「外貨建て保険」の危険性について、本コーナーでもたびたび取り上げてきたが、またひとつ、見落としがちなリスクがあった。それは、クーリングオフを行ってもなお、損になることだ。そんな、外貨建て保険のクーリングオフについて、経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれたーー。■クーリングオフ時までに円高が進めば大損してしまう可能性も。外貨建て保険は、加入者から集めた保険料を、保険会社が外貨で運用する保険です。日本は今、超低金利ですが、たとえば「米ドルなら3%で運用可能」など宣伝し、利回りのよさから人気があります。いっぽう、外貨建て保険は円と外貨の両替に為替手数料がかかり、保険の経費なども一般の円建て保険より高い傾向があります。払った保険料から、高い手数料を差し引いた残高だけが運用に回ると考えると、多少利回りがよくても、運用成績がいいとは思えません。さらに、為替の影響を受け、契約時より円高のときに解約すると、損になるというリスクもあります。保険自体をむずかしく思う人が多いなか、為替リスクまで含む外貨建て保険は、かなり複雑でわかりづらい商品です。’18年度に「説明が不十分」などの苦情が2543件寄せられ過去最多、6年間で4倍に増えました(生命保険協会)。外貨建て保険は、「クーリングオフ」が可能です。クーリングオフとは、契約後でも一定期間なら、無条件で契約を解除できる仕組みです(金融商品は8日間)。クーリングオフを行えば、支払った金額がそのまま戻ってくるはずですが、外貨建て保険の場合はそうはいきません。外貨建て保険は、契約前に日本円を外貨に両替し、外貨で契約します。契約を破棄すると、契約時の外貨で返金されるのが一般的。となると、外貨を日本円に両替するための為替手数料がかかりますが、この手数料は契約外。自腹を切るしかありません。また、ここでも為替の影響を受けます。たった8日間でも円高が進めば大損してしまう可能性も。こうした状況を受けて、保険会社は「円入金特約」を設けました。クーリングオフ時には、日本円で返金しようという特約です。この特約があると、クーリングオフの際には支払った日本円のまま戻ってくるため、余分な手数料を払わずに済みます。しかし、銀行や一部の保険会社では、この特約が導入できていません。大手銀行では、みずほ銀行は対応済みですが、三菱UFJ銀行や三井住友銀行の全商品に導入するのは、来年春以降になるといいます。外貨建て保険を勧誘され契約するのは、高齢者が中心です。というのも、銀行はまとまった資金を持つ方を把握して、狙い撃ちで手の出しやすい金額を指示するから。契約後すぐにリスクに気づき、クーリングオフに間に合えばいいのですが、もし8日間を過ぎてしまったら、消費者ホットライン(電話・188)にご相談ください。金融商品は「わからないものには手を出さない」が鉄則。親御さんに退職金などが入ったときは特に注意して、何でも相談できる密な連絡を心がけましょう。
2019年11月22日街の一角に建つ癒しの空間「街の中の庭となる、そんな家にできたらなと思いました」。古谷デザイン建築設計事務所の古谷俊一さんのご自宅は、昭和の風情の残る街並みに、まるでオアシスのように緑を湛えて佇んでいる。「子供の頃から田舎というものをもっていなかったので、緑を渇望していたところがあるんです。20年くらい植物を育ててきた経験を活かして植栽のプランを立てました」。1階の外構から2階、3階のバルコニーまで、緑の溢れる外観は、古谷さんがリノベーションを担当した、向かい側の「大森ロッヂ」との連続性も考えられている。「8棟の木造住宅が並ぶエリアに、庭のようにつながる建物にしたいと考えました。ちょうど真向かいに建てた店舗付き住居と相対する形で、フロアのレベルや意匠も揃えています」。改修した長屋の立ち並ぶ路地の入り口にある、街に向けて開かれた建物は、住居でもありサテライトオフィスでもあり、グリーンのナーセリーでもある。敷地をぐるりと取り囲むようにグリーンが生い茂る。それぞれの方角に適したグリーンを植樹。住宅街の路地の一角に、向かい側の店舗付き住居と対峙するように建つ。3層の木造住居。3階までグリーンが連続し、街の中にひとつの景観を生み出すかのよう。日本の建築物を踏襲したいむき出しの軒柱に、建物の隅にそれぞれ設けられたバルコニー。空間に“欠け”のある独特の外観が開かれた印象を与える。「この辺りは準防火地域なので、柱を現しにはできないんです。そこを、通常より太い燃え代設計にすることでクリアしています」。現しにこだわったのは、親しみやすさ、分かりやすさ、だという。「今は何でも包み隠してしまうけれど、建物がどういう構造で建っているのか、現しにすれば分かりますよね。お寺や昔の日本家屋の良さを、できるだけ踏襲したいという思いがあります」。軒柱のあるバルコニーは、書院造りの濡れ縁のイメージ。ここを介して、中と外が曖昧に区切られる。そして家全体を、頂点から四隅へ同じ角度で傾斜する宝形屋根が包む。「向かい側の家のデザインに合わせているのですが、御神輿をかついでいるような雰囲気で、縁起がいいじゃないですか(笑)。雨よけにも合理的なんです」。軒柱を現した設計は、縁側のある昔の日本家屋を思い起こさせる佇まい。自邸の玄関側。自然な木目の外壁は“選びに選んだ”サイディング。「縦に張ったことでつなぎ目が目立ちにくくなっています」。玄関には京都の「BOLTS HARDWARE STORE」の照明を外灯に使い、カッティングボードで名前を貼ることで表札代わりに。内でも外でもない廊下1階のサテライトオフィスとグリーンのナーセリーから、外階段でつながる2階には、居室とバスルームが。ここは廊下を外部テラスに見立てた。「外構の延長として、外からつながっている感じにしたいと思いました。天井に照明をつけたり、ドアノブを取り付けたりすると一気に室内の感じが出てしまうので工夫しています」。照明の代わりに、床の上に小さなライトを行灯のように配置。夜にはほのかな明かりが、3階につながる階段まで誘導する。取っ手の形状にこだわったドアノブとモルタライクの床も、室内という雰囲気を和らげている。「室内でも外でもない、そういう曖昧な空間が好きなんです。できるだけそんな場所をつくりたいですね」。玄関脇にはマンガの書庫を設けることを決めていた。家族全員の愛読書は2000冊程。「ここにあるのは2軍なんです(笑)」。シューズインクローゼット。奥の鏡は扉のように手前に引くことができ、外出前に全身をチェックできる。「BOLTS HARDWARE STORE」の照明を行灯のように点在させて。廊下の床はモルタライク。半室内のような空間が3階LDKヘとつながる。天然の素材感が心地いい2階の主寝室。緻密に計算して棚を取り付けたクローゼットを、カーテンで仕切っている。バスルームはFRPで。床には冷たさを感じにくいLIXILのサーモタイルを使用。洗面、バルコニーに接続させて動線も確保。生活のしやすさをベースに「妻が“ルーフバルコニーは絶対に欲しい”と言ったことが、設計のスタートです。コンセプトは実は後付けで(笑)。住宅は生活しやすいことがいちばんなので、そこから入っていかないと」。空中庭園のようなバルコニーの先に街が広がる3階のLDKで、そう語る古谷さん。「とってつけたようにしたくない」と設計したバルコニーにより、結果、室内はジグザグの形状になり、リビングとダイニングキッチンが緩やかに分かれている。「これによって隣家との距離感が保たれる、という効果も生んでいます。ただ、すべて居心地のよさを考えた結果なんです」。上を見上げると屋根の稜線の先に青い空が広がる。外から見ても癒されるグリーンの建物は、中にいても心地よく、開放感を味わえる空間だった。宝形屋根の欠けの部分から光が差し込む3階のLDK。リビングにはセルジュ・ムーユのシーリングランプを。LDKからフラットにつながるバルコニーでは、南側北側の二隅に無機の土を盛って屋上緑化を図り、空中庭園を造園。保水力が高いためプランターよりよく育つそう。南側にはエゴノキやアメリカハナズオウ、北側にはハギやヤマボウシなどを植え、四季折々の表情を楽しんでいる。バルコニーの配置により、LDKはジグザグに分かれる。奥のダイニングキッチンは、カウンターが緩やかな仕切りに。システムキッチンのまわりにカウンターを造作したことでコストもカット。収納の扉はグレーとブルーのリバーシブルで、アレンジが可能。リビングには、あぐらをかいて座れるIDÉEのソファー・AGLASを。たくさんの本を整然と収納できるよう、予め本のサイズを計って棚を造作。飾り棚にはスリランカ、北欧、台湾など旅先で買ってきた雑貨をディスプレイ。ブラインドは斜めになった開口の形に合わせ、スイスの「CRÉATION BAUMANN」社にオーダーしたもの。古谷デザイン建築設計事務所代表の古谷俊一さん。1階のサテライトオフィスで。古谷邸設計古谷デザイン建築設計事務所所在地東京都大田区構造木造規模地上3階延床面積142.05㎡
2019年11月20日神奈川・逗子マリーナに2020年3月26日(木)より開業する「マリブホテル」は、スモールラグジュアリーをコンセプトとした、11室のスイートを構える4階建てラグジュアリーホテルです。日本初上陸のレストラン『MALIBU FARM』も同時オープン。全室から海を望む富士山ビューに加え、各部屋ごとに違ったスタイルの客室が魅力的です。是非、今までに味わったことのない贅沢なひと時を過ごしてみてはいかがでしょうか。全客室オールスイートの「マリブホテル」THE MALIBU SUITE全客室の中でも最上級の「THE MALIBU SUITE」。リビングルームとベッドルーム別々に備えられており、広々とした空間がこの上ない贅沢な時間を届けてくれます。大窓の向こうに広がるテラスでは、ゆったりとしたソファで逗子の大自然を感じることができます。MARINA VIEW SUITE逗子マリーナを一望することができる「MARINA VIEW SUITE」は広いバルコニーが非日常的な空間を創り出してくれる開放的な客室。著名なデザイナーがインテリア監修した空間は使い勝手がよく、住まうような感覚で滞在できるのも魅力の一つです。PRIVATE VILLA専用のアプローチやガーデンテラスを設えた「PRIVATE VILLA」では、愛犬とも宿泊可能な自由度の高い客室。屋外と室内を一体化させたような広々とした空間では、レストランからテイクアウトした料理を青空の下で楽しむこともできます。セレブの地L.A・マリブで絶大な人気を誇る『マリブファーム』現地L.Aのマリブスタイル「FRESH, ORGANIC, LOCAL」のコンセプトをもとに作られる料理が絶大な人気を誇る「マリブファーム」が日本初上陸します。新鮮な地元の食材をふんだんに使った日本限定のスペシャルメニューを楽しむことができます。心も身体も潤す 楽園のスパ「CLAYD SPA in MALIBU HOTEL」海の音と風を感じながら、五感を開放していく癒し体験「クレイドスパ」。アメリカ西海岸の砂漠地帯で採取されるCLAYDのクレイを使った極上のスパ。ミネラル豊富なクレイが体の不要なものを流し、身も心も整えてくれます。本国アメリカの5つ星ホテルでも使用されているこの「クレイドスパ」をぜひ、逗子の広大な自然の地で体験して癒されてみましょう。逗子ならではの豊富なアクティビティプラン逗子の大自然だからこそ体験できるアクティビティもたくさん。ホテルから少し足をのばすだけで海や街、歴史観光もできちゃいます。特にここでしかできない湘南クルーズはおすすめのアクティビティ。プライベートクルーズやランチクルーズ、大型のカタマランヨットでのセーリングなど、プランも多彩に用意されているのでパートナーや友人、家族でも利用できます。自分だけの特別な体験ができるプライベートセッティングたとえば、ダイヤモンド富士が出現する日には最も美しく見える時間、最も眺めの良い場所にテーブルをセットしてディナーをいただける。そんな、その日・その瞬間・その場所でしか味わえない特別なひと時を提案してくれる特別なプランがこの「プライベートセッティング」です。特別な滞在をしたい方はぜひ。MALIBU HOTEL(マリブホテル)概要<住所> 神奈川県逗子市小坪5-23-16 リビエラ逗子マリーナ内<開業> 2020年3月26日(木)予定<客室> 4階建/全11室(50㎡~93㎡)/全室ツイン/全室ガーデンテラスまたはバルコニー付<施設> レストラン/BAR/テラスラウンジ/スパ<交通> JR鎌倉駅よりバス10分/JR逗子駅よりバス10分<予約>2019年11月26日(火)11時より、オフィシャルホームページにて。公式ホームページ:スポット情報スポット名:MALIBU HOTEL住所:神奈川県逗子市小坪5-23-16 リビエラ逗子マリーナ内
2019年11月17日《まさに#二階からガソリン》《#二階からガソリンうますぎて草》こんなハッシュタグが生まれたのは11月12日のこと。「各界で功績、功労のあった方々」を招待することになっている総理大臣主催の「桜を見る会」に、安倍晋三首相(65)をはじめとした自民党議員たちが、多数の後援会関係者を招いていた問題。安倍首相が「(功労のある)自治会やPTAの役員方が後援会員と重複することもある」「招待者の取りまとめなどには関与していない」と必死に火消しをするなか、油を注いだのが自民党の二階俊博幹事長(80)だ。「誰でも議員は、選挙区のみなさんに、機会あるごとに、呼びかけて、ご参加いただくということに配慮するのは、当然のことじゃないか」「(与党議員に割り当てられた招待枠が)あったって別にいい。何か問題があるか」そう12日の幹事長会見で言い放ったのだ。“各界の功績のある人を呼んでいる”“招待客は内閣府が取りまとめている”という政府の言い訳を一瞬で無に帰す“ぶっちゃけ”発言。てっきり安倍政権に見切りをつけ、反旗を翻したのかと思いきや、本人にはそんなつもりはないようだ。記者会見ではその後、政権の政策を推進していく姿勢を見せている。おそらく無自覚なまま火に油を注いでいる二階氏だが、近年この“ガソリンぶっかけ癖”に安倍政権は苦しめられているのだ。「子どもを産まないほうが幸せに(生活を)送れるんじゃないかと、勝手なことを考えてね」’18年、6月26日、東京都内で行われた講演での二階氏の「生まない幸せは勝手」発言。じつは前月の5月には、自民党の加藤寛治衆院議員(73)が「新郎新婦は必ず3人以上の子供を産んでほしい」と発言。多様な家族のあり方を否定していると、批判を浴びたばかり。この二階氏の失言報道とともに、鎮火しつつあった加藤氏の発言も蒸し返されることになるのだった。さらに同講演ではこんな発言も……。「『今晩、飯を炊くのにお米が用意できない』という家は日本にはないんです」6月8日に映画『万引き家族』が公開され、世はまさに貧困問題に焦点が集まっている真っ只中。「子ども食堂」などの存在も広く認知されつつあるなか、“日本には食事に困るような貧困層はいない”という二階氏の発言は“現実知らず”との批判を当然受けた。さらに極めつけは10月12日に本州に上陸し、およそ100名にものぼる死者・行方不明者を出した台風19号に関する発言だ。巨大台風の甚大な被害の全容が明らかになりつつあり、政府の事前の準備が不十分だったのではないかとの声が高まっていた13日午後。台風対策のために開かれた自民党の緊急役員会で二階氏はこう言い放った。「予測されて色々言われていたことから比べると、まずまずで収まったという感じ」当然、非難が殺到。15日には二階氏は謝罪し、発言を撤回することになるが、のちに「言葉尻を捉えてうんぬんしても災害復旧は始まらない」と開き直るような発言をしている。二階氏は自らの失言で、鎮火しつつあった問題やこれからまさに燃え上がろうとしている問題に何度もガソリンを注ぎ続けてきた。だが、安倍政権はそのたびに二階氏を擁護している。派閥の領袖として党内では絶大な権力を誇り、抜群の政局観で幹事長として安倍政権を支える二階氏。自民党内で数少ない安倍首相も頭が上がらない相手とも言われ、誰も面と向かってたしなめる者がいないだけに、二階氏の“ガソリンぶっかけ癖”は治りそうもない。
2019年11月13日土地探しは神楽坂に絞って地元の人や観光客で賑わう神楽坂通りから1本入った閑静な住宅街の一角。控えめな木の看板を目印に竹垣に囲まれた細いアプローチを進むと、「神楽坂和茶」の入り口にたどり着く。引き戸を開けると、店内には4畳半の茶室があり、周りを囲むようにL字型の土間が広がっている。ここは、店主の塚田玲実さんが、茶室のある空間で気軽にお茶を愉しんでほしいという思いから生まれたカフェだ。「『どうしてみんなお茶を習うんだろう?』と疑問に思ったことがきっかけで、30代から茶道を習い始めました。その後、茶道の先生の茶室をお借りして、茶会や茶事をまったく知らない人に体験してもらう催しを開いていたら、それが楽しくなってしまって」と話す塚田さん。次第に、いつか気軽に茶会を体験してお茶を愉しんでもらえる場所をつくりたいと考えるようになったそうだ。その思いを実現する場として選んだのは、東京・神楽坂。「大人の街で、飲食店が多くて、お店を出す規模としてもちょうどいい場所かなと思って。最初からピンポイントで探しました」と振り返る。不動産関係のお仕事に就くご主人とともに、1年ほどかけてインターネットや不動産屋で情報を収集。そうして出会ったのが、賑やかな通りから奥へ入った隠れ家のような場所。「もうここしかないよね、とすぐに決めました」(塚田さん)。1階が店舗。4畳半の茶室を、テーブル席のある土間がL字型に囲むという配置。床の間には知人から譲り受けた「花月織」の軸や、鳥の形の香合が。季節ごとのしつらえも、訪れる人の目を楽しませる。茶事に欠かせないつくばいを土間の一角に。茶室に入る前に、手や口を清める役割がある。熊本産の和紅茶と、米麹100%・砂糖不使用の甘麹「米の花」。発酵マイスター市村和美さんの手作りで、旬の果物とともに味わうお店の人気スイーツ。徳島県の阿波晩茶と湯布院の「ジャズ羊羹classic」。その時々に塚田さんが選んだおいしいお菓子がメニューに。茶室の畳の上で、お抹茶と上生菓子を気軽に楽しむことができるのも魅力。写真のセットで1300円(税込)。2階はあえて暗く、重厚に3階建ての塚田邸は、1階がお店、2階と3階が夫妻の自宅というつくり。2階に上がると、1階の茶室の雰囲気とは異なるモダンな空間が広がっている。「2階は窓もあえて小さくして、少し暗く、目が落ち着くように設計者の方と考えました。コンパクトなリビングなので、以前の住まいで使っていた家具も全部処分したんです」と塚田さん。そんなシンプルな空間で存在感を放つのが、重厚な大谷石の壁だ。「主人がとてもこだわって選びました。2階の主役はこの壁だね、と話しています」(塚田さん)。2階のリビングはベッドルームも兼ねている。写真左が大谷石の壁。溝加工されているため、モダンな印象だ。大谷石の壁の向こうに収納や洗面室、浴室などの水回りが配されている。洗面室はシンプルなつくりながら、床のタイルにこだわりが光る。明るくて清潔感のある浴室。3階は明るく開放的に一方3階に上がると、ほの暗い2階とは対象的に、大きな開口部から光が差し込む明るい空間が広がっている。3階にダイニングキッチンだけを配置するというちょっと大胆なプランは、ご主人のアイデアなのだそう。「最初に土地を見に来た時から、『目線が抜ける3階にキッチンを持ってこよう』と言っていたんです」と塚田さん。周囲の建物より高い位置に窓があるため、障子を開け放つと遠くまで見渡せて開放感もある。中央に配されたアイランドキッチンは、トーヨーキッチンのもの。ダイニングテーブルも兼ねる特注のステンレスワークトップは、1260×2440mmという圧巻の大きさ。この大きさを生かして、和菓子づくり体験などワークショップの場としても使っているそうだ。また、マーブル模様が入ったヘキサゴンタイルの床もご主人のこだわり。「タイルショップを何軒も回って気に入ったものを見つけました」と塚田さん。1階の店舗は土間と畳、2階のリビングはフローリング、3階のダイニングキッチンはタイルと床の素材がすべて異なることも、階ごとに雰囲気の異なる空間を生み出している要因だろう。3階のダイニングキッチン。スタイリッシュなキッチンと床のヘキサゴンタイル、障子が絶妙な組み合わせ。大きなキッチンは、ふだんの食事だけでなく、お客様を招いたワークショップやデモンストレーションの場としても活用。開口部の障子は、上部を摺り下げれば視線を遮りながら採光ができる。人懐こくてかわいい4歳の愛犬ウールちゃん。圧迫感のない軽やかな印象の階段。気楽にお茶を愉しむ場にお店をオープンしてからもうすぐ1年。静かな和の空間で、落ち着いてお茶を愉しめる「神楽坂和茶」は、知る人ぞ知る存在に。茶室の畳の上でお抹茶と上生菓子をいただいたり、テーブル席で和紅茶と甘麹のスイーツを味わったり、訪れるお客さまは思い思いの時間をゆったりと過ごす。塚田さんの念願だった、初心者も気軽に楽しめる体験茶会を開催しているほか、1周年記念のお茶会も企画中とのこと。「お茶の愉しみをたくさんの人に伝えたい」という塚田さんの思いは、少しずつ実を結び始めている。2階と3階の窓の大きさが対象的。写真右側の奥に店舗入り口がある。敷石や竹垣などに和の趣が漂う「神楽坂和茶」へのアプローチ。
2019年11月11日素材の経年変化を楽しむ表参道のヘアサロンのオーナー藩 賢毅さんの住まいは、鉄、木、コンクリートと、建材のマテリアルが生きる家。髪質が生きるようにカットする”ノンブローカット”を生み出した藩さんらしいお宅だ。「鉄板が錆びたり、石に苔が生えたり、木材が飴色に変わっていったりと、朽ちて行く姿が美しい、経年変化が楽しめるマテリアルで家を作りました」設計は、海建築家工房の海野健三さん。「設計士を探していた時、インテリア雑誌の編集者に海野さんをご紹介いただきました。きっと気が合うわよ、と(笑)」果たしてその読みは大正解だったそう。「既成概念にとらわれず、あっと驚くような柔軟な発想で設計してくださり、想像以上の理想の家ができました。いわゆる豪邸みたいにはしたくないという僕の希望も汲んでくださいました」藩 賢毅さん、弓恵さん夫妻。お子さんは柚葉さん、勘太くん、凰太くんの3人。ダイニングテーブルはイサム・ノグチ。チェアはチャールズ・イームズ。壁の時計はジョージ・ネルソン、その下に柳宗理のバタフライチェア。ミッドセンチュリーのものを始め、家具は以前の家で使っていたものがほとんどだとか。そして大きなアイランドキッチン。収納もたっぷり。「海野さんの設計の素晴らしさは、竣工時が完成ではなく、自分たちの手で育てる部分をふんだんに残していただいているところだと思います」鉄を錆びさせ、モルタルを塗装し、植栽も楽しむ。天井に渡してあるグレーチングの網目を使い、照明の位置も好きに変えられる。「家を作る順序としては、外壁を作ってから内装にとりかかるのが一般的だと思うのですが、うちの階段は屋根を作る前にとりつけました。階段が雨ざらしになる期間をあえて作ることで、いい感じに階段の鉄板に錆が出ています」ギャラリーのような設えの階段。「階段下の右の鉄板はサンポールで錆びさせました。いい感じに錆びたところで錆止めを塗りました」これは弓恵さんのDIYだそう。「妻はこの家に住んでからDIYをするようになりました」「2ndリビングと呼んでる場所です。長男は遊びに来た友だちとここで遊んでいることが多いですね。もう一部屋子供部屋を作りたいとなった時に、このスペースに作ることも可能です」ダイニングと2ndリビング、そして3階からも眺められるテラス。「夏はここでプール遊びをします」緩やかな傾斜の階段。最後の段を床面から浮かせている。左側に子供部屋が2部屋並んでいる。「あえて子供部屋はベッドと学習机だけの小さな空間にしました。遊ぶ時は部屋の外で遊んでいますし、巣ごもり感もあって楽しいようです」家に拡張の余地を残す「RC造にすることも考えましたが、建築費を抑えるために鉄骨造にしました。現しになっている鉄骨や天井の構造が気に入っています」鉄骨造の3階建て。2階をターミナルにしたいと考えていたそう。「家から帰ってきて手を洗い、着替えも2階で済ませます」頭を悩ませたのが1階の使い方。「海野さんに1階は貸駐車場にしましょうという割り切った提案をしていただきました。この場所はハザードマップに大雨のときの浸水予想が1〜3mとあったので、居住スペースにせずにピロティにしたほうがよいと考えたそうです。スペースを貸し出せばローンの足しになりますし、将来、駐車場のスペースを改装してここで髪を切ることもできるかな、という思いもあります」エントランスの鉄板はわざと錆びさせ、いい感じの錆び具合になった時に藩さんが錆止めを塗り、錆の進行を止めた。植栽も自分たちで。ガラス張りの、開放感が気持ちいいエントランス。外壁はステンレスのメッシュの中に軽石が入る海野さんオリジナルの『Uウォール』。屋根に降った雨が石の層に落ちるようになっている。軽石の遮熱効果も高い。「そのうち自然にコケが生えてくると思います。どこからか飛んできた草が根を下ろし始めました」一階は一部を貸駐車場にしている。「一般的なコンクリートの壁はコンパネで平らに作りますが、この有機的な壁は麻袋にコンクリートを流し入れて作る海野さんオリジナルの『URC』です。コンパネを使うより安価で、造形がおもしろく、強度も高いです」脱衣所を広々とした畳敷きに藩さんのお宅は、余裕のある広々としたスペースと、必要にして充分なコンパクトなスペースの緩急が見事だ。なんと、脱衣所は広い畳敷き。トイレもひとつの部屋のような広々とした設えだ。対して、子供部屋はベッドと机だけの、秘密基地のような作りになっている。そして、快適に住まう機能はしっかりと確保されている。「きちんと断熱されているので、夏涼しく冬暖かい家になりました。冬の暖房は、2階の床暖房をごく弱くつけるだけで暖かいです」収納スペースもたっぷりと。「壁面はほぼ収納になっています。布団とかも仕舞える奥行きのある収納スペースも作りました」海野さんはカラダが住まいに合ってくるとおっしゃっていたそう。「たとえばバタンと大きな音を立てて閉まるドアを、音を立てないように仕様変更する必要はなくて、自然と音を立てない所作が身についてくると。ほんとうにその通りで、今では意識しなくても後ろ手にドアを押さえながら閉めるようになりました。人が家に馴染むものなのだなと感慨深いです」家は作って終わりではない。竣工時がピークな建物はつまらない。藩さん一家がこの家にかかわって育て、育てられることで、唯一無二の素晴らしい住まいに成長していく。広々とした開放感のあるバスルーム。脱衣所は広々とした防水の畳敷き! 旅館でゆっくり過ごしているような気分を味わえる。「長女はここでストレッチを楽しんでいるようです」トイレには扉がない。必要に応じてカーテンを使う。「僕はトイレで考え事がはかどるので、トイレもひとつの部屋のように作りました。"気"が他の空間と繋がるように完全に仕切らず、風通しの良い空間にしています」2階のトイレも部屋仕様。リビングと壁の間のスリットを通して繋がっている。「来客が使うことを考えて、2階にはちゃんと扉があります」(建築家クレジット)藩邸設計海野健三/海建築家工房所在地東京都渋谷区構造鉄骨造規模地上3階延床面積199.57㎡
2019年09月30日妻が育った場所に住む富安朝海さんが生まれ育った土地に建てた一戸建て。「キッチンの場所が、私の以前の部屋と同じ場所なんです。キッチンに立っていると不思議な感じがします」旗竿敷地なので以前の建物は日当たりが悪かった。なので、新しく建てる家は、光をたっぷり差し込む明るい家にしたい、というのが希望だったそうだ。キッチンには大きな天窓を設け、3階までの吹き抜けの階段室は、1階まで光が届く。ここが旗竿敷地だとは思えない気持ちのよい光と風が満ちている。設計はHOUSE TRADにお願いした。「打ち合わせにお伺いしたら、以前の勤務先で店舗の内装をお願いしたことがあったとわかりました。大まかな希望を伝えると、イメージ通りのものを作っていただいたので、お願いして良かったです」と良明さん。「キッチンの天窓はこんな感じのものにしたいねと夫と話していたら、ズバリなイメージのものを提案していただいたのには驚きました」と朝海さん。白の壁と木目に、1階はグレー、2階は淡いブルーをアクセントカラーに加え、モダンでシックなウェストコーストの家が完成した。リビングはツヤ感のあるフローリング、キッチンはPタイルを採用。良明さん、朝海さん、3歳の凛ちゃん、1歳の紗々ちゃんの4人家族。ソファはHOUSE TRADのオリジナル。生地を外して洗えるので、小さい子どもがいる家庭でも安心。アメリカンダイナーのようなダイニングテーブル。フィフティーズっぽいベンチシートが、コンパネにペイントした壁の味わいにしっくりとハマる。「時間が経つにつれてコンパネの地色が浮いてきて、どんどんいい味になってきました」階段の手すりはエキスパンドメタル。「子どもが小さいので手すりにはネットが必要だと思っていたのですが、いっそのこと、最初からエキスパンドメタルにすればいいのでは?と考えを変えました」ウッドのキャビネットの中にダイニングスペースがある。ソファのブルーとキッチンのタイルのブルーが、白とウッドの空間に映える。大きな吹き抜けの天窓から明るい光が差し込むキッチン。カウンターは防水効果の高いモールテックスで仕上げている。釉薬のかかった淡いターコイズ・ブルーのタイルが美しい。段差とキャビネットで空間を分ける「階段に座るのが好き、と伝えると、キッチンとダイニングを2段の階段でゆるやかに空間をわけてくれました」キャビネットの向こうには、ベンチシートのダイニングが隠れている。「ベンチシートのダイニングも希望したもののひとつです。アメリカンな感じになりすぎない、イメージしていたものよりはるかにいい感じのものになりました」ダイニングがキャビネットでゆるやかに目隠しされることで、ソファスペースがよりくつろげる空間になる。「子どもがもう少し大きくなったら、ダイニングで宿題などをするようになるのかなと想像しています。なので、なるべく広いベンチシートにしてもらいました」エキスパンドメタルを使い、アパレルショップのようなウォークインクローゼットを作った。「服が多いので、大きな収納はマストでした」3階はメインベッドルーム。パシフィックファニチャーサービスのベッドを2台合わせてゆったりと。「ここを子供部屋にすることも考えて、将来的に壁で仕切ることができるようにしてもらいました」1階のベッドルームには、ベンチシートとデスクを造作してもらった。子どもと共に成長する家富安邸は、エキスパンドメタルを効果的に使っているのも特徴のひとつ。子どもが小さなうちは階段からの落下を防ぐためにネットをはることが多いが、それならば最初からエキスパンドメタルにしようという発想の転換で、階段の手すりにエキスパンドメタルを採用。そして、アパレル会社に勤めていた良明さんは服の量もかなり多い。ウォークインクローゼットは、扉にエキスパンドメタルを使ってショップ風にアレンジした。1階のバスルームは白のメトロタイル、白のルーバーの扉を使い、大きな窓から差し込む光が白い空間に満ちてとても明るい。1階のベッドルームを夫婦の寝室にして、3階を子供部屋にする計画もあるそうだ。2階のベンチシートのダイニングスペースで子どもたちが勉強するようになると、リビングとキッチンの関係性も変わっていきそうだ。子どもの成長とともに家がどんなふうに変わっていくのか、これから先が楽しみだ。洗面所はメトロタイルを採用。ベッドルームへと回遊できる動線になっている。1階のバスルームも気持ちの良い光がたっぷりと差し込む。洗面台はモールテックス。ルーバーの収納扉とドアには真鍮の把手を。階段室は2階まで吹き抜けになっている。エキスパンドメタル越しに光が1階まで差し込む。1階から2階の階段はカーペット敷き。白と木目+グレーの組み合わせが西海岸を感じさせる家にシックな落ち着きをプラス。ガラスブロックから明るい光が差し込む広々とした1階エントランス。グレーのカーペットと、大判のグレーのタイルの組み合わせ。(建築家クレジット)富安邸設計HOUSETRAD所在地神奈川県川崎市構造木造規模地上3階
2019年08月28日動線を考えた家づくり中野駅至近の便利な場所に建つ鉄骨3階建ての戸建てを購入したYさんご夫妻。リノベーションはランドスケーププロダクツに依頼した。「ランドスケーププロダクツが運営するインテリアショップ『プレイマウンテン』が大好きで、よく通っていました。そのランドスケーププロダクツが個人宅のリノベーションを手掛けていると知り、すぐにコンタクトをとりました。デザイナーの片山貴之さんは、ざっくばらんに会話をする中で、好きなものややりたいことを的確に拾って形にしてくださいます。インテリアを含め、思い描いていたイメージ以上の家になりました」なかでも、Yさんが大切にしたことのひとつに、“動線”があったそう。「たとえば、波乗りから帰ってウエットスーツをどこで洗って、サーフボードをどこに置くか。脱いだ洋服はどこに仕舞うか。家に帰って鍵をどこに置くか。そんなふうに動きを考えながら間取りを決めていく過程がとても楽しかったです」もともとは外階段で上がった2階に玄関がある家だったが、動線を考え、外階段を外して1階に玄関を作り直したのだそうだ。「とても暮らしやすい家になりました」1階はもともと倉庫として使われていたのだそう。玄関のモルタルを奥まで伸ばし、土間のように使えるスペースに。オーク材を貼った壁面に自転車ラックを設置。階段は新設した。1階に、サーフィンから帰ってきてすぐにウエットスーツやボードを洗えるシャワーブースを作った。「砂をここでしっかりと落とします」玄関脇に鍵などを収納できるBOXを作った。「家に帰ってきてここに鍵をしまう。出かけるときはここから持ち出す。動線を考えて、必要なものを考えました」木+鉄の経年変化を楽しむ広い空間を作ることができる鉄骨造の建物の良さを生かし、2階に広々としたリビングとキッチンを作った。「天井の内装材をはがしてみたら、鉄骨が見えたので天井は現しにしてもらいました」階段も鉄骨造の質感を生かしたデザインにして、インテリアにアイアン+ウッドの統一感をもたせている。「鉄や木など、時間とともに自分たちと一緒に育ち、味わいを楽しめる素材が好きです。キッチンの白ラワン材の面材は、かなり赤っぽく変化してきました」床は無垢のオーク材を使っている。ヘリンボーンやパーケット、乱尺張りなど、リビングや寝室、廊下で張り方を変えて楽しんでいる。ソファやローテーブルはランドスケーププロダクツが制作。床材は無垢のオーク材のオイル仕上げ。ブラインドはハンターダグラスのものをチョイス。柔らかな光を室内に取り入れながら、外の建物からの視線は遮ることができる。窓枠の下にはナラ材を張った。アアルト、タピオ・ウィルカラ、フリッツ・ハンセン……お気に入りのイスを一脚づつ並べている。ダイニングテーブルもランドスケーププロダクツのオリジナル。天板は3階の書斎の床材に使ったヘリンボーンのオーク材。キッチンの吊り戸棚やアイランドキッチンの腰板は、白ラワン材の突板を使っている。キッチンの天板は熱い鍋などもそのまま置けるステンレスに。「ヒースタイルを使ってみたいとも思いましたが、そこは敢えて引き算のデザインにして、シンプルな白のタイルにしました」お気に入りのものを飾っている棚とたっぷりの緑の組み合わせが美しい。「ここに越す前は植物には興味がなかったのですが、いまはすっかりハマっています(笑)」「普段なかなかTVを見る時間がとれないので、風呂に入りながらTVを見たいという希望がありました。ならばユニットバスのほうがいいだろうということになり、片山さんにメーカーのショールームまでお付き合いいただきました」水槽の中にはペットのナマズくん。「空腹の時に餌をねだる姿が可愛いです」居心地が良すぎて外出したくない!?3階には、寝室、書斎、ゲストルームの3部屋がある。「寝室の壁の一部にオーク材を張りました。ベッドのヘッドボードとしての役割も兼ねています」使い勝手や素材感など、細かな部分までこだわって作ったYさんの居心地のいい住まい。「居心地が良すぎて家から出たくなくなります。3階に冷蔵庫を置きたいとも思ったのですが、これ以上便利すぎるのは良くないと思いやめました(笑)。ゆっくり家に居たいと思える住まいを作ることができて、これ以上の幸せはないです」北側斜線制限のため斜めになっている壁が、巣ごもり感のある寝室になっている。テラスにはたくさんのグリーンが。2階から3階への階段は既存のものを使った。美しいデザインのアイアンの手摺り。玄関を1階に移動したので、1階から2階への階段は新設した。3階のゲストルームは、いつでも友人が泊まれるように、美しく整えられている。(建築家クレジット)ランドスケーププロダクツ所在地東京都中野区構造鉄骨造+RC造規模地上3階
2019年07月29日可変性を仕込むK邸の敷地は恵比寿の住宅地にある。Kさんの仕事場との距離を考慮してこの土地を購入したが、その際にはご両親が利用することも想定されていたという。「当時は一人暮らしでしたが、これから家族が増える可能性もあるし、何年後かに事務所にするパターンもあるかもしれない。将来いかようにもできるようなつくりにしてほしいと建築家にお伝えしました」鉄骨3階建てのK邸。この写真では見えないが奥にはペントハウスが載っている。玄関入って数段階段を上がると1階スペース。加えて、Kさんが共同でこの家の設計にあたった山路さんと釜萢さんのお2人に伝えたのは「スキップフロアにしたい」、そして「ツルツルピカピカの空間にはしたくない」ということだった。さらに、ネットで見つけた好みのインテリア写真を見てもらったという。山路さんは「スキップフロアにしたいというお話があった時に、部屋をつくっていくというよりずるずるとスペースがつながっているような構成をイメージされているように感じた」という。「それで、斜線制限をかわした最大ボリュームをシンプルに立ち上げてできた空間を伸びやかに使い切るようにしようと。そしてその縦の空間にどのように床を取っていくか、断面的な構成をどうするかが最初から設計のテーマになりました」玄関入ってすぐのソファの置かれたスペース。階高は2.2mで鉄骨造の部分はペントハウスを含めて4層ある。寝室と同じ2階レベルにある踊り場スペース。チャーミングな場所をつくるKさんが揃えたインテリアの写真には、「シンプルだが設えがかわいらしい感じのもの」が多かったという。そこで空間としてはシンプルな構成につつ、ところどころにチャーミングな場所をつくる方向で設計を進めることに。空間を広く感じまた使えるように、木造よりも小ぶりで薄い部材ですむ鉄骨造が選択されたが、鉄骨造でありがちな、人を少し突き放すような冷たさを感じさせないように、建築家のお2人は、このチャーミングな場所をつくることを意識しつつも、温もりのようなものも感じさせることも考慮して素材や色の選択を行っていったという。2階レベルにある踊り場を見下ろす。「チャーミングな場所」は家具や緑とのセットでつくられる。踊り場から同じ2階レベルにある寝室を見る。庭のような空間設計が進む中で、お風呂を眺めのいいペントハウスにつくり、寝室を2階に、ダイニングキッチンを地下にすることなどが決まっていったが、K邸の玄関を入ってすぐ目の前に現れるスペースは用途が決まらないままだった。今はソファが置かれリビング然としたこの空間、Kさんは「何にでも使える庭のようなものにしたらどうだろう」と思っていた。これに対して設計側は「ふつうに考えた場合、いちばんいいと思える場所に生活の中での機能的な役割をあまりもたせずに、Kさんの言われるように中庭的なものとすることで家の広がりをつくるというふうにとらえてみると面白いのでは」と考えたという。山路さんがまたさらにKさんとの打ち合わせの中で面白いと感じたことがある。「行為の順番で空間に対する要望を話されるんですね。お風呂を出た後にこうしたいからこのへんにそうできるスペースがあったらいい、というようなシーンで伝えてくる。こういう要望の出され方ってほんとに珍しいんですね」踊り場から1階を見下ろす。寝室に行くにはここから1階上がってから階段を下る。トイレ以外は閉じた空間がなく1階のスペースを中心に広がりの感じられるつくりになっている。寝室の1層上は服や小物が置かれ洗面所もある多目的のスペース。寝室を見下ろす。壁の明るいシナ合板は、鉄骨部分のグレーを考慮し、かつ空間に温もり感を与えるための選択。「そういう話からあの部屋が生まれたんです」と山路さんが話すのは寝室の1層上につくられた多目的のスペースだ。「ふつうは水回りは水回りで固めるとつくりやすいんですが、シーンで考えていくと、お風呂をあがった後に顔を洗わないし、服を着替える近くに洗面所があったほうが自然じゃないかという話からあの場所にできたんです」Kさんは「帰ってきて、あそこで服を脱いでお風呂に入って着替えて寝るという流れを考えたのと、あの部屋はぐちゃぐちゃしていていいという考えだったので、あそこにものをたくさん置いて、ほかのスペースをすっきりさせようという考えもありました」階段の踊り場に置かれた古い机とテーブルがチャーミングな雰囲気をつくり出している。1階の柱にかけられたマーク・ロスコのレプリカ。1階の壁際に置かれた家具や緑などもチャーミングな場所をつくり出している。背景のシナ合板の色合いとの相性もいい。「お風呂だろ、この家は」というKさんのお父様の“鶴の一声”でお風呂を最上階のペントハウスにつくることが決まったという。お風呂だけのシンプルなつくりが気持ちの良さをさらに増幅する。大開口からの眺望がすばらしい。近くの住宅とはレベル差があるためプライバシー的にも大きな問題はないという。今も攻略中引っ越しから1年近く経ったK邸。最初は慣れない感じもあったが、Kさんの中では気持ちのいい“流れ”ができてきたという。「帰ってきて、窓を開けて、上に上がって、お風呂にお湯を貯めてとか、だいぶ自分のなかで流れ、リズムのようなものができてきて、今はそれが気持ちがいいし楽しいですね」窓を開けるといった単純な所作も意外と楽しいというKさん。「そういう普通なら“余白みたいなところ”に面白さを見出すとは自分でも思ってもみなかった」という。「帰ってきてからあの洗面のあるスペースから子どもが寝ているのが見えるのもいいし、また同じ場所で、一拍おくようにして何かを考えるリズムのようなものができて、それも面白い」と話すKさん。さらなる面白さを見出すために、この家を「今も攻略している感じ」だという。「もうちょっとこの家の可能性を住みながら探していく感じはあります」とも話すKさんは、この家を身体にとても近い感覚でとらえ、楽しんでいるのではと感じられた。Kさんが一人の時はよくキッチンの換気扇の下あたりで、タバコを吸いながら晩酌をしているという話から、地下のキッチンを居心地の良いものにしようと心がけたという。キッチンの上は吹き抜けになっている。Kさんは現在、パートナーと娘さんの3人で暮らす。3人でいる時間はダイニングスペースがいちばん長いという。テーブル上のライトは、「真っすぐに並べたらたぶんつまらないんじゃないか」と思い、試験的にばらばらに設置したもの。キッチン上の吹き抜け。ペントハウスの天井まで見える。玄関の下にあるボックスがトイレ。この家で唯一の閉じられたスペースだ。エントランス付近に置かれた緑もどこかチャーミングな雰囲気を醸し出している。K邸設計山路哲生建築設計事務所+釜萢誠司建築設計事務所所在地東京都渋谷区構造鉄骨造規模地上3階+地下1階延床面積103.84㎡
2019年07月22日ながれが感じられるようにスペイン料理のシェフを務める夫と、デザイナーの妻。昨年秋、のどかな東京郊外に建坪14坪ほどの角地を見つけ、松島さん夫妻は新居を建てた。「土地を見つけてから設計事務所を探し、その中でいちばん私が求めているものに近いミハデザインに依頼することにしたんです」。設計の仕事に携わってきた妻が、家づくりを主導した。「ほとんど私の希望で進めました。夫が口出しをしたのはキッチンだけなんですよ(笑)」。妻の理想は“仕切りが少なく、全部がつながっているような家”。1歳の長女が1階のリビングで遊んでいても、2階のワークスペースからその様子を感じ取ることができる。そんな見通しのいい家が希望だった。南側のテラスに面した大きな開口から光が差し込むリビング。2階の床の高さに差がつけられている。厨房のようなキッチンがリビングと一体に。正面上はワークスペースから子ども部屋に上がる階段。抜けが連続していく「松島さんが思い描く家は、生活をベースにしたフラットでナチュラルなものでした。大まかなことを伝えられた以外、細かい指示はなくスムーズでしたね」というのは、ミハデザインの光本さん。“全体がつながった家”を実現するために、光本さんが考えたのは、床のレベルを違えながら、2階の天井までつなげていくこと。吹き抜けになったリビングの上に生活スペースが積み上げられていくような構成だ。「まず1階のリビングから2階のワークスペースに空間が抜け、さらに2階の子ども部屋も少しレベルを上げることで、抜けが全体をぐるっとつなげていきます」。敷地に面した通りとの距離も、どうカバーするかを思考した。「車や人が通ったときの家との距離感が気になっていました。そこでプランターのあるテラスを1階の南側に設け、テラスに面して大きな開口を設置しました」。北側の2階にも開口が設けられ、光が南から北に、家の中を通り抜ける。「この光の通り道があることで、空間が外までつながっていきます。外まで含めた大きな空間の中に、レベルの違う床が載っかっているイメージです」。25坪ほどのコンパクトな一軒家ながら、つながりと外部との一体感が、開放感を感じさせる。2階ワークスペースからリビングを見る。ここから家族の様子を見守ることができる。2階のワークスペース。中央の机と本棚を挟み、左右対照に設計されている。リビングから上を見上げる。仕上げ材を使わないことで自然な風合いを感じさせながら、コストもカット。木の温もりを味わうミハデザインともうひとつ考え方を共有していたのは、空間を包む素材感。「均質でまっさらな感じには違和感があったんです。子どもが絵を描いたり、だんだん汚れていったりしても気にならない。そういう家にしておきたかったので、仕上げ材はあえて用いず、木を現しました」(松島さん)。無垢のオークの床に壁はラワン、天井も建材をむき出しに。「あとはリビングさえ広ければ、個室は小さくてもいいとお伝えしました」。2階のワークスペースとベッドルームのあるフロアから、階段を数段あがってアクセスする子ども部屋は、中央で区切ればもうひと部屋設けることもできる。その際には、現在ある階段と反対側にもうひとつ、左右対称に階段を設けて、入り口をつくることも計算されている。ここで図面をひいたり、パースを描いたりする間も、1階や2階子ども部屋の気配を感じることができる。ベッドルームもシンプルに。昔から持っている和家具を活用。玄関とリビングの間に階段を設置。空間を塞ぐことなく緩やかに分けている。階段下を利用して土間の収納に。キッチンにも通り抜けられて動線がいい。リビングの壁は、家族の思い出の写真を飾るコーナーに。これからどんどん増えて行く予定。いずれはテイクアウトのお店も「私のリクエストはキッチン台の高さとシンクの大きさ、コンロの火力などの設備です。調理のしやすさを優先しました」。夫のオーダーで造ったステンレスのキッチン台の下は、収納を設けずオープンに。こうすることで厨房のように調理器具などが取り出しやすくなる。毎週末、ここで食事の準備をするのは、夫の担当なのだそう。「いずれはテイクアウトの弁当屋などもできたらいいなと思っているんです。そのために、小窓を設けてもらいました」。キッチンの一角は将来のプランにも対応が可能。今は、1歳の長女が自然の風合いに包まれたリビングで自由に遊ぶ。光が通り抜ける開放的な一軒家は、これから変化を続けていく。使い勝手を考えたキッチン。子どものために、これまで観ることがなかったテレビを、キッチン台の下に置いた。スコーンなども、よく夫が焼いて家族で味わうそう。いずれお店にしたいと考えているコーナー。リビングで寛ぐ松島さん家族。外とつながるような開放感が心地よい。昔、古道具屋さんで買ったライト。設備鋼管や既成の金物をうまく組み合わせて設置してもらった。グレーに青を混ぜた色味の外壁は、粗めのタッチでムラを出した左官仕上げ。松島邸設計ミハデザイン所在地東京都小金井市構造木造規模地上2階延床面積78.35㎡
2019年07月15日超狭小地での建て替え高級感と庶民性を併せ持った雰囲気と利便性の良さが魅力の東京・四谷。大きな通りから1本奥へ入ると、細かく区切られた昔ながらの住宅街がある。古河さん一家が暮らすのは、車は入ることができない狭い路地に面した敷地。「両親が新婚時代に購入したところで、築40年くらいの古家に住んでいました。子育てをはじめその住みやすさから、この先もずっと四谷に住み続けたいと思い、建て替えを決意しました」と話すのは、四谷育ちの奥さま。建築面積は、わずか6坪の超狭小地。「土地は狭いのに、リビングやキッチン、テラス、屋上など、いろいろなところの空間を“広く”とってほしいとリクエストしました(笑)」とご主人。「その難題をすべて叶えていただき、感動しています」とご満悦である。設計を依頼されたのは、建築家の岡本浩さん。明るく広がりのある家を目指し、プロならではの工夫を詰め込んだ。そして、地上3階、地下1階のコンパクトながらも開放感のある家が完成した。ダイニングとリビングはスキップフロアになっていて、バルコニーまで一続きに。長女(6歳)、長男(4歳)も自由に行き来し、のびやかに過ごしている。住宅密集地に建つ。マーブル模様の外壁は左官コテ塗仕上げで落ち着いた雰囲気。2階のバルコニーに設置した木製ルーバーの羽根の角度にこだわり、道路からの視線をカット。ダイニングの上は吹き抜けで、4.5mの天井高を確保。天井にはご主人が希望したアンティーク調のシーリングファンを設置。「ビールを飲みながら、ファンが回っているのを見ているのが好きです」。防火壁を最大限に活用する玄関奥の階段を昇ると、たっぷりの光が降り注ぐダイニングキッチンが現れる。「朝起きて、半地下の寝室からここに上がってきた瞬間がとても気持ちいいんです。まぶしいほどの光に包まれ、一気に目が覚めますね」とご主人。スキップフロアによって半階上のリビングを見通すことができ、さらにリビングからフルオープン窓でつながるバルコニーへと続く。バルコニーには周囲からの視線を遮りつつ、光と風を通す木製ルーバーが設置されているため、リビングの延長として安心して使用できる。内外一体の開放感が気持ちよく、子どもたちや愛犬も自由に行き来している。隣地の境界ギリギリの位置には、防火壁を設けた。これにより、法規制で必要とされていた階段室の設置を回避したうえに、隣からの視線も完全にカット。そのためカーテンいらずの大きな開口を実現し、日中は豊かな自然光が室内の隅々まで行きわたる。また夜間は、外部照明の光を反射させて室内に送り込み、防火壁が間接照明の役割も。自宅で仕事をしている奥さまは、「夕方くらいまで照明をつける必要がないですね」と話す。防火壁と建物との間には30cmほどの隙間があり、さらに奥行きを感じさせてくれる利点も。その隙間はドッグランとしても活用し、長年共に暮らす愛犬ピースちゃん(8歳・メス)が嬉しそうに駆け回っていた。ご夫妻で立てるよう作業台を広めにとったキッチン。衣服等が引っ掛からないようにフラットなデザインをチョイス。造作のテーブルにはカトラリーの収納を設けた。扉の奥には地下の寝室へと続く階段があり、まるで隠し部屋のよう。扉は階段のほうまで開くため、大きな荷物も搬入可能に。左の階段を昇るとダイニングキッチンへ。半地下にある寝室は、1年中安定した気温で快適。造作棚には間接照明を組み込み、演出効果を。大きな開口(右側〉の奥が防火壁。シャビーシックな床はご主人の希望。「あまり真新しい感じが好きではないので、少しレトロな感じにしたかったんです」。犬のハウスやオモチャを置くスペースをリクエスト。ピースちゃんのサイズに合わせて棚の高さを決定。ベンチとしても使用できるようにした。防火壁と建物の隙間によって生まれたドッグラン。大人はやっとすり抜けられる幅ではあるが、ピースちゃんにはちょうどよい。3階はキッズスペース。奥が長女の部屋、手前が長男の部屋。扉によって分けられるようになっている。螺旋階段を昇ってきた正面には、大きめの収納を確保。梁が必要だったところに板を置いてデスクにした。自宅で仕事をする奥さまのちょうどよい仕事スペースとなった。屋上は家族の憩いの場空間を広く見せるために、仕切りとなる壁は極力抑えたという岡本さんは、「必要な壁は、逆手にとってポジティブに利用しました」と話す。例えば、リビングとバルコニーを結ぶ開口部。家の四隅には壁が必要なため、ここにも壁を設置しなければならなかった。「ならば壁で窓のフレームを隠し、風景だけが見えるような空間にしたら面白いかなと思って」と岡本さん。さらに、壁をアーチ型にし、裏側には間接照明を設けるなど徹底的にこだわった。まるで額縁の中の1枚の絵のような美しい光景は、奥さまの最もお気に入りの場所という。「ダイニングから見上げたときに目に飛び込んでくる、窓際のその光景が好きです」。また、ほかの壁も収納や家具として利用している。スキップフロアの階段部分はベンチ兼収納になっていて、テレビ脇の壁も収納を兼ねている。さらにそこに間接照明を組み込むなど、一石二鳥、三鳥の発想が随所にあり、使い勝手のよい空間となっている。これからの季節は屋上テラスも活躍。都会の風景や空が360度見渡せ、風も心地よい。バーベキューや子どもたちのプールなど、屋外にいながら人目を気にせず寛ぐことができ、家族だけの時間が満喫できる。「先日、玄関前に子どもたちとひまわりを植えました。もっと緑を増やしていきたいので、屋上でのガーデニングも構想中です」とご主人。家族で植物にふれる豊かなひととき。まさに古河家のオアシスになりそうだ。フルオープンの窓は、壁でフレームを隠し、窓の存在を消した。スキップフロアの段差を利用し、ベンチを2つ設けた。ベンチの中は収納に。毎日使うものを即収納できて便利だそう。長男が顔を出しているのはトイレの窓。ダイニングとつながり、コミュニケーションの場にもなっている。360度眺望が楽しめる、気持ちのよい屋上テラス。ベンチは折りたたみ可能。古河邸設計OASis一級建築士事務所所在地東京都新宿区構造木造規模地上3階地下1階延床面積65.14㎡
2019年06月03日一目惚れの敷地正方形の敷地を探していたという建築家の古澤さん。「見た瞬間にここだと思った」敷地は約45㎡の狭小地で、私道(位置指定道路)の突き当りに位置する。そして、住宅に両脇を挟まれたその私道は古澤邸のためだけに存在しているかのように見える。「正面性もあって一目惚れでした。そして、ここだったら街とつながったような生活ができるんじゃないかと」私道奥の真正面に立つ古澤邸。敷地は約45㎡。建物の半分近くが外部空間になっている。外部空間が半分当初の計画ではプランの真ん中に螺旋階段をもうけていたが、「図式的には美しいけれども、求心力が強すぎて生活が束縛されそうな感じがしたため」、多数の案を経て現在のプランへと変更を行った。しかし、道路に面した建物の半分近くを外部空間にするというコンセプトははじめと変わらずに維持した。「こういう繁華街に近い場所ではどうしても外部が少なくなってしまう。さらに、子どもを育てるうえでも外があるほうが絶対いいと思ったので」と古澤さん。2階バルコニー。都会ではどうしても外部空間が少なくなってしまうため、2~4階でバルコニーを4カ所もうけた。2階の入口近くから外階段越しにバルコニーを見る。コンクリート階段が途中からスチールにかわる。2階へ上る階段途中から見る。梁とスラブを分離する試行錯誤を重ねて行き着いたプランは中央に十字形を配したものだった。図面を見る限りこのプランにも空間を支配するような図式の強さが感じられるが、十字の四隅に柱を設けて十字の交点の部分には柱を置いていないため、ある意味、螺旋のプランとは違って中心といえるものもなく、十字形によって「生活が束縛されそうな感じ」はまったくしない。十字形を意識させない要素としてはこのほか、梁と床/天井のスラブが分離していることが挙げられる。通常は梁と同じレベルにスラブがつくられるが、古澤邸では上下の梁の間にもうけられている。そのため床レベルから見ると天井までの途中に梁が見えることになる。2階スペース。柱から出ているのはスラブではなく梁。この梁が上から見ると十字の形になっている。梁が直角にぶつかっている部分が建物の中央になる。2階スペース。左からキッチン、階段室、バルコニー。ガラス面が大きいが、梁が視線をほどよくさえぎるためプライバシーの面ではあまり気にならないという。この構造は構造家との話し合いの中から生まれたものという。「梁とスラブが一体になっていることに疑いをもつ人はいないと思いますが、ラーメン構造というのは柱梁構造のためスラブは本来、構造的に不要です。ジャングルジムのようなものなので、ある意味、スラブは柱や梁とは別の要素なんですね」こうしてできた空間ではスラブと梁が絵画のフレームのようになって外部空間をさまざまなプロポ―ションで切り取るだけでなく、視線が内外ともに斜めにも抜けて都会の狭小敷地では得難い開放性も獲得している。さらにはまた、正面がガラス張りのため、内へと閉じがちの都会生活では珍しく街とのほどよい距離感と関係性もつくり出されている。4階からの見下げ。基本的に外の階段をコンクリート、内部は木にしているが、それだけでは対比的になりすぎるので途中にスチールの階段もつくっている。寝室のある4階スペース。柱から出た梁によって十字の形ができているのがわかる。階段部分の吹き抜けは1階から4階まで続く。狭小住宅では上下移動の体験が重要になるため、歩くごとに風景が変わる、街を散歩するような楽しさを目指した。2階と3階を見る。2つの床の途中に存在感のある梁があるため、スキップフロアと勘違いする人が多いという。スラブがピン角でぶつかる部分はスチールで接合されている。3階バルコニー。和室のある3階スペース。3階和室から見る。厳しさとは真逆の居心地がいい引っ越しをしてから1カ月という古澤さん一家。間仕切り壁のような存在感のある梁はモノを置く棚としても活用しているというが、はじめてチャレンジしたつくりの空間の中で古澤さんは「モノをどこに置くのかがまったく決まらなかった」と話す。「ようやく落ち着いてきましたが、いろんなところにモノを置いていいきっかけがあるから、しばらくの間、毎日のようにモノが移動していました」家族の戸惑いは、古澤さんよりもさらに大きかった。「最初は開放的すぎて全部外につながっている気がして自分の部屋がないような感じがしました」と娘さん。しかし今は心地よい開放感に慣れて外の目が気にならなくなり、カーテンも開けて暮らしているという。いろいろなプロポーションの開口部が外をさまざまに切り取って風景の変化を楽しませてくれる。1階玄関内部から外を見る。壁と天井のスリットから光が入る。1階。木のボックスの内部はトイレ。階段越しに玄関のほうを見る。階段途中から見る。梁とスラブが分離することで、通常ではありえないような外との関係性が建物のいたるところで生まれている。古澤さんと息子さんの2人がいるのは梁の上。40×40cmの梁は棚としても使えるし、腰かけたりすることもできる。奥さんも「家の中まで見えてしまうのかなと思っていたんですが、意外に見えないので、外からの視線はだんだん気にならなくなってきました」と話す。「あと、頭をコンクリートの梁にぶつけたりするととても痛いのですが、そうした厳しさとは真逆の居心地の良さがあってそれがとても気に入っています。コンクリートでなければ、このような快適な開放性は得られなかったんだろうなと」奥さんは古澤さんに「狭い面積の中でバルコニーを広く取りすぎてもったいない」と設計中ずっと言っていたそうだ。しかし「外とつながって空間が広く感じられるし、よくあそこでお茶を飲んだりして楽しんでいるので、これで良かったなと思って」いるという。設計で外を意識的に多く取り込んだ古澤さんもこう話す。「昨日も友人たちをまねいてバルコニーで食事をしたんですが、外というのはやはり気持ちがいいですね。外とつながっているというのは街とつながっているというのと同じなので、そのあたりの気持ちの良さに住んでみてあらためて気づいたような気がします」。古澤さんはまたこの気持ちの良さを「街と体験が一体化する」という建築家らしい表現でも伝えてくれた。古澤邸設計古澤大輔/リライト_D+日本大学理工学部古澤研究室所在地東京都杉並区構造RC造規模地上4階延床面積90.59㎡
2019年05月27日間口3m。筋交いが生み出す広々空間東京23区の中心部に位置し、歴史と文化の街として発展してきた文京区。Kさん夫妻がこの地に家を建てたのが5年前。共働きで子育てをすることを考え、文京区育ちの奥様の実家の近くに住もうと思ったのがきっかけだった。文京区という場所柄、限られた予算の中で購入できる建売住宅はとても狭く感じたという。そこで、土地探しからお願いしたのが石井井上建築事務所。「テレビの住宅番組で、いい雰囲気だなと思った家を手掛けていて、事務所も文京区だったのでお願いしました」(ご主人)。いくつか提案のあったなかで、Kさん夫妻が決めたのは約16坪の細長い狭小地。そこに、間口3m、奥行き10mの木造3階建ての家を建築した。「ご主人が『土地の特徴を活かして、建物も細長くしたほうが面白い』と言われたことが設計の決め手となりました」と当時を振り返るのは、建築家の石井大さん。通常、かなりの量の構造壁が室内に出るところを、見通せる筋交いで建物を支えるように設計した。天井高3mの2階は、階段部分に2つの筋交いを設置。リビング・ダイニングとキッチンを振り分けつつ、奥行きのある広々とした空間を実現した。4歳になる息子さんはひとつながりのワンルームを元気に走り回り、筋交いと絡んだ階段は格好の遊び場に。「筋交いがアクセントになり、楽しい家になりました」とご夫妻も微笑む。2階は、間口3m、奥行10mの細長いワンルーム。天井高3mがより開放的に印象付ける。「好きな家具を揃えていきたい」と、マルニ木工でジャスパー・モリソンのダイニングテーブルと椅子(手前)を購入。筋交いのある階段奥がキッチン。ダイニングスペースと分けたのは奥様の希望。使い勝手の良いコンパクトなキッチン。階段は移動手段だけでなく、コミュニケーションの場にもなっている。大きく窓をとったリビング。窓に筋交いを設け、耐震強化。住宅が密集した狭小地。アウトドアが趣味のご夫妻にとってガレージは必須だった。キャンピングカーの上部の棚は既製品の鋼製足場板を利用。アウトドアグッズが置かれている。リゾート気分のバスルームK邸の天井は、木のまま見せた梁が一定間隔で並んでいる。生活しながら木で造られた家であることを実感できるのが心地よい。「都心部の住宅ゆえに準防火地域に属するものの、火災に強い“燃え代設計”を利用していることで、通常は石膏ボードで覆われるところを回避しました」(石井さん)。階段を昇りきるとガラス張りの真っ白なバスルームが登場する。「リゾートホテル風なお風呂を希望しました」とはご主人。昼間は階段上の天窓からたっぷりの光が降り注ぎ、夜は季節によって天窓越しに月見風呂が楽しめるという。この天窓からの光は2階のダイニングまで届き、北向きのリビングを明るく演出している。3階まで階段を昇った右手には、扉のないガラス張りのバスルームがある。天窓を通して空が眺められる。開閉式の天窓。階下に十分な光を届ける。3階の左手(南側)には寝室がある。3階の右手奥(北側)は将来の子供部屋。白い机はご主人が20年ほど前に「unico」で購入したもの。家具職人!?必要なものは自分で製作今回、壁はご主人が中心になって塗装されたそう。「ビスを隠すために厚めに塗ったこともあり、時間がかかって大変でしたが、工事中に現場に入って大工さんの作業を見ていられるというのが楽しかったですね」。その影響なのか、ここに住むまではあまり経験がなかったというDIYだが、いまではまるで家具職人のように製作しているという。キッチンのスパイスラックやコーナー収納、本棚、PC机……と数えきれないほどである。「生活していて、こういうのがあったらいいね、と言うと図面を描いて作ってくれます」と奥様。「ただ時間がかかりますけどね」と笑うご主人。暮らしながら、必要なものを自ら作り、住まいやすいように手を加えていくことで、家への愛着がさらに深まっていくという。今、あったらいいなと思うものを訊いてみると、「屋上」とのこと。「料理に使うハーブなどを屋上で育てたい」と。なんでも作るKさんのこと。きっと何年後かに実現していることだろう。玄関奥にある書斎は80cm高くなっている。PCデスクや棚などすべてご主人が製作したもの。壁に取り付けたガス暖炉がオシャレ。玄関を入って階段へ向かう通路。洋服掛けや自転車のフックはご主人がDIY。キッチンに立つご主人が「あったらいいな」と思い作製したコーナー収納。構想2年の力作。「カップをつるす棚が欲しいと言ったら作ってくれました」(奥様)階段からのぞいたり、腰掛けたり。階段は4歳の息子さんの遊び場でもある。K邸設計石井井上建築事務所所在地東京都文京区構造木造規模地上3階延床面積89.40㎡
2019年05月20日構想5年。念願のカフェをオープン再開発が進む京王線調布駅から徒歩5分。拡張工事中の道路沿いを歩いていると、ウエスタンレッドシダーの壁に施された、ぷっくりとした「!」マークに目が留まる。目立った看板はないものの、丸太の椅子が置かれ、植栽で彩られたエントランスは、一般の住宅とは一線を画しており、「何屋さんかな?」と足を止める人も多い。ここは、直井雄太さんが昨年春に開いたカフェ「いづみ」。かつて、直井さんの祖父母が40年以上も洋食屋を営み、暮らしていた場所である。祖父が他界し、祖母の惠子(しげこ)さんが一人で住んでいたが、建て替えを機に1階をカフェ、2、3階を住居とし、3世代4人での暮らしが始まった。「祖父母の店で祖父のハンバーグなどよく食べていました。料理をしている、“かっこいいおじいちゃん”の姿が目に焼き付いています」。祖父の影響もあり、料理が好きになったという直井さん。調理師学校に進み、その後代官山のカフェで珈琲について学んだという。「祖父母の店があったこの場所だからこそカフェを開きたいと思ったんです。思い出の場所で、祖父母の思いを引継ぎ、地域に密着したお店を持ちたいと。店名も、当時と同じ『いづみ』にしました。いつも祖父が見守ってくれているように感じます」。目立った看板はなく、OPEN、CLOSEの札のみ。大きなドアから「何屋かな?」とのぞく人も多い。切妻屋根と四角い木製窓がかわいらしい外観。入口の左側に丸太の椅子があり、ウェイティングスペースになっている。「いづみ(IDUMI)」の“i”や滴を連想させる店のマークは、グラフィックデザイナーが作製した数案の中から、祖母の惠子さんが最終決定したそう。シェアハウスのような造り現在は、主に、2階が直井さんと惠子さん、3階が直井さんのご両親の生活スペースになっている。2階のリビング・ダイニングは家族の共有スペース。作業台を広くとった大きなアイランドキッチンでは、直井さんをはじめ惠子さん、働いている母、ときには父も、そのときどきでできる人が料理を作る。夕食時にはダイニングに家族が集い、カフェでの出来事など何気ない話題で会話が弾むという。床はオークのフローリングを斜めに敷き詰め、天井には杉の足場板を使用。自然素材が心地よい空間には、ハンス・J・ウェグナーやボーエ・モーエンセンの名作椅子たちがさりげなく置かれている。家族の時間を大切にしている直井さんは、家族が集う2階のスペースには経年変化が楽しめる素材や家具にこだわったという。北欧家具の専門店「グリニッチ」オリジナルの一人掛けソファに座る惠子さん。「座り心地がとてもいいです。ここは、木のぬくもりが感じられ、広々としていて落ち着きますね」と、最も2階で過ごすことが多い惠子さんの笑顔から、その快適さがうかがえる。2階でもうひとつ目を引くのが、オブジェのように置かれたバスタブ。思い切って扉や間仕切りを設けず、“見せるバスルーム”という大胆な発想である。「常にオープンになっているため、通気性もよくカビも生えません。簡単に拭くだけでよいので、掃除もラクですよ」と直井さん。シンプルな空間のアクセントにもなっている。「料理しながら2階全体を見渡せる、この場所が好き」という直井さん。大きなアイランドキッチンは、将来、料理教室を開くことも視野に入れている。光がたっぷり入る2階のリビング・ダイニング。さりげなく置かれたバスタブがインテリアの一部になっている。直井さん憧れの北欧の椅子たちに「IKEA」のダイニングテーブルをセット。ダイニング側の引き出しには、衣類や生活雑貨が収納されている。2階にある直井さんの寝室。ベッドと棚を設えただけのシンプルな個室がほかに4つある。約30畳の広々とした空間。惠子さんが座っている椅子が「グリニッチ」のオリジナルソファ。テレビの下の棚は、この家の設計を手掛けた「TENHACHI」の製作。扉や間仕切りを設けず、“見せるバスルーム”に。入浴するときは、カーテンを閉める。机にシンクをはめ込んだような家具調の洗面台は、「TENHACHI」のオリジナル。1階から2階へ昇る階段は、昇降機を設置することを考慮し、広めにとっている。可変性を考えた余白のある空間3世代にわたる家族は、生活パターンや趣味もさまざま。それぞれのプライベートな時間を守れるようにと、2階に2つ、3階には3つの小さな個室を設けた。また、3階にもリビングとミニキッチン、シャワーブースを設け、各階で生活が完結できるようにした。好きなときにテレビを観たり、シャワーを浴びたり、父母の生活スタイルに合わせて自由に過ごせるようになっている。3階のクローゼットの奥は、予備の個室もある余白を残した空間。将来、家族構成やライフスタイルが変化したときにも柔軟に対応できるようにと考えてのこと。自由度の高いシンプルな造りは、そのときどきの家族の暮らし方に合わせてカスタマイズできるのである。ラーチ材で統一した3階のリビングと父母の寝室。2階とは異なる印象に。一人掛けソファは2階と同様、「グリニッチ」のオリジナル。ミニキッチンや冷蔵庫も用意。木製サッシを開けると、日当たりのよいベランダへ。4人各自のクローゼットが設置。勾配天井と素朴な素材感が山小屋風。「ドアノブなどの細かいところにもこだわりました」。これは、「パシフィックファニチュアサービス」で購入。父の帰りが遅いときなどシャワーブースが活躍。珈琲に思いを込めて家族をはじめ、人とのつながりを大切にする直井さん。1階のカフェでもお客様とのコミュニケーションを大事にしている。「豆は常時6~8種類用意しています。お客様の好みや気分などをうかがい、今飲みたいもの、お客様の求めているものに応えられるよう心がけています。カフェオレも基本のレシピはありますが、お客様の年齢や性別、雰囲気などから想像して、豆やミルクの量など微妙に変えたりすることもありますね」。お客様に合わせて一杯ずつ丁寧にドリップ。「同じ一杯はありません」と、一杯一杯に思いを込めた仕事ぶりが伝わってくる。この極上の珈琲を引き立てるのが、シンプルな木の空間と北欧の名作家具たちである。ここにはゆったりとした時間が流れ、まるでリゾート地で飲むような格別な一杯が楽しめる。「最近嬉しいことがあったんです」ととびっきりの笑顔で話し始めた直井さん。「“先日、ここで婚姻届けを書きました”というエピソードを話してくれたお客様がいらしたんです。そういう人の人生に寄り添い、思い出の1ページになるようなお店にしていきたいですね」。カフェ「いづみ」は、朝7時から夕方6時まで営業(水曜日定休)。土日のみ登場する直井さんのお父様が作る家庭的なサンドウィッチも好評。祖母の惠子さんがカフェで座っていると、昔馴染みの方々が集まってくるそう。家具はすべてハンス・J・ウェグナーのもの。「心地よい椅子でゆっくり珈琲をお楽しみください」。忙しいときにも効率的に動けるように考え尽くしたシンク。作り置きはせず、注文を取ってから淹れる。「TENHACHI」の建築家、佐々木倫子さんの父・典彦氏の作品。「いづみ」のコーヒーは典彦氏作製のカップで提供される。一杯ずつ心を込めて、丁寧に珈琲を淹れる直井さん。その姿は美しく、見ている人を飽きさせない。直井邸設計TENHACHI一級建築士事務所所在地東京都調布市構造木造規模地上3階延床面積195㎡
2019年05月06日3月29日に、おおよそ3年の休館を経てリニューアルオープンする東京都現代美術館内2階に、スマイルズの新業態「二階のサンドイッチ」がオープン。定番と日替わりのサンドイッチや、オリジナルドリンクを片手にアート鑑賞後の余韻を味わうことのできる空間を提供する。お店のコンセプトは、“サンドイッチは額縁のような。”。サンドイッチは食における、額縁とアートの関係に似ているという発想から生まれた。どんなにおいしい料理も、レストランとその皿の上だけでしか味わうことができない。しかし、サンドイッチに挟みこめば、手の内に携え、自由に持ち運んで思い思いの場所で食べることができる。まさにサンドイッチは発明なのだ。提供されるサンドイッチは、単なる具材をシンプルに挟んだものとは異なる。チリソースと香草をきかせた鯖のローストや、柚子胡椒をアクセントにした佐助豚のロースト、カカオ風味のテリヤキチキンとコールスローなど、契約農家から仕入れた野菜や産地直送の食材をレストランシェフが調理したこだわりの料理を挟んだ贅沢な逸品だ。サンドイッチ食後には、自家製カスタードとフルーツのデザートサンドイッチや、ミルクソフトクリームとサクサクのデニッシュを合わせた甘いデザートもどうぞ。コーヒーやフルーツコンポートジュースなどのドリンクメニューも豊富。店内でもテイクアウトでも自由に選んで楽しんで。デニッシュが突き刺さったミルクソフトクリーム(680円)また、同じくスマイルズの手がけるファミリーレストラン「100本のスプーン」が、美術館内に初めてオープン。あざみ野ガーデンズ、二子玉川に続いて3店舗目となる同店では、美術館ならではの、食事をしながらアートと触れ合える様々な仕掛けが用意される。料理が届くまでの待ち時間に子どもと一緒に作品を描いたり、時には食事を楽しむ家族自身が作品になってしまうことも!? 子どもから、大人まで、美術館での新しいアート体験が待っている。【店舗情報】二階のサンドイッチ住所:東京都江東区三好4-1-1 東京都現代美術館内営業時間:10:00〜18:00(L.O.17:30)100本のスプーン 東京都現代美術館内住所:東京都江東区三好4-1-1 東京都現代美術館内営業時間:11:00〜18:00(L.O.17:00)席数:100席
2019年03月26日住み慣れた街に家を建てるある休日のお昼前。デザイナー、アートディレクターとして書籍のデザインなどを手がける中澤睦夫さんと、デザイン事務所でマネージャーを務める奥さまの千佳子さんの自宅を訪ねると、穏やかな光が差し込む3階のダイニングで、お二人がゆったりとブランチを楽しんでいた。中澤さん夫妻がこの家を建てたのは、6年ほど前のこと。睦夫さんのアトリエと自宅を兼ねるため、マンションではなく戸建てにしたいと考えていた二人は、千佳子さんが子供の頃から慣れ親しんできた東京・高円寺、阿佐谷周辺で土地を探すことに。そうして、いわゆる狭小地ではあるが、駅から近く周囲の街並みもきれいなこの土地に出会った。「この辺りは周囲に高い建物がなくて、視界が抜けているのが気に入りました」と振り返る睦夫さん。限られた敷地に理想の住まいをつくるため、設計は奥さまの叔父である建築家の小野寺利朗さんに依頼した。ダイニング・キッチンの壁は一面だけ淡いピンク色。白で統一された空間のアクセントになっている。明るいダイニングで休日のブランチ。共通の趣味であるマラソンの話題に花が咲く。シンプルで清潔感のあるキッチン。千佳子さんの帰宅時間が遅いため、料理は睦夫さんが担当することが多いそう。キッチンの壁や冷蔵庫の上も、ディスプレイ空間に。アレッシイのじょうごなど、お気に入りの雑貨を飾っている。心地よい居場所がいくつもある中澤邸は、1階に睦夫さんのアトリエ、2階に水まわりと寝室、3階にダイニング・キッチンとリビングというつくり。3階は日当たりのいい南側にダイニング・キッチンをつくり、階段の踊り場と吹き抜けを挟んだ北側にリビングを配置している。リビングの窓の外には視界を遮る大きな建物がなく、ダイニングからリビング、その先の景色まで視線が通るため、実際の面積以上に広く感じる。「休日はテレビを観たりお茶を飲んだりとダイニングでのんびりしている時間が大好きです」と千佳子さん。一方の睦夫さんは、特にリビングが気に入っているのだそう。「設計当初の案ではリビングの場所に部屋がなかったのですが、リクエストしてつくってもらいました」と話す。また、ダイニング・キッチンとリビングが離れていることで、心地よい居場所が複数あるのも魅力のひとつ。「友人が集まったとき、ダイニングで食事をして、その後リビングでゆっくり話をしたり」と千佳子さん。「タバコを吸う人はベランダへ行ったり、それぞれが好きな場所に分かれて過ごしますね」と睦夫さんも続ける。千佳子さんは、ダイニングとリビングの間の踊り場にヨガマットを敷いてストレッチをするのも好きなのだとか。「ちょうどいい広さで、集中できるんですよね」(千佳子さん)。ダイニングと写真右のリビングをつなぐ踊り場。左手に1階から3階まで貫く吹き抜けがある。北側に位置するリビング。PIET HEIN EEKのベンチは睦夫さんのお気に入り。2階の踊り場。写真右手が吹き抜け。シンプルで清潔感のある洗面室。作品が引き立つ白の空間室内のいたるところに、絵や陶器、雑貨などが飾られている中澤邸。知人のアーティストから譲ってもらったイラストや陶器なども並ぶが、中でも目を引くのが、画家でもある睦夫さんが描いた音楽家をテーマにした作品たち。「数年前に個展を開いた時に描いたものです。誰もが覚えているであろう、音楽室に厳粛に飾られていた肖像画を、“現代の空間に飛び出させたらなんか合うんじゃないのかな”と思い、心地よいクラシックが聞こえてくるようなイメージで巨匠達を僕なりに描いてみました。我が家にはゆる〜く合っていて自分の作品ながらとても気に入っています」(睦夫さん)。さまざまな作品が印象的に目に映るのは、シンプルな白の空間だからこそ。設計時から、このようにたくさんの絵を飾ることを前提に、壁や床はもちろん、ドアなどの建具、キッチンや洗面台などの設備まで白にこだわって選択したのだという。1階にある中澤さんのアトリエ。大きな仕事机は友人から譲り受けたもの。画材やアートディレクションを担当した書籍や雑誌、資料などが並ぶアトリエの収納棚。家のあちこちに、さりげなく花が飾られている。デスク上部は3階までつながる吹き抜け。階段の手すりなども白で統一。飾られた作品がパッと目に飛び込んでくる。階段の手すりには、お気に入りの小さなぬいぐるみがかけてあった。玄関には、友人であるアーティストのスドウピウさん作の陶器などをディスプレイ。白い花が咲く庭白へのこだわりは、玄関前の庭にも。取材に訪れた1月は冬の表情だったが、夏にはアジサイやサルスベリ、ハニーサックル、マグノリアなどの「白い花」が賑やかに咲くそうだ。じつは、当初は庭をつくる予定ではなかったのだという。「北側斜線の関係で、玄関前の空間が空いてしまって。普通はコンクリートを敷いて駐車スペースにするんでしょうけど、必要ないからどうしようかと考えて」と睦夫さん。そんなとき、たまたま井の頭公園で開催されていた緑化フェアを二人で訪問。出展していた自由が丘のショップ「BROCANTE」のブースを訪れ、「すごくきれいで魅力的な庭をつくっていたのを見て、急遽お願いすることに決めました」と千佳子さんは振り返る。「BROCANTE」がつくり出したのは、小さなスペースながら訪れた人を迎え入れてくれるようなおおらかで自然な雰囲気の庭。「近所のワンちゃんやアイドル猫が、散歩の途中によく立ち寄ってくれます。夏になるとカエルも来てくれて」と笑顔で話す千佳子さん。「家だけだと味気ない。やっぱり庭があるのはいいですね」と睦夫さんも。楽しそうに話すお二人の様子から、家や庭への愛着が伝わってきた。門や塀はあえてつくらず、開かれた雰囲気に。初夏の庭は、こんもり茂った緑と白い花のコントラストが美しい。(写真2点=中澤さん提供)
2019年03月11日煙突との出会いが始まりだった吉祥寺の賑やかな商店街から1歩入ると、そこは閑静な住宅街。以前は鍼灸院だった築20年程の3階建て鉄筋コンクリートの建物を、2世帯で暮らす戸建てにリノベーション。住人は店舗のディレクションや空間設計を手掛ける鈴木善雄さん、舞さんご家族と、舞さんのご両親の引田ターセンさん、かおりさんのご夫婦だ。「結婚した当初は、いつか古い物件を改装して暮らせたらなと考えていましたが、義父母からいい物件があるから一緒に住まないかという話をいただいて。訪れてみると、1階に暖炉のある住宅でした。煙突のある家なんて、東京ではなかなか建てられないけれど、ここならずっと自分が憧れていた薪ストーブも設置できるだろうと」そう語るのは、新木場で複合施設「CASICA」のディレクションを手掛ける鈴木善雄さん。1階はご両親の住居、2階はゲストルーム&作業場、3階を鈴木さんご家族の住居に。2世帯それぞれの、思い思いのリノベーションが始まった。ヨーロッパの古い照明に、日本の古道具の作業台など、年代を感じさせるインテリアが味わい深い3階。昨年11月、新木場にオープンした複合施設「CASICA」は100%LIFEでも掲載。「CASICA」「スタンダード トレード」にリノベーションを依頼。ホテルのように洗練されたシンプルで居心地のいい1階。古家具を独自に再構築鈴木さん家族が暮らす3階のフロアは、3LDKだった間取りを70㎡ほどのワンルームに変更。荒々しい古材を敷いた床に工業的なペンダントライト、日本の古い家具などがあしらわれた空間は、おふたりが手掛ける店舗の世界観のよう。「何風というのではなく、好きなものを選んで、縛られることなく構築したいんです。インダストリアルと和家具が合わないわけではないし、トルコのラグもあればアメリカのソファなど、国も色々とミックスしていいと思っています」。リノベーションは、善雄さんと大工仲間達とDIYで少しずつ着手していったそう。壁づけのキッチンは、和箪笥や小引き出しなどをパズルのようにはめこんだ棚に目を奪われる。「日本のものをどう現代的にアレンジするか、と常に考えています。畳からイスの生活になった今、和箪笥は床の上じゃなくてもいいですよね」。斬新なアイデアの溢れる空間を彩るのは、仕事の買い付けで見つけた古道具だったり、全国を車で旅する中で出会ったものだったり。愛着のあるものたちが、素朴な素材感が活かされた空間に味わいを加える。「キレイすぎると落ち着かないんです」と善雄さん。キッチンという境を設けず多様性のある空間にしたかった、という暮らしの中心にあるダイニングテーブルで。南北に開口があり光が通り抜ける。床には室内用ではないインドネシアのチーク材を張った。キッチンには、少しずつ集めた古家具などをパズルのようにはめ込み、独創的な棚をアレンジ。抜けのあるワンルームにスケルトンにした空間に、あえて1カ所仕切りを設けたのはアトリエ。「鉄加工ができる友人に頼んで、窓枠を作ってもらい、わざと錆びさせてガラスをはめ込みました」。現在は仕事部屋にしているが、保育園に通うお子さんがもう少し大きくなったら、いずれ子供部屋にする予定だそう。「壁は後からいくらでも作れるので、最低限に。ベッドルームにも仕切りは設けませんでした」。床と同じ古材を面材にして、壁一面に収納を設けたベッドルームは、サンルームからの明るい日差しで満たされる。「ここに暮らすようになって、グリーンを育てるのも楽しくなりました」。薪ストーブが鎮座するリビングで、家族で語らう暖かな時間も偲ばれる。「1階には両親がいることで、一緒に食事をしたり、息子を見てくれたり、たくさんの時間を共にするようになりました。仕事の話も夫も交えて色々と話せる関係なので、いつもたくさんの刺激をもらっています」と舞さん。LDKの一角に仕切りを設け、アトリエを設置。ガラスの窓を光が通過する。現在、仕事部屋にしているアトリエは、いずれは子供部屋にする予定だそう。リビングに隣接したベッドルーム。壁のように見えるよう、床と同じ素材で収納を設けた。南側のサンルームは植物がよく育つ。お子さんの遊び場にも。ESSE社の「THE IRONHEART」が置かれたリビング。クックオーブンなど機能も充実。チェーンソーと斧で薪割りをしているそう。北欧テイストの1階「早期リタイア後がこんなに充実するとは思っていませんでした」。と語るのは、舞さんのご両親、引田ターセンさんとかおりさん。人気のパン屋さんとギャラリーを営みつつ、2世帯での暮らしを楽しんでいる。140㎡ある1階は、3階と打って変わって、北欧テイストで統一されたシンプルでナチュラルな空間が広がる。「以前からおつきあいがあって、家具のデザインなどが好きだったスタンダードトレードさんにリノベーションをお願いしました」。薄い緑の混ざった珪藻土の壁、オークの天井や家具、麻混の絨毯の敷き詰められた床。穏やかで居心地のよい空気が流れる。「私たちが求めたのはやりすぎない、主張しないインテリア。和でも洋でもなじんで、ずっと使い続けられるテイストが好きなんです」。1階は床面積140㎡の広々空間。暖炉のある山小屋風の空間だったのを、北欧テイストに。コンクリートの冷たい躯体に、木とガラスで温もりを加えた。ハンス・J・ウェグナーのテーブル、フリッツ・ハンセンのイスなど、内装に合わせて家具もセレクト。吉祥寺で「ギャラリーフェブ」、パン屋さん「ダンディゾン」を営む、ターセンさんとかおりさん。普段はキッチンとリビングの間の空間で仕事をすることが多いそう。ワンルームを半オープンの仕切りと床の段差が緩やかに分ける。人の集まる居心地のいい家に鍼灸院だった南側のスペースは、外構の緑とルーバー状になったガラス窓から光が差し込む、明るいベッドルームに。暖炉のある広々としたLDKは、大人数でパーティーを開いたり、何人かで料理をしたりも可能な余裕のスペースを確保した。「婿の誕生日会には40人くらい集まりましたよ。キッチンはアイランドにシンクを入れるかどうか悩みましたが、オープンなキッチン台にして正解でした。お料理を運んだりするのを、みんなが手伝ってくれるんです」。一部分には仕切りを立てて、キッチン内すべてを見せないよう細かな計算も。「家は私たちにとって充電をするところ。明るくて風が通って、“ああ、家に帰りたい”と思えるような快適な場所にしておきたいですね」。その願いが結集した1階には、家族や友人たちが集まってくる。個性の違う2つのフロアのそれぞれの生活を、コンクリートの堅牢な建物が包み込んでいる。明るい日差しに包まれるベッドルームには、ウォークインクローゼットを設けた。ベッド脇のステップは、年を取った愛犬用。ベッドルームの入り口。ルーバー状になったガラス窓から光が差し込む。パーツにこだわり、イタリア製のグレーのタイルを貼ったバスルーム。微妙な陰影が奥行きを出す。余裕の幅を確保したキッチンでは、普段おふたり一緒に料理するそう。キッチン台の黒の面材がアクセントとなっている。パントリーにキッチンまわりのものを一括に。以前は勝手口だったところを塞いで、ガラスブロックを採用した。窓辺には、「ギャラリーフェブ」でもかかわりのある陶芸家・内田鋼一や、ガラス作家・イイノナホの作品を飾る。十字型のガラスをはめ込むようオーダーしたドア。玄関にあるイイノナホの照明がガラス越しに見えるのが、かおりさんのお気に入り。約100坪の敷地に建つ、鉄筋コンクリート3階建ての建物。元オーナーとは知り合いで、縁あってリノベーションが実現。
2019年02月18日Iさん夫妻の住まいは、世田谷区にある3階建て集合住宅の1階。妻の亡き祖父が持ち主であったこの集合住宅は、祖父の自宅も兼ねていました。その祖父の住居部分と隣の賃貸部分をつなぐことで、96平米という大空間が出現。リノベーションは空間社に依頼し、工事費1,650万円(税・設計料込み)で夫妻の希望であった「楽しくホームパーティできる空間」を実現させました。■ キッチンはホームパーティを楽しめる空間に玄関を入ると、奥行きの深いLDKが目の前に広がります。祖父の住居部分を丸ごとLDK空間にあて、大きなアイランドキッチンを設置。そしてダイニングは、8~10人が余裕で使えるテーブルがゆったりを置けるほどの広さを確保しました。また、西側を書斎とカウンターで仕切り、ワークスペースとパントリーを設けてあります。ダイニングテーブルの先にはアイランドキッチンが。「料理していると、みんな自然とここに集まって手伝ってくれるんです」と妻。対面からもサイドからも調理に参加できて、ホームパーティを存分に楽しめます。幅2840mmというワイドサイズのキッチンの背後には、色鮮やかなカウンター。調理が効率よくはかどるレイアウトです。通路の幅は950mmを確保し、料理好きな夫妻が同時に作業してもラクにすれ違えます。また、キッチン通路の延長線上、書棚の奥にはパントリーがあります。1坪強の空間には、ストック食品や酒類のほか、掃除機や外出用の衣類なども収納されています。キッチンに立って玄関側を向いてみるとこんな景色。正面の玄関ホールの左右にリビングと多目的ルームを配置しました。ともに南側に面していて、日当たりは抜群。同一空間なのでキッチンまで光が届くそう。リビングはダイニングキッチンとひとつながりの空間にありますが、隣接するエントランスの奥行きを利用したゾーニングに。ほどよいこもり感のあるつくりになっています。ソファで読書やテレビにじっくりと集中できそう。■ つながり感も、こもり感もあるワークスペースLDKの一角には夫専用のワークスペースを実現。カウンターには夫の祖母の家で使われていた青森ヒバが使われています。オープンなつくりでありながら、中に入るとほどよいこもり感もあり、なんとも落ち着ける雰囲気です。こちらには造作のオープン棚を設置。「空間に背を向けていることに違和感があるので」という夫の希望で、デスクはLDKに面して付けられているのも特徴です。大空間の一角だから解放感があり、LDKにいる妻とのコミュニケーションも取りやすいそう。こちらはLDKとは引き戸で仕切られている多目的ルーム。引き戸の開閉により、LDKとのワンルームにも、個室にもできるフレキシブルな空間に。幅広の無垢ラスティックオークのフローリングからは木の美しさが感じられます。もともと賃貸部分だった空間の約半分を使い、ゆったりとした寝室に一新しました。大容量のクロゼットを置いても余裕の広さを確保。残り半分は水まわりにあて、相互の行き来を良好にしています。壁の一面だけミントグリーンの塗装を施してアクセントに。■ ゲストが多くても大丈夫!ゆとりのエントランス寝室の前から玄関側を向くと、右手には書棚が連なっています。エントランスは既存の2倍近く広めに取ったことで、ゲストが多い日でもゆったり。靴収納も扉のないオープンなつくりにしたため、空間がより広々と感じられます。玄関を入ると目の前がすぐ生活空間なので、必要に応じて引き戸を開閉して使っているそう。寝室と至近距離の位置に水まわりを配置。天井にはワークスペースにも使った夫の祖母宅の青森ヒバを。水に強いヒバの適材適所の再利用となりました。洗面台の壁面には、かわいい柄クロスや個性的なタイルなどで遊び心をプラス。タイルは「バティック」(名古屋モザイク)というシリーズの柄をランダムに組み合わせたそう。こうした仕上げや水栓、スイッチプレートなどは、妻がインスタグラムなどで探したイメージ画像をもとに、空間社がセレクト、提案をしました。祖父の計らいでつくられた2戸をつなげて、大胆にリノベーションをしたI邸。余裕の広さに加えて、夫妻の気さくで大らかな人柄が、訪れる人をもてなしてくれます。このリノベーションをもっと詳しく見たい方は、ぜひ「リライフプラスvol.19」も参考にしてみてくださいね。※物件価格、工事費、ご家族の年齢等は取材時のものです。設計・施工空間社撮影山田耕司
2018年11月09日2階建て住宅を建てる場合、2階のトイレに手洗い器を設置するかどうかで悩む方は多いのではないでしょうか?我が家は建築費が少なく、ローコスト住宅しか建てられませんでしたが、「お金がかかってもトイレの手洗い器は必須!」という考えでした。結果的に、この2階トイレの手洗い器は大正解だったわけですが。手洗い器が必須だと思った理由と、現在の手洗い器の使い道をご紹介したいと思います!■ そもそも2階にトイレは必要?TATSU / PIXTA(ピクスタ)2階のトイレの設置自体を悩むご家庭もあるかと思いますが、我が家の場合「トイレも必須!手洗い器も必須!」でした。なぜなら、夜中にお手洗いで起きてしまった時、2階にトイレがないと1階まで降りないといけないのが面倒!また、体調を崩して寝室で寝ている時、トイレのために1階まで降りるなんて地獄!という、単純ですが実は便利に感じる機会は多いと思ったからです。KY / PIXTA(ピクスタ)掃除の面を考えると、2か所のトイレ掃除は主婦にとっては仕事が増える事かもしれませんが、それ以上のメリットがあると感じたので2階のトイレは絶対必要でした。実際は1階のトイレだけでも生活はできるので、贅沢といえば贅沢ですが……。今は標準設備で2階トイレが付いている場合が多いと思うので、金銭的にはそんなに負担にはなりません。■ 2階トイレに手洗い器が必須だと思った理由我が家の場合、トイレだけでなく、手洗い器も必須だと感じました。理由はただ一つ、「トイレの後はちゃんと石鹸で手を洗ってほしいから!」です。だって、タンクの上の水栓じゃ石鹸使えないですよね?トイレの後は、ちゃんと石鹸で手を洗ってほしい!望むのはただそれだけです。A_Team / PIXTA(ピクスタ)なので、2階にトイレを作るなら「トイレ内に手洗い器もしくはトイレ付近に洗面所」は必須でした。でも、我が家の家の広さでは別で洗面所を設置するのは不可能。ということで、コンパクトな手洗い器を2階にも設置したわけです。■ 2階の手洗い器の使い道実際に住んでみて、2階トイレに手洗い器を付けていて本当に良かったと思っています。思った以上に使う場面が多いです!主な用途は……トイレの後の手洗いの時加湿器用の水をくむ時2階を拭き掃除する時とくに便利だと思うのは、加湿器用の水と掃除用の水が必要な時!reeangle / PIXTA(ピクスタ)1階にしか水栓がない場合、わざわざ1階から水を汲んで運ばなければいけません。寝る前に「あ!加湿器の水がない!」と思って1階まで水を汲みに降りるなんて……考えただけで面倒くさいっ!そんなわけで、2階の手洗い器は思った以上に大活躍してくれています。■ 2階に水栓があると何かと便利NavinTar / PIXTA(ピクスタ)こんな感じで、2階に手洗い器などの水栓があると思った以上に便利です!そして、逆に水栓がないと、思った以上に不便だと思います。住んでからプチストレスの原因になること間違いなしです!「トイレのタンク上の手洗いで十分!」ではなく、色々な状況を考えて手洗い器の設置を検討するのがおすすめです。(ayumi)
2018年10月22日「平屋建て」というと、シニア世代の方がのんびり住んでいるイメージではないでしょうか?しかし、今はモダンな平屋建てが増え、子育て世代や若い夫婦からも人気です。そこで今回は〔セキスイハイム東海〕の高柳店長に、平屋建てにするメリットやデメリット、モデルルーム見学で抑えるべきチェックポイントなどを教えてもらいました。いま子育て世代からもブームの「平屋建て」――「平屋建て=シニア」のイメージでしたが、いまは子育て世代からも人気があるようですね。高柳店長(以下、高柳さん):はい。最近は20代や30代のご夫婦も、平屋建てのモデルルームにご来場いただいています。そういった若い方から人気を集める要因の一つは、ワンフロアで掃除や洗濯など家事を完結できるからだと思います。それに、子どもが小さいうちは2階を子供部屋として使っていたとしても、大きくなればおそらく出ていくでしょう。自分たちも、足腰が悪くなれば2階に上がらなくなる。そうなれば「最初から2階はいらないね」という若い人が多いのも実情なんです。――平屋の良さはわかりました!では、あえてデメリットも教えていただけますか。高柳さん:平屋建てには2つ欠点があります。まず1つ目は、平屋だと2階の部分を全部1階にもってくるので、土地の広さが必要になること。2つ目は、坪単価が高くなってしまうこと。――なぜ平屋だと坪単価が高くなるのでしょう?高柳さん:坪単価を上げる要因は、家の土台の基礎と屋根。この2つが多いほど坪単価は高くなります。たとえば、床面積が同じ30坪の家でも、総2階になれば、1階で15坪、2Fで15坪を合計するため、基礎も屋根も半分ですみます。それに対して、平屋は30坪分まるまる基礎も屋根も必要になります。分譲地で総2階の建物が多いのは、割安で建てられるからなんですよ。――どのくらい坪単価は違うのでしょうか。高柳さん:坪単価でいうと、平屋の方が坪10万~15万円ほど高くなります。でも、坪数を落とせるので総額はあまり変わらないんですよ。というのも、実際の広さで比較すると、同じ30坪でも平屋の方が+5坪ほど広くなります。2階建ての場合は、2Fの廊下やトイレ、階段スペースがいりますが、平屋の場合はいりませんよね。だから、2階建ての広さと同じ感覚で平屋を建てるのであれば、25~26坪くらいに落とせるんです。そうなってくると、総額は、平屋でも2階建てでもあまり変わらない。「平屋建ては坪単価が高いから……」といって、最初からあきらめてしまうのはもったいなんです。平屋を賢く使いこなすアイデア――平屋住宅派!という人のために、知っておくと便利なアイデアなどを教えてください。高柳さん:平屋建てだと、2階がない分、吹き抜けや屋根裏を有効活用ができます。たとえば、吹き抜けで視線を広く見せるのもひとつの手。2階建てだと、上に部屋を作らなければならない分、空間も限られますからね。高柳さん:床下から高さ1.4m以下なら「2階」ではなく「中二階」の扱いになります。これだと部屋として換算されないため、固定資産税の対象になりません。――なるほど!屋根裏部分を閉じてしまえば、ただのデッドスペース。そこを賢く使いこなすことで、お得感も出ますね。モデルルーム見学で気をつけたいこと――モデルルームの見学をすると、ただただ内装の雰囲気が素敵で、「こんな家に住んでみたい!」という強い憧れをもちます。非日常感溢れる空間に、テンションも上がりっぱなし。そんなモデルルーム・マジックに惑わされないためにも、見学時はどこを気をつけるべきなのでしょうか。高柳さん:「家造り」は「構造作り」とも言われるように、まずはその家がどういった構造なのかちゃんと知ったうえで、話を進めるようにしましょう。内装は後でも変えられますが、唯一変えられないのは、構造(中身の部分)なんです。たとえば、この内装飽きたな……と思えば、20年後にでも変えられます。しかし、柱をぶちぬくなど構造部分を変えようとすると、大掛かりな工事になり、莫大な費用が発生してしまいます。――「わー!素敵」で選んでしまったら、あとで大変なことになりますね。高柳さん:はい。モデルルームが少々遠い場所にあっても、実際に足を運んで、担当者に家の構造を確認し、しっかり把握しておくことが重要です。高柳さん:それから、メンテナンス性も大切です。最初は安く住めるようでも、10年ごとに外壁の塗替えが必要だったり、屋根のメンテンスが必要だったりします。初めは少しお金がかかりますが、メンテナンスフリーの外壁や屋根を使っておけば、長い目で見て安上がりになる場合も多いんですよ。モデルルームを見学するときは、屋根や外壁のメンテナンス費用についても質問するようにしましょう。――ちなみに、平屋だと、メンテナンス費用も高くなるのでしょうか?高柳さん:外壁の塗替えをする場合、平屋は2階建てと違い「足場」がいりません。そうなると外壁の塗り替え自体は安くできますが、問題は屋根なんです。平屋はもともと屋根の量が多いので、屋根のメンテナンスコストが高くなります。メンテナンス費用は、外壁が大体1回100~150万、屋根が1回200~300万かかると言われているんですよ。さらに、ソーラーパネルをつけるなら、屋根の上にパネルを乗せるのか、屋根とソーラーが一体型になっている建物なのか、知っておく必要があります。ソーラーがのっていると、さらにメンテナンス費用がかかりますからね。特にソーラーパネルをつける場合は、最初からメンテナンスが必要ない屋根を選ぶことをオススメします。――他に気をつけたいポイントはありますか?高柳さん:子育て世代なら、平屋でも部屋数は欲しい。その場合、2階の子供部屋や寝室がすべて1階に集まるので、部屋数はどうしても多くなります。そうなると、場合によっては、キッチンから洗面室が遠くなり、料理をしながら洗濯をするのが難しくなることも……。高柳さん:家事動線が悪い場合は、あえて壁を抜いて通路を作り、キッチンから洗面所へのワープゾーンを作る場合もあります。モデルルームを見学する際には、家事動線がスムーズなのかも確認すると良いでしょう。まとめいかがでしたでしょうか?高柳さんがいるのは、静岡県内の総合住宅展示場内で唯一の平屋モデルルーム。落ち着いた雰囲気、かつ愛犬家との生活環境を重視してつくられた「愛犬家住宅」仕様になっており、平屋に興味がある方はもちろん、ワンちゃんネコちゃんと快適に暮らしたい方にもぴったりです。家造りに興味がある方は、ぜひ足を運んで、参考にしてみてください。●取材協力:セキスイハイム東海浜松「平屋の家」展示場●住所:浜松市南区青屋町400(SBSマイホームセンター内)●TEL:053-469-5113●営業時間:10:00~17:30※定休日はHPをご確認ください。●写真・文安藤美紀
2018年10月03日今回は建ぺい率と容積率についてご説明します。先日あるテレビ番組で、アンジャッシュの渡部建さんが女性タレントと一緒に一級建築士の自宅を訪問し、建築のプロが自身の家はどのような考えで設計したかをレポートするのを見ました。各分野に博学の渡部さんが共演者に容積率の知識を披露をすると女性タレントに「すごおーい!」と言われて、ドヤ顔するという演出が記憶に残っています。建ぺい率と容積率は不動産において基本中の基本といってよいもので、坪数と平米数の関係とともに筆者が不動産業界に転身した初日に習った知識です。■ 「建ぺい率」と「容積率」ってなに?一言でいうと土地面積の内でどのくらい建物に使えるかを示したのが建ぺい率、延床面積の上限を示したのが容積率です。YsPhoto / PIXTA(ピクスタ)例えば「面積100平米、建ぺい率60%、容積率200%」という土地に家を建てる場合、1階の床面積の上限が60平米で延べ床面積の上限が200平米です。そのためこのような土地では床面積が60平米の3階建ての家というのが最も無難です。ABC / PIXTA(ピクスタ)建ぺい率に関してはこれだけ知っていれば十分ですが、容積率についてはこれ以外にもいろいろと複雑な要素が絡んできます。■ 8階建てが建て替えで38階建てになった「新丸ビル」のカラクリ容積率は都市計画上で指定された用途地域に応じて上限が定められています。街並みというものをみていると一定のエリア内ではだいたい同じような建物が並んでいるのが通例で、周囲から突出したような建物というのはほとんど見ることがありません。これは容積率や高さ制限というような規制がかかっているからであり、逆に言うと突出したような建物があった場合、容積率で何らかの優遇措置を受けている事例が多いと思います。容積率が緩和されればそれだけ大きな建物を建てることができるようになります。東京駅の目の前にある地上38階建ての新丸ビルは昭和27年に建設された8階建ての旧丸ビルを建て替えたものですが、特例制度を利用して3階建てである東京駅赤レンガ駅舎の余った容積率を譲り受けるといった内容の緩和措置により誕生しています。YNS / PIXTA(ピクスタ)■ 容積率の計算から除外される「不算入」とは?家の大きさに文字通り直結するのが容積率ですが、「不算入」という例外措置がいくつかあり、不算入の認定を受けた場合は延床面積の計算から除外され、その分だけ使える空間が広がります。例えば住宅の天井裏は「高さが平均で1.4m以下」「直下階の床面積の50%以下」という条件を満たせば収納目的(居住用ではない)と認定されて延べ床面積から除外されます。kpw / PIXTA(ピクスタ)書斎や趣味の部屋、収納場所と使い方は様々ですが、このような空間があれば家の中は随分と広くなります(冒頭で触れたテレビ番組で渡部建さんがドヤ顔をしていたのはこの部分です)。イグのマスタ / PIXTA(ピクスタ)■ 「地上4階、地下5階」というようなマンションはなぜ出現した?もう一つ重要なものに「住宅地下室の容積不算入」というものがあります。住宅の用途として使用する地下室については、床面積の三分の一を容積率の計算から除外するというものですが、延べ床面積が販売住戸の数に直結するマンションにとってこれは重大なものがありました。夏夫 / PIXTA(ピクスタ)建築基準法では不算入の対象となる地下室を「その天井が地盤面からの高さ1m以下にあるもの」と定義しています。そのため例えば傾斜地に建てられた一見すると9階建てのマンションにおいて、一番上の地表面を地盤面とすれば「地上4階、地下5階」というような建物とすることが可能であり、延べ床面積の算定において大幅な優遇措置を受けることができます。■ 老朽化マンション増加に対する切り札でもある容積率老朽化したマンションの増加に比べて建て替えが一向に進んでおらず、今後大きな社会問題となることが確実視されていますが、この問題を解決するための切り札とされているのも容積率の緩和です。Rise / PIXTA(ピクスタ)老朽化したマンションを買い取った業者は別の場所で建てるマンションの容積率を上乗せすることを認めるという制度の導入を東京都が決定しました。買い取ったマンションを建て替える際に別の老朽化マンションを買い取れば、ここでも容積率の積み増しが可能となり、建て替え事業による利益が確保しやすくなります。これにより多くの業者に老朽化マンション建て替えへの参入を促し、ビリヤードのように玉突きで建て替えが進むことが期待されています。容積率がからむ様々な事項についてできるだけ簡単にご説明しましたがいかがだったでしょうか。これだけ知っていればあなたも十分にドヤ顔ができるかも!?
2018年10月02日筆者宅は狭小地に建てた3階建てで、コンパクトな造りです。そのため、何でも出しっぱなしにしていると、ただ雑然とした散らかった家になってしまいます。そうかといって、何でも仕舞いこんでしまうのも、不便ですよね。生活していく上でサッと取り出しせたり、サッと使える出しっぱなしOKアイテムは、インテリアに馴染むものだけに絞るのがオススメです。■ 出しっ放しでも綺麗に見せるインテリアのコツ、キッチンの場合キッチンの背面カウンターには、ポールを取り付けて鍋敷きやざるなどを、飾りながら引っ掛け収納をしています。北欧のキッチン雑貨を選んだり、鍋敷きの色を統一したり、天然素材を選択することでキッチンインテリアとしての役割も担っています。冷蔵庫の上には、掃除用のウエスとお菓子をカゴに入れて置いています。デザインの良いカゴを選ぶことでダイニングからキッチンを眺めたときの良いアクセントにもなっています。浄水器はブリタのカートリッジが設置可能なステルトン社のウォーターフィルタージャグを使用していて、常に出しっぱなしにしています。生ごみ入れには、野田琺瑯の容器を利用しています。どちらも機能的でデザインの良いところが気に入っていて長年愛用中です。■ 出しっ放しでも綺麗に見せるインテリアのコツ、リビング編リビングでは、デザインの良い収納アイテムを使うことで出しっぱなしを可能にしています。テレビのリモコンやティッシュなどは、大きめのカゴにまとめて入れています。真上まで来ると何が入っているかわかりますが、深さがあるので少し離れると中が見えません。多少カゴの中が雑然としても中が見えないので部屋が散らかった印象にならないところも気に入っています。ちょっと床を拭いたり、子ども達が手を拭いたりとサッとすぐに取り出す場所に置いておきたいウェットティッシュは、ウェットティッシュケースに入れています。インテリアに馴染むケースなので棚の上にポンと置きっぱなしでも違和感がありません。カラの状態でリビングに置いている頑丈なフエルト素材でできた北欧デザインのバスケットは、乾いた洗濯物やリビングに持ち込んだものをそれぞれの部屋に戻すときに重宝しています。ちなみにキッチンやリビングに置く出しっぱなしOKアイテムは、眺めていたくなるようなデザインの良いものに限定しています。程よくその家らしさの出るこだわりアイテムはインテリアの一部にもなり得るのです。
2018年09月11日古いものや質感のあるものが好きだったことから、リノベーションを計画した渡邉さん夫妻。友人の建築家、野﨑亮一さんに設計を依頼し、DIYでコストを抑えながら880万円でリノベーションしました(設計料、消費税、施主支給品別)。完成したのは雑貨やレコードなど、夫妻の好きなものがいつも近くにある住まいです。■ ライフスタイルに合わせて3フロアをゾーン分け物件探しは野崎さんサポートのもと、当初からリノベーション前提で検討。そして出会ったのが、名古屋市内に立つ築21年、鉄骨造3階建ての物件でした。立地や広さ、価格などが希望どおりで構造的にもしっかりとしていたこと、そして空間がシンプルでリノベーションがしやすそうだったことから購入を決意。購入時はリフォームが行われていなかった分、購入費を抑えられたのだそう。箱のようにシンプルな形が気に入ったこともあり、外観はほぼ既存のままいかしています。各フロアはそれぞれ約10坪。1階と2階は間取りを大きく変更し、1階にショップのディスプレイなどを手掛ける妻のアトリエ、2階に広いLDKをレイアウトしました。3階はコストバランスを考えて間取りをそのまま生かし、寝室や書斎を配置しましたが、「床をクルミの無垢材、壁を新たなクロスに貼り替えただけで雰囲気がずいぶん良くなりました」と夫。夫妻とは10年来の付き合いである建築家の野﨑さん。好きなものを熟知してくれているという信頼があったのに加え、野﨑さんの提案で好みの空間を雑誌からスクラップしたり、好きなカフェや雑貨ショップの雰囲気を写真で伝えたりしてイメージを共有しました。そして出てきたキーワードは、「素材感」や「経年変化による味わい」。床に杉足場板、1・2階の壁に漆喰を使うことを決め、さらにアトリエの漆喰塗りや床、建具などの塗装はコストダウンも兼ねて夫妻がDIYで行うことに。■ 間仕切り壁を取り払ってかなえた、広いアトリエとLDK細かく区切られていた1階は間仕切り壁を取り払って明るいアトリエに一新。妻のアイデアで鉄骨の間にガラス戸を設置し、緩やかに区切りました。将来、ドライフラワーなどのワークショップを開くことも考えているそう。アトリエ手前には、引越し後にDIYで製作した下駄箱を置いています。2階も廊下にあった壁を撤去し、広々としたLDKを実現しました。中央にアイランドキッチンを設けることで、ダイニング、キッチン、リビングを緩やかに区切っています。杉足場板で造作したアイランドキッチンは、簡単な食事やPC作業に便利なカウンターや収納も一体に。以前の2階の様子はこちら。以前のキッチンはシンプルなI型で、現在と反対側の壁に設置されていました。キッチンだけでなく、趣味のレコードや雑誌の収納棚や雑貨を飾る窓の木枠など、さまざまな造作家具を杉足場板で造作してイメージを統一。夫妻の希望だった「好きなモノに囲まれながらも、統一感のある空間」をかなえました。■ イメージを統一し、好きなもので埋めつくした住まいにくつろぎのリビングはキッチン奥の窓辺にレイアウト。「以前、旅先のホテルで座面が広く背もたれの低いソファを見かけてから、ずっと探していたんです。これは名古屋の家具ショップで見つけました」と夫妻。朝食はカウンターでとる一方、夕食はキッチン手前に置いたダイニングテーブルでゆっくりと過ごしています。2階の洗面台も造作し、実験用のボウルを採用しました。窓の前面は木枠で統一。小物などを飾るスペースとしても活躍します。ベイ杉の大きな玄関扉は、野﨑さんが設計したオーダーメイド。エントランスには夫妻共通の趣味である自転車をディスプレイ。壁を取り払って鉄骨の構造のみにすることで、奥のアトリエまで伸びやかに見渡せます。アトリエの手前までコンクリートの土間とし、内と外をつなぐ空間に。エントランス横には大容量のウォークインクロゼット。棚はDIYで設置し、下段にアウトドアの道具類を収納しています。1階にもトイレを配置。「DIYで塗った漆喰のコテ跡が味わい深く、気に入っています」と妻。好きなものを生かしながらDIYで手を加えることで、いっそう思い入れが深い住まいとなりました。もっと詳しく見たい方は、ぜひ『住まいの設計2018年5.6月号』も参考にしてみてくださいね。設計/のざき設計撮影/飯貝拓司【巻頭特集】自分らしいキッチン&くつろぎのバスルーム北欧スタイル、アジアンリゾート、モダンテイスト…理想のキッチンやバスルームスタイルは、十人十色。今号は、住まい手の希望に設計者を叶えた、4つのキッチンと4つのバスルームをご紹介します。「使い勝手にこだわったプロ仕様の土間キッチン」や「開放感と非日常感を味わう至高のリラックス空間のバスルーム」など、きっとあなたの好きなスタイルが見つかるはずです。
2018年08月16日住宅街を歩いていると、なんとなく2階建ての家が多いエリアだな、ここは3階建てが並んでいるな、と感じることはありませんか?また上の階の一部が斜めに切り取られたような形をしている家を見たことがある方もいるかもしれません。これは、建築基準法に基づいた高さの制限によるものです。いくらでも高い家を沢山建ててしまうと、日当たりや景観の問題が生じてしまいますよね。そこで、建物の高さを調整して、周辺の環境とのバランスをとるための制限が用途地域ごとに設けられているのです。今回は、第1種・2種低層住居専用地域に建つ2階建ての家を例に、4つの制限について解説していきます。家を持つときに目が向きがちなのは土地面積や立地かもしれませんが、この制限によって希望の階数の家が建たなくなる可能性もあります。きちんと確認して後悔のない土地探しをしてくださいね。■ 1.絶対高さ制限用途地域の第1種・2種低層住居専用地域では、絶対高さ制限によって建物の高さを10mまたは12m以下にしなくてはなりません。建物の高さとは、地面から家の一番高いところまでの垂直長さです。地方自治体が高度地区指定をしている場合は、そちらが優先されます。■ 2.道路斜線制限道路斜線制限とは、道路上空間の開放感を保つための規定です。敷地に対する前面道路の反対側の境界線から、住居系用途地域であれば1:1.25、その他は1:1.5の角度でできる斜線を、建物と敷地の間の後退距離と同じだけ道路境界から下がった位置から伸ばした線が、道路斜線です。その斜線がかからないように、内側に家を収めなければなりません。イラストでは、前面道路が1つの設定ですが、例えば角地などで2つの道路に面している場合はそれぞれの面で道路斜線を考えなければなりません。■ 3.隣地斜線制限隣地境界線から垂直に20mの線を引き、そこから1:1.25の角度でできる斜線が隣地斜線です。この斜線の内側に家を収めなければなりませんが、この制限は隣地境界線から垂直に20m引いた線から角度が発生するため、20m以下の住宅には影響がありません。■ 4.北側斜線制限北側斜線制限とは、日照・通風のため適用されている制限です。北側の隣地境界線から垂直に5mまたは10mの線を引き、1:1.25の角度でできる斜線が北側斜線です。この斜線の内側に家を収める必要があります。イラストでは、左側が真北の設定ですが、例えば家の形状に対し北方向が垂直ではない場合は、北方向に斜めに面している2面について制限がかかります。■ 仕組みを把握して理想の家づくりにつなげよう!ABC / PIXTA(ピクスタ)いかがでしたか。今回は、第1種・2種低層住居専用地域に建つ2階建ての家を取り上げましたが、例えば3階建ての家を検討しているとき、北側斜線制限によって、3階部分が大きく削れてしまい、構造上3階部分は成立しないということもあります。また、道路斜線制限では前面道路が狭いと受ける影響が大きくなりますが、道路側をバルコニーにすることで斜線を回避するなどのテクニックもあります。地域によって、規制の数字は異なりますが、仕組みをしっかり理解しておくことで、家づくりの担当者とも密度の濃い議論ができることでしょう。今後も、家づくりに役立つ豆知識を発信していきますので、ぜひチェックしてみてくださいね。
2018年08月15日実はすでにしれっと家が出来上がっていてしれっと住んでいる我が家です(笑)。出来上がってからのお話もまだまだたくさんあるのですが、今回は、我が家の家へのお金のかけ方で特に「削ったところ」に焦点を当てて書いていきたいと思います。これまで散々書いていたように、「土地にお金をかけたので上物にはあまりかけない方針」をベースに読み進めていってもらえればと思います。■ 使う頻度が低い場所にお金をかけるのはどうなのか?我が家はまず、思っていたよりお金がかかるねという理由から、打ち合わせの初期の段階でオプションリストから除外した場所があります。それは「ロフト(天井裏収納)」と「屋上(テラス含む)」。そもそも我が家の場合は「斜線規制にひっかかるため、あまり広いスペースを確保できない」という現状が前提にありました。もちろんどちらも「作ることは可能」だったのですが、わざわざ作るにしてはスぺースが小さい。かといって、その分値段が下がるわけではありません。例えばロフトを10畳作る予定が5畳になったからといって半額になるわけでもない、という現実。人が上に立つことに耐えうる場所を作るので、そこまで簡易的なものでもありませんものね。K.M.S.P. / PIXTA(ピクスタ)そしてもう一つ、「そのロフトにあがるためのはしごが常に視界に存在する」というストレスも想像できました。ひろーい家ならまだしも……はしご邪魔!絶対邪魔!!!そして思いました。「オフシーズンのものやイベントもの(キャンプ用品とか)のためのスペースになるであろう、日常ほとんど足を踏み入れない可能性が高い場所のために金銭的負担、視界的にも圧迫感を感じてまで作る必要あるのかな?」と。家にかけるお金のうち何パーセントまでなら「日常でない部分」にお金をかけられるかなと考えてみたんですけど、私が思うパーセンテージ分じゃロフトなんて作れませんでした。■ 物があふれたらどうしよう?でも収納は確かに大事。置くところがなくなってしまうくらい物が増えたらどうしよう?だったらどうしても必要になったその時に「近くでトランクルームを借りる」方がいいと感じました。お金を払ってまで物を置くのはどちらも同じなのに、毎月いくらか払ってトランクルームに、ということに抵抗を感じる人も多いようです。でも「空間的、視界的に日常生活を圧迫するものを家の中から追い出せる」けど「処分は出来ない」のならロフトよりトランクルームの方が私には魅力的に感じました。なにより「そこまでして保管したいか?」と物と真剣に向き合えますしね。CAN CAN / PIXTA(ピクスタ)あと私はそもそも「フタをしてしまえば見えない場所」を作ることにそもそも抵抗がありました。今流行りのミニマリストほどのストイックさには程遠いのですが、「今必要でないもの」「もう好きではなくなってしまったもの」を持ち続けるのがストレスなタイプではあります。捨てることにもストレスはあるのですが、本当はもう使っていないものたちなのに今、現在大切なものたちを圧迫してまで持っていたいものなのか?と考えることが年々増えているのです。なのでロフトのような場所に「とりあえず」置いたが最後、きっと「捨てるほどじゃないんだけど今はいらないし」みたいな扱いでずっとそこに鎮座すると思うんです。そんなもののために数十万、数百万かけたいか?と考えたとき……私は「絶対NO!」でした。あれば便利かもしれない、でもあれば便利くらいのものに日常生活でそんな大金かけませんよね?家という大きな買い物の場合は「その中では少ない金額」かもしれませんが、日常生活で「普段は使わないんだけどあったら便利だよねぇこういうバッグ」レベルのものに数十万円なんて出せますか?屋上も同じ理由で、我が家は夏の花火が近くで見える立地なのですが、365日中たった1日「あったらいいよね」な場所にそんな大金かけるのか?と言われたら…私はNOでした。もちろんあったら素敵だな、とは思うんです。ゆったり家の屋上から花火。うん素敵。マイケル / PIXTA(ピクスタ)でも、じゃあその日だけ特別に花火が見える素敵な場所でディナーなんてのはどうでしょう?な、なんて贅沢!!!そんなものすごい贅沢を感じるような行為も、屋上を作るくらいなら10回はできちゃうんですよ。屋上で見るなら自分でお料理運んだり椅子やテーブル用意したりするよね?屋上への階段も作らなきゃならないから三階の部屋が狭くなるよね?などなど、デメリットに目を向けてみることも大切。364日不必要になるかもしれない、それなりにメンテナンスしなきゃいけない場所に大金を投入するくらいなら、違うやり方でその夢を叶える方法も考えてみる。そしてその分のお金を、普段目にする場所や毎日使うキッチンのオプションにまわす方が私にとって「価値がある」と感じました。■ 私は大金持ちじゃない!大金持ちならどっちも作っていいと思うんです。ただ、「ここまで」と決めていたり「必要になったときのお金を残しておきたい」という家計状況なら「本当に必要な場所」に「本当に必要な内容」でお金を使いたいなぁと家づくりでよく感じました。簡単に買い替えがきかないからこそ「あとで必要になったらどうしよう」という不安にかられたりもしましたが、「自分にとって価値がある部分」「我が家のライフスタイルの傾向」を把握していれば、「ここは我が家に必要ないかも?」な場所も見えてくると思います。もちろん「屋上でBBQが我が家の夢!毎年10回はやっちゃうよー!」というライフスタイルなら屋上やテラスは必須だと思います。アウトドアが大好きで毎年必ず山に登る!なんて人には土間やロフトが必須かも。どの場所に使っても「お金はお金」なので、自分たちに一番価値のある部分のオプションに使いたいですよね。もし迷ったらパーセンテージで考えてみるのもおすすめですよ。2,000万円の家で100万円を占めるオプション=5%一年の5%って約18日。(ここではローン年数は無視してくださいね!)一年の18日分の住宅ローンを投入してでも欲しいオプションかな?なんて。なんとなく想像しやすくなりませんか?いろんな数字に置き換えてみるのもおすすめです!家族で海外旅行に行くより高いな、でもいいと思います。支払うまではすべて「同じ価値」のお金ですからね!
2018年07月04日戸建てを検討し始めてから、建売住宅もたくさん見にいきました。ですが、「ここだ!!!」と思った試しがありません。もちろん都心の小さい土地に建っている家なんだから、お城みたいな感動があるとは思っていませんでしたが、それにしてもひとつも感動がみつからないなぁ……なんて。(失礼)そして何軒か見るうちに、「私だったらこうするのに」という気持ちがムクムク。その気持ちが「戸建てなら絶対に注文住宅!!!」という流れになったキッカケでした。※【駅近・狭小地に木造3階建て建築中!】今までの記事を見てみる■ 住宅展示場よりも先に見るべきなのは…?注文住宅ってすっごく贅沢なことで、お金を惜しまないような人たちが選ぶんだろうなというイメージでした。値段を抑えたい、小さな戸建てを探している我が家には不釣り合いなものだとも思っていました。でも、建売住宅を見ていくうちにその気持ちは徐々に変わりました。確かに私はこだわりがある方だと思います。が、そのこだわりは「お金をかければ解決する種類のこだわりではない」と思っています。そりゃもちろん、広いリビングだって憧れるし、吹き抜けだって憧れるし、可能なら平屋に住みたいし……あぁ夢が膨らむ(笑)。とはいっても、「絶対かなえたい部分」がそこではなかった。私は贅沢がしたいとか豪華な家にしたいとかよりも「身の丈に合っていて生活がしやすい、自分が居心地がいい家」にしたいだけで、それは「土地が広くお金をかけないと叶えられない願い」ではなかったんです。お金が有り余っているなら、もちろんもっともっとやってみたかったことはあるし、建てたい家も変わってきたと思いますけど、私が本当に望んでいるのはそこではありませんでした。自分が本当に住みたい家ってどんな家なんだろう?それを手っ取り早く知るには、住宅展示場よりも先に「自分が購入できるであろう広さの土地に建ってる家」を何軒が見てみることだと思うのです。■ 10秒で「なし!」と判断した建売住宅も図面を見ただけでは、生活しているところをイマイチ想像できないのが現実。更地を見て広さを把握しても、実際に間取りまで想像するのは難しいですよね。豪華で広い住宅展示場を見にいくのではなく、自分が買えそうな家の広さを「体感」してみる方が私にとっては価値がありました。建売住宅を見るたび「…ハイ、なし。」とすぐに決めてしまってた私。(ひどいと10秒!)最初こそ色合いだったり普通すぎることだったりが不満なんだと思っていましたが、3軒目くらいではっきり見えてきたのが「どうしてこの間取りにしちゃうかなぁ?」と毎回自分が思っていることでした。■ 建売住宅ならではの「水回りを圧迫しての3LDK」がどうしてもイヤ!建売住宅は万人受けしやすいよう「普通に無難に」そして無駄なく上手にできていることが多いです。トモヤ / PIXTA(ピクスタ)※写真はイメージですただ、私はもともと「普通に無難に」があまり好きではないようです(笑)。洋服でもとにかく無難に、よりも「無難なスタイルにもひとくせ」や「ここは私らしく」だったりが大好きで、年齢に合ったベーシックなスタイルが好きなんだけど全部が全部うまくまとまっているのを自分が着るとどうも落ち着かない。全体的にシンプルでいいんだけど、私らしさや「一点集中!」な目を惹くものがあってほしい。それは家にも現れていたようで、どこを見ても「普通」。どうも惹かれない。ひとくせって、人によっては不必要だったり無駄なことだったりしますよね。私はそんな「無駄な」目を惹く愛せる部分を無意識にさがしていたようです。PHOTO NAOKI / PIXTA(ピクスタ)建売りで私が一番「無難なのはわかっているけど、ここがどうしてもイヤだ」と思ったのは「水回りを圧迫しての3LDK」という間取りでした。我が家が希望していた土地の大きさは、めいっぱい頑張っても駐車場をビルトインにして「3階建てで3LDK」という広さでした(ちなみに主人の希望で駐車場は必須案件)。私も賃貸などで家を探すときに間取りを入力して探していたのでわかるのですが、戸建て希望で子どもがいたりする世帯に一番ヒットするのは3LDKだと思います。世間で一般的なのは「子どもは2人」「ゆくゆくは子どもひとりひとりに個室を」=3LDKですよね。そこは否定しません。私だって3LDKは欲しいです。■ 建売住宅の3LDKは正解すぎて私には不向きPHOTO NAOKI / PIXTA(ピクスタ)3階建ての建売住宅で多いのは、トイレは1階のみ、もしくは2階のみ、の1つだけ。限りあるスペースがもったいないからです。1階に個室が1つ、2階がリビングダイニング、3階に2部屋という3LDK。土地に余裕がある場合はその限りではありませんでしたが、ほとんどの物件は1階の水回りが極狭でした。私はその家で暮らす自分を想像します。1階のお風呂と脱衣所と洗面台(さらには洗濯機)、毎日毎日、家族全員が使うであろうものの3つが狭苦しい場所になる、その代わり個室がつくれる。1階の個室は冬場は寒いだろうから、当分子どもが小さい我が家は誰かがそこで寝ることはないだろう。ということは1階の部屋は物置になってしまうんだろうなぁ。…なんてもったいない。子どもが帰宅してすぐにトイレに行きたいのにトイレは2階?トイレの後に手を洗うのは調理中のキッチンかもしれない。夜中にトイレに行きたくなった子ども、寝ぼけて落ちては大変と、どうせ母親の私がトイレまで付き合うのだろう。そういえば……私はつわりがひどくて毎晩トイレにこもっていたなぁ、もし2人目なんてことになったらリビングで寝るのだろうか?うーん。今より不便になる家に引っ越すメリットは?私はこんな不便な思いをしてまでの「3LDK」を望んではいませんでした。2LDKでもいい。その代わり、生活動線にゆとりが欲しい。これが「戸建てなら絶対注文住宅!」と我が家が豪語していた理由の第一位です。我が家は「水回りに余裕をもたせて」「トイレを1階と3階の2か所に」そして「主人のものが置けるスペースを1階に」を必須案件にしました。そしてそれがかなう建売住宅で、希望する立地と価格の物件に出会えなかった。なので土地を探し、注文住宅を建てたのです。「主人のものが置けるスペースを1階に」を熱望する理由はまた別の機会に書きたいと思います!※【駅近・狭小地に木造3階建て建築中!】今までの記事を見てみる
2018年04月20日筆者宅は3階建てで1フロアが約30平米前後です。2階部分にリビング・ダイニング、キッチン、洗面室、浴室を集約させたため、動線は良いのですが、すべてがコンパクトなつくりとなりました。憧れの広々としたアイランドキッチンとは無縁の筆者宅のキッチンですが、10年間使ってみて狭いキッチンの良さにいろいろ気づく事ができました。そこで今回は、狭いキッチンの使い方と収納法についてご紹介いたします。Olga Pink / PIXTA(ピクスタ)■ 動線抜群!たった2歩で事足りる「コンパクトキッチン」ご覧の通り、筆者宅のキッチンは、シンクから左に2歩行けば冷蔵庫から食材を取り出す事ができ、シンクから右に2歩行けばコンロで調理することができます。コンパクトなキッチンの最大のメリットは歩き回る必要がなく数歩ですべて事が足りるところです。また、食洗機から食器やカトラリーを収納している背面の引き出しも距離がとても近いので、食洗機にかけた食器類を元の場所に戻すのもカンタン。毎日のことなので、しまいやすさはとても重要ですよね。筆者の性格上、しまいにくくて少し離れた場所だと食器をそのままカウンターに置きっぱなしにする恐れがありましたが、ここまで近いと苦もなくしまえます。■ デッドスペースはゼロ!狭いからこそ収納は充実させる狭いキッチンでもすっきりと使いたかったので、収納は十分に取ることにしました。背面には造り付けの吊り戸棚とカウンターを設置しています。造り付けにした事で無駄なデッドスペースが生じず、天井から床まで効率的にキッチン用品を収納することができます。棚の中には、食器、グラス、ティーポット、ハンドミキサー、せいろ、お重などあらゆるキッチン用品を収納しています。造り付けの食器は地震の時も倒れる心配がなく、扉には耐震ラッチも付いているので安心です。実際に東日本大震災時は耐震ラッチが作動したおかげで、食器棚の中で数個の食器が倒れて割れるのみで済みました。カウンター内部は無印良品の収納用品を使い、水筒、お弁当箱、ペーパーナプキン、乾物、お茶類、保存容器を収納しています。こちらも造り付けのため、床から直接収納できるのでその分収納力はアップしており、ホームベーカリーやフードプロセッサーも収納が可能です。いかがでしたか?狭いキッチンでも必要か不要かをハッキリさせて使うモノだけを残し、収納力をアップ出来るような工夫をしたり、収納用品を見直すことで快適な空間を作る事ができます。最後までお読みいただきありがとうございました。
2018年04月04日家を建てるにあたって、とりあえず立地探しからスタートした我が家。土地が決まったら、次は工務店選びでした。これもなかなか一筋縄ではいきません。※【駅近・狭小地に木造3階建て建築中!】今までの記事を見てみる我が家が土地を決めた例の会社は、系列で工務店もやっているのですが、不信感でいっぱいの我が家。主人の両親から「家族が暮らす家なんだから信用できる会社じゃないとこわいんじゃない?」と言われ、大きな買い物なのにこの先ずっと「やめときゃよかったかなぁ……」なんて、ネガティブな気持ちを抱えて暮らしていくことになるかもしれないんだなぁ、とちょっとブルーに。家を建てたことのある先輩世代の言葉って、やっぱり参考になりますよね。「このおうちのここがとても気に入っていてね、ここに頼んでよかった」「こういう素材を使ったから丈夫だし地震のときもびくともしなかった」なんて聞いてしまうとお金がすべてとは思いたくないですが、お金をかけたぶん、そしてなにより信用して任せた分「安心感」につながっているという印象を受けました。■ 系列の工務店に依頼するとオトクになる特典はあるものの…実はその系列の工務店に頼むと、本来かかるはずの費用の一部がかからない特典めいたものがあったのです。でも、やっぱり不信感が強すぎる……。freeangle / PIXTA(ピクスタ)ネットを駆使して色々検索した結果、やっぱりというべきか、やっぱり悪評高い会社でした(苦笑)。もちろん「満足している」「いい対応をしてもらった」という意見もあり、「嫌な思いをした人」「不安が残った人」が書き込むことが多い傾向があるとは思っているので全部を鵜呑みにするのはよくないですが、やっぱり「あとから請求があった」「やたらオプションをつけさせようとする」「納期が遅れる」「アフターケアがそもそも来ない」なんていうのを読んでしまうと、それこそ「暮らし始めてからも不安が付きまとうのか」という気持ちになり、「安さは捨てがたいけど他も見てからにしよう」となりました。■ そもそも、工務店ってどうやって探すの?無知な私達は、まずは展示場に行き、いろんなメーカーや工務店のモデルルームを見て「こんなに素敵な建物が建てられる!」と夢を見たものの、かかる費用を聞いて撃沈……が結構多かったです。でも、いろいろとお話が聞けたことで「自分たちの家は木造にしよう」などの勉強にはなったものの、結局は予算に見合う工務店を探そうという結論に。■ テレビCMでもおなじみの相談カウンターに行った結果…展示場で工務店が決められなかった私達は、テレビCMでもおなじみの、工務店を紹介してくれるカウンターに出向くことに。そういえば結婚式を挙げる会場を決めるときにもこういうカウンターに来たなぁ……と(笑)。ふじよ / PIXTA(ピクスタ)素人だからこそこういうルートで紹介してもらえるのはとってもありがたかったし、知名度のある会社の紹介、という安心感もありました。知人から紹介してもらったものの、知名度のない小さな会社だったりした場合、ちょっと不安ですよね。私達の場合は建てるエリア土地の広さ予算本体のタイプ(木造、鉄筋等)をそのカウンターにお伝えして私達に合う候補の工務店さんを何社か紹介していただき、説明や話した時の印象等で決めていきました。「上物にあまりお金をかけない」と決めていた我が家は予算から会社を選びたかったので、その予算で建てた施工例のデータ等を見せてもらいました。おかげで「どれくらいお金がかかるんだろう」という不安感を持たずに済み、またカウンターから事前に「どういうジャンルに強い会社か」という会社の情報をもらえたことで、あとは直接話した感じの印象や安心感、お得意の口コミなんかで「派手さより信頼できる人たちかどうか」「私達の予算をちゃんと考えて予算内で提案してくださるかどうか」を重要視することにしました。結果、担当さんの人柄も良く、真面目な雰囲気でそのエリアに強く、木造三階建てに慣れているという工務店にお願いする運びになりました。■ 工務店によって得意分野、契約しているメーカーが違うので事前に確認をもし、この食洗器を入れたい、キッチンは絶対このメーカーの、といった強い希望があるなら工務店探しの段階で絶対に先方に確認しておいた方がいいと思います!契約前なので、「え、オプション料金がかかるの?」「そもそもそのメーカーは使ったことがない」なんて事態に陥らずに済みます。ここ、結構大事ですので検討中の段階だからこそ遠慮せずたくさん聞きましょう!メーカーを変えるだけでオプションの場合、クオリティは同レベルでも費用が全然違うので、もし希望するメーカーが標準仕様だった場合、そこでかからなかったお金を他に回すこともできますよ!※【駅近・狭小地に木造3階建て建築中!】今までの記事を見てみる
2018年03月28日最近、賃貸から新築一戸建てに住み替えた東京都23区内にお住まいのNさん(40代)。小学生以上のお子さんをお持ちの方なら誰もが悩む「学区」が今回の住み替えの大きなポイントでした。学区内での住み替えについて伺いました。「年の離れた姉妹」にそれぞれあった生活スタイルをNさんは二人姉妹のママ。2人のお子さんは中学生と小学生低学年と「年が離れた姉妹」です。「住み替えを考え始めたのは、上の子が中学生になって、下の子と生活時間が変わったことから。中学生の寝る時間と小学生低学年の寝る時間が全然違う、さらに上の子も一人の時間が必要になってきた。そこで姉妹一人一人に部屋をあたえたいと住み替えを考え始めました」しかし、すでに地元の小学校、中学校に通う姉妹。遠方に引っ越すと「転校」がともないます。そのため「学区内」にこだわったNさん。「まだまだ本格的に引っ越そうなんて思っていなくて、なんとなく学区内の新築から中古のマンションから一戸建てまで見て回るということをしていました」結果、見つけた家はすでにできあがっていた新築分譲一戸建て。住んでいた賃貸一戸建ての目と鼻の先にあるものの、普段使わない道だったこともあり「まったく建てていることを知らなかった」と笑います。学区内引っ越しは負担が少なくすぐに「ベスト」に距離にして数百メートルしか離れていない新築一戸建てを偶然みつけたNさん一家。部屋の間取りは、家族全員が一人部屋を持て、家族全員で集える広いリビングダイニングがある理想的な間取りでした。「それまでぼんやりしか想像していなかった住み替えが一気に加速してあれよあれよと進んでいきました。子どもたちも転校することなく、通学時間もほとんど変わらない。親も仕事場からの距離も買い物する場所も変わらない。すぐに普段の生活に戻れました」学区内引っ越しは、区役所への届け出なども住所変更ほどで特に大きな手続きもなく楽だったそう。そのスピード感のある新築物件の購入のもうひとつの決定打は──、「やっぱりマンションより一戸建てだったことでしょうか。夫も私も一戸建てが当たり前の地域で生まれ育っているのでマンションには少し抵抗があったのかも。条件がほぼ当てはまる新築物件がそばで見つかったことで、購入しない理由がなくなりました」一人部屋を持って「自立心」が芽生えた子供たち学区内引っ越しをし、転校もなく落ち着いた生活をそのままスライドできた姉妹に、現在の「一人部屋」をもらった気持ちを伺いました。まずは、小学生の妹さんから。「部屋を自分のすきなように変えられて、お姉ちゃんの邪魔にならないので友だちが自由に呼べるのも嬉しいです。姉妹ケンカも減りました。一人で寝るのはちょっと怖いけれど……」とかわいらしい思いを聞かせてくれました。中学生のお姉さんは、「一人で過ごせる時間ができたので精神的に楽になりました。家族ともめた時も確実に一人になれる場所があるので助かります。その反面、部屋の自己管理は結構難しいなぁと思っています」とのこと。やはり、年の離れた兄弟姉妹は、生活スタイルだけでなく「部屋の使い方」も違っています。姉妹は一人部屋が与えられたことで、それぞれが自立しようとしているのを感じました。デメリットなしの「賃貸の身軽な環境」も捨てがたかった今回の学区内住み替えには「メリットしかない」というNさんですが、一言付け加えました。「あえてデメリットがあるとするなら〈賃貸ならではの身軽な環境〉がなくなったこと。今までは飽きたら別の場所に引っ越せる身軽さがあり、家のメンテナンスも家主さん任せ、と精神的にも楽でした。それが無くなった責任の重さは感じています」賃貸の良さを懐かしみつつも、新しい家での生活からはメリットしか聞かれなかったNさんの住み替え話。学区内の新築への住み替えは「家族全員がベストな生活になる」素晴らしい選択だったようです。※画像はイメージです合わせて読みたい住まい購入の決め手夫実家そばの新築マンション!購入決意した「意外な理由」とは妻の実家から徒歩8分の近居に家購入はメリットしかない新築マンション購入の決め手は横長リビングの間取り!妥協点は日当たりでした【体験談】新築マンション購入の決め手!デメリットもプラス思考で住めば都
2018年03月16日タワーマンションとは?タワーマンションとは、字のごとく通常のマンションよりも高いマンションのことをいいます。通常のマンションと異なる点は、以下の2つです。「階層」が段違い!タワーマンションは、通常20階建て以上のマンションのことをいいます。「高さ」そのものが違う!外観上でもわかるように、タワーマンションは通常のマンションに比べて段違いに高いです。一般的には「高さ60m以上」もしくは「高さ100m以上(環境アセスメント条例)」のものを、タワーマンションと認められています。※環境アセスメント条令・・・・環境に著しい影響を及ぼすおそれがある大規模な開発事業について、環境の保全上の見地から環境アセスメントと事後調査の手続について、条例により規定したもののこと一般のマンションとはまるで異なるタワーマンションですが、どのような魅力があるのでしょうか。おそらく、マンションからの眺望を想像された方も多いはず。しかしそれだけにとどまらないタワーマンションの魅力をご紹介!タワーマンションの魅力24時間のフロントコンシェルジュが、ホテルと同様のサービスをしてくれるゲストルームの貸出しがある(友人や家族など)ジムやプールなどの施設を利用できる高層の利点を活かし、ナイトプールやパーティールームなどの時間貸し施設を利用できる、などタワーマンションには、一般のマンションにはない施設やサービスがあります。また内装もシティホテルのような豪華なものとなっています。デメリットはあるの?一般のタワーマンションと比べて、ホテルと同様の豪華さ・サービスがメリットといえるタワーマンションですが、以下のようなデメリットもあると考えられます。デメリット敷地が広い分、侵入もされやすい部屋によっては、敷地から自室まで5分以上かかるなんて話もあります。マンション自体の敷地が広い分、侵入も容易であり、都内であれば治安が気がかりとなります。眺望は良いが、プライバシーの確保が懸念良好な眺めを保つ窓設計となっていますが、逆にいえばプライバシーに影響があるともいえます。高層だからとはいえ、どこからみられているかはわからないものです。サービスコストによる「管理」上の労力同じタワーマンションの部屋とはいえ、階数によって受けるサービスは異なってくる場合があります。当然、サービスの幅が広い分、コストもかかるでしょう。多くの人が同じ建物内に違った費用で住むとなると、管理上の労力バランスが異なってくることが考えられます。緊急避難が困難である地震や火災が起きた場合に、エレベーターが停止もしくは住居人で混雑する場合が考えられます。特に上階の住居人は、避難が困難であるといえます。こうしてみると、デメリットも多いように感じますね。後々後悔しないよう、メリットだけでなくデメリットも考慮したうえで、入居(購入)を検討するのがベターでしょう。
2017年11月29日