス皇帝役溝端淳平 “人生で初めて観た舞台が蜷川さんのシェイクスピア・シリーズでした。感銘を受けた蜷川演出に後に立たせて頂く事が出来、深い縁と恩を感じています。蜷川さんの意志を受け継がれた鋼太郎さんにお声をかけて頂き、また稽古場で神経を注ぎながらシェイクスピアに挑める喜びを強く感じています。尊敬してやまない鋼太郎さんの演出を受けるのは、気負いと重圧はありますが、それ以上にこんな贅沢な時間に感謝です。”出典:「ヘンリー五世」公演情報出演松坂桃李/吉田鋼太郎/溝端淳平/横田栄司/中河内雅貴/河内大和間宮啓行/廣田高志/原慎一郎/出光秀一郎/坪内守/松本こうせい/長谷川志鈴木彰紀/竪山隼太/堀源起/續木淳平/髙橋英希/橋本好弘/大河原啓介/岩倉弘樹/谷畑聡/齋藤慎平/杉本政志/山田隼平/松尾竜兵/橋倉靖彦/河村岳司/沢海陽子/悠木つかさ/宮崎夢子期間2019年2月8日(金)~2月24日(日)全19回劇場彩の国さいたま芸術劇場 大ホール※埼玉公演後、ツアー公演の予定ありチケット販売【一般】2018年11月17日(土)~発売開始チケット取扱い チケット料金【一般】S席 9,500円/A席 7,500円/B席 5,500円【SAFメンバーズ】S席 8,600円/A席 6,800円/B席 5,000円【U-25(B席対象】2,000円(劇場のみ取り扱い)※U-25チケットは公演時、25歳以下の方が対象です。入場時に身分証明書をご提示ください。※SAFメンバーズのご予約はSAFチケットセンター、劇場・会館窓口にて承ります。イベント情報イベント名:彩の国シェイクスピア・シリーズ「ヘンリー五世」催行期間:2019年02月08日 〜 2019年02月24日住所:さいたま市中央区上峰3-15-1電話番号:0570-064-939
2018年09月03日親譲りの知名度と話題性の高さから、CM業界も常に熱視線を送る2世タレント。だが、同時に起用にはリスクも伴うようだ。「2世タレントは話題性に関して抜群ですが、起用するデメリットもあります。それは、騒動が起きたときもまた、注目されやすいということです。たとえば、高畑裕太さん(24)や清水良太郎さん(30)の事件も、2世であるがゆえに大きく報じられました。そうしたリスクから、起用するのに慎重なクライアントも多いです」(大手広告代理店関係者・C氏)実際、逆境に立たされている2世がいる。先日ラッパーRYKEY(30)との結婚を発表した草刈正雄(65)の長女・紅蘭(28)だ。「結婚相手の彼に逮捕歴があることが報じられており、イメージダウンは避けられない状態です。持ち前の明るいキャラクターで持ち直してほしいのですが……」(前出・C氏)そんな中、これからの活躍が期待される注目株も。7月末に放送された『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)でテレビ初出演を果たしたエレナ・アレジ・後藤(21)だ。「日本語がまだ流暢に話せないのが課題ではありますが、なんといっても後藤久美子(44)さんの娘ですからね。また長らく海外で暮らしてきたエレナさんを日本に適応させるため、久美子さんは『日本での一人暮らし』を厳命。さらに、日本語学校に通わせて猛特訓中だとか。そうしたスパルタ教育も手伝って、メキメキと頭角を現しています。露出も少ないなか、CMギャラは800万円代。出だしは上々と言えるでしょう」(前出・C氏)エレナと同日に『さんま御殿』に出演した田原俊彦(57)の娘・田原可南子(24)もホープの一人。「可南子さんはトークがうまく、番組内で語ったお父さんの変なエピソードもかなりウケていました。田原さんは今でも熟年層からの支持が厚いですからね。親子共演が実現すれば、彼女もさらに注目されそうです」(前出・C氏)生き馬の目を抜く2世タレント業界。親超えの日も、夢じゃないかも?
2018年08月16日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第14回アクマの辞典パ行【パ】▶「パパ活」(ぱぱかつ)…何重にもオブラートをかぶせた援助交際今回のテーマは「パパ活」である。「パパ活」とは簡単に言うと、飯を奢ってくれたり何か買ってくれたり、お小遣いをくれたりするパパ的存在のおっさんを捕まえることだ。しゃらくさい言い方しやがって、結局援助交際じゃねえかと、と思うかもしれないが「パパ活」は、実際はどうあれ、「あくまでおっさんに払う対価はデートやトークだけ」なのである。つまり「大3枚で一発」※みたいな世界観ではないのだ。果たして世の中に、女に高い飯を奢ってトークだけで満足する男がいるのだろうか、という疑問も湧くが「男の奢りは全部セックス目的」と断じてしまうのは「女のオシャレは全て男にモテるため」と言うぐらい失礼な話だろう。ともかく、今出会い系にはこの「パパ活」をしている若い女が多いと言う、もちろん成人同士が合意の元でしていることなら、とやかく言うことではないが、両者に「思惑の違い」があるとトラブルになりやすい。女のほうは、本当にトークとデートだけで援助してもらいたい、と思っているのに、男のほうは「そうは言っても交渉次第でワンチャン」と思っている場合である。逆に「大3枚で一発、渋るようなら2枚で妥協、それでもダメならせめて口でゲーセン」と思っている女が「若い女の子と楽しくおしゃべりしたい」と思っているおっさんとミートするのも不幸な事故である。しかし、最初は本当にデートだけのパパ活をしようと思っていた女でも、目の前に「大」をちらつかされたら、少し触らせるぐらいなら、とズルズル行ってしまうかもしれないし、しゃべるだけで満足しようと思っていたおっさんも、いざ若い女を前にすると変な気を起こさないとも限らない。「パパ活」というライトな言葉を使っていても、やはり身元不明の人間と出会うことには変わりないので、リスクはあるのだ。ところで実際「パパ活」の相場はどのぐらいなのだろう、飯を奢ってもらうにしても、サイゼリアだったら一人で食ったほうがマシなはずである。そこで早速「パパ活 相場」で検索したところ、トップに「体ありでパパ活するといくらもらえる?」というページが出てきた。やっぱり体ありなのかよ、とミラノ風ドリアをひっくり返して帰るところだったが、読んでみるとやはり「パパ活は体なしが原則」とは書かれており、高くても3万、安くなると5千円の場合もある、という。だが「体なし」を前提としながらも、もし体ありにするなら「最低3万はとれ」と書かれている、やはり「大3枚」の世界だったようだ。逆に体ありで3万も出せないような男は「パパ」を名乗る資格はないから切ったほうが良い、という。パパになっても金がなくなれば唾を吐かれて切られる、ということだ。男も女も「パパ活だから大丈夫」などということはない、と肝に銘じたほうが良いだろう【パ】▶「パパ活」(ぱぱかつ)…何重にもオブラートをかぶせた援助交際【ピ】▶「ピラニア女」(ぴらにあおんな)…金持ち男の子どもを妊娠し養育費をせしめる女日本だと養育費を取り立てるシステムがグダグダなので真似しないほうが良い【プ】▶「プチ整形」(ぷちせいけい)…プチだけに気付かれず、ついつい自ら整形カミングアウトしがち【ペ】▶「ペタジーニ」(ぺたじーに)…友達の母親と結婚という生きるエロマンガ、だが離婚したらしい【ポ】▶「ポイズン」(ぽいずん)…言いたいことも言えない世の中、というネタが通じなくなってきたことがポイズン※大3枚=3万円の意味プロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年08月06日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第14回アクマの辞典バ行【バ】▶「バックハグ」(ばっくはぐ)…痴漢の得意技でもあるので使用には細心注意が必要今回のテーマは「バ行」から「バックハグ」だ。新しい体位かな?と思ったら、あながち間違いではなかったようで「後ろから抱きしめること」を指し、男女ともに「キュン」とくる行為として今アツいようだ。このような「ときめき体位」は「壁ドン」「顎クイ」のように定期的に爆誕するが、こういったものが「これをやれば女はみんな落ちる」「男は全員喜ぶ」といった風に拡散してしまうのは危険な気がする。上目使いや、アヒル口のような単独行動ならいい。ミスっても「ウンコ我慢してんのかな」と思われるぐらいで済む。ただ相手に何かする行為というのはどれも「※ただし交際相手に限る」と注釈をつけた方がいいものばかりである。「壁ドン」とか、交際相手以外にやられたら、不快を越えてただ恐怖である、自分より力の強い男に壁に追いつめられたら怖いに決まっている。体に触れる顎クイやバックハグなど言わずもがなであり、男だっていきなりよく知らん女に後ろから抱きつかれたら、ときめくより「妖怪だ」と思うだろう。つまり「ときめき体位」は「好きな人へのアプローチ」ではなく「カップルの前戯」だと思っておかないと大変なことになる。しかし、こう言うと必ず「でも相手がイケメンなら喜ぶんだろ」もしくは「美人なら何されてもいいんだろ」という者が現れる。「※ただしイケメンに限る」という秀逸すぎる注釈が生まれてしまったばかりに、女はどんなセクハラ行為でもイケメンなら許すし喜ぶという誤解が生まれてしまったのである。そんなことはないのだ。欧米のほうでも美人女優にキスされたティーンの男子が「ファーストキスは好きな人としたかった」と怒っていた、というのだから、女も男も相手の顔が良くても嫌なものは嫌なのだ、嫌じゃないのはイケメンとか美人とかではなく「相手に好意を持っているとき」だけだ。例え「イケメンなら何でも嬉しい」と豪語している女がいても、その女が考えるイケメンとは「ドウェイン・ジョンソン」かもしれないのだから、ジャニーズ系がおいそれと触っていいものではないのである。やはり、他人の身体に触る、というのはリスキーな行為なのである。女も「さりげないボディタッチ」が男を喜ばせる鉄板モテテクとして、旧石器時代あたりから語り継がれてきたのだと思うが、そろそろ平成も終わるし、見直しが必要なのではないか。男は女以上にそういう行為に異議を唱えにくいのだ。ちなみにバックハグの効果だが、男の場合は「相手を守りたい」女の場合は「相手に甘えたい」という気持ちが伝わる、とのことだが、女の場合単純に「乳が当たる」という効果もある。だがそれも、好意を持っている女の乳だから価値があるのだ。【バ】▶「バックハグ」(ばっくはぐ)…痴漢の得意技でもあるので使用には細心注意が必要【ビ】▶「ビッチ」(びっち)…ビッチと言われて喜ぶ女は「小悪魔」の意だと思っている正しくは「ヤリマン」【ブ】▶「武勇伝」(ぶゆうでん)…大体が過去の犯罪自慢なので、賢い奴は黙ってるバカはSNSに書く【ベ】▶「ベッキー」(べっきー)…1周回って応援するフェーズがなかなか来ない【ボ】▶「ボトックス」(ぼとっくす)…顔面に菌を打ってまで小顔を求める、明日を捨てた戦士プロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年07月20日伊勢丹新宿店で7月18日から23日まで、『ルパン三世』とコラボレーションしたイベント「ISETAN×ルパン三世 ルパンの夏祭り」が開催される。アニメにも登場したルパンのアジト、リクヴィールのテラス ©モンキー・パンチ/TMS・NTV伊勢丹新宿店のお宝を狙った2016年、アジトを作った2017年と2年にわたり伊勢丹新宿店をジャックしたルパン一味が、今年は伊勢丹新宿店で「祭り」をプロデュースすると、予告状ならぬ招待状が届いた! 今回の『ルパン三世』とのコラボレーションは、ファッション、アート、コスメ、ステーショナリーといった幅広い商品に、レストラン、カフェ、バー、パブと前回よりも規模が拡大し見どころが満載。日本テレビほかで放送中の『ルパン三世PART5』に登場する、カフェレストラン ラ・リヴィエールの2号店「ビストロ リクヴィール(Bistro Riquewihr)」が伊勢丹新宿店本館6階に出現する。第1話でルパンと次元がおいしそうに食べていたガレットやミートボールスパゲティーを始め、デザートも充実。6月20日から伊勢丹オンラインストアにて予約受付を開始する。また今回は予約せずとも当日気軽に立ち寄れるカフェやバー、パブも登場する。カフェラテ(ホット/アイス)税込648円※写真はホットカフェラテ©モンキー・パンチ/TMS・NTV7月20日の夜には本イベントの開催を記念して、伊勢丹新宿店本館屋上にて大野雄二&ルパンティックシックスによる「ルパンジャズライブ at 伊勢丹新宿店屋上」が開催。一夜限りの迫力のパフォーマンスは必見。ライブのチケットは、デジタルチケットサービス Yahoo!JAPAN パスマーケットにて6月23日10:30より販売開始。©モンキー・パンチ/TMS・NTVさらに会期中には、謎解きイベント「ルパンミステリー 伊勢丹の黒い手帳」も開催。伊勢丹新宿店各所で得られるヒントを探しだし謎を解いていく。開催日は7月18日、19日、21日、22日の4日間。6月27日10:30より伊勢丹オンラインストアにて予約受付を開始する。そのほか、イベントの詳細は「ISETAN × ルパン三世」スペシャルサイト(www.isetanguide.com/lupin/)にてチェックできる。 今夏、『ルパン三世』と伊勢丹新宿店がおくるこのお祭りに、ぜひ参加してみては。【イベント情報】ISERAN×ルパン三世 #ルパンの夏祭り会期 : 7月18日〜23日(最終日は18:00終了)会場 : 伊勢丹新宿店本館6階ルパンジャズライブ at 伊勢丹新宿店屋上会期 : 7月20日会場 : 伊勢丹新宿店本館屋上時間 : 第1部 開場16:45/開演17:30、第2部 開場19:30/開演20:15料金 : 税込5,500円※第1部、第2部の入場チケット料金は一律。当日は各部共に、入場チケットの購入順(決済完了時点の順番で、チケットに番号が表示される)での入場となる(※一部内容が変更となりました)6月23日10:30からYahoo!JAPAN パスマーケット( )でチケット販売開始ルパンミステリー 伊勢丹の黒い手帳会期 : 7月18日〜22日会場 : 伊勢丹新宿店各所時間 : 11:00〜18:00料金 : 2,500円6月27日10:30から伊勢丹オンラインストアで予約受付開始
2018年07月11日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!第13回アクマの辞典ダ行【デ】▶「DT」(でぃーてぃー)…恥ずかしいことではないが「逆にカッコいいものにする」作戦は止めた方が良い今回のテーマはダ行から「DT」だ。「DT」とは、いろんな意味があるようだが、このコラムに出てくるぐらいだから「童貞」のことだろう。童貞とは、セックスしたことがない男のことを指し、風俗のみで経験がある男のことは素人童貞、という。処女が今でも「価値があるもの」という気持ち悪い考えが消えないのに対し、童貞は一貫してバカにされがちなものであった。厳密に言うと「童貞シブい」という文化もあったようだが、局地的なものである。しかし、今では「処女云々」がド級のセクハラなのと同じように「童貞いじり」も立派なセクハラだと言われるようになった。考えて見れば当たり前のことなのだが、女へのセクハラでさえここまで野放しにされていたのだから、男へのセクハラなど、まだ問題にすらされていない問題の段階である。ともかく女だろうが男だろうが他人のセクシャリティを笑いにするのはセクハラなわけだが、それ以前に、セックスしていたら何が偉いのか、という話である。確かにその昔、ジョージ秋山御大により「おセックス様」と表され、崇め奉られてきた、セックスだが、男というのは全員セックスしたがっている生き物であり、男の価値はいかに早く女の股間にチンコをツッコむかの「早セックス選手権」で決まる、というのは先日炎上した「女の価値はバッグで決まる」どころではない、失礼な偏見である。俺様の大事なモノをそんな得体の知れない物体Xに預けられるか、と言われたらこちらはぐうの音も出ない。百歩譲って「早セックス選手権」を開催するなら、全員したがっている男を集めるべきだろう、それなら「1位が偉い」はまだわかる、それをもともとセックスに興味がない男を捕まえて「童貞なんだ」とバカにするのは、彼氏とか全然欲しくない女に「そんなんじゃカレシできないよ~」と言うのと同義である。しかし若いころは「セックスしたら偉い」と勘違いしがちである。これは男だけでなく女もだ。逆に女の方が「男に性的対象に見られることがモテ」と勘違いしたりするので危険である。もちろんヤリマンが悪いわけではない、セックスは健康にいいと言うし、安全に気を付ければ「趣味はジョギング」と言うのと変わらないだろう。ただ、自分に自覚があってヤリマンをやるのは良いが、自分じゃ「モテガール」のつもりで男からは「ヤリ田マン子さん」と呼ばれているのは悲しすぎるし、幸せになれない。このように、セックスしていたからと言って大して偉くもなく、むしろヤリすぎたことにより己の価値を下げたり、家庭裁判所にいくことになる者もいたりするのだから、それの経験の有無で人をバカにするというのは、自分のバカを露呈するようなものだろう。【ダ】▶「ダーリン」(だーりん)…一貫して「うちのダァ」と言っておけば男が変わっても気づかれない。【ヂ】▶「地頭」(ぢあたま)…「地頭は良い」というのは「悪い奴じゃない」と同じで良いわけでもない【ヅ】▶「ヅカ」(づか)…沼にハマりやすいオタが、怖くて近づけないもの【デ】▶「DT」(でぃーてぃー)…恥ずかしいことではないが「逆にカッコいいものにする」作戦は止めたほうが良い【ド】▶「毒舌」(どくぜつ)…本当に舌に毒を仕込んでいる奴しか、名乗れないようにしろプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年07月06日九星別、仕事運&金運の展望を開運学研究家・オペラ沢かおりさんが占います!2018年後半の四緑木星(しろくもくせい)、五黄土星(ごおうどせい)、六白金星(ろっぱくきんせい)の運勢は果たして…。四緑木星(1960年生、1969年生、1978年生、1987年生、1996年生)当たり運が体内ですくすく成長、徐々にふくらむ高額当せんの夢。【基本の仕事運と金運:風のように東奔西走する情報通。】会社とは「社会の役に立つ」「営利を追求する」を目的とする団体組織であり、なかよしクラブではありません。大事なのは気が合う、合わないよりもチームワーク、協調と和合の精神です。…という真実を誰よりも心得ているのが、中立的な立場でものごとを俯瞰できる四緑です。「とかく乾燥しがちな社内の潤滑油になれたら」。ピースフルなヒューマニストの四緑は、ヒマさえあれば総務経理営業食堂給湯室ほか各部署の垣根を乗り越え、そよ風のように社内を飛び回ります。「シロ子くんはどこで油を売っているんだ!?」。上司が怒っても四緑はあまり気に留めません、「そうだよねーわかる」「気にしちゃだめ!」と人間関係の調停役として今日も忙しく東奔西走します。人脈が豊かな四緑のもとには、人間関係の裏事情だけでなくさまざまな金融情報も集まります。話題の金融商品、注目株の銘柄、銀行支店別・定期預入時にもらえる粗品の種類など、生きた情報がオンタイムで入ってくるでしょう。「もっといい預け先がある」と聞けばすぐに乗り換えたくなるのが四緑の性(さが)ですが、少しでも迷いがあるならやめたほうが正解。特に気をつけたいのは「成功者の講演会に行かない?」「大金持ちになれる方法知りたい?」「仮設テントで羽毛布団の激安即売会やってるよ!」などの儲け話。そもそもこのご時世においしい話なんてあるわけないですし、それが本当なら今ごろ全員大金持ちです。まずは地道に貯金して、投資は富豪になってからやりましょう。【’18年後半の仕事とお金の展望:イライラしたら宝くじ売り場へGO!】四緑の頭の中にはバーチャルなキャッシュ&フロー計算書が格納されていて、財布を開くたびそれが起動して「やめとけ」「買ってよし」の見きわめができるシステムになっています。だから衝動買いとはほぼ無縁、普通に働いていれば食べるのに困ることはありません。今後もそのまま平穏に…と申し上げたいところですがちょっと待った、’18年初頭から四緑の体内には宝くじ運が芽生え、今この瞬間も成長して7月には最盛期を迎えることになっています。7月といえばサマージャンボ。当てるコツは「イライラしたときに買う」「鬼軍曹(六白か七赤)と一緒に買いに行く」。感情が荒々しく波打つとき、人は日常の殻を突き破って非日常の世界にジャンプしやすくなるのです。もし当たったら「誰にも言わない」「従来の暮らし方を変えない」と心して、財産をキープしましょう。五黄土星(1959年生、1968年生、1977年生、1986年生、1995年生)いたずらに動き回るより、座してお金を貯めるが勝ち。【基本の仕事運と金運:度胸と義侠でてっぺんを目指す。】「姐(ねえ)さん」、それが職場における五黄のミドルネームです。普段はもの静かに電卓に指を這わせていても、書類に不備を発見するやいなや背中に真っ赤な火炎を立ち上らせ、目をカッと見開いて鬼の形相に一変します。「この出張経費精算書を提出したのは誰や」。あわてて参上した顔面蒼白の社員を前に、五黄は啖呵を切ります。「経理課をなめんなや!」その場にいる全員が震え上がるほどの迫力でミスを是正する五黄ですが、その根底には熱い責任感と正義感が流れています。困っている人を見ると放っておけずひと肌脱いでしまう義侠心もあるため、同僚や後輩からは頼りにされ、慕われるでしょう。いるだけで職場の空気がきりりと締まる、なくてはならない重鎮的存在です。五黄にとって大事なのはお金のある・なしよりも「信念を貫き通す」「相手が誰でも間違っていることは間違っているとはっきり言う」「自分の言動に責任を持つ」。プライベートはもちろん職場でもそのポリシーを遺憾なく発揮するため、「筋が通ってる」「見上げた度胸」「決着(けじめ)をきっちりつけるやつ」と上司から評価され、出世の確率はかなり高くなります。収入は地位と一緒に上がるので、たとえ若いうちはお金がなくても、年を重ねるにつれてお金回りがよくなるでしょう。「若いうちの苦労は買ってでもしとき」「人生は大器晩成がトクなのや」。タワマンの最上階に仲間を呼んで極上ステーキをフランベするその姿に、「カッコいい!」と憧れる人は少なくありません。【’18年後半の仕事とお金の展望:10年に一度の貯め期が到来。】職場ではミス連発で上司やクライアントからヤキを入れられ、さらに敵対勢力がのしてきて内部抗争勃発の予感。…大変ですね、たしかに今年に入ってからの五黄は少々しんどいかもしれません。でも考えてみてください、人間が成長できるのって、楽しいときより「つらい」「苦しい」ときではないでしょうか。そう考えると少しは気が楽に…なりませんか。ではいいことを教えましょう、仕事運は今ひとつでも貯蓄運は絶好調、これから10年に一度の貯め期が到来します。こういうときは下手に外で暴れてパワーを消耗するより黙って静かに内側を充実させる、つまりお金を貯めて人生基盤をがっちり固めるといいのです。ストレスが溜まったときは三碧や四緑と雑談を。「カットオフデニムにほつれ止め塗ってる?」。とりとめのないどうでもいい話に気がまぎれ、平常心に戻れます。六白金星(1958年生、1967年生、1976年生、1985年生、1994年生)点検と補修で運を立て直せば、やがて秋の実りの大収穫祭へ。【基本の仕事運と金運:お金を引きつける驚異の吸引力。】「仕事とはおのれの人生に仕えること」「職場で起こることはすべて偶然ではなく必然」「力の大きさ×移動させた距離=仕事量」「社食と名物にうまいものなし」六白の広大な脳内宇宙には常にそのような哲学的な命題がビッグバンのように浮かんでは消え浮かんでは消えしています。頭脳明晰でものごとの本質を大局からつかむのが得意、失敗を恐れずダイナミックに行動する、細かいことにこだわらないなどの特徴から、周囲からリーダー役として持ち上げられることも多いでしょう。責任感と正義感の強さは五黄と互角ですが、五黄が「姐さん」なら六白は「ワンダーウーマン」。弱きを助け強きをぶっ飛ばす勇敢で心やさしい戦士として周囲から慕われ、希望の星となるでしょう。金星=金の性質を持つがゆえにカキーンと打てばスコーンと響く六白は「ウソがない」「頭の回転が速い」「常に沈着冷静」と目上からその特性を高く買われ、どこにいてもすぐに頭角を現します。出世運に加えて金運にも恵まれており、ガツガツしなくても向こうから自然にお金が寄ってくる超強力な吸引力の持ち主。ダイナミックともいえる驚異の集塵パワーでお金をくまなくかき集めて吸い込み、気づいたときにはダストカップもとい通帳にたっぷりお金が貯まっていることでしょう。ただし「入るものも大きいが出るものも大きい」がこの星の特徴。「どうせ買うなら一流品」というポリシーを持つため、予算オーバーの大金がどかんと出ていく可能性が。自制心を育てましょう。【’18年後半の仕事とお金の展望:運の再生まであともうひと踏ん張り。】現在、六白の仕事運は10年に一度の大規模修繕工事中です。前半は経年劣化による補修箇所がいくつも見つかり、その対処に追われて大忙しだったのでは?後半もこの流れで何かと忙しくなるでしょうが、ここで音を上げずにタイル浮きやヒビ割れ、水漏れ、剥げた塗装などを一気に補修しておけば、仕事運と連動して金運もグングン上がります。面倒くさいかもですが、根性を入れてもうひと踏ん張りしてください。頑張る人には天からのごほうびとして積立保険の満期金や印税収入、家賃収入、溜まったポイントによる豪華賞品などが降ってきます。名づけて「不労所得の収穫祭」。臨時収入は癒し上手の一白につき合ってもらって洋服やグルメなどでパーッと使い、厄を落として身も心もピカピカになりましょう。工事が終わって足場がはずれるまで、もう少しのガマンです。※九星気学では「立春から新年が始まる」と考えるので、1/1~節分(2/3頃)生まれの人は前年の本命星になります。オペラ沢かおりさん開運学研究家、作家。女性誌などで活躍中。「占いは快適な人生の友」がモットー。ブログ「PINKIE’S EYE(ピンキーズアイ)」で毎月の九星別運気と吉方位などを発信中。※『anan』2018年6月27日号より。イラスト・いぬんこ監修・文・オペラ沢かおり(by anan編集部)
2018年06月26日OL兼漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!第12回アクマの辞典ザ行【ザ】▶「雑魚モテ」(ざこもて)…雑魚すら寄ってこない漁場も多数ある今回のテーマはザ行から「雑魚モテ」である。この言葉、私は知らなかったのだが、おそらく知らないまま死んだほうがマシな言葉な気がしてならない。だが仕事上そうもいかないので調べたところ「どうでもいい男にばかりモテる女」という意味だそうだ。つまり、低スペック男=雑魚である。人様がキンタマを痛めて生んだご子息を雑魚とは思い切ったことを言うな、と思うが、こちらが男を雑魚扱いしている時、男もこちらを雑魚と見ているという深淵の法則があるのでお互いさまかもしれない。だが、実際「雑魚モテ」というか、合コンにいたら爆弾処理班がフル装備で出動しだすような男にばかりモテる女というのは存在する。そういう女はまず自動魚選別機能が故障している場合が多い。その機能が発達している女なら、瞬時に相手が雑魚なのかサバなのか本マグロなのか、選別しそれに見合った態度をとる。当然、塩対応どころか「雑魚対応」された男はよほど鈍くない限りそれ以上その女に近づかないだろう。普通の女でも「こいつ絶対アニサキス持っている」という男には距離を置いた態度をとるだろう。それがぶっ壊れている女というのは、男を見ても全部「お魚さんだ」としか思えないか、雑魚と本マグロの見分けはついても、対応を変えることができず、全部刺身についてるしょうゆで食ってしまうのだ。つまり悪い意味で「わけへだてない」前にも書いたが、モテない人間というのは、異性からの好意どころか「普通に接してもらう」ことにすら慣れてないため、過剰に警戒するか、すぐ好きになってしまうかの二択になってしまいがちなのだ。選別機能がない女は、そういう男にも普通に接してしまうため、出会って4秒で好きになられて、あっという間に雑魚サーの姫になってしまう。そして本人自身も自分に自信がないタイプだと「こんな私を好きって言ってくれるんだし」とそのまま雑魚とつきあってしまうそうだ。結果、雑魚しか回ってこない回転ずしの皿を重ねることになってしまう。こう見ると「自分に自信がない」というのは、百害しかない。満々過ぎるのも良くないが、なさすぎると、ちょっと優しくされただけで「す…好き!」となってしまったり、緑色に変色したマグロを「せっかくだし…」と食ってしまったりする。「生きてるだけで丸儲け」と同じぐらい「息しているだけで偉い」という思想が我々には必要なのかもしれない。【ザ】▶「雑魚モテ」(ざこもて)…雑魚すら寄ってこない漁場も多数ある【ジ】▶「地雷」(じらい)…いきなり「それ私の地雷なんですけど」と怒り出す女は大体の人間にとって地雷【ズ】▶「ズボラ女子」(ずぼらじょし)…つまり衛生観念が低い女なので、手料理などには注意【ぜ】▶「絶食男子」(ぜっしょくだんし)…セックスしなきゃ死ぬ男のほうが生物として弱いと思う【ゾ】▶「ぞっこん」(ぞっこん)…「こいつ俺にぞっこんなんで」と言った瞬間ぞっこんじゃなくなるプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。★オフィシャルサイト★Twitter
2018年06月20日OL兼漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第11回アクマの辞典ガ行【ガ】▶「外国人彼氏」(がいこくじんかれし)外国人と付き合うのがステータスと思っている女もいるようだが、自慢のカレシも祖国ではクラスで変なあだなをつけられてたタイプかもしれない。今回のテーマは「ガ行」から「外国人」だ。私もこう見えて実は日本語がしゃべれるのだが、何故か同じ日本語を話す日本人ともコミュニケーションを取れたことがなく、よって外国人とコミュニケーション、まして恋愛なんてとても考えられない。しかしよく考えれば、私がいつも追っている画面から出てこない系の男子は国どころか次元が違う。二次元と三次元の垣根に比べたら国境なんぞもはやないも同然だろう。ところで「日本人は外国人にモテる」という説を、みなさんも1回は聞いたことがあるのではないか。真実なら朗報だと思うが「外国人」というのがあまりにザックリしすぎている、ここをどこかハッキリさせてくれないと「いっちょモテてみっか」とボスニアに着いた瞬間「モテるのはセルビアです」と言われても困る。それとも、日本の男以外なら全世界でモテるということだろうか、日本から出る予定がない女にとっては無意味すぎるし、逆に全世界にブスと言われてもいいから日本で美人と言われたかった。調べてみたが、諸説ありすぎて「この国なら確実にモテる」というのは見つからなかった上、逆に悲報を見つけてしまった。「日本の女が外国人にモテるのは簡単にヤラせるからである」Oh…ガッドムファッキンシット…思わず知っている英語が全部出てしまった。つまり、外国人の間では「日本の女はイージー(すぐヤラせる)」なことで有名なため、見つけたらとりあえず声をかけてみる、それを日本人女が「モテた!」と勘違いしている、という構図らしい。さらにそういう女は大体「日本でモテた経験がない女」だそうだ。ジーザス…クライスト…また新しい英語を覚えてしまった。全ケースそれ、というわけではないだろうが、確かになくはない話である。自分もそうなったら勘違いする自信があるからだ。これは「モテないあるある」だが、あまりにも人、特に異性などから好意を向けられ慣れていないと、たまに好意を向けられた時、必要以上に「舞い上がる」か「疑う」かの二択になってしまうのだ。前者は「イージー」で後者は「私に声をかけるなんて、こいつネズミ講か宗教だな?」と思う奴である。しかし、ねこ歩きで有名な岩合さんに一度だけお会いした時「かわいい猫よりそうじゃない猫に声をかける、すると猫も『えっ私?』となる」と言っていた。生まれた瞬間「カワイイ」が約束されたおキャット様でもそうなってしまうのだ、それより下の人間がそうなるのは当然なのである、これからも、たまのモテ(た風)に心からはしゃいでいこう。【ガ】▶「外国人彼氏」(がいこくじんかれし)外国人とつきあうのがステータスと思っている女もいるようだが、自慢のカレシも祖国ではクラスで変なあだなをつけられてたタイプかもしれない。【ギ】▶「擬人化」(ぎじんか)やると「擬人化すればオタクが喜ぶと思って!」と怒り出すオタクが必ず現れるジャンル【グ】▶「愚痴」(ぐち)SNSがこればかりだと嫌われると言うが、景気良いことばかり言っていても嫌われる【ゲ】▶「解せぬ」(げせぬ)「なんであんなブスがモテるか全然わかんない」多分そういうことを言わないからだ【ゴ】▶「ご縁」(ごえん)これがないことを理由に、交際、結婚、就職、全部断っていいプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年06月06日2009年の『ヘンリー六世』に始まり、『リチャード三世』、『ヘンリー四世』と鵜山仁の演出で、浦井健治、岡本健一らを迎えシェイクスピアの歴史劇を上演してきた新国立劇場。その集大成とも言える『ヘンリー五世』がまもなく幕を開ける。【チケット情報はこちら】前作『ヘンリー四世』(2016年)では、浦井はハル王子として、放蕩三昧の暮らしを送ったかと思えば、あっさり悪い仲間たちと手を切り、戴冠しヘンリー五世に即位した。本作では冒頭から、王子時代の若気など一切感じさせぬ、怜悧かつ威厳に溢れた王の姿を体現。ハル王子時代はヘッドフォンを首から下げ、ハイテンションの芝居が印象的だったが、今回は王冠に王笏、ローブという“王道”スタイルで、目は据わり、セリフ回しにもどっしりと重みが感じられる。仏王の挑発を落ち着いて受け止め、裏切り者の諸侯を苛烈に処断し、戦争となれば、先頭に立って躍動し、勇ましく兵たちを率いていく。『ヘンリー四世』でタイトルロール、つまりハル王子の父親を演じたのは、昨年、急逝した中嶋しゅう。演出の鵜山は「このシリーズはいわば、浦井健治がいろんなものを食べて、成長していくという話。しゅうさんのことも含めて、いろんな“エコー”を背負って、吸収し、変化していくのを感じる」と浦井が背負うドラマに言及する。そんな王が象徴する「国家」と相反する「個」を象徴する存在として描かれるのが、王にとっては王子時代の悪友であるピストル。前作に続き、岡本が演じているが、こちらは子どもがそのまま大きくなったかのような悪童ぶり。言葉遣いは乱暴で酒好き。欲張りで器が小っちゃく、勇ましいことは言いつつも戦には及び腰、しかし仲間の命のために奔走する情の厚さも持つ男を岡本は人間臭く、魅力的に演じている。鵜山はこのピストルを「大義名分よりも個の幸せや欲望。大陸を巻き込んだグローバルに対するローカルを象徴している」と評す。浦井と岡本は過去のシリーズでは、様々な関係性で一騎打ちを見せてきたが、本作では直接やりあうシーンはない。後半、ふたりが顔を合わせるシーンでは、ピストルは目の前の相手が王でかつての悪友であることを認識せぬまま、王に対する評価を口にする。「直接、ぶつからないのが厄介(笑)。このすれ違いを掘り下げていくと何か見えるんじゃないか」(鵜山)。もうひとり、物語…というよりも歴史の歯車を大きく回すことになるのが、中嶋朋子が演じるフランス王女でヘンリー五世に嫁ぐことになるキャサリン。英語の会話もままならぬ状態で、“戦果”として英国に渡ることになるが、彼女の存在が『ヘンリー六世』、そして『リチャード三世』へと繋がっていくことを想像しながら見ていると、英語を必死で練習し、片言で受け答えをするコミカルなやり取りがどこか恐ろしく感じられる。『ヘンリー五世』は5月17日(木)より東京・新国立劇場中劇場で上演。取材・文・撮影:黒豆直樹
2018年05月16日OL兼漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第10回アクマの辞典ワ行【ワ】▶「ワンナイトラブ」(わんないとらぶ)ラブってそんなに価値ねえな、と気づかせてくれる今回はわ行から「ワンナイトラブ」だ。字面だけ見ると、バーでの出会い、カクテルドレスのミステリアスな美女、「良かったら思い出を作りにきて」と渡される最上階のスイートルームの鍵、などを連想しがちだが、実際は未だにババアが鍵を手渡ししてくるラブホで行われていたりもする。つまり「一夜限りのセックス」を、考え得る限りしゃらくさく言ったのが「ワンナイトラブ」だ。ただしこれは、行きずりとは言えお互い合意が前提であり、酔わせて連れ込もうとするのは「犯罪」。片方がワンナイトラブで、片方がつきあってもらえるつもりでいたら「スパーク一発ヤリ逃げ」となる。しかし、そんな文字通り、使いきりコンタクト感覚でパツイチかました経験がある女というのはどのぐらいいるものなのだろう。いつも通り真偽不明のネット情報によると20~30代の女100人に聞いたら3~4割が「ある」と答えたそうだ。なぜヤッたかというと、その多くが「酒の勢い」また「失恋のヤケクソ」など「カッとなってヤッた」としか言いようがない「強く当たって後は流れで」のような、相撲の八百長の如き理由である。したことがない、またやりたいとも思わない者の意見としては「好きにならないと無理」という純粋なものから「酔ってヤッていいことなし」という「せやな」としか言えない真っ当なもの、「翌朝、戦国自衛隊の夏八木勲なってるから」という「次の日の服やメイクのことが気になるから無理」というタイプもいる。真面目なことを言えば一夜限りの関係なんて虚しいし、危ないからやめなさいとなるが、誰かが知らない男と一発ヤるごとにトキが1匹死ぬというわけでもない。フリーの大人の女が、合意の上で、その後巻き起こる面倒やリスクを理解した上でヤッているなら止めようもない話である。また男向けに「女をワンナイトラブに持ち込む方法」を指南しているページも見つけた。そこに書かれている「ビッチと噂されるのを嫌がるから、口が堅いことをアピール」ぐらいはまだわかるが「体目当てではないとアピール」はいただけない。ワンナイトラブでこれをやると「俺は君の体目当てではない。内面も評価した上でヤリ捨てたいんだ」ということになってしまう。嫌がっている相手に関係を迫るのは下の下だが、ワンナイトラブで誠実さを見せるというのも下策な気がする。それこそ相撲感覚で、1回ぶつかって。いい汗かいたら解散ぐらいでいいのではないだろうか。【ワ】▶「ワンチャン」(わんちゃん)「1回チャンスがある」より「可能性がある」と言う意味で使われがち、ただセックスだけ前者の意味が使われる【ヲ】▶「ヲタク」(をたく)自らを「ヲタク」と自称するオタクに会ったらオタクの中でも面倒な奴なので関わるな【ン】▶「んめー」(んめー)辞書を作るとき、「ん」はいつも俺たちを悩ませる、そんな女になりたいプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年05月06日OL兼漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!第9回アクマの辞典ラ行【ロ】▶「ロミオメール」(ろみおめーる)恋人と別れたことによりポエムの才能に目覚めたならプラスと言える今回のテーマはラ行から「ロミオメール」だ。ロミオメール、というのを皆さんはご存知だろうか、主に何故か別れた瞬間、ポエムの才能に目覚めてしまった元カレから送られてくる、自分に泥酔しているメールのことを指す。逆に元カノから送られてくるのは「ジュリエットメール」である。「ロミオ」と称される通り、大体別れた原因は己の浮気やギャンブル癖だったりするのだが、何故か彼の中では「運命に引き裂かれた」というようなストーリーになっており「俺は愛の翼広げて待っているから、いつでも帰ってきていいんだよ、素直になりな」と、いつのまにか許す側に回っているため、こちらは「も、もしかして私たち(立場が)入れ替わっちゃってる~!?」と驚愕するしかない。こんなメールを、愛情が残っていない相手から送られてきたら、怒りと不愉快さで爆発必至であり、すぐさま消去されるものがほとんどだろう。しかし、ロミオメールはポエムとしての完成度は高いのだ。この作品を、怒りに任せて、ゴミ箱に捨ててしまうのは、大きな文化の損失である。そんな己の感情より「文化財の保存」を優先してくれた者たちのおかげで、今でも多くのロミオメールが現存している。ちなみに保存方法は「ネットに晒す」である。ロミオメールのみならず、どれだけ心を込めたメールでも、相手から「どうでもいい奴」と思われていたら、全て「爆笑メール」として、晒していいものとされてしまうのだ。逆に好きな相手からなら、タイトル欄に「りょ」としか書かれていないメールでも、保護る、そんなものである。そんな、人の無慈悲さのおかげで、今でも「ロミオメール まとめ」などで検索すれば、多くの文化遺産を鑑賞できる。昔は私もこの美術鑑賞を趣味としていた時期があるが、今はもう見られない。人間関係、特に他人の恋愛のいざこざを笑って見られるのは、心身ともに元気がある若い時だけなのである。だから今はもう、ロミオメールは胃にもたれてしまい、見ることができず、「ギャンブルの借金で困っている人」など、あっさりしたものしか鑑賞することができない。「老後の楽しみ」という言葉もあるが、若い時にしか楽しめないものも、歴然と存在するのだ。そうなった時後悔がないよう、今のうちにロミオメールを鑑賞しておくといい。【ラ】▶ラブレター」(らぶれたー)昔は回し読みぐらいで済んだが、今は写真でネットに晒される、読んだら爆発する機能がない限りは、出さない方がいい【リ】▶「理系男子」(りけいだんし)メガネで細身の白衣が似合う賢いイケメン以外はただの理系【ル】▶「ルイボスティー」(るいぼすてぃー)何にでも効く、女にとっての進研ゼミ的存在つまりやっていてもそんなに効かない【レ】▶「レンタル彼氏」(れんたるかれし)「デートの練習などに」と書かれているが、彼氏にレンタル彼氏でデートの練習をしたと知られたら別れそう【ロ】▶「ロミオメール」(ろみおめーる)恋人と別れたことによりポエムの才能に目覚めたならプラスと言えるプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年04月06日映画『ルイ14世の死』が、2018年5月26日(土)にシアター・イメージフォーラムほか全国で公開される。『ルイ14世の死』の題材は、フランスの王・ルイ14世。“太陽王”と呼ばれ、豪奢を尽くしてヴェルサイユ宮殿を作った、ルイ14世の最期の数週間を辿る。ゴージャスなヴェルサイユの王の寝室で、衰弱し食欲も失せた王がビスケットを口にしただけで「ブラヴォー!」と叫ぶ、貴族たちの陳腐な空気感を絶妙に描き出している。宮廷の生活を細かく記録したサン=シモン公の『回想録』と廷臣ダンジョーの『覚え書、別名ルイ14世宮廷日誌』をもとに、死にゆく王と、その周りの医師や側近、貴族達を、ドラマチックなクライマックスを排除し、仔細かつ大胆に表現した作品だ。監督は、カタルーニャ出身の異才アルベルト・セラ。風車の出てこないドン・ホーテ物語『騎士の名誉』やカサノバとドラキュラが出会う『私の死の物語』など、古典や歴史上の人物を革新的に描き出し、世界で高く評価されている。また、映画作品以外にも、戯曲の執、舞台の演出、映像によるインスタレーション、パフォーマンスなど幅広い活躍を見せ、「21世紀の前衛」と称されている。18世紀に死を遂げたルイ14世を演じるのは、ヌーヴェルヴァーグの申し子とも呼ばれるジャン=ピエール・レオ。左脚の壊疽から死に向かう王の姿をほぼベッドの上で演じている。【詳細】映画『ルイ14世の死』公開日:2018年5月26日(土)監督:アルベルト・セラ出演:ジャン=ピエール・レオ、パトリック・ダスマサオ、マルク・スジーニ、イレーヌ・シルヴァーニ配給:ムヴィオラ原題:La Mort de Louis XIV©CAPRICCI FILMS,ROSA FILMES,ANDERCRAUN FILMS,BOBI LUX 2016
2018年03月19日OL兼漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第8回アクマの辞典ヤ行【ヤ】▶「やけぼっくい」木の燃えカス、お前らのモトサヤ恋愛はそんなに美しいものではないと教えてくれる今回のテーマはヤ行から「やけぼっくい」だ。今まで「松ぼっくり」のようなものをイメージしていたが正しくは「木杭」と書き、文字通り木の杭や切り株などを指す。だからと言って、延々と木の燃えカスについて話せ、という意味ではないはずだ。むしろそれで1000文字書ける奴の方が怖い。おそらく「やけぼっくいに火がついた」の方について書け、ということだろう。逆にこの慣用句以外でやけぼっくいという言葉を聞いたことがない。「やけぼっくいに火がついた」とは「過去に関係があった者同士は、一度縁が切れても元の関係に戻りやすい」というたとえだ、特に男女に使われることが多く、簡単に言えば、よりを戻す、モトサヤだ。だが、元に戻りやすい、と言うが「男の恋愛はフォルダ別保存で女は上書き保存」と言われるように、男は昔の女をいつまでも覚えているが、女は次の男ができたら前の男のことはさっさと忘れる、とも言われている。つまり、女は一度好きでなくなった男を、もう一度好きになることはあんまりない、ということだ。しかし、現にモトサヤカップルは存在する、では一体どういう時に「やけぼっくいに火がつく」のか。一番美しいのは「別れて初めてお互いの大切さに気づいた」だろうが、それはTim Tamぐらいソースイートだ、確かに口ではそう言うかもしれないが、実際はもっと打算があるはずである。まず、別れた相手がアップグレードしていた場合だ。わかりやすく言うと「別れたヒモバンドマンがミュージックステーションに出てた」時である。同じデータをもう一回保存する気にはなれなくても、新しいデータになっているなら話は別ということだ。しかしこの段階で「あなたの大切さに気づいた」などと言っても、相手も馬鹿ではない、型落ち機に再インストールされてくれることは希で、すでに別のハイスペック機のものになっている場合がほとんどだ。次は「上書きしたデータの方がクソだった」バージョンアップが全て「改善」とは限らない、「改悪」の場合もままある。あとでじっくり鑑賞しようと「ファボ」しておいた破廉恥画像が、何故かフォロー先のタイムラインに表示されてしまう機能等、ツイッターがよくやるやつである。そんな時、誰しも思うだろう「前の方が良かった」と。つまり「別れて大切さに気づいた」のではなく「新しい男がクソすぎて前の男のマシさがわかった」パターンである。最後に「衰え」だ。年を取ってから、新しいゲームより、昔のゲームのリバイバルの方に魅力を感じることが多くなった。懐かしさもあるが、そういうゲームの一番の利点は「もう大体知っている」ことだ。つまり、もう新しい相手と一から関係を築いていく元気も時間的猶予もなく、それよりは性感帯の位置まで把握している相手ともう1回付き合うほうが手っ取り早いし楽、という時だ。以上のことから、例えに「木の燃えカス」が使われているのはこれ以上なく正しい、昔の人は偉大である。【ヤ】▶「やけぼっくい」木の燃えカス、お前らのモトサヤ恋愛はそんなに美しいものではないと教えてくれる【ヰ】▶「ヰキペヂア」何かと思ったらウィキペディアのこと、私のコラムはこれの知識のみで書かれている【ユ】▶「ゆるふわ」頭、もしくは股につけられる形容詞【ヱ】▶「ヱヴァ」かつて彼らと同年代が今35歳【ヨ】▶「欲求不満」金で解決するのが一番安全プロフィールカレー沢薫OLであり漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年03月06日