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LITALICOジュニアスタンダードコースってどんなところ?スタンダードコースは、通所受給者証を使って通うコースで、児童発達支援と放課後等デイサービスの2種類があります。児童発達支援は0歳から年長のお子さま、放課後等デイサービスは小学1年生から高校3年生のお子さまが対象です。スタンダードコースでは、約10人の子どもたちが集団で過ごす場と個別指導を組み合わせ、合計3時間程度の支援を行っています。(※)体験授業では、豊富な知識や経験に基づき、一人ひとりに合わせて楽しく学べるような工夫がされた授業を実際に体験できます。※お子さまの状況やニーズに応じて1.5時間などでの支援提供もしております。詳しくはお問い合せ時におたずねください体験授業を受けてくれるBくんのプロフィールUpload By 発達ナビ編集部今回体験授業を受けるのは、保育園に通う5歳の男の子Bくんです。保育園で友達に手を出してしまうことがあり、「友達と仲良く過ごせるようになってほしい」というご両親の願いから、LITALICOジュニアスタンダードコース・児童発達支援の体験に参加しました。事前にお母さまにお話を伺いました。「Bは手が出てしまうこと以外にも、眠くなると怒りっぽくなったり、落ち着きがないところもあるんです」LITALICOジュニアスタンダードコースの体験授業では具体的にどんなことを体験できるのか、Bくんの1日体験の様子をご紹介します。丁寧なヒアリングでお悩み相談しながら困りの整理ができる!体験授業を申し込むと教室から電話があり、体験授業の内容やその後の流れについて説明があります。その後、お子さまの困りごとを先生が丁寧にヒアリングします(教室やご状況によって、当日行われる場合もあります)。「好きなことがたくさんあって素敵ですね!注意が逸れやすいのは、興味の幅が広いということも関係してるかもしれませんね」「お母さまに手が出やすいのも、お母さまやお家が安心できる場だからこその行動なのかなと思いました。お母さまが汲み取ってくれるからBくんも安心できるんでしょうね」などお子さまのいい面をしっかり分析しているのも印象的でした。お母さまに事前の面談について、感想を聞いてみました。「先生がいろんな視点から質問してくださって、質問の内容もとても的確で、あ、そういえばそうだなと答えながら思うこともたくさんありました」「いろんなお子さまを見てきたから分かるんだろうなと、先生の専門性の高さを感じました。とにかく話していてとても安心感がありました」先生にも、事前の面談でどんなことをヒアリングされているのか聞いてみました。「困りごとは同じでも、その要因はお子さまによってそれぞれです。ですので、より細かくお話を聞きながら、考えられるたくさんの要因のうち、お子さまの困難さはどこにあるのか、困りごとの根底にある要因を見立てていきます」「お子さまはこういう様子がありそうなので、体験ではこういうところを見ていきましょう」というように体験授業で見るべきポイントを提示してもらえるので、お母さまも一緒の目線で体験授業を見られるところもいいですね。Upload By 発達ナビ編集部体験授業では、LITALICOジュニア川崎駅前教室を訪問しました。教室は明るくカラフルで、子どもたちの賑やかな声が聞こえてきます。お母さまと教室にやってきたBくん。数日前まで風邪をひいていたこともあり、体調が万全ではないとのこと。お母さまと離れるのが難しく、予定していた集団授業のお部屋に入ることができません。そこで、先生はタブレットで集団のお部屋の様子を見ることを提案。「ここでお友達がどんなことしてるか見られるんだよ」とタブレットを見せると興味津々のBくん。徐々に笑顔が見られました。先生とほかの教室を一緒に探検したり、好きなもののお話をしていくうちに、Bくんは先生とすっかり打ち解けていました。集団授業に入って体験を受けられる予定でしたが、予定を変更し、このまま個別で行われることに。最初お母さまと離れることが難しかったBくんも、先生と2人でお部屋で過ごすことができました!先生から好きなものを聞かれると答えたり、「これはどうかな?」「こうやってあそぼう!」と自分からもたくさんお話しする姿がみられました。Upload By 発達ナビ編集部このように、お子さまの状況に合わせて、体験できるのは安心ですね。最初はお母さまと離れるのも難しそうだったBくんがここまで楽しそうに過ごせたのはなぜなのか、先生に伺いました。「体験授業は、お子さまのご様子をみて、必要に応じて形を変えて行うこともあります。それは、まずはお子さまに楽しかったなと思ってもらうことを目的にしているからです。そのために、お子さまの興味がありそうなおもちゃを用意したり、お子さまが興味をもたれたものは積極的に共感したりしながら、まずは『楽しい場所だ!』『褒めてくれる人だ!』と思ってもらえるような関わりを意識しています」Upload By 発達ナビ編集部また、Bくんとあそびながらも、Bくんの得意不得意や事前の見立てがあっているかなどを見ながら授業をしていたという先生。先生は具体的にどんなことをされていたのでしょうか。「隣の部屋の音を気にしていたり、先生の持っているシートのにおいを気にしたりしている様子から、もしかしたら感覚の過敏さがあるのかもしれないなと思いました」「また、力いっぱいおもちゃを押す様子があったので、力のコントロールに苦手さがあるのかなと感じたので、『そっと押すとうまくできるよ』と声をかけると、上手に力をコントロールできていました。このように、お子さまの困りごとはどんなところにあるのか、どういう声かけをしたら解消できそうかを考えながら接していました」お子さまも楽しく過ごせている状態で、困りごとの根底にあるもの、どういう支援や関わり方でそれが解消できそうかを専門的な視点で見てもらえるのはうれしいですね。また、先生があそびの中でも、「教えてくれてありがとう」「先生のお話聞いてくれてありがとう」などBくんの一つひとつの行動を見逃さず褒めている姿が印象的でした。※クリックするとLITALICOジュニアのお問い合わせページに遷移しますお子さまの困りの要因や関わり方のアドバイスを教えてもらえる!Upload By 発達ナビ編集部体験中の様子はリアルタイムで視聴でき、体験後には授業中のお子さまの様子や課題の解決方法についてフィードバックがあります。Bくんの体験授業について、先生からは「人も場所もはじめてのところで見通しが立っていなかった中、2、30分でこれだけ慣れることができたので、事前に情報が分かるとBくんのいいところがたくさん発揮できるかもしれないですね」とお話が。的確なアドバイスをしてくれる先生に、お母さまから就学に向けての相談も。「園での様子があまり分からないんですが、手が出てしまうという話は聞いているので、小学校入学に向けて今のままで大丈夫か心配で……」先生からは「通う小学校を事前に見ておいたり、学校の先生と面談をしておくと、どんなことをするところかが分かって安心して通えるかもしれないですね」とアドバイス。また、「園の様子が分からないと不安ですよね。LITALICOジュニアでは保育所等訪問支援を行っているので、指導員が園を訪問してお子さまの様子を見てお母さまに共有したり、LITALICOジュニアでうまくいった方法を園の先生と共有したり、連携することもできるので、一緒に活用されるのもおすすめです」と、実際のサービスを使ったときのイメージがわくような説明も。体験授業のあとにどんなお話をされているのか先生からもお話を伺いました。「体験授業後は授業の振り返りとともに、どういうスキルを獲得すれば過ごしやすくなるかといった個の側面と、どんなふうに環境面を整えてあげれば過ごしやすくなるかといった環境の側面のそれぞれで、LITALICOジュニアではどんなアプローチができそうかといったことをお話ししています」Upload By 発達ナビ編集部体験授業後、お母さまにお話を伺いました。「とにかく褒めて、とにかく居心地のいい居場所をつくることに全力を尽くしてくれる先生がいるという安心感がありました。園で怒られて、家でもうまくいかなかった日も、ここでは絶対に褒めてもらえるということが、子どもの力になるんじゃないかと思いました。体験授業の1回だけでも、子どもが成功を実感して積み重ねていける『成功体験の場』だと実感できました!」「ほかにも、『感覚の過敏さはありますか?』という質問をされたのですが、まさに聴覚過敏気味なのが気になっていたので、『体験の時間だけで見抜くのがすごい!プロの目ってこういうことだ!』と実感しました」Bくんは体験が終わってからも、「次はいつ行く?」とお母さまにLITALICOジュニアのパンフレットを持ってきてくれるそうです。Bくんが楽しめた様子が伝わってきますね!「子どももとっても楽しかったみたいです。親としては子どもが楽しいというのであれば、じゃあ行こうか!という気持ちになりますね!」とお母さまもお話しされていました。LITALICOジュニアスタンダードコースは、お子さまが楽しみながら学べる場所。教室によってはすぐに体験授業を受けられる場所もあるそうなので、気になった方はまずは問い合わせてみてはいかがでしょうか。先生に聞く!体験授業を受けると何が分かる?Upload By 発達ナビ編集部LITALICOジュニアスタンダードコースの体験授業を受けるとどんなことが分かるのか改めて先生にお伺いしました。「LITALICOジュニアスタンダードコースの体験授業は、実際の集団指導を受けられるので通ってからの様子がイメージしやすいと思います。また、体験授業後には、指導員の視点から見たお子さまの様子をお伝えしているので、お子さまの新たな強みを知ることができるかもしれません」「そして、今後どうすればいいか手立てが分かるので、やるべきことの整理がしやすくなるのも体験をおすすめするポイントですね」Upload By 発達ナビ編集部何をするべきか、今どのステップにいるのかが分かるだけでも体験授業を受ける価値がありそうですね!保護者さまのお話を聞く先生のあたたかい雰囲気がとても印象的ですが、どんな気持ちでご家族を迎えられているのか聞いてみました。「保護者さまは、さまざまな困りごとやお悩みがあって相談してくださっていると思うので、まずはその気持ちをしっかり受け止めたいなと思っています。そして、違う側面から見るとお子さまの素敵な強みを知っていただき、お子さまと関わる時のヒントになればいいなと思っています 」「たとえば、園などの集団の中では『できていない』と判断されてしまっても、大人になって広い世界に出たときには、お子さまの強みが発揮されることもあります」「LITALICOジュニアでは、困りごとを解消するために必要なスキルの獲得をサポートしているのと同時に、お子さまの強みを伸ばすことも心がけています。お子さまには強みを伸ばしながら、いずれはお子さま自身が自分のもっている強みを理解して発信できるようになるといいなと思っていますし、保護者さまにもお子さまの強みにあらためて気づいてもらえたらいいなと思っています」お子さまが楽しみながら必要なスキルを獲得できるように、指導員みんなでご家族をサポートしてくれるスタンダードコース。気になった方はまずはお問い合わせしてみるのがおすすめです。LITALICOジュニアスタンダードコースの体験授業のまとめ教室ではどんな授業を受けられるのか、利用したときの様子をイメージできるLITALICOジュニアスタンダードコースの体験授業。集団生活の中での困りごとや、学習でのつまずきなど、お子さま一人ひとりの課題に合わせて集団指導と個別指導を受けられるスタンダードコースの体験授業であれば、お子さまの困りごとの解決の糸口が見つかるかもしれません!体験授業では、利用するにあたっての疑問点や不安なことも相談することができるので、気になった方は問い合わせてみてはいかがでしょうか。※この記事は、LITALICOジュニアに掲載のコラムの一部を変更し、構成しています※クリックするとLITALICOジュニアのお問い合わせページに遷移します
2024年07月22日発達ナビ連載ライター陣や読者の皆さんにお寄せいただいた、面談や学校からの呼び出しにまつわるエピソードをご紹介!定期テストなども終わり、多くの学校で担任の先生との面談が始まる時期となりました。「先生に子どもの特性を伝える際に何を用意したらいいの?」「合理的配慮、どこまでお願いできる?」「学校でトラブルなどを起こしていたらどうしよう……」など悩む保護者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、発達ナビ連載ライター陣や読者の皆さんにお寄せいただいた、面談や学校からの呼び出しにまつわるエピソードをご紹介します。持ち物や相談の内容など、ぜひ参考にしてみてくださいね。発達ナビみんなのアンケート「連載ライターのみなさんに聞いてみたいこと大募集!」に寄せられた「小学校・中学校の先生に理解を得るコツ」の声。このコラムでは丸山さとこさんとコウさんの小学校から中学校にかけての合理的配慮についての実体験をつづっていただきました。幼児の頃から動きが大きくて速かった次女のリスミーさん。小学校の三者面談でリスミーさんが授業中に走り回っていることを知らされ……!先生に教えてもらった「落ち着くための工夫」とは?ASD(自閉スペクトラム症)のある小学校2年生のミミさん。お母さまのtaekoさんは面談で担任の先生からミミさんの友達トラブルについてのお話を聞きます。「指摘グセ」のあるミミさんに対してtaekoさんの考えは……。発達障害のある息子のコウさんが中学に入学して1ヶ月、担任の先生と二者面談を行った丸山さとこさん。診断書とWISCの検査報告書をコピーして挑んだ面談の結果は……。面談で心がけたこと、新生活後すぐに面談をする意義など参考になるお話がたくさん盛り込まれています。ASD(自閉スペクトラム症)のあるミミさん。小学校1年生から2年生への進級にあたって先生が変わると知ったお母さまのtaekoさんが新しい担任の先生に連携したものとは?また、「宿題がつらい」と悩むミミさんについて面談で相談すると……。小学校6年でSLD/LD(限局性学習症/学習障害)グレーゾーンと診断を受けたひらたともみさんの息子さん。中学3年生、夏の三者面談で高校進学について先生から聞かされたのは「母の知らない息子の頑張り」で……!中学受験をし、中堅の私立中学に進学したあっきーさんの息子さん。ある日突然、学校から呼び出しを受け、向かうとそこには担任、学年主任、副校長などの面々がずらり……息子さんの起こした「ある事件」で停学処分、さらには退学の危機にまで……!?ASD(自閉スペクトラム症)のあるまゆんさんの息子の太郎さん。行き渋りなどはまったくなかったものの、小学生のころは体調不良で学校から急な呼び出しがかかることがたびたびあったそうです。気になって小児科を受診すると……。その他関連コラムはこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2024年07月20日LITALICO発達特性検査の結果をヒントにLITALICO発達特性検査は、保護者の方がお子さまについての質問にスマートフォンやパソコンから回答することで、お子さまの特性や困っていることが分かるオンラインの検査です。検査について知りたい方はこちらをご覧ください。LITALICO発達特性検査の結果では、お子さまの特性に合わせて取り組みやすい対応方法も紹介されます。ご家庭や園・学校などで、おすすめされているサポートを試すことで、困りごとが軽減される可能性があります。そこで、この記事では検査結果を使って対応方法を試す方法について、Q&A形式でお答えします。うまくいかない場合の解決法など、検査結果の使い方に関する疑問を解消し、お子さまの対応や特性理解に活かすためのヒントとしてお使いください。Q.検査結果を受けて、まずは何をすればいいでしょうか?検査結果が出たら、まずは以下の3つを試してみましょう。周囲の人にとっての「困った行動」が、実は本人自身もどうしていいか分からない「本人が困った結果の行動」である場合があります。例)欲しいものを言葉で伝えることができずに、保護者の手を引っ張ってその場まで連れて行くなどまた、保護者や周りの人が「やめてほしい行動」「意味がない行動」と思っていても、本人にとっては必要のある行動だという場合もあります。例)筋力が弱く、姿勢を保てないために、寝そべりながら宿題をするなど特性やそれに関連した行動がなぜ現れるかを理解すると、解決法を一緒に考え、困っていることを減らしたり、適応的な方法に置き換えていくこともできます。また、「困った行動」ではなく「特性による行動」として、周囲の理解を得やすくなるかもしれません。検査結果レポートの「サポートの方向性」の中から、お子さまに合いそうで、できそうな方法からやってみるのがポイントです。「試しやすい」のタグがついているものがあれば、はじめに取り組んでみてください。基本となるサポート方法や、まずは取り組みやすいサポート方法を示しています。ほかにも、お子さまの特性や困りごとに対応して複数のサポート方法が提示されますが、すべてを一度に始めなくても大丈夫です。お子さまに合いそうなもの、できそうなものから順番に試してみるといいでしょう。一つの方法が合わなくても、そのときは別の方法を試してみましょう。検査結果を周りの人と共有することで、お子さまへの一貫した接し方につながります。お子さまにとって、取り組みやすく失敗しにくい方法や環境があり、それを繰り返すことで習慣化できれば、困りごとは軽減されていくでしょう。そのために、特性や本人に合った方法を本人や家族、園や学校などの周りの人と共有することが必要になってきます。また、LITALICO発達特性検査は保護者の方の視点での回答に基づく検査です。保護者の方と関係者で見立てが異なる場合や、環境によってお子さまの困りや特性の現れ方が異なる場合もあります。「家庭ではこのような困りがあり、この方法でうまくいきました」「学校ではその点は困っている様子がありませんが、こういう場合には困ることがあるようです」など、園や学校、専門家との相談などで結果を共有し、話し合うきっかけにすることで、別の情報やサポートのヒントが得られることもあります。相談や対応方法を試す際などに、検査結果を周りの人と共有するためのツールとしてご活用ください。Q.サポートを試してもうまくいかない場合はどうしたらいいでしょうか?検査結果レポートの「サポートの方向性」では、基本的にはお子さまの特性や年齢に合わせ、比較的うまくいきやすい方法が表示されています。ですが、お子さまの状況や環境、またほかの特性や要因が影響している場合などもあるため、表示された方法がそのまますべてうまくいくとは限りません。お子さまの場合はどう当てはめたらうまくいきそうか調整をしてみましょう。例えば、課題の難易度や取り組む時間、内容などをカスタマイズしたり、お子さまに合うように試してみてください。検査結果を参考にしながら、本人が困っていることや状況に合わせて工夫や調整をしてみましょう。「サポートの方向性」の例示そのままではうまくいかない場合でも、以下のような工夫でうまくいくようになることもあります。・好きなものや取り組みやすいもの、ご褒美でモチベーションをあげる例)着替えのあとでジュースを飲めるようにスケジュールを示す・本人に分かりやすい言葉や方法で伝える例)「早くして」と注意する代わりに、時計を示して「短い針が6になるまでにやってね」と具体的な指示に変更するこのほかにも、課題の難易度や取り組む時間を調整する、スモールステップで段階に分けて取り組む、本人に合う道具や環境を探すなどの工夫もできます。タイミングがいいときや慣れることによってうまくできるようになったり、調子がいいときにうまくいく場合もあります。どのようなきっかけや状況があると困りごとが現れるかや、どのようなときにうまくいくかなど、お子さまの様子を観察することもポイントです。カスタマイズできるところがないか、何度か試してみるといいでしょう。サポートは一つだけではなく、いくつか試して本人に合う方法を探していくといいでしょう。うまくいかない場合は、特定のやり方にこだわらず別のサポートも試してみてください。対応方法を試してもうまくいかないときや、何らかの理由で試すことができない場合、無理に取り組んでお子さまや保護者の方がつらくなる場合は、家庭で抱え込まず、専門家に相談するのも大切です。「やり方を工夫する」ことについて、カスタマイズの方法を専門家や周囲の関係者と相談するのもいい方法です。相談支援や児童発達支援、医療機関など、園・学校以外の機関も含めて相談していきましょう。以下の記事で相談や連携ができる機関を紹介しています。お子さまのことを考えて、試行錯誤する中で疲れてしまう保護者の方もいることと思います。お子さまと向き合うのがしんどくなってしまったり、心身に不調が現れたりしたときには、保護者の方自身のサポートや負担を軽くする方法を検討してみてください。Q.困っていることが変わってきました。どうしたらいいでしょうか?以前検査した時から困りごとの様子が変わったり、新しい困りごとが出てきたり、対応方法がうまくいかなくなることがあります。同じ特性があっても、状況や環境が変わったり、お子さまの発達や成長によって変化することによるものかもしれません。逆に、本人に合った対応をすることで、困りごと自体がなくなっていくこともあります。特に幼児期の場合は、発達による変化も大きい時期です。・入園や入学などの環境の変化・ストレスや体調の影響・発達や成長による変化・要求されるスキルの変化などその際には、変化した状況に応じて、サポート方法も調整できることがないか試したり、新たに現れた困りごとに合わせたサポートをしたりすることも検討しましょう。検査結果では、困りごとや年齢に応じた検査結果が表示されますので、LITALICO発達特性検査を定期的に受検することで、子どもの発達の記録として残していくことも可能です。Q.医療機関やほかの検査では指摘や診断をされませんでした。その場合でも子どもへのサポートをすべきでしょうか?診断がない場合、サポートは不要である、ということではありません。医療機関では、疾患や障害の有無を医学的な診断基準と照らし合わせて判断します。そのため、特性があっても基準を満たさない場合などには診断されない場合もあります。ほかの検査や医療機関で指摘や診断をされなかった場合でも、困りごとが生じたり、特性に合わせたサポートが必要になることは多いと言えます。医療機関で診断されなかった場合には、公的な支援や医療的なサポートにつながりにくい場合もあるかもしれません。そのような場合に、本人や周りの人が困りを感じているときには、LITALICO発達特性検査で得られた結果をもとに、サポートを試すことでうまくいく方法が見つかる可能性があります。また、児童発達支援や放課後等デイサービスなど公的な支援の中には、診断がなくても支援の必要が認められれば利用できるケースもあります。診断の有無にかかわらず、本人や周りの人が困っていることにフォーカスし、本人の特性に合わせた対応方法を探すために、LITALICO発達特性検査の検査結果をぜひ活用し、サポートをしてください。また、医療機関では確定診断までに何度か経過や様子を見るなど、すぐに診断されないケースもあります。そのような場合にも、特性を理解し早期にサポートを開始することが重要です。Q.困りの強さや困りごとの分類などは、どのように理解すればいいでしょうか?LITALICO発達特性検査の検査結果は、年齢群・性別ごとの定型発達母集団データを元に、平均点が50になるように得点を変換し、判定しています。困りの程度や特性が強いほど点数が高くなります。「困りが強い」「困りがやや強い」「今は困っていない」の困りのラベルについては、変換した点数を元に、どのくらい困っているかを得点によって以下のように分類しています。得点70以上:「困りが強い」得点60-69:「困りがやや強い」得点59以下:「今は困っていない」※ただし、一部の分類は上記の点数換算が妥当でないことを踏まえて、定型発達データと臨床データから推定した困りの強さの判定を元に、点数の割付を行っています。Upload By LITALICO発達特性検査 活用サポート大分類内における小分類ごとの困り度ラベルの組み合わせによって、お子さまに最も近いタイプを推定しています。こちらは、より妥当な困りごとの背景説明やサポート方法をお伝えするための分類となっています。Upload By LITALICO発達特性検査 活用サポートQ.検査結果レポートは年齢に合わせた内容ですか?LITALICO発達特性検査では、お子さまの年齢によって適切な検査結果が出るように設計されています。同じ特性でも、年齢によって困りごとの内容や強さ、その対応方法が変わると考えているためです。検査結果の得点は、年齢・性別ごとに算出しています。また、提示される検査結果のレポートも、できるだけ年齢段階に応じた例示や、その年齢段階で起きやすい困りごととその対応方法を取り上げています。例えば、学齢期の学習面でのサポート方法については、学習内容に応じて、学年相当の漢字を例にするなど、学年に応じた例示が提示され、より具体的な支援で役立つことを目指しています。また、その発達に応じたコミュニケーションの方法や手先操作の難易度を考慮し、内容を提示しています。中高生には生活面で身の回りのことを自分でできるような工夫、お小遣いやスケジュール管理の方法などのヒントや、パソコンやスマートフォンを使った環境調整の方法などが提示される場合があります。まとめお子さまにとって取り組みやすい環境があり、それを繰り返すことで習慣化できれば、困りごとの軽減につながります。また、失敗しにくい環境で成功体験を積むこともできます。特性や本人に合った方法を本人や家族、園や学校などの周りの人と共有することが必要になってきます。そのために、LITALICO発達特性検査の検査結果は詳細な内容で複数の「サポートの方向性」が示されます。さまざまな方法が提示されることで、何から手をつけていいか、迷うことがあるかもしれません。そんなときは、お子さまの様子で当てはまりそうな背景はないか「ちょっと考えてみる」、「できそうな対応方法から一つだけやってみる」でもいいのです。お子さまの特性を整理して、困りそうな状況を減らしていくことができれば、保護者や周りの人にとっても、子育てがスムーズになったり、つらい状況が減っていくことにつながります。もし、サポートが難しいと感じたら、専門機関に相談することも検討しましょう。その際にも、検査結果が参考資料として役立つかもしれません。LITALICO発達特性検査を、お子さまの特性理解とサポートのためのツールとして、ぜひご活用ください。
2024年07月19日マンガ「発達障害の子どもと私たち」はるき編 第4話(最終話)Upload By ユーザー体験談Upload By ユーザー体験談私も息子と同じだった……?Upload By ユーザー体験談Upload By ユーザー体験談わが家が選んだ道――Upload By ユーザー体験談Upload By ユーザー体験談家族で話し合い、不登校に取り組んでいく発達ナビユーザーから寄せられた体験談を元にしたストーリーマンガ「発達障害の子どもと私たち」の最終話(第4話)をお届けします。小学2年生のはるきさんは、3歳でASD(自閉スペクトラム症)、4歳で知的障害(知的発達症)と診断を受けています。2年生の5月、運動会のあとから学校を休みがちになり、保護者はそんなはるきさんを受け止めていました。しかしある日登校をうながされたはるきさんは、教室で腹痛を訴えることに。身体症状がでたはるきさんは、完全に不登校となりました。保護者である母は、自宅でリモートワークをしているのですが、仕事が忙しいためはるきさんを全く構えない状態。部屋の隅で気配を消してゲームをしているはるきさんを見て、心を痛めていました。A家がとった選択は「母が仕事を辞めて、今ははるきさんと向き合う」こと。長期で休むことによって、学校の先生やスクールカウンセラーと話す機会が減っていくかもしれません。自分ひとりで悩みを抱え、孤独になりがちだった母とパートナーが話し合いをし、一つの決断をできたのはとても大切なことです。もちろんこれは選択肢の一つであって、唯一の正解があるわけではありません。このことによってはるきさんとの時間がとれるようになった母は、はるきさんと会話したり、はるきさんの居場所探しをすることができるようになりました。はるきさんたちのその後は、2章みき編完結後にお届けする「エピローグ」でご紹介します。不登校の子どもの居場所は?今や将来についての情報を集める【専門家解説】ずっと家にこもりっきりでいいのだろうかと不安になることも多いと思いますが、今は家にいるだけで精一杯のお子さんも、少し元気が出てくると、家にいながらオンラインなどで興味関心のあるイベントに参加したり、やがて実際に行われているイベントへ行ってみたいという気持ちが湧く場合もあります。また、同世代の友達がほしいと思う場合、「不登校」仲間がいると心強いと感じるお子さんもいます。そうした単発イベントや継続して通える公的・民間の居場所についての情報を集めてみるといいでしょう。フリースクール、放課後等デイサービスなどは地域の相談支援専門員などと相談しながら進めていけるとよいでしょう。※放課後等デイサービスの利用には「通所受給者証」(受給者証)が必要となります。取得の条件や手続き方法は自治体により異なります。在宅勤務で家にいるのに、はるきさん相手にできない罪悪感があったと思います。はるきさんとお母さんの場合、退職をするという一大決心をされたのは良い側面もあるでしょう。寄り添う時間をもつことが、大きなプラスになったと思います。一方、不登校状態になってしまったお子さんに対する親御さんの関わり方として、一定の答えがあるわけではありません。寄り添うことが親御さんにとって過度な負担になって、お子さんとの関係が悪化してしまうケースもあるので、一人ひとりに合わせて判断する必要があるのでしょう。Upload By ユーザー体験談不登校への対応については、以下記事を是非ご覧ください。次回からは2章「みき編」がスタートします。通常学級に通うみきさんは、小学校4年生になりだんだんと学校の勉強についていくことができなくなりました。苦しむみきさんを見て母は「このままではみきの心が壊れてしまう」と感じ、転籍を求め学校、教育委員会との話し合いに臨むのですが……。お楽しみに。【マンガ発達障害の子どもと私たち】(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年07月18日医療機関での相談と連携お子さまの発達が気になるとき、医療機関を受診する場合もあるでしょう。受診では、お子さまの様子を実際に診察するほか、保護者の方への問診が行われます。特に、それまでの生育歴や様子、気になっていることなどの保護者の方からの情報が重視されます。必要に応じて検査や診断を行う場合もあります。発達が気になる場合の専門科としては、発達外来や児童精神科、小児神経科などがあります。Webサイトなどで診療科を確認したり、発達障害の診断や診察ができる専門医が在籍している医療機関を調べたりしてみましょう。かかりつけの小児科や、相談機関から紹介を受けて受診するケースもあります。もし、自分で専門の医療機関を見つけることが難しい場合や、受診すべきか迷う場合などには、地域の子育て支援センターや発達支援センター、保健センターなどの相談機関や、かかりつけの小児科などで受診について相談するといいでしょう。紹介状をもらえることもあります。発達障害診療医師名簿(一般社団法人日本小児神経学会)事前に具体的な困りごとを整理しておくと、問診がスムーズに進みます。その方法の一つとして、LITALICO発達特性検査があります。オンラインで受検できる検査サービスのため、自宅など好きな場所で利用でき、受検後すぐに検査結果レポートをWebブラウザで閲覧できるほか、PDF形式でダウンロードできます。お子さまの困っていることや特性の傾向や強さのほか、その困りや特性の背景にどのようなことがあるか、またどう対応すればいいかのサポートの方向性が表示されます。検査結果のデータやPDFをプリントすることで、医療機関での相談・共有のためのツールとしてお役立てください。検査について知りたい方はこちらをご覧ください。連携と情報提供のポイント問診では、まずは家庭での様子や保護者の方やお子さまが感じている困りごとや課題を具体的に共有します。どのくらい困っているかなどは、主観的な内容でもあり、なかなか説明するのが難しい部分です。LITALICO発達特性検査を受検している場合は、その結果を持参し、検査結果のグラフなどを見せながら説明すると、より伝わりやすくなります。注意点としては、LITALICO発達特性検査は保護者の方の視点で測定されるということです。保護者として感じている不安や困りごとは重要な情報となりますが、医療機関では、そのほかの情報も含め、診断基準を満たしているかなどを慎重に判断します。そのため、医師の見立てが保護者の方の見立てと異なることもあります。環境によって特性や困りごとの現れ方が変わっている可能性もあり、見立てが異なること自体も重要な情報になります。専門家の見立てや場面による行動の違いを知る機会と考えて、相談を進めるとお子さまの理解が深まるかもしれません。検査結果のほかにもフラットな情報収集を意識するといいでしょう。問診では、出産時の状況やその後の病歴、歩き始めた時期や言葉の発達の様子など、生育歴についても聞かれることがあります。また1歳半健診や3歳児健診時の様子やそこで言われたことなどが確認されるケースもあるので、母子健康手帳なども準備しておくとよいでしょう。LITALICO発達特性検査を複数回受検している場合には、過去の結果も持参すると、困りごとの現れ方の変化の情報にもなります。また、授業についていけなくなった、学校に行くのを嫌がるようになったなど、新しい困りごとが出てきたり、お子さまの様子が変わってきたことをきっかけに受診する場合にも、情報を整理しておくと問診がスムーズになります。変化によって不安が強まりやすい特性があるお子さまの場合、また、困りごとの生じにくい環境や方法がある場合などには、本人に合った環境で一貫した対応が必要なことがあります。そこで、保護者だけでなく、周囲で関わる人が情報の共有をし、理解をしたうえで同じような接し方をすることが大切です。特に、医療機関では、治療方針や診断をよりきめ細やかにするために、実際に家庭や園・学校で試してみた対応方法などの結果といった情報の共有が必要になることがあります。また対応方法や環境調整についても、医学的な見地からのアドバイスを得られるチャンスとなります。具体的な支援方法や、家庭で試してみてもうまくいかなかったことなどについて、レポートの結果をもとに話すことで、限られた診察時間の中で、より具体的で専門的な相談ができるかもしれません。予約や診断まで時間がある場合にできること医療機関や状況によっては、予約がとりにくいなどで初診までに時間がかかることもあります。また、子どもの発達障害の診断には、さまざまな検査や経過をみる必要があるため、ある程度の期間がかかる傾向があります。また、一度受診したあと、再診までに期間があくこともあるでしょう。その間にできることをいくつかご紹介します。受診時にその場で考えると意外と焦ってうまく伝えられないことや、思い出せないこともあります。事前に以下のような情報を集め、まとめておくといいでしょう。・困っていることやお子さまの気になる様子・様子がいつ頃から続いているか、変化した時期はいつか・いつ、どのような状況で困りごとが起きるか、家庭で試してみた対応方法などの様子・園や学校での様子や、相談機関などに相談した際の内容など、外部からの情報など家庭で保護者の方が観察したり、これまでを振り返ったりすると、時間がかかって負担が大きいと感じるかもしれません。LITALICO発達特性検査の検査結果の情報を切り取ったり、マーカーや付箋、メモなどをつけて活用するといいでしょう。どのような観点で気になっているかが分からないときには、ヒントとしてLITALICO発達特性検査の検査結果を活用することもできます。検査結果で困りが強く出ているところや、特性などで当てはまると感じた部分に注目してみましょう。事前に相談機関や園・学校で情報収集する際の連携ツールとしても、検査結果を活用できます。問診の時間が限られていることもあるので、相談したいことが複数ある場合は、事前に相談したいことに優先順位をつけておくことをおすすめします。検査結果を持参する際には、特に相談したい点にマーカーや付箋をつけておいたり、自分でメモをつくる際には箇条書きなどにしたり、簡潔にまとめておくといいでしょう。さらに時間がある場合、検査結果で表示されたお子さまに合いそうなサポートの中からいくつか試してみて、その結果がどうだったかメモしておくのもおすすめです。それらを医療機関で伝えることで、お子さまの特性についてより把握しやすくなることもあります。今後の方針や、より具体的な配慮について相談するきっかけにもなります。再診時のポイント再診時には、前回の受診時との変化や、直近の様子などを中心に聞かれることが多くあります。お子さまの様子や、治療や発達支援などを受けた様子、家庭や学校で試したみた方法などについてまとめておくといいでしょう。特に、前回の受診から数年経っているときなど、間が長くあいた場合には、困りごとの内容や強さが変わっているかどうかが情報として役立ちます。検査結果と以前の様子で変化があるところや、気になるところをまとめておくといいでしょう。まとめお子さまに合った対応をすることで困りごとが軽減する場合、発達が気になる場合でも、必ずしも受診や診断が必要であるとは限りません。ですが、困りごとが強く、長く続いている場合などには、医療機関に相談し、より専門的な支援を検討することが重要です。また、医療機関の受診や診断がなくても、受けられる支援もありますが、福祉的な支援や園・学校での配慮を受ける際に、医療的な見解を求められる場合もあります。医療機関と連携し、信頼関係をつくることで、お子さまと保護者の方にとって心強いサポートになるともいえます。医療機関への相談で重要なのが、保護者の方からの情報をスムーズに伝えることです。受診の限られた時間の中で情報の共有やより具体的な相談をするためにも、事前に情報をまとめておく、優先順位をつけておくといった工夫がポイントとなります。そのような際に、ぜひLITALICO発達特性検査を連携のためのツールとしてご活用ください。
2024年07月12日重度知的障害(知的発達症)息子のレスパイト、ショートステイの経験をご紹介します4歳で知的障害(知的発達症)と診断された現在33歳の息子の母です。現在息子の知的障害(知的発達症)は重度判定で、グループホームで生活しています。息子は、真面目で、かつマイペース。今はすっかり大きくなりましたが、小さい頃はできないことも多く、悩んだこともありました。ですが、嘆くより「どうしたらできるようになるか」「こんなことができるんだ」と思うようにし、息子と一緒に成長してきました。わが家では、中学生でレスパイトを初めて利用し、20歳でショートステイに登録、その後グループホームへ入所しました。この経験をご紹介します。※レスパイトケア:日頃ケアを行っている保護者に息抜きを提供するため、代理の介護者が一時的にケアを行うこと※ショートステイ:家庭において養育を受けることが一時的に困難となった児童について、児童養護施設などに入所させ、必要な保護を行うこと参考:レスパイトケア|MSDマニュアル参考:在宅の子ども・子育て家庭支援事業の概要|厚生労働省レスパイトの想定外のメリットは「送迎」でした子どもが特別支援学校の中学部に進学した頃から、レスパイトを利用し始めました。利用前にはたくさんの書類を書く必要があったため大変でしたが、登録してよかったです。もちろん自分の時間が持てるというのはありました。ですが、想定していなかったメリットは「送迎」。わが家が登録したレスパイト先は送迎も利用できたので、保護者が送迎しなければ行けない場面で、レスパイト先の送迎に頼ることができました。例えば、息子の学校では、夏休みにプール活動がありました。スクールバスがある登校日は良いのですが、ない時は保護者が送迎する必要があります。私に用事があって送れないときは、レスパイトの送迎で学校まで送っていただきました。この送迎には高等部でも助けられ、部活の迎えなどでも利用していました。子どもの送迎というものは、送迎時間自体が短いものだとしても、丸1日仕事を入れることも難しくなるし、予定も立てづらいですよね。これを解決してくれるレスパイトの送迎には本当に助けられました。Upload By ユーザー体験談「お守り」になったショートスティショートステイには20歳の頃に登録しました。その頃、同居している義父が入院することになりました。身の回りの世話や、突発的に病院へ行くこともあるかもしれないと思い、1人で留守番ができない息子の預け先を確保しようと思ってのことです。幸いにも1人で留守番をする場面はなかったのですが、「もしものとき」を考えるともっと早くから登録しておけばよかったと思いました。この時登録したことで、もしなにかあっても預け先があるという「お守り」として、私の安心材料になりました。Upload By ユーザー体験談特別支援学校高等部卒業後、就労継続支援B型へ。グループホームを将来の居場所として息子は特別支援学校高等部を卒業後、就労継続支援B型に通所しはじめました。月曜から金曜まで通所し、土日は休みです。その施設はグループホームも運営しているため、将来の居場所としても意識していました。息子ははじめ自宅から作業所へ通っていましたが、20歳を過ぎた頃から少しずつショートステイを始めて「ホームで過ごす日」を増やしていきました。※就労継続支援B型:障害や年齢、体力などの理由から一般企業に雇用されることが難しく、雇用契約に基づく就労が困難である方に対して、就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供を行う障害福祉サービス参考:障害者の就労支援対策の状況|厚生労働省Upload By ユーザー体験談週に1回から増やしていき、やがて帰宅が毎週末になって慣れた頃、コロナ禍になりました。グループホームで新型コロナウイルスの感染が広がってしまい、息子は一時期帰宅ができなくなりました。この長期滞在をきっかけに、その後は月2回の帰宅が定着しました。今ではすっかりグループホームが息子の居場所になっています。Upload By ユーザー体験談とにかく「見学」と「質問」で子どもの居場所を探すレスパイト、ショートステイについてはとにかく見学し、聞きたいことは遠慮なく聞くことが大事だと感じました。いきなり泊まるのが心配なら、日帰りできるかを聞いておくのも良いと思います。現在の息子は、グループホームで穏やかに生活しています。特別支援学校卒業後に入った就労継続支援B型での仕事も続いています。老後は、同じ施設が老人ホームを運営しているので、そこに入れたら……と親なきあとをイメージしています。イラスト/海乃けだまエピソード参考/RINRIN(監修:井上先生)青年期のお子さんが学校に通うためにアパートに下宿したり、一人で生活する体験をすることはよくあると思いますが、障害のあるお子さんも親から離れて生活する機会が選択肢としてあることは大事だと思います。それぞれのご家庭の事情でショートステイのニーズは異なると思いますが、このコラムのご家庭のようにグループホームへのステップとして体験されるのも良いと思います。親御さんとして、最初は心配なことも沢山あるとは思いますが、ショートステイでのさまざまな体験がお子さんにとって貴重な経験になっていくと思います。しかしながら地域によってはショートステイの枠が不足しているという現状もあります。その場合、それぞれの地域の自立支援協議会などで行政のほうにも働きかけていくことも大事だと思います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
2024年07月12日スポ少に入ったのも6年生からで、発達障害と協調性運動障害があって運動が不得意。だから他の子たちに「遅い」と言われたり叩かれる息子。チーム全体にいじめの雰囲気がある。本人は「辞めたら何言われるか」と後ろ向きな理由で続けているけど......。子どもの世界に親が口出すのは憚られるけど、子どもだけで解決できる?というお悩みをいただきました。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの取材で得た知見をもとにアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<努力もしないのに「プロになりたい」なんて気軽に言わないで!自主練もしないのに「上手くなりたい」などと言って欲しくない問題<サッカーママからの相談>私の子どもは6年生で、スポ少に入ったのは3か月前からです。周りは早ければ2年生から入団している子もいて、力の差は歴然です。また、発達障害と協調性運動障害もあり、他の子よりも運動が不得意な面もあって、練習中、我が子の番が来るとテンポが遅くなったりすることが見受けられます。そんな時に下級生から遅いと背中をつめられたり叩かれたり暴力的な態度や、乱暴な言い方で責められるようです。また、休憩中には仲間からバカにされる発言が聞かれたり、お前はチームにいらない人間だとハラスメントともとれる言葉が聞かれています。私はチーム全体に我が子をバカにし、いじめる雰囲気があると感じています。子の話を聞いているととても気分が悪くて辞めさせたい気持ちにかられます。しかし、子は辞める気はないらしく続けると言います。ただ、辞めない理由を聞けば、辞めたら誰に何を言われるか分からないから。と言い、スポ少が好きだからとは言いません。子の世界に親が口を挟むのは良くはないと思うのですが、やはり解決は難しいのでしょうか。<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。背中を「つめられる」と書かれていますが、つねられるということでしょうか。暴力はもちろんですが、「おまえはチームにいらない人間だ」と言葉の暴力のほうが息子さんのこころの傷になっていることでしょう。息子さんはもちろんのこと、お母さんもどんなにかお辛いことでしょう。それなのに「子の世界に親が口を挟むのは良くはないと思う」と理解を示しており、頭が下がります。■まずは少年団側に相談しましょう私からは二つほどお伝えします。お母さんには、息子さんだけの問題ではないと考えてもらいたいです。いじめ被害に遭っているのは息子さんですが、いじめのターゲットはコロコロ変わるものです。子どもたちが息子さんに向けて行ったような暴力や暴言が許されてしまえば、再びチームの誰かが同じ目に遭う確率は高くなります。そのように考えて、まずはスポーツ少年団側に相談しましょう。説明の順番としては、最初に息子さんの特性をチームのコーチに伝えましょう。10年、20年前に比べれば、発達障害に対する認識は深まっていますが、多くの人が正確に把握しているとは思えません。そのことを踏まえて、自閉症スペクトラムなのか、それともほかのものか、もしくは何かと何かの混合的な特性があるのであれば、なるべく詳しく説明してあげてください。親が変われば子どもも変わる!?サッカー少年の親の心得LINEで配信中>>■ただし言い方には注意、「いじめ」と聞くと態度を硬化する指導者もいる次に、以下の主旨を伝えましょう。「ピッチの上や練習はコーチと選手の世界なので技術指導やコーチングについては全面的に任せたい。しかしながら、今回はチームメイトの暴力や暴言がある。そこに対してコーチにはコミットしてほしい」と。なぜならば小学生でもフェアプレーを実践すべきアスリートであり、サッカーはチームで助け合うスポーツだからです。ただし、この話をする際は「いじめられている」とか「いじめている子どもが」というように、いじめだと断定する言い回しはやめましょう。過去に私が相談を受けたお母さんがコーチ陣に相談した際、彼女が「いじめがあって......」と言った瞬間にコーチたちの顔色が変わったそうです。困惑した彼らは「何がいじめなのかわからない」「いじめの定義は何か?」と言い出し、話が違うほうに飛んでしまったと聞きました。したがって、起きたことをお母さんの言葉で総括せずに、事実を淡々と伝えましょう。そのなかで、息子さんがサッカーを好きだということにふれ、チームで活動を続けるためにサポートをお願いしたい旨を伝えましょう。■みんなが楽しくサッカーできる環境づくりをお願いしたい、と強調しようでは、コーチたちは子どもたちにどう向き合ってもらえるといいのでしょうか。一番良いのは、このことをチーム全体の話にしてもらうことです。コーチたちが「誰が暴力をふるったのか」という犯人捜しを始めたり、暴力暴言を浴びせた子どもと個別に話し合うのではなく、あくまでも全体の問題にしてもらうこと。そうすることで全員がこのことに対し当事者として考えられるはずです。無論、そういったことを含めて指導者に対してお母さんがどこまで意見を述べられるかはわかりませんが、みんなが楽しくサッカーができる環境作りをお願いしたいのだということを強調してください。■息子さんには「あなたは絶対に悪くない」と言ってあげよう次に、息子さんと話をしましょう。まず「あなたは絶対に悪くない」のひとことを最初に言ってあげてください。息子さんは何も悪くないのに、チームを去るのはおかしいこと。いじめている子どもたちが、これをいじめだと理解しなくては次にまた誰かがいじめられること。その子たちは中学生になったときも同じことをするかも知れないこと。それらを伝えたうえで「暴力や暴言をやめてほしい」と自分から言う勇気をもってもらえたらと思います。■状況によっては「逃げる」という選択肢もあることを知っておいて(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)子どものいじめや差別の問題と出逢ったとき、私は、いつでも被害者がやめなくてはいけなくなることに強い違和感を抱きます。実際に、いけないことをしたのは加害者なのに、結果的に被害を受けた側が居場所を失うことが往々にしてあります。状況によっては逃げるという行動が必要なときもあります。そうなったときは他チームでやることを視野に入れられないでしょうか。技術が遅れていたり、他の子どもよりも下手だとサッカーをする環境を奪われる。このことが肯定されてしまえば、息子さんはもちろんほかの子どもの未来にも悪い影響を及ぼします。ここはぜひ闘ってほしいです。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキルビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。
2024年07月10日相談機関との連携の重要性子育てに悩むとき、お子さまについて困りごとが強くなったり、専門的な支援の必要性を感じたとき、保護者の方が最初に出合うのが、相談機関ではないでしょうか。相談機関は、子育てや福祉に関する窓口、教育相談の窓口などさまざまです。ヒアリングや相談内容をもとに、保護者にアドバイスをする、適切な支援制度を紹介する、医療的な支援に繋ぐといった機能を持っています。その際に、重要になってくるのが保護者の方からの情報です。どのようなことに困っているのか、お子さまにどのような様子や行動の傾向がみられるか、保護者の方がどのくらい困難を感じているかなどを分かりやすく伝えることで、相談の具体性や、その先のサポートの適切さが上がります。相談機関は入口であると同時に、支援の伴走者でもあります。サポートについてのアドバイスを受ける機会や、お子さまの年齢や状況、ニーズの変化があったときにはその都度相談する機会があるかもしれません。相談機関にはさまざまな種類があります。目的に応じて相談先を選ぶことで、適切なサポートを受けやすくなります。地域によって名称や制度が違う場合もありますが、子育て相談や発達相談、教育相談などのキーワードで探したり、地域の自治体の窓口で聞いたりするといいでしょう。子育てに困ったとき・地域の自治体の子育て支援窓口・子育て支援センター・児童相談所など就学相談・学校生活や教育についての相談・スクールカウンセラー・教育センター・教育支援センター(適応指導教室)など発達が気になるときの相談・保健所・保健センター・発達障害者支援センター・児童発達支援センター・精神保健福祉センターなど支援に関する相談・児童発達支援・放課後等デイサービス・臨床心理士・公認心理師、作業療法士、言語聴覚士などの専門家などそれぞれインターネットなどで、お住まいの都道府県や市区町村と併せて検索してみてください。各支援機関については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。事前に具体的な困りごとを整理しておくと、相談がスムーズに進みます。その方法の一つとして、LITALICO発達特性検査があります。オンラインで受検できる検査サービスのため、自宅など好きな場所で利用でき、受検後すぐに検査結果レポートをWebブラウザで閲覧できるほか、PDF形式でダウンロードできます。お子さまの困っていることや特性の傾向や強さのほか、その困りや特性の背景にどのようなことがあるか、またどう対応すればいいかのサポートの方向性が表示されます。検査結果のデータやPDFをプリントすることで、周囲の方や関係者との相談・共有のためのツールとしてお役立てください。検査について知りたい方はこちらをご覧ください。相談での活用方法:共有するときのポイント1.困っていることや状況の共有まずは保護者の方やお子さまがどのようなことに困っているかの共有が必要です。困っていることの共有、お子さまの特性の共通理解をすることで、お子さまにとってうまくいく場面を増やすための方法について考えることができます。特に相談機関での連携時には、まずは家庭での様子や保護者の方やお子さまが感じている困りごとや課題を具体的に共有します。どのくらい困っているかなどは、主観的な内容でもあり、なかなか説明するのが難しい部分です。検査を受検している場合は、検査結果のグラフなどを見せながら説明すると、より伝わりやすくなります。注意点としては、LITALICO発達特性検査は保護者の方の視点で測定されるということです。保護者として感じている不安や困りごとは重要な情報となりますが、専門家の視点と見立てが異なる可能性もあります。外部での様子が家庭での様子と違う場合は、環境によって特性や困りごとの現れ方が変わっている可能性もあり、それも重要な情報になります。場面による行動の違いを知る機会と考えて、相談を進めるとお子さまの理解が深まるかもしれません。検査結果のほかにもフラットな情報収集を意識するといいでしょう。Upload By LITALICO発達特性検査 活用サポート2.本人の特性をみんなで理解し、共通認識をつくる変化によって不安が強まりやすい特性があるお子さまの場合、また、困りごとの生じにくい環境や方法がある場合などには、本人に合った環境で一貫した対応が必要なことがあります。そこで、保護者だけでなく、周囲で関わる人が情報の共有をし、理解をしたうえで同じような接し方をすることが大切です。相談機関に臨床心理士や公認心理師など、専門家がいる場合には、レポートの結果をもとに、より専門的な相談ができるかもしれません。3.協力してサポートする子どもと関わる人が、その子の特性や困っていることについて理解し、共通認識を持つことがとても大切です。子どもの過ごしやすい環境づくりや困りごとが現れる状況を減らすために、相談の機会を役立てましょう。特に、具体的な支援方法や、家庭で試してみてもうまくいかなかったことなどについて、専門家のアドバイスを得られるチャンスとなります。作業療法士や言語聴覚士などの専門家がいる場合、よりお子さまに合った方法の提案や、実践する際のアドバイスなどをもらえることもあります。限られた時間の中で相談をうまく進めるポイントは、相談したいことを事前に整理してまとめておくことです。例えば、下記のような工夫をしてみるとよいでしょう。・話したいことに優先順位をつけておき、大事なことから話す・視覚的な情報や、言語化された資料として検査結果を見せながら話す検査結果レポートの内容は詳細でボリュームもあるため、すべてを読んでもらうのが難しい場合もあります。検査結果を持参する際には、あらかじめ、優先順位をつけて特に相談したい部分に付箋をつけたり、その部分だけを持っていくなどするのもおすすめです。検査結果を見せたり渡したりする際には、検査結果レポートの「04.専門家の皆様へ」のページを見せるなどして、LITALICO発達特性検査についても説明するとよいでしょう。Upload By LITALICO発達特性検査 活用サポートまとめ相談機関は、お子さまと保護者の方にとって、支援の輪を広げる最初の入口です。不安や相談そのものにハードルを感じるときは、事前にどのような不安があるかや、何が気になっているかをまとめておくことで、相談しやすくなり、その先のサポートも受けやすくなります。より具体的でお子さまにとって前向きに考えられるよう、相談ができるとよいでしょう。それぞれの相談機関の持つ専門性や機能、専門家の種類によっても相談できる内容はさまざまです。いずれも保護者の方とお子さまに寄り添い、よき伴走者となってくれる頼もしい存在です。そのためにも、お互いの情報を共有し、協力体制をつくることがとても重要です。ぜひ、LITALICO発達特性検査を相談のためのツールとしてご活用ください。
2024年07月09日熱中症とは?熱中症が起きる原因は?熱中症とは、高温多湿の状況に身体がうまく適応できないために、めまいや気分の悪さなどさまざまな症状が表れる状態のことです。人間の身体は平常時には体温が上昇しても、汗をかいたり身体の表面の温度を上げたりすることで、体温が上昇しすぎることを防ぐ調節機能があります。しかし、その調節機能が何らかの原因でバランスを崩すと、身体に熱がたまったままになってしまい、さまざまな不調が表れてきます。熱中症の原因は、大きく分けて3つあります。・環境要因(気温や日差しなど)・身体要因(年齢や栄養状況など)・行動要因(運動や水分摂取など)それぞれ解説していきます。まず環境要因ですが、気温が高い・日差しが強いこと以外にも、湿度の高さやしめきった部屋で風が通らない、急に気温が高くなったなども熱中症の要因になり得ます。次に身体要因ですが、高齢者や子どもなどは体温調整がうまくできないことがあります。また、糖尿病など持病があること、それに睡眠や栄養が不足していることなども挙げられます。最後に行動要因ですが、激しい運動や慣れない運動をしたとき、長時間の屋外活動、水分を補給できない状況での活動などがあります。参考:熱中症について学ぼう:原因・環境や暑さ指数(WBGT)|日本気象協会推進「熱中症ゼロへ」プロジェクト熱中症の初期症状、熱中症になった時の対処法は?受診の目安熱中症の初期症状として以下のような症状が表れます。・めまい・たちくらみ・手足のしびれ・筋肉のこむら返り・気分の悪さ・頭痛・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感・そのほかいつもと違う様子などこういった症状が見られた場合は、すぐに次の対処法を実行してみましょう。熱中症の対処法は以下のようなものがあります。・涼しい場所に移動させる(風通しのいい日陰、エアコンの効いている室内など)・衣類をゆるめる(締めつけているものなど)・身体を冷やす(特に首回り、わきの下、足の付け根など)・水分や塩分を摂取させる(スポーツドリンクや経口補水液など)などまずは日差しを避けて涼しい場所に移動させます。その後はボタン、ベルト、ネクタイなど締め付けているものをゆるめましょう。そして速やかに身体を冷やします。首回りなど太い静脈のある部分を冷やすと効果的と言われています。冷やす際には、水をかけて風を送る方法や、保冷材や冷えたペットボトル・缶をタオルでくるんで当てる方法などがあります。それと同時に、水分や塩分の摂取も促しましょう。スポーツドリンクや経口補水液(水に食塩とブドウ糖を溶かしたもの)などが効果があると言われています。病院を受診する目安としては、対処法を試してみても状態がよくならない時です。また、自力で水が飲めなかったり、意識がなかったりする場合はすぐに救急車を呼ぶようにしましょう。119番に電話をかけると、救急か消防か聞かれるため「救急」と答えましょう。ほかにも、一般的に以下の内容を聞かれます。・救急車が来てほしい住所・具合の悪い方の状態・具合の悪い方の年齢・電話をかけた方の名前や電話番号などまた、救急車を呼ぶべきか判断が難しい場合は、子ども医療電話相談事業(♯8000)に電話をかける方法もあります。子ども医療電話相談事業とは、夜間や休日などに子どもの症状が出た場合に、医師や看護師などの専門家が対処方法や病院受診など電話でアドバイスしてくれるサービスです。参考:熱中症予防のために|厚生労働省参考:熱中症について学ぼう:応急処置のポイント|日本気象協会推進「熱中症ゼロへ」プロジェクト参考:消防救急無線・119番緊急通報|消防庁参考:子ども医療電話相談事業(♯8000)について|厚生労働省熱中症の予防法は?発達障害があると熱中症になりやすい?ここでは、熱中症を予防するための方法を紹介します。熱中症は条件次第でだれでもかかる可能性があります。しかし、正しい知識を持って予防法を実践することで、防ぐことも可能です。熱中症の予防法・身体づくりをする・生活の中で工夫する・屋外の作業時などで対策をする・起こりやすい時期を知る・熱中症警戒アラートをチェックするなどそれぞれ解説をしていきます。身体づくりをする熱中症にかかりにくい身体にするためには、日ごろから適度な運動を行い、食事で栄養を摂り、充分な睡眠時間を確保するということが大事です。生活の中で工夫する日常的に暑さへの対応をしておくことも大事です。日差しが強い日には日傘や帽子などを使って直射日光に当たらないようにすることや、風通しのいい衣類を身につけるようにする、水分をこまめに摂るなどの対策があります。また、室内ではエアコンを使い、適度な温度・湿度になるように調節しておくといいでしょう。屋外の作業時などで対策をする炎天下での運動やエアコンがない場所での作業など、熱中症が起こりやすい状況ではしっかりと対策をすることが大事です。水分と塩分をこまめに補給することや、定期的に休憩を取って身体に無理をさせないことが大切です。なお、コーヒーや日本茶、烏龍茶などカフェインが入っている飲料には利尿作用があり、結果的に体内の水分を必要以上に減らすことがあります。そのため、熱中症予防として水分を補給する場合は、水やスポーツドリンク、ノンカフェインのお茶(麦茶など)を飲むようにしましょう。起きやすい時期を知る熱中症はいつでもかかる可能性がありますが、特にかかりやすい時期を知って準備しておくことも重要なポイントです。例えば、初夏や梅雨明け、夏休み明けなどは気温・湿度が高いことに加えて、身体が暑さに慣れていないため、熱中症の危険性が高くなると言われています。この時期は無理をせずに、徐々に身体を慣らしていくことを意識するといいでしょう。熱中症警戒アラートをチェックする熱中症警戒アラートとは、環境省と気象庁が共同で発表している情報のことです。全国を58ヶ所に分け、前日の17時と当日の5時に環境省のWebサイトなどに掲載されます。熱中症警戒アラートが発表されている日は、なるべくエアコンのある室内など涼しい環境で過ごすと共に、水分・塩分の摂取、こまめな休憩などを意識しましょう。令和6年(2024年)4月からは、熱中症警戒アラートを上回る危険を知らせる「熱中症特別警戒アラート」の運用も始まりました。熱中症特別警戒アラートは、過去に例がないような危険な暑さが予測される場合に発表されます。また、危険な暑さから逃れるための避難場所として、各自治体の首長が「クーリングシェルター」を指定できることになりましたので、外出時にはあらかじめ近くのクーリングシェルターの場所を確認しておくと安心です。ただ、熱中症警戒アラートや熱中症特別警戒アラートが出ていない時にも熱中症にかかる可能性はあります。行動の指針として、暑さ指数(WBGT)を確認しておくことも大事です。暑さ指数は「WBGT( Wet Bulb Globe Temperature)」とも言い、気温や湿度、日射量などを元に導き出される熱中症予防の指数です。全国840ヶ所に分かれており、環境省のWebサイトの「暑さ指数について」から確認できます。熱中症警戒アラートや熱中症特別警戒アラートの発表通知、および暑さ指数は、環境省のLINEアカウントでも配信しているほか、メールで通知してくれるサービスもあります。自分が情報をキャッチしやすい状況をつくっておくといいでしょう。また、高齢者や子どもは熱中症にかかりやすいため、周りの人は声をかけたり水分摂取を促したりするようにしましょう。参考:熱中症について学ぼう:予防と対策|日本気象協会推進「熱中症ゼロへ」プロジェクト参考:熱中症警戒アラート|気象庁参考:障害のある方へ|厚生労働省発達障害がある場合の注意点、よくある悩みに医師が回答ここからは、発達障害や発達に特性がある子どもの保護者によくある熱中症の疑問や悩みについて、小児科医の室伏佑香先生にお答えいただきました。(質問)帽子をいやがってかぶりません。かぶせてもすぐに自分で帽子を取ってしまうので、熱中症が心配です。(回答)帽子をかぶらない背景には感覚過敏がある場合があります。感覚過敏とは、聴覚や視覚、触覚といった感覚が過敏である状態のことを言い、刺激に過剰に反応したり耐え難い苦痛を感じたりします。感覚過敏は年齢とともに和らいでいくことも多いと言われていますが、すぐに講じることができる対策として、スモールステップといって少しずつ感覚に慣らしていく方法があります。例えば、遊びの中で帽子をかぶるゲームを取り入れていく、好きなキャラクターや色の帽子を使ってかぶりたくなる気持ちを盛り上げていく、などがあります。そして、もし短時間でもかぶれたらしっかりほめることで、徐々に帽子をかぶることへの抵抗を少なくしていきます。また、日差しの強い日には室内や日陰での遊びを増やすなど、炎天下の元にいる時間を減らしていくなどの環境調整も取り入れるといいでしょう。Upload By 発達障害のキホン(質問)のどの渇きをあまり感じないようで、水を飲みたがりません。また、遊びの途中で声をかけても切り上げることができず、なかなか水を飲みません。(回答)発達障害があると活動の切り替えが苦手だったり、感覚鈍麻で暑さやのどの渇きを感じにくかったりする可能性があります。自分では体調を伝えにくい場合もあるので、飲むタイミングや時間をあらかじめ決めて、水分補給を促すようにしよう。その際は、子どもにあらかじめいつ飲むか伝えておくと切り替えもスムーズになるかもしれません。イラストや時計など視覚的に分かりやすく伝えておくのもいいでしょう。Upload By 発達障害のキホンまとめ熱中症にかかると、吐き気や頭痛などさまざまな症状が表れ、重症化すると意識を失う可能性もあり、場合によっては命に関わることもあります。特に子どもや高齢者は体温調節がうまくできず、暑さを感じにくいなどの理由で熱中症にかかりやすいと言われています。熱中症は日ごろから、暑さ指数などをチェックしておく、栄養や睡眠に気をつかう、日差しを避けるなど予防しておくことが大事です。それと共に、子どもなどが熱中症かもしれないと感じたら、日陰に移動して身体を冷やす、水分・塩分を摂るなどの対策を行いましょう。熱中症への正しい知識を持って、予防と対策を行っていきましょう。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2024年07月08日『マンガ発達障害の子どもと私たち』シリーズの連載がスタート!こだわりで登下校トラブル、放デイ選び失敗談なども【2024年6月】発達ナビでは、発達ナビ読者の困った経験、こうしたら良かったといった経験を読者体験談としてお届けしています。今回は2024年6月に公開した読者体験談をご紹介いたします。『マンガ発達障害の子どもと私たち』シリーズの連載がスタート!6月にはプロローグと第1話が公開されました。発達障害のある子ども、そして子どもを育てる保護者が悩み、戦った記録をぜひご覧ください。7月以降も定期更新予定です。その他、ルールやルーティンにこだわりのあるお子さんの登下校トラブル、ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんの放課後等デイサービス探しについての体験談など、参考になるコラムが満載です。発達ナビユーザーから寄せられた体験談を元にしたストーリーマンガ「発達障害の子どもと私たち」のプロローグ編です。この物語の主人公は、発達障害のある子ども、そして子どもを育てる保護者たち。学校に行けない、学校でのトラブル……初めて社会で「壁」にぶつかった子どもたちを見て、あなたは何を感じますか?こちらは『はるき編 第1話』になります。 3歳でASD(自閉スペクトラム症)と診断を受けたはるきさんは、小学2年生まで元気に学校へ通っていました。しかし運動会が終わった5月の下旬頃から「学校を休みたい」というように。「無理はさせたくないけれど、完全な不登校になってしまったら……」と焦りが膨らむ状態に共感される方も多いのではないでしょうか。『はるき編 第2話』も公開中ですので合わせてぜひご覧ください。こだわりが強いという特性のあるASD(自閉スペクトラム症)のお子さん。小学校1年生の時、通学路が工事の関係で変更になることになりました。こだわりの道が変更になり、どうなるかと青ざめたところ……。学年が上がるにつれてのお子さんの変化も必見です。就学後、体育の時に走るのが遅いことをからかわれてから学校を休みたがるようになった娘さん。そのため運動療育ができる放課後等デイサービスを利用することになったのですが……。経験して感じた利用のポイントなども放課後等デイサービス探しの参考になりそうです。ご自身のエピソードを投稿してみませんか?『発達ナビ 読者体験談』はみなさんのご経験を基に制作されています。ご投稿いただいたエピソードは、連載ライターさんのイラスト、専門家の先生からのコメントをつけた上で掲載させていただきます。「あの時は悩んでいたけれど、今はこうなった……」など、発達障害のあるお子さんを育児しているみなさんへ、ご自身の経験をお届けいただけないでしょうか。ご応募は以下の応募フォームから受け付けております。みなさまのご投稿を、お待ちしております。【現在の募集テーマ】・障害告知・パートナー(夫婦) 関係・両親(義両親)、親族関係・進学・受験関係・冠婚葬祭関連・反抗期、思春期・自傷・学習関係・不登校、行き渋り・ゲームとの関わり・不器用さについて・ママ友や、ほかの保護者の方とのエピソード・ご近所関係(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年07月07日うつ病とは?子どももなる?原因や診断基準うつ病(鬱病)の症状として、1日中、気分が落ち込み何もする気になれなかったり(抑うつ気分)、興味があったものに興味が持てなくなる・喜びを感じていたことを喜べなくなる(興味または喜びの喪失)がほぼ毎日続くことが挙げられます。そのほか、体重の有意な減少(または増加)や食欲減退(または増加)、不眠・過眠、焦燥感、疲労感・気力の減退、自分に価値がないと感じる(無価値感)、思考力の減退、希死念慮などがみられることもあります。うつ病は10代半ばから30代までに発症することが多いですが、学齢期の子どもが発症することも珍しくありません。実際に学齢期の子どものうつ病有病率は1~2%、思春期の子どもの有病率は2~5%という調査もあります。 子どもがうつ病になった場合、気分が落ち込むことだけではなく、いらだちや過活動など一見するとうつ病の反対のような症状が目立つこともあります。また、小学校から中学校の移行期にかけてうつ病が深刻化する傾向があると言われています。小学6年生のうつ病の有病率が1.4%なのに対して、中学1年生になると4.1%と約3倍に上がっているという報告もあります。適切な治療を行わないと再発やほかの精神疾患の併発リスクがあり、将来の社会生活にも影響を及ぼす可能性があるため、早期に周囲が気づいて対策することが大切と言われています。参考:小児と青年におけるうつ病および気分調節症|MSDマニュアル家庭版参考:松原 耕平, 佐藤 寛, 髙橋 高人, 石川 信一, 佐藤 正二著「小学校から中学校への移行期における子どもの抑うつ症状の発達的変化」行動医学研究 22 巻 (2016)1号 p. 3-8うつ病の原因は明確に判明しているわけではありませんが、一説では脳内の神経伝達物質「セロトニン」「ノルアドレナリン」 が減少することにより発症すると言われています。セロトニンやノルアドレナリンは精神の安定や意欲などに関係しており、減少することで抑うつ気分や興味の喪失といった状態を引き起こすと考えられています。また、うつ病の原因として遺伝的な要因もあると言われています。といっても、親や親族にうつ病の方がいても必ずうつ病が発症するわけではありません。悲しい出来事やつらい経験などの外的要因と、うつ病になりやすい遺伝的要因が複雑に絡みあうことで、発症に至ると考えられています。最近では、肥満や脂質異常、葉酸不足といった栄養学的異常も、うつ病の発症リスクと関連しているという研究結果も報告されています。このように、うつ病の発症にはさまざまな要因が関係しており、特に思い当たるきっかけがなくても発症することがありますので、自身や子どもにうつ病の症状が表れているときは、気のせいと思わずに専門機関に相談するといいでしょう。参考:うつ病|厚生労働省 こころもメンテしよう参考:小児と青年におけるうつ病および気分調節症|MSDマニュアル家庭版参考:功刀 浩, 古賀 賀恵, 小川 眞太郎著「うつ病患者における栄養学的異常」日本生物学的精神医学会誌26 巻 (2015) 1号 p.54-58ここでは、子どもにおける診断基準を紹介します。うつ病の診断では、子ども本人と保護者や教師など周りの大人に問診を行い、複数の情報を照らし合わせて診断を行っていきます。問診以外にも標準化された質問票を使用することもあります。その際に、以下のことを確認します。・悲しみやいらだちを感じる・ほぼすべての活動に対して興味や喜びの喪失こういった症状が連続した2週間のうちほぼ毎日、一日の中で大半の時間表れていることが診断の基準となっています。また、自死に関しての言動の有無も確認します。そのほかにも、食欲不振や体重減少、睡眠の乱れなどうつ病のほかの症状を確認し、血液検査などの身体的な検査を行うこともあります。体内の新陳代謝を盛んにする甲状腺ホルモンが低下する甲状腺機能低下症などの病気が抑うつ状態の要因となっている場合もあります。うつ病以外の疾患の影響で気分の落ち込みなどが生じていないか確認していきます。このような問診や検査を通して情報を集め、最終的に医師がうつ病の診断を行います。参考:小児と青年におけるうつ病および気分調節症|MSDマニュアル家庭版参考:甲状腺機能低下症|MSDマニュアル家庭版うつ病のサインは?子どもに見られたら注意すべき症状のチェックリストうつ病では心身共に症状が表れます。以下のような症状が2週間以上続く場合、うつ病の初期症状の可能性があるため、早めに専門機関に相談してみるといいでしょう。・ゆううつ、悲しい気持ちが続く・気力がわかない・これまで好きだったことにも興味がなくなる・意欲、集中力、決断力が低下する・焦燥感、自責感が強くなる・悲観的になる・柔軟な考え方ができなくなる・将来に希望がもてなくなる・死にたい、消えたいという気持ちになるなど・眠れない、もしくは寝過ぎる・食欲が低下する、もしくは食べ過ぎる・疲れやすく、元気が出なくなる・頭痛やめまい、吐き気がする・わけもなく涙が出ることがある・無表情な顔つきやぼーっとした表情が多くなるなどうつ病の症状は、「日内変動」と言って一日のうちで強くなったり弱くなったりすることがあり、午前中に最も強く、午後から夕方にかけて少しやわらいでくる場合があるという報告もあります。この場合、朝学校に行けないのに、夕方頃から活動ができるようになるといった場面もみられるかもしれません。参考:うつ病|厚生労働省 こころもメンテしよう子どものうつ病の治療法は?自然に回復する?処方される薬について解説うつ病は自然に治るものではなく、何も対処しないと悪化する可能性もあります。反対に、適切な治療を受けることで症状が改善していく病気でもあります。うつ病の治療では大人の場合は薬物療法と精神療法が行われますが、子どものうつ病の場合は精神療法を行い、必要であれば薬物療法も行うという形が多いでしょう。また、保護者や学校の先生に対して心理教育を行うなど、大人の場合と治療方針に違いがあります。精神療法では、認知行動療法や対人関係療法などが効果があるとされています。子どもに対して精神療法を行う場合、その子の発達の段階に合わせることや家族との関係に焦点を当てるなど大人とは違ったアプローチを取っていきます。心理教育では、保護者や教師を対象に子どものうつ病についての知識や、家庭や学校で子どもが過ごしやすくなるような環境調整の方法などのレクチャーが行われます。参考:小児と青年におけるうつ病および気分調節症|MSDマニュアル家庭版参考:傳田 健三著「子どものうつ病」再考|児童青年精神医学とその近接領域57巻 (2016) 3号p.415-424子どものうつ病の治療では、必要に応じて薬が処方されることもあります。現在のところ、子どものうつ病において処方される薬はSSRIが一般的です。SSRIは「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」といい、脳内のセロトニンに働きかけ、うつ病の症状を改善させる薬です。SSRIには複数の種類がありますが、海外で小児への有効性が認められているSSRIは、日本国内では使用されていません。現在国内で使用されているSSRIの中には、副作用の可能性が指摘されているものもあります。SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)や三環系・四環系といったほかの抗うつ薬についても、子どもへの使用は有効性や安全性が確認されていないというのが現状です。そのため、子どもに抗うつ薬を使用する場合には、その効果と副作用を天秤にかけて、十分に検討する必要があります。医師と本人、保護者の間でどのようなリスクがあるかについての共通認識を持つことや、慎重な経過観察が求められています。副作用として・けいれん・めまい・眠気・発熱・吐き気・動悸・自殺関連行動などが見られることがあります。保護者の方は服用後に心身に変化がないか見守るようにしましょう。宇佐美 政英著「薬物療法に関する検討委員会セミナー:児童青年期精神科における薬物療法の実際2─抗うつ薬編─」児童青年精神医学とその近接領域/58 巻 (2017) 1号p. 146-156子どもがうつ病になったら、家族が気をつけることは?接し方や相談先など子どもがうつ病かもしれないと思ったときは、話を聞くことが大事です。子ども自身も心の変化に不安や戸惑いを感じていると思いますので、いきなり受診をすすめたりせずに、まずはその不安な気持ちに寄り添うことが大切です。うつ病と診断されたあとも急に接し方を変えずに、いつでも話を聞く姿勢でいるといいでしょう。また、うつ病の回復には心身の療養も大切な要素です。無理して学校に行ったり、習い事をしていたりする場合は、いったん休むなど療養がしやすい環境をつくっていきましょう。なかなか回復しないと本人も家族も焦ると思いますが、うつ病は回復に時間がかかると共に再発率も高い病気なので、じっくりと向き合っていくという心構えが大切です。「いつ治るの?」「よくなってきた?」など焦らすような発言はしないように気をつけましょう。参考:子どものこころと向きあう|厚生労働省 こころもメンテしよう参考:ご家族にできること|厚生労働省 こころの耳うつ病の治療は数ヶ月~数年かかると言われています。その間には焦りや不安を感じることも多いと思いますので、そのような気持ちを話せる相談先を見つけておくことも大切です。子どもの相談先としては、・保護者・担任の先生・スクールカウンセラー・主治医などがあります。家族の相談先としては・保健所/保健センター・精神保健福祉センター・主治医・うつ病の家族会などがあります。また、こころの健康相談統一ダイヤルといって、電話による公的な相談窓口もあります。ほかにも、Webで相談できるサービスなどもありますので、本人、家族共に悩んだときに相談できる場所を確保しておくといいでしょう。参考:こころの健康相談統一ダイヤル|厚生労働省早めに対応するためにも、子どものSOSサインを見逃さないことも大事です。精神的なストレスを感じているときには、睡眠、食欲、体調、行動の4つの面でサインが出ると言われています。睡眠では夜更かししている、睡眠リズムが乱れているなどがあり、食欲では食べる量の増減や体重を過度に気にしている様子があるなどです。体調では顔色の悪さや、腹痛、頭痛、吐き気などがあり、行動では学校へ行きたがらない、表情の変化がなくなる、身だしなみに気を遣わなくなるなどがあります。ほかにも、自分を傷つけるような行為をしたり、消えたいなどと発言するといったことがSOSサインとしてあります。こういったサインが見られたときには、話を聞くことや一緒に専門家のもとを訪ねるなどの対応をしていきましょう。詳しいことは厚生労働省のWebサイトもご覧ください。参考:子どものSOSサイン|厚生労働省こころもメンテしようまとめうつ病は大人だけでなく子どもが発症することもあり、有病率は小学生よりも中学生のほうが約3倍という調査もあります。治療しないでいると、ほかの精神疾患の併発のリスクもあり、その後の社会生活にも影響が考えられます。子どものうつ病の治療では、精神療法や心理教育を行い、必要があれば薬物療法も取り入れていきます。 薬物療法では副作用などのリスクもあることから、家族も服用後の様子の変化を見守っていくことが大切です。うつ病の治療では一般的に長い時間がかかるため、なるべく焦らず子どもの味方であることを示しながら寄り添っていくようにしましょう。それでも悩みを抱えることもあると思いますので、つらい思いを話せる相談先を確保しておくことも大切です。
2024年07月06日授業の「人数」と「時間」が変更に。リニューアルのメリットは?Upload By 発達ナビ編集部緒方広海(おがた ひろうみ)臨床心理士、公認心理師。行政機関にて心理専門職として15年間勤務。精神保健福祉センター、発達障害者支援センター、子ども家庭総合センターで、乳幼児から成人期までの精神保健福祉・障害福祉の分野で幅広く心理臨床業務に従事。現在はLITALICOの中で支援に関わる指導員への研修やスーパーバイザー育成の統括などに従事する。ーー障害福祉サービスの制度・基準変更に伴い、LITALICOジュニアのサービス内容がリニューアルされました。まずは、改めてサービスの変更点についてお聞かせください。LITALICOジュニアでは、これまで1対1から1対3の個別指導や少人数グループを対象に、45分から1時間程度の比較的短い時間の支援を提供していましたが、2024年4月からは、10人前後のお子さまが同じ空間内で過ごす「集団の場」を中心とした支援を開始しました。それと同時に、1回あたりの支援時間が45分から3時間へと大幅に拡大されました。(※)この変更後も、集団の場と並行するかたちでお子さま一人ひとりの状況に合わせた個別指導は引き続き実施しています。集団と個別、両方の支援を組み合わせることで、お子さまの発達段階やニーズに柔軟に対応できる体制を整えたのが今回のリニューアルのポイントだといえます。※児童発達支援ではお子さまの状況やニーズに応じて1.5時間での支援を提供する場合もあります。また、放課後等デイサービスでは1.5時間支援を中心にしています。詳しくはお問合せ時におたずねください。Upload By 発達ナビ編集部ーー今回の支援形態の変更のメリットは、具体的にどのようなところにあるのでしょうか?発達支援に限らず、支援は個別最適であることが何よりも大切です。そう考えると、支援のバリエーションは多ければ多いほどよく、理想としては一人ひとりのお子さまや保護者さまの状況に合わせた支援を選択できる状態です。これまで特別プログラムとしての提供にとどまっていた集団支援を支援形態の1つとして正式に位置づけることで、個別支援と組み合わせたサービスを提供できるようになりました。この変更により、お子さま一人ひとりにとって最適な支援を届けやすくなったことが大きなメリットだと考えています。集団の場は、学んだスキルを自分のものとして身につけるための練習の場Upload By 発達ナビ編集部ーー個別と集団、それぞれに違ったよさがあると思いますが、集団授業ならではのメリットは、どのようなところにあるのでしょうか?お子さまが快適な生活を送るために必要なスキルの獲得を目指すのが個別支援の大きなテーマです。しかし、スキルを獲得することは最終的なゴールではありません。大切なのは、学んだスキルをご家庭や保育園・幼稚園、学校で使えるようになることなんですよね。LITALICOジュニアの集団の場にご参加いただく最大のメリットは、学んだスキルを応用し、自分のものとして身につけるための練習の場ができる点にあります。お子さま一人ひとりの特性を理解した指導員が見守る中、お友達と関わる機会を持っていただくことには、大きな意味があると考えています。保育園や幼稚園、学校などの集団に参加することに不安があるお子さまでも、安心して参加できる集団の場をつくりたいという思いで、集団授業のプログラムをつくりました。ーーこれまでの個別授業では難しかった支援ができるようになったのですね。その通りです。指導員との1対1の空間では、そもそもご家庭や園での困りごとが表に出ないこともありました。どのような場面で困りごとが出てくるのかを確認しなければ、最適な改善策を提案するのが難しいケースもあり、それも個別支援の中で1つの課題になっていたんです。今回、LITALICOジュニア内に集団の場を設けることで、日常生活でのお子さまの困りごとの発見と、その解決策の提案がスムーズになる効果も期待できると考えています。※クリックするとLITALICOジュニアのお問い合わせページに遷移します支援時間の拡大により多様な経験の提供が可能にUpload By 発達ナビ編集部ーー1回あたりの支援時間が3時間となりましたが、この支援時間の拡大によるメリットについても教えてください。集団授業では、自由あそびやおやつの時間、みんなで一緒に活動する時間など、さまざまな場面を設定しています。授業時間を延長することで、このようにお子さまの成長を支える多様な経験を提供できるようになったことが一番のメリットですね。ーーおやつの時間のように、今までの授業にはなかった日常的な場面も取り入れることで、お子さまの新たな一面を発見することにもつながりそうですね。そうなんです。つい最近、「3歳のお子さまが自分のおやつを分けてくれたんです」と嬉しそうに報告してくれた指導員がいました。お子さまの新たな一面を発見したり、できることが増えていく姿を見られたりすることは、指導員のやりがいにもつながります。Upload By 発達ナビ編集部ーー集団生活の中でお子さま同士のトラブルが起きた場合はどのように対応されていますか?LITALICOジュニアでは、お子さま一人ひとりの状況に合わせた環境調整を行うことを大切にしています。たとえば、お友達とあそぶ時のルールを決めたり、おもちゃの取り合いを防ぐために同じおもちゃをいくつか用意したり、それぞれの子に合った過ごし方を提供したりと、工夫できることはたくさんあるんです。もちろん、個別授業の中でお子さまに対して「次はこんな伝え方をしようね」のように伝えることも必要です。ただ、LITALICOジュニアとしては、そもそもトラブルが起こらないようにするには何ができるのかを考えたうえでの環境面へのアプローチを今後も重視していきたいですね。※クリックするとLITALICOジュニアのお問い合わせページに遷移します丁寧なアセスメントによって実現する、個別最適な支援Upload By 発達ナビ編集部ーー集団の場でも一人ひとりのお子さまに合わせた支援を提供できる理由はどんなところにあるのでしょうか?LITALICOジュニアでは、お子さまとご家族に寄り添った丁寧なアセスメントを行うことが大切だと考えています。お子さまの発達状況や特性について、アセスメントを通して深く理解するからこそ、一人ひとりに合わせた支援の提供ができるんです。ーーLITALICOジュニアで行っているアセスメントとは、具体的にどのようなものなのでしょうか?アセスメントでは、保護者さまへのヒアリングをはじめ、お子さまの行動観察、質問用紙を用いた発達状況・特性の調査など、いくつかの客観的な評価を組み合わせながら、一人ひとりの特性を多角的に理解していきます。その情報をもとに、お子さまが次に目指すべき目標を決め、それを達成するためのサポート内容を具体的に考えていきます。同時に、お子さまが過ごしやすくなるような環境づくりについても検討します。こうして、お子さま一人ひとりに合った個別支援計画をつくりあげていくんです。最後に、個別支援計画の内容について保護者さまにも詳しくご説明し、同意を得たうえでサポートに移るというのがアセスメントから支援開始までの一連の流れになります。支援を開始したあとも定期的にモニタリングを行い、必要に応じて個別支援計画の見直しをしています。アセスメントから支援、モニタリングまでのサイクルを丁寧に回していくことが、お子さま一人ひとりに合った支援を実現するための鍵となっています。Upload By 発達ナビ編集部ーー個別支援計画を作成する際の目標設定について、何か気をつけていることはありますか?目標設定では、抽象的な目標ではなく、具体的な行動に落とし込んだ細かい目標を設定するようにしています。たとえば、「楽しくあそぶ」という目標では、何をもって達成とするのかが曖昧で、指導員によって評価にバラつきが出てしまいますよね。そのため、「おもちゃを貸してと言われた時に、5回中4回は貸すことができる」というように、明確な行動基準を設定するんです。具体的な目標を設定することで、指導員同士が同じ基準でお子さまの行動を評価できますし、今後の支援内容を検討する際の意見交換もしやすくなります。「ブロックで30分集中してあそぶ」という目標を設定し、お子さまがそれをクリアできたら、自然と「40分集中してあそべるようにするためにできることは?」と、建設的な議論につながります。このように、具体的な行動目標を設定することで、支援の方向性が明確になり、スタッフ間の連携もスムーズになります。これが、お子さま一人ひとりに対する支援の質を高めることにつながっていると考えています。※クリックするとLITALICOジュニアのお問い合わせページに遷移します今後も「お子さまが自分らしく生きる力を育める場所」でありたいUpload By 発達ナビ編集部ーーサービスのリニューアル後、保護者さまからはどのようなお声がありましたか?リニューアル後は多くの方から「楽しく通えている」「支援時間が伸びたことで、自分の時間を確保できるようになった」などのポジティブな感想をいただいています。また、集団の中で過ごす様子から、お子さまの成長を実感できることも、保護者さまにとってうれしい変化のようです。授業をモニタリングいただいた保護者さまからは「こんなふうにお友達と関わることができるんだ」という驚きの声が上がることもあるんですよ。ーーお子さまの発達が気になる保護者さまは多くいらっしゃると思いますが、LITALICOジュニアの児童発達支援や放課後等デイサービスはどのような方におすすめできるでしょうか?LITALICOジュニアには「自分らしく生きる力を育む」というコンセプトがあるんです。苦手なことを克服するだけでなく、周囲の理解や配慮を促すことも重視しながら、お子さまが自分らしく生きていくための発達支援を提供し続けたい。そのために、お子さまの特性を深く理解し、周囲との関わり方を共に考えていくパートナーでありたい。そう考えながら、私たちは日々お子さま一人ひとりと向き合っています。なので、お子さまが自分らしく生きていくためのサポートを求めている方には、ぜひLITALICOジュニアをご利用いただきたいです。お子さまの発達が気になる方であれば、どなたでもご利用いただけるサービスですので、心配ごとがある方はぜひ一度教室にお越しいただければと思います。ーーありがとうございました。※この記事は、LITALICOジュニアに掲載のコラムの一部を変更し、構成しています※クリックするとLITALICOジュニアのお問い合わせページに遷移します(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2024年07月05日園・学校との連携お子さまにとって、園や学校は、家庭に次いで長い時間を過ごす場所です。また、集団での行動や学習、自立活動など、家庭とは異なる状況や困難が現れたり、家庭と同じようなサポートが難しかったりという場面もあります。お子さま自身の頑張りたいという気持ちから、合わない環境で無理をし、疲れてしまうという可能性もあります。そのような時に、保護者と園・学校で連携して課題意識を共有したり、困りごとを解決する方法を探っていくことがとても重要です。今回は、LITALICO発達特性検査を使って園や学校とうまく連携するためのポイントをご紹介します。LITALICO発達特性検査は、保護者がお子さまについての質問にスマートフォンやパソコンから回答することで、お子さまの特性や困っていること、その対処法が分かるオンラインの検査です。検査結果は、Webブラウザのほか、PDFの形式でダウンロードできます。お子さまの困っていることや特性の傾向や強さのほか、その困りや特性の背景にどんなことがあるか、またどう対応すればいいかといったサポートの方向性が表示されます。家庭での対応方法だけでなく、園や学校での対応方法についても具体的に紹介されるのが特徴です。そのため、検査結果をデータやPDFをプリントしたものを使い、園・学校などでお子さまと接する関係者への相談・共有のためのツールとしても役立てられます。LITALICO発達特性検査について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。園・学校での連携が重要になるタイミング園・学校と家庭での相談には、以下のようなタイミングがあります。新しい環境でお子さまに困りごとが現れやすくなるタイミングです。新しい担任への情報共有や、配慮が必要な場合の相談が必要になる場合もあります。お子さまについての情報をまとめておいて、サポートブックのような形で渡す保護者の方もいます。その際の資料としても、検査結果を活用できます。短い時間の中で、お子さまについて話し合うために、どのようなことを相談したいか、伝えたいかなどをまとめておくと良いでしょう。通常学級・通級指導教室(特別支援教室)・特別支援学級・特別支援学校など、お子さまに合った学びの環境を選ぶための相談です。小学校・中学校入学前の就学相談のほか、入学後に転籍したい場合の相談をすることもあります。困りごとがあった場合や相談したい場合、保護者の方が持っている情報をまとめておくといいでしょう。家庭と園・学校との様子が違う場合や、それぞれの見立てや課題感が異なる場合もあります。どちらが正しいかを議論するのではなく、家庭での状況を把握してもらうことが重要です。そのためにも、事前にまとめた情報があると相談しやすくなります。スクールカウンセラーに相談できることもあります。合理的配慮として、お願いしたい支援や配慮があれば、具体的に伝えることで導入の検討がしやすくなります。合理的配慮には診断書が求められることがありますが、診断書はないけれども、お願いしたい配慮がある場合、発達特性検査の結果が背景要因を共通理解するのに役立ちます。また、家庭で行ってうまくいったサポートがあれば、それを伝えることで園や学校でも試しやすくなるかもしれません。園や学校に共有するときのポイント1.困っていることや状況の共有保護者の方やお子さまがどんなことに困っているかの共有が必要です。困っていることの共有、お子さまの特性の共通理解をみんなで行い、お子さまにとってうまくいく場面が増えるようにしましょう。相談では、まずは家庭での様子や保護者の方やお子さまが感じている困りごとや課題を共有します。2.本人の特性をみんなで理解し、共通認識をつくるお子さまに、いつもと同じ対応方法が望ましい特性や、困りごとの生じにくい環境や方法がある場合、本人に合った環境が必要な場合などもあります。そこで、保護者の方だけでなく、周囲で関わる人がお子さまについて情報の共有をし、理解をしたうえで同じような接し方をすることがポイントとなってきます。3.協力してサポートする園や学校でお子さまと関わる人が、その子の特性や困っていることについて理解し、共通認識を持つことがとても大切です。お子さまの過ごしやすい環境づくりや困りごとが現れる状況を減らすために役立てましょう。LITALICO発達特性検査の検査結果レポートでは「サポートの方向性」として、家庭で起こっていることが学校でも起きている場合、園や学校でも同じケースで使いやすいアドバイスやヒントが提案されています。限られた時間の中で相談をうまく進めるポイントは、相談したいことを事前に整理してまとめておくことです。・話したいことに優先順位をつけておき、大事なことから話す・視覚的な情報や、言語化された資料として検査結果を見せながら話す検査結果レポートの内容は詳細でボリュームもあるため、全てを読んでもらうのが難しい場合もあります。検査結果を持参する際には、あらかじめ、優先順位をつけて特に相談したい部分に付箋をつけたり、その部分だけを持っていくなどするのもおすすめです。検査結果を見せたり渡したりする際には、検査結果レポートの「04.専門家の皆様へ」の箇所を見せるなど、LITALICO発達特性検査についても説明するとよいでしょう。Upload By LITALICO発達特性検査 活用サポートお子さまによっては「困った行動」をする「困った子」という捉え方をされることがあるかもしれません。ですが、その行動をなぜするのか、特性や困っていることの背景を知ることで、本人にもコントロールできない行動だったり、本人にとっては必要な行動であることが分かることもあります。また、環境に影響を受けて生じる行動の場合もあります。お子さまにとってどうしたらうまくいくか、困りごとが減らせるかという視点で、お互いに前向きで具体的に話すことを意識するようにします。園や学校での見立てや困っている度合いが家庭や検査結果と異なる場合もあります。そんな時は、逆にチャンスと捉えて、話し合うのもおすすめです。LITALICO発達特性検査は学校の見立てと違うときのすり合わせツールとしても活用できます。LITALICO発達特性検査は、主に保護者が把握できる場面で感じている困りごとから結果を出します。そのため、園や学校での見立てと違う場合や、周囲では「困っている」と捉えていないことがあるかもしれません。また、お子さまの困りごとや特性の現れ方は環境との相互関係で現れます。そのため、家庭では困っていることが園や学校では現れなかったり、集団生活や学習の場面など、特定の場面で困りごとが現れたりするなど、家庭と園・学校での状況や困りごとの様子に違いがあり、それぞれの見解が異なる場合もあります。どちらもお子さまの姿であることをお互いが理解することがとても重要です。検査結果を伝えるだけでなく、「家庭ではこういうことがありますが、学校ではどうでしょうか?」などと、園や学校での様子を聞くことも重要です。特性や困りがどんなときに強くなり、どんなときに現れないかなどの情報収集をし、両者でそれぞれの様子を共有し、連携できるとよいでしょう。まとめ本人の困りごとを減らし、過ごしやすい環境をつくるためには、家庭だけでなく、園や学校との協力が欠かせません。また、家庭だけでお子さまのサポートをすると、どうしても負担が大きくなり、保護者の方が疲弊してしまうかもしれません。少しでも頼り先を増やし、お子さまのために同じ目線で一緒にサポートを進められる仲間をつくっていきましょう。また、園や学校での様子と家庭での様子が異なる場合には、お互いに情報を共有したり、その違いから支援のヒントを得ることもできます。そのための第一歩が、情報をスムーズに共有することです。ぜひ、LITALICO発達特性検査をそのツールとしてご活用ください。
2024年07月02日青春は勉強に費やして。勉強ができてもトラウマに大学受験当時、私の発達障害に気づく人は誰もいませんでした。学校の成績も良かったため、私自身も含め誰もが「宇樹は難関大学に入ってエリートになるべき」と信じていて、かかっていたプレッシャーは相当なものでした。親は「勉強しろ」と直接的な言い回しこそしなかったものの、「学生の本分は勉強だ」「お前が勉強に集中できるように」とよく言っていました。家事の手伝いなどを免除するから、その時間を勉強に回すべきという雰囲気だったのです。自分にとって長時間の通学も含んだ学校生活だけでも疲労困憊するということも、自分がたとえ疲れていなくても比較的長時間の睡眠が必要だということも知らなかった当時。私はプレッシャーにせきたてられるまま、自分の体力の3倍ぐらいの無理を重ねました。青春らしい経験もいっさい重ねることなく、すべての時間を勉強に使ったのです。毎朝5時半に起きて2時間の通学をし、16時ぐらいに学校が終わるとゼイゼイするほどダッシュして電車に飛び乗って予備校へ。途中で、昼の分と合わせて2個持ってきた夜の分のお弁当を食べながら22時半ぐらいまで予備校の授業を受ける。23時過ぎに帰ってくると短時間でお風呂を済ませ、夜中の1時ぐらいまで船を漕ぎながら予備校の復習。そうしてようやく就寝、睡眠時間は4時間半あればいいほう、という感じでした。勉強=身体を壊すほどの疲れに耐えること になってしまった慢性的に過労状態だった私は、いつも耳鳴りがしていて、顔はニキビだらけ、顔は真っ赤にのぼせて手足は氷のように冷たく、歩きながらでも意識が落ちてしまいそうなほどに眠かった……。自律神経が悲鳴を上げていたと思います。そして、高校3年の10月頃、私はついに激しい腹痛と血便血尿を起こして倒れました。過労による腸炎と腎盂炎との診断で、1ヶ月ほど寝込むことに。なんとか持ち直した私は、学校が休みに入った受験直前には、食事やトイレの暇も秒単位で惜しむようにして時間を捻出し、毎日16時間の勉強をして、有名難関私大に合格しました。受験が終わった瞬間、私はプツリと糸が切れたかのように、何もかもやる気がなくなってしまいました。バーンアウトです。大学が始まっても、一度深刻に壊れてしまった心身は回復することはなく、せっかくあれほど努力して入った大学の授業にまったく身が入らないまま、漫然と4年間を過ごしました。それ以来、何十年といった単位で、私は「勉強」がダメになってしまいました。資格試験だとか、キャリアのためとか、そういったもののために勉強しようとすると、自動的に大学受験当時の、全身を300%張り詰めていたモードのスイッチがオンになって、体調が悪くなってしまうのです。もうこれは「勉強トラウマ」のフラッシュバックと言っていいと思います。40代の私、学びは生きがいけれど、私はそれでも、学ぶことは常に楽しんできたと思います。大学受験のためとかキャリアのためとか社会的評価のためとかいった、自分の価値をジャッジされることとは離れたところで、純粋に、知らなかったことを知る営みとして。「勉強」は訓読みすると「勉(つと)める、強(し)いる」となります。ここから、勉強には「外的にしろ内的にしろ、何か圧力のようなものがあって頑張ること」というようなニュアンスが感じられます。しかし、「学び」の語源は「まねび(真似)」から来ているそうです。先人の考え、知ってきた軌跡を、同じようにたどりながら知識と意識を身に着けていく。そんな「学び」が、私は大好きです。知らなかったことを知ることで、「これはこういうことだったのか!」「これとこれはこんなふうにつながっているのか!」と知的な興奮があったり、「こういうしくみだったのなら仕方ないな」とある種の納得や癒やしがあったり。「では、これをこうすればこれが実現できるのでは?」と、見通しや希望が持てたり。誰に強制されるでもなく、興味の赴くままに学ぶことは、生きるのを楽にしてくれ、また、人生の解像度を上げて、より楽しくしてくれます。勉強せざるをえなかった学校の教科の中でも、私は常に学びを発見してきました。勉強から離れたあとも、宗教学、哲学、心理学、神経科学、言語学……いろいろなことを学んできました。40代になった今、学びは私にとって不可欠なものとなっています。勉強と学び、それぞれ違う魅力がある私にとって勉強は非常につらいものではありましたが、それはあまりに無理を強いられたために極端につらかっただけ。本来勉強は、学びの基礎をつくるものとして不可欠なものだと思っています。たとえば私の場合、英語が読めなければ、英語で資料を探すこともできなかったでしょう。評論用語を知らなければ人文系の本を読んでも意味が分からなかったでしょう。数学が分からなければ心理統計が分からず、理科が分からなければ自律神経の話も理解できなかったでしょう。国語や古文の積み重ねがなければ言語学も分からなかったでしょう。勉強はこうした基礎を示すものだからこそ、大学受験や資格試験で試されるのであって、上手に努力すれば「合格」という比較的短期的に分かりやすい結果に結びつきやすいところは大きな魅力だと思います。学びはその点では短期的に分かりやすい結果に結びつくことは少ないですが、確実に人間性に深みを出してくれるし、そこはまさに人生そのものを充実させてくれる大事な要素だと思っています。人生にとって分かりやすい成果も大事ではありますが、人生を過ごす本体は自分という人間です。私は、つらくてもたくさん勉強をした過去の自分自身に感謝していますし、これからもたゆまぬ学びによって、自分の人間性を深めていきたいと思っています。文/宇樹義子(監修:森先生より)本当によく頑張られたのですね……。100%の限界を超えて力を出し切ってしまい、しばらくの間、燃え尽き症候群(バーンアウト)になってしまったと考えられます。 実は、発達障害の傾向のある方はご自分の疲労に気づきにくく、仕事や勉強に没頭しすぎてしまってエネルギーを出し尽くしてしまうことがあるのです。その結果、適応障害やうつ病になってしまうことも少なくありません。 宇樹さんの「勉強」と「学び」の考察についても、たしかにおっしゃる通りで、読んでいてとても学びになりました。 実は英語でもニュアンスの異なる「study(勉強する)」と「learn(学ぶ)」という2つの表現があります。英語の「study」は、ラテン語の「studium」からきた単語で、「没頭する」という意味を持つそうです。「learn」の語源は「leornian」という単語で、「知識を得る」「習得する」という意味だそうです。 宇樹さんの場合は、「勉強」「study」をしようとすると、健康を害しかねないレベルでご自分の時間・健康・興味のすべてを投入して没頭してしまうのでしょうね。知的な好奇心が旺盛で、常に楽しく興味の向くものを学ばれているとのこと、大変素晴らしいですね。これからも、ご自分の体調に気を配りながら、人生を豊かにするような「学び」を続けていけるように願っております。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2024年07月02日障害児通所支援事業を行うアース・キッズ株式会社(R)(所在地:東京都渋谷区、代表取締役:高見 裕一)は、教育・保育に関する商品やサービスを展開する株式会社チャイルド社(所在地:東京都杉並区、代表取締役:柴田 豊幸)や、スポーツクラブ「メガロス」を展開する野村不動産ライフ&スポーツ株式会社(所在地:東京都中野区、代表取締役:小林 利彦)などを協力企業とし、2024年7月1日、総合情報メディア「チャイルドラボ(R)」の提供を開始いたしました。チャイルドラボは、「育児×保育×療育をつなぎ、すべての子どもの健やかな成長を支える」をコンセプトとし、保護者と保育園や幼稚園、発達支援施設の先生など、子どもに関わるすべての方に向けたアプリ・WEBサイトです。専門家監修のじっくり学べる記事と、数分から学べる動画で情報提供し、社会全体で子どもを育てる環境作りを推進します。チャイルドラボ■サービス提供の背景2022年の文部科学省の調査によると、通常学級に通う児童・生徒の約8.8%、35人の学級では1クラスに3名程度が発達障害の可能性があることが明らかになりました。文部科学省は「特別支援教育の知識がある教員が少なく、適切な支援ができていない可能性がある」と指摘しており、発達支援の課題が社会問題となっています。また少子化に伴い、保育園閉鎖が増える見込みであり、選ばれる園となることが課題となっています。2023年には保育園と児童発達支援施設の併設が認められ、発達障害児の数が年々増加している中、インクルーシブ保育・教育が求められる時代背景が相まって、発達障害児支援に関するエビデンスに基づく知識の需要が高まっています。このような背景から、保護者、保育施設、発達支援施設がそれぞれの考え方で子どもと関わるのではなく、子どもを社会全体で分け隔てなく育てていくことの重要性が理解されています。チャイルドラボでは、育児、保育、療育を軸に情報を発信し、保育教育機関と福祉施設が相互理解を深め、また保護者や子どもと関わる方々に対しては、エビデンスに基づいた情報や多様な選択肢、心身の健康を促す情報を提供し、子どもの健やかな成長を目指します。■チャイルドラボ・サービス概要チャイルドラボは、育児×保育×療育をつなぎ、すべての子どもの健やかな成長を支える、アプリ・WEBサイトの総合情報メディアです。保護者と保育園や幼稚園、発達支援施設の先生などの子どもに関わるすべての人に向け、「育児・子育て」「暮らし」「心の健康」「身体の健康」「園・施設紹介」「エンタメ」「発達障害」「保育者」「児発・放デイ」の9カテゴリーにわたって、記事と動画で情報を提供します。WEBサイト : 法人向けサービス紹介: ■チャイルドラボの5つのポイント【(1)数分で学べる!忙しい保育者・先生の育成に】チャイルドラボでは、記事と動画で育児・保育・療育に関する情報を提供しています。必要な知識や発達障害の解説、子どものやる気を促す方法などをご紹介。初心者でも学びやすく、施設スタッフの研修にも最適です。専門家監修の記事と、3分から学べる動画をスマホでも簡単に閲覧可能。時間や場所を選ばず、忙しい保育者・先生の学習に適しています。【(2)投稿機能で事例の共有!最新情報を学べる】園や施設から記事を投稿する機能があります。園、施設の管理画面から遊びや工作、取り組み、事例を手軽に更新でき、テキストの他にも写真や動画、PDF資料も投稿できます。チャイルドラボからの発信だけでなく、施設の遊びや工作アイディアが随時更新されるので、常に新しい情報を得ることができます。【(3)独自カスタマイズでオリジナル研修教材にも】記事や動画をフォルダ分けしてお気に入り登録できる、コレクション機能があります。「新任研修用」「2歳児クラス方針」など用途別に作成したお気に入りフォルダは、園、施設内、法人内などで共有することができ、共通の研修ツールとして活用できます。投稿機能と組み合わせることで、独自の研修教材作りも可能です。【(4)育児・保育・療育現場で活かせるプログラム】児童発達支援・放課後等デイサービスの5領域に対応した発達支援プログラム集は200種類を超えます。中期目標や具体的な支援内容、楽しく活動するためのポイントや、難易度調整のやり方など、初めて子どもと関わる方でも写真付きで分かりやすく掲載しています。発達支援プログラムで使えるプリント教材の他、育児や保育の中で行える工作キットや遊びの紹介も豊富で、明日からの子どもとの関わりに活かすことができます。【(5)施設情報を発信し、イメージアップができる】チャイルドラボは保護者の方からの利用も多く、工作や遊びのアイディアなどの投稿をすることで認知向上に繋げることが可能です。■チャイルドラボ・監修者小関 俊祐:桜美林大学准教授。「発達障害療育研究所」および「スタジオそら(R)」顧問。公認心理師、臨床心理士、認知行動療法スーパーバイザー。土屋 さとみ:発達障害療育研究所研究員。公認心理師、臨床心理士、専門健康心理士、日本ストレスマネジメント学会認定ストレスマネジメント実践士。発達障害療育研究所(R):発達障害や支援に関する情報収集や分析、専門家や関係機関との事例・情報共有を行い、より良い支援と人材育成を目的として、アース・キッズ株式会社により設立。国立研究開発法人産業技術総合研究所との共同研究の他、育児・保育・療育に関するセミナー、支援に関する幅広い情報を学会や「そら通信」などで発信しています。■協力企業株式会社チャイルド社:「幼児の 美しいこころ すこやかなからだ ゆたかな夢 をそだてる」を理念とし、「園のお役に立つこと」「一人ひとりの子どもの最善の利益」の実現を目指して様々な教育・保育に関する商品やサービスを展開。グループ会社である株式会社三恭では保育園「パピーナ」を6か所で運営。野村不動産ライフ&スポーツ株式会社:「顧客満足を感動と喜びに変える」を企業理念に掲げ、スポーツクラブ「メガロス」、メガロスアフタースクール、バイリンガル幼児園などの事業を通じて地域に住まう方々に健康であることの「喜び」「大切さ」を伝え、「健康」と「生きがい」創造に貢献することにより、お客様や社会と共に栄え、成長することを目指す。記事イメージプリント教材イメージプログラム集イメージ動画イメージ■会社概要商号 : アース・キッズ株式会社代表者 : 代表取締役 高見 裕一所在地 : 東京都渋谷区千駄ヶ谷3-51-6 原宿MOA 2F設立 : 2000年1月28日理念 : 子どもたちのために。以上。ビジョン: すべての子どもたちが公平に可能性にチャレンジできる…。そんな社会を創る。事業内容: 児童福祉法に基づく児童発達支援、放課後等デイサービス「スタジオそら」子どもの健やかな成長を支える総合情報メディア「チャイルドラボ」URL : TEL : 03-3403-4389FAX : 03-3403-4388Mail : child-lab@earth-kids.com 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2024年07月01日機能的アセスメントとは?機能的アセスメントは、環境と行動との関係性に着目し、本人の視点からその行動の機能を理解するために使用されるアセスメントの総称です。具体的な手法や考え方については、専門家や研究者の立場によってさまざまなものがあり、特定の決まった方法はありません。この記事では、「機能的アセスメント」という考え方を用いて、「特定の行動がどんな環境要因によって生じているのか」「その行動がどのような意味があるのか」ということに着目することで、本人への理解や、具体的な支援を考える方法について、家庭でも実践できるヒントをご紹介します。機能的アセスメントの基本的な考え方行動の前にはきっかけがあり、行動のあとには結果があります。このような行動の前後の環境から本人視点でその行動の意味を考えることを「機能的アセスメント」といいます。行動の機能はそれが生じる環境によって複数考えられます。それに着目することで、その行動を変えたり、よりよくするための効果的な工夫がしやすくなります。例えば、次のように考えます。おもちゃ売り場(きっかけとなる環境)↓癇癪を起こす(行動)↓おもちゃを買ってもらえた(結果)癇癪を起こすとおもちゃを買ってもらえるというメリットがあるために、お子さまが癇癪を繰り返すようになる、と考えます。この場合の癇癪は、「おもちゃが欲しい」という要求の機能を果たしていると考えられます。Upload By LITALICO発達特性検査 活用サポートお子さまにとって課題のある行動や、望ましくない行動がある場合、その行動のきっかけや結果を知ることで、「癇癪を起こす」という望ましくない行動が起きにくい環境を整備したり、代わりになるコミュニーケーションやより適応的な別の行動に置き換えていく具体的なアイデアを考えやすくなります。LITALICO発達特性検査と機能的アセスメントLITALICO発達特性検査では、お子さま本人(個)と周囲の態勢・設備(環境)の相互作用の中で、お子さまの困難が生じると考えています。「いつも同じような状況で困りごとが起きる」「お菓子売り場で騒ぐのをなだめたくて一度買ったら、毎回騒ぐようになった」など、繰り返す行動がある場合や、解決したい課題がある場合にも、この考え方をもとにすることができます。また、観察や分析をするうちに、「同じような場面で起きていた」「きっかけがあると起きやすい」ということに気づくこともあるかもしれません。そうすることで、困りごとだけにフォーカスしてお子さまを「困った子」としてとらえるのではなく、お子さまの特性と、なんらかのきっかけや状況といった環境が相互に影響しあってその困りごとが生じると考えることができます。さらに「お子さまの行動にはどんな意味があるのか?」「その行動がどういう機能・目的を果たしているか」という機能的アセスメントによって把握することで、その状況や行動を変えたり、困りごとが軽減できるよう、対応方法のヒントが得られる場合があります。Upload By LITALICO発達特性検査 活用サポート「いつも同じような状況で困りごとが起きてしまう」「お菓子売り場で騒ぐのをなだめたくて買ってあげたら、毎回騒ぐようになった」など、繰り返す行動がある場合や、解決したい課題がある場合にも、この考え方をもとにすることができます。また、観察や分析をするうちに、「同じような場面で起きていた」「きっかけがあると起きやすい」ということに気づくこともあるかもしれません。そうすることで、困りごとだけにフォーカスしてお子さまを「困った子」としてとらえるのではなく、お子さまの特性と、なんらかのきっかけや状況といった環境が相互に影響しあってその困りごとが生じると考えることができます。さらに「お子さまの行動にはどんな意味があるのか?」「その行動がどういう機能・目的を果たしているか」という機能的アセスメントによって把握することで、その状況や行動を変えたり、困りごとが軽減できるよう、対応方法のヒントが得られる場合があります。また、LITALICO発達特性検査では、お子さまの特性や困っていることの傾向と、その対応方法が「検査結果レポート」として表示されます。特に機能に着目したサポートが合うお子さまの場合、検査結果レポートでも、サポート方法として「機能」に着目した対応方法を提示している場合があります。その場合は、検査結果レポートを参考にすることで、課題や困りごとに即したサポートに取り組みやすくなります。このように、LITALICO発達特性検査で得られた情報と合わせて機能的アセスメントを行うことで、より適切な支援や、家庭での環境調整につながっていきます。行動の理由を4つの「機能」(=原因)から考えるお子さまが特定の行動をするとき、なぜその行動が生じているのか、本人の視点から考える必要があります。背景にあることが多い、主に4つの「機能」(=原因)をご紹介します。ここでいう機能とは、行動がどのようなニーズを満たすためのものかを示しています。Upload By LITALICO発達特性検査 活用サポートおもちゃが欲しい、ボールを蹴りたいなど、本人の要求が困った行動の原因になっていることがあります。例えば、スーパーのお菓子売り場で癇癪を起してお菓子を買ってもらえた(=要求が実現した)場合、今後もその癇癪の行動が増える可能性が高いのです。モノや活動の要求が行動の原因の場合、適切な要求の方法を教えることや、交渉することを教えていきます。本人にとって、好ましくない状況を回避できたとき、不適切な方法でも逃避できたという経験が課題となる行動の原因となります。例えば、友達に手を握られていて、手を握られるのが不快で、友達の手をかむと友達が離れた。このとき、「かむ」という行動で不快を回避できたため、嫌なことから避けるために同じ行動を繰り返すことにつながります。この場合その行動は「回避」の機能を持つと考えられます。逃避(回避)の機能の場合は、課題や活動をお子さまに合わせたものにする、その行動が生じにくいよう環境の変更をする、「やめて」「休憩したい」「教えて」など、その行動の代わりとなる適切なコミュニケーションの方法を教えるなどをしていきます。相手や周囲、家族や保育士の先生などの注目が欲しいという欲求が課題となる行動の原因になっている場合があります。たとえば、食器を叩いて大きな音を出した結果として先生の注目が得られた場合、先生からの「注目」が、行動を繰り返す要因となることがあります。このような場合、本人のコミュニケーションを取りたいという気持ちを満たす方法を検討してみましょう。「大きな音を出さないで!」と注意をするよりも、食器の音に大きく反応しないで、適応的な行動をしているときに本人に話しかけたり関わったりする、本人に注目してほしい時の言い方を教えるなどが効果的な場合があります。課題となる行動が生み出す刺激自体が、本人にとっての心地よさを生み出して、その行動を繰り返す状況に陥っている場合があります。手をひらひらさせたり、ぐるぐるまわる、つばを出したり入れたりするなどは、退屈や不安がまぎれるという感覚刺激自体が行動を繰り返させる原因になっている場合があります。感覚刺激が行動の背景にある場合は、代わりになる適切な余暇スキルを教えることが有効です。例えば、手をひらひらさせるなどの行動と同じような感覚が得られる遊びとして、玉を落とすおもちゃ(視覚刺激)や振って音が出るマラカスなどの楽器(聴覚刺激)でより発展的な活動に置き換えていくことが考えられます。また、感覚刺激を得る行動が自然になる環境をつくるなどの環境調整も有効です。例えば、紙を破き続けたいお子さまの場合、工作の時間にちぎり絵など、紙をビリビリやぶくような内容を加えて、それが活動内で自然な行動になるようにするといいでしょう。機能的アセスメントの考え方を活用してみましょうある特性によって、他者の関わりや周囲の環境が刺激となり、特定の行動が引き起こされやすくなっている場合があります。ひんぱんに起きる行動がある場合、機能的アセスメントを行うことで、行動そのものの理解と、お子さまの特性を掛け合わせるような形で捉えると、お子さま理解が深まりやすいでしょう。行動にはいくつかの機能があることを知ることができると、なぜ何度も同じ行動をするのか、叱っても繰り返すのはなぜか、などが見えやすくなってきます。適応的な行動を促すために、お子さまと保護者さまの両方にとって、叱るよりも心理的に負担の小さい方法が取れるかもしれません。検査結果に加えて、行動の機能を知ることはアプローチを変えることにつながるでしょう。例えば、以下のようなアプローチの方法があります。・環境調整困った状況が起きにくいように、環境を変えることができないか工夫してみましょう。環境調整については以下の記事もあわせてお読みください。・別の行動に置き換えるお子さまがその行動で満たしたい機能を、ほかの適応的な行動に置き換えられないか検討してみましょう。この場合、置き換えることが本人にとっても望ましく嬉しいものにすることがポイントです。まとめ機能的アセスメントは、お子さまの行動の背景にある「行動の機能」を理解し、その行動がどのような要因によって引き起こされているかを分析する手法です。機能的アセスメントの考え方を理解することで、お子さまの行動理解が深まり、適切な支援や環境調整のヒントが得られます。慣れないうちはなかなかうまく分析できないという場合もあるかもしれません。そのような場合は、一つの具体的な行動や場面にしぼって観察するのがポイントです。いつ、どんな状況で、誰といる時なのか、など行動が起きやすい条件についても注目して観察してみましょう。前後を観察・記録することで、お子さまにとっての行動の機能が見えてきて、対応策を考えやすくなります。また、家庭で難しい場合は、相談機関や支援機関で専門家に相談するなど、協力して取り組むことをおすすめします。
2024年06月28日「ランドセルをロッカーにしまいましょう!」と何度も先生に注意されたリュウ太は!?ADHD(注意欠如多動症)とASD(自閉スペクトラム症)がある息子リュウ太は、現在26歳。一昨年結婚しました。5歳年下のお嫁さんとリュウ太の母である私は一つ屋根の下で同居しています。母の私から見れば今でも立派とは程遠いですが、リュウ太の学童期は特に課題がたくさんありました。小学1年生~小学3年生の期間、担任の先生から「リュウ太くんがランドセルをしまってくれません」と報告を受けること数知れず……。机の横に置いたり机の上に置いたままだったり、学童帽子も同じく片付けられなくて、教室ではかぶったままだったりします。「ランドセルはロッカーにしまいますよ」と優しく促してくれる先生に対して「やだ!」とか「ムリ!」というような返事しかしなかったのです(先生談)。Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。注意を受けても動かないリュウ太に先生は言い疲れてしまったのか、「リュウ太くんが自主的に片付けるのを待ちます!」ということなりました。しかし、なかなかランドセルをロッカーにしまわないのでクラスメイトからは机の横を通る際に「ジャマだな」とか「通りにくい」など文句も出ていました。なのにリュウ太は「仕方ないだろう」と言い返し、通行の迷惑になっていることに気がつきませんでした。周囲からは自分さえよければお構いなし!という身勝手な行動にみられてしまっていたと思います。ランドセルをロッカーにしまえるようになったのは小学4年生の時。担任の先生が何度も何度も無視できないほど注意を促してくれたからでした。(えーー!就学してから丸3年間もかかる?ってお思いになる読者もいるかしら、はははは)。リュウ太にどうして片付けたくないのか聞いたことがあるのですが、こんな理由だったそうです。Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。「ロッカーは遠いからイヤだよ。ロッカーにしまう、っていうルールがイヤなんだ。自分の持ち物はいつも手に届く場所にないと不安だから机の横に置いているだけ、それの何がいけないの?」目に入らなくなったものはリュウ太にとってはないものと同じです。あると認識するには常に目に入る位置に置いておかないと失くしてしまう特性があります。また「失くすとお母さんに怒られるから恐い」という思いから物がないと不安になるとも言われました。はい……私がしつけと称して怒りすぎたことが原因かもしれません。反省です。この行動はクラスメイトや先生にとって迷惑行為だったと思いますが、リュウ太は小学3年生にして自分の特性に気づきはじめていて、本人なりの物の管理の工夫の一つだったのではないか?とも思いました。とはいえ、周りから苦情が来てるんだから、周りの声にも気づこうね!と思う母でした。執筆/かなしろにゃんこ。(監修:初川先生より)リュウ太くん小学校低学年時代のランドセルがしまえないエピソード、ありがとうございます。面白いですね。とても興味深く読みました。見えないところに物があると「ない」となってしまう子いますね。大人でもいらっしゃいますね(ストックを買っても、しまいこんでしまうと存在を忘れて、また安いタイミングで買って、しまおうとしてストックの棚を開けると「あ……」となるような)。ランドセルや自分の持ち物を手元に置いておかないと不安だ、失くしたくない。そういう気持ちがあってのランドセルをそばに置いておく。友逹に苦言を呈されても「仕方ないだろ」という返しなのはそういうことだったのですね(「うるさいなぁ」じゃないのが興味深いです。仕方ないのですね。本人なりに、ランドセルロッカーにしまうほうがいいのは分かっている、しかしできない、だから「仕方ない」といったところでしょうか)。一口に「片付けができない」「物の管理ができない」と言っても、やり方が分からない、やる気がわかない(めんどくさい)、そして、物が遠くに置かれるのが不安だ、視界から消えるのが不安だというパターンもあるのだなと改めて思いました。小1の頃のリュウ太くんはさすがにそこまで説明できなかったかもしれません。ただ、今回こういったエピソードを知ると、同じように物の片付けで独特のこだわりや難しさを持つお子さんにかける言葉かけのバリエーションが増えるように感じました。視界から消えるのが不安なのであれば、もしかしたら、教室前方の邪魔にならないところにランドセルを収納できる可能性も出てきますね。ところで余談ですが、このエピソードを読んで、私は子どもが小さかった頃、抱っこ紐で子どもを連れていた時期が長かったので、ベビーカーに乗せて出かけるときはたかだか1メートル程度でも子どもと距離ができることが不安だったことを思い出しました。大切な存在をそばに置いておきたい気持ちは分かる気がします。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年06月25日WISC(ウィスク)知能検査とは?WISC(ウィスク)とは、ウェクスラー式知能検査に分類される知能検査の一つです。ウェクスラー式知能検査は1939年に刊行された「ウェクスラー・ベルビュー知能検査」から始まって80年を超える歴史を持ち、日本においても広く使われている知能検査です。ウェクスラー式知能検査には年齢によって、幼児用のWPPSI(ウィプシ)、児童用のWISC、成人用のWAIS(ウェイス)という種類があります。それぞれ改訂を繰り返しており、現在ではWPPSI-III、WISC-V、WAIS-IVが最新となっています。具体的な対象年齢は以下の通りです。・WPPSI-III:2歳6ヶ月〜7歳3ヶ月・WISC-V:5歳0ヶ月〜16歳11ヶ月・WAIS-IV:16歳0ヶ月〜90歳11ヶ月今回はその中で児童用のWISCについて解説していきます。参考:ウェクスラー知能検査の概要|厚生労働科学研究成果データベースWISC検査ではさまざまな問題が出題され、その回答結果によって子どもの知的機能を数値化しています。WISC-IVもWISC-Vも具体的な問題内容は非公開となっています。これはあらかじめどのような問題が出るか知っていると、結果に影響が出ることがあるためです。また、検査を受けたことがある人がその検査内容をほかの人に伝えてはいけません。これは、ほかの知能検査でも同様です。また、WISC検査は検査用具や採点マニュアルなどが販売されていますが、購入できるのも保健医療、福祉、心理・教育など専門機関に限られています。そのため、公平性・専門性が保たれた中で検査を受けることができると言えるでしょう。WISC-IVとWISC-Vの違いって?変更点や指標など用語について解説WISCの最新版はWISC-Vですが、現在でもWISC-IVを使用している機関は多くあります。どちらも子どもに対して複数の検査を行い、その結果としてIQ(知能指数)などの数字を導き出します。WISC-IVとWISC-Vでは、その検査と結果の出し方に一部違いがあります。まず、WISC-IVの検査内容ですが、15の下位検査(10個の基本検査と5個の補助検査)で構成されています。10個の基本検査を実施することで以下の4つの合成得点と全体的な知能を表す全検査IQ(FSIQ)を算出することができます。WISC-IVで算出できる指標・全検査IQ(FSIQ)・言語理解指標(VCI)・知覚推理指標(PRI)・ワーキングメモリー指標(WMI)・処理速度指標(PSI)対してWISC-Vでは、16の下位検査(10個の主要下位検査と6個の二次下位検査)で構成されています。そして、導き出される指標は全体的な知能を表す全検査IQ(FSIQ)と、特定の領域の知能を表す主要指標、付加的な情報としての補助指標の3つに変更されました。そのほかWISC-IVからの大きな変更点として、主要指標から知覚推理指標がなくなり、視空間指標と流動性推理指標に置き換えられています。Upload By 発達障害のキホンWISC-Vで導き出される指標には主要指標と補助指標があり、それぞれ以下の通りです。主要指標・言語理解指標(VCI)・視空間指標(VSI)・流動性推理指標(FRI)・ワーキングメモリー指標(WMI)・処理速度指標(PSI)補助指標・量的推理指標(QRI)・聴覚ワーキングメモリー指標 (AWMI)・非言語性能力指標(NVI)・一般知的能力指標(GAI)・認知熟達度指標(CPI)10個の下位検査からすべての主要指標を算出するための所要時間は、65〜80分程度とされています。WISC検査を受けるメリット、デメリットは?WISC検査を受けるメリットとして以下の2つが挙げられます。1.IQ(知能指数)が分かる2.子どもの得意不得意が分かるIQ(知能指数)とは、知能のいくつかの側面(知識量や読み書き計算の力だけではなく、記憶や問題解決、見たり聞いたりする力など)を測定する検査の結果を数値化したもので、平均は100です。IQを測ることで、知的障害(知的発達症)などの診断や支援を受けることにもつながります。また、WISC検査は言語理解やワーキングメモリーなどの領域ごとに結果が出るため、子どもの得意なこと不得意なことも分かります。得意不得意の傾向が分かると、子どもの得意を活かしたり、現在困っていることへの対策を考えたりすることにも活かせるというメリットがあります。WISC検査を受けるうえでデメリットとなり得ることとして、以下の2点があります。1.専門機関でしか受けられない2.知能検査では測れないものもあるまず、WISC検査は医療、福祉、心理・教育などの専門機関でしか受検することができません。さらに、検査を実施できるのは限られた人になることもあり、受けたいと思ってからすぐに受検できるわけではありません。具体的な実施場所には以下のような機関があります。・教育相談センター・児童相談所・発達障害者支援センター・児童発達支援センター・医療機関教育相談センターや児童相談所など公的な機関では、面談などを通して必要性が認められたうえで無料で受験できる場合があります。医療機関は小児科や児童精神科などで受けることができ、自費で受ける場合と、医師により必要が認められて保険診療となる場合があります。自費の場合は15,000円~20,000円程度かかることが多いようです。どちらも、診察料や報告書作成費用などが別途かかることもあります。また、WISCでは、例えば芸術性や創造性などの個性や、共感性などの能力は算出することができないので、そのこともデメリットと言えるかもしれません。参考:知能指数 / IQ(ちのうしすう)|厚生労働省e-ヘルスネット参考:わが子の育て辛さを感じたら「WISC(ウィスク)検査と発達障害」|杉並区参考:Ⅲ 発達検査の活用|山口県WISC検査の結果の見方は?数値の凸凹が大きいとどうなる?検査の活用方法は?ここではWISC検査の各主要指標の数値が高いとどのような特徴があるのか、また数値が低いとどのような困りごとが起きやすいのかご紹介します。・言語理解指標(VCI)が高い場合語彙力が高く、読み書きや文章の理解が得意・言語理解指標(VCI)が低い場合先生の口頭での指示や、プリントや黒板に書かれた文章が理解できないことがある・ワーキングメモリ指標(WMI)が高い場合一時的に情報を記憶する力が強く、複数の情報を処理することができる・ワーキングメモリ指標(WMI)が低い場合指示を覚えていられず、注意がそれやすい・処理速度指標(PSI)が高い場合タスクを効率的に素早く判断し、処理することができる・処理速度指標(PSI)が低い場合読み書きや会話の反応などが遅くなることも。テストなどに時間がかかる・流動性推理指標(FRI)が高い場合論理的に物事を捉えることが得意・流動性推理指標(FRI)が低い場合問題解決や新しい環境で見通しを立てることが苦手・視空間指標(VSI)が高い場合視覚的思考や図、地図などを理解するのが得意・視空間指標(VSI)が低い場合グラフの読み取りや図形問題などが苦手WISC検査で算出された各指標の数値の差が大きければ大きいほど、そのギャップから子どもの生活や学習上の困りごとも大きくなる可能性もあります。WISCによる数値だけで子どものすべてを把握できるわけではありませんが、得意不得意を知ることは困りごとの把握や対策を考える上でも活用できます。また、WISCの結果を子どもが通っている学校や支援機関とも共有することで、学校生活や支援で困りごとを減らしていくことにもつながります。検査結果に一喜一憂するのではなく、子どものためにも上手に活用していくようにしましょう。参考:大六一志著「知能検査の “ 正しい ” 理解─課題の自覚と効果的な努力を導くために─」発達障害研究第43巻(2021 年)第1号P.26~32参考:岡田 智, 飯利 知恵子, 安住 ゆう子, 大谷 和大著「自閉症スペクトラム障害における日本版WISC-IVの認知プロフィール―Cattell-Horn-Carroll 理論によるサブタイプの検討―」教育心理学研究第69巻(2021 年)第3号P.254~267(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
2024年06月23日支援者の不安を軽減『マインドチェンジでうまくいく! 配慮が必要な子どもの発達支援』Upload By 発達ナビBOOKガイド本書は、配慮を必要とする子どもの支援者自身が、過度な心身の負担なく、子どもにとって最善の支援を行うために持ちたいマインドについて紹介しています。チェンジしたい20のマインドのテーマが紹介されており、それぞれのテーマごとに、マインドチェンジの理由、マインドからの保育実践、WORK、マインドチェンジの確認チェックが掲載されています。そのほか、支援の実践エピソードや、用語解説などのコラムもふんだんに盛り込まれています。また、巻末にはマインドチェンジのためのコピーツールもあり、活用することができます。著者である藤原里美さんは「子どもは1ミリも変えずに」、子どものまわりの世界を変えるマインドを持つことーーそうすることで見える世界は一変し、たとえ子どもの不適切な行動は変わらなくても、安心して支援に取り組むことができる、と言います。支援者だけではなく、発達が気になるお子さんとの関わり方に悩む保護者にとっても、子育てのヒントが詰まった一冊です。現役小児神経科医による解説本『発達が気になる子どもが小児科の専門外来を受診するとき 診察室で行われていること』Upload By 発達ナビBOOKガイド公立病院に勤務する現役の小児神経科医・柏木充先生によって書かれた本書は、受診から診断までの一連の流れが、小児神経科医ならではの解説と共に紹介されています。なかには、受診前の心構えや初診時の問診で聞かれることなど、日々の診療で多くの親子に接している医師だからこそ分かる、専門外来を初めて受診する時に不安に感じやすい内容についても触れられています。診察や検査、主な神経発達症(ASD/自閉スペクトラム症、ADHD/注意欠如多動症など)とその併存疾患、薬剤治療などの医療に関する内容だけではなく、支援者間の連携などについても丁寧に解説されており、発達が気になるお子さんの保護者や学校の先生などにとって、手元に置いておきたいガイドブックのような一冊です。吃音のある人への支援や合理的配慮について、理解を深める『吃音ドクターが教える「なおしたい」吃音との向き合い方 初診時の悩みから導く合理的配慮』Upload By 発達ナビBOOKガイド自身も吃音のある医師・菊池良和先生によって書かれた本書。タイトルにあるように、吃音をなおしたいと思う当事者や家族の方は多くいらっしゃると思います。しかし、本書には「なおす方法」が書いてあるわけではありません。これまでの吃音のセラピーは、吃音のある本人へのアプローチが主流でしたが、本人が困りごとを抱えている背景には、聞き手側の配慮・理解が影響していることも多いと言います。第一章では当事者が吃音をなおしたいと思う背景、第二章では32の事例紹介と治療の実践編について紹介されています。また、巻末資料として、園や学校、職場などで合理的配慮を受けるためのテンプレート文が掲載されています。吃音のある人への理解・配慮があれば、吃音があることで困ったり悩んだりすることは減らせるのではないか?一人でも多くの“アライ(味方)”を増やしたい、そんな思いで書かれた本書。吃音のある人への支援や合理的配慮について、理解を深めることができる一冊です。親子で心について学ぶ絵本『こころをなくしたかいじゅう』Upload By 発達ナビBOOKガイド主人公のかいじゅう・オルーガは、自分の勘違いから親友を傷つけ、友情を壊してしまいました。一人ぼっちになったオルーガは、その後悔と悲しみのあまり、心まで失ってしまったのです。何も感じない、何をするにも意味なんてない……そんな毎日を送っていたオルーガのもとに、ある日封筒に入った地図が届きます。地図に記された宝が何なのか気になったオルーガは、宝を探す旅に出ます。地図には、「ケラケラ村」「イライラ村」「エーンエーン村」「ワクワク村」など、ふしぎな村の名前がたくさん。それぞれの村を訪れると、笑ったり、怒ったり、泣いたり、楽しんだり……いろいろな心を持ったかいじゅう達が住んでいました。個性豊かなかいじゅう達の感情に触れるうちに、オルーガは心を持っていた頃の自分を少しずつ思い出していきます。可愛らしくユーモラスな姿のかいじゅう達が描かれた絵本の世界を通じて、心って、感情って何だろう?と親子で話しながら、自分の気持ちやほかの人の気持ちを考えるきっかけになるのではないでしょうか。発達障害のある子どもの睡眠問題を理解する『日常生活から学ぶ 子どもの発達障害と睡眠』Upload By 発達ナビBOOKガイド日本の子どもたちは世界の中でも睡眠時間が少なく、睡眠の問題を抱えている頻度が高いとされています。特に発達障害のある子どもでは、睡眠障害の有病率が高いと言われています。本書では、食事や運動、昼寝といった日常生活の場面や、乳幼児期から青年期までの子どもの成長段階に応じて、睡眠が子どもの発達にどのような影響を及ぼすのか、専門的な知識を交えながら詳しく紹介しています。睡眠は、生きていく上で必要不可欠であり、子どもの心身の成長に大きな影響があります。子どもの睡眠の問題と発達障害の関連について焦点を当てた本書は、最新の知見に基づいた適切な治療や対応方法を体系的に学ぶことができる、数少ない一冊といえるのではないでしょうか。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年06月22日この10年で発達支援を受けることが身近になった医療機関や、児童発達支援、放課後等デイサービスなどで、作業療法士(OT)による支援を受けたことがあるお子さん、保護者の方も多いのではないでしょうか。今回は、日本作業療法士協会で常務理事を務める酒井康年さんにインタビュー。酒井さんは、特別支援学校(当時は養護学校)の教員時代に重度障害のある子どもたちと関わる中で、ご自身の力不足を自覚するとともに、作業療法士が持つ専門性の高さを知り、資格を取得して現場で力を発揮したいと考えたそうです。インタビューでは、協会の活動や発達支援の現場で感じる変化、作業療法のゴール、保護者の方が作業療法を受ける際に意識するといいことなどをお聞きしました。Upload By 専門家インタビュー――2012年に改正児童福祉法が施行されてから10年以上が経ちます。どのような変化を感じているでしょうか。酒井常務理事(以下、酒井):大きな変化として、「支援の量」が満たされるようになってきたのではないでしょうか。つまり、都市部を中心に通所事業所が増え、お子さんが発達支援を受けることがとても身近にとらえられるようになったと思います。ここ数年、保護者の方とお話しをすると、「わが子に必要なことは、なんでもやりたい」というスタンスの人が増えたように感じています。以前は特別な支援を受けることに抵抗が強い人が多くいらっしゃったことと比較すると、ある意味、合理的な考え方になってきているのではないかと感じています。一方で、「訓練」が注目されがちでもあります。不器用さがあるから作業療法士の訓練を受ける。歩行が困難だから作業療法士や理学療法士の訓練を受ける。それは大切なことですが、「どの訓練を受けさせるか」ではなく、「子どもをどう育てるか」が重要だと考えています。――ここ数年、国でも障害児通所支援の基本的な考え方について議論が重ねられてきました。どのように受け止めていますか。酒井:2021年に「障害児通所支援の在り方に関する検討会」、2022~2023年に「障害児通所支援に関する検討会」という大きな検討会が開かれました。広範囲に渡り深く議論いただき、最終的に「障害児通所支援に関する検討会」で児童発達支援・放課後等デイサービスにおいて、総合的な支援を行う重要性が改めて確認されたことに安堵しています。厚生労働省|障害児通所支援に関する検討会報告書(概要)・総合的な支援を行い、その上でこどもの状態に合わせた特定の領域への専門的な支援(理学療法等)を重点的に行う支援が考えられる。 その際には、アセスメントを踏まえ、必要性を丁寧に判断し、障害児支援利用計画等に位置づける等、計画的に実施されることが必要。――総合的な支援を行うことは、「子どもをどう育てるか」という視点とつながりますね。保護者の方も、支援者の皆さんと一緒に考えていく必要がありそうです。酒井:そうですね。繰り返しになりますが、訓練を受けさせることだけが、子どもを育てることではありません。もちろん、保護者の方にとって専門家に相談し、お子さんの困りごとにストレートに答えてもらえるのは分かりやすく、安心感もあるでしょう。そのお気持ちは否定されるものではありません。どちらかというと、私たち支援者が、「総合的な支援」の大切さを意識し、自分たちが行う訓練は「その一部である」と忘れないことが必要です。目指すのは「人々の健康と幸福」であり、「障害の克服」ではないUpload By 専門家インタビュー――酒井さんは、日本作業療法士協会が主催する「児童福祉領域の作業療法意見交換会」での講演をはじめ、作業療法士のあるべき姿について啓発活動をされていますね。酒井:まさに今、力を入れている活動です。日本作業療法士協会では、「作業療法は、人々の健康と幸福を促進するために、医療、保健、福祉、教育、職業などの領域で行われる、作業に焦点を当てた治療、指導、援助である。作業とは、対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す。」という作業療法の定義を定めています。特に注目したいのが、「人々の健康と幸福を促進するために」という部分です。一般社団法人 日本作業療法士協会――大目的は「人々の健康と幸福を促進する」ことだと。酒井:そうですね。私たちが目指すのは、「障害の克服」ではないということです。これは、国の「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」において、「ウェルビーイング」という言葉で表現されていますが、とても近いと感じています。私自身も、「子どもと家族がハッピーでなければいけない」といつも言っています。例えば「運動ができるようになる」ことはプロセスの一つとしてもちろん大事だけれど、ゴールではない。「ハッピーに過ごせる」ことがゴール。そのために、作業療法士として何ができるかという視点を持つ重要性を、伝えるようにしています。――作業療法士の皆さんは、そのような視点を持ち、どのような活動に落とし込まれていくのでしょうか。酒井:ICFと呼ばれる国際生活機能分類(WHO)の概念では「活動・参加」と示されていますが、作業療法士は「活動・参加」を支援する専門職です。医学的な知識、活動分析・作業分析というスキル、人・環境・作業の3要素によって情報をとりまとめるPEOモデルなどを駆使して、子どもの「活動・参加」において何ができて何が課題になっているのか、どこにどういうアプローチをすればいいかを考えて、「ハッピー」につなげていこうと話しています。――「活動・参加」は、具体的にイメージするのが難しいケースもありそうです。酒井:障害が重度になればなるほど、参加を想定するのが難しく、その手前である機能面へのアプローチにとどまってしまうように思います。先日も難病のお子さんを訪問看護している作業療法士や理学療法士に、「社会参加をどう考えていますか?」と聞いてみました。難病があると感染リスクがあって学校に行ってはいけないと言われていると。もちろん、命を守ることが第一です。では、「放課後に行くというトライはできないのか」「日曜日の校舎を借りてトライができないのか」。では、買い物は?小学生が買い物に行く機会がない、これは一般的にはそうそう起こりにくい事態ですよね。そういった事態であると認識し、医学的な知識を役立て、支援者同士でアイデアを出し合うのです。そうすれば、社会参加に向けて違ったさまざまなアプローチが出てくるでしょう。難しいことは重々承知ですが、制限があると社会参加しなくてよいわけではなく、制限がある中でどのように前に進めるのか、なのです。――以前からそのような意識で取り組まれてきたのでしょうか。酒井:2022年9月の「障害者権利条約」における政府報告に関する国連総括所見で、「人権モデル」という言葉に出合ったことが大きいです。人権モデルは、一言でいうと「なによりも人権を尊重することを最優先にする」というもの。どんな理由があっても、人権が損なわれてはいけないというスタンスで物事を考えることです。先ほどのケースでは、難病がある=外に出られなくても仕方がない、ではいけない。ほかにも、強度行動障害がある=身体拘束をしても仕方ない、ではだめなのです。現状はそうせざるをえないのかもしれませんが、極めて懸念される事態であり、なんとかしなくてはいけないという認識を持つことが大事ということです。この学びによって、自分の中でより「活動・参加」に沿って考えられるようになりました。――「仕方がない」「諦めて当然」ではないのだと。酒井:私たち支援者が諦めたら誰がやるのか。この子たちを知っている支援に携わる人間が、今の限界にしっかり気づき、仕方ないではなく子どもが権利侵害を受けている認識がないと前に進むことができません。少し難しい話になってしまいましたが、分かりやすく言うと「子どもの可能性を形にする」です。目の前にいる子どもの可能性を、小さいことでも形にできるか。保護者の方が「無理じゃないか」「そんなことできると思わなかった」を、「うちの子、できるんですか!」につなげていく。それは、重度心身障害のお子さんが指を一本動かせることかもしれない、重度知的障害のお子さんが名前を呼ばれた時に立ち止まれることかもしれない。保護者の方にお子さんの可能性を見せていくことを大事にしていきたいですね。「意見が合わない」は多職種連携の一歩――「活動・参加」を目指すために、より多職種連携が大切になりそうです。酒井:そうですね。お互いに平等であるという考え方のもと、連携を強化していく必要があります。私は、通所事業所で時々聞く、「保育士と専門職」という言い方もおかしいと思っています。保育士の方も、専門職ですよね。あくまで、専門性が違うだけですから。また、多職種連携では意見が合わなくて当たり前なのです。意見が合わないことが分かりましたというのは、残念なことではなく多職種連携の一歩を踏み出せたということ。意見を合わせることが大事なのであれば一職種でいいということです。子どもと家族のハッピーに向けて、同じ方向を見ることができればうまくいくはずなのです。作業療法士には「お子さんの全部」を話してほしい――保護者の方が作業療法を受ける際に意識するといいことはありますか。酒井:まずお伝えしたいのが、「焦らなくて大丈夫」ということです。お子さんの成長は、一人ひとり違うものです。準備が整うのを待つ、ほかのところから頑張ってみる、そんな意識で一緒に取り組んでいきましょう。そして、お子さんの「生活の全部」を教えてほしいと思います。保護者の方が心配していること、保育園・幼稚園の先生に言われたことだけではなく、ですね。思いがけないところに解決のヒントがあったりするので、最初から狭めることなく広く投げかけてほしいと思います。私が担当したあるお子さんについて、保護者の方からは「不器用さがあり、勉強が嫌い」とお聞きしていました。数ヶ月後に「最近すごくよくなったんですよ」とおっしゃるので、「何がよくなりましたか?」とお聞きすると、「夜泣きがなくなりました」「行き渋りがなくなました」と。「え、夜泣きや不登校のお困りがあったの!?」と、反省したことがあります。――保護者の方は、お悩みと作業療法が結びつかない場合、伝える情報を選んでしまいそうですよね。それでは、最後にこれからの活動について教えてください。酒井:日本作業療法士協会で特別支援教育の分野も担当しているので、特別支援教育において作業療法士がどのような役割を担えるのかを考え、発信していきたいと思います。――ありがとうございました。まとめ酒井さんは最後に、「僕は作業療法士の仕事が大好きで、今でも勉強を続けています」と笑顔で話されていました。「子どもと家族がハッピーでなければいけない」という酒井さんの言葉は、とても力強く、発達支援に携わる皆さんと一緒に目指したい、あるべき姿なのだと感じました。これから医療機関や児童発達支援、放課後等デイサービスで作業療法を受ける際は、ぜひ酒井さんのアドバイスのように、「お子さんの全部」をお話ししてみてはいかがでしょうか。Upload By 専門家インタビュー酒井康年さん大学を卒業後、都内の特別支援学校の教員として5年間勤務。その後作業療法士の資格を取得し、うめだ・あけぼの学園に就職。地域の幼稚園・保育園・小学校・特別支援学校の巡回相談や、保育所等訪問支援などを担当し、2024年4月より学園長。子どもの持つ可能性を形にすることを目指して活動中。
2024年06月21日「COSMIN」は品質担保のための尺度開発の国際的なガイドラインCOSMINは、健康に関連する尺度※などに関する国際的な開発の指針です。COnsensus‐based Standards for the selection of health Measurement INstrumentsの略称で、直訳すると「健康関連尺度の選択に関する合意に基づく指針」を意味し、国際的な専門家のチームによって尺度の開発や評価をする際の指針やガイドラインなどが作成されています。LITALICO発達特性検査は、今回の検査の開発に際して、COSMINが選定した指針やガイドライン上の基準を満たすようにつくられています。この記事では、COSMINとは何か、その目的のほか、実際にどのようにして信頼性や妥当性を担保するのか、またLITALICO発達特性検査でなぜCOSMINを採択し、どのように開発で使用したのかなど、取り組みについてもご紹介します。※ここでいう「尺度」とは、対象となる方(受検者)が自ら質問文を読んでそれに回答をする形式のツールのことで、LITALICO発達特性検査も尺度を用いたサービスです。分野によっては、質問紙、心理尺度、患者報告式アウトカム尺度などと呼ばれることもありますが、この記事では総じて尺度と呼ぶことにします。「LITALICO発達特性検査」は保護者回答による尺度形式LITALICO発達特性検査は、お子さまの様子や困りごとなどについて、保護者の視点から質問に回答する尺度という形式を用いた検査で、尺度開発の国際基準であるCOSMINチェックリストに準拠した開発が行われました。尺度を使った評価のほかにも、医師や臨床心理士などが、面接や行動観察などを行う他者評価形式のものもあります。しかし、他者評価形式の検査の場合、有資格者でないと実施できない検査がある、検査を受けることができる施設が限られる、検査を受ける経済的負担が大きい、結果が出るまで時間がかかるなどの課題も少なくありません。LITALICO発達特性検査では、そうした課題に対して、どこからでも比較的短時間で気軽に受けられる検査を目指して開発されました。そのため、保護者回答による尺度形式を採用しています。ただし、尺度と他者評価形式のそれぞれにメリットやデメリットがあるため、どちらが優れているかという話ではないことに注意が必要です。※LITALICO発達特性検査 について詳しく知りたい方は、以下をお読みください。なぜ尺度開発に品質担保が必要なの?心理検査や発達検査などの検査を受けるとき、その検査が信頼できるものであるのか、適正な結果が得られるかどうかは受検者にとって大きな関心事ではないでしょうか。そのため、検査の開発者は、検査内容や結果の出し方について、適正な工程で開発し、検証をすることが求められます。特に尺度を開発する際には、のちに紹介する信頼性や妥当性といったさまざまな心理測定学的特性の基準を満たしているのかを検証する必要があります。尺度というのは、受検者や検査の対象となる人(お子さまやご家族など)の気持ちや体験などのこころの状態を数量的に測定するための「物差し」のことです。この「物差し」をつくるために、どのような質問をするか、またその回答データをどのように検査結果として評価するかを研究し、開発を行っています。検査の品質において、その物差しが信頼できるかどうか、妥当なものであるかをどう担保するかが、とても重要です。質問項目でどのようなことをどのように聞くか、その結果を数量的に測定し、結果を判断するのかによって、その品質が大きく変わると考えられるからです。信頼性と妥当性尺度の品質を評価するための心理測定学的特性として、主に信頼性と妥当性があります。信頼性とは、受検のたびに結果や得点が変動することがあまりなく、安定している度合いを表します。妥当性とは、その検査で本当に測定したいもの(LITALICO発達特性検査の場合にはお子さまの発達特性)をきちんと測定できている度合いを表します。適切な開発が行われず、品質が十分にチェックできていない場合、以下のような問題が出る可能性があります。◾️ある尺度を繰り返し受検した場合、その尺度で測定される気持ちや体験に大きな変化がないにもかかわらず、尺度の得点が大きくばらつく(つまり安定した結果にならない)◾️質問で聞かれていることに対する解釈が回答者によって違う◾️受検者にとって質問の内容や回答の選択肢が適切ではないこうした検査であったら、適切な結果が得られるとは言えないかもしれません。そもそも検査に対して安心して受検することも難しいのではないでしょうか。特に、尺度は質問項目に対して主観的に回答するため、質問項目に対する解釈のずれや回答する時期、状況などによって、回答に大きなばらつきが出ないように注意する必要があります。そのため、尺度に十分な妥当性と信頼性がある尺度を開発するためには、尺度の教示文や質問項目の内容などについて、しっかりと検討する必要があります。COSMINの目的と特徴尺度は受検者が自ら回答する検査ツールです。健康に関わるQOL(生活の質)や自覚症状、日常生活の機能状態などについて、受検者が自ら気持ちや体験をどのようにとらえているのかを数量的に測定することができます。そのため、近年では発達障害の分野でも尺度がよく用いられるようになり、さまざまな尺度が開発されてきました。尺度を開発したり使用したりする場合、それぞれの主観で回答しても一定の結果が得られるか、検査結果と実際の状態に大きなずれがないかなどは、検査の品質として検討され、担保されなくてはいけません。つまり、こうした受検者が主観で回答するという特性を考慮したうえで、尺度に十分な妥当性と信頼性がある必要があります。ですが、これまで、どうやって信頼性や妥当性を担保するのかというのは研究者間でも考え方が分かれ、基準や意見の一致がほとんどない状態でした。そのため、信頼性や妥当性を十分に評価されていない尺度が使われているのではないかという懸念もありました。このような背景や課題に対し、尺度特性を評価するための標準的な基準として開発されたのがCOSMINです。COSMINでは、信頼性や妥当性といった心理測定学的特性を下の図のように分類しており、それぞれに対して評価基準が明確に設定されています。2018年に国際的専門家による合意形成によってガイドラインが改訂され、具体的に検証を進めるためのチェックリストなども開発されています。Upload By LITALICO発達特性検査 編集部COSMINでは、チェック結果が高い品質になるよう、事前にしっかりと研究計画を立てて開発を進めることが重要です。COSMINでは、チェックリストに含まれている評価項目一つひとつに対して、「とても良い」から「不適切」までの4段階で評価していきます。このチェックリストを使うことで、検査が妥当なものであるか、信頼できるものであるかどうかを、慎重に評価して開発することができます。なぜLITALICO発達特性検査はCOSMINを使って開発したの?LITALICO発達特性検査では、検査の品質を重要視して開発しています。品質担保の観点でCOSMINを開発指針として採用した理由としては、主に以下の2点が挙げられます。1. 尺度としての妥当性と信頼性を担保するため2. LITALICO発達特性検査の形式や測定特性に対して適切なガイドライン・チェック項目があるそれぞれについて詳しく説明します。LITALICO発達特性検査の開発では、尺度の信頼性や妥当性に関して、COSMINのガイドラインやチェックリストに準拠することが有用であると考えました。現在の尺度開発のガイドライン、チェックリストとして最も厳しい基準の一つであるCOSMINに準拠することで品質の担保を目指すことができると考えられるためです。LITALICO発達特性検査のような保護者さまがオンライン回答する検査では、いつどのような状況で回答しても安定した検査結果であることがより重要になるでしょう。そこで、LITALICO発達特性検査では、尺度開発において、信頼性と妥当性について品質を重要視した開発を行いました。その品質担保の方法として、COSMINのガイドラインに沿った手順を踏み、チェックリストで「不適切」という評価がないよう、チェックリストを満たしながら開発が行われました。まとめCOSMINは尺度の信頼性や妥当性をチェックするための国際的な基準です。COSMINに準拠した尺度開発は、チェックリストが厳格であることや、またその指針に沿って開発するには、通常の開発よりも時間やコストがかかるなど、難易度も高い傾向があります。COSMINを完全に満たす形での尺度開発はまだ数か少ない状況でもあります。そのような中、LITALICO発達特性検査はCOSMINに準拠した開発を行い、約3年の時間をかけ、2024年4月にサービス提供が始まりました。LITALICO発達特性検査では、オンラインでいつでもどこからでも受検できる、信頼できる検査の開発によって、多くの保護者さまやお子さまにとって、過ごしやすい社会へとつながることを目指しています。気軽に受検できるという検査の特徴と、より高い信頼性・妥当性の両立のために、COSMINは欠かせない指針であり、重要な役割を果たしています。参考:COSMIN Risk of Bias checklist参考:『尺度研究におけるCOSMINガイドラインの動向』 (認知行動療法研究/48 巻 (2022) 2 号/佐藤秀樹、土屋政雄)参考:『尺度研究の必須事項(<特集>「行動療法研究」における研究報告に関するガイドライン)』(行動療法研究2015年41巻2号 p.107-116/土屋政雄)
2024年06月20日「使わない!着ない!」こだわりが強く癇癪が出ていたASD(自閉スペクトラム症)息子現在16歳の息子は、6歳でASD(自閉スペクトラム症)と診断されました。LD・SLD(限局性学習症)、聴覚過敏もあります。生真面目でルーティンが好きな息子は、幼い頃からミニカーの配置や角度にこだわりがあったり、文房具類や上着に車の絵が描いていないと使わない!着ない!という徹底ぶり。こだわると癇癪を起こし、床に寝そべってジタバタとしていました。そんな息子は、小学校の登下校でもそのこだわりを発揮し、トラブルがありました。通学路が変更に⁉息子のこだわりが発動して大変なことになる!と青ざめ……息子が小学校1年生の時のことです。小学校の隣に保育園があったのですが、その保育園を建て替えることになり、その工事のため大型のダンプカーやミキサー車などが出入りするということで、安全のため小学校の通学路を一時変更することが決まりました。学校からの「通学路変更のお知らせ」を見た私は、(これは、息子のこだわりが発動して大変なことになる!)と青ざめました。当時息子は一人で登校していましたが、こだわりが出ると癇癪、パニックを起こしてしまうことがありました。このままでは、「いつもの道じゃなきゃダメだ」と癇癪を起こし、工事現場の方や学校にも迷惑がかかってしまうかも……。Upload By ユーザー体験談私は息子に通学路が変更になることを、変わる前から丁寧に丁寧に説明しました。また、それと同時に改めて交通のルールも説明をしました。歩行者は右側通行ですから、皆さん「道路は右側の端を歩くんだよ」とお子さんに教えていらっしゃると思います。私もそれを息子に伝えたところ……なんと息子は通学路のこだわりを変えなければいけない代わりに、「右側を歩く」こだわりを強く出すようになりました。どんな道でも「右側」を歩く息子……ルール通りと言ったらそうなのですが、道の狭いところなどでは側溝に降りてまで右側を歩こうとすることもあり、ヒヤりとする場面もありました。癇癪が起こらずよかったですが、(そうくるか……)とびっくりしたこだわりでした。そして、通学路にこだわりすぎて危ないことをしてほしくない……という意味で言った「無事に帰って来られるなら、通学路じゃなくても良いよ」という言葉が、さらなるトラブルを招いてしまったのです。上級生の一言で大混乱!「僕、注意されるようなことはしていない!」通学路が変わってから息子は、新しく指定された通学路ではなく別の道の右側を歩いて登下校していました。そんな息子を何度か見かけたある上級生が、新しい通学路を知らないのでは?と心配し、声をかけてくれたそうなんです。「帰りは通学路できちんと帰りなよ。道が違うだろ?おばあちゃんの家にでも行くのか?」と。Upload By ユーザー体験談息子は上級生ということもあり、始めは固まって何も声が出せなかったようです。そして走って帰ってきました。帰宅してから「あいつ、僕に通学路で帰れって言った。お母さんは、無事に帰ってこられるなら通学路じゃなくても良いよって言ったのに。僕、注意されるようなことしていない!」と大混乱。失敗した……、この声がけはNGだったと反省しました。息子に「そうだよね……びっくりしたよね」と言いながら、上級生は心配して声をかけてくれたんだよと説明し、なんとか息子に納得してもらいました。Upload By ユーザー体験談こだわりの減少とともに対人トラブルも激減!道へのこだわりもなくなりましたそんな登下校トラブルが絶えなかった息子ですが、学年が上がるにつれトラブルも減少、小学校5年生頃からは友達と一緒に歩いて帰って来られるようになりました。これは、息子のこだわりが全体的に減ったことも関わっていると思います。以前強くこだわっていた「車の絵が描いてある洋服しか着ない」こだわりですが、それらはサイズがなくて買えないことを事前に話し納得してくれるようになりました。そして、色へのこだわりもなくなりました。それまでは何でもかんでも「青」にこだわっていましたが、何色でも大丈夫になりました。また、給食についても、偏食で食べられるものが少なかったのに、少しずつではありますが、一口は食べるようになっていました。このようなこだわりが減り始めた頃から、対人トラブルも急に減ってきました。Upload By ユーザー体験談そして息子は現在高校2年生。基本的に平和主義ですが、ルールにそぐわないことを周りの人がしていると、注意や皮肉を言うことがあります。でもそんなときは「こんなことがあってね~」と家で自己申告してくれます。特にトラブルなく生活しているので、今思うと小学校時代が一番大変でした。息子とは、きちんと親子で発達障害について学習し、一つひとつ受け入れてきたので、障害受容、自分の得意不得意への理解不足といった心配はしていません。自分と同じような障害を持つ子の手助けをしたいと言った息子の思いが、届くように私も願っています。イラスト/志士ノまるエピソード参考/しのっぺ(監修:鈴木先生より)ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんはルートメモリー(道順の暗記)が得意です。どこに信号があって、どこに橋があって、どこに自動販売機があってなど鮮明に記憶しているのです。カーナビの代わりになるくらい道を知っている場合もあります。しかし、新しい道ができたときなどのバージョンアップが苦手な傾向にあります。いつまでも最初に覚えた古い道は分かりますが、少しでも情景が変わると戸惑います。これと同じ現象はお弁当でも見受けられます。白いご飯は食べられるけれど、ご飯に少しでも黒いゴマがかかっていると全く別物ととらえて食べられなくなる、などです。決まったルーティン、同じ環境が好きで、予定の変更を嫌うのです。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2024年06月18日環境調整とは?環境調整とは、お子さまが困りごとや困難さを感じる環境を整えることを指します。ストレスや困難が生じやすい環境を、その子に合わせて調整することで、心理的・行動的な困難を減らしていきます。お子さまの特性に適した環境を整えることで、課題や困りごとが軽減できるケースも多くあります。しかし、特性には個人差があり、いくつかの特性や背景要因が複合して複雑に現れていることも多いものです。そのため、家庭で環境調整を行うのは、ハードルが高いと感じる保護者の方も多いのではないでしょうか?「この子の特性ってなんだろう」「今のままではうまくできない」「やりにくそうだけれども、具体的にどうしたらいいの?」と悩むかもしれません。LITALICO発達特性検査は、保護者がお子さまについての質問にスマートフォンやパソコンから回答することで、お子さまに合わせた特性や、困りの背景が分かるオンライン検査ツールです。さらに、困りの背景に合わせたサポート方法が示されることが特徴です。検査結果を踏まえて、はじめに試していただきたいことの一つが、環境調整です。本人の特性や困りごとに合わせて環境や関わり方を工夫することで、お子さまと環境の間にある困りごとを減らせる可能性が上がります。Upload By LITALICO発達特性検査 活用サポート適切な環境調整の必要性困難が生じにくい環境を整えることで、お子さまの成功体験が増えることにつながります。お子さまの特性やその理由は一人ひとり異なります。その子に合わせた適切な関わりや調整が大切です。環境調整では、具体的には次の4つの環境を踏まえて考えます。家族や周囲の人々の関わり方を工夫します。例えば、お子さまが安心できる人と一緒に過ごす時間を増やすことや、適切な声かけを心がけることが含まれます。お子さまが使用する道具やそれを使う環境を工夫します。お子さまが使いやすい道具や、安心できるアイテムを用意することで、困りを減らし、安心して過ごすことに繋がります。また配置を工夫することで使いやすくなる場合もあります。お子さまが過ごす空間を整理整頓します。例えば、いろいろなものが目に入ると注意がそれやすくなる場合や、何をする空間なのか明確でないと落ち着いて過ごすことが難しくなる場合があります。遊ぶ場所と学ぶ場所が分かれているなど、空間と活動が対応していることで過ごしやすくなるお子さまもいます。お子さまの特性や困っていることに合わせ、余計な刺激を減らす、落ち着いて過ごせる環境にする、必要なものがすぐに見つかる環境にするなどの調整が重要です。時間の感覚を把握するのが苦手な場合や、変更や変化が苦手な場合などに、時間についての環境調整が有効な場合もあります。スケジュールや時間を可視化する、アラームを使う、変則的な変更を減らす、ルーティン化や視覚化で見通しが立ちやすくするなどの工夫で生活リズムや時間管理がしやすくなります。検査結果を環境調整に活かすにはお子さまの特性に合った環境を整えることは、発達を支えるうえで欠かせません。ご家族はお子さまにとって最も身近な存在であり、環境調整の中心的な役割を担います。家庭だけで個別の環境調整をするのが難しい場合は、検査結果をもとに、専門家の助言を取り入れることも検討するといいでしょう。お子さまに合った関わり方を探してみてください。実践する際には、次の5つのステップを意識するといいでしょう。お子さまがどのような状況で困難を感じるのか、環境や条件に目を向けていきます。お子さまの行動や反応を観察し、どのような環境が適しているのかを見極めます。問題行動があれば、前後の行動やきっかけを観察します。特定の時間、場所、人との関わりなど、起きやすい条件や起きにくくなる条件がないかに着目すると、調整する際のヒントになります。お子さまが困難を感じる要素を取り除くための環境調整を行います。例えば、騒がしい場所で集中できない場合は、静かな場所で学習できるようにします。お子さまがやりやすい方法や道具を取り入れることで、負担を減らします。例えば、書くことが苦手なお子さまには、タブレットを使って入力する方法を提案します。環境調整が実際にお子さまに合っているかどうかを観察し、必要に応じて再調整を行います。以上のように、それぞれが困っていることに合わせて観察や相談しながら環境を調整していきます。それぞれの特性によって適切な個別の環境調整がある場合、LITALICO発達特性検査の検査結果レポートで詳しい例示が紹介されることもあります。学校や園と連携して環境調整・合理的配慮を検討しましょう学校や園は家庭とは異なり集団で過ごす場所です。お子さまにとって合わない環境が家庭以上に増える可能性があります。お子さまが長時間過ごす場所が合わない環境だと、一日を過ごすことに相当なエネルギーが必要になります。そのため、園・学校でも特性に合った環境調整や支援ができるといいでしょう。検査結果を学校や園と共有し、お子さまへの理解を深めることで、教員との定期的な情報交換と協力体制を築くことが大切です。どう相談したらいいかに迷ったときには、検査結果の中で気になった点をピックアップし、それをきっかけに相談や依頼をしてみてください。環境調整や配慮によって、お子さまは安心して力を発揮できるでしょう。LITALICO発達特性検査では、具体的な園や学校でやりやすいサポートの方向性も提案しています。さまざまなお子さまが共同生活する場ですので、すべてのサポートをすぐに実践できるとは限りませんが、できそうなところから、一緒に調整を進めていきましょう。定期的な見直しと更新お子さまは日々成長し、環境も状況に応じて変化していきます。お子さまの変化に合わせて環境調整を見直し、修正することが重要です。環境調整は一時的なものではなく、継続的に取り組むプロセスであることを意識するといいでしょう。もし、今までの方法でうまくいかなくなった場合や、新しい環境調整の方法を試してみたけれども、うまくいかない場合、環境調整以外の方法が有効な場合もあります。何か、困りごとになる行動があった場合、その行動を適切な行動に置き換えていく、専門家に相談するなど、さまざまなアプローチができます。LITALICO発達特性検査のサポートの方向性でも複数の方法を提案していますので、参考にしてみてください。まとめお子さまの困りごとに対して、まず取り組みたいことの一つが環境調整です。お子さま自身への働きかけをしなくても、環境の方を調整することで、困りごと自体が生じる場面を減らせる可能性があります。お子さまが過ごしやすい環境を整えることで、成功体験が増え、より健やかに成長することが期待されます。そのためにも、お子さまにどのようなサポートが合いそうかを理解することがポイントです。また、保護者や本人のニーズが明らかになっていると、園や学校などへの連携や相談もしやすくなります。その際にはLITALICO発達特性検査の結果レポートも参考になるかもしれません。取り組みやすいところから、お子さまの特性に合わせた環境調整を実践し、日々の生活をより豊かにしていきましょう。
2024年06月13日気候変動の影響が世界各地で見られる中、その範囲は異常気象にとどまらず、人々の健康と命の問題にまで拡大しています。世界気象機関(WMO)は、昨年の世界の平均気温が観測史上最も高かったと発表、日本でも各地で最高気温30℃以上の真夏日が過去最長を記録しました。気象庁は、今年の夏も猛暑になる可能性があると予想しています。「異常気象と気候変動の関係と子どもの健康問題」そこで2024年5月8日、現役医師や医療関係者などによる、気候変動による健康被害に関する啓発プロジェクト「医師たちの気候変動啓発プロジェクト」と「東京医科歯科大学 ウェルビーイング創成センター(CWRA)」、「東京大学 大気海洋研究所」は共催で、「異常気象と気候変動の関係と子どもの健康問題について」と題し、報道関係者を対象としたセミナーを実施しました。はじめに登壇した東京大学 大気海洋研究所 気候システム研究系 今田 由紀子 准教授によるプレゼンテーションでは、異常気象(極端な気象現象)への気候変動の影響を定量的に示す「イベント・アトリビューション」を用いて「異常気象と気候変動の関係」についての解説があり、つづいて東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 公衆衛生学分野の藤原 武男 教授によるプレゼンテーションでは、「気候変動・異常気象がどのように子どもの健康に影響を及ぼすのか」について発表がありました。*****本セミナーサマリー*****1. 異常気象への気候変動(地球温暖化)の影響が科学的に証明されるようになってきた。2. 「イベント・アトリビューション」によると、例えば2023年の猛暑は、温暖化がなければ起こり得ないものだった。3. 熱中症の被害件数とイベント・アトリビューションを結びつけ、熱中症による被害に対しても地球温暖化がどれくらい影響しているのかを定量化できるよう、新たな取り組みも。4. 気候変動は、何をしていても地球上に生きている限り全員に影響を与える点を踏まえることが重要。5. 健康影響には直接的な影響と間接的な影響があり、大気汚染やアレルゲンの増加など「原因の原因」という点でも気候変動の影響を受けている。6. 「子どもは小さな大人ではない」。感受期にある、大人に依存しているなどの6つの点から、特に子どもは脆弱な存在であることを認識する必要。7. 「早産」や「喘息」など、子どもへの健康被害はすでに起きている。間接的には気候変動によるPM2.5の影響で「発達障害」へのリスクも考えられる。8. さらに温暖化が進行したら我々の生活がどうなるのか、目の前の異常気象を通して想像することが重要。《目の前で起こった異常気象に対して地球温暖化の影響をエビデンスで示す》まず、東京大学 大気海洋研究所 気候システム研究系に所属し、大気モデルや大気海洋モデルを用いて数年から数十年規模の気候変動のメカニズムなどを専門に研究する今田 由紀子先生が、異常気象と気候変動の関係を定量化する「イベント・アトリビューション」について解説を行いました。■東京大学 大気海洋研究所 准教授 今田 由紀子「異常気象と気候変動の関係」東京大学 大気海洋研究所 気候システム研究系 今田 由紀子 准教授・そもそも異常気象とは何か。気候変動との関係性の証明が難しい理由気象庁の定義では「異常気象:ある場所(地域)・ある時期(週・月・季節)において30年に1回以下程度で発生する現象」とあります。30年に1回程度なので、みなさんご存知の通り、地球温暖化が進行しているからといって毎年徐々に徐々に気温が上がっていくわけではありません。年ごとに暑い夏もあれば涼しい夏もあって、気候というのは気温の上昇と下降を繰り返しながら少しずつ平均的に上がってきます。これが地球温暖化というわけです。・一つの気象現象に対して、温暖化がどれくらい影響しているかを証明するには異常気象は偶発的な大気の「揺らぎ」が重ならないと起こらないので、それに対して地球温暖化がどのくらい発生確率を底上げしているのか、しかも長い時系列で見た場合ではなくて、1つのイベント(現象・事象)だけを見た時にどれくらい影響しているのかという証明は非常に難しいです。そこで私たちは最近、気候モデルを使って1つの目の前で起こったイベントに対する温暖化の影響をいかに定量化するかという新しい手法を開発しました。開発するにあたって参考にしたのが、疫学の考え方です。1番わかりやすいのが、タバコとガンの発生リスクの関係です。タバコを吸う同じような習慣を持っている人を集め、どれくらいの人がガンになったか、またタバコを吸わない人を集め、どれくらいの人がガンになったかを比較しました。タバコを吸わなくてもガンになる方はいらっしゃるのですが、実際に何人の方が発症したかを比べると、明らかにタバコを吸っている集団の方が肺ガンになったケースが多かったとなると、やはりタバコを吸っているせいでガンの発生リスクが増えている、ということを証明できます。このような考え方を参考にして開発した方法が、「イベント・アトリビューション」という、1つの異常気象に対して地球温暖化の影響を証明する研究になります。疫学では「人のデータ」をたくさん集めてきますが、異常気象に対する地球温暖化の影響を証明する「イベント・アトリビューション」では、「地球」をたくさん集めてきます。気候モデルによって、たくさんの模擬的な地球を作り出すことができるので、一つの異常気象に対してたくさんのシミュレーションを行います。ただし与える条件を少し変えて、片方のグループは温暖化が進行している現実的な状態、現実的な温室効果ガス等の排出量を与えた状態でシミュレーションをします。もう1つのグループでは、温暖化しなかったと仮定した仮想的な地球、人間活動による温室効果ガス等のレベルを産業化前のレベルに落として、その上でたくさんの地球を作り出す。この2つのグループを比較して、実際に観測されたような異常気気象がどれくらいの確率で起こったのかを検討します。・異常気象と気候変動の関係性を証明した「イベント・アトリビューション」で見る2023年の猛暑実際に過去に発生した異常気象に対してこのイベント・アトリビューションを適用した例を紹介すると、やはり皆さんの記憶で1番新しいのは昨年の猛暑だと思います。高温イベントの発生頻度このグラフは、横軸に書いてある気温は日本の上空1,500メートル付近の気温です。そして実際に観測された気温が縦破線です。そしてヒストグラムを滑らかな線でつないだ山形で書かれている2つの線が頻度分布です。100個の地球があって、その100個の地球における日本上空の気温がそれぞれどの値に位置していたのかをヒストグラムで表しています。赤い線は「温暖化ありの現実的な条件」で計算した100個のシミュレーション結果で、青い線は「もし地球温暖化がなかったらという条件」で計算した100個のシミュレーション結果です。昨年の猛暑にイベント・アトリビューションを適用してみると、温暖化している条件では発生確率が1.65%、温暖化していないと発生確率が0%なので、温暖化がなければ昨年のような異常なことは起こり得なかったということが証明されたわけです。・今後「イベント・アトリビューション」に期待する健康被害への警告イベント・アトリビューションの結果は、今後、健康影響や人間の体への影響につなげていかなければいけないと考えています。熱中症死亡者数の推移過去に熱中症で死亡した数、死亡者数の数が1番多かった年は2010年の猛暑の時でした。この年は日本漢字能力検定協会が発表する「今年の漢字」が「暑」になったぐらい暑い年でして、7月、8月が当時非常に暑くて、年間で1,700人近くの方が亡くなったという年になります。その2番目に来るのが2018年、「最大級の猛暑」という言葉が話題になった年になりますが、この年は7月の時点で1,000人を超える方が亡くなっていました。2018年は、200名近くの方が亡くなった7月初めの西日本豪雨が非常に大きく悲惨な異常気象として皆様の記憶にも残っていると思いますが、その後の1ヶ月に熱中症でその5倍近くの人命が奪われていたことは、あまり報じられていませんでした。というのも、熱中症による被害は、季節が終わった後にデータが公開されるので、認識されにくいという現実があります。このように熱中症の被害と、イベント・アトリビューションのデータを結びつけて、熱中症による被害者に対しても地球温暖化がどれくらい影響しているのかをきちんと定量化できるように手法を改善していこうと、今、医学の研究者の方たちと協力しながら取り組みも進めております。イベント・アトリビューションの1番の意義は、目の前で起こった異常気象に対して地球温暖化の影響をエビデンスで示す、ということです。そもそも地球の温度が1度や2度上がることがそんなに大変なことなの?と思っている方達に、本当に大変なことなのですよ、と実感してもらうことを目的に取り組んでいます。実感を通して、今度は皆さんにぜひその将来に対する想像力を持ってほしいと思います。現在、この地球温暖化によって異常気象が起こってしまっていて、これがさらに温暖化が進行したら我々の生活はどうなってしまうのだろう、というのを、目の前の異常気象を通して想像していただきたいということです。その上で、本セミナーのテーマである子どもたちへの健康被害を想像していただくというのは「備え」という意味では非常に重要だと思いますし、また、そのようにならないために、どのような対策が必要かを、1人1人に考えていただき、問題解決に向けた行動、特に国が打ち出す緩和策にどのように協力していくかということをぜひ考えていただければと思っております。■東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 教授 藤原先生「気候変動と子どもの健康」《気候変動による子どもへの健康被害について私たちが知るべきこと》続いて、東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 公衆衛生学分野にて、社会疫学、ライフコース疫学を通して子どもを中心に社会環境の健康影響の研究を幅広く展開する藤原 武男先生が、気候変動、また異常気象などによって実際に子どもの健康にどのような影響を及ぼすのかについて発表しました。東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科公衆衛生学分野 藤原 武男 教授・気候変動の健康影響を考える時に大事な視点(小タイトル)まず気候変動の健康影響を考える時に、研究者あるいは医師でも間違いやすい、思わず忘れてしまうような視点を2つお話ししたいと思います。1点目は、気候変動による影響は全員に与えるものだということ。もう1つは、直接的な影響と間接的な影響があるということです。例えば子どもの受動喫煙のリスクについて考えてみたい場合、母親の喫煙者の割合が10%で、非喫煙者の子どもたちも大体10%ぐらいで喘息になるとしましょう。母親がタバコを吸っていて受動喫煙をしてしまった子どもの喘息発症率が2倍になるとした時、その影響を受けるのは、喫煙者の母親を持つ10%の子どもたちだけです。つまり1,400万人の子どもがいたら140万人の子どもに関わる話になります。さらに、全体から見ると受動喫煙によって子どもが実際に喘息になるのは1%でしかないわけです。つまり、1,400万人の子どもがいたら14万人が発症するということです。気候変動の影響しかし、気候変動は全員に影響します。何をしていても地球上に生きている限り、暑い夏を経験するわけです。例えば夏の1日の平均気温が27度であった場合の喘息の割合が10%だとしましょう。平均気温が1度上がって28度になった場合に、よく論文で1度上がると喘息のリスクが1.2倍上がると言われています。1.2倍なんてそんなに大したことではないと思うかもしれませんが、1,400万人の子どもたち全員に影響します。つまり、1.2倍(12%)は、人数にすると1,400万人の子どもに対して28万人が喘息を発症することになります。・気候変動は「原因の原因」もう1つの視点は、直接的な影響と間接的な影響があるという点です。間接的な影響とは、気温が高くなることで花粉やカビが増えていき喘息になる、気候変動によって亜熱帯にいるような蚊が日本にやってくることで起こる健康への影響や、環境の変化によって農作物が減収して採れるものがなくなってくると農薬がたくさん使用されることになり、それに暴露する機会も増えてくるということです。全体で見ると私たちは「原因の原因」という点でものすごく気候変動の影響を受けています。気候変動は「原因の原因」・気候変動による子どもの健康影響を重要視するべき6つの理由気候変動による子どもの健康影響を重要視するべき6つの理由1つ目は、子どもは熱への適用システムが未発達という点です。子どもは大人のように、うまく熱に対応できません。子どもは小さいですが体重あたりで考えると表面積は大きいので熱を取り込みやすく、代謝もいいので動いた時の体重あたりの熱生産量が大きいのに対して、汗腺が未発達なため十分に汗をかけません。また、失った水分をきちんと補給しようと感じることができなくて、脱水になりやすいということもあります。2つ目は、子どもは環境の影響を受けやすい時期・感受期にあるということです。臓器の発達、例えば汗腺の発達においても小さい頃に適切な環境に晒されないと適切に発育されないなど、非常に大事な時期と言えます。気候変動の影響で早産のリスクが高まっていると言えますが、早産で生まれてしまうと適切な感受期に晒されてはいけない外界の影響を受けてしまい、発達障害や呼吸障害、心疾患とか腎障害のリスクが高まります。さらに、胎児期や乳幼児期に暑い気温に晒された時に生涯に渡る影響をもたらすものの例として汗腺の発達があります。汗腺が適切に発達しないと熱中症になりやすく、実際にデータを見ても、初夏のような熱くなり始めた時に、熱中症の症状が多いことがわかっています。逆に言うと、小さい頃から暑いのでずっとクーラーの中でいるとなると、うまく汗をかけない、汗腺が発達しないので熱中症になってしまうということです。実際、データを見てみても、暑くなり始めた時に、こうした熱中症などの症状が多いということがわかっています。そしてもう1つは、感受期にあるということです。脳は生まれた後もどんどん発達していきますが、神経と神経が結合するという大事なときに、農薬や大気汚染のPM2.5などの物質が入ってきてしまうと良くないであろうということです。3つ目は、体重あたりの暴露量が多いということです。子どもの体重あたりの空気や水分、食事の摂取量は、量自体は少ないのですが、子どもの体重に換算すると多いので、例えば農薬など、取り込んだものによる負荷が結果的にかかっていると言えます。4つ目は、外での活動が多いということです。小学生は平均14分外で遊んでいますが、大人になるにつれて屋外での活動時間は下がっていきます。大人であれば、暑い日中に屋外に出ることを避けて早朝や夜にランニングをするなど工夫ができますが、子どもは安全性などを考えるとなかなかできにくいですし、熱の影響だけではなく、蚊といった感染症の媒介物への暴露のリスクも高まります。5つ目は、幼少期の健康への影響がその後も長く続くということです。例えば、子どもの頃の喘息の影響は将来にわたって長く続き、大人になっても喘息が続いていたりするとアレルゲンを避けるためにずっと家にいます。そうすると活動量が下がって肥満になるということもわかっていますし、休みがちになって欠勤してしまい、そうすると収入も低くなるといったことが考えられます。6つ目は、大人に依存して生活しているということです。子どもには、保護者だけでなく保育園や幼稚園の先生、学校の先生、さらにクラブのコーチなど色々な大人が関わっており、子どもがどこでどう遊ぶのかは大人が決めることが多いです。そのため、そばにいる大人が気温のリスクやその他の間接的な要因に気づかなければ、子ども本人は避けることができません。また、論文にも書いてあったのですが、もし子どもが仮に自分でリスクに気づいたとしても、状況を変えるために投票をすることもできないですし、あるいは環境に配慮した会社の製品を買うというチョイスもほとんどの場合ではできません。つまり、子どもはステークホルダーになり得ないということも考えないといけません。・日本における具体的な子どもへの健康被害健康への影響としては、もう熱中症、熱射病は分かっていると思いますが、香港のデータによると、夏において1日の平均気温が27度の時に比べると、30度になった場合の喘息による入院リスクは約1.2倍になっています。全員に影響を与えるので、数字としては小さく見えますが重要です。5歳から14歳の子どもに限ると約1.3倍になるというデータが出ています。(2023年8月の平均気温は29.2度)日本に関連するエビデンス:喘息さらに、湿度だけの影響を見てみると、湿度が70%の時に比べて94%になると、喘息のリスクが約4倍となっています。極端な例かもしれませんが、湿度の影響も無視できないと思います。日本のデータとしては、兵庫医科大学の島先生が姫路で同様の研究をされており、子どもの喘息発作による夜間救急外来のデータがあります。姫路の夏の平均気温が1度上昇すると、奇しくも香港と似たような数字ですが、夜間の受診が1.2倍増えます。これらのデータから言えることは、熱が直接、喘息のリスクや病状悪化のリスクを上げているということです。気温上昇で喘息が悪化するメカニズムでは、なぜ熱が喘息の原因になり得るかについてですが、1つは熱い気温に晒されると気管支のC繊維(知覚神経)が刺激されて、気管が閉まるようにできているからです。例えば、火山の火口に立った時にものすごく熱い空気が出てきたら息してはいけないとなるイメージです。もう1つは、気温が上がることによって花粉やカビなどのアレルゲンが増えることで、リスクを上げるだろうと考えられています。・「早産」や「発達障害」も他に考えられる健康影響としては、「早産」と「発達障害」が挙げられます。「早産」に関して、1日の平均気温が30度になってくると、平均気温が16度と比べて早産のリスクが8%という解析結果があります(同じ季節、例えば初夏の平均気温が16度だった頃と、平均気温が30度になる場合を比較すると、早産のリスクが8%程度高まってくるという解釈)。メカニズムは、気温が高くなると脱水を引き起こして、子宮への血流が減ってしまう。そうすると母体を守ろう、胎児を出さなければと分娩が誘発されるといった説明がされます。「発達障害」については、気候変動というか、気温、熱によって、直接発達障害のリスクを上げるという事実はまだないのですが、間接的に、気候変動によって増加すると考えられる大気汚染や農薬の使用が、発達障害のリスクという風に考えられています。PM2.5の程度も違うので、直接的に日本に応用できるかは分かりませんが、アメリカのデータによると、2歳までのPM2.5の暴露によって、自閉症スペクトラム障害のリスクが1.5倍近くになるといった例があります。日本に関連するエビデンス:発達障害発達障害のメカニズムこのような健康被害に対する対策としては、熱中症など直接的な影響に関しては医者からの注意喚起も大事だと考えています。さらに間接的な影響に対しては、空気が綺麗な広い遊び場を確保する、早い時期から外遊びを通して汗をしっかりかけるようにするなど、また間接的な影響へのもう一つの対策は、化学物質使用の規制など、レギュレーションをしっかり決める必要があると考えています。こうした適応と合わせて、緩和(排出削減)があり、直接的な影響と間接的な影響を踏まえると、適応と緩和が必要なのは理解しやすいと思います。セミナーの様子は、以下よりご覧いただくことができます。URL: 詳細は医師たちの気候変動プロジェクト公式HPをご参照ください。公式HP URL: ■登壇者略歴(敬称略・登壇順) 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2024年06月12日DCD(発達性協調運動症)娘は、走るのが遅いことをからかわれ学校を休みたがるように…現在9歳の娘は、3歳の時にASD(自閉スペクトラム症)とDCD(発達性協調運動症)と診断を受けました。DCD(発達性協調運動症)については、「この子の場合、身体的な機能の問題というより、経験不足による不器用さ」だと主治医から説明を受けました。幼児期から外遊びを嫌がる傾向が強く、体を動かす機会が少なかった娘。就学前までは主治医のいる病院内で粗大運動を中心に作業療法を受け、年長の終わりに作業療法は終了となりました(通院先の作業療法は未就学児のみ対象でした)。しかし就学後、体育の時に走るのが遅いことをからかわれてからは学校を休みたがり、「みんなの声がうるさいから」と体育を見学するようになってしまいました。私は静かな環境で運動の経験を積んだ方が良いのかもしれないと思い、運動療育の放課後等デイサービスに通うことにしたのです。そんなわが家が2つの事業所を経験して感じたエピソードをご紹介します。Upload By ユーザー体験談個々に応じたプログラムとは?体験の時と支援の内容が違って……初めに通った放課後等デイサービスでは、体験時の話と実際に通い出してからの「違い」を感じました。体験の時は娘の安心材料であるぬいぐるみの持参が可能であること、独自の能力テストによって娘の発達段階をはかりそれに応じたプログラムを提案され、本人も「通いたい」とのことで通所を決めました。ですが、実際にはぬいぐるみの持参は禁止され、毎回似たようなプログラム……。娘は飽きはじめてしまい、私も契約時に示された個々に応じたプログラムを踏まえた支援はしてもらえていないのでは?と疑問を抱くようになりました。スタッフの方に「娘が飽きはじめている」と伝えたものの「教具が娘さんの体のサイズに合っていないから」との返答。この事業所は児童発達支援と併設されているせいか、小学生の娘の身長に対してトランポリンやバランスボールが小さく、教具や療育内容が娘に合っていないようでした。また体験時の話と支援内容の違いを伝えても「うちにはうちのやり方がある」の一点張り……もやもやが募りました。この事業所については、対象となるお子さんの幅が狭く、それに娘があっていなかったのだろうと思います。Upload By ユーザー体験談そんな時、空き待ちしていた別の放課後等デイサービスから入室可能との連絡がきたため、娘はそちらへも通うことになったのです。ステップアップしていった個別トレーニングで、ついにDCD(発達性協調運動症)の診断が外れた!新しい事業所は、それまでとは全く異なりました。短期目標計画の面談は書面や電話対応でも可能などフレキシブルで保護者の都合に合わせてもらえました。また、臨床心理士さんや作業療法士さんが娘の発達段階を見極めた療育内容を考えてくれました。体育を想定した跳び箱や鉄棒、ボール投げ、縄跳びを個別でトレーニングをしていただきました。成長が見られるようになると個別ではできない集団でのドッチボールやサッカーの練習をするために少人数でのトレーニングを提案されました。Upload By ユーザー体験談本人が集団に慣れるペースを考慮し、同じ時間枠で個別トレーニングをしていたお子さんと指導員さんとのペア同士でドッチボールをする時間を設けてもらい、個別から集団への移行をゆっくり進めていただきました。跳び箱や縄跳びができるようになると、娘は学校の体育も嫌がらずに参加できるようになりました。そしてついにはDCD(発達性協調運動症)の診断がなくなったのです。そのほかにも面談では不安に感じていることを否定せずに傾聴してくれ、「他害や多動といった分かりやすい問題行動がないおとなしい子は困り事が分かりにくく、支援が受けにくい傾向があります。学校や家庭での様子をなんでも教えてください」と言っていただけ、ホッとしたのを覚えています。Upload By ユーザー体験談経験して思った、わが家の放課後等デイサービスを利用のポイント事業所が違うだけで、ここまで対応が違うとは思いませんでした。このような経験をして放課後等デイサービスに通う際に気をつけておけばよかったと思ったことは2つあります。1、通所時に子どもの気持ちが切り替わる場所かチェックする特性にあった療育内容はもちろん大事ですが、時にははっきりした理由が本人にも分からずに嫌がる時もあります。相性がいい指導員さん、好きなおもちゃや本、レクリエーションなどがあり、子ども自身がデイに通うことを楽しめているか、また通所時に前向きな気持ちに切り替わるような場所であるかは、見極めのポイントの一つになるのかなと思いました。2、疑問を感じたら無理に通い続けない子どもが通いたいと言っても事業所の対応に疑問を感じたら、無理に通い続ける必要はないと感じました。もちろん事業所との話し合いなどで疑問を解決できることが一番良いのですが、不信感を感じているところに通い続けていると保護者のストレスも溜まってしまいます。今も楽しく放課後等デイサービスに通っている娘。これからも社会とつながりをもちながら、楽しくのびのびと成長してもらえればと思っています。イラスト/keiko※エピソード参考者のお名前はご希望により非公開とさせていただきます。(監修:新美先生より)運動療育系の放課後等デイサービス探しについてのエピソードを教えていただきありがとうございます。DCD(発達性協調運動症)というのは、目から入る情報、触覚や自分の体の部分の位置や動き、力の入れ具合を感じる感覚などの情報を統合し、目的に合わせて対応、修正しながら体を動かす「協調運動」がスムーズにいかず、体の動かし方が極端に不器用になる発達障害の一つです。ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)などのほかの発達障害に合併することも多いです。ASD(自閉スペクトラム症)にDCD(発達性協調運動症)が合併すると、慎重さや、興味の偏りと相まって、体を動かす遊びに興味を示さなかったり、怖がったりするために、体を動かすことの経験不足も重なり、さらに運動が苦手になるという悪循環が起きやすいです。特に学校の体育の一斉授業では、活動のテンポが早かったり、集団の指示が分かりづらかったり、他者におくれを取ってコンプレックスが高まったりしてとても苦痛に感じやすいでしょう。病院などの作業療法といったリハビリで、本人の発達段階に応じて個別療育が受けられる機会があるとよいですが、枠などの制限があることはどこの地域でも多いです。放課後等デイサービスの中には「運動療育」「個別療育」をウリにしているところもあります。発達特性に理解のある事業所で、個別~少人数で運動療育を行うことで、本人のペースで体を動かす経験を積んで、楽しいと感じたり、自信をつけたりできるのは理想です。ただ、注意したいこともあります。放課後等デイサービスは学校が終わってから、または子どもにとって貴重なお休みに行く場所です。平日の日中、学校生活で十分疲れているところに、苦手に感じている運動の活動を行うのが本人の負担にならないかということです。このため訓練意識の強いところや、発達特性・本人の意思に無頓着なところはNGだと思います。大切なのは、本人がそれほどの負担なく、楽しんで通えるところです。記事にもあったように、通ってみて、疑問に感じることがあり、話し合っても解決しなければ、別のところを探す(ほかのところが見つからなくても、いったんやめる)という決断もとても大事だと思います。娘さんが大事にしたいぬいぐるみを、初めの見学では持っていけるといったのに、実際には持参を禁じられたというエピソードだけでも、疑問に感じるのは十分だったと思います。別のよいところを見つけられてよかったですね。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年06月11日休み明けが鬼門⁉登校渋り、不登校エピソード、放デイ探し、てんかん寛解までの道のりなどをお届け!【2024年5月】発達ナビでは、発達ナビユーザーの困った経験、こうしたら良かったといった経験を読者体験談としてお届けしています。今回は2024年5月に公開した読者体験談をご紹介いたします。GW明けの登校渋り、不登校の体験談などぜひご覧ください。ASD(自閉スペクトラム症)のまこちゃさんの息子さんは、小学校、中学校で不登校、行き渋りを経験されています。ですが、それぞれ行き渋り、不登校の理由が異なるそうで……。中学生の現在、自ら登校できるように頑張るたくましい姿に感動です。長期休み明けは「学校に行くのがつらい」と感じるお子さんが多くなる時期です。こちらでは、不安感、劣等感、学業トラブル、友達トラブル、いじめ、起立性調節障害など、さまざまな理由で行き渋りや不登校を経験した読者体験談11エピソードをご紹介しています。みなさんがどうして不登校になったのか、またどうやって乗り越えたのか、ぜひご覧ください。エピソードを投稿いただいた苗さんのお住まいの地域には、なんと36の放課後等デイサービスがあったそうです。そこからお子さんにぴったりの放課後等デイサービスを見つける過程を、教えていただきました。これから放課後等デイサービスを探す方、必見です!生後1ヶ月で起こった脳出血(左脳)の後遺症で、長く難治性てんかんを患っていたみったんさんの娘さん。検査、転院、そして2度の手術をし、高校生になった今では服薬も終わったそうです。その長いてんかんとの闘いを、詳細に教えていただきました。ご自身のエピソードを投稿してみませんか?『発達ナビ 読者体験談』はみなさんのご経験を基に制作されています。ご投稿いただいたエピソードは、連載ライターさんのイラスト、専門家の先生からのコメントつけた上で掲載させていただきます。「あの時は悩んでいたけれど、今はこうなった……」など、発達障害のあるお子さんを育児しているみなさんへ、ご自身の経験をお届けいただけないでしょうか。ご応募は以下の応募フォームから受け付けております。みなさまのご投稿を、お待ちしております。【現在の募集テーマ】・障害告知でのトラブル・パートナー(夫婦) との間でのトラブル・両親(義両親)、親族などの間でのトラブル・進学・受験関係でのトラブル・冠婚葬祭関連でのトラブル・お子さまの反抗期、思春期でのトラブル・お子さまの自傷でのトラブル・お子さまの学習関係でのトラブル・不登校、行き渋りでのトラブル・お子さまとゲームの関わりでのトラブル・子さまの不器用さでのトラブル・ママ友や、ほかの保護者の方とのトラブルでのトラブル・ご近所関係でのトラブル(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年06月08日オンラインで特性を検査する「LITALICO発達特性検査」公認心理師の井上雅彦です。LITALICO発達特性検査では、企画段階から参画し、多動・不注意/情緒・行動/感覚/運動(くせ)の検査結果テキストの監修を担当しました。LITALICO発達特性検査は、お子さまと保護者さまが感じている困りごとに対して、その特性の現れ方や背景、具体的なサポート方法が分かる検査です。オンラインで検査に回答するとすぐに結果が得られることも特徴です。検査結果によって、お子さまの特性の現れ方の傾向や困っている事柄への対応方法のヒントが得られます。LITALICO発達特性検査は、医学的な診断を意味する検査ではありません。また、ほかの心理検査とは違って、発達指数や知能指数が表示されるものではありません。ですが、お子さま本人にとって障害となる困りごとや子育ての課題を解決するためには、この、お子さま本人の特性を理解し、その特性や困りごとに応じた対応方法を保護者さまやご家族、園や学校などの周りの人が理解することが、とても重要です。今回は特性を検査するとはどういう意味を持っているのか、また、特性を検査することで、どのようにお子さまやご家族の困りごとや課題をサポートしていけるのかということをお話ししたいと思います。「特性を検査する」とはどういうことかUpload By LITALICO発達特性検査 編集部LITALICO発達特性検査はお子さまと保護者さまが感じている困りごとに対して、その特性の現れ方や背景、具体的なサポート方法が分かる検査ですが、そもそも「特性」とは何でしょうか。特性は、その人の心身や脳の機能、感覚の受け取り方や考え方のくせなどの現れ方や性質です。個人の中でさまざまな特性があり、複雑に合わさって一人ひとり違うものとなり、結果として得意なことや苦手なこととして現れていると考えられます。概念としては「個性」や「障害」と似ていますが、障害というとネガティブな印象、個性というとポジティブな印象といったように、使われることもあります。私は、特性はそれ自体にはポジティブ、ネガティブ、どちらの色もないもので、環境によって障害や困難になることも、個性や強みとなることもあると考えています。分かりやすくいうと、「集中しやすい」という特性があった時に、ほかの人と同じ活動を一斉にしないといけない場面では、「好きなことに集中して、一緒に活動に参加できない」という困難や弱みになることもありますし、個人の趣味などでは「集中して本1冊読み切った」といった強みとなることもあります。本人にとっては、まずはそういった個別の特性や、個人の中の苦手と得意の差が、困ったこと→障害となって現れないように考えていくことが必要になりますし、そのためにお子さまと保護者さま、周りの方にとって、どのように本人に合ったやり方にしていくのか、できることを増やしていくのかという観点で考えていくことが大切になってきます。その意味で、まずは先入観がつかない「特性」という言葉を使うことが、その子を理解し、サポートしやすくするうえでも馴染む考え方なのではないかとも思っています。特性理解を「診断がないと支援できない」を変えるきっかけにLITALICO発達特性検査のように、特性をキーワードにすることは「困り」をスタート地点とする支援にもつながります。診断のある場合は支援対象とされるけれども、診断がない場合には支援が受けにくいという現状もまだまだありますね。ですが、「診断がないかぎり何もできないのか」というとそうではありません。先ほども言ったように、「その人に特性があって、それが本人にとって困った状況であれば変えていく」、その観点がすごく大事です。身近にいる保護者さまや周りの方が本人のもともと持っている得意や苦手に対して、できることを考えることが重要です。診断がないが、何らかの困りごとや特性がある場合「グレーゾーン」と呼ばれることもあります。現状だと、診断があることでサポートや制度が受けやすくなる傾向があるので、こうした診断がないグレーゾーンの方に、支援が届きにくい場合が出てしまうこと、また、本人の努力不足、あるいは保護者の育て方の問題ではないかとされてしまうこともあります。そうすると診断がないことが支援を遅らせてしまう場合もあるかもしれません。必要な支援が届かず、放置されることによって、困りごとや、生活をしていくうえでの困難が大きくなり、それぞれの特性が診断域になってしまうケースもあります。この問題は、何とかしていくべきではないかと思います。もう一つの課題として、診断名だけにとらわれていると、特性が合併している場合などに、診断のある症状や特性以外に困っていることがあっても、それに対しての支援が見過ごされがちになるということもあります。特性から読み解くことのメリットとして、診断にとらわれず子どものニーズや困りを包括的に見ていくことができるということです。ASD(自閉スペクトラム症)の診断がある人の多くは、ほかの発達障害の診断基準も満たしているという研究も出てきています。そのことから、ASDの診断だけをもとに支援を組み立ててしまうと、その子の診断名以外のさまざまなニーズや困難性を見逃してしまうというリスクや、適切な支援に繋がらないという場合もあるでしょう。よくあるケースをご紹介すると、SLD(限局性学習症)の傾向は、学年が上がってから分かったり、困りごとが強まることもあります。それを見過ごして、ASDの診断名があることにとらわれて、コミュニケーションへの配慮や支援はしたけれども、読み書きに対するサポートがないままで、学校や勉強が嫌いになってしまったというお子さまもいます。こうしたケースでは、診断名にとらわれて、実際のお子さまの状態や困っていること、新たに出てきた課題を見つけることが、難しくなってしまうこともあるのではないかと思います。本人の特性を理解せずに、この診断だからこの支援法、という思い込みで支援すると、実際のお子さまの状態や困っていること、新たに出てきた課題を見つけることが、難しくなってしまうこともあるのではないかと思います。そこで、今のお子さまの状態について評価し、包括的に特性や困りごとを見ていく必要があると考えています。LITALICO発達特性検査は、医学的な診断を意味する検査ではありません。ですが、今言ったような観点で、この「特性を検査する」ということが、一つの方法として選択できるということは、大きな意味があると思います。もちろん、心理検査や知能検査、診断、医学的な支援の重要性は、しっかりお伝えしたいです。LITALICO発達特性検査はそれらを否定するものではありませんし、それぞれのよさや目的、できることがあるので、必要に応じて、それぞれ、あるいは併用して使っていただくことが重要だと思います。いずれにしても、今、支援から取り残されている人を、特性というモデルで考えることで、境目をつくらずに支援の対象としていけることを願っています。そのために、診断の有無にかかわらず、その子にどんな特性があるのか、保護者さまの視点で今どんなことに課題や困りごとがあると感じているかに気づき、理解できるというのはとてもいいと思います。特性を具体的な行動に読み直していくUpload By LITALICO発達特性検査 編集部特性に着目することの意味は、それを「具体的な行動に置き換えて支援の対象にできる」ということにあります。よく保護者さまからの相談で、「うちの子は、わがままなのか障害なのか、どちらでしょう」と聞かれることがあります。「わがままだったらやめてほしい」と感じていることがあるけれども、「特性による障害だったら仕方がないかな」と考える保護者さまも多くおられます。わがままなのか、障害なのか、はっきり分けることが難しいと関わり方もそれでいいのか不安になることもあるでしょう。そうやって迷いながらお子さまと接することはかなりストレスになったり、うまくいかなかったりでつらい状況になることも多いでしょう。でも、「こういう特性があるな」ということに気づいて、それが出やすい状況を客観的に捉え直し、改善することで、その子が困る状況を減らし、結果的にできることが増えていきます。一つひとつの行動は環境との兼ね合いで変わっていくからです。一つひとつの困りごとは、その特性やどんなことに困っているかということについての気づきがあって、環境とのマッチングを修正することで改善することも多いのではないかと考えています。このような環境の調整は、最初の取り組みとして大切です。もう一つ、「特性だったら、変えられないのでしょうか」と言う疑問や、「特性より何より、今困っているんです」と言う保護者さまの声もよく聞きます。変わらないのであれば、検査をする必要があるのか?あるいは、改めて今のつらい状況を確認する必要があるのか?悩まれる方もおられるかもしれません。特性というのは、確かに持って生まれた場合もありますし、特性自体は変わらないこともあります。本人にとっては特性自体をコントロールすることが難しいというものも確かにあると思います。でも、先ほどお話したように、特性は変わりにくくても、そこから生じる行動や環境にアプローチしていくことができます。そのためには、特性という概念の中から、一つの行動に着目していくことです。特性を具体的な行動に読み直していくといいと思います。困っている行動や、その子の行動傾向を一つ見つけたら、その行動に対して適切な対応方法を考えてやってみる。ちょっと例を挙げて考えてみましょう。【特性】眩しさを感じやすい感覚過敏の特性がある【困りごととなる行動】教室で窓側の席に座ると、顔を伏せて授業に参加できない【原因】窓側の席の光の差し方が強すぎて、教科書を開いたり、前を向いて長時間過ごすことが苦痛【行動と環境への働きかけ】・授業に参加するという行動に変えるため、席を光の入りにくい内側にする・授業中はカーテンを引く・サングラスをかけるなどなくなってほしいのは、「授業に参加できない」という困りごとであって、特性ではないという考え方もポイントですよね。個人的には、「障害」という概念を、個々の環境と個人との相互作用である「行動」を単位として捉えることで、「障害者」「~障害のある人」というラベルづけから脱却できると思います。特性から生まれる困りごとや障害自体を具体的行動に落とし込むことで、環境や対応を変化させ、解決していくことはできるのではないかと思います。一つひとつの行動が変わっていくことで、最終的に、特性や困りごとについても、変わったり薄まったりしていくことはあると思います。LITALICO発達特性検査で分かること「特性」を知るための検査として、LITALICO発達特性検査で具体的に分かることをあらためてまとめると、以下が挙げられます。1. お子さまの特性や困りごとの傾向まずはお子さまの特性や困っていることの行動傾向に気づく2.お子さまの特性や困りごとの背景要因いくつかの背景要因が提示されることで理解がより進む3.特性や困りごとに合った対応方法やサポートの方向性サポートを試して本人に合うものを探していくこの3つのステップをセットでやってみることで、特性理解をスタート地点にして、行動に働きかけることができるのではないでしょうか。もちろん家庭でできることには限界もありますし、できることからやってみるだけでもいいので、提案された支援の中から試してみてください。お子さまに合っていたサポートなどを抽出してサポートブックなどに記録したり、プリントしてまとめたりしていくといいですし、もしうまくいかなかったとしても、専門家や周りの人に相談する材料にしたり、より本人や状況に合わせてカスタマイズする方法はないか、考えるのもいいと思います。Upload By LITALICO発達特性検査 編集部特性理解のための最初のツールとしてのLITALICO発達特性検査保護者さまや本人が特性を知り、それに適した対応法を知ることで、周りもサポートがしやすくなり、困りごとが減らしていける。特性が障害になるかどうか、環境に働きかけることで障害や困りごとがなくなる・軽減されることがある。LITALICO発達特性検査はそのような立ち位置から出発しています。私は、特性を検査すること、特性をスタートにして支援をすることは、お子さま自身が自分の特性について自己理解をすることがゴールではないかと考えています。もちろん、お子さまに検査結果を見せるという意味ではないですが、保護者さまや周りが特性を理解し、困っている行動に着目して、それを減らしたり変えたりするにはどうしたらいいか、と考えて対応していく。支援や学校での合理的配慮などを行っていくためのツールとして使っていただきたいと思っています。診断のあるなしによらず、特性が分かるということが本人に合わせた支援のカスタマイズに繋がることを、LITALICO発達特性検査の監修者の一人として、願っています。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2024年06月07日どう対応したらいいか分からない……発達障害のある子の「学習の難しさ」お子さんの学習について、困りごとを抱えているご家庭も多いのではないでしょうか。「宿題よりゲームに夢中で、取り掛かりに時間がかかる」「読み書きが苦手で学習を嫌がる」など、さまざまなお悩みがあるかと思います。学習の難しさの背景には、・書くことや読むことが、周囲の想像以上に大変・正解へのこだわりから間違いを許容できない・失敗体験が多く自信をなくしているなど、お子さんによってさまざまで、この理由に沿ったサポートがとても大切になります。しかし、「なぜ学習を難しいと感じているのか」の理由を探ることは専門的な部分もあり、何より宿題は毎日のことですので、日々目の前の対応に追われ、なかなか丁寧にお子さんを観察する、といったことも難易度の高いことかもしれません。今回、学習の悩みが軽減したとお話ししてくださった発達ナビPLUS会員の保護者(Aさん)も、当時は大変悩んでいました。そんなAさんの、お子さんの学習サポートについて、どのようなサポートをしたのか、ご紹介します。毎日の「宿題バトル」に親子で疲弊……。子どもに合う学習方法が分からず途方にくれた日々●Aさん(仮名)<お子さん>・小学3年生・ADHD(注意欠如多動症)・放課後等デイサービス利用<お悩み>・宿題に取り組めない・算数の文章題が特に苦手わが子は小学3年生になってから、宿題が終わらず、夜遅くなってもプリントが真っ白という場面が目立つようになりました。早く取り掛かるよう言っても、ダラダラと動画を見つづけ、やり始めるのは寝る前ギリギリ。なかでも算数の文章問題が苦手で、式を作る時点でつまずき、筆算でもミスすることもしばしば……。✕だらけで返ってくる宿題に子どもが「もうやだ!」と泣いてプリントをグチャグチャにしてしまう、それをまた私が怒る……ということをほぼ毎日繰り返していました。Upload By 発達ナビPLUS私がじっくり勉強に付き合ってあげられたらいいのですが、フルタイムで働いているうえ、下の子(年長)もいるので難しい状況でした。放課後等デイサービスにも通ってはいるものの、運動療育メインで勉強の相談にのってもらえるのか微妙で……というより、そもそも私自身気持ちにゆとりが持てず、仕事で体力的にも余力がなかったので、相談しに行く気にはなれませんでした。そんな時に、発達支援の専門家の解説動画や解説記事が読めて、相談フォームから個別相談もできるオンラインサービスの「発達ナビPLUS」の存在を知りました。子どもの学習について家庭でできることを知りたいと思っていたので、すぐ利用を始めました。家事のちょっとした合間で、解説動画をながら視聴していた時に、「内容を理解する以前に、読み書きの行動自体にすごく負担がかかっているんですよね」という先生の一言が耳に入ってきました。「そう言われてみれば、うちの子もそうかも。問題を解く以前に書くことを嫌がってるよな、字もなかなかうまく書けないし……」と感じました。「そもそも『書く』ことへの拒否感が強く、不器用さもあるかも」と、いろいろと腑に落ち、問題の難易度というより、「書字」が苦手なのかもしれないと初めて気づきました。Upload By 発達ナビPLUS解説動画を視聴して数日後、子どもに合った学習のサポート方法を詳しく知りたいと思い、専用フォームからテキストで相談できる「専門家への相談」で直接専門家の先生に相談してみました。悩みを書いているうち、つい勉強とは関係ない私の気持ちまで吐き出してしまい、正直にいろいろ書き過ぎたかもしれないと送ってから落ち込んだりもしました。ですが、届いた回答には学習のアドバイスだけでなく私の思いに寄り添う言葉がつづられていて、すごくホッとしました。正直に言うと、毎日嫌だ、できない、と泣いてばかりいる子どもに「私のほうが泣きたい」「いつもイライラさせられてる」と思うことも多くて……でもそんなことを放課後等デイサービスの先生や学校の先生に言えるわけがなく。顔を合わせる相手には言いにくい気持ちを、発達ナビPLUSの専門家相談で受け止めてもらえたことで、救われたように感じました。Upload By 発達ナビPLUS勉強については、・書字が苦手な子への身体機能的なアプローチの具体的な手立て・書きをサポートするアイテム・わが子が特に苦手な算数の割り算を、特性に合わせてつまずきどころから学び直すステップ(割り算を実感として学ぶ方法も)などが具体的に書かれていました。日常生活のなかで楽しく学ぶアイディアがあることを教えてもらえ、少しだけ肩の荷が下りたような気分になりました。回答にあったように、晩ごはんの取り分けをしながら「割り算ってこういうことだよ」など説明すると、大好きな食べ物が絡む話だからなのか、まじめに聞いてくれました。最近は、「からあげが7個あって、おかあさんとぼくと弟でわけるからー……」と自ら計算しようとする場面も出てきています。子どもとの関わり方のヒントを得られたことで、親子共々、穏やかに過ごせる時間が増えて本当にありがたいです。先のことも含めてまだまだ悩みは尽きませんが、これから少しずつ取り組んでいけたらなと思います。すきま時間に解説動画を見られる!発達支援の専門家に相談もできる「発達ナビPLUS」「発達ナビPLUS」は、ご家庭での子育ての「どう対応すればいいのかな?」「誰かに相談したい」といった悩みをオンラインでサポートするサービスです。心理士や学校現場にも詳しい発達支援の専門家が、解説動画やテキスト相談で保護者の子育てのお悩みに寄り添います。今、子育てに悩みごとがある方、わが子に合った子育てをしたいとお考えの方は、ぜひサイトを覗いてみてください。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2024年06月05日児童発達支援・放課後等デイサービス「スタジオそら」を運営するアース・キッズ株式会社(所在地:東京都渋谷区、代表取締役:高見 裕一)は、スポーツクラブ「メガロス」を展開する野村不動産ライフ&スポーツ株式会社(所在地:東京都中野区、代表取締役:小林 利彦)とパートナー企業として提携し、6月開講の発達が気になるお子さま向けパーソナルスクール「ミライクAID」に向け、研修を提供いたしました。ミライクAIDに向けた研修内容は、発達障害の特性と配慮のポイントなどの基礎知識から、対応方法、療育メソッドなどの指導ノウハウです。これらの内容は、2024年7月リリース予定の総合情報メディア「チャイルドラボ(R)」にて、類似の研修コンテンツの提供を予定しています。ミライクAIDに研修提供■野村不動産ライフ&スポーツ株式会社、ミライクAIDについて野村不動産ライフ&スポーツ株式会社は、「顧客満足を感動と喜びに変える」を企業理念に掲げ、スポーツクラブ「メガロス」、メガロスアフタースクール、バイリンガル幼児園などの事業を通じて地域に住まう方々に健康であることの「喜び」「大切さ」を伝え、「健康」と「生きがい」創造に貢献することにより、お客様や社会と共に栄え、成長することを目指す。また、運動能力の基礎が形成される3~8歳の子どもを対象とした、様々な動きを楽しみながら子どもの潜在能力を目覚めさせ、将来の可能性を無限に広げる体育スクール「メガロスミライク」を運営。2024年6月、障がいを抱えているお子さま、集団行動に不安のあるお子さまに対して、メガロスミライクの内容を提供するパーソナルスクールとパーソナルレッスン「ミライクAID」を開講。■総合情報メディア「チャイルドラボ」について2024年7月1日リリース予定のアプリ・WEBサイト。育児×保育×療育をつなぎ、すべての子どもの健やかな成長を支える総合情報メディアです。専門家監修の育児お悩み解決方法や発達障害の特性への対応例などを、じっくり学べる記事と数分で視聴できる動画で解説します。また全国の保育園、発達支援施設からの遊びや工作アイディアの発信など、最新情報を随時更新。家庭での育児や日々の保育に活かせる情報をお届けします。▼Instagram「チャイルドラボ準備室」 チャイルドラボに掲載予定のコンテンツより抜粋した育児情報や障害知識などの情報を、先取りして配信しています。■児童発達支援・放課後等デイサービス「スタジオそら(R)」について東京都、神奈川県を中心に、発達が気になる児童に発達支援療育(R)を提供する児童発達支援・放課後等デイサービスを合計28事業所運営。1対1の個別療育を中心に、子どもの「できた!」を成長に繋げます。粗大運動や微細運動などの運動プログラムの他、SST(ソーシャルスキルトレーニング)、学習支援など、子どもが楽しみながら課題にチャレンジできる支援を提供しています。チャイルドラボ■会社概要商号 : アース・キッズ株式会社代表者 : 代表取締役 高見 裕一所在地 : 東京都渋谷区千駄ヶ谷3-51-6 原宿MOA 2F設立 : 2000年1月28日理念 : 子どもたちのために。以上。ビジョン : すべての子どもたちが公平に可能性にチャレンジできる…。そんな社会を創る。事業内容 : 児童福祉法に基づく児童発達支援、放課後等デイサービス「スタジオそら」、子どもの健やかな成長を支える総合情報メディア「チャイルドラボ」公式サイト: TEL : 03-3403-4389FAX : 03-3403-4388Mail : info@studiosora.jp 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2024年06月04日大学生となった次男の湧太は、小学校の頃、支援級に通っていました。今は支援を必要としていませんが、彼が家庭にいるうちに、できる限り様々なトライ&エラーをして欲しいと思っています。なぜなら、トライ&エラーで得る経験値は財産だからです。今回は、生きていくための必須項目、「お金との付き合い方」のトライ&エラーについて、我が家の事例を紹介します。■発達障害があるとお金のトラブルを抱えがち発達障害があるとお金のトラブルを抱えがちであることは、多くの支援者が指摘しています。【発達障害の特性があるがゆえに抱えがちな困りごと】(1)衝動的に欲しいものを買ったり、やりたいことやってしまう(2)見通しを立てるのが苦手なので、計画的にお金を管理するのが難しい(3)予算に関係なく、好きなものには徹底的にお金を使ってしまう幼い頃の息子は、(1)(2)が該当していました。「このままだとマズイかも!」と考え、金銭教育には力をいれることにしました。■子どものお金の使い方をどうやって把握する?まずは、彼のお金の使い方を知るために、お金を精算制にしてみました。中高時代のおこづかいは3,000円。その他の必要経費は、「下記の精算用紙とレシートを提出すれば、後日精算します」という制度です。お金の使い方は、優先順位をつけることが必須です。そのためには、大きく3つの項目に分け考えます。緑はインフラ、黄色はコスト、グレーはクッションです。【緑:インフラ】生活をする上でのインフラとなる費用です。将来的には家賃、水光熱費、通信費などです。中高生で考えると、部活の遠征や塾に行く際の交通費、学校から塾に行く間の腹ごしらえや時間調整のために入るカフェ代をカウントしました。【黄色:コスト】生活をする上での、ランニングコストです。将来的には、食費、日用品といった生活費です。中高生で考えると、パンやおにぎりといったお弁当以外に食べる捕食代(中高生男子は、いつもお腹がペコペコです)、文房具代、書籍代などをカウントしました。【グレー:クッション】イレギュラーなお金のことです。将来的には、レジャー費、交際費などです。中高生で考えると、お友だちとの外食やレジャー費です。クッション費については、「500円以上の部分」かつ「親が納得するようなプレゼンができれば」精算します、というルールでした。たとえば、休みの日に友だちと遠くに遊びに行った時の交通費や食事代を一部負担するといったところでしょうか。この制度の良い点は、経費精算なので「お金が足りなくなると、精算せざるを得なくなる」ということです。「精算用紙を提出すれば現金が手に入る」と脳の報酬系を刺激する仕組みを作ることで持続可能な制度となりました。■息子の動きが透けて見える優秀な手がかり思春期は、親子の会話の少ない時期です。「必要経費にするためのプレゼン」など、精算にまつわるアレコレが親子の大切なコミュニケーションになりました。予想外の副産物として、レシートの優秀な探偵ぶりをあげたいです。息子が買い食いをしているレシートを見ることで、「こんなものを食べているんだ。この時間に、ここにいるんだ」と、息子の動きが透けて見えました。お金の流れは、本当に正直です。■無駄遣いは注意すべき?私は、息子に対して、「無駄遣いをやめなさい」とか「節約しなさい」と言ったことはありません。むしろ、お金の小さな失敗を経験させたいと考えています。たとえば、「友だちと遊びに行く予定があるのに、お小遣いが足りない。どうしよう!」とか「あの時無駄遣いしなければ、今〇〇円あるはずなのに!」といった感情経験です。最初から、お金を上手に使える人なんていません。お金の小さな失敗は、冒頭でお話した「トライ&エラーでしか得ることができない経験値」です。本人が感情経験を素直に感じとれるよう、家庭内に、失敗も含めてお金の話を自然にできる雰囲気を作っておくことが大切だと思います。■「お金の失敗をさせない」ことより大切なこと成年年齢の引き下げで18歳、19歳の若者は、未成年者取消権(親などの同意なく行った契約を取り消すことができる権利)を使えなくなりました。「お金の失敗は、誰にでも起こり得る」という気持ちで親が構えていれば、子どもが実際に金銭トラブルを抱えてしまった時、親に相談がしやすいとも思います。もっとも困ることは、子どもがお金のトラブルを抱えたまま、誰にも相談できず、問題が大きくなってしまうことです。高校を卒業するまでに、「この子のお金の使い方はどんな感じかな」と子どものお金の使い方の癖を親が把握しておくこと、「お金の失敗は誰でもするんだから、何かあったら相談できる」という親子関係の構築は大切だと思います。■もし子どもが金銭トラブルに巻き込まれたら…?少し余談になりますが、子どもから金銭トラブルの相談を受けた時、保護者も動揺するでしょう。でも、大丈夫!保護者は「このトラブルは、どこに相談すればいいのかな?」ということを子どもと一緒に考えてください。「相談先を子どもと一緒に調べ、考える」という保護者の姿勢があるだけで、子どもは心強いと思います。相談窓口は、下記などがあります。◎金融庁: 「中学生・高校生のみなさんへ」 「基礎から学べる金融ガイド」が、ダウンロードできます。お金のベーシックな知識は、これを読むと良いでしょう。また「基礎から学べる金融ガイド」の31ページ以降は「トラブルに注意」という項目となっており、相談窓口が記載されています。お金を請求された場合、支払ってしまった後に取り戻すことが難しい場合もあるので、支払う前に、相談した方が良いでしょう。保護者の側にも、「問題を一人で抱え込まずに、早めに相談機関と繋がる」という感覚が必要です。■発達障害の診断を受けた息子の今!わが家の金銭教育について、息子はどう感じていたのでしょうか? 本人に聞いてみました!湧太:精算制度のおかげで、浪費してしまった次の月は節制するなど、「自分で自分のお金は、コントロールできる」という感覚を持てるようになりました。■発達障害のある子はずっとこのまま?という不安いかがだったでしょうか? 3回に渡って、発達障害と診断された息子の中学高校生活に伴走して考えたことをまとめてみました。子どもに発達障害の特性があると、育児最前線にいるママは本当に、本当に大変です。いくら大変でも、ママには「育児をしない」という選択肢がない以上、毎日をゼーハーと“こなす”しかないですよね…。お疲れさまです。でも、そんな日々を懐かしく思い出せる日が来るんです。私は、ある時、ふっとそんな日がやってきました。発達障害がある子の成長スピードは、定型発達の子の7割くらいと言われています。幼い頃や学齢期だと、周囲の子どもと比べてできないことが多すぎて「ずっとこのままなんじゃないか」という気持ちになることもありますが大丈夫!! 「オムツがとれた」「立てた」「おしゃべりができた」といった時代、「あれ? うちの子、発達が遅い? 大丈夫かな?」などと気になっていたことはありませんか? でもあとから考えれば、それはたいした時差ではなかったですよね…。発達のスピードはゆっくりかもしれませんが、発達障害がある子も確実に成長します。子どもが育つ力を信じて、その子なりの育ちを見守れると良いですね!最後に最近の私の話をひとつ。「ふつう」という枠に入らない子を育てている母ばかりで話をする機会があった時のことです。「私たちは、ヘビーな子育てだったがゆえに、いろんなことを考えざるをえなかった。そんな時間は、振り返った今となっては貴重だったよね」というのは、全員一致の見解でした。発達障害のある子を育てていると、途方に暮れることも多々あります。でも、大丈夫! 子どものことを一生懸命考えている自分を大切に扱いながら、自分なりの歩幅で歩いていけば、いつの間にか楽になる日が来るのだと実感を込めて思います。そして、そんな日々こそが人生の財産なんです。本記事はあくまでも筆者の体験談であり、症状を説明したり治療を保証したりするものではありません。気になる症状がある場合は専門機関にご相談ください。■楢戸ひかるの著書 『ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−』(小学館刊) 定価1,760円(税込)/192ページ著:楢戸ひかる監修:片桐正敏(北海道教育大学旭川校教授)取材協力:小泉雅彦/日高茂暢/ギフテッド応援隊マンガ:黒川清作 ギフテッドの生きづらさをリアルに描いたストーリーマンガ80ページと、約100ページの解説で構成。 当事者たちの「生きづらさ」を「らしさ」に変えるために必要なサポートのあり方についても提案した書籍。
2024年05月31日STEAM教育って何?
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